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八人の冒険者達
- 1 名前:作者 投稿日:2002年12月27日(金)15時58分23秒
- 元のネタが一応あります。
登場人物は、計八人。
特に主人公は、やっぱりこの八人。
一人に絞れば吉澤。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2002年12月27日(金)16時10分34秒
絵に描いたように青々した空を白い何かが、ビュン!と横切った。
続いて、ビュン!ビュン!
追いかけていく赤いものがある。
追われている白い物体の肌はつるつるで、おそらく金属製だろう。
日の光にまぶしく照り輝き、全体に比べて異様に長い腕が卵らしきものを数個、
大事そうに包み込んでいる。
一方、追いかけているのは寸胴型の赤い物体。
一体ではなく、何体かで編隊を組み、腕から手榴弾(グレネード)を
次々に発射してくる。
白い物体は左右に攻撃をかわすが、襲ってくる敵の数が多い分、
すべてをかわすことはできない。
手の甲に一発当たった拍子に、抱えていた卵の一つが腕からこぼれた。
白い物体もそれに気付き、卵を回収しようと落下を試みるが、
追っ手の攻撃をかわしながらの回収は不可能と知り、
落ちていく卵を無念そうに見つめながら、ふたたび上昇を開始した。
卵の落ちていく先には、鬱蒼と広がる黒い森があった。
- 3 名前:八人の冒険者達 投稿日:2002年12月27日(金)16時12分09秒
第一章 漂着
- 4 名前:1 あの夏 投稿日:2002年12月27日(金)16時18分02秒
「大丈夫?」
と、吉澤ひとみは、おでこに解熱用のシートをぺたんと貼って、
ベットの中で悪寒に震えている、妹の希美に聞いた。
希美は、精一杯の笑顔で
「うん。」
と答えた。
「そっか。」
と肯きはしたものの、ひとみは心の中で舌打ちをした。
風邪の徴候は昨日からあった。
それには気付かず、今日のキャンプの買出しに希美をつきあわせた。
変だな、とは思ってた。
でも、風邪とは思わなかった。
- 5 名前:1 あの夏 投稿日:2002年12月27日(金)16時25分32秒
昨日の朝、テレビを見ていた時の事だ。
テレビはこのところの世界の異常気象を報じていた。
真夏なのに、アメリカで雪が降ったり、国によって様々だった。
テレビの気象予報士は、環境破壊のせいだろうと言っていた。
だか、希美は
「違うれす。」
「えっ?」
ピザを食べていたひとみは不思議そうな顔で希美を見た。
希美は、ブラウン管の何も映ってないところを一心に見つめていた。
- 6 名前:1 あの夏 投稿日:2002年12月27日(金)16時35分15秒
「デジ・・・モン。」
希美は聞き慣れない言葉を呟いた。
「デジモン?何、それ?」
ひとみはきょとんとした顔で聞いた。
希美は、くりっとした瞳をブラウン管からひとみに移し、
「お姉ちゃんには見えないの?」
と聞き返してきた。
「見えない、って・・・・。」
ひとみは、じっくりとテレビの映像を見た。
「何も見えないよ。」
「そうれすか・・・。ならいいれす。気にしないで。」
希美は八重歯を見せて笑いまたテレビを見た。
その横顔が、ひとみにはなんだか寂しそうに見えた。
たぶん、あのときから熱があったんだ、と今になってひとみは考える。
あの時熱を診て、希美を休ませていれば、
引き始めで風邪を治せたかもしれない。
希美だって、キャンプを楽しみにしていたのに・・・。
- 7 名前:作者 投稿日:2002年12月27日(金)16時40分09秒
- まずはここまで。
元ネタ知ってる人、いると思いますが。
- 8 名前:読み人 投稿日:2002年12月28日(土)01時48分36秒
- デジモンですか〜(w
しかも8人ということは初期ですね。
楽しみです。
- 9 名前:1 あの夏 投稿日:2002年12月28日(土)14時16分50秒
―――
出発を待つバスの前で、キャンプの行く地域の子供たちは
それぞれのグループで集まってぺちゃくちゃといろいろなお喋りをしていた。
だが、市井紗耶香はどのグループのも属していない。
紗耶香が孤独なわけではない。
現に、何人もの知り合いが、
紗耶香を見つけるなり、親密そうに声をかけてきた。
紗耶香のそばに、黒目がちの小さめな女の子が立っていた。
紗耶香に声をかけるものはいても、その女の子に声をかける者はおらず、
その女の子も、自分から誰かに手を振るわけでもない。
ただ黙って、にこにこ笑顔を振りまきながら紗耶香のそばにくっついていた。
それもそのはず、女の子はこの地域の子供ではなく誰とも面識がなかったのだ。
紗耶香の親の離婚で今は、離ればなれに暮らしている妹―加護亜依。
引率の藤山さんの許可を得て、特別にこのキャンプに参加していたのだ。
亜依自身は心配していないのだが、亜依が他の人と上手くやれるかどうか、
紗耶香としては、気が気でなかった。
連れてこないほうがよかったのかな、とさえ思った。
- 10 名前:1 あの夏 投稿日:2002年12月28日(土)14時40分07秒
- 夏休みの始める前、亜依は、紗耶香と父親の家に泊まりにきた。
そのとき、カレンダーの八月一日の赤い丸を見つけた。
父親が、地域でやるキャンプだ、と教えると亜依も行きたいと言い出した。
父親もしまったと思ったに違いない。
そのために別れた妻に連絡し、許可をとる面倒が増えたのだから。
もっとも、「困った、困った。」と言いながらも
それほど困ってるようには見えなかったのだが。
キャンプの前日、つまり昨日、紗耶香は亜依を家まで迎えに行った。
「紗耶香も遠慮なんかせんで、いつでも遊びに来ていいんやで。」と
亜依のリュックにお菓子をぎゅうぎゅう詰め込みながら
関西出身の母親は、関西弁で紗耶香に話し掛けた。
「そうだね。」と紗耶香は言った。
「そうやでぇ。」と母親は笑いながら答えたが、その笑いはどこか儚げで、
紗耶香が遊びに来てくれるとは最初から思ってはいなかった。
「亜依、あんまりお姉ちゃんに迷惑をかけちゃあかんで。」
準備が済んで、玄関口まで見送った。
まるで、他人に子供を預けるような言い方だ。
「いいじゃん。姉妹なんだし。」とぽつりと紗耶香が言った。
「おかん、行ってくる〜。」母親の影響で微妙な関西弁を話す亜依は
昔と変わらなかった。
- 11 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2002年12月28日(土)14時58分02秒
矢口真里は、バスの移動中、友達とおしゃべりをしていて
窓の外の景色の移り変わりには何の興味も感心もなかった。
だから、どうやってこのキャンプ場まで来たのかさっぱりわからなかった。
「班分けは今朝渡したプリント通り。リーダーは、名前の入った腕章が目印だ。
後は、リーダーの指示に従って。以上。」
マイクなしでも藤山先生の声は聞こえてくる。
真里は、今朝配れらた自分のプリントを見た。
そこには、「安倍班(リーダー・安倍なつみ 高三)と書かれていた。
真里は、ほっとした。
なぜなら、安倍なつみは、真里の知り合だからだ。
きょろきょろと周りを見渡して、なつみの姿を捜した。
あっ。
なつみは、非常食、と書かれたかばんを肩にぶら下げていた。
リーダーに選ばれた責任感からか、顔が少しこわばって見えた。
となりにいた友達が真里の肩をつついて「あれ、見て。」と言いながら
バスから降りようとしていた女の子を指差した。
その子は、真里も知ってる。
- 12 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2002年12月28日(土)15時14分01秒
- あまり話した事はないが、同じ学年の石川梨華。
友達が「見て。」と言ったのは彼女が持っていた携帯用のノートパソコン。
「キャンプにまで持ってくることないのにねー。」と
言いながら友達は冷やかすように笑っていた。
しかし、真里は笑わなかった。
特に笑う理由が見つからなかっただけであるが。
―――
「おはよ、真希。あのさー」と、カラのバケツを両手にさげて給水所にむかう
後藤真希にすれ違い様話し掛けたのは、ときどき一緒にサッカーをする友達。
「何?」
と真希が聞き返すと
「よっすぃー見なかった?」
よっすぃーというのは、吉澤ひとみのあだ名である。
「知らなーい。」と真希はそっけなくこたえた。
「班が違うのに知るわけないでしょ。」と付け加えて。
「そっかぁ。」
友達は何かぶつぶつ言いながらどこかに言ってしまった。
サッカーをしているときのひとみと真希の息の合ったツートップは
二人でサインをテレパシーで飛ばし合ってるのだと
勘違いしているのに違いない。
- 13 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2002年12月28日(土)15時33分52秒
- 給水所につくと、真希は水道の水を二つのバケツに注ぎだした。
真希は水がいっぱいになったバケツを両手に持つと、
肩が抜けそうになるほどバケツは重たかった。
本来ならそれは男子の仕事で、女子はもっと楽な仕事をしてもいいのだが
真希は逆にそういうのが苦手だった。
日常でもスカートをはくことは少なく、
自分が女子である事を半ば意識して拒否しているようだった。
男子がよくやるサッカーをひとみを誘ってやりはじめたのもそのせいだ。
少し歩いていると、ひとみがベンチに寝っ転がってを見つけた。
「よっすぃー、何やってるの?」
ひとみはそのままの姿勢で、顔だけ真希に向けた。
「別にぃ。」とだるそうな声で投げやりに答えた。
真希は、ひとみがサボっていることがわかった。
「ねぇ、ののちゃん、来なかったね。」
自分がずっと気になっていたことを聞いてみた。
希美がキャンプを楽しみにしていた事を本人の口から聞いていた。
「うん。風邪ひいちゃって。」
真希は、心配になった。
「残念だね・・・。」
「うん。」と答えたひとみの目の前を何か白いものがゆっくりと落ちてきた。
信じられない事だったが、それは雪。
「ごっちん、雪。」とひとみが言う頃にはとっくに真希も気付いていた。
ひとみの背後で大粒の雪の風邪が乱舞していた。
「みんなのとこに、戻ろうっ!」
真希、ひとみにむかって言った。
- 14 名前:作者 投稿日:2002年12月28日(土)15時39分19秒
- そろそろ主な登場人物でも。
吉澤、市井、後藤、矢口、石川、安倍、加護、辻です。
それから訂正。
>13 真希、ひとみにむかって言った。
真希は、ひとみにむかって言った。
すいません。
>読み人様
知ってるんですかぁ。
初期、です。
個人的には、02が好きです。
これから頑張ります。
- 15 名前:読み人 投稿日:2002年12月28日(土)17時46分50秒
- 更新乙です。
デジモンたちは同じなのかな?
オリジナルなのかな?
今後の展開期待です。
- 16 名前:読み人 投稿日:2002年12月28日(土)17時49分09秒
- 更新乙です。
デジモン入れると登場人物がやたらと多そうですけど、
がんがってください。
実は、初期はあまり見てないので、展開がいまいち分からなかったり(w;
- 17 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2003年01月02日(木)15時11分48秒
―――
「信じられない。」
木の匂いがするほこらの中で、石川梨華は、誰もいないのに一人で呟いた。
外では、季節はずれの雪が降っている。
「異常気象のせいかなぁ?」
ほこらの中は、何もない。
ここからしばらくは出られないと考えた梨華は、
昨日あまり睡眠できなかったため、昼寝をしようと思った。
その時だった。
ほこらの扉がばーんと開いて頭に雪を少しのせた二人の少女が入ってきた。
梨華は驚き、扉のほうを向いた。
「ごめんね。」
二人のうち、あきらかに年上の少女が謝った。
紗耶香である。
「雪がやむまで、ここにいていいかな?」
紗耶香はまた話し出した。
「えと、いいですけど・・・。」
梨華は、梨華の特徴のアニメ声で答えた。
「ありがと。」
そう言うと紗耶香は亜依の頭や服についた雪を手ではらい落とした。
- 18 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2003年01月02日(木)15時37分34秒
- 雪はまだ降りやむ気配がなく、続けて何人かの人たちが入ってきた。
リーダーの腕章をつけた安倍なつみ。
梨華とは同じクラスの矢口真里。
後藤真希。
そして、吉澤ひとみ。
このとき、誰一人として、ここに集まった七人で
長い長い冒険をしていくことになろうとは、想像もしなかった。
―――
吹雪はやんだ。
ほこらをでた七人は、真夏の空とは不釣合いの見渡す限りの
銀世界にとまどいを隠せなかった。
「雪や〜!」
亜依は降り積もった雪の中に走って行き、
手のひらで、雪をすくい丸めだした。
「おねぇ、雪合戦できるで。」
「そうだね。」
かわいい妹を保護者のような顔で見守る紗耶香。
「どうなってるわけぇ?」
と紗耶香の横でひとみがぶすっと言う。
誰に向けられたものでもなく、思ったことがすぐに
口に出るひとみのいつもの癖だ。
「なぁ、あれってオーロラってゆーやつちゃうん?」
雪だるまを作り始めた亜依が、その作業を中断させて上空を指差した。
みんな、空を見上げた。
そこには、シャボン玉のように次々と光の色を変えてゆく、透き通った巨大な
カーテンがその裾をゆらゆらと翻していた。
「でも、日本でオーロラが見れるなんて・・・。」
信じられるものではなかったが、その神秘的な景色に目を奪われた。
- 19 名前:作者 投稿日:2003年01月02日(木)15時42分52秒
- 新年、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがいします。
>読み人様
デジモンは次回登場予定です。
登場人物多いですよねぇ。
時間が経ったら、また紹介するつもりです。
アニメとは違うところもありますが。
- 20 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2003年01月07日(火)12時47分04秒
その時だった。
そのオーロラの中にきらっと何かが輝いた。
一つではなく、複数。
目の錯覚だと思い、ひとみはもう一度見てみるが光はまだあった。
光り続けている。
そしてそれは、ひとみたちの方に向かってきた。
「何か飛んでくる!」
真希と紗耶香も気付いた。
「何あれ?隕石?」
動体視力のよくない人でも見えるくらい、それは近づいていた。
全部で七つの光。
「危ないっ。」
ひとみが叫ぶと同時に全員が伏せた。
紗耶香が妹の亜依をかばった。
パーン!!
雪柱があがった。
幸い、怪我はなかった。
「びっくりしたぁ。」
真里が起きあがって言った。
しかし、その顔は近くにいるなつみのように青ざめてはいない。
逆にアクシデントを楽しんでいる様子だった。
「何があったのかな?」
梨華が好奇心を抑えられず、雪柱があがった地点に走った。
梨華は、落下物に手を伸ばそうとした。
しかし、次の瞬間、
「きゃっ。」
と手を引っ込めた。
- 21 名前:2 オーロラのむこうに 投稿日:2003年01月07日(火)13時45分17秒
- 柔らかい光を放つ何かがふわふわと浮かんできたからである。
全部で七つ。
その七つの光のかたまりは、七人のそれぞれの手の中に飛びこんできた。
「これは・・・。」
ポケベルに似た液晶画面のある何かの装置。
その表面を光の粒子が、靄のようにオブラートしていた。
突然、七つの物体がピピピピピ、と鳴り始めた。
その瞬間、上空にあったオーロラが突風に
あおられたカーテンのように揺れ始めた。
オーロラの揺れは激しさを増し、このままだと今にも天から
引きはがされて、飛ばされるのではと思われた。
空一面がくわっと眩しく輝いた。
と、同時にあり得ないことが起こった。
巨大な水面が見えたのだ。
ここは、山なのに。
水面はぐるりと裏返るように垂直にそそり立った。
轟音とともに周囲の空気がその中へ吸い込まれていく。
下ではない。
地面と平行などこかへ。
「「「「「「「うわあぁぁぁ」」」」」」」
逆らえない力に囚われて七人はその中に吸い込まれた。
- 22 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月07日(火)13時58分28秒
彼らは長い長い時を、ただパートナーとめぐり逢うためだけに待っていた。
かつては地表をおおっていた氷河も今はもうすっかり溶け、
裸の大地にぽつりぽつりと樹木の芽が吹き出、だんだんと
生い茂ってゆくのを、彼らは遠い過去の記憶として覚えている。
彼らは誰からも教えられず言葉を知っていた。
自分の名前や、誰を待っているか、まで。
だが、それが何のためなのかは知らない。
もっともそれ(生きる目的)は人間だって知らない。
神のみぞ知る、ものであろう。
とにかく彼らは待っていた。
パートナーは空から降ってくるという確信があり、
来る日も来る日も、パートナーの名前を呼んだ。
ある者は「ひとみー」と。
ある者は「真希ぃ」と。
「紗耶香ー」「亜依ー」「真里ー」「梨華はーん」「なつみー」・・・。
- 23 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月07日(火)14時07分05秒
- ある日、「亜依」を待つものが上空にオーロラを見つけた。
「みんな、見て!」
全員で空を見上げた。
運命の時が来たことを本能的に悟った彼らは、ぐっとかたずをのんだ。
中には感激のあまりに涙を流している者もいた。
空一面が一瞬ぱっと輝き、続いて遠い悲鳴が聞こえた。
そして、ひとかたまりになって落ちてくる七人の姿がはっきり見えた。
「ひとみ、ひとみ!」
「紗耶香、紗耶香っ!」
彼らは嬉しさのあまり、それぞれ待ちこがれたパートナーの名前を連呼しながら
ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねた。
そしてひとかたまりだった七人が空中で七つに分かれたとき、
彼らはパートナーの着地場所を予想し、ばらばらになった。
- 24 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月07日(火)14時21分47秒
- ―――
ドーン!
鈍い音をたてて紗耶香は地面に投げ出された。
「いたっ。」
反射的に叫んだものの実際はそれほど痛くなかった。
「あれ?」
紗耶香は頭の上を見た。
上空の高いところからくるくると回転しながら
落下してきたと思ったが、あれは錯覚だったのだろうか。
確か、真下に島のようなものが見えたのだが・・・・・。
紗耶香は不思議に思いながら立ち上がった。
周囲を見渡すと、ここは林の中。
キャンプ場のどこかかと思ったが、キャンプ場の空気とは違う、
湿気を帯びたじめじめした熱気に違和感を覚えた。
「亜依?」
妹の名を呼んだ。
だが、返事がない。
「亜依?」
同じ言葉を方向を変えて繰り返す。
どこからも亜依の声は返ってこない。
亜依にもしものことがあったら・・・。
「亜依?亜依っ!」
紗耶香は諦めきれず亜依の名を呼びつづけていた。
昔の別れぎわの母親の顔が頭をよぎった。
不安に押しつぶされそうだった。
「さ、やか?」
恥じらいを含んだ声が聞こえた。
「誰?」
紗耶香は振り返った。
人の姿は見えなかったが、変わりに頭にツノをはやした栗色の
ぬいぐるみが地面に落ちていた。
どういうしかけか、その目尻に波打つようなシワができ、
「紗耶香、だよね?」
声にあわせてぬいぐるみの口が生き物のように動いた。
「は・・・?」
紗耶香は何がなんだかわからなかったが、少なくともぬいぐるみが
喋ってるとは思わなかった。
- 25 名前:作者 投稿日:2003年01月07日(火)14時22分50秒
- とりあえずここまで。
- 26 名前:読み人 投稿日:2003年01月08日(水)02時16分43秒
- 更新おつかれです。
とうとうデジモン登場ですね。
今後の展開が楽しみ(w
- 27 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月15日(水)14時00分19秒
- 「ねぇ、誰?出て来てよ。」
きょろきょろまわりを見渡した。
すると、ぬいぐるみが自分の存在を主張するかのように、飛び跳ねた。
「あたしだよ。紗耶香。ツノモン!紗耶香のこと、ずーっと待ってたんだよ!」
紗耶香は、開いた口がふさがらない。頭がパニック状態に陥っていた。
「さっき、亜依を探してたんだね?それなら、あたしが案内する!
きっとトコモンが亜依のこと、見つけてるはずだから。」
と、ツノモンは言った。
―――
頭に大きな青い花飾りをつけたピンク色の奇妙な生き物を見て、
そして、それが言葉を発したのを聞いて、真希は動けずにいた。
「・・・・。」
悲鳴をあげようかと思った。
しかし、へたに悲鳴をあげてこの生き物を興奮させたらと思うと、
それもためらわれた。
「私ね―」と再び生き物が言葉を発した。
「真希のこと、ずっと待ってたから、会えて嬉しいのっ!」
生き物が足なのか触手なのか、頭の下に生えた無数の突起物を
くねくね動かして近づいてきたのに真希は後ずさった。
「来ないでぇ!」
真希は、さすがに近づかれるのは怖かった。
大きな声を出した。
生き物はその言葉にしゅん、となり、
「真希・・・私のこと、嫌い?」
と悲しそうに聞いた。
「嫌いとかじゃなくてぇ、君はなんなの?」
一番気になっていた事を聞いてみた。
「ピョコモン、ってさっき言ったよ。」
きょとん、とした顔でその生き物、ピョコモンは言う。
- 28 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月15日(水)14時13分09秒
- 「だーかーらー!そのピョコモンって何!?」
真希は少々切れ気味に言う。
「ピョコモンはピョコモン。真希が真希のように。」
上目遣いに真希を見上げるピョコモンの目は、
まるで親の愛情に飢えた幼子のようだった。
それは、愛おしくもあり同時に、不愉快でもあった。
真希の中に眠る、しかし真希本人は否定したい母性本能を、刺激させたせいだ。
「はぁ。」とため息をついて、真希は諦めたように言った。
「わかったよ。とりあえず、君がピョコモンってことはね。」
どうやら、そのくもりのない水色の瞳は、
真希から警戒心だけは取り除いたようである。
―――
木に茂った葉っぱの一枚をさわって梨華はまた新しい不思議を発見した。
「これ、本物の葉っぱじゃない。」
本物ではないのは葉っぱだけではない。
砂利は色違いの角砂糖をつぶしたもの。
黒ずんだ地面は固形のカレールーだった。
- 29 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月15日(水)14時25分37秒
- 「もう一度聞くけど、ここってファイル島って言うんでしょ?」
と、梨華はさっきから自分にまとわりつく精巧なクリーチャーに質問した。
「はいな。」
おそらく中に高性能の送受信機が内蔵されているのだろう、モチモンと名乗る
そのクリーチャーは胸を張って自信たっぷりに答えた。
「それにしても、よくできたテーマパークだね。」
独り言のように呟いた。
「梨華はん、テーマパークってなんでっか?」
「知らないの?」
「はい。」
きっと、オープンはずっと先のことで声を送ってる主
(関西人であることは明らか)はとぼけているのだろう―と梨華は考えた。
「それより梨華はん。みんな待ってるさかい、みんなのところへ行きましょ。」
モチモンのぶよぶよした体はさわると予想通り、ぶよぶよしていた。
かなり手はこんであるが、これだけの規模の人工森林を
作れる人たちならすぐにできるだろう。
「わかったよ。じゃあ案内して。」
「はいな!」
クリーチャーは嬉しそうに地面をずるずると移動した。
きっとあのぶよぶよなひだの下に
車輪が隠されているんだ、と梨華はひそかに推理した。
- 30 名前:作者 投稿日:2003年01月15日(水)14時27分20秒
- 更新終了。
>読み人様
本格的に登場してきました。
だんだん増えていきます。
- 31 名前:読み人 投稿日:2003年01月16日(木)04時26分18秒
- 更新乙です。
ファーストはしっかり見てないので分からないのですが、
これってオリジナルのデジモンですか?
- 32 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月20日(月)15時57分04秒
- ―――
なつみがこれまで生きてきた中で
これほど非現実的な事はなかったといっていい。
空を浮かぶ(といってもほんの一メートルぐらい)タツノオトシゴとアザラシの
中間のような奇怪な生物が、「なつみー。」とやんちゃな声を
あげながら追っかけてくるのである。
「待ってよぅ、なつみ〜!」
この奇妙な生き物は日本語を話した。
なつみの頭の中ではすでに答えが出ていた―怪物?
「そんなことってあるわけ〜!?」
夢を見てるのであるか?
しかし、出会ってすぐあの生物のヒレらしきものが
なつみの頬を撫でた時感じた。
あのぬめっとした感触、そしてその生き物が
口から吐いた生臭い潮の匂いは決して夢ではない。
やっぱり、現実?
「何で逃げるのさ〜。」
背後からなつみの常識をくつがえす非常識の生き物が追いかけてくる。
なつみは必死に逃げるだけだ。
それにしても、これほど全力疾走したのはなつみにとって生まれて初めてだ。
「頼むからどっかに行ってよ〜!なっちに構うのはやめて〜!」
なつみの叫んだ声はみっともないくらい裏返っていた。
- 33 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月20日(月)16時18分37秒
- ―――
「亜依!」
ツノモンに案内され、森の中を進んでいく途中、紗耶香は亜依と再会した。
「おねぇっ!」
亜依は嬉しそうに走って来た。
紗耶香は亜依の顔に涙の痕跡を探したが、見つけられなかった。
てっきり自分とはぐれて、心細さ故に泣いているのかと思ったのに。
亜依は腕に貯金箱? いや、蚊取り豚?―のような
不思議な形をしたものを大切に抱いていた。
亜依は紗耶香の視線に気付いて、
「紹介する。トコモンや。」
と、おそらく置物であろう<それ>を紗耶香の目の前に突き出した。
「こんにちはー、紗耶香ぁ。」
置物ではなかった。紗耶香をここまで案内してくれた
ツノモンと同じ、言葉を喋る生き物だ。
「トコモンは加護たちを待ってたんやって。」と亜依は紗耶香に説明した。
紗耶香は亜依の環境的応能力に驚かずにはいられなかった。
現実には存在しない生き物を抵抗なく受け入れている。
亜依は、昔から『サンタクロースなんておらへんもん!』
などと言って、サンタクロースを信じてはいなかった。
しかし、それはきっと、照れ隠しだったのだ、と紗耶香は考えた。
きっと心のどこかでは信じていたのかもしれない。
なぜなら今目の前にいる不思議な生き物を簡単に受け入れていたのだから。
紗耶香は、亜依の無邪気さを嬉しく思った。
親の離婚という厳しい現実も亜依の精神を傷つけることはなかったらしい。
「トコモンの仲間がいるんやって。コロモンと、タネモンとプカモンと
ピョコモンとモチモンとツノモン!」
亜依は得意げに言った。
全員の名前が言えたことが嬉しかったのだろうか。
- 34 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月20日(月)16時26分13秒
- 「ツノモンはあたし。」
緊張した表情でツノモンは言う。
「あ、そうなんや。加護亜依や。よろしくなっ!」
亜依はちょこんとお辞儀をした。
「みんなのところに行こうよ!」
ツノモンがぴょんぴょん飛び跳ねながら先を急ぐ。
その後を腕にトコモンを抱えた亜依が走って追いかけた。
紗耶香はこの状況が理解できずにいた。
納得いく答えがあるとすれば、ここは夢の中で紗耶香は亜依と
一緒に現実を忘れさせてくれるファンタジーを楽しんでいるのだ。
もしそうなら、しばらくこの夢とつきあってもるのもいいよね。
紗耶香は、照れ笑いを浮かべ、亜依の後を追いかけた。
- 35 名前:作者 投稿日:2003年01月20日(月)16時31分02秒
- 紗耶香と亜依は、離婚して名字が違います。
>読み人様
オリジナルじゃありません。
ただ、性別が変わりました。
性別っていってもデジモンには性別はありませんが。
- 36 名前:作者 投稿日:2003年01月20日(月)16時32分09秒
- 紗耶香と亜依は、離婚して名字が違います。
>読み人様
オリジナルじゃありません。
ただ、性別が変わりました。
性別っていってもデジモンには性別はありませんが。
- 37 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月24日(金)12時39分08秒
- ―――
倒れて気を失ったひとみの手の中でオーロラの中から現れたポケベルに似た
装置がピコピコと点滅をくり返していた。
「ん…。」
その点滅のせいではなかったが、ひとみはようやく目を覚ました。
目の前にピンク色のラグビーボールのような物があり、その表面に
落書きされたようにしか見えない赤い瞳がパチンとまばたきをした。
そして、小さな牙の生えた大きな口が動き、
「ひとみ、ひとみ!」
と言葉を喋ったのにひとみは驚いた。
「えっ!な、なになに!?」
相手の丸い目が猫のように目を細めた。
そして、ひとみに飛びついてくる。
突然の事にひとみは、それを手ではねのけ、へっぴり腰で立ち上がった。
「何で吉澤の名前知ってるわけ?あんた、一体何者!?」
興奮のあまりに次々と質問が飛び出す。
ピンク色のラグビーボールは、
「あたし、コロモンだよっ!」と溌剌とした声で名乗り、もう一度ひとみに
飛びつこうとした。だが、またしてもひとみはするりとかわした。
その時、近くの草むらがガサガサと音をたてた。
茂みの中から、顔見知りの梨華が顔を出した。
「梨華ちゃんっ!」
梨華の足元に軟体動物のようなピンク色の生き物が動いているのを見て、
「そこにもいるの!?何、この変なやつらは!」
「デジモンだって、主張してるの。」
梨華は自分でも困惑してるという表情を浮かべた。
- 38 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月24日(金)12時55分17秒
- 「ここ、ファイル島っていうところなんだって。よっすぃー、聞いた事ある?」
「ファイル、島?」
ひとみは、頭の中で考えてみたが、聞いた事はなかった。
「大きな山だね。」
ひとみは左手に見える尖った山を指差した。
「あれは、ムゲンマウンテンって言うんや。」梨華のパートナー、モチモンが
自信たっぷりに答えた。聞いたことのない山の名前に
ひとみと梨華は顔を見合わせた。
そうこうしているうちに、ひとみと梨華の所に続々と、
ほこらに一緒にいた者たちが集まってきた。
それぞれ、姿形の著しく異なるパートナーを連れて。
真希とピョコモン。
紗耶香とツノモン。
亜依とトコモン。
そして
「きゃあぁぁぁー!」
と悲鳴をあげて現れたのはなつみだった。
なつみはほこらで知り合った顔ぶれが集まっているのに一瞬ほっとしたが、
そこにもいた怪物を見て、固まってしまった。
「おいら、プカモン。よろしくね、なつみ。」タツノオトシゴとアザラシの
中間のような怪物は嬉しそうになつみに飛びついた。
なつみは、きっとこの世の終わりを見たような顔をしていたのだろう。
「これで全員だっけ?」と紗耶香がここにいる人に聞いた。
「あ、やぐち!矢口がいな〜い!」となつみは声をあげた。
- 39 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月24日(金)13時10分44秒
- ―――
真里の質問にタネモンは困っていた。
「どこから来たって聞かれても、最初からここにいたんだけど…。」
しかし、真里は信じてくれない。
「そんなことないでしょ。どこの星から来たの?」
真里は今までにUFOが実在すると主張した事はない。
しかし、突然目の前に現れたこの奇妙な生き物を説明しろと言われたら、
宇宙から来たエイリアン以外に思いつかない。
「ずっとここにいて待ってたの、真里のこと…。」
と、申し訳なさそうに小さな手足をもじもじ動かしながら真里に言った。
どういう事?
真里は考えた。
ここはもしかして地球じゃないの?
UFOに捕まえられてここに連れてこられたのかも。
「そんなのやだぁー!」真里は、甲高い声で叫んだ。
タネモンは、無性に悲しくなった。
それを表現するのはわんわん泣き喚く事だった。
「そんなこと言われても、私ー…。」
- 40 名前:3 謎の生き物 投稿日:2003年01月24日(金)13時20分53秒
- 突然相手が泣き出したことに真里は困惑した。
実はタネモンは心優しい宇宙人で地球人に友好を求めていただけかもしれない。
このことで地球とタネモンの星の間で戦争が始まるとは思わなかったが、
友好関係を築く事は必要なのではないか。
「あー、泣かないで。」
真里は子供をあやすようにタネモンに謝った。
「わかったよ。タネモンの言う通り。ヤグチ達、友達になれるよ。」
真里は笑顔でタネモンに握手の手を差し出した。
この時、真里の肩に「平和親善大使」のタスキがかかっていても、
何の違和感もなかっただろう。
「うん。」
タネモンは泣きやんだが、真里が差し出した手にどう対応すれば
いいのかわからなかった。少し考えて頭の葉っぱで
真里の手にスキンシップをとってみる。
地球とタネモンの星の記念すべきファーストコンタクトは成功した―と
思われたとき、突然真里とタネモンの頭上で、
ブウウゥゥーンというけたたましい音がした。
UFOだ、と真里は思った。
- 41 名前:作者 投稿日:2003年01月24日(金)13時21分42秒
- 更新終了です。
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