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作者フリー 短編用スレ 二集目
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)11時09分54秒
- このスレッドは作者フリーの短編用スレッドです。
どなたが書かれてもかまいませんが、以下の注意事項を守ってください。
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・レス数の上限は特にありませんが、100レスを超えるような作品の場合、
森板(短編専用)に新スレッドを立てることをお薦めします。
なお、レス数の下限はありません。
・できるだけ、名前欄には『タイトル』または『ハンドルネーム』を入れるようにしてください。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
次の人に終了したことを明示してください。
・後書き等を書く場合は、1スレに収めてください。
・感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ。
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)11時37分01秒
- http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/white/1027523725/
前スレ
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)13時47分04秒
- 新スレおめ&おつです。
短いですが、一発目行かせて頂きます。
- 4 名前:A RAINY 誕生日の朝 投稿日:2002年10月22日(火)13時48分00秒
- なんとなく目が覚めた。
豆電球ほどの明かりしかない部屋で、視界も開けないまま闇雲に枕元に手を伸ばすと、小さな痛みとともに時計を探り当てた。
頼りない手つきで時計を引き寄せ覗き込むと、緑の蛍光色がぼんやりと浮かぶ針は七時前を指している。
起きるかどうか、少し戸惑った。
もう一度眠ろうと思えば眠れない事もない。
起きるとすれば、隣で静かに眠る彼女を起こさないようにしなければならないし、
どうも腰の辺りに気だるい倦怠感を感じる。
昨日の夜は久々に激しかったから、もう少し身体を休めた方がいいかもしれない。
そう思って時計を頭上に戻し、体勢を立て直そうとした瞬間、微かな物音が耳に飛び込んできた。
息を呑んで体の動きを止めると、その音は彼女の向こうにある薄目を開けたブラインドのさらに向こうから聞こえる。
しばらくするとその音は繋がりだし、断続的にはっきりとした音を奏でだした。
どうやら、雨が降り出したらしかった。
- 5 名前:A RAINY 誕生日の朝 投稿日:2002年10月22日(火)13時49分21秒
- その音が雨音だと気付いてすぐ、私は物憂げなため息をついた。
そしてすぐにベッドを抜け出し、彼女を起こさないよう気を使いながらブラインドを引き上げ、申し訳程度に開いていた窓を閉める。
はっきりとしていた雨音がおぼろげに霞んだ。
雨音は霞んだけれど、私の意識はすっかり覚醒してしまった。
もう今更ベッドに入る気にもならず、とりあえず何も纏っていない身体に下着を付ける。
下着だけつけると、ベッドの下に生々しく放りっぱなしになっている彼女の服を身に着けた。
特に深い意味のある行動ではないのだけれど、何故かいつもしてしまう。
彼女は私より大きくて、胸元はゆったりしているし、袖は手のひらを半分飲み込んでしまう。
その分温かいせいかも知れない。
台所へ行って、適当に何か作ろうと冷蔵庫を空け愕然とした。
昨日一緒に作ったケーキの材料はあるものの、他には何もない。
卵、砂糖、牛乳、小麦粉にトッピング用のイチゴ。
砂糖や小麦粉まで冷蔵庫にしまってしまう彼女の料理の才のなさに苦笑しながら、それらを取り出して冷蔵庫を閉めた。
どうやら、彼女が起きるまで朝ごはんはお預けになりそうだ。
- 6 名前:A RAINY 誕生日の朝 投稿日:2002年10月22日(火)13時50分13秒
- しばらく台所でボーっとしていると、マンションの壁を力づくで通り抜けて雷鳴が響いた。
驚いて顔を上げると、目に入った時計は七時半になろうとしている。
私は掛けていた椅子から腰を上げ、彼女のベッドから斜向かいに当たる窓から外を眺めた。
七時半になるにしては暗いなと思った。
雨粒が纏わりついた窓は、まばらに点在する光を震わせる。
五台ほど連なった車の全てがヘッドライトとテールランプを光らせている。
窓を叩く音にあわせて眼下の水溜りが形を変える光景はどこか不思議だった。
私はどこかいたたまれなくなって、窓から顔を離した。
雨のせいでも、外が暗いせいでもないだろうけれど、たまに突然、自分は何をしているんだろうと思うことがある。
ふと仕事に疑問を感じてしまったり、逆にたまの休みに暇を持て余してしまったり。
それは本当に突然やってきて、そして突然去っていく。
そんなこと、考えたって結局分かるわけがないのだから。
この世の中、理由のない行動はないらしいのだけれど、理由の見えにくい行動ならいくらでもあると思う。
- 7 名前:A RAINY 誕生日の朝 投稿日:2002年10月22日(火)13時51分06秒
- そんな中で、今日は久々に明確な意思と理由を持って行動するはずだった。
リビングの床に豪快に置かれている自分の鞄から、その鞄の大きさに不釣合いな小さな箱を取り出す。
綺麗なラッピングも何も施されていないそれは、ちょっとした決意の塊だった。
今日は彼女を遊園地に誘おうという決意、その観覧車でこれを渡そうという決意。
今更改まってプレゼントを渡すような間柄ではないのだけれど、でもこれは、気軽に手渡せるようなものとは思えなかった。
けれど外は雨だ。
無理をすれば遊園地に行けない事はないだろうけれど、風邪をひいてしまうかも知れない。
雨の遊園地、大切な人に気持ちを込めて渡すプレゼントなんて映画みたいでとてもかっこいいけれど、明日には仕事が待っている。
ロマンチックは現実世界に持ち込むべきものではない。
欲張らないで、ほんの少しいつもより素敵な行動を心がけるべきなのだ。
そう思ったら、次にするべき行動が決まった。
私は、乱雑になっている小さなテーブルからメモ用紙と鉛筆を探り出し、手を動かし始めた。
- 8 名前:A RAINY 誕生日の朝 投稿日:2002年10月22日(火)13時51分55秒
- 「DEAR 梨華ちゃん
誕生日おめでとう。
これからも二人で思い出を重ねて、少しずつ歩いていきたいね。
FROM 矢口」
書いている途中、色々と気になった。
シャカシャカと響く鉛筆の音で彼女が目を覚まさないか。
こんな改まった書き方じゃなく、いつもみたいなもっとくだけた書き方をするべきか。
けれど、今日くらいはいいと思う。
ほんの少し、いつもよりカッコをつけるべき日だと勝手に決め付けた。
だって、今日は彼女の誕生日なのだから。
- 9 名前:A RAINY 誕生日の朝 投稿日:2002年10月22日(火)13時52分32秒
- 朝から雨が降っていて、ため息の出る休日になった。
予定は狂って、やりたいことはできなくなってしまったけれど、代わりを見つけた。
メモ用紙を貼り付けた小箱をそっと彼女の隣に置き、彼女に気付かれないように私もベッドに入った。
もしあなたが起きたらすぐに、気が付くように、プレゼントを置いておくわ。
もしあなたが起きたらちょっと 眠ったふりで 幸せな顔を見せるわ。
口の形だけそう動かし、声を立てずに笑った。
ちょっとカッコつけすぎかもしれない。
私は苦笑しながら、おでこを彼女の背中に押し当てた。
そこはほんのりと温かくて、彼女に幸せな顔を見せられる気がした。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)13時53分38秒
- おわり
- 11 名前:ピーチヨーグルト 投稿日:2002年10月22日(火)21時27分20秒
自分が感じている甘いものを共有したい人がいる
「あれ、やぐちなんか食べてる?」
楽屋で各々好きなことしながら時間をつぶしているとなっちが声をかけてきた。
「うん、コレ」
さっき口の中に放った飴を唇で挟んで見せる
「何味?いちご?」
「うんん、ピーチヨーグルト」
「ああ、なんか甘い匂いすんね。おいしい?」
「うん。なっちも食べる?」
「いいの?」
「うん、多分まだあると思うから」
そういって自分の荷物をがさごそ探る
「んー?っかしいなぁ。もう一つくらい残ってるハズ・・」
「えー、ないの?ザンネン。まぁ無かったらいいよ、また今度でもさ」
カバンの荷物を全部出して逆さにしても出てこない。ま、当然だけど
「あ!そーだ、なっち、ちょっとこっちきて?」
「ん?」
なんて首をかしげる仕草もかわいいなっちの手を引いて楽屋の隅っこ、
みんなから死角になるトコへ連れて行く。
- 12 名前:ピーチヨーグルト 投稿日:2002年10月22日(火)21時32分39秒
「なに?やぐち」
なんもわかってないなっちの顔にすっと顔を近づけて、そっとちゅう
「んんっ!」
慌ててるなっちの唇をそっと舌で割って、ころ、と飴を転がした。
やぐちの口からなっちの口へ無事移動を果たしたピーチヨーグルトの塊
「・・・最後の一個だったから」
へへっとわらっていたずらなウィンク
「・・・も、やぐちはぁ」
ピーチヨーグルトの飴よりピンクに染まったなっちの頬がちょっとふくれて
非難めいた視線の後に照れ隠しのようにふっと緩んだ。
小さな塊はなくなったのに口の中にはまだ甘い香り
なんかさっきより甘いかも
- 13 名前:ピーチヨーグルト 投稿日:2002年10月22日(火)21時39分55秒
「あー安倍さんなんかたべてるー」
「なんれすかそれー?」
戻った途端お菓子に敏感な小さな二人に捕まって
口の中覗き込まれてるなっち
「んー?やぐちから貰ったんだぁ〜」
「「いいなぁ〜」」
「いいだろぉ〜すっごく美味しいよ〜♪」
「やぐちさ〜ん、私にもくださーい」
「くらさ〜い」
「ザンネンでしたぁ、もうないよ〜ん。なっちので最後だった」
「「え〜」」
「あはは、今度買ったらあげるよ」
残念がる二人には悪いけど今はあげらんない、
なっちが側にいるからあげらんない。
上着のポケットに入ったピーチヨーグルトの飴を服の上からそっとなぞった
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)21時45分50秒
共有したいのは飴の甘さだけなわけじゃないから
ね、なっち
〜おわり〜
すみません、お目汚しでした。
てかageちゃってるし・・・いいのかなぁ?
やぐちさんがあげないあげないゆーとるのに・・
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月25日(金)06時32分51秒
3本目。タイトル「ロシアンルーレット」 注意:大人の時間。
- 16 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時34分35秒
- 「これはウチらからのプレゼントや」
そう言って中澤さんは紐のようなものをあたしの首にくるっと一周させた。
喉元でカチャッと音が聞こえ、冷たい感触が首筋に伝わる。
「吉澤似合うねー」
何やら満足げに微笑む中澤さん。
「これ何ですか?」
自分の首に手をやると真ん中あたりに四角いカタチをした金属製のものが
付いてるのがわかった。
薄い笑みを浮かべる中澤さんに、なんとなくイヤな予感がして、
ふと鏡に目をやると、そこに映ったのは…。
小型犬用くらいの黒っぽい色をした、首輪だった―――
- 17 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時36分16秒
- 「ど、どーいうつもりですかッ!」
ハズそうとして中心の金属部分をガチャガチャ引っ張ったけど、カギがないと
ハズれない仕組みになっているらしい。
紐も妙に丈夫で切るのはムリそう。
「カギ貸してくださいよ!」
「さて、どーしよかなぁ〜」
中澤さんは挑発するようにカギを振って見せつける。
「ふざけないで下さいッ!!」
カギを取ろうと手を伸ばしたら、あと少しのところで交わされて、
そのまま中澤さんを組み敷くカタチで倒れ込んだ。
- 18 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時37分11秒
- 「ッ…!」
「あ、ごめんなさい!」
あたしは慌てて中澤さんからカラダを離す。
中澤さんはネックレス状のカギを首に掛けると意地悪げに微笑みながら
あたしを見上げる。
「飼い主を襲うとは行儀の悪い子やなぁ」
「だ、誰が飼い主ですかっ!」
それに襲うなんて人聞きの悪いこと言わないで下さい!
中澤さんを襲うなんて怖くて誰もできませんよっ。
だいたい、あたしが好きなのは――
なんてことを考えてる間に、あたしの肩は中澤さんに捕まっていた。
- 19 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時38分14秒
- 「押し倒されるんも悪くないけど―」
えっ、ななな、何―――ッ!?
「やっぱり、ウチはこっちのほうがええわ」
ち、ちょっと、待ってッ―――!
あたしの肩をつかむ腕に力が入ったと思ったら、あっという間に回転して、
机の上にカラダを押さえ付けられていた。
悪戯っぽい笑顔を見せていた中澤さんの顔つきが、急に真剣な表情に変わる。
なんだよこの空気。すげー怖いんだけど―。
『裕ちゃんは野獣だからよっすぃー気をつけなよッ。』
いつだったか矢口さんが、そんなことを言ってたのを思い出した。
――やっぱり矢口さんも中澤さんにされちゃったのかな?
- 20 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時39分18秒
- 「吉澤…」
中澤さんはあたしの耳元に唇を寄せると甘く噛みつき、シャツの裾から手を
潜り込ませ素肌に触れる。
「ま、待って…中澤さ…ッ…!」
「ええから…」
胸を掌全体で包みながら、もう片方の手がズボンのボタンを慣れた手付きで
外し、下着の上からやんわりと撫で上げる。
「…やッ…あ、……やめてくださいッ…!」
「すぐ気持ちよくなるから…」
中澤さんは不意にスルッと下着の中に手を滑らせる。
ソコをゆっくりと撫でられて思わずカラダがビクンと反応する。
- 21 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時40分13秒
- 「あッ!…だめッ…はぁん…ッ」
「足開けて…」
「やぁだッ…!あ…んッ…!」
中澤さんは膝の間に顔を埋め、ぴち、ぴちゃ、淫らな音を響かせる。
あたしはきつく目を瞑り、声が漏れないように唇を噛みしめる。
「ちゃんとしてるか?……すごい濡れてるで……」
「…んっ…ぁ…、…まだ…」
「…まだ?」
急に舌の動きが止まった。
中澤さんはあたしの顔を覗き込んで、ニッと意地の悪い笑みを浮かべると、
再びソコに唇を近づけた。
- 22 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時41分10秒
- 「任せとき。優し〜くしてあげるから」
「あッ!…やぁ…っんん…ぅ…」
敏感なそれを吸い上げられ、あたしのカラダがビクッと大きく揺れた。
舌で繰り返し刺激されヒクヒクとソコが小刻みに震えはじめる。
「ほしそうやな」
「や!…やだぁ…あッ…んぅ…」
「力抜き…」
「でもッ…はぁっ…ん…」
「安心し、慣らすだけやから…」
舌の代わりに指がゆっくり差し入れられ、ヘンな感覚が体中に広がっていく。
中でゆっくり絡みつくように動かされ、それだけでいっちゃいそう。
- 23 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時42分25秒
- 「ここ、ええやろ?」
「ああ!っん…はぁ…ッ…」
中澤さんの指にキュッと突起を擦られてカラダが仰け反る。
「な…、なかざ…さんッ…」
「…何や…どうしてほしい?…」
敏感な部分を激しく指で擦り上げられ腰のあたりがジンと痺れた。
全身が熱くて苦しくて耐えきれず、あたしは中澤さんの首にしがみついた。
「あんッ!…中澤さ…ッ…、もう…」
「イきたい…?」
中澤さんは耳朶に唇を這わせながら甘く囁く。
ゆっくりと指で撫でられ、達しそうで達せなくて、もう、気がヘンになりそう。
- 24 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時43分48秒
- 「ほら…ちゃんと言わな止めるで… 」
「…やぁっ…して…ください……」
何度も指先でくすぐられて、本当にもう限界…。
「ちゃんと見せて……吉澤のイク顔………」
「…やっ…見ないで…ああッ…ぁ…んんッ!…」
中澤さんの指に攻め立てられ、快感が体中を駆け抜けて行って、痺れるような
刺激に頭ん中が真っ白になった。
- 25 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時44分57秒
- 「吉澤」
「なんですか?」
あたしはシャツのボタンをとめながら中澤さんのほうに顔を向ける。
「気持ちよかった?」
「そ、そういうこと聞かないでくださいッ!」
「だって聞きたいやん」
あたしの顔を覗き込むように中澤さんの顔がぐっと近づく。
間近で見る中澤さんは妙にえっちぃくて思わず顔が赤くなる。
「痛くなかったやろ?」
「…はい」
さっきのエッチを思い出してしまって、熱くなった顔がバレないように
あたしは思わず下を向いた。
- 26 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時46分01秒
- 「かわいいなぁ。好きやで吉澤ぁ」
「うあッ!な…中澤さんッ…!」
おもいっきり抱きしめられて、ちょっと息苦すぃ…。
中澤さんはあたしの腰に手をまわすと、そっと唇を重ねてきた。
触れるだけの優しいキスに頭ん中がボーッとする。
「ほしいんやろ?」
「ほ、ほしくないですッ!」
中澤さんはそっと体を離すと、あたしにカギを差し出した。
「いらんのか?」
「へッ…?ほほほ、ほしいですッ!!」
- 27 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時47分04秒
- あぶねー。首輪のことすっかり忘れてた。
あの状況であんなこと言から違う想像しちゃったよ。
あたしは受け取ったカギを錠前に差し込む。
短い間だったけど、サヨナラ首輪くん。
―――ん!?
「あのー、カギが回らないんですけど…」
「ハズレか」
は、はずれ??
「それって、どういう…」
「みんなで分けてるうちに混ざってもうてな」
みんな?分けるぅ??
- 28 名前:ロシアンルーレット 投稿日:2002年10月25日(金)06時47分55秒
- 「ウチも誰がアタリを持ってるか、ようわからんねん」
「じゃあ、これ、どうするんですかッ!!」
こんなモノ付けてたら変態だと思われるよッ!!
「吉澤ー」
「はい?」
「とりあえず一人ずつまわってくれるか。」
end
- 29 名前:ロシアンルーレットの作者 投稿日:2002年10月25日(金)06時49分24秒
- あとがき。
つい出来心で書いてしまいました。
いまいちオチが分かりにくかったらゴメンナサイ。
- 30 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)10時45分33秒
二人の幸せを
取り戻せる術がもしあったなら
きっと
わたしは
みつけに行った
- 31 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)10時56分20秒
―――
「圭坊はやっぱこの店継ぐべきだと思うけどなぁ。
教師なんて職よりも、本に囲まれた生活のほうが何倍も魅力的に感じる。」
常連客の裕ちゃんは、そう言った。
「だったら、わたしのかわりに裕ちゃんが
ここに座っていて欲しいんだけどね。」
「怠慢やなぁ。と、いうかなんで今日は、圭坊が店番してるん?」
裕ちゃんは、さっきからずっと近くの本を興味のなさそうに見ている。
「父さんが夏カゼで入院。母さんは付き添い。」
わたしはなるべく話を終わらせようとする。
「道楽半分なんだから入院中ぐらいなら閉めとけばいいのに。」
ぼそっと独り言。
「常連としては困るんやけど。」
裕ちゃんにはわたしの独り言が聞こえたみたい。
「何が別れたやつが常連客・・・・。」
「別れても逢瀬を重ねるなんて艶っぽいやんか。」
「わたしらに、艶もくそもないでしょ。」
まったく・・・・・。
あの日から二年以上経つっていうのに
「二年・・・・か。」
出逢ったのは
もっと遠い昔のように思えるけど
- 32 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時03分38秒
―――
あれは、二年前・・・・・。
「紹介するね。こちらは、保田圭さん。
いつも、ヤグチが話してる大親友。」
にこにこしながらわたしを紹介する金髪の彼女。
「圭ちゃん、こっちは紗耶香。
市井紗耶香っていうんだよ。」
二人は何も言わなかったけど、すぐに恋人同士だなと、ピンときたよ。
すぐに、わかったのに・・・・・どうして
馬鹿だな、どうして
好きだと思ってしまったんだろう
一目ボレと言えば、聞こえはよかったかもしれないけど
「ねぇ、圭ちゃん、紗耶香に圭ちゃんの家の店、教えてもいいかな?」
ただの親友の恋人に横恋慕しただけで
何も知らないやぐちが笑いかけてくれる度、
罪悪感が胸を焦がした。
- 33 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時12分16秒
しばらくして、紗耶香がわたしの親がやってる本屋に足をはこんできた。
「ごめんね、やぐち、無理言ったんじゃない?」
「そんなわけないよ。」
紗耶香は、一人できた。
やぐちとくるかと思ったのに。
ちょっと来てくれたのが、嬉しかった。
「やぐちね、圭ちゃんの話をよくするよ。
仲がいいんだね。やぐち、信頼してるね。ときどき、嫉妬しちゃうよ。」
急に話し掛けられた。
本を見ながらだったけど。
「・・・・親友、だからね。
高校で知り合って、そのまま卒業した今でも仲良くしてる。
不思議だね。やぐちといるとさ、こっちまでやさしくなれる気がするんだ。
嬉しいから笑って、悲しいから泣いて、屈託がなくて朗らかで。」
わたしもあんな風になれたらよかった。
憧れそのもの。
「うん。わかる気がする。」
静かに、紗耶香は笑った。
「紗耶香にも、親友がいるって聞いたよ。
ユーチャンとナッチって二人。」
やぐちが、楽しそうに喋ってた。
「親友・・・・だったのかな?」
なんか、納得しない顔をしてた。
親友じゃないの?
- 34 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時17分46秒
静かに、笑う彼女が好きだった。
その声が
輪郭が
存在が
好きだった
永遠に届きはしないのに
いくら想ってもむだなのに
いっそ忘れてしまえばよかった
なのに、裕ちゃんや、なっちと出会って
彼女の一部を益々知って
ほんと
ばかだ、わたし
裕ちゃんたちに会って、数日たった後、たまたま裕ちゃんにあった。
「また食事しようって、やぐちが言ってたで。」
「うん、聞いた。」
ちょっとした沈黙。
「あのさ、あの二人って付き合ってるんだよね。」
つい、裕ちゃんに聞いてみた。
わずかな希望をもって・・・・
「知らないほうが身のためになることもあるやろ?
やぐちが、きみの秘めた想いに、気付かないほうが平和なようにね。」
名前を言わなくても『あの二人』というのは、わかったみたい。
- 35 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時24分12秒
「奪っちゃえばいいのに。」
ぽつりと、裕ちゃんが提案する。
「やぐちに敵うわけないじゃん。」
敵わないから憧れるんだ。
「むしろ、あの二人には幸せになってほしい。
『あぁ、敵わない』って思えるほどに。
わたしじゃ、追いつけない遠いところまで・・・・・。」
手の届かない処まで、いってほしい。
「賢明やな。じゃ、うちと付き合ってみる?」
「はぁ!?」
いつもなら出さないくらい大きな声が出た。
それほどに、裕ちゃんはさらりといった。
「圭坊、寂しそうやから。
うちも退屈してたところやし。付き合ってあげるで?」
裕ちゃんはまさになんともないやつだった。
キスをするでも、抱き合うわけでもないやつ。
ただ、なんとなく一緒に居て・・・・。
- 36 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時29分17秒
「圭ちゃん、裕ちゃんとは上手くいってる?」
突然、やぐちは、心配そうに聞いてきた。
「へ?なんで?」
「だって、圭ちゃん、他人に気を遣いすぎて、
自分を抑えちゃうとこがあるから。
ちゃんと幸せかどうか、心配だよ。」
何かに、戸惑ってるみたいだった。
「裕ちゃんは、やぐちの信用を全く得てないわけだ。」
じょーだん半分に言ってみた。
「えっ!?ちが・・違うよ!!そんなつもりじゃないんだけど・・・・。」
やぐちは自分がからかわれてることに気付かないのかな?
ありがとう、やぐち。
わたしは、大丈夫。
だから、やぐちこそ幸せになって。
幸せでいて
- 37 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時36分58秒
最近、やぐちから連絡がなくて心配になった頃、
わたしは、ひまができたから、やぐちの家へ行ってみた。
やぐちに、久しぶりに会った。
「あ・・・・。圭ちゃんだ・・・・・・。会いに、き、来てくれた・・・の?
ご、ごめんね。せっかく来てくれたのに、見苦しい格好で・・・。」
久しぶりに会ったやぐちは、ひどく傷ついてるみたいだった。
目に、光がなかった。
いつものやぐちじゃないのは、一目瞭然だった。
妙な胸騒ぎがした。
「でも、ほんと久しぶりだね。やぐち、
音信不通になってたから、心配してた。」
無理矢理、話題をつくった。
「紗耶香・・・・紗耶香には・・・会った?」
「え?ううん。会ってない。」
やぐちが、小さくふるえてた。
「さやか・・・さやかねぇ・・・・・目を、怪我・・しちゃった。
ヤグチ・・・・・ヤグチのせいで・・・・。」
- 38 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時42分48秒
「やぐち・・・・・。」
言葉を失った。
「ねぇ、圭ちゃん、どうしよう・・・・・。ヤグチ、取り返しのつかないこと、
しちゃったよぉ・・・。ヤグチのせいで・・・・・。
側に・・・いたのに・・・・・。なのに・・あんなひどい怪我させて・・・・。
ヤグチ・・・・ヤグチ・・・・・・守って、あげられなか・・った。」
「あげられなかった・・・・・っ。」
やぐちを抱きしめた。
力をいっぱい込めて。
だって、今にもやぐちが、壊れてしまいそうで・・・。
やぐちが、儚くて・・・・・。
人一倍小さな体が、なくなりそうだったから・・・・。
わたしが、やぐちを守ってあげればよかった・・・・・。
「守って・・・・・・・あげられなかった・・・の。」
- 39 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時44分41秒
理由も事情もどうでもよかった
壊れてしまった
終わってしまったんだ
・・・・・もう
こんな形で
二人の幸せは
その事実は変えられなかった
- 40 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時49分20秒
一ヶ月が経った
「ごめんね、長い間寝込んじゃって。圭ちゃんにも心配させたね。
でも、もう大丈夫だからっ!」
いつものやぐちは、そこにいた。
「ほんと?なんかまだほっぺがこけてない?」
「へへへっ。もちろんちょっとはおとなしくしてなきゃだめだって。
だから、また少ししたら、一緒に遊びに行こうねっ。」
無邪気な笑顔だった。
ちょっと見てるのが、辛かった。
「ほんとに、忘れちゃったんだね。」
自然にでてしまった、この言葉。
だって、あんまりにも悲しかったから。
「え?」
やぐちがこっちをむく。
「なんでも、ないよ。」
これは、絶対、やぐちには教えられない。
- 41 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時54分08秒
裕ちゃんに、教えてもらったもの。
紗耶香は、人の記憶を一部だけ消す事ができるらしい。
彼女は一体、どんな気持ちで、やぐちの記憶を・・・・・・。
「そうだ。圭ちゃん、裕ちゃんと別れたんだって?」
「うん。」
あのあと、少ししたら裕ちゃんとも別れた。
「ヤグチねぇ、圭ちゃんなら紗耶香がいいと思うんだっ!
きっと、お似合いだよっ!!」
「やぐちのほうが、合ってるよ。」
「え〜!?ヤグチはだめだよぉ。
全然、釣り合わないもんっ!!」
幸せになって
- 42 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時56分55秒
ふいに、やぐちと紗耶香が笑いあってる姿が目に浮かんだ。
そしたら、視界がゆがんだ。
「圭ちゃん?どしたの?」
ひとはひとを好きになるわけじゃ、ないはずなのに
悲しくなりたくて
寂しくなりたくて
忘れて
消えて欲しかったのは
あの日の二人なんかじゃなかったのに
- 43 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)11時59分28秒
それから、きめたこと。
いくら、寂しいからって
誰かと付き合うことはやめた。
寂しさが
増すだけだと
わかったから
わたしも
見つけにいくべきかな
幸せを
・・・・・みつけられるかな
今度は
寂しくなるためじゃなくて
今度こそは
- 44 名前:作者 投稿日:2002年10月28日(月)12時00分18秒
-
―――END
- 45 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月28日(月)16時59分59秒
- タイトルはないのかな?
もっと長編でよんでみたい感じ。
- 46 名前:『後悔』 投稿日:2002年10月30日(水)20時44分59秒
- タイトル:『後悔』
- 47 名前:後悔 投稿日:2002年10月30日(水)20時45分35秒
- 楽屋のドアがけたたましく開いた。
「みんな、おはよう!」
元気な声と共に保田が部室へと入る。
しかし、まだ誰も楽屋に来ていなかった。
「なんだ、誰もいないのか……」
仕方なく座布団に座ると他のメンバーが来るまで待つことにした。
しかし、数秒経ったが誰も来なかった。
- 48 名前:後悔 投稿日:2002年10月30日(水)20時46分22秒
- 保田はつまらなそうに楽屋内を見渡す。
壁に備え付けられているメイク台の鏡に自分の姿が映った。
「はっ! 悪霊め! このすーぱー陰明師、保田圭様が退治してくれる!」
そして、立ち上がると素早く両手で印を結んだ。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前!」
そのまま掛け声ともに手刀で空間を縦横に切りつつ、
素早く九字の印を作り、気を溜める。
「破ーッ!!」
そして、両手を突き出すと気を解き放った。
その時である。
- 49 名前:後悔 投稿日:2002年10月30日(水)20時47分07秒
バァフォ!という爆音と共に、スカートの後ろが風で捲れ上がった。
周囲に異様な匂いが立ち込める。
「ぶふぁ! 自分のオナラは臭くないなんて言うけどあれは嘘ね!」
保田は、一つ賢くなったと言わんばかりの表情で頷いた。
突然、ロッカーがゴトゴトと動き出した。
保田は驚いてロッカーの方を向くと身構える。
見る間にロッカーの振動は激しくなり、
保田は本当に悪霊が出たのかと思い慌てて印を結んだ。
その直後、勢いよくロッカーの扉は開かれた。
- 50 名前:後悔 投稿日:2002年10月30日(水)20時47分53秒
「ごふぉ、げほっ、さっ酸素! 酸素頂戴! 何だよこの臭い、目に染みる!」
ロッカーからは、咳き込み、涙を流しながら矢口が飛び出してきた。
矢口は慌てて保田に振り向き、ばつが悪そうな顔をする。
「ははは、矢口、いたんだ……」
「……ごめん。隠れてた」
その日、矢口と保田は押し黙ったまま番組の撮影を迎えた。
メンバーは二人の様子に気づいていたが、
あまりにも深刻な表情に誰も話しかける事が出来ないでいた。
- 51 名前:後悔 投稿日:2002年10月30日(水)20時48分44秒
- それから一週間後、娘。達は後藤と保田が卒業する事を知らされる。
後藤はソロで、保田は女優として新たな試みに挑戦するというのが
主な卒業の理由である。
矢口は保田と二人っきりになると、卒業の本当の理由を問い詰めた。
矢口は責任を感じていたのだ。
あの日、ロッカーから直ぐに出て来ていれば、
保田は卒業しなくても良かったのではないかと。
しかし、保田は、「矢口は悪くない、私が自分で決めた事なんだ」
と言うと、優しく微笑みを浮かべるばかりであった。
後日、保田は脱退の理由をこう話す。
なぜ、私はあの時、孔雀明王印を結んでしまったのだろう、
あの時、かめはめ波を放ってさえいれば、こんな事にはならなかったのに、と。
- 52 名前:後悔 投稿日:2002年10月30日(水)20時49分16秒
- =END=
- 53 名前:後悔の作者 投稿日:2002年10月30日(水)20時50分06秒
- 一度書いてみたかったやぐけいの萌え話です。
スレを立てるまでもないのでこちらに上げさせていただきました。
- 54 名前:名無し 投稿日:2002年11月01日(金)05時23分01秒
- 短編書いたのでうpさせていただきます。
タイトルは『誰にも内緒』です。
- 55 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時24分02秒
- 「ね、小川…。」
座ってウォークマンを聞いていた小川の肩に手を乗せて、石川は言った。
「小川ってさ、私のこと、どう思う?」
「え?」
小川は明らかに動揺している。
「どうって…。」
「好きか嫌いか。言って。」
石川は真剣な目で小川に詰め寄った。
「好き…です。」
ただ、好きか嫌いか聞かれただけ。
けれど、二人っきりの楽屋。
なんとなく、いつもと様子の違う石川。
「だったら、いいよね…。」
「え?」
手を引いて立ちあがらせる。
「私、めちゃくちゃになりたいの…。」
そのいつもより頼りなく見える背中から零れた声は涙に滲んでいた。
- 56 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時24分46秒
- 「石川さん…。」
小川は、後ろから梨華を抱きしめる。
「あたし、石川さんのこと好きですよ…。だから…。」
小川はそのまま、石川を畳の上に横たえた。
その石川を組み敷いて、目をジッと見据える。
頼りなく揺れる瞳。
ドキッとして、顔がほてっていくのを感じる。
ゆっくりと、腕を曲げ、その艶やかな唇に唇を重ねた。
何度かついばむようなキスを繰り返し…
薄くその唇が開いた隙に舌を忍び込ませる。
「んっ…。」
鼻にかかって漏れる石川の声が、体の芯にカッと火をつける。
- 57 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時25分26秒
- ぎこちなかった動作が、スムーズになる。
理性が…飛んだ瞬間だった。
痛いぐらいに唇を擦り合わせて。
綺麗に塗られていた石川の唇のグロスがその頬に薄い跡をつけた。
クチュクチュと卑猥な音が静かな楽屋に響き渡る。
小川はそっと石川のふくよかな胸に手を触れさせる。
「ぁ…。」
熱い、吐息と共に、離れた唇から漏れた声。
小川の手のひらには余るその膨らみを夢中で揉みしだく。
「石川さん…。」
声は欲望に塗れ擦れた…。
シャツをたくし上げ、フロントフォックをはずしてしまう。
さっきより、確かにそれらしくなった感触を手のひら全体に感じ、
今までは感じ得なかった、堅く勃起した突起に執拗に手のひらを擦りつける。
「んん…ぁっ…。」
今まで、小川が見たことのない石川の表情。
小川の額には、汗が滲み出している。
- 58 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時26分06秒
- 石川のその表情を視線で味わった後、胸の先に向かい焦らすように、唇を押し当てる。
「あっ…。」
突起を掠めると答えるように漏れる声。
「ん…小川ぁ…。」
そう名前を呼ばれるだけでどんどん熱を持つ小川の体。
チュッと音を立ててその突起を吸い上げる。
「ゃあ!…んっ…ぁん…。」
腕の中で乱れていく…大人の女…。
今、彼女を感じさせているのは、他でもない、自分なのだ…。
小川の体と擦れ、はしたくまくれあがっているスカートの裾から手を通し、
すぐに辿りつく、石川の秘部にショーツ越しに触れる。
「んんっ…ぁあ…ゃぁだ…。」
すごく、綺麗…。
小川は、石川の表情を見詰めそんなことを考える。
お腹の辺りに口付けると、ショーツをゆっくりと剥ぎ取った。
「石川、さん…。」
もう熱くなり過ぎた吐息で、石川の耳元に囁きを落とす。
まるで子供だと感じずにはいられないような、少し震える自分の声。
スッと泉の先の蕾に触れると、石川がビクッと体を揺らす。
少し、躊躇った小川に気付いたのか、石川は小川の首をグッと引き寄せた。
- 59 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時26分46秒
- 指先に触れる部分は、物凄く熱い。
重なり合った胸も…吐息も…。
「んんっ…っく…ぁぁ…。」
「気持ち…いいですか?」
顎に唇を当てながら、そう呟く。
石川は、小さく頷くと、小川の口頭部を手のひらで寄せて、唇を合わせた。
小川は口の中をかき混ぜられる快感に酔いながら、
石川の泉の源へ指をゆっくりと、沈める…。
「…はぁ…んっ…ん…あっ…。」
石川はそのしたたり落ちる愛液で小川の指をスンナリと受け入れた。
「すごい…あったかいですよ…石川さん…。」
小川の息も知らぬ間に洗い。
石川の頬に唇を何度も当てる。
「んっ…ぁ…もう駄目…。」
耳のすぐ側で聞くその声は、もう淫らな欲望に濡れて…
途切れて聞こえる息が、小川の体を何度も震わせる。
「石川さん…。」
もう一度、少し開いたままのその唇に自分の唇を押し当てる。
「あっ…ぁぁ…も……。」
そう言ったきり、麻痺した体はグッタリと力を失った。
小川は、ジットリと額に滲む汗を感じながら、
荒い息をそのままに、石川の隣にベタリと寝転ぶ。
はぁはぁ、と息を吐きながら…
何故か霞む天井を見詰める。
- 60 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時27分22秒
「…小川、…今日のこと、誰にも内緒だよ?」
「…はい…。」
囁くような声で石川がそう言って、楽屋を出ていく。
小川はギュッと目を瞑った。
熱い体を時間がそっと撫ぜながら、冷ましていった…。
- 61 名前:誰にも内緒 投稿日:2002年11月01日(金)05時28分06秒
fin
- 62 名前:名無し 投稿日:2002年11月01日(金)05時28分36秒
- 完結です。
駄文な上にエロ。申し訳ありません。
- 63 名前:タイトル 投稿日:2002年11月01日(金)12時10分41秒
- 『希美とあさ美ちゃん』
- 64 名前:希美とあさ美ちゃん 投稿日:2002年11月01日(金)12時11分58秒
- テレビ局の廊下を歩いているとあさ美ちゃんが自動販売機の前で悩んでいるようでした。
あたしは邪魔にならないように通り過ぎていきました。
それから10分ほどして、もう一度同じ廊下を歩いていると、まだあさ美ちゃんが自動販売機の前に立っているではありませんか。
さすがにあたしは無視して通り過ぎる事ができずに話しかけました。
「あさ美ちゃん。何を飲もうか悩んでるの?」
あさ美ちゃんは、少しの間、口をあけてボーっとしていましたが、あたしに気がつくと首を左右に振りました。
「いいえ、違います。ジュースを買おうか考えていたんです」
あたしは「ふーん」と言うと通り過ぎて行きました。
あさ美ちゃんは本当に変わった子です。
- 65 名前:希美とあさ美ちゃん 投稿日:2002年11月01日(金)12時12分51秒
- おわり
- 66 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時00分08秒
- カーテンを通り越してまで差し込む太陽の光がまぶしくて、
一旦開けた目を細めた。
なんだか喉が痛い。
身体も全体的にだるくて、すごく熱かった。
(あ、風邪ひいたのかなぁ…)
のんきにそんなことを考えたまま横になっていると、
机の上に置いてある時計が視界の端に映る。
- 67 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時01分00秒
- もうお昼の12時。
もしかしたら起こしに来てくれた家族が私の風邪に
気づいて休ませてくれたのかも知れない。
そんな簡単に休んでいいわけないけれど、
別にサボりでもないし、ゆっくり寝かせてもらおう。
布団を頭から被って太陽の光を遮った。
一度目が覚めればなかなか眠れるものじゃない。
仕方なくため息をつきながら、頭に被っていた布団をすぐに退けた。
特にすることもない。
部屋の中も別に面白いものを置いていたりするわけでは
ないので、何度も読み返した漫画を再度読むか、
窓の外を眺めているぐらいしかすることがなかった。
勉強も嫌いではないけれど、今は頭を使うようなことは
避けた方がよさそうだ。
- 68 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時02分20秒
- 窓の外の電線に雀が何匹か止まっていた。
ちゅんちゅん鳴きながら飛び去ったり、また戻って来たり。
そんな雀の生体観察なんかしている自分がとてもバカらしく
思えたけれど、他にすることがなくて。
仕方ないよ。
そう自分にそう言い聞かせて観察を続けた。何分も、観察を続けた。
でもやっぱり段々飽きて来るのは当然のこと。
もう一度布団を頭から被って眠る体勢を作り、羊を数えながら眠ろう。
- 69 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時03分47秒
- 羊が一匹。
羊が二匹。
羊が三匹。
羊が……。
………。
麻琴が一人。
麻琴が二人。
麻琴が三人。
麻琴が一気に十人。
麻琴が…。
脳裏に浮かんだ最高の光景を楽しんでいると、すぐに眠気はやって来て。
意識はどこか深い底に落ちて行った。
- 70 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時04分27秒
夢と言うのは不思議なもので。
現実には起こらない物とか見ると、とても面白い。
例えば、私を取り囲む麻琴(ざっと目で数えて219人)が、
あさ美ちゃんあさ美ちゃんと言いながらじわりじわりと迫って来る夢とか。
そのうちの45人に私がジャンピングスクワット教えていたりとか。
- 71 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時05分22秒
「…あさ美ちゃん?」
そのうちの一人だろうか。
知らないうちに汗をかいていたらしい。
額にはりついた前髪をかきあげてくれるその手の主。
重いまぶたを開くと、微かな人影が見えた。
(いや、これは現実…)
やっぱりさっきのは夢か、と。
ちょっとだけ残念な気がしてしまうのはおかしいことですか。神様。
「ごめん、起こしちゃったかな」
次第にクリアになっていく視界に、麻琴が心配そうに
顔をのぞき込んでいた。
あまりの顔の近さに顔を赤くした私を見て勘違いしたのか、
濡れタオルを持っておろおろしている。
- 72 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時05分54秒
「あ、えと…大丈夫だから」
「ホント?無理してない?」
「うん…大丈夫」
まだ完璧とは言えないけれど、朝のだるさは多少取れていた。
今すぐにでも腹筋を開始することだって出来るだろう。
外を見るともうすっかり夕方の風景だ。
オレンジ色の空はどこまでも広がっていて、雀はもうすでに一羽も居なかった。
「まこっちゃん、仕事は?」
「今日はすぐに終わったから」
私のせいで明日に繰り上がった物もあったらしい。
みんなに申し訳ないことをしたなぁって思うのと同時に脳裏をかすめる疑問。
なんで麻琴がここにいるのか。
率直にそう聞いたら、あさ美ちゃんが心配だったからって。
彼女だって疲れているはずなのに。
- 73 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時06分43秒
- まっすぐ駆けつけてくれた麻琴の優しさが嬉しかった。
みんなの伝言預って来たよ、って、渡されたお土産の数々も嬉しかった。
「キツかったらすぐに言ってね。あたし何でもするからさ」
その言葉もとても優しくて。
「……何でも…」
ぽつりとつぶやいた私の言葉はちゃんと完璧には聞こえなかったらしい。
中途半端な一部分だけ聞き取った彼女は、不思議そうに首を
傾げながら、濡れタオルを洗面器の中に入れては絞るという行動を繰り返していた。
「じゃあ…好きって言ってほしいなぁ…」
「へ?」
「…普段言ってくれない分20回言わせたいところだけど、まずは1回…」
「ちょ、何それ。あんまり今の状況と関係ないと思うんだけど」
「いいから、早く」
なんだよそれ〜、と顔を真っ赤にしてる。
私だってこんなことお願いするの恥ずかしいんです。
- 74 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時08分36秒
「……あ〜、もうっ」
照れ隠しに頭をくしゃくしゃっと掻く格好が可愛い。
「す…」
「………」
「…き」
それって、ちょっとずるいんじゃないかな。
でもそれだけでもとても嬉しいから。
「………」
「……何か言おうよ」
「何か」
「バカにしてるね、あさ美ちゃん」
「してないよ」
お互い顔真っ赤にさせて何を言ってるんだか。
再び部屋の中が沈黙。
だけどその静けさは別に嫌じゃなくて、むしろ心地良いもの。
視線を麻琴の方に向けると、彼女も同じようにこっちを見ていた。
- 75 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時09分22秒
お互い見つめあったまま、どちらも視線を逸さない。
よく考えればここは私の家で私の部屋で私のベッドで。
私は、パジャマなわけで。
急にすごく恥ずかしくなって、私が先に視線を外し、布団を頭から被った。
驚いたのは麻琴の方だと思う。
いきなり布団の中にもぐり込まれた理由なんてわかるわけない。
だから彼女は私の体調が悪くなったんではないかと、
また濡れタオル片手におろおろし始めた。
「あ、あさ美ちゃん?ちょっと…頭とか痛いの?」
「ご、ごめん…何か眠いから私寝る」
「そっか、わかった。具合とかはどう?」
「…うん、多分、大丈夫」
布団の中でオーバーにこくこくと頷きながらアピールすると、
やっと麻琴は信用してくれたみたい。
被った布団の上から優しく頭を撫でられる。
- 76 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時10分09秒
「…よくそこが頭だってわかったね」
「ん。なんとなく」
なでなでされてすごく気持ち良い。
段々、本当に眠気が訪れて来る。
「…大好きだよ、あさ美ちゃん」
深い眠りの底に落ちる前、そんな声が聞こえたような気がして。
こんな時にしか言ってくれない意地悪な彼女。
「私も大好き」
この言葉が、麻琴の元に届くかどうかわからないけれど。
「…幸せだなぁ」
…届きますように。
- 77 名前:あなたは1人で充分。 投稿日:2002年11月02日(土)01時11分21秒
- おわり。
- 78 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時41分14秒
「カップラーメンってなんか嫌だよね。」
- 79 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時43分01秒
- 私は不意に私の「仲間」にそう呼びかけられた。
どうやら、いつものように汚い楽屋は、
いつのまにか彼女と私の二人だけになっていたらしい。
相変わらず突然訳の分からないことを
聞いてくる彼女を気にせず私はまた
呼びかけの最近お気に入りの本に目を通した。
「ああゆう風にいつでも、すぐに、ほどよく
欲しいものが手に入るのってよくないと思う。」
どうやら私の態度に構わず話し続ける気らしい。
- 80 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時43分58秒
「カオはさぁ、努力して時間をかけるのがやっぱり
いいと思うなぁ。そんなことが嫌なとき
もあるけどさぁ。それに・・・」
どうやらこのまま、ほっとくと一人でしゃべり
続けるようなのでいいかげん私は答えてやることにした。
「で、何が言いたいの。」
せっかくの私の解答に彼女は目を丸くして
黙り込んでしまった。
「無駄なまえふりはいいからさ、言いたいことだけ言ってよ。」
彼女は今度は大きくまばたきをした。
- 81 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時45分10秒
- 「何も言わないならだまってて、
せっかく静かなんだから。」
彼女は少しひきつった顔をして「ごめん」と言って
元の場所に帰って行った。
私の方も、こんな楽屋に居る気にはならず、
何も言わず、ただなんとなくコーヒーでも買いに行った。
- 82 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時46分47秒
- その後はいつものように「仲間」が楽屋を
さらに汚し、その後、撮影があったりして、
その日はいつの間にか忙しく過ぎていった。
翌日、別のまだきれいな楽屋に私は予定より
三十分ほど早く着いていた。
そしてそこには彼女が居た。
- 83 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時49分06秒
- 「「おはよう」」
ひさびさにハモった私たちの声が楽屋に響き
その後、二人の笑い声が楽屋に響いた。
私はやっぱり「仲間」なんだなと思った。
「昨日はごめん。私なんかイラついててさぁ。」
少し声を落として私が言うとさえぎるように彼女は言った。
「いや、あれはカオが悪かったよ。どうもちゃんと言えなくてさ。」
よく見ると彼女の瞳は少し震えているようだった。
- 84 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時49分50秒
- 今度はちゃんと言うからしっかり聞いててよ。」
いつのまにか彼女の目は輝きいつものように
強い意思を持つものへと変わっていた。
「これからもずっと同じだからね。」
また楽屋に声が響いた。
- 85 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時50分33秒
- 「娘を卒業したってさ、ずっとずっと「仲間」だから。」
彼女は一度も言葉を詰まらせなかった。
私は身体中が熱くなるのを感じていた。
「私たちはインスタントじゃなくてずっと一緒に
居たんだから、長い時間助け合ってきたんだから、
ラーメンと違って食べ終わったら終わりじゃない、
だいたい絶対食べ終わったりしないからね。」
よりいっそう声は楽屋に響いていた。
- 86 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時54分13秒
- そうだね。」
わたしは小さな声でそれでいてハッキリそう言った。
そして楽屋にはまた笑い声が響いた。
彼女の顔はひさびさに最高の顔だった。
きっとわたしもいい顔してるだろうなって自分で思った。
- 87 名前:二人は仲間 投稿日:2002年11月06日(水)19時55分30秒
- 終わりです。
- 88 名前:クローン・ビューティー 投稿日:2002年11月06日(水)22時56分17秒
- 「クローン・モーニング。」シリーズ。
前シリーズは、短編用スレ、一集にあります。
「クローン・ビューティー」
オレは、六本木でしたたかに酔っ払って、歩いていた。
すると、ひょろっと痩せた、いかにも弱っちい男と、
ぶつかった、ぶつからないのと口論になった。
めんどくさいので、一発パンチを食らわしてやった。
そいつは、あっけなく尻餅をついたが、何やら携帯で
誰かを呼び出しているようだ。
男「野郎!今、助っ人を呼ぶからそこ、動くなよ!」
和田「おー、上等じゃねえか〜、矢でも鉄砲でも持ってこい!」
喧嘩には、自身がある。
男「そ〜ら、来たぞ〜」
後ろを振り向くと、思わずタジタジとなった。
そこには、K−1の、ボブ・サップそっくりの、二メートルは
ありそうな、ごつい体をした雲突くような黒人の大男が
ニタニタと笑いながら、立っていた。
- 89 名前:クローン・ビューティー 投稿日:2002年11月06日(水)23時07分39秒
- 男「そいつを、のしちゃってくれ。」
ボブ「オーケー、」
と、ボブは野太い声で、太い腕を振り回してくる。
オレはたちまち、二三発食って、鼻血を噴出してふっ飛んだ。
と、そこへ、「セーラー服を脱がさないで〜♪」
と、歌いながらセーラー服の女の子が現れた。
紺野「はい、今日のあなたは、元気ですか〜」
和田「んなわけ、ね〜だろ・・・」
紺野「はい、私がご注文のクローン・ビューティーです。」
和田「何だ、何だ、ビューティーだと〜!、ラブリーじゃ
ねえのかよ〜」
紺野「違います、私はビューティーです。」
- 90 名前:クローン・ビューティー 投稿日:2002年11月06日(水)23時22分31秒
- 紺野「え〜、今あなたは、お困りですか〜」
和田「困ってるも何も、死にそうだ〜!」
ボブがニタニタと笑いながら、両手を広げて迫ってくる。
紺野「わかりました。何とかいたします。」
意外にも、その女の子は、右の拳を突き出して空手のかまえを
した。
オレは二人を見比べた。ボブは化け物のような巨漢で、女の子は
丸ぽちゃの顔の、たよりなさげな感じで、いくらなんでも、勝負に
なりそうもない。
紺野「押忍!、前屈下段払い!、たあ〜!」
ビューティーの、突きや、蹴りを入っても、ボブには蚊に食われた
ほどにしか、感じないみたいだった。
- 91 名前:クローン・ビューティー 投稿日:2002年11月06日(水)23時44分56秒
- すると、不思議なことが起こった、ビューティーが無表情で
繰り出す、突きを受けているうちに、ボブが困ったように頭を
かいて、やがてこそこそと逃げ出して行くではないか。
どうも、ボブは可愛い女の子は苦手のようで、毒気を
ぬかれたみたいだった。
紺野「中段、構えて!、エイッ!」
和田「ちょいと、ビューティー、敵は逃げたよ。」
紺野「ああ、そうですか。あの、空手はお好きですか〜」
和田「あ、ウン、好きだな〜」
- 92 名前:クローン・ビューティー 投稿日:2002年11月07日(木)00時01分29秒
- オレは、ビューティーに助けられて、自分のマンションに
戻った。
紺野「あの〜、私は24時間レンタルです。その間、あなたの
どんな要望でもお答えします。」
和田「ほう〜、それでは一緒に良いことをしちゃおうかな〜」
紺野「押忍!、前屈下段払い!エイッ!」
と、またも無表情で突きを繰り出してくるビューティーに、
オレはあわてて下がった。
和田「わかった、わかった。お楽しみは後にするよ〜、そうだ、
お芋が入った、美味しいパンがあるんだけど、一緒に食べないかい。」
紺野「ハイッ!食べます!」
ビューティーは、嬉しそうにうなづいた。
夜は、これからなのだ・・・。
終わり。
- 93 名前:ちくわの穴 投稿日:2002年11月07日(木)02時44分09秒
- はじめて書き込みさせていただきます。
題名:昼のひととき
- 94 名前:昼のひととき 投稿日:2002年11月07日(木)02時45分50秒
- タモリ:「辻と加護は五月蝿いよなぁ」
保田:「あと、なっちとか矢口も結構楽屋では騒いでるんでぇ」
タモリ:「あ、そうなんだ。そりゃ、12人も13人もいりゃあ五月蝿いよなぁ」
保田:「ひとクラス分の女子くらいいますからねぇ」
タモリ:「そうだよなぁ。一度楽屋に遊びに行きたいと思ってるんだけどねぇ」
保田:「来ないほうがいいですよ、ホント、騒がしいだけですから(笑)」
タモリ:「あ、そう?(笑) あ、昨日の裕ちゃんからのメッセージで、『また今度二人だけでしっとりと飲みに行きましょう』。プライベートで二人で飲みに行くんだ?」
保田:「そうですねー。わたし、お酒好きなんですよ」
タモリ:「あ、ホント?」
保田:「それで、まわりで飲めるのが裕ちゃんくらいで」
- 95 名前:昼のひととき 投稿日:2002年11月07日(木)02時47分04秒
- タモリ:「姉さんは飲むよねぇ?」
保田:「飲みますねぇ、かなり」
タモリ:「そうなんだよ、飲むんだよ、中澤は」
保田:「今度ご一緒にどうですか?」
タモリ:「いいねぇ。他にプライベートとかで、モーニング娘。のメンバーとかと遊んだりするの?」
保田:「結構、一緒に遊んでますねー。食事に行ったりとか」
タモリ:「いちばん仲良いのは誰?」
保田:「メンバーでですか? 最近は、小川かな」
タモリ:「小川? 五期メンだったっけ?」
保田:「そうです。小川麻琴ちゃん」
タモリ:「へぇ、な〜んか、意外だねぇ」
- 96 名前:昼のひととき 投稿日:2002年11月07日(木)02時48分16秒
- 保田:「そうですよね。矢口にも驚かれましたよ。娘。にいたときはそんなに仲が良いってほどじゃ、あ、仲は良かったですよ。仲は良かったですけど、プライベートで遊んだりすることはなかったですからね」
タモリ:「そうだよねぇ。なんかきっかけとかあった?」
保田:「ありましたねぇ。この間シャッフルがあったじゃないですか」
タモリ:「ああ、あったねぇ」
保田:「そのときに久々に小川とか、高橋とかと話したんですね」
タモリ:「会う機会ないから」
保田:「そのとき小川が、なんか、スゴイ悩んでいるみたいだったから、ウチによんだんですよ」
タモリ:「あ、そう。悩み事の相談聞いたげたんだ?」
保田:「はい。それで小川の話を聞いたんです。そのとき、小川、ホントに悩んでて、六期メンのこととか、プッチモニのこととかで、自分をかなり追い詰めちゃってたみたいで、それで、わたし、小川の話をずっと聞いてたんです」
- 97 名前:昼のひととき 投稿日:2002年11月07日(木)02時50分17秒
- タモリ:「圭ちゃんがモーニング娘。だったときは、そういう話は――」
保田:「しなかったですねぇ。自分のことで精一杯なところがありましたからねぇ」
タモリ:「ソロになって余裕が出来た?」
保田:「余裕が出来たっていうか、娘。のときほど忙しくないんで、人の話を良く聞けるようになったんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょうかね?(笑)」
タモリ:「モー娘。は忙しそうだもんねぇ」
保田:「それで――、あ、話戻して良いですか?」
タモリ:「ああ、ごめんごめん。小川の話だったっけ?」
保田:「で、小川が全部打ち明けるのを聞いてあげたんですね。そうしたら、小川、急に泣き始めたんですよ。『保田さんがいなくて淋しい』って。それから30分くらいは延々泣いてたと思うんですけど、そのあいだずっと、わたし、小川の肩を抱いてあげてたんです。そうしたら、『保田さんどうして卒業しちゃったんですか』って、卒業ライヴのときよりももっと泣くんですよ。それで、わたし、小川の肩を抱きながら、『ああ、小川がこんな子だと早く知ってたら、卒業なんかしなかったのに』、って考えたりしてたんですね」
- 98 名前:昼のひととき 投稿日:2002年11月07日(木)02時50分56秒
- タモリ:「へぇ、卒業したのを後悔したんだ?」
保田:「そうですね、そのときはじめて後悔しましたねぇ。それ以来ですね、小川と仲良くなって、ホント、可愛いんですよ、小川。新しい妹が出来たみたいで、ウチに泊まりに来たりもするんです」
タモリ:「へぇ、泊まりに来るんだ? 今度、おじさんも呼んでくれない?」
保田:「タモリさんもですかぁ? 駄目ですよ」
タモリ:「あ、やっぱ駄目? そんじゃあ、そろそろお友達の紹介を――」
おわり
- 99 名前:ちくわの穴 投稿日:2002年11月07日(木)19時41分45秒
- 調子にのってまた書かせていただきます。
スミマセン。
題名は「せーの、チュッ!」です。
- 100 名前:せーの、チュッ! 投稿日:2002年11月07日(木)19時42分41秒
- 矢口:「なっちー」
安倍:「んー、なにー?」
矢口:「ちゅーしていい?」
安倍:「はぁ? 矢口、なに言ってんの?」
矢口:「ねー、ちゅーしていい?」
安倍:「ちょっと、矢口ぃ〜」
矢口:「ねー、ちゅーしようよ」
安倍:「もー、ちょっと、矢口どうしちゃったのさ?」
矢口:「ちゅーするよー」
安倍:「駄目だって。ね、矢口。落ち着いて。ね」
矢口:「ちゅーするよー」
安倍:「もお。ちょっと、矢口、やめてってば」
- 101 名前:せーの、チュッ! 投稿日:2002年11月07日(木)19時43分49秒
- 矢口:「なっち、ちゅーするよ」
安倍:「駄目だって。ホント、なっち、怒るよぉ」
矢口:「ちゅー……」
安倍:「辻ちゃんや加護ちゃんじゃないんだからさ。なんかさ、そういうのやっぱヘンだよー」
矢口:「むー」
安倍:「だって、矢口とは年齢が近いし、恥ずかしいよ。恥ずい、恥ずい。エヘヘ」
矢口:「だって、なっち、可愛いんだもん」
安倍:「あ、どうも」
矢口:「ちゅーしようよ」
安倍:「もー、だからー」
矢口:「おいらのことキライ?」
安倍:「キライとか、そういうんじゃないってば」
矢口:「じゃあ、スキ?」
安倍:「だから、そういうんじゃなくって」
- 102 名前:せーの、チュッ! 投稿日:2002年11月07日(木)19時44分52秒
- 矢口:「キライなんだ」
安倍:「違うんだってば」
矢口:「おいらのことスキ?」
安倍:「えーと。うん、まあ、はい」
矢口:「おいらもなっちのことスキ。ちゅーしよー」
安倍:「だーかーらー。そんなことばっかしてると、なっち、矢口のことキライになるよー」
矢口:「しゅん……」
安倍:「ね。なっち、矢口のことスキだから。そういうことはやめようよ。ね」
矢口:「…………」
安倍:「…………」
矢口:「……ぐすん」
安倍:「なに? 矢口……、泣いてるの?」
矢口:「だって」
安倍:「もー。今日の矢口、ヘンだよー」
矢口:「…………」
安倍:「…………」
矢口:「…………」
- 103 名前:せーの、チュッ! 投稿日:2002年11月07日(木)19時45分56秒
- 安倍:「もー、今日だけだよー」
矢口:「ちゅー?」
安倍:「一回だけだかんね」
矢口:「うん。エヘヘ」
安倍:「ねぇ。……あのさ、矢口」
矢口:「ん?」
安倍:「目、瞑ってよ。恥ずかしいじゃん」
矢口:「はい」
安倍:「っていうかさ、そのヘンな口の形もやめて」
矢口:「これでいい?」
安倍:「はー。いきます」
矢口:「うん」
安倍:「はー、なんか、緊張するなぁ」
矢口:「まだー?」
安倍:「すー。はー。すー。はー」
矢口:「ねー、まだー?」
- 104 名前:せーの、チュッ! 投稿日:2002年11月07日(木)19時46分53秒
- 安倍:「じゃ、じゃあ、いくよ」
矢口:「うん」
安倍:「せーの……」
矢口:「ちょっと待って、なっち。ちょっと待って」
安倍:「もー、なによー?」
矢口:「なっち、『せーの』って、なに?」
安倍:「えー、掛け声?」
矢口:「なっち、キスするとき掛け声かけるの? っていうか、怖ぁ〜い。目を瞑って待ってるのに、小声で、『せーの』とか言われたらマジ怖いってー」
安倍:「むー。じゃー、もーいいよー」
矢口:「あー、なっち、ごめーん」
おわり
- 105 名前:バスストップ・のの 投稿日:2002年11月07日(木)20時30分35秒
- 「モーニング。クローン」
モーヲタの和田家に来た、クローンビューティー。お芋入りのパンに
つられてきたものの、いよいよ、和田は本性を現してくる。
和田「さあ、ビューティーちゃん、そろそろ良いことをしようか。」
紺野「・・・前屈下段払い!」
和田「おっと、と、あんたは、24時間レンタルで、その間
こっちのどんな要望にも答えるんだろ〜。」
紺野「・・・そうでした。あの〜金魚のモノマネじゃだめですか」
と、口をパクパクする。
和田「ダメ〜」
紺野「じゃあ、フグのモノマネじゃだめですか。」
と、口をパクパクする。
和田「どっちも同じだろ〜、ダメ〜」
- 106 名前:バスストップ・のの 投稿日:2002年11月07日(木)20時42分49秒
- 和田「さあ、良いことをする前に一緒にお風呂に入ろう〜。もう、
沸いてる頃だ。オレが先に入るから、後からくるんだよ〜」
と、和田は風呂場に入り、バスタブのふたを取った。
その時、
のの「ジャジャジャーン、呼ばれて飛び出てのので〜す。」
何と、スクール水着の女の子がバスタブから飛び出した。
和田「ひええええええ〜、何だ、何だ、お前は何だ!!」
のの「あたしが、ご注文の、クローンのので〜す。」
- 107 名前:バスストップ・のの 投稿日:2002年11月07日(木)21時13分25秒
- 和田「ご注文って、おめ〜何か注文してねえ〜よ」
のの「あれ?、ここは、和田さんちですよね。今度は、
間違えてないもん。」
和田「いったい、いつの話だよ。いくら待ってもおめ〜が
こねえから、別の子を注文しちゃったよ〜」
のの「あれ〜、そんな〜」
和田「だいいち、お前はなんで、バスタブから出てくんだよ〜」
のの「だって、あたしはバスストップののだも〜ん」
和田「バカ、バスストップは「バス停」だろう。」
のの「そうか〜、間違えた〜」
っていうか、間違えたのは、作者です。
- 108 名前:バスストップ・のの 投稿日:2002年11月07日(木)21時30分15秒
- のの「あの〜、前でブラブラしてるのが、気になるんです。」
和田は、まっぱだった。
和田「ま〜いいか。今夜は三人で楽しもう。」
のの「三人って、もう1人は誰なの。」
と、そこへビューティーが首を出してきた。
紺野「あの〜、あなたは鏡はお好きですか〜」
のの「あれ〜、ビューティーさんじゃないの」
紺野「あれ、どうして、ののちゃんがここにいるの・・・」
和田「まあ、まあ、いいじゃないか。三人で仲良くお風呂に
入ろう〜」
さて、ののと、ビューティーの運命はどうなるか。
続きは、おとぎ話をご覧下さい。めでたし、めでたし。
そんなおとぎ話あったかな〜・・・。
終わり。
- 109 名前:クローン・Yosiko 投稿日:2002年11月08日(金)01時40分39秒
- 母「先生、息子は大丈夫でしょうか・・・」
医者「う〜ん、今夜が山ですね。」
病院の集中治療室。
患者「ああ、僕はどうなるのかな、このまま死ぬのかな・・・、
心残りは女の子を知らないまま、逝くのが残念だな。」
すると、ドアが開いて、誰かが入って来た。
患者「あれ、変な看護婦さんだな。ピンクのナース服なんて、
初めてだな。それに帽子の「M」のマークは何んなのだ・・」
そのピンクの看護婦はベッドの僕をのぞき込んだ。
顔にホクロがやけに多いひとだなと思う。
患者「あ〜、何にをするんです〜、ヤメテ〜!・・・・
あ〜、やめないで・・・」
看護婦「せんせ〜!、大変です〜!、患者さんがお亡くなりなって
ます〜、」
医者「何んだって、ふむ、それにしても、この幸せそうな死に顔は
どうしてなんだ・・・」
看護婦「先生、うちにピンクの服で、帽子に「M」のマークが
ついた看護婦さんっていましたっけ・・・、さっき集中治療室から
出て行くのを見たんです。」
医者「そんな看護婦、いるはずがないよ・・・」
二人は顔を見あわせて、何にか、死神でも見たような恐怖に
襲われた・・・。
終わり。
- 110 名前:クローン・Inoki 投稿日:2002年11月08日(金)02時26分27秒
- 患者「やれやれ、やっと退院できるな。帰ったらモーニング。の
コンサートに行くぞ」
その時、病室に看護婦が入って来た。
その看護婦は、患者に体温計を渡した。
患者「あれ、あなたは見たことないな。それにそのピンクの服は
珍しいな。その帽子の「M」は何んなのですか。」
その看護婦は患者の耳元でささやいた。
患者「え、そのクローンって何ですか。そんなの注文した憶えは
ないけど、あれ、あなたはどこかで見たことが・・・」
看護婦「せんせ〜、大変です〜、今日退院するはずの患者さんが、
お亡くなりになってます・・・」
医者「何んだって、またか、まさかピンクの看護婦を見たんじゃ・・・」
看護婦「それが、さっき病室から、ピンク色の服を着て帽子に「M」の
マークがついた、看護婦が出て行くのを・・・」
二人は顔を見あわせて震えあがった。
廊下で入院患者が話している。
患者「この病院に、モーニング。のまこっちゃんが入院してるって
本当なのか。オレ、ファンなんだ。まこっちゃんの猪木のモノマネを
見れたら、死んでもいいなあ・・・」
終わり。
- 111 名前:タイトル 投稿日:2002年11月08日(金)17時20分41秒
- 『希美とあさ美ちゃんR(あーる)』
- 112 名前:希美とあさ美ちゃんR(あーる) 投稿日:2002年11月08日(金)17時21分22秒
- テレビ局の楽屋に入ると、辻さんがアイスを食べていました。
美味しそうに食べていました。
私が隣りに座ると、にっこりと微笑んでくれます。
「何を食べてるんですか?」
もちろんアイスです。
そんなことは分かっています。
でも、ついつい聞いてしまいます。
辻さんはいなや顔ひとつせずに答えてくれました。
「なんでしょうかねぇ」
辻さんはやっぱり不思議な人です。
- 113 名前:希美とあさ美ちゃんR(あーる) 投稿日:2002年11月08日(金)17時22分06秒
- おわり
- 114 名前:或る不幸の話 投稿日:2002年11月14日(木)20時30分11秒
- あるところに後藤というものがいました。
後藤は、市井という大好きな人を事故で失ってしまい、泣いていました。
空を見上げては星に祈ります。
あの人を返して、と。
ある日、後藤の下に一人の女がやってきました。
その女は自分は市井だと言いました。
自分は死んでしまったが、魂だけがこの娘に乗り移ったのだと。
当然、後藤は信じません。
しかし、それは本当だったのです。
後藤もそれを信じるようになり、二人の幸せな時間が再び訪れました。
- 115 名前:或る不幸の話 投稿日:2002年11月14日(木)20時30分47秒
- それも長くは続きませんでした。
二人の下に吉澤という女がやってきました。
そして、後藤に言いました。
その娘を返せ、と。
その娘の本当の名は石川で、自分の妻であり、子供もいるのだと。
吉澤も石川も女でしたが、結婚し、幸せな家庭を築いていました。
子供も泣いている。いつ帰ってくるのか、不安がっている。
吉澤は涙ながらに訴えました。
結局、石川に乗り移った市井は、吉澤の下へと戻る事になりました。
子供を悲しませたくない。全ては自分のせいだと己を責めました。
皆が、泣きました。
市井は愛する人のため戻ったのに、愛する人の下へ留まる事が出来ませんでした。
後藤は、失ったと半ば諦めた気持ちをまた奮い起こされた挙句、再び失いました。
吉澤は夜な夜な愛する石川との思い出を辿っては泣きました。
石川は、もう吉澤のことを想う事も出来ません。
皆が、不幸になりました。
- 116 名前:或る不幸の話 投稿日:2002年11月14日(木)20時31分19秒
- 終わり。
- 117 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時32分20秒
「ねえ、梨華ちゃん。」
「何よ。」
なあに、よっすぃー。
そんな甘い声での返事を期待していた吉澤は、梨華の冷たい返事にちょっと肩透かしを食
らわされた気分になる。
だけど、そんな事でくじける吉澤ではない。
「今日、これで仕事終わりじゃん。一緒にごはん食べに行こう!」
「悪いけど、保田さんと約束してるから。」
これまた、冷たい返事。
「…なんか梨華ちゃん…冷たくない?」
「そうでもないよ。」
「冷たいって。」
「そうでもないってば。」
梨華はくるりと吉澤の方に向き直り、吉澤に人差し指を突きつけた。
「冷たいとすれば、それはすべてよっすぃーのせいだよ。
ここ最近のよっすぃーがした事、胸に手をあててよぉぉぉ〜く思い出してみなさい。」
思わず、胸に手を当ててしまう吉澤。
そんな吉澤を置いて、梨華は小走りで保田に駆け寄った。
- 118 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時32分55秒
- 「保田さぁ〜ん!今日、どこに行きましょうか。」
「そうねぇ…今日はお好み焼きの気分ね!」
「良いですねっ!!行きましょう、お好み焼き!」
梨華は、保田の腕に自分の腕をからめた。
(…っああああああああっ!!)
胸に手をあてたまま、吉澤は心の中で叫ぶ。
(何やってんだよ梨華ちゃん!!それじゃ胸がケメ子の腕に…!!それよか、マジでくっ
つき過ぎ!!ナニあたし以外の人にそんなサービスしちゃってるんだよ!!)
しかし、梨華には届かない。
梨華は吉澤を無視したまま、保田と一緒に姿を消した。
残されたのは、胸に手をあてたままの吉澤のみだった。
- 119 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時33分25秒
(…あたしが何したって言うのさ。)
よくよく思い出しても、心当たりは皆無だ。
毎日のように愛の言葉を囁いてるし、キスだって一日五回以上はしてる。それも触れる
だけじゃなくて、もっと濃厚なモノを。スキンシップだって過剰な程してるし…えっちだっ
てかなり頻繁にしてる。
えっちのテクニックだって、向上してるはずなのだ。確かに梨華と付き合い始めたばか
りの頃は経験値も少なかったので、そんなに上手いとは言えなかった。
(けど、梨華ちゃんをキモチ良くさせたいって思って…いっぱい研究したんだぞー?)
どんな研究をしたのかは謎だが、とにかく技術はものすごく向上している。
(ホンットに…あたしが何したって言うのさ。)
思い当たるフシが、まるでない。
確かに最近、よく加護や飯田とじゃれあうようになった。だけどそれは梨華も同じで、
梨華は辻や保田、それに柴田とよくじゃれあってる。
吉澤はそれがけっこう気に入らなかったりするのだが、でもまぁ、そこはそれ。本命の
恋人としての余裕ってヤツがある。
- 120 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時33分57秒
- 「う〜ん…。」
さっぱりわからなくて、とりあえずTVをつけた。
そこに写るは、カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)。
「うわっ!やべっ!!ビデオ録るの忘れてたよ!!」
焦ってビデオをセットし、録画ボタンを押す。
(はぁ〜…可愛いなぁ、梨華ちゃん…。)
しかも、エロい。フェロモン大放出中、と言う感じだ。
最初はでれっとした顔で見ていた吉澤だったが、だんだんと不機嫌になって来た。
(…何、あたし以外のヤツにもそんなエロいカッコ見せてんのさ!!)
曲が始まると、吉澤の機嫌は一層悪くなる。
そして、ターンと共に梨華のスカートがひらりと舞う。
「うっああああああああああっ!!!」
叫んで、TVにつかみかかる。
- 121 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時34分31秒
- 「な、何してんのさ!!いくら見せパンだっつってもそんな、そこまでしちゃったら…!!」
「姉ちゃん、うるさい!!」
弟が隣の部屋で文句を言ってるが、吉澤の耳には聞こえない。
「…梨華ちゃん…!!」
イライラが募り過ぎて、吉澤はその場に倒れこんだ。
「…しばらく立ち直れな〜い…。」
吉澤は床で、ごろりと寝返りを打った。
- 122 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時35分01秒
結局一睡もできなかった吉澤は、集合時間よりもかなり早い時間に楽屋に入った。
「おはようございま〜す…って、まだ誰も来てないか…。」
誰もいないと、人は独り言が激しくなる。吉澤も例に漏れず、ブツブツと呟きながら雑誌
を開いた。
「…この服、梨華ちゃんに似合いそう…いや、こっちのが良いかな。ピンクだし。梨華ちゃ
ん細いからなぁ〜。こう言うデザイン似合いそー。こっちのコレは、イメージ違うな…。」
そんな独り言をもらしてる事に自分で気付き、はーっとため息をつく。
(…独り言まで梨華ちゃん一色だよ、あたし…。)
ふと、梨華の顔を思い出す。その表情は、果てしなく冷たい。
『冷たいとすれば、それはすべてよっすぃーのせいだよ。
ここ最近のよっすぃーがした事、胸に手をあててよぉぉぉ〜く思い出してみなさい。』
(…あたし、本当に何しちゃったんだろう…。)
思い当たるフシが、全くない。
- 123 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時35分36秒
- (言ってもらわなきゃわからんよ〜…。)
そう思って、頭を抱える。
「うああ…。」
うめき声を漏らした、その直後。
「…何、うめいてるの?」
「梨華ちゃん!!」
顔をあげると、そこにいたのは愛しの彼女。
「うわっ。どうしたのよっすぃー?目の下、ものすごいクマだよ!?」
「う、うん…ちょっと昨日の夜、眠れなかったから…。」
「眠れなかった?なんで?」
『梨華ちゃんの大胆な見せパンにショックを受けたから』とは言えず、吉澤は黙りこくる。
すると梨華は、ふーっとため息をついた。
「…まだ時間あるから、ちょっと寝ておけば?」
「…うん…でも、いいや。」
「なんで?」
『梨華ちゃんが目の前にいるのに、それを見ずに寝てるなんてできません』とは言えず、
またしても吉澤は黙りこくる。
- 124 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時36分07秒
- そんな吉澤を見て、梨華は言った。
「わたしがいるから?眠れないの?」
「…いや、そんな事は決して…」
しかし、目が泳ぎまくっている。つくずく、嘘の吐けないヒトである。
すると梨華は黙って、ちょっと俯く。
「そんなにわたし、うざいの?」
「…はい?」
「側にいてほしくないのね?」
「はぁ!?」
梨華の声は、だんだん涙混じりになって行く。
「…もう、わたしと別れたいの?」
「はぁ!?何言ってるんだよ!!そんなハズないじゃん!!」
「嘘!!」
吉澤に二の腕をつかまれた梨華だったが、すぐにするりと逃げた。
「…無理しなくて良いよ、よっすぃー。だってわたし、うざいんでしょ?」
- 125 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時36分40秒
- 「うざくなんかねーって!!何言ってんだよ!!」
「やめてよ!!好きでもないくせに、優しくしないでよ!!」
「好きだよ!!だってウチら恋人じゃん!!」
吉澤には、梨華が何を言いたいのかわからなかった。
そんな吉澤を、梨華は涙に濡れた目で言う。
「…ひどいよよっすぃー。
じゃあ、なんであいぼんとあんなにくっつくの?なんで飯田さんに『カオリさんの犬に
なりたい』なんて言うの?
それなのにわたしには『石川さんうざいんですけど』とか『コレが嫌』とか言うの?」
「そ、それは…。」
吉澤は、ソデで梨華の涙を拭う。
男前は、ハンカチなんぞ携帯してないモンである。
「…前はね、それがよっすぃーの愛情表現なんだって思ってた。近くにいればいる程、身
内みたいな感覚でそーゆー事言うのかなって。
それに、わたし以外の人にもキスとかしちゃうのは、特に意味はないんだって思ってた。
だけど…もう限界。」
- 126 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時37分17秒
- 「梨華ちゃん…。」
吉澤の手は、梨華に振り払われた。
「もう、嫌なの!!嫉妬するのも、悶々と考えるのも!!
わたしだけじゃ満足できないの!?わたし以外の人を見ないでよ!!よっすぃーはわた
しの恋人なんだって…もっとわからせてよ!!」
吉澤は、梨華の唇を奪った。
「んん…っ!!」
梨華は抵抗するが、吉澤は押さえつける。
最終的に、梨華はソファーへと押し倒された。
「…何よぉ…。なんでこんな…。」
「好きだよ。大好き。あたしの彼女は、梨華ちゃんだけだ。」
「嘘吐かなくて良いよ…。」
「嘘じゃない!」
そして、もう一度唇を奪う。
- 127 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時37分47秒
- 「…もう嫌だぁ…。」
唇が離れると、梨華は泣きながら言った。
「…許したくなっちゃうよ。何されても。
だけどわたし…もう嫌なの。ハッキリしてよ。わたしだけを見るか、わたしと別れるか。」
「別れたくない!もともとあたし、梨華ちゃんしか見てない!!」
吉澤は梨華の目を覗き込んだ。
「…梨華ちゃんは、あたしと別れたいの!?別れて…今度は誰と付き合うつもりなの!?」
「わたしだって…別れたくなんかないよ…。」
「じゃあ、別れる必要なんかないじゃん!!」
「でも、不安なのぉ!!」
梨華の目からは、とめどなく涙が流れている。そんな梨華の額に、吉澤はキスをした。
「…もっとあたしを信じてよ。
あたしは梨華ちゃんが好きだ。あたしだって梨華ちゃんを独り占めしたい。
今回のカン梨華の新曲だって…あたし以外に、あんな色っぽい梨華ちゃんを見せたくない。
でもあたしは、信じてる。梨華ちゃんが好きなのはあたしだって。
だから、梨華ちゃんも信じてよ。
あたしの恋人は、本当に絶対に梨華ちゃんだけなんだ。
梨華ちゃんしかいないんだよ…。」
- 128 名前:幸せ 投稿日:2002年11月17日(日)00時38分25秒
「…ずるいよぉ。」
「愛してるよ、梨華ちゃん。」
「ずるいってばぁ…。」
「梨華ちゃんは?」
すると梨華は、吉澤の頭を引き寄せた。
そして、今度は梨華からキス。
「…愛してる。わかった。よっすぃーを信じる。」
「よろしい。」
「なんか偉そうっ。」
そんな事を言う梨華に、また、キス。
しばらくキスの嵐をお見舞いしてると…背後から、控えめな声が聞こえて来た。
「…あの〜、吉澤?もう入っても良い…?」
振り返ると、そこには…安倍以外の娘。が、全員揃っていた。
吉澤は、梨華に突き飛ばされて…ソファーから落ちた。
落ちた時に打った背中は痛いけど、また梨華が笑顔を見せてくれるようになって…吉澤は
幸せになったそうだ。
おわり。
- 129 名前:十字架 投稿日:2002年11月17日(日)00時46分32秒
- いしよし命なのれす。
- 130 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月18日(月)19時49分13秒
- 短いのを書きたいと思います。
「桜とあなた」
- 131 名前:「桜とあなた」 投稿日:2002年11月18日(月)19時54分14秒
- 季節外れの狂い咲きした桜を見た
雪の白に桜の淡いピンクが私の目をとめた。
あなたを思い出した。
もう、私の隣にいない人
私の隣でもう笑ってない人を・・・
だから、嫌い桜なんて
いないあなたを思い出すから
桜なんて嫌い・・・
あなたにそっくりであなたの好きなピンクであなたのように綺麗で・・・・
だから、嫌い
あなたと桜は
壊れそうなくらい我慢して、夜一人さびしく涙を流してるのに
平気なフリをして笑顔を作って言うんだ
「大丈夫だよ」
って・・・
- 132 名前:「桜とあなた」 投稿日:2002年11月18日(月)20時01分11秒
- だから嫌い桜は
あなたにそっくりであなたの好きなピンクであなたのように綺麗で
でも、好きなんだ。
今でも忘れず想い続けてる
あなたのことを想って胸を痛めてる
見えない傷をいくつも自分で傷つけて強がった
今、見えない傷はどれくらいの数になったのだろう?
あなたを想って桜を見た
思わず足をとめた
あなたを見たような気がして
でも、そこにあったのは狂い咲きした桜
あなたの好きなピンクだった。
そのとき分かったんだ。
あぁ、幻想だったんだって・・・
いくら手を伸ばしてもあなたには届かないんだって・・・
- 133 名前:「桜とあなた」 投稿日:2002年11月18日(月)20時04分00秒
- 分かったんだ。
本当の私が・・・・
あぁ、今でもあなたが好きなんだって
今でもあなたを想ってるんだって・・・
桜は嫌い
あなたに似てるから
嫌と言うほど似すぎてるから
強がることも綺麗なことも・・・・
END
- 134 名前:「桜とあなた」 投稿日:2002年11月18日(月)20時05分13秒
- 〜あとがき〜
短いですけど書いてみました^^
どうでしょうか?
一応、いしよしで吉澤さん視点です。
分かりづらくてすいませんでした。。。
- 135 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)20時57分13秒
大好きで大好きでたまらなかった。
見てるだけじゃ、もう満足できない。
独り占めしたい。こっちを見て欲しい。
だけど彼女は、あのコしか見てなかった。
なっちは知ってた。あのコには、彼女じゃない恋人がいた。
だから、なっちは…
なっちは、卑怯な事をした。
でも、なんとしてでも彼女がほしかった。
なっちだけを見てほしかった。
それで、彼女はなっちの恋人になった。
だけど、多分彼女の心は今もあのコのもの。
コレは、罰だ。
卑怯だったなっちに、神様が与えた罰。
でも、良いの。
側にいられれば…なっちが、彼女のいちばん側にいる人間なら、それで良い。
大好きだよ、圭ちゃん。誰よりも、何よりも。
例えあなたが、なっちの事そんなに好きじゃなくっても。
- 136 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)20時58分15秒
ぐっすりと眠る圭ちゃんを起こさないように、そっとベッドから降りる。
言うまでもなく、なっちは全裸。
数時間前、圭ちゃんに脱がされたから。
気だるさを残した全裸の身体を、引きずるようにしてバスルームへと向かう。
鏡の前に立つと…我ながら、ヒドい顔してる。
目は腫れてるし、鼻の頭は赤い。頬にはいく筋もの涙のアト。
これは、圭ちゃんに抱かれた後に、圭ちゃんに気付かれないように号泣したから。
圭ちゃんに抱かれた後はいつもこう。
だって圭ちゃん、えっちの最中に名前間違えるんだもん。
まだ、あのコの事好きなんだね。
圭ちゃんに抱かれる度…そして、毎回名前を間違えられる度に思い知る。
『イシカワ…』
気付かれてないって、思ってるでしょ?でもね、なっちはそんなに鈍くないんだよ。
囁くような、小さな声。
これ以上なく、優しい声。
なっちの名前を呼ぶ時に、そんな声を使ってくれた事ないよね。
でも、良いの。
実際抱かれてるのは、梨華ちゃんじゃなくてなっちなんだから。
代用品だって良いんだ。
あなたの、側にいられれば。
- 137 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)20時59分09秒
シャワーを浴びて、ベッドに戻る。
圭ちゃんは相変わらず、深く眠ったまま。
なっちは、するりと圭ちゃんの隣に滑り込む。
そして、寝息を確認してから呟いた。
「…知ってるよ。圭ちゃんが、まだ梨華ちゃんを好きだって。」
こんな事、圭ちゃんが起きてる時には絶対言えない。
だって陰気ななっちなんて、絶対嫌われちゃうもん。
だから、寝てる時くらい許してね。
「それでも、大好き。」
涙がまた、こみ上げて来た。
圭ちゃんと付き合うようになってから、声を殺して泣くのが上手くなった。
悲しい、だけど絶対に必要な特技。
「…愛してるんだよぉ。なっちは…なっちは、圭ちゃんだけなんだからね…?」
これ以上、大きな声は出しちゃ駄目。圭ちゃんが起きちゃう。
でも、もう一言だけ。あと一言だけ言わせて。
そうしたらなっち、また明日から『代用品』でも大丈夫になれる。
「今じゃなくて良いから…いつか、なっちを愛してね。お願い。」
- 138 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)21時00分10秒
「…何言ってんのよ、イモなっち。」
「へ?」
寝てるとばっか思ってた圭ちゃんが、ぱっちりと目を開けた。
「…どしたの、その目。」
「いや…その…コレは…。」
慌てて顔を隠そうとしたけど、圭ちゃんに腕をつかまれてしまった。
「泣いたの?」
「…うん。」
「なんで?」
「なんで、って…。」
言えるワケない。
『圭ちゃんがえっちの真っ最中に梨華ちゃんの名前呼んだから』なんて。
「な、なんでだろうねぇ…。」
そう言うと、圭ちゃんに抱きしめられた。
「…ごめんね、なっち。」
「…何が『ごめん』なの?」
「いろいろと。」
「・・・・・・。」
なっちは、黙るしかない。
そんななっちに、圭ちゃんは優しくキスをしてくれた。
「…アタシ、なっちが好きよ。」
嘘吐き。
「アタシの彼女は、なっちだけだから。」
嘘吐き。
「…だから、アタシに隠れて泣くなんてしないで。
なっちが泣いてると、アタシも悲しいよ。」
嘘吐き。
- 139 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)21時00分57秒
- なっちは、圭ちゃんを突き放した。
「嘘、吐かないで。」
「嘘なんかじゃ…」
「梨華ちゃんが好きなくせに!!」
言っちゃ、駄目。
わかってるのに、止まらない。
「なっちの事、そんなに好きじゃないくせに!!そんな嘘、うれしくなんかない!!」
「な…なっち?」
「気付いてないとでも思ってんの!?
なっちを抱く時、圭ちゃんが誰を想ってるのか…気付いてないワケないじゃん!!!」
一回、大きく息を吸い込む。
「なっちは…なっちはもう、梨華ちゃんの代用品じゃ嫌だ!!」
そう叫んだ瞬間、圭ちゃんに押し倒された。
「んん…っ!!」
激しいキスに、抵抗するけど…無理。
だって、本気で抵抗できないんだもん。
「…何、すんだよぉ…。」
唇が離れると、また涙の量が増える。
「好きでもないくせに…なんでこんなキス…!!」
「好きだよ。」
「だから、嘘つかないでってば!!」
「嘘じゃない!!」
その目に見据えられて、身動きが取れなくなる。
- 140 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)21時01分30秒
- 「好き。好きだよ。なっちが好き。」
「・・・・・・。」
「石川よりも、なっちの方が好き。」
「…じゃあ…なんでえっちの時、梨華ちゃんの名前呼ぶんだよぉ…。」
すると圭ちゃんは、きょとんとした顔になる。
「はぁ?」
「圭ちゃんいっつも、えっちの時に『イシカワ』って言うじゃん!!」
「い、言ってないわよ!そんな事!!」
「言ってるべさ!!」
「言ってないって!!」
むむむ、とちょっとにらみ合う。
そして、圭ちゃんは言った。
「これから、もっかいしよう。で、本当に言ってるかどうか検証しよう。
言ったら、止めて。良い!?」
「の、望む所だべさ!!」
- 141 名前:想い人 投稿日:2002年11月19日(火)21時02分04秒
それから、一時間後。
「…ね?言ってないでしょ?」
勝ち誇った顔の圭ちゃんが、隣でタバコを吸ってる。
なっちは…起き上がる事もできないくらいヘトヘト…。
「ず、ずるい…圭ちゃん、ズルした!!今回は言わないように気をつけたんでしょ!?」
「んな事ないわよ。いつも通り。…いや、ちょっといつもより激しかったかな?」
「〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「ははは。真っ赤になった。可愛い〜。」
く、くやしいっ!!
「…じゃあなんで、今までは聞こえてたんだべさ!!」
「幻聴じゃないの?なっちの思い込みによる。」
「そ、そうだとしたら…なっち今まで、馬鹿みたいじゃん!!」
「そーね。馬鹿ね。」
「っか〜〜〜〜〜〜っ!!むかつく!!ケメコのくせに!!」
すると圭ちゃんは、なっちにキスをくれた。
そして、言う。
「…そんな事言うと…もっかいするよ?」
これは、ハッピーエンドなのかな…?
おわれ
- 142 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時09分46秒
高校生になっても、私の毎日は相変わらずせわしない。
「吉澤さーん、どこいったのぉー!?」
どたどたと、廊下を走りながら吉澤さんを捜す。
ここ1ヶ月ちょっと、週に数回必ず繰り返される光景。
「吉澤?知らないけど」
「よっすぃー?見てないよ」
いつものごとく、吉澤さんは行方不明。
「んも〜〜〜!!どこでサボってるのぉ!?よ・し・ざ・わぁー!!」
「おっ、何だ何だ?」
「委員長は今日も元気いいねぇ」
その、『委員長』と言うセリフに反応する私。
「ちょっと、『委員長』はやめてよ。私には石川梨華ってちゃんとした名前があるんだから」
「いいじゃん、実際クラス委員なんだし」
「だぁーめ!」
委員長、って呼ばれるのは嫌じゃないけど、石川梨華って人格を否定された気分になっちゃうのよね。気分だけど。
「石川さん、吉澤さん捜さなくていいの?」
「…そうだった。じゃあね」
クラスメイトに教えられて、私はまた吉澤さんを捜しに走る。
- 143 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時11分28秒
私は…いつもせかせかと生きてきた。
急がなきゃいけないわけじゃないのに、いつも急いでた。
「よっ、梨華ちゃん」
「柴ちゃん」
たったっとステップを踏んだまま立ち止まる。
「相変わらず忙しそうだねー。…おや、可愛いマスコット」
柴ちゃんの興味は、どうやら私のカバンについてるマスコットに行ったらしい。
「えへへ、これ吉澤さんにもらったんだ…って、そうだ柴ちゃん、吉澤さん知らない?」
「よっすぃー?」
柴ちゃんは、何も言わずに窓際へ…って…
「いたぁー!!」
お目当ての人物、吉澤さんは中庭のベンチで堂々と居眠り。
まったく、捜し回ってたこっちの気も知らないで…
「どうして堂々とサボれるのかなー…よしっ、今すぐ捕まえて…」
「ねぇ梨華ちゃん?」
「ぐっ!!」
柴ちゃんが走り出そうとした私の襟首をいきなり掴んできた。
くっ、苦しい…
「しっ、柴ちゃん何…苦しい…」
「ああ、ごめんごめん。梨華ちゃんさぁ…吉澤さんに返事したの?」
ぼっ、と顔が熱くなるのがわかる。
「ま、まだ…」
―――――そうなのだ。
話はかれこれ2週間前のこと。
その日、私は生まれて初めて告白された。
- 144 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時12分26秒
私は…いつもせかせかと生きてきた。
急がなきゃいけないわけじゃないのに、いつも急いでた。
「よっ、梨華ちゃん」
「柴ちゃん」
たったっとステップを踏んだまま立ち止まる。
「相変わらず忙しそうだねー。…おや、可愛いマスコット」
柴ちゃんの興味は、どうやら私のカバンについてるマスコットに行ったらしい。
「えへへ、これ吉澤さんにもらったんだ…って、そうだ柴ちゃん、吉澤さん知らない?」
「よっすぃー?」
柴ちゃんは、何も言わずに窓際へ…って…
「いたぁー!!」
お目当ての人物、吉澤さんは中庭のベンチで堂々と居眠り。
まったく、捜し回ってたこっちの気も知らないで…
「どうして堂々とサボれるのかなー…よしっ、今すぐ捕まえて…」
「ねぇ梨華ちゃん?」
「ぐっ!!」
柴ちゃんが走り出そうとした私の襟首をいきなり掴んできた。
くっ、苦しい…
「しっ、柴ちゃん何…苦しい…」
「ああ、ごめんごめん。梨華ちゃんさぁ…吉澤さんに返事したの?」
ぼっ、と顔が熱くなるのがわかる。
「ま、まだ…」
―――――そうなのだ。
話はかれこれ2週間前のこと。
その日、私は生まれて初めて告白された。
- 145 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時13分22秒
私は、今日と同じようにどたどたと廊下を走りながら吉澤さんを捜してた。
「もぉーっ!!いくら欠席中に決められたクラス委員だからって委員会までサボらないでよー!怒られるのは私なんだからー!!」
吉澤さんは、今日と同じように行方不明。
校内中走らされて捜し疲れた私は、ちょっとベンチで一休み。
ふと、上を見上げると…桜がきれいに咲いていた。
「もう、咲いてたんだ…桜…いっつも通り過ぎてるだけで、気付かなかったな…」
私は、クラス委員には慣れている。中学から数えてもう4回目。
別に目立ちたいわけでもリーダーシップを取っているわけでもないのに、
物事を白黒ハッキリつけないと気が済まない性格でいつも選ばれてしまうのだ。
自分でも可愛くない性格だなって思うけど、もともとこうなんだからしょうがない。
―――――そう思ってた。
- 146 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時14分17秒
「そこ、あたしの指定席」
「あ、はい」
いきなりベンチの下から現れた顔に驚きつつも律儀に避けてしまう私。
ん?あれ?この人は…
「あーっ!!吉澤さん!捜してたんだよ!」
「うん。はい、缶コーヒーあげる」
吉澤さんは、のほほーんと笑いながら缶コーヒーを差し出してきた。
「もう委員会始まっちゃってるよ、すぐに行かないと…」
「はい。早く飲まないと冷めるよ」
開いた口がふさがらなかった。
何なの?この人…
「…ありがと」
「どーいたしまして」
「…吉澤さんといると調子狂うよ…」
渡された缶コーヒーはまだ温かくておいしかった。
その缶コーヒーを飲んでる私に、次の瞬間吉澤さんは爆弾発言をしてくれた…
「あのね…あたし、石川さんのこと好き」
- 147 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時14分51秒
これが、2週間前の出来事。
「嬉しかったよ…私には縁がないと思ってたし。初めて告白されたんだから…」
「じゃあ早くOKすれば?」
「どう返事していいかわかんない…」
そう。今まで告白なんてされたことなかったから、私はいまだに迷っている。
「それに、吉澤さん…その後なんで私を好きかって聞いても教えてくれないの…
どうして好きになってくれたかわからないまま返事するのって嫌じゃない…?」
「出た出た。梨華ちゃんの白黒ハッキリさせたい病」
柴ちゃんは昔からそう。
私が何か気になることを追求しようとすると、すぐ「白黒ハッキリさせたい病だ」ってからかってくる。
「だって…私みたいなせっかちな子彼女にしたい人なんていないよ…」
実際、この性格のおかげで今まで告白されたことがなかった。
友達もみんな「もうちょっと落ち着きなさいよ」って口をそろえて言ってくるし…
「梨華ちゃんは可愛いと思うけど」
「じゃあ柴ちゃんヨメにもらってくれる?」
「ヨメにはちょっと…疲れそうだし」
「ひっどーい!」
やっぱり、柴ちゃんは私をからかって楽しんでる。
- 148 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時15分22秒
吉澤さんは、のんびりとした自分の世界を持ってる人だ。
…まあ、世間的にはぐうたらと言うのかもしれないけど…
そんな彼女といれば、白黒ハッキリじゃない自分を見つけられるかな…
今とは違う世界の見え方が出来るのかな…って思ってたりもする。
まあ、こんな恥ずかしいこと誰にも言えないけどね。
「珍しいね、梨華ちゃんがハッキリしないなんて」
「そうか、そうだよね」
「私は凸凹コンビでいいと思うんだけど」
今の白でも黒でもない状態はこれまでの私にはなかったことで
もう、私は動き始めてる
私は、自分がどう変われるか見てみたい。
- 149 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時16分18秒
「はい、プレゼント」
「ありがとぉー。わ、ピンクのプーさんだー」
「うん」
「吉澤さんってプレゼント魔だよね」
「うん」
「どうして何回もプレゼントくれるの?」
「好きだから」
「うっ…」
やっぱり、吉澤さんは何て言うか…つかみどころがない。
「お金…大丈夫?プレゼント代も高いよね…いつももらってる気がするし
それに…プレゼントもらってるからって…OKってわけじゃないよ?」
「うん。別にあたし物で釣ろうと思ってないし。わかんないかなあ?」
「…わかんないよ…」
もしかして、バカにされてる?
じゃあどんな理由でくれるの…気になる…
あ、ダメダメ!これじゃいままでのせっかち娘のままじゃない!がまんしなきゃ!
その時、風が通りすぎた。
風に吹かれてる吉澤さんの顔はとても気持ちよさそうで…
私は、見てみたい。
あたたかくてのんびりした、彼女の世界を。
- 150 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時17分57秒
「おーい、梨華ちゃんちょっと」
「何?柴ちゃん」
「後藤さんが呼んでたよ」
後藤さん?2つ隣のクラスの?
「後藤さん…何の用だろ?」
「もしかしたら告白だったりして」
「…それはないよー。」
「そっかぁ〜?わかんないよ〜?」
そう。こんなちょっとの間に2回も告白されるなんて事ない。
世の中、そんなに甘くないよね。
- 151 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時20分16秒
「後藤は、梨華ちゃんのこと好きです」
そんなに…甘くない…はずなんだけど…
「後藤と付き合ってください!」
す、すごい!高校入ってから2回も立て続けに告白されるなんて…
これが、高校デビューってやつなの?
「後藤さんって人気あるんだよー!クールで美人で、でもかわいいとこもあるんだって!」
「だから違うよー!」
教室を出る前の柴ちゃんとの会話を思い出した。
確かに、凄い美人だなあ…気付かなかったけど…
後藤さんのこと、そう言う風に見たことなかったなぁ…ほとんど話したことないし。
まあ、今すぐ返事しなくてもいいよね…
その時、ふと目に入った後藤さんの手。
…すごく、震えてる…
そうだ、後藤さんは自分の思いに決着をつけようと一生懸命なんだ。
そうだよね…告白って、すっごく勇気いるよね…
バカだ、私。
真剣な後藤さんを灰色のままあしらおうとしてた。
恋愛は…恋愛だけは、灰色のままじゃダメ。
白黒ハッキリしなくちゃ、後藤さんの本気に失礼だ!
- 152 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時21分02秒
「あ、石川さん…ごっちんに告白されたんだって?」
階段で、吉澤さんに話し掛けられた。
昨日の今日なのに…早いなぁ
「…随分情報が早いんだね…」
「柴田さんに聞いたんだよね。何て返事したの?」
「…断った」
「ふーん…」
私は、後藤さんのこと灰色のまま、中途半端にするなんてできなかった。
だから…はっきり断ったんだ…
なのに、なのに次の吉澤さんの言葉は…
「ごっちん、いい子だと思うんだけどなぁ…もったいない」
え?
今、何て言った…
もったいない、って、何なのよ…
「どうして、そんなこと言えるの…?」
「どうして、って…自分の好きな人が他の人に好かれてるのってうれしくない?」
「じゃあ、もし私が…後藤さんの告白OKしちゃったらどうするの?」
私は、吉澤さんに何を期待してるのだろう?
「嫌だよ」って言って欲しかったのかもしれない。
でも、吉澤さんはいつもの笑顔のままで…
「しょーがないんじゃない?」
こう、一言だけ。
- 153 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時21分33秒
何だろう。ずん、ってのしかかる感じがした。
すごく、体が重くなる感じ。
「吉澤さん…私のこと好きじゃなかったの?」
「うん、好きだよ」
何、それ
好きなら、なんでそう平気でいられるの?
「…じゃあ何で好きな人を取られてもしょーがないなんて言えるの!?
何でプレゼントなんかくれるの!?本当に私のこと好きなの!?
私、吉澤さんがわからない!!」
そのまま、私は吉澤さんに背を向けて階段を駆け上った。
…吉澤さんのせいで泣いた顔を見られるのが悔しかったから…
- 154 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時22分23秒
私は、変わりたかった。
白黒ハッキリつけたがるせっかちな自分は、もう終わりにしたかった。
吉澤さんといればのんびり灰色の自分になれるかなって
違う世界が見れるかなって…そう思ってたのに…
あの人の灰色は、本当にただの“いいかげん”だった!!
「やだやだ!もうあんな人知らない!!」
枕に当たった後、ベッドに突っ伏す。
『あのね…あたし、石川さんのこと好き』
頭の中に吉澤さんの声が浮かぶ。
夢にまで見た、初めての告白なのに…乙女心を踏みにじって!!
「よーしっ!!」
…こうなったら、白黒ハッキリつけよう。
のんびりした灰色の世界なんて、もうどうでもいいっ!!
あの人にどれだけ自分の灰色がいい加減か教えてあげる!!
- 155 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時23分52秒
「おはよう、吉澤さん」
「あっ、石川さんおはよー。怖い顔してどうしたの?」
「誰のせいだと思ってるのよ…話があるの。ちょっといい?」
「うん」
呼び出したのは、あの日のベンチの前。
…告白された場所って…ちょっとベタかな…
「吉澤さん、私のこと好きって言ったよね」
「うん」
「でも吉澤さんは私が違う人のところに行ってもしょうがないんだよね」
「うん」
「私…吉澤さんがわかんないよ…好きなら一緒にいたいって思うもん。
しょうがないなんて絶対言えない。そんなしょうがないなんて…好きでも何でもないよ」
さあ、吉澤さんはどう来るんだろう。
納得する?いつもみたいに笑ってはぐらかす?
「…どんなに好きでも『自分』が『相手』を束縛するなんて絶対出来ないよ」
…言い訳するんだ…いつもの、綺麗な笑顔で…
- 156 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時24分23秒
- 「それは、ただの“逃げ”の言い訳じゃない!!灰色のまま曖昧にしたいから…
自分の中で1番をハッキリしたくないから、そう言ってるだけじゃない!!
1番が曖昧なら好きな人がいなくなっても傷つかずにすむもんね…でも…
好きになることって、その人を自分の中で1番にすることでしょう?」
これが、私の考え。
さあ、次こそが本題。
「あなたにとっての1番は何なの!?自分?相手?ハッキリしてよ!」
そう、私は吉澤さんの1番に白黒つけて欲しい。
吉澤さんの1番を、ハッキリさせたい。
吉澤さんの手が、すっと伸びてきた。
「誰かのために何かをしてあげるとか、1番にするとかそう言う行為も…
結局は自分自身の自己満足でしかないんだよ」
頬に触れるかと思った手は、カバンについているマスコットに触れていて。
「『自分』以上に『相手』を好きになることなんて誰にも出来ないんだよ」
私は、いつになく真剣な吉澤さんの目に…射抜かれてしまった。
- 157 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月21日(木)23時25分06秒
- 「クローン・モーニング」
それは送られてきた。
人1人、入るぐらいの箱だった。
オレは、慎重に箱の封を開けた。
まさか、またケメコが入ってんじゃないかと、ひやひやしたが、
箱を開けると、まぎれもなくあこがれのチャーミーだった。
しかも、例の美少女Uのウサギのコスチュームを着て、
眠っている。
説明書の通り、口から息を吹き込む。
すると、チャーミーは眼を開けた。
- 158 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時25分10秒
「…だから、あたしはあたしが好き。石川さんが大好きでしょうがない自分が好きなの」
いつもの笑顔に戻って、あたしの手を握りながら楽しそうに言う吉澤さん。
…何なの、なによ…
のんびりなあなあに灰色に生きてる人かと思ってたけど…
この人が1番白黒ハッキリつけた生き方してるじゃない…
言い返せなかった…
悔しいけど、確かにそうかもと思ってしまった。
「吉澤さん、怖いね…」
「いやいや、そんなことないよ」
- 159 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時25分52秒
「で、結局つきあうことにしたんだ」
「うん」
「吉澤さんのおおらかさに惹かれたんだねー」
柴ちゃんはそう言うけど、ちょっと違ってたりする。
なんだろう?おおらかっていうか、怖いっていうか、負けたくないっていうか…
あの目に、やられてしまったというか。
その時、頭の上に何かの感触。
「はい、プレゼント」
「…ありがとう」
頭には、ネコのぬいぐるみ
後ろには、にこにこ笑顔の…ひとみちゃん
- 160 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時26分44秒
「がんばれ、凸凹コンビ」なんて、楽しそうに柴ちゃんは送り出してくれた。
私はとりあえず頭にぬいぐるみをのっけたままひとみちゃんと帰る。
「これも自己満足のためなのねぇー」
「うん。いつも忙しそうな梨華ちゃんの喜んだ顔が好きだからね」
「…つまり、私の喜ぶ顔が好きな『自分』が好きなのだと?」
「うん」
「…それで、『相手』に何かをしてあげられる『自分』を実感できて満足ですか」
「ま、そういうことだね」
…この人は…でも、言い返せないなぁ…
「私、ひとみちゃんに何もしてあげられてないよ」
「いやいや、幸せにしてもらってるよ」
むぅ…ホントに幸せそうだからなぁ…
「じゃあ、仮に私がひとみちゃんに何かをしてあげられていて、ひとみちゃんが勝手に
幸せになってたとしても、まだ私はそれで幸せを感じてはいないんだから!」
「ふうーん?ホントにそうかな?」
やっぱり、このいいかげんなようでハッキリした人には勝てない。
まあ、いい…のかなぁ?
灰色のようで、灰色でない。
そんな私達の時間は、始まったばかり。
〜END〜
- 161 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月21日(木)23時29分23秒
- 「オセロゲーム」さん、
失礼しました。割り込んでしまいました。
お先にどうぞ。
- 162 名前:オセロゲーム 投稿日:2002年11月21日(木)23時30分42秒
- 「ワイルド・チャーミー」さん
終了いたしました。無駄に長い、二重投稿…すみません。
- 163 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月21日(木)23時48分55秒
- 「クローン・モーニング」
ワイルド・チャーミー
それは送られてきた。
人1人、入るぐらいの箱だった。
オレは慎重に箱を開けた。
この前みたい、ケメコが入ってたらと、ひやひやしたが、
箱の中には、チャーミーが眠っていた。
それも、美少女Uのコスチュームのウサギの格好だった。
有頂天になったオレは、説明書の通り、口から息を吹き込んだ。
すると、チャーミーはパッチリと眼を開けた。
- 164 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月22日(金)00時05分10秒
- オレは、優しくチャーミーを抱き起こそうとした、すると、
石川「ニャオ〜!」
ヲタ「ニャオ〜って、何んなの?」
チャーミーは、まるで、ネコのように箱から飛び出して来た。
そして、よつんばいで歩き回った。
ヲタ「・・・ウサギの格好なのに、ニャオッってどういうこと!?」
チャーミーは、ネコのように鳴きながら部屋を歩き回る。
その姿は、どう見てもネコとしか思えない。外見は、ウサギの
格好をしたチャーミーなのだが・・・。
- 165 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月22日(金)00時17分27秒
- オレは、優しく声をかけて近づこうとした。
ヲタ「いい子だね〜、怖くなんかないよ〜」
石川「フーッ!!」
チャーミーは、ネコ独特の威かくの声を上げて、オレの向かって
ネコパンチを繰り出してくる。
とうとう、オレは頭にきて、UFAへ電話をかけた。
ヲタ「てめえ、このやろう!どういうつもりだ!!
あんなもの送りつけやがって、」
係り「はあ?、確かにチャーミーを送ったはずですが・・・」
ヲタ「ばかやろう!見かけはチャーミーだが、どう見てもあれは、
ネコにしか見えないじゃないか!!」
- 166 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月22日(金)00時35分30秒
- 係り「どうも失礼しました。調べましたところ、クローンに
チャーミーの記憶をインプットしている時、その辺のノラネコが
まぎれ込んできて、ノラネコの記憶が間違ってインプットされた
みたいですね。」
ヲタ「みたいって、この不始末をどうしてくれるんだ!」
係り「っていうか〜、外見はチャーミーなんだから、いいんじゃ
ないっすか〜。まあ、当方の不手際ですから、料金は半額に
いたします。」
ヲタ「・・・しょうがねえな〜。半額か、まあ、外見はチャーミー
なんだけどな・・・」
ふと、チャーミーを見ると、なんと・・・、いつのまにか、
下半身を丸出しにして、部屋のすみっこにオシッコをしている
ではないか・・・。
ヲタ「あー!、ダメだよ〜、こんなとこでオシッコしちゃ・・・」
石川「フニャ〜、」
叱られたチャーミーは小さくなっている。
これから先、どうしたものか・・・、
終わり
- 167 名前:夢の中 投稿日:2002年11月22日(金)20時02分20秒
- ふと目が覚めた。いつもと同じ天井。
変な時間に起きちゃったんだ。よっすぃー、寝てるよね。
首だけ動かして、隣を見る。
あれ、いない、の?どこ行っちゃったんだろ。
隣に手を伸ばそうとして、それが動かないことに気づく。
足元。
きちんと肌がけをかぶって寝ているのに、足首を直に掴む手を感じる。
よっすぃー、何してるの?
違う、よっすぃーじゃ、ない。
動こうともがく私を押さえつけるように、その手に力がこもる。
イヤだ、誰?離してよ、痛い、ヤだ、イヤ!
地震?揺れてる。動かない体がグラグラ。
- 168 名前:夢の中 投稿日:2002年11月22日(金)20時04分05秒
- 「・・・かちゃん。梨華ちゃん!」
たぶん、本当に目が覚めた。心配顔と目が合う。
私の体を揺さぶっていたのは、よっすぃー。
「だいじょうぶ?」
夢、だったんだ。私は自分を覗き込むよっすぃーにしがみついた。
強く抱きしめてくれる。
「怖い夢、見たの?すぐ起こしたつもりなんだけど、ごめんね」
よしよし、そんなふうに私をあやしてくれるよっすぃーに、やっと
少し落ち着く。
「だいじょうぶ?怖かったの?」
「うん」
夢の内容より、得体の知れない怖さを強く覚えている。
気づいた隣に、あなたがいなかったから。
夢から覚めた現実が、あなたがそばにいる現実が、私を安心させる。
- 169 名前:夢の中 投稿日:2002年11月22日(金)20時05分16秒
- 強くしがみつく。再び夢に引き込まれないように。
抱きしめ返してくれる現実に、また、安心する。
「梨華ちゃん、ごめんね」
「何で、謝るの?」
「夢の中まで、助けに行ってあげられなくて」
もう、見ないよ。怖い夢なんて、見ない。この腕の中で、そんな
夢なんて絶対に、見ないから。
でも、本当に助けに来てくれるなら、ちょっとぐらい怖い夢なら、
見ても、いいかな。
- 170 名前:夢の中 投稿日:2002年11月22日(金)20時06分44秒
- 額、まぶた、頬。唇が下りてくる。私のそれで、少し休憩。
「眠れそう?」
「うん、ありがと。ねえ」
「ん?」
「いい夢にも、出てきて」
「・・・うん、分かった」
鼓動が、子守唄。少しずつ、寝かしつけられる。
・・ねえ・・・よっすぃー。
・・・夢の中まで・・・・あなたが・・・・好き・・・・・
- 171 名前:名無しです 投稿日:2002年11月22日(金)20時08分32秒
終わりです。梨華ちゃん、おやすみ。いい夢見れるといいね。
- 172 名前:赤い靴(クローン・ラブリー) 投稿日:2002年11月23日(土)00時22分32秒
- クローン・ラブリーは、舞台のそでにやって来た。
愛「私がクローン・ラブリーです、私は24時間レンタル・・・」
振付け「そんなことは、いいから早く衣装に着替えて・・・その
チュチュを着て、そこの赤いトーシューズを履いて・・・」
ラブリーは、ぐったりとして運ばれて行くバレリーナを見送った。
愛「あの人どうしたんですか・・・」
振付け「いいから、早く衣装をつけて。」
ラブリーはわけもわからず、衣装、チュチュを身につける。
振付け「いいね。曲目は、『ひん死の白鳥』だよ。」
愛「そんな曲、踊ったことないです・・・」
振付け「大丈夫、その赤いトーシューズを履けば踊れるわ・・・」
ラブリーは、舞台に進み出て、踊り始めた。一度も踊った事の
ない、『ひん死の白鳥』を・・・。
その赤い靴を履いたものは、一生踊り続けなければならないと、
いうことを知るよしもなかった・・・。
終わり。
- 173 名前:クローン・ダンク 投稿日:2002年11月23日(土)19時46分48秒
- ここは、九州のとある県、
学校の体育館で、バスケットの町内大会が行われていた。
選手「コーチ、1人ケガしてダメです。」
コーチ「何だって、あの子はエースじゃないか、ダメだ〜」
選手「どうします、60対6で負けてますし、棄権しますか・・・」
コーチ「待て待て、こっちには切り札がある。しかし、遅いな〜」
その時、ユニフォーム姿の小さな少女が現れた。
新垣「お待たせ〜、あたしが、ご注文のクローン・ニイニイで〜す」
コーチ「しかし、遅いな。これこれ、小学生はじゃまだから、どいて。」
少女は、飛び上がりながら言った。
新垣「だから〜、あたしが、ご注文のクローン・ニイニイで〜す。」
コーチ「んな〜バカな〜!、こんなお豆ちゃんみたいのが・・・」
- 174 名前:クローン・ダンク 投稿日:2002年11月23日(土)20時02分04秒
- コーチ「だいいち、オレが頼んだのは、○ャンソンの清水八重子の
クローンだぞ・・・」
選手「ダメですよ、そんなの呼んだらすぐにバレちゃいますよ。
私は、モーニング。のファンですから知ってますよ、確か、ニイニイは
小学校の時、バスケットの選手でしたよ・・・」
コーチは、準備運動を始めているニイニイを見ながら言った。
コーチ「だからと言って、あんなちっこいのは、ダメだろう〜、
せめて、リーダーのかおりんだったら、良かったのに・・・」
とにかく、ダメもとで、ニイニイを出してみることにした。
相手の選手は、小さいのが出て来たなと、ハナからバカにしていた、
ところが、驚異のスーパープレイに愕然とする・・・。
- 175 名前:クローン・ダンク 投稿日:2002年11月23日(土)20時27分11秒
- クローン・ニイニイは、相手の大きな選手の足元を機敏に動き、
敵のゴールに肉迫する。
そして、ラインの外から、ジャンプしてスリーポイントゴールを
決めた・・・。
敵味方の選手は、あっけにとられて茫然としている。
コーチ「んな、バカな〜、五、六メートルはジャンプしているぞ。
しかも、助走なしで・・・」
ニイニイは縦横無尽に走り回り、ゴールをたて続けに決める。
敵のゴール下にくると、敵のディフェンスを巧みにかわして、
軽く、二メートルはジャンプして、ダンクシュートを決める。
コーチ「んんんんん〜む・・・」
残り時間、十数秒という時、ついに逆転のゴールを決めて、
二点のリードをつける。
残り、五秒。しかし、敵もさる物、破れかぶれの超遠投のシュートを
放つ。
そのボールは、大きな放物線を描き、味方のゴールに向かっている。
すると、間に合わないと見るや、ニイニイは、
さっと、自分の眉毛に指を当てて、叫んだ。
新垣「眉毛、ビ〜ム!!!!」
すると、ボールはゴールイン寸前で、なぜか、大きく横にそれた・・・。
終わり。
- 176 名前:SELF PORTRAIT 投稿日:2002年11月24日(日)03時05分37秒
親友はいつのまにか消えてしまった。
誰にも見つからないように枯れるほど流した涙を、私は今でも思い出す。
- 177 名前:SELF PORTRAIT 投稿日:2002年11月24日(日)03時06分37秒
ある日、プレゼントをもらった。
丁寧に梱包された箱は大きさの割りに少し重たい。
その場で開けてみると、その箱の中に収まっていたのは少し古ぼけた、
でも味のあるポラロイドカメラと専用のフィルム。
その独特のシャッター音が私の心を虜にするのに時間はかからなかった。
あれから何枚の写真を撮っただろう。写真はコルクボードに、私の手帳に、
どんどん増えていく。直に瞳で見る世界とファインダー越しの世界。
そのギャップがたまらなく好きになっていた。
- 178 名前:SELF PORTRAIT 投稿日:2002年11月24日(日)03時08分24秒
撮られる側の気持ちは仕事を通してよくわかっているつもりだったが
撮る側になることで今まで推し量ることしか出来なかった部分がなんとなく
見えるようになった。
写真は心も映し出す。撮る人の想い、被写体の想い、フレームから外れた所にある
想い。一枚の薄っぺらい写真は、私が思っているよりもずっと多くのものを映し出す。
はじめの頃に撮った写真はほとんどがピンボケだらけで、面白いほど
まともに写った写真が見当たらない。
それでも……――
目を細めて見つめる先にあるそれは、ただ透き通るような青に重なる
白くぼやけた雲らしきものが写っているのみ。
- 179 名前:SELF PORTRAIT 投稿日:2002年11月24日(日)03時09分49秒
不思議なのは、これを撮った日は快晴とは程遠い雨の夜だったという事実。
それ以降も何度か同じ条件下でシャッターを押してみたが、ごく普通の黒い雲から
落ちる無数の水滴を映し出すだけ。
でも、その怪奇現象ともいえる話を誰かに話そうとは思わなかった。
ただ何も言わず他の写真と一緒にコルクボードに貼り付ける。
そこは私の宇宙だから。
習慣で付けてしまっていた写真の裏の日付は、見ない。
本当は、わかっていたから。
晴れの日でも雨の日でも、きっとあの写真には関係ない。
私は今日ものんびりと散歩して軽い音を響かせるのだろう。
あの遠い日の涙を取り戻しながら、いつかあいつに追いつくように。
終わり。
- 180 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時48分41秒
- 彼女への気持ちは、単純に、一言で言ってしまえる想いだったりする。
うん、そう、好き、なんだよね。
年下だけど、時々、すっごくオトコマエな感じだったりして、
頼り甲斐があるというか、あたしが頼りないだけなのかも知れないんだけど。
それでも、初めて会ったときから、彼女はあたしの全世界だった。
- 181 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時50分02秒
- 「みーきたーん」
絶対聞き間違えたりしない声で呼ばれても、すぐに振り向いたりしない。
だって、何度でも呼んでほしいんだもん。
「おいこらっ、みきすけっ、無視すんなーっ」
だけど相手は、あたしがちゃんと聞こえてるって判ってるから、
振り向かないあたしにすぐに文句を並べる。
拗ねた顔も可愛いんだよね、なんて、
心の底ではとんでもないことを考えてるあたしに、いつ気付くかなあ。
ってか、気付かれても困るんだけど。
いや、気付いて欲しいとも思ってはいますけども。
- 182 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時51分19秒
- 「無視なんてしてないよー」
言いながら振り向くと同時に、ばふっ、って感じに抱きついてくる。
ああ、可愛い。
このまま、どっか、閉じ込めておきたいよ。
さすがに、それは犯罪だから、頭の中でだけ見ることの出来る、夢でしかないけど。
「聞いて聞いて、あのね」
「うん?」
ふたつ年下の先輩。
だけど、きっと、今のあたしに一番近い気持ちでいてくれる彼女。
- 183 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時52分07秒
- 「今度、平家さんとゴハン行くことになったんだぁ」
って、そうきますか。
やっぱりもういっそ、このままどっかに拉致っちゃおうかな。
「へえ?」
「なによぉ、気のない返事しちゃってさぁ!」
「だって、ほかにどう言えば」
好きなんだよ。
好きなんだってば。
キミの視線が誰を追ってるか知ってても、
それでも止められないこの気持ちにさ、早く気付いてよ。
- 184 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時52分49秒
- 「みきすけも一緒だよ」
「はあ?」
思いがけなさすぎて答えた声が裏返る。
「…な、んで、あたしまで」
「え? 都合悪かった?」
「そーじゃなくて」
きょとん、した面持ちで上目遣い。
殺人的な可愛さでそんなふうに見上げられてさ、
キミのことが好きで好きでたまらないあたしに、いったいどうしろと?
- 185 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時53分27秒
- 「そーゆーのってさ、やっぱ、ふたりっきりのほうが、いいんじゃないの?」
「……平家さんとあたしのふたりで行けってこと?」
ちょっと、そーゆーの、切ないけどさ。
「……ジャマしたくないし」
抱きつく彼女の腕をやんわりとほどいて、苦笑しながら言ってみる。
「頑張っといでよ」
相手はちょっと、いやかなりオトボケで超鈍感な、ある意味、難攻不落の先輩だけどさ。
抱きついてくる彼女の腕から逃げて、その手で彼女の髪の先に触れてみる。
- 186 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時54分05秒
- 「…みきすけ?」
………ヤバ、泣きそう。
「ごめん、ちょっと、用事思い出した。またね」
慌てて手を引っ込めて、取り繕うように言って一歩退く。
そしてそのまま背中を向けたら、
真正面で受け止めた倍以上の衝撃を背中に感じた。
「えっ? なに、どしたの?」
ぎゅぅぅぅぅって、目をきつく閉じながら、背中から抱きつかれてる。
- 187 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時54分42秒
- 「…みきすけのアホ」
「はい?」
「アホ、バカ、マヌケ、ボケ、抜けさく、チビ」
ちょい待ち、最後のは有り得ないでしょ。
ほとんど背丈に差なんてないんだし、
むしろあたしのほうが大きく見えるって評判ですよ?
てか、なんでこんな態勢に?
「超がつくくらい鈍い平家さんだって気付いたっていうのにさ!」
- 188 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時55分31秒
- だから、なんなんですか、もう。
鈍いのはどっち……。
って、そこまで考えて、あたしは、あたし自身がずっと思いつづけてきた願望に全身を包まれた。
ちょっと待って。
それって…、それって、ひょっとして?
だけどあたしは彼女の体温を背中に感じたまま、身動き出来ずにいた。
- 189 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時56分20秒
- 「…気付け、ばか」
抱きつく腕の強さが増してくる。
あたしが、心に隠してた気持ちでその手を掴み返しても、
それはキミにとって迷惑にならないの?
「もっともっと、あたしのそばにこい、ばかやろー」
………そんな、連呼しないでよ。
自分の前にまわる彼女の手首を、思い切って掴んでみる。
- 190 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時56分53秒
- もう何度となく触ってて知ってる体温が、何だか急に、あたし自身を熱くしていく。
掴んだ手首を引っ張って、体勢を反転させてから再び彼女を正面から抱きとめる。
似た体格なのに。
ううん、似た体格だからかな、守ってるようにも、守られてるようにも、思えるよ。
「…みきすけ」
耳元で聞こえる、あたしを呼ぶキミの声が好き。
「…あたしを好きって、言え」
「好き」
- 191 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時57分28秒
- 命令口調な言葉に耳元で囁き返してすぐ、
近くの衣装室のドアを開けて、ふたりしてなだれ込む。
閉じたドアに背中を預けて抱きしめるあたしに、彼女の唇が近付いてくる。
唇へのキスなんて、ホントはもう何度だって繰り返してるのに、
今日ほど心臓が跳ね上がったことはない。
「……恋人のキス、して」
求められるままに、言葉で指示された通りに、彼女の唇を深く、深く塞いだ。
ゆっくりと、彼女のカラダをたくさん並べられている衣装の中へと、埋めていきながら。
- 192 名前:強情なくちびる 投稿日:2002年11月24日(日)23時58分21秒
- ほんの少しだけ苦しげに漏れた吐息も、
あたしの首のうしろに回された腕の強さで気にならなくなる。
ばさばさとか、じゃらじゃらとか、
普段は耳につくだろう衣装の衣擦れの音も、今は淫らな物音でしかない。
「………み、き…」
ずらした唇から聞こえてくるのはあたしの名前。
もう、キミの口から、その名前以外、聞きたくない。
もっともっと、あたしのことだけ、考えて。
もっともっと、今まで以上に、あたしで、キミを、いっぱいにして。
――― END
- 193 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月25日(月)04時08分02秒
- とっても良かったです!
自分も最近すっかりこの二人に嵌ってるので
今見つけて嬉しくレスしちゃいました。
また機会があったら書いてください〜(w
強引だけどそれが合ってるあやや(・∀・)イイ!!
- 194 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時25分54秒
「…ば〜っか」
急に横に居た亜弥っぺから言われた。
何?なんでば〜か?あたし何かしたっけ?
…したといえば今日はごまっとうの仕事、そしていつも通り仕事をしたってことだけ。
「…なにかしたっけ?」
「むぅ…気づいてないなら更にば〜っか!」
えぇ?美貴何かしたかなぁ?
楽屋に戻ってきた途端に亜弥っぺはこう…――
可愛い顔の一部の頬をプクーって膨らまして怒ってる。
やっぱり仕事中何かした?
「…ひょっとしてさ。あれ駄目だった?」
「――何がですかぁ〜?」
心当りがあるとしたらあのトーク。
あれがいけなかったのかな?
- 195 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時26分48秒
「えっと…トークに炊飯器の話したの…駄目だった?」
「あれはいいのっ!だってミキスケと亜弥がラブラブだってことみんなに知らせれたしっ♪」
……知らせたんですか。
しかもしてやったり♪みたいな顔を一瞬してまたスグ脹れた顔に戻った
あれは美貴が調子扱いて言っちゃったんだけど…
まぁいっか――って原因はこれではないらしい…
「じゃあさ、なんで怒ってるの?」
「…――だって、だってぇ。」
だって何?わかんないよぉ。
「だっての続きは何?」
- 196 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時27分38秒
―――
「………楽しそうだったんだもんっ」
「――はっ?」
「…だって!後藤さんと話してるミキスケ楽しそうだったんだもん!!!」
目に涙を少し潤めて亜弥っぺは大きな声で言った
…トーク中のですか?見てたんだ。
てっきり見られてないと思ってたよ、だけどそんなことで妬いてくれてたんだ。
何か嬉しいかも――…
「見てたんだ…」
「……ミキスケのこと見逃すわけないじゃん」
「何か嬉しいなぁ。亜弥っぺ妬いてるんでしょ?」
「…バカっ」
「―――バカでもいいよ、だってあれ亜弥っぺの言ってることで笑ってたんだもん。」
「…あれ?そうだったっけ――?」
…それすら忘れてたの?
思わず呆れてしまう。
- 197 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時28分37秒
「……そうじゃん」
「そんなのすっかり忘れてた…―」
「あらら…」
「だって…ミキスケが後藤さんと楽しく笑ってた事しかもう考えられなってたんだもん…」
そう言って俯く亜弥っぺ…
何か顔を真っ赤にしてて凄く可愛いんだけど…
これがあたしの可愛い彼女なんだよね。
- 198 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時29分43秒
「…大丈夫だよ」
そう言って亜弥っぺを後ろから抱きしめる
「なにがよぅ〜!」
「だって美貴は亜弥っぺのことしか考えられないから」
最初は少し手を動かして抵抗してた亜弥っぺも
あたしの言葉を聞いたらピタッって止まった
「…ほんと?ホントに本当?」
顔を少しあたしの方に向けて、その潤んだままの瞳でそう確かめてきた
「―――本当っ。もう亜弥っぺなしじゃ生きてけないから」
「…――っ、ならぁ、許すっ」
我ながら気障なことを言ったなぁって思ったら
亜弥っぺは泣いてしまった
「――ちょっ?!なんで泣くのぉ?」
「…だっ、てぇ〜嬉しいんだもん!」
嬉しさのあまり泣いてしまったらしい。
そんな泣いてる亜弥っぺも可愛くて思わず唇と唇を合わせた
「「…ぅん」」
- 199 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時30分51秒
―――
「…離れないでよ?」
キスした後にそう言う亜弥っぺ
わかってるでしょ?そう伝える感じであたしも…
「……そっちこそ」
―――これがあたし達の日常の一部
- 200 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時32分07秒
――おまけ――
…まっつーにふじもってぃ〜
ごとーが居るの知っててやってるのかな?
何か見てるこっちが恥ずかしいんだけどぉ〜
まぁいっか。ハァ〜ごとーもラブラブしたいよぉ〜〜!!
―fin―
- 201 名前:これが日常 投稿日:2002年11月25日(月)21時35分36秒
- >>196
目に涙を少し潤めて→目に涙を少し溜めて
でした、すいません。
- 202 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月26日(火)02時23分13秒
- あやみき二つ読ませていただきました。
俺も最近この二人に嵌り気味です(w
ことミックのほっぺにチュなんて見ちゃうと(ry
天真爛漫なあややに振り回されるミキティって展開がモロツボに嵌りました。
短編でここまで萌えさせる筆力に感動です。
機会があったらまた書いてください。
- 203 名前:名無し蒼 投稿日:2002年11月26日(火)03時40分45秒
- 先程あやみき書いた者です。
また出来たのでまた書かせて頂きたいと思います。
- 204 名前:我侭お姫様 投稿日:2002年11月26日(火)03時41分58秒
「…ったくもぉ〜」
あたしは今無償に彼女に惚れてるんだと思った。
それはさっきの電話、内容はなんだったかって言うと…―
- 205 名前:我侭お姫様 投稿日:2002年11月26日(火)03時43分20秒
…………
………
……
「みきすけぇ〜!明日家にこぉーいっ!」
「――はっ?!」
なんですとっ?!電話がかかってきたと思ったらこれですか?
「『――はっ?!』っとは何よぉ〜!明日家に来てくれるんでしょうねぇ?」
「…何しに行くのさ?」
彼女――松浦亜弥は電話を掛けてきたら速攻それのみ。
いったい明日あたしは何しに行けと…?
確か明日…仕事なんだけどなぁ〜…
そのことも亜弥っぺは知ってるはずなのに―――
「むぅ〜〜!!何しにって、亜弥の家に遊びにでしょぉ〜!」
――もっともです…
でも急だなぁ〜・・
「――それはわかるけどさ、だって急だし…
それに明日あたし仕事だよ?亜弥っぺ知ってるでしょ?」
さっき思ってたことを言う。
いったいどんな反応が返ってくるんだろう
まぁ〜予想はつくけど…――
- 206 名前:我侭お姫様 投稿日:2002年11月26日(火)03時44分28秒
- 「仕事があることなんて知ってるよー♪だけどさぁ〜…
みきすけにさぁ…会いたいんだもん――…」
ほらね…こうだと思った。
そりゃぁあたしも会いたいですよ?
だけどさ…明日の仕事って―――
「あたしも会いたいけどさ…明日の仕事って遠征で帰ってくるの遅いんだよ?」
――そう、明日は新曲のイベントで遠くに行く。
まぁ日帰りなんだけど…帰りが遅くなるはず…――
その後会うとなると…さ…
「――だってぇ…みきすけに会いたいんだもんっ…」
あっ…――
やばい、電話越しで泣いてるみたいだ。
イヤだなぁ…亜弥っぺは笑顔でいて欲しいもん。
はぁ〜…惚れた弱みかなぁ?
―――しょうがない。
「……泣かないでよ亜弥っぺ――。
ちゃんと、明日遅くなるかもしれないけどさ、会いに行くからさ…」
だからさ…泣かないで?ねっ?
- 207 名前:我侭お姫様 投稿日:2002年11月26日(火)03時45分35秒
「…――っ、ほっんとぉ?」
「ほんと、ほんと――。美貴が嘘ついたことある?」
「……ないっ」
「ねっ――?なら明日遅いけど、待っててよ?」
ちゃーんと会いに行くからさ
「うん!」
――良かった、どうやら元気になったみたい。
これで安心して寝れるや…
「――それじゃ、明日行くね?おやすみ。」
「…おやすみぃ!待ってるからね〜!」
「待ってなよ」
「―――もちっ!!じゃねぇ!」
…………
………
……
っとまぁ〜こんなことっ
――それじゃあ、明日の為に早く寝ますか。
お姫様が泣かないようにちゃーんと迎えに行くためにさ。
―end―
- 208 名前:名無し蒼 投稿日:2002年11月26日(火)03時47分42秒
- 終わりです。
何かミキアヤ書きやすいなぁ…
- 209 名前:まめ大福 投稿日:2002年11月26日(火)12時58分37秒
- 名無し蒼様>初めまして☆
みきあや読ませて頂きました〜!
この二人ならあやみきだなぁと思っていたんですが、みきあやも良いですね(萌
今度、ごっちんのお相手も考えてやって下さい(爆
二人ばかしラブラブじゃあ可哀想なんで
- 210 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時34分41秒
初めの頃、どこかで苦手意識があったのは確かに覚えている。
なんでもそつなくこなして、同期の中の人気も一番で。
私と対極にいる存在。だからこそ余計に惹かれたのかもしれない。
まるで磁石のNとSみたいに。
- 211 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時35分20秒
きっかけは些細なこと。
五期全員がミュージカルの時にひどく怒られて、みんな落ち込んで。
私は涙は出なかった。元々、実力が一番下にいる補欠だったから
ショックも少なかったのかもしれない。
悲しいことには変わりなかったけど、先にみんなが泣いてると
なんとなく泣けなくて。
車の中でも寝たふりをしてみんなが落ち着くのを待っているつもり
だったのにいつのまにか本当に寝てしまった。
その後の電車の中で、愛ちゃんが下を向いて肩を震わせていることに
気付き、励ます。
「泣くなよぉ……」
その端正な横顔を綺麗な涙が瞬きの度に頬を伝ってゆき、唇で光る。
きっと、その時、私の心は弾けた。
何も言わずに頭を撫でて、肩を軽くたたいて。
もう一度、自分の気持ちを確かめるように。
別れ際の台詞がより一層それに火をつける。
「ごめんね……ありがと、あさ美ちゃん」
- 212 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時36分26秒
部屋に帰っても、ずっとその横顔が脳裏に焼き付いて離れない。
愛ちゃんの部屋はどこだっけ。
無意識に電話に手が伸びる。が、すぐに力なく手を緩めた。
携帯がするりと床へ滑り落ちる。
「……まこっちゃんと相部屋だったっけ……」
今ごろきっと二人で今日のことについて話し合っているだろう。
邪魔するのは悪いなあ。
私と同室の里沙ちゃんは加護さんたちのところへ遊びに行ったっきり
帰ってこないままだからそのまま向こうで寝るのかもしれない。
「……好きなのかな……これは、やっぱり」
- 213 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時37分10秒
かなり前から、なんとなく気付いてはいた。でもその度にその存在を
否定して気付いてない振りを続けてきた。
しかし自分を欺き続けるのも、もう限界のようだ。
この得体の知れない感情に自分自身戸惑っている。
なんにしても、今はこの気持ちは自分の心の内だけに秘めておこう。
せめてミュージカルが終わるまで。
どちみち、一部と二部で分かれてるし終わるまでそんなに接触できないだろう。
その後ミュージカルが終わるまでは、まこっちゃんと二人でいることが多かった。
時々話に愛ちゃんのことが上がると、嬉しそうに話すのがちょっと悔しい。
まこっちゃんも私と同じなのだろうか。そんなの全然勝ち目がないじゃないか。
「まこっちゃんは、好きな人いる?」
「へ?なに?急にそんなこと聞いて。みんな好きだよ」
これは確信犯なのか、天然なのか。誰か教えてください。
その話題はそれ以降することはないまま、舞台ははねた。
- 214 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時37分59秒
- 久々のオフ。予定もなく部屋でボーっとしていようと思ったのに、
こういう日に限っていつもより早く目が覚めるのは何故だろう。
カーテンの隙間から差し込む朝の薄い光が気持ちよかった。
「天気いーなー……」
……愛ちゃんの家はどこだったっけ。もちろん福井じゃないほうの。
服を着替えて、以前教えてもらった住所を手帳から引っ張り出す。
携帯は電源を落としておこう。誰にも邪魔されないように。
連絡もなしに尋ねるのは気が引ける。近所まで散歩に行くだけ。
その道の先で出会う偶然に期待して。
ずっといるのは反則な気がするから留まる時間を決めよう。
10分。それくらいの短さがいい。もしあえなくても時間のせいに出来て
あきらめもつきやすいから。
- 215 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時38分44秒
- 一人で行ったことないから迷うかもしれない。
でも、会いに行けたら伝えよう。その一言を。
靴を踏み鳴らして外へ出る。
う〜んと思い切り伸びをして天を見上げる。
伝える言葉は決めてない。
その時が来たらこの青い空から舞い降りてきた言葉でいい。
そう遠くない町へ行く。それだけでこんなにドキドキワクワクする。
まるで小学生に戻ったみたいに。
鼻歌交じりに早足で歩く私を周りの人はどんな反応で見ているのだろう。
考えると、余計に笑えてきた。
愛ちゃんの家のある町まで来た所で、住所を見るのはやめた。
ガードレールに座って空を仰ぐ。
朝よりもずっと強い光が振ってくるので目を細める。
時計に目をやり、時間を確認した。
あと10分ですぐに帰る。
- 216 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時39分19秒
- 私は何のためにここにきたのだろう。
愛ちゃんは誰かと遊ぶ約束でもしてここにはいないかもしれないのに。
だからこそいいんじゃないか。
ここで出会えたらそれこそ奇跡や運命ってのを信じてもいい。
10分の間に考えよう。
何もおきなかった時のこと、振られた時のこと……そうじゃない時のこと。
やっぱりやめた。考えても、意味がない気がするから。
その時に感じたことがすべてだってわかってるから。
気の向くままにボーっとしていよう。いつもみたく微笑みながら。
あと4分。3分。2分。1分。
「……タイムオーバーかぁ……残念」
- 217 名前:会いに行けたら届けましょう 投稿日:2002年11月26日(火)15時40分18秒
- 「あさ美ちゃん?」
独り言に被るように名前を呼ばれた気がした。
あの聞き覚えのある高い声で。
「なした?こんなとこで一人で座って。携帯かけても繋がらんし」
携帯?聞き返すと愛ちゃんも今日の予定がなくて私と遊ぼうと思って連絡を
とろうとしたとものすごい訛りながら説明してくれた。
「そうなんだ、ごめんね。ちょっと奇跡があるのか試してみたくて」
「?」
さて、そろそろ本題に入りましょう。
かっこつけなくていい。素直に、自分の気持ちを伝えましょう。
青い空にも映りそうな言葉で。
【終わり】
- 218 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月26日(火)17時39分37秒
- 高紺!とってもよかったです(w
描写がいいですね…
また機会があったら書いてください!
- 219 名前:白いドレスの女 投稿日:2002年11月26日(火)18時28分04秒
- 女は、切立った崖に立って冬の日本海を見つめていた。
死ぬ気だった。
あたりは、霧が立ち込めていた。
自分を捨てた男に恨みの言葉を吐きながら、靴を脱ぎ捨てた。
何んで、靴を脱ぐのだろう・・・、もう、死ぬのだからどうでもいい
ことなのだけど。
下までは、数十メートルはありそうな波が打ちつけている
岩場を見下ろした。飛び降りれば、岩にぶつかって、自分の
体は粉々に砕け散るだろう。
自分にふさわしい死に方だと思った。
その時、白いものが見えた。向こうから誰か歩いてくる。
近づいて来て、白いドレスでつばの広い白い帽子をかぶった
女の人とわかる。
霧の中に浮かび上がった白いドレスの女は、人間とは思えなかった。
死にゆく自分を迎えに来た、亡霊としか思えない。
- 220 名前:白いドレスの女 投稿日:2002年11月26日(火)18時51分32秒
- 側まで来た白いドレスの女を、死ぬつもりの女は睨みつけた。
もう死ぬのだから、何にも怖いものは無い。
二人は、向き合った。その女は背が高かった。
女は、彼女に向かって男の恨みつらみを吐き出した。
涙が溢れ出してくる。
白いドレスの女は、大きな瞳で女を見つめていた。
やがて、きびすを返すと、ゆっくりと立ち去って行った。
女は彼女を見送りながら、生きようと思った。
まだ、涙が出るのなら自分はやり直せるかもしれない・・・。
数ヵ月後、デパートのアート&カラーという、展覧会で、
白いドレスの女とよく似た女性の絵を見つけた・・・。
「モーニング・クローン」
終わり。
- 221 名前:我慢できない 投稿日:2002年11月26日(火)20時25分32秒
- 愛されてるんだなぁって思った
だってわたしのあんな我侭でも聞いてくれるんだもん
だから好きだなぁ――
…………
………
……
今、電話大丈夫かなぁ?
仕事は終わってるはずなんだよね――
我侭だと思うんだけど…ここのところ忙しくて会ってないんだもん…
ミキスケもダイブ売れてきたし会う機会が減った
――だから会いたいよぉ…
――よっし!やっぱ電話しよ!
我慢出来ないもん
- 222 名前:我慢できない 投稿日:2002年11月26日(火)20時26分29秒
トゥルル〜…
早く出ろ〜早く〜
プルル〜ガチャッ―
…繋がった!よしっ!
「みきすけぇ〜!明日家にこぉーいっ!」
「――はっ?!」
…あ、急過ぎたかな?だけどミキスケだぁ〜ミキスケの声だぁ♪
我侭だと思うけどもうこのさいいっちゃえ!
「『――はっ?!』っとは何よぉ〜!明日家に来てくれるんでしょうねぇ?」
「…何しに行くのさ?」
何しにって他にありますかぁ?
「むぅ〜〜!!何しにって、亜弥の家に遊びにでしょぉ〜!」
そうこれ!まぁ遊ぶってことより会いたいんだけどね
「――それはわかるけどさ、だって急だし…
それに明日あたし仕事だよ?亜弥っぺ知ってるでしょ?」
- 223 名前:我慢できない 投稿日:2002年11月26日(火)20時27分54秒
- …―そう問題はこれ。
明日ミキスケは仕事あるんだよね。
まぁ亜弥もあるけど明日は珍しく昼頃に終わる
仕事の後でいいから会いたいんだよ〜…
「仕事があることなんて知ってるよー♪だけどさぁ〜…
みきすけにさぁ…会いたいんだもん――…」
うん…会いたい――
ミキスケは亜弥に会いたくないの…?
「あたしも会いたいけどさ…明日の仕事って遠征で帰ってくるの遅いんだよ?」
会いたいって言ってくれた
嘘じゃないよね?
…だけどそっかぁ〜帰ってくるの遅いんだった――
だけど…だけどさ…
「――だってぇ…みきすけに会いたいんだもんっ…」
あ、、涙出てきちゃった…
そんだけ会いたいんだよね―――
こんなに好きなのにミキスケのバカっ
- 224 名前:我慢できない 投稿日:2002年11月26日(火)20時29分16秒
- 「……泣かないでよ亜弥っぺ――。
ちゃんと、明日遅くなるかもしれないけどさ、会いに行くからさ…」
バカって思ってたらミキスケからの返事はこう…―――
良いの――?
「…――っ、ほっんとぉ?」
「ほんと、ほんと――。美貴が嘘ついたことある?」
「……ないっ」
「ねっ――?なら明日遅いけど、待っててよ?」
「うん!」
やった!ミキスケに会える♪
そう思うと涙も自然に止まってしまってた
「――それじゃ、明日行くね?おやすみ。」
あぁ…そっか明日早いもんね―――
「…おやすみぃ!待ってるからね〜!」
「待ってなよ」
おやすみって言ったらミキスケは『待ってなよ』だって。
そんなの決まってるじゃん!
「―――もちっ!!じゃねぇ!」
…………
………
……
あぁ〜…早く明日にならないかなぁ―――
ミキスケのバ〜ッカ…
こんなに惚れさせたのが悪いんだぞぉ〜
――…おわれ
- 225 名前:名無し蒼 投稿日:2002年11月26日(火)20時30分09秒
- 視点違いでした。
- 226 名前:こーゆーのも有りと言う事で・・・ 投稿日:2002年11月26日(火)21時59分07秒
- 「やっほー、裕ちゃん」
「紗耶香やないか?イキナリ楽屋に入って来るから誰かと思ったわ」
「イキナリって事はないでしょ。ちゃんとノックしたのに」
ここはハローモーニング出演者の楽屋。
紗耶香はBSジャパンの歌番組に出演予定のハズだったが、
ある大物歌手の到着が遅れている為に始まっていなかった。
しかも、四時間も遅れるの事・・・
たいせーからは
「時間が有り余ってるから、自由にしててええよ」
と言われたので、紗耶香は『ハローモーニング』の出演者の裕子の楽屋に遊びに来たのだ。
「四時間か〜。随分時間空くなぁ・・・」
「まーね、こんなのいつもの事だし、慣れたよ」
「じゃあ、自分無茶苦茶ヒマやろ?」
「うん、とっても」
紗耶香はのん気に言うと裕子はニヤリと笑った。
裕子のこの笑い・・・紗耶香は知っていた。
「裕ちゃん、何か企んでるでしょ?」
「え!?何でわかったん?」
「わからいでか」
紗耶香は苦笑した。
- 227 名前:こーゆーのも有りと言う事で・・・ 投稿日:2002年11月26日(火)22時10分06秒
- 裕子の楽屋に紗耶香、なつみ、圭織、圭、ひとみ、愛、麻琴が揃っていた。
裕子がこっそりと出演者の娘。メンバーを呼んだのだ。
「というわけで、これをやろうと思うけどええ?」
裕子の言葉になつみ、圭織、圭、ひとみ、愛、麻琴は驚いてる。
「面白そうだけど、スタッフの人達に許可取らないでいいの?」
「なっち、そこは大丈夫や。ちゃーんと許可取ってあるでぇ。しかも、プロデューサーにも許可取ってある」
「ウチはこーゆーの大好きです!当然やりますよ!!」
「さすがよっさん、話が分かるなぁ♪」
「紗耶香・・紗耶香はどうなの?」
圭が呆れながら紗耶香に話し掛けた。
「圭ちゃん、言わなくても分かるでしょ♪」
「やっぱり・・・」
紗耶香はこの様な企みは大好きだった。
特に後藤に関係する事は・・・
「そんじゃ話すで」
裕子は皆に話し始めた。
- 228 名前:こーゆーのも有りと言う事で・・・ 投稿日:2002年11月26日(火)22時38分16秒
- 『昼下がりのモーママたち』の撮影中、麻琴の『黒板五郎』のものまねがとても上手く、
裕子が笑いのツボにハマってしまったが、どうにか撮影が進んだ。
ガチャ・・・
「持子姉さん、ココにいたんですか?」
(え!?いちーちゃん?)
ピンクのスーツを着た真希は目が点になってしまった。
それもそのはず、ココにいないハズの紗耶香がストレートのジーンズに半袖のトレーナーと
長袖のTシャツのレイヤードを着て店の中に入ってきた。
見た感じはどう見てもイケてる男子大学生。
「遅いですわ、サクヤ」
「何言ってんですか、探しましたよ」
サクヤは裕子の隣に座った。
「あ・あの奥様?」
真希は頭の中がパニックを起こしながらも芝居を続けようとした。
「あら、ゴメンなさい。紹介するわ。従姉弟の『市井サクヤ』。
学校の休日を利用して遊びに来てくれたの。
サクヤ、こちらはお友達の『綾小路真希』さん」
「『市井サクヤ』と申します」
「あの・・綾・・小路・・真希で・・」
「奥さん、結婚してるんですよね・・・残念だな、市井のタイプなのに」
「へ!?」
サクヤの口説きに更に真っ赤な顔になった真希。
- 229 名前:こーゆーのも有りと言う事で・・・ 投稿日:2002年11月26日(火)22時44分24秒
- 「旦那さんに内緒で遊びに行きません?
ワインの美味しい店知ってるんですよ」
サクヤは真希の手を握って口説き始めた。
「サクヤ、人妻を口説くのは頂けませんわよ」
持子は嗜めた。直ぐに手を離して笑ってごまかすサクヤ。
サクヤに手を握られた真希は胸を手に当てて嬉しそうにしていた。
「ハイ、OKです!お疲れ様でした!!」
スタッフの声に真希は顔を上げた。
真希は紗耶香の顔を見るととうの本人は笑って真希を見ていた。
- 230 名前:こーゆーのも有りと言う事で・・・ 投稿日:2002年11月26日(火)22時51分43秒
- 「お疲れさん!」
「いちーちゃん!ちょっとこっち来て!!」
真希は紗耶香の手を掴んで楽屋に戻った。
「いちーちゃん、なんでココにいるの!?」
「歌番組の収録が四時間遅れでさ、ヒマだったから裕ちゃんのトコへあぞびに行ったら、
裕ちゃんが『ごっつぁんをちょっと驚かさん?』って言われて、
面白そうだったから皆を裕ちゃんの楽屋に来てもらって後藤を驚かす相談をしてた。
言っとくけど、裕ちゃんが発案者だから」
「ごとーだけのけ者?」
「うん、後藤の驚いてる顔面白かったよ」
紗耶香はニッコリ笑った。
- 231 名前:こーゆーのも有りと言う事で・・・ 投稿日:2002年11月26日(火)22時58分13秒
- 「うー・・いちーちゃんのバカ・・」
「ゴメンネ。でも、芝居じゃなかったら、いちー口説いてたよ」
紗耶香は後藤を抱き寄せた。
楽屋に妙な雰囲気が流れている・・・
「なんか、後藤と不倫してるみたい」
「いちーちゃん間男だー」
「【間男】って・・んじゃ奥さんと過ちを犯す前に退散しますか」
「えー!」
「こっちの収録が再開するから戻らないとダメなんだ」
「分かった・・」
紗耶香は真希の顎を持ち上げてキスをした。
・・・・・
「いちーちゃん」
「じゃな、後藤♪」
「いちーちゃん!今度いちーちゃんの家に行っていい?」
「当然!」
紗耶香は笑顔で言うと楽屋を飛び出した。
- 232 名前:和尚 投稿日:2002年11月26日(火)22時58分49秒
- おわり
- 233 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月27日(水)20時20分52秒
- 結局オレはチャーミーをネコとして扱うことにした。
外見はともかく、行動はネコそのものでしかないのだから。
最初は、おびえていたチャーミーはオレの辛抱強く、愛情を持った
接し方に徐々に慣れてきて、オレに近づいて来るようになった。
元々、ネコは好きだったし、外見はチャーミーなのだから、これ
以上言うことはない。
三日目には、寝る時はオレの布団の上で丸くなって眠るようになった。
外見は人間の体なのだから、重くってしかたがないが、我慢する。
UFAから電話が入る。
「もう、三日目になります。クローンを返して貰います。」
オレはもうすっかり、チャーミーに情が移り返す気になれない。
そこで、一芝居うつことにした。
- 234 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月27日(水)20時41分20秒
- 「てめえ!どうしてくれるんだ!ノラネコなんか、インプット
するから、ネコみたいに外へ飛び出したきり、帰ってこないぞ!」
「それは、困りましたね・・・何とかうちで捜しますが、もし
帰ってきたら、連絡してください。」
うまくいった。これで、ネコのチャーミーはオレのものだ。
元々ノラネコなので、トイレをしつけるのに苦労したが、
なんとか、専用トイレでさせることが出来るようになった。
外見が人間の姿のチャーミーが、むずかしい顔でオシッコをした
後、ネコのように足で砂をかぶせる光景は、不思議な姿だった。
食べ物は、体は人間なのでキャットフードというわけには、いかない
が、前に皿を置くと、手を使わずに口と舌で器用に食べる。
もう、すっかりオレに慣れたチャーミーは、オレに体をこすりつけて
来る。そして、喉を撫でてやると、驚いたことにゴロゴロと喉を
鳴らすではないか。
オレは嬉しくなって、チャーミーを抱きしめた。
- 235 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月27日(水)20時59分44秒
- しばらくたったある日、チャーミーの様子が、おかしくなった。
急にそわそわと落ち着かなくなり、さかんに外をうかがう様子。
すると、外からネコの鳴き声が聴こえてきた時、がばっと起き上がり
外へ出て行こうとする。
オレが苦労して、抑えていると、今度はオレに向かって頭をこすり
つけてくる。そして、なんとも甘ったるい声で鳴くではないか。
眼はとろんとして、しまいにはオレに尻を向けてこすりつけて来る。
オレはあわてて、ネコの飼い方という本を引っ張り出して読むと、
何んと、チャーミーはどうやら発情したらしい・・・。
おれは、しなだれかかってくるチャーミーを前にして困って
しまった・・・。
もし、オレがチャーミーと、いたしたら、オレは、
女の子とするのか、それともネコとすることに
なるのだろうか・・・。
終わり。
- 236 名前:白いドレスの女 投稿日:2002年11月30日(土)00時48分13秒
- あたりは騒然としていた。
Mデパートの一階での出来事だった。40代らしい男が、
10歳ぐらいの女の子の首に腕をまいて、押さえていた。
手にはナイフが握られていた。
連絡を受けて警察が来たが、男のナイフは女の子に喉もとに
当てられていて、危なくて手が出せない。
男は、わけのわからないことを大声でわめきちらしている。
その時だった、白いドレス、白い帽子の女が現れて男に近づいて
行く。その女は何のちゅうちょもなく、男に向かってゆく。
近づく女に、男は興奮してナイフを振りまわす。
女は、大きな瞳で男をじっと見つめている。
やがて、きびすを返すと女は立ち去って行った。
それを茫然と見送っていた男はナイフを放り出し、その場に
膝をついた。 警官が飛びついて行く。
デパートの入口には、「アート&カラー展」のポスターがあった。
終わり。
- 237 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月30日(土)14時34分02秒
- 別れは突然にやって来た。
予感はあった・・・。女の子の姿をした、ネコと一緒に住んでいて
人目につかないはずはなかった。
アパートだし、鳴き声も聞かれている。
自分や、チャーミーを食べさせるため仕事に行かなくてはならない。
自分の留守の間は、チャーミーは寂しがっていっそう、鳴き声を
上げていた。隣から何度も苦情を聞かされている。
UFAから、電話が来た。
「・・・さん、あなたは例のクローンと住んでらっしゃる
ようですな。困りますね・・・帰ってきたら、必ず連絡を
してくれるように、言っておいたはずです。」
「・・・すみません」
「すぐにでも、クローンを引き取りにお伺いします。」
- 238 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月30日(土)14時55分20秒
- オレは、チャーミーを連れて逃げる事も考えた。
しかし、それがチャーミーにとって幸せだろうか・・・。
オレみたいなヤツといつまでもいては、いけないのだ・・・。
オレは、新品の洋服を買った。女の子らしい、ピンクの服と
スカートだ。恥ずかしかったが、女の子用の下着も買った。
それらを全部チャーミーに着せた。着せながら思わず涙が
こぼれ落ちた。
チャーミーは、何の憂いもない、つぶらな瞳でオレを見つめ、
優しく鳴きながらその涙を舐めてくれる。
オレは、チャーミーを強く抱きしめた。
結局、オレはチャーミーが発情した時、彼女を抱くことが
出来なかった。
そんなことは、とても出来るはずが無い・・・。
- 239 名前:ワイルド・チャーミー 投稿日:2002年11月30日(土)15時18分04秒
- チャーミーを引き取りに来た連中は、屈強な数人の男達だった。
トラブルにそなえてのものだろう。
チャーミーは、大暴れして抵抗した。
そのオレを呼ぶ悲痛な鳴き声に、思わず間に入って懇願した・・・。
オレが責任をもって連れて行くからという、願いを何とか
聞き入れてもらう。
チャーミーは、オレに痛いほど強くしがみついてくる。
その瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
ネコが泣くかどうか、わからない・・・。
その瞬間、チャーミーはひとりの女の子に戻っていたのかも
しれない・・・。
オレは、チャーミーを抱きしめたまま、車に乗り、
薬で眠らされた、チャーミーが連れていかれるのを
見送った・・・。
終わり。
- 240 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時48分21秒
電話と言うのは、便利なモンだ。
「ごめん梨華ちゃん!今日、行けなくなっちゃった。」
こんな言いにくい言葉も、顔が見えないからなんとか言える。
『…そ、そうなんだ…。』
電話の向こうでは、彼女の無理しまくってる声。絶対目に涙とか浮かべてるんだろうなぁ。
電話で良かった。
『ど、どうしても駄目?今から会えない?』
必死っぽい彼女の声。
「う〜ん…ちょっと無理だな。ごめんね。」
面と向かってたら言えない事も、顔が見えないから言えちゃう。
本当に、電話で良かった。
『・・・・・・。』
「もしもし?」
『…わかった…。』
鼻をすする音。泣き出しちゃったみたいだ。
そりゃそーだよなぁ。
「それじゃ、あたし用事あるから!もう切るね。」
『おやすみ…。』
彼女の鼻声を聞きながら、あたしは電話を切った。
本当に、電話で良かった。
と、そこに。
「おーい!よしこー!」
「ごっちん!!」
待ち人来る、だ。
- 241 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時49分30秒
- 「もー、待ってたよー。」
「ごめんごめん!ちょっと立て込んでてさ。」
ごっちんはそう言ってから、顔を曇らせた。
「…でもさぁ…本当に良かったの?今日、梨華ちゃんと会うんじゃ…?」
「断った!!だってあたし、こっちのが大事だもん!」
あたしはひらひらと、一枚の紙を振る。
それは、ライブのチケット。
苦労して手に入れた、大好きなバンドのライブチケットだ。
そのバンドの名前は『CUBIC−CROSS』。
いちーさん(ボーカル)、けーちゃん(ベース)、ナチ君(ギター)、ノゾミ君(ドラ
ム)の男四人で構成されてるインディーズバンドだ。
インディーズながらかなり人気があるバンドで、小さなライブハウスでしかやらないか
ら、チケットを手に入れるのはけっこー大変。
四人ともすごーくカッコ良くて…とくにあたしは、いちーさんの少年っぽい声が大好き
なんだ。
- 242 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時50分31秒
- そして今日は、そのバンドに新メンバーが入ると言う大事なライブ。
もー手に入らないかと思って諦めて、梨華ちゃんと約束入れてたんだけど…今日の午後
になっていきなり、ごっちんから『手に入った!』と言われ、急遽梨華ちゃんとの約束を
破らせてもらった。
それを聞いて、ごっちんはため息をついた。
「…可哀想に、梨華ちゃん。あんなに一途であんなに純情であんなに可愛いのに、こんな
変な女につかまっちゃって。」
「変な女ってなんだよぉ〜。」
「変って言うか…性質悪いよね。今度ごとーから梨華ちゃんに謝っておかなきゃ。」
「大丈夫だって。梨華ちゃんはウチにぞっこん☆なんだから!!」
あたしは胸を張って、ごっちんに言う。するとごっちんは、今度はため息と共に頭を押さ
えた。
- 243 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時51分01秒
- 「…知らなかったとは言え、梨華ちゃんとの約束破らせたごとーが言うのも何だけどさー…
よしこ。あんたいつか痛い目見るよ。」
あたしは、笑い飛ばした。
「痛い目?梨華ちゃんができるワケないじゃん!また今度会った時に優し〜くしたげれば、
また『ひとみちゃ〜んっ!』て追っかけまわして来るって。
それよか、早く行こう!!」
「ちょ、ちょっと!!待ってよよしこ!!」
あたしは、ライブハウスに向かって走り出した。
- 244 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時51分33秒
ライブ、最高だった…!!!
「超良かったねー!!」
「うん!!最高だった!!」
ごっちんとファミレスに入って、熱く語る。
「やっぱいちーちゃん、最高だよ!!」
ごっちんは、『CUBIC−CROSS』のボーカル・いちーさんの大ファンだ。あたしも、今日の
ライブまではいちーさんが一番好きだった。
「…ウチ、いちーさんのファンやめる!」
「は!?」
いきなりのウチの発言に、ごっちんは目を丸くする。
そりゃそーだよなぁ。今日の昼までは『いちーさん命!』とか一緒に言ってたんだもん。
だけど…あたしは、もういちーさんには目がいかなくなってしまった。
「あたし、ハナちゃんのファンになる!!」
ごっちんの口が、あんぐりと開く。
ハナちゃんと言うのは、今日『CUBIC−CROSS』に加入した新メンバー。キーボート担当
だ。
- 245 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時52分04秒
- 舞台の上でいちーさんに紹介された彼は、舞台は始めてらしくて…すっごい緊張してた。
だけどもー、曲が始まったら豹変!!キーボードを引くハナちゃんは、マジでカッコ良かっ
た!!
「…そんなギャップに惚れたのよー!!」
机をがしがし叩きながら言うあたしに、ごっちんは冷たぁい目線を送って来る。
「ハナちゃんがカッコいいのはわかったからさ。梨華ちゃんに電話した方が良いんじゃん?
今頃泣いてるかもよ?」
ごっちんに言われて、しぶしぶかける。
あ〜あ。もっとライブの余韻に浸ってたいのに。彼女持つのって面倒くさいなぁ。
そんな事を考えながら呼び出し音を鳴らし続けたけど…梨華ちゃんは出なかった。
「あれ?おかしーなぁ。」
「…愛想つかされたかー?」
「そんな事ないもん!梨華ちゃんはあたしに夢中なんだから!!」
- 246 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時52分35秒
その自信も、電話に出ない日が四日も続くと揺らいで来る。
「・・・・・・。」
今日も、梨華ちゃんは電話に出ない。
おかしい。
前までだったら、あたしがかけるとワンコールで出て『ひとみちゃんっ!?』とか嬉し
そーに言って来たのに…。
留守番電話に切り替わる直前で、電話を切る。
そして、じっと携帯を見つめる。
…どうしたんだろう、梨華ちゃん…。もしかして、病気とか事故とか!?
「・・・・・・っ!!!」
あたしは、いても立ってもいられなくなって走り出した。
向かうは、梨華ちゃんのマンションだ。
…そりゃ確かに、告白して来たのは梨華ちゃんの方だ。それも、電話で。
震える声で『付き合ってください!大好きなんです!』って言われて…丁度、『CUBIC−
CROSS』好きが原因で彼氏と別れたばっかだったし、あたしは女の子でもオッケーなヒト
だから、即座にオッケーした。
電話をかけて来るのはいつも梨華ちゃん。デートの誘いをかけて来るのもいつも梨華ちゃ
ん。あたしがする事と言ったら…デートのキャンセルの電話をかけるくらい。
それでも、嫌いなワケじゃない。
てゆーか、嫌いだったらそもそも付き合ってないし…。
- 247 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時53分40秒
- 告白の電話をもらう前から、『可愛い子だな』って思ってた。
学校違うからよく知らない子だったけど、電車ん中では毎朝会ってたし。
そんな事を考えながら無我夢中で走っていると、梨華ちゃんのマンションに着いた。
梨華ちゃんはウチと同い年なんだけど、家庭の事情とかで一人暮らししてるらしい。
ここに来るのは、実は初めてだったりする。会うのはいつも外だし…あたしも来たいと
か言わなかったし、梨華ちゃんも来てほしそうじゃなかったし。
「…よし。」
アドレス帳の住所と、マンションの表札を見て確認。更に、集合郵便受けの1444号室
の所にある『石川梨華』の文字を確認。
「…つーか…デケェ〜…。」
マンションを見上げて、あたしはため息をつく。
つーかコレ、マンションって呼んで良いの?ちょっと古いけど『億ション』じゃないか?
こんなトコに一人暮らしって…梨華ちゃんちって、実は金持ち?
大理石の床の上で、インターホンを鳴らそうかどうしようか迷っていると…
「…いちーさん、ありがとうございました。」
この声は、梨華ちゃん!!!
振り返ると、梨華ちゃんの後姿。そして、その先には…
- 248 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時54分10秒
「いいって。これから長い付き合いになるんだからさ。」
「い、いちーさん!!!!」
あたしが叫ぶと、梨華ちゃんはがばっと振り向いた。
「ひ…ひとみちゃん!!?」
「な…!!!」
なんで、梨華ちゃんといちーさんが!?
衝撃で、あたしは口をぱくぱくさせる。
そんなあたしに、いちーさんは…ものすごくカッコイイ微笑を投げかけた。
「…君が、梨華の恋人?」
「・・・・・・。」
衝撃のあまり、声が出ない。するといちーさんは、梨華ちゃんを後ろから抱きすくめる。
「電話でしかつながってないんだってね、君と梨華。しかも、梨華がかけなきゃ絶対に
つながらない。」
「い、いちーさん…。」
「そんなんじゃ、梨華が可哀想だよ。」
いちーさんは、梨華ちゃんの頬にちゅ、とキスをする。
「あぁあっ!!!」
「いらないんなら、俺がもらうから。」
「「なっ!?」」
あたしの驚きの声が、梨華ちゃんの声とハモる。
「それじゃあね、梨華。また明日。明日は十時にいつものトコ集合だから。」
いちーさんはそう言って、去って行った。
残されたあたしと梨華ちゃんは…しばらく見詰め合った後、お互い気まずそうに目を
そらした。
- 249 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時54分41秒
梨華ちゃんに『あがっていかない?』と言われたので、あがる事にした。
「…どうぞ。」
一人暮らしをするには広すぎる部屋に通されて、紅茶を出される。
あたしの目線の先には、ピアノがあった。しかも、グランドピアノだ。
「…ピアノ、弾くの?」
梨華ちゃんはこくりと頷く。
「小さい頃から、やってるの。…ううん、やらされてるの。」
梨華ちゃんはあたしと向かい合う形で座りながら言った。
「…父は若い時、ピアニストを目指していたんだって。だけど、家が許してくれなくて
諦めて…それで、わたしに夢を託したのよ。
わたしは、ピアニストになんかなりたくないのに。」
「…へぇ。」
初めて聞く話だ。
…いや、そうじゃない。梨華ちゃんの話をマトモに聞くのが始めてなんだ。
今まで、電話くらいでしか話さなかったから。
会ってても上の空で、梨華ちゃんの話なんて聞いた事なかった。
「…ひとみちゃん、『CUBIC−CROSS』好きなんだよね。」
「へっ!?う、うん…好きだけど。」
「で、ひとみちゃんはいちーさんのファンなんだよね。」
「な、なんで知ってるの!?」
すると梨華ちゃんは、悲しそうな微笑を浮かべる。
- 250 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時55分11秒
- 「…知ってるよ。だってひとみちゃん、いつも話してるじゃない。『いちーさんがね、
いちーさんがね』って。」
そ、そんな事話してたんだ、梨華ちゃんに…。無意識だったよ。
あたし、本当に梨華ちゃんと喋ってる時は上の空だったんだなぁ…。
「…だからわたし、勉強したもの。『CUBIC−CROSS』の事。いちーさんの事。
わたし今までクラシック以外あんまり聴いた事なかったけど、曲も聴いた。…クラシッ
ク以外の曲のCD、初めて買ったの。」
梨華ちゃんの視線の先にあるCDラックを見ると…『バッハ』とか『シューベルト』とか
のCDと並んで、『CUBIC−CROSS』のCDがあった。
「…ひとみちゃんとちゃんとお話したくて…一生懸命、『CUBIC−CROSS』の話題を振っ
てたのよ?気付かなかっただろうけど。」
「・・・・・・。」
「…ひとみちゃんは、いつもそう。」
梨華ちゃんの高い声が、少し揺れている。
「デートのキャンセルの電話でしか、わたしとちゃんと話してくれない。」
梨華ちゃんは、立ち上がった。
「…ねえ、気付いた?」
「え?」
「四日前、ひとみちゃん…わたしと会う約束を断って『CUBIC−CROSS』のライブ行った
でしょ。」
「うん。」
- 251 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時55分41秒
- 「気付いた?」
「…だから、何が?」
首を傾げるあたしに、梨華ちゃんは涙を流す。
そして、クローゼットを開けた。そこにあったのは…
四日前、ハナちゃんがライブで着てた衣装。
「…んな…ッ!!こ、コレ…!!!」
驚きを隠せないあたしを見て、梨華ちゃんは涙を流し始めた。
「…『ハナ』はわたし。ナチさんがつけてくれたの。『梨華って「梨の華」って書くか
ら、「ハナ」にしよう』って。」
涙を拭おうともせずに梨華ちゃんは続ける。
「ライブの前に会って…それで本当にわたしの事好きでいてくれてるってわかったら、
新メンバーになるのやめるって…いちーさんと約束してたの。
でも、ひとみちゃんは…来てもくれなかった。」
梨華ちゃんはあたしに背を向けて、衣装の袖をいじる。
「…だけど、わたし…それでも諦め切れなかった。ひとみちゃんの事。
電話でしかつながってない恋人だけど、それでも恋人だって…信じてた。
だから、ステージに立って…男装したわたしを見つけてくれるって。後で留守電にで
も『何やってんだよー』って入れてくれるって…そう信じてた。
なのに…ひとみちゃんは…気付いてくれなかった。」
- 252 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時56分11秒
- 「・・・・・・。」
「こんなの…恋人って言えないよ…!!」
梨華ちゃんの高い声が、ブレる。
「片想いの時の方が、良かった…!!」
「梨華ちゃん…!!!」
あたしは梨華ちゃんを抱きしめた。だけど、梨華ちゃんはあたしを拒む。
「やめてよ!!何を今更…!!!」
「あたし、確かにハナちゃんが梨華ちゃんだってわからなかった!でも…!!」
もう一度、梨華ちゃんを抱きしめる。
「あたし、ハナちゃんに惚れたんだよ!?」
「・・・・・・。」
「好きだよ、梨華ちゃん。何とも思ってないワケないじゃん。つーか、好きじゃなかっ
たら付き合ってないよ!」
「・・・・・・。」
拒まなくはなったけど、やっぱり抱き返してはくれない。
「…あたしは、甘えてたんだ。梨華ちゃんに。
梨華ちゃんが電話くれるから…梨華ちゃんが想っててくれるからって…甘えてたんだ。
だけどね、梨華ちゃん。あたし、梨華ちゃんをなくしたくないよ。」
- 253 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時56分53秒
- 「…嘘。」
「嘘じゃないって!」
梨華ちゃんの、涙に濡れた瞳を覗き込む。
「ホント、今までごめん。…甘えすぎてた。」
「・・・・・・。」
「好きだよ、梨華ちゃん。」
梨華ちゃんは上目遣いで、あたしを見る。
…なんつーか…その表情、マジエロいんですけど…。
「…本当に?」
「本当!」
「どのくらい?」
「ど、どのくらいって…そりゃー…」
あたしはちょっと考えてから、叫ぶ。
「『CUBIC−CROSS』と同じくらい!!」
すると梨華ちゃんの眉間にシワが寄った。
「…何ソレ。」
「な、なんだよ。あたしの中では最上級だよ!?」
「・・・・・・。」
疑わしげな視線を送って来る梨華ちゃんの額に、ちゅっと口付けた。
そして、言う。
「…で、ハナちゃんはもう『CUBIC−CROSS』の正式メンバーなんだよね?」
「うん。まぁ、一応。」
「ヨッシャ!!じゃああたし、ハナちゃんの彼女なんじゃん!!」
「・・・・・・。」
またしても梨華ちゃんは、疑わしげな視線を送って来る。
- 254 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時57分27秒
- 今思ったんだけど…梨華ちゃんってこんなに表情豊かな子だったっけ?
思い返してみると、梨華ちゃんとの思い出って…電話で喋ってるトコしか思いつかない。
知らなかった。こんなに表情豊かで、こんなに可愛い子だったなんて。
そりゃ、顔立ち整ってるな〜とは思ってたけど。
「…ひとみちゃんは、『ハナ』と『梨華』どっちが好きなの?」
今にも泣きそうな、声と顔。
そうか、電話でこの声を聞いてた時…電話の向こうではこんな可愛い表情してたんだな。
そう思いながら、あたしは梨華ちゃんの唇を奪う。
「…両方、かな。」
そう答えて…梨華ちゃんにクッションで殴られながら…あたしはそんな梨華ちゃんを、心
底愛しいと思ったのでした。
おしまい。
- 255 名前:恋人 投稿日:2002年12月05日(木)22時57分57秒
おまけ。
「…てゆーかさ、男の中で一人女って…梨華ちゃんみたく女子校育ちのお嬢様にはキツく
ないの?」
「ああ、ひとみちゃん知らないんだっけ。
『CUBIC−CROSS』のメンバーは全員、男装した女の子よ。」
「う…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「みんな、カッコ良いからわからないのよねー。」
「…い、いちーさんも?」
「もちろん。いちーさんの本職は、OLなのよー。」
「・・・・・・。」
「きゃ、きゃぁっ!!どうしたのひとみちゃん!!急に倒れたりして…」
「…た、立ち直れな〜い…。衝撃〜…。」
「しっかりして、ひとみちゃん!」
「…ひざまくらしてくれたら、立ち直るかも…。」
「・・・・・・。」
「駄目?」
「・・・・・・。…どうぞ。」
おわれ。
- 256 名前:和尚 投稿日:2002年12月06日(金)02時29分16秒
- 面白かったです!夜中なのに爆笑してしまいました。
- 257 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月06日(金)08時48分39秒
- このタッチは? 作者さんはあの人かな?(w
- 258 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月06日(金)13時17分46秒
- >和尚様
ありがとうございます。名乗らなかったけど、実は書いたの私です。
楽しんで頂けましたか。よかった☆
>ひとみんこ様
…うふふ。
- 259 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月06日(金)20時10分50秒
- おぉ〜!!!
このタッチは・・・クロイツ様〜!!!!
さすがですっっっっ!!!!
面白くて、すこし悲しくて泣けちゃいました^^;
- 260 名前:和尚 投稿日:2002年12月06日(金)22時38分10秒
- >クロイツ様
はい、とっても♪
続きを書いて欲しいぐらいです。
- 261 名前:はにーめいぷる 投稿日:2002年12月08日(日)01時58分14秒
- むさぼる。
「ほんとおいしそうに食べるねー。かおはビスケット食べよっと」
みつめる。
「ん?一口食べる?」
くわえる。
「何、シロップの方が食べたかったんだ?
かおもうかけたから舐めちゃっていいよ」
すいとる。
「でもリーダーとしてはここはストップかけ」
くちづける。
「甘っ。ってかひーちゃん、
握りしめてるからシロップこぼれてるよ!」
めくる。
「ちょ、ひーちゃん何するの」
まさぐる。
「あ…っ、だめぇ」
はぎとる。
「ほら…やめよ?」
したたらす。
「こらっ!ほんと…怒るよ?」
こうしん。
「しょうがないなぁ…おいで、かもも」
- 262 名前:はにーめいぷる 投稿日:2002年12月08日(日)01時59分16秒
- 終わりです。
今更ながらの吉飯犬ネタでした。
- 263 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時28分35秒
「私、ひとみちゃんのことが好きなの。」
黄色や橙色した落ち葉たちが埋め尽くす道の中で、
梨華ちゃんは言った。
「好き…。」
何度か、呟きを繰り返す。
風が強くて、空が高くて、夕陽が傾き始めていて――
「好きな人、いるの?」
答えを返さない私にみかねて梨華ちゃんは、
告白から問い掛けへと言葉をスライドさせた。
「私じゃ、だめ?」
梨華ちゃんの薄手のコートの裾を落ち葉たちが掠めていく。
何故だか、寂しくなった。
こうやって今までも何度か女の子に告白されたことはあったけど、
そのたびに思い知る。
あなたがいる場所は誰にも明け渡せやしないって。
あなたのための場所は誰にも埋めれはしないって。
この心の中のあるこの場所だけはあなたの登場を待っている。
まるで、ジグソーパズルみたいに、決まっている。
あなたのいる場所はあなたでなければ意味がない。
他の誰でも包み隠せやしないんだって。
- 264 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時29分28秒
- 「だめ、だね。」
「好きなんだ、あの人のことが。」
ふたつ、言葉を返した。
その言葉に俯く梨華ちゃん。
何か、期待でもしていたのだろうか。
私もっていう展開を待っていたのだろうか。
ありえない。
たとえ、どんなに愛をくれたとしても、
抱え切れないほど、愛してくれたとしても、
私の心は微動だにしない自信がある。
「そっか…。」
梨華ちゃんは踵を返して、歩き出す。
強く握りしめた両手をポケットに押し込んで。
町の景色と同化しそうな色のコートを翻しながら。
何故だか、無性に会いたくなった。
いつもやさしい笑顔をくれるあなたに。
- 265 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時30分24秒
- 駆け出していた。
梨華ちゃんを追い越して、カップルで賑う並木通りを抜けて、
寂し気な歌が溢れていく駅までの商店街を、
とにかく、とにかく大急ぎで駆け抜けた。
銀色の電車が繋ぐ、あなたのいる所まで。
制服の高校生が、スーツにネクタイのサラリーマンが、
少しだけおめかししている年配の女の人が揺られる電車に乗って。
予知能力なんて持ってない。
心理学なんて習ってない。
だから、あなたがそこにいる確信なんてない。
だけど、そんな気がしていた。
あなたは今日、部屋の窓を開けて、
沈んでいく夕陽を見つめながら、寂しさを実感している。
そんな風景が目に浮かんでいた。
それは、あなたに恋をしてからの私と同じ。
いつも、そこはかとない虚しさに襲われて、
この世界でひとりぼっちのような気がして、
ひとり、何処か遠い所からこの世界を見ているような錯覚に侵されていた。
その、私の心を表す比喩と、これっぽっちもずれのないあなたの姿が目には浮かんでいた。
- 266 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時31分08秒
- 何度も通ったわけじゃないけど、鮮明に覚えているあなたの家までの道を駆ける。
あなたの家が近くなればなるほど、心の重心が下がっていく感じがした。
あなたの家が近くなればなるほど、あの風景が鮮やかさを増していくから。
見上げればきりがないマンションに、辿り着いた。
水色の壁が私の心の中の全ての悲しみに、輪を掛けていく気がした。
それに飲み込まれないうちに、あなたの部屋の番号を押して、呼鈴を押す。
『はい?』
「あ、あの。吉澤です。」
『…開いとるから。』
私の予想は的中した。
やはりここにあなたはいた。
自動ドアを潜り、左手にあるエレベーターに乗った。
控えめな機械音がひとりぼっちの密室に響く。
- 267 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時31分54秒
- 間もなくして停まったエレベーターから下りて、大理石のような柄の廊下を歩く。
それと私の靴とが擦れる3次元な摩擦音を聴きながら。
まるで、重い鉄の扉のようなドアの前で立ち止まる。
少し、息を整えて、目の前の呼鈴に手を伸ばした。
ドアの中でしていた音が止まって、数秒後にドアが開かれた。
「ほんまに吉澤やん…。」
私と目が合うなり、あなたはそう言う。
「こんにちは。」
「どしたん?急に…。あ。まぁ、入り。」
大きく開かれたドアの中へ足を踏み入れた。
横切ったあなたの髪から、微かに甘い匂いが漂ってきた。
「…今、起きました?」
「あ、うん。起きてシャワー浴びたとこやけど。」
よく見れば、その髪もまだ、完全には乾いていなかった。
「いい匂いがしたんで。」
「…。それ、あんま多用したらあかんよ。」
「それ?多用?」
靴を脱いで上がろうとしていたら、難解な言葉を掛けられた。
- 268 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時32分43秒
- 「ちょっと、ドキっとするから。」
その言葉で『それ』が『多用』が指しているものが理解できた。
「ケースバイケースですね?」
「その解釈も何か違う気がするけど…。」
「大丈夫ですよ。他では遣う必要がないですし。」
と、ひとつ、投げ掛けてみた。
「どういう意味やろうか。」
余裕、ともとれる笑みを浮かべて訊き返された。
「さぁ…。」
かわして、顔を見てみたら、もう興味がなくなったのか、
視線が絡むことはなかった。
何か、少し悔しくて。
- 269 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時33分26秒
- 「…会いたかったんです。中澤さんに。」
後ろ姿のあなたを抱きしめた。
「そういう、意味です。」
透き通るようなあなたの髪が、頬を掠める。
どうするわけでもなく、下ろされたままのあなたの両腕。
「好きって言葉を耳にすると、中澤さんに会いたくなるんです。」
「…誰かに、好きって言われたん?」
「そんなのは、大して問題じゃないです。」
「じゃあ、主題は何?」
「この心で空いてる所を、埋めてもらいたくて。」
「つまり…。」
「つまり、欲しいんです。中澤さんが。」
ゆっくりと、両手を放して、あなたを解放した。
肩に手を置き、その体をこっちへ向き直させて。
「心が?それとも体が?」
私の答えも聴かないで、唇を塞いできた。
- 270 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時34分11秒
- あなたの答えも聴いていない。
私の愛は、受け入れられたのだろうか疑問が残る。
やっぱり、大人の人だから、このキスがそういう意味だとは限らないから。
首を竦めて、唇の自由を返してもらった。
「愛のない行為は、しなことにしてるので。」
「じゃあ、愛や。」
「じゃあ、愛、ですか…。」
「足りん?」
指一本分くらいの所まで近づけられたあなたの唇が問う。
視界にはあなただけしか映っていなかった。
「足りない分は、吉澤が補いますから…。」
甘い、甘い、味がする。
- 271 名前:秋 投稿日:2002年12月12日(木)13時35分04秒
- 脳内で何かが溶けていくような感じがしていた。
閉じた瞳の分だけ鋭くなった耳に、
たなびくカーテンの音が微かに聞えている。
息をつくことさえ許されなくて、頭の中が虚ろになっていく。
あなたの両手が抱く腰。
いつのまにか壁に押し付けられていた背中。
不器用にぶつかり合うあなたと私の胸。
埋めてくれるのは、寂しさだけ?
それとも、あなたのために用意されている場所へ、
腰を下ろしてくれるのだろうか。
「…泊まっていっても、いいですか…?」
ようやく離された唇がそう問い質す頃、
私はすでに、冷たい床に押し倒されていた。
そして、あなたはこう答えるから。
「帰すわけないやんか…。」
今はもう、どっちでも――
end
- 272 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)22時57分01秒
昔から、人前で弾くのは苦手だったのよ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!ハナちゃんっ!ハナちゃぁぁぁぁぁぁん!!!」
発表会だって、先生とお父さんに無理矢理出させられてて…。
「こっち向いて!きゃぁぁぁぁっ!!こっち向いてくれたぁぁぁぁ!!!」
それだっつーのに、いつもいつも演奏終わると『ここが悪かった』『あそこが悪かった』
とか…そーゆー事しか言わないし。嫌々出てるんだから、たまには誉めろってぇのよ。
「ハナちゃん大好きー!!愛してるー!!!」
…ホンットわたし、早まった事したわ。
あのひとに気付いてもらいたいが為に…バンドでキーボード弾く事を引き受けちゃうな
んて…。
ファンの子達には、本当に悪い事してるってわかってる。だってわたし、実は女だし。
それに、サービス精神もほとんどないし。…てゆーか、そんな余裕がないによね。舞台の
上では。
ま、わたし以外にも四人の先輩が同じ舞台に立っててくれるから…いつもの発表会やコ
ンクールよりかは落ち着いてられるけど。
- 273 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)22時57分33秒
- 『ハナちゃんは寡黙』ってファンの子達は言うけど…実は全然そんな事ないのよ。ただ、
人前では緊張して何も喋れないだけで。しかも、このアニメ声だもの。一声喋ったら女だっ
てバレちゃう…。
「お疲れッ!!」
そんな事を思いつつ、楽屋でメイクを落としていたら…けーさんに声をかけられた。
「あ、お、お疲れ様です。」
「今日も良かったわよー、アンタ!」
「それはどうも…ありがとうございます。」
自分で顔が赤いのがわかる。
…だって、舞台の後に演奏を誉めてもらえるのって…慣れないんだもん。
そんなわたしに気付かずに、けーさんはMDと手書きの楽譜をくれた。
「はい、コレ。次の新曲。」
「うわぁ!できたんですか!?」
「うん。一応ね。今度はラブソングよ!!」
高らかに笑いながら、けーさんは去って行った。
…ラブソングかぁ。
- 274 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)22時58分04秒
- ちらりと歌詞を見てみて…わたしは、驚いた。
『どこにいるんだ?誰といるんだ?俺の事、どう思ってるんだ?
訊きたい事はたくさん だけど訊けない
訊いてしまえば、全てが壊れてしまいそうで』
まるで、わたしのひとみちゃんへの気持ちじゃない!!
目を見開いて、けーさんを見る。
「けーさん、コレ…!」
「そう。モデルはアンタ。」
「・・・・・・。」
『真実知りたい いや、知りたくない
不安で 不安で 眠れない
怖くて 怖くて 話せない
メールの君は 俺を「愛してる」と言う
信じていいのか?その文字を
疑うべきか?その言葉』
「…ホント、やめてくださいよ…。」
「いーじゃないの。誰もアンタの気持ちだなんてわかりゃしないわよ。
「…そうかなぁ。」
それはそれで悲しい気はするけど。
『あの夜に交わした約束は 今でも有効?
あの時の君の愛の言葉 賞味期限は まだ切れてない?』
けーさんは、わたしの教育係だし…いろんな事を相談してる。ひとみちゃんの事もいつ
も聞いてもらってる。
- 275 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)22時58分35秒
- 「…コレ、際ど過ぎですよぉ…。わたしとひとみちゃんの事知ってる人だったら、誰でも
わかりそうじゃないですか。」
「そんな事ないって。コレ男言葉だし。ダイジョブダイジョブ。」
けーさんはひらひらと手を振りながら、去って行った。
「…次の練習の時から、その曲始めるから。」
そんな言葉を残して。
わたしは、MDと譜面を持って…ちょっと呆然としてしまった。
- 276 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)22時59分40秒
玄関の鍵を開けて、中に入る。
「…ただいま。」
一応言ってみるけど…やっぱり、返事はない。
実は、一ヶ月前からひとみちゃんと同棲を始めた。もともと一人で住むには広すぎる部
屋だったし、両親も『二人の方が安全だ』と許してくれたし。
…ま、親にはひとみちゃんは『友達だ』って言ってるからね…。
「…はぁ。」
ため息が、防音設備の整った部屋の中に消えて行く。わたしは、ソファーの上に座ってる
ピンクのテディベアにでこピンをする。
「今日もまた、ひとみちゃんは帰って来ないのかしらね?」
テディベアは、何も言わない。そりゃそーよね。
「…一緒に住み始めて、一ヶ月間。わたしよりも先にひとみちゃんが帰ってた例はないの
よね。まったく、毎晩毎晩…どこで何やってるんだか。」
胸の中に、鉛が詰まってるみたい。なんだか嫌な感じに重くて…身動きが取れなくなる。
『…あたしは、甘えてたんだ。梨華ちゃんに。
梨華ちゃんが電話くれるから…梨華ちゃんが想っててくれるからって…甘えてたんだ。
だけどね、梨華ちゃん。あたし、梨華ちゃんをなくしたくないよ。』
同棲し始めるちょっと前に、あなたがくれた言葉。
- 277 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時00分12秒
『好きだよ、梨華ちゃん。』
今でも鮮明に、胸の中に蘇る。
嬉しかった。本当に。
電車の中で初めて見た時から、大好きだった。思い切って告白して、付き合う事になっ
た時は…天にも昇る気分だった。付き合えるってだけで、じゅうぶん幸せだった。
だけど、欲はどんどん大きくなって行って…。
わたしは、頭を振る。
そして、カバンの中から譜面を取り出した。
「よっこいしょ。」
ピアノの蓋を開け、譜面台を立てる。そこに譜面を乗せて、わたしはピアノに向かった。
もらったMDは、帰りの電車の中で散々聴いた。メロディはほとんど、頭の中に入っている。
♪
指先が、平面だった譜面を立体的にする。
サビの部分、好きだなぁ。激しくて物悲しくって…でも、優しい旋律。
「…どこにいるんだ?誰といるんだ?俺の事、どう思ってるんだ?
訊きたい事はたくさん だけど訊けない
訊いてしまえば、全てが壊れてしまいそうで」
自然と、歌詞が口から出てくる。
- 278 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時00分43秒
- 「真実知りたい いや、知りたくない
不安で 不安で 眠れない
怖くて 怖くて 話せない
メールの君は 俺を「愛してる」と言う
信じていいのか?その文字を
疑うべきか?その言葉」
本当に、けーさん才能あり過ぎよ。どうしてここまで的確に、わたしの心の叫びを聞き取
れたのかしら?
「あの夜に交わした約束は 今でも有効?
あの時の君の愛の言葉 賞味期限は まだ切れてない?」
本当にねぇ。愛って、賞味期限があるんじゃないかしら?だって、いつか冷めちゃうじゃ
ない。
わたしの愛の賞味期限は、きっとひとみちゃんの愛の賞味期限よりも長いんだろうな。
だってわたし、ひとみちゃんに一目惚れしてからもう二年も経つけど…想いは全然変わら
ないもの。てゆーかむしろ、強くなってるんじゃない?
それなのにひとみちゃんは…あんな情熱的な告白をしてくれちゃってから、まだ一ヶ月
しか経ってないのに、もうこの体たらく。帰ってすら来ない。
「…あれ?」
頬に何かを感じて、わたしは手を止めた。
涙だわ。
「・・・・・・。」
わたしはもう一度、手を動かし始めた。
そうでもしてないと…声を上げて泣いてしまいそうだから。
- 279 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時01分55秒
やっぱり、昨夜もひとみちゃんは帰って来なかった。
「…仕方ないわね。」
わたしは二人分の食事の用意をした。一人分はわたしが食べる為。もう一人分は、ひとみ
ちゃんが帰って来た時に食べられるように、ラップをして冷蔵庫の中へ。
食べ終わり、後片付けも終わり、学校へ出かける支度も終わった。
わたしは、ひとみちゃん宛てにメモを書く。
『ひとみちゃんへ
冷蔵庫の中に、オムライスが入ってます。チンして食べてね。
梨華より』
「…これでよし、っと。」
ボールペンのキャップを閉めて、戸締りとガスの元栓をチェックしてから家を出る。
…てゆーかひとみちゃん。ちゃんと学校行ってるのかしら?
気になるけど…電話は、かけられない。
メールによると、どうやらお友達の家に転がり込んで遊びほうけてるらしい。
- 280 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時02分27秒
- 「…良いご身分だ事。」
そんな事を言いつつも、携帯のメールボックスに『吉澤ひとみ』と言う名前が表示される
と、胸が躍ってしまう。
「片思いみたいね。」
本当に。だってこんなの、付き合ってるって言える?
一ヶ月前、ひとみちゃんは『心を入れ替える!』とわたしに誓ってくれた。
…もう飽きちゃったのかな?わたしの事。
涙が出そうになっちゃって…わたしは空を見上げた。
空は、まぶしいくらいに晴れ渡っていた。
- 281 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時02分59秒
まだ、帰ってない。
わたしが学校から帰って来ても、ひとみちゃんは家にいなかった。
「・・・・・・。」
机の上のメモと、冷蔵庫の中のオムライスをゴミ箱に捨てる。
お皿ごと。
「…何なのよ。」
もう、止められない。
「何なのよ!!本当にもう!!何だって言うのよ!!!」
机を、拳で叩く。…いや、殴りつけるって言った方が良いかも。
「何してんのよ!!誰とどこで、どうしてるのよ!!何が不満だって言うのよ!!!」
机に、ぽたぽたと涙が落ちた。
「嘘吐き!嘘吐き嘘吐き嘘吐きッ!!!!」
肩から、カバンがズリ落ちた。だけど、下ろす事も持ち直す事もしない。てゆーかでき
ない。
わたしは、机を蹴り倒した。
それを合図に、今度はクッションを投げ飛ばす。ソファーに置いてあったぬいぐるみ
達も、投げる。
頭のどこかでは、自分が馬鹿な事してるってわかってる。こんなの、何の解決にもな
らない。ただ、部屋が散らかるだけだって。そんなの、十分わかってる。
でも…そうしなきゃわたし、精神の平衡を保ってられない。
「タラシ!無責任!!嘘吐き!!!」
思いつく限りの罵詈雑言を発しつつ、わたしはしばらく暴れ続けた。
- 282 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時03分30秒
暴れ疲れて放心し、はたと気付くと…部屋はまるで、空き巣に入られたかのようなあ
り様になっていた。
「・・・・・・。」
ピンクのテディベアと、目が合う。
なんだかとっても、叱られてる気分。
それがなんだか心地よくて、わたしはのろのろと立ち上がった。
「…お片付け、しなきゃ。」
でも、やる気が出ない。
わたしは、ピアノの前に座った。
♪
昨日覚えたばかりの、激しく物悲しく…優しいメロディ。
「・・・・・・。」
今日は歌えない。歌詞を口に出せない。
悲しすぎる。
「…コレのどこが、ラブソングなのよ…。」
コレは失恋ソングじゃないのかしら?だってこの主人公、彼女にフラれたも同然じゃ
ない。
そこまで考えて、わたしは笑った。
「…そっか。わたし、もう失恋してるんだ。」
- 283 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時04分00秒
- 帰って来ないあのひと。
『友達の家にいる』ってメールで言ってたけど…それはもしかしたら、『新しい彼女
ができた』って意味だったのかも知れない。
ひとみちゃんは優しいから。
直接、別れようとは言えなくて。
「…もう、帰って来ないのかなぁ。」
ひとみちゃんの笑顔を思い出す。
胸が、痛いくらいに締め付けられる。
それはもう、甘い痛みなんかじゃない。激痛の域。
「…痛いなぁ。」
わたしが呟いた、その直後。
「ただいま〜…って、うわっ!!何コレ!?」
ひとみちゃんの登場。…わたしもしかして、夢見てる?
「ぐちゃぐちゃじゃん!空き巣でも入ったの!?」
最後に見た時と、同じ服装。…って事は今まで、学校行ってなかったのね。
「梨華ちゃん!?どしたのさ、コレ!」
ごはんは、ちゃんと食べてたみたいね。…そりゃそーか。ひとみちゃんは子供じゃない
もんね。バイトもしてるしお金も持ってるし、わざわざわたしが用意してあげなくても
ちゃんと食べられるのよね。
- 284 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時04分32秒
- 「…梨華ちゃん?」
いらないのね。わたしなんて。
ひとみちゃんは、ピアノを弾き続けるわたしの腕を掴んだ。
「梨華ちゃんってば!」
「…何よ。」
「何…って、どうしたのさ、コレは!」
「コレって?」
「この部屋だよ!なんかあったの?」
「…別に。」
「別に、…って」
ひとみちゃんは、わたしの顔を覗き込んで硬直した。
そんなひとみちゃんに、わたしは言った。
「…コレは、わたしがやったの。大暴れしたの。」
「え!?」
「ひとみちゃんが、帰って来なかったから。」
わたしの声って、こんなに冷たかったんだ。アニメ声だってのはわかってたけど、こん
な冷たい声を出すのは初めてだわ。
- 285 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時05分05秒
- 「…あ、あたし?」
「そう。」
わたしは、ひとみちゃんの手を振り払った。
「…帰って来る気がないなら、もう良いよ。」
「な、何言ってるんだよ?」
「もう、嫌。帰って来ないひとみちゃんを待って、机で寝るのも。帰って来ないひとみ
ちゃんの為に、ゴミになるってわかってる食事を作るのも。帰って来ないひとみちゃん
を心配して、終電が来るまで駅で傘持って待ち続けるのも。」
ひとみちゃんの目が、見開かれる。
「…まさか梨華ちゃん、ソレやっててくれたの!?」
わたしは、答えない事にした。
なんか、馬鹿にされてる気分になったから。
「…もう良い。そんな事はどうでも。」
「・・・・・・。ご、ごめん。」
「もう良いってば。」
膝の上で、拳を握り締める。
「…ずっと、疑問だった。ひとみちゃん、わたしにキス以上の事しないでしょ?」
「・・・・・・。」
「そんなにわたしの事、嫌いなの?」
「は!?」
「嫌いになっちゃったの?」
「そんな事、あるワケないじゃん!」
「嘘よ。」
- 286 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時05分37秒
- ピアノの蓋を閉め、その上に手を乗せる。
「…だったらなんで、帰って来ないの?」
「そ、それは…。」
「やっぱりわたしの事、嫌いなんでしょ?」
「それは違うんだって!!」
ひとみちゃんは、ため息と共に言った。
「その逆なんだよ。…大好きで大好きで、たまらないんだ。」
「・・・・・・。」
コレ、夢じゃないの?本当に現実?てゆーか今、ひとみちゃんは何て言った?
「梨華ちゃんに触れたい。抱きしめたい。キスしたい。…その先もしたい。
その想いは、梨華ちゃんと暮らすようになってから…すごく強くなったんだ。…油断し
たら、溢れ出そうになるくらいに。」
ひとみちゃんの震える手が、わたしの手を掴む。
「だけど…きっとあたしは…そうなっちゃったら手加減できない。梨華ちゃんを壊しちゃ
うかも知れない。…優しくできないかも知れない。こんなの、初めてなんだ。」
ひとみちゃんに抱き寄せられて、わたしは身をかたくした。
「…だから…帰れなかった。ごっちんの家にいた。」
- 287 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時06分08秒
- 「・・・・・・。」
わたしは、涙が流れ始めるのを感じた。
凍り付いていた目が、溶け出したような涙。
「…だけど、ごめん。やっぱウチ、自分の事しか考えてなかった。
一人残された梨華ちゃんがどんな気持ちでいるかなんて…自分の事でいっぱいいっぱい
で、わかんなかった。」
ひとみちゃんの胸に、顔をうずめる。
ひとみちゃんの香り。
わたしはひとみちゃんにしがみついた。
「…ひとみちゃんにだったら、壊されて良い。優しくなんてなくても良い。」
「り、梨華ちゃん。」
「抱いて。」
ひとみちゃんは、すぐさまわたしを近くにあったソファーに押し倒した。
「…梨華ちゃん。」
「ひとみちゃん。」
「…ごめんね。」
「何が?」
「いろいろと。」
わたしは、くすっと笑って言った。
「それは、今までの事?それとも…今から起こる事?」
「…両方。」
何か言おうと思ったけど、言えなかった。ひとみちゃんに唇を塞がれてしまったから。
ここから先は内緒だけど…一つだけ教えてあげる。
ひとみちゃんは…あー言ったけど、十分優しかったです♪
おわり
- 288 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時07分20秒
おまけ
場所をベッドに移して、しばらく二人でぼんやりしていたら…ひとみちゃんは、一枚の
紙を取り上げた。
「コレ、何?歌詞?」
「うん。『CUBIC−CROSS』の新曲。」
「へぇ〜…すげー!コレ、ラブソングじゃん!かっけ〜。」
「え!?な、なんでそう思うの!?」
するとひとみちゃんは、きょとんとした顔で…まるで当たり前の事を言うかのように言っ
た。
「だってこの男、不満や不安並べながらも彼女の事『大好きだぁ〜ッ!!』て叫んでるじゃ
ん。惚気てるじゃん。」
「・・・・・・。」
か、顔が真っ赤になるのが自分でわかる…。
- 289 名前:恋人2 投稿日:2002年12月12日(木)23時07分50秒
- わたし今まで、けーさんに悩み相談してるつもりで…思いっきり惚気てたのね…。
「どしたの?梨華ちゃん。」
「な、なんでもない…。」
「なんでもないワケないじゃん!そんな真っ赤な顔して。」
「なんでもないんだってばぁっ!」
わたしは布団をかぶって、ひとみちゃんに背中を向けた。
「…とりゃっ!」
そんなわたしに、ひとみちゃんは後ろから抱き付いて…む、胸をもみ始めた。
「なっ!?な、何す…んんっ」
「ほ〜ら、言っちゃえ言っちゃえ。」
「な、なんでもない、ってば…あんっ!」
「これでどーだっ!!」
「や、やめっ!やめてよ…ん…っ!!!」
…その後、もっかい襲われたのは…言うまでもないかしら…。
おわれ。
- 290 名前:カクテル 投稿日:2002年12月13日(金)22時01分33秒
カラカラに渇いたノドに、甘いカクテルが心地よい。
そしてあたしは、甘いカクテルの中にまた逃げる。
「飲み過ぎ。あんた普段飲めないくせにそんなに飲むんじゃないの!」
「うるさぁーい!圭ちゃんなんかになっちの気持ちわかんないよっ!!」
すでに何杯目かわからなくなったカクテルに口をつけた時にあたしの友達でバーテンの
圭ちゃんに止められた。
あたしは普段はお酒を飲まないのに、圭ちゃんのカクテルだけはよく飲みに来る。
そして今日も、圭ちゃんのカクテルでやけ酒中。
「なっち…何があったの。そんなに飲むなんて…」
「だってぇ…矢口がぁ…」
「矢口?矢口が何かしたの?」
「…矢口が、いきなり好きな人がいるって言い出すんだもん…」
「…はぁ、そんなことか…」
圭ちゃんは、あたしの話を聞くと呆れてしまったみたい。
- 291 名前:カクテル 投稿日:2002年12月13日(金)22時02分12秒
矢口って言うのは、あたしと圭ちゃんの共通の親友。
いっつも明るくて、周りの人からも好かれてた。
そしてあたしは…そんな矢口がずっと好きだった。
昔っからいろんなことを言いあってた。
でも、恋の相談だけはなぜかしなかった。
矢口はどうか知らないけど、あたしは矢口のことか好きだったから…相談なんかできる
はずなくて。
だから、あたし達の中で恋愛相談がないのがあたりまえみたい…だったのに…
「何で今更になって言うんだよ…やぐちのばかやろぉ…」
カウンターに突っ伏したままつぶやく。
「あのねぇ…失恋とかはいいけどわざわざあたしの所来て愚痴らないでよ…」
「だってさぁ…寂しくない?他の友達はみんな彼氏出来たーとか結婚しましたーとか
言っててさぁ。それでもなっちは矢口がいるから寂しくなかったのに、矢口まで…」
「なっち…それ、あたしに対する嫌味?」
「あっ、圭ちゃんもまだ独り身だっけ。寂しいねー」
「本気で怒るわよ…」
圭ちゃんをからかうのは楽しい。でも、何かむなしい。
そのむなしさを追っ払おうとして、あたしはまたカクテルを飲み干した。
- 292 名前:カクテル 投稿日:2002年12月13日(金)22時03分15秒
「なっち、矢口ね、好きな人がいるんだ」
その言葉を聞いた時、凄く胸が痛かった。
「えー?どんな人?」
明るく返してはみたけど、ちゃんと言えてたかわかんない。
「あのね、すっごくかっこいいのに、子どもみたいなとこもあって…」
矢口が笑顔でその人のいい所を言うたび辛くてしょうがなかった。
「そっかぁ、矢口がそこまで好きになるなら、きっと素敵な人なんだろうね」
『あたしが好きになったあなただから、あなたが選んだ人も素敵だよ』
そう言いたいのは、胸にしまっておいた。
「うん!大好き!」
その言葉を聞いて返した笑顔は、ちゃんとしたものだったかな?
「ずーっと前にちゃんと『好きです』って言ってたら、何か変わったかなぁ…」
「は?何言ってんの」
「だってぇ、矢口はずっとなっちを友達として見てたんでしょ?好きだって言ってたら
もっと違う風に見てくれたかな?」
「そんなのあたしにわかるわけないじゃないの」
「圭ちゃんつめたーい」
圭ちゃんは冷静にグラスなんか磨いてる。
あたしの話なんか興味ないのかな?
- 293 名前:カクテル 投稿日:2002年12月13日(金)22時03分52秒
「って言うか、なっちは『もし、こうだったら』ってのが多すぎ」
「へ?」
「もしあの時…って言うってことは、その時何もしなかったってことじゃない。何も
しないでぐちぐち言い訳ばっか言ってるんじゃないわよ」
「言い訳なんかじゃ…」
「言い訳してるじゃない。ぐちるならちゃんと告白して玉砕してからにしなさい。
話聞いてたら、まだなっちは何もしてない。それって完全にダメって決まったワケ
じゃないでしょ?」
圭ちゃんの言うことはもっともだけど、でも…
「無理だよっ!矢口には好きな人がいるんだし!」
「うじうじ言ってるんじゃないっ!奪い取るくらいの意地を見せなさいよ!」
びっくりした。圭ちゃん、いきなり叫ぶんだもん。
「もし玉砕したんなら、いつでも来ていいから…そん時は、カクテル作って待ってて
あげる」
「圭ちゃん…」
「ほら、笑いなさいよ。なっちは笑顔の方がいいんだから」
「け、圭ちゃぁぁぁんっ!」
そう言った圭ちゃんの笑顔が凄く優しくて…あたしは、思わず号泣してしまった…
- 294 名前:カクテル 投稿日:2002年12月13日(金)22時04分23秒
「笑いなさいって言ったのに泣くんじゃないわよ」って圭ちゃんは怒ってたけど、
なんだか圭ちゃんの言葉ですごくすっきりした。
圭ちゃんに頭なでてもらいながらいーっぱい泣いて、それからお店を出た。
圭ちゃんの言うとおり…かもね。
甘いカクテルに溺れるのは、全部ハッキリさせて玉砕してからだ。
携帯を取り出して、何回もかけた番号へ。
『もしもし』
「あ、もしもし矢口?」
『んー、どしたのなっち』
「あのね、ちょっと話したいことがあるんだけど、今から矢口のとこ行っていいかな?」
- 295 名前:カクテル(おまけ) 投稿日:2002年12月13日(金)22時05分00秒
ひとしきり泣いて出ていったなっちの後ろ姿を見送って、あたしはため息をついた。
「何もしてないねぇ…自分に言ってるようなもんじゃない」
そう言って、カウンターの横に伏せておいた写真立てを起こす。
映っているのは、満面の笑顔のあたしとなっち。
なっちは気付いてないかもしれないけど、あたしにはなっちの気持ちがよくわかる。
だって、あたしも…他に好きな人がいる人を好きになってるんだから。
「矢口はいい奴だよ…『あたしが好きになったなっちが好きな人』だからね…」
気付かなくてもいい。気付いたらなっちは気にしちゃうだろうから。
あたしもなっちも臆病だけど…なっちは、一歩踏み出したかな?
そしてあたしは、溺れるための甘いカクテルを作り出す。
このカクテルをなっちに出す時が…来なければいいと思ってる自分と、来て欲しいと
思ってる自分。
矛盾した思いを抱えながら、あたしは今日もカクテルを作る。
END
- 296 名前:ノラネコ・チャーミー 投稿日:2002年12月18日(水)22時15分02秒
- ネコのチャーミーと別れて、一週間が立った。
夜中にネコの鳴き声が聞こえると、思わず飛び起きてしまう。
窓から、チャーミー!と呼びかけるが、返事はない。
チャーミーがもうこんな所にいるはずがない・・・。
別れた時の、あのオレを呼ぶチャーミーの鳴き声がまだ耳に
こびりついて、はなれない。
日曜、テレビでモー娘。を見る。
「は〜い、チャーミー石川で〜す。」
違う・・・あの娘。ではない。オレが想っているのは、顔は
同じだけど、心はネコのチャーミーなんだ・・・。
あれから、寝てもさめても考えるのチャーミーのことばかり。
思いあまって、UFAに電話をかけて見る。
「例のネコのクローンチャーミーは、どうなったんですか・・・」
「あ、あのクローンね。あんなの使いものにならないので、
廃棄しましたよ。」
「ええ〜!、そんな・・・」
- 297 名前:ノラネコ・チャーミー 投稿日:2002年12月18日(水)22時40分59秒
- あのネコのクローンチャーミーが棄てられた・・・。
思わず涙がこぼれ落ちた。あの時体をはってでもチャーミーを
引きとめていれば・・・、棄てるくらいなら、なんでオレたちの
ことを放っておいてくれないんだ・・・。
オレは、バイトに行く事にした。明日食べる物が無い。下手をすると
電話も止められそうだ。
バイトは、埋立地でのキツイ仕事だった。あたり一面、ゴミの山だ。
ふと、気になる言葉を聴いた。
「変なヤツだな・・・まるで、ネコ娘。だ・・・」
オレは、そう言った作業員に飛びついて聞いた。
「その、ネコ娘。というのはどこに・・・」
「あー、びっくりするじゃないか・・・いや、あっちだよ。
人間のくせに、まるで、ノラネコみたいにゴミをあさってるんだ。」
走って行った。そこには、ボロボロの服を着て、まるでネコのように
よっつんばいになって、ゴミをあさっている女の子がいた・・・。
「チャーミー!!、チャーミーなんだろ・・・」
- 298 名前:ノラネコ・チャーミー 投稿日:2002年12月18日(水)22時50分30秒
- オレの声に、チャーミーは逃げ出した。
オレは追いかけながら、声をふりしぼって呼んだ。
「チャーミー!!、オレだよー!」
その声に、チャーミーは振り返った。
「おいで、チャーミー・・・もう大丈夫だよ・・・」
ようやく、オレがわかったチャーミーは鳴きながら、オレに
飛びついてくる。
着ている服は、ボロボロになっていたが、オレが買って、着せた
物だった。
オレは飛びついてきたチャーミーを強く抱きしめた・・・。
もう、離すもんか。絶対に・・・また一緒に暮らせるんだ。
終わり。
- 299 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月22日(日)14時28分29秒
- 初めて書かせて頂きます。
- 300 名前:共通点 投稿日:2002年12月22日(日)14時36分56秒
「ごとーとよしこってさぁ・・・ホント似てるよねぇ。」
「ほえ?・・・ああ、そーだね。」
ここは楽屋。
っていっても、今はあたしとごっちんの二人しかいないけど。
そんな楽屋で、唐突にごっちんは話し出した。
あまりにもいきなりだったから、ちょっと変な声だしちゃったよ・・・
「だあってさぁ、性格も似てるし」
よかった。ごっちん聞こえてなかったみたい。
「マイペース(?)なとことかね」
「好きな服のブランドもいっしょだし。」
「そうだね。」
「血液型もいっしょ。」
「うん」
「たまに変な声出すのも、いっしょ。」
「・・・・・・・」
聞いてたんだね、さっきの。ってゆーか、何が言いたいの?ごっちん。
- 301 名前:共通点 投稿日:2002年12月22日(日)14時44分43秒
- 「あと、男前なとことかあ・・・ほかには・・・」
「ごっちんごっちん、いったい何が・・・」
「あ!あと、好きな人もいっしょ!!」
「・・・・・・・へ?」
思わずまた変な声を出すあたし。
いや、ちょっと待て。今なんて言った?
「よしこはさ、梨華ちゃんの事好きなんでしょ?」
「え?ああ、そりゃ・・・・」
あたしと梨華ちゃんは付き合ってるんだから、当たり前。
「ごとーも、梨華ちゃんの事好きなの。ね?いっしょ!」
・・・・・いや、いっしょ!でなくて・・・
「それは・・・LIKE?それとも・・・LOVE?」
「なに言ってんの?よしこ。LOVEに決まってんじゃん!」
決まってんじゃん!って、あーた。
- 302 名前:共通点 投稿日:2002年12月22日(日)14時53分22秒
- でも・・・
「あたしと・・・梨華ちゃんは、付き合ってるんだよ?」
「もちろん知ってるよ。」
そりゃそーだよね、あたしも梨華ちゃんもよくごっちんに悩み相談してるし・・・
けど、だったらなんで?
「わかんない、気づいたら好きになってた。」
わかんないって・・・・ごっち〜ん。
あたしの脳みそは、パニック全開
「けどね、よしこ。ごとーは本気だよ」
「え?」
「梨華ちゃんの事、本気で好き。だからうかうかしてると、ごとーが梨華ちゃん取っちゃうよ。
「ごっちん・・・」
なんだかよくわからないけど、あたしの頭の中で試合開始のゴングが鳴り響いた。
「けど、好きな人もいっしょ・・・なんてね・・・」
「似すぎるのも困ったもんだね。アハ☆」
「あはは・・・・はは。」
あんたがそれを言うか・・・・・。
- 303 名前:共通点 投稿日:2002年12月22日(日)14時54分03秒
- おわり(?)
- 304 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月22日(日)16時54分27秒
- 書かしてもらいます。
「触れて・触れないで」
- 305 名前:「触れて・触れないで」 投稿日:2002年12月22日(日)16時58分02秒
- 【やめて】
私の心が叫んだって
私は口では叫ばないでしょう
だって、私が言ったってアナタがやめてくれるわけでもないから
アナタが触れる私の髪
アナタが触れる私の頬
細い白い指で触れるの。
- 306 名前:「触れて・触れないで」 投稿日:2002年12月22日(日)17時01分39秒
- 私が顔をゆがめても
アナタは関係ないように
不気味すぎるほど綺麗な笑顔を浮かべて私に触れるの。
「愛してる」
そんな言葉なんて信じない。
アナタはいろんな人に言ってるでしょ?
ねぇ、何でそんなに優しいの?
私が問いかけてもアナタはきっと答えてくれないでしょう。
答えてくれたとしても「梨華ちゃんが好きだから」って答えにならない答えを言うでしょう。
- 307 名前:「触れて・触れないで」 投稿日:2002年12月22日(日)17時04分55秒
- 他の人に触れた手で私に触れないで。
わがままだって分かってる。
でも、アナタを独り占めしたいのよ。
アナタに誰も触れて欲しくないの。
「好きだから」
そういうのなら私だけ触れてよ。
他の人に触れたアナタならもう私に触れないで
私だけ触れてくれるアナタならもっと私に触れて
私でアナタの心をいっぱいにして・・・・
〜END〜
- 308 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月22日(日)17時07分23秒
- 〜あとがき〜
えっと・・・頭に浮かんだものをすぐ書いたので意味不明なところがあるかもしれません。
申し訳ありません(>_<)
これは、梨華ちゃん視点でよっすぃーのコトを言ってます^^;
では、失礼しました。
- 309 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時32分51秒
- 東京に来て思ったこと──
夏は暑い。あたりまえだけど、今まではあたりまえじゃなかった。
死にそうになるほど暑い。溶けそうになるほど暑い。暑いというか、熱い。
こんな環境でみんなよく生きていけるな、と思う。
でも、こっちの人はこれがあたりまえなのかな。
私の今までのあたりまえが、あたりまえだったように。
札幌のそれよりもはるかに有害そうな太陽光線。
それを片っ端から熱気に変えるアスファルト。
建ち並ぶビル。たくさんの人。渋滞の車。エアコンの排気熱。その他いろいろ。
破壊されて、汚染されていく環境。──実感。
でも、みんな、ここで生きていかなきゃいけないんだし。
- 310 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時33分33秒
- 東京に来て思ったこと──
湿気がすごい。湿度が高い。湿っている。じめじめしている。うんざりする。
札幌にいるときは雨なんかはまったくといっていいほど気にならなかったけど、
こっちに来てからは、雨の日は本当にうんざりする。憂鬱になる。
雨の日は憂鬱だという人の気持ちが初めて理解できた。
しかも、東京の雨は、北海道の雨よりもずっと汚そうだ。
雨降りの日に外に出たいなんて思えなくなる。
札幌にいたときはもう少しマシだったのにな……
帰りたいな……
- 311 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時34分03秒
からふるなぱらそる
- 312 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時34分33秒
- そんな私こと紺野あさ美は、日傘を買いました。
晴れの日はもちろんのこと、雨の日も使える、晴雨兼用パラソルです。
ちょっと値段は張ったけど……
UV加工のスグレモノ! らしいです。とりあえず便利です。
これで、一方的に紫外線に打たれ続ける紫外線ドランカーにはなりません。
あと、酸性雨にも負けません。私は勝ちます。勝ち続けます!
ご清聴、ありがとうございました。
- 313 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時35分07秒
- さて、そんな晴雨兼用パラソルさん(以下、パラソル)を買ったのはいいけれど、
日傘をさす習慣などない私にとって、日傘をさすという行為はなかなか恥ずかしくて
できることじゃないということが判明しました。
せっかくの晴雨兼用パラソルが雨の日専用になっています。
って、おい! 以下、パラソルっていったじゃねーかよ!
はぁ……、ツッコミって難しい……
仕方ないので、さりげない自慢をしておくことだけに留めています。
せめてもの慰みです。だって、高価かったから……
- 314 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時35分55秒
- 「ねえねえ、マコっちゃん。これ、見て。私、パラソル買ったんだけど──」
「はぁ……。自信が欲しいなぁ……。あと、失敗をこわがらない心と……」
「あのね、これ、晴れの日も雨の日も使える──」
「頑張ってるのになぁ……」
「ねえ、マコっ──」
「はぁ……」
「……」
- 315 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時36分45秒
- 「このパラソル、晴雨兼用で、すっごい便利なんですよ」
「何やて!? 水陸両用? ズゴック?」
「なんれすと!? シャアがくるというのれすか?」
「そいつはヤバイで! ジムが、ジムの名もなきパイロットがやられてまう!」
「たいへんれす! ウッディー中尉が──」
キャッキャ☆キャッキャ☆
「…………。えーと……、黙れオマエら!」
ピタッ!
「これ、晴雨兼用なんですよ」
「そ、そうか。そいつは便利やなぁ……」
「ま、まったく、便利なのれす……」
- 316 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時37分31秒
- 「コンギョの情報によるとですね、紺野さんはかなりステキな
晴雨兼用パラソルを買ったらしく──」
「ちょっと紺野──じゃなくてコンギョ! 今日は保田さんの──」
「これがまたすごいんですよ。何がすごいって、まず値段が高くてですね、
傘のくせに1万円以上もするんですよ。もっとも、そんな高価なものを
買った紺野さんも紺野さんですけど。いや、でもですね、それを購入するに
あたって悩んだことは悩んだらしいんです。1回はあきらめたというか、
やっぱり買うのはやめにしようと思ったんです。だけどなんだかとっても
気になって気になって、えーい、って思いきって買ってしまったんです。
あ、それで、いざ買ったはいいんですけど、一つおもしろい話があってですね──」
「あさ美ちゃん、怒られるって! あさ美ちゃん!」
- 317 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時38分07秒
- 「あっ、矢口さん。おはようございます」
「…………」
スタスタスタスタ。
「あれ? あのですね、私──」
「…………」
「あ、ちょっと矢口さん。無視しないでください」
「…………」
「あの、私が『何もしてないくせにネタになったり、人気者になってるっぽい。
あと、見た目と違って頑固で人の言う事をちゃんと聞こうとしないから嫌い。
ついでに、おいらのプーさん好きキャラを奪うなよ!』
とか思って無視しないでください。矢口さん!」
「(ピクッ)…………」
スタスタスタスタ。
- 318 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時38分42秒
- ○月×日 雨
日記に書くならそんな日のことです。
今日も今日とてムリヤリ奮い立たせた勇気と元気でダンスレッスンへ
でかけようとしたそのとき、我が愛しのパラソルがないことに気づきました。
行方知れずです。詠み人知らずです。
って、おい! えーと………………
えーと……………
…………
お母さんに訊いても知らないという答えしか返ってきません。
どこをさがしても見当たりません。
仕方なく、他の傘を手にしてスタジオへ。
はたして、どこではぐれてしまったんだろう?
記憶をたぐっても何も浮かばない。
どこに忘れてきたんだろう?
このまえ雨が降ったのはいつだったろう?
あっ!──おい! 詠んでるやつくらい知っとけよ!
うーん、ちょっと違うかも……
- 319 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時39分12秒
- そして、レッスン前。
スタジオでは私の消えたパラソルの話題でもちきりに──
なる予定だったけれど、誰も私の話なんか聞きやがりません。
ええ、それはもう人っ子一人として。
そのフラストレーションのせいで、衝動的に里沙ちゃんを
サンドバッグ代わりにしようとした、そのとき──
「おはようさん」
「あーっ!」
ドスッ!
「げふぅっ……!」
いつものように大物気取りで堂々と遅刻して現れた安倍さんが
手にしていたのは、確かに私の晴雨兼用パラソルでした。
ついでに、勢いあまって里沙ちゃんのボディに一発入れてしまいました。
- 320 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時39分55秒
- 「それ、私のパラソル!」
「へっ? これ?」
と、安倍さんは手にしているパラソルをきょとんと見つめる。
「どこにあったんですか、それ?」
「へっ? どこって……。えーとね……」
「あー、それってさ、このまえ、
『あ、こんなとこに傘落ちてる。ラッキー。今もってるなっちの傘、
なんか飽きちゃったから買い換えようと思ってたんだよねー。得したべさ』
って持ってったやつじゃないの?」
と矢口さん。
- 321 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時40分33秒
- 「ヤグチ! なっち『べさ』なんて言ってな──え、あの、違っ……。
これ、えーとね、そう、忘れ物! も〜、矢口なに言ってんのかなぁ。
これは、誰かが忘れてったみたいだから、なっちが預かってたんだよ☆」
「えー? だって、その日って、なっちが一番遅く入ってきて、一番早く
帰った日じゃなかったっけ? あ、だいたい、いつもそんな感じか」
と再び矢口さん。
- 322 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時41分13秒
- 「ヤグチぃっ!──じゃなくて、えーとね、な、なに、その目?
ちょっとやめてよ、紺野。そんなに凝視しないでよ。そんな目で見ないでよ。
預かってただけなんだから! なっち預かってただけなんだからぁっ!」
「そうですか、わかりました。じゃあ、それ私のなので、返してください」
「え? ずいぶんあっさりしてんね。──あ、いや、うん。返すよ。
もちろん返すよ。でもね、あのね、なっちホントに預かってただけ
なんだからね。ホントにホントなんだから」
- 323 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時41分50秒
- 「わかりましたから、早く返してください」
「そう? わかった? ホントにわかった?──よし。じゃあ、はい」
そして、パラソルは数日ぶりに私のもとへ帰ってきた。
おかえりなさい。
こんなにびしょ濡れになっちゃって。
もちろん、ご飯よりも先にお風呂だよね?──えっ!? ご飯!?
「もー、やだなー、みんな、そんな目で見て〜。なっちがそんな泥棒みたいなこと
するわけないっしょ。ねー。だって、ほら、なっちはさ、なっちっていうか、天使? だし。
もう、紺野も忘れ物なんかしてなっちに迷惑かけるんじゃないよ。あはははは〜」
「調子にのるな」
「はい……」
- 324 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時42分21秒
- ◇
「おつかれ〜」
「は〜い、じゃあ、圭織とご飯行く人手ぇあげろ」
ダンスレッスンを終えてスタジオの外に出ると、雨はすっかり弱まっていた。
しかし、小雨というか霧雨というか、そんなのが、しつこくしぶとく
ぱらぱらと降り続けている。
「えーと、もう一回訊きます。リーダーの圭織とご飯行く人手ぇあげろ!」
そして私は、真っ白いパラソルを広げる。
ちょっと頑張って手に入れた高価なパラソル。
強すぎる光や冷たい雨を防いでくれるステキなパラソル。
「これが最後のチャンスです。圭織と……ぐすん……」
- 325 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時42分55秒
- 「ちょっとカオリ、さっきから何アホやってんだよ」と矢口さん。
「今日はみんなでメシいくって言ったでしょうが」と保田さん。
「だって、圭織がリーダーなのにさ、仕切ってんの矢口と圭ちゃんじゃん」と飯田さん。
「しょうがないんじゃないすか」と吉澤さん。
「しょーがないんじゃないすかぁ」と加護さん。
「やっぱりしょーがないのかなー?」と石川さん。
「はらへった」と辻さん。
「えーとね、なっちはお寿司!」と安倍さん。
「確か、焼肉行くって……」とマコっちゃん。
「うん。しかも全員で決めたはず……」と愛ちゃん。
「やっぱり帰ろうかな……。おなか痛いし……」と里沙ちゃん。
そして、実は辻さんと同じことを思っている私。
あっ!──じつはつじ、って回文かよ!
うーん、ちょっと説明過多かも。
- 326 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時43分33秒
- 「じゃあ、最後の最後に訊きます!
モーニング娘。のリーダーであるところの飯田圭織さんと一緒に
ご飯行く人、手ぇあ〜げろ!」
仕方なく、全員死んだ目になって、のそのそと手を上げる。
「よーし! そんじゃあ、しゅっぱ〜つ!」
「お〜……」
- 327 名前:からふるなぱらそる 投稿日:2002年12月23日(月)21時44分10秒
- ◇
東京に来て、改めて強く思ったこと──
私はモーニング娘。なんだということ。
頑張っているのは私だけじゃないということ。
悩んだりするのは私だけじゃないということ。
私は一人だけで生きているわけじゃないということ。
おちこんだりもしたけれど、私は元気です!
だって、強すぎる光や冷たい雨にも負けないステキなパラソルが──
お金なんかじゃ絶対に手に入れることのできないステキな仲間たちが、
こんなにも、私の周りに咲き誇っているんだから。
ただし安倍さんは除外。
Σ(・´ー`・)
嘘です。(笑)
・おわり・
- 328 名前:アイドルはやめられない。 投稿日:2002年12月24日(火)23時54分01秒
- その女の子は、慌ただしくタクシーに乗り込んで来た。
夜だというのに、サングラスをかけて、ニット帽を深く
被っている。
「どこまでですか・・・」
「いいから、早く出して・・・」
その娘。はしきりに外を気にしている。
「どうしたんですか。」
「あ、横浜まで・・・変なストーカーみたいなやつに
つけられていたのよ・・・」
「へえ〜、近頃はぶっそうですからね・・・お客さん、もしかして
芸能人かなんかですか・・・」
「そう見える・・・」
「だって、夜中にサングラスなんか、かけてるじゃないですか。
あ、高速に乗っていいですか。」
「いいわよ。・・・モーニング娘。って知ってますか。」
「さあ、テレビはあんまり見ないので、わかんないなあ。」
- 329 名前:アイドルはやめられない。 投稿日:2002年12月25日(水)00時15分42秒
- 「ふ〜ん、テレビ見ない人もいるんだ・・・」
「お客さん、まだお若いみたいだけど、歌、歌う人ですか。」
「まあ、そんなところね。」
「まあ、こう言っては、なんだけど、若いタレントの中には、
生意気な連中もいるみたいですね。テレビでは、殊勝なことを
言ってても、楽屋では下着姿でタバコをプカプカとふかしてる
そうじゃないですか。」
「それって、いつの時代の話なんですか。今どき、そんな人
いませんって・・・」
「そうですかね。聴くところによると、テレビやラジオで、
えらそうにグループの人気を自分の人気だと思って、可愛い子ぶって
やたら笑いながら、生意気なことを言ってるのがいるじゃないですか。」
「ふ〜ん、グループの人気を自分の人気だと思っている、おまぬけな
アイドルって誰のことかな・・・」
その娘。は、サングラスをはずした。
- 330 名前:アイドルはやめられない。 投稿日:2002年12月25日(水)00時34分49秒
- タクシーの運転手は、後ろの娘。を無視して話をつづける。
「やたら、イヤ〜ンなんて言っちゃって、ゲームなんかで、
風船に虫なんか入ってると、わざとらしくキャアーなんて
言ったりするそうじゃないですか・・・」
「テレビ、よく見てるじゃないの・・・」
「いや、子供から聞いたんですよ。それで、長者番付とか見ると、
いっぱいお金を貰ってるようで、いい気なもんだ。」
「あのね、おいら・・・私たちはね、これでも苦労してるのよ。
ファンの子たちに夢をもたせるために、ツアーであちこち回り、
それこそ、休む間もなく働いてるの!」
「へえ〜、そうですかァ」
「まあ、知らない人にいくら言っても仕方がないけど・・・」
やがて、目的地について、娘。はお金を払った。
運転手は、おつりを出しながら、言った。
「色々、言ってすみませんね。頑張ってください。矢口さん・・・」
「あ〜!、やっぱり知ってたんだァ〜!」
終わり。
- 331 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月25日(水)23時59分51秒
- 捨てるには惜しくなったので上げさせてもらいます。
丸一日遅れのネタですが。
- 332 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時01分36秒
- 「まこっちゃん、緊張してる?」
アヤカさんが声をかけてきてくれた。
「あ、いえ、大丈夫です」
どうにか声を返す。でも顔が引きつってるのが自分でも分かった。
リラックスしてね、と肩を叩かれた。
大人っぽいその仕草はさすがに落ち着いて見える。
でもアヤカさんにとっても今日は初めての夜だ。
きっと内心は緊張してるに違いない。
現に今も、自分のパートを確認するのに余念がない。
「どうした? 小川。元気がないぞ」
「あ、吉澤さん」
先輩の吉澤さん。今年から、あたし達三人をまとめるリーダー役になった人。
吉澤さんにとっても、今日は特別な夜のはずだ。
なのにいつもと同じおおらかな笑顔。
あたしにはさすがにそんな余裕はない。
- 333 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時02分12秒
- はあ。
ため息を一つ。
なんだか自信がない。
本当にあたしにこんな大役が務まるのだろうか。
たくさんの人に夢を与えるそんな仕事が。
「そろそろ行くよ」
「あ、はい」
赤と白の衣装をもう一度軽くチェックして、帽子をかぶる。
ここまで来たら悩んだって仕方がない。
思いっきり頑張るしかないんだ。
そう自分に言い聞かせる。
通路を抜け、ひらけた明るい場所に出た。
──そこにはすでに、たくさんのソリが用意されていた。
「東方輸送部隊。第237小隊、出発します」
声とともにトナカイがゆっくりと動き始めた。
ソリが前へと進み始める。
さあ、いよいよ初めてのお仕事だ。
よーし、頑張るぞ!
小川麻琴、15歳。職業……サンタクロース!!
- 334 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時02分42秒
クリスマス特別短編 「笑顔のサンタクロース」
- 335 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時03分40秒
- この日のために調整された相棒──トナカイ達はとても順調だ。
しゃんしゃんと鈴の音が鳴り、ソリの通った後にひかりの輪が舞う。
それはとても幻想的な光景。
「さて、二人とも今日はしっかり頑張ってよ」
「まかせて。日本は初めてだけど、この仕事はもう長いからね」
実はアヤカさんは吉澤さんよりもベテランだ。
今も自分の配送パートをまとめながら、優雅に手綱を操っている。
「去年まではハワイだったっけ?」
「そ、向こうは暖かかったけど、こっちは寒いから大変。
おまけに支給された制服は防寒性低いしね」
「ったくさー。大体ケチなんだよ、ウチの上のやつらは」
「しょうがないよ。今はどっこも不況なんだから」
子供には聞かせられない現実的な会話。
あたしはその中にも入れず、ただ手綱を握り締めていた。
- 336 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時04分36秒
- 「なんだよ、小川。そんな暗い顔してちゃダメだろ」
「あ、すみません……」
「ほらまた。もっとスマイルスマイル。
そんなんじゃ、子供達に喜んでもらえないぞ」
「は、はい……」
サンタの仕事で一番重要なのは、子供達に何をプレゼントするかだ。
それはサンタ自身に任せられる。
子供たちが喜んでくれるか。笑顔を見せてくれるか。
全てはサンタの腕次第だ。
でも……正直あたしには自信がない。
初めてサンタに選ばれたと聞いた時には本当に嬉しかった。
昔からあこがれていたこの仕事。
でも今ではそのプレッシャーに押しつぶされそうな気分だ。
最近ずっと胃が痛い。
時々、全てを捨ててしまいたくなるときもある。
そう、このソリの下を自由に泳ぐあの白い雲のように。
- 337 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時05分14秒
- どかん!!
鬱な思考に沈み込んでいたあたしは、突然の衝撃に現実に引き戻された。
暗い夜空に赤い炎が光る。
同時につんとする火薬のにおいが辺りに漂った。
これって……大砲の弾!?
どうやら下から何者かに砲撃を受けているようだ。
「な、な、な、なんですかこれ!?」
「もしかして、やつらが!!」
「っきしょ、よりによってこんなときに!」
──やつらって誰なんですか!?
質問をすることはできなかった。
先ほどとは比べ物にならない強い衝撃。
ソリの下に砲弾の直撃を受けたあたしは、まっさかさまに墜落していった。
吉澤さんが何か叫んだようだったが、もう耳には届かなかった。
- 338 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時05分55秒
- 自分でも感心したことに、手綱はしっかりと握っていた。
ごおごおと風を切る音を聞きながら、あたしは手の中のそれを思いっきり引っ張った。
さすがは選び抜かれた最高のトナカイ。
落下する勢いをどうにか殺し、急制動をかけようと足を踏ん張る。
しかし、スピードはなかなか落ちない。
雲の中を突っ切る。水蒸気がまるで砂のようにあたしの頬を叩いた。
雲の下はどうやら海のようだった。
その海の真中、あたしのソリの真下には巨大な流氷。
「こなくそーーー!!」
こんなところで死んでたまるか!
最後に残った力を振り絞る。
ぐん、と下を向いていた体が横に流れた。
ずざざざざ。
ある意味ではソリ本来の使い方。
流氷の上を、氷の欠片を撒き散らしながらソリは滑る。
がくんと大きく揺れた後、ようやくソリは止まった。
──助かった。
どうにか着地を決めたあたしは、ほっとため息を漏らした。
- 339 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時09分21秒
- 「ようこそ! わたし達の島へ」
聞こえてきた高い声に慌てて顔を上げる。
流氷の上の白い世界。
そこには二人の女性が立っていた。
「ほーほっほ。最近のサンタは大したことないわねぇ。
この程度の攻撃で落とされるようじゃ、まだまだぜぇんぜんだわ。
せっかくこのわたし達が直々にお相手してあげようっていうのに。
ま、しょうがないのかもしれないわね。
だってわたし達はナイトメアの中でも最強の部隊ですもの。
そう、ナイトメア……それは白い雪の中の一輪の花。
暗闇の中で咲き誇るスィートピー。
だからあなた達みたいなサンタなんて、このチャーミーが──
あ、痛て」
独特な声で長々としゃべっていた女の人は、隣の金髪の人に頭をはたかれた。
雪焼けした頬を膨らませ、下がった眉で犯人を上目づかいに見上げる。
「いったぁーい。もー、中澤さーーん。なぁんで頭叩くんですかぁ。
せっかく気持ち良くしゃべってたのにぃ」
「長いねん、あんたの前口上は」
すがるような目をばっさりと切り捨て、中澤と呼ばれた人はあたしを睨んだ。
- 340 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時09分52秒
- 「だ、誰なんですか!? あなた達は」
「おやおや、最近のサンタは自分らの敵のことも教えへんのかいな」
「て、敵!?」
思わず目をぱちぱちする。
確かに大砲撃ってくるような相手だから味方だとは思わなかったけど……。
「そういうことや、大人しく荷物を置いていってもらおうか」
「ど、どうして! どうしてあたし達の邪魔をするんですか!!
こんな子供達へのプレゼントを奪おうなんて!」
「ま、別にプレゼントが欲しいわけやないけどな」
中澤さんは片頬を上げて笑った。
正直怖い。なぜか本能的な恐怖をあたしは感じていた。
- 341 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時10分26秒
- 「そ、それじゃなんで!!」
「これはな。バランスなんよ」
「バランス?」
「そう、世界はバランスによって成り立っている。
それはどんなものであっても代わりはない。
正義があるところには悪が生まれ、
光あるところには闇が生まれ、
笑顔あるところには涙が生まれる。
そして、サンタあるところには、あたし達ナイトメアが生まれるっちゅーことや」
「そ、そんな!!」
「悪く思うなや、これがあたし達の存在理由ってやつなんや」
「存在……理由……?」
「ま、理解してもらう必要はないけどな。
さあ、その荷物置いてってもらおうか。
抵抗するなら……痛い目に会うことになるで」
いつの間にか、中澤さんの手には長い鞭が握られていた。
ぴしり、と氷の表面を鞭が削る。
その横に立つ女の人はにこやかな笑顔。
可愛らしい顔立ちなのに、それがよりいっそう恐怖を募る。
- 342 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時10分56秒
- ……だめだ。
やっぱりあたしには無理だったんだ。
子供達に笑顔を与えるなんて、そんなすごい事できるわけなかったんだ。
だって……だって勝てるわけないもん。
こんなところでプレゼントを奪われて……。
あたしは……あたしは……。
「ええ子や。そのまま大人しくしといたら悪いようにはせんからな」
ナイトメア──悪夢の手がプレゼントへと伸びる。
ごめんね。あたしのプレゼントを待ってる子供達。
来年はきっとちゃんとしたサンタさんがプレゼント持って来てくれるよ。
来年は……。
……………。
本当にいいの?
あたしは何のためにサンタになりたかったの?
子供達が喜んでくれるから。
笑顔を見せてくれるから。
だから……だからサンタになったんじゃなかったの?
「うわああああああ!」
気がついたら伸ばした手にしがみついていた。
- 343 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時11分43秒
- 「な! この! 離さんかい!」
空いたほうの手で体中を殴られた。
高い声の人もぽかぽか頭を叩いてくる。
それでもあたしは手を離さなかった。
大声で叫び、さらにしっかりと抱え込む。
「いいかげん観念──」
たあん。
軽い音がして、氷の地面にぴしりと何かがぶつかった。
びっくりして顔を上げる。
そこには月の光を浴びて夜空に浮かぶ二台のソリ。
ライフルを構えたままのアヤカさん。
その横には腕を組んでこちらを見下ろす吉澤さん。
「ち、新手がきたんか」
あたしの隙を突いて、中澤さんは手を引き抜いた。
そのまま後ろに飛んで距離をとる。
「おもろい。三人まとめて相手してやるで」
- 344 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時12分54秒
- ナイトメアの影。月明かりに照らされたその中から、ぬうっと黒い人形が現れた。
次々と登場する真っ黒な怪物。
たあん、またあの音がして、頭を撃ち抜かれた影は霧のように散らばった。
冷静に一体一体ライフルでしとめていくアヤカさん。
でも怪物たちの数は多い。
ひらりと吉澤さんが飛び降りた。
その前に立ちふさがるのはあの女の人。
「チャーミー。君だったのか」
「よっすぃー、これも全てあなたのせいなのよ」
し、知り合いなの?
あたしの疑問をよそに、二人は壮絶な戦いを繰り広げ始めた。
「どうして、どうしてこんなこと!?」
「あなたがいけないのよ! あなたが……あなたがサンタだから!」
「君が突然いなくなって、とても心配した。
まさかこんなところで出会うなんて……」
「運命……そう、これも運命なのかもしれないわね」
流氷を割ろうかというほどの激しい戦い。
しかし交わされる会話は……なんかメロドラマみたい。
- 345 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時13分47秒
- 「さて、あたしの相手はあんたか」
その声にあたしの顔は引きつった。
目の前には冷たく笑う中澤さん。
慌てて周りを見る。
アヤカさんは次々現れる怪物に苦戦していた。
そのライフルは正確に敵を倒していく。
でも弾を込める暇もないほど次々に湧き出てくる怪物達。
よ、吉澤さんは。
「理由を! 理由を教えてくれ!!」
「あなたにとっては、サンタの仕事が全てだった。
わたしの事はどうでも良かったのよ!」
「違う! それは違うよ!!」
「わたしは! わたしはあなたと一緒にクリスマスを……。
クリスマスを過ごしたかっただけなのに!!」
ダメだ。さっき以上に盛り上がってる。
じゃり、じゃり、氷を踏んで中澤さんが迫ってくる。
そう、あたしがやらなきゃいけないんだ。
- 346 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時14分21秒
- ぴしり、あたしの横で鞭が鳴る。
……さっきの気持ちを思い出せ。
さっきの……。
ぱん、赤い袖の部分が鋭い鞭に切り裂かれた。
一歩一歩近づいてくる敵を睨み返す。
そうだ。せめて他の人が駆けつけるまで。
それまで足止めするだけでもいい。
それでもダメなら……。
うん、例えあたしがやられても、このプレゼントだけは守ってやる!
ぐっとこぶしを握る。
気合を入れ、大きく振りかぶった。
髪を掠めて鞭が通り過ぎる。
- 347 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時15分04秒
- 「えええぇぇぇぇい!!」
思いっきり拳を突き出す。腰も全然入ってないヘロヘロパンチ。
それでもその攻撃は敵の顔面に命中した。
ぎろり、頬にあたしの拳を貼り付けたまま、中澤さんは鋭い視線を向けてきた。
や、やっぱりダメだ。
で、でも、あたしは負けるわけにはいかない。
体が、がくがくと震える。
それでもあたしは唇を噛み締めて相手を睨み返した。
「ふ、ええ目やな」
「え?」
中澤さんは一歩引いた。
あたしの殴った頬を右手で押さえる。
「やっぱり効くなあ。若い子の心がこもったパンチは」
「あ、あの……」
「見事な攻撃や。今回はあたしの負けやな」
「は?」
気がつくとライフルの音が止んでいた。
あれだけいたたくさんの影達の姿はすっかり消えている。
ソリの上でアヤカさんがひらひらと手を振った。
- 348 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時15分38秒
- あ、そうだ。吉澤さんは。
「ごめんよ、チャーミー。君に寂しい思いをさせてしまって」
「ううん、いいの。わたしもあなたに悲しい思いをさせてしまったわ」
「……これ。あの年のクリスマスの次の日に、君に渡す予定だったんだ」
「まあ……。これは……指輪……。ああ、よっすぃー!」
「チャーミー!!」
熱い抱擁を交わす二人。
……どうやら解決したみたいだな。
まあ、深くは考えないことにしよう。
あ、で、でも。
「ち、ちょっと。あたし、何がなんだかわかんないんですけど」
「そんなことより、早よ行き。もう時間あらへんで」
「え? あ、ああ!!」
いつの間にか吉澤さんはソリに乗り込んでいた。
しかもその横にはぴったりとくっつくチャーミーさんの姿。
「急げ! 小川! 夜明けまでにプレゼント配んなきゃいけないんだからな!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
急がなきゃいけない。
でも、どうしても納得のできないあたしは、もう一回中澤さんの顔を見た。
- 349 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時16分20秒
- 「ふん、何か聞きたそうな顔やな」
「どうして、どうしてあっさり負けちゃったんですか?」
「……一つだけ教えたる。
あんな、あたし達ナイトメアは今まであんた達サンタには一回も勝った事ないねん」
「え、ええ!?
だ、だって世界のバランスが……。光あるところに闇が……。笑顔あるところに涙が……」
あたしがそう言うと、中澤さんはにやりと笑った。
「なあ……」
照れたように一度下を向き、ゆっくりとあたしの顔を見る。
「一年に一日くらい、世界中のみんなが笑顔になる日があってもええんちゃうかな」
あたしは呆然とその顔を見つめた。
「じゃ、じゃあ、中澤さん達はなんでこんなこと……」
「そりゃ、これがあたし達の存在理由ってやつやからや」
また中澤さんが笑う。今度の笑顔はとても柔らかい笑顔だった。
その顔を見て、あたしの顔も自然と笑顔になる。
「ほら、お仲間が待っとるで」
「あ、はい。 それじゃ……」
「ああ、今度会うたときは容赦せんからな」
「はい!」
ソリに乗り込みぴしりと手綱を鳴らす。
トナカイが駆け出すとソリはふわりと空へ舞い上がった。
- 350 名前:笑顔のサンタクロース 投稿日:2002年12月26日(木)00時17分11秒
- 「まこっちゃん、良い顔になったわね」
「そ、そうですか?」
「うん、良い笑顔よ。
それなら子供達にも笑顔を届けてあげられそうだわ」
そうか。
プレゼントの内容は関係ないんだ。
笑顔を届けるためには自分も笑顔になれば良いんだ。
暗い顔じゃ、自信のない顔じゃ、人に笑顔は届けられない。
うん。
そうだ笑おう。おなかいっぱいになるまで。
「小川もこれでようやくサンタになれたかな」
吉澤さんがあたしに言う。
その膝にはチャーミーさんが乗っかり、その首には細い手が巻きついてる。
「吉澤さん」
「ん?」
「あたし……あたしサンタの仕事大好きです!」
「よーし、よく言った。
さあ! 飛ばすぞ! ちゃーんとついて来いよ!!」
「はい!!」
冬の夜空を全速力で駆け抜ける。
身を切る寒さの中、あたしはとても晴れ晴れとした気分を感じていた。
こみ上げてくる感情が自然と口から溢れる。
その気持ちに身を任せ、あたしは大きな声で叫んだ。
「Mery X'mas!!」
──END
- 351 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月26日(木)01時44分30秒
- よっすぃーと小川の関係がなんかいい!こういうお話すごく好きです!!
- 352 名前:笑顔のサンタクロース作者 投稿日:2002年12月27日(金)07時17分32秒
- >>351
ありがとうございます。また何か思いついたら書かせてもらいます。
- 353 名前:プレゼントは、わ、た、し。 投稿日:2002年12月28日(土)12時17分08秒
- 「なっち、ハイ!、プレゼント・・・」
「ええ〜、ありがとう!・・・何かな〜」
リボンをほどく、なっち。
「ギャァ〜!、ひもパンじゃないの〜!」
「恥ずかしがりやの、なっちだから自分じゃ買えないと
思ったの〜。絶対、穿いてね〜」
「う〜ん、穿いてみるか〜。ねえ、今夜来る・・・」
「え〜、いいの〜、行く行く〜」
今度こそは、なっちの唇を奪ってやると、密かに誓う、
矢口である・・・。
終わり。
- 354 名前:とある楽屋の日常風景 投稿日:2002年12月29日(日)10時09分20秒
- ざわざわとした楽屋。
コンコン。
ノックの音を認識する前に。
バンっ!
乱暴に開かれた扉と。
同じくらい、荒れた雰囲気のヒト。
「おはよぉ〜〜」
「おはよーさん。うん。えーっとぉ・・・・」
一応、ご挨拶してるアタシの声なんて聴こえてないみたい。
当の本人は、キョロキョロ人ごみを見渡して。
「なっちぃ〜〜!!」
「へ? 何? あ〜裕ちゃん」
部屋の隅っこ。
ちっちゃい2人の片方を、チカラいっぱい叫んでる。
- 355 名前:とある楽屋の日常風景 投稿日:2002年12月29日(日)10時10分15秒
- ―――あぁ・・・コドモたちがビビってるよぉ。
まったく、このヒトは何しに、一体・・・・・
アタシの呟きなんて、聞こえるわけもなく。
ツカツカと近寄った裕ちゃんは、なっちの肩をグイっと掴んで。
「なっち!! どーゆーことやねん!」
久しぶりの怒鳴り声。
あぁ、相変らず元気だなぁなんて、しみじみしながら。
なっち、何したのかなぁって傍観者。
ついでに、ふっと周りを見ると、同じようなヒトが隣にも。
「カオリ?」
「うん。久しぶりだね」
笑顔を交わして、今度はじっくり視線を向けると。
いつの間にか、奥のほうでは、お説教が始まっていた。
- 356 名前:とある楽屋の日常風景 投稿日:2002年12月29日(日)10時11分29秒
- 「なっち。どーゆーことやねん」
「何のコトか、わかんないよぉ」
「そーだぞ、ゆーこ。イキナリ何言ってんのさ」
興奮した裕ちゃんと、その勢いに戸惑うなっち。
そんな2人に巻き込まれたヤグチは、可哀相に・・・・・・
「あんたなぁ。原田さんとラブラブやったやん。アカンでぇ」
「え??・・・・・・何のこと?」
「原田さん?・・・・・・あぁ、ドラマ? ホームズ?」
「そや。そのホームズとかで、あんたなぁ、アカンってぇ」
情けなそうな顔で、なっちにお説教する裕ちゃんは、何となく半泣き。
―――裕ちゃん、それって何か・・・・・・パパみたいだ。
- 357 名前:とある楽屋の日常風景 投稿日:2002年12月29日(日)10時12分13秒
- 「ヤグチもヤグチや。側にいたんなら、止めなアカンやん!」
「はぁ? 裕ちゃん? 大丈夫?」
「そーだよ。ドラマの中じゃん」
「ドラマん中やったら、オッケーなんかぁ? 何してもええんかぁ?」
矛先をヤグチに向けて。
お説教は、まだまだヒートアップ。
「というか、ヤグチは何もないよなぁ!?」
「は? ゆーこ、アホ?」
「や、何もなけりゃええねんけど・・・・・・」
と、突然グリンと振り向いて。
グレーの瞳が、アタシたちをキッと捕らえる。
「カオリぃ!!」
「へ??」
- 358 名前:とある楽屋の日常風景 投稿日:2002年12月29日(日)10時13分05秒
- カオリにしては素早い反応。
でも、イキナリの点呼に、驚きの表情を貼り付けたまま。
「あんたもな、リーダーなんやから、何でなっちを止めないんやぁ」
「あ〜〜・・・・・・そうだねぇ」
「ちゅうやで? なっち、ちゅうしてたで? 止めぇや」
「うん。そうだねぇ・・・・・・」
さすがカオリ。
聞いてるようで、聞いてるのかな?
でも、聞き流されてるの・・・・・・気付いてないみたいだね。
「裕ちゃ〜ん? なっちはキスしてないよ?」
「何や? 圭坊。―――何やって?」
「だから、なっちがキスしたのは、ネコだよ。ね?」
やれやれって顔して傍観してたなっちに、視線を向けると。
うんうん!って、チカラいっぱい頷く2人。
それを確認したヒトは、ちょっとチカラを抜いて。
あ〜そうなんやぁって、ホッと表情を崩したの束の間。
- 359 名前:とある楽屋の日常風景 投稿日:2002年12月29日(日)10時15分38秒
「あ〜〜。ちゅうか、あんた、なっち殺そーとしたやろ。どーゆーことやねん!!」
今度は、アタシにキッツイ視線。
―――怖っ。裕ちゃん、それ怖いから。
「何て怖いコトすんねん。予想してたけど、あ〜怖っ!」
・・・・・・何か、妙にむかついてきた。
何なのさ、その、予想してたって。
というか、あなたの頭ん中には、なっち&ヤグチしかいないのか?・・・・・・今更か。
「裕ちゃん?」
「何や? 殺人犯」
「・・・・・・・・もう1人、殺させたい?」
「―――あ〜、せや。ドラマの話やんな。うん」
そして、そそくさと部屋の奥に引っ込んで。
ちっさい2人と、うるさいオトナと。
幾つもの声が。ざわざわと充満するハローの楽屋。
―――これがいつもの、ココの風景。
end
- 360 名前:あとがき 投稿日:2002年12月29日(日)10時16分49秒
- 昨日の「ホームズ」からです。
一応、正月ハロプロ楽屋裏ということで。
- 361 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月31日(火)03時37分54秒
- 需要がありそうなので赤板に新スレ立てました。
作者フリー 短編用スレ 3集目
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