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作者フリー 短編用スレ 3集目
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月31日(火)03時35分12秒
- このスレッドは作者フリーの短編用スレッドです。
どなたが書かれてもかまいませんが、以下の注意事項を守ってください。
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・レス数の上限は特にありませんが、100レスを超えるような作品の場合、
森板(短編専用)に新スレッドを立てることをお薦めします。
なお、レス数の下限はありません。
・できるだけ、名前欄には『タイトル』または『ハンドルネーム』を入れるようにしてください。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
次の人に終了したことを明示してください。
・後書き等を書く場合は、1スレに収めてください。
・感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ。
前スレ 作者フリー短編用スレ二集目
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- 2 名前:EYES FOR ME 投稿日:2003年01月03日(金)00時24分13秒
- いつもほんの少し後ろから感じる―――――
「そこまでっ、ほら小川遅れてるよ」
ピシャリと言い放たれた台詞、横手に掲げられた腕と共に音楽が中断される。
前のめりになり落ちた前髪を伝って、茶褐色の床に汗が落ちる。
5分間の休憩が通知された後も膝をついたまま彼女はその場に留まっている。
………俯いたその表情は見えない。
でも恐らくそこに浮かぶのはもどかしさとやり場のないやりきれなさの入り混
じった苦悩の色。
きっと彼女は自分のせいで練習が中断されたのだと思っているのだろうけれど、
実際の所、体が悲鳴をあげはじめたのはみんなおんなじで。
そんなことすら気付いていない。
ようやく息が整った思った矢先にすぐさま再会が告げられる。
「小川、一回高橋のバックで動き見ながら一緒に踊ってみて。高橋、ポジション
着いて!」
「あ、は、はいっ」
「ボーっとしない。ほら高橋がしっかりしないとついてかないんだから」
次々と飛んでくる指示に振向くことすら出来ない。
- 3 名前:EYES FOR ME 投稿日:2003年01月03日(金)00時25分42秒
- しっかり。
そう、しっかり、しなきゃ。
同期だけど、ライバル。
友達だけど、競争相手。
仲間だけど、拭えない対抗意識。
ちょっと歌が上手いだとか、昔やったなんとやらでダンスにキレがあるなんて言わ
れた所で、差なんてほんとにほんとの少しで。
立ち止まってたらすぐにでも抜かされる。
だから、走りつづけなきゃ行けない。
ずっと、憧れてたんだもの。
こんな風にステージで、踊って、歌って。
負けたく、ないよ。
けれど。
体中の筋肉と神経を総動員してビートを刻む。
タン、タン
タン、タタン
ここで右に、一端肘を曲げて、そのまま…ターン。止まらずにもう一度、ターン。
右足を軸に体の重心を崩さずに。
無数に大気が、躍動する。そのなかにきっと彼女のものも一つ。
私と、彼女と。
- 4 名前:EYES FOR ME 投稿日:2003年01月03日(金)00時27分10秒
- 「駄目、小川、頭がぶれてる。紺野も、リズムに合ってない」
再び中断される音楽と、断絶された大気の流れ。
振り返った先に。
「……ぁ…ハア……ッ」
「あさ美ちゃんっ」
胸を押さえて蹲るあさ美ちゃんに駆け寄っていく彼女。
「大丈夫っ?」
「うん、へ…いき」
細い彼女の指先が肩口に滑って、そこにあさ美ちゃんの手がゆっくりと重ねられて。
私はそれと気付かれないように出来るだけ、そうできるだけ自然に言葉を紡ぐ。
「休憩、…入れてもらう?」
いつのまにか止められている音楽と私達に集まる視線。
「がんば…」
「頑張れるよねっ、ほらここ踏ん張りどころ!それに……」
よいしょとあさ美ちゃんを支えて立ち上がった彼女の視線が私を射ぬく。
「ごめん、愛ちゃん。後ろ気にしないで。ちゃんと見て、ついてくからさ」
「えっ?」
次の瞬間はいつもの柔らかい笑みであさ美ちゃんに向かって笑いかけ。
彼女もそれにこたえる。
チクリ。
小さな痛みが胸を走る。
- 5 名前:EYES FOR ME 投稿日:2003年01月03日(金)00時28分35秒
- 「いいのっ?再開するよ、さっきの所から」
「はい!!」
それがなんなのか、考える間も無く私は向き直る。
「ほら、いい?小川、高橋よく見て。紺野もっ」
「はいっ」
息切れしながらもはっきりとした彼女の声、フロアに響く音楽と、大気。
背中に感じる彼女の視線。
ああ、
(ちゃんと見て、ついてくから)
一緒に、同じ視点で歩くこと。
支えて支えられて歩くこと。
それもいいけど。
けど、私は。
いつもほんの少し後ろから感じるその視線が好きなの。
様々な感情の入り混じったその視線。
だから私は、走りつづける。
- 6 名前:EYES FOR ME 投稿日:2003年01月03日(金)00時33分28秒
- FIN
超短いですが。。五期では小川さんと紺野さんを書いて多のですが
突発的に高橋さん書きたくなったので。。
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月03日(金)02時46分01秒
- いい!!なんかよかったぁ!!!w
こーゆうの好きっす。
- 8 名前:ななしぃ〜 投稿日:2003年01月03日(金)14時04分44秒
- 書かしてもらいます。
たかこんで・・・・
- 9 名前:気がついてる。 投稿日:2003年01月03日(金)14時07分08秒
- いつか、気がついてたんだ。
この気持ちに
でも、どこかで気づいてはいけないと思っている自分がいて
この気持ちに気づかないように目を伏せている・・・
「愛ちゃん!」
その言葉が聞こえるといつも反応してしまう。
びくっと体が動いて目であなたを探してしまう。
- 10 名前:気がついてる。 投稿日:2003年01月03日(金)14時12分54秒
- 「あのさ〜・・・・」
まこっちゃんと楽しそうに話しているのをみて胸がズキッとするの。
笑顔をみせて、楽しそうにしてるだけなのに。
なんでよ。
何でこんな想いするのよ。
こんなにも痛いの、胸が。
だから、もう恋はしないと決めたはずなのに・・・・
気がついてる私。
この想いに。
アナタを愛してる気持ちに。
ねぇ、この痛い気持ちは恋してるんだよね?
アナタだから恋をしたんだよね?
あなただからだよ。
あなただから・・・・
優しいあなただから。
笑顔が綺麗なあなただから。
何もかもが綺麗なあなただからだよ?
今気がついてる。
私の気持ち。
いつか・・・この気持ちあなたの胸に届くかな?
胸の中に溶けていかないかな?
この想い・・・・
- 11 名前:気がついてる。 投稿日:2003年01月03日(金)14時13分32秒
- 終わり。
〜あとがき〜
え〜・・・お目汚しすいませんでした><
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月03日(金)15時23分42秒
- よかったよー。
また書いて欲しいかもw
高橋視点
- 13 名前:ななしぃ〜 投稿日:2003年01月03日(金)17時36分40秒
- ≫12 名無し読者様
どうもありがとうございます。
ということで、ちょーしにのって高橋視点で。。。
- 14 名前:気がついてる。 投稿日:2003年01月03日(金)17時42分15秒
- 気がついてた。
アナタの気持ち。
それから、私の気持ち。
それを知ったのはいつかのクリスマス。
その日も仕事が入っていた。
2時間の休憩時間があって皆は街に出かけていったんだ。
私はその日、少ししんどくて、楽屋に入った時だった。
アナタがいたんだ。
一人ぼっちで、涙を流して・・・
それから・・・私の名前をかすれた小さな呟きのような声で呼んでた。
それから、アナタの気持ち分かったの。
それから・・・心の中で小さく芽生えたアナタへの想いも気がついたの・・・
- 15 名前:気がついてる。 投稿日:2003年01月03日(金)17時46分52秒
- いつもそばにいて、友達感覚だったから
この気持ち気がついたときは、私の心の中戸惑いでいっぱいだった。
ほんの少しでもアナタのそばに入れる時は幸せでもう、それ以上望まなかった。
でも、幸せはすぐ消えてしまうもの。
「愛ちゃ〜ん!」
私が幸せな時にかぎって私を呼ぶまこっちゃん。
- 16 名前:気がついてる。 投稿日:2003年01月03日(金)17時53分27秒
- 私が誰かと話しているとすごくさびしそうな顔をするあなた。
そんなあなたの顔を見るとすごく胸が痛いの。
あなたを求めてしまうの。
すぐに、抱きしめたくて
すぐに、そばに駆け寄ってあげたくて
不安と意味のわからないモヤモヤが私の心を渦巻く
求めて求めて求めてしまうの。
私は。
ないものばかり求めてしまうの。
「愛してる」
気がついた想い
アナタと私の想い
ねぇ、こんなに求めてこんなに切なくてこんなに幸せなのは
恋だよね?
アナタと私の想い気がついたついでに
あなたにこの想いとどけていいかな?
あなたの心に雪のように積もってゆけばいいな
私の想い・・・・
おわり。
- 17 名前:ななしぃ〜 投稿日:2003年01月03日(金)17時54分26秒
- 〜あとがき〜
すいません。
ちょーしにのって2作品も・・・・
お目汚しすみませんでした。><
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月03日(金)21時37分04秒
- くぁー両想いなのになぁ〜…
高橋視点もよかったれす。
- 19 名前:The noticed thought 投稿日:2003年01月04日(土)16時40分22秒
- いつも通りの学校の帰り道
今日は久しぶりにあの子に会う…
元気にやっているのだろうか?
離れ離れになってしまったけれど
それのお陰であたしは君を好きだったことに気づかされた
いつも一緒に居るのが当たり前
…そうだったから中々気づかなかったんだ。
君がこんなにも大切だったなんて…離したくないなんて
- 20 名前:The noticed thought 投稿日:2003年01月04日(土)16時41分30秒
『君の笑顔は100万ボルト』とか昔誰か言ってた気がするけれど
それは本当だね。
だってね、君の笑顔があたしのすべて。
元気にしてくれる源――…
早く会いたいよ、そして伝えるんだ。
ずーっと秘めてたこの思いを。
ねっ?亜弥ちゃん
end
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月04日(土)16時42分42秒
- ミキアヤ。語りでした。
在り来りな駄文ですいませんでしたm(_ _)m
- 22 名前:I continue considering. 投稿日:2003年01月04日(土)19時40分44秒
…今日は久しぶりにあなたと会う。
すっごく楽しみ、だって――
学校を卒業してからは離れ離れで、ずっとずーっと会いたかった。
…学校は近いのに中々会える時間が合わなくて。
それで今日やっと会える。
ずーっとずーっとアピールしてた。
なのにあなたは中々気付いてくれなくて、
もう駄目かな…?友達止まりかな?って思ってた。
だけど…やっぱり駄目、わたしにはあなたが必要…
いつでもどこでも気付かないうちにあなたのことを考えてる…
もうだめだなぁ…病気だよ、恋っていう名の…
だから勇気を出していつもメールはしているけれど。
『会わない?』って書いて送った。
ドキドキした、何て返ってくるのかなって…――
『駄目』って言われたらどうしよう…って
だけど、だけどね、ちょっぴり期待してたんだ。
あなたも会いたいって言ってくるのを。
…そしたら神様が願いを叶えてくれたのかな…?
あなたも『会いたい』って送ってきてくれた。
嬉しかった。
だから、だからね?今日会ったら言うよ。
―――あなたが大好きだって。
ねぇ?ミキたん
end
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月04日(土)19時43分39秒
- ミキアヤ、視点違いでした…
駄文すまそm(_ _)m
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月04日(土)21時06分40秒
- みきあや(・∀・)イイ!
最近みきあやにハマりつつあります。
みきあや小説増えるといいなぁ。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月04日(土)21時37分34秒
- >>24
ありがとうございますm(_ _)m
増えるといいですよねぇ…ってこれじゃないやつもなんですけどw
また思いついたら書かせて頂きたいと思います。
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月04日(土)21時39分05秒
- 高紺(・∀・)イイ!
もっと増えないかなぁ…
- 27 名前:愛しいあの子。 投稿日:2003年01月04日(土)23時22分35秒
- 「ねえ、ねえ、ミキスケ聴いて聴いて!昨日、テレビで可愛い
女の子見つけちゃった!」
「なになに、なによ、あやっぺ。その女の子あたしより可愛い
女の子?」
「え〜とね、ミキスケより、ず〜と、ず〜と!可愛い子。」
「え〜ェ、マジ〜かよ〜。超ムカツク〜」
「怒んないでェ。え〜とね、ミキスケより少しだけ、可愛い子。」
「え〜、なら良いか〜、ってよくね〜よ。で、名前は。」
「わかんないけど、歌、歌ってる子。いつもオヘソ出してて、
超プリチ〜な、女の子。歌も踊りも上手いの〜。みんな夢中
みたい〜な〜感じ。」
「で、どんな歌なのよ〜」
「ズバッと、Yeah!めっちゃホリディ〜♪。あ!いけない!
この子、あたしだった!」
「ガビョ〜ン!!!!」
- 28 名前:愛しいあの子。 投稿日:2003年01月04日(土)23時23分41秒
- 終わりデス。
- 29 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時34分20秒
後藤真希、17歳。
好きな人がいます。
- 30 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時35分41秒
連休明け、授業をサボり目指すのは体育科職員室。
愛しいあの人のいる場所。
今日この時間、都合のいい事にあの人以外の体育教師は授業か出張。
そんな事とっくに調査済みだ。
この連休中、あの人が顧問をしている部の大会があった。そのせいで…
“忙しいからさ…ちょっとの間、会えない”
…なんて言ってかれこれ二週間はマトモに会ってない。
あたしにしては耐えた方だと思う。うん。
- 31 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時37分30秒
はやる心を抑え、静かにドアを開ける。
少し猫背気味にソファに座り、何やら真剣に読んでいる様子。
む…まさか、またラブレターとか!?
今すぐ怒鳴りたいのをグッとこらえて、ゆっくり近づいて行く。
その人の真後ろに立つと、あたしは思い切り息を吸い込んだ。
「…コラ、吉澤ぁ!!」
- 32 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時38分59秒
その瞬間その人は面白いほど飛び上がって、手にしていたものを床に落とした。
素早く前にまわり込んでそれを拾う。
「なんだ、マンガ本かぁ。」
あたしがそう呟くと、ようやく彼女は反応を示した。
彼女―そう、実はあたしの愛しい人は…女の人だったり。
- 33 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時40分59秒
「んな、な、何して…真…や、後藤さん!」
「もう!二人っきりのときは真希!!」
「真希…わかってるけど今は学校だし…って違くて!
今は授業中!…またサボったな、お前。」
「よしこだってマンガ読んでたじゃんかぁ。」
「うっ…。」
「こないだ圭ちゃんに見つかって怒られてたよねぇ?」
「な、なんでソレを…。」
このちょっとヘタレな人は吉澤ひとみ、教師になりたての23歳。
…あたしの恋人です。
- 34 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時45分57秒
「そんな事より!愛しのハニーに久しぶりに会えたのに、嬉しくないの?」
上目遣いで見つめる。
あたしの親友である梨華ちゃんいわく、必殺の上目遣いらしい。
コレをするとたいがいよしこをオトすことができる…ハズが。
想像とは違ってよしこはやけにマジメな顔。
そして、小さくため息を漏らした。
「…真希、自分のしたいことだけしてればいい、っていう子供の
我が儘は、いつまでも通用しないんだよ。嫌な授業をサボらないで
我慢して受けるのも、大人になるための訓練なんだ。…わかるよね?」
- 35 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時47分53秒
- その言葉で、よしこに会えた嬉しさでのぼせ気味だった
あたしの頭は、一気に冷めた。
―こういう時、嫌ってほど思い知らされる。
あたし達は恋人である前に“教師と生徒”なんだってことを。
よしこはあたしが道を間違えそうなとき、「こっちだよ」と手を差し伸べてくれる。
あたしは…バカで、子供だから、よしこがいないと何にもできない。
よしこが言ってること、わかるよ。
でも…でも…。あたしはね、よしこに会いたかっただけなんだ。
ただ、それだけなんだよ?
「…っく、…ふぇ…。」
やっぱり子供なあたしは、自分の気持ちを上手に伝えることができなくて、
知らない内に泣いてしまっていた。
- 36 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時49分30秒
「ちょ、真希?言い方キツかったかぁ?…泣くなよぉ〜。」
頭をなでる手の優しさに、思わず顔を上げた。
さっきまでの男前な人はどこに…。
眉毛がすっかり八の字になっていて、笑ってしまった。
「へへ…よしこの顔、ちょ〜情けないよ?」
そう言って、ほっぺをプニプにして遊ぶ。
「真希…。」
急にまた男前な顔になったと思ったら…。
気付いた時には、あたしはよしこの腕の中。
あたしは、ずいぶん久しぶりにその腕の温かさを感じた気がした。
- 37 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時57分23秒
「…よしこぉ、寂しかったぞ〜…ばかぁ…。」
「…ん。…ウチも真希に会いたかった。ずっと、ずっと、会いたかった。」
そんな言葉と一緒に首元に顔をうずめられ、なぜかまた少し泣きそうになった。
それがなんだか恥ずかしくて、何とか隠そうと思ったけど…。
そういうことが下手くそなあたし。彼女にはすぐに見つかって。
頭をグチャグチャにされながらバカだなぁ、って言葉。
言い返そうと思ったら…優しいキスが降りてきて、それも叶わなかった。
「今日は、特別だからね?明日からサボらないこと。」
「…はぁい…。」
「よろしい。」
そして、キスがもう一つ。
- 38 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)04時59分05秒
後藤真希、17歳。
好きな人がいます。
上手くいかないことも多いけれど。
なかなか毎日、幸せです。
―END―
- 39 名前:好きな人。 投稿日:2003年01月05日(日)05時03分26秒
某板で吉後駄文を書いてる者です。
リハビリも兼ねてちょっと書かせてもらいました。
最近吉後の作者さん達、元気ないんで頑張りましょう。
(とりあえず自分の駄文を何とかしろ
- 40 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)08時59分25秒
- よしごまいいね!
続編を希望してしまうような設定だ。。。
- 41 名前:モーニングクローン 投稿日:2003年01月05日(日)13時00分06秒
- ここは、UFAの地下の秘密の部屋である。
不況のおり、UFAは窮余の策としてモーニング娘。たちの
細胞を使い、本人そっくりのクローン人間を作り出し、高額
で、レンタルしているのだ。
係「もしもし、なんですって、モーニング娘。全員の
クローンをご希望ですって。娘。を全員集めて、
プライベート・コンサートを開きたい。それは、
素晴らしいですね。それで、お金はいくらかかっても
かまわない。ありがとうございます。しかしですね。」
係の物は、部屋の中を振り返って見る。
「困った事に、今クローンモーニング。は全員揃って
いないんですよ。」
- 42 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)13時50分28秒
わたしは…出会った頃からずーっと、あなたに嘘を吐いています。
「あ!ごめん、もう帰らなきゃ。」
わたしは慌てて席を立つ。すると彼女は、残念そうな笑顔を浮かべた。
「あ…そっか。門限、厳しいんだっけ。梨華ちゃんち。」
「うん…。」
胸が、ちくんと痛む。
タクシーが来て、乗り込む直前に向き合う。
「ごめんね、本当に…」
「ううん。良いんだよ。また、明日も会えるんだし。」
運転手さんから見えないように気をつけて、軽くキス。
「…ひとみちゃん、大好き。」
「ウチも、梨華ちゃん大好きだよ。」
そう言い交わしてから、タクシーに乗り込む。
タクシーが走り出し、ひとみちゃんの姿が見えなくなってから…携帯を取り出し、電話かける。
「もしもし。…完了しました。」
『そう。お疲れ様…と言いたいトコなんだけど、ちょっとマズい事になってる現場があるのよ。』
「…マズい事?」
『そう。小川が失敗しちゃったみたいでね。』
- 43 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)13時51分49秒
- わりこんじゃいました!!ごめんなさい!
モーニングクローンの作者様、続けて下さい!!
- 44 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時40分45秒
- モーニングクローンの作者様が書かれないようですので…申し訳ございませんが、私の方を続けさせて頂きたいと思います。
- 45 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時41分35秒
- わたしは内心でため息をついてから、言葉を発する。」
「了解しました。場所は?」
『新宿よ。…いつもの、あそこ。』
新宿の、いつもの、あそこ。
その言葉が、胸を締め付ける。
「…了解。すぐに向かいます。」
電話を切ってから、運転手さんに行き先の変更を伝え…わたしは軽く目を閉じた。
胸の痛みなんかにかまってる暇はないの。
罪悪感を感じるような心は、とっくの昔に捨てたの。
目を開ければ、もう大丈夫。
わたしは、窓に映る自分の顔を見て安心した。
そう、大丈夫。いつものわたしの顔に戻ってるから。
心があると勘違いしちゃったのは…ひとみちゃんに会った後だから。
演じてる自分を、本当の自分と勘違いしちゃっただけだから。
冷たい目をした、無表情の女。
これが、本当のわたし。
- 46 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時42分30秒
この会社に入って、何年目になるんだろう?
正社員になったのは三年前だけど、バイトの時から考えると…もう七年目になるわね。
ヤバい仕事しか引き受けない『何でも屋』。主な業務は『復讐の代行』。
両親が借金残して自殺して、借金取りから逃げてる所を社長に拾われた。あれからもう、七年にもなるんだ。
月日が経つのは早いわね。
「いらっしゃいませ。」
指定された店に入る。この店は、会社が所有してる…いわば『騙す為の場所』。
そこで、小川が真っ青な顔で待っていた。左頬が腫れている。
「い、石川さんっ!!」
悲鳴に近い小川の声を聞いて、思わず苦笑してしまう。
昔はわたしも、こーだったのよね。失敗して、ターゲットにバレて…殴られる。
「…小川。」
「ごめんなさいっ!!私…私、バレちゃって…!!!」
震える小川を抱きしめて、耳元で優しく囁く。
「落ち着いて。大丈夫。失敗なんてよくある事なの。」
「で、でも…っ!!」
「大丈夫。フォローは会社がしてくれるから。さ、今日はもう帰りましょう。」
「…はい…。」
落ち込み、鼻をぐずぐず言わせてる小川を、待たせておいたタクシーに乗せた。そしてわたしは、店に戻る。
- 47 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時43分17秒
- 「…梨華ちゃんも、育ったねぇ〜。」
そう言うのは、バーテンの安倍さん。
「そりゃー、もう七年もやってますもん。」
「昔は梨華ちゃんも、小川みたいに失敗して泣きながら圭ちゃんを待ってたんだよねぇ〜。懐かしいなぁ。」
わたしにいつものカクテルを差し出しながら、安倍さんはにやっと笑う。
「それが今では、こーやって後輩を迎えに来るんだから。」
「ほっといてください…。」
思い出すと顔から火が出そうだわ…。
なっちさんはしばらくけらけらと笑ってたけど、急に真面目な顔になった。
「…ところでさ。吉澤グループの一人娘。どーなった?」
思わずカクテルを噴出しそうになった。
「ど、どーって…!?」
「…やっぱりね。」
「な、何がやっぱりなんですか!?」
すると安倍さんは、カウンターの向こうで悲しそうな微笑を浮かべた。
「本当に、好きになっちゃったでしょ?」
「…そ、そんな事…ッ!!!」
- 48 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時43分53秒
- 安倍さんの言葉で、いろんなひとみちゃんの表情を思い出してしまった。
微笑むひとみちゃん。はにかんだ顔のひとみちゃん。キスをした直後の、切なそうな顔のひとみちゃん。
胸がきゅんっとなったのを振り払いたくて、頭を振る。
「そんな事、ないですッ!!!恋愛感情なんか抱いてません!!」
「…本当に?」
「ほ、本当ですっ!!!!」
必要以上に声が大きくなってしまって、焦って口を閉じる。
そんなわたしを…安倍さんは心配そうに見つめていた。
今日は、ちょっと飲みすぎた…。
- 49 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時45分06秒
依頼主は、矢口真里さんと言う女性。
吉澤グループの一人娘・吉澤ひとみと付き合っていたのだが…かなりこっぴどくフラれたらしい。
『お金ならいくらでも払う!!だから…だからよっすぃーを、矢口と同じ目にあわせてやって!!』
それが、依頼内容。
ひとみちゃんを安倍さんの店に来るように仕掛けて、偶然を装って近付いて…恋人になる。
女性相手にこーゆー仕事をするのは初めてなんだけど、わたしはプロ。
わたしの立てたシナリオ通りに事は進み、今ではひとみちゃんはわたしに夢中。
「…あったま痛〜…。」
昨日はさすがに飲みすぎた…だって安倍さんが変な事言うんだもん。
「わたしがひとみちゃんを、本当に好きに?なるワケないじゃない!」
だって、ひとみちゃんは『騙すべき相手』。
- 50 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時45分42秒
- それに『憎むべき相手』でもある。
お父さんとお母さんが自殺したのは、吉澤グループのせいなんだから!!
だから、矢口真里さんからの依頼が来た時は…わたしから『やりたい!』って言ったくらい。
憎みこそすれ、好きになるなんてありえない。それに相手は女なのよ?好きになんか、なるはずない。
…確かに、整った顔してるわよ。すごく。中性的で…それに、女の子なのにすごく紳士的で。
だけど、わたしにとってそれは『都合が良い』だけ。そんな相手になら、いくらでも『可愛い女』になれるから。
「・・・・・・。」
痛む頭をなんとか持ち上げ、お風呂場に向かう。
寝すぎちゃった。あと三時間で、ひとみちゃんと待ち合わせの時間になっちゃう。
…帰って来たの、朝の九時だったからなぁ…。
- 51 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時46分16秒
「…大丈夫?梨華ちゃん。」
「う、うん…ちょっと、頭痛がするだけだから。大丈夫。」
…仕事が始まれば、集中力でなんとかなるかなー?と思ったんだけど…やっぱ、無理みたい。
だんだん良くなって来てはいるものの、頭はガンガン言ってる。
「でも、そんなに辛いなら電話くれれば良かったのに。」
「…ひとみちゃんに、会いたかったから。」
その言葉に、ひとみちゃんの顔がボッと赤くなる。
フ…ちょろいわ。
「梨華ちゃん…!!」
抱きしめられて、ギクっとする。香水で誤魔化してるけど…さすがにここまで密着したら、酒臭いのバレちゃうかも!
「…あれ?」
「な、なぁに?」
酒臭いのバレた!?
そう思ってヒヤヒヤしてたけど、ひとみちゃんはにっこりと微笑んだ。
「…あたしがあげた香水、使ってくれてるんだね?」
- 52 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時46分55秒
- 「もちろんっ♪」
あーよかった…。
「コレつけてると、ひとみちゃんがいつも側にいてくれるような気がして…最近、いつもつけてるの。」
はにかむ感じでうつむく。するとまた、抱きしめられた。
「梨華ちゃん…。」
耳元で囁かれて、心臓が跳ねた。
…違う。これは、ときめいてるんじゃないの。さっき酒臭いのがバレそうになった時の後遺症。
好きになんか、なるはずがない。親のカタキで…そして、女の敵。
なるはずがないんだから!!
と、そこに。
「…もー見てられないッ!!!!!」
「「へっ?」」
飛び出して来たのは、金髪で小柄な女の子。
…依頼人の、矢口真里さん!?
- 53 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時47分34秒
- 「矢口さん!?」
ひとみちゃんは驚きのあまり叫んだけど、わたしは押しとどめた。だってバレちゃうじゃない。
…てゆーか矢口さん、何なの!?何で出て来るの!?
驚きと疑問の視線を投げかけるわたしに、矢口さんはぼろぼろと涙を流しながら叫んだ。
「あんた、やりすぎ!!なんなのよ、矢口のよっすぃーにべたべたべたべた!!矢口はそこまで頼んでない!!」
「!!?」
な、何のつもりなの矢口真里さん…!!
だけど、ここでバレるワケにはいかない!!まだ、任務は完了してないんだから!!
「あ、あの…どちら様ですか?」
「もーいいってば!!あんたに依頼したのは矢口だけどさぁ!!」
「だから、何の事だか全然…」
矢口真里さんは、わたしの頬をひっぱたいた。
「いいの!!もう!!本当は嘘なの!!よっすぃーにこっぴどくフラれたなんて!!!」
「・・・・・・!?」
- 54 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時48分12秒
- 「た、たしかにフラれたけどさぁ、なんか優しくて…諦めきれなくて、ハラ立っただけなんだよぉ!!
だから矢口、あんたの会社に『復讐してくれ』なんて依頼しちゃったんだよ!!」
「梨…梨華ちゃ…」
泣きじゃくる矢口真里さん。…あー、もう…どーすりゃ良いのよ…。こっちが泣きたいわよ…。
ひとみちゃんはわたしを見てるみたいだけど…わたしは怖くて、ひとみちゃんを見られない。
しょーがない、とため息をつく。
「…そうなの。」
全てを終わらそう。この調子だとお金入って来なさそうだけど。
わたしはひとみちゃんに背を向けた。
「わたしは、矢口真里さんに雇われて…あなたを騙してたの。」
「梨華ちゃ…」
いつも通り。仕事がひとつ終わる。今回は失敗だけど…でも、失敗だって慣れっこ。だって七年もやってるんだもん。
「さようなら。」
そう言い残して、歩き出す。顔は…見られなかった。だからひとみちゃんがどんな顔してるのかは知らない。
…あ、両親の事の恨み言、言うの忘れちゃった。
フル時には絶対言おうって思ってたのに…まぁ、いっか。
とにかく今は、一刻も早くここから離れたかった。…なんでだろ?
- 55 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時48分52秒
安倍さんのお店で、保田さんと会って…全てを話した。会社には既に、報告書を出してある。
「そっか。お疲れ様。」
「いつも通りですよ。」
「…いや、なんか疲れてるよーに見えるからさ。」
「いつも通りです。」
保田さんは黙ってしまった。
わたしは、手元に置かれたお酒をぐいっと飲み干す。
「安倍さーん。おかわりー。」
「はいはい。」
「ちょっとなっち、そんなに飲ませないでよ。」
「いーじゃないですかぁ。カタイ事言わないれくらさいよぉ。」
「もうすでに、呂律がちょっとおかしいわよ!」
安倍さんが苦笑しながら出してくれたカクテルは、淡いピンク色のカクテルだった。
「なっち特製。『ラブラブエンジェル』だべさ。」
そう言ってくれた安倍さんの笑顔は、まるで天使みたいだった。
- 56 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時49分29秒
- 『ラブラブエンジェル』を飲み終えると、わたしは不思議と素直になれた。
「ねえ…安倍さん。」
「ん?何?」
「女の子、好きになった事ありますか?」
安倍さんは、寂しそうな微笑みを浮かべた。
「…あるよ。」
「…そっかぁ。あるんだぁ…安倍さんも。」
涙が流れ始めた。
「…やっぱり、安倍さんの言う通りだったみたいです。…わたし…」
全てを吐き出す思いで、言った。
「ひとみちゃんの事、好きになっちゃってたみたい。」
色んな事情や想いが重なりすぎて、とうとう最後まで素直になれなかった。
安倍さんは全てを解かってるみたいな笑顔で、受け止めてくれた。
それが…なんだか死んだお母さんに会ってるみたいな感じで…また、泣けて来た。
- 57 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時50分15秒
「二日連続二日酔い〜…。も〜胃が死ぬわ、わたし…。」
「だ、大丈夫ですか!?石川さん!!」
出社したわたしに、小川が駆け寄って来る。
「ふふ…大丈夫よ…。小川…。」
「はい?」
「人間って…大人って、学習しない生き物よねぇ〜…。
二日酔いで地獄の苦しみを味わう度、『もう二度と酒なんか飲まない!』って思うのに…」
「また、繰り返しちゃうんですか?」
「フフ…小川も大人になればわかるわよ☆」
「うう〜ん、わかりたくないですね…。」
懸命な娘だこと…。
「とりあえず、冷蔵庫の中にお薬ありました!」
「ありがと〜…。」
小川から受け取った薬を見て思う。
…二日酔いの薬を常備してる会社って一体…。
ま、普通の会社じゃないしね…。
「お、石川。苦しんでるわね。」
「…ええ、まぁ…。」
保田さんにニヤリと笑われて、苦笑を返す。安倍さんと同じく、この人にも全てお見通しなんじゃないかと思う。
実は、二日酔いよりも…胸の痛みの方が苦しい。
- 58 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時50分47秒
- 「…は〜…彼氏作ろう…。」
一刻も早く、ひとみちゃんの事は忘れなきゃ。そうしなきゃわたし、一歩も前に進めない。
「彼氏〜?あんた、男は長続きしないじゃない。」
「…そーなんですよね〜。なんでだろ。尽くすタイプなのにぃ。」
「石川さんの場合、ブリッコの部分が男の人には嫌がられますよねっ!」
「おがわっ!!…痛〜…!!」
叫ぶと、頭に響く。小川はさっさと保田さんの背後に回る。
…ま、良いわ。今のわたしは前向きなの。生意気な後輩の事で、いちいちカリカリなんかしないの。
と、そこに。
「石川〜!!」
社長こと中澤さんに呼ばれた。
…マズい。怒られるのかしら…。
「は、はい〜…」
「なんやオマエ。めっちゃソ○マックくっさいで?」
「…ほっといてください…。」
自分でもわかってるもん…。小川にすら距離とられてたもん…。
「で、何ですか?」
「ああ、客や。」
中澤さんが指した先には…
- 59 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時51分31秒
「ひ…ひとみちゃんッ!!?」
マッハで逃げようとしたんだけど、中澤さんと保田さんに止められた。
「と、止めないでくださいっ!!わたしは逃げます!!遠いお空のお星様になるんですっ!!」
「ええいっ!!ワケわからん事言わんで、とっとと覚悟決めぃっ!!」
「そーよ!逃げてどーなるのよ!!」
「だって〜!!スッピンだし髪ぼさぼさだしソルマッ○臭いし〜!!!」
「やかましいっ!!とっとと行け!!!」
強引に、ひとみちゃんと二人で応接室に閉じ込められてしまった…。
き、きまずい…。
「あの、さ…。」
なんだか遠慮がちなひとみちゃんの声。
…だめ。ときめいたりしちゃ駄目。罵られる覚悟でいなきゃ。
「親父に、聞いた。梨華ちゃんのご両親…ウチのせいで…。」
わたしは目を見開く。
「親父、責任感じてて…梨華ちゃんを引き取りたいって思ってたんだって。
でも、そう思った時には梨華ちゃん、借金取りに追われて行方不明になっちゃってて…。」
「・・・・・・。」
「ようやく見つけ出したと思ったら、なんか変な会社で働いてるし。」
- 60 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時52分08秒
- がばっと顔を上げると…にっこりと笑ったひとみちゃんの顔。
「はぁ!?」
「…ごめん。最初から知ってた。」
わたしはよろめいて、頭を壁にぶつける。
…二日酔いの頭にはものすごいダメージで、わたしはへなへなとうずくまった。
「な、何それ…。」
「いや、その…。」
ひとみちゃんの顔が、ちょっと赤くなる。
「実は、さ…小さい時に梨華ちゃんの写真見た時から、梨華ちゃんの事好きだったんだ。
それで、あの店で出会った時…一目で『あの梨華ちゃんだ』ってわかった。
だから…その、騙されてるフリしてたんだ。あたし。梨華ちゃんに会いたくて。」
うずくまったわたしに手を差し伸べながら、ひとみちゃんは言う。
「…好きなんだ。梨華ちゃんの事、ずっと前から。」
涙が溢れる。
「梨華ちゃんはそーゆー目で、あたしの事見れないかも知れない。…それでも良い。会いたい。
だから…お友達、になってくれないかな?今度は仕事抜きで。」
- 61 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時52分38秒
- わたしは、涙を拭いながらひとみちゃんに言う。
「いいの?友達で。」
「え?」
驚いた顔をしているひとみちゃんの唇を、すっと奪う。
「お友達じゃ、こんな事はできないわよ?」
真っ赤な顔のひとみちゃんに抱きしめられる。そんなひとみちゃんの耳元で、わたしは囁いた。
「わたしも、好き。ひとみちゃんが大好き。
気付いたら、そうなってたの。
わたしは、お友達じゃイヤ。本当の恋人になりたい。」
するとひとみちゃんに、唇を奪われた。
「…そうだね。やっぱりあたしも、友達じゃ嫌だ。」
長い長いキスのあとで、わたし達は見つめ合う。
…わたしはなんだか、とっても満たされた気分になった。
きっとわたし、今まであんまりひとみちゃんをまっすぐ見てなかったのね。
だって…こんな素敵な人をまっすぐ見ちゃったら、すぐに本気で好きになっちゃう。
「愛してるよ、ひとみちゃん。」
「ウチも。愛してるよ、梨華ちゃん。」
そして、またキス。
中澤さんが『いつまでやっとるんじゃー!!』と怒鳴り込んで来るまで、わたしたちは見詰め合ってはキス、を繰り返したのでした♪
〜FIN〜
- 62 名前:騙し屋 投稿日:2003年01月05日(日)14時53分30秒
- ありがとーございました!!
- 63 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)19時48分59秒
- 『好きな人。』を書かれた作者さん、自スレのヒント欲しいです…
- 64 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)20時21分36秒
- >>27
ワラタ
実際そんな会話してそうで萌えw
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)21時33分30秒
- 騙し屋さんナイスです。
なんかおもろかった。
- 66 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)21時39分20秒
- >好きな人。
リアルが好きなんだけどこれ見てアンリアルなよしごまも好きになった。
続きが読みたい・・(w
是非、自スレ教えてほしいです!
- 67 名前:「好きな人。」の作者 投稿日:2003年01月05日(日)22時50分58秒
- >40 名無し読者さん、63 名無し読者さん、66 名無し読者さん
レス、ありがとうございます。
続編のほうですが自分でも書きたいと思っていたので、
時間があればここに載せたいですね。
じ、自スレですか?(汗
…あの…雪の底の方にあるので、お暇でしたら読んでやって下さい。
ただ、内容はまだまだ吉後と呼べるものでは…(あわわわ
短編と違って書くのに時間がかかってしまい申し訳ないです。
- 68 名前:名無し娘。 投稿日:2003年01月06日(月)00時21分31秒
- 「好きな人。」作者様。
続編是非期待です!
学園もの、吉が教師になるだけでこうも新鮮になるとは…脱帽。
- 69 名前:ななしぃ〜 投稿日:2003年01月06日(月)11時19分13秒
- たかこんを・・・
- 70 名前:届け。 投稿日:2003年01月06日(月)11時23分14秒
- ねぇ、何回「好き」って言ったらアナタの心に届く?
私が「好きだよ」って言うたび、にこっと笑って「私も好きだよ、あさ美ちゃん」
って言ってくれる。
嬉しいよ。
嬉しいけど、アナタは私が友達として「好き」って言ってると思ってるでしょ?
違うんだよ。
私は恋愛の「好き」なんだよ。
英語で言うと、アナタが思ってるのは「like」
私が言ってるのは「iove」なんだよ。
- 71 名前:届け。 投稿日:2003年01月06日(月)11時27分44秒
- 何で届かないのかな?
私の想い。
こんなにも想ってるのに
こんなにも「好き」って言ってるのに
こんなに近くにいるのに・・・・
想い届かない時こみあげる寂しさ
この寂しさ感じる時、感情を持って生まれたことが憂鬱に思うよ。
いつかアナタと2人屋上で見た雲のように
アナタにどんどん流されていくキモチ
この想い口に出して伝えないと忘れていってしまいそうで怖いよ
ねぇ、アナタに「好き」って言ってこの気持ち届けられたらそれでいい。
他には何も望まないから
だから・・・・
このキモチ届いて。
あなたの心に。
おわり。
- 72 名前:ななしぃ〜 投稿日:2003年01月06日(月)11時28分40秒
- 〜あとがき〜
え・・と。お目汚しすいませんでした><
何回も書いてますけど・・・。。。
ホントすいませんでした。
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月06日(月)15時40分13秒
- 高紺!!いいっす!w
もっと増えないかなぁ・・・
- 74 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時02分46秒
『いちーちゃん、今終わったんだ。すぐ行くから、待ってて!』
『うん、急がなくていいから気をつけて…』
……ピッ……
…切れた。
ったく…。
2002年がもうすぐ終わろうとしている。
手に持っているケータイの日付を見て、ちょっぴり感傷的になってしまったりして―。
- 75 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時04分43秒
あたしは夕方仕事納めをし、まっすぐ家に帰ってきた。
そしてキッチンにこもって慣れない料理を必死に作って、なんとかテーブルの上を
いっぱい埋め尽くすことができ、ほっと一安心してテレビをつけたら、…いた。
つんくさんと裕ちゃんと、そして後藤。
この生放送が終わったら後藤の仕事も終わりで、まっすぐうちに来ることになって
いた。
今年最後の日、またはあたしの誕生日でもある今日、二人だけで過ごそうって約束
していたんだ。
- 76 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時05分20秒
もう、タクシーに乗ったかな。
めっちゃ運転手を急がせてるんだろうな、きっと。
『運転手さん、はやくー!』なんて言って。
目に浮かぶよ、そんな後藤の姿が。
缶ビールを飲みながら、あたしは後藤を想い、後藤を待つ。
- 77 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時06分18秒
『紅白残念だったね』
『うん、しかたないよ。ソロの実績ないし、ごとーはまだ一人じゃだめだよ』
デビューしてからずっと出場していた紅白。
今年は娘。や松浦、藤本が出るのに、後藤だけだめだった。
落ち込んでるかなって心配になってすぐ電話したら、案外さばさばしてて、
やっぱり後藤だなって思った。
こういうところはあたしなんかよりずっと強かったりするんだ。
一緒に紅白に出たのは…、3年前か。
インタビューで後藤が『紅白は見たことがりません』なんて平然と答えて、
メンバーみんな顔面蒼白になったっけ。
あのころの後藤を思い出すと、笑っちゃうことがいっぱいあるなぁ。
今じゃすっかり独り立ちしてるけど、あの頃は…クスッ
- 78 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時07分01秒
後藤、早く来いよー!
会いたいぞー!
運転手さん、スピードアップしてくださーい!
あれ…、ちょっと酔ってきた…?
- 79 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時07分45秒
- ♪♪♪
ケータイが鳴った、後藤からだ。
『いちーちゃん、もうすぐ着くよ』
『そっか』
『コンビニでなんか買っていくものある?』
『ないない、寄り道しなくていいから』
『そお?』
『早く会いたいからさ、早く来てよ』
『…』
なんでそこで黙るかなぁ…恥ずかしいじゃん。
- 80 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時08分50秒
『ごとー?』
『あっ、ごめん。いちーちゃんがそんなこと言うなんて初めてだからさ、
びっくりしちゃった』
『そうだっけ?』
『そうだよ、うれしい!』
特別の日だから、少しアルコールが回っているから、素直に言葉にできたのかな。
いつだって、会いたいって思ってるのにね。
- 81 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時09分39秒
『今どのへん?』
『もう着くよ、マンションが見えてきた』
ケータイを持ったまま靴をはく。
もう待ちきれない。
エレベーターで下へ降りて外へ駆け出したら、タクシーから後藤が降りる姿が
ちょうど見えた。
- 82 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時10分37秒
「ごとー!」
逸る気持ちを抑えられなくて、近所迷惑も考えず叫んでしまう。
あっ、気がついた。
ケーキらしき箱を抱えた後藤が手を振って走ってくる。
あの笑顔、今日は独り占めできるんだ。
- 83 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時12分18秒
「いちーちゃん!」
腕の中に飛び込んできた後藤をぎゅっと抱きしめて、あたしは今日という日に
感謝する。
初めて後藤と二人だけで過ごす、19歳の誕生日。
〜お・わ・り〜
- 84 名前:キミを待つ 投稿日:2003年01月06日(月)16時14分31秒
誕生日は過ぎちゃってますが、ギリギリセーフ?ということにしてください。
- 85 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月06日(月)19時03分58秒
- いちごまイイ!(・∀・)
とてもよかったっす!
- 86 名前:和尚 投稿日:2003年01月06日(月)22時31分03秒
- 心が暖かくなりました。
ありがとうございました。
- 87 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時21分15秒
憧れてた。モーニング娘。に加入する前、
あの人に、憧れてた。
- 88 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時22分27秒
――― 晴れの日があるからそのうち雨も降る ―――
- 89 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時23分21秒
「加護亜依ってゆうの。奈良出身」
「かご……ちゃん?あいちゃん?」
「あだ名?あいぼんって呼ばれてたけど」
「ふぅん、あたしは、のの。辻希美だから、のの」
「…なんで“のの”になるのか、よく分からない」
「あたしもよく分かんない、へへぇ」
初めて、東京に来てできた友達は、ののやった。
意識して関西弁が出ないように振舞っていたのは、自分だけその場で浮きたくなかったから。
『モーニング娘。第3次追加オーディション』
なんとなく、受かりそうな予感はしていた。難しい言葉で言うなら、「漠然とした予感」。
自信があったわけやない、ただ、落ちるとは思ってなかった。
……結局それって、受かる自信があったってことなんやろか。よく分からへん。
- 90 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時24分04秒
モーニング娘。を好きになったのは、「ラブマシーン」がヒットしてから。
ウチの周りにも、そんな子は多かった。
皆で真似っ子するとき、決まって1番上手なのはうちやった。器用なタイプやと自覚してたし
お父さんもお母さんもそう言ってうちのこと、よく褒めててくれてた。
「あいちゃんはうまいなぁ」
「上手やね」
「うん、めっちゃ似てる似てる」
「ねえ、この中で誰が好き?」
アイドルグループの話題になると、必ず誰かが挙げる質問。
当時、現リーダーの飯田さんや副リーダーのおばちゃ…もとい保田さんは、名前どころか
その存在すら朧げにしか記憶に残っていない程度で、
『誰が好き?』なんて聞くのは、暗にあの人の名前を話題に上らせるための手段にしか
過ぎないんやないかと、幼いながらもウチはそう、思ってた。
- 91 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時25分11秒
「後藤真希!」
誰か1人が勢い良く言った途端、「うちもうちも」と後に続く友達一同。
微妙に、そんな芸のない回答で盛り上がる友達を、軽蔑する気持ちが沸くときがあった。
(どうせ、1番目立ってるから好きだってだけのくせに)
その頃、『ゴマキ』なんて呼び名は浸透してへんかった。あの人が嫌がるその名称、
いつから耳にするようになったんやろ。
(すぐ飽きるんや、みんな。ウチは………違う)
ウチは、違う。
けったいやな、なんて自分かて思う。真性阿呆な自己満足。
単に、ウチは独占欲が強かったんや。
今になって思うけど、小学生くらいの年齢ならグループ内で目立つポジションにおるメンバー
に惹かれるのは当然の話やし、たった1人で鮮烈デビューした「後藤真希」に世間が注目
するのも当然やし、それやったら友達がみんなあの人を好きだって言うのも変やない。
- 92 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時26分00秒
「な、ののは……誰が好き?」
「ごとーまき!」
あーほーか。
初めて東京でできた友達も、地元の友達と変わらへんこと言いおって。
内心苦々しく思いながらも、素直にそれに同調する気持ちは沸かんかった。幼かった。
八重歯を見せながら嬉しそうに「ごとーまき」について色々語る新しい友達“のの”は、
何故かあの人のことが自分のことのように、さも誇らしげな様子で、それが余計にウチに
とっては忌々しくも思えた。
でも、カオには出せへんかった。何か、負けたみたいで悔しかったから。
- 93 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時26分52秒
悔しい。
悔しい。
絶対負けたくない。負けられへん。絶対、負けへん。
……何が悔しかったんやろか?素直にあの人を好きだって言えることが?
言ったらええやん、別に恥ずかしいことやない。みんな言ってることや。
みんなが言ってることだから、逆に言いたくなかった。
ただあの人に「憧れてる」だけの自分じゃ、満足できなかった。特別が良かった。
きっとうちは、友達の誰より子供だったんやな。
みんなと一緒じゃ嫌なんて、小っちゃな子供の我儘同然や。
でもうちは本当に子供で、
あの人がうちの「教育係」になったとき、誰にもばれないようにしてたけど、めっちゃ喜んだ。
ののが羨ましそうな顔してたから、余計に鼻高々やった。
今考えたら、あの頃のあの人は今のうちより年下で、でもやたら堂々としててマイペースが
服着て歩いてるようなもので。
改めて、あの人のオーラを感じた。一緒にいることが、誇らしかった。
お母さんに電話で自慢したら、「よかったなぁ」なんて笑ってた。子供扱いされたんやろな。
- 94 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時27分54秒
ふざけて親分なんて呼ばれたりした。いくら背伸びしても、対等には並ばれへんかった。
いっぱい甘えたら、いっぱい抱き締めてくれた。
何度も「妹みたいでかわいいね」って言っていた。
その言葉が、抱き締められた温もりが、何より好きだった。幸せやった。
ずっと続いていくことを信じて疑いもせえへんかった。
◇
- 95 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時28分38秒
――― 全ていつか納得できるさ ―――
- 96 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時29分27秒
ずっとずっと、言えへんかったことがある。
最後の最後まで、ウチがあの人に言うことはなかった。
初めてモーニング娘。の公式本を出版することが決まったとき、個別にインタビューの席が
設けられて、ウチはそこで初めて本音を漏らした。
さり気なく言ったつもりやった。
でも、言った後で、滅茶苦茶後悔したんや。言わなきゃよかったって。
別に今更誰かに知って欲しいことやないし、わざわざアピールせんでも、あの人とウチの仲は
13人いる娘。の中でもめっちゃ良い方だったのに。
/ 元々モーニング娘。は大好きだったんですよね。
/ はい、大ファンでした。ゴッチンのファンでした。
- 97 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時30分01秒
今は、ファンなんかやない。
もっともっと、昔よりずっと近いところにおるんやで。
あの人の為にモーニング娘。を目指した訳やない。でも、きっかけではあった。
仲良くなればなるほど、姉のように感じれば感じるほど、何かが違うと感じる。
喉に魚の骨がひっかかったみたいな違和感。
うちは、察しのいいコドモやから自分でも気付いてる。
あの人に対し、どこかまだ羨望の思いを抱いてること。同じ仲間なのに。
目線が、違う。
同じ方向を向いているのに、その目に映る未来はきっと全く異なってるんや。
- 98 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時30分41秒
胸がいっぱいになって、仕事中なのに泣きそうになった。
うちはののとは違う。新しく入った5期メンバーとも違う。うちは、これからモーニング娘。を
引っ張っていくねん。簡単に泣いたらあかんのや。
インタビューの間、泣きそうになってた間、必死になって違うこと考えた。
ぶりんこのこととか3人祭りのこととか、ミニモニ。のこととか、あの人を連想させないことばかり
考えて、頑張ってにいってあいぼんスマイルで乗り切った。
ちょっと、大人になったんかなあって思った。
ののに、こう聞いたらこう答えた。知り合ってすぐの時、聞いたのと同じ質問。
「な、ののは……誰が好き?」
「あいぼんが好き!」
馬鹿みたいにだらしない笑顔で、しかもみたらし団子の串を握り締めたまんま、ののは即答した。
その後照れたみたいに「でもみんな好きだよ」っててへてへ笑った、コドモの顔やった。
ああ、カッコばっかし大人になってるわ、そんな風に思った。
でも、ちょっとだけ羨ましかった。ののは誰より素直に生きとる。
◇
- 99 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時31分20秒
あの人が生放送でモーニング娘。の唄を歌うのが最後の日、あの人が「最後に歌う」と選んだ
のは、うちとの2トップから始まる歌やった。
正直、ちゃんと歌えるか自信なかった。歌唱力がどうこうやない、泣いたら絶対歌えへん。
それでも、「手、握っててやるから大丈夫だよ」って笑ったあの人を見てたら、自分が本当に
可愛がられてきたことを実感して、余計に泣きそうになった。
ああ、この手が離れていくんやな。
一緒に歌うこと、もうないんやな。
- 100 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時32分23秒
歌いだしは、本当に手を繋いでいてくれた。
――― 1人ぼっちで少し退屈な夜 ―――
/ ソロでがんばるんだから、ちゃんと見ててよ
/ 絶対見ねえ
- 101 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時32分54秒
ごっちん、大好き。ずっと憧れてた。
だから、辞めちゃヤダよ。
そんな安っぽいドラマみたいな陳腐な台詞、うちには似合わんのは百も承知。
芸能人の「かごあい」として求められるのは、偉大なる先輩を涙を持って、だけど笑顔で
見送る可愛い後輩の姿やて。
無理矢理そんな理屈をこじつけてみたけど、やっぱりそれは単なる言い訳。
- 102 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時33分27秒
ごっちん、大好き。ずっと憧れてた。
だから、辞めちゃヤダよ。
それを素直に今まで言うことができなかったのは、単に憧れとして認識してしまった時点で
あの人との距離がどれだけ開いているかを実感させられるからやった。
こんなに近くにいるのに?
あんなに可愛がってもらったのに?
モーニング娘。に入って、教育係でペアになって、いっぱい抱き締めてもらって、いっぱい
抱きついて、手を握って一緒にご飯食べて、一緒のベッドで寝たりしたのに?
- 103 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時34分15秒
いつかは、あの人が出て行くことは何となく感じてた。
それがこんなに早期になるとは流石に想像してへんかったけれど、
あの人と相対的なポジションでモーニング娘。を支えてきた安倍さんが、絶対的な母体として
必ずそこにいてくれる安心感を与えてくれる存在であるなら、
あの人は揺ぎ無い自身の立場を固めながら、それでも何故か流動的に何処かへ行ってしまう
ような不安感を、常にウチに抱かせてた。
そんな寂しさも侘しさも、にへってだらしなく笑って帳消しにしてしまうねん。
ほんま、ずるいわ。笑ってごまかすのは、昔から子供の特権て決まってるのに。
- 104 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時34分53秒
笑った顔が好き。抱き締めてくれる腕が好き。頭を撫でてくれる手の平が好き。
卒業しても、ずっと大事なおねえちゃんやで。
ウチ、もう少しで15歳になんねん。コドモなあいぼんかて、ちょっとずつ大人になってくんや。
昔、素直になれなかったのは、絶対的な距離があったから。
今からなら……これからなら、その差を埋めていけるかもしれへん。
- 105 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時35分26秒
頑張るから、加護。
だからごっちんは、ゆっくりでええで。大人になってくの。
そのうち肩を並べられるくらい、加護もおっきくなるから、待ってて。
そのうちびっくりするくらいきれいになって、お団子頭も卒業するから。
ウチもいつか、カッコいいソロ歌手になるんや。そんで、ごっちんと一緒にコンサート開くんや。
もう1度、手を握って歌うんや、あの歌を。
それまで、うちは絶対弱音吐かへんし、簡単に泣かへん。
- 106 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時36分09秒
―――― だって、笑顔を大切にしたい。大好きな人のために。
あの頃は分からなかったあの歌の意味、もうウチはちゃんと分かるから。
- 107 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時37分04秒
Fin.
- 108 名前:亜依・wish 投稿日:2003年01月07日(火)01時38分53秒
- 横浜アリーナでの加護亜依大泣きを見ていつかは書こうと思っており、とうとう
載せてしまいました。
妙に大人びた口調の加護さんなので違和感あるかもしれませんが…
- 109 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時15分57秒
吉澤ひとみ。職業、教師。
恋人は…生徒です。
◇ ◇ ◇ ◇
ようやく仕事にも慣れてきた、六月のある日。
その日は朝から雨だった。
雨の日は、何となく憂鬱な気分になる。
でもジャージで出勤できるし、普通の会社員よりは楽。
少々情けないが、体育教師になってよかったと思う瞬間。
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)02時16分12秒
- 「亜依・wish」作者様
すごい良かったです。
最近の大人びてきた加護と作者様の描く加護がすごくマッチしてて
ツボでした。
- 111 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時18分26秒
自分の授業がない時は、雑用や見回りなんかをする。
もちろんサボってる生徒を見つけるためだ。
この日は雨だったから、体育館裏とかにはいないだろうと思った。
空き教室を一つ一つチェックする。誰もいない。
雨なんか降ってると、サボるような子は最初から来ないかもな…。
そう思ってふと窓の外に目を向ける。
外はさっきまでの雨が嘘のように晴れ渡っていた。
- 112 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時19分35秒
窓の近くに歩み寄ると、屋上が目に入った。
ここの学校は屋上にベンチがいくつか設置してある。
天気のいい日はそこで昼食を取る生徒も多い。
温室もあり、園芸部の生徒達が育てた様々な植物がある。
さすがにこんな雨で屋上でサボるような生徒はいないだろう。
そう考えたから今日は屋上を見回ってはいなかった。
でもきれいに晴れた空を見て、行こうかな…と思った。
屋上がお気に入りなのは自分も同じ。
- 113 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時21分41秒
階段を上り、屋上のドアを開ける。
雨のせいかいつもより空気が少し濃いような、そんな感じ。
いつもならベンチに座って景色を眺めたりするんだけど。
今日はとても座れるような状態じゃない。
「…あ、そういえば。」
温室の方を見る。結構広いから奥までは見えないけど…。
英語担当の教師で、園芸部の顧問でもある圭ちゃんこと、
保田先生の言葉を思い出す。
「ウチの温室ね、部員少ないわりに広いでしょ?だからね〜
作業すると結構疲れるのよ。それでこないだ、部費使って
テーブルとイス買ったの。休憩するのにいいと思ってね。」
…そうそう、そんな事言ってた。
広い校内を歩き回ると多少疲れる。今ちょっと座りたい気分。
温室の中って一回入ってみたかったしね。
入り口に近づきふと気付く。
…カギ、開いてないよな…普通。
- 114 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時23分34秒
あの圭ちゃんが顧問なら戸締りはキッチリやってるだろう。
ダメもとでドアのノブを回すと…開いた。
「あれ?…意外に適当なんだなぁ。」
中に入り後ろ手にドアを閉める。
温室の中は外以上に空気が濃い、と思った。
「ん〜イス、イス、っと…。」
たくさんの花や植物が歩く場所を塞いでいる。
間違って蹴ったりしないように慎重に進む。
「おっ、あれかな…ん?」
目的のものは発見したけど、そこには先客が一人。
- 115 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時24分37秒
しかも…その子は制服を着ている。どう見ても、生徒。
向こうに顔を向けて寝ているため、顔が見えない。
まったく…こんなサボリ場所があったとは。吉澤ひとみ、不覚。
「…んう〜…。」
「んん?」
寝返りをうったその顔には見覚えあり。
それはあたしが体育担当のクラスの子だった。
いつも淡々としていて、何をやらせてもできる子で。
名前は…確か…後藤真希、だ。
- 116 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時26分38秒
印象としては、表情があまりない子。それが少し気になっていた。
彼女は自分の授業中に笑ったことなど一度もない気がする。
でもこないだやたらと声が高い子に笑いかけていたのを見かけた。
…なんだ、笑うとかわいいんじゃん。もしかしてウチのこと嫌いなのかなぁ…。
そう思って吉澤先生、少しヘコみました。
それと同時に、ウチはあの子が自分の前でも笑ってくれないかな、と思ったんだ。
それは教師として思ったのか、それとも…。
…おっと、いつまでも寝顔を見てるわけにはいかない。
自分の仕事を忘れるところだった。
それにしても可愛い寝顔だなぁ…。起こすのが、もったいないくらい。
そんなことを思っていたら、彼女はもぞもぞと動き出しやがて目を開けた。
- 117 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時29分41秒
「おぅ、おはよう。」
「…おはよぉございます…?」
彼女はぼ〜っとした顔でしばらくウチの顔を見つめていた。
すると、突然びっくりしたように目を見開いた。
「よ、吉澤先生!?なんでここに…。」
「見回りです。サボっちゃダメだろ、君。」
「や…何で入れたんですか?カギかかってませんでした?」
「ん。いつもかかってないんでしょ?」
「…いつもは、カギかけてます。あたし園芸部なんでカギ持ってるんですよ。」
「あ、そうなの?じゃあとりあえず、それよこしなさい。」
するとめんどくさそうにカバンの中をかき回し、彼女はカギを出した。
それを受け取りながら彼女が園芸部だったなんて意外だなぁと思ったけど、
わざわざ口には出さなかった。
- 118 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時32分15秒
「で、今日はたまたまカギかけ忘れたから、ウチに見つかったと。」
「…ごめんなさい。」
「残念だったね。コレは保田先生に渡しとく。もうこんな事ないように
よく言っておくから、ここでサボることはもうできないよ。」
ウチがニヤッと笑いながらそう言うと、彼女は口を少しとがらせた。
そして、悔しそうな表情。
「…ははっ。」
「…どうかしたんですか?」
今度は不思議そうな表情。
「いやぁ…後藤さんて本当は色んな表情するんだなぁ、と思って。」
「え…。」
「授業中、いつも無表情だからさ。今みたいにもっと色んな表情見せてくれると
先生は嬉しいな。…それにそっちのが可愛いと思うよ?」
「…!!」
「ん、どした?顔赤いよ?熱でもあるの?」
額に手を伸ばしたら、「だ、大丈夫です!」と言って下を向いてしまった。
- 119 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時34分03秒
「ふぅん…?なら、いいけど。そろそろ時間だから、次からはちゃんと
授業受けること…って、あたしも授業じゃん。」
準備しなきゃ、と思って急いで行こうとして気付いた事、一つ。
「ねぇ、そういえば後藤さんさ、ウチの授業はサボったことないよね?」
振り返って問い掛ける。
彼女は驚いたような表情を見せ、一瞬動きが止まった。
その後彼女は声には出さずに首をこくん、と縦に動かした。
なんだぁ…嫌われてるわけじゃなさそうじゃん。
もしそうだったら今みたいに授業サボってるよなぁ。
そう思ったら、なんか嬉しくなった。
「だよね?あっ、もちろん次のあたしの授業もサボらないこと!」
一応、念を押すように一言そう言って歩き出した。
- 120 名前:「好きな人。」〜二人の出会い〜 投稿日:2003年01月07日(火)02時37分14秒
「…あたしが吉澤先生の授業、サボるわけないじゃん…。」
彼女が最後に呟いたそんな言葉は、授業の終わりを告げるチャイムの音で
かき消されて、ウチの耳に届く事はなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まともに会話をしたのは、あの時が初めてだった。
…それが今じゃこんな事になるなんて、想像もしなかったなぁ。
ウチの右腕を枕にしすやすやと眠る恋人を見つめながら思った。
その彼女はあまりにも安心しきった顔で眠っていて。
そしたら急に愛しさがこみ上げてきて、瞼にそっとキスを落とした。
窓の外を見てみるとまだ雨が降っていた。
でもあれ以来、雨の日でも気分が沈むことはなかった。
二人出会えたこと。彼女は運命だとか言うけれど。
毎日がこんなにも楽しいから、とりあえずそういうことにしておこう。
―END―
- 121 名前:「好きな人。」の作者 投稿日:2003年01月07日(火)02時43分36秒
えっと、また書かせてもらいました。
神が降りてきて自分にしてはありえないくらいの速さで
書き上げることができました(w
あの…あまり続編になってないような気がしますが、その辺は
突っ込まずそっとしておいてもらえると助かります(w
- 122 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)04時26分09秒
- 続編待ってました!作者さんありがとう!!
- 123 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時12分20秒
- それはいつも思うことで
気がつけばいつもあなたを目で追っていた。
日が暮れる夕焼けの下も
暗闇の中も
機械的な光の下も
ずっと見てた。
1分1秒も、もったいないくらい
目に焼き付けるように
まばたきもしないで見ていた。
私の愛しい人
- 124 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時15分19秒
- うるさい楽屋の中でもアナタの声だけは聞こえていた。
いや・・・・聞いていた。
あなたの声だけに神経を集中させてじっと聞いていた。
耳に残る甲高いアニメ声
目に映る優しい笑顔
全てが私のものになればいいと思っていた。
泣いた顔も笑った顔もすねた顔も・・・・全て。
- 125 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時19分45秒
- 暗い夜空を見上げると
白い天井を見上げると
思い出すのはアナタのことばかり。
頭の中でぐるぐるアナタが回る。
でも、笑顔のアナタは出てこなくて泣いた顔のアナタが出てくる。
思い出すのは泣いた顔のアナタ。
夢でまで想うのはあなたのこと。
独り占めしたいと想うのはあなたのこと。
でも、あなたを独り占めできないと知った夜は泣いたこともない夜に泣いた。
涙はどんどん流れてくるばかりで枯れることなど知らないように流れ続けた。
- 126 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時22分26秒
- 泣いた後は何の感情も湧かなくて
それほどまであなたを愛していたことに気がついた。
もう少し早く気づけば後戻りが出来たのに。
そう思うのに涙はまた流れ出して乾いた涙の跡を又流れ始めた。
落ちる雫は透明で、その中にアナタを見たような気がした。
- 127 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時28分03秒
- アナタをいつまでも愛すことが私の運命なら
私はその運命に従おう。
いつまでも代わりない想いで
あなたを包んであげたい
アナタのために流した涙なら何も後悔しない
あなたのために傷つくのなら本望だから
アナタのためにならこの身をささげよう
少しでもアナタの心の中に私が入れるのなら何でもしよう
少しでも私を見てくれるのなら傷ついたってかまわない
少しでも私を愛してくれるのなら何だってささげよう
それが私のキモチだから。
〜END〜
- 128 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時30分04秒
- アナタをいつまでも愛すことが私の運命なら
私はその運命に従おう。
いつまでも代わりない想いで
あなたを包んであげたい
アナタのために流した涙なら何も後悔しない
あなたのために傷つくのなら本望だから
アナタのためにならこの身をささげよう
少しでもアナタの心の中に私が入れるのなら何でもしよう
少しでも私を見てくれるのなら傷ついたってかまわない
少しでも私を愛してくれるのなら何だってささげよう
それが私のキモチだから。
〜END〜
- 129 名前:キモチ 投稿日:2003年01月07日(火)13時30分33秒
- アナタをいつまでも愛すことが私の運命なら
私はその運命に従おう。
いつまでも代わりない想いで
あなたを包んであげたい
アナタのために流した涙なら何も後悔しない
あなたのために傷つくのなら本望だから
アナタのためにならこの身をささげよう
少しでもアナタの心の中に私が入れるのなら何でもしよう
少しでも私を見てくれるのなら傷ついたってかまわない
少しでも私を愛してくれるのなら何だってささげよう
それが私のキモチだから。
〜END〜
- 130 名前:キモチの作者 投稿日:2003年01月07日(火)13時32分27秒
- うわ、2重投稿すいません><;
それとお目汚し失礼しました>_<;
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月07日(火)16時25分25秒
- 亜依・wish良かったです。
何だか切ない気分になりました。あいぼん、がんばれ!
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月07日(火)18時36分49秒
- 自スレにあげるべきなんでしょうが、話の性質上といいますか、こちらをお借りします。
やぐいしです、意味はありません。
内容がよくわからなかった、私の力不足です、ごめんなさい。
- 133 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時37分52秒
- 瞬くイルミネーションが、私の周りをやわらかく包囲している。
右も左も前も後ろも、規則的に輝く光に囲まれていると思うと、
無意識のうちに体がすくんだ。
闇はいっそう深くなっている気がする。
家を出てからまだたかだか二十分くらいのはずなのに、街灯に灯がともり、
道行く車もヘッドライトが仕事をし始めた。
冬の日は、フリーフォールのような速さで落ちていく。
ちらりと腕時計に目を落とすと、約束の時間までまだ十五分もあった。
臆病さは昔から変わらないな、と自分に苦笑する。
約束に遅れるのがいやで、無駄に早く家を出てしまうのは昔からの癖だった。
彼女が知ったら、またからかってくるに違いない。
それならそれでいい気がする。
- 134 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時38分29秒
- 六時を少し回ったばかりだと言うのに、背広姿が歩道に目立ち始めた。
普通の会社はこんな時間に終わるのだろうか、よくわからない。
私の家の父親など、十時より前に帰ってきたことなどなかった。
少し風が強さを増し、首筋が薄ら寒くなってきた。
フリルのついた襟首を立て風をしのぐ。
こんなことをしていると、昔に戻ってしまったかのような錯覚に陥る。
冬のデートでは、彼女から手編みのマフラーをもらうまで、
襟首の厚ぼったい服しか着ていなかったことを思い出す。
懐かしさがこみ上げてきて、鼻の頭がつんと痛んだ。
- 135 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時39分30秒
- ∇
「矢口さん」
電動マッサージ器のような音を立てて、布団に放り投げてあった携帯が震えた。
画面を覗き込むと、きっと最もたくさんその画面に浮かんだであろう名前が見えた。
何とはなしに眺めていた窓に背を向け、通話ボタンを押す。
「おーっす」
心地よい高さの彼女の声が耳に響いた。
自然と顔がほころんでくるのが自分でもわかる。
けれど、なるべくそれを悟られないよう、何気ないといった口調で答えた。
「どうしたんです?こんな時間に」
「あのさー、明日って午前中仕事入ってたでしょ?タンポポの」
「はい」
「それがさ、来週になったらしいんだよ。
なんかよくわかんないけど」
「何でそれを私が矢口さんから聞くことになるんですかね?」
「マネージャーが楽屋にきたときにオイラしかいなかったから。
めんどくさいから矢口頼むわ、だってさ」
彼女がこの任務を嫌々やっているわけでないことは、声を聞けばひと目だった。
私は誰よりも敏感に、彼女の機嫌を察知することができる自信がある。
- 136 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時40分47秒
- 「じゃあ明日はオフですか?」
「知らないけど、タンポポだけだったの?」
「そうですね、明日はそうです」
そっかぁ、と小さな声で呟いた彼女の声が聞こえた。
その時ふと、電話口の向こうにいる彼女の姿が見えた気がした。
ベッドに横たわり、愛する人形を小脇に抱え、首ではさんで電話をしている。
なぜ急にそんな姿が浮かんだのかよくわからなかったが、変に確信を持てた。
「んとさ、明日矢口はオフなんだけど」
彼女の声が少し改まった。
そして電話口の向こうでは、人形を傍らに置き、ベッドから体を起こしたに違いない。
彼女の動きが手にとるようにわかるのは面白かった。
「そうですか」
彼女がはじめからしたてに出るのは珍しいことだった。
いろいろと考えをめぐらせながら、一番意地の悪い相槌を打った。
電話口から、彼女の不満げなむぅという呟きが聞こえた。
- 137 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時41分21秒
- 「…なんだよぉ」
「なにがですか?」
「矢口の言いたいことわかってるんだろぉ」
また人形を抱きかかえたに違いない。
彼女は少し甘えるような声を出した。
「どうしたんですか矢口さん?今日変ですよ?」
「…オイラ自分でも変だと思う」
長い付き合いになる。
もう二年を超えた。
けれど彼女のこんな弱々しい姿は、二年間見たことがなかった。
その姿はある種新鮮で、けれどやっぱり不安を煽るものだった。
- 138 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時42分00秒
- 「梨華ちゃん、明日遊ぼう。
どこでもいいっていうか、梨華ちゃんのいきたいところついてくからさ。
ねぇ、いいでしょ?」
彼女は必殺の甘え声を出した。
来年で二十歳のクセして、
その身長を生かした上目遣い攻撃が百発百中の命中精度を誇ることはメンバー内周知の事実だった。
飯田さんやよっすぃーや、卒業しちゃったけれどごっちんや、餌食になった人の数は知れない。
ただ、今は電話中だ。
上目遣い攻撃は効かない。
彼女はそれを忘れている。
「明日はしばちゃんと遊ぼうかなぁって考えてたんですよ。
昨日から」
「嘘つけよ!
昨日の段階じゃまだ仕事だったはずじゃねえか」
初歩的なミスを犯してしまった。
穴があったら入りたい。
- 139 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時43分16秒
- 恥ずかしさで体を締め付けられ、私がしばらく黙っていると、今度は彼女は沈んだ声を出した。
「…オイラと遊ぶの嫌?」
型にはまったお涙頂戴のセリフみたいに、こんな場面ではよく使われそうなセリフだ。
ただ、私はその手のお涙頂戴にこれ以上ないほど弱い。
事実、その一言で、固まっていた決心がぐらりと揺らいでしまった。
「…嫌じゃないですけど…」
「嫌じゃないけど嫌なんだね」
- 140 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時43分47秒
- 時たま、知っていることは不自由だな、と思うことがある。
寂しそうな顔をして、肩を落として懇願する彼女の姿が私のまぶたに焼き付いているせいで、
見えてもいない幻覚を見せられることになる。
つまり、私は見事に彼女の上目遣い攻撃の術中にはまってしまったというわけだ。
枕もとにおいてあった犬の人形に軽めのヘッドロックをかけながら、
私は幻覚だとわかりきっている彼女に慰めの言葉をかけた。
「…じゃあ映画でも行きましょうか。
ちょうど見たい映画もあったことですし」
「ホント!?」
案の定、さっきまでの暗いそぶりなど霧散してしまったかのように彼女は明るい声を出した。
そんな彼女の現金な態度に苦笑しながら、私の中の何かは、素直に喜ぶ彼女に好感を持っている。
その何かが、私の中で案外大きな割合を占めていることは、少し前からわかっていることだった。
- 141 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時44分29秒
- ∇
約束の時間まであと二分になった。
人通りは気持ち増え、車の流れも少しゆっくりになった。
風は、変わらぬ冷たさを体に打ち付けてくる。
私はバッグの中から、二枚のチケットを取り出した。
目の前の映画館で、これから三十分もすれば始まる映画のチケット。
ブロンドの髪をしたアメリカの超人気女優と、
残念ながら私は名前を知らない男性が見つめあっている。
よくある恋愛ものだと思うのだが、前評判がとても高かったらしい。
私は最近、これらのことにめっぽう疎くなってしまった。
頭の上から、イチョウの葉が一枚舞い降りてきた。
それが合図になったかのように、タイマーをセットしていた携帯が小さな音を立てる。
待ち合わせの時間になったらしい。
ただ、彼女はまだこない。
- 142 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時45分23秒
- ∇
「解散や」
言葉は突然で、冷淡で、けれど悲壮に満ちていた。
楽屋は一瞬静まり返り、それから少しして、湯が沸騰するように、ぽつぽつと泡が立ち始めた。
「…どういうことですか?」
最初に口を開いたのはよっすぃーだった。
貼り付けられてしまったかのように顔が下を向いたまま動かなくなってしまっていた私は、
その一言で顔を上げることができた。
よっすぃーの目は、普段のよっすぃーからは想像もできないほど真剣で、怒っているように見えた。
「言葉のとおりや。
二ヵ月後、ラスコンを持ってモーニング娘。は終いや」
- 143 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時46分03秒
- つんくさんは苦虫を噛み潰したような顔をして、こちらも怒っているように見えた。
控えめにあたりを見回すと、辻と加護と五期メンバーは、
いまだに何が起こったのかわからないといった風に口をあけている。
安倍さんは小さく震えていた。
その肩を飯田さんが抱き寄せている。
一番最初に泣き出してしまったのは安倍さんだった。
保田さんは黙って目を閉じていた。
二ヵ月後といったら、保田さん卒業予定の春の、まだ入り口の段階だ。
どう思っているのか、窺い知ることはできない。
「幸い言うかなんちゅうか、六期メンバーは選べんかった。
藤本も一人でやらせられるし、はっきり言って周りへの影響はほとんどない」
つんくさんの物言いはよくわからなかった。
つんくさん自身が解散に関して口をはさんだのか、はっきりしない。
はっきりさせるつもりなど無いように思えたし、特に知りたいとも思わなかった。
- 144 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時46分34秒
- 「安倍、飯田。
五年以上もご苦労やったな。
これからのことはあとで話し合おう」
つんくさんが労いの言葉をかけ始めた。
どうやら覚悟を決めなければならないらしい。
その前に、私はまだ視線を伸ばしていない人のほうへと目を向けた。
矢口さんは静かに泣いていた。
まるで蝋人形が溶け出したかのように、本人は気づいていないんじゃないかと思うほど、
涙は音もなくほほを伝っている。
その姿はただ、痛々しかった。
「石川」
彼女から視線を離せずにいると、つんくさんが声をかけてきた。
どうやらいつのまにか、労いの言葉が私の順番まで回ってきていたらしい。
彼女への言葉を聞き逃したことを少し後悔しながら、姿勢を正した。
- 145 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時47分18秒
- ────
つんくさんが部屋を出て行ってすぐ、安倍さんの泣き声がいっそう大きくなった。
飯田さんも必死にあやそうとはせず、好きなだけ泣かそうとしているように見えた。
保田さんは相も変わらず動かない。
矢口さんも、動かないといったよりは動けないといった感じで、同じ形でとどまっていた。
よっすぃーは立ち上がって、壁に向かってシャドウボクシングをはじめていた。
なにを殴りたいのか、わかるようなわからないような気がする。
辻加護と五期メンバーはようやく事態が飲み込めたらしく、
安倍さんにも負けないほどの大声をあげて泣いていた。
私も、どうやら泣いているらしかった。
実感のない、ただの水が目から溢れ出している。
「現実はしっかりと受け止めろや」
つんくさんは私にこういった。
取り乱し気味だった安倍さんにもかけなかった言葉を私にかけた。
その真意はわからない。
ただ、娘。の解散以上に、私がダメージを受けることがあるのだろうということはなんとなく想像がついた。
その実態は、涙で霞んでぼやけている。
はっきりと姿を見たいような見たくないような、不思議な気持ちだった。
- 146 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時48分27秒
- ∇
約束の時間を五分過ぎた。
映画館へと飲み込まれていく人の数が多くなってくる。
私は川の流れを分かつ石のように、その場に立ち尽くしていた。
喧騒がだんだんと遠くに聞こえ出した。
意識が彼女の方へのみ向き出したことが窺い知れる。
遅い、遅い。
いてもたってもいられなくなりかけた瞬間、電話がなった。
慌てて手にとり、白い息を大量に吐き出しながら耳に押し当てる。
「もしもしっ?」
「ん?どうしたそんなに意気込んで」
電話口から聞こえてきた声は夫のものだった。
よく考えてみれば着信音を変えているのだからわかるはずなのに、慌てぶりがわかる。
「いや、なんでもない。
どうしたの?」
「いや、今日ってさ、飯食ってくるって言ってたっけ?
ちょっと分量間違えてさ、ビーフストロガノフが大量に余りそうなんだけど…」
- 147 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時49分02秒
- 夫はどこか抜けている部分がある。
やさしくて気が利いて、料理の手伝いや掃除なども進んでやってくれるのだけれど、
完璧にできていたことは一度もない。
確認すればすぐにでも粗が見つかってしまう。
「ごめん…」
そんな時、彼は心底すまなそうに謝る。
できた人だと思う。
自分にはもったいないと、いつも思う。
「いいよ、残しておいてくれれば。
明日の朝に食べてもいいし、お弁当、にはちょっと無理か」
「ごめんよ。
心配かけさせて悪かったね。
九時ぐらいだったね、楽しんできな」
「うん、ありがとうね」
心なしか暖かな気分になりながら電話を切った。
すぐに寒風が体を包み込んだけれど、先ほどのようには気にかからない。
あとは一刻も早く彼女がきてくれるのを祈るのみだ。
時間はすでに、約束を十分過ぎていた。
- 148 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時49分43秒
- ∇
解散まではあっという間だった。
気が付けばラストコンサートを終え、私たちは打ち上げの場にいた。
見慣れた顔が、みなくしゃくしゃになっている。
そしてその場で、つんくさんから今後の身の振り方を発表された。
安倍さんと飯田さんは二人で組んでデビュー。
ある程度予想がついていただけに、驚いた人はほとんどいなかったけれど、
つんくさんの下を離れ、すべてを二人だけでやっていくといったのには驚いた。
また同居もはじめるらしい。
保田さんも予定通り、歌手でありながら女優の勉強もするらしい。
よっすぃーは引退すると語った。
自分にできることは何もないから、そういったよっすぃーは悲しいくらい凛々しく見えた。
辻はなんらかの形で芸能界に残ることになるといった。
お仕事が大好きだから。
涙ながらに辻はそう語った。
加護は奈良へ帰ると言った。
辻と離れ離れになるのが寂しいと、言葉にならない言葉で言い、辻と抱き合った。
五期メンバーはつんくさんの指導のもと、しばらくは力をつけることになるという。
活動に関してはめどがたっていないというのが一抹の不安を誘った。
- 149 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時50分43秒
- 私は涙を見せず、引退する旨を語った。
正直言って、話がきていないではない。
ただ、辻のようにこの仕事を楽しいと思う自信がなかった。
少し休みたかったのかもしれない。
自分でもはっきりと整理がつかないままでの決定だっただけに、
喋っている最中、所々でつっかえた。
けれど、それを笑うメンバーは一人もいなかった。
そして、矢口さん。
彼女は、見るのも辛いほど痛々しい笑顔で、周りを一瞥しながら言った。
「オイラ、結婚する」
- 150 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時51分19秒
- ∇
約束の時間を三十分過ぎた。
映画はもう始まっている。
- 151 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時51分55秒
- ∇
頭を殴られたのかと思った。
結婚する。
矢口さんのその言葉がなにを意味しているのか、まったくわからなかった。
判ったのは驚きの表情を見せるメンバーと、静かに頷いたつんくさんの動きのみ。
矢口さんは続けた。
「事後報告みたいになって申し訳ないんだけど、もう式の日取りとかも決まってるんだ」
式の日取りが決まっている。
フーン、ソウデスカ。
「新居とかも決めたからさ、遊びに来てよ」
新居が決まった。
ソレハヨカッタデスネ。
「あ、もちろん結婚式には招待するからね」
結婚式には招待してくれる。
ソレハウレシイナァ。
- 152 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時52分29秒
- そして最後、おどけたように矢口さんは言った。
「まずは矢口が幸せになっちゃうけど、みんな頑張ってね。
みんなの幸せを心から願ってるから」
私以外のメンバーが頷くのが見えた。
ナニイッテンダヨ。
ヤグチサンガシアワセニナルトキハ、イシカワモイッショニシアワセニナルベキデショ。
ヤグチサンガシアワセニナルノニ、イシカワハナラナイッテドウイウコト。
刑事さんにも話したけれど、この後のことは何も覚えていない。
気が付いたときには、私はおびえた表情のメンバーに周りを取り囲まれていた。
そして手の中には、夢に出そうな表情で息絶えた矢口さんがいた。
- 153 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時54分06秒
- ∇
知っているというのは、本当に不自由なものだ。
憎めないわがままさを持っている矢口さんは、行動パターンが単純なんだから。
私が刑務所から出てきたら、絶対にお祝いだ、とか言って食事に招待するに決まっている。
梨華ちゃんのおごりだよ、とか言って甘えた声を出すに違いない。
現に、電話口の矢口さんはそうした。
そして、甘い声で矢口さんに誘われた私が、その申し出を断るわけがない。
「映画見に行こうぜ、チケット取っておいてよ」
まったく、チケットくらい自分で取ってくださいよ。
「オイラおいしいお店知ってるからそこで食べようぜ。
あ、もちろん梨華ちゃんのおごりでね」
私をお祝いしてくれるんじゃないんですか。
矢口さん。
それもこれも、矢口さんが来てくれないと始まりませんよ。
まだ許してあげますから、早く来てくださいよ。
- 154 名前:樹下の想い 投稿日:2003年01月07日(火)18時55分20秒
- 映画館からは、ちらほらと人が出てき始めていた。
時間は八時三十分。
約束の時間を、二時間半、過ぎていた。
頭の上に再び、イチョウの葉が舞い降りてきた。
そういえば、みんなどうしているのだろうとふと思った。
ただ、あまり私には関係ない。
重要なのはやはり、一刻も早く矢口さんが来てくれることなのだから。
- 155 名前:あとがき 投稿日:2003年01月07日(火)18時57分14秒
- 電話のシーンって書くのが難しいです。
誰か教えてください。
あと、タイトルに関してはメール欄に示したとおり藤田宣永の著書をそのまま引用してますが、
話に関してはもちろんパクリではありません。
念のため。
- 156 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時50分51秒
今あたしは異常なまでに興奮している。
一体、何週間ぶりだろう――。
とにかく、ずっと、ご無沙汰だった。
- 157 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時52分08秒
今までそれほど固執したことはないけど
離れてみてようやく気づいた。
あたしにとってどれだけ大きな存在だったかってことを。
ここ数日間、あたしはある種の禁断症状まで起こした。
だけど、ついに―――。
たまんね、マジ、やべぇ…。
- 158 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時53分15秒
「もう入れて、い?」
「まだ、だめぇ。」
「いいじゃん別に。」
「あっ! だめだよぉ、まだ入れちゃ…」
- 159 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時56分29秒
「だってさ…」
「だめっ。まずはコレから…、ね?」
「はいはい、わかりましたよ」
- 160 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時57分18秒
「んっ…」
「大丈夫、梨華ちゃん?」
「ご、めん…チカラ入らない…」
「仕方ないなぁ。ま、そういうとこが、かわいいんだけど。」
「あー、よっすぃーばかにしてるぅ!」
「んなことないって。かわいいって言ってるじゃんっ」
- 161 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時58分19秒
「ね、もういい? 入れるよ?」
「うん…入れて…」
- 162 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時59分04秒
「わ、あちぃ…」
「あっ…!」
「あは、濡れちゃったねっ」
「もう…! よっすぃーのばかぁ…」
「あはは、怒った顔もかわいい〜」
- 163 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)08時59分58秒
「あ…よっすぃーも濡れてる…」
「はは…、みたいだね…」
- 164 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)09時01分26秒
「い、いいよ、梨華ちゃんそんなことしなくて」
「いいから、私にまかせて」
「それよりさ、コレ、すげー溢れてるんだけど…」
「それは…よっすぃーのせいじゃん…」
- 165 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)09時02分16秒
「梨華ちゃん」
「なぁに?」
「もぉガマンできない。」
「もう?」
「食べたい。」
- 166 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)09時03分03秒
「まだ、だめだってばぁ」
「待てないよぉ」
「もう少しだから…、ね?」
「うぅ…。」
心臓がバクバクして破裂しそう。
自分でも信じられないほどにあたしの心臓は激しく脈打っている。
- 167 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)09時04分17秒
後、何分だ?
いや、もう一分を切っている。
手元の時計で残り30秒。
ゴールは近い。
…20…………10…………5…4、3、2、1……
ゼロ。
来たぁぁああああああ―――――!!
- 168 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)09時05分09秒
ごくり、とあたしは喉を鳴らした。
「うまそ〜。」
「おいしそうだね。」
あたしと梨華ちゃんはにっこり微笑み、両掌を合わせる。
そして―
「「いただきます」」
- 169 名前:シアワセ・ビーム 投稿日:2003年01月08日(水)09時06分33秒
***
ガマンした後の食事はまた格別で
コレって案外アレにも似てるとこあるよな…
梨華ちゃんとのいつかのソレを思い出したら自然と顔が緩んじゃって
あたしの興味はカップラーメンからあっさり梨華ちゃんに移行。
さ、お腹もいっぱいになったことだし
今夜は梨華ちゃんをいただいちゃいますか。
end
- 170 名前:シアワセ・ビームの作者 投稿日:2003年01月08日(水)09時19分44秒
- あとがき。
最初はこのお話、違うカプで書いてたんですが、
書いてるうちにこの二人の方が似合うかなってことになって
最終的にいしよしに落ち着きました・・(w
- 171 名前:素人○吉 投稿日:2003年01月10日(金)17時56分18秒
- >キミを待つ
酔っぱで素直ないちーちゃんカワイイ!
>目に浮かぶよ、そんな後藤の姿が。
そんないちーちゃんが凄く目に浮かびました。
- 172 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)17時57分17秒
土砂降りの雨の中、
不思議と、それは涙だとわかった――
――
- 173 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)17時57分49秒
- 「温まるから…」
コトン。
四方形の黒い小さなテーブルに置かれた、真っ白のマグカップ。
「…うん」
亜弥っぺは、その小さな手でマグカップに口をつけた。
お互い、敢えて言葉を見つけようとはしない。
亜弥っぺが今日、どうしてここにきたのか、直ぐに理解ったから――
- 174 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)17時58分22秒
- ピッタリと、肩を寄せ合い、座る。
暫く、無音の時間が続く。
張り詰めたわけでもない。
ただ重たい空気に多少息苦しいモノを感じていた。
ゆっくりと、口を開く亜弥っぺ。
「"ごめん"って…」
「うん」
「それ以上、何も言わなかった…」
「うん」
- 175 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)17時58分55秒
- 今にも、大声を上げて泣き出しそうな、薄く擦れた声。
それと同時に生まれる怒り。悔しさ。
私の中に浮かんできたのはただひとり。
亜弥っぺにこんな辛い想いをさせているそのひとだけ。
視点が合っているようには見えなかった。
何を見ているわけでもなく、ただ思い起こしているのだろう、そう思った。
- 176 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)17時59分25秒
――
"気づいてたかも知ないけど、私、吉澤さんのことが好…"
"ごめん…"
たった一言。
凄く真っ直ぐとした真剣な瞳だった。奇麗な瞳だった。
――
「上手くいくなんて思ってなかった…。わかってたのに……っ…」
フローリングの床に零れ落ちた一滴の涙が、私の心を締め付けた。
- 177 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)17時59分57秒
そっと抱き寄せる。
その後暫く、亜弥っぺは、私の胸の中で泣いた――
――
- 178 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)18時00分37秒
「ありがとう…」
ゆつくりと私の腕の中から離れる。
それでも繋いだ手を離さないでいるのは、きっと亜弥っぺの優しさ。
そんなことに、思わず落とす笑みはなんだか今にも涙を堪えている。
- 179 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)18時01分08秒
- 「こういうところだけ無駄に優しいんだよね、…亜弥っぺはさ」
「…そういうところ、吉澤さんに気づいて欲しかったんだけどな……」
笑ってた。
せいいっぱいの憎まれ口を叩きながら。
そんな亜弥っぺの切なさに、またほんの少し吉澤さんを恨みながら、私も笑った。
- 180 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)18時01分40秒
そして言った。
「あーあ。どうしてこんなに亜弥っぺのこと大切に想ってるひとが近くにいん、のに…」
喉に、ズキリと痛いものを感じ、言葉が詰まる。
「……遠いひとばっか追いかけてんのかね、亜弥っぺはさ…」
- 181 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)18時02分12秒
頭では理解っているんだ。
理解っているつもり、なんだ。
けれど、理解はしているけれど、納得は出来てない、弱い心。
本人の口から、それを聞いて。
改めて痛感する。
"このひとは、私を求めてはいなんだ…"と――
"ミキスケは、…"
亜弥っぺの口元がそう動いたように見えた。
- 182 名前:トモダチ 投稿日:2003年01月10日(金)18時03分17秒
続けて、言った。
"大切な友達だよ…――"
わかっているのに、涙が止まらない――
end
- 183 名前:素人○吉 投稿日:2003年01月10日(金)18時03分49秒
- 初みきあやでした。
- 184 名前:眠れない日 投稿日:2003年01月10日(金)22時48分26秒
- 今日は忙しくてすごく疲れた。
すぐにでもベットに入って眠りたい。
…のに。
眠らせてくれない彼女。
「寝ちゃうの?」とか「つまんない」とか言ってるけど、
ホントはキミも眠いはず。
だってその閉じかけのまぶたが物語ってるから。
「愛ちゃんも眠いんでしょ?」って言うと、
「眠くないもん!」って拗ねる姿もモチロン可愛いけど。
その後、「…寝たら麻琴を見れなくなるから」なんてもっと可愛い事言うから、
昨日も今日も眠れない。
いつになったら眠れるかわからないけど、あたしもずっと見ていたいから、
昨日も今日も眠らない。
夢で逢えたら幸せなのにね?
END
- 185 名前:nanasi 投稿日:2003年01月11日(土)02時37分08秒
- シアワセ・ビームおもしろかったよ!(・∀・)
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月11日(土)07時44分48秒
- トモダチとっても良かったです。
あやみきでこういう切ないお話は初めて読みました。
あやみきはラブラブでお馬鹿なハッピーストーリーって勝手なイメージを持っていましたが、
こういうシリアスな切ないお話もガッチリ嵌りますね。
文章の流れも繊細な感じがして引き込まれました。
最後はハッピーエンドかと思いきや裏をかかれました(w
そこがまた(・∀・)イイ!
- 187 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時53分59秒
- 山道に入ってどれくらい経っただろう?
モーニング娘。を乗せたロケ用のワゴン車が2台、対向車の無い道を進んでいく。
薄い霧のかかった渓谷。
上に掛けられた橋と両側の舗装道路は、過疎地に不釣合いなくらい綺麗で立派だ。
橋の上で停車し、マネージャーに促されてメンバーが車を降りる。
眠たげに目をこする加護。
新緑の空気を確認するかのように息を吸い込む飯田。
嬉しげに周りをキョロキョロしながら何やら指差している新垣と小川。
安倍は一番最後に車から降りると、すこしばかり故郷を連想させる風景を見渡した。
撮影スタッフ達が機材をおろし始め、マネージャーから台本がメンバーに配られる。
こういう田舎めいた場所まで遠征してPVを撮るのは『ふるさと』以来のことだ。
- 188 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時54分37秒
- 「なんだか懐かしいね〜」
飯田が安倍に笑いかける。
「そうだね…」
「はねたっ! 何かあっちではねたよっ!」
とつぜん、新垣が素っ頓狂な声をあげる。
その場に居る全員の目が、新垣の指差す方向に注がれた。
ぴょ〜ん
安倍は橋の欄干から身を乗り出すようにして、目をこらす。
(何だろう……? ノミが飛び跳ねたような大きさにしか見えないけど)
- 189 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時55分07秒
- 「これだけ距離があって見えるってことは、大きな動物じゃないですか? 猿とか」
「猿って何十メートルもジャンプできるの? 鳥じゃない?」
淡々と分析する紺野に対し、小川が素朴な突込みをいれる。
ぴょ〜ん
はるか向こうの山の尾根から飛び跳ねてるのが見えるのだから、かなりの高さまで上がってることになる。
「でも鳥が飛んでる感じじゃないよ。あれってジャンプだもん」
騒ぎを制するように、マネージャーが声を張り上げる。
「ほらほら、時間が無いんだよ。みんなちゃんと台本に目を通して!」
ぴょ〜ん
- 190 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時55分47秒
- 「あっ、だいぶ近づいてきたよ!」
加護も新垣もマネージャーの声が耳に入らないようだ。
ユーモラスに跳ねる何かから目を離そうとしない。
リーダーの飯田まで好奇心剥き出しの目で正体を確かめようと躍起になる。
安倍はその騒ぎから取り残されたように漠然とした不安にかられていた。
(なんだろう……あれは……)
ぴょ〜ん
『それ』が近付くたびに安倍の不安は徐々に確かなものになっていった。
- 191 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時56分20秒
- 「あれってさあ、カカシじゃない?」
辻がほうけたような顔でつぶやく。
「はあ? どうしてカカシが飛び跳ねるんだよ?」
加護は、あきれたように辻の後頭部をこづく。
ぴょ〜ん
「あれ、やっぱカカシだ……」
飯田が呆然とした表情で口をあけている。
(カカシが飛び跳ねてる…… 案山子がこっちに飛んでくる…… ここに……)
- 192 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時57分03秒
ぴょ〜ん
100メートルほど先の田んぼに着地した物体がカカシであるのは、もはや誰の目にも明らかだった。
「やだッ! あれ、うちらの方に向かって近づいてきてるよ!」
矢口の悲鳴が、みんなの恐怖心に火をつけた。
口々に何かを叫ぶ者。
その場にへたり込む者。
その場から逃げようとする者。
ワゴン車にかけこもうとする者。
泣きながらスタッフにしがみつく者。
- 193 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時57分44秒
- 安倍は、ひとり冷静だった。
パニック状態の現場からすこし距離をおいている。
彼女の目はカカシの顔のあたりからぶら下がっている物体に注がれていた。
(あれは…… やっぱりそうなんだ……)
ぴょ〜ん
数十メートル先に迫ったカカシとカカシがぶら下げている黒いもの。
次のジャンプでカカシはこの橋の上に着地するだろう。
(そうだ…… あれは私が埋めた……)
- 194 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時58分19秒
ぴょ〜ん
カカシは異臭を放つどす黒い塊を口にくわえて安倍の正面に向き合っている。
狂ったように絶叫し続ける周囲を無視して、安倍は顔色を変えず挨拶をする。
「ひさしぶりね、ごっちん」
カカシの口が髪の毛をくわえていることで、かろうじて人間の首だとわかる。
安倍の瞳は、あくまで冷ややかだ。
「不細工な顔」
- 195 名前:まりつき 投稿日:2003年01月12日(日)02時58分55秒
ぴょ〜ん
安倍が頭上を見上げた時、初めてカカシの顔がはっきりと見えた。
(私だ……)
後藤の腐敗した首をくわえ、天使のように笑う安倍がいた。
おしまい
- 196 名前:アイドルはやめられない。 投稿日:2003年01月12日(日)15時34分54秒
- 「ねえねえ!、ミキスケ!聴いて聴いて!昨夜私、
変な夢、見ちゃった。」
「なによ〜、あやっぺ、また可愛い子が出て来て、
実は、あやっぺだったなんて・・・」
「ちがうって〜、あのね〜、ミキスケが出て来たの。
それが、変なの。ミキスケがモーニング娘。のみんなに
いじめられているの・・・」
「ふ〜ん・・・」
「それで、モー娘。からこき使われて、荷物をみ〜んな
持たされたり、みんなのパンツまで洗濯してるのよ〜。」
「それで・・・」
「それで、どういうわけかステージでモー娘。と一緒に
歌ってるの。それが、ミキスケだけ後ろの見えない所で
歌わされて、あの、意地悪な娘。に邪魔されて泣きそうに
なりながら、歌ってるの。 変でしょ・・・」
「あやっぺは、まだ知らないでしょうでけど、今度、私
モーニング娘。に入ることになったの〜。」
「ガビョ〜ン!!!!」
終わり。
- 197 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時35分37秒
- 「嘘でしょ!!」
空気が、夏から秋に変わりかけてきたある日。まだ9月だというのに、北海道の景色は夕日色になっている。
日直に付け加え、やってこなかった宿題を済ませるため、私は数人の生徒とともに、教室に残っていた。
壁にかけられた時計が五の数字をさした時、みんなの宿題を持って職員室へ向かう。
それまでは、いつもと何も変わらない日常だった。
そう、ドア越しに、聞きたくない言葉が耳に入ってくるまでは。
「そんなの、嘘でしょ!!」
気付けば私は職員室のドアを開けて、思いっきり叫んでた。
まだ残ってる先生達の視線は沢山感じたけど、はっきり言ってそんなの気にならなかった。
私は、集めたみんなのノートを持ったまま、真っ直ぐと歩いていった。
「ねぇ、嘘でしょ?嘘だと言ってよ、ねぇ…。」
目的の場所に着くなり、私はノートを置いて、叫びながら彼女にしがみついた。
私より10cm以上も背が高い彼女は、そんな私を受け止めてくれたけど、何も言わなかった。
ただ私のほうをじっと見て、悲しそうに微笑むだけだった。
- 198 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時37分01秒
- 結局、先生に叱られて、私は職員室を出た。気付かなかったけど、彼女の両親も来てたみたいで。
私は仕方なく、空を真っ赤に染める夕日を見ながら、校門で彼女を待った。
彼女とその両親が来たのはそれからすぐのことだった。私はさっきの行動を思い出して、俯きながら謝った。彼女も、彼女の親も全然気にしてないと言ってくれた。昔から知ってる人たちなだけに、少し恥ずかしかった。
それから気を使ってくれたのか、彼女の両親は私と彼女を二人きりにさせてくれた。
行き先はどちらからともなく、いつもの川辺に行くことになった。
「こうやってなっちとここを歩くのも、今日で最後になるかもね。」
気まずい沈黙を破ったのは、彼女の方からだった。
だけどその一言が凄く悲しくて、私は歩きながらだけど、思わず叫んだ。
「何で?!何でそんなこと言うべさ!…かおり、もしかして本当に…。」
夕日をバッグにした彼女の表情はよく分かんなかったけど、私の方を見てなかったのだけは、何となく分かった。
「なっちごめんね。かおり、もっと早く言うべきだったんだけど…。」
- 199 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時39分44秒
- かおりはそう言ったけど、私はそれ以上、何て言えばいいのか分からなくて、ずっと黙ってた。
頭の中にはいろんな質問が駆け巡ってて、何から聞けばいいのか分かんなかった。
だからかおりが話し出すのを待ってたんだけど、彼女もそれ以上何も言わなかった。
そうこうしてるうちに、いつもの川辺に着いたんだ。
「思い出すな。なっちとよく、ここに来たよね。」
もう外はすっかり暗くなってたけど、私達はごろごろ転がる石の上に腰を下ろした。
「そうだね。何かあった時は、いっつもここに来てたよね。…小さい時、近所の男の子に積み木のおもちゃを取られた時、算数で赤点取って家に帰るのが恐かった時、お母さんの大事にしてた花瓶を間違えて割っちゃった時、初めて告白した人にふられた時…。」
「そういえば、そんなこともあったねー。なっち、よく覚えてるね。」
「へへ。なっち、こういうことだけは記憶力いいんだべさ。」
そう言って二人で笑った。かおりの笑顔を見るのはいつものことなのに、何だか寂しかった。
「そういえば、もう16年も一緒なんだもんねー。」
- 200 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時41分05秒
- かおりは足を広げて、暗い空を見上げた。私はそんな彼女の方は見ないで、横に転がってる石を握って、川に投げつけた。
「…かおり、本当に行っちゃうの?」
職員室の前で聞いた時から、ずっと頭の中を廻ってた質問。
答えはもうとっくに分かってるはずなんだけど、確かめるのが恐くて、ずっと聞けなかった。
私はもう一度石を拾って、急流になってる所に投げつけた。
「…うん。」
かおりが言ったのはそれだけだった。たった二文字なのに、私の中ではそれが大きく拡がっていって。
気が付けば、私はかおりの胸の中で泣いていた。かおりが抱きしめてくれたから泣いたんじゃなくて、私が泣いたから抱きしめてくれたんだ。
「…でも、いつも、いつもかおりがいたから…。」
不思議だけど、涙を流すと、いつも言えないこととかが言えたりする。私は感情の波に任せて、言葉を繋いだ。
「男の子におもちゃ取られた時だって、お母さんに怒られた時だって、初めて告白した時だって、いつも…いつも乗り越えられてたのは、かおりがいたからなんだよ!かおりが、かおりがなっちの傍にいたから…だからなっちは、いつも頑張ってこれ…。」
- 201 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時42分21秒
- だけど私は、そこで言うのをやめた。かおりがもっときつく、抱きしめてくれたからだ。
私を包む体がとても温かくて、優しくて…私はやっぱり、それ以上何もいえなかった。
かおりが東京へ行っちゃう日は、最後まで迷ってたけど、結局お母さんとかにもせがまれて空港まで行った。
本当は、別れの時を見ちゃうと泣きまくりそうだったから、その日は家でじっとしてたかった。
時間なんて、あっという間で。言いたい事も言えない間に、かおりが行っちゃう時間になった。
後で後悔するだろうな、と思いながら、でも私は泣くことしかできなくて。
大事な言葉を伝えないといけないのに、時間だけが過ぎていった。
「かおり、そろそろ行くわよ。」
かおりの後ろから、お母さんの声が聞こえてきた。
「なっち…ごめんね。かおり、そろそろ行かないと…。」
かおりが申し訳なさそうに言った。そんな態度も、全て悲しくて、
「…かおり、かおりごめんね。」
私はただ、泣きながら謝ることしかできなかった。
「なっち、もっといろいろ話したかったんだけど、なんか、なんかわけわかんなくて…。」
- 202 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時43分08秒
- 「ううん。かおりもね、本当はなっちに、いろいろ言いたかった事あるんだ。」
かおりの言葉が聞きにくかったから、顔を上げたら、かおりも、目に涙を浮かべながら泣いていた。
「なっち…今までありがとうね。かおり、なっちと友達になれて、本当に良かったよ。」
「そんな!なっちこそ、なっちこそお礼言いたい!こんななっちと友達になってくれて…本当にありがとう。」
かおりに、少しでも私の想いが伝わるように、必死で言った。
かおりはそれに答えるように、もう一度抱きしめてくれた。
私が涙を流す時はいつも、その優しい体で包んでくれてたんだ。
いつも私は自分のことで精一杯なんだけど、その時はかおりの心臓の音も聞こえたような気がした。
「かおりっ!早く行かないと、飛行機間に合わないわよ。」
既にエスカレーターのところにいるお母さんが、こっちを見ていた。
「じゃぁなっち、かおり行くね。…バイバイ。」
とうとうお別れの時が来た。
私は泣きたいのか、叫びたいのか分からなかったけど、かおりの思い出に残るように、精一杯明るい声を出した。
- 203 名前:さよならなんて、言わないで 投稿日:2003年01月13日(月)18時44分03秒
- 「バイバイ!また、また会おうね!なっち、東京行くからね!かおりに、会いに行くからね!」
もう涙なんて気にしないで、私はとにかく手を振った。周りの人たちがこっちを見てたけど、そんなのも気にしないで、私はただただ手を振った。
「かおり!大好きだよー!なっち、かおりのこといつまでも大好きだよー!!」
エスカレーターでおりていくかおりに、必死の思いでそう叫んだ。
そしたら、顔が見えなくなる寸前、「かおりも、なっちのこと大好きだよー!」と口が動いた気がした。
だから、さよならなんて、言わないで。私達はずっと一緒だから…ね、かおり。
- 204 名前:クローン・コンサート 投稿日:2003年01月14日(火)12時09分02秒
- 「モーニング。クローン」
「はあ、モーニング。クローンを全員集めてあなた1人
だけのコンサートを開きたいとおっしゃる。お金はいくら
かかってもかまわない。ありがとうございます。」
「しかしですね、残念なことに今現在、クローンは不在の
ものがいまして、全員集めるのは困難でして・・・」
「まず、リーダーのクローン、白いドレスの女は、アート&カラー
の展覧会のため、本人に代わって出席してまして、不在です。
クローン・なっちは、本人に代わりに北海道へ帰ってまして、
不在です。」
「クローン・マリーは、本人が忙しいため、クローンがキッズの
面倒を見ているため、不在です。クローン・ラブリーは、
今だに、『ひん死の白鳥』を踊り続けています。」
- 205 名前:クローン・コンサート 投稿日:2003年01月14日(火)12時28分13秒
- 「クローン・チャーミーは、ファンの方が引き取りまして、
不在です。クローン・あいぼんは、大阪のほうで、もめ事が
ありまして、本人に代わって軍団を率いて行ってまして、
不在です。」
「クローン・よっすぃ〜と、クローン・まこっちゃんの
ピンク・ナースは、患者を死なせまして、高飛び中でして、
不在です。」
「クローン・ビューティーは、クローンのくせに食べすぎ
まして、消化不良のため、調整中です。」
「でありますから、今残っているのは、カスばかりで・・・」
ケメコ「カスとは何によ!、カスとは!」
「ええ〜、カスが騒いでます。え〜、ケメコ・・・、この
呼び名は、一部地域ではマズイかな〜。と、クローン・のの
クローン・ニイニイしか、残っておりません。」
「何とかしろって、言われてもね〜、また、新しく、
クローン・ミキティ、クローン・Gっちん、クローン・あやや
など、作る予定です。そちらを利用しては、いかがでしょう。」
「そうですか、全員集まりましたら、ご連絡いたします。はい。」
終わり。
- 206 名前:仁義無きバトル 投稿日:2003年01月15日(水)12時41分25秒
- アナ「え〜、現場からお送りします。ここ、テレビ阪神前では
えたいの知れない集団が気勢を上げています。」
アナ「何んと、集団を率いているのは、女の子です!顔は、
サングラスとマスクでわかりませんが、まだ14、5歳の少女
のようです。早速、インタビューして見ます。」
アナ「え〜、出来たらお名前を聴かせてもらいたいのですが・・・」
「あのね、セリーヌ・アイボンーヌ・ジャンヌ・ダルクだよ〜」
アナ「どっかで、聴いたような・・・それで、この騒動を
起こした、趣旨はなんですか?」
「騒動じゃ、ないんよ。テレビ阪神の横暴を球団・・・糾弾しに
来たんよ〜。テレビ阪神が、ハローモーニング!を放送しないと
いう、暴挙に対して抗議するため、東京から来たんよ〜」
アナ「東京から来たわりには、関西なまりがあったりして・・・。
それに、その髪型のお団子はどっかで見たような気が・・・」
「何にかの見間違いでしょ。え〜、テレビ阪神が、このまま
ハロモニ!を放送しないならば、局内に突入するゾ〜!!」
「オ〜!!!!!」
アナ「え〜、機動隊が監視する中、関西○護軍団は気勢を上げて
います。以上、現場でした〜。」
- 207 名前:仁義無きバトル 投稿日:2003年01月15日(水)12時47分58秒
- ハロモニ!を一時間で放送しろ!!、で、日本中でハロモニ!
を放送しろ!!!
終わり。
- 208 名前:ブリザード・クローン 投稿日:2003年01月15日(水)17時41分43秒
- ここは、南極の某国の基地。外は激しいブリザードが吹き荒れている。
「よっすぃーさん、寒いっすね・・・」
「さぶ〜、なんでェ、あたしたちがこんなとこに逃げなきゃ
いけないのよ・・・まこっちゃん。」
クローン・よっすいーとクローン・まこっちゃんは、なぜか
南極に、高飛びしているのだ。
「しょがないっすよ。患者さんを死なせちゃったんだから、
きっと、指名手配されてますよ。捕まると死刑ですよ・・・」
「何でよ〜、病状が悪化したから、逝ったのよ〜。・・・
まあ、ここ、南極までは追いかけてこないしょ。」
「あれ、無線が入ってますよ・・・誰もいないのかな〜、
どれどれ、アッ、疑いが晴れて日本に帰れるって書いてますよ。」
「ヤッタァ〜!、」
「あれ、今は8月で冬だから、飛行機が出せないって
書いてますよ・・・」
「何んでだよ〜、8月は夏だろ〜、」
「アッ!、ここは南半球だから、日本と反対だよ〜!」
「アレ〜、誰もいないっすよ〜、」
「おまけに、食料が無くなってるよ〜」
「しょうがないっす。ペンギンでも、取るしかないっす。」
「うちらは、タロー、ジローかよ!!」
終わり。
- 209 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時49分10秒
- ごっちんが卒業してから四ヶ月ほどたった日
いつものように寒い日で、いつものように仕事だった
そして、いつものように一日の半分が過ぎていった
ただ、私は疲れていたのか、最近やる気が無くて
なんだか少しセンチメンタルだったのかな
- 210 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時50分46秒
- 今日の私に残った仕事は溜まった
雑誌からのアンケートを答えるだけになっていた
私、なっち、高橋、小川、新垣、紺野の五人は
結構新しそうな、陽の光がさしこむ白い部屋で
ただもくもくと手を動かし続づけていた
事務所の人もいなくて、音を立てる物もなくて
不思議なくらい静まり返った部屋はどこか冬らしい
私はそんな鉛筆の音しかしない場所で
ただ、ボーっと何も書けずにいた
でも別に書くのが大変という訳ではなかった
確かに、書かなければいけない事は多かったけど
ただいつものように飯田佳織らしい
半分決められたような答えを書けばいい
ただそれだけのことである訳で、
別に誰かが飯田佳織の様に書いたところで
実はそんなに大差ないようなそんな仕事で
だから誰を見てもどこかもう仕事を終えた満足感
みたいなものがあって、どこか楽しそうにも見えた
私もいつもならこの後の予定でも考えて
浮かれモードにでもなっていただろう
- 211 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時52分01秒
- でも、なぜか私の気分はさえなかった
別にまだ働き足りないと思っていた訳じゃない
だいたい私達は相変わらず毎日忙しくて
『休みたい』、そう思う日も少なくなかった
それにその日はひさしぶりになっちが遅刻した以外、
本当に特にに何もない平和な日だったはずで
だから今日のように楽な日は
当然いつもの私なら喜んでいたはずだったんだけど…
でも、もし質問が「今の気持ちは?」なら
『やってらんないよ』かな
- 212 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時53分27秒
- カオリ、カオリってば。」
私の耳に聞きなれたなっちの声が入ってきて
私は急に現実に引き戻されるような気がした
気がつけばなっちは私の隣に立っていて
なんだか心配そうな顔で私を見ていた
私はそんな顔が何故か無性にムカついた。
「また交信?ボーっとしてちゃだめだよ…」
…自分だって、遅刻してたくせに…
「それにまだ全然書けてないっしょ、ほら、…さっさと書いちゃいなよ。」
…うるさいよ…
「それとも具合でも悪い?だったら……」
私の中で何かがキレた
「もう、いいから黙っててよ!!」
わたしは思わず大声でさけんでいた
自分でも驚くぐらいの大声を、
本当に心配そうに私を見ているなっちにむかって
- 213 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時54分03秒
- なっちは一瞬たじろいで、そしてすぐに少し怯えた顔で
「ごめん」、そういって少しうつむいて私から目をそらした
そして今にも泣きそうなそして何かを訴える様な目をして
早歩きで逃げるように部屋を出て行った
バタン、というドアの閉まる音が虚しく部屋に響いた
なんだかそれが私を責めているように聞こえた
『あーあ、なにやってんだろ私』
- 214 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時54分34秒
- 気がつけば広い部屋に二人だけだった様で
一人残された私の心はますます重くなっていく気がして
なにひとつ音を起てる者が消えた部屋は
なんだかとても冷たく感じて、
まるで私が世界でいちばん孤独で
罪深い罪人であるかのような気さえさせた
『なっちにまた嫌われたかな』
私は少し溜息をついて上を見上げながらそう思った
でもそうは思ったんだけど、それでも何故か
私は一歩も動く事ができなくて
ただもう一度深くため息をついた
なんだかどんどん世界が暗くなった
思わず何かにすがる様にまわりを見渡すと
窓から見える空はほんとうに真っ青で
壁、天井そして机までも不思議なくらい真っ白だった。
「あーあ」
私はそう呟いた
- 215 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時55分23秒
- それから、少したってようやく私は
半分以上白紙のアンケート用紙に
すっかり冷たくなっていたペンで
ほとんど読むこともなく書き始めた
次々と空欄は消えていった
再び部屋は音を取り戻していた
『さっさと書いて、明日謝る』
私は心の中でそう呟いていた
一瞬感じた不安や虚無感は
逆に私に現実を認識させてくれていた
そして目のまえのどうでもいい仕事は
当初の予想どおりに簡単に片付こうとしていた
- 216 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時56分09秒
- そしてそれからはあっというまで
気がつけば最後の質問を迎えていて、
ふくろうが誰かを求め鳴く頃までには
十分に今日の仕事は終わりそうだった
一瞬にして片付いた仕事に
だいぶ暗くなって来ていた外とは対照的に
私の気分も少しは明るくなっていたようで
私は小学生が朗読をするみたいに、
ゆっくりと質問を読み始めた。
「飯田さんの忘れられない思い出は?」
なんだか身体が熱くなった
私の脳は猛スピードで回転し始めた
- 217 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時57分14秒
- 『・・・みんなの卒業かな・・・』
でも結局出たのは本当にありきたりな答えだった。
なんだか自分でも嘘っぽくも思えてきて
自分の事なんだけどなんだか分からなくなってきて
また、ため息が出た
でも、私はやっと自分と向き合えた
- 218 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時58分01秒
- 『だって確かに私は泣いたんだ、苦しかったんだ』
明日香のときも彩っぺのときも
紗耶香のときも裕ちゃんのときも
ごっちんのときもタンポポのときも
『卒業ってとき、いつもいろんな思い出が浮かぶんだ』
がんばった事、楽しかった事
苦しかったこと、つらかった事
『…そしていつも私は後悔するんだ…』
ケンカしたり、何もできなかった事を…
そしてやっと私は気付いた気がした
私がどうして何も楽しめなくなっていたか
それでもどうして今ここにいるのかを
- 219 名前:なんだか寒い日 投稿日:2003年01月18日(土)07時59分17秒
- 外で誰かが歩く音がして私は現実に戻った
そこはなんだかさっきよりずっと明るかったけど
『あやまらなくっちゃ、なっちに』
私は走った、不思議と疲れなかった
少し視線は感じたけど…。
なんだか寒い日だった。
でも私は、私達は負けないと思う。
どんなことがあっても必ず立ち上がるんだ。
また、おもいでが創れるように・・・。
- 220 名前:作者 投稿日:2003年01月18日(土)08時01分05秒
- 終わり
- 221 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時23分15秒
- あたしは自分がそれほど頭が良いとは思ってない。
でも、亜弥ちゃんの思考は読める、ような気がする。
そしてその結果導き出される答えは、亜弥ちゃんにもそう
思われているんだろうなということ。
会社のロビーのソファーに2人して肩を並べている。
始めは戸惑ったけど、この肩先が触れ合うほどの距離にももう慣れた。
「大丈夫だよ。美貴たん、頑張って」
「うん…分かった!頑張る!」
お互いにガッツポーズの白々しさは百も承知で気付かぬふり。
あたしは自動ドアを開けて入って来た亜弥ちゃんのマネージャーさんに目を向けた。
車の準備が出来たみたいだ。
- 222 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時24分41秒
- 「ありがとね。じゃ亜弥ちゃん、気ぃつけて帰んなね」
亜弥ちゃんの体がぴくりと動く。
もしかしたら、ていうか確実に、ゴハンとか誘ってくれるつもりだったんだろう。
言葉に出来ない気持ちを分かり合える大事な友達。
でも今日は、だからこそ一緒にいたくない。
「ん…うん。美貴たんもね…」
2人で立ち上がり、亜弥ちゃんの背中をマネージャーさんに軽く押し出すと、
彼女までが軽く驚いたような顔をした。
「あれ、藤本は一緒じゃないの?…ちょっと待ってて…」
- 223 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時25分26秒
- そしてあたしのマネージャーさんを呼びに行こうとする。
あたしはそれを呼び止めた。
「あ、いいですよ。自分が行けば早いし」
あたしのマネージャーさんは急な仕事が入ったせいで残業をしている。
多分マネージャーさん同士の間で、あたしの帰宅も亜弥ちゃんと一緒に
面倒みるって話が出来ているんだろう。
――人の知らないとこで勝手に決めないでよ。
一瞬腹立たしくも思ったものの、こんな風に、どちらかのマネージャーさんが
あたし達を2人セットで送って行くことは、実際よくあることなのだ。
あたしは、笑顔を貼り付けた。
「じゃ、お疲れ様でしたっ」
「悪いね。お疲れ様」
2人の真ん中辺りに視線を向けて軽くお辞儀をし、踵を返してエレベーターに向かった。
やや遅れて亜弥ちゃんの返事があたしの背中に追いついたけど、あたしは振り向かなかった。
今日、あたしはモーニング娘。加入を告げられた。
- 224 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時25分58秒
- 目の前のドアが閉まって、1人になったあたしはため息をついて事務室の階を押した。
箱はスムーズに動き出し、見上げたランプは途中止まることもなく目的の階に移動する。
良かった。今は誰とも顔を合わせたくなかったから。
エレベーターを降り、事務室の前を静かに通り抜け、重い金属のドアを開けると外階段がある。
あたしは3階分階段を登り、屋上に上がった。
ここはあたしの、ささやかなお気に入りの場所だ。
携帯を取り出してマネージャーさんに連絡を入れる。
「あ、もしもし。あのー、あたしです。上手いことタクシー捕まえたんで…はい…そうです。
…明日は6時ですよね……はーい。…じゃあ…お疲れ様ですー」
通話を切ったあたしは、給水塔の陰に隠してある木箱を持って来て、足元に置いた。
こうしないと、地上を見下ろしながら手摺に凭れて、
物思いに耽るなんてことも出来ないのだ、あたしの身長では。
ちゃんと割れてもいいお皿を使って夫婦喧嘩する主婦みたいだなあなんて思って、
あたしは少し笑った。
- 225 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時26分28秒
- そう。あたしのモットーは『楽しむ』こと。
でも今は、何て押し付けがましい言葉だろうと思う。
つんくさんに娘。加入を言われた時のことを思い出す。
《別に藤本が悪いっちゅう話やないんやで》
――楽しめない。楽しみたくもない。
《娘。のレベルアップにもなる》
――情けない。恥ずかしい。悔しい。
あたしを応援してくれた家族や友達、ファンの人、スタッフさんはどう思うだろう。
それに娘。のファンの人には何を言われるだろう。
《藤本自身のステップアップにもなる》
あたしは重ねた両手の上に額を乗せた。
鼻の奥がつーんと熱くなって来る。目蓋をぎゅっと閉じ、左手の甲に爪を立てる。
――亜弥ちゃん。
彼女に失望されることが何より怖かった。
やっとその背中に追い付いたと思っていたのに。
親しく会話を交わすようになってすぐ、多分彼女はあたしを頼りに思ってくれるようになった。
誰かに甘えられることはくすぐったかったけど、自分が強くなった気がして嬉しかった。
彼女の影響力は空恐ろしいものがある。
気付いたらあたしの物事をはかるものさしが、亜弥ちゃんになっていたのだから。
- 226 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時27分20秒
- 「…ふぇ…ぶぇっくしょ!…へいっくし!…へっくし!」
少し背の低いこのビルに向かって、示し合わせたような
強いつむじ風が、立ち並ぶビルの隙間からびゅうっと吹き降りた。
鼻をすすりながら、あたしは時計を見た。
何時の間にか、もう30分もここにいたらしい。
十分過ぎる程に頭も冷えた。風邪をひかないうちに帰らなければ。
「ちっくしょー…」
口に出して呟いた。
答えなんて出せなくても、あたしは忘れない。
この声。左手の痛み。静かに瞬く地上の星。
冷たい夜の匂いと、涙のしょっぱさも。
あたしは木箱を降りて、元通りに隠した。
階段ホールに足を向ける。
途端、視界の端に映ったものに、あたしはギョッとした。
- 227 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時28分09秒
- 恐る恐る近付くと、子供の幽霊かと思われたそれは、
顎を胸元に埋めるようにしてしゃがみ込んだ人間だった。
「遅い…」
そして息を呑んだあたしの足音に気付いたようにゆっくりと顔を上げたのは、
かのアイドルサイボーグ。
「…あ…あ…亜弥ちゃん!何やってんの!」
「『何やってんの?』…ちょーっ、と待って。それはあたしの台詞でしょ」
亜弥ちゃんは『何やってんの?』に似てない物真似を入れて、
『あたしの』を噛み締めるようにして言葉を返す。
あたしは構わず質問を続けた。
「…いつからいたの」
「最初から」
亜弥ちゃんは少し申し訳なさそうに、だけどしっかりお得意の上目遣いをあたしに向けた。
あたしは彼女の思惑通りに、ぽかんと毒気を抜かれてしまう。
そもそも、あたしを心配してくれたんだろうから。
- 228 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時29分04秒
- それにしても、亜弥ちゃんにバレないように、
わざわざエレベーターを途中下車したっていうのに。
やっぱり亜弥ちゃんには分かっちゃうんだなあと、
あたしは妙なところに感心した。
――で、そういうとこが勘違いのもとなんだ。
あたしは咳払いをして、ようやく微かな違和感に気付く。
その行動や言葉をあたしが負担に思うかも知れないってことに、
聡明な亜弥ちゃんが思い至らない筈がないけど。
亜弥ちゃんは、あたしの思考を読んだように呟いた。
「あのねえ美貴たん。あたし、今日決めたのよ」
「…何をさ」
亜弥ちゃんの手が、あたしの両の二の腕をがっちりと掴んだ。
その指の力とは裏腹に、言葉はもぞもぞと歯切れが悪い。
「…だからぁ、美貴たんはモーニング娘。になるでしょ?
美貴たんは1人じゃなくなるのよ。それこそ、売るほど人がいるの!」
「亜弥ちゃん…それ、なにげにかなり失礼だから。…あたしに対しても」
苦笑いを浮かべたあたしの顔を、亜弥ちゃんは思いつめたような表情で見据えた。
「あたしじゃ、頼りにならないかなあ!?」
- 229 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時29分48秒
- 「え…」
あたしの胸がドキリと鳴った。
返事を待たずに飛び込んで来た亜弥ちゃんの体は、冷え性のあたしよりも冷たかった。
「…なーんちゃって」
そのままの姿勢で、あたしの耳元で悪戯っぽく呟く。
あたしは亜弥ちゃんの肩に手を置いて、とにかく早く気を逸らそうとした。
果たして現れたものは、片目アイマスクの人形だった。
――なーみをじゃぶじゃぶ…。
「…おーい。何とか言ってよ」
ちょっと自覚がなさすぎるよ。
――くーもをすいすい…。
「美貴たん、心臓ドクドクしてるよ」
お願いだから、気を持たせるようなこと言わないでよ。
――…………。
亜弥ちゃんはあたしの肩口に鼻をすり寄せた。
「…矢口さんとか、保田さんとかだったら…聞いてあげれるのかな?
…いつも美貴たんから話してくれるの…待ってたんだけどさ……待ってたら、
誰かに持ってかれちゃうかも知れないじゃん…」
体越しに直接伝わる声が震えていて、あたしははっとする。
- 230 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時30分57秒
- 「…亜弥ちゃん」
あたしの頭が、急激な速さで冷静さを取り戻していく。
やけに亜弥ちゃんを小さく感じた。
そうだよ。このコは、あたしよりも2つも年下なんだ。
しっかりしてるように見えるけど、あたしが小3の時の1年生だったんだ。
「…あの…あたし…あのさ、そのうち言おうって思ったんだけど
…あたしさあ、亜弥ちゃん…」
「…ププッ」
亜弥ちゃんの肩が小刻みに揺れた。
訝しく思ったあたしが顎を引いて亜弥ちゃんの顔を覗き込もうとすると、
勢いよく顔を上げた亜弥ちゃんの後頭部に鼻を強打されてしまった。
「いたっ!」
「あっ美貴たんごめん!…ふ…ぷぷ…あはははは!」
痛がるあたしをよそに、亜弥ちゃんは頭とお腹に手を当てて、苦しそうに笑っている。
あたしは鼻を押さえ、呆然と立ち尽くした。
こういう時、つい隠しカメラを探してしまうのはあたしだけだろうか。
まさに狐につままれたような気持ちだった。
- 231 名前:冬の日 投稿日:2003年01月19日(日)18時32分36秒
- ややあって、亜弥ちゃんは喉をひゅうひゅう言わせながらあたしに向き直った。
「美貴たん、ごめーん。分かったから、今日はいいや」
「…分かったって…今日はって…」
「だって、今日は色んなことあって大変だったしょ?」
亜弥ちゃんは嬉しそうに笑って、あたしの手を取った。
あたしはまだ言葉が出ない。
「ごめんごめん。ほら、風邪引くよ?もう帰ろう?」
亜弥ちゃんの目尻には、確かに光るものがあり。
「今日さ、やっぱりウチにおいでよ。…もう気が済んだでしょ?」
泣くほどおかしかったのか、それとも違うのか、
あたしにはやっぱり分からなかったわけで。
「マネージャーさん達、下で待ってるよ」
そのくらい知ってたけど、結局、あたしの知ってる松浦亜弥なんて
ほんのちょこっとでしかなかったんだ。
「…ったく」
でも、あたし達にはまだ時間がある。
これから少しずつ知っていけばいいんだと思う。
この先、もしもあたしの中の松浦亜弥が変わってしまってもいい。
取り敢えず、どんな彼女との駆け引きも、あたしは楽しめる自信があるから。
―――終わり
- 232 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月20日(月)11時31分16秒
- みきあや(・∀・)イイ!!
とても初に思えませんよ(w
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月20日(月)12時30分40秒
- 同じくあやみき萌えです。
タイムリーネタで良かったです。
シリアスでもコミカルでも合いそうな二人ですね。
- 234 名前:冬の日を書いたモノです 投稿日:2003年01月20日(月)20時26分31秒
- >>232 ありがとうございます。突っ込み所満載なのに今頃気付いたんで恐縮です…。
>>233 特番を見てしまうと話が違い過ぎて載せられないに違いないと思って焦りました。
少しでも何か感じて頂けたとしたらすごい嬉しいです。ありがとうございました。
- 235 名前:アイドルは大変だ。 投稿日:2003年01月22日(水)23時09分12秒
- 「ねえねえ、ミキスケ、聴いて聴いて!
今度私、また写真集出すの〜!ハワイよ〜!」
「ふ〜ん、」
「でさ〜、今度は水着姿を披露しちゃったァ〜」
「水着って、恥ずかしくなかった・・・」
「水着は恥ずかしかったんだけど、衣装があまりにも
可愛いかったから、もういいや、見せとけ見せとけって
思ってさァ〜」
「へぇ〜」
「で、これは写真集に載らなかった写真なの〜。で、
これなんか、真里ちゃんに対抗して、ひもパンに
挑戦したのォ〜」
「あ、あやっぺ、この写真ひもがほどけてお尻丸出し!」
「ガビョ〜ん!!!!」
終わり。
- 236 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時09分32秒
- 愛が足りないと思うのよね。
「…ん?何?どうしたの、梨華ちゃん?」
じっと見つめるわたしに、ひとみちゃんは不思議そうな顔を返す。
「なんでもない。」
「ふーん。」
そして、すぐに視線を雑誌に戻してしまう。
もーちょっと突っ込みなさいよ!
「…はぁ。」
ため息を吐いても、無視。
ひとみちゃんと付き合い始めて、一年とちょっとが経った。
前は良かったな〜。ひとみちゃんはわたしに夢中〜っ!!って感じでさぁ…。
わたしが嫌がっても、無理矢理キスして来たり押し倒して来たり…。
それなのに今は、『いてもいなくても同じ』って感じ。
わたしじゃなくてあいぼんと付き合ってるんじゃないの!?って感じ。
今だって、久々にひとみちゃんのお部屋で二人っきりなのに…わたしに触れようともしない。
…思い返してたら、あったま来た。
「…もー、許せない。」
「へ?」
ひとみちゃんはようやく、わたしの顔を見る。…そのトボケた顔が、今は怒りの炎に油を注ぐ。
- 237 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時10分12秒
- 「ひとみちゃん、わたしの事好き!?」
「な、何言ってるんだよ?」
「いーから答えてっ!!」
「す、好きに決まってんじゃん。付き合ってるんだし。」
「どのくらい!?」
「ど、どのくらいって…。」
汗をたらたら流すひとみちゃん。…なんで即答できないの!?
…質問を変えよう。
「あいぼんとわたし、どっちが好きなの!?」
「はぁ!?」
完全に困惑顔。…駄目だこりゃ。この人、わたしが『欲しい答え』をわかってない。
「あいぼんはあいぼんで、梨華ちゃんは梨華ちゃんじゃん。」
「わたしが聞きたいのはそーゆー事じゃないのッ!!!」
「えぇぇ〜!?」
「ねえ、答えてよ。わたしの事、どれくらい好き?ひとみちゃんの中で、わたしはどれくらいの存在なの?」
内心、ハラハラしながらきいてみる。
ひとみちゃんはちょっと黙った後、困ったよーな笑顔を浮かべて言った。
「…ど、どれくらいって…そーだなぁ。ガッツ石松さん以上べーグル以下?」
…ひとみちゃんを引っ叩いて逃げたわたしに、誰が文句を言えるのかしら?
- 238 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時10分58秒
「浮気してやる!!浮気してやるぅぅぅぅぅぅ!!!」
部屋でピンクのプーさんを抱きしめて泣くわたしを、柴ちゃんは冷静に見つめていた。
「…浮気するって、具体的に誰とするのさ。」
「柴ちゃん。」
「…うわっ。やめて。」
柴ちゃんは思いっきり顔をしかめる。
「な、なんでよぉ!」
「なんでもクソもないっての。私を巻き込むなって。」
「ふふふ…もう呼ばれてこの部屋に来た時点で、十分巻き込まれてるわよ。」
「うわぁっ!しまったぁ!」
頭をかかえる柴ちゃんから視線を外し、窓の外を眺める。
「…ガッツ石松以上、べーグル以下って何よ…。」
「よっすぃー、なかなか面白いよね。」
「面白くなぁぁぁぁぁぁいっ!!!」
深い深いため息を吐く。
「…やっぱもう、わたしの事飽きちゃったのかなぁ。」
なんか、鼻のあたりがつーんとする。
「最近、あいぼんとかののにばっかくっついてるし。わたしの事キショいとか言うし。」
「梨華ちゃんがキショいのは前からじゃん。」
柴ちゃんに牙を剥き、シャーッと威嚇する。
「…あんた獣か!?」
そんな柴ちゃんの呟きは無視。
- 239 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時12分17秒
- 「あ〜あ…久々にネガティブ石川になっちゃう…。」
「大丈夫。ポジティブ石川はただ、空回りしてるだけだから。」
また牙を剥いて、シャーッと威嚇。柴ちゃんは黙って携帯をいじりだした。
「どうしたら、また前みたくラブラブになれるんだろう?やっぱイメチェンが必要なのかな?」
「…あ、もしもし?柴田だけど。」
…くそう。柴ちゃんってば電話なんかかけて…。
これだから女の友情って嫌ぁよね!モロ過ぎなのよ!ったく、邪魔してやろうかしら…。
「実は今、私ってば梨華ちゃんに誘惑されちゃってんだけど。誘いに乗っちゃって良い?よっすぃー。」
「んなっ!!?」
柴ちゃんを振り返った直後、柴ちゃんはニヤケ顔で電話を切った。
「柴ちゃん!?」
「準備オッケ〜☆んじゃ私、帰るから。さ〜てよっすぃー、何分後くらいに来るかな〜?」
- 240 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時12分55秒
- 「ちょ、ちょっと待ってよ!!!」
柴ちゃんのセーターを掴む。
「…こ、こなかったら!?来なかったらわたし、どうすれば…!!」
「よっすぃーん家からここまで、何分くらいかかる?」
「え!?…た、多分…三十分くらい?」
「それじゃ、万が一来なかった時の為に、三十五分だけ近所のコンビニにいてあげる。
こなかったら、携帯に電話ちょーだい来てあげる。だけど、三十五分経っても連絡なかったら、私は帰る。」
柴ちゃんはコートを着て、親指を立てた。
「ぐっど、らっく♪」
柴ちゃんの後姿を見送りながら…わたしは、ぼうぜんと立ちすくんだ。
- 241 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時13分34秒
一分が、一時間にも一日にも感じる。柴ちゃんがひとみちゃんに電話してから、まだ十分も経ってない。
こ、来なかったらどうしよう…?
そればっかりが頭の中を駆け巡る。
…もう、柴ちゃんに電話かけちゃおうおかな。絶対来ないから、もっかい家に来てって。
あ、コンビニいるんなら何かお酒買って来てもらおうかな。今夜は飲むぞー!みたいな。
でも…ひとみちゃんを待ってみたいって気持ちもある。
…もう、わたしは一体どうすれば良いのか…。
と、その時。
がちゃっ!!
「ひっ!?」
いきなり、玄関の鍵が開いた。そして、扉が乱暴に開けられる。
「梨華ちゃんっ!!!」
入って来たのは、ひとみちゃん。
「・・・・・・。」
来て、くれたんだ…。なんか目頭が熱い。
「ひ…ひとみちゃ…」
ばしっ
頬を叩かれた。
「何やってんのさ!!よりにもよって柴ちゃんに…!!」
「な、何もしてないもん!!」
- 242 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時14分49秒
- 「だって…」
言いかけて、わたしの部屋を見渡して…ひとみちゃんは目を丸くする。
「…あれ?柴ちゃんは…?」
「…帰った。」
「はぁ!?」
驚きの表情のまま固まるひとみちゃんに、わたしは抱きつく。
「…来て、くれたんだね…。」
「そ、そりゃー来るでしょ…あんな事言われたら…。」
「アレが嘘だとは思わなかったの?」
「え?」
素っ頓狂な声を出す。
「アレ、嘘だったの!?」
「うん。」
「な…なんだよぉ…!!」
ひとみちゃんはへなへなと床に座り込んだ。
- 243 名前:愛情 投稿日:2003年01月31日(金)15時15分19秒
- 「マジかと思って…タクシー使って来ちゃったじゃん、ウチ…。」
「…わたしが他の人とそーゆー事するの、嫌?」
「嫌に決まってんじゃん!!梨華ちゃんはウチのだ!!」
背中に回された腕の感触に、わたしは…最高級の幸福を感じた。
「それじゃ、もう一度訊くよ?」
「ん?」
「わたしの事、どれくらい好き?ひとみちゃんの中で、わたしはどれくらいの存在なの?」
ひとみちゃんはちょっと黙った後、耳元で囁くようにして言ってくれた。
「…誰よりも何よりも、愛してる。梨華ちゃんが一番だよ。」
「よろしいっ♪」
久々に、熱い夜になりそうです♪
〜FIN〜
- 244 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時37分40秒
- いよいよバレンタインが数日後に迫って来た。
去年までは、義理チョコばかりをあげていたが、今年からは、本命はもちろん、
美貴に渡すつもりの亜弥だ。
亜弥と美貴が付き合い始めて、初めてのバレンタインである。
亜弥の気合いの入れ方も半端ではなかった。
「みきたんも、チョコ大好きなんだよねぇ…」
自分もチョコが大好きであるが、美貴も亜弥に負けず大好きで、
二人して食べ過ぎで、鼻血を出した事もある。
「どういうのが、いいのかなぁ…。奇をてらって、鮭トバ入りチョコとか
あげたら…やっぱり、ダメかなぁ…」
考えてるだけでも楽しいので、自然と顔が緩んでしまう。
きっと、美貴は、何をあげても喜ぶ筈だ。
「まぁストレートにいきますか!」
亜弥は、ポンと手を叩き、ニコッと笑った。
- 245 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時38分54秒
- バレンタインの前日の夜、亜弥の家のキッチンは戦場と化していた。
甘くとろけそうな香りが、キッチンを漂わせている。
亜弥は手作りチョコに奮闘中である。
と、言ってもチョコを溶かして型にハメるだけなのだが。
悪戦苦闘の末、どうにか形になり、後はラッピング。
予定より早く仕上がった亜弥は、ご満悦である。
そして、美貴の家を目指して、亜弥は自転車を走らせた。
- 246 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時39分41秒
- 2月14日0時きっかりに、会って渡す。
そう、誰よりも先に。先に渡したい。この気持ち届けたい。
前もって、美貴には夜遅くに、家に行く事は伝えてある。
夜遅いから、美貴から亜弥の家に行くと言ってくれたのだが、それではダメだから
断固として断った亜弥だった。
亜弥は美貴の家の前に行くと、深呼吸をする。
自転車を飛ばして来たから、少しだけあがっている息も整える為だ。
時計を見る。0時までには、あと数分…。
チャイムを押そうとしたところで、後ろから声がした。
「亜〜弥ちゃん…」
「み、みきたんっ!」
まさか、外で待ってるとは思わなかった亜弥は、驚いて振り返った。
「やだ、おどかさないでよ…」
危うく、チョコを落とすところだった。
と、言うより隠し持って行くつもりだったのに、美貴から既に丸見えになっている。
「やだぁ、もう。みきたんのせいで、計画台無しぃ〜…」
遅いと思いつつ、亜弥は後ろにチョコを隠した。
- 247 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時40分21秒
- 「何が?なんか、あった?」
美貴が近づいてくる。
亜弥は、作り笑顔で答えた。
そして、亜弥の前で、鼻をひくひくさせる。
「なぁに?みきたん……」
亜弥は、顔を少しだけ退く。
「亜弥ちゃん、すっごく甘い匂いがするね…。
なんか、チョコレートって言うかさぁ…」
分かってて言ってるのなら、美貴は確信犯だ。
それを聞いて、やはりもう1つの案にすれば良かったかなと後悔する亜弥。
それは…、全身をチョコで塗って(現実的には無理な話だが)自分を
ラッピングして、美貴に『丸ごと食べて♪』と言うバカげたものだった。
「そうかなぁ…」
まだシラを切る亜弥。
しかし、時間は0時を回ろうとしている。
時計をチラチラ見ながら、亜弥はタイミングを見計らっていた。
- 248 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時41分02秒
- ピーッと、時計のアラームが鳴る。
キョトンとする美貴に、亜弥は、隠し持っていた包みを美貴に差し出した。
「バレバレだったみたいだけど、みきたんに、愛を込めてハイ!」
亜弥は照れ隠しの為か、美貴にチョコを押しつけた。
「え?なに?私に?」
どうして?と言いたげな美貴に、亜弥の方も、同じようにどうして?と言う顔で返す。
「もしかして、忘れてる?今日が何の日か……」
こういうイベントには、あまり興味のない美貴だから、充分あり得るかもしれない。
「なんかあったっけ?て言うか、今日って何日だっけ?」
髪の毛を掻きながら、美貴は素で返した。
- 249 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時41分38秒
- 「ホント、みきたんは、鈍感なんだからなぁ…。とにかく開けてみてよ」
亜弥は苦笑いしながら、美貴を促す。
「う、うん…」
美貴は包みを開ける。
中から出て来たのは、まだ完全に固まっていない手作りのチョコがかかったクッキー。
『ミキタンへ』なんて文字まで入っている。
「ぉぉっ。ありがと、亜弥ちゃん!」
美貴は嬉しそうだ。
「いやいや〜。当然の事です」
「別に明日でも良かったのに…」
しかし美貴は、かなり嬉しいのか、ニヤニヤしている。
「やっぱり、一番先に渡したかったからね〜。みきたんに!」
「ありがと。食べていい?」
「うん…」
亜弥も嬉しそうに返す。
- 250 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時42分13秒
- 「あ、まだあったかいよ。とけちゃいそう…」
美貴は、箱から取り出すと口に入れた。
「どう?」
「…んぅ、ぅまぃ…ょ…ぁゃ…ちゃん…」
口をモグモグさせながら、美貴は答える。
「アタシと、どっちが美味しい?」
それを聞いた美貴は、いきなり咽せ込んだ。
「やだ、みきたん、汚いぃ〜!」
亜弥は美貴の背中をさする。
「亜弥ちゃんが、そんなこと言うから、吃驚したんだよ…」
美貴は咳き込みながら答える。
「吃驚する事じゃないじゃん…」
亜弥は、言って欲しいの…と言わんばかりに、美貴を見つめた。
- 251 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時42分47秒
- 「言わなくたって、分かるでしょ?」
「言わなくちゃ分からないもん…」
「じゃぁね…、教えてあげる」
美貴は、困ったと言う顔をして、答える代わりに亜弥に素早くキスをした。
「あーっ。不意打ちだぁ!」
今度は、亜弥が照れる番だ。
「これが、答えだ!分かったか、松浦くん…」
ふふっと美貴は、腰に手を当てて偉そうに答えた。
美貴も美貴で必死に照れを隠そうとしている。
- 252 名前:【ヴァレンタインは一番乗り】 投稿日:2003年02月08日(土)15時43分24秒
それが分かるから、亜弥の嬉しさも倍増する。
そう、なかなか美貴からキスをする事は、今までだって数える程しかないのだから。
「狡いみきたん。もう少しゆっくり教えてくれないと分かりません」
亜弥も負けずに言い返した。
「答えは一回しか教えないんだよ…」
美貴は、そう返されるとは思わなかったらしく、しどろもどろになる。
その表情が、また亜弥には可笑しく映った。
「じゃぁ、アタシからみきたんに、教えてあげるね!」
亜弥は美貴に抱きつくと、くちびるを重ねた。
「「………」」
何度も重ね合わせ、段々と深いものにしていく。
美貴は、下げていた手を亜弥の腰に回した。
キスの味は、甘いチョコの味がした―――。
『Happy Valentine's Day!』
− The END −
- 253 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月08日(土)22時25分56秒
- みきあやヴァレンタイン(・∀・)イイ
全身チョコのコーティングを想像(;´Д`)ハァハァ
- 254 名前:白 投稿日:2003年02月09日(日)13時17分46秒
- 「ねぇ、紺野ちゃん。一緒に、ご飯食べに行かないれすか?」
仕事が終わって、楽屋で帰る準備をしているとこでした。
もう外は吐く息が白くなるくらい寒くなっています。
今日ははやく家に帰ってコタツに入っておイモさんを
食べたかったんですが…。
大好きな辻さんに、誘われてしまいました。
「もちろんです。ご飯食べにいきましょう。」
コタツに入っておイモさんを食べるより、
辻さんとご飯食べにいくほうが良いのです。
辻さんが何かを食べてるところをみてると、幸せになれるんです。
辻さんも食べてる時が幸せっていってました。
- 255 名前:白 投稿日:2003年02月09日(日)13時19分03秒
- 「今日は何食べにいきましょうか?」
「寒いから温まるものがいいれすよね」
「ラーメンとかですか?」
「そうれす!らぁめんがいいれす!紺ちゃん、よく気がついたのれす」
辻さんは八重歯をのぞかせながらにっこりと笑いました。
私も一緒ににっこりと笑います。
辻さんの笑顔をみると幸せな気持ちになれるんです。
ココロがあったかくなるんです。
- 256 名前:白 投稿日:2003年02月09日(日)13時20分08秒
- 私が白いコートを着てマフラーをすると、辻さんは
「紺野ちゃん、なんか可愛いのれす」
ってまたにっこり笑いました。
私もにっこり笑います。とてもあったかくなりました。
二人で楽屋をでて、外にでました。
「寒いから、手つなぐのれす」
また辻さんが笑いました。
私も笑って辻さんの手をにぎります。
二人でラーメンを食べて、二人で電車に乗って
二人でたくさん笑いました。
帰りに辻さんは
「一緒にご飯食べにいってくれてありがとれす」
ってほっぺにキスしてくれました。
またあったかくなりました。
―――――終わり
- 257 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時18分20秒
- 『3番ホームより東京行き○○○3号が発車いたします』
「よっすぃー頑張って!」
「変な男に引っかかるんじゃないわよ!って泣いてんじゃないわよ!」
「泣いてなんかないよ…ありがとう、うち頑張るよ!」
見送りにきたみんなにお礼をしてるよっすぃー。
- 258 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時24分05秒
- そんな様子を遠くで見てる私を
「ホラっ」
と、柴ちゃんとごっちんがよっすぃーの所まで引っ張っていった。
私に気づいたよっすぃーは私の大好きな笑顔で
「あっ、梨華ちゃん。今までありがとう!MDもありがとね!」
「うん…頑張ってね」
ギュッとポケットの中で手を握り締めた。
そんな言葉しか言えない…もっと言いたいことがあるのに!
- 259 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時28分25秒
- いつもその笑顔が私に向けられるだけで嬉しくて嬉しくて、
思わず『ハッピー♪』って叫んじゃいそうになるのに
今日は素直に喜べないよ。
(大好き…大好きだよ)
とうとう言えないままよっすぃーは遠くの街に行ってしまう。
何回も、何回も書き直した手紙は私のポケットの中…。
- 260 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時35分15秒
- 「梨華ちゃん、原チャの免許取りに行こう!」
「何、急に!?ちょっとよっすぃー?」
いつも突発的なよっすぃーには驚かされてばかりだったけど、
よっすぃーと一緒が一つでも増えてとっても嬉しかった。
2日前の夜遅く
私は原チャリに乗ってよっすぃーに会いに行った。
徹夜で作ったオリジナルMD…
ずっと言えなかった言葉を託した曲たちも
長い旅の退屈しのぎになったらそれでいいから。
- 261 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時39分17秒
- 夜遅くに家に来たことにびっくりしながらも
「こんな時間にどうしたのさ!
てか、梨華ちゃ〜ん、髪の毛ぺッタンコになっちゃってるよ〜」
ヘルメットを取って変になった私の髪を
笑いながら直してくれたよっすぃー。
忘れないよ…。
- 262 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時45分12秒
- よっすぃーとは3年生になってクラスも分かれちゃって
私が自転車通学、よっすぃーが電車通学だったから
毎日楽しみにしてたのが、みんなと一緒に帰る駅までの時間。
「ん?梨華ちゃんどうしたの?うち顔何かついてる?」
「うん!目と鼻と口がついてる!」
なんだよそれ〜!とよっすぃーは笑う。
私はこっそり見てるのに気づかれると
こんな風に適当にごまかしてたけど
本当はね
夕陽に照らされてる横顔がとっても綺麗で見とれてたんだよ。
- 263 名前:love letter 投稿日:2003年02月11日(火)04時47分30秒
- 大好きだって、ずっとずっと思ってた…
何回も、何回も書き直した手紙は
『扉が閉まります』
ずっと私のポケットの中…。
END
- 264 名前:初心者作者 投稿日:2003年02月11日(火)04時51分38秒
- あとがき
読んでくれた皆さんありがとうございました。
某男性歌手の方の歌が元ネタです。
初めて小説書いてみて(歌の詩かなり使ってるけどw)
改めて難しいものだと思いました。
文章がおかしくなっちゃったりして…。
もっと勉強してまた書けるように頑張りたいです。
- 265 名前:その辺の作者 投稿日:2003年02月11日(火)17時31分10秒
五期メンいきます。
- 266 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時32分48秒
なんで、あなたに話しかけられると
なんで、こんなに嬉しいのだろう、
―――――心が高鳴るのだろう。
- 267 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時36分23秒
「愛ちゃん」
そう言ったあなたは私の肩を抱いて、
悪戯っぽく私の髪の毛に指を通したり、いじって遊んだり。
「……」
今、
私の顔は相当やばくなってるんだろうなぁ。
タコにも負けないくらい、
きっと、真っ赤になっているのだろう。
―――耳が熱い、体が熱い、頭が…あっつい…
- 268 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時40分05秒
「どうかしたの?なんか今日、暗いじゃん」
そう笑っていいながら、
あなたは髪を弄んでいた手を、ピタリと頬へくっ付ける。
私の熱すぎな頬と違って、
あなたの手は…ひんやりと冷たい。
…ばれたかな?
「そ、そんな事…ないよ…っ」
―――――私はそれだけ言うのが、精一杯
「愛ちゃん…?」
- 269 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時42分20秒
しばらく二人共無言でいると、
あなたの顔が徐々に近づいてきて…
ものすっごく驚いた、けど、…嬉しかった。
私はギュッと固く目を瞑った。
あぁ…やばい…頭がクラクラクラクラする…
まこっちゃん…
- 270 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時44分53秒
「小川ァ―――!」
「はいっ!?」
突然開かれたドアと同時に、
あなたはすぐに体を私の体から離す。
その行動は、普段冷静なあなたが焦っているかのようで
少し笑ってしまった。
それにしても…
……ちぇっ、キス…出来なかったな。
- 271 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時47分09秒
それでも良い。
ポンッと私の頭を1回叩き、
その後…優しく優しく撫でてくれて
私の再好きな、あなたの笑顔を見せてくれたから。
「愛ちゃん、また、後でね!」
「うんっ」
- 272 名前:。 投稿日:2003年02月11日(火)17時50分38秒
あなたが好き。
きっと、この気持ちはいつまでも変わらない。
「あーれー?
高橋、顔めっちゃ赤いよ。どうしたの?」
「何でもないですっ!」
そう答えた私に、
ちょっと苦笑いのあなた。
私も少し苦笑いで返して、それからとっておきの笑顔を返す。
――――あなたが、大好き。
FIN
- 273 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月11日(火)20時32分22秒
- まこあい最高…(*´д`*)
続きが読みたくなりますた。
- 274 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時23分47秒
- 最近ハマっているあやみきでいきたいと思います。
初書きなので多少変なところもあると思いますが
目をつぶってください。
- 275 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時26分55秒
夜の冷えた空気が漂う自分の部屋でため息をついた。
何かを確かに伝えたいと思うのだけれどうまく形にならなくて
次第に温もっていくケータイを握り締めたまま何度も。
部屋に残っていた愛しい気配はもうだいぶ前に拡散してしまった。
甲高い笑い声で大騒ぎしたのが嘘みたいに静か。
もうお家に着いたよね?
お風呂にでも入ってる?
TVとか観てるのかな?
もしかして、寝ちゃった?
『着いたら電話するよ』
・・・何してるの?
いつもは平気でワガママいうのに
いつもは強気で当たっていくのに
こういうときに限って妙に臆病な自分。
「バカ・・みきたんのバーカバーカバーカ..」
体温と同じくらいまで温まったケータイに八つ当たり
画面には不自然なくらい笑ってる自分
- 276 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時30分10秒
『もー、バカじゃないの?』
大好きな自分の大好きな待ち受け画面をみせたら
大好きな人にそう言われた。
『もー亜弥ちゃん自分好きすぎ!』
爆笑されて、ちょっと頭小突かれて、でも嬉しくて。
小突かれて嬉しいなんてちょっとアレな人みたいだけど
でもやっぱりみきたんのこと好きだし。
かといって待ち受けをみきたんにしたら
ホントに殴られるかもしれないし。
みきたんの照れ隠しは案外痛いんだから。
そういうとこももちろん好き、なんだけど。
- 277 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時32分53秒
「電話するって言ったのになぁ・・・」
別に催促してもいいんだけど、
こっちからかけてもいいんだけど、
メールでもなんでもいいんだけど、
なんでかな、なんかちょっと怖いんだ。
こうゆうことに関して変に弱気なんだ。
「もう寝るよー、みきたん。寝ちゃうよー・・?」
待ち受け画面のあたしは相変わらず笑顔。
今のあたしはどんな顔してるのかな・・?
「ばーか・・」
笑顔の自分から目をそらしてちょっと俯いた。
ヤバイ・・なんか泣きそう。こんなことくらいで・・
- 278 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時40分38秒
思わず目をつぶって奥歯をかみ締めた。
〜〜〜〜♪
「えっ、うわっ、わっ、わっ・・ハイッ」
突然大音量で流れだした自分の曲に
慌てて確かめもせずに通話ボタンを押す。
『あ、亜弥ちゃん?ごめんね〜もっと早くに電話しようと思ったんだけどさぁ〜』
「・・ううん、みきたん今までお仕事だったの?」
電話の声にじわっっと目の奥が熱くなった。
なのにちょっとそっけないくらいの声、平静を装ってる。
変なの。ずっと待ってたのに・・・変なの。
『や、ちょっと母親来るの忘れててさ〜家帰ったらアレ?みたいな・・』
嬉しいんだけど悔しくて。
直ぐにでもはしゃぎたいんだけどちょっと照れちゃって。
なんか変にぎこちなくなっちゃって
返す言葉が詰まってしまう。
- 279 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時41分23秒
『・・・亜弥ちゃん、怒ってる?』
そんな気配を察してかみきたんにしては珍しくおずおずと聞いてくる。
「怒ってない」
全然怒ってない。すごく嬉しいし、楽しい。
こんなにすぐ機嫌直るなんてゲンキンだけど
やっぱりみきたんの声は特別。
不安も不満も弱気の虫も全部吹っ飛ばしてくれる
あたしにとってはなによりの特効薬。
ときどき胸が苦しくなるけれど、
それはまぁ良薬口に苦し、だからね?
・・って合ってるのかな?間違ってる?ま、いっか。
でも胸が苦しくなるのは本当。
みきたんのこと、みきたんだけに反応して苦しくなる。
ホントにホントに好きだから。大好きだから。
誰にも止められないくらい。
- 280 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時44分58秒
「みきたん・・」
『何?』
「好き、大好き。みきたんが」
『・・・・ハァ?』
「好き」
『な、何急に好き好き連呼してんの、バカじゃないの?』
「みきたんは?あたしのこと好き?」
『亜弥ちゃん頭打った?つーか寝てたの?寝ぼけてんの?』
「好き?」
電話の向こうであたふたしてる気配。
みきたんは特攻に弱い。
弱気の虫はもういない。あたしには特効薬があるから。
「みきた〜ん?」
『なんでいきなりそんなん聞くの?』
「いいから、答えて、みきたん。ホラ、ホラ早くっ!」
『・・キに決まってんじゃん』
「え?聴こえないみきたん、も1回、もう一回言って?」
『も〜何?亜弥ちゃんやっぱ怒ってんの?』
「いいから、もう一回言って?言えミキスケ!」
『命令かよ!』
- 281 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時49分14秒
- 結局みきたんはのらりくらりとかわして小一時間以上も話して。
気がつけばさすがに寝なきゃやばい時間になってて、
防戦一方だったみきたんはこれ幸いと
「寝よ、寝よ」なんて急かすし。
結局聞きたい言葉は聴けなかったけど
あたしは十分満足しててこの休戦を受け入れた。
「も〜みきたんのばぁか。明日覚えてろよ〜」
『はいはい・・じゃぁまた明日ね』
「うん、じゃおやすみ・・」
そうは言ってもあたしからは切れなくて
ケータイの向こうの気配に耳をすませる。
- 282 名前:あやみきとか 投稿日:2003年02月13日(木)19時51分33秒
「?」
いつまでたっても会話終了の電子音は聞こえてこなくて
思わず口を開こうとした途端、
『あたしはちゃんと好きだから。亜弥ちゃんのこと』
ポン、っと放り投げられた一言。
一拍おいてから電子音。
高くもなく、低くもなく落ち着いたいつものみきたんの声。
変に甘くも真剣でもない。ホントにさり気ない告白。
「・・っずっるいなぁ・・・」
そしてあたしは不意打ちに弱い。
追いかければ逃げるくせに、こうゆうとこはしっかり決める年上の恋人。
あたしは当分この甘くて苦い薬から抜け出せそうにない・・。
とりあえず明日会ったら思いっきり抱きついてやる。
・・・スタッフがいてもかまうもんか。
少し冷えた身体をベッドに沈めながら
慌てるみきたんの顔を想像してちょっと笑った。
- 283 名前:END 投稿日:2003年02月13日(木)19時53分13秒
- あやみき、これで終わりです。
誤字脱字があっても脳内変換してください。
- 284 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)02時35分57秒
- 鼻を微かにくすぐる甘い匂いでうちは目を覚ました
鼻から息を思いっきり吸い込む
ごっちんのシャンプーの匂い?
違う…ごっちんの匂いじゃないや…
第一隣にはごっちんの姿はなくて
その変わりに大きい熊のヌイグルミがうちの隣で横たわっていた
「……は?」
寝起きのせいか頭がはっきりしない
あのお寝坊さんのごっちんがうちより早く起きるはずないし…
隣で横たわるヌイグルミに目を向ける
まさか…このヌイグルミがごっちん?!
寝過ぎでとうとうヌイグルミになっちゃったの?!
- 285 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)02時43分04秒
- 「ごっちーん……そんなわけないっちゅーの」
ヌイグルミに抱きつくがすぐに顔を上げる
本日一発目のノリツッコミだ
やっぱりごっちんが一番抱き心地良いや…
ん?紙?
ヌイグルミの背中に紙が張り付けてあるのに気付き起き上がる
『おはよう、よしこ
今日のおはようのキスは我慢してね?
ごっつあんはやらなきゃいけないことがあるの。
だからぜーったいキッチンは見に来ちゃダメ!!』
メモを読み終えてククッと笑いをこらえる
2月14日…今日はバレンタインデー
ごっちんは手作りチョコでもくれるつもりらしい
- 286 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)02時49分42秒
- こんなこと書いたら気になって見に行きたくなっちゃうじゃん…
「ったく、可愛いことするなぁ…うちの彼女は…」
顔はまさに締まりのないニヤケ顔
だってごっちんが料理してるとこ見れるし…
うちはごっちんが料理してる時の姿が大好きだ
歌を口ずさみながらリズム良く聞こえる包丁の音も好きだし
髪を耳に掛ける仕草も大好き
ごめん、ごっちん…
吉澤ひとみ、キッチン覗きます…
「手ぇを握って〜道をあーるこぉ〜」
いたいた、いつも通り歌を口ずさんで…
今日は少し寝癖が付いた髪であくびなんかして眠そうだけどそれも可愛い
- 287 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)02時56分09秒
- いつもは寝起きが悪いごっちんだけど今日は頑張って一人で起きたんだろう
きっとうちを起こさないように目覚ましも掛けないで…
そう考えるとうちはなんて幸せものなんだろうって…
そうだよね、ごっちん?
「ねっ?ごっちん…」
腰に手を回して後ろから抱き締める
「よしこ…キッチンはダメって……」
「良いじゃん…」
髪に顔を埋めてそう呟くと
もぅ、しょうがないなぁ…って呆れた声を出す
「邪魔しちゃ…やだよ?」
顔を横に向けて目だけチラッとうちを見る
フーッとため息を付くごっちんを見てニッコリと頷くうち
- 288 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)03時01分34秒
- 「困ったさんだねぇ、よしこは…」
そんなこと言われると邪魔したくなるってことごっちんは知ってるはずなのに…
ダメって言われるとついやりたくなるうちは子供ですか?
でもね、ごっちん……うちも知ってるよ?
ごっちんの『ダメ』は『もっと甘えて』ってこと
素直に甘えられない不器用なごっちんが好き
ダメって言いながら嬉しそうにニッコリ笑うごっちんが…好き
「ごっちん……好き……」
耳元で吐息まじりに囁くのはごっちんが耳弱いって知ってるから
「よ、よしこぉ、邪魔しちゃ…ダメだよぉ…」
- 289 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)03時07分44秒
- そんなこと言いながらうちの温度を確認するように
ぎゅっと手を握りしめてくるのは
まんざらじゃない証拠
「甘えて欲しかったくせに…」
うちの腕の中でうろたえるごっちんが可愛くてついつい強引に唇を奪う
「チョコ…つまみ食いした?」
ごっちんの唇は甘いチョコの匂いでいっぱいで
チョコっとチョコに嫉妬……
そんなことを考えてるとごっちんの一言
「今、すごくつまんないこと考えたでしょ?」
「えっ…ま、まさか…」
苦笑いを浮かべるうちを見て
ごっちんはきょとんとして首を傾げる
- 290 名前:Happy Valentine'Day 投稿日:2003年02月14日(金)03時15分35秒
- 「チョコっとチョコに??……ま、いっか…」
うっ…完璧に見破られてる…
うちがごっちんのこと知ってるってことは…
それだけごっちんもうちのこと知ってるってこと…
お互い通じあってるってことだよね
「あ、そろそろかなぁ?」
そう言ってごっちんは冷蔵庫を開けてチョコを確認する
「よしこのは特別にチョコにメッセージ書いたんだぁ」
- 291 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
- 川o・-・)ダメです…
- 292 名前:Happy Valentine's Day 投稿日:2003年02月14日(金)03時23分01秒
- メッセージかぁ…
ごっちんのことだから…
『チョコっとラブ』とかって書いてそうだよなぁ…
「もしかして『チョコっとラブ』って書いた?」
ニヤニヤするうちに
「秘密だもん!」って認めようとしないごっちんを見て
図星だなって思ううち
「ごっちん……好きだよ…」
うちが不意をついて唇を奪ってもちゃんと受け入れるごっちん
きっとこれからも…
ずっとずっと…
こうゆう関係は変わらない
END
- 293 名前:チョコラブ 投稿日:2003年02月14日(金)03時27分54秒
- 初小説なのですごく緊張しました…もぅ少し落ち着いて出来れば良かったですm(__)m
なんか同じの2回書き込んだみたいだから削除してもらった方が良いのかなぁ…
でもバレンタインなのでちょっと頑張りました(笑)
以上、よしごまでした!!
感想くれるとすっごく嬉しいです☆
- 294 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)06時58分42秒
- >>274-282
初書きとは思えない作品でしたよ
細かい描写部分が良かったです
次作も期待します
- 295 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)11時36分58秒
- あやみき(・∀・)イイ!!
いや〜やっぱ、あやみきはいいっすね〜
今日もやっぱチョコ交換してんのかなぁ(w
初でもよかったです!また書いてください
- 296 名前:おがたか 投稿日:2003年02月14日(金)18時40分15秒
あまりに多い
某雑誌の連載写真をネタに(w
事実と異なる所はネタとして処理してください。
- 297 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時41分48秒
- 「麻琴ー写真とろー」
突然かけられた声にドキッとして
食べかけの干しイモを咥えたまま台本から顔をあげると
カメラ片手の愛ちゃんが駆け寄ってきた。
「いいよー」
急いで干しイモを飲み込んで軽く口の周りをぬぐう。
「雑誌のヤツ?」
「うん、麻琴は?もう撮った?」
「あー、この前家で何枚か。でももう少し撮ろうかなと思って
愛ちゃん一緒に写ってくれる?」
「いいよ。じゃ麻琴のから撮ろ!」
- 298 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時42分29秒
雑誌に定期的に載せる写真。
コンセプトは自分の好きな物を写したり、
ハマってるものを写したりして
「素」の自分を見せること、らしい。
- 299 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時47分45秒
- 果たしてあたしの日常にそんなに興味がある人がいるとは
あんまり思えないんだけどこれがなかなか楽しかったりする。
もともとメンバーで写真撮り合ったりすることは多いし。
仕事でというよりどっちかというと遊びの延長。
その場のノリで変顔したり、
ふざけたりしながらわいわい撮るのは楽しい。
だからときどきとんでもない顔した写真が載ったりして
後から軽く後悔することもあるけど、それも結構楽しい。
・・・だけど最近気になってることがある。
- 300 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時49分18秒
「どうする?」
「誰かに頼もうか」
愛ちゃんはあたしのカメラを持つと
キョロキョロとあたりを見まわして
手が空いてそうな人を探す。
「あ、他の人も呼ぶ?」
後ろで騒いでる小さな先輩達を振り返ってから愛ちゃんに聞く。
(ん?)
なんだか愛ちゃんは微妙な顔。
あたしなんか悪いこと言った?
「あたしは麻琴と撮りたい」
「え」
「ダメ?」
「・・ダメじゃない、けど」
まっすぐな瞳。
少ししかめられた眉がなんかすっごく可愛い。
いつもよりちょっと幼い感じ。
- 301 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時50分35秒
「いや、愛ちゃんいっつもあたしと撮ってるから
たまには他の人とも撮りたいかなって思って」
そう、気になってるのはコレ。
雑誌に載るときあたしと愛ちゃんは同じ号に載る。
だからついついチェックしちゃうんだけど
割合的にあたしが多く写ってる。
それはそれですっごくうれしいんだけど、
あたしばっかりでいいのかな?
ただ同じ時期に写真をとるから
ついつい一緒になっちゃうのかな?
ま、まさかメディアへの露出が少ないからって
変に気を使われてるなんてことはない、よね・・?
「麻琴・・」
「えっ、あ、何?」
いけないいけないネガティブになっちゃ、
飯田さんにも言われたじゃん。
自信持とう自信。
うんガンバッテルモン!
- 302 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時51分54秒
「あたしが麻琴の写真撮るの迷惑?一緒に写るのヤダ?」
別に愛ちゃんと写真を撮るのはいやじゃない。
いやじゃないんだけど・・・
ああ、だからそんな悲しそうな顔しないでよ、
いじめてるみたいじゃんか。
「ぜ、全ッ然イヤじゃない!すっごい嬉しいよ!」
「ホントに?」
「うん、うん!」
「じゃ、一緒に撮ろう!」
あっという間に腕を掴まれて引きずられる。
細いのに意外と力、強い。
- 303 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時52分46秒
愛ちゃんは早速スタッフさんに二人分のカメラを渡してる。
「ほい、こっち来て麻琴」
腕を組んだままポーズをとって
・・ってなんかくっつき過ぎてません?
そのまま一枚。
もうちょっとアップで更に一枚撮った。
なんか顔引きつってそう・・・
- 304 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時54分14秒
「こっちのカメラでも撮るの?」
「あ、十枚くらいお願いします」
「愛ちゃん、それ多過ぎるよ。他の写真載せられなくなるよ」
スタッフさんの問に平然と答える愛ちゃんに思わず忠告。
「じゃぁ五枚くらいで・・」
まだ多い。と思ったけど
小さな舌打ちが聞こえたから黙っておいた。
まぁ撮ったの全部載せるわけじゃないし・・
「ハイいくよー」
スタッフさんの声にカメラのほうに向かって笑いかける。
愛ちゃんがさらにきつく腕を絡ませてきた。
- 305 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時56分03秒
仕事じゃないからリラックスした状態・・なんだけど
ああ、でもなんか最近感じる変な感覚が押し寄せてくる。
隣りの愛ちゃんが近過ぎてちょっとドキドキしてしまう。
ほっぺたくっつきそう。
いっつも思うけど髪、サラサラだなぁ・・それにイイ匂いがする。
組んだ腕にやわらかい熱が押し当てられて、ますますドキドキしちゃう。
まずいまずい、なんでこんなに緊張してるんだ・・おちけつ琴美!
間違った!おちつけ麻琴!
相手は大きさの違いこそあれ同じ女の子。
しかも同じグループのメンバーじゃん!
気をしっかり持てば大丈夫、きっと大丈夫・・・。
は、早く終われ。心臓壊れちゃうよ・・・
- 306 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時57分31秒
「ハイこれでラストねー」
パシャっとフラッシュの光を浴びて我に返った。
・・・あ、変顔するの忘れちゃった。
いそいそとカメラを受取りにいく愛ちゃんの後ろで
ぼんやりと突っ立っていた。
「はい、コレ麻琴の」
「あ、ありがと・・」
手渡されたカメラをしばらくぼーと見つめていた。
「麻琴〜」
呼ばれて顔を上げると愛ちゃんは嬉しそうに
あたしに向かってカメラを構えていた。
・・ちょっと顔が赤い。
「愛ちゃん・・」
「何?」
「なんでそんなにあたしと写真撮りたいの?」
ズバリ、聞いちゃった。
- 307 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)18時59分06秒
だってなんか、なんとなくだけど、
うっすらとだけど、
そこはかとなくぼんやりとだけど
わかってしまったような気がする。
自分の、気持ち。
今までなんとなく感じていた事だけど、
うすうす気付いていたことなんだけど
なんか今のでハッキリした・・気がする。
あたし愛ちゃんのこと・・・・好・・い、意識してる?
でもってあたしのカンが確かならたぶん愛ちゃんも・・・
そう思ったらなんだか突進してしまった。
- 308 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)19時00分36秒
「・・あの、愛ちゃん?」
愛ちゃんは少しだけ赤い顔をしてこっちを見ていた。
「・・言わんとわからん?」
・・え〜・・・と・・それはつまりあの、そういうこと、ですか?
そんな上目遣いで見られるのはあたしだけだと思っていいんですか?
「っちゅーか、鈍すぎやの〜麻琴は・・」
大げさにため息をついた愛ちゃんがくるり、と背を向ける。
髪の間から見える耳が真っ赤だった。
・・・何か、何か言わなきゃ。
「あ、あのさ、今度あたしも撮っていいかな?愛ちゃんの写真」
まだまだ赤い耳をしたままの愛ちゃんは背を向けたままうなずいた。
- 309 名前:〜写真の告白〜 投稿日:2003年02月14日(金)19時01分56秒
ある雑誌に定期的に載せる写真。
コンセプトは自分の好きな物を写したり、ハマってるものを写したりして
「素」の自分を見せること、らしい。
〜END〜
- 310 名前:おがたかでした 投稿日:2003年02月14日(金)19時05分31秒
え〜なんだか分かりにくくなってしまったような気が(汗
モー○ャンで二人の写真(つーか高→小)が多いような気がしたので(w
お目汚し失礼しました(ペコリ)。
- 311 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月14日(金)19時58分21秒
- おがたかグッジョブ!面白かったです。
萌えました。えぇ。
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)20時44分05秒
- チョコラブ甘くて良かった。こおゆうの好き
- 313 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年02月16日(日)19時34分11秒
- 短いのを何本か・・・
- 314 名前:『禁断症状』 投稿日:2003年02月16日(日)19時42分19秒
- 抱きしめて
力いっぱい
アナタ以外考えられないように
アナタから1日でも離れると不安でたまらない。
それは、まるで麻薬の禁断症状みたい
ねぇ、早く抱きしめて
アナタの家に向かうタクシーの中、アナタから毎日来るメール読み返す。
ねぇ、早くアナタで私の心をいっぱいにして
早く、アナタの香りで私の心いっぱいにして
アナタの声を聞くと
アナタのことを考えると
熱を帯びたように熱くなる体
ねぇ、早く触れて
早く、愛して
アナタで私の心いっぱいにして
早く・・・早く・・・
この症状から抜け出させて
〜END〜
- 315 名前:アナタ一色の心 投稿日:2003年02月16日(日)19時51分06秒
- 街で香るアナタの香りに似た香り
心揺れる忘れたはずの香り
瞬時に思い出すあの日。
ねぇ、いつになったら本当に忘れられるのだろう?
いつになったら、あの日が過去の思い出となるの?
「ごめんね」
アナタが残した言葉
トゲのように胸を刺したまま
「行かないで」
なんて口に出して言えなくて、ただ、心の中で叫んでた
アナタの後姿をじっと見ながら
もう、届くことは無いアナタの胸に
心を突き抜けて溢れ出す想いと記憶
気がつけば捜してた
アナタの姿
唇に手を当てて閉じ込めた想い、伝わらない悲しみに鍵をかけたのに
『忘れよう』
思えば思う程、アナタを求めてしまう
ねぇ、どんどんアナタが大きくなっていくよ
ねぇ、どうして忘れられないの?
ねぇ、どうしてこんなにも想うの?
〜END〜
- 316 名前:愛しくて、愛しくて 投稿日:2003年02月16日(日)19時57分21秒
- キミを想い
今日もまた眠れない夜を過ごす
涙を流すのは切なくて悲しくて愛しい
星が綺麗に輝いた空に涙の跡をつける
キミばかり見てたから胸に焼き付いて目をつぶれば胸に浮かぶ
キミの溢れぬばかりの笑顔や、はちきれそうな泣き顔
溢れる想い、つらすぎて涙と一緒に流しだしてしまいたい
毎日、嫌になるほど想ってる
キミの香りがすると、すぐ、ときめいて
キミが私以外の人と話していると勝手に嫉妬する
あぁ、もう嫌になるほどキミが好き
愛しすぎて、もう、どうにかなりそう。
愛しくて、愛しくて、今日もまた嫌になる程、キミを想い続ける・・・・
- 317 名前:愛しくて、愛しくて 投稿日:2003年02月16日(日)19時57分53秒
- 〜END〜
- 318 名前:〔叶わない〕 投稿日:2003年02月16日(日)20時02分55秒
- 叶わない恋なんてしなければよかった。
そしたら、こんなにも切なく、悲しくならないのに
私の目に映るのはアナタだけ。
アナタ以外は見えたとしてもモノクロだから。
「愛してよ」
分かっているのに、心は叫ぶ
届かないと、ただ自分が悲しくなるだけなのに
「私を見てよ」
届かない想い溢れ出して、抑えても、抑えても止まらない
叶わない。
分かっているのに、求める恋
ねぇ、こんなにも切ない恋、止めることが出来たならどれだけ楽になれる?
〜END〜
- 319 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年02月16日(日)20時03分49秒
- え〜・・・何本か書かせて頂きました。
お目汚し、すいませんでした。。。
- 320 名前:ななすぃ〜 投稿日:2003年02月17日(月)20時50分08秒
- 2〜3本書かせていただきます。
- 321 名前:フルムーン 投稿日:2003年02月17日(月)20時52分39秒
- 暗い闇空
浮かぶ満月
そっと見上げた
風は私の耳元でささやき
静寂を連れて来る
私の隣で満月を見上げるアナタ
そっとその横顔に言ったよ
「大好き」って。
- 322 名前:フルムーン 投稿日:2003年02月17日(月)20時55分25秒
- 満月の月光に照らされたアナタの横顔
綺麗過ぎて、静寂に飲み込まれてしまいそうで少し怖かった
アナタは満月のように優しく笑って言ってくれた
「私も大好き」って。
その瞬間抱きしめられた満月の夜
少し背の高い見上げたアナタの顔は少し赤くなっていた
願うわ、フルムーン
アナタをいつまでも変わらぬ愛で愛せるように・・・・
〜END〜
- 323 名前:世界で一番 投稿日:2003年02月17日(月)21時00分16秒
- もう、愛しいほど
苦しいほど
溢れる程
あなたが好き
黒目がちな瞳
その瞳で見つめられる度、胸の鼓動早くなっていくの
あなたが好き
止められないほど
この恋苦しくて止めたいと思うほど
その笑顔が私の心締め付けて息も出来ないほど苦しくなる
ほんの一瞬触れた手
ずっと覚えてるわ
アナタの暖かい温度
優しい手
ねぇ、愛しいわ
アナタが好きすぎて
涙溢れるよ
アナタが優しすぎて
流れた涙悲しすぎるよ
- 324 名前:世界で一番 投稿日:2003年02月17日(月)21時02分38秒
- ねぇ、いつでも心で言ってるわ
叫んでるわ
「大好き」って
「愛してる」って
流れ星に向かって
夜空で輝く月に向かって
優しいあなたが好き
いじっぱりなあなたが好き
強がりなあなたが好き
ねぇ、想ったら届くかしら?
「大好き」って
「愛してる」って
『世界で一番好き』って・・・
〜END〜
- 325 名前:チョコレートの海の中に 投稿日:2003年02月18日(火)04時44分50秒
- 心が壊れた人間と、心を壊す人間と、どちらが不幸だろう。
声を上げてあなたが幻と格闘する。私は何もしてあげることが出来なくて、傍観する。
やがて力尽き膝をつくあなたに私は駆け寄って抱きしめてあげる事しか出来ない。私はこんなにも無力だ。壊すことは出来ても直すことは出来ない。誰か、助けて。彼女を助けてあげて。叫ぶことすら叶わない。
バレンタインデー。あなたは珍しく台所に立っていて。手に持っているのはチョコレート。何をしているのかと問い掛けると手作りチョコレートを作るんだと笑顔で返す。私が大好きなチョコレートケーキを作ってくれると。
思わず嬉しくて抱きしめた。
そして私の背中に激痛が走る。あなたから身を離し、よろけて溶かしたチョコレートを床に零してしまった。せっかくあなたが溶かしたチョコレート。駄目にしてしまってごめんなさい。
床に手をついたままあなたを見上げると、汚れた包丁を持つあなたが笑っていた。そんなに気にしてないみたい。良かった。
息が苦しくなって私の意識は沈んでいく。そのままうつ伏せになるとチョコレートの匂いでいっぱいになった。
チョコレートの海の中に 全て 沈んでいく。
〔終わり〕
- 326 名前:『エンジェル・スノー』 投稿日:2003年02月18日(火)20時20分39秒
- それは、ほんのわずかな恋心
それは、少し憧れに似ていて、恋心だと知ったのはつい最近。
雪のように繊細で、誰にでも優しくて笑顔振りまいていて、少しいじっぱりで、泣き虫で、ネガティブで、女の子っぽくて
守ってあげたくなる。
あなたが私よりも年上だってこと忘れてしまって。
雪を見るとすごい嬉しそうに笑って遊んでる。
大人びた顔なのに性格はまるで子供で私と、どっちが年上なのか分からなくなる。
天使のような笑顔を私に向けるからすごいドキドキしてしまう。
ねぇ、雪と一緒に私の気持ち届けようか?
『大好きです』ってあなたの胸まで。
[おわり]
- 327 名前:『カワラナイデ』 投稿日:2003年02月18日(火)20時25分50秒
- カワラナイデ
カワラナイデ
心で叫んでる
あなたが私の知らない人に代わってしまいそうで
いつもなら「梨華ちゃん」ってすぐ私にくっついてくるのに
最近はののやあいぼんと遊んでるし
私がいなかったら前はしょぼんとしてたのに
今は何も変わりはないかのように元気に過ごしてる
カワラナイデ
カワラナイデ
私の知らない人にならないで
私無しでも生きていける人にならないで
カワラナイデ
カワラナイデ
寂しいよ
あなたがいなかったら
カワラナイデ
ずっと、あのひとみちゃんでいて
カワラナイデ
カワラナイデ
私の心は叫び続ける
END
- 328 名前:花梨 投稿日:2003年02月21日(金)18時43分32秒
- トルルルー、トルルルー、
「ハイ。りかです。ハイ・・・、先週行ったレストラン、
とても、美味しかったです。今週・・・?」
「今週も会えるのですか・・・高尾山?、暖かくなったから、
ピクニックがてら、行きたい・・・良いですね・・・」
「今、頂上からとても綺麗な富士山が見える・・・、素敵、
もしかして、この前の日曜、家族で行ったんじゃ・・・」
「・・・行ってない、ウソ・・・、雪化粧の富士山、見たい。」
「アッ、でもだめ、私、花粉症なの・・・目は痒くなるし、
くしゃみはでるし、鼻水も出てくるの、そんなみっともない
姿、見せられない・・・」
「やっぱり、いつものレストランでお食事して、コーヒーを
飲んで、それから・・・、」
「そして、いつも11時になると、あなたは帰って行くのね。」
「一度でいいから、朝まであなたと一緒にいたい・・・」
「・・・わかってます。ちょっとあなたを困らせたいと、
思っただけ。では、いつもの所で、6時に・・・」
ガチャッ・・・。
終わり。
- 329 名前:探偵チャーミー 投稿日:2003年02月21日(金)19時04分32秒
- 俺とチャーミーの生活は充実していた。
体は女の子、アイドルグループのあの娘。そっくり。
そのはずで、あの娘。のクローンなのだから。
しかし、心はネコそのもの。ネコのチャーミー。
今は、ボロアパートから、マンションに引っ越した。
俺は売れない漫画家だった。しかし、ネコのチャーミーを
ヒロインにして、書いた漫画が大当たり。
今や、売れっ子漫画家になった。
ネコだから、喋れないチャーミーを、マンションの隣人には、
口の聞けない妹ということにした。
漫画が大当たりしたから、外にアルバイトに行かなくても良い。
部屋で、一日中、チャーミーと一緒にいれる。
- 330 名前:探偵チャーミー 投稿日:2003年02月21日(金)19時13分09秒
- 漫画は、パソコンを購入して、それで書いている。
便利になったもんだ。書いた漫画は、そのままネットで
出版社に送れば良い。
時々、チャーミーが邪魔をするが、チャーミーをモデルに
して、大当たりしたのだから、少々のいたずらはなんでもない。
煙草を買いに、部屋を出た時だった。
隣の奥さんとばったり会った。
「あの〜、家のネコ、見なかったでしょうか・・・」
ここは、ペットが飼えるマンションだった。
「あ、マリーちゃんですか。見ないですね。」
部屋に帰ると、チャーミーがじゃれついてくる。
- 331 名前:探偵チャーミー 投稿日:2003年02月21日(金)19時26分20秒
- ふと、気がついた。チャーミーの体に白い毛が・・・。
「チャーミー、その毛はどうしたんだ・・・」
最近では、チャーミーの言うことが少しはわかるように
なってきていた。
さかんに、壁に体をこすりつけている。
壁の向こうは、ネコを捜している、隣の奥さんとは、
反対側の、隣の部屋だった。
そこには、夫婦が住んでいる。30代の夫婦だった。
主人は、いつも帰りが遅い。
チャーミーは、ベランダに出ると、壁伝いに隣の部屋に
行こうとする。
「危ないよ・・・」
そこは、ネコで、器用に壁伝いに隣に行く。
- 332 名前:探偵チャーミー 投稿日:2003年02月21日(金)19時33分55秒
- チャーミーは、隣のベランダに移り、ガラス戸を
手で叩いた。
体を伸ばして、見てみると、中に白いネコが見えた。
チャーミーとさかんに鳴き合って、何か話しているようだ。
そのネコは、反対側の隣の奥さんの飼いネコのマリーに
間違いないようだ。ネコ好きの俺も何度か遊んだことが
ある。
ネコのいる部屋の奥さんは、買い物にでも行ったらしい。
しばらくして、帰って来たようだ。
俺は、意を決して、隣の部屋のドアを叩いた。
- 333 名前:探偵チャーミー 投稿日:2003年02月21日(金)19時41分55秒
- ドアが開いて、奥さんが出て来た。
この奥さんとは、挨拶ぐらいで、あまり交流がない。
「あの・・・、そちらの部屋にネコが・・・・」
「ネコなんか、居ません。」
奥さんは、きっぱりと言って、ドアを閉めようとした、
その時、いつ来たのか、チャーミーが、するりと、
ネコのように、(ネコだけど、)ドアを間をすり抜けて、
中へ入ってしまった。
あっけにとられている、奥さんを尻目に、チャーミーが
鳴き声を上げると、白いネコ、マリーが飛び出してくる。
突然、奥さんは泣き出した・・・。
- 334 名前:探偵チャーミー 投稿日:2003年02月21日(金)19時53分43秒
- 俺は、マリーを抱いて、反対側の奥さんの所へ、行った。
チャーミーもついて来る。
マリーの飼い主の奥さんは大喜びでマリーを抱きしめた。
「本当にありがとうございます。あら、あなたがきっと
マリーを見つけてくれたんでしょう。」
と、奥さんは、聴きもしないで、チャーミーに向かって
言った。
そして、意味有りげに、俺とチャーミーを見比べた。
どうやら、俺の隣同士の奥さんたちには、なにか確執が
あるようだ。
それに、マリーの飼い主の奥さんは、どうも、チャーミーの
正体を見抜いてるようだ。
ネコ好きな人だけに、気がついているようだ。
それは、かまわない。俺は、チャーミーと部屋に
入った。
俺とチャーミーの生活を誰にも邪魔されなければ、
それで良い。
終わり。
- 335 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時43分25秒
――
―
今日は、2001年12月24日。クリスマスイブ。
年始のコンサートツアーに向けて、レッスン漬けの毎日を送る13人の娘達。
夜の11時すぎにやっと、長いレッスンが終わった。
街の街路樹に、電球が華やかに飾られているのが、レッスン場の窓から見える。
店にはクリスマスグッズが並び、通りは手をつなぐカップルであふれてるのだろう。
- 336 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時44分04秒
「はい、また明日。今日もお疲れ様でした」
「「「おつかれさまでしたぁ!!」」」
先生のねぎらいに、気合いをふりしぼって声を出した娘達は、
バラバラと楽屋に戻っていった。
レッスン場から楽屋への廊下は、自然と列になる。
先輩の後からレッスン場を出る新メンバーは、列の後方でクリスマスの話をはじめた。
「ねー、サンタクロースは親だ、っていつ知った?」
小川の問いかけに、新垣と高橋が答えた。
「小4んとき。お母さんがプレゼント置いてくの見ちゃった」
「あたしもそんぐらい。父さんがプレゼント買ってるとこ、たまたま見つけた」
「あさ美ちゃんはー?」
「ん…」
「サンタはいない、っていつ気付いた?」
紺野は一呼吸おいて、小声で答えた。
「あたし……サンタは、いるんじゃないかって思う」
「へ?」
すぐ前で話を聞いてた安倍が、
「あたしも、サンタさんいると思うよ」
とにっこりと紺野に笑いかけた。
- 337 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時44分41秒
-
紺野は今年、クリスマスが来るのがいやだった。できるなら来てほしくなかった。
- 338 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時45分14秒
紺野は、サンタの存在を信じはじめている。
でもそれは、みんなには言いたくなかった。変な子だと思われてしまう。
あれはサンタクロースだったのか。それとも偶然12月24日に来た神様なのか。
サンタなのか神様なのか悪魔なのか、それはいまだにわからない。
紺野は、サンタクロースが親だと小1のときには気付いていた。
クリスマスになっておもちゃ屋がクリスマス色になる事で
そんな紺野がなぜサンタクロースを信じるようになったのか。
それは、紺野がモーニング娘になれたという、奇跡が起こったから。
- 339 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時45分56秒
紺野は頑張り屋だ。
勉強だって運動だって、努力をして良い結果を出せれた。
しかし紺野は、音楽がダメだった。
音感もリズム感もなく、歌もダンスも苦手。
音楽の成績はほとんど1、よくて2だった。
それなのに紺野は、モーニング娘になりたいと思ってしまった。
自分の力と、目指す夢との距離を感じ、涙した。
- 340 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時46分40秒
-
そんな2000年の12月24日。紺野あさ美が中1の冬、部屋に珍客があらわれた。
- 341 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時48分17秒
「君が頑張り屋だということは知っている。努力を怠る若者が多いなかで立派だよ」
「プレゼントをあげよう。何がほしい?」
紺野は驚きのあまり、声にならない。
金魚のように口を開いたまま、視線が定まらない。
「どうした? 何でも言ってみてくれ」
「あ、あたし、モーニング娘。に、なりたいなって」
「モーニング、むすめ?」
男は、モーニング娘の事を知らなかった。
紺野は本棚から音楽雑誌を取り出して、男に見せた。
「こ、これ」
男は表紙を見て、雑誌をぱらぱらとめくって、モーニング娘の記事を読んだ。
「歌手の、グループか」
男は両手の指で鍵かっこを作り、カメラマンが構図を決めるように紺野に合わせて、じっと見つめた。
「ふむ……。正直言って、君の音楽の才能は乏しい。歌を歌っていく仕事は厳しいな」
- 342 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時49分20秒
男は目を閉じると、紺野が一度も聞いたことのない言語で、一人喋り出した。
誰かと交信し、なにかを確かめているようだ。
しばらくすると、男は口を止め、ゆっくりと目を開けた。
「……6月に、モーニング娘のオーディションがある」
「今までと同じことを、最終選考前日まで毎日、休みなく続けなさい」
「簡単にもらえるプレゼントではないよ。1日でもサボったら、プレゼントは無しになる」
「でも、君ならきっとやり遂げる」
男は、優しく微笑んだ。
「しかし、限界もある」
「適性が合わない事柄の実現は、長く続かない」
「夢を見せてあげられるのは、2001年の12月24日までになる」
「それ以降は私の力が及ばない」
紺野は、真剣な面持ちで言った。
「それでもいいです。短い間でもモーニング娘になれるなら、いいです」
「わかった。では、そう手続きしておくよ」
- 343 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時49分57秒
紺野はこつこつと努力を続けた。
音感の訓練や発声の訓練。
リズム感を養う為ドラムを叩く真似事をしたり、
自分で考えたダンスのステップを踏んでみた。
役に立つのか怪しい訓練もあったが、それでも紺野は毎日続けた。
風邪で体調の悪い日、うっかりしていて日付が変わる直前ギリギリの日もあったが、
紺野は休みなく自己流の訓練を続けた。
そして8月26日、モー娘のメンバーとして選ばれたのだ。
補欠合格のような形になったのは、
クリスマスの来訪者が、急につんく氏のインスピレーションを刺激したからである。
- 344 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時50分38秒
-
モーニング娘のメンバーたちが集まる、楽屋。
飯田がわくわくしたように言った。
「毎年クリスマスイブは仕事だから、メンバーで鐘の音にあわせてカウントするんだよ。圭ちゃん、お願い」
「おう」
保田は鞄から、小ぶりな振り子時計を出して、テーブルに置いた。
後藤が新メンバーに伝えるように言う。
「去年やって雰囲気良くてさー。今年もやろうって」
「あれ、紺野はー?」
紺野がメンバーの輪にいないことに気づいた安倍が、驚いて声を上げた。
「えと、トイレ行く、って」
と、高橋がたどたどしく答えた。
矢口が楽屋の入り口を見ながら、ぼやく。
「もー、タイミング悪いな」
- 345 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時52分06秒
飯田がちらっと、振り子時計をみた。
「じゃ、みんな静かにして」
楽屋は静まり、メンバーはみな振り子時計に集中する。
12人の娘たちに見つめられる振り子時計が、12時を伝える最初の鐘を鳴らした。
おごそかな音が、部屋に響く。
続いて2回目、3回目の鐘が鳴る。
その鐘の音が、モーニング娘メンバーの記憶から、紺野に関する部分だけをさらっていく。
一つ鐘がなるたび、一人。また一人。
紺野のことを忘れていく。
12回の鐘の音が鳴り終わり、モーニング娘の楽屋から波が広がるように、
日本中の紺野に関する記憶、記録がさらわれ、消えていった。
人の記憶、紙媒体、映像媒体から。
「「「メリー、クリスマース!」」」
12人の声が響くにぎやな楽屋の外。
廊下の紺野は一人、壁にもたれかかりうつむいて、あふれる涙を止められなかった。
- 346 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時52分44秒
-
おおみそか。
北海道の実家のこたつで、みかんを黙々と食べる紺野の姿があった。
「おかーさん。次モーニング娘だよー」
「ほいほーい」
台所にいた紺野の母は、急いで居間に来て、こたつに滑り込んだ。
風呂あがりの紺野の父が頭をふきながら居間に入ってきて、テレビの見やすい位置に座った。
「モームスか。新しく入った子、みんな中学生なんだよな」
「あさ美と同い年の子も入ったんだよねぇ。どの子だっけ?」
母にそう聞かれ、紺野は口の中のみかんをごくっと飲みこんだ。
「んぐ、あ、あの子。髪の毛、ふわっとして、目つき鋭い」
「怒ったら恐そうだなあ」
「そんなこと、ないよ。優しいよ」
「知ってるみたいなこと言うねぇ」
「ん、なんとなく、そう、かなって」
- 347 名前:聖なる鐘が、12回 投稿日:2003年02月24日(月)05時53分33秒
飯田がNHKのアナウンサーのインタビューを受けている。
「今年は、新メンバーが3人入られて、12人になったんですよね?」
「そうなんですよー。新メンバー前出て」
小川、新垣、高橋が、12人の列から、一歩前に出た。
「リーダーの飯田さん。まとめるの大変でしょう?」
「そうなんですよー」
「皆さん、モーニング娘を応援してくれてありがとうございます! 来年もモーニング娘。は、新メンバー3人含め12人で突っ走っていきますので、どうか見守っててください!」
テレビから聞こえる会場の大声援が、紺野家の茶の間をにぎわす。
除夜の鐘が、2001年を締めくくるように、夜闇に響いた。
〜了〜
- 348 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時08分54秒
ちょっとマイナーななちよし(苦め)で。
- 349 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時12分33秒
あの頃の純粋な憧憬はどこへ行ってしまったんだろう?
こんなふうに心に渦を巻くように騒ぎ立てる慕情じゃなくて
尊敬と畏怖が軽く混ざった視線でアナタを追っていた
あの忙しくも穏やかな日々はそう遠くない昔のはずなのに。
軽くにごった情緒不安定な視線を言葉の代わり投げつけるだけ
の冒涜感に苛まれるような恋情を持て余している日常に
早くも根をあげかけている。
どうしてそんな顔で笑うの?
ちっとも穏やかでなんていられないくせに
弱くないことなんてよくわかってるけど
むしろ意気地なしの自分より強いこと知ってるけど
その笑顔じゃ欺けないよ。
そんな笑顔にだまされないよ。
アナタに向ける視線に込めたこの想いは
とっくに笑顔の向こうのあなたに気付いているんだ。
- 350 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時17分36秒
「あ、よっすぃ〜お疲れ〜。まだ帰ってなかったんだ?」
「お疲れさまっす。いや、なんかぼーっとしてたら皆先帰っちゃって」
―――アナタを待っていたらいつの間にか一人になっていました。
「あは、皆薄情だねぇ・・・」
「安倍さんは今日コレで終わりですか?」
「うん。今日は久々に早く帰れるよぉ」
疲れた笑顔、目の下のクマ、少し伏せ気味の睫。
一日がかりの収録と個別の雑誌取材では不似合いなほどの疲労。
ねぇそれは何のせいで?
苦しげに向けていた今日の視線と関係があるんですか?
「でもハロモニはまだ楽ですよね、収録。
美味しいもの食べられると、なおさら」
「うん、そーだよねー・・・」
心を置き去りにしたままどこか遠くに向かって投げかけた笑顔は
軌道を逸れてあたしの横をすり抜けていく。
そんな顔で笑うのやめてくれませんか、人の気も知らないで。
意地悪したくなりますよ?
- 351 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時21分10秒
「そういえば矢口さんは?荷物置いたままみたいですけど・・・」
荷物をしまうための手が、止まった。
「あ・・うん、裕ちゃんのトコ、行くっていってたから・・」
言い淀んだ数秒の沈黙がアナタの疲れに拍車をかけてることに
アタシはちゃんと気付いてる。
今日の視線が誰を追っていたのか、それの意味するところがなんなのか
おぼろげながら掴んでる。
だからこそ、言ってみた。
歌の歌詞じゃないけど
詰まるところエゴのシーソーゲームなんだ、恋なんて。
「ホントに仲いいですよね、中澤さんと矢口さん」
「そーだねー」
こちらを振り返らないまま、顔を少し俯かせたまま何気な
いふうを装って答える。
そんな健気さが自分のためにじゃないことを知っているから
アタシのアクセルは緩むことをしない。
- 352 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時24分59秒
「最近特に仲いいですよね。収録中もずっと一緒にいるし」
「もう、裕ちゃん矢口の事大っ好きってカンジだしね。
・・・矢口も裕ちゃんといると安心するみたい」
―――ほら、祐ちゃんはさ、なっちと違ってオトナだから
・・・矢口もいろいろあるからさぁ
少し肩が震えているのに声はいつもどおり、
きっと口元には儚いような微笑。
見なくてもわかる。でも、それが辛い。
なんでそんなに庇うんですか?
もっと罵ったら良いじゃないですか。
素直に悔しがったら良いじゃないですか。
怒って、泣いて、責めたらいいじゃないですか。
どうして黙ってるんですか、そんなに好きなんですか、
あたしじゃアナタをあんな笑顔にできないんですか?
「安倍さん」
「ん?なに?」
再開させた荷物を片付ける手を止めずに聞き返す。
振り向けない理由はなんですか、
どうして声がさっきより震えてるんですか?
- 353 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時27分27秒
- 感情が脳に達するよりも先にカラダが動いていた。
「どうしたのさ、よっすぃ〜?急に黙っ・・・!!」
振り返った安倍さんは真後ろに突っ立ているアタシに驚いて
言葉を失っていた。
軽く見開いた瞳の淵に少しだけ水滴がついていた。
「・・びっくりしたぁ。もう、よっすぃ〜心臓に悪いべさ」
そんな風にごまかしてさりげなく目を擦ろうとした腕を思わず掴んだ。
こんなときにまだ笑おうとするアナタに心が軋んだ。
笑わなくていいから、泣いていいから、
アナタの涙を受け止められるだけの想いなら十分にあるから。
利用されても良いくらい、誰かの代わりでいいくらい好きなんです。
好き、なんですよ?
- 354 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時32分44秒
「ウチ・・じゃダメですか?」
「・・よっすぃ〜・・何言って・・?」
「だからっウチが代わりじゃダメですか?
矢口さんの代わりに・・ウチが・・」
ほら意気地なしのあたしはアナタの目を見て最後まで言えない。
睫に水滴を付けたままのアナタの目にあたしの想いは負けるんですよ。
「も、なぁに言ってるべさ〜よっすぃ〜は。冗談ばっかり・・」
「冗談なんかじゃないですよ?」
別にコドモ扱いされたとは思わないけど、
体よくかわされた事にハラがたった。
浮かべた笑顔に、軽い意図を含んだ上目遣いに、
わざと茶化した高い声に、
かなり真剣なこの気持ちを受け取る前から断ち切られたみたいで、
はなっから相手にされてないことを思い知って
理不尽だけどハラがたった。
「本気で好きなんです。安倍さんが」
「・・・イタッ・・ちょっと、よっすぃ〜・・・!」
掴んだ手を強く引っ張って腕の中へ引き寄せようとしたら思い
も寄らないほど強い抵抗。
体中の血液が一瞬のうちに沸騰して思考回路が完全に焼き切れた。
- 355 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時37分33秒
- まどろっこしい思考を取り払ったら残ったのは単純な欲望。
あなたに触れたいと切実に願っていた頃に感じたあの罪悪感なんて
カケラも存在しないほど。
愛だとか恋だとかに高尚な思考なんていらない、
ホラ結局したいことはこれだけ。
「・・なにすっ・・んっ・・んんっ!・・」
何とか引き離そうとする顔にさらに強く唇を押し付ける。
優しさなんて微塵も存在しないキスをした。
腕を突っ張ることも出来ないよう、
二の腕の上から背中に手を回して体ごと抱きしめる。
腰の辺りの服を掴んで引っ張ったってあたしはキスを止めない。
もがくように腕の中で暴れるアナタをさらに強く抱きしめるだけ。
業を煮やしたアナタに踏まれた足も
沸き立つ高揚感の麻酔が効いてて何も感じない。
角度を変えてさらに乱暴に口付ける。
―――息が苦しいのはこの胸の中の想いのせいだ。
- 356 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時40分01秒
「んうっ・・はっ・・はぁ・・!」
乱れた呼吸に我慢できずに軽く唇が開いた瞬間、
口中に舌を滑り込ませた。
自分の舌より熱い口内で目当ての塊を探り出そうと
動きだした途端、何か硬いものが舌に触れた。
「・・・ッ!!」
そして加わった圧力、小さな激痛、
追いかけるようにやってくるジクジクとした鈍い痛み。
思わず顔を離して手を口に持っていく。
次の一瞬、肩にかかった衝撃、
あたしは力に流されるまま後ずさり、
あなたは押した反動で後ずさる。
見詰め合うより早く口の中に広がる錆びた鉄の匂い。
――――不実の愛の味がした。
- 357 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時44分30秒
「な、に・・考えてん、のっ!」
途切れ途切れの息で非難の声をあげるあなたは
高潮した頬に流れている一本の筋に気付かない。
荒く息を吐く唇が誘うように濡れて光っていることに気付かない。
睨み付けるような上目遣いが僅かに怯えを含んでいて
あたしの加虐心を煽っていることに気付かない。
―――追いすがるように向けたあたしの視線に気付かない。
「・・・本気だって、いったじゃないですか」
「だからって急に、こんなことっ!」
「ダメなんですか?どうしてウチじゃだめなんですか?
矢口さんなんてどうせっ・・!」
「矢口のことは関係ないべさ!」
思った以上に激しい口調で言い切るアナタに
自分の知らなかった一面を見たような気がして
少し嬉しいと感じるくらい、
オカシイくらい好きなんです。
代わりでもいいのに、
あなたの視線がまっすぐ自分を見つめてくれることなどなくても
それでもいいのに。
傷ついた心を少しだけ癒す道具でもいいのに、どうして・・・
- 358 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時49分25秒
「今日のこと、謝りませんから。・・・ウチは本気ですから」
それだけ言って目をそらしてバッグを掴んだのは、
ここで泣くのは卑怯だと思ったからで、
ここで、目の前で泣かれたらアナタがどうするかなんて
簡単に想像できるからで、
そんな同情じみた優しさを自分は望んでいないわけで。
ムジュンしてる・・・
代わりでいいなんて言いながらアナタの心を求めてる。
ドアが閉まる直前に聞いた小さな嗚咽が胸に刺さって痛い。
誰を思って泣いてるのか知っているから尚更苦しい。
行き場のない感情が出口を求めて世界を歪める。
瞬きしたら床に落ちた。
〜END〜
- 359 名前:なちよしとか 投稿日:2003年02月28日(金)16時50分52秒
以上、なちよし(苦め)でした。
- 360 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月28日(金)17時05分20秒
- ある意味白かな、とも思いました。
黒と白って隣り合ってるんじゃないかなと。
いい話だったと思いますよ、私は。
- 361 名前:りゅ(ry 投稿日:2003年03月01日(土)12時06分03秒
- なちよしとか萌えました。感動しました。切なかったです。
こういうの大好きです。本当につぼにはまりました。
書いてくれた人ありがとう。黒い話大好きです。
- 362 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)21時28分36秒
- キスがしたいとか、体に触ってみたいとか…
考えちゃうのっておかしいのかな。
女の子にこういった感情を持つあたしは変なのかな。
- 363 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)21時36分04秒
撮影中の今も、ついあの子の方に目が行っちゃう。
カメラマンさんに「こっち見て!」って注意されるくらい自分が撮影に集中していないのがわかる。
最近目立ってきたかな…やっぱり。どう考えても見すぎだもんね。
しかし…あぁ、今日も可愛いなぁ…
「…ぁ」
やば…
今思いっきり目が合った。
気づかれちゃったかな?
だ、駄目だ。今は仕事中なんだから集中しなきゃ、そう、撮影に…
- 364 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)21時43分58秒
「麻琴?」
撮影が終わって。
一人疲れきったあたしの元へ、心配そうにあの子が話しかけてきた。
「なんか今日具合悪い?大丈夫?」
集中しようしようとは思うんだけど。
どうしても気になってしょうがない。
ちょこまか動くあの子をつい観察してしまう。
…こんな理由で、撮影中に6回も怒られてしまった。
あの子はそんなあたしを、不思議そうに見つめてくる。
「ぅあ、大丈夫だよ」
- 365 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)21時50分14秒
「なんか、でも珍しいなぁ。
麻琴があんなに撮影で怒られてるの、初めて見たかも。」
「うん…」
「何か考え事でもしてた?」
「…うん」
何を聞いても上の空のあたしを、あの子は怪訝そうに眉を顰めて。
「なんか、今日の麻琴おかしいよ」って呟いた。
だって…
そんな近くに座られたらドキドキするじゃん。
腕がピッタリくっつくくらい傍にいられると、
どうしていいかわからなくなるんだもん。
- 366 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)21時55分47秒
君は、あたしがどれだけあなたを好きか分かりますか?
声をかけられるだけで頭の中が沸騰して、
名前を呼ばれるだけで一気に体温が上昇して。
隣に座ってる今だって、
冷静を装ってるけど、本当は…
「麻琴ぉ…」
ぅわっ!そんな近くで顔覗き込まないでよ。
ほんと…やばい、あぁ、でもなんか泣きそうになってるし。
- 367 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時04分14秒
「愛ちゃん、あのさ…」
必死になって振り絞った声で話しかけた。
瞬間に泣き出しそうな顔だったのが、パアって明るくなって。
何何?って大きな瞳を輝かせて聞いてくる。
あれ?ちょっと、さっきより距離が近づいた気がする。
「あの、あの…さ、」
どうしよう、何て言おう。
ま、周りには誰もいないし…言っちゃおうか…あたしの気持ち。
大好きな君への気持ち。
そんなあたしの心の葛藤を知ってか、知らずか、
あたしの肩に頭を乗せて、気分良さげに鼻歌なんか歌ったりして。
更に上昇してゆくあたしの体温。
- 368 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時09分21秒
「あ、あのね、…聞いてくれる?」
「んー、何を?」
あたしの肩に乗っけた頭をごりごり動かしている愛ちゃん。
あ、あの…お願いだから、もうちっとだけ離れてくれないかな…
ドキドキしすぎて、こんな状態じゃ告白なんか絶対出来ないよ!
「ねぇ、麻琴はモーニング娘。の中で誰が一番好き?」
- 369 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時10分26秒
「えっ?」
「誰が好き?」
誰が…って。
そりゃあもちろん…
「愛ちゃんは?」
- 370 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時15分14秒
「私はぁ〜…」
誰なんだろ…
ちょっと…いや、かなり興味あったりして。
「すぐ近くにいてね、一番安心できる人。」
…え?
そ、それって…
「麻琴が一番好きだなぁ」
- 371 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時24分14秒
その言葉に思わず体をビクッと揺れ動かしてしまったあたし。
そうしたら当然、
肩に頭を置いていた愛ちゃんに、相当な振動がいくわけで。
愛ちゃんはびっくりしながら、すぐに顔を上げた。
「ど、どうしたの、突然。」
「……」
ぅあ。やばい…恥ずかしい…。
不意打ちだよ…
「顔赤いよ!熱あるかも、」
愛ちゃんはそう言って、あたしの前髪を手で上げて
おでこをくっつけてきた。
うあぁっ!これを…好きな人にこんな事されて我慢なんかできるかー!!
「…ま、まこ…っ」
- 372 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時29分36秒
「あたしが、一番好きなのは…愛ちゃん、だよ」
抱きしめた愛ちゃんの吐息が耳にかかって、
動きすぎて破裂しそうな心臓を、愛ちゃんに聞かれてはいないか心配になった。
だって…なんか、かっこわるいじゃん?
緊張しすぎて手も震えてきたし…
あたしは、ごまかすようにもっと強く愛ちゃんの体を抱きしめた。
- 373 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時33分33秒
「……」
愛ちゃんさっきからずっと無言だし…
突然こんな事言われても困るよね。
もしかしたら怒ってるかもしれない。
でも、もう少しこうしていたい。
愛ちゃんに、触れていたい。
「麻琴…」
すぐ近くで聞こえる愛ちゃんの声は新鮮だった。
これはあたしの勘違いかもしれないけど、
いつもよりなんとなく甘い声で、あたしの名前を呼んだ気がした。
- 374 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時37分24秒
「ぅわぁっ!?」
って、あれ…?
背中が冷たい…
「私も…す、きだよ」
上からかかる愛ちゃんの重み。
チカチカした蛍光灯の光が目に入る。
つまり…
小川麻琴、現在押し倒されています。
- 375 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時44分07秒
「ねぇ、キスしていい?」
こんな体制で、そんな無邪気な顔して言われても…
「や、だ」
「えぇっ!?」
本人もさすがに拒否されるとは思ってなかったらしく、
目をパチクリさせてあたしを見ていた。
その後は拗ねた顔を見せて、
「麻琴の…ばか」とかなんとかブツブツ言いながら
胸に顔を寄せてギュウって抱きついてきた。
- 376 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時46分31秒
「するよ、だめって言われても…」
「だから、だめです」
「…なんでー?」
- 377 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時51分44秒
「あたしから、する」
あーぁ…かっこよく決めようと思ったのに。
こんなに震えた声で顔が真っ赤だったら、全然だめじゃんあたし…
「い…、いぃよ」
愛ちゃんもなんか顔赤いよ…
照れた顔も可愛いのデス。
目を瞑ってる愛ちゃんのほっぺにチュってキスをして。
高まる鼓動を抑えつつ、今度は口に唇を寄せた。
「…ん」
- 378 名前:我慢 投稿日:2003年03月01日(土)22時55分58秒
いつから、こんなに愛ちゃんのこと好きになってたのかなぁ。
女の子同士の恋愛って、理解しがたいものがあるって昔は考えてた。
でも…
今この腕の中にいる温もりは、失いたくないって思うんだ。
ずっと、愛ちゃんを傍で感じていたい。
「愛ちゃん、好きだよ…」
今、小川はとっても幸せです。
- 379 名前:。 投稿日:2003年03月01日(土)22時56分50秒
- 終わり。
意味不明ですが、おがたかでした。
興味ない方はスルーしてくださいね!
- 380 名前:友達 投稿日:2003年03月02日(日)12時30分27秒
- 「ねえねえ、ミキスケ、聴いて聴いて!、あたしねェ
好きな人出来ちゃった。」
「なによ、あやっぺ、好きな人って、私のこと?」
「なに言ってんのよ!ミキスケも好きだけど、
あたしが言うのは、男の人・・・。」
「うわーッ、で、誰なの・・・」
「あるグループのボーカルの人、番組で一緒になって、
仲良くなったの!。すっごい、ステキな人!!」
「へえ〜、そうなのォ〜、実はね、私も好きな人が
いるのよ〜、」
「わ〜!、ミキスケもなの!、誰誰!!」
「あるユニットのボーカルの人。番組で知り合って、
色々、お話したけど、すごいステキな人!」
「え〜、なんだか、あたしと似てるはね。じゃあ、
一緒に、名前を言って見ない・・・」
「良いわよ、せ〜ので、言うのよ、せ〜の!!」
「ヒストリーのボーカルの豪珍く〜ん!!。」
「ヒストリーの豪珍さ〜ん!!」
- 381 名前:友達 投稿日:2003年03月02日(日)12時41分27秒
- 「・・・・」
「・・・・」
「ミキスケ・・・あなたもなの・・・」
「ウソ〜、あやっぺも、彼なの・・・」
「豪珍さん、あたしのファンって言ってくれて、
あたしのCDもよく聴くって・・・」
「豪珍くん、私のファンだって、CDも全部持ってるって、」
「彼、あたしのこと、すごく可愛いって言ってた・・・」
「彼も、私のこと、とっても可愛いと・・・」
「ミキスケ・・・騙されてるよ・・・」
「あやっぺこそ、騙されてたりして・・・」
「あ、あたし、行かないと・・・ミキスケ・・・
あたしたち、友達だよね。」
「ウン・・・」
「あたし、行くよ・・・」
「ガビョーン・・・・」
- 382 名前:友達 投稿日:2003年03月02日(日)12時43分18秒
- 「わたしたち、友達だよね・・・・」
終わり。
- 383 名前:親友 投稿日:2003年03月02日(日)17時38分14秒
- 「ねえ・・・美貴ちゃん・・・」
「あ、亜弥ちゃん・・・久しぶりだね。」
「美貴ちゃん、あれからヒストリーの豪珍さんに
会ったの・・・」
「ウウン、あれから会ってないよ・・・」
「あのね、この前、また番組で彼に一緒になったの。」
「・・・」
「今度は、ごっちんと一緒だったの。そしたらね、
彼、ごっちんに、可愛いね、とかCD全部持ってるとか
言ってるの聞いっちゃったの・・・」
「ええ〜、あきれた〜、」
「でね、後でごっちんに、あたしや、ミキスケに、
豪珍さんが言ったことを話したの。」
「で、どうしの?」
「そしたらごっちん、わかったって、終った後、彼を
呼び出して、すごいの、ごっちん、彼に蹴りを入れてた!!」
- 384 名前:親友 投稿日:2003年03月02日(日)17時56分00秒
- 「ウワ〜、ごっちん、すご〜い!!」
「豪珍が逃げ出した後、ごっちん、あたしに向かって
ピースしてたよ〜。」
「さすが、ごっちんだね!豪珍が轟沈だね!!あやっぺ!」
「アハハハ、ミキスケ、うま〜い!!」
「あやっぺ・・・わたしたち、親友だよね。」
「ミキスケ、どんなことがあってもあたしたちは、
親友だよ・・・」
「あやっぺ・・・」
「ミキスケ・・・」
「アッ、あやっぺ、この前貸したCD返して!」
「ガビョ〜ン!!!!」
- 385 名前:親友 投稿日:2003年03月02日(日)17時57分07秒
- 「わたしたち、いつまでも親友だよ・・・」
終わり。
- 386 名前:相合傘 投稿日:2003年03月02日(日)20時43分53秒
- 学校が終わってさて帰ろう、…と思ったのに。
外はドシャ降りで。
天気予報の嘘つき。
今日の降水確率10%って言ってたじゃん。
もうあの気象予報士は信じない。
「先輩?」
突然後方からの声。
ハスキーな声。
部活の後輩。
どんな大勢の人の声に混ざっても聞き分けられる。
…あたしの大好きな人。
「…麻琴」
「傘忘れたんですかぁ?」
「だって今日は雨降らない予報だったから…」
ニヤニヤしながら鞄の中の手をごそごそと動かして。
「じゃ〜ん、こんな事もあろうかと折り畳み傘持ってるっす!一緒に帰りましょ?」
…って、もしかして相合傘…?
「いっ、いいよ!麻琴、濡れちゃうよ。傘小さいし…」
「気にしないで下さい。ね?早く帰りましょうよ」
- 387 名前:相合傘 投稿日:2003年03月02日(日)20時44分29秒
- 手を引っ張られた事にドキドキして。
ワケわかんなくなって。
気がついたらあたしは麻琴の手を振り払っていて。
「あ…」
麻琴は少し悲しそうな顔をして、でもすぐに笑顔になった。
「すいません!調子に乗りすぎました」
「え、ち、違う…!」
「はい!」
差し出された傘を普通に受け取って。
「じゃあ!また明日〜!さよーならー!」
「ちょっ…、麻琴!濡れちゃうよ!」
「家近いから平気でーす!」
うそ。
麻琴んちなんてここからかなり遠いのに。
走っていってしまった彼女を追いかける事も出来ずに
ただ呆然と立ち尽くした。
手には受け取った小さな傘。
そんなつもりじゃなかったんだよ。
ただ、驚いて、嬉しくて、頭が混乱しただけだったんだよ。
…あんな顔させたかったワケじゃないんだよ。
降り止まない雨は次第に勢いを増してあたしの心の中まで濡らしていった。
- 388 名前:相合傘 投稿日:2003年03月02日(日)20時45分07秒
- 「明日…謝らなきゃ…」
借りた傘を差して家へ帰った。
−次の日−
「おはよう!先輩!」
「あ、麻琴!おはよう…。あの…昨日は…」
「ホラッ!」
差し出された手には大きな傘。
「これで濡れないですよ?ね?」
満面の笑みで聞いてくる彼女。あたしの事をどう思ってるかは知らない。
あたしは麻琴の事好きだけど…麻琴は?
こんな事されたら自惚れちゃうでしょ?
そしてさぁ。
「麻琴…今日晴れてるけど」
空には眩しい太陽。
麻琴の手には傘。
「し、しまったー!!」
頭を抱えてる麻琴がアホで、可愛くて、大好きで。
気象予報士さん。
今日の天気予報なんですけど…。
間違いって事はないですかね?
END
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)13時15分12秒
- >我慢
おがたかですね…良かったです。なんか、可愛くて
>相合傘
これは…やっぱりおがたかですかね?
おがーさん良い子ですね。こちらも可愛いです。
続編期待しちゃいます
- 390 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)21時56分57秒
- そんな瞳で見つめないで。
私はもう卒業するんだ…
いつまでもそんなんじゃ、そんなままじゃいけないよ。
これから4期メンバーだって入ってくる。
『先輩』になるって事。いつまでも甘えてちゃいけない。
――――わかった?後藤。
- 391 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時04分41秒
「…まーた…この夢かよ」
卒業してから何万回も見続けている夢。
市井が、泣いている後藤を慰めている夢。いや、宥めていると言った方が正しいか。
泣き叫ぶ後藤の前に、市井は何もしてやれる事はなかった。
ただ、震える肩をそっと抱いていただけ。
卒業する事は、市井の夢への第一歩なんだ。
シンガーソングライターへの…道なんだよ。
…わかってよ、後藤。
そう言い聞かせてもあいつはただ泣き続けるだけで、
市井の顔も見やしなかった。
その内、肩を抱いていた手も振り払われて、市井から背を向けた。
振り払う瞬間に見えた、あいつの涙でグショグショになった顔。
悲しいなんてもんじゃなかった。
―――市井だって―――後藤と離れたくなかった…大好きだったよ、後藤。
- 392 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時09分11秒
思い出すのは、加入当時の後藤の顔。
13のくせに金髪で、やけに大人びてて、でも笑顔は子供だった。
感情を素直に表す後藤の無邪気な笑顔は、市井の宝物だった。
楽屋でもいつも一緒にいて、どこへでもすぐひっついてきて。
“市井ちゃんっ”
…二度と、呼んではもらえないけど。
- 393 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時17分32秒
- 後藤のすべてが好きだった。
叱ったりもしたけど、喧嘩もたくさんしたけど―――本当に。
市井は夢を叶えたよ。結構時間はかかっちゃったけど、夢を諦めなくて良かった。
今日は晴れたからよく星が見えるね。
後藤も、市井の顔が見えるかな?市井はあのお月様が、後藤のニッコリ微笑んだ顔に見えるよ。
まだヘタクソだけど、後藤が最後に言ってくれた言葉―――約束。
後藤だけに、市井の歌を聞かせるよ。
後藤もしっかり聞いてろよ?星屑の観客席から―――
- 394 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時25分51秒
忘れないで。私の言葉を。
忘れないよ。あなたの笑顔を。
傍にいすぎて離れたとき本当につらい思いもしたけど。
あなたがいてくれたから。私は頑張ってこれた。
あなたがいてくれて、本当に良かった。
忘れないよ。君と過ごした日々。
忘れないよ。君との思い出。
いつまでも私の心に咲き続けるあなたの笑顔を胸に、
あの時は照れくさくて言えなかった事も、今なら言える。
ありがとう――――好きだよ――――
「後藤、大好きだったよ…」
“やーだー市井ちゃんっ、恥ずかしいからそんな事言わないでよぉ”
後藤の声が、聞こえた気がした。
歌い終わって、
- 395 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時26分54秒
- 訂正。
394の『歌い終わって、』は抜かしてください。
すいません
- 396 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時31分48秒
柔らかい風が市井の頬を包む。
顔を伝う雫を優しく優しく拭ってくれた。
思い出すのは、卒業の日の自分。
誰よりも最後に温かく迎えてくれたのは、後藤だった。
楽屋を出て、家に帰るとき
『バイバイっ、また明日ねぇっ』
って言ったのが、あいつの最後の言葉。最後の笑顔。
『あはっ』
…ったく、だらしない顔しやがって。
- 397 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時33分25秒
『いちーちゃんっ!』
「…なんだよ」
『いちーちゃん、大好きっ!』
「…っく…、い、ちーも…だよ…っ」
- 398 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時39分08秒
- 後ろから誰かに抱きしめられた感触がした。
振り返ってみても、誰もいない。
「……」
鼻をかすめる甘い香り。アイツの大好きだったあの香水の香りだ。
「…後藤」
無駄だとは思うが、話しかけてみた。
「ありがとう、な。」
その瞬間、私は静かに目を閉じた。
温かい温もりは、私が眠るまでずっと付いていてくれた。
- 399 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時43分07秒
夢の中では、市井と後藤が手を繋いで楽しそうに走っていた。
一面に広がるお花畑の間を縫って思い切り駆け抜けていった。
あの頃の市井はもういない。
そして、これからも変わり続ける。
「…応援、してろよ」
『うんっ!』
『いちいちゃん、だーいすきっ!』
そして、私は目を覚ました。
- 400 名前:。 投稿日:2003年03月05日(水)22時44分07秒
- 終わり。
いちごまです。
かなり意味不明です…痛め?かも(w
- 401 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時29分01秒
- 道を歩いてると蛍光灯の輪っかみたいなのが落ちていた。
拾い上げるとそれは硬くもなく柔らかくもなく。
少し温かかった。
(なに…?これ?)
よくわからないけど何故かあたしは家に持って帰った。
あたしの部屋は所狭しと画材道具が散らばっている。
「うーん、相変わらず汚い」
美大生でバイトなんかもしてるから片付ける暇もなくてこんな感じ。
一人暮らしだからまぁいいかと。
「それにしてもこれなんなんだろう?」
持ち上げて下から見たり、上から見たり、引っ張ったり。
「蛍光灯にしては手触りがヘンなんだよね…」
それを部屋の隅に放り投げて、あたしは課題を終わらせるべく、絵を書き始めた。
成績は中の上くらい。
可もなく不可もなく。
…要するに個性が足りないあたし。
- 402 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時29分33秒
- 「…だめ!」
スケッチブックの紙を破いてゴミ箱に投げた。
頭がさえなかったりした時は続けないで気分転換した方がいい。
と、言うことであたしはベットに入って眠りについた。
数時間後、目を覚ますと部屋は真っ暗で。
長い間寝ちゃったんだと思って起きようとすると部屋の中には誰かがいる気配。
「なっ…!誰かいるの!!?」
ガバッとベットから起きて電気をつけると、小さく縮こまって震えている女の子がいた。
「あなた…誰?」
あたしが近づくと怯えたように更に小さくなった。
「大丈夫だよ、圭織怖くないから…」
「……ほんとう?」
にこっと笑ったら女の子も笑った。
…でもどうして?
「ねぇ?あなたは何でここにいるの?」
「…あのね、のの…落し物をしたんれす…」
「落し物…?」
「丸くって…ドーナツみたいな形の輪っか…。ここのおうちにあるって教えてもらったんれす」
「丸くてドーナツ………あぁ!これの事?」
あたしは散乱してる道具の中からさっき放り投げた輪っかを取り出した。
- 403 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時30分06秒
- 「これでしょ?」
「あー!!はい、これれす!良かったぁ…」
輪っかを抱きしめて嬉しそうに笑った顔がなんだか可愛かった。
「…ねぇ?教えてもらったって言ってたけど誰に?」
「………神様れすよ!!」
「は?」
神様に教えてもらった、と。
「神様れす!!」
「……へぇ」
女の子は手に持っていた輪っかを頭の上にかざした。
すると輪っかは頭の上に浮き、ほのかに光りはじめた。
「ええ!??」
あたしが驚くのをよそに、背中から白い翼まで現れた。
「ええええ!???」
- 404 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時30分39秒
- 「ののっていいます。おねえさんは?」
「………飯田圭織…」
「いいらさんですね!いいらさん、ののの大事なもの拾ってくれました。おれいに一つだけ願い事を叶えます!何がいいれすか?」
…えーと、ちょっと話についていけないんだけど。
あたしが拾った蛍光灯みたいなのは天使が頭につけてる輪っかで。
今目の前にいるのは天使でお礼に願い事を一つだけ叶えると。
…うん、こんな感じ?
「ちょ…っと待っていきなりいろいろな事が起きて訳わかんないんだけど…」
「いきなり願い事って言ってもぱっとおもいつきませんよね〜、じゃあ少し待つことにします」
「え?」
「願い事が決まるまで一緒に住もうと思います。よろしくれす!」
こうして『のの』と二人暮しが始まった。
- 405 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時32分15秒
- ののは部屋を掃除したり(余計汚くなってる気もするけど)、
ご飯を作ってくれたり(食べれるものは少ないけど)、
絵のモデルになってくれたり(じっとしててくれないけど)した。
ののと一緒にいると笑いが耐えなくて毎日が充実していた。
「いいらさ〜ん!!」
「ののー!!」
いつもののを抱っこしてテレビを見るのが日課となっていた。
一緒にドラマを見ているとこんなワンシーンがあった。
病気の女の子が病魔に蝕まれ亡くなった。
『この子はきっと天使になるんです』
ふと、ののを見ると感動して泣いていた。
そしてドラマが終わって思った事を聞いてみた。
「ねぇ?ののってもともと天使だったの?」
「はい!生まれた時からそうれす!」
「へぇ〜、かっこいいね〜」
「…でもののは人間に生まれてきたかったれす…。そうすれば…」
「…ん?何?」
「……なんれもないれす」
ののはえへへと笑いながら甘えてきた。
- 406 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時32分47秒
- それから半年くらいたったある日。
いつものように家に帰るとののの元気がなかった。
「どうしたの?のの?」
「……いいらさん、ののは天界に帰る事になりました…」
「え……」
「いいらさんとは今日でおわかれれす…。…願い事決まりましたか…?」
「いやだ!のの!!行かないで!圭織とずっと一緒に暮らそう?!」
「…だめなのれす。人間とは一緒に暮らせないのれす…。掟なのれす…」
ぽろぽろと涙をこぼしながら一生懸命話すののを抱きしめた。
いつの間にかあたしも泣いてた。
「いやだ!ずっと一緒に…!!」
ののは首を振った。
- 407 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時33分24秒
- 「いいらさん…お願いれす…、願い事…。…画家になりたい、れすか?」
あたしは首を振った。
画家にはなりたい。でもこんなのは嫌だ。
「大金持ち、れすか…?」
また首を振った。
お金持ちにもなりたいけど、今はお金なんかいらない。
「……じゃあ…、なんれすか…?」
願うことがあるとすればただ一つ。
「……ののを…人間にしてくださいっ…!!」
「………え…」
「圭織の願い事…!聞いてくれるんでしょう?!お願い!!」
「…それは無理れす…、ののが変わる事はできないのれす……」
- 408 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時33分58秒
- 「じゃあ…、圭織を天使にして」
「え…」
「それは出来るでしょう…?」
「できます…けど!画家になれないれすよ?!それでもいいんれすか…?」
「…いいよ。天界でだって絵、描けるよね…?」
「………」
あたしは必要な画材道具を手に持ち、ののの前に立った。
「…お願い。のの…」
ののは両手を広げ前に出した。
手のひらが光り、眩しくて目を瞑った。
「…のの………?」
目を開けるとそこにののの姿はなくて。
あたしの頭の上には輪っかもなくて、翼も生えてなかった。
- 409 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時34分30秒
- 「う…そ……?なんで!?…ののー!!!」
何度名前を呼んでもののの声はしなかった。
あたしの前から天使はいなくなってしまった。
泣き虫で、照れ屋で、食いしん坊の天使。
「願い事…叶えるって言ったのに…!!」
いつもあたしの隣で笑ってた天使。
「ののぉ〜〜……!!!」
*
***
*****
- 410 名前:願い事 投稿日:2003年03月06日(木)20時35分12秒
- 数年後、あたしは画家になって、少しではあるけどお金持ちになった。
ののの力なのか、なんなのか真相はわからないけど。
あたしは確かにあの時天使に会った。
個展をひらいたあたしは出入り口の一番初めに気に入った絵を飾った。
あたしが初めて書いたのの。
下手くそでも飾りたかった。
絵を眺めていると後ろから声を掛けられた。
『…この絵のモデルさん、かわいいれすね…!』
FIN
- 411 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月06日(木)21時34分49秒
- 新スレ 作者フリー短編用スレ4集目
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/red/1046953775/
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