インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板
小川さんの誕生日。
- 1 名前:■0.ハッピーバースデー。 投稿日:2002年10月30日(水)00時07分22秒
- 10月29日。
その日は、小川麻琴が生まれた日。
- 2 名前:■1.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)00時09分04秒
「おはよーございまーす!」
小川麻琴は、元気よく挨拶しながら楽屋へと入った。
どうやら一番乗りのようだ。部屋の中には人の気配が全くなく、
自分の声だけが、こだましたような気がする。
「あっれ…?」
一瞬、自分が集合時間を間違えてしまったのかと思い、
腕につけた真新しい時計に視線を落とす。
大丈夫だ。朝確かめたスケジュールの時間通り。
(…まぁ、たまにはこういう日もあるか)
きっと他のメンバーもそのうち来るんだろう。
のんきにそう考えながら、鞄を近くの机に置き、パイプ椅子を引いて座る。
しんとした部屋の中。
物音一つすらしないその空間の中で、麻琴は小さくため息をつく。
- 3 名前:■1.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)00時10分12秒
- 「暇だよぉ」
あまりの静けさにわざわざ独り言を口に出してしまうほど、
今の麻琴にはすることが全くない。
宿題は昨日のうちに全て終わらせてもらったし、
新しくもらった本を見ようにも持って来るのを忘れてしまった。
お菓子を食べちゃおうかな、なんて。
一瞬頭を過ぎった邪念に首を振ってそれを吹き飛ばす。
ダイエット中なのに、お菓子禁止令を自分で自分に出しておいたのに。
鞄の中にはいつもの癖で入れてしまったポッキー。
すぐにでも、それに手を伸ばしてしまいそうになる。
(誰か…誰か来て〜…)
誰でもいい。
話し相手さえできれば、この誘惑に勝てるはずだ。
麻琴は一心に願った。誰かが、この楽屋へ早くやってくることを。
しかし、いくら待っても誰もやってこない。
このままではポッキーを食べてしまう。
何を思ったのか、彼女は急にがばっと机に突っ伏して、目をぎゅっと瞑った。
起きていたら絶対いつか食べてしまう。
だから、寝てしまえばいいのだ。
(食べちゃダメ、食べちゃダメ、食べちゃダメ…)
そんな呪文を心の中で唱えているうちに、
いつの間にか麻琴は希望通り夢の中へと落ちていった。
- 4 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時11分32秒
「おはよう麻琴」
「あ、おはよー愛ちゃん」
麻琴がにこにこと笑顔を浮かべていた。
いつもならその可愛い笑顔にとろけてしまう所だけど、今日は違う。
心の中にある罪悪感が胸をきつく締め付ける。
「あの、ね。麻琴」
「うん?」
「実は、その…ええとね」
なかなか言い出せない私に痺れを切らすこともなく、のんびりと口を開く。
「何?お腹空いたの?」
「んでなくてぇ……あの…ね、その…」
一体何なの、って。
不思議そうに光るその目で、小さく首をかしげながら私を見る。
耐えられなくなって頭をばっと下へさげた。
「ごめん!!」
「へ?」
ぐっと拳を握り、次に浴びせられる非難の声に備えて、目を強く瞑った。
- 5 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時12分04秒
「…あ。あたしの誕生日忘れてたんだろ、このヤロー」
「す、すみません、すみませぇん…」
全くもってその通り。
最近、新曲の振り付けや、プロモの撮りやらで色々忙しかったものだから、頭の中から抜け落ちてしまっていたのだ。
しかもこの間の里沙ちゃんの誕生日も実は忘れてしまっていたのだが、その事に気づいた当日、街中を駆けずり回りながら持っていたお小遣いを叩いてプレゼントを買ってしまっていた。
つまり所持金がゼロ。
(私、一応芸能人なのにな…)
懐がとても寒い。
「ごめんね、プレゼントも用意できなくて…」
「あはは。いいよぉ別に。プレゼントをもらうために、誕生日があるわけじゃないんだしさ」
にこにこと笑顔を浮かべる彼女を見て少し安心する。
握り拳を開いて、何かの本を見ている彼女の隣の椅子に座った。
ふと彼女の前に広がる本と、その机を見て、何故か違和感を感じる。
珍しいことに彼女の机の上にはお菓子類が全くなかった。
- 6 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時13分45秒
「お菓子、食べないの?」
自分の分のお菓子を取りに行こうと立ち上がると、麻琴はうーんと一つ唸った。
「いや、あたしはいい、いらない。最近ちょっと食べ過ぎたみたいでね。
ヤバいんだよ。あさ美ちゃんと張り合ってる場合じゃなかった」
「張り合ってたんだ…」
外見とは違う子供っぽい彼女の行動に、思わず苦笑してしまう。
隣の机にはまだ未開封のお菓子が山ほど散乱している。
その中から一つ自分が食べる分をとり、
ジュースを注いだコップを片手に席へと戻る。
麻琴はまだ本とにらめっこしていた。
「あのね、麻琴」
「ん〜?」
「今日一日麻琴の言うこと聞くことにした」
「は?」
コップに口をつけてジュースを一口飲む。
渇いた口を湿らせてから、もう一度私は口を開く。
「プレゼントの代わりに、何でも言うこと聞くから」
「はぁ…」
それでもよくわからないといった表情で、麻琴は首を傾げる。
「何か言ってみて」
「…え…あ……じゃ、じゃあ…肩、揉んでもらおうかなぁ…」
とくに凝ってるわけでもないんだけど、と一言付け加えて、背中を向ける。
- 7 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時14分21秒
- 「がってんだー!」
「な、何を気合入れて…」
怯えたようにビクつく麻琴の肩を捕まえ、席を立つ。
お父さん相手に鍛えた肩揉みテクを今こそ発揮すべし。
「とぁー!」
「痛い痛い痛い痛い!!」
「あ?…わ、ごめん…」
しまった。お父さんと麻琴では力の入れ具合を変えなければならなかった。
今度こそは、と、ゆっくりゆっくり優しく力を入れながら肩を揉んでいく。
「どう?」
「うーん…よくわかんない…」
凝ってるわけでもない肩を揉んだって効果ないか。
「いいよ。ありがと愛ちゃん」
「うん…」
結局麻琴に喜んでもらうことはできなかった。
少し残念な思いで肩から手を離し、席に着く。
「他に何かして欲しいこととかない?」
「え?えーと…そうだなぁ…」
何かあったかなぁ、と悩む彼女の横顔を眺めながら私は命令を待った。
まるで忠犬ハチ公。
- 8 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時16分35秒
- 「あ!宿題!」
「宿題?」
がさごそと鞄から取り出してきたノートと数学の教科書を見て、私は首を傾げた。
「宿題?」
「そう、宿題」
やってやって、と笑顔で頼んでくる麻琴。
(これは…)
私がやってしまってもいいものなんだろうか。
宿題とは自分のためにやるわけであって、
他人が手を出してしまってはいけないわけであって。
決して私が数学苦手で全くわかんないとかそういうわけではなくて。
「愛ちゃんもう高校生…ううん、高校2年生になるだもんね。わかるよね。
中3の数学問題ぐらい。反比例とか二次関数とか、わかるもんね」
「んなの知ら…うん、知ってる!わかるよ、うん!」
年上のプライドが変なところで意地を張らせる。
「じゃあお願いします」
「あ、いや、でも…しゅ、宿題は、やっぱり自分のためのものだから…」
「愛ちゃんわかんないの?」
「わかるよこれぐらい」
ばっと教科書を取り上げてノートを開き、ペンを走らせる。
- 9 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時18分21秒
(だめだ。わけわからん)
公式とか公式とか公式とか。多すぎてわからない。
それでも必死に例題と問題と公式を照らし合わせて、
一つずつゆっくりと解いていく。
ここで間違えてしまえばアウトだ。
麻琴にバカにされた挙句メンバーで晒し者になってしまうこと必須。
それだけは避けなくてはならない。
それに私は麻琴と違って、と言ってはあれだが、まぁまぁ勉強はできるのだ。
細かいところは忘れてしまっていたりするけれど、
大体そつなく問題をこなしていく。
「終わったー!」
「早っ」
ツッコミを入れながらも嬉しそうにありがとうとお礼を言う彼女の笑顔に、
思わずこっちまで嬉しくなってしまう。
いいことしたなぁ、って気になれる。
例え宿題を代わりにやらされただけだとしても。
(だって今日は麻琴の誕生日だもんね)
そして誕生日を忘れて文無しになっている私が悪いんだもんね。
自分に何度も言い聞かせて、お菓子を一口食べる。
ポテトチップスの薄い塩味が口に広がった。
- 10 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時19分01秒
- 「愛ちゃん愛ちゃん」
「ん、今度は何?」
また宿題系だったら嫌だなぁ、とか思いながら袖を引っ張る麻琴のほうへと、顔を向ける。
今日は言うことを聞く日。どんなことでも、聞いてあげないと。
満面の笑みを浮かべながら麻琴は口を開いた。
「抱っこ」
「…え?」
「抱っこ」
「……お、おいで」
「うん」
手を広げてみると、麻琴は素直にその腕の中にすっぽり納まった。
私の膝の上にちょこんと腰掛けて。
「…確かに、ちょっと…」
「何?」
「なんでもないです」
ふるふると首を振って彼女の腰に手を回す。
機嫌良さそうに鼻歌なんて歌ってる彼女の首に顔を埋めて、
足が重みでしびれないように、必死で祈った。
雑誌をめくる音が部屋に響く。
- 11 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時19分42秒
- 「みんな、来るの遅いね」
「ほーやね」
こくこくと頷いてみせる。
一瞬麻琴の髪からいい匂いが漂って来て、少しドキドキした。
「…きっと、麻琴の誕生日プレゼントを買ってるんじゃない?」
「うーん、そっか」
そしてまた紙をめくる音だけが部屋に響く。
「愛ちゃん」
「ん?」
「ジュース一口頂戴」
コップを渡すと、そのまま麻琴は口をつけた。
(…って…)
かんせつきす、っていうんではないだろうか。
頭の中でその文字が変換されて、辞書で引かれて、
意味がわかると同時に顔が熱くなっていくのがわかる。
「愛ちゃん」
「は、はひ!!」
「お菓子頂戴」
無言でポテトチップスの袋を差し出す。
麻琴は嬉しそうに一つつまんで、ダイエットは明日からでも間に合うもんね
と呟いてからぱくっと食べる。
- 12 名前:■2.キボンヌ 投稿日:2002年10月30日(水)00時20分14秒
- 「ねえ愛ちゃん」
「はいはいっ」
「来年も一緒に、祝ってね」
これもお願いだよ、って。
…もちろん、叶えてあげるよ。
麻琴がどんなに嫌がったとしても、ね?
「あ、そうだ。後でさ、飯田さんに向かって、この電波めーって叫んできてみて」
「罰ゲーム…?」
苦笑しながら呟く私。
一回誰か言ったりしてくれないかなぁって思ってたんだ、って。
彼女は無邪気に笑っていた。
そんな、彼女の生まれた日の朝。
- 13 名前:■3.正直、すまんかった。 投稿日:2002年10月30日(水)00時22分12秒
「マジですまんかった」
「すまんかった」
「…ええと」
麻琴は戸惑った。
この二人に謝られる覚えもないし、何故自分なのかもわからない。
まったく身に覚えのないことにどう反応しろと言うのか。
「ど、どうし…たんですか、加護さん、辻さん」
「聞いてくれるか。ウチらに釈明の余地を与えてくれるんか?」
「くれるんか?」
「いや、あの、何を言ってるのかが…その、いまいちわからなくて」
とくに辻はただ加護の言ってることを繰り返しているだけで。
加護は加護で神妙な表情をしていて、何故かこっちが怯えてしまう。
- 14 名前:■3.正直、すまんかった。 投稿日:2002年10月30日(水)00時22分44秒
- 「実はな、」
「………」
妙な、間。
唾をごくりと飲み込む音が聞こえた。
「ののがケーキ食べてもーた」
「もーた」
「すまんかった」
「すまんかった」
「マジですまんかった」
「すまんかった」
「ののの代わりにウチが謝る。ケーキ代もちゃんと出す。
せやから、怒らんでおいてほしい。ちょっとお腹空いてしもただけなんや」
「結構美味かったのれす」
「お前はだまっとれ!!」
一喝されてしまった辻は、大人しく一歩下がる。
「…あいぼん怖いのれす…」
本人自身は反省していないかのような発言。
- 15 名前:■3.正直、すまんかった。 投稿日:2002年10月30日(水)00時23分31秒
- 「とにかくすまん。まさかののがあのかぼちゃケーキを食べるとは…」
「か、かぼちゃケーキ!?」
「いや、別にかぼちゃの味がするわけやない。
ただ単に見た目がかぼちゃなだけで…」
「かぼちゃ…」
「あ、の…」
「かぼちゃ…」
「………」
「………」
「結構美味かったのれす」
「だからお前はだまっとれ!!」
加護の怒鳴り声だけが、スタジオ内に響いた。
- 16 名前:■4.(゜皿゜) 投稿日:2002年10月30日(水)00時24分41秒
- 「はぁ…あたしのかぼちゃ…」
麻琴はため息をつきながら廊下を歩く。
先程知らされた自分の誕生日ケーキの行方に、少なからずショックを受けていた。
確かに、かぼちゃの味がしないただのかぼちゃケーキ(見た目のみ)だったのかもしれない。
だけどやはりそれはかぼちゃケーキであって、
味がかぼちゃじゃなくても自分の好きなかぼちゃなわけで。
「小川」
「…はい…?」
呼びかけに振り返ってみると、そこには長い髪をなびかせた飯田がいた。
(どこから風が…)
あまり気にしちゃいけないような気がした。
とりあえず呼び止められたんだ。何の用なのかと、麻琴は疑問符を浮かべる。
- 17 名前:■4.(゜皿゜) 投稿日:2002年10月30日(水)00時25分52秒
- 「あの、どうしたんで…」
「コウノトリはね」
「はい?」
飯田の目はどこか遠くを見ていた。
ああ、やばいな。
そう思いながらも、麻琴は先輩を置いたままその場を離れることもできず、
ただその場で立ち尽くしていた。
「コウノトリは、日本では天然記念物に指定されているの」
「え、と…そうでしたっけ…」
「赤ちゃんをコウノトリが運んでくるっていう話を聞くでしょ?
カオリは考えたの。そして悩んだわ。日本では絶滅してしまったコウノトリが、
どうやってこの国へ子供を持ってきてくれるのか」
「はぁ…」
「つまりは愛なのよ」
「は?」
いまいちリーダーの言おうとしていることがわからない。
むしろ言ってることもわからない。
- 18 名前:■4.(゜皿゜) 投稿日:2002年10月30日(水)00時26分26秒
「愛さえあればどんな障害物だって越えられる」
「え、あの…コウノトリはどこへ…」
「小川もお母さん達の愛があったからこそ、この世に生を受けたんだと思うの」
微妙にコウノトリの話が絡んでるのか絡んでないのか判断しにくい。
とにかく、飯田は満足したように笑顔を浮かべて、麻琴の肩を叩く。
「愛されてるね、小川は」
「…はぁ…」
良いことだよ、とても良いこと。
そう言いながら飯田はその場を去っていく。
(…一体、なんだったんだろう…)
いつもリーダーの話は、わかりそうでわからない。
唯一わかったのは、自分の誕生日を祝ってくれているらしいと言うことぐらい。
その事に気づいたとき麻琴はとっさに叫んでいた。
- 19 名前:■4.(゜皿゜) 投稿日:2002年10月30日(水)00時27分08秒
「ありがとうございます、飯田さん!」
振り返って飯田は笑う。
その綺麗な笑顔に負けないように、麻琴も笑って見せた。
「誕生日おめでとう、だって」
「え?」
「今日はそんな電波でいっぱい」
「………」
彼女はそんな不思議な言葉を残して、去っていった。
麻琴一人をその場に残して。
- 20 名前:■6.ハッピー。 投稿日:2002年10月30日(水)00時28分04秒
麻琴は楽屋に戻ってきた。
部屋の中に入ると、パンパンッ、と言う破裂音に出迎えられた。
「きゃっ…!」
「意外に女の子らしい叫び声だなぁ、小川」
「もー、よっすぃーがいきなりクラッカー鳴らすからだよぉ」
アルトとソプラノの綺麗なハーモニー。
黒と白の肌が対照的な二人組は、笑顔で麻琴を出迎えた。
部屋には他に誰もいないらしい。
- 21 名前:■6.ハッピー。 投稿日:2002年10月30日(水)00時28分45秒
- 「ど、どうしたんですか吉澤さん、石川さん…」
「いやぁ、今日は小川の誕生日でしょ。プレゼント買えなかったから、今のうちに言っておこうと思って」
「ごめんねぇ。よっすぃーと一緒にベーグル買い込んじゃったから…」
「え、うちのせい?梨華ちゃんだって何かいっぱい買ってたじゃん!」
「よっすぃーのためにブルーベリーベーグルを買い込んだだけだよぉ」
「…そ、そうだったの?ごめん梨華ちゃん…あたしそんなことにも気づかないで…」
「ううんいいの。だって私が勝手にやったことだもん…」
「梨華ちゃん…」
「…よっすぃー…」
完璧に二人の世界に飛んで行ってしまっている。
(…あたし、置いてけぼり?)
まあいつものことか。
そう諦めて、部屋の奥の椅子に座ろうと足を進める。
- 22 名前:■6.ハッピー。 投稿日:2002年10月30日(水)00時29分26秒
- 「あー待って小川!私のプレゼント、受け取って欲しいの」
「え?でも今、プレゼント買えなかったって…」
「ううん、買えなかったけど、プレゼントはあるの。受け取ってくれる?」
そんな潤んだ目で見られてしまえば、断ることなんてできないはずで。
隣で恨めしそうに睨んでいる吉澤をできるだけ見ないようにして頷いてみせる。
「よかったぁ、それじゃ聞いててね」
「へ?聞いて…って…」
石川は息をゆっくり吸い込み…。
- 23 名前:■6.ハッピー。 投稿日:2002年10月30日(水)00時30分11秒
『しばらくお待ちください』
- 24 名前:■5.ハッピー。 投稿日:2002年10月30日(水)00時31分22秒
「り、梨華…ちゃ…歌うなら…先に言っ…」
そして吉澤は床に倒れた。
その状態で小さく呟く。
「はぁー…あれ?よっすぃーなんで倒れて…ねえ、小川は?小川どこに行ったの?」
「もう…先に逃げ…」
石川は周りを見渡し、首をかしげている。
心の中で吉澤は悪態をついた。
もちろん石川にではない、先輩を置いて逃げた麻琴にだ。
「よっすぃー…ねえ、よっすぃーどうしたの!?なんでそんなやつれてるの?ねー…あれぇ?私、歌う歌間違えた?大丈夫だよね?完璧のはず…よっすぃー?」
「………」
そんな会話が交わされている部屋を背に、麻琴は走って行った。
- 25 名前:■6.なっち天使。 投稿日:2002年10月30日(水)00時36分34秒
- 「どうした小川ー、そんな急いで走ってー」
「な、なんでもなっ…なんでもないです!」
「どう見たってなんでもなさそうな雰囲気じゃないんだけど…」
麻琴は広いロビーみたいな場所へやってきていた。
安倍と保田がのんびり二人並んで一休みしている場所を横切り、
どこか遠くへ向かおうと、必死に足を動かす。
「あー!ちょっ、小川!どこにい…」
安倍が呼びかけても麻琴は立ち止まらなかった。
そのまま走り去り、ついに背中が豆ぐらいの小ささになる。
「…行っちゃったわね」
「もう何なんだべさ。すっごい気になるっしょー」
二人は同時に首をかしげる。
「ま、いいや。それより圭ちゃん、そっちの紅茶頂戴ー」
「なっち…自分の分があるでしょ…」
「良いから頂戴ってば〜」
仲が良さそうなそんな二人のやり取りを、麻琴は知る由もなかった。
- 26 名前:■7.んぁ? 投稿日:2002年10月30日(水)00時49分49秒
- 走って逃げて行き着いた先は、相変わらず廊下だった。
しかし麻琴は走る足を徐々に止めて、視線の先にいる金髪の髪と、その隣を歩くストレートの髪に気がついて声をかける。
「矢口さん、後藤さんっ」
「おっ?あれ、小川じゃん。どーしたー?」
お前今は休憩でしょー、と矢口は続ける。
「…実は…」
かくかくしかじかと説明してみせると、すぐに彼女は納得顔になる。
「石川とよっすぃーね。大丈夫だよ。多分もう楽屋にはいないと思うし」
「え?」
「多分あの二人なら、今頃部屋を変えて…」
首を傾げる麻琴を見て、矢口は言葉を止める。
「子供にはまだ早いな」
「…?」
とりあえず楽屋戻ってみ、と言われて、麻琴は回れ右をした。
「もし石川たちがまだいたら、悪戯もほどほどにしとけって、言っといて」
「はい」
あの二人の片方の教育係である彼女がそういうなら。
そう頷く麻琴を見送って、矢口はため息をつく。
そして何も言葉を発しなかった隣の人物を見た。
「…いつまで寝てんの」
「……んぁ?」
- 27 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)00時51分33秒
- 「これ何」
「登山のススメ」
「名前を聞いてるワケではなくてですね」
麻琴ちゃんはとても呆れたような声で呟く。
私は今日もピカーンと絶好調。
眉毛だって私の手にかかれば自由自在に動かせるのよ。
「いや、それ関係ないし」
「なっ、何で私の心を読めるの!?」
「さっきから全部口に出してるよ」
そんな。
完璧なのにちゃんとお約束も忘れない素敵な私。主役級だ。
麻琴ちゃんは、そんな私を怪訝そうに見ている。
そのつりあがった目。
気を抜いていない証拠のように、本当は下がり目の彼女は私を睨んでるようだ。
ああ、今日もラヴラヴっ。
「…で、これは何の嫌がらせ?」
「嫌がらせなんてそんな!麻琴ちゃんのためにうちのパパに頼んで
世界各国から優れた登山家たちの著書をじっくり私自身が吟味し
たうえでよく考えたら麻琴ちゃん英語できなさそうとか思ったか
らわかりやすい日本語でかかれているものから厳選したっていう
のに!」
「さり気にバカにしたよね今」
「シャンゼリーゼ!そんなわけないじゃない!」
両手を大きく広げて大声を上げてみせる。思わず口調もデルモ風。
- 28 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)00時52分56秒
- 嫌がらせなんてヒドイことを言うもんだ。
私の愛をたくさんこめたプレゼントをそんなふうに扱うなんて。
でもそんな被害妄想を繰り出す麻琴ちゃんも大好き。ラヴラヴ。
ああ、今日もカッコいいなぁ。
「…これが里沙ちゃんからの誕生日プレゼントなの?」
「うん。来年のリベンジ・ザ・フジヤマに、何か役立つと思って」
「リベンジ決定かよ!何だよそのセンスの一カケラもなさそうなタイトルは!」
「偉い姓名鑑定士のおじいさんがそうしろと」
「姓名鑑定士に頼むなよ!名前じゃないだろそれ!」
あ、そうか。
「今更気付くなぁ…」
ちょっと涙目で涙声。
そんな麻琴ちゃんは可愛い。
ああ、そんな危ない趣味を持っちゃいけないわ里沙。うん、でも可愛い。
「…まあ、リベンジはあたしもしたいけどさ、また他メンのみんなが
24時間テレビスタジオでぬくぬくしてる裏で、必死に山登るはちょっと…」
「大丈夫。プライベートで行けばいいのよ」
そして私もお供として一緒に富士登山。
山の頂上できつくお互い抱き締めあう二人には、高山病だって逃げ出すの。ふふふ。
- 29 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)00時53分53秒
- 「………」
麻琴ちゃんは私のスペシャルイタリアンな計画のすばらしさに、
声を出すことすらできないようだ。
「呆れて何も言えないだけだよ…」
また私の心を読んじゃうなんて、意外に私達相思相愛だったりして。毎日一緒に帰ったりして。
ああ、私の中で静かに燃えたぎるこの淡い恋心に気付いてマイダーリン。
「心を読んでるんじゃなくて、口に出してるんだってば」
「アンビリーバボー!」
「いや、全然不思議じゃないから」
恋だの愛だの、そっち方面はまったく鈍いくせに、
ツッコミだけは日々上達しちゃうのね。
- 30 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)00時55分46秒
- でも大丈夫、私にはわかってるの。
麻琴ちゃんは照れ屋さんだから、人一番繊細で優しくて他人を思いやる子だから。
私にフラれたらって、そんなもしもの悪循環に捕らわれているのよね。
でもね麻琴ちゃん。
それをちゃんと逃げださずに乗り越えないと、立派大人にはなれないのよ。
愛しい麻琴ちゃんのため。私も心を鬼にして
燃えさかる恋の炎をあなたに悟られないよう、ひっそり好意をよせているわ。
「…どーでもいいけどさ、この本、ヒマラヤ山脈がどうたらこうたらって
書いてあるんだけど」
何故かそっぽを向いて、私のプレゼントした本をパラパラとめくっている。
「ヒマラヤ山脈の本だもん」
「富士山はどうしたんだよ!ヒマラヤ関係ないじゃん!」
「ほら、山繋がりだし」
「えらくアバウトだなオイ…」
溜め息をつきながら本を閉じる。
- 31 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)00時57分01秒
- 大丈夫。わかってるわ。
いくら文句を言ったとしても、麻琴ちゃんは本心から
そう言ってるんじゃないってことぐらい。
「…とりあえず、ありがと」
「どういたしまして」
ほら。
本当にイヤなら、もっと不機嫌そうな顔するもんね。
- 32 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)00時58分27秒
- 私、麻琴ちゃんのことならたくさん知ってるよ。
年下だし、同い歳のあさ美ちゃんや愛ちゃんのほうが、
麻琴ちゃんのこと全部知ってるかもしれないけれど。
それでも私だって負けないんだよ。
「…じゃ、行きますか」
「え?」
「スタバに行こう」
椅子から立ち上がって、机に置いてあった鞄を手に取る。
「本のお礼するよ」
私の手を軽くとって、麻琴ちゃんは部屋の扉へと進んでいく。
「でも、仕事は」
「今日はもう終わりだよ。スケジュール表見てないの?みんないないでしょ」
そういわれてみれば。みんないないから、プレゼントを渡すなら
今だと思ったんだった。
- 33 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)01時02分05秒
- 「…あ、ほら、でも夜は危ないし…」
「あたしがいるよ。それとも、行くのイヤ?」
とんでもない。
小さく首を傾げて尋いてくる彼女に首を横に振って見せる。
私が麻琴ちゃんの誘いを嫌がるわけないのに。
まったく、私のことをわかってないんだから。
麻琴ちゃんは、私の答えに満足そうに笑い、
二人分の荷物を持って扉へと歩いて行く。
片手に荷物、片手に私の手を掴んでいる彼女に代わって、
私が扉のノブに手をのばす。
「…里沙ちゃんのこと、あたし、ちゃんと知ってるからね」
「え?」
回そうとしていた手の動きが止まる。
悪戯っぽく笑う顔が、少しだけ赤かった。
「なんでも思ったことを口にしちゃう癖、早く治したほうがいいよ。
隠し事できなくなるから」
彼女の言葉の意味が一瞬わからなくて、まじまじと顔を見つめる。
うーん、やっぱりカッコいい。ラヴラヴ。
- 34 名前:■7.ゴルァ! 投稿日:2002年10月30日(水)01時02分56秒
- 「…もう手遅れっぽいけど」
耳まで真っ赤になってしまった彼女が、溜め息混じりにそう呟いた。
- 35 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時07分44秒
- ぷくっと頬を膨らませている私に、まこっちゃんは苦笑しながら近づいてきた。
「何怒ってんの?」
「…怒ってません」
「じゃあなんで敬語なの」
「………」
顔を横へ向けると、愛ちゃんと里沙ちゃんが、
恐る恐ると言った感じでこっちを眺めていた。
そんなに今の私、不機嫌な顔してるのかな。
「あさ美ちゃーん、機嫌治してー」
「別に元から機嫌なんて損ねてません」
ぷにぷにと頬を突付いて来る手を払いのけて、さっさと歩き出す。
後ろから、笑いを堪えるような、そんな彼女の息遣いが聞こえた。
「…何笑ってるの」
「いや、あさ美ちゃんってば可愛いなぁって思って」
さぁ行こうか、って。後ろにいる二人にも声をかけて、
まこっちゃんは私の横を歩く。
- 36 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時08分50秒
- まこっちゃんは酷い。
みんながどれぐらいまこっちゃんのことを好きなのか、多分よく知ってる上で、皆に優しく接する。
優しさが、時には誰かを傷つけるということに、彼女は気づかない。
さっきだって里沙ちゃんから本をもらって、嬉しそうにしてた。
ぶちぶち文句を言っていたけれど、それでもやっぱり嬉しそうに。ありがとうって囁いてた。
「………」
「どこがいいかな?やっぱりいつも行ってるあそこのスタバで良いと思う?」
「良いんじゃないんですか」
「もう、あさ美ちゃん冷たーい」
文句を言いながら、それでも私の隣から離れない。
にこにこと浮かべてるその笑顔が今日は妙に癪に障る。
なんでこんなにイライラするのかわからないけれど、でも、何か嫌なんだ。
皆に見せるこの笑顔が、私以外にも見せちゃうその笑顔が。
- 37 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時09分35秒
- 「まこっちゃんの、バカ」
「うわ酷っ」
そう言いながら頬をまた突付く。
キッ、と睨みつけてみても、彼女には効果がないのだろうか。
相変わらずにこにこしていてまったく怯える様子がない。
「んー、何?」
むしろ嬉しそうにしている。
何だかイライラする。
私は彼女の手のひらで踊らされているのだろうか。
いくら不機嫌に怒っても、全く動じない彼女が凄く酷く恨めしい。
「また頬膨らませてる。可愛い〜」
もう、突付いてくる手を払うことすら煩わしい。
何でこんなにイライラするのかわからない。
私がわからなければ、まこっちゃんにわかるわけがなくて。
「今日は愛ちゃんのおごりね」
いつの間にかまこっちゃんは、私の隣から後ろの二人のほうへと振り向いていた。
- 38 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時10分05秒
「え、ええ!そんな…」
まこっちゃんの真後ろを歩いていた愛ちゃんが泣きそうな声を出す。
「良いでしょー?だって、今日は…ね?」
「…ううっ…」
がくっと肩を落とす愛ちゃんの背中を、ぽんぽんと、慰めるように叩いた。
「ああ、麻琴ちゃんってば優しい、ラヴラヴっ」
「本当に優しかったら、私におごらせたりしないと思うんけど…」
「何で愛ちゃん私の考えてることがわかるの!?」
「口に出してるー…」
愛ちゃんのツッコミにすら里沙ちゃんは反応しない。
ただラヴラヴ言いながら、まこっちゃんを眺めていた。
(…何だろう……)
イライラして、もやもやして。
心の中がざわついて。
「里沙ちゃんほっといて行こ。ほら、愛ちゃん」
苦笑しながら、まこっちゃんは愛ちゃんの方へと手を伸ばす。
手を、その手を伸ばして、
誰を、捕まえるの?
- 39 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時11分04秒
「…あさ美ちゃん?」
その手を私が捕まえて、彼女が誰も捕まえられないように、そっと押さえる。
困ったように首を傾げる彼女の視線を感じる。
だけど顔は上げられない。恥ずかしくて、真っ赤に染まる顔を上げることができない。
「……麻琴」
「うん…?」
俯いていた私にはわからなかったけれど、愛ちゃんとまこっちゃんは、同時に頷いた。
イヤだ。もやもやする。
それ以上、他の人と一緒にならないで。
「あさ美ちゃん、ほら、行こう」
まこっちゃんはそう言って、私が掴んだままの手を逆に握り、先を歩く。
私は引っ張られるままに足を進めた。
後ろからは愛ちゃんたちの足音が聞こえない。
振り向こうとして身体を後ろへ向けようとすると、
まこっちゃんがさり気なく妨害してきた。
ぐっと腕を引っ張って、無理やり自分のほうへと向けさせるように。
- 40 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時11分49秒
「………」
「あさ美ちゃんのヤキモチ焼き」
「…違う…もん」
「ヤキモチはおいしいね」
「…まこっちゃんのバカ」
うまいぞぉー、とか何とか叫びながら、まこっちゃんは歩く。
長いスタジオの廊下が途切れて、やっと玄関へと着いた。
ガラス張りの自動ドアの向こう側は真っ暗で。
「あさ美ちゃんが焼くヤキモチは、大好きだよ」
そんなこと言われたら、反省できなくなるよ。
ワガママ言っちゃいけないってわかってるのに。
わかってるのに、いつまでもヤキモチ焼いちゃうよ。
「…やっとあさ美ちゃんと同い年だねー、あたし」
「…うん」
さっきからずっと怒ってばっかりだったから、誕生日プレゼントすらまだ渡せてない。
ヤキモチ焼かせるようなことばかりするまこっちゃんが悪いんだ。
「プレゼントは?」
「………」
「ないの?」
「…あるよっ」
鞄の中から、プレゼント用にラッピングしてもらった箱を、彼女の胸に突き出す。
- 41 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時12分41秒
「ありがとー」
にこにこ笑うまこっちゃん。
何だか、こっちまで嬉しくなって。
「…あれ?」
「ん?どしたのあさ美ちゃん」
いつの間にかイライラがなくなってた。
もやもやもなくなってた。
代わりに、私の身体の中を占めるものは、
「どーしたの、あさ美ちゃん。お腹空いちゃった?」
早鐘のように打つ心臓の音。
さっきまで感じてた彼女の笑顔に対する嫌悪感もなくなってて。
- 42 名前:■6.マターリ 投稿日:2002年10月30日(水)01時13分14秒
- 「おーい……愛ちゃぁん、あさ美ちゃんがどっか行ってるー」
「それよりも里沙ちゃんどうにかして…」
「ラヴラヴ〜」
「………」
そう言いながらも、まこっちゃんの顔には笑顔が浮かんでる。
彼女の笑顔が私の心を揺らす。
イライラさせたり、もやもやさせたり、ドキドキさせたり。
「ほら、行こうあさ美ちゃん」
たまに、私を安心させてくれたりもする、そんな彼女の笑顔。
「…他の人には、見せないで欲しいな」
「? 何を?」
「……秘密」
首を傾げる彼女の腕を引っ張って、闇の中へ、二人一緒に踏み込んだ。
- 43 名前:■0.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)01時56分54秒
- 「ん…」
「あ、起きた起きた」
そんな声が聞こえてきて、麻琴は小さく目を開ける。
何か長いようで短いような夢を見ていた気がした。
「…おはよ、まこっちゃん」
「ん…おはよーあさ美ちゃん」
上体を机から起こして、上にぐぐっと手を上げて伸びをする。
背中から小さく骨の音がした。
首をぐるぐる回しながら時計で時間を確かめる。
「あ…それ…」
「うん?あ、似合う?あさ美ちゃんが選んでくれたんだよね、この時計」
こくこくと赤い顔で頷く紺野を見て、麻琴は満足そうにその腕時計を優しく撫でる。
黄色と緑の腕時計。
なんとなく、美味しそうだった。
紺野はどこからか持ってきたパイプ椅子を隣に並べて座る。
楽屋の中にはすでに人が数人集まってきていた。その仲には当然、
他の5機メンバーも混ざっている。
「麻琴ちゃん、ちゃんとあの本読んでる?」
「重いから持ち運びできないんだよね」
新垣の言葉に、ため息交じりで答える。
ヒマラヤ山脈について書かれていたあの本は、見た目以上に中の文字が小さく、
重く、そしてページ数が多いのだ。
はっきり言って眠くなる。
- 44 名前:■0.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)01時57分39秒
- 「麻琴、これ」
そういって恐る恐る差し出されたパン袋を受け取る。
顔を上げると、いつもの何か驚いたようなそんな高橋の顔があった。
「? これ、くれるの?」
「うん。プレゼント」
パンの表面に書いてある文字を読み、麻琴の表情が一気にぱっと輝く。
「かぼちゃパン!」
ほお擦りする麻琴を見て高橋はほっとため息をついた。
「うらあ!まこっちゃんはどこやー!」
「やー!」
バンッ、と開け放たれた楽屋のドアから、小さい二人組が突入してくる。
「こ、ここにいますけど…」
「よっしゃ、のの!行くで!もう一踏ん張りや!」
「うっしゃー!」
恐る恐るあげた手で位置確認をした二人は、廊下から何かを持って中へ飛び込んでくる。
どんっと机の上に置かれた白い箱に麻琴は首を傾げた。
- 45 名前:■0.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)01時58分27秒
「これは…」
「辻加護特製かぼちゃケーキや!」
「ちゃんとかぼちゃが入ってるのれす」
「あ、ありがとうございます!!」
感極まって、麻琴はその箱を開けた。
中身をのぞきこんで一瞬たじろぐ。
「…ええと…」
「どうや最高傑作!かぼちゃの煮物とパンと生とペーストと」
「ある意味最高傑作なのれす!」
確かに。
普通の生クリームケーキ(ホール)に突き刺さるかぼちゃの煮物たちを見ると、かぼちゃケーキと言えなくもないのだが。
「やっぱり愛されてるね、小川」
「いっ、いつの間に背後に立ってるんですか、飯田さん…」
どこか遠くを見たまま飯田は小さく呟く。
「愛って、良いね」
(何かあったのかな…)
そう思いたくなるような一言を残してどこかへと去っていく。
- 46 名前:■0.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)01時59分01秒
「やっぱケーキにはろうそくだべ」
「ちょっとなっち!こら!危ないってば!」
まだろうそくを立ててもいないのにライターを片手にすたんばっている安倍を
必死で止める保田。
どこからそのライターを取り出したのかは不明だ。
「あ、じゃあ私が歌を」
「梨華ちゃんストップ!!」
石川を止めるのは吉澤だけではない。
全員が手で×印を作る。
「…みんな酷いよ…」
ぐすぐすと泣き始める彼女を慰める役は吉澤に任せ、
矢口が小川の背中を軽く叩いた。
「一日遅れだけど、みんなで祝お」
「…で、でも、仕事…」
「さっさと食べちゃえばよし。娘。内にはよく食べる奴が多いしね」
そういって矢口は周りを見渡し、何かを見つけた。
「…ていうか、おまえ何か喋りなよ…」
「……んぁ?」
全く話を聞いていなかったかのような後藤の反応に、みんな笑った。
- 47 名前:■0.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)02時00分04秒
「てゆーかごっちん娘卒業したのに、何故ここに…」
「んぁ…気にしないで良いよ」
「いや、気にするって…」
石川を押さえたままの吉澤はそう呟いて、そして頭を振った。
「まあいいや、さっさと食べちゃおう」
そう言って手を伸ばす数人の手を叩きながら、飯田は大声で叫ぶ。
「誕生日おめでとう小川!!」
「うわっ、い、いきなり…」
飯田の言葉に続くように、楽屋内におめでとうの言葉が飛び交う。
そしてみんないっせいにケーキへ飛びついた。
「あたしのケーキなのに…」
「…まこっちゃん」
紺野が麻琴の袖を引っ張る。
「うん?何、あさ美ちゃん…ケーキ食べても良いよ、もう…」
「そうじゃなくて…」
周りを見て、声のボリュームをとても小さくして。
紺野は囁いた。
- 48 名前:■0.ワショーイ 投稿日:2002年10月30日(水)02時04分34秒
- 「…昨日言えなかったから…お誕生日おめでとう、まこっちゃん」
「……ありがと」
一日遅れの盛大な誕生日会。
嬉しくて仕方がなくて。
照れ隠しに、麻琴はケーキを一切れ頬ばる。
「………」
「どや、美味いやろ」
「やろ」
同い年とはいえ一応は先輩の二人に向かって、
普通のケーキがよかったかな、なんて。言える筈がなかった。
…そんな彼女の誕生日。
- 49 名前:■END■ 投稿日:2002年10月30日(水)02時08分17秒
- 『END』
- 50 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2002年10月30日(水)02時09分28秒
- とりあえず。小説内でのCPについて。
おがたか編。
高橋さんに甘える小川さんな関係を推奨。
おがにぃ編。
このお二人には、甘い雰囲気のない、友達同士のようなおつきあいをキボン。
小川さんは新垣さんを容赦なくどつき、新垣さんは小川さんに
多大なる異常な恋心を寄せ、ステキな自分に浸り酔ってくらさい。
おがこん編。
とにかくヤキモチ紺野さんと、それに気づいていない鈍感小川さん推奨。
やっぱりすらすらっと書けてしまうのはおがこんだけでしょうか。
ひたすら紺野さんは小川さんをバカ呼ばわりして、
小川さんは紺野さんの頬を突付いてあげてくらさい。
- 51 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2002年10月30日(水)02時12分13秒
- とりあえず最後が先走りすぎてしまい、まとまりを上手く作れなかったっす。
要領もかなり残ってしまったみたいだし(死
これから先、ここは適当に短編を載せていこうかな、と。
ここまで読んでくださった方どうもありがとうございました。
それと数字。
1話2話のつもりで振っておいた数字がかなり間違ってしまっているので、
次で目次でも作ってみます。
- 52 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2002年10月30日(水)02時12分59秒
- 目次はこんな感じ。
最後が走りすぎてしまったせいでまとまりがない話になってしまつた。
やっぱり一日で書き上げるなんて無理だよぅ(今更
0.ハッピーバースデー。
>>1
1.ワショーイ
>>2
2.キボンヌ
>>4
3.正直、すまんかった。
>>13
4.(゜皿゜)
>>16
5.ハッピー
>>20
6.なっち天使。
>>25
7.んぁ?
>>26
8.ゴルァ!
>>27
9.マターリ
>>35
10.ワショーイ
>>43
- 53 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2002年10月30日(水)02時14分04秒
- 時間経過がめちゃくちゃになっているので、そこら辺は根性で(何)
ああ、本スレ終わらせないと…。
- 54 名前:名無しさん@小川ヲタ 投稿日:2002年10月31日(木)00時22分58秒
- 羊の隠れた名作スレ見て読みました。とても面白かったです。
特におがにぃがツボすぎるというか。おがたかも歌姫も良かったです。
幸せをありがとう。よろしかったら本スレも教えてください。
- 55 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月31日(木)07時10分50秒
- おがこんさいこー!
この言葉だけで俺の感想全てが集約されてる感じ(w
短編も期待してます
- 56 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月04日(月)03時43分06秒
- ごちそうさまですた〜〜〜おがこんいいですね〜〜〜
でもっておがにい最高(V
- 57 名前:加藤ティ〜 投稿日:2002年11月18日(月)04時23分09秒
- これ面白いですね。ギャグもネタが巧くまとまってて秀逸です。
そして何より軽く読める適度な長さw
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月18日(水)20時08分43秒
- 今ごろ全部読ませて頂きました。
自分の目是すべき道が此処にはありました。
面白かったです。有難う御座いました。
- 59 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2002年12月25日(水)00時12分32秒
- >>54 名無しさん@小川ヲタさん
おがにぃは自分も結構好きです(w
幸せになっていただけて光栄です。書いた甲斐があったというものです。
本スレはもう今更なんで言わなくても大丈夫ですよね。多分(w
>>55 名無し読者さん
おがこんさいこー!
この言葉だけで感謝の気持ち全てが集約されています。
短編、遅くなっていてすみません。
>>56 名無しさん
お粗末さまでした。おがこんもおがにぃもいいです。
>>57 加藤ティ〜さん
ありがとうございます。
自分的にはいつも滑ってるよなぁとか思うんですが、
面白いと言われて嬉しいです。
>>58 名無し読者さん
Σ道がありましたか。うちのスレで見つけてもらえて光栄です。
こちらこそありがとうございました。
こんな駄文でよければ、ちょくちょく覗きに来ていただけると嬉しいです。
今回短編企画に参加させていただいた際に、ボツったネタがありまして、
それを元にもう一度手を加えたものをUPさせていただきます。
ヤマもオチもテーマもへったくれもないんですが、
とりあえずいしやぐっぽいです。でも期待しないで下さい。
- 60 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時15分48秒
ありきたりな展開だな、ホント。
外は雨が降ってる。
隣にはオイラと別にもう一人、雨宿りしてる奴がいる。
傘は一つしかない。
「なんで?石川が使えばいいじゃん」
「ダメですよぉ、やっぱり先輩なんですから、ここは矢口さんが使ってください」
譲り合いに終わりは見えない。
さぁ、どうする?
- 61 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時16分57秒
いくら頭を回転させても答えは出てこない。
いや、本当はもう出てる。だけどそれを梨華ちゃんが承諾してくれない。
「頑固だよなぁ…」
「え?何か言いました?」
「いんや、別に」
素っ気無く答えてから、空を見上げる。
もう少しで止みそうな雨。これなら多少濡れて帰ることもできるハズだ。
「矢口さぁん…」
「…んだよ、もう」
さっきから感じる視線に耐え切れなくなって、やっと横を見た。
彼女の体勢はいつまでも変わらない。
眉をハの字にして、ピンク色の傘を差し出してる。
オイラはこんな色の傘はイヤだ。趣味じゃない。
どっちかっていうと、こーゆーのは梨華ちゃんの方が似合うだろ。
…なんて、関係ないことばっか並べて、
どうにかしてでもコイツに傘を差させてやりたいだけなんだけど。
- 62 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時18分16秒
- 「大体それって石川の置き傘だろー?オイラが使えるわけないよ」
「んもぅ、そんなこと気にしなくていいですよ。
矢口さんの顔が雨に濡れた方がヤバイんですから」
「嫌がらせか!嫌がらせなのか!?」
だけどそのチャーミースマイルに嫌味は感じられない。
感じられないからこそ余計に始末が悪いということを、
実はわかってるんじゃないだろうか。
怒るにも怒れなくて、力なくため息をつく。
「…もう、いいからさ。さっさと帰りなよ。風邪ひくよ」
「じゃあこれ受け取ってください」
「自分で使えって」
以下エンドレス。
終わりの見えない譲り合いは、さっきから10分ほど続いてる。
- 63 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時20分00秒
確かに彼女が言う通り、オイラは先輩だ。
でも、そしたらつまりコイツはオイラの後輩であり、
逆に言わせて貰えば、先輩としてここは傘を譲るのが当然ってもんだろ。
加えてこの傘は梨華ちゃんのだ。
傘を持ってきてない奴が傘を使って、持ってきた奴が濡れて帰るなんて、
そんな馬鹿げたことないって。
と、口に出して言えばそれでいいわけなんだけど。
何でだろ。これなら確かに彼女一人で帰らせることができるはずなんだ。
だけど面と向かってそう言う事ができない。
置いてかれるのが嫌だとかそんなこと思ってないぞ。絶対。
「…あっ」
不意に隣から声があがった。
どうせしょーもない発見でもしたんだろ。
オイラは特に気に留めず、雨がいつ止むのか空を見上げようとした。
「ってイテェよ!何してんだコラ!」
が、首根っこを掴まれ、グイッと90度ぐらい横に曲げられ、
梨華ちゃんの顔が嬉しそうにほころんでいるのが良く見えた。
そしてその表情のまま彼女は口を開いた。
- 64 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時21分05秒
- 「それじゃ、相合傘しましょう!」
「は?」
ナイスアイディアと言わんばかりに、置き傘のカバー外しへと取りかかる。
(相合傘ってオイオイ…一昔前の初々しい中学生カップルじゃないんだからさー…)
突っ込みを入れてやりたいけれど、どう言ってやれば良いのか。
悩んでる間に傘は姿を現し、小さい身体を徐々に広げていく。
「…本気?」
「冗談で言うわけないじゃないですか」
そう言いながらも視線は傘に注がれたまま。
頑張って開いているけれど、どう見ても傘は裏返しの状態になっている。
あれだよな。小学生が良くやる、傘のひっくり返し。あんな感じ。
一生懸命真剣な顔でそれと格闘してるから、何だか笑ってしまいそうになる。
そんな急がなくて良いよ。
ゆっくり、ちゃんと傘開きなって。
- 65 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時21分56秒
- 「…あれ…これはこう……こっち…ええ?」
「折りたたみ傘の組み立てにこんな時間かけるのって、石川ぐらいしかいないよな」
「えー、これでも一生懸命なんですよーっ」
いつも見てんだからそれぐらいわかるっつの。
あえてそれは口にしないで、そっぽを向いた。
「とにかく、オイラは相合傘なんてヤダかんね」
「真里っぺひどーい!そんなに私とラブラブするのが嫌なの!?」
「真里っぺ言うな!誰だよお前!!」
腕にまとわりついてくる黒色の物体を払いのけながら、大げさに突っ込んでみる。
案の定梨華ちゃんは楽しそうにそのツッコミを受け入れた。
「もぉー、矢口さんってばノリ悪いんですから」
「石川には言われたくなかったけどね…」
そんな呟きすら無視して、彼女は格闘の末やっと開けた傘を差し出す。
- 66 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時23分29秒
- 「じゃあ、帰りましょうか」
「だから嫌だって言って…」
デパートで駄々をこねる子供みたいに、いくら引っ張られても動くもんか。
そんな気持ちで視線を合わせたら、言葉が詰まった。
「…嫌、ですか?」
って、何でいきなりそこでそんな顔をするんだよ。
眉をハの字して、悲しそうに傘を差してる梨華ちゃんを見たら、
急激に胸が痛くなった。
「…やっぱり石川のこと、」
「嫌いだったら傘を譲ったりしないでしょーが」
好きだとは言わない。天邪鬼なのか、素直じゃないのかわからないけど、
どっちにしてもろくな性格してないなって自分でも思う。
こんなオイラじゃ、未だに少々顔を出すネガティブ思考な梨華ちゃんを
安心させる言葉すらかけてやれない。
こんな時よっすぃーならもっと気の効いた言葉でも言ってあげるのかな、とか
そんなこと考えたら、何だか無性に負け犬気分になった。
何でここでよっすぃーが出て来るんだよ。
梨華ちゃんと言えばよっすぃーかよ。そんな方程式いらないって。
オイラにだってできるっつの。
ふと視界の端に映ったのは、ピンク色の傘。
- 67 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時24分24秒
- 「………」
これしかないか。
そう思って息を吸い込み、
「あのさ、いしか」
「あ、雨止んでますね」
「わって止んだのかよ!」
ばっと顔を上げると、確かに雨は止んでいた。早いよ。
気づけば梨華ちゃんの表情もいつの間にかいつも通りに戻っている。
演技だったのか、もしかして。
思わずそんな風に疑いたくなるほど彼女の顔は晴れやかだ。
「傘、どうしましょうか。晴れちゃったのに持って帰るのも…」
「…またロッカーに戻してくれば?」
「そうですねー」
脱力したオイラに気づくことなく、石川はせっせと傘をたたむ。
「すぐに戻ってきますから」
「待ってろってこと?」
「やっぱり石川のこと…」
「待ってるからさっさと行ってこい!!」
上機嫌でUターンしていく彼女の背中を眺めて、ため息をつく。
絶対人のことからかってるな、コイツ。
- 68 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時28分27秒
- 「あーそうだ」
一歩踏み出したところでぴたっと止まり、
上半身だけこっちに向け、梨華ちゃんは口を開いた。
「今度しましょうね」
「何を?」
「相合傘ですよぉ」
笑いながら、彼女はまた事務所へと戻っていった。
「そんなこっぱずかしいことやってられるかってのっ」
閉まっていく自動ドアの向こう側に消えた背中に向けて、そう突っ込んでやった。
- 69 名前:しないよ。 投稿日:2002年12月25日(水)00時29分22秒
END。
- 70 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2002年12月25日(水)00時33分15秒
- 初・いしやぐ。
何を書きたかったのか自分でも(ry
- 71 名前:(0^〜^)チュキチュキ 投稿日:2002年12月25日(水)01時20分50秒
- 凄く面白かったです!
メール欄に書いた部分の哀愁がまたなんとも言えずイイ!
いしよしもいいですけど、いしやぐもいいですね。
もっと増えてくれればいいなぁ。ということで、次も期待してます!
- 72 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月25日(水)06時28分29秒
- おもしろかったよん
ごまこきぼ(ry
- 73 名前:58 投稿日:2002年12月25日(水)11時35分45秒
- 最高!!
矢口が石川をコントロールしている様に見えて実は逆…
まさに自分の妄想の中のリアリティーがここにありました。
で、石川が本気なのかがわからないところも好き
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月27日(金)00時53分54秒
- いしやぐ最高です。すごく良かったです!
それはもう今までオイラが読んだいしやぐ小説の中で1.2を争うくらいに。
- 75 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月06日(月)23時25分16秒
>>71 (0^〜^)チュキチュキ さん
いしやぐ、増えると良いですねえ。
自分はおがこんが一番なんですが、最近はいしやぐも結構
良いなぁと思ってたりします。
時間があったらまた書こうかな。
>>72 名無し読者 さん
ありがとうございます。
ごまこは(ry
>>73 58 さん
自分もこういういしやぐな関係が好きです(w
>>74 名無し読者 さん
1、2を争うぐらい…ありがとうございます。恐縮です。
相変わらずのダメダメ文を炸裂させようと思います。
いつもにも増して、期待しないでください。
- 76 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月06日(月)23時28分14秒
・ファンヒーター
「………」
「………」
「…あさ美ちゃんさぁ」
「何?」
「そこに座ってると、こっちに暖かい風が来ないんだけど」
「寒そうだね」
「寒いよ!わかってるんならどいてよ!」
「ええー」
「えーじゃないって!こっちはマジで寒いから!」
「私は暖かいよ」
「そりゃ目の前に座ってれば暖かいよ」
「どっちかって言うと熱いけどね」
「離れろよ!何でそんな至近距離で座ってんだよ!」
「だって寒いもん」
「今は熱いんでしょうが!」
「麻琴ちゃんってツッコミ上手だね」
「あ、あさ美ちゃんのせいだよ…」
「それがカメラの前でも発揮できれば良いのにね」
「…人が気にしてることを、さらりと言わないで欲しいんだけどなっ…」
「ガンバッテルモン?」
「頑張ってるよ!!何か悪いか!?」
「私より目立つと悪いね」
「それって今のあたしが目立ってないから別に良いやみたいな意味かコラ。
ミュージカルの主役演じたからっていう余裕かオイ!」
「わかってるよ、麻琴ちゃんも頑張ってるもんね…」
「何だその哀れみの目は!そんな目で見るなチクショウ!」
「2人とも仲良いよね。ラヴラヴ」
「いや、それはどーやろう…」
- 77 名前:無意味におがたか。 投稿日:2003年01月06日(月)23時31分31秒
・ピアス
「ピアスすると大人っぽいね」
「…え…」
いつの間に移動してたのか。
さっきまで里沙ちゃんと楽しそうに話していた麻琴が、
隣に椅子を持って来て座っていた。
「何かやっぱり年上なんだなあって感じがする」
「…そ、そうかな」
「うん」
自分でこれ買ったのとか、穴を開けた時痛かったのかとか、
色々な質問をぶつけてくる。
興味あるのかな。
そう思って、思わず口を開いた。
「麻琴は、ピアス開けたい?」
「え?ああ、んー…高校入ったら開けたいかも」
「そうなんだ」
やっぱり中学生はまだダメだよね。
- 78 名前:無意味におがたか。 投稿日:2003年01月06日(月)23時32分22秒
(麻琴がピアスつけたらどうだろう…。
似合いそうといえば似合いそうだけど、何だか…ちょっと嫌だなぁ…)
もともと大人っぽい外見をしてるけど、本当は凄く子どもみたいだし、
そんなところが好きな私としてはちょっと抵抗がある。
でも本人が開けたいって言うんだから、それをむりやり止める権利は無い。
もしかしたら凄く似合うかもしれないし。
自分にそう言いきかせて、自分の耳につけてるピアスをなんとなく触った。
「…それさー」
「うん?」
ぽつりとつぶやかれた言葉に思わず顔を向ける。
「似合うけど、何か嫌だ」
「………」
いきなりの言葉にぽかーんと口を開けたままの私をまったく無視して、
麻琴はピアスを手で軽く触れる。
- 79 名前:無意味におがたか。 投稿日:2003年01月06日(月)23時33分06秒
- 「何か愛ちゃんっぽくないんだよなぁ」
「…それって、似合わないって言うんじゃ…」
「いや、似合わないことないんだけどー」
何か違うんだよね、と言いながらピアスをじーっと眺めている。
その間ずっと耳に手が触れてて、結構至近距離なわけで。
「………」
「ピアスの穴ってすぐに塞がるから、
一時これは付けておかなきゃいけないんだよね?」
「う、うん…」
「うーん…じゃあピアス変えてみるとかできないか…」
気づいてない。この人全く気づいてない。
触れられた耳がどんどん熱くなって行くのが自分でもわかってしまうのに。
「何か嫌だなぁ…何だろうなぁ…」
麻琴はずっとぶつぶつと何かつぶやいて、
私はただ、顔を真っ赤にしたまま硬直していたのだった。
END
- 80 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月06日(月)23時36分06秒
- 以上、思い付きの5期ネタでした。
お目汚しスマソ。
- 81 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月06日(月)23時38分55秒
- ついでにレスの書き忘れ。
>>74 名無し読者 さん
ええと、白板です。おがこん好きです。
これで何とか探してみてください。バレバレだけど(w
- 82 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月07日(火)00時06分15秒
- 準備が整ったので更新の続きを。
小川絡みだったりそーじゃなかったりするので、気をつけてくらさい。
- 83 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時08分15秒
- 彼女はすぐ側にいた。
寒そうに震えながら、自分で自分を抱きしめてる。
そりゃそんなに露出度高い服着てれば寒いだろうよ。
アレか、わざとか。視線のやり場に困らせる作戦か。
「今日も寒いですね、矢口さん」
人の気も知らないで、のんきに窓の外なんか眺めやがって。
奴当たりに近いそんな気持ちで返事をする。
「石川のギャグよりかはまだマシだと思うけどな」
「何ですかそれー」
酷い酷いを連発しながらオイラの膝の上に載せてある雑誌をのぞき込んだ。
それを見計らって、わざとページをバラバラめくり邪魔をしてみる。
それでも特に怒る様子もなく、面白そうに、
雑誌をめくるオイラの手に自分の手を重ねて止めようとする彼女。
黒と白のコントラストがきれいで、
冷たかった手が、少しだけ暖かくなる。
- 84 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時08分51秒
- 「わ、冷たーい…」
「…石川の手が暖かすぎるんだろ」
無理矢理にでもその手を払い退けようかと思ったけれど、
一瞬にしてその考えすら、頭を振って打ち消した。
ここでこの手を振り払ったらどうするだろ。また泣きそうな顔すんのかな。
そう思うと行動には移せない。
いろいろ扱いが面倒だなぁとか思いながらも、少しだけ顔が綻ぶ。
煩わしいとか思いながら離れられると少しだけ寂しい。
じゃあ結局どうすればいいのか、何をどうしたいのか。
「じゃあ石川が温めてあげますね」
ぎゅっと両手で握られたオイラの右手。
暖かさがその手を伝って、心まで溶かしてくれるような気がした。
- 85 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時09分37秒
…って、ハズッ。何だそのセリフ。
自分で自分にツッコミを入れて、思わず緩みかけた気を張り直す。
梨華ちゃんはそんな他人の葛藤なぞ知るわけもなく、
のんきに手で遊んでいた。
「そういえば、手が冷たい人って心は暖かいんですよね」
「…そんな迷信…」
「迷信なんかじゃないですよぉ」
だって現に矢口さんは優しいですもんねー、とか、
お世辞なのかわからない言葉を発しながら必死に手を温めてくれる。
何だか段々恥ずかしくなって、雑誌に視線を落とした。
「…もう、良いから。手、離せ」
「温めてるからダメです」
「温めなくて良いよ、別に」
「凍え死にますよ」
「このぐらいで死んでたまるかっ!」
それでやっとしぶしぶながらも手を離してくれる。そこ、舌打ちすんな。
不満そうにぶらぶらする足が、視界の端に映ってウザイ。
- 86 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時10分41秒
- 「あーあ…暇だなぁ」
わざとらしくつぶやかれた言葉。
無視していると、梨華ちゃんはもう一度つぶやいた。
「あーあー、暇だなぁー」
「…そーだな」
仕方なく返事をしてやると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「でも最近忙しかったし、スケジュールミスのおかげで
1時間もお休みもらえるなんてついてますよね」
「そーだな」
「あ、明日はおやすみですよね。矢口さんは予定あるんですか?」
「そーだな」
「そういえばこの間ゲーセンで小川がプーさん取ったんですよ。
凄いですよね。紺野と2人でおそろいにするために1万円も使うなんて」
「そーだな」
「もう小川から紺野に対する愛情が溢れてるって言うか優しいって言うか、
あれなら紺野が小川にべったりするのもわかりますよね」
「そーだな」
「まあ私的にはどちらかというと、紺野は貢がれてる今の状況を
楽しんでるように思えて仕方が無いんですけど」
「そーだな」
「矢口さんの厚化粧」
「殺す」
雑誌をめくりながらさりげなく物騒な言葉を返してやった。
いかにも機嫌損ねてますって表情の彼女は、こっちを睨み付けて口を開く。
- 87 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時12分08秒
- 「私一人で喋ってて馬鹿みたいじゃないですか」
「………」
「あ、今その通りだよとか心の中でツッコミいれましたね」
「あーもう!静かに雑誌読ませろよ!!」
図星だと気づかれる前に大声で叫んでみた。
「話相手が欲しいんならどっか行けっての!」
「でもここ楽屋じゃないですかー。ここにいない人達が
どこにいるかなんて検討もつかないし」
「…そのぐらい自分で考えろっ」
ばっ、と背中を向けて、雑誌をぱらぱらめくる。
特に見たいページがあるわけでもないけど、
梨華ちゃんなんか興味無いですよ風を装うためには仕方が無い。
- 88 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時14分11秒
- 「………」
沈黙。
そして彼女は口を開く。
「矢口さーん、遊びましょうよー」
「………」
何だかんだ言っても、やっぱり彼女はオイラを置いて行かない。
それをわかってて突き放したりするのって、どうなんだろうな。
「ねー、矢口さん、矢口さーん」
「…だっ!抱きつくなー!!」
ぎゅっと背中から抱きつかれて、思わず大声で叫んでしまった。
冷たかった身体が、少しだけ暖かくなる。
「…〜っ…」
いくらバタバタと騒いでみたとしても、
小さいオイラの身体じゃ、所詮抵抗できる限度は決まってるわけで。
- 89 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時15分12秒
- 「……あのさぁ」
「はい?」
力なくうなだれた身体を、まるでぬいぐるみのようにして
抱きしめてくる彼女。
上からのぞき込むようにして首を傾げてて。
「…オイラの側にいて、何か面白いか?」
「え?…んー…」
人指し指をその自慢の顎に当てて十秒ほど考える。
「そーですね、矢口さんをからかうと反応面白いし」
そんなにこにこ顔の彼女の顎に、とりあえず、アッパーを食らわせておいた。
END
- 90 名前:caliente 投稿日:2003年01月07日(火)00時16分58秒
- いしやぐでした。
小川絡みじゃなくてごめんなさい。
- 91 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時20分36秒
- 「小川」
「はい?」
振り向くとあの人がいた。
あたしの憧れであり、みんなの憧れ。
後藤さん。
「久しぶり。元気?」
「あ…はい、元気です」
久しぶりというにはハロモニの収録でよく顔合わせるのにな、とか思いながら、
もしかして収録のときあたしがいることに気づいてもらえてないのか
という不安も、一瞬頭を過ぎる。
さーびしーくないよー。
最近覚えたこのフレーズを口ずさみそうになり、慌てて手で塞いだ。
- 92 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時21分56秒
- 「んぁ、そっか。よかった」
そんな不審な行動をするあたしを気にした様子もなく、
機嫌良さそうに笑いながら頭をぽんぽんと撫でてくれる。
恥ずかしくてあたしは俯いてしまった。
こんな上機嫌の後藤さんと2人きりなんて始めてかもしれない。
周りには誰もいなかった。
もう今日のスケジュールは全てこなしたし、
あとは玄関口で待っていてくれる車で家に帰るだけだ。
さっきまでは5期のメンバーみんなで一緒に移動していたけれど、
楽屋に忘れ物をしてしまったあたしは、1人ここへと戻ってきていた。
いまだにモーニング娘。と書かれた紙の張ってある扉の前で、
動くこともできず立ち尽くしたまま見上げる。
少しだけ背の高い視線がじっとこっちを見ていた。
「…ねえ」
その瞳に捕らわれる。
視線を逸らすことができなくて、あたしはバカみたいな状態で、
彼女の言葉の続きを静かに待った。
- 93 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時22分37秒
- 「これから時間ある?少しで良いんだけど」
「…あ…えっと…」
腕時計に視線を落として、頭を回す。
早く戻らないとみんなが心配するかもしれない。
だけど、ここで先輩のお誘いを断っていいのだろうか。
「………」
あとで、言い訳すれば良いか。
「大丈夫ですよ。10分ぐらいなら…」
「んぁ」
じゃああっちでジュースでも、と言いながら先を歩く後藤さん。
その後を急いで追いながら心の中でマネージャーさんたちに謝っておく。
後藤さんは歩く姿一つ取ってもカッコ良かった。
まっすぐ背筋は伸ばされて、ブーツはリノリウムの床をコツコツ鳴らす。
それに対してあたしはとてもカッコ悪い。
少しだけ怯えたように顔を俯かせて、スニーカーでズルズル床を擦る。
いくら歳が違うとはいえ、この差は一体何なんだろう。
生まれのせいか、育ちのせいか、元からの違いなのか。
そもそも比べてしまうことがいけないんじゃないだろうか。
- 94 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時24分04秒
- 後藤さんがまだ娘。メンバーの時だって、一緒に話す機会はまったくなかった。
あたしなんてまだ全然子供だし、いきなり憧れの人と同じ位置に立たされても、
親しげに友達気分で話せるわけがない。
だからこうやって後藤さんから誘われたことなんて初めてだ。
一体何の用があるんだろう。
嬉しさよりも不安が大きくて、また顔がどんどん俯き、気分も一緒に沈んでいく。
「小川」
「…は、はい!」
「そんな怯えなくていいからね。別にいじめたりするわけじゃないし」
安心して、というようにパタパタと手が振られる。
そんなにわかりやすかったんだろうか。
恥ずかしくなって、また顔が俯く。失礼なことをしてしまった。
「…すみません」
「謝られると余計にあたしが悪いみたいじゃん」
また謝りそうになってあたしは口を閉じる。
微妙な沈黙を保ったまま、自動販売機の前に着いた。
- 95 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時25分22秒
- 「何飲む?おごるよ」
「い、いいです。ちゃんと払いますから…」
「こっちが時間取ってもらったんだから、これぐらいおごらせてよ」
半ば強引に説得されて、しぶしぶ赤い缶を指さす。
ちゃりんちゃりん、と小銭の落ちる音が聞こえて、
すぐに中身の入った重たい缶が取り出し口に出て来た。
「はい」
ぽかぽかと温かい缶が手渡される。
ありがとうございますと消え入りそうな声でお礼を言って、
意味もなく両手でその缶を転がす。
「…小川とこうやって喋るのってさ、初めてだよね」
声の方を見ると、後藤さんが顔をあげて天井を眺めていた。
「一度ちゃんと話してみたいなぁって思ってたんだけど、
小川たち、5期メンとかで固まってたでしょ?」
だからちょっと話しかけにくくて。
そんな言葉にあたしはただ呆然とする。
- 96 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時26分14秒
- 「そ、そうだったん…ですか…」
後藤さんには、あたしたちのことなんて視界の端にも入って
ないんじゃないかなんて、勝手に思っていた。
(あたしと話してみたかったなんて…)
だから、そう思われていたことに衝撃を受けた。
「ハロモニの富良野の人、面白いよね」
どこかへ意識が飛んでいたあたしは、その言葉に
はっ、と我を取り戻す。
何だ、やっぱり気づいてはもらえてたのか。
当り前のことを確認できてホッとしながら、
ありがとうございます、とありきたりな挨拶を返した。
「小川も、前よりか出番が増えて来たし」
「…そんなことないですよ。まだ、全然喋れないし…」
「そう?ちゃんとできてると思うよ。
あたしの時に比べれば全然…」
「比べられるほどじゃないです、あたし…」
後藤さんの言葉を止めるように、思わずそう言ってしまっていた。
わかってる。励ますためにこう言ってくれてるってことぐらい。
だけど、それでも。
お世辞でも比べられるほどあたしと後藤さんは同じじゃない。
全然、立ってる位置が違いすぎる。
- 97 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時27分24秒
- 「…何で、そう思うの?」
「………」
後藤さんの視線を感じる。
だけどそれを真正面から受け止めることができなくて、
あたしは顔を俯かせた。
「…だって…あたしと違って、全然凄いから…」
「そうかな」
とぼけてるのか、本当にわからないのか。
「あたしと小川は、確かに、お互い友達みたいに
話し合う時間は無かったけどさ」
同じグループで、同じメンバーだったでしょ、って。
コーヒーを一口飲みながら、後藤さんは言葉を続ける。
「全然違う生き物同士じゃないんだよ。
凄いとか凄くないとか、そんな小さいことで人を区別してたら
きりがないって」
さりげない言葉の裏に、だからそんなこと気にしなくていいよ、って
そんな意味合いが込められてるような気がした。
やっぱり言うことが違うんだなぁ。
どう言われても、やっぱりあたしには後藤さんが違う次元の人間に見える。
- 98 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時28分05秒
- 「…んぁ〜…納得してくれないみたいだね」
「…すみません」
「まあ今すぐ理解しろとは言わないけど」
さっきから謝ってばかりだ。
それでも気にした様子もなく、後藤さんは立ち上がった。
そっちへ視線を向けて少しだけ驚いた。
「別に大した用とか無かったんだ」
「へ?」
「ここまで呼び出した理由。
ただちょっと、話してみたかっただけなんだよね」
いつものクールそうな後藤さんじゃなくて、
楽しそうに笑顔を浮かべる後藤さんがそこにいたんだ。
今までは安部さんたちにしか見せたことのない笑顔。
始めてその笑顔を向けられて、戸惑うしか無かった。
「ありがと」
何であたしがお礼を言われるんだろう。
ろくな話もしなかった。特に何かしたわけでもなかった。
- 99 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時29分05秒
- 空になったらしいコーヒーの缶を空き缶入れに捨てて、
後藤さんはさっきの楽屋の方へと向く。
まだお仕事があるんだろうか。今日の予定をこなしたあたしは、
楽屋とは反対の方向へ向かわなければならない。
「何か悩みとかあったら遠慮無く相談してね」
「え…あ…」
パタパタと手を振って去って行こうとする。
何だか一瞬、そのまま別れるのが惜しいような気がして、
あたしは引き留める言葉を必死に探した。
「でっ、でもっ…ソロで忙しいだろうし…」
「? そんなこと気にしなくても良いのに」
思惑通り後藤さんは立ち止まり、振り返った。
- 100 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時29分36秒
- 頼りないけどあたしだって先輩なんだよ、って。
同じグループで活動してたんだから、遠慮はいらない、って。
そんな感じの目で見られて。
それでも、いくらそう言われてもできるわけがない。
だって、
「今は、一緒のグループのメンバーじゃ、ないし…」
後藤さんはあたしとは、やっぱり全然違う場所にいる。
多分とても遠いところにいるんだ。
そんな人に気軽に相談なんてできるわけがない。話しかけられるわけがない。
こうやって話すことだって、もうできないだろう。
「…んぁ」
天井を見上げて何か考え込んでる。
あたしは床を眺めて、何言ってるんだろって、自嘲の笑いを浮かべた。
- 101 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時30分41秒
- 「…すみません変なこと言って、あたし…」
「遠くに感じる、か」
今度はあたしが言葉を止める番だった。
「さっきも言ったけどね、あたしと小川は違わないよ」
「………」
「そりゃあそんな風に…なんて言うのかな、崇拝?
凄い凄いって、そんな感じに扱われるのは悪い気はしないけど」
楽屋に向かっていたはずの足は、またあたしの方へと戻って来る。
「でもねー、あたしはそんな壁を壊したいわけよ」
「…え…」
「小川と話したい。もっと近付きたい」
あたしに、近付く?
どんなにあがいても後藤さんの側に行けないようなあたしに、
近付く意味なんてあるんだろうか。
「だから小川も、もしよかったらこっちに近付いて来てほしいな」
近付けるわけ、ないじゃないですか。
そんな簡単にあなたの側に行けるんなら、とっくに行ってますって。
- 102 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時31分12秒
- 「お互いの位置なんて、そう遠くないよ」
そう言いながら一歩、また一歩と進む後藤さん。
空き缶入れの目の前ぐらいで立ち止まる。
「…ほら、これで距離は半分になった」
両手を広げて、こっちをまっすぐ見て、
「おいで小川。いじめたりしないから、怖くないよ」
一歩、また一歩。
ゆっくりと吸い寄せられるように足が進む。
ただそれだけのことでも何分も経ったような気がした。
頭のどこかでマネージャーさんに怒られちゃうよ、なんて、
無意味に冷静な部分がそう警告音を発して、でもあたしは何も考えられなくて。
後一歩で、後藤さんの側へ。
「………」
だけどその一歩が踏み出せない。
足が固まってて、動けない。
- 103 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時32分07秒
- 「あのね、小川」
そんなあたしを怒るでもなく、優しい声色で話かけてくれる。
顔をあげてそんな後藤さんの方を見た。
「あたしはいつでもここにいるよ。小川が呼んでくれたら、
いくらだって手を差し延べてあげられる」
広げていた両手を降ろして、じっとまっすぐ見つめられて、
その瞳に、また捕らわれる。
「ほら。あたしを呼んで、小川」
「………」
魔法をかけられたように棒立ちだったあたしは、口を小さく開いた。
「…後藤…さん」
その瞬間身体が暖かいものに包まれた。
ぎゅっと強く身体が縛られて、でもそれが逆に心地よくて。
- 104 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時33分10秒
- 「…ね?こんなに近くにいるでしょ?」
後藤さんの胸の中で、上から降って来る優しい声に耳を傾ける。
「全然違わない、遠くもない、すぐそばに来れるよ」
あぁ、そっか。
こんなに近かったんだ。
後藤さんがあの一歩分、こっちに引っ張ってくれたらしい。
すぐ側に感じられる後藤さんが何か不思議な感じで、
あたしは、本当に何か、不思議な気持ちだった。
やってみればとても簡単なことを、あんなに悩んだのが馬鹿みたい。
「…どう?これで少しは、あたしも小川に近付けたかな」
「……多分、もう十分だと思います」
そうつぶやくと、そっかって嬉しそうに言いながら身体を離す。
暖かい温もりが名残惜しかったけれど、仕方無い。
わかってもらえてよかった、って。嬉しそうに笑いながら、
後藤さんは壁にかかっている時計を見上げた。
- 105 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時33分40秒
- 「もうこんな時間になっちゃったか。
ごめんね。10分、とっくにオーバーしちゃった」
「い、いえ……あっ」
まだ少しだけ夢見心地だったあたしは、その言葉に現実へ戻って来る。
マネージャーさんやみんなを待たせたままだ。
「ごめんなさい!あたし急いで行かないと…」
「うん。引き留めて、本当にごめん」
パタパタと手を降って、後藤さんはまたね、と言ってくれた。
何だかやけにあっさりした挨拶だったけど、大丈夫。
これが最後の別れじゃないんだから、そんなしんみりする必要無いんだよね。
そして背中を向けて走り出そうとしていたあたしは、すぐに立ち止まった。
- 106 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時35分06秒
- 「? どうかした?」
「…あの」
不思議そうにこっちを見てる後藤さんの方へ振り向いて、
「こ、今度、一緒にどこか遊びに行きましょうね!」
精一杯の勇気を降りしぼって叫んでみた。
驚いたような顔をして、後藤さんはすぐに笑顔になる。
何だか恥ずかしくなって来て、
ありがとうございましたって言ってからあたしは玄関へと走り出した。
誰もいないリノリウムの床をパタパタ鳴らして、エレベーターに乗り込む。
「…はぁ…はぁ…」
心臓がバクバク言ってる。
荒く息をついて、深呼吸をする。
大丈夫だった。
ちゃんと言えた。
何だか無性に笑えて来て、何だか凄く嬉しくなってきて。
- 107 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時36分15秒
- ―――。
- 108 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時37分53秒
- 「あ、麻琴!」
一人だけ車の外で立っていた愛ちゃんは
あたしの姿を見つけるや否や、こっちに突っ込んで来た。
それを抱き止めると、愛ちゃんは怒ったような表情で口を開いた。
「麻琴の馬鹿、遅い」
「ごめんごめん」
べしべしと頭を叩かれながら、預けて置いた荷物を受け取る。
「心配したんだよー。あさ美ちゃんは探しに行くってしつこいし、
里沙ちゃんなんて麻琴の荷物を無断でガサ入れしようとするし」
「………」
その2人はとりあえずタクシーで先に帰されたらしい。
そして5期の中では一応年長者の愛ちゃんは、
最後まで我儘を言って残ってくれてたようだ。
- 109 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時40分00秒
- 「何でこんなに遅かったん?」
車の中に乗り込んでマネージャーさんのお叱りを受けるあたしに、
そういえば、と愛ちゃんが不思議そうに話しかけて来た。
隠すことでもないからあたしは素直に答える。
「んー、後藤さんに会った」
「後藤さん?」
「うん。ちょっと、話し込んじゃってさ」
「麻琴と後藤さんってそんなに仲良かったっけ…?」
今日仲良くなったって答えると、愛ちゃんは不思議そうに首を傾げる。
詳しいことは話さないまま、そんな愛ちゃんを笑顔で眺めて、携帯を取り出す。
そういえば後藤さんのメールアドレス、一応アドレス帳に入ってたっけ。
いきなり送っても大丈夫だろうか。迷惑じゃないだろうか。
(…大丈夫だよね)
妙な所で前向きになりメール作成画面を呼び出した。
(……よし、まずは…)
そしてあたしは、後藤さんへのメールを打ち始める。
- 110 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時41分04秒
END
- 111 名前:ここにいるよ。 投稿日:2003年01月07日(火)00時42分57秒
- ごまこでした。
何か展開が無理矢理のような(ry
- 112 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月07日(火)00時47分09秒
・氷食人種
「あさ美ちゃん、何食べてるの?」
「氷」
「は?氷…アイス?」
「ううん、氷」
口の中に入っていた氷をガリガリと噛み砕いて見せると、
麻琴ちゃんはようやく理解したらしい。
「何で氷なんか食べてんの?」
「お腹空いたから」
至極簡単な理由なのに、麻琴ちゃんは脱力したようにため息をつく。
「…お菓子食べればいいじゃん」
「ううん。お菓子はダメ。体重が増えちゃうよ」
「え…あさ美ちゃん、別に太っては見えないけど…」
体重と言うのは、外見よりも的確な数字を見て判断するものだよ。
そう言い聞かせてみると、麻琴ちゃんは苦笑したように頭を撫でてくれた。
- 113 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月07日(火)00時49分59秒
- 「どーせその数字だって、別に突拍子もないものじゃないんでしょ。
そのままでも十分大丈夫だって」
「その気の緩みが、油断が、突拍子もない数字を生むんだよ」
うっ、と呻きながら、麻琴ちゃんは顔をしかめる。
どうやらそういう経験があったらしい。
口の中の固まりが溶けて水になり、私は次の氷を頬張る。
ガリガリと噛み砕きながら頭の中で色々なことを考えた。
- 114 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月07日(火)00時51分11秒
- ステーキって美味しいよね。
切った時のあのじゅわーっとした肉汁がたまらないし、
ソースと絡めて口に頬張る時のあの美味しさと言ったら無いよね。
お寿司も美味しいよね。
特にあのワサビをぬいたサーモン。本当に美味しいよ。
あ、でもマグロも好きだなぁ。
とろりとした舌触りに、頬張る瞬間から溶けていくあの濃厚な味。
しゃぶしゃぶ、良いね。
食べ放題で挑戦したときはたった2皿までしか行かなくて。
あの時ほど悔しい思いをしたことは無かったよ。
やっぱりゴマだれが一番だと思うけど、ポン酢も結構捨てがたいなぁ。
(あとはー…)
頭の中で映し出されて行く食べ物の映像たち。
気分はとても幸せで、今日の晩ご飯は何だろうなんていうことにまで
思考が飛んで行ってしまう。
唯一虚しいのは、ガリガリと音を経てるこの氷。
- 115 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月07日(火)00時54分00秒
- 「…あさ美ちゃん、美味しい?」
「冷たい」
「そりゃ氷だからね…」
麻琴ちゃんは苦笑したまま、鞄から何か取り出す。
「………」
「………」
「嫌がらせ?」
「な、何で?」
となりに座りながらポッキー食べてるよこの人。
じーっとその様子を眺めていると、麻琴ちゃんはまた脱力したように、
こっちにポッキーを差し出して、
「…食べる?」
「食べる」
ぱくっとそのまま噛みつく。
「無理なダイエットって身体に良くないから、やめた方が良いよ」
「………」
「それにあたしはー…今のあさ美ちゃんでも…十分……」
「………」
「…十分…その…」
「………」
「………」
「………」
「…聞いてないね」
麻琴ちゃんの手から奪い去ったポッキーの袋から、
また一本取り出して私はそれをまた頬張る。
- 116 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月07日(火)00時55分22秒
- 「…もういいもん…」
涙を浮かべた彼女は、そのまま箱も私に突き出して、
楽屋から走り去るように飛び出て行った。
「………」
もぐもぐとポッキーを食べて、数本残ったままの袋を箱に入れ直す。
そして氷を一つ口に入れた。
飴玉をなめるように、冷たい固まりを舌の上で転がして、
身体の体温を少しでも冷ましておこう。
(…最後まで言われなくて良かった)
徐々に熱くなって行く頬を手で押えて、また氷を1つ口に頬張る。
麻琴ちゃんと入れ違いのようにして楽屋に入って来た安倍さんが、
不思議そうに首を傾げて私に声をかけた。
「紺野ー、何食べてんの?」
「氷です」
「…え?氷…?」
意味が理解できないという風に疑問符を浮かべる安倍さんをよそに、
私はもう一個、氷を口の中に入れた。
END
- 117 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月07日(火)00時57分41秒
- 今日の更新はやっとこれで終了です。
- 118 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月07日(火)01時03分20秒
- (続き)
何かいろいろ一気にあげてみたので最新25じゃ表示しきれないみたいです。
一応、今日の更新分は>>75〜>>117まで。
最後に、相変わらずのダメ文でお目汚しスマソ。
今年も宜しくお願いします。本スレも頑張ります。
- 119 名前:そ 投稿日:2003年01月07日(火)16時26分38秒
- いしやぐ(・∀・)イイ!
おがこん(・∀・)イイ!
ごまこめちゃ(・∀・)イイ!!!
有難うございました!感動しました!
- 120 名前:74 投稿日:2003年01月07日(火)19時46分34秒
- >ここにいるよ。
クールでホットな後藤さん、カッケーです。
きっと普段の小川もこんな感じなんだろうな…
なんて思ったり。
- 121 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月08日(水)03時13分01秒
- >>119 そさん
いえいえ、どーいたしまして。
満足していただけたようでよかったです。
>>120 74さん
後藤の口調とか全然わからなくて結構苦労しました。
小川はやっぱり書きやすかったんですけどね(w
では、少ないですが今日の更新です。
CPは適当に当ててみてください。
- 122 名前:リメンバーミー? 投稿日:2003年01月08日(水)03時15分53秒
- じーっと見つめてたら、彼女もこっちに気づいてくれた。
多分私はすごく不機嫌な顔をしてるんだろう。
まずったー、とかそんな感じの表情で、とりあえず苦笑いを浮かべる。
彼女は誰かさんと仲良さそうに話してた。
今もその会話は止まず、ちらちらとこっちの様子をうかがってはいるけれど、
決して彼女は私に話しかけようとしない。
ふぐみたいに頬を膨らませてみた。
彼女は元から驚いたような顔をもっと驚かせて、周りを必死で見回す。
そうですか。そんなに今の私の顔はヤバイですか。
ムンクの叫びよろしく、ぐにょーんと頬をつぶしてのばしてみたりすると、
彼女はこの世の終わりみたいな顔で必死に周りを見渡し、手をバタバタと上下に動かす。
会話の相手はそれを不審そうに眺めながら、彼女の視線が向けられてる
こっちを見ようと振り向きかけた。
- 123 名前:リメンバーミー? 投稿日:2003年01月08日(水)03時17分06秒
- あ、すごい。
彼女は右ストレートを見事に決める。
「いてえ!何すんの愛ちゃんっ!」
「ご、ごめん!何でもないんよ、何でもないけど…あの、ジャブですジャブ!!」
「意味わかんねえよ!何だよジャブって!
何でそんなファイティングポーズとってんだよ!っていてえ!二発目かよ!」
「シュッ!シュッシュッシュッ!!」
「危なっ!危ないよちょっとー!!」
彼女はボクサーみたいに拳を繰り出しながら、楽屋の外へ逃げたターゲットを追う。
「………」
で、一応恋人の私は放置ですか?
END
- 124 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月19日(日)14時23分18秒
- たかこん?!
(・∀・)イイ!!なんか知らんが凄く好きな感じw
- 125 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時38分06秒
- 「ねーたぁ」
「うん、何?」
こんな山口訛りで話しかけてくるのはただ一人。
あたしは振り返って、笑って見せた。
「コロッケ、食べない?」
「コロッケ?」
「残っちゃった」
えへへ、と笑顔を浮かべて擦り寄ってくる彼女。
警戒心というものを持っていないんだろうか。
見た目からしてちゃらちゃらしてそうとか、怖そうとか言われるあたしなのに、
彼女はそんなことにすら気づかない様子で慕ってくる。
いや、実際気づいてないのかもしれない。
合宿のときからこの子の天然さには薄々気づいてはいたし、
自分も言える立場じゃないけど、彼女も結構田舎者だ。
もしかしたら人を疑うことすら知らないんじゃないだろうか。
- 126 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時38分53秒
- (…あはは、まさかそこまでじゃないか)
山口弁を全開にして喋り続ける彼女の言葉に相槌を打ちながら、
受け取った紙袋の中から、コロッケを取り出した。
5つあるうちの1つにかぶりつく。
蒸かした男爵芋の形が少しだけ残っていてそれがまた美味しい。
もぐもぐと口を動かしていると、彼女が嬉しそうにこっちを見ていたのに気づいた。
「…何?」
「ううん、なんでもない」
口の端についたコロッケの衣を舌ですくい取り、首を傾げてみせる。
なんでもないと言いながら視線はずっとこっちに向けられていた。
「…やっぱり、返して欲しい、とか?」
「え。何を?」
「コロッケ。ずっと見とるし」
「あぁ、違う。気にしなくていいよ」
ぱたぱたと手を振って否定するけど、相変わらず視線は動かない。
じっと凝視されてるとさすがに気分悪いんだけど。
- 127 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時39分49秒
- 「………」
「………」
「……あのさ」
「これも食べる?」
こっちが口を開くと同時に彼女はポケットからチョコレートを取り出した。
コロッケとチョコレートは、さすがに合わないと思うんだけど。
何とも言えずそのチョコレートを眺めていたあたしを覗き込むように、
彼女が低い姿勢で、上目遣いにこっちを見てくる。
「………」
「………」
「…た、食べる」
「よかったぁ」
はい、と手渡されるお菓子。
ポケットに入れてたって、溶けてないよね。
「ジュースも用意しちょるよ」
「え」
「はい、トマトジュース」
缶かと思ったらペットボトルだった。
あっちは軽々と渡してくるけど、受け取ったときのずっしりとした重みに
思わずあたしはよろけてしまう。
- 128 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時40分46秒
- そして彼女はニコニコとあたしを見てた。
「…これ全部、残ったもの?」
「ううん」
首を横に振る。
そして鞄を取り出し、その中から袋を取り出した。
「あとお煎餅も」
どさっと机の上にその袋が乗せられる。
それだけじゃなかった。
「佃煮も」
「キムチとか」
「ご飯はどこだったかな」
「林檎のうさぎ」
「イナゴ」
「砂糖」
「唐辛子」
「ダンベル」
「鼈甲飴」
「フラフープ」
「ピンクパンサー」
「氷山」
「スルメ」
「たこわさび」
「フレンチトースト」
「山口名物の」
「ストップ」
彼女の口を無理矢理手で塞ぐ。
バタバタとその手から逃れようともがいてはいるけど、
あたしも荷物を両手いっぱいに抱えながら、懸命に押さえつける。
- 129 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時41分20秒
- 「さすがにこがん食べられんて」
「もごもご」
「大体こんなに買うたら食べ切れんって何でわからんと!」
「もごもご」
手を離す。
ぷはっと息を吸い込んで、彼女は小さく呟いた。
「欲しかったんだもん」
「欲しいからって買いすぎ!」
「そねーなこた、ありませんにーの」
「いきなり山口弁に戻らんでくれんね!」
「そっちだって長崎弁を…」
「福岡!」
力いっぱい突っ込むと、また彼女は笑う。
「だって欲しかったんだもん」
「だから…もう、いいよ。ったく」
どう言っても彼女は顔色一つ変えずに笑うだけだ。
とたんに力が抜けて、どうでもよくなった。
いくら叫んでも目の前の残り物は減らないわけだし。
- 130 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時42分08秒
- 「…仕方ないからスタッフさんにでも分ける?」
「えー」
さり気なく食べ物の中に混じってたダンベルを持ち上げ、
腕の運動をしながらそう提案するけど、彼女は不満そうに声をあげる。
「そういう賄賂みたいなことやったら捕ま」
「それぐらいで捕まったら大変だから」
突拍子もないことを考える彼女には少し慣れた。
「これ以上買わないようにね」
「うん。もう手に入ったし」
「あ、そ」
満足したってことかな。
とにかくスタッフさんを呼ぼう部屋のドアの方へ歩きかけると、
彼女が不意に腕を絡ませて、一緒についてきた。
「…何?」
「ううん、なんでもない」
ふるふると首を振りながら、彼女はよりいっそう身体を寄せる。
何なんだろう。
不思議に思いながらもあたしは気にせずドアを開ける。
「…手に入ったんだよね、多分」
「………?」
なんでもないって笑いながら、彼女はあたしの腕を引っ張った。
- 131 名前:あれもこれもそれも君も。 投稿日:2003年01月26日(日)18時42分46秒
- 『END』
- 132 名前:無意味におがこん。 投稿日:2003年01月26日(日)19時07分25秒
- ・白い花。
「雪だね」
窓に張り付いて、彼女はそう呟く。
小さい子供みたいにはしゃいでる様子が可愛い。
デヘヘと笑いながら、上からふる白い花をボーっと眺めてる。
「雪だね」
私もそう言い返す。
読んでいた本から目を上げて、一緒に窓の外を眺めた。
最初は埃みたいに小さくて、ふわふわしていたその雪も、
いつのまにか大きいボタン雪に変わっていた。
部屋の中はファンヒーターの熱でとても暖かい。
逆に外はすごく寒そうだ。外と中の温度差で窓に水滴がついている。
「寒そうだね」
窓に張り付いて、彼女はそう呟く。
「…でも、暖かいよね」
私は少しだけ身体を彼女の方に寄せて目を閉じて、そう言い返す。
「うん」
嬉しそうに笑顔を浮かべて彼女もそう頷く。
白い花は、今も降り続けていた。
- 133 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月26日(日)19時09分21秒
- とゆーわけで今回も相変わらずのダメ文れした。
本調子がまだ取り戻せなーい。
>>124 名無し読者さん
ありがとうございます。
おがこんも好きなんですが、たかこんもそれなりに気に入ってたりします。
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)22時43分25秒
- うっわー。道重×田中、すげー萌える…(眩暈
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月27日(月)02時45分39秒
- 最初は歌すご〜って思ってたけど
オーディションの番組見直して道重気になりだしたら…
萌え…(w
田中も色々噂聞きますけどいいっすね〜♪
- 136 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時42分27秒
- 「ということでー、田中と道重と藤本。よろしく」
「一緒なのれす」
「あーあ…矢口さぁん…」
「………」
リーダーである飯田の言葉を筆頭に、6期以前の娘メンバーが形式的に挨拶をする。
まあ少なからずその挨拶に加わっていないメンバーもいるようだが。
「うん、これからよろしくね」
「…よろしくお願いします」
「センター目指して頑張ります」
藤本は好意的な笑顔を浮かべながら挨拶を交わすが、
田中は緊張しているせいか加護がいないせいか、何となく雰囲気が暗い。
道重は相変わらず的外れな言葉を発していた。
飯田はそんな6期の様子を見て、リーダーらしく一番に口を開く。
- 137 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時43分27秒
- 「まあお互い固くならずフレンドリーに行こうね。
これからは、同じメンバーとして活動するわけだし」
そんな飯田の言葉で少し緊張の糸を緩めたらしい田中が少し笑った。
隣の道重がその様子に気付いて、嬉しそうに彼女の袖を引っ張ってちょっかいを出す。
藤本はそんな2人を宥めながらも、やはり一緒になってはしゃいでいた。
「…何だかいいグループになりそう」
「そうれすね。らって、いいらさんがリーダーなんれすから」
「あ、辻もそう思う?だよね。カオリがリーダーなんだもん、
豚が引き連れた家畜の群れなんかに負けるわけないもんね!それに大体さぁ…」
自分に酔ったリーダーはそのままその豚さんへの不平不満を愚痴り始め、
自分の良さを理解しないつんくへの罵詈讒謗を連発しながら、今度は何故か
日本経済についての説教モードに切り変わる。
そのまま隣にいた辻は、予め用意していた耳栓を耳に詰め込んだ。
「はぁ…」
そんな状況をまったく無視している彼女たちは、同時に溜め息をつく。
- 138 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時44分09秒
- 「矢口さん、よっすぃーに襲われてませんよね?ましてや不倫なんて…
ヒ、ヒドイ!私というものがありながら、ありながらっ…そんな河豚と亀を…!」
「…あさ美ちゃん…みんな……なんであたしだけ…」
そして片方は怒りに燃え、残りの片方はへたれもいいとこに泣き出す。
「魚といい河豚といい、ついには亀まで加えて…矢口さんってば海鮮物好き?
石川はダメですか?海や川のものじゃなくて川そのものだからいけないんですか?」
「あさ美ちゃん…ぐすっ……」
あ、河豚よりまず禿がいたじゃん!などと叫びながら壁に拳を繰り出す
歌姫こと石川は、へたれな小川の腕を掴んだ。
「小川!あのふ…紺野の首に輪っかつけちゃいなさい!」
「く、首輪…?」
「ほら、そうと決まったらさっさと隣のさくら組の楽屋に行くわよ!
矢口さんが危ないんだから!」
「首輪……鎖…首に…繋いで…」
何故か顔を真っ赤にしている小川の襟首を掴み、
石川はさっさとおとめ組の部屋から出ようと足を一歩踏み出す。
しかしそこで簡単に抜け出させてくれるような飯田ではなかった。
辻のチクリによって現実に戻ってきた彼女は、石川の前に立ちはだかる。
- 139 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時44分43秒
- 「まだミーティングは終わってないわよ、石川」
「顔合わせならもうすんだじゃないですか。そこ、どいてくださいよぉ」
「リーダーとしてそんな我が侭は却下」
「なんでですか!独り者が邪魔しないでください!」
「ひっ…独り者…」
実際娘。の中でも一人寂しいメンバーはもちろんいる。
しかし一人なのがどちらかというと当然な状況でも、こんな言葉を言われたら、
普通ショックを受けるものだろう。
例に漏れず飯田の心にもその言葉が矢となって突き刺さる。
「………」
「しっかりしてくらさい、いいらさん!チャーミーろときに負けていいんれすか!」
「ちょ、ちょっとのの。チャーミーごときにって…」
すっかり悪者役に仕立て上げられた石川は、ショッカー辺りの係に無理やり
当てられるんであろう小川を辻のほうを押し出す。
「仕方ないわ、小川!紺野とのめぐりめぐる2人だけのラブラブタイムを
手にいれるために、まずはこいつらを蹴散らしておしまい!」
結構悪役やる気マンマンな石川に押されるがまま、小川は辻の前に立つ。
- 140 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時45分46秒
- 「ら、らぶらぶたいむ?」
「首輪!鎖!2人きりの時間と言えば!」
「………」
肩越しに聞こえてくるボスの声。
数秒考えたのち、小川は顔を真っ直ぐ辻へと向けた。
「…小川、頑張りまぐふっ!」
台詞もそこそこに、ショッカーは雑魚キャラらしくその場に倒れる。
そんな哀れな小川を踏み越えて飯田は辻を抱き締める。
「そうよ、辻がいたじゃない…ねえ、のの。カオリとさ、昔のように二人仲良く…」
「ののにはあいぼんがいるのれ、この手をさっさとはなせでんぱやろうなのれす」
小川も小川だが、結構リーダーも哀れだ。
「てゆーか飯田さん…小川を椅子で殴って…」
崩れ落ちた飯田は石川の言葉など聞こえないのか、ぶつぶつと、
メガネ○ラッグの桃太郎を例にこれからの日本経済について語り始めた。
「…なんか、少し可哀想…」
その可哀想な状況に追い込んだ決定的な言葉を、一番最初に吐いた
その敵方ボスが彼女を見下ろす。
- 141 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時46分28秒
- 「きっとそのうちいい人があらわれるのれす。気をおとしちゃ、らめれすよ」
ぽんぽんと飯田の肩を叩く辻。
その様子を眺めていた石川が不意に手を叩いた。
「そうだ!6期があいてるじゃない!」
「! いい所に目をつけたれすね、梨華ちゃん!」
そして2人同時に6期の3人の方を振り向いた。
もちろんあんな大声で会話されていた話を聞いていないわけはなく、
彼女たちは三者三様な反応を返した。
「あたし、亜弥ちゃんがいるんで」
「…加護さん…」
「あのぉ、ミーティングっていつまで続くんですか?」
その言葉から一応藤本は対象から外れる。
とりあえず辻は、聞き捨てならなそうな名前をつぶやいた田中に目標を定めた。
「れいなちゃん」
「…あ、はい?」
憧れだった先輩がそんな人だったなんて、とショックを受けていただけなのだが、
田中が加護に特別な感情を抱いているのだと勝手に決めつけた辻は、
この厄介な問題を彼女に押しつけようと目論む。
- 142 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時47分06秒
- 「いいらさんのこと、ろーおもうんれすか」
「どうって…」
「きらい?」
「い、いや」
「すきなんれすね!」
ぱあっと花が咲いたように笑顔を浮かべる子悪魔、辻。
田中の手を引いて無理やり飯田のとなりに座らせようとするそんな彼女の手を、
唯一止める人物がいた。
「………」
「………」
「…なんれすか、さゆみちゃん」
健気にぎゅっと田中の着ているシャツの裾を掴み、
彼女を行かせまいという気持ちを全身から出して、道重は辻を見つめている。
「ダメです」
「なんれれすか」
「何でとかじゃなく、ダメなんです」
「だからなんれで…」
「ダメだっていっちょるやろがー!!」
訛りは時として言葉以上に相手を恐がらせる。
- 143 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時47分36秒
- 「ごっ…ごめんなさい…」
田中の腕から手を離して、辻は怯えたような声でそう呟いた。
そんな彼女を気にせず道重は田中を引っ張って元の位置に戻る。
「せやない?いとぉない?」
「…あ、いや、大丈夫だけど…」
「よかったぁ」
可愛い笑顔を浮かべる道重を見て、田中は引きつったような笑顔を浮かべ返す。
何だろう。
この光景をどこか前で見たような気がすると、石川は遠い記憶を思い返す。
「…あ、そうか」
足もとで転がる小川が小さくあさ美ちゃーんと呟いたような気がした。
「で」
「うん?」
今まで黙っていた藤本がふと口を開く。
その言葉をちゃんと聞いていたのは、珍しくも石川、ただ一人だ。
- 144 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時48分17秒
- 「…どうすんの?この後」
「とりあえず亀井が空いてるかどうか調べないとね」
「そうじゃなくて」
思わずそう突っ込むが、石川はもう既に聞いちゃいない。
「そうだ!こんなことしてる場合じゃないわ、矢口さんの所に行かないと…」
小川の脇腹を華麗に蹴りあげる石川。
うっと呻きながら、蹴られた箇所を押えながら彼女も起き上がる。
「あれ…ロウソクは…」
「何言ってんの小川。妄想は後にして、さっさと実行しに行くわよ!」
「…は、はいっ!」
そう言ってそのまま2人は部屋を出て行く。
さっきはそれを止めた飯田は相変わらず今の経済について
何やら意見を述べている様子だったが、藤本には少し理解できない
範囲にまで行ってしまっている。
「らいたい、なんれののらあんなこうはいろときに…」
辻はその横で悪態をついていた。
- 145 名前:おとめぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時48分47秒
- 道重はさっきと変わらず、何やら山口弁全開で
必死に田中へ話しかけている。
話しかてる方は満面の笑みなのに、何故話しかけられている
当の本人は顔を引きつらせたままなのだろうか。
まあそんなことはともかく。
既にミーティングとかやれる状況じゃないことは理解できたので、
1人普通な藤本は天井を仰ぐように上を向く。
(…こっちが先に崩壊するな)
彼女の頭に、そんな言葉がよぎった。
■おわり■
- 146 名前:そのころのさくらぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時49分36秒
- 亀井は途方に暮れていた。
「…梨華ちゃん、大丈夫かなぁ…」
「だいじょーぶっしょ。あ、これ美味しい。
食べないんなら矢口のぶんももらうべ」
返事を返す前から矢口の前にあったお菓子を横取りする安倍。
「よっすぃーは今日も相変わらず大きいなあ。
ウチもそのくらいデカなりたいわ」
「あはは、何言ってるんだいベイベー。
君のその整えられたヘアーの方が羨ましいよ」
「そーやな。自分もワックス要らずでまとまる髪になってみーや」
「ははは。あいぼんも屋上から落ちた人を無事受けとめられる
クッション役にでも挑戦してみなよ」
水面下で激化していく加護吉澤の口喧嘩。
- 147 名前:そのころのさくらぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時50分19秒
- 「はあ…まこっちゃん、何してるかなあ…」
「ミーティング」
「………」
「………」
「…愛ちゃん、どこに行くの?」
「麻琴が寂しがってないか見に行ってくる」
「………」
「………」
お互いがお互いを押さえ込んでいるため、
愛しい小川の元へ向かえない紺野と高橋。
「…はあ」
自分はこの中で無事やっていけるんだろうか。
亀井はそう自分自身に問いかける。
同期の3人とは組分けが別になってしまったし、何より
その中の道重と離れてしまったことが一番堪えた。
- 148 名前:そのころのさくらぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時50分55秒
- (…今頃、みんなと仲良く話してるのかな)
彼女の心地良いぐらいの山口訛り。今きっと、
他の誰よりもそんな道重の声を聞きたいのは自分だ。
もう一度ため息を付いた所でふと声をかけられた。
「…亀井、さん?」
「え?」
1人だけ静かに窓の外を眺めていた人物。新垣だ。
「ね。絵里ちゃんて呼んでいい?」
「あ…ど、どうぞ…」
「可愛い名前なんだね。ラヴラヴ」
最後はよく分からなかったけれど、このメンバーの中でも
まだ比較的まともそうだ。年齢も近いし、もしかしたら
仲良くなれるかも知れないと淡い期待を抱いた亀井は、
できるだけ好意的な笑顔を浮かべた。
「私は里沙で良いからね」
「…でも…」
「遠慮はいらないよ。ジュマペール」
最後はやっぱりよく分からなかったけれど、
彼女が良い人だと言うことはなんとなくわかった。
- 149 名前:そのころのさくらぐみなひとびと。 投稿日:2003年01月29日(水)02時51分46秒
- 「これからよろしくね、里沙ちゃん」
「あ…はい、り…新垣先輩」
「徐々に慣れて行ってね」
やはり口に出して言えない。そんな亀井を、新垣は笑いながら
慰めてくれる。
(…良い人なんだなぁ…)
新垣なら、良い友達になれそうだ。
そう思いながら亀井は笑顔を浮かべる。
その時新垣の目が光ったことを亀井は知らない。
そう。小川にフラれ続けている新垣が、
もうすでにこの時点で自分を獲物としてロックオンしていたことを、
彼女はまだ知る由もなかったのだった。
■続かない。■
- 150 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月29日(水)02時57分19秒
- 最近スレ名に反して小川主役物が少なくなって来てることに
反省しきりな作者です。
ちなみにあの組分け、オイラ的には最悪でした。まる。
>>134 名無し読者さん
めまいを起こすほど萌えて頂けたようで。
ありがとうございます。
>>135 名無し読者さん
道重の歌は天才並ですね。オイラも人のことは言えませんが!
自分は6期の中で強いて言えば、田中道重コンビで好きになれそうです。
今日はあと1つ。短篇載せて更新を終ろうと思います。
おがこんじゃなくてごめんなさい(銃声。
- 151 名前:無意味にれなさみ 投稿日:2003年01月29日(水)02時58分24秒
・愛のボタンを連打!連打!
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたったたーん
かたっかたっかたっかたっ
「妙にリズミカルなインターホンの鳴らし方はやめて…」
「あ、おはようございましたぁ」
普通山口県民でも違和感を感じる挨拶を軽やかに行いながら、
道重は、開いたドアの中に入る。
- 152 名前:無意味にれなさみ 投稿日:2003年01月29日(水)02時59分45秒
- 「って、ちょっ…勝手にうちに入るなー!」
「今何しょーるん?」
人の話は無視。
そんな道重の態度に困りながら、とりあえず田中は
ドアを閉めようと必死に力をこめる。
「何って宿題だけどっ…」
「おー、てごーするよ」
「てご…て…手伝うってこと?」
「うん」
が、そんな努力も虚しく、この身体のどこから出るのか、
道重は簡単にそのドアを開け放った。
「い、良いから。別に手伝わなくて良いから…」
「はよ直してお買い物行こ」
「勝手に予定まで決めんなよ!…って、人の話を聞いて…」
すでにスリッパにはきかえて、2階の部屋へあがっていく道重の背中を見て、
彼女は深いため息を付いた。
(…不法侵入罪で警察呼ぼうかな)
本気でそんなことを思ったとか、思わなかったとか。
■おわり■
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)03時42分30秒
- 分割ネタ書くの早すぎッ! ごちそうさまですた(合掌
- 154 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)04時19分14秒
- うおぉぉーー!CPのてんこ盛りだ!!
こういう、ごった煮みたいな話大好きです。
今までの話の中でもかなり好きな方です。
6期メンカプの開拓者としてこれからも頑張って下さい(w
- 155 名前:無意味にれなさみ 投稿日:2003年01月30日(木)22時51分39秒
・写真コレクター。
「携帯の使い方がわからん」
「ふーん」
「これ、どねーなっちょるん?レンズっぽいし…」
「え…カメラでしょ」
「携帯にカメラ?何で?」
「何でって、そりゃ写真を撮るのに…」
「しゃ、写真?」
「うん。山口じゃメジャーじゃないと?」
「あー。山口県民を馬鹿にしちょる」
「ち、ちがっ…ほ、ほら。このボタン押すと…」
パシャッ
「…わぁ」
パシャッ
「まぶしー」
パシャッ
「撮る、撮らせて。どれ押すん?」
「ここ」
パシャッ
「撮れた?」
「いや、あたしに聞かれても…」
- 156 名前:無意味にれなさみ 投稿日:2003年01月30日(木)22時52分45秒
- パシャッ
「すごいすごい」
パシャッ
「うわぁ、ぶちええっちゃー」
パシャッ
「…何でさっきからあたしのことばっかり写してんの?」
「気にせんで」
パシャッ
「いや、気になるから…」
パシャッ
「ちょっと…」
パシャッ
「………」
パシャッ
「はぁ、容量がいっぱいになった」
「全部保存してんの!?」
「えーと、私のは消してー…」
「私のって、あたしが撮ったやつ?今のを消せ!全部!」
- 157 名前:無意味にれなさみ 投稿日:2003年01月30日(木)22時53分46秒
- パシャッ
「笑って笑って」
「って、いきなりそう言われてもできな」
パシャッ
「人の話を最後ま」
パシャッ
「………」
「いっぱいいっぱい」
「なに嬉しそうな顔してんの…」
「保護かけよう」
「かけんなよ!」
「えへへ」
「………」
【そしてとくに落ちもなくEND】
- 158 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月30日(木)22時54分19秒
- 眠い頭で浮かんで来たネタを簡単にまとめてうp。ごめん、手抜きで。
相変わらずダメダメな内容ですが、軽く流しちゃってください。
>>153 名無し読者さん
朝のメルマガやテレビなどで分割の話を聞いて、
ふっと頭に浮かんだネタを携帯でまとめてさっさと完成させました(w
>>154 名無し読者さん
CPだらけです。もう、自分の趣味に走りました。
もともと登場人物を何人も増やしてしまうと、キャラをうまく
使え切れなかったりするので無意識のうちに避けていたんですが…。
いつも2人きり物っていうのもあれですし、ネタがネタなので
今回は敢えてみんなを出してみました。保田さんはいませんけど。
6期メンCP、頑張ります。れなさみ!れなさみ!
- 159 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年01月30日(木)22時55分30秒
- >>149 訂正です。
「これからよろしくね、里沙ちゃん」
→「これからよろしくね、絵里ちゃん」です。
他にも誤字脱字もありましたけど、気にしないでくらさい。
やっぱりゆっくり時間がある時に見直さないとダメだなあ…。
- 160 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月30日(木)23時18分27秒
- オチが無いから素晴らしい。
オチがついてしまったらそこで物語が終わってしまう!
そうさオチなんか無くても良いんだ!ね?(自分に向けて暴走中)
もう完全に道重を掴んでいますね。
石川さん紺野さん推しの自分は有無を言わさずオーディションで彼女を応援していたんですが
いざ受かってみるとこの二人から乗り換えたくなるぐらいのオーラを放っているので
なぜか色々な意味で勝手にかなり危機感を抱いています。
この話を読んで6期メン推しが増えていくのだろうか…。自分を含め。
小川さんの誕生日を読んで5期メンが好きになった自分は少し複雑な気分です。
- 161 名前:無意味にあやみき。 投稿日:2003年02月01日(土)22時47分30秒
- ・セクシー∨キュート
「セクシーなの?キュートなの?」
「何が?」
「シャンプー」
「あー、CMの?あの亜弥ちゃん可愛いよね」
「やだもー可愛いのはいつものこと…じゃなくて、みきたんはどっちが好きなの?」
「何が?」
「いやだから、セクシーかキュートか…」
「亜弥ちゃんが好きだよ」
「それは当たり前…じゃなくて!シャンプーの!」
「あー。セクシーの亜弥ちゃんはちょっと髪が長くて好きだけど、
キュートの亜弥ちゃんも良いし、どっちも捨てがたいかなぁ」
「みきたんってば欲張りなんだからぁ…って違うよCMじゃなくて!」
「普段の亜弥ちゃんはセクシーかキュートかってこと?」
「全然違う!わざとやってるでしょみきたん!」
- 162 名前:無意味にあやみき。 投稿日:2003年02月01日(土)22時48分13秒
- 「いや、理解できてないだけなんだけど…」
「セクシーが似合うのかキュートが似合うのかどっちかっていうことと、
みきたんならどっちが好きなのかってこと!」
「それなら最初からそう言ってよ〜。そうだねー、んー、でも、
亜弥ちゃんは今のままで十分可愛いし、色っぽいと思うよ」
「…え…」
「セクシーとかキュートとかどうでもいいよ。亜弥ちゃんが大好き」
「………」
「あ。あたし先にお風呂入るねー。
セクシーの方使おうっと。これ使わせてもらうからー」
「…うん」
【またオチもなく(ry】
- 163 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年02月01日(土)22時50分02秒
- 今日は書いていた小説が全てパーになってしまったので、
簡単なものになってしまいましたとさ。∬つ▽`;∬
どうでもいいですが、初あやみき。
>>160 名無し読者さん
まあ、話によっては落ちがない方がいいと思う場合もあるとは思いますけれど。
掴んだといってもまだ6期はキャラがわからないので、あくまでこれは仮です(w
自分は6期メンというよりCPヲタなので、れなさみだけは推して行こうと思います。
とりあえず、スレ名に応じた小川主役ものとかでもを書こうとネタを考え中なので、
複雑な気分を振り払って期待せずお待ち下さい。
明日辺りまた更新しようと思います。
相変わらずのダメ文ですので、やっぱり期待せず(ry
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月01日(土)23時41分55秒
- すごいなぁ。
書いたらすぐ更新ですか。
オチが無くてもセクシー&キュートだから大丈夫!(ワケワカメ
- 165 名前:無意味にあやみき。 投稿日:2003年02月02日(日)20時18分21秒
・通過の多い駅。
「次の電車は20分後だって〜」
「え、マジ?」
あたしがのんびりと登る階段へ、一足先にホームに着いた彼女が振り返る。
逆光の眩しさに目を細めながらあたしは顔をあげた。
「どうする?バスに乗ってく?」
「ヤダ」
気を利かせてそう言ってみるけれど、彼女は首を横に振った。
「…っそ」
最後の一段へゆっくり足をかける。
なのに彼女が早く早くってせかすように腕を引っ張って、
半ば引き上げられるような状態でホームへ出た。
冷たい風が吹き付ける。
がらんとしたそのホームは、太陽の光が照っていると言うのに
全然暖かみを感じない。
むしろペンキのはげた柱がより一層寂しさを感じさせてしまう。
仮にもここは東京都のとある駅。
それなのに次の電車の待ち時間のあの長さといい、駅の寂れぐらいといい、
一体何なんだろう。
- 166 名前:無意味にあやみき。 投稿日:2003年02月02日(日)20時19分05秒
- 適当な場所で腰を降ろした。
ダッフルコートがうまい具合にクッションになったと言うか、
とにかく冷たい椅子へ肌を直にくっつけるという目には合わなかった。
「まだまだ時間あるね」
「だね」
あたしは隣で次の電車を告げる電光掲示板を眺める彼女を、そっと盗み見た。
「…? どしたの、みきたん」
「…い、いや、何でもない。何でもないよ」
ふるふると顔を横に振って、視線を下にさげる。
そこにあるのはグレーのコンクリートに黄色いでこぼこな線。
誰もいない無人のホームで二人、ぴったり隣り合ってベンチに座ってる。
(…何してんだろ)
そんな疑問が頭の中をかすめるけれど、それでもあたしは、
決してここから離れたりはしないわけで。
彼女が隣に座っている限り、動けるわけがなくて。
「みきたん、みきたん」
「何さ」
「さむーい」
「うん、寒いねえ」
冷たい風が勝手に着てるコートの中にまで不法進入してくる。
彼女はマフラーをしていたけれど、決して暖かそうとは思えない。
あたしはとりあえず寒さで震える彼女の手を取った。
- 167 名前:無意味にあやみき。 投稿日:2003年02月02日(日)20時20分08秒
- 「なあに?」
「寒いんでしょ」
そのままコートのポケットに手を突っ込む。
「わ。みきたん、あったかい」
「ふふーん。でしょ〜」
カイロを持ってきていて正解だった。
袖の中に隠し持ったオレンジ色の袋で自分の手を暖めて、
その手で彼女の凍えた手を握る。
「熱い熱い、なんで?」
「なんでだろうね」
ぎゅっと強く握ってくるその手の甲を優しく撫で返す。
「あ、わかった。みきたんはおバカさんだから体温が高いんだ」
「ちげーよ!それは亜弥ちゃんでしょ!」
「みきたんよりはまともだもん」
生意気な口を聞きながらも彼女は甘えるように擦り寄ってきた。
どんなことを言ってても、その可愛らしい仕草には負けてしまうらしい。
彼女はあたしが着込んでるダッフルコートのボタンをいじり始めた。
「遅いね」
「まだ5分も経ってないじゃん」
「そっかあ」
肩に頭を乗せられるように少し体制を変えてやると、ごく自然に彼女がもたれかかる。
風が少し強く吹いたけど、これなら二人がお互いを暖め合ってるようで、
あまり寒くはなかった。
- 168 名前:無意味にあやみき。 投稿日:2003年02月02日(日)20時20分43秒
- 「寝るなよー」
「………」
「はや!」
冗談かと思って大声で突っ込んでみたけれど彼女は反応しない。
まさかと思って横顔を覗いてみたら、本当に眠っていた。
「………」
「…すー…」
「………」
動けない。
こんな可愛い寝顔で眠っている亜弥ちゃんを起こせるわけがない。
(どうすればいいんだろ…)
あと数十分で起きるとは限らないだろう。
もしかしたらこのまま、電車が来ても眠っているのかもしれない。
「…ま、いっか」
そのときは次のに乗ればいいんだし。
2人寄り添ってれば、寒くないもんね。
あたしはもっと彼女の方にくっついて、同じように目を閉じた。
【えんど】
- 169 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年02月02日(日)20時25分33秒
- またあやみきでした。
ハロモニの新コーナー、ちょっとツボです(w
>>164 名無し読者さん
勢いで書き上げてすぐにあげてしまう方でして ∬´▽`;∬
- 170 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)01時56分10秒
- デートで見る定番の映画と言えば、やっぱりラブロマンスだ。
そう。できれば主人公とヒロインの泣ける、だけど最後は幸せになるそんな話。
ドラマチックな展開に思わず涙ぐむ私。
それを慰めるように、隣で手を繋いでくれる彼女。
普通の恋愛とはどこか違う私たちの関係よりも、もっと不思議で、
淡い色のドラマを見よう。
甘い砂糖菓子みたいなムードに酔う私たちを、周りの人はどう見るんだろうね。
恋人には見えない2人。
だけど友達じゃない2人。
周りの人は、どう見るんだろうね。
- 171 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)01時58分20秒
- ―――………。
『何をするんだウェルシュ菌マン!!』
『野菜如きがオラの邪魔をすんでねぇ!!それ以上近づくな、
このお姫さまがどーなってもいいんべか!!』
姫と称した見た目フライパンな彼女は、泣きそうな顔で主人公達を見る。
『おまいらこっちきたらコロヌ!!』
『あ、暴れるなこのフライパン!オラを噛むでねえー!』
悪役の腕の中でじっとしているだけかと思われたお姫様は、
そう叫びながら果敢にも悪役に噛み付いた。
フライパンなのに噛み付くとはこれいかに。
どちらかというと悪役のウェルシュ菌マンの方が弱そうだった。
『…仕方ない!行こう、ほうれん草マン、にんじんマン!
今こそ我らベータカロチンズが手を組んで、ウェルシュ菌マンを倒すときだ!
この世界のために命を散らすフライパン姫のためにも!!』
『逝ってよし!!おまいら全員逝ってよし!!』
姫の悲痛な声を聞いてベータカロチンズと名乗る野菜3体、つまり、
かぼちゃとほうれん草とにんじん達は、同時にウェルシュ菌マンの方へと走り出した。
- 172 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時00分04秒
- 「頑張れかぼちゃマーン!!」
ついに耐え切れなくなったのか彼女が大声で叫ぶ。
あくまでこれはほうれん草が主役の話だったはずなのだが、
彼女はどうやらその脇役の方を気に入ってしまったようだ。
まあ主役ばりに決め台詞を発したかぼちゃは偶然にも彼女の大好物。
叫びたくなるのもわかるけれど、少しは周りの目を気にして欲しかった。
どうでもいいけれどウェルシュ菌と言うのはイコール悪玉菌のことで、
どちらかというと、ベータカロチンよりも食物繊維の方が効果的なはず。
そんなことを考えながら私も、大きなスクリーンに映る色鮮やかな
ヒーロー達の動向を見守った。
『お前なんかうどんと一緒に煮込まれてほうとうになりゃええんだ!!』
いかにも悪者風な衣装に身を包んだウェルシュ菌の台詞が大きく響く。
彼もなかなか通なことを言うものだ。何だかほうとうが食べたくなってきてしまった。
お昼は少し歩いてほうとうを食べに行ってみようかな。
きっと彼女も喜んでくれるだろう。
- 173 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時00分54秒
- 『あぁ、にんじんが…にんじんが切り刻まれて…』
『くそう!ウェルシュ菌マンめ…!!』
『フライパン姫の顔でにんじんのキンピラ作ってやるべー!』
『そんなことやったら本気で焼き入れるぞゴルァ!!』
(…なんだかなぁ…)
ここまで見ておきながらやっと気づく。
何で子供向けのアニメ映画なんて見ているんだろう。
隣をふと見てみると、すごく真剣な顔でスクリーンを見つめる彼女。
手に汗握る攻防戦を間抜けに半分口を開け食い入るように眺めている。
本当だったらここで私がハンカチなんて取り出し、流れる涙を抑え、
彼女に手を握ってもらって良い雰囲気なんてことになっていたはずではないだろうか。
何でベータカロチンズの運命などに一喜一憂なんてしているんだろう。
ほうとうが食べたいとか、なんでお昼御飯のことまで考える暇があるんだろう。
- 174 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時02分24秒
- スクリーンの方では、ついにかぼちゃが悪のウェルシュ菌マンによって
ただの煮物にされてしまっていた。鍋を用意する過程などは見ていなかったので
作り方はわからなかったけど、とにかくウェルシュ菌マンは美味しそうに作り上げる。
はっと気づいて振り向いたときにはもう彼女の顔がすごいことになっていた。
涙をだらだら流しながらぐすぐす鼻を鳴らす。周りの子供も同じだった。
今は感動的場面、らしい。
「かぼちゃ…かぼちゃ…」
ほうれん草の活躍場面は見ないんだね。
溢れ出る涙を堪えきれず、彼女は下を向いてしまった。
一人でも健気にキックを決めている真の主人公を哀れに思いながら、
自分用に用意していたはずのハンカチを、彼女に差し出す。
「あ…ありがとぉ、あさ美ちゃん…ううっ…」
赤のペイズリー柄なハンカチが、少しずつ色を変えていく様を眺めて、
どういたしましてと小さい声で答える。周りの子供達も堪えきれず大声で泣いていた。
ここまで泣いてもらえれば煮物になったかぼちゃマンも悔い無しだろうなぁ。
リアルな話、映画制作会社も泣きながら両手挙げて喜ぶだろうなぁ。
少しだけ夢のないことを考えながら私はスクリーンを見上げる。
- 175 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時03分07秒
- 『…くっ…オラたち村の野望が…野望が…』
『そこまでだウェルシュ菌マン!消えろ!』
素敵な映像で、ついにウェルシュ菌マンは惨殺された。
これは子供向けアニメ映画ではなかったのだろうか。
何でここだけやけにリアルな映像で流すんだろうか。
ある意味私も衝撃を受けながら、彼女の背中を撫でる。
うっうっ、と嗚咽を漏らすたびに上下する背中が、
彼女のその優しさを表してる気がして何だか嬉しくなる。
かぼちゃ如きで泣いてるのかと思うと、情けなさ100倍だけれど。
「まこっちゃん。ほうれん草マンがかぼちゃマンたちの敵を取ったよ」
「…っぐ…ほ、本当…?」
いつの間にか場面が夕方になっていたスクリーンの映像の中で、
ほうれん草が夕日をバックに、フライパンから豪快に殴られる場面が写されていた。
- 176 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時03分45秒
- 「よかったねぇ…よかったよ…かぼちゃマン…」
ぐすぐす言いながら、私と反対の方に座っていた小さな女の子の頭を撫で、
その子と一緒にまた泣き出す。
どうやらその子はかぼちゃのファンらしかった。向こう側に座る親御さんたちが、
私のその連れの様子を見て、何て心優しい子なんだと感銘を受けているようだ。
何かが間違っているような気がする。
「…よかったね」
とりあえず私も彼女たちに合わせておいた。
『ぐふっ…と、とりあえず…色んな犠牲がごふっ…』
いつの間にか瀕死の状態になったほうれん草が吐血している。
フライパンが少々へこんで見えるのは、きっと気のせいじゃない。
『ベータカロチンズによってベジタブル星の平和は守られた!
私達はかぼちゃマン、にんじんマンの勇姿は一生忘れない!!』
が、この後衝撃の事態が!
ナレーターの声に思わずそう続けてしまいそうになった口を手で押さえ、
彼女の背中をもう一度撫でる。
ナレーターの声で締めも終わり、スタッフロールが流れ始めた。
徐々に明るくなっていく館内を目を細めながら見回すと、
涙でぐしゃぐしゃになった顔で今だ何かを叫び続ける子供が結構いる。
- 177 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時04分47秒
- 「…込まないうちに出よっか」
「ううっ…」
ハンカチがすでに絞れるぐらい色が変わっていた。
仕方なく彼女の手を引っ張って、反対側に座る子と親御さんに軽く挨拶をしながら、
出口へと向かう。
私たち以外には誰一人席を立とうとする人間はいなかったので、さっさと出られた。
まるでコンサートの余韻を味わうファンの人たちのようだ。
そんなことを思いながら、広いロビーへと出る。
「お昼どうしよっか」
「………」
「…? まこっちゃん?」
振り向くと、彼女がまだぐずぐず言っていた。
「………」
「かぼちゃ…ぐすっ…」
「…あ、あのね、お昼はほうとう放蕩を食べたいなーって…」
「ほうとう…うどん…」
食べ物の話をすれば少しは効果があるかもしれない。
そう思って階段を下りながらお昼ご飯についての話題を出してみるけれど、
彼女は泣きそうな顔を変えずにぽつりと呟く。
「かぼちゃ…」
「………」
「………」
「………」
フォローのしようがなかった。
- 178 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時05分49秒
- どうしようもなく食べたかったほうとうは仕方がないので諦め、
そこら辺のファーストフードで済ませようかと頭を悩ませながら映画館を出る。
ふと上空を見上げると、映画の広告が何枚も貼ってあった。
感動のラブロマンス。
爆笑のギャグアクション。
恐怖のホラー。
色々なジャンルの映画がここでは放映されていると言うのに、
何が悲しくて、私は子供用のヒーローアクションアニメを見に来たんだろう。
そう思うと段々と腹が立ってきて、あんな感動的な映画を見せてくれた
アニメの広告を睨みつけてしまった。
入る前に、彼女がこれを見たいと言ったときに、文句を言うべきだったんだろうけど。
せっかく2人だけのおでかけなのに。
久しぶりに遊べるオフの日なのに。
秋には、離れ離れになってしまうのに。
「まこっちゃ…」
このどうしようもなく湧き上がった怒りをぶつけたくて、
彼女のほうを振り向いたけれど。
- 179 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時06分52秒
- 「…かぼちゃマン……」
小さな子供みたいに俯いて、瞼を手の甲で押さえて。
一向に泣き止む気配のない彼女の鼻の頭は真っ赤になってるし、
周りの通行者の人たちは何事かと視線を送ってくる。
これじゃまるで私が泣かしたみたいで肩身が狭い。
「…もう」
数歩戻る。
彼女との間を狭めて、すぐそばに寄り添って、顔を覗き込む。
「…いつまで泣いてるの?」
「だって…」
「まこっちゃんの泣き虫」
頬すり寄せ、周りからは気づかれないよう気を配りながら、
乾いた唇でその頬に傷を付けるように軽く擦る。
キスのようで、キスじゃない。中途半端な行為。
私にはこれが精一杯で、今一番の慰め方。
「元気、出た?」
「………」
口をあんぐりと開けたままの彼女から少し離れる。
何だか恥ずかしくなってきた。
今までされることはあっても、自発的にしたことはなかったんだ。
- 180 名前:MOVIE. 投稿日:2003年02月03日(月)02時08分05秒
- くるりと背中を向けて、彼女の手を取り歩き出す。
まだこっちの世界に戻ってきてない彼女は引っ張られるがままついてきた。
最初の計画でならここで泣くのは私で、慰めてくれるのは彼女なのに。
「…でへへ」
照れたように笑ってくれた彼女の笑顔を見たら、
もうそんなことも、どうでもよくなってしまった。
「今度は私が見たいやつ、見せてね」
「うん」
少しだけ鼻をぐずぐず言わせながら頷いてくれる。
怒っていたはずの感情もやっぱり収まっていて、私も笑い返す。
こういう映画もたまにはいいかな。
そんなことを思いながら、今日のお昼御飯を結局ほうとうにするか、
別のものにするならどうするかで頭を悩ませる。
彼女は隣で暢気にベータカロチンズのテーマソングを歌ってる。
どこにでもいる仲のいい2人組みたいな私たちを、周りの人はどう見るんだろうね。
姉妹か何かぐらいにしか、見えないんだろうなぁ。
【END】
- 181 名前:名無しなどっかの作者。 投稿日:2003年02月03日(月)02時29分17秒
- 何だかんだでもう180越えました。スレッド引越し警報です。
今まで読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
思い起こせば10月29日の早朝。ふと思い付いたネタを必死に、
携帯へ打ち込んでいたあの日が昨日のように思い出せます。
(確かに昨日も同じようなことをやっていましたが)
あのときは小川さんなんて本当は別に好きでもなかったなんて、
口が裂けても言えません。今じゃもう大好き好き好きです。キショッ。
とゆーわけで今日で「小川さんの誕生日。」は更新を終わりにしたいと思います。
本スレの方は気長にお待ちください。これで少しは専念できるかと思います(w
そのうち一週間もしないうちに「紺野さんの誕生日。(予定)」スレが
本気で立つと思いますが、その時は生暖かい目で見守ってやってください。
初めて自分で立てたスレが完結して嬉しいなぁという気持ちで
いっぱいいっぱいなんですが、所詮短篇の集まりだったんだから
こんな挨拶しなくても良かったのかなーなんて思っている作者でした。
最後に小川さんありがとう。
今更ながら、誕生日おめでとうございました。
- 182 名前:終わり。 投稿日:2003年02月03日(月)02時30分24秒
- 〆〃ハハ
∬∬´▽`)
(( ⊂ ) ⊃
し(_)
(( 〆〃ハハ
/⌒∬´▽`)
⊂,,)^∪-∪
ずざー。250ゲット。
 ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
〆〃ハハ
⊂' ⌒つ∬´▽`)つ ペタン…
ノハハベ
(´▽`∬∬ ミ
⊂' ⌒∪ ノ ∪ ムクリ
ノハハベ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´▽`∬∬< やったぁ!ついに250ゲットできたよー
( U )) \__________________
(__)\ノ
■小川さんの誕生日。終わり■
- 183 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月03日(月)11時57分55秒
- 完結?お疲れ様です。
前々から紺野さんの事は好きだったんですが
おがこんにはまったのはここを読んでからでした。
これに影響を受けてパクッた事もありました。すいません。
今回の話ではかぼちゃがやられた所でなんらかの反応を示すと思われた
小川さんでしたが、まさか号泣するとは思ってもいませんでした。
さすがking of pumpkin、バンプオブチキンみたいで(o^〜^) カッケー!!
これからも勝手に応援させて頂きます。頑張って下さい。
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月24日(月)20時04分11秒
- 紺野さんの誕生日。は何処に在るのでしょうか?
Converted by dat2html.pl 1.0