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耳に残るは・・・2
- 1 名前:南風 投稿日:2002年11月09日(土)23時54分00秒
- 同板にある『耳に残るは・・・』の続編になります。
第2章からこっちに書こうと思っていたのですが、上手いことおわまりきらず
こっちに残りの第1章分かかせていただきます。
これまた引き続き駄文ですがよろしければおつき合いお願いいたします。
- 2 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)00時21分52秒
- ゆっくりと瞳を閉じる梨華ちゃん。
緊張のせいで震えているのであろうその体を両手でしっかりと包み込む。
閉じられた瞳。
長い睫毛。
全てが愛おしく見える。
あたしはそっとリップグロスで輝く唇に自分の唇を落としていった。
始めは本当触れるだけの軽いキス。
触れれば触れる程欲しくなる。
初めは震えていたお互いが、やがて熱っぽく求めあう。
唇を合わせるただけなのに体中の熱が上がっていくようだ。
こんな体験は初めてだった。
今まで何人もの女性を抱いたが、ここまで落ちることなんてなかった。
ここまで欲しいと思ったことなんてなかった。
無意識のうちにお互いが回した腕に力がこもっていく。
あたしが梨華ちゃんの上唇や下唇を自分の唇で優しく包むと、自然と梨華ちゃんの口が開いた。
自分の舌を梨華ちゃんの熱を帯びた口内へと差し入れる。
一瞬体が強ばった梨華ちゃんだったが、恐る恐る舌を絡ませてきてくれた。
深くなっていく口付け。
あたしは必要以上に梨華ちゃんの口内を刺激した。
お互いがお互いの全てを感じようと舌で弄りあう。
重ねられている唇はお互いのだ液で今まで以上に湿っている。
ひとみは口付けの間にそっと部屋の電気のスイッチを手探りで消した。
- 3 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)00時36分15秒
- やがてひとみが舌を梨華の口内からゆっくりと抜いた。。
物足りなさを狭長するようにお互いのだ液が一筋の糸を引く。
梨華はそれを言葉で表情で代弁するかのように自分よりも少し背の高いひとみのことを見上げた。
ひとみは暗い部屋の中で梨華に優しく微笑みかけると、頬や額に軽く唇を落としていく。
梨華が少しくすぐったそうに笑う。
ひとみは瞼にそっと唇を落とすと、梨華の体を軽々と持ち上げてお姫様抱っこをした。
「ひ、ひとみちゃん!?」
あわてる梨華をひとみは優しい面持ちで見つめたまま、ゆっくりとベッドの方へ
運んでいった。
柔らかな布団の上に梨華のことを寝かせると、ひとみはもう一度額に唇を落とした。
仰向けに寝かせた梨華の上に四つん這いになってひとみは梨華の顔を見つめた。
梨華はひとみの目を見つめてニコッと優しく微笑む。
そして手を伸ばしてひとみの頬をそっと両手で包み自分の方へと引き寄せた。
「ひとみちゃん、大好きだよ」
梨華の言葉にひとみは行動で自分の言葉を伝えた。
その髪に口付け、額、頬、唇へと自分の唇を落としていく。
そしてもう一度お互いに舌を絡ませあった後に、ひとみはその唇を首筋へと落としていった。
- 4 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)00時46分09秒
- ひとみは触れる度に梨華の口からは淡い吐息がもれる。
ひとみが触れた所に熱が残る。
梨華はひとみの行動全てにどんどんと落ちていった。
今まで味わったことのない感覚。
愛する人の柔らかい唇が自分に触れていると思うそれだけで胸が高鳴った。
ひとみは首筋や鎖骨に舌や唇を這わせながらゆっくりと右手を梨華の胸の方へ
這わせていく。
かすかに震える梨華を安心させるようにひとみは梨華に優しく微笑みかけ、その唇に
もう一度唇を合わせた。
ひとみは唇を合わせたまま自分の右手を梨華の胸に優しく触れる。
口付けをしている梨華の口からは吐息まじりの熱っぽい声が漏れてくる。
優しく右手で胸を触れながら梨華の口内に舌を滑り込ませると、それを受けた梨華が
自分の舌をぎこちなくひとみに絡ませていく。
ひとみは梨華の行動一つ一つで、どんどんと自分が高まっていくのを感じいた。
- 5 名前:南風 投稿日:2002年11月10日(日)00時48分00秒
- すんません、短いですが更新しました。
続きは明日にでも書きます。
官能的なエロってのはなかなか書けないんですが、もうちこっと頑張ってみます。
そいでは本当に短くて申し訳なかったですが、本日の更新を終了させていただきます。
- 6 名前:南風 投稿日:2002年11月10日(日)19時09分56秒
- 続き
- 7 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)20時21分44秒
- 舌を絡ませながらひとみは梨華の胸に置いていた右手をずらして手探りでドレスのファスナー
を探し出し、それをゆっくりと下ろしていった。
深い口付けをしたまま回した左手で梨華の腰を浮かせ、そっとドレスを脱がせていく。
足下から露になってゆく梨華の整った美しい体。
梨華はそれらがあまり気にならない程にひとみとのキスに溺れていた。
ドレスが腰を通過すると、ひとみは左手で梨華の上半身を起き上がらせた。
絡ませていた舌を一度引き抜き、軽く唇に口付けをして、ひとみは梨華の両腕を
上に上げさせるようにリードしていく。
滑らかな生地が梨華の腕を通過して、そのまま床に落とされる。
ひとみは下着姿になった梨華の体に腕を回すと、その首や鎖骨、ブラの上らへんの肌へと
唇を落としていった。
梨華の体はひとみの唇の温もりを感じ、どんどんと火照ってゆく。
さっきから恥ずかしさでひとみの顔を見れずにいた梨華がそっと目を開きその視線を
ひとみに向ける。
梨華の視界には自分の肌に愛おしそうに口付けるひとみの姿が入ってきた。
柔らかい髪が顔にかかっていて、その隙間から見える長い睫、閉じられた瞳の
奥に写っているであろう自分の素肌。
そこにはいやらしさの欠片もなく、ただ純粋なひとみの梨華に対する気持ちが現れていた。
ひとみは回した腕を梨華のブラのホックほ方へと移動させていった。
自然と抱きつくように、ひとみの体に腕を回す梨華。
すぐに梨華は自分の胸の開放感を感じた。
少しだけひとみは梨華の体を自分から離すと、梨華のブラをその体から取り去った。
梨華は見られることに対する恥ずかしさでひとみに強く抱きつく。
- 8 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)20時44分33秒
- まわされた腕に答えるように、ひとみは梨華の背中に自分の腕をまわした。
露になったその美しい肌を優しく撫でながら梨華の体温を味わう。
梨華の方はひとみの愛撫とも呼べるその指使いに、すっかり酔っていた。
梨華はひとみの両頬を自分の両手で包むと、ぐいっと自分の方へ引き寄せ、自ら
唇を合わせ舌を絡ませていった。
ひとみは梨華の背中に回していた手をゆっくりとなぞるように梨華の胸の方へと移動
させていき、その柔らかい胸に優しく触れ、撫でるように愛撫をする。
ひとみの手の平が胸の先端の方へと進んでいくと、すでに快感から硬く立ったモノへと到達した。
「・・・ん」
梨華の口からは今まで聞いたことがないような甘い吐息まじりの声がもれる。
ひとみは片方の乳首を手で転がすように愛撫を続けながら、唇を梨華から離し、
舌でそっとその体をなぞっていった。
生き物のように動くひとみの舌が梨華の体を刺激していく。
全てが初めての感覚。
波打つような快感の波。
自然と様々な反応を示す自分の体。
梨華はひとみの髪に自分の指を通すので精一杯だった。
やがてひとみの舌が梨華の硬くなった乳首に達すると、梨華の体には電気が走った
ような感覚が流れた。
「・・・ん・・ぁ・・・ひとみ・・・ちゃ・・・」
いつもよりも高ぶった声。
梨華はひとみに抱きつかずにはいられなかった。
抱きつかれたひとみは、梨華の胸に挟まれ息ができなくなりそうになり、思わず
胸の中から顔を上げた。
- 9 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)21時04分36秒
- 「・・・ひとみちゃん」
久々にからみ合った愛しい人のその瞳は優しく輝いていた。
梨華は目を潤ませながらその優しい瞳にうったえかけるように服を引っ張った。
それは自分だけが裸というのがどうにも恥ずかしくてならないのと、直にひとみの
体温を感じたかったからだ。
ひとみは少しだけ戸惑った。
実際に今まで何人もの女性を抱いたが、今まで自分の体を見せたことはない。
過去に受けた左肩から右脇腹まである傷。
これがその原因だ。
今まではひとみの素性を知らない人間だったから、傷のことを見せるのが嫌だった。
興味本位で色々と聞かれたくなかったから。
今回は自分の傷を見せることで、リアルな現実を梨華に見せることになるのでは
ないかという恐れがひとみの心に鎖をかけていた。
ひとみは梨華の体を強く抱き締める。
梨華の温もりがひとみに不思議な勇気をくれる。
ひとみは梨華から自分の体を離すと、着ていたパーカーを脱ぎ、下に装着していた
銃をホルダーごと外した。
その光景を梨華は、何の驚きもなく見つめていた。
自分が抱き締められていた時、それの存在はいつも感じているからだ。
ひとみが慎重に銃を下に置くと、自分の着ていたTシャツを脱ぐ。
そしてそのTシャツの下に身につけていた肌にぴったりとしたタンクトップ
のようなシャツを脱いだ。
ひとみはブラというものが嫌いだった。
ずっと身につけていれば、それはあまり気にならに存在なのだが、仕事の時になると
妙に気になってしまうのだ。
学校へ行く時はしょうがなくつけていくのだが、制服を脱ぐとブラの代わりに特注の
肌にぴったり合うシャツを着るようにしていた。
- 10 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)21時35分54秒
梨華の目の前にひとみの生々しい傷が初めてあらわになった。
左肩から右脇腹に走るその傷は、ひとみの体の成長に合わせるように伸びていった
のであろう、線というよりは幅1cm程の溝になっていた。
梨華の視線に気付き思わず苦笑いをするひとみ。
その傷を隠すように梨華を抱き締めようとすると、梨華がひとみの傷に指を這わせてきた。
ゆっくりと左肩から右の脇腹までその痕を辿るようにだ。
梨華の行為がいじらしくて、ひとみは梨華のことを抱きしめた。
お互いの裸が伝える体温の暖かさが気持ち良かった。
ひとみは抱え込むようにして梨華の体をベッドへと押し倒していった。
ひとみは梨華の胸に唇と手を再び這わせていく。
しばらく梨華の胸を愛撫したひとみは、ゆっくりと梨華のお腹や太腿もへと手を
移動させていった。
かすかに震える梨華の体を安心させるようにもう片方の腕で抱きしめる。
ひとみの体温を感じて梨華の体から力が少しだけ抜けた。
ひとみの手は下着一枚を隔ててまだ誰も触れたことのない場所へとそっと触れる。
今までのひとみの愛撫ですっかり湿ったその下着の上からひとみは探るように指を動かす。
「・・・あぁ・・・ん・・ひ、ひと・・・み・・ちゃん」
梨華は体を仰け反らせるように動かす。
それを支えながらもひとみは口で胸の愛撫を続け、下着にかかっていた手で梨華の
濡れた黒の下着を脱がせていく。
ひとみは梨華の唇に優しく口付けると、梨華から体を離して、その足から下着を取り去った。
そして自分もジーパンと下着を一気に脱ぐと、もう一度梨華の体温を味わうように体を
合わせる。
- 11 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月10日(日)21時51分00秒
- お互いがお互いの体温をじっくりと感じあった後、ひとみは梨華の片方の手を
しっかりと握った。
そしてもう片方の手をそっと梨華の足の間に滑り込ませる。
梨華の薄い茂みの中にある突起を手探りで探し、優しく触れる。
梨華は今まで味わったことのない快感に襲われ、ひとみと繋いだ手に力がこもった。
ひとみはそこの部分を撫で、時には軽く摘んだりしながら梨華に快感を与えていく。
梨華のあまった方の手は自然とひとみの背中に回された。
「・・・爪立ていいからね」
ひとみが梨華の耳元で甘く囁くように言う。
そして舌で耳や首筋、鎖骨、胸、腹となぞっていく。
ひとみは梨華の両足を広げ、膝を軽く折るように曲げさせると、熱を帯びた茂みの中へと進んでいった。
- 12 名前:南風 投稿日:2002年11月10日(日)21時55分34秒
- 更新しました。
予定では書き上げるつもりだったんですが、予想以上にこのシーン書けなくて
本日はここで挫折しました。
文章力無いって痛いッス・・・。
明日から何だかまた忙しくなるようなことを言われたので、いつ更新できるのか
わかりませんが、暇を見つけて更新します(ってか家帰れるのか・・・((汗)
ともかく予定では22日まで忙しいらしいので何とも言えないッス。
すんげー中途半端ですみません。
*絶対放置はしないッス!!
- 13 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2002年11月11日(月)18時33分29秒
- ヒサブリです。
エロだ…作者様がついにエロを。・゚・(ノД`)・゚・。
続き待ってますよデヘヘ(氏
- 14 名前:南風 投稿日:2002年11月13日(水)08時12分40秒
- >名無しどくしゃさま
お久ぶりですねぇ。
ついに踏み込んでしまいました・・・
書くかどうかは結構悩んだんですけど、書いてしまいました・・・。
おはようございます。
時間が出来たとはいえ、朝から書くのもどうかと思ったのですが、朝しか時間
がないので更新します。
- 15 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月13日(水)08時31分11秒
- 「あぁ!・・・だ、ダメ・・だよ・・・・ん・・そんな・・・汚いよ・・・ふぁ・・」
ひとみは梨華の言葉にかまわず、さらに舌の動きを早めていく。
ひとみの背中に回した腕に力がこもり、自然と爪がたってしまう。
梨華のソコはさっきよりも大量の愛液が溢れてきていた。
ひとみは指でその綺麗なピンク色をした所を少し開くと、そこにそっと口付けをし、
そのまま溢れ出た愛液を吸い上げた。
「ひ、ひとみちゃん!!・・・わ・・私・・・」
ひとみは梨華の腕を自分の左手で掴む。
強く立てすぎた梨華の爪がひとみの白い皮膚に食込んで、ひとみの背中には赤い
血が滲んできた。
ひとみはかまわずに舌を使い、梨華の赤く充血した頂きを刺激していく。
そして梨華はその快感に耐えきれなくなり、背中を大きく仰け反らせ、力の抜けた
体をベッドへと沈ませた。
荒い呼吸で全身に汗をかいている梨華の体中にキスをすると、ひとみは優しく梨華
のことを抱きしめ、熱を帯びた唇に口付けをした。
「好きだよ・・・梨華」
そのひとみの言葉は今まで聞いた中で一番優しく、梨華の心へと響いた。
梨華もひとみのことを抱きしめ返すと、同じように耳元で『私もだよ、ひとみ・・・ちゃん』と囁いた。
ひとみは優しく梨華に微笑みかけた後、まだ自分の欲求を抑えられずにいるのをごまかすように悪戯ッ子
のような笑顔になると、ニヤニヤ笑い始めた。
「ひ、ひとみちゃん?」
「梨華ちゃんの声って本当可愛いよねぇ」
梨華の顔はみるみる赤くなっていく。
「あたし、誰かの声でここまで高ぶったの初めてだよ」
- 16 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月13日(水)08時48分29秒
- ニヤニヤ笑うひとみの頬を挟んで、梨華は真っ赤な顔のままその頬をグリグリ回した。
「もう!ひろみちゃんの意地悪ぅぅぅ」
「ふぁってほんろうなんらもん」
「むぅぅぅぅ」
ひとみの楽しそうな顔を見ていると怒るに怒れない。
ひとみは梨華に弱い。
そして梨華もまたひとみに弱いのだ。
ニコニコ顔のひとみは梨華のおでこに自分のおでこをコツンと当てると、また優しい顔に戻った。
「汗かいちゃったでしょ?風呂でも行くかい?って普通順番逆か」
その子供のような笑顔に梨華も思わず笑いかえしてしまう。
「うん。行く」
「一緒に行ってあげようか?」
「え!あ・・・」
またまた真っ赤になる梨華をひとみは初めのようにお姫さまだっこをする。
「よし、それではお風呂場へ直行〜」
「ひ、ひ、ひとみちゃん、大丈夫だよ、私歩いて行くよ。ってか重いでしょ」
「この何処が重いっていうの?むしろ軽すぎ。もっとちゃんと食べなさい」
ひとみは嬉しそうに笑ったまま梨華のことを風呂場まで連れていった。
「はい、それじゃあごゆっくり」
そのままひとみはベッドへと戻った。
暗がりならば見せれた傷も、まだ明るい所では見せることに抵抗がある。
愛おしすぎて、大事すぎて見せれないのだ。
ベッドに身を投げ、長い手足を広げて天井を仰いだ。
ひとみの背中に、シーツについた梨華の愛液がしっとりと触れた。
- 17 名前:南風 投稿日:2002年11月13日(水)08時51分58秒
- 微妙にキリが悪く、短いですが本日の更新終了です。
本日判明。
南風にエロ描写は無理ッスね・・・。
そいではまた時間があれが、ちょくちょく更新します。
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月13日(水)12時35分12秒
- いえいえ、そんなことないですよ!
南風さんのエロ描写、口開けたまま読み耽りました(w
すごくイイです!
次回更新、お待ちしております。
- 19 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月16日(土)09時03分35秒
- あ〜朝から読んでしまった、夜にしておけば良かった。
仕事になりまっしぇ〜ん。
南風さんのえろ描写、とても素敵です。
ものすごく雰囲気伝わってきます。
完結までにもう一度、お願いします。
- 20 名前:394 投稿日:2002年11月23日(土)17時43分50秒
- 遅くなりましたが前のスレから飛んできました(w
エロ描写は難しいですよね、、、自分も思います。
だけど十分いいですよ!!
忙しそうですがマータリまってますので頑張ってください!
そしてマータリあの二人の進展も待ってます(w
- 21 名前:南風 投稿日:2002年11月25日(月)21時30分35秒
- >18 名無し読者様
そうッスか。何かかなり自信なかったんでそう言っていただけると嬉しいです。
更新遅くなってしまってすみませんでした。
>ひとみんこ様
お仕事はちゃんと出来たのでしょうか?(笑)
多分最後までにはもう一回は書くと思います。
そん時はもう一度朝にでも読んでやって下さい☆
>394様
ありがとうございます。
あの二人もここでいしよし書いてたら書きたくなってきてしまいました。
ので、期待なんかを片隅でしていただいても良いかと・・・ふふっ
皆様、レスありがとうございました。
思っていた以上に忙しくて、死ぬかと思いました。
ちょっこりだけ落ち着いたスキを見計らって更新させていただきます。
- 22 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月25日(月)21時46分33秒
- 風呂場に残された梨華はひとみが去った後もその場にボーッと立っていた。
というよりも、目の前にある鏡に自分の姿が写し出されたことによってそうならざるえなかった。
鏡に写る自分の胸元や首筋には今さっきひとみがつけた赤い痣が数カ所ついている。
それを見てしまったことによって、梨華はひとみの舌の動きや唇の暖かさ、そしてあの優しい瞳
を鮮明に思い出していた。
自分の体を抱き締めるように指で痣の付いている所を軽くなぞっていくと、自分の指なのに、ひとみ
に愛されている気持ちになる。
そう、それは愛の証とも言える程、ひとみの気持ちがこもっている痣。
梨華は自分の体を腕でぎゅっと抱きしめた。
そしてゆっくりとシャワーを捻ると、熱いお湯を全身に浴び、髪を洗って湯舟に
体をゆっくりと沈めた。
ひとみの方も梨華の香と温もりが残るベッドの上に横たわりながら、今まで触れていた梨華の
肌の感触を思い出していた。
梨華の肌は今まで抱いた誰よりも美しかった。
梨華の一つ一つの動作が愛おしくて、行為の最中に梨華に対して自分が何も言葉を発する
ことができなかった。
言葉を出すのが惜しい程に梨華を感じていたかったから。
一つ触れるごとにもっと欲しくなる。
梨華の甘い香はひとみのことをどんどんと溺れさせていってた。
- 23 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月25日(月)21時58分35秒
- 横たわった布団に香る梨華の匂いを感じるだけで、もっと梨華のことを抱きたくなる。
そんな衝動と必死にひとみは戦っていた。
しかし、そんなひとみの気持ちを無視するかのように梨華はひとみの想像以上に早く風呂から
出てきた。
暗い部屋の中でうっすと見える梨華は、濡れた髪に大きめなバスタオルを体に巻いているようだった。
恥ずかしそうにひとみが横になっているベッドまで来ると、ちょっと下を向いて指をもじもじとさせている。
ひとみはそんな梨華の手を優しく掴むと、布団を少し上に上げて梨華のことをベッドの中に招き入れた。
抱き締めた体から漂うボディーソープの匂い、濡れた髪から香るシャンプーの匂い。
それら全てがひとみのことを狂わせる対象だった。
知らず知らずのうちに梨華のことを抱き締める腕に力がこもる。
「・・・ひとみちゃん」
ひとみの少し冷えた肌に梨華は体をくっつかせるように自分もひとみのことを抱き締めた。
「体冷えてるよ?大丈夫??」
梨華が言葉を発する度にひとみの胸に梨華の息が熱くふきかかる。
早くなる鼓動と共に抑えきれなくなっていく自分の欲望をひとみは感じ、梨華からすっと体を離した。
- 24 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月25日(月)22時15分45秒
- 「大丈夫だよ、ごめんね。せっかく暖ッたまったのに体冷えちゃうでしょ」
ひとみは梨華の体から離した手でまだ濡れている梨華の髪をそっと撫でた。
梨華はその白く長い指を手で捕まえると、少し怒ったような顔をして、捕まえたひとみの手を
ひとみの目の方へと押しやって、視界を塞いだ。
そして体を少し起こすと、身につけていたバスタオルを取り去り、冷たいひとみの肌とまだ温
かい自分の肌をぎゅっと密着させた。
「風邪ひいちゃったらどうするの」
いつもよりも高い声で梨華が照れているのがひとみは分かった。
そして自分の上半身に感じる梨華の胸の柔らかさが、押さえこもうと必死だったひとみの
欲望に火をつけそうになる。
ひとみの気持ちを知ってか知らずか、梨華はもっとひとみとくっつこうと、自分の足をひとみの
足の間に滑りませる。
「・・・梨華・・・ちゃん」
梨華はひとみの胸元に自分の顔をくっつけるようにしてひとみのことを抱きしめた。
「ひとみちゃんの心臓がドキドキいってるの聞こえるよ。暖かい音だね」
梨華の手がひとみの背中をそっと撫でるように動く。
「・・・我慢しないで。私、ひとみちゃんにだったら・・・」
ひとみの背中でかすかに震える梨華の指。
ひとみはそれを感じ、梨華に見えないようにふっと笑うと梨華の頭をぎゅっと抱き寄せた。
「今日はもう寝よう。焦ることなんてないんだからさ」
ひとみの優しい言葉に梨華は少し間を置いて頷く。
それを見てひとみは満足そうに笑った。
「おやすみ。梨華」
- 25 名前:南風 投稿日:2002年11月25日(月)22時17分07秒
- 恥ずかしい程短いですが更新しました。
一応南風の生存アピールみたいなもんで・・・汗
- 26 名前:名無し蒼 投稿日:2002年11月28日(木)18時55分18秒
- 生きてた――!!(笑
えぇっと394です。
あの二人も書いてたら書きたくなったとはっ?!期待してていいんですか?w
忙しそうですがマータリ待ってますので頑張って下さい。
- 27 名前:南風 投稿日:2002年11月28日(木)21時23分45秒
- >394様改めまして名無し蒼様
はい生きていました(笑)
期待していて下さい。今すぐというわけにはいきませんが、必ず確実に書きます。
お気づかい本当にありがとうございます。
南風、地味に頑張らせていただきます!
- 28 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月28日(木)21時28分46秒
- 梨華ちゃんが眠りについてからどれくらいがたったのだろう、カーテンから漏れた太陽の光りが朝を告げ始めた。
部屋に注いでくる光りで室内はじょじょに明るくなってくる。
今だ明るい所で見られる傷に対して抵抗のあるあたしは、梨華ちゃんのことを起こさないようにそっとベッドを抜け
出すと、素早く床に散らばっていた服を身につけた。
もちろん銃もだ。
あたしは今だ寝ている梨華ちゃんの肩まで毛布を上げると、台所で朝食の準備を始めた。
- 29 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月28日(木)21時37分14秒
- 簡単な朝食の準備を終わったひとみは梨華の寝ているベッドの隅に腰をかけると、梨華の柔らかい髪にそっと指を
通してしばらくその髪をとかすように撫でていた。
しならくすると梨華がもぞもぞっと動き、目を覚ました。
はっきりとしない眠気眼でひとみのことを探しているようだ。
「おはよう梨華ちゃん」
自分の後ろから聞こえてくる声に反応してゆっくりと体を回転させる梨華。
梨華が少し顔を上げると、優しい笑顔で自分を見つめているひとみの顔がある。
「おはよう、ひとみちゃん」
たったそれだけのことなのに、梨華は嬉しくてとびっきりの笑顔をひとみに向けた。
自分の髪に当てられているひとみの手に自分の手を重ねてひとみの体温を味わうようにその手のひらに
唇を落とす。
途端、ひとみの顔が真っ赤に染まる。
それは梨華が腕を上げた瞬間に隠れていた梨華の大きめな胸が毛布からはみだしてしまったからだ。
「あ、あの梨華ちゃん・・・」
「うん?どうしたの?」
「・・・」
ひとみは真っ赤になった顔のまま、なるべく梨華の体を見ないようにそっと毛布を梨華の肩らへんまで
引っ張り上げた。
「・・・あっ」
- 30 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月28日(木)21時49分14秒
- 梨華はひとみの行動で、やっと自分がまだ裸だということに気付き、ひとみに負けないくらい
真っ赤になって急いで毛布を自分の鼻の上まで引っ張り上げた。
恥ずかしそうにひとみのことを見る梨華の頭に手を置き、ひとみは同じように真っ赤な顔で毛布の
上から梨華の唇に自分の唇を落とした。
「朝御飯作ったンだ。今持ってくるから服着ちゃいなよ」
優しい笑顔を梨華の方に向け、ひとみはベッドから立ち上がって台所へと向かった。
梨華はそんなひとみの後ろ姿を見つめながら、夕べのことを思いだして、さらに赤くなって
ノロノロと下に落ちた服に手を伸ばした。
ひとみはできるだけ時間をかけて紅茶を入れて、できるだけ時間をかけてパンにマーガリンを塗った。
無駄に伸びをしてみたり、意味もないのに引き出しを開けてみたりする。
しかし、時間を潰そうにも前もって準備をしていた為、あっという間にしたくは終わってしまう。
ひとみは心で10秒数えてから料理をもっていった。
「おまたせ」
ひとみが台所から戻ると、梨華が何やら毛布に包まったまま眉毛をハの字型にして困った顔をしていた。
「どうしたの?」
「・・・服、どうしようかと思って・・・」
「服?昨日着てたドレスでいいじゃん」
「うぅぅぅぅ・・・やっぱりアレは恥ずかしいの・・・」
そんな梨華の態度にひとみは頬の筋肉を緩めて微笑むと、自分の着ていたパーカーを脱いで梨華に差し出した。
- 31 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月28日(木)22時10分49秒
- 「これ、ちょっと大きいと思うけど、とりあえずどうぞ」
「あ、ありがとう」
梨華はそれを受け取ると、毛布の中でもぞもぞとパーカーに袖を通した。
ひとみの方は銃が生で見えているのには抵抗があったので、上半身につけていた銃を腰回りに
つけ直し、それをTシャツで隠すようにした。
数秒後、ひとみのパーカーを着た梨華が恥ずかしそうに毛布から出てきた。
いくら大きめといっても梨華の太腿らへんまでの長さしかないパーカー、必然的にひとみの視線は
パーカーからのぞく梨華の足へといってしまう。
「・・・ひとみちゃん」
「あぁ!ご、ごめん!あたし台所行ってるから、着替え終わったら呼んで」
ひとみは自分の鼓動を抑えるように早足で台所に向かった。
あまりの梨華の可愛さに目の前がくらくらとした。
熱っぽい自分を抑えるように、ひとみは台所にある洗物用のスポンジを見つめていた。
「ひとみちゃん、もう平気だよ」
梨華の声が聞こえて、ひとみは部屋へと戻った。
梨華はベージュのロングスカートをはいて、その上にひとみからかりた黒いパーカーを着ている。
「これ、もう少しかりてていい?」
梨華は自分には少し大きいひとみのパーカーをつまみながら訪ねる。
これで断れる人が一体何人いるのだろう?
この少し照れたような感じの梨華の行為がひとみの男心(女心?)をくすぐらないワケがない。
「全然いいよ」
できるだけ鼻の下がのびないようにひとみは梨華に向かって微笑みかける。
- 32 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年11月28日(木)22時21分06秒
- そんなひとみの笑顔につられて梨華の顔には笑顔が広がる。
一線を越えたことにより、お互いがもっと近くに感じられるようになった。
お互いが相手の笑顔だけで、前よりも幸せな気持ちになれる。
肌を重ねただけといえばそれだけなのだが、肌を重ねながら愛を重ねた2人にとって
この一線を越えたか越えていないかという差は大きなものがあったのだ。
ひとみのことをもっと近くに感じることができるようになった梨華。
今までとは違い、本当に愛しく思って体を重ねることのできたひとみ。
自然と繋がれる手、自然とこぼれる笑顔、それは前までと同じようなことだが、
確実に今までとは違う感覚だった。
「さて、簡単なモノだけど朝食でも食べますか」
ひとみの言葉に梨華は大きく頷いた。
- 33 名前:南風 投稿日:2002年11月28日(木)22時35分02秒
- 雀の涙程の更新終了です。
何だか文章めちゃくちゃッスね・・・すみません。
しかしPCの調子が何とも悪い・・・。
悔しいなぁ。
あ、何だか中途半端な上、えらく時間かかってしまいましたが、ここで第一章おしまいなんです。
本当に中途半端だなぁってつっこみはかんべんして下さい。
次ぎから新章を書くか、番外編を書くかで悩んだるのですが・・・。
うぅん・・・どうしようかなぁ。
とりあえず次ぎの更新は新章か番外編に突入します。
- 34 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月29日(金)08時34分36秒
- 祝「合体」! いしよしオタとしては何ともおめでたい限りです。(w
まだまだ、色々な展開が有りそうな予感、新章、期待してます。
- 35 名前:南風 投稿日:2002年12月09日(月)20時31分33秒
- >ひとみんこさま
レスありがとうございます。
新章に期待して下さっているんですね(涙)
どうにもこうにも忙しくてなんだか進まないのですが、ちょびひげ程度でも
更新させていただきます。
くわっ・・・!!
南風です。
できるとこまでは更新を・・・
- 36 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月09日(月)20時50分50秒
- ここに連れてこられて約1週間。
中澤はずっとこの中にある小さな部屋に監禁のような状態で研究をしいられていた。
ここは得に目立った軍事施設という所ではない。
むしろ平凡な家だ。
家の中にいるのはたった自分を含めてったたの5人だけ。
そこはあまりにも言い放たれた指命とは似ても似つかない場所。
しかし、つんくの性格を考えると納得もいく。
疑わしきものは全て処分せよ。
用心深いのだ。
今中澤がいるのは何の変哲もない部屋。
何の変哲もないと言っても、そこにはベッドやタンスといった一切の家具はなく、
中澤の目目の前置かれているのは紙皿に乗った少量の飯と紙コップに入った少量の水だけ。
ここに来てからというもの、与えられているモノはこんなものだ。
そして並べられた食物を挟んで、中澤の前には『圭坊』と呼ばれた保田圭が背を扉にもたれかけさせ座っている。
- 37 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月09日(月)20時54分15秒
- 保田はこれと言って中澤の方を見るワケでもなく、ただじっと組んだ自分の手を見つめていた。
中澤は保田がその手の中に何を見ているのかを直感的に見た気がした。
それは酷く簡単に手に入りそうなモノで、実はとてつもなく手にいれるのが難しいモノ、
そして悲しい程に純粋なモノなのだろう。
目には見えないモノを保田は静かに握ろうとしている。
その目は悲しみや寂しさを兼ね備えつつも何処か強い意思のような光りを放っていた。
しかしその奥では煮え切れない思いを煙草の火を消すように押しつぶしている。
強くならなくては生きていけなかった生活が保田をこんな姿にしてしまったのだろう。
今の保田は1年前とは比べ物にならに程に生き生きとしたオーラが消え、悲しみと寂しさに満ちているようだった。
「早く食べちゃいなよ。今日も裕ちゃんには働いてもらわなきゃいけないんだから」
- 38 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月09日(月)20時55分08秒
- 感情を押し殺したような保田の冷たい声が中澤の耳に刺さる。
相変わらず視線は手元に向けたままだが、その声には人を押さえ込むような力強さがこもっていた。
従わなければ生きていけなかった。
従わなければ大切なモノを守りきることができない。
取り引きというにはあまりにも理不尽な押し付けがましい要求。
しかしそれを飲まなければならないような状況。
全てが悪い方にしか向いていなかったのだ。
保田はそれらの全てを受け入れ、今こうしてこの場に留まっているの。
できることならこんな所にいたくない。
自らの手で全てを破壊してしまいたい。
しかし現実的にそれは不可能なのだ。
やみくもに動き回って全てを無にする程保田は愚かでもなく、幼くもない。
そして全てを受け入れることができる程器用でもなかった。
中澤は保田にかける言葉が見つからず、ただ目の前にかれた食事に手を伸ばすしかなかった。
- 39 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月09日(月)20時57分25秒
- 紺野の診察の結果、飯田の傷はほぼ回復したとのことだった。
この奇跡的な回復の早さの裏には、辻達の必死の看病と紺野の適格な処置があったのは言うまでもないだろう。
新垣は飯田よりも早く回復しており、今では高橋達と一緒に遊べるまでになっていた。
しかし、新垣には後遺症が残ってしまった。
それは人や生き物に対する熱感知。
つまり、あの施設の中で新垣がまかされていた監視というものと同じ能力だ。
これはたとえ新垣が望まなくても目を閉じ、眠りに落ちるまで自然と働いてしますのだ。
紺野はこの原因を短時間で数多くのプラグを抜いてしまった為に脳に組み込まれていたデーだが残ってしまったと考えていた。
しかし命と引き換えに残ってしまったこの症状を新垣はさほど気にしてはいなかった。
もちろん始めは戸惑った、が、慣れという言葉があてはまるのならば新垣はこのような感覚に慣れていた。
それに昔とは違って自分の意思というものが働く。
あの頃は意思というものは取り除かれていたのだが意識はあった。
新垣にしか分からないであろうこの感覚は数年間にわたって新垣を支配していた。
だからこそ今がさほど気にならないのだ。
むしろ今こうして意思をもって行動できるということに喜びを感じている。
- 40 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月09日(月)21時01分37秒
- 新垣は落ち込んでいた紺野にこのことを必死で伝えた。
紺野は新垣の言葉をしっかりと受け止め、落ち込んでいた気持ちを立て直らせた。
そしていつか必ずそれを取り除いてみせると誓い、また研究を始めたのだ。
その紺野が研究を再開した頃、矢口はひとみと後藤を見張りに立たせ、他の中澤班と飯田を自分の寝室へと呼んだ。
このメンバーの中にはなつみも梨華も含まれていたので、他の娘達は自分達だけのけ者にされたように感じ、辻加護を筆頭に
隙あらば部屋の様子を見ようと必死に悪知恵を働かせた。
もちろんひとみと後藤にそんなことが通用することもなく、いけどもいけども玉砕してっているのは言うまでもないだろう。
梨華はひとみと離れることに不安を覚えたのか、ずっと眉毛をハの字にしていた。
ひとみが仕方ないよという風に笑った時に、市井はそれを狙っていたかのようにさりげなく
梨華の肩をしっかりと抱いて部屋の中に入っていった。
そう、背中に感じるであろう痛いはずの2人分の視線も気にせず。
そして極め付けに市井はひとみ達に向かって意味ありげにウィンクをしていった。
- 41 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月09日(月)21時18分04秒
- 「・・・」
「・・・」
扉を挟むように立っている後藤とひとみ。
会話こそないものの、お互いにイライラしてみたり、気まずそうにしていたり、自分達にちょっかいを出すおこちゃま達を追っ払ったりしている。
「・・・あれは後藤のせいじゃないからね」
「・・・知ってる」
ひとみは背中を壁に押し当てるようにして、前髪をかきあげながらため息をついた。
嫉妬。
こんなに醜い気持ちだったなんて考えたこともなかった。
市井さんは単にふざけていただけなんていうことは分かっているつもりだ。
それでも、自分以外の誰かが梨華に触れている所をひとみは見たくなかった。
自分の独占欲の強さに驚かされる毎日。
お互いに体を合わせた日から、ひとみの独占欲は強くなる一方だった。
「・・・ダメだな」
ひとみは小さく小さく呟いた。
それを聞いた後藤はひとみの方をちらっと見て少し悲しそうに微笑んだ。
「よしこ、変わったね」
後藤の声に反応して顔を上げるひとみに、後藤はいつものようなトロンとした笑顔を向けた。
「どうだろうね・・・」
『本当は気付いてるくせに』こんな言葉を飲み込んで後藤は自分よりも大きなひとみの拳に自分の拳をコツンと当てた。
- 42 名前:南風 投稿日:2002年12月09日(月)21時22分47秒
- 更新終了です。
朦朧とする意識の中、打った文章なもんで微妙な感じッスね・・・汗
なんだか改行少なくて読みにくいかもしれないですが、すみませんです。
何だか打てば打つ程にボロが出てきそうなので今日はこのへんでフェードアウトさせていただきます。
あ、初雪万歳。
6時前。早朝の駅のホームは顔が氷るかと思いました。←大袈裟。
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月09日(月)21時39分31秒
- 新章開始、おめでとうございます。
マターリお待ちしてますので、頑張って下さい。
機会があれば、番外編も読みたいです。
- 44 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月09日(月)21時55分36秒
- 南風さん。
私も今朝起きて、窓の外の雪をみて、今日は家にいようと思い
一日中、娘。小説ばかり読んでました。
新章突入、お疲れさまです、ご自分のペースでガンがって下さい。
- 45 名前:南風 投稿日:2002年12月16日(月)21時54分37秒
- >43名無し読者さま。
ありがとうございます。
自分的にも番外編で書きたいのがあるので、まったりねっとりと待ってて下さい。
>ひとみんこさま
自分の家の前にはまだ雪が残ってます。
けっこうしぶとい雪です。
っていうよりもここが寒い・・・?
不定期な更新で申し訳ないです。
先に言わせて下さい。
南風は知識不足です。
さらに暗くて重いッス。
しばらく?は重いです。
自分で書いてても重いです。
でも、かきます。
- 46 名前:南風 投稿日:2002年12月16日(月)21時58分19秒
- 「さてと・・・」
矢口は部屋の中にいる全員のことを見回した。
「もう集まってもらった理由っていうのは大体分かってるよね」
皆が無言のまま頷く。
なつみも梨華もその空気にのまれ、顔をキッと引き締め神妙に頷いた。
「カオリの怪我もほとんど直ったことだし、もうそろそろ動きだそうと思ったんだ。
まぁ正確に言うともうリミットが近いっていうのもあるんだけどね。
まずはこのメンバーだけを呼んだ理由、前書き無しでいうと、ここにいる娘達以外は連れていかないから。
石川やなっちを呼んだのは、それを知っていたうえでここに残って他の娘達を見ていてほしいから。
皆2人によく懐いていすみたいだからね。
そしてカオリ、カオリにもここに残ってもらう」
何でと言う顔で矢口のことを見つめる飯田に、矢口は続けた。
「カオリにはここに残ってやってもらいたいことがあるの」
矢口は視線をしっかりと飯田に向けたまま、その言葉を大切そうに伝えた。
飯田は矢口の視線に見据えられ、少し考えてから素直に首を縦にふる。
- 47 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時00分03秒
- 「今回直接現場に行って動くのは市井、後藤、吉澤、矢口の4人」
最後に矢口が自分の名前を言った瞬間に市井となつみが矢口の方を向く。
矢口はそれでもかまわずに続けた。
「組みは市井と後藤、矢口と吉澤。これを基本として行動は行う。
カオリは矢口達のナビゲーターとしても動いてもらうつもりだからよろしくね。
そして次ぎは多分何人か気になってる人もいると思う人達のこと。
まずは裕ちゃんのことから話すね」
中澤の名前が出た瞬間に飯田を除く全員がその名前に反応を示す。
1人残されたような飯田は頭の上におもいっきり大きなクエッションマークを浮かべている。
「一番初めから話すから、カオリも皆もよく聞いておいてね。
本名、中澤裕子 1973年6月10日生まれ 29歳 O型 現在は東京都に在住。
ここまでは皆いいね」
矢口は一息おくと、一気に話しはじめた。
- 48 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時02分09秒
- 「裕ちゃんは母親と妹と裕ちゃんとの3人暮らしだったんだってさ。
父親は裕ちゃんがまだ小学生の頃に死んじゃった。心臓病って聞いた。
妹は裕ちゃんの10歳くらい下って言ってたかな?裕ちゃんは年下の妹のことをすごく可愛がってたみたい。
ともかく家族3人、本当に仲良く暮らしてたんだってさ。
裕ちゃんは高校2年の時に1人母親に頼まれた買い物に出かけた。
一緒に付いてこようとする妹に『いい娘だからお母さんのお手伝いをしてなさい』って言って。
その日はすごく綺麗な夕日が出ていて、裕ちゃんはちょっと寄り道をして丘の上からその夕日を見てたんだってさ。
オレンジ色っていうよりも赤かったなぁなんて言ってた。
見とれていたというよりも見いってしまったって感じだったみたい。
そうしていたら夕日はもうほとんど沈んでいて-------------
---------中澤は急いで帰った。
母の手伝いをしなければいけないのに、どうしてか今日だけはこんなにも時がたつのを忘れてしまっていた。
自分の手の中には頼まれた食材があるのだ。
きっと妹がもうお腹が空いたとグズッているだろう。
中澤は夕日を背にして早足で家へと戻った。
- 49 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時04分00秒
- いつものようにドアのぶを握って扉をあける。
「ただいまぁ」
いつものように言った言葉にはいつものように返ってくる言葉はなく、
いつものようにかけよって抱きついてくる妹の姿もい。
狭い家の小さな台所からはぽたっぽたっと一定のリズムで落ちる水滴の音だけが聞こえてくる。
その音だけが無気味な程に家の中を支配する。
無音ではない、その音の方が部屋の静けさを物語っているようだ。
玄関で立ち止まったまま、中澤は耳をすませてみた。
しかし、聞こえるはずの台所から食材を切る包丁の音も、妹の可愛らしい笑い声も何も聞こえない。
中澤の背中に冷たい汗が流れた。
悪い考えが次々と浮かんでくる。
母が突然倒れたのだろうか?
それとも妹に何かあったのだろうか?
止まらない思考の波を押し抜けるように中澤は靴を脱ぎ捨て、部屋へと駆け上がった。
台所に近付くにつれて不快な臭いが鼻につくようになる。
小さな家の為にあっという間に台所に辿り着く。
そして中澤は足を一歩踏み入れた時、何かに足をとられて床に倒れこんだ。
倒れた拍子に持っていた買い物袋から玉葱や豚肉や妹の為に買ったおまけ付きのお菓子が飛び出し、
濡れた床に散乱した。
- 50 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時05分55秒
- 中澤は自分の足に小さな柔らかい感触を感じ、床にくっついた体の部分に生暖かい液体を感じた。
どろりとした感触。
始めはそれが何か分からなかった。
しかし、それが血だと判断するまでにそう時間はかからなかった。
そして、視線の先にある中澤と同じように血に浸っているモノを見た時、中澤の頭は真っ白になった。
叫び声を上げることすらできない。
息を吸おうとしても上手く呼吸ができない。
簡単なパニック状態になってしまったのだ。
中澤の視線の先には肩までの黒髪の小さな妹が目を大きく見開いて横たわっていた。
笑顔が可愛い娘だった。
小学校の低学年にしては小さくてか細い妹だったが、明るくて、甘えん坊で、
ちょっとわがままな本当に可愛い娘だった。
その妹が今、中澤が今まで見たことのないような表情で倒れている。
痺れた頭で感覚の無くなった手を震えながら伸ばして、小さな妹の顔を触れてみる。
妹の暖かな肌はもう無く、冷たく、ゴムのような弾力を持った真っ白な肌しかそこにはなかった。
震える指で妹の頬や唇に触れているうちに、中澤の目からは一筋の涙がこぼれた。
それがきっかけとなったかのように涙は次々と流れてくる。
- 51 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時07分00秒
- 声を出そうとしてものどからは掠れた息しか出てこない。
言葉の代わりに出てくるのは言葉とは呼べない嗚咽のような声だけ。
中澤は涙で歪んだ視界で、そっと妹の瞼を下ろした。
しかし死後硬直の始まった体はその意に反するように抵抗を見せる。
中澤は着ていた制服の真っ白のスカーフを首元からするりと取り、妹の顔へかぶせた。
力なんて入らない体を台所の流し台を支えに無理矢理立たせる。
どす黒い血の海に浸った妹のことをもう一度見つめる。
さっきまで真っ白だったスカーフは血を吸い込み赤く赤く変色をしていっていた。
中澤が目を反らそうとした時、その視界に血の気を失った真っ白な肌とは対照的な色をしたモノが入ってきた。
それは黒かった。
- 52 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時08分04秒
- とてつものなく嫌な予感がした。
吐き気の波が押し寄せてくる。
それはさっきから臭っている臭いが何なのか、中澤に強制的に教えた。
妹の手の先は手というものが認識できない程に真っ黒く焼けただれていた。
指は溶けた皮膚と皮膚がくっついているようだ。
中澤がそれを手と認識することが出来たのは、ソレがたんに腕の先にあっただけだから。
本当は手じゃなかったのかもしれないが、中澤にそこまで考える力は残っていなかった。
自分の目を信じられなくなっていた。
あの妹がこんな事になるなんて考えられるはずがなかった。
酷い苦痛だったはずだ。
そう思うだけで、中澤の涙はさっきよりも量を増して溢れてくる。
何故自分じゃなかったのだろうと思った。
何故こんなにも幼い妹にこんなにも酷いことを・・・。
- 53 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時09分14秒
- 中澤は力無く頭を振った。
その拍子に涙がぽたぽたと血の海に吸収されていく。
そして自分が今体の支えにしていうる流し台の冷たさを一瞬感じた時、
やっと母親がいないことに気が付いた。
今だ震えの治まらない足で辺りを見回してみる。
濡れた床、横たわっている妹、散乱した袋の中身。
袋から転がった中身を目で追うと、その先には不自然な光りを放つモノが見えた。
中澤は最後の気力を振り絞ってソレへと近付いていく。
大量の汗が体中の穴とう穴から流れてくる。
手足や頭はもう完全に冷たく痺れ、恐怖という言葉が中澤の神経を完全に食らっていた。
自分の考え出したイメージが猛烈な速度で体の自由を奪っていく。
凍えた手で中澤は半開きになった冷蔵庫に手を伸ばした。
中澤はその場で意識を失った。
部屋の中には幼い少女の亡骸と意識を失って倒れた中澤、
そして冷蔵庫から転がり出た母親の頭部が血の海に浸っていた。
- 54 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月16日(月)22時10分43秒
中澤の叫び声で隣の住民が駆け付け、そこから警察へと連絡がとられた。
中澤は精神病院へと入院させられた。
そして1年後、奇跡的な回復を見せ退院をする。
中澤は入院してしばらく、ずっと心を閉ざしたままだった。
誰の言葉も受け入れようとはせず、誰とも口をきかなかった。
目に写るもの全てを敵とみなし、近付こうとするモノにはすぐに牙をむいた。
あの事件の後、真っ黒だった髪は金髪に近い白へと自然に変わってしまった。
目はつねに虚ろで真っ白な衣服には、常に自分で自分を傷つけた跡である真っ赤な染みがついていた。
中澤は何度も拘束着をつけられた。
鎮静剤を使うなんてことは日常茶飯事になっていたかもしれない。
そして入院して半年がたった頃、中澤の元に一通の手紙が届けられた。
その手紙が届いたのは中澤の18歳の誕生日の日だった。
差出人は昔他界してしまった父だった。
父親は自分の心臓が弱いことを知っていて、自分の命が残りわずかだということを悟っていたのだという。
手紙には今の家族の皆はどうしているのだろうとか、家族を気づかうようなことが書かれていた。
そして自分が早く逝ってしまった謝罪の言葉も。
手紙の2枚目は『18歳になった裕子へ』という言葉から始まった。
- 55 名前:南風 投稿日:2002年12月16日(月)22時13分27秒
- 更新終了です。
ストックとして書いているのをベタッと貼っている状態なので誤字脱字が多いかと
思います。申し訳ないです。
年内にはいい所まで進んでおきたいなぁって思ってます。
ってか話しをまとめる力をつけたいッス・・・。
とりあえず更新終了です。
- 56 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時28分07秒
- 『お誕生日おめでとう。
裕子ももう18歳になったんだな。
月日が流れるのは早いもんだな。ってこんなこと書いてるけど今裕子は父さんの隣でぐっすり寝てるよ。
未来のお前に手紙を書いている自分が何だか妙な感じがするけど、父さんはこの手紙が裕子の元へ届く頃にはもう
この世にはいないと思うから、大事なことをここに書いておくよ。
本当は手紙なんかじゃなくて、きちんと話し合いたいんだけどそれは無理だからな。
回りくどいことを言っても辿り着く所は同じだから、単刀直入に言う。
お前にはもう1人妹がいる。
こんなこといきなり言われたって困るだろうし、怒るだろう。今まで黙っていて本当にすまない。
この事は母さんも知っているんだ。
お前のもう1人の妹の母親は母さんの親友の人なんだ。
- 57 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時29分57秒
- そこの夫婦は不妊症だった。
検査の結果で父親の精子に問題があって子供が出来ないということが分かったんだ。
それでも母親は子供をほしがった。
父さんも母さんもならば養子をもらえばと何度も説得をしたんだけど、
その人はどうしても自分で産みたいと言ったんだ。
そして父さんと母さん、そして母さんの親友の夫婦達は話しあった。
何日も何日もね。
結果、父さんの精子を使ってその母さんの親友の母親を妊娠させることになったんだ。
知らない人のを使うのよりも、って理由でね。
今思えば本当に凄いことを決断したと思う。
そして母さんもその夫婦の夫の方もよくそれを承諾したなって思うよ。
そしてその母さんの親友の人は取り出した父さんの精子を使った何度目かの体外受精で、妊娠したんだ。
それと同じ頃、お前の母さんも妊娠した。
そう、父さんと母さんの間に生まれたお前の妹を。
- 58 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時30分59秒
いつこのことを言おうかとずっと悩んでいたよ。
でも今、父さんの隣で寝ている裕子に伝えるには早すぎると思って、文面で本当に申し訳ないんだが、
伝えさせてもらった。
だからもし、裕子が会いたいと思うのならばそのお前のもう1人の妹に会ってくれ。
詳しいことは母さんが知っているから色々聞くといいだろう。
何だかだらだらと長くなってしまったね。
未来の裕子と一緒にいられないのは本当に辛いけど、いつまでも見守っているからね。
可愛い父さんの娘、裕子へ』
- 59 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時32分25秒
- 中澤はこの手紙を見た時、入院して以来始めての涙を見せた。
動揺こそしていたものの、妹を探すいう目標を持った中澤の瞳には意思の強い光りが戻っていった。
もう詳しいことを知る母親はいない。
入院してから全てを拒み続けた自分は、外からの接触を一切断ってきた為、
母親の親友との連絡のとりかたもかわらない。
ならば自分の力で探すしかない。
こうして入院して1年後に中澤は異例の早さで退院をしたのだった。
退院後、中澤は自衛隊へと入隊した。
今までの入院費を支払う為と、今後の生活を考えた時、食事にも住む場所にも困らずにすむから------
- 60 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時33分31秒
- -----精神病院への入院という点でひっかかりこそしたものの、裕ちゃんの入隊試験の時の成績は
その点をも凌駕するものだったんだ。
入隊後、基本訓練を終えた中澤は上官からの強い推薦である研究をすることになった。
「研究?」
今まで震える梨華の肩を抱き続けていた市井の片眉が上がる。
「そう、研究・・・」
矢口は視線をカーテンのしまった窓の方へと向ける。
その瞳の向く先は先が見えず、その瞳に写っているであろう空はあまりにも遠くにあるように見えた。
「・・・裕ちゃんの研究は科学兵器・・・そう、科学っていう名の武器の研究だよ。
絶対に抵抗あったはずだよ。命を奪う為の研究だからね・・・。
それでも裕ちゃんは研究を続けてたんだ・・・つんくの元でね」
- 61 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時35分28秒
- 矢口の発したつんくという言葉に部屋中の空気が一気に凍り付いた。
が、かまわず矢口は話しを続けた。
「裕ちゃんはつんくのお気に入りだったみたい。
上司という名を武器につんくは裕ちゃんに必要以上にくっつこうとした。
若くて美人で頭もきれる。
そりゃ側に置きたくなるよね。
でも、つんくが裕ちゃんの側にいたのはソレだけじゃなかった。
つんくは知っていたんだ。
裕ちゃんが自分の手掛けたあの事件の生き残りだっていうことを・・・。
つんくは裕ちゃんの研究が少し落ち着いた頃、入隊して2年くらいたった頃に命令という
言葉を使い裕ちゃんのことを自室へと呼び寄せた。
入り口の所で直立不動の体勢で立つ裕ちゃんをソファーに促し、つんくは薄ら笑いを浮かべて
突然あの中澤家を襲った事件のことを喋りだした。
裕ちゃんは頭が真っ白になったって。
- 62 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時37分00秒
- 当たり前だよね。
本当に突然喋り出して、過去を引きずり出して、自分の望みをつらつらと並べてくるんだよ。
『その時人はどういう心理状態に陥るのかを知りたい』
『そこから立ち直ったお前のその強い精神力が欲しい』
『お前のその頭脳が欲しい』
『お前のその存在が欲しい』
裕ちゃん言ってた。
あの時の見たつんくの目はただの狂人の目だって。
狂ってる。
本能が逃げろって言ってたって------
----中澤は自分の本能に従うべく、一礼をして部屋から出ようとした。
つんくは中澤が扉に手をかけようとした瞬間に、その木製の扉に向かって小型のナイフを
一本投げ付けた。
「まぁ待ちぃや。まだ話しは終わっとらん」
- 63 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時39分30秒
- 中澤はつんくに背中を向けたまま扉から手を引き、その場に立ち止まった。
「そうや、聞き分けがええ方が長生きできるっちゅうもんや。中澤もちゃんとわかっとるやないか」
つんくはそう言うと中澤の方へ歩み寄り、立ち止まって固まっていた中澤の腕を無理矢理掴んで自分の机の方へと引っ張っていった。
ガタッと木製の机と床がすれるような音がし、中澤はつんくに組み敷かれるような体勢になる。
自分の体の上につんくの体温を感じ、自分の顔にかかる煙草くさい息に中澤は嫌悪感を覚えた。
「混乱しとるんやろ?当然や。俺がお前の家族のこと知ってるんやからなぁ」
つんくは中澤の制服のボタンに片手をかけた。
「しかし運命ってのは凄いモンなんやな」
狂気じみた目のまま胸元辺りのボタンを一つ外し、その隙間からつんくは自らの手を差し入れ、中澤の耳に囁きかけるかのように
熱く湿っぽい息を言葉と一緒に吐き出した。
- 64 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時41分39秒
- 「まさか自分の手掛けた作戦のターゲットの生き残りが自分の部下としてここにおるんだからな」
中澤の目が見開かれた。
妙に頭がクリアになる。
体全身で自分の上に被さるようにしている男のことを拒絶した。
自分の家族を奪った張本人が目の前にいる。
あんなにも幼かった妹、あんなにも優しかった母を奪った男が目の前にいるのだ。
中澤は持てる力全てを使ってつんくのその存在を拒否するようにもがいた。
全身に鳥肌が立った。
自分の体に触れられていると思うだけで胃の中にあるモノを吐き出しそうになる。
が、つんくはその中澤の動きをいとも簡単に押さえ込み、ボタンの隙間から入れた手を中澤の腹部の方へと移動させた。
「何故俺がこのことをお前に話したかわかるか?俺はさっきも言った通りお前のその頭が欲しいンや。
そしてお前自身もな。
俺と組もうやないか。これから先、どんどん仲間も増えてく予定なんや」
- 65 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時42分42秒
- つんくは中澤の腹部を自分の指で弄びながら笑った。
「傷ついてなお立ち直る程の生命力をもった可愛い可愛い子らがな」
このつんくの言葉を聞き、中澤は自分でも信じられない程の力でつんくのことを跳ね飛ばした。
自分の息が荒くなっていく。
こいつは何を言っているんだ。
何故こんなにも笑っていられるんだ。
こいつは何を考えてるんだ。
全ては疑問だ。
この目の前にいる男に対する。
「おいおい、上官に向かってこんなことしてええのか?」
「うるさい!!」
- 66 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時44分47秒
- 「ははっ、威勢がええな。そういう怒りに狂ったような目がまた俺のことをくすぐるんや」
「あなたは・・・お前何かんがえとんねん!」
「口の聞き方もなっとらんなぁ。まぁええわ。話しついでに教えてやるわ」
つんくはそう言って立ち上がると、ズボンや上着についたホコリを手で簡単に払い壁に寄り掛かった。
「中澤、お前はこの国が腐ってると思ったことはないか?」
つんくは胸のポケットから煙草を取り出し、それに火をつける。
「俺は思っとる。だから変えてやらないけんと思った。
では変える為には一体何が必要だ?
それは力や。
力が必要なんや。
腐りきったこの国を根っこから取ッ変える程の力や。
じゃあその力はどうやって作ればええ?
必要なのは厳選された兵士。
それも俺の命令を素直に聞くような聞き分けのええ兵士や。
ならばその兵士はどうやって選ぶ?
- 67 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時45分50秒
- 俺は考えた。
まずは必要となる組織を作った。
まだまだ発展途上の組織やけど、これからどんどん大きくなっていくはずや。
そして組織の基盤が出来た今、平行して行わなければいけないのが兵士の育成や。
その兵士は厳選せなあかん。
まず兵士をいかにして見つけるか。
そこが問題やった。
俺は考えた。
該当するモノがいないのならば自らテストすればええと。
命に関わる程の致命傷を負ったにもかかわらずに生きていられる程の生命力を持った子。
まさに理想!
まだ幼い子供ならば聞き分けもええ。
刃向かうならばそれを直せばええだけや。
それでも刃向かおうとするのならば処分すればええしな。
今んところ該当するモンはおらんけど、そのうちぽつぽつと出てくるやろう」
- 68 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時47分52秒
煙草の灰を床に落とし、つんくは壁によりかかったまま中澤の方を向いた。
「どうや?俺と一緒にこの腐って死んでしまった国を作り直そうやないか。
お前のその頭脳と俺の今の力があれば恐いモン無しや。
一生の生活も保証したる。それなりの地位も用意したる。
望みとあらば男だって用意・・・」
「ふざけるな!!お前自分が何言ってるか分かってんのか!?何が世の中を直すや!何が理想や!!
お前のやっていることの方がよっぽど腐っとるわ!!」
中澤は握っていた拳を机に思いきり叩きつけた。
「お前のつまらんその思想で何人の人達を不幸にしようとしとんや!
何人の人達を苦しめたんや!!」
「つまらん思想っていうのは心外やなぁ」
「これだけは言っとく。ウチはあんたのモンになんかならへん。
あんたの為に自分の頭脳なんて使う気はないからな」
「・・・そう言ってられるのも今のうちや」
つんくは小さく笑みを浮かべながら呟いた。
- 69 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月19日(木)21時49分05秒
- 「まぁ、今日のところはこんなんでええわ。きっと今これ以上何を話したって無駄やろうからな。
もう帰ってええで。今晩じっくり考えて明日にでも返事くれたらええわ。
それと・・・」
ガンッ
乾いた音がした場所につんくが投げた先程よりも大型のナイフが突き刺さる。
「この部屋で俺のことを狙おうと思っても無駄だってことは覚えておけよ。
お前が俺を狙っている間に俺はお前を殺せるからな」
そう言うとつんくは目で中澤に早く出て行けと促した----------
- 70 名前:南風 投稿日:2002年12月19日(木)21時53分07秒
- 更新終了。
自分の知識の無さが恥ずかしすぎて気絶しそうです。
でももうちょい続きます。
季節外れな南風は寒い北風に変身中です。
暗い話っすね。
早く明るい話しまでいかないかなぁ・・・←ってお前が早く書けよですな。
とりあえず今日は更新終了でございます。
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月20日(金)00時54分03秒
- 中澤しゃん…辛かったんだね…(号泣
みんなが幸せになれるよう祈ってます…。
- 72 名前:18 投稿日:2002年12月20日(金)03時43分16秒
- ググっと引き込まれました。
裕ちゃんにそんな過去があったとは・・
人の痛みを分かっているから、大切なものを守るために戦おうとしているんですね。
この戦い、皆生き残って幸せを手に入れて欲しいです。
- 73 名前:南風 投稿日:2002年12月21日(土)18時16分22秒
- >71名無し読者様
同じく皆が幸せになれることを祈っている作者です。
自分で書いていてもどうなるかわからないので、同じように祈らせていただきます。
>18の名無し読者様
引き込まれてくれましたか。
嬉しいです。
やはり人の上に立つ人というのは下の人以上に様々なことを思い、考えている
んでないかと思っているので。
幸せの形は人それぞれですが、皆が幸せを感じられるようになると良いなと思ってます。
レスありがとうございます。
どうにも日本語がおかしい南風です。
でも更新です。
- 74 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月21日(土)18時18分26秒
- --------裕ちゃんは翌日に脱隊の申し出をした。
当たり前だけどすぐになんて辞めれるはずないじゃん。
だから裕ちゃんはほぼ脱走のようにそこを去ったんだってさ。
その後は必死に父親に書いてあった妹の捜索をした。
でも今だにその妹にはたどり着けてないみたい」
矢口はここまで一気に話すと視線を自分の前で組んでいる指へと向けた。
「裕ちゃんは妹を捜しながら矢口達みたいな子を捜してくれてたんだ。
つんくの話しを聞き終わった後、中澤はあの病院にいた日、父からの手紙に綴られていた
もう1人の妹の存在がどうしようもなく気になってしょうがなかった」
俯くような形になっている矢口の隣になつみが静かに座ってその小さな肩をそっと抱いた。
- 75 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月21日(土)18時19分54秒
- 「矢口は裕ちゃんに一番初めに拾われたんだ。
皆が知らないようなこんな話しを知ってるのは、昔本当にボロボロになっちゃってた裕ちゃんがお酒を飲んでる時に
話してくれたから。
それで皆にこの話しをしたのは、きっと裕ちゃんも望んでいたんじゃないかって思ったし、矢口も思ったから。
真実を知らないでただ動かされるんじゃきっと納得しないと思ったからさ。
矢口だったら納得できないもん」
部屋の中の空気は止まっていた。
それぞれが今聞いた矢口の話しを整理しようとしている。
そしてそんな中、梨華だけが1人深刻な顔をしていた。
それにいち早く気付いたのは隣にいた市井だった。
「石川、どうした?」
市井の声に部屋の中にいる人達の視線が梨華に集まる。
その視線を感じ、梨華は今自分が考えていたことを頭の隅おいやり、無理に笑顔を作って『何でもないです』と答えた。
酷く自分の考えが恥ずかしく思えたから。
梨華はすっと市井の腕から逃れるように体を動かすと、扉の反対側にいるひとみの方へと一瞬視線を向けた。
- 76 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月21日(土)18時21分05秒
- 一方その頃・・・
「いいかげん諦めたのかなぁ?」
「どうだろうね、辻加護のことだからまた何かくだらないことでも考えてるんじゃない?」
ひとみと後藤は自分にくっついている紙吹雪の残骸を払いのけながら扉の前に座りこんでいた。
この紙吹雪は辻加護が『霧隠れの術』とか言いながらひとみ達に向かって投げ付けたものだ。
初めは2人とも全力で喧嘩をふっかけてきたりしていたのだが、途中から今のようなな悪戯に変わっていた。
辻加護にしてみればこの2人にかなうはずもないということが分かり、ならばあの手この手を使って部屋に
侵入してやろうという魂胆みたいなのだが、ひとみ達にはその意図がどうにも分からないようだ。
だからひとみ達は思う。
どう考えても真剣さにかけている。
というか遊ばれているようにしか思えないと。
「・・・次ぎはどんなのでくんのかなぁ?」
「・・・蛇だけは勘弁だね」
- 77 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月21日(土)18時22分59秒
- そしてひとみと後藤がこんな会話をしている頃・・・
辻と加護は高橋と紺野がいる部屋の扉をノック無しで開けて中に入って行っていた。
当然、中で真剣に正座をしてオセロをしていた2人はばっちり固まっている。
ただでさえ驚き顔の高橋は口をポかァんと開けたまま入り口でにこにこしている2人を見つめ、
マイペース紺野は辻が脇に抱えているモノに目を奪われて固まっているのだ。
辻は早く自分が持っているモノの話題に触れてほしくてたまらないと言った感じでそれを両手で
抱きしめ腰をフリフリして変な踊りを踊っている。
「・・・あのぉ、辻さん?その手に持ってらっしゃる巨大な・・・骨?って」
ためらいがちに言ったこの紺野の質問に、辻は嬉しそうに巨大な骨を自分の腕めいいっぱい伸ばして
前に突き出した。
それに続くように加護も背中に隠していた黄土色のような色で毛がもじゃもじゃした大きな布を突き出す。
「もうのの達だけの力じゃよっすぃ〜達のことをぎゃふんと言わせることができないのれす!」
「そう、だから次ぎは『やだ!何これ可愛い〜。ちょっとお姉さん達と向こうでいいことして遊びましょうよ。』作戦で
いくことにしたんや」
- 78 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月21日(土)18時23分48秒
- このどうでもいいような作戦名に高橋も紺野も発する言葉を無くしていた。
高橋はに嫌な予感で背中に汗までかいている。
その動揺を隠すように高橋はモールス信号のようなイントネーションで怯えながら口を開いた。
「・・・あのぉ、それって・・・着ぐるみってヤツですよねぇ?」
2人はそろって大きく頷く。
「それで、ここに来たってことは・・・」
2人はまたまたそろって大きく頷く。
「それを着る運命にある人っていうのは・・・」
2人はそろって高橋のことを指差した。
「・・・えぇえええ!!な、ちょっ、えぇ!?!!すんなん着たくないですよぉおお!!」
「ののいくで!!」
「へいっ!!!」
「・・・。」
- 79 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月21日(土)18時24分52秒
- 嫌がる高橋を見事なまでのコンビプレーで追い詰めるこの小さなコンビ。
辻の恐ろしい程の腕力をもってその自由を押さえ付け、その隙に加護がどんどん服をはいで自分の持っていた着ぐるみを着せていく。
いくらひとみ達にかなわないと言ってもこの2人は元戦闘部。
ちょっと力を出せば元元戦闘部で元情報部の高橋などよりも強くて当たり前なのだ。
必死の抵抗を見せる高橋だが、2人の小悪魔のような笑みでの実力行使にはかなうはずがない。
遠くから見ればレイプとも見えるこの戦いの中で、紺野は・・・
1人オセロを続けていた(もちろん高橋の番も思いっきり自分でやっている)
「あ、負けちゃった」
そう、たとえ1人でやろうとも決して手は抜かないの。
「やっぱり角を3つ取られたのは痛かったなぁ」
角を取ったのも紺野が動かしていた高橋のモノだ。
「単純なようで難しいですねぇ。よし!次ぎこそ愛ちゃんに勝たなきゃ」
まるで北海道の大草原を思わせるような満面の笑みで紺野は今の勝負の結果を自分のパソコンのデータに入れ、1人もくもくと
次ぎの戦いの準備をした。
- 80 名前:南風 投稿日:2002年12月21日(土)18時26分38秒
- ちょう中途半端ですが、時間がないので、一旦切ります。
書けたら今日続き書きます。
- 81 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時26分39秒
- そして激しい戦いから5分程たった頃・・・
「かわいいのれす!!」
「こりゃよっすぃー達もメロメロやな」
辻も加護も二人並んで腕組をして満足そうに頷いている。
そして高橋は真っ暗な表情で俯いている。
辻加護曰く『びば番犬』
一体何が『びば』なのかは定かではないが、ともかく番犬をイメージしたらしい。
俯く高橋の今の格好は、足元から首まで黄土色のような色の毛むくじゃらでもこもこした『番犬』イメージの着ぐるみ。
頭には丁寧にバニーガールの人がつけているような耳の犬耳バンド。
そしてその高橋の胸の前で抱きしめられている、先程まで辻が持って踊っていた巨大な骨。
『これはもう誰がどう見たって番犬でしかない』辻も加護もその目は輝いていた。
「あとは決め台詞の練習やな」
「その通りなのれす。愛しゃん。この紙を見て覚えるのれす」
- 82 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時27分58秒
- 俯いている高橋の顔を強制的に上に向かせ、自分の持っていた紙を高橋に見せる辻。
もはや何も言い返す気力の無い高橋。
高橋は焦点の定まらない目でその文字を見つめ、うなだれるように頷いた。
その間、加護は1人オセロに燃える紺野の所へと近付く。
「なぁなぁなぁなぁなぁなぁ」
加護の呼び掛けに紺野はオセロを置く寸前まで伸ばしていた手を止め加護の方へと首を向けた。
「どうしたんですか?」
「ちょっと悪いんやけどベッドの上に立ってくれへん?」
「はぁ、別にいいですけど」
紺野は伸ばしていた手を引っ込めて『よいしょ』と言いながらベッドの上に乗り、立ち上がった。
「のの、こっちは完璧やで」
「らじゃぁなのれす!さぁ愛ちゃん練習の時間れす!!」
うなだれる高橋の手を引いてベッドの上でボーッと遠くを見つめている紺野の目の前まで連れていき、
その場で耳打ちをする辻。
「いいれすか、ポイントは何と言っても上目使いれす。これが紺しゃんにもきけば問題無しなのれす!」
- 83 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時28分53秒
- ぐっと握り拳をする辻の言葉に高橋はぴくりと耳を動かす。
ずっと下を向いていた高橋は目の前にいるのが紺野だということが分かっていなかったのだ。
そして目の前にいる相手が紺野だと思うと、恥ずかしいが、やる気も出てきてしまう。
高橋も紺野も仲は良い。
しかし、その仲が良いというのは小川や新垣と同じような仲の良さなのだ。
むしろそういう風に考えると、高橋と小川の方が繋がりが強い。
だから高橋としてはもうちょっと紺野と深い仲になりたい。
そう思ってはいるものの、現状でも案外満足してみたり、しなかったり。
しかし、でも、しかし・・・
このくり返しだったのだ。
今回のこの作戦は思いっきり迷惑だが、そこまで思いっきりでもない。
紺野に喜んでもらいたい。
紺野に可愛がってもらいたい。
紺野によしよししてもらいたい(照)
紺野にぎゅっと・・・(鼻血寸前)
頑張れ高橋!
負けるな高橋!
お前は今チャンスの前に立っているんだ!!
- 84 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時29分38秒
- 高橋の目に炎が灯った。
「まかせて下さい!」
突然の高橋のやる気にちょっと臆したものの、辻は大きくさらに早く力強く首を縦に振った。
加護の手を引いて自分達が無理矢理脱がせた高橋の服が散らばっている部屋の隅まで行く。
どきどき
ドキドキ
どきどき
今部屋の中には3人の期待に満ちた心臓の音が聞こえないが響いている。
高橋は自分の胸の前に抱えている骨を抱き直して、まだ何処か遠くを見ている紺野のことを見上げた。
紺野い見とれそうになる自分を必死で押さえ、心の中でぐっと気合いを込める。
- 85 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時30分37秒
- 「こ、こ、こ、こ紺ちゃん!!」
ボーッとしていたところに突然自分の名前を呼ばれたのでちょっと驚いた紺野は大きな目をさらに
大きく見開いて呼ばれた方を向いた。
そして向いた瞬間に大きく開かれた目をこれでもかってくらいにさらに大きく見開く。
正直知らない人が見たらちょっと恐い。
しかし、そんなことで怖がる高橋ではなかった。
辻に言われた通りに上目使いにし、ちょっと可愛さをプラスしようと首を少しかしげる。
「エサちょぉだい☆」
ずきゅーん!
ズキューン!
どっかーん!!
部屋の中に何か聞こえないはずの音第2弾が響きわたる。
「「か、可愛い。のれす」」
部屋の片隅にいた辻加護が思わず声を漏らす。
そして高橋の本当のターゲットの紺野はというと・・・。
- 86 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時31分32秒
- 目に涙をたっぷりと浮かべている。
それに少しどころか思いっきり焦る高橋。
(ド、どうしたンやが?何で涙目になんてなってるんか??)
しかしその高橋の焦りなんてほんの数秒で吹き飛ぶことになる。
なぜなら・・・
「愛ちゃぁ〜ん。可愛い〜〜〜〜〜。。」
むぎゅっと自分の胸元に高橋のことを抱き寄せて、柔らかい頬を高橋の髪にしゅりしゅりとする。
突然の紺野の行動に戸惑いつつも、顔と頭に柔らかい紺野を感じて気絶しそうになる高橋。
そんなことに気付くはずもなく、紺野はもっとぎゅっと力を入れて抱きしめる。
高橋ダウン。
それでも紺野は気付かない。
- 87 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月22日(日)00時32分13秒
「愛しゃんが落ちたのれす」
「う、うん」
「ろうしますか?」
「・・・大成功やけど大失敗やな。次ぎの作戦考えよう」
加護は辻の手を握って部屋からそっと出ていった。
扉が閉まった後も、紺野は高橋のことを抱きしめ続けていた。
そして気絶しているということに気付くまでに20分ほどかかったという。
そしてひとみ達は・・・
部屋から項垂れて出てくる2人(辻加護)を見て首をかしげていた。
- 88 名前:南風 投稿日:2002年12月22日(日)00時33分59秒
- ほろ酔い南風の本日の更新終了です。
ちょっと古いネタですが、どうしても書きたかったのでのせました。
自分的息抜きもありですね。
はい。
- 89 名前:名無し蒼 投稿日:2002年12月22日(日)00時57分36秒
- 番犬キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
どうもお久しぶりですw
いやぁ読んでてニタニタしちゃいましたw
なんか実際にありそうで(w
自分もあれくらったらクラリってきますね多分w
マータリいつもお待ちしております。
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月22日(日)01時23分00秒
- 辻、加護おもしろすぎ!
なんかかなり癒されました。
- 91 名前:72 投稿日:2002年12月22日(日)02時34分53秒
- 番犬、最高ですw
あの大きな瞳で「エサちょぉだい☆」、ピピ〜!反則です!
そして一人でオセロゲームに没頭するこんこん、ツボでした・・
何だかほのぼのして良かったです。
- 92 名前:南風 投稿日:2002年12月25日(水)18時38分02秒
- >名無し蒼様。
おひさしぶりです。
高橋は自分の武器の使い方を覚えてきたようです(笑)
自分もやられたらきっとノックアウトされます。
>90名無し読者様。
やっぱり2人にはこういう癒しの効果がある気がするんですよね。
暗い話が続いて鬱だった自分も癒されました。
>72名無し読者様。
番犬大人気ですねぇ。
たしかにありゃ反則ですね(笑)
自分の中で紺野のおいしキャラも半反則で大好きです。
25日更新です。
そう、こんな時間に更新です。
- 93 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時40分07秒
- 静まりかえる部屋の中、石川は扉の方に向けていた顔を矢口の方へと向ける。
それを合図にするように、部屋の中にいた全員が矢口の方へまた意識を集中させた。
なつみは矢口の側から離れると、飯田の隣に腰を下ろした。
「簡単に説明をしたけど、これが裕ちゃんの過去、そしてつんくを追い掛ける理由、
矢口達が拾われた理由。
今裕ちゃんはつんくの元で半ば監禁状態で研究をさせられてるはずだよ。
抵抗もせず時間を稼ぐ為に、ウチらを守る為に捕まったんだ。
裕ちゃんは全部分かってたんだよ。
皆をカオリ達の所へ向かわせた時から。
裕ちゃんはカオリ達が仲間になることを見通して矢口に一定の資料だけを与えたんだと思う。
矢口達だけではつんくに勝てないかもしれないからね。
そしてもう一つ、カオリ達に平穏という生活を与えようとしていたんだと思う。
もちろん他の皆もね。
- 94 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時43分16秒
- 矢口達は裕ちゃんが稼いでいてくれた時間を無駄にしない為にも、絶対にこの戦いに勝たなきゃいけない。
今度は矢口達が裕ちゃんのことを守る番だよ。
そしてもう1人の大切な仲間もね」
市井がその言葉にすぐに反応を示す。
突然消えた大切な仲間。
突然追いかけることができなくなった尊敬していた背中。
よく泣いていた自分の頭を乱暴に撫でてくれる優しい手。
手がかりすら掴めなかった。
まるでその人だけ濃い霧に隠されているかのように何も見えなくなかった。
地下室で矢口から聞いたことを思い出す。
やはりあの情報は嘘ではなかったという現実が市井にのしかかる。
市井は目を閉じて少しだけあの人の背中を思い出した。
強くて暖かいあの背中を。
「・・・やっぱり間違いとかじゃなかったんだよね」
目を閉じたまま質問する市井に、矢口は『うん』とだけ答えた。
- 95 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時44分26秒
- 「ここからは、後藤も吉澤も呼んでおこうか。
もうあの小さい娘達に聞かせたくないような話しもないからね。
で、悪いんだけど石川、ごっつぁんとよっすぃー呼んできてくれる?
んで扉の前には代わりに辻と加護立たせておいて」
梨華は頷くと早足で扉の方へと向かっていった。
「矢口、ありがとうね」
梨華が扉を閉めた後、飯田は矢口の方をまっすぐと向いて礼を述べた。
「カオリだって今矢口の立場にいたら同じように、あの娘達はこの場に呼ばなかったでしょ?
・・・あの娘達に聞かせるにはちょっときついと思うし」
「・・・うん」
市井もなつみも飯田と同じように頷いた。
そして少しだけ重い沈黙になった時、扉が開いて廊下の蛍光灯の光りと共に後藤とひとみと梨華が
部屋の中へと入ってきた。
矢口は入ってきた3人に柔らかい笑顔を向ける。
「見張りお疲れ様。ごっつぁんにもよっすぃーにも詳しいことは後で話すからとりあえず座って」
矢口に促され、後藤はベッドに腰掛けていた市井の隣に、ひとみと梨華はそのベッドの横の床に腰を下ろした。
- 96 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時46分03秒
- 矢口は3人が座るのを待って、部屋の中にいる全員に話すように口を開いた。
「・・・一応、全員が今この部屋の中にいるけど、本当ならここにはもう1人の仲間がいるはずだったんだ。
多分、ここにいる誰よりも強い人。
そして矢口達はもちろん、カオリも知ってる人」
飯田はどういうこと?といった感じの顔で矢口を見る。
「カオリ、昔カオリ達がいた組織の中で脱走した娘いたでしょ?」
飯田は少し考えてから首を縦に振る。
「できたての組織の中でも一目おかれる存在で、特別な訓練を受けさせられて、特別な待遇で訓練の宿舎に住まずに養父の元で生活をしていた。
そして脱走者として抹殺されたッて聞いた?」
矢口の言葉を自分の中に飲み込むまで少し時間がかかった。
そしてその言葉の意味をしっかりと捕らえ、飯田は目に涙を溜ながら頷いた。
「でもそれは他の人達に脱走者が辿る末路を見せつける為のただのでまかせだよ。
その人は組織を脱走した後、ずっと逃げ隠れの生活をしていたんだ。
そしてある日裕ちゃんに拾われた。
その直後に養父は抹殺された」
梨華の目が悲しそうに瞑られる。
そんな梨華の手をひとみはは矢口から視線を外すことなくそっと握ってあげる。
- 97 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時47分35秒
- 「不器用なんだけど、すごく優しい人だったでしょ?
裕ちゃんに拾われて来た時も本当始めはウチらと馴染めなくて、でも気が付くといつも守られていた感じがしてた。
一緒にいた時間はそんなに長くないけど、矢口も紗耶香もごっちんもなっちもよっすぃーすごい助けられてきたはずだよ」
梨華を除く全員が頷く。
「今から1年くらい前にその人は突然、うちらの前から消えた。
どうしていなくなったのか全然分からなかったよね?
・・・今その人はつんく達と裕ちゃんと一緒にいるんだ。
裕ちゃんを連れていったのもその人。
どうして突然矢口達の前から消えてつんくの元へかは矢口に分からない。
矢口がその人の生存を知ったのもついこないだ、皆がカオリ達の所へ行ってる時だから。
でも、生きてる。
『圭ちゃん』は生きてるんだ。
だから絶対に助ける」
「・・・圭ちゃん?」
ひとみが怪訝そうな顔をして矢口のことを見る。
その隣では梨華がひとみ以上に矢口のことを凝視している。
「あぁ、そっか。よっすぃーは圭ちゃんの下の名前知らなかったんだっけ。
よっすぃーってあんまり人と関わりもとうとしてなかったから知ろうともしなかったんだよね。
圭ちゃんっていうのは保田のことだよ。
保田圭。あの猫目でむちゃくちゃ強い人」
- 98 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時49分20秒
- 矢口の言葉にひとみよりも反応したのは梨華だった。
「・・・圭ちゃん?保田圭??」
力なく口から漏れるその言葉には明らかに困惑の色が伺える。
「梨華ちゃん?」
「・・・そんな、まさか・・・」
「ちょ、梨華ちゃん!?」
「・・・」
「・・・!」
「・・・う・・・んぐ・・・」
ひとみとは繋がれていない方の手を顔に当て、梨華は必死で嗚咽を堪えるようにして俯いてしまった。
口から漏れていた言葉の重みは梨華の涙となってフローリングの床を濡らしていく。
少し上から梨華のことを見つめているひとみにはその表情は見えないが、 自分の手に伝わる体温と梨華から漏れるその嗚咽はひとみの記憶の中にあった
言葉を電気のように刺激していた。
そう、あの日想いが通じた日に梨華の口から発せられた人の名前『圭ちゃん』という名前。
何であの時少しでも保田さんのことを思い出さなかったんだろう。
突然あたし達の前からいなくなった『保田さん』と、突然梨華ちゃんの前からいなくなった『圭ちゃん』
偶然同じ時期に蒸発する人がいたなんていう不可思議な出来事に何故自分は何も思わなかったんだろう。
- 99 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時51分12秒
- その答えは簡単だ。
自分の醜い嫉妬にかられて梨華ちゃんから発せられたその名前と事実を酷く憎んでいたから。
独占欲と梨華ちゃんのことを一瞬でも傷つけた相手に対する復讐心とも呼べる感情、そして初めて気付いた自分の梨華ちゃんに対する
気持ちに、想い動揺していたから。
何も見えていなかった。
いや、見ようとしていなかった。
梨華ちゃんの昔付き合っていた恋人が、そっけない態度を取り続けていた自分を常に後ろから見守ってくれていた人だと分かった時、
あたしの中にあったモノは『自分という人間にに対する嫌悪感』と『どうしようもないくらいに醜い嫉妬心』だった。
- 100 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時52分41秒
あの後、矢口さんはあまり深いことは探索せずに、今後の説明を皆にしてその場を納めた。
梨華ちゃんは涙こそ止まっていたものの、矢口さんが話している間中ずっと俯いて黙っていた。
その隣にいたあたしは握っていた手を強く握り直すこともできず、ただひたすらに矢口さんの方を向いていた。
梨華ちゃんのことが見れなかったから。
弱くて醜くて汚い自分の心を直視する勇気すらなかったから。
皆がばらばらと部屋に戻って行った後、あたし達2人だけが残ったこの空間。
カーテンのわずかな隙間から差し込んでいた光りはもうすでに消え、閉め切ったこの部屋の中は
お互いの顔が見えない程に暗かった。
自分の手の下にある梨華ちゃんの手の体温が感じられない。
それはお互いに冷えてしまっていた手のせいなのか、それとも痺れたあたしの感覚がそう思わせて
いただけなのか・・・。
その答えは梨華ちゃんが震えるような声で『ごめん』と呟いて部屋を出て行った後もわからなかった。
暗い閉じられた空間で、一体自分はどんな顔をしていたんだろう。
愛しい彼女のことをすぐに追いかけることもできず、何をすればいいのかも分からず、ただ座っている
ことしかできなかった。
- 101 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時53分35秒
そしてどれくらいだろうか、何も動くことができずに時計の秒針が動く音をずっと聞いていたら、
隣に懐かしい匂いを感じた。
彼女はあたしの横にすっと座ると、昔のようにあたしの頭を自分の胸元にぎゅって抱きしめてくれた。
「・・・ごっちん」
こういう時、彼女は何も言わない。
ただあたしの気持ちが落ち着くまでずっと抱きしめていてくれる。
あたしはその懐かしい優しさと香りにすがりつくように、ごっちんの胸に抱きついて涙を流した。
自分のどうしようもない感情とどうしようもない自分を涙にして流してしまいたくて。
声を押し殺して涙を流し続けるあたしのことをごっちんはやっぱり何も言わずにずっと抱きしめていて
くれた。
- 102 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時55分06秒
- 梨華は今、いつもひとみちゃんが座っているカウンターの席に座っている。
部屋を飛び出して、廊下の一番奥で壁に手をついて座り込んでいたら梨華のところに矢口と市井がやってきて、
梨華のことをここまで連れてきたのだ。
さっきから俯いている梨華の前に、矢口は一つのカクテルをそっと置くと、梨華の後ろの方に座っている市井が
そのカクテルを懐かしそうに見つめた。
「これ、圭ちゃんが好きだったカクテルなんだ」
『圭ちゃん』という言葉に反応を示した梨華が自分の目の前に置かれているカクテルへと視線を上げる。
「圭ちゃんは絶対にプライベートを持ち出さない人だったから、矢口詳しいこととか分からないんだけど、
石川って圭ちゃんと知り合いだったの?」
- 103 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時56分26秒
- 梨華は少しだけ間を開けてから小さく頷いた。
「そっか、ごめん。矢口全然知らなくってさ・・・」
「いえ、矢口さんのせいじゃないですから・・・」
そのまま黙ってしまいそうな梨華を見て、梨華の後ろに座っていた市井が立ち上がると少し躊躇いがちに
梨華の肩に手を置く。
「あ、あのさ・・・もしよかったらさ・・・圭ちゃんとのこと、教えてもらってもいいかな」
梨華は目の前に置かれた薄紫色のカクテルを見ながら先程と同じように小さく頷き、ゆっくりと喋り出した。
- 104 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)18時58分54秒
- 時計の秒針の音が響く部屋の中、ひとみは後藤の胸から顔を上げた。
「・・・ありがとう」
後藤は何か言いたそうな笑顔でひとみから自分の体を離す。
ひとみはそんな後藤の表情を見て、頬に残る涙を自分の親指で拭ってから顔にかかっていた前髪を手でかきあげ、
口から大袈裟に息をはいた。
「ははっ、何だか格好悪い所見せちゃったね」
「よし子・・・」
言葉を続けようとする後藤の顔の前に、ひとみは自分の手を持っていき、その言葉を遮る。
「・・・聞いてもらえるかな?」
後藤はひとみの横顔を見つめ、優しい表情で頷いた。
「・・・あたしさ、梨華ちゃんから保田さんのこと聞いてた。ほんの一部だけど聞いてたんだ。
でもあたしは保田さんの下の名前なんて知らなくて、梨華ちゃんの口から『圭ちゃん』という言葉を聞いた時に
保田さんのことだとは思ってなかった。
梨華ちゃんの前から突然消えた『圭ちゃん』とあたし達の前から突然消えた保田さん。
同じ時期にいなくなったのに、その時のあたしは不思議なくらいに接点を見い出そうともしなかった。
- 105 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時00分21秒
- 梨華ちゃんのことを傷つけた相手が許せなくて、一時でも梨華ちゃんの心を奪った相手が酷く憎くて、
ただ独占欲と醜い嫉妬だけがあたしの全てを支配してた。
その後、梨華ちゃんと付き合うようになって、自分で言うのも何だけど、あたしは変わった。
そしてその時よりも強く梨華ちゃんのこと欲しいと思うようになった。
恐かった。
梨華ちゃんのことを失うことが何よりも恐かった。
だから今さっきだって弱くて醜くて汚い自分の心を直視する勇気すらなくて、梨華ちゃんのこと直視することもできなくて、
追いかけることもできなくて、手すら握ってあげることもできなくて・・・
ただあの瞬間に梨華ちゃんの心を支配した保田さんに嫉妬してた・・・」
後藤は遠くを見ているような目をしているひとみの顔をじっと見た後、立ち上がると窓のカーテンを開けた。
「今日は月が綺麗だね」
- 106 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時01分07秒
- 突然の後藤の言葉が理解できなくてひとみは顔を上げて後藤の方を見た。
月明かりに照らされた後藤の髪がゆらりと流れて月明かりをひとみの方へと運んでいく。
「よし子は梨華ちゃんのこと、本当に大切に思ってるんだね。
後藤さ、よし子の気持ち全部分かるって言ったら嘘になるんだけど少しは分かるよ。
好きになると自分だけがその人の心を独占していたくなっちゃうんだよね。
後藤もそう。
その人に後藤のことだけ見ていて欲しい。
だからそういう時、言葉にして伝えるようにしてる。
やぱり自分以外の人ってどんなに深い仲になろうと他人だから、きちんと伝えないと自分の気持ちは伝わらないでしょ?
だからその気持ちが爆発しちゃわないうちに後藤は声に出して伝えるんだ。
って言ってもいつも流されちゃうんだけどね。
よし子は自分の中に気持ち溜めすぎなんだよ。
もっと梨華ちゃんに打ち明けていいと思うよ。
梨華ちゃんも絶対にその方が嬉しいと思うしね」
そう言ったごっちんの笑顔は、月明かりに照らされて、とても美しかった。
- 107 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時02分56秒
- 梨華は保田のことを話し終えた後、矢口と市井に促されて今の自分の思いを話ていた。
「・・・私って不謹慎何です。
中澤さんの家族のこととか聞いてたら自分の家族のこと心配しちゃって、でもそんなことも言えなくて、
そしたら圭ちゃんの話しも出て来て・・・
私、ひとみちゃんと出会ってから、すっと圭ちゃんのことを心の奥の方に閉まっていたんです。
あんなに大好きだったのに、心の奥に閉まっておいたんです。
今私が本当に好きだって言えるのはもちろんひとみちゃんです。
でもこの関係を壊してしまうのが恐くて、ずっと圭ちゃんの話題は出さないようにしていました。
ひとみちゃんのことを失うのが恐くて、どんな反応をするか知るのも恐くて。
この話しをしたらひとみちゃんが困っちゃうの分かってるんです。
私はひとみちゃんのこと困らせたくないんです。
ひとみちゃんの前ではいい子でいようって。
あんまり負担かけないようにしようって・・・でも本当の私は全然良い子じゃなくて。
本当の私は困らせてもいいからひとみちゃんの側にいたい。ずっとずっと側にいたい。
不安になるんです。すっと前からひとみちゃんを失いそうな気がしていて・・・離れていっちゃう気がしていて」
矢口じっと梨華のことを見つめていた。
不器用であるがその言葉の一つ一つが梨華のひとみに対する気持ちを痛い程表していた。
- 108 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時05分20秒
- 「ありがとな、そんなにひとみのこと思っててくれて」
矢口は梨華を見て笑った。
矢口の喋り出す言葉は梨華には聞き慣れない響きだったが、そこには深い優しさがある感じがしていた。
「石川はさ、もっと言いたいこと言って良いんだよ。よっすぃ・・・いや、ひとみにさ。
アイツそんなんじゃ石川のこと嫌いになったり絶対しないよ。これはあたしが保証する。
ひとみはさ、不器用だから思ったことなかなか口に出せなかったりするけど、絶対に石川にもっと
言いたいこと言ってもらいたいはずだよ。
あたしだってなっちが自分に気を使ってばっかいたら嫌だからね。
石川だってそうだろう?それと同じだよ」
梨華の指は矢口の言葉を聞きながら自然とピアスに伸びた。
「ひとみちゃんは・・・とっても大事な人なんです。わがままを言って嫌われたくないんです」
市井は梨華の頭を拳でポカンと叩いた。
「ばぁか、んなことで嫌うやついるかよ。
市井はそこまで吉澤と一緒にいたわけじゃないけど、アイツがあんなに笑うところなんて見たことなかったんだぞ」
矢口は市井に続くように梨華の頭をもう一度ポカンと叩いた。
「大切にしろよ、オイラの大事な妹なんだからな。そんで沢山わがまま言って困らせてやれよ。
たまには困らせてやった方がいいんだから。
もう少し素直になってみな。
石川も・・・ひとみもな」
- 109 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時07分00秒
- 矢口は自分用に作ったカクテルを一口飲んだ。
「2人もさ、中途半端に素直になれないんだよねぇ。お互いに気使いすぎ。
まったく、肝心な時になるとすぐ自分の意見引っ込めちゃうんだから」
「そうそう、ったくさぁやっちゃってる時とかは素直なんでしょ?こう・・・」
「市井さん!!!」
「・・・えっ?」
「あっ・・・」
市井と矢口はにやっと笑うと階段の方を向いた。
突然ひとみの声が聞こえた梨華は驚いてその声の方に顔を向けた。
後藤と話しを終えたひとみは、梨華に自分の気持ちを伝えようと下に下りてきていた。
立ち聞きするつもりはなかったのだが、自分のことをあんなに真剣に話す梨華の話しを遮ることもできなくて、
近寄ることもできなくて、階段の途中でずっと立ち止まっていたのだ。
「本当素直じゃねぇなぁ」
市井が大袈裟に両手を上げる。
「ほら、ひとみも言いたいことがあったから来たんだろ」
矢口が席を立って、ひとみの方へと近付く。
それに続くように市井もひとみの方へと移動する。
「今夜このフロアを君達2人の貸しきりとします。
それも特別に無料で貸しきりにして上げます。
気のすむまで使って下さい」
そう言うと矢口と市井はひとみの横を通り過ぎて階段を上がっていった。
そしてその途中ぴたっと立ち止まると『飲み物は有料だからな』と言ってひとみにウィンクをして去っていった。
- 110 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時08分43秒
- 矢口達の後ろ姿を見送った後、ひとみはゆっくりと梨華の方へ近付いていった。
梨華はまばたきもしないでずっとひとみのことを見つめている。
そしてひとみは梨華の椅子の後ろまで来ると、ちょっと鼻の上をかいた。
「・・・梨華ちゃん」
「・・・ごめんね、突然泣いたりしちゃって」
「ううん」
「何だか沢山のこと考えちゃったらさ、涙抑えられなくなっちゃった」
「あたしも同じ。上で思いっきり泣いてきちゃったよ」
梨華は少し驚いた顔でひとみのことを見つめた。
「あたしだって泣くことくらいあるんだよ」
素直に笑うひとみに梨華は『ごめんなさい』と呟いた。
「謝らないで。悪いのは梨華ちゃんじゃない。
むしろあたしだよ。
ずっと梨華ちゃんに甘えていた。
悪いところを見せないで、自分のきれいなところだけを見せようとしてた」
「それは私も・・・」
「知ってるよ。さっき聞こえたから」
ひとみは笑って梨華の頭に手を置いた。
「だから今度はあたしの思いを伝える番なんだ。
あたし初めて梨華ちゃんの口から『圭ちゃん』って言葉を聞いた時さ、
梨華ちゃんのことを傷つけた相手が許せなくて、
梨華ちゃんの心を奪った相手が酷く憎く思えてた。
- 111 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時10分45秒
- 自分の梨華ちゃんに対する気持ちに気付いて、自分はこんな思いさせないって自分自身に誓った。
あたしの過去の傷を受け入れてくれた梨華ちゃんにこれ以上自分の醜い所を見せたくなくて
汚い気持ちをずっと抑えて隠してきた。
だけど一緒にいればいる程梨華ちゃんのことが欲しくなった。
昔よりも汚い気持ちが増えていった。
こんな気持ちを知られて梨華ちゃんのことを失うことが恐かった。
自分はすごく弱い人間だから。
あたしはこうでもして自分を装って生きていないと潰れちゃいそうだから。
強い人間なんかじゃない。
地に足下ろして日の中なんて歩けないから。
独りじゃ・・・無理だからさ。
何だろう、何言ってるんだろうね。
よく言いたいことがまとまらないんだけど、あたしはきっとこれからも沢山嫉妬して、
沢山梨華ちゃんを欲しくなって、沢山泣かせることがあると思う。
あ、もちろん泣かすつもりなんてないんだけど、そういうことがあるかもしれない。
それでも良ければずっとあたしと一緒にいて下さい。
ずっと側にいて下さい。
沢山言い合って、一緒に年をとっていって下さい」
- 112 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2002年12月25日(水)19時11分59秒
- ひとみは梨華の頭の上に置いていた手をどけて、まっすぐと涙をいっぱい溜めている梨華の顔を見つめた。
「・・・私もひとみちゃんと、ひとみちゃんと一緒にいたいよ」
「梨華ちゃん」
梨華は立ち上がるとひとみの前に背筋を伸ばして立った。
「・・・ひとみちゃんは突然いなくなったりしない?」
「うん」
「だったらお願い、『いなくならない』そう言って。
そう言って私のことを抱きしめて」
今だ涙を必死で流さないように堪えている梨華の体をひとみは優しく抱きしめた。
「突然いなくなったりしないよ」
「もっと、もっと強く抱きしめて・・・」
「梨華・・・」
ひとみは梨華をもっと強く抱きしめ、柔らかく梨華の髪に口付けを落とした。
「・・・ひとみ、愛してるよ」
そう言うと梨華はひとみの唇に自分の唇を合わせた。
店の柔らかな光は2人の濡れた唇と、梨華の頬を伝う涙をそっと照らしていた。
- 113 名前:南風 投稿日:2002年12月25日(水)19時14分39秒
- 更新終了です。
改行が変になっちゃった所あります。
ごめんなさい。
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月31日(火)18時28分17秒
- 続き楽しみにしてます。
頑張って下さい。
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月08日(水)18時27分43秒
- 待ってますよ〜
- 116 名前:南風 投稿日:2003年01月09日(木)00時11分19秒
- >114・115名無し読者様。
すみません。
ありがとうございます。
ありえない程に文章が書けなくなってしまい、なかなか進まず状態になってしまいました・・・。
しかし1月の中旬頃までには更新したいと思っております。
こんな作者でごめんなさい。
でも頑張ります!!
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月14日(火)00時08分47秒
- 焦らなくていいですよ〜。
マターリお待ちしてます。
- 118 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年01月16日(木)16時14分18秒
- あたし達はその後、矢口さん達に声をかけてから店を後にした。
今後の動きについては明日詳しい話をしてくれるということだ。
さっき聞いていなかった中澤さんの話しは、店を出る前に矢口さんから聞いた。
今、あたしは梨華ちゃんの手を握って夜道をぶらぶらと歩いている。
さっき窓からごっちんのことを照らしていた月明かりは、
今遠くからあたし達のことを照らしていて、
梨華ちゃんはあたしの手を握りながら空を見上げたり、
あたしを見上げたりしてる。
- 119 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年01月16日(木)16時19分31秒
- あたし達は分かっていた。
明日になれば物事が今まで以上に動き出すことを。
そしてそれは最後の戦いになるんだということも。
結末なんて分からない。
どうなるか何てその時になってしまわないと分からない。
だけどあたしはこの手をずっと繋いでいきたい。
だからあたしは生まれて初めて月に祈った。
『ずっと2人を照らしていて下さい』と。
自分で祈った後、何だか妙に照れくさくなって前髪をかきわけた。
- 120 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年01月16日(木)16時21分32秒
- 翌日、矢口さんはあたしの家にやって来た。
もちろんあたしの隣には梨華ちゃんがいる。
矢口さんが家に来たのはいつが決行日か伝える為。
店だと辻とか加護が聞き耳をたててるだろうからということだ。
矢口さんがあたし達に伝えた決行日は明日だった。
急の話しでごめんと言ってあたし達に頭を下げた。
そして帰り際にあたしの手に小さく畳まれた紙を押し付けていった。
その紙には家の見取り図やそこにいる人達の情報が書き込まれていた。
全て矢口さんの直筆のようで、所々に滲んだ文字が見えた。
あたしはその情報をしっかりと頭にいれ、灰皿の上で紙に火をつけた。
梨華ちゃんはその火をじっと見つめていた。
- 121 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年01月16日(木)16時22分21秒
- 夜、あたしは梨華ちゃんのことを抱きしめながら眠りについた。
何をするわけでもなく、ただぎゅっと抱きしめていたかったのだ。
梨華ちゃんの体は温かかった。
そんな単純なことなのにあたしは幸せを感じた。
そして眠ったあたしはいつものように朝を迎えた。
梨華ちゃんはあたしよりも早く目が覚めていたようで、すでに朝食を作っておいてくれた。
寝癖のついたあたしの頭を撫でて、あたしの唇に一瞬だけ自分の唇を合わせ、
そしてすぐにあたしから離れて台所で紅茶を入れて、戻ってきた。
決戦の日というのを忘れてしまいそうな程、朝の時間はおだやかに過ぎていった。
- 122 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年01月16日(木)16時23分00秒
- しかし夜が明けて朝が来るように、あたしにも決戦の時間がやってくる。
淡々と過ぎるおだやかな時間はもう終わりだ。
あたしはバイクにまたがりながら今一昨日から今までのことを思い返し、
今を見つめて気を引き締めた。
「じゃあ矢口さん、出発しますよ」
あたしの後ろに座っている矢口さんは、返事の代わりにあたしの背中を軽く叩いた。
その合図を受けてあたしはバイクを走らせた。
- 123 名前:南風 投稿日:2003年01月16日(木)16時26分24秒
- 地味で少ない更新終了しました。
相変わらずスランプを抜け出してはいないのですが、ちょっとでも更新しようと
思ってます。
>117名無し読者様。
ありがとうございます。
本当にまったりになってしまいました。
が、できるだけがんがってみます。
- 124 名前:91 投稿日:2003年01月16日(木)21時53分58秒
- >南風さん
更新、お疲れ様でした。
焦らずまったりお待ちしておりますので、更新速度はあまり気に
なさらずに!
やっと素直になれた吉澤さんと石川さん。良かったです。
いよいよ決戦の時が来ましたか・・
皆が幸せな未来を手に入れて欲しいと願ってやみません。
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月27日(月)19時09分19秒
- みんな無事に帰って来いよ〜。
ゆっくり待ってますので、
南風さんのペースで頑張って下さい。
- 126 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時24分07秒
- 時は少し戻る・・・
朝、あたし達は矢口さん達のいる店に向かった。
店に着くと、梨華ちゃんは安倍さんと共に2階へと消えていった。
今1階にいるのはごっちんと市井さんと矢口さんと飯田さんとあたしの5人だ。
飯田さんはウチらの前に立って、休めの格好をしている。
「今からここの統括はカオリがとります。
細かな指事指令は現場の状況を見て与えます。
昨日矢口から渡された情報で皆の頭の中に家の間取りとかは全て入っているはずなので
これからはそれを前提に話しを進めていきます。
まず、都心から多少外れているとじゃいえ周りには民家があります。
分かっていると思うけど銃には必ずサイレンサーをつけること。
そして逆に民家が近いということで、家の周辺にはそれ程のトラップも監視用のカメラも
ありません。
今回、私達はそこを狙って侵入します。
現場に着くまでの間は必ず2人ずつで行動をとること。
基本はこの間矢口が決めたペアです。
- 127 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時25分01秒
- 市井、後藤は1階の勝手口の方面から侵入、矢口、吉澤はその逆のテラスの方面からの侵入を試みて下さい。
あくまでもこれが基本です。
問題があった場合、随時カオリまで連絡を入れて下さい。
移動手段はペアごとにまかせます。
ナビはカオリが行います。
以上何か質問がなければ全員5分後に行動にうつって下さい」
飯田さんはそれを言うと以前矢口さんがあたし達に指事を与えていた地下へと下りていった。
市井さんとごっちんは各々自分の持ち物の点検を始めていた。
「よっすぃー、矢口今からなっちの所行ってくるけど、梨華ちゃん呼んでこようか?」
矢口さんの申し出にあたしは正直悩んだ。
一度顔を見れば離れがたくなるから。
- 128 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時26分16秒
- そんなあたしの気持ちを察したのかどうかは定かではないが、矢口さんは2階にへと向かいながらあたしに『あんたはどうか分からないけど梨華ちゃんは絶対に会いたいはずだよ』と言っていった。
そして矢口さんと入れ代わるように梨華ちゃんが2階からゆっくりと辺りを見回すように下りてきた。
「後藤、ちょっと外出ようか」
一度階段から目を離して市井さん達の方を見ると、ごっちんの腰のあたりに手を当てて市井さんが促すようにごっちんのことを裏口の方へと連れていっていた。
あたしが再び視線を階段の方へと戻すと、階段を下りきった梨華ちゃんが両手を後ろに回してその場に立ちすくんでいた。
- 129 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時27分00秒
- 〜ひとみと梨華〜
あたしは俯いて立ちすくんでいる梨華ちゃんの手前まで近付いた。
まだ俯いている梨華ちゃんの顎を指で軽く持ち上げ、上を向かせる。
梨華ちゃんの視線があたしとからみ合う。
その瞳は涙で潤んでいる。
不安を抱えたままの瞳。
信じようと思う気持ちと、その気持ちが裏切られるのではないかという気持ち。
互いがせめぎあっているのだろう、言葉を発することなく見つめてくる梨華ちゃんの瞳はとても揺れているように見えた。
「大丈夫だって言ってくれる?」
あたしの言葉に梨華ちゃんの瞳からは涙がこぼれ落ちた。
梨華ちゃんの顎から指を外してまっすぐとその瞳を見つめる。
「あたしは突然梨華ちゃんの前からいなくなったりしない。
今ここで改めてあたし自身に、そして梨華ちゃんに誓うよ。
だから梨華ちゃんも言って。
あたしに大丈夫だって」
- 130 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時27分36秒
- あたしがにこっと笑うと梨華ちゃんの瞳からこぼれ落ちる涙の量が一気に増えた。
梨華ちゃんはそれを子供みたいにそれを手で拭うと、涙をこらえながらあたしの方を見た。
「・・・大丈夫だから。ひとみちゃんは絶対に大丈夫だから」
「ありがとう」
そう言ってあたしは一歩後ろに下がると右手を梨華ちゃんの前に出した。
少し驚いた顔であたしを見つめる梨華ちゃんにあたしは右手を下げることなく言葉を発した。
「次に抱き締める時はあたしが帰ってきた時だから。
だから今はあたしの手だけ握って下さい」
梨華ちゃんは少しだけ間を開けて大きく頷いてくれた。
細い小さな手をあたしの手に合わせると優しく握ってくれる。
あたしはその手を優しく握り返すと、梨華ちゃんに笑いかけてそっと手を離して背を向けた。
弱くなりそうな心を押さえるように扉に向かって歩きだす。
「ひとみ!!」
梨華ちゃん独自の高い声であたしは足を止めて振り返った。
- 131 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時28分12秒
- 階段の下からちょっと不器用そうにあたしに向かって投げてきたのはいつか梨華ちゃんがどうしてもと言ってウチに持ってきた箱だった。
手のひらサイズのそれを空中で掴む。
その箱には小さく折り畳まれた手紙のような紙もついていた。
紙を箱にくくりつけておく為の麻ヒモをほどく。
手紙を片手に握りながら箱を明けるてみると、中には小さな小さなアフロ犬が入っていた。
中に入っていた物に思わず吹き出してしまい、笑いながらそれを箱から取り出した。
「それ、私が生まれて初めてゲームセンターで取ったやつなんだから絶対に返してね!!」
梨華ちゃんもあたしと同じような笑顔で大きな声を上げると左手を大袈裟に上げて大きく振った。
あたしはそのアフロ犬をポケットに入れると自分のポケットからあの古びたハーモニカを取り出して、アフロ犬の入っていた箱に手紙のようにくくりつけて梨華ちゃんに向かって柔らかく投げた。
梨華ちゃんは慌てて手をあたふたと振りながらあたしの投げたハーモニカをキャッチした。
「それ、あたしの思い出の品なんだから絶対に返してもらうからね!」
あたしは梨華ちゃんがそれを胸に抱くき頷くのを見ると走って店を飛び出した。
扉を出て、階段を下りながら箱にくっついていた紙を広げてみる。
その紙には辻、加護、高橋、小川、紺野、新垣、安倍さん、そして梨華ちゃんが書いたメッセージが残されていた。
- 132 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時28分42秒
- 次はみんなでゆうえん地行きましょぉ!! つじ
やっぱ皆で温泉やろ。 加護
今度皆で着ぐるみ大会すましょう。 高橋
皆でスキー行きましょうね! 小川
皆で山葵抜きで鮪とトロとサーモン食べに行きましょう。 紺野
皆さんでフルーツ盛り合わせを食べましょう。 新垣
すっごい料理作っておいてあげるべ。皆早く帰ってくるんだよ。 なっち
今度皆で海に行きましょう。 石川
あたしはこの紙をぎゅっと胸に抱き締めるとごっちん達に見せるべく、裏口の方へと歩いていった。
皆の気持ち、それがすごく力になるってことを改めて実感した。
あたしには沢山の仲間がいる。
数カ月前なら考えられなかったこのことに嬉しくて涙が出そうになった。
- 133 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時29分14秒
- 〜矢口となつみ〜
矢口は梨華と階段ですれ違った後、なつみがいるであろう、自分達の寝室に入っていった。
そこには矢口の予想通り、なつみがベッドに座って足をプらプらとさせながら矢口の方を見て笑顔を浮かべていた。
「矢口、気をつけてね」
『よいしょっ』という言葉とともになつみはベッドから降りると、矢口はなつみの方に向かって行った。
なつみはベッドから降りた状態のままそこに立って矢口が来るのを笑顔で待っている。
「なっちの居場所は矢口の隣、矢口の居場所もなっちの隣。何があったて側にいてあげる」
なつみはそう言うと近くまで来ていた矢口にぎゅっと抱きついた。
「久しぶり、矢口の体温をこんなに近くで感じたの」
- 134 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時29分45秒
- ほかほかと太陽の匂いがしそうななつみの体を矢口は優しく抱きしめ返した。
「なっち、今はこれだけで十分だから。だから泣かないで」
矢口は口をぐっと噛み締め嗚咽をこらえながら首を立てに振り、なつみの胸に大量の涙を染み込ませた。
「でも今だけだよ。帰ってきたら沢山お話してね」
そう言うとなつみは矢口が反応を示す前にその答えを拒絶するように矢口の頭をぎゅうっと抱きしめ、金色の髪の毛に口付けを落とした。
- 135 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時30分20秒
- 〜後藤と市井〜
「なぁ後藤、お前はこのことが終わったらどうしたい?」
市井は車に寄り掛かり腕を組ながら後藤の目をしっかりと見つめた。
その目を後藤はふにゃりと笑いながら見つめ返す。
「後藤はずっといちーちゃんと一緒にいたいよ」
「本気で考えてくれよ」
「本気だよ。後藤はいちーちゃんの側にいたい。それが一番でそれが二番なの」
「後藤・・・」
後藤は一歩市井に近付くと足下の砂利を足でケリながら下を俯いた。
- 136 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時30分52秒
- 「いちーちゃんは信じないかもしれないけど、後藤は本気なんだよ。ずっといちーちゃんのこと好きだったんだから。家族が死んじゃって、裕ちゃんに拾われて、いちーちゃんだ後藤の教育係になって後藤にはいちーちゃんが全てになった。いちーちゃんがいなくなったら後藤はどうしたらいいのか分からなくなっちゃうよ。本当にいちーちゃんの側にいたい。
全部が終わってしまったて側にいたい・・・」
「全部が終わってしまっても、か・・・」
市井は少し考えこんでから後藤の腕を掴むと強引に自分の横に引き寄せた。
驚く後藤の口元に自分の人さし指を当ててその言葉を封じる。
「圭ちゃんは私にとって親友で、姉さんで、尊敬できる人なんだ。私はつねにあの人の背中を追ってきた。
追い付きたくて追い抜きたくて必死になってた。
何も出来ない私が後藤の教育係になって、プレッシャーに押しつぶされそうになった時もさりげなく背中を支えてくれていたのは圭ちゃんだった。
私は絶対に圭ちゃんを救ってみせる。
どんなことがあったて救ってみせる。
- 137 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時31分23秒
- そして後藤のことも絶対に私が守ってみせる。
約束するよ。
だから絶対に生きて帰ろう。
今まで私達がやってきた『命を奪う』ということはどんな理由でさえ許されない。
でも・・・だからその分の罪を背負って生きよう。
ちゃんと一緒に生きていこう」
そう言うと市井は後藤の口元に当てていた自分の指をどかし、後藤の柔らかな唇にそっと自分の唇を重ねた。
市井と後藤が重ねる初めての唇。
それは誓いの口付け。
驚き固まる後藤の腰にそっと両腕を回し、柔らかく抱き締める。
永い永い口付けに、後藤はそっと瞳を閉じて市井の首に自分の両腕を回した。
『ちゃんと一緒に生きよう』
後藤はその言葉を胸に焼きつけた。
そして市井に気付かれないように心の中で暖かな涙を流した。
- 138 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時32分00秒
- 「ごっちん!市井さん!!」
2人が車に乗り込もうとしたところをひとみが大声を上げて呼び止める。
一旦は入れていた体を車から外へと出す。
「これ、これ読んでいって下さい」
ひとみが先程梨華から受け取った皆の寄せ書きを2人に見せる。
「・・・これでまた生きる理由が増えちまったな」
市井が口元に笑みを浮かべて後藤の方を見る。
後藤はフニャっと笑うと首を立てに力強くふった。
そんな2人を不思議そうに見つめるひとみに後藤は『こりゃ簡単には死ねないね』と笑ってひとみに寄せ書きを返し、車に乗り込み、窓から腕を出してひとみの肩をバシッと叩いた。
走り去る車の後ろ姿をただ呆然と眺めているひとみに、市井はクラクションを2回鳴らしていった。
- 139 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月14日(金)20時32分36秒
- 市井達の乗った車が見えなくなるまで見送った後、ひとみは梨華からもらった皆の寄せ書きが書かれた紙を丁寧に畳んで、すでに単車の横でひとみのことを待っていた矢口に差し出した。
矢口はそれを受け取ると笑いを噛み締めるようにニヤッと笑ってその紙をひとみに渡した。
それを胸ポケットにしまい、ひとみはメットを冠って単車にまたがってエンジンをかける。
矢口も何も言うことなくメットを冠るとひとみの後ろにまたがった。
言葉なんてモノは今交わす必要はない。
終演に近付く物語りを皆がそれぞれ胸に感じ、時計の針が動くように受け入れている。
止まらない時なんてないように動きださないモノとうのも存在しないのかもしれない。
それはあたし達も例外ではなくて、動き続ける時の中にのまれるように生ある限り動き続ける運命なんだと思う。
エンジンの高鳴る動きはまるで自分の高鳴る鼓動とリンクしているようだった。
- 140 名前:南風 投稿日:2003年02月14日(金)20時37分28秒
- 更新しました。
すみません気がつけばもう1ヶ月近く書いていなかったんですね・・・。
スランプというのはどうしたら抜けれるのか(大汗)
本当に遅くなってしまいましたが、こんな作者でも待っていて下さる方々のおかげで
続けてることができます。
ありがとうございます。
南風がんがります!!
>91様
ありがとうございます。
ラストは結構決まってきているのでどうかまったり待っていただければ幸せです。
素直になるって難しいっスよねぇ。
>125名無し読者様
まだ待っていただけたのでしょうか(汗)
ありがとうございます。
ゆっくりだとは思いますが最後まで頑張ります。
- 141 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月14日(金)22時45分13秒
- お久しぶりです。
ただいま接続出来ないので携帯から見てます^^;
これからはじまるんですね…
スランプだそうですがいつまでも気長に待っています、頑張ってください。
密に高紺もお待ちしてます(w
- 142 名前:124 投稿日:2003年02月15日(土)01時29分09秒
- 更新、お疲れ様です。
待っていた甲斐がありました。うれしいです。
いよいよ決戦の時が来ましたね。
寄せ書き・・小ネタが仕込んであって、ちょっぴりニヤけましたw
それぞれの大切な人のために、必ず戻って来て欲しいですね。
この先も楽しみです。まったりお待ちしてますよ。
- 143 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月15日(土)13時34分12秒
- ぞくぞくしますね。いよいよ・・ですか。
楽しみにしてます。
- 144 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時14分35秒
- ひとみ達が出発してすぐ、飯田は地下に入ると パソコンの電源を入れて目的地までの最短ルートを割り出した。
事前に矢口が調べておいたものをベースに飯田なりの考えをふまえたものを追加した完璧と思われるルートだ。
機械てきトラブルがないかぎり道中何事もなく進むことは分かっている。
皆が困った時にだけ自分は正確で適格なルートを伝えれば良い。
飯田はもう一度画面を見てルート等の確認をすると もう一つのパソコンの電源を入れると今朝矢口から頼まれたモノの手配を始めた。
- 145 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時15分41秒
- その作業をしながら飯田はずっと疑問だったことをもう一度考え直してみた。
飯田の疑問というのは 何故つんくがここまで自分達の存在を無理に消そうとしないのかだ。
とっくに知れ渡っているはずの存在。
それも自身のことを消そうとしているのにも関わらずに、自分からしかけてこようとはしない。
つんくは一体何を待っているのだろう?
全てを知り尽くしたうえで待っているのは何故なのだろう?
飯田は一人パソコンの画面を見つめながらぎゅっと口元を結んだ。
- 146 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時16分16秒
- この疑問を持っていたのは飯田だけではなかった。
現在軟禁されている中澤も同様の疑問を持っていたのだ。
しかし中澤の場合は飯田と違い、すでにその答えを見つけていた。
というよりも感じざるえなような感じだったと言った方がいいだろうか。
中澤がつんくと久々の対面をした日、落ち着き払っている中澤よりも深い目でその中澤のことをつんくは見ていた。
サングラスの奥に見えるその目は全てを悟り、全てを見すかしているようだったのだ。
その目を見て中澤は直感的に感じさせらた。
中澤達が組織を壊滅することをつんくはあらかじめ予想していた。
自分達はつんくの手の平の上で踊らされていただけなのだと。
- 147 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時17分03秒
- つんくは座っていた椅子の背もたれに頭を沈ませるように深く座り込むとサングラスの奥から天井を見上げた。
自分には時間がない。
だったら余計なモノは誰かに潰させるのが手っ取り早い。
軍隊の予備軍なんてもう必要なかった。
時間が無い為育つのを待つことができなくなったのだ。
つんくは手元にある重たい銃を見つめた。
もうすぐ完成する。
この腐った世の中をうち消せる程のモノが。
こんな重たい銃なんて必要ない。
アレが完成する頃は自分にとっても人生のタイムリミットだ。
つんくは椅子につかり込むように座り直すとサングラスを少し持ち上げた。
『全てを無にかえそうではないか』
- 148 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時18分30秒
- ひとみ達が出発して数時間、ひとみ、矢口、市井、後藤の4人は何のトラブルも無く現場付近まで到着していた。
目標とする家の周りには数十メートル離れて民家がぽつぽつと立っているだけ。
小さな集落とでも思えるような小さな村。
その村の周りは沢山の木々が取り囲んでいる。
車やバイクは目立たないように林の中にかくしてきた。
自分達が着ている黒い服も、もうすぐ落ちる日と供に目立たないモノになるだろう。
ひとみは木に寄り掛かって地面に座り込んだ。
見上げた空は、木々の隙間からかろうじて見える程に小さいが、その美しさはひとみが屋上で梨華と見つめた空によく似ていた。
胸から取り出した萎れた煙草に火をつけると、空と煙りが踊るようにひとみの視界をゆっくりと塞いだ。
あまりにも静寂すぎる世界は、昔のことを思い出させるには十分すぎる世界だ。
- 149 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時19分39秒
- その静寂に身を委ねるように目を閉じると、矢口の香が近付いてきてひとみの口から煙草を取り去った。
ひとみが静かに目を開けようとすると矢口の顔は近付いてきて取り去られたばかりの口に静かに口付けをされる。
小さい頃よく眠る前に矢口にされていた行為にひとみは驚くことなくそれを受ける。
決して深くはならない重ねられるだけの唇。
それは懐かしさを運んでくる。
『あぁ、矢口さんも静かすぎるこの世界で昔のことを思い出しているんだ』なんて思ってみたりして、
ひとみは目を再び閉じる。
柔らかな唇はそのまま数秒離れることはなく、矢口が持っていた煙草は時間の経過を知らせるように
灰を地面に落とした。
日が傾いてきた。
時間は決して止まらない。
- 150 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時20分49秒
- 紺野は窓に近付くと沈んで行く夕日をじっと眺めていた。
「もうすぐ、始まるんだよね」
その呼び掛けに部屋にいた新垣、小川、高橋、辻、加護が神妙な顔で頷く。
ここにいる皆は同じ気持ちだった。
『自分達には何も出来ないのだろうか?』と。
しかしその答えも皆が痛感しているものだ。
『今の自分達のレベルじゃただの足手纏いになる』
力の無い自分が悔しくてたまらない。
「ねぇ、やっぱり・・・」
「あかん。それはあかん」
続きの小川の言葉を遮るように加護は静かに口を開いた。
- 151 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時21分40秒
- 「自分だって分かってるんやろ?足手纏いになるだけだって。
ウチだって今すぐにでも行きたいけど、そんなことしたら余計迷惑かけるだけや・・・」
言葉つまる小川は泣き出しそうな顔で加護を見つめる。
泣き出しそうなのは加護だって同じことだ。
震えた肩と爪が食い込んで血が出る程に握りしめた拳がそれを物語っている。
「あいぼん」
辻は自分の感覚の無い小さな手で加護の手を掴むと、その手を自分の胸の前まで引き寄せる。
心臓の心音と振動が加護の辻と同じくらい小さな手に響く。
- 152 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時23分04秒
- 「あのさ、生きているってことが大切なんじゃないのかな?
それらけれも皆のおてつらいになるんじゃないかな?」
「・・・のの」
一つの部屋で小さな戦士達は辻の言葉を受けて皆がそれぞれに頷いた。
泣き出しそうだった小川は涙をぐいっと手のひらでぬぐい去り、ベッドのふちに静かに座り、
しゃがみこんで同じように涙をこらえていた新垣の頭を撫でてあげる。
皆の様子を見ていた紺野は少し寂しそうにもう一度窓の外を見つめた。
ちょっとしか時間がたっていなかったけど、夕日はさっきと比べると随分と沈んでいる。
手持ち無沙汰だった手を窓にかけて冷たい窓に手を触れて、暗くなりかけている外の世界を眺めていると
空いている方の手をそっと掴んでくれる暖かい手を感じた。
- 153 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時23分54秒
- 「・・・あさ美。皆で一緒に安倍さんとか石川さんとかいる部屋行こうよ」
ちょっと照れながら自分の名前を呼んだ娘の方を振り向く。
辻や加護はすでに部屋を出ようとしていて、『早く来い』と言うように紺野に向かって手を振っている。
小川も新垣もそれに続くように立ち上がっている。
「ウチら先行っとるから愛ちゃん、ちゃんとあさ美ちゃんのこと連れてきてなぁ」
そう言うと一足先に加護達は部屋を出て行った。
- 154 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時24分33秒
「あいぼん、なんれ愛ちゃん達置いていったんれすか?」
廊下をテケテケっと加護の後ろをついて行く辻が不思議そうに加護に訪ねる。
「やぼなこと聞くなやぁ」
そう言うと加護は今だよく分からないといった顔をしている辻を残して階段を降りて行った。
加護においてけぼりをくらい、両腕を前で組んで首をこてっとかしげている辻の背中を小川はとんっと軽く叩くと
新垣と繋いでいない方の手で辻の手をにぎって階段を足早に降りた。
「・・・よくわからないのれす」
- 155 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時25分34秒
- そして部屋に取り残された2人。
夕日を浴びて高橋の顔が赤らめて見える。
「ほら、行こう」
にっこりと笑って紺野の手をさっきよりも強めに握る高橋に紺野はちょっとどきどきしながらその手を握り返した。
「あ、あのぉ・・・愛ちゃん」
「ん?」
「・・・み、皆さんが帰ってきたら、ピクニック行こうね」
何か言葉を隠すように紡ぎ出された言葉を言い、暗い顔をわざと笑顔にして笑う紺野に高橋は
「そうだね。行こうね」
そう言って紺野に一歩近付いて紺野のほっぺたにチュッとキスをした。
驚く紺野に高橋は笑いかける。
「私達が暗い顔してちゃダメだよ。こんな時だからこそ私達が皆を笑顔にしなきゃ。ね」
- 156 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月24日(月)23時26分18秒
- 夕日は完全に沈みきろうとしていた。
高橋や紺野を照らしていた光りはもすぐ闇に包まれるであろう。
しかしその闇は永遠には続かない。
きっとあの人達が続かせない。
想い人を敵陣に見送った人が今自分の近くにいるのならば、私達がこの闇を振払う程の光りになろう。
紺野は高橋の笑顔がそう言っているのを感じた。
言葉ではないけど、確かに感じた。
「そうだね、うん。ありがとう愛ちゃん」
柔らかく微笑む紺野に高橋も微笑み返し、2人は手をつなぎながら加護達を追い掛けるように部屋を後にした。
- 157 名前:南風 投稿日:2003年02月24日(月)23時34分58秒
- 更新しました。
次でやっとこさ戦闘になります。
前振り長くてごめんなさい。
そして文章がなんだかめちゃくちゃ・・・次の更新までに立ち直ってみせます。
>名無し蒼様。
自分の機種は携帯から見ることができないんですよねぇ・・・。
携帯からのってどんな画面なんだろう??
気長に待ってて下さるんですか。
まぢありがとうございます。
スランプでも頑張ります!!
>124様
大変お待たせしました。
次こそ決戦です。
そして待ってて下さって本当にありがとうございます。
次の更新にあまり間が空かないように頑張りたいと思ってます。
そう、思ってます・・・。
>143名無し読者様。
ぞくぞくしてますか??
戦いの前の静けさ。
自分的にはこんな時間がけっこう好きなんです(苦笑)
皆様本当に本当に本当にレスありがとうございます。
これのおかげで南風頑張ってます。
待ってて下さってる方々。
まじありがとうございます。
- 158 名前:143 投稿日:2003年02月25日(火)13時33分35秒
- あー、それだ・・・戦いの前の静けさ。
その中にいる、それぞれの時間。
作者さんのそういう描写がツボです。
- 159 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時35分29秒
- 日没。
それはひとみ達に静かなる合図を送った。
じょじょに暗闇に目を慣らした後、ペアになったモノ同士がアいコンタクトと手での合図を使って
目的の場所まで移動して行く。
木々に身を隠すようにして市井はナイフを、後藤、矢口、ひとみはそれぞれ銃を手に取る。
静かすぎる家と静かすぎる外が不安感というものを余計にあおる。
ひとみは唾を飲み込むと家の壁に向かってダッシュをし、矢口の到着を待ち、窓ガラスに向かって銃口を向けた。
- 160 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時36分14秒
- ギシッと言う音をたててつんくは椅子から立ち上がった。
咳きと供に吐き出された血は自分の命の残料を示すいわばメーター。
銃を一旦腰におさめ、血のついていない方の手で壁に立て掛けてあった日本刀に手を伸ばし、鞘から刀を抜き出す。
青白い光を放つ刀身は何度見ても見飽きることなどない。
その刀身に写る自分の青白い顔。
ここ数日間で体力は著しく落ちた。
自分の死が近いことなど等の昔から気づいていた。
いずれ死ぬ存在、それは生けるモノ全てに言えることだ。
多少の早い遅いはあるものの、確実に消滅する。
死期が近づいている今、何を急いで自分の存在を消そうとするモノを消そうとするのだ。
意味はない。
- 161 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時36分57秒
- 計画は着実に進んでいる。
全ては順調だ。
つんくは吐き出した血のついた手を見つめながら薄く笑った。
『さぁ始まりの時間や』
血のついた方の手で一度おさめていた銃を握り直し、左手で日本刀を握り直す。
着ていた黒の薄手のロングコートを翻しつんくは扉に向かい、その近くにあるボタンを刀の柄で押してそのまま部屋を後にした。
その数秒後窓の割れる音がし、それに続くように家の中には『G線上のアリア』が流れ静かな空間をゆっくりとした音楽が支配した。
- 162 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時37分29秒
- ひとみと市井はほぼ同時刻に窓を撃ち破った。
窓が割れた瞬間にひとみと矢口は体を家の中に滑りこませる。
音楽の曲調に合うように全てがスローで見えるような世界。
自分に向けて放たれた銃弾すらも遅く見える。
侵入した勢いで矢口とひとみはお互いが逆方向へ転がり柱の影に身を隠すようにして銃を構える。
その間も銃弾は止むことなく発砲され続けている。
身を隠している柱のコンクリートが削られていき、ほんの一瞬相手の姿を見ようとしたひとみの頬に赤い筋が出来上がる。
「ったく何で皆同じようなところばかり撃つんだよ」
火傷の為に熱を帯びた自分の頬の血を指で拭うと、一瞬のうちに確認した相手に向かいひとみは発砲を開始した。
- 163 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時39分02秒
- 市井がナイフの柄の部分で窓がラスの中心を思いきり叩くと窓は粉々に割れた。
『侵入の時が一番狙われやすい』体験上痛感しているところだ。
それも今自分達が狙っているところは標的に最もねらい撃ちされやすい。
一見普通の家だが外部からの侵入者を考えて作られている構造。
窓と玄関のみが侵入に使える唯一の場所なのだ。
飯田がひとみ達に窓から侵入しろと言ったのは、つんくのことだから必ず玄関には
何か仕掛けているとふんだからだ。
そしてそれはその通りだった。
見張りを玄関につける変わりに無人の入り口には扉に何か衝撃が与えられたその瞬間に
人一人を簡単に吹き飛ばせる程のダイナマイトをしかけていた。
ガラスが舞う中窓を割った市井が部屋の中に転がり込む。
そして間を空けずに後藤が部屋に滑り込んだ瞬間、狙いすました銃口が後藤に向かって火を吹いた。
一瞬で肌に感じた直感を頼りに市井は滑り込んだ動きを筋肉の力だけで止めて後藤の身体めがけて自分の身体をぶつける。
- 164 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時39分49秒
- 鋭い痛みを腹部に感じながら市井は持っていたナイフを弾丸が飛んできた方向に向かって投げ付ける。
それに続くように市井の身体の陰から後藤が銃弾を放つ。
音のない銃撃戦。
後藤をかばうようにして銃弾を浴びた市井の腹部からは赤黒い血が流れるている。
『何とか急所は外れてるか』
冷静に今の自分の負った傷の判断をすると市井は後藤を柱の陰に投げ飛ばした。
そして自分はズボンから取り出した鎮静剤を腹部の傷口近くに打ち込みながら後藤とは逆の柱の陰に滑り込む。
ナイフを使って相手の居場所を確認すると後藤に指でサインを送り、こぼれる息を口の中にため込めて
市井はナイフを投げ付けながら移動をする。
後藤は市井の行動に驚きながらもすぐさま援護するように両手に持った銃から雨のように銃弾を撃ち放つ。
「あのぉ、後藤って人いますかぁ?」
激しい銃撃戦の中いたって冷静な声で少し間延びした声が室内に響いた。
突然自分の名前を呼ばれて後藤の動きが止まる。
市井がナイフを一本投げ付けるとそのナイフは相手から放たれた弾一発によって弾かれる。
「確か一番強いんですよね?松浦と勝負しましょうよ」
そう言って松浦亜弥はニコリと小悪魔のような笑顔を浮かべた。
- 165 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時40分30秒
- 「…始まったね」
隔離された部屋で作業を続ける中澤を硝子越しで見つめながら保田は小さく呟いた。
声なんて届かない完璧に密閉された部屋。
その奥で中澤が苦渋な表情を浮かべながら作業を続けている。
完全防音で完全密封なこの部屋にはきっとガラスの割れる音もモノが壊れる音も届いていないのだろう。
あの部屋の中に聞こえているのは今家全体に流れているこの音楽だけだろう。
「G線上のアリアねぇ・・・」
保田は両手をポッケにつっこむとその中で拳を握りしめた。
- 166 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時41分42秒
- 双方が様子を見ながら銃撃戦をくり返す中でひとみは柱の陰から逆方向にいる矢口の方を一瞬だけ見た。
『矢口さん、ここはあたしが引き受けますから隙をみて行ってください』
手と指の動きだけでそれを矢口に伝えるとひとみ。
柱に身を隠しながら銃を放つその腕や顔には何本かの血筋が浮かんでいる。
小さい身体を柱にかくしている矢口は血だらけになっているひとみの方を向くと静かに頷いた。
その後数弾の銃弾を放った後、お互いがほぼ動じに弾切れとなり一瞬のうちに予備カートリッジに取り替える。
その一瞬の隙のうちに矢口が床を滑るように扉のすぐ脇の物陰に隠れる。
カラッ
「・・・ひとみ伏せろ!!!」
言葉と同時に矢口は自分の足下に転がってきた手榴弾を掴んで自分達が侵入につかい撃ち破った窓み向かって放り投げた。
すさまじい爆発音と共に外からえぐれ飛んできた土や石の破片が窓に一番近かったひとみの身体につきささる。
「っつぅ!!無茶苦茶しやがって」
- 167 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時42分56秒
- 弾を装填し終わった銃をもう一度構えると、ひとみは部屋に唯一あった鏡を狙って弾丸を放った。
くだけ散った破片が飛び交う中で、その破片に写った相手の居所を確認すると、アイコンタクトで矢口に早く行くように促し、
その援護をするように柱の陰から飛び出す。
もちろん相手がそれを見過ごすはずもなく、お互いが身体をひねりながら銃弾を放ち続ける。
その一瞬一瞬が身体に暑い痕を残し、足下に赤い血を垂らさせる。
体には急所を外した弾丸の傷から血が流れ続けている。熱を帯びた傷が動きを制限しはじめ、部屋中に荒い息使いがあふれる。
「君、名前なんて言うの?」
撃ちつくした空の銃にもう一度弾を装填しながらひとみは楽しそうに相手に問いかけた。
こんなにも熱く戦える相手は久しぶりだ。
従来戦いが好きではないひとみだが、今こんな状態だが気分が高揚している。
いや、こんな状態だからだろうか。
自分のアドレナリンが大量放出している。
- 168 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時43分42秒
- 子供が遊ぶのと同じなのかもしれない。
自分と同じ程の力を持った相手と渡りあう楽しさ、喜び。
幼年期に欠落していた『楽しむ』ということをひとみは銃を通して今行っていた。
『あたしも大分やばいのかな・・・』
血を流しすぎて感覚が麻痺し始めているのだろう。
ひとみは頭のどこかでそんなことを冷静に考えている自分に自虐の笑みを向けた。
「・・・藤本美貴」
一瞬静まりかえった部屋に相手の呟きだけが広がった。
- 169 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時44分39秒
- 「・・・中澤、タイムリミットや」
いつの間にか保田の隣に来ていたつんくが窓越しに中澤に話し掛けた。
声こそ届かない程隔離された部屋だが、中澤は異様な気配を感じて作業していた手を止めて顔を上げた。
そして今自分の隣にいる完璧に気配を消したつんくの存在にまったくと言って良い程気づけなかった保田は
つんくの存在にらしくないが一瞬だが呆然としてしまう。
「・・・つんく」
保田の呟きを聞きとったのか、つんくはゆっくりと保田の方に顔を向けると
感情を何も出さない表情で左手に持っていた刀を一振りした。
- 170 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年02月28日(金)14時45分22秒
- ほとばしる鮮血。
中澤はその光景を見て窓にかけよった。
防音効果のある窓越しから中澤が『圭坊』と叫んでいるのが崩れ落ちそうになる視線に写る。
片手で目の当たりを押さえた保田が怒りを込めた視線でつんくの方を睨む。
その手の指の間からは赤い血が大量に出ている。
「保田、お疲れさんやったな。お前との契約は今を持って解約や。
だからお前が必死になって守ろうとしていた奴の暗然も約束することはできへん」
「・・・せこいな」
「意味なんかなくなるんやからしょうがないやろ。
この世界は終わるんや。
死は、必然的にやってくる」
そう言うとつんくはもう一度持っていた刀を保田に向かって振りかざした。
- 171 名前:南風 投稿日:2003年02月28日(金)14時48分22秒
- 更新しました。
自分でも分かる程に早い展開は御勘弁を・・・。
・・・ageちゃってたんだ(鬱
>143名無し読者様。
こんな感じに仕上がってきました。
書けば書く程に自分の手は違う文字を打ち出し、物語りがまわっていきます。
終がだんだんと見えてきた感じです。
もうちょいおつき合いいただけたら幸いです。
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月28日(金)17時43分43秒
- 圭ちゃぁぁぁん!!!
死んだらあかんでぇぇぇ!!!
- 173 名前:142 投稿日:2003年03月01日(土)01時19分15秒
- 更新、お疲れ様でした。
うぅ〜、激しさの中に静けさがあるような・・
あややと美貴ティも登場して、役者はそろいましたねw
お互いに殺し合うことが無意味なことだと、早くこの二人にも分からせて
あげて欲しいですが・・この先はどうなるのか、固唾を飲んで見守りたいと
思います。
- 174 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)19時59分35秒
- 松浦と後藤はお互いが真正面に向き合うように立っていた。
すでに市井は保田の元へと向かっている。
後藤の視界には先刻まで市井がいた場所にたまっている血液が反らそうとしても入ってくる。
「市井ちゃんを傷つけたな・・・」
「何言ってるんです?これは戦いなんだから誰かが傷ついて当たり前じゃないですか」
松浦の平然とした言葉に後藤の銃を握る手に力が隠る。
「初めから後藤が狙いだった?市井ちゃんと戦うつもりなんてなかったの?」
「4分の1の確率で当たればラッキーって思ってましたよ。
いなければ全員片付けるだけだし、いたならば後藤さんだけと戦えればよかった」
「・・・そう」
「もういいですか?早いところ勝負つけましょうよ」
時が一瞬だけ止まった。
松浦が指で弾いたコインが落ちると同時にお互いが同時に動き、雨のように弾を撃ち続ける。
互いの弾同士が真正面からぶつかり合う程に正確な腕。
鉛は空中で時を止め、重力に逆らうことなく床に落ちていく。
転がりこむようにしてお互いが柱の陰に転がり込む。
- 175 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時00分31秒
- 「っつ!」
思わず声を上げたのは松浦の方だった。
転がりこんで気付いたのだが、松浦の右の太腿には銃弾の貫通した後があった。
自分では互角に打ち合っているつもりだったのだが、そうではなかったらしい。
よくみると脇腹にもかすった傷がある。
服の腕の部分を引きちぎって応急処置のための止血をする。
動きが多少は鈍るがしょうがない。
手早く処置を済ますと、すぐさま柱から飛び出す。
後藤の方は松浦に傷を与えたのは分かっていた。
相手が応急処置をしている間に弾を装填しなおし、柱から転がるように銃を撃ち始めた。
この時もしこの場に市井がいたのならば気付いただろう。
いつもは絶えず笑顔を浮かべているような後藤の表情が、今は恐ろしい程に冷めて冷徹になっていることを。
- 176 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時01分14秒
- つんくは血まみれになって倒れている保田には見向きもせずに、中澤のいる部屋に入って行った。
部屋の中は静かに音楽だけが流れている。
分厚い扉を閉め、持っていた銃を仕舞い込むとつんくは中澤につめよった。
「・・・こんな騒ぎにして御近所さん達大騒ぎするんやないの?」
「心配無い。お前の言う御近所さんというのはすでにもう始末してある」
「・・・この悪魔が」
「褒め言葉だ」
この会話の間にも中澤とつんくの距離はどんどんと近付いていく。
「で、『ロンギヌス』は出来上がったんだろうな」
- 177 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時01分48秒
- 『ロンギヌス』それはつんくが中澤に作らせていた液体の名前だ。
液体から発生させられるガスによって、人々の皮膚は溶けるように腐敗していき、全ての細胞や組織を破壊しそのまま永久なる死を与える。
それを下水に流せば全国各地に広まっていくのだ。
つんくがこの場所を研究所にした理由。
それはここを流れている地下水路がほぼ全国に繋がっているからだった。
中澤は火にかかっている容器に目をやった。
それを見たつんくが満足そうに笑みを浮かべる。
「後5分くらいってところか」
再び中澤に視線を戻すと、つんくは持っていた刀で中澤の服の前の部分を切り裂く。
「それまでお楽しみとでもいくか?」
つんくの目が睨み付ける中澤の目を冷酷に捕らえた。
- 178 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時03分00秒
- 「やぐっちゃん!!」
2階部分を探索し、終わって1階に戻って来た時に矢口は市井と遭遇した。
「紗耶香!?・・・その傷!!」
驚いた矢口の口を塞ぐように人さし指を立てると、矢口の通信機の電源が切ってあるかどうか確かめた。
電源はOFFになっている。
「どうせ紗耶香も切ってあるんでしょ?多分ひとみも後藤も切ってあるんだろうね」
「あぁ、この場所と向こうを繋いだらいけないよ」
2人はにやっと笑うと今まで探索してきた所の報告をしあった。
- 179 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時03分41秒
- 「じゃあやっぱり地下か」
「うん、調べきれなかったけどそこしか無いと思う」
「っしゃ、じゃあやぐっちゃんそこ退いて」
そう言うと切れ切れになった息で市井は腰の周りに巻き付けていた鞄から様々な機械を取り出した。
それを手早く繋ぎあわせて即席の爆弾を作り上げ、それを床にしかける。
「しっかり隠れててね!!」
凄まじい爆発音と共に床に人が2人が通れる程の大穴があく。
その穴に向かって矢口が飛び込み、それに市井が続いた。
- 180 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時04分18秒
- ひとみは服で顔や身体についた血を拭う。
思った以上に様々な場所から血が流れている。
荒くなった息を整えると、銃を持っている方の手を引きちぎった服で結び固定をした。
頭の中で次のシュミレーションをする。
荒くなる息とは反対に頭の中が妙にクリアになっていく。
『よし・・・』
ひとみは散らかっている鏡を足で蹴りあげる。
藤本が敏感にそれに反応することを信じてひとみは柱から飛び出すと、一気に藤本の方につめよった。
ひとみの描いた作戦通り、藤本は敏感に反応を示した。
蹴り上げられた鏡の破片が銃弾によってさらにバラバラになる。
そして高く舞い上がった破片は部屋の照明によって輝き、藤本の視界をほんの一瞬だけふさいだ。
- 181 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時05分12秒
- カツンッ!!
音と共に藤本が構えていた銃が床に転がる。
ひとみがその一瞬を狙って打ち落としたものだ。
藤本の伸ばす腕の先にある銃に数発打ち込んでソレを打ち壊す。
倒れながらも攻撃を加えようとしてくる藤本の肩の間接を狙って手に巻き付けていた銃を振りおろす。
その動きの反応した藤本が靴にしかけておいたギザギザの溝の入ったナイフを出し、そのまま長い足を使って
ひとみの腕をめがけて蹴りをくり出した。
ひとみは振りおろしかけていた腕をもう片方の手で押さえ付けるようにして動きを寸前で止める。
サメの歯のような磨かれたナイフがひとみの腕の服と皮そして一部の肉をえぐるように奪い去る。
藤本の蹴りが完璧にその起動を止めた瞬間に、ひとみは動く方の手を使って手に巻き付けておいたハンカチを取り去り
ソレを藤本の視界をふさぐように落とすと力の入らない手から銃が滑るように落ちた。
- 182 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時06分09秒
- 手でハンカチを退かした時には眼前に真っ黒な銃がある。
藤本は顔を背けてそれを避ける。
が、そこを狙ったひとみの拳がその頬を捕らえた。
ガラスの散らばった床を滑るように藤本の身体が血の痕を残しながら転がる。
そして腕の肉を持っていかれたひとみも、身体を支えることが出来ずに思わず前に倒れ込む。
お互いがこの短時間の間に極限まで来ていた。
「・・はぁっ、はぁっ・・・・君みたいな人と、戦えてよかった・・・」
「ん・・・ぐっ・・はぁ・・・それは私も同じだよ」
ひとみはよろよろと立ち上がると来ていた上着を引きちぎって止血をする。
そして藤本の方も力の入らない足で立ち上がると、血で真っ赤にそまった拳をしっかりと握った。
自然とお互いの口元に笑みが浮かぶ。
好敵手に出会えた喜び。
- 183 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時07分01秒
- そして以外にこいつは悪い奴ではないと自覚できた時間。
『もっと違った形で出会っていれば』そうお互いが思った。
そして最後の気力を乗せた一撃をくり出そうとした時だった、向かい側の部屋にいるはずの松浦の叫び声が、この部屋まで響いてきた。
「亜弥!?」
その声に藤本が過敏な程に反応を示す。
視線はそのままひとみの方に向けているのだが、この一瞬で完全に意識は松浦の方へ移ってしまっていた。
「・・・。」
ひとみは少しの間藤本を見ていたが、その瞳に動揺の色が浮かんでいるの見て取り、全身にはり巡らしていた殺気を仕舞い込んだ。
「行きなよ。今の君と戦ったって楽しくない」
「!!」
「大切な人なんでしょ?だったら早く行った方がいいよ。
多分ごっちんが無茶してるんだと思う。
そうなったらあたしにはもうごっちんを止めることが出来ない。
あの場に市井さんもきっといないだろうから、放っておくとその『亜弥』って娘確実に殺されるよ」
- 184 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時07分43秒
- 澄んだ瞳で真直ぐと見つめ返すその表情に藤本は握っていた拳を自然と解いた。
「この決着は必ず」
「あたりまえだよ」
藤本はひとみに背を向けると、何度か転倒しながらも部屋を出て行った。
「・・・さて、あたしも・・・矢口さん達の所に行か・・・な・・きゃ・・・」
グラリと視界が揺れてひとみの身体が床に倒れ込む。
『あぁ・・・やばい、血流しすぎちゃったよ・・・』
横になったまま肉をもぎ取られた方の腕を見てみる。
もう指先すら動かない。
『・・・きっとこの腕、使い物にならなくなっちゃうかもな・・・』
あまりに冷静すぎるこの頭が少し嫌になる。
「G線上のアリアの次はカノンねぇ、良い趣味してるよ」
そう呟くと、ひとみは一瞬だけ目を閉じた。
- 185 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時08分19秒
- 藤本が気力だけで松浦達がいる部屋に辿り着いた時、その光景に目を疑った。
松浦の実力は藤本自身も認めていた。
確かに自意識過剰になるところもあったが、それにになう実力も兼ね備えている。
藤本と松浦がやり合えば紙一重の差かもしれないが確実に松浦が勝つだろう。
その松浦が無様な姿で今床に横たわっている。
手の指や片方の足は通常ではありえない方向に曲がっていた。
さっきの叫び声と今の状況が一致をする。
視線を少しあげると、冷酷な表情の女がひとり、松浦に銃口を向けて立っていた。
顔や髪や服には松浦の返り血と思われる血が付着しており、銃を持つ手にもその血はべっとりあった。
「市井ちゃんを傷つける奴は誰だろうと許さない」
- 186 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月10日(月)20時08分51秒
- 凍り付くようなその声に、松浦は激痛の走る中自分の一生が終わる覚悟を決めた。
見上げた後藤の顔の表情を読み取ることが出来ないが、その銃口が自分の腹部を狙いつけているのぐらいは分かった。
『苦しむようにってワケですか』
松浦は諦めたように目を閉じた。
しかし次に松浦が感じたのものは、銃弾の焼けるような痛みでもなく、何かがのしかかったような重みだった。
不信に思った松浦が目を明けると、眼前には苦痛の表情を浮かべた藤本の顔があった。
この日、2度目の悲鳴がこの家に木霊した瞬間だった。
- 187 名前:南風 投稿日:2003年03月10日(月)20時18分25秒
- 更新終了。
早い・・・戦闘シーンって書くのへたっッぴなもんで展開が早いうえ、情景とか
色々伝わりにくいと思います。
ごめんなさい。
そして、つんくはやっぱりネーミングセンスがちょいズレでおります(苦笑)
動かない指に動かす力を与える為に少ないスットク全てだしました。
頑張ります。
そう、ひたすら頑張ります。
>172様
保田さん、死んじゃだめです。
その通りです。
血の海で保田は今どうなっているんでしょう・・・。
>142様
登場人物が揃った所でこんな感じになってしまいました・・・(汗
自分も望むのは平和です。
皆が幸せになるということが望みです。
敵対していても、元を辿れば始まりは同じ所なのでこの2人は悪いとは言えないんですよねぇ・・・。
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月10日(月)22時09分23秒
- あー。息を詰めて読みました。
コトバなんて出せないくらいの緊張感だけれど、あえて言います。
頑張ってください。今、これだけが楽しみで読んでます。
- 189 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時09分49秒
- 2度目の悲鳴を松浦が上げた頃、ひとみは先に市井が空けていた穴の中に入っていた。
肉をえぐり取られた方の腕は、止血帯をできるかぎりの力でしばった。
完全に血の流れを止める行為。
今服の下の腕は死人のように真っ白になっている。
ふらつく足で慎重に歩いて行く。
足下には自分の血液とは違う血液が道しるべのように落ちている。
荒くなる息を抑えながらひとみが角を曲がると、そこには窓硝子に向かって小さな拳を打ち付けている矢口と、
血の海に座りこんで、保田の抱き締めている市井の姿があった。
「・・・市井さん・・・」
霞む視界の中で市井との距離を縮めていき、その傍らに倒れ込むように片膝をついて座る。
- 190 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時10分37秒
- 「圭ちゃん!!頼むから起きてくれよ!!」
「・・・市井さん」
「くそっ!何でだよ!!せっかく会えたってのによ!!!」
冷静さを失った市井は腕の中にいる保田のことをきつく抱き締めた。
あまり人前では涙を見せない市井だが、今の市井は違う。
大粒の涙をぼろぼろと隠すくとなく流し続けている。
「・・・ったく・・泣き虫なのは・・・変わって・・ないのね・・・」
「圭ちゃん!!!」
「・・・何泣いて・・んのよ」
「だ、だって・・・だって・・・」
保田は震える腕を伸ばすと、市井の涙をそっと拭った。
「大丈夫よ・・・ちょっと綺麗な顔に・・・傷が・・ついただけよ・・・」
「・・・ばかやろう」
「・・・市井さん」
ひとみがそっと市井の肩に触れると、市井は驚いたようにひとみの方を見た。
- 191 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時11分29秒
- 「ごっちんを、止めて下さい。お願いします」
「後藤!?」
「お願いします。保田さんのことはあたしが見てますから。お願いします」
「・・・早く行きなさい」
そう言う保田のことを市井は難しい顔で見つめると、神妙に頷いてから保田の身体をひとみに預けた。
ひとみは片腕と身体で保田のことを支えると、目だけで『お願いします』と市井に伝えた。
「・・・あんたが、石川の恋人になったんだね」
「保田さん」
「これからは、御両親を大切にしなさいって・・・伝えてね」
「・・・それでここにいたんですね」
「・・・エゴよ」
「愛じゃないんですか?」
「ふっ・・それよりも・・・・早く矢口の方、行ってあげて・・あたしは・・・」
そう言うと保田は市井によって顔に巻かれた血に染まった布を押さえると、ゆっくりと身体を起こした。
「平気だから」
保田は口をあけて弱々しくウィンクをすると、ひとみの動く方ほ肩を押した。
力があまり入らないひとみは、保田のその動きだけでよろけてしまったが、頷くと矢口の所まで走って行った。
「・・・濁っていて、どこか怯えてて、そして真直ぐか・・・石川が惚れそうなタイプだね」
保田は壁に寄り掛かると目をそっと閉じた。
- 192 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時12分43秒
- 「美貴!!美貴!!」
松浦は目の前で苦痛の表情を浮かべている藤本の身体を砕けた指のついた腕で必死に揺さぶっていた。
後藤の放った弾丸は藤本のせき髄を打ち砕いていた。
弾丸を放った本人である後藤は突然の訪問者に、そしてその突然の行動に驚きを隠せないでいる。
自分の今の今までの恨みの対象は庇われた松浦。
その松浦を庇ったこの藤本の存在を後藤は知らない。
そして恨みもない。
キレていた頭の線が修復を始める。
歪んだ糸くず達が手を取り合い1本の線としてつながりあう。
銃口を2人に向けたまま動きが止まる。
いや、正確に言うと固まる。
目の前では松浦がぐちゃぐちゃになった指で藤本の身体を揺さぶっている。
部屋中に充満する音楽がその情景を妙にリアルに見せる。
それはまるで1つの命の灯火を消させる為に存在するのではないかと思う程に壮大な曲は、止む事なく流れ続けている。
- 193 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時14分03秒
- 時間が止まる自分を残し、松浦と名前も知らない女の人が揺れている。
暗闇が突然その重圧を後藤にあびせかける。
『身体が重い』
『意思とは裏腹に引き金にかけた指が徐々に動く』
『殺しちゃダメ』
『止まれ』
『動くな』
『引き金を引かないで』
全ては意の反するままに。
クライマックスまで上り詰めた曲が一瞬止まる。
カチッ
どこかで時計の針が鳴った。
腕が動いた。
- 194 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時15分00秒
- 乾いた音と共にまた流れ出す音楽。
先刻と同じ『G線上のアリア』
後藤の腕は真直ぐ天井を向いていた。
「泣くのは後だろ」
後藤の腕を天井の方向へ向くように支えている市井。
その市井を後藤は涙で濡れた顔で見つめていた。
「まずは早くあの2人の手当てをするぞ。
その後に・・・お前を殴るからな」
もう・・・痛みはないから。
- 195 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時16分16秒
- 窓はその先の光景をよく写し出す。
赤い痣。
それは矢口にとって何よりもリアルすぎる画だった。
ここについた時、まず見えたのは血の海に横たわる保田の姿だった。
そして次に目に入ったのは、笑っているようで笑っていない中澤の姿だった。
中澤を見つけた時、そのオプションとしてつんくの姿も見えた。
かけよった窓。
見えた光景に鳥肌がたった。
露になった中澤の上半身。
中澤の真正面に笑みを浮かべながら立っているつんく。
目の前に広がっている光景を見て、何も考えずに銃を構えた。
つんくの方だけを見ていた中澤が矢口の方に顔を向ける。
口で『絶対に撃つな』と伝えられた。
中澤の動きでつんくも矢口の方に顔を向けた。
その顔には笑みが浮かんでいる。
まるで全てを手に入れた幼い子供のような笑顔。
矢口は銃を落とした。
そして一緒に涙もこぼした。
- 196 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時16分56秒
- 10センチ近くあるであろう扉は固く鍵がかかっていた。
撃つなと言われた窓も防弾であろう。
中澤が撃つなと言ったのはきっと飛弾を心配してだ。
様々な奇怪な装置や薬品。
揺らめく炎に熱が感じられなかった。
炎は今、その隔離された部屋中を支配していた。
- 197 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時19分04秒
- 「どうすんの?あんたもこのままじゃ焼け死ぬで」
「お前も同じやないか」
「元から生かしておくつもりないんやろ」
「まぁな」
つんくの手には青色のカプセルが握られている。
中澤はそれに目を向けるわけでもなくつんくの目だけを見ていた。
「ならさっさと行きぃや、もうすぐその扉は熱でゆがむんとちゃうか?」
「んなやわなもんちゃうわ」
「・・・ったく自分の墓場選びに他人を巻き込むのはどうかと思うで」
「それは俺の勝手や」
2人を取り囲む炎はその勢いを増していく。
じりじりと肌を焼かれる感じ。
- 198 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時19分38秒
- ちらりと窓の方を見ると矢口が小さな拳を窓に叩きつけながらで必死に何かを叫んでいた。
炎の揺らめきのせいで口の動きまで見ることが出来なかったが、その目に涙が浮かんでいるのは見てとれた。
矢口の横では白色だった肌の色をかえた吉澤が呆然と立ちすくんでいる。
「・・あんたも孤独やったってことか」
「・・・」
「そのカプセル、炎に数分間さらされるとよう燃えるんや」
「・・・そうか」
つんくは中澤がいる部屋の扉を開け、その姿を見た時から最後の幕を引き始めていた。
腐りきったこの世の中なんてもうどうでもいい。
この短い人生の中で様々なことをやってきた。
でもそれには常に空虚感というものがつきまとった。
- 199 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時20分30秒
- 始めは本当にこの国を作り直したかった。
全てを無に返したかった。
だが進む計画とは裏腹に満たされないむずがゆい気持ち。
全てを手にいれることなんて出来なかった。
知れば知る程に根は深く、動けば動く程にどうにもならない自分の力を知った。
組織を立ち上げた時、自分の力を過信した。
組織が軌道に乗った時、強大になりそうな力達に恐怖を覚えた。
排除した。
残したいもの以外は全て。
だが、不安や不満、そして今だ埋めることの出来ない空虚感は排除できなかった。
この部屋で中澤を見た時、絶望の中に見た瞳につんくは感じた。
空虚感の意味。
空虚感の理由。
己の存在の小ささ。
- 200 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時21分09秒
- 全ては力だった。
他人を従わせるような力。
自らがふるいあげた拳は誰も止めてくれなかった。
自分に触れてくれるものがいなかったから。
自分が他人をよせつけなかったから。
臆病ものの末路。
何もかも信じられない状況。
愛を知らないで育った自分。
- 201 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時22分16秒
- 家は金持ちだった。
父親は政治家。
母親はその秘書。
恵まれた家庭と呼ばれた家で育った。
しかしつんくはそんなこと思ったことがなかった。
夜な夜な母は泣いていた。
夜な夜な父の寝室からは知らない女の声が聞こえた。
自宅に押し寄せてくる眼鏡にハゲぎみの政治家達は、御機嫌取りをするかのように頭を下げ、様々なモノを父に持ってきていた。
見ていて虫酸が走った。
当たり前でないことが当たり前に起こる家の中。
だからつんく自身にもありえないことが起こった。
- 202 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時22分58秒
実の母を抱かされた。
父の前で。
『お前も男だろ?ならば女を知っておけ』
泣く母を前に口から血が出る程歯を噛み締め、目を瞑った。
感情を殺すことでしか対応できなかった。
一瞬視界に入った母の顔は冷たく、その鑞人形のような顔はつんくの脳裏に焼き付いて離れなかった。
ただそこに、父を拒めない自分がいて、母を抱いている自分がいたから。
愛してほしかった。
力をつければ愛してくれると思った。
でも誰も愛してはくれなかった。
- 203 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時23分53秒
- ならば愛なんていらない。
全てをリセットしてしまえば、この世から愛を排除できる。
自分以外に愛される人もいなくなる。
見にくい嫉妬。
『愛される』ことに執着しすぎた。
手にした刀は父の遺産。
手にした銃は母への未練。
結局は自分も親から離れることなんてできなかった。
手にした刀で父を殺した。
手にした銃で母を殺した。
ただ愛して欲しかっただけなのに。
- 204 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時24分47秒
- この部屋で中澤を見た時、自分を同じようなモノを見た気になった。
しかしその瞳はあきらかに自分と違っていた。
愛を知っている瞳。
壊しても壊しても奪い去ることなんて出来ない。
痛感させられた。
全てを無に返したとしても、自分の思いは成就されないのだと。
中澤を抱いた。
昔母を抱いたように抱いた。
自分の目の前にいた女はあの日、母にされた時と同じ表情だった。
無駄と思った。
だから故意的に中澤が火に自分の切れた上着の一部を投げた時にそれを止めようともしなかった。
全てなんていらない。
ならばせめて1つ欲しかった。
もう独りは嫌だ。
- 205 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時25分40秒
- 「カオリ、大至急車と紺野をこっちに送って」
『紗耶香!何で皆連絡系統の電源を切るのよ!!』
「大至急頼む」
そう言うと市井は通信機の電源をOFFにした。
一通りの手当ては終えた。
皆かろうじて一命は取り留めている。
松浦という少女も、手や足の骨は酷い者の、命に直接関わる傷はなかった。
むしろ心配だったのは藤本という少女の方だった。
松浦を庇った時に浴びた銃弾はせき髄を見事に破壊していた。
その弾を放った後藤は今、膝を抱えて部屋の隅に座り込んでいる。
頬は赤く黒く腫れている。
藤本と松浦の手当てを黙々と市井が行っている時、後藤は何も出来ずにただ立っていることしか出来なかった。
ただでさえ線が細い市井。
その作業をする背中が、見ていて温かくなかった。
後藤は恐かった。
市井が恐かった。
その背中は怒っていた。
自分を怒っていた。
- 206 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時26分39秒
- 「・・・何してんだよ!!!お前も早く手伝えよ!!!」
市井ちゃんが怒った。
市井ちゃんが怒鳴った。
市井ちゃんを怒らせた。
後藤が市井ちゃんを怒らせた。
頬をおもいきり殴られた。
絶対に自分に手をあげなかった市井ちゃんが殴った。
胸ぐらを掴まれた。
「何もしないなら隅にいろ。
てめぇの尻拭いくらいてめぇでしろ!!
昔言ったよな。
『絶対にキレるな』って。
私の血を見てもキレるなって言ったよな」
恐くて目が見れなかった。
そらしたら顎を掴まれて無理矢理目を合わされた。
恐かった。
部屋の隅に投げられた。
市井ちゃんはまた手当てに戻った。
背中は温かくなかった。
- 207 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時27分36秒
- 市井ちゃんがカオリに何か伝えてた。
口調は淡々としていた。
仕事をしている時と何も変わりなんてなかった。
それは感情を殺している時と同じ、自分を殺している時と同じ。
市井ちゃんの気配を感じた。
近くに市井ちゃんを感じた。
「後藤」
恐くて顔を上げられないでいたら、さっきと同じように顎をつかまれた。
無理矢理目を合わさせられた。
抱き締められた。
市井ちゃんは温かかった。
- 208 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時28分14秒
後藤は涙が止まらなかった。
「・・・んぐ、ご・・・・ごめんな・・・さい・・・」
市井ちゃんは強く抱き締めてくれた。
それだけでよかった。
力になった。
「よし、じゃあ圭ちゃん達の所行くぞ」
だから素直に頷けた。
- 209 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時29分53秒
中は燃えていた。
赤く燃えていた。
矢口さんは泣いている。
そして叫んでいる『お姉ちゃん』と。
中で見合いながら立ちすくんでいる2人は動こうとしない。
このままじゃ・・・死んじゃう。
中澤さんが死んじゃう。
あたしは唯一動く方の手で銃を構えた。
嫌だ、誰かが死ぬなんていやだ。
何も出来ないなんて絶対に嫌だ。
銃口が窓硝子の中心を向く。
銃の反動に耐えられるかなんて分からない。
飛弾のことも考えられない。
ただ誰も死んでほしくない。
- 210 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時30分49秒
- 中澤さんがこっちを向いた。
その顔は・・・
優しい微笑んだ顔だった。
『ごめんな。あんた達の人生をむちゃくちゃにして』
口の動きで言葉を読んだ。
あたしの周りにはいつの間にかごっちんに支えられた市井さんや、保田さんがいた。
『こんなことに巻き込んでしまって、今さら何を言えばいいのか分からんけど・・・
幸せになれるんやったら皆幸せになりぃや。
あたしの分まで幸せになりぃや』
「嫌だよ!!お姉ちゃん!!!たった1人の家族なのに・・・」
『矢口、お前の周りには沢山の姉妹がいるやないか。
血の繋がりだけが全てやない。
それを教えてくれたのはあんた達や。
あたしは嬉しかった。
失ったはずの家族がまたできたことが・・・。
でもまだ1人ここにおんねん。
独り孤独な阿呆な男がな・・・。
あたしは大切な家族に惨いことばかりやらせてきた。
だからせめて最後はあたしがケジメをつけたい』
- 211 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時31分35秒
- 中澤さんは悪戯のばれたような子供の顔をして頭をかいた。
あたしはそれが無償に悲しかった。
その意味も分かっているし、それについて何も出来ない自分がいるし・・・
扉は絶対に開けることが出来ないし、窓も撃ち破ることは出来ない。
完全に密封された空間。
部屋の中にある空気を作りだす機械が憎くてたまらなかった。
『こんな境遇やったけど皆に会えてよかった。
皆・・・』
大好きやで・・・
最後の呟きはほとんど見てとれることが出来なかった。
あたし達の視界を激しい炎が遮ったからだ。
その視界の中、つんくがカプセルの握り潰したのが見えた。
中澤さんはやっぱり笑っていたみたいだった。
- 212 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時32分11秒
- 炎は中にいた2人は飲み込んだ。
わずかに見えた炎の隙間から皮膚が崩れ落ちていくつんくの姿が目に入った。
中澤さんもそんな風になっているのかと思うと、見ていられなくなった。
あまりにも早すぎる最後。
助け出すことすら出来なかった。
むしろあたし達が助けられた。
力だけじゃなにも出来ない。
今さらのように見せつけられた現実が酷く自分にのしかかった。
そしてあたしの記憶はここで途切れた。
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- 213 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時34分11秒
- 気がついた時、あたしはベッドの上にいた。
これは夢なのではないかと思った。
動かない脳で、色々なことを思った。
聞きたいことが沢山あった。
でも言葉が出なくて、代わりのような涙が目から流れた。
「・・・ひとみちゃん?」
甘い声。
震えていたけど、それは確かに梨華ちゃんの声。
顔を少し傾けると、涙をぼろぼろとこぼしている梨華ちゃんがいた。
『・・・梨華ちゃん』
言葉を発したつもりなのに、声が出なかった。
- 214 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時35分05秒
- 梨華ちゃんはあたしに抱きついて大声で泣いた。
その身体を抱き締めようとした腕が1本足りなかったけど、梨華ちゃんの温もりは現実だと思えた。
梨華ちゃんの泣き声に皆が集まってきた。
中澤さんを除く皆が・・・。
あたしが皆の方を見るように視線を動かすと、皆が折り重なるようにあたしの周りにつめよってきた。
ふと、1人その場から少し離れている所に立っている矢口さんと目があった。
『・・・中澤さんは?』
やはり声は出なかったが、矢口さんはそれを見て読んでくれた。
分かってはいた。
でも認めたくなかった。
中澤さんはもうこの世にいないって。
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- 215 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時35分42秒
- あたしは昏睡状態だったらしい。
大量に血を失いすぎていたのだ。
そして3週間あまり目を覚まさなかった。
矢口さんの話しによるとあの場で気を失ったあたしは、ごっちんや矢口さんに地上まで上げられた。
放心状態だった矢口さんも、倒れたあたしの状態の悪さに相当焦ってたと言っていた。
飯田さんと紺野がかけつけた時、強化硝子を破った炎は家全体や木々、そして他の民家まで燃え広がっていたそうだ。
火が治まった頃、消防や警察が様々なことを調べたらしいが、中澤さんとつんくの遺体は出てこなかった。
矢口さんや飯田さんはあの薬品のせいでボロボロになった組織や骨は炎で焼けてしまったのだろうと言う。
紺野の治療により、市井さんも保田さんも松浦さんも藤本さんも助かった。
しかし藤本さんのせき髄の損傷だけは治らなかった。
新垣を助けた時のような設備が整っていればと紺野は嘆いていた。
- 216 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時36分30秒
- 藤本さんは今車椅子で生活をしている。
松浦さんの手をかりながら。
市井さんとごっちんは様々な所を旅しながら生活をしている。
たまに写真付きの便りが届く。
簡潔な手紙だが、心がこもっているような手紙だ。
飯田さんと保田さんは今孤児院を経営している。
そこで新垣、小川、高橋、紺野、加護、辻、松浦さん、藤本さんも一緒に生活している。
後から知ったのだが、この孤児院は矢口さんが飯田さんに提案していたらしい。
矢口さんは新しい生活を送る為のことを考えていた。
その器量の良さには驚くばかりだ。
中澤さんのお墓はそのすぐ近くに建てた。
見晴らしのいい丘で心地よい風が吹く所。
行くだけで自然と安らぐような所だ。
安倍さんと矢口さんは今までと同じ所でBerを経営している。
常連客も増えてきていて、不景気な世の中だが繁盛しているようだ。
- 217 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時37分13秒
- 片腕を失ったあたしは紺野が作ってくれた義手をつけ、矢口さんと安倍さんが経営している店で昔のように働いている。
ちなみに今までの学校は辞めた。
代わりに通信制の学校に入学した。
あたしと梨華ちゃんは一緒に暮らすようになった。
その梨華ちゃんは今までのように学校に通いながらあたしと同じ所でバイトをしている。
前と代わったことろといえば、時々は家に帰るようになったというところだろう。
あたし達は毎年、あの日、全てが終わった日に集まって中澤さんの所に行く。
年をとれば顔もかわるし、少しづつ生活も代わって行く。
でもこの日に集まることだけは代わらない。
- 218 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時37分55秒
- 昔、あたしは矢口さんに聞いたことがあった。
『寂しいですか?』と。
矢口さんは答えてくれた。
『当たり前じゃん。
寂しくなる時は今だってあるよ。
でもね、裕ちゃんはいなくなっちゃったけど、いるんだ。
矢口の中に。
目を閉じれば思い出せるあの温もり。
裕ちゃんと過ごした日を思えば裕ちゃんは矢口に向かって怒ったり笑ったりしてくれる。
忘れるはずないよ。
忘れられないよ。
寂しくなくなるんてないよ。
大好きだったんだから』
矢口さんはあたしに向かって笑顔を向けていた。
きっとその時、あたしも不器用ながら笑顔を向けていたんだと思う。
- 219 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時38分38秒
- 風、それはいつも見守ってくれていた中澤さんのように優しく、時に荒々しく吹く。
伸びた前髪は無造作に揺れ、持ってきた花束は次々と舞い、空へと消えてゆく。
花なんて持ってきたことに怒っているのか・・・それとも中澤さんの元へ届けてくれているのか。
失った右腕、失った大切な人。
全てが過去で、全てが現在。
お墓の横に腰を下ろしてみる。
今は確かに現在で、あたしは確かに今を生きている。
風を感じようと目を閉じる。
優しい風はいつも何かを運んでくる。
あの娘の声も、あの娘の歌声も。
中澤さんの声も、皆の声も。
- 220 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時39分35秒
- 存在しなくたって残るものなんて沢山ある。
触れられなくたって感じられることは沢山ある。
耳に残った様々な音や声は消えることなく生き続ける。
あたしが生き続けるかぎり、残り続ける。
今もこれからも、これからずっと先も。
生き続けるかぎり。
〜fin〜
- 221 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時40分24秒
- ◇
- 222 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時40分54秒
- ◇
- 223 名前:耳に残るは・・・2 投稿日:2003年03月12日(水)22時41分33秒
- ◇
- 224 名前:南風 投稿日:2003年03月12日(水)22時50分44秒
- 全ての更新終了しました。
あれから手の動くままに、何かに焦るように書き続けました。
何かに背中を押されるように、落ち着かない気持ちで更新しました。
本当は何度かに区切ろうと思ったのですが、読み返す勇気がない自分は、
焦るように全ての更新を今、ここにしました。
生まれて初めてこんな長文を書き、生まれて初めて完結まで持っていくことが
できました。
今まで自分にレスを送って下さった皆様、こんな駄文を読んで下さった皆様、
本当にありがとうございます。
皆様のおかげでここまで辿り着くことが出来ました。
感謝の気持ちが簡単な言葉でしか表せれない自分がとてももどかしいです。
余った分で、途中でも言っていた通りこの物語りの中に入れきれなかった
モノを書こうと思っています。
番外編というよりは過去の話しです。
時間があくかもしれませんが、よろしければ読んでやって下さい。
- 225 名前:南風 投稿日:2003年03月12日(水)23時00分02秒
- >188様。
レスありがとうございます。
このレスを頂いた後、自分は大量に文を打ち直しました。
そしてその結果は後悔するものになりませんでした。
この時の気持ちをどう言葉にしてよいのか分からないのですが、
何かが自分の中で切り替わったんです。
ので、改めてお礼を言わせて下さい。
そして、もう一度。
今まで読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
- 226 名前:173 投稿日:2003年03月12日(水)23時14分21秒
- 完結、お疲れ様でした。
ただひたすら、息を殺して読み耽りました・・
壮大なスケールの叙事詩が終わった・・という感覚です。
幸せの形はいくつもあるように、この中のメンバー達もそれぞれ
の幸せを手にしたのではないか、と思います。
南風さんの文章にグイグイと引き込まれました。
ゆっくりと休んで下さい。
そしてサイドストーリー、また楽しみにしています。
- 227 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月13日(木)00時48分24秒
- 最終更新だと知って覚悟を決めて、背筋を正して読みました。
良かった。本当に。
クライマックスをリアルタイムで読めて幸せだな。
またどこかで、あなたの小説に出会えるコトを祈りつつ。
お疲れ様でした。
- 228 名前:ごまべーぐる 投稿日:2003年03月13日(木)06時05分50秒
- 何と言ったらいいのか…毎回かなり惹きつけられて読んでました。
このお話の世界観が、とても好きです。
お疲れ様でした。
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