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空の手のひらの中

1 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月04日(月)03時32分20秒
というわけで、説明も前置きも下がってから全てをはじめさせて下さい。申し訳ありません。
どうかよろしくお願いします。
2 名前:ななし 投稿日:2002年11月05日(火)11時08分52秒
んあ。sage
3 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)16時53分11秒
なんだろう?
とても気になる前ふりですね…
4 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)19時54分25秒
>3 名無し読者様
本文の前にメール欄の文言を付け加えていただければ少しはよろしいかと。
お手数かけます。

実は「sage走り」という命名の妙について小一時間ほど考えているときに、構想が
出来た、ということがあるはずもなく、某所の「ナース石川企画」というのに触発
されて書きはじめたものです。なので、石川さんはナースな設定です。
でもあちらの秀逸さに寄稿する勇気が持てませんでした。すみません。
意気地梨でごめんなさい。ここでこっそりやらせて下さい。
と、言いつつ、名作集という板の名に恥じる駄作です。
なお、医者には幸い縁がなく、何も考えず書いてます。
熱心なヲタでもないです。だから設定の甘さなど、見逃してください。

巡回してみましたが、待っててもあまり下がりそうにないですね。
立て逃げにならないうちに、始めてしまいたいと思います。
よろしくお願いします。
5 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)19時56分14秒

空の手のひらの中

6 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)19時57分59秒
ポケットの中に何が入ってるんだろう・・・。
先生はいつも白衣のポケットに手を入れて何かを握っている。
診察が終わって、次の患者さんを呼ぶまでの間。
使わない手を、交互に。

事故で右手を骨折しちゃった安倍先生。
整復期間も含めて、復帰まで三ヶ月。
その間ここ小児科は、他の科から応援の医師を募ってしのぐことになった。
「アタシ子ども苦手やねん。よっさん行っといで」
そんな中澤先生の一言で送り出されて来たという、この先生。
応援に来て、今週で三ヶ月。つまりは、最後の週ってこと。
今日は土曜日だから、午前中でこの先生、吉澤先生はお役御免。

中澤先生は照れ屋だから、そんな風に言ったんだろうけど、
吉澤先生の適性を見抜いてのことだったんだと思う。
「なんで小児科選ばなかったんだろう?」
看護婦の誰もがそう噂するほど、先生の評判は良かった。
あ、安倍先生の名誉のために付け加えると、安倍先生の評判も、
とても良い。子どもには絶大な人気を誇っている。
だからこそ、すごいな、って思うんだよね。
7 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)19時59分19秒
とか何とか考えているうちに、先生の最後の患者さんの診察が終わった。
なんか・・・淋しい。いや、安倍先生の復帰は嬉しいんだけど・・・。
お大事にね〜、なんて最後の患者さんを送り出して、しばしぼんやりしていた。

「・・・石川さん」
「えっ、あ、はい」
「三ヶ月間、お世話になりました」
ペコリ、と先生が頭を下げる。
「いろいろフォローしてもらって。おかげで何とか乗り切れました。
ありがとうございました」
「いえ、こちらこそお世話になりました。あの、お疲れ様でした」

う〜ん、なんで私ったら気の利いたセリフのひとつも言えないんだろ・・・。
今日で、今日で最後なのに・・・。
8 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時00分18秒
「あの、石川さんは、今夜お暇じゃないですか?」
え?先生今何て言った?きょんや、いや今夜暇って言ったよね?
「あ、予定、ありますよね。土曜日ですもんね」
「いえ、あの暇です。空いてます空いてます」
何故だか私は動揺していた。
「・・・、もしよかったら、お世話になった御礼に一緒に食事でも、って
思ったんですけど・・・」
伺うように私を見ている先生。
黙って頷くしかできないよほ。
それでも先生はにこっと笑って、「6時でいいですか?」って確かめてから、
待ち合わせ場所を私に伝えた。
何で私、こんなにドキドキしてるんだろう?
女の先生と、ごはん食べに行くだけだよね?
9 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時02分06秒
白衣じゃない先生を見るのは初めてかも。
6時より早めに着くと、先生の姿がすでにあった。
「すいません、お待たせして」
「ううん、全然。お腹、空かせてきてくれた?」
私を待っている間読んでいたらしい文庫本をジーンズの後ろポケットにしまうと、
先生は少しだけ先に立って歩き出した。
「好き嫌いとか、ある?」
「いえ、特にないです」
「そう、よかった」
先生はハーフコートのポケットにやっぱり手を入れて、何かを軽く握っているみたい。
白衣じゃなくてもそうなんだ。何が入ってるんだろう?お守り?
私の半歩前を、先生が歩いてく。病院の廊下とは違うその歩調。
そんな小さなことが、何故か私の足取りを軽くする。
10 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時03分10秒
「ここなんですよ」
立ち止まった先生が道路にはみ出た看板を指差した。
リストランテ・エムって読むのかな。
ちょっと、いやかなりあらたまった感じの店。
病院の近くにこんな店があったのなんて、知らなかった。
知ってても、縁ないと思うけど。
先生は、よく来るのかな?でなかったら連れて来ないよね。
「ここだけの話なんですけど・・・」
先生があたりをはばかるように声を潜めた。
「何ですか?」
「一回も来たことないんですよ。すいません。でもきっと大丈夫だと思うんで」
別にいいけど、ってか大丈夫の根拠は?・・・先生?

すでに扉を押して中へと入りかける先生に、気を取り直してついて行く。
「よっすぃ〜!やっと来てくれたんだぁ!」
華やいだ声の持ち主の女性。金髪。ちっちゃい。
「矢口、ずっと待ってたんだよぉ〜」
ちょっと何でよ〜?
先生の胸に飛び込んだその女性に感じたのは、軽〜いジェラシー?
んなこたぁない。嫉妬する理由なんてない。
自分の感情に名づけようとするのを中断して、私は笑顔を作った。
そう、作った。
11 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時04分50秒
「ちょっと矢口さん、いいんですか、そんな大きな声出して。ほかのお客さんの
スープが波立ちますよ?」
ヤグチさんからさりげなく体を離しながら、先生が言う。
「まだどなたもいらしてませーん」
完全に先生に隠れている小さなヤグチさんが、ひょい、と私を覗く。
作り笑顔の私と目が合う。
「いらっしゃいませ〜」
即座にまた先生に隠れる。
「なになによっすぃ〜、彼女連れ〜?可愛い人じゃん」
小声で先生に言うのが聞こえた。
「何言ってんすか矢口さん。お腹減ってんすよ、二人とも」
「は〜い」
どうぞ、と、店員モードに入ったらしいヤグチさんが、恭しい仕草で私たちを
迎えた。矢口さんの言葉を強く否定しなかった先生に、安堵している私。


クロークに上着を預けると、ヤグチさんが先に立って席へと案内してくれる。
ほんの一瞬だけ先生が私の肩を抱く。
それだけのことで、さっきの笑顔が本物になるのがわかる。
何か、さっきから静か〜に、振り回されてる私。なんで?
12 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時06分16秒
「石川さんは何食べたい?」
「あ・・・先生にお任せします。」
「お酒は?飲める?」
「はい、少しなら」
先生はヤグチさんと相談しながらコースを選択し、ワインを決めた。
場馴れした様子に、私は見惚れた。
「じゃあ、ワインとデザートは矢口からの大サービスってことで。
ゆっくりしてってね〜、よっすぃ〜に、石川さん」
先生と私の顔を交互に見ながら、矢口さんは去って行った。先生に小さく
手を振りながら。
先生が一回だけ呼んだ私の名前を聞き逃していない。
見た目なんかよりずっと優秀な人なんだ。たぶん先生の「大丈夫」の根拠。
13 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時07分31秒
「元患者さんなんですよ、矢口さん。絶対来てね、って何度も言われてて。
でも、連れ、いないと、ひとりじゃねぇ」
同意を求めるように、洗練された店内の調度を見回す。
あまりよく見なかったけれど、さっきのメニューには値段が書いてなかった。
まあ普通、こんな店には、ひとりじゃ来ないよね。
連れがいない、という先生の言葉に安心している私、だから、なんで?
「すいません、つき合わせちゃって」
「よかったんですか?私なんかが相手で」
「石川さん、が、よかったんです。石川さん、と、来たかったんです」
悪戯っ子のような顔で、先生が言う。
「またぁ〜」
勘違い、しちゃうよ、先生。あれ、勘違いってどういうことだろ?
おそらく前菜を運んできたらしい矢口さんが視界に入ってきて、私はとりあえず、
浮かんだ疑問を思考の端に追いやった。

小さな矢口さんのスマートな給仕。
申し分のない料理。目の前で楽しそうに話す先生。
素敵な夜。こんな夜はきっと何度も有りはしない。
回ってくる酔いにまかせて、私は素直に全てを楽しんだ。
14 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時08分27秒
矢口さんに見送られて店を後にする。
空には三日月。頼りない月明かりの下を、並んで歩く。
やっぱり少し先を行く先生のスローテンポが、往く夜を惜しんでるみたい。
それは私の思い過ごしかな。先生の胃に収まったけっこうな量のワインが、
歩みを遅くしているだけなのかな?

私たち職員は全員、病院から徒歩10分圏内に住むように義務付けられている。
何かあったらすぐに駆けつけられる距離。
なので、知ってる人も知らない人も、ご近所さんなことが多い。
私と先生もそんな感じ。わずかに先生の家が病院よりだった。
送ってくれるという先生の好意に甘えて、先生の家を通り越す。
他愛無い話をしながら、公園を横切る。一人の時は通らない帰り道。
「秋も終わるねぇ」
枯葉を踏みしめ歩きながら、先生が呟いた。
なんとなく、今なら聞けそうな気がした。
15 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時09分28秒
「先生」
「ん?」
「先生のポケット、何が入ってるんですか?」
「え?」
「いつも、手を、グーにして入れてるじゃないですか。だから何か・・・」
「ああ、・・・よく見てるんだね」
恥ずかしそうに、先生が立ち止まって私を見た。
「あっためてるだけですよ、手を」
先生がポケットから出した右手を握手の形で差し出して、反射的に私はそれを握った。
先生の手は、明らかに体温以上に暖かい。つないだ手が数回縦に振られ、離れる。
ポケットに手を戻し、先生はまたゆっくり歩き出す。私もついていく。

歩きながら、悪戯が見つかった子どものような顔で、先生が語る。
「病院に来るのは、病気の人ですよね」
「はい」
「誰しも不安なわけですよ」
「はい」
「冷たい手より、あったかい手で触られた方が、少しは安心すると思うんですよ、
患者さん。だから、コレ」
先生は何かを掴んだままの手をポケットから出して、私の目の前で上下させた。
リズミカルに小さな音を立てるそれは、使い捨てカイロ。
未熟者だから、こんなことしか出来ないけど、せめて、ね?
そう言って笑った先生の横顔。
16 名前:第一章 太陽のポケットの中 投稿日:2002年11月05日(火)20時11分05秒
この人が好きだ。私、この人が好きなんだ。
やっと分かった。
先生の診察日だけ、何故だか落ち着かなかった理由。
ほんの少し手が触れただけで、ドキドキした理由。
そしてさっきから、勝手に振り回されている理由。
なんだ、簡単なことだったんだ。
男とか女とか、考えちゃってわかんなくなってた。
いつの間にか立ち止まっていた私を先生が振り返った。
「どうしたの?石川さん?」
少し歩を戻して、心配そうに私を覗き込む愛しい人。
「いえ、なんでもないです。」
大きく首を横に振ったら、先生は安心したみたい。
少しだけ私の背中を押して、また同じテンポで歩き出す。

もう来週から、一緒に仕事することもないんだ・・・。
きっと思いが届くことも、ないだろう。
先生を心に焼き付けておこうと、私はその横顔を盗み見た。
もっと早く気づいてれば、もっと・・・、もっと・・・、辛かったのかな?
17 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)20時12分04秒
更新終了。次回第二章です。
18 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月05日(火)20時27分46秒
>4、17
名前入れないと、読者になってしまうんですね。
次から気をつけます。すみません。
19 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月05日(火)22時49分44秒
凄く素敵です。
20 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時32分56秒
やがて私のアパートが見えてきて、あっという間にその前にたどり着いた。
もう少し、一緒にいたい。まとわりつく名残惜しさを懸命に振り払う。

「ここです。ごちそうになった上に、わざわざ送ってもらって、ありがとう
ございました」
「いや、近いし何も。今日は楽しかった。こっちこそありがとう」
一瞬の沈黙の後、大きく息を吸い込んで、吐き出す音が聞こえた。

「あの、ね、石川さん」
「はい?」
その名のとおりに大きな瞳。視線が落ち着きなくあちこち動いている。
先生はその目を大きく一度閉じた後、まっすぐに私を見つめた。
「その、酒の勢い借りて言うわけじゃないんですけど・・・」
先生の視線が足元に落ちて、ゆっくりと戻ってきた。
「えっと、好き、なんですよ、石川さんのことが。あの、つまり、変な意味で」
「へっ?」
「ごめんなさい、びっくりしたよね。あの、気にしないで。ただ、伝えたかった
だけだから。もう、あんまり会えなくなるし、だから、あの、好きだって、ただ
言っておきたかっただけなんですよ。だから、あの、忘れて下さい」
21 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時34分23秒
・・・先生が。・・・私のことを。・・・好き。・・・変な意味で。
いわゆる両思いだと気づくのに、私は手間取っていたらしい。
固まった私に勘違いした先生が、慌てているのがわかる。
「何をどうしようとか、別に何も思ってないですから。だから今言ったことは
本当に忘れてください。でも、あの、もし嫌じゃなければ、また時々、ご飯、
誘っていいですか?あの、他の人も一緒で」
未だ整理しきれない思考のまま、私は多分曖昧に頷いたんだと思う。

私がアパートのドアの中に消えるまで、先生は手を振っていてくれた。
一人の部屋の中で、冷え込んだ夜だというのに、その部屋を暖めるのさえ忘れて、
私はぼんやり座り込んだ。起きているのか眠っているのか、自分でも分からない。
夢か現か、先生の告白だけが頭をグルグル回っていた。
22 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時36分38秒
どれくらいの時間そうしていたのだろう、寒さに覚醒した私は、出勤までに
残された時間の少なさに、さらにはっきり目を覚ました。
「やばい、遅刻しちゃう!」
ふらつく足元を寝不足のせいにして、滑り込んだナースステーション。
すぐに始まった朝礼。保田主任の声がやけに遠くにぼんやり聞こえる。
ガッシャーン!何かが倒れる音もまた遠くに聞こえて、焦点の合わない視界に
誰かのナースシューズが見えた。・・・倒れたのは私らしい。
音からして、ご丁寧に何かを巻き込んでしまっている。どうしよう・・・。
「ちょっと、石川!しっかりしなさい!すいませ〜ん、安倍先生!」
「なした?」

ありゃこら、・・っごい熱だわ、どっか寝かすとこない?内科受診させたほうが
・・・裕ちゃんに連絡・・・

寝不足でフラフラしてたんじゃなかったんだな・・・。
あ〜、そういえば昨日の夜すごく寒かった。
熱出すって、こんな感じだったな。この仕事に就いてから、そういえば病気って
してないや・・・。
23 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時39分37秒
霞む視界は一面、見慣れない天井。
どうやら私は空いている当直室に運んでもらったみたい。
静かにドアを開けて入ってくる人の気配がした。
中澤先生かな?だったら医者離れした金髪がもうすぐみえるはず。
なのに真っ先にぼんやりした視界に映ったのは、ふくらんだ白衣のポケット。
あ・・・、よっすぃ〜。
回らない頭で、矢口さんを真似て私は先生を認識した。
「倒れたの、石川さん、だったんだ?」
先生の手が私の額に触れる。暖められているはずの手の温もりを、あまり感じない。
「もしかして、昨日から辛かったの?ごめんね、無理に誘ったりして」
違うんです・・・、私が悪・・・と声にするまもなく抱き起こされた。
ナース服の、背中のファスナーが下ろされる。
24 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時40分24秒
え、え、ちょ、先生?!心臓が、必要以上に暴れまわっていた。
はだけた背中の隙間から聴診器の入り込む気配がして、私は悟った。
そっか、診察・・・。
けれど、まだまだ飛び跳ねつづけている私の心臓。
先生の聴診器が不審がっているのがわかる。
私の前に回った先生は、医者の顔。
「ちょっとごめんね」
左胸に聴診器が届くまでだけ服を下ろして、今度は前から私の鼓動を確かめる。
早いでしょ。だってドキドキしてるもん。
服を直して、今度は脈を取る。それも早いでしょ、先生。だって・・・。
25 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時41分24秒
熱に浮かされた私は思った。きっとこれは夢だと。だから、言える。
「先生。先生が触ってるから、だからだよ」
「え?何?」
私の小さな声を聞き取ろうと、先生の耳が私の唇に近づいてくる。
「先生が好きだから、だから、ドキドキしてるんだよ」
狼狽した、昨日の別れ際と同じ先生の顔が、私を見つめていた。
熱で乾いた唇で私は、先生のそれに触れた。
「先生、ギュッてして」
ためらいがちにそうしてくれた先生の腕の中で、やっと私の心臓が静かに脈打つ。
「ほら、ね?」
再び脈をとり、うなずいて私を寝かせると、先生は内線電話に向かった。
その背中を見つめて、電話の相手に指示を出す声を聞きながら、私はいつしか
深い眠りに引き込まれた。
26 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時42分55秒
人の気配に無理やり両目をこじ開けると、私の腕から伸びた管の先に見覚えの
ある看護婦さんがいる。
「気がついた?よく寝てたねぇ」
窓の外に目をやると、空の緋色が見えた。たっぷり数時間寝ていた計算になる。
「すいません、ご迷惑おかけして」
「いいのいいのお互い様。うちの吉澤先生がお世話になったことだし」
うちの?・・・ああ、思い出した、内科の柴田さんだ。

「お尻、触られなかった?」
「え、誰にですか?」
「決まってるじゃない、吉澤先生。大丈夫だったみたいだね」
27 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時43分56秒
私の知らない吉澤先生が、内科にいる。
挨拶代わりに看護婦のお尻を触ってニヤニヤ。
宴会芸には世界のジョーク。時折憑依する別人格。
戯れに看護婦を押し倒したりもするらしい。
先生の正体は・・・狼?羊?桃?
いくつかの口癖。よくする仕草。
点滴を交換しながら、柴田さんは私の知らない先生の百態を教えてくれる。
ありがたいけど、嬉しいんだけど悔しい。
「柴田さん、先生のポケットの中身、知ってますか?」
「え?ポケット?何か入ってるの?」
よくわからないけど、勝った。私だけが知っている。
「何でもないです」
首を横に振った。頭の下で氷枕が音を立て、私は再びゆるゆると睡魔に襲われた。
半分閉じかけた私の目を、柴田さんが覗いて言う。
「でも優しいよ、吉澤先生。優しすぎて心配なくらい」
それなら、知ってる。知ってるもん。私の目の前の先生だけを信じよう。
それだけ思って、私は睡魔に完敗した。
28 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時45分41秒
再び目を覚ます。窓の外に昨日より少しふくらんだはずの月が浮かんでる。
動かした頭の下で、溶け切らない氷が動く音がした。
誰かが交換してくれている。おまけに点滴も終わっている。
どうやらそれに気づかないほど、物凄い勢いで私は眠っていたらしい。

傍のソファで、暗闇にむっくりと白衣が起き上がった。
暖かい手が額に触れる。暖かい。それだけのことでものすごく安心した。
「よかった、だいぶん熱下がったね」
病院に来る人は誰しも不安、昨日の先生の言葉を思い出す。
手当て。その文字通りの意味を、私は忘れかけていたのかもしれない。
もっともっと仕事がんばらなきゃ。先生に相応しい人間になりたい。
看護婦のお尻触ってニヤニヤしてるのは、きっと吉澤違いの人だ。
29 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時48分50秒
「すいません迷惑かけて。あの今、何時ですか?」
月明かりに腕時計を照らさせて、先生が答える。
「2時かな。たまたま当直だったから、気にしないで」
「恥ずかしいです。プロ失格ですよね」
「たまにはゆっくり休むのもいいじゃない。いつも一生懸命なんだし」
何か飲み物持ってくるから、その間にもう一回着替えてて、そう言って先生は
立ち上がった。もう一回?あ、私いつのまにか着替えてる。先生が?
ほい!という声とともに、真新しいTシャツが差し出された。私の頬は
熱のせいじゃなく上気してる。私、今日どんな下着つけてたっけ?
30 名前:第二章 優しい月の光の中 投稿日:2002年11月06日(水)22時50分03秒
部屋を出がけに先生が振り返った。
「着替えさせたのは、柴田さんだから、だいじょうぶだよ」
なんだ、柴田さんだったのか・・・。なんだ、じゃないか。
ありがとう、柴田さん。

戻ってきた先生にもらったスポーツドリンクを、大切に飲み干した。
「出来るだけここにいるから、安心して朝まで寝ればいいよ」
遠慮がちに、先生が私の頬に触れる。その温もりに身を委ね、私は静かに目を
閉じる。遠のく意識のなかで額に唇を感じ、おやすみ、という囁きが聞こえた。
さっきの出来事は、夢じゃなかったんだ。
とたんに鼓動が跳ね、目が冴えたけれど、同じく目を開けることも出来ない。
きつく閉じた目がようやく睡魔を捕まえた。
優しい月の光と、先生の気配に満ちる部屋の中、私は三たび、眠りの底へと
沈み込んだ。
31 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月06日(水)22時51分19秒
更新終了。

>19 名無し読者様
私のような者、またこんな駄文にはもったいないお言葉、ありがとうございます。
励みになりました。ご期待に添えるよう精進いたします。

また温かく見守って下さっている皆様、いらっしゃいましたら重ねてお礼申し上げます。
これからも、孫を見るじいさんのような薄目で見ていていただけたら、と思います。
よろしくお願いします。


では次回、第三章です。出来ているところまではサクッとこのペースで。
いけたらいいな、という希望も含みつつ。
32 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月06日(水)23時24分57秒
忘れていたわけではないのですが。
どこのどなたかは存じませんが、五冊目に紹介していただいた方、
ありがとうございます。やっぱりお礼を申し上げておこうと思いました。
いわゆるいしよしという題材を使わせていただいた以上は、
ちょっと並んでみたいな、なんて思ってみたりみなかったり。
嬉しかったです。
我が事になってみて初めて実感しましたが、本当にセンサーか探知機が
ついているとしか思えない早さですね。

それにしてもAX行きたかった。
いい人がみんな幸せでいられる世の中であればいいのに。
明日大阪に行かれる方がおられましたら、私の分まで声援を送ってきて
いただきたく存じます。「待ってるよ」と。
33 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月07日(木)17時09分48秒
やさしい雰囲気がとても良いです。
34 名前:第三章 矢のように過ぎる時の中 投稿日:2002年11月07日(木)20時34分38秒
翌日の自宅療養と合わせて丸二日の休みをもらって、私は職場復帰した。
保田主任に小言をもらい、その足で内科にお礼に行く。
私が持参した菓子折りを、気ぃ使わんでええのに、と言いながら中澤先生が
受け取ってくれた。
「うちのエロ大臣が世話になったことやし。あれ?エロ旦那やったかな?」
柴田さんが教えてくれたこととリンクしてる。
一体、ほんとの先生はどんな人なの?
私の前では、そんなことおくびにも見せないじゃない。じゃない?

真実を確かめたい。けれど張本人は出張中だと、中澤先生に教わる。
「柴田も夜勤でまだ来てへんわ。よう言うとくから、あんたも戻り」
これ、ありがとうな、と言いながら見送ってくれる中澤先生に頭を下げて、
私は内科を後にした。
エロ旦那?それでもいい。私は、私の目の前の先生を信じるんだから。
暖かい先生の手のひらを信じるんだから。
35 名前:第三章 矢のように過ぎる時の中 投稿日:2002年11月07日(木)20時36分17秒
その手の温もりに追いつこうともがく私を、あざ笑うかのように時が過ぎる。
休んでかけた迷惑を物凄い勢いで取り戻そうとし、一日はあっという間に終わった。
でも、結局先生に直接お礼を言うことが出来ない、会えない長い日々だった。

気づいてみれば、明日は休み。コンビニ寄ってたくさん買い込もう。
イチャイチャする相手はいないけど。
ウーロン茶、牛乳、卵、、それに、えっと・・・。
冷蔵庫に足りないものを補充しようとすると、買い物カゴは結構な重さになった。
雑誌なんぞも放り込む。デートはおろか、出かける予定すらないというのに、
情報誌なんか買ってもな〜。だって友達とは休み、合わないんだもん。
でも見るだけでも楽しいよ、きっと。
疲れて悲鳴を上げそうな腕をいたわって、カゴ持ち替えようとすると、突然それが
重力に逆らって軽くなった。誰かが持ち上げてる。えっ・・・!?
36 名前:第三章 矢のように過ぎる時の中 投稿日:2002年11月07日(木)20時36分58秒
「先生!?」
「ココ、よく来るの?」
「あ、はい。一番近いからいつも。・・・あのこの間は・・・」
「中澤先生に聞いたよ。わざわざありがとうね。お菓子、みんな喜んでた。
すっかりよくなった?」
「はい、本当にありがとうございました。あの、カゴ・・・」
「あ、重そうだから、持ってあげる」
デカイから、力あるんだ、そう言って身長を誇示するように胸を張る先生。
結局私は先生に甘えた。
37 名前:第三章 矢のように過ぎる時の中 投稿日:2002年11月07日(木)20時37分48秒
「先生は、いつもココですか?」
「ん、いや。明日休みだから、ちょっと飲もうかな、なんて」
「一人で?」
「うん。いつも行くトコは、お酒置いてないんですよ」
自分のカゴは持っていない先生が、反対の手にぶら下げたワインを私に示す。
「石川さんは、明日早いの?」
「いえ、休みなんです」
「そっか。もしよかったら・・・」
よかったら?
「一緒にうちで飲みませんか?」
飲みます!青汁でも黒酢でもなんでも。
持っていたワインを私のカゴの中に入れて、先生は固辞する私をやんわり振り切って、
まとめて支払いを済ませる。
そして、私のアパートまでカゴの中身を運んでくれた。
38 名前:第三章 矢のように過ぎる時の中 投稿日:2002年11月07日(木)20時39分08秒
先生は優しい。私に優しい。私にも優しい。きっと誰にでも優しい。
それでも別にいい。優しい仮面の下が、たとえエロ旦那でも。
だって、大好き。
こればっかりはどうしようもない。

先生の家までわずかな距離。
ワインと少しの惣菜を片手に、空いた暖かい手を私とつないで歩いてくれる。
だまし絵のように、この道が永遠に続けばいいのに。
39 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月07日(木)20時44分11秒
>33 名無し読者様
褒めていただけて、嬉しいです。本当にありがとうございます。
とても励みになりました。よろしければこれからも薄目で見守って下さい。

オノレに「さん付け」はどうかと思い、ハンドルつけてみました。
瓦を割ったりするつもりは別にありません。タイトルの略です。

書いていても「そんなウマイ話あるかい!」と指摘したくなりました。
ですがこれからも都合の良い展開は続きます。誰も不幸にならず。
だって作り話だから。思い通りにいかないのは、現実だけで充分。

章立てからいうと、折り返しました(予定)。
今しばらくお付き合いください。次回第四章です。
40 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)21時59分43秒
今しがた買った惣菜に冷蔵庫の中身で少し色をつけ、先生が食卓を整える。
手早く用意された食事と片付いた部屋。

保田主任の「きちんと生活できない人間にいい仕事が出来るわけないじゃない」
という言葉を思い出す。
先生に追いついて、本当に並んで歩くためにしなくちゃならないことは、私の
前に山積みだな、なんて思う。
41 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時00分59秒
並んで腰掛ける。二人がけのソファに、届くか届かないかの微妙な距離。
「安倍先生の調子はどう?」
「ヘコんでましたよ〜。患者の子どもたちがね、『あれ?吉澤せんせーは?』って
みんな言うから。」
冗談めかして言うと、先生は苦笑いした。
「よかった。子どもたちを病院嫌いにしちゃったらどうしよう、って思ってたんだ」
「先生の評判、とっても良かったんだから。そんな心配全然いらないのに」
先生のいない小児科の様子を話す。すでに懐かしそうな先生の顔。
「そっかぁ。安倍先生、また怪我しないかなぁ、なーんて」
とびきりの笑顔を私に向けて、しばし目が合うと、急に真面目な表情になった。
「石川さんは?どうしてた?」
先生の指が、私の髪を梳く。
「がんばって生きてた?」
42 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時02分39秒
淋しかった。先生の傍にいられなくて。
言葉の代わりに涙があふれそうになって、慌てて俯いた。
涙が膝に落ちた。肩を抱かれ、そのまま引き寄せられる。
「がんばって生きてた?」
「うん。会いたかった」
ようやくそれだけ言葉に出来た。先生が涙を拭いてくれる。
きっと何も言わなくていい。私は先生の背中に腕を回した。

さっきまでの微妙な距離をゼロにして私を抱きしめた先生が、耳元で囁く。
「泊まって、行く?」
コレってそうゆう意味、なんだよね?
私は先生の腕の中で頷いて、シャツの背中を掴んだ手に力を込めた。
先生は私を軽々と抱き上げる。自分で自分の体が強張るのがわかる。
覚悟は出来てる。初めてなわけじゃない。久しぶり、だけど。
だけど、確かに私は少し、怯えていた。
43 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時04分18秒
運ばれたベッドに横たわる私を照らすのは、窓越しの仄かな外灯の明かりだけ。
寝室の扉を閉めて戻ってきた先生が私を再び抱きしめた。
そのままゆっくり、先生の右手が私の髪を撫でる。
髪から背中、頬、首筋、肩、腕、・・・。繰り返し繰り返し。ゆっくりゆっくり。
先生の手、あったかいな・・・。
先生の腕の中で、私がほぐれていく。やがて私は、全てを先生に預けた。
先生の匂いで、私が満たされていく。凪いだ海に浮かんでるみたい。
たぶん幸せって、こんな感じなんだろう。

あったかい先生の手は、動きを止めない。きっと待ってくれてるんだ。
順番どおり頬に触れた先生の手を捕まえる。
「石川さんが嫌なら、しないから。今日はこのまま一緒に寝よう」
先生の親指が、私の唇をなぞった。
少しだけ唇を開いて、その指に口づける。
「・・・梨華、です」
44 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時05分41秒
「梨華、です」
もう一度伝えた。
刹那、強く強く抱きしめられて、耳元で少し掠れた、愛しい声が私の名を呼んだ。
唇が深く結びつき、やがて激しく求め合う。
いつの間にか私たちを隔てるものは互いの体だけになっていた。
「寒くない?」
「だいじょうぶ」
きっと、愛しい人以外の人に、生まれたままの姿を見られないために、私たちは
服を着てるんだ。
先生の唇が、大きなあったかい手が、私の素肌を滑ってく。
凪いだ海に小波が立つ。私は身を任せて漂う。
時折大きな波が押し寄せて、私を攫って行きそうになるたび、先生にしがみついた。
45 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時06分50秒
幾度目かの波が引いた隙に、先生は私の視界の底へと潜って行く。
先生、行かないで。今度こそ攫われちゃうよ・・・。
先生、行かないで。でもそれは、少し、嘘。
ねぇ、聞こえてくるのは先生の息遣いと、私の声、なの?
私の行き場を失った両手が、先生の髪をくしゃくしゃにする。
ダメ、このままじゃむしっちゃう。
私の、多分最後の理性が、私に掴ませようとしたシーツはピンと張っていて、
私の指はむなしく空を掴む。
きっと私を助けるために先生が浮上してきて、私は先生の左腕の中。
助けに来てくれたはずなのに私を捕らえて離さない悪戯な先生の右手だけは、
波の味方なのかもしれない。
46 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時07分42秒
だけど一緒なら、波に呑まれても構わない。
もう少しで終わりそうな旨を告げると、先生はまるで扉をノックするかのように
私にキスして、それから、私の中にゆっくりと入って来た。
しっかり私を抱きしめて。難なく先生を受け入れた自分を少し恥ずかしく思ったけど、
もうそれどころじゃない。
塞がれた唇から、さっきの耳慣れない声がくぐもったまま先生の中に吸い込まれていく。
やっぱり私の声だったんだ。

耳元に、首筋に、先生の唇を微かに感じる。
やがてどこかで火の手が上がり、その炎が生み出す気流に乗って、さっきまで漂っていた
波間を見下ろせるところまで昇って行ったような気がするけど、定かな記憶じゃない。

ふと、また波間に漂っていることに気がつく。
今度は自分の荒い息遣いだけが聞こえた。
小波に揺れるのは私一人?
先生、何処にいるの?先生?
47 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時09分18秒
はじまりの場面と同じように後ろ手にドアを閉めて、ペットボトル片手に先生が
戻ってきた。
「飲む?」
「ありがとう」
私を抱え起こして、ペットボトルを差し出してくれる。その中身が私の渇いていた
喉を潤していく。先生は私を潤す。この人を失ったら、私は乾涸びてしまう。
むき出しの背中に、先生がシャツを羽織らせてくれた。
また熱出すといけないから。照れながら言う先生が愛しかった。

返したペットボトルの残りを、先生が一息に呷る。
薄暗がりに動く喉元に、やっと凪いだはずの私の中の海が微かに波立つ。
空のボトルをサイドテーブルに置くと、先生は私を腕枕して横になった。
ものの30秒もたたないうちに、規則正しい呼吸を頭上に感じる。
え?もう寝ちゃったの?でもそりゃ、疲れるよね、ごめんね、先生。
かつてこんなに優しく、激しく、愛されたことはない。
私は先生を起こさないように気をつけながら、腕枕を交代した。
こうして誰かを腕にしたことも、一度もないな、そんなことを思いながら。
48 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時10分39秒
羽織っただけのシャツの合わせ目から、先生の規則正しい寝息を感じる。
先生の吐息が、私の中の残り火に風を送り込む。再び燃え上がろうとする炎。
それをなだめるように先生の頭を抱えて撫でて、どれぐらいそうしていただろう。
パチッ、音を立てたかのように錯覚するほどの大きな瞳が、私の腕の中で開いた。

「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや、起きたんだ。得意なんだよ、仮眠。医者は24時間営業・・」
「年中無休だから?」
「あれ、なんで知ってるの?言ったことあったかな」
ないよ。柴田さんに聞いたんだもん。
ごめんね一人にして、と言いながらまた腕枕を代わってくれる先生に従いながら、
私はただ笑って、先生の胸に頬を埋めた。なだめきれなかった私の中の炎。
49 名前:第四章 愛しい人のその腕の中 投稿日:2002年11月07日(木)22時11分34秒
「先生、疲れたよね?」
「ん?いや、そんなことないこともないけど、どうした?」
二度目を、煩わしく思いつつ受け入れたことはあっても、ねだった経験はない。
迷うのをやめて、私はありのままを先生に伝えた。
先生は黙って私を組み敷いて、戸惑いがちに私の言ったことの意味を確認する。
私は答えずに、また先生にしがみついた。

捨てきれない羞恥心を裏切って、先生の腕の中で次第に大胆になる私の体。
一度高みを知って生まれた余裕が、私をそうさせている。
いつしか体に心が引きずられ、もっと高く深く遠くを求めはじめる。
自分がこんなに欲張りだったなんて、知らなかったよ、先生。
50 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月07日(木)22時12分52秒
更新終了。さっきあえて書かなかったのは、ですね。

門出を見届けられない悔しさあまって、ヤケクソで更新してやりました。
ヤケクソついでに激痛なカミングアウトをしてしまうと、そう、ミチヲタなんです。
彼女の人生に幸あれと、心から祈りたいです。

取り乱してすいません。平にご容赦賜りたい気持ちです。なお内容はヤケクソでは
ないつもりです。見切り発車の見切り具合が、ヤケクソ。ほんとにすいません。

次回第五章です。どうかお許し下さい。
51 名前:名無し桃板住人 投稿日:2002年11月07日(木)22時33分59秒
五冊目に紹介させてもらった者です。32のレス見てびっくりしました。
たまたま見てて「いしよしだ!」と思って咄嗟に書き込んでしまいました。
素敵な作品を紹介出来るってのは、読者にとっても幸せなんです。
名無し空手さんの文章は、読んでいて心があったかくなってきます。
毎回読むのを楽しみにしてるので、頑張ってください。
52 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月07日(木)22時53分24秒
>名無し桃板住人様
今、まさかな、だって自分でも予定外の更新だったし・・・。
と思いつつ覗いてみたら・・・びっくりしたのは私の方です。
もしかして、たまたま見てくださっている方は予想外に多いのではないかと、
今更ながら襟を正しています。

お褒めに預かり、本当に恐縮です。
こんなに人様に褒めていただいたのは、どれくらいぶりの経験でしょうか。
今自分に出来るだけのことを精一杯やるつもりですので、よろしくお願いします。
53 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月08日(金)17時08分38秒
レスつけるの下手なんだけど…これだけは。
はまりました。
何というか、文章全体の雰囲気がすごく好きです。
楽しみにしてます。
54 名前:第五章 秋晴れの陽の光の中 投稿日:2002年11月08日(金)21時00分34秒
初めての朝は、真っ青に晴れ上がっていた。
カーテンを勢いよく開けた先生が、昇りはじめた太陽を背負って私に向き直る。
「ねえ、どっか出かけようよ。すごい天気いいよ」
即座にその提案に賛成し、私はなお残る気だるさを押しのけて飛び起きる。

先生が用意してくれた朝食を並んで摂って、私が後片付けをした。
最後の皿を洗い終えてリビングに戻る。
窓枠に切り取られて差し込む太陽の光の中、先生が一心に昨日買った情報誌を
めくっていた。
私はその光の絨毯を敷いたかのような床に、先生と向かい合って腰を下ろす。
吉澤、という姓の職員が、目の前の先生ただ一人なことは、実は確認してある。
55 名前:第五章 秋晴れの陽の光の中 投稿日:2002年11月08日(金)21時02分10秒
「吉澤先生って、二人いるの?」
ページを繰る手を止めて私を見ながら、先生が答える。
「いや、一人だよ」
「ふ〜ん」
何?どしたの?ねえ?って矢継ぎ早に聞いてくる先生。へへ。
「じゃあ、看護婦さんのおしり撫でたりするエロ旦那って、先生なんだ」
「え!」
「誰と誰押し倒したの?」
「・・・・・・・柴田か?柴田だな?余計なこと言ったヤツは」
心底困っているらしい先生。頭を抱えて唸っている。可愛いな。
「せ〜んせっ!」
ポン、と肩を叩くと、はじかれたように先生が背筋を伸ばした。
膝を突き合わせて、私の前に正座する。
56 名前:第五章 秋晴れの陽の光の中 投稿日:2002年11月08日(金)21時04分19秒
「してないよ!」
光より速く首を横に振る。
「梨華ちゃんに会ってからは、してない」
呼ばれる名前が、嬉しい。
「何をしてないの?」
「何もしてない」
「ほんと?」
今度は、縦。わざと怒ったふりをする。
けれどすぐに笑いがこみ上げてきてうつむくと、先生が覗きこんできた。
「怒ってる?」
うつむいたまま黙って頷く。
「ねえ、どうしたら、許してもらえる?」
バカな先生。私に会ってからは何もしてないんだったら、無実じゃない。
「じゃあ、世界のジョーク、やって」
57 名前:第五章 秋晴れの陽の光の中 投稿日:2002年11月08日(金)21時05分16秒
我慢できなくて、私は笑い出した。キョトンとして私を見ている先生。
もしかしてからかってるのかぁ〜?と言いながら私の頬を挟もうとする先生の
両手をさえぎって、私は先生の胸にダイブした。
私を受け止めて、先生が光の絨毯に倒れ込む。
私は先生を敷きつめて、耳をくっつけ、その鼓動を数える。
静かに上下する胸は、まるで魔法の絨毯のように私を空へと浮かべる。
先生がそっと私の髪を撫でる。
胸腔からダイレクトに、先生の声がこだまする。
「せっかくカッコつけてたのに、柴田のヤツ・・・」
「エロ旦那って言ったのは、中澤先生」
「なぬぅ〜!」
本当に悔しそうだ。
58 名前:第五章 秋晴れの陽の光の中 投稿日:2002年11月08日(金)21時06分09秒
ねえ、先生。カッコ悪くても。
それから、もし先生が、私のことを好きじゃなくなったとしても。
「どんな先生でも、好きだよ」
私は先生の首にかじりついて、耳元で言った。
「ありがとう」
「だから、私の前では我慢したり、無理したり、しないで」
「うん。・・・あの、ごめんね」
「本当に、怒ってないから」
先生は私を抱きしめて、気が遠くなるくらい優しくて甘い愛の言葉と口づけを
くれた。
59 名前:第五章 秋晴れの陽の光の中 投稿日:2002年11月08日(金)21時07分19秒
この人を失ったら、きっと私は暗闇に迷ってしまう。
だから、ずっと先生に見ていてもらえるように。
私、そんなふうに生きるよ、先生。だから私を照らして。
「梨華ちゃん、ところで、どこ行きたい?」
「先生の行きたいところ」
「それじゃあ決まらないよ」
「一緒ならどこでもいいんだもん。でも・・・」
もう少し、このままでいたい。
先生は私にきつく頬を寄せ、黙って私の願いをかなえてくれた。

太陽が一日で一番空高く昇る頃、二人で紅葉の綺麗な公園を手を握って歩いて、
穏やかな秋の一日は暮れていった。
60 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月08日(金)21時08分45秒
更新終了。

>53 名無し読者様
ありがとうございます。はまらせてしまった責任は、完結という事実だけでしか
とれないかもしれません。そのときはお許しください。
これからも晩年の馬場の試合を見るプロレスファンのような、そんな目で見守って
いただければ幸いです。よろしくお願いします。

この章が、何と言うか一番好きかもしれない。今、ものすごく恥ずかしいことを
言ったような気がする。独り言です。お忘れください。

次回最終章前編です。これまでのペースで行けるかどうかまだわかりません。
61 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月08日(金)23時04分04秒
いえいえ、「ナース石川企画」に負けない位、素晴らしい作品だと
思います。文体がすごく爽やかで綺麗な表現をしてるなと思いました。
更新ペースも嬉しいです。
次回もう最終章前編ですか・・何だか終わりに近付くのが寂しいような
・・馬場を見る目でいしよしを見てますので、最後まで頑張って下さい。
62 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時19分35秒
休日だった昨日一日中煮込んで、その匂いだけでお腹いっぱいになってしまった
シチューを今夜、一緒に食べることになっている。

あれから、カレンダーを一枚めくって、窓の外の景色は様変わりしたけれど、
私の幸せは同じだった。
月の初めに、勤務表を交換しあう。すれ違って、会えない日も多い。
だからこそ、その会える日まで私は全力で生きられる。
「がんばって、生きてた?」
その問いに、笑顔で頷きたいから。

先生は変わらず優しく、ごくたまにエロ旦那で。世界のジョークも見せてくれた。
コレについては先生の名誉のためにも話すのを控えよう。
63 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時20分57秒
幸せ。
なのに、時折漠とした不安は、突然私に忍び込んでくる。
ずっと先は見えない。いつまでも一緒にはいられない。
この世には、男と女しかいないのに。どっちを選んでも、確率は二分の一なのに。
好きになった人が、自分と同じ性だっただけなのに。

一度だけ先生の前でそれを口にしてしまったことがある。
暖かい腕の中で眠りにつこうとしたその一瞬の隙に、それは私を襲ったのだ。
声を殺したつもりだったのに、先生はすぐに私の異変に気づいた。
「どうしたの?」
澄んだ先生の目は、私の嘘なんかきっとすぐに見抜いてしまう。
穏やかに問い詰められて、私は自白した。
64 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時22分15秒
「梨華ちゃんに嫌われるまで、ずっと一緒にいるから」
だから、大丈夫。
「ほんとは嫌われたって、一緒にいたいけど」
ねえ、心配しなくていいから。
「だから、泣かないで」
先生はそう言ってくれた。
なのに私はその時、先生の腕の中で、母を求める乳呑み児のように泣いた。
65 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時23分15秒
まもなく仕事を終えるころ、先生がとても急いで私のところへ来た。
「ごめん、遅くなりそうだから、先に行って待ってて」
それだけ言って自分の家の鍵を渡し、駆け戻る。シチューは先生の家にある。
急変、かな・・・。
きっと入院患者の様態が、急に変わったんだろう。

渡された鍵を使って先生の部屋に入る。
家中の電気をつけて、部屋を暖めて、待っていてあげなきゃ。だって・・・。
66 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時24分14秒
先生が帰ってきた。
ついさっきよりもやつれた面立ち。
きっと、助からなかったんだ・・・。
消え入りそうな声でただいまを言って、先生は上着も脱がずにソファに座り込む。
何も映していない、虚ろな大きな瞳。
私は自分の勘が外れていないことを確信する。

職業柄私たちは永遠の別れに接する機会が多い。
そして、慣れる。
悲しくないわけじゃない。
悲しくないはずがない。
決してそれが平気になるという意味じゃなく、自分なりに悲しみを咀嚼する
方法を身につけていく、そんなふうなこと。うまくは言えないけど。
先生だって、その術を身につけていないはずがない。
67 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時25分17秒
普通の、順番通りの別れであれば。
先生はきっとこんなに憔悴したりしない。
こんなふうになるのは、神様がめちゃくちゃにルールを破った時だ。

私は先生の隣に座る。でも何も言えない。聞けない。
「アイツが・・・」
「そう、なんだ・・・」
それきり先生は黙りこんだ。
68 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時26分48秒
その子のことなら、私も知っている。
少し前まで、小児科に入院していて、その年齢が周りから浮いてしまい、内科に移った。

「でも、僕、まだ中学生なのにな」
次々に襲い掛かる病と闘ううち、学校に行くより入院しているほうが長くなって、
学年を年齢が追い越してしまったから。

本を読むのが好きで、でも、時には「絶対安静」と、それさえも禁じられて。
「僕って、病気の博物館みたいでしょ?」
そう自称していた。決して自嘲じゃなく、諦めでもなく、開き直りでもなく。
まるで、それが日常であるかのように、ただ静かに病と対峙していた。
いや、たぶん、彼にはそれが日常だった。
自分に非は一つもないのに。
だから少しぐらいは苛立って、私たちに八つ当たりしてもいいのに。
69 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時27分57秒
内科に移ったあと、気候のいいときに、中庭で彼の車椅子を押して散歩する先生の
姿を見かけたことがある。そのときはまだ、名前も知らなかったけど。
でも、忙しい医師が車椅子を押す、なんて珍しい光景だから。だから覚えている。

先生とめぐり会った後には。
彼のために、問題集を作り、好きそうな本を探し、交換日記をし。
その入院生活を輝かせるために、まるで我が事のように心を砕く先生の姿を、
きっと私が一番よく知っている、と思う。

そう、まるで自分の弟のように。
それほどまでに先生は、彼を可愛がっていたのだ。
70 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時28分48秒
大きなため息のあと、先生が重い口を開いた。
「分かってるんだ。お別れは空の手のひらの中にあるって。自分の力なんて、
及ばないところにあるって。でも・・・」
もっと何か出来ることあったんじゃないかって・・・それだけ言うと、先生は
唇を固く結んだ。
かける言葉を持たない無力な私は、そっと先生の手を握った。
こらえきれずに零れた涙が、膝に落ちる。
「先生・・・」

こんなとき、誰のどんな言葉も意味を持たないことは、私にもよくわかってる。
71 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時29分54秒
「その先は神様の領域なのよ。私たちは決してそこに立ち入ることはできないの」
だからこそ、その入り口に人がたどり着いてしまうまで、時には片足を踏み入れて
しまっていても、私たちは戦わなきゃいけない。
そんなふうに保田主任は言った。

中澤先生はこう言った。
「ほんまに神様っちゅうやつは、困った気まぐれさんやで」
ええやつほど、そばに置きたがるからなぁ。

「若くして亡くなる人はね、梨華ちゃん。神様に愛されてる人なんだよ」
だからはやくおいで、って連れて行かれちゃうんだわ。
亡くす患者は自分より年若い人ばかりの、安倍先生。

掟破りの神への思いを昇華させて、私たちは戦う。
刃が折れ矢が尽きるまで。いや、尽きても。
それでも力及ばなかった悲しみは、どんな言葉にも癒されることがない。
72 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時30分55秒
私たちの仕事の宿命。だから、それぞれのやり方で乗り越えるしかない。
だから、私は先生に何も言うことが出来ない。力になりたいのに。
「ゴメン、いつまでたっても慣れなくて、カッコ悪いよね」
そんなこと、ない。こんな先生じゃなかったら、きっと好きにならなかったよ。
「先生。いつも優しくなくても、カッコ良くなくても、強くなくてもいいから」
ごめん、ごめん、呻くように呟き続ける先生の背中を撫でた。
「言ったじゃない、どんな先生でも好きだって」
だから、謝らないで。私が言うと、先生は嗚咽をもらした。
子どもをあやすように先生を抱きしめて、髪を撫でた。
先生が泣き止むまで、ずっとそうしていた。
73 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時31分48秒
やがて先生は落ち着いて、私から体を離した。
「だいじょうぶ?」
「うん。梨華ちゃん、いてくれて、ありがとう」
「そんなこと言わないの。ねえ、ご飯、食べようよ」
先生はうつむいたまま、何も答えない。
食欲がないだろうことはもちろん分かっている。
けれど、この様子じゃ、朝から何も食べていないはず。
私たちももちろんそうだけれど、直接命を預かる医師の仕事はもっと激務だ。
そして人ひとり消えた日も、病院はいつもと変わらず動き続ける。
無理にでも食べなければ、先生の体がもたない。
そしてそれは比喩ではなく命取りにもなる。もちろん自らの命ではなく。
74 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時32分50秒
目を伏せたままの先生に、少しだけ強く言う。
「食べないと、力、出ないよ。医者は、肉体労働なんでしょ?」
先生の口ぐせを真似る。先生は反応しない。
「残された者には、生き抜く義務があるんでしょ?」
自分を残酷に思いながら真似続ける。

やっと黙って頷いた先生は、静かにきちんと一人前を平らげた。
「悪いけど片付け、頼んでいいかな?」
それだけ声にして、先生はバスルームへ向かった。
75 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時34分21秒
自分が強いたことなんだけど、でも。
先生。
「食べたくねぇんだよ!」
って怒鳴ってもいいんだよ。
ねえ、先生。
「わかったようなこと言うな!」
って怒ってもいいんだよ。
本当にそうしてほしい。
でないとまっすぐで強い先生の心が、いつか音を立てて折れてしまう。
先生が使った皿を重ねながら、私は心で泣いた。歯を食いしばって。
涙を見せるわけにはいかない。だって先生が泣けなくなるから。
「梨華ちゃんまで泣かせてごめんね」
そう言って、自分は我慢してしまうに決まってるから。

片付けを終えて、私はリビングに膝を抱えて座り込んだ。
亡くなった少年と、先生の顔とが、目の前を交互に行き来していた。
76 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時35分26秒
いつの間にか、洗い髪をタオルでだけ乾かして立ったまま、先生が私を見ていた。
その姿がいつもより小さく見える。

「梨華ちゃん、ひとつだけお願いがあるんだけど・・・」
それだけ言って、先生は目を伏せた。
今日は帰ってくれ、って言いたいんだ。
きっと一人になりたいんだ。
だって、ものすごく言いにくそうにしてる。
帰れ、なんて、そんなこと平気で言える人じゃないことは、よく知ってる。
先生を一人になんて、したくない。絶対にしたくない。
けれど、初めての先生のお願いだから、何も言わずに受け入れよう。
77 名前:最終章 空の手のひらの中(前) 投稿日:2002年11月09日(土)20時36分33秒
「あの、膝枕、してほしいんだ」
理不尽との戦いにある先生の孤独を思って、私はまた歯を食いしばった。
「うん。おいで」
自分の膝を枕に横たわる、先生の輪郭をたどる。
触れる手のひらに全ての思いを託して。

絶対に先生を。
折れさせたり、しない。
壊れさせたり、しない。

「梨華ちゃん、ごめんね」
「そんなこと言うと、ほんとに怒るよ」
「うん、ごめん・・・あ」

先生を傷つけようとする全てから、私は先生を、守る。
守り抜いてみせる。
たとえ、それがどんなに強い相手でも。抗いようのない大きな力だったとしても。
絶対に、負けないんだから。
78 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月09日(土)20時38分04秒
更新終了。

>61 名無し読者様
ありがとうございます。そう言っていただけて、安心しました。
文体については、現実の石川さんのイメージを悪くさせることだけはしないように、
それだけに注意してます。ですから嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

次回最終章後編。完結予定です。

本当は誰も死なせたくなかった。力が足りなくて、ゴメンね、と自分で登場させた
少年に謝ってみる試み。
79 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時33分09秒
私はあれから、先生に「ゴメン禁止令」を発令した。
謝る必要のない時にそう言ったら、罰金。
使い道は、もう決まってる。矢口さんの店に行けるまで、あと少し。

やっと休みが重なって、今日ようやく少年に花を手向けることが出来る。
街から離れた、海の見える丘の上に、彼は静かに眠っている。

その道のりを並んで辿りながら、隣を歩くその人と出会えた偶然を、私は
思い返していた。

もし、安倍先生が怪我しなかったら。
もし、応援に来てくれたのが、先生じゃなかったら。
もし、先生が医者じゃなかったら。
そして、私が看護婦じゃなかったら。

もし、二人のうち一人でも、この世に産まれてこなかったとしたら。
80 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時34分58秒
星の数ほどの人々と行き違う中で、こうして並んで歩いていること。
私は皆が、神様、と呼ぶ存在について思う。
きっと、あなたが、こうして出会わせてくれたんだよね。

静かに眠る少年の前にしゃがみこんで、先生は長いことそうしていた。
いつか必ず、そこへ行くから。いつになるかは、分からないけど。
だから、待ってて。たぶん、そんなに遠くないよ。百年後には、必ず。

きっとそんなふうに声をかけているに違いない。
あ、もし、「ゴメン」って言ってたら、罰金徴収しなきゃ。

私もまた、先生の隣で頭を垂れ、祈る。
二人で、がんばって生きるから。あなたの分まで。だから、ずっと見ててね。
81 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時36分05秒
先生が立ち上がった。
「寒いけど少し、海、見て行こうか」
眠る少年を背に、その丘を中腹まで下る。
先生が芝生に敷いてくれたハンカチの上に腰を下ろす。
時折海へと吹きおろす冬風から私をかばうように、先生は背中から私を包み込んで
座った。
頬を寄せ、同じ海を見る。視線のずっと向こうでぶつかる空と海。

「中澤先生、行っちゃうんだね」
「うん」

強い風が吹く岬で有名な町の診療所に、この春、中澤先生は赴任する。
何もないというその春に、町でたった一人の医師として。
82 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時37分07秒
「中澤先生には、いろんなこと、教わった」
「私も」

私が、患者さんとの接し方に悩んでいたとき。
偶然中澤先生と誰かの送別会で隣り合った。

「患者さんとどれくらい距離を置いたらいいのか、よくわからなくて」
「悩む必要なんかないやん。出来るだけのことをする。全力でする。それだけや」
「でも、あまり患者の事情に深入りすると辛いよ、って言われる方もいて」
「ちょっとぐらい話聞いて、それで患者の肩の荷物持ってやったつもりになって、
それがしんどい、そんなヤツはさっさと辞めたらええねん。病気背負わされた人間
よりそっちのが辛いと思うような人間は、医者失格や。ああ、あんたはナース、
やったな。でも、同じことやで」
83 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時38分16秒
私が黙っていると、先生は照れたように続けた。
「病気に関係ない患者の事情なんか、有り得へん。だって心と体で一人の人間やで」

一瞬で迷いは消え去り、私は自然に患者さんと接することが出来るようになった。
中澤先生には、大恩がある。がんばって生きることで、それを返していこうと思う。

お別れは、空の手のひらの中。
先生はそう言ってた。
この出会いも、きっとその中にあったのだろう。
重なり合ったいくつもの偶然が、今は必然に思える。
そして、また別れも、今は見えないけど、きっとそのどこかにあるんだろう。
84 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時39分27秒
もし、神様が気まぐれを起こしたら。
私たちを、分かとうとしたならば。
その時は、全力で戦えばいい。二人で。たとえ、それが無駄な抵抗でも。
絶対にあきらめたりしない。
だって私は、乾涸びたくない。迷いたくない。そして、この人を、失いたくない。

「ねえ、梨華ちゃん。キスしていい?」
背中から先生の声がする。
聞かなくていいって、いつも言ってるのに。
「ダメ」
初めて拒まれた先生が困っている。
「ん、そっか。・・・なんで?」
今、きっと、ゴメンを飲み込んだ。
「だって・・・」
口ごもった私の言葉を、先生は待つ。
「たまには、奪ってほしいから」
85 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時40分29秒
よぉし。そう言って私を抱き上げて、先生は少年の眠る丘の上を見やった。
先生の首につかまって、その視線を追う。

「梨華」
不意に呼び捨てされて怯んだ私の唇を、先生が掠め取る。
「へへ、やった」
軽く勝ち誇った先生は、私を並んで立たせた。
もう一度、二人で丘を見上げる。
また、会いに来るからね。
86 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時41分24秒
ふと、先生を見る。
先生も私を見つめてる。
二つの唇が磁石のように惹かれあう。
私は、もっと強力な磁石になりたい。
先生の魂ごと、引き付けて離さないほどの。

私を抱きしめ、照れ隠しにエロ旦那の仮面をつけて、先生は言った。
「本当は、今、ここで押し倒したいけど」
けど?
「大急ぎで家に帰って、続き、しよう」
私と手をつなぎ、ヨーイ、ドン!言うなり先生は駆け出した。

手をひかれて、転ばないよう気をつけて走りながら、思う。
87 名前:最終章 空の手のひらの中(後) 投稿日:2002年11月10日(日)08時42分44秒
神様。素敵な出会いをありがとう。でも。
いつか私たちに意地悪するつもりなんでしょ?
私たちは、手ごわいわよ〜!覚悟しててね。
そうだ、いつか対決する前に、一言、挨拶だけしとくね。


「神様、チャーオー!」


      
                  空の手のひらの中<了>
88 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時44分12秒
完結しました。
悪人も恋敵も登場せず、事件も事故も起こらず、山も谷もない素人の妄想に
お付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました。
衷心よりお礼申し上げます。

作中のエピソードより、「冷たい手で患者に触るわけにはいかん」と言って、
カイロを肌身離さない医師、また、大きな子を持つ主婦でありながら医師を志し、
それを叶え、その家族の支えを得てたった一人、岬が有名な町に赴任した女医は、
実在します。

願わくば、医療関係者の方々の御心がけが、皆これらの人々と同じからんことを。
杞憂だとは思うのですが。
89 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時44分49秒
また、私の勝手な都合で葬られた少年、本当にごめんなさい。
せめて作り話の中でぐらい、誰もが幸せでいいじゃないか、いつも思っていたのに。
あなたの分まで二人を幸せにしてあげられたでしょうか?
私に力があれば、あなたに生きていてもらえたのに。出直してきます。
90 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時45分24秒
誇張ではなく、生まれて初めて、事実や調査結果を報告する、という趣旨では
ない長文を書きました。
その最中とっても楽しかったのは、おそらくビギナーズラックってヤツでしょう。
拙文なりに、誤字脱字、改行、更新作業にミスなどがないように心がけましたが、
それも完全ではなかったかもしれません。申し訳ありません。

他人が同じことを言ったら絶対に胡散臭いと思う、とわかっていながら、あえて
こんなことを申し述べるのですが、とある企画に寄せられた文章を拝読させて
いただくうち、自分の中に書きたい欲望がうまれ、たぎり、気づくと指先に
石川さんが宿って勝手にしゃべっていた。そんな感じで書けました。
恐山のイタコの口寄せみたいなものです。インチキ臭さも含めて。
自分を乗っ取った石川さんに好きなようにさせながら、少しだけ思った。
皆が優しければ、この世の「悲しみ」は、きっと一つづつ、「幸せ」に退治されるのに。
91 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時46分04秒
間に思いがけずお褒めのレスポンスをいただき、本当に嬉しかったです。
改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
謙虚なふりしてお返事させていただきながら、「でしょ?いいでしょ?ね?」
なんて実は思っていたことは、ココだけの話にして下さいね。

五冊目の速さにも毎回仰天し、本当に励まされました。
言葉に尽くせない謝意をところどころ織り込んでみたのですが、どうでしょう、
住人の皆様、お気に召されましたでしょうか?
本当に不思議なのですが、あれは本当にたまたま見かけた方だけが書き込んで
おられるのでしょうか?
少ない更新回数の中で複数回「更新中」の文字を見かけ、身のすくむ思いでした。
一回だけおイタをさせていただき、あの時はすごく嬉しかった。なんで?
あの時の270さんにもお礼申し上げたいです。ありがとうございました。
練り物好きの管理人様、いつもお世話になってます。
御身御大切に。広義の愛をこめて、「チャーオー!」
92 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時46分38秒
もし、私が、読んで下さった方に少しでも楽しみを提供できていたとしたら。
それは、辛さや悲しみも多々あろうに、それらを微塵も見せずに元気な姿で
歌い踊り、私に夢と力を与えてくれる(こんなつまらない言い方しか出来ない
自分が嫌いです)現実の娘。さんたちの姿と。

そして、娘。を、生き生きと自由自在に活躍させてこられた先輩作者の皆様の
おかげです。
おそらく、私がこれまで読ませてもらってきた、数多ある娘。小説の、作者様達が
作り上げてこられたイメージが、私の中で具体像を結び、ひとつの形となって
飛び出したのだと思います。
ですからこの場をお借りして、先達に感謝の意を。ありがとうございました。
これからも、楽しませて下さい。

本当に、娘。さんたちの末永い活躍を祈りたい。
今の曲は、何なんだ。どんな大切なことをしている最中の私をも釘付けにする。
これほど良質なパフォーマンスを自宅で手軽に楽しめる。
そんな時代に生まれあわせて、良かった。
さらに、再びの平家みちよのデビューも。
93 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時47分12秒
それから、コンセプトをまるまるパクらせていただいたページの管理人様。
ごめんなさい、そしてありがとうございました。
「運命」「無問題」(仮に中国で映画化されたとしてのタイトル)好きです。
あまり思いつめないように、すごく面白いですから。
と、申し訳ありませんが、もしご親切な方、いらっしゃいましたらお伝え下さい。
よろしくお願いします。

タイトルは、日本で一番長く売れ続けた記録を持つ歌い手さんの「A級戦犯」
じゃなかった、「永久欠番」という曲のワンフレーズを拝借しました。
最終章はずっとこの曲をイメージしながら書きました。他にもいくつか借りた
言葉があります。よろしければ、是非。
94 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時47分53秒
また、これまで黙って、コアラを見る三原順子のような目で温かく見守って下さって
いた方がもしおられましたら、お手すきの折にでも何か一言書き込んでやって下さい。
お手数かけますが、よろしくお願いします。
皆様の温かいお心のおかげで、無事にひとつの幕引きが出来ました。
ありがとうございました。
もしレスポンスをいただけました際には、お褒めの言葉だけかいつまんで、私の中で
まだがんばって生きてる梨華ちゃんに伝えたいと思います。
95 名前:あとがき・・・の、ようなもの 投稿日:2002年11月10日(日)08時48分43秒
二人は、どうやら中澤先生のところや、矢口さんのレストランに行きたいらしいです。
その願いは、是非形にしてあげたいと思います。
中澤先生も矢口さんも「私の出番、少 な す ぎ」なんて拗ねてますし。
忘れた頃にでも、もう一度覗いて下さったら、またお目にかかれるかもしれません。
ではその日を楽しみに。

最後になりましたが、お立ち寄りいただいた全ての皆様へ。そしてサザエ様。
本当にありがとうございました。
                           
                                 名無し空手
96 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月10日(日)11時58分35秒
よかったよ*
97 名前:名無し読者M 投稿日:2002年11月10日(日)14時12分07秒
素敵な作品を読ませて頂きました。ありがとうございました。
98 名前:殿 投稿日:2002年11月10日(日)14時29分27秒
名無し空手さんのあったかさがそのまま表れていて素敵でした。
お疲れ様でした。
99 名前:53です 投稿日:2002年11月10日(日)15時12分01秒
最後までハマりっぱなしでした。完結した今も、続編への期待がふつふつと。
うまく言えないけど、とにかくよかった。
読後、清清しくて、脳天がジヮ…となりました。

永久欠番…中島さんかぃ?よしちょっと買ってくる。
エンドレスで聴きながら、続編待ってます。
100 名前:61です 投稿日:2002年11月10日(日)16時54分21秒
完結、お疲れ様でした。
今、良質のドラマを観させていただいたような、とても爽やかですっきり
とした気持ちでいっぱいです。
ジェットコースターのような展開や、絵に描いたようなキャラクターが
存在しなくても、素敵な物語は成り立つのだということ。今回改めて
思いました。
願わくば、この二人の続編を読ませていただきたいと思っています。
今度は矢口さんのレストランで、中澤先生とのささやかな送別会・・
なんてちょっといいかな、と期待しています。
本当に素晴らしい作品をどうもありがとうございました。
101 名前:名無し香辛料 投稿日:2002年11月11日(月)01時41分45秒
大っ変、面白かったです。素晴らしかったです。
これが処女作とは…驚きです。
テンポもいいしキャラ作りもいい。
なんというか…ツボでした。うう…うまく言えない。
是非続編も読みたいです。気が向いた時をお待ちしております。

PS...あちらの掲示板にも是非書き込んでみてください。
大歓迎です。両手を広げてお待ちしております。
102 名前:じゃない 投稿日:2002年11月11日(月)02時40分34秒
すみません、遅くなりました。




した。  読み終わった後のこの暖かさ。全裸でもへっちゃらです。
103 名前:リエット 投稿日:2002年11月11日(月)03時48分57秒
お疲れ様です、面白かったです!
石川さんは可愛いし、吉澤さんも面白いし、もう最高です。
続編書かれるんですね〜。
期待してます!
104 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)22時59分49秒
ヘッポコ作者を褒め殺すスレッドはここですか?

ディスプレーの前で、こんなに座りが悪いのは、初めてかもしれない。
感想いただいた皆様、本当にありがとうございます。

>96 名無し読者様

ありがとう*

>97 名無し読者M様

こちらこそ、お付き合いいただき、ありがとうございました。
素敵とか言われたことないので、ほんと照れます。
105 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)23時00分52秒
>98 殿様

褒められるべきは、ほんとに私じゃないです、ただのお筆先ですから。
暖まっていただけたのだとしたら、それは季節を早送りしたかのように
降り積もる窓外の雪に、少々うんざり気味だった私への、二人の計らい
によります。

私も同じく、皆様のレスポンスに暖めていただきました。
この温度を保温して、明日から人に接していこうと思います。
よろしければ、皆様も是非。この世から悲しみがひとつ消えるかも。
106 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)23時01分48秒
>99、53 名無し読者様

大任を果たせたようで安堵しています。
無事、見つかりましたでしょうか?
近しい人とのお別れのとき、本当にこの曲が立ち直りの一助となりました。
そのイメージをうまく表せたかどうか。
エンドレスで曲だけ聴いておられたほうが、いいかもしれないです。

>100、61 名無し読者様
決してアクション大作などを否定するわけではありませんが、私の嗜好は
例えば、「愛を乞うひと」のような静かで激しい作品にあるかもしれません。
あれはほんと原作も映像もどっちも評価されてよかったと思いました。
商業ベースには乗りにくい作品ですから。
そのへんが、反映されたのかも。乗っ取られつつも。

送別会、まだ赴任まで間がありますので、お誘いしたら、と伝えてみます。
107 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)23時03分17秒
>101 名無し香辛料様
大と変の間の「っ」で、楽しんでいただいたお気持ち、伝わってきます。
私も嬉しいです。
でもキャラなんて作ってないんです、ほんと、口寄せですから。
一発屋で終わると思います。その一発も、テキサスヒットですし。

間違いだったら手をついてお詫びしなければなりませんが、もしかして、
お名前中の「香辛料」って、赤くて辛い液体でしょうか?
だとしたら、五章の「魔法の絨毯」のくだりをビジュアルに出来ないかと、
ひそかに14440ヒットを狙ってるのが私だということは、内緒にして
おかなければ。
冗談ですよ。気にしないで下さい。
でももし課題の合間にスラスラっと気分転換に書いていただけるようなら、
それこそ、気が向いたときにでもよろしくお願いします。
しょっちゅうお邪魔させてもらってますので、ほんとに気が向いたときに。
もし叶ったら、物凄い勢いで壁紙に設定するかもしれません。
ほんとにあそこは書き終えるのが淋しかった。

掲示板の方には、改めてご挨拶に伺います。どうかよろしくお伝えください。
108 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)23時04分32秒
>102 親愛なるじゃない様
自分のスレッドで、このレスポンスをいただけた幸せを今、噛み締めています。
そして牛のように反芻しています。

名無し香辛料さんもたぶんそうだと思うんですけど、石川さん推しの方に
評価していただけて本当によかった。
好きな人を、納得できないいじり方されたら、腹立たしいですもんね。
いくら虚構とはいえ。
あ、早く服、着て下さい。風邪など召されませんよう。

これからもお世話になりますので、よろしくお願いします。
109 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)23時05分46秒
>103 リエット様
よっすぃ〜面白い、と思っていただけたことは、すごく嬉しいかもしれません。
人間味、みたいなものを拙いなりに各人に表したかった。
少しはお伝えできたみたいですね。よかったです。

皆様本当にありがとうございます。感謝いたします。

続編というほどのものの用意はありません。ちょこっと番外編その1です。
110 名前:再びのリストランテ 投稿日:2002年11月11日(月)23時07分10秒
あれから罰金はまた少し増えた。でもまだちょっと足りないかな?
だって先生、最近やっと、あんまり言わなくなったから。
「大丈夫、もし足りなかったら、何回もゴメンって言うから」
だから、行こうよ。そんな穏やかな強引さに寄り添い、励まされて、
私は今日までがんばって生きてこられた。

「よっすぃ〜!」
店内に一歩入ったとたんに、矢口さんの声が響く。
「久しぶり〜!会いたかったよ〜」
あの日のように先生に飛び込もうとする矢口さんをやんわり制して、
先生が言った。
111 名前:再びのリストランテ 投稿日:2002年11月11日(月)23時08分31秒
「矢口さん、今日は、彼女連れなんですよ」
先生越しに、矢口さんと目が合う。驚いた顔。軽く、頭を下げる。
「こないだはそんなこと言ってなかったじゃん」
そう、ここからの、帰り道だった。
あの日。ほんの少し前のことなのに、もう何年も一緒にいる気がする。

「サービス、してくださいね」
「え〜、ヤダ。何だよ〜二人して幸せそうな顔して」
「妬かない妬かない」

ちょっと拗ねたままの矢口さんに再び、席へと案内される。
あの日と、同じ席。
「どうぞ。思い出の場所で存分にイチャイチャして下さい」
112 名前:再びのリストランテ 投稿日:2002年11月11日(月)23時09分38秒
あの日見た光景が目の前にひろがり、オーダーが済む。
「実は今日は、彼女のおごりなんです」
「マジで!石川さん、いいの?こんな甲斐性なしで」
笑って、頷く。だって元々は先生のものだし、ね。
「そんな大事なこと、先に言ってよね〜、矢口ミスっちゃたじゃん」
トランプマンのような仕草で色違いのコースターを入れ替える。
そっか、やっぱり先生の方のメニューには値段が書いてあるんだ。
立ち去り際、矢口さんは言ってくれた。
「なんかさ、いいカンジだよね。矢口もいい人探すわ」
矢口さん、探さなくても、きっと出会えますよ。空の手のひらの中で。
113 名前:再びのリストランテ 投稿日:2002年11月11日(月)23時11分23秒
決して私たちを裏切らない料理と、祝福してくれている矢口さん。
何気なく人を喜ばせる人間が、本物のプロなんだ。

チェックを頼む。やがて見せられた紙切れにある数字に、
私は自分の目を疑う。
「あの、サービス、してもらい過ぎじゃないですか?」
「ううん、デザートだけ。なんで?」
「だって・・・」

先生と矢口さんが、私を見て笑っている。
「梨華ちゃん、うちのMの意味、知らないでしょ?」
やっぱりいつの間にか、ちゃんと名前を変換してる。
「真里の、M?じゃないですよね?」
私もさっき、教えてもらった。
長いお付き合いになりそうな気がしたから。
「キャハハハ、なんでただの店員の頭文字とるかな」
お腹を抱えるようにして笑っている矢口さんの後を、先生が受けた。
114 名前:再びのリストランテ 投稿日:2002年11月11日(月)23時12分32秒
「モーニングサービス、ってあるでしょ」
「喫茶店の?」
「そう、あんなふうに気軽に、おいしい料理を楽しんでほしい、
そういう意味なんだよ。モーニングの、M」

余った予算で、また来ますから。
私たちは店を出て、手をつないで家路をたどった。
115 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月11日(月)23時13分27秒
番外編その1完結です。
嘘のように、連続で着地が決まったような気がするのは、自惚れだろうか。
梨華ちゃん、ありがとう梨華ちゃん。降りてきてくれて。

連作短編のような形で、いくつかお届けできそうです。
でも、今度こそ、少し休ませてよ、梨華ちゃん。
だって私、タバコの本数、増 え す ぎ。
116 名前:100です 投稿日:2002年11月12日(火)00時03分18秒
番外編、待っておりました。
予想以上の速さに大感激です。今回も口寄せ、素晴らしいの一言ですね。
送別会の件、彼女達によしなにお伝え下さい(w
連作短編ということですが、名無し空手さんのタバコの本数も心配です・・
どうか無理をなさらぬよう、ゆっくりと進めて下さい。
117 名前:名無し読者M 投稿日:2002年11月12日(火)09時45分28秒
街を歩いていて、ふと見かけたような、
それでいて見ているこちらも温かいものを感じられる、
なんだかそんな眺めを感じさせてくれる素敵な場面ですね。
118 名前:番外編その2 早春賦 投稿日:2002年11月14日(木)20時01分18秒
鮮やかな空の青を切り裂きながら、中澤先生を乗せて北へ向かう
飛行機が、少しずつ小さくなっていく。
それを見届けた帰り、私たちはあの公園を並んで歩いていた。
先生を好きだ、そう気づいた公園。

この町に春は姿を見せはじめ、この公園にもその気配があちこちに
感じられた。穏やかな日差しが、人々を薄着にしている。
私たちも、薄物を一枚羽織っているくらい。
中澤先生の着く町にも、遅い春の足音は聞こえているのかな?
119 名前:早春賦 投稿日:2002年11月14日(木)20時03分00秒
「送別会、したかったね」
みんな忙しいのに、ええわ。気持ちだけもらっとくから。
「うん。ああ見えて、シャイだからね」
だからきっと、泣き顔を見られたくなかったんだろう。

「遊びにおいで、って」
「え?」
「中澤先生。二人で、遊びにおいでって。その・・・」
「なに?」
「挨拶に、来いって」
120 名前:早春賦 投稿日:2002年11月14日(木)20時04分19秒
あいさつ?
「話したの?」
「いや。急にエロ旦那じゃなくなったし、それに、実はあの時・・・」
「やっぱり、当直じゃなかったんだ」
「あ・・・、なんだ、知ってたの?」
「ううん、何となくそうじゃないかな、って思ってただけ」

あんたら見てたら、すぐ分かるわ。
そう中澤先生は言ったらしい。
誰が何て言おうと、裕ちゃんはあんたらの味方やから、な。
そんな言葉を残して、中澤先生は、旅立った。
何もない春の岬はその名医を、きっと暖かく迎えることだろう。
121 名前:早春賦 投稿日:2002年11月14日(木)20時05分13秒
そこに入れた手につかまって歩きながら、ずっと気になっていた。
先生の不自然にふくらんだポケット。私から遠い方の。
いつもとは少し違う。

「ねえ、もうカイロ、持ってないんだよね?」
「春だからね」
白衣の時は、一年中。
「じゃあ今日は、そっちのポケット、何が入ってるの?」

とぼける先生を追い詰めた。
「私に、言えないもの?」
「いや、別にそういうわけじゃないんだけど・・・」
122 名前:早春賦 投稿日:2002年11月14日(木)20時07分08秒
立ち止まった先生の右手が、その中身をサルベージする。
よく見る、あれだ。あのケース。
「指輪?」
「うん。ほんとはもっと早く、渡したかったんだけど」
あまりにもベタだから。書いてる人が、本編ではオクラ入りさせた。
だけど、どこまでもベタは続く。まるで線路のように。

「受け取って、もらえるかな?」
頷く。先生が、少し迷って私の左手をとる。薬指が、リングのトンネルを
通り抜け、行き止まる。
「よかった、ぴったりで。」
「ありがとう」
軽く抱きしめられちゃったりする。キスなんかされちゃったりもする。
そしてやっぱり再び、その胸に引き寄せられる。
私は私を、先生の匂いで満たす。
123 名前:早春賦 投稿日:2002年11月14日(木)20時08分13秒
「先生は、浮気しても、匂いではバレないね」
病院の、消毒液の匂い。普段着でも、一番それが匂う。
「え、浮気なんて、そんなの、しないよ」

先生、それは私のセリフなんだよ。
これも実は、どっかで使いたかったんだって。
いいよね、番外編だもん。少しくらい遊んだって。

春とは名ばかりの風が、二人をからかうように通り過ぎていった。
124 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月14日(木)20時09分16秒
番外編その2完結。

・・・やっちゃった。
人手に渡った生家を、物陰から見ているような気持ちです。
書き込んじゃったら、取り返しがつかない。

>116 名無し読者様
送別会は、このようなことになったそうです。
それから、ご心配いただいてありがとうございました。
だいぶ元の本数に戻りました。

>117 名無し読者M様
ありがとうございます。そこで心の保温スイッチを連打!連打!ですよ。
でも、私も試みていますが、難しいです。

次回、その3です。見捨てないで。次あたりでお役ゴメンの予定です。
125 名前:名無し香辛料 投稿日:2002年11月14日(木)21時24分08秒
ん〜。心があったかくなりました。どうもありがとうございます。
>あまりにもベタだから。書いてる人が、本編ではオクラ入りさせた。
>いいよね、番外編だもん。少しくらい遊んだって。
すっごい笑いました(w

香辛料はその赤い液体で大正解です。いらっしゃって下さってたんですね。
嬉しいです。ありがとうございます。

絨毯のシーン。私も甘くて大好きです。
キリ番取らなくても、きっとみんなが忘れた頃にビジュアル化するかもしれません(w
よければ待っててください。

更新楽しみにしています。お役ゴメンだなんて言わずに。
126 名前:116です 投稿日:2002年11月15日(金)00時23分57秒
番外編その2、完結お疲れ様でした。

>「え、浮気なんて、そんなの、しないよ」
>先生、それは私のセリフなんだよ。
>これも実は、どっかで使いたかったんだって。
>いいよね、番外編だもん。少しくらい遊んだって。

スイマセン、PCにコーヒーぶちまけそうになりました(w
今回はニヤニヤしながら読みました。
次回、番外編その3、楽しみにしております。
お役ゴメンですか・・寂しいです・・
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月15日(金)16時50分01秒
某板の感想スレを見てやって参りました。
今日は寒いですが、作品に漂う幸せな空気にすっかり温められました。
番外編の遊び心、かなり好きです♪
次回も楽しみに待ってます。
128 名前:名無し空手 投稿日:2002年11月16日(土)14時09分10秒
よかった、皆さんお優しい方ばかりで。
覗き見た生家で、幸せな家族が暮らしていたような、そんな気持ちです。

>125 名無し香辛料様
ああ、ものすごい楽しみです。待つ身の方が気楽でいいです。
よろしくお願いします。それから、いろいろありがとう。

>126 名無し読者様
ご無事ですか?私も「親愛なる友達へ(要英訳)」シリーズ一連の作品などで、
何度かやりそうになりました。
いつもありがとうございます。今までずいぶん励ましていただきました。

>127 名無し読者様
お運びいただいて、ありがとうございます。
えっ!と思って確認しに行って、びっくりしました。
あちらで感想いただいた方、あわせてお礼申し上げます。
関係ないですが、私の住む町は、昨日、真冬日でした。
皆さんに暖かくなっていただけて、口寄せ冥利に尽きます。

淋しいのは私も同じですが、更新はこれが最後になります。
予定はもちろん未定ですが、しばらくは読者に戻らせていただきます。
皆様、ほんとうにありがとうございました。

番外編その3、とおまけです。
129 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時11分01秒
青い空が少し見えてきた。
右手を海に、二人を乗せたレンタカーはゆっくりと走る。
少しくらい混んでも、ちっとも構わないのに。
信号すらあまりない道を、液体のように車は流れる。

ほら。先生の指差した先に、風の岬が見えた。
「先に、寄って行こうか」
車を止め、強い風に背中を押され、あるいは行く手を阻まれながら、
その先端に向かって歩く。
130 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時12分13秒
風の岬のその先に立つ。陸尽き、海始まる岬。
あふれ出し、尽くことのない先生への思い。
いつかのように風からかばって、先生が私を包んでくれる。
まわされた手に手を重ねる。強く握る。
この世に永遠は、ある。それは、この腕の中にある。

二人で、四方から吹きつける風を切り裂く。
私は、飛ばされたりしない。そしてこの手を離しはしない。
つまらない価値観だけ、この強い風に吹かれてしまえばいい。

「先生。好きだよ」
「うん。・・・知ってるよ」
照れる先生に凭れた。抱きとめてくれる先生に甘えて、長い間
そうしていた。
131 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時13分53秒
やがてその風に導かれて、中澤先生の診療所へ着く。
「よう来たな。ちょっとそっちで待ってて」
隣接する広い家が、中澤先生の住まい。
お手伝いさんらしき人を紹介されて、お邪魔させてもらった。

金髪。関西弁。何もない町。
「中澤先生、ね」
「ん?」
「浮いてる、よね」
笑い出したのは、お茶を淹れてくれているお手伝いさん。

赴任当初、その風貌に大手新聞社の地方版が、取材に来た。
社名をカサに着た、あまりの記者の高慢さに、中澤先生はその途中で
「うっさい、帰れ!」と怒鳴ったらしい。
後日掲載された悪意の見え隠れする記事は、人々の足を遠ざけるのに
充分すぎた。
132 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時15分31秒
「今は、笑い話ですけどね」
そう、今は、笑い話。曲がり角ごとに道を尋ねた、地元の人たちから
預かったお土産で、後部座席はいっぱいだったから。

「またその話かいな。もう、意味なく偉そうにしてるヤツが一番嫌い
やねん。そんなもん、しょうもない記事書いてる人間より、雨の日も
風の日も黙って新聞配ってる人間の方が、よっぽど偉いっちゅうねん」
なあ、石川。診察を終えて来たらしい中澤先生に、思い出し怒り
しながらそう言われて、頷いた。
133 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時17分06秒
「今日は、飲ましてもらうで。そのためにあんたら呼んだし」
中澤先生が、コードレス電話の子機を、先生に渡す。
広い家のどこにいても、すぐに電話が取れるようになっている。
医者は24時間営業、年中無休。
先生の口ぐせは、この名医の移しなのかもしれない。
食事とビールの用意をして、お手伝いさんが帰っていった。
北の、短い夏の一日が、静かに暮れようとしている。
134 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時19分19秒
中澤先生は、ほんとゴキゲン。つられて私たちの食も進む。
「夏らしいこと、まだいっこもしてへんねん。花火、しようや」

涼しいというより肌寒い庭が、夏の終わりを示している。
先生が、私と中澤先生から離れ、吹き上げ花火に火をつけた。
次々に暗闇のスクリーンを彩る、儚い、光のシュプール。
映し出される、先生の半身。
そのどちらもが、私を魅了する。

「石川」
我に返ると、まっすぐな中澤先生の目が、私を射抜いていた。
「はい」
「・・・幸せか?」
「はい!」
135 名前:幸せですか? 投稿日:2002年11月16日(土)14時20分50秒
そら、よかった。裕ちゃん安心やわ。
中澤先生は私の頭をくしゃっと撫でてから、立ち上がった。
「お〜いよっさん、こっちで手持ち花火、やろ!」
そして、瞬く間に残った最後の一本。

「二人で、一緒にやりいな」
中澤先生の微笑みに見守られ、二人で一つの花火を手にした。
「ずっとずっと、消えない花火にしようね」
耳元で、小さな小さな声が聞こえる。

消え残る煙が夏を連れて、秋へと溶けていった。
136 名前:番外編その0 君と出逢ってから 投稿日:2002年11月16日(土)14時23分17秒
吉澤先生が、内科に戻ってきた。
一見、普段どおりなんだけど、何かが、どこかがおかしい。
何だろ。3ヶ月前と何かが違うんだけど。

「先生」
「ん?」
「さっき、おはようって、言いましたよね?」
「言ったと思うけど、なんで?」
「触りませんでしたよね?私のおしり」
「ああ」

違和感があるくらい、毎日触られていたとは思わなかったな。
先生は一点を見つめて、手にしたペンをいじりながら、考えこんでる。
やがて何かを決めたように、私に向き直った。
137 名前:君と出逢ってから 投稿日:2002年11月16日(土)14時24分55秒
「好きな人がね、いるから」
「・・・付き合ってるんですか?」
「いや、片想いだけど。だから」

内科のナースは、みんな知ってる。
先生がわざとエロ旦那の仮面をかぶっていることを。
えらそうな医者も中にはいるから。
私たちが話しやすい雰囲気を作って。
ナースのストレスを吸い取って。働きやすい環境にしてくれて。
頼まれてもいないのに、先生は職場の潤滑油になろうとしてるんだって。
患者さんが早く元気になれるように、それだけを考えてるって。
でも、そんな先生の澱は、いったいどこへ行くんだろう。
その人と、うまくいくといいんだけど。
138 名前:君と出逢ってから 投稿日:2002年11月16日(土)14時26分19秒
電話がなった。中澤先生が、私たちを呼ぶ。
「お〜い、そこの二人。小児科で看護婦倒れてんて。ちょっと見てきて」
「はい」
返事が重なった。
「あ、あとで連絡するから、柴ちゃんはそれから来てくれればいいから」

そう言って部屋を出て行く背中を見つめた。
先生に愛された人は、きっと幸せになれるだろう。
139 名前:Farewell! 投稿日:2002年11月16日(土)14時28分17秒
さっき、石川さんが、「この後のことは、内緒なの。ゴメンね。またいつか、
どこかで会えるといいね。元気でね。グッチャー!」そう言って、去って
行きました。暖かい手にひかれて。
心配ないからね!時折振り返って、手を振ってくれるふたつの背中が、雄弁に
そう語っていました。

私も、名無しの一読者に戻ります。
再び、石川さんに出会えるまで。
彼女に、また皆様に再びお会いできるかどうか。
それはきっと空の手のひらの中にあります。

そのときまで、二人が、そして皆様が、どうか幸せでありますように。

なお、引き続きご指導ご鞭撻のほど、お手すきでしたらよろしくお願いします。
調子に乗って、また霊媒体質になるかもしれませんので。
お返事できないのが心苦しいところですが。だって、カッコ悪いし。

管理人様、お世話になりました。楽しい経験をさせていただきました。

最後になりましたが、お世話になった皆様へ、本当にありがとうございました。
                               
                                名無し空手
140 名前:名無し香辛料 投稿日:2002年11月16日(土)15時20分10秒
完結おめでとうございます。
番外編もおまけも、おいしくいただきました。
もうね、なんというか吉澤先生の石川さんを見つめる目というか
大事にしてる感が、本当読んでて幸せで。
とにかく何の事件も起こさず、幸せだけを追い続けたこのお話が大好きです。

できる事ならば、また名無し空手さんの作品を読ませていただきたいです。
その日を密かに待ち続けています。良い作品を本当にありがとうございました。

最後に、
>先生に愛された人は、きっと幸せになれるだろう。
私も心からそう思います。
141 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月16日(土)18時50分29秒
完結及び番外編お疲れさまでした。

皆さん、素晴らしいレスをされているので、ROMってましたが
最後にレスさせていただきます。

小説と言う虚構の世界ですから、痛いのも、暗いのも、何でも有りかなと言う
気もしますが、やはり読んでいる人が幸せな気持ちになれる作品はいつ読んでも
素晴らしいと思います。

本編、番外編を通して、人間に対する愛に貫かれたタッチには感服です。

又、誰かが憑依されたら、次回作お願いします。
142 名前:名無し読者M 投稿日:2002年11月17日(日)17時56分15秒
番外編とおまけも読ませていただきました。
読み終わり、とても心地好い気分に浸っております。
またいつの日か、名無し空手さんに降りてきてくれることを願って止みません。
まだ、旅は終わらないでしょうから・・・
143 名前:CA 投稿日:2002年11月18日(月)20時49分23秒
脱稿、お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。
一気に読ませていただいたのですが、時間をまったく感じませんでした。

>皆が優しければ、この世の「悲しみ」は、きっと一つづつ、「幸せ」に退治されるのに。
あとがきのこの文を読んで、この作品に流れる暖かい心地よさと、
名無し空手さんの人柄が分かったような気がします。
(すみません。偉そうな事を…)
また、お会いできる事を願いつつ、失礼します。
144 名前:126です 投稿日:2002年11月22日(金)02時02分23秒
完結、お疲れ様でした。
しばらく留守にしていたら、石川さんが去って行ってしまわれました・・
でも、すぐそばに暖かくて大きな手がいつもあるようなので、安心です(w

こんなに幸せな、優しいぬくもりに包まれたような作品は、本当に久しぶり
です。読んでいると、心の澱みが少しずつ浄化されて行くかのようでした。
数あるCPの中でも、私の中ではいしよしが一番好きなCPです。
この二人には、例え小説の中であろうとも、幸せになって欲しい・・
それが私の唯一の、切実なる勝手な願いです。
名無し空手さんの瑞々しい描写、美しい表現力。数あるいしよし作品の
中でも、本当に素晴らしい作品だと思っています。

もしまた、どなたかが憑依されて、新しいストーリーが紡ぎ出される時が
来たら、またどこまでも付いて行かせていただきます。
145 名前:なんにも言わずにI LOVE YOU 投稿日:2002年12月03日(火)00時39分13秒
たまに泊まりがけの学会も、悪くない。
少々不謹慎だけれど、まあ、息抜きってヤツだ。
受付で渡された資料に目を通していると、どこからか懐かしい声。
「よっさんも、来てたんか」
一瞬にして今夜の予定が決定した。

あっという間に3軒目。中澤先生は、知った街を歩くかのように、
躊躇せずドアを開ける。落ち着いたいい店。酒飲みの嗅覚はすごい。
絵に描いたような初老のバーテンが、カウンターを勧めてくれた。
先生はまだ飲むつもりらしい。気づかれないようにペリエを頼む。
このまま先生に付き合ったら、きっと大変な目に合う。
146 名前:なんにも言わずにI LOVE YOU 投稿日:2002年12月03日(火)00時41分37秒
「ひとつ、聞いてもええか?」
少し目が据わってはいるけれど、先生の口調は普段とあまり変わらない。
「ひとつと言わずに、いくつでもどうぞ」
やや、間があった。
「今まで好きになった人も、女の子ばっかりか?」

梨華ちゃんに出会うまでの、実際より、はるか彼方に感じる昔を辿る。
「いえ、これまでは、普通の恋愛、してきましたよ」
便宜的に普通と言ったけれど、現状が普通じゃないとは、実は少しも
思っていない。だって、好きなんだ。ただそれだけなんだ。

初めてのキス。初めての夜。初めての朝。
幾つものキス。幾つもの夜。幾つもの朝。
365の朝と、昼と、夜。
出会ってから、いくつかの季節を経た今も、それらすべてを鮮烈に
思い出せる。梨華ちゃんが、好きなんだ。ただそれだけなんだ。
147 名前:なんにも言わずにI LOVE YOU 投稿日:2002年12月03日(火)00時43分57秒
その気持ちにブレーキをかけることなんて、出来ない。
普通とか普通じゃないとか、誰が決めるんだ?
梨華ちゃんを好きなことに、誰かの許しが必要なの?

「そうか。まあ、ええ子にしてたら、ええことあるで」
神様はそら気まぐれやけど、そんなに意地の悪いヤツやないから。
やっと少しあやしくなってきた呂律で、先生は言った。
「はい、いい子にしてます。二人で」
誰に許されなくても、別に構わない。
ただこの気持ちと梨華ちゃんを、大切に守っていく。
148 名前:なんにも言わずにI LOVE YOU 投稿日:2002年12月03日(火)00時46分02秒
先生を部屋まで送って、醒めつつある酔いを持て余しながら、ひとり
ベッドに寝転がった。もうすぐ、日付が変わる。
梨華ちゃんは、夜勤だったな。きっとがんばってるんだろうな。

そうだ、手紙を書こう。手紙が着くより先に、帰っちゃうんだけど。
恥ずかしくて、面と向かっては、あまり言えないこと。
酔ってるから、少しくらいキザでもいいんだ。飯田でいいんだ。いや。

『愛してるよ』

大きな字で書いて、口づけで封をする。切手買いに行かなきゃ。

この思い、届けて下さい。どうかよろしく。
ポストにお願いしながら、封筒を差し込む。
「まかせなさい!」返事の代わりにコトン、と音がした。
149 名前:帰還のご挨拶 投稿日:2002年12月03日(火)00時48分16秒
えー、格好悪いことこの上ないのですが、戻ってまいりました。
レスポンスくださった皆様、本当にありがとうございます。

>140 名無し香辛料様
今回も、ご期待に添えましたでしょうか?
待ち続けていただくまでもなく、ノコノコ戻ってきてしまいました。
修羅の道が、私を待っているのかもしれません(いや、冗談じゃなく)。
そのときはまた、癒してください。今後ともよろしくお願いします。

>141 ひとみんこ様
はじめまして。レスポンスありがとうございます。
痛みの中に一条の光を描き出す、そんな素晴らしい作品も、たくさんあります。
残念ながら、私にはその筆力がありませんので、精一杯幸せを追いかけました。
痛いこと、辛いこと、悲しいことなんて、現実だけで充分だということ、
また、人間に対する愛は、現実の娘。さんたちから教えていただきました。
次回作、ではないんですが、今後ともよろしくお願いします。
150 名前:帰還のご挨拶 投稿日:2002年12月03日(火)00時49分14秒
>142 名無し読者M様
いつもありがとうございます。
えー、案外と短い旅でございました。きっとこれからが、長いのでしょう。
そのご気分を維持していただけますよう、努力いたします。
今後ともよろしくお願いします。

>143 CA様
お忙しい中、お仕事中に読んでくださって、ありがとうございます。
あ、そんなことは一言もおっしゃっていませんね。失礼しました。
時間を感じられなかったのは、きっと短いせいです。
何を書いても短くなってしまうのは、私の最大の悪い癖です。
現実には不実ばかりの人間で、全くお恥ずかしい限りですが、
今後とも、よろしくお願いします。
151 名前:帰還のご挨拶 投稿日:2002年12月03日(火)00時50分53秒
>144 名無し読者様 
再度申し上げるまでもなく、現実の二人の輝きあらばこそ、これらは成立
し得ました。私が書きながら味わえたカタルシスをお伝えできていれば、
本当に幸せに思います。
また、虚構にあってさえ、誰もが幸せであって欲しいという気持ちは
私も同じで、それだけは今後も変わらないと思います。
お褒めいただきまして、ありがとうございます。
よろしければ、これからもお付き合いください。


あれから、掌編というのにも足りない、指の腹編とでも言うべき拙文を
2つほどしたためさせていただきました。
お借りしている場所の容量を残したままなことが心残りで、本当は
それをここでやるか、最初に森に立てるべきだったと後悔しています。
本当に申し訳ございません。
152 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
153 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月03日(火)09時25分52秒
名無し空手さん

今回は、ひーさまが憑依された様で、嬉しい限りです。
又、近々にチャミさまが憑依されますよ、きっと。(w

前レスで仰っている事、全く同感です。
普遍的な話では無く、娘。メンバーを仮想キャラクターとして使うからには
例えその内容が、痛く、暗い物であっても、何処かに読む側に
救いが無くては、読後、嫌な思いが残るだけです。
全編にわたって、純愛を装いながら、最後の土壇場で、読者に絶望感を与えるような
手法を取る小手先のテクニックを見かけます。
私も、現在、痛い目の物を書いているので、えらそうな事は言えませんが。

又、次回、幸せになれる作品、お待ちしています。

154 名前:144です 投稿日:2002年12月03日(火)17時09分14秒
>名無し空手さま
おかえりなさい!うぉ〜、何気なく来たら更新されてる〜!
また素敵なお話、ありがとうございました。
今回は先生視点ですか。う〜ん、先生視点もちょっぴり期待してましたので、非常に
嬉しいです。「指の腹編」2作目、お待ちしております。

「明けない夜はない」「越えられない過去は無い」。
何かのドラマで出て来たセリフです。
例えどんなに絶望の淵に追い込まれようとも、最後に残るのは希望であり、
痛くてもその中に一筋の光・未来が見えれば、私はそれも「幸せ」なのだと思います。
架空の設定だからこそ、よりリアルにストーリーも動き出す・・そんなこともある
んじゃないかと思います。
本当に伝えたいものがあれば、フィクションでもしっかり伝わります。これからも、
名無し空手さんのいろんな「幸せのカタチ」を読ませていただきたい、そう思って
おります。ずっとお付き合いさせて下さい。

155 名前:いしよし読者。 投稿日:2002年12月03日(火)21時43分34秒
待ってましたよw
貴方様の文体、すんげぇ好きです。
あまあまな幸せ路線だけでどこまで行けるかチャレンジして欲しいです。

そんな感じのがあったって不自然じゃないですもんね。
これからも頑張ってください。
156 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)02時49分27秒
自分はあなたの小説の登場人物の石川さんと吉澤さんよりも
多分あなたが仰っている作者さんの石川さんと吉澤さんのほうがリアリティーを感じてしまいます。
自分はあなたの小説が大好きです。だからこそこの場で特定の作者の話をされるのはショックでした。
羊にも感想スレッドなどがあるのでそちらでこういう話をしてはいかがでしょうか?
帰還は素直にうれしいです。スレ汚しすいませんでした。
157 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)15時34分09秒
152のレスに煽られてる時点で厨房であることは承知で一言。
悪夢は人それぞれ違います。
べたべたとひっつくのが悪夢と考える方もいます。
簡単に幸せに行き着くのは害基地の慰みとは言えないのでしょうか?

勝手に連れ戻される人の立場も考えてください。
158 名前:名無し空手 投稿日:2002年12月04日(水)17時35分16秒
すいません。今猛烈に反省しています。とりあえずほんとにごめんなさい。
159 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)18時18分17秒
作者さん。
何も謝る必要なんて有りません、ましてや反省なんてしないで下さい。
スレを立てて、作品を発表して、その作品についての関連記事を書くのは自由です。
それに対して、自分の曲がった性格を棚に上げて煽る性格破綻者がいるだけの事です。
世の中が幸せになるのをやっかんでいる、悲しいヤシです。
連れ戻されるのが嫌なら読まなければ良いのです。
害基地が良いのなら、そちらへ行けば良いのです。
悪夢が見たけりゃ、その様な作品を読めば良いのです。


信念を持って、持論を貫いてください。
私は、作者さんを支持します。
160 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)20時04分30秒
>>159
素敵な煽りですね
161 名前:名無し読者M 投稿日:2002年12月04日(水)21時35分34秒
作者様、お帰りなさいませ。
そして、再びここの空気に触れさせていただけること、感謝いたします。

ここの中澤先生の話を聞いたとき、かつて読んだことのあった
「南の無医村の島に行く中澤先生」の話がもう一度読みたくなり、
探し出して再読したりしておりました。

さて、旅の続きに後ろからこっそりと付いて行こうと思いますので、
寄り道などしながらごゆるりとお進みくださいませ。
162 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月05日(木)02時08分35秒
>>159
どこを縦読みすればいいのでせう
>>152
削除依頼出すなら最初から言うなよ
他人が出したの?そんな読者しかいないってことか
163 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月05日(木)19時09分16秒
確かに>>152を読んだ時は、猛烈にがっかりしたけど、
今は落ち込むより、あなたの小説を楽しみにしている
読者さんのために、頑張って下さい。
164 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月06日(金)08時01分15秒
作者たん、粘着の言うことなんか気にするな。
気にするな言うのが無理かもだけど、気にするな。
良い作品を掲載することで全て分かるだろう。
165 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月09日(月)21時42分34秒
作者さん。
もし間違ってたらごめんなさい、以前、魚系の作品書いていらっしゃいませんでした?
文体が似ているので。
166 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月11日(水)20時33分56秒
>>165
時々作者が誰なのかって聞く人がいるけど誰でもいいじゃん。
作者が名無しで書き込みしてるんだからさ。
そうやって詮索するのはどうかと思うよ。
167 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月12日(木)06時13分51秒
>>165
とりあえず、俺が言うのもなんだけど、違うと思うよ。そして>>166に激しく同意。
スレ汚し申し訳。作者さん続きお待ちしてまっせ。
168 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月12日(木)08時01分26秒
どうもここは粘着が多いな。
>165
誰でも良いだろうが。

>166,167
一々、くだらんレス付けんじゃないよ。

と言いつつ、レス付けてるオレも粘着か?
169 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月12日(木)12時29分42秒
はい、あなたも粘着です。
でも自分を含めてこの粘着たちは作者さんの復活を願っている者達です。
1レス目のメール欄の言葉が泣ける……
170 名前:おわび 投稿日:2002年12月12日(木)19時11分55秒
ほんとうにすいませんでした。
そしてこのアフォを、それでも応援してくださった皆様、
ありがとうございます。ほんとうにありがとうございます。

肉親を、連れ戻せずに「向こう」へ一人で行かせてしまった
経験は、ある時私を一瞬で子どもじみさせてしまいます。
黙って100レス書け、という自分が、今回そんな自分に
負けてしまいました。

せっかく皆さんがその気配りあふれる温かいレスで育てて
下さったスレッドを、荒野にしてしまった。
わが身の愚かさをいまさら嘆いています。不快な思いをされた方、
申し訳ありませんでした。ほんとうにごめんなさい。

取り返しは、もうつきませんので、新しいものをお届けする
努力によって、せめて償いたいと考えています。
どこかで、幸せクレイジーが、ありえない話を拙く綴っていたら、
それはきっと私です。
お許しいただけるなら、また是非お会いしたいです。

なお、削除依頼出したのは、私です。読んで下さっている方では
ありません。また、本当にこれが初めて書いた作り話です。

寒さ厳しき折、皆様御身御大切に。良いお年をお迎えください。
171 名前:名無し空手 投稿日:2002年12月12日(木)19時14分20秒
とりあえず自分をさらしage。

恥さらしついでに、白板作者フリー2集目内「夢の中」
某板いしよし「短編小説スレ」内「湯煙温泉」は、私が書いたものです。

本当にすいませんでした。
172 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月12日(木)20時36分02秒
真っ先にあのレスに対して反抗の意を示した者です。
あの時は感情的になって全く書き手の気持ちを考えない最低のレスをしました。
すいませんでした。
作者さんの小説は本当に好きです。
わがままながら、またあなたの小説に会える事を願っています。
もしかしたらすでに出会えているのかもしれません。
この後にも色々なレスがつくと思います。
それでもこの愚かな只の読み手はあなたのことを応援しています。
本当にすいませんでした。
173 名前:名無し香辛料 投稿日:2002年12月12日(木)22時15分10秒
私は、空手さんの作品のファンです。空手さんの作品が読みたいです。
どうか穏やかに執筆できるよう、私も陰ながら応援しています。
もうすぐにでも、応援の品を届けさせていただきます。

次回作、がんがってください。楽しみにしてます!
174 名前:154 投稿日:2002年12月12日(木)23時25分44秒
>名無し空手さま
お帰りなさい。戻って来ていただけて、本当に嬉しいです。
過ぎたことはもう何も言いますまい。
また物語を紡ぎ出して下さるだけで、私は何も望みません。
名無し空手さんが幸せな余韻を醸し出して下さるのならば、私は何処へでも
追いかけて行きますよ。ずっとお付き合いさせて下さい。

それから・・
「湯煙温泉」は名無し空手さんだったんですねw
いやぁ〜、ちっとも気付きませんでしたよ!
あちらもまた楽しいお話ですよね。
175 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月16日(月)08時12分06秒
「湯煙温泉」が見つからん、どこに有るかおせーて。
176 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)19時43分20秒
ttp://jbbs.shitaraba.com/music/bbs/read.cgi?BBS=605&KEY=1014474265&STARTEND=101
>175 
ここの最後です。

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