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上手くは言えないけれど
- 1 名前:オニオン 投稿日:2002年11月17日(日)12時46分48秒
- 今日和。中2日で帰ってきました。
とりあえず初っ端から切ないの書いてると
そっちでいくんだなと思われ兼ねないので
痛くも痒くもないものから行かせて頂きます。
スタートです。
- 2 名前:GO or STAY?―1― 投稿日:2002年11月17日(日)12時51分53秒
- 目を合わせる事が恥かしかった。
『モーニング娘。』という肩書きを手放した中澤さんは
とてつもなく魅力的だった。
あの頃と変わらず、気さくに声を掛けてくれるし
メンバー1人1人の事をちゃんと見てくれている。
そんな中澤さんを見ているのが楽しかった。嬉しかった。
けれど、私の目は
中澤裕子という一人間としての魅力を痛感してから
一度もまっすぐにあの人をみる事が出来なくなっていた。
- 3 名前:GO or STAY?―1― 投稿日:2002年11月17日(日)12時56分39秒
- 広い楽屋の中、他のメンバーと話している中澤さんの
後姿を見つめる事がせいいっぱいだった。
その輪の中へ入っていく事さえ困難だった。
少し、長くなった髪が、笑う度に揺れてる。
時折、両隣にいる矢口さんや圭ちゃんの肩に
ツッコミを入れてるその触れる手が羨ましくて。
何か、心の中がグチャグチャして来たから
見つめる事を諦めて机に突っ伏した。
- 4 名前:GO or STAY?―1― 投稿日:2002年11月17日(日)13時02分03秒
- …好きなのかなぁ。
隣りに立つとドキドキするし
吉澤のために発せられる言葉ひとつひとつが
心を弾ましちゃってるし…
…これって恋っすか?!
って考えると、体温が1℃くらい上昇していく感じがした。
やばい。顔赤いかも。
今までも街歩いてて美人だなぁって思う人は何人もいたけど
あくまで美人なお姉さんは観賞用だったはずなのに
恋…ですか…。
「吉澤ー。」
吉澤ひとみ、17歳にして女に惚れる…。
「吉澤ぁー。」
あぁ、何か幻聴が…。
「…ひとみちゃん、ご飯よー。」
あぁ、お母さんか。
「はーいお母さ…。」
!!
- 5 名前:GO or STAY?―1― 投稿日:2002年11月17日(日)13時06分46秒
- 「誰がお母さんやねん。」
うぉっと、中澤さん。
何故こんな至近距離に。
「す、すいません。」
って何でか分からないけど立ち上がっちゃったよ。
「お疲れモードな?
今日はプレイボーイオーラあんま出てないやん。」
いやぁ、見つめないで下さいって。
「そっすか…。」
…目ぇそらしちまったい。
「何目ぇそらしとんねん。」
しかも指摘されちゃったし。
「何や、やましい事でもあんのか?」
「いや、別にないっす。」
あぁ、今心拍数測ったら
とんでもない数値を叩き出す自信があるなぁ。
- 6 名前:GO or STAY?―1― 投稿日:2002年11月17日(日)13時12分48秒
- 「えらいんやったら言いなや。
メンバーぎょうさんおるんやから。
無理したらあかんよ。」
天使の、天使の囁き。
「大丈夫っすよ。元気だけがとりえみたいなもんすから。」
と、右腕で力こぶを出すポーズをしてみた。
「…えぇっと、自分ら今日1人当たり
1.2倍の力出して頑張る事。
吉澤の体調が優れんみたいやから。」
「えっ、あのっ…。」
別に体調が悪い訳じゃないんすけど…。
メンバーに呼びかけてる中澤さんの肩を掴んじゃった。
「そういう時のための仲間やんか。」
振り返ってそう言って
な。ってスマイルもらっちゃいました。
- 7 名前:GO or STAY?―1― 投稿日:2002年11月17日(日)13時13分42秒
- それで、確信した。
私はこの笑顔を独り占めにしたいと
思っているんだって事を。
- 8 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)13時30分32秒
- 恋の病ってよく言うけど、今の私の状態は正しくそれだ。
病名・恋煩い。
症状・動悸。緊張からくる異常なまでの発汗。
これを恋以外の言葉で表せるのだとしたら
教えて欲しいくらいだ。
…あぶないなぁ…。
あんな年上な人にトキメいちゃってんだもんなぁ。
…末期だな。
- 9 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)13時35分18秒
- 「どーしたの?よっすぃ〜。」
「あぁ、安倍さん…。」
「…何。声掛けたのが私で不服そうだねぇ。」
「いや、そんな事ないっすけど…。」
相変わらずミクロっすねぇ…。
こういうペットいたら買うなぁ…、そして飼うなぁ…。
「何か悩み事?
だったらなっちが相談に乗…。」
「いいっす。
悩んでても安倍さんにだけは言わないっすから。」
「えー。何でだよぉ。」
「だって、安倍さんの頭の中
大した事入ってなさそうなんすもん。」
「ひどーい。
よっすぃ〜よりかは詰まってるべさ。」
「…食う寝る遊ぶ以外に何が?」
「………。」
- 10 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)13時39分23秒
- 「ほら、やっぱり無理っす。」
「えぇっ。でも大丈夫だって。ね?話してよぉ。」
「…何か今日、粘っこいっすねぇ。」
「…しつこいって事かい?」
「…はい…。」
「…だってさぁ、よっすぃ〜は元気な方がいいじゃん。」
「…吉澤に惚れてるんすか?」
「……。」
!
今、うなずいちゃいました?
ちょっ…何?!
「あー、びっくりしてる?
やっぱり気付いてなかったんだ。
鈍感だもんねぇ、よっすぃ〜って。」
- 11 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)13時43分38秒
- えぇっと。
…とりあえず…。
「あ!逃げたなっ。」
だってどう言っていいのか分からないんすもん。
そりゃもう逃げるしかないっしょ。
「裕ちゃん。よっすぃ〜捕まえてっ。」
裕ちゃん?って…
うあっ!!
「捕まえたでぇ。」
いつの間に来てたんすか?
で、いつの間にかキャッチされちゃってるし…。
っていうか後ろからハグはまずいですって。
胸当たってるし…。
うぁぁ…やばい。めちゃくちゃドキドキしてきたし…。
- 12 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)13時49分31秒
- 「何してんの?自分ら。」
「だって、よっすぃ〜がなっちの
一世一代の告白を聞き流そうとするんだよぉ。」
「何?なっちは吉澤の事が好きなんか?」
「…うん…。」
あぁ…。せっかく逃げたのに。無意味だったよ。
「吉澤も隅におけんなぁ。」
いや、おいといてもらった方がよかったっすよ…。
「付き合ってまいなって。
ええやん。なっちかわいいし。」
そういう問題じゃないんすけど。
「…や、その…。吉澤としましては…。」
「しましては?」
「好きな人がいたりとかするんで…。」
言っちゃった。
っていうか中澤さんにバレませんようにっ!!
- 13 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)13時52分30秒
- 「うーあー…。ふられちまったぁ…。」
って安倍さんは肩を落として
ちっちゃいもの仲間の矢口さんの元へ行ってしまわれて…。
2人にしないで!
おいてかないで下さいって!
「ええなぁ…若いって。
私もそんな色恋沙汰に巻き込まれたいわぁ…。」
…巻き込む事は今すぐ出来ない事はないっすけどねぇ…。
- 14 名前:GO or STAY?―2― 投稿日:2002年11月17日(日)14時02分05秒
- 「…いないんすか、好きな人?」
「…出逢いがなぁ…。」
「出逢いだったらそこら辺にいっぱいADさんとかが…。」
「嫌や。何か臭いそうやんか。」
ごもっともっす。
「…という訳で、吉澤で人肌の感覚を
思い出してるとこやね、今。」
「…。」
あぁ、そういえばまだ羽交い締めにされたままっすねぇ。
「…何黙っとんねんな?」
「…いや、別に…。」
「最近変やで。」
知ってますって、自分でも。
「…。あの、手、離してもらえませんか…?」
「えー。ええやん。」
って腕に力入れちゃダメっすよ。
「あ。もしかして吉澤が好きなんて私?」
「…。」
言ってしまえ。
チャンスじゃん。
どうした?吉澤ひとみ!!
「お…オバさんに興味ないっすもんっ。」
ていっ。
って軽く背中で押し飛ばしちゃいました。
で、逃げます。今度は逃げ切ります。
言えないって。言えやしませんって。
だって、今のままがずっと続くなら
それ、壊したくないし…。
あぁ…ダメだなぁ…。
いつもだったら好きとか
簡単に言えてたはずなのに…。
何でか、言えないんだよねぇ…。
ハア…。
- 15 名前:GO or STAY?―3― 投稿日:2002年11月17日(日)14時08分57秒
- あっという間でした。
安倍さんにごめんなさいしたのがメンバーにバレたのは。
「もったいない。」
は飯田さん談。
「見る目がない。」
は矢口さん談。
「理想高過ぎ。」
は梨華ちゃん談。
「後悔するのも時間の問題。」
は圭ちゃん談。
「チョーシ乗ってるんじゃなーい?」
はあいぼんとのの。
五期メンはさすがに何も言って来ないけど
何か、前と目の色が違う気がするんだよねぇ…。
挙句にほら、見てごらんよ。
あの安倍さんの哀愁たっぷりの背中を。
わざわざこっちに見せてるっぽいんだよねぇ。
そんな事したって吉澤の心はグラつかないっすよ。
だって、かわいい人より
美人なお姉さんが好きなんだもーん。
- 16 名前:GO or STAY?―3― 投稿日:2002年11月17日(日)14時13分29秒
- …言ってて虚しくなって来ちゃったよ。
「…紺野ぉ…。」
「あ、はい。」
みんな目ぇ合わせてくれないから
五期メンに構ってもらおう。
「面白い話して。」
「…面白い話、ですか…。」
「そう。」
無理難題なのは分かってるけどさぁ
笑いたいんだよねぇ。
だから、笑わせて、紺野。
「…じゃあ…。」
「ん、何か思い付いた?」
「安倍さんが吉澤さんに振られたらしいです。」
おぉっと。
「…笑えない。」
「そ、そうですか…。」
イチかバチかで言ったんだろうけどさぁ…。
- 17 名前:GO or STAY?―3― 投稿日:2002年11月17日(日)14時17分52秒
- 「じゃあ…。吉澤さんは他に好きな人がいるらしいです。」
「…笑えない。」
「…皆さんの予想では…
矢口さん…なんですけど…。」
「はいぃ?」
しまった。ちょっと声のボリューム上がっちまったい。
あー…皆こっち見ちゃったよぉ。
「あ、違うんですか?」
…紺野さん…。
君、なかなかチャレンジャーだねぇ。
「…残念ながら…。」
「うそぉ!矢口も振られちゃうの?
告ってもないのにぃ!!」
遠くで頭抱えてる矢口さんが見えますねぇ…。
- 18 名前:GO or STAY?―3― 投稿日:2002年11月17日(日)14時22分22秒
- …っていうかさぁ、これ、消去法?
安倍さん消えた。矢口さん消えた。
って…そのうちに1人しか残ってなくなるんじゃ…。
うわっ。もう答えるのよそう。
自分で自分の首絞めちゃってるじゃん。
軽ーく恋の熱にやられちゃって
自分警護するの忘れちゃってたよ。
大事にしよう、自分の事…。
――で、このあと1日中ずっと
ちっちゃいものコンビの執拗なまでに睨みを
もらい続けたのは言うまでもない事なんすけどね…。
- 19 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時33分13秒
- 恋愛ビギナー吉澤としましては
どうしていいものか分かりません。
なので、ここは恋愛マスターの中澤さんに
手ほどきを受けようと思い
今、中澤さんの楽屋の前に来ております。
…分かってます。大胆な行動に出てるって事くらいは。
だけど、本人が伝授してくれる方法をとるのが
手っ取り早いじゃん。
- 20 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時38分34秒
- いざ、出陣。
ドアをノックしてみます。
「吉澤でーす。」
「…。」
しばらくしてドアが開いて
開口一番
「何か用なん?鬼畜。」
「き…キチクって…。
いきなりキチク呼ばわりですか…。」
カウンター攻撃くらった気分でもう
負け戦って感じです。
別に勝負しに来た訳じゃんないんすけどねぇ…。
「何固まっとんねん。入りって。」
…フリーズしちゃってたよ。
「お邪魔します。」
「邪魔するなら帰ってぇ。」
「…帰ります。」
「嘘やん。」
いや、本気で帰ろうと思いましたよ。
「あんた、吉本新喜劇みたいな切り返しやなぁ。」
…褒めてます?それ。
- 21 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時41分46秒
- 「裕ちゃん寂しがり屋なんやから
ひとりにしたらあかんで。」
「…十分ひとりで生きて行けそ…。」
「アホ言うたらあかんで。
私は寂しかったら死んでまうんやから。」
って、真顔で言われても…。
ウサギじゃないんすから。
「はい入る。はい座る。はい話題振る。」
そんな無茶な…。
「で、何の用なん?」
…まだ着席してから2秒ぐらいっすよ。
テンポおかしくないっすか?
- 22 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時46分44秒
- 「ははん。恋やね。恋の相談やろ?
ええで。受けて立ってやろうやん。」
…いいのか、私。この人好きで…。
「…じゃあ、言いますよ?」
「なんぼでもこい。」
「…吉澤は好きな人がいます。
出来ればラブラブになりたいんすけど
今のままでも悪くないっていうか…
後退するこが怖いんすよねぇ…。」
「…普通に恋愛相談やん。」
「いや、そうっすけど。」
「てっきりボケてくるんかと思てたのに。」
「いや、ボケられませんって。」
「…ほな、私もマジに答えなあかんって事やんなぁ…。」
そりゃそうっすよ。
- 23 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時51分57秒
- 「…告るか告らんかって事?」
「…とりあえず、そうっすねぇ…。」
「…心変わりせん限り、いつかは言うてまうで?
抱え切れんようになったら言うしかないねんから。」
「…そいっすけど…。」
「それが今かって事やろ?
…吉澤が今やって思う時がその時とちゃうん?」
吉澤が今だって思う時…。
「プラスとかマイナスとかやなくて
知って欲しいって時。」
前進とか後退とか、そんなの全部端っこに除けて。
「…それが『今』って時っすか…。」
「…やろ?たぶんな。」
「…じゃあ、『今』は…たぶん…今っす…。」
- 24 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時54分31秒
- 現場で会うのが辛くなるかもしれない。
話とかあんまり出来なくなるかもしれない。
でも。そんな事は後で考えればいいじゃん。
「…吉澤ひとみは中澤裕子さんが、好きです。」
伝える事が大事だから。
いいじゃん、ダメ元で。
聞こう。どんな返事も受け止めれる、きっと。
- 25 名前:GO or STAY?―4― 投稿日:2002年11月17日(日)14時58分46秒
- 「…私…なん…?」
「はい。」
「…ありがとぉ…。」
「…。」
「…やけど、吉澤の事、そういう風に見た事なかったから…。」
「はい。」
「…とりあえず、これからちゃんと
恋愛対象として見るから…。」
「はい。」
「…それで、ええ?」
「はい。」
いいじゃん、ダメ元なんだから。
「…とりあえず、現状維持っすか…?」
「せやな…。」
「…惚れさせますから。
吉澤が中澤さんに惚れたみたいに…。」
いつか、好きって言わせてみせるから…。
END
- 26 名前:後書きと言う名の悪あがき。 投稿日:2002年11月17日(日)15時06分39秒
- 山場のない作品でごめんなさい。
次はもうちょっと頑張ります。
次作はたぶん三角関係の話になると思います。
今日のよりは切な系だと思います。
本日は撤収です。オニオンでした。
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月17日(日)16時50分14秒
- GO or STAY?・・・いいです。
前スレ後半かなり好きな作品多かったです。
でも、何で全部ストーリーの入り口でおわちゃうんですか?
どの作品も続きが読んで見たいです(W
- 28 名前:一号 投稿日:2002年11月17日(日)22時33分27秒
- お早いお帰りお待ちしてました。
27さんとは違ってますが、自分はココで止められるの最高です。
あえて理由はいいませんが(w
切ない系でも僕は全然構いません。
作者さんのペースで頑張ってください。
- 29 名前:名無し 投稿日:2002年11月18日(月)19時03分16秒
- 復帰待ってました!また頑張って書いてください!なかよし最高(^〜^)
- 30 名前:オニオン 投稿日:2002年11月20日(水)12時41分58秒
- 2日かかっても終わりまで持って行けなかったので
予告したのパスします。
>>27
>>28
説明するのは難しいんですが自分的には
終わってるんですよねぇ。
なので続編って結構無理して書いてます。
>>29
いいなかよしが提供出来るよう頑張ります、はい。
じゃあ、スタートです。
- 31 名前:つまりは。 投稿日:2002年11月20日(水)12時44分41秒
- 海ん中おるみたいやった。
吉澤に見つめられると息が出来んようなって
胸が苦しくなる。
ほんの一瞬、1秒にも満たん間だけ目が合うても
心拍数が上がってって、他のもん全部
見えんようになっていく感じがする。
- 32 名前:つまりは。 投稿日:2002年11月20日(水)12時46分58秒
- 吉澤が話しかける。
吉澤が笑う。
吉澤の手が触れる。
どんな仕草も心に焼き付けて
吉澤が話っしょった事や笑んよった事が
そんな思い出が勝手に増えて行く。
心ん中、吉澤以外
誰も、何もおらんようになってた。
- 33 名前:つまりは。 投稿日:2002年11月20日(水)12時49分31秒
- 吉澤はよう言う。
「中澤さんの事好きっすよぉ。」
って。
本気なんかそうやないんかは分からんけど
その言葉聞いたら嬉し過ぎて顔に出そうになる。
幸福過ぎて、息をするんも忘れてまう。
- 34 名前:つまりは。 投稿日:2002年11月20日(水)12時51分31秒
- 「最近吉澤の事避けてません?」
って訊いて来るけど
理由は明確やった。
「そんな事ないよ。」
って答えてるけど
嘘なんは明確やった。
ほんまの事言うたら
あんたは何て思うんやろう。
……言って、みたくなった。
- 35 名前:つまりは。 投稿日:2002年11月20日(水)12時53分56秒
- 「吉澤が近くにおると酸素薄いねん…。」
…意味、分かってるか?
「…奇遇ですねぇ。
吉澤も中澤さんの近くだと酸素薄く感じますから…。」
なぁ、それって…。
私が思てるように受け止めてもええん?
自惚れてええん?
「…私の事…。」
「好きです。」
END
- 36 名前:作者。 投稿日:2002年11月20日(水)12時54分57秒
- 次。
- 37 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)12時56分36秒
- 「私は、吉澤が好きや。」
いつか、中澤は吉澤にそう言った事があった。
突然降り出した雨の中
その雨音に掻き消されそうになりながらも
確かに中澤はそう言っていた。
- 38 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時00分13秒
- 吉澤の視線。
中澤の頭の下にある枕の右端をいつも見つめている。
中澤の視線。
吉澤の左肩をいつも見つめている。
絡まる事のない2人の視線。
私の何がいいの?
愛を返す事は出来ない吉澤。
そんな自分を何故中澤は愛すのかが分からなかった。
何で、抱くん?
好きでもない自分を抱いて
吉澤の心は何を思うのか、中澤には分からなかった。
- 39 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時03分31秒
- 中澤の心は何度となく諦めようと考えた。
けれどその度、吉澤は中澤を求めて来た。
例えそれが愛じゃないとしても
吉澤の腕の中、眠る事の出来る者は中澤だけだったから
それでもいいんじゃないかと思ってしまう。
そしてまた、やめようと思って、その繰り返しだった。
もう、その痛みが体なのか心なのか
中澤に識別する事は不可能だった。
- 40 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時06分00秒
- 吉澤の心は何度となく愛そうと思った。
自分の事を本気で愛してくれている中澤を。
これが愛じゃないと知ってて拒みはしない中澤を。
だけど、吉澤の心は愛し方を知らなかった。
誰も本気で好きになった事のない吉澤は
なにが本当の愛なのか知らなかった。
- 41 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時08分02秒
- 私、今のまま吉澤の事好きでおってええんかなぁ…。
愛は無償だと言うけれど
残酷な言葉すら与えてはくれない人を愛し続けて
中澤に残るものは何なのだろうか。
- 42 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時09分34秒
- 愛を、知りたい。
中澤が自分の愛を欲しているのに
それを返す事は出来なくて、返す術が見当たらなくて
吉澤は苦しんでいた。
- 43 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時14分46秒
- 「…戻ろうか…?こんな関係になる前に…。」
突然中澤はそんな事を言い出した。
「吉澤は…私なしでも生きて行けるやろ?
私も、吉澤の事好きになる前に戻ったら
今より…楽になるかもしれんし…。」
諦めた。
吉澤に愛される事を中澤は諦めたのだ。
「…忘れる…。あんたの事好きな事も…
今みたいに、抱かれよった事も…。」
そう言う中澤の顔は苦痛に歪んでいた。
苦肉の策だったのだろう。
それを察した吉澤は中澤の言葉にうなずき
その部屋を後にした。
- 44 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時18分58秒
- 1日、2日、3日…。
時計の針の音が重たく響き
それぞれの時間を刻んで行く。
最初の頃はつい吉澤の姿を目で追ってしまっていた中澤も
そのうちに、そうする事もなくなって行った。
その視線を感じていた吉澤は
出来るだけ自然に感じていないフリをしていた。
けれど、中澤が吉澤を視界に入れていない事に気付くと
今度は吉澤の方が中澤の事を目で追うようになっていた。
- 45 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時21分21秒
- 愛ってなんだろう。
あんなに好きだと言っていたくせに
そうも簡単に失くしてしまえるようなものなのか。
愛とはそんなに安いものなのだろうか。
その疑問を、中澤を見つめる事で解決出来る訳じゃない事くらい
吉澤も知っていたはずなのに。
- 46 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時24分08秒
- 本当にやめたのだろうか。
ほんとうにもういいのだろうか。
吉澤はもう、愛さなくていいんすか。
もう吉澤の愛を求めてはくれないんすか。
イライラが募っていた。
その程度だったのか。
中澤にとって自分はその程度のものだったのかと思うと
胸がもやもやしていた。
- 47 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時28分13秒
- 「自分が楽になる方を選んだからって
いけない事じゃないよ。
それも正当な選択肢のひとつなんだから…。」
メンバーの誰かが中澤に言った言葉。
それを聞いた当時、中澤の心は随分救われた。
勝手に好きになっただけだから
それを勝手にやめるだけ。
1だったものを0にするんじゃなくて
まだ1にすらなってなかったのだから。
そう思うと楽になった。
けれどそれも数日の間だけだった。
- 48 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時31分33秒
- 失くそうとすればする程
想いは強くなって行く気がしていた。
まるで舗装された道路よりも
道なき道の方が自分には合っているかのように。
茨の道を歩いて行く方が
ゴールは明るいものではないのだろうか。
そんな気さえしていた。
- 49 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時34分11秒
- 愛したい。
今、中澤を愛さなければ自分はもう一生
誰も愛せなくなってしまうのではないだろうかと吉澤は考えていた。
今までの誰よりも気になる存在であるのは確かで。
だからこそ、愛を知らない心を
埋めてくれるのではないかと思って
ああいう行為に陥った訳だったから。
- 50 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時37分05秒
- 愛したい。
あなたを愛したい。
ただ、愛してると言われても、愛は発動しなかった。
何が吉澤の心の中にある
愛の発動装置の引き金を引いてくれるのだろうか。
見つめ続ければ愛せるだろうか。
愛してると叫び続ければ愛せるだろうか。
吉澤はただ、切実に愛したかった…。
- 51 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時41分54秒
- 歌っていた。
吉澤への想いの全てを吐き出すかのように
中澤は歌っていた。
真夜中のカラオケボックス。
思い付く限りの愛の歌を歌い
心の中の吉澤への愛をカラッポにしてしまおうと思っていた。
こんな事で本当にそんな事が出来るのかは分からない。
だけども、出来たとすればそれに越した事はなかったから。
- 52 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時45分16秒
- 歌っていた。
いっぱい伝えたかった言葉を
いっぱい聞かせて欲しかった言葉を
全部メロディーに乗せて、叫んでいた。
伝えたかった言葉を声に出してしまえば
意外とすんなり気が済むかもしれない。
聞きたかった言葉を歌詞として画面で見れば
言われた気になって気が済むかもしれない。
―中澤は一晩中歌い続けていた。
- 53 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時46分08秒
- 吉澤の愛したいが勝るのか
中澤の忘れたいが勝るのか
答えはもう出ようとしている。
- 54 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時50分30秒
- 1日24時間。
その大半を中澤が占めていた。
吉澤の心の中は中澤だけが存在する場所となっていた。
愛をくれていたはずなのに
何がきっかけなのかも分からないうちに
それをやめられてしまったから。
そんな事は今まで一度たりともなかったのに。
今、吉澤の中にあるそれが
愛なのかは分からない。
だけど、以前に比べて
愛に近付いている事は確かだった。
- 55 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時54分01秒
- 「ちょっと、いいっすか?」
あの日以来、初めて中澤に声を掛けた吉澤。
「…。」
無言で吉澤の後を歩く中澤。
スタジオの隅に来た所で立ち止まり
吉澤は言う。
「…もう、終わりましたか…?」
「…何が…?」
「…もう、吉澤の事何とも思ってないっすか?」
「…思ってないよ…。」
これが嘘か本当か
吉澤は読み取れたのだろうか。
- 56 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時55分39秒
- そんなはずはない。
現に今だって
目線が吉澤を捕らえていないから。
それはまだ、未練がある証拠なんだと吉澤は思った。
- 57 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時56分44秒
- 「…愛が、欲しいんです。
中澤さんの愛が…。」
これが嘘か本当か
中澤は読み取れたのだろうか。
- 58 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)13時58分45秒
- そんなはずない。
愛した所で吉澤には何のメリットもないから。
得体の知れない愛を
吉澤が本気で欲しがる訳がない。
自分はただの
孤独やヒマを埋めるための存在なんだと中澤は思った。
- 59 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)14時01分38秒
- 「…無理な相談やわ…。
吉澤の事…もう忘れたから…。」
「…嘘っすよねぇ?
まだ吉澤の事愛してくれてますよね?
欲しいんですって、愛が!」
吉澤は取り乱していた。
自分でも驚くくらいに。
「…もう、構わんといてよ…。
私、やっと諦めついてんからっ。」
これが、真実。
- 60 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)14時03分47秒
- 「…そ…んな…。
吉澤は…。」
焦点が定まらない。
胸が苦しかった。
辛かった。痛かった。悔しかった。
「中澤さんの事を…
好きなのにっ…。」
これが、真実。
- 61 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)14時06分48秒
- 「ようやく分かったのに…。
中澤さんへのこのキモチ…
ちゃんと、愛なんだって…。」
最初から、愛だったのかもしれない。
それを吉澤が気付いていなかっただけなのかもしれない。
どこかで愛になったのかもしれない。
それを今、叶わないと知って
ようやくそれが愛なんだと気付いただけかもしれない。
どっちにしても今、吉澤の中澤へのキモチは
紛れもなく、愛だった。
- 62 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)14時10分23秒
- 最初から諦めていたのかもしれない。
心の何処かで愛を返してはくれないであろう事に
気付いていたのかもしれない。
どこかで、落としてしまったのかもしれない。
歌声の中に置いてきたのかもしれない。
どっちにしても今、もう中澤は
吉澤を愛してあげる事は出来ない。
- 63 名前:愛を教えてくれた人。 投稿日:2002年11月20日(水)14時12分09秒
- どちらかがもう少しだけ早ければ
まだよかったのかもしれない。
けれど、同じだった。
同じだけ時間が必要だった。
中澤の心が吉澤を諦めるまでと
吉澤の心が中澤を愛するまでは。
END
- 64 名前:後書きと言う名の悪あがき。 投稿日:2002年11月20日(水)14時16分48秒
- 自身初のバッドエンド(?)です。
幸せ大好きなんすけどねぇ…。
ポイントは
心の微妙な変化が大事なのに
書き切れてない所です。
堂々と言ってみました。
今日は予告もパス。
オニオンでした。
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月20日(水)14時47分24秒
- バッドエンドキター!
…ごめんなさい、ごめんなさい。
自分がバッドエンドななかよし大好きなものだからつい…。
オニオンさんのなかよしはマジで勉強になります。
頑張ってください。
- 66 名前:オニオン 投稿日:2002年11月21日(木)13時25分05秒
- >>65
褒められて伸びるタイプですので
そう言って貰えるとやる気出ます。
何故かしらここってバッド好み読者さんが多いような…。
作者自身は苦手なのに。何故っすか?
疑問系でスタート。
- 67 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時27分46秒
- よく歩いてたこの並木道。
暗い夜の道を2人、歩いてた。
だけど今日、あなたは言った。
「いっぺん、距離置きたいねんや…。」
- 68 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時30分23秒
- 2人でこうしてこの道を歩くのも今日で最後。
そう思うと、足が重たくなって
半ばくらいまで来た所で
ついに立ち止まってしまった。
理由はひとつ。
まだ、愛してるから。
この道を抜ければもう2度と
こんな風に過ごす日には帰れない。
そんなのは嫌だった。
まだ、愛したいのに。
- 69 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時33分03秒
- 何で恋愛って、愛されなくなったら
どんなに愛しててもヤメなきゃいけないんだろうか。
一緒にいたいのに、離れたくないのに
それを許してはくれない。
吉澤、何かしましたか?
吉澤、何か足りなかったっすか?
どうして何も言ってくれないんだろう。
何で、サヨナラする事になったんだろう…。
- 70 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時35分43秒
- 「…吉澤…?」
…これが最後になるのかもしれない。
恋人という立場で名前を呼ばれるの…。
「…何も、ないっす…。」
中澤さんの声が目が
この足を前へと進ませる。
中澤さんの方に引き寄せられるみたいに
前に、前に、歩いて行ってしまう。
- 71 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時38分14秒
- 中澤さんが立ち止まって振り返っている場所。
並木道の終わり。
その四つ角を中澤さんは右
吉澤は左に曲がる。
つまり、そこがサヨナラ地点なんだ。
無理。
やっぱりもう、進めない。
この、あと数メートルを行けば終わりだなんて
そんなのは嫌だ。
- 72 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時41分11秒
- だけど中澤さんは勝手にそれを切り出す。
「…ここで…お別れやな…。」
「…。」
「…ほなな…吉澤。」
勝手に背を向けて
勝手に歩き出す。
一歩…二歩…。
角を曲がったから、すぐに姿は見えなくなって…。
慌てて走った。
その角に立って右を振り返ったら
まだ近くに中澤さんの後ろ姿があった。
- 73 名前:サヨナラ。 投稿日:2002年11月21日(木)13時43分02秒
- サヨナラとか、ありがとうとか、ふざけんなとか…
そういうんじゃなくて…
その背中に
「愛してます。」
とだけ告げて。
END
- 74 名前:65 投稿日:2002年11月21日(木)17時51分20秒
- 綺麗な別れですね…。
食っただ殺しただしか浮かばない能無しとは全然違って素敵です。
オニオンさんの作品を読むと、素敵な別れを書きたくなるなぁと思ってしまうのです。
ただ、バッドがお嫌いなら無理にバッドする必要はないとも思いますがね。
オニオンさんのペースと言うかやり方で頑張ってください。
- 75 名前:オニオン 投稿日:2002年11月22日(金)12時47分34秒
- 何て言うか、無理してる訳じゃないんすけどね。
自分が滅入って来るとそういうの書きたくなるだけだし。
今日は短編3作。
スタートです。
- 76 名前:この星に生まれて。 投稿日:2002年11月22日(金)12時50分48秒
- いっぱい笑った。
いっぱい泣いた。
色んな人と出逢って、そして別れた。
手に入れたものも
失くしたものもいっぱい。
毎日は24時間。
別に26時間あったらいいのにって
思った事はない。
長くもなく短くもなく
丁度いい感じ。
- 77 名前:この星に生まれて。 投稿日:2002年11月22日(金)12時52分44秒
- 人生、今の所17年間。
いい事も悪い事も同じ分だけ。
±0。
何でもある世の中だけど
何にもない世界で
あなたと出逢い
恋に落ちた。
- 78 名前:この星に生まれて。 投稿日:2002年11月22日(金)12時55分14秒
- 冬の帰り道。
空いっぱいの星を見上げて
幾千もの星の中で
この星に生まれた幸せを
ただ、感じて生きている。
幾千もの時代の中で
あなたと同じこの時を生きている幸せを
ただ、噛み締めて生きて行きたい。
- 79 名前:この星に生まれて。 投稿日:2002年11月22日(金)12時57分05秒
- あなたがここにいる。
あなたのいる世界。
それだけでいい。
他に何も必要ない。
END
- 80 名前:反歌。 投稿日:2002年11月22日(金)13時01分17秒
- Yシャツなんて必要ない。
男前な科白も必要ない。
フリルのついたスカートなんて必要ない。
女の子っぽい仕草も必要ない。
好きな服着て
普段通りの言葉遣いでええ。
急いで大人になる必要もない。
ずっと子供のままでおる必要もない。
- 81 名前:この星に生まれて。 投稿日:2002年11月22日(金)13時03分35秒
- 立ち止まる気も
立ち止まらす気もない。
やけど、急に変わったからって
手放す気もない。
あんたが好きやって言うてくれる限り
あんたを好きやって言うてたい。
やけど、急に嫌われたからって
嫌いになる気もない。
あんたが好きやから。
ただ、それだけ。
END
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月22日(金)13時05分04秒
- 上、タイトルミス。反歌。
- 83 名前:上手くは言えないけれど。 投稿日:2002年11月22日(金)13時08分27秒
- この前、振られたらしい。
相手が誰なのかは知らない。
その話になるといつも
席を立つようにしてたから。
何か、聞きたくないなぁって。
そんなの聞いても
自分凹ますだけだし。
だから、それが男なのか女なのかも知らない。
…だけど、そいつ
振りやがった。
バカじゃないのって思った。
中澤さんを振るだなんて。
- 84 名前:上手くは言えないけれど。 投稿日:2002年11月22日(金)13時11分18秒
- でも、そのおかげで
吉澤の心は少し
きつくなくなった訳ではあるけど。
吉澤的には万万歳だけど
中澤さんがあそこまで落ち込むなんて
相当好きだったんだろうなぁって思う。
何でそんなに愛されてるのに
振ったりするんだろう。
吉澤だったら絶対
そんな事しないのに。
- 85 名前:上手くは言えないけれど。 投稿日:2002年11月22日(金)13時14分14秒
- もうさっきからずっと
あの椅子に腰掛けたきり微動だにしない。
両方の腕で頬杖ついて
顔、見られないようにして
何か、接近禁止ってオーラが出てて…。
だけど、ほっとけない。
うざいって思われるかもしれないけど
ひとりにしとけなかった。
皆、遠巻きに見てるから
吉澤が行くしかないって思うし。
- 86 名前:上手くは言えないけれど。 投稿日:2002年11月22日(金)13時16分54秒
- その心を救ってあげられるような言葉を
持ち合わせている訳じゃない。
その曇った顔を笑顔にされられるような言葉を
持っている訳じゃない。
だけど。
「……あのっ。」
いいから。
こっち向いてくれなくったって。
「…吉澤は…。」
いいから。
こんな言葉聞き流してしまっても。
- 87 名前:上手くは言えないけれど。 投稿日:2002年11月22日(金)13時18分53秒
- 「…一言だけ…言わせて欲しいんです。」
上手くは言えないけれど
それでも伝えておきたい。
「…吉澤は…傍にいたいだけなんで……
傍に、いさせてください。」
そう言って、隣りの椅子を引いて座った。
- 88 名前:上手くは言えないけれど。 投稿日:2002年11月22日(金)13時20分56秒
- 愛とか恋とか好きとか…
今は聞きたくないのかもしれない。
だから
愛してるとか恋してるとか好きとか
そういうのより何よりも
悲しみに暮れるあなたを
ひとりきりにさせたくなかったから…。
END
- 89 名前:後書きと言う名の悪あがき。 投稿日:2002年11月22日(金)13時24分18秒
- …ちょっと修行の旅に出たい感じです。
何か、ダメだね。
反省します。しっかりと。
明日はきちんと頑張ります。
以上。撤収。
- 90 名前:オニオン 投稿日:2002年11月23日(土)12時57分53秒
- 今日は上の方で予告してパスしたのを。
タイトルだけ気に入ってたりします。
そっけなくスタート。
- 91 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)12時59分11秒
- キスを、した。
- 92 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)13時02分13秒
- 吉澤がひとりで中澤の楽屋に遊びに来ていて
昨日吉澤たちが出ていた番組の話とかをしていて。
なのに、突然吉澤は中澤にキスをした。
話の流れとしては明らかに不自然だった。
なのに吉澤が交わしてきた唇は全然
不自然ではなくて。
- 93 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)13時05分40秒
- 中澤の頭の中は一瞬真っ白になった。
何が起こったのかを把握出来ないでいた。
数秒後、ようやく我に返った中澤の両手が
吉澤の肩を掴み
体を引き離した。
「なっ…吉澤っ…。」
吉澤の目を睨みつける。
が、それにたじろぐ事なく
中澤を見つめ返す。
- 94 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)13時09分55秒
- 「…宣戦布告です。
あ、でもそれだと矢口さんに見せなきゃ
意味ないっすよねぇ。」
軽い言葉とは裏腹に
吉澤の顔は笑っていなかった。
「…こんな事したって
どうもならんで…。」
怒りさえ含んだ言い方で中澤は言う。
けれど吉澤は
「あなたが好きです。」
と、一方的に愛を告げ
中澤の楽屋を後にした。
ひとり残された中澤は
今初めて知った吉澤の想いに
呆然とするしかなかった。
- 95 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)13時14分31秒
- 忘れよう。
キスされてしまった事も
告白された事も忘れて
なかった事にしようと中澤は思っていた。
けれど、事態はそれを許さなかった。
あの日から数日経ったある日の夜。
いつものように中澤の家へ来ていた矢口の態度が
明らかにおかしかった。
今日は何か言いたい事があるんだなと
中澤も感じ取っていた。
ただ、それがあの日の事だとは思いもしなかった。
- 96 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)13時21分55秒
- 「何でよっすぃ〜とキスしたの?」
中澤が作った料理を前に
感想を言うでもなく
ただ一言そう訊いた。
「…な、何で…。」
「何で知ってるのかって?
よっすぃ〜に聞かされたからだよ。
っていうか何で黙ってたの?
矢口には何でも話してくれるはずじゃなかったの?!」
サラダの皿にフォークを横たわせ
せきを切ったように責め立てる矢口。
- 97 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)13時26分51秒
- 「…ごめん。
大した事やないと思ったから
言わんかってんや…。」
「裕ちゃんにとって大した事じゃなくても
矢口にとってはオオゴトなんだよ?」
「…うん…ごめんな…。」
申し訳なさそうに謝る中澤。
けれど心の中は
矢口に言った吉澤への
怒りとも不服ともとれる感情でいっぱいだった。
上手くいっていた矢口との関係に
わざわざ水を差すようなマネをして…と。
中澤が大好きな矢口の笑顔はこの日
一度も目にする事はなかった。
- 98 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)14時24分00秒
- あのキス以来初めてのハロモニ。の収録日。
中澤は矢口への点数稼ぎも程々に
吉澤の手を掴み、廊下へと連れ出した。
娘。たちの楽屋から数メートル先の角を曲がり
振り返った中澤は吉澤に問う。
「何で、矢口に言うたん?」
「言いましたよね?
宣戦布告だって。」
悪びれもせず答える。
「あんたのせいで…
矢口があんな悲しい顔するようになってんで。」
冷静に。
出来るだけ自分を見失わないよう心掛けて中澤は言う。
- 99 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)14時27分20秒
- 「…関係ないですよ。
そもそも私は中澤さんを手に入れたいんすから。」
中澤が一歩、後退する。
吉澤が一歩、前進する。
「私にしときません?」
さっきまでの余裕っぽい言い方ではなく
落ち着いたトーンで吉澤はそう言って
中澤を抱き締めた。
「ちょっ…吉ざ…。」
抵抗しようとする中澤の声を遮る者がいた。
- 100 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)14時31分40秒
- 「…よっすぃ〜。悪趣味だよ。やり過ぎ。」
矢口だった。
2人がなかなか帰って来ない事を不審に思い
追って来た所
案の定吉澤のペースに中澤が呑まれていた。
「手、離して。」
吉澤の腕を掴み、無理矢理に解く矢口。
そして中澤の前に立ち、吉澤を睨みつける。
「裕ちゃんに手、出さないでよ。
裕ちゃんはあげないから。」
とだけ言って中澤の手を引き
楽屋へと戻る。
「矢口が守るから。」
どの道中に矢口が言った言葉。
- 101 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)14時36分05秒
- その日、矢口が泊めて欲しいと言った。
キスの事を黙っていた罰として
当分何もしないと宣言し
泊まりに来なかった矢口が
中澤が思っていたよりも早く
それを撤回した。
「…許してくれるん?」
後ろから矢口を抱き締める。
「…裕ちゃんのせいじゃないから…。
それに…。」
「…それに?」
「矢口がどれだけ裕ちゃんの事好きなのか
知っててもらいたいし…。」
自分の言葉に照れて俯く矢口。
- 102 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)14時40分12秒
- 「…ほな、私がどれだけ矢口の事好きかも分かって…。」
1週間以上触れ合う事のなかったお互いの体を抱き寄せて
重ねる事のなかった唇の感触を確かめ合う。
中澤を求める矢口の目。
それに勝るものなどない。
中澤はただそれを実感していた。
「…離れて…いかないよね…?」
中澤の体を抱き締め
切れ切れな声で矢口は言う。
他の誰も抱いたりしないよね、と。
- 103 名前:奪取。 投稿日:2002年11月23日(土)14時42分25秒
- 「…矢口しか…見えへん…。」
抱き締めたいのは矢口だけ。
キスをしたいのも矢口だけ。
愛したいのも矢口だけ。
感じたいのも矢口だけ。
中澤にとって矢口より大事なものなどなかった。
少なくともこの時
矢口を抱いていた瞬間までは…。
- 104 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時05分18秒
- 違和感。
正確に言えば異変、に気付いた。
中澤と話す時、もしくは
中澤が至近距離にいる時の吉澤に
以前のような陽気さはなかった。
特に2人になってしまった場合
ドラマの中でしか聞いた事のないような
言葉を言う吉澤の表情に
冗談を言っている感じはなかった。
中澤の前でおちゃらける事がなかった。
その事に中澤自身、気が付いた。
- 105 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時25分13秒
- これは本気なのだろうか。
からかっている、茶化している
弄んでいる、気の迷い…。
その全部を否定しなくてはいけないのだろうか。
そのどれにも当て嵌まらなくてやっぱり
本気であると認めなくてはいけないのだろうか。
中澤の心は吉澤の真意を見つけ出せないでいた。
- 106 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時28分37秒
- 不意に中澤の目が吉澤を捕らえる。
すぐにそれに気が付いた吉澤は
口元を緩め微笑む。
はっとして視線をそらす中澤。
少し経って、もう一度そっちを見ると
吉澤の視線は話をしている石川の方へと向いていた。
その奥に矢口が見える。
矢口は保田と何やら盛り上がっていた。
- 107 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時32分28秒
- そういえば2人共、目ぇ合わせへんなぁ。
当然と言えば当然だが
矢口と吉澤の視線はいつも交差している。
決して絡まる事はない。
前は、めっちゃ仲良かったのに…。
2人が中澤の事を好きにならなければ
もしくはどちらか一方でも好きじゃなければ
こんな事にはならなかった。
自分のせい。
中澤は自分のせいだと思った。
以前みたいに笑い合っていて欲しいのに
もう、どんな風景は見られない。
- 108 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時34分48秒
- だけど、自分がきちんと吉澤に納得してもらえれば
また、以前のような2人に戻るのではないかと考え
苦手だとは思いつつも
吉澤に話し掛ける事にした。
自分にも吉澤にも逃げ道を与えないように
娘。たちがいるこの場所で。
- 109 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時40分51秒
- 「…吉澤。」
「…はい。」
矢口を含め数人が
中澤と吉澤の方に視線を向けている。
「…私は…矢口が好きやねん…。
私は、矢口のもんやから…。」
「…吉澤は、中澤さんのものですよ?」
「……何で私なん?
吉澤の事好きや言うてくれる人
いっぱいおるやろ?」
「…私は、彼氏になりたい訳じゃないんです。
私だって女の子なんすよ?」
「…そんなん分かって…。」
「だから、そう思ってくれてるのは
中澤さんだけなんすよ。」
- 110 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時44分56秒
- 中澤の両肩を掴み
苦しそうな表情で詰め寄る吉澤。
「あなたじゃないとダメなんですよ…。」
胸が、苦しかった。
人を好きになるっていうのがどういう事か
中澤も知っていたから。
そして気が付いた。
今目の前にいる吉澤が本物で
ろくでもない事を言ったりしていたのは
やり場のないキモチを誤魔化しているだけなんだと。
- 111 名前:奪取。 投稿日:2002年11月24日(日)13時47分39秒
- 「…ごめんなぁ…吉澤…。
愛したげれんでごめんな…。」
「…まだ…あと少しだけ、
好きでいさせてください…。」
あと少しだけ、足掻きたかった。
始まったばかりの恋を
そう簡単に終わらせたくはなかったから。
中澤はそれを否定する事は出来なかった。
- 112 名前:オニオン 投稿日:2002年11月24日(日)14時04分17秒
- 若干、逃走したくなってます。
骨のない話を書いてるなっていう自覚はあるんですが
自分見失い中につき改善策が見当りません。
明日、奪取終了予定ですが
その後、死んでたらごめんなさい。
今日は撤収です。
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月24日(日)15時07分43秒
- めちゃくちゃ明日が待ちどうしい心境です。
中澤の心がどう動いていくのか、気になって先が読みたい〜!!!
- 114 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)12時42分18秒
- これは、罠だ。
誰かが、もしくは何かが自分の事を
試しているんだと中澤は思った。
矢口と待ち合わせをしている同じ時間に
別の場所を指定し、吉澤は
一方的に待ち合わせの約束をした。
- 115 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)12時45分44秒
- 12月に入ったある日の午後7時。
中澤の姿はとある公園の中にあった。
中澤が着いてから間もなくして現れるのは
もちろん矢口。
矢口とは前から約束していたし
吉澤のは強引に押し付けられただけだから。
矢口は中澤の恋人だから。
当然と言えば当然の事なのだが…。
- 116 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)12時47分42秒
- 吉澤の心が読めない。
時折、切羽詰った顔をして愛を投げ掛け
時折、力づくで矢口との関係を破壊しようとする。
自分への愛は純粋なのか不純なのか
中澤は理解出来ないでいた。
- 117 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)12時50分37秒
- 今もそう。
中澤は吉澤にただの一言も言わず
矢口との約束を選んだ。
それを知らない訳はないとは思うが
普通なら電話の一本でも掛かって来て
文句なりイヤミなりを言う所なのではないのだろうか。
なのにあれから数時間が経過しているというのに
未だ吉澤からの着信はなかった。
- 118 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)12時54分06秒
- 真夜中。
翌日の仕事の関係で
矢口の家を後にする事になった中澤。
高く澄み切った星空の下、気がかりな事がひとつ。
吉澤の所在。
午後7時、駅前の時計下。
…冬やで…。おる訳ないやんか…。
一度、中澤はそう自分に言い聞かせた。
けれどすぐにそれを否定する。
- 119 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)12時56分20秒
- やりかねない。
不可解な所で生真面目さを発揮するような人間だから。
もう午前0時を回っている。
けれど中澤はタクシーを拾い
吉澤の指定していた待ち合わせ場所へと向かう。
吉澤の姿がない事だけを祈って。
- 120 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時00分12秒
- 昨日、偶然矢口が飯田達に
デートの約束をした事を話しているのを耳にして。
幸せそうな矢口の姿が胸を締め付けて来て。
少し、困らせたくなって。
同じ日時を指定して
強引に待ち合わせを敢行した吉澤。
気が付けばもう5時間以上もここに居座っている。
コートもマフラーももう、役には立たない程
吉澤の体はしんから冷え切っていた。
- 121 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時02分40秒
- 「…バカかも…。」
帰ろうにも、歩く気力さえ
もう体のどこにも残っていない。
ここに着いた頃はしっかり両足で立っていたものの
今は地べたに座り込み
ただ目の前を通過していく幾多の足を見送っているだけ。
- 122 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時05分17秒
- ―さぁ、困った。
膝を抱えて座っている吉澤の姿を
少し離れた所から見付けてしまった中澤。
何度見直してみても
あの横顔は紛れもなく吉澤のものだった。
上手い言葉が見付からない。
中澤が悪い訳ではない。
勝手に待っている吉澤の方が悪いと言っても
過言ではないのだから。
- 123 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時08分01秒
- 胸の内も決まらないまま
足はゆっくりと吉澤の方へと近付いて行く。
雪の下の土の色をしたコート。
剥き出しになっている両手が
交差している腕の曲がり角にしがみついている。
期待も失望もしていない。
ただ、無心で中澤の事を待っているように見える。
- 124 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時11分25秒
- 中澤の足が、そんな吉澤の真横で立ち止まった。
耳と頭の奥がキーンとしていた。
たった数10メートルを歩いただけの自分でも
こんなに寒さを感じているのに
何時間もここにいる吉澤は
本当に生きているのだろうかと心配にさえなってきていた中澤。
- 125 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時14分43秒
- 「…時間通りですね…。」
中澤の存在に気付いた吉澤は
くだらない冗談と笑顔で中澤の事を迎えた。
「…何でなん?
何でそうまでするん…?」
「…来ると、思ったから…。
中澤さんはそういう人だから…。」
懐かしささえ覚える言葉。
いつだったか、初めて誰かを好きになった頃
自分もそんな風にまっすぐな愛を持っていたなぁ
と、中澤は思っていた。
- 126 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時17分38秒
- 「そういう所、好きだし。」
好きというキモチだけで十分で。
自分を突き動かすもの
それは相手への好きってキモチだけで…。
忘れていたものを
思い出させてくれているようだった。
「…本当は、もう、来ないかなぁとも思ってたんすけどね。」
立ち上がる吉澤。
いつもと同じ。
中澤より少しだけ目線の高い吉澤が目の前にはいる。
- 127 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時20分37秒
- 「…会いたかったっす…。
今日…何が何でも…。」
抱き締めて。
そう言われているような気がして。
北風に晒されていた吉澤を抱き締める中澤。
さっきまで一緒にいた矢口の事を忘れた訳じゃない。
ただ、抱き締めてあげたかっただけ
それだけだった。
- 128 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時23分14秒
- またねのキスを矢口と交わした唇を
吉澤に奪われた。
矢口の感触を刻み込んだ体を
吉澤に抱かれていた。
今度は、言い訳する言葉も思いつかないだろう。
けれど、吉澤の事を拒めはしなかった。
- 129 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時27分58秒
- ずっと欲しかったもの。
ずっと手に入れたいと思っていたもの。
それが今、吉澤の腕の中にはある。
数10分前、コートの上から抱き締めてくれた体が
今、自分のそれと直に触れ合っていた。
頭のどこかで聞こえている声が
吉澤を急き立てる。
奪イ去レ。
奪イ去レ。
奪イ去ッテシマエ。
そしてその声の通り
中澤を手に入れた吉澤。
例えそれが今、一瞬だけの事だとしても
その喜びに勝るものはなかった。
- 130 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時32分27秒
- 吉澤は、何も言わない。
この前のキスの時は早々に矢口に言ったくせに
矢口を抱いたそのすぐ後
その腕の中にいた事を言いはしなかった。
だから矢口は何も言わない。
知らないのだから言いようがないのだ。
けれど、中澤はそれが辛かった。
矢口への罪悪感。
吉澤への罪悪感。
そのふたつは日に日に勢力を増して行く。
バランスを失った中澤の心は
今、本当に矢口を愛しているのかさえ
分からなくなっていた。
- 131 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時35分21秒
- 確かめよう。
今、中澤自身の心は誰を見つめているのか
それを、確かめよう。
まずは、矢口。
「矢口、ちょっとええ?」
中澤の言葉に満面の笑みで返事する矢口。
この笑顔に何度救われただろうか。
どんなに落ち込んでいても
その心を復活させてくれる魔法だった笑顔。
だけど、今は。
- 132 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時38分25秒
- 「…好きって、言うて…。」
何の前振りもなく中澤は言う。
「…。」
少しだけ考えたような
びっくりしたような間があって。
「…好きだよ。」
変わらない声。
聞き慣れた愛しい矢口の声がする。
けれど。
「…。」
波を、打たなかった。
心はそれをキャッチしなかった。
その愛を捕らえ、鼓動を揺らす事はなかった。
- 133 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時41分06秒
- 何も変わった訳じゃないのに
何故か心は矢口の声に
反応を示してはくれなかった。
「…。ごめん、矢口…。」
何をどう謝ればいいのかも分からなかったが
とりあえず、謝りたかった中澤。
それ以外の言葉が思い付かなかった…。
- 134 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時45分07秒
- 吉澤。
矢口を置いて娘。たちの楽屋に来た中澤。
その姿をすぐに見付けた吉澤は歩み寄って来る。
「矢口さんはどうしたんですか?」
悪意あっての言葉だろうか。
でも、今はそんな事はどうでもよかった。
「…好き…?私の事…。」
「え?何すか、急に。」
「答えて…。」
矢口同様、吉澤も一瞬困った顔を見せる。
けれどすぐに答える。
- 135 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時47分08秒
- 「好きっす。」
また、だ。
あの日あんなに抵抗なく受け入れる事が出来たのに
今日は何故か届いて来ない。
吉澤の愛も、中澤の心の扉の前で
そのドアを開ける術を持たなかった。
- 136 名前:奪取。 投稿日:2002年11月25日(月)13時49分37秒
- 吉澤は、中澤の心を矢口の元から奪い去る事は出来た。
けれどそれを自分の手の中へ入れる事は出来なかったのだ。
END
- 137 名前:後書きと言う名の悪あがき。 投稿日:2002年11月25日(月)14時00分25秒
- 自分は今日、支離滅裂と言う言葉の意味を
身をもって知る事が出来ました。
挙句にこの結末。
>>113
こんな終わりでごめんなさい。
今日はそんな所で撤収です。
オニオンでした。
- 138 名前:オニオン 投稿日:2002年11月25日(月)23時26分45秒
- 思いつくがままにやってみたり(↓)。
- 139 名前:冬の景色。 投稿日:2002年11月25日(月)23時30分14秒
- 雪の降る夜は
凍えそうな体を抱きしめあって眠ればいい
それでも眠れない夜は
意識がなくなるまで求め合えばいい
背中にあなたの爪の痕
鎖骨の下には唇の痕
変色した体の端々を含み
撫でる口と舌
あなたが奪った体温の
代わりにあなたの声を貰う
真っ白なキャンパスの上
あなたと私は描かれる
時には花のように
時には真珠のように
時には灰のように
雪の降る夜は
愛がなくても愛しあえる
だから私は冬が好き…
END
- 140 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月26日(火)01時43分35秒
- >>137
全然支離滅裂じゃないです。
心にひびくものありました。
- 141 名前:オニオン 投稿日:2002年11月26日(火)12時59分21秒
- 今日和。今日もまだ生きてます。
>>140
そう言ってもらえると
作品も救われます。
感謝の中、スタート。
- 142 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時00分56秒
- 静かな街だった。
緩やかなカーブを描く坂道が続き
平屋建ての家が立ち並んでいる。
信号のない交差点。
街灯のない路地。
迷路のような裏道通り。
時折すれ違う小学生の足音。
スーツを着た男の人が漕ぐ自転車。
10年、一昔前のような風景。
ここは、この国の中で一番
穏やかに時間が流れている場所なのではないだろうか。
不意に吹く北風も
空の遠くへと呑み込まれて行くようだった。
- 143 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時01分51秒
- ここに、あの人はいる。
最後の言葉を交わしてからもう
何年もの月日が経っていた。
あの人は忘れてしまったのだろうか。
あの日、私と交わした約束を。
私はあの日から幾つ時が過ぎようとも
忘れた事は一度もなかった。
- 144 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時04分25秒
- 「これは、サヨナラなんかやないから。
私は少し、あんたの事を愛しすぎたんや。
やから、あんたのおらん世界で生きる事にした。
やけどもし、あんたが今の私と同じ歳になっても
まだ、私の事好きでおってくれてたら
迎えに来て。
その時は――。」
- 145 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時04分59秒
- 時は、満ちた。
私はようやくあの時のあなたと同じ歳になった。
長かった。
あなたのいない日々は
とてつもなく長く思えた。
一緒にいた頃はあんなにも短く感じていたはずなのに。
あなたという軸を失ってしまった心は
毎日、毎日、腐敗して行っているようだった。
だけど、失くした事はなかった。
あなたへの愛を手放そうと思ったことなんてなかった。
愛してる。
今も、あの頃とかわらずに愛してると言える。
だから私はここへ来た。
あなたを迎えに。
あなたをさらいにやって来た。
- 146 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時06分39秒
- 死んだように生きてた。
時が止まったような町並みの中、
私の心も止まってしまっているような気がしてた。
いっそそのままカラッポになってしまえばよかったのに
あのこのおらん日々は何故か
あのこへの愛情を深くさせてくばかりやった。
あれからもう12年が経過してるっていうのに。
あのこを忘れた事は一度もなかった。
あのこはきっともう、忘れてしもてるやろう。
私の事も。
私を愛してくれてた事も。
そして誰かと結婚でもして
私の知らん家庭を築っきょるんやろう。
あの約束も、もう効力なんか持ってない。
こんなに長い時が経過すれば
おのずと効き目はなくなってく。
分かってるはずやったのに。
それでも待ってたかった。
信じたかった。
きっと、あのこは迎えに来てくれると。
- 147 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時07分26秒
- 町の風景に溶け込むように建っているその家。
一度だけ来た事があったその家。
年季の入った木造の平屋建て。
道路に面している引き戸の玄関。
雨なんかに晒されて薄くなってしまった表札。
中澤。とだけ書かれた素っ気無い表札。
この中に、あなたはいる。
確信なんてなかった。
けれど、この町へ来て
あなたはここにいると何故か確信した。
- 148 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時08分22秒
- 玄関の扉に手を掛ける。
反対の掌では冷たい汗を握りしめて。
息をひとつ呑んで。
ガラガラガラ…
段差のある玄関。
幾つかの靴がきちんと並べられてある。
あの頃のような色の靴はそこにはないけれど。
「…今日和。あのぉ…。」
辺りを見渡してみる。
しいぃんとした家の中から
廊下を歩く音が微かにしていた。
ミシ、ミシ、と…。
- 149 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時08分53秒
- 言葉にならなかった。
あの頃と変わらないとは言えないけれど
あの頃の面影をしっかりと残したあなたが
いた。
少し、色の薄くなった長い髪が
少し、やつれたような細い腕が
少し、やさしくなった黒い瞳が
こんなにも愛しかった。
- 150 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時09分27秒
- 言葉にならなかった。
暖かくなり始めたばかりの太陽の光を背負い
あの頃と変わらないあのこが
いた。
少し、ウェーブのかかった長い髪が
少し、大人っぽくなったような姿が
少し、落ち着きを持ったような表情が
こんなにも愛しかった。
- 151 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時10分34秒
- 「迎えに、来ました。」
先に言葉を取り戻しのは吉澤だった。
「待ってて、くれてたんですよね?」
そう言って伸ばされる綺麗な手。
「…吉澤っ。」
その手を通過して
その先にある体を抱きしめる。
29歳だった。
あの頃に巻き戻ったみたいやった。
もう12年も経ってるっていうのに。
- 152 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時11分14秒
- 「…中澤さん。」
自分の体にしがみついている中澤さんを
つよく抱きしめた。
17歳だったあの頃。
愛してると言いながら離れていくあなたを
全然理解出来ないで見送ってしまっていた。
あれから、今日のために生きていた。
もう一度その顔をみたくて
その一心で生きていた。
間違ってなかった。
12年間、忘れたりしなくて本当によかった。
あの頃、近すぎて見えなかったものが
今は鮮やかに見える。
あなたは40歳を越えてしまったけれど
私も来年30歳になってしまうけれど
こころは未だあの頃のまま。
- 153 名前:約束。 投稿日:2002年11月26日(火)13時11分56秒
- あの約束を交わした日から
昨日までの月日が全て
ばっさりと切り落とされて
今日と繋がったようだった。
「さらって行っても、いいですか?」
「どこまででもついてくよ。」
「じゃあ、とりあえず
あなたのいる世界へ――。」
END
- 154 名前:後書き。 投稿日:2002年11月26日(火)13時16分48秒
- 日常の中に非日常を
投げ込んでみたかった。
そんな感じです。
以上。
オニオンでした。
- 155 名前:雨と傘とあなたと私。 投稿日:2002年11月27日(水)13時51分37秒
- 雨が降っているから。
「相合傘して帰ろか?」
鞄の中から深緑の折りたたみ傘を出して。
雨が降っているから。
「少し、雨宿りしていきません?」
その傘の柄を握って。
「ここ、寒いんとちゃう?」
見つめてくる碧い瞳。
「…いい。中澤さんと一緒だから…。」
隣り合っている手を繋いで。
「静かですね…。」
「そうか?雨の音ばっかり聞こえて来よるやん。」
「だから
それ以外何も聞こえなくて
まるで――。」
- 156 名前:雨と傘とあなたと私。 投稿日:2002年11月27日(水)13時52分25秒
- 「何?」
「世界にふたりぼっちみたいですね。」
視界の端々に映る幾多の人の足。
不意に傘を開いて。
垂直にその腕を伸ばして。
もう一方の手が向き合うよう促す。
「これで、ほんまにふたりぼっちみたいやろ?」
車のヘッドライトを傘が遮って。
行き交う人の視線も遮って。
建物の中の話し声を雨が遮って。
この鼓動の動悸も遮って。
「好き。好き。好き。」
あなたにしか聞こえないから。
あなたしか見ていないから。
「私も好きやで。」
徐々に近付いてくる綺麗な顔。
目の前で碧い瞳が閉じられて。
柔らかい唇が触れて。
繋いでた手に力が入って。
その手がこの手を引き寄せて。
耳元で甘い声がして。
「愛してる。
有り得んぐらいに。」
耳の奥で
心の芯で
溶けていくように浸透して。
「…死んでもいい。」
この幸福の中
あなたの手の中
死んでしまいたかった。
END
- 157 名前:雨夜。 投稿日:2002年11月27日(水)13時55分06秒
「今夜は帰さへんよ。」
中澤さんのその言葉が的中する。
突然降り出した雨が
時間が深くなるにつれて激しさを増す。
「帰られへんって。」
不敵な笑みをもらす。
「帰ります。」
嫌な予感がする。
「あかん。」
立ち上がった私を羽交い締めする。
- 158 名前:雨夜。 投稿日:2002年11月27日(水)13時56分05秒
- 「見せ合おうや。」
「…何をですか?」
馬鹿な質問。
「心と体、全部を…。」
首筋にキス。
確信犯だ。
「欲しないん?あげるで。」
耳の付け根にキス。
知ってるくせに。
「したかってんやろ?」
上着ごとたくし上げる。
ひんやりとした掌が
その中で何かを探している。
「…ぃやっ…。」
言葉とは裏腹に吐息がもれる。
「言いなや。楽になれるで。」
「…っやです…。」
「そうか?ほな、勝手にするで。」
あっと思う間もなくその場に押し倒された。
「いただきます。」
なんて余裕を見せて。
- 159 名前:雨夜。 投稿日:2002年11月27日(水)13時56分52秒
- ジーンズのチャックに手を掛ける。
瞳だけは顔を見つめたまま。
まるで逃げ出さないように
見張っているかのような。
「…やっぱりダメです。」
その口許に一方の胸が含まれた時
我慢の限界が来た。
「チェンジです。」
私に跨っていた中澤さんの体を掴み
横へと押し倒す。
形勢逆転。
「なしにしません?やっぱり。」
「えー、何でよ。たまにはええやん。」
「落ち着かないんすもん。受身って。」
「生粋のオオカミやねんなぁ。」
「オオカミでもいいっすよ。」
「だから、雨の日は逆っていうのやめましょうよ。」
「えー、やけど押し切られる吉澤なんて滅多に見られんのに。」
「ダメ。嫌がるの下手なんですって。」
「迫真の演技やったやん。」
「とにかくダメです。こっちの方がいいんです。」
「しゃーないなぁ…。」
首に絡まる中澤さんの両腕。
近付く唇にキスをして――
END
- 160 名前:オニオン 投稿日:2002年11月27日(水)14時03分14秒
- 通常業務に戻ります。
先生と生徒。に手を出そう
って事で。
スタート。
- 161 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時05分39秒
- 「…吉澤ぁ〜。
もう、あんただけやで?」
テスト発表期間中で部活が全部活中止の中
放課後の体育館で生徒1人、教師1人の姿が。
- 162 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時08分51秒
- 「私もヒマとちゃうねんから
早ぉしぃやぁ。」
吉澤のクラスの名簿とボールペンを片手に
退屈そうに吉澤の姿を見つめている。
「だったら、おまけしてくださいよ。マジで。」
「何言うてんねん。
運動神経ええねんから、ちゃっちゃと済ましぃや。」
中澤の視界を右から左へ、左から右へ
行っては帰ってを繰り返す。
- 163 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時12分55秒
- 「ひとつ減らしません?」
「甘えるなや。皆それでやっとんねんから。」
目が行け。と指示を出す。
キュッキュッ。と体育館シューズと床が擦れる音がして
バンッ。と踏み切る音がする。
「…。や〜か〜ら〜。
上へ飛ぶなっちゅうとんねん。
前へ飛べ。前へ。」
「それが出来たら苦労しないっすよぉ。」
「それでも皆のアイドル吉澤さんか?」
「アイドルじゃないっす。
だから1段…。」
「あかん。」
「けちぃ。」
「…飛べ。」
「…うぃぃっす。」
- 164 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時15分32秒
- この女子校にあって
持ち前の運動神経とその容姿で
人気のある吉澤だが
跳び箱だけは苦手だった。
…よって、その吉澤に6段の跳び箱、
しかも縦使用は無理難題だったらしい。
何度挑もうが、向う側にひかれたマットに着地する事はない。
むしろ、いらない。
- 165 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時20分11秒
- 「…中澤せんせぇ、お手本を。」
挑み疲れた吉澤は休憩のため
中澤にそう頼んでみた。
「無理。私は運動神経ないねんから。」
「…。自分に出来ない事を
人にさせちゃダメなんすよ。」
「ええんや。私は教師やもん。」
「…ズルイっすねぇ…。」
「…。むかついたから
次、飛べんかったら点数なしな。」
「えぇーっ!!
それはまずいですって。」
「じゃあ飛んだらええだけの話やん。」
「マジで無理っす。
飛べた覚えがないんすもん、6段なんて。」
「それを根性で行っとかんと。」
- 166 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時24分38秒
- 「…他人事みたいに…。」
「ひと事やもん。」
「…。」
「分かった分かったって。
せやったら、飛んだら自販でジュース奢ったるって。」
「…。それより――。」
「ん?」
「ハグがいい。
愛が欲しいっす。」
「…。変わっとんなぁ。
世をすれとんなぁ。」
「よし、決定。
何か、やる気出て来ましたよ。」
「や、まだO.K.やなんて言うてないやんかぁ?」
「吉澤ひとみ、行っきまーす。」
- 167 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時28分31秒
- 体操選手のように右手をピッと上げて
何度か小さくジャンプをして
再び走り出す。
5メートルほどの助走の後
踏み切り板を力強く踏み切る。
『手は出来るだけ前に』
『前に向かって飛ぶ』
授業中教わった事を反復する。
ふわっと宙に浮いた吉澤の体。
いけるか?
2人共がそう思った瞬間。
- 168 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時32分37秒
- ぽすっ。
間の抜けた音がした。
あきれて言葉もない中澤。
跳び箱の上には
”おすわり”の状態の吉澤が。
「…コントとしては最高やねんけどさぁ
普通、飛べる所とちゃん?」
「…ねぇ、ほんとに。」
「…。吉澤、0点っと。」
大きく溜め息をついて
名簿に書き込もうとする中澤を見て
慌てて跳び箱から下りて止めに入る。
「いやいやいやいや。
なし、今のはなしっす。」
ガッチリ中澤の右手首をつかんで。
- 169 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時35分58秒
- 「もうええって。ええやん。
吉澤ひとみさんは跳び箱0点ですって事で、な。」
「体育だけで順位死守してるんすから。」
「…想像つくはわ、だいたい。」
「今度のテスト、理数系範囲広いんすから
ここで取っとかないと。」
「いや、もう取れへんって。」
「取る。取ります。
そしてハグもしてもらう。」
「…もう無効やろぉ。」
「続行。」
勝手に位置に着く。
- 170 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時40分34秒
- 「…中澤先生。あっち側にいてくださいよ。」
跳び箱の先を指して言う。
「もぉ、めんどいなぁ…。」
ぶつぶつ言いながらも従ってあげる中澤。
「これがほんまにラストやでぇ。」
「了解。」
今度は右手で敬礼をしてから
さっきと同じ動作をする。
何度目かも分からない踏み切りの音が
体育館中に響く。
「…。」
「…。」
「イッツ・ミラクル。」
馬の目の前に人参をぶら下げておけば
速く走るっていうあれが本当なんだという事を
2人は確信した。
- 171 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時44分27秒
- 「飛べた。飛べましたよ、先生っ。」
両手をぐっと上に突き上げて
体を後ろに反らしながら
全身で喜びを表現する吉澤。
「はい、吉澤クリア、と。」
「何でそんなに淡白なんすか。
分かち合いましょうよ、この喜びを。」
「…よかったな。あめでとう。」
「冷たっ。この人
教師の仮面を被った鬼っすよ、鬼。」
「誰が鬼やねん。」
ちょっと頭にきた中澤は吉澤に詰め寄る。
- 172 名前:中澤先生と吉澤さん。 投稿日:2002年11月27日(水)14時47分59秒
- 「キャッチ…エーンド・ゲッツッ。」
意味不明な言葉と共に
吉澤は中澤を抱きしめた。
「2度目の正直。」
「…そんな言葉ないし。
そんで、2度目でもないし。」
「何?先生、もしかして照れ隠しっすかぁ?
いやぁ、まいったなぁ。」
「…吉澤、実技0点やな…。」
「ノーーーッ!!」
END
- 173 名前:後書き。 投稿日:2002年11月27日(水)14時51分24秒
- 途中で吉澤さんのキャラが変わったような…。
気のせいです、きっと。
久しぶりに勝手に次回予告
中澤先生数学教師編とかいいなぁ。
全教科制覇したい感じで。
今日は以上です。
オニオンでした。
- 174 名前:リエット 投稿日:2002年11月29日(金)02時43分43秒
- コミカルな吉澤さん面白いです(w
次はなんの先生だろう……。
- 175 名前:オニオン 投稿日:2002年11月29日(金)12時55分47秒
- >>174
せっかくそう言ってもらったのに
今日は中澤先生数学教師編でもなければ
通常業務でもありません。
すいません。
心の衰退と共に作品もダークサイドへ。
ダメ人間ぶりを発揮しつつスタート。
- 176 名前:カナリア。 投稿日:2002年11月29日(金)12時58分16秒
- とあるマンションの一室にある6畳の部屋。
ここはあなたの鳥篭。
何をするのも全てこの部屋の中。
私はそんなあなたを
檻の外から監視する。
正にあなたは私の掌の中にいる。
- 177 名前:カナリア。 投稿日:2002年11月29日(金)13時02分33秒
- 首輪と手錠と目隠しと。
自由の利かないあなたを飼い馴らすのが私の役目。
出来の悪いあなたは時折
食事を与えに来た私の腕に噛み付いて来たり
手錠を噛み千切ろうとしたりする。
最初は本当に手間のかかる生き物だった。
だけどすぐにあなたは諦めてしまった。
私に刃向かう事も
逃げ出そうとする事も。
そしてその内、それは喜びへと変わっていった。
光のない世界が。
首や手の食い込む拘束具が。
それなしではもう生きては行けない。
- 178 名前:カナリア。 投稿日:2002年11月29日(金)13時06分22秒
- 私が右手で髪を撫で上げれば
きちんと仰向けに寝転がって
私にされるがまま、声を上げる。
悩みと言えば
あなたがその行為を求め過ぎる事くらい。
贅沢な悩みではあるけれど。
私がそれを拒んだなら、近くにいるよう頼み
すぐそこで独りで始めてしまうあなた。
その時の肴は何?
矢口さん?安倍さん?飯田さん?
それともごっちん?梨華ちゃん?紺野?
意外とつんくさんなのかも知れないけど。
それはダメ。
そんなのは許さない。
- 179 名前:カナリア。 投稿日:2002年11月29日(金)13時09分13秒
- 私は裸に拘束具と言う恥かしい姿のあなたの背に回り
その指を静止させる。
すると、今度はあなたが私の手首を掴み
この指をそこに偲ばせようとする。
だから私は言ってあげる。
「ダメですよ。他の人とやってるの想像しちゃ。
私以外でやっちゃうとあなたは汚れちゃうじゃないですか。」
- 180 名前:カナリア。 投稿日:2002年11月29日(金)13時11分26秒
- あなたは甘い息を漏らしながら
私の唇を奪う。
そんなあなたが愛らしくて
つい甘やかせてしまう。
私の心が飼い馴らされる前に
あなたの全てを調教しなくちゃ。
END
- 181 名前:後書き。 投稿日:2002年11月29日(金)13時13分42秒
- もう何も言いますまい。
次はホントに先生と生徒。で行くと思います。
以上。撤収。
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月29日(金)13時40分46秒
- キーター!
ツボツボですマジで。
適切な言葉が見つからず申し訳ですが、頑張ってください。
- 183 名前:オニオン 投稿日:2002年11月30日(土)13時20分32秒
- もう何度目かも分からない予告撤回。
今、緊急で長めの(自分にしては)を書いてます。
勝手に某板の某宣言に対し
弔い合戦(違)をしたります。
勝手に献上作品を上げてまいます。
馴れ合ったります。全力で。
ええ、勝手に。
近々公開予定です。
- 184 名前:オニオン 投稿日:2002年11月30日(土)20時01分38秒
- 出来た。
明日上げる。
タイトルだけ告知。
『サヨナラLoveSong』です。
- 185 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時46分28秒
- ―序章―
「中澤、詞を書いてみぃひんか?」
ある日、つんくさんから電話が掛かって来て
「最近、調子はどうや?」
とか、最初は他愛ない会話をしてたはずやのに
「…それでや…。」
と、突然作詞を勧められた。
「や、出来ませんよ、そんなんっ。」
「…。これは、中澤へのチャンスのつもりや。
自分の言葉で何かを伝えたいって思う事あるやろ?
それを詞にすればええ。どうや?」
確かに、自分の言葉を伝えられるっていうんは魅力やけど。
「でも、私は詞なんて書いたことないですよ。」
「書き出せばええ。それを俺がつないで詞にしたるから。
言いたい事、伝えたい事、全部書き殴ったらええ。」
「…。」
「中澤。」
「…分かりました。やってみます…。」
「よっしゃ、決まりやな。」
こうして私は人生初の作詞をする事になった。
- 186 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時47分30秒
- メモ用紙とボールペンを目の前にして
自分なりに真剣に考えた。
そしたら、気がついた。
伝えたい事、伝えたい相手は
ひとりやって事に。
気付いてないふりしようとしてたはずやのに
浮かんでくるんは全部
吉澤に向かっての言葉ばっかやった。
好きなんかやないって
自分に言い聞かせとったばずやのに
よう言わん気持ちが
詞の中には溢れとった。
- 187 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時48分02秒
- それで私はようやく腹をくくった。
このままで
吉澤への想いを書いたまま
詞にしてもらう事にした。
どうせ吉澤は気付かへんやろうし。
どうせ吉澤には告げられへんやろうし。
せやったら、せめて
歌にして歌わせて欲しい。
宛て先のない
このラブソングを――。
- 188 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時48分47秒
- ―中澤編―
11月某日
Mステのスタジオにいた。
今日は新曲のテレビ初披露の日。
発売日は来週の水曜やねんけど
今回はあえてあんまり派手に
プロモーション活動はせえへんかった。
つんくさんの意向でもあり
私の意見でもあったから。
- 189 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時49分22秒
- そして、20時32分。
「続いては中澤裕子さんで『LoveSong』です。」
武内さんの声で前奏が始まる。
吉澤。
見てるか見てへんかは分からんけど
今日はあんたのためだけに
歌わしてや。
- 190 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時49分57秒
- 愛してる 愛してる
愛してる 愛してる
言葉にしても足りないくらい
あなたを愛してる
- 191 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時50分42秒
- 知らず知らず大きくなっていっきょったこの気持ちを
いつか、伝えられたらええなって思ってた。
やけど、好きが大きくなって行く度に
言えんようになってった。
このまま抱え込んで
ずっとずっと心の奥に押し込んでしもて
忘れてしまえたらどんだけ楽になれるやろうって考えた事もあった。
やけど、分かったから。
自分がどんだけ吉澤の事を好きなんかが。
この歌は届かんかもしれん。
例え聞いてくれとったとしても
気付かんかもしれん。
それでも、今日、今この瞬間は
あんたに捧ぐためだけに歌うから――
- 192 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時51分56秒
- モニターに映る自分の姿を見て
気がついた。
私は、泣いてた。
慌てて堪えようとしたけど
もうどないにもならんで
頭ん中、吉澤の顔が浮かんでて
その吉澤が微笑んどって
また、上から涙が溢れてく。
- 193 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時52分46秒
- 悪循環に嵌ったみたいやった。
届かんでもええからって思てんのに
その現実が辛くて
やけど好きは止められんで
また、その気持ちを込めて歌ってまう。
好きって気持ちが勝手に勢力を増してく。
好きって気持ちが涙を誘う…。
- 194 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時53分50秒
- 翌週。
初めて、ソロの曲がベスト10に入った。
オリコンシングルチャート初登場第8位。
先週のMステと
その放送をスポーツ新聞が煽った事が
結果、これに繋がってしもたんやと思う。
複雑やった。
誰々に向かっての愛のメッセージやとか
勘違いな名前が挙げられたりしとった。
初の8位が嬉しくない訳やない。
やけど、こんなん書かれよったら
確実に吉澤は気付かんのやろうなって思ってまう。
ほんまは少し、期待しとったんかもしれん。
吉澤がこの気持ちを知る事を。
- 195 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時54分46秒
- テレビ東京内。
ハロモニ。の収録で娘。たちと顔を合わせる事になった。
まだ、心の準備も整ってないっていうのに…。
あの放送以来、初めて吉澤に会う。
何か、言うてくるやろうか。
いや、何も言わんかもしれん。
頭ん中で自問自答を繰り返っしょったら
その内に皆、スタジオに入り出して
私に声を掛けてきた。
「おめでとう、裕ちゃん。」
「すごいじゃん、8位なんてさぁ。」
「まだまだアイドルって言ってていいんじゃない。」
「よかったね。うん、よかった。」
なっち、圭坊、かおりん、矢口…。
そして――
「あのっ…。あの詞、中澤さんが書いたんですよね?
すごく、心に響きましたよ。
なんて、生意気ですよね、すいません。」
- 196 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時55分28秒
- 嬉しかった。
吉澤への想いを歌ったもんが
こうしてちゃんと吉澤の耳に届いとって
賛辞まで貰えた。
きっと、その詞を捧げた人が
自分やって事は思いもせんのやろうけど。
ただ、今は、それだけで
嬉しかった。
- 197 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時56分02秒
- 「よっすぃ〜。」
「あ、はい。…じゃあ、呼ばれてるんで行きます。」
「はいよ。」
ひらひらと手を振って遠ざかる吉澤の背を見送った。
何か、胸がちょっと、ぎゅってなった。
一瞬振り返って見せた笑顔が
あんまり眩しいもんやから…。
- 198 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時56分39秒
- 収録の合間。
吉澤に話し掛ける矢口の姿が見える。
矢口は、吉澤の事が好き。
それは前から知ってた。
別に本人がそう言うた訳やないけど
それは明らかやった。
あの距離。
矢口は緊張する相手と話す時
一歩分だけいつもより
距離をとるから。
吉澤相手やとその癖が出てる。
- 199 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時57分13秒
- 矢口の
「よっすぃ〜、かっこいい。」
は、お世辞なんかやない。
簡単に言葉にしよるけど
たぶん、あのこなりに勇気とか
振り絞って言いよんかもしれん。
- 200 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時57分52秒
- 2人の姿を目で追んよる石川が見える。
握り締められた両方の手。
きっと石川も今
私と同じ気持ちなんやろうって思う。
けど、違うんは
石川は吉澤に
好きやって言うたらしいから。
ドコにそんな逞しさ持っとんやろうかって思ったけど
すごいなって。
吉澤が何て答えたんかは知らん。
まだ、答えてないんかもしれん。
やけど、羨ましかった、2人が。
- 201 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時58分28秒
- 私のこの気持ちは全然
まっすぐなもんやないねんなって感じた。
足掻く事もせんと
特定少数の、たった1人の吉澤のために歌ってるけど
知らん人が聞けば
不特定多数の人に向けた歌にしか聞こえんもんやから。
私は、ずるい人間や…。
- 202 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)12時59分38秒
「そんな事ないよ。」
…絶妙なタイミングでいつも声を掛けてくる。
「…何がな?」
「んー…何か、自分の事追い詰めてそうだったからさ。」
隣りの椅子を引いて「いい?」って遠慮がちに訊く。
「ダメな訳ないやろ?」
「…。そっか…。」
スカートを押さえながら腰掛ける。
それをぼんやり眺めとった。
「…空いてるから、いつでもさぁ…。」
「ん?」
「手。」
「手?」
「辛くなったらこの手、貸したげるから。」
両方のてのひらをこっちに向けて突き出してそう言う。
「…まだ、大丈夫や…。」
「そっかぁ。まだなっちの出番はないのか。」
特撮ヒーローもんの変身ポーズみたいな動作をしながら
冗談っぽく言うけど。
「…なっち…。」
「ダメ。何も言っちゃダメだからね。
きっとその一言、私の事落ちこませるんだからさ。」
両方の耳を押さえて首を横に振る。
「…言わんよ…。」
その手を取って、否定する。
これ以上、なっちの事を傷付けたくなかった。
「よかったぁ。なっちは
いつもの裕ちゃんが好きだからさぁ…。
あっ。ううん。そういう意味じゃなくて…。」
- 203 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時00分27秒
- 好きやって言うてた。
吉澤しか見えてへんかった…今もそうかもしれんけど、そんな私に
好きやって言うてくれた。
やけど、なっちが欲しいような答えを持ってるはずなんかなくて。
言葉が出てこんかった。
思い出すんは
そん時のなっちの顔。
せいいっぱい無理して「大丈夫だよ。知ってるから。裕ちゃんの好きな人…。」
そんな事言わしてしもた。
やからもう、なっちの事を傷付けたくなかった。
「…。」
「…。」
ごめんもありがとうも禁句。
やったら、何を言えばええんやろう。
「…待ってる。
勝手に待ってるから。」
…私がその言葉に答える時が来るんやとしたら
それは、私の想いが報われんかったって結論が出る時やった。
- 204 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時01分00秒
「ね?」
全力の笑顔。
何で、そんな、背中押してくれてるんやろう。
吉澤に玉砕したら立ち直れんやろう私の心の
防波堤になろうとしとるようで、
まるで、生命保険掛けとるみたいな
その、やさしさに申し訳ない気持ちでいっぱいやった。
- 205 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時02分20秒
- 「あの歌、あの鈍感ガールへの歌なんでしょ?」
「…。」
「…言わなきゃ、伝わらない事もあるんじゃない?」
そうやな。
なっちが好きやって言うてくれた時
いいとか、ダメやとかやなくて
ただ、こんな自分でも好きやって言うてくれる人がおるんが
嬉しかったから。
「なっちっ。」
抱きしめた。
ごめん、やっぱ言うてまうわ。
「私、なっちの事好きやで。
嘘やない。ありがとうな…。」
手、放してもずっと
俯いたままやった。
その頭を軽く撫でて、
吉澤を追い掛けた。
- 206 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時03分00秒
- ―吉澤編―
たまたまその日は家にいた。
新聞のテレビ欄で見て
Mステに中澤さんが出るのも知ってた。
初めて、新曲を聞いた。
タイトルからしてちょっとヘコんでたんだけど
その直後だった。
テレビ画面の向こうで
中澤さんは泣いてた。
- 207 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時04分04秒
- 直感なんだけど
きっとたぶんそれは
その歌詞が誰かへ捧ぐものだったから。
何か、勝手に涙がこぼれてきた。
こんな風に
中澤さんに愛を告げられている人は
誰なんだろうって。
羨ましかった。
まるで
この想いが無駄なんだって
思い知らされてるみたいだった。
- 208 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時04分50秒
- 自分でも気付かないうちに
あっという間に大きくなっていったこの気持ち。
まるで風船が膨らむみたいに。
その風船に
針を刺された気分だった。
血の気が引いていくのが分かった。
悔しいとか、やられたとか
そんな事を思う間もなく
打ちのめされた感じで。
- 209 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時05分27秒
- だから、これは強がり。
「すごく、心に響きましたよ。」
頑張って、笑顔で言ったつもり。
ひきつってたかもしれない。
だって、この言葉には
私が中澤さんの事を好きだから
って意味が含まれているから。
例えば、私がいち中澤さんファンなんだったとすれば
都合よく、自分のために歌ってるって思えたかもしれない。
だけど、この距離にいるからこそ
それは出来なかった。
- 210 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時06分03秒
- 飯田さんに呼ばれて
去って行こうとしてる私の方を見てる
あなたの綺麗な瞳が
心の中を泳いでいく。
今にも溢れそうな好きって気持ちの海の中
漂うノアの方舟のように…。
- 211 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時06分46秒
梨華ちゃんに好きって言われた。
今から、10日くらい前の事。
歌番組のリハの合間で
まるで、紙コップを差し出すみたいに
「好きだよ。」
って言われた。
その前、その後、何を話したのかは覚えてない。
だけど、たぶん私は黙り込んだんだと思う。
自分自身、こんなにも言葉にするのを躊躇ってるっていうのに
あんまりあっさりと言葉にしてきたから。
言葉を、失くしてたと思う。
- 212 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時07分17秒
梨華ちゃんだってそうだし
矢口さん、圭ちゃん、ごっちん…
みんな、やさしかった。
私が中澤さんの事、好きだって知っても
前みたいに
何も変わらず接してくれてる。
- 213 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時07分55秒
- 「よっすぃ〜、元気ないじゃん。
何だったら矢口が話くらい聞いてあげるよ?」
心に溜め込んで
行き止まりに嵌った頃、
誰かが必ず救いにきてくれる。
「こう見えても矢口は来年成人式なんだから。」
胸を叩いて、軽く微笑んでそう言ってくれる。
「ゴー。」
人に聞かれないような所へ
誘い出されて。
- 214 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時08分37秒
- 「やめた?裕ちゃんの事、好きな事。」
「…。いえ…。」
「じゃあ、そんな暗い顔してちゃダメだよ。」
両手で頬を挟まれて。
「笑顔に勝るものはなし。」
「…何すか、それ。」
「矢口的格言。」
「そんなきっぱりっ。」
力をくれる。
「あ。笑った。やっぱそうでなくちゃね。」
元気をくれる。
「やる事、残ってるんじゃないの?」
さっき後にしたスタジオの方に視線を向けて。
「…。ある。あります。」
「よし。じゃあ、行ってこい。」
「はい。」
- 215 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時09分10秒
- 何にも伝えてない。
みんな、ちゃんと言葉にしてるっていうのに。
勝手に、諦めてた。
だけど、それじゃあこの気持ちがあまりにも可哀想だ。
- 216 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時09分53秒
- スタジオへ足を踏み入れようとした時
中澤さんと出会った。
「私、あんたに…言わなあかん事があってん。」
何だろう、そんなに慌てて…。
「私、あんたが好きやねん。」
夢みたいだった。
「あの歌は、あんたのためのもんやねん。」
夢みたいだった。
「…私も、好きです…。」
- 217 名前:サヨナラLoveSong 投稿日:2002年12月01日(日)13時10分41秒
- ―終焉―
もう、このLoveSongを歌う必要はなくなった。
歌わんでも
吉澤はすぐそこにおるから。
遠回りせんでも
愛を伝えられるから。
サヨナラ、LoveSong。
END
- 218 名前:後書き。 投稿日:2002年12月01日(日)13時21分57秒
- 幸せななかよしを提供するのが
自分の仕事かなと思いまして
自分らしい作品で弔おうと考えました。
勝手に献上です。
>>182
ああいった作品もぼちぼち書いてくつもりですんで。
って、このスレもう終わっちゃうし。
ま、いいか。撤収。
- 219 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)13時54分51秒
- ここのなかよし
心に響きました。
たまにでいいので、また中編や長編かいてください。(w
- 220 名前:オニオン 投稿日:2002年12月06日(金)14時42分24秒
- ちょっと自分自身と小説が
倦怠期に入っておりました。
おかえり、自分。ってことでスタート。
- 221 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時43分07秒
- 「気分はどうですか?
20代最後の恋愛相手に
こんなバカを選んだ心境は?」
デートの帰り道。
少しだけ歩きたいっていう吉澤に従って
冬の星座の下を歩っきょったら
吉澤はふと、そんなことを訊いてきよった。
やっぱりまだ少し幼さの残っとる吉澤の顔を見とったら
あの日のことを思い出した…。
- 222 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時43分48秒
- 今年の6月。
私の誕生日を目前に控えたある日
吉澤からメールが届いた。
>今日、空いてますか?
8時に仕事終わるんで
その後会いたいなぁと
思うんすけど。
いつもの夕食のたかり方と
なんら変わらん文章やったから
私もいつもと同じように返事をする。
>仕方ないから私の
貴重な時間割いたる。
待ち合わせ場所、ドコ
がええの?
- 223 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時44分26秒
- 返信したらすぐに電話が掛かってきて。
いつもならここで、待ち合わせ場所指定して
「やった。ゴチになります。」
とか言うと所なんやけど。
「家、行ってもいいっすか?」
吉澤の口からそんな言葉聞いたんは初めてやった。
「ええけど…。」
「大丈夫っすよ。
別に手料理食わせろ
とか言いませんから。」
それ、笑いながら言わないかんとことちゃうかな。
そんな真面目なトーンで言われても困るんねんけどなぁ。
「じゃあ、後で伺いますんで。」
伺います、なんて今まで
聞いたことなかった気がした。
何か、ちょっと変な感じやった。
- 224 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時45分15秒
- 8時を回った頃
予告通り吉澤はやって来た。
「うぁー、中澤さんだぁ。」
「…。」
何や、それ。
「今晩和です。」
「はいはい。今晩和。」
やっぱり、さっきの違和感は
気のせいやったんかなぁ。
「まぁ、入り。」
玄関の扉を全開にしてそう促したら
入ったことには入ってんけど。
「…。」
一歩、中に入った所で立ち止まった。
「どしたん?上がりなよ?」
靴を履いたまま。
何か分からんけど
上がろうとはせぇへんで。
「…あのっ…。」
少しだけ下にあった吉澤の視線が
私を捕らえた。
「…。」
無言で左手が差し出されて。
手の甲を上にして
何か、握っとるっぽい。
「手、出してください。」
私がその手の下に右手を出したら
ハート型のネックレスが降ってきた。
「吉澤の愛、貰ってください。」
「…えっ…。」
整理するまで時間がかかった。
けど、たぶんこれは…
告白されたらしい。
- 225 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時45分56秒
- 未だ、吉澤の目が逸らされんと
見つめてきよる。
役目を終えた左手を
下ろすんも忘れて。
吉澤のことは、嫌いやない。
けど、好きかどうかは分からん。
とりあえず吉澤の左手をとって
下に下ろさした。
改めて吉澤を見た。
嫌やなって思った。
今ここでゴメンナサイしたら
誰かに持ってかれるやと思うと
嫌やった。
- 226 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時46分48秒
- 「…勝手なこと言うけど…。」
そう、勝手なんは分かっとるつもり。
「貰うっていうより
他の人にあげたないなって思うんや…。」
「…いいっすよ、それで。」
「…吉澤…。」
「順番はどうでも
貰ってくれるって意味にはなるんですよね?」
「でもっ、これって消去法やん。
誰にも渡したないから貰うって
そんなん…。」
「全然OKですよ。
嫌われてないだけ万万歳っす。」
声は平静保ててんのに
顔は笑えてなかった。
- 227 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時47分26秒
- 「あぁっ、緊張したぁ。」
何かの線がぷっつり切れたみたいに
声のボリューム上げて
吉澤はその場にしゃがみ込んだ。
「…。のみの心臓なんで、もう
ずっとバクバクだったんすよぉ。」
見上げてくる吉澤は
いつもの吉澤の顔しとった。
「…私も、ちょっと
ドキッとしたで…。」
その正面にしゃがみ込んでそう言うた。
この日が始まりやった。
- 228 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時48分21秒
- 思えば、最初の頃は
好きになったげなっていう
義務感みたいなんがあって
ギクシャクしてたっぽい時もあったけど。
そんなに時間はかからんかった。
吉澤を好きになるまでには。
初めて私が好きやって言うた日
相当嬉しかったんか
吉澤はめっちゃ笑いよった。
声上げて笑いよったなぁ。
そんで、何べんとなく
「もっかい。」って言われて
ずっと、好きやでって
繰り返し言わされて…。
- 229 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時49分04秒
- 気が付いたらもう
夏が終わってて
秋が終わってて
冬も折り返そうとしとる。
あの日から、半年以上が経過しとって
つまり、次の誕生日まで
半年を切ったってことで。
あぁ、さっきのは、そういう意味か。
まだ、何ヶ月か20代は残されとるけど
次の誕生まで、離したりせえへんってこと。
もしかしたら
30代最初の恋愛相手も
名乗ってくれるって意味も
含まれとんのかもしれん。
なんて、都合のええ考え方やな。
でも、そうなるとええな。
きっと、そうなるよな?
- 230 名前:stay gold 投稿日:2002年12月06日(金)14時49分49秒
- 「最高やで。」
「うわっ。めちゃくちゃ嘘っぽいっす。」
「…なんだかんだ言うても
人生バラ色やから。」
自分で言うてても可笑しくなった。
「バラ色っすかぁ…。
じゃあ、吉澤は黄金色っす。」
真剣な顔してそう切り返すんやから。
「ずっと、この先もずっと
黄金色の輝きを持ってたいです。」
「「2人で…。」」
END
- 231 名前:後書き。 投稿日:2002年12月06日(金)14時54分01秒
- stay goldって
僕等はずっと輝いたままでいよう
って意味じゃなかったでしたっけ?
そういう思い込みで作りました。
>>219
長いの、頑張れれば頑張ります。
自分も書きたいんすけどね、なかなか…。
そういうことで撤収。
- 232 名前:オニオン 投稿日:2002年12月09日(月)13時30分51秒
- 今日で最後ですが
思えば一度もなかよしど真ん中な話、
なかったような気がします。
今日も微妙にストライクではない気がしてます。
小首をかしげつつスタート。
- 233 名前:放課後狂想曲。 投稿日:2002年12月09日(月)13時31分43秒
- 5時。
誰もいない校舎であなたを待っている。
職員会議が終わって
教室へと戻ってくるため
ここを通るあなたを
ただ、待っている。
見上げれば
オレンジの頃を通り過ぎようとしている空。
吐く息が微かに白くなって消える。
手袋を忘れた両手が
ポケットの中で息を潜めている。
静止したら凍りついてしまいそうで
足踏みをしている両足。
あなたがくるはずの本館の入り口を
じっと見ている瞳。
体中があなたに会いたいと言っている。
そんな気がしていた。
- 234 名前:放課後狂想曲。 投稿日:2002年12月09日(月)13時32分27秒
- 約束したわけじゃない。
一方的にいつもあなたを待っている。
青いファイルを左脇に抱えて
何か、考え事をしながら
東館へとやってくるあなたを待っている。
私を見つけたあなたはまず初めに
「何しとんな?吉澤。」
って言う。
本当は私があなたを待っていることくらい
とっくに知っているのかもしれない。
けれどあなたはいつも最初にそう訊いてくる。
「あれ?吉澤。何しとんな?」
ほら。
「冬の北風と対話してます。」
「…くだらんなぁ。」
「…先生は?」
「お仕事や。」
『お仕事や。』
これもお決まりの科白。
- 235 名前:放課後狂想曲。 投稿日:2002年12月09日(月)13時33分00秒
- 「大変ですねぇ…。」
「いつも言いよるな、それ。」
「本当にそう思って言ってるんですよ?」
「せやったら、私の仕事増やさんように
さっさと家帰りや。」
『せやったら、私の仕事増やさんように
さっさと家帰りや。』
心の中で先生の言葉が浮かんでくる。
一言一句違うことなく
何を言うのかが分かる。
私、他のどんな生徒よりも
先生のこと、知ってる自信があるんだ。
- 236 名前:放課後狂想曲。 投稿日:2002年12月09日(月)13時33分41秒
- だけど、先生は私のこと、きっと
あまり知らないんだろうね。
そう思うと、少し
困らせてみたくなった。
「…先生のこと、いつも
待ってたんです。」
「んー?」
「帰る前に、もう一回
先生に会いたいなって思って。」
右手が勝手に先生の服の
左手の袖を握っていた。
「吉澤。」
呼ばれて先生の顔を見たら
先生は、先生の顔をしていた。
「暗なる前に帰りや。」
って、私の頭を何回か撫でる先生の右手。
何故だろう。
確かに、先生が先生で
私が生徒でなければ
出逢わなかったのかもしれない。
けど、今私は1人の人間として
素直な気持ちを伝えたのに
先生は先生の肩書きを下ろしてはくれない。
- 237 名前:放課後狂想曲。 投稿日:2002年12月09日(月)13時34分23秒
- 「…先生。」
「何?」
「私、先生のことが好きです。
先生としてじゃなくて…。」
さっき頭を撫でてくれていた右手が
私の肩を、ギュッて抱きしめた。
「先生のクラスの生徒でおって…。」
絞り出されたみたいな先生の声。
きっとこれが先生の素直な気持ち。
先生は先生でいたいんだって。
だから私も、先生の言うように
先生が望むように
生徒でいるのがいいのかなって思った。
- 238 名前:放課後狂想曲。 投稿日:2002年12月09日(月)13時34分59秒
- だから、
「…先生、困らせてごめんね?
私、先生の生徒、ちゃんとするから…。」
この言葉も嘘なんかじゃなくて
素直な気持ちだよ。
「暗くなる前に、家に帰ります…。」
「…ええこや…。」
「先生、サヨウナラ。」
「また、明日な。吉澤。」
END
- 239 名前:作者。 投稿日:2002年12月09日(月)13時35分48秒
- 次。
- 240 名前:束の間。 投稿日:2002年12月09日(月)13時36分36秒
- 「アイシテル。」が2つ響いた夜。
あなたと私の求める愛が一致した時
その瞬間にサヨナラまでの
カウントダウンも始まっている。
いつも2つは背中合わせだから。
アイシテルの隣りにはいつも
サヨナラがいるから。
- 241 名前:束の間。 投稿日:2002年12月09日(月)13時37分20秒
- 「吉澤…?」
私の心の中の不安を推し量ったみたいに
中澤さんは声を掛けた。
「どしたん?ミケンに皺なんか寄せて…。」
透き通るような中澤さんの指が
私のミケンに触れる。
「私の体にハリがないなぁとか考えてる?」
「…ううん。」
「よかった。冗談やのにうんとか言われたら
どうしよかと思たわ。」
「…ちょっと、ネガティブになってただけですから…。」
数十分前まで触れ合っていた
中澤さんの体に寄り添った。
中澤さんのシャンプーの香りが微かにする枕の
すぐむこうに、本物の中澤さんの顔があって。
こんなに近くにいるのに何で
私の心はこんなにも悲しみに脅えているんだろう。
- 242 名前:束の間。 投稿日:2002年12月09日(月)13時37分52秒
- 「またそんな顔して…。
石川梨華降臨か?」
「…やだ。」
「ん?」
「他の人の名前、口にしちゃ嫌です。」
「名前出ただけでも焼くん?」
「…だって、今は中澤さんのこと全部
ひとり占めしたいし…。」
「…いつでも私は吉澤ひとりのもんやで?」
「…分かってるけど…。でも、だめです。
体の細胞全部、心の中も、頭の中も全部
私のことだけにして欲しい…。」
「そうしてるつもりやで…?」
背中に回された指が少しだけ
ひんやりとしていた。
- 243 名前:束の間。 投稿日:2002年12月09日(月)13時38分34秒
- 「…たとえ、紙一枚でも、結婚って
カタチに出来るけど、恋愛ってどうやっても
カタチにはならないんですよね…。」
紙い一枚でも、結婚は重い。
だけど、こんな愛に
紙一枚分のカタチすら用意されることはないから。
それが、こんな不安の一翼を担っているのかもしれない。
耳の奥ではずっと
時限爆弾のタイマーが時を刻むような音がしていて
目を閉じると、暗闇の中で
白い日めくりカレンダーが
一枚一枚破り捨てられていって
サヨナラまでの日を数えているみたいだった。
これは今に始まったことではなくて
この愛を手に入れた時から既に
聞こえ始めていた。
見え始めていたんだ。
- 244 名前:束の間。 投稿日:2002年12月09日(月)13時39分12秒
- 「吉澤の方こそ、今は私のことだけ考えてや…。」
トリップから私を救ったのは中澤さんの唇。
「…考えてますよ…。」
「違う。私とのことやなくて
私のことを。」
再び触れる唇。
「だって…。何か…どうしても…。」
キスがやさしいほどに。
あなたを愛しく想うほどに。
「…サヨナラ以外の結末が
思い描けないんですよぉ…。」
「そんな先のこと考えたって、しょうがないやんか。
それに、私の辞書にそんな言葉、載ってへんからなぁ。」
- 245 名前:束の間。 投稿日:2002年12月09日(月)13時40分01秒
- いつも、アイシテルとサヨナラは背中合わせ。
アイシテルの隣りにはいつもサヨナラがいる。
けれど。
触れた唇は嘘じゃない。
重ね合わせた体は嘘じゃない。
囁き合った言葉は嘘じゃない。
いつか、このアイシテルが
サヨナラに辿り着いたとしても
いつか、その日がやってくるのだとしても
それはまだ、そうだと決まったわけじゃない。
私がアイシテルを繰り返す限り
中澤さんがアイシテルを繰り返す限り
その時はやって来ないから。
出来ることなら出来るだけ遠回りしていきたい。
「愛してます…。」
「愛しとるよ…。」
END
- 246 名前:後書き。 投稿日:2002年12月09日(月)13時46分02秒
- 色んな意味でごめんなさい。
…ネジ、巻き直してから帰ってきます。
撤収です。オニオンでした。
- 247 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月09日(月)13時49分38秒
- 今日で最後とかいわないで下さい(涙
ずっと楽しませていただいてます。
- 248 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年12月13日(金)23時49分31秒
- 早く、帰ってきてください…
- 249 名前:オニオン 投稿日:2002年12月15日(日)14時28分45秒
- とりあえず立てました。
次スレ。
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