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トラフィックライト

1 名前:流氷 投稿日:2002年12月15日(日)23時20分16秒
はじめて書きます。流氷という者です。
わからないことが多いのでご指導よろしくお願いします。
感想でも批判でも何でもお待ちしてます。

この話は吉澤と加護が主人公の入れ替わりものです。
今度のドラマに対抗してみました(w
それほど長くないです。というか短いです。
ではさっそく。
2 名前:トラフィックライト 投稿日:2002年12月15日(日)23時21分15秒
その日は、満天の星空だった。
なにげなく見上げた夜空。
でも、その無数の煌きは、あたしに何かを訴えかけていたのかも知れない。
その時あたしは、そんなシグナルにも気づけずに。
3 名前:その1 投稿日:2002年12月15日(日)23時22分56秒

「ぐっ・・・」思わず声がもれる。
後頭部に激痛が走る。
あまりの痛さで、その場にしゃがみこんでしまう。
テレビ局のロビーだけど、この時間帯は人の出入りが少ない。
周りを見渡しても人はいなくて、助けを呼ぶことすら出来ない。

頭痛は激しさを増し、視界が揺らぐ。
気が遠くなり、とうとう意識がなくなっていく・・・

4 名前:その1 投稿日:2002年12月15日(日)23時24分12秒

目を覚ますとそこには、辻と5期メンがあたしを心配そうに見つめていた。
「大丈夫?」
辻が今にも泣き出しそうに言った。
どうやらココは病院らしい。
「心配したんだよぅ。あいぼんが交通事故に遭ったって言うから。」
「は?」
交通事故?あいぼん?何を言ってるんだ?
と思って発した「は?」と言う声がいつもあたしの声とまるで違う。
あわてて自分の手を見てみる。
ちっちゃくてプヨプヨしてるではないか。
まさしく加護の手そのものだ。
何がなんだかさっぱり理解できない。

あたしの思考回路は、完全に止まってしまった。
とりあえず時計に目をやる。
九時五分前。
「ドラマ始まっちゃう」なんてことが頭に浮かんだ。

この状況は、もう上の空だった。



5 名前:その2 投稿日:2002年12月15日(日)23時25分44秒


鏡の前に立つ。
いつもなら皆の人気者、よっすぃーこと吉澤ひとみが映し出されるはずなのに。
自画自賛しても虚しいだけだけど。
今映っているのは明らかに別人。
そう、だって加護亜依が映ってるんだもん。

あたしは、加護の体にのりうつってしまった。
あたしがそのことを完璧に理解し、納得するまでには、あれから小一時間必要だった。


あのあと、不自然な言動のあたしを、首を傾げながら見ていた五人。
なんとか事故を言い訳にして誤魔化した。
「じゃあ安静にね。」
そう言い残して帰ろうとする辻に、年上チームはどうしているのか聞いてみた。
すると、このあと仕事が終わり次第かけつけてくれるらしい。
あたしの本当の体である吉澤ひとみも元気らしい。
謎は深まるばかりだ。


6 名前:その2 投稿日:2002年12月15日(日)23時26分27秒
なにもすることがないので、鏡の前の加護を再度チェック。
次に加護の体を動かしてみた。
普通に動けてしまう。
とりあえずダンスをしてみる。
『加っ護ちゃんです』をやってみる。
『チュッ』とかもしてみる。

鏡に映る加護がすごくかわいい。
あらためて加護の魅力を感じさせられた。


鏡をいくら見ても、あたしの体が加護ってことは変わらないわけで。
それなら、なんかしようと思ってベットに戻ってみたものの
加護の荷物が置かれてて、私の携帯や雑誌とかはないわけで。
バフッとベットに寝転がった。
すると窓の外の星が目に入った。
東京でもこんなに見えるんだというくらい、やけに輝く星空。
年に一度あるかないかの、幻想的な夜。
まるで今置かれてる状況が幻だと言っているかのように。


7 名前:その2 投稿日:2002年12月15日(日)23時27分10秒
しばらくして、ドアが勢いよく開かれた。
「かっごぉー、大丈夫かー。」
そう言いながら、矢口さんがベットに飛び込んできた。
なにやら医者が言うには、あたしの体は異常なく、みんな胸をなでおろしたのだと言う。
まぁ精神的には、問題が山済みなんだけど。
年上チームの皆様方は、これからのスケジュールとお見舞いを残して帰っていった。
去り際、保田さんが
「あー、なんかね、よしこが一人で話がしたいっていってて、これから来るから。」
と言い残した。
ついに謎が解ける、と思った。


数分後。
あたしが、いや、吉澤ひとみの姿をした何者かが入ってきた。
ベットに近づき、立ち止まる。
先に口を開いたのは、あっちだった。
「私が加護亜依なんだけど。」
この一言で、すべてを理解した。
というか予想通りだった。

あたしの心と体は、加護の心と体と入れ替わってしまったのだ。



8 名前:その3 投稿日:2002年12月15日(日)23時29分47秒


加護亜依の姿をしたあたしと、あたしの姿をした加護。
このまま、目を点にして見つめあっててもどうしようもない。
加護は明日の夕方までオフ。
あたしももう退院してもいいらしい。
だからとりあえず、あたしのマンションで作戦を練ることにした。

結構前のことだ。
実家から通うのも大変なので、マンションを借りた。
一人ってのは本当に寂しいんだ、ってことを思い知らされた部屋。
でも今、この状況ではありがたい。


9 名前:その3 投稿日:2002年12月15日(日)23時30分27秒
マンションの鍵を開け、誰にともなく「ただいま」を言う。
すると後ろから、加護が「おかえり」と返す。
こういうところが、うまいなぁと思う。
なんというか加護には、人を引き寄せる力がある気がする。

部屋に入る。
加護はさっそうと私の部屋をあさりはじめる。
日記が入っている引出しに手を掛けたところを取り押さえ、なんとか座らせる。
あたしは冷蔵庫からペットボトルのお茶を出し、向き合って座る。
そこにはあたしがいるわけで、なんとも変な感じ。
あたしの目からあたしが見える。
鏡の前に立っているわけでもないのに。
なんだか落ち着かない。


10 名前:その3 投稿日:2002年12月15日(日)23時32分09秒
「あのだな・・・」
独特の加護節だが、声色は吉澤の低音という不自然な言葉が部屋に響く。
加護の話によると、道路を渡ろうとした瞬間、トラックに思い切り轢かれたのだそうだ。
その瞬間周りが真っ白に。
気づいたらテレビ局。
そして姿は吉澤ひとみ。
てな具合にトントントンと進んだらしい。
そして今日一日、吉澤ライフを楽しんだという。
それにしてもすごい対応力。
あたしとは大違いだ。
なんだか感心してしまった。


11 名前:その3 投稿日:2002年12月15日(日)23時35分37秒
普段はメンバー内でものんびりめの二人。
だけどさすがにこの状況は焦る。
なによりこのままだと困る。
二人で頭を絞って打開策を考えた。

でも30分経っても、一向にいい案が思い浮かばない。
「ちょっとトイレ。」
そういってあたしはトイレに入る。
その瞬間、「あー」という叫び声が聞こえ、ものすごい勢いで加護もトイレに入ってきた。
「どしたの?」
あたしが聞くと、
「おしっこしたら、加護の、その、あそこが、よっすぃーに見えちゃうじゃん。」
と、必死になって加護が答えた。
「まぁそれはそうだけど。」
「じゃあ、やめて。」
「はぁ?だってもう我慢できないし。」
その言葉に加護は悩んで、
「じゃあ、代わりにあたしがする。」
という、なんとも意味不明な結論を出した。
「せやから、よっすぃーは目つぶってたらいいの。」
加護はそう言うと、あたしの服をおろし便座に座らせた。
「もう、だしてもいいよ。」
と言う加護の言葉とともに、あたしは用を足した。
この方が何倍もいやらしい気がするけど・・・。
でもあまりに必死だったから、とりあえず黙っておいた。

12 名前:その3 投稿日:2002年12月15日(日)23時36分14秒
ふと考えた。
そういえばあたし、今まで加護の裸を見たことがない。
辻といっしょにお風呂に入る時とかは、気にしないらしい。
でもあたしもいっしょだとわざわざ大きいタオルで上も下も隠していた。
なんであたしには裸を見せてくれないんだろう。
いや、別に見たいとかそういうわけじゃないんだけど。
もしかして、あたしってば加護に嫌われてる?

密かに、そんな疑惑の念を抱きつつ、今日はもう寝ることにした。
ベットが一つしかなかったから、いっしょに寝るしかない。
ちょっと恥ずかしかったけど、自分の顔と向き合いながら眠りについた。

そのときあたしは、これは長い夢で、目が覚めれば元通りになってることを祈っていた。



13 名前:その4 投稿日:2002年12月15日(日)23時37分08秒


朝、目が覚めると、自分の顔が視界に飛び込んできた。
なんとか昨日の出来事を思い出し、納得した。
この体が夢ではないこと。
今日からどうしようという不安。
その二つが、ため息になってあたしの口からこぼれた。

それにしてもなぜ、姿ヨシザワ中身カゴなんてことになったんだろう。
そもそも何で、あたしと加護が・・・
そんなこと考えたところで、どうにかなるわけじゃない。
もっと前向きに、これからのことを考えよう。

今日は夕方から仕事。
テレビ局で番組の収録。
だからそれまでにこの状況をなんとかしなければ。

きっと普段なら、半日の休みは学校に行くんだろう。
加護は中学生なわけだし。
でもそんなわけにもいかない。
元に戻る方法、とまではいかなくても皆にバレないようにしなきゃ。

14 名前:その4 投稿日:2002年12月15日(日)23時37分51秒
人が必死に考えてる中、加護がやっと隣でお目覚め。
「んあー」と大きなあくび。
そしてあたしの顔を見て一瞬驚き、
「オハヨ、よっすぃー。」
寝ぼけ眼で、そう言ってベットから起きる。
どうやら理解できたようだ。


あたしがシャワーを浴びてくると、テーブルにオムライスが並んでる。
「これ、どうしたの?」
驚くあたしを見て、加護は得意げに
「へっへーん。」
と威張ってみせる。
加護って料理できたのか、と感心しながらオムライスを頬張る。
「う、うまい。」
ヤバイ。素でリアクションしてしまった。
加護はさっきから満面の笑み。
・・・なんかくやしい。
ちょっと、あたしも料理の勉強しなくちゃ、なんて思ってしまった。


15 名前:その4 投稿日:2002年12月15日(日)23時38分30秒
食事が終わると、加護はテレビを点けた。
そしてビデオを探し、ちょっと前のうたばんを見つけた。
「見てもいい?」
「うん、別にいいよ。」
日数的に見れば、本当にちょっと前。
でも皆、今とはけっこう違うもんだ。

こうして過去が記録に残ってるってのは、いいことだと思う。
確かに番組とかで、過去の映像を流されると恥ずかしい。
でもまだまだ入りたての頃を一人で見たりすると、妙に感動する。
成長の記録というか。
あぁ昔はこれしか出来なかったよね、とか思う。
いつかは娘。だったことが懐かしくなる日が来るのかな、なんてしみじみしてみたり。


16 名前:その4 投稿日:2002年12月15日(日)23時39分03秒
うたばんを見ながら、ところどころにツッコミはじめる。
会話がはじまる。笑いあう。しゃべりまくる。
単純なことなんだけど、忙しい日々を送ってると、こういうことも楽しい。
なんか小さな幸せを感じてしまう。
幸せな時間はあっという間に過ぎ、気づけば三時。
あたしはバカだ。
もう仕事の時間じゃないか。
でも今さら慌てても、もう遅い。
しょうがないから支度をして家を出る。
今日は二人一緒にいて、お互いの不自然な言動をカバーしあうってことになった。


17 名前:その4 投稿日:2002年12月15日(日)23時39分36秒
スタジオまで歩いて行くことにした。
今日のスタジオは近いし。
何より加護と口裏を合わせなきゃ。

いつも通いなれた道。
でも目線が低いから、なんかいつもと違う。

スタジオについても加護、加護呼ばれるのに違和感を感じる。
「よっすぃー」って呼ばれると答えそうになる。

そしてまた、加護のほうは好き勝手やってる。
だからあたしは、ずっとドキドキしっぱなし・・・。


18 名前:その4 投稿日:2002年12月15日(日)23時40分12秒
収録の方は無事終わった。
それほど大変ではなかった。
それよりもまたツアーがはじまる。レッスンもはじまる。
それまでには何とかしなくちゃ。

そんなことを考えていると、あたしが・・・イヤイヤ、加護が梨華ちゃんと話をしている。
まずい。直感的にそう思った。
案の定、梨華ちゃんが涙目で走り去ってしまった。
あたしは、その場に立ち尽くす吉澤の姿をした加護を、ただただ見つめていた。
19 名前:nanaSi 投稿日:2002年12月16日(月)00時01分25秒
ドラマに対抗しちゃってください(w
今後の展開が楽しみ。がんがってください。
20 名前:その5 投稿日:2002年12月16日(月)23時37分26秒


やっぱり説明しとくべきだったんだ。
あたしと梨華ちゃんが付き合ってることを。
なんか照れ臭かったから。
加護からだと、からかわれそうだったから。
だからなぜか言えずにいたんだ。

21 名前:その5 投稿日:2002年12月16日(月)23時38分04秒

第一あたしと梨華ちゃんの関係を、恋人と呼べるかどうかも、本当のところわからない。

まずあたし達には、メンバーという上手に言い表せない人間関係がある。
一緒に仕事してるから、仕事仲間なんだけど。
でも年齢的に言えば、学校の友達だし。
だからといって、同じ学校でもないし。
そんなあやふやなメンバーという関係。
その中でも特に仲良くて、よく買い物に行って、家に泊まったりして。
そんな仲だった、あたしと梨華ちゃん。

そんな頃、梨華ちゃんが言ったひとことがきっかけになった。
「うーん、よっすぃーが恋人、だったらな。」
「だったら?」
「え?、あ、いや、その、ねー。」
――今までほとんど話したことがなかった好きなタイプを話してる時だった。
「あたしも梨華ちゃんが恋人だったらなー。」
「だったら?」
「・・・・・だったら?」
あたしも梨華ちゃんもそこで吹きだしてしまった。
それから二人はお互いを恋人って呼ぶようになった。

22 名前:その5 投稿日:2002年12月16日(月)23時38分41秒
普通に考えたら、女の子同士って変かもしれない。
でも、あたしも梨華ちゃんも、元から女の子を好きなわけじゃない。
友達になって、親友になって、その先に恋人という関係があっただけ。
でもそんな二人の関係は皆には内緒だった。

23 名前:その5 投稿日:2002年12月16日(月)23時39分11秒

でももうそんな悠長なことも言っていられない。
加護に駆け寄って、梨華ちゃんが走り去った理由を聞く。
予想通り、今度のデートの約束を覚えてなかったこと。
そして何を言っても普段のあたしじゃないような返答をすること。
それが原因だったらしい。

とりあえず加護に事情を説明して、梨華ちゃんの誤解を解こう。
吉澤の姿をした加護じゃないと説得力がない。

加護にあたしと梨華ちゃんのことを説明する。
これからして欲しいことも告げる。
するとなぜか、加護は黙って下を向いたままだった。
そしてさっきの梨華ちゃんみたく、走り去ってしまった。

今度は、加護の姿をしたあたしが立ち尽くしていた。

24 名前:その5 投稿日:2002年12月16日(月)23時39分46秒
もう何がなんだか、意味不明。
どうしたらいいかわかんない。
なんで加護までどっか行っちゃうの?

でもこんな時バッチリのタイミングで現れるのが、矢口さん。
加護の姿だったら逆に相談しやすい。
なんて考えてると、矢口さんの方から近づいてきて、コッソリと話し出した。
「そういえばさ、もうよっすぃーに告白した?うまくいった?」

またあたしは止まってしまった。
でも思考回路は今までの出来事を走馬灯みたいに振り返りだした。
その瞬間、すべてが繋がった。

そう、まるで夜空の星が、星座をつくるみたいに。



25 名前:流氷 投稿日:2002年12月16日(月)23時48分58秒
一回目に頑張りすぎたので今回はこれだけです。
ほんとにちょっぴりです。

>19 nanaSi様
読んでいただき、ありがとうございます。
ドラマはいしよしに期待です。
これからもこんな感じですがお付き合いいただけると嬉しいです。

次回からは加護視点です。
26 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時14分53秒


事故に遭った。
よっすぃーと入れ替わるという奇想天外なことが起きた。
よっすぃーは必死にどうにかしようとしていた。
でも私はそのままでよかった。
ずっと二人で居られるから。

そもそもこれは夢なんだと思ってた。

27 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時15分43秒

その時、私は急いでいた。
ちょうど日が沈みきった直後。
空では星が徐々に姿を見せ始めた頃だった。
右手にはスーパーで買った料理の材料を持って・・・

28 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時16分25秒

その日はミニモニ。の仕事が最後だった。
日程がすべて終わり、楽屋で帰り支度をする矢口さんと二人きりになった。
ちょうど、よっすぃーからのメールへの返信を考えている時だった。
突然、矢口さんが話し出した。
「加護さー、今よっすぃーのこと考えてるでしょ。」
「えっ!?」
あまりの不意打ちでパニックになってしまった。
「加護ちゃんは、なんでよっすぃーのこと好きになったの?」
「な、なんで知ってるの!?」
単純なフェイク。
「やっぱりよっすぃーのこと好きなんだ。」
なのに、まんまとはめられてしまった。

29 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時17分00秒

・・・自分のアホさ加減にあきれた。
普段だったらコッチが騙す側なのに。
とにかく観念して、自分の気持ちを全て白状した。

もしかしたら誰かに聞いてほしかったのかも知れない。
そのくらい次から次に言葉が出た。

30 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時17分43秒

矢口さんはちゃんと聞いてくれた。
軽蔑される、と思って誰にも打ち明けれなかった思い。
でも矢口さんは当然のことのように受け入れてくれた。
「思いを伝える前に、もっと相手のことを知ったほうがいい。」
「これから、よっすぃーの家に遊びに行ってみたら?」
そんなアドバイスまでしてくれた。

私はよっすぃーのマンションに夕食を作りにいくことにした。
幸い、よっすぃーの仕事は夜からだった。
だから夕食なら一緒に食べれるな、と考えた。

31 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時18分23秒

ふと空を見上げると、星がひしめきあっていた。
今まで見た事がないくらいの数の星が見える。
そんな時、一筋の光が見えた。
――流れ星だ。
私は慌てて願い事を考えた。
「いつかよっすぃーに告白できますように。」
もう流れ星はとっくに消えていたけど。
しかも願い事なのに、恋人になれるとかじゃなく、告白できるだけでいいなんて。
なんて謙虚なんだ、私。
――いや、臆病なのかな・・・

32 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時19分04秒

スーパーの買い物袋は重かった。
買い過ぎてしまった。
でもそんな重さ、今は気にならない。
よっすぃーに会えることで胸が高鳴っていた。

ヘッドライトが私を照らす。
けたたましいブレーキ音。
スーパーの買い物袋が、夜空に舞った。

信号機だけが冷静に、赤く私を照らした。

33 名前:その6 投稿日:2002年12月17日(火)23時19分38秒

次に私の目に映ったのは、見慣れたテレビ局のロビー。
夢だと思った。
いや、ずっと夢だと思い続けた。
よっすぃーの体にのりうつったこと自体が。

よっすぃーの家に泊まれた。
二人きりの秘密ができた。
楽しくてしょうがなかった。
夢だと思っていたから、楽しかったのかも知れない。

でもまさかこんなに傷つくことになるなんて。
残酷な告白。
それも、よっすぃーの口から。



34 名前:その7 投稿日:2002年12月17日(火)23時20分09秒


とにかく走った。
涙が頬を伝ってきた。

この涙は、なんの涙だろう。
告白する前に振られてしまった悲しさ?
それとも二人が付き合ってることを話してくれなかったことへの悔しさ?
もしかしたら、この夢から覚めてしまうような怖さなのかもしれない。

溢れ出てくる涙を私は止められなかった。
なぜこんなに涙がでるかわからなかったけど、泣きつづけた。

35 名前:その7 投稿日:2002年12月17日(火)23時20分40秒

テレビ局の給湯室みたいな、誰もいない部屋。
その部屋の片隅で、私は丸くなって座っていた。
しばらくして部屋の奥に、鏡があることに気がついた。
鏡の前に立ってみる。
するとそこにはよっすぃーの顔が映し出される。
そっか私、よっすぃーのままだったんだ。

36 名前:その7 投稿日:2002年12月17日(火)23時21分23秒

少しの間、じっとよっすぃーの顔を見つめ続ける。
はじめはよっすぃーの体だってことが嬉しかった。
ドキドキしっぱなしだった。
でもずっと一緒に居たのに、私の目によっすぃーは映っていなかった。
よっすぃーの目にも加護亜依は映っていなかったんだ。
私の目からよっすぃーの顔を直接見ることはできないんだ。
そんな思いが溢れ、また涙がこぼれた。

鏡の中のよっすぃーの顔に手を当てた。
私の手に伝わってきたのは、冷たい鏡の感触だけだった。



37 名前:その8 投稿日:2002年12月17日(火)23時21分57秒


ずっと、気づいていた。
あの時私は一度死んだんだ。
そもそもあんなに大きな事故だったのに、身体が無傷というのがおかしい。

きっと、これはチャンスなんだ。
流れ星が叶えてくれた、よっすぃーに告白するためのチャンス。
そのために今、私はココに居るんだ。
伝えなきゃ。
この思いをよっすぃーに伝えなきゃ。

私はまた走り出した。

38 名前:その8 投稿日:2002年12月17日(火)23時22分31秒

私はよっすぃーが大好きだ。
それは普通じゃないのかもしれない。
よっすぃーは女の子なわけだし。
私たちはモーニング娘。なわけだし。
でもそんなこと知ったこっちゃない。
好きになっちゃったんだから、どうしようもない。

39 名前:その8 投稿日:2002年12月17日(火)23時23分19秒

よっすぃーの魅力ってどこだろう、と考えてみる。
まず、よっすぃーは人に媚びない。
例えばダンスがうまくいかなくて、ひとり早く来て練習したとする。
でもそのことは誰にも言わない。
いつの間にかできてることを誉められると
「あったりまえっすよ〜。」
と何事も無かったようにおちゃらける。
そんなよっすぃーの一面を知った時、もっとよっすぃーを知りたいと思った。

40 名前:その8 投稿日:2002年12月17日(火)23時23分54秒

もともと、よっすぃーとは気があった。
だから一緒にいることが多かった。
一緒に梨華ちゃんをからかったり、イタズラしあったり。
親友と呼ぶのは照れ臭くて、でもいつでも笑いあえる、ちょうどいい距離感。
でもその距離感は、ちょっとずつ狂いだした。

41 名前:その8 投稿日:2002年12月17日(火)23時24分31秒

よっすぃーはサッパリとした性格。
例えるなら、昔ながらの中華ラーメン。
食べ終わったとき、また食べたいと思う。
よっすぃーと遊んで楽しかったとき、また遊びたいと思う。
そしてよっすぃーと関わるたびに、新たな一面を知る。
今じゃ、よっすぃーと一緒にいたくてたまらない。
おもしろいように恋に落ちてしまっていた。



42 名前:流氷 投稿日:2002年12月17日(火)23時25分22秒

今回は以上です。
本当につまらない作品でスイマセン。
次回で最後になると思います。
次からまた吉澤視点に戻ります。
43 名前:nanaSi 投稿日:2002年12月19日(木)13時44分54秒
にゃにゃにゃ〜〜!!
がんがって流氷さん。
44 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時00分04秒


とにかく矢口さんに全てを話すことにした。
あたしは加護の姿だけど吉澤です、と。
でもそんなこと言っても不思議がられるだけ。
そりゃそうだ。
いきなり加護が
「あたし吉澤です。」
といったところで、新手のイタズラとしか思われない。
首を傾げる矢口さん。
明らかに頭に"?"が出ている。
45 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時00分48秒

それからあたしは熱弁を始めた。
今、あたしの身に起きていることの一部始終。
矢口さんが信じてくれるように、今までの思い出とか。
赴くままに言葉をはじきだす。

46 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時01分29秒

すると矢口さんは、不思議と納得してくれた。
あたしの顔を見て微笑むと、口を開いた。
「それで、どうしたいの。よっすぃーは。」
「・・・・会って、ちゃんと話したい。」
「だろうね。たぶん加護ちゃんもイロイロあったでしょ。
体入れ替わったり、よっすぃーんちに泊まったりとか。
それでパニックになってるだけだと思う。たぶん落ち着いて話せばわかってくれるよ。」
そういうと矢口さんは、一緒に加護を探してくれた。


47 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時02分16秒

いつも矢口さんはあたしを見守ってくれている。
そして一歩先から導いてくれる。
「ありがとうございます。」
聞こえたかどうかはわからない。
でもそう呟いてその場をあとにした。


48 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時02分53秒

「結構探したけどいないから、家に帰ってるかもしんない。
 とりあえず時間も時間だし、この場は私にまかせてよっすぃーは帰ってみな。」
そんな矢口さんの予想はピシャリと当たった。

帰ってみるとマンションの部屋のまえで加護が丸くなっていた。
顔をあげると、目が腫れている。
泣いていたことが一目瞭然。
まだ声もかれたままだった。

49 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時03分29秒

「よっすぃー、聞いてほしいことがあるんだけど。」
そう話し始めた加護の隣に腰をおろす。
マンションの通路の床は、コンクリートの冷たさが直に伝わる。
「なぁに?」
そう言いながら、加護の手を握る。
驚くほど冷たい指は、ここでずっとあたしを待っていたことを伝えた。

50 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時04分00秒

「加護、今まで好きな人っていなかったんです。
だから、人を好きになる気持ちって説明しろって言われても、たぶんできない。
 でも今よっすぃーに抱いてる気持ちが、好きってことなんだと思うから・・・
 えっと、・・・好き。よっすぃーのことが好き。」

それからも加護の口からは、あたしへの思いが溢れ出た。
でもどの思いも、あたしに何かして欲しいとか、そういうものじゃなくて。
だから、あたしはどうしてあげることもできなくて。
ただ涙の止まらない加護を抱きしめてあげるくらいしかできなかった。
 
51 名前:その9 投稿日:2002年12月19日(木)23時04分42秒
 
加護の涙は、頬を伝いあたしの握った手に雫になって落ちた。

夜空の星の光は、ずっとずっと前に放たれたものが今あたしの目に届いているだけなんだ。
加護の思いもずっとずっと前からあたしに向けて放たれていたんだ。
でもあたしはそれに気づくことが出来なかった。
だから今、流星群のように流れだした加護の思いは、あたしの心をとらえて離さなかった。



52 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時05分29秒


いつもと何も変わらない楽屋。
そこにあわてた安部さんが飛び込んできた。
「よっすぃー、スタッフさんが呼んでる。ってあれ?
 あっ、そうか加護ちゃんか。いや、やっぱよっすぃー?」
「あーもう、加護が呼ばれてんだからよっすぃーだよ。」
こんなところでも安倍さんのドジっぷりが発揮されている。


53 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時06分06秒

あのあと。
加護の涙の告白のあと。
あたしは加護が天に昇ってくような気がした。
きっとドラマだったら、加護は光に包まれ夜空に溶けていっただろう。
でも人生はドラマみたいにはいかない。
何も起こらないまま、玄関の前で立ち尽くす二人がいた。
残ったのは明日からどうしよう、という前と変わらない現実。

54 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時06分57秒

翌朝。
楽屋ではみんな揃い踏みだった。
そして娘。緊急会議が開かれていた。
議題はあたし達のこと。
季節はずれのシャッフルをしちゃった二人をどうするか。

矢口さんがメンバーみんなに説明してくれていた。
誰もそんな経験無いわけだから、全てに納得するのも無理がある。
でもそこは矢口さん。
うまく伝えてくれたみたいだ。

55 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時07分30秒

緊急会議で決定したこと。
それは、スケジュールをうまく調整し仕事に支障をきたさないこと。
そしてメンバー内でなんとかフォローしあって、マスコミにばれないようにすること。
この二つ。
すごく具体的。
元に戻る方法とかもみんなに考えてほしかったけど、
「まぁいいんじゃない。めったにできない経験だよ。」
と、まったく的のはずれた飯田さんの一言で会議は幕を閉じたのだった。

56 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時08分08秒

なんで加護とあたしは入れ替わっちゃたんだろう。
あたしが思うに、これはチャンスだったんだ。
あたしに加護の魅力を伝えるための、神様がくれたチャンス。
加護と入れ替わってしまったことで、加護の知らないところをたくさん知れた。
そしてもっと知りたいと思った。

「どしたの?」
「へぇ?」
「話しかけても物思いにふっけてて、反応なしだったから。」
「あー、イヤイヤなんでもない。」
さすがのあたしでも本人目の前にして、「加護の魅力に気づいたよ」とは言えない。

57 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時08分48秒

そうだ。
これがチャンスだったとしても、今の状況は変わらない。
メンバーにだって迷惑をかけてるのは事実だ。
それに、いつばれるかわからない。
ばれたら大変なことになる。
モーニング娘。どころか人類にまで話が飛躍しそうだ。
そうなってからじゃ遅い。
どうしたら元に戻れるのか、はやく探さないと。

58 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時09分18秒

そんな焦るあたしを尻目に、ケーキを頬張る加護。
そしてしゃべりだす。
「あのだな・・・」
いっきに和やかになる。
そんな、加護を見てると「このままでもいいか」と、つい思ってしまう。

59 名前:その10 投稿日:2002年12月19日(木)23時10分00秒

そとは青空が広がっている。
今、星は見えない。
でも星はたしかに存在し、光を放っている。
そして今夜もその光たちが夜空を賑わすのだろう。



end


60 名前:流氷 投稿日:2002年12月19日(木)23時10分56秒

以上で『トラフィックライト』終了です。
読んでくれた方、感謝です。
最後は自分でも納得してないんですけど、これが私の全力なので・・・

>43 nanaSi様
こんな駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
がんがってみました。
こんな感じで終わっちまいましたがどうでしょう?

もしまた駄文を書くようなことがあったら、ここに書きます。
なので感想やアドバイスなどございましたら
書き込んでおいてもらえると嬉しいです。
61 名前:名無しです 投稿日:2002年12月20日(金)01時27分31秒
すんごい良かったです^^
これしかいえなくてすみません。

なんだか、続きを読みたいくらいです。
気が向けばシリーズ的にでも短編として書いていただければ嬉しいかなぁーって。

この後も色々な話期待してますんで、頑張ってください。
62 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月21日(土)17時47分02秒
お疲れ様です。
面白い話だったのでもっと読みたかったですね。
続編、次回作待ってます。
63 名前:nanaSi 投稿日:2002年12月22日(日)00時40分47秒
おつかれさまでした。
とても面白かったですよ。

続編読みたいな〜とかってみたり(w
次回作も期待してます。
64 名前:流氷 投稿日:2002年12月25日(水)18時21分15秒

新しいやつ書いてみたので登場しました。
まず、レスです。

>61 名無しです様
ありがとうございます。イヤイヤなんか照れちゃいますね。
『トラフィックライト』の続きは検討してみます。
果たして今の私に続きを書き出してまとめる力があるのでしょうか(w

>62 名無し読者様
面白いだなんて、恐縮です。
今回はちょっと違う感じの話ですが楽しんでいただけると幸いです。

>63 nanaSi様
いつもいつも、ありがとうございます。
期待に応えられるよう、精進いたします。

65 名前:流氷 投稿日:2002年12月25日(水)18時22分05秒

今回は矢口さん視点で、吉澤さんと保田さんしか出てきません。
アンリアルものです。矢口さんがOLという設定です。

季節もので、クリスマスまでに完成させたかったのですが間に合いませんでした。
時期はずれになっちゃいますが、その辺はどうかご勘弁ください。
前回同様、つたない駄文ですがお付き合いいただけると光栄です。

題名は『幸福論』です。

66 名前:あと1ヶ月 投稿日:2002年12月25日(水)18時23分14秒

セミの鳴き声が響いていた八月。
三ヶ月が過ぎただけ。
なのにもうセミの鳴き声は、思い出すのでさえ難しい。

街に響くのはセミの鳴き声ではなく、鐘の音。
赤と白の装飾は一ヶ月も先の誕生日を祝っている。

吐く息は白く、道行く人も足早なのに、どこか幸せそうで。
まるでコートの中に暖かい幸福を隠しているみたいだった。

そんなショーウィンドウに照らされた街道を私は静かに通り過ぎた。

67 名前:あと1ヶ月 投稿日:2002年12月25日(水)18時23分51秒

もう数百メートルで自宅に着く。
その行く手を阻んでいるのがこの坂道。
帰り道に上り坂があるというのはつらい。
疲れが波のように押し寄せる。

こうして遠目から見たマンションはとても立派だ。
だが実際、家賃を少し無理して借りているあの部屋は不便なことが多かった。
この坂道を含めて。

68 名前:あと1ヶ月 投稿日:2002年12月25日(水)18時24分23秒

301号室にたどり着き、開ける度にきしむ不思議なドアに手をかける。
部屋に足を踏み入れると、湯気が私を包んだ。

「ただいま」
かすれた私の声。たぶん外の冷たい風のせいだ。私は十一月の寒さを恨んだ。
「あ、真理さん。」
途端に顔に温かさが宿る。
「おかえりなさい。ちょうど今できたとこなんですよ。」
そういうとよっすぃーはエプロンで手を拭いた。

決して料理が上手ではない彼女。
でもこうして平日の夜は、遅くなる私の帰りをおいしい香りで出迎えてくれる。

69 名前:あと1ヶ月 投稿日:2002年12月25日(水)18時24分55秒

今夜はシチューらしい。
ミルクのまろやかな匂いが部屋中を覆う。

ほくほくのジャガイモ。
少し歪な形のニンジン。
そして体の芯まで温めてくれるスープ。
牛乳は嫌いだけど、よっすぃーの作ってくれるシチューは大好きだ。

70 名前:あと1ヶ月 投稿日:2002年12月25日(水)18時25分30秒

食事が終わったあとの宙ぶらりんな時間。
私はこの時間が好きだ。
よっすぃーと他愛もないことを話して、わけもなく頬を寄せて。

それから二人、毛布に包まってテレビとかを見て。
最近この曲にはまってて、とか言ってCDを聞いたり。
よっすぃーの温もりを肌で感じる時間。

まるでマッチ売りの少女が思い描いた幻の様な時間。

71 名前:あと1ヶ月 投稿日:2002年12月25日(水)18時26分01秒

◇ ◇ ◇

その夜は眠れなかった。

夜の静けさが部屋に漂っていた。
隣を見るとよっすぃーが寝息をたてている。
時計の秒針だけが耳に届く。

クリスマスまで一ヶ月。
今夜は忘れることのできない日になるだろう。

静かな空気が孤独感を誘う。
よっすぃーの寝顔を見ると胸が苦しくなった。
刻まれる針の音がカウントダウンの様だった。

・・・あと一ヶ月。



72 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月30日(月)22時10分27秒
>>流氷さま
いいところでつづきますねw
更新待ってます

差し支えなければ書きたいテーマとか教えてください
勝手な要望とか控えたいのでw
73 名前:あと20日 投稿日:2003年01月16日(木)14時31分19秒

今日もまた、コピー機と格闘していた。
あまりに単純な作業があくびを誘う。

書類だらけの机を見て、ふと学生時代を思い出す。
ただ眠るための机。
先生の目をごまかすために積み上げられた教科書。
あの頃の机が今ここにあったらな、と心に懐かしい風が通り過ぎる。

そもそも私はこの仕事が好きじゃない。
仕事に生きがいを感じれる人に憧れる。
正直暮らしていくため、そのために仕事をしているというのが本音だ。
でもきっとそういう人の方が多いのだろう。
仕事が楽しい人っていうのは滅多にいないのだ。
そう自分に言い聞かせまたパソコンと格闘をはじめる。

74 名前:あと20日 投稿日:2003年01月16日(木)14時32分05秒

昼休みになると人が群がる場所を避け、人気のない自販機の前に立つ。
少ない選択肢の中から紅茶花伝を選ぶ。

「お昼、一緒しない?」
振り返るを圭ちゃんが立っていた。

いつも圭ちゃんとお昼を食べる休憩室みたいな所で今日も弁当をひろげる。
景色がよくないせいかここには誰も来ない。
だからゆっくり圭ちゃんと話ができる。

75 名前:あと20日 投稿日:2003年01月16日(木)14時32分36秒

保田圭と聞けばこの会社の人間は大体知っている。
女の人でこんなに頑張っているのは圭ちゃんくらいだろう。
圭ちゃんと私は同期だった。

課が違うから仕事で一緒になることはないけど、よく遊んだ。
おいしいお店を見つければ一緒に食事をして。
カラオケに二人で一日粘ったこともあった。

76 名前:あと20日 投稿日:2003年01月16日(木)14時33分27秒

「あーあー、今年もシングルベルが鳴り響くわ〜。」
その声はあまりに哀愁がこもってて、つい笑ってしまった。
「なあに笑ってんのよ。まさか彼氏でもできたんじゃないでしょうね。」
「そんなわけないでしょ。」

圭ちゃんは、私とよっすぃーのことを知らない。
よっすぃーはただのルームメイトってことになってる。
圭ちゃんならわかってくれるかもしれない。
でもよっすぃーとも仲良くしてくれているから、変に気を使わせたくもなかった。

77 名前:あと20日 投稿日:2003年01月16日(木)14時34分58秒

「イブの夜はどう過ごすのよ。」
「家かな。」
「じゃああの同居人と聖夜をともにするわけ。」
「そうなるね。」
「ふ〜ん。」
「そういう圭ちゃんは?」
「男と過ごすに決まってるじゃない。」
「は?でも圭ちゃん、彼氏いないじゃん。」
「バカねー。これから作るのよ。だってまだ二十日あるのよ。」
そういえば去年もこんな展開だった気がする。
二十五日は圭ちゃんにこの話題をふってはダメだな、と心に誓う。

「じゃあイブは吉澤さんとせいぜいケーキでもつついてなさい。」
「はいはい。わかりましたよー。」
「あー、プレゼントの交換とかもすんの?」
プレゼント。考えもしなかった。
そうだ。せっかくのクリスマスなんだ。

沈んだ私の心の中に、淡い期待が浮かび上がった。


78 名前:あと2週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時36分06秒

七時にセットされた目覚まし時計より十分だけ早く起きるのが私の日課。
よっすぃーを起こさないようにベットからでる。

トーストを焼いて。
コップにオレンジジュースを注いで。
絵に描いたような朝のワンシーンの中、彼女は目を覚ます。

朝はしっかり余裕をもって。
これは私とよっすぃーの数少ない約束の一つ。
急いでたりすると些細なことでももめてしまう。
そんなことですれ違いを起こしたくはない。
だから二人でちょっと眠いのを我慢する。

穏やかな朝の時間は終わりを告げ、今日も会社へと行かなくてはならない。

79 名前:あと2週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時36分59秒

「これでよし。」
鍵を掛け終わった彼女が呟く。
アルバイトのために朝私と一緒に家をでるよっすぃー。
なぜか戸締りは彼女の担当だった。

よっすぃーより一歩先に坂道を下り始めた。

ちょっと疲れていた。
自然に溜息がこぼれてしまっていた。
だから余計に帰りに上らなければならない坂に嫌気が差していた。

80 名前:あと2週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時37分41秒

ちょうど桜の木に差し掛かった時だった。

「えっ!?うわっ、わわわわわー。」

はじめは何が起きたのかわからなかった。
坂をものすごい勢いで下っていた。
よっすぃーが後ろから押しているのだ。
慌てて悲鳴をあげる私をみて楽しんでいるに違いない。

81 名前:あと2週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時38分12秒

桜が散りはじめた頃。
桜の花びらが風の行方を示していた頃だった。

初めてよっすぃーが私の家に泊まった次の日の朝。
あの時もこんなふうによっすぃーは私を押しながらすごい勢いでこの坂を下ったっけ。

桜は花を落とし、葉を落とし、今ではこれから降る雪への準備をしている。

82 名前:あと2週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時38分46秒

坂を下りおわった私たちは、ゼエゼエと息を切らしていた。
息を切らしながらも、悪戯っ子のように笑うよっすぃー。
そんな彼女の横で私は涙をこらえるのに必死だった。



83 名前:あと10日 投稿日:2003年01月16日(木)14時39分44秒

真夜中に目が覚めた。
手に汗をかいていた。
とても怖い夢を見ていたような気がする。
その夢はもう思い出せないのだけれど、心の中に何ともいえない空虚感が漂う。

もう一度寝なおそうと思っても、なかなか寝つけない。
隣で眠るよっすぃーを起こさないように、そっと彼女の手を握った。
すると彼女の手の冷たさに一瞬驚かされる。

そして彼女と出会ったばかりの頃の出来事が頭の中でリフレインする。

84 名前:あと10日 投稿日:2003年01月16日(木)14時40分16秒

私とよっすぃーとの出会いは、春と呼ぶにはまだ早すぎる頃。
雪がとけて間もない頃だった。

正確に言うとそれは私が初めて彼女の存在を知った時で。
よっすぃーはそのずっと前から私のことを知っていたのだと言う。

私は月に一度の割引の日には確実に映画を見るほどの映画好きで。
よっすぃーはよく行く映画館で働いていた。
きっと「よく来る人だな」とでも思っていたのだろう。

いつものように映画が終わった時。
私は泣いてしまい、人がいなくなるのを席で待っている時だった。
「大丈夫ですか」とよっすぃーは声をかけてきた。
その時、恋が始まった。

85 名前:あと10日 投稿日:2003年01月16日(木)14時40分51秒

初めてよっすぃーが私の家にきた日。
私はよっすぃーに「冷たいね」と言った。
それは素振りとかじゃなくて本当に体温が低いという意味だった。
抱きしめた肩も、重ねた唇も、信じられないくらい冷たかった。

「でしょ」と何故か誇らしげに返答してきた彼女は「肌も白いんです」と続けた。
相槌を打ちながらも、言っている意味を理解できなかった私。
すると「だから雪なんです」と確信めいた口調で彼女は言った。

「冬が好きな真理さんが雪がとけても寂しくないようにあたしがやってきたんです。」

確かに付き合いだしたばかりの私への言葉としてはなかなかカッコイイのかもしれない。
でもあまりに歯の浮くセリフで私は思わず笑ってしまった。

86 名前:あと10日 投稿日:2003年01月16日(木)14時41分28秒

今もあの頃と変わらず、冷たいよっすぃーの手。
その手を握り締めながら思う。
――ねえ、よっすぃー。
――よっすぃーは雪の代わりに私のもとへやってきたの?
――だから雪が降る頃に私のもとから去ってしまうの。
やりきれない思いが葛藤する。



87 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時42分14秒

アルバムを開いた。大きくてかなりのページがあるアルバム。
これはよっすぃーが買ってきたものだった。

いまどきアルバムなんてあまり見かけない。
でもよっすぃーは写真を撮るのが好きだった。
好きというか、むしろ趣味。かなりの値のするカメラまで持ってる。

どこかへ遊びに行く時には必ずそのカメラを持っていった。
時には時間を忘れるくらい夢中で撮っていることもある。
被写体はいつも私。照れる私などお構いなしに。
写真を撮ってる時のよっすぃーは生き生きしていた。

アルバムの中には楽しそうにはしゃぐ私達が写っていた。

もうこのアルバムに新しい写真が綴られることはないのかもしれない。

88 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時42分47秒

クリスマスまで残り一ヶ月のあの日。

私は外回りをしていた。
その途中よっすぃーを発見した。
彼女を街中で見かけることがそれまではなかった。
昼はバイトをしているよっすぃーだけど詳しいことはわからない。

89 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時43分24秒

同棲をしている分、待ち合わせたりすることは滅多にない。
まして約束もなしに出会うなんて本当に珍しいことだ。
だから、ただ彼女を見つけただけ。
でもそれはジグソーパズルのピースを見つけたみたいで、胸が高鳴った。

声をかけようとした。
でもその足取りはどこかへ向かっているようで、ついついあとを追ってしまった。

探偵気分の私。
見つからないように尾行する。
これだけの人通りがあるのだから探すほうが大変だろうけど。

90 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時44分00秒

よっすぃーが立ち止まったのは小さな病院の前。
個人でやっている普通の住宅とさほど違いのないような病院。
そのなかに彼女は入っていった。

胸騒ぎがした。
今朝だって体調が悪いとは言っていなかった。
今だって普通に歩いていた。
なにかある。
私はよっすぃーに見つからないようにその病院の裏へと周った。

91 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時44分33秒

裏庭の門は開いていた。
明らかに不法侵入。
でも今のこの胸のざわめきを止めることはできなかった。

壁越しでは声は聞こえない。
すると脇に小さな窓がある。
普通の人なら入れるわけがない。
この時ばかりは自分の身長に感謝した。

92 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時45分04秒

「・・・・・でしょうね。」
「それで?」
いつになく真剣なよっすぃーの声。
診察室の会話を盗み聞き。

「驚くことに腫瘍の進行は徐々に遅くなっています。」
「でも治りはしないんでしょう。」
場を包む沈黙。
緊張で胸が張り裂けそうだった。

93 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時45分39秒

「ご両親は本当にいらっしゃらないんですね。」
「いることはいますよ。でももう何年もあってません。あたしですらどこにいるかわからないし。」
「そうですか。でははっきり申し上げましょう。もってあと一ヵ月半です。」
「・・・・・わかりました。」
「本当に入院しない気ですか。手術すればもう少しどうにかなるかもしれませんよ。」
「いえ、春に宣告されてから覚悟はしていましたから。」

あまりにも静かだった。
あまりに淡々としていた。

涙がこぼれた。
でもはじめそれがなんだかわからなかった。
目から溢れてくるものは私の意思とは裏腹にどんどんこぼれていった。

94 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時46分14秒

あれから三週間。
ずっと嘘だと思いつづけていた私。
でも隠し持っていた錠剤と日に日に悪くなる彼女の顔色だけがリアルだった。

彼女は私のまえから消えてしまう。
そしてもう会うことすらできない。

そう、だって彼女は死んでしまうのだから。

だから最高の、そして最後のプレゼントをしようと心に決めた。
でも今の彼女のためになるものなんてあるのだろうか。
――これから全てを失う彼女に必要なものなんて・・・

95 名前:あと1週間 投稿日:2003年01月16日(木)14時46分44秒

毎日のように通うデパート。
でも結局いいプレゼントなんて見つからない。見つかるわけがない。
焦りと苛立ちだけが私に圧し掛かる。

息苦しくなって逃げてきた屋上。
街に光るネオンが滲んで見える。

願いなど叶うわけもない、と言いたげな雲に覆われて星一つ見えない夜空を、私は睨んだ。



96 名前:あと3日 投稿日:2003年01月16日(木)14時47分26秒

「うんと、たとえば、ですよ。」
「うん。」
「もしサンタクロースが実在するとしたら、今年は何を頼みます?」

なんてヘタな例え話だろう。
きっとよっすぃーも私に贈るプレゼントのことで悩んでいるのだろう。
――よっすぃーの最後の贈り物は私が受け取るのか。

「よっすぃーの笑顔が欲しいかな。」
「なっなに言ってんのー、もー、やだなー、真理さんらしくないですよ。」
・・・らしくないか。そうかもしれない。
よっすぃーは冗談にとったけど、それが今の私の本当の願いだった。
いつまでも、いつまでも、その笑顔が側にあって欲しい。
それが私の唯一の願い。

97 名前:あと3日 投稿日:2003年01月16日(木)14時47分58秒

「それから、もしも、ですよ。」
よっすぃーは例え話が多い。
たとえば、とか、もしも、とかは彼女の口癖とも言える。
だから彼女との会話はどこか現実味に欠けて不思議な気分になる。

「うん。もしも?」
「もしも明日死んじゃうとしたら今日は何をしますか?」

その言葉は私の心を貫いた。
突き刺さった言葉のせいで私の口から言葉が出ない。
このまま黙ってしまったら不自然だ。
何か答えなくては。

98 名前:あと3日 投稿日:2003年01月16日(木)14時48分31秒

「えー、そうだな。
おいしいものを食べて欲しい物を買って見たい映画を見て、悔いを残さない様にする。」
「そんなに無理ですよー。」
そういうと彼女は笑った。
私も胸の内を悟られないように彼女のあとにつられて笑った。
そして彼女はポツリと呟く。

「・・・無理ですよ、悔いを残さないなんて。」

それが彼女の本音なのだ。
死が迫ってきて、納得なんて到底できないのだ。

それっきり彼女との会話は途切れた。

99 名前:あと3日 投稿日:2003年01月16日(木)14時49分14秒

その日、圭ちゃんに聞いてみる。
朝よっすぃーがしてきた質問を。

「明日死ぬとしたら?うーん、今日一日だけでしょ。」
こういう質問に圭ちゃんは弱い。
すごく悩んでいる。

その間に私はちょっとしたことに気づいた。
この質問の答えは、大きく分けて二つしかない。
いつもと変わらなく過ごすか、何か特別なことをするか。
そんな予想を立てていたのに、圭ちゃんの答えはどちらともいえなかった。

「みんなにさよならを言うかな。」
「え?」
「いや、だからさ、いきなりいなくなったらみんな驚くじゃん。」
「うん。」
「だから、ちゃんと別れのあいさつがしたいな、って思ったの。」
その答えはなんとも圭ちゃんらしかった。

100 名前:あと6時間 投稿日:2003年01月16日(木)14時49分56秒

街がイルミネーションに彩られる。
今日は誕生日の前夜祭。
その意味など忘れているかのように幸せそうな恋人達。

時計が六時を刻んだ。
今夜は少し早めに仕事が終わった。

よっすぃーと過ごせる最後のクリスマス。
本当なら会社なんて休んでしまいたかった。
でも普段と何にも変わらず振舞う彼女に合わせて、何も変わらないクリスマスを過ごすことにした。

101 名前:あと6時間 投稿日:2003年01月16日(木)14時50分29秒

片手にクリスマスケーキ。片手にバック。
そのバックの中にはよっすぃーへのプレゼントが入っている。

いつもより寒い帰り道。
よっすぃーがいなくなってしまう寂しさ。
それは暗闇のように私の心の中で広がっていた。
でも今を大切に一瞬一瞬をよっすぃーと楽しもうとする気持ちは心の中で光となっていた。
いつもは嫌な坂道も力いっぱい駆け上がった。

102 名前:あと6時間 投稿日:2003年01月16日(木)14時51分02秒

301号室のドアを開く。
すると部屋の中は真っ暗で電気が消えている。

――まさかよっすぃーに何かあったんじゃ。
どうしようもない不安が脳裏をよぎる。
病状が悪化して倒れたとしても何の不思議もない。
今まで元気だったこと自体、奇跡的なことなんだ。

心臓が高鳴る。頭が真っ白になる。

「メリークリスマス。」
クラッカーが弾ける。
振り返るとそこにはよっすぃーがいた。

よっすぃーがスイッチを押すと部屋中に施されたクリスマスの飾りが赤や緑に光った。
さらに電気をつけると大きなツリーが目に入る。
家具の配置まで変えられ、部屋中にたくさんの飾り付けが行なわれている。

驚く私を満面の笑みで見つめる彼女に私は抱きついた。

103 名前:あと6時間 投稿日:2003年01月16日(木)14時51分32秒

食卓にはたくさんのごちそうが並んだ。
私の買ってきたケーキもその一角をしめる。
よっすぃーの料理はおいしかった。
一口一口が温かかった。

食事が大体終わった頃。
よっすぃーがきりだした。
「実は・・・プレゼントがあるんでーす。」
そういって彼女は思い切り拍手して立ち上がった。

そのまま本棚まで歩き、あの分厚いアルバムを取り出した。
私達二人の思い出の写真がはられているアルバム。
それがプレゼントなのだと彼女は言う。
「ただし今開けちゃダメですよ。なんたって魔法がかかってますからね。」

きっと何か新しい写真でも付け足されているのだろう。
そのアルバムは楽しみにとっておくことにした。

104 名前:あと6時間 投稿日:2003年01月16日(木)14時52分04秒

「じゃあ、わたしからも」
そういって私は部屋をプレゼントで埋め尽くした。
私のプレゼント。それはキャンドル。
よっすぃーは前からキャンドルに凝っていたから。
結局悩みに悩んだけど、納得できるものは見つからなかった。

今この夜を過ごすためだけと思って買ったプレゼント。
一緒にいられる時間が最高のプレゼント。それが私の結論。
そんな思いは彼女に届いたのだろうか。

105 名前:あと6時間 投稿日:2003年01月16日(木)14時52分42秒

時間は残酷にも過ぎ去っていった。
このまま二人で過ごす夜が永遠に続けばいいのに。
何度も心でそう願う。

窓の外では雪が降ってきた。



106 名前:あと、もう… 投稿日:2003年01月16日(木)14時54分17秒

いつものように時計のアラームより早く目覚める。
違和感を感じ起き上がると、よっすぃーがいなかった。

トイレにでもいったのだろうかと思い、部屋をみわたす。
すると昨夜のクリスマスの飾りが全て片付けられていた。
それどころかよっすぃーの物がなくなっている。
よっすぃーが使っていた棚も、よっすぃーのコンポも。
部屋中を探してみるけど、よっすぃーの物は全て跡形もない。

107 名前:あと、もう… 投稿日:2003年01月16日(木)14時54分48秒

私は悟った。
よっすぃーは行ってしまったんだ。
もうここに戻ってくることはないんだ。
きのうのパーティが彼女の別れの挨拶の代わりだったんだ、と。

ふとベットに視線を戻すと、枕もとにあのアルバムが置かれている。
よっすぃーの言葉を思い出す。
「明日になったら開いてください。」

108 名前:あと、もう… 投稿日:2003年01月16日(木)14時55分20秒

おもむろにアルバムを開く。
するとそこには、私の写真が貼られていた。
いつ撮ったのだろうというくらい、たくさんの私の写真。
それは今まで私の見たことのないものばかりだった。
しかしページが進むにつれ、今まであったよっすぃーと一緒の写真がないことに気づく。
ついに最後のページまで進むとそこに手紙がはさまれていた。

手紙は私の目を涙でいっぱいにさせた。
そこには死を宣告され、気づいた私への気持ちと踏ん切り。
そしてたくさんの思い出が綴られていた。
最後には、こう締められている。
『真理さんは、あたしのことなんか早く忘れて、いい恋をしてくださいね。』

――残酷すぎるよ、よっすぃー。
私は声をあげて泣いた。

たまらず外へ飛び出す。
すると坂にはよっすぃーの足跡が残っていた。

109 名前:あと、もう… 投稿日:2003年01月16日(木)14時55分52秒

この雪も、冬が終わればとけてなくなる。
まるで最初からなかったかのように。
夏になったら思い出すことすらできないだろう。

よっすぃーはそんな雪のように私の前から消えてしまった。
私の心の中の彼女への思いもとけてなくなる日が来るのだろうか。
でも、雪が降るたびに思い出す。
あれほどよっすぃーを好きだったことを。

――さよなら、よっすぃー。

涙は頬を伝い、足跡の上に落ち、ほんの少しの雪をとかした。



110 名前:流氷 投稿日:2003年01月16日(木)14時57分05秒

以上です。
今更クリスマスかよ!と自らツッこんでおく(w

かなり間があいてしまいましたがいちおう完結に辿り着きました。
次まではかなり間があいてしまうと思います。
充電期間を経てまたなにか書けたらいいなと思ってます。

>名無し読者様
レス遅れてしまって申し訳ありませんでした。
テーマというより読んで何かしら感じていただけたらそれだけで幸いです。
次回からはテーマをあらかじめ書いておきます。
というかテーマを決めて書きたいと思いますw

111 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月16日(木)19時15分34秒
泣けた…・゚。(ノд`)。゚・ 切ないッス。
112 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月23日(木)23時57分14秒
レスありがとうございます
そして一気に完結おつかれさま

感想はまだかけそーにありませんwずっと書き込もうと思ってるんですが
また改めて




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