TEL ME U
- 1 名前:tsukise 投稿日:2002年11月21日(木)18時05分29秒
- 月板で書かせて頂いている者です。
今回続きとしてこちらの板に、スレッドを立てさせて頂きます。
お目汚しにならないように…努力は…します(^^ゞ
前スレ
TEL MET
http://m-seek.net/moon/index.html#1032186355
- 2 名前:TEL ME 投稿日:2002年11月21日(木)18時08分10秒
- 返事ができなかった時はYES…?
うーん…、とにかく『はい』か『いいえ』で答えればいいんだよね?
それにしても…口で言えないようなお願いってなんだろう?
まさか、さっはの告白はなかったことにしてくれ、なんて言われたりしたら…っ。
って、それはないよね…? 後藤さんはなんだか嬉しそうにメールを打ってるし…。
あ…っ。
ピピピッ ピピピッ
色々考えている間に、後藤さんが送ったメールが届いた。
ちょっと不安になりながら、そのメールを開いて…心臓が飛び出すほどビックリした。
だって、開いたメールには…っ、
『キスして、いい?』
なんて書かれてあったんだもん…っ。
「ふぇっ!? ご、後藤さんっ、これって…あのっ!?」
声を裏返しながらも、後藤さんに問いかけようとしたんだけど…、
「返事はYESかNOかだよ。いーち…」
私の方をじっとみつめながら、後藤さんは秒読みを始めちゃったんだ。
- 3 名前:TEL ME 投稿日:2002年11月21日(木)18時08分43秒
- キ、キスって…そんな…っ。
ご、ご、後藤さんと…!?
「にーい…さーん…」
混乱している間にも、カウントは続いていってるし…っ。
ど、どうしようっ! だって私、まだ誰とも…したこと…。
「しーい…ご」
きっと私は今、顔を真っ赤にしながらオロオロしてると思う。
だって、もう五秒たっていることにも気づかなかったんだから…。
熱のせいで熱くなってしまった頭が、クラクラしていくのが自分でもわかる。
「返事ができなかった場合は、YESだね…」
ハッとして顔をあげた時には、もう後藤さんは椅子から腰を浮かせて私に顔を近づけていた。
「うあ…」
少し身体を起こして後ろに後ずさる私。
もちろん、それ以上に距離を縮めてくる後藤さん。
自然と、そんな後藤さんの潤った唇に視線がいってしまってドギマギしてしまう。
- 4 名前:TEL ME 投稿日:2002年11月21日(木)18時09分17秒
- 「ちょ…っ、後藤さんっ、待ってください…っ」
「待たない」
「でも…っ、あのっ、私初めてで…」
「初めてが私じゃ、イヤ?」
ドキっとした。
だって、目の前で止まった後藤さんは、ちょっと切なそうな顔をして私を上目遣いで見ていて…。
至近距離で、そんな表情をされたら…拒めないじゃないですか…。
「イヤ…じゃないです…けど…」
「じゃ、いいよね」
曖昧な私の返事を聞いた後藤さんは、さらに顔を近づけてきて余計慌てた。
「まっ、待ってください…っ、あの…私…っ」
「黙って…」
「あ…っ…ん…っ」
言いかけた言葉は、後藤さんのキスで最後まで言えなかった。
ときめくようなキスだった。
ほんの一瞬触れただけの、そんなキスなのに全身がしびれるような感覚が広がっていくような…。
多分、私にとってそれはファーストキスだったから…。
…想いの通じた、大好きな人が相手だったから…。
- 5 名前:TEL ME 投稿日:2002年11月21日(木)18時09分51秒
- 「ん…はぁ…」
唇が離れた瞬間、漏れてしまう吐息。
それは後藤さんの頬を撫でてしまったみたいで、ちょっとくすぐったそうに目を細めていた。
「ね、紺野…」
「な、なんですか…?」
後藤さんの艶っぽいよびかけに、私はまたドキっとしてしまう。
だって、唇を離した後も後藤さんは距離をとろうともせずに、まだ至近距離で私を見つめていたから。
「普通はさ、キスする時って目、閉じるんだよ?」
「え…っ? あっ、ス、スイマセン…っ」
「紺野らしくていいけどね」
「後藤さん…」
そこで、どこか上品に可笑しそうに笑う後藤さん。
思えば、初めて後藤さんに惹かれたのもこの笑顔だったっけ…。
すごくしっかりしてて、色んな人に優しくて…誰からも好かれてて…。
そんなあなたを知りたいって思って…。
それが好きって気持ちなんだってことに気づいて…。
- 6 名前:TEL ME 投稿日:2002年11月21日(木)18時10分40秒
- たくさんあなたを知っていくたびに、想いは募っていって。
想いをぶつけて…、あなたからもぶつけられて、お互いにいっぱい傷ついたりもした。
でも…今は…。
今は、繋がっていますよね? 私達の想い…。
「紺野…」
再び顔の向きを変えて近づいてくる後藤さんに、今度こそ私はゆっくりと瞼を閉じた。
「…んぅ…」
私のセカンドキスは、深くて…強く求められるような、そんなキスだった。
でも唇の感触を確かめるみたいに触れてくる、柔らかな後藤さんのキスは優しくて、嬉しかった…。
唇が重なる瞬間、後藤さんが『好きだよ…』って言ってくれたのは聞き間違いなんかじゃないと思う。
だってうっすらと開いた視界の先に、優しい眼差しで同じく軽く目を開いて私を見つめている後藤さんが
映っていたから…。
それを見て思ったんだ。
私…この人を…後藤さんを好きになってよかったって…。
そして…これからもずっと…あなたをみつめていきたいって…。
- 7 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時12分29秒
- それから約一週間が経った、ある日の土曜日。
私は後藤さんにお願いして、学校帰りに市井さんの眠る場所へと案内してもらったんだ。
最初、ちょっと後藤さんは戸惑っていたみたいだけど、どうしてもってお願いに耳を傾けてくれた。
やっぱり、私が逢いたいって思うのはおかしかったのかなぁ…?って思ったけど、市井さんに
一度ちゃんと向かい合いたかったんだ。
これからも、きっと後藤さんと一緒に付き合っていくであろう市井さんっていう存在に。
「ここだよ」
私の前を歩いていた後藤さんは、ちょっと高台になっているその場所の入り口で私に振り返った。
見晴らしのいいその場所は、まだできて新しい場所なのか全然古びたイメージはなかった。
お墓って、もうちょっと…寂れたようなのを想像していたから自然と『うわぁー…』って声が出て
後藤さんに笑われてしまったっけ。
- 8 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時13分11秒
- それからしばらく歩いた先で、後藤さんは止まった。
後ろを歩いていた私は、横に立って一つの墓石を見つめる。
目の前にあるのは、素人の私から見ても立派なお墓で…いつも誰かがきているのかとっても
綺麗で塵1つなかった。
そして刻まれた文字を確認する。
『市井家之墓』
「ここが…いちーちゃんの眠る場所だよ」
私の疑問に答えるみたいに、後藤さんはちょっと目を細めてそう言った。
きっと、色んな思い出が蘇っているんだって、その口調でわかる。
でも、私はもうそんな後藤さんに焦りを感じることはなかった。
だって、後藤さんと市井さんには深い絆があるんだって分かったから。
そして…その絆は私にも受け継がれているんだって知っているから。
- 9 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時13分41秒
- 「はじめまして、紺野あさ美です」
一度後藤さんの顔を見てから、市井さんの墓石の前に途中で買ってきた花を供える。
それからゆっくりしゃがんで目を閉じると、両手を合わせた。
市井さん…、私は後藤さんの中の市井さんしか知りません。
でも、後藤さんが話してくれる市井さんは、とっても優しい人で心の強い人で…少し
男っぽいところがある人なんだって分かります。
そして…どれだけ後藤さんが好きだったのか…、市井さんもどれだけ後藤さんの事を
好きだったのか、痛いほど伝わってきて…正直、辛いとさえ思ったこともありました。
でも、同時に思ったんです。
こうやって市井さんの思い出を話してくれるのは私だけなんだから、後藤さんの市井さんを
思う気持ちを受け止めようって。
いつか、いい思い出に変わるその日まで、私は市井さんもひっくるめて後藤さんを好きで
いようって。
- 10 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時14分17秒
- だから、一つだけお願いしてもいいですか…?
私も、後藤さんと一緒に市井さんの思い出に触れることを許してください…。
大切な二人の思い出に触れることを。
心の中で、私は市井さんに届くように強く願った。
今日、ここに来た理由は…どうしてもこのことだけを伝えたかったからだったんだ。
いつか、思い出に変わるその日まで、私は市井さんを追いかけて行こうって…。
そう…後藤さんと一緒に。
- 11 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時14分58秒
- 隣で熱心に手を合わせる紺野は、どんなことをいちーちゃんに伝えてるんだろう?
私には全然わからないんだけど、真剣にも映る横顔が他愛もないコトを伝えてるんじゃ
ないんだって判る。
そのまま紺野をじっと見つめているのもなんだか気恥ずかしくて、私もしゃがんでいちーちゃんに
向かって…ううん…いちーちゃんの眠るお墓に向かって瞼を閉じて手をあわせたんだ。
――いちーちゃん、このコが私の大切なコだよ?…って。
たくさん回り道して、たくさん想いをぶつけ合って、たくさん傷つけ合ったりもしたけど、
それでも、このコとずっと一緒にいたいって気がついたんだ。
もう…逃げたりしないよ?
紺野から…、なにより自分の気持ちから。
きっとこれからだってケンカもするだろうし、泣かせたりするかもしれない。
でも紺野となら…きっと乗り越えていける。
だから…だからね……
「…後藤さん?」
「…ん? なに?」
呼ばれた声に瞼を開いて紺野に振り向くと、心配そうな顔で覗き込んでいた。
- 12 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時15分29秒
- なんだろう?って思っていたら、ゆっくりと紺野の手が私の顔に伸びてそっと頬の辺りを
人差し指で撫でたんだ。
後に残ったのは、水が肌に張り付くような感触。
私は…泣いていたんだ。
感情が高ぶると泣いてしまうのは私の悪いクセ。
あー…なんだか紺野に,心配をかけてしまったみたい。
付き合い始めて一週間が経つけど、電話も、集会で会っても、学校帰りでも、どんどん
紺野に依存してしまっているような気がする。
もちろん、紺野も私を頼ってくれたりしてくれてたんだけど、私はそれ以上かもしれない。
でも…。
でも、紺野は絶対に私を突き放したりしなかった。
夜、どれだけ長電話でも付き合ってくれたし、メールを送っても必ず返事を返してくれた。
今だって、ほら…。
紺野は涙をぬぐった手を、そのまま私の頬に優しく当ててくれてる。
『大丈夫ですか?』って、大きくてまっすぐな目で私を見つめてくれてる。
その当てられた手のひらの温もりに、安心している自分がいるし…。
あはっ、なんだかどっちが先輩なのかわかんないね。
- 13 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時16分00秒
- 「…ありがとう。大丈夫だよ」
頬に当てられた紺野の手に自分の手を重ねて、私は笑って見せる。
紺野はホっとしたみたいに笑い返してから、ゆっくり立ち上がった。
そして、なんだか嬉しそうに手のひらをパチンと合わせた。
「後藤さん、ここに来る途中に和菓子屋さんがあったじゃないですか?」
「んぁ?あーそういえば…」
「あそこの看板に『芋ようかん』って書いてあったんですよっ、食べに行きませんか?」
「あー…」
そうそう…付き合い始めて気づいたコトのひとつ。
紺野は、ちょっと…いやかなりの食いしん坊さんみたい。
朝入ってくる紺野からのメールは、何故か朝食のメニュー報告だったりするし…。
本人曰く『おいもとかぼちゃが大好きです』…らしい。
芋ようかんかぁ…。
「いいけど、あんま食べ過ぎると太っちゃうよ?」
「大丈夫ですっ。体育の授業でヘトヘトになるまで頑張ってますからっ」
そーゆー問題なのかなぁ…?
もうちょっと女のコなんだし、気をつけたほうがいいと思うんだけど…。
まぁ、私も一時期結構食べたりしたこともあったから強くは言えないけどね…。
- 14 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時16分45秒
- 「だめ…ですか?」
ちょっと沈んだ声。
顔は笑ってるけどちょっとぎこちなくて、私の反応に結構落ち込んでしまったのかもしれない。
うーん…、まいっか。
紺野ってば食べてる時は、本当に幸せそうな顔してるし。
少しぐらいポッチャリしてても、私は気にしないしね…。
「いいよ。じゃあ、寄り道して帰ろっか」
「はいっ。後藤さん、そうと決まったら早く行きましょうっ」
言いながら紺野は元気に私の前を歩き始めた。
その変わり身に、ちょっと頬が緩んでしまうのを感じながら私も立ち上がって歩き出す。
…と。
その時、静かに風が通り抜けた。
いつか来たあの日のように、やわらかい風が…。
- 15 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時17分25秒
- はは…、こんなコトってあるんだね。
もう振り向かなくても分かるよ。
すぐ後ろにいちーちゃんがいるってね。
ゆっくり振り返ってみて、やっぱりそうだったんだ。
いちーちゃんが私の方を見ていた。
でも、その顔はこの間みたいに悲しいものじゃなくって、とっても優しい笑顔。
私が大好きだった、いちーちゃんの笑顔。
その表情に勇気をもらって、さっき伝えられなかった言葉を自然と口に出したんだ。
…きっとこれからだってケンカもするだろうし、泣かせたりするかもしれない。
でも紺野となら…きっと乗り越えていける。
だからね…
「いちーちゃん…私、いいよね?また人を好きになっていいんだよね?」
いちーちゃんに問いかける言葉。
でも、本当は自分自身で確認しておきたかった言葉なのかもしれない。
もう答えは出ているけど、それでもちゃんと確認しておきたかった、そんな言葉。
いちーちゃんはなんにも答えてくれなかったけど、ずっと笑顔でいてくれた。
だから…もう十分だったんだ。
- 16 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時18分08秒
- 「後藤さーんっ、早く行きましょうよーっ」
「あ…、すぐ行くよー」
もうずっと先に行ってしまっていた紺野に呼ばれて、私は振り返って手を振った。
紺野って…食べ物が絡むとホント生き生きするよね…。
そんなコトを考えていると…、
♪〜メールが届いたよ〜♪
突然メールの着信音が鳴ってビックリした。
なんでかって、だって紺野に『電車の中では切らないと』って言われて携帯の電源を
切ってたはずなのに鳴ったんだもん。
よしこからかな?なんて思いながら携帯を取り出してアドレスを確認して…また驚いた。
だって、それはもう届かないはずのいちーちゃんのメールアドレスだったんだから。
慌てて振り返ってみたけど、もうそこにはいちーちゃんの姿はなくって穏やかな風が
通り抜けているだけだった。
私は少し狐につままれたみたいな思いで…ゆっくりとメールをひらいたんだ。
- 17 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時18分47秒
- そしたら…いちーちゃんからの最後のメールには、ただ一文だけ書かれていたんだ。
―――『元気でね、真希』って…。
それから不思議なことに、携帯の電源はそれをみた5秒後に消えてしまった。
すぐに、電源を入れなおしてメールを確認したんだけど、受信の欄にそのメールは
なかったんだ。
…いちーちゃんからの、本当に最後のメールは突然で一瞬だったけど、一生分の想いの
詰まった『思い出』だった。
あはっ、最後の最後までカッコイイことしてくれちゃってさ。
真希、なんて呼んでくれたコトほとんどないクセにさ。
いちーちゃんのばか。
でも…
「ありがとう、いちーちゃん。そして…サヨナラ…っ」
空に向かって…いちーちゃんに届くことを祈りながらそれだけを告げた。
きっとまた、柔らかい風が吹いたら…この想いを届けてくれるだろう…。
- 18 名前:エピローグ ―手を握って― 投稿日:2002年11月21日(木)18時20分00秒
- 「後藤さーんっ、まだですかーっ?」
「今行くよーっ」
紺野の呼び声に私は少し笑いながら答えて、紺野のもとへと歩いた。
「遅いですよ、後藤さん」
「ゴメンゴメン」
「早く行きましょうっ」
「あ、紺野…」
「? なんですか?」
「手、握っていい?」
「え…?ど、どうしたんですか?突然」
「いい?」
「あ、はい…どうぞ」
「ありがと。じゃ、行こっか」
「…はいっ」
繋いだ手のぬくもりを感じるように、しっかりと握って歩いていく。
もう後ろは振り返らない。
前を向いて歩いていくんだ。
ずっとずっと長い道のりを、紺野と一緒に前を向いて歩いていくんだ。
きっと、色んな出来事が私達を待っていると思う。
でも、繋いだこの手を離すことがないように、しっかり握って歩いて行こう。
ずっと、ずっと…。
―― FIN ――
- 19 名前:tsukise 投稿日:2002年11月21日(木)18時26分18秒
- 更新終了〜…に伴って、【TEL ME】完結しましたです♪
いやー…長かったです…。書き始めたのが、まだごっちんが
娘にいたころですからね…。
次スレが立つなんて思ってもいませんでしたし…(^^ゞ
容量的に、続編みたいなものを書いたほうがいいのかなぁなんて考えて
しまいますが…。
とりあえず、次回作もすぐにUPすると思いますので、もしよければ
読んであげてくださいませ。多分…またこんごまCPで、ごまっとう主体な
話になるかと…。
- 20 名前:tsukise 投稿日:2002年11月21日(木)18時38分00秒
- >286 こんごま推進派さん
前回も大量UPで、今回も大量UPですみません(^^ゞ
いつもROMって読んでくださっていたんですね♪ありがとうございます。
皆さんの応援レスのおかげで、完結させることができましたっ!
紺野とごっちん…上手くくっつけれたでしょうか…?
最後まで、お付き合いくださいましてありがとうございました♪
>287 キャンドルさん
物語、終了させましたですが『寂しい』なんて嬉しいご意見をありがとうございますっ。
そうですね、書いた本人もちょっと寂しかったりするんですが…。
機会があれば続編っぽいものをUPしようかと考え中だったりして…(^^ゞ
長々とお付き合いくださいまして、ありがとうございましたっ。
>288 名無し( ´Д`)ファンさん
3泊4日の実習、お疲れ様でしたっ。帰ってきて、速攻チェックして
くださったみたいで、ありがとうございますっ。
ふっきれたごっちんと、紺野…。とりあえずハッピーエンドにしましたです♪
いつも温かい応援レスを本当にありがとうございましたっ。
ほんと、完結できたのは応援レスのおかげですっ。
- 21 名前:tsukise 投稿日:2002年11月21日(木)18時38分40秒
- >289 15さん
ごっちん、ほんとに気づくのが遅かったですねっ。もう少し早ければ
次スレも立てずに…(^^ゞ そしてっ!いつも応援レスをありがとうございましたっ。
ホントに励みになりましたですっ。
そして携帯サイト…ちょこちょこと見つけましたけどやっぱり少ないですね…(^^ゞ
これはやっぱり、15さんに期待するしかっ!(ぉ
新スレ設立の際には、お声をかけてくださいねっ。
- 22 名前:名無し( ´Д`)ファン 投稿日:2002年11月21日(木)20時12分43秒
- 脱稿お疲れ様でした。
読んでいて、とっても感動しました。
ボクは、この作品に出会えて
本当によかったと思います。
次回作も必ずチェックさせていただきます。
- 23 名前:こんごま推進派 投稿日:2002年11月22日(金)15時16分39秒
- 小説完結、乙でした。
紺野とごっちん、ラブラブでくっついて良かったですよ。
ラストの市井ちゃんに向けて言ったごっちんのセリフ
鳥肌たちました。
次回も、こんごまだそうですね。必ずチェックしますね。
ごまっとうの小説ってまだ見たことないんで、がんがってくらはい。
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月22日(金)15時34分58秒
- 完結乙でした。楽しませていただきました!
次回はこんごまにごまっとうですか……楽しみが尽きませんね、ありがとうございます!
- 25 名前:北都の雪 投稿日:2002年11月22日(金)21時34分37秒
- 完結お疲れ様でした。
ハッピーエンドで良かったです。
元々こんごま好きだったんですが
この小説でもっと好きになりました。
次はごまっとう・・・?
どんなストーリーなのか予測不可能ですが
楽しみに待っております。
- 26 名前:tsukise 投稿日:2002年11月22日(金)22時59分29秒
- 完結に、皆さん温かいご感想をありがとうございますっ。
結構初めて文章を書いたので、見にくい部分もあったかと思いますが
最後までかけてよかったです…。
そして、実は新作のスレッドを空板の方へと立てさせて頂きましたので
よろしければ、ご覧になってくださいませ…(^^ゞ
宣告どおり、ごまっとう主体でCPこんごまです…。
- 27 名前:tsukise 投稿日:2002年11月22日(金)23時00分19秒
- 空板 CROSS HEART
http://m-seek.net/sky/index.html#1037973113
- 28 名前:tsukise 投稿日:2002年11月22日(金)23時07分48秒
- >>22 名無し( ´Д`)ファンさん
小説完結に、ありがとうございますっ。
そして、感動だなんて…本当に嬉しいご意見をありがとうございます。
結構、途中途中で息切れしたこともありましたが、無事完結できたのは
いつも応援レスを下さったおかげですっ
>>23 こんごま推進派さん
小説完結にありがとうございますっ。
ラストのいちーちゃんへのセリフ、結構だいぶ前から決めてたんで
こんごま推進派さんのご感想、すごく嬉しいですっ。
ごまっとう小説…まだ手探り状態ですが頑張りますね。
>>24 名無し読者さん
小説完結に、ありがとうございますっ。
楽しんでいただけたようで、書いたものとしてはなによりです。
そして、次回作への嬉しいご意見もありがとうございますっ。
もし、宜しければチラっとでも見てみてくださいね(^^ゞ
>>25 北都の雪さん
小説完結にありがとうございますっ。
私もこんごまが結構好きなんで、北都の雪さんのご感想すごく嬉しいですっ。
ごまっとう小説…自分でもホントに手探り状態なんですがよい物が
できるよう頑張りますっ。
- 29 名前:15 投稿日:2002年11月23日(土)14時54分43秒
- 完結おめでとうございます!
遅くなってすいませんm(_ _)m
こんごまよかったです〜。無事気持ちも伝えられて…
そして影で見守っていた高橋いいやつだ〜…(泣)
続編あるのですか?頑張ってくださいね。
そしていつか高紺も…(w
自分は今書いてみてるのですが止まってますw
ごまっとう小説もするそうで、そちらも行きますね!
アヤミキあるんでしょうか?w好きなんで♪
- 30 名前:tsukise 投稿日:2002年11月24日(日)21時15分08秒
- >>29 15さん
小説完結に、ありがとうごさいますっ。
こんごま良かったでしょうか?そして、高橋ですが報われない想いですが
さっぱりした彼女なら、こんなのもアリかな…と(^^ゞ
続編、しばらくかかりそうですが頑張りますねっ。いずれは高紺も…っ。
15さんの書かれる小説も期待していますねっ。頑張ってください♪
- 31 名前:tsukise 投稿日:2002年11月30日(土)07時39分28秒
- 完結から、約1週間ですね。
なんだか怒涛の2ヶ月だったような気がしますが…(^^ゞ
とりあえず、容量がかなり残ってることもあるんで
ちょっち短編を書かせていただきます。
『TEL ME』の続編もので、もちろんこんごまです。
…その後の二人って所でしょうか…?
まだまだ粗雑な文章もあると思いますが、お付き合いくださると嬉しいです。
- 32 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年11月30日(土)07時41分04秒
- ほんとはさ、いつだってそばにいてほしいし、そばにいたい。
すぐ近くにその存在を確かめていたいんだよね…。
手を握って…、抱きしめて…キスもしたい…。
でも、鈍感な彼女は私の気持ちに気づくわけもなくって…。
大きくて純粋な瞳で笑いながら、とぼけたコトを言ったりする。
はぁ…私がこんなコト思ってるなんて、夢にも思わないんだろうなぁ…。
- 33 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年11月30日(土)07時41分57秒
- 「まったく…ヤんなっちゃうよね…」
思わず漏れた呟き。
別にこれは、彼女に向けての言葉じゃなくって今の私に対する言葉。
…そう、今の私の状況に対する。
現在、時刻はAM9:45を回ったトコロ。
いつもなら、学校に行って授業を受けて1時限目が終わったぐらいだと思う。
でも今日の私は、ベッドの上でグッタリと天井を見上げ彼女への愚痴をこぼしてた。
なぜなら…
ピピッ
電子音に、私は自分のワキに挟んでいた体温計を取り出して表示を確認する。
「…39度6分……。死にそー…」
無情な温度を告げる体温計。
そう…私は風邪をひいてしまったんだ。
人間、病気になると弱気になるとか、普段は言えない愚痴が飛び出すとか聞いた事は
あったけど、今ほどホントなんだって実感したコトないかも。
こんなにも、一人が寂しいものなんだって思ったコトなかったし…。
こんなにも、彼女に―――紺野に想いが募っているなんて分かってなかったから。
- 34 名前:tsukise 投稿日:2002年11月30日(土)07時45分13秒
- 短いですが、今回はここまでです…(^^ゞ
プロローグ的なものですが、とりあえず次回からそこそこUP予定です。
こんごまものの小説…やっぱり少ないですね…。
結構好きなCPなんですが…。
- 35 名前:名無し( ´Д`)ファン 投稿日:2002年11月30日(土)10時52分20秒
- 更新お疲れ様です。
待ってました、続編。
こんごま小説…確かに少ないかも…。
でも、ボクは作者様の書かれる小説だけでも
生きて行けそう…。
- 36 名前:こんごま推進派 投稿日:2002年11月30日(土)15時30分44秒
- おおっ!続編ですね、待ってました!
風邪でダウンのごっちんですか。紺野の登場が今から気になります!
自分も作者さんの書くこんごまだけで生きていけますよ。
どこまでもついていくので、頑張ってください。
- 37 名前:名無しゴマー 投稿日:2002年12月06日(金)02時42分24秒
- 今日始めて見つけて、一気に読んでしまいました
私もミュージカル見に行ってからこんごまにはまった人間として、
こちらのお話はツボにはまりまくりです!!!
楽しみに待ってますので、作者さん頑張ってください
もちろん新作のほうも応援してます!
- 38 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月06日(金)22時32分32秒
- 「え…っ! 後藤さんがお休み…っ!?」
朝早く、高等部の教室の前で私はビックリして声を上げた。
その声がちょっと大きかったみたいで、廊下を歩いていた先輩達が不思議そうに私を見ていた。
ちょっと恥ずかしくなって、口元を押さえて私はもう一度問いかけるように目の前の人に視線を向ける。
その先にいるのは、後藤さんのクラスメートである石川さん。
「うん、なんか風邪ひいたらしくって熱が酷いんだって…って紺野、聞いてなかったの?」
「え…、あの…メールを送っても全然連絡がなくて…」
まさか、っていうような石川さんの表情に、私はオロオロして言い訳じみた言葉しか言えなかった。
後藤さんと付き合っている私が休みの理由を知らないなんて、あるはずがないって思われたんだと思う。
でも、私の話を聞いた石川さんはちょっと納得するように腕を組んで頷きだした。
「あ〜、じゃあごっちん寝ちゃってたのかもしれないね。ごっちんって一度寝るとしばらく起きないから」
「そう…ですね…」
曖昧に笑ってそう答えた。
- 39 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月06日(金)22時33分52秒
- 付き合い始めて3ヶ月。
だんだんと見えてきた後藤さんの性格。
朝、本当に弱いんだってこととか…、意外と…大雑把なところとか。
理解しているつもりだったけど、やっぱり付き合いの長い石川さんには敵わないなぁ、なんて思って
しまった。
「…紺野、そんな寂しそうに笑わないのっ。ごっちんが好きなのは紺野なんだから、もっと自信もたなきゃ」
「え…っ?あ、はい…っ」
顔に出てしまったのかなぁ…?
石川さんは、腰に手を当てて頬を膨らませた。
そうだよね…っ。うん、もっと自信を持とうっ。
「梨華ちゃ〜ん、あ、紺野もいたんだ?ちょうど良かった」
「よっすぃー?」
石川さんの後ろから顔を覗かせたのは、吉澤さん。
そういえば、吉澤さんも同じクラスだったっけ…。
でも、ちょうどいいってなんだろう…?
「実はさっきさ、中澤先生にごっちんに渡して欲しいって生徒会のプリントを渡されたんだ。でさ、
お見舞いがてらごっちんの家に行かないか?って言おうと思ったの」
「え…?」
「紺野って、ごっちんの家に行ったことないっしょ?だから、一緒にどうかなぁって思って」
言って、最後に軽くウインク。
- 40 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月06日(金)22時34分33秒
- 多分、吉澤さんなりに気を使ってくれたのかもしれない。
そう思うと、ちょっと嬉しくなった。
でも…、
「あの…でも、突然私が行っちゃってもいいんでしょうか…?」
素朴な疑問。
だって、一度も行ったことないのに迷惑なんじゃないかなって思ったから。
しかも、後藤さんは風邪をひいてるし…。
「な〜に、言ってんの紺野っ。こんな時に行かなくてどうすんのよ〜」
「ふぇ…っ?」
石川さんは、軽くため息交じりに言って隣に来た吉澤さんに視線を向ける。
気づいた吉澤さんも、ちょっと呆れたみたいに頷いた。
「そうだよ。好きなヒトが苦しんでるのを助けてあげたい、とかって思わないの?」
「そ、それは、そうです…けど」
好きなヒト、って改めて言われるとちょっと恥ずかしい。
私は少し俯いてしまう。
- 41 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月06日(金)22時35分06秒
- 「それに、ごっちんもきっと喜ぶよ?一人で辛い時だと思うし」
そんな私に肩に手を置いて目線を合わせてきたのは石川さん。
凄く優しい目で、『ね?』って問いかけてきてくれてる。
後藤さんも喜んでくれる。
その一言で、今まで考えていた不安は綺麗になくなった。
風邪で苦しんでいる後藤さんには悪いって思うけど、一日でも顔を見ない日があると
寂しい私は『逢いたい』って気持ちを抑えられなかったんだ。
だから…
「あの…っ、一緒に行かせてくださいっ」
そう言って頭を下げたんだ。
…この時、石川さんの言った『一人で辛い時だと思うし』って言葉を聞き逃していた私は
後々、驚く事になる。
―――後藤さんの、行動に。
- 42 名前:tsukise 投稿日:2002年12月06日(金)22時44分44秒
- 今回更新はここまでです。す、少ない…(^^ゞ
ちょっち風邪をひいてしまってダウン気味なんで、ペースダウンしてます。
次回こそは、もうちょっと頑張り…たいなぁ…(^^ゞ
>>35 名無し( ´Д`)ファンさん
続編に温かい意見をありがとうございますっ。
そしてそしてっ、私めなんぞのこんごま小説に嬉しい感想、感謝ですっ!
今回、結構甘々なこんごま+痛めが入る予定なんですが、続けて読んで
くださると嬉しいですっ。
>>36 こんごま推進派さん
続編に、ありがたい感想をありがとうございますっ。
風邪でダウンのごっちんを見舞う紺野ですが、結構甘々な展開になりそうなんですが
お付き合いくださると嬉しいですっ。
そして、身に余るほどのお言葉っ、感謝ですっ。
>>37 名無しゴマーさん
小説に嬉しいご意見・応援レスをありがとうございますっ。
おおっ、同じくミュージカルでハマってしまったのですねっ♪
ここでは結構アンリアルなこんごまなんですが、続けて読んで
くださると嬉しいですっ♪
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月06日(金)23時26分21秒
- オイラも驚きたいッス!♪
- 44 名前:名無し( ´Д`)ファン 投稿日:2002年12月06日(金)23時44分51秒
- 更新お疲れ様です。
ごっちん…紺野を驚かす行動って…
そして、甘々なこんごま…きっ気になる…。
作者さん、無理をせずに風邪を治してから頑張って下さい。
- 45 名前:名無しゴマー 投稿日:2002年12月07日(土)01時26分50秒
- うわーい更新だー!作者さんありがとうございます。
紺野に甘えた気味なごっちんがすごく好きなので、
風邪で気弱になってるごっちんはかなりツボです(笑
この後の展開にも期待してます!
お風邪引かれて大変みたいですが、ゆっくりお待ちしております。
- 46 名前:こんごま推進派 投稿日:2002年12月08日(日)06時53分02秒
- 更新お疲れ様です。
甘々なこんごまですか!か、かなり気になります!
この後の紺野は一体ごっちんの何に驚いたんでしょう…?
続き、マターリ待ってます!
- 47 名前:BLUE SKY 投稿日:2002年12月11日(水)23時15分50秒
- 更新お疲れ様です。
甘々なのはいいとして、痛めと書いてあるのが気になりますね。
痛いのを乗り越えてからの方が、より甘くなるってことなんでしょうか。
風邪をひかれたようですが、無理はなさらないでください。
- 48 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時25分40秒
- 「つーあー…」
「『つーあー』って紺野…、それ何語?」
「あっ、すいません…」
吉澤さんと石川さんに連れられて学校から歩くこと10分足らず。一つの建物の前に着いたんだ。
その目の前にある建物を見あげて、思わず出てしまった言葉に吉澤さんが吹き出した。
でも、きっと初めて見た人は絶対に驚くと思う。
だって、その建物は10階建てぐらいのマンションなんだけど、敷地の広さが半端じゃないんだもん。
外観も赤レンガのような感じでとってもオシャレで、門灯だってかなり凝った造りみたい…。
こんな所に後藤さんが…。
「んじゃまー、インターフォンを押しますか」
ぼーっとしている間に、どんどん入り口まで入っていく吉澤さん。
なんだか、何度も訪ねてきているみたいで慣れてるなぁ…。
自動扉の前に設置してある、暗証式インターフォンの前でも器用に数字を打ち込んでいる。
「あ、あのー…」
「ん?なに、紺野」
ちょっと下がってそれを見ている石川さんに声をかけた。
相変わらず、石川さんは満面の笑顔で振り返ってくれる。
- 49 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時26分18秒
- やっぱり石川さんの方が話しやすいかも…なんてどうでもいい事を考えながら、まだ整理の付かない頭を、
なんとか落ち着かせて一番の疑問を訊いてみた。
「後藤さんのご家族は何をしている人なんですか…?」
だって、どう考えても目の前の建物は普通の中流家庭が住めるような場所なんかじゃないと思ったから。
それこそ…どこか大きな企業の管理職さんぐらいじゃないと、住めないんじゃないかなぁって…。
そしたら、石川さんは一瞬キョトンとしてから眉をひそめた。
「え…、紺野なんにも聞いてないの?」
「えっ、あの…はい…」
「そっかぁ…。ごっちん、あんまし自分の話ってしない方だしねー…」
うぅ…またまた、ちょっと後藤さんとの付き合いの短さを痛感してしまう。
それにしても…改めて、後藤さんって不思議な人なんだなぁって思った。
まだまだ私の知らないことがたくさんあって…。
- 50 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時27分14秒
- 「ごっちんのご両親はね、全国に店舗を持つ飲食店のオーナーさんをしてるんだよ。年商10億円は
くだらないって言われてるぐらいすっごいお店なんだ」
「ふぇっ!?じゅ、10億円…っ!?」
その額の大きさに、声が裏返ってしまった。
だ、だって10億円って…。
一体、幾つ焼きイモが食べられるんだろう?なんて、訳のわからない事を考えてしまう。
「まぁ、それだけの大手だから、ごっちんと一緒にいる暇もないらしくて、都内に別のマンション借りて
そこで住んでるんだって」
「え?じゃあ、後藤さんは…」
「そ、もう3年ぐらい前からここで一人暮らし。学校もこっちの方がいいって交渉したんだってさ」
「そうなんですか…」
3年も…。
一人でこんな所に、後藤さんは暮らしていたんだ…。
ほんとならきっと『いいなぁ』とか『凄いなぁ』とか、そんな事を考えたりするんだろうけど、何故か
その時私は、『寂しくないのかなぁ…?』って考えていたんだ。
- 51 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時27分53秒
- プルルルッ プルルルッ
あ…。
そんな事を考えている間に、吉澤さんはさっさと後藤さんの部屋に呼び出しをかけてたみたい。
電話みたいな呼び出し音が鳴り響いているから。
「ごっちん、でるかな〜? いや〜でないかな〜? でるに100円」
よ、吉澤さん? なんでここでそんな賭けみたいな事言ってるんですか…?
「梨華ちゃんは?」
「じゃあ、でないに100円」
石川さんまで…。
しかも出ないって…、出なかったら私達は一体なんの為に来てるんですか…?
「紺野は?」
「えっ!? わ、私もですか?」
「あったりまえじゃん、折角なんだしホラ」
あの、吉澤さん。何が折角なのかわからないんですけど…?
でも、なんだかとりあえず言ったほうがいいような気がして考える。
えーと…後藤さんが出るか出ないか…。
「まだ?紺野〜」
うーん…どっちかなぁ…。出て欲しいけど…。
「早く〜、ごっちんが出ちゃうかもよ〜?」
後藤さん…病気だし…。でもやっぱり…。
- 52 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時28分30秒
- 「あの…出…」
『……はい?どちら様ですか?』
私が答えるより早く、インターフォンから聞きなれた声が聞こえた。
少しアルトがかったこの声は間違いなく、後藤さんだ。
「っあ〜〜!もう! 紺野遅い!!」
「あ…スイマセン…」
反射的に吉澤さんに謝ってしまう私。
でも、なんだか釈然としないこの気持ちはなんだろう…?
「とりあえず、紺野の負けね。明日までに200円、ヨロシク」
「え…っ?そ、そうなっちゃうんですか?」
「そうなっちゃうんです」
即答する石川さん。
なんで吉澤さんと石川さんはこういう時に限って、呼吸がピッタリなんだろう。
な、なんだか納得できないけど…しょうがない…のかなぁ…。
『…その声はよっすぃーに梨華ちゃん? もしかして…紺野もいるの?』
「よ〜う、ごっちん元気か〜い?お見舞いに来てやったぜ〜い!」
『あははっ、元気なワケないじゃんか。病気で学校休んでんだからさー』
吉澤さんの声に、後藤さんは笑って答えた。
なんだか、その声を聞く限り大丈夫そうでちょっとホっとする。
- 53 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時29分22秒
- 『とにかく、今下のドアを開けるから上までおいでよ。なんにもないケド、お茶ぐらい出すよー』
「よろしく〜」
吉澤さんが返事をして、きっかり3秒後。
目の前の自動扉が開いたんだ。
『じゃ、待ってるから。…紺野もね』
「あ…っ、はいっ」
最後のさりげない呼びかけに、私は少し声を大きくして返事してしまったみたい。
インターフォンが切れる瞬間、後藤さんが笑ったのが判ったから。
ちょっと…恥ずかしい…。
「それじゃ、行きますか」
そんな私の背中を押すみたいにして、そう言ったのは石川さん。
それから私達は後藤さんの部屋までエレベーターで上ったんだ。
実は、後藤さんの部屋は一番上の10階だったりして、ビックリしたのは言うまでもなかった…。
- 54 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時30分03秒
- ピンポーン
部屋の前まで来て、チャイムを鳴らすとすぐに扉がひらいたんだ。
「いらっしゃい、よっすぃーに梨華ちゃん。…それに紺野」
扉を開けて出てきたのは、赤と白のチェックのパジャマに白いカーディガンを羽織った後藤さん。
学校となんだか雰囲気が違うなぁって思ってよく見ると、いつもはおろされているストレートで
綺麗な髪が、今は二つに分けられておさげにしてあったんだ。
こんなこと先輩なんだから失礼だって思ったけど、私は『可愛いなぁ』なんて見とれてしまった。
あ…ずっと見てたら、変に思われちゃうよね…。
「あれ? 何、紺野。ごっちんにみとれちゃった?」
「えっ? あ、そのっ、別に…」
吉澤さんの鋭い突っ込み。
なんだか、表情も面白がってるみたいに見えて思わずどもってしまう。
「いいって、いいって。だって好きなヒトの無防備な姿だもんね〜。誰だってみとれるって」
「そ、そんなんじゃ…っ」
吉澤さんに加担するように、石川さんまで突っ込んできて余計に私は慌てる。
な、なんで2人ともそういう所ばかりしっかりハモってるんですか…っ。
- 55 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時31分19秒
- 「でも、病気なんだから襲っちゃダメだよ〜?」
「襲いませんよっ!」
赤面して否定したけど、吉澤さんも石川さんも可笑しそうに大笑いしている。
結局…、変には思われなかったけど、からかわれる原因になっちゃったみたい…。
「えー紺野、私を襲うの?」
ご、後藤さんまで…。
そんな目を爛々とさせて、面白がらないでください…。
きっとここで矢口さんとかだったら、『あったり前じゃん、その為に来たんだから〜』なんて冗談の
一つも言えたんだろうけど、あいにく私にはそんな発想なんて浮かばずに…
「ち、ちがっ、そんなことしません…っ」
って、多分後藤さんの予想通りの行動をしてしまったんだ。
「あはっ、どうぞはいって」
それからひとしきり笑ってから、後藤さんは促すみたいに完全に扉を開いた。
- 56 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月17日(火)18時31分54秒
- 「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔…します…」
普通に入っていく吉澤さんと石川さん。
それに続くように、私も入っていく。
その時、後藤さんと目があった。
いきなり訪ねてきて困らせてしまったかなって思ったけど、後藤さんはニッコリと笑ってくれたんだ。
それから吉澤さんと石川さんに聞こえないように私の耳元に近づいて、
『来てくれて嬉しいよ、ありがと』
って囁いてくれた。
ちょっと熱っぽいその声にドキっとしてしまうのを感じながらも、私も後藤さんに笑い返したんだ。
- 57 名前:tsukise 投稿日:2002年12月17日(火)18時45分51秒
- 今回更新はここまでです。
短くてキリが悪い上に遅れてしまって申し訳ないです<(_ _)>
さっさと風邪を治してしまいたい今日この頃…仕事にもいけないし(つД`;)
>>43 名無し読者さん
驚きの展開は、次回持ち越しになってしまいましたが(^^ゞ
なるべくご期待に沿えるように頑張りますねっ。
なんだか、次回更新は甘々っぽい展開になりそうです…(^^ゞ
>>44 名無し( ´Д`)ファンさん
甘々なこんごま…結構、人間風邪の時ってメンタル部分が弱くなるらしいので
ちょこっと大胆なごっちんを現在書いております(^^ゞ次回にはUPできるかと…。
うぅ…風邪をひいている私には嬉しい意見をありがとうございますっ。
>>45 名無しゴマーさん
紺野に甘えたなごっちん、私も結構好きだったりするんで期待は裏切らないかと(^^ゞ
ただし、ちょこっと一転二転させる予定だったりしますが(^^ゞ
まぁ、最終的には甘々で完結予定ですので、続けて読んで下さると嬉しいです。
- 58 名前:tsukise 投稿日:2002年12月17日(火)18時46分24秒
- >>46 こんごま推進派さん
紺野の驚きは次回持ち越しになっちゃいましたけれど、甘々な展開には
かわりないんで、ゆっくり待ってくだされば幸いです。
なるべく…早く…更新したいなぁ…(^^ゞ
>>47 BLUE SKYさん
おおっ!なんて凄い洞察力…!(゜∀゜)ここまでスバリと的中されちゃうと
ホントにビックリです(^^ゞ短編を書く予定が、何故か痛めを入れてしまって
そこそこのものになりそうなんですよね…。風邪っぴきな私めに嬉しいご意見を
ありがとうございますっ!
- 59 名前:北都の雪 投稿日:2002年12月17日(火)19時10分59秒
- 紺野がおどおどしてる姿が目に浮かびます。
いしよしの妙に息が合ってるのも良いっすね。
それにしても年収10億って・・・
まったりと待ってます。
インフルエンザしっかり直してくださいね。
- 60 名前:名無し( ´Д`)ファン 投稿日:2002年12月17日(火)21時13分56秒
- 更新お疲れ様です。
更新されるだけで嬉しい今日この頃
次回は甘々な展開のようなので楽しみです。
ごっちんも作者さんも早く風邪を治して
頑張って下さい。
- 61 名前:青のひつじ 投稿日:2002年12月18日(水)21時55分16秒
- レスするのは初めてですが、ずっと応援してました。
ここの小説の紺野とごっちん好きです。(こんごま派)
更新楽しみにしています。
- 62 名前:名無し 投稿日:2002年12月20日(金)20時26分49秒
- 紺野とごっちんの絡みが大好きです。
- 63 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月21日(土)22時00分09秒
- >tsukiseさん
甘痛いの、つぼです。好きです。
今回の短編は>56「熱っぽい声」に紺野と一緒にドキドキしますた。
引き続きがんばってくださいね!お仕事も。
- 64 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時06分24秒
- あれから吉澤さん・石川さんとリビングに通されて、お茶をもらうことになったんだ。
かなり広い部屋の間取りに、結構ビックリした…。
後藤さんに言わせれば、「よくわかんないけど、親のおかげかなー」ってことらしい…。
ほんとに後藤さんって不思議な人だって、つくづく思ってしまったっけ…。
「それにしても…、まさか紺野まで来てくれるとは思ってなかったよー…」
お盆にお茶を4つ持って、キッチンからリビングに入ってきた後藤さんは私に視線を向けてきた。
どう反応していいのかわからない私は、曖昧に笑ってみせるしかなかったけど…。
「え〜、だってやっぱ病気の時って心細いでしょ?でまぁ、紺野を見て元気出してもらおうかな〜って」
「薬より、こっちの方が効くでしょ?」
吉澤さんに石川さんは、ちょっと意地悪そうに笑ってみせる。
そ、そんな…多分薬の方が効くと思うんですけど…。
でも、それに対して後藤さんは…
「うん、そだねー。こっちの方が効くかも」
なんてなんの躊躇いもなく言ってのけたんだ。
- 65 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時07分01秒
- 途端に顔が熱くなっていく私。
後藤さんの顔がまともに見られない。
でも、思ったんだ。もしかして、またからかわれていんじゃないかって…。
そう思って、後藤さんを見たんだけど―――後藤さんは真摯な目で私を見てたんだ。
嘘とも冗談ともとれないような、そんな目で。
「それにしても、ホントありがとね」
それから何事もなかったみたいに、後藤さんはお茶を差し出してくる。
その時、私は『あれ…?』って思ったんだ。
だって、テーブルにお茶を置く後藤さんの手が微かに震えていたから。
別に部屋が寒いわけじゃない。だって暖房は強くてちょっと汗ばむぐらいだったから…。
「ん…? 何、紺野?」
「あ…、なんでもないです…っ」
じっと見つめてしまったみたい。
後藤さんが、ぎこちない笑顔で問いかけてきたから。
その笑顔が自然なものだったから、私はさっきの疑問をお茶を飲んで濁したんだ。
- 66 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時08分22秒
- 「そういやさぁ、ごっち〜ん」
「え?なに?」
吉澤さんの『も〜』っていう言い方に、後藤さんは首を傾げるみたいにイスに座って問いかける。
「紺野を家に呼んだコトないんだって〜?」
「あー…、そういえばそだねー」
「紺野、ちょっと寂しそうだったよ〜?」
ちょっ、吉澤さんっ、なんでこんな時にそんな事を言うんですかっ。
「やっ、そ、そんな…っ、私別に…っ」
「そうだよ〜、なんか家の事情も教えてもらえなくて泣きそうだったし」
石川さんまでっ。
だから、どうして2人とも、そういう時だけ仲がいいのを発揮するんですか…っ。
「そうなの?紺野」
後藤さんの問いかける声。
多分、『泣きそうだった』っていう言葉に、ちょっと気を病ませてしまったのかもしれない。
お見舞いに来たのに、これじゃ心配をかけてるだけみたいで私は思い切り首を振った。
- 67 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時09分05秒
- 「そんなことないです…っ。だって後藤さんにだって言いたくない事だってあると思うし…っ。
私なんかが、聞いたらいけないかな…って思うし…」
「紺野ー…、それフォローになってないよ」
「え…っ!」
石川さんがちょっと吹き出して言う。
後藤さんも、なんだか困ったみたいに笑って頭を人差し指でポリポリとかいていた。
「でも、大丈夫だよ? ちゃんとあたしが教えといたから。ごっちんのご両親のコト」
「そうなの?」
そういえば石川さんに教えてもらったっけ。
後藤さんに問いかけられて、私は素直にうなずく。
「ごっちんのご両親は年商10億円のお店のオーナーなんだってコトとか」
これには本当にビックリしたっけ。
そんな凄い人達なんだって、全然知らなかったから。
「ちょっと、梨華ちゃん…何嘘を教えてんのさ…」
え…嘘なんですか?
まぁ、確かに年商10億円っていうのは凄すぎるって思ってたんですけど…。
- 68 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時09分49秒
- 「えー?そうじゃなかったっけ?」
「違うよ。ウチは年商3億円だってば」
…………。
後藤さん…それでも十分凄すぎです…。
「まーいいじゃん、そんな話はさ。とにかく今日はごっちんのお見舞いってコトだし」
吉澤さんの明るい声。
そうですよね、今日はお見舞いなんだし…。またそれは別の機会ってことで。
それから私達は学校の話とかを色々したんだ。
後藤さんが休んでいる間、生徒会では安倍さんがしきってくれていたんだって事とか。
授業内容の事とか。
何度か、石川さんと吉澤さんが別世界にいっちゃったりして脱線したんだけど、楽しい時間だった。
それに後藤さんは、いつもと変わらない笑顔で全然病気だって事を感じさせない表情をしていたから
私は少しホっとしたんだ。
もっと、大変だったらどうしようって思っていたから…。
それから、そろそろ帰ろうかって時のこと。
いいですっていったのに、後藤さんはわざわざ玄関まで見送りにきてくれたんだ。
- 69 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時10分29秒
- 「今日は、ありがとね」
「な〜に言ってんの、水臭い。ウチらとごっちんの仲じゃん。気にしてないでよ」
「あははっ、よしこカッコいいぞー」
「まぁ、とにかくお大事にね。無理そうだったら、明日もゆっくり休んでもいいし」
「うん、ありがと梨華ちゃん」
言ってから、石川さんは私を後藤さんの前に出してくれた。
『ほら』って言うみたいに。
何か言わなきゃ…っ。
そう思うけど、いざ後藤さんを目の前にすると言葉はでなくて…。
「紺野、ありがとね。ホント…嬉しかったよ」
あ…。
なんにもいえない私に、後藤さんはそれでも優しく笑って頭を撫でてくれたんだ。
つい嬉しくて、私は笑みを漏らして後藤さんを見つめる。
「も〜、このほのぼのカップルは…」
「そんなんじゃ、進展しないぞ〜?」
吉澤さんと石川さんが茶化すけど、私はそれでもいいかなって思ったんだ。
後藤さんと、こうやって笑い合えれば…それで。
- 70 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時11分16秒
- 「あ、そうだ、忘れてた」
そこで声を上げる吉澤さん。
何かを探すみたいに、カバンの中に手をつっこんでる。
それからようやく見つけたそれを、後藤さんに向かって差し出した。
「なにコレ?」
「中澤先生に頼まれてたプリント。なんか目を通して欲しいんだってさ」
「ふーん…」
差し出されたプリント。
それを後藤さんは受け取ろうとして―――
バサバサッ
寸前の所で、落としてしまった。
「あー…」
床に散らばっていくプリントを、ただ呆然としたみたいに見つめる後藤さん。
一瞬…本当に一瞬だけど、その目が焦点の定まってないものに見えたような気がする。
こみ上げてくる違和感。
それはさっき、後藤さんがお茶を差し出してくれた時にも感じたような…。
なんだか胸騒ぎがする…。
- 71 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時12分03秒
- 「ごめんごめん、ちょっと手が滑っちゃったみたい。いいよ、拾っとくから」
曖昧に笑いながら後藤さんは素早く広い上げる。
「そう? んーじゃあ、ウチらは帰るけどゆっくり休んでね」
「うん」
「じゃ、またねごっちん」
「はいはい」
吉澤さんと石川さんは、気に留めていないみたいに別れを告げて扉の外へ出て行く。
私も続こうとしたんだけど、後藤さんの事が気になって口を開きかけたんだ。
でも…
「あの…」
「紺野も…、私は大丈夫だからさ。またね」
「あ…はい、その…お大事に…」
「ありがと」
結局何も言えずに、外に出たんだ。
- 72 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時12分46秒
- そして、下りのエレベーターを待っている時のこと。
吉澤さんと石川さんは、この後どこに行こうかなんて話していたみたいだけど正直、私は
耳に届いていなかったんだ。
だって、やっぱり後藤さんのことが気になって…。
『私は大丈夫だからさ』
ほんとに…?
ほんとに後藤さんは大丈夫なの?
一人きりで、病気で…。確かに元気そうではあったけど、あれが本当にそのまま後藤さん
なんだって信じていいの?
この三ヶ月で、気づいたことが他にもあったじゃない。
それは、後藤さんは頑固だってこと。
もし、あの姿がただ虚勢を張っているだけだったとしたら?
ほんとは辛い状態なのに、無理して笑っていたとしたら?
- 73 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時13分34秒
- 「…っ。すいません!石川さん、吉澤さん!私、戻ります!」
「えっ! ちょ、紺野!」
気がついたら、石川さんが止めるのを無視して私は部屋に向かって走り出していたんだ。
後藤さんの部屋に。
だから、そのあとの吉澤さんと石川さんの会話を聞くことはなかったんだ。
「おー…、なんてゆーか…『愛』だね〜」
「も〜よっすぃーってば…。でも、紺野ってば、だんだんごっちんの性格が判ってきたみたいじゃん」
「まー、ごっちんってば他人に絶対弱い部分は見せたくないってタイプだしね」
「心配性の紺野とは、お似合いかも」
「じゃ、まぁウチらは邪魔しないように帰りますか」
「うんっ」
そんな2人が、私の背中に向かって「頑張れよ〜」って言ってたみたいだけど、やっぱり私には
聞こえていなかったっけ。
- 74 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時14分16秒
- ピンポーン…
荒い息を整えながら、チャイムを押す。
…でも、後藤さんからの応答はない。
今別れたばかりだから、すぐに反応があってもおかしくないのに…。
だんだんと不安になってくる。
「あの…、後藤さん…っ?」
呼びかけて、ドアノブに手をかけて…気がついた。
鍵がかかっていなかったんだ。
それも無用心に少し開いていて…。
ほんとはいけないって思いながらも、ゆっくりと開いて…
「…っ!?」
覗いてみて、―――驚いた。
だって、後藤さんはさっき私達を見送ってくれた玄関で、壁に寄り添うようにして辛そうに
倒れこんでしまっていたから。
- 75 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時14分56秒
- 「後藤さんっ!」
私は慌てて扉を開けて靴を脱ぐと、後藤さんの側に寄って肩に手を触れる。
その手から伝わってくるのは、信じられないぐらいの体温。
熱い…っ。
微熱なんてものじゃないと思う。
多分、自分だったら起き上がる事だってできないぐらいの熱の高さ。
「紺野…?あれ…、帰ったんじゃないの?」
フラフラと顔を上げて私を見る後藤さんは、本当に辛そうで瞳もどこか虚ろで。
額にいっぱい汗を掻いていて、息だって上がっていて…。
さっきまでの、笑顔がやっぱり全部ウソだったんだって気が付いたんだ。
「ぜんぜん…っ、大丈夫なんかじゃないじゃないですか…っ!」
気にかける事ができなかった自分が、凄く悔しくて…。
話す声に自分でも珍しく、語気を荒めてしまっていた。
それなのに…
- 76 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時15分32秒
- 「や…、ちょっと立ちくらみがしただけだよ。だいじょぶ、たいじょぶ」
後藤さんは、まだ強がってそんな事をいう。
でも、身体は正直で立ち上がることができないみたいだった。
「とにかく、私の肩につかまってください…っ」
「ホント、大丈夫だから…」
「ダメですっ!」
「!」
「だって後藤さん、すっごく辛そうじゃないですか!すっごく…苦しそうじゃないですか…っ!そりゃあ…
私は頼りないかもしれないけど…、こんな時ぐらい頼ってくださいよ…っ、お願いします…!」
泣きそうになった。
だって、こんな時でも誰にも頼ろうとしない後藤さんが、付き合う前の誰にも心を許さなかったあの頃の
姿と重なったから。
全然力になれていない自分が悲しくて…切なくて。
- 77 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2002年12月24日(火)17時16分30秒
- 「紺野…」
後藤さんはビックリしたみたいに目を丸くしていたけど、一度俯いてそれから顔をあげて笑ってくれた。
私の大好きな柔らかいあの笑顔で。
「あは…、じゃあ悪いけど肩貸してくれる?なんか、ちょっと足が使いものにならないんだよね…」
力ない声。
顔は真っ赤になっていて、身体もグッタリしてる。
そんな後藤さんが私を頼ってくれたことに、不謹慎だけど嬉しさを感じた。
きっと私が男の人だったら、抱えてベッドに連れていったと思う。
それぐらい、この時の後藤さんは弱くて小さくて…守ってあげたいって思ってしまったんだ。
- 78 名前:tsukise 投稿日:2002年12月24日(火)17時30分08秒
- 今回更新はここまでです。やっと体調が治ったんで、
これからは順調に2作とも、更新していきたい今日この頃…(^^ゞ
>>59 北都の雪さん
体調を気遣っていただきまして、本当にありがとうございます♪
おかげさまで完治しましたです♪オロオロする紺野、いい感じでしょうか♪
年商10億、ほんとにあったら凄いですよね(^^ゞまぁ、梨華ちゃんの勘違いってことで。
3億でも変わらない気はしますけどね(^^ゞ
>>60 名無し( ´Д`)ファンさん
風邪っぴきだった私めに、嬉しいご意見をありがとうございます♪
おかげさまで、やっとこそ治りましたです!
まぁ、ここのごっちんはもうちょっと引き続けてもらいますが(^^ゞ
今回は甘々一歩手前で終わってしまったんで、次回こそは!と思ってます♪
>>61 青のひつじさん
応援レスをありがとうございます♪
ずっと読んでいてくださったなんて、もう嬉しい限りですっ!
私の書きますこんごま、まだまだ読んでて見苦しいところもあると思いますが
つづけて読んでくだされば嬉しいです♪
- 79 名前:tsukise 投稿日:2002年12月24日(火)17時30分52秒
- >>62 名無しさん
嬉しいご意見をありがとうございます♪
そうですね、私も紺野とごっちんのマターリした感じの絡み好きなんですよ〜。
リアルではともかく、ここでは結構絡みますので続けて読んで下さると嬉しいです♪
>>63 名無し読者さん
甘痛いの、お好きだそうですね♪まだまだ痛めなのはこれからなんですが
今は『甘』ということで(^^ゞ 結構、単語を選んだりするのは大変なんで
ご感想、凄く嬉しいです♪続きは、気長にまって下さるとありがたいです(^^ゞ
- 80 名前:北都の雪 投稿日:2002年12月26日(木)00時01分16秒
- 3億でしたか。まったく梨華ちゃんたら驚かせてくれる・・・
紺野さん、あなたの感想は正しい。
作者さんは治ってくれたけどごっちんやばいっすね。
守ってあげて!紺ちゃん、守ってあげて!!(壊
- 81 名前:名無しゴマー 投稿日:2002年12月26日(木)15時27分49秒
- ああっ、ごちーん!
ごっちんを支える紺野がなんだか頼もしく見えます(笑
これからの展開に大期待です。
作者さん風邪治ってよかったですね。
これからもまたーりお待ちしております。
- 82 名前:名無し蒼 投稿日:2002年12月30日(月)22時37分58秒
- ども、お久しぶりです。
レスはしていませんでしたが拝見していました〜。
いやー進みが速くて尊敬しちゃいます!!
風邪は今年は自分もひいたので辛さ分ります(^^;
ごまこん!!!どうなってくのか楽しみです♪
- 83 名前:こんごま推進派 投稿日:2003年01月02日(木)18時49分57秒
- 紺野には弱い自分を見せるごっちん、かなりツボです!
これからの展開が気になりまくりです!
作者さん、がんばってください!
- 84 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時13分00秒
- 「ん…、ありがと」
後藤さんの身体をゆっくりとベッドに横たわらせて、布団をかけてあげる。
困ったみたいな、なんともいえないような表情をした後藤さん。
きっと、戸惑ってしまっていたのかもしれない。
私が戻ってきたことに。
私が…隠していた後藤さんの気持ちに気づいてしまったことに。
「あ、あの…」
「なに?」
「お薬は飲みましたか?」
一瞬キョトンとして、それから『あはっ』て、いつもみたいに笑う後藤さん。
何か、変なことでも言ったっけ…?
「あー…ごめん、紺野は別に可笑しくないよ?たださー…、なんか紺野の方がお姉さんみたいに
見えちゃったからさ」
「え…っ、ス、スイマセンっ」
慌ててペコリと頭を下げると、後藤さんはフフって笑いながら頭を撫でてくれた。
「なーんか、そうしてるトコみるといつもの紺野なんたけどね」
どこまでも優しい瞳。
ちょっと潤んでいるその瞳に、私はドキっとしながら『ははぁ』って笑う。
- 85 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時13分40秒
- けど…ふと、思うことがあった。
後藤さんは、どういう想いで私の事を見てくれているんだろうって。
目の前に映る後藤さんは、穏やかで…学校では絶対に見たことがない表情をしている。
でも、もしかして…これは私だけが知ってる後藤さんじゃないかもしれない。
そう、例えば石川さんや吉澤さんも知ってる後藤さんの一面だったとしたら…?
『好きだよ』って、いってくれた後藤さん。
その言葉を疑いたくない。疑いたくないけど…一番側にいるのが自分じゃないかもって思うと
胸が締め付けられて…上手くいえないけど…そう、切ないって思うんだ。
その時、後藤さんの肩越しに一つの写真立てが見えたんだ。
なんだろう?って思ってよく見てみて、ちょっと驚いた。
だって、その写真立てには、今とは全然違うけどその面影から見て後藤さんだと思う人と、
その隣で元気にVサインをしている、女の人が映っていたから。
後藤さんの――見たこともない、嬉しそうな顔が映っていたから…。
- 86 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時14分28秒
- 「…ん? どした?紺野」
「…あっ…、べつになんでもないですっ」
でも、その返事に後藤さんは不思議そうに首をかしげて視線の先を追ったんだ。
そして、その写真立てに写る人をみて『あー…』って言って、静かに笑った。
その表情は…どこまでも悲しかった。
「これは、私が中3の頃に撮った写真。文化祭が終わってからー…生徒会室で撮ったんだっけ?」
訊いてもいないけど、後藤さんはゆっくり話し始めた。
声は限りなく元気。元気…だけどその顔は私の見たくない、させたくない『あの』表情。
それで判ったんだ。
ああ…この人がきっと…あの人なんだって。
「今とはかなり体系とか違うケド、私と…いちーちゃん…『市井紗耶香』さん」
懐かしそうに、その写真たてを手に取る後藤さん。
やっぱり―――。
…泣きそうになった。
べつに悔しいからでも、市井さんに嫉妬したからでもない。
ただ、私の目の前で後藤さんに悲しい表情をさせてしまったから。
どうやったら、その悲しみ…辛い想いをとりのぞける?
今まで何度も考えた言葉。
- 87 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時15分43秒
- きっと、後藤さんの中の市井さんの思い出は私なんかが考えているよりもずっと深いもので
すぐには拭い去ることなんてできない…できるはずがない。
でも、その気持ちを支えれるのは私だけなんだ。
けど私は…今、なんにもできていない。そのことが腹立たしかった。
「後藤さん…っ」
「な、なに?」
ちょっと驚いたみたいな後藤さん。
でも、それよりも私は別のことが気になっていたんだ。
「薬はどこにありますか?」
「んぁ? あー…、そこの救急箱に…」
後藤さんの指差した先に、確かにある救急箱。
その箱を開けて、風邪薬を取り出す。
- 88 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時16分25秒
- 「これは…食後に飲むものですね…。あの…お台所借りてもいいですか?」
「それは構わないけど…って、もしかして紺野が作ってくれるの?」
「その…っ、味の保障はしないですけど、なんにも食べないで薬は飲めないし…だから…っ」
言葉につまってしまう私。
でも後藤さんは、どこか嬉しそうに笑って、
「…楽しみにしてるよ、ありがとう紺野」
そういって、また頭を撫でてくれたんだ。
後藤さんの心の中にはまだ…あの人がいる。
でも、今頼ってくれているのはその人じゃなくて私なんだ。
だから…私は私の出来ることを精一杯頑張ろうって思ったんだ。
- 89 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時17分20秒
- 台所に立って、立派な冷蔵庫を開ける。
よく冷蔵庫の中身で、住んでる人の性格が判るっていうけど、開いてみてそうなんだって判ったんだ。
だって、後藤さんの冷蔵庫にはある程度の食材は入っていて、多分ちょっとした料理ならすぐに作れる
ぐらいのものが入っていたから。
そういえば、石川さんから『ごっちんは料理が趣味』って聞いたことがあったっけ。
お米が炊いてあることを確認して、鶏肉や水菜・卵を取り出して壁にかかってあった鍋を洗う。
即席だし、後藤さんの体調を考えて『おじや』にすることに決めたんだ。
あんまり作った事はないけど、お母さんが作っていたのを見たことがあるし。
中火の火に、水を入れたお鍋をかける。
そしてご飯を入れて、鶏肉を切っていれる。
味付けは醤油にお砂糖。
後藤さんの味の好みが判らないけど、多分ちょうどいいくらいの分量だと思う。
それから鶏肉の灰汁をとって卵をいれた、その時、
- 90 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時17分52秒
- 「…いい匂いだね」
不意に耳元でささやく声がして、心臓がドキンと跳ね上がった。
それから振り返ってみると、いつのまにいたのか後藤さんが肩越しにお鍋の中身を覗き込んで
いたんだ。
両手でカーディガンの前をとめるようにして、しげしげと見つめている。
「あ、あの…っ、うちでいつもお母さんが作ってくれるものなんですけど……美味くできてるか
自信ないんですよね…っ」
私はちょっと慌てて、おたまでかき混ぜる。
誰かの為に作ったりするのは楽しいけど、そんなに上手くないと思うし…なんだか恥ずかしいし。
「…ちゃんと、出汁が効いてるみたいだし」
ポツリと漏らすみたいに言った言葉に、直感的に後藤さんは気に入ってくれたんだって判った。
でも…ちょっと私は困っていた。
だって…、後藤さんは私のすぐ後ろに立っていて、話すたびに熱を帯びた吐息が頬をくすぐっていたから…。
それに、少し垣間見た後藤さんは目がどこか虚ろで…でも妙に艶かしくて…。
ドキっと、してしまったんだ。
そんな自分を落ち着けるように、おじやの中に入れる水菜を切り始める。
- 91 名前:TEL ME ―if you wish― TEL 投稿日:2003年01月02日(木)20時18分41秒
- 「そういえばさ…一緒にいたよっすぃーと梨華ちゃんは?」
「あ…、その、用事があるってそのまま帰られました」
「ふーん…」
後藤さんは何かを考え込む。
なんだか迷っているみたいにも見えるけど…どうしたんだろう?
それから口をついて出た言葉に、心臓が飛び出すくらい動揺した。
「じゃあ…2人きりなんだ?」
サクッ
「あっ、わっわ…っ」
水菜の最後を切ろうとした瞬間、人差し指に走る鋭い感触。
あまりに唐突の言葉に、間違えて指を切ってしまったんだ。
一筋の赤い線は、だんだんと赤い玉になって盛り上がっていく。
「ど、どうしよう…っ」
痛みは感じない。
でも、ここで血が落ちちゃったりしたら、せっかくの料理が台無しになっちゃう…っ。
- 92 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時19分23秒
- 「貸して…」
左手を押さえてバタバタしていると、後藤さんがスっと手を伸ばして引っ張った。
有無も言わせないような、強い力で。
それから、そのまま指に後藤さんの唇が押し当てられたんだ。
瞬間…自分の血とは別の温かさが、指を優しく吸った。
「ご、後藤さん…っ!」
思いがけない行動に、声が裏返ってしまう。
でも後藤さんは気にもとめていないみたいに、唇を押し当ててる。
…目が離せなかった。
熱のせいで少し潤んだ瞳が、少し伏せられてて…それが綺麗に映って…。
繋がった部分に全神経が集中して、後藤さんを感じてしまう自分がいたんだ。
は、恥ずかしい…っ。顔がカァーって熱くなっていくのが自分でもわかるぐらい。
しばらくして、ゆっくり後藤さんの唇が離された。
綺麗に血が拭われた傷からは、まだじわりと新しい血がにじみでていたけど赤い線ができないと
どこに傷があるのかわからないぐらいの、浅い傷みたい。
それをじっと確認して、後藤さんは落ち着いた声で言った。
- 93 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時21分16秒
- 「…大丈夫、たいしたことないよ」
でも、私は正直落ち着くどころじゃなかった。
だって、後藤さんの温かな唇の感触が、指にずっと残っていたから。
どんどん恥ずかしくなって、手を引き戻そうとした。
けど…、その手を後藤さんはさらに強く引っ張ってきたんだ。
「え…?」
自然と引き寄せられる身体。
顔を上げれば、すぐ目と鼻の先に後藤さんが真摯な目でみつめている。
「あ、あの…っ!」
戸惑って声を上げるけど、後藤さんはさらに顔を近づけて…
♪〜電話だよ〜♪ ♪〜電話だよ〜♪
ビクッと私も、後藤さんも身体を震わせた。
聞こえてきたのは、後藤さんのベッドの上にあった携帯電話の着信音。
- 94 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月02日(木)20時21分52秒
- 「…後藤さん?」
「うん?」
「携帯電話…鳴ってます」
「…うん」
どこか、ガッカリしたみたいな声に聞こえたのは気のせいなのかな…?
後藤さんは一度ため息をついて私の手を離すと、おぼつかない足どりでベッドへと戻っていったんだ。
その背中を見送って、それから私は一度息をついて、おじやへと視線を戻す。
でも…考えるのは、さっきの後藤さんの目。
一体、今なにが起こったんだろう…?
胸のドキドキは全然おさまらない。それだけ動揺していたんだ。
だって、ただ傷の具合を見るにしては、上手く言えないけど…あまりにも強い感情が伝わって
きていたから…。
- 95 名前:tsukise 投稿日:2003年01月02日(木)20時33分40秒
- 今回更新はここまでです。微妙…ですね。
甘くもなく…痛くもなく…(^^ゞ 次回は痛甘展開予定です(^^ゞ
>>80 北都の雪さん
そうですねっ、私の風邪は治りましたが、ここのごっちんはまだ風邪っぴきなんで
これからの紺野の行動が鍵になったりしのすです♪守り…きれるかっ!頑張れ、紺野って
カンジですが(^^ゞとりあえず、次回は思いもよらぬ展開になる予定です(^^ゞ
>>81 名無しゴマーさん
そうですね、今回ちょっと紺野が頼もしいかもしれませんね(^^ゞ
病気回復に嬉しいご意見をありがとうございますっ♪
ちょっち、更新は遅れ気味ですが完結はさせますのでお付き合いくだされば嬉しいです!
>>82 名無し蒼さん
こちらこそお久しぶりです♪名無し蒼さんも風邪をひかれたそうで…。
今年の風邪はしつこいらしいですね(^^ゞここのごっちんも例外ではないかも(^^ゞ
更新は…どちらかというと私も遅いほうだと思います(^^ゞこれからも続けて読んで
下さると嬉しいですっ!
- 96 名前:tsukise 投稿日:2003年01月02日(木)20時34分37秒
- >>83 こんごま推進派さん
紺野に弱いごっちん、立場逆転も面白いかも…と思って描いて見ましたです(^^ゞ
まぁ主導権は、いつもごっちんだったりしますが(^^ゞありがたい応援レスを
ありがとうございますっ!
- 97 名前:名無しゴマー 投稿日:2003年01月04日(土)00時57分29秒
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
お待ちしておりました!
…すいません興奮してしまいました(苦笑
作者さんあけましておめでとうございます。
新年早々続きが読めて嬉しい限りです!
自分が紺野になった気分で、ごっちんの行動にどきどきしながら読みました。
素敵なタイミングでごっちんの携帯を鳴らすのは誰なんでしょう…?
次回は思いもよらぬ展開だということで…楽しみです!
今年も応援してますので、ゆっくり頑張ってください〜
- 98 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月09日(木)07時16分15秒
- 更新お疲れ様です。
甘い展開いいですね。紺野の動揺が目に浮かびます。
続き期待してるんで頑張ってください。
- 99 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時34分59秒
- ぼんやりした頭を押さえながら、のろのろとベッドの中に潜り込む。
それから、恨めしげに携帯を手にとって表示を見た。
映っていたのは『吉澤ひとみ』の文字。
……よっすぃーのヤツ…。こんな時まで連絡しなくてもいいのに…。
ピッ
「もしもしー…?」
『あ、ごっちん? …って、なんでそんな不機嫌なワケ?』
「べ、べつに…」
ヤバ…、声に気持ちがでちゃったみたい。
「で、なに? なんか用?」
『そう邪険にしなさんなって。紺野、今いるの?』
言われてキッチンに視線を向ける。
紺野はまだおじやと格闘中みたいで、何度も味見をしているみたい。
なんだか、その量が多くて味見じゃなくて味わってる?なんて思ってしまうけど、まぁいいか。
- 100 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時35分36秒
- 「うん、紺野がどうかした?」
『いや、なんか『愛』だなぁーって』
「は?」
よっすぃーって時々意味わかんないコト言うよね…。
そんなコトを考えていると、電話の向こうで梨華ちゃんの『ちょっと貸して』って声が聞こえた。
『もしもし、ごっちん?』
「梨華ちゃん? なに、いったい?」
ワケわかんない電話にちょっと苛立ちが募っていく。
でも、やっぱり梨華ちゃんはどこかのほほんとした声で、ズバリ核心をついてくる。
『もしかして、いいカンジにでもなってた?』
「べつに。それより何?2人してさー…」
もう動揺はなかった。
それにしても…2人して邪魔してさー…。いくら私でもちょっとムカつくかも。
『いや、なんかごっちんと紺野ってあんまり進展してなさそうだからちょっと助言してあげようかと思って』
小さな親切大きなお世話…。
なんか急に頭にそんな言葉が浮かんでくる。
「や、べつにいいから」
『まあまあ、そう言わずに。紺野ってさぁ、結構シャイっぽい…ってか、ボーっとしてるじゃない?だから
ちょっと強引な方がいいかもしんないよ?』
梨華ちゃん…、人の話は聞いてよー…。
- 101 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時36分10秒
- …でも強引にかぁ…。
確かに、紺野ってばボーっとしてるしなー…。
きっとさっきのコトだって、ただ傷口を手当てしてくれたんだってぐらいにしか思ってないんだろうし…。
『あ、今なんか考えてる?』
ちょっとからかうみたいな口調に、むってくる。
「べつに」
精一杯の強がり。
絶対梨華ちゃんにはバレてる。だって電話越しにクスって笑う声が聞こえたから。
『まぁ、なんにしてもごっちん風邪引きなんだし、まさか紺野にまで移すようなコトはしないようにね』
「? なんのこと?」
『またまた、とぼけちゃって〜』
いや、とぼけてないし。意味わかんないよ。
そのまま梨華ちゃんは『じゃ、またね〜』なんて言いながら電話を切った。
出来れば『またねー』は、明日以降にしてくれるとありがたいかも。不意にそんなコトを思ってしまった。
「あの…」
「ん?あーなに?」
振り返ると、おじやをトレイに乗せて遠慮がちに立っている紺野。
電話が切れるのを待ってたみたいで、『そのー…そのー…』って俯いてしまってる。
- 102 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時37分27秒
- 「紺野」
「あ…っ」
「人と話す時は、相手の目を見る」
携帯をベッドの枕元に投げて紺野に近づくと、頬を両手で包み込んで目線を合わせた。
途端に赤くなっていく頬。
意外な反応に『お?』なんて不思議に思いながらも可愛いって素直に思った。
まさか、さっきのコトを気にして…るワケないか…。紺野、そーゆーのウトそうだし…。
「後藤さん…?」
「ん? あー、ゴメン。なんでもないよ」
思わず漏れてしまったため息に、ちょっと心配そうな紺野の顔。
曖昧にはぐらかして、私は頬に当てていた手をそのまま頭においてクシャクシャと撫でた。
「それで、どした?…って、もしかして料理ができたの?」
「あっ、はい…っ。そのー…、あんまり自信とかないんで美味しいかわからないんですけど…」
「や、紺野が作ってくれたものなら、なんでも嬉しいよ。ありがと」
いつもは言えないような言葉も、今日ばかりはサラっと口をついてでる。
熱の威力って、ヘンなところで凄い力を発揮するもんだなー…なんて考える。
- 103 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時38分01秒
- 「そ、そんな…っ、あの…ありがとうございます」
あらら、テレちゃったよ。
ほんと、紺野ってばシャイというかなんというか…ヘンなところ真面目だよね。
もう3ヶ月も付き合ってるのに、いまだに『後藤さん』だし。
前に指摘したんだケド、恐縮しちゃって結局別の呼びかたでは呼べなかったみたいで。
「じゃ、まー早速食べさしてもらおうかな?」
「あ、はい…っ」
はりきった紺野の声。
なんだか口では自信ないって言ってたけど、相当自信があるみたい。
ベッドに座った私の膝にトレイを乗せてもらって、れんげを手に取る。
それから軽くすくって…
「…………」
「…………」
「…ねー、紺野ー…」
「はい、なんですか?」
「そんな、ジっと見られると食べづらいんだケド…?」
「あっ、ス、スイマセンっ」
やっぱ出来が不安みたい。
でも、色も香りも全然フツーだし大丈夫だと思うんだけどなぁ…。
- 104 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時38分36秒
- 湯気の上ったおじやに息を吹きかけて冷まして、一口ゆっくり口の中に入れる。
「ん…」
「どう…ですか…?」
うん、これは中々…
「うん、美味しいよ。味もちょうどいいし」
「ほんとですか…っ?」
「ほんとほんと、紺野やるじゃん。ありがと」
嬉しそうな紺野の笑顔に、こっちまで嬉しくなる。
結構心配だったみたいで、その表情はさっきと大違い。
それから私は、今日の学校での出来事を紺野から聞きながらおじやを食べたんだ。
集会でのこと。よっすぃーと梨華ちゃんに誘われたこと。うちに来て見てビックリしたこと…。
身振り手振りを一緒にして話す紺野は一生懸命で、思わず頬が緩んでしまったっけ。
そして、ゆうに時間が過ぎた頃。
「あ…」
「え?あー…もうこんな時間なんだ?」
紺野の視線の先にあった時計が7時を指していたんだ。
さすがに、これ以上ここにとどまらせる訳にはいかない。
- 105 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時39分13秒
- 「そろそろ帰った方がいいね」
「…はい、そうですね」
残念そうな声。
表情も明らかに気落ちしていて、なんだかこっちが罪悪感を感じてしまう。
「そんな、もう逢えないワケじゃないんだし」
「…はい」
しょうがないなぁって顔で、頬を指先でつついてやる。
紺野は困ったみたいな表情をしながらも、テレたみたいに笑ってくれた。
ゆっくりと立ち上がってコートを着、カバンを手にとって一度ペコリとお辞儀する。
それから背中を向けて歩こうとした時。
―――突然、不安になった。
昔――随分昔に味わったような、誰かに置き去りにされるような感覚。
あれは誰だっただろう…? 今みたいに、ただ一人残して離れていったその人は。
でも、今その人のコトはどうでも良かった。
ただ、また一人になるコトが何故か素直に『寂しい』と感じてしまっていたんだ。
だから…
- 106 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時39分51秒
- 「! 後藤さん…?」
気がつくと私は紺野の腕を掴んでいた。
びっくりしたみたいに振り返って、大きな目を丸くして見つめる紺野。
「あー…」
どうしよう…、かける言葉が見つからない。
一気に頭に血が逆流していくのがわかる。曖昧な思考に答えなんかでるワケがなくって
口から出た言葉は衝動に近い『本心』だった。
「紺野…、キス、していい?」
「え…っ!?」
誰でもいいから、側にいてほしい…ううん、『紺野』に近くにいて欲しかった。
紺野の温もりを感じたかった。
一人なんかじゃないって、寂しくなんかないんだって証が欲しかったんだ。
「あの…はい……」
しばらくの沈黙の後、掠れた声で頷いて紺野はベッドの側のイスに座った。
私は、ただぼんやりとそれを見つめる。
まるでスローモーションみたいだった。
はにかんだみたいに一度笑った表情も、閉じられていく瞼も。
- 107 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時40分31秒
- 「紺野…」
ダルい身体を起こして、そっと手のひらを頬に当てる。
ビクっと、紺野の身体が震えたのが判った。
息がかかるくらいの距離に顔を近づけて、一度だけ紺野の表情を眺める。
それからゆっくりと唇を重ねた。
「ん…」
ほんの一瞬、重ねるだけのキス。
それからもう一度口づけて、唇の感触を確かめるように紺野を求めた。
頭の芯がしびれるような感覚が広がっていくのがわかる。
何もかもイヤなコトを忘れさせてくれるみたいな、そんな気持ちと一緒に。
それと同時に、こみ上げてくる1つの感情。
―――紺野を離したくない。
『紺野ってさぁ、結構シャイっぽい…ってか、ボーっとしてるじゃない?だからちょっと強引な方が
いいかもしんないよ?』
耳の奥で、梨華ちゃんの声が聞こえたような気がした。
気づいたときにはもう行動していた。
頬に当てた手を、華奢な肩に回して。
- 108 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時41分14秒
- 「んぅ…っ…!」
だんだんと深くなっていくキスに、紺野が戸惑ったみたいな息を漏らす。
けど、その時私は求めることに夢中になっていた。
何度も何度も、ついばむみたいに唇を重ね合わせて…それからようやく紺野を解放する。
それでもおさまらない感情に流されるみたいに、頬にキスを落とし…ゆっくり首筋へと顔をうずめて…。
「ご、ごとぉ…っ、さん…っ」
止まらない、止められない欲望にも似た気持ちが、行為に没頭させる。
自分が自分でないような、っていうのはきっと、こういうことかもしれない…。
そのまま強く唇を押し当てたその時。
「…っ…ッ!」
紺野の声にならない声。今まで一番硬直する身体。
「! ご、ごめ…っ」
それにやっと我に返って、ハッと離れた。
思わず口元に手を当てる。
- 109 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時41分45秒
- 私は今、何をした…?紺野に何を…?
………。
きまずい沈黙が流れる。
ただ一つ判っていたのは、今目の前に座って首元を押さえている紺野は明らかに怯えているって
コトだった。
ほかならない、私に。
「あー…そのー…、ごめん、怖がらせた…?」
聞かなくても判っているのに訊ねてしまう。
けど紺野は、けなげにも首を振って「だ、大丈夫です」って言ってくれた。
瞳が潤んでいるのに。
身体が…震えているのに…。
この時初めて、自分の欲求が抑えられなかったことに、形の見えない不安がこみ上げてきた。
ううん…先の見えない紺野との関係に、不安を感じてしまったんだ。
- 110 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時42分27秒
- あれから、どうやって家に帰ったのか判らない。
最後に後藤さんに、なんて言って別れたのかさえも判らなかった。
それだけ…心の動揺を抑えることができなかったんだ。
気がつくと、私は家に戻っていて…ベッドの上に身を投げ出していた。
電気もつけないで、暖房だってつけないで。
それでも、身体の一部分は信じられないぐらい熱をもっていたんだ。
それは―――後藤さんが触れた、首筋。
今でもはっきりと思い出せる。
熱を帯びた瞳で『キス、していい?』って訊ねてきた後藤さん。
瞼を閉じたときにフっと鼻先をかすめた、後藤さんの柔らかな吐息。
そして…いつもと同じみたいに優しく重ねられた唇。
でも…。
でも、いつもと違った事があった。
- 111 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時43分11秒
- 後藤さんは…すぐに私を離さなかった。
ううん、さらに強く想いをぶつけてきたんだ。
強引なくらいのキス。
息苦しさを覚えて声を漏らすけど、塞がれた唇から漏れるのは吐息だけで、完全に後藤さんは
キスに没頭していた。
やっと解放されて大きく息を吸い込んだのも束の間。
後藤さんは頬に唇を這わして…そのまま首筋へと顔をうずめて…。
「…っ、やめよう…っ!」
私は大きく頭を振って、思考を止めた。
それからゆっくり首筋を指先でなぞってみて、かすかな痛みがあった。
え…? どうして?
なんで痛みがあるの…?
不安になって、ベッドから起き上がると鏡台に首筋を映してみる。
瞬間、ハっとして顔に血が上ってきた。
だってそこには、暗闇の中でもくっきりとわかるぐらいのアザが一つ浮かび上がっていたから。
それが示すものは一つだけ。
こういう事には疎い私だけど、それがどういうことなのかは知っている。
- 112 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時43分48秒
- 「後藤さんの…キスマーク…っ」
恥ずかしかった。
鏡に映る自分も直視できないほど。
それと同時に胸をしめる気持ちは何故か―――怖いってものだった。
ガクガクと足の力が抜けて、その場に膝をつく。
寒さから来るものじゃない震えが、全身を駆け巡っていく。
もう、思い始めたら止めることはできなかった。
後藤さんが…怖い。
ううん、後藤さんの想いが分からなくて怖い…。
後藤さんは、一体どういう気持ちでこんなことしたの…?
衝動的なもの? 誰でも良かった? 私じゃなくても…誰でも良かった?
ピリリッ ピリリッ
突然鳴った携帯の音に、ビクッと身体が震えた。
一瞬躊躇ったけど、カバンをあさって携帯を取り出す。
- 113 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時44分21秒
- 『新着メール1件』
表示された文字を見て、どうしようか迷う。
多分…ううん、きっと…後藤さんだと思ったから。
でも、見ないわけにはいかない…そう思って開く。
『お見舞いありがと。やっぱりまだ体調が悪いから明日も休むね』
文章はいつもと同じ変わりない後藤さんの文字だ。
でも、
『P,S 今日はゴメン』
最後の文字が何故か、引っかかった。
ゴメン――これは何に対しての言葉?
分からない…分からないよぉ…。
後藤さんの私を好きだと言ってくれた気持ちは信じたい。信じたいけど…心の中にできた
疑問を、この時の私は簡単に拭えそうもなかったんだ。
- 114 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月11日(土)23時44分57秒
- 次の日。
ぼんやりとした頭を抱えながら、学校へと向かう。
どんな事があっても、必ず朝はやってきていつもの一日が始まる…そんな当たり前のことが
何故かちょっと恨めしかった。
そのまま何人かのクラスメートに挨拶をして、下駄箱を開いて…一つのことに気がついた。
履き替え用の上履きの上に、一枚の紙切れがたたんで置いてあったんだ。
不思議におもいながら開いたその紙には、一文だけが書かれていた。
『昼休み、高等部中庭に来てください。 高等部2年 柴田あゆみ』
柴田…あゆみさん?
聞いたこともない人の名前に首をかしげてしまう。
一体なんだろう…? 高等部の人とはそんなに喋ったこともないのに…?
でも、高等部…。あ…っ、もしかして後藤さんに関係すること…?
そう思って、不安になった。
後藤さんの人気は、付き合い始めてもおさまる事はなくって…。だからもしかして何か言われたり
するのかもしれないって思って。
でも…、この後私はそれ以上にビックリする事になったんだ。
- 115 名前:tsukise 投稿日:2003年01月11日(土)23時50分19秒
- 今回更新はここまでです。
とりあえず、サクサク進めたいですね(^^ゞこちらは…。
微妙に痛めをいれてきてますが…どうでしょうね(^^ゞ
>>97 名無しゴマーさん
素敵なタイミングで携帯を鳴らしたのは、やはりというかこの2人です(^^ゞ
ドキドキしながら読んでくださったとは、作者としては嬉しい限りですっ。
これから急転直下な展開にさせますので続けて読んでくだされば嬉しいです!
>>98 名無し読者さん
紺野の動揺、結構文章力がないので心配でしたが感想に安心しましたです♪
甘い展開は、ちょっちおあずけとなりますが極甘な展開を最後にもってきますので
続けて読んでくださればありがたいですっ!応援レス、本当に嬉しいですっ
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月12日(日)17時40分12秒
- もしかして♪ごっちんじゃなく(自主規制。)
続き楽しみです。
- 117 名前:こんごま推進派 投稿日:2003年01月16日(木)22時31分51秒
- 更新お疲れ様です。
おお!紺野...悩んでしまってますね。
で、柴ちゃん登場ですか!大期待です!
やっぱりごっちんじゃなくて、これは...!
- 118 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時06分06秒
- 「おはよー…」
「「あっ、おはよー!紺野ちゃんっ」」
教室に入るとやっぱりというか、今日も元気に挨拶を返してくれる辻さんと加護さん。
多分、この2人には元気じゃない時なんてないんじゃないかなぁって思う。
あ、お昼休みの前は元気ないみたいだけど。
「紺野ちゃん、今日はなんだか疲れてるみたいだね〜」
「なんかあった?」
す、するどいなぁ…。
いつもクラス全員の顔を見ているからなのかなぁ?
「う、ううん、べつになんにもないよ?」
「うーん…あ〜やし〜」
「あ〜やし〜」
加護さんが首を傾げるて、それを真似する辻さん。
でも、まさかここで昨日の事を言えるわけもなくて、
「ほんと、なんでもないよ…っ?」
軽く手を振って私は自分の席に向かったんだ。
それでもまだこっちを見ながら目を細めていたから、疑われてるんだろうなぁって思った。
- 119 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時06分50秒
- 「あ、おはよーあさ美ちゃん。…って、どうかしたの?なんか疲れてるみたい」
席に着いた途端に、隣の愛ちゃんが今度は訊ねてくる。
そ、そんなに…疲れて見えるのかなぁ…。ちょっと苦笑してしまう。
本当は疲れてるんじゃなくて、悩んでるんだけど…。
「ううん、大丈夫だよ」
「何か…悩みでもあるの? あたしで良かったら話ぐらい聞くけど…?」
愛ちゃん…。
すっごく嬉しい申し出だけど、こればっかりは相談できない事なんだ。
きっと相談された愛ちゃんだって、困ってしまうと思うから。
『後藤さんにキスされたんだけど、どうしたらいい?』なんて、ね…。
あ…、でも手紙のことなら相談してもいいかもしれない。
もし、本当に後藤さんの事で何か言われたりした時、どうしていいか判らないし…。
「あのさ、愛ちゃん?」
「うん?」
「あの…」
「「あ〜〜〜ッ!!」」
耳をつんざくような声。
思わず耳を押さえて振り返ると、いつのまにいたのか辻さんと加護さんが後ろに立って
私の顔を指差していたんだ。
- 120 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時07分32秒
- 「つ、辻さん? 加護さん…?」
恐る恐る訊ねるけど、辻さんと加護さんは信じられないものを見るみたいな目をしながら、
でもどこか興味津々な表情で、指をガクガクと震えさせた。
「「こ、こ、紺野ちゃん…ッ!!」」
足までバタバタさせてるし…、一体どうしたんだろう?
「は、はい…っ?」
ちょっと引きつつ問いかけると、
「「く、く、くく」」
「くく? はちじゅうに?」
「「ちっがーう!! 首っ!首っ!」」
首…?
そっと指で触れようとして、思い出した。
そ、そういえば…っ、昨日のアザ…っ。
消えたものだとばっかり思ってたけど、まだ残って…っ?
慌てて私は手のひらで隠す。
けど、やっぱり遅かったみたい。
辻さんも加護さんも、愛ちゃんも驚いたみたいに目を見開いてしまっていたんだ。
- 121 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時08分23秒
- 「こ、紺野ちゃん?もしかしてそれって〜」
「もしかしなくとも、それって〜」
「「キスマー…」」
「ちっ、違うよっ!」
否定の声を上げるけど、赤くなってしまった顔が全然説得力なくって、
「じゃあなに〜?」
「なに〜?」
う…、両サイドからそんな興味津々に見つめないでほしいなぁ。
とにかく何か言わないと…っ。このままじゃ絶対2人に言いふらされてしまう。
「そ、その…そうっ!昨日タコを使った料理をしたんだけど、切った時に首に飛んで張り付い
ちゃったんだよ…っ」
自分でも苦しい言い訳だってわかる。
だって、そんなどうやったって首まで飛ぶことなんてないと思うし…。
でも、加護さんと辻さんはタコって名前に反応したみたい。
- 122 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時09分07秒
- 「えっ!タコ? もしかしてタコ焼きでも作ったの?」
「え? あ、うん…っ」
目をキラキラさせながら聞いてくる加護さん。
「タコ焼きはいいよね〜。あたしも大好きでさ〜!活きのいいタコを入れると美味しいんだよね〜」
「あ〜ののも食べたいっ。紺野ちゃん、なんで持ってきてくれなかったの〜?」
え…っ、辻さん…学校にはそんなもの持ってこれないと思うよ?
匂いが凄いと思うし。
「今度、あいぼん達にも食べさせてね」
「絶対だよ?」
「あ、うん…」
でも、どうやら話題を逸らすことができたみたい。
2人はそのまま『タコ焼きは出汁が決め手』とか色々言いながら、席に戻っていったから。
一度大きく息を吐いて、緊張を抑えようとしたその時、
「…ふーん…? タコ、ねぇ…」
えっ?
どこまでも冷めた声にちょっと硬直しながら振り返ると、愛ちゃんが机に頬杖をついて呆れた目で
こっちを見てたんだ。
- 123 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時09分44秒
- 「あ…、愛ちゃん…」
そうだ…、愛ちゃんも一緒に聞いてたんだ…。
人一倍鋭い愛ちゃんは、やっぱり加護さんと辻さんみたく納得してくれたわけじゃないみたいで、
「相当、あさ美ちゃんの事が好きなタコさんだったんだね」
「そっ、そんなこと…っ」
「ま、別にいいけど。そのタコさんに病気を移されないようにしなよ?」
ちょっと怒ったみたいにそれだけ言って、1時間目の授業の教科書に視線を落としたんだ。
やっぱりバレてる…。そんなんじゃないのに…。
なんで愛ちゃんがこんなにも怒っているのか全然わからなかったんだけど、1つだけ判ったことは
愛ちゃんに手紙の相談をするタイミングを失ってしまったってことだった…。
- 124 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時10分20秒
- 結局、その日の昼休み。
愛ちゃんに相談することもできなくて、私はちょっと緊張しながら高等部の中庭に向かったんだ。
もし、本当に後藤さんの事で何か言われたらどうしようとか、いきなり暴力を振るわれたりしたら
どうしようとか…、そんな事ばかりを頭に浮かべながら。
そして―――見つけた一人の女の人。
ちょっと切れ長の瞳に、整った顔立ち。
多分、後藤さんとは違うベクトルで美人な人なんじゃないかなって思う。
あの人が…柴田さん…?
周りに人もいないし…そうなの…かな?
ちょっと不安になりながらも近づいていくと、向こうもこっちに気がついたみたいで笑顔を浮かべて
歩いてきたんだ。
「来てくれたんだ?」
「あ、あの…?柴田…あゆみさんですか?」
「うん、そう。高等部2年の柴田。手紙を渡した張本人」
やっぱり…。この人が手紙をくれた人なんだ…。
でも思っていた感じとは、ちょっとイメージが違うみたい。
こう…なんていうか、もっとキツめの人が待っていて…目つきだって鋭くって『怖い』イメージの人が
待っているのかと思っていたから。
正直、ちょっとホっとした。
- 125 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時11分01秒
- 「それで…、あの…一体なんですか?私に用事って…」
「紺野さんって、意外とせっかちなんだ? ま、いいや。じゃあ、単刀直入に言うけど…」
なんだろう…?やっぱり後藤さんのこと…?
不安になって、一度咽喉を鳴らす。
でも、言われた言葉は想像もしないものだったんだ。
「あたしと付き合わない?」
…………ふぇっ!?
い、今、なんて…?
「あたしと、付き合わないかって訊いたんだけど…?」
顔に疑問が出てしまったみたいで、柴田さんは可笑しそうに笑いながらもう一度言葉を区切りながら
そういったんだ。
つ、付き合うって…、柴田さんと私が!?
「あ、あの…っ、柴田さん。わ、私とですか?」
「うん、他に誰もいないじゃん?」
確認するけど、やっぱり柴田さんは可笑しそうに笑ってみせる。
ちょ、ちょっと待ってください…っ。だ、だって私は…後藤さんと…っ。
頭が混乱してしまって、私は整理しようと俯いてその場をウロウロする。
- 126 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時12分23秒
- 今、柴田さんに付き合って欲しいって言われて…。
その相手は私で。後藤さんじゃなくて…。別に後藤さんのことで怒られてるわけじゃなくって…っ。
だ、だめだ…、考えれば考えるほどよく判んなくなっちゃう…っ。
と、とにかく、何か言わないと…っ。
そ、そう…っ、私は後藤さんとその…付き合ってるんだって事を言わないとっ。
「あの…っ、でも私、付き合ってて…」
「知ってるよ? 生徒会長の後藤さんでしょ?」
「え…っ?」
俯いていた顔を上げて、柴田さんを見ると『当たり前だよ』って言うみたいにちょっと呆れている
みたいだった。
「まさか、知らないとでも思ってた?普通、好きになった子のコトだったら調べるでしょ」
「あ…、そうですよね…」
「…ってゆうか、この学校で知らないヒトはいないと思うよ?紺野さんと後藤さんのコト」
「えっ?」
意味が判らなくて問い返すと、今度はちょっとイタズラっぽく笑い返してきたんだ。
「かなり有名だってコト。誰とも付き合わなかった後藤さんを落とした女のコってね」
「お、落とした…っ!?」
なんて話になってるんだろう…!? べ、別に私は落としたつもりなんてないのに…。
- 127 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時13分00秒
- 「でもさぁ…」
「…?」
続けられた言葉に柴田さんを見ると、何かを考えるように首をかしげながら私を見つめていた。
「なんていうか…、あたしには後藤さんは、なんだか寂しさを紛らわすために付き合ってるように
見えるんだよね」
「え…っ?」
寂しさを紛らわせるため…?
一体どういう意味ですか…?って訊こうとしたその時、突然に…脳裏に昨日のことが浮かんで
きたんだ。
後藤さんの部屋で見つけた写真立て。
そして、その写真に写る人をみて『あー…』って寂しげに笑った後藤さん。
懐かしそうに、その写真たてを手に取って私に説明してくれたけど、その想いは私に向いて
いたものじゃなかったと思う。
すべては…市井さんに向けられたものなんじゃないかって…。
「紺野さんはどう?ズバリ訊くけど後藤さんの中の市井さん、重荷になってるんじゃない?」
続けていわれた言葉に、ハっとする。
後藤さんの中の市井さん…。
その存在は大きい。でも…、
- 128 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時13分44秒
- 「そんなことないです。そんなこと…あるわけないじゃないですか」
はっきりと口から出た。
けど…柴田さんの目を見据えて言うには…自信がなかった。
もちろん、柴田さんはそれを見過ごすわけがなかったみたい。
一歩私に近づいて、問いかけたんだ。
「これからもずっと、そう思っていける?たとえ後藤さんの中に自分が少ししかなくても」
「…っ」
トドメの言葉だった。
ずっと押し隠していた昨日の不安を、一気に…それも初対面の人に暴け出されてしまった。
後藤さんの中の市井さん。
私はその大きさを知っている。どれだけ私が追いかけても追いつけるか判らないんだって事も。
でも、後藤さんは私を受け入れてくれた。私を大切にしてくれてる。
判ってる。判ってる…はずなのに…。
- 129 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月20日(月)18時14分21秒
- 「紺野さん」
「あ…っ」
気がついたら、柴田さんは私の両肩に手を置いて目線を合わせてしっかり見据えていた。
「あたしだったら、そんな顔絶対にさせたりしない。ずっと紺野さんだけを好きでい続ける自信ある」
強い意志を秘めたその瞳に何もいえなくなる。
多分私は今、すごく悲しい表情をしていると思う。
だって自分でもわかるぐらいに、心が動揺していたから…。
そんな気持ちで、ちゃんと答えがでるわけもなくって私はただ一言柴田さんに告げていたんだ。
自分でも信じられない言葉を。
「…少しだけ…待ってくれませんか…?」
って。
- 130 名前:tsukise 投稿日:2003年01月20日(月)18時19分34秒
- 今回更新はここまでです。ここら辺は…サクサクっといきたいですね…(^^ゞ
書いてる本人、ちょっちテンション下がってるんで(マテ
6期メンが…っ、何故かインスピレーションを妨げてしまって…(^^ゞ
>>116 名無し読者様
応援レスをありがとうございます♪
そうですね〜、今回はごっちんではなく紺野にちょっと悩んでもらおうかと(^^ゞ
テンポ遅いですが、また読んでくだされば嬉しいです♪
>>117 こんごま推進派さん
柴ちゃん登場させましたけど、どうでしょうね(^^ゞ
なんかタンポポで結構絡みがあるんで、面白いかなぁと(^^ゞ
いつも応援レスを本当にありがとうございますっ!
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月23日(木)22時32分35秒
- え!紺野!!って感じです。
柴ちゃんの登場で今後どうなっていくのか読めません。
続きお待ちしています。tsukiseさん、頑張ってください。
- 132 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時12分55秒
- 柴田さんがいなくなった後も、私は近くのベンチに座って鬱々としていた。
どうして、すぐに答えが出せなかったんだろう?
答えは初めから出ているはずなのに。
『待ってください』なんて、柴田さんにも後藤さんにも失礼なのに…。
「あれ?紺野じゃん」
「え? あ…、矢口さんに安倍さん」
名前を呼ばれて顔を上げると、二人が小さな包みを持って渡り廊下からこっちを見ていたんだ。
多分、どこかでお昼を一緒にとっていたんだと思う。
「珍しいね、こんなトコに紺野が一人でいるなんてさ。ごっつぁんは?」
「あ…、後藤さんは今日も風邪でお休みなんです」
「そう…、じゃちょっと寂しいね」
安倍さんは、からかうみたいにそう言いながら私の隣に腰掛けた。
「やっぱ好きな人とは、少しでも一緒にいたいもんね〜」
矢口さんも、うんうんって頷きながらニヤニヤ笑ってる。
多分、いつもの私なら恥かしくて俯いたんだろうけど…。
今は、別の意味で俯いた。
後藤さんの気持ちが判らなくなってしまって…。
そうだ…、安倍さんと矢口さんは付き合っているんだし訊ねてみようかな?
2人のこと。それから、もし私と同じ立場だったらどうするのか?
- 133 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時13分41秒
- 「あの…、安倍さんと矢口さんは付き合ってるんですよね?」
「へっ!? なに急にっ」
いきなり素っ頓狂な声を上げる安倍さん。
あ…、いきなりこんな事訊く私が悪いんだろうけど…。
「それがどうかしたの?」
対照的に、あっけらかんとしている矢口さん。
なんだか、主導権は矢口さんに握られてるんだなぁって、それだけで判った気がする。
「あの…、付き合い始めて相手の気持ちが判らなくなった時って、ありますか?」
「相手の気持ちが?んー…、結構あるかなぁ…?矢口って時々ハメをはずしすぎるし…」
「オイラかよっ!いや、なっちだって判んなくなるときあるから」
お互いに言い合う安倍さんと矢口さん。
でも、ある意味通じ合ってるなぁって思う。
だって、ちゃんと本心でお互いの事を知り合えてるって感じがするから。
私と後藤さんはどうなんだろう?って考えてしまって…。
ついため息をついてしまう。
- 134 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時14分23秒
- 「? 紺野?どうした?」
「あ…、べつになんでもないです」
矢口さんの声に、軽く首をふるけど、
「あ、もしかして、ごっつぁんとなんかあった?」
やっぱり鋭い安倍さんは、心配そうに顔を覗き込んできたんだ。
でも、『何か』ならあったけど、まさか先輩に相談なんかできるわけがなくって慌てて首を振る。
「紺野〜、ここまで訊いといて、だんまりはないっしょ?」
「あ…、いや、でも…」
「誰にも言わないし、言ってみなって」
ダメだ。
今、ここで安倍さんと矢口さんを振り切るだけの言葉が私には見当たらない。
仕方なく、私は後藤さんの事を打ち明けることにしたんだ。
「あの…私、後藤さんの気持ちがわからなくなっちゃったんです…」
「ん? どういうこと?」
「後藤さんが…、どんなことを考えて私に接してくれてるのか…とか…」
どんなことを考えて、『あんな事』をしたのか、とか…。
- 135 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時15分04秒
- 「2人が付き合い始めて、どんくらい経ったっけ?」
「3ヶ月です…」
「あ〜、矢口もそんくらいの頃結構悩んだ。なっちが浮気とかしてんじゃないか〜とかさ〜」
「あ、いや、そういうんじゃないんですけど…」
なんだか、矢口さんって安倍さんの事しか頭にないんだなって思ってしまう。
まぁ、それだけ好きなんだって事だろうけど、安倍さんはちょっと呆れたみたいに『もう』って言ってる。
「ごっつぁんが、何かしたの?」
ずばり核心を突かれて、何もいえなくなってしまう。
この時気づかなかったんだけど、矢口さんが安倍さんに向かって何かを耳打ちしていたんだ。
それから安倍さんが、ちょっと信じられないものを見るみたいに一度私を見て、言葉を変えてきたんだ。
「酷いこと…された?」
言われて、思わず首元に手を当ててしまう。
多分、矢口さんが耳打ちしたのは、この事だったんだと思う。
誰が見ても判る、それが意味するもの。
もちろん、私にこれをつけることが出来るのは後藤さんだけだし、安倍さんもすぐに判ったみたい。
だから…もう私は隠すのをやめた。
少しうな垂れるみたいに首を振って静かに否定する。
- 136 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時15分44秒
- 「後藤さんは、優しく触れてくれたんです。…でも、私は…」
「紺野は…?」
「…怖かったんです。後藤さんの、あんな表情を見たことなくて…だから…」
そうか…怖かったのは後のことで…、ショックだったのはその前のことだったんだ。
真剣で真摯で…どこか熱っぽい目をしていた後藤さんが、知らない人に見えて怖かった…。
そしてそんな後藤さんを『怖い』と思ってしまったのがショックだった…。
それが大きな不安となって、今私を苦しめているんだ。
そう思ったら、もう止まらない。
自分でも判るぐらい身体が震えて、動揺していたんだ。
「うーん…、でもさ…ごっつぁんは紺野のコト、ほんとに大切にしてると思うよ?」
ちょっと困ったみたいに矢口さんと顔を見合わせて、安倍さんが言った。
「その…なんてゆーか…軽い気持ちで紺野に触れたんじゃないと思うし…」
「大体、3ヶ月経ってンのに何もないってことは紺野の気持ちに合わせてると思うんだけど〜?」
安倍さんの言葉に被せるみたいに、矢口さんが腰に手を当てて告げる。
- 137 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時16分27秒
- 3ヶ月経ってるのに何もないって…どういう事なんだろう?
よく意味が判らなくて、安倍さんに視線を向けると、安倍さんは恥かしそうに矢口さんに向かって
『こらッ!』って軽く手を上げていた。
………あっ。
そこで判ったんだ。『そういうこと』なんだって。
は、恥かしいなぁ…っ。頬が火照っていく。
「ごっつぁんの事、信じてあげなよ」
ちょっとクスリと笑っている安倍さん。
矢口さんも『そうそう』って言いながら笑ってる。
それに対して、私はコクコクと頷くしかなかったんだ。
―――その胸に、微かに不安を残して。
- 138 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時17分15秒
- 結局、その日の授業が終わっても気持ちが晴れることはなかったんだ。
だから…、もう一度後藤さんに向かい合えれば…何かが変わるかもしれないって思って…。
知らず知らずのうちに、家に帰る道を外れて後藤さんのマンションまで向かってた。
目の前の後藤さんのマンション。
見上げれば部屋が見える。
あそこに後藤さんがいるのに…、なんでこんなにも距離感を感じてしまうんだろう?
…ううん。それを確かめるために来たんじゃない…っ。
そんなことないんだって、確認するために。
静かにインターフォンに後藤さんの部屋の番号を入力して応答を待つ。
初めてここに来た時よりも、何故か私は緊張していた。
『…はい?』
「あ、あの…っ、私、こ、紺野です…っ」
『あ…、来て…くれたんだ?』
後藤さんには珍しく、ちょっと遠慮したみたいな声。
多分…、後藤さんも昨日の事を気にしているからかもしれない。
- 139 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時17分57秒
- 「あ…、はい。その…、心配で…」
出来るだけ平常心を装って話す。
だって、それでなくても今日はいろんなことがあって…、後藤さんには知られてはいけない事が
できてしまっていたから。
こんな風にしないと、絶対ボロが出てしまう。
『……ありがとう。今、開ける』
ちょっと嬉しそうに聞こえたその声に、ズキンと心が痛んだ気がした。
それから後藤さんの部屋までエレベーターで上って、
ピンポーン
軽くチャイムを鳴らす。
それから大きく一度息を吐いた。
冷静に…冷静に。
いつも通りにすれば、大丈夫。きっと後藤さんには判らない。判らせちゃいけない…。
ガチャ
「紺野…?」
「あっ、は、はい…っ。身体の具合はどうですか?まだ熱とかありますか?辛くないですか?」
「ちょ、ちょっと…、そんな質問ばっかされても困るんだケド…?」
「あ…っ、スイマセン…っ」
- 140 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時18分42秒
- いけない。
気が焦ってしまって、思わず質問攻めにしてしまったみたい。
でも後藤さんは、ちょっと困ったみたいに笑いながらも『中、入って』って扉を開いてくれた。
その時見た表情から、昨日よりは随分良くなっているみたいでホっとした。
リビングに通されて、イスに座る。
後藤さんはキッチンに立って、紅茶を入れてくれてるみたい。
なんだか、病み上がりなのに申し訳ない気持ちになってしまう。
それからテーブルにティーカップが差し出される。
「熱いかもしんないから、気をつけて」
「あ、ありがとうございます」
ゆっくりカップを手でもって口元に運ぶ。
それから一口。
うん…熱すぎず、ぬる過ぎずちょうどいいと思う。
「美味しいです…」
「そう? 良かった」
後藤さんの安心したみたいな笑顔。
それを見てから、今の後藤さんを改めて見たんだ。
昨日と違って、黒のカッターシャツに白のセーターを羽織って袖を前で結んでいて下はジーンズ。
多分、部屋着なんだろうけど、元々スタイルがいいからなんだかカッコイイと思う。
昨日は二つにくくられていた髪だって、今は一つにくくられていてすっきりした顔立ちにちょっと
ドキっとしてしまった。
- 141 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時19分34秒
- 「ん…? なに?」
「あ…っ、なんでもないですっ」
じっと見つめてしまったみたいで、私は慌てて俯いた。
そんな私に後藤さんは一度首をかしげながら、自分の分の紅茶を口に含んだんだ。
何か話さないと…っ。
いつもは心地いい沈黙の時間も、今日ばかりは息苦しくて必死に話題を探す。
その時、視界の端に何かの光が差し込んできたんだ。
「? …あっ」
不思議に思って顔を向けて見つけたもの。
それは―――昨日見た、市井さんと後藤さんの写真。
多分、太陽の光が反射したんだ。
途端に、胸がぎゅっと締め付けられる感覚が広がる。
『…後藤さんは、なんだか寂しさを紛らわすために付き合ってるように見えるんだよね』
ふいに、耳の奥から聞こえる柴田さんの言葉。
そんなことない…っ、そんなことないって否定したいけど…。
写真の後藤さんは、私の見たこともない笑顔を向けている。
――本当に信頼している人の前でしか見せないような、そんな笑顔で。
- 142 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時20分27秒
- 「…紺野?」
「…あ、すいませんっ、なんですか?」
ちょっと心配そうな声で呼びかけられて、私は後藤さんに視線を戻す。
いつから見てたんだろう?後藤さんはじっと私の表情をうかがっていたんだ。
「あの、さ…」
「…?」
そこで言いよどむ後藤さん。
必死に何かを言おうとするけど、言葉が出てこないみたい。
でも、それでも後藤さんは大きく息を一度吐いて、私を見据えると、
「――ごめん」
そういって、目を細めたんだ。
「え…?後藤さん…?」
突然の事で戸惑ってしまう私。
そんな私に、後藤さんは言葉を続けた。
「昨日のコト」
あ…。
それだけで、ぜんぶ判った。
今でも思い出せる、首筋に残った熱い感覚。正直…怖いと思ったあの瞬間。
その時の事を言ってるんだって。
「一人でいるとちょっと弱気になっちゃうんだよね。それで…なんてゆーか…人恋しかったってゆーか…」
視線を泳がしながらも、後藤さんはそう言った。
- 143 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時21分18秒
- 人恋しい…。それって…『寂しい』って事、だよね?
寂しいから…あんな事を?それは―――誰でも良かった?
私じゃなくても?
『…後藤さんの中の市井さん、重荷になってるんじゃない?』
柴田さんからの疑問が、胸に大きく膨らんで…弾けたような気がした。
「後藤さんは、市井さんがいなくなって寂しいから…、だから私と付きあったんですか…?あんなこと
するんですか?」
気がついたら、私は静かに呟いていた。
自然と口から、言葉が出ていたんだ。
「え…?紺野、今なんて?」
「! なんでもないですっ。忘れてください…っ」
後藤さんのぎこちない表情に、ハッと我に返って口元を押さえた。
な、何をいってるんだろう…っ。
後藤さんに、こんな事を言うなんて…。こんな事を言っても困らせるだけなのにっ。
市井さんの事を思い出になるまで待つって決めたのは私じゃない。
こんなの…、自分で自分の言った事を否定してる。間違ってる…っ。
- 144 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時21分57秒
- 「スイマセン…っ!私、今日は帰りますっ」
凄く自分が恥かしくなって、後藤さんの顔を見ていられなくて私は勢いよく立ち上がって部屋を
去ろうとしたんだ。
そしたら、
「あ…っ、待って紺野っ!」
ちょっと強い口調で後藤さんは呼び止めて、私の腕を掴んできた。
「!」
「…紺野の言ってるコトよくわかんないケド、私は紺野だから…紺野だから触れたいって、そう
思ったんだからね?これだけは信じて欲しい」
まるで私の心の中を読んだみたいに、後藤さんは私の欲しかった答えをくれた。
まっすぐとした瞳には、私だけが映っている。誰でもない、私が。
嬉しかった。
でも…、同時に恥かしかった。
- 145 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時22分30秒
- 「あ…う…その…っ」
なんて答えていいのかわからないで、口をパクパクさせてしまう。
それでもかろうじて言えた言葉は
「し、失礼します…っ」
短いそんな言葉。
それから後藤さんの腕をすり抜けて部屋を飛び出す。
部屋を出るとき、後藤さんがちょっと切なそうに見えたのは気のせいなのかな…?
マンションを後にしても、胸のドキドキは治まらなくてしばらく大きく深呼吸をした。
それから静かに建物を見上げて、心の中で呟いたんだ。
―――後藤さん、信じて…いいんですよね?
って…。
- 146 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時23分43秒
- どんなに悩んだって、必ず次の日はやってくる。
それに、どんなに体調が悪いヒトだって必ず良くなっていく。
もちろん、私だって例外なんかじゃない。
「はー…、やっぱ行くしかないよね」
鏡に向かって制服を整えながら、軽くため息。
病気が治ったのは、そりゃ嬉しい。結構辛かったりもしたし、一人で寂しかったから。
けど、なんか今回は素直に喜べなかった。
何故って、そりゃー…紺野のコトがあったから。
昨日だって、結局紺野は私の事を避けるみたいに帰っていっちゃったし。
学校で逢って、どんな顔で話せばいいのかとか、昨日あれから考えたけど正直判んない。
こんなコトになるんだったら、あんなコトしなきゃ良かった、なんて思ってしまう。
でも、私の気持ちはハッキリ昨日伝えたし。
多分、紺野も判ってくれたはず。
ホントのコト言うと、これでも結構抑えてるんだよね…。
心の中には、2人の私がいて。
紺野に触れたいって強く思っている私と、大切に守りたいって思ってる私。
微妙なバランスの上で成り立ってるから、この間みたいに何かの拍子に崩れてしまうんだ。
きっと、紺野には判らないんだろうけど、ね…。
- 147 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時24分27秒
- 「よし、行こう」
いつまでもウジウジしてるのは、らしくない。
いつも通りに話せばいいじゃん。
気持ちを振り切って、私はカバンを手にとると学校へ向かったんだ。
「おはようございます!後藤さんっ」
「おはよう」
「もう風邪はいいんですか…っ?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
「あっ、後藤さん!おはようございます!」
「おはよう」
学校までの道のり。
次々と声をかけてくれる生徒達。
生徒会長ともなると、みんなやっぱ注目してるんだなぁって思う。
まぁ、自分達の学校行事とかが私の決定にかかってるんだし、当然か。
そういえば、前にその話をよっすぃーにしたら『はぁっ!?ごっちん、気づいてないの!?』なんて
驚かれたけど、どういう意味なんだろう?
色々考えてみたけど判んなくて、『みんな可哀想に…』なんてよっすぃーは頭を押さえていたっけ?
- 148 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時25分46秒
- 「あっ、後藤さん!おはようございますっ」
「ん?あ、おはよう」
後ろからかけられた声に振り返ると、中等部の小川と新垣、それに高橋がいたんだ。
「風邪治ったんですねっ。すっごく心配しましたよ」
「ありがとう。それとごめんね、集会、大変だったんじゃない?」
新垣の嬉しそうな声にそう言うと、『ちょっとだけですよ』なんて言いながらへへっと笑った。
多分、安倍さんが仕切ってくれてたと思うし、概ね大丈夫だったんだと思う。
「そういえば…紺野は?」
ふいに視線を向けてみて、紺野がいなかったから自然に訊ねたんだ。
そしたら、
「あさ美ちゃ…紺野さんなら日直で先に行きました」
黙ってじっと私を見ていた高橋が、ボソっと呟いた。
ん?と思って顔を向けると、高橋はなんだか居心地悪そうにソワソワしていたんた。
「それにしても、ビックリです…。まさか後藤さんとあさ美ちゃんが付き合うコトになるなんて…」
「んぁ?」
突然の小川の声に、私はちょっとマヌケな返事を返してしまう。
いきなりそんなコト言われると思ってなかったし。
- 149 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時26分29秒
- 「全然知りませんでしたもん。あさ美ちゃん、何にも言わなかったし。ショックですよ〜」
新垣は残念そうに肩を落としていて、返答に困った私は笑うしかない。
「でも…紺野さんの事、大切に思ってるんですよね?」
最後に高橋は確認するみたいに訊いてきた。
だから私は
「うん、思ってるよ」
迷いなく答えたんだ。
それを見て、ちょっとホっとする高橋。
一体、なんでそんな顔をするのか判んなかったケド、何かに納得してくれたみたい。
「あ、ホラ、そろそろ行かないと遅刻するよ?」
「あ、はいっ!それじゃ失礼します!」
腕時計を確認して3人に告げるとペコリと頭を下げて、中等部へと向かって走り出したんだ。
私も、それを手を振って見送ってから、高等部の校舎へと向かった。
この日、思いもよらないことになるなんて考えもせずに…。
―――事の発端は、その日の昼休み。
- 150 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時27分10秒
- 「ごっち〜ん?」
「んぁ?なに、よしこ」
授業が終わってすぐ、教室の入り口で呼ばれて顔を向けた。
そしたら、見たことない生徒がよっすぃーの後ろで軽くこっちに頭を下げていたんだ。
「彼女、なんかごっちんに話したい事があるらしいよ?」
「私に?」
なんだろ…? 呼び出されることは、そんな珍しいことでもなんでもないけど、なんだか
その子の目はちょっと私を射るみたいな感じで、直感的にヤな予感がしたんだ。
「…今、行く」
短く答えて、席を立った。
「時間、とらせてゴメン。私は柴田っていうんだけど、ちょっと後藤さんと話がしたくてさ」
呼び出されたのは屋上。
この時間なら、たくさん人がいるような場所なんだけど、あいにくうちの学校は屋上を開放してなくて
ここに来れるのは、一部の不良生徒ぐらいなものなんだ。
…ま、私の場合は役職柄大体の教室なんかの鍵を使えるから『特別』だけど。
「なに?」
別に苛立った様子もなく私は答える。
そしたら彼女は、何かを決心したみたいに鋭い眼差しを向けてきたんだ。
- 151 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時27分54秒
- 「紺野さんのコト、市井さんの代わりとして見てるんだったら別れてくれない?」
「は…っ?」
思わず訊き返してしまった。
なんで、今ここで紺野の名前がでてくるのか判らなかったから。
「あたし、昨日紺野さんに『付き合って欲しい』って告ったんだ。後藤さんと付き合ってるのを承知で」
「…!」
「驚いた、みたいだね。なんにも聞いてなかったんだ?」
面白がるみたいな、挑発するような声。
暗に『信頼されてないんだ?』って言われたみたいで、ムっときた。
でも…言い返せない。
紺野が、何にも話してくれてなかったのは事実だったから。
「あたしは、後藤さんが彼女と付き合う前から好きだった。ずっと見てた。だから今の彼女を見たら
放っておけなかった」
「…?」
端整な顔立ちをした彼女の眉がしかめられて、語気が荒くなった。
何か強い意志が、その言葉に込められるみたいに。
「彼女は…紺野さんは、市井さんの代わりじゃない。ずっと、後藤さんが誰とも付き合ったりしなかった
のは市井さんのコトが忘れられなかったからでしょ? それなのに紺野さんと付き合ったってコトは、
彼女を代わりとして見てるからなんじゃないの?」
- 152 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時29分09秒
- 彼女の言葉は、鋭利な刃物で傷口をえぐるみたいな突き刺さってくる。
忘れかけていた苦い思い出が蘇ってきそうになって、私は大きくかぶりふって止めた。
それから静かに口を開く。
「そんな風に紺野を見たコト、一度もない」
「本当に?本当にそういいきれる?ちょっとした会話の中で、市井さんと紺野さんを重ねて見たコト
ない?」
「…なにが言いたいの?」
もう、冷静に話を聞くぐらいの余裕が私にはなかった。
一触即発って、こういう雰囲気なのかもしれない。私も彼女も鋭い視線を絡ませていたから。
先に視線をはずしたのは、彼女のほうだった。
居たたまれないような表情で、地面に視線を落として…それでもその瞳は何かを睨むみたいに鋭い。
そんな顔のまま、こう告げたんだ。
「紺野さん、不安がってる。後藤さんの中の市井さんに。自分はいつも市井さんの次なんじゃないかって」
え…?
「自分自身を見てもらえないんじゃないかって」
紺野…が?
- 153 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時29分50秒
- 驚きで、なんにも言えなくなった。
それは、紺野が不安がってるって聞いた事もあったけど、なによりそんな紺野の事を私じゃない
目の前に立つ彼女の方が理解していたから。
いつもそばにいた私じゃなくて、彼女が。
兆候は…今から考えればあった気がする。
昨日、お見舞いに来てくれた紺野の、不自然なくらいの笑顔。
今思えば、不安に揺れていたんだきっと…。
『後藤さんは、市井さんがいなくなって寂しいから…、だから私と付きあったんですか…?』
呟くみたいに出た、あの言葉。
灰色に曇っていた瞳が、ずっと思い悩んでいたからだって今なら分かる気がする。
あー…、いっつもこうだ。
鈍感な私は紺野の気持ちにすぐ気づく事ができなくて、なんでも後手、後手に回ってしまう。
あの時こうだったのに…。あの時こうすれば…。
気づけば、そんな後悔ばかりしてる。
今回だってそう。
目の前の彼女に言われて、初めて紺野の不安に気づいて慌てふためいて…。
こんなんじゃ…私…。
「よく、考えてあげて?紺野さんのコト」
彼女は、何もいえない私にそれだけ言って屋上を去っていった。
その背中を、私は情けなく見送るしか出来なかった。
- 154 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月26日(日)09時30分32秒
- 胸にこみ上げてくるのは、どうしようもないくらいの敗北感。
紺野のコトを一番理解しているつもりでいて、結局私はなんにも分かってなかった。
どうすればいい? 私はどうしたらいい?
思わず顔を手で覆ってから、空を仰ぎ見た。
当たり前だけど、そこにはなんにもない空間が漂っていて、頼りなく雲が風に流されていた。
ただ、フワフワと。
まるで、人の心みたい。自由に形を変えて、捕まえるのが難しくて。
ううん…捕まえるのなんて無理なんだ、きっと。
無理に捕まえようとすると、歪みが生まれて分かれてしまう…。
そっか…そうなんだ…。
突然に、納得している自分がいた。
それからこみ上げてくるのは、諦めにも似た気持ち。
「そうするしか…ないか…」
小さく呟いて、はは…っと笑った。
気のない返事だったけど、それは私なりの決心の表れ。
これからどうすればいいのか、どうすれば紺野の為にいいのか判ったから。
- 155 名前:tsukise 投稿日:2003年01月26日(日)09時33分58秒
- 今回、更新はここまでです。た、大量ですねー…(^^ゞ
とりあえず、次回が一番の山場ですねー…。
短編のはずが、いつのまにか長編になっていてビックリです(^^ゞ
>>131 名無しさん
意外な紺野の行動ですね〜(^^ゞ先が読めないように…というか
書いてるうちに、最初に考えていた感じから変わってしまって(マテ
応援レス、ありがとうございますっ。
- 156 名前:ウィンキー 投稿日:2003年01月26日(日)19時03分43秒
- え、え、えぇえ?!諦めって…まさか…?
鈍感ごっちんと鋭いよっすぃーの会話に笑いました。
- 157 名前:ゆちぃ 投稿日:2003年01月26日(日)21時38分00秒
- はじめまして。
毎回読んでますが、今回はほんと痛いです・・・。
次、マジですっごい(くどい!?)待ってます。
- 158 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)09時56分20秒
- その後の授業のことは、全く頭に入らなかった。
ただ、ぼーっと窓の外の景色を眺めながら、あのコの事を考えてた。
『…? あの、大丈夫? 立てる?』
『え…、あ…っ、はいっ、大丈夫ですっ』
初めて逢ったのは、中高合同生徒会の初日。
扉を開けた瞬間に、凄い勢い…ってワケじゃなかったけど、走ってきたあのコと正面から
ぶつかったんだよね。
顔を真っ赤にして恥かしそうに笑っていたっけ…。
『あはっ、はははっ』
『ご、後藤さん…っ、笑わないでくださいよ…っ』
『ご、ごめん。でも紺野ってば…かっこいいって言うよりなんか可愛いんだもん』
『そ、そんな…』
一緒に帰ったあの日。
あのコは一生懸命、空手の型を見せてくれた。
でも、人によっては一生懸命な姿って空回りしちゃうコトがあるんだよね。
まさにあのコはそんなカンジ。
でも、そんな姿も今思えば愛しいモノだったんだってわかる。
- 159 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)09時57分03秒
- 『ほんとにスイマセン…っ、後藤さんにも迷惑をかけちゃって…っ』
『……迷惑じゃないよ』
申し訳なさそうに謝ってたコトもあった。迷惑だって思い込んで。
全然そんなコトなかったのに。
ううん、むしろ、私が迷惑をかけてたぐらい。
いつだって受身だった私は、自分から行動する事を恐れてたから。
どれだけあのコに…紺野に支えられていたんだろう?
どれだけ紺野に救われていたんだろう?
気がついたら、紺野から離れられなくなってしまっていたのかもしれない。
周りから見れば、全然そんな風にみえなかったかもしれないけど、紺野が私の支えだったって
言っても過言じゃないくらい。
だから…紺野の心の変化に気づかなかった。
気づけなかった。
でも、まだ間に合う。
紺野の為に、私がしてあげられるコトがある。
それは――紺野を解放してあげるコト。
選択肢を…与えるコト。
- 160 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)09時57分51秒
- 「あの…後藤さん…?帰るんじゃなかったんですか?」
紺野のちょっと戸惑った声。
授業が終わってすぐ、私は紺野のクラスに言って一緒に帰ろうって誘ったんだ。
けれど、向かったのは校門じゃなくて高等部の中庭。
帰りながら気軽に話せるような話じゃなかったから、ここで伝えようと思って。
「後藤さん…?」
「まぁ、座ってよ」
「え…っ? あ、はい…」
困ったみたいにもう一度呼びかけてくる紺野を、ベンチに促す。
それから私も隣に腰掛けた。
一度大きく息をつく。
まさか、こんな話をするなんて思ったことなかったから緊張したんだ。
でも、できるだけ優しく伝えないと紺野が困ってしまうと思うから、少し笑みを浮かべて
話し始める。
「ねー紺野?」
「はい?」
「今、なんか私に隠し事してない?」
「え…っ?」
判りやすい反応。
大きく目が見開かれて、口をパクパクしちゃってる。
いつもの私だったら吹き出したりするんだろうけど、今は真剣に見つめ返すだけ。
紺野の口から、ちゃんと聞く為に。
- 161 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)09時58分44秒
- やがて、ゆっくり紺野は俯いて、
「ごめんなさい…」
申し訳なさそうに謝った。
「や、謝んなくていいけど…。でも、話してくれると嬉しい」
内容は知っているけど、あえて私はそう言った。
紺野はやっぱり困ったみたいに私の顔を見ていたけど、やがてポツリポツリと話してくれたんだ。
柴田さんに告られたコト。返事をためらってしまったコト。
いちーちゃんのコトを深く考えていたコト。
そして…私の気持ちが判らなくなってしまった時があったコト。
何度か口ごもってしまっていたけど、ちゃんと紺野は全部話してくれた。
話し終わって紺野は、胸のつっかえがとれたみたいにため息を一度ついていたっけ。
「あの、私…、どうしたらいいのか…わからなくて…」
「…そっか」
紺野のそんな言葉に笑みがこぼれる。
可笑しさからくるもんじゃない、自分が情けなくて出た笑み。
結局、柴田さんの言ったことは全部本当だった。
紺野の悩み、苦しみ…それらを全部彼女は判ってた。
私みたいに直接訊かなくても。
やっぱり…言うしかないか。
- 162 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)09時59分28秒
- 「紺野?」
「はい…」
まっすぐ向けられる視線。
それを直視できなくて、私は視線を校舎に向けて告げた。
「…少し、距離を置こっか?」
「…え…?」
本当に意味が判らないで、問い返してくる紺野。
だから、
「しばらく、逢わないでいようか?って言ったの」
そう付け加えた。
「後藤さん…っ!?」
やっと意味が判った紺野は、信じられないって顔をする。
正直、心が揺らぐ。
でも、私の一時的な感情に紺野を振り回してはいけないんだ。
だから言葉を続ける。
「…悔しいけど、変われるからいいコトだってあるんだよね…」
呟くように出た言葉に、紺野は何かに気づいたみたいにハッとして私を見返した。
きっと、私を傷つけたとでも思ったのかもしれない。
『あ…っ』って小さく言って切なそうに向けられた瞳が、不安定に揺れていたから。
でも、言葉にしてみてそうなんだって改めて思ったんだ。
- 163 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)10時00分08秒
- 上手くいかない恋があるから、気づいたコトがあった。
違う人を好きになって、初めて判ったことがあった…。
そう…、好きだった気持ちだけはずっと思い出に残るし、色んなヒトとの色んな『好き』がいつも
自分を包んでいてくれるんだってコト。
だから色んなヒトと触れ合って、いっぱい傷ついて、その傷の中から自分のホントの気持ちがほんの
少し見える、…そんな気がするんだ。
「紺野…」
その存在を確認するみたいに、私は名前を呼ぶ。
多分…コレが最後かもしれないなぁ、なんて思いながら。
たった3ヶ月間だったけど、私は紺野にたくさんのモノをもらったよ。
きっと私が紺野の為にしたコトよりも、ずっとずっとたくさん。
これからだって、一緒にいられるって思ってたから、ちゃんとこんな言葉を口にしたことなかったよね。
だから…改めて、今言うよ。
「今まで、いろいろありがとね」
「…っ」
紺野の身体がビクリと震える。
見開かれた瞳が、何を言っていいのかわからないって風に言ってるような気がした。
- 164 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)10時01分35秒
- ほんとはね、もっとずっと一緒にいたいと思ってる。
これからだって紺野の隣には私が立っていたいって。
でも、紺野の辛そうな顔を見たくないから…。
悲しい思いをさせたくないから…だから…。
「バイバイ」
それだけ言って、私は席を立ったんだ。
繋がっていると思ったんだけどなぁ。
なんでかなー…? なんでこうなっちゃったのかなー…?
多分、ぜんぶ私のせいなんだろうなー…。
なんで、なんで、のオンパレード。
答えの見つからない疑問を頭の中に広がらせながら、校舎へと歩いていく。
ガタンッ!
その時、後ろで勢いよく立ち上がる音がしたんだ。
それから、駆け足で近づいてくる足音。
「ま…、待ってください、後藤さん! 私、後藤さんの事…っ」
「いいからっ!」
すぐ後ろで呼びかけられたけど、私はそれを遮って制したんだ。
今…紺野の顔を見たら、決心が揺らいじゃうから。
「!」
私の声に驚いたのか、紺野が立ち止まって息を飲むのがわかった。
きっと、戸惑ってるんだろうね。
- 165 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月27日(月)10時02分22秒
- 紺野の言いたいことは判る。
多分、私の事を傷つけないようにしなきゃって何かを伝えようとしているに違いない。
でもね、そんな優しさが今一番辛いんだよ。
だからさ、もうやめてよ?
その時、思い出したんだ。
この間、紺野が言っていた言葉。
懇願するみたいな、そんな瞳で問いかけてきたあの言葉…。
『後藤さんは、市井さんがいなくなって寂しいから…、だから私と付きあったんですか…?』
一時的な感情から言ったんだって判ってる。
でも、えてしてそーゆーモノほど、ずっと心の中に強くあったものだったりするんだ。
「あのさ…」
「…?」
―――後藤さんは
「紺野には悪いケド」
―――市井さんがいなくなって寂しいから…
「私、まだいちーちゃんのコトが好きなんだよね」
―――だから私と付き合ったんですか…?
「ただ、寂しかっただけなんだよ。それで紺野と付き合ったんだ。――だから、ゴメンね」
紺野の心の中に強くあった疑問。
それを今、偽りの答えを言うことで…私は別れを告げたんだ。
紺野がヘンに悔やんだりしないように。
いっそ、私を嫌ってくれるように願いながら…。
- 166 名前:tsukise 投稿日:2003年01月27日(月)10時08分56秒
- 今回、更新はここまでです。
珍しく2日連続更新しましたね(^^ゞ
このまま続けられるかどうかは判りませんけど(^^ゞ
>>156 ウィンキーさん
ご想像通りの展開となってしまいましたでしょうか?(^^ゞ
鈍感なごっちん、結構好きなんですよね〜。よっすぃーの鋭さがなんだか
光って見えたりしますし♪楽しんでいただけて嬉しいです♪
>>157 ゆちぃさん
応援レスをありがとうございます♪痛いですか?いや、痛いですよね〜(^^ゞ
何故か痛い方の話が書きやすかったりするんですよね(^^ゞ
いつも読んで下さっているみたいで、嬉しい限りですっ。
- 167 名前:こんごま推進派 投稿日:2003年01月27日(月)10時11分28秒
- 更新お疲れ様です!リアルタイムで読めました!
ごっちーん!!って感じですよ!痛い...痛すぎです!
これからの展開、期待してるんで作者さん頑張ってください!
- 168 名前:ウィンキー 投稿日:2003年01月27日(月)18時34分16秒
- うぬぉああ!!ごっちぃーん!!
嫌な予感が当たりました。涙・涙。(+_+)
- 169 名前:ゆちぃ 投稿日:2003年01月27日(月)21時28分50秒
- やっぱり痛いですけど、好きです。
ていうか、泣ける・・・。
続けて読めるコトにも感激です☆
次も期待してます。がんばってくださいねぇ〜〜。
- 170 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月28日(火)17時25分56秒
- 「ごっちん」
「?」
教室に戻って扉を開けた先に、突然よっすぃーが目の前に立っていた。
不思議に思って、顔を上げた瞬間―――
パシンッ!
響き渡る乾いた音。
一瞬、何が起きたのか判らなかった。頭の中が真っ白になった。
ただ、ジンジンと熱くなっていく左の頬に…振り切られたよっすぃーの右腕に私は平手打ちを
食らったんだって判ったんだ。
「見損なったよ、ごっちん」
「よっすぃーっ!」
そのまま襟首を掴んできたよっすぃーを、梨華ちゃんが後ろから抱き付いてかろうじて押しとどめていた。
今更ながら、よっすぃーの力の強さを痛感してしまった。
「ごっちんは…そりゃあ、市井さんのコトまだ忘れられないんだって判ってたつもりだけど、それでも
紺野のコトが好きで付き合ったんだって思ってた」
「………」
梨華ちゃんになだめすかされて冷静を取り戻したよっすぃーは、肩で息をしてそれだけ言うと窓際に背を
向けて歩いた。
- 171 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月28日(火)17時26分37秒
- 全身から伝わってくるのは、怒りのオーラ。
どちらかというとストレートに意見をぶつけるよっすぃーだから、その怒りも半端じゃないみたい。
でも、私はそんなよっすぃーをぼんやりと見ることしかできなかった。
別にそれは頬を殴られたショックからくるもんじゃない。
ただ…今の私は、何も受け付けられなかったから。
「ごっちん…大丈夫?」
「……うん」
心配したみたいに声をかけてくる梨華ちゃん。
まだ頬はジンジンするけど、とくに問題はない。
「あのね…、さっきたまたま窓からごっちんと紺野を見かけて…それで『からかってやろう』って
よっすぃーが。そしたら、2人の会話を聞いちゃって…」
「…そう」
「あ…っ、ごっちん…っ」
乱れた髪を直して梨華ちゃんの横をすり抜けると、そのまま自分の席に置いてたカバンを手にとって
扉に向かう。
- 172 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月28日(火)17時27分23秒
- 「待ちなよっ!ウチらに何か言うコトないの!?」
よっすぃーの鋭い声。
それに足を止めて、ゆっくり振り返る。
そしたら、またよっすぃーは私と差を縮めてきたんだ。
また殴られる?
それもいいかもね。
だって私はサイテーなコトをしたんだから。
誰でもいいよ、私をなじってくれて。むしろ、その方がラク。
「…ごっちん」
目の前に立ったよっすぃーは一度驚いた顔をしたけど、またすぐにキっと怒り顔に戻った。
そして、軽くよっすぃーの手が上がる。
それから鋭い痛みが頬に―――
―――こなかった。
私を殴ると思ったその手は、優しく頭の後ろに添えられてぐっと引き寄せられたんだ。
逆らうことなく、私はよっすぃーの腕の中に顔をうずめる形になる。
- 173 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月28日(火)17時28分05秒
- 「…?よっすぃー?」
「泣くなよぉー…。ごっちんに泣かれたら、怒れないじゃんかぁー…」
泣く? 私が? なんで?
そんなワケないって言おうとして、頬に熱い感覚がしたんだ。
私は、無意識のうちに泣いてたんだ…。
そんな資格、ありはしないのに。
「…梨華ちゃんが見てるよ?」
「不可抗力だよ」
答えたのは梨華ちゃん本人だった。
怒った様子もなく、しょうがないよって少し笑ってこっちを見てた。
「教えてくれるよね? なんで紺野と別れたのか。なんか事情があるんでしょ?」
「…………」
そんな優しくされたら、言わないワケにはいかないじゃん…。
私は、あはって笑ってよっすぃーから自然に離れると、近くの机に背を向けて座った。
「紺野の為だよ」
「? どういうコト?」
よっすぃーは私の意図に気づいてか、近づきはしなかった。
人に泣いてるトコロを見られたくないって、私いつも言ってたもんね。
- 174 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月28日(火)17時29分28秒
- 「なんか…なんか私、ダメなんだよね…。なんか、紺野のコト困らせてばっかでさー…。そのクセ
紺野のコト理解してると思ってたけど、全然わかってなかったんだよね…」
「ごっちん…?」
心配そうに梨華ちゃんが呼びかけてくるけど、私の言葉は止まらない。
溜め込んでいた想いが今、涙と一緒にあふれ返ってきてるんだ。
「今日さ、紺野のコトが好きだっていう人と話してさ。その人、ホントに紺野のコト判ってたんだ。
紺野の不安なコトとか、ぜんぶ」
「………」
なんとなく、よっすぃーは判ってくれたみたい。
私を、このまま泣かせておいた方がいいって。
何にも言わずに、私と背中をくっ付けるみたいにして机に座ってきたのがその証拠。
「それで思ったんだ。『もしかしたら、私は紺野には釣り合わないんじゃないか』って…」
「そんなこと…っ」
梨華ちゃんの戸惑った言葉。でも私は首を振る。
「ううん、ホントそうだと思う。だから、距離が欲しかった。紺野に自分の気持ちを確認してもらう
為にも、距離が…」
それで、本当に離れることになっても。
- 175 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月28日(火)17時30分05秒
- 「ごっちんは…それでいいの?」
よっすぃーの声は、静かなのに凄く心に響いてくる。
その声はもう、怒ってないみたいだった。
いいかって? そんなの…
「いいワケないじゃん…っ。あたし、そんな聞き分けのイイ方じゃないよ…っ。全然優等生なんか
でもないっ。フツーの独占欲が強くてワガママなヤツなんだよっ。紺野を離したくなんかないっ!
誰にも渡したくなんかないよぉ…っ!」
ころがり出た本音。
俯くと同時に、膝元に涙が落ちる。
紺野と離れることを望んでいながら、紺野と離れたくないって強く思ってる。
矛盾した二つの気持ちはごちゃまぜになって、ひとつの強い感情がこみあげてきたんだ。
激しくて止めようがない感情が。
「でも…っ、でもダメなんだよ…っ」
後はもう言葉にならなかった。
ただ、ひどく熱い吐息と嗚咽が教室に響くだけ。
よっすぃーも梨華ちゃんも、なんにも言わなかった。
こんな強く想っていても、通じない気持ちもあるんだ…。
久しぶりに感じた喪失感を、私はただよっすぃーの背にもたれてぼんやりと受け止めていた。
- 176 名前:tsukise 投稿日:2003年01月28日(火)17時36分05秒
- 今回更新はここまでです。おおっ3日連続できましたね(^^ゞ
…というか、ここが一番キリがいい場所だったんで…(^^ゞ
そろそろ…大詰め…カモ?
>>167 こんごま推進派さん
痛いですね〜、自分も書いてて読み直すとなんでこんなに痛くしてるのか
ビックリするぐらいです(^^ゞいつも応援レスをありがとうございますッ!
>>168 ウィンキーさん
当たってしまいましたか〜(^^ゞごっちんの決断、結構悩んだ末に
こんな形になってしまいましたが…。紺野に頑張ってもらうしかないですね〜(^^ゞ
>>169 ゆちぃさん
痛・泣ける系、私もかなり好きなんですよね〜別板でも探すくらい(^^ゞ
応援レスに励まされつつ、続き早めにUPさせていただきますね〜(^^ゞ
- 177 名前:名無しゴマー 投稿日:2003年01月29日(水)01時48分38秒
- ぬああああ、ごっちーん!(涙
ひたすら胸が痛いです。
多分、これがごっちんの痛みなんだろうなぁ…あう…
作者様、連続更新お疲れ様です。
ここを毎日覗くのが日課になってます(笑
空版ともども応援してますので、これからも頑張ってください!
- 178 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時48分34秒
- 家に帰ると、制服を着替えることもしないで机に向かってうつ伏せる。
後藤さんの事。柴田さんの事。そして自分の気持ち…。
全部が不安と悔恨だらけだった。
どうすればいいのかわからなくて、頭が煮つまって重かった。
『紺野には悪いケド私、まだいちーちゃんのコトが好きなんだよね。ただ、寂しかっただけなんだよ。
それで紺野と付き合ったんだ。――だから、ゴメンね』
嘘だ…、絶対そんなの嘘に決まってる。
後藤さんは、そんな人じゃない。
ただ、人を傷つけるような事を平気で言う人なんかじゃない。
じゃあ、どうしてあんな言葉を言ったの?
それはきっと、私のためを思ってだ…。
だって、最後に言った『ゴメン』が凄く優しかったから…。
優しくて…切ないものだったから…。
- 179 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時49分12秒
- 私はこれからどうしよう…? どうすればいいんだろう…?
柴田さんの気持ちに応える? それも多分選択肢の一つ。
後藤さんにもう一度気持ちを伝える? それも間違ってない…。
でも…けど…だって…。
取り止めのない言葉が頭の中で繰り返される。
そんな風に考えてる自分に…優柔不断な自分にイライラしながら。
その日は結局、なんの答えも出ないまま机の上で眠りについてしまったんだ…。
- 180 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時49分48秒
- 次の日の集会。
すべてが一変した。
後藤さんとの会話がなくなった。
ううん、仕事の事ではちゃんと話してくれる。
けど、それ以上のことは何もなくなったんだ。
「あの…後藤さん」
資料を持っていった時も、
「そこの机に置いといて。後で目を通す。じゃあ、高橋を手伝って」
私の方を見ることもせずに、それだけ言った。
「あ…はい」
普通に話しかけようとした時もどこか投げやりに、
「あー…、悪いケド今忙しいんだ」
内容も聞かず、突き放されたんだ。
その机の上には、そんなに忙しい量の仕事はなかったはずなのに。
前はそうじゃなかったのに…、後藤さんが自分に対して無関心に見えた。
それとももう、無関心になってしまっている…?
- 181 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時50分38秒
- 「あさ美ちゃん?」
「…えっ? あ、なに?」
席に戻って、仕事をしていると隣の愛ちゃんがどこか心配そうに話しかけてきた。
「…後藤さんと何かあった?」
「ふぇっ!? あ…、ううんっ、なんでもないよっ」
「……そう?」
周りからも、変に見られてしまってるって事なのかな…?
愛ちゃんは、しきりに私と後藤さんを見比べて何かを考え込んでしまっていた。
「ほんと…なんでもないから」
「……うん」
続けて言うと、愛ちゃんは渋々って感じで頷いてくれた。
これは…私が解決しないといけないことだと思うから…今回ばかり誰にも相談できないんだ。
自分で蒔いてしまった種だから…。
その後気づかなかったけど集会が終わるっていう時、愛ちゃんは後藤さんに何事かを話して
一緒に教室を出て行ってたんだ。
- 182 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時51分19秒
- 「なんで…っ、どうしてですか!?」
高橋の信じられないって声。
誰もいない屋上では、鋭く響いてくる。
あれから屋上に呼び出されて、高橋はズバリ私と紺野の事を訊いてきたんだ。
あまりにも不自然な私らの様子の事を。だから…話したんだ、私らの事を。
自分でも判ってた。
紺野の事をあからさまに避けすぎてるって。
けど、普通に接することができるほど私はまだ大人じゃないんだ。
近づけば、またきっと辛い思いをさせる。だったら極力離れていれば、紺野だってきっと…。
「後藤さんは、あさ美ちゃんの事を大切に思ってるんじゃなかったんですか!?」
高橋の声は、どこか懇願するみたいに私を攻め立てる。
でも…、それに対して私はなんの感情も起き上がらなかった。怒りも、苦しいって気持ちも。
多分1つだけあったとしたら、罪悪感なのかもしれない。
……同じヒトを好きになった高橋に対する。
- 183 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時52分22秒
- 「…思ってるよ。だから、離れたんだ。紺野に…もう一度チャンスを与えたかったから」
もう高橋に飾った言葉なんて必要ないと思ったから、そう言った。
きっと彼女とは本心で話さないと失礼だから。
「チャンス…? 一体なんのですか?」
「選ぶチャンス」
「選ぶ…?」
よくわからないって顔をする高橋。
だから、言葉を続けた。
「…もしかしたら、紺野の一番は私じゃないかもしれないから」
「…っ」
高橋は、ぐっと息を飲んだ。
そんなことない、とでも言いたかったのかもしれないけど、それが不確かな事だって本人が
一番知っていたから言葉に詰まってしまったんだと思う。
ヒトの心なんて、一番不透明で判らないモノだから…ね。
そのまま私は屋上の手すりにもたれかかって、校庭を見下ろす。
当たり前だけど、もうこの時間に部活をしているクラブなんてなくて誰もいなかった。
誰も―――いない。
心に重く圧し掛かる言葉。
- 184 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時53分02秒
- 私には紺野がいた。
いつだって振り返ったら、はにかんだみたいな笑顔で『後藤さん』って呼んでくれる紺野が。
いつからか、それが当たり前になってた。
当たり前のことなんて、この世の中になんにもないのに。
いちーちゃんとの事で、判ってたはずなのに…。私はまた、同じ過ちを繰り返して…
そして――紺野は、私の心から離れていった。
あー…、正確には私が離してしまったのか…。
私は俯いたまま笑ってみせる。
どんなにやっても、力の抜けたような諦めたみたいな笑いにしかならないのは判ってたけど。
高橋もそれに気がついたみたいで、何かを理解したみたいに…大きく肩を落としてうな垂れた。
「後藤さんは、バカです…っ」
「…そうかもね。でもいーよ、紺野が自分の一番のヒトを見つけてくれれば」
「ほんとに…バカです…っ」
振り返って笑って見せると、高橋も笑ってくれた。
泣きそうな顔で、それでも必死に笑ってくれたんだ。
- 185 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時53分42秒
- 真っ暗になった校舎を一人で歩く。
集会が終わってから後藤さんの姿を探したけど、どこにもいなくて結局声もかけれずに
今、こうして一人で帰路を歩いているんだ。
「寂しい…なぁ…」
不意に呟いてしまう言葉。
いつも後藤さんと一緒に帰っていたから、こんなにも一人が寂しいなんて思いもよらなかった。
そう…一人になって、初めて後藤さんの存在の大きさを感じてしまったんだ。
「紺野さん」
「えっ? あ…っ、柴田さん」
呼びかけられた声に顔を上げると、下駄箱にもたれかかるようにして柴田さんが立っていた。
「一緒に帰らない?」
「え…っ、あの、でも…」
「見たところ、一人っぽいしさ。まぁ、良ければ…だけど。それとも―――あたしじゃイヤ?」
「あ…」
なんだろう…?今の言葉。どこかで聞いた…。
『あたしじゃイヤ?』…。どこで聞いた?誰の言葉…?
喉元まで出ているのに、思い出せない。
「紺野さん?」
「あっ、ス、スイマセンっ。あの、ご一緒します…」
ぼんやりしていた私は、慌てて返事を返す。
折角誘ってくれているのに断るのは申し訳ないし、今一人で帰るには…寂しい気持ちだったから。
- 186 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時54分27秒
- 「あれ? 紺野?」
「え…?あ、吉澤さんに石川さん」
校門を出ようとした時、壁にもたれかかっている2人が意外そうな顔をして話しかけてきたんだ。
それから、何かに納得したみたいに柴田さんと私を交互に見てくる。
なんだか…きまずい。
「帰るんだ?」
「あ…はい。石川さんたちもですか?」
「ううん、私達は…人を待ってるんだ。まだ残ってるはずだから」
石川さんは『誰』とは言わなかった。
でも、言いかけた言葉にそれが誰かわかって、ちょっと心が痛んだ。
「…ま、辛いよね」
「…えっ?」
いきなり言われた言葉に、顔を上げて吉澤さんの方を見たけど、何事もなかったみたいに校舎の
方を見上げてる。
吉澤さんって、時々こんな風に曖昧な表現をするけど…それはいつだってちゃんと意味があるもの
だったりする。
今だって、きっと…。
「生徒会長だしね」
「…っ」
ビクッと心臓が跳ねた気がした。続けて言われた一言に。
- 187 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時55分10秒
- その言葉は、一体何を指しているのかわからない。
誰に対してかも。
あの人が生徒会長だから、こんな遅くまで仕事をしているのが辛いよねって話なのか。
それとも…?
「吉澤さんって、ずるいよね」
気がついたら、柴田さんが私の前に立って口を開いていた。
少し鋭い口調が、怒ってるんだってわかる。
でも、吉澤さんは一度柴田さんに視線を向けて、それからつまらなそうにため息を一度ついて…
「紺野ほどでもないケドね」
そう言ったんだ。
私が…ずるい…?
ずっしりと、何かが肩にのっかかってきたような感覚がこみ上げてくる。
重い重い、罪の意識と一緒に。
「…行こう、紺野さん」
「あ…っ」
柴田さんは腕を取って、歩き出す。
自然と引っ張られる形で私も学校を後にしたんだ。
ふっと振り返ってみたとき、石川さんも吉澤さんも、じっとこっちを見ていたのが目に入った…。
- 188 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時55分52秒
- 「…でさ、そのとき友達がさ…」
あれから、ゆっくり歩きながら話をする。
落ち込んでしまっている私の事を気遣ってくれてるのか、色々話しかけてくれる柴田さん。
私は相槌をうってはいるけど…正直、上の空だったんだ。
ただ、頭の中を占めるのは―――楽しかった後藤さんとの時間…。
さっき、吉澤さん達と話をしたから余計、後藤さんの事を考えてしまって。
今となりで話してくれているのは後藤さんじゃない。
けど、いつも隣に立っていてくれたから…いつも楽しそうに『あはっ』て笑ってくれていたから、
だから自然と柴田さんを後藤さんと重ね合わせて見てしまっていたんだ。
こんなの、柴田さんに失礼だって判ってる。
でも、声・瞳・表情が後藤さんに見えて…。
その時、気づいたんだ。
後藤さんが私の中に市井さんを見ているって思ったけれど、本当にそうだったの?って。
今の…自分みたいに。
思い返すとこの3ヶ月、後藤さんは市井さんの話を決して私にしなかったと思う。
最後にちゃんと話したのは、墓前に向かい合ったあの時だけだったはず。
もちろん、私が疑問に思ったり訊ねた時は答えてくれたけど、それ以外では多分なかった。
- 189 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時56分38秒
- いつだって、後藤さんは『紺野は』『紺野は』って呼びかけてくれてた。
熱っぽい眼差しで触れたときだって『私は紺野だから…紺野だから触れたいって、そう思ったん
だからね』って、言ってくれた。
そうだ…いつだって、後藤さんは『私』だけを見つめてくれていたじゃない…っ。
それなのに自分は、後藤さんの気持ちを信じきれずに確かめるみたいに問いかけて。
一人になることをずっと恐れていた後藤さんの口から、別れの言葉を言わせてしまったんだ。
孤独の痛みを誰よりも知っている後藤さんは、どんな気持ちでその言葉を言った…?
今だって、どんな気持ちでいるの?
『あたしじゃイヤ?』。
さっき思い出せなかった言葉。あの言葉を言った人を思い出した。
他でもない、後藤さんだ…。
なんて…今の私には重い言葉なんだろう?
つきせぬ思いがあふれかえってくるのがわかる。
胸が締め付けられて息苦しい。目の奥もじんじんしてる。
『紺野ほどでもないケドね』
突然に、吉澤さんの言葉が思い出される。
- 190 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時57分25秒
- ほんとだ…、私ってずるい…。
自分だけが、辛い思いをしているみたいに考えて…。
どうして私は、後藤さんを信じきることができなかったの…?
どうして、ちょっとした不安に流されるみたいに、今ここにいるの…?
―――私は、ここにいていいの?
思い出したらもう止まらなかった。
ただ心に強く浮かび上がってきたのは『後藤さんに逢いたい』という気持ち。
「紺野…さん?どうかした?」
気がついたら私は俯いて立ち止まっていた。
心配したような声で、柴田さんが顔をのぞきこんでくる。
こんなにも、想ってくれているのに…。こんなにも私の事を気にかけてくれているのに…。
でも、その想いに流されて本当の気持ちを見失っちゃダメなんだ。
『変われるからいいコトだってあるんだよね…』
いつか聞いた後藤さんの言葉。
ほんとに、そうですね…。
私の周りがいっぺんに変わったから気づいたことがあった。
自分が本当は誰を強く想っているのか。誰に強く想われたいのか…。
胸にこみ上げてくるのは、失いたくない…あの人のぬくもり。
だから、私は今ちゃんと伝えなきゃいけないんだ。
- 191 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時58分45秒
- 「柴田さん…、ごめんなさい…っ」
「え…?」
「私、柴田さんの気持ちには応えられません…っ」
顔を上げて、しっかりと瞳を見据えて言った。
一瞬ビックリしたみたいに目を見開いて、それから柴田さんは何かを悟ったみたいに口を開いた。
「理由を聞かせてもらっていい?」
優しい声。
でも、そんな声までもあの人に…後藤さんに重ねてしまうくらい決意は固かったんだ。
「私…気がついたんです。市井さんの思い出に縛られていたのは自分だったんだって。確かに
後藤さんと一緒にいて、不安になったりすることはあります…。だけど、それ以上に後藤さんと
一緒にいてドキドキすることがたくさんあるんです」
その時何故か、後藤さんが別れを告げたときの背中が脳裏をよぎった。
本当に大切なものを、どうしても諦めなくてはならない…そんな切ない想いが伝わってきたあの背中。
私がもう少し強かったら消せたかしれない…、私がもう少し優しかったら消せたかもしれない悲しみ。
もう、こんな後悔をしたくないんだ…っ。
- 192 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)09時59分53秒
- 「私…後藤さんと一緒にいたいんです…。後藤さんじゃなきゃダメなんです…後藤さんじゃないと…」
涙が零れた。
もう…顔をあげていられなかった。
ただ口から出た言葉は、心の底から思っていたもので言葉にして初めて想いの深さを実感したんだ。
「そっか…わかった。そんな強い想いがあるんじゃ入り込めないね…」
柴田さんの、しょうがないっていうような言葉。
滲んだ視界には、どんな表情でその言葉を言ったのか判らなかったけど、きっと傷つけたと思う。
だから、私は
「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」
そう言って、頭を下げるしかなかったんだ。
「そんな謝らないでよ、なんかあたしが寂しいじゃん。ホラ…それならこんなところにいないで他に
行くべき場所があるんじゃない?」
行くべき場所。それはもちろん、あの人のところ。
「多分、後藤さんは不安なだけだと思う。その不安を受け止めてあげなよ?」
もう一度顔を上げて見た柴田さんは、優しく笑ってくれていたんだ。
だから私は、精一杯の笑顔で頷いて走り出した。
- 193 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)10時00分35秒
- 「…あたしもツメが甘いよね〜…惚れた弱みか…」
私の走り出した後、呟いた柴田さん。
その言葉は聞こえなかったんだけど、その後私が振り返って
「柴田さん…っ、あたしなんかを好きになってくれてありがとうございますっ」
って叫んだ時、
「最後の最後まで、まったく…」
って頭を掻きながら笑っていたのは、はっきり判ったんだ。
不安だった。
不安なのは、何も後藤さんだけじゃない。
私も、押し隠し続けた不安の爆発を抑えることはできなかった。
判ってる。
今、後藤さんの不安を癒そうって目的で、私自身の不安を紛らわせようとしてるってことは。
だからもう夜なのに、こんな風に走り出したりして…。
笑われたって、どうだっていい。
私らしくないって笑われたって、もう何とも感じない。
―――逢いたい。
私は逢いたかった。
私の横から、いなくなってしまった後藤さんに。
- 194 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年01月29日(水)10時01分15秒
- 「ハァ…っ、ハァ…っ」
後藤さんの住むマンションの前で立ち止まる。
激しく吐く息は白くて、その向こうの闇はクリアに凍り付いているのに、走ってきたせいか
私の身体は熱くて、汗までもにじんでる。
闇雲に走りすぎた…、胸が痛い。
一度呼吸を整えて、目の前の建物を見上げる。
でも…。
真っ暗な後藤さんの部屋。
「そ…んな…」
私の目の前も真っ暗になった気分になる。
自分でも判らないうちに、私は呟いていた。
「ぜんぶ…、私が…悪いんだ…っ」
後藤さんを、あの人の心を大切にすることで私は、逆に大切にされてた。
後藤さんの心に踏み込む勇気のなかった私は、いつだって…。
そして、とうとう、私は…後藤さんを失った。
―――後藤さんはどこかに行ってしまった。
- 195 名前:tsukise 投稿日:2003年01月29日(水)10時06分09秒
- 今回更新はここまでです。多分…連続更新は今日までですね(^^ゞ
や…ストックがなくなったんで(^^ゞ上手くいけば次回で終了です♪
…にしても、『さくら』『おとめ』って…(^^ゞ
個人的には、紺野・高橋・やぐっつぁん・なっちのいる『さくら』派かも(^^ゞ
>>177 名無しゴマーさん
ごっちん、痛すぎですね…。でも、そろそろ報われる…カモ?です(^^ゞ
いつも覗いて下さってありがとうございますっ!空板の方は、今こっちを
やってるんで止まってますが…(^^ゞ応援レスに励まされながら頑張りますっ!
- 196 名前:こんごま推進派 投稿日:2003年01月29日(水)10時35分48秒
- 連続更新、お疲れ様です。
よしこ、かっけ〜ッス!!でもって、柴ちゃんいい奴だ!!
紺野も自分の気持ちに気づいたみたいだしこのまま...!
ごっちん、どこにいるんだ!早く帰ってきてくれ!って感じです!
続き、期待してるんで頑張ってください。
- 197 名前:ゆちぃ 投稿日:2003年01月29日(水)20時27分36秒
- 連続更新、おつかれさまです♪
毎日どっきどきで読んでますよぉ。
よっすぃ、ぐっさりくるコトいいますね・・・。
しかもビンゴっ!なところを。
ごっちんも痛いです。ムシするくらいしかできない・・・なんかわかる・・・。
てか、どこ行っちゃったのぉ??カムバック!ごっち〜ん!!!
娘。分裂。私も『さくら』の方が、どっちかっていえばいいなぁ(笑)
- 198 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月01日(土)15時46分37秒
- またまたお久しぶりです。
いちようこっちで来ましたw
自分は推しメンが別れたな〜って部分もありますが。
高紺一緒で嬉しいなって思ってる部分もw
両方応援しそうです。
ごっちんどうなったんだよーごっちん!!!
続き気になるっす!がんがってください。
- 199 名前:名無し( ´Д`)ファン 投稿日:2003年02月03日(月)11時45分41秒
- とってもお久しぶりです。
冬休みに入って入院してしまい、なかなか来れなかったのですが
やっと一日だけ外泊許可が下りたのでさっそく見に来ました。
いやはやしばらく見ないうちにこんな展開に…。
今度はいつ帰って来れるか分かりませんが、
作者様、これからも頑張って下さい。でわでわ。
- 200 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時26分24秒
- 疲れた…。
今日は特に…。
ガックリと肩を落としながら、校舎を後にしてため息をつく。
こんなにも、一日が長いものなんだって感じたコトなかったかも。
それもこれも全部、自分が招いたコトが原因なんだけど。
胸を占めるのは、紺野への罪悪感だけ。
何度謝ったって、伝わるコトはないんだろうけど謝れるモノなら謝りたい。
「ごっちん」
「え? あー、よっすぃーに梨華ちゃん…。なに、2人ともどしたの?こんなトコでさ」
顔を上げた先に、よっすぃーと梨華ちゃんが立ってた。
ずっとここにいたのか、とっても寒そうだ。
「こんなトコでって…ヒドイなぁ、ごっちんを待ってたのに」
「え?そーなの?」
梨華ちゃは『も〜』なんて言いながら呆れてる。
その後ろで、よっすぃーが静かに壁にもたれかかっていた背を離して近づいてきた。
「一人でしょ? 一緒に帰ろうと思ってさ」
「あー…」
痛いトコついてくるよね、よっすぃーは。
- 201 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時26分57秒
- 「ほ、ほら、帰りにマックでも寄ってさー」
梨華ちゃんの弾んだ声。
でも、こーゆー時の言葉に限って、私には重いものだったりするんだよね。
「悪いケド…」
「いいじゃん」
? よっすぃー?
いつもと違う、ちょっと怒気を含んだよっすぃーの言葉に『え?』って眉をしかめた。
でも、よっすぃーは全くの無表情でこっちを見てる。
「紺野、柴田さんと帰ったよ」
「! …そう」
思わず紺野の名前に、身体が反応してしまった。
そのコトに…離れても尚、紺野の事を考えてる自分に苛立ちを覚えてしまう。
女々しいヤツ…。
心の中で悪態をつく。
同時に、身体の力が抜けるような無力感が、心身を蝕んでいくのがわかる。
今となっては、もうなにもかもがわからなくなっていた。
何が自分にとって良かったのか、紺野にとって何をどうすれば良かったのか?
本当にこれで良かったのか…とか。
高橋にはカッコつけてあんなコト言ったけど、ホントは醜い感情がグルグルしてるんだ。
ただ、それを悟られたくなかっただけ。
- 202 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時27分42秒
- 「…ごっちん」
「ん?」
「紺野のコト、好きなんでしょ?」
「…………」
黙っていると、よっすぃーがいきなり襟元をぐいっとつかみ寄せてきた。
「ちょっ、よっすぃー…っ!」
「いいよ、梨華ちゃん」
止めようとする梨華ちゃんを、私は制した。
よっすぃーは、別に乱暴なコトをしようとしてるんじゃないんだって判ったから。
だって、瞳がどこまでも真剣で…何かを訴えようとしていたから。
「ごっちん…酷なコト言うけど、絶対にごっちんは間違ってる。離したくないなら相手の気持ちもだけど
まず自分の気持ちを大切にしなよ…っ」
「よっすぃー…」
梨華ちゃんが目を細めて呟いた。
きっと、そんなコト考えてるなんて思いもよらなかったんだろう。
「離れていても心があれば、なんてウソだよ。離れれば離れるほど心の糸は切れやすくなるんだ。
時には我侭にならないと、本当に失いたくないものを失ってしまうことになるよ?」
よっすぃーが、そう言うのは当然の事だと思う。
言った言葉も態度も間違ってない。
- 203 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時28分34秒
- 対等な関係だと認めているからこそ、こうやって厳しくて辛いコトを言ってくれる。
ここで同情や優しさを示すのは親友として間違ってるから。
けど…。
けど、そんなよっすぃーの正しさが今の私にはどうしようもなく疎ましかった。
「…そうかもね」
ゆっくりと、かけられたよっすぃーの手を払いのける。
「ごっちん…?」
梨華ちゃんが何か言いかけるけど、気にも留めない。
「やっぱ悪いケド、帰るわ」
「ちょ…っ」
「マックは今度にしといて」
崩れた襟元を直すこともしないで歩き出す。
何もする気にもならなかった。ましてや、梨華ちゃんと楽しくおしゃべりって気分でもない。
後ろでよっすぃーが何かを叫んでいたけど、私の耳には届かなかったっけ…。
- 204 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時29分15秒
- 家に帰ると、暖房だけをつけて机の前に座り込む。
もう、なんにも考えたくなかった。
紺野のことも、自分のことも…。
こんなに辛い想いをするんだったら、いっそ嫌ってしまえれば良かったのに。
そんな事まで思ってしまうぐらい、疲れ果てていた。
「…もうっ!」
乱暴にコートを脱ぎ捨てて―――カンッ、と何かが床を転がった。
暗がりの向こうに転がってしまったそれを、私は目を凝らして確かめる。
それから…思わずため息がでた。
渋々、ゆっくり近づいて拾い上げる。
「どうして…いつも…」
言いかけた言葉は最後まで続かない。
ただ恨めしげにそれを見つめるだけ。
私の手の中にあるそれは―――携帯電話。
どんな時だって手放すことができないものになってしまっているものだったんだ。
- 205 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時29分53秒
- いつだって、この携帯電話がすべてだった気がする。
いちーちゃんとの過去も…、紺野との出会いも…。
ふと、誰が携帯電話なんて考えたのか、なんてどうでもいいコトを考えてしまう。
その人は、どんなコトを思って作った?
どんな風に使われるんだろうって思ってた?
答えなんかわかる筈はないケド、きっと床に投げ出されるコトだけは考えてなかっただろうな。
携帯を握って、机の前にもう一度座る。
そして、ぼーっと画面を覗き込みながらメールを確認した。
当然だけど、私のメールの大半を占めるのは…紺野の文字。
もちろん、その他にもよっすぃーや梨華ちゃん、安倍さんのモノもあるけど、ほとんどは紺野だ。
『今日は、焼きいもを作って食べました』とか。
『今度の土曜日、どこかに出かけませんか?』とか。
中には『えっと、あの、おやすみなさい』って、いつもの困ったみたいな顔が浮かんでくるような
そんなメールもあって、何故か笑みがこぼれてしまう。
- 206 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時30分31秒
- けど…そんなメールも2日前から途絶えてる。
どれだけ問い合わせてみても、新着メールは1つもない。
当たり前なんだケド―――寂しかった。
「あたしって…ヤなヤツ…だよね」
離れてもやっぱり、考えてるのは紺野のコト。
考えたくない…考えたくないのに、絶対にそこに行き着く。
紺野には、きっと重荷になるこの気持ち。
無理にでも振り切りたくて…私はメールを全部消去したんだ。
「もー…ヤダ…」
携帯を机に放り出して、うつぶせる。
途端に襲い掛かってくる睡魔。
そういえば、ここのトコロ良く眠れていない…。
睡眠第一の私なのに…。
ぼんやり、そんなコトを考えながら…私は深い眠りについてしまっていたんだ。
- 207 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時31分09秒
- 時刻はPM9:30を回ったトコロ―――。
石油ストーブが給油になったことを知らせる音で目が覚めた。
「痛……」
無理な体勢をずっとしていたせいか、身体の節々が痛んだ。
それから、ぼんやりとした頭を覚まそうと思って、窓を開けた。
「うわ…寒いはずだわ…」
白い息を吐き出しながら、両手で身体をこすって呟いた。
寒さの理由、それは真っ暗な空から降ってくる白い粉上の物体…そう『雪』のせいだったんだ。
そういえば、天気予報で関東でも雪が降るって言ってたような気がする。
その時、何故か私は下の通りに目を向けた。
何故そうしたのかは判らない。
ただ、なんとなくそうしたかったんだ。
「…!?」
そして驚いた。
私の視線の先、通り向かいの壁にもたれかかるようにして―――紺野がいたんだ。
遠目でも判るぐらい震えている身体。
一体、いつからそこにいたのか、なんでココにいるのか判らなかったケドかなり弱ってる。
- 208 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時31分54秒
- 「何やって…ッ!」
私はコートも羽織るのも忘れて部屋を飛び出した。
それからエレベーターのノロい動きに、ボタンに向かって苛立ちをぶつけながら降りて…
玄関を出たすぐそこの通り。
やっぱり…紺野がいたんだ。
「こんなトコで何やってんのよ…ッ!風邪引くじゃんか!」
「…………」
少し声を荒げて言うけど、紺野はぼんやりとした表情で私を見つめるだけだった。
灰色に濁った瞳は、焦点があってなくて私は余計に不安になる。
「おいで、紺野」
それだけ言ってマンションに進むけど、紺野は動こうとしない。
ただやっぱり、何を考えているのか判らない表情で私を見るだけ。
「紺野っ!」
もう一度強く言うと、紺野はビクッと身体を震わせて俯いてしまった。
あー…怖がらせた…かも?
でも、このままここにいてもラチがあかない。
とにかく部屋に連れて行こう。そうじゃなきゃ話もできないし。
しばらく考えて、私は紺野の腕をとって中に入っていったんだ。
触れた瞬間、一瞬離してしまいそうになるぐらい紺野の手は冷たかった。
- 209 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時32分41秒
- ヴ――――ン…
のぼりのエレベーターの中で、ふと考える。
もしかしたら、紺野は私が部屋にいることに気づかないで、ずっと待っていたのかもしれないって。
部屋の電気がついていなかったから、いないと勘違いして…。
自惚れかもしれないけど…そう思ったんだ。
部屋に戻って紺野をリビングまで連れてくると、私は慌しく部屋を動いた。
ストーブの風量を強めて、風呂の湯を沸かして…。
「とりあえず、身体を温めないと…っ。紺野、私の服を貸すからシャワーを浴びて…っ…!!」
そこまで言いかけて紺野の方に振り返ろうとして、軽い衝撃が背中を押した。
ビックリして首だけを向けると、紺野が私の背中にすがりつくみたいに顔を埋めていたんだ。
「…い…っ、…さい」
「え?」
「…なさい…っ、ごめんなさい…っ」
「紺野…?」
小さな声に聞き返すと、紺野は搾り出すみたいに何度も何度も謝ってきた。
時々鼻をすする音も混じっていて、泣いてるんだってわかる。
―――胸をつかれた…。
なにがどうなっているのか判らなくて、私はただ戸惑ってしまって動けなくなった…。
- 210 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時33分22秒
- どのぐらいそうしていたんだろう?
多分ほんの5、6秒ぐらいだけど私には、ずっと時が止まっていたようにも感じられた。
ただ、紺野がきゅっと私の制服の後ろを掴んだコトで、ようやく時間が動き出したんだ。
「私…馬鹿だった…。変な不安にとらわれて大事な気持ちを見失ってた…」
「…?」
紺野が馬鹿…?
大事な気持ち…?
よく判らなかったけど、紺野は何かを必死に伝えようとしてくれているんだったのは判る。
今まで言えなかった何かを、今…やっと言おうとしている。
だから、その先の言葉をじっと待ったんだ。
そしたら、涙声に混じって紺野は言ってくれたんだ。
「私…、後藤さんが好き…好きなんです…っ。他の誰かじゃダメ…後藤さんじゃなきゃ…っ」
って。
一番聞きたかった言葉を。
でも、一番聞くことができなかった言葉を。
それで判ったんだ。
紺野は、この言葉を伝えるために私の所に来てくれたんだって。
柴田さんと帰ったはずの紺野が…、私の所に。
- 211 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時34分10秒
- ひどく不器用な紺野のその言葉が、一瞬にして私の中の憂鬱な気持ちを消し去っていくのがわかった。
驚くほどに、綺麗サッパリ。
全身についた泥が、清水で洗い流されていくみたいな、そんな心地。
途切れてしまったと思った気持ち。
でも、それは間違いだったんだ。
だってほら、こんなにも紺野は一生懸命自分の気持ちを伝えてくれてる。
私だって…同じだ。
「お願いします…っ、側にいさせてください…後藤さんの側に…いさせてください…っ。ずっと一緒に
いたいんです…っ」
「…もういいから、紺野…」
「後藤さんの側にいたい…っ、ずっと…ずっと…」
「もういいって、紺野…っ」
「あ…っ」
呪文みたいに繰り返す紺野の言葉を遮って、私は振り返ると紺野を抱き寄せた。
紺野の身体は、今までになくひどく冷たい。
ただ、嗚咽する吐息と、そして涙だけが酷く熱かったんだ…。
- 212 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時34分55秒
- 『離したくないなら、相手の気持ちもだけど、まず自分の気持ちを大切にしなよ…っ』
よっすぃーに言われた言葉。
聞いた時は、なんて身勝手なんだろうって思った。
でも、そうじゃない。そーゆー意味じゃなかったんだ。
きっとよっすぃーは『自分の中の気持ちを見つめなおせ』って意味で言ってくれたんだと思う。
相手の気持ちを探るより先に、自分の気持ちを確認しろって。
そして気づいた自分の気持ち。
弱い自分は見せたくない、でも…紺野になら…。
「紺野」
「…?」
「ホント言うとさ…私、不安だったんだ。ずっと紺野と一緒にいていいのか…私なんかが一緒にいて
いいのか…。もっと他に、紺野にとっていい人がいるんじゃないかって…」
多分、今までで一番、私は頼りない表情をしていると思う。
こんな不安を打ち明けるなんて、考えたコトなかったから。
でも、ちゃんと紺野には伝えたかった。私の気持ちを。
紺野は少し見上げるように私の顔を見て、首を大きく振った。
そしてたどたどしく、『後藤さんだから…後藤さんじゃなきゃ…』って何度も呟いた。
それだけで胸がいっぱいになる。
- 213 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時36分24秒
- 「ん。紺野の気持ち、判ったから…。ありがとう、伝えてくれて。それから…ゴメン。紺野に酷いコト言って」
優しく頭を撫でると、紺野はまた首をふりながらも笑ってくれた。
真っ赤になった瞳で、涙に濡れた顔で…それでも笑ってくれたんだ。
だから、自然と言えたんだ。
「私も…その…紺野のコト、好き…だよ?」
って。
「ね、紺野」
「はい…?」
「ずっと側にいてくれる?」
ちょっと戸惑ったみたいな、それでも恥かしそうな顔をする紺野。
でもゆっくりと頷いてくれた。
「……はい」
「ずっと、ずーっとだよ?」
「はい…っ。離れてって言われても、もう離れません」
思わぬ言葉に、ちょっと吹き出してしまう。
「それは、ちょっと怖いなぁ…」
でも、紺野は楽しそうに私の表情を見てる。
なんか、してやられたってカンジかも。
- 214 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時37分03秒
- 「後藤さんも…その…あの…」
ん?って顔で見つめ返すと紺野は言いよどんでしまった。
だから、
「離れないよ?ってゆーか、もう離さないし」
さっきの仕返し。
少し強く紺野を抱きしめてやったんだ。
途端に、紺野は困ったみたいに顔を赤くして、どうしていいのか判らない表情をする。
あはっ、やっぱり紺野って可愛いよ。
きっともっと困ってしまうと思うから言わないけどね。
『離れれば離れるほど心の糸は切れやすくなるんだ』
よっすぃーはそう言ってたね。
確かに、そうだったかもしれない。
紺野と離れて、私はどうしていいのかわかんなくて、ただ避けることしかできなかったし。
紺野も…きっと、そんなカンジだったと思う。
- 215 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時37分50秒
- でも、そうじゃないコトだってあった。
私と紺野は、こうしてまた想いを繋げることができたから。
だから…ってワケじゃないけど、今度よっすぃーに教えてあげようかな?
『切れやすくなった糸は、もっと強く結んでやればいいんだ』って。
ありがとうって言葉と一緒に…。
「紺野…」
「? あ…」
優しく呼びかけて、紺野と向き合うとゆっくりと顔を近づけていく。
紺野は、照れたみたいに一度目を伏せたけど拒むコトはなくって、静かに瞼を閉じた。
唇が触れ合う瞬間、薄く開いた瞳の先には涙の乾ききっていない頬が綺麗に映っていた。
- 216 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時38分27秒
- その後、雪で冷え切ってしまった紺野にシャワーを薦めて身体を温めさせたんだ。
着替えなんて当然持ってないし、私の服を貸したんだけど、ちょっと手足がブカブカになってて
笑ってしまったっけ。
それから軽く夕食をとって、しばらくのコト。
窓の外ではまだ雪が強く振っていて、紺野が心配そうに見ていたんだ。
多分、帰りはどうしようとか考えてるんだと思う。
そんなに私の家と遠いってワケではないケド、それでも電車2つ分は違うから。
どうしようか…?
このまま帰しても、多分また身体を冷やすコトになりそうだし…。
「ねー紺野?」
「はい?」
んー…ちょっと、言いにくいけど風邪をひかれるよりはマシだし…、
「今夜さー…、良かったら泊まってく?」
「ふぇっ!?」
案の定、紺野のビックリした声。
困ったみたいに私の顔と、窓の外を見比べてるし…。
- 217 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時39分13秒
- 「や、別にとって食べようなんて思ってないし。ただ、きっと今電車止まってるよ?」
その言葉がトドメだったみたい。
しばらく紺野は俯いて悩んでいたみたいだけど、
「あの…、迷惑じゃなかったら…いいですか?」
って恐る恐る訊いてきたんだ。
もちろん、迷惑なんて私が思うワケないし結局紺野は泊まっていくコトになったんだ。
家に連絡を入れて事情を留守電にいれた紺野をベッドに促した。
もう夜も遅いし、私が眠いってのもあったけど紺野の身体も心配だったから。
もちろん、予備の布団なんてないから一緒のベッドだけど。
でも、1つだけ疑問があったんだ。
それは…
「ねー紺野、なんで背中向けてるワケ…?」
そう、私の目の前には紺野の少し遠慮した背中しか映ってなかったんだ。
「そ、その…恥ずかしいから…」
しかも背中向けたまま返事してるし…。
- 218 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時40分08秒
- 「ってか、そんな端にいて寒くない?」
「大丈夫、完璧です…っ」
完璧って…。そんな風に言われたら何もいえないじゃん。
でも私でさえ、ちょっと肌寒いって思うし、絶対紺野も寒いはずなんだ。
だから…ちょっと意地悪をしてやろうと思って、不意打ちで後ろから抱きしめてやったんだ。
「!? ご、ごと…うさん…っ!?」
案の定、紺野のビックリした声。
素直じゃない紺野が悪いんだよ?
だって、抱きしめた身体は全然冷たくて我慢してたんだって判ったから。
「やっぱ、冷たいじゃん…。もっとこっちきなよ」
「え…っ、で、でも」
「いーから、いーから」
ちょっと強引かもって思ったけど、私は紺野の身体をそのまま自分の方に向けて引き寄せた。
やっぱりっていうか、紺野はどうしていいかわかんないような顔で視線を泳がせていたけど。
- 219 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時40分47秒
- 「こうしてると、あったかいでしょ?」
「は、はい…」
「私もあったかいし」
「…………」
「? 紺野?」
返事をしない紺野に、首を傾げて問いかける。
そしたら、何かを考え込むみたいに俯いて、それからゆっくりと私を見据えてきたんだ。
「あの…後藤さん、訊いてもいいですか?」
「ん?なに?」
「その…あの時の言葉…いまでもかわらないですか?」
「?」
あの時の言葉…? なんだろ?
よく判らなくて眉をしかめてしまう。
それを見て、紺野は少し言いにくそうに…でも何かを決心したみたいに言葉を続けたんだ。
「後藤さんに市井さんの代わりに私を好きになったのかって訊いたとき…その…」
いちーちゃんの代わりに…。
あー…そういえば、そんなコトを話したような…。
- 220 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時41分25秒
- って、ちょっと待って。
確かあの時、お見舞いに来てくれたのに急いで帰ろうとする紺野の腕を掴んで、私は何かを
言ったんじゃなかったっけ?
なんだっけ…?
………あっ。
『私は紺野だから…紺野だから触れたいって、そう思ったんだからね?』
そうだ…、確かそう言った。
もしかして、そのコトを言ってるの?
もう一度紺野の方を見たら、少し頬を赤くして恥かしそうに俯いていた。
それを見て確信したんだ。そのコトだって。
「…うん、本気だった。もちろん今でも変わらない」
ここでヘンにごまかすのは、私自身照れくさかったから正直に答えた。
そしたら紺野は、信じられないコトを言ってきたんだ。
「その言葉…信じさせてほしいんです。今、ここで」
って。
何言ってんのよ…っ、って思わず言いかけて止めた。
紺野は顔を赤くしてるけど、まっすぐに私を見つめていたんだ。
なんてゆーか…覚悟を決めたっていうような、そんなカンジで。
そこまでされたら……いくら私でも、正直拒めない。
- 221 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時42分16秒
- 「…わかった」
短くそれだけ答えて、私は紺野に覆いかぶさった。
まさか紺野から言ってくるなんて思ってもいなかったから、逆に緊張してしまったけど、
それでも熱い気持ちは自然と湧き上がってたんだ。
軽く紺野の頬に指を走らせる。
ちょっとくすぐったそうにする紺野に、笑みが漏れてしまう。
それから顎を上げさせて…
「紺野…」
顔を近づけていくと、紺野も自然と瞼を閉じていく。
あと数センチで触れる…その時、私は気がついたんだ。
紺野の身体が小刻みに震えているコトに。
多分、それは寒さからくるもんじゃない。
理由は1つ―――怖いから。
それなのに紺野は、健気にも私を受け止めようとしている。
嬉しいよ? けど、それって違くない?
想いを繋げるって、そんなんじゃないと思うんだ。
だから…――私は、紺野の額に軽くキスをしたんだ。
- 222 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時43分01秒
- 「え…っ? 後藤さん…?」
ちょっとびっくりしながら、目を開ける紺野。
予想外のコトに戸惑ってしまってるんだ、きっと。
だから私は優しく笑って見せて、口をひらいた。
「紺野ー、こんなコトしなくても私は紺野のコト、誰よりも好きだよ?」
一度顔を真っ赤にする紺野。
でも、まだ納得できてないみたいで「で、でも…っ」って小さく呟いてる。
うーん…どうしよう?
ちょっと考えて、それならばって私は意地悪く一度笑うと紺野の頬に…瞼に、とキスを落としていったんだ。
好きだって気持ちと一緒に。
「あ…っ、あの…っ…、後藤…さん…」
まだ何かを言いかける紺野。
だから、最後にその唇に深くキスをしたんだ。
「…ん…っ」
ゆっくりと、でも確実に紺野の身体から力が抜けて、震えがとまっていくのがわかった。
「はぁ…」
唇を離すと、紺野の吐息が私の首筋を撫でていく。
- 223 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時43分49秒
- 「…わかってくれた? …って、紺野?」
違和感を感じて、もう一度紺野を覗き込むと、紺野は規則正しい寝息を立てて…眠ってしまっていた。
おーい…。
…紺野って、安心すると眠ってしまうタイプ?
ってゆーか…マイペース過ぎるよ…。
吹き出してしまいそうになるのを我慢して、紺野のほっぺたを軽く指でつついた。
「可愛い顔してさー…、私じゃなかったら絶対襲われてたよ?」
…ま、私も未遂の前科があるからなんともいえないか。
「おやすみ…紺野」
静かに、できるだけ優しく、私は紺野を抱き寄せる。
せめて…これぐらいはいいよね?
自分に言い訳をして、私もその日は眠りについたんだ。
- 224 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時44分39秒
- カーテンの隙間から覗く陽の光に照らされて、ゆっくりと私は目を覚ました。
身体を包む温かさがいつもと違って、なんだか違和感を感じながら目を開いて…
「!?」
飛び起きた。
だって、目の前に…本当に目の前に、後藤さんの顔があったから…っ。
それに温かい感触は布団だと思っていたけれど、それは実は後藤さんの回された腕の温かさだったんだ。
必死になって事態を把握しようと頭をフル回転させる。
えっと…っ、昨日後藤さんのマンションまで来て…?
それでどうしたんだっけ…?
そうだ…っ、私昨日後藤さんの部屋に泊まったんだ…っ。
今更だけど恥かしくてオロオロしてしまう。
でも、改めて見る後藤さんの寝顔はとっても綺麗で…どこかあどけなくって。
猫みたいに丸まって眠る姿は、『可愛い』とさえ思ってしまうんだ。
だから…自然に『触れてみたい』って気持ちが生まれて…。
いつの間にか、後藤さんに向かって顔を近づけていたんだ。
- 225 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時45分27秒
- 触れるか触れないかの距離まで近づいて、一度だけじっと見つめ返す。
閉じられた瞼。規則正しい寝息。
それと同じく上下する胸元。
起きない…よね?
後藤さんって、朝弱いし…。
…よし…っ。
「……ん…」
一度深呼吸をしてドキドキする気持ちを抑えて、ゆっくりとほんの少し触れるだけのキスをした。
温かくて、柔らかくて、しっとりと濡れた感触。
たった一瞬のことなのに、深く唇にその感覚が広がった気がした。
でも、次の瞬間心臓が飛び出すぐらいビックリした。
「…紺野に襲われた」
えっ!?
ご、後藤さんっ!?
突然、パチっと後藤さんの目が開いて、しっかりと私を捉えていたんだ。
「!? ごっ、後藤さん…っ!? お、起きて…」
驚きで声が裏返ってしまう。
対照的に、意地悪そうな笑みを浮かべてむっくり起き上がる後藤さん。
「あはっ、実は紺野が起きる1時間ぐらい前から起きてたんだよね」
…ってことは、ずっと私の事を見てた…?
うわー…っ、恥かしいっ。
- 226 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時46分15秒
- 「でも、まさか紺野の方からキスしてくれるなんて思わなかった」
「そっ、それは…っ、そのっ」
「んー?なにー?」
面白そうに顔を覗き込んでくる後藤さん。
結局、良い言い訳なんか浮かばなくて…
「あの…っ、ごめんなさいっ」
頭をペコって下げて謝ったんだ。
「なーんで、紺野が謝んのさ。別に悪いコトしたワケじゃないし。むしろ嬉しかったよー。紺野も
意外にダイタンなんだって判って」
「そ、そんな…っ」
うぅ…やっぱり後藤さんは時々意地悪です…。
何にも言い返せなくて俯いてしまう私。
そんな私に後藤さんは、へらって笑って頭を撫でるとベッドから起き上がったんだ。
- 227 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時46分59秒
- 「よし、じゃーキスのお礼ってコトで私が朝食を作ってあげよう」
「え…っ? あの…っ」
「いーから、いーから。ほら、紺野は顔洗ってな?」
戸惑う私をよそに、後藤さんは嬉しそうにキッチンへと向かっていってしまった。
今更ながら、後藤さんの変わり身の早さに戸惑ってしまう。
けど…変かもしれないけど、こんな後藤さんとのやりとりが嬉しかった。
昨日あれだけ辛い想いをしたのが嘘のよう。
多分それはやっと…自分の想いを確かめることができたから。
そして…後藤さんの想いも知ることができたから…。
夢みたい…なんて言ったら笑われるかな…?
後藤さんが作ってくれた朝食は純和食で、とっても美味しかった。
なんていうか…改めて、後藤さんって料理が上手いんだって実感してしまったっけ。
それから一緒にマンションを後にして、学校に向かったんだ。
- 228 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時47分46秒
- その途中、見知った人を見つけた。
遠くからでも端整な顔立ちで判る。あれは…柴田さんだ。
向こうもこっちに気づいたみたいで、軽く手を挙げてこっちに歩いてくる。
ちょっと戸惑って後藤さんの方に視線を向けると、後藤さんもじっと柴田さんを見ていた。
そして、柴田さんが目の前まで来た時、スっと私の前に立ったんだ。
「元に戻れたんだね」
嫌味じゃなくて、本当にそうなることが当たり前だったんだねって言うような柴田さんの口調。
昨日のことがあったから、私はなんにも言えなくて…ただ一度頷くしかできなかったんだ。
けど、後藤さんはしっかりした口調で、柴田さんに口を開いた。
「ごめん、あなたに…ううん、誰にも紺野は渡せない。大切な人を、もう失いたくないんだ」
「後藤さん…」
びっくりしたのと同時に、嬉しかった。
こんなにハッキリと、後藤さんの口から気持ちを聞くのは今までなかったから。
私の事をこんなにも大切に想ってくれてたんだって、改めて実感した気がする。
- 229 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時48分31秒
- ふと、心の奥底で思うことがあった。
考えてみたら…、私はまだ後藤さんの事を何も知らないんじゃないかって。
性格とか、過去のこととか、知ったつもりでいて何にも知らないんじゃないかって…。
誰かが、『後藤さんはいつもしっかりしてて、強い人だ』なんて言っていたのを聞いたことがある。
私もそうだと思ってた。
でも、それは間違いだって、違うんだって気づいた…ううん気づけた。
後藤さんだって弱いんだ。
弱い上で、強くなろうとしていただけ。
何かに怯えたり、臆病になったり、怒ったり泣いたり…そんな自分を出せなかったのは、強くなる
必要があったから。
ただ、それだけなんだと思う。
「…もう、大丈夫だね。紺野さんを悲しませたりしないよね?」
柴田さんは確認するみたいに、でも笑顔で問いかけてきた。
後藤さんはなんの迷いもなくそれに頷く。
「うん」
「じゃあ…市井さんと紺野さん、どっちか選ばないといけないとしたら?」
「…っ、柴田さんっ」
- 230 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時49分16秒
- 突然の質問に、私は前に出ようとした。
でも、それを止めたのは後藤さんの腕。
え?って思って顔を上げると後藤さんは優しく笑ってくれてた。
その笑顔は何故か、『大丈夫だから』って言ってるような気がしたんだ。
「…紺野を選んだよ。いちーちゃん…市井さんは思い出だから」
柴田さんをしっかり見つめて言った言葉。
それは私の心にも強く届いた。
市井さんの事をあれだけ強く思っていたのに。
それでも、私を選ぶと言ってくれた後藤さん。
市井さんは『思い出』だって…。その言葉を口にするのに、どれだけの決心がいるのか私にだってわかる。
それなのに…。
「そっか…。大切にしてよね、紺野さんのコト」
どこか嬉しそうな声の柴田さん。
そのまま『じゃあね』って軽く手を上げると、私達の顔を一度見て校門をくぐっていってしまった。
- 231 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時50分10秒
- 「じゃ、私らも行こっか…。って、紺野…?」
返事ができなかった。
後藤さんが、あまりにも優しすぎるから…。
だから、泣きそうになる顔を見られたくなくてそっと後藤さんの背に頭を預けたんだ。
「ごめんなさい…」
「? 紺野?」
戸惑ったみたいな後藤さんの声。
でも私は、他に浮かぶ言葉がなかったんだ。
ただ、きっと後藤さんは私の為に辛い想いをしたと思ったから。
けど、次の瞬間後藤さんは何かに気がついたみたいに一度ため息をもらして
「言う言葉…違くない?」
そういったんだ。
そうだ、こんなの後藤さんは望んでなんかいない。
きっと私でも、謝られたりしたら困ってしまうもん。
今私が伝えられる言葉、それは『ごめんなさい』じゃなくて…
「ありがとう…ございます…っ」
自然と笑みがこぼれた。
それを見て、後藤さんも『あはっ』って笑ってくれたんだ。
いつもの…私が大好きな笑顔で。
久しぶりに向けられた笑顔が、こんなにも嬉しいだなんて思いもしなかった。
- 232 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時51分05秒
- 「ね、紺野ー」
「はい?」
後藤さんは、その笑顔のまま私の手をとって、そっと耳元に顔を近づけてくる。
それから、こう囁いた。
「…このままサボっちゃおっか?」
え…っ! サボるって…学校をですかっ?
驚いて目を丸くする。
でも、後藤さんはその反応を判ってたみたいで、思いっきり吹き出したんだ。
「あっははっ! 冗談、冗談。紺野がそんなコトできるワケないもんね」
じょ、冗談って…後藤さん、ひどいです…。
私、てっきり本気だと思って…。
やっぱり、私はこれからも後藤さんに振り回されてしまうんだろうなぁ。
なんだか、悔しい気持ちになる。
だから、なのかな?
このとき、私は大きく1つ頷いてぎゅっと後藤さんの手を握ったんだ。
せめてもの仕返しに、1度くらい驚かせてやろうって。
「紺野…?」
ちょっとキョトンとしてる後藤さん。
そんな反応は、いつもはカッコ良く見える後藤さんを可愛いなんて思わせるんだ。
後藤さんはきっと気づいてないんだろうけど、私はその姿にもドキドキするんですよ?
- 233 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時51分51秒
- 「行きましょう…っ、後藤さんっ」
「え?」
意味の判ってない後藤さん。
でも私は赤くなっている頬に気づかれたくなくって、握った手をくんって引っ張って走り出したんだ。
学校とは別の方向へ。
「ちょ、ちょっと紺野…っ?」
自然と引っ張られる形で後ろを走る後藤さんは、ビックリした声を上げた。
でも私は振り返らない。
たまには、私が後藤さんを引っ張っていたいから。
「私、強引かもしれないけど…っ、今日は、今日だけは後藤さんと一緒にいたいです…っ。
め、迷惑ですか…?」
やっぱり語尾がどもってしまうのは、ちょっと不安だったから。
チラっと見えた後藤さんの表情は、呆気にとられてるみたいだった。
そうだよね、私がこんなこと言うなんて…自分でも信じられないもん…。
けど、
「ンなワケないじゃん…っ。行こうっ、紺野っ」
後藤さんはそう言って、笑顔で私の手を握り返してくれたんだ。
- 234 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時52分36秒
- 走り抜けてる時、学校のみんなは驚くだろうな、とか、きっとお母さんに知られたら怒られる
だろうな、とか色んな事が頭をよぎったけど、全部考えるのは後回しにした。
だって、今こうして後藤さんと一緒にいることを素直に喜びたかったから。
一緒に…笑ってるんだって感じたかったから…。
真っ白な雪は相変わらず降り続いていて、私と後藤さんの上をひらひらと舞い降りてきてる。
でも、冷たい雪とは裏腹に、繋いだその手はいつまでも暖かかったんだ。
そう…いつまでも。
- 235 名前:TEL ME ―if you wish― 投稿日:2003年02月06日(木)20時54分21秒
――――FIN――――
- 236 名前:tsukise 投稿日:2003年02月06日(木)21時01分44秒
- 大量更新&UP終了ですー…。
かなりラストは息切れしつつ描いてしまいましたが…(^^ゞ
短編の予定がこれほど行くとは思ってなかったです…(^^ゞ
次回作…は、空板が終わってからですね。
最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございましたっ。
>>196 こんごま推進派さん
よっすぃーに柴ちゃん、ここではかなり潔いキャラでしたけどよかったでしょうか?
ごっちんと紺野の結末、微妙に最初考えてたのと違いましたが応援レスに
励まされつつ完結できました。ありがとうございましたっ。
>>197 ゆちぃさん
よっすぃーは、なんとなく自分の中ではかっけぇーキャラなんで、感想とても嬉しいですっ
娘分割…なんか『さくら』の方が、人気あるみたいですね♪
きっとそのうち小説でも、さくらとおとめで話ができちゃうんでしょうね(^^ゞ
応援レス本当にありがとうございましたっ。
- 237 名前:tsukise 投稿日:2003年02月06日(木)21時06分57秒
- >>198 名無し蒼さん
こちらこそ、お久しぶりですっ。今回はこちらなんですね(^^ゞ
まさか自分のHPがバレるとは思ってなかったんで、けっこうカキコにビックリしましたよ(^^ゞ
名無し蒼さんは両方応援ですか〜♪や、私もそうなんですけど、なんとなく高紺推しでも
あるんで『さくら』に期待したいなぁと(^^ゞ連載小説大変でしょうが頑張ってくださいねっ!
>>199 名無し( ´Д`)ファンさん
こちらこそ、お久しぶりです…って!大丈夫ですか!?
にゅ、入院って…っ。その…ありきたりなことしかいえませんが安静にして
早く元気になってくださいね…っ。回復されること、心から願ってますんでっ。
そして、応援レスを本当にありがとうございますっ!
- 238 名前:チップ 投稿日:2003年02月07日(金)00時47分45秒
- お疲れ様です。最初の頃からずっと読んでました。
これを読んでる時は、ごまこんもいいなぁ〜って感じだったんですけど
別のとこでごまこんを読んだ時に、tsukiseさんのおかげで
すっかりごまこんにハマってたことに気づきました。
あちらも楽しみにしてますんで、これからも頑張って下さい。
- 239 名前:ウィンキー 投稿日:2003年02月07日(金)19時29分24秒
- 良いぞ良いぞ良いぞーーー!!
はぁ…こんごまいいなぁ…。って自分はたかごま書いてるんですけどね。
でもやっぱこんごまいい♪
- 240 名前:北都の雪 投稿日:2003年02月08日(土)00時04分10秒
- 完結お疲れ様でした。
ボーっとしていたらいつの間にか完結していて。
遅れたことが悔しいです。
物語、最後のほうはどうなるのか心配しましたが、
さすがはこの二人ですね。ハッピーエンドにしてくれました。
次は空の方ですか。あっちも楽しみにしてるので、まったりと頑張ってください。
本当にお疲れ様でした。
- 241 名前:こんごま推進派 投稿日:2003年02月08日(土)12時39分17秒
- 脱稿お疲れ様です!
ラスト、ハッピーエンドで終わってよかったです!!
もうめちゃ、こんごまにハマってしまいました!
空板の方はこれからみたいですが、応援してますんで頑張ってくださいね!
- 242 名前:tsukise 投稿日:2003年02月09日(日)19時02分37秒
- >>238 チップさん
小説完結にありがとうございますっ。しかも最初の頃から読んでくださっていたなんて…っ。
結構こんごま専門の書き手になっちゃってるんで自己満足入ってるかと心配でしたが
チップさんの感想にホッとしましたです♪応援レスを本当にありがとうございますっ!
>>239 ウィンキーさん
こんごま、良かったでしょうか♪かなり嬉しいご感想ですっ!
そしてそして、ウィンキーさんのたかこん、実はかなり期待しているんで
更新頑張ってくださいね!また伺わせていただきますんで!
>>240 北都の雪さん
小説完結にありがとうございますっ!実は、ラスト結構悩んだんですが
北都の雪さんの感想を見て、ハッピーエンドでよかったなぁって思いました(^^ゞ
空板での小説への応援レスまでありがとうございますっ!
>>241 こんごま推進派さん
小説完結に、ありがとうございますっ。ハッピーエンド…やっぱり
2人には幸せになってほしいですよね♪最後まで読んでいただきまして
本当にありがとうございますっ!
- 243 名前:チョッパー 投稿日:2003年02月10日(月)02時39分05秒
- 初カキコです!このサイト来て日が浅いのですがtsukiseさんの作品はかなりのお気に入りです!ってごまこん良いっすね!ちょっと切ないところもあって涙が…
空の方も読ませて頂くので頑張って下さいね!
- 244 名前:tsukise 投稿日:2003年02月14日(金)05時58分41秒
- >>243 チョッパーさん
小説完結に、嬉しいご意見をありがとうございますっ。
作者としては、気に入っていただけた人がいるだけでありがたいものですっ。
もう、ほぼ『後藤×紺野』のCP専門になっちゃってますが、
またまたご覧になって下さると嬉しいです。
- 245 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月20日(木)05時44分56秒
- tsukiseさん遅くなりましたが完結お疲れ様でした。
すぐに来たかったんですけど回線変更で来れませんでした^^;
PCから書きたかったもので…。
HPの方はたまたま五期メンサイトで逝ってるところのリンクでw
あそこ逝ってるんですよ自分。あちらの方とは思ってませんでした。
自分も少し他のも逝ってるので、今度読んでみようかと(^^
さくら推しですか〜。自分も高紺好きですがおがこんも好きw
でも両方応援ですけどそっち寄りにもなりそう^^;
石藤が居るんで同じ状況が…w ま、頑張ってもらいたいです。
空の方もお待ちしております、自分もマータリ頑張りますのでtsukiseさんも自分のペースで頑張ってください。
最後に、長くなってすいません(^^;ゞ
- 246 名前:tsukise 投稿日:2003年02月20日(木)19時42分47秒
- >>245 名無し蒼さん
小説完結に、名無し蒼さんもありがとうございますっ!
そして、回線変更お疲れ様です♪
ぐはっ!HPがバレちゃったのは、そういう経由だったんですね(^^ゞ
や、5期CP、かなり好きなんですよ〜。でまぁリンクさせて頂いて(^^ゞ
名無し蒼さんの好きなCP、自分に似てますね〜。小紺も最近好きなんで♪
ホントお互いに更新が大変ですが、頑張っていきましょうね♪
- 247 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2003年04月03日(木)20時02分24秒
- 遅れましたが完結おめでとうございます!!
読もう読もうと思いながらも時間が無く呼んでいなかったものなのですが
今一気に読ませていただきました
紺野の心理描写や 後藤の過去と現在の葛藤など非常に細かくかかれているところにものすごく引き込まれました
私もいつか絶対に「こんごま」書きます!
いつになるかわかりませんが 完成したらいの一番にお知らせします
最後に 「ごまこん」をありがとう!!
- 248 名前:tsukise 投稿日:2003年04月22日(火)06時31分40秒
- うわっ、大変遅ればせながら小説完結にありがとうございますっ!
空板ばっかりみていて…見落としてました(^^ゞ
結構、途中息切れになりかけたのですが、最後まで書けたのは
応援レスなど、読んでくださっていた皆さんのおかげですっ!
そしてっ!うまい棒メンタイ味さんの書かれる、こんごまっ!!
大期待ですっ! マターリお待ちしていますね!
- 249 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月13日(水)17時29分25秒
- 保全
- 250 名前:んあ 投稿日:2003/10/17(金) 21:25
- 番外編に期待しつつ・・・
- 251 名前:hozen大使 投稿日:2003/12/18(木) 20:30
- hozen
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