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言いたくもないコト

1 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時42分13秒
石黒×福田。
ほぼリアル設定に近く、ほぼ現在設定に近い予定なので
不倫となってしまう予定。
2 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月08日(金)21時43分06秒
…っていうか、だからね。
逢う気なんてもともと、もう、なかったわけ。
こんなのって、おかしいと思うし。
「ただれた関係」とか、そういう
パターンな表現する気はまあ、ないんだけど。
でも、どうかしてるとは思うよ、自分でも。

久しぶりに電話があったとき、逢うの、
すんなりOKしてたからね…自分でも不思議だ。
3 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時43分42秒
「…最近、どう?」

って、訊かれてもさ。
別に、どうもこうもないわけよ。

何も別に、変わってないよ、あたしは。
彩っぺは、…ちょっと、太った…よね。
「幸せ太り」ってやつなのかな、これは、さ。
鼻ピアスは…出かけるときは、今でもするのか。
穴、ふさがっちゃったりすることってないのかな。
4 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時44分23秒
「…別に。そっちは?」
「…相変わらず。…ってか」
「…何よ」
「『何よ』って、こっちのセリフ。
明日香も相変わらずってーか…わかってねぇなぁ」
「…何がぁ」

相変わらずは、あんたのほうだ。
そのキツいものの言い方。
なんだよ、今さら呼び出しておいて。
その言い方はなんなんだよ。
5 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時45分09秒
「…ま、そーゆートコも、明日香らしいけどさ。
そーゆー子だってコトはもう、とっくに知ってるし」
「…あー、そーですか」
「…『相変わらず』ってのも、よーくわかったし」
「…あー、そー」

…なんだかなぁ。
…どうしてあたしも、こういうヒトに逢いに、
のこのこ出かけてくるかな。

…なんのために?
6 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時45分42秒
「…ま、じゃあ、行こっか」
「…どこへ」
「…決まってんだろー、もー」

…決まってるのか!
7 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時46分27秒
「ね、彩っぺ、さぁ。」
「ん、なに」

さっきから、逢ったときから。
ずっと気になってはいたんだけど。

そのファッションは…いわゆるギャル系?
…いま、いくつだったっけ。あたしより、6歳上だったっけ。
…ってか、ルーズソックス、ですか。

「そういう格好でいつも、子供連れて歩いたりしてんのかな」
「えー、そうだよ。なんかおかしい?」
「…いや、別に」
8 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時47分00秒
旦那さんと歩くときも、そうなのかな。
…たぶん、そうだな。聞くまでもない。
男の人、そういう格好、好きそうだし。

…ま、あたしには、とんと縁がない格好というか。
男の子と…デートしたこともそれは、あるけど。
ディズニーランド行くときも、他のトコ行くときも。
そういう服装しようとは…したいと思ったコトもないし。
9 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時47分31秒
「…明日香、相変わらず、地味な格好好きだよね」
「…そうかな。普通だと思うけど」
「あんた、いくつよ。歳のわりに、渋好み過ぎだって」
「大きなお世話だよ」
「ほんとにもー、相変わらずっていうか。わかってない」
「…だから、ひとのことはほっとけって」
「…そーだねー、そうする」

…あっさりそう言われると、それはそれで
ちょっと寂しかったりもする。
…なんでなんだか。
10 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時48分01秒
…そんなあたしの一瞬の心の動きを見透かすかのように
歯を見せた笑みを浮かべた彩っぺが、あたしを見て、言った。

「放っておければいいんだろうけど、ね」

…答える言葉、今は見つからない。
11 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時52分39秒
こういうちぐはぐな格好で午後の街を歩く
あたしたち二人は、周りから見るといったいどう見えるんだろう。
友達同士でショッピング、とか?
…いや、こんなに服装の趣味が離れてる友達同士も珍しいよね。
服買うにも、同じ店とか絶対行きそうにないよね。

…っていうか、歳も離れてるし。
…いいんだけどさ。
周りからどう見えるか、なんてわかんないし。
そんなこと気にするのも
あたしらしくないといえば、あたしらしくない。
12 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時53分19秒
「…とりあえず、まずは、飲めるとこ行こうか」
「こんな昼間っから」
「いいだろー。たまの主婦の休日なんだから」
「…未成年なんすけど、あたし」
「じゃあ、おとなしくウーロン茶でも飲んでな、あんたは」
「…そうする」
13 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時53分59秒
…って言っても、こんな時間から開いてる「飲めるとこ」って
やっぱりそんなには、ないんだよ。
仕方ないから、ビルの地下にある
雰囲気も、明かりも本当に薄暗い喫茶店で
彩っぺは、バドワイザーを注文した。

…二つ。
…ってこれは、ビールなわけで。

「…あー…」

と間抜けな声を出しただけで、止めはしなかったあたし。
14 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時55分12秒
「大丈夫。明日香なんてさー、全然未成年なんかに見えない」
「ああ、そーかもね」

少しやけくそで。
別にそれくらいなら、飲めないわけじゃないし。
もっとずっと小さい頃から。
あたしの歌を誉めてくれるじいちゃんが
歌ったあと、ごほうびって言って飲ませてくれてたりしたし。
15 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時55分46秒
…だから雰囲気が、老けちゃうかな…そういうわけじゃないよな…。
ってふと向こうの席を見ると、どう見ても成人してそうにない人が
同じくバドワイザーの缶から自分でグラスに注いで、
なくなったのを見て缶を握りつぶしていた。
アルミが凹んできしむ音がした。
…そっか、そういう店か、ここ。

あの子…男かな、女かな。
色白で、細くて、どっちかよくわかりにくい雰囲気の人。
グラスの残りを一気にあおったとき、
小さいともいえない胸のふくらみが確認できて
女の子だってわかった。
どう見てもあたしより年下だと思う。
16 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時56分33秒
「お待たせしました」

あたしたちの前に、今握りつぶされるのを見たのと同じ缶が二本、
そして冷えたグラスが二個運ばれてきた。
あたしはともかく、あの、どう見ても15歳かそこらに見える
あの子にも、こうやって平気な顔して同じものを運んだんだね、きっと。

ぼんやりそっちを見てたら、彩っぺがあたしのグラスに注いでくれた。

「…あー…」

またあたしは、自分でも間が抜けていると思う声を出す。
あたしの意思じゃないから。これ。
17 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時57分38秒
「ほら」

注がれたグラスを持たされ、それに彼女が自分のグラスを
軽い音を立ててぶつけてくる。

…乾杯? 何に?

問う間もなく、彼女は喉に流し込み始めた。
…あたしは、少しずつ、口に含むように。
そうしながら、また、向こうの席の二人に目をやる。
18 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時58分21秒
一緒にいる人は…どう見ても大人。
なのに、自分はコーヒーかなんか飲んでる。
彩っぺみたく、未成年者に勝手に勧めたわけじゃないんだね。
…ってことは、あの子が勝手に頼んでビール飲んで。
それを止められない大人の連れ、ってこと?
どんな関係か知らないけど、情けないね。
19 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時58分54秒
「…何見てんの、明日香」
「…ん、向こうの二人連れ」
「…なんか面白いことでもしてんの?」
「…いや、べつに」

またアルミ缶が大きな音を立てる。
両手で乱暴に、もみつぶした音。
その音に、さすがに彩っぺもそちらを見る。
20 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)21時59分42秒
大人のほうの人は、もう一本頼もうとしてるのを止めて、
その子をなだめてるみたいだ。
ふてくされたようにテーブルに突っ伏したその子のブリーチされた髪を、
向かいの席から腕を伸ばしてしばらくなでていた。

「…どっちも女か、あの二人」
「…そうみたい」
「…なんなんだろーね、あれ」
「…さあ」
「姉妹ってわけじゃなさそうだけど…全然どこも似てないし」
「…そうだね」
「でも、友達にしちゃ、歳、離れてんね。へんなの」

…あたしたちも、ね。
21 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)22時02分42秒
こんなに年も服装も違っても、
彩っぺは、昔一時一緒に仕事をしたことがある仲だ。
…その頃から、この人とは
仲がよかったとはとても言えない。
この人のきっぱりしたきついものの言い方に困惑したこともあるし
あたしのペースや、ものごとの感じ方やとらえ方が
この人に理解されていたとも思えない。
それでも。
ひとつの同じ夢に向かって、共に努力をしたことがある仲だ。

もともと5人、のちに8人に増えたそのプロジェクトチームを
最初に辞めたのがあたし、そのつぎ、2番目に辞めたのが彩っぺだった。
彩っぺはその直後に結婚した。
22 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)22時03分13秒
…そういえば、まわりも顧みず、
言いたいことをついはっきりと言ってしまうことがあった。
そうしたいと決めたことは行動に移してしまうところがあった。

その結果、最初と2番目に辞めた、あたしと彩っぺは。
似ているところが、まったくないとも言えないのかもしれない。
23 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)22時04分02秒
「…ね、明日香さあ」
「…ぁ?」

ん…少し酔いが。
まわってきたんだろうか。

「…さっきから、上の空?」
「…や、そんなことは」
「…つまんない?」
「…や、別に…」
「…でも、そう見える」
「…そんなことない」
「…酔った?」
「…や、別に」
24 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)22時04分52秒
彩っぺは両手を、パン、と手拍子を打つように
あたしの目の前で1回打ち鳴らした。
…びっくりした。

「…いまあたしと逢ってるんだからさー。」
「…は」
「あたしのほう、見ろよなー」
25 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月08日(金)22時05分58秒
言われてみると、さっきから彩っぺの顔を、あまりまともに見ていないような気がする。

別に目を合わせづらいわけじゃない。
あたしは、何も、やましくなんかない。
見てやろうじゃん。

まっすぐ見つめてやる。
まっすぐな視線がかえってくる。
目と目が合ったまま、彩っぺはにニッと笑って言った。

「…オッケー」
26 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)03時19分57秒
うぉ、新作! 非常に興味深い組み合わせですねぇ。期待してます。
27 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)11時08分12秒
このcpは思いつかなかった…
楽しみにさせていただきます。
28 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月09日(土)14時14分15秒
おぉ!面白そうだぞ 続きに期待!!
頑張ってください
29 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)13時57分48秒
読んでくれてありがとう!
そして、読んでくれたことがわかるよう書き込みしてくれてありがとう!
>>26
組み合わせ自体興味深いですよね。私もそう思います。
それをちゃんと、内容でも興味深くできるよう頑張る!
>>27
「思いつかなかった」ってことは、
やっぱり他にはないんでしょうか、このCP。
もしあったら教えていただけると嬉しいな。
>>28
私も自分で面白そう!と思って書いてます。
…書いてる私が一番面白がってるかも。続きもよろしく!

もし今後も読んでもらえたら「俺様用しおり ここまで読んだ」とかでもいいから
なんか書いてもらえると嬉しいです。
でないと読んでくれてる方がいるのかいないのかもわからないから、寂しい…。
30 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)13時58分52秒
「…で、さ」
「…なによ」
「…んー…」

…何か言いたくて「こっち見ろ」って
言ったんじゃないの?
それとも、何か言いにくいことでも
言いたいんだろうか。
考え込むように自分から視線を落として
そのまま黙っているから、
あたしはそのまま。
しっかり見つめたまま、彩っぺが口を開くのを待ってる。
そして、少し待ちくたびれて。
促してみた。

「…なに?」
「…ん、あの…えっと…あのさ…」
31 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)13時59分45秒
話し出すと思いきや、また少しの間。
あれだけ歯切れ良く、あたしをこっちに向かせたくせに。
なんなの、いったい。

そんなコトでイライラするのもつまらないから、
あたしの缶にまだ残っていたビールを
もうカラになってる彩っぺのグラスに注いでみる。

「…あ、ども」

身に付いた動作のようにグラスに手を添え、
軽く頭を下げる。
それに口をつけてから、やっと彩っぺが口を開いた。
32 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時00分29秒

「…明日香さぁ」
「…うん」
「…いま、テレビとか、見る?」

…なんて答えるべきか。

33 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時01分15秒
普通に「テレビを視聴するか」
という意味でなさそうなことは、もちろんわかる。
あたしたちが過去に、一緒にしていた仕事というのは。
参加していたプロジェクトチームというのは。
テレビ番組に出演することがその役割の多くを占めていた仕事で。
あたしたちがそこから抜けた後も、
何人かの離脱者と、その人数よりも多くの
新たな参入者が入れ替わるようにして、未だ在り続けていた。
もちろん、自然と目にしてしまう機会も多い「それ」に
誰もが知っているだろう「名前」はある。

…あたしたちがいた頃と変わらない「名前」が。
34 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時01分54秒
「…見るけど」

とりあえず、そうとだけ答えてみる。
その名前をあたしが進んで、好んで口にすることはまずない。
考えざるを得ないとき。
そんなときは、あたしの頭の中だけで。
「あのプロジェクトチーム」と呼ぶことにしている。
35 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時02分25秒
「…そっか」

彩っぺは数回頷いてそう言うと、
グラスに残ったビールを大きな動作で一気に飲み干した。
まるであたしに「彩っぺは?」と訊きかえされるのを
恐れてでもいるかのように。

…そんなこと、あたしは、訊かないのに。
間違っても、絶対に、訊きやしないのに。
36 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時03分11秒
音を立てて、カラになったグラスをテーブルに置くと
ふう、と大げさなため息をついてから、

「…じゃ、そろそろ、行こっか」

と言って彩っぺは、伝票を手に取る。
…だからさ。さっきも言った気がするけどさ。

「…どこへ」
「んー、そうだね、二人っきりで話せそうな場所」
37 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時03分57秒
立ち上がると、さっきまでいた向こうの席の二人連れは
もういなくなっていた。
未成年のほうがもみつぶしたアルミ缶が、
使われたグラスやカップや灰皿と一緒に、そのまま
放ったらかしになっていた。
どうせ他に客が来ないから、すぐ片づける気もないらしい。
38 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時04分37秒
「…十分『二人っきり』じゃない? ここでも」
「…そーゆーとこが、ほんと、明日香さぁ」
「…なに」
「可愛くないよね」
「…あー、そ」

まともに答える気にもなれない。
なんて勝手な意見だか。
事実を言っただけなのに、
いったいどういう勝手な理由であたしが「可愛くない」と
決めつけられなければいけないのか。
39 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時05分13秒
「あたしが払っとくから」

そう言って彩っぺは、奥からのろのろと店員が出てきた
出入り口脇の会計へ向かう。
…当たり前だ。
ほとんど彩っぺが飲んだんだし。
感謝なんて、しないよ。

…一応「ごちそうさま」くらいは言うべきか。
40 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時05分49秒
夕方の少し手前。
そんな時間の午後の街。
薄暗いビルの地下から出てきたばかりの目には
少しだけ眩しく感じないこともない地上。

前を歩く彩っぺが足を止めて振り返る。

「…だってさぁ、明日香」
「…はい?」
「カラオケボックスとかじゃ、やでしょ?」

…えーっと。
何が!? 何がだよ!?
41 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時06分22秒
「…二人っきりにはなれるけど。でも、
カラオケあって歌わないのももったいない感じしない?」

…さっきの話の続き…だよね。

「…でも、いまさらあたしと明日香で、歌い合って
聞かせ合っても、ねぇ。そんな気にもならないよねぇ?」
42 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時06分53秒
…いや、「歌うのが目的」なら、
そっちのほうがいいと思うんだけど。
だけど。

「…明日香、いま、歌いたい?」
「…いや、別に」
「じゃ、決まりだね」

…だから、何が。
43 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月15日(金)14時07分40秒
「先に、コンビニ寄ってこ。パン買お。飲み物も。」
「パンって…食パン?」

一緒に仕事をしていたとき、
彼女がよくカバンに入れて持ち歩いていたのを
思い出したから。
不規則な仕事中空腹を訴える当時の「仕事仲間」に
分け与えたりしていた。
それを、思い出したから。
なのに、彼女は「あははっ」と笑っただけで
それには答えず、「勝手な話」を続ける。

「飲み物、中の、高いしさ。」

…中、ってだから。どこの。
44 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月15日(金)19時09分58秒
彩っぺは何が言いたいんだろ?気になって眠れない(w
作者さんの作品の明日香はマジ明日香っぽくて(変な言い方ですが)
うれしくなります この冷めた感じが何とも明日香(w
45 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時22分05秒
>>44
読んでいただき、書き込みいただきありがとうございます。
続ける気力が湧きます。
今回このテーマですとちょっと「理想的な明日香」とは
言いにくいところもありますけれど、
「明日香っぽく冷めた感じ」は書き続けられる限りは
私に可能な限り、表現できたらいいな、と思っています。
46 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時23分49秒
「前行ったとこでいいよね。
女二人でも大丈夫ってわかってるの、
あそこしか知らないし」

さっきまで先に立って歩いている感じだった彩っぺは
いま、コンビニで買い物した袋を手に提げて
あたしと肩を並べるようにして歩いている。
…肩の位置は、あたしより上にあるけれど。
…とにかく、並んで歩いている。
そして、そういう無神経なコトを、平気で言う。

…あたしが、肯定も否定もしないことをたぶん、知っていて。
47 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時24分30秒
昔の彩っぺは、こういう人ではなかったと思う。
きついと思えることは言うことがあっても、
無神経と思えることを言う人ではなかったと思う。

あたしが「あのプロジェクトチーム」を辞める前。
あまり長い期間ではなかったように思うけれど。
理解されていた、とも思えない存在だった彼女が
一時「いいお姉さん」であってくれたことも、
確かにあったように思うのに。
48 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時25分25秒
「あのプロジェクトチーム」関連の集団からの
「卒業」やその後の「再出発」に関わる催しがあれば、
直接見に行くことがあった。
あたしが所属していた頃に、ライバルでもあり、
仲間でもあった人の晴れ舞台だけは、
この目で、その場で見て。
この耳で、直接聴いて。
記憶にとどめておきたいと思った。
49 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時26分08秒
特に、「卒業」。
その先が決まっていないとしても、それは
センチメンタルな別れなんかじゃない。
そこから「晴れて」何かをすることができるように
「なるかも知れない」機会。

それはさ、ほんとに「晴れ舞台」なんだよ。
そんな気持ちも込めて、見届けて。
見送りたいと思ったから。

50 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時26分47秒

…そんな晴れ舞台のうちのひとつで。

舞台に立つその人が舞台を終えた後、
直接声をかけに行くことも可能な立場ではあるものの、
「観客同士」として。

彩っぺと、会った。

51 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時27分39秒

そして、その後。
一緒に、二人っきりでいた時間の長さの割には
深い会話を交わすこともほとんどなく。

…ただ、「流れ」に、流された。

そこに何かしらの共感めいたものは
確かにあったと思うけれど。

単なる傷の舐め合いだったとは、思いたくない。

52 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時29分18秒

それから昨日まで、一切
彼女からの連絡などなく。
あたしのほうから連絡をとることもなく。
電話があった昨日までは
そんなことは忘れた…つもりで過ごしてきた。

それなのに、あたしは、
その彩っぺからの突然の電話での誘いにあっさり応じて
いま、肩を並べるようにして歩いている。

…そして行き先は「決まってる」らしい。

53 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時30分12秒

「…確か、この道だったよね」

そう言って角を曲がる、コンビニの袋を手に提げた彼女。
人通りが少なめになる道。
返事もせずに、並んで歩くあたし。

とりあえず、いまや普通の主婦と同レベルに暇な自分がイヤだ。
そのせいで、断る理由も見つからなかった。

54 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時31分10秒

…でも、考えてみると。
あたしはともかくとして、
彩っぺはまだ子供とか…いろいろ、忙しい時期じゃ、ないのかな。
子供を置いて、こんなふうにのんびりしてていいの?
…と言葉にして尋ねると、
どうも機嫌を損ねてしまいそうな気がする。
きっとまた「勝手な彼女の理由」で。
だから、黙ってる。

55 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時31分49秒

「…あ、そうだ、やっぱりこの道だ。そうだったよね」

そしてそういう、勝手な彼女の理由、らしきものを。
どうやら甘んじて受け入れてもいいようにも思ってしまっているらしい
自分がイヤだ。

…イヤだけど、別にどうでもいい、もう。

56 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時32分56秒

あの日、あてもなく二人でこの街を彷徨った。
この近辺で一件、受付らしき場所で
「女性二人はお断り」と言われた。
それだけでもあたしは、顔から火が出るほど恥ずかしかったのに
彩っぺは「あ、そう」と言っただけで
気にする風もなく毅然とあたしの手を引いて踵を返した。

そして次には、同じことを言われることなく、
当然の客のように部屋まで通してもらえるところを
見つけ出した。

57 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時33分37秒

あたしはただ、彼女に手を引かれるまま。
彼女のなすがまま。

反駁するどころか、
自分の意見を持つ気力すら、なかった。
何がどうでも、どうなってもいい、と思った。

…あのとき。
あたしはあたしで、
わけのわからない「圧倒的な何か」に、
うちひしがれていたのかも知れない。

58 名前:カンナナ 投稿日:2002年11月22日(金)17時34分47秒

普段はそんなこと、考えない。
…考えないようにしている。
けれど。
「圧倒的な何か」は今もあたしの心に、
大きな重圧をかけ続けているんだと思う。

59 名前:リエット 投稿日:2002年11月26日(火)01時46分54秒
以前一体どんなことがあったのか……。
福田さんの一人称に引きこまれます。
60 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月26日(火)21時37分57秒
二人の間には多分こんなことが・・・と勝手に妄想してみる(w
続き楽しみです 頑張って下さい
61 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月17日(火)23時54分11秒
明日香誕生日おめでとう!
とにかく今日の日に間に合うように更新を!!!

>>59
きっと、ほぼご想像通りのことが…。
福田一人称は私にとって、娘。小説の醍醐味とも言えるのかも…。

>>60
たぶん、ほぼご想像通りのことが…。
私の小説、一年前の前作もそうでしたけど
「意外な展開」ってあんまりないかも…。
62 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月17日(火)23時55分00秒
…以前。
入ったことのないときに想像していたほど
けばけばしい、ということはなかった室内。
落ち着いた暖色の間接照明。
思っていたよりもずっと広く見えるのは、
余計な家具やら生活のための道具というものが
いっさいないからかもしれない。
以前ここに、別にあたしの意思でなく、
同じ人と入ったときにあてがわれた部屋と、
内装のコンセプトはほぼ同じなのだろうと納得できる程度に
雰囲気は似ている。

…もちろん今だって、べつにあたしの意思でここにいるわけじゃ、ない。
けど、ふと、前にこの、同じ人と入った同じ建物の別の部屋と。
違うと思えることと言えば。
63 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月17日(火)23時55分40秒
「…前きたときの部屋より、ここのがちょっと広いね」

あたしより先に部屋に入った彩っぺが、
室内を見回したあと、そう言った。

「…おんなじ料金なのにね」

確かに、道を歩く人たちからは中が
見えないようになっている建物の入り口を入ったところで
入室可能な部屋が表示されているパネルにあった金額が一緒だった…ように思う。
あたしも確かにそう思う。
だけど、返事はしなかった。

「…あ、おんなじじゃないか。
今まだサービスタイムだわ…料金は同じだけど
長い時間いられるっていうか」

…そんなコト、知らないってば…。
さすがにそこまでは見てなかったってば。

…そうだ、前に来たときは、もっと遅い時間だったっけ。
64 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月17日(火)23時56分24秒
返事をしないあたしにあきれたのか、
彩っぺは大げさにふう、とため息をつくと、
十分大きいけれど、部屋に一つしかないベッドに座った。
その拍子に気付いたらしい。

「…あ、有線入ってる」

ベッドの頭側のパネルにスイッチが取り付けられている。
番組表も置いてあった。

彩っぺが番組表も見ずに、てきとうにチャンネルを切り替える。
…一瞬、「あのプロジェクトチーム」の最近の曲の前奏部分が
聞こえた気がした。
それに気を留めるふうもなく、どんどんチャンネルを切り替えていく。

…気のせいだったかな、いまのは。あたしの。
ちがう曲の似ている部分が、ふとそう聞こえてしまっただけかも知れない。
65 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月17日(火)23時56分57秒
いきなり、聞き覚えのある音階。
伴奏は…雑踏の音?

「…あ、それ…」
「え、なに?」

この部屋に入って初めて口を開いたあたしに、
彩っぺがそこで手を止める。

そのまま聴いていると、あたしの、
なじみのある駅名の入ったアナウンス。

「なにこれ…駅の放送? なんで?」
「えー…、なになに? んーっと…」

そこで彩っぺが初めて番組表を見る。
表示されているチャンネルを見て、番組表を指先でなぞって
照らし合わせる。
66 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月17日(火)23時57分31秒
「ああ、えーっとね、『アリバイ』だって」
「アリバイ?」

電車の車輪が、レールの上を通って刻むリズム。

「…こーゆーとこ来る人には、こーゆーの、
必要なこともあるんじゃないの?」
「…なんで」
「…今この駅にいるから、って。電話とかで」
「…あ」

…嘘をつく電話のBGMに。そうか。

こんな番組まである、たぶん「普通でない」有線放送に
あたしはつい感心してしまう。
67 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月18日(水)01時37分36秒
「…ま、あたしらには必要ないよね」

そう言って彩っぺはスイッチを切る。
急にあたしたちは静寂に包まれる。

「…さっきの曲も、いまは、ね」

そう続けて、彩っぺは軽くため息をつく。

「…あ…」

…やっぱり、さっきのイントロは。そうだよね…。

「圧倒的な何か」はこうして断片的に。
ときにはそのプロジェクトチームへの復帰の噂として、直接的に。
あたしに、何かしらの重圧を、間接的に、直接的に。

その圧迫感から生じる、沈殿物みたいなものが。
何年もかけて、あたしの心を、少しずつ。
ぼんやりと、埋め尽くしていく。
68 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月18日(水)01時38分36秒
「こんなときに聴きたい曲じゃないよ、ねぇ?」

そう言って、ニッと笑う彩っぺも。
たとえばあたしとは違うカタチでもたぶん、似たように、間接的に、直接的に。
あたしと同じような、重圧感と「心の沈殿物」を感じているんじゃないかな。
…そんな事柄について彩っぺと話し合ったことなんて、だから、一度もないんだけれど。
それでも、きっとそうなんじゃないかな、と思う。

たとえばそこに共感したからって、その人と、
こういうところに来る理由にはならないとも思うけれど。
69 名前:カンナナ 投稿日:2002年12月18日(水)01時39分24秒
「…ん…まぁ…そうだね」

あたしたちの過去の事情のせいで起こる感情を抜きにして考えてみても…たしかに。
そうは思う。うん。
だからつい、素直にそう答えてしまった。

「やっとまともに返事するようになったか」

そう言って立ち上がった彼女に、あたしは早わざのように
唇を奪われた。

…そういう、予想外の彼女の行動のおかげで、あたしは
「こんなときって、どんな時?」と訊きそびれてしまった。

70 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月18日(水)22時11分30秒
ん〜 めっちゃいいとこで!
続きが気になって眠れないじゃないか!!(w
71 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時26分59秒
>>70
いやいや、よく眠る日々を送りながらどうか気長に…。
そういうペースでしか進められない作者なんです…ごめん。
72 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時28分02秒
…気に入らない。
とにかく、このまま、ただ、言いなりに。
流されるのは、気に入らない。
ね、あたしの着てるパーカーの前を。
勝手に開けるのやめて。

「…今日は時間あるよね? お風呂入る?」
「…や、あの、さ」
「…なに?」

だから、さ。
脱がす手、止めてよ。
仕方ないから自分の手で、彼女の手の
動きを制する。
73 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時28分37秒
怪訝な表情で、彼女がもう一度。

「…なに?」

…なにも何も、見たままの制止。

「…いやなの?」
「…んー…」

彩っぺは、はぁ、と聞こえるように
ため息をついて、またベッドに腰を下ろす。
勢いで体が少し弾んだ。
74 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時29分10秒
「…まあ、無理に、ってつもりはね、
ないんだけどさー」

手招きされる。
自分の隣をポンポンと掌で叩く。
座れ、と。

「…あー、でも、もったいないよ」

指図されたとおりにあたしは、
大きなベッドの、彩っぺの隣に座る。
75 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時30分26秒
「…もったいない、って…」

どういう意味だよ。

「だってさ、めったにこういう時間なんて
とれないのに、さぁ」
「…こういう時間…」

鸚鵡返しに呟くあたしは、
こういう状況をうまく消化するセンスはないのかも知れない。
76 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時31分03秒
「…羽を伸ばせるっていうか。自分だけのために
好きなことできる時間ってね。
結婚すると、なかなかないんだよねー」
「…そんなの仕方ないんじゃん」

むっとしたようにあたしのほうに顔を向けた彩っぺ。
それを視界の端で感じながら、あたしは前を向いたまま。

「…でもさぁ、息がつまってくる時もあんのよ。
…ま、明日香にはまだ、わかんないだろうけど、さ」
「…わかる必要なんかないし」
77 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時31分41秒
至近距離の、二人の間の空気が。
ぴりぴりと、痛い。
だけどあたしも、もう止める気もなくて。

「…あたしは結婚してるわけじゃないから、
今はまだわかる必要ないし。いいじゃん」
「…」
「それに、結婚してる人はみんな、
そんなの、当たり前なんじゃないの?
わかってて結婚したんじゃないの?」
「…ったく、もう…」

彩っぺはそのまま絶句する。
78 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時32分58秒
…なんか、気に入らないことでもあるのか。
今の生活に。

「…自分で選んだ道、なんじゃ、ないの?」

彩っぺは、下ろしていた髪をかきあげながら
立ち上がる。
入る前に買ったものが入ったコンビニの袋から、
ペットボトルの飲み物を2本取り出す。
そしてあたしの隣に戻ってくる。

「…はい」
79 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時33分37秒
差し出された1本をあたしは黙って受け取る。
彩っぺは自分のボトルの口を開けて一口飲む。
それから、話し始める。

「…わかってる。そうだよ。
明日香の言うとおり、なんだけど、さ。」

あたしは黙って聞いている。

「…でもね、時々あたし、このままでいいのかな、って。
焦りっていうか、なんかね。考えちゃうこともあって」
80 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時34分40秒
「…どんなこと?」
「…え…」
「どんなことを考えちゃうの?」
「…どんなこと、って…だからさぁ…
あたし、このままこれで、いいのかな、って」

それはね。
あたしだって、考えたことはあるよ。
どっちかっていうとさ、それは、いま。
あたしのほうが考えなきゃいけないことのはずで。
81 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時35分13秒
普通に結婚して、子供もいて。
そのために「仕事」を辞めた彩っぺは、すごく普通で。
何も他人に後ろ指を指されることもない生活を送っている
彩っぺが、そんなことを言うのはおかしい気がする。

「…なんか今、いやなことでもあるの?」

それが、疑問だった。
82 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時35分45秒
「…いや、別に…旦那はよくしてくれるし…
子供も可愛いし…うん、何も…」
「じゃあ、…」
「ん?」
「…じゃあさ、なんで…」
「何よ」
「…あたしと、こういうこと…
しようと、思うのかな」

彩っぺは、くすくすと笑い出した。
83 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時36分15秒
「…明日香」
「…はい?」
「…案外、真面目なんだね」

そんなふうに言われると、
馬鹿にされているようでなんだか腹が立つ。
…でも、ここで怒りを露わにするのはきっと、子供っぽい。
84 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時36分48秒
「…そういうわけじゃ、ないけど」
「じゃあ、いいじゃない。しようよ」
「だからさぁ、そういう問題じゃなくて」
「なによ」
「だからなんで、あたし」
「え」
「旦那さんじゃない人としたいんでしょ?
だったら、あたしじゃなくて、どっか他の、男の人…」
「…ああ」

そういうことか、と納得したようにまた
彩っぺは、あたしの続きを脱がせようとしかねない手を
下ろしてくれた。
そしてにやっと笑って、言い放つ。

「別に、オトコはダンナで間に合ってるから」
85 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時37分19秒
なんだそれ! なんなの!?
彩っぺの手がまたあたしに近付く。
ふざけんなっ!って怒鳴りたいけれど
なんでか声が出せない。

抵抗…しようと思ったけれど、
ふ、と突然強引さを失った彼女の手に
逆に驚かされる。
その手は、そのままあたしの肩に
そっと回されて、抱きしめられる。
86 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時38分10秒
「…なーんかね、あの日さ。
…ほっとしたんだよねーすごく」

耳元で聞く彼女の、落ち着いた声。

「…明日香が、いてくれて、さ」

…それは、現在のあたしと彩っぺが。
立場が近いから?
もっと早くに。とっくの昔に。
なくなるだろうと思っていたあのプロジェクトチームが。
今もまだ、健在で。
すっかり形を変えてはいても。
誰が抜けても、入れ替わっても。
あたしたちなんか、いなくても。

それでも、今も、「同じ名前で」。
今も、あり続けているから?
87 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時38分40秒

「…それってさぁ…あれだよね」
「…なに」
「哀れみあいっていうか。」
「…」
「傷のなめ合いっていうか。」

言いたくはなかったのに、こんなこと。
一番言いたくなかったのに。
こんなときに。
88 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時39分15秒
…って、「こんなとき」って。
だから。どんな時なんだ。
なんで、こんなこと、あたし。

いやだ。イヤだ。
…とにかく、こういう時に。
こういうつまんないこと、考えちゃダメなんだ。
余計なこと、言った。
89 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時39分47秒
「…ごめん」
「なんで謝んのよ」

あたしだって、本当は。
この前だって、今日だって。
こういうことになるの、わかってて
ついて来てるのに。
自分でも本当は、選んでいるはずなのに。それなのに。

この前のことも。今回のことも。
「みっともないこと」にしてしまうようなことを、言ったから。

そう理由をはっきり口にしてしまうと
よけいそうなってしまう気がして。

返事ができない。
90 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時40分37秒
彩っぺが、あたしの頭の後ろのほうを
そっと撫でてくれながら、言った。

「…んー、まあ、そうとも言うのかなぁ。
あたしは、一応、違うつもりなんだけどね」
「…ん…」

もうなんでもいい。
なんか、しゃべって彩っぺ。頼む。

「『なめ合い』ってさ、ねえ、明日香」
「…ん?」
91 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時41分10秒
にやっと笑った顔であたしの顔をのぞき込んで
彩っぺが言った。

「傷、じゃなくてさ」

ちょっと落ち込んだ気分に浸ってたあたしは、
言わないその続きを理解するのに少し時間がかかってしまった。
92 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)05時41分45秒
「……っはっ…」

笑いながら、なんでか少しだけ涙が出そうになるけど
そっちは我慢する。

笑うあたしの口元をなめるようにしながら、
彩っぺの舌があたしの口の中に入ってきた。

…やっぱり、彩っぺは、年の差と同じくらいは。
あたしよりも大人なのかも知れない。
93 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)21時49分52秒
「まあ、オンナだって別に、さ。
間に合ってないわけじゃないんだけど」

ゆっくりとあたしの身につけているものを、
順番にはずしながら彩っぺが話す。

「…今さらっていうか…うん、なんつーか…」

何を急に口ごもるのかよくわからないけれど、
全部脱がされる前に、あたしも相手を
少しは脱がせてみることにする。
94 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)21時50分23秒
「…間に合ってんの? だったら…」

そんなこと言いつつ、あたしももう
やめなくていいと思ってるけど。

「…間に合ってない。抱いてよ明日香」
「やだよ」

顔は二人とも、笑ってて。
95 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)21時51分02秒
「…明日香ってさ、この前が初めて?」
「…なにが」
「…こういうこと、するの」

…なんて答えようかな。
と思いながら彩っぺの背中に腕を回して
ブラジャーのホックをはずしてたら、彩っぺが続ける。

「…男とは、あるか。でも女は初めてだった?」
「…や」
「…え?あるの!?」
「…んー」

っていうか、んなコト訊くな。
「こんなとき」にさぁ。
96 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)21時51分47秒
「嘘だぁ!誰よ?誰?」
「…誰って…」
「ああ、でも、そっかぁ…じゃなきゃこの前だって、
もっと抵抗あったはずだもんねぇ…そっかぁ…」

勝手に納得している彼女をよそに、
あたしは「作業」を進めている。
露わになった彼女の胸は、昔一緒に仕事をしていたときに
見たよりも大きくなっているような気がした。
…子供産むと大きくなるって、やっぱり
ほんとなのかな。
97 名前:カンナナ 投稿日:2003年01月09日(木)21時53分29秒
「…でもマジで、誰よ。昔のヤンキー友達とか?」
「…なにそれ…友達とするの? 彩っぺは」
「…んー、友達…じゃあ、なかったか、あたしの場合は…
前も、大事な仲間、だったかな、やっぱり」
「仲間?」
「うん、そうだね。カオリだったから」
「…はぁ!?」

…まじっすか。
98 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月10日(金)00時17分05秒
まじっすか…!
カンナナさんの明日香の雰囲気はとっても好きです。
頑張って下さい。
99 名前:名無しです 投稿日:2003年01月23日(木)04時38分46秒
まじっすか!?

六期メンが入ってもモー娘はモー娘、と思うけれど、
やっぱりこういう話を読むと思うね。
ああ、明日香や彩っぺがいたからこそ、モー娘はあったんだなぁって。

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