インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

専属ケーキ屋さん2

1 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月19日(火)14時05分56秒
ボーっとしてたら、前スレの容量がいっぱいになってしまいました…すみません(汗)
ってなワケで、新スレです!!
2になってもテンション変わらずに行きたいと思います☆

前スレ
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/silver/1034649375/l25
2 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時06分50秒

 目の前で起きている事態が、信じられない。
 自室に戻り、制服姿のまま二人分の紅茶を淹れながら…真希は混乱していた。
 客にマグカップを差し出し、真希はその正面に座る。
 マグカップを受け取った客は、小さく『サンキュ』と言ってから、改めて真希の顔を見
た。
「…久しぶりだな。元気にしてたか?」
前とは寸分変わらない笑顔と声で、紗耶香は真希の目の前に座っている。それが、真希に
は信じられない。
「どうしたんだよ、そんな怖い顔して。二年ぶりの再会だって言うのに。」
「…笑えるワケないじゃん…。」
真希は、まるで子供のようにふくれていた。
「なんなんだよ、ほんとにもう!!」
真希は勢い良く立ち上がった。
「いきなり消えたり、いきなり現れたり!!
 いちーちゃんがいきなりいなくなって、後藤…後藤がどんな想いをしたのか、いちーちゃ
ん全然わかってない!!」
「おいおい、落ち着けよ。」
「落ち着けるワケないじゃん!!」
3 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時07分22秒
真希の目には、大粒の涙が浮かんでいた。そんな真希を、紗耶香はあやすように抱きとめる。
「市井がいなくても、後藤はちゃんとやってるじゃないか。見たぞー?お前の働きっぷり。」
「駄目だよ。後藤はまだまだ…。無理してるんだよ。お嬢様方が不安にならないように、」
「それができれば一人前だ。」
「だから、まだまだなんだってば!!」
紗耶香は真希の顔を覗き込んだ。

「いや、お前は一人前だ。」

真希の目から、涙がぼろぼろと零れ落ちる。
「…ずるいよ、いちーちゃんは…。」
「ああ、そうだな。」
「二年前、黙っていきなり消えるし。」
「しょうがなかったんだよ。ちょっと、面倒くさい用事を頼まれたから。」
真希は顔を上げた。
「面倒くさい用事?」
「ああ。」
「…それは、旦那様に頼まれたの?」
すると紗耶香は、にやっと笑って唇に人差し指を立てた。
「それは、ノーコメントだ。」
4 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時07分52秒
「…やっぱずるい。」
「はっはっは。」
紗耶香は真希を離して、またマグカップに口をつける。
「…うん、ウマい。腕、あがったな。」
「そりゃー…二年も経ったもん。」
「そうだな。」
「…今まで、どこにいたの?」
その問いに、紗耶香はふっと笑ってから答えた。

「大阪。」

「はっ!?」
「大阪にいた。」
「…微妙〜。」
「なんだよソレ。」
真希は、はーっとため息をついた。
「…なんか、中途半端過ぎ。どうせだったらこの近所か、もしくは海外とか行っててよ。
じゃないとドラマ性もクソもあったモンじゃないじゃん。」
5 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時08分23秒
「…執事が『クソ』とか言うなよ…。」
「今の後藤は、執事じゃないもん。」
真希は、紗耶香を見つめた。

「『市井の前にいる時は、普通の女の子に戻って良いんだぞ』。」

「…そうだったな。」
紗耶香はくくっと笑った。
「『じゃあ、後藤の前にいる時は、いちーちゃんも普通の女の子に戻ってね』…だっけ?」
「その通り。」
真希と紗耶香は、目を合わせて…まるで、本物の姉妹のように明るく笑いあう。
 そうやって笑う二人は、本当に『年相応の少女たち』だった。
6 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時08分55秒


 「…早退したのに、帰る時間がいつもと一緒になっちゃった。」
石川家の門の前で一旦ベンツを止め、ひとみを降ろしながら…梨華は言った。
「ま、イロイロあったからね。」
ひとみがつぶやくと、梨華は深いため息をつく。
「…ホントに、『イロイロ』ね。」
「…梨華ちゃん、やっぱり…なんか怒ってない?」
「怒ってなんかないわよ。」
梨華はそっぽを向いてぶつぶつ呟く。

「…わたしは完全に『柴田さんよりひとみちゃんが好き』って言ってひとみちゃんを選ん
だのに、ひとみちゃんは過去の『ヒモ暦』と『浮気癖』がバレただけで、あとはキスで誤
魔化されちゃったとか、ひとみちゃんはきっと浮気しないだろうけど、それは真希の『お
しおき』を怖がってるだけなんだろーな、なんて思ってないもん。」

「…やっぱりちょっと怒ってるじゃん…。」
「怒ってないもーん。」
そんな梨華の前に回って、ひとみは言う。
「だからぁ…なんてゆーか…。」
「何?」
「うう〜ん…そのぉ…。」
「だから何よ?」
7 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時09分25秒
ひとみは一回後ろを向いて、深呼吸してから小さく『ヨッシャ!』と叫んで拳を握る。
「…何なの?」
いぶかしげな梨華の顔を覗き込み、至近距離で囁く。

「…愛してるよ。梨華ちゃんだけを。」

「・・・・・・。」
「…なんか反応してよ…。」
ひとみの顔は極限まで赤い。そんなひとみに、梨華はにこっと笑ってからキスをした。
「…嬉しい。」
「それは、よかった…。」
気合まで入れた甲斐があった、と言うものだ。
 そんなひとみに、梨華はもう一度キス。
「わたしも、愛してる。」
「…そ、それは…よかった…。」
「ねえ、キスして?」
「うへっ!?」
そして、梨華の必殺・上目遣い。

「イヤ?」

ひとみは、激しく梨華の唇を奪う。
 その背後で、完全に存在を忘れ去られた運転手・山崎はぼやく。
「…俺も逃げた〜い…。」
山崎は、居心地が悪くてどうしようもなかった。
8 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時09分55秒


 限定ケーキの試作品が、完成した。
 なつみは完成したケーキを前に、天使の微笑を浮かべる。
「でーきたっ♪」
その声を聞きつけて、希美が厨房に駆け込んで来る。
「できたんれすか!?」
そんな希美の頭をわしゃわしゃ撫でて、なつみは大きく頷く。
「コレ、パイれすか?」
「うん、そう。パンプキンパイ♪」
「パンプキンパイ…って事は、かぼちゃれすね!?」
「そうだべさ。」
希美は目をきらきらと輝かせる。
「あ…あのねあのねあのねっ!!のののおともだちのまこっちゃん、かぼちゃが大好きな
のれすっ!!」
「そうなの?」
「へいっ!!もう、給食で出たかぼちゃの煮つけなんて、ほかのコのをうばおうとするく
らい大好きなのれす!!」
「へぇ〜…。」
なつみはにこっと笑った。
「…じゃあ、十九日前後にウチに連れて来ると良いべ。なっち、まこっちゃんの為にもう
一個作るべさ。」
「ほんとれすか!?あ、でも…。」
9 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時10分25秒
希美の顔が曇る。
「…ななこも作ったら、カチがさがっちゃうのれす…。」
希美はしょぼーん、と俯く。

『…限定ケーキは全て、旦那様から梨華お嬢様への贈り物になるから…同じ物を五個以上
売る事になると、価値が下がっちゃうんだって。』

前になつみが言った言葉を、希美は覚えていたのだ。
 なつみは苦笑して、希美の頭を撫でる。
「…売らなきゃ、良いんだべさ。」
「え?」
「のののお友達に、なっちが作ってあげるんだべさ。だったら、問題はないっしょ?」
希美の顔が、ぱあああっと輝く。
「ありがとうなのれす!!なつみおねーちゃん!!」
「あはははは。可愛い妹のお友達がウチに来るなら、歓迎するのは当然だべさ。」
抱きついて来た希美に、頬擦りをする。
 まるで、赤ん坊を抱いている時の様な香りがした。
 と、そこに。

…RURURU…TURURURURU…

「あ、電話だべ。」
10 名前:第二十七話 投稿日:2002年11月19日(火)14時10分55秒
なつみは慌てて、電話に駆け寄る。
 その時、なつみはなんだか複雑な予感がした。
 取ってはいけないような、でもどうしても取りたいような。
 電話の相手は、自分は話したくなくて、でも話したいような相手なような。

TURURURURU…TURURURURU…

「なつみおねーちゃん?どうしたんれすか?」
希美に声をかけられて、正気に戻る。
(そ、そうだ。もしかしたら里田様からの注文の電話かも知れない!)
「はい、ケーキ屋『Tochter.』でございます。」
『・・・・・・。』
相手は、沈黙していた。
 なつみは、またあの複雑な予感に包まれた。
 電話を切った方が良いかも知れない。でも、切らないでいたい。
「…もしもし?」
『・・・・・・。』
「…どちら様ですか?」
すると、受話器の向こう側から控えめな声が聞こえて来た。

『…なっち…?』

「・・・・・・!!!」
なつみは受話器を握り締めたまま、目を見開いた。
11 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月19日(火)14時11分25秒


はい、どーも…ご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません。
いやぁ、もう容量超えちゃうとは…ちゃんと確認してなきゃ駄目ですね…(汗)
合言葉は目分量☆なこの性格、ちょっと直さなくては…。

>まるみ様
 こんこんVSあややの他にも、各地でイロイロと起こってます(笑)
 やぐっつぁんの出番はこれからです!!
 がんばりますので、どうぞよろしく!!

>ひとみんこ様
 そう言って頂けると嬉し過ぎです!!ありがとうございます!!
 製本化…マジですか?いやん、そんなに愛して頂けるなんて…幸せです!!
 (0^〜^)<ありがとう〜!!ひとみんこ様に…愛を捧げるぜぃえぃ!!
 (T▽T)<…浮気?
 
>>371名無し様
 そう言って下さいますかー!?ううう、嬉しいですー!!
 ( ´ Д`)<君に愛を捧げる…。
 川o・-・)<・・・・・・。
12 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月19日(火)20時26分56秒
おぉ〜新レスですね。おめでとうございます^^
梨華ちゃん&よしこ、ラブラブになれてちょっとほっとしました・・^^
でも、山崎さんの逃げたい気持ちよ〜く分かりました(なぜ?)
では更新楽しみに待ってます。
頑張ってください♪
13 名前:あおのり 投稿日:2002年11月20日(水)01時24分36秒
新スレかっけぇ〜!&おめでとうございます。ついでに目分量かっけぇ〜!(w

今回もご馳走様でした。大変おいしくいただきました。
もう梨華ちゃんはヨシコのものと決定した…のかな?
柴ちゃんにはがんばってもらって、どんどんヨシコの背中を後押しいてもらいたいです。
柴ちゃん、あんたにはうらみはないですがよしいしの甘甘な未来のために踏み台になってもらうです。(w

更新が早くて私的には嬉しい限りです。クロイツさんかっけぇ〜っす!
読むだけの私と違い、作者さんにとっては大変でしょうが、無理をしない程度にやってください。
14 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時54分32秒

 あさ美が普通にもどったと思ったら、今度はなつみがおかしくなってしまった。
「げほぉっ!!なんだこの味噌汁!!恐ろしく辛い!!希美!あさ美!食べちゃ駄目だ!」
「うわぁっ!!こ、このやきざかな…はんぶんくらいナマなのれす!!」
「…あの〜、佃煮をポテトサラダに混ぜるのは、あんまりイケてないと思うんですが…。」
そんな恐怖の声が上がる夕食の席で、なつみはただただぼーっとしていた。
 そんななつみを見て、ひとみは希美とあさ美に耳打ちする。
「…ねえ、なつみ姉ちゃん、なんかあったの?」
すると希美とあさ美は顔を見合わせてから、ふるふると首を横に振る。
「どうしちゃったんだろうね…。食べ物にここまで影響が出るのって初めてじゃない?」
「そうですよねぇ…。」
そんな姉と妹にはさまれて、希美は思い出した。

「…そーいえば…ゆうがたくらいにだれかから電話が来たのれす。それに出てから、なつ
みおねーちゃんはヘンになったのれす!」

「「ヘンな電話?」」
「へいっ!」
15 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時55分03秒
希美は首を傾げる。
「なんか、すっごくヘンれした。なんか、なつみおねーちゃんしどろもどろで…。」
ひとみとあさ美が顔を見合わせる。
「…なんなんだろうねぇ。」
「気になります。」
「そのとおりなのれす。」
そして、三人同時に食卓の上を見る。
「てゆーか…どうします?コレ。」
「…食べられるモンじゃないのれす…。」
ひとみはため息をついた。
「しょーがない。リメイクしよう。」
そしてひとみが立ち上がって、キッチンへと向かった。
16 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時56分25秒


 翌朝。
「…吉澤さん。…吉澤さん?吉澤ひとみさん?」
担任が出席を取るが、真希の隣の席は空席のままだ。
「いませんか?」
担任教師が、出席表に『遅刻』と言うマークを書き入れようとした、その時。

ずどどどどどどどど…ずべっ…ずどどどどど、ばぁぁぁぁぁぁん!!

「はいはいはいはいっ!!今来ました!!吉澤、今来ましたよー!!」
ひとみが、ものすごい勢いで教室に入って来た。真希は額に手をあてて、ため息をついた。
「うああっ!!間に合わなかったかぁ…頑張ったのにぃ!!」
大げさに悔しがるひとみに、担任は笑顔を向けた。
「…じゃあ、転校して来てから初遅刻だから、今回は見逃してあげる。
 その代わり、明日からはもっと余裕を持って来てくださいね。」
「うおっ!マジ!?やりぃっ!!」
そして、担任教師の手を取って言う。
「ありがとう、先生…。今日もキレイですね…。」
「そ、そんな、吉澤さん…お世辞言ったって、何も出ないわよ…?」
「いえ、お世辞なんかではなく、あたしは本気で…」

ばこっ

ものすごい勢いで飛来した文庫本のカドが、ひとみの側頭部にヒット。
17 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時56分55秒
「ぐおあぁぁぁぁぁ〜…」
頭を抑えてうずくまり、本が飛んできた方向を見ると…そこにいたのは、『超☆執事スマ
イル』を浮かべた真希。
 迫力まで備えたその笑顔は、怒鳴られるより怖かった。
「…ハイ、すみません…。席に着きます…。」
落ちた本を拾い上げ、そろそろと自分の席に戻ると…真希が小声で言う。

「…貴様。『浮気は万死に値する』と覚えておけ…。」

普段よりも数倍低い声に、ひとみは戦慄を覚えた。
「う、浮気じゃないって。ただのご挨拶じゃん…。」
「その判断は、私がする。
 …とりあえず今の事は、梨華お嬢様にメールで報告するよ。」
「ゲッ!!そ、それは勘弁っ!!」
「問答無用。」
そう言って、真希は作成しておいたメールを送信する。
「う…あああああ…。」
そして、三十秒後。

『ひとみちゃんの、馬鹿。』

受信したメールを表示した携帯を片手に、ひとみはへなへなと机に突っ伏した。
18 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時57分35秒


 なつみがボーっとしていたおかげで、『Tochter.』の四姉妹は揃って寝坊した。
だけど電車通学のひとみと違って、中学は徒歩十分の距離にある。
 急いで支度を終わらせたおかげで、希美とあさ美はいつもと同じ時間に学校に着けた。
「おはようございます、フランソワーズ。」
「げこ。」
「用務員室の居心地はいかがでしたか?」
「げこ!」
「そうですか…よかったですね。」
「げこ♪」
フランソワーズとの会話を楽しんでいると、担任教師が来た。あさ美は急いで、フランソ
ワーズの入った水槽を床におろす。
 ふと顔を上げると、担任教師と目が合った。
「?」
気のせいかとも思ったのだが、担任は目線を逸らす事なくあさ美を見ている。
 しばらく黙った後、苦しそうに口を開いた。
「…紺野あさ美さん。」
「はい?」
やっぱり自分を見ていたのか、と思い、返事をするが…担任教師はなかなか口を開かない。
「…何ですか?」
あさ美が言うと、ようやくぽそぽそと口を動かした。

「…HRが終わったら、職員室に来て下さい。」

その言葉と共に、周囲で忍び笑いが起こる。
19 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時58分08秒
「はい。わかりました。」
クラスメイト達の反応を見て見ても、あまり楽しい話ではなさそうだ。
「…げこ。」
控えめなフランソワーズの鳴き声を聞いて、あさ美はフランソワーズに微笑みかけた。
(私は大丈夫です。何があっても。)
 ポケットの中のハンカチをにぎりしめる。
そして、担任はさっさとHRを終わらせ、逃げるように教室から出て行った。
「紺野さぁーん。行かなくて良いのぉー?」
どこからともなく聞こえて来た声に対して、あさ美はにっこりと微笑んだ。
「はい、今行きます。わざわざ教えて下さって…親切なんですね。ありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げてから、フランソワーズの入った水槽とカバンを持って教室を出る。
「…何アレ!馬っ鹿じゃないのぉー!?」
そんな聞こえよがしの悪口を背に、教室の扉を閉めた。
 大きく、ため息。
 そして…
「行きましょうか、フランソワーズ。」
「げこ。」
職員室へと、力強く歩き出した。
20 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時58分41秒


 なつみは、実はボーっとしているワケではなかった。混乱しているのだ。
「…どうしたんですか?なっち。」
紗耶香が声をかけても、気付かない。
「なっち?」
もう一度呼びかけられて、ようやく覚醒する。
「うひゃあっ!…あ、ああ…紗耶香さん…。」
「どうなさったのですか?様子が少しおかしいように見えますが。」
「な、なんでもないべさっ!」
笑って見せるが、その笑顔はどう見ても『困り顔』だった。
「そ、そうだ!なっち、ケーキ作らなきゃ…あ!もうこんな時間!」
「…なっち…。」
「開店まで、あとちょっとしかないべさ。急がなきゃ!」
「なっち。」
「えっと、今日出すのは『メロン記念日』と『This is 運命』と…」
「なっち!!」
紗耶香に左手首をつかまれて、なつみは驚きの表情を見せる。
「な…なんだべさ…。」
「今日は、お休みしましょう。」
「な…!!」
なつみは大きく頭を振った。
「だ、駄目だべさ!!まだ開店して日も浅いし、ようやく常連さんができて来た大事な時
期なのに…」
「良いんですよ。『Tochter.』は本来、梨華お嬢様の為だけに作られた店です。
ですから、最悪梨華お嬢様しか客がいなくても良いんです。」
21 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)15時59分15秒
「で、でも…!!なっちが嫌だべさ、そんなの!!」
紗耶香は、なつみの右手首もつかむ。

「…そんな不安定な心で、本当に美味しいケーキが作れるのですか?」

「・・・・・・。」
なつみは俯いた。
「出すぎた真似かも知れません。ですが私は…今のなっちに、ケーキを作って欲しくあり
ません。」
するとなつみの目から、ぽろぽろと涙が落ち始めた。
「…駄目だべ、紗耶香さん。」
「え?」
「…なっちは…なっちは…。」
「なっち?」
なつみは大粒の涙を流しながら、吐き出すように言う。

「なっちは…なっちは汚いんだ。
 だから…紗耶香さんにそんな、気を使ってもらえる人間じゃないんだべさ…。」

紗耶香は、たまらなくなった。
 なんとかして、なつみの涙を止めたかった。
 そんな事を、この天使の口から言わせたくなかった。
 だから…。
「・・・・・・!?」
なつみは、紗耶香に思いっきり引き寄せられた。そして、すっぽりとその腕の中に抱え込
まれる。
22 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)16時02分18秒


「…なっちは、綺麗です。」

「…嘘、だべさ…。」
「本当です。」
ぎゅっと抱きしめていると、クリームとスポンジの匂いがした。
「…まるで、ケーキを抱きしめているようですね。」
「ご、ごめ…っ、ごめんなさい!!なっち、いつもケーキ作ってるから…!!」
「謝る事なんか、ないですよ。」
「だって紗耶香さん、ケーキ…てゆーか甘いモノ、あんまり好きじゃないっしょ?」
その発言に、紗耶香は少し驚く。
「…なんでそれを?」
言った覚えはないのだが。するとなつみは、紗耶香の腕の中でちょっと笑った。
「見てればわかるべさ。…ケーキとかお菓子とかに対する態度とかで。」
23 名前:第二十八話 投稿日:2002年11月21日(木)16時02分48秒
「そうですか…私は、ケーキに対して、どんな態度を取っていましたか?」
「うんとね…ちょっと、冷たい感じ。あんまり興味なさそうな、そんな感じ。」
紗耶香が、苦笑する。
「そんな態度を取っているつもりはなかったのですが。」
 そして紗耶香は、なつみを抱く腕に力を込めた。

「…でも、このケーキは大好きですよ。」

なつみには、一瞬その言葉の意味がわからなかった。
 そして、意味を理解したその瞬間、なつみの顔はぼんっと赤くなった。
 なつみはそのまま倒れこんでしまった為、本日『Tochter.』はお休みとなった。
24 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月21日(木)16時03分22秒


どうしたんでしょうね、なっち。
そして今回、誰よりも男前ないちーちゃん。
流石は元祖。男前!!腹のうちが読めなさそうなトコが、ヨッスィーよりも男前かも(笑)

>ヒトシズク様
 よしこさん、怒られてます(笑)。
 頑張ります!!どうぞよろしく☆

>あおのり様
 柴ちゃん、梨華ちゃんの二つ後ろの席から、まだまだ梨華ちゃん狙ってます(笑)
 でも、梨華ちゃんはヨッスィーのものです(断言)。
 がんばりますね!!よろしくお願いします!!
25 名前:チップ 投稿日:2002年11月21日(木)17時14分14秒
その訛りの強いケーキおいくらかしら?
是非頂きたい、六回払いじゃ駄目ですよね・・・
諦めますので幸せにしてあげてください。


26 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月21日(木)18時08分50秒
ひーさまから愛だなんて、もうどうにでもして!
チャミさまも好きですよ♪

ここのひーさまは、ほんと少年って言う感じですね。
本家男前、紗耶男にゃかないません。

前スレの371さん
完結したら、声掛けてください、プレゼントしますよ。
27 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月21日(木)20時03分28秒
い・・・いちーちゃん〜!!!
君はなぜそんなにかっこよく決めれるの〜!!!!?
なっち&いちーちゃんも気になりますが、一番は梨華ちゃん&よしこですね。(私的には)
よしこの浮気もの!!!
梨華ちゃんと言うか〜わ〜い〜彼女がいるのに・・・・。。。
ごっちんの動きも気になりますっ!
がんばってくださいね。更新楽しみに待ってます!
28 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時05分06秒

 「失礼しまーす。」
「げこ。」
あさ美とフランソワーズの二重唱が職員室に響くと、教師達は一様に静まり返った。
「・・・・・・?」
「げこ?」
あさ美はフランソワーズと目を合わせて、首をかしげたが…そのまま担任教師の席へと向
かった。
「…あ、ああ、紺野さん。」
「何ですか?」
「えっと、その…。」
担任教師は歯切れが悪い。あさ美はますます首をかしげる。
 そして…ふと、机の上に視線を走らせた。
「・・・・・・!!!」
そこにあったものは、あさ美を驚愕させるのに十分なものだった。

 そこにあったのは、真希とあさ美が写った写真。
 公園で泣いているあさ美を、真希が抱きしめている所の写真だ。

「これ…!!!」
真希はスーツを完璧に着こなしている為、どう見ても男にしか見えない。
「・・・・・・。」
担任は、ちらりとあさ美の顔を見てから目をそらした。
「…昨日、匿名で学校に送られて来たんだ。こんな手紙と一緒に。」
渡された紙を、震える手で開く。

『紺野あさ美は、ホスト狂いだ。』

でかでかと書かれたその文字に、あさ美は眩暈を覚える。
29 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時07分08秒
「ほ…ホスト…。」
なるほど、確かに見えなくもない。
 そう考えてみると、この写真も…『ホストに甘える紺野あさ美』と言うように見えなく
もない。
「…で、先生としては…その、紺野さんを信じたいんだけど…こんな写真もある事だし…。」
しどろもどろの担任をにらみつけて、あさ美は叫んだ。
「失礼ですよ、こんなの!!」
「そ、それはそうなんだけど…なんて言うか、事実としてはどうなのかな、って先生は思っ
て…。」
「失礼です!!ホントにこんなの失礼です!!」
あさ美は紙を握りつぶした。

「ホストってなんですか!!」

「…は?」
「ホストなんかじゃないですよ、後藤さんは!!…そりゃー確かに、すっごーくカッコイ
イし、スーツ姿なんかもうそんじょそこらの男の人よりも数倍…いえ、数兆倍似合うし、
動きとかしゃべり方とかも洗練されてて…私も最初は『王子様!?』とか思ったりしちゃっ
たりして…つまりは本当に『男前』だとは思います!!!」
「は、はぁ…。」
30 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時08分16秒
「だけど、ホストってなんなんですか!!失礼ですよ、コレ出した人!!
 …いえ、私は『ホスト』って職業が駄目だって言ってるのではありません。ホストって
大変な職業だなぁ、と思うし、そのサービス精神には見習うべき部分も多いと思っていま
す。」
「そ、そうなの…?」
「そうです!!私は『サービス業』と言うモノに誇りを持っていますから!!」
「そ、それじゃあ、ナニが失礼だと、紺野さんは…?」

「後藤さんは女性です!!」

担任が、ぴきっとかたまる。
「確かに男前ではあるけれど、実はすごく素敵な女性なんです。
 そ、それを…!!ホストって!!男じゃないですか!!本当に失礼です!!」
真希がスーツを着こなしている事を『紛らわしい』とは思わないあさ美であった。
「…じゃあ、この手紙にある事は…」
「まったくのデタラメです。」
「・・・・・・。」
きっぱりと言い放ったあさ美に、担任は困惑した様子でぽりぽりと頭をかく。
「それに後藤さんは…石川家の執事さんですよ?」
あさ美が付け足したその言葉は、効果的であった。
31 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時08分47秒
 担任教師は、そばにおいてあったライターで写真を燃やし、取ってつけたような笑顔を
浮かべる。
「…それじゃ紺野さん。教室に戻って下さい。もう授業始まってますからね。」
あさ美はフランソワーズとかばんを抱えて、職員室から追い出された。
「ったく。」
「…げこ。」
不安そうなフランソワーズに、あさ美は苦笑を見せる。
「…いや、わかってるんですよ。犯人は。ただ、ちょっとわからないのは…」
あさ美の目が、きらりと光る。
「どうして学校側が、松浦さんをそんなにかばうのか。」
 中学生のやる事だ。どこまで巧妙にやったとしても、大人には『犯人は誰か』なんて簡
単につかめそうなモノである。しかも、あの手紙の文字は手書きだった。国語科の教師に
見せれば、誰の字なのかなんてすぐにわかる。
 それなのに、担任は『犯人』よりも内容を重視し、あさ美を呼び出した。
 そして、こんな事をするような人物は…ただ一人。松浦亜弥だけだ。
 あさ美は思考をめぐらせながら、教室へと帰って行った。
32 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時09分21秒


 なつみが目を覚ましたのは、本来ならば開店してから三十分が経った時間だった。
「…うああああっ!!寝ちゃった!!」
なつみが飛び起きると、そこには紗耶香の姿があった。
「おはようございます、なっち。」
その笑顔を見て、朝の出来事を思い出す。そして、今更ながら赤面する。
「…おはよう、ございます…。あの、なっち…どれくらい寝てましたか?」
「一時間半、ですね。」
「一時間半、ずっとここにいてくれたんですか?」
「はい。」
なつみの顔が、ますます赤くなる。
「…帰っても、よかったのに…。」
「そんな事できませんよ。目の前で女性が倒れたって言うのに。」
「〜〜〜〜〜〜っ。」
なつみは両頬を押さえた。熱い。
「…あの、なっちが寝てる間に…何かありましたか?」
「いえ、特になにも。お電話が入ったくらいです。」
「電話?」

「ええ、中澤様、とおっしゃる方から。」

 なつみは、目を見開く。
 そして、震えだした全身を抑えようと、二の腕をつかんだ。
33 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時09分52秒
「…なっち?」
「…裕ちゃん…から?また…!?」
「なっち、どうしたのですか?」
「裕ちゃん…裕ちゃん!!!」
「なっち!!!」
紗耶香の声など、なつみには届いていないようだ。目から、大粒の涙が零れ落ちる。
「なんでだべ、裕ちゃん…!!せっかく…せっかくなっちが…!!!」
「なっち!!!」
紗耶香はなつみを抱きしめた。
 それでようやく、なつみは紗耶香の存在を思い出したようだった。
「…紗…耶香さん…。」
「なっち…。」
紗耶香の腕の中で、なつみはまだ震えていた。だが、だんだんと震えはおさまって来てい
る。
(紗耶香さんのニオイは…なんだかなっちを安心させてくれるべさ…。)
そのニオイに身を任せ、なつみは紗耶香にもたれかかった。
「…紗耶香さん。」
「…はい。」
「なっちの事…どう思ってる?」
すると紗耶香は、なつみをちょっと離して、顔を覗き込む。

「好きです。」

「…それは、どんな『好き』?」
「・・・・・・。」
紗耶香はちょっと迷った。
34 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時10分22秒
 告げてしまおうか。この想い。
 今ならきっと、言える気がする。だが、それと同時に…今なら引き返せる気もする。
 一生お仕えする、と心に決めた人物を思い出してみる。
 だが、紗耶香の心は少しも動揺しなかった。
 そして紗耶香が口を開こうとすると、なつみは手でそれを止めた。
「…やっぱ、聞かせてくれなくて良い。」
そして、今度はなつみの方から紗耶香に抱きついた。

「…嫌いじゃないなら…抱いて、くれないかなぁ?」

「・・・・・・!?」
紗耶香の顔が、驚愕に彩られる。これは、極めて珍しい事である。
「…駄目、だべか?」
紗耶香はなつみを抱きしめて…決心した。
35 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時11分54秒


 ひとみは、冷や汗をたらたらと流していた。
 ここは、石川邸の中の梨華の部屋。高い天井と、真っ白い壁と、ピンクで統一された家
具や調度品がひとみの前に繰り広げられている。
 今日はなつみの都合とかで『Tochter.』はお休みなので、ひとみはケーキを梨
華に届けに来たのだ。
 梨華の部屋に来られたのは嬉しい。一生足を踏み入れる事などできないだろう、と思っ
ていた場所だし、それにここには『梨華の香り』が充満している。
 そんな『幸せの部屋』であるはずのココで、ひとみは冷や汗を流しているのだ。
 それもそのはず。ひとみの目の前に座る梨華は、目に涙をためてじぃぃぃぃっとひとみ
を見ているのだ。
「…ひとみちゃんの、ばかぁ。」
今にも落ちそうな大粒の涙を、懸命にこらえようとしてるその姿は…ハッキリ言って、も
のすごく可愛い。ひとみなんぞ、冷や汗を流しながらもトキメいてたりする。
「だからぁ、誤解なんだってば。あたしは別に、浮気なんてするつもりはこれっぽっちも…。」
「ひとみちゃんにその気がなくても、相手がそう思っちゃったら、それは浮気だもん。」
「…うう〜ん…。そ、そうなの?」
36 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時12分28秒
「そうなのぉっ。」
梨華は、側に置いてあったピンクのテディベアをぎゅっと抱きしめる。
「…勘違いさせるようなコト、しちゃ駄目だよぉ…ぐすっ。」
その様子が、あまりにも可愛かったので…ひとみは我慢できなくなって、梨華をテディベ
アごと抱きしめた。
「…ごめん。もうしない。」
「本当に?」
「うん。絶対。」
「…じゃあ…。」
梨華は、眉毛を寄せて言った。

「今、わたしが一番欲しいモノをくれたら、許してあげる。」

ひとみは、困惑した。
(梨華ちゃんが一番欲しいモノぉ!?)
サッパリわからない。
(ケーキをとか…?それとも指輪?…てゆーか梨華ちゃん金持ちだから、欲しかったら自
分で買うだろーし…。何だぁ!?)
 そして、思い出す。
 『プレゼントを選ぶ時、相手の好みがわからなかったら…自分の一番欲しいモノをあげ
なさい。そうすれば、それがその人の気に入らなかったとしても気持ちは伝わります。』
 昔、あゆみのヒモ時代にあゆみに無理矢理読まされた『良いパートナーとなる為に』と
言う本に書いてあった。
37 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時12分58秒
(あたしが一番欲しいもの…。)
 それは、即答できる。『梨華自身』である。
 もう、さっきからヤバくてヤバくてしょうがないのだ。
 だってここは、梨華の自室。梨華の甘い香りが充満していて、まるで梨華につつまれて
いるような気さえして来る空間。
 更に梨華の現在のお召し物は、白いファー素材のキャミソールに、ピンクのスカート。
暖房の効いた室内に一日中いられる、お嬢様特有の『冬にしか着られない素材で作られた、
季節外れルック』である。
 そして、キャミソールと言うのは…露出度が高い。
 そんな格好をした梨華が、目の前の淡いピンクのソファーの上にちょこんと座っている
のだ。コレはもう拷問に近い。
(…でも、いきなり押し倒したら…やっぱ、嫌われるんだろーなぁ…。梨華ちゃんは『初
めて』っぽいし…)
そりゃそーだ。
(だけど…ココでわかんなくっても、嫌われるんだろうなぁ。それは嫌だ…。
 …よしっ!!)
 ひとみは、腹を決めて立ち上がった。そして、つかつかと梨華に近寄る。
「・・・・・・。」
梨華は潤んだ目で、ひとみを見上げてる。それがもう、ものすごくセクシーで…ひとみは
思わず、理性がブッ飛びそうになった。
38 名前:第二十九話 投稿日:2002年11月22日(金)14時13分32秒
(い、いかん…!!嫌われるワケにはいかん!!)
そして、最後の理性を総動員しながら、梨華の唇に自分の唇を重ねる。
 唇を離すと、梨華はふわん、と笑顔を浮かべた。

「嬉しいっ!!ちゃんとわかってくれたのね!?」

ひとみはきょとん、としているのだが、梨華は気付いていない。
「…ひとみちゃんからのキスが、ほしかったの。だっていつも、わたしが『キスして』っ
て言わなきゃしてくれないんだもん。」
「…あ、ああ…。」
ひとみはうろたえつつも、自分を取り戻す。
「…やっぱり、そうだと思ったよ。」
 大嘘吐きである。
 本当は、『キスで許してッ!』とか言うつもりだったのである。
 そんなひとみの思惑も知らず、梨華はひとみに抱き付く。
「大好きっ!!…もう、他の人に気を持たせるよーな事しないでね?」
「はっはっは。もちろんだって。」
そして梨華は目を閉じる。そんな梨華に、ひとみはキスをする。
 ひとみは、思った。
 早く帰らないと、理性タガがもうヤバい。
 しかし、もっと梨華といたい。
 相反する気持ちと理性の間で、ひとみは人知れず苦しんでいた。
39 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月22日(金)14時14分20秒


 ヨッスィー、耐えてます。
 がんばれヨッスィー。いつかきっと…☆
 そしていちーちゃん。彼女は紳士です。
 んでもってフランソワーズ。某アルジャーノンのごとく知能が向上してるよーな気が…(汗)

>チップ様
 幸せに、なれるんでしょうか?あのケーキは。
 今回こんなんなっちゃってますし…(笑)。
 どーする、いちーちゃん。

>ひとみんこ様
 うう〜ん…ヲトメちっく吉澤、にしたいんですが…お嬢様があまりにもヲトメな為に、それも
ままならない…。
 少年ヨッスィー、どうでしょうか?
 そしていちーちゃん。男前っつーか紳士です(爆笑)。

>ヒトシズク様
 いしよしあまあまを書いていると…なんだかすごーく幸せになれる私。
 これから益々『バカップル度』が上がるかも知れません(笑)。
 大人の恋愛、は別のCPでやりますから(爆笑)
 がんばります!!どうぞよろしく!!
40 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月22日(金)17時56分07秒
姐さん、出てきそうですか? ゆうなちに何が?

なんか痛めの話が出てきそうなのに、痛く感じないのは
全体にハッピーな雰囲気が漂ってるからでしょうか?
41 名前:まるみ 投稿日:2002年11月22日(金)18時45分00秒
新スレ見逃してた〜
姐さん登場か!ゆうなち、どうする?どうなる?

執事真希が怖くなる日々、吉がいつも震えていそう。
がんばれ吉!真希のチェックに負けずに甘々ないしよしを応援しております。

ps ひとみんこ様
製本化されたら私もほすぃーな〜・・・
42 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月23日(土)01時03分51秒
クロイツ さま
新スレ、おめでとうございます。
ご挨拶遅くなりました。(汗)
また、更新お疲れさまです。

最近やばいんです。あまあまな『いしよし』好きなはずなのに、あさ美とフランソワーズの2人?が気になって仕方ありません。
それぞれのCPでまだまだ波乱が起こりそうな予感!
でも、策士の柴田さんのヒモも捨てがいたいのですが、意地悪あやゃにも惚れそうです。
やばい、気が多すぎかも。
では、次の更新も楽しみ待ってます。

PS:第二十九話までの保存完了しました。
   http://kuni0416.hp.infoseek.co.jp/text/index.html
   BGM、少し増やしました。
   あまあまな、よっすぃ〜&梨華ちゃんの時は、ハピサマで!
43 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月23日(土)11時40分25秒
おお〜!!!めっちゃあまあま^^
よしこの理性が持つかどうかが不安ですけど・・・^^;
それにしても!なっちと祐ちゃんはどんな関係!?
すごい気になりますっ!
あと、紺ちゃんとフランソワーズ・・・君たちはなんでそんなにイイコンビなんだ〜!
って叫びたくなりましたね。。。
では更新楽しみに待ってます!
がんばってくださいね!
44 名前:あおのり 投稿日:2002年11月23日(土)11時52分47秒
なっちは裕ちゃんと何があったんだろう?すごおく気になります。
それ以上に気になるのはフランソワーズ、あさみちゃんと普通に会話してる…
あさみちゃんの「完璧ですオーラ」に近づくと生き物は知能が発達するとか…んな訳ないか
ゆうなち、いちなち、かごやす、ごまこん、フラこん(?)など色んなカップリングが気になって気になって
よしいし?ここのよしいしは直接見たら目を火傷してしまいますのでサングラスをかけて50m離れてから読んでます(w
45 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時51分41秒

 真希の最近の趣味…それは『散歩』。
ここ数日の間に、いきなり散歩が好きになったのだ。
(なんでだろう?)
 ここ数日の間は、天気が良いから。この周辺はあまり人通りがないから、一人になれる
から。一人きりでいると、いつも気を使ってなければいけないと言う緊張感から開放され
るから。
 理由は色々思いついたが…真希hがなんだか言い訳をしているような気分になる。
(言い訳?誰に、何を言い分けるって言うの?)
そう考える自分に、ちょっと苦笑する。

『完璧です。』

(…いい加減、認めなきゃ。)
 あさ美と出会ったのは、気まぐれで散歩をしている最中だった。
 公園で泣いているあさ美を見つけたのも、散歩の最中だった
 ここ二日、あさ美に会っていない。
 それが、真希を散歩に駆り立てる理由なのだ。
「…会いたいなぁ。」
呟いてみて、その声の大きさにちょっと慌てる。しかし、ここは閑静な住宅街。人通りも
ほとんどないし、真希の声を聞いている者は誰もいない。
 もちろん、あさ美の姿も。
 真希はため息をつく。
 と、その時。
46 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時53分08秒
「…みません。先日に続いて、今日まで…。」
「!!」
あさ美の声だ。真希はすばやく反応して、声の方へと向かう。
(落ち着け。落ち着くんだ。ナニ焦ってるんだ、私は!)
そう思いつつも、足は普段より三十パーセントほど速く動いてしまう(当社比)。
 そして、見つけた。制服姿のあさ美を。
 そして、同時に…あさ美の隣にいる人物の姿も見つける。
「いいのよ。紺野さんに会うと、アタシまで元気になれるから。」
「でも…こうも続きますと、さすがに悪い気がして来ます…。」
「ナニ言ってんのよ、子供らしくない!」
(・・・・・・!!!)
真希の目が、見開かれる。
 保田圭だ。
梨華の家庭教師で、日本最高の偏差値を誇る国立大学に通う女。
圭は真希の存在に気付かず、あさ美の頭をぽんぽんと叩く。
「いいのよ。アタシがアンタに何かしたいだけなんだから。」
「…ありがとうございます。」
真希の角度からだと、あさ美の表情は見えない。それが、救いでもあり苛立たしくもある。
「それじゃあね。応援してるわよっ!」
「ありがとうございます!!私…頑張りますね!!」
そして、あさ美は圭を見送ってから、真希が立っている方向に駆け出して来た。
47 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時53分41秒
 その顔は、なんだかとっても晴れやかに見える。
(…私じゃなくても、良いんじゃん。)
あさ美の晴れやかな顔を見ながら、真希は腹の底に熱いものを感じた。

「あれっ?後藤さん!」

あさ美が、ようやく真希の存在に気付く。そして嬉しそうに駆け寄って来た。
「こんにちは!どうしたんですか?こんな所で。」
「…いちゃいけない?」
「え…っ?そ、そんな事はないですけど…。」
いつもとは違う、冷たい言葉。その冷たさに、あさ美はちょっと身構える。
 そうさせているのは真希自身だ。それなのに真希の腹の底の熱い塊は、まるで生きてい
るかのように暴れまわる。
「・・・・・・。」
真希は、あさ美に背中を向ける。
「ど、どうしたんですか?」
「…別に。じゃあね。」
「ま、待って下さい!」
「…何?」
「…あの…その…。」
あさ美は困り果てている。そんなあさ美を見て…真希のイライラは頂点に達した。

「誰でも、良いんだね。」

「え?」
「私じゃなくても、優しくしてくれりゃー誰でも良いんだね。紺野さんは。」
あさ美の頭の中は既に、『?』でいっぱいだ。
48 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時54分12秒
「あの時…額を怪我してる時に偶然通りがかったのが私じゃなくても、公園で泣いてるの
を見つけたのが私じゃなくても!!!紺野さんはソイツの部屋にあがり込むんだね!!!」
「そ、そんな事…!!」
真希はぐぐっと、あさ美に詰め寄り…あさ美を近くの壁に押し付ける。
「きゃあっ!」
「…誰でも、良いんだ。」

どくんっ

そう言った真希の瞳が、あまりにも悲しそうだったので…あさ美も泣きたくなって来た。
「な、なんでそんな事言うんですかぁ…。」
あさ美の泣き声を聞いて、真希ははっと我に返る。
「…ごめん。」
真希はあさ美に背中を向けた。
「なんか私…ちょっと、おかしいね。頭、冷やさなきゃ。」
「・・・・・・。」
あさ美は壁に寄りかかったまま、何も言えない。
49 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時54分43秒
「それじゃ。」
真希は振り向こうともせずに、その場から去ろうとした。

「待って下さい…!!」

去ろうとした真希の背中に、あさ美が抱きつく。
「・・・・・・!!」
「待って下さい!!誤解したままなんて、嫌です!!」
「…誤解?」
「大好きなんです!!後藤さんが!!!」
「・・・・・・っ!?」
真希は慌てて振り向こうとするが、あさ美に止められる。
「…そのまま、聞いてください。」
あさ美はゆっくりと、息を吸い込む。
 真希の香り。
 それを胸いっぱいに吸い込んで…あさ美は口を開いた。
50 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時55分13秒


 「梨華ちゃ〜ん…。ウチ、そろそろ帰らなきゃなんだけど…。」
ぴったりとくっついて離れない梨華にひとみは言う。しかし梨華は、ひとみを離さない。
ひとみは一応、梨華の背中に手を回しているが…この体勢は、辛過ぎる。
(む…胸が!!むむむ胸が!!!)
そう。ひとみにひっついてると言う事は、胸が押しつぶされる形になっていると言う事。
(梨華ちゃん…細いのに…!!細いのになんでそんな、胸があるんだぁぁぁぁ!!!)
嬉しいんだか悲しいんだかわからない状況である。
 そんなひとみに、梨華は上目遣いで言った。

「…ひとみちゃんは、わたしとえっちしたいと思ってる?」

づぎゅんっ
ひとみの心臓は、そんな音を立てながら跳ね上がった。
「んな…っ!!でっ…!!!」
「ねえ、どうなの?」
「そ、それ…それは…」
もちろん、と言いかけて、ちょっと考える。
 言葉と言うのは、力のあるモノである。
 口に出してしまったらきっと、理性の鍵が解き放たれてしまうだろう。
「・・・・・・。」
黙りこくってしまったひとみに、梨華を目を潤ませる。
「したくないの?わたしとは…。」
「そ、そんな事は…ッ!!」
「どっちなの?」
51 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時55分44秒
 そりゃーもちろんしたいに決まってる。
「…梨華ちゃん。」
ひとみは梨華の肩に手を置いた。
「そんな事、軽々しく言っちゃ駄目だよ。梨華ちゃんは石川家の『お嬢様』なんだから。」
「そんなの関係ないもんっ!!」
梨華の潤んだ瞳に見据えられて、ひとみの鼓動はますます速くなる。
 そしてそのまま、梨華は言った。

「わたしは、してほしいな。ひとみちゃんのモノになりたいの。」

ひとみは、固まった。
「…ほ…本気…?」
「うんっ!!もちろん!!」
「冗談、とかじゃなくて…?」
「違うよー!!わたしは本気!」
「てゆーか…えっちって言葉のい、意味、わかってるよね…?」
「もちろん!!!」
とろん、とした笑顔を向ける梨華に…ひとみは、押さえがたい衝動に駆られた。
52 名前:第三十話 投稿日:2002年11月25日(月)21時56分18秒
それと同時に、自制心も働く。
(本人もこー言ってる事だし、頂いちゃえば?)
(や、やめろよ!何考えてんだよ!!こーゆー事はもっと、段階を踏んで…)
(十分踏んだじゃん。それにひとみ。お前はよく今まで耐えた!!そのご褒美だ!!)
(落ち着けよ!!相手は、一般人じゃないんだぞ!?超VIPなんだぞ!?)
(それがどーした!!今はオマエの女じゃんか!!)
(身分差を考えろ!!こーゆーお嬢様の『初めて』を奪って良いのは、生涯の伴侶だけな
んだぞ!?)
天使と悪魔が、耳元で交互に囁く。
(…ああ…天国の母ちゃん…。ひとみは一体、どーすれば…。)
そんな事を訊かれても、天国の母は困るだけである。
 ちらりと梨華を見ると…既にキス待ち体勢。

「〜〜〜〜〜〜っ!!!あああああっ!!!もう!!!」

ひとみは叫んで、梨華をソファに押し倒した。
53 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月25日(月)21時56分51秒


 えろえろヨッスィー。
 天国の母も、見守ってます。頑張れよ。

>ひとみんこ様
 姐さん、多分次回から登場です。
 ハッピーな雰囲気だなんて…そんな…すっげぇ嬉しいです!!!ありがとうございます!!

>まるみ様
 執事後藤、今回はいらついてます(笑)
 いしよし、あまあまっつーか…ヨッスィー困ってます。ジレンマです。

>ななしのよっすぃ〜様
 保存、いつもありがとうございます!!
 こんこん、フランソワーズとごっちんだったら、どっち選ぶんでしょうか(笑)
 フラこん、大人気みたいで…嬉しすぎです!!
 がんばりますね〜!!!

>ヒトシズク様
 理性…持つんでしょうかねぇ。てゆーか今回崩壊しちゃった気もしますが(笑)
 なっちと祐ちゃんは、次回出てきます!!どうぞお楽しみに!!

>あおのり様
 『完璧です』オーラ…笑わせて頂きました。
 そして、今回のいしよしはどうだったでしょうか?ちゃんと離れて見ましたか?(爆笑)
 いしよしらぶらぶを書くと、なんだか癒される今日このごろ…。
54 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月25日(月)22時16分41秒
今日は夜に読みました! やっぱり夜です!
ひーさま行きなさい! 
邪魔は入りません、多分?
55 名前:まるみ 投稿日:2002年11月26日(火)00時51分04秒
悪魔の誘惑に負けると執事後藤が黙ってなさそう。
あさ美も告白か?ごっちん、素直になってね。

姐さん次回か・・・なっちゅー楽しみだな!
56 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時21分36秒

 夕日の差し込む室内で、なつみは一人、ベッドの上で膝をかかえて座っていた。
 なつみは、肩に一枚カーディガンを羽織ってるだけで、あとは裸だ。だが、暖房がきい
ているおかげで寒くはない。
「…いやぁ〜。なっち、びっくりだべさ。
 『もしかしたらこの人も、女の人オッケーなのかなぁ〜?』とは思ってたけど、まさか
本当にオッケーだったとはねぇ。」
 できるだけ明るい声で言ってみる。
「しかも、なまら上手いし。どこで磨いたんだべさ、そのテクニック、みたいな。」
 だが、声とは裏腹に…顔は、暗い。
 なつみの脳裏に、一時間程前に帰って行った紗耶香の事が浮かぶ。
 紗耶香は優しかった。
『…良いんですか?本当に?後悔、しませんか?』
『もう…止まりません。今更拒まれたら、私は…きっと、狂ってしまう。』
『…なっち、寒いでしょう。脱がす前に、暖房を入れましょう。私は平気ですが…なっち
が風邪をひいてしまいます。』
そうして押し倒した後も、優しかった。
57 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時22分06秒
『失礼します。』
『ああ、なっち…綺麗ですよ。なっちは本当に綺麗です。』
『大丈夫ですか?痛くありませんか?』
『…可愛い。』
最中も、ものすごく気を使ってくれた。
本当に、優しかった。
『…すみません。私とした事が…なっちを泣かせてしまいました。』
『とても可愛かったですよ、なっち。』
『…それでは私は、帰ります。なっち、そのままでいては風邪をひいてしまいますよ。こ
れを羽織って。』
最後の最後まで、本当に優しかった。
「…裕ちゃんとは、大違いだべさ。」
 あの人は、いじわるだった。
 泣いているなつみや困り顔のなつみが好きだ、と言った。
 体を重ねる度に、そのいじわるな攻め方に泣かされた。
58 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時22分46秒


 出会ったのは、なつみが高校生だった頃だ。
『中澤裕子です。担当は、英語です。よろしゅう。』
教育実習生として、なつみのクラスに来た彼女は…ものすごく目立った。
教育実習生だと言うのに金髪だったし、関西弁だったし、スカートも他の実習生たちに比
べると格段に短かったし。
 クラスメート達が不安そうな顔をする中、なつみは裕子に恋をした。
 弁当も作ったし、お菓子も差し入れた。
 裕子の研究授業には、進んで協力した。
 そうしているうちに、だんだん仲良くなって…そして、付き合うようになった。
『なっちの笑顔もええけど…泣き顔は、もっとええ。』
そう言って、いつもいつも泣かされた。その為に、デートをすっぽかされた事も一度や二
度じゃない。
 それなのに…嫌いになれなかった。
 そばにいられるだけで、幸せだったのだ。
 それなのに…。

 ぴーんぽーん

玄関のチャイムの音で、なつみはわれに返る。
「…は、はーい!!」
叫んでから、気付く。
(うああああっ!!な、なっち裸だっ!!)
しかも胸元にはたくさんのキスマーク。人前に出られる格好ではない。
59 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時25分23秒
 しかし、返事をしてしまったからには…居留守は使えない。
 なつみは慌ててクローゼットを開け、近くにあった服を身にまとった。
 下着をつけ、白いシャツのボタンをとめ、スカートに足を通す。スカートのファスナー
をあげながら、玄関に向かった。
「はい、はーい!!すみません!!おそくなって…」
そう叫んで、扉を開けて…なつみはかたまる。

「裕…ちゃん!?」

ぱくぱくを口を開け閉めするなつみを、裕子は突然抱きしめた。
「…久しぶり。髪切ったんやな、なっち。」
「…なんで…!?」
すると裕子は、なつみの顔を覗き込みながら言った。
「ウチ、今この店の目の前の家のお嬢様達が通ってる学校で、教師やってるんや。
 それで、その生徒からなっちがここにいるって聞いた。」
カラーコンタクトの入った裕子の瞳が、揺らめいている。
「…やっぱウチ、なっちじゃなきゃ駄目なんや。それが、ようやくわかったんや。」
「そ…んな…!!!」
「なあ、なっち。もう遅い?もう駄目か?もう一度、裕ちゃんのなっちにならへん?」
60 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時25分55秒
「・・・・・・。」
「ずっと、探してた。もう、なっちだけなんや。ウチには、なっちしかおらん…!
 ダンナとは離婚した。もう、なっちを離したりせぇへん!!」
「・・・・・・。」
なつみは、俯く。
「…勝手だべ、裕ちゃん…。」
「わかっとる。」
「…なっち…だけ?それだったらなんで、あの時…」
なつみの胸に、封印していた過去の記憶が蘇る。

『ウチ、実は結婚しとるんや。で、なっちとの事がダンナにバレた。
 …ウチは、ダンナを取ろうと思う。だから、別れよう。』

裕子が発したその言葉を思い出すだけで、胸が張り裂けそうになる。
 何日も何日も、泣き続けた。食事なんて、喉を通らなかった。救いとなったのは、ケー
キだった。ケーキを作る事で、なつみは立ち直る事ができたのだ。
 それを思い出して、なつみは裕子を押し戻した。
「…帰って、裕ちゃん。」
「なっち…!!」
「ごめんね。なっちはもう、裕ちゃんに振り回されるのはゴメンだべさ。」
「・・・・・・。」
61 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時26分25秒
「それにね。」
なつみは、シャツのボタンを外す。
「・・・・・・っ!!!」
出てきた、たくさんのキスマークに…裕子は息をのんだ。
「…なっち、もう…裕ちゃんよりも好きな人が出来ちゃった。
 遅いんだよ、裕ちゃん。」
なつみは、裕子を玄関の外に追い出す。

「…ばいばい。」

玄関の扉を閉め、鍵もかける。
 そして、一気に階段を駆け上り…自分の部屋へと駆け込んだ。
 涙が、止まらない。
「…なんでだよぉ。」
 突き放したのは、自分なのに。
 なつみはそのまま、床に座り込んで涙を流し続けた。
 頭に浮かぶのは紗耶香の笑顔だけ。
「…会いたい…。」
そう呟いて、なつみは遠くを見つめた。
62 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時26分56秒


 ひとみ押し倒された梨華は、ちょっと震えていた。
 それに気付いて、ひとみの理性が目を覚ます。
(…な、なにやってんだよあたし!!何いきなり押し倒してるんだよ!!)
梨華に誘われたわけだが、ひとみは激しく動揺していた。
 そして、自分の『初めて』の時の事を思い出す。
(…やっぱ、怖かったよなぁ。するのもされるのも…。)
ひとみは自分から『して』とは頼まなかった。
ひとみはちゅ、と梨華の額にキスをした。
「やっぱやめよう、梨華ちゃん。」
「な、なんで…?」
「だって…その…。」
くちごもっていると、梨華の瞳がどんどん涙を溜めて行く。
「梨、梨華ちゃん!?」
ひとみは慌てて梨華を抱き起こし、顔を覗き込む。
「なんで泣くの?」
「だって…だってぇ!!」
梨華は両手で顔を覆う。

「やっぱりひとみちゃん、わたしの事そんなに好きじゃないのねっ!!!」

「んなっ!?」
「ずっと、そうじゃないかって思ってたのぉっ!!」
63 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時27分28秒
「なんで!?」
「だって、キスだっておねだりしないとしてくれないしぃっ!!」
「さっき、あたしからしたじゃん!!」
「アレだって、『わたしが一番欲しいモノをくれたら許してあげる』って言ったからでしょぉ!?」
「うぐっ!!!」
『実はそうじゃなくて、何が欲しいのかわからなかったからとりあえずキスしただけです』
とは言えないひとみ。
「それに…愛してるとか好きとか言ってくれるけど…ほ、他の子にも言っちゃうみたいだし!!」
「もう言わないって!!」
「そーゆー問題じゃないのぉ!!それに…」
梨華はぐす、と鼻をすする。
「わたし、すごく嫉妬してるんだから!!真希にも、柴田さんにも、ひとみちゃんが過去
に付き合った人達にも、その他のひとにも!!
わたしよりももっとひとみちゃんを知ってる人達に、すっごく嫉妬してるんだから!!」
ひとみの顔が、かぁぁっと赤くなった。
「…どうして、わたしがひとみちゃんを想うように、ひとみちゃんはわたしを想ってくれな
いんだろう…。わたしはもう、大好きで大好きでしょうがないのに…。」
64 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時28分06秒
 ようするに、梨華は不安だったのだ。
 ひとみがあまりにも遠慮深いから。
 それは、本当は仕方がない事だ。梨華は大金持ちの令嬢で、ひとみは一般人。それを考え
てしまうと、ひとみはそんなに積極的になれないのだ。
 だから梨華は、抱いてほしかった。
 そうすれば、気持ちを確かめられると思ったのだ。
「…そんな事ないよ。」
ひとみは梨華の髪に触れた。
「あたしだって、大好きだ。あたしも、ごっちんとか梨華ちゃんの家庭教師の人とかに嫉妬
してる。もっともっと梨華ちゃんに触れたいし、どうしようもないくらい好きなんだ。」
「…うそ。」
「ほんとだって。」
ひとみは梨華を抱き寄せる。
「でもね…そんな不安な気持ちのままの梨華ちゃんを抱くなんて、ウチにはできないよ。」
「・・・・・・。」
「だって、それじゃ…なんか、意味がないように思えるし…。」
「…わかった…。」
梨華は涙に濡れた顔を上げた。
「…じゃあ、ひとみちゃん。信じて良いのね?
 ひとみちゃんは、わたしを好きだって…本当に信じちゃって良いの?」
「もっちろん!!大好きだよ、梨華ちゃん!!」
「・・・・・・。」
65 名前:第三十一話 投稿日:2002年11月26日(火)14時28分37秒
それでもなんだか不安顔の梨華。そんな梨華の胸元に、ひとみは口を付ける。
「えっ?…ん…っ。」
梨華は驚いて身を強張らせるが、次第にひとみに身をまかせるようになって行く。
 どのくらい、そうしていただろうか。
 ひとみが唇を離すと…梨華の胸元には、赤い花が咲いていた。

「…あたしのものって、しるし。」

梨華はぎゅっと、ひとみにしがみついた。そして、ひとみの服のボタンを二つ外す。
 そして、梨華もひとみの鎖骨のあたりに口を付ける。
 口を離すと、そこにもう一つの花が咲いた。

「…わたしも、つけちゃった。」

舌を出してそう言う梨華を、ひとみは抱きしめた。
 そして、心の中で思う。
(これで、良かったんだ。やっちゃわなくてよかったんだ。だから落ち着け、あたしの
本能…!!)
 そんなひとみに、不安も襲って来る。
 梨華につけたキスマークを真希が見つけたら、自分はどうされてしまうのだろうか、と。
66 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月26日(火)14時29分10秒


裕ちゃん、梨華ちゃんのクラスの担任なんですが…皆様、覚えてらっしゃるでしょうか?
覚えてて下さったら、嬉しいなぁ…。
 そしてヨッスィー。よく耐えた。

>ひとみんこ様
 こーゆー結果に終わりました。
 やっぱ、お嬢様相手にするのは苦労するみたいです。
 てゆーかヨッスィーの鎖骨は美しいと思うのですが(笑)。

>まるみ様
 姐さん、いかがでしたかー?
 ヨッスィー、誘惑には勝ちました(笑)
67 名前:まるみ 投稿日:2002年11月26日(火)16時48分12秒
物の見事に担任裕ちゃん忘れてた(笑
思わず過去から見直したら、ちゃんと9話に出てるじゃな〜い。
なんか振られちゃったけど、まだ出番あるのかな?
無理矢理にでも顔を出しちゃえー!がんばれ裕ちゃん
68 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月26日(火)20時10分27秒
姐さん、出てましたっけ? 忘れてた! ごめりんこ!

ひーさまのサコツ? さこつ? 差子津? SAKTOTU?
画像張り付けて壁紙にします。
69 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月26日(火)23時01分46秒
クロイツさま、更新お疲れさまです。
それにしても、よっすぃ〜、よくぞ理性のブレーキが効いた。えらいぞ!
でも、実際ここの梨華姫に『しって』って言われたら止まれる自信無しです。(笑)
なっちと中澤先生の関係も解明され、こんごの複雑な人間模様も楽しみです。
でも、紺野さんのフランソワーズは、冬には冬眠するのかな?
続きも楽しみに待ってます!!
70 名前:あおのり 投稿日:2002年11月27日(水)00時38分55秒
うへ〜今回もよしいしご馳走様でした。やっぱり裸眼では見れませんでした(w
なんにもしないでキスマーク付け合うっていうのはすごく萌えるシュチュエーションですなぁ
梨華お嬢が積極的なのがたまらんです。
71 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時20分43秒

 石川邸の敷地内にある、使用人用の寮に着いた紗耶香は…メイドの一人に呼び止められ
た。
「市井さん。真里お嬢がお呼びです。」
「はい、わかりました。真里お嬢様に『着替えたらすぐに参ります』と伝えて下さい。」
「わかりました。」
紗耶香は早足で部屋に戻り、服を着替えた。
 真里の前に行く前に、シャワーを浴びなければならない。
 なつみを抱いた直後の紗耶香からは、甘い香りが漂っているのだ。
 素早くシャワーを浴び終え、慣れた感じで男物のスーツを身にまとう。
 鏡の前で簡単に全身チェックをしてから、部屋を出た。
(真里お嬢様…。)
早足で石川邸に入り、真里の部屋へと向かう道中、紗耶香の気は重かった。
 思い出すのは、二年前までの真里の事。
 明るくてよく笑い、裏も表もない少女だった頃の真里。
(真里お嬢様は、変わってしまわれた。)
そう思ってから、頭を振る。
(…それでも、私の主は真里お嬢様だけだと決めたじゃないか。)
真里の部屋の扉の前で、紗耶香は顔を引き締める。
72 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時21分15秒
(…もう、思い出すのはやめよう。
 過去は過去。現在は現在。私の愛した真里お嬢様は、もういないんだ。
 現在の真里お嬢様こそ、私の主。私がお仕えすべき方…。)

こんこん

「市井です。遅くなりまして、申し訳ございません。」
「どうぞ。開いてるわ。」
「失礼いたします。」
扉を開けると、豪奢なソファーに小さな体を埋めるようにして座っている真里がいた。
「…本当に、遅かったじゃない。」
「はい。申し訳ございません。」
「・・・・・・。」
真里は足を組み替えた。
「…頼みたい事があるの。」
「はい、なんでございましょう?」
「中澤裕子。」
真里は紗耶香に、ぺらりと一枚の紙を放ってよこす。その紙には、『中澤裕子』と言う人
物の個人情報が、顔写真付きでびっしりと書かれていた。
「…梨華お嬢様の、担任教師でございますね。」
「そう。そして…紗耶香の大切な大切な『安倍なつみ』の、前の恋人。」
73 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時21分46秒
「・・・・・・!!」
「…私が知らないとでも思ってるの?」
真里はソファーから体を起こし、持っていた扇子で紗耶香の顎に触れた。
「…今日、『Tochter.』はお休みだったそうね?それなのに、紗耶香はいつもよ
り遅く帰って来た…お楽しみだったのかしら?」
「・・・・・・。」

ばしっ

黙る紗耶香に、真里は平手打ちをかます。
「許さない。」
「・・・・・・。」
真里の長い爪が引っかかったらしい。紗耶香の頬から一筋の血が流れ出した。
「主である私はこんなにも不幸なのに!!お前だけが幸せになるなんて…許さない!!」
真里は扇子を開く。
「…わかってるでしょ?紗耶香。私が不幸だったら、お前も不幸でなくてはいけないの。」
「…わかっております。」
「そう。」
真里の顔が、まるで子供のように無邪気な笑顔に変わる。
「それなら良いわ。それでね、本題なんだけど…」
まるで何事もなかったかのように…真里は笑顔で話を変える。
「私ね、その『中澤裕子』と会いたいの。」
「…かしこまりました。明日にでもお会いになれるよう、手配致します。」
74 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時22分19秒
「そうして。…それと、紗耶香。」
真里は笑顔で紗耶香に言った。

「『Tochter.』へのお手伝いは、変わらず続けて良いわよ。
 その代わり、もう『安倍なつみ』には手を出しちゃ駄目。握手する事すら許さない。
 …私は優しいから、『会っちゃ駄目』とは言わないわ。」

「ありがとうございます。」
「それじゃ、もう下がって。これから服屋さんが来るの。」
「はい。失礼致します。」
紗耶香は、真里の部屋を出た。
 そして、早足で石川邸を出て…寮にある自室に帰る。

がこっ

 紗耶香は、壁を殴りつけた。
「・・・・・・。」
 二年前、真里を守れなかった。その為に、真里は変わってしまった。
 紗耶香はその場にしゃがみこむ。
 頭に浮かぶのは、なつみの天使の微笑み。
「…会いたい…。」
そう呟いて、紗耶香は遠くを見つめた。
75 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時22分55秒


 真希の背中に抱きついたあさ美は、心臓をバクバク言わせていた。
「…あ、あの…ですね。聞いてほしいって言うのはですね…その…。」
そんな様子のあさ美に、真希はいささか不安になる。
「…紺野さん、大丈夫?」
「はいぃっ!!その…なんてゆーか…あのっ!!」
真希の前に回って来ている手が、震えている。
「あの…私、逃げないから。ちゃんと聞くから。だから、もっと落ち着いて。」
「は、はい。すみません…。」
(…私から『聞いてください』とか言っておいて…後藤さんに気を使わせるなんて…私っ
て本当に駄目だ…。)
泣きそうになるのをぐっとこらえ、あさ美は思い切って言った。

「さっきも言いましたけど、私…後藤さんが大好きなんです。」

「・・・・・・。」
「あの時あそこにいたのが後藤さんじゃなかったら、私…きっと今頃逃げ出してます。」
「・・・・・・。」
「後藤さんが『味方だ』って言ってくれたから…私、『戦おう』って決意できたんです。」
「・・・・・・。」
「だから…その…誰でも良く、ないんですよ…。」
何も言わない真希に、あさ美の震えは激しくなって行く。
76 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時23分27秒
「その…ごめんなさいっ!!!」
あさ美は、真希から離れて駆け出した。
「ま、待って、紺野さん!!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!!」
駆け出したあさ美の腕を、真希は素早く掴んだ。
「…なんで、止めるんですかっ!!」
「だって私、返事してないし。」
「・・・・・・。」

「私も、好きだよ。」

あさ美は涙に濡れた瞳を見開いて、きょとんとした。
「…はい?」
「だから、私も好き。」
「…どんな風に?」
「い、言わなきゃ駄目?」
真希の顔が、ちょっと赤くなる。そんな真希に、あさ美は言った。
「聞きたいんですぅ!だって私は…その、友達としての『好き』とかじゃなくって…!」
「・・・・・・。目ぇ、つぶって。」
77 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時24分01秒
あさ美を首を傾げつつ目を閉じる。

ちゅっ

唇に、一瞬だけ感じた暖かい感触。
「…わかった?」
そう言った真希の顔は、『執事』の顔ではなかった。
「・・・・・・。」
驚いた顔をしているあさ美を、真希は優しく抱きしめる。
「…ごめん。私、ヒドい事言ったね。ちょっと、嫉妬しちゃって。」
あさ美は、ぼんっと音を立てて赤くなり…そして、おずおずと真希の背中に手を回す。
「しかも、先に言わせちゃったし。」
「いえ、そんな…。」
「好きだよ。」
「〜〜〜〜〜〜っ!」
「大好き。紺野さんが。」
「…私も、後藤さんが大好きです。」
見詰め合って、どちらからともなくキスをする。
 唇が離れた後…あさ美はゆでたこのように赤くなってへたりこんだ。
78 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時24分47秒


 リビングでおやつのケーキを頬張る希美は、これ以上なく幸せそうな顔をしていた。
 希美が食べているのは、『プロポーズ』。
 なつみが作ったにしては珍しく、装飾の極端に少ないレアチーズケーキだ。
 素朴だが上品、と言う、なつみ自身をそのまま表したようなこのケーキは、舌の肥えた
マダム達にも人気のある一品。
「んん〜。おいしーのれす!」
希美が幸せそうにそう言った直後、玄関が開いた。
「ん?」
振り返ると、ひとみがよろよろと家の中に入って来る所だった。
「おかえりなさーい。」
「おう…ただいま…。」
「ひとみおねーちゃん、どしたのれすか?」
希美は心配そうにそう言う。
 そりゃそーだ。
 ひとみは、げっそりとやつれていた。
 『頬袋』といつも希美にからかわれる頬はこけ、顔色も悪い。
「…うん。ちょっとね。姉ちゃんはがんばって来たんだよ…。」
「なにをれすか?」
「うん…そりゃーもう、我慢大会並みに辛い事を耐えて来たんだ…。」
「そ、それはたいへんれしたね。」
「わかってくれる!?」
79 名前:第三十二話 投稿日:2002年11月27日(水)17時25分17秒
がしっと両肩を掴まれて、希美はちょっと引く。
「わかってくれる!?わかってくれるの!?」
「へ、へい…」
「がんばったよね!?あたし、がんばって耐えたよね!?」
「…そうなんれすか?」
「そう!!ありがとう、のの!!」
「いえ…どういたしましてなのれす…。」
ひとみは希美を離して、フラフラと自室へと帰って行った。
「・・・・・・?」
希美は、首をひねる事しかできなかったそうだ。
80 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月27日(水)17時25分47秒


ヨッスィー、疲れてます。よくがんばった。よく耐えた。
そして、矢口さん。
そんなあなたが大好きです。

>まるみ様
 うう〜ん、やっぱ忘れ去られてましたか…。
 けっこう前だしなぁ(汗)
 裕ちゃん、まだまだ出番ありますよー!

>ひとみんこ様
 ヨッスィーの鎖骨画像…私も欲しい。
 梨華ちゃんの谷間画像も欲しい…。
 そして二つを並べて壁紙にするのれす。

>ななしのよっすぃ〜様
 フランソワーズ…冬眠するんでしょうか?
 知能高いしなぁ…でも、知能高くても本能には勝てないでしょうか。
 冬眠しちゃったらこんこんさみしがりますから…どうなんでしょう?
 がんばりますねー!!

>あおのり様
 萌えてくださいましたか。それはよかった。
 てゆーかヨッスィー…アンタ本当によく耐えたよ…。
 積極的で誘い受。それがウチの梨華ちゃんです(笑)
81 名前:まるみ 投稿日:2002年11月27日(水)18時10分26秒
まりっぺの過去に何があったんだ〜。
みんがの過去が、だんだん出てきて一層楽しみな毎日!

クロイツ様期待してまっせ〜
82 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月28日(木)15時16分03秒
よっすぃーおつかれさまでした^^
てか、矢口・・・アンタ・・・すごいっすね!読んでるだけでびびりました^^;
ゆうちゃん・・・あんたは、なっちになにをしたー!!!
叫びたいこのごろです^^
では更新楽しみに待ってます!
がんばってくださいな。
83 名前:第三十三話 投稿日:2002年11月28日(木)15時55分39秒

 亜弥はいつも、学校から出るとすぐに駅のトイレで私服に着替え、そのまま遊びに行く。
私服は毎朝、学校に来る前に駅のコインロッカーに入れておくのだ。
 だが、今日は違う。
 着替えず、制服姿のままで電車に乗る。
 しばらくそのまま乗って、目当ての駅で降りた。
 そして、花屋で小さな花束を買って…花屋の目の前の病院に入って行った。
「・・・・・・。」
病室の前で、亜弥は立ち止まる。

『藤本美貴』

そんな名札の下がっている病室は、個室…しかも特別室。
亜弥は無表情なまま、ノックもせずに扉を開ける。
「…また来たよ、ミキスケ。二週間ぶりかな?ここんトコ、ちょっと忙しくてあんま来れ
なくてごめんね。」
声は明るいが、亜弥は無表情のままだ。
「来れない間に、学校でいろんな事があったんだよー。…実はね、転校生が来たの。紺野
あさ美って言って、ちょっと変わった変な子。クラスで浮いちゃってるから、あややが面
倒見てあげてるんだ。」
亜弥は花束をベッドサイドのテーブルに置き、椅子を引き寄せてそこに座る。
84 名前:第三十三話 投稿日:2002年11月28日(木)15時56分53秒
「でもね、その紺野さんっって子…あややの事、うざがってるみたいなんだ。
 あやや悲しいな…。でも、がんばるよ!だから、ミキスケも頑張って!!」
そう言って、亜弥は美貴のやせ細った手を握る。しかし、美貴は握り返さない。
 それだけではない。さっきから返事もしていない。

 それもそのはず。美貴には、意識がないのだから。

「・・・・・・。」
亜弥は唇をかみ締める。
 交通事故だった。
 青信号を渡ろうとしていた美貴を、信号無視をした車が撥ね飛ばしたのだ。
 犯人は、そのまま逃げた。そしてまだ、つかまっていない。目撃証言によると、運転手
は女性だったらしい。
 幸い、命は助かった。しかし、打ち所が悪かったらしい。事故から二年経った現在も、
美貴の意識は戻らない。
 部屋の中に、ピッ、ピッ、と言う規則的な電子音が響く。
 これが唯一、美貴が生きていると言う証。
 家が隣同士で、赤ん坊の頃から一緒に育った。
 何よりも誰よりも大切な人だった。
 なついてた祖父が死んだ時も、両親が別居した時も、美貴がいてくれたから立ち直れた。
85 名前:第三十三話 投稿日:2002年11月28日(木)15時57分25秒
「・・・・・・っ!!!」
亜弥は、涙を流し始めた。
「…殺してやるっ!!!」
暖かい、だが力がまったく入っていない美貴の手を更に握り締める。
「殺してやる…!!絶対見つけ出して…この手で!!!地獄を見せてやる!!!」
嗚咽を上げながらも、亜弥の目からは怒りの炎が消えない。
 そして、呟く。

「…紺野も、大嫌い。あんな幸せそうな顔したヤツ、許せない。
 不幸にしてやる…!!!あややの苦しみを、ちょっとでも味わえば良いんだ!!!」

亜弥はそのまま、美貴の横たわるベッドに突っ伏した。
86 名前:第三十三話 投稿日:2002年11月28日(木)16時02分52秒


 梨華はドレッサーの前に座り、さっきひとみにつけられたばかりのキスマークを見て微
笑んでいた。つけられた時の事を思い出すと、顔が緩んでしまうのだ。
嬉しくて嬉しくて、ひとみが帰る直前、梨華はひとみに言った。
『ねえ、これ…消えちゃったら、またつけてね。』
それを聞いたひとみの顔は、おそらく梨華は一生忘れないだろう。
「…ひとみちゃんってば。」
梨華はなんだかうずうずして来て、携帯を取り上げる。
ちょっと考えてから、梨華はメールを打ち始めた。
『ひとみちゃんへ。
 さっき離れたばかりなのに、なんだかひとみちゃんがすごーく恋しくなっちゃってます。
 …さっき、すごーく嬉しかったよ。
 ひとみちゃん、わたしの事をちゃんと好きでいてくれてるのね。
 それなのにわたし、疑っちゃったりしてごめんなさい。
 大好きよ、ひとみちゃん。
                            あなたの梨華より』
そして、ドキドキしながら送信ボタンを押す。
(さて、ひとみちゃんはどんなお返事をくれるのかしら?)
87 名前:第三十三話 投稿日:2002年11月28日(木)16時04分04秒



 そのメールを読んだひとみは…ベッドの上にばったりと倒れた。
「・・・・・・っ!!!くあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
携帯片手に、じたばたと暴れる。
「…可愛過ぎるぜ、梨華ちゃん…!!!」
梨華の代わりに、携帯を抱きしめる。
(あたしだって恋しいってばよー!!あああああ、今すぐ梨華ちゃんのもとへと走って行
きたい!!!)
そして、メールを打つ。
『DEAR:梨華ちゃん
 あたしも、梨華ちゃんが恋しいよ〜!今すぐにでも、抱きしめたいくらい!!
 あたしも梨華ちゃんが大好きだよ。…いや、愛してるよ。
 本当に本当に、愛してるんだ。
 だから、不安になんてならなくて良いんだよ。
 あたしには梨華ちゃんしかいないんだからね!!
 最後にもう一回…愛してるぜ!!
                            ひとみ』
「は、はずかすぃ〜…。」
『愛してる』を連発したメールを、躊躇いながらも梨華に送る。
そして、ふと視線をずらした先にあった鏡で、鎖骨のあたりにあるキスマークを見た。
(ああ、梨華ちゃん…!!)
ひとみはもう一回、ベッドに倒れこんだのだった。
88 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月28日(木)16時04分36秒


あややにはそんな事情が…!!
そしてバカップルいしよし。メールでもバカップルです。

>まるみ様
 みんなの過去…重いのばっかでちょっと困ってます(汗)
 誰か、思いっきり笑える過去の人とかいないんでしょーかねぇ…。
 いつもありがとうございます!頑張ります!!

>ヒトシズク様
 そんな矢口さんが大好きです。今回はあややが怖いですね(汗)。
 がんばります!!いつもありがとうございます!!
89 名前:名無し蒼 投稿日:2002年11月28日(木)18時25分01秒
前々からレスをしていましたがHNで登場(w
あややにはやっぱり何か事情があったんですね…!!
そしてそれがこれとはっ!!
そしてメルでもバカップルのいしよし萌え♪
自分はアヤミキ好きで前からいしよしは好きで…w
萌え萌えです♪がんがってください!
90 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年11月29日(金)21時09分48秒
おぉっ!
バカップル!!!!
みきたん、アンタは・・・(泣。
あややにもそんな秘密があったんですね・・・^^
てか、紺ちゃん&ごっちん、おめでと〜♪
ますます楽しみですっ!
更新がんばってください!
応援してま〜す♪
91 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月30日(土)09時07分48秒
ミキティをはねた女って? 誰なんでしょうね・・・・・
あややを救うのは、誰?

これからの展開、目が離せません。
92 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時08分35秒

 付き合い始めて一ヶ月も経過した頃になると、さすがに真希や紗耶香以外の使用人達も、
梨華の『恋人』の存在に気付きだしたようである。
「…マズいな。」
紗耶香と真希は向き合って、声を潜める。
「女なのは別にかまわないんだ。
 そりゃー、男だった方が都合は良かったが…それでもヤツなら、男装させればなんとか
なる。石川家の力があれば、男としての戸籍だって作れるしな。
 一番の問題は…吉澤が『一般人』だって事だ。」
紗耶香はため息をついた。
「せめて何か、他人よりも秀でているモノがあればな…何かの才能が…。」
「才能って…そ、そんなモンなくても、ヨッスィーは良いヤツだよ!!」
「それはわかってるって。怒るなよ、後藤。」
「だって…だって!!」
真希は目を潤ませる。そんな真希の頭を軽く二回叩き、紗耶香は苦笑する。
「わかってるよ。吉澤の価値は、そんなトコじゃなくて…もっと深いトコにあるんだよな。
そして、梨華お嬢様もそんな吉澤に惚れた。」
真希はこくこくと頷く。
93 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時09分09秒
「でもなぁ…。梨華お嬢様の相手となる人間のいるべき世界は、ソレが通用しないかも知
れないんだ。」
「…わかってるよ。石川家の為になる人間じゃなきゃ、梨華お嬢様の伴侶にはなれないん
だって…。だけど、梨華お嬢様は次女じゃないか!!」
「・・・・・・。」
紗耶香は黙って、目を伏せる。
「石川家を継ぐのは、長女の真里お嬢様だ。…確かに、財産の一部は梨華お嬢様が継ぐ事
になるだろうけど…でも、跡取りを生む必要もないし…!!」
「・・・・・・。」
紗耶香は目を開けて、寂しそうに微笑んだ。
「…真里お嬢様は…」
「え?」
「いや、なんでもない。」
紗耶香はにっこりと微笑んで、真希に言った。
「…それじゃあ、ここからは後藤の腕の見せ所だな。」
「…は?なんで?」
「そりゃーもちろん。」
紗耶香はびしっと、真希を指差す。

「相方のお前が、吉澤を『育成』するんだ。」

「…な…!!!」
真希の目が、点になる。そんな真希に、紗耶香は真顔で言った。
94 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時10分15秒
「頑張れ後藤!!男としての『吉澤ひとみ』の戸籍の用意なら私がやっておく。だからお
前は吉澤が十八歳になるまでに、吉澤を梨華お嬢様に釣り合う人間に育成するんだ!!」
「い、嫌だよ、そんな面倒臭いの!!だったら後藤が戸籍用意するからいちーちゃんがヨッ
スィー育成してよ!!」
 真希の脳裏に思い浮かんだのは、先日の小テストの事。
 地理の小テストの点取り問題の『四国四県は?』と言う問題に『九州』と答えていたひと
み。
 社会の小テストの点取り問題の『現在のアメリカ大統領の名前は?』と言う問題に、『ソ
ビエト』と答えていたひとみ。
 国語の小テストの点取り問題の『入手困難』と『顎』と言う漢字の読みの問題に、『にゅ
うてこなん』と『ほげ』と答えていたひとみ。
 それ以上、真希は思い出したくなかったので、忘れる事にした。
「後藤には、無理だって…。マジでいちーちゃんやってよ…。」
「それは無理。だって私、吉澤と面識ないし。」
「くっ…!!」
95 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時10分45秒
紗耶香は優しい微笑みを、真希に投げかけた。

「いいか、後藤。梨華お嬢様の夢である『ひとみちゃんのお嫁さんになりたい☆』が叶う
かどーかは、お前の腕にかかってるんだ・」

「…梨華お嬢様の、夢…。」
真希の瞳に、みるみる内に炎が起こる。
「…お任せください、梨華お嬢様!!この真希が!!必ずや梨華お嬢様の夢を実現させて
見せましょう…!!!」
「いよッ!!それでこそ執事の鑑ッ!!」
真希の魂に、火がついた。
96 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時11分18秒


 その、翌日。
「おハヨ…。」
眠そうな顔で登校して来たひとみに…真希は優しい笑顔で言った。
「おはよう、ヨッスィー。」
「…ど、どうしたのごっちん。なんか笑顔が怖いよ?」
「気のせいだから。気のせい。」
そしてひとみは、ちらりと床を見る。そこには、大きく膨れたスポーツバッグが置いてあっ
た。
「・・・・・・。」
ひとみは、本能的に悟った。『コレについて触れてはいけない』と。
「…い、良い天気だね!!」
「そうだね。絶好の勉強日和だ。」
そして真希は、スポーツバッグの中をひとみの前にブチまける。

 そこにあらわれたのは、本・本・本…。

「こ…これは…?」
顔を引きつらせるひとみに、真希はさわやか〜な笑顔で言う。
「そりゃーもちろん。『ヨッスィーのお勉強セット☆』だよ♪」
「あ、あたしの?」
「そう。ヨッスィーの。」
真希は笑顔のまま、ひとみに詰め寄る。
「今日から私、ヨッスィーの『先生』だから。」
97 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時11分50秒
「い、嫌だよ!!だってウチ、勉強嫌いだし…」
「やかましいっ!!」
真希の顔が、いきなり真剣になる。

「あんた、梨華お嬢様との将来とか考えてないのか!?」

「梨、梨華ちゃんとの将来…?」
「梨華お嬢様は言っていた…。『ひとみちゃんのお嫁さんになりたい☆』と…。」
「え?そ、そうなの?いやぁ…それは…なんちゅーか…。」
真っ赤な顔でぽりぽりと頭をかく。そんなひとみの胸倉を、真希は掴む。
「そんな梨華お嬢様の真っ直ぐな気持ちを、踏みにじるつもりなのか!?」
「踏みにじるって…そ、そんなつもりは…。」
そこまで言って、ひとみははたと気付く。
「あたしのお嫁さんって言っても…あたし、女だよ!?結婚できないじゃん!!」
「はっはっはっはっは!!!石川家を甘く見るなぁ!!石川家に不可能はないっ!!」
真希はニヤリと笑った。
「今頃、石川家の人間が『吉澤ひとみ・男』の戸籍を作る手続きをしてるハズ!!」
「マジかよ!!」
「マジマジ。超マジ。」
「・・・・・・。」
ひとみは床に崩れ落ちた。
98 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時12分40秒
「…ヨッスィーどう思ってるの?梨華お嬢様の事。」
「そりゃー…大好きだよ。愛してるよ。」
「でも、『梨華お嬢様を妻にしたい』とは思わない、と?」
「違う!!あたしだって、梨華ちゃんをお嫁さんにしたいって思うよ!!本気で!!」
「それじゃあ、問題ないね。」
真希はにっこり笑った。
「…いや、問題がないとは言えない。それは、ヨッスィーのその頭。」
「あ、あたま?」
「そう。」
真希はひとみの頭をぽんぽんと叩く。

「石川家のお嬢様のお相手が、アホじゃ困るんだよ。」

ひとみは黙るしかない。
「だから、今日から私とお勉強☆
 さーて!!どうする!?どれから入る!?国語・算数・理科・社会!!!」
「ソレ小学校の科目じゃん!!」
「当然だっつの!!あんた基礎がなってないんだよ!!そんな頭にいくら難しい事積み上
げたって理解なんかできるワケないじゃん!!」
そうして、ひとみ(と真希)の戦いは始まった。
99 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時13分15秒


 真里は、イラついていた。
「紗耶香!!紗耶香はいないの!?」
「も、申し訳ございません。市井は現在、旦那様に申し付かった仕事の最中でして…。」
真里は腹立たしげに舌打ちをする。
「…ったく、どいつもこいつも!!」
そう言い放ってソファーに腰を下ろすと…側に控えていたメイドに向かって怒鳴る。
「ナニそんな所でぼさっと突っ立ってるのよ!!さっさと消えて!!」
「は…はいっ!!も、申し訳ござ、ございません!!失礼いたしますっ!!」
メイドは逃げるようにして真里の部屋から出て行った。その目には、涙が浮かんでいる。
「・・・・・・。」
一人になって、真里は一ヶ月前に会った『中澤裕子』の事を思い出す。

『…何を言われても、ウチはウチの好きなようにしかやらん。』

真里は苛立たしげに、組んだ方の足をぶらぶらと動かす。

『アンタ、悲しい人やね。そんな事でしか、自分の存在を確かめられんなんて…。』

テーブルの上に置いてあった花瓶を、思いっきり蹴り付ける。
がしゃーん
派手な音を立てて、花瓶は砕け散った。
100 名前:第三十四話 投稿日:2002年11月30日(土)19時13分47秒
「何なの…何なのよ、あのババア!!!」
真里の瞳は、怒りの色で染められていた。
「何も知らないクセに!!私の事なんて何も…!!それなのに、あんな偉そうなクチ…!!
この私に向かって!!!!!」
怒りに身を任せている内に、過去の記憶が身体に蘇る。
 大勢の男たち。
 薬を嗅がされて、一瞬で気が遠くなる感覚。
 縛られている自分。
 手首に感じる、硬く冷たい縄の感触。
 下卑た笑い声。
 逃げ出す時の、必死な気持ち。
 逃げてる最中の、生きた心地がしない気分。
 すがるような気持ちで握っていた、ハンドルの感触。
 ようやく届く所にあるアクセルとブレーキの感触。
 そして…

「…いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

真里の悲鳴が、広い広い石川邸に響き渡った。
101 名前:クロイツ 投稿日:2002年11月30日(土)19時14分19秒


ヨッスィーの『婿入り計画』、発動です。
それで良いのか、石川家…。

>名無し蒼様
 ヨッスィー、梨華ちゃんの為にどこまで頑張れるのか!?
 あやみき、何気に私も好きなんですよ〜。
 頑張りますね!!どうぞよろしく!!

>ヒトシズク様
 ごっちん…彼女できても、梨華お嬢様命です。
 こんこんはどう思ってるんでしょうかねぇ。
 応援ありがとうございます!!頑張りますね〜♪

>ひとみんこ様
 さーて誰でしょう?んっふふふふふふ…。
 頑張りますね!!どうぞよろしく!!
102 名前:まるみ 投稿日:2002年11月30日(土)19時38分11秒
四国四県の所で思わず、「吉澤さんが○○だったころ」を思い出してしまった。

超執事から超先生に変身の後藤さん・・・悩みが尽きないですね。
上手く嫁入り計画は、完了するのでしょうか?たいへんです。
103 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年11月30日(土)21時15分07秒
クロイツさま
更新お疲れさままです。
梨華ちゃんのお婿さんになるためですから、かなりきついでしょうね?
ごっちんの教師ぶり、スパルタっぽいですね。
お婿になるための修行、、よっすぃ〜には精一杯頑張ってもらいましょう!

あやゃにも、幸せになって欲しいです。
ミキティ〜を轢いたのは、もしかして...。
続きも期待です。では、楽しみに待っています。
104 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月30日(土)21時45分41秒
昔、知り合いで「仁美」と言う男の人がいました。
とても嫌がっていました、女みたいって。

ひーさま、男戸籍になっても「ひとみ」で行けます。
って、婿養子なんでしょうか?

そうですか、真里お嬢様、そんな過去が!
すごい人間模様、モー大変です。

あちらにご訪問ありがとです。
良かったら、短編、寄稿お待ちしてます。
105 名前:名無し蒼 投稿日:2002年11月30日(土)22時25分05秒
…凄い展開になってきましたね。
執事ごっちん燃えてますね!(w
そしてがんがれよっすぃ〜!君に全てがw

真里にも何か過去がありそうで…
ひょっとしてなんでしょうか?ますます気になります!
あ、あやみきはおいらも最近好きで(w
てっきり嵌っております♪
106 名前:あおのり 投稿日:2002年12月01日(日)01時16分50秒
よっすぃー育成計画…
しかし次から次へと素敵な大計画を思いつく作者さん偉い
アメリカの大統領=ソビエトなよっすぃーをどう変身するのか
茨の道の後藤執事の活躍が楽しみです。

真里お嬢様はどうしたんだろう…気になる
107 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月01日(日)10時19分43秒
久々にパソコンたちあげたら2になってる(早っ )
しかし、ここまで絡まった人間模様を矛盾なく書けるなんてすごいですね
みんな重い過去が…
ハッピーなのはバカップルいしよしだけだし(それがまた好き)
てか、真里とかも名字は石川なんですよね
うっかりしてましたわ
108 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月01日(日)14時38分51秒
バカップルいしよし、最高です。
109 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時25分29秒

 真希による『吉澤ひとみ育成計画』が発動してから、三週間が過ぎた頃の事。梨華は、
真希から聞いた話に…感動しつつも驚いた。

『吉澤ひとみは、お嬢様に釣り合う「男」になる為に頑張っていますよ。』

(嬉しい…!!本当に!!でも…)
梨華の美しい顔に、憂いの色が落ちる。
(…ひとみちゃんにばっかり、苦労はかけられないわ!!)
梨華は決意して、自室を飛び出す。
 向かった先は、メイドの詰め所。
「誰かいる!?お願いがあるの!!」
突然あらわれた梨華に、ブレイクタイムの真っ最中だったメイド達は、驚きのあまり固ま
る。
 煎餅をくわえたまま固まっている者や、思わず茶を噴出した者もいるようだ。
 そのように、ものすごく混乱しているメイド達に向かって梨華は叫んだ。

「お願い!!誰かわたしに、『家事』を教えて!!!」

固まったメイドたちの間に、ぴきっと言う亀裂音が走る。
「り、梨華お嬢様が…家事?」
ようやく口を開けたのは、メイド頭の福田明日香だった。
110 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時26分02秒
 明日香は紗耶香の従姉妹にあたる。紗耶香や真希と同じく、小さな頃から石川家に仕え
ている。若いが、ベテランのメイドである。
「梨華お嬢様。梨華お嬢様は、そんな事をなさる必要はございませんのよ?」
「あるの!わたし、お裁縫なら学校で習ったからちょっとできるけど…でもそれだけじゃ
足りないの!ちゃんと、お料理とかお洗濯とかお掃除とかもできなくちゃ!!」
 ぐっと拳を握る梨華を、明日香は詰め所から連れ出した。
 これ以上の押し問答は、他のメイド達に聞かれてはマズい。
 そして、メイドの詰め所から百メートル程離れた場所にある第三応接室に入り、明日香
は梨華をソファーに座らせた。
「梨華お嬢様に家事なんて、必要ございませんわ。
 お料理はコックが、お洗濯とお掃除とお裁縫は我々メイドがやります。」
「それじゃ駄目なのぉ!」
梨華は潤んだ瞳で明日香を見上げる。
「わたし、将来の夫の為に頑張りたいの!ちゃんと、しっかりした妻になりたいの!
 毎日、愛しいひとにごはんを作って…愛しいひとのお洋服をお洗濯して…二人の愛の巣
をお掃除して!!」
111 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時26分36秒
梨華の目が輝き始める。

「わたしの夢は、大好きな大好きなひとみちゃんのお嫁さん!ひとみちゃんの妻!!
 それを叶えてくれる為に、ひとみちゃんは今、頑張ってくれてるわ。
 だからわたしも、努力しなくちゃ!!良い妻になる為に!!!」

高らかに宣言した梨華に…明日香はため息をついた。
(よかった…詰め所から連れ出しておいて…。コレ、他のメイドに聞かれたら…大事だっ
たわね。『噂は本当だったのか!』って。)
 メイドの間では現在、『梨華の恋人は誰だ?』と言う話題で持ちきりだ。
 その中でも一番の有力候補が『吉澤ひとみ』なのだ。
「…わかりましたわ。」
明日香は梨華の前で膝をついた。
「私が、お教え致します。お料理、お洗濯、お掃除、その他生活するのに必要な事全てを。
…基礎から応用、裏技まで全部お教えいたしましょう。」
「本当!?」
「ただし!」
明日香は、梨華に不適な微笑を見せた。
「私は、厳しいですよ?覚悟なさって下さいね。」
「はいっ!!師匠!!」
そして二人は、しばらく笑った。
112 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時27分08秒


 それよりも十分前。
 石川邸の中の小部屋(ひとみには、ここが本来は何をする場所なのかサッパリわからな
い)では、真希がひとみに勉強を教えていた。
「百点満点!」
真希がひとみに出した宿題のプリントを見ながら、笑顔を見せる。
「伸びたね、ヨッスィー!」
「…まぁね…。」
「最初は『小学校五年レベル』でも三十五点しかとれなかったのに、今回は『中学一年生
レベル』で百点満点取れるなんて!ホント、三週間でよく伸びたよ!!」
「…おかげさまで。」
三週間の苦労を思い起こして嬉し泣きをしている真希。
 実は、勉強を始める際に真希はまず、ひとみの知能指数を測定した。すると…意外な事
に、かなり高かったのだ。
 つまり、やりゃーできるがやらなきゃできないタイプだ。
 それを知って、真希はがぜん張り切った。
 一度教えて理解すれば、ひとみは二度と間違えなかった。
「ホントにもう…今まで、ホントに宝の持ち腐れだったんだね…ヨッスィー…!!」
「…よく知らないけど。」
「今日からは中学二年のレベルに入るよ!!」
「はい…もー、好きにして…。」
真希とは対照的に、ひとみの顔は暗い。
113 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時28分18秒
「…ナニ暗い顔してるんだよ。」
真希に言われて、ひとみは机に突っ伏す。
「…疲れた…。」
そんなひとみを見下ろして、真希は言う。
「三週間で音を上げるの!?」
「だって…だってぇぇぇぇぇ!!!」
ひとみはがばっと起き上がって、真希に涙目で言った。

「勉強始めてから三週間!!あたし、梨華ちゃんに会ってないんだよ!?」

 そう。ここ三週間、ひとみは梨華に会ってない。
 勉強があるから『Tochter.』には出られない。梨華の接客は、希美がしている
らしい。
「ううう…愛しい愛しい梨華ちゃんと、ずっといられる為に頑張ってるのに…!!頑張れ
ば頑張る程、梨華ちゃんから離れて行ってる気がする…。」
「そんな事ないって。むしろ、逆だよ。」
真希はひとみの頭にプリントをかぶせる。
「前のままのヨッスィーじゃ、どれだけお互いが想い合っていても…その内絶対に石川家
に邪魔される。引き離させられる。
 だから、まだ梨華お嬢様とヨッスィーの関係が『噂話』の内にヨッスィーが『非の打ち
ようのない人間』になれば…邪魔はされない。」
114 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時28分51秒
「・・・・・・。」
「それに、この三週間でよーくわかった。
 ヨッスィーには、石川家を納得させられるような人間になれる素質がある!!」
「…そぉかなぁ…。」
あくまで乗り気でないひとみに、真希は続けた。
「ヨッスィーには言わなかったけど、実は…梨華お嬢様にはたくさんの縁談が来ているん
だ。」
「え!?」
ひとみは目を見開いて、真希を見る。
「世界中の金持ちが、梨華お嬢様を欲しがっている。
 そりゃそーだろう。梨華お嬢様のバックには、『石川家』と言う大金持ちがついている
んだから。」
真希は、一つしかない窓のカーテンを半分だけ閉めた。
「…だけど、私は嫌だ。そんな…『石川家』と言うバックだけを見てるヤツの所に、大切
な梨華お嬢様を嫁がせたくない!!不幸になるのは、目に見えるじゃないか!!」
「ごっちん…。」
「だから、ヨッスィーには頑張って欲しいんだよ。」
真希の真剣な目に見据えられて、ひとみはちょっとビビる。
「ヨッスィーは、梨華お嬢様の財産なんか見てない。梨華お嬢様自身を見ている。そして、
『石川梨華』と言う一人の人間を愛している。そうだよね?」
「うん、もちろん。」
115 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時29分26秒
「だから、頑張って。石川家に認めさせるような人間になって。
 『石川家から梨華お嬢様を奪う』んじゃなくて、『石川家から梨華お嬢様を譲り受ける』
んだ。そうすれば、梨華お嬢様の苦労もヨッスィーの苦労も、極端に少なくなる。」
真希は、ひとみに背を向けた。
「…それくらいしか、私は多分…もう梨華お嬢様にして差し上げられないんだ。」
「それって…?」
真希は振り返り、ニヤリと笑う。

「梨華お嬢様より、あさ美ちゃんの方が大切になっちゃったからね。」

「・・・・・・。」
ぽかん、としていたひとみだったが、何か思い当るフシがあったらしい。
「…ぁああああっ!!あああああああああああああっ!!!」
ひとみは立ち上がって、真希を指差す。
「最近あさ美、なんだかヤケに色気づいて来たと思ったら…!!!」
「そう。」
「っあああああっ!!なんか、気付かなかった自分が悔しいっ!!
 いつから!?いつからそーなったんだよ!!」
「内緒。」
「なんだよソレ!!」
と、その時。

『梨華お嬢様に家事なんて、必要ございませんわ。
 お料理はコックが、お洗濯とお掃除とお裁縫は我々メイドがやります。』

「へ?」
116 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時29分58秒
突然聞こえて来た声に、ひとみは驚く。しかし真希は冷静に言った。
「どうやら、第三応接室に誰か来たみたいだな。…この声は、メイド頭の福田明日香だな。」
そしてスイッチを入れると…壁が動いて、スクリーンが出てきた。
「おおっ!かっけ〜!なんかSF映画みたーい!」
「この部屋は本来、不審な客が来た時に監視する為の部屋なんだよ。」
「へぇ〜…金持ちって大変だよな〜。」
ひとみがそう言うと、スクリーンに豪華な応接室が映し出された。そこに映し出されたの
は…
「梨華ちゃん!!」
「梨華お嬢様!!」
と、メイド頭の福田明日香だった。
『それじゃ駄目なのぉ!』
久々に見る梨華は、目を潤ませて明日香に言った。
『わたし、将来の夫の為に頑張りたいの!ちゃんと、しっかりした妻になりたいの!
 毎日、愛しいひとにごはんを作って…愛しいひとのお洋服をお洗濯して…二人の愛の巣
をお掃除して!!』
久々に見る、梨華の姿。久々に聞く、梨華の声。それが、ひとみの心拍数を激しく上げる。
117 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時30分30秒

『わたしの夢は、大好きな大好きなひとみちゃんのお嫁さん!ひとみちゃんの妻!!
 それを叶えてくれる為に、ひとみちゃんは今、頑張ってくれてるわ。
 だからわたしも、努力しなくちゃ!良い妻になる為に!!』

「「・・・・・・。」」
そこまで聞いて、真希は監視システムのスイッチを切った。スクリーンが壁の中に消えて
行く。
「…どうよ?」
「・・・・・・。」
真希に言われて、ひとみは言った。
「…梨華ちゃん…あたし、頑張るよ!!」
拳を握り、高らかに宣言する。
「梨華ちゃんに釣り合う『男』に、何がなんでもなってやる!!
 そして…大手をふるって梨華ちゃんを迎えに行く!!」
「よーし!!良く言ったー!!!」
真希はひとみの手を取った。
「てゆーかヨッスィーが仕上がらないと、私も思うようにあさ美ちゃんに会えないんだよ。」
「そーかそーか!!ごっちんも大変なんだな!!」
そして、同時に言う。

「「気合入れるぜ!!」」

気合を入れたひとみは、ものすごい勢いで勉強し始めた。
118 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時31分00秒


 裕子は宿題のプリントの採点をしながら、思い出していた。
『安倍なつみ、取り返したいとは思わない?』
なつみもずいぶんと背が低いと、裕子は思っていたが…彼女はそのなつみよりも背が低かっ
た。
『協力してあげる。その代わり、お願いがあるの。』
背の低い、その少女。彼女の目には、力がなかった。
暗い暗いその瞳に見据えられると、裕子は無条件で逃げ出したくなった。
『…ねえ、どうする?引き受ける?』
魅惑的な誘いだった。
 なつみを、取り返したかった。もう一度、自らの腕に抱きたかった。
 だけど…裕子は断った。
「…なんで…断ったりしたんやろ…。」
口に出して言いながらも、その理由は裕子にはちゃんとわかっていた。

 自分は、なつみを幸せにはできないとわかっているから。

 なつみの事は、好きだ。
 担任をしているクラスの生徒から『安倍なつみ』と言う名前を聞いた時は、本当に嬉し
かった。電話番号を聞きだし、久しぶりに声を聞いたら…会いたくて会いたくてたまらな
くなった。それで、会いに行ってしまった。
119 名前:第三十五話 投稿日:2002年12月01日(日)15時31分31秒
 今では、それも後悔している。
 なつみの所在を知らない方が、裕子は幸せだった。
 会ってしまったら、抑えられなくなってしまうのに。
「でもなぁ…。」
裕子は、なつみを幸せにはできない。傷付けて傷付けて…壊してしまうかも知れない。
 なつみの泣き顔が、何よりも好きだった。
 笑わせるより、泣かせる方が好きなのだ。
(天使みたいななっちには…もう、泣いて欲しくない。)
そう思うのに、きっと裕子は泣かせてしまうだろう。
 だって、なつみの泣き顔が大好きだから。
「…歪んどるなぁ、ウチ…。」
 なつみは、笑っているのが一番幸福。
 だからなつみには、『なつみの笑顔が一番好き』と言う人間が一番良い。
 裕子は、空を見上げた。
「笑い顔も泣き顔も、全部ひっくるめて好きになってやれんで、ごめんな。なっち…。」
万感込めたその言葉は、秋晴れの空に吸い込まれて行った。
120 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月01日(日)15時32分34秒


私も実は、『梨華ちゃんの困り顔』が一番好きだったりします(笑)。
いや、笑顔も好きですが。
 そして、気合入りました『梨華ちゃん大好きーズ』。

>まるみ様
 あ!そー言えば…!!!
 私は先月のハロモニの『ものまね対決』でヨッスィーが『梨華ちゃんパパにそっくり』と
言った時にも思い出しました(笑)。

>ななしのよっすぃ〜様
 意外と、優秀な生徒のようです。ヨッスィーってば。
 そして今回、梨華ちゃんも花嫁修業を始めました。
 二人とも頑張って!!

>ひとみんこ様
 『ひとむ』にしよーか『ひとみ』のままで行こうか悩んでたんですが…『ひとみ』でも大
丈夫そうですね!!
 人間模様…複雑ですかね?

>名無し蒼様
 ごっちん更に燃えてます(笑)。ついでに梨華ちゃんも燃えてます。
 あやみき、良いですよね!!
121 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月01日(日)15時33分10秒

レスの続きです〜♪

>あおのり様
 『後藤、本当に吉澤と…!?駄目だ、後藤は私のモノだ!!うん、そーだよ♪ごとーはいちー
ちゃんのモノ☆…だからもう二度と放さないでね?もちろんだとも!大作戦』(懐かしいッ!!)
みたいに、作戦名考えようかと思ったのですが…いかんせん、執事・後藤には楽しい作戦名を
言わせて良いのかわからず…シンプルに『婿入り計画』となりました(笑)

>ラヴ梨〜様
 お久しぶりです!!なんか長くなってますよね(笑)。
 ハッピーバカップルいしよし、過去は幸せっぽいですが、現在苦労してます(爆笑)三週間
会えてません。
 そうです。真里さんも亜依さんも里沙さんも『石川』です。
 ついでに愛さんは『保田』です(笑)。

>名無しさん様
 いしよしはバカップルでなくては!!のコンセプトのもとで書いてます(笑)。
122 名前:REDRUM 投稿日:2002年12月01日(日)17時38分15秒
すごい展開になってきてる(w
よっちぃ、「男」って自然に受け止めてますね。
カッケーできる男になって早く梨華ちゃんを迎えに行って欲しいです。
ガンガレ!よっちぃ!!
123 名前:まるみ 投稿日:2002年12月01日(日)18時22分04秒
バカップルますます暴走中。
周りの人は巻き込まれるが、そのまま突っ走れー!

ごっちんも早くあさ美と逢えると良いね。
124 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月01日(日)18時53分16秒
おぉ〜!よしこ、そんなに伸びたのですね^^よかったよかった♪
ごっちんもすごいがんばりようですね^^
てか、梨華ちゃんすごい、積極的・・・私的にはいいんですけどね^^
では更新がんばってくださいね。
応援してます!
125 名前:チップ 投稿日:2002年12月01日(日)19時02分05秒
私くしも梨華ちゃん大好きーズの一員として、
気合を再投入致しました。
おかげで持っていたハトサブレは粉々に・・・
よっすぃ応援しつつ、今から掃除しますだ。
126 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月01日(日)20時56分13秒
ここに「いしよし」の理想型を見ました。
バカップルだのアフォだの何とでも言ってください。
純粋です、ピュァです、二人だけの世界です!
それで良いのです、思う存分やって下さい。

姐さん、あんたもいつかは幸せになれます
大丈夫、きっと、大丈夫♪
127 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月02日(月)00時13分04秒
私も明日香師匠に裏技教わりたい(笑)
そして、やはりひとみもじつは頭脳明晰!
なんたって、妹のあさ美が天才だから…かな?
そうなると希美は…
128 名前:第三十六話 投稿日:2002年12月03日(火)14時20分32秒

 あさ美は、久々に真希を目の前にして…胸を高鳴らせた。
「…久しぶりだね。ごめん、なかなか会えなくて…。」
「いえっ!!完璧です!大丈夫です!!」
あさ美はついつい、目をそらしてしまう。
(だって…眩し過ぎるから…。)
もっとよく見たい。近くに寄りたい。
 だけど、久々に会う真希は…前よりもなんだか輝いているみたいで近づけない。
「あさ美ちゃんは大丈夫だったんだ?」
「へっ?」
いきなりの質問に、あさ美が顔を上げると…真希が目前まで迫って来ていた。
「あさ美ちゃんは…私に会えなくても、大丈夫だったんだ。」
「えっ!?ち、違います!!大丈夫なんかじゃ…なかったです!!」
その答えに真希は優しく微笑み、あさ美をぎゅっと抱きしめる。
「…よかった。」
あさ美は、恐る恐る真希の背中に手を回す。
「…会いたかった、です。ずっと…。
 で、でも…真希さんが忙しいのは私の姉の為ですし…それで私…。」
そして、真っ赤になった顔を真希の胸に埋める。
「私も会いたかった。ずっと…あさ美ちゃんをこうやって、抱きしめたかった。」
「真希さん…。」
129 名前:第三十六話 投稿日:2002年12月03日(火)14時21分05秒
「キスして良い?」
「っ!!」
あさ美の顔が、ぼんっと言う音を立てて赤くなる。それを見て、真希はフッと笑う。
「可愛いなぁ。」
そんな真希に、あさ美は目を閉じて見せる。

「…どうぞ。」

真希は、あさ美の唇に自分の唇を重ねた。
 離してから、真希は苦笑しながら言う。
「…今の『どうぞ』は、ちょっと危ないな。」
「え?何がですか?」
「…なんでもない。だけどね、あさ美ちゃん。」
真希はあさ美の額に自分の額をくっつけた。

「私以外の人に、今みたいに『どうぞ』って言っちゃ駄目だよ?」

「な、なんでですか?」
「危ないからね。」
「・・・・・・?」
きょとんとするあさ美の額に、真希はちゅっとキスをする。
「今は、わからなくて良いよ。…大丈夫。いつかわからせてあげるから。」
「…は、はあ…。」
ワケがわからずきょとんとするあさ美の唇に、真希はもう一度キスをする。
 更に真っ赤になったあさ美を、真希はぎゅっと抱きしめた。
130 名前:第三十六話 投稿日:2002年12月03日(火)14時21分37秒


 その頃、亜弥は自宅の自分の部屋で暴れていた。
「…くそぉっ!!何なのよ!!何なのよ何なのよ何なのよぉぉぉぉぉっ!!!」
手当たりしだい、物を辺りに投げつける。
「紺野あさ美!!何なのよ!?」
そう言って投げた目覚まし時計がドレッサーにヒットし、鏡にヒビが入る。それと同時に
スイッチが入ったようだ。『PiPiPiPiPi…』と言う電子音が部屋に響き渡る。
亜弥は、肩で息をした。

 思い付く嫌がらせは、あさ美が転校して来てから二ヶ月間、全てやり尽くした。

 上履きもローファーも、幾度となく隠した。
 だけどあさ美はその度ごとに、巧妙に隠された靴を見つけ出し…何事もなかったかのよ
うにしていた。
 それがムカついたので、上履きとに牛乳もブッかけておいた。
 だけどあさ美は動じずに、来客用に置いてあるスリッパを履いて…牛乳まみれの上履き
を捨てていた。そして、それ以来亜弥達にも見付からない場所に、上履きもローファーも
置いている。
 体操着もビリビリに破いてやった。
 だけどあさ美は、泣かなかった。冷静にその体操着を職員室に持って行き、体育の教師
に『しばらく体育を見学して良い』と認めさせた。
131 名前:第三十六話 投稿日:2002年12月03日(火)14時22分21秒
 教科書にもイタズラしてやろうと思った。
 だがあさ美も警戒しているらしく、ロッカーの中にも机の中にも教科書は置いていなかっ
た。どうやら常にカバンに入れて、持ち歩いているようだ。
 …この通り、亜弥の『嫌がらせ』は全て空回りしている。

「…愛は、泣いたのに!!!」

 去年までのターゲットの事を思い出して、亜弥は唇を噛む。
「許さない!!絶対に許さないから、紺野あさ美!!!」
そう叫んでから、亜弥はニヤリと笑った。
「…愛と同じコース、たどってもらうわよ…絶対に!!!」
 亜弥の笑みは、まるで死神のようだった。
132 名前:第三十六話 投稿日:2002年12月03日(火)14時22分53秒


 一ヶ月間で、ひとみは『高校卒業レベル』の知識を身につけた。驚異的な速さである。
真希も『良くがんばったね』と言ってくれた。
 そのご褒美に…ひとみは一日のお休みをもらった。今日は一日、勉強しなくても良いの
だ。
 そして『ご褒美』の一環として…梨華と一日ずっと一緒にいられる事になった。
「ひとみちゃん…っ!!!」
梨華は、一ヶ月ぶりに会うひとみに抱きつく。
「ひとみちゃんっ!!ひとみちゃぁんっ!!」
「梨、梨華ちゃん…。」
一ヶ月ぶりにかぐ、梨華の甘い香り。ひとみは梨華を、そっと抱きしめる。だが梨華はそ
れでは足りないようで、ぎゅっとひとみに抱きついた。
「本物の…本物のひとみちゃんなのね…!!」
「うん…本物だよ。」
梨華は大粒の涙を浮かべながら、ひとみの顔に触れる。
「会いたかったよぉ…っ!!」
そう言う梨華に、ひとみは軽く口付ける。
「…あたしも、会いたかったよ。」
「ひとみちゃんっ!!」
「梨華ちゃん!!!」
「ゲホッ!!ごほっ!!!」
必要以上にデカい咳。二人は抱き合ったまま、その咳の主の方を見た。
133 名前:第三十六話 投稿日:2002年12月03日(火)14時23分23秒
 梨華の師匠・明日香である。
「…私はまだ、吉澤様を認めたわけではございませんのよ。」
「す、すみません。」
「明日香さぁ〜ん…。」
「それに!!」
明日香はビシッと梨華を指差す。
「梨華お嬢様はまだ、及第点を出せる程にはなっておりませんのよ?」
「…はぁ〜い…。」
 そりゃそーだ。
 今まで、ナイフとフォークより重いモノを持った事がなかったお嬢様なのだ。そんなに
簡単に家事ができるようになるワケがない。
「…だけどまぁ、人間は休息も必要です。明日からはまたビシバシとしごかせて頂きます
よ!だから…」
明日香はにっこりと微笑んだ。
「今日はゆっくり、楽しんでいらして下さいませ。」
「明日香さん…ありがとう!!!」
梨華が笑顔でそう言い、ひとみはぺこりと頭を下げる。
 去って行く二人の後姿を見送りながら…明日香は呟いた。
「…てゆーか…良いのかしら?嫁入り前のお嬢様とその恋人を二人っきりにしちゃうなん
て…。」
明日香はため息をつく。
「…ま、吉澤様の事だもの。せいぜいキス止まりね。
 万が一、その先まで進んじゃったとしても…最有力婿候補なんだから、まいっか。」
134 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月03日(火)14時23分55秒


 最有力婿候補・吉澤ひとみ。
 高い知能指数と激しいやる気で、知識だけなら高校卒業できるまでになりました。
 梨華お嬢様の家事レベルは…アレですね。『普通の女子高生レベル』にまで上がったようです。
 冷蔵庫の残り物で簡単なモノは作れませんが、本見て食材揃えればなんとか一品仕上がります。
 でも、メイド頭にして梨華の師匠・明日香にしてみれば『まだまだ』です。

>REDRUM様
 受け入れてます(笑)。彼女はむしろ『梨華ちゃんと結婚できる!!』と喜んでます。
 そして、またしてもケーキと遠ざかる…(泣)資料集めたのにー(号泣)。

>まるみ様
 ごっちん、こんこんと会えました。バカップルがもう一組誕生です(笑)。
 フランソワーズ失恋か?…げこ。

>ヒトシズク様
 やっぱりお嬢様は積極的でなくては!!と思いながら書いております(笑)。
 ヨッスィー、まだまだ伸びますよ〜。
 ( ´ Д`)<テーブルマナーもやらなきゃね。

>チップ様
 >おかげで持っていたハトサブレは粉々に・・・
 爆笑しました。
 ( ´D`)つ○<のののクッキーあげるのれす。なつみねーちゃんのお手製なのれす。
135 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月03日(火)14時24分32秒
レスの続きです〜♪

>ひとみんこ様
 理想型なんて、そんな…。ありがとうございます!嬉しいです!!
 明日香師匠の前で、明日香師匠の存在を忘れ去ってちゅっちゅちゅっちゅしてます(笑)。

>ラヴ梨〜様
 明日香師匠、スパルタです。
 『Tochter.』四姉妹、意外と天才です。ただ、あさ美以外は勉強しないだけで。
 まぁ、あさ美の知能指数が一番高いんですが…。
136 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月03日(火)18時45分44秒
こんこんとあややのバトル、楽しみです! 目に浮かぶようです。

やっぱり、ひーさま『婿』ですか?
ひーさまのスワローティルと、チャミさまのウェディングドレス、早く見たい!
137 名前:名無しかも〜んな! 投稿日:2002年12月03日(火)18時57分07秒
今日見つけて読みまくりました。良いですね〜
いしよしもですが紺ごまもどうなって行くか興味がつきません。
138 名前:桜流 投稿日:2002年12月03日(火)22時59分03秒
どうも☆初レスさせていただきます\(^▽^)/ハッピー☆

一ヶ月も耐えて耐えてがんばっていられた二人、これも愛なればこそなんですね。
一日中、甘い甘い時を過ごしてほしいものです。
いしよしだけでなく、それぞれがいろんなものを抱えて生きている。
その心模様や行動から目が離せないです☆
139 名前:まるみ 投稿日:2002年12月04日(水)04時50分36秒
みんな吉を婿候補と言っているが、ほんとに良いのか?良いんでしょうね・・・
なんか間違っているような・・・
まー全員それで良いならつっぱしれー!

あさ美VSあやや 抗争本格的に勃発か!がんばれあさ美!負けるな!
140 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月04日(水)21時20分38秒
おぉ!さすがっよしこですね^^やる気は誰にも負けないのよっ!!!
お休みの1日、あま〜くすごしてくださいね♪
楽しみに待ってまーす!
更新がんばってくださいね^^
141 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月05日(木)02時37分15秒
たまに出てくるこんごまが大好きです…
自分の脳内ではごっちんのビジュアルは完璧に後藤主任です
やっぱり後藤主任には紺野じゃなきゃ(笑
話もなんだかいろいろ複雑に絡んでいるみたいで目が離せません!
楽しみにしてますので、作者さん頑張ってください〜
142 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時43分18秒

 二人っきりでいられるとなっても、梨華の行動にはある程度の制約がかけられる。
 誘拐の恐れがあるので、人ごみには行けない。同じ理由で、あまり遠出もできない。更
に何よりも世間知らずなので、道に迷ったら最後だ。知らない場所にも行けない。
 と言うワケで、ひとみは梨華を自分の部屋に招待した。
「…ごめんね、ひとみちゃん。」
梨華は眉毛を寄せて、ひとみに言う。
「…わたしが世間知らずだから…ひとみちゃんの行きたい所に行けなくて…。」
「そんな事ないよ!」
ひとみは、梨華に笑顔を向ける。
「ウチは、梨華ちゃんが側にいてくれればそれで良いんだよ。それだけで十分幸せなんだ。」
その言葉に、梨華はぽっと頬を赤くする。それを見て、今更ながらひとみも顔を赤くした。
「…で、でもさ、梨華ちゃんも良かったの?ウチの部屋なんかで…。」
すると梨華は、目を輝かせる。
「わたし、ずっとひとみちゃんの部屋に行ってみたかったの!」
「そ、そうなの?」
「うん!」
にこにこと笑う梨華に、ひとみの鼓動がどんどんと速くなって行く。
 なんてったって、一ヶ月ぶりなのだ。
143 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時44分18秒
 勉強中は、会う事すらままならなかった。ひとみは勉強するだけで精一杯だったし、梨
華も明日香に家事を習っているだけでいっぱいいっぱいだったから。
 でも、会いたいと言う気持ちはものすごくあったのだ。時には食事さえも喉を通らない
程に、会いたくて会いたくてたまらなかった。
 それは、梨華も同じ。
 いそがしくしていても、頭の中は『ひとみちゃん』でいっぱい。眠れない夜も多々あっ
た。

 そんな状況だったので…ひとみの部屋に入った途端、梨華はひとみに抱きついた。

「り、り、り、梨華ちゃん!!?」
「会いたかったのぉ!!」
ひとみは後ろ手で部屋の扉を閉めながら、梨華を抱きとめた。
 なつみも希美もあさ美も気を利かせて、今家には二人以外には誰もいないのだが…それ
でもひとみはなんとなく、扉を閉めた。
 完全に二人っきりになりたかったのかも知れない。
「もう…本当に本当に会いたかったんだからぁ!抱きしめてほしかったんだからぁ!!」
144 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時44分56秒
「…うん。あたしも、会いたかった。こうやって梨華ちゃんを抱きしめたかった。」
ひとみも梨華の背中に腕を回す。
 力を入れすぎたら折れてしまいそうな、華奢な身体。それが、小刻みに震えながらひと
みにしがみついている。
「…ねえ、ひとみちゃん。」
「何?梨華ちゃん。」
「顔見せて。もっと、良く。」
名残惜しい気持ちを抑え、ちょっと梨華を離して…顔を見せる。すると梨華は、涙に濡れ
た瞳を拭って、笑顔でひとみを見つめた。
「名前、呼んで。」
「…梨華ちゃん。」
「もっと。」
「梨華ちゃん…梨華ちゃん。」
何回か呼んだ後、ひとみは押さえきれなくなって…梨華の唇を奪う。
「…ん…ふ…。」
だんだん激しくなるキスに応えながら、梨華は涙を流していた。
145 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時45分28秒
「…なんで、泣くの?」
「だって…。」
指で涙を拭うひとみに、梨華は言った。
「夢みたいなんだもん。…ううん、夢が正夢になったんだもん。」
「正夢?」
「ずっと、こうしてもらいたかったの。夢にまで見たの…。」
「…ウチも、ずっとこうしたかった…。一ヶ月がこんなに長く感じた事、今までなかった
よ。」
そしてまた、キス。
 しばらく二人は、見詰め合ってからキス、と言う事を繰り返した。
 電話越しの声や、メールの文字では伝え切れなかった想いを、伝え合うかのように。
 言葉なんか、必要なかった。
146 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時45分59秒


 一方、『Tochter.』では。
「…駄目、だべさ…。」
なつみは、完成したハズのケーキを目の前にして肩を落とした。
 うまく行かない。
 見た目には鮮やかなケーキだ。色合いも雰囲気も味も、きっと悪くないだろう。

だけど『魂』が入っていない。

 なつみにとって、なつみが作るケーキや焼き菓子は子供同然。お客様の目に留まって、そ
のお客様に食べられて、食べた人を幸せにする。それがなつみの子供達の人生であり、生命
である。
「…その子供に『魂』が入らないなんて…。」
なつみはそのケーキを見つめて、涙を浮かべた。
「これじゃ、抜け殻だべさ。」
 理由は、わかり過ぎる程にわかっている。紗耶香だ。
 あれ以来、なつみに触れようとしないのだ。
 なんでもないフリを装っているが…なつみは精神的に追い詰められていた。
「…なんでだべさ。」
抜け殻のケーキに、涙の雨が降る。
147 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時46分37秒
「なんでだべさ…っ!!一回で、飽きちゃったのかなぁっ!?誘ったのなっちだったし…軽
い女だって思われちゃったのかなぁっ!?」
なつみは右手で、涙を拭う。
 紗耶香は、まるで何事もなかったかのようになつみに接する。
 なつみを抱いた事など、覚えていないかのように。
「卑怯だべさ…!!紗耶香さん!!だったら、嫌いにならせてよ!!忘れさせてよ!!もう
なっちの前に、顔を出さないでよ!!!
 そんな紗耶香さんなんか、大っ嫌いだべさ!!!」
そう叫んでから、なつみは天井を見上げた。

「…なっちの、嘘つき…。」

 嫌いになんか、なれるハズがない。
 裕子に振られた後、なつみは『なっちは一生、裕ちゃん以外の人を好きにならない』と誓っ
た。
 そうでもしなければ、心の安定が保てなかったから。
 想い続けている事で、フラれた傷を見ない振りしていたのだ。
148 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時47分17秒
(だけど…なっちは、紗耶香さんに出会っちゃった…。)
 あんなに優しくされたのは、初めてだった。
「…大好き。」
そう呟いてまた一筋、涙を流す。
 その涙はなつみの目じりから流れ出して、耳の裏を通り、首筋を伝って、鎖骨を濡らす。
 丁度、あの日…紗耶香の唇が辿った道だ。
 一層の涙を流しながら、なつみは『抜け殻』のケーキを見た。

「・・・・・・!?」

 『抜け殻』だったはずのケーキに、『魂』が吹き込まれていた。
「な…んで…!?」
 もともとは、ガトー・オペラ(ビスキュイ・ジョコンドという特別に焼いた生地にコーヒー
シロップやチョコレートガナッシュを何段にも塗り重ね、表面に金箔を添えるチョコレートケー
キ)をちょっとアレンジしたケーキだった。
 そのケーキの周囲に、なつみの涙が光っている。
「・・・・・・。」
なつみの中の、パティシエとしての血が騒ぐ。
 なつみはそのケーキを作業台の上に置いたまま、くるりと背を向けた。
 その瞳は、もう涙を流していなかった。
149 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時47分51秒


 ひとみが一旦キッチンへと行き、紅茶を入れてから部屋に帰って来ると…梨華は、ベッドの
上で丸まっていた。
「な、何やってんの?」
すると梨華は、ころりと寝返りを打った。
「…このベッド、欲しいなぁ…。」
「はい?」
ひとみはテーブルの上に紅茶を置いてから、頭をかいた。
「で、でもソレ、梨華ちゃんがいつも寝てるベッドよかかなり安物だよ?」
しかも、梨華のいつも寝ているベッドはキングサイズである。この普通のシングルベッドで寝
ようモンなら、確実に寝てる最中にベッドから転がり落ちるであろう。
だが、梨華はふるふると首を横に振る。
「そんな問題じゃないの。」
「え?」
梨華は頬をピンクに染めながら、ベッドに頬擦りした。
「だって…ひとみちゃんの香りでいっぱいなんだもん、このベッド。
 だから、このベッドで眠れば…ひとみちゃんに抱きしめられながら寝てるみたいな気分にな
れるでしょ?」
150 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時49分05秒
ひとみはカーッと顔を赤くしながら、ベッドに腰掛ける。そして梨華の頬に触れた。その指の
感触に、嬉しそうな顔をしながら…梨華は言った。

「本当はわたし、いつでもひとみちゃんに抱きしめられながら眠りたいの。」

「り、梨華ちゃん…。」
梨華は起き上がって、ひとみの真っ赤な頬にキスをする。
「…毎日いつでも一緒にいられるように、ひとみちゃんは頑張ってくれてるのよね!だからわ
たし、ワガママ言わない。わたしも、『家事』頑張って覚える。だって…。」
梨華はひとみの手を握った。
「わたし、ひとみちゃん以外の人なんて考えられないもの!」
「梨華ちゃん!!」
ひとみは梨華を抱きしめる。
「…あたしも、梨華ちゃん以外考えられないよ…!!だからウチ、石川家にも認められるよー
な『男』になろうって決意したんだ!!
 相手が梨華ちゃんじゃなかったら…絶対、頑張れないよ。」
「ひとみちゃん!!」
ひしと抱き合ってから、キス。
「大好きよ、ひとみちゃん。」
「愛してるよ、梨華ちゃん…。」
見詰め合って、もう一度キス。
151 名前:第三十七話 投稿日:2002年12月05日(木)17時49分39秒
 そんな時、梨華は言った。
「一ヶ月も経ったから、『ひとみちゃんのしるし』が消えちゃったの…。」
梨華はブラウスのボタンを外して、胸元をひとみに見せる。
 ひとみは、くらりと眩暈を感じた。
 そんなひとみに気付かず、梨華は笑顔を向ける。
「また、つけて?」
「…う、うん…。」
梨華の胸元に顔を近付けながら、ひとみは思った。
(まだ…!!まだ駄目だ…!!押し倒したりしちゃ駄目だからな!?
 で、でも…谷間が…っ!!目前に…!!!
 いや、駄目だ!!明日香さんとか他の石川家の人には、あたしは認められてないんだから!!
まだ手ぇ出しちゃ駄目なんだってばぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!)
決意を固めるひとみ。しかし…。
「ん…ひとみちゃん…。」
甘い甘い砂糖菓子のような梨華の声を聞いて、理性が今にもブッ飛びそうになる。
(か、神様…。)
梨華にキスマークをつけながら、ひとみは必死に理性のタガを抑えていたのだった。
152 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月05日(木)17時50分15秒


 もー、いしよしらぶらぶが書きたくて書きたくて書きたくて書きたくて、こんな事になって
しまいました。
 ああ、楽しかった…!!

>ひとみんこ様
 婿です。婿養子です。いちーちゃんが今、『吉澤ひとみ・男』の戸籍を取る為に頑張ってます。
 梨華ちゃんのウェディングドレス…うおー!!なんか燃え(萌え)るーっ!!
 頑張りますね!!

>名無しかも〜んな!様
 どうも、はじめまして〜☆ありがとうございます!
 ごまこんにも注目してくださるなんて…嬉しいです!!
 頑張りますので、どうぞよろしくでっす!!

>桜流様
 はじめまして!!
 ありがとうございます☆甘い時、今回過ごしまくっております!!いかがでしょうか?
 頑張りますので、よろしくお願いしますね!!
153 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月05日(木)17時50分48秒
レスの続きで〜す☆

>まるみ様
 …『無理が通れば道理は引っ込む』とも言いますし…(←オイ)
 ま、ヨッスィーが普通に受け入れてるんでヨシとしましょう(笑)
 多分、ヨッスィーの保護者(なっち)も何も言わないでしょうし(爆笑)。

>ヒトシズク様
 あま〜くしてみました☆
 最後のヨッスィー、またしても耐えておりまする(笑)
 頑張りますね〜!!どうぞよろしく☆

>名無し読者様
 ををっ!!あなたもごまこんにも注目して下さってますか!!うれすぃ〜!!
 >自分の脳内ではごっちんのビジュアルは完璧に後藤主任です
 私も、そのビジュアルで書いております!!後藤主任のスーツ姿は最高です!!
 ありがとうございます!!頑張りますね!!
154 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月05日(木)21時34分45秒
おぉぉぉぉぉぉ!!!!あまあま♪
叫びたくなりましたよ。よっすぃーの代わりに(笑。
よっすぃーがんばって耐えろぉぉぉ〜!!!!それでこそ男だっっっ!!!
がんばってくださいね^^
応援してます♪
155 名前:まるみ 投稿日:2002年12月05日(木)22時03分05秒
あまあますぎてなにも言えない。
もー!姫がかわいすぎ!

さやまりなちも気になる・・・。
156 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月05日(木)22時20分00秒
溶けて流れてま〜す、甘過ぎで〜〜〜〜〜〜〜す。
究極のいしよし目指して頑張ってください。
157 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月05日(木)23時07分46秒
や・やばすぎる
この甘いオーラ!!
今から二人の新婚生活が楽しみすぎて、ニヤけちゃってますよぉぉ
作者さんは神です
158 名前:名無しかも〜んな! 投稿日:2002年12月05日(木)23時46分46秒
くぅ〜!甘いっすね〜
「しるし」オイラが付けてあげたい〜(w
159 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時08分11秒

 暗い部屋。冷たい床。縛られた両手。
『…すまねぇな、オジョウサマ。アンタに恨みはねぇんだけど…。』
下卑た笑いを含む、男達の声。
『…なあ、やっちまおうぜ?』
『いや、やめとけ。無傷で返さねぇと後が怖ぇ。逆に、無傷で返せば後は安泰だ。』
『それもそうだな。…しっかし、惜しいなぁ。こんな上玉目の前にして手ェ出せねえとは。』
『そうだよな。ちょっとちっちぇけど。しかも本物の『お嬢様』だ。』
『希少価値だよな〜。』
 ああ、そうだ。これは夢。ただの夢。
 リアルだけど、現実に起こっている事じゃない。
 深層意識が、恐怖の記憶の一部を『夢』と言う形で再生させているだけ。
 この二年間、何千回も何万回も見てきた。もう慣れてる。

 それなのに、なんでこんなに震えてるんだろう?

 目が覚めたら、ものすごい汗をかいていた。
「・・・・・・っ!!!」
のどがひきつる。あの夢を見た後は、いつもそう。
 窓の外は、まだ薄暗い。
「…やか。」
真里は震える身体を抱きしめながら、声の限りに叫ぶ。
160 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時08分42秒
「紗耶香!紗耶香!!紗耶香ぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 叫んだ直後に、真里の部屋の扉が開く。
「お呼びになりましたか?真里お嬢様。」
いつもと同じ笑顔、いつもと同じ口調の紗耶香が、顔を見せる。
「・・・・・・。」
真里は、紗耶香から目をそらした。
「…違う!」
真里は吐き捨てるような口調で言う。
「私が呼んだのは…アンタじゃないのよ!!」
紗耶香は黙って、ベッドのそばに立っている。
「紗耶香…紗耶香ッ!!!」
「・・・・・・。」
今度は、紗耶香は何も言わなかった。
 真里の目から、涙が流れていた。
「…もう、いいわ。出てって。」
「かしこまりました。」
紗耶香は、入ってくる時と同じ調子で部屋から出て行った。
 扉が閉じられる音を聞いて…真里はつぶやく。
「…わかってる。わかってるのよ。紗耶香は…『私の紗耶香』はもういない。」
真里は涙を拭おうともせず、天井を仰いだ。
 紗耶香は、変わった。
 真里にはその理由が、わかりすぎる程わかっている。

「…安倍なつみ。」

そう。紗耶香は出会ってしまったのだ。そして、主人である真里よりも、なつみの方が愛
しくなってしまった。
161 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時09分12秒
(そして、私は紗耶香から…安倍なつみを取り上げた。)
紗耶香の事だ。なつみを優先させて職務を放り出すなんて事は、絶対しないだろう。
 わかっていたのに、真里はなつみを取り上げた。
 もしかしたら、嫉妬していたのかも知れない。
 『何よりも大切な人』を見つけてしまった紗耶香に対して。
 それ以来、紗耶香は変わってしまった。今の紗耶香はもう、前の紗耶香ではない。
 真里は心の傷の痛みと、『紗耶香』の喪失の悲しみを抱いて…涙を流し続けた。
162 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時10分47秒


 その、四時間後。
「…寒い…。」
あゆみは車から降りた直後に、呟いた。
「やっぱり、本日のお召し物は薄過ぎるのですよ。だから、申し上げたでしょう。見栄を
張らずにもう一枚上に羽織るか、ババシャツを着た方が良い、と…」
「おぉぉぉぉおぉぉぉぉたぁぁぁぁにぃぃぃぃ!!!!」
あゆみは、柴田家の女執事・大谷雅恵の胸倉をつかんだ。
「ちょっとアンタ!!お嬢様に対して、敬意を払うって事を知らないの!?私がコレで良
いっつったらコレで良いのよ!!
 大体、見栄とかババシャツとか、外で言うんじゃないわよ!!!」
雅恵は、するりとあゆみの手から逃げ出して、冷たい目線をあゆみに送る。
「私は、真実を申し上げているのみ。…お嬢様は昔から軟弱…失礼、ひ弱でいらっしゃい
ますから、ちょっとでも冷えると下痢…いえいえ、お体に障ると思いまして。」
「ぅおぉぉぉぉぉぉぉぅおぉぉぉぉぉぉぉとぅあぁぁぁぁぁぁぬぅいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
またしてもあゆみが、雅恵の胸倉をつかむ。
163 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時11分17秒
「アンタ、ナメてるでしょ!?この私をナメてるでしょ!?」
「いえいえ、そのような事実はございません。
 あゆみお嬢様こそ、長年お仕えしている執事の助言を無視されるその態度は、いかがな
ものかと思われますが。」
「どこぞの悪徳政治家みたいな口調を使うなぁぁぁぁ!!
 てゆーか、身体が寒いんじゃないの!!心が寒い、と私は言っておるの!!!」
「ああ、あゆみお嬢様フラれたんでしたっけ。石川家の次女に。」
「ハッキリ言うな!!私はまだ諦めてないんだから!!」
しかしあゆみは雅恵を離してしゃがみ込み、地面にのの字を書き始めた。
「…諦めてないもん。なのにさぁ…梨華ちゃんってばさぁ…昨日、ひとみに会ったんだっ
てさ…。」
「ほぉー。」
「昨日メール入れたらさ…『ひとみちゃんと一日、いちゃいちゃしちゃったぁ☆』とか返
して来るしさぁ…。」
「へぇー。」
「鈍いんだよ、梨華ちゃんは!てゆーかひとみのどこが良いってのよ!!あのヘタレの甲
斐性無し!!」
「はぁー。」
「…大谷、今何時?」
「まぁー。」
あゆみはハリセンで、雅恵の頭をブッ叩く。
164 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時11分49秒
「聞ーてなかったでしょ!?聞ーてなかっただろ!?オマエ執事だろ!?主の話を聞けッ!!」
「あゆみお嬢様も、お嬢様でしょう。言葉遣いを気を付けなさい。」
「むっかぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜ッ!!!!!」
そこで雅恵は、ぽんっと手を打った。
「そう言えば、最新情報があるんですよ。」
「…何よ?」
涙目になってるあゆみに、雅恵は超☆スマイルで言った。

「石川家が、『吉澤ひとみ・男』の戸籍をゲットしたそうですよ。」

「…っな…っ!!?」
驚愕の表情のあゆみに、笑顔の雅恵。
「一ヶ月前、石川家の執事が走り回ってるって情報が入って来たんで『なんかあるなー』と
は思ってましたが…まさか戸籍ゲットとはね〜。」
あゆみはがっくりとうなだれた。それに気付いてか気付かずか、雅恵は笑顔のまま続ける。
「あの吉澤ひとみが、石川家に婿入りか〜。いいなぁ。逆玉ですね。」
「良くないッ!!!」
あゆみはハリセンで、雅恵をもう一発殴った。
165 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時12分51秒


 その頃、石川邸では。
「…お、お嬢様!!梨華お嬢様!!おやめください!」
「いいの。やらせて。」
「ですが…わ、私達が怒られます!!」
「大丈夫。明日香さんの許可はとってあるし、何よりもわたしがやりたいって言ってるんだ
もの。」
ハラハラした顔のメイド達を尻目に、梨華は一心不乱に窓ガラスを拭いていた。
 左手に持った窓用洗剤をふりかけ、右手に持った雑巾で拭く。まだまだ慣れない手つきを
しているが、ずいぶんうまくなった。
「あなたたち、他のお仕事をしてて。二階の窓は、全部わたしがやるから。」
「で、ですが…」
「大丈夫!まかせて!」
そう言われたら、メイド達は引き下がるしかない。
 メイド達が去った後、梨華は窓を拭きながら頬を緩ませていた。
『…まだ、離れたくない…。』
別れ際、そう言った梨華に…ひとみは優しい抱擁とキスをくれた。
『あたしもだよ。でも、けじめはつけないと。』
『・・・・・・。』
梨華はしっかりとひとみに抱きつき、涙を流す。
『泣かないで。…もう一生会えないワケじゃないんだし…それに、ごっちんも約束してくれ
たじゃん。「これからは週一回、必ず会えるようにセッティングする」って…。』
166 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時13分23秒
『…でも…。』
梨華の涙を指で拭って、ひとみは言った。
『…必ず、迎えに行くから。その為にウチ、頑張るから。…ね?』
 そして、約束のキス。
そこまで思い出して、梨華の手に力がこもる。
「きゃは──────────────────────────────ッッッ!!!!!」
 もともと高い声を、極限まで高くして叫ぶ。
 拭いていた窓ガラスが、嫌〜な感じにビリビリ震えた。
「『必ず、迎えに行くから』って!!『必ず、迎えに行くから』って!!
 ああん、もう!!ひとみちゃぁんっ!!!」
雑巾を持ったまま、祈る形に手を組み合わせる。

「…愛してるわ、ひとみちゃん。梨華はもう、あなただけのものです。」

そして雑巾を床に落として両頬を押さえる。
「きゃーっ!!わたしってば!!わたしってばぁ!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ梨華は、背後に忍び寄っている鬼師匠・明日香の存在に気付かなかった。
 そして、本日三度目の雷が石川邸に落ちたのだった。
167 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時13分53秒


 『きゃは──────────────────────────────ッッッ!!!!!』
「な、な、な、何っ!?」
その雄叫びを聞いて、亜依は飛び上がった。
「…梨華お姉様の声、よね…?」
恐る恐る部屋から顔を出してみるが、辺りに梨華の姿はない。
「…どこから叫んだんだろ…。」
首をかしげる亜依。そんな亜依の目に、ひとりの人物が飛び込んで来た。

 保田圭である。

「おっばっちゃん!!」
迷うことなく、亜依は圭の背中に飛びつく。
「うぉっ!!?」
なんとなくオッサン臭い声を上げた圭は背中に張り付く亜依に言った。
「…亜依お嬢様?」
「お嬢様って、やめてよー。亜依って呼んで☆」
「それじゃ妹とカブるじゃない。」
「字が違うじゃん。」
「・・・・・・。」
圭ははーっとため息をつき、何かを言おうとした。
 その時。

 どくん…どくん…どくん…

普通の心音よりも、遥かに早い心拍数が背中を打つ。
168 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時14分25秒
 自分の心臓の音ではない。
「…亜依お嬢様。」
「だから、お嬢様いらないって。」
「…じゃあ、亜依。」

どくんっ

「何なにー?なぁに?」
背中に感じる心臓の音はこんなにも速いのに、亜依の声はいつもと変わらない。
「…風邪とか、ひいてる?」
「ううん。超元気だよ!なんで?」
そう言う亜依を、圭は無理矢理背中から下ろして、顔を覗き込んだ。
 真っ赤である。
「「・・・・・・。」」
しばし、無言で見つめ合う。
「…あの、亜依おじょ…いや、亜依?」
「は、はい。」
「どうか、したの?」
「どうも、しないです。はい。」
そして、また無言で見つめ合う。
 しばらくそうしていた亜依だったが…やっぱり、沈黙に耐えられなくなった。
「…あの!!」
「ん?」
「…あのですねぇ…あ、亜依は…。」
「はい?」
169 名前:第三十八話 投稿日:2002年12月06日(金)14時14分55秒
「その…。」
亜依は、顔を真っ赤にしながら俯いた。
 そして、何かを決心したかのように顔を上げる。
「保田先生!!」
「だから、何?」

ちゅっ

一瞬だけ…触れるだけの、キス。
亜依の、精一杯だ。
そして。
「…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
亜依は叫びながら走り去り、自分の部屋に飛び込んだ。
 残された圭は…ただ呆然と、亜依の後姿を見送るしかできなかった。
170 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月06日(金)14時16分17秒


 …保田さん生誕祭です。
 その為、いつもよか大量です。しかも久々にやすかご登場。
 そしてあいぼん。姉に似て大胆です。果たしてヤッスーは気付いたのか?

>ヒトシズク様
 ありがとうございます!!最後の最後まで、あまあまだったようです。
 (0T〜T)<オイラ、頑張ったよね!?耐えたよね!?

>まるみ様
 (♯^▽^)<可愛いだなんて…そんな…ありがとう!まるみ様!
 いちーちゃん、ちょっと変わっちゃったみたいです。

>ひとみんこ様
 あああっ!!溶けちゃ駄目!!流れちゃ駄目!!
 究極…頑張ってみますが…力量不足でごめんなさい(汗)

>ラヴ梨〜様
 この二人の新婚生活…なんか凄そうですね。砂糖吐けまくりそう…。
 いやいやいや、神じゃないッスよ。トランスチャーミーの下くらいですよ。

>名無しかも〜んな!様
 (0^〜^)<名無しかも〜んな!様の『しるし』は、オイラが引き受けた!!
        ウチ以外の人が梨華ちゃんにつけちゃ駄目だ!
 最近、あまあまいしよし書きたくてたまらない症候群な私。
171 名前:まるみ 投稿日:2002年12月06日(金)19時05分43秒
いやー 柴田大谷コンビのコント?には笑わしてもらいました(w
柴ちゃん、地面にのの字を書いていじけてるのが、ちっと可愛かった。

あいぼん、まだまだお姉ちゃんの超音波ボイスには届かないようですね。
もっと精進あるのみ!?がんばれ。


172 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月06日(金)20時40分05秒
柴っちゃん&おーたにさんのコンビに笑いましたね^^
てか、柴っちゃんどこに行くつもりなんだろう・・・?
よしこ〜!!!!君はかっこよすぎるぅぅぅぅぅぅ〜!!!!!
これからもがんばってくださいね。
応援してます!
173 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月06日(金)21時37分09秒
柴ちゃんのハリセン…最高です。笑わせていただきました。
苦労人、大谷さんにもこれから頑張って欲しいですね。
鬼師匠・明日香はきっとものすごい迫力なんでしょう。
雷を落とされた梨華ちゃんの運命やいかに!?(w
そして…やすかご!やすかご!
あいぼん大胆ですなぁ。超音波発してるお姉ちゃんみたいにラブラブになれるといいですね。
174 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月06日(金)23時44分10秒
矢口が可哀想・・・市井、どうにかしてやれないのか…一生責任取れ!(w。
175 名前:名無しかも〜んな! 投稿日:2002年12月07日(土)00時26分58秒
柴田さんハリセン常備なんですね(w
親びんを誰か救ってやって・・・
176 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月07日(土)09時22分53秒
チャミさまの超音波でガラスにはひびが入りました。
チャミさまの瞳には星が一万個位、輝いてます。

柴っちゃんのはりせん、一万円札で出来てるそうです。
177 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月07日(土)10時25分59秒
真里ねぇ可哀想です…二年間(約700日)に何万回も悪夢だなんて、何度寝たんだろ…じゃなくて精神的にキツイよ〜
その上、屋敷には幸せタップリ超音波放出中だし…
ああ、無情…
そして、もっとも心配なのは新婚生活に石川家のガラスは耐えられるのか(w
178 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時23分40秒

 あゆみは、ものすごぉぉぉぉ〜く不機嫌そうな表情で席に着く。
 ここは、柴田家の本邸。その応接室にあゆみはいた。
 実はあゆみは現在、学校の近くに最近立てられたあゆみ専用の別邸に住んでいる。この
本邸に来たのは、実に三ヶ月ぶりだ。
(…それもこれも、梨華ちゃんGET!の為だったのにぃ〜…。)
「…お嬢様。そんな膨れっ面してると、もとに戻らなくなりますよ。」
「…んなワケあるかいッ!」
小声で突っ込むが、他にも人(親族…主に従兄弟達)がいる為にハリセンは使わなかった。
 と、そこに。

「…あら、皆さん!もうお集まりなんですね!あやや、遅刻しちゃったかな〜?」

その声に、あゆみは眉をひそめる。
 現れたのは、松浦亜弥だった。
(大谷!なんでアイツまで来るのよ!!)
(仕方ないでしょう。亜弥様は外孫ながら、今は亡き大旦那様の一番のお気に入りでいら
したのですから。)
 そう。あゆみと亜弥は、従姉妹にあたる。あゆみの父親が、亜弥の母親の兄なのだ。
(私、アイツ嫌い!!好みじゃない!!顔は可愛いけど、なんか嫌!!)
179 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時24分14秒
(女性に関して、あゆみお嬢様が好き嫌いをおっしゃるとは珍しい。)
(…どーゆー意味よ。)
(だって、あゆみお嬢様ってけっこー節操無しじゃないですか。)
(おぉぉぉぉおぉぉぉぉたぁぁぁぁにぃぃぃぃ!!!)
二人が目と目で会話をしていると、亜弥はあゆみの隣にちょこんと座った。
「こんにちは、あゆみちゃん!」
「…こんにちは、亜弥ちゃん。」
あゆみは、亜弥の目を見てぞっとした。
(…な、なんて暗い目してんのよ、この子…!!)
「…そう言えば、ウチのお父様は…一体どんな用事で私達を呼び出したのかしら。」
「そーですよねぇ。…あら、でも、あゆみちゃんのお姉様方はいらしてないみたいだけど。」
「ええ。瞳姉様とめぐみ姉様は呼ばれてないみたい。…まあ、二人ともお嫁に行っちゃっ
たからかも知れないわね。」
にこやかに会話をしながらも、あゆみの全身には鳥肌が立っていた。
(…なんで!?なんでこんなに怖いの!?こんな…私よりも小柄で年下の子が…!!!)
全身が震え出しそうになるのを止めるだけで、あゆみは精一杯だ。
 恐怖を感じている事を、他人に悟られてはいけない。そう思って、笑顔の裏で歯を食い
しばった。
180 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時24分47秒
 そんなあゆみに…雅恵は目で言う。
(…やっぱり、寒そうですね。だから、恥ずかしがらずにババシャツを着ろ、と、私は何
度も申し上げたんですよ。)
あゆみは『違ぇよ!!』と言う言葉を飲み込んだ。
 そのやりとりで、あゆみの鳥肌はおさまったのだが…あゆみ自身はまだそれに気付いて
いない。
「…優秀な執事と言うのは、痒いところに手が届きます。
 更に優秀な執事は…主が気付いていない『痒さ』にも気付いて、主が気付かない内にそ
れを取り除いて差し上げられるものなのですよ。」
 ウィンクと共に、雅恵は呟く。
 …それよりも…雅恵は、誰に話しかけているのだろうか?
181 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時25分17秒


 圭は、亜依の『いきなりチュー』に動揺しながらも…とりあえず目的を果たしに歩き出
した。そして、豪華な扉の前で立ち止まる。
 …真里の部屋だ。

こんこん

「真里?アタシよ。」
「…どうぞ。」
扉を開くと、久々に会う友の姿。
「…どうしたって言うのよ?」
その友の憔悴した姿に、圭は驚きを隠せなかった。
 圭と真里は、幼い頃からの親友だ。
 高校までは同じ学校に通い、梨華の家庭教師に推薦したのも真里だ。
 そんな真里の、もともと小さな身体がもっと小さくなっているような気がした圭は、眉
をひそめた。
 真里はその、崩れ落ちそうな小さな身体を豪奢なソファーに埋めて、小さく震えていた。
「…別に、どうもしない。」
「どうもしないって事はないでしょ。」
「・・・・・・。」
黙ってしまった真里を見て、圭はため息を吐く。
「…それで、用事って何?」
真里の身体がビクッと震えた。
182 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時25分47秒
「…聞いて欲しい事があるの。」
「え?」
真里の、暗く冷たい瞳が…圭を捕らえる。

「…圭ちゃんの妹が殺された原因を作ったの、私なのよ。」

「・・・・・・っ!?」
圭には一瞬、何を言われているのかわからなかった。
「愛ちゃんを死に追いやった…ううん、殺した女。松浦亜弥って言うんでしょ?」
「…う、うん。」
「私はね、その松浦亜弥の、一番大切な人を…二年前、車で跳ね飛ばしちゃったの。」
「・・・・・・。」
圭の膝が、震える。
「死にはしなかったわ。ただ、二年間意識が戻らないの。
 …松浦亜弥の事は、昔から知ってたわ。柴田家の、今は亡き前当主の一番のお気に入り。
外孫ながら、跡取りの孫であるめぐみ・瞳・あゆみの三姉妹よりも可愛がられてて…」
真里は、暗く冷たい目を圭に向ける。
「…その前当主が亡くなった時、柴田家の正当な相続人にはなれなかったけど…前当主の
私的な財産のほとんどを受け継いだ子。」
圭は、耳を塞ぎたかった。しかし、身体が動かない。

「そして…その『私的な財産』の中には…愛ちゃんの通っていた学校の『理事』の地位も
あったの。」

「!!!?」
183 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時26分18秒
「…それが、愛ちゃんがいじめられてる事を知っていても…学校側は何も手を出さなかっ
た理由。そうよね。理事の一人が生徒をいじめてるなんて、外聞悪いものね。」
「そ…そんな馬鹿な!!だって松浦は、愛と同い年なのよ!?それなのに理事になんてな
れるワケ…!!」
「金持ちの怖さは、金持ちが一番知ってるわ。財力さえあればそんな常識、簡単に覆せる。
知ってた?松浦亜弥は代理人を立てずに、理事会にも自ら顔を出すのよ?」
くすくす笑う真里。目は笑っていないが、笑い声は不気味な程に楽しそうだ。

バシッ

圭のてのひらが、真里の左頬を打つ。
「・・・・・・っ!!!」
圭は涙を浮かべて、真里の部屋から走り去った。
184 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時26分50秒
 その後姿を見送りながら、真里は呟く。
「…私も、必死だったの…ヤツらから逃げたくて。だから、信号なんて見てなかった。ブレー
キなんて踏めなかった。跳ね飛ばしても…怖くてそのまま逃げちゃった。」
真里の暗く冷たい瞳から、涙が一筋流れ出す。
「…どうして、こうなっちゃったんだろう。」
涙の筋は、一本から二本へ、二本から三本へ…とどんどん増えて行く。
「…どうして、私ばっかりこんな目に遭うんだろう。
真里は、何の表情も浮かべず…ただ涙を流しながら言った。

「誰か、私を殺して。」

その呟きは、誰に聞こえる事なく、シャボン玉のように消えて行った。
185 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時27分21秒


 『Tochter.』では、ひとみが久しぶりにギャルソン姿でレジを打っていた。
「…ねえ、あなたのお勧めのケーキはどれ?」
ものすごーく気合の入った服装で、必要以上にフェロモンを振りまくマダムが、ひとみに
擦り寄るように尋ねて来た。
「ほ、本日のお勧めケーキは、こちらとなっております。」
そのマダムをうまく避けながら、ひとみは一つのケーキを指し示す。
「…お店のお勧めケーキじゃなくってぇ、あ・な・た・の!お勧めケーキを聞いてるの!」
「へっ!?あた…私の、ですか?」
「そぉよ。」
そう言いながらも、谷間を強調するマダム。ひとみは『助けてビーム』を希美とあさ美に
発しているのだが…。
(ののはその人イヤなのれす。なんかキモチワルイのれす。)
(…わ、私も遠慮させて頂きたいかなぁ、なんて…。)
と言うよーな表情で、知らんぷりを決め込んでいた。
(く、くそぉ…ウチだってヤなんだよこの人ぉ!!)
しかし、仕事だ。ひとみは営業用スマイルを、心の棚の奥のほうから引っ張り出して顔に
貼り付けた。
「…そ、それでしたら私は、こちらがお勧めです。」
186 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時27分51秒
 ひとみが指し示したのは、ガトー・オペラ。
「チョコレートケーキ?」
「はい。」
「なんかキラキラしてるけど、コレは何?」
「金粉でございます。」
「金粉!?それにしては細かいんじゃない!?」
ひとみは営業用スマイルが崩れないよう注意しながら、口を開く。
「この金粉は、涙を表現しているんです。
 愛しいひとを思って流す涙には色々な種類がございますが…これは、とっても『悲しい
涙』なんです。
 ケーキ本体の方も、それと同じように…ビターチョコを使って、少々苦めになっており
ます。ですが、香りはあくまで甘く…言って見れば『愛の苦しみ』をそのまま形にした、
と言う感じですね。」
マダムは驚きの表情で尋ねる。
「それじゃあコレ、『失恋』のケーキなの?」
「いいえ、違います。それだけではございません。」
ひとみは、梨華の顔を思い浮かべた。
 胸がきゅん、となる。
「…どれだけ幸せの絶頂にあっても、やはり苦しみはあるでしょう。会いたいのに会えな
いとか、そのひとを思うだけで胸が痛むとか…。
 このケーキは、そんな『甘い苦しみ』も表現しているんです。」
187 名前:第三十九話 投稿日:2002年12月07日(土)11時28分22秒
そう言ったひとみの顔は…まるで溶けそうな程に緩んでいた。その表情を見て、マダムは
ため息を吐いた。
「…それじゃ、そのケーキを四つくださるかしら?」
「かしこまりました。」
 ケーキを包み、会計を済ませ…マダムは店から出て行く直前、こう言った。

「…あなたを見てたら、なんだか私…ものすごく遠回りをしているような気がして来たわ。
旦那と子供達が私を見てないんじゃなくて、私が旦那と子供達を見ていないのね。」

そう言って去って行ったマダムは、なんだかすごくカッコ良く見えた。
「…なんの事だかわかんないけど、とりあえずよかった…。」
ひとみが安堵のため息を吐くと…希美とあさ美の冷たい視線を感じた。
「…な、何?」
すると、希美とあさ美も同時にため息を吐く。コレは『呆れ』のため息だ。
「ひとみおねーちゃん。お客様相手にのろけちゃダメなのれす…。」
「えっ!?えぇっ!?の、のろけてなんかないよっ!!」
「…完璧です。惚気てました。」
「そんな…どこが!?」
すると希美とあさ美は同時にひとみの顔を指差す。

「「その顔が。」」

「・・・・・・。」
ひとみの顔は、いまだにデレっと緩みきっていた。
188 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月07日(土)11時29分25秒


 矢口さんが痛ーいっ(汗)!!
 でも、矢口さん…なんでそんなに痛く書きやすいんだ…。
 そして、でれでれヨッスィーも書きやすい…。

>まるみ様
 柴田さん、これからは笑わせ要因として頑張ってもらいたいと計画中です。
 大谷さんは…さ、最初はこんなキャラにするつもりはなかったのに…(汗)
 今回も漫才やってます、この二人。

>ヒトシズク様
 客にのろけるヨッスィー。それが書きたくてあのケーキとマダムを出したと行っても
過言ではございません(笑)。
 がんばりますね!どうぞよろしく!

>>173名無し読者様
 やすかご…どうなってしまうのか。波乱の予感がひしひしと…。
 鬼師匠・福田明日香。『情け』とか『容赦』とか言う単語は、彼女の辞書にはありま
せん(笑)

>>174名無し読者様
 矢口さん…もっとかわいそうな事になってしまいました…(泣)。
 でも、大丈夫!!救いはあります!!…多分(←オイ)。
189 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月07日(土)11時29分59秒
レスの続きでっす☆

>名無しかも〜んな!様
 どこに隠し持ってるんでしょうねぇ、あのハリセン…。
 川σ_σ||<ナイショ♪

>ひとみんこ様
 星が輝く梨華ちゃんの瞳…ヨッスィーの顔は、とろけるチーズのごとく溶けております。
 一万円札で出来たハリセン…すげー!!さすが金持ち!!
 私のハリセンはレシートでできております(笑)

>ラヴ梨〜様
 白昼夢も入れて、何万回です。
 常に思い出しては苦しんでるワケですね。…そりゃーヒトも変わるわ…(泣)
 いしよしの愛の巣☆のガラスは、全て『防弾』にするそうです(笑)
190 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年12月07日(土)20時05分41秒
クロイツさま
更新お疲れさまです。
あまあまな、よっすぃ〜ろ梨華ちゃん最高です!
そして、策略家のあゆみちゃんですら鳥肌が立つあやゃの凄みというか雰囲気。
あやゃにも幸せになって欲しいな〜と願ってます。
でも、あやゃの凍えるような視線で見つめられたら、よっすぃ〜ファンからあやゃファンに乗り換えそうです(笑)
それでは、次の更新も楽しみに待ってます!
191 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月07日(土)21時44分55秒
よっすぃー・・・客相手にのろけるなぁぁぁぁ〜!!!!
思わず叫びたい衝動に・・・(笑。
てか、柴田家複雑ですねぇぇ〜・・・あややがそんなことだったなんて・・・。
では、更新楽しみに待ってます!
がんばってくださいね!
192 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月08日(日)04時34分24秒
圭ちゃん…矢口を助けたって…(涙
見捨てないでやっとくれ〜〜〜!!!

あと加護ちゃんもよろしくね!
193 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月08日(日)09時52分18秒
あやゃが柴田家と関連してたんですね、複雑だ〜!!
そろそろキャラクター相関図書こうかな(笑)
一人一人イイ味だしてますし、やっぱ最高ですね。
クロイツ様の他作品を探しにいってみようかと…
194 名前:プチひとむ 投稿日:2002年12月08日(日)12時34分13秒
初めまして。楽しく読ませてもらってます。これからどんな展開になるのか、すっごい楽しみです。
195 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月08日(日)20時00分42秒
何という人間関係! よくこんな事考えつきますね。(w
羨ましいです。

あちらに、ご訪問、有り難うございました。
私も、甘いのを書けるよう精進します。
196 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時41分47秒

 どれくらい走ったのだろうか。
「…はぁ、はぁ、はぁ…。」
圭は立ち止まって、壁にもたれかかった。

『…圭ちゃんの妹が殺された原因を作ったの、私なのよ。』

真里の言葉が、頭の中で繰り返される。
 真里に聞かされた言葉が真実だとすると、愛は八つ当たりで殺された事になる。しかも
その原因を作ったのは圭の親友。
「…なんだっつーのよ…。」
涙がてのひらで拭いつつ、圭は立ち上がった。
「…一年間も黙ってたクセに…なんで今頃になってそんな事、アタシに言うのよ…。」
 真里のような親友は、この先二度とあらわれないだろう。
 お嬢様だらけのあの学校でも、珍しい位のお嬢様だった真里。
 お嬢様だらけのあの学校で、珍しく『一般家庭の子供』だった圭。
 学年が違う二人だったが、圭が高校を卒業するまでは何をするのも一緒だった。真里は
圭に、姉に甘えるようにまとわりつき…圭はそんな真里を、妹のように可愛がった。
 価値観の違いから、しばしば喧嘩もしたけれど…喧嘩する度仲良くなれた。
「・・・・・・っ!!!」
圭の目から、また涙が流れ始める。
「…馬鹿真里ぃっ!!」
圭は壁を、拳で殴る。
197 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時42分18秒
「…なんで言うのよ!?言わなければアタシ…真里と愛の自殺を結びつける事なんか、一
生なかったのに!!なんで言っちゃうのよ!!!」
と、そこに。

「多分、真里お姉様はそれがわかっていたから…あえて言っちゃったんじゃないかな。」

圭が顔を上げると、そこにいたのは…亜依だった。
「あ…亜依…。」
亜依はトコトコと圭に近付き、背伸びをして圭の頬にハンカチを当てる。
「真里お姉様は…二年前から、人が変わっちゃったの。『リョーシンのカシャクに耐えら
れないんだ』って、真希ちゃん…ウチの執事は言ってた。」
「・・・・・・。」
「真里お姉様は、保田先生に甘えてるんだよ。
 保田先生に吐き出す事で、心の安定を求めてるんだよ。…そして、どんな事があっても
保田先生は味方でいてくれるって…確かめたかったんだよ。」
圭は、涙を流しながら呟くように喋る。
「…でも、アタシは…逃げちゃったわ。真里をひっぱたいて…。」
亜依は圭に抱きついた。
「それは、当然の反応。…保田先生は今、真里お姉様をどう思ってる?憎い?嫌い?」
198 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時42分59秒
圭は頭を振る。
「…そんな簡単に、嫌いになれるワケないじゃない。」
「妹さんが亡くなる原因になったのが真里お姉様でも?」
「…それはそれ、これはこれ。
 それに、よーく考えてみれば…確かに原因となったのは真里でも、実際殺したのは真里
じゃないんだし。」
「…へへっ。」
亜依は、圭に抱きつく力を強める。
「だから大好き。保田先生っ♪」
「・・・・・・。」
亜依は、圭を見上げる。

「…亜依も真里お姉様も、すっごく自分に都合の良い事言ってるってわかってる。
 でも…お願い。真里お姉様を、見捨てないであげて。」

「…亜依。」
「はいっ♪」
「アタシ、頭に血が上りすぎてたみたいね。…真里に一発殴られに行かなきゃ。」
圭は、亜依の背中に手を回す。
「…一緒に来てくれる?」
「もっちろんっ!!!」
亜依は、満面の笑顔でそう答えた。
199 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時43分32秒


 「うはぁ〜…。」
梨華は、涙を浮かべながらため息をついた。
「…明日香さん、厳し過ぎだよぉ…。」
さっき怒られたのを、まだ引きずっているらしい。梨華はふるふると頭を振って、拳を振
り上げた。
「ううんっ!!厳しい方が良いの!!わたし、がんばるんだから!!」
そう言って、ちらりと携帯を見る。
「…声が聞きたい…。」
そう呟いてから、また頭を振る。
「だ、駄目よ!甘えちゃうもの!…ひとみちゃんだって頑張ってくれてるんだから、わた
しも頑張らなきゃ!!他の何でもない、わたしとひとみちゃんの『らぶらぶ☆生活』の為
に!!」
そう言って、ちらりと写真立てを見る。
 そこに写ってるのは、ひとみの姿。真希が梨華の為に隠し撮りしてくれたものだ。
 梨華は写真立てを持ち上げて、その唇にちゅっと口付ける。
「ひとみちゃん…。梨華は、頑張ってます。ひとみちゃんも頑張ってるわよね?
 だから、ワガママ言いません。…今すぐ会いたいとか抱きしめて欲しいとかキスしてほ
しいとか…。」
バリバリ言っちゃってる梨華。
「…大好きよ。」
梨華が言った、その時。
「っ!?」
携帯が鳴り始めた。ひとみからだ。
200 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時44分05秒
「…もしもしっ!?」
『あ、梨華ちゃん?』
「ひとみちゃん…。」
涙が出そうになるのを、梨華は必死で食い止める。
「…どうしたの?」
『いやぁ、その…なんつーか…ははは。』
「?」
ひとみのはにかんだ声が、梨華の胸を熱くする。

『…声が、聞きたくなっちゃってさ。』

どきゅぅんっ!!!
梨華の心臓に、未だかつてない衝撃が走る。
「わ、わたしも!!わたしもなのぉっ!!」
『え?』
突然の梨華の泣き声に、ひとみはどぎまぎしているようだ。
「わたしも、ひとみちゃんの声が聞きたかったのぉっ!!」
『そうなんだ…なんか、すごい嬉しいな。』
「うんっ!!」
梨華は涙を拭った。
「…大好きよ、ひとみちゃん。」
『うん…ウチも、大好き。』
「…愛してるの。」
『うん。あたしも愛してる。』
梨華はまるで、電話越しにキスをされているような気分になった。
 しかし。
『…とみおねーちゃーん!!ごシメイなのれーす!!』
電話の向こう側から聞こえる、希美の声。
201 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時44分36秒
「…ご指名?」
『うっ!!あの、いや、その…。』
「今、何してるの?」
「…『Tochter.』で、久々に店員を…。』
「それで、ご指名って?」
『いや…だからその…。』
ひとみは咳払いした後、小さな声で言った。
『…たま〜に、いらっしゃるんだよ。あたしを指名するお客様が…。』
「・・・・・・。」
梨華の目が、不機嫌に細められる。
『…あの、だけど…その、ウチは梨華ちゃんだけだから!!』
「…ほんとに?」
『本当だって!!』
梨華はため息をついた。
「…ひとみちゃん。」
『は、はい…。』
「ま、しょうがないわ。『Tochter.』が繁盛するのはわたしも嬉しいし、お仕事
なんだし。」
電話の向こうで、ひとみの安堵のため息が聞こえた。
「だけどね、忘れないで。」
『え?』

「ひとみちゃんの『本妻』は、わたしなんだからね!」

電話の向こうで、『ぼんっ』と言う音が聞こえた。ひとみが赤くなった音だろう。
202 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時45分06秒
「不倫も浮気も許さないわよ!もちろん、『側室』も駄目!」
『梨華ちゃん…。』
ひとみは切なそうに言った。
『…もーウチ、今、梨華ちゃん抱きしめたくてしょーがなくなっちゃったよ…。』
「そうね。わたしも抱きしめられたくてしょうがないわ。」
『梨華ちゃん…愛してるよ。ウチには梨華ちゃんだけだ…。』
「わたしも、ひとみちゃんだけよ。愛してる。」
「『・・・・・・。』」
しばらく沈黙を楽しんでから、二人は名残惜しげに電話を切った。
 梨華は、ぽすっとベッドにダイブする。
「…ご指名、ですって?」
本妻の余裕で『許す』とは言ったものの、やっぱり納得が行かない梨華。
「・・・・・・。」
枕元においてある、梨華お手製の『ひとみちゃん人形(ヌイグルミ)』を引き寄せる。
「…なんか、胸がもやもやする。」
『ひとみちゃん人形』を抱きしめて、梨華は眉間にシワを寄せたまま目を閉じた。
203 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時45分39秒


 紗耶香は、今日は石川邸で雑務をこなしていた。
「明日香、紅茶の茶葉…ダージリンが切れかけているよ。」
「はい。それじゃ明日、注文を出しておくわ。」
そう答えてから、明日香はため息をついた。
「…ねえ、紗耶香。」
振り返った紗耶香の瞳には、『生気』と言うものが感じられなかった。
「なんで、そこまで我慢するの?」
「…何の話?」
「安倍なつみ。」
紗耶香の全身が、凍りついた。
「…確かに、私達にとって主は大切よ。でも、紗耶香は何か間違ってる気がしてしょうが
ないのよ。」
「間違ってる?私が?」
明日香はこくりと頷く。
「…真里お嬢様が望んでるのは、そんな紗耶香じゃないハズ。」
「・・・・・・。」
「安倍なつみとの事、真里お嬢様に止められたんでしょ?」
「・・・・・・。」
紗耶香は、震える声を出す。
「…なんで?」
それを聞いて、明日香は腰に手を当てた。
「それは、どう言う意味の『なんで』なのかしら?『なんで』真里お嬢様に止められた事
を私が知っているのかって聞きたいの?それとも、『なんで』私が安倍なつみの事を知っ
ているかって事を聞きたいの?」
204 名前:第四十話 投稿日:2002年12月09日(月)09時46分09秒
「…両方だ。」
明日香はくすっと笑った。
「教えてあげない。」
「・・・・・・。」
「とにかく、従姉妹として忠告するわ。今の紗耶香は間違ってる。」
明日香は指先で、紗耶香の頬に触れた。

「欲しいものは欲しがらなくちゃ。そうじゃないと何も手に入らないわよ?」

そして、明日香はひとつのケーキを差し出した。
「はい、コレ。食べてみれば?」
「…これは?」
「『Tochter.』の最新作のケーキ。その名も、『LOVE涙色』。」
「・・・・・・。」
細かい金粉が舞う、小さなガトー・オペラだ。
「私ね、紗耶香に恋愛講座なんかしたくないワケよ。だけど…それを食べちゃったらもう、
黙ってなんかいられない。」
「・・・・・・。」
明日香は、ケーキを目の前にして固まる紗耶香に背を向けた。
「それ食べて、安倍なつみの苦しみをちょっとは味わえば?一応女なんだから、わからな
いハズはないわよ。」
一人残された紗耶香は、恐る恐るケーキを口に運ぶ。
「・・・・・・。」
ケーキはなんだか、涙の香りを思い出させる味がした。
205 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月09日(月)09時47分12秒


雪です。学校行けません。単位がやばいです。
…ま、開き直って更新更新。

>ななしのよっすぃ〜様
 よかった〜…あやや嫌われてなくって…。実は心配してたんですよ。「あ、悪役にし過
ぎたぁっ!!これじゃ皆様に嫌われてしまうっ!!」と。
 頑張りますね!!どうぞよろしく☆

>ヒトシズク様
 ヨッスィー、ご指名かかってます。売れっ子です。
 柴田家、石川家と違って親戚が多いんで、かなり複雑な事になってます(笑)。
 がんばりますよ〜!よろしくでっす!!

>>192名無し読者様
 圭ちゃん、こうなりました。あいぼん必死で追いかけたみたいです。
 矢口さんの救いはこれから出てくる予定ですよ〜☆

>ラヴ梨〜様
 キャラクター相関図…書いて下さいますか?いやぁ、もう、私はほとんど頭ん中だけで
まとめちゃってるモンで…(汗)
 私の他の小説…青板の「わたしの望み。」くらいッスよ。他に、たまに白板の「作者フリー
 短編用スレ」で書いてたりもしますが。
206 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月09日(月)09時47分45秒
レスの続きです〜☆

>プチひとむ様
 はじめまして〜!
 楽しみですか!ありがとうございます!!頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!!

>ひとみんこ様
 読んで下さってる方の度肝を抜きたいッ!!と言う私の内なる願望が、きっと人間関係を
複雑にさせて行くのでしょうか…。
 あまあま、頑張って書いて下さいませ!!私はエロが書いてみたい…カモ(笑)
207 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月09日(月)16時44分45秒
私も雪で出るのやめました。

側室って? 石川家はひょっとして元大名? やっぱりチャミさまは姫ですね。

ソフトでも良いので、エ○挑戦してください。(甘エ○)(w
208 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月09日(月)21時24分40秒
ひとみちゃん人形、私も欲しいです。

よっすぃー、ご指名ってホストじゃないんだから…
梨華ちゃん不安にさせちゃダメですよー。

そしてどうか…矢口と市井ちゃんに救いを…
圭ちゃんは矢口を救えるでしょうか…
209 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時24分32秒

 あゆみは、顔面蒼白で自宅へと戻って来た。
「…あゆみお嬢様。」
「わかってる。わかってるわよ、大谷。」
あゆみは、ともすればフラつきそうになる足を懸命に支え、雅恵を振り返る。
「…私は、甘かったのよ。この私とした事が…こんな事にも気付かなかったなんて。」
「・・・・・・。」
雅恵は何も言えず、あゆみのコートを脱がす。
 あゆみは、さっき本邸で聞かされた話を思い出した。


『私は、引退しようと思う。』
どよめく親族を目の前にして、あゆみの父はなんだかサッパリした様子で言った。
『持病の胃潰瘍もちょっとヒドくなって来たし、私ももートシだし。それに、私はスイス
の別荘で妻と共に隠居生活に入ろうと思う。』
あゆみはこの父親の事を、常々『世間知らずのアホ親父』だと思っていた。
 しかし、ここまでアホだとは思っていなかった。
『それで、私の引退後にこの柴田家を継ぐのは…』
アホ親父は、にこやかにあゆみを見て言った。

『私の実の娘である、柴田あゆみ。』

『『『『『んなッ!?』』』』』
その場にいた全員が、驚きの声を漏らした。もちろん、あゆみも例外ではない。
210 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時30分23秒
『なんで私ッ!?』
そんなあゆみの質問に、アホ親父はきょとんとした顔で当然のように答えた。
『そりゃーもちろん。お前は私の実の娘なんだし、私はお前が生まれた時からお前を柴田
家の跡取りにするって決めてたし。今は亡き私の父上も、それを認めて下さってたし。』
『き、聞いてないッ!!私そんなの、一度も聞いた事ないッ!!』
『アレ?言ってなかったっけ?…でもまぁ、コレは決定事項なんで。』
アホ親父は、晴れ晴れした表情で言い放った。
『柴田家、第三十五代目当主の誕生だ!みんな、共に祝おう!!
 …ってなワケで、当主就任式は来週の土曜日の朝十時から。全員知ってるだろうけど、
祝宴は月曜日の朝まで続くから、覚悟しといて。』
その場にいる全員が、色んな意味で凍り付いていた。


 「…おかしいと思ったのよ。瞳姉様が『高校の担任と結婚したい』って言い出した時も、
めぐみ姉様がいきなり『お見合い結婚したい』って言い出した時も、『相続権さえ放棄し
てくれたらかまわん』とか言って全然反対しなかったし…。」
211 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時30分53秒
「…ま、確かに跡取りをあゆみお嬢様だって決めてしまっているのだったら、瞳お嬢様の
お相手もめぐみお嬢様の結婚も、大した事じゃありませんね。」
あゆみは自分の部屋に着くと、どっかりとソファーに腰掛けた。
「…私は、嫌よ。」
「そーでしょうね。」
あゆみはガンッとテーブルを叩く。
「何が悲しくて、柴田家当主なんて面倒くさいモンにならにゃーいかんのよ!!あのオヤ
ジ…!!娘に嫌な事全部押し付けやがって…!!それでも親か!?」
雅恵は紅茶を淹れて、あゆみに差し出した。
「まあまあ、落ち着いて下さいませ。」
「落ち着いてられるかッ!!!」
 と、その時。
「あゆみお嬢様ッ!」
メイドの一人が、ノックの音と共に現れた。なかなか可愛い顔をしたメイドである。
「何だ、騒々しい。」
「ああ!!大谷さんもいらしたんですね!!た、大変なんですぅ!!」
可愛いメイドの泣き声に、あゆみは素早く反応した。
「…そんなに急いで、どうしたの?フフ。涙まで浮かべちゃって…。」
あゆみはメイドに近付いて、指先で涙を拭う。
212 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時31分25秒
「泣き顔も可愛いけど…私はアナタの笑顔が見たいな。ほら、笑って。」
ちゅ、と頬に口付ける。メイドは真っ赤になった。
「そ、そんな…いけませんわ、あゆみお嬢様。」
「何がいけないの?」
「お、女同士ですし…それに、私はただのメイドで…」
「そんなの関係ない。私はアナタを純粋に可愛いと…」
「あゆみお嬢様。メイド口説いてる場合じゃありませんよ。」
もうちょっとでオチそうな所を邪魔されて、あゆみは不機嫌に雅恵を見る。
 そして、絶句。
 雅恵の手には、百を超えるであろう見合い写真があった。
「・・・・・・。」
「まだまだあるみたいですよ?続々と送られて来てるみたいですし。」
ふと見ると、あゆみの部屋の前には千を超える見合い写真が積まれていた。
「・・・・・・。」
「皆様、情報が速いですねぇ。」
「・・・・・・。」
あゆみは顔を引きつらせて、かたまるしかできなかった。
213 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時31分58秒


 その翌日、あさ美は自分の机を見て…ちょっとビビッた。
『この、淫乱!!』
そうマジックで書きなぐられているのだ。
「…コレはすごい。」
「げこ。」
「てゆーか、この単語の意味と漢字を知っているって事もすごいですね。」
「げこ。」
「あ。辞書で調べたんでしょうか?…それ考えるとけっこー笑えますね。」
「げこ♪」
そう言って、あさ美は掃除用具入れに向かった。
「えっと、洗剤洗剤。あ、『ヨゴレオチール』だ!コレよく落ちるらしいですよ。真希さ
んのオススメなんです♪」
「げこ♪」
ヨゴレオチールと雑巾を手に席に戻り、落書きを消す。
 丁度、『この、』と言う文字を消し終わった時。
「…紺野さん。」
「?」
くるりと振り向くと、そこには亜弥が立っていた。
「ああ、松浦さん。おはようございます。」
「…あんたさぁ、なんで怒らないの?」
「へ?」
あさ美はきょとんとしてフランソワーズを見るが、フランソワーズもきょとんとした表情
をしていた。
214 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時32分58秒
「なんで怒らないのかって聞いてるの!!」
いつもの余裕がない。あさ美は不思議に思ったが、とりあえず笑顔で答えた。
「だって、別に腹は立ちませんし。」
あさ美は、亜弥に胸倉をつかまれた。
「アンタ、馬鹿にしてんの!?このあたしを!!!」
「え!?今気が付いたんですか!?遅いですよ、松浦さん。」
亜弥の顔が、怒りでカァッと赤くなる。
「殺してやる!!」
「八つ当たりで殺されるなんて、嫌ですよ。」
すべてを見透かしたようなあさ美のその言葉に、亜弥の動きが一瞬止まる。その隙に、あ
さ美はするりと亜弥の手から抜け出した。

「…藤本美貴さんの事も、柴田家の当主交代によるあなたの立場の揺らぎも、確かに気の
毒だとは思いますけど。」

「ッ!?」
「…でも、どちらも原因は私じゃありません。…もちろん、愛さんでもなかった。」
もともと凍りついてた教室の空気が、一層凍り付く。
215 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時33分30秒
「…調べたの!?あややの事を!?」
「いいえ。自然と耳に入ってしまったんですよ。」
「嘘吐くな!!」
「嘘じゃありません。」
あさ美は、ニヤリと微笑んだ。
「…ま、世の中は『目に見えない糸』でつながってる事もあるって事、忘れないほうが良
いですね。」
それだけ言って、あさ美は落書きを消す作業に戻った。
 亜弥は、がくがくと震えながら…その場に立ち尽くしていた。
216 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時34分02秒


 その日の夕方。
「…今日はこの辺に致しましょう。」
里沙は、ぱたんと本を閉じた。
「それにしても…真希さんの言う通り。飲み込みが早いですわね。私も教え甲斐があると
言うものですわ。」
里沙は、目の前に座る人物に笑顔を向けた。
「い、いやぁ…そう言われると、テレるなぁ。」
そこに座っているのは、ひとみだった。
 高校卒業程度の知識をつけたひとみ。次に学ぶべきは、石川家の人間になる為には必要
不可欠な『経営学』や『経済学』等の、専門的な知識。
 専門的な事になると、真希は教えられない。彼女は『執事』なのだ。
 そこで、真希は石川家の四女・里沙に頼み込んだ。『コイツを一人前にしてやって下さ
い。』と。
 里沙は昔から、経営等の方面で『天才少女』と呼ばれて来た。まだ中学一年生なのだが、
石川家の傘下企業の一部の経営を任されているくらいだ。
「…ところで…私、吉澤さんに訊きたい事がありますの。よろしいかしら?」
「う、うん。どうぞ。」
慣れない言葉遣いに、ひとみは戸惑いつつも頷いた。

「吉澤さんは、梨華お姉様のどこが好きなんですの?」

「ふへっ!?」
ひとみは驚きながらも、顔を赤くした。
217 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時35分02秒
「いや、その…どこって…。」
ひとみは頬をかいた。
「全部?」
「・・・・・・。」
里沙の疑わしげな視線を受けて、ひとみは手を振る。
「ぐ、具体的には色々あり過ぎるんだよ!!例えば、顔とか声とか香りとかっ!!」
梨華を思い出したらしいひとみは、顔をでれっと緩ませる。
「あとはね、ちょっと地黒な肌も好きだなぁ。スタイルも超良いし、髪も好きだな。触っ
てるとなんか安心できるし。手も良いなぁ。指とか細くて長くて。手ぇつなぐ時、ちょっ
と緊張するんだよね〜。折れちゃわないかなぁ、とか思って。抱きしめる時もそう。折れ
そうでさー…
 あ!!でも、外見だけじゃないんだよ!?明るくて積極的で、ちょっとやきもち焼きで…
それで、甘えん坊なトコなんてもう最高なんだよねー!!それにさー、嫉妬とかされると
『ウチ愛されてるー』って実感できて超嬉しいし…」
「わ、わかりました。わかりましたわ。」
里沙に止められて、ひとみは自分が惚気まくっていた事に気付く。
「…つまり、本当に梨華お姉様の『全て』を好きでいてくださってるんですのね?」
「そりゃーもちろんっ!!」
218 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時36分03秒
「それじゃ、梨華お姉様の『お金』は?」
「え?」
ひとみは、何を言われてるのかわからなかった。
「…その様子だと大丈夫そうですけど…一つだけ言っておきますわ。
 梨華お姉様は将来的に、石川家の財産の一部を相続する事になります。一部と言っても、
一般的に言うと…一生遊んで遊んで遊び尽くして、それでもお釣りが来る位の莫大な財産
ですわ。」
「へぇ〜。梨華ちゃんスゲェ〜!!」
そのひとみの反応に、里沙はため息をついた。
「…その財産が目当てって事は、なさそうですわね。」
「へ!?う、ウチが!?」
「もちろん。…吉澤さん以外にはあり得ないでしょう。吉澤さんは、梨華お姉様の最有力
婿候補なんですから。」
「さ、さいゆうりょく…むここうほ…。」
ひとみが赤くなった。そんなひとみの鼻先に、里沙はシャーペンを突きつけた。
「もしも、吉澤さんが『財産目当て』だと私が判断したら…。」
219 名前:第四十一話 投稿日:2002年12月10日(火)14時36分35秒
理沙は真顔で言った。

「私、容赦致しませんわよ?」

「…肝に銘じておきます。」
「よろしい。それでは、今日の授業はここまでですわ。」
里沙は、年相応の笑顔を浮かべて言った。
「…今なら、梨華お姉様はお部屋にいるハズ。会いに行かれたらいかがです?梨華お姉様
も喜ぶハズですわ。」
ひとみは、挨拶だけを残して風のように去って行った。
 その後姿を見て思う。
(…あれだけの頭脳を持ちながら、野心はカケラもないなんて…不思議な人。)
理沙はため息と共に、パソコンを立ち上げた。
220 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月10日(火)14時37分06秒


にいにいも、天才です。
…つーか、もう四十一話…。すごい、早いなぁ。
お付き合い下さってる皆様、本当にどうもありがとうございます!!
これからも頑張りますね!!

>ひとみんこ様
 元大名です。旧華族です。平安まで遡れば元貴族です。
 無論、梨華ちゃんは姫です。
 エロ…い、いつか書きたい…。

>>208名無し読者様
 ナンバーワンです(笑)。
 きっと『ご指名に答えてる』と執事・後藤に知れたら、大変な事になるんでしょぉねぇ。
 ヤッスー&いちーちゃんは、次回出てくる予定です☆
221 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月10日(火)18時47分58秒
おぉ〜!何か大変なことになってますね〜・・・柴田家。
てか、梨華ちゃん・・・あんたはすごすぎ・・・^^;
石川家の人すごいですねぇ〜・・・個性派と言うか・・・。新垣もすごい・・・
あんた中@っしょ!?一人でつっこみ入れてました(笑。
更新楽しみに待ってます!
がんばってくださいね!
222 名前:桜流 投稿日:2002年12月11日(水)13時13分47秒
紺野さん&フランソワ−ズ大好きです。
『淫乱』、必死に辞書で調べてるところ考えたら……ホント激しく笑いました☆

いつもいつも更新を楽しみにしてますですよ。
そして自分の作品も読んでいただけて本当にうれしく思っております。
これからもがんばってください!
( ´ Д `)< 自分こそがんばんなきゃだけどね……(´ー`●;)
223 名前:まるみ 投稿日:2002年12月11日(水)17時13分51秒
お豆ちゃんもあさ美も年下コンビはすごいですね〜
吉も早く「最有力候補」がとれて、婿さんになれると良いね。

柴田家にもドタバタが出てきて大変だが、漫才で乗り切ってくれよ〜。
224 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年12月11日(水)22時26分40秒
クロイツさま
更新お疲れさまです。

最近は、よっすぃ〜や梨華ちゃんよりも、悪役でも何でもあやゃの方が好きですよ。
愛すべき悪役あやゃ。違う意味で理想です。でも、小悪魔ぐらいで勘弁してください。
あとは、紺野さんの頑張りで、あやゃの氷のような心に日々が入る日を信じて、とりあえず、柴田さんの婿候補用にお見合写真をひっそり提出しておきます。(笑)
225 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時45分38秒

 亜弥は、フラフラとよろめきながら美貴の病室へと入って行く。
「…み、ミキスケぇ…。」
何も答えない美貴に、亜弥はすがりつくように駆け寄った。
「あややは…あややはもう駄目なのかなぁ!?」
涙が、頬に筋を作る。
 柴田家の当主が交代した。
 それも、従姉妹のあゆみに。
 亜弥は、あゆみが自分を嫌っている事など百も承知だ。あゆみが当主になれば、亜弥の
今まで行使していた権限など…軽く取り上げられてしまうだろう。
「ミキスケ、起きてよ…ねぇ、起きてってば!!起きて、あややを助けてよ!!!
 もう、あややにはミキスケ以外はなにもないの!!」
 祖父が生きていた頃は、良かった。
 亜弥は祖父が大好きだったし、祖父も亜弥を一番気に入っていた。
 もともとそんなに仲の良い夫婦ではなかった亜弥の両親も、祖父の手前では仲良さそう
に振舞っていたし。
 だけど、祖父が死んでから…状況は一変した。
 まず、両親は別居し出した。お互い愛人を作り、めったに家には帰って来ない。なので
亜弥は、広い一戸建てに一人暮らし状態なのだ。
 心の支えは、美貴しかなかった。
226 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時47分03秒
 その美貴も、今はこんな状態。
 そして…あゆみが当主となってしまったら、亜弥はますます柴田家の中で孤立してしま
う。
「寒いよ、寂しいよ!!ねぇ、起きてよミキスケ!!あやや、こんなに寂しいの!!辛い
の!!もう…一人は耐えられないよ!!」
それでも、美貴は目覚めない。
 亜弥は祖父から受け継いだ財産を使って、美貴に最高の治療を受けさせている。それで
も、美貴は目覚めない。
 医者は、もう十人以上取り替えている。
 美貴を目覚めさせられない医者は、亜弥にとっては不要な存在。今まで取り替えた医者
達は全員、亜弥の指示によって医者生命を絶たれた。
「どいつもこいつも、役立たずばっかり!!」
亜弥の目が、危険に光る。
「…紺野あさ美!!!!」
 何をやっても潰れない、世界で一番気に食わない女の名前を呼ぶ。
 亜弥は立ち上がり、涙を拭おうともせずに呟いた。
「…壊してやる。アイツの全てを…!!!」
 美貴の手がピクリと動いたが、亜弥はそれに気付かなかった。
227 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時48分09秒


 石川邸三階の廊下で、ひとみと紗耶香はばったりと会った。
「あ。吉澤ひとみ。」
「うぇっ!?」
いきなりフルネームを呼ばれて、ひとみは驚きのあまり飛び退いた。
「ど、どちら様ですか!?」
「フ…そーだよな…。オマエは私の事知らないんだよな。私はオマエの事、よぉぉぉぉ〜
く知ってるんだが。」
「えぇっ!?」
驚くひとみに、紗耶香はニヤケ顔で行った。
「梨華お嬢様の最有力婿候補、吉澤ひとみ。オマエの写真や資料は、飽きるくらいに読ん
だからな。」
紗耶香はビシッとひとみを指差す。

「オマエの『男』の戸籍をGETしたのは、この私なんだ。」

「あ、そ、そうだったんですか!それは…お手数かけまして…その、ありがとうございま
した!」
深々と頭を下げるひとみに、紗耶香は言った。
228 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時48分40秒
「…それに、なっちからも色々話を聞いてるからな。黙って座ってれば美少女なのに、動
き出しちゃうとものすごい『男前』。スカートなんか制服以外ではめったに着ないから、
一緒に歩いてるといつも『弟さんですか?』って言われるって。
 もっとおしとやかにすれば、男にだってモテるだろーに…あんなんだから、女にばかり
モッテモテで。姉として、見てて面白いって。」
「な、なつみ姉ちゃん…そんな事言ってましたか…。」
顔を赤くして、頭をかく。そして、はたと気付いた。
「…てゆーか、なつみ姉ちゃんの友達なんですか?」
紗耶香はにっこりと微笑んだ。
「まぁ、そうとも言うかな。」
そして、ひとみに向かって右手を差し出す。
「私の名前は、市井紗耶香。…オマエが学校行ってる間、『Tochter.』で接客し
てるんだ。」
「…あ!それじゃ、なつみ姉ちゃんが行ってた、『石川家から派遣されて来てる店員さん』
って…!!」
「そう。私。本業は、石川家の執事なんだけどな。」
ひとみは目をぱちくりさせた。
229 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時49分10秒
「…へぇ〜、すごいですね!執事さんなのに店員までできるなんて!
 …まぁ、梨華ちゃんに買い物の練習をさせる為に、家の目の前にケーキ屋を一つ作っちゃ
う時点で、『金持ちって凄い』って思いましたけど。金持ちの下で働いてる人も、凄いん
ですね。かっけ〜!」
「まぁな〜。…でも、旦那様は過保護過ぎると思うんだよなぁ。」
と、その時。

がしゃーんっ

ひとみの背後で、何かが割れるような音がした。
「「なっ!?」」
驚いて、二人同時に振り返ると…そこには、顔面蒼白の梨華の姿。

「…今の…話…本当なの?」

「り、梨華ちゃん!!」
「梨華お嬢様!!」
「…偶然、じゃなかったの?」
((聞かれてた…!!))
ひとみと紗耶香は、同時に目を見合わせる。
「…わたしにあんなに優しく…お買い物の仕方を教えてくれたのも…お仕事だったの?お
父様の命令だったの?」
230 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時50分15秒
「ち、違うんだ梨華ちゃん。それは…」
しかし、そこから先が続かない。もともとひとみは嘘を吐ける程器用な人間じゃないのだ。
黙ってしまったひとみの目に、梨華の涙が見えた。
「そ、そうよね…わたし、勘違いしてた。普通、こんな世間知らずのレジ打つなんて、嫌
よね。お仕事でもなければ、やってられないわよね。」
梨華の背後から、明日香が現れる。
(…やっちゃったわね。)
その表情は、そう語りかけて来ていた。
「…それに…お父様に頼まれてるんだったら、何言われても断れないわよね。ひとみちゃ
んの事を知りたいとか、ひとみちゃんの恋人になりたいとか、キスしてほしいとか…。」
「違う!そ、それは違うんだよ、梨華ちゃん!!」
「大丈夫よ、無理しなくっても。…大丈夫なの。慣れてるから。」
梨華は、近付いて来ようとするひとみを手で制す。

「…いつもそう。わたしに近付いて来る人たちはみんな、『お仕事』なの。」

梨華は、駆け出した。
「梨華ちゃん!!」
ひとみが慌てて追いかける。
231 名前:第四十二話 投稿日:2002年12月13日(金)12時51分21秒
「「・・・・・・。」」
残された明日香と紗耶香は、梨香が床にブチまけた花瓶の残骸を、拾い始めた。
「…ねえ、紗耶香。」
明日香は紗耶香を見ずに、手を動かしながら言った。
「あれ、ワザと言わせたでしょ?」
「何の話だ?」
「トボけても無駄よ。
 後藤さんを育てたあなたが、梨華お嬢様が接近してる事がわからないわけないわ。いい
え、それ以前に…あなたが、梨華お嬢様がどこにいるかわからない邸内で、梨華お嬢様に
聞かれたくない話題をフッかけるはずないもの。」
紗耶香は微笑みながら、何も答えなかった。

「…ったく、我が従姉妹ながら…タチ悪いったらありゃしない。」

全てを理解しているようなその言葉にも、紗耶香は微笑んでみせるだけだった。
232 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月13日(金)12時52分23秒


すみません。前回私、嘘吐きました。
今回、ヤッスー出てきてません。

アレー?

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ(エンドレス)

そして今日は、学校主催のクリスマスコンサート!!合唱の授業の単位の関係で、私も出
演いたします。コーラスのソプラノパートです。
 てゆーか、十三日の金曜日にクリスマスコンサートをするとは…本当にキリスト教系な
のか?ウチの学校。
 ま、私は仏教徒なんであんま関係なにのですが。


>ヒトシズク様
 にいにいは、十歳の頃から一部の経営任されてます。
 うおぉう天才っ!!
 梨華ちゃんには、そっち方面の才能はございません。
 がんばりますので、どうぞよろしく!!
233 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月13日(金)12時52分55秒
レスの続きです〜♪

>桜流様
 笑えますよね。必死で辞書引くクラスメート達(笑)
 桜流様の作品も、毎回楽しみにしております!お互いがんばりましょー♪

>まるみ様
 今度はいしよしに危機が…!!
 婿になる為、がんばれヨッスィー!!
 柴田&大谷の漫才コンビ、書きやすくて気に入っております。

>ななしのよっすぃ〜様
 悪役あやや…好きになってくださいますか!!よかった〜!
 柴田さんの婿候補の見合い写真、No.77444に入れておきます(笑)
234 名前:チップ 投稿日:2002年12月13日(金)22時33分10秒
あややが・・・いしよしよりもあややが心配・・・
うちに優秀なドクター吉澤ってのがいるんで
そやつならミキスケを・・・
ミキスケ、早く起きて泡風呂へ☆
235 名前:まるみ 投稿日:2002年12月14日(土)03時32分51秒
うお〜!紗耶香!なにやってるんだ!
いしよし!君たちはいつも、甘々じゃないか!ラブラブじゃないか!
信じろ!信じるんだ!
吉!ここでがんばれ!
236 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月14日(土)14時20分38秒
いちーちゃん!!?
あんたなにをやってるんだ!?
すごい目が離せませんっ!
更新楽しみにしてます!
がんばってください!
237 名前:あおのり 投稿日:2002年12月14日(土)14時24分56秒
市井執事のなぞの行動、かっけぇー
市井執事のおかげで、まだまだ甘甘よしいしが続きそうですね。
いちーよくやった!(w

あやや、やぐは未だ苦しみの途中ですが、今後どう展開していくか楽しみです。
238 名前:第四十三話 投稿日:2002年12月16日(月)23時49分51秒

 「梨華ちゃん!!梨華ちゃんっ!!!」
ひとみは、天岩戸に閉じこもったアマテラスオオミオカミのごとく自室に閉じこもった梨
華に、必死に呼びかける。
「梨華ちゃん、お願い!あたしの話を聞いて!!」
「…聞きたくない。」
厚い扉の向こうで、梨華は静かに涙を流しながら答えた。
「聞きたくないよ。『実は梨華ちゃんの事なんか好きでもなんでもなくて、ただ旦那様の
命令があったから逆らえずにいました』なんて。」
「ち、違うっ!!あたしが言いたいのはそんな事じゃなくて…!!ああ、もうっ!!」
ひとみは舌打ちをした。
「なんで疑うのさ!?今まであたしが、そんな『命令』なんかで動いて来たって、本当に
そう思ってるの!?梨華ちゃんは!!」
「思いたくない!!」
梨華の声が、激しく震えている。姿は見えないが、きっと身体も震えているのだろう。そ
んな震え方をしていた。
「…思いたくない…ひとみちゃんが、命令でわたしと付き合ってくれてたなんて…思いた
くないよ!!」
「だったら…」
239 名前:第四十三話 投稿日:2002年12月16日(月)23時50分23秒
「でも!!でもっ!!!信じられないの!!」
ひとみの目が、驚愕に見開かれる。
「…し、信じられない!?あたしが!?」
「だって…今まで、みんなそうだったんだもん!!どれだけ優しくしてくれても!どれだ
けわたしを想ってくれてる素振りをしていても!!みんな、わたしの事なんか見てくれて
なかった…。
 みんな、見てたのはお父様と…わたしの『お金』だけ。」
「あたしは違う!!!」
ひとみは叫んだ。
「あたしが見てるのは、梨華ちゃんだけ。梨華ちゃんのお父さんもお金も、関係ないんだ。
…いや、てゆーか…そうじゃなくって…」
ひとみはもどかしくなって、頭をかきむしる。
 そして、ぐぐっと顔を上げた。
「…確かにあたしは、ずっと梨華ちゃんを騙してた。それは謝るよ。…ごめん。」
「・・・・・・。」
「だけど、今まで梨華ちゃんに伝えた気持ちは嘘じゃない!!」
ひとみは一回、大きく息を吸い込んだ。
「…愛してるよ、梨華ちゃん。例え梨華ちゃんが何も持ってなくても。」
240 名前:第四十三話 投稿日:2002年12月16日(月)23時50分55秒
しかし、梨華は信じない。
「…もう、良いんだよ、ひとみちゃん。」
「え?」
「無理してわたしに付き合わなくても。『Tochter.』ならお父様にお願いして、
ちゃんと営業を続けられるように手配するし。ひとみちゃんの立場が悪くなる事もないだ
よ…。」
ひとみは、梨華の部屋の扉にごんっと頭をぶつけた。
「…梨華ちゃん!!なんで…なんで信じてくれないんだよ…ッ!!!」
「もう、良いってば。」
梨華の声が、毅然としたものに変わった。
「…大丈夫。わたしなら全然大丈夫よ。
 今ならまだ、諦められる。ひとみちゃんがいなくなっても、今ならまだ立ち直れる。後
戻りできるの。」
ひとみは、ガンッと扉を殴りつけた。
「…諦め、られるの?梨華ちゃんは。」
「・・・・・・。」
「あたしは、無理だよ。」
「…え?」
ひとみの目から、大粒の涙が流れ出した。

「…あたしはもう無理だ。梨華ちゃんを諦めるなんてできない。」
241 名前:第四十三話 投稿日:2002年12月16日(月)23時51分27秒
「・・・・・・っ!!」
「後戻りなんてできないし、したくない。…絶対に失いたくない。」
ひとみの頬に、涙の筋が何本も作られた。
「…嫌だよ、梨華ちゃん。別れるなんて、出来るワケないじゃん…。愛してるんだよ、
梨華ちゃんの事…。こんなに他人を好きになったの…初めてなんだ。」
ひとみはズルズルと、床に座り込む。
 すると、梨華の部屋の扉が開けられた。
「・・・・・・。」
梨華は床に膝をついて、座り込んだひとみの頭を胸に抱きしめた。
「…本当?本当に…わたしの事…」
「愛してる。」
「絶対?絶対に、はなさないでいてくれる?」
「もちろん。…てゆーか…はなしたくない。絶対に。」
梨華は震える手で、震える声で続けた。

「…じゃあ…一緒に駆け落ちしようって言ったら…してくれる?」

「もちろん。」
ひとみは即答し、今度は梨華を抱きしめた。
「…本当に?一緒に逃げてくれるの?」
「本当だってば。…梨華ちゃんがそう望むのなら。」
二人はしばらく見詰め合い、どちらからともなくキスをする。
 その夜、石川家はパニックに陥った。
 石川家次女・石川梨華が、婚約者・吉澤ひとみと駆け落ちしたのだ。
242 名前:第四十三話 投稿日:2002年12月16日(月)23時52分00秒


 石川家では、緊急会議が開かれた。
「…駆け落ちだなんて…何考えてるのよ、梨華は…!」
真里は左頬の湿布のはってある部分に触れながら呟いた。圭に引っ叩かれたアトがまだくっ
きり残っているのだ。
「大胆な事するね〜、梨華お姉様!駆け落ちなんて…カッコイイ〜!!」
亜依は手を祈るような形に組み、うっとりと宙を見つめる。圭と共に逃げる自分を想像し
ているのだろう。
「…しっかし…『最有力婿候補』と逃げるなんて。何があったんでしょうね。」
里沙は一人冷静。紅茶を口に運びながら、さらりと言う。
「別に駆け落ちなんかしなくても、吉澤さんとは結婚できる事になってたのに。合理的で
はありませんわね、梨華お姉様の行動は。」
「…里沙お嬢様、きっとそう言う事ではないのではないでしょうか?」
控えめながら、きっぱりとした物言いの真希に…その場にいた全員の視線が集まる。
「真希は何故、そう思うの?」
真里に尋ねられて、真希は穏やかに話し始めた。
「…きっと梨華お嬢様は…確証が欲しいんだと思います。」
「確証?」
首を傾げる亜依に、真希は微笑みかける。
243 名前:第四十三話 投稿日:2002年12月16日(月)23時52分31秒
「はい。…財産や地位や…そんなものではなく、自分を愛して欲しい。梨華お嬢様はそう
思われて、吉澤ひとみに『連れて逃げて』と頼んだのではないでしょうか?」
その言葉に、真里は複雑な表情を見せる。
「…その気持ちは、わからないワケじゃないわ。」
 その表情を見て、真希は驚いた。
(…昔の真里お嬢様に、戻りつつあるの?なんだか真里お嬢様…穏やかな顔をしていらっ
しゃる…。)
ふと紗耶香を見ると…紗耶香は真希と目が合うと、にっこりと笑って見せた。
(・・・・・・?)
なんだかワケがわからなくて、真希は首を傾げる。
 そんな真希を置いて、会議は終了した。
 全力で梨華を探し出す。全ては見つけ出した後決める。
 それが、決定事項だった。
244 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月16日(月)23時53分02秒


さぁーて。大変な事になりました。
BGMはもーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』より二重唱『手を取り合って』です。
つーかその曲を聴いてる最中、この展開を思いつきました。
モーツァルト…最近だいすっきです。

>チップ様
 今回、あやや&ミキティ出て来てませんね(汗)
 なんかダークあやや、それなりに人気あるみたいで嬉しいです☆

>まるみ様
 こんな方向へと転んでしまいました(笑)
 最有力婿候補、がんばりました。そしてがんばります。

>ヒトシズク様
 どうもありがとうございます。がんばりまっす☆
 紗耶香さんはどーも、自分の事よりも他人におせっかい焼いてる方が好きみたいです。

>あおのり様
 執事市井の真意はどこにあるのか?んっふふふふふふ…(←不気味)
 楽しみだなんてそんな…ありがとうございます!がんばります。
245 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月16日(月)23時59分31秒
更新してから気付いたんですが…今回誤字脱字多いですね…(汗)

>>238二行目『アマテラスオオミオカミ』→『アマテラスオオミカミ』

>>240五行目『ないだよ』→『ないんだよ』

うおをををう…。
246 名前:桜流 投稿日:2002年12月17日(火)00時13分23秒
駆け落ち!!!
よっすぃーの真実の愛、すばらしい!
お金とかじゃなくて……ただその存在を愛しているんだということを
行動で示せるところに感動を覚えますね…!!
247 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月17日(火)00時13分52秒
リアルタイム更新を見届けて嬉しい!!
いや〜しかし、紗耶香はヒヤヒヤさせてくれますね
二人がショックで首でも吊ったらどう責任を(笑)
自分的にはもちっと二人が疑惑や葛藤にさいなまれるダークなのも覚悟してましたが、はたしてどうなるか(ワクワク
248 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月17日(火)09時50分16秒
行け〜、いしよし、地の果てまでも!

でも、落ち着く先は何処なんでしょう?
249 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時40分52秒

 石川家なつみ・あさ美・希美は、石川邸の応接室に駆け込んだ。
「…ああ、いらしたのね。」
「いらっしゃーい!!」
「初めまして。」
真里・亜依・里沙が笑顔で迎えるが…なつみは顔面蒼白で、床に膝をついた。
「「「?」」」
石川家の姉妹が顔を見合わせると、なつみはがばっと土下座の体制に入った。

「申し訳ございません!!!!」

それを聞いて、あさ美と希美も床に座って頭を下げる。
「ちょ、ちょっと…安倍さん!それに妹さん達も…」
「申し訳ございません!!宅のひとみが…そちらの大切なお嬢様を…!!」
「「ごめんなさい…。」」
なつみの後に続いて、あさ美と希美も声を揃えて言った。
 そんな三人を見て、真里はすっかり困ってしまった。
「…安倍さん、どうか頭を上げてください。」
「いえ…ですが…ッ合わせる顔もございません…!!」
「それは、私達姉妹も同じなんです。」
「「「え?」」」
三人同時に顔を上げると、石川姉妹は困り顔をしていた。
250 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時41分41秒
「どーせ、『駆け落ちしよー!』って言い出したのは梨華お姉様だよ。」
「そうですわ。どう考えても、吉澤さんにそんな大それた提案ができるとは思いませんも
の。」
二人の妹は同時にため息を吐く。
「…本当に、梨華は昔から唐突で『思い込んだら命がけ』ですから。
 ですから、あなた方が頭を下げる必要は皆無なんです。…どっちかと言うと、私達の方
が下げなきゃいけないくらいで。」
真里がちらりと亜依と里沙を見る。
 そして、石川姉妹も床に座った。
「「「ごめんなさい。」」」
「そ、そんな!!駄目だべさ!石川家のお嬢様がそんな事しちゃ…!!!」
「そうなのれす!!てゆーか、やっぱりひとみおねーちゃんも悪いのれす!!」
「その提案に乗る、ひとみ姉さんが悪いんですよ!完璧です!!」
真里・亜依・里沙は同時に顔を上げた。

「…だべさ?」
「う…っ。」

「…れす?」
「…うぐっ。」

「…完璧?」
「はうっ…。」

最初に噴出したのは、亜依だった。
亜依は希美を指差して、眩しいくらいの笑顔を浮かべる。
251 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時42分12秒
「…っははは!!あはははははは!!良いキャラしてるね、あなた!…ええっと…」
「ののは、希美って言うのれす!辻希美。」
「のの?」
「あ…。」
亜依は希美に近づいて、無理矢理手を握った。
「はい、握手。」
「へ?」
「亜依の事は、あいぼんって呼んで。学校ではそう呼ばれてるの。」
「へ、へい…。」
「『へい』って!!『へい』って!!!すごーい!!真里お姉様!里沙!亜依、この子気
に入ったよ!!」
それを合図に、真里と里沙も笑い出す。
「…本当に…こんなご姉妹に囲まれている方だったら、きっととっても良い方なんでしょ
うね。」
「あら、真里お姉様。吉澤さんに会った事ありませんの?」
「里沙はあるの?」
「もちろん!」
里沙は胸を張る。
「だって私、吉澤さんの『先生』だもの!!」
「まあ、良いわね!私も一度会ってみたいわ。」
「会えますわよ。だって、吉澤さんは梨華お姉様の旦那様ですもの!」
「…それもそうね。」
そんな会話く繰り広げる石川姉妹を前に、なつみ・希美・あさ美はきょとんとする以外は
何もできなかった。
252 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時43分14秒


 石川家でそんな騒動が起きている事など、外には一切漏れていない。
 柴田家のあゆみ専用の別邸で、あゆみはだらだらとソファーに横たわっていた。
「見合い写真が五万七千三枚〜、見合い写真が五万七千四枚〜…」
「あゆみお嬢様。何してらっしゃるんですか?」
「…見りゃわかるでしょ。見合い写真数えてるのよ。」
「表現が適切ではありませんね。」
雅恵は真面目な顔で言った。
「柴田家当主になるのは絶対に嫌だけど、かと言ってお父上である旦那様に逆らうのも面
倒くさい。そんなジレンマの中で唯一の救いである石川梨華嬢も本日は学校を休み、もー
全てがイヤんなって『ケッ。やってられっかよ』と言わんばかりに学校を早退し、ダラダ
ラしている…それが一番適切な表現ですね。」
「解説ありがとよッ!!」
あゆみは見合い写真を束で掴み取り、雅恵に向かって投げつける。しかし雅恵はひらり、
とそれを避けた。
253 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時45分22秒
「…あああああっ!!もう!!なんで梨華ちゃん来ないのよー!!メール送っても返事な
いしー!電話しても出ないしー!!!」
「嫌われてるんじゃないですか?」
「おおたにィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」
ハリセンが繰り出されるが、雅恵はそれもひらりと避ける。
「…ま、石川家の梨華様より…松浦亜弥様の事を考えたらいかがです?」
「・・・・・・。」
雅恵に言われて、あゆみはクッションを抱きしめた。
「…私だって、考えてるわよ。」
「嘘ですね。あゆみお嬢様は、考えるのを拒否しておられる。」
「・・・・・・。」
あゆみは胡坐をかいた。
「…だってさぁ!!私あの子イヤなんだもん!!なんか…怖くて。」
ぼりぼりと頭をかく。
「なんでだろ…顔立ちは可愛いと思うのよ。だけどなんか、雰囲気が怖いってゆーか。」
「まぁ、それはそうでしょうね。」
254 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時45分52秒
雅恵は笑みを崩さず言った。

「なんと言っても、何人もの人間を死に追いやってる方ですから。」

「!?」
驚愕の表情を浮かべて雅恵を見るあゆみ。雅恵は表情を変えず、淡々を言う。
「柴田家の当主になられるあゆみお嬢様には、知っておかなければいけない事です。」
雅恵は、表情すら変えなかった。そして、付け加えるかの様に言う。
「それから、あゆみお嬢様。パンツ丸見えですよ。」
あゆみはささっと、足をもとにもどした。
255 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時46分25秒


 (…ここは、どこ?)
美貴は大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐いた。
 視界が、だんだんとクリアになって来る。無機質な天井が見えた。薄暗いのに、電気は
ついていない。
「…う…。」
声を出そうとしたけど、うまく行かなかった。
(あやっぺ?)
一つ年下の、大切な大切な親友の名を思い浮かべて…美貴は視線をさまよわせる。
 しかし、姿は見えない。
(あやっぺ?どこにいんの?あやっぺ?)
しばらく手探りでその辺を探してみる。
 身体がうまく動かない。
(なんで手足がこんなに重いの?なんで指がこんなに動きにくいの?なんで…立ち上がれ
ないの!?)
美貴は泣きそうになりながら、震える手でプラスチックのスイッチをつかんだ。
(…何?コレ…。)
美貴は、とりあえず押してみる。
 すると…
『藤本さん!?藤本さん、どうなさったんですか!?』
枕元のスピーカーから、焦ったような女の声が聞こえて来た。
256 名前:第四十四話 投稿日:2002年12月17日(火)13時46分56秒
「…う…んんっ!」
一回咳払いをしてから、美貴はかすれる声で言った。
「…誰?ここどこ?」
『ふ、藤本さん!?目が覚めたんですか!?』
その声の直後、スピーカーはぶつっと言う音を立てて切れた。

「…あやっぺ…」

しかし、亜弥は来なかった。来たのは彼女の主治医だけ。
 美貴は、大声で泣きたくなった。
257 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月17日(火)13時47分27秒


 今回いしよし、逃亡中な為にお休みです。
 さて、どこに逃げたんだいしよし。

>桜流様
 感動してくださいましたか…ヨカッタ☆
 いしよし、どこ行っちゃったんでしょーねぇ。

>ラヴ梨〜様
 をを!!リアルタイムでしたか!!
 >二人がショックで首でも吊ったらどう責任を(笑)
 大丈夫です。私の書く梨華ちゃんは、自殺なんかできるよーなタイプじゃないのれす(笑)
 ついでに私、ダークも書けない人種だったりもします(爆笑)

>ひとみんこ様
 んっふふふふふふふ!!どこなんでしょぉねぇ〜☆
 いしよしはどこに行っても絵になりそーで楽しいです♪
258 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月17日(火)17時10分01秒
おぉ〜!かけおちですか〜^^大胆なことしますね〜いしよし。
ま、その方が私的には・・・♪
っ!美貴ちぃー目覚めたのですかっっ!すごいっ!
それにしてもあややはどこに・・・
今後とも目が離せませんっ!
更新頑張ってくださいね。応援してます!
259 名前:まるみ 投稿日:2002年12月17日(火)18時26分29秒
駆け落ちか〜・・・かっけ〜!
美貴ちゃん目覚めてこれからのあやみきが楽しみ♪
柴ちゃん大谷コンビもいい味出してるし
楽しみに待ってるよ〜
260 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)20時37分00秒
いしよし駆け落ちー!
しかも姉妹方はよく性格をご存知で(w
みきてぃも目が覚めてよかった!(泣
アヤミキも幸せになってほしいっす!
今後も期待!
261 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)21時32分29秒
駆け落ちという大変な事態のはずなのに妙に落ち着いている石川家の皆さん、大好きです(w
いしよし、ホントどこ行っちゃったんでしょうか…

柴ちゃんと大谷さんの漫才コンビも相変わらず素敵ですv

そして…ミキティ!!
あややを幸せにできるのは君しかいない!
どうかミキティに頑張って欲しいです!
262 名前:あおのり 投稿日:2002年12月18日(水)13時17分33秒
真理お嬢も亜衣お嬢も市井執事のおかげで復調の兆し?
福ちゃんといちーちゃんとごっちんがいれば石川家は大丈夫きっと大丈夫。
柴田家もおーたにさんがいれば大丈夫!かな?(w
ミキスケも目が覚めたようだしあやや早く行ってやってくれ!

それにしてもよしいしは何処に?かなり期待なんですが…
263 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時15分53秒

 年が明けた。
 それでも、梨華とひとみの行方は依然として知れない。
「…ったく、石川家のネットワークってのも、案外頼りにならないわね。」
真里はそう呟いて、『捜索結果・沖縄県』とでかでかと書かれた資料を指先で弾く。
「まぁ、もともと石川家のネットワークは、人探しの為に作られたワケじゃりませんしね。」
真里のぼやきに、里沙はパソコンに向かいながら答える。
「一番効果的な方法は、人海作戦ですわよ。」
「じゃあ、なんでそれやらないのよ。」
「決まってるでしょう、真里お姉様。」
里沙はビシっと真里を指差す。

「人件費が勿体無いですわ。」

その表情は、真剣そのもの。真里は思わず絶句した。
「考えても見て下さいませ。梨華お姉様は『自分の意思』で、『婚約者』と逃げたんです
のよ?連れ去られたワケでも、どこの馬の骨とも知れない人間と逃げたワケではありませ
んわ。」
「う、うん。」
「って事は、『居場所がわからない』って事以外は大した問題じゃないんですのよ。
 そんな…言わば『梨華お姉様のワガママ』に、膨大な人件費や貴重な人員なんざ割けま
せんわ。」
264 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時16分25秒
そんな里沙に、真里は冷や汗をたらしつつ言う。
「…里沙、キッツくない?」
「失礼。私、少々気が立っておりますの。」
里沙はパソコンに向かった。そして、画面を見て舌打ちをする。
 画面に出ているのは、里沙が経営を任されている会社の『業績表』。
 全体的には優秀な成績が出ているが、前年度のこの時期に比べると…あきらかに落ちて
いる。
 原因はわかっている。柴田家だ。
「…柴田あゆみ…。」
ぽつりと呟いてから、里沙の顔の険しさが増す。
(…柴田家の当主が交代してから、やりにくくなってる…とくに服飾部門が。)
今まで、柴田家は服飾部門が弱かった。流行を取り入れると言う事を知らない、頭のカタ
い人間が仕切っていたのだろう。他の部門でも同様に、柴田家には甘い所が多々あった。
 だが、あゆみが当主になってから…大幅な人事異動があったらしい。それほど甘くなく
なってしまった。
265 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時16分55秒
 里沙はもう一度、舌打ちをする。
 そんな里沙に、真里は言った。
「…里沙、そんなカリカリしないで。あなたまだ十三歳じゃない。もっと年相応に、のび
のびと遊んだら?」
「・・・・・・。」
それを聞いた里沙は、顔だけ振り返った。
 そして、寂しそうな顔を見せる。

「…私が『年相応』でいようとすればするだけ、風当たりは強くなって行くんですのよ。」

その、脱力感を伴っているかのような寂しい笑顔に…真里は何も言えなくなった。
266 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時17分25秒


 真里は重い足取りで、邸内をふらふらと歩き回った。
(…私は…自分だけが不幸なんだって、思い込んでいたのかも知れない。)
 トラウマを抱え、苦しんで来た。…いや、いまも苦しんでいる。
 だから、自分は誰よりも不幸なんだと思っていた。
 だけど、さっき見た里沙の表情を思い出すと…今まで自分が抱えて来た想いは間違いだっ
たんじゃないか、と思えて来るのだ。
(里沙も、苦しんでるのね。)
 正直、真里は里沙の頭脳をずっと羨んでいた。
 『あれくらいの頭脳が、私にもあれば…』と思わなかった事はないくらい。
『…私が「年相応」でいようとすればするだけ、風当たりは強くなって行くんですのよ。』
 里沙はそう言った。
(…確かに、そうかも。)
 高過ぎる知能指数。同年代の子達にはできない事が、できてしまう能力。
 それは一見、とても素晴らしい物に思えるかも知れないが…持っている本人はどう思っ
ているのだろうか?
267 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時18分27秒
 里沙は、真里が思う程幸せそうではなかった。
 真里の脳裏に、梨華の顔が浮かび上がって来た。
 いつも幸せそうに微笑んでいた梨華。だけど、ひとみと共に逃げた梨華。
 果たして梨華は、本当に幸せだったのだろうか?完璧に幸せなのだったら、逃げたした
りなんかしなかったはず。
 誘拐され、男達に監禁され…逃げた時の事を思い出してみる。
(…私は、なんであそこから逃げたんだっけ?)
 答えは簡単。嫌だったから。恐怖を感じてたから。この状況から脱したいと願ったから。
「・・・・・・。」
はたと気がつくと、厨房の付近までやって来ていた。
「やだ、私…部屋に帰るつもりだったのに…」
そう呟いた直後。
「うわぁ、おいしそう!」
亜依の声だ。真里は驚いて、声の出所を探す。…どやら厨房の中から聞こえて来ているよ
うだ。
 真里はこっそりと覗いて見る。
 そこにいたのは、亜依だけでなく…なつみと希美もいた。
268 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時19分28秒
「れしょれしょ!?なつみおねーちゃんのケーキは、味はもちろん!見た目も超おいしそ
うなのれーす!!」
「本当に!!コレ、なんて言うケーキなの?」
亜依の問いに、なつみは笑顔で答えた。

「『桃色片想い』だべさ♪」

亜依と希美が、目をキラキラさせて覗き込む。
「ショートケーキの桃版って感じかな。でも、すっごいね〜石川家。季節外れなのに桃が
手に入っちゃったよ。
 それに、クリームにも桃のリキュールを含ませてあるんだべさ!まさに、桃尽くし!」
なつみは一旦言葉を切った。
「…片想いって…けっこー切ないモンだけどさ。ののとか亜依お嬢様の年頃だと、けっこー
甘くて楽しいモンっしょ?」
首を傾げる希美とは対照的に、亜依はこくこくと頷く。
「だよね〜!なっちも経験あるんだー!影からこそっと覗き見したり、廊下ですれ違った
りするだけでもー、超幸せなの!!」
そして、ケーキを亜依に差し出す。
「…亜依お嬢様も、片想い中っしょ?これは亜依お嬢様にあげるべさ。」
「えっ?」
亜依の頬が、朱に染まる。
「がんばって、って、なっちの気持ち!食べて食べてー!」
269 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時20分00秒
「あああ!あいぼんズルいのれす!」
「ののは試食したっしょ?」
三人同時に、笑いが起きる。
 ちょっと笑った後、なつみはふっと大人びた笑顔を浮かべた。
「そして、コレは『The美学』。」
取り出したのは、生チーズタルトだった。

「これは、真里お嬢様の為に焼いたんだべさ。」

「真里お姉様に?」
「そう。」
なつみは柔らかい笑顔で言った。
「チーズと生クリームがいっぱいの、生チーズタルトだべさ。他の店では『タルトフロマー
ジュ』って呼ぶんだけど…これはやっぱり、今の真里お嬢様にピッタリだと思うから。」
「なんで?」
「…『一人じゃない。一人で苦しまないで』って、なっちは伝えたいんだべさ。」
真里はぎくりとした。
270 名前:第四十五話 投稿日:2002年12月18日(水)17時20分30秒
 そんな真里の存在に気付かず、なつみは言う。

「…なんか、もしかしたら思い過ごしなのかも知れないけど…真里お嬢様は何か大きな傷
を抱えてて…それがあまりにも大きくて、それによってまた傷ついて、みたいな事を繰り
返してるよーに見えるんだべ。
 だから、なっちは…真里お嬢様に『一人じゃないよ』って伝えてあげたいんだべさ。」

真里の目から、涙が止めどなく流れ始めた。
 それと同時に、激しい後悔が真里の胸を襲う。
(私は…安倍なつみに、そんな気を使ってもらえる人間じゃないのに!!)
 紗耶香を、なつみから奪った。
 それも、八つ当たりみたいな方法で。
 真里は逃げ出したかったが…足が、ピクリとも動いてくれなかった。
271 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月18日(水)17時21分03秒


今回はやぐっつぁんでずっぱり〜。
矢口さん好きな方、集合です(笑)。

>ヒトシズク様
 どこいっちゃったんでしょーねぇ、あやや。ミキティはリハビリ中です(笑)。
 ありがとうございます!がんばります!!よろしくでっす☆

>まるみ様
 柴ちゃん当主として大活躍中です(笑)。
 がんばりますね〜!!

>>260名無し読者様
 姉妹はお互い、冷静に相手の事を見てるモンです(笑)
 あやみき、どーなるんでしょうかねぇ♪うふふふふ。がんばります!!

>>261名無し読者様
 そーですよね…落ち着きすぎですよね、石川家(笑)
 なっちの反応が一番正しかったよーな気がする今日このごろ。

>あおのり様
 どこいっちゃったんでしょーねぇ、あの二人は♪
 柴ちゃん、新当主として奮闘中です。
272 名前:まるみ 投稿日:2002年12月18日(水)20時40分46秒
柴ちゃん!新当主就任おめでと〜♪
ボケボケだと思ったけど、案外経営うまいね〜。

またまた出てきたなっちね〜さんのケーキ
ほんと〜にオイシそうでたべたいよ〜
だんだん真理っぺの心の氷が溶けてきたみたいでよかったね!
273 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月18日(水)21時04分28秒
なっちのケーキおいしそう・・・・
なっちは何でもお見通しなんですね・・・真里っぺに涙を流しましたよ^^
なっちの言葉にも・・・
いしよしは何処へ!?
ちょい気になるんですよねぇ〜いしよし。
更新楽しみに待ってます!
がんばってくださいね!
274 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月18日(水)23時37分46秒
石川家経営難に陥るのか…いや、梨華一人のためにケーキ屋立てる人件費と設備費があるから平気か(笑)
しかし、年明けたのに依然、行方不明の主役二人…
もしかして熱くて甘〜い二人の初夜が読者の知らぬとこで終わってるかと思うとやりきれないですー!!(悲)
クロイツ様、ヘルプミー!!
275 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時10分33秒

 家を出てから一ヶ月。
 ここは、石川邸から約一時間程電車に揺られた所にある、下町の風情を残す住宅街だ。
「好っきっなっ人ぉ〜がっ♪やっさっしっかぁったっ♪」
梨華は上機嫌で洗濯物を干す。ベランダはないので、窓からぶるさげる形になる。梨華は
多少のスリルを味わいながら、楽しそうに洗濯物を干して行く。
 最初、この土地に着いた時…梨華は戸惑った。『こんなに近い所じゃ、すぐに見つかっ
ちゃう!』と思ったのだ。
 しかしひとみは、余裕の表情でこう言った。
『灯台下暗し、って言うじゃん。このくらいの距離が、一番見つかりにくかったりするん
だよ。』
 その通りだった。この一ヶ月、石川家の探索の手はここには来ていない。
 そしてこのアパート。
 去年の夏に奥さんを亡くした、情に厚いお爺さんが経営している。築三十年、1DK、風
呂なしトイレ付き。家賃は三万円。
276 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時11分05秒
 この付近をさまよっていたら、丁度引越しが行われていて…管理人のおじいさんに声を
かけ、事情を説明したら涙ながらに『使ってください!敷金礼金はいりませんから!』と
言ってくれた。さすがに家賃は毎月払う事にしたが…家出してきた身の上で、敷金礼金を
払える財力はなかったので、助かった。
 まさに『幸運』である。
「うっれっ〜いで〜き〜ご〜とがぁぁ〜♪増えましたっ♪」
ふと右を見ると、隣の隣でも洗濯物を干している。
「こんにちはっ!平家さん!」
「はい、こんにちは。吉澤さん。」
平家みちよは、梨華に笑顔を返す。
「お嬢ちゃん、一人で洗濯なんかして大丈夫なんか?」
「はいっ!慣れました!!」
梨華は、真っ赤になった手を祈るような形に組む。
「楽しいですね、お洗濯!てゆーか、洗濯機なくてもお洗濯ってできるんですね!」
「はっはっは。そーやなぁ。てゆーか、管理人さん家の物置に洗濯板なんて時代物が残っ
てたのも奇跡に近いなぁー。」
二人は顔を見合わせて、くすくす笑う。
277 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時11分37秒
「せやけど、毎日毎日冷たい水で、洗濯板で洗濯すんのは辛いやろ。」
「いいえ、大丈夫です!」
梨華は、自分の赤くなった指先を見る。
 そして、幸せそうに笑った。

「なんか、『自分でやってるんだーっ!』って実感が持てて、嬉しいですから!」

みちよは、首をかしげた。
「なんかよーわからん思想持ったねーちゃんやなぁ。」
そして、ニヤリと笑う。
「…ま、はよ旦那が洗濯機買えるくらい高給取りになる事、ウチも祈っててあげるわ。」
梨華の顔がぼっと赤くなったのを見てから、みちよは窓から首を引っ込めた。
 梨華は、冷たくなった手で火照った頬を押さえる。
「…旦那様…。」
ちょっと身悶えてから、また上機嫌に歌いだす。
 その顔は、言うまでもなく幸せそうだった。
278 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時12分09秒
 梨華にとって、駆け落ちしてからの生活は『初めて』尽くしだった。
 まず、逃げるために電車に乗ったのも『初めて』。そんなモンだから、切符を買ったの
も自動改札を通ったのも『初めて』。
 布団を敷くのも『初めて』だったし、スーパーと言うモノに入ったのも『初めて』。石
川邸の自分の部屋よりも狭い家に住むのも『初めて』だ。

 さらに、ひとみとは『初めて』大喧嘩もした。

 詳しい事は省くが、すぐに仲直りし…その後は前よりも仲良くなった。梨華にはそれが、
本当に嬉しかった。
 梨華は掃除を始めた。掃除機は管理人が古いのを貸してくれたのだ。
「明日香さんに家事を習っておいて良かった♪」
 お世辞にも『上手い』とは言えないが、なんとか人並みにはこなせる。
 ひとみは今、仕事に行っている。
 ここに住むようになった直後、近所のケーキ屋でアルバイトを募集しているのを見つけ
て、迷わず面接に行ったら採用してくれたのだ。
 これも、まさに『幸運』。
 梨華がふと時計を見ると…午後二時過ぎだった。
「ひとみちゃん、お弁当食べてくれてるかしら♪」
そう呟いてから、ふと顔を曇らせた。
279 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時12分41秒
「…今日こそ…してくれるかしら…。」
 『初めて』尽くしのこの生活。そんな中で、梨華に不満があるとすればただ一つ。

 ひとみは、梨華に指一本触れようとしないのだ。

 キスも、ねだってねだってねだりまくって、ようやく軽いのをくれるだけ。布団は一組
しかないし、寝る時も『寒いから』と布団の中で抱きしめてくれるのだが、本当に『抱き
しめる』だけ。
(…毎日一緒にいられるだけで、十分幸せだとは思うけど…)
梨華は、ため息をついた。
「わたしって、そんなに魅力ないのかしら…。」
そう呟くその姿は、まさに『悩める人妻』のそれだった。
280 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時14分08秒


 あゆみは、病院の廊下をつかつかと歩いていた。
「大谷、藤本美貴の病室は?」
「最上階の、特別室です。ですが今は、リハビリ室でリハビリ中だと思います。」
「…そう。」
あゆみは進行方向を変え、今度はリハビリ室に向かってつかつか歩く。

 『リハビリ室』

でかでかとそう書かれた扉を、勢いよくあける。全員が一斉に、あゆみを見た。
「…し、失礼します。」
実は意外と小心者なあゆみ。
「あの、藤本美貴さんいらっしゃいます?」
「…え?」
振り返ったのは、歩行訓練中の少女だった。
 あゆみは美貴にむかって、にっこりと笑顔を向ける。
「リハビリ中にごめんなさい。…藤本美貴さん。」
「は、はい…。」
つかまっていた補助用具にしっかりつかまり、警戒するようなそぶりを見せると…付き添
いの看護婦が前に立ちはだかった。
281 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時14分49秒
「どちら様ですか?藤本さんは面識ないみたいなんですが。」
「…ふふふ。アナタ美人ね。ナース服、良く似合ってるわよ。」
「はい、そこまで。」
雅恵はあゆみの後頭部を、カバンでブッ叩いた。
「…てぇな!!何すんだよ大谷!!」
「口が悪いです。減点三十点。」
「減点って、何がだよ!!」
「あゆみ様の持ち点は百点。ゼロになるごとに一回ずつお見合いをして頂きます。」
「な…っ!!何よそれ!!いつ、誰が、どのよーにして決めたのよ!!」
「今、私が、思いついて決めました。」
「おぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉたぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃ!!!」
「はい、大口開けすぎ。減点十点。これで持ち点は六十点になってしまいました。」
そんな漫才を見て、美貴は不安そうな表情を浮かべる。
 そんな美貴に気付いて、あゆみは営業用の笑顔を顔に貼り付けた。
「うふふ。ごめんなさいっ。私とした事が、ちょっぴり取り乱しちゃった☆」
「は、はぁ…。」
「本題に入りましょう。」
あゆみは咳払いをして、言った。
「藤本美貴さん。…あえて『ミキティ』と呼ばせてもらうわ。」
「は、はぁ…?」
困惑する美貴を指差して、あゆみは言い放った。
282 名前:第四十六話 投稿日:2002年12月19日(木)15時15分19秒

「あなたは、私のモノになってもらいます。」

「「「「・・・・・・。」」」」
美貴も雅恵も看護婦も、言った当人のあゆみですらちょっと固まった。
「…あゆみ様。それ、ヒロインをヒーローから引き離した時に、悪役が言う台詞みたいで
すよ。」
「ち、違ぁぁぁぁう!!私が言いたいのはそーじゃなくって!!」
「…キメ台詞をトチるとは…まだまだですね、あゆみ様。」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃ
ぃぃぃぃぃ!!!!!!」
美貴の目は、点になったままだった。
 当然の事だが、美貴はあゆみが本当は『あなたの後ろ盾になります』と言う意味の事を
言いたかったと言う事はわからなかった。
283 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月19日(木)15時15分59秒


とーとー出て来ました。主役その1。
実はアパートのモデルは…私のじーさんの家だったりします(笑)。
ああ〜、あそこにもいしよし来ないかなぁ〜。

>まるみ様
 川σ_σ||<ありがと〜!ま、脳ある鷹は爪を隠すってヤツ?オホホホホ!!
 ( `_´)<鳩の爪かも知れませんけどね。
 川σ_σ||<おぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉたぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃ!!!
 ま、有能な執事の力もあるって事ですわ(笑)

>ヒトシズク様
 (* ´ー`)<そんな、照れるだべさ。…ありがとう。
 がんばります!!ああ〜なっち!!私にもケーキ作ってくれぇ〜!!!

>ラヴ梨〜様
 石川家に経営難なんぞあり得ません。ただ、にいにいの部門が圧迫され始めただけです。
 がんばれにいにい!!
 そして…甘〜い初夜はまだみたいですよ〜(笑)
284 名前:まるみ 投稿日:2002年12月19日(木)16時16分39秒
クロイツさん!漫才コンビさいこーです。
電車の中でニヤニヤしちゃいました(笑
新妻?りかちゃん、新婚生活満喫中!洗濯機買えると良いね。
285 名前:あおのり 投稿日:2002年12月19日(木)21時37分09秒
よしいしのそばにこの人アリ!ミチャーン登場
どんどんよしいしのイチャイチャぶりを実況キボーン(w
新妻梨華ちゃんかわいすぎて氏にますた。
甲斐性なし旦那よちこがんがれ!洗濯機までまだまだ道は遠いぞ!
286 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年12月19日(木)22時31分44秒
クロイツさま
柴田さんの婿候補の見合い写真No.77444のななしのよっすぃ〜です。
漫才コンビ最高です!
77444×100点だから、大谷さんにあと何点減点してもらえれば、お見舞いまで行けるのか...
道のりは遠そうです。

お姫さまから町娘になった梨華ちゃんもあいかわらず可愛いですよ!
アパートの隣の部屋で洗濯物を干している梨華ちゃん、見てみた〜い!!

失礼しました。取り乱しました。(笑)

では、次の更新も楽しみにしてます!
287 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年12月20日(金)01時11分55秒
駆け落ちして『神田川』してるいしよしに萌え。
そしてミチャーソが隣人なのに爆笑。( `◇´)

前回の『あややシリーズケーキ』にも笑わせて頂きますた。
ただ甘いだけではなく、ちゃんと各人の苦悩もきっちり描いてるところが
すごいな、といつも思ってます。
これからもがんがってください。
288 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時36分14秒

 誰もいない厨房で、真里となつみと向き合っていた。亜依と希美には席を外してもらっ
た。
「…なんだべさ?話って…。」
首をかしげるなつみに、真里は涙を目に残しながらも言った。
「ごめんなさい。」
いきなり頭を下げた真里に、なつみは困惑の表情を隠せない。
「な、なんで真里お嬢様がなっちに謝るの!?ひとみと梨華お嬢様の事だったらお互い様
って事で話がついたハズ…」
「そうじゃないの!」
真里の頬に幾筋もついている涙のアトが、なつみには痛々しく感じられる。
「私は…私は甘えていたの!!」
「え?」
「皆に…私の周囲にあるモノ全てに、甘えていたの!!」
真里の小柄な身体は今にも崩れそうで、なつみはちょっと戸惑った。
「辛いのは自分だけ…不幸なのは自分だけ、って思ってたの!自分が恵まれた環境にいて、
何不自由なく育って来たって言う事も忘れて…私は甘えていたの!!」
「・・・・・・。」
なつみは、頷いて良いのか否定して良いのかわからない。
 と、言うよりも、真里が何を言いたいのかがわからなかった。
289 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時36分47秒
「当たり前、になっちゃってたの…全てが。だから私は…こんなに甘えた事をしでかして
しまったのかも知れない…。」
真里はキッと顔を上げた。
 真里は、不安と期待が入り混じった複雑な感情を抱えていた。
 これからなつみに言う言葉は、梨華がひとみと駆け落ちする直前に圭に告白したのと、
同じくらいの重さを持つ言葉だ。
 圭は、許してくれた。だけど、なつみは?
 圭は昔からの親友だったが、なつみはつい最近顔見知りになっただけの人間。
 そんな相手にこんな重い言葉を言うのは、間違っているんじゃないか?なつみは受け入
れてくれないんじゃないか?そんな不安。
 逆に、もしかしたらなつみは受け入れてくれるかも知れない。言う事は正解なのかも知
れない。そんな期待。
 相反する二つの感情を、その小さな身体いっぱいに詰めて…真里は言った。

「市井紗耶香をあなたから取り上げたのは、私なの。」

なつみの目が、ちょっと見開かれる。
「…紗耶香と私は、一緒に育ったの。紗耶香は小さい頃から立派な『執事』で…私は紗耶
香に、全面の信頼を置いていたわ。もちろん、今でも。」
真里は、ともすればそむけたくなる顔を必死で押しとどめた。
290 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時39分06秒
 もう、自分は逃げてはいけない。
「…私には、大きなトラウマがあるの。思い出すだけで、死にたくなるような大きな心の
傷。それをずっと抱えて生きるのは、本当に辛くて…私はいろんなものに甘えて、その傷
を見ないようにして来たわ。
 紗耶香にも、ものすごく甘えてた。」
「・・・・・・。」
「そんな時、あなたと紗耶香が…その…そう言う仲になったって知ってしまって…取り乱
しちゃったの。それで私は紗耶香に…ちょっと、言ってしまって…」
なつみの目にも、涙がたまり始めた。
 どうやら、言いたかった事は伝わったようだ。
「…本当に…本当にごめんなさい!私には、そんな権利はなかったのに!あなたから紗耶
香を取り上げる権利も、紗耶香からあなたを取り上げる権利もなかったのに!!!」
真里は再び、涙を流し始めた。
 そんな真里に、なつみは目に涙をためながら近づいて行った。
「…苦しかったんだね、真里お嬢様。」
真里がはっと顔をあげる。
「…なっちも、ずっと心に傷を抱えてた。それが辛くて、傷を見たくなくて、ケーキ作り
に逃げてたんだ。最近までは。」
なつみの手が、真里の胸に触れた。
291 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時39分41秒
「紗耶香さんがなっちの事を見なくなって、その傷はまた開き始めた。…痛かった。苦し
かったよ。…でも、今度はケーキもなっちの味方じゃなくなっちゃって…癒されず、どう
にもならない痛みを感じてた。」
「・・・・・・。」
「だけど、そのお陰で気付いたんだ。
 なっちはもしかしたら、紗耶香さんを『好きだ』って思ってたけど…実は『甘えてた』
だけなんじゃないかなって。代用品みたく、扱ってただけだったんじゃないかって。
 だから、ケーキも怒っちゃったんだべ。『紗耶香さんをそんな風に扱っちゃいけないん
だぞ!』って。」
なつみは一筋だけ涙を流して、真里を見た。
「…みんな、多かれ少なかれ傷を抱えて…甘えながら生きてるモンだべさ。
 だけど、真里お嬢様となっちは『それじゃいけない!』って気付いた。
 それだけで、立派な財産だべさ!」
そして、なつみは右手を差し出す。
「…実はなっち、『友達』ってあんまいないんだ。」
ちょっと恥じてるかのように、顔を赤らめる。

「…だから、お友達になってくれないかなぁ?」

真里は、その場にへなへなと座り込む。
292 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時40分43秒
「ど、どうしたんだべさ!?真里お嬢様!!」
「…気が抜けたのよ。」
真里を覗き込む為にしゃがんだなつみに、真里は抱きついた。
「んなっ!?」
「一つ聞きたいんだけど。」
驚くなつみの耳元で、真里は囁くように言った。
「紗耶香の事、今はどう思ってるの?」
「・・・・・・。」
「まだ『身代わり』?」
「ち、違うっ!!」
なつみは真っ赤な顔で、目線をうろうろさせながら答えた。
「…そ、そりゃー一回は身代わりみたいに考えちゃったけどさぁ…で、でも、何とも思っ
てなかったら…あ、あんな事させないっしょ…。」
「じゃ、好きなの?」
「ほへっ!?す、好きって言うか…」
「じゃ、嫌いなの?」
「違ッ!!嫌いじゃないよ!!」
「じゃ、興味ないの?」
「興味あるよ!あり過ぎて困るくらいに!!…って、あああああっ!!なっち何言ってる
んだかわかんないよー!!」
293 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時41分13秒
真っ赤になって叫ぶなつみに、真里は人の悪い笑みを浮かべて言った。
「なっち、で良いわね?」
「は、はぁ…。」

「『お友達』には、正直に全部話しなさいよ。」

なつみはきょとんとしてから、にっこり笑い…真っ赤になってぽつりと言った。
「…やっぱなっち…紗耶香さんが、好きだべさ。」
真里は満足げに微笑んだ。
294 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時41分44秒


 あさ美への『いじめ』はエスカレートするばかり。
「…どうやら松浦さん、よっぽど立場悪くなっちゃったみたいですね。」
真希の部屋のベッドに腰掛け、真希が淹れてくれたロイヤルミルクティーを飲みながらそ
う言う。
「…そっか。」
真希はあさ美の隣に座り、優しくあさ美の髪を撫でる。
「あさ美ちゃんは大丈夫?辛くない?」
「は、はい。完璧です。」
かーっと顔を赤くしたあさ美は、視線をカップの中に注いだ。本当は真希の顔を見たいの
だが、恥ずかしすぎて見られないのだ。
「ののさんもまこっちゃんもフランソワーズもいますし。」
その言葉に、真希の手がぴくっと止まる。
「…真希さん?」
ふと真希を見ると、この上なく不機嫌そうな顔をしていた。
「…ののちゃんは良いんだよ。ののちゃんは。…まぁ、フランソワーズもヨシとしよう。
カエルだし。」
「は、はぁ。」
「だけどさぁ…。」
295 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時42分22秒
真希は拗ねたように顔をそらす。

「まこっちゃんって。何ソレ。」

「まこっちゃんですか?あれ?お話しませんでしたっけ?ののさんのクラスメートで、校
長先生の姪御さんで…」
「聞いた。」
「・・・・・・?」
あさ美は真希が何を言いたいのか、わからなかった。首を傾げて、考え込む。
 真希はそんなあさ美の手からティーカップを奪い取り、そうした後に押し倒した。
「ま、まっまっまっまっまっ、真希さん!?」
突然の事に、あさ美は激しく動揺する。
「…『まこっちゃん』?」
「は、はい。」
「…『真希さん』?」
「は、はい?」
真希は脱力したように、組み敷いたあさ美の胸に顔をうずめる。
「お。けっこーあるじゃん。」
「はい、完璧…って、んなっ!?何をっ!!」
「…どきどき言ってる。」
「そ、そりゃー…生きてますし…。」
「…それだけ?」
「・・・・・・。」
あさ美は真っ赤な顔で、ぽつりと呟く。

「ときめいても、いますし。」

真希はがばっと顔を上げ、あさ美を覗き込む。
「本当に?ときめいてる?」
「…完璧です。」
真希は迷わず、あさ美の唇にキスを落とす。
296 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時43分24秒
(い、いつもと違うぅぅ〜!!)
あまりに激しいキスに、あさ美は腰が砕けそうになる。今『立て』と言われても無理だろ
う。
 唇を離すと、真希は真剣な顔で言う。
「…その『まこっちゃん』はあさ美ちゃんの事、なんて呼んでるの?」
「え?」
ぽーっとする頭で、必死に答えをはじき出す。
「…あ、『あさ美ちゃん』ですけど…。」
「チッ…一緒か。」
不機嫌丸出しで、真希は言った。

「私これからあさ美ちゃんの事『あさ美』って呼ぶから。」

あさ美は赤い顔を、もっと赤くする。
 それを見て、真希はあさ美の耳元で囁いた。
「あさ美…。」
「うひゃんっ!」
「あさ美。」
「や、やめてくださいぃぃ〜!!」
「なんで?」
あさ美は真剣な顔で、言う。
「これ以上ドキドキしたら私…心臓止まるかも知れません…。」
真希はもう一度あさ美の胸に顔を埋めて、大爆笑した。
297 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時44分16秒


 ケーキ屋では、ずいぶんと高い時給で働かせてもらえる事になった。
「さーて、もうそろそろ閉店ッ!吉澤、レジ閉めしてくれ。」
「はい。」
『Tochter.』の店員時代(と言っても少しの期間だったが)の経験が、ひとみを
助けてくれてる。面接の時に『ケーキ屋で店員してた事あります!』と言ったら、店長は
喜んで迎え入れてくれたし…大抵の仕事はこなせる。
「しっかし、お前の嫁さん可愛いのな!!昨日スーパーで一緒に買い物してんの見かけた
ぞ〜!!」
先輩の店員に言われ、ひとみは顔をでれっと緩ませた。
「でっしょぉ〜。可愛いんスよ〜!」
「オイ、吉澤に嫁さんの話題振るなよ。惚気られまくるぞ。」
別の先輩店員に言われ、ひとみは口を尖らせる。
「いいじゃないッスか!聞いて下さいよ!」
「嫌だよ。何が悲しくて、他人のモンになった女の『可愛い所』を聞かにゃーならんのか。」
どっと笑いが起きた。
 このケーキ屋は、かなりの大型店だ。喫茶店でもあるから店内も広く、バイトもかなり
たくさんいる。
298 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時45分21秒
 ひとみはここに来てから、ずっと『男だ』と名乗っていた。
 幸い、男の戸籍はある。それに、駆け落ちする寸前に真希から『男としての偽の経歴』
を教え込まれていたので、履歴書にも困らなかった。
 …まぁ、年齢はごまかしたが。
 アパートは風呂なしだが、管理人が『ウチのを使って良いよ。どーせぼく一人が入るだ
けだから。』と言って、お風呂を貸してくれている。
(銭湯行ったらバレるからなぁ…ありがとう、管理人さん。)
敷金礼金ナシ、お風呂は入れてくれる…良い管理人さんにめぐり合ったものだ。
 『してもらってばかりじゃ申し訳ないから…』と、梨華は毎日管理人宅へ行き、掃除や
洗濯やお昼ごはんの支度などをしているらしいが…そんなんじゃ足りないくらい迷惑をか
けている。
(…早くお金貯めて、出て行かないとなぁ。)
 そんな事を考えてる内に、本日の仕事は全て終了。
 先輩達が全員帰った後、店の掃除を済ませてから帰宅する。
299 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時45分56秒
「…はい、終わりッス!」
店長に鍵を渡すと、店長はにこやかに頭を撫でてくれた。
「本当に吉澤君、文句も言わずよくやるね。」
「いえ、そんな…雇ってもらえただけで感謝なのに、時給もけっこー高くしてもらったん
スから、当然ッスよ。」
「謙虚だねぇ。…それじゃ、帰って良いよ。お疲れ様。」
「お疲れ様でしたー!!」
 ひとみは踵を返し、まるで飛ぶようにして帰路へと着く。
 目指すは、『愛の巣』。
 ひとみは今、最高に幸せだった。


 逃げてる最中の電車の中で、梨華はぽつりぽつりと語ってくれた。
『わたしね…ずっとずっと、不安だったの。小さな頃からずっと…。』
つないだ手に、ぎゅっと力が込められる。
『お金の力や家の力が、あまりにも大きくて強くて。皆、わたしじゃなくて「お金」を見
てる。
 …一生このまま、「わたし自身」を見てくれる人はいないんじゃないかって。
 だとしたら…すごく悲しいじゃない?』
『梨華ちゃん…』
300 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時46分27秒
『だから…ひとみちゃんを好きになって…どんどんどんどん好きになって行くのが不安だっ
た。ひとみちゃんも「わたし」じゃなくて「お金」とか…そーゆーものを見てるのかもっ
て。だから、紗耶香さんと話してるのを聞いて、取り乱しちゃったの。』
梨華は、ひとみの肩に頭を乗せる。
『だけど…ひとみちゃんは、わたしと逃げてくれてる。何も持ってない「わたし」と一緒
に…。』
梨華は、まるで花が開いたような笑顔を見せた。
『幸せ。』


 「たっだいま〜!」
「おかえりなさーいっ!!」
エプロン姿の梨華に、ひとみはくらりと眩暈を覚える。
「今日のお夕飯は、肉じゃがとアジの開きとお味噌汁とごはんっ!!聞いて!肉じゃが成
功したのっ!!」
抱きついて来た梨華を抱きとめて、ひとみは笑顔を浮かべる。
「やったね、梨華ちゃん!!」
「うん!!」
そして見詰め合った後、梨華はふと切なそうな表情になり、目を閉じた。
301 名前:第四十七話 投稿日:2002年12月20日(金)14時46分44秒
(…こ、これは…やっぱ『キス待ち』?)
ひとみはどぎまぎしながら、梨華をするりと離した。
「あー、お腹空いたー!!」
梨華はひとみの背後で、ふくれっ面をする。
(…どうしてキスしてくれないのよぉっ!)
だけど、なんとなく自分から言うのは癪に障る。
 梨華はため息をついて、ひとみのコートを受け取ってハンガーにかけた。
 ひとみは梨華が後ろを向いている隙に、頬をペチペチと叩く。
(耐えろ…耐えるんだ吉澤ひとみ!!今はまだ駄目だ!!せめてウチが、結婚できる年に
なるまでは…!!!)
二人は同時に切なそうなため息を吐いた。
302 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月20日(金)14時47分14秒


 ごまこんらぶらぶ。今回は激しくこれが書きたかった…!!!
 …つーか最近やすかご出て来ないですね…(汗)

>まるみ様
 漫才コンビ、なかなか人気みたいで…よかった〜!スベッてたらどーしよーかと…。
 いしよしあまあま新婚生活に、洗濯機はいらないけどふりふりエプロンは必需品です(笑)

>あおのり様
 新妻梨華ちゃん、書いてて楽しすぎです。
 悩める人妻・吉澤梨華(笑)。今回は旦那の出番ですわね!!

>ななしのよっすぃ〜様
 梨華ちゃんが真っ赤な指で、洗濯板でお洗濯…そのフレーズが私の頭の中で生まれたのは、
ドイツ語の授業中でした(笑)
 先生が一生懸命「関係代名詞が〜」とか言ってる最中、教科書に隠れてニヤニヤしてたの
は秘密です。

>ごまべーぐる様
 ケーキの名前、あややの曲名が一番しっくり来るんですよねぇ…。
 逆に、一番しっくり来ないのがごっちんの曲。
 『溢れちゃう…BE IN LOVE』って…どんなケーキになるのやら(笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくお願いするのれす!!
303 名前:まるみ 投稿日:2002年12月20日(金)16時53分11秒
くぅ〜!さいこー!
なちまり!こんごま!いしよし!みんな良いですね〜。
今回、ごまがちょっとこわれぎみ・・・嫉妬しちゃった?
またの更新お待ちしております。
304 名前:桜流 投稿日:2002年12月21日(土)00時38分10秒
旦那(0^〜^0)かっけ〜!!『漢』です!
でもあんまり何もしなかったら梨華ちゃんが……。

ヤキモチやいてるごまかわいい☆
真里お嬢様は壁をひとつ越えられたんですね、なっちとの友情に乾杯!!
305 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月21日(土)14時53分29秒
おぉぉぉぉ!ごまこんラブラブじゃないですかっ!
ヤキモチ焼くごっちんがかわい〜っす!
よっすぃー耐えてますね・・・でも、梨華ちゃんがかわいそう・・・
更新楽しみにしてます!
がんばってくださいね!
306 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時36分15秒

 「あゆみちゃんッ!!!!」
亜弥はものすごい剣幕で、扉を開けた。ここは柴田家本邸の、当主専用執務室。
 あゆみは、まるで亜弥が来るのを予測していたかのように優雅に振り返った。
「あら、亜弥ちゃん。ごきげんよう。どうしたの?そんなに怖い顔で。」
ミステリアスな美貌を、にっこりと上機嫌に微笑ませたあゆみに…亜弥は掴み掛からん勢
いで叫んだ。
「ミキスケをどこにやったのよ!!!」
「ミキスケ?誰それ。」
「藤本美貴よ!!どこにやったの!?」
「藤本美貴?」
あゆみはすっとぼけた表情を作る。
「知らないわね、そんな人。」
「・・・・・・っ!!」
亜弥は、近くにあったテーブルを蹴り倒す。
「しらばっくれんじゃないよ!!わかってんだよ、あんたがミキスケをどっかにやったっ
て事は!!!」
あゆみはすっとぼけた表情のまま、首を傾げる。
「そんな事言われても…亜弥ちゃんはなんで、私がその…ミキスケとかゆー人をどっかに
やったと思うワケ?」
あくまですっとぼけるあゆみに、亜弥の顔が怒りの為に真っ赤になる。
307 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時36分49秒
「ちょっと考えればわかるじゃない!!一ヶ月行かなかっただけで、病室からミキスケが
消えて…担当してた医者もナースも海外とか地方とかに転勤してるのよ!?そんな事でき
るの、あゆみちゃんくらいしかいないわ!!」
あゆみは、こんどはびっくりしたような顔をする。
「まあ!そのミキスケとか言う人、入院してたの!?…それなのに病院からいなくなっちゃ
うなんて…心配ね。」
「な…ッ!!!」
あゆみは立ち上がって、亜弥の頬に触れる。
「…それで、こんなにも取り乱してるのね。可哀想に…。」
亜弥は顔に青筋を立てて、あゆみの手を振り払った。
 そして、無言で退室して行く。それを見計らって、雅恵が姿をあらわした。
「・・・・・・。」
雅恵は無言で、執務机の正面に設置されたスクリーンの電源をONにする。すると、邸内の監
視カメラの映像が映し出された。
 亜弥が門を出た所で、雅恵はスクリーンの電源のすぐ隣にあるボタンを押した。
「…盗聴器反応、出ません。」
その言葉と同時に、あゆみはほっとため息をついた。
308 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時38分38秒
「あゆみ様、お疲れ様でした。お見事でしたよ、そのトボケっぷり。」
「まぁね〜。昔よく、浮気がバレた時に彼女にやってたから。」
「昔とった杵柄、ってヤツですか。あんまり自慢にならない杵柄ですが。」
「…言わないで…。」
あゆみは力なく、執務机に突っ伏した。
「すっごい疲れた…てゆーか怖かった。」
「松浦様、ものすごい目をしてらっしゃいましたからね。」
あゆみはちらりと雅恵の顔を見る。
「…それで、ミキティは今は?」
「こちらに。藤本様、どうぞお入り下さい。」

「は、はーい…。」

よたよたと、歩行器にしがみついて歩く美貴があらわれた。
309 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時39分14秒
 淡いオレンジのニットのアンサンブルに、茶色い膝丈スカートを着た美貴に、雅恵はにっ
こりと微笑みかける。
「よく、我慢なさいましたね。本当は松浦様に会いたくてたまらなかったんでしょう?」
 そう。美貴は隣の部屋で待機していたのだ。
 すると美貴は首をふるふると振る。
「は、はい…でも、会わない方があやっぺの為、なんですよね?」
「ええ。」
「それなら私、我慢します。」
にこっと笑う美貴の笑顔に、あゆみの胸がときめく。
(…可愛いッ!!!)
あゆみは美貴に、熱い視線を送り始めた。
310 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時39分49秒


 今日もよく働いた。
 ひとみは店内の掃除を終え、店長に鍵を渡す。
「掃除完了です!お疲れ様でした!」
「はい、お疲れ様。」
「それじゃ俺、帰ります。」
そう言うが早いか、ひとみはすぐさま店長に背中を向ける。

「待って、吉澤君。」

「え?」
いきなり呼び止められて、ひとみは驚く。
 そんなひとみに、店長は言った。
「僕、帰りにスーパー寄らなきゃいけないんだ。だから、一緒に帰ろう。」
「あ、ハイ!」
「ちょっと待ってて。荷物持って来るから。」
店長は置くに引っ込み、しばらくしてから出て来た。
「…お待たせ。さあ、帰ろう。」
二人は並んで、店を出た。
311 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時40分20秒
 差し障りのない会話をしばらくしていると、ひとみの住むアパートが見えて来た。
「あ、あれです。ウチのアパート。」
「ああ、親切な管理人さんがいるってアレか。…確かに古いけど、手入れが行き届いてる
感じするね。」
「でしょー♪隙間風とかもあんまないんですよー。」
アパートの前で、ひとみはぺこりと頭を下げる。
「それでは俺、失礼します。お疲れ様でした!」
そんなひとみに、店長はぽつりと言う。
「ねえ、吉澤君。…間違ってたら悪いんだけどさ。」
「はい?」

「君、女の子だろう。」

「・・・・・・。」
ひとみは絶句した。ぱくぱくと口を動かし、かすれた声でようやく一言言う。
「な…んで…?」
「やっぱりね。」
店長はにっこりと笑顔で言う。
「そうだと思ったんだ。確かに君、雰囲気も感じも本物の男に見えるんだけど…なんかそ
んな感じしたんだよね。」
ひとみは頭を押さえた。
312 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時40分52秒
(…ど、どうしよう…クビになっちゃうかも…。)
頭の中が、ぐるぐると回る。
 ひとみは、混乱した頭で尋ねる。
「ほ、他の人も…気付いてるんですか…!?」
「いーや。僕しか気付いてないハズ。」
やけにキッパリ言い切る店長に、ひとみが疑問の眼差しを向けると…店長は困ったような
でこう言った。

「実は僕、男しか愛せないんだよね。」

「うへっ!?」
「ゲイってヤツ。今僕と一緒に住んでる恋人も、男なんだ。」
「・・・・・・。」
ひとみは驚愕の表情を崩せない。
「だから、わかっちゃったんだ。君が女の子だって。」
「そ、そう…でしたか…。」
「気持ち悪い?」
「いいえっ!!」
ひとみはぽりぽりと頭をかく。
「…俺…あたしの恋人も、女の子ですから。」
「あの子本当に君の恋人なの?僕はてっきり、カモフラージュかと思ってた。」
「いえ…本当に、恋人なんですよ。…そして、婚約者でもあります。」
「え!?」
 ひとみは、堰を切ったように…自分の事情を話した。
 彼女は大金持ちの家の娘だと言う事。駆け落ちして来た事。現在の状況…etc。
 話している内に、涙が出て来た。
313 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時42分02秒
「…アレ…?」
頬を伝う涙に気付き、ひとみは驚く。
「な…なんで?」
すると店長は、ひとみを優しく抱きしめた。
 まるで父親のように。
「…苦労してるんだね。その若さで。」
「・・・・・・。」
「いくら君がしっかりしてても…恋人を連れてここまで逃げて来るなんて、大変だっただ
ろう。よく頑張ってるよ。」
「・・・・・・っ!!!」
ひとみは店長の胸にしがみついた。店長は優しく、ひとみの頭を撫でる。
「いつでも、相談してくれてかまわないよ。恋人に言えない悩み事とかあったら、どんど
ん言ってくれてかまわない。」
「あ…あたし、クビじゃないんですか?」
「なんで?」
314 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時42分34秒
「だって…。」
すると店長は、にっこりと笑って言った。

「君みたいによく働く真面目な子、そう簡単に手放すワケないじゃないか。」

ひとみはきょとん、としてからにっこりと微笑んだ。
「…ありがとうございます!!」
そして、自ら店長の腕から離れた。
 そして、ぽりぽりと頭をかく。
「…やっぱあたし、男の人に抱きしめられるよりも…彼女を抱きしめる方が好きかも。」
「…僕もやっぱり、女の子を抱きしめるよりも…彼氏に抱きしめられる方が好きだな。」
そして、二人同時に噴出した。
315 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時43分37秒


 柱の陰からそれを見ていた梨華は、あまりのショックによろめいた。
(…ひとみちゃん…!!)
梨華のいる所からだと、話し声は聞こえない。
 ただ、ひとみが男(店長)と抱き合ってる所しか見えないのだ。しかもひとみは泣いて
いる様子。
 手に持っていた醤油を、危うく落としそうになる。
(ハッ…だ、駄目よ梨華!これは管理人さんがおすそ分けして下さった、大切なお醤油な
んだから!落としたりしちゃ駄目!)
 今日の夕飯に、特売になっていた刺身を買った梨華。しかし、家に着いてから醤油が切
れている事に気付いたのだ。
 もう一度スーパーに行こうとしたら、管理人が『ウチに一本余ってるから、持って行き
なさい』と言ってくれたのだ。
 梨華は醤油をかかえて、電柱に寄りかかった。
(…さっき、男の人に抱きしめられてたひとみちゃん…すっごく安心したような顔してた…。)
梨華は醤油を抱きしめる。
316 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時44分08秒
「…やっぱり、わたし…ひとみちゃんのお荷物にしかなってないのかなぁ。…そうよね。
だってわたしさえ『駆け落ちしよう』なんて言わなきゃ…ひとみちゃんは働く必要なんて
なかったんだし…。
 もしかしたらわたし、ひとみちゃんに嫌われちゃったのかしら!最初の大喧嘩の時とか
に…!!だから、キスもえっちもしてくれないのかしら!!」
思考がどんどんネガティブな方向へと流れて行く。
 はっと気付くと、ひとみと男の姿はなくなっていた。重い足取りのまま、梨華はアパー
トへと入って行く。
「…ただいま…。」
「お、お帰り、梨華ちゃん!どこ行ってたのー?」
元気で明るい、ひとみの声。
 梨華は、涙が出て来た。
「なっ!?梨華ちゃん!?どうしたの!?」
梨華は答えない。
「何かあったの!?誰かにいじめられたの!?」
ひとみは梨華を抱き寄せる。
 ひとみからは、男性用香水の香りがした。
「・・・・・・っ!!」
梨華はひとみを押して、その香りから逃れた。
317 名前:第四十八話 投稿日:2002年12月23日(月)09時44分41秒
「…梨華ちゃん…!?」
拒まれたのが相当ショックだったらしく、ひとみは傷ついたような顔をした。
 だが、まだ梨華は泣いている。
 ひとみは無理矢理明るい声と表情を出した。
「…そーだ!梨華ちゃん、もうすぐ誕生日だよね!!」
「・・・・・・。」
梨華の誕生日は、一月十九日である。
「何が欲しい?何がしたい?十九日はまだ貧乏だけど、二十日になったら給料入るし…あ、
外食でもしよーか!二十日に!」
しかし梨華は泣き止まず、首を横に振るばかり。
 そして、ぼろぼろと大粒の涙を流しながら言った。

「わたしは…ひとみちゃんが、ほしい。」

ひとみが凍りついたのは、言うまでもないだろう。
318 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月23日(月)09時45分11秒


店長、関西弁にして名前を『寺田さん』にしよーかとも思ったんですが、こーゆー設定な為
にやめました(笑)『相手誰だよ!!』って事になりますし(爆笑)。

>まるみ様
 後藤執事、いちーちゃん&こんこんの前では変わります。壊れます。
 今回はいしよし!!

>桜流様
 誤解しちゃってますねぇ〜、梨華ちゃん♪困り顔が素敵!!そしてわたわたしてるヨッスィー、
書くのが最高に楽しいです!!
 旦那は『漢』だけどもやっぱ女の子、って事で(笑)

>ヒトシズク様
 と〜と〜言いましたね、梨華ちゃん!!やっぱ待たせすぎはいけませんよね。待たせすぎ
は(笑)
 がんばります!!次回もよろしく☆
319 名前:桜流 投稿日:2002年12月23日(月)12時55分46秒
店長はいわば同士、すごくありがたい存在ですね。
よっすぃー少しは気持ちがラクになってよかった、でも…これから、なんですね〜
続きがそ〜と〜気になります!!
320 名前:あおのり 投稿日:2002年12月23日(月)13時42分02秒
誕生日プレゼントはよしこですか…
梨華ちゃん焦ってますな。
よしこどうするの?
321 名前:まるみ 投稿日:2002年12月23日(月)17時27分00秒
柴ちゃんのまじめっぷり、久しぶりに見ましたね〜。
コント以外もやれば出来るじゃないですか!
けどアヤミキをなんであわせないんだろう?

よしこ・・・誕生日プレゼントど〜するんだろう?
322 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年12月23日(月)17時58分43秒
クロイツさま
更新お疲れさままです。
あやゃの更正計画スタートですか?
柴田さんにも頑張って欲しいですね。
悪役のあやゃもいいけど、やっぱりあやゃにも幸せになって欲しいです。

梨華ちゃんの勘違い波乱になるんでしょうか?
梨華ちゃんよっすぃ〜を信じてあげて!
323 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月23日(月)18時58分12秒
柴ちゃんの演技にちょいびっくり!浮気にばれたときに使ってたんですね^^;
なんか一人で納得してました(^−^o
いしよしの方はまた一波乱しそうですね。楽しませていただきます!
更新がんばってくださいね!
応援してます!
324 名前:名無し梨華っち。 投稿日:2002年12月23日(月)19時52分56秒
今日初めて読ませて頂きました!
すげ〜面白いっす!(^〜^O)
マジドキドキもんっす!!
残念ながら来年の夏までPCがいじられないのが…(鬱
続きが気になって仕方ありません。
作者さん、気張ってやぁ〜!!
325 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月24日(火)00時18分07秒
店長強烈キャラですな
いしよし病の私は同性愛は気持ち悪く感じませんが、なぜか男同士と女同士では印象違いますね(いしよし見すぎだから?)
そして、いしよし描写萌えです
駆け落ち中とはいえ、石川家に認められるというケジメをつけずに梨華を本能のままにチョメチョメしてしまうのか!?漢・吉澤決断のときですな
326 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時01分35秒

 (ほ…ほしいって…!!ウチがほしいって…!!や、やっぱそーゆー意味なの!?)
ひとみは、自分の顔がかぁぁぁぁっと赤くなるのを感じた。それと同時に、抑えがたい衝
動に駆られる。
 ひとみは、ふるふると頭を振った。
(だ、駄目だ…!!まだ、駄目だ!!)
 ひとみは梨華と駆け落ちする際、『絶対に十八になるまでは梨華ちゃんに手を出さない!』
と心に決めた。それがけじめだと思ったのだ。
 そんなひとみを見て、梨華は涙に濡れた目を見開く。
「…嫌?わたしを抱くのは…嫌なの!?」
「違う!そーじゃなくて!!」
「じゃあ、抱いてよ!なんでわたしに触れようとしないのよ!!」
「それは…やっぱり、なんてゆーか…」
くちごもるひとみ。そんなひとみの頬に、梨華は触れた。
 ひとみはビクッとなり、ちょっと後退りをしてしまった。抑えがたい衝動を抱えている
ひとみは、梨華に触れられたらそれだけで理性が飛んでしまいそうになっている。
 それ故のこの行動なのだが、梨華はそれを知らない。
「・・・・・・。」
傷付いた目で、梨華は微笑んだ。
「…ごめんなさい。」
327 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時02分05秒
「え!?」
「わかってるつもりでも、わたし…わかってなかったのよね。」
何を?と訊ねようとするひとみを、梨華は手で制する。
「本当にごめんなさい。わたし、身勝手だった。
 ひとみちゃんが『自分が働くから、梨華ちゃんは家事をして』って言ってくれて…夫婦
みたいって喜んだけど…それじゃいけなかったのよね。」
「な、何が!?」
「いいの。わかってる。ひとみちゃんは優しいから、ずっとわたしに気を使っててくれた
のよね。」
梨華は手の甲で涙を拭って言った。
「やっぱり…ひとみちゃん、男の人の方が良いんでしょう?」
ひとみは最初、梨華が何を言っているのかわからなかった。
「わたしの前では、無理しててくれたのね。『男になる』って決断も…無理してくれてた
のね。本当にごめんなさい。
 わたし、ひとみちゃんが女の子だってわかってたつもりだった。その上で、愛してるっ
て…誰よりも何よりも、どんな障害があっても愛してるって思った。」
「それは、ウチもだよ!!何言ってるんだよ、梨華ちゃん!!」
梨華は力なく首を振る。
「…ひとみちゃん、もう無理しなくて良いんだよ。」
328 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時02分35秒
「無理なんてしてない!!何言ってるんだか全然わかんないよ、梨華ちゃん!!」
梨華は、床に醤油を置いてから微笑んだ。

「男の人の腕の中だと、あんなに安らいだカオができるのね。
 わたし、今まで…ひとみちゃんのあんなカオ、見た事なかったわ。」

梨華はそのまま、外に向かって走り出す。
「梨華ちゃん!!?」
ひとみは慌ててスニーカーをはき、追いかける。
 その時、気付いた。
(そうか…さっきの店長とのアレ、見られてたんだ!!!)
内心、舌打ちする。
 梨華がちょっと嫉妬深くて、マイナス思考の持ち主だと言う事は、ひとみは誰よりもよ
く知っていたはずだった。
 そんな梨華が見てるかもしれない場所で、あんな誤解されるような行動は取るべきじゃ
なかったのだ。
(くそっ!!)
ひとみは全速力で駆け出した。
329 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時03分14秒


 あさ美は、『フランソワーズ・シャルル・ド・シャトーブリアンのお部屋』と書かれた
紙が張ってある水槽を前に、青ざめた。
「ふ…フランソワーズ!?どこに行ったんですか!?」
水槽は、カラだった。
 あさ美は、激烈に嫌な予感を感じた。
「フランソワーズっ!!」
急いで、教室の隅々を探すが…見つからない。
「どこっ!?どこにいるの!?フランソワーズ!!!」
すると、ゴミ箱の中から一枚の紙を見つけた。

『紺野あさ美へ
 アンタがゴミ箱あさってる姿を想像するだけで、すっごい笑えるよ!
 カエルに会いたかったら、石井公園まで行きな。』

「石井公園…!!!」
他でもない、真希との思い出の公園の名前だ。
 あさ美は、カバンを抱えて教室を飛び出した。
 靴の隠し場所に行き、上履きから靴に履き替えている時間も惜しい。あさ美は上履きの
まま、学校を飛び出した。
330 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時03分46秒
(フランソワーズ!!!)
嫌な予感は、だんだん増して来る。
 フランソワーズとの思い出が、走馬灯のように駆け巡った。
 カエル用の餌を嫌い、たまごやきを好んだフランソワーズ。
 カボチャの煮つけを巡って、麻琴とにらみ合ってたフランソワーズ。
 授業中、うつらうつらとしていたフランソワーズ。
 あさ美は頭を振った。
(…思い出なら、これからもっとたくさん作れます!!だって、出会ってまだ三ヶ月しか
経ってないんですから!!)
 息を切らせて石井公園に駆け込むが…誰もいない。
「・・・・・・?」
呼吸を整えつつ、公園内を歩き回る。
 そうしてるうちに、真希と再会したベンチが見えて来た。
 あさ美の足が止まる。
 本能が、このベンチを見てはいけないと叫ぶ。…しかし、足が止まらない。
 あさ美の心臓が、嫌な感じでドキドキ言い始めた。

 ベンチの上には、瀕死のフランソワーズ。

「っ!!!?」
あさ美は、フランソワーズに駆け寄った。
331 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時04分16秒
「ふ、フランソワーズっ!!!」
「…げ、こ…。」
「しっかりしてください!!フランソワーズ!!!」
あさ美の目から、涙が次から次へと流れ始めた。
 あさ美の目に、フランソワーズは微笑んでいるように見えた。
「げ…げこ…。」
「そんな…そんな事ないです!!そうだ、病院…!!獣医さんとかに見せれば…!!」
「げこ…」
「あきらめちゃ駄目です!!」
「げこ。」
フランソワーズに言われて、あさ美はふと、フランソワーズの手足を見た。
 フランソワーズの手足は、強力接着剤でベンチに貼り付けられていた。
「ひど…ッ!!こんな…こんな事を…!!」
あさ美の脳裏に、松浦亜弥の顔が浮かぶ。ゴミ箱から見つけ出したあのメモの文字は、間
違いなく亜弥の筆跡だった。
「…松浦亜弥ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!」
332 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時04分49秒
「…げこ…。」
「なんでそんな…フランソワーズは受け入れちゃってるんですか!?」
「げこ。」
「・・・・・・ッ!!!!」
目を見開くあさ美に、フランソワーズは言う。

「…げこ。げこ…げこ。」

その言葉を最後に、フランソワーズは息を引き取った。
「・・・・・・。」
あさ美はしばらく、動けなかった。
 フランソワーズが息を引き取ってから、約五分後。

「…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

あさ美の悲鳴が、近所中に響き渡った。
333 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時05分26秒


 スニーカーを履いてる分のロスタイムはあったものの、ひとみはすぐに梨華に追いつい
た。
「待ってよ、梨華ちゃん!」
「は、離してよ!」
「嫌だよ!離したら梨華ちゃん逃げるじゃん!!」
「・・・・・・。」
黙った梨華を、ひとみはぎゅっと抱きしめた。

「あたしは…後悔なんてしてない。梨華ちゃんと出会った事も、『男』になった事も、梨
華ちゃんと駆け落ちした事も。」

「・・・・・・。」
梨華は静かに涙を流している。
「…あたし、梨華ちゃんと駆け落ちする時…けじめをつける為に、十八になるまでは梨華
ちゃんを抱かないって決めたんだ。」
ひとみの言葉に、梨華はぴくっと震えた。
「だって、あたしは石川家から梨華ちゃんを奪ったんだから。
 そのくらいしないと…梨華ちゃんのご両親とかお姉さんや妹さん…それから、お手伝い
さんとか…石川家の関係者に申し訳が立たないと思ったから。
 だけど、本心は違ったのかも知れない。」
334 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時05分59秒
「え?」
「怖かったんだ。」
ひとみの腕は、いつしか震えていた。
「…梨華ちゃんは、今はあたしを愛してくれてるかも知れない。けど…この先どうなるか
わからない。
 あたしは本物の男じゃないから…梨華ちゃんを妊娠させる事はできない。もしも梨華ちゃ
んが『自分の子供が欲しい』って思っても…あたしには、無理だ。」
梨華の涙は、止まっていた。反対に、ひとみの目から涙が流れ始めている。
「…そうなった時、あたしができる事と言えば…身を引く事か、梨華ちゃんを他の男に抱
かせる事しかなくなる。
 あたしは嫌だ!!そんなの…考えただけでも、嫉妬で気が狂いそうだよ!!」
「ひとみちゃん…。」
「だけど…梨華ちゃんを抱かないでおけば、いつかそう言う日が来たとしても…諦められ
るかも知れない。梨華ちゃんの幸せを祈ってあげられるかも知れない。
 あたしは本心ではそう思って…抱かなかったんだ。」
梨華はひとみの背中に、手を回す。
「…本当は、抱きたくて…梨華ちゃんをあたしのものにしたくてしょうがないのに…。」
335 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時06分31秒
そう言うひとみの胸に、梨華は頬擦りした。

「…馬鹿ね、ひとみちゃん。」

「え?」
「わたしは、ひとみちゃんがいてくれればそれで良いの。」
梨華はひとみの心臓の音を聞きながら、身をひとみにあずける。
「…わたし、不安だった。ひとみちゃんは抱いてくれないし…それなのにあんな…男の人
と抱き合ってるトコ見ちゃうし。」
「あれは…」
「ううん。もう良い。」
ひとみの言葉を遮り、梨華は嬉しそうに言った。
「…誰でも、良い。ひとみちゃんを信じるから。」
「そっか…。」
そして、久々に濃厚なキスを交わす。
336 名前:第四十九話 投稿日:2002年12月24日(火)14時07分02秒
 唇を離した直後、梨華はひとみに言った。

「…ってなワケだから、誕生日プレゼントのリクエストは変えないでおくわね。」

「へっ!?」
ひとみの脳裏に、さっきの梨華の言葉が蘇る。
『わたしは…ひとみちゃんが、ほしい。』
ひとみは真っ赤になって、視線を逸らした。
337 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月24日(火)14時07分34秒


ふ、フランソワーズぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!!!!
こんな…こんな事になるなんてぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!

>桜流様
 ヨッスィーの状況がだんだん良くなっていくにつれ、あややが追い込まれて行くのは何故
なんでしょうか…。
 店長、これから先もちょびっと出て来る予定です!!よろしく!!

>あおのり様
 はい。誕生日プレゼントです(笑)。
 あとちょっとですねぇ〜♪がんばれヨッスィー!!みんな期待してるかもだぞー!!

>まるみ様
 んっふふふふふ…策士・柴田あゆみですから、イロイロと計画があるんでしょう…。
 ヨッスィー誕生日プレゼント…本当にどーずるんでしょーかねぇ♪
338 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月24日(火)14時08分06秒
わーい!!レスがいっぱーい☆うれしいなー♪

>ななしのよっすぃ〜様
 波乱、意外とアッサリ終わってしまいましたが…(汗)いかがでしたでしょーか?
 >あやゃの更正計画スタートですか?
 スタートしましたが、とばっちりが思わぬトコに出てますねぇ…。げこ…。

>ヒトシズク様
 柴田あゆみ。策士にして女優にしてやりて経営者!!
 すげーなぁ、柴ちゃん…彼女の人生だけで一本小説書けそうです(笑)。もちろん、執事
大谷も出演して(爆笑)
 がんばります!!どうぞよろしく!!

>名無し梨華っち。様
 はじめまして〜!!嬉しいお言葉、ありがとうございます!!
 来年夏までパソコンできないなんて…ちょっと寂しいです…。
 がんばりますので、また来て下さいませ!!!

>ラヴ梨〜様
 ヨッスィー本当にどーするんでしょーかねぇ(笑)。ここが男前の見せ所!頑張ってほし
ものです。天国のお母さんも見守ってる事でしょーし(笑)
 男同士よりも女同士のが美しく見える今日このごろ…わたしもどうやら、いしよし見すぎ
なようです(爆笑)。
339 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月24日(火)14時10分10秒
スレッド引越し警報が出たので、次回から新スレになります。
…ううーん…『専属ケーキ屋さん』、なんだか思った以上に続いておりますねぇ…。
これもひとえに、皆様が読んで下さっているおかげ…本当に本当にありがとうございます!!
340 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年12月24日(火)21時05分25秒
フランソワーズ〜〜〜〜〜(泣。
マジで泣きそうでした、紺ちゃんと一緒に。。。
いしよし、甘そうですね^^
めっっちゃ楽しみにしてま〜す!
更新頑張ってくださいね!
341 名前:まるみ 投稿日:2002年12月25日(水)05時00分09秒
ど〜してフランソワーズが〜〜〜!
そんな死に方をするなんて、かわいそうだ〜(泣
うそだと、夢だと言ってくれ・・・

よしこは相変わらず崖っぷちにいるね。
342 名前:クロイツ 投稿日:2002年12月25日(水)10時29分00秒
お引越しで〜す☆

次スレ
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/silver/1040779128/

第五十話から『専属ケーキ屋さん3』になります!うわ〜、なんてキリの良い…!!
3もがんばりますので、皆様どうぞよろしく!!
343 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年12月25日(水)10時49分37秒
お嬢様、カワエ〜
石推しの私にはたまらないやりとり
純潔は大事にね(笑)
紺野爆発の予感だし、どこまでもついてきますぜ、クロイツ様!!

Converted by dat2html.pl 1.0