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- 1 名前:デール 投稿日:2002年11月28日(木)02時19分45秒
- 元ネタは大変有名なマンガです。
知識の乏しさ故かなり適当なので、ドクターまがいの
恋愛ものになる思います。
某企画への憧れを胸に頑張ります。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2002年11月28日(木)02時44分07秒
- ちぢむ
その奇病をウチが知ったのは、何度来ても落ち着かない院長室に呼び出され、
これまた何度会っても緊張する寺田院長に、突然の出張を命じられた時だった。
知ったなんつっても名前だけなんだけど・・・
詳しい話は研修医時代に教育係だった中澤先生のいる
研究所に行ってから。
「行ってくれるか?中澤がお前がええって言うとんねん」
「はっはい!行きます!」
中澤先生の関西弁は好きなんだけど、院長のはなんか駄目なんだよね・・
テンパったウチはロクに話も聞かず即答していた。
「ほうか、女の子は嫌がるトコやけど、流石中澤の教え子や。
ほな吉澤、石川も一緒やから仲良うがんばり」
「はいっそれでは失礼します」
院長が笑顔で手を振ってきたもんだから、慌てて頭を下げて廊下に出た。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2002年11月28日(木)03時09分33秒
- 少しひんやりとした汗を背中に感じる。
「あ〜ぁ、ウチって結構優秀に見られてんのに
なんでこんなに院長にビビるんだろ...」
深いため息をついてトボトボと歩き出すと、冷静なウチが帰ってきた。
『えぇっと、明日休みになって明後日出発だよね』
『そう、中澤先生のいる研究所に』
『どこだっけ?』
『アフリカ』
『あぁ..そうそうアフリカね....ふぇっ!!アフリカぁ!?』
『しかも奥地、周りは野生動物がいっぱい』
そうだった...確かに女の子って年齢でもないけど普通嫌がるよね、
ウチって普通じゃないじゃん、かっけぇ〜♪
...ん?あともう1つ大事な事言ってたような......
『石川も一緒やから仲良うがんばり』
言われなくても仲良いっスよ!じゃなくて!
梨華ちゃんもアフリカへ?あの超女の子の梨華ちゃんが?
研修医時代からの親友ごっちんが聞いたら間違いなくこう言う、
『ありえなぁ〜い』
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2002年11月28日(木)03時18分46秒
- この時ウチは、名前しか知らないその奇病について
何も考えていなかった。
中澤先生が病院じゃなくて研究所にいるっていうのも
初耳だったのに、アフリカの奥地だから情報も遅いのかなぁとか
明後日からベーグルはしばらくおあずけかなぁなんて
そんな事ばっかり考えてた。
その奇病との戦いがこれから始まるっていうのに。
- 5 名前:ピンクの君 投稿日:2002年11月28日(木)05時37分58秒
- 「ありえなぁ〜い」
ふにゃっと笑って発した言葉は、やっぱりウチが思った通りのモノだった。
仕事帰りの馴染みの店でウチは梨華ちゃんを、ごっちんは安倍さんを待ってる。
安倍さんは梨華ちゃんの教育係をしていた先輩ナースで
ごっちんとつき合ってる。梨華ちゃんより少し小柄で童顔、
流暢な北海道弁を操り、通称天使の笑顔で患者さんにも大人気。
お嫁さんにしたいって感じですごくかわいい・・・
いやっもちろん梨華ちゃんが一番なんだけどね!
そういう人だからごっちんの嫉妬の悩みも絶えなくて、相談に乗るうちに
ウチらは自然と親友になった。
お互い女同士ってのもあるけど、結構気も合うんだよ。
そして今、なかなか来ない彼女達を待ちつつビール片手に
アフリカ行きの話をしたところ。
- 6 名前:ピンクの君 投稿日:2002年11月28日(木)05時49分16秒
- 「まぁ梨華ちゃんのことだからよしこが行くって聞いて
思わず頷いちゃったんだろうねぇ」
ひひひ....と笑うごっちんに、なんか無償に腹が立つ。
「でもウチより先に呼び出されてたみたいだし、仕事中だったから
ゆっくり話もしてないけど・・・・・」
「「騙されたかな・・・」」
見事なハモりにため息も出ず、そこで会話は途切れた。
- 7 名前:ピンクの君 投稿日:2002年11月28日(木)06時05分42秒
- はぁ...梨華ちゃんと一緒なのは嬉しいんだけど
アフリカの奥地で、サバンナで、野生で......
飯田先生の話だと、未確認の集落もあるみたいだから
人間がどのぐらいいるのかもわかんない場所らしい。
一応研究所だから外で寝るとかじゃないみたいだけど
風呂は無いだろうしベーグルも.....
飢饉で毎日たくさんの人が死んでるんだから、
そんな事言ってらんないよね、ウチは医者なんだから!
でも、なんで梨華ちゃんもなのかな?
ウチはよく中澤先生に『アンタの奇抜な発想好きやわ』って
言われてたから、それが奇病の研究に必要なのかなぁなんて思う。
- 8 名前:ピンクの君 投稿日:2002年11月28日(木)06時20分56秒
- 元々中澤先生のいた病院が少し離れたところにあるから、
研究所には先生と黒人の助手一人だけ.....まさか淋しいとか?
飢饉で食料不足だから、ウチ一人の方がいいだろうし、
研究所にナースっておかしくない?
あ〜わかんない...てか考えるだけ無駄だね。
梨華ちゃんはああ見えて年上だし、しっかりしてるし、
細いのに胸は大きいし、大丈夫だよね! フフフフフ・・・
「よしこキショイ」
大好きな梨華ちゃんを思い浮かべてニヤついてたみたい。
キショイのは梨華ちゃんでしょって言おうとしたら、
店員さんの挨拶と共に、安倍さんと梨華ちゃんが店にはいってきた。
うん、ちょっとピンクすぎるけど私服の梨華ちゃんもかわいいね。
- 9 名前:ピンクの君 投稿日:2002年11月28日(木)06時45分23秒
- 「ごめんねぇごっちん、待たせちゃったべさ」
「んあ〜仕事だもん、いいよ〜」
ごっちんが隣に座った安倍さんの頭を撫でて嬉しそうに言うのを見ながら
ウチも撫でようと隣に手をのばした。
だけど・・・ん?掴まれてる?
ふと手を見ると、梨華ちゃんが真剣な顔で握りしめてた...ガシッと。
「よっすぃ・・・頑張ろうね」
なんか目燃えてる?なんなのこの子は、いっつも唐突。
「よっすぃ?聞いてる?頭悪いの?」
上目遣いがかわいい♪なんて思ってたら、返事するの忘れてた・・・ん?
「ちょっと待って!頭悪いってなにさ!変わってるとはよく言われるけど
そんな真剣な顔で言うなんて、ヒドイよっ!!」
さすがに傷ついて手を振り払うと、目を見開いて青くなってる。
「ちっ違うの!頭痛いのって訊こうとしたのに間違えちゃったの!
ごめんね、傷ついたよね、ごめんねよっすぃ」
目を潤ませてまくしたてた梨華ちゃんに、
前に座ってる安倍さんとごっちんが吹き出した。
「あはっありえなぁ〜い」
- 10 名前:デール 投稿日:2002年11月28日(木)06時52分39秒
- アフリカには行ったことがないので、これからも
かなり適当な記述が続くと思います。
アフリカを愛する方、ごめんなさい。
- 11 名前:出張前日 投稿日:2002年11月28日(木)21時08分39秒
- あの後、“よしこと梨華ちゃんを送る会”と題して
ひたすら飲んで騒いだ。もちろんごっちんのオゴリでね♪
ちょっと飲みすぎたみたいで、気づいたら梨華ちゃんと一緒に
住んでる部屋にいて水を飲んだ記憶を最後に、意識は飛んだ。
「よっすぃ...起きて.....」
カン高いアニメ声が呼んでるけど、昨夜のお酒のせいか
瞼が重くて開いてくれない。
「お゛おはよう、今何時?」
「もう11時だよ、明日の準備しなきゃ、お昼食べてお買い物行こ」
「うん・・・シャワー浴びるね」
フラフラと三分の一も開いてない目のままバスルームへむかった。
- 12 名前:出張前日 投稿日:2002年11月28日(木)21時19分59秒
- 冷たいシャワーを浴びると、ようやく目が覚めた。
久しぶりにぐっすり寝たおかげで頭もスッキリしてる。
バスタオルをまいてキッチンへ、牛乳をラッパ飲みしようとして
鋭い視線を感じ、渋々コップを使う。
テーブルの上にはおいしそうなべーグル♪
「むこうでは食べられないだろうから、たくさん食べてね」
「うん、オムレツとサラダもおいしさうだね」
「よっすぃの為にがんばったもん」
へへっ・・・・・・ちょっと待った!
「あのさぁ梨華ちゃん?」
「なぁに?」
目の前に広がった美しい光景に心奪われて、
お腹がパンパンになるまで気づかなかったウチって、やっぱ頭悪い?
- 13 名前:出張前日 投稿日:2002年11月30日(土)03時14分20秒
- 「出張って何泊だっけ?」
「ふぇっ!?まだ寝ボケてるのぉ?少なくとも一ヶ月って言われたでしょ。
長期出張を急に言うなんて、院長もヒドイよね」
フリーズ
・・・今、一ヶ月って言ったよね・・・マジっすか・・・
「よっすぃ?お〜い...飯田先生の交信うつっちゃったのかなぁ...」
梨華ちゃんのボヤキが遠く聞こえる。
今度から、人の話はしっかり聞いて返事をしよう。
院長の関西弁に立ち向かう決心を今更したウチって、やっぱ頭悪い?
- 14 名前:出張前日 投稿日:2002年11月30日(土)03時21分10秒
- コツンとおでこをあてられて、目の前に梨華ちゃんの顔。
心配そうな八の字眉に感情がこみ上げて、細い腰を抱きよせた。
ギュウと強く抱きしめて、髪に顔をうずめる・・・
「よっすぃの甘えんぼ」
甘い声と背中にまわされた腕が、ネガティヴになってたウチを
優しく包む・・・これじゃいつもと逆じゃんね。
そうだ、まだ訊かなきゃいけないことがあるんだ。
- 15 名前:出張前日 投稿日:2002年11月30日(土)03時41分46秒
- そっと腕の力を緩めて見つめ合う。
「院長に出張の事なんて言われた?」
「えっと、中澤先生の研究を吉澤に手伝って欲しいから
サポートメンバーとして同行するようにって」
「サポートメンバー?」
「うん、場所が場所だし、一ヶ月も一人で行かせるのは不安やろ?
公私共に支えたって欲しいねんって。
それに中澤先生が是非石川もって言うとんねんって言われたの」
「ふぅん、ウチに気使ってくれたってことかな?...でも危ないよ?
野生動物がウヨウヨしてるし、生活だって不便で.....んんっ!?」
奪うみたいに口を塞がれて、舌を絡められる。
「・・・んっ・・・ハァ・・だからこそ、一人でなんて行かせられないの」
「梨華ちゃん・・・」
「やだもん・・・象に踏まれたとか、いきなり報せがきたらやだもん」
「いくらなんでもそれはないんじゃないかな?」
てかそんな死因最悪じゃん、ごっちんが聞いたら絶対吹き出すね。
「冗談だよぅ」
クスクス笑う梨華ちゃんの、揺れる髪がくすぐったい.....
幸せってたぶんコレ、愛してるってコノ気持ち。
でもね、梨華ちゃんが言うと冗談に聞こえないんだよ。知ってる?
- 16 名前:出張前日 投稿日:2002年11月30日(土)03時58分36秒
中澤先生、先生を助けるって何するの?
ウチは学者じゃないし、医者としてもまだ新米だよ?
ちぢむ≠チて、一体どんな奇病なの?
どうして研究所にいるの?
先生、ウチはこの時 確かに不安を抱いていたんだ。
小さい小さい とても小さい 確かな不安を この胸に
- 17 名前:リエット 投稿日:2002年12月01日(日)21時26分49秒
- ちぢむ・・・。
この語感から言うと(w
- 18 名前:デール 投稿日:2002年12月02日(月)01時12分38秒
- おおっ!レスがついてる!ありがとうございます。
>リエット様 ちぢむ≠フれす。
- 19 名前:出張前日 投稿日:2002年12月02日(月)01時26分55秒
- 買い物を終えて部屋に戻り、荷造りをする。
ウチはズボンを二本と、シャツと下着をありったけつっこんで、
余ったスペースに保存食やチョコを入れるだけだからすぐ終わる。
えいっとか、やぁっとか言ってる梨華ちゃんを助けて・・・
「んっ・・・無理ぃ・・入んないよぅ」
だぁぁぁぁ!!なんつうこと口走るんだ!でもワザとじゃないんだよね、はぁ。
押し倒したい気持ちをグッと堪えて時計を見ると
19時04分・・・お腹減ったなぁ。
「梨華ちゃん、夕食外で食べない?」
「うん。平家さんのお店に行きたいんだけど、いい?」
「いいよ〜久しぶりだし、行く前に挨拶しとかなきゃね」
- 20 名前:出張前日 投稿日:2002年12月02日(月)01時39分11秒
- 平家さんの店ってのは“和なんだか洋なんだか”をコンセプトにした
レストランで、結構人気がある。もちろん味も最高においしい。
オーナーの平家みちよさんは中澤先生の幼馴染だから、
研修医の頃よく連れてきてもらって、ウチも今じゃ常連客。
先輩ナースの矢口さんにくっついてきた梨華ちゃんと、初めて
まともに話した思い出の場所でもある。
中澤先生が矢口さん見つけた途端抱きついて離れなくなっちゃって、
取り残された者同士仕方無くって感じだったけど・・・
も〜先生って普段の姿からは考えられないくらい矢口さんにメロメロでさぁ〜
恋人同士っていうより夫婦って感じで・・・・
だから本当に驚いたんだよ、アフリカ行きを聞いた時は。
- 21 名前:出張前日 投稿日:2002年12月02日(月)01時49分51秒
- 「昨日ね、矢口さんにゆうちゃんに渡して欲しいモノがあるから
みっちゃんの店に来てって言われたの」
ウチが運転する車の中、助手席の梨華ちゃんがニコニコと話す。
「へぇ・・・それにしても、もう一年も会ってなくて
電話も半年前に一回きりじゃ、矢口さん淋しいだろうね」
「でもあの二人って、見えないところで繋がってるっていうか・・
お互い自立して一緒にいるから大丈夫なんだよね」
ウチには無理だなぁ、そんなに離れるなんて・・
梨華ちゃんは大丈夫かもだけど・・・
そうか、だから先生は一緒に来いって言ったんだね。
「私も大丈夫じゃないよ」
静かになった車内に、その言葉だけが響いた。
- 22 名前:出張前日 投稿日:2002年12月02日(月)02時07分05秒
- この時間じゃあ混みまくりだろうと覚悟してたんだけど、
先に来ていた矢口さんが席を取っておいてくれてた。
驚く程小さな体のどこにそんなパワーがあるのか、
矢口さんはとても明るくて、器用にパスタを食べながら、キャハハとよく笑う。
先生とお揃いの金髪も、なんだか楽しそう......
「でもホント急だね〜最近手紙ないから忙しそうだと思ってたけど、
なんで矢口じゃなくて石川呼ぶんだよぅ、ばか裕子のヤツ」
「ウチに気使ってくれたんスよ、なんかすいません」
一瞬本当に淋しそうな顔をしたから、思わず謝ってしまう。
「キャハハハっいいっていいって、よっすぃ〜石川と一ヶ月も
離れらんないでしょ。どーせ裕子もあと一年で
帰ってくんだから、気にしないでよ」
そう言う矢口さんの笑顔は真っ直ぐで輝いてて、
本当にそう思ってくれてるんだってわかる。かっけぇよ、まじかっけぇ。
先生のこと、マジで愛してんだね。
- 23 名前:出張前日 投稿日:2002年12月02日(月)02時20分48秒
- 「そういえば、渡して欲しいモノって何ですか?」
食後のコーヒーとデザートがきたところで、梨華ちゃんが切り出した。
「あ〜写真なんだけど、こないださぁ白血病でずっと入院してた
加護って子、退院したでしょ?あの子裕子と仲良かったから
元気になった姿見せたげようと思って。さっき現像してきたんだ」
あいぼんかぁ・・・親友のののって子と一緒に小児病棟の問題児として
一世を風靡した、病める悪ガキ。
骨髄移植が成功して、先週退院したんだったね。
「わかりました!この吉澤が責任を持ってお届けします」
「おうっ!頼んだぞ、よっすぃ〜」
渡された封筒の中の写真には、元気に笑うあいぼんとのの、
そして、矢口さんの顔があった。
- 24 名前:出張前日 投稿日:2002年12月02日(月)02時34分14秒
- 八時を過ぎて少し手が空いたのか、平家さんが紅茶を片手に
ウチらの席に来てくれた。
四人でアフリカの話をしたり、矢口さんに送られた
先生からのラブレターの内容を訊き出したり・・・
真っ赤になった矢口さんの話によると、
『今日見たカンガルーの子供が矢口に見えてん』とか
『今日は矢口のマネして二つ結びやで』とか
そんなんばっかで、アフリカは一体どんなトコなのか、
先生はどんな生活をしてるのかさっぱりわからなかった。
隣の梨華ちゃんは「素敵」って呟いてたけど・・・・・・・
行っちゃえ まず行っちゃえ
とにかく行けよ!行けばわかるさ!・・・そうだよね?梨華ちゃん。
- 25 名前:デール 投稿日:2002年12月02日(月)02時40分05秒
- PCの調子が悪い・・・
次回からアフリカ編に入りますが、その前にもう一度。
アフリカを愛する方、又は関係者の方、ごめんなさい。
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月03日(火)02時00分58秒
- 医者は何のためにあるんだ!
- 27 名前:デール 投稿日:2002年12月03日(火)16時27分33秒
- <26 名無し読者様
わぉ・・・えぇっとそのH氏の台詞は結構この話の中で
一番大事なモノだったりする感じがしちゃったりしてまして、
できるだけ元ネタとは違う話になるよう努力はしているのですが、
話の流れや、H氏のその辺の台詞はパクろうかななどと
神をも恐れぬ行為を企んでいたりしておりますので
それ以上触れないでいただけると有難いです。
だったらそんな有名な話ネタにすんなよと思われるかもしれませんが、
どうかお許しください。
長々と失礼しました。
- 28 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月05日(木)03時15分26秒
- 信じられないぐらい長く飛行機に乗せられ、ヨダレをたらして
寝てる間に目的の空港に着いた。
真昼間に着いたせいで、日差しが強く気温が高い。
梨華ちゃんが今更ながら日焼けを気にしてバッグからポーチを
取り出した時、一人のアフロ頭の黒人さんが近づいてきた。
「初めまして、研究所で中澤先生の助手をしているイナーバといいます」
突然日本語で話しかけられたことに驚いて、声が出せない。
「吉澤先生に石川助手ですね?車を用意してまいりましたので
荷物を積んで下さい」
言われた通りに荷物を積んで、後部座席に二人で座る。
クーラーはついてなかったけど、走り出した車の開いた窓から
吹いてくる風のおかげで充分涼しかった。
とりあえずアフリカ様、初めまして。
- 29 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月05日(木)03時31分21秒
- 「この度は遠い所、わざわざご苦労様です。
先程あなた方の病院とボランティア団体の方から
研究所の近くの病院の方に食料や医療器具が届きました。
院長に代わってお礼を言わせて頂きます。
・・・もう少ししたらおわかりになると思いますが、ここでは今
大飢饉の発生により毎日三千人の人間が死んでいます。
滞在中は何かと不便があると思いますが、ご了承下さい」
「ええ、飢饉の話は聞いていますが・・・ひどいもんですね」
イナーバさんの話の途中で目に映った光景に、思わず目を瞑りたくなった。
かなり大きめの集落・・・布を腰に巻いただけの男女が、
ガックリと頭を下げて座りこんでいる。
剥き出しの上半身は骨と皮だけという表現が正しいだろう・・・
子供たちは折れそうな、梨華ちゃんよりずっと細い腕に
不自然に膨らんだ下腹部、栄養失調の典型だ。
- 30 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月05日(木)03時38分21秒
- ウチら日本人は平和な時代を、民を見捨てた戦争の果てに
アメリカの傘の下で手に入れて、
食べ過ぎで太っただの、ダイエットするだの騒いでいるのに・・・
わかっていたことだけど、世界は広い。
この手でウチはあと何人救うことができるんだろう?
女にしてはやや大きめの手を見つめて、悔しくて涙が出そうだった。
- 31 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月05日(木)03時47分32秒
- あれまぁ梨華ちゃんも同じこと考えてるね?
小さい手をギュッと握りしめて涙目になってるよ。
ウチらのもがく時間って、地球の歴史からするとどれくらいなんだろう。
あ〜ぁきっと米粒よりちっちゃいだろうけど
とにかく必死でもがき続けるしかないんじゃん?
その小さな手と大きな手を繋いで
この手の届く範囲は狭いけど仕方ないさ
だってウチらは神様じゃないんだ そうだろう?
- 32 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月05日(木)03時52分50秒
- それからいくつかの集落を通り過ぎた。
飢饉に苦しんでいるのは人間だけじゃない、枯れた水たまりのまわりに
集まってきた家畜がそのまま死んでいた。
ウチと梨華ちゃんはそれらから目を背けることなく
繋いだ手を離さなかった。
空港から車で五時間かかって、やっと研究所に着いた。
- 33 名前:デール 投稿日:2002年12月05日(木)03時57分45秒
- ぬぉっ!?
最後の最後でsage忘れた・・・
変てこりんな文章ageてもてごめんなさい。
- 34 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月05日(木)22時06分52秒
- 元ネタ…アレっスね(w
"ちぢむ"で何となくアレかなと思ってました。あの方の話はカナリ好きなので楽しみです。更新待ってますよほ!
- 35 名前:デール 投稿日:2002年12月06日(金)03時10分28秒
- >34名無し読者様 レスありがとうございます!
アレでございます。あの方の作品大好きなんです♪
元ネタが素晴らさに比べ駄文過ぎて恐縮ですが、楽しみと言って頂けて
嬉しいです。
- 36 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)03時26分00秒
- 車から降りると、ようやく日の落ち始めたオレンジの夕日を見上げて
体を伸ばす。あぁぁぁ気持ちいい・・・
今日は一日中座りっぱなしで、痔になったらどうすんだよ!なんて
自分のよりも大切な彼女のお尻を心配して凝視してしまう。
「よっすぃの変態。早く荷物運ぼうよ」
変態って・・・一応恋人なんだしさ、いやんエッチ!とか
そんなに見ないでよばかぁとか、他にも候補はたくさんあるんじゃない?
大体そんな形のいいお尻してる梨華ちゃんのせいじゃん。
「・・・ごめんなさい」
思ってる事なんて言える筈もなく、自分のわりと軽めのボストンバッグと
梨華ちゃんの重いトランクを担いで目の前にそびえ立つ研究所へ足を踏み入れた。
- 37 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)03時46分48秒
- なんか・・・小学校の校舎みたいっていうか、そんなデカイわけじゃ
ないんだけど。4,5クラス分ぐらいはあって『アフリカの奥地』には似合わない
白いコンクリートの建物だった。
「そーいや先生、出迎えぐらいしてくれりゃいーのになぁ」
一年ぶりの感動の再会を、ちょっとは期待してたんだよ?
「この建物は防音設備が整ってまして、中澤先生の部屋は一番奥なので
車が到着したことも気づいてらっしゃらないと思います。それに・・・」
「それに?」
「あ、いえ。着いたらすぐに先生の部屋に通すように言われている
のですが、乗り物酔いなどは大丈夫ですか?」
「ウチは大丈夫です。先生に早く会いたいし・・・」
振り返って見ると、梨華ちゃんもにっこりと頷いた。
「そうですか、では荷物はここへ置いてください。
この貨物用エレベーターで二階へ運びますんで、お二人に用意した
部屋に入れておきますね」
- 38 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)03時52分41秒
- 「このエレベーターは手動ですか?」
「ええ、ここでは電気は貴重なものですから。一ヶ月の使用量も決まって
ますし、自己発電装置でここで電気を作っているので・・・
でも、夜ろうそくを使うとかちょっとした節電をしていただくだけで
そこまで不便な場所ではないですよ。
ここではアフリカの奥地にいるなんて、実感できないでしょうね」
- 39 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)04時02分13秒
- そう、この時。
この時ウチは考えもしなかったのか、考えようともしなかったのか。
考えるのが怖かったのか。怖い?何デ?ヨカン?
アフリカの奥地とは思えない設備を備えた研究所。
ここへ来るまでに見た飢饉に苦しむ人々と、痩せてはいるが
ほどよい肉つきの健康的なイナーバさん。
ねぇ、梨華ちゃんは気づいてた?
イナーバさんが研究所に入る時にゴムの手袋をはめたこと。
ウチは気づいていたのに、なんて楽観的だったんだろう。
- 40 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)04時16分48秒
- 「やっと会えるね」
エレベーターの操作を始めたイナーバさんと別れて、案内された
奥の部屋へと向かう・・・・・梨華ちゃん?さっきまでは
荷物持っててわかんなかったけど、なんかヒョコヒョコ歩いてない?
ウチがよっぽど心配そうな視線を向けたせいか、心あたりがあるせいか
梨華ちゃんは少し俯いてバツが悪そうに呟いた。
「なんか・・・お尻痛くない?」
「・・・・・」
何それ、ウチがさっき心配して熱い視線を送ったのにつき放したのは
どこの誰よ?でもせっかくの美尻、形が崩れたりしたら大変!
「揉もうか?」
「・・変態」
そうこう言ってる間に変態ドクターと美尻ナース目的地に到着。
先生って人一倍礼儀に厳しかったなぁなんて思い出しながら
ドアをノックした。
「先生?吉澤です」
「入ってええで」
一年ぶりに聞く懐かしい関西弁に梨華ちゃんと微笑み合いながら
ゆっくりドアを開いた。
- 41 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)04時39分13秒
- 「おぅよっさんに石川ぁ、相変わらずバカップルしとるみたいやな」
「「えっ!?」」
「いやぁ〜そのドア木でできとんのやけど、こないだ酔っ払って蹴ったら
ヒビ入ってもうて。よっさんの石川の尻を揉みたがる様子が
クリアに耳に届いたんよ」
クリアって、携帯の電波がバリサン(死語)ね♪ってんじゃないんだから・・・
「よっすぃのばかぁ・・・」
ごめんなさい。てか防音設備整ってるって聞いてたのに・・・
木製とはいえドアを蹴破るなんて、先生ってば常識を覆すよね。
「まぁまぁ二人ともそんなトコつっ立っとらんと、早よ座り」
先生は一人用のソファに少し偉そうに座っている。
矢口さんとお揃いの金髪はプリンになることなく、ブルーのカラコンも
昔のまま。でもやっぱり痩せたみたいで少し小さくなったように感じるのは
きっと座って柔らかな微笑みを浮かべているから。
身長はウチより5cmくらい低いけど、先生ってオーラっていうの?
なんか後光が射して見える時があって。
そんだけウチにとっては大きな存在だから、ちょっと違和感感じちゃうよ。
設備が整ってるとはいえ、やっぱ苦労してんだよね。
- 42 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)04時53分58秒
- 先生の向かいの二人掛けソファに机を挟んで腰掛ける。
「石川、お尻痛かったらこれ敷いとき」
先生がニヤニヤしながら差し出したクッションを真っ赤な顔で受け取ると
「お茶入れますね」
と言って、俯いたまま机の上にあった紙コップにポットのお茶を注いだ。
「先生、いつから研究所にいるんですか?ウチらは何をするんです?」
「う〜ん・・・ゆっくり説明しよ思てたんやけど、まぁ
コレ見てもうたら早いわな」
先生は座ったまま腕を伸ばして横の棚から小さな白い箱を取り出す。
「きゃっ」
箱の蓋を開けた途端、梨華ちゃんが小さく叫んだ。
中に入っていたのは、ミカンぐらいの大きさの・・・ふたつの人間の首。
- 43 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)05時07分50秒
- 「これは・・・初めて見ますけど、この辺の風習で作る干し首って
やつですか?」
昔、本で読んだことがある。
「そう思うやろ?ほなこっち見てみ」
続いて出されたのは、猫のハク製・・かな。
「これは何のハク製やと思う?」
「山猫・・・ですか?」
「待って」
それまで黙って話を聞いていた梨華ちゃんが、身を乗り出して
マジマジとハク製を見る。そして、ハッとしたようにソレを撫でた。
「この毛ざわりは猫じゃないですね。
それに・・・これってたてがみじゃ・・・」
毛ざわりって・・・あぁ梨華ちゃんの実家猫飼ってたね。
・・たてがみ?タテガミ?たてがみって言ったら・・・・・
「そや、それはレッキとしたライオンや」
- 44 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月06日(金)05時21分37秒
- 「ライオン?まさか・・・」
これはどう見ても猫サイズで、赤ちゃんライオンより小さいよ?
ちぢむ
「まさか・・・これが奇病の?」
そんな、こんな無茶苦茶な事が起こるなんて。
水俣病とか、体の一部がってんならまだ話はわかる。
でもこれは・・・明らかにちぢんで≠「る、綺麗に原型を留めたまま。
呆然となっているウチと梨華ちゃんに言い聞かせるように先生は続ける。
「信じられへん気持ちはわかる。
初めは私も発育異常かなんかやと思っとった。でもな、そのうちに
これは一種の組織萎縮症、つまり体がちぢんで≠「く病気やってわかったんや。
・・・これは、まだ世界に知られてへんこの国の一部の人間しか知らん奇病や」
ちぢむ♀病 未知との遭遇 そして 未知との戦いが始まる
- 45 名前:デール 投稿日:2002年12月06日(金)05時28分39秒
- あぁウトウトする。
えぇっと猫飼ってるからって山猫は撫でたことねーだろ!
山猫とライオンの毛ざわりの違いなんかわかるかい!
と思われるかと思いますが、わかるんです。だって、ナース石川だから。
- 46 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月06日(金)08時35分41秒
- ひーさまとチャミさまは同じ部屋で泊まるのでしょうか?
非常に気になります、ソフト◯ロなんか有ると嬉しいな。
- 47 名前:デール 投稿日:2002年12月07日(土)04時42分57秒
- >ひとみんこ様 レスありがとうございます。
ひとみんこ様の作品読ませて頂いてます、少し怯えながら・・・
お部屋の件ですが、迷うことなく同室です。
エロは下手なんで・・ソフティーエロなら頑張ってみようかなぁ・・・
- 48 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)05時03分37秒
- 「「グゥ」」
奇病への驚きが和らぎ、ちぢむ≠現実のモノとして受け止めた瞬間
仲良くウチと梨華ちゃんのお腹が鳴った。
さすがにちょっと恥ずかしい・・・そういやアフリカ着いてから
六時間以上何も食べてないじゃん、そら腹減るわなぁ。
「アハハハハハッなんや自分ら、人が真面目な話しとんのに
仲良う腹の虫鳴かしよって」
「す、すみません・・・・・」
「ちょっ梨華ちゃん!そんな泣きそうな顔しなくても、自然現象なんだから
しょーがないじゃん。それより同時にお腹が鳴った奇跡を喜び合おうよ!」
「ふぇぇん・・ばかぁ・・・そんなの奇跡じゃないよぉ」
ちっ(舌打ち)、ポジティブにミラクルで押し切ろうと思ったのに・・・
大体先生に聞かれたぐらいでさぁ、しかもお腹だよ?オナラとかじゃないんだし・・
そういえば、一緒に住み始めてすぐの頃梨華ちゃんの寝屁を聞いちゃって
すごくかわいかったから、起きた彼女をからかったらパジャマ代わりの
ジャージのまま飛び出してっちゃって・・・あの時はホント大変だった。
『もう嫌いになったよね?・・覚悟はできてるから・・・』
なんて勝手に別れる決意をしてて、あれはあれでかわいかったけどさ。
- 49 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)05時17分02秒
- そんな前科を持つ彼女だからそれ以上下手なことも言えず・・・
ウチはただ背中を撫でてオロオロするばかり。
「アハハハハッもうあかん!涙出るわぁ。イナーバがアンタらの部屋に
食料用意してある筈やから、石川は先に行って夕食の用意しとり。
火も夜だけは使ってええことになってるから、明日の分のコーヒーも作って
ポットに入れとくんやでぇ」
梨華ちゃんのとは明らかに種類の違う涙を拭いながら苦しそうに言う。
「・・・はい、じゃあ先に行ってるね」
沈んだ声のまま立ち上がると、梨華ちゃんはフラフラと部屋を出て行った。
「ふぅ・・・石川のネガティブ病は治ってへんのやな。
ほな、さっきの話の続きしよか」
息も整い、涙も渇いた先生は急に真剣な顔になった。
「はい」
ウチも医者の顔に戻る。まだ少し、ネガティブな彼女が心配だったけど
- 50 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)05時30分57秒
- 「ちぢむ≠フ被害はな、始めは獣達だけやってん。
あちこちでちぢんだ℃体が発見されて、てっきり子供ばっかが
死んでんのやと思った。でも死体の増加と共に人間にも被害が及んで
あちこちの集落で人間の患者が出始めた」
「先生のいた病院に患者はいるんですか?」
「いや、ヒドイ話ゆけどな、ここでは病院に行くなんて珍しいことやし
医者が車で集落を廻って患者を探すって形やから、
奇病の患者は治療所に隔離されんねん・・私も治療に手を尽くしたけど
サッパリやった。せやからここで治療法の研究をしとんねん」
「・・・先生、ならどうしてここにはもっと多くの人がいないんです?
今もどんどん患者は増えているんでしょう?そんな恐ろしい奇病なら・・・」
・・・まさか、まさか、まさか・・・
- 51 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)05時50分23秒
- 話の途中で固まったウチを見た先生は、少し安心してるように見えた。
「お察しの通り、私も奇病にかかってしもたんや。
病院におる医者たちも、もちろん治療法を研究しとる。イナーバは
お祖母さんが日本人らしくてな、こっちに来た時からよう一緒におってん。
そのせいで感染もしてないのに私の助手にされて、可哀相なやっちゃで」
さっき感じた違和感は・・・正しかったんだ、気のせいなんかじゃなかったんだ。
「このグラフ見てみ。この一週間、私の身長はどんどんちぢんで≠チとる。
ある程度・・本来の大きさの五分の一から六分の一までちぢむ≠ニ
死ぬらしいわ。・・・よっさん、アンタは優秀な教え子や。
アンタならこの原因不明の奇病の治療法をきっと見つけられるやろう」
「そんな・・・どうして世界中に発表しないんですか?」
「発表なんかしてみ、世界中が恐怖に巻き込まれんで。
病院側もなんやためらっとるみたいやしな。今のうちに、これ以上
広まる前に奇病の正体がわかれば、人類を、いや地球の生物全てを
救うことになるんや!」
- 52 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)06時02分17秒
- 「でも先生・・・ウチは学者じゃないし、まだ新米の医者ですよ?
本当にウチなんかでいいんですか?」
「ええんや!頼むわ、ここで奇病の治し方を調べてくれ!」
先生はもうちぢみ℃nめてる。ウチが治し方を発見できれば
先生を助けられる・・・断る理由なんて、ないよね。
「わかりました。自信はないですけど、先生を助ける為にも
とにかくやってみます。でも・・一つだけお願いがあるんですけど・・・」
ヒドイやつだと思われるだろう。でも、ウチにとって一番大切な人だから。
「何や?言うてみ」
「梨華ちゃんを日本に帰したいんです。気を使ってもらったみたいですけど
ウチ一人で大丈夫ですし」
先生は深いため息をついて、ゆっくりとウチを見た。
「それに、先生から奇病がうつる可能性もありますから」
- 53 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)06時16分06秒
- 「そう言うやろなと予想はしとった。でもな、私は知っとる。
アンタが初めてのオペ成功したんも、その後の大きな手術次々と
成功さして優秀に見られとんのも、全部傍に石川がおるおかげや。
まだまだヘタレなアンタは一人じゃ無理や。石川にはここにおってもらわな
困る。私の命だけやない、世界中の人々の為にもや」
「た、確かにウチはヘタレで、今までの成功だって全部梨華ちゃんの支えの
おかげですけど・・こんな危険の根源地に彼女をおいておくなんてできません!」
「辛口なこと言うてくれるやないか・・・でもそれは絶対にあかん。
今石川を日本に帰したら、日本中が奇病に襲われるかもしれんからな」
「は?い、今・・何て・・・?」
・・・まさか、まさか、嘘だろ・・・?
- 54 名前:平和で正常な日常の終わり 投稿日:2002年12月07日(土)06時34分15秒
- 「残念やけど、石川はもう感染しとる。
さっき病死したライオンに触ったやろ?あれは計算外で驚いたけど
奇病は毛から空気感染するんや。
潜伏期間は一ヶ月。
一ヶ月経てば石川の体はちぢんで≠「くで」
そんな・・・梨華ちゃんがちぢむ=H・・・死ぬ?
「どうして!!なぜそれを早く言ってくれなかったんですか!!
知ってれば触らせなかったのに・・・
先生がこんな卑怯なことするなんて!」
怒りに任せて机を殴る。こんな風に叫ぶのは、何年ぶりだったろう。
「もう選択の余地は無い筈や、石川を助けたり」
選択の余地って・・・ウチは先生を助けるってさっき言ったよ?
先生にとっても梨華ちゃんが感染したのは予想外の事故だっつっても
じゃあなんで院長に是非石川もなんて言ったのさ
許せないよ こんなの
この日 この瞬間に ウチの平和で正常な日常は終わりを告げた
- 55 名前:デール 投稿日:2002年12月07日(土)06時40分34秒
- やはりPCの調子最悪・・・
中澤先生がなんかすんごいヒドイ人になってますけど
真意というか考えあってのことなので、ファンの方ごめんなさい。
- 56 名前:デール 投稿日:2002年12月07日(土)06時47分59秒
- うぉっと、言い忘れましたが。
たぶん前々回の更新部分にサ○ン○ールス○ーズ(バレバレやん)の
『平和の琉歌』の歌詞の一部を引用させていただきました。
それと、一日遅れたけど圭ちゃんお誕生日おめでとう。
- 57 名前:デール 投稿日:2002年12月07日(土)06時49分59秒
- この際だから、記念に隠してみる。
- 58 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月07日(土)08時40分23秒
- チャミさま、寝屁ですか? さぞかし可愛い音なんでしょうね? ”ぴゅん”とかいって。
チャミさまに言うと「しないよ」って怒られそうですね。(w
そうか! トイレをしないから気体で・・・・・
笑いを納めるのに10分位掛かり
後のシリアスな場面でも、思い出して困りました。
あちらの方を読んで頂いているようで、有り難うございます。
これから、チャミさま、悩むそうです。(w
- 59 名前:読者 投稿日:2002年12月07日(土)14時25分39秒
- 中澤はちぢんで・・・しまうのか?
いやかっけー吉澤が救ってくれる事を祈って・・・
石川はマジで感染したのか?
なにやら面白そうな話で楽しみです。
- 60 名前:デール 投稿日:2002年12月09日(月)03時26分42秒
- レスありがとうございます!
>ひとみんこ様
寝屁についてはですねぇ、もっと詳しく姫のショックぶりや
吉の奮闘ぶりを書こうと思ったんですが
シリアス目前で寝屁について熱く語るのもどうかと思い断念しました。
音の件ですが・・・ぶっちゃけ「ぴゅん」系も心惹かれたんですけど
一般的な「ぷぅ♪」か、革命的な「ちゃお♪」にするかで
激しく悩みまして・・・・・
でも実際は、気体すら「しないよ」
>読者様
嬉しいお言葉どうもです。
ふふふ・・・どうなりますかねぇ。ラストは書き終えてるので
よろしければ最後まで読んでやって下さい。
今回エロがありますのでお気をつけ下さい。
- 61 名前:デール 投稿日:2002年12月09日(月)03時47分03秒
- 『もし石川が感染してへんかったらおなぐさみや。
人間の場合、頭髪からの感染は確率が低いんやけど
抱けば確実に感染すんで、気ぃつけや』
部屋を出る時最後に言われた言葉・・・・
ウチは爆発した怒りのせいで叫びたくなる衝動を、どうにか抑えて足を動かす。
『石川はもう感染しとる』
与えられた部屋へ向かう途中、機能することを拒む頭で
渡された奇病の資料を読む。
発見当初から、奇病の最大の恐ろしい点は、発病者のほとんどが
「ちぢんで¥奄゚て感染に気づいた」ということだった。
研究の結果、毛から空気感染することや潜伏期間は割り出せたものの、
ちぢむ∴ネ外の症状がない為、感染に気づかず
ある日突然ちぢみ¥oすのだ。
だから、もし感染していないのだとしても、ちぢむ∴ネ外に
証明する術はない。
- 62 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)03時56分37秒
- 先生の部屋の丁度真上に位置する二階の一番奥のゲストルーム。
この扉の向こうに梨華ちゃんがいる。
ウチはもう食欲なんてこれっぽっちもないけど
お腹を空かせて待っててくれてるよね?
昔に見た ブルースリーに従って
決めた 考えないで 感じて 決めた
後悔? 後悔なんて する程長く 生きてやしないよ
- 63 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)04時08分47秒
- 「ただいまぁ」
意外とすんなり出たいつも通りの声、笑顔だって完璧じゃん。
ウチだってやればできるんだなぁ。
「おっおかえりなさいっ」
あ〜しまった、ノックを忘れてた。驚かせちゃったみた・・い・・・・・
「梨華ちゃん?」
ドウシテ 風呂上ガリデモナイノ二頭ニタオルヲマイテルノ?
ドウシテ セッカク作ッタ夕飯ヲ捨テヨウトシテルノ?
ドウシテ・・・泣イテルノ?
「梨華ちゃん?」
やばい、声震えてきた・・どうしよう、今すごく叫びたい。
泣いてる梨華ちゃんを抱きしめたい・・キスして・・・めちゃくちゃにしたい・・・
ウチが一歩近づくと、一歩後ずさる梨華ちゃん。
少し離れて見ても、はっきりとわかるくらいガタガタと震えてる。
- 64 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)04時24分28秒
- 「いやぁっ!ダメ!!離してぇ!」
壁際まで追い詰めて、強引に抱きしめた。
「…うっ…くっ…うつっちゃうよぉ……お願いだから離してぇ!…」
泣いて懇願しながら懸命に離れようとしてる。
非力な彼女からは信じられないぐらいの強い力と
一瞬合った上目遣いの潤んだ目に
ウチの理性は飛んだ。
「…っ!んんっ…んぁめぇ!……んむぅ…」
暴れる体を抱き上げてベッドに押し倒し、馬乗りになって
乱暴に唇を塞ぐ。
今までしたどのキスよりも激しく舌を絡めて
ウチの肩を押す両腕を頭の上へ押しつける。
首を振ってキスから逃れようとしてた頭は自分の腕に挟まれて
動けなくなった。
まいてあったタオルは、もうとっくにとれてる。
疲れてきたのか抵抗する力が弱くなってきた腕をクロスさせて
左手で抑え、空いた右手で破く様にスカートをまくり上げた。
- 65 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)04時36分01秒
- 「ぷはぁっ…!…やだぁ…お願いぃ……んんぅ…」
一度離れた唇にもう一度噛み付いて
再び激しく動き出した足を無視してショーツを引き剥がした。
露になったソコに触れる前に、キスを止めて右手で口を抑える。
「梨華ちゃん…大好き、愛してるよ……
ウチが絶対に助けるから」
梨華ちゃんはキツク閉じていた目を開けてウチを見た。
その目は医者として最低のことをしているウチを責めているようで・・・
彼女を失うかもしれない恐怖と、先生への怒りで
八つ当たりしている吉澤ひとみを責めているようで・・・
「愛してる」
最後にもう一度囁いて、彼女のソコに顔を埋めた。
- 66 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)04時52分58秒
- <石川視点>
「はぁっ…ぁん…ぅ……やぁ…」
よっすぃは・・・ひとみちゃんは、私に触れる時いつも優しい。
そりゃ、たまに意地悪で焦らしたりして大変な時もあったけど・・・
愛されてる、大切にされてるってことがものすごく伝わってくる。
『梨華ちゃんを日本に帰したいんです』
卵を茹でてカラを剥き、コーヒーを入れ心の中で謝りながら
持ってきたクッキーをほおばった時、
ふとひとみちゃんも食料をバッグに詰めていたことを思い出した。
勝手に開けると普通は怒るものだけど、ひとみちゃんは全然気にしない。
『梨華ちゃんだからだよ』って前に言ってくれたっけ。
バッグからどうやって詰めたの?っていうぐらいの量の食料を
ひっぱり出したら、一緒に矢口さんに頼まれた写真の入った封筒が出てきた。
「責任持って届けるって言ってたのに、しょうがないなぁ」
まぁ私も忘れてたけど・・(だってお尻痛かったんだもん)
思い出したからには早く渡さなきゃ!
こうして私はもう一度先生の部屋へ向かった。
- 67 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)05時02分38秒
- だけど・・・ヒビの入ったドアから聞こえてきた
ひとみちゃんの言葉に、ノックしようとした手を思わず止めた。
私を・・・帰す・・?
『それに、先生から奇病がうつる可能性もありますから』
・・え?・・それはつまり・・・先生も、奇病に・・?・・そんな・・・
でも!だったら尚更帰れないよっ
あ・・・私の代わりに矢口さんを呼ぶってことかなぁ?
先生の恋人だし、私なんかよりずっと優秀なナースだし。
昨日の様子だと矢口さんはこの事を知らないみたいだし、早く報せなきゃ!
なんてぐるぐると考え込んでいた私の耳に、信じられない言葉が届いた。
- 68 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)05時15分16秒
- 『残念やけど、石川はもう感染しとる』
今の・・・・先生の声だよね?・・さっきのライオン・・・?
毛から空気感染・・?一ヶ月で・・・ちぢむ=H
そこから先はよく憶えてない・・・
ひとみちゃんの怒鳴る声が聞こえた気がしたけど、
いつの間にか部屋に戻っていて、頭にタオルをまいて髪を隠し
手を洗ってしばらくペタンと座り込んでいた・・・
どのぐらいそうしていたのかわからないけど、
たぶんそんなに長くはなかったハズ。
感染した私が用意した食事をひとみちゃんに食べさせるわけには
いかないと思い、卵のカラを剥いたことを後悔しながら
パンと一緒に捨てようとした時
ひとみちゃんが部屋に突然入ってきた。
どうして?・・私が感染したるの知ってるんでしょう?
なんでそんなに優しい声で、いつもと変わらぬ笑顔を私に向けるの?
- 69 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)05時26分05秒
- 「あぁ……ぁん…ん……やだぁ…」
私の不自然な頭のタオルと態度のせいで
ひとみちゃんはすぐに悟ってしまった。いつもはニブイのに・・
うつしちゃいけないうつしちゃいけない
うつしちゃいけないうつしちゃいけない
頭の中で唱えながら、必死で逃げ続けた果てに
捕まえられた腕の中で、やっと私は自分の頬を伝う涙に気づいた。
泣いちゃいけない 泣けばひとみちゃんは私を離せなくなってしまうから
全身全霊で止めようとした。
それでも涙は止まず流れて、初めてひとみちゃんは乱暴に私に触れた。
- 70 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)05時36分55秒
- 「はぁっ……ああぁ…ぁん……ぁ…」
ソコに触れられたら間違いなくうつることぐらい、私にもわかる。
私は可能な限りの力で抵抗し続けたけど、
長くしなやかな腕に敵うハズもなく・・・・・
ショーツを剥ぎ取られ、ひとみちゃんがキスをやめて私の口を抑えた瞬間
自分の中に沸き起こるある想いに気づいて愕然となった。
奇病に感染してしまったことに対する恐怖と
死への恐怖に震える私を安心させてくれる、唯一無二の存在。
そう ひとみちゃん
あなたに抱きしめてもらいたい 抱かれたい
何も考えられなくなるくらい めちゃくちゃにしてほしい
お願い 私を ひとみちゃんでいっぱいにして
- 71 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月09日(月)05時48分23秒
- 「あああん……やん…はぁっ…ぅん……あんっ」
私って最低だ・・・・・
激しいキスと、与えられる快感のおかげで
今や、不埒な体は濡れて愛撫に震えている。
ついさっきまで、恐怖で震えていたっていうのに・・・
「あっ…あんっあ…ひ、とみ……ちゃぁ…もぉ……」
気づけばとっくに解放されていた両腕をひとみちゃんの背中にまわして
一気に二本の指をすんなり受け入れた私は
何度も激しくつきたてられて
「ひゃぁんっ!…あん…ああん…くぅっ…んっ…ぁああぁぁぁ…」
お望み通り めちゃくちゃになって 果てた
- 72 名前:デール 投稿日:2002年12月09日(月)05時55分00秒
- 最初の題名入れ忘れた・・・
えぇっと、ごめんなさい。エロ苦手なんれす。
ってかエロになってんのかなぁ?
なんで私はこんな時間に・・・よっすぃ〜に梨華ちゃんごめんなさい。
- 73 名前:デール 投稿日:2002年12月09日(月)05時56分00秒
- 朝っぱらだから隠しとこう・・・
- 74 名前:デール 投稿日:2002年12月09日(月)05時56分44秒
- どっこいしょ
- 75 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月09日(月)07時46分34秒
- 折角、隠して貰ってるのに、朝から読むやつが、約一名います。
はい、私です、ご馳走様でした。
寝屁については、番外編で詳細をよろしく。(w
- 76 名前:デール 投稿日:2002年12月11日(水)18時24分43秒
- レスどうもです!
>ひとみんこ様
寝屁で番外編・・・なんて魅惑的な・・・
でも書いたら怒られそ・・・
今にも壊れそうなPCで意地の更新。
- 77 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)18時38分30秒
………腰がダルイ………
一度果てた後も、ひとみちゃんは休むことなく私を攻め続け
私も彼女を求め続けた。
あれだけ抵抗しておきながら
今までにないぐらい喘ぎ、腰を振って・・・
まるで動物のようだった私。
ねぇひとみちゃん 私を抱いたこと 後悔してないの?
どうして 喘ぐだけ喘いで気を失った私を
ずっと抱きしめてくれてるの?
私、最低なんだよ?
優しいアナタを利用したんだ。
もし治療法が見つからないまま一ヶ月経ったら
二人共ちぢんで℃んじゃうのに。
そうなったら中澤先生も死んじゃう・・・
矢口さんに怒られちゃうよ。
『お前ら何しに行ったんだ』って。
- 78 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)18時46分34秒
- 自分の中の弱く醜い心が
愛する人を追い詰めてしまったことを
ものすごく後悔する。
だけどそれ以上に、私を離さない腕の中
ぬるま湯につかっているような安らぎを感じてるの。
とても、とても気持ち良くて
アナタの愛に甘えていいのかもと思ってしまう。
『梨華ちゃん…大好き、愛してるよ……
ウチが絶対に助けるから』
あの時は耳に入っただけだった愛の言葉が
今になってやっと私の全身を走り、心に響いて・・・・
その瞬間、自分がどんどん開き直っていくのを感じた。
- 79 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)18時57分10秒
- <吉澤視点>
・・・ん〜まだ眠いよ・・・
でもなんか胸のあたりがくすぐったいし
腕もちょっとしびれてんなぁ・・・
パチリ
とりあえず目を開けてみたけど・・真っ暗じゃん
ここドコ?ウチは・・吉澤ひとみです・・今何時?
時計を見よう、いやその前に電気つけなきゃ
てかなんで体動かないの?
……………………
………………
…………
あぁ・・・そうだった・・・・・
梨華ちゃんを抱きしめてるんだ
理性が飛んだウチは狂ったように攻め続けて
気を失わせてしまったんだ
ごめんね 怖かったよね
あんな風に乱暴にしちゃったのは初めてだったし
抵抗する体を無理矢理なんて
そんな最低なこと 絶対にしないって思ってたのに
- 80 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)19時09分03秒
- 目が暗闇に慣れてきて
抱きしめてる梨華ちゃんの頬にそっと手を伸ばす。
「よっすぃ、起きたの?」
「!…梨華ちゃん…起きてたの?」
びっくりした・・・なんか気まずいんだけど、どうしよう?
「あ、あのね、少し話したいんだけど…まだ眠い?大丈夫?」
「いや、大丈夫だけど。今何時かわかる?」
「え?…わかんないよぉ、動けないもん…
それにまだこっちに合わせてないし」
「あ・・・ごめん」
そーじゃん、ウチの腕の中にすっぽりおさまってんのに
時間わかるわけないよね。
ウチの時計は空港でこっちの時間に合わせたから
それ見りゃ早いんだけど・・・・・
「梨華ちゃん……時計見たいんだけど…」
離れようとしたら、ぎゅうとしがみついてきた彼女に言ってみると
「その前に、キスして」
顔を上げて目を閉じてる。
ウチのこと、怒って・・ないのかな?
- 81 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)19時18分29秒
- もしかして呆れちゃってんのかなぁ
ネガティブになってんのよりはいいけど・・ちょっと怖い・・
「早くぅ」
いかん、落ち着こう。
せがむ唇にそっと口付けて、ゆっくりと体を離し
手探りでライターを見つけて火をつけた。
イナーバさんがろうそく使えって言ってたけど・・・
あった、思いっきり目の前に。
ベッド脇のテーブルの上の、銀の皿に乗ったろうそくに火を灯すと
思った以上に部屋の中は明るくなった。
時計に目をやると・・・午前四時ちょうど。
「よっすぃ・・・戻ってきて」
背中に甘い声、まだ起きるには時間がある。
奇病と戦う時間だってたっぷりある。
キミが何を言おうとも
ウチはキミを助ける この命をかけて 必ずキミを
- 82 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)19時28分10秒
それからウチと梨華ちゃんは、まだ湿っぽいベッドの中
しっかりと抱き合って話しあった。
二人とも、恐怖に負けて行為に及んでしまった自分を
責めていた・・・・・
元はといえば、先に無理矢理求めたウチが悪いのに
梨華ちゃんは最終的に求めたのは自分だと言って・・・・・
「知らないふりして触らせないようにしようとか、
考える前によっすぃが入ってきて、パニックになっちゃって
どうしていいかわかんなくって
馬鹿みたいに泣いて震えて・・・そんな私見たら
よっすぃが放っておけなくなることぐらいわかってたのに。
よっすぃの優しさを利用しちゃった・・・・
最低だね、私・・・」
そんな自分に呆れるよなんて言って
ウチから目を逸らす彼女をより強く抱きしめた。
- 83 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)19時39分21秒
- 「梨華ちゃんが最低ならウチも最低だよ。
先生から頭髪からの感染は確率が低いって聞いてたし
安心させる為だけなら
こうやって抱きしめればよかったんだ。
ウチだって怖かった…梨華ちゃんを失うのが……
失うぐらいなら一緒にって、部屋に入る前にもう決めてたんだ。
乱暴にしちゃって、ごめんね…」
「ううん、よっすぃが抱いてくれなかったら
どうにかなっちゃってたもん……ありがとう、ひとみちゃん」
「うっ…ん、ありがとぉ…梨華ちゃん…っく」
何かが切れたようにウチの目から涙が溢れて
梨華ちゃんの胸元にそっと引き寄せられる。
柔らかい胸と、頭を撫でてくれる手は
まるで母のように感じられて
少しの間、声をあげて泣いた。
- 84 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)19時53分19秒
「でも、梨華ちゃんが知ってたのには驚いたよ」
そう、そもそもウチは感染を教える気なんてなかった。
何も知らせないまま抱いて
最悪の場合ちぢんで≠ゥらバラそうかなんて
末恐ろしいことを考えたりしちゃってたんだ。
言ったら怒られそうだから、内緒だけどね。
「ん?梨華ちゃん、どしたの?」
驚いたよってウチが言ったのに、
なんで梨華ちゃんが驚いた顔してんのさ。
でも、そういう顔を見るのが久しぶりな感じがして、ちょっと嬉しい。
「梨華ちゃん!どうしたのさ?」
いつまでも驚いたまま固まってるから、少し強く声をかけた。
「!あっ…あのね、矢口さんの写真届けに行って
ドアから声が漏れてきて……
気づいたらここに戻ってたんだけど…
私、写真どこにやっちゃったんだろう?
ここに着いた時はもう持ってなかった気が……」
「え!?どっかに落としたんじゃん?
探せばすぐ見つかるよ、後で一緒に探そ」
先生に対する怒りは、まだ確かにウチの心の中に存在して・・・
だけどこれは矢口さんとの約束だし
絶対守んなきゃ。
- 85 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月11日(水)20時00分36秒
- 壊れかけのマシンで更新、お疲れさまです。(w
現在、この作品は更新チェックリストのトップです。
楽しみにしていますので、がんがって下さい。
- 86 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)20時04分42秒
- 「よっすぃ…私ね、なんか開き直ってきちゃったの」
「どゆこと?」
「あのね、うつったのは仕方ない。
ここにいたらいずれ感染してたのかもしれないし・・・
ただそれが早かっただけ。
だから、絶対三人で日本に帰ろう、ポジティブにいこうって」
あははは・・・ごめん。
真剣に言ってんのに悪いけど、ちょっと笑える。
「なんで笑うのよぅ」
拗ねた顔でウチの頬をひっぱる梨華ちゃんも
いつの間にか笑顔になって。あぁ、この顔も久しぶり。
「ごめぇん、ウチもそう思う。
もしかしたら二人とも感染してないかもしんないし
奇病と戦う為にアフリカまで来たんだもんね。
ここに来る途中、車の中で思ったんだ。
ウチはあと何人救えるんだろうって、
この手の届く範囲の全てを助けたいって。
だから頑張る。
絶対惚れ直すから、ちゃんと見ててね」
生きて必ず 日本へ帰ろう
- 87 名前:求め合う心と体 投稿日:2002年12月11日(水)20時11分58秒
- あぃや〜びっくりしただぁ(高橋風)
すんません、あといっこあったりしますた。
書いててわけわかんなくなってきたし、指つるし・・・
>ひとみんこ様
こんな駄文にもったいないお言葉ありがとうございます。
がんがりやす。
- 88 名前:デール. 投稿日:2002年12月11日(水)20時26分20秒
- がっくり・・名前入れ忘れ・・・
それと、文中の時計は腕時計です。
よっすぃのは・・ブルガリなイメージかなぁ。
- 89 名前:デール 投稿日:2002年12月11日(水)20時35分10秒
- しくしく・・・
まだエ○の余韻が残る駄文をageてしまうなんて
ごめんなさい。
- 90 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月11日(水)20時45分37秒
- 済みません!! 割り込みレスしてしまいました。
静かに,sageときます。
- 91 名前:デール. 投稿日:2002年12月14日(土)05時39分08秒
- >ひとみんこ様
いえいえ、全然気にせんでくださいませ。
全てはこの壊れそうで壊れないPCが悪いのれす。
- 92 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月14日(土)06時06分11秒
- 「捨てなくてよかったぁ」
ホントだよ。飢饉で苦しんでる人たちを見たその日に
食べ物を捨てるなんて、バチが当たるとこだったよ。もぐもぐ・・・
昨日用意して一晩放置されてたご飯でも、食べ物を粗末にしちゃだめなんだ。
「はぁ…よっすぃって好きなもの食べてる時が
一番幸せそうだよね」
「そぉ?でも確かに梨華ちゃんと一緒に
朝ご飯食べれるってのは幸せだよ。
ゆで卵だって梨華ちゃんのが一番おいすぃ〜し」
「ゆで卵なんてゆでるだけじゃない、もっとちゃんと噛んで食べて」
「梨華ちゃん!
ゆで卵を馬鹿にしちゃいけないよ!
水を火にかける前に卵を入れて、沸騰したらしばらく様子を見、
“今だ!”と思った瞬間にすばやく冷水につけないと
この味は生まれないんだよ。それにむきやすかったでしょ?
そしてこの黄身。見事に卵の中心にある黄身。
これはゆでてる間、梨華ちゃんがずっと卵を優しく
転がしてくれてたおかげじゃん…ありがとう……ウチ、嬉しいよ…」
- 93 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月14日(土)06時19分34秒
- 視界が歪む。梨華ちゃんがウチの為に卵を・・・
あまり料理が得意じゃなかったから、
最初の頃はよく途中でカラにヒビが入って
雲みたいな白身がくっついてた梨華ちゃんのゆで卵も
今じゃこんなに立派になって・・・・・
一生懸命練習して“優しい卵の転がし方”をマスターした梨華ちゃんはホントにかっけぇ。
「ちょっ!?よっすぃ、泣かないでよぅ…もぅ……」
正面に座ってた梨華ちゃんが椅子ごと隣に来てくれて
背中を撫でてくれる。
顔をじっと見つめたらなぜか笑われて・・・
「ふふっ、よっすぃほっぺたに黄身がついてる」
なんて言ってキスで取ってくれた。
幸せだよ 今のウチは 幸せなんだよ
梨華ちゃんも幸せですか? 今のアナタは 幸せなんですか?
- 94 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月14日(土)06時28分16秒
- 「よっすぃ、あ〜ん」
なぁんて言ってフォークを向けるアナタの笑顔は
幸せそうに見えるけど、この食事が終われば奇病がウチらを待ってる。
「よっすぃ、私もよっすぃと一緒に朝ご飯食べれて・・
ううん、一緒にいられるだけですっごく幸せだよ。
だからそんな顔しないで?
今は・・・笑ってて・・・・・」
ありがとう ウチの天使
・・・でもこの体勢とその上目遣いは反則
「いただきま「ごちそうさま!」
ウチが“優しい梨華ちゃんの転がし方”をマスターできる日は、そぉとぉ遠い。
- 95 名前:デール 投稿日:2002年12月14日(土)06時35分10秒
- 超短更新ですが・・・
ちょっとダラダラとしてしまいました、申し訳。
ちなみに小生はゆで卵にクレイジーソルトをつけて食べるのが
好きです。ってかクレイジーソルトが好き。
- 96 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)04時08分39秒
- 「ぬ」
「・・・ないね」
矢口さんの写真を探しながら、先生へ向かう。
でも、殺風景な研究所の廊下にはゴミ一つ落ちてやしない。
どんどん八の字になっていく眉毛が見えて、笑わせようと
ウチが発した渾身のボケは見事に聞き流され、余計な淋しさまで感じてしまう。
さっき『今は笑ってて』って言ってたのになぁ。
それともボケだって気づかなかったとか?
でもちょっと考えたよね?
う〜ん、高校時代にウチの周りでにわかに流行ったヤツに
したのがだめだったかぁ。
でも、梨華ちゃんだって古典で打消しの助動詞「ぬ」ぐらい
習った筈だし、普通わかるよね?
てかコレ言ってたのウチらの他にもいたでしょ?
「消しゴムがぬ」とかさぁ。
あぁ 懐かしいまだ子供だったあの頃
子供扱いと大人扱いを同時に受けたあの頃
もう戻れない 平和だった日々
- 97 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)04時19分20秒
- 「おはようございます、よく眠れましたか?」
「「ひっ!!」」
静かで少し寒い空気の漂う中、突然背後から声をかけられて、
ウチと梨華ちゃんから揃って変な声が出る。
「すみません、驚かせてしまいましたか」
「あ、いえ大丈夫です。こちらこそすみません。
昨日この辺で封筒を落としたんですけど、見ませんでした?」
「さぁ・・見てませんねぇ。私は昨日お二人の部屋に
荷物を運んだ後はずっと自室にいたもので」
「そうですか、イナーバさんの部屋はどちらに?」
「私の部屋は玄関入ってすぐのところですよ。
病院でいう受付みたいなもんです」
ほっ・・・てことは昨日の声は聞こえてないよね?
ウチはいいけど梨華ちゃんカン高い声で叫んでたし、アノ声も・・・
普段は恥ずかはがって声出すの我慢しちゃう人だから
ウチ以外に聞かれたりしたら何するかわかんない。
- 98 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)04時28分48秒
- 「イナーバさんも今から先生の部屋に行くんですか?」
明らかにほっとした顔の梨華ちゃんが、下を向いていた顔を上げて訊いた。
やっぱ気にしてたね、ごめんね。
「いえ、雑用が残ってますんで。
封筒を見つけたら、お部屋に届けますね」
そう言うと、イナーバさんはくるりと背を向けて去って行った。
今日も、彼女の手にはゴムの手袋がはめられていた。
彼女は当然先生の感染を知っていて・・・
ウチらのことは知っているのだろうか?
今の様子では、きっと知らない。
感染を恐れているであろう彼女が、感染者に囲まれていると知った時
彼女は何を思うんだろう?
- 99 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)04時37分54秒
- 「「おはようございます」」
部屋に入ると、すでに先生は机に向かって本を読んでいた。
「おぅ、おはようさん。昨夜はえらいドタバタやっとったなぁ」
「「!!」」
「聞こえたんは物音だけやから安心し、声までは届いてへんよ。
まぁアンタらの部屋はここの真上やからしゃーないわな」
物音だけでも結構恥ずかしい・・・
だってそぉとぉうるさかっただろうし・・・
あぁまた梨華眉が・・・・ん?でもさぁ、火種は・・・・
「誰のせいだと思ってんスか!?先生のせいでしょ!!
先生がドアにヒビなんか入れるから声が漏れて・・・」
「ん?せやから石川の声は漏れてへんよ」
「違いますよ!!ウチと先生の声ですよ!
今絶対わかってて言ったでしょ?趣味悪いっスよ!」
- 100 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)04時47分53秒
- カンのいい先生のこと。
昨夜ウチと梨華ちゃんの間に何があったか、ウチが何を選んだか
そして、ウチが今から言うことも全てお見通しの筈。
「先生」
「なんや?」
「ウチは梨華ちゃんの為にも、必ず奇病の治療法を見つけて
日本に帰ります。
だから、ついでに先生のことも助けてあげますよ」
「ほぅか・・・ほな石川のついでにアフリカの、いや世界中の人々を救ったれ」
そう言った先生の顔は 涙はなくとも泣いてるように見えた
ウチはわかってるよ 先生は酔ってドアを蹴ったんじゃないって
奇病に感染して 先生だってムチャクチャ怖かったんだ
矢口さんに会えなくなるのが 怖かったんだ
今更先生を責めても仕方無い
ポジティブにいこうって 決めたもんね
- 101 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)05時03分03秒
- 「あのぅ、先生?」
「おぅ石川、やっと立ち直ったんか」
「・・・・・」
「先生っ!そういうのは思っても口にしないで下さいよ!
絶対ワザとでしょ?ったくさっきから・・」
「あははっごめんごめん。で、なんやの?」
ウチは知っている。人が同じ言葉を二度繰り返す時、
その言葉に気持ちはこもっていない。「はいはい」とかが良い例だ。
「…あの、矢口さんから写真を渡して欲しいって頼まれたんですけど
昨日のドタバタで落としちゃって…探したんですけど……」
「あ〜それならさっき拾ったで。
ドアのスグ目の前に落ちとったわ」
「えっ!?本当ですか?……よかったぁ…」
「ホラ、もう写真立てに入れてあんで。早よ気づきや」
先生の指差す方を見ると、白い棚の上にピンクのハート型の写真立てがあった。
その中で、矢口さんとあいぼんとののが笑ってる。
「やっぱ矢口はかわいいなぁ、悪ガキーズも元気そうで安心したわ」
- 102 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)05時11分21秒
- 先生、矢口さんに会いたいよね?
でもこの世で一番大切な矢口さんを奇病の危険に近づけたくなくて
会えないんだね。
ウチは幸せだな
死ぬにしろ生きるにしろ梨華ちゃんと一緒にいられて
ちょっとまだ腹たってるけどさ
絶対に矢口さんに会わせるよ ウチのこの手で
「先生、矢口さんは先生の体のこと知りませんよね?」
「なんや石川、先生の体って。ヤラしい言い方せんといて。
ただでさえアンタはエロイんやから」
「だからぁ!梨華ちゃんをイジメないで下さいよ!!」
そんな風におどけてみせても、先生の体からは
矢口さん好き好きビームと、会いたいビームが出まくりだよ?
報せなくていいの?
- 103 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)05時20分19秒
- 「言うてへん、言えへんわこんなん」
「…先生…矢口さん言ってました、先生は後一年で帰って来るって。
だから、呼ばれたのが自分じゃなくて私でも気にしなくていいって。
矢口さんは先生のことを信じて待ってるんです」
真剣な梨華ちゃんに詰め寄られて、先生は諦めたように長く息を吐いた。
「言えへんのはな、そりゃ言うたら矢口がここに来てもうて
感染してまうかもしれんのが嫌ってのもあるで。
でもな、それだけやない。私が言おうとしても、言えへんねん」
「どういうことですか?」
「よっさんには昨日も言うたけど、
この奇病を世界に発表するんを、病院はためらっとる」
- 104 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)05時30分10秒
- 「それはまだ早いっちゅうこっちゃ。被害はどんどん広まっとるけど
まだアフリカの中だけの問題で、しかも奥地や。
世界中に広まるなんて、考えてへんのかもしれん・・・
でも私は発見された段階で、さっさと発表するべきって言ったんや。
それがあかんかった。
矢口への手紙もチェックされるようになったし
電話の使用も禁止された。
元々忙しくてなかなか電話はできへんかったけど
半年前にやっとかけれたんが最後になってもうたわ。
そんで私も感染して、ここへ来てからは手紙も書けへんくなった。
矢口からの手紙は病院に届いたんをイナーバがチェックして
渡してもらえるけど、私の書いた手紙が毒になる可能性もある。
せやから、言お思ても言えへんねん」
- 105 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)05時41分18秒
- 「でも!そんなのヒド過ぎますっ!
先生も・・・矢口さんもつらいじゃないですか!」
「でも、ここにはここのやり方やルールがあんねん。
私は所詮外人や、従うしかないねん」
嘘だ、そんなの絶対間違ってる。
「納得できへん気持ちはわかる。
私もここに来てから不条理ばっかり感じとる。
でも、矢口に報せる術はない、ここには電話もない。
あるんはイナーバの部屋の無線機だけや、その無線機も
病院としか連絡取れへんようになってるから
もう私らは治療法を見つける以外に道はないねん」
「ウチらを呼ぶことは反対されなかったんですか?」
「半分脅したんやけどな。奇病の存在と名前以外、詳細は
こっちに来てから話すことを条件に許可が降りたわ。
寺田院長は…うすうす何か気づいとるかもしれんけど」
- 106 名前:幸せと現実 投稿日:2002年12月16日(月)05時45分49秒
- NGだわ・・・こんな話・・・
アフリカに来てから信じられない話ばっかだよ
何考えてんのさ アフリカ人は
先生はガケップチに追い詰められて
ウチに助けを求めた
それから先はどうなるんだろう
ねぇ梨華ちゃん こんな話聞かされてもさ
ポジティブにいかなきゃダメ?
ウチちょっと自信ないかも
ごめん ちょっと考えさして
- 107 名前:デール 投稿日:2002年12月16日(月)05時54分29秒
- なんかポジとネガの繰り返しがしつこいなぁ・・反省
アフリカの皆様、悪者にしてごめんなさい。
次からやっと戦いが始まります。
医療についてもかなり適当な点がきっとありますが
目を瞑ってやって下さい。
PCのせいでもうこんな時間・・働きに行かねば。
- 108 名前:デール 投稿日:2002年12月16日(月)06時09分31秒
- “誤字脱字の訂正”
>96 先生へ向かう× 先生の部屋へ向かう○
>97 恥ずかはがって× 恥ずかしがって○
この他にも今までの文に多くの誤字がありました、申し訳。
- 109 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月25日(水)01時30分09秒
- ウチと梨華ちゃんが研究所に来て、一週間が経った。
中澤先生の体は確かにちぢんで≠「く。
診療を始めてから、もう30センチもちぢん≠セ。
組織検査やレントゲン……思いつくことは全て
調べてみたけれど、奇病の正体は少しも掴めない。
「くそっ!なんなんだこれはっ!?」
「…よっすぃ、先生が呼んでるよ」
情けないけど、ウチは実際に先生がちぢむ≠フを目の当たりにして
馬鹿みたいに焦っていた。
まだ一週間・・・・もう一週間・・・・
夜、寝る間も惜しんで研究に没頭してるにもかかわらず
奇病の尻尾すら掴めないなんて・・・・・
- 110 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月25日(水)01時41分57秒
- 「先生、これは病気じゃありませんよ……
何か別の原因です」
「そうやったらええんやけどなぁ…ええこたぁないか」
「外部に何の変化もなく、症状もちぢむ≠フみ。
細胞の一つ一つは原型のままちぢんで≠ワす!
しかも古い細胞が新しくなって………」
一階の研究室で、先生とイナーバさんと顕微鏡を覗きながら
こんな議論をするのはもう何回目だろう。
この研究所にあった資料は読み尽くしたし、保存してあった
ちぢん≠セ動物の体も調べ尽くした。
それなのにこんな会話しかできないなんて・・・・
「まぁよっさん、最初からさっさと上手くいくなんて
思ってへんから、そう気を落とさんと」
「はぁ、そうですね・・・」
自分の体はもうちぢみ¥oしてるのに、先生は強いなぁ。
- 111 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月25日(水)01時57分20秒
- 「あの、イナーバさんのジープ明日使いたいんですけど」
「あぁ、構いませんよ。外の動物を調べに行くんですね?」
「えぇ、とりあえずできるだけ多くの血を採って調べたいんです」
「でもまだよっさんこの辺の道わからんやろ?
イナーバ、悪いけど一緒に乗ってったってくれるか?」
「はい、では明日の朝…早いうちに出ましょう。
私はこれからジープの整備をしてきますので、今日はこれで」
そう言って立ち上がり、イナーバさんは出て行った。
彼女はまだ、ウチと梨華ちゃんの感染を知らない。
「ほな私らも今日は休もか。よっさんずっと寝てないやろ?
無理してもしゃーないで、今日は早よ寝な」
「そうっスね、じゃあ失礼します」
「あんまギシギシ音立てへんといてやぁ」
「・・・・・おやすみなさい」
まったく一言多いんだから・・・
もう今調べられることはないし、明日からの為に
寝て体力をつけとかなきゃ。
だけどやっぱり焦りからか、心臓がずっとバクバクしてて
なんか簡単には眠れそうにない。
嫌だけど・・・薬飲もうかなぁ・・・
- 112 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月25日(水)02時08分25秒
- 「ただいま」
「おかえりなさぁい」
二人の部屋のドアを開けた瞬間、自然に言葉が出た。
この一週間、研究室や実験室にこもって机で寝る日々だったし
食事も梨華ちゃんが運んできてくれたのを、資料片手に
頬張ってたからあまり一緒に食べていなかった。
ぱたぱたと忙しく動く彼女を久しぶりにゆっくり見て
ものすごく愛しく想う・・・かわいいなぁ、やっぱ好きだなぁ・・・
「今日はここでお休み?ご飯もう食べる?」
「ここで寝るよ、用意まだみたいだから先にシャワー浴びてくるね」
思えば、今日が最後の休日なのかもしれない。
明日からは、外に転がってるであろう被害者たちを
徹底的に調べて、必ずや奇病の正体を突き止めてやるんだ。
- 113 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月25日(水)02時27分26秒
- シャワーを浴びた後、梨華ちゃんと久しぶりにゆっくり食事をした。
ベッドの上に寝転んでゴロゴロしていたウチを、シャワーを
浴びた梨華ちゃんがマッサージしてくれて
変な緊張感で興奮状態だった体が、だんだんと緩んでいく・・・
「よっすぃ…焦っちゃうのはわかるけど、無理はしないでね」
「大丈夫だよ、ウチ体力あるし」
「…心配だもん。私にできることなら何でもするから、甘えていいよぅ」
「あははっ。うん、甘えるね。
でもウチらの命もかかってることだし、やっぱ無理はする。
・・・いい?」
ウチは優しく梨華ちゃんを押し倒す。
だってさ、もっと彼女を感じてないと眠れそうにないんだ。
甘えていいって言ってくれたし・・・・
「疲れてない?明日朝早いんでしょ?だったら……」
「黙って、キスできないじゃん。
それに甘えさせてくんなきゃ寝らんないよ、甘えていーんでしょ?」
わかってるよ?甘えていいってのは、精神的にってことでしょ?
でも欲しいんだ、止まんない。
- 114 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月25日(水)02時35分20秒
- 「いいけど……んぅ…んっ……」
まだ何か言いたそうな唇を強めに塞いで、吐息を呑み込んだ。
「あっ…んんっ……ひとみ…ちゃぁ…好き、大好き……あぁんっ…」
暖かく柔らかい体を抱きしめて
甘く切ない声だけを耳にして
この世で唯一人だけを感じて ウチはようやく眠りについた
- 115 名前:デール 投稿日:2002年12月25日(水)02時44分12秒
- やってもた・・・前回の更新から変に時間があいてるし・・・
読んで頂いてる方、いらっしゃいましたらお待たせしました。
やっと壊れたかと思いきやクリスマスにPC復活。
新しいの買おうと思ったのに・・・
酔っぱらいつつ更新したのでミスがなきゃいいんですが。
メリークリスマスです。ほな飲み直すべ♪
パーティー抜け出して駄文書いてる私って一体(ry
- 116 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2002年12月28日(土)22時29分01秒
- はじまして。ななしのよっすぃ〜ともうします。
いや〜おもしろいっす。
プロローグの『ちぢむ』を見て、懐かしくなりました。
ネタバレにならないように細かい内容はカットしますが、更新、楽しみに待ってます。
- 117 名前:デール 投稿日:2002年12月29日(日)03時31分29秒
- レスありがとうございます!
>ななしのよっすぃ〜様
こちらこそはじめまして。ネタバレに気まで使って頂いて
おもしろいとまで言って頂いて、狂喜乱舞致しました。
元ネタはあんなに短いのにこっちはダラダラと長くてすいません。
レスはやっぱり嬉しいですねぇ、励みになります。
うっし!頑張るぞぉ〜
- 118 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)03時46分19秒
- 翌朝、ウチとイナーバさんは太陽が昇りきるのと同時に研究所を出た。
「ガソリンはどのくらいあるんです?
今日はどのくらい走れますかね?」
「今は満タンですよ、一応後ろに余分を積んでおきましたし
ガソリンは減り次第病院から取り寄せてます。
お二人が来る際、多めに支給してもらったので当分大丈夫ですよ」
足場の悪い道を20分も進むと、奇病に苦しみ倒れた病獣の姿が目に入る。
「あれは…象ですね?停めて下さい」
「気をつけて下さいよ、この手袋をした方がいい」
そう言って手渡された手袋を受け取って、改めて彼女の無知を確認する。
大きな木の傍にジープを停めて、ちぢんで%|れた象に近づいた。
「七頭か……もう意識がありませんね、手分けして血を採りましょう。
イナーバさんはあっちの三頭お願いします」
こうして・・・ウチとイナーバさんは片っ端から病獣たちの血を採っていった。
- 119 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)04時04分49秒
- <石川視点>
よっすぃとイナーバさんを送り出してから、部屋の掃除をして布団を干した。
まさかアフリカで布団を干すなんて、貴重な体験っポイなぁ・・・
そうだ!中澤先生にコーヒー持ってこうかな、
ついでに先生の部屋と研究室も片付けた方がいいよね。
皆研究に没頭して部屋グチャグチャになってたし・・・・
綺麗好きなよっすぃからは信じられないぐらい、まさに腐海の森。
おぉっといけない、ノートも持ってかなきゃ!
私は基本的に研究にはノータッチなんだけど、先生の体調や
ちぢみ°合を測るのは私の仕事。
今のところ先生は30センチちぢんで≠オまったけれど
なんていうか・・・“それだけ”
本当にこの奇病は他に名前のつけようがないなぁって思った。
先生は本当に元気で、病人だってたまに忘れちゃう。
日本にいた頃、昨日まで元気だった患者さんが急変して亡くなること
だってあったけど・・・それとも違うんだけど・・・なんていうか・・・
先生はちぢむ≠アとで確実に 1ミリずつ死に近づいていってるのに
全然わかんないよ
でも わかってしまうのは もっと怖いの
- 120 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)04時18分32秒
- <吉澤視点>
「次で最後にしましょうか、もう容器の空きがないので」
「そうですね。
あっ!あそこ見て下さい、サイがいます」
「……やっぱり…あれもかなりちぢんで≠ワすね」
そう、ウチの目の前に次々と現れるちぢむ
さっきなんて手乗り象って呼びたくなるようなのまでいてさ
非現実な、夢見てるような奇病の存在が
先生以外の、多数のちぢん≠セ動物たちの姿によって
現実のものなのだと、確実に奇病は広まっているのだと、思い知った。
「じゃあ、さっさと血を採って帰りましょ」
今、時刻は二時少し前。
お互い口には出さないけど、そぉとぉお腹も減ってて
汗もすごいかいてるし、かなり疲れてる。
あ〜早く梨華ちゃんに会いたい・・・こんなに離れたのいつブリかなぁ?
………………………
なんて 愛しい彼女を想って ウチの意識が少し飛んだ時
悲劇は起きた
- 121 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)04時31分41秒
- 「うわぁっ!!!」
ドスッと鈍い音が聞こえて目を向けると、もう動けないだろうと
思っていたサイに、血を採ろうと近づいたイナーバさんが吹っ飛ばされていた。
「大丈夫ですか!?あんなに小さいのに・・・
やっぱサイはサイですね、こいつは諦めて帰りましょう」
「やっ!やられたぁっ!!病サイに腹をやられたぁ!
感染だぁーっ!!!」
涙目になって大声で叫ぶイナーバさんのお腹を見ると
服が破れている。
「ツノでつかれたぐらいじゃ感染しませんよ。
血も出てないし……とにかくジープに戻りましょう」
「いや…もうダメです……っダメだぁ…」
イナーバさんは子供のようにポロポロと涙を流して呟いた。
油断した 最後の最後で油断した
死を目前に衰弱しきった様子と
照りつける太陽に集中力を奪われて アフリカに来て 初めてのミスを犯した
- 122 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)04時44分33秒
- 泣きじゃくりながらブツブツと呟き続けるイナーバさんを
助手席に乗せ、ウチはジープを走らせた。
イナーバさんの目は完全に焦点を失って、涙だけが溢れている。
サイにつかれたお腹を抑えた手はガタガタと震えて・・・
いかに彼女が奇病を恐れていたかが、強く強く伝わってくる。
「も…もうダメだ……我慢できないっ!!
吉澤先生!逃げましょうっ、このままジープで町へ逃げましょう!」
車を走らせて30分、ようやく涙を止めた彼女の血走った目がウチを睨む。
「何言ってんスか!?ダメですよっ!」
「じっじゃあこの車を返せっ!私は逃げ出したい!!
もうこんなところはウンザリだっ!!」
これが火事場のクソ力ってやつかってぐらいの強い力で
イナーバさんはウチの体を掴み、揺らしてくる。
当然ハンドルを握る腕も掴まれて、ジープはグラグラと八の字に進み出した。
- 123 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)05時01分52秒
- 「やめっ!!離してくださいっ!木が……!ぶつかる!!!」
落ち着いて考えれば、さっさとブレーキ踏んでりゃよかったんだけど
『逃げる』って言葉に、ウチは動揺してたんだ。
木にぶつかる寸前でやっとブレーキを踏み、無理矢理ハンドルを左へきった。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…何するんですか!?
危ないですよっ!」
「わ…私は最初から嫌だったんだ、あんな…感染者の傍に
いなきゃならないなんて!中澤先生はいい人……それはわかってる。
でもっ!!私は怖い!怖くてたまらないっ!!」
「落ち着いて!あなたより中澤先生の方が怖いんですよ、
逃げるなら…勝手に一人で逃げればいいっ!
ウチは約束したんだ…必ず助けるって、だから最後まで逃げない!」
「……その前に、あなたがちぢんで℃んでも知りませんよ……」
お生憎様 ウチもすでに感染者さ 時が来れば いずれちぢむ
でもね 感染者である前に ウチは医者なんだ
病気が怖くて逃げるなんて できるわけないだろ
そして 医者である前に 吉澤ひとみ
愛する人と恩師を置いて 逃げるなんて できるわけないじゃん
- 124 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)05時21分42秒
- <石川視点>
「いやぁ〜石川もコーヒー炒れるんうまなったなぁ」
「よっすぃが好きなんで、色々勉強したんです」
「ちっ惚気か…どーせご褒美目当てやろ…
あー矢口何しとるかなぁ、今日もかわいいんやろな。
チューしたい、あーチューしたい」
もう、先生ったらデレデレしちゃって。
先生がふざけた調子で言うから、私も普通に笑っちゃうけど
すごく切ないよね。
会わせて、チューさせてあげたいって心の底から思う。
「よっさんら、何時頃帰ってくるんやろ?
お昼持ってかんだし、腹空かして帰ってくるんやろなぁ」
「さっき二人の分も作っておいたんで大丈夫です。
あっ、でも夕食の時間まで帰って来ないのかなぁ」
「もしかして、イナーバとええことしとったりしてな」
「なっ!?そんなワケないですよっ!だって・・・・・」
「イナーバはアンタらの感染知らんで、よっさんが黙って押し倒せば…」
「もうっ!変なこと……言わないで下さいよぉ……
だ、大丈夫だもん…よっすぃは……浮気なんて、しないもん…」
- 125 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)05時38分32秒
- 「・・・・・」
しない……ハズだけど…外人さんって…その…す、すごいみたいだし…
一度はお相手してみたいって、前にテレビで誰かが言ってた。
けど、よっすぃはタイプじゃないよね?
ア、アフロ頭とか……あんまり好きじゃないよね?
あっ!でも人の好みは季節の如く移り変わるものっていうし…
………どどどどうしよう……ひとみちゃぁん………
「…っ!」
苦しそうに引き攣った声が聞こえて慌てて先生を見ると・・・
涙を流して・・・・・笑ってる・・・
くっ悔しいっ!またからかわれたのねっ
私って・・・なんでいつもこうなんだろう・・・
「あ〜っありがとさん、石川。やっぱ人間笑わなあかん。
アンタとおると笑えるわぁ、よっさんは幸せ者やね」
えっ、そうなの?えへへ・・そうなんだぁ・・
私ってばサムくないのね。そうよ、私はいつでもハートフルだもん!
「ニヤニヤしよって…キショイで」
ちょっと褒めてくれたかと思えばすぐコレなんだから。
でも・・・コレって照れ隠しなのよね?わかってるんだから♪
- 126 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)05時49分27秒
- えへへっ・・・て、何気にスルーしちゃったけど
やっぱりイナーバさんは知らないんだよね、私たちのことは。
「先生、イナーバさんに教えなくていいんですか?」
「んん?イキナリなんや、感染のことか……言っても混乱させるだけ
かもしれんで。あいつの手、見たやろ?
今あいつがこの世で一番恐れとんのは奇病の感染や」
うん、それはわかってた。
「イナーバのおかんは入院しとって金がかかんねん。
おとんも早よぅに亡くなっとるし、妹もまだ小さい
せやからここで我慢して働いとるんや。
嫌やろなぁ、いくらようけ金貰えるからって
感染もしてないのにこんなとこで働くんは・・・地獄やろなぁ」
- 127 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)05時55分58秒
- 地獄という言葉に 少しの間何も言えなくなった
イナーバさんに同情するのが普通だろうに、それもできなくて
免疫っていうか アフリカに来てからびっくりする話ばっかで
イナーバさんがここで働く理由や 家族の事情なんて
やっぱりそういうことかって 思うことしかできなかった
だってそういう話がなきゃ 断れたハズだもん 感染を恐れる 彼女なら
- 128 名前:逃亡者 投稿日:2002年12月29日(日)06時06分14秒
- この日、夕方四時頃によっすぃとイナーバさんは帰ってきた。
よっすぃは普通だったけど、イナーバさんはとても具合が悪そうで
大丈夫ですかって訊く前に、部屋に入ってしまった。
初めて見る彼女のその様子に、不安と心配、それにある考えが頭に浮かんだけど
よっすぃに「気にしなくていいから」って抱きしめられて
怪我なく無事に帰ってきてくれた暖かい腕の中の
浮かれモードな私のムコウ 夜は静かに過ぎていった
その日 イナーバさんは一歩も部屋から出てこなかった
そして翌朝 壊れた無線機だけを部屋に残して
彼女は消えた
- 129 名前:デール 投稿日:2002年12月29日(日)06時13分59秒
- なんかいつも思うけど今回はいつもに増して
文章ボロボロ・・・PCもボロボロ・・・私もボロボロ・・・
ぶっちゃけ、免許は持ってますがジープがどんな車なのかはよくわかってません。
オートマしか持ってないんで運転とか、ジープについても適当な記述しか
できませんでした。ジープってマニュアルですかね?
とにかくジープを愛する方、ごめんなさい。
- 130 名前:チップ 投稿日:2002年12月30日(月)20時29分25秒
- 年内にもう一度更新するつもりでしたが、諸事情により
ダメになっちまいました・・・ショボン
最後だけは書き終えているものの、途中がまだまだなので
いつ完結できるのやら見当もつきませんが
絶対に完結させますので、来年もよろしくお願い致します。
ではよいお年を。
- 131 名前:デール 投稿日:2002年12月30日(月)20時37分32秒
- まっ間違えた!
デールです、デール。
あ〜びっくりしたぁ、まぁどっちでもいいか。
こんなボケたままじゃ来年もいいことなさそ・・・・・
- 132 名前:ひとみんこ 投稿日:2003年01月01日(水)08時26分26秒
- デールさん、あけおめです。
今年もよろしく。
私、原作を知らないので、楽しみです。
- 133 名前:デール 投稿日:2003年01月06日(月)02時34分21秒
- あけおめ&ことよろです。
元旦の朝に喉にレンコンが詰まり、出先でクレスタ(たぶん)にはねられ
タクシーに不時着し、正月早々警察官と仲良くなってました。
二日に更新しようと思ってたのに・・・
車にはねられたのは二度目ですが、前回同様目立った怪我無し。
自転車が静かに凹んだだけ・・・ついてんだかついてないんだか・・・
あっでもタクシーに不時着した時打った背中が普通に痛い。
>ひとみんこ様
レスどうも!あけおめっす。
今年もよっすぃの優しさとかっけさと類まれな勇気、
そして梨華ちゃんのかわいさと自覚無き色気と内に秘めた包容力を、微力ながら
頑張って書きたいと思います。
- 134 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月06日(月)02時45分56秒
- <吉澤視点>
イナーバさんがいなくなって ウチにはわかったことがある
先生がどうして梨華ちゃんを呼んだのか?
その・・・・・本当の理由
梨華ちゃんが一緒なら ウチは決して逃げない
先生の申し出を 絶対に拒めやしない
先生はきっと ウチなら逃げないだろうって思った筈
けど 保障なんて無い
ウチがイナーバさんのようにならない保障なんて無い
でも 梨華ちゃんが一緒なら 例え梨華ちゃんが感染してなくても
ウチが先生を置いて日本に逃げ帰るなんてありえない
梨華ちゃんが感染して 今もここにいるのは事故
もし無事な体なら 先生はあの日
梨華ちゃんを日本に帰らせるつもりあったんじゃない?
だって ウチにとっての梨華ちゃんは
先生にとっての矢口さんだってこと よく知ってるんだからさ
- 135 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月06日(月)02時57分13秒
- 「ご丁寧に無線機壊してくなんて、ぬかりないなぁ」
「感心してる場合じゃありませんよ」
「でもイナーバがおったところで私は外部との連絡取れへんだし、
変化なしやな」
不思議なことに、イナーバさんがいなくなったのがわかった時、
ウチらはとても冷静だった。
先生はいつかこうなるって思ってたし、ウチもなんとなくわかってた。
イナーバさんがサイに襲われた時のことを話してなかったのに
梨華ちゃんも何も言わなくて。
普通なら泣いて取り乱すであろう梨華ちゃんが第一発見者だったんだけど、
どこか興味無さそうに、壊れた無線機を拾い上げて
静かに佇んでいた。
ウチが外でのことを話した時も、「ふぅん」なんて呟いただけで・・・・・
まぁ先生も「ほぉか」しか言わなかったけどさ。
驚くことへの免疫がついたのは、ウチだけじゃないらしい。
- 136 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月06日(月)03時08分31秒
- でもその後で二人っきりになった時、なぜか梨華ちゃんはむすっとしてて・・・
「なんか怒ってる?」
「怒ってません」
「怒ってんじゃん、なんか敬語だし」
「お、怒ってないもん………」
「じゃあなんでそんな顔してんのさ?」
頬に手を当ててそっと顔を覗きこむと、梨華ちゃんは真っ赤になってて
「なんか…二人で逃げようって……駆け落ちみたいで
イヤだったのぉ………」
「・・・・・・」
梨華ちゃんの着眼点ってなんでそんなとこにばっか敏感なの?
ある意味天才?
「ば…馬鹿だと思ってるんでしょ……どーせ…」
「違うよ、すげぇかわいいなぁって思ってる」
そう言って彼女を抱く手に力を込めたその時、
「ちっ」
わざとらしい舌打ちが聞こえて、慌てて体を離した。
- 137 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月06日(月)03時21分23秒
- その日から、ウチは殆ど一人で研究を続けている。
先生は、まるで子供のようだ。
矢口さんも身長が145センチで“ミニマム矢口”なんて
言われてたけど、今の先生は矢口さんより小さくなってしまった。
「よっすぃ、なんとかして矢口さんに連絡取れないかな?」
「難しいね。パソコンがあれば感染なんて関係ないけど
ここにはないし……」
「先生、病院にはありますよね?」
「あるな」
「イナーバさんは結局私とよっすぃの感染は知らないまま・・・
なら、私が病院に行ってメールを打つのも可能ですよね?」
「メールを打つんはできても送れるかどうかはアヤシイな。
イナーバが何か言うとるかもしれんし、アンタは私側の人間なワケやろ?
せやからメールの内容はチェックされる筈や。
送れた思ても消されるやろ・・・・・
アンタが伝えようとしとることは、確実にな」
- 138 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月06日(月)03時34分27秒
- 「・・・そうですよねぇ」
「気にせんでもええ、私は自分で決めてアフリカに来たんや。
後悔なんかしてへん。
こんなことになるなんて思ってもみぃへんかったけど
人が生きるってそういうもんやん、矢口もきっとわかってくれる」
「えっと…っていうかさ、イナーバさんからの連絡が途絶えたことに
気づけば向こうから来てくれるかもよ?
食料もガソリンもしばらくもつって言ってたし
もうゴチャゴチャ考えても始まんないよ。
体治して日本に帰ってさ、感染してたこと黙ってりゃ
矢口さんに怒られなくてすむじゃん」
「せや!よっさんええこと言うわ。
石川ぁ、アンタもよっさん見習ってもっとポジティブになりぃ」
「・・・・・はい」
「そうそう、こないだ開き直ったって言ってたじゃん。
ポジティブにいくんでしょ?」
「・・・・・うん!梨華ガンバる!!」
満面の笑みの向こうで、小さく舌打ちが聞こえた気がしたのは
ウチの気のせいだよね?そこの呆れ顔の先生?
- 139 名前:デール 投稿日:2003年01月06日(月)03時47分02秒
- 今回・・・というかいつも?全然戦ってなくてすいません。
次こそは戦います。
微妙に続き書けてますが、背中が痛いので
短いですが今日はもう寝ます。アタタタタタ(T▽T)
- 140 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月07日(火)18時10分24秒
- 「先生、明日もう一度外を見てこようと思ってるんです」
「せやなぁ、ヒントは必ず外にあるハズや。気ぃつけてな」
X月X日
アフリカに来て、二度目の外出。
今日は一人、荒野にジープを走らせる。
走り続けて二時間、まばらに立つ木々の間にちぢん≠セライオンの死体を見つけた。
そういえば、ウチが最初に見たちぢむ≠ヘライオンだったな。
そして、梨華ちゃんの感染の原因も・・・・・・
ライオンを麻袋に入れてジープに乗せ、川のある方向に向かおうと
ハンドルを掴んだ時、遠くの森から煙が立ち昇っているのが見えた。
動物が火を使うワケがない・・・・
人間!あそこに人間がいるんだ!
ただの自然発火で火事が起きてるとかじゃなけれけば、あそこには人間がいる筈だ!
- 141 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月07日(火)18時22分18秒
- ウチは急いでジープを走らせ、森の手前で降りた。
空高く立ち昇る煙を頼りに、迷わず森の中へと歩き進んで行く。
腹の立つことに、煙は目の錯覚からかすごく近くに感じるのに
歩いても歩いても一向に人のいる気配は無い。
ただでさえ暑いのに、歩き続けていると更に汗が吹き出てくる。
首に巻いたタオルでそれを拭きながら歩き始めて一時間半、
辿り着いた先は・・・・・・・・行き止まりだった。
「マジかよ・・・・」
思わずウチはその場に座りこんだ。
それで気づいたんだけど・・・何?この虫・・・
煙に夢中で全然気づかなかったんだけど、
ウチの周りには見たこともない虫やら鳥やらが好き勝手に飛び回っている。
コレって・・・・・もしかして刺されたりとかとたら
変な病気になっちゃったりする?
「・・・・・・もう変な病気になってんじゃん」
- 142 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月07日(火)18時40分57秒
- とりあえず深呼吸をして体を見たけど、
日焼け止めの為に長袖長ズボンで靴は研究所にあった長靴だし
首にはタオル、手にはあの日イナーバさんにもらった手袋をはめているから
刺されてはいないみたい。
もう一度深呼吸をして空を見上げると・・・・・煙がない!!
ついさっきまで確かに見えていた煙が消えている!
状況ってのはどんどん不利になってくもんなんだね・・・
ウチは目の前に聳え立つ木々と、その間にびっしりと生えている草を
睨みつけた。・・・それはまるで壁のようだ・・・
この壁の先は、全く見えない。
けれど、煙はこの壁の向こうから出ていたものに間違いない。
どこかに入れそうな隙間はないかと、冷静に目を凝らしてよく見てみると
木の間の草たちは、不自然に敷き詰められているように見えた。
「梨華ちゃん・・・ウチってやっぱ頭悪いわぁ」
そーじゃん、そーじゃん!森に行き止まりやら壁なんてあるワケないじゃん!
えっ?ある?もうそんなんどっちでもいーよ!
ウチを止める壁があるなら ブチ破ればいいんだ!!
- 143 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月07日(火)18時57分53秒
- 「うわあぁぁぁっっ!!!」
ウチは足元に落ちていた太めの枝を振り上げて、木の間の草を思いっきり叩きつけた。
助走までつけて飛び込むように突っ込んだおかげか、
ウチの体は叩き倒した草と、情けない悲鳴と一緒に硬い地面に転がり落ちた。
バキバキバキバキバキッ!ドンッ!
予想以上に大きい音がしたにも関わらず、体はそんなに痛くない。
慎重に体を起こして下を見ると、草がクッションになったらしく
ソレは明らかに人の手によって編み込まれたものであることがわかった。
だから壁に見えたのか・・・そうだよね、こんな背の高い草は無いよなぁ。
ウチの背より高いっつーの。
ここは飯田先生の言っていた未確認の集落ってやつだろう。
外敵から身を守る為に壁を作って隠れ住んでいる人間がここにいる筈だ。
- 144 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月07日(火)19時07分57秒
- 体にまとわりついた草を払って立ち上がり辺りを見渡すと、
学生の頃に地理かなんかの教科書で見たことがありそうな
屋根が藁でできた家が十件程建っているのが見えた。
その手前にはキャンプファイヤーで囲むヤツの、ミニ版みたいなのがあって
中の火は完全に消え、灰が静かに風に揺れていた。
ウチが見た煙は、ここから出ていたものだろう。
・・・・・・それにしても、ついさっきまで火はついていた筈なのに
人の気配が全く感じられない。
ウチが来たから隠れたとか?
それはおかしいよねぇ、これだけ家があるんだから人もそぉとぉいる筈。
たった一人の侵入者ぐらいで逃げ出すワケがない。
- 145 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月07日(火)19時15分11秒
- とにかく人を捜そう。
見つけたところで言葉は通じないけれど、何とかなるでしょ。
グニュ
不法侵入って犯罪だよなぁなんてため息をつきつつ家の中を見ようと
動かした足が、何かを踏んだ。
「ん?・・・・・っっ!!・・・・ちぢんで≠驕E・・・・」
ウチが踏んだのは 小さくちぢん≠セ人間の体だった
- 146 名前:デール 投稿日:2003年01月07日(火)19時22分27秒
- ミキティーにはびっくりしました。
「へぇ」としか言えない・・・良いのか悪いのかもわからない。
そしてこの駄文もこれで良いのか悪いのかわからない。
- 147 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年01月07日(火)21時31分26秒
- 更新、お疲れさまです。
段々クライマックスに近づいてますよね。
原作とは違う面白さがありますよ。
続きも期待です!更新頑張ってください!!
- 148 名前:デール 投稿日:2003年01月09日(木)03時35分13秒
- >ななしのよっすぃ〜様
レスありがとうございます!
近づいてますねぇ、でももうちっとかかりそうです。
上手くまとまらないもんですから・・・・・
原作の助手の子が出ていない分、石川さんが書きやすいです。
- 149 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)03時50分11秒
- <石川視点>
よっすぃが帰ってこない。
もうとっくに日は沈んで、用意した夕食もすっかり冷めてしまった。
イナーバさんがいなくなってから、食事は三人で摂るようになって
よっすぃはどんなに研究が忙しくても、夕食だけは必ず一緒にいてくれるようになった。
先生は勿論研究も熱心にしてるけど、「人生の楽しみまで潰すなんてんなアホな」
と言って三食キチンと食べてくれる。
でも反対に、よっすぃは集中しちゃうと食欲や睡眠欲に無反応になるらしく
無意識に自分の体をボロボロにしてしまうから、
私はいつも不安になって・・・・・
つき合い出した頃、「梨華ちゃんって黙ってると儚げだよね、離したくなくなっちゃうよ」
なんて一言多く言ってくれたけど、それは私の台詞なんだよ?
よっすぃの心は、常にふわふわと何ものにも縛られずただあなたの中にあって、
簡単に体を離れて自由にどこかへ飛んでいける。
だから、自分の体調も気にせずに
心は飛び回ってしまうの。
そんな時は 傍にいても とても遠いの
- 150 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)03時59分29秒
- 「そうは言うても、よっっさんの心を縛っとるもんなら
一つだけ知っとんで」
私がよっすぃの帰りを待つと告げると、先生も急に一人で食べるのは
淋しいと言ってくれたので、二人でコーヒーを飲みながらよっすぃを待つ。
声をかけた時、先生はものすごくブ厚い本を片手に
顕微鏡を覗きこんでいて、私は邪魔してしまったことを後悔していたのに
すぐに得意の下ネタで私の心をほぐしてくれた。
それは日本にいた時からのことで・・・・
私ってつくづく優しい人たちに囲まれて生きてるんだなぁって思った。
知ってると思うけど、先生のこと大好きだよ。
ものすごぉく感謝してるよ、いつもありがと。
- 151 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)04時16分20秒
- 「なっ!?何ですか?教えて下さい!」
ベーグルとゆで卵とか?でも一つって言ったよね。
このどっちかって言われたら・・・どっちなんだろう?
それとももっと別のものかなぁ・・・・・・
「アンタ……ホンマにわからんの?」
「わかりませんよぅ、食べ物じゃないものですか?」
「食べよ思たら食べれやんこともないけど………
ある意味いっつも食べとるかな、ヒヒヒヒヒ」
「いっつも食べてる…ベーグル?でも普通は食べないんですよねぇ…」
「ヒント1、やや黒い」
「黒い?服は黒をよく着てるけど、食べれないし…」
「ヒント2、寒くてキショイ」
「ん?」
「ヒント3、今私の目の前におる」
「ひょえっ!?私ですかぁ??」
「アンタ以外に誰がおんねん!そのオトボケはワザとか?
街頭アンケートとったら100人中100人がアンタやって言うで!」
「そんなことないですよぉ……」
「はぁぁ…せやな、岡目八目とはまさにこのことやな…」
オカメハチモク?オカメさんには八つも目があるの?
眼鏡かけられないじゃない、八つもあるんじゃコンタクトも面倒よね。
「石川、アンタ今めっちゃアホなこと考えとるやろ………」
- 152 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)04時29分06秒
- <吉澤視点>
ヤバイ・・・日が沈むまでに森を脱け出さなきゃ。
行きは煙があったからズンズン歩いてきちゃったけど
目印とかつけんのすっかり忘れてたから、今非常にヤバイことになってる。
運良く森から出られても、ジープのあるところに出れる確率は低い。
暗くなったらジープ見つけられないだろうし・・・・・
ってことは野宿?
うぁ〜せめてジープの中で休みたいなぁ。
お昼にって梨華ちゃんが持たせてくれたお弁当とお茶もその中だ。
お腹が空いたというより、とにかく喉が渇いた。
「グゥ」
ありゃりゃ・・・お腹もやっぱ空いてんのかぁ。
ご安心を、ちゃんと食べるよ。
貴重な食料で作ってもらったお弁当だし、この森で見つけた集落で
ウチは一つの答えを得たばかりなんだから。
それは、今まで目にした光景からも、容易に得られるものではあったけれど。
- 153 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)04時39分18秒
- ウチが辿り着いた、あの集落。
あの集落全体が、死に絶えていた。奇病によってたった30センチにちぢん≠セ死体が
家の中にも外にも無数に転がっていた。
死体の状態や死斑などを見るに、どれも死んで二日程しか経っておらず
ウチが踏んでしまった死体が一番長く生きていたようだった。
あの煙はのろしだったんだろう。
身を隠して生きてきたものの、ただちぢむ≠セけの恐怖に外に助けを求めたんだ。
もしかしたら火はとっくの昔に消えていて、ウチが見た煙は
死人の魂が見せた幻影だったのかもしれない。
そう思うと、目頭が急に熱くなって
死体たちの傍に倒れていたクワで穴を掘り、全員を埋葬した。
- 154 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)04時51分59秒
- それからウチは家の中を調べて、はっきりとわかったんだ。
奇病が広がるのは、決まって飢饉のひどいところだと。
この森で、動いているのは虫ばかりだ。
足元には、なんでさっきは気づかなかったのかと呆れるぐらい
あちこちにちぢん≠セ動物の死体が転がっている。
何もかも この地の生物全てがちぢんで≠「く
なんでなんだ それを教えるヒントが欲しい
こんなワケわかんないままじゃ 治すなんて夢のまた夢
怖いよ 怖くて怖くて 逃げ出したいよ
このアフリカの奥地に潜む死神は 一体どんなヤツなんだ
そいつの正体は なんだっていうのさ
今タイムスリップできるなら 先生のアフリカ行きを止めに行くよ
そして日本で 平和に暮らすんだ
ごっちん 安倍さん 矢口さん 平家さん みんな みんな
梨華ちゃんだって親友の柴ちゃんに会いたいでしょ?
わかってるんだ・・・こんなこと考えちゃダメだって・・・・・
でも一人になると 耐えらんないよ 梨華ちゃんに 梨華ちゃんに会いたい
- 155 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)05時04分14秒
- 悲鳴を上げる体を無視して、ウチは歩き続ける。
止まれば、枯れることなく溢れる負の感情が心を蝕み
二度と動けなくなってしまうだろうから。
こんな虫だらけ&死体だらけの森で死ぬなんて真っ平ごめんだよ。
梨華ちゃんに会えないままなんて、最悪過ぎて笑えない。
日はどんどん沈んで足元が暗くなり、ウチは何度も転んだ。
きっと体はアザだらけ。
足の感覚はとっくにない。
そういや何時なんだろうと腕を見ると、はめていた筈の時計が失くなっている。
何度も転んだせいで皮が切れてしまったのだろう、
ウチの手首からも血が滲んでいた。
よかった・・・自分で買ったヤツで。
梨華ちゃんからもらったのは時間を変えるのが面倒なタイプだったから
日本時間のままウチのバッグの中に入れといたんだよね。
不幸中の幸いついでに、そろそろこの森から出たい。
- 156 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)05時16分01秒
- 「ぬわぁっ!!」
ドボォォン!!!
・・・・・・最悪。
もう完全に日は沈んで真っ暗になってるからって、このオチはヒド過ぎる。
喜んでんのは渇きまくりなウチの喉だけ。
冷たいっつーの。
しかも服が水を吸って重い重い。
ただでさえ力入んないのに・・・・・嫌がらせ?
ウチは最後の転倒で森からの脱出には成功したものの
浅めの川に背中から落ちてしまった。
川があるってことは明らかにジープのある場所じゃないし、
ホントついてないよね・・・ガックシ。
このまま寝ちゃいたい気分だけど、それじゃ死んでも文句は言えない。
二本足では立てそうにないので、人間のプライドを捨て
四つん這いで這うように川から上がり、そのままズリズリと森に沿って進む。
こっちでいいのかなんてわからない
ただこの先に 梨華ちゃんがいれば それでいい
- 157 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)05時31分35秒
- ━
━
━
━
今何時なんだろう?
もう全身の感覚が消えた。
耳もおかしくて、なんだか世界がとても静かだ。
寝転がって空を仰げば、楽になれるだろう。
そう思ってんのに、ウチの体は休むことなく進み続ける。
まるで何かに取り憑かれたように、ひたすら前へ。
あ〜ぁ、膝とか肘んトコ服破れてるっポイ。
こんな格好で帰ったら、梨華ちゃんに何言われんだろ?
今ってもう絶対夜中じゃんね?
夕食に間に合うように帰るつもりだったのに、完璧遅刻だよ。
たぶん梨華ちゃんは食べるの我慢して
眉毛八の字にしながらウチのこと待っててくれてるんだろうなぁ。
ごめんね、心配ばっかかけて。
梨華ちゃんのこと、不安にさせてばっかだね。
『よっすぃ………こっちだよ……』
目の前に、名も知らぬピンクの花を見つけた瞬間
ウチを導く彼女の声が、確かに聞こえた。
- 158 名前:トリノコサレテ 投稿日:2003年01月09日(木)05時42分21秒
- ウチは掠れたうめき声と共に立ち上がり
気力だけで声の聞こえた方向に歩いて行く。
一歩、二歩、三歩、四歩・・・・・・・・・・・
嬉しかった。
もう何歩目かなんてわかんなくなってたけど、ウチの目にジープが映った。
ひぃ〜んとかいう情けない声が勝手に出て、フラフラとドアを開け
運転席に倒れ込む。鍵、開けっ放しじゃん。
よかったぁ・・・助かった・・・・・
ちょっともう無理、正直限界。喉渇いたし、お茶飲も。
へへへ・・・テンションおかしいよぉ。
お茶も上手く飲めないし。
お茶を諦めてドアを閉め、シートを倒して靴を脱ぎすてると
そのまま死んだように眠りについた。
- 159 名前:デール 投稿日:2003年01月09日(木)05時45分40秒
- 眠い、私も限界。
うたた寝しつつ更新したのでミスがたんまりありそうですが
よっすぃ〜も寝たところで、私も寝ます。
- 160 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)20時02分51秒
- <石川視点>
よっすぃが帰ってこない。
体に毒だからって、10時頃に先生には先に食べてもらった。
何度か外に見に行ったけど、よっすぃが帰って来る気配は全然なくて・・・・・
何かあったんじゃないかと思うと胸が引き裂かれたように痛む。
もっと遠くまで様子を見に行きたいけど、それは先生に止められて。
そうよね、すれ違ったりしたらおかえりって言えないもん。
私はここでよっすぃを迎えなきゃ。
先生はいつも通り12時で研究を切り上げて
私を部屋に招き、一緒に起きてよっすぃの帰りを待ってくれた。
「日の出を待っとるんかもしれんな。
ここの地理をバッチリ覚えたワケやないし、
暗い中車走らせるんは危険やと判断したんかもしれん。
そんな心配せんと、アンタがここにおる限りよっさんの帰る場所はたった一つや」
- 161 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)20時11分23秒
- 窓の外が白み始めた。
矢口さんの写真を手に笑みを零す先生に声をかけ、一人玄関へと向かう。
外に出ると少し肌寒さを感じて、吹き飛ばすように体を伸ばして深呼吸をした。
本当に私がよっすぃの心を引き留められているのか。
自信なんて、無い。
だけど信じたいな、そうであって欲しい。
お願い、早く帰って来て。私の、私の元に、どうか早く。
この空に下にいるよっすぃを早く私に返してと
空の上にいるであろう神に、私は祈った。
- 162 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)20時21分31秒
- 日が完全に昇り、アフリカ本来の暑さが戻り始めて2時間程経っただろうか?
私のお腹が不覚にもグゥグゥと鳴いて
誰にも聞かれてないのに恥ずかしさで顔が真っ赤になった時、
遠くから小さくエンジン音が響いた。
「よっすぃ・・・・?」
とっさに立ち上がって音のした方へ駆け出す。
まだ姿は見えない。
でも視界に障害物は少ないから、もっと目を凝らせばすぐに見えるハズ。
・・・・・あった!!
あれは・・・ジーマとかいう名前の、よっすぃが乗っていった車に間違いない!
本当は走って近づきたかったけど
よっすぃは疲れてるだろうからぐっと我慢して研究所の前に戻った。
降りてきたら、おかえりって言うんだ。
- 163 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)20時34分09秒
- こみ上げる笑顔を持て余していると、車はすぐに私の前に止まった。
なのに、運転席のよっすぃが動く気配はない。
嫌な予感がして慌てて近づくと・・・・・・・ほぇっ!?
よっ・・すぃだよね?顔が私より真っ黒になっちゃってるけど
ふと合った優しい目は、間違いなくよっすぃのもの。
どうやらよっすぃは疲れきってて動けないみたい。
しょうがないなぁとドアを開けて・・・・・・・・・・私は固まった。
「ちょっ!?よっすぃー怪我してるじゃない!」
「あ〜痛くないよ、痛くなんかないよ」
「何言ってるの、しっかりして!早く手当てしなきゃ。
降りるよ、私に掴まって」
「うぅ・・・」
よっすぃの体はどこも泥だらけで、腕や膝からは血が出ていた。
もう乾いてるけど、ものすごく痛々しい。
できるだけ優しく抱きしめて、引きずるように玄関に運びこんだ。
- 164 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)20時50分41秒
- 「石川!それよっさんか?」
「そうです!何か運ぶものありませんか?」
「えぇっと……あるわ、目の前に」
ちょうど玄関に置きっぱなしになっていたキャスターつきの椅子に
先生と二人でよっすぃを乗せる。
「研究室のベッドに運ぶで。
脱水症状おこしかけとんな、コレは」
カサカサになった唇を診て言う先生の言葉が、私の胸に突き刺さる。
何があったの?
私のいない所で無茶なことして
もっと気をつけてっていつも言ってるのに。
「止血はええな、消毒の前に体拭いたらなあかんわ。
石川、私のベッドの横に黒いポットがあんで取ってきてくれるか」
「はい!」
看護学校の体育祭以来の全力疾走で先生の部屋からポットを取ってくると
すでによっすぃはベッドに寝かされていて、
先生にボウルと数枚のタオルを投げ渡された。
「そん中熱い緑茶入っとるから、水でぬるくして体拭いたり」
先生の指示通り、私はボウルにお茶を出して
触れる温度になるまで水を加え、タオルを浸した。
その間に先生はすばやくよっすぃの服を脱がし点滴の準備をする。
- 165 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)21時08分42秒
- 私はまず左手の泥を拭き取り、オキシドールで消毒した。
「よぅわかっとるやないか、成長したな」
先生が点滴の針を刺すのを横目に、すでに真っ黒になったタオルを裏返して
右腕、顔、全身を拭いて消毒していく。
大量にかいた汗のせいか、泥をとって現れたよっすぃの体は
アザの隙間に覗く肌がいつもよりいっそう白く見えて、
このまま透けてしまうんじゃないかと不安になった。
「よっさん、よっさん起きとるか?」
「よっすぃー、よっすぃー」
包帯を巻きながら肩を揺らして呼びかけると、よっすぃはゆっくり目を開けて口をパクパクと動かした。
「わかった、ちょっと待ってな」
先生はベッド脇の水筒を私に差し出し
「ポカリや。イナーバのやけど、飲ましたり」
ロクな会話もする前に逃げ出してしまった彼女の壊れた無線機以外の忘れ物に、
この時ばかりは感謝する。
コップでなんか飲める状態じゃないよっすぃに、私は先生の存在も気にせず口づけた。
こぼさないように深く深く口づけて、ゆっくりゆっくり確実に。
優しく頭を撫で、コクコクと鳴く喉の音を聞きながら
何度も何度も渇いた体に潤いを与えていった。
- 166 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)21時23分19秒
- 「見た目はヒドかったけど、たいした怪我はないな。
今日ずっと点滴しといたら大丈夫やろ。悪いけど私はちょっと寝るで」
ついでにスケベも禁止やで〜と手を振って、先生は出ていった。
「梨ぃ…華ちゃ……」
「ダメ、喋らないで。ゆっくり寝なさい、ついててあげるから」
「ぁりが…と…でも、先生に…つ、たえてほしい…こと…が…」
「今すぐじゃなきゃダメなのぉ?先生寝ちゃったよ」
「ホントは、今日がいいけど…明日、し、手術するから…」
「明日?無理だよ、そんな体じゃ……ね?」
「時間が、ないんだ」
もうすぐここへ来て二週間が経つ。
よっすぃの言う通り、時間は、ない。
だって時間は過ぎて減るもので、決して増えたりしないのだから。
「わかったから、今日はもう休むの」
「ん〜添い寝希望〜」
「スケベ禁止!」
「あぅ・・・」
残念そうに目を閉じるよっすぃ。
気づけば点滴が終わっていて、急いで新しいのに代える。
看護士にも点滴の交換が出来るように、針を刺しっぱなしにして
チューブを代えるだけなので、先生を起こしに行く必要はない。
伝言は、先生が起きたら伝えよう。
- 167 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)21時46分17秒
- 一日中、ずっとよっすぃの傍にいた。
点滴を代えたり、時々目を覚ますよっすぃにポカリを飲ませたり、
お昼におかゆを作って食べさせてあげたら、嬉しそうに食べてくれた。
寝グセ頭の先生が入ってきた時は、よっすぃの手がいつの間にか私の胸に伸びていて、
案の定からかわれて赤くなったり、
おかゆを喉に詰まらせて苦しむ姿に青くなったりした。
よっすぃが先生に明日のことを伝えると、先生は
「よろしくお願いします」と頭を下げて部屋に戻っていった。
1メートルと少しの体になっても、後姿の威厳はそのままに。
夜になってすっかり元気になったよっすぃは、まだ完全に起きれはしなかったけど
先生と私に外でのことを説明してくれた。
聞いてる間、私の涙は止まらなくなるし、
なぜか先生に抱きしめられてよっすぃは膨れるし、
一緒に寝る時も拗ねたままで、「胸枕してくんなきゃ寝ない」なんて言うし・・・・
- 168 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)21時51分33秒
- 「腕枕じゃないの?」
「胸!腕枕とあんま違いはないけど胸なの!
コレ、ポリスィ〜だから」
よくわかんないけどポリシー?らしいから従っておく。
研究室の狭いベッドの上でよっすぃの頭を胸に抱き寄せ瞼にキスを落とすと、
いつの間にか眠ってしまった。
- 169 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)22時07分58秒
- <吉澤視点>
柔らかい感触と、甘い香りの中で目覚める。
梨華ちゃん、ただいま。会いたかったよ。
プ〜ン
ゲ・・・・・髪の毛かな?この匂いは・・・
梨華ちゃんって気遣いだから我慢してくれてるんだろう。
体は拭いてもらったけど、頭はそのまんまだからそぉとぉ汚い。
もったいないけど離れるか。
離れよう、離れない、いや、離れ“ら”れない。
渋々って顔してた割に、ガシッと抱えて胸に顔を押しつけてくれてて
離れるなんて絶対無理、三億円もらっても嫌。
点滴のせいで腕をまわせないのがつらいけど、たまには抱かれてるだけってのもいい。
生きててよかった・・・・・・・
あぃやっ!先生が入ってきてこんなの見られたら
もう二度とやってくんないかも。そんなの絶対ダメ!
ウチは梨華ちゃんを起こすべく顔でグリグリと胸を揺らしたり、
服ごと噛みついたりしてみた。
「んっ……よっすぃ?」
「梨華ちゃん起きて、先生来ちゃうかも」
言葉の威力って絶大だね。
梨華ちゃんは飛び起きて服の乱れを直した。・・・・・お見事。
- 170 名前:ソシテ君ニ還ル 投稿日:2003年01月10日(金)22時16分44秒
- 「そんなに慌てなくても……おはようのキスしてよ」
「え?でも…時計は……7時か、まだ大丈夫だね」
心底安心した顔でキスをくれる。
「ごめんね、頭臭かったでしょ」
「ううん、全然気にならなかったよ。
無事に…じゃないけど帰ってきてくれて嬉しいから。
遅くなったけど、おかえりなさい」
「…ただいま、愛してるよ」
「私も…愛してる」
あぁ ウチは本当に 本当に帰ってきたんだ
「さっき胸噛んだでしょ?」
「へっ!?いやぁ………それは…ごめんなさい」
「食べようと思ったら食べれる、か………」
「はい?何の話?」
「なんでもない、こっちの話ですぅ」
「何ソレ、教えてよ」
「内緒♪今度噛んだら怒るからね」
「・・・・・・はい」
- 171 名前:デール 投稿日:2003年01月10日(金)22時21分46秒
- ヨソ見はするもんじゃない。
高校教師をとりあえず見るか・・・
- 172 名前:ちぃ 投稿日:2003年01月11日(土)22時25分24秒
- これってブ○ック・ジャッ○のちぢむ!!ですよね??
- 173 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月11日(土)22時34分07秒
- >>172
伏せたってモロバレしてるよ。心の中でとどめておけばよいものを…
作者さん、いつも読ませてもらってます。頑張ってください。
- 174 名前:デール 投稿日:2003年01月16日(木)01時16分57秒
- レスありがとうございます。
>172 ちぃ様
そうです、元ネタはそれです。
元ネタ知らない方はそのまま知らない方がいいかもと思われますので
興味のある方は完結を待って頂けたらと思います。
もうすぐ終わりますんで、我侭言ってすいません。
>173 名無し読者様
お優しい心遣いとハートフルな声援ありがとうございます!
あと4,5回で終わると思いますんで、これからも読んでやってください。
新成人にも関わらず、着物も着なければ式にも出ず、
ギリギリに年をとるタイプなので二十歳にもなっておらず、
普通の祭日でした。
- 175 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)01時27分21秒
- 『面白ければいいんだ。
面白ければ、無駄遣いではない。
子供の砂遊びと同じだよ。
面白くなかったら、誰が研究なんてするものか』
アレはいつだったか。
そう遠くはない過去に読んだ小説の、主人公の台詞を思い出して苦笑した。
本来、研究とはそういうもんなんだろう。
興味があって、突き止めたくて、面白いから研究するんだ。
『じゃあ、今のウチはなんなんだよ』
ウチは医者だからかな?
面白いなんて思えないのは。助けたい、助かりたいとしか思えないよ。
あの主人公はたしか建築学科の助教授だった。
ウチは医者だ。
考え方に違いがあっても、ソレはおかしいことじゃないよね?
- 176 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)01時41分41秒
- X月X日
一回目の手術を行う。
「よっすぃー、こんなとこにいたのぉ?足痛くない?」
「大丈夫。先生の準備できた?」
「うん。……あのね、さっき測ったら…先生1メートルきってたの…」
「…そっか、カルシウムも全然効果ナシか。
今日の手術で何か結果が出てくれればいいけど……」
ウチは今まで研究の傍ら、先生にカルシウムやヴィガントール甲状腺製剤等の投与を
行ってきたけど、どれも効果は皆無。先生はちぢみ¢アける。
「先生待ってるから行こ」
つないだ手は珍しく汗ばんでいて、梨華ちゃんの緊張が伝わった。
「先生、効果はわかりませんけど
甲状腺を切開して治療物質を埋めこんでみます」
「おぅ、頼むわ」
…………………………
……………………
………………
手術は短時間で終了し、先生も夕方には目を覚ました。
- 177 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)01時43分40秒
期待はあまりしないようにしてたけど、やっぱりショックはショックなワケで
翌日、先生はまたちぢん≠セ。
- 178 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)01時58分47秒
- X月X日
二回目の手術を行った。
術後、小さな寝顔を見つめて祈る。
頼む、頼むからこれで治ってくれ。ちぢむ≠諱A止まれ。
コンコン
「よっすぃー、私が看てるから研究に戻って?」
「あぁ…うん、そだね。何かあったらスグに呼んでね」
「うん、頑張って」
一回目のように、手術の効果が無い可能性は高い。
ウチは医者なのに・・・
医者ならメスを持って患者のお腹を切った以上、治さなければいけないんだ。
治せなきゃ・・・・・手術の意味なんて・・・・・
救急病棟の応援に駆り出された時、二人乗りのバイク事故で
瀕死の重傷を負った女子高生が、ウチの元に運ばれてきたことがあって
運転していた彼氏は助かったけれど、彼女は手術の甲斐無く命を落とした。
よくある事故、よくあるケースだった。
二人乗りは、運転している方には危険の認知ができても、後ろに乗っている方は
ソレができない。
愛する彼女を乗せた彼氏も悪いし、乗ってしまった彼女も悪い。
- 179 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)02時09分51秒
- 本人たちに非があるとわかっていても、ウチは悔しかった。
医者に事故は止められない。
だけど、命を助けることはできた筈なのに。
運ばれてきた時には、もう手遅れだったと周りは言ってくれたけど
誰も、ウチを責めたりなんかしなかったけど
悔しくて、悔しくて。
助かった彼氏と彼女の両親に申し訳なくて涙が止まらなかった。
あの時は気づいてなかったけど、それまでの手術に失敗が無かったウチは
自信過剰になっていたんだと思う。
どんな手術も成功できる。
どんな患者も治せる。
なんて、心のどっかで思っていたんだ。
それから、ウチは変わったよ。
どんな手術も成功させたい。
どんな患者も治したい。
そう強く願うようになった。
その為にウチの持ってる力を全て捧げようと、そう心に誓ったんだ。
- 180 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)02時16分14秒
「・・・・・・63センチ・・・・」
二回目の手術も失敗だった。
先生の体は、赤ん坊ぐらいにまでちぢん≠セ。
本来の5分の1から6分の1までちぢむ≠ニ死ぬということだから、
158センチだった先生はもうあと約30センチの猶予しかない。
次は何をする?どうすれば治せる?
ちぢん≠セ動物を解剖してもわからない。
誰かヒントを教えてくれ、ほんの小さなヒントでいいから。
- 181 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)02時30分30秒
- <石川視点>
「石川ぁーっ!」
「っはい!どうしました?」
「寝とると矢口の顔が見えへんねん、ベッドの上に持ってきてや」
「はいはい、急に大きな声出さないでくださいね」
「なんやの石川のクセに、おばはんくさいで」
「それは先生でしょ」
「なんやとぉ!一言多いねん、お前はぁ」
「痛っ!枕投げないでくださいよぉ」
体は赤ちゃんぐらいまでちぢんで≠オまったのに、先生は明るく元気に振舞ってくれている。
本当に体以外は以前と何一つ変わらなくて、私の目がおかしいんじゃないかと思ってしまう。
「先生、ここでいいですか?壁に立て掛けておきますね」
「ん、ありがとさん。
あとついでに机の引き出しからノートとペン取ってくれるか」
「はい。………えっと、これでいいですか?」
「あぁ〜それでええ。ほなもう遅いし、アンタはもう寝や」
「それなら先生も寝ないと……そうだ!一緒に寝ましょうか?」
- 182 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)02時50分17秒
- 「はぁっ!?何言うとんねん、よっさんに殺されるわ。
それに私は今からポエム書くねん、邪魔やから出てってや」
「・・・ポエムなんて書く趣味あったんですね」
「アフリカに来てから暇な時に書くようになってん。
って下敷きがないやないか!早よ持ってきて」
「キャア!もう、お尻はやめてください!」
「先に誘惑したんはそっちやん。
あんがと、ほなまた明日な、おやすみ」
「おやすみなさい」
パタン
ポエムを書くなんて言ってたけど、一人になりたいんだろうなと思ったから
私は素直に先生の部屋を出た。
小さい先生を一人にするのは心配だけど
私がいて無理をさせてしまうのは心苦しいから。
部屋に戻っても、まだまだ眠れそうにない。
よっすぃの顔が見たいけど、邪魔になっちゃうし・・・・・
ネガティヴはダメってわかってるけど、こういう時はいつも思う。
私は何をしに来たんだろうって。
よっすぃのサポートを、ちゃんとできてる?
ただ身の回りの世話をしてるだけ、これじゃまるで家政婦じゃない。
- 183 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)02時54分19秒
- 私はナースなのに
私だって先生を助けたいのに
よっすぃを助けたいのに
何もできない自分が悔しい
こんな私に「梨華ちゃんがいてくれてよかった」って抱きしめてくれるよっすぃが愛しい
そんな想いは空回りするだけで、私を飛び立たせてはくれないのに。
わかってるのに・・・・私の馬鹿。
- 184 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月16日(木)03時00分44秒
- 必要ないだろうけど、お腹が空いた時の為に
クッキーとコーヒーを実験室の前に置いて、私は部屋に戻った。
明日の支度をして、時計の針が深夜を告げても
眠気は全然感じられなくて
ひたすら美しい星空を見上げて
深いため息と一緒に、私の心は闇に溶けていった。
<吉澤視点>
X月X日
ついに最悪の時が来た。
先生の体は40センチまでちぢみ=A昏睡状態に陥った。
- 185 名前:デール 投稿日:2003年01月16日(木)03時03分39秒
- なんかどんどん文章がおかしくなって
表現力の無さ故に、同じような言い回しが多くて
読みづらくてすいません。
- 186 名前:デール 投稿日:2003年01月16日(木)03時12分45秒
- 今回の更新分に出てくる「甲状腺」ですが、
喉の下にある内分泌腺で、発育や新陳代謝に関するホルモンを分泌しているらしいです。
ホントに医療わかんないんで、これ以上のことはサッパリです。
それと、冒頭の台詞の小説は森氏の「冷たい密室と博士たち」です。
勝手に引用してごめんなさい。推理小説好きなんれす。
- 187 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年01月18日(土)07時57分48秒
- 更新お疲れさまです。
デールさんも、森さんの小説好きなんですか?
ななしのよっすぃ〜も好きですよ。もえちゃんがいいっすはあと。
話しがそれましたが、完結まであと少しです。頑張ってください!
更新楽しみに待ってます!!
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月18日(土)16時26分04秒
- とうとう中澤先生・・・昏睡状態ですか
ポエムは遺書なんですか?
矢口に逢わせてあげたい!!
吉澤頑張れ。
- 189 名前:デール 投稿日:2003年01月19日(日)01時41分04秒
- レスありがとうございます!
>187 ななしのよっすぃ〜様
好きなんですよ〜もえちゃんいいですね、車とか計算の速さとか羨ますぃ・・
森氏を読み出したのは最近なんですが、あの師弟コンビに
まんまとハマりました。基本的に推理小説しか読まないのに初小説が
このような話になるとは・・・残りのあと少しも頑張ります。
>188 名無し読者様
矢口に会わせてあげたいと言って頂けてものすごく嬉しかったです。(感涙)
ポエムは次の次の更新くらいに公表致しますのでもう少々お待ち下さい。
今回の更新分に瀉血(しゃけつ)という言葉が出てくるのですが、意味は
患者の静脈から血液の一部を体外に除去すること、だそうです。
あと梨華ちゃんお誕生日おめでとう。
今年はよしに何をもらうんでしょうなぁ?
訊くだけ野暮か・・・・
- 190 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時55分22秒
- ウチは汗だくになって、先生に強心剤注射を打ち、瀉血と輸血を繰り返す。
そうしている間にも、先生の体はどんどんちぢんで≠「くように思えた。
今日中になんとかしないと、先生の命が危ない。
「よっすぃー、もう輸血の血が・・・」
「くそっ!先生起きてよっ、何か言ってよ!」
輸血パックはあと一つ。
感染しているウチと梨華ちゃんの血は使えないし・・・
それに第一、この輸血もちぢむ≠止める効果はないようだ。
何か他の手を考えないと・・・・・
「ああっ!落ち着けよ自分っ!」
感情的になるな
感情的なものは何ものにもまして 医者として尊重すべき冷静な理知と相容れない
正しい判断を下す為にも 落ち着いて考えるんだ
感情的になるな なるなよ
医者として最悪な状態に陥ったウチを助けるかのように
午後になって先生は意識を取り戻した。
- 191 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時12分12秒
「よっさん…ちょっと話してええか?」
「短いならいいですよ、長いのは治ってからにして下さい」
「すぐ済むわ。石川もおいで」
黙ってそれに頷いた梨華ちゃんに促されて、ベッド脇の椅子に腰掛ける。
「寝とる間にちょっと思いついたんやけどな、
よっさんはなんで飢饉の地域に限ってこの症状が起こるか考えてみたことあるか?」
「それは…ありません」
「例えば、野ネズミはエサが不足してくると生まれてくる子供も小さくて 生き延びるんも少ないやろ?
人間だってそうや。
母ちゃんが飢えとって栄養のある母乳が出ぇへんと赤ん坊は死んでしまう」
「でも、それは自然現象です」
「自然のしくみなんや。それと同じなんとちゃうか?」
「そんな……
原因もわからない。体にも異常がない。
それなのに死ななきゃならないんですよ?
ただちぢんで=A他はなんともないのに死んでいくのを、
先生は自然のしくみで片付けられるんですか?
そんなんじゃ解決になりません、ウチは先生を治したいんです!」
- 192 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時29分09秒
- 気づけば涙が頬を伝って、小さな先生の表情はよく見えなかった。
「私が奇病にかかったんは、自然のしくみに背いた罰なんかもしれん。
男と女が愛し合って、女は子供を産み子孫を残す。
それに背いて矢口を愛した私への……罰なんかもしれん」
「何言うんですか!!
たとえ女同士でも…人を愛して何が悪い?
ウチだって梨華ちゃんを愛してる。
それを今更否定しろって言うんですか?ウチにはそんなことできない!
先生は……矢口さんを愛してること間違いだって言うんですか?
後悔してるんですか?」
「・・・・・後悔なんかしてへん」
「だったら!!」
「よっすぃー」
興奮して顔も頭の中もぐちゃぐちゃで、思わず立ち上がろうとしていたウチの肩を
梨華ちゃんが抑えた。
「落ち着いて。よっすぃは先生の担当医でしょ?
先生はよっすぃの患者さんなの。
先生を助けられるのはよっすぃだけなんだよ」
「わ、わかってるけど…」
「じゃあ今何をすべきかわかるでしょ?
一時間だけあげる。
先生は私が看てるから、外で頭冷やしてきて。
ヒントは必ず外にあるって、先生も言ってたじゃない」
- 193 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時38分57秒
- まっすぐに目を見て優しく言い聞かせる梨華ちゃんは、やっぱりウチより大人なんだ。
先生と口喧嘩してる場合じゃない。
今ウチがすべきことは、ただ一つ。
「そうだ、ヒントを探してくる!
先生待ってて下さいね。話はその後です」
半分叫ぶように言い捨てて、ウチは弾丸のように研究所を飛び出しジープに乗り込んだ。
行ったことのない方へ行こう。
タイムリミットは一時間、決して長くない。急げ!!
- 194 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時51分34秒
- アクセルを思いっきり踏み込んで、スピードメータも見ずに突っ走り、
前、右、左へと、キョロキョロと忙しなく黒目を動かしてヒントを探す。
頼むよアフリカ。ヒントをくれ、助けるから。
20分も走り続けると、ジープに負けないぐらいの速さで
草の中を走り抜ける黒ヒョウが目に入った。
どうやら狩りをしているようだ。
狙いは鹿によく似た動物で、よく見ると追われているのは1頭だけだが、
遠くにその仲間が10頭程逃げ去って行くのがわかった。
団体でいたところを襲われ、あの一頭が逃げ遅れたのだろう。
弱肉強食 食物連鎖 そう、これは自然のしくみなんだ。
1頭を犠牲にして10頭が生き残る、これも自然のしくみなんだ。
- 195 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)03時04分49秒
- さらにジープを進めると、日本人にとってはかなり大きめの木に
数十匹の猿がぶら下がっていた。
そういえば、
この辺りも飢饉は広まっている筈なのに、どうしてさっきの鹿もどきもこの猿たちも
団体で生きていられるんだろう?
1頭でも奇病にかかれば、一緒にいる仲間にどんどん感染して
もっと大群が死んでいていい筈だ。
いつかの死に絶えた森のように、死体だらけじゃないのはなぜだ?
「この猿も・・・ちぢんで≠ネい」
・・・知ってるのか?
奇病の予防法を、動物たちは知っているんだ!
「何なの?教えてよ、どうすればいい?」
頭をフル回転させて周りを見渡す。
健康な動物たち
あまり見当たらない死体
そして・・・・猿の木から200メートル程向こうに、今度はシマウマの団体を見つけた。
- 196 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)03時18分22秒
- 驚かさないように、逃げられないようにスピードを抑えてギリギリまで近づき観察すると、
どうやらシマウマたちは食事中のようだ。口の周りが赤く染まっている。
・・・赤く?おかしいよ、なんで赤いの?シマウマは肉食じゃないでしょ?
ウチはジープの窓から身を乗り出し、シマウマが食べているものを見た。
アレは・・・シマウマ?シマウマがシマウマを食べてる?
そうか! 見つけたぞ、これがヒントだ。
食べられているシマウマは小さい、イコール奇病で死んだんだ。
それを肉食じゃないシマウマが食べている。
『1頭を犠牲にして10頭が生き残る』
もしかして・・・動物たちは病死した組織の毒素から免疫をとることを
本能的に知っているんだとしたら
わかった!!!
血清だ! 免疫血清を作るんだ!!
- 197 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月19日(日)03時20分52秒
やっとの思いで手に入れた答えを実行に移す為
ウチは来た時以上のスピードでジープを飛ばした。
これで これで先生を助けられる
- 198 名前:デール 投稿日:2003年01月19日(日)03時25分47秒
- 途中でPCが変な叫び声を上げた時はどうなることかと思いましたが
なんとか無事で一安心。
こないだ4,5回と言いましたが、上手くいけばあと2回で終われそう・・
- 199 名前:デール 投稿日:2003年01月19日(日)03時28分52秒
- 100の時に全然気づかずスルーしてしまったのが大変悲しかったので
(だって必死だったんだもん)ついでに隠します。
- 200 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月21日(火)03時28分45秒
- 研究所に戻る途中で、馬のちぢん≠セ死体を拾った。
これで免疫血清を作るんだ。
かなりのスピードを出したのに、研究所に着いた時には約束の一時間を少しオーバーしていた。
早く、早く血清を先生に
ダッシュで実験室に飛び込み、血清作りに取り掛かる。
自分の汗が目に入るのも気にならなかった。
だけどその時、
「よっすぃー!!」
ウチの足音を聞きつけた梨華ちゃんが、息を切らせて入ってきた。
「梨華ちゃん、わかったんだ…もうちょっと待って!」
作業する手を止めずに、彼女の方すら見ないで告げると
一瞬迷う素振りをして、梨華ちゃんはウチの背中に手をあてた。
「あのね、よっすぃが出てって30分後ぐらいに先生またちぢんで=E・・・
よっすぃのこと呼んでるの…お願いだから今すぐ行ってあげて……」
岩で、思いっきり頭を殴られたみたいだった。
- 201 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月21日(火)03時47分06秒
「待ってよ!!もうすぐ血清ができるから!」
「血清?でも、もう……。お願い、よっすぃと話がしたいって言ってるの」
梨華ちゃんの声が、震えていた。
もう少しでてきる。でも、それを待つ時間は、もうないみたいだ。
「くそっ!先生っ!!!」
わかったのに やっとわかったのに
なんでもっと早く気づかなかったんだ
「先生!血清を注射します!だからもう少しだけ時間を…」
「もう…無駄や。……今打っても、もう間に合わん」
「そんなことっ!」
「私は・・・死ぬ覚悟ならもうできとる」
先生は写真立てにぴったりと寄り添って、小さくなった左手で
写真の中の矢口さんを愛しそうに撫でながら言った。
「先生っ、矢口さんを一人にしちゃダメです!」
「ずっと傍におる。これからも、ずっと。
私が死んだら、私の血清で免疫血清を作って石川に一番に打ったり。
アンタらはそれで死なんで済む」
「ウチは先生を助けたいんです!!
やっとここまで突き止めたんだ…三人で日本に帰るって約束したでしょ?
もう少しだけ時間を!」
もう、わかってんのに。それでも駄々っ子みたいに諦められないウチを見て
先生は呆れたように笑った。
- 202 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月21日(火)04時01分27秒
- 「もうええねん、せやから聞いてや。
この奇病にはな…元々正体なんてなかったんや。
もしなんのせいやと言うなら・・・・これは神の警告やな」
「神?」
「おかしな話やで。今まで神サンなんて信じてへんかったのに、
……死ぬ時になって神サンのおぼしめしが見えるなんてなぁ……。
せやけどこの飢饉の中で…い、生き物が小さなるってことは、限られたこの…
この地球の食料を生き物全部が分かち合うには…か、体を縮小せなアカンって意味なんかも……」
「先生…もう話しちゃ……」
「矢口・・・」
先生は矢口さんの頬に手をあてて、はっきりとした声で言った。
「矢口。朝も、昼も、夜も・・・いつも愛してる」
ポトッ
「・・・・先生?」
先生の目は、矢口さんを見つめたまま。
およそ30センチにまでちぢんで%ョかない先生は、まるで人形のよう。
ウチの横にはいつの間にか梨華ちゃんが立っていて、
死亡確認だとか、しなきゃいけないことはたくさんあるのに、二人ともしばらく動けなかった。
- 203 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月21日(火)04時12分37秒
- どのぐらいそうしていたのか
時間が止まったような錯覚を振り払って ようやくウチの体は動いた
「午後、6時13分。御臨終です」
背中に軽い衝撃 耳に梨華ちゃんの嗚咽
震える手で開いたままの先生の目を閉じて、ガーゼを顔にかけた。
わかんないよ 全然わかんないよ
わかんなさすぎて 涙も出やしない
先生まだあったかいじゃん なんで息してないの?
タスケラレナカッタ
腰が抜けたみたいにその場にへたりこんで
背中に梨華ちゃんをくっつけたまま、小さな先生から目が離れない。
タスケラレナカッタ
先生越しにふと目に映った矢口さんの笑顔
カミノオボシメシ
気づけばウチは小さな先生を腕に抱えて、研究所を飛び出していた。
- 204 名前:ちぢむ 投稿日:2003年01月21日(火)04時25分01秒
- いつの間に夜になっていたのか。
外はすでに暗く、空には星が瞬いている。
美しい星空が、今は憎い。
「神様!!そこにいるならよく聞いて!
あんたは、あんたは残酷だよ!
医者は人間の病気を治して命を助ける。
その結果、男と女が愛し合って世界中に人間が爆発的に増え、食料危機がきて
何億人も飢えて死んでいく・・・・・・・
そいつがあんたのおぼしめしなら、医者は何の為にあるんだ!!!」
いるのかどうかもわからない神様を恨むのは、お門違いだってわかってる。
医者ならもっと現実的になれ、自分の非を認めろ。
ウチが治せなかっただけ 医者が患者を助けられなかっただけ
腕に抱えた小さな先生を抱きしめて
硬くなり始めた体を ウチの涙が濡らしていた
- 205 名前:デール 投稿日:2003年01月21日(火)04時28分53秒
- 間に合わなかったけど、矢口さんおめでとう。
なのにごめんなさい・・・
前回隠すとか言って隠しきれてなかったし・・・
もーほんと買い換えたいってこの話始めた頃から言ってるような・・・・
- 206 名前:デール 投稿日:2003年01月21日(火)04時32分26秒
- 今日こそは隠そう。
6期メンはモーニング娘として踊り出すまではよくわかんないです。
イメージする力が無いもんで・・わかるのは、多いってことだけ。
- 207 名前:デール 投稿日:2003年01月21日(火)04時35分44秒
- 次で終わるハズです。
読んで頂いてる方、こんな終わりでごめんなさい。と、先に言っときます。
- 208 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月21日(火)23時51分30秒
- よっすぃーのセリフのひとつひとつがとても重たいです。
原作を知っていながらも、ドキドキして読んでました。
原作ではなかったラストが、どうなるか楽しみです。
がんがってください。
- 209 名前:デール 投稿日:2003年01月24日(金)01時14分50秒
- >208 名無し読者様
レスありがとうございます!嬉すぃ〜です。
原作を知ってらっしゃるのにドキドキして頂けたとは光栄です。
原作は↑の部分までで終わってますね、そこが胸にグッとくるんですよね〜。
最後まで駄文に恥文で親分古文ですが、最終話更新、PCイ`。
- 210 名前:涙流れるままに 投稿日:2003年01月24日(金)01時36分30秒
- 中澤先生が亡くなった翌日、逃げ出した筈のイナーバさんが研究所に戻ってきた。
すっかり痩せて頬はこけ、目が充血した別人のような顔でウチと梨華ちゃんに
土下座をして謝罪し、小さくなった先生に縋って泣いた。
タイミングの良すぎた彼女に、腹が立たなかったと言えば嘘になる。
でもね、ウチも梨華ちゃんも、彼女を責めるなんてできやしなかったんだ。
その後は一応彼女にも血清を打って、病院から数人のスタッフを連れてきてもらい
残りの細かい仕事は全て彼らに引き継いでもらった。
そして、感染した日から期限の一ヶ月が経ってもウチと梨華ちゃんの体はちぢま≠ク、
免疫血清での治療は成功をおさめた。
先生 先生の最後の願いは ウチが必ず叶えてあげるよ。
一緒に日本へ帰ろう 矢口さんに会いに行こう
保存容器に入れられ、まるで眠っているかのような先生と共に
ウチと梨華ちゃんは帰国した。
- 211 名前:涙流れるままに 投稿日:2003年01月24日(金)01時48分11秒
「よっすぃ……先生に頼まれたことがあるの…」
あの夜、先生にしがみついて泣き喚いていたウチは
いつの間にか先生の部屋のベッドに座らされて、梨華ちゃんの胸に顔を埋めていた。
呼吸が落ち着くのを待ってそっと体を離すと、
梨華ちゃんは白い棚の一番下の引き出しから二通の封筒を取り出しウチに手渡した。
封筒を見ると、先生の字で一通には『矢口へ』、
そしてもう一通には『バカップルへ』と書かれていた。
これは・・・遺書ってやつだよね
なんだよ こんなのいつ書いてたんだよ
この字は確かに先生の字だけど
いつも丁寧過ぎるぐらい綺麗な字を書いてた先生にしては 少し雑だね
ちぢん≠セ体じゃ 字を書くのも大変だったでしょ?
先生ごめんね これを書いた時には
ウチは先生を治せないって 助からないってわかってたんだよね
- 212 名前:涙流れるままに 投稿日:2003年01月24日(金)02時13分59秒
- 遺書を持ったまま放心していたウチの手から自分たちにあてられたものを抜き取ると、
梨華ちゃんは呟くように読み始めた。
『やっほ〜祐ちゃんやで
ってコレをアンタらが読んどるってことは私は死んどるんやから
やっほ〜は場違いやったな、ごめんごめん
今、私の体はだいぶ小さなっとる
字ぃ書くんがこんな大変やと思ったんは初めてや
ペンがでかいねん、ちょっとムカツクわ
アラごめん、いきなり話それたわ
まずは、一番アンタらに言わなアカンこと
アンタらにはホンマ悪いことしたって思ってる
許してくれやんでもええ、死を覚悟すると何も怖ないねん
不思議やな、人間っちゅーんは
私は助からんかもしれん、せやけどアンタらは最高のコンビや(バカップルやけどな)
きっと奇跡を起こせると思う(ちょっと見とると腹立つけどな)
アカン!書いとったらなんや淋しなってきたわ
はぁ〜矢口に会ってギュウってしてブチュウっとしたいわぁ
まさか矢口より小さなるなんてなぁ、ヘコむわぁ
あっ今ちょっとカワイソウとか思った?思ったやろ?
特に石川!祐ちゃんはお見通しやで、フフン♪
- 213 名前:涙流れるままに 投稿日:2003年01月24日(金)02時30分01秒
- でや、ちょっと書くんしんどなってきたで本題行くわな
頼みがあんねん、私の人生最後の頼みや
ちょっとでもカワイソウやと思うんやったら聞いたってほしい
私を、矢口に会わせたってほしい
矢口に会う前に腐ったり骨になりたないねん
面倒なこと頼んどるんはわかっとる
せやけど、お願いします 矢口に会わせて下さい
葬式とかはせんでええから、日本で焼いて埋めたってほしい
道具とかはここに揃っとるし、私のへそくりアンタらにあげるで
それと、これと一緒においといた手紙を矢口に渡して下さい
私の為にも、矢口の為にも、どうかお願いします
ほな、アンタらがすぐに私を追ってこーへんことを祈りつつ
フェードアウトォ☆
祐ちゃんこと、中澤裕子より
追伸 よっさん、自分を責めやんでええで
アンタにはホンマ感謝してる ありがとう
石川も、二人とも本当にありがとうございました
- 214 名前:涙流れるままに 投稿日:2003年01月24日(金)02時46分09秒
- 梨華ちゃんは、声を震わせながらも最後まで読みあげてくれた。
ウチはこみ上げる涙を素直に流して
顔を上げた梨華ちゃんと、今はただ、涙流れるままに。
「あと…ね、さっきよっすぃが出てる間に先生に頼まれて私が代筆したんだけど…」
そう言って梨華ちゃんはスカートのポケットから小さなメモを出し、広げて見せた。
そこには梨華ちゃんの字でこう書かれていた。
『よっさんへ
さっきはごめん
自然のしくみに反ししるなんて言ったけど、本気やない
私は矢口を愛しとることを間違いやとは思わんし、アンタらのことも大好きや
さっきはちょっと弱気やってん、八つ当たりや、情けないなぁ
なっさんより』
なんかさぁ・・・先生ズルイよ・・・・・
なんで先生が謝るんだよ 悪いのはウチじゃんか
「先生は情けなくなんかないよね…助けられなかったウチが情けないんだ。
ウチ頑張るよ。
先生みたいな…立派な、強い医者になる」
ウチが情けないと言った時、梨華ちゃんは首を横に振ったけど
最後はにっこりと微笑んで頷いてくれた。
- 215 名前:涙流れるままに 投稿日:2003年01月24日(金)02時58分46秒
- 「よっすぃ……二人で頑張ろうね」
そう言って、ウチの頬に口づけた。
「うん。それじゃ…さっさと血清作って先生帰らせてあげよ?」
二人とも、流れ続けてた涙を拭って
矢口さんのことを考えると気が重かったけど
誰よりも矢口さんを愛してた先生の最後の頼みだもんね
涙はまだ枯れそうにないけど、いつまでもヘタレてちゃダメだ
「えい」とまだ悲しみに暮れたくて活動することを拒む体を無理矢理動かして立ち上がり、
先生に手を合わせてお別れを言った。
「もうとっくに先生のこと許してます。
ウチの方こそ…治せなくてごめんなさい……後は任せて下さいね」
絶対錯覚なんだけど
先生はその時笑ってくれたんだ 『ありがとう』って
- 216 名前:エピローグ 投稿日:2003年01月24日(金)03時08分51秒
- 日本に着いてから、ウチと梨華ちゃんには一週間の休暇が与えられた。
まぁ一応病み上がりってとこだし・・・・
だけどその一週間、ゆっくりしてた記憶なんてない。
血清の効果が出るまで研究所から出られなかったし、検査もいっぱい受けさせられて
なかなか日本に帰れなかったから、亡くなってだいぶ経っちゃったけど
綺麗なままの中澤先生を矢口さんに会わせて、手紙を渡して・・・・・・
直接触れることはできなかったから、矢口さんは容器ごと先生を抱きしめて
「祐…ちゃん……裕子ぉ…」
何度も何度も名前を呼んで
「なんで…こんなにちっちゃいんだよぅ……おいてくなよぉ…」
そう呟いて、泣いた。
- 217 名前:エピローグ 投稿日:2003年01月24日(金)03時18分03秒
- 病院からもお金が出て、えらく豪華なものになった先生のお葬式もあった。
棺は一番小さいものでも大きいくらいだったけど
先生の本来の身長に合わせたものが使われた。
式で見かけた矢口さんは背筋を伸ばし、毅然としていて
思わずかっけぇと呟いたウチは隣にいた梨華ちゃんに思いっきりつねられてしまった。
そして、残りの休暇はちぢむ♀病のレポートを書いて過ごした。
まぁ寺田院長に言われて初めて書いたんだけど・・・・・
提出したウチのレポートは中澤先生の残した資料を元に
大幅に修正が加えられ、学会に発表された。
・・・あれでも結構頑張ったんだよ?
やっぱウチには学者とか研究はむいてないんだ、うん。
- 218 名前:エピローグ 投稿日:2003年01月24日(金)03時27分37秒
- 休暇が明けると、話を聞きつけたマスコミが病院にやって来て、
先生の人生を本にするだの色々騒いでいたし、ウチにもインタビューやら
取材の依頼がたくさんきたけど、もちろん全部断ったよ。
ウチは立派で強い医者になるって決めたから、そんな時間なかったしね。
マスコミも騒いだのはほんのちょっとで、今じゃアイドルの電撃結婚に夢中。
結局奇病は遠い国での出来事だから
しかも現実的じゃないし、興味が薄れるのも早かったみたい。
先生 矢口さんはまだやっぱり暗い顔をしていて
時々目が赤いけど しっかり前を見て歩く努力をしている
矢口さん宛ての手紙に 何て書かれてたのかは知らないけど
「アレのおかげで矢口は頑張れる」って言ってたよ
やっぱ先生ってかっけぇね マジ尊敬
- 219 名前:エピローグ 投稿日:2003年01月24日(金)03時34分46秒
- 「よっすぃー」
屋上で中澤先生に向かって飯田先生直伝の交信をしていたら
いつの間にか隣に梨華ちゃんがいて、びっくり顔のウチを見て笑っていた。
「梨華ちゃん……ウチね、もっと勉強して経験積んで
医者がいなくて困ってる人たちを助けに行きたいんだ」
「うん」
「そんでさ、梨華ちゃんにも一緒に来てほしいんだけど…」
「うん」
「ずっと傍にいてくれる?」
「ずっと傍にいる」
「・・・・・」
「ひとみちゃんも……ずっと傍にいてね?」
「あったり前じゃん!絶対離れてやんないよぉ」
抱き合って キスをして 見つめあって
その時 どこからかキャハハと高い笑い声が聞こえた
- 220 名前:Shrink 投稿日:2003年01月24日(金)03時35分57秒
END
- 221 名前:デール 投稿日:2003年01月24日(金)03時45分19秒
- なんとか、完結致しました。
最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。
初小説とはいえ、読み返すと数多くの矛盾を含んだ部分があったり
なんじゃそりゃ的要素がてんこもりで鼻で笑ってしまう感じですが、
なんとか書き終えることができてよかったです。
お気づきになられる方もいらっしゃると思いますが
最後の「涙流れるままに」は、私の尊敬する小説家の一人でもある
島田氏の作品の題名をそのまま拝借しました。
- 222 名前:デール 投稿日:2003年01月24日(金)04時06分59秒
- 完結したらひっそりとROM専に戻るつもりでしたが、
少々余っているようですので、書けたら番外編を書こうかなと企んでおります。
元ネタはもう今更言うまでもないですが、BJ先生こと間黒男氏のお話の一つ
「ちぢむ!!」Shrinking Bodiesというものです。
私が持っているやつでは、三巻の二つ目に載っております。
このBJシリーズは一つの話はすごく短いのに、いくつも心打たれる言葉があって
大ファン故に恐れ多くも元ネタにしてしまいました。
Shrinkの医者は何の為…も好きなんですけど、三巻で特に好きな台詞は
「ふたりの黒い医者」の中の「それでも私は人を治すんだ、自分が生きる為に」
だったりしまして、よっすぃーに言わせようとして見事に失敗しました。
最後の最後に、こんな駄文を読んで下さった方、本当にありがとうございました。
- 223 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年01月25日(土)00時18分26秒
- デールさま
更新&脱稿、お疲れさまです。
原作にはない結末、楽しませていただきました。
番外編も楽しみに待ってます。
PS:ドクター・キリコや座頭医師も出てくるとうれしいです。
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