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こんなの小説じゃないから

1 名前:名無し 投稿日:2002年11月20日(水)01時13分02秒
これは愛の物語。(not高橋愛)

     Å
  ∋8ノノハ)
   川 ;’ー’;)
    ( O┬O    
≡ ◎-ヽJ┴◎ キコキコ

ああ、行かないでアンテナたん…。
2 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時13分45秒
これは逃げではない、戦略だ。
少女よ、大志を抱け。
貴様の進むべき道は、貴様で決めるよりないのだ。
3 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時14分15秒
闇が逃げていく。
吉澤ひとみはその感覚をぼんやりと味わいながら、けたたましく鳴る目覚まし時計に手を伸ばした。
二三度手探りを繰り返し探し当てたそれを思い切り叩くと、気持ち悪いほどの静寂と共に闇が舞い戻ってきた。
目に見える闇、思考を煙に巻く闇。
そのどちらをもいっぺんに振り払おうと、何度か左右に首を振る。
首がコキコキとなり、妙に焦った。

壁掛け時計に目を向けると、緑の蛍光塗料を塗られた針がぼんやりと時刻を示していた。

「七時か…」

誰に伝えるでもなく、小さな声で呟いた。
いや、正確にはある人物に伝えようとしたのだが、その人物は未だ夢の中だ。
効果がないことを悟ると、吉澤はため息をつきベッドを抜け出した。
露骨に起こしたくはなかったから、足音は忍ばせて。
4 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時15分00秒
吉澤はシャワーが嫌いだった。
身体に水が当たると言う感覚がどうも馴染まない。
体を流れる水滴に全てを洗い流され、文字通り裸にされてしまう、それを恐れているからかも知れない。
短時間で頭と身体を洗い終え、水滴をタオルに吸わせると、どこかほっとした。
吸わせる。
甘美な響きだと思いながら。

吉澤が寝室に戻ると、蛍光の針が九十度進んでいた。
それ以外には何の変化もない。
ベッドで眠る彼女の呼吸まで先程とぴったり一致する気がする。
もちろんそんなことはないのだけれど。
5 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時16分00秒
とりあえずトレーナーとジーンズに着替えを済ませ、さてどうしようとベッドに視線を落とした。
布団が大きく、また小さくと上下運動を繰り返している。
なんだかその単純な動作がえらく幸せそうに見えて、吉澤の心を大きく揺らした。

どうするのが正解かな。
さっぱりわかんないよ。

正しい答えは存在している。
それも目の前に堂々と。
ただ意地悪く二択にしてあることが、吉澤を迷わせる。
起こすべきか、起こさぬべきか、それが問題だ。
6 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時16分30秒
数分迷った挙句、吉澤は意を決したように布団から視線を上げ、壁に貼り付けてあるメモ用紙を一枚破いた。
そして胸ポケットに常備している愛用の赤ペンを取り出し、慣れた手つきで言葉を紡いでいく。
その動作は、吉澤が選択肢を選んだことと同意だ。
吉澤は腕の動きを止めると、元あった場所の隣に、画鋲でメモを貼り付けた。

「探さないで下さい」

上下にブレの目立つ文字は、普段の吉澤の文字の特徴とは違う。
それが何を意味しているのかは、神と吉澤のみぞ知る。
選択肢は後者。
吉澤は、起こさずひっそりと姿を消す道を選んだ。
7 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時16分57秒
これから漕ぎ出す大海原を拝んでみようと、ブラインドを薄く開けた。
ほっそりとも光が入ってこない。
思い切って開けてみると、空はただひたすらに曇天、曇天であった。

歓迎されてないな。

そう思わざるを得ない風景。
けれどそれには、漕ぎ出しを躊躇わせるまでの力はない。
秀麗な緑の杜も、木など見当たらない荒れた荒野も、踏み出す者には寸分も違っては見えないのだ。
8 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時17分40秒
荷物に急遽折り畳み傘を追加して、準備は整った。
履き潰したヴィンテージ級のスニーカーを装着し、もう拝むことの出来なくなった寝室を、彼女を思う。

ごめんね、自分勝手で。
でも、決めたからしょうがないんだ。
迷惑もいっぱいかけたし、心配もかけたけど、もうこれからは気にしなくていいんだよ。

面と向かって言えない事を、面と向かわずに言う。
愚行だとは分かっていても、言葉を残さずにはいられなかった。
それがどんな感情によるものか、それはわからないけれど。

音を立てずドアを開けると、窓越しに眺めた以上に雲は厚ぼったかった。
一雨も二雨も来そうな雲、身体に当たる水滴の幻影。
突如こみ上げてきた吐き気を、必死に飲み込んだ。
9 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時18分13秒
雨は嫌いだ。
私を裸にしてしまうから。
裸の私は、着飾った私以上に醜いことを、雨は知る事はないのかな。

早く出ようと思った。
雨に降られたくない。
名残を惜しむ時間こそが惜しい。
吉澤はドアを閉め、螺旋状に続く階段を下へと下りた。

向かうはバス停。
行き着く先は安住の地。
無事にたどり着けば、安住の地にあるのは、今以上の快楽。

吉澤は捨て、そして拾いに行った。
その行動が正解か、それは吉澤にも分からない。
一千万かトルネードスピン。
捨てたのは一千万だ。
そしてトルネードスピンに、一千万以上の快楽を求めに行く。
10 名前:序章1 投稿日:2002年11月20日(水)01時18分55秒

双頭のうち一つを失い、全てが半分になってしまった部屋。
その寂しさに気付いたか、ベッドからもう一つの頭が顔を覗かせた。
けれど時既に遅し。
横を見ても、かしらを失った首根っこが蠢いているだけだ。

「よっすぃー?」

石川梨華が目を覚ましたのは、八時を回った頃だった。
11 名前:序章2 投稿日:2002年11月20日(水)01時19分25秒
やってきた、やってきた、
真っ赤なお迎え別離の瞬間。
あなたを乗せて、あなたを乗せて、
炎の車は天へと昇り行く。
12 名前:序章2 投稿日:2002年11月20日(水)01時19分45秒
部屋は修羅場と化し、矢口真里は修羅と化した。

そんな矢口に、戸惑いも、気負いも、罪悪感も、あるはずがなかった。
13 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時20分30秒
揺れる揺れる、大きく揺れる。
心の針は左へ右へ。
運命を乗せたさまよえる船はニシヘヒガシヘ。

燃える燃える、真っ赤に燃える。
お前を倒せと輝き叫ぶ。
全ては、美しく燃える森で。
14 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時21分13秒
「…続きましてニュースです。
 今朝未明、××州の××アパートにて火災が発生しました。
 ただ今火は鎮火しましたが、アパートの住人が数名、火の中に取り残されていた模様です。
 詳しい情報が入り次第、お伝えいたします」
15 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時21分56秒
「これが矢口の仕業なん?」
「多分ね。
 後藤真希後藤真希って矢口がしつこく言うもんだから調べてみたら何の事はない、矢口の元カノだよ。
 私怨って事だね、私怨」

望む夜景は一体いくらになるのだろう。
地上百メートル強、アメリカの誇る超高層ホテル最上階のスイートルームで、
香港も舌を巻く夜景には目もくれず、二人の女性は会話を続けていた。

「ふーん、元カノねぇ。
 矢口もこっちの人間やったっけ?」
「元は違うんだよ。
 なっちも詳しくは知らないんだけどさ、仲良くなったばっかの頃だったから。
 何人かにマワされて、子供が産めなくなったらしいの。
 それからね」

ベッドに腰掛けミネラルを飲んでいた安倍なつみが、空いた左手を頭の横で数度回した。
クルクル。
16 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時22分31秒
「やっぱりちょっとおかしいんか。
 わざわざアメリカくんだりまで来てアパートに火つけるくらいやからなぁ」
「普段は普通の子なんだよ。
 ただなんていうのかなぁ、やっぱり色恋沙汰になると目の色が変わるんだよね」

色恋沙汰になると目の色が変わる。
安倍の言葉に中澤裕子は反応しなかった。
人間ならば当然だ。
色恋沙汰、それも自分が苦しめられる立場に立った瞬間、反発して暴れださないやつがいるとしたら
そいつはおかしい。

「なっちはどうなん?
 カオリとは上手くいってんの?」
「今頃日本で仕事してるよ」

中澤の言葉に安倍は見るからに苦々しげな表情を浮かべた。
ほら見ろ。
中澤は安倍に悟られないよう心の中で舌を出した。
17 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時23分04秒
「ええのん?仕事させといて。
 最近ご無沙汰なんやないの?あんたら二人」
「いいの。
 なっちは裕ちゃんと違ってカオに身体を求めてるわけじゃないから」
「えらいつんつんしとんなぁ。
 身体は求めてへんつもりやけど。
 それにいくら天使ななっちでも、知らん男にやられっぱなしなのを許してるとは思えへんけど」

言いながら、中澤がそっと安倍に手を伸ばした。
その手の目的は明らかだ。
安倍は露骨にその手を振り払った。

「やめてよね」

取り付く島もない。
中澤は苦笑し、その手を引っ込めた。
18 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時23分48秒
「ホンマわからんなぁ。
 幼なじみでしかも恋人やろ?
 AV女優なんて絶対許せへんけどな」
「カオリはノーマルだよ。
 なっちとは違うの」
「なっちはこっちの人間やもんな」
「裕ちゃんとは一緒にされたくない」

飯田圭織は日本でも屈指のAV女優として名を馳せている。
世の男性方は一度や二度はお世話になっているはずだ。

安倍は飯田との関係を恋人だとは思っていない。
あくまで友人、同棲をしていて、たまに行き着くとこまでいってしまうことがあるだけだ。

中澤はそんな関係は恋人以外に表現の仕様がないと思っている。
現に今の自分の恋人など安倍と飯田の関係よりなお希薄だ。
住む所は当然別々、たまに電話で話をして、あえばセックスをする。
これじゃあデリヘルと何も変わらないじゃないかと思いつつも、反論は許されない。
19 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時24分27秒
「別れたかったらいつでも別れるわよ」

彼女は恐ろしく強気だ。
その理由は分からない。
分かるのは、中澤には誰かが必要であるという事だけ。

彼女である必要性はない、皆無と言ってしまってもいい。
けれど今、彼女の周りには誰もいない。
誰かいなければ、誰でもいい、極論女ならば。
身体を愛してくれる女ならば誰でもいい。

だから、中澤は手段を弄する。
今よりも美人で、今よりも従順な女を捜すために。
安倍に罵られようが知ったこっちゃない。
隣に十分な女がいるやつに気持ちが分かるわけがない。
20 名前:序章3 投稿日:2002年11月20日(水)01時24分52秒
「電話鳴ってるよ」

安倍に指摘されて、中澤は意識が離れていた事を知った。
いつのまにか安倍は風呂上りのような格好をしている。
生唾を飲み込んだが、どうやら悟られなかったらしい。

「出ないの?じゃあなっち出ちゃおうかな」
「アホな事言いよんなや」

まるで付き合いたての恋人のような仕草で電話に手を伸ばそうとする安倍を邪険に振り払った。
そして願う。
ディスプレイに「紺野あさ美」の文字が浮かんでいることを。

しかしそこには「保田圭」の文字が浮かんでいた。
21 名前:名無し 投稿日:2002年11月20日(水)01時28分31秒
とりあえずここまで。
そして作者からのお願い。

1、作者はアメリカに行った事もなければマワされた経験もありません。
つまりは憶測でものを書いてます。
今後もリアリティが不足するところがあるかとは思いますが、どうかご容赦を。
2、罵倒レスは謹んでお受けしますが、削除以来だけはカンベンしてください。
削除依頼は自分で出しに行きます。

千鳥足で進む話ですがどうぞよろしく。
22 名前:リエット 投稿日:2002年11月21日(木)02時26分27秒
断片的に飛んでいく話の構成が面白いです。
布石が多分に置いてありそうで、続きが楽しみ。
23 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月22日(金)06時17分47秒
面白そうですね、
この先の展開が楽しみです。
24 名前:sxrdD0vM 投稿日:2002年11月25日(月)02時25分45秒
「まぁったくもう、なんやよこの寒さは!
 相変わらずあさ美ちゃんは人使いが荒いんやから…」

周りを木々に囲まれた静かかつ陰湿なバス停で、一人の少女がごちていた。
木々を伝って、細かな雨が少女の身体に降り注ぐ。
水色のパーカーには、既にいくつかしみが出来ていた。

「大体、なんであさ美ちゃんが待機して私が外に出なきゃならないんよ!
 私だって暖かい所で指示出しながらコーヒー飲んだりしたいって言うのに…」

雨は水色。
傘も水色。
おまけにパーカーまで水色。
これが彼女の示してくれた愛の形なのだろうか。
少女高橋愛は大きなため息をついた。
25 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時27分04秒
「今日はね、なんとなく水色の傘を持って水色のパーカーを着るといいと思うの。
 ほら、だってこんな雨の日には水色の傘を差せば気分が晴れるだろうし。
 ただあれだね、水色のパーカーを着てると誰かに惚れられちゃうかもしれないから気をつけてね。
 もしそんなことになったら、私その人の事刺さなきゃいけなくなっちゃうから」

出発前、彼女である紺野あさ美から念入りに言われた。
しかしさっぱり意味が分からない。
不思議なところはあるが、ココまで電波状態の悪いのは初めてだ。
しかしこれが惚れた弱みと言うやつだろうか。
熱っぽく語られると、何が何でも首を縦に振るしかない。

「うー、さびいよぉ…」

愛した人を間違えたかもしれない。
今まで過ごしてきた一年間の道のりは平坦そのものだった。
初めての砂利道に、再度大きなため息をついた。
26 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時27分57秒
高橋が紺野と知り合ったのは、当たり前だが学校である。
高橋が生徒会長を務めていた生徒会に、会計として入ってきたのが紺野だった。
あの時の衝撃を、高橋は後日

「ビビビ婚ならぬゆんゆん惚れやよ」

と語っている。
「ゆんゆん惚れ」がどういうものかはわからないが。

しかし、二人の出会いは
「初めまして、紺野あさ美と言います。
 会計を務めます、よろしくお願いします」
「(うぁ〜、かわいい子やね〜)」
等と言う平凡なものではない。
いや、ある意味もっと平凡であるかもしれないが。
27 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時29分00秒
その日、九月にしては妙に寒い日だった。
高橋は珍しく宿題を忘れ、担任から居残りを命じられていた。

「あーもう、遅れちゃうよー」

根が生真面目な高橋は言いつけどおり、忘れた宿題の残りをやっていた。
担任は職員室に戻ってしまったのか教室にはおらず、ごまかし放題し放題なのだが、
そんなことは考えもしていない。
ただただ放課後に行われる生徒総会に遅れることのないよう、ひたすら宿題を片付ける事しか頭にないのだ。

「あーもう、なんで昨日眠ってしまったんやー」

どれだけ愚痴っても時間は戻ってこない。
教室には物凄い速度で動くシャープペンシルの音だけが響いた。
28 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時30分00秒
「あー、こりゃギリギリやなー」

結局宿題を全て終わらせた頃には、生徒総会の時間まであと二分と迫っていた。
二分と言う時間は、教室から会議室までの距離を考えると無理な時間ではない。
走れば。

もちろんこの学校にだって、バカの一つ覚えで校則がある。
「押さない、走らない、喋らない」と言うものであるが、俗に言う災害時の「おはし」とは違う。
これが平時の校則なのだ。
学生たるもの、廊下で話すこと何もない、先生への質問は教室か職員室で、
などと言うトチ狂った初代創設者の意向により、廊下でおしゃべりは禁止されているのだ。
しかし生徒も真面目なもので、廊下では一切会話をしない。
教室の喧騒とのコントラストはまさに見事と言うほかなく、校舎は放課になると一種異様な空間へと変貌する。
29 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時30分47秒
と言うわけで、高橋は岐路に立たされていた。
走れば間に合う。
しかし自分は生徒会長だ。
生徒会長自ら率先して校則を破ったとなると何を言われるか分かったもんじゃない。
かといって総会に遅れるのもメンツ丸つぶれ。
ただでさえ今は、何故か副会長に居座っている新垣里沙からの突き上げが厳しいのだ。

「あ〜ら〜、会長さんな〜んで総会に遅れたのかしら?
 え?宿題を忘れたですって?
 ま、信じられな〜い。
 天下の生徒会長様が宿題を忘れるなんてあるまじき行為ではないですか?
 自慢じゃありませんが私、今まで宿題を忘れた事など一度も、一度も、一度もありませんことよ〜」

そんな光景が目に浮かび、高橋は吐く真似をした。
30 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時31分33秒
一年のクセして副会長になった新垣はとことん性格が悪い。
弱みを見つけたと見るや執拗にそこを攻撃してくる習性がある。
しかもそんな自分に酔うと言う性癖まである筋金入りの変態なのだ。
しかし、お察しの通りこの(高橋曰く)クソアマの祖母に当たる人物がこの辺り一体の敷地を持つ大地主であるらしい。
というわけで、学校側は手出しが出来ない。
一方の生徒側だが、明らかに新垣は嫌われている。
しかし、ここでもこのクソアマは権力を盾に猛威を振るっている。

「皆の衆〜、時期生徒会副会長にはこの新垣里沙に一票をよろしくお願いしますわ〜。
 一票を投じてくれたと確認できたものに関しては、当選の暁に、報酬を取らせようぞ〜」

言葉遣いも時代もムチャクチャで頭の弱さは露呈しているものの、報酬と言う単語は
懐に隙間風吹きすさぶ学生さんには夢のような言葉だ。
結局、新垣は満票を取って当選してしまった。
立候補者には投票権がないため、高橋は新垣に入れてはいないのだが、
はらわたが煮えくり返ったのは言うまでも無いだろう。
先程言ったとおり、高橋はとても真面目なのだ。
ちなみに報酬がどういったものなのか、高橋は当然知らない。
31 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時32分19秒
「しゃーない、走ろう」

ひとさらいは出てこないが、考えた結果、走ることにした。
真面目ではあるが、真面目だって時と場合による。
校則を破る事になってしまうが仕方ない。
あのクソアマにねちねちと嫌味を言われるよりは、担任に軽い小言で済ませてもらうほうが数段賢い。
周りに生徒がいないことを確認して、高橋が走ろうとしたその瞬間。

「あいた!」

何故か後ろから突撃された。
言うなればアメフトのタックルのように。

「あ、ごめんなさい」

もんどりうって倒れた高橋。
後ろから突撃してきたと思しき少女は、慌てた様子で高橋の顔を覗きこんだ。

「あの、大丈夫ですか?」
「はいぃ、大丈夫ですよぉ」

それが紺野であった事は言うまでも無い。
二人の出会いは衝突で。
32 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時33分19秒
結局二人は総会に遅れ、高橋はクソアマにねちねちと嫌味を言われる事になった。
もちろん紺野がフォローしたのだが、そんなモノが通用するはずもない。
そればかりか、何故か紺野まで一緒になって頭をもたげている。

「会長さ〜ん…」

自らの演説に惚れ込み、恍惚の表情を浮かべている新垣をよそに高橋は聞いた。

「何で紺野さんまで一緒になって怒られてんのぉ?」
「え、だって私が後ろからぶつかったから…」

何故か泣きそうになる紺野。
高橋の中で長い笛の鳴る音が聞こえた。
試合終了。

「(やぁー、その顔は反則やよー…)」

高橋、ウルウル紺野にノックアウト。
33 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時34分28秒
そんなこんなで今に至るわけだが、高橋はいかんせん紺野について知らなさ過ぎた。
アニヲタであるとかゲーヲタであるとか同人ヲタであるとか、衝突したときはブル(byスーパーマリオブラザース)の
真似をして会議室に行こうとしていただとか、その辺りの知識はどうでもいい。
肝心なのは、紺野がしていたアルバイトのことだ。

「アルバイトぉ?」
「そう、親戚のオバ…じゃない、お姉さんから頼まれてるんだ。
 一回の仕事で五千円。
 お姉さんが満足したら、その度合いによってイロをつけてくれるって感じで」

初めて紺野の家に行った日。
おさつドキッ!を頬張りながら紺野はそういった。
高橋は出された麦茶に口をつけながら、紺野の言った言葉の意味を必死に理解しようとしたが、
分かるわけもなかった。
何せ何も説明されていないのだから。

「わけわかんねぇや」
「うーん、簡単に言えば人探しだね」
34 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時35分32秒
つまりはそういうことである。
高橋は紺野が目をつけた人を紺野のところへ案内する案内人をするために、バス停に立っているのだ。

「えーとぉ、背が高くて、カッコイイ系で、ほくろがあって、世捨て人みたいなオーラを漂わせてる人…。
 そんなのわがんねぇよぉ」

紺野の説明は実にアバウト、しかしなかなかに急所を付いていた。

「とにかくバスに乗ってる人から探せばいいんやろ。
 あー、さびぃ。
 はよバスこんかなぁ…」

高橋の願いが通じたのか、バスは程なくしてやってきた。
35 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時36分03秒
>>24-34
36 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時38分06秒
意味もなくトリップ。
カッケー。

>>22>>23
レス有り難うございます。
決して真面目な話ではないと思われますので、その辺りはご注意を。
37 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年11月25日(月)02時41分55秒
書き忘れ。
基本的に更新は週一から十日に一回。
ただしストックがまとまらない場合は更新が滞る可能性もありますが、
そんな時はマターリと茶でも啜っててください。

あと、もしレスをしようと思ってくださった方がいたら、age、sageは気にしないで下さい。
上がってても下がってても嬉しい事に変わりはありませんから。
38 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)03時53分34秒
あ、高紺ですね(w
おもしろいしCPが嬉しいっす(w
待ち人ってあの人ですかね〜?w
続きお待ちしております。
39 名前:リエット 投稿日:2002年11月26日(火)02時43分06秒
二人の出会いは〜が懐かしい(w
作者さんなりの新垣、面白いです。
40 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時04分53秒
新東京国際空港。
国際線の発着が行われるこの空港で、何故か大きな人だかりが出来ていた。

「うぉー、カオリーン!」
「飯田さん、こっち向いてー」
「ハァハァ」

黄色いとはお世辞にもいえないだみ声の歓声に、教育上よろしくなさそうな音。
日本の誇るAV女優飯田圭織を取り巻くヲタどもが、場をわきまえない大声を上げる。
こんなんだから日本は誤解されるのだが、それはまた別の機会に。

「そろそろなっちが来る時間のはずなんだけどな…」

さらりと流れる長い髪をたゆたわせながら、時計に視線を落とす。
その一行動だけで大歓声を上げるヲタ。
しかし飯田も手馴れたもので、柔らかい笑みを出し惜しみしながら振りまく。
その笑顔を見て、四、五人が方々に散った理由については深く考えてはいけない。
41 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時05分28秒
「あれー?まだ来ないのかなー?」

安倍がアメリカに発つ前に渡されたメモには、十五時五分着と書かれている。
今の時刻は十五時三十分。
遅いといえば遅いという程度だ。

「どうしよ…なんかあったのかな?」

根っからの心配性と言うわけではない。
どちらかと言えば人生楽観派の飯田がココまで心配するのはもちろん、対象が安倍であるからに他ならない。
同じ病院で生まれ、同い年で、同棲相手。
何から何まで同がつく二人の関係を言葉に表すのは難しい。
友達だとか恋人だとか、よくある言葉には到底当てはまらない。
運命と言うには風呂敷が過ぎるし、空気と言うほど相手に関心がないわけでもない。
42 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時06分06秒
しかし、最近飯田は言い得て妙の言葉を見つけていた。
二人の関係を端的に、しかも分かりやすく表す言葉。
これが最もしっくり来るかは分からないけれど、詩的表現の才に長けている飯田は気に入っていた。

「命綱…」

なっちはカオリの命綱。
カオリはなっちの命綱。
なっちの心も身体もなっちのものだし、カオリの心も身体もカオリのものだけど。
なっちはカオリのものだから、カオリはなっちのものだから。
お互い引っ張り合ってて、登る時も落ちる時もいっしょだから。

ココまで強固な絆を築けた理由を探るとなると、話は過去へ跳ぶことになる。
二年前、飯田も安倍も十九歳。
43 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時06分36秒
「ちょ、カオ、やだ、やめて!」
「何で…カオリじゃヤ?」
「だって、カオはノーマルでしょ?
 なっちとは違うんだよ!」
「ノーマルとか関係ないよ。
 カオリはなっちが好きなの、それじゃダメ?」
「違うよぉ…。
 カオの好きと、なっちの好きは違うんだよぉ…」
「違わないよ。
 カオリはなっちとずっと一緒にいたい、キスだってしたいし、抱きたい。
 なっちの言ってる事はそうじゃないの?」
「違うよ…。
 なっちは抱かれたくない、男の人とセックスした身体なんて、気持ち悪くて耐えられないんだよ。
 カオリの事は好きだけど、そういう好きじゃないの。
 なっちは自分勝手だから、だからダメだよぉ!」

何だエロかと興醒めするのは、恐縮ながら筋違いと言うものだろう。
この世の中、身体から始まる関係など掃いて捨てても湧いてくるほどそこいらに転がっている。
44 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時07分05秒
当時、飯田は既にAV女優の仕事を始めていた。
まだまだ駆け出しで名前が売れていたわけではなかったが、それなりにお金の工面にも苦労はしていない。
一方、安倍は超が付くほど有名で、超が付くほどレベルの高い大学に通っていた。
学費は親が出し、生活費は飯田が出すというなんとも優雅な生活。
もちろんそれには大きな責任を感じていた。

上の文を見ても分かるとおり、このとき既に同棲生活はスタートしている。
ただし、関係はあくまで幼なじみのルームメイト。
その関係が崩れたのは、飯田がある人物を安倍に紹介したときだった。
45 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時08分23秒
その日は雨が降っていた。
前日までにVの撮りが終わり、飯田はその人物を部屋に招いて談笑していた。
仕事仲間、正確には同業のその人物は、親に隠して仕事をしていた。
当然と言えば当然だが、飯田は例外に当たる。
名前も本名だし、親にも公然と現在の職業は暴露してある。
一時は狂わんばかりに嘆いた両親だったが、始めてしまったものは仕方ないと思ったのか、
出演したビデオを送ると何も言わなくなった。

「自分の出たビデオなんて送る、普通?」

その人物は信じられないといった感じで首を振った。

その時だった。
ちょうど安倍が大学から帰ってきたのは。
時間もほぼいつも通り。
夕食の支度も、いつも通りに出来ている。
ただ違ったのは、来客がいたことと、それを飯田が安倍に伝えていなかったこと。
そして、安倍の様子。
46 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時09分03秒
「おかえり、なっち」

抑えきれない笑顔を表しながら飯田が玄関を開けても、安倍は何も反応しない。
ただ下を向き、わざと表情を飯田に見せないようにしているかのように。

「なっち…どうかした?
 気分悪いの?」
「誰?」

慌てて様子を聞く飯田に、安倍は鋭く重たい言葉を返した。
奔放で明るい安倍の裏の顔が覗いた。
飯田は一瞬戸惑ったものの、自分にやましい所は何もない。
悪びれもせず言葉を返す。

「あ、ごめんね。
 えと、同業って言うか、一緒に仕事した女優の…」

悪びれてはいないがどもりっぱなしの飯田の言葉に安倍が反応した。

「一緒に仕事したってどういうこと?
 女の人じゃん」
「いや、だからその、レズモノなんかを…」

飯田は気付いていなかった。
安倍が何に反応していたのか。
もっとも気付いていたところでもう手遅れなのだが。
47 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時10分06秒
「どいて!」

まだ言葉も言い終わらぬうちに、飯田は安倍に突き飛ばされた。
身体が横に飛び、下駄箱にしたたかに腰を打ちつけ激痛が走る。
しかし飯田は痛がるより先に、安倍を視線で追った。
只ならぬ雰囲気。
その悪い予感は見事に当たり、視線の先の安倍は同業者の首根っこをつかみ上げ、今まで見たこともない顔をしていた。
そしてその小さな身体をいっぱいに使って、同業者の身体を前後に揺らす。

「出てって!今すぐ出てって!
 カオリに近寄るな!もう顔見せるな!
 ふざけんなよ…ふざけんなー!」

ココがどんな高級マンションであっても、きっと安倍の声は方々へと響いていただろう。
ましてや低家賃のアパート、何事かとドアと言うドアから顔が覗く。
しかしもちろん中にいる三人はそれを知るはずもなく、
飯田は何とか立ち上がって安倍の背中を押さえ込み、安倍はひたすらに叫び続けた。
48 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時11分08秒
「なっち!どうしたの?やめて!」
「出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけぇ!」

同業者は呆気にとられた顔をしながら、安倍の抗議を甘んじて受け入れている。
文句を言い出すでもなく、ただ揺らされ続けている。

「帰れよぉ!帰ってよ…お願いだから帰って…」

いつしか安倍の方に泣きが入った。
これにはさすがに驚いたのか、同業者は荒々しく安倍の手を跳ね除けると

「それじゃあ帰るね。
 なんか邪魔者みたいだし」

悪態をつきながらそそくさと部屋を後にした。
49 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時12分09秒
さて、困ったのは飯田である。
同業者にはよくわからぬ誤解をされている気がするし、安倍はよくわからないままに泣き出してしまい
部屋の隅でうずくまっている。
怒りたい気がないわけではないが、それより先に心配が立ち、痛む腰をさすりながら安倍の肩に手をかけた。
ピクリ、なんて生易しいものではない震え方をした安倍に、さらに不安が募る。

「なっち…どうしたの急に?」

言葉をかけても、一方通行で帰ってこない。
しゃくりあげる回数は減ったものの、泣き止む気配は一向に見えない。
困り果てた飯田は、窮余の一策として、台所に向かった。
そしてしばらくして戻ってきたとき、手には温められたミルクココア。
それを無言で安倍の前に差し出し、飯田は部屋を出た。
50 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時12分41秒
昔からそうだった、と飯田は所々ぎすぎすとしたドアにもたれながら思った。
普段は決して弱さを見せない安倍、しかし一度崩れてしまうと、修復には時間を要する。
向日葵とも天使とも評されるその笑顔の裏には、決して普段は現すことのないどす黒いものが蠢いているのだ。
けれどそんな時、いや、どんな時でも安倍は決まってココアを飲む。
嫌な自分が表に現れたときも、試験前の追い込み学習の合間も、事あるごとにココアを飲んでいた。

「ココアっておいしいべさ」

ココアに関しての安倍の言葉は、これしか印象にない。
ココアに執着する理由は分からない。
けれど事実、安倍はココアが好きで。
それにきっと、今はとても辛い時間で。
だったら、黙ってココアを差し出すよりないと思った。
51 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時13分17秒
雨は本降りの様相を呈している。
雲に切れ間はなく、潰されそうな迫力を感じる。
足もとの錆びた鉄筋の上を雫が流れ、身体に少々の寒さを感じた頃、もたれていたドアが音と共に軽く振動した。

「ありがとねカオ、ごめんね」

震える声。
けれど飯田はもう安心しきっていた。
繋がっている感覚。
額をドアに押し付け、瞳をうっすらと輝かせながら、右手でこぶしを作っている。
安倍の全てが手に取るように分かった。

「入るね」
「うん」

そしてその通りの安倍の姿に安堵した。
52 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時14分05秒
「とりあえず説明してよね、あとカオリにもココア」
「うん」

部屋に戻った飯田は入るなり安倍を動かし、自分はソファに腰掛けた。
さっきまでの殺伐とした空気は大分薄れていたが、崩れた雑誌にその後を見ることが出来る。
ただ、生々しさがないのは救いだろう。
安倍も先程より幾分すっきりとした表情で、両手に湯気を立たせたココアを持って現れた。
と、突然

「取り乱しました、スミマセン」

とどこかで聞いた事のあるセリフを吐きながら頭を下げた。
もっとも、次に見た安倍の顔からは舌が覗いていたのだけれど。

「ちょっとぉ、本気で心配したって言うか、何事だと思ったんだからね」
「だから悪かったって。
 でもカオも悪いべさ、なっちがカオのこと好きだって知ってて女の子連れ込むんだもん」
53 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時15分05秒
それは例えば、七月に聞こえる風鈴の音。
六時半になったからとご飯を求める犬の鳴き声。
それくらい自然に安倍は言葉を発し、それくらい自然に飯田は言葉を飲み込みかけた。
が、日本のネズミ捕り侮るなかれ。
いやいや、飯田も何とか安倍の言葉を引っ掛けた。

「ん?」
「ん?」

お互い顔を見合わせる。
飯田の顔は硬直し、安倍の顔には微笑が浮かんでいた。

「なっち?」

しかし見る見るうちに安倍の表情も翳ってくる。
そしてまた俯いてしまった。
クルクル変わる表情、まさに曇り後晴れ、ところにより雷雨。
そして微風と共に、辛そうな言葉を吐き出した。

「もう、さらっと言ったつもりだったのになぁ」
54 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時15分44秒
ふてくされたような安倍の言葉を聞いて、飯田は交信、いや、混乱した。
とりあえず脳内会議の議題は安倍の先程の言葉。

「カオはいや?」

だったのだが、議長の第一声より先に安倍が言葉を発した。
未だよくわからぬまま視線を向けると、安倍は今まで見たこともないほど真剣な目をしている。

「ゴメンネ、なっちってなんかレズみたいなんだわ。
 だからさぁ、さっきの女の子のこと腹立って腹立ってね」

レズみたいなんだわ。
この言葉の意味を理解するまでに数秒を要した。

「どう?」

安倍が問う。
飯田に選択の余地はない。
55 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時16分24秒
好きか嫌いか。
最もポピュラーなこの二者択一において、多くの方は「嫌いじゃない」と答えた事があるだろう。
そして、「じゃあ好きなの?」と問われれば「普通かな」と続けて答える事も。

しかし実際そんな答えはありえない、少なくとも飯田の中では。
好き、嫌い、どちらも感情を表す言葉だけれど、じゃあ普通は?
普通は一体何を表す言葉だというのだろう。
きっと状態だろうが、誰も状態なんか訊ねてやしない。
そして無理やり感情を表す言葉に置き換えようとすれば、「どうでもいい」になるに違いない。
「どうでもいい」。
飯田にとっての安倍は、「どうでもいい」なんて言葉とは無縁の場所にいる。
そしてもちろん、「嫌い」なんて想いとも。

「好き、だよ」
56 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時17分05秒
安倍に対して何らかの感情は抱いている、そしてそれが「嫌い」でないことも確かだ。
だとしたらもう「好き」と言う感情に決まっている。
それが友達としてのものか、それとも恋か、それは分からないけれども。

「よかった」

けどそんなものはそれこそ「どうでもいい」と、安倍の笑顔を見て思った。
余計なことを考える必要はない。
私は今、なっちの唇を奪いたい。

飯田は機敏に安倍の手をとり引き寄せた。
そしてそっと口付け、ぎゅっと抱きしめた。
57 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時17分51秒
相変わらず外野は元気だ。
夏のセミや突貫工事に勝るとも劣らない。
自分達が恥ずかしい事が気にならないのだから凄い、と不本意ながら飯田は身をすくめる。

そして相変わらず安倍は姿を見せない。
時刻は四時になろうとしている。

「どうしたんだよなっちぃ…」

飯田の声がか細くなる。

四時半になっても、安倍は姿を現さなかった。
58 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時19分49秒
>>40-57
59 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時20分35秒
川‘〜‘)||人(´ー`・)
60 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月02日(月)16時22分36秒
>>38>>39
レス有り難うございます。
二人の出会いはみたいなコネタに気付いていただき嬉しい限りです。
気付いたらどんどん指摘してやってください。
61 名前:リエット 投稿日:2002年12月06日(金)20時43分12秒
過去の安倍さんかなり強引ですね(w
それにしても、安倍さんどうしたんだろう……。
62 名前:MFa7UIa6 投稿日:2002年12月16日(月)13時05分57秒
すみません。
少し更新遅れます。(既に遅れてますが)
63 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月21日(土)00時51分23秒
マータリ待ってますw
64 名前:あにゅ 投稿日:2002年12月23日(月)02時19分27秒
このサイトは金儲けにいいですよ。「フルーツメール」っていうのなんだけど、どう?
http://www.fruitmail.net/
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65 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月25日(水)00時47分07秒
続きが待ち遠しい…
マターリお茶飲んで待たせてもらいますけどね。

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