インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板
=水曜日、雨=(いしよし)
- 1 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)21時36分25秒
- 現在いしよし小説修行の身なので、よろしければお付き合いくださいませ。
今回のは「甘」です。
いしよし学園もの。
- 2 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)21時53分25秒
=水曜日、雨=
雨、雨、雨-----
教室の蛍光灯は全て点いているけど、外の暗さが中にまで
漂ってきそうな程の雨模様。
「なーんか面白いことないー真理っぺー」
「だから真理っぺって呼ぶのやめろよなつみ」
お昼休み。
2人は教室の窓側の席でぐたっと机に伏していた。
- 3 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時08分49秒
- 「部活休みだろなぁ。こんだけ雨降ってたら。」
少し伸びてきた前髪を触りながら、なつみはつぶやいた。
「え?バレー部って体育館使ってるから関係ないじゃん。」
「水曜日は体育館使えないの。
前も言ったのに覚えが悪いね、真理っぺは。」
「だからー」
(覚えが悪いのはどっちだよっ!)
何度注意してもなつみは真理をそう呼ぶので、
真理自身も最近は諦めかけている。
「水曜日は筋トレと郊外ランニング。
後輩たちの悲愴な顔見るの楽しみなのに。」
なつみはニヤリと笑った。
「あんたって悪趣味だよね。」
「ちがうの。悪趣味じゃなくて、苦しみに耐えても頑張ってる姿に感動するの!」
「なつみはマネージャーだもんね。どちみち練習には参加しないし。」
- 4 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時10分10秒
真理は体を起こすと頬づえをついて窓の外を眺めた。
「この分だとテニス部も休みなんじゃない?」
「うん。キャプテンに確認とらなくてもそうだろうね。
オイラは久々にゆっくりできるから嬉しいけど。」
真理は腕を伸ばしてのびをした。
「そういえばさ。バレー部にすっごい美人の子が
入ってきたって噂になってたけど?」
「あぁ、それきっと吉澤のことね。
うん、かなり美人だよあの子は。」
その言葉に真理はすぐさま目を輝かせた。
「うっそ。紹介してよ。なつみの友達だって。」
なつみは首を横に振った。
「だめだめ。あの子もう彼女いるみたいだから。」
「んだよ。オイラを差し置いてもうGETしたヤツいるのかよ。
で、その吉澤ちゃんの彼女ってどんな子?」
「どんな子って・・・。真理っぺのとこのテニス部の石川。」
「げーーーっ!!!」
真理の顔は明らかに怒りでゆがめられた。
「石川のヤロー。あいつ今度バシバシにしごいてやるっ!」
- 5 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時13分33秒
- 一方一年のクラスでは。
「ひとみちゃーん。食後のおやつにクッキー焼いてきたの。食べてー♪」
「遠慮しとく。」
「なんでよー折角作ってきたのに。」
梨華はタッパーのフタをあけてひとみににじり寄っていた。
- 6 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時18分37秒
- しかしひとみはそれをがんとして拒んだ。
それというのも以前同じように別の手作りの品を食べた経験上、
その史上最悪な味に恐怖すら抱いていたから。
「うち最近太ってきたからお菓子禁止してるんだよね。」
ダイエットという言葉とは無縁のスタイルのいいひとみのその言葉に、
梨華の顔はますますムクれていく。
「いいもん。それなら他の子にあげるから。」
ひとみの気を引こうとする梨華の努力も虚しく、ひとみは
「そう。」と言うと愛読書のバレー雑誌に視線を落とした。
- 7 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時26分03秒
- (なんでうち梨華ちゃんの告白オーケーしたんだろ・・・)
ひとみは父の転勤の都合で、一年の半ばからこの高校に転入してきた。
そのクラスで何かとひとみの世話を焼いていたのが他ならぬ梨華。
告白された時も断る理由がなかったから付き合っただけという
かなりいいかげんな気持ちで始まった関係だった。
(確かに梨華ちゃんはかわいいんだけど。)
ひとみの心の中では恋人と友達の違いが今ひとつ区別できないでいた。
「ひとみちゃん冷たい・・・」
いまだクッキーのタッパーを抱えている梨華。
「・・・わかったから。そんな目でうちを見ないでよ。」
ウルウルさせている梨華の瞳にさすがに悪いと思ったのか、
一つつまんでそれを口に入れた。
(・・・マズッ)
「どう?おいしいでしょ?」
さっきまでのウルウルをパッと笑顔にかえて梨華は満足気。
「まぁまぁ。」
さすがにマズイとは言えないけど、ウマイとうそをつくのはもっといやなひとみであった。
「喜んでもらえてよかったー。また作ってくるね♪」
ひとみはその言葉に気が遠くなるのを感じていた。
- 8 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時43分20秒
- 2年のクラス---
「なっちいいこと思いついちゃった♪」
なつみは胸の前で手を合わせてニコニコしている。
「何?いいことって。」
「今日はバレー部もテニス部もお休みでしょ。そこでっ!
希望者を募って放課後鬼ごっこするの。」
「・・・なつみ。あんた歳いくつ?」
真理の冷ややかな視線をなつみはものともしない。
「そうと決まったら早速勧誘かけにいかなきゃ。
3年生は誘いにくいから1年の子たちに声かけてみようよ。」
「勝手に決めるなよ。オイラはやだよ。そんなガキくさいことできっか。」
「吉澤も参加させるつもりだけど?」
「・・・オイラも参加しまーす。」
そして2人は仲良く(?)一年校舎へと向かった。
- 9 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時45分45秒
- 「おーい吉澤ー。ちょっと。」
ひとみたちのクラスの入り口でなつみは声をかけた。
「あっ。安倍先輩。こんにちは。」
「どうしたの吉澤。顔色悪いよ?」
「・・・なんでもありません。」
「ま、いっか。あのね今日部活休みでしょ。だから放課後鬼ごっこして遊ぶことにしたの。」
「先輩。『だから』って接続詞の使い方間違ってると思うんですけど・・・」
「いやだとは言わせないわよ。これは先輩としての命令だから。」
「はぁ・・・」
体育会系の世界において先輩の命令は本当に絶対である。
「あ、そうそう忘れてた。紹介するね。うちのクラスの真理っぺ。
彼女も参加するからよろしく。」
「・・・だからぁ。もういいや。矢口真理です。吉澤ちゃんよろしくね♪」
「はい、こちらこそ。」(かなり小柄だ・・・)
ひとみは真理との身長差をものさしで計りたい欲求に襲われていた。
- 10 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)22時51分12秒
- 「石川。ちょっとこっちこい。」
「や、矢口先輩・・・」
梨華は真理のことを普段から苦手としていたけど、今日の真理からは
更に近付きたくないものを感じていた。
「石川。放課後鬼ごっこ参加しろ。強制だから。」
「・・・はい。」
当初の参加希望型とは随分違った鬼ごっこはこうして幕を開けたのである。
「じゃぁ確認するよ。テニス部は矢口、石川、紺野。バレー部は安倍、
吉澤、高橋。以上6名。それぞれ顔と名前は今覚えるように。」
なつみの指示の下放課後集められたメンバーは各自名前をブツブツ復唱していた。
「ルールは簡単。一年校舎と二年校舎の渡り廊下の柱にタッチした時点でセーフ。
行動範囲はそれぞれの校舎内のみ。勿論その範囲ならどこに隠れてもOKだから。」
「それじゃージャンケンするぞ。ジャンケンピョン!」
真理の掛け声で出された6コの手は一つを除いて全て揃っていた。
- 11 名前:ルチア 投稿日:2002年11月18日(月)23時00分25秒
- >作者
真理≠真里
失礼しました。お詫びして訂正します。
続きはまた今度ということで。完結はしてますので。
- 12 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年11月18日(月)23時12分39秒
- うわっ♪めっちゃメンバーがいいです(w
どうなるのか楽しみです!頑張ってください。
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月18日(月)23時59分10秒
- 中学時代水泳部で冬季のみトレーニングとして鬼ごっこを強制された事
思い出しました☆
なっちと矢口のキャラがいいですねぇ、こんこんと高橋も楽しみっす!
梨華ちゃんがあらゆる意味で心配ですが、見守らせていただきます。
- 14 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)00時30分15秒
- >ぶらぅさま
わぁー。ありがとうございます^^
・・・あの、実は言いにくいことなんですけど、
5期メンはちらっとしか出てこないんです・・・。
いしよしメインなのでひとつご容赦くださいませ^^;
>名無し読者さま(13)
読んでいただきありがとうございます。
一人でも読者がいてくれることがめちゃ励みに
なりますのでこれからもよろしくお願いします^^
それと、水泳部ではそんなことしてたんですか?
うらやましー^^
実は私も中学時代一度先輩に誘われて鬼ごっこしたんですよ。
(雨でクラブが休みになったので)
これからの梨華ちゃんは・・・(w
ちなみにハッピーエンドしか書けない根性なし作者なので(笑)
- 15 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)00時39分32秒
- 「げっ。うちが鬼か。しょうがないな。」
一発負けしたひとみはしぶしぶ柱の位置で目を伏せた。
「吉澤、ちゃんと100数えてから行動するんだよ。」
「はい、安倍先輩。」
「がんばれよー吉澤ちゃん♪」
真里のその応援に対抗するかのように梨華も負けじと声をかけた。
「ひとみちゃん、私を一番に見つけてね♪」
「はいはい。」
ひとみは半ばやけくそ気味に返事をすると、ゆっくりと数を数えだした。
雨音の中に廊下を走る彼女たちの足音がけたたましく交錯して消えていった。
- 16 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時01分32秒
- 「・・・ひゃーく。もういいかーい?」
当然返事はない。
すぐ側を通った2年生のクスクス笑いに恥ずかしさを込みあがらせた
ひとみ。
(こんなこと絶対さっさと終わらせてやるっ!)
やっと高校生活にも慣れ始め、好きなバレーに情熱を注ごうと決心していた
ひとみであったが、まさかこんな子供じみた遊びに付き合わされるハメに
なるとは。
駆け出した足はものすごいスピードで校舎内を巡った。
バタバタと手当たり次第に開かれていく扉。
(・・・甘いな。ニヤリ)
「高橋さんみーっけ。」
「あわわわ・・・なんで見つかったんやろー?」
一年の教室のカーテンに体を包んで隠れていた高橋は
あっさりとみつかり素直にタッチされた。
(あと4人か・・・)
その後も一つ一つ教室の扉を開けてまわるひとみ。
鋭いカンをはたらかせて、教卓の下で隠れている影をみつけた。
「紺野さんみーっけ。」
「きゃっ!」
あわてて立ち上がった紺野は見事天板に頭をぶつけ、うずくまっている間に
タッチされた。
「・・・大丈夫?」
「クスン。いたーい。」
紺野の介抱もそこそこにひとみは次のターゲットを目指して動き始めた。
(あと3人!)
- 17 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時21分06秒
- 一度柱まで戻って確認しに行ったけど、まだその3人はここにきていなかった。
鬼に捕まった高橋と紺野は渡り廊下の隅にある階段でのんびり座って話している。
(確か矢口さんは・・・)
ひとみは真里の身長のことを思い出していた。
(あの体からするとあそこだな。)
一年校舎の一階にある用具入れロッカーに手をかけた。
「矢口さんみーっけ。」
モップの隙間に体を隠していた真里もまたすんなりとつかまった。
「ちぇー。いい隠れ場だと思ったのに。」
『わかりやすすぎです』とはさすがに言えないひとみである。
- 18 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時26分49秒
- 「ねぇ吉澤ちゃん。」
「なんですか?」
「石川なんかやめてさ、オイラと付き合わない?」
鬼に手を引かれているのをいいことに真里は積極的にアプローチした。
「えぇ・・・っと。それは・・・」
答えに詰まるひとみ。
本来なら【梨華ちゃんを愛してますから】の一言で話は終わるところだが、
ひとみは梨華のことを心から愛しているとは言い切れないだけに言葉が出てこない。
「あの、まだうちら付き合いだしてそんなに時間たってないんで。
もうちょっと彼女のことみてみたいんです。」
「そっか。それなら石川とダメになったら考えてみてよ。」
「・・・はい。」
ひとみは苦笑気味に笑いかけた。
- 19 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時28分06秒
- 柱のところまで真里を連行していくと、まさにその場所でなつみが不敵に笑って立っていた。
「うぁ。安倍先輩セーフですか。」
「ったりまえじゃん。なっちをなめちゃいけないよ。」
「しくったな・・・ところで先輩はどこに隠れてたんですか?」
「なっちはねぇ、コレ」
そう言って手にしていた鍵をジャラリと見せた。
「・・・そういや開かない部屋ありました。
でも先輩、それってルール-----」
「先輩のすることにケチつけるんだ、吉澤。」
「・・・・・。」
さすがにそれ以上は何も言えない。
体育会系とはそういうところだ。
- 20 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時35分20秒
- 《タンタンタンターン♪バレー部マネージャーの安倍さん。
至急職員室まで来てください。》
みんなの視線がなつみに集まった。
「なつみー。あんた何かやらかしたの?」
「なっちなーんもしてないよ?それにわざわざ『バレー部の』って言ってたから部活関係のことだよ。」
「そうかもね。んじゃそろそろお開きにするか。」
「そだね。でもいい暇つぶしになったよね、真里っぺ♪」
「今度やる時は絶対セーフになってやる。」
「あのー。そろそろ私たち帰ってもいいですか?」
高橋と紺野はモジモジとなつみにお伺いをたてた。
「いいよ。おつかれさま。また遊ぼうね。」
コクリとうなづくとそそくさと退散していった2人。
彼女たちもまた強制の名の下に連れてこられたメンバーであったのをこの時ひとみは知った。
- 21 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時41分11秒
- 「吉澤もあがっていいよ。また明日からがんばろうね。」
「はい。お疲れ様でしたっ!」
「吉澤ちゃん、今度は負けないからね♪」
真里のウインクはハート型になって飛んできた。
「はい、その時は。お2人ともお疲れ様でした!」
2人の姿を見送った後、ひとみはカバンを取りに教室へ戻った。
誰もいない教室にカバンが2つ。
1つは自分のだとしてもう1つは?
(・・・忘れてた。)
- 22 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)01時49分30秒
- >作者
はい。今夜はこのあたりで一旦終了します。
続きはまた今度で。
おやすみなさい。
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月20日(水)01時55分20秒
- 石川さんは放置ですか?(w
石川さん前途多難です、いしかわさんがんがれ!
激しく続き希望です
- 24 名前:チップ 投稿日:2002年11月20日(水)02時32分48秒
- おっと、名前書くの忘れてた・・・元水泳部の者です。
私も矢口と同じくロッカー入ってましたよ〜あと体育館裏やら
変な小屋のネットの下やら・・・かなり真剣に隠れてましたよ。
ぶっちゃけ放置も未遂なら経験済みですし・・・梨華ちゃんは完全放置か・・
はっぴ〜えんど大好きなんでこれからも読ませて頂きます。
- 25 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)19時21分22秒
- >23名無し読者さま
ある意味放置プレイかも?(w
石川さん、これからがんがりますよっ♪^^
>チップさま
>変な小屋のネットの下
・・・うーむ非常に興味をそそられますた^^
その当時お目当ての先輩とかいました?
実は私はいました(w
もちコクるなんてことはできなかったんですけどね^^;
めちゃめちゃ美人の先輩だったんですよー♪
おまけにめっちゃ頭がよくて、レベルの高い某高校に入ったって
聞いたので、私もがんがって受験勉強して入学しますた(w
でも結局告白はできなかったです。青春時代のあわい思い出です。
- 26 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)19時32分34秒
- 梨華はその頃、一年校舎の非常階段でうずくまっていた。
「はやくひとみちゃんきてくれないかなぁ・・・」
時折ふく雨風によって梨華の制服は、その名の通り水玉模様を浮かばせていた。
「クシュン」
時間にするとわずか20分ほどしか経っていなかったが、
晩秋の気温に体は完全に冷えていたようだった。
「・・・寒いよぉー。はやく・・・き・・て・・・」
梨華の意識はそのまま段々と薄れていった。
「・・・かちゃん。梨華ちゃん、しっかりして!」
遠くに誰かの声が聞こえるけど、意識はまだ朦朧としていた。
瞼も重くてあけることができない。
フワッと体が宙に浮くような感覚に全身の力が抜けていく。
(けっこう重いな・・・)
ひとみは梨華を背負うと保健室目指して非常階段を下りていた。
- 27 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)19時48分29秒
- 階段を下りる振動は梨華に伝わり、幸いなことにその意識を呼び戻すきっかけとなった。
(・・・あれ?なんで私ひとみちゃんにおぶられているんだろう?)
梨華は一瞬考えを巡らせたけど、すぐにその状況を把握した。
(このままだまってひとみちゃんにピッタリくっついてよっかな♪
・・・でもやっぱ悪いよね・・・)
よしっ。と心の中で迷いを断つと、ひとみに声をかけた。
「ありがと。もういいよ。」
「うわっ!」
転ばないように意識を階段に集中させていたひとみは、
不意にかけられたその言葉に驚いてしまって、不幸にも雨で濡れた階段を踏み外してしまった。
滑るように転がっていく2人。
「いたた・・・」
「・・・うぅ・・・」
すぐ目の前に踊り場があったため2〜3段転げ落ちただけで済んだのは
不幸中の幸いであったのだが。
その体勢が問題だった。
ひとみは梨華を組み敷くように覆いかぶさっていたのだ。
- 28 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)20時03分52秒
- (あれ、あれれれれれ?何この気持ちは?)
胸の奥がキューンとトキメク感情を目下にいる梨華に感じたひとみ。
しかしとにかく今は梨華の無事を確認しなくてはならない。
「だっ・・・大丈夫?」
「・・・なんとか。」
「よかった・・・」
ごめんねと謝ると、梨華を抱き起こしてその濡れた髪を拭ってあげた。
「私寂しかったんだから!」
梨華はひとみに飛びかかるように抱きついた。
「うわっ。ちょっ・・・」
(マズイよこれは。非常にマズイ・・・)
さっきのキューンはドキドキへと姿を変えていく。
背後には壁。
体には梨華が抱きつく圧力がかかっていて動けそうにない。
「ひとみちゃん来てくれるのずーっと待ってたんだよ。」
さて、この状況で『忘れてました』とは誰が言えよう。
「その・・・ごめんね。来るの遅くなっちゃって。」
《嘘も方便》
どこかで聞いた言葉がひとみの頭をよぎった。
しかしやはりちょっぴり心が痛む。
おまけに梨華が自分を待っていた時の寂しさを思うと、
余計に罪悪感を感じない訳にはいかなかった。
- 29 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)20時12分41秒
- 「でもいいや。こうやってちゃんと私のこと見つけてくれたんだもん。」
梨華はそう言うと、もう一度しっかりひとみに抱きついた。
「梨華ちゃん・・・」
また胸が高鳴った。
今まで感じたことのない感覚に、ひとみは友達と恋人との境界線を
やっと認識できたような気がした。
「・・・あれ?ひとみちゃん、顔赤いよ?」
「そっ、そんなことないよ。」
あわてて視線をそらしたものだから、梨華はしたり顔に。
「もしかしてトキめいちゃった?」
クスリと梨華が笑う。
「・・・うん。」
その答えに驚く梨華。
いつも恋人らしい雰囲気には程遠い態度だったひとみが
あっさりと『トキメキ』を認めたものだから。
「そう素直に認められると恥ずかしいかも・・・」
「恥ずかしいのはこっちも同じ。」
密接した体を今更離せる訳もなく、2人はただうつむいて照れが冷めるのをまった。
- 30 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)20時18分50秒
- 水しぶきを上げて車が通り過ぎる音を何回か数えた後。
「・・・ねぇ、ひとみちゃん。キス・・・しよっか。」
「キス!?」
上目遣いに見る梨華の視線は熱っぽく注がれている。
「・・・したくない?」
急展開のこの状況でも、ひとみは極めて冷静に自分の気持ちを確かめていた。
「したい。」
好きな相手とキスがしたいと思うのは「人間の本能」なのだろうか?
互いに相手の唇だけに視線が集中した。
ゆっくりと距離を測るようにその間隔は縮められ、
あと少しの位置までくると、2人は目を閉じてそれに触れた。
「なんかよくわかんなかったなぁ。」
「私も。」
どうやら2人とも極度に緊張していたようだった。
- 31 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)20時27分29秒
- 「あの・・・さ。もう一回してみてもいい?」
「ひとみちゃんたら。」
ぎゅっと抱きしめあって再び唇を重ねた。
「少しは私のこと好きになってくれた?」
一方通行だった想いは-----
「少しというよりかなり。」
どうやら双方向に開通されたようだった。
その後2人は教室まで手を繋いで戻って行った。
「そう言えば鬼ごっこ途中じゃなかったっけ?」
(・・・ギクッ)
「あ、あぁなんかね、みんな急用ができたみたいで途中で解散したんだ。」
「えーっ。じゃあ私一人だけ取り残されてたの?
まさか私のこと忘れてたんじゃないよね?」
(・・・ギクギクッ!)
「そんなことある訳ないじゃない。考えすぎだよ。
ちゃんとお迎えに行ったでしょ?」
(妙に鋭いな・・・)
「そ。ならいいわ。もう帰ろっか。」
「うっ、うん。」
こうして無事(?)最後の一人を捕まえて鬼ごっこは幕を閉じたのである。
- 32 名前:ルチア 投稿日:2002年11月20日(水)20時28分52秒
- >作者
一旦終了。
また夜にでも時間があれば書きたいと思います。
もう少し続きますのでお付き合いください。
- 33 名前:チップ 投稿日:2002年11月20日(水)22時32分03秒
- おぉっ!やっと両想いに☆初々しいのが最高です。
その時は違いましたけど初恋の人がいましたね〜
たまに一緒に隠れたり、昔は追ってたのに追われたり・・・
かなりマッチョになってたんでトキメキもしませんでしたけど。
- 34 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年11月21日(木)01時17分43秒
- おぉやっと(w
遅いよよっすぃ〜!w
- 35 名前:ルチア 投稿日:2002年11月21日(木)18時16分09秒
- >チップさま
いつもありがとうございます♪
>マッチョ
微妙ですね(w
>ぶらぅさま
ありがとうございます♪
もうすぐENDなんでよければ最後までお付き合いください。
- 36 名前:ルチア 投稿日:2002年11月21日(木)18時25分19秒
- 次の日。
「矢口先輩、そんな球打てませんっ!!!」
「うるさい!先輩に反抗するやつはこうだっ!」
テニスコートでは左右に飛んでくる剛速球にヘトヘトになっている梨華の姿。
一方体育館では・・・
「なんですかコレ?」
ひとみの手には2kgの鉄アレイが1つずつ握らされていた。
「なにって、鉄アレイじゃない。」
「いや、そういうことではなくて・・・。」
「吉澤。昨日なっちのこと捕まえられなかったでしょ?
思うにそれは基礎体力がついていないからだと思うのよね。」
「だってあれは」
「つべこべ言わずに筋トレするっ!」
こうしてひとみは体育館を使えるにもかかわらず、なつみの指導の下、
苦痛の表情で筋トレに励んでいたのであった。
(ふふっ。吉澤、ステキよっ♪)
次の水曜日。
天気予報通りの雨。
「くると思う?」
「くるだろうね、きっと・・・」
教室の扉が勢いよく開けられた。
「吉澤ー。ちょっとおいで。」
梨華とひとみはため息とともに顔を見合わせた。
- 37 名前:ルチア 投稿日:2002年11月21日(木)18時34分51秒
- 「ジャーンケーンピョン。」
6つの手の中に一つだけ違った形。
「うわっ。なっちが鬼な訳ー。」
「なつみついてないね。」
「先輩、100までちゃーんと数えてくださいよ。」
「わかってるよぉ。それじゃいくよ。いーち、にーい・・・」
クモの子を散らすようにバタバタと走り去る影。
その中に繋いだままでいる手の持ち主が2人。
「やっぱあそこに行く?」
「そうだね。いいかもしれない。」
梨華とひとみは再びあの非常階段に向かった。
「ひとみちゃん、立ってたらすぐバレるよ。しゃがまないと。」
「そうだったね。」
2人はその場にしゃがみ込んで息を殺していた。
「そこ雨かかるよ。もっとこっちにきたら?」
「ありがと。」
梨華はその言葉通り、ぴったりとひとみにくっついた。
「・・・ねぇ、今何考えてるの?」
「梨華ちゃんは?」
なぜか2人もニヤケ顔。
「私が先に質問したのにぃー。」
「それじゃ、せーので言おうよ。」
互いの気持ちは声に出さなくても通じ合っていたのだが。
「せーの。」
「「キスがしたいっ!」」
そしてまた2人の唇はやわらかくくっついた。
- 38 名前:ルチア 投稿日:2002年11月21日(木)18時38分32秒
- 「このままこっそり帰っちゃおっか。」
「ひとみちゃんも考えてたんだ。」
「どうせ明日もビシバシしごかれるんだったらここにいても無駄だしね。」
「明日もまた筋肉痛かなぁ。」
非常階段から消えた2人の足跡は裏門へと続いていた。
雨はまだ降り続いている。
=END=
- 39 名前:ルチア 投稿日:2002年11月21日(木)18時40分03秒
- 終わりです♪
今までおつきあいくださいましてありがとうございました。
また投稿したいと思いますので、よければ読んでやってくださいね♪
=ルチア=
- 40 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月22日(金)22時00分29秒
- やっぱ、いしよしだねぇ!お疲れ様でした!
Converted by dat2html.pl 1.0