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( ´ Д `)<ごとーにお任せ〜。

1 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)09時45分43秒
友人に手伝って貰いながら作った奴です。
酔った勢いで載せます。
2 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)09時47分43秒
 別れがあるから、出逢いがある。
 誰しもが、別れを経験し、出逢いを経験する。


 市井が、とてつもなく幸せな出逢いをした、と思ったのは丁度一年前の春だった。


 入学式。
 桜の下で、歌ってるあの人を見つけた時。
 圧倒的でさえあった、その声に、いつの間にか聴き惚れていた…。

 『一緒にバンドやってみない?』
 名前を聞く間すら惜しんで、そう声をかけていた。

 『どんな奴かと思ったわよ』
 しばらくたってから、保田は笑いながら市井の第一印象をこう語った。

 一個上の先輩で、音楽部に所属していた保田圭。
 保田の幼馴染のベース、飯田圭織。
 市井と、ライブハウスで知り合ったドラマー石川梨華。
 ボーカルは勿論、保田。ギターは市井。
3 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)09時48分13秒
 本格的にバンドを組んだのは、それが初めてだった。
 試行錯誤、メンバーのぶつかり合いなんて、しょっちゅうだったけど。
 飯田の知り合いのバーで金曜の晩だけ朝まで生ライブ。
 いろんな人と出逢って。
 最高に楽しくて。
 そんな時間がずっと続くものだと思っていた。
 だけど。

 出逢いだけの人生なんて存在しない――。
 そんな当たり前のことに気付いた、市井紗耶香、16歳の春。

――
4 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)09時49分22秒
 「イギリスへね、行こうと思ってんだ」

 放課後の教室。
 夕焼け空の黄土色が射し込む窓を横目に、市井と保田は一つの机を挟み、雑談を繰り広げていた。
 その日あった馬鹿げた出来事や、ブラウン管の向こうの大好きな芸能人の話し。
 そして、それは前振りもなく、保田の口から突然発せられた。

 「え?」
 咄嗟に出る言葉。
 「音楽の勉強をね、専門的にしたいと思ってんだ」
 淡々とした口調で喋る保田に、市井はただ茫然と、自然と耳に入ってくる言葉に聞き入ることしか出来なかった。

 さっきまで、ただ楽しそうに雑談が広がっていた教室に、シンとした重苦しい空気が流れている。
 「いちーも行く…」
 気がついたら、そんなことを言っていた。
 保田の突然の告白に、思考回路は一切回っていなかったくせに。
 そんな言葉が自然に出てきた。
5 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)09時49分53秒
 大きな溜息を落とすと同時に保田が言った。
 「駄目に決まってんでしょ。紗耶香は…」
 どうして。という表情で保田の目を見る市井に、それでも淡々とした口調で保田が答える。
 「紗耶香は、この学校でも凄く期待されてる特待生」
 少し間を空けた。
 「私みたいな平凡な生徒とは、違うんだよ…」

 「そんなの――」関係ない!
 そう言おうとしたのを、次の瞬間、それまで市井が見たことのないほどの保田の冷たい目が遮った。

 そして、それと同時に、ほとんど本能で感じ取った予感。
 凄く。凄く嫌な予感。

 …嫌だ。

 「…ごめん。紗耶香」

 嫌だ。
 「私ね、」
 嫌だ。凄く嫌だ。
 聞きたくない!!
6 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)09時50分27秒
 市井の表情を察してはいたが、保田はそれでもそれを自分の中で押し殺し、ゆっくりと口を開いた。

 「紗耶香より、夢を選んだんだ」
 その時、保田が見せた笑顔は、またそれも、市井が今まで見たことないほど大らかな笑顔だった。

――
7 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月28日(木)10時59分13秒
タイトル忘れてた。
タイトル『市井は君と…』

間違ってもK1ではない。
8 名前:南平岸 投稿日:2002年11月29日(金)02時29分22秒
age
9 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時41分32秒
 三月、上旬。
 まだ、冬の冷たさが残る都内のとある公園。
 市井は一人、ベンチに腰掛けていた。
 市井が座っているベンチの隣に立っている時計の短針は、ちょうど五時を指していた。

 「そういえば、圭ちゃんにさよなら言われたのも、この時間帯だったっけ…」
 空を見上げた。
 そろそろ日も落ちかけ、辺りは暗くなりかけている。
 さっきまで見えていた夕焼け空は消え、黒く分厚い雲が空全体を覆っていた。
 それと同時に、公園から徐々に人の数も減っていく。

 そっと、目を閉じてみた。
10 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時42分15秒
 ふと蘇る記憶。大好きな人の笑顔。
 高校の先輩、後輩という仲で、市井の一方的な片想いから始まった恋だった。
 怖くて近寄りにくいイメージはあったけど。
 それでも大人びていて、かっこいい人。話してみると、実は凄く優しい人――。

 『いちー、圭ちゃんのこと、好きなんだ』
 思い切って伝えた、夏。
 二人っきりのスタジオ。
 少し、戸惑ったような顔をした保田。
 『私も、紗耶香のこと、好きだよ?』
 『…そういうんじゃなくてっ!!』
 初めてしたキスは少し、乱暴で。
 『いちーの好きは、こういう好きなんだよ…』
 ぶっきらぼうに呟いた市井に、保田が答えてくれた時の嬉しさ。
11 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時42分50秒
 市井が、ぐっと拳を握り締めた瞬間、少しだけ強めの風が吹き、市井の髪が揺れた。
 風は、とても冷たかった。
 その冷たい風を感じながら、市井は思った。
 出来ることなら…、
 この氷のように冷たい風の中に、今までの圭ちゃんとの記憶、総て閉じ込めたい…。

 目を、開ける。
 隣に置いていたギターをそっと抱えあげた。
 「そうすれば、こんな想いしなくていいのかな…」

 指が、自然とそっとギターの弦を弾く。

 圭ちゃんに逢えなくなった辛さ。
 圭ちゃんに自分より夢を選ばれた悔しさ。
 そして、
 今まで当たり前のように隣で笑っていてくれた圭ちゃんを、あの笑顔を、失った虚しさ。

 全部、全部が大切なのに、それを抱えてる自分が凄く嫌。

 そんなことだけが、自分の中でたくさん渦を巻いて、気がついたらあの日、この公園へ来ていた。
12 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時43分28秒
 「そういえば、この曲も圭ちゃんに教えてもらった曲だったなー…」
 それは、市井にとってとても大切な曲。
 はじめて、市井が覚えた曲。
 はじめて、圭ちゃんに教えてもらった曲。
 凄く歌の上手い人だったけど、ギターも上手くて、圭ちゃんに教えてもらった。

 あの頃は、この歌の歌詞なかなか覚えられなかったから、
 今も鼻歌交じりの部分があるけれど、今なら凄く共感出来るなぁ…。
 まるで、自分の心を見透かされてるぐらいに――

 「…なた愛してくれた、すべて包んでくれた〜まるで、ひだまりでした〜」
 突然耳に入ってきたその声に、市井の思考は遮断された。
13 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時44分02秒
 「え?」
 思わず顔を隣に向ける。
 「この歌、いい歌だよねぇ。切ない歌だけどさぁ」
 …え?
 「ぁ…そう、」なんだ…。
 そこには、見たことのない女の子が座っていた。

 思わず、眉間に皺を寄せる。
 てか…誰?

 「あ、あのぉー」
 女の子は手をポンッと叩くと訊いて来た。
 何故だか、満面の笑顔。
 「ぁ、はい」
 「一つお願いしていいですか?」
 お願い…?
 「…?」
 「もう一度弾いてください、それ」
 「…え?」
 「だからー、さっきの曲!」
 「ぁ、はい…」

 訳もわからず、市井は再度、指を弦にかける。
 でも、ホントに誰なんだ?この子は…。
14 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時44分38秒
 横目で女の子を見る。
 見た感じ、年齢は私とほとんど変わらない、みたいだけど…。
 肩ぐらいまで伸ばした茶髪。
 奇麗に筋の通った鼻、凄く奇麗な顔立ちをしている。

 そして――、

 ♪逢えなくなってどれくらいたつのでしょう
  出した手紙も今朝ポストに舞い戻った♪

 市井のギターに合わせて歌う声。
 その声も、凄く奇麗だ。
15 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時45分14秒
 「いい声してるじゃん」
 歌い終わった後、市井が言った。
 すると、女の子はにぱっと笑った。
 「ありがと!ごとー、歌うの大好きなんだっ♪」
 「ごとー…って言うの?」
 「うん。後藤真希。真実の真に希望の希!」
 「へぇ。いい名前じゃん」
 「あはっ♪ありがと。あ、そっちは?」
 「私は市井紗耶香」
 「へぇ、いちーちゃん、かぁ。へへ、いちーちゃんっ♪」
 「な、なんだよ」
 見知らぬ女の子に突然、ちゃん付けで呼ばれ、少し戸惑ったが。
 「呼んでみただけー。いちーちゃん♪」
 不思議と、嫌な感じはしなかった。
 「もうー。なんだよぉ」
 「なんでもなーい♪」
 「ったく」
 市井は、突然現れた不思議な女の子を目の前に、自然と笑顔になっていた。
16 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)06時45分45秒
 暫く話しを聞いていると、どうやら後藤は学校を早退し、家には親が居るため帰るわけにもいかず、この公園に来ていたらしく。
 そして、気がついたら眠っていて、私がギターを弾いてる音で目が覚めたんだとか。

 「明日もここに来るの?」
 市井がギターを片付けている途中、後藤が聞いてきた。
 「うん。多分な」
 「そっか。じゃ、ごとーも明日、ここ来るね!」
 「あぁ。じゃあ、また明日」

 後藤の満面の笑顔に見送られ、市井は公園を後にした。
 気がついたら、どんよりと空を覆っていた雲も流れ、空には奇麗な月が輝いていた。
17 名前:マーチ。 投稿日:2002年11月30日(土)13時31分35秒
見つけてびっくりしました!
(もしかして何作も書いている方なんですか?)

運命的な出会いですね。
これからの展開が楽しみです。
甘えた感じのごっちんがかわいい!
18 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)23時06分29秒
――

 「あーぁ。どっかに圭ちゃんみたいに歌上手い人いないかなー?」
 「…そうですよねぇ」
 「ったく。よりによって市井の前で圭ちゃんの話し出す必要あんの?」
 「だって圭ちゃんと紗耶香はいろいろあったけど、それでも紗耶香はうちの大切なメンバーじゃん?」
 「そりゃそうだけどさー」

 保田がイギリスへ旅立って、一ヶ月。
 飯田、石川が市井の部屋に集まってメンバー会議。
 と言うよりは寧ろ、春休みで偶然暇し、外でフラフラしていたメンバーが、市井の部屋に立ち寄っただけの話しだが。
19 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)23時07分39秒
 「だって圭ちゃんぐらい歌上手い人ってそうそういないじゃん?」
 バンドのリーダーで、保田とは幼馴染みの飯田が、椅子に腰掛け背もたれに肘を付き、半ば諦め口調で言った。
 「ヴォーカル、早く探さないとバンド続けていくことだって難しいですからねぇ」
 飯田の隣で首を大きく縦に振りながら石川が言った。
 「それに圭ちゃんがイギリスに発ってもうすぐ一ヶ月でしょ?いい加減忘れたらー?」
 「…たく。いちーはカオリみたいに薄情じゃないんですよ」
 市井は飯田と目を合わせることもなく、たった今持ってきたばかりのジュースをコップに注ぎながら言った。
 「ムーッ。カオリのどこが薄情なのよぉ!?」
 「まだ一ヶ月も経ってないのにもう幼馴染みのことなんかどうでもいいっぽく言ってるところ」
 あっさりと答える市井。
20 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)23時08分14秒
 「別にどうでもいいなんて言ってないでしょー!」
 ムキになり、声を大きくする飯田。
 「ふ、二人とも落ち着いて下さいーっ」
 慌てる石川に、市井が微笑みかけ。
 「大丈夫。カオリが短気なのはいつものことだから」
 「ちょっ、紗耶香ー。それ全部紗耶香のせいでしょ!?」
 「はいはい、わかったから声のボリューム下げて」
 市井は立ち上がり、飯田の背中をポンッと叩くと空のペットボトルを肩に部屋を出て行った。
21 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)23時08分50秒
 バタン、というドアが閉まる音がすると、石川が飯田に聞いた。
 「あの様子だったら市井さん、保田さんのこと吹っ切れたみたいですね」
 「…ホントにそう思う?」
 「違うんですか?」
 飯田は黙り込んだ。
 さっき話してた中でも時折見せていた市井の哀しそうな目を飯田は思い出した。

 「こんな短期間で吹っ切れられるほどの簡単な想いだったらよかったんだろうけどね…」
22 名前:市井は君と… 投稿日:2002年11月30日(土)23時10分26秒
――

 「えっとー…ゴミ袋っと…」
 ペットボトルを捨てようと思ったら、ゴミ袋が一杯になっていたので、市井は新しいゴミ袋を探すため、キッチンへ来ていた。

 「……」

 流しの下の物入れの中を探すため、両膝を床に付けると、引き出しに伸ばしていた手を止めた。
 伸ばしていた手の甲に、大粒の涙が落ちた。

 「……ゎ、忘れられるわけないじゃん〜…」
 圭ちゃん…。圭ちゃん…圭ちゃん…!!
 そして、何度も何度も心の中でその人の名を繰り返した。
23 名前:素人○吉 投稿日:2002年11月30日(土)23時16分28秒
>南平岸さん
 どうもです!

>マーチ。さん
 マーチ。さんのレス!
 や、やばい。嬉し過ぎて手が震える…w

 いや、ここでははじめてです。
 自サイトで数個載せてるくらいで、人に見せるということはあまり^^;
24 名前:マーチ。 投稿日:2002年12月01日(日)13時27分46秒
圭ちゃんへの想いは深いですね。
人知れず涙を流すいちーちゃん…せつない。

素人○吉さんのサイト、お邪魔したいです!
よければ教えてください。
25 名前:G 投稿日:2002年12月01日(日)21時55分13秒
いちごま小説発見っっ!
始めはK1かと思ったけどいちごまッスよね?
素人○吉さんのお名前をよくいちごま小説のスレ内で見かけるもので…

小説期待しております。
市井ちゃんの寂しさをごまの笑顔でうめてほしぃ…
26 名前:和尚 投稿日:2002年12月02日(月)01時34分54秒
保田さんを好きな市井さん。
その市井さんを後藤さんがどう絡んでいくのか気になります。

更新非常に楽しみにしております。
27 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月02日(月)12時43分10秒
――

 「いちーちゃんー♪」
 笑顔で、両手をぶんぶん振る後藤。

 「お待たせー」
 「ホント、遅いよ!約束より30分も遅刻だもん」
 後藤は腕時計を市井に見せつけ、言った。
 「ごめんごめん、寮の玄関で友達に捕まっててさ」
 むぅ、と膨れる後藤。そう言いながら、さっそくギターの準備を始める市井。

 市井と後藤が出逢って、約二週間という時間が流れていた。
 あれから二人はほとんど毎日逢うようになり、気がつけば、この公園でストリートライブをし、小遣い程度ではあるがお金も稼ぐようになっていた。
 そして、稼いだお金で一緒にご飯を食べに行く仲にもなっていた。
28 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月02日(月)12時44分48秒
 市井も、普段は保田のことを思い出しつつも、後藤と入る時は少しだけでも気が紛れるようになっていた。

 「今日から新しい曲も歌うし、気合入れて歌おうな。後藤」
 「うん。そのために一生懸命憶えたんだから!」
 両手でグッと握り拳を作って見せる後藤に、市井は右手を差し出した。
 その右手の甲に、後藤は自分の掌を重ね合わせた。
 「それじゃ、かけ声いきますか。がんばっていきま――」
 「「しょい!!」」

 どちらから言い出したでもなく、いつしからか二人の間で使われていたかけ声。
 「あはっ。やっぱこのかけ声、なんか気合入るんだよねぇ」
 「だよなぁ。なんか、小さい頃から気合入れる時、いつもこのかけ声使ってたんだ」
 「え。うそー?ごとーもこのかけ声、小さい頃から心ん中でいつも言ってたよ?」
29 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月02日(月)12時45分24秒
 二人は目を見開くと、互いの顔を改めて見た。
 「ほんとに?でも…なんか、小さい頃っていうか、物心付く前から言ってたんだよな、この言葉」
 「うんうん!ごとーもそんな感じだった!」
 「そういえば、こないだバンドメンバーの話ししたじゃん?最近わかったんだけど、二人もこのかけ声、小さい頃から使ってたんだってさ」
 「えー。なんかそれって凄くない??」
 「あぁ、しかも他の人に聞いても使ってる人誰もいないっぽいし」
 「なんか凄いねー。飯田さんと石川さん、だっけ?」
 「そう。後藤といちーとカオリと石川。このかけ声を使ってんの、この四人だけなんだ」

 「…でも」
 後藤は、ゆっくりと空を見上げた。
 それは雲一つない快晴で。
 「でも?」
30 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月02日(月)12時45分54秒
 「もしかしたら、この同じ空の下で、小さい頃からごとーたちと同じかけ声を使ってる人が、まだいるかもしれない」

 空を眺めながめる後藤を不思議そうに見ていた市井だったが、そんなことを言う後藤の横顔を見、自然と笑みが零れた。
 「うん」
 「逢って、みたいねぇ」
 「そうだな」
 そう言いながら、市井も、空を眺めた。

 もしかしたら、まだ見ぬ大切な仲間達も、
 この青い空を眺めているんじゃないか、なんて期待を胸に膨らませながら――
31 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月02日(月)12時59分39秒
>マーチさん。
 http://ww9.tiki.ne.jp/~candy/
 一応、サイトは此方になりますが…。ヘボサイトw
 マーチ。さんも小説頑張って下さい!
 ファンのひとりとしてずっと応援してます。
 レスありがとうございます!

>Gさん
 レスありがとうございます!
 いちごまですよー。てか、素人がいちごまを愛してやまない奴なのでっ♪
 でももともとこの話しは、某サイトで友人が連載していたやぐちゅー小説の
 番外編として作ったモノだったりするので、話し自体はそこまで長いものではなくw

 終わったら、また自作をいくつか載せる予定なので感想でも頂けたら嬉しいです。

>和尚さん
 レスありがとうございます!
 この話し自体は一応夏頃に作ったモノなのでもう完成しているのですが、
 ごっちんはやっぱりごっちんらしく(?)ですかね。
32 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月06日(金)09時31分10秒
 翌日も、市井は公園へ来ていた。
 くすんだ色の空の下でも、無邪気な笑顔で遊ぶ子供達を、市井は笑顔で見つめていた。

 そして、以前この公園で後藤としていたある会話を思い出していた。

 「じゃあ将来はシンガーソングライター!?凄いねぇ!いちーちゃん」
 「まだなりたいな〜ってぼんやり考えてるだけだよ」
 苦笑を浮かべながらも照れた様子の市井に、後藤も嬉しくなり笑みを浮かべる。
 「絶対叶うよ!いちーちゃんならさっ♪」
 「はは、ありがと。後藤」
 市井はそう言って後藤の頭をポンポンと撫でた。
33 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月06日(金)09時33分43秒
 後藤の頭をそっと撫でてやるたびに、市井は思っていた。

 不思議なんだ。
 後藤と話しているだけで、凄く安心出来るっていうか、その空間が凄く心地いいものになっていく。
 気がつけば、それが嬉しくて、後藤に逢いに来るようになってたの、かも。

 どうして、こんなに可愛い奴、なんて思っちゃうんだろうな…。
 どうして、こんなにも一緒にいたい、なんて思っちゃうんだろうな…。
34 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月06日(金)09時34分13秒
 暫くの間、そんなことをぼんやり思い出していた。
 そして、気がつけば無邪気に遊んでいた子供たちの姿も消え、
 市井は、自分が公園に来てから随分の時間が流れていたことに気づいた。
 しかし、いつまで経っても後藤が現れる気配がない。

 「どうしたんだろ…」
 不安が過ぎる。
 「後藤が、いちーに無言で公園に来ないなんてこと、今までなかったのに…」

 ふと、思い出す。
 いつも当たり前のように傍らに居たはずの後藤のことを。

 その笑顔も、その声も。――その温もりも。
35 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月06日(金)09時34分47秒
 後藤の残像。
 昨日までは、確かに隣にあったはずの温もりなのに…。

 その時だった。
 公園の向こう側の歩道を見覚えのある制服姿が何人か歩いているのを市井が見つけたのは。
 「…あれ?あれ、確か前、後藤が言ってた後藤の学校の…」

 ……。
 そっか。
 学校、始まったから…。
 もう、わざわざこの公園に来て暇潰す理由も失くなったんだ…。
36 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月06日(金)09時35分22秒
 市井は、その時、瞬間的に感じていた確信的な想いに背を向け、下を向いた。
 それでも必死に笑みを浮かべようとしたが、また、それも無理で。
 ただ、脳裏に焼き付いて離れない。

 その笑顔も、その声も。――その温もりも。

 「…ご、ごとぉ〜…」
 そうして、考えられる言葉何一つ見つけられず、ただ、その名前を掠れた声で口にした。
37 名前:マーチ。 投稿日:2002年12月07日(土)01時10分30秒
一緒にいるときはその存在がどんなに大切かなんて
考えもしないから、いなくなって初めて気づくんで
すよね。
いちーちゃん、どうするのでしょうか…。
この先が楽しみです。
38 名前:和尚 投稿日:2002年12月08日(日)01時17分53秒
切なくなってきました。
市井さん頑張れ!!
更新楽しみに待ってます!
39 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月13日(金)15時27分57秒
――

 夜も深夜。
 市井が住んでいる寮で、誰かが壁を攀じ登るようなミスマッチな音が響いていた。

 「ったくもー。なんで私がこんなことしなきゃいけないのよっ!
  それもこれも紗耶香がこーんな規則の厳しい寮に住んでるせいよっ!!
  …でも、紗耶香は圭ちゃんラヴだし。カオリ、頑張んなくちゃ!!」
 ぶつぶつと呟く小さな声。
 どう考えてもおかしな使命感に燃えているのは、飯田圭織……。
 市井の携帯に電話してどこかの窓を開けてもらう、とか
 そういう発想は浮かんでこないあたり、飯田の飯田たる所以か。
40 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月13日(金)15時28分30秒
 「紗耶香、紗耶香ー!」
 「…ん〜っ…?」
 「ほら、さっと起きる!」
 その声と同時に、ドサッと被っていた布団を取られる市井。
 「…だれぇ…?」
 「ったく。なに寝てんの!?ほら、起きる!」

 面倒くさそうに、上半身だけ起こす市井。
 そして、突然明るくなった部屋の眩しさに思わず、片手で目を隠す。
 「……」
 布団を取り上げた張本人と目が合う。
 「…」
 「…」
 「…いま、何時?」
 いたって冷静な口調で。
 「え?」
 「いま、何時?」
 今度は少しだけキツく。
 「え、あー。いま?えっとー、うん。夜中の二時十五分!」
 自分の腕時計をチェックし、自信気にそう答える姿を、まだ半分寝惚け眼の顔で市井が答える。
 「……で。あんたはこんな夜中に勝手に寮に上がり込んで。何の用?カオリ」
41 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月13日(金)15時29分08秒
 ってか、ここの寮、結構抜け出すのも入ってくるのも大変なんだけど…。

 「それがさ〜、もう大変だったんだから!」
 そして飯田は、自分がなぜこんな時間に市井の部屋にいるのか、話し始めた。

――
42 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月13日(金)15時30分29秒
 それは、飯田が学校から帰宅したときのこと。
 「あぁ――――ッ!!!」
 突然、叫ぶように声を上げる。
 「うるさい!!」
 「っあ。ご、ごめん」
 親からの説教だけならいいが。
 住宅街に住んでいる飯田の家から発せられたその声は、恐らくかなりの苦情が来ると思われた。
 しかし、そんなことを心配するような様子もなく、
 飯田は、悲鳴を上げた原因を大事そうに両手でしっかり持ち、急いで二階にある自分の部屋へ駆け上がった。
 バタリ、とドアを閉めると、そのドアを背に、飯田はゆっくりと手に握り締めていたそれを見た。
 「さ、紗耶香に教えなきゃ…」
43 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月13日(金)15時31分00秒
しかし――、
 「あぁ――――ッ!!!!!」
 また悲鳴。
 その瞬間、自分の悲鳴に驚いた飯田は咄嗟に口元を押さえた。
 親の怒鳴り声は聞こえなかった。
 「い、いま何時!?」
 必死に時計を探す飯田。

 市井にそれを教えようとしたのはいいが、気がつくと自分は眠っていたことに気づき、目が覚めたのだった。

 「……んげ。もう夜中の一時回ってんじゃん!」

 「紗耶香起きてるかな〜」
 しかし、こんな時間に起きてる人も早々いない。
 そんなことには気づく様子も見せず、ただ黙々と飯田は身支度を始めていた。
44 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月13日(金)15時36分02秒
マウスが思うように動いてくれない…。
えらい中途半端だけど;

>マーチ。さん
 レスありがとうございます!
 市井を書くのは難しい!でもごっちんはもっと難しい…。
 マーチ。さんみたく、いちごまらしさは全然出せないですけど、
 感想頂けると嬉しいです。ありがとうございます。
 
>和尚さん
 内容自体は友人が考えてくれたもので、文は自分が書いてるって奴なんですが、
 この内容を聞いた時には書けるかどうか不安でした。
 期待にこたえられんのか全然わかんないですけど^^;;
 レスありがとうございます!
45 名前:マーチ。 投稿日:2002年12月14日(土)10時40分04秒
もしかして圭ちゃんが絡んでくるのでしょうか。
ますます悩めるいちーちゃん…。
更新がんばってください。(マウスの不具合に負けず)
46 名前:和尚 投稿日:2002年12月15日(日)00時10分12秒
飯田さん面白すぎッス(笑)
和尚の心にクリティカルヒットです(爆笑)
飯田さんの話で、市井さんはどうなっていくのか!?
非常に気になります。
頑張ってください。
47 名前:つかさ 投稿日:2002年12月16日(月)00時46分59秒
あ〜びっくりした(w)
まさかこんなとこであげてるとは・・・・・ふむ。
この話終わったら、あれ、ど〜よ?ネタなら提供するぜ♪(ニヤリ)

あ、ちなみに自分でばらしていいのかわかんないけど、この話のネタ提供者
です(笑)
48 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月19日(木)09時02分35秒
――

 そのようなことを延々と語られた後、
 「あ、そうだ!これ、これ!」
 使命という名の役目を果たした子供と言った表情から、真面目な顔に戻ると、飯田は一枚の封筒を市井に渡した。
 「…なに、これ?」
 「言いから見てみて!」
 そう言うと、やっと目も覚めてきた市井は、
 ガサガサと封筒の中から一枚の手紙を取り出し、封筒の裏を見、差出人を確かめた。

 そして、言葉を失った。
 同時に、その手紙に見入った。
49 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月19日(木)09時03分48秒
 「カオリ、久しぶりだね。元気?
  相変わらず、交信とかしてんのかい?(笑)
  こっちは知ってる人はいないし、言葉は通じないし、学校に行っても全然
  共通の話題とか見つかんなくて、困ってたんだ。
  もう日本帰りたいーって何度も思った。
  けどね、そんな時、加護亜依っていう日本人の子に出逢ったんだ。
  親の仕事の関係でイギリスに来てたみたいで。
  その子は、うちらなんかよりずっと年の小さい子なのに、一人で、凄く頑
  張ってるんだよー。
  時々「おばちゃん」なんてからかわれたりなんかもするけど(笑)、
  最近は、その子の友達の辻ちゃんって子とも仲良くなって、この頃はずっ
  と二人のお守り役って感じだねー(笑)
  ったく。私はなんのためにイギリスに行ったんだ!?って感じだよ(笑)
  でも、あの子達とは初めて逢った時から「なんか他人じゃないなー」って
  不思議な感じがしてさ。
  ほら、「がんばっていきまっしょい!」って言葉、あったじゃん?
  ウチらが物心付く前から気がついたら使ってた言葉。
50 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月19日(木)09時05分47秒
  実はその子達もその言葉を使っててさ!あれには驚いたよー!!
  なんか運命でもあんのかねー。
  ま、とにかくそんな感じで、私は毎日楽しくやってます。
  それに、なんとか住む所も決まり、元気でやってるよー。
  カオリも頑張れよ!
  それじゃ、返事待ってるよー♪

  P.S.
  紗耶香、元気でやってる?
  なんか、一方的に別れちゃったし…。
  紗耶香が付いて来るって言った時、正直嬉しかった。
  けどやっぱ無理じゃん?
  私の勝手で紗耶香の将来壊すことなんか、絶対出来ないじゃん?
  そして、私は夢を選んだんだ。愛する人を捨ててまでね。
  酷い奴っしょー(笑)我侭なんだよね、もともとさ。
  だから、もう一つだけ、我侭なお願い。聞いて欲しいんだ。
  紗耶香に、いつか心から大切にしたいって、そう思える人が出来るまで、
  カオリにあの子のこと見守ってて欲しいんだ。
  こんなこと、私が言う資格ないのはわかってるんだけどさ。

  それじゃ、また。                        保田圭       」
51 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月19日(木)09時06分22秒
 「……」
 市井は手紙を読み終えた後も、暫くその手紙から目を離すことができずにいた。

 ……。

 「よかったじゃん、紗耶香!圭ちゃん、何だかんだ言って紗耶香のこと心配してんだよ!」
 そんな飯田の言葉がその時、市井の耳に入ったのかはわからないが、
 市井はゆっくりとした動作で手紙を封筒の中にしまうと、それを飯田に渡した。

 「…紗耶香?」
52 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月19日(木)09時06分56秒
 そして、市井がゆっくりと口を開けた。
 飯田のことは見ず、何かを思い出すようにただ一点を見つめながら。
 「私、圭ちゃんに振られた時、なんかもう世界が終わったかと思ったんだ。
  ほんと、あの頃は圭ちゃん以外のこと何も見えてなかったから。
  だから、圭ちゃんと逢えなくなってから、何も考えられなかった。ずっと、何も考える余裕が持てなかった。
  圭ちゃんに逢いたくて、なーんか、もうどうしようもなくなって。
  それであの時、圭ちゃんと離れたくなくて。”ついていく”なんてバカなこと言っちゃって…。
  たがら、圭ちゃんの追いかけてる夢のこと、考えてあげられなかった。
  圭ちゃんを失う自分が怖くて、バンドのことも、圭ちゃんの夢のことも何も考えてなかったんだ。
  ほんと、情けなかった…」
 それを言い終え、市井は大きな溜息をついた。
53 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月19日(木)09時07分28秒
 そんな市井を見、飯田は市井の座っているベッドに腰をかけると言った。
 「でも、紗耶香、最近よく笑ってるよ。沈んでるようなとこ、あんま見かけないしさ。
  私達、長い付き合いだからさ、これでも一応その笑顔がホントかどうかくらいは見分けられるつもりだよ?
  でも、紗耶香の笑顔は、カオリ、やっぱ、嘘には見えないんだ」
54 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月19日(木)09時08分01秒
 保田が、市井の前から去っていったとき、市井は、何も言わなかった。
 寧ろ、普段よりはしゃいでるくらいに見えていて――。
 でも、飯田には何となくわかっていた。
 素直じゃない幼馴染と似たような感性を持ち、当たり前のように惹かれ合っていった市井と保田。

 二人がどういう別れ話をしたのかはわからないが。
 イギリスへ旅立つ前の保田の笑顔は、やっぱり本当の笑顔ではなかった。
 寂しそうな、笑顔。
 無理してどうして笑うの?
 何度となく、この一ヶ月、飯田はそう思っていたのだが。
 ここ最近、市井の顔に笑顔が戻ってきていた。
 時折、寂しそうな表情はするものの…。
55 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月19日(木)09時08分31秒
 保田の手紙から、飯田は、最近の市井と似たような感じを受けた。
 あぁ、圭ちゃん、今、楽しんでるんだね?
 素直に嬉しかった。
 だから、紗耶香に教えなければ、と思った。
 そしたら…紗耶香はもっと素直に、笑える。
 そんな気がしたのだ。

 飯田のその言葉に、市井は一瞬不思議そうな表情になった。
 しかし、自然と、寧ろ当たり前のように市井の中に浮かぶ笑顔。

 「前ね、公園でごとーって子に逢ったって言ったじゃん?」
 「あぁ、すっごい歌上手い子?だっけ?」
 「うん。それで、それから毎日、ごとーに逢うようになってたんだ」

 市井は、後藤と過ごしたこの数週間のことを一つひとつ大切そうに思い出しながら話し出した。
56 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月19日(木)09時09分01秒
 「毎日、ストリートライブでお金溜めて、一緒にご飯食べに行ったり、いろんな話ししたり。
  お互い音楽が大好きでさ。そんな話しもしたりして。
  楽しかった。ごとーがいると。互いに住んでるとこも何も知らないくせに。
  毎日が凄く楽しくて、ごとーがいると嬉しくてしょうがなかったんだ」

 そこでひとつ間を空けた。

 飯田は、市井の次の言葉を待っていた。

 そして、照れくさそうな表情を浮かべ言った。
 「…知らない間に、ごとーにどんどん惹かれてく自分に気づいたんだ」
57 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月19日(木)09時09分32秒
 市井の、本当に心から嬉しそうな笑顔を見ると、飯田もそれにつられるように笑った。
 「そっか」

 「でも、もう逢えそうにないけどね」
 それを力なく言うと、市井は口を閉ざした。

 「…どうゆうこと?」

 一つ呼吸をすると、また口を開けた。
 「ごとーが、もう公園に来る理由。…失くなったからさ」
 おちゃらけた表情で笑う市井。

 恐らく、今にも涙が溢れ出しそうなのを必死に堪えて作った笑顔だろう。
 飯田は市井の頬の辺りが震えているのを見、言葉を失った。
58 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月19日(木)09時16分52秒
>マーチ。さん
 当たりです。ベタです。(素人はベタ大好き人間w)
 マウス…いい加減変えないととは思いつつ。
 くそぉ〜!思い通りに動いてくれよっ!!(><)
 そう言えば次で終わります。
 レスありがとうございます!

>和尚さん
 そう言っていただけると嬉しいです(笑)
 市井とカオリの絡みって何となく好きなんで。
 レスありがとうございます!
 
>つかさ
 いちごま書けないってよりいちごまに興味ないんだろ?w
 あれ、なー。結構キツい…。ただ出来る限りやってみるけど。
 まぁ今日のこと次第で俺が凹んだりしたら、わかんないけどw
59 名前:和尚 投稿日:2002年12月20日(金)01時30分01秒
ついに言った市井さんの想い!
後藤さんは一体どうしたんでしょうか?気になります〜。
次で最後との事ですが、更新待ってます。
60 名前:マーチ。 投稿日:2002年12月20日(金)20時44分58秒
次で終わりですか。
いちーちゃんとごっちん、うまくいきますように!
61 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時19分23秒
 「それでも紗耶香がその後藤って子を諦めたくないんなら、やっぱ行くべきだとカオリは思うな」
 あのあと、飯田にそんなことを言われたのを市井は思い出していた。

 そうして、というわけでもないのだが、
 習慣のせいか、それとも後藤に逢えるかもしれない、と心どこかで期待をしているせいなのか。
 市井は今日も、公園へ来ていた。
62 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時19分57秒
 高一の春、友達間で噂になってた『かっこいい先輩』に一目惚れした。
 少しずつ言葉を交わすようになり、勇気を振り絞ってしたはじめての告白。
 自分の想いが届いた時には、嬉しくて、それから何日かは眠れない夜が続いた。
 暫くは、楽しい日々が続いた。
 そして、そんな楽しい日々が二つの季節を跨いだ頃、突然告げられた別れ。
 ずっと一緒にいられると信じて疑わなかった頃、突然告げられた別れ。
 頭の中が真っ白で、心の中も真っ白で。
 右も左も、前も、真っ暗闇の中、手探りですら何も探すことができない孤独。

 そんな時であった、不思議な女の子。
 はじめて逢ったとは思えないほどの親近感。
 自然と、笑顔になっていくのがわかる安心感。
 心の闇に照らされた一筋の光に、躊躇することもなく、自然と歩み寄っていくのがわかった。
63 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時20分30秒
 そして気づいた。
 後藤の大切さ。

 「一ヶ月も経ってない間に、二度も失恋、かぁ…」
 全く、惚れやすい奴だな。
 そんなことを思いながら、また市井は想いに耽った。
64 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時21分03秒
 自分は、この一ヶ月の間、何を考えていたんだろう…。
 気がつけば自分のことはがりで、バンドのことも圭ちゃんの夢のことも、何も考えられなかった。
 圭ちゃんは、自分の夢を、現実のものにしたくて、イギリスへと旅立った。
 私は、圭ちゃんと離れるのが嫌で、頑張ってる圭ちゃんを、応援しようともしなかった。
 バンドの方だって、ヴォーカルがいなくて、大変な時期なのに外で遊んでばっかりで。
 だけど、
 ホントは嫌だったんだ。
 うちのバンドに、圭ちゃん以外のヴォーカルが入るなんて。
 認めたくなかったんだ。
 圭ちゃんじゃない、他の誰かがうちのバンドで歌ってるなんて、考えられなかったんだ。

 …あーぁ。相変わらず自分勝手な奴だ――
65 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時21分45秒
 次の瞬間。
 市井の視線が遮られ、目の前が真っ暗になった。
 そして、
 「だーれだっ♪」
 その声に、突然蘇る安心感。
 心の中が光よりも早い勢いで熱くなるがわかった。

 「…ご、ごとー…」
 「だめだめぇ。ちゃんとフルネームで!」
 「…ご、後藤真希」
 「あはっ♪当たりー。さすがいちーちゃんっ♪」

 市井は、躊躇しながらも、ゆっくりと振り向いた。

 そこには、学校帰りなのか、制服姿のままの後藤が立っていた。
66 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時22分15秒
 「…鞄は?」
 どうして、こんな質問が出るんだろう。
 「へへ。全部置き勉してるからさ。学校に鞄持ってってないんだよねー」
 相変わらず能天気口調のごとー。
 「…駄目じゃん」
 嬉しいよ。
 「いいんだよー。ごとはー」
 その声も。
 「はは、なにそれー」
 「あはっ♪」
 その笑顔も。

 「もう、逢えないかと思った」
 そんな市井に、後藤は不思議そうに首を傾げる。
 「えーなんでー?逢えるに決まってんじゃん!」
 「なんでそんなにはっきり言えんのよー」
 「だってぇ」
 「だって?」
 すると突然、後藤の顔が今まで見たことがないくらい赤くなってくのがわかった。
 「…ごとーはぁ」
 「ごとーは?」
67 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時22分48秒
 「…いちーちゃんのことが、…好きだからぁ!」
 語尾が強くなったのは、恐らく照れ隠し。

68 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時24分01秒
 そっと後藤の頬に手を指し伸ばす。
 「…それってlike?それとも、love?」
 逢えない時は凄く凹むくせに、こういう時はやけに冷静な市井。
 そんな市井に、後藤はふにゃっと笑いかけ。
 「あはっ♪わかんない♪」
 思わず肩をがくりと落とす市井。
 「でも、」
 後藤が続ける。
 「ごとーはいちーちゃんとずっと一緒にいたいって思ってるよ」

 その笑顔に、どれだけ癒されただろう。
 そして、ずっとこれからも。
 その笑顔が欲しいよ。

 だから、市井は、満面の笑顔で言葉を返した。
 「いちーも、同じだ」
69 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時24分36秒
――

 その日の帰り道。
 はじめて、後藤が市井の寮に来たいと言ったので、二人一緒に帰ることになった。


 「でさー。ま、いろいろあったけどやっと決心がついたよ」
 「へぇ。大変だったんだねぇ」
 今まで、自分が感じてきたことを市井は話していた。
 保田とのこと、そして後藤と出逢った時のこと。
 「うん。やっと、圭ちゃんのことも応援しようって気持ちになれた」
 「それって、…やっぱ、ごとーのおかげ?」
 恐る恐る聞く後藤に、市井は頭をくしゃくしゃ撫でてやり。
 「うん。そうだよ」
 「へへ♪」

 市井は、嬉しそうに笑う後藤の前に一歩出た。
 「だから、ま、長かったけどさ。やっとこの言葉が言える人が見つかったって思った」
 「…この言葉?」
 「ほら、はじめて逢った時にさ、ごとー歌歌うの好きって言ってたじゃん?」
 「うん。歌歌うの大好きっ♪」
 「だからさ」
70 名前:市井は君と… 投稿日:2002年12月30日(月)15時25分06秒
 市井は、くるっと向きを変え、後藤を見た。
 後藤も不思議そうに、それでもしっかりと市井を見つめていた。
 
 圭ちゃん以外の誰かがうちのバンドで歌ってるなんて、想像できなかった。
 圭ちゃん以外の誰かがうちのバンドで歌ってるなんて、認めたくなかった。
 だけど、――

 市井も後藤のことをしっかりと見つめた。
 そうして、言った。

 「ごとーさ、一緒にバンドやってみない?」



それが、すべての始まり――
71 名前:素人○吉 投稿日:2002年12月30日(月)15時28分16秒
先ずに、マーチ。さん、和尚さんレスありがとうございます。
気が付けば前回と大幅に時間が空いてしまい…。汗。
正直、このスレを立てた時はかなり酔っぱで、何も憶えていません。
なので総て勢いでやってしまいました。

そういえば明日は市井紗耶香生誕日。
きっといちーさんは、ごっちんと楽しく元旦を迎えるんだろうなー、とまた妄想しつつ。
ワはいちごま読者に戻り、また妄想。
では。
72 名前:和尚 投稿日:2002年12月30日(月)23時48分18秒
本編完結お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
like、loveに関係なく、ずっと一緒にいたい・・・
この言葉に心打たれてしまいました。

いちごま読者に戻り・・・え〜勿体無いですよ!
こんな素敵な文章書けるんですから、続編を望みます。
73 名前:マーチ。 投稿日:2002年12月31日(火)01時04分56秒
完結お疲れ様です。
ラストシーン、いいですね!
さわやかで、かっこよくて、強く印象に残ります。
第2章が始まるって感じも…。

また酔ったときに書いてくれるんですよね!?

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