恋せよ、乙女

1 名前:IM 投稿日:2003年01月06日(月)13時57分59秒
アンリアル・ベタな学園ラブコメ・主役は、紺野・マイナーカップリングです。
夜に更新で、速度はマターリと。
2 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月06日(月)22時35分02秒

学校の帰りに立ち寄った駅ビルのファミレスにて、私、紺野あさ美は大いに悩んでいた。

「あさ美ちゃんて好きな人とかいるの?」

原因は、ガラス越しに通りを歩くカップルを見て呟いた愛ちゃんの愚痴を聞いて、麻琴ちゃんがしたこの質問。

「いない…かなぁ?たぶん…」
「『かなぁ?』じゃないでしょ。自分のことやろ」
「だって急に聞かれても」
「ほんま鈍臭いのぉ。いらつくわ〜」
「まあまあ、愛ちゃんそう言わずに…」

鼻息の荒い愛ちゃんを麻琴ちゃんが押し止める。
3 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月06日(月)22時37分20秒

(また始まった…)

幼なじみ3人組の私たちのポジションは何年経っても変わらない。愛ちゃんが私に怒って、麻琴ちゃんが愛ちゃんをなだめて、私は麻琴ちゃんに庇われる。

でも、なんだかんだで仲はいい…筈。

「大体、麻琴はあさ美に昔っから甘い!だから高校に入ってもこんなにボケたまんまなんや。どーせ『実は初恋もまだなんだぁ、あはは〜』って感じに決まってる……って人の話を聞いてんの!?」
「聞いてる、聞いてますっ!だから、ポテト返してよぉ」
「好きな人はもうええから、タイプだけ答えやー。そしたら返してあげる」

4 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月06日(月)22時40分50秒
麻琴ちゃんに助けを求めて見つめても、何故か麻琴ちゃんは興味津々に瞳を輝かせてる。

「分かったよ…」

愛ちゃんに奪われてしまったポテト奪還の為に、私は本気出して考えてみた。

(タイプかぁ…特にないなー)

愛ちゃんの言う通り、実は初恋もまだな私だけど、恋愛に興味がないわけじゃない。
『なかよし』や『りぼん』、『別マ』に描かれているような恋に憧れてもいる。

高校受験前は、密かに『高校教師』みたいな禁断の恋が訪れることを期待してたし。
入学後、2ヶ月経った今、望みは薄い。

(女子校で恋すること自体、無理だよぉ。先生も校長以外みんな女だし)
5 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月06日(月)22時43分48秒

「……タイプはー、悪ぶってるのに、本当は優しい人…とか」

「捨てられた子犬にごはんあげるような奴?」

溶けかけた氷をストローで弄びながらの愛ちゃんの補足。

「うん。そんな感じ」「で、周りからは敬遠されて誤解されちゃってて、でも、あさ美ちゃんはその人の良さを知ってる…みたいな?」

ナプキンで手持ち無沙汰に折り紙を始めた麻琴ちゃんも付け足す。二人の的確な言葉に、私は思わず立ち上がっていた。
6 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月06日(月)22時47分09秒

「うん、うん!それだよ、それ」

まさにそんな感じ。

学校では超がつく程の問題児。
でも、根は動物を愛する優しくて、いい人。それを知ってるのは私だけで……、いつか二人は、ふとしたきっかけで恋に落ちるって寸法。

私のラブ・ストーリー、完璧過ぎる。

なのに、愛ちゃんと麻琴ちゃんは、
「こてこての乙女趣味やー」
「今日のあさ美ちゃんは、いつもより飛ばしてるねえ」
好き勝手なこと言って笑う。
私、何か変なこと言ったかなぁ?
7 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月08日(水)15時20分43秒

「そんなに笑うことないじゃない」

クラシックバレエの稽古がある愛ちゃんと途中の乗り換え駅で別れた後、電車で地元に向かう間中、麻琴ちゃんは私の顔を見ては含み笑いを零していた。

真面目に答えたら答えたで笑われるし、結局ポテトは愛ちゃんに食べられちゃったしで散々だ。

「だってさー、今時の少女マンガでもありえないようなこと言うんだもん。ベタ過ぎて笑っちゃうって」
「麻琴ちゃんのバカ」

不機嫌な仕草で麻琴ちゃんから顔を逸らす。途端に麻琴ちゃんは慌てて私の前にまわり込む。

8 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月08日(水)15時22分41秒

「わ、わかったよぉ。もう笑わないからさ。ごめん」
「――あーあ、私、愛ちゃんにポテト食べられちゃったんだよねえ」
「チョコパフェとアイス食べたじゃん。あんま食べ過ぎると太るからちょーどいいんじゃな……ごめんなさい、ごめんなさいぃ!!明日、肉まん奢らせていただきます。はい」
「絶対だからね」

睨みをきかせて許してから、ふと、『花より団子』とゆうコトワザが頭に浮かんだ。
そうだなぁ…、私は、色気より食い気かも。でもね、そもそも焦って恋する必要ないじゃない。
まだまだ人生長いんだし。

麻琴ちゃんはどうなんだろ?好きな人とかいるのかな。

9 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月08日(水)15時24分18秒

「ねえ、ねえ。麻琴ちゃんは好きな人いる?」
「あた、あたしぃ!? 」
「声裏返ってるってことはー、いるんだ?」「まぁねえ、それなりに……って、違う!違う!そんなんどーでもいいじゃん。ほら、駅着いたよ」

白々しい口調で言ってドアが開く前に降りようとした麻琴ちゃん。おでこをドアにぶつけてうずくまった。

(やっぱいるんだぁ…)

麻琴ちゃんてほんと分かりやすい性格なんだから。

もっと問い詰めたかったけど、おでこを押さえて唸っている後ろ姿があまりにも可哀相なので止めておいた。

涙目で天を仰いだ麻琴ちゃんと目が合って、どちらからともなく2人して笑った。

10 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月08日(水)15時25分04秒
麻琴ちゃんの笑顔が、私は好きだ。
パッと場が明るくなるような笑み。

どことなくボーイッシュな外見をしているせいか、麻琴ちゃんは女子生徒からモテる。
優しいし、人懐っこいし、スポーツができてカッコイイ。
でも、強そうに見えて実は私よりも愛ちゃんよりも女の子らしいことを知ってる。

「あさ美ちゃん…!?」

歩き出した麻琴ちゃんの腕を組むと、麻琴ちゃんの体は硬直して、頬に赤みがさす。

「早く行こっ」
「う…、うん!」

私は、恋人なんてまだいらない。
大好きな友達に囲まれて楽しい毎日を過ごすのが一番幸せだも
11 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月08日(水)15時28分57秒
駅から出ると外は真っ暗で、時計は18時を過ぎていた。
普段ならとっくに家に帰って夕飯をとっている時間。
それと、お姉ちゃんのバイトからあがる時間でもある。

今日は、お母さんもお父さんも遅いから、夕飯は外食でいっか。
お姉ちゃんの創作料理(材料不明)には閉口してるし。

「コンビニ寄ってもいい?」
「駄目。てゆーか、やだ」

お姉ちゃんのバイトしてる駅前のコンビニに向かおうとした私のコートのフードを麻琴ちゃんが掴む。

「なんで?麻琴ちゃんも一緒に夕飯食べようよ。お姉ちゃんに奢らせるからぁ」
「ゴチでも絶対やだ!こないだ行った時、ひとみ先輩のせーで恥かいた」
「もー。麻琴ちゃんは大袈裟だなぁ。今更なに嫌がってるの?そんなの慣れてるでしょ」「おい、おいっ!さらっと言いのけるなー!」
12 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月08日(水)15時30分34秒
よっぽど酷い目に遭ったのか、麻琴ちゃんの顔色は極めて悪い。
眼も必死だ。

「マジであたしは遠慮させてもらうよ…」

麻琴ちゃんは、昔からとてもお姉ちゃんを恐れている。
家が隣同士の私と麻琴ちゃんは、幼稚園に通う前から毎日のように遊んでいた。
たまにお姉ちゃんも一緒に。
お姉ちゃんは、ちょっと男まさりでおおざっぱだけど、麻琴ちゃんをそれなりに可愛がっていたと思う。
でも、あれは少ーしやり過ぎだと思った『遊び』は幾つかあったかも。
よく考えると、お姉ちゃんといる時の麻琴ちゃんは、いっつも泣いてたなぁ。
13 名前:IM 投稿日:2003年01月08日(水)15時34分23秒
夜無理なので、早め更新。
スレタイ失敗。
「セイシュンミジカシ、コイセヨ、オトメ」でした。
14 名前:IM 投稿日:2003年01月08日(水)15時40分08秒
レス10。
大好きな友達に囲まれて楽しい毎日を過ごすのが一番幸せだも

大好きな友達に囲まれて楽しい毎日を過ごすのが一番幸せだもん。
が正しいです。
文末切れてました。スミマセン。
15 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月08日(水)19時56分05秒
くーっ。5期好きなので、ほのぼのと楽しんでいます。
16 名前:名無し蒼 投稿日:2003年01月08日(水)20時50分51秒
あはっ♪
五期好きでしかも紺ちゃん好きなので嬉しいです♪
ほのぼのでいいですね、頑張ってください。
17 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月10日(金)09時30分17秒
「なんかさー、年々ひどくなってきてるよ、ひとみ先輩のイタズラ…つーか、イジメ?あさ美ちゃん、よく先輩と姉妹やってられるよねー。あたしだったら縁切るな」

文句をたれながらも私の言う通りコンビニに麻琴ちゃんは付き合ってくれた。

駅から徒歩5分のとこにコンビニはある。
お姉ちゃんの趣味友の後藤さんの家が経営している個人経営のコンビニで、店内はとてもまったりとした雰囲気で居心地がいい。
たまに変わったメーカーのお菓子が置いてあったりして、週一で寄らせていただいてる。

「そっかなぁ。お姉ちゃん優しいよ?麻琴ちゃんのリアクションが面白いから、ついつい遊んじゃうんでしょ」「あんなに色々された嫌でもリアクションがでかくなるって…」

18 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月10日(金)09時31分54秒
自動ドアを抜けた途端、麻琴ちゃんが私の背後にまわった。
フードに必死にしがみつくから首の辺りが締まって苦しい…。

「もー、何やってんのぉ」
「ひとみ先輩に不意打ちされないよーにと思って。油断大敵火事の元」
「日本語めちゃくちゃだよー」

レジには後藤さんが立ってボーッと天井を見上げてた。

変わってる人だけど、新作のお菓子とかが入荷するとメールをくれたり、家に遊びに来た時に持ってきてくれる親切な人だ。

「あのぉ、後藤さん」「―――あれ?あさ美ちゃんじゃん。ひさぶりだねぇ」
「一昨日会いましたけど」
「んあ?そうだったっけ?」

(…うん。いい人なんだけどね…)

19 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月10日(金)09時34分21秒
「お姉ちゃん、もうあがっちゃいましたか?」
「待って。何も言わないで。私には分かるから」

ゆっくりと眼を閉じた後藤さん。
その行く末を見守ること3分経過。

痺れを切らした麻琴ちゃんが、私の肩越しに顔を覗かせ、

「まだですか?」

後藤さんは、カッと眼を見開き、ゴムで髪を1つに束ね、どこからか紅い薔薇の造花を取り出した。

「あなたの考えている事が、僕には分かる。今、あなたのお姉ちゃんが此処いるのか気になってるでしょう?」「さっきあさ美ちゃん言ってた気が…」

(バカね、麻琴ちゃんたら。マジレスしちゃって)

すかさず普通にツッコミを入れた麻琴ちゃんのみぞおちを肘で突いた。

20 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月10日(金)09時39分11秒
私だってそう思ったけれど、ぐっと我慢したのよ。
……なんて、嘘、嘘。こうゆう時、自分のトロさを呪っちゃうわ。本当は、私もツッコミたかったんだ。

「ふっ…」

私たちを鼻で笑って一瞥し、何事もなかったように後藤さんはカウンターの奥へ去っていった。
紅い薔薇を残して…。

「ほらー、麻琴ちゃんが余計なこと言うから後藤さんあっち行っちゃったじゃん」
「てゆーか、みぞおち痛いよぉ…」
「しょうがない。呼び戻すしかないわ……。よしっ!あった」

掲げられた私の右手には、小学生御用達のロート子供ソフト。
簡単に言えば、目に滲みにくい、ただのお子ちゃま用目薬。

(あ、麻琴ちゃんの視線がちょっと痛い)

いかにも「こいつ、やべーよ」みたいな眼。
21 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月10日(金)09時42分23秒
「その眼は何、その眼は〜」
「いや、別に」
「あのね、これをこうやって…みんなから隠れて両目に垂らします」
「うん、うん」
「そして、振り返ってみんなの前に泣き真似を晒しながら、『そんなの悲し過ぎるぅ』と叫ぶと、あら不思議。後藤さんが現れるってわけ。はい。では、実践してみようっ」

レッツ・トライ!と言わんばかりに目薬を麻琴ちゃんに手渡す。
麻琴ちゃんは、ん?と首を傾げ、私と目薬を交互に見てから、

「あたしがすんの!?やだ、やだぁ!恥ずかしい〜。みんな見てんじゃん」

麻琴ちゃんの言うように、後ろにはいつの間にかギャラリー(レジ待ちの列)ができていた。

22 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月10日(金)09時44分41秒
だからといって、麻琴ちゃんが恥ずかしがろうが関係ナッシング。お姉ちゃんから聞いた『文麿ごっこ』を生で見たいんだもの。

「麻琴ちゃん……、この目薬、眼に滲みないから。だから、お願い」
「あのねー、そーゆう問題じゃないんだけどさ。分かったよ…こうやるんだっけ?」

覚悟を決めた麻琴ちゃん。
ロート子供ソフトを目に垂らし、瞬きを2・3回する。
眼が段々と充血していって、両目からは大粒の露が膨れ上がり、頬を伝いはじめた。

麻琴ちゃんてば泣き真似うま〜い、と感心しながら決め台詞が出るのを待ってたのだが、麻琴ちゃんはお間抜けな悲鳴を張り上げた。

「――イダダダダッ!めっ゙ちゃ目に滲みる〜ぅ゙っ!あ゙さ美ぢゃんのうぞつぎぃぃ〜〜」

23 名前:IM 投稿日:2003年01月10日(金)09時51分44秒
時間あったので朝っぱらから更新。

>15名無し読者さん
レスサンクスです。
これからも楽しんで読んでもらえるよう頑張ります。

>16名無し蒼さん
レスサンクスです。
自分も5期好きです。ヤグ推しですが(w
24 名前:15 投稿日:2003年01月12日(日)00時50分09秒
楽しんでますよー。更新わくわくしながら待ってます。
25 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月12日(日)14時23分03秒
痛い、痛いと執拗に連呼し、麻琴ちゃんは瞼をごしごしと擦る。

(眼を擦ると眼球がひっこんじゃうの知らないのかしら。それにしても、麻琴ちゃんはリアクションが3流芸人よりオーバーね。お姉ちゃんにイジメられてもしょーがないわ。あぁ、今日の夕飯何にしようかな…)

そんな思いを淡々と巡らせながら、麻琴ちゃんの相変わらずのヘタれぶりに、私は呆気にとられてしまった。
ギャラリーの反応というと、目薬をさしただけで大量の涙を流す少女の様子を笑うこともせず見ていた。

きっと、事が性急に進み過ぎていた為、何が起こったのか掴てないのだろう。
掴めていたなら、大失笑したに違いない。
残念。

26 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月12日(日)14時25分05秒
「う〜っ、眼がしょぼしょぼするぅ」

そして、麻琴ちゃんが落ち着きを取り戻した時、ギャラリーの中から微かなざわめきが聞こえ始めた。
長蛇の列が四方へと分散し、空いたスペースをゆうゆうと歩いて誰かが私たちに近づいてくる。

ガツン、ガツンとごっつい靴音に耳を傾けながら、私と麻琴ちゃんは顔を見合わせた。
思いは同じ。

((後藤さんだ!))

「おいっ、おまえらそこどけ」

待ち人来ず。
私たちの前に現れたのは、後藤さんではなく、小さな金髪の女の人だった。
女の人は、くちゃくちゃとガムを噛み、私と麻琴ちゃんを強引に押しのけると、カウンターに身を乗り出す。
すっごく香水臭い。

27 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月12日(日)14時27分05秒
「ごとー!!さっさと仕事しろよ!レジ混んでんぞ。ったく、これからライブ行かなきゃいけねーのに、時間とらすなよな」

どうやら、この女の人は後藤さんと知り合いらしい。

カウンターを掌で叩いて後藤さんを呼び出す彼女を横目で観察してみた。

毛根から毛先まで見事な金髪で、身長はミニマム。
靴は最近滅多に見られない厚底、服装とアクセサリーからして、いわゆるギャル子。

と、突然、ギャル子が振り返った。
ばっちり目が合う。

(顔までミニマムだわ)

顔立ちは整っている。でも、化粧をおとした後もこの美貌をキープできているかは定かでない。

「なんだよ?じろじろ見てんじゃねーぞ」
「すい、すい、すんまそんっ!」
「あ?その謝り方、オイラをバカにしてんのか」
「そ、そんなわけないじゃないですか〜ぁ」
28 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月12日(日)14時30分04秒
ギャル子の勢いに退いて思わず「すんまそん」なんてバカな謝り方をした麻琴ちゃんに、彼女は更にすごむ。
麻琴ちゃんは、私の背後に隠れて助けを求めた。

(いざって時に弱気になるんだから。麻琴ちゃんは、どこまでもヘタれね〜)

でも、まあ、ここは任せて。
こう見えても私、空手茶帯ですから。茶帯。

腰を落としてファイティングポーズをとってギャル子に改めて向き合った。

「因縁つけて絡むの止めてもらえませんか?」

壁を拳で殴ってドスをきかせたりする。
しかし、脅しに動揺したのはギャル子ではなく、麻琴ちゃんだ。
29 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月12日(日)14時32分24秒
私の肩を両手で掴んでぐらぐらと揺らし、どさくさに紛れて言いたい放題。

「あああ、あさ、あさ美ちゃんっ!ケンカ売ってどーすんのさ!?あんたバカでしょ?絶対バカでしょ!?どこまでも鈍過ぎる」
「失礼ねぇ。こないだの中間テスト、麻琴ちゃんより平均高かったもん」
「マジ?自信あったのにぃ。ガックシ…てゆーか、なんであたしの平均知ってんだー!?」
「愚問ね。そんなこと今は関係ないわ」

「だぁーーっ!おまえら、オイラを無視すんなぁっ!!」

精一杯の大声で自分の小さな存在を主張してギャル子が割り込んできた。
30 名前:IM 投稿日:2003年01月12日(日)14時37分25秒
文がまとまったら夜中にまた更新します(タブン…

>24 15さん
レスサンクスです。
楽しんでいただけてると思うと頑張れます。しかし…いっつも更新レス数ちょびっとでスマソ
31 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月12日(日)19時26分18秒
むっちゃおもろい!
ちっちゃい人登場でますます楽しみです。
32 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月12日(日)23時26分04秒
何気に麻琴をいじめている紺ちゃんに萌え。
がんばれまこっちゃん。
33 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月15日(水)00時15分15秒
厚底を履いているわりに、私たちを見るギャル子の目線は、若干、見上げるかたちをとっている。
そのせいか、迫力がなく、睨まれていても恐くはない。

だけど、麻琴ちゃんはそうとう怯えてる。
再び素早く私の背に隠れ、ギャル子を伺いながら言う。

「あさ美ちゃん…やばいって…。絶対絶命、絶望的」
「だからぁ、私の後ろに隠れてフード掴むのやめて。首が締まる。私のこと殺すつもり?」
「あ…それは困る。ここであさ美ちゃんに死なれたら、この金髪から逃げられないもん〜」

34 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月15日(水)00時17分04秒
私にしがみつく麻琴ちゃんの手から力が少しだけ抜けた。
麻琴ちゃんの言葉に何かひっかかるものがあったけど、今は問い詰める余裕がないわ。

とにかく、ギャル子を上手くまく方法を考えなくてはいけない。
でも、かなり質の悪そうな人物で、なかなか逃げられそうにないのが現状。

どうやって逃げるか悩む一方で、平凡な日常に起きた危機に、ちょっとだけワクワクっときてるのは本音。

「あんまオイラのことナメてんじゃねーぞ。いざとなったらなぁ、おまえらの耳に……えっと…手を、手を突っ込んで、前歯…じゃなくて、奥歯ガタガタいわせ…させたるどー!文句あっかー!!」

最後は強引にもっていき、ギャル子は逆ギレ気味に叫んだ。
自分が台詞を噛み過ぎたのは、私たちのせいだと言いたげに理不尽に怒っている。
35 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月15日(水)00時19分28秒

色んな意味で私たちの置かれた状況は危険極まりなかった。

麻琴ちゃんはまるでその緊急事態に気づいてるようで、気づいてないらしい。
笑いを堪えきれずに、

「ぷっ。今のめっちゃ噛み噛み〜」
「麻琴ちゃん笑ったら悪いよぉ。頑張ってたじゃない」
「う、うるせーっ!あー、もう、マジで頭にきた」

厚化粧の上からでも分かる程にギャル子の顔が真っ赤になった。

(ちょっと〜、麻琴ちゃんまでギャル子を怒らせてどうするわけ)

ここは私の手を汚して切り抜けるしかないと判断し、拳を握りしめ直した直後、ギャル子が後ろに一歩下がって右足を大きく振り上げた。
小柄な分、機敏な動きだが、そんな見え見えのキックがこの茶帯保有者である私に当たるとでもお思いなのかしら…。
36 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月15日(水)00時20分12秒
(えっ?)

黒い物体が私の頬ぎりぎりに掠め、

「◇○☆△×っ!!」

例えようのない鈍い音と、不可解な悲鳴が耳元に届き、重いものが背中にぶつかって床に崩れた。

私の足元に、顔に厚底靴をめり込ませて気絶している麻琴ちゃんの何とも笑え……無残な残骸が。

「麻琴ちゃん!?大丈夫?目ぇ覚まして」
「………」
「こんなとこに寝られたら邪魔だし、戦えないじゃない。おきろー」

傍にしゃがんで頬をビンタしても起きない。仕方ない、ひとまずカウンターに放置しおこう。
37 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月15日(水)00時23分07秒

「ちょーっとやり過ぎちゃったかな」

その言葉とは裏腹に、悪びれた様子のない笑みを浮かべ、ギャル子は麻琴ちゃんを覗き込む。

返してもらうよ、と言って麻琴ちゃんの顔にめり込んだ厚底靴を回収しようとした手を私は制止た。

(このまま引き下がったら女がすたるわ)

「んだよ?友達連れてさっさと帰んな」
「……嫌です。これはケンカの戦利品としていただいて帰ります」「それって、オイラとやるってこと?」

ゆっくりと私を見上げたギャル子の表情は、やや曇っていた。
厚底飛ばしで体力を消耗し、あまり気が乗らないのだろう。

(さっきの、ゲゲの鬼太郎{鉄ゲタ攻撃}に要注意…)

あさ美。あの厚底をまともに受けたら一発でKO負けよ。
ここは、私の苦手な速攻勝負でケリをつけるしかなさそうだ。

38 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月15日(水)00時27分20秒

「そうです。次は、文武両道、空手茶帯・朝比奈女学園1年の紺野あさ美がお相手させて――っ!」

胸元を貫く勢いで靴がめり込んでゆく感覚が、ありありと伝わってくる。
叫び声すら出せない。

(喋っている途中で攻撃するなんて、卑怯よ)

とゆーことは、この勝負、ギャル子の反則負けね。
私の勝ちってことね。やったね☆

(でも、今度会った時は、見事なKOで勝利してみせる…っ!)

その眉毛、その瞳、その鼻、その唇、その金髪、ミニマムさ加減。絶対に忘れないから。

膝を床につき、胸元を押さえながら、遠退く意識の中、私はギャル子の顔を網膜に焼き付けた。
体が完全に床へと落ちる。

最低、最悪。
これが、私と矢口真里の運命の出会い。

39 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月15日(水)00時32分32秒
いつか小川さんにもほんの少しぐらいは良いとこありますように。ナムナム。。。
40 名前:IM 投稿日:2003年01月15日(水)02時19分49秒
更新しました。遅レス返しスマソ。

お察しの通り、カップリング→やぐこんです。
需要も供給もなさそうなマイナー中のマイナー。

>31名無し読者さん
レスサンクスです。
ちっちゃい人の正体は、言わずもがなヤグでした(w

>32名無し読者さん
レスサンクスです。
さり気に小川いじりをしている川o・-・)
紺野さん書くと、やはりブラックキャラになっちゃいます。

>39名無し読者さん
即レスサンクスです。
ヘタれな∬´▽`∬マンセー良いとこも、良いこともあるように、作者もナムナム。。。
41 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月15日(水)17時03分59秒
超問題児やぐと紺野がどう恋に落ちていくのか!!
楽しみにしてます。
42 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月16日(木)18時41分03秒

ずきずきと胸が痛む。なんだろう、この胸の痛みは……。



瞼を開けて辺りを見渡した。
気を失ったコンビニでも、自分の部屋でもない、真っ白な空間に立っている。

どこまでも広がる白、しろ、シロ…。
太陽も電灯もないのに世界が明るい。

(もしかして…天国?)

ギャル子の厚底靴が運悪く急所にはいって死んじゃったのかなぁ?麻琴ちゃんは?
此処にいないってことは生きてるのだろう。

「うっそ〜。なんで私だけ死んじゃうのぉ。ついてないぃ…。胸は痛いし、最悪だよ〜」

自分を置いて一人だけ助かった麻琴ちゃんの事を呪ってからじゃないと死んでも死にきれないと半泣きになった私の肩を生暖かいものが包み込んだ。

43 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月16日(木)18時42分34秒
「オ〜、ハートが痛むとゆーのかい?マイ・シスターよ、それはラブ、たぶんラブわずらいさぁ」

その奇妙で微妙な英語は――。

「何でお姉ちゃんが天国にいるの?しかも何言ってるの?お姉ちゃんも死んじゃったの?でも、頭に天使の輪とかないね〜。私にはある?」
「ノン、ノン。そんなに一度にクエスチョンされて、姉ちゃんの脳みそがアンサ〜出来るとでも思う?あと、お姉ちゃんじゃなくて、ひー姉ちゃんだろ〜」「あ…うん。ソーリー」

つられて英語で返事してしまった。
ひー姉ちゃんは私の質問に一切答えずに、いつの間にか用意されていたクッションにあぐらをかいて座る。
家でくつろいでいる時と同じ様子で、こっちまでマッタリ気分。

44 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月16日(木)18時44分06秒

(これで干し芋とお茶があればなぁ)

そう考えた瞬間、ちゃぶ台と干し芋とお茶、何故かベーグルが現れる。
さっすが天国〜。思いがままだわ。

「あのな、あさ美。ライフは確かにロング・ロングだよ」

むぐむぐとベーグルを頬張りながら、日ごろ滅多に見せない真剣な顔でひー姉ちゃんは喋り出した。

「現在のジャパンでは、ウーメンの平均寿命は82才…簡単に言うと、約セブン回は年女になったりするわけ。アンダ〜スタンド?」「う〜ん…、分かりずらいけど、分かった気がする。でもー、もう私たち死んでるから関係ないんじゃ…」
「テキトーにアンダ〜スタンドでいいから。でね…」

45 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月16日(木)18時46分01秒
何事もアバウトな ひー姉ちゃんらしい。
思わせぶりに会話を切ると、前髪をかき上げる。

「アワ〜ユ〜スは、ワン・ツゥ・スリ〜で成り立っているの。あさ美は、そのツゥのポジションにスタンディング・ナウなんだよ」
「……ツゥってことはぁ…今が一番盛り上がってる時?」
「イェス、イェ〜ス。あさ美みたいにボケっとしてると〜、ハッピ〜なもんもハッピ〜じゃなくなるんだぞ」
「じゃあ、今がツゥなら、スリーはいつ?」「あさ美は何にもドント・ノウだね〜。姉ちゃん心配だぞ……とゆーわけで、あたしはそろそろゴー・ホームさせてもらうよ」
「なんだ。ひー姉ちゃんも知らないんじゃん」
「シャラ〜ップ」

ベーグルをポケットと頬袋に詰められるだけ詰め、ひー姉ちゃんが立ち上がる。
腕時計を見る感じが不思議の国のアリスに登場する白兎みたいだ。
46 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月16日(木)18時47分23秒
白い世界の果てに向かって歩き始めるひー姉ちゃんの後ろ姿を、私は止めも、追いもせずに見送った。
先程の不可思議な会話を反芻した。

ひー姉ちゃんが話したように、私の人生は今が青春真っ盛りなわけで、それを無駄にするなと、ひー姉ちゃんは言いたかったのかな?

(我が姉ながら、何を言ってるのか理解に苦しむわ〜… )

ひー姉ちゃんの背中に首を傾げていると、ひー姉ちゃんが振り返り、何かを伝えようとべーグルの詰まった頬袋を押さえて口を懸命に動かす。

47 名前:恋せよ、乙女 投稿日:2003年01月16日(木)18時48分53秒

「あさ美…考えるんじゃない…フィーリングだ。青春と…ゆう…貴重なタイム……は…止まんねっ…す。要…チェッ…ク・イ…ット…・アウト…・ユ〜!」

ひー姉ちゃんが言い終わった後、真っ白な世界が一瞬にして暗黒に代わった気がした。

最近、英語に目覚めたひー姉ちゃん。
何の為にNOVAに通い始めたんだろう。
3年前も同じ間違えしてたじゃん…。

落胆してる私に、ひー姉ちゃんは、スマートに決まったぜ、と満足そうな笑みを浮かべていた。
48 名前:IM 投稿日:2003年01月16日(木)18時55分39秒
更新しました。

>41名無し読者さん
反発し合いながらも運命に導かれる2人…。これぞラブコメの王道、な感じで恋に落ちてゆく予定です(w
49 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月16日(木)22時38分33秒
ひー姉ちゃんおもろいです。
しかし、ここは天国?ん?何が起きたんだ?
50 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月21日(火)19時54分32秒
面白いです。
続きが楽しみだなー。
51 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月28日(金)14時49分18秒
待ってますよ・・・
52 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)11時40分22秒
ほぜむ
53 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月05日(土)11時52分01秒
保全
54 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月27日(日)21時32分57秒
保??????????
55 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月10日(土)14時11分07秒
ほぜん

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