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-TERRORIST-
- 1 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)20時57分00秒
- 娘。達がテロリストに捕まっちゃう話です。
忙しいと言うか、受験生なんでかなり気まぐれな更新になります。
ちなみに、モスクワの事件と似ているかもしれませんが、なんの関係もないです。
事件が起こる前から書き始めていたので。
- 2 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)20時58分22秒
「ここだな……」
深夜の道を走る黒いワゴン車の中、助手席に座った男が呟いた。
運転している小太りの男は、ちらりと助手席を見るが、何も言わず視線を戻す。
その視線の先には大きな建物がある。
運転席の男はハンドルを切り、その建物の入り口付近の道路に車をとめた。
「村山、ここでいいよな」
「ああ」
村山と呼ばれた男は、後部座席を振り返り、口元に歪んだ笑みを浮かべた。
そして鳩のように「くっくっ」と小さく笑いながら車を下りた。
運転していた男もそれに続く。
そのまま、それを眺めるように近くに止まっていたもう一台の車に乗り込んだ。
バタン、ドアが閉まると、何の合図もなく車は走り出す。
テールランプはどんどん遠ざかって行き、
そのまま夜の闇と静寂の中へと溶け込んで行った。
- 3 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月29日(火)20時59分35秒
- <吉澤ひとみ>
「あああ、つっかれた!」
圭ちゃんが叫ぶのが聞こえた。
「けーちゃん、もう歳だね」
すかさず矢口さんの突っ込みが入った。
矢口さんはああ言ってるけど、
ここにいるメンバー全員、かなり疲れているハズだ。
もちろん私、吉澤ひとみも、もうへとへとだ。
いつものことながら今日はコンサートが二回あって、
今はちょうど二回目が終わったところなのだ。
さすがの辻加護もお疲れのようだし、
五期メンも「疲れた」って目になってる。
梨華ちゃんは……。あれ、梨華ちゃんがいない。まさかトイレか?
……と思ったら、ソファーで大股広げて寝てる。
なんつーか、すごいな。
ここはコンサート会場の控え室で、
スタッフとかが間違えて入ってくるかも知れないのに。
そう思い起こしてあげようとしたが、止めた。
梨華ちゃんの寝起きは、超機嫌が悪い。
- 4 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)21時00分25秒
- ふうっとため息をつきまた部屋を見渡した。
なんか、ほんとにいつも通りってってカンジだ。
ここにいると、疲れてはいても安心できる。などと考えていた時だった。
ドォーン
もの凄い音が部屋中に響き渡った。お腹に響くような音だった。その瞬間、みんなの動きが止まった。
「な……今の何!?」
「なんか、爆弾が爆発するみたいだったけど」
「この建物の近くじゃない!?」
言葉の端々に緊張感が漂ってはいるものの、
他人事として扱うような声だった。
もちろん私も、
今の轟音が自分の身に降りかかる出来事の序章だとは思いもしなかった。
- 5 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)21時01分27秒
- 急に、私たちの周りの人達がバタバタし始めた。
しかもみんな興奮した様子だ。
「何があったんですか?」
「ここの入り口の近くに止めてあった車が爆発したみたいです。
テロの可能性もあるらしいんです。」
名も知らないアルバイトらしき青年は、そう言ってまた走り出した。
背筋に寒気が走るのを感じた。
ただの爆発にしてはタイミングが良すぎる。
私たちのコンサートの客がいっせいに会場から出てくる所を狙った、
としか考えられない。
テロかどうかはわからないが、私には人間の起こした爆発にしか思えなかった。
私達は、コンサートが終わってすぐ会場を出ることはないので、
どれくらいの人がそこにいたのかはわからない。
けが人は何人くらいいるのだろうか。
亡くなった人もいるだろうか。
寒気は消えなかったけど、同時に鳥肌が立つような怒りが込み上げてきた。
- 6 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)21時03分01秒
本当に突然だった。
突然、変な男達が男達が私たちの控え室に入って来た。
私たちの目はその男達に吸い寄せられていった。
なにせ格好が尋常じゃない。
全員バンダナかなんかを逆三角形にして鼻から下を覆い、
サングラスをかけ、帽子をかぶっている。
それに黒いコートを着込み、黒い手袋をしている。
そして、その手の中には……。
バァン!!
その音に私は思わず震えた。
拳銃だ。映画なんかで見る、弾が六発入るやつ。
いや、それだけではなかった。
男四人のうち二人は、自動小銃のようなものを持っている。
私にはそういう知識はまったくないのでわからないが、多分そうだ。
そんなものを持った奴らが、何でこんな所にいるんだ。
私は頭が重くなるのを感じていた。
「な……何なのよあんた達!」
マネージャーが男達につっかかった。
「どうやってここまで入ってきたのか知らないけど、すぐ警備員が来るんだから!」
「……お前には用はない。我々の目的はそちらのお嬢さん方だけだ。」
いやに落ち着いた声だった。
- 7 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)21時04分17秒
「そんなこと……」
マネージャーはそれ以上喋れなかった。
男に拳銃で足を撃ち抜かれたのだ。
その足からは、血がドバッと噴出した。
私は思わず目をそらした。
「今すぐ出て行けばこれ以上危害は加えない。さあ、早く出て行くんだ。」
マネージャーは、うつむきながら、
そして左足をひきずりながら出て行った。
後には血の足跡が残っていた。
テロリスト――と言う言葉が思い浮かんだ。
人質をとって建物に立て篭もり金などを要求する。
こいつらはテロリストではないのか。
ここに立て篭もるつもりなのではないか。
あまりに現実離れした状況に、頭が追いつかない。
思考回路がだんだんまともじゃなくなって来る。
けれどそんな私達とは逆に、
いやに落ち着いている四人の男達は、すぐに行動を開始した。
- 8 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)21時05分52秒
- まずはここまで。
- 9 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月29日(火)21時12分03秒
- それと、羊の相談スレの>>271-272 >>274、ありがとうございました。
- 10 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月31日(木)21時08分24秒
「おい、そこのちっこい金髪」
「……わ、私ですか?」
矢口さんだ。緊張からか、
いつもの『おいら』という一人称じゃなくなってる。
まあこんな状況で『おいら』なんて絶対いえないと思うけど。
「ああ。ちょっとこっちに来い」
「……」
矢口さんは無言で従った。
厚底の靴のせいだけではない不自然な足取りが見ててつらい。
男は矢口さんに手錠をはめた。そしてそのまま部屋から出て行ってしまった。
「よっすぃー……」
梨華ちゃんが腕にしがみついてきた。
今にも壊れそうなくらいに震えている。
私は何も出来ずにただうつむいていた。
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月31日(木)21時08分58秒
- ブツッと、変な音がどこかから聞こえた。
すぐにスピーカーの電源が入ったのだとわかる。
「この建物の中にいる諸君に告ぐ」
さっき矢口さんを連れて行った男の声だった。
「我々は左翼系過激派組織だ。
今からこの建物は我々の監視下に入る。
怪我をしたくなければ速やかにここから出て行きたまえ。
くりかえす……」
また頭がぐらぐら揺れた。
やはりこいつらはテロリストで、私達は人質になったのだ!
一体やつらはどんな要求をし、どれくらいここにいるのだろうか。
ちょうど、窓から満月に少し欠けた月が見えた。
まだ、事件は始まったばかりだ。
- 12 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年10月31日(木)21時10分05秒
- <小川麻琴>
「小川ぁ……」
後ろにいる飯田さんがあたしの服をつかんでいる。
正直言って、こんな状況になってあたしは少し興奮していた。
そりゃ恐いけど、授業中とかに妄想していたことが現実になったって感じ。
それに、男達4人は、みんなやせてるか小太りで、
あまり強そうじゃない。
もちろん、そんなこと顔には出さずびびってる振りをしてるが。
さっき矢口さんを連れて行った男が、矢口さんを連れて戻ってきた。
とたんに飯田さんが服をつかむ力が強くなる。
「お前らには、ステージに移動してもらおう。
すぐそこだからわかるよな。」
男はそう言って部屋の扉をあごで指した。
私達はそれに従い、ステージへ移動する。
- 13 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月01日(金)21時30分35秒
- 期待カキコ
- 14 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月02日(土)23時52分09秒
- ステージには薄暗い明かりがついていた。
誰もいない客席がびっくりするぐらい大きく見える。
私達は横一列に並ばされた。その正面に男が一人立った。
彼はポケットからコードレスホンの子機を取り出し、
ボタンを押した。相手は警察のようだ。
「落ち着いて聞いてほしい。我々は左翼系の過激派組織だ。
ここ、〇×ホールは、我々が占拠した。
モーニング娘。とやらのメンバー12人は、我々の監視下にある。
もちろんそちらが誠意ある対応をしてくれれば人質に危害は加えない」
男はそう言って、受話器を列の一番端にいる安倍さんに渡す。
安部さんが戸惑った顔をしていると、男は一言「名前を言え」と言った。
- 15 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月02日(土)23時52分39秒
「あ、安倍です」
「新垣です」
「加護……です」
12人が名前を言い終えると、再び男が受話器を持った。
「聞こえるか。こいつらの命は、そちらの対応次第だ」
「ああ。よくわかった。わかったから要求を言ってもらえないだろうか。」
「……まず、食料だ。
この前の通りを北へ少し行ったところにコンビニがあるはずだ。
そこに置いてあるすべての弁当、パン、おにぎり、菓子、それと飲み物を、
ダンボールに入れて台車に載せ、5分以内にエントランスホールへ持ってきてくれ」
「ご……5分でか?」
「ああ。変なものを混ぜられると困るからな。それと……、
24時間以内に、番号不ぞろいの札で、20億円用意してもらおう」
「に、20億だと!」
「なに、12人のアイドルの命に比べたら安いもんだろ。
ちなみに、この建物の周りはカメラで監視している。
それから、建物内にはいたるところに爆弾を仕掛けておいた。
くれぐれも下手な真似はしない方がいい」
「ま、待ってくれ!20億もの金がすぐに用意できると思っているのか!?」
「念のために言っておくが、そちらの意見を聞くつもりはまったくない」
そう言って男は受話器のボタンを押した。
- 16 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月02日(土)23時53分42秒
- 20億円。男はそう言った。あたしには少し微妙な数に思える。
あたしなら10億か50億くらいのきりのいい数字にするのに。
確かに20億でも悪くはないけど。
そんなことをあれこれ考えていたときだった。
「おいでなすったぜ」
と、ステージの上のほうから声が聞こえた。
ちょうど、監視カメラのモニターや放送用のマイクなんかがある管理室の所だ。
見上げると、ガラス越しに男の姿が見えた。
今度はマイクを使って、また男は言った。
「食料が届いた。赤西と矢田で取りに言ってくれ。
村山はそこで人質の監視を続けてくれ。」
この目の前にいる男は村山と言うらしい。
あたしは村山を思いっきり睨んでやった。
- 17 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月02日(土)23時55分50秒
- >>13
ありがとうございます。期待に添えるよう頑張ります。
- 18 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月05日(火)21時35分12秒
- 「くっくっくっ」
……笑われた。悔しかったが、
相手は銃を持っているので下手な真似は出来ない。
この歳で死にたくはないし。
「おい、名前何だっけ? そこの不細工なの」
……あたし?あたしのことなの?
そんな顔して村山を見ると、今度は声を上げて笑い出した。
もう頭が沸騰しそうなほどムカツイた。
それでもなんとか押さえていたのが、次の男の一言で、完全にキレた。
「どうせ事務所の社長とかに体売ったりしてんだろ」
「……うっさいこのボケ!お前……」
- 19 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月05日(火)21時35分53秒
そこまで言ってあたしは我に帰った。
男の持った銃が、あたしの額に向けられたからだ。
瞬時にあたしの体から血の気が引いていく。
もし村山が引き金を引けば、あたしの人生はそれで終わり。
そんな思いだけが頭の中をぐるぐるまわり続ける。
男はまた静かに笑いながら銃を下ろした。
……完全にからかわれてる。
あたしは心を落ち着けようと深呼吸を繰り返した。
そんな時、舞台袖から何かがガラガラと言う音と共に運ばれてきた。
台車に載せた食料だ。
赤西、矢田と呼ばれていた男達が一台ずつ運んできて、
「あと5台ある」と言って戻っていった。
「お前ら、腹減ってるか?」
村山が聞いてきたが、誰も答えない。変わりに安倍さんが口を開いた。
- 20 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月05日(火)21時36分59秒
- 「あ、あの……、お手洗いに行きたいんですけど……」
「……わかった。赤西と矢田が来るまで待っていろ。飯はいいのか?」
「はい……」
しばらくして、二人はすべての台車を運び終えた。
「ふう……。さ、早いとこ例の物を仕掛けて飯にしようぜ」
「あ、赤西、待ってくれ、こいつが便所行きたいんだと」
指差された安倍さんはうつむいてしまった。
それを見るとためらわれたが、あたしは思い切って言った。
「あの……あたしも」
なにせ、ここで行っとかないといつ行けるかわからない。
けれど、そんな考えをしていたのはあたしだけではなかったらしい。
「わたしも……行きたいです」
「……私もいいですか?」
結局、トイレに行きたいと申し出たのはあたしと安倍さん含め、5人だった。
男達は隅のほうで相談を始めたが、すぐ戻ってきた。
「5人いっぺんに連れて行くわけにはいかない。一人ずつだ」
- 21 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月05日(火)21時37分48秒
- 一人ずつ、男に付きまとわれながらトイレに行く
――それはあたし、いや多くの女性にとってかなり屈辱的な事だ。
考えるだけでも背筋になにやら冷たいものが這い回る。
「じゃあまず……お前から行くか」
村山があたしを指差していった。
- 22 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月09日(土)16時01分23秒
<吉澤ひとみ>
涙が、手に落ちた。
私が吉澤ひとみとしてこの世に生を受けてから、
こんなに悔しさを感じたことはない。
次から次へ溢れてくる涙が、私の服のそでを濡らした。
「おい、早くしろ」
トイレのドアの向こう側にいる男が声をかける。
私はなんとか涙を止めて、立ち上がった。
トイレに向かったのは私が最後だった。
私が戻ってきたのを見て、飯田さんが村山と赤西に言った。
「お願いがあります」
「……なんだ」
答えたのは村山だった。
「5期メンだけでも、解放してくれませんか」
村山は無言だ。
- 23 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月09日(土)16時02分21秒
- 「お願いです。新垣なんかまだ中二ですよ!ただでさえ気使う子なのに。
せめて5期、それに辻と加護だけでも……」
「だめだ」
村山が冷たく言い放った。
「今だって人質が12人しかいないんだ。
これより人質が減ると、我々の脱出なんかにも危険が出る恐れがある」
「そんな……」
それきり飯田さんはそれっきりうつむいて黙ってしまった。
それを見て今度は辻が呟く。
「あの……」
「なんだ」
「あの、ご飯、食べたいです」
私は少し拍子抜けしてしまった。
他のみんなも、少しだけ表情が和らいだように見えた。
そんな中辻は、なぜか照れながら言う。
「ち、ちがうんです。ののだってこわいんです。
でも、もっとお腹すいたんです」
たぶん、みんなを元気付けようと辻なりに頑張っているのだ。
私も泣いてばかりいられない。
静かにぐっと拳を握り、私はこの状況から抜け出すすべを探し始めた。
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月09日(土)16時04分44秒
- <山越署長>
今やトップアイドルであるモーニング娘。を人質に取ると言う
大事件の始まりは、一本の110番の電話だった。
路上で車が爆発したと言う。
だが、その通報でパトカーが現場につく前に、事件は発覚した。
妙な男達から「この建物は占拠した」との電話が入ったのだ。
そのため急遽そのホールは立ち入り禁止となった。
その直後、そのホールの中にいて慌てて出てきたと言う人たちに混じって、
足を撃たれたと言うモーニング娘。のマネージャーが出てきたらしい。
しかしその後は進展がない。
と、ここまでの事を、緊急に開かれた対策本部で聞かされた。
しかし、いかに私が署長と言う肩書きのベテランでも、
こんな事件に出くわした事はない。
そもそも、日本ではテロ事件などめったに起こるものではないのだ。
- 25 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月09日(土)16時07分14秒
「わかった。じゃあ、松本」
私は詳しい情報を聞くため、松本を促した。
「マネージャーが出てきてからは、銃声、爆発音などは確認されていません。
また、今建物の周りをおよそ五百人の警官が囲んでいます。
ただ、夜にもライトが点きますので、闇に紛れて近づくことは不可能です。
今のところ、犠牲者は足に重傷を負ったマネージャだけですので、
それほど緊迫しているわけではありません。
なので、交渉を引き延ばすのが今のところ最も有効と思われます」
交渉の引き延ばしは、こういった立て篭もり事件においては、
日本警察の常套手段だ。
事件が単独犯による犯行だった場合、それでほとんどが解決する。
複数犯でも、引き延ばしが成功すれば解決の可能性が一気に増す。
だが……
「犯人達はかなり計画的に行動しているな。
最初の爆発があってから10分も立たないうちに警察に電話をしてきている。
これは難しいかもしれないな……」
- 26 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月09日(土)16時08分27秒
- 最初の爆発にしても、最小限の被害で、
出来るだけ早く人達を建物から追い出すにはもってこいの方法だ。
実際、場所が良かったのか怪我人すら出ていない。
とにかく、私はこう結論づけて会議を終えた。
「とにかく犯人との交渉を引き延ばすんだ。
それから、他の者は情報収集に全力を上げてくれ」
部屋を出た私は、また別の刑事に捕まった。
「署長。今、記者の連中が、記者会見を開け、と押しかけているのですが」
やはり来たか、と言う感じだった。
トップアイドルが巻き込まれた事件、しかも立て篭もりとなれば、
テレビ局や新聞社が動かないわけがない。
私はため息をつきながら記者たちの待つ部屋へ向かった。
足がだんだん重くなっている気がした。
- 27 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月09日(土)16時18分21秒
- 批判や感想があればお願いします。
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月11日(月)14時27分21秒
- 緊迫感が出ていてよい文章だと思います。
どういう物語に発展するのかまだつかめませんね。
- 29 名前:名無し 投稿日:2002年11月11日(月)17時01分39秒
- 今のところは得に感想はなし
けど面白くなりそう
作者さんがんばれ
- 30 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年11月12日(火)13時14分38秒
- 小川さんイイです!
作者さん頑張って下さい。
更新期待してます。
- 31 名前:読んでる人@ヤグヲタ 投稿日:2002年11月13日(水)09時17分50秒
- 現在、さほど大きな展開が無いので、様子見って感じで読んでます。
もちろん期待していますんで頑張って下さいね。
- 32 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時26分44秒
<小川麻琴>
……理沙ちゃんが、泣き出してしまった。口を手で覆って、泣いている。
こういうのは伝染するものなんだろうか。
理沙ちゃんが泣き出したとたん、愛ちゃん、
加護さんまで泣き出してしまった。
「理沙ちゃん、泣かないでよ。元気出して」
その負の感情はあたしにまで襲い掛かって来そうだったから
理沙ちゃんのことは見ずに言った。
けれど、いかにも悲しげなすすり上げる声が、胸にズキズキ突き刺さってくる。
……負けるもんか。あたしはぎりっと奥歯をかんだ。
なぜかはわからないけど、ここで泣いたら負けな気がした。
「愛ちゃん、頑張って」
紺ちゃんの声が聞こえた。
紺ちゃんは目を真っ赤にしながら、愛ちゃんの背中をさすっている。
なんかあたしまで励まされた気分だ。
…………。不意に頭がぼーっとした。
よく考えてみたら、もう深夜ではないのか。
時計がないのでわからないが、
ここに監禁されてからもうだいぶ時間がたっている。
ただでさえコンサートを二回もやって疲れているのに、
今まで眠気を感じなかったのが不思議だ。
- 33 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時28分37秒
そう思うと余計に眠たくなってくる。
いけない、と思い顔を上げた。
しかし、その耳に今度はかすかな寝息が聞こえてきた。
理沙ちゃんが、眠っていた。
それだけではない。
愛ちゃんも、加護さんも、そして紺ちゃんも眠ってしまっている。
いったいあたしはどれくらいボーっとしていたんだろう。
しかし、まもなくあたしの元にも睡魔はやってきて、
だんだんとあたしから意識を奪っていった。
誰かに触られてる気がしてあたしは目を覚ました。
それにつられたのか、理沙ちゃんの逆隣にいた石川さんも目を覚ます。
石川さんは、目を覚ますとすぐ体のあちこちを見回し始めた。
どうやら着衣の様子を調べているようだ。
異常はなかったらしい。
それを見届けてあたしは周りを見回してみた。
見張りの男はいつの間にか、矢田に代わっている。
コートの下に覗く赤いシャツが彼の目印だ。
- 34 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時33分03秒
さらに真横の方をみると、飯田さんと矢口さんが同時に目を覚ましていた。
目が合い、お互いに不幸を慰み合う。
一体いつまでここにいなければいけないのだろう。
無意識のうちに、立ち上がろうとしてしまった。
寸前で思いとどまったが。なぜ立ち上がろうと思ったのか。
そうだ、あたしはトイレに行きたかったのではないか。
まだ半分眠りの世界にいる頭を二三度振って、あたしは矢田に申し出た。
「すいません、トイレに行かせて下さい」
朝だからだろう。今度は12人中11人が「私も」と手を上げた。
またしてもあたしは最初だった。
しかし、昨日とは何か違った。歩いていると、背中に冷たい物を感じる。
しばらくしてそれの正体に思い当たったとき、
あたしは立ち止まってしまいそうだった。
銃口が、向けられている。
それはあたしの体内に残った眠気を綺麗さっぱり削ぎ落とした。
なんとか、あたしは無事にトイレを済ますことが出来た。
銃を突きつけたのに、脅し以外の意味はなかったようだ。
- 35 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時34分05秒
ふと、トイレまでの道に掛け時計があったことを思い出した。
残念ながら、あたしはまったく忘れていたので見てない。
「ねえ紺ちゃん、時計見なかった?」
年上のメンバーの配慮で、
あたしの次にトイレに立った紺ちゃんに聞いてみた。
「うん、もう11時過ぎだった」
呟くような声だった。やはり疲れているのだ。
あたしも、始め感じていた根拠のない余裕は、いつの間にかなくなっていた。
ただこの状況から一刻も早く抜け出したかった。
- 36 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時37分33秒
<山越署長>
「くそお……、何か方法はないのか……」
私は思わず机の上で拳を握り締めた。
実際、我々は何できない。
建物の周りを包囲しているのに、
壁面に設置されたカメラのせいでうかつに近づくことすら出来なかった。
もともと防犯目的であるはずのカメラが、今は犯罪を助けている。
そのカメラがある限り我々は建物へ近づけないのだ。
日本警察の意地をかけても、金は渡してはならない。
いや、意地だけでなく、そうした事は、
似たような犯罪が再び起こる可能性を生む。
また犯人グループの活動を活発化させることにも繋がるのだ。
今の時点では、何も出来ることはなかった。
実は、金の手配はもう済ませてある。
日銀に連絡すれば、20億ぐらいはすぐに用意出来るのだ。
その事を犯人は知っているのだろうか。
もし知らなければ、交渉の引き延ばしは上手く行くだろう。
- 37 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時38分38秒
いや、他にもこの事件は犯人側に圧倒的に不利な点がある。
建物の入り口と道路が離れていると言うことだ。
どんな場所に閉じこもろうとも、
脱出の際だけは警察の前に姿を晒さない訳には行かない。
今回はその時間が長くかかるのだ。それだけが救いだった。
「署長、署長!」
誰かが私の思考を邪魔した。
見ると、受話器を握り締めた刑事が私を呼んでいる。
……まさか。
「署長、犯人からの電話です!」
- 38 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月13日(水)20時46分18秒
- >>28-31
ありがとうございます。まじで感謝感激しております。
これからも精進してがんばります。
ちなみに、作者道程のため、エロにはなりません。
もちろん暴力シーンもないです。
- 39 名前:リエット 投稿日:2002年11月15日(金)18時52分46秒
- ラスト、一体なんなんでしょう・・・。
署長は娘。達を助けることができるんでしょうか。
- 40 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月19日(火)20時47分47秒
<小川麻琴>
「ごきげんよう。どうだ、金の準備は順調に行ってるか?」
昨日と同じような落ち着いた声で村山は言った。
「……今懸命に努力をしている。本当だ。
だが、すまないが約束の時間には間に合わないかもしれない。
なにぶん額が多いので、こっちもてこずっているんだ」
「……」
「本当だよ。信じてくれ。今必死になって集めている所なんだ」
「……高橋愛」
「え?」
「いいか、時間通りに出来なければ、こいつを殺す」
「ま、まて、はやまるな!わかってくれ!
今必死になって集めている所なんだよ!
額があまりにも多いんだ!時間をもらえれば確実に届けることは約束する」
「……」
「人殺しが目的ではないだろう。金は必ず届ける。
だから変な真似はやめてくれ。」
「……わかった。多少は認めてやろう。
だが、引き延ばし工作などは無駄だ。わかってるな」
「ああ、もちろんだ。」
「じゃあ、また連絡する」
- 41 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月19日(火)20時49分16秒
- ……あたしの頭の中で何かが動き出した。
村山は何故愛ちゃんのフルネームを知っているんだ。
結成当時からのメンバーで、
一般人には一番知名度がありそうな安倍さんの名前も知らなかったし、
あたしの名前もおそらく知らなかっただろう。なのに、なぜ……。
それともう一つ。彼らは過激派組織のメンバーだと名乗っていた。
とすれば組織には多くの人間が所属しているだろう。
その中で実行犯に選ばれたのが彼らだと言うのは納得できない。
リーダー格と思われる村山にしたって、
服の上からでもわかるくらい痩せている。
それに他の三人は小太り。いったいどういうことなのだろう。
今までの言動からみても特別頭がいいと言うわけでもなさそうだし。
あたしの脳みそはかつてないほどのスピードで回転し始めた。
- 42 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月19日(火)20時51分44秒
- <吉澤ひとみ>
やはり、警察は引き延ばしをしようとしている。
私達に危険が及ぶことよりも、
警察としてのプライドを取ったのかもしれない。
そんな風に思えるのは私の考えすぎだろうか。
どっちにしろ、とても約束の24時間以内に
現金を用意してくれることはありえないだろう。
ここは、私がやるしかない。
今朝起きてからずっと考えていた計画を実行しよう。
みんなの気力が完全になくなる前に。
隣にいる圭ちゃんを見た。
見張りにばれないようにするには、
伝言ゲームのように小声で伝えていくのがいいだろう。
私は圭ちゃんの肩をそっと叩いた。
「あのー、トイレに行きたいんですけど」
紺野が言った。
「さっき行ったばっかりじゃんか」
「すいません、おっきい方なんです……」
紺野はそう言うと恥ずかしそうにうつむく。
なんて演技が上手いんだろうか。見張りの矢田もすっかり騙されている。
例によって、矢田は村山を呼び、彼に紺野をトイレに連れて行くよう促す。
名前を知らないもう一人の男はさっき仮眠を取ると行って部屋を出て行った。
赤西は今管理室にいる。男達はたったの四人だ。
私はただ計画の成功を祈った。
- 43 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月19日(火)20時53分46秒
「あれ?」
これまた計画どおりに加護が上を見て呟く。
矢田もその声に反応している。
いい感じだ。つぎに加護は隣の辻の耳元で何か囁く。
それを聞いた辻もまた、天井を見る。
と言っても、今このステージを照らしているライトは、
フロントと呼ばれるもので、客席の頭上にある。
つまり、ステージの真上は真っ暗で何も見えないのだ。
ちなみに、ライトの操作は舞台袖でも出来るようになっている。
ついに矢田は上を見上げた。
当然のことながら、そこには何もない。
それでも矢田はしつこく上を見ている。
たぶん警察が何らかの手段で天井に入り込んだとでも思っているのだろう。
そこに、紺野と村山が帰ってきた。
村山は、矢田がしきりに天井を気にしているのを不思議そうに見ている。
その横で紺野がじっとチャンスをうかがっているとも知らずに。
やがて彼自身も、こちらを気にしながらも天井に目をやった。
- 44 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月19日(火)20時55分13秒
- ――その時。
紺野は、ステージの真上にあるライトのスイッチを入れた。
とたんにライトは生を受けたようにこうこうと光り出す。
「う、うわっ」
まともに光を見てしまった二人は完全に目をつぶっている。
「今だっ!」
「たあっ」
紺野の、得意の空手キックが村山の手に命中し、
拳銃が音を立てて床に落ちた。紺野はすぐにそれを拾い上げる。
「クソッ!」
村山が薄目をあけて紺野に突進していった。
しかし紺野は簡単にそれをよけて、照明のスイッチを今度は逆にひねった。
瞬く間にステージは暗闇に包まれる。
私達はすぐに予定通りの場所へ身を隠した。
- 45 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月19日(火)21時03分58秒
- >>リエットさん
レスありがとうございます。
ラストまで付き合ってもらえるとうれしいです。
なんだか知らないけど、熱っぽいのに熱はないという症状が
2日ほど続いてぐだぐだです……。
皆さんも風邪には気をつけてください。
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)23時54分29秒
- おぉ、今見つけました。
ハラハラしながら読んでました!
続きが気になりますw
- 47 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時35分21秒
「ちっくしょう!おい、赤西!」
矢田は叫びながら、胸元で何かのスイッチを入れた。
トランシーバーか何かだろうか。
「おい!聞こえるか!?」
「ああ。電気が消えたけど何があったんだ?」
ステージの様子は管理室からでも見える。
「今すぐ明かりをつけてくれ」
「わ、わかった」
その言葉どおりに、5秒もしないうちに再び明かりが点いた。
しかし、男達の見える範囲に私達の姿はない。
「ちくしょう、どこに逃げやがった!」
「まあ落ち着け、矢田。
あの暗闇の中をステージ脇の入り口から出れるわけはない。
たぶん客席の座席の下にでも隠れてるんだろうよ」
「……そうだな。じゃあ、客席の入り口を見張っていてくれ。
俺が座席の下とか探してくる」
「わかった……あいつらは銃を持っている。気をつけろよ」
「ああ」
そう言って彼らは客席の方、つまり私達とは逆方向に歩き出した。
- 48 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時36分31秒
で、今私達がいる場所は、
ステージ向かって奥の壁とそのすぐ手前にあるカーテンの隙間。
ここにライトを当てて演出をしたりするのだ。
私は、慎重にカーテンの切れた所から男達の様子をうかがった。
だいぶ遠いけど四人ともまったくこっちを気にしていないことは良くわかった。
いや、もしかしたら自分の願望がそう思わせただけかもしれない。
急にドクドクと鼓動を刻み始めた心臓を落ち着かせるように、
三回深呼吸してもう一度男達の様子を見た。
大丈夫だ。
必死になって座席を探しているのと出入り口でその様子をボケッと見ているのが二人。
まったくもってこっちには注目していない。
やるなら、今だ。
- 49 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時40分53秒
<小川麻琴>
隣にいた理沙ちゃんが、動き出した。
あたしもすぐ、カーテンを動かさないように歩き始めた。
少し歩いて、なぜか息を止めている自分に気づいて苦笑いする。
カーテンを出ると、舞台袖のわきにある階段を下り、変な部屋に入った。
その部屋はちょうどステージの真下にある。
たぶん、ライブのときはここからエレベーターみたいなので
ステージに登場したりするのだろう。
ちょうど体育館のステージの下にあるパイプ椅子なんかを収納するスペース、
あんな感じ。
「みんな、ちょっと来て」
飯田さんが小声でみんなに囁いた。
みんな飯田さんの周りに集まる。飯田さんは、ドアを閉めながら続けた。
部屋は真っ暗になった。
「ここにいればしばらくは見つからないと思う。
でも、このままじゃ私達は絶対にここから出れない。
そこでね、ひとつ提案があるの」
「なに……提案って」
「誰かが控え室まで行って携帯を持ってくるの」
「え……で、でも」
- 50 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時42分48秒
「でもなに?このままここにいたら絶対に見つかるよ。
かといって他に隠れる場所もない。
そうなればなんとか外部と連絡を取って、
警察に突入してもらうしかないじゃない。
私達が安全なら何のためらいもなく入ってこれるんだから」
「……そうでしょうか」
紺ちゃんだ。
「……何?紺野」
「犯人達が警察に電話したときに言ってましたよね?
『この建物のいたるところに爆弾を仕掛けた』って」
「あ……」
「……でも、携帯をとりに行くのは賛成です。
なんかいい方法を考えてくれるかもしれないし」
……結局、大人のメンバーがじゃんけんをして、
保田さんがとりに行くことになった。
保田さんが『絶対戻ってくるからね』と
いささか大げさな台詞を吐いて部屋から出て行くと、
あたしは大きなため息をついて座り込んだ。
- 51 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時43分55秒
授業中の妄想通りなら、
あたしは誰かが銃で撃たれそうな所に飛び出していって撃たれて、
だけど急所外れてて助かるんだよな……。
なんて、くだらない事を思い出した。
そんな偶然あるわけないし、あたしにそんな勇気はない。
それがよくわかった。というより思い知らされたと言った方がいいか。
そんなことを考えていた時だ。
「待て!動くな!」
バァン
ほぼ同時に遠くから聞こえてきた叫び声と銃声。
そしてこちらに向かって走ってくる足音。
あたしは暗闇の中で身を固くした。
- 52 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時46分06秒
<山越署長>
「署長!」
遠くで誰かが叫んだ。
「署長、大変です!」
「一体どうしたと言うんだ」
「現場から銃声が聞こえたそうです」
「なんだって!?」
すぐに私は拳銃を発砲しなくてはならなくなった状況を想像してみた。
が、それは容易に結論に達する。
人質が抵抗したのだ。
「まずいことになったな……」
思わず声に出して呟いていた。人質の身に危険が迫っているのだ。
早く解決しないと犠牲者が増える可能性がある。
「……仕方ない。特殊部隊を呼ぼう」
特殊部隊。この場合は、テロに対する厳しい訓練を受けた者達だ。
彼らに現場の見取り図を渡し、カメラの死角を進んでもらうのだ。
彼らはそんな訓練も受けているはずだが、
これが危険な賭けであることにかわりはない。
見つかれば、最悪モーニング娘。のメンバー、特殊部隊の命が奪われ
建物も爆発する。あまりにも危険な賭けだ。
さきほどの銃声がただの牽制か、それとも誰かの体を貫いたのか。
ただ前者を祈るしかない。
- 53 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年11月30日(土)23時51分16秒
- >>46
ありがとうございます。
ハラハラしてもらえる文が書きたかったので嬉しいです。
- 54 名前:リエット 投稿日:2002年12月04日(水)05時46分22秒
- 話の止め方が上手いです。
小川さんの妄想どおりになるのか……
- 55 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月24日(火)00時51分00秒
- <吉澤ひとみ>
圭ちゃんがもの凄い勢いで部屋に飛び込んできた。肩で息をしている。
「ちょっと圭ちゃん、一体何が……」
飯田さんの言葉はそこで止まった。
複数の足音がこっちに向かってくるのが聞こえたからだ。
「みんな!ドア開けさせないようにするの手伝って!」
「わ、わかった!」
私は真っ先にドアへ向かった。
私が丸いノブをぐっと握った瞬間、男達の足音がドアの向こうで止まる。
そして間髪いれずにノブが力を持ち始める。
「ぐっ……」
多少は引っ張られながらも、なんとか押さえていた。とにかく必死だった。
誰かの手が、私の手を上から包んだ。安倍さんだ。
「うああぁぁ!」
気付けばわけのわからないうめき声を上げていた。
だんだんと汗で手が滑り出す。それに疲労が溜まってきている。
なんとか耐えようと思いっきり歯を食いしばってみたが無駄だった。
もう限界だ。このままじゃ手がもぎ取られてしまいそうだ。
- 56 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月24日(火)01時01分03秒
- そう思った時だった。
突然相手が手を放し、思わず私は逆の方向に回してしまった。
そこをすかさず凄い力で押してくる。
急な出来事だったので反応できず、ついに大きな音を立てドアは開いてしまった。
ドアが開いた瞬間、私達はドアから飛びのき、
暗い部屋の隅に固まるようにしながら男達を見つめた。
「みんなゴメン……」
圭ちゃんが泣きながら呟いた。私もいつの間にか泣いていた。
荒い息の男達が部屋の電気をつけた。
意外にも、あまり興奮していないように見える。
と言うより、何かを警戒している。
そこまで考えてピーンと来た。
男達は紺野が拾ったの拳銃を警戒しているのだ。
しかもまだ紺野が持っている事に気付いていないようだ。
まだ希望が残っている。男は三人。一人は管理室だろう。弾は多分六発。十分だ。
- 57 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月24日(火)01時02分14秒
ふと、一人の男が私をサングラス越しにじっと見つめているのが分かった。
何か思い見返すと、彼は紺野の方へ歩いていく。
しまった、と思う間もなくあっさりと背中に隠していた拳銃が奪われた。
気付かないうちにみんなが拳銃を凝視していたのだ。
「おまえら、こんなことをしておいてタダで済むと思うなよ。
なんなら今ここで俺らの相手をしてもらおうか?」
……もうだめだ、と思った。もうおしまいだ。
よく考えてみれば今までこいつらが私達に手を出してこなかった方が不思議な気がする。
もう、いさぎよくあきらめよう。
そう思い、ため息をついた時、娘の誰かが静かに立ち上がった。
- 58 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月24日(火)01時08分37秒
- 後数回の更新で終わりそうです。
気合で年内に終わらせるかもしれません。
リエットさん、いつもありがとうございます。
励みになります。
- 59 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月24日(火)10時20分35秒
- 更新きたーー!!!待ってました!
今回も緊迫感があるシーンで…。
誰が立ち上がったんだろう?とても気になります!
作者さん頑張って!更新期待してます。
- 60 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月25日(水)01時47分14秒
- <小川麻琴>
手がベタベタする。なのに口の中はカラカラ。頭はジンジンする。
それでもあたしは立ち上がり、男達の方へ歩き出した。
あたしの考えが間違っていれば、きっと殺されるだろう。
それがわかってて何故歩いているのか、自分でも不思議だった。
「小川……何する気なの!?」
飯田さんの声は震えていた。それを理解すると同時に、男達の声が部屋に響いた。
「なんのつもりだ。殺されたいのか?」
同時に銃口があたしの方へ向けられる。
あたしは彼らから5メートル程はなれた所で立ち止まった。
「おい、これが見えないのか?」
男が拳銃を揺らす。あたしは構わずまた男に近づいて行く。
「な、なんだ、撃つぞ!いいのか!?」
「やめてぇぇぇぇーーー!!!」
ほぼ同時に二つの声が部屋にこだました。
「撃ってみなよ」
あたしは精一杯落ち着いた声を作って言った。
「え……小川?」
後ろから聞こえてきた誰かの声は、無視した。
「撃ってみなよ、あんたの大好きなモーニング娘。のメンバーを!!
なあ、モー娘オタク!」
- 61 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月25日(水)01時49分38秒
- 男の体がビクっと跳ねた。サングラスの奥の目が動揺しているのが分かる。
やはりあたしの推理は間違っていなかった!
あたしは一気に男の目の前まで近寄った。
そしてすばやく拳銃を奪う。
なんともあっけないくらい簡単に拳銃は男の手から離れる。
よほど動揺しているのだろう。
「手ぇ挙げろ!」
あたしは拳銃を男に向けて言った。
「……ハハッ、お前に撃てるのか?」
言いながら顔が引きつっているのがわかる。
ぞわぞわした感覚が背中を走り抜けた。
それにまかせて、男の横の壁を狙って引き金を引いた。
バァン
もの凄い衝撃に、しりもちをついてしまった。
「いてて……」
呟きながら立ち上がろうとして目を疑った。
別の男が、二の腕を押さえてうずくまっている。
押さえた場所から真っ赤な血を流して。
そんな……。
本当に撃つつもりなんてなかったのに。
支離滅裂になりそうな頭を二三度振って落ち着くように自分に言い聞かせた。
今は撃った男の事をあれこれ考えてはだめだ。
「動いたら今度こそ本当に撃つ!
壁に向いて手を挙げろ!」
- 62 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月25日(水)01時50分46秒
- 声の震えが悟られないように大声を張り上げて言った。
それにひるんだのか、彼らは何も言わず従う。
全員が従ったのを確認して、あたしは慎重に近づいていった。
顔につけていたスカーフをほどき、それで彼らの手首を縛っていった。
足は着ていた黒いコートを脱がせて縛った。
彼らの着ていたコートには例外なく拳銃と予備の玉が入っていた。
「……あたしもやる」
二人目を縛っている時、あさ美ちゃんが言ってきた。
三人目の血まみれの男は、あさ美ちゃんと一緒にやった。
「……」
すべて終わると、一気に力が抜けた。
頬が熱かったので触れてみると、泣いていた。
「まこっちゃん……」
「う……ひっく……あさ美ちゃん……」
あたしはあさ美ちゃんの胸の中で思いっきり泣いた。
「こわかったよぉ……こかったよぉ……」
……その時だった。男達の方から何か物音が聞こえた。
彼らの持っていたトランシーバーからだった。
「……こちら管理室。どうした……何かあったのか?
……何故応答しない。」
少しの沈黙。
「何かあったんだな、今すぐ行く」
それだけ告げると、ノイズを残して男の声は消えた。
- 63 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月25日(水)01時59分56秒
- 今日はなんかの日だった気もするけど、更新。
>>りゅ〜ばさん
速攻レスありがとうございます。
がんばります。
- 64 名前:リエット 投稿日:2002年12月26日(木)04時03分58秒
- まだ、もう一波乱ありそうですね……。
- 65 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月31日(火)03時12分22秒
- 本当にすぐだった。
一分もしないうちにそいつは来た。
派手な音を立ててドアを開けたそいつは、部屋の中の様子に一瞬驚いていた。
「どういうことだ、これは…」
あたしは念入りに涙を拭き、また立ち上がろうとした。
けれどそれは叶わなかった。あさ美ちゃんに肩をつかまれた。
「私が行くよ」
そう小声で言って、あさ美ちゃんは立ち上がる。
「もう全部ばれてるんですよ」
「なんだと……?」
「あなた達の正体、もうばれてるんですよ」
あさ美ちゃんがそう言うと、彼は縛られている男達を見た。
しかし男達は目を合わせようとしない。
「くっそう……。このまま捕まるくらいなら、いっそ……」
そう言って彼はポケットから何かを取り出す。そしてそれを高く掲げて言った。
「動くなよ……。こいつがなんだか分かるか?」
よく分からなかった。何かのスイッチらしきものが並んでいる。
不意に、彼はそのスイッチの一つを押した。
ドォン
どこかからものすごい音がした。お腹に響くような音だった。
すぐにその音の原因に気付き、血の気が引いていくのがわかる。
- 66 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月31日(火)03時12分59秒
- 「へっへっへ、分かったか。このボタンを全部押しゃあ、
この建物は木っ端微塵だ。
俺たちゃあな、警察に捕まるくらいならお前らと一緒に死んだ方ましなんだよ」
「そんな……」
その瞬間、
銃声が響いた。
彼の手にしていた物が、
宙を待って床に落ちた。
- 67 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月31日(火)03時13分44秒
- <突入部隊隊員>
私の放った弾丸は、確かに男の掲げていた物を貫いた。
それを見届けると、仲間と部屋へ突入する。
「動くな、警察だ。壁に手を……あれ?」
どういうことだろうか。男達が部屋の隅に三人、転がっている。
私はすばやくさっきの男捕まえてから、怯えて縮こまっている娘。メンバーに尋ねた。
「これは……どういうことなんだ?
犯人はこれで全員なのか?」
「はい、間違いないはずです」
それを聞いて、半信半疑ながらも、外の上司に無線で今の彼女の言葉を伝える。
向こうも驚いていたようだ。そしてすぐに指示が出される。
「とりあえず、すぐに脱出してくれ、南の方が今も燃えているんだ」
「了解」
二分後、私はモーニング娘。を、残りの隊員は犯人グループを連れて、
それぞれ建物から出てきた。
すぐにモーニング娘。は救急車に載せられる。
これで、今回の事件はとりあえず解決したのだ。
- 68 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2002年12月31日(火)03時15分24秒
- あとほんとに少しなんですが、さすがにもう勉強しないとまずいので、
少し中断します。受験が終わる頃(2月後半くらい)に戻ってきます。
本当に申し訳ないです。
- 69 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月31日(火)04時22分23秒
- 更新お疲れ様です!
ラストに近いという感じですね…。
でも、受験の方も、頑張って下さい!
更新マターリ待ってます!
- 70 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年01月04日(土)11時29分53秒
- あけましておめでとうございます。
今日、テレビで「ホワイトアウト」やるらしいですね。
実はこの映画の原作の小説、俺が小説読み始めるきっかけであり
この話を書くきっかけでした。
だから、内容は自分で考えましたが、
『テロリストに捕まる』と言う設定はこの小説のパクリです。
ゴメンナサイ。
あと警察の対応なんかも参考にしました。ゴメンナサイ。
ということで、これは最後に書こうと思ってたけど、
テレビでやるのに合わせてカムアウトしてみました。
今度こそ受験終わるまで行方をくらまします。探さないで下さい。
- 71 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月06日(木)21時23分49秒
- <吉澤ひとみ>
娘。は全員病院に連れて行かれ検査を受けた。
念のために2,3日は入院だそうだ。
なんかこうして一日中やる事もなく過ごすと、余計な事まで考えてしまいそうで恐い。
しかし12人全員同じ部屋と言うのはどういうつもりなんだろうか。
気になってる事があったので都合よかったが。
「ねえ、小川」
紺野と談笑している小川に、他のメンバーの話し声にかき消されないように
少し大きな声で声をかけた。
「はい」
「小川さ、どうしてあいつらが私達のファンだってわかったの?」
「あ、それあたしも知りたい」
安倍さんが割り込んできた。
「あ……あれですか……」
少し照れたようにうつむいてから、小川は話を始めた。
- 72 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月06日(木)21時24分24秒
「まず、最初に気になったのは、あの人達安倍さんの名前は知らないのに、
愛ちゃんのは下の名前まで知ってた。そん時は何でか分からなかったけど。
それから、あの人達の体格。大きな組織の中から選ばれたメンバーにしては
不健康そうでおかしかった。
それに気付いて、いろいろ思い返してみた」
小川はそこで一旦言葉を切った。みんな小川の話に聞き入っていた。
「あの人達、警察に電話で『我々は左翼系過激派組織だ』って言ってた。
普通なら正体をばれたくないはずなのに、なんでこんな事言うんだろう
って考えて、なんとなく分かった。
こいつらは過激派組織のフリをした一般人なんじゃないかって」
「なるほどねー……」
みんなしきりに感心している。もちろん私もだ。
「でも、ホントは恐かった。間違ってたらどうしようと思った」
急にせきを切ったように泣き出した。いつかと同じ泣き方だった。
急に病室内が湿っぽい空気に包まれた。
- 73 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月06日(木)21時25分02秒
- 小川が泣き出すのを待っていたかのように病室のドアが開いた。
つんくさんだった。
「おう、元気か?」
「つんくさん!」
つんくさんは部屋を一眺めした。
当然小川に目が止まる。
つんくさんは軽く溜め息をついてから後ろに隠していたものを掲げた。
白い大きな袋だった。
「なんなんですか、それ?」
「薬や」
なんか薬にしてはでかいんですけど……
「俺はこれ届に来ただけやから。じゃあな」
そういってつんくさんはあっという間に帰っていった。
残された袋が浮いてみえた。
「つじちゃん、それ開けてみてよ」
飯田さんに促され、辻が袋を開ける。
「あ……」
- 74 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月06日(木)21時25分42秒
- 「どうしたの、辻。中身何?」
矢口さんの問いかけに、辻は中身を取り出してみせた。
ファンレターだった。
たくさんのファンレターが袋の中から出てきたのだ。
不思議なものだ。ファンの人に傷つけられ、ファンの人に癒されるなんて。
みんなが袋の周りに集まり出した。私ももちろんその輪に加わった。
とりあえず、目に付いた薄いブルーの手紙を手にとった。
- 75 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月06日(木)21時27分08秒
-TERRORIST- 終
- 76 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月06日(木)21時32分50秒
- 終わったけどスレが全然余ってる……。
こういう場合ちゃんと埋めるべきですよね。
てことでそのうちまたこのスレでなんか始めると思います。
それから、受験ですが、あれですよ。合格です。
応援してもらってありがとうございます。
- 77 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年02月07日(金)14時05分46秒
- 受験合格キタ━━(゚∀゚)━━!!!! おめでとうございます。
そして完結も乙です。何だかヲタの力って偉大だなと感じました。
小川タンかっこよかったです。
また新作、期待してます。
- 78 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時09分28秒
- 高三には2月は学校ないらしく毎日だらだらと過ごしております。
そんなわけで早速次のヤツ行きます。
えー、タイトルからも分かるとおりまたパクリです。
ごめんなさい
>>77
ありがとうございます。
マジでうれしいっす。
- 79 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時10分39秒
草原の人
- 80 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時12分12秒
- 「バカヤローーーー!!!」
こうやって叫ぶのも久しぶりだ、と亜弥は思った。
海が近くにあれば、そこで毎日叫んでやるのに。
けれど、こんな田舎に海なんかあるわけがない。
あるのはそう、亜弥の眼前に広がる草原。
ひざくらいの丈の草が風にそよいで、波打っている。
「そうだった」
あんまり懐かしいんで忘れる所だった。
今日は、大事な用事があって来たのだ。
「先輩、今日は報告があるんです。聞いてください」
亜弥は、今は姿の見えないあの人に呼びかけた。
- 81 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時13分19秒
- 82 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時13分52秒
- 「はあー」
亜弥は両手で顔を覆ってため息をついた。
明日は中学に入って初めてのテストで、
まだ要領はつかめないから、こうやって2時まで頑張ってる。
別に勉強は嫌いではなかった。もちろん好きでもないが。
亜弥には好きな物がない。
運動も大して好きではないし、ゲームもあまり熱中出来ない。
歌手でも女優でもフライトアテンダントでもケーキ屋でも何でもいいから
夢と呼べるものが欲しかった。
そろそろ寝ようかな。テスト中に眠くなってもしょうがないし。
回転の鈍った頭でそんな事を考えながら亜弥は本を閉じてベッドに入った。
翌朝、亜弥は朝食もそこそこに学校へ向かう。
昨日覚えた事をいろいろと思い出しながら下駄箱を開けた亜弥は何か違和感を感じた。
手紙が入っている。
小学校のときから時々あったから慣れてはいたが、何でテストの日に……。
と亜弥はなんとなく不機嫌にその手紙を眺め回す。
差出人の名前はなく、表に亜弥の名前が書いてあるだけだ。
周りに誰もいないのを確認して、それを開いた。
『今日の放課後、体育館の裏に来てください。』
……体育館の裏って、私はいじめられっこかい。
そんな突っ込みが私の頭を駆けめぐった。
- 83 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時14分33秒
- テストはなかなかの出来だったように思う。
それでも解けなかった問題を悔しがりながらカバンを背負って、思い出した。
今朝の手紙を。
相手が誰であっても、亜弥には受け入れる気はまったくなかった。
ただ、あの手紙を無視する事は出来ない。行ってちゃんと断らなければ。
友達には先生に呼ばれたと言って教室を出た。
重い足を引きずるように約束の場所へ向かった。
周りを見わたしてから、隠れるように体育館の裏へまわると
見知らぬ男が鏡で髪形をチェックしていた。
田舎で二クラスしかない亜弥の中学だったが、まだ日が浅いので
違うクラスの人の事はまるで知らなかった。
男は亜弥に気付くとさっと鏡をしまい、こんにちは、と声をかけた。
亜弥も挨拶を返しながら男を観察する。
- 84 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時15分43秒
- 背も高く、かっこいいと言ってもまったく問題ない容姿だ。
胸についた名札には『鈴木』と刻まれていた。
その上の青のラインは同級生である事を表している。
男が何か喋り出しそうだったので亜弥は素早く言った。
「ごめんなさい」
「え?」
「私、まだ恋愛とか良くわからないんです。ごめんなさい」
まだ告白もしていないのに振られた男は、がっくりと肩を落とす。
それを横目で見ながら亜弥は足早に歩き出した。
久しぶりに一人で帰る羽目になった。
さっきの事を思い出しなんとなく溜め息をつく。
こんな日は早く帰ろう、そう亜弥は考え、すっと狭い路地へ入った。
おそらくどこの小中学校にもあったのではないか。
人の家の庭や塀を進まなくてはいけない近道が。
亜弥の知っている近道は普通の道だったが、
ちょっとした段差を飛び降りたりする所もあり、
普段から使えるような道ではなかった。
- 85 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月08日(土)18時16分59秒
そこを利用しようと思ったのだが、歩いている亜弥の耳に
微かな音楽が聞こえてきた。
はっとなって周りを見わたすと、道のすぐ横にある草原のまん中で、
長髪の男が日の光の中でギターを弾いていた。
亜弥はなんとなく気になって彼のほうへ近づいた。
それにつれギターの音もはっきり聞こえてくる。
それはこんなにいい天気だと言うのに、悲しげなメロディーだった。
ttp://www.muzie.co.jp/download/51445/songs125/jad-20030203-223222.mp3
- 86 名前:1.昼に思うこと 投稿日:2003年02月15日(土)18時53分55秒
- そう言えば、亜弥の父親も昔はよくギターを弾いてくれた。
なんのことはない、ただコードを押さえてジャカジャカかき鳴らすだけだったけど
それなりに亜弥を楽しませていた。
あの時と同じような感覚だった。
彼への興味が湧き出て来た。
最後に右手で弦をすいっと撫でて、演奏が止まった。
彼はゆっくりと目を開け、景色に酔うように周りを見わたす。
ギターの音が止んだ草原は平和で健康的だった。
亜弥はさっきから動けずにいたのだが、
視線を巡らした彼がようやく亜弥を見つけ、視線が合う。
『重なる』とか『ぶつかる』じゃなく、がっちり組み合わさったのだ、と亜弥は思った。
「いつもここでギター弾いてるんですか?」
一度視線をはずしてから亜弥は言った。
「まあね。だいたい毎日。こうしてると気持ちいいから」
彼はさらりと言った。
亜弥はその言葉に微かな嫉妬を感じる。
けれど、すぐに忘れた。
「しばらくここにいていいですか?」
「……構わないけど」
彼はそう呟くとギターを抱え直した。
ttp://www.muzie.co.jp/download/51447/songs125/jad-20030206-220801.mp3
- 87 名前:1.昼に思うこと 投稿日:2003年02月15日(土)18時55分17秒
- 素直にかっこいい、と思えた。
それが恋愛感情なのか、人間としての憧れなのかはわからない。
ただそのどちらかであることはわかっていた。
途中、亜弥の素人目にもわかる失敗もあったが、気にならなかった。
彼が演奏を終えた。亜弥は拍手を送った。
「今のはなんて曲なんですか?」
「え…別にタイトルなんてないけど」
「じゃあ自分でつくったんですか」
「まあ…」
「すごいですね!そんなにうまかったらプロになれるんじゃないですか?」
お世辞ではなかった。本当にそう思った。
「俺よりうまい人なんかいくらでもいるよ。こんなんじゃ絶対無理」
「そうなんですか」
「さて、そろそろ帰るかな」
「えー、もう帰るんですか。明日も来ていいですか?」
「まあいいけど。学校は?」
「中間テストです」
「そっか。勉強もしろよ」
「はい。じゃあ、また明日」
「じゃあな」
- 88 名前:1.昼に思うこと 投稿日:2003年02月15日(土)18時56分13秒
- その日の夜も1時半まで勉強したけど、あの人の事が頭から離れなかった。
鉛筆を動かしながらも、知らぬ間に考え事をしている自分がいた。
翌日も、友達には用事ができたと断ってまたあの草原へ向かった。
彼は昨日と同じような態度で迎えてくれた。
次の日も、その次の日も亜弥は草原へ行った。
テストが終わってからは用事のない土日に通った。
そして亜弥にはだんだんとわかって来たのだ。これが初恋だと。
- 89 名前:ミスターロビンソン 投稿日:2003年02月15日(土)19時01分04秒
- えーと、この話は「草原の人」の1番が1話、2番が2話、3番が3話
という感じになっております。
思いっきり自分の解釈で書いているので違和感を感じることもあるかも知れませんが
ご了承ください
- 90 名前:れいなのこうげき! 投稿日:2003年02月17日(月)01時44分22秒
- 某日朝8時。
私はある決意を秘めて仕事場へ向かった。
今日こそ、さゆみにはっきり言ってやろうと決めたのだ。
いっつもべたべたくっ付いてきて邪魔だしうざい。
もう私に近づかないでくれ、と。
仕事場についた。部屋を見回したが、彼女はいなかった。
そのうち来るだろうと思ったが、集合時間を過ぎても現れなかった。
「あの、さゆみはどうしたんですか?」
「ああ、熱出して寝込んでるみたいだよ。心配ならお見舞いに行ってあげれば?」
「いや、やめときます」
黄色いジャンパーを着たスタッフは、
私が怒ったような顔になったのを怪訝な顔で眺めてから、すぐに仕事に戻っていく。
休憩時間に、することもなくなんとなく携帯をいじりながら
頭に浮かんでくるのは彼女の事ばかりだった。
そのたびに私はイライラした。
- 91 名前:れいなのこうげき! 投稿日:2003年02月17日(月)01時45分24秒
- 来てしまった。ここは彼女のマンション。
彼女の具合が気になるというのも少しあったが、
「近寄るな宣言」を突きつけるという目的があった。
ピンポーン
「はーい」
「あ、田中です」
すぐにドアは開いた。お母さんに挨拶をし、彼女の部屋に案内される。
「もうだいぶよくなって来たんだけどねえ、まだちょっと熱があるみたいなのよ」
言いつつ開けられたドアの向こうで、
彼女はベッドに寝転がりながらスーパーマリオブラーザーズ3に熱中していた。
「さゆみ、ほら、れいなちゃん来たわよ。さゆみが呼んだんでしょ」
「ん?あ、ほんとだー」
「じゃあ、どうぞごゆっくり」
- 92 名前:れいなのかいしんのいちげき! 投稿日:2003年02月17日(月)01時46分29秒
- 「…私別にさゆみに呼ばれて来たけじゃないんだけど」
「うん、でもれいななら来てくれるって信じてたよ」
「ああそうですか。で、今日は話があって来たんだけど」
「あ、あたしも話があるの」
「…何?」
「あのね、きのう夢にれいなが出て来たのさ。そんで、あたし…」
「わかったわかった。もういいから、私の言うこと聞いて」
「うん。あーわかった。こないだのバレンタインのチョコやっぱ欲しいとか?
素直にいいなよー」
そう言って立ち上がる彼女。まだ持ってんのかよ。
「いやちがくてさ、うざいんだよね、あんた。」
…はっきり言ってやった。これならさすがの彼女も凹むだろうか。
「もう私に近寄らないで」
さらに改心の一撃。しとめたはずだ。
- 93 名前:しかし、さゆみにはきかなかった! 投稿日:2003年02月17日(月)01時47分52秒
- しかし、私の考えは甘かった。
「えーでも、近寄らなきゃ抱きついたりできないよー」
「……」
「膝に乗っかったりもできないし。喋ったりはできるのかな?」
「いや…」
「あ、わかった。れいな風邪引いてるんでしょ。あたしにうつさないように
気使ってくれてるんだ。やさしーなー。れいなだいすき」
「いや風邪引いてるのはさゆみの方じゃ…」
やっぱり私はこれからもさゆみにつけまわされる運命なんだろうか…。
■そして、えんど■
- 94 名前:みすたーろびんそん 投稿日:2003年02月17日(月)01時53分14秒
- えーと、突然のれなさゆですが、キシ(ryとかつま(ryとか言わないで…
自分でも自覚してるんで。
あとこれからはsageで行こうかなと思ってます。
こんなつまらんのがいちいち上がってきてもウザイだけだと思うんで。
- 95 名前:猫になりたい 投稿日:2003年02月20日(木)02時05分04秒
- 「ぷあーっ、もうだめだー」
麻琴はまるで水泳の息継ぎのように顔を上げた。
「えー、まだ十分もたってないよ」
「なんであさ美ちゃんは平気なのさー」
「まだ始めたばっかじゃん。うちで一緒にテスト勉強しようっていったの麻琴だよ」
「それはそうだけどさー」
彼女のノートを見てみると、「南瓜」という字が並んでいる。
「せめて一時間くらいしてからにしようよ。休憩」
「えー、私一時間もやったら死んじゃうかも」
「そんな大袈裟な…」
「おねがぁーい、あさ美ちゃん」
これがいわゆる猫なで声ってやつですか。
- 96 名前:猫になりたい 投稿日:2003年02月20日(木)02時06分25秒
- わざわざ私のところまで寄ってきて、私のお腹に頭をすり寄せる麻琴。
「わあ、あさ美ちゃんの胸気持ちいいね」
猫の真似なのか、「うにゃー」とかいいながらじゃれついてくる。
思わず抱きしめたくなるほど、可愛かった。
「あぁ、私、あさ美ちゃんの猫になりたいなぁ」
「そ、そんなこといってないで、勉強しようよう」
あまりに可愛くて動揺してしまった。
たぶん顔真っ赤だろうな。
- 97 名前:猫になりたい 投稿日:2003年02月20日(木)02時07分57秒
- 「てゆうか、私、ほんとは勉強するつもりできたんじゃないの」
「え?」
麻琴はなぜかテレ気味に下唇を噛む。
「久しぶりにあさ美ちゃんといっしょに居たかったんだよう」
思考回路が熱でショートしてしまいそうだった。
「…休憩、しよっか」
「わーい!さすがあさ美ちゃん」
麻琴はそう言って、子供が甘えるように、口を開けて笑う。
たまんないなあ。
・・・
その日麻琴のノートが再び開かれることはありませんでした。
おわり
- 98 名前:りゅ(ry 投稿日:2003年02月20日(木)11時15分23秒
- れいなの攻撃よみました。
れなさゆ、レアですね。ワラタ。
- 99 名前:道重さゆみのだじゃれ講座 投稿日:2003年02月20日(木)23時26分47秒
- 「れいなー」
「なに?」
「こないだもののけやってたけど見た?」
「みたよ」
「じゃあさじゃあさ、アシタカが来るのっていつかなー?」
「…?」
「明日かな」
「…」
「…」
「それで?」
「あのさ、ココア飲むからここ開けてくれない?」
「ここってどこさ?」
「…」
「…」
「これは、タケダさんに生えた毛だ」
「( ´_ゝ`)ふーん 」
- 100 名前:道重さゆみのだじゃれ講座 投稿日:2003年02月20日(木)23時27分40秒
- 「ここは寺田の寺だ」
「( ´_ゝ`) つまんね」
「妻の料理はつまんねー」
「…」
「…」
「頭大丈夫?」
「大丈夫きっと大丈夫♪」
「…」
「あ、私そろそろ行くね」
「帰ってこなくていいよ」
「じゃあね(上手く出来た。これでれいなも私のとりこ♪)」
「つんくさん、私モーニング娘。辞めたいんですけど」
- 101 名前:道重さゆみのだじゃれ講座 投稿日:2003年02月20日(木)23時29分02秒
おわり
- 102 名前:みす(ry 投稿日:2003年02月20日(木)23時36分00秒
- >>98
久しぶりにレスキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
れなさゆはこれからメジャーになります。
暖かく見守ってやってください。
- 103 名前:昼に思うこと 投稿日:2003年02月25日(火)03時21分08秒
- 二人が付き合い始めるまでそんなに時間はかからなかった。
かからなかったのだが、亜弥にはいつもある悩みが付きまとっていた。
あの人が、やさしすぎるということ。
もしかしたら、亜弥のことは好きではないけど、優しいから付き合ってくれてるんじゃ、とか
本当は迷惑なんじゃないかとか。
そんな思いがいつも亜弥の胸に宿っていた。
そんな思いを伝えたのは、9月頃だったと思う。
どんなことを言ったのかはよく覚えていない。
まるで手品師が空中から次々とカードを出すように、
亜弥の口は言葉をつむいでいった。
それに対して、あの人は言った。
「心配しなくても、僕は君が好きだ。
ただ僕はあまりそういうことが口に出せない。
…ごめん」
- 104 名前:昼に思うこと 投稿日:2003年02月25日(火)03時21分44秒
- 「…ちょっと、待ってて」
そう言って彼はどこかへ行き、すぐに戻ってくる。
「僕が大事にしてた花。あげるよ」
少し大きな鉢に似合いなコスモスだった。
この時貰ったコスモスは押し花にして今も亜弥の部屋に飾ってある。
永遠に枯れることのないように…
- 105 名前:雨上がりに思うこと 投稿日:2003年02月25日(火)03時24分00秒
- 「そ…そんなの聞いてないよ!」
突然聞かされた亜弥には到底理解できるものではなかった。
「ごめん…」
「そんな、留学って…しかも今週の土曜…」
「ごめん…」
「…なんの勉強するの?」
「音楽」
「そっか…」
「…もう二度と会えないのかな…」
「いつか帰って来るよ。きっと」
「そっか」
それだけだった。
その日はそれだけ話して分かれた。
土曜日の見送りも、行かなかった。
- 106 名前:雨上がりに思うこと 投稿日:2003年02月25日(火)03時24分47秒
- あれから1年がたった。
しばらくは落ち込んで何も手につかなかったが、
そんなことは時間がまるで水が泥を落とすように消し去ってくれた。
便利で手垢のついた言葉だけれど、あの人もどこかで同じ空を見ているんだと
思えるようになれた。
そして今日。ここへ来たのは、あの人への報告のため。
こんなこと報告してもしょうがないけど。
「私、最近、好きな人ができました」
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