インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板
Never read me.
- 1 名前:山田フラワ子 投稿日:2002年11月13日(水)00時50分53秒
- ▼簡単なルール説明▼
BOOKS:あらわれるもの
MUSIX:破壊させるもの
▼この小説を読むにあたっての注意(必読)▼
>>2
▼読書上の注意▼
この小説は必ずsageてください。読者の不用意なレスでageていた場合の責任は負いかねます。
万が一ageられていても不用意に読んだりするこののないよう予めお含みおきください。
- 2 名前:山田フラワ子 投稿日:2002年11月13日(水)00時58分22秒
- ▼この小説を読まれる皆さんへ(必読)▼
この小説は古今東西の小説のネタバレを激しく含みます。
不用意にえげつないほどのネタバレをご覧になられても責任は負いかねます。
あらかじめご了承ください。
▼めやす(どうぞ参考にしてください)▼
CP度:微妙 お笑い度:微妙 バトル度:文系 涙度:低
沈みきったら更新開始します。
- 3 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月13日(水)01時27分21秒
- 放置しませんように(合掌)
- 4 名前:名無し娘。 投稿日:2002年11月13日(水)17時55分13秒
- めちゃめちゃオモシロソウ
がんがって
- 5 名前:無言娘 投稿日:2002年11月15日(金)20時23分23秒
- 前置きはいいから、早く始めれ!
- 6 名前:序 投稿日:2002年11月15日(金)23時53分59秒
- 物語を始める前に、つまらない観念的な話をしよう。
人は誰しも突然、世界のペテンに気付く瞬間がある。
幼児の頃には信じていた、世界は確固たる論理で構成され、世の中のこと
はすべて綺麗に整頓されきっているという概念が、突如として突き崩され、
破片の破片までバラバラに崩れていく瞬間。きっかけはいつだって些細なこ
とだ。逆上がりをした瞬間だったり、親の後姿だったり、見知らぬ友達だっ
たり――
ごくつまらないことで、世界はあっさり崩壊する。
- 7 名前:序 投稿日:2002年11月16日(土)00時04分56秒
- いわし雲が綺麗に連なっていたから多分、秋だったのだろう。
私は、白い雲から透けて見える青空の濃淡を楽しんでいた。『活用国語
便覧』にあった『天打つ浪』という魅惑的なタイトルの書籍は、おそらく
この空のことを綴ったものに違いあるまい。もしあれがさざ波だとすれば、
波音は何が置き換わるのだろうか――
今でも鮮明に残ってる記憶は、その原因を見る直前から残っている。
つまり、ここからだ。
中学2年生の秋の日のことだった。国語の授業で俳句を綴ることになった
私は、ネタを探して便覧をめくっていた。天打つ波。綺麗な言葉だ。見上げ
た空にはいわし雲――
いわし雲 天打つ波の 静けさや
一首完成。簡単なものだ。いや、いわし雲と天打つ波は同じもののことを
言っていてくどいから、適当な言葉に変えたほうがいいかもしれない。青空
の美しさを目に焼きながら、漠然と考えていた。作文は苦手だが、言葉と言
葉を繋いでいく作業は楽しかった。
- 8 名前:序 投稿日:2002年11月16日(土)00時16分09秒
- 絶妙な白と青のコンビネーションを見せ付けた青空に、漠然とした違和感
がはしった。ゆるやかにたわみ、しぶき、波打ち、やがて端っこのほうから
ひるひると青空がめくれあがった。
青空の向こうはハレーションを起こしていてなにも見えなかった。青空が
無いことはわかるのに、無いところに何が在るのかはわからない。視界は、
それをとらえているのに、視神経はそれを脳に伝えることを拒んでいる。
ハレーション。太陽をじっと見続けていれば涙が出るように、そこに意識
を向けると脳ににぶい痛みを感じた。寝不足のときの、脳がどこまでも外に
広がっていき妄想が現実に溶け込む感じに似ている。
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月16日(土)00時44分55秒
- 常時age
- 10 名前:序 投稿日:2002年11月16日(土)01時16分53秒
- 時間を置けば置くほど、白昼夢のようなあの一瞬は、現実味を増して
いくようだった。この体験を誰かに打ち明けたことはない。なぜなら、
あのとき、ひどく狼狽した私は、悲鳴を上げて席を立ち、消えた空を指
指したのだから。
尋常ではない私の様子に、みんな一斉に『それ』を見た。
そして、私が何を言っているのかわからないと途方にくれた。
私の見たものが夢でない証拠がある。
空はまだ、戻ってきていない。消えたままだ。
もっとも、それを認識しているのは『私』、たくさんいる『私』のなか
で唯一『私』を『私』たらしめている唯一の『私』、一人きりなのだ――
- 11 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年11月17日(日)19時50分17秒
ひとつぶの麦、地に落ちて死なずば、ただ一粒のままにてありなん。
もし死なば多くの実を結ぶべし。
――ヨハネ福音書12章
- 12 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年11月17日(日)20時05分04秒
- 低いバチバチという音を鳴らし、街燈が明滅を繰り返している。その街燈
はその道の終点にあって、ほんとうの夜と人のいる夜の境界上の、さいごの
ひとつだった。明滅は、小さなふたつの人影を闇の中に頼りなく浮かばせ、
また夜の中に沈める。
「早くして。誰か来ちゃうよ」
「わかってるって」
人影は甲高い、でも精一杯低くしようと努力を払ったかすれ声で闇に吸い
込まれる。ガチャガチャと激しく鉄製の門扉と閂がぶつかる音が続く。空気
を切り、砂が擦れる鋭い音がふたつ。
「どこだったっけ?」
「美術室があるとこの、手前の窓。いちばん右」
会話は、はずむ息の合間に交わされた。軽い足音が夜のなかに消えていく。
ここは学校。この現代において未だに夜の恐怖に支配され続けている世界。
- 13 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年11月17日(日)21時02分20秒
- 週番が戸締りした後を見計らって、あらかじめ鍵を開いておいた窓から
ふたりは校内に侵入する。緑色の非常灯が二人の容姿をおぼろげながらに
浮かびあがらせる。
ひとりめは緩いウェーヴのかかった髪を短く切りっぱなしにしている。
身体の動きに合わせて踊る髪はモダンジャズのようだ。
ふたりめは、長い髪をふたつに分けてゆるく縛っている。こちらの髪の
描く軌跡はワルツだ。
ふたりは緑色に光る非常灯の光だけを頼りに、薄暗い1階の廊下をひた
走る。足元は、ほとんど闇に呑み込まれている。今ここに鋭く切り立った
クレバスがあらわれても、気付くことはあるまい。アッという声を出す暇
もなく飲み込まれ、昼間にはリノリウム張りの床は何事も無かったかのよ
うに冷たい光を反射する――実際この学校では、今年にはいってからすで
に3人の生徒と1人の教育実習生、それから1人の教師が校内で行方を絶っ
ていた。
いつの頃から広がりだしたのか誰も明瞭には答えられない『うわさ』に、
こんなものがある。
- 14 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年11月17日(日)21時03分05秒
この古い城址に建てられた学校には、昔ながらの秘密の通路があって、
ひとさらいが使っている。ひとさらいにさらわれたくなければ、校内で
歩いてはいけない。走れ。
- 15 名前:リエット 投稿日:2002年11月18日(月)02時31分58秒
- 面白そう。
面白そうだけど、まだ1レス目の意味がわからない。
- 16 名前:リエット 投稿日:2002年12月12日(木)22時08分27秒
- 待ってまーす。
- 17 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月12日(木)22時11分21秒
- これも放置カヨ!
- 18 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年12月22日(日)11時24分03秒
- 「図書室の本は扉」
彼女――真っ直ぐな髪を肩口で切りそろえた、ふっくらした頬の彼女の口癖だ。
「この世界の外側にはもうひとつ世界があるの。書籍はその証拠。どの本も、外側
の世界にあることがかかれているの。すべての本はぜんぶ世界の外側でつながって
いて、外側への扉になる」
おっとりと喋る彼女のコトバは意味はわからないけど、ひどく魅力的だった。
信じたわけではない。
鼻で笑い飛ばせたわけでもない。
ただ、面白そうだと思った。それだけだった。彼女のいう証拠は夜の図書室の
なかにあるのだという、その言葉を。
- 19 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年12月22日(日)13時34分14秒
- 「麻琴ちゃん……」
不安げな声に、ショートカットの少女が足を止める。
「ん? なぁに、里沙ちゃん?」
降りかえった踊り場の、里沙の姿がいやにくっきりと闇のなかに浮いて見えた。
里沙の足元の床はうっすらと白くひかり影があまりにも黒々として、麻琴はゾッと
する。まるで奈落のようだ。舞台の真ん中で突如せせりあがる四角い跳ね板。彼女
たちの学校では、体育館にしつらえられた舞台の下にある埃っぽい倉庫は、伝統的
に奈落と呼ばれていた。その言葉が、地獄の別名だということを麻琴は知らない。
知らないなりに――言葉のイメージは重なっていた。暗くてしめっていて不潔な、
いやなところ。
「どうしたの?」
里沙は目を奪われたように、ガラス窓を見上げている。
麻琴は軽く頭を振って、階段を数歩くだる。足が白く光る床を踏む。光源は、
窓の外にあるようだ。
「月が」
里沙の言葉に頬をあげる。ガラス越しの月は、星ひとつ見えない夜空に、薄く
薄く淡く白く輝いていた。
「笑っているみたいに見えて」
- 20 名前:ひとつ、ひとさらいは夜に『あらわれ』 投稿日:2002年12月24日(火)02時52分05秒
- 「こわいこと言わないでよー。行こう、ね?」
麻琴は困ったような笑顔を浮かべて、里沙の腕を引っ張った。触れ合ったことで
二人は安心する。
「うん…」
繋いだ手と手の向こうにお互いがいる。もし自分が闇に呑まれても、必ずひっぱ
りあげてくれる力強い命綱――もし相手が闇に呑まれたら、自分まで引っ張り込ま
れてしまう、という可能性に、二人は思いあたらない。
「みんなもう来てるのかな。それともあたしたちが一番乗りなのかな」
「わかんないけど――急ごう」
遠ざかる足音に、窓型に切り抜かれた光が妖しく揺らめいた。それはまるで、
窓辺に置いた書籍の頁がやわらかな風に一枚一枚めくられていくような直線的
なゆらぎだった。
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月25日(水)02時31分48秒
- 暗幕のような暗い色のカーテンを引いた図書室のなかは電気が晧々と照っており、
昼間のように明るかった。二人は、暗闇にいることになれた目をしばたいた。扉を
後ろ手で閉めると、もうそこに、あの闇の痕跡はない。完璧な部屋だ。
「――四人とも、もう来てたんだ?」
自習スペースの広い机の上に分厚い書籍を何冊も放り出して、疎らに四人の少女
が座っている。
机の上には、『冒険者たち』『ゲラダヒヒの紋章』『はてしない物語』『魔の沼』
『ヒルズ・エンド』『残された日記』『竜太と青い薔薇』――などのハードカバーの
児童書に紛れて、『柘榴の園』や『光輝の書(ゾハル)』など禍禍しいタイトルの書
籍が見える。
「二人とも遅いっ。何やってたのさ。待ちくたびれちゃったよ」
ポニーテールが、早口に文句を言った。ほかの三人は特に文句も関心ないようで、
机の上に散らかった本の頁を思い思いに繰っている。
「ごめ、愛ちゃん。なんかー、なかなか抜け出せなくって」
「ほんっとごめん。みんなもごめん」
麻琴と里沙は大袈裟な身振りと声音で平謝りに謝った。
- 22 名前:リエット 投稿日:2002年12月26日(木)03時37分20秒
- 登場人物の名前の出し方が凄く自然で、引き込まれます。
「あらわれ(あらわれるもの)」の部分がようやく出てきたところでしょうか……?
Converted by dat2html.pl 1.0