God bless
- 1 名前:H21 投稿日:2002年10月28日(月)21時30分50秒
「波の音がする。潮の匂いがする」吉澤が、夢ごこちにつぶやく。
「海についたの」石川は、うっとりと答える。
二人は手をつなぎ、砂浜をゆっくりと歩いている。
まっすぐに、海へ。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2002年10月28日(月)21時32分08秒
「間違いないよ。この子、石川梨華だよ」
「本物だ」
「ああ。テレビで見た通りの顔だね」
複数の声の主は、みな女性だった。石川は、少しだけ安心していた。彼女を
監禁している犯人たちが男性であったならば、最悪レイプまであったかも知
れないけど。そうではなくて良かった、と油断さえしていた。
その安堵が底なしの絶望にとって変わるのに、たいして時間はかからなかっ
た。この日、芸能人としての石川梨華の人生は終わった。
- 3 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時32分50秒
「矢口さん、来てくれたんですか」
「ありゃ。オイラだって分かるんだ」
吉澤の包帯がとれる日、矢口は花束を抱えて病院を訪ねた。吉澤はベッド
から身体を起こして、窓の外の日差しに顔を向けたまま、言葉を続けた。
「分かりますよ。矢口さんの足音はね、可愛い音がするんですよ」
なんだよそれー、と、矢口は明るく言った。スリッパをぱたぱた言わせて、
ベッドのそばまで歩く。吉澤はこちらを向いた。両目を包帯で巻かれたその
姿に、矢口ははっ、となった。
- 4 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時33分44秒
いつまでたっても、矢口はこの吉澤の姿に馴れることが出来ない。が、出来
るだけ動揺を気取らせまいと、平静を装った。
「お花買って来てくれたんだ。矢口さん、ありがとうございます」
「あ、うん。飾っておこうね」
「……いい匂い」
花を買っていこうかどうか、直前まで悩んだ。いくら綺麗な花も、今の吉澤
には見ることは出来ないから。
- 5 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時34分22秒
(でも良かった。よっすぃ、喜んでくれてるみたいだし)
空の花瓶に水を入れ、花を生ける。いちいち背伸びをしないといけないので、
それらはひどく手間のかかる作業だった。
くすくす、と吉澤の笑う声が聞こえて、矢口は振り返った。まるで矢口の姿
が見えてでもいるかのように、吉澤は手を口元に当てて、静かに笑っていた。
「なにがおかしいんだよ、よっすぃ」
「矢口さん、いちいち『うんしょ、うんしょ』って声出すでしょう? 背伸
びしてる矢口さんの姿思い出しちゃったんです」
吉澤の笑顔が透明で、矢口はどきりとした。照れ隠しに、どうせオイラは小
さいよ、と拗ねて言った。
- 6 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時35分02秒
「矢口さん」
「なんだよ」
吉澤は口元の笑みを消して、
「私のこと、バカだと思いますよね」
そう言った。
- 7 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時35分36秒
後藤真希に続くモーニング娘。の卒業生は、保田圭ではなかった。いや、急
遽、保田圭の卒業は取りやめになった。
- 8 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時36分07秒
『石川梨華と吉澤ひとみは本日をもちまして、モーニング娘。を卒業するこ
とになりました。これまで応援して下さって、ありがとうございました。な
お、今後の芸能活動の予定はありません』
- 9 名前:1 投稿日:2002年10月28日(月)21時36分53秒
なんの説明もなく、オフィシャルサイトでなされた告知。
「どうして吉澤まで?」
それが、告知を受けた芸能記者やファンたちの反応だった。
- 10 名前:H21 投稿日:2002年10月28日(月)21時37分43秒
つづく
- 11 名前:H21 投稿日:2002年10月28日(月)21時39分16秒
(注意)
当作品には、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
- 12 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時38分19秒
吉澤はベッドを降りた。矢口は、あっ、と寄り添おうとしたが、吉澤は笑って、
大丈夫ですよ、と手を振った。
「この部屋のことは、みんな覚えました。もう足をぶつけたりしませんよ」
そして、窓まで歩いた。
「これが窓。お天気がいいと、日差しのあったかいのを感じます。曇ってると肌
寒いです。雨の日は、朝から水の匂いがします」
手のひらで留め具を探り、ロックを外す。窓をいっぱいに開ける。風が、吉澤
の髪とパジャマの裾を揺らす。
- 13 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時39分01秒
- 「これが風。病院のお庭の椿の匂いが、ここまで香ることもあるんです。花の
匂いで季節を感じるなんて、私って風流でしょう?」
吉澤は窓を閉める。病室備え付けの洗面台へ移動し、蛇口をひねる。新鮮な水
が、蛇口から溢れる。指先で味わうかのように、吉澤は手のひらで水と戯れる。
「これが水。水の手触り。水の温度。水の匂い」
コップをさぐり当て、水を汲む。
「まだ、火だけは危ない、って触らせてくれないんですけどね」
- 14 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時39分51秒
矢口は、黙って吉澤を見ていた。
もしかしたら、吉澤は、矢口に見せるために常人と同じ様に振る舞える練習を
していたのかも知れない。
私のことは心配しなくてもいい、っていう、彼女からのメッセージなのかも知
れない。
「これから、包帯取るんだよね」
「今日からは、社会復帰するためのリハビリです。いつまでも甘えていられま
せんからね」
矢口は、病室の入り口に立てかけてあった盲人用の杖を見つけていた。すでに、
あれを使って病院のトイレくらいなら1人で行けるようになっているのだろう。
- 15 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時40分34秒
「よっすぃ、さっきお医者さんに話聞いたんだけどさ、明日、外出許可取って
るんだって? どうして?」
答えが簡単に予想出来る質問を、あえて矢口は発した。
「はい」
吉澤は、嬉しそうに微笑んだ。
「梨華ちゃんに会いに行きます」
あの事件の後、石川梨華に会ったモーニング娘。のメンバーはいない。石川当
人が、面会を頑なに拒否し続けていた。
- 16 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時41分04秒
- 「でも、石川は……」
「大丈夫。梨華ちゃんは、私になら、会ってくれます」
今の私になら、と吉澤は繰り返した。
突然、矢口の脳裏に、あの事件の映像がフラッシュバックした。矢口は両耳を
ふさいで、しゃがみ込みたくなる衝動を必死でこらえた。
(ああああっ!)
- 17 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時41分34秒
――鉄の鋲が入ったごついブーツが、溶けて変色した肉片を蹴り上げるイメージ。
- 18 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時42分08秒
矢口ですら、あの事件から立ち直ったとは言えなかった。何度も夢に見た。モ
ーニング娘。のメンバーたちの間で、不眠症になる者が続出した。みな、罪悪
感を感じていた。石川ひとりに不幸を押しつけたような気がしていた。
矢口は、ゆっくりと深呼吸して気分を落ち着かせる。
(矢口はね、だからあの時、よっすぃの気が狂っちゃったんじゃないか、って
思ったんだよ)
- 19 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時42分39秒
石川のいない、11人のモーニング娘。の冬のコンサートツアー。
石川のパートを他のメンバーが担当することは無かった。その部分は空けたま
まにした。最終公演では、会場のファン達が石川のパートを合唱した。
- 20 名前:2 投稿日:2002年10月29日(火)21時43分11秒
そしてコンサートが終わり、打ち上げの後、個人個人に与えられたホテルの個
室で、
吉澤は、自分の両目を潰した。
- 21 名前:H21 投稿日:2002年10月29日(火)21時43分51秒
つづく
- 22 名前:H21 投稿日:2002年10月29日(火)21時45分38秒
- 隠しの意味もある雑談。
いしよし好きな人にはお勧めできないかも知れません。
- 23 名前:H21 投稿日:2002年10月29日(火)21時46分31秒
特に、次回は。
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月29日(火)22時43分21秒
- 痛そう・・・
だけど凄く続きが気になります――
続き期待。
- 25 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時06分22秒
最初、石川は、顔に熱湯を浴びせられたのかと思った。
- 26 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時07分06秒
「ここにいる全員、楽屋から出ていけ!」
「モタモタするな!」
野太い、女性の声。
ばたん、と大きな音を立てて扉が開け放たれた。ここはモーニング娘。の楽屋
だ。ハロモニの収録を終え、みなメイクを落としたり衣装を着替えたりしてい
た。
別の番組の観覧の客なのだろうか、大柄の女性が三人、イスを蹴倒しながら真
ん中へ進んだ。
「貴方たち、なに?」
「うるせえ!」
- 27 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時07分45秒
マネージャーが声をかけると、怒鳴り声が返ってきた。メンバーたちは、粗暴
な乱入者たちに震え上がった。
「いいか、この楽屋は私たちが占拠する。お前らは邪魔だからとっとと出て行
け!」
手に、特殊警棒のようなものを持った女性がメンバーたちを睨み付けながら言
った。
「あなたたち――」
バン!
- 28 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時15分27秒
鋲のついた頑丈そうなブーツが、ロッカーを蹴りつけた。飯田が悲鳴をあげた。
「もう一度だけ言うぞ? 手荒なマネされたくなかったら、出て行け」
べこりと凹んだロッカーから足を抜いて、リーダーらしきひときわ体格のいい
女性は言った。
保田が、みなに目配せする。
(いいから、とりあえずみんな楽屋から出るよ。興奮させないように、ゆっく
り、ゆっくりね)
- 29 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時16分35秒
石川は、吉澤にくっついて、小さくなっていた。安心させようと、吉澤は石川
をぎゅっ、と抱きしめていた。
(梨華ちゃん、大丈夫? 歩ける?)
(うん。大変なことになっちゃったね)
「早くしろ!」
1人が警棒を振り回した。辻のボストンバックが叩き破られ、中の私物が散乱
した。
辻は泣きそうになりながら、みなに続いて楽屋から出た。
- 30 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時17分06秒
(行くよ、梨華ちゃん)
石川の手を引き、吉澤が扉に向かう。
(あ、ちょっと待って。携帯持っていかなくちゃ)
石川がつぶやく。
出口に近い鏡の前に、石川のピンクの携帯が転がっている。
(携帯なんていいよ。危ないから、早く出ようよ)
(ストラップがよっすぃとお揃いのなの。あいつらに壊されちゃう。よっすぃ
先に行ってて)
携帯を拾った石川は、娘。たちの列の最後尾についた。
- 31 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時17分57秒
楽屋の外では、最初に出たマネージャーがセキュリティに連絡を取っていた。
吉澤は、扉のすぐそばで石川を待っていた。矢口、飯田、保田、と続いたとこ
ろで、バタン、と扉が閉じられた。
(え?)
吉澤は扉に取り付いた。ノブをがちゃがちゃひねっても開かなかった。鍵をか
けられたようだ。保田も気づいたようで、
「石川!? まだ私の後ろに石川がいたよ! すいません! まだ石川が出て
ません!」
楽屋の中に向かって、扉を叩きながら叫んだ。楽屋から、石川のかん高い悲鳴
が聞こえた。
- 32 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時18分34秒
「十二人もいらないよ。誰でもいいから、仕返しするのは一人でいいんだ」
最後の一人。
彼女たちの狙いは、最後の一人をランダムに選ぶことだったのだ。
「ちょっと、仕返し、ってあんたたち何が目的で――」
保田の声は、ぎゃあああ、という凄まじい悲鳴にかき消された。石川の声とは
似ても似つかない、だけど、それは石川のものでしかあり得なかった。
- 33 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時22分25秒
「熱い熱い熱いーーーーッ!」
机のひっくり返る音、何かを蹴り倒す音、そして止むことなく続く石川の悲鳴。
「――――!」
吉澤も叫び続けていた。半狂乱になって、扉をやたらめったらに叩いた。手の
皮が破れて血がしぶいた。男性スタッフに羽交い締めにされて引き剥がされた。
- 34 名前:3 投稿日:2002年10月30日(水)21時22分56秒
「鍵を、早く鍵を開けて! 石川を助けてぇぇ!」
矢口が声を引き絞るように叫んでいる。安倍が、矢口を抱きしめて震えている。
飯田は腰が抜けたのかへたり込んでしまっている。五期メンバーたちは、オロ
オロと隅っこに並んで立っている。楽屋前の廊下は、混乱の極みにあった。
- 35 名前:H21 投稿日:2002年10月30日(水)21時31分53秒
続く
- 36 名前:H21 投稿日:2002年10月30日(水)21時32分28秒
次回も痛めで。
- 37 名前:名無し。 投稿日:2002年10月31日(木)17時21分08秒
- イタイ…
でも続きが気になる…
- 38 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時42分25秒
一分、
二分、
三分、
もう、石川の悲鳴は聞こえなくなっていた。まだ到着しないセキュリティを
待ちこがれ、メンバーたちはじっと楽屋の扉を凝視していた。まだ、ばたん、
どすん、と楽屋の中からは物音が続いていた。
「――?」
なにか、イヤな匂いが辺りに立ちこめ始めた。ゴムの焼けるような刺激臭だっ
た。それは楽屋からだった。
- 39 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時43分28秒
セキュリティが駆けつけてきた。後ろには制服を着た警察官もいた。
吉澤は、全身の血が沸騰するような怒りを覚えた。
(警察が来るまで待機してた?)
楽屋の鍵を渡されて扉に取り付いた警官は鼻をひくひくさせ「酸だ」とつぶや
き、表情を固くした。もう一人の警官は腰の拳銃に手を当てた。躊躇すること
なく、鍵を開け、三人の警官は楽屋内に飛び込んだ。
「梨華ちゃん!」
- 40 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時44分26秒
その次に駆け込んだのが吉澤だった。どうして携帯を取ってくる、と言った石
川を無理にでも引き留めなかったのか、もし石川の身に何かあったら、耐えら
れない、と――、
「なに、これ……?」
- 41 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時45分01秒
楽屋の中にいた女性三人は、警官によって床に押さえつけられていた。後ろ手
に手錠をかけられていた。
そして、床に、何かが横たわっていた。強烈な悪臭の発生源は、そこからのよ
うだ。
(身体)
そう、それは人の身体のカタチをしていた。ただ、顔の位置に、何か別の物体
がすげ替えられていた。
焼けただれた肉。
- 42 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時45分44秒
「吉澤あぁ!」
警官に取り押さえられている女性の一人が叫んだ。びくっ、と吉澤はそっちの
方向を向いた。
目を真っ赤に充血させて、乱入してきた女性の一人が吉澤を睨んでいた。
「矢口いぃ!」
「石川あぁ!」
「加護おぉ!」
三人は雑多に騒ぎ始めた。警官が、こら、大人しくしろ、と怒鳴りつけた。
「お前ら、チョーシこいてJrに近寄るんじゃねえよぉ!」
「腐れ○○○が二度と色目使えねえようお仕置きしてやった」
リーダー格以外の二人は、げらげらと笑い始めた。
- 43 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時46分20秒
がふっ、
と、ただれた肉の固まりが音を立てた。裂け目から声のようなものが漏れた。びくん、びくん、と痙攣した。
きゃあああ、という飯田の悲鳴が、扉からあがった。名を呼ばれて、覗き込ん
だようだった。
「生きてるぞ」
「救急車を、早く!」
男性スタッフが、扉の前で身体を張って中を見せないようにしていた。
(生きてる? 何が?)
(そうだ。梨華ちゃん! 梨華ちゃんはどこにいるの?)
- 44 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時46分54秒
セキュリティと男性スタッフが顔をしかめながらぞろぞろと楽屋に入ってきた。
その中に矢口もいた。
「よっすぃ……」
矢口はへたりこんで放心状態の吉澤の肩に触れた。矢口の手ばガタガタと震え
ていた。
「石川は、大丈夫だからね。石川は、大丈夫だからね」
カチカチと歯の音が合わない様子の矢口は、その物体を凝視して言った。
(え……?)
(これが梨華ちゃん?)
(これ、が、梨華ちゃん?)
- 45 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時47分29秒
床に押さえつけられた乱入者の女性三人は、荒々しく起こされた。彼女たちは
従順に従った。
かに見えた。
一番身体のごつい女性が吠えるような声をあげ、警官の拘束を振りほどいた。
そのまま床の物体に駆け寄り、
鉄の鋲のブーツで、
ただれた肉を蹴り付けた。
- 46 名前:4 投稿日:2002年11月01日(金)20時48分28秒
がつん、と音がして
肉片が壁まで飛んだ。
- 47 名前:H21 投稿日:2002年11月01日(金)20時49分00秒
つづく
- 48 名前:H21 投稿日:2002年11月01日(金)20時49分37秒
自分の日記サイトに、短文を書いてみたり。
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月01日(金)21時53分42秒
- いやぁ、前作に続いてまたハードな内容ですねぇ。
と言いつつ更新が楽しみです。
頑張って下さい。
- 50 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月02日(土)05時07分31秒
- う〜ん…
若いころの美空ひばりが硫酸をかけられた事件(体のどの部位だったかは知らないが)を思い出した。
あれは確か妬みも混じった偏執的ストーカーな少女が犯人だったかな。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月02日(土)05時12分01秒
- 顔だった。
1956/01/13/美空ひばり硫酸/浅草の国際劇場で「花吹雪おしどり絵巻」に出演中に、客席にいた19才のポニーテールの少女に2合入りの薬瓶に入った硫酸を顔にかけられた。全治3週間のやけど。
本編と関係なくてすみません。
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月02日(土)08時41分50秒
- 新作もイタイイタイ系ですね…
う〜む、読みたいやら読むの辛いやら…
でも気になる…術中にはまってる?(w
- 53 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時16分51秒
矢口と吉澤は、江ノ電に揺られていた。
平日昼間の車内に、人影はまばらだ。サングラスをかけた吉澤は、矢口の差し
出した腕をぎゅっ、と握っている。
がたんがたん、と車内が揺れる。矢口は吉澤と少しでも身長を合わせようと一
番の厚底をはいていた。おっとお、とバランスを崩したところを吉澤が抱き留
めた。
「大丈夫ですか? 矢口さん」
矢口が見上げると、吊革を持った吉澤が笑っていた。吉澤の背景に、窓から見
える海が一面に広がっていた。水面は日差しを反射して、キラキラと光ってい
た。矢口は軽い目眩を覚えた。
- 54 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時17分33秒
「湘南の海ですね」
「うん」
吉澤は、まるで矢口の視線につられたように自然に振り返った。矢口は一瞬、
これまでの悪い出来事はすべて夢で、石川にも吉澤にも不幸な出来事なんて何
一つ起こっていないのだと錯覚した。矢口が家族のように大切に思っている人
たちが相次いでこんなひどい目にあうはずなんて――、
「海にも気配、ってあるんですね。……見えなくても、なんかすっごい『海』
って存在を感じます」
(ああ。そうだよね。夢なんかじゃないよね)
矢口は鼻の奥がつん、として慌てて息を止めた。
- 55 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時18分06秒
吉澤は矢口の頭に手を置いて、
「矢口さん、泣かないで下さい」
と困ったように言った。
「泣いてないよ」
「矢口さんが泣いてると、なんだか捨てられた子どもみたいで切なくなります」
そう言って、矢口を抱き寄せた。
(よっすぃは、なんだか雰囲気が変わった)
吉澤に包まれながら、矢口はそう思った。
- 56 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時18分49秒
病院から外に出るのは今日が初めてです、と吉澤は言っていた。病院からタク
シーへ、そして駅へと矢口は吉澤を先導した。
本当は、矢口は今日は仕事だった。でも、包帯がとれた姿を矢口に見せたあと、
吉澤から、
「明日も来てくれますか?」
と静かに懇願され、うん、とうなづいてしまった。
二人は、横浜の北のはずれにある療養所に向かっていた。そこで、石川梨華は
療養生活を続けていた。
- 57 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時19分36秒
矢口と吉澤は電車を乗り継ぎ、私鉄の小さな駅に降り立った。そこから療養所
に電話をかけた。よく考えたら、事前に連絡を入れておくべきだった。
「あの、もしもし。私、矢口真里と言います」
石川梨華の母親は、もちろん矢口のことは覚えていた。昔、石川に会わせても
らおうと、矢口、吉澤、飯田、保田の四人で療養所に押し掛けたこともあった。
あの時は、丁寧に面会は断られたのだけれど。
矢口が石川に会わせて欲しい旨を伝えると、
『梨華は、まだ誰とも会いたくない、って言ってるんです。本当に申し訳ない
んですけど』
「あ、あの、オイラじゃないんです。会いたがってるのは、吉澤ひとみなんで
す」
矢口は、吉澤の目が見えなくなっていることを告げた。吉澤の失明については
公式にマスコミには発表しなかったので、石川の母親はひどく驚いていた。
- 58 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時20分18秒
「会わせてくれるって。行こう」
駅前に古びたバスが停まっていた。
「ほら、ここに段があるよ」
ステップの段差に戸惑う吉澤の足を片足ずつ取り、矢口はバスに乗り込んだ。
療養所の前で、石川の母親は待っていてくれた。吉澤の変わり果てた姿に、言
葉を失っているようだった。
「一体どうして……どうしてそんなことに」
彼女からの無遠慮な同情に、吉澤はへへっ、と笑うだけだった。
- 59 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時20分52秒
「オイラ待合室でジュースでも飲んで待ってるよ」
矢口は石川の母親によろしくお願いします、と吉澤を託した。
「矢口さん、ありがとうございます」
「なんだよ急にお礼なんてさ」
「私、矢口さんのこと好きですよ」
矢口は頬が熱くなって、
「年上をからかうな!」
怒ったフリをした。
- 60 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時21分24秒
吉澤はしゅん、となって、
「ごめんなさい。感謝の気持ちをどう伝えたらいいか分かんなくて」
本当に申し訳なさそうに頭を下げた。
「怒ってない怒ってない。いいから、早く石川に会っておいで」
「はい」
母親に付き添われ、不安定な足取りで庭の丘を歩いていく吉澤。
その後ろ姿が見えなくなってから、矢口は泣いた。
- 61 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時22分40秒
−−−−−−−−−−−−
- 62 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時23分19秒
覆面のように、顔に包帯を巻いている。傷は癒えている。だが、顔の神経と筋
肉は酸に焼かれてしまい、表情を作ることはもう出来なかった。ケロイド状の
火傷を整形するために、これからも何度もメスを入れなければならなかった。
毛根もかなり損傷してしまっているようで、未だにまばらにしか毛髪はない。
石川は自分の顔を鏡で正視出来ない。だから、顔をさらす勇気が持てない石川
にとって、包帯は覆面と同じだった。
石川の最近の考え事は、どうやってひっそりと死のうか、それだけだった。
- 63 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時24分14秒
石川が入院している療養所は、広大な土地に森や池を配して、国立公園のよう
になっていた。一般人の目を気にすることなく、ゆっくりと散歩したりぼんや
りと放心することが出来た。
包帯の隙間から、見える世界。
だが、心が折れてしまった石川にとって、どんな景色も冷たいモノクロにしか
映らなかった。
向こうから、母親が歩いて来るのが見えた。
三時のお茶の時間なのかしら、と石川は立ち上がり、その場で凍り付いた。
一緒に、誰かがいる!!
誰とも会いたくなかった。親兄弟以外の親戚にさえ、この姿は見せたくなかっ
た。石川は、自分の顔が化け物であることを自覚していた。顔を他人にさらす
ことは、死よりもつらい恥辱だった。
- 64 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時25分04秒
「来ないで!」
石川は叫んだ。幸いなことに、声だけはあの事件でも損なわれることは無かっ
た。
「梨華ちゃん!」
その声に、石川は動揺した。
母親が連れてきたのは、石川が最も会いたくない人物だった。
(よっすぃ!)
吉澤は、こちらへ向かって丘を駆け下りようとダッシュして三歩目で派手に転
んだ。
(……?)
- 65 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時25分37秒
吉澤の様子がおかしいことに石川は気づいた。母親に助け起こされても、自分
一人ではそこから一歩も動けないようだった。
母親に手を引かれ、杖をつきながら、慎重な足取りで吉澤は歩いた。
「……よっすぃ、目、どうしたの?」
その時、石川は自らの羞恥のことは忘れていた。心配の方が上回っていた。吉
澤のサングラスの奥のまぶたは閉じられたままだった。
- 66 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時26分11秒
「梨華ちゃん、顔、見られたくない、だから会えない、って言ってたじゃん?」
事情を知らないのか、母親も、はっ、とした表情で隣りに立つ吉澤を見やった。
- 67 名前:5 投稿日:2002年11月02日(土)10時26分51秒
「だから」
吉澤は、
「目、潰して来た」
そう言って笑った。
- 68 名前:H21 投稿日:2002年11月02日(土)10時27分22秒
つづく
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月02日(土)16時22分31秒
- 「ドールズ」を見た時にも感じた、支配されるような感覚に包まれました。
今作の作者さんのコンセプトはまだわかりませんが、個人的には前作以上に
「究極の愛」と言う感じを受けます。
頑張ってください。
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月03日(日)20時23分03秒
- ホームページの番外編とともにとても気になりマス。怖いもの見たさとでもいうか。
なるほど、あっちの話とも微妙にリンクしてるんですな。
- 71 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月03日(日)21時00分54秒
- ホムペ知りたいっス。
- 72 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時54分56秒
モー娘&ジャニーズ<裏>合コンは存在した!
http://www.ultracyzo.com/
とある雑誌に掲載された、モーニング娘。とジャニーズJrの合コン記事。
ジャニーズJr.山下智久さん液体かけられる 番組収録後に路上で。
http://www.mainichi.co.jp/entertainments/geinou/0209/18-01.html
犯人は、モーニング娘。のファン。
それがきっかけだった。
- 73 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時55分28秒
−−−−−−−−−−−
- 74 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時56分14秒
ステージを羨望のまなざしで見上げることしか出来ない彼女にとって、崇拝し
ている偶像への冒涜は許し難いものだった。
羨望と嫉妬で歯ぎしりするような思いが彼女を狂わせた。夜ごと残酷な妄想を
思い浮かべては、精神の安定を図っていた。しかし暗い思いを繰り返すことで
彼女の精神は失調していった。いつしか妄想は使命に変わっていた。
私設親衛隊の中で、体格のいい仲間に声をかけた。淫売に制裁を下すだのなん
だのと焚き付けてその気にさせた。
「……」
目の前には、両手、両足を仲間に押さえつけられた少女――テレビでよく見る
顔、あのモーニング娘。の石川梨華がきゃあきゃあと可愛らしい声をあげてい
る。
- 75 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時56分55秒
(やっぱり男は、こういった女性を好むんだろうね)
子ども時代から体格が良かった。女扱いされたことが無かった。中学生時代の
あだ名は『ダンプ』だった。好きだった男子に想いを告げた翌日には、告白の
一字一句すべてをクラスじゅうの生徒が知っていた。現実の異性に失望した。
病院に勤める追っかけ仲間から調達してきた茶色のビンのふたを慎重に空ける。
絶対に匂いを嗅いではいけない、と強く言われている。
本当は、分かっていた。いくら情熱を捧げたところでそれは疑似恋愛でしかな
い、なんてことは。今自分たちがしていることは妄想に狂ったファンの暴走に
過ぎない。
「やるよ」
声をかける。
- 76 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時57分34秒
「ああ」
「めちゃくちゃにしちゃえよ」
二人とも激しい興奮状態にあるのか鼻息が荒い。
石川梨華の上にまたがる。怯えた視線が彼女を見上げている。
「あんたが悪いんだよ。あんたが悪いんだ」
ビンの中身をぶちまける。
刺激臭がある、と聞いたが、何も臭わなかった。悲鳴をあげているようだった
が、何も聞こえなかった。
「まだだ。まだ、押さえつけておきなよ」
自分の声が、遠くに聞こえた。のたうつ石川梨華の身体はどこか悩ましげだっ
た。綺麗に整った顔を、酸が残酷に犯していくのをスプラッタ映画でも見てい
るような気持ちで眺めていた。
- 77 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時58分06秒
−−−−−−−−−−−−−−
- 78 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時58分45秒
「お帰り。早かったね」
目を赤くして、それでも出来るだけ元気な声で矢口は吉澤を出迎えた。
「どうだった?」
矢口の差し出した腕に、吉澤がつかまる。石川の母親の申し訳なさそうな様子
から、なんとなく結果は予想できるのだけれど。
「梨華ちゃんに追い返されちゃいました」
しんみりと、吉澤は言った。
「そっか……」
「せっかく矢口さんにここまで連れてきて貰ったのに、ごめんなさい」
一番落胆しているだろう吉澤は、まず矢口に詫びた。矢口はなぐさめの言葉を
飲み込んでしまった。光を無くしてから、彼女は周囲に細やかに気を使うよう
になった。吉澤を励まそうとお見舞いに行ったモーニング娘。のメンバーたち
は、逆に仕事の愚痴をこぼし、吉澤に元気づけられる始末だった。
- 79 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)19時59分25秒
でも、それが矢口にはかえって心配だった。吉澤は、自分の感情を殺してしま
ったかのように思えたから。
「ここ、いいところですね」
吉澤は丘に身体を向け、石川の母親に話しかけた。
「太陽の匂いがします」
そう言って、陽だまりのように微笑んだ。
「今日は矢口さんに連れてきてもらいましたけど、明日からリハビリ頑張って、
一人で来れるようになったら、また来ます」
吉澤は腕を曲げて、ちからこぶを作るマネをした。何も言わず、石川の母親は
深々と頭を下げた。
じゃあ帰りましょうか、と矢口の肩に手を置く。
- 80 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)20時00分08秒
「よっすぃのバカーー!」
矢口は、懐かしい声を聞いた。
このカン高いキンキン声は、
「梨華ちゃん……」
吉澤が声の方向に顔を向けてつぶやく。
矢口は見た。
丘の上に立つ少女の姿を。
矢口は、足がすくんだ。石川梨華は神経質気味に顔全部を包帯で巻いていた。
白い包帯のあちこちから、黒い髪の束が生えていた。包帯の隙間から、目がこ
ちらを見ていた。矢口は石川に対していびつなものを――生理的な恐怖を感じ
た。
(……私って)
同時に、底なしの自己嫌悪が矢口を襲った。
(私って、最低だ)
石川がみんなと会いたくない、っていうのも当然だ。頭では理解しているつも
りだったのに、いざ目の当たりにすると石川にひどい思いを抱いてしまった。
- 81 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)20時00分38秒
「矢口さん」
優しく肩を押し戻す力を感じた。吉澤だった。
「矢口さんはここで待っていて下さい。私が一人で行きます」
吉澤は唇の動きだけで(自分を責めないで下さい)と矢口に伝えた。足下の草
を杖の先で確かめつつ、吉澤は一歩一歩、石川へ向かって丘を登っていった。
- 82 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)20時01分14秒
「……よっすぃのバカ。どうして会いたくない、って言ってるのに来ちゃうのよ」
「ごめん」
二人の会話が、風に乗って矢口の耳に届く。
「よっすぃのバカ。どうして帰れ、って言ったら帰っちゃうのよ」
「ごめん」
「よっすぃのバカ。どうして自分の目をそんなことしちゃうの」
「ごめん」
「よっすぃのバカ。どうしてもっと早く会いに来てくれなかったの」
「ごめん」
「……ごめん以外のこと言ったらどうなの」
「梨華ちゃんにまた会えて嬉しい」
石川は、おどおどと、吉澤に手を伸ばした。そして、頬に触れた。
吉澤は、石川を壊れ物でも扱うかのように、柔らかく抱きしめた。
- 83 名前:6 投稿日:2002年11月05日(火)20時01分53秒
矢口は、久しぶりに、本当に久しぶりに、声をあげて泣く吉澤の姿を見た。
- 84 名前:H21 投稿日:2002年11月05日(火)20時02分25秒
つづく
- 85 名前:H21 投稿日:2002年11月05日(火)20時03分15秒
番外編は、あくまでもお遊びなので。
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/12717/diary.html
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月07日(木)00時44分26秒
- 鳥肌が立ちました。凄い
- 87 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月09日(土)20時58分16秒
- 顔が包帯グルグルの女が夢に出てきました。
こえかったぁ・・・(泣
- 88 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月09日(土)23時16分26秒
- 今日はじめて読みました…。
凄い!凄すぎます…。
切ない・・・痛い・・・凄い感情が押し寄せてきます。
更新期待してます。本当に、凄いです。
- 89 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時20分31秒
加護は、矢口の部屋の扉をノックした。しばらくして、扉が開いた。同室の保
田が顔を出した。おいで、といざなわれ、加護は中に入った。
「矢口さん、よっすぃ、どうでした?」
夜。
モーニング娘。の10人は、明日早朝からの長距離移動を控えて、前日からビ
ジネスホテルに泊まることになっていた。あの吉澤の事件があってから、でも
ないが、個室をあてがわれることはなくなり、昔のようにペアで部屋割りされ
るようになった。
- 90 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時21分04秒
「ああ、加護かあ。今日の仕事、代わりにお願いしちゃってゴメンね。よっす
ぃ、梨華ちゃんのトコロに泊まるってさ」
「そう……ですか。梨華ちゃん、会ってくれたんだ」
「加護さあ、よっすぃのことが気になるんだったらどうして声かけてあげない
の?」
吉澤のお見舞いにはみんなで行った。だが、加護は口々に声をかけるメンバー
たちとのやりとりをじっと見ているだけだった。
- 91 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時21分41秒
加護は一人で吉澤のお見舞いにも行った。杖をついて歩く練習をしている吉澤
を遠くから見てるうちに、夜になってしまったこともあった。きっと吉澤は、
加護が来ていることすら気づいていないだろう。
加護は、メンバーで唯一の吉澤の怪我の目撃者だった。それがショックだった
んじゃないか、そう矢口や飯田は推測していた。
- 92 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時22分30秒
−−−−−−−−−−−−−−−−
- 93 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時23分19秒
「ああーっ、よっすぃ、加護のグロス使ったあ」
「いいじゃん。減るもんじゃないし」
「減るじゃん!」
石川があんなことになってから、みなピリピリしていた。メンバー内でも、ち
ょっとしたことで言い争いになったりした。
楽屋での、吉澤と加護の口ゲンカの原因も、たわいのないものだった。
「よっすぃ、加護の勝手に使わないでよ」
「うっさいなあ。返すよ、ほら」
- 94 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時23分51秒
本当はそれほど怒ってる訳ではなかった。メイク道具の仲間うちでの貸し借り
はこれまでもよくあったことだ。
石川があんなことになってから、吉澤はずっとぼんやりしてることが多くなっ
た。楽屋で吉澤がじゃれる相手はずっと加護だったから、いきなり捨てられた
ような気持ちになった。
吉澤に文句を言ったのは、その間は加護を見ていてくれてるから。
「もういらない」
加護は、リップグロスをゴミ箱に投げ捨てた。普段ならいさめてくれるはずの
他のメンバーたちも、今はそんな余裕もないのか誰も何も言わなかった。
- 95 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時24分57秒
(よっすぃ、少しは怒ったかな? それとも傷ついたかな?)
なんでもいいから、加護は吉澤に構って欲しかった。だが、吉澤は無言で席を
立ち、楽屋を出ていってしまった。
それが、加護が吉澤と交わした最後の言葉となった。
- 96 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時26分32秒
−−−−−−−−−−−−−
- 97 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時27分05秒
どうして自分が謝らないといけないのかは納得していない。でも、あれから気
まずくなって、話かけることも出来なくなってしまっている。
今日は、コンサートツアーが終わって、みんなハイになっていた。最終公演で
はアンコールで石川コールが起こった。そして、インストになる石川パートを
客席のみんなが合唱したときは、メンバーはみんな涙目になった。保田はメイ
クが完全にはげ落ちていた。久々に、みんないいムードになっていた。
(今日のこの勢いで、よっすぃに謝ってしまおう)
- 98 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時27分34秒
広間ではメンバーたちの宴会が続いている。吉澤は、体調がすぐれない、との
ことで先に部屋に戻っていた。
加護は、吉澤の部屋の前に立った。すると、中から低い苦悶の声が聞こえてき
た。
加護が真っ先に連想したのは、石川の事件だ。
「よっすぃ!」
中にどんな危険が潜んでいるか、なんて考えなかった。このフロアのすべての
部屋を関係者で借りていたので、鍵はかかっていない。加護は部屋の中に飛び
込んだ。
- 99 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時28分21秒
(――っ!)
部屋の中に、四つん這いになった吉澤がいた。吉澤はうめき声をあげていた。
顔を押さえていた。その手が濡れていた。
「よっすぃ、どうしたの、よっすぃ!」
吉澤を抱き起こそうとして顔を覗き込んで、
- 100 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時29分01秒
――真っ赤なくぼみが二つ。
- 101 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時29分42秒
加護は悲鳴をあげた。
なにが起こったのか理解できなかった。
スタッフが悲鳴を聞きつけて、吉澤の部屋へと駆けつけた。メンバーたちは広
間に集められた。
状況が一切分からず、遠くに聞こえる救急車のサイレンや入れ替わり鳴り続け
る携帯の着メロ、慌ただしく廊下を歩き回る警察の足音に怯えていた。
- 102 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時30分13秒
吉澤はしばらく活動を休養する、とアナウンスされた。そしてそのまま、モー
ニング娘。を卒業することになった。
矢口と二人っきりの時、加護は、吉澤の事故の真相を聞いた。
「よっすぃはさ、梨華ちゃんに会うために、目を見えなくしちゃったんだ」
お見舞いに行った時に、本人がそう言ったらしい。
- 103 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時30分45秒
そして、加護へ紙袋を差し出した。
「なんですかこれ?」
「加護に渡して欲しいんだって。よっすぃから頼まれたんだ」
病院の地元の店なのか、聞き慣れないドラッグストアの紙袋だった。中には、
新品のリップグリスが入っていた。
読みにくい字で、メモが一枚添えられてあった。
- 104 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時31分41秒
『同じのさがしたけどなかったんだ
これでゆるして
いつもおみまいに来てくれてありがとう
byよしこ』
- 105 名前:7 投稿日:2002年11月13日(水)00時32分21秒
加護はその場にしゃがみ込んで泣いた。
- 106 名前:H21 投稿日:2002年11月13日(水)00時32分47秒
つづく
- 107 名前:LVR 投稿日:2002年11月13日(水)01時04分07秒
- 痛さの中にも、それぞれの優しさが見えて……。
いったい、どのように収束していくのでしょか。
- 108 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月13日(水)08時37分52秒
読んでいる途中、つい息を止めてしまいます。
痛い題材なのに、痛いだけではない何かを感じてしまいます。
こんなに続きが早く読みたいと言う作品は滅多に有りません。
更新、楽しみにしています。
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月13日(水)12時16分53秒
- 何と言うか・・
痛いけど優しくて、ぬくもりを感じるような作品です。
更新が待ち遠しくて身悶えしています。
- 110 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時25分43秒
(熱いっ!)
保田は、汗びっしょりになって目が覚めた。
また、あの夢だ。
あの、罪深い夢。
- 111 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時26分14秒
−−−−−−−−−−−−−−
- 112 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時27分07秒
石川の事故があってから、モーニング娘。のメンバーたちは定期的に精神科の
カウンセリングを受けている。特に、吉澤以下の若いメンバーたちに与えた心
理的衝撃はかなりのもののようだ。
紺野は、夜中に石川の叫び声が聞こえてくる、とカウンセラーに告げたし、小
川はつい先日あの事件の夢をまた見たそうだ。
飯田や安倍も、若年層に比べたらマシ、という程度で二人ともやつれている。
やはり、彼女たちも当時の夢を見てしまうのだそうだ。特に飯田は楽屋にいる
と、扉が施錠されているか確認の為に何度も何度も席を立つようになっていた。
保田も、カウンセラーには『石川の夢を見てうなされます』とだけ答えている。
でも、本当は、保田の見ている夢は、皆とは違う。
- 113 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時27分41秒
(吉澤――)
吉澤は、発作的に不機嫌になることもあったが、基本的に、感情の起伏が無く
なってしまったように保田は思う。今、楽屋でにぎやかにしている時も、吉澤
は一人、壁に張ってあるモーニング娘。のポスターをぼんやりと眺めている。
そして時折、目を閉じて、うんうんとうなずく。
「よっすぃさ、何してるの?」
さすがにヤバイと感じて、保田は吉澤に声をかけた。
「焼き付けてるんです」
微笑みを浮かべたまま、吉澤は意味不明のことを言った。
- 114 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時28分23秒
「やきつける?」
「はい。みんなの顔を、ずっとずっと忘れないように、記憶に焼き付けていま
す」
保田も、自分自身の精神状態がテンパってることを自覚していたが、吉澤もか
なりのものだ。
吉澤が何度も石川の面会に行っては断られていることを保田は知っている。な
ぜなら、保田が病院を訪ねる時は大抵吉澤も来ているからだ。足を運ぶ頻度は
実のところ、保田の方が多い。結局、石川に会えたためしはないのだけれど。
- 115 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時29分04秒
ただ、石川を担当している澤田、という看護婦と顔見知りになったお陰で、い
ろいろと話を聞くことが出来た。石川は精神的なショックからか、色が見えな
くなっているのだそうだ。すべての風景は、モノクロに映るらしい。
そして、入院中に何度も自殺未遂を図っている。石川の腕には、カミソリで傷
つけた自殺未遂の跡がミミズ腫れのようになって無数に走っているのだそうだ。
(それに、佐々木先生が)
(先生?)
(い、いえ、なんでもありません)
何かを言い淀んだ看護婦は、明らかに動揺していた。
- 116 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時29分34秒
(何を言いかけたんですか?)
(佐々木先生が、石川さんの担当医だ、ってことだけです)
看護婦のきつい口調が気になったが、保田はそれ以上深く追求することが出来
なかった。
(どうして……)
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
誰が、こんなひどい罰を受けなければならない程の罪を犯したというのだろう。
- 117 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時30分05秒
−−−−−−−−−−−−−
- 118 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時30分51秒
罵声と共に、楽屋の扉が蹴り開けられる。
体格のいい、プロレスラーのような女性が3人、わめき散らしながら部屋の中
に入ってくる。
(ああ、またあの夢だ)
保田は、これが夢だ、と自覚している。自覚していても、逃げ出すことは出来
ない。
彼女たちの命令に従って、保田はメンバーたちを順番に外に出していく。五期
メンバーや、加護辻を先に出して、そして吉澤と石川も外へ。腰が抜けそうに
なっている飯田や震えているなっち、矢口が出たトコロで、自分も外へ……、
ばたん、と、保田の鼻の先で扉は閉ざされる。石川は携帯を取りに戻らなかっ
たし、だから保田が一番最後だ。
- 119 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時31分27秒
扉の向こうから、激しいノックの音とメンバーたちの保田を呼ぶ声が聞こえて
くる。保田は乱暴に髪の毛をつかまれ、引きずられるようにしてテーブルの上
に仰向けに投げ出される。
両手を二人がかりで押さえつけられていて動けない。リーダー格らしい、ひと
きわ身体の大きな女性が保田をまたぐようにして見下ろしている。
リーダーは、手にしていた茶色の小瓶のフタを開ける。その慎重な手つきに、
保田はぞっとする。
「あんたが悪いんだよ。あんたが悪いんだ」
そして、肌を焼く硫酸が、保田の視界一杯に広がる。
- 120 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時32分02秒
(熱いっ!)
保田は、汗びっしょりになって目が覚めた。
反射的に、顔に手を当てる。まだ熱の感覚が頬に残っている。
(大丈夫。肌は焼かれていないし、これは夢だし、本当は、楽屋を最後に出た
のは私じゃないから)
でも、全身の震えは止まらない。保田はきわどいところで助かったのだ。
そして、思ってしまう。
(……私じゃなくて良かった)
- 121 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時33分24秒
十二人の中の誰かが引き受けなければならない罰。それを回避出来たことに安
堵している、醜い自分自身。それが、保田の罪だ。
罪悪感が、悪夢を繰り返し見せられる理由だろう。
(石川が代わりになってくれて助かった)
(自分じゃなくて良かった)
それが貴方の深層心理です。そう指摘されるのが怖くて、カウンセラーにも正
直に話すことが出来ないでいる。
だって、仕方ないじゃない。
じゃあ私はどうしたらいいの?
- 122 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時34分16秒
−−−−−−−−−−−−−−
- 123 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時35分23秒
そして、吉澤の事件が起こった。
不幸の連続に、ついにモーニング娘。のメンバーたちはパニックに陥った。一
週間の臨時休暇を貰ったメンバーたちを一人一人訪ねて励まして回ったのは保
田だった。
- 124 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時36分15秒
−−−−−−−−−−−−−−
- 125 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時36分46秒
面会の許可が下りたのは、吉澤の精神状態が安定しているからだそうだ。言動
もしっかりしていて、錯乱している様子もない。ただ、どうして自分で自分の
目を傷つけるような行為に走ったのか、その理由だけは沈黙を守っているらし
い。
「あ、いらっしゃい」
吉澤は――お見舞いに行ってこういうのも変な話だが――元気そうだった。た
だ、目隠しのように巻かれている白い包帯姿が、痛々しく映った。
- 126 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時37分30秒
今日ここに来たのは、飯田、安倍、保田、矢口の四人。
吉澤はまず、自分の勝手な行動でモーニング娘。のメンバーみんなに迷惑をか
けたことを詫びた。
事務所との契約関係の話し合いが終わったら、このまま芸能界を引退すること
になるだろう。
視力の回復は絶望的で、なんとか光を感じることが出来る程度まで戻れば上出来。
それらの事象を、吉澤は淡々と語った。
- 127 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時38分02秒
とりとめのない話で場は盛り上がった。どこか白々しい、無理をしてテンショ
ンをあげているような空虚な会話。
みなが一番聞きたかったこと――吉澤の自傷の理由には、誰も触れなかった。
だから保田が聞いた。
「あんたのそれ、石川のためにやったんだよね」
- 128 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時38分56秒
安倍と飯田が、ぎょっ、とした表情で保田を見た。矢口は、なに? なに?
と保田と吉澤の顔を交互に見た。
吉澤は、口をあんぐりと開けて、さすが保田さんだあ、とつぶやいた。
保田は、すべてを納得した。
「なっち分かんないよ? 圭ちゃん、どうして石川の名前が出てくるの? 吉
澤、なにがさすがなの?」
飯田は黙っていた。理解したようだった。うつむいて、背中を向けてしまった。
「顔見られるの嫌だから、だから、会わない、って言ってたけど――え? え?
まさか、どうして、よっすぃが、そんなバ――」
バカげた、と言おうとしたらしい矢口は口を閉ざした。口調は明らかに怒って
いた。
- 129 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時39分46秒
保田は――、
保田は、ぞくり、と全身に悪寒が走るのを感じていた。
そうか。
保田と同じような苦悩を、吉澤もいだいていたのだ。
あの時、石川の手を引いていたのは吉澤だ。吉澤はあの時、石川の手を離して
しまった。
だから、これが、吉澤の出した答えなのだ。
保田が立ちすくんでいる間に、吉澤はあちら側へ足を踏み入れてしまった。
- 130 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時40分32秒
飯田の悲しみ。
安倍の困惑。
矢口の怒り。
- 131 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時42分10秒
彼女たちは、真っ直ぐだ。
正しくて、健全だ。
だけど、それでは、辿り着けない。
それだけでは、石川に届かない。
保田は、神聖な気持ちで、吉澤を眺めた。吉澤に、迷いはないように見えた。
- 132 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時42分45秒
果たして、
かの行為は、
吉澤にとって、謝罪なのか手段なのか。
石川にとって、重荷なのか救いなのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。
- 133 名前:8 投稿日:2002年11月14日(木)19時44分13秒
つづく
- 134 名前:H21 投稿日:2002年11月14日(木)19時45分48秒
ここまでを第一部とするならば、
次回からは第二部です。
- 135 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月14日(木)22時36分51秒
- なんというか・・・人の精神について考えさせられます・・・
- 136 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月16日(土)22時24分08秒
- んー前回よりも中途半端な気がするのは漏れだけか・・・
まだ完結してないのにこんな事言っちゃいけないね。スマソ。
- 137 名前:読み人 投稿日:2002年11月27日(水)00時45分23秒
- 待ってます。
- 138 名前:H21 投稿日:2002年11月30日(土)11時23分33秒
第2部
- 139 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時26分03秒
(波の音がする)
ぼんやりと石川は思った。
彼は医者だった。背が高く、若くてハンサムだった。同僚の看護婦たちにもよ
くモテているようだ。
だが、今は、石川の目の前で床に這いつくばっている。石川の差し出した素足
に、唇を押しつけている。
こんな顔になってしまっても、元モーニング娘。の石川梨華、という偶像は彼
を強力に魅了してやまないらしい。恍惚とした表情で足の指の一本一本に口づ
ける彼を、何の感情も沸かず、石川は見下ろしている。
- 140 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時26分48秒
石川の足を愛撫すること。
それ以上のことを彼は求めようとはしない。それは崇拝する石川の聖を汚して
しまう、許されざる行為なのだそうだ。
彼は石川の下僕同然だった。時折、こうやってご褒美をあげてさえいれば、石
川の望むどんな薬でも――睡眠薬や向精神薬、モルヒネでさえ――処方してく
れた。
彼の調合したクスリが、石川の思考を麻痺させる。
- 141 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時27分24秒
(波の音がする)
脳のイメージは、すみやかに幻覚に反映される。部屋の中が夜の海で満ち始め
る。薄暗い天井を、海面が反射した月の青が流れる。とろりとした温かな海が
石川の足を濡らし、身体を濡らし、そして全身が夜の海にひたる。
――それは予感だったのかも知れない。
甘い幻覚。
青い海の底へ、石川は沈んでいく。
- 142 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時28分11秒
−−−−−−−−−−−−−−
- 143 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時29分00秒
石川は、個室をあてがわれていた。母親と、担当の医者と一部の看護婦以外に
は、自分の顔を晒すことをひどく怖がっているのだそうだ。
「ここで、梨華ちゃんが生活してるんだね」
吉澤は半歩ずつ、部屋の中へと足を進めた。杖が、ベッドのへりに当たる。吉
澤は手を伸ばし、シーツに触れた。
「梨華ちゃんの寝てるベッド」
そこで90度右に回転し、また半歩ずつ歩き出す。吉澤の意図を理解したのか、
石川は吉澤の隣りに寄り添うように立つ。そして、腕をからませる。
「ありがとう」
吉澤は石川に礼を言い、二人寄り添ってまっすぐ歩く。壁に突き当たると、手
のひらで表面を触る。
- 144 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時29分35秒
「ちょっと横にずれるとね、窓があるの」
石川に手を引かれ、吉澤は二歩右へ。
「窓際には花瓶を置いてるの」
吉澤の手は、窓から花瓶を辿る。
「カーネーションを生けてるの」
花に軽く触れ、匂いをかぐ。
吉澤の足の先が、何かに当たる。しゃがんで指で触る。紙の感触。雑誌だ。
「散らかしちゃってて」
「本棚どこ?」
雑誌を拾い上げる。石川に導かれて、吉澤の手は本棚を確認する。
- 145 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時30分09秒
壁の灯りのスイッチの場所、
テレビのリモコン、
ナースコールのボタン。
三十分かけて、吉澤は石川の部屋をすみずみまで体験した。
「これで、梨華ちゃんの部屋がどんなのか『見える』よ」
言いながら、吉澤は扉の方向へ顔を向けた。
「……誰か来た」
- 146 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時30分50秒
「回診の時間です」
女性の声。
吉澤は足音から、男性と女性が一人ずつだ、と予想する。
「驚いた。石川さんのお友達?」
肩に、手が触れる。
吉澤の目が悪いことにすぐ気づいたようだ。
「初めまして。私は看護婦の澤田です。もう一人は、石川さんの担当医の佐々
木先生」
「佐々木です」
声のする方に、吉澤は頭を下げた。
そして、部屋の隅に置いてある丸イスにすたすたと歩き、腰を下ろした。
- 147 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時31分32秒
「あの、今から石川さんの包帯を外すんですけど――」
包帯を取り替える時は、母親にさえ立ち会わせない、と聞いた。
「大丈夫ですよ。私、見えませんから」
「だから、よっすぃはいいの」
石川の声に甘美な響きが混じる。
石川の包帯がほどかれていく。もし、吉澤に視力があったなら、石川に加えら
れた仕打ちを正視出来なかっただろう。
- 148 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時32分21秒
顔の右半分は、修復が進んでいて、それほどの損傷はないように見える。ただ、
骨まで達した酸は、顔の筋肉と神経の機能を永遠に奪い去ってしまっている。
結果、彼女の顔はデスマスクの肉面を張り付けてでもいるかのような薄ら寒い
印象を受ける。
左半分は、まだ無惨に変色したままだ。ケロイド状の火傷、ひきつれたような
唇、満足に機能しないまぶた、原型をとどめていない耳。
腕には、ミミズ腫れのような肉の盛り上がりが無数に走っている。吉澤は後に
知ることになるのだが、石川は幾度となく自殺未遂を繰り返している。
消毒と投薬を終え、医者と看護婦は部屋を出ていった。
- 149 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時32分52秒
「お散歩の時以外はね、」
ふう、と石川はため息をつく。
「包帯を外しなさい、ってお医者さまに言われてるの」
看護婦の澤田が、石川の包帯を外す前にカーテンを閉めたことに吉澤は気づい
ていた。素顔を晒す時、石川は締め切られた空間に一人でいないと落ち着けな
いのだろう。
「お茶でも、入れようか」
吉澤は、大またで歩き、ホットプレートのようなコンロに指で触れた。
- 150 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時33分27秒
「梨華ちゃんの部屋には電磁調理器があるんだね。これだったら私にもお湯が
沸かせるよ」
「よっすぃはそんなことしなくていいよ。私がしてあげる」
「……私はね、自分で出来ることは、なんでも自分でしたいんだ」
吉澤は、石川の声のする方向に顔を向け、あごの下に手を当てた。そして、べ
らべらとしゃべり始めた。
「楽しみだなー、最近、お茶に凝ってるんだよね。お湯の温度と葉っぱを投入
するタイミングってすっげえ重要なんだよ?」
石川は口元に手を当てて、笑いだした。そして、あれ? あれ? とつぶやい
た。
- 151 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時33分58秒
「梨華ちゃん、どうしたの?」
「なんでもない」
吉澤は石川の顔に手を伸ばす。
「なんでもないよ」
かさかさした固い肌を撫でる。
吉澤の指が、しっとりと濡れる。
「泣いてるの?」
「……よっすぃの声、聞いたら、笑っちゃって」
吉澤の指が、石川の涙をぬぐう。
「ずっと、ずっと、……笑ったことなかったなあ、って思ったら……涙が出て
きちゃった」
「梨華ちゃん……」
石川は細い声で嗚咽し続けた。
- 152 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時34分54秒
「ずっとひとりぼっちだったの」
喉を詰まらせながら、石川は言った。
「私、ずっとひとりぼっちだったの。誰にも顔を見られたくないの」
吉澤は黙って石川の言葉を聞いている。
「当直のお医者さまが、担当の佐々木先生じゃなかったら、夜中に顔が痛くな
ってもガマンしてるの。朝までガマンしてる。顔を見られたくないから」
石川は吉澤に手を重ねた。
「淋しいの。ひとりぼっちの夜は、淋しいの」
吉澤は石川の手を握り返した。
「今日、泊まっていくよ。一晩中、ずっと手を握っててあげる」
- 153 名前:1 投稿日:2002年11月30日(土)11時35分37秒
夜。
二人は一つのベッドで折り重なるようにして眠った。
石川は、五分とたたず熟睡してしまった。ただ、吉澤がトイレに行こうとして
つないだ手をほどくと、びくん、と目を覚ました。
「あ、ごめん」
手を優しく握ると、また石川は安心したようにすやすやと寝息を立て始めた。
(梨華ちゃんの匂い、懐かしいな)
吉澤はトイレをガマンしつつ、いつしか眠りに落ちていった。
- 154 名前:H21 投稿日:2002年11月30日(土)11時37分09秒
つづく
- 155 名前:リエット 投稿日:2002年11月30日(土)22時55分43秒
- 待ってました!
傷ついた者だけがいる世界の空気感が、すごく透明で綺麗ですね。
- 156 名前:名無し香辛料 投稿日:2002年12月01日(日)23時33分09秒
- はああ。ドキドキします。
- 157 名前:読み人 投稿日:2002年12月02日(月)00時54分29秒
- 更新おつかれです。
これも「愛の形」ってことなんですかねぇ…
今後の展開がドキドキですね。
- 158 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時40分19秒
翌朝、よっすぃは帰っていった。また来るよ、って言ってくれた。嬉しかった。
看護婦の澤田さんが、昨日は睡眠薬を使わないで眠れたことに驚いていた。な
んだかこんなにぐっすり眠れたのって久しぶりだった。
やっぱり神様っているんだ。
私の最後のお願いを聞いてくれたんだ。
ありがとう神様。
ありがとうよっすぃ。
(これで決心がついたよ)
本当に、本当にありがとう。
……よっすぃ。
- 159 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時40分58秒
−−−−−−−−−−−−−−−−
- 160 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時44分02秒
石川と久しぶりの再会を果たした翌朝。
通勤ラッシュも一区切りした電車の中。
(あれ見ろよ)
(なんだ?)
(ほら、モーニング娘。の……)
(グラサンあやしすぎ)
(なんかおかしくね?)
(目、見えないのか)
吉澤は、自分のことを噂しているらしいひそひそ話を耳にした。
来週発売の週刊誌に、吉澤は元々緑内障を患っており、今回網膜剥離を併発し
失明した、と発表されることになっていた。
- 161 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時46分23秒
気配が吉澤を取り囲んだ。電車内は混雑している様子は無かったのに、ぎゅう
ぎゅうと前後から身体を押しつけられてきた。薄ら笑いのような声が聞こえた。
(……!?)
悪寒が走った。吉澤の胸を、誰かの手のひらが触ったのだ。故意としか思えな
かった。怖くなった吉澤は車両を移動した。
電車を乗り換えても、不審な足音は吉澤についてきた。もう彼らは声を発する
ことはなくなっていた。駅を出たところで5メートルほど後方にいる複数の足
音が忍び足になったことに気づいて、身の危険を感じた吉澤は記憶しているタ
クシー乗り場へと急いだ。
- 162 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時47分11秒
だが、どうやらタクシーはいないようだった。タクシー待ちの客の気配もない。
立ち止まった吉澤の背後に、ひたひたと足音が迫る。
(逃げなくちゃ)
早足で歩き始めたが、もう音も隠す必要がないと判断したのだろう、どかどか
とつきまとう靴音が吉澤の左右に並んだ。
「お前、モーニング娘。の吉澤だよな。目、悪いんだ。俺たちが道案内してや
るよ」
「結構です」
「今、仲間ケータイで呼んでっから。ミニバンソッコー回して来るってよ。2
時間くらい休憩すっけどいいよな」
- 163 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時48分06秒
下品な笑い声。
吉澤はこれから自分がどんな目に合わされるのかを想像し、ぞっとなった。し
かし、彼らから逃げ出せる自信はなかった。相手は複数だし、男だし、
(それに、目が見える)
今、自分がどこへ向かって逃げているのかも分からなかった。もしかしたら、
ひとけのないところへ、自分から歩いているのかも知れない。
(そうだ! 今来た駅に逃げ込めば――)
「きゃあっ!」
不意に腕を絡み取られ、強引に引っ張られた。吉澤は大声で悲鳴をあげた。
- 164 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時48分48秒
「よっ。王子さまは朝帰りっすか? カッコイイねえ」
吉澤は、全身が安堵で脱力するのを感じた。
「ごっちん……ビックリしたよう」
「びっくりしたのはこっちだよ。やぐっちゃんにさあ、コンサートで遠征して
る間、よっすぃのことよろしく、って言われちゃって、せっかくお見舞いに来
てあげたらいきなり無断外泊してるじゃん」
で、あんたたちは何、と後藤は低い声で言った。どうやら回りの男たちに向け
ての牽制のようだ。
舌打ちの音がして、ぞろぞろと足音が遠くなっていった。
- 165 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時49分19秒
(なにヤバそうな男引き連れてんのさ。ほら、急いでここ離れるよ)
耳元で後藤に囁かれ、吉澤はうんうんと頷いた。
後藤は、吉澤の入院している病院に朝イチで向かったらしい。いないと知って、
駅まで戻ってきたところで吉澤に出くわしたようだ。
「タクシー待たせてあるんだ。それに乗って病院まで行こう」
後藤は吉澤と腕を組んだまま歩いた。
タクシーの後部座席に乗り込み、二人はふう、とため息をついた。
- 166 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時49分57秒
「で、久しぶりに再会した梨華ちゃんどうだった?」
「どう、って、別になにもしてないよ。手をつないで眠っただけ」
後藤のしししという笑い声が聞こえた。
「ちがうくて、そうじゃなくて、梨華ちゃん元気だった? って話」
「んー、あんまし良くない。体調が、っていうんじゃなくて、精神的に」
後藤が身体をこちらに乗り出したようだ。髪の先が吉澤の頬に触れた。シャン
プーの匂いがした。
「そのことで、今日は来たんだ」
「そのこと?」
「うん」
後藤の声に、微妙な響きが混じった。あまり良くない話のようだ。
- 167 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時50分32秒
「せっかくだからさ、よっすぃのお部屋見せてよ」
そう言って、後藤の気配は離れていった。どうやらタクシーの中ではそれ以上
の話をするつもりはないようだった。
- 168 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時52分01秒
−−−−−−−−−−−
- 169 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時53分15秒
「まあ座っててよ。ウーロン茶でも飲む?」
自分の病室で、吉澤は冷蔵庫からペットボトルを取り出した。コップを並べ、
中身を注ぐ。かたん、と後藤が腰掛けたと思われるイスの音から、その隣りに
置いてあったサイドテーブルまでコップを運ぶ。
「驚いた。よっすぃ、本当は見えてるんじゃないの?」
ずけずけと、遠慮もしないで後藤は言った。
「これくらいなら出来るよ」
吉澤はベッドに腰掛けた。そして、後藤の方向に顔を向けた。
しばらくの間、後藤は沈黙していた。ずずず、とウーロン茶をすすっていた。
吉澤は、後藤が口を開くのを待った。
- 170 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時54分05秒
「あのさあ、あの病院――梨華ちゃんが入院してるところってさ、ヤバいよ」
吉澤は、ベッドに深く座り直した。舌で唇を湿らせた。大きく深呼吸をひとつ
して、それで? と後藤に話の続きを促した。
「後藤の知り合いにさあ、医者のぼんぼんがいるんだけど。そいつが言うのよ。
『俺は元モーニング娘。の石川梨華の主治医をしている、って男が、アイドル
好きの若い医者たちに自慢している』って」
吉澤は、心拍があがっていくのを感じた。
芸能界を引退した以上、石川梨華は一個人としての石川梨華でしかない。それ
は吉澤も同じだ。でも、『モーニング娘。』というカテゴライズの上で一括り
にされた時、彼女たちの個は無くなってしまう。
元モーニング娘。という名前のみが彼女たちの前に大きく立ちはだかっている。
人形としての石川梨華。人形としての吉澤ひとみ。いつか、この呪縛から逃れ
られる日は来るのだろうか?
- 171 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時55分07秒
「そのぼんぼんに探り入れてもらって、情報仕入れたんだけど。そこって精神
科も兼ねてるんだけどさ、評判悪いんだよね。点数稼ぐためにバカみたいな量
の精神薬を投与するんだって。普通の人でもあそこに入院したら精神病になっ
ちゃうよ、って噂されてるみたい」
後藤は、ホントならもっといろいろ協力してあげたいんだけど、こっちはこっ
ちで今いろいろあってさあ、と、どこか嬉しそうに言った。
「分かった」
吉澤は静かに言った。
「今度、梨華ちゃんに聞いてみるよ。ごっちん、教えてくれてありがと」
吉澤は、なんとなく、後藤のいろいろは市井紗耶香絡みのような気がした。訊
ねてみようと口を開きかけて、
「結局さあ、私たちって、人形なんだよね」
後藤のつぶやきに吉澤ははっ、となった。
- 172 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時55分41秒
「誰も中身なんて見てくれないんだよ。綺麗なお人形――モーニング娘。の後
藤真希。あいつらにとって必要なのはただそれだけ」
膝の上に手の感触があった。後藤が、吉澤のすぐ前に来ていた。
「ウチらの気持ちが分かるのって、ウチらしかいないと思わない?」
どこか悟ったような響きの声。
「そう――だね。私たちには私たちしかいないんだよね」
「後藤さあ、しばらく姿消そうかと思ってるんだ」
突然の告白に、でも吉澤は理由を問いただそうとは思わなかった。きっと、私
と同じように、後藤も何かと戦っているんだ、吉澤はそう思った。
- 173 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時56分14秒
「ね、よっすぃ、キスしよっか」
「……うん」
久しぶりの後藤の感触。それは、昔交わした
キスとはまったく異なった温度を持っていた。
「がんばれ、よっすぃ」
「ごっちんも負けんな」
エールを交わし合い、そして二人は別れた。
- 174 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時57分01秒
−−−−−−−−−−−−
- 175 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時57分38秒
検索エンジンにも登録されていない、深いところに沈められているサイト。そ
の、さらに深い場所にある鍵付き掲示板で、ふつふつと毒を吐き続ける書き込
みがあった。
尊敬し、心酔していたこのサイトの管理人は実刑判決をくらった。副管理人だ
った同士と彼女は、二人して執行猶予をもらい釈放された。しかし、留置所で
過ごした二ヶ月の間に、彼女たちを取り巻く環境は激変してしまっていた。バ
イトは首になり、家族からは勘当され、住んでいたマンションは追い出された。
同士は行方不明となり、彼女は一人になった。
前科者として、新しいバイト先どころか住むところさえままならず、なけなし
の貯金を切り崩して安ホテルを転々としていた。
- 176 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時58分09秒
(どうしてこんなことになったんだろう?)
(なにがいけなかったんだろう?)
彼女は、石川梨華を芸能界から引退に追い込んだ襲撃事件の実行犯の一人であ
る。罪が軽くてすんだのは、未成年ということと、主犯に脅されてやったとい
う二人の口裏合わせのお陰だ。
もう誰も近づかないと思われた廃墟のような掲示板に、久々に第三者からの書
き込みがあった。IPを調べてみると、鍵をメールしたメンバーでは無かった。
だが、今はそんなことは重要ではなかった。書き込まれた内容こそが、彼女が
一番求めていたことがらだった。
- 177 名前:2 投稿日:2002年12月19日(木)00時58分43秒
――横浜の北のはずれにある、とある療養所の住所。
そこになにがあるのか誰がいるのか、余計なことは何一つ書かれてはいなかっ
たが、彼女には分かった。いや、分かったと思い込んだ。
(……私をこんな目に合わせたあいつに、仕返ししてやる)
世間が彼女の敵に回った以上、世間のルールやロジックに彼女が従うべき理由
などなかった。
彼女は、最後の残金をかき集め、そして行動に移った。
- 178 名前:H21 投稿日:2002年12月19日(木)00時59分15秒
つづく
- 179 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月19日(木)14時17分09秒
- 久々更新オツです
- 180 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月19日(木)19時00分44秒
- いい作品ですね。引きこまれました。
- 181 名前:読み人 投稿日:2002年12月20日(金)01時59分28秒
- 正直、怖いですね・・・
読むのも怖いし、怖いほど引き込まれてるし・・・
更新期待です。
- 182 名前:リエット 投稿日:2002年12月22日(日)01時04分34秒
- 前回の話と繋がっているのでしょうか……。
一息すらつく暇もなくて、引き込まれています。
- 183 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月24日(火)10時31分08秒
- 更新お疲れ様です。
これからもしかして、もっと怖い展開になっていくんじゃないかと心配してます。
作者さん頑張って下さい。
- 184 名前:ななし 投稿日:2003年01月06日(月)20時30分05秒
- ほぜむ
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月19日(日)13時26分23秒
- 更にほぜむ
- 186 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月24日(金)16時24分06秒
- 個人的に久々にいしよしでキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
といった感じ。期待sage
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月01日(土)12時54分27秒
- ドキドキ。待ってます。
- 188 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月12日(水)17時40分40秒
- ほぜん♥
- 189 名前:KIIRO 投稿日:2003年02月19日(水)16時40分19秒
- 保全
- 190 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)00時22分58秒
「あ、飯田さんお早うございます」
「よっすぃ大変だよ! ごっちんがいなくなったんだよ」
吉澤の病室で、午前九時に待ち合わせ。扉を開けた飯田の第一声は、それだっ
た。
(ごっちん、この前そんなこと言ってたよな。そっかあ。……私も、みんなに
頼ってばっかじゃなくて、そろそろ行動を始めないとね)
ここじゃないどこかへ。
今じゃないいつかへ。
「よっすぃ、ビックリしないの?」
出かける支度を終えていた吉澤は、杖を付いて立ち上がり、
「飯田さん、今日はお世話になります」
そう言って頭を下げた。
- 191 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)00時24分07秒
- 「あ、あー。えー?」
予想外の反応のせいなのか、飯田は工藤静香のような声でどもった。だが、急
に落ち着き払った堂々とした態度で、
「なに気を使ってんのよ。よっすぃは圭織を頼ってくれたらいいんだからね。
圭織は一生、よっすぃのリーダーだよ」
吉澤のことをずっとモーニング娘。のメンバーと同じように思っている、と言
いたいらしい。
「じゃあ行きましょうか」
飯田に手を引かれて、吉澤は病院を出た。飯田は、ぶつぶつと口の中で(圭織
も全然動揺してないんだからね。そりゃごっちんがいなくなって心配だけど、
うろたえたり騒ぎ立てたりしたらリーダーとして失格だからね)と呟いていた。
- 192 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)00時24分43秒
(病院から病院へ。飯田さんに連れられて)
吉澤には通い慣れた、石川へと続く療養所の道だったが、飯田には新鮮だった
のだろう、電車の外の景色にはしゃいだ様子だった。後藤の件はひとまずおあ
ずけのようだ。
「ね、飯田さん」
「ほらほらよっすぃ、島だよ島!」
扉の前に並んで立って。ふらつかないように吉澤は飯田と腕を組んで。
「こうしてると、飯田さんとデートしてるみたいですね」
飯田はふふふっと笑いながら、そうだね、と言った。そして石川にヤキモチ焼
かれちゃうよ、と付け加えた。
- 193 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)00時25分24秒
「飯田さんを触っていいですか?」
しばしの沈黙の後、いいよ、という飯田の声を聞いて、吉澤は手を伸ばした。
指が、瑞々しい髪に触れた。手のひらで、飯田の耳をさわった。指先で、吉澤
の記憶の中の飯田の輪郭を辿った。
睫毛。
まぶた。
頬。
唇。
組んだ腕から伝わってくる飯田の鼓動が少し早くなった。
- 194 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)00時27分26秒
−−−−−−−−−−−
- 195 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)00時28分02秒
「えーー、なんでダメなのよ!」
療養所の受付で、石川梨華は面会謝絶中だと告げられた。飯田が窓口の事務員
にくってかかったが、頑として面会の許可は下りなかった。
「チャーミーの容態が悪くなったの? 面会出来ないくらいに?」
(飯田さん、チャーミーって……)
「関係者以外の方にお教えすることは出来ません」
判で押したような反応に、飯田はますますテンションをあげたようだ。
「圭織は部外者かも知んないけど、よっすぃは関係者だよ。ほら、よっすぃ言
ってやりな、チャーミーとは肉体関係者だって」
「そんな訳ないでしょう!」
- 196 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時07分16秒
受付で押し問答を続けていると、
「これはこれは、モーニング娘。の飯田圭織さんと吉澤ひとみさんですね」
背後から、二人は声をかけられた。
「私はもうモーニング娘。じゃありません。佐々木先生」
吉澤は、石川の担当医の名を呼んだ。
「それはどうも。ここじゃなんですから、向こうで説明させて頂きましょうか」
吉澤は小声で(梨華ちゃんを担当してるお医者さん)と飯田に説明した。
- 197 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時07分53秒
==================
- 198 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時08分31秒
「朝方、石川梨華さんが自殺未遂を図りまして。今は、鎮静剤で眠って頂いて
おります」
単刀直入に、佐々木医師はそう告げた。
はっ、と飯田の息を飲む気配がした。
「それで石川の様子はどうなの?」
飯田が立ち上がったのか、がたん、と席を蹴る音が吉澤の耳に届く。
「少し出血があった程度です。形成外科手術で傷跡も消せます。ただ、問題な
のは、彼女の心の問題の方でして」
「ココロ……?」
「理不尽な事件で、芸能界から引退を強いられたショックのせいでしょうね。
今は、生きる目的を見失っているようです」
- 199 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時09分37秒
会話は、飯田と佐々木医師の間で行われていた。吉澤は一言も言葉を発しなか
った。
佐々木の声は柔らかく、発する言葉は理知的で整然としていた。声の質から大
体の体格も想定できた。また、飯田の返答の調子から見て、それなりに良い見
た目の持ち主であろうことも類推できた。
きっと、彼は、頼もしく映る人物なのだろう。弱気になりやすい病人なら尚更、
彼のような医者を信頼するだろう。
目に映るものに頼っていれば。
吉澤は、視力を失って、逆にいろいろなものが見えるようになった。
「当療養所では、肉体的なリハビリテーションの他に、心のケアにも積極的に
取り組んでいます。海外の最先端の医療現場で修行してきたカウンセリングの
専門家が、今は、昔の華やかな時代を思い出させてしまうモーニング娘。さん
に会わせるのはお勧めできません、と仰っているのです。どうかご理解下さい」
「はい。……無理言ってごめんなさい」
飯田は、最初の勢いはすっかりなくして、しょげた声で言った。
- 200 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時10分14秒
「石川梨華さんは、こう言ってはなんですが、自殺未遂を繰り返しています。
我々は、なんとかして、肉体的にも精神的にも、彼女を社会復帰させたいと―
―」
「先生」
吉澤は、佐々木の言葉を遮った。
「嬉しそうですね」
佐々木は言葉に詰まったようだった。しばらくの間、絶句していた。
彼の言葉から伝わってくる感情は、石川のことを話すときのみひどく歪んだ。
石川が自殺を図ることは、彼にとって興奮する出来事のようだった。
(梨華ちゃんの主治医に会って話が出来て良かった)
「吉澤、ひとみさん」
動揺からか、佐々木の声はひどくかすれた。
- 201 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時10分56秒
ぶくぶくと醜く肥え太った、血走った目の小心なケモノ。
吉澤の脳裏に、そんなイメージが浮かんだ。きっと、これこそがこの医者の正
体。
「それは一体、どういう意味でしょうか?」
咳払いをひとつ。どうやら体勢を立て直したのか、また穏やかな口調に戻って
佐々木は言った。
「……佐々木先生」
吉澤は、彼の質問への返答はあえてしなかった。
「私、ここに転院してきてもいいですか?」
この病院は危険だった。ここから、石川を連れ出さなければならなかった。そ
の為に吉澤が出来ることは限られていた。
「それは――」
- 202 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時11分40秒
佐々木はそれだけ言って言葉に詰まった。吉澤は、今、彼はどんな表情をして
いるのだろう、と思った。声、挙動、息遣い、そのすべては、まるで性的に欲
情でもしてしたのだろうか。
「あ、それいいよ。石川ってさあ、吉澤には心開いてるもんね。電車でお見舞
いに通うよりもずっといいよ。これってなんていうんだろ。一石二鳥?」
飯田は、いい考えだ、と単純にはしゃいでいた。
「分かりました。それはとても良いアイデアだと思います。私個人としても、
元モーニング娘。さんがお二人も入院して頂けるなんて、医大の同期たちに自
慢できますよ」
佐々木は笑い、飯田もつられて笑った。
佐々木の笑い声の奥に潜む冥い響きに、吉澤は震え上がった。こんなにもスト
レートに歪んだ感情をぶつけてきているというのに、飯田は気づいていないよ
うだった。
- 203 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時12分12秒
==========================
- 204 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時12分52秒
三日後。夜十時。
佐々木は吉澤のカルテに目を通していた。転院の際の引継ぎ用に、送付されて
来たものだ。吉澤の視力回復の可能性は、限りなくゼロだった。本人も回復を
望んではいないとのことだ。
「佐々木先生、準備できました」
「分かった。すぐ行く」
転院初日。
佐々木は、吉澤の個室へと向かった。佐々木の来訪を知らされていたのか、ベ
ッドに腰掛けた状態で、こちらに顔を向け、これからよろしくお願いします、
と言った。
「初めに、基本的な診察を行います。それでは上着を脱いで貰えますか」
「はい」
- 205 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時13分41秒
吉澤はパジャマのボタンを外した。下着はつけていなかった。
彼女の上半身は、元とはいえ芸能人の名に恥ずべきところのない見事なものだ
った。佐々木は職業柄、よりその素晴らしさを理解することが出来た。同年代
の女性とは比較にならない。
(石川梨華を除いて……だが)
吉澤ひとみの身体が素晴らしいとするならば、石川梨華の身体は神々しかった。
一通り触診を行い、看護婦に手伝わせて吉澤にパジャマを着させた。
「それでは検査用に採血します。腕をまくってください」
ありえないことではあるが、もし、吉澤の目が見えていたなら、看護婦が用意
した注射器に、佐々木が何かの液体を吸いだしている様子が見えていただろう。
- 206 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時14分49秒
中身は、液状のリタリンとアンナカのブレンド。
リタリンは医者の処方する最強の向精神薬だ。普通ならナルコレプシーの患者
にのみ用いられる。アンナカは……正式名称は安息香酸ナトリウムといい、少
なくとも治療薬ではなかった。馬の発情促進剤として開発された経歴を持って
いた。
巷では、一般的にはリタリンの代わりに覚醒剤を使用するようだ。だが、意識
を吹き飛ばす催淫剤としては、こちらの方がより強力だと佐々木は考えていた。
「ちくりとしますよ」
注射針を、吉澤の腕にあてがう。じわりじわりと、針を進入させていく。皮膚
を何段階かに突き破っていく感触が佐々木の指に伝わってくる。針の先端が血
管の壁に触れる。注射針ごしに、吉澤の鼓動が伝わってくる。
- 207 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時15分35秒
ぷつ、と血管の中に針の先端が潜り込む。佐々木はゆっくりと息を吐きながら、
親指に力を込め、吉澤の血に液体を注いだ。
吉澤は違和感を感じたのか、こちらに顔を向けた。
「何を、注射してるんですか!」
「あなたがここに来た目的は分かっています。まあ、それはあとからゆっくり
白状してもらうとして、まず、あなたには精神分裂病になってもらいます」
振りほどいた吉澤の腕から注射針がすっぽ抜けた。佐々木は力を込めて吉澤の
手首をつかんだ。先ほどの注射跡から、ぷくり、と血が膨らんで球状になった。
看護婦が後ろから吉澤の肩を固定し動けないようにした。佐々木は、同じ場所
に、注射針を挿入した。
- 208 名前:3 投稿日:2003年02月20日(木)01時16分36秒
吉澤の白い肌が紅潮し始めた。食いしばった歯の隙間から、やめてください、
と言った。もう遅かった。佐々木は、最後の一滴を吉澤の中に放ち終えた。
拘束から開放され、吉澤はベッドに横倒しに倒れた。ぶるぶると震えだし、あ
ごを仰け反らせて、ああっ、と声を漏らした。
- 209 名前:H21 投稿日:2003年02月20日(木)01時17分20秒
つづく。
- 210 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月20日(木)05時24分41秒
- 来た―――――!!!引き続きがむばってください。。。
- 211 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月20日(木)21時25分30秒
- 待ってますた・゚・(ノд`)・゚・
ああ、よちぃ…。
どうなるんでしょうか。気になります。
- 212 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時35分26秒
得体の知れない何かを注射されてしまった恐怖感は、すぐに吹き飛んだ。吉澤
の思考は、細切れに分断された回転する巨大な歯車の連続体になった。視界い
っぱいに広がった白いシーツ。それは今、ベッドに顔を押し付けているから。
いや、頬と布がこすれてる感触が白いシーツのイメージを想起させただけ。砂
漠に吹く風が砂をさらさらと鳴らす。その音と風景が白いシーツの存在してい
る理由。
「効いてきたようですね。道木さん、この患者が錯乱して自傷しないように処
置を」
誰かの声が聞こえる。言葉は空気の振動だ。鼓膜と声帯のシンクロニシティ。
手首と足首に布のようなものを巻かれる。それらがぐい、と引かれ、吉澤はベ
ッドに大の字になる。白い天井が『見え』る。吉澤には、それが現実なのか妄
想なのか区別がつかなかった。きっとどちらも正解なのだろう。
ぱん、と軽く頬を叩かれる。意識が現実を意識する。
- 213 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時36分59秒
「すっかりイッちゃってるね。まだ下半身に来ないのかな?」
若い女性の声。女性の指が、そろりと吉澤の胸の隆起を撫でた。
光の津波が吉澤の全身を襲った。突然皮膚の感度が跳ね上がった。縛られてい
る手首足首からの強い刺激が快感に変わった。驚いてもがくと、パジャマと素
肌が擦れて、まるで全身を羽毛で撫で回されているような感覚になった。
「モーニング娘。の子たちって、やっぱり男遊び激しいの?」
女性の声。
「石川さん以外はな」
佐々木医師の声。
『石川』という単語を聞いた途端、吉澤の脳裏に現実と変わらぬ昔の石川のイ
メージが満ち溢れた。
- 214 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時37分32秒
「梨華ちゃん……」
吉澤は呻いた。
「やだ。この子、石川梨華でオナってるんじゃないの?」
そう言って、女性はケラケラと笑った。
「さて、そろそろ私たちは引き上げるか。吉澤ひとみさん、いい旅を」
気配は部屋を出て行った。
吉澤の錯乱した夜は、長く長く続いた。
- 215 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時38分10秒
=================================================
- 216 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時39分11秒
吉澤の意識がようやく地についたのは、明け方だった。じんじんと頭痛がした。
(私の判断は、甘かったんだろうか)
ぐったりと疲弊した頭で考える。これが小説とか映画なら、敵の陣地に潜り込
んで、颯爽と囚われのヒロインを救い出したりするのだけれど。だけど、これ
が現実だった。吉澤は敵の虜になり、オモチャにされている。
クスリが効いている間、夢想だけで何度も絶頂に達した。あの状態だと、知ら
ない男でも――それこそ佐々木でさえも――受け入れてしまいそうだ。自分が
自分で無くなってしまう恐ろしさに、吉澤は震え上がった。性的な暴行こそ受
けはしなかったが、自ら身体と心をひどく汚されてしまったように感じた。も
はや、吉澤ひとみは麻薬経験者なのだ。
(梨華ちゃんもこんな目にあってるんだろうか?)
早く、一刻も早く、石川を連れてここから逃げ出さないといけない。
気がつくと、カーテン越しの窓の外が明るくなっていた。
- 217 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時39分53秒
(朝――)
両手両足は縛られたままだ。いつまでこの状態は続くのだろうか。
(とりあえず、疲れた。寝よう……)
とろとろとまどろみ始めた時、がちゃりと扉の開く音がして、吉澤ははっ、と
目を覚ました。
「お早うございます、吉澤ひとみさん。朝のお薬の時間です」
昨日の女性の声。きっと看護婦なのだろう。
「手足をほどいてください。どうしてこんなひどいことをするんですか? 警
察に通報しますよ」
返答は無かった。ただ、右腕に注射の針が刺さる感覚があった。
- 218 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時40分31秒
「ええっ」
「昨日よりも少し量多めにしておきますね」
「や、やだ。もうやめて。もうあのクスリはいらない。いらないったら!」
「ちょっと暴れないで。すぐにこのお薬が大好きになりますからね」
「もうやめて……もうやめてったら……、あ、、、、ああ、、、また……」
脳の中に道すじが出来上がってしまったからなのか、昨日よりも早く来た。
それはより現実的で生々しかった。
- 219 名前:3 投稿日:2003年02月21日(金)20時41分33秒
その日の昼も、夜も、クスリを打たれた。
吉澤の人格は何度も何度も陵辱を受けた。
- 220 名前:H21 投稿日:2003年02月21日(金)20時42分06秒
つづく
- 221 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月22日(土)04時19分56秒
- あぁ、よっすぃ〜・・・
- 222 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月22日(土)09時29分27秒
- 読んでいるほうが狂ってしまいそうだ。。。
- 223 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時44分28秒
また、死ねなかった。
ドラマなんかだと手首を切って自殺したりするのに、どうして私はうまくいか
ないんだろう。どうしてこんなになってもまだ生きてるんだろう。
(やっぱりチャーミーはダメな子)
私は、真新しい包帯の巻かれた右手首を眺めながら、ぼんやりと思った。
「よっすぃ……」
私を生んでくれたお父さんお母さん、一緒に育った仲良しの姉妹、自慢したい
素敵な彼氏(いないけど)なんかより、ずっと大切になってしまった人の名ま
えをつぶやく。胸の奥がぽっ、と温かくなる。恋や愛なんて言葉が薄っぺらに
思える。みんなにはきっと歪んでいて醜くさえ映るだろう、よっすぃと私の関
係。よっすぃと私の執着。
- 224 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時45分21秒
もう私は、この世で最上級の幸せに届いてしまった。そう、私は幸せだった。
絶望の底から、よっすぃが救い上げてくれた。だから、私は死のうと思った。
この幸せが無くなってしまうかも、っていう恐怖に毎日怯えながら暮らしては
いけない。だってよっすぃにはまだまだ未来があるし、よっすぃは私にたくさ
んのものをくれるけど、私はよっすぃに何一つしてあげられないから。
この幸せな気持ちのままで、消えてしまいたい。それが、私のささやかな願い。
あ、そうだ。私の目、よっすぃにあげられないかな?
私がいなくなっても、私の目はよっすぃと一緒。よっすぃと世界を共有して、
二人三脚で一生一緒に暮らすの。なんて素敵だろう。そうなれたらすごく嬉し
いな。
- 225 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時46分35秒
「石川さん、消毒の時間ですよ」
物思いにふけっていると、ノックもしないで看護婦さんが部屋に入ってきた。
私の嫌いな道木さんだった。道木さんは、佐々木先生のことが好きみたいで、
ことあるごとにに私に意地悪する。佐々木先生が私のファンだ、ってことが気
に入らないみたい。今も、私の包帯を外しながら、私の顔を見てニヤニヤ笑っ
ている。
(なによ、ヤな感じ)
「あ、そうだ!」
いかにも今思いついた、みたいな大げさな仕草で、道木さんは手をぱん、と叩
いた。そしてもったいつけて、あ、でも佐々木先生にはまだ口止めされてるし
ねー、なんて呟いた。
- 226 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時47分13秒
「なんですか?」
「いえね、吉澤さんがね――」
そこで言葉を止めて、どうしようかなあやっぱりいうのやめとうかなあ、と、
意地悪く言った。
「よっすぃが? よっすぃがどうかしたんですか?」
「やっぱり興味ある?」
「あります」
「……会いたい?」
どきん、と心臓が鳴った。一体、どういうことなんだろう。もし、よっすぃが
私に会いに来てくれたのなら、一番にここに来る筈だ。どうして、道木さんが、
そんな申し出をするのだろう。
- 227 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時48分09秒
「あー、でも石川さんにはショックかも知れないなー」
「よっすぃに何かあったんですか?」
ふふふ、と道木さんは笑い、ゆっくりと、
「吉澤さんね、頭がおかしくなっちゃったのよ。ほら、もともと自分で自分の
目を潰しちゃうような子でしょ。あの時点で精神科医にかかっておけば良かっ
たのにね」
「よっすぃは頭おかしくなんてない!」
この人は何も分かってない。何も分かってないんだ。よっすぃが何のためにあ
んなことをしたのか。いや、この人にはきっとかけがえのないくらいに大切な
人がいないんだ。だからこんなことが平気で言えるんだ。
「とにかく、吉澤さんは精神分裂病を発症してて、佐々木先生には口止めされ
てたけど、今はこの病院に入院してるの。ここに来る前に、吉澤さんに注射を
打ってあげたところよ」
- 228 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時48分48秒
「会わせて下さい!」
私は、道木さんにすがりついた。よっすぃが精神病? 一体どうして?
「ここまでバラしちゃったからには、会わせてあげない訳にはいかないけど…
…でも吉澤さんは、もう貴方のこと、分かんないかも知れないわよ? それで
もいいの?」
がくがくと、手が震えて来た。よっすぃが私のことを分からない? じゃあま
た、私は世界で一人ぼっちになっちゃうの?
そんな筈はない。
そんな筈はない。
私は、悪い考えを頭の中から打ち消した。きっと大丈夫。よっすぃはきっと大
丈夫。だって、よっすぃは私のスーパーマンだもの。
「ついていらっしゃい」
- 229 名前:4 投稿日:2003年02月22日(土)17時49分47秒
道木さんの後をついて行く。
両腕をねじりあわせるように、神さまにお祈りしながら。
どうか、
どうか、よっすぃを――
- 230 名前:H21 投稿日:2003年02月22日(土)17時51分11秒
つづく
- 231 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月23日(日)03時20分25秒
- あぁぁーーーーーめっちゃいいとこで終わってるぅぅぅ!!
よっすぃーはどうなってしまうのか!?
りかっちは!?
読んでるうちに自分の鼓動が早くなりました・・・
- 232 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時07分31秒
私が正気でいられる時間は、一日の中で数十分しか無かった。もはや、彼らの
目的は明確だった。私の人格を壊すこと。吉澤ひとみを発狂させること。
どうして彼らがそんなことをするのか分からない。もしかしたら、梨華ちゃん
が襲われたのと同じ理由なのかも知れない。
私は、私の罪を思う。モーニング娘。の背負った業を思う。これは、きっと罰
だ。私は梨華ちゃんを守れなかった。
梨華ちゃんは暴力によって未来を奪われ、私はクスリに汚されて未来を失う。
暗い夜の中で、私は神さまにお祈りする。
どうか、
どうか、あとひとつだけ、私のお願いを聞いてください。
- 233 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時08分24秒
道木、という名の看護婦が、私にクスリを注射した。病室を出際に、今日はア
ヤワスカも特別にブレンドしておいてあげたから凄いわよ、と言った。
私の脳は、すみやかに別の人格に支配された。
『その時』がすぐそばまで来ていた。
その人格は天から降りてきた創造するミスターマイセルフで、世界の最高峰で
まどろんでいた。妄想と世界の境界は限りなく薄くなった。現実が私のイマジ
ネーションに寄り添った。私は音階で思考した。感情は全身を包む明滅するパ
ネルだった。
これまでの私とは、その人格の一部分でしかない。吉澤ひとみは統合され、消
滅する。コップに入った水を海に返す行為に似ている。海にとっては、モーニ
ング娘。も石川梨華も一杯の水だ。とるに足らぬ事象。
分かっている。
吉澤ひとみは悔やんでいる。石川梨華に償おうとしている。意味のないことだ。
分かっている。
魂の階段を上れば、そこに待っているのは光と歓喜と祝福の三千世界だ。
- 234 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時08分55秒
吉澤ひとみは解放される。すべての悲しみから解き放たれる。
もうすぐだ。
頭が内部から締め付けられる。いや、脳が膨張しているのだ。爆発してしまい
そうだ。
おめでとう。吉澤ひとみ。
さようなら。吉澤ひとみ。
天国の扉が開く。
ようこそ。
ようこそ、イノセントワールドへ。
- 235 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時09分32秒
「よっすぃ!」
声の持ち主を記憶が認識し、脳が映像を再現する。
泣きそうな顔をした、色黒の少女。
石川梨華。
私の中に残っていた最後の私があがいた。脳の支配権を取り戻した。
――もう一度だけ梨華ちゃんに会わせてください。
羽毛のような意識の中で、最後のお願いを聞き届けて下さった神さまに感謝し
た。
(ああ、神さま、ありがとうございます)
彼女の手が、私の肩に触れる。
そこから円周状に、身体の中を金色の波紋が広がる。
- 236 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時10分08秒
「梨華ちゃん……」
「よっすぃ、分かる? 私のこと分かる?」
手を伸ばす。手のひらの先が、彼女を見つける。彼女を引き寄せる。彼女を抱
きしめる。
身体が彼女と溶け合う。橙色が世界にあふれる。
聖なるかな。
聖なるかな。
- 237 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時10分54秒
「よっすぃ、行かないで。私を置いて行かないで」
ごめんね梨華ちゃん。私がもう少し強かったら良かったんだけど。
ああ、もう時間だよ。
「梨華ちゃん、あの時、助けてあげられなくてごめんね」
私を振り絞って彼女に言う。
「梨華ちゃん、ずっと一緒にいてあげられなくてごめんね」
最後の言葉はもう決めてある。
「梨華ちゃん、大好きだよ」
- 238 名前:5 投稿日:2003年02月24日(月)21時11分25秒
そして、私は、
壊れた。
- 239 名前:H21 投稿日:2003年02月24日(月)21時11分56秒
つづく
- 240 名前:H21 投稿日:2003年02月24日(月)21時12分51秒
BGM:ジムノペディ第1番
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Aquarius/6727/godbless.mid
- 241 名前:きいろ 投稿日:2003年02月24日(月)23時09分44秒
- 泣きますた…。
よっすぃーそれで良いのか。
梨華ちゃんを守りきれなくて良いのか。
その後、
梨華ちゃんは…
期待してます。
- 242 名前:名無し読者。。。 投稿日:2003年02月24日(月)23時38分12秒
- どうか2人の未来に救いがありますように…
- 243 名前:ななしさん 投稿日:2003年02月24日(月)23時43分34秒
- いよいよ
>>1
の、ラストシーンが、感慨深くなってきました。
- 244 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月25日(火)07時03分01秒
- こんないしよしは見たことありません。
作者様リスペクト。よっすぃ。。。
- 245 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月02日(日)19時25分06秒
- ミサで「聖なるかな」をラテン語で歌ってきました。
よっすぃー・・・と涙が出そうになりました。
- 246 名前:読み人 投稿日:2003年03月03日(月)03時40分23秒
- 二人の行く末に、幸あらんことを・・・
それが誰が見てもバッドエンドだとしても、
二人だけのハッピーエンドを・・・
- 247 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月30日(日)23時21分23秒
- 更新マテマスヨー
- 248 名前:読者@ 投稿日:2003年04月01日(火)03時04分06秒
- 気長に待ってます
- 249 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時05分01秒
- やっぱ作者様は春琴抄はおすきなのでしょうか?
すごくはいりこまされております頑張ってください!
- 250 名前:ヤベッチ 投稿日:2003年04月15日(火)23時00分29秒
- 小説読ませていただきました。
読んでいる途中、心が痛むような感じがしました。
とにかく凄いの一言しかありません。
更新を待ってます。
作者さん、がんばってくださいね!
- 251 名前:H21 投稿日:2003年04月16日(水)00時23分59秒
- あげにつられて更新
春琴抄はまだ未読なのですよ。
- 252 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時24分57秒
「今日も雨か」
丘の上ベーカリーの主人は、窓の外の暗雲を見上げてため息をついた。
店の中は焼きたてパンのいいにおいでいっぱいだ。昔は腕のいいパン屋として
地元でも評判だったのだが、郊外型のショッピングモールが進出してきたせい
か最近は客足も落ち込んでいた。この雨のせいで、今日の売り上げも期待でき
ないだろう。今も、店内には客の姿はない。
「本当だって」
「そんなのいる訳ねえよ」
学校から子供たちが帰って来たようだ。
- 253 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時25分43秒
「タケシも包帯女を見た、って言ってたよ。雨の日になると出るんだ」
「ウソだね。あいつウソつきだからな」
兄弟二人は言い合いをしながら、階段を上っていった。まったく、と父親の顔
になって主人は思う。兄貴の方が弟よりも怖がりときたもんだからな。
包帯女の話は主人も聞いたことがあった。よくある都市伝説だ。彼が子供の頃
にもよく似た噂があった。あのときは口裂け女、って名の化け物だった。
二階から階段を駆け下りてくる騒がしい足音がする。
「お父さん、これからタケシん家に行ってくるよ」
暗くなる前に帰って来いよ、と声をかける。
「包帯女は子どもの顔の皮をはぐんだよ。自分の顔を元に戻すためなんだって」
「怖いな」
「ぐっちゃー、って三回叫べば逃げていくんだって」
「ふーん」
元気よく店を飛び出してゆく子どもたちの姿を眺めながら、それにしても憂鬱
な雨だ、と心の中でつぶやく。
- 254 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時26分24秒
どれくらいうつらうつらしていただろうか。お客さんの気配で主人は意識をは
っきりさせた。外は薄暗くなっていた。相変わらず雨は降り続いていた。
軒先に後姿が見える。フリルのついたピンクの傘をたたんでいる。
自動ドアが開く。
「いらっしゃいま――」
主人は絶句した。湿度が高いせいか、冷たい汗が服の下に流れた。
「……こんにちは」
- 255 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時26分56秒
それは非現実的な光景だった。顔を包帯でぐるぐる巻きにした少女が入り口に
立っていた。包帯の隙間から、目が覗いていた。そして、ゆっくりと近づいて
きた。
主人は身動き出来なかった。幽霊や化け物の類だとは思わなかったが、だから
こそ余計に、『それ』が気のふれた危険な人物であると思われた。
「……あの」
「はいっ」
「ここのベーグルが、焼きたてでおいしい……って聞いて来たんですけど」
- 256 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時27分30秒
主人は精一杯の愛想笑いを浮かべて、彼女に言われるままにプレーンのベーグ
ルを五個、紙袋に入れた。濡れないように、その上からビニール袋をかけた。
少女は何度も礼を言って、店を出て行った。
ピンクの傘が、夜の雨のカーテンの向こうに消えていくまで、店の主人は彼女
の後ろ姿から目を離すことが出来なかった。
- 257 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時28分03秒
===============================
- 258 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時37分27秒
深夜。
消え入るような歌声に、石川は目を覚ました。
まどろみの中、しばらくの間、それが現実なのか夢なのか判断が出来なかった。
聞こえるか聞こえないかの小さな音で鳴く鈴虫のようだ、と石川は思った。
「よっすぃ?」
歌声は、ぴたりと止んだ。
ベッドから身体を起こす。月明かりひとつ無い病室は、完全な闇だ。
暗闇の向こうにいるはずの吉澤の名を、もう一度呼ぼうと息を吸い込む。
- 259 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時37分58秒
石川は思い出す。
遠い昔、石川が少し甘えるように吉澤を呼ぶと、面倒くさそうに振り返り『な
んだよ』とぶっきらぼうに返事をしてくれた。
石川は思い出す。
祝福され、満たされ、すべてを持っていた、青い時代のことを。
どこで、あの幸せな日々から足を踏み外してしまったのだろう。
誰が悪かったのだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。
- 260 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時38分51秒
「……よっすぃ?」
- 261 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時39分33秒
あの日から、吉澤は世界とコミュニケートをとることが出来なくなった。
石川の呼びかけに、やはり吉澤からのいらえは無かった。
石川はベッドに再び横になった。
眠れずにまんじりとしていた。顔の、ひきつれた傷が痛んだ。
ふいに、か細い歌声が聞えてきた。
天から降ってくる銀の糸のようだった。
- 262 名前:6 投稿日:2003年04月16日(水)00時40分30秒
ここで声を出したら、また吉澤は歌うのをやめてしまうだろう。
石川はシーツを頭からかぶり、声を押し殺して嗚咽した。
- 263 名前:H21 投稿日:2003年04月16日(水)00時41分08秒
つづく
- 264 名前:名無し 投稿日:2003年04月16日(水)00時53分46秒
- 昨日初めてここ発見しましたが…もうドキドキです。
続きを楽しみにしています。
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月16日(水)15時50分50秒
- 今までの更新で1番泣けた。
- 266 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月19日(土)12時21分32秒
泣 け る
作者タン頑張って!
- 267 名前:読み人 投稿日:2003年04月28日(月)17時56分52秒
- 更新乙彼。
いったいどんな結末がまっているのか…
せつなすぎです
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月15日(木)18時17分15秒
- 続き待ってます
- 269 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月20日(火)20時17分20秒
- 更新お願いします!!
すっげー楽しみにしてるんで!!!
- 270 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月23日(金)07時15分40秒
- 期待ochi...。
- 271 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月26日(月)05時24分58秒
- これ、すごい・・・
びっくりした・・・
- 272 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月30日(金)00時30分11秒
- 期待ochi
- 273 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月19日(木)09時48分00秒
- 更新期待保全。
- 274 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月28日(土)16時05分26秒
- 物凄く続きが気になります!!
いつまででも待ちます。更新期待してます!
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月29日(日)22時41分24秒
- 最近やってる映画『クラッシュ』の宣伝が
この小説と重なってしかたありませんでした…続き待ってます。
- 276 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月12日(土)15時53分19秒
- 保全します。この作品は最後まで読みたいです!
吉澤はどうなるのか…
- 277 名前:トーマ 投稿日:2003年07月15日(火)18時01分30秒
- 読めば読むほどケダモノ医者と陰湿看護婦に殺意を抱いてしまいます…
更新期待age
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月16日(水)04時12分41秒
- 今日初めてこの作品を知り今一気に読ませていただきました。
辛い・・・。胸が痛いっす。寝る前に読むもんじゃナカタ(苦笑
更新期待してます
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月30日(水)02時59分21秒
- この作品でいしよしが好きになりました。
ぜひとも完結してほしいです。
まだまだ待ちます!更新期待してます!
- 280 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)18時50分52秒
- もう放置かな…
- 281 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)06時36分40秒
- 自分が最初に保全してから
3ヶ月経とうとしてますがまだまだ復活期待しております。
- 282 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)08時36分13秒
-
- 283 名前:京 投稿日:2003年08月23日(土)12時45分11秒
- すごいです。今まで見たこと無いいしよしでした。
最後までがんばってください!!
- 284 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時42分16秒
Them that's got shall get
Them that's not shall lose
So the bible said
and is still the news
- 285 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時43分00秒
夢の中で、歌の続きを聴いたような気がした。
(ん……)
分厚いカーテンごしに、太陽の光が部屋を薄明るくしていた。石川は目をしば
たたかせた。そろりとベッドから起きあがる。隣りの吉澤はよく寝ているよう
だ。
(今、何時だろ?)
顔を締め付けている包帯の内側──右耳の辺りに異物感があった。包帯の上か
ら触れると、それはコロコロと動いた。
包帯をほどく。ぽとり、とシーツの上に落ちたのは、壊死した右耳だった。
- 286 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時44分11秒
石川の顔の左半分は、骨に直接ボルトを打ち込んでステンレスの板で固定して
いる。こうしておかないと、どんどん顔が崩れていくのだそうだ。治療、とい
うよりは、修復工事と云った方が近い。
石川は、自分の右耳だった肉の塊を手にとった。それはくしゃくしゃに丸まっ
ていた。前に佐々木医師は、この耳はもう治らないから、イミテーションを作
りましょう、と云っていた。
(私の顔は、どんどん作り物のパーツに取り替えられていく)
黒ずんだ肉の塊をかじった。古いゴムの味がした。
- 287 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時44分56秒
時計の針は、午前11時を指していた。
今日は休日で、石川の主治医である佐々木医師は出勤していない。そうなると、
療養所では石川と吉澤はやっかい者扱いされた。呼ばなければ看護婦も見回り
に来ず、食事の用意もしてくれない。
トントン、と扉がノックされた。
石川は慌てた。包帯は解いてしまっている。
「ちょっと待って下さい」
消毒済みの包帯を手に取る。
- 288 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時45分46秒
(素顔を見られたくない素顔を見られたくない素顔を、)
カギをかけていた筈なのに、乱暴に扉は開け放たれた。私はとっさに顔を隠し
た。
「やだ、来ないで。出ていって!」
きっと道木看護婦に違いない、石川はそう思った。素顔を見られるのがイヤだ、
って知っていてこんな意地悪をするのは──
「……へえ。驚いた」
その野太い女性の声は、今まで聞いたどの看護婦とも違った。その女性は無遠
慮に部屋に入って来た。そしてドアを閉め、再びカギをかけた。
- 289 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時46分37秒
ちゃららん、と電子音が響いた。石川は悲鳴をあげた。
(ケータイだ。写真を撮られた)
女性は、看護婦ではなかった。悪夢の中で聞いた声に似ていた。
「あの状態からここまで戻ったんだ。医学の進歩は素晴らしいね」
ゲラゲラと笑うその声。
あの日に聞いた声。
全身がおこりのように震えて、止まらなくなった。
「あんたのせいで、私の人生はメチャクチャにされたんだ。だから、仕返し
──いやいや、お見舞いに来たって訳」
- 290 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時47分59秒
おっ、と彼女は隣りのベッドを見た。
「吉澤ひとみじゃん。この子、緑内障? で失明したんだってね。なんかあっ
たの?」
靴のまま、吉澤のベッドに上がり、毛布をはぎとった。そして、吉澤をまたい
で、見下ろした。
「なにこの子。大層に包帯なんか巻いちゃって。……何? ボケちゃってる?」
おどけるように云った。その時には吉澤も目が覚めていたようだ。しかし何が
起こってるのかは理解していない様子で、怯えたように身体を丸め、顔だけを
声のする方向にむけていた。
彼女の手が、吉澤の包帯に伸びる。
「やめて! よっすぃにひどいことしないで!」
石川は、彼女の足にすがった。
「うるさいっ」
ケータイのレンズが、正面から石川の顔をとらえた。
「化け物の素顔ゲッツ! 待ち受けにしてみんなに見せてやろう」
石川の身体から、力が抜けた。
と、彼女の靴の裏が石川の顔を蹴った。石川の目の前に火花が散った。そのま
ま床に崩れ落ちた。鼻の奥が鉄臭くなった。
- 291 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時48分37秒
一時的に、放心状態になっていた。
うー、うー、と吉澤のうなり声が聞こえて、石川は我に返った。
吉澤は、ばんざいをするかっこうで、ベッドにいた。身体をくねらせて逃れよ
うとしているのだけど、足で手首を踏みつけられて動けないでいた。顔の上半
分をおおっていた包帯はすべてはぎ取られていた。そして、
「うっわー、グロ画像だ」
「これが元モーニング娘。のねえ」
「ほら、もっとサービスしろよ」
ちゃららん、ちゃららん、と電子音が続く。彼女は吉澤の写真を撮り続けてい
た。
「ううぅーああぁあー」
吉澤は泣いていた。きつく閉じた瞼の間から、涙があふれていた。
- 292 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時49分29秒
石川は──
石川は、ガタガタと震えて動けないでいた。顔を潰され酸で焼かれたあの日の
恐怖と激痛がよみがえっていた。先ほど蹴られたせいで鼻から血があふれ出て
いて、呼吸も満足にできなかった。
「いい写真が撮れたなあ。元モーニング娘。のその後──化け物とキチガイの
衝撃映像。来週の週刊誌、楽しみにしてな」
ケラケラ笑いながら、彼女は部屋を出ていった。バタン、と、来た時と同じよ
うに乱暴に、扉は閉められた。
看護婦を呼ぶ気持ちにもなれなかった。石川は鼻血が止まるまで、じっとして
いた。床は、石川の血で汚れていた。
ベッドの上の吉澤は、ばんざいの姿勢のまま、浴衣の前をはだけさせて、動か
ないでいた。
- 293 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時49分59秒
長い時間をかけて、後始末をした。ショック状態の吉澤を寝つかせて、床の掃
除をした。気がついたら夕方になっていた。その間も、看護婦は一度も石川た
ちの部屋を訪れなかった。
(彼女の言葉が本当なら、写真は週刊誌に持ち込まれる)
(例え掲載されなくても、私とよっすぃの写真は業界に出回る)
(そうなったら、ここにも、もっともっといろんな人たちが押し寄せてくる)
「逃げよう、よっすぃ」
明日になれば、佐々木医師も出勤してくる。そうなると、脱走を企んでも止め
られてしまうだろう。
今夜だ。
今夜、ここから逃げだそう。大丈夫、きっとうまくいく。
夜になるのを待って、石川と吉澤は病室を抜けだした。
- 294 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時50分29秒
=======================
- 295 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時51分24秒
(やっと、いなくなってくれた)
ブラインドの間から中庭を見下ろして、道木看護婦は微笑んだ。
ナースセンターの窓から、二人の姿はよく見えた。足取りもおぼつかげな二人
は、寄り添うようにして月明かりの下を歩いていた。
他の看護婦たちには、今日一日絶対に彼女たちに関わらないように、ときつく
云っておいた。彼女たちの脱走は成功するだろう。
そもそも、療養所の場所をあの掲示板に書き込んだのも道木看護婦だった。
(あそこまでお膳立てしないと何も出来ないんだから。やっぱり社会不適格者
は使えないわね)
だがまあ、事態は道木の思惑どおりに運ばれたようだ。
- 296 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時52分00秒
(これで、彼も正気に戻るわよね)
彼──佐々木医師の、石川梨華に対する執着は異常だった。
こんなことがあった。冷蔵保存庫で、佐々木、と名まえの書かれた大きめのタ
ッパーを道木は見つけた。好奇心に駆られて開けてみると、『rika』とラベリ
ングされた試験管がずらりと出てきた。道木は一目見て吐き気を覚えた。検査
用に採取した筈の彼女の血液、ケロイド状の皮膚片、尿、毛髪、痰。それらが
整然と並べられていた。
道木は悲鳴をあげて、タッパーごと床に叩き付けていた。
床に散乱したガラス片と汚物を片づけながら、彼女はある決心をした。
──すべては、石川梨華が悪いのだ。石川梨華が、彼を狂わせたのだ。
そして、彼女は実行した。
- 297 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時52分56秒
=====================
- 298 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時53分32秒
雲が、月を隠す。
石川は吉澤の手を引いて、足下のぬかるみを気にしながら、前へ、前へと歩い
ている。
- 299 名前:7 投稿日:2003年08月27日(水)22時55分10秒
つづく
- 300 名前:H21 投稿日:2003年08月27日(水)22時55分50秒
第二部終わり
- 301 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)14時23分41秒
- 更新キテター
- 302 名前:京 投稿日:2003年08月28日(木)22時56分54秒
- 待ってましたー!!
- 303 名前:京 投稿日:2003年08月28日(木)22時58分06秒
- ごめんなさい!!
ageちゃいました…
- 304 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月29日(金)20時03分15秒
- 新展開期待
- 305 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月01日(月)23時30分17秒
- 三部下書き読んだ。超期待。
- 306 名前:へっとずぴかる 投稿日:2003年09月02日(火)05時05分39秒
- 復活おめでとうございます!
いえ・・続きを書いてくださってありがとうございます
3ヶ月待ってた甲斐がありました^^
第3部も期待しております〜
- 307 名前:読み人 投稿日:2003/09/11(木) 21:06
- 更新乙です。
怖いですけど、読みたくなります・・・
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/30(火) 21:24
- dokidoki…待ってます。
- 309 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/05(日) 20:54
- 痛い!でも気になる!
更新、待ってます。
- 310 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/06(月) 12:15
- >309
ageるな
- 311 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/07(火) 01:46
- age
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/07(火) 08:01
-
- 313 名前:名無しの一読者 投稿日:2003/11/03(月) 19:11
- >309
ageるな
- 314 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/12(水) 08:07
- (・∀・)オモシロイ♪
次回更新まで待ってます
- 315 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 22:45
- hozen
- 316 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/30(日) 01:45
- …落としつつ、待ってます。
- 317 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/11(木) 16:15
- 保全
- 318 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 11:17
- 補ぜム
- 319 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/03(土) 10:28
- 新年ほぜ
- 320 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/13(火) 19:09
- 更新期待保全
- 321 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/25(日) 15:38
- 保全
- 322 名前:H21 投稿日:2004/01/31(土) 09:55
- 第三部
- 323 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 09:56
-
「なんちゅうザマやぁ!」
事務所の扉を蹴破る勢いで飛び込んできたのは中澤だった。
つんくを見つけるやいなや、一直線に走りより、顔面を殴りつけた。
何度も殴った。つんくは抵抗しなかった。
「あの子らがややこしいことに巻き込まれてる、ってのはウチもよー知ってる。
そやけど、素人は手ぇ出さんでエエ。俺らに任せとき、言うたんはアンタやで。
それがこの体たらくかいッ!」
中澤の手に握り締められているものと同じ写真が、テーブルに広げられていた。
- 324 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 09:58
-
左半分に金属プレートが何枚も埋め込まれた、見るに耐えないいびつな少女の
顔の写真と、
両目を引きつれたような傷で塞がれている、胸をあらわにした少女の、レイプ
現場めいた写真。
写真週刊誌に持ち込まれ、事務所がもみ消した、最近の石川と吉澤の写真があ
る、との情報を入手した中澤は、手を尽くしてそれを取り寄せた。
この写真から、2人が誰なのか判断できる人間はそうはいないだろう。
事実、寝食を共にした中澤でさえ、写真を初めて見た時には、それが誰なのか
分からなかった。
いや、何が写っているのかさえ理解出来なかった。理解する前に吐いた。
- 325 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 09:59
-
「これは、どこで撮られた写真や!? こんなん、誰が撮ったんや!?」
中澤はつんくに怒鳴りつけた。
「場所は、横浜の療養所。ここは潰す。撮った人間は、もうこの世にはいない」
背後から、声がした。激昂していた中澤は、事務所のお偉方が勢ぞろいしていた
ことにようやく気づいた。
「じゃあ、2人は保護してるんですね。今はどんな様子なんですか?」
中澤は安堵して、口調を和らげた。
「それがな……」
つんくが、絞り出すような声で云った。
- 326 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 09:59
-
=======================
- 327 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:00
-
(保田から連絡があった。2人が、彼女のとこに来ていたと)
中澤は、タクシーの運転手を怒鳴りつけつつ、保田のマンションへと急いだ。
どうして自分のところへ来てくれなかったのか、自分を頼ってくれなかったの
か、それが悔しかった。
(保田は……あの事件の後、軽い心身症にかかってたみたいやな。カウンセリ
ングに通いながら舞台やってる、ってあいつから聞いてた)
携帯で、保田に連絡を取る。あと10分くらいでそっちに行ける、そう伝える。
携帯の向こうの彼女は、どうやら酔っているみたいだった。
- 328 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:01
-
圭ちゃんに会って来ます、そう伝えた後、ぼそりとつぶやいたつんくの表情に
中澤ははっ、となった。
(中澤。お前と俺は同類や。あいつらは、俺らには心を開かん)
つんくの言葉の意味は分からなかったが、なんだか自分たちがひどく年老いて
しまったように思えた。
- 329 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:02
-
=======================
- 330 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:02
-
「……圭坊?」
マンションの扉は開いていた。部屋の中は薄暗かった。からん、と奥から何か
の音がした。中澤は、ずかずかと中へ入った。フローリングの床に、ビールの
空き缶が散乱していた。ベッドにもたれかかる、床に直接座り込んだ保田圭の
姿が見えた。
「あー、裕ちゃん? いらっさいー。もうそろそろ来る頃だと思ってたよう」
保田の笑い声が聞こえた。
「ちょっと圭坊、あんたなあ」
「裕ちゃんも飲む? いっぱい買い置きあるから」
「……頂こうか」
サイドテーブルに並んだ缶ビールを手に取る。ひとくち流し込む。ぬるかった。
「電気つけるで。こっちまで気分が暗くなるわ」
蛍光灯が、保田の泣き顔を照らした。涙と鼻水で、それはもうブサイクなこと
になっていた。
- 331 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:03
-
「圭坊……」
「ごめんね、裕ちゃん。私、石川と吉澤を止められなかったよ。彼女たちを止められなかったよ」
くっ、と缶ビールをあおって、中澤は保田を抱きしめた。保田は中澤の肩にあごを乗せて号泣した。
「夜遅くにさ、部屋に戻ったら、2人がいたんだ。ここに、2人で座ってた。
電気はつけないで、って。朝になったら出ていくから、一晩だけここに泊めて
って。シャワーを使わせてって」
「だったらなんでその時――」
中澤は、保田を糾弾しにここへ来た。保田が、素早く事務所なり中澤なりに連
絡を取ってくれていれば、彼女たちを保護できたのだ。
- 332 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:05
-
「私のせいなんだ。私が、最後に部屋を出ていたら、石川はあんなことになら
なかったんだ。私が悪いの。私が、あの時……」
ぞわっ、と中澤の背筋に寒気が走った。『あの時』のことは娘。たちの中でも
禁句だ。中澤でさえ、『あの時』の石川の獣めいた悲鳴を悪夢で見ることがあ
るのだ。
「石川が言ったの。私たちがここにいること、誰にも言わないで、って。私、
石川の言うことならなんでも聞くよ。だって、石川は私の身代わりになったか
ら。一生かけたって償えないから」
モーニング娘。のメンバーたちなら、みな、少なからず石川に後ろめたい感情
をいだいている。偶然とはいえ、彼女を生け贄の羊にしてしまったことに、罪
悪感を感じている。
結局、保田は着替えの服といくらかのお金を置いて、部屋を出たのだという。
- 333 名前:1 投稿日:2004/01/31(土) 10:06
-
「ねえ、私、どうすれば良かったのかな? 私、間違ってたのかな? 教えて
よ。私がどうすれば良かったのか。ねえ、裕ちゃん、教えてよ」
背中ごしの(圭ちゃんありがとう)の石川の声が忘れられない、そう言って保田
はもう一度泣いた。
強く抱きしめるよりほか、中澤にはすべがなかった。
- 334 名前:H21 投稿日:2004/01/31(土) 10:08
-
つづく。
ええ、勿論、つづきます。
- 335 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 20:45
- 更新きた!
待ってました。
最後まで見届けたいので、頑張ってください。
- 336 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 19:47
- やはりGod blessはおもしろいな
なんて改めて思った。
ラストまでしっかり見届けますぜ
- 337 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 22:09
- ま、待ってました・・・
五ヶ月間、待ち焦がれておりました。
最後までお供します。
- 338 名前:へっとずぴかる 投稿日:2004/02/07(土) 02:50
- 更新お待ちしてましたー!
どうでもいいですが「Schwarz Stein」というバンドの
「New vogue children」と「Current」という曲の歌詞が
「God bless」の世界観と妙にマッチしてて、曲聴くたびに
「God bless」の描写された風景が出てきて泣けてきます・・
僕も最後までこの物語を見届けたいと思います。
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/07(土) 23:04
- 更新お疲れ様です。
ずっと待ってた甲斐がありました(w
これからも面白い作品期待しております。
- 340 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:54
-
夜の海の底に魂はさまよう
神の祝福も ここには届かない
- 341 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:55
-
「今日のハロモニの収録、中澤と保田欠席です」
そうマネージャに伝えられ、矢口は安倍を見た。安倍も、何かを言いたげに矢口を見ていた。
朝から不穏な空気を矢口は感じていた。スタッフたちの様子がおかしかった。気配を察してか、
小川や紺野が落ち着かなげに席を立ったり座ったり物を落としたりしていた。
石川と吉澤が病院を脱走した、という話を矢口は一週間前に、泥酔した中澤から聞きだしてい
た。はっきりとした確証はないが、どうやら2人は一度、保田の元を訪れていたらしい。
- 342 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:55
-
「なっち、どう思う?」
「そりゃあ怪しいっしょ」
年少組を怯えさせないよう、少し離れた場所に移動して噂話を続ける。そもそも石川が病院を
脱走した理由すら矢口と安倍は知らされていなかった。この一連の事件に対して、2人は蚊帳
の外に置かれているようだ。
「この収録終わったらさ、裕ちゃんのトコ行こう」
「そうだね。ウチらだけ仲間はずれだなんてひどいよ」
- 343 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:56
-
=======================
- 344 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:57
-
夜。
中澤の携帯はつながらなかった。マンションに電話しても留守電だった。
「全然だめ。なっちの方はどう?」
「圭ちゃんもつかまんないよ。いよいよ怪しいよ」
2人揃って連絡がつかないなんてあり得ない。つんくに連絡をとろうか……と悩みながら、2人
は結局、タクシーで中澤のマンションへと向かった。
(やっぱいるじゃん。居留守かよ!)
タクシーを降り、マンションを見上げて矢口はつぶやいた。中澤の部屋の明かりは点いていた。
「きっと圭ちゃんも一緒だよ。行こう矢口」
安倍に手を引かれて、矢口は中澤の部屋へ急いだ。
- 345 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:59
-
(うっ)
玄関に現れた中澤の姿を見て、安倍は声を失った。ひどく酒臭かった。
「……なんやあんたら。仕事はどうしたんや」
その静かな声に、矢口は震え上がった。本来なら当日になって仕事をドタキャンしたのは中澤
だし、そのフォローをしたのは矢口なのだ。
「今日の収録は終わったよっ」
うわずった声で、矢口は答えた。
「そうか。なら帰りや」
奥へ引っ込もうとする中澤を、矢口は慌てて遮った。
「ちょっと待ってよ。圭ちゃん中にいるんでしょ? なんでオイラたちだけ何にも教えてくれない
んだよ。裕ちゃんズルイよ。ウチらだってモーニング娘。なんだよ」
一瞬、中澤の表情がひどく歪んだ。しわがれた声で、圭坊はここにはおらへん、あんたらは知
らんでええことや、そう言った。
- 346 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 21:59
-
中澤が意地悪をしているのではない、ということは分かる。矢口と安倍のことを気遣っているの
だ、ということも分かる。裕ちゃんは優しいから。だけど、だからこそ、
(ここが勝負どころだ。行け! ちっちゃな矢口真里!!)
「梨華ちゃんとよっすぃって、今どうなってるの?」
口火を切ったのは安倍だった。先を越された。びくっ、と滑稽なほどに中澤の身体が痙攣した。
「吉澤は──」
そうつぶやいて、中澤はガタガタと震えだした。
「会えたの? だから、急に仕事キャンセルしたの?」
安倍がたたみかける。中澤が、激しく首を振って否定する。
「会ってへん。吉澤となんか会ってへん」
嘘がバレた子供のように、中澤は両耳を押さえてしゃがみ込んでしまった。
- 347 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 22:01
-
その様子に矢口はちょっと引いた。玄関でこんな大騒ぎをする訳にはいかない。とりあえず部屋
の中へ中澤を引っ張り込んだ。
中澤の部屋の様子は惨憺たるものだった。保田はいなかった。割れたガラスが散乱していた。
「裕ちゃん……これ、どうしたのさ……?」
中澤はぷい、と向こうをむいた。どうも、部屋で大暴れしていたようだ。一体、何なのだ。何が起
こっているのだ。矢口は不安で、その場に立っていられなくなった。
(──?)
ふらふらと手をついたソファに、三枚の紙が投げ出されていた。それは、何かの写真をプリント
したものだった。日付は10日前。最初、そこに写っているモノが何なのか、矢口は理解できな
かった。
- 348 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 22:04
-
安倍はへたり込んでいる中澤に、必死で問いかけている。
「ねえ、圭ちゃんは? 今日は圭ちゃんと一緒だったんでしょ? 圭ちゃんとも連絡つかないん
だ。裕ちゃん知ってるよね?」
「圭坊は……」
うつろな視線をさまよわせ、中澤は独り言のように、
「圭坊は、死のうとした。ウチが止めた。だけど、血がぎょうさん出て──」
「ちょ、ちょっと裕ちゃん何言ってるのよ!」
「──吉澤を見て、圭坊は、自分の手首切った」
「よっすぃ見つかったの!? どうして圭ちゃんが??」
中澤と安倍の会話は、矢口の耳には入っていなかった。矢口は、三枚の写真を、血の気が引
く思いで見ていた。
- 349 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 22:06
-
一枚目は、顔半分に鉄板を埋め込まれた少女の悲痛な表情。
二枚目は、半裸で泣きながら抵抗している別の少女の姿。
矢口は吐き気を覚えた。それは、石川と吉澤の変わり果てた姿だった。
三枚目は……、日付は一昨日になっていた。夜の交差点が、俯瞰した位置から撮られていた。
ひどく画像は荒い。少女が1人、横断歩道を渡っている。顔に包帯を巻いている。手に、ぬいぐる
みのようなモノを抱いている。
(これ……石川?)
それは、胸の奥がちりちりするような不思議な光景だった。
- 350 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 22:07
-
「ねえ、裕ちゃん」
矢口は、低い声で言った。
「教えてよ。何があったのか。あたしたちが知らない間に、一体、何が起こってたのか」
中澤と安倍は、矢口を見た。矢口は、泣き笑いのような気持ちで、2人を見つめ返した。
- 351 名前:2 投稿日:2004/02/09(月) 22:08
-
しばしの間、沈黙が続き、
そして、
中澤は、
- 352 名前:H21 投稿日:2004/02/09(月) 22:09
-
つづく
- 353 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/09(月) 22:26
- っておいっ!
思わずつっこんでしまった、、
あわわわわわ・・・・続きを読むのがこわひこわひよぉ
- 354 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/10(火) 04:55
- 久々に来たらいっぱい更新されていてビックリです。
私も >352 につっこんでしましました。
見れば見るほどはまっていく。
怖いけど見たい!
次に更新に期待大です。
- 355 名前:読み人 投稿日:2004/02/10(火) 09:07
- 更新乙彼様です。
読むのが痛いですけど・・・
読みたいです
- 356 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/10(火) 18:06
- >354
ageんなよ!
- 357 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/10(火) 20:34
-
- 358 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/10(火) 20:37
- >356
その後sagaってるんだから、一々文句たれんじゃねぇよ。
- 359 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 20:34
- まぁまぁ、せっかくの良スレを無駄なコメントで埋めるのはやめましょうぜ
というか本当いいとこで話切るなぁ(w
- 360 名前:H21 投稿日:2004/02/13(金) 20:02
-
今回の更新は超短め。というか1シーンのみで申し訳ない。
- 361 名前:3 投稿日:2004/02/13(金) 20:03
-
ふと、石川は誰かの気配を感じて振り返った。
夜の交差点。見上げると、信号の上の監視カメラがこちらを――いや、横断歩道の真ん中に
向けられていた。
「梨華ちゃん、どうしたの?」
腕の中の吉澤がつぶやく。
「ううん……なんでもない」
(なんだか今、矢口さんの声が聞こえたような気がした)
少しいぶかしく思い、そして石川はいつものように考えるのをやめた。
(今は、よっすぃのことだけを考えていよう)
やっと、2人は許されたのだから。
- 362 名前:3 投稿日:2004/02/13(金) 20:04
-
2人は、全然違うタイプだった。出会った時は反発しあった。そして、魅かれあった。事件が2人を
隔てたけど、こうしてもう一度たどりつけた。もう二度と離れ離れになることはないだろう。
(なんだか、とてもしんとした気持ち……)
夜の闇も、今は優しく温かい。幸せは、目に映る風景さえも一変させる。
「なんでもないよ。行こう、よっすぃ」
「うん。梨華ちゃん」
点滅する青信号を、石川は小走りで渡っていく。彼女たちの足元から長く伸びた一本の影が、
ゆっくりと見えなくなる。
- 363 名前:H21 投稿日:2004/02/13(金) 20:04
-
次回は中澤さんのシーンからつづく。
- 364 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 14:10
- 前回ぼんやり読んでたけど、今回の更新で349の最後の方がさりげなく怖く感じた・・
まさか・・吉澤は・・
ヤベ〜、ゾクっとしてしまった。
- 365 名前:読み人 投稿日:2004/02/16(月) 15:04
- 更新乙彼です。
・・・こ、怖い・・・
よっすぃーは・・・
- 366 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/22(日) 01:15
- 久ブリに来たら更新キテルー!
>364のレスで気付いた。
マジで怖い・・。
- 367 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/22(日) 19:30
- ぅわっ!!
>>364自分も今気づいた…
背筋がゾクッてきました…。
こんなんリングみた時以来かなぁ(w
- 368 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/25(水) 13:21
- わ、わたしも・・・
>364のレスで気が付いちゃった・・・
イヤーーー!
- 369 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 00:19
- ネタバレを匂わすような発言は慎みましょう。
自分の中だけに留めておいて。
- 370 名前:H21 投稿日:2004/03/14(日) 00:54
-
前にも貼りましたけど、BGM:ジムノペディ第1番
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Aquarius/6727/godbless.mid
私の中でのテーマ曲です途中で怖くなる辺りとか。
コピーペーストでどうぞ。
- 371 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:54
-
(吉澤が、どんな罪を犯したというんだろう)
薄暗い死体安置所で、中澤は無力感に打ちひしがれていた。
- 372 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:55
-
=========================
- 373 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:56
-
中澤は血まなこになって石川と吉澤の足取りを追っていた。しかし入って来る情報は、終わって
しまった出来事の後追いばかりだった。結局、中澤が何年もかけて作り上げてきた業界のネット
ワークは、少女2人を見つけ出すことすら出来なかった。
ひんやりとした地下室。かすかな線香の匂い。
ベッドの傍らに立ち、真っ白なシーツをめくる。雪のような肌の、吉澤の上半身があらわになる。
吉澤の頬に指で触れる。大理石みたいだ。指先をゆっくりと下ろす。なだらかな乳房の間の、ご
つごつとした縫い跡が指先に触れる。
- 374 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:56
-
胸の間からへその下までまっすぐに伸びた傷。司法解剖は済んだ、と聞いた。ならば、これは
一度開いて、そして閉じた跡。すっかり痩せてしまった吉澤の白い身体に、その傷痕は刻印め
いて無残に写った。
「もっと綺麗に縫ってあげればいいのに」
つぶやいて、中澤は泣いた。それでも吉澤の死体は美しかった。口元には、満足そうな笑みさえ
浮かんでいた。
- 375 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:57
-
=========================
- 376 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:57
-
「あの石川の事件。あの犯人がな、もう一回、石川と吉澤を襲ったんや」
中澤は、手短に事情を説明した。2人が病院から失踪したこと、そして吉澤だけが遺体で発見
されたこと。
「直接の原因は衰弱死。検死官の先生はそう言うてた」
中澤はそう告げた。矢口が鼻にしわを寄せて「直接の?」とうなるように言った。
(カンのええ子や)
中澤は視線を床に落とし、首を振った。
吉澤の身体には、性的に暴行されたあとがあった。
- 377 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:58
-
安倍と矢口には言えない。言える訳がない。
中澤と保田は、同時にその事実を告げられた。ショックを受けてよろめいた中澤の視界の隅に、
能面のような目で自らの手首を見下ろしている保田の姿が映った。押さえている指の間から、血
が溢れていた。
衝動的に自殺を図った保田は、今は鎮静剤を打たれて眠っている筈だ。かなり強いストレスを受
けているようで、薬で強制的に自由を奪うか拘束服の着用が必要になるらしい。
- 378 名前:4 投稿日:2004/03/14(日) 00:59
-
「……裕ちゃん、顔、怖いよ」
安倍に指摘され、中澤ははっ、と我に返った。
「石川はまだ見つかってへん。マスコミへどういう形で発表するかはまだ事務所が──」
「そんな話を聞きたいんじゃないよ、裕ちゃん」
安倍の強い表情。そこからは怒りの感情が見てとれた。
「そんなことはどうでもいいの」
もう一度、安倍は言った。
- 379 名前:H21 投稿日:2004/03/14(日) 00:59
-
つづく
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/14(日) 01:06
- なんか虚をつかれた
意外な展開にドキドキです
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/14(日) 19:21
- 更新はすごく嬉しいけど
読むのが怖い・・・
- 382 名前:読み人 投稿日:2004/03/17(水) 09:50
- 更新乙彼様です。
やはり、怖いですね・・・
- 383 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/20(土) 18:00
- すごいよ・・・・
どうなるんだろう・・・・
- 384 名前:名無し 投稿日:2004/03/22(月) 22:21
- 怖いなぁ…でも面白い。
続き楽しみです。
- 385 名前:名無しさん 投稿日:2004/04/12(月) 16:46
- なんつーか、もう娘の小説として読んでないよ・・・
- 386 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/12(月) 17:38
- >>385ageないでね
更新きたのかと思った。。。
- 387 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/06(木) 21:17
- ( `.∀´)
- 388 名前:みず 投稿日:2004/05/17(月) 16:43
- ジャニーズ出して。恋人系で
- 389 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 18:00
- >>388
おまえ、バカ?
- 390 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/18(火) 22:16
- 待ってます
- 391 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/14(月) 00:24
- 気長に待ってます
- 392 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/30(金) 15:04
- ( `.∀´)
- 393 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/31(土) 19:56
- イダタタタ・・・けど先が気になる。
- 394 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/31(土) 21:32
- ochi
- 395 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/31(土) 22:14
- ギブ・・・泣いていいですか?
- 396 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/01(日) 04:24
- だめです
- 397 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/03(火) 16:20
- まじか・・
- 398 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/03(火) 17:33
- ochi
- 399 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/13(金) 19:44
- 放置マンセー
- 400 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/16(月) 00:13
- 明日から仕事やだな
- 401 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/30(月) 23:40
- 超待ってる。
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/07(火) 04:03
- 待ってますよ〜?
- 403 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/24(金) 23:56
- ほ
- 404 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/14(木) 12:20
- 待ち
- 405 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/20(水) 02:04
- 待ってます
- 406 名前:通りすがりの者 投稿日:2004/10/31(日) 00:38
- 泣けます。なんかグロイとことかありましたが、更新まってます。
- 407 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/08(月) 23:55
- ほ
- 408 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 02:38
- ぜ
- 409 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/25(木) 23:44
- ん
- 410 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/28(日) 17:42
- 。
- 411 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 23:22
- ほぜ
- 412 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/19(日) 02:30
- ん
- 413 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/20(月) 02:44
- もう誰でもいいからこの物語終わらしてほしいなぁ。
めっちゃもったいないもん。
- 414 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/20(月) 07:13
- >>413
あげるな
- 415 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/20(月) 19:08
- 誰でもいいからとかわけわかんないこと言わないようにてことでochi
- 416 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/21(火) 16:37
- 今日はじめて読みました。
続き期待しております。あぁ…
- 417 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/08(土) 17:32
- 保全させて頂きますね
- 418 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/12(水) 12:51
- 作者さん、待ってますよ。。。
てな事で、保全です
- 419 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/17(月) 09:20
- ええ、続きをひたすら待ってます!!!
このヘビーな物語にどんな決着が付くのか楽しみです。
期待保全。
- 420 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 01:32
- 人の持つ様々な闇を感じます
その闇に福音はもたらされるのでしょうか・・・
変質し、腐敗してもなお傷口から鮮血が滴っている様な
出口の無い暗黒の迷路で、それでもなを、必死で這いずる様な
水牢の中で溺れてもなを、息をしようと水面に腕だけを突き出してだしてもがいている様な
そんな救い様の無い物語にどんな結末が待っているのか・・・
更新を肌を粟立たせて待ってます
保全です
- 421 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/25(火) 22:51
- 待つ
- 422 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/01(火) 19:24
- ほ
- 423 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/02(水) 12:22
- ぜ
- 424 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/03(木) 12:39
- ん
- 425 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/03(木) 21:34
- 超待ってる
- 426 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 12:06
- 保全
- 427 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 20:13
- 喪失と救いの物語・・・
痛いほど多くの喪失を読ませて頂きました。
この後に、どの様な救いが用意されているのでしょうか。
温かい微笑の涙が流せる事を願いつつ、
保全させて頂きますね。
- 428 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/13(日) 11:37
- イタイいよ、ココロがイタイ
果たして彼女達のココロは救われるのか?
暗澹たる展開に自律神経が失調しそうです(汗
夢オチでしか救済は不可能と思われるこの物語の結末を
作者様はどの様に導いて下さるのか
期待を込めて・・・保全!!!
- 429 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/17(木) 22:31
- 今日、彼女と別れました。
嫌いになって別れたわけじゃありません。
互いの感性がまるで噛み合わない事が多すぎて、
その溝を埋めようとすればするほどその溝が深まって、
笑顔でいられる時間が少なくなっていく。
相手の心を乞う事を恋というなら、
互いの心を合わせあう事を愛というなら、
中途半端な恋愛でした。
恐れて、怯んで、臆病な恋愛でした。
身も心も命まで、全てを賭けての恋愛。
失う事を恐れない恋愛。
如何なる束縛にも屈しない恋愛。
互いの運命までをも意思の力で重ね合わせるような恋愛。
そんな恋愛をこの物語で知りました。
心が震えました。
この恋愛の終局を知りたいと強く思いました。
保全します。
Converted by dat2html.pl v0.2