恋をしちゃいました4
- 1 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年01月07日(火)22時08分44秒
- 空板に立てていた「恋をしちゃいました4」の472からの続きです。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=sky&thp=1010057821&st=472&to=472
我が儘ですみませんが、sage進行でお願いしたいので宜しくお願いします。
- 2 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-64- 投稿日:2003年01月07日(火)22時09分31秒
−64−
それから二人は、お互いを求め合い、愛し合った。
身体を重ね合わせる事が、どれだけ大切な事か幸せな事かを知った二人だった。
翌朝、通学の途中、いつものように梨華を後ろに乗せて走る自転車は
一層、軽快に走らせていた。
「一つ、大人になった気分だね、梨華…」
朝、起きた時は、酷く照れていたのに、もう、いつもと変わらないひとみ。
「ひとみちゃん、ごっちんとかに変なコト言わないでよね…」
梨華は念のため釘を刺しておく。
きっと、それは余り役の立たない釘である事は承知の上で。
- 3 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-64- 投稿日:2003年01月07日(火)22時10分08秒
- 「変って何さ? 変なコトなんて、やってないもん。さいっこう!」
はぁーっと梨華はひとみの背中でため息を零す。
一発で、何かあったって分かる顔だ。
(ひとみちゃん、嘘つけないしなぁ…。会いませんように…!)
梨華は祈るような思いで念じた…筈が、やはり、事は悪い方に運ぶもので、
背後から二人に声がかかる。
「お前ら、なんかあった?」
その声は矢口。と言う事は、真希も当然一緒である訳で。
ひとみの真横に、矢口を乗せた真希が併走する。
「さては、さてはぁぁぁ〜」
ニヤッとした顔で真希は笑う。
「やだなぁ。何もしてないってば…」
嬉しそうに返すひとみ。これでは言っているようなものだ。
「……!!(ひとみちゃんってば、もう!)」
梨華は諦めたように目をつぶった。
自ら自爆したひとみに、矢口と真希から、容赦ないつっこみが再三に渡って
入ったのは、言うまでもない。
- 4 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-65- 投稿日:2003年01月07日(火)22時11分04秒
−65−
「お前ら、後で体育館の裏に来いよな!」
矢口が至極当然のように二人に言う。
「えぇーなんでですかぁ?」
ひとみは、そう言いながらも嬉しそうな顔を終始浮かべている。
梨華は黙って俯いていて、真希に肘で小突かれたりしていた。
「いいじゃん別にさぁ。隠すコトないんだし」
真希は、あっけらかんとして言う。
「だからってわざわざ言うコトでもないと思う…ょ」
梨華の声は弱々しい。
「ほーら、やっぱり、したんじゃんか!」
「ごっちん、声が大きいよぅ…」
元から声の大きい真希は、しかも良く通るから、これでは全校生徒に言ってるような
ものである。
「お楽しみは、放課後ミッチリとな」
矢口もニヤリとすると、真希の腕を引いて一足先に階段を上っていった。
- 5 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-66- 投稿日:2003年01月07日(火)22時12分52秒
−66−
「もぅ、矢口先輩も…」
梨華は呆然としたように呟くが、ニヘラニヘラしているひとみに、ピシッと言った。
「ひとみちゃん!」
「ぅん?」
「…まぁいっかぁ。幸せだもんね」
あまりに嬉しそうなひとみを見ていると、怒る事もないかなと梨華も思ってしまう。
実際、悪い事をしている訳でもないし、囃し立てた、矢口や真希にも悪気があって
やってる事もでない。
「ぅん、しゅっごく幸せ♪」
再び締まらない顔で、ひとみは答える。
- 6 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-66- 投稿日:2003年01月07日(火)22時13分25秒
「吉澤! なんやお前ぇ。良いコトでも、あったんか?」
背後から再び声が。振り返れば出席簿を持った中澤が仁王立ちしていた。
「中澤先生!」
途端に恐縮した態度になる梨華とは、裏腹に、ひとみは恐れずに一歩前に踏み出た。
「中澤先生! まぁさぁに! いいことある記念の瞬間って感じですね!」
「……はぁ?」
訳の分からない中澤は首を傾げている。
「あ、あの…失礼します!」
梨華はペコリとお辞儀をすると、「あとで」と言って足早に駆けていった。
「吉澤、訳わからんコト言うてないで、さっさと教室に行かんかい!
もう始業ベル鳴るんやで!」
「先生にも幸せ分けてあげたい!」
ひとみは、構わずまだ続けている。
「わぁったから、とっとと行け!」
中澤は出席簿で、ひとみのおしりを軽く叩いた。
- 7 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-67- 投稿日:2003年01月07日(火)22時14分16秒
−67−
本当に噂と言うのは、怖いものだと梨華は思う。
休み時間になった途端に、あゆみが梨華の前の椅子に座る。
なんでも、聞きたくてうずうずしていたらしい。
「梨華ちゃん、おめでとう!」
「え?」
「でも結構長かったよねぇ…」
「は?」
「やっぱり緊張した?」
「あ?」
「ヤダ、梨華ちゃん。さっきから一文字しか言ってないよ」
自分より嬉しそうなあゆみを見て梨華は戸惑う。
「柴っちゃん、なんの話?」
「もぅ梨華ちゃんとぼけちゃって…」
「う?」
「梨ぃ華ぁちゃん!」
なんだか、周囲は自分とあゆみに視線が集まっているような気がする。
いや、気のせいではなくて、集まってる!
梨華はガタンと勢い良く立ち上がると、注目の的の中、あゆみの手を引いて教室を出た。
- 8 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-67- 投稿日:2003年01月07日(火)22時15分18秒
「柴っちゃん、ごっちんから、その…聞いたの?」
伝わるにしては、早すぎるからだ。
「すぐにメールが来てね…」
「梨ぃ華先輩♪」
また一人、梨華にとって有り難くない人物の登場である。
「なんで亜弥ちゃんまで出て来るのよ」
軽くあゆみに視線を送り睨む。あゆみは舌を出して微笑み返すだけだ。
「も〜ぉ、一大事ですよね。梨華先輩!」
亜弥の声も良く通るから、気が気でない梨華である。
「亜弥ちゃん、ちょ、ちょっと!」
梨華は慌てて亜弥の腕を掴むと廊下の隅に連れ出した。
「他人事だと思って、あんまり、その…言うのは、やめてね。恥ずかしいから」
「えー、どうしてですかぁ? 素敵なコトじゃないですか」
ただでさえ目立つひとみの彼女だと言うのに、また格好の餌食になるのはイヤだった。
「だから、変に噂たてられるのは困るの。亜弥ちゃんだって分かるでしょ?」
「梨華先輩。でも噂じゃなくて、それは事実じゃないんですか?」
ズバリ指摘されて、梨華は動揺してしまう。
- 9 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-67- 投稿日:2003年01月07日(火)22時16分44秒
「だ、だから、変に尾ひれつけて話を誇張されるのがイヤなの!
もう亜弥ちゃんも虐めないでよ。亜弥ちゃんこそ、柴っちゃんとどうなのよ?」
いい加減、自分とひとみの事には触れてほしくない梨華は、矛先を変えた。
「私はぁ、もっちろん、あゆ先輩とラブラブですよおおおおお」
ぬけぬけと言い放つ亜弥に推され気味の梨華。
「そ、そう。それならいいんだけどね…」
かつては、自分を追いかけて、この学園にまで来た亜弥のパワーには
恐れ入ったが、今は、あゆみの事しか頭にないのかと、少し寂しい梨華である。
それは贅沢と言うものだろうか?
「でも、今でも梨華先輩のコト、ちゃんと想ってますよ」
「え?」
急に真面目な顔で亜弥が言うから梨華は言葉に詰まる。
「だって、梨華先輩は私の初恋の人ですもん。初恋の人って忘れられないって言う
じゃないですか。まぁ忘れろったって、毎日会うから忘れる訳ないですけどね」
そう言って亜弥は笑う。
- 10 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-67- 投稿日:2003年01月07日(火)22時17分17秒
「亜弥ちゃん…」
「安心しましたか? ま、梨華先輩には、吉澤さんしか映ってないですからねぇ。
悔しいけど、負けました。それに、今は私にはあゆ先輩がいるから、いいんです」
「ハッキリ言ってくれちゃって…」
「それが私の良いところでもあり、悪いところなんですけどねぇ」
「もう、いつまで二人で喋ってるの?」
あゆみに呼ばれて、亜弥は振り返った。
「梨華先輩は吉澤さんにゾッコン。私はあゆ先輩とラブラブって話してたんですよ」
「亜弥ちゃんってば…」
あゆみは嬉しそうだ。
この二人も安泰と言ったところである。
- 11 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-68- 投稿日:2003年01月07日(火)22時18分18秒
- −68−
放課後―――。
梨華は、呼び出しを無視して、そそくさと帰ろうとしたが、やはり真希に見つかり
止められてしまう。
「石川先輩の行動は読めてるんだから!」
大の字に腕を広げて通せんぼをする真希に、梨華は、すぐに諦めた。
勿論、梨華も真希の行動は読めている。
「ごっちんの行動も読めてるよ…」
「じゃぁ無駄な抵抗は、やめてね♪ 石川先輩っ」
「これからバイトだもん。ごっちんだって、まだバイト続けてるんでしょ?」
言われるまでもなく、体育館裏に向かう梨華。
最初から素直に来ればいいのに…と思う真希。
「続けてるけど〜。図書委員も名前だけ残ってるよ」
「高橋さん一人に押しつけてるの?」
「押しつけてるなんて、イヤな言い方するなぁ…。ちゃんと昼休みとか出てるって」
のんびりと真希は答える。
本当に梨華が聞きたいのは、そんなのではなく、高橋と矢口と真希の関係だった。
しかし、面と向かって聞けるような性格ではない。
「ふぅん。まぁ、いいけどねぇ…」
なんだか分からない返事をして、梨華と真希は体育館裏へ向かった。
- 12 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-69- 投稿日:2003年01月07日(火)22時19分00秒
- −69−
そして呼び出しておいた矢口は、まだ図書室にいた。
高橋の事を気に掛けている矢口は、よく放課後にも顔を出している。
逆に高橋の方が、気にしてしまうほどである。
「矢口先輩、まだいいんですか? ごっちん先輩が待ってるんじゃないですか?」
今日もお決まりの台詞が高橋から飛び出す。
勿論、高橋からしてみれば、矢口が来てくれる事は凄く嬉しいのだが
同時に、真希に対して悪い気持ちになってしまうのも事実だった。
「おっと。いけねぇ。もうこんな時間か」
時計を見て、慌てて矢口は椅子から立ち上がった。
「あんまり、ごっちん先輩を待たせちゃダメですよ」
「高橋、お前気遣いすぎ。平気だって」
「矢口先輩が気を遣わなさすぎなんですよ」
「言いやがったな」
「あ、すみません」
「別にいいけどよ。また来るわ。じゃぁな!」
矢口は片手をヒラリとさせて図書室を出て行った。
こんな他愛のない時間が、今の高橋にとっては、至極幸せな時間である。
それも、あと数ヶ月だと思うと、高橋の胸はちょっぴり痛んだ。
- 13 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年01月07日(火)22時22分23秒
- 64-69話更新。
63話からの続きを待っていた方は、すみません。
新スレ初めで、その続きを書くのは、躊躇いがあったので、
ヘタレ作者ですみません。
今後は、なるべく早めに更新するようにします。
このスレで完結を目指していますので、もう暫くお付き合い下さい。
- 14 名前:名無し。 投稿日:2003年01月08日(水)00時10分46秒
- 新スレおめでとうございます!
当初から二人の事を見守ってきたので、少しショックを受けましたが…ようやく結ばれたのだと思うと、娘を嫁にやっと送ったみたいな感じで、心が晴れやかになりました。
ようやく終盤を迎えるのですね!
好きな作品が完結を迎えてしまうのは悲しいけれど…頑張ってください!ずっと応援します。
いつかの機会に、二人の初夜予行の一部始終が公開されることを願ってます(w
- 15 名前:M.ANZAI 投稿日:2003年01月08日(水)00時52分26秒
- とうとう、と言うか、やっと、と言うべきか、
2人の進展をようやく見届けることが出来ました。
四六時中ゆるみっぱなしのバカ旦那のニヤついた
顔が目に浮かんできそうですよ。
新スレ発展並びに新年最初の更新お疲れ様です。
そして続きがまた読めることに感謝いたします。
- 16 名前:チップ 投稿日:2003年01月08日(水)01時12分56秒
- 新スレおめでとうございます。
ようやくようやく結ばれたんですねぇ・・・(感涙)
営みの続きがなくとも、話の続きが読めることが素直に嬉しいです。
お体に気をつけてがんがって下さい。
- 17 名前:ごまべーぐる 投稿日:2003年01月08日(水)19時40分15秒
- 新スレおめでとうございます。
幸せなふたりに、私まで気持ちが温かくなりました。
完結を迎えるのはみなさんと同じく寂しいのですが…今は続きを楽しみに
待っています。がんがってください。
- 18 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-70- 投稿日:2003年01月15日(水)19時21分55秒
- −70−
「遅いですよ、ちょっとぉ!」
遅れて来た矢口に、ひとみが不満を漏らす。
「呼び出しておいて、張本人が遅れて来て、どうすんですかぁ?」
呼び出されたひとみの方が、なんだか楽しそうなのは気のせいかしら?
と梨華は、ひとみを横目で見つめながら心の中でつっこみを入れた。
「吉澤、お前嬉しそうだなヲイ! ちょっと遅れたくらいで文句言うなよ」
「また、愛ちゃんとこに入り浸ってたんでしょ〜! ごっちんがいるのに…」
ひとみも容赦なく突っ込みを入れる。
「ひとみちゃん!」
梨華は、ひとみの袖を引っ張った。
- 19 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-70- 投稿日:2003年01月15日(水)19時22分38秒
- しかし、矢口も負けてはいない。
「あぁオイラは純粋に本を探してただけさ。文学少女に変な茶々入れるなよ!」
「今まで本なんか、漫画くらいしか読んでなかったくせにぃ〜」
真希も参戦に加わる。
「失礼だな。普通にちゃんと読むよ! そういうごっつぁんは、なんなんだよ!
最近、高橋に仕事押しつけっぱなしじゃんかよ!」
「押しつけてなんか! ちゃんと昼休みは出てるよ!」
いつの間にか、二人の喧嘩? にすり替わっている。
「あれ? 私たち…」
ひとみは放置されてる自分を指さして、矢口と真希に存在をアピールするが
もう視野には入っていないらしい。
そんな光景を見て、梨華は苦笑いしている。
「矢口先パーイ。ごっちん!」
ひとみが止めようとするが、入っていこうとするひとみの腕を梨華がやんわり押さえた。
- 20 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-70- 投稿日:2003年01月15日(水)19時23分25秒
- 「んー? 何? 梨華…」
梨華は目配せすると喧嘩の最中の二人を残して、ひとみの手を引っ張り帰ろうとする。
「帰っちゃうの?」
「いいからっ」
元々梨華は、今日の呼び出しには出たくなかったから、喧嘩をしている二人には
悪いが、正直ホッとしていた。
あの二人は、一旦どんな些細な口喧嘩が始まると、なかなか納まらない事は、
梨華もひとみも知っているから、ひとみも諦めたようだった。
「まぁ、いっかー。梨華と二人の方が1444倍いいもんね」
「1444倍って? おかしなひとみちゃん」
ひとみの例えに梨華はクスクス笑う。
「最近のマイブーム。まっ昨日の梨華の方が更に百万倍良かったけどね…」
そう言って、ひとみは梨華を眩しそうに見つめた。
- 21 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-70- 投稿日:2003年01月15日(水)19時23分59秒
- 「………」
梨華は立ち止まり、昨夜の事を思い出す。
今、思い出しても身体が熱くなる想いで、あまり思い出さないようにして来たのに
ひとみに熱い視線で見つめられ、梨華は、またもや心臓がドキドキしてくるのだった。
ひとみは何か言いたげだったが、ふいに梨華から視線を外した。
「帰ろうか…」
「…ぅん」
「送っていくよ」
ひとみが梨華の手を取るとギュッと握りしめた。
―――ハァー、ドキドキしちゃった。
―――ヤヴェー、思い出しちゃった。
二人は口数も少なく、微妙な空気を漂わせながら、自転車置き場まで歩いていった。
- 22 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-71- 投稿日:2003年01月15日(水)19時24分43秒
- −71−
ひとみと梨華が帰って少ししてから、矢口と真希の喧嘩も収まった。
「あれぇ? よっすぃー達は?」
キョロキョロと真希は周囲を見回す。
「とっくの昔に帰ったじゃん。気づかなかったのかよ」
矢口は既に帰る体制である。
「私、何事に関しても夢中になるから、周囲は見えないの。
やぐっつぁんしか見えてなかったからね」
威張ったように言う真希に、矢口は思い返したように言う。
「お前、バイトだろ? 早く行った方がいいんじゃねぇーのか?」
「分かってるよーっ。愛ちゃんに迷惑かけてって思ってんでしょ…」
途端に、また真希が膨れる。
「分かってんなら早く行けよっ。おいらは勝手に帰るから先に行け。なーっ」
矢口は真希の背中を押す。
「そんなに急かさないでよっ」
「―ごっつぁん…。あとで…バイト終わったら迎えに行くから。じゃーなっ」
「え?」
さらっと言うと矢口は走って行ってしまった。
- 23 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-71- 投稿日:2003年01月15日(水)19時25分47秒
- 「やぐっつぁん?」
真希は一瞬考えるが、猛ダッシュで矢口を追いかけだした。
真希は足が速いから、瞬く間に矢口に追いついてしまう。
「やぐっつぁん途中まで一緒じゃんっ。一緒に帰ろっ!」
矢口は真希に襟ぐりをグイッと掴まれ、そのまま倒れそうになった。
「ぅわっと、ちょっと危ねぇなヲイ! 倒れたらどーすんだよ!」
矢口は咳き込みながら喉を押さえた。
「そしたら私がやぐっつぁんのコト、抱き留めるよ」
「ん?」
矢口は真希を見つめた。
「迎えにって、どういうコト? 今まで来てくれたコトあまりなかったクセに…」
真希は嬉しいのか口許が緩んでいる。
「ま、まぁごっつぁんの一応女だしな。夜も遅いと危ないだろ」
矢口は真希から視線を外す。
「夜が遅いのなんて前からじゃん。急に優しくしちゃって何か気持ち悪ーい」
その言いぐさに矢口は少しムッとする。
「イヤなのかよ。じゃ、じゃーぁいいよ。高橋を送るからっ」
「何で愛ちゃんが出てくるのよ〜!」
素直じゃない二人はまた喧嘩の体制に入りそうだ。
- 24 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-71- 投稿日:2003年01月15日(水)19時27分14秒
- また喧嘩になるのはゴメンだと矢口は大声を張り上げた。
「ちょっとでもごっつぁんの傍にいたいからだろっ! わかんねぇのかよ!」
「やぐっつぁん!?」
「もっと素直になれよ。イヤでも来年になれば、ごっつぁんと、こうして
会うコトも喧嘩するコトも出来なくなる。だから少しでも、ごっつぁんと
一緒にいたいって思うから…今、おいらが出来るコトは、こんくらいだし…」
「やめて!」
「え?」
「急に優しくしたりしないでよ。いつものまんまでいいよ。
そんなコトされたら余計辛いよ!」
「ごっつぁん…」
「あんまり一緒にいる時間が長いと、離れた時、もっと寂しくなるもん…」
真希は目に涙を浮かべながら矢口を抱きしめた。
「でもな…ごっつぁんと一緒にいる時間は大切にしたいんだ…。
だから、あまり喧嘩とかしたく…ないんだけどな、つい、いつもの調子でよ
やっちまって悪いよな。ゴメンな…」
矢口は真希の涙を指でそっと拭う。
「いいよ別に。いつでも本気な、やぐっつぁんが好きだからさ…」
真希は泣き笑いしながら答える。
- 25 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-71- 投稿日:2003年01月15日(水)19時28分07秒
- 「おいらも生意気なごっつぁんが好きだぜ」
矢口は真希の額をゲンコツで小突いた。
「いったぁ。少しは手加減してよ!」
真希が大袈裟気味に額を抑えしゃがみ込む。
「手加減してるぞ。お前はオーバーなんだよ」
矢口は真希の手首を掴むと、顔を近づけ額にくちびるを押し当てた。
「……っ!?」
「これで、少しは治るかな?」
矢口は照れ笑いする。
「痛いのは……そこじゃない…。ここ…」
真希から矢口のくちびるに触れ、矢口の手は真希の胸に押し当てられた。
- 26 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-72- 投稿日:2003年01月15日(水)19時29分12秒
- −72−
やはり自転車に乗っている時も、あまり会話の弾まなかったひとみと梨華。
あっと言う間に梨華の家まで辿り着いたひとみは、玄関まで梨華を送り届ける。
「じゃぁ、梨華もあまり寝てないだろうから、今日は早く寝るんだよ。
昨日は、ありがと」
ひとみは微笑むと梨華に背を向ける。
このまま帰すのは、やはり気が引けて梨華はひとみを呼び止めた。
「ひとみちゃん!」
「ん?」
ゆっくりとひとみが振り返る。
「ぁの…お茶でも飲んで行かない? 折角送ってくれたんだし…」
「でも…」
「あ、イヤならいいんだ。ひとみちゃんも疲れてるだろうし…」
梨華は慌てた様子で手を左右に振る。
自分でも何か焦ってるなと思いながら梨華は苦笑いした。
- 27 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-72- 投稿日:2003年01月15日(水)19時29分44秒
- 「イヤじゃないけど、迷惑じゃないかなって。嬉しいよ」
ひとみは微笑み、梨華と共に家に入っていく。
お湯を沸かしている間、ひとみは梨華のリビングにいた。
どうしても昨夜の事を思い出してしまい、何となく、梨華とぎこちない空気を
作り出してしまう事に、ため息をついていた。
なぜか意識してしまう。梨華も同じような感じである。
キッチンを覗けば、梨華はガスの前に突っ立っていた。
ひとみは、そっと立ち上がると、梨華の背後に近づいた。
梨華は、気づいていない様子。
急に抱きしめたら梨華は、どんな反応をするのだろうか? とひとみは
思いながら、ひとみは両手を広げた。
- 28 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-73- 投稿日:2003年01月15日(水)19時30分43秒
- −73−
矢口の方からくちびるを離す。矢口は真希とマトモに見つめ合ってしまい
慌てて目を逸らせた。
「もぅ、やぐっつぁんは照れ屋なんだからなぁ…」
「ごっつぁんだって…」
矢口は手をふりほどいて急いで立ち上がる。
「ま、そういうトコが好きなんだけどねぇ…」
「バカ…」
「でも、胸の痛みは治りそうにないや。やぐっつぁん全然触ってくんないんだもん」
胸を押さえながら言う真希に矢口は顔を真っ赤にする。
「こ、こんなとこで出来る訳ないだろっ!」
「ここじゃなかったら、してくれるのぉ?」
「バカじゃねぇの? そういう問題じゃねぇだろっ! もう早くバイト行けってば!」
「はいはい。行きますよ。じゃぁねぇ。やぐっつぁん♪」
手をヒラヒラさせながら、真希はのんびりと歩いていく。
- 29 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-73- 投稿日:2003年01月15日(水)19時31分30秒
- 「ホントにごっつぁんは…」
後ろ姿を見ながら、矢口はニヤけ、無意識にくちびるに手をやる。
と、急に真希が振り返り、ニヤける矢口と目が合う。固まる矢口。
真希は近づいてくる。
「やぐっつぁんのスケベ♪」
「…あ? な、なんだよ、まだ何かあんのかよ?」
矢口はバツが悪そうに手を後ろにやる。
ニヤけた顔まで見られたのかと思うと、矢口は何故か悔しくなる。
「もう1回したくなっちゃった」
そう言って真希は顔を屈め、矢口に軽くくちづけた。
「…じゃぁね。またあとで♪ もう振り向かないからさっ」
「………」
真希はニーッと笑うと、軽やかに走っていった。
「……何が振り向かないからだよ。しっかり見てたんじゃねぇかよ!」
矢口は叫ぶが、もう真希の姿は見えなくなっていた。
- 30 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年01月15日(水)19時36分00秒
- 70-73話更新。
>14 名無し。さん
ショックでしたか。まぁ私も、どうしようかと思いました。
やっぱり普通の路線で書く方が、楽です。
>いつかの機会に、二人の初夜予行の一部始終が公開されることを願ってます(w
私のエロが全開な時にでもw。
>15 M.ANZAIさん
お久しぶりです。バカ旦那は、更にバカに歯車が、かかりそうです。
今後も見守ってやって下さい。
>16 チップさん
こちらでも、どうもです。チップさんも連載がんがって下さい。
>17 ごまべーぐるさん
お待たせしてしまって申し訳なかったです。
営みが長引いてしまったもので(w。
完結は出来れば…と思いますが、どうなりますやら。
- 31 名前:チップ 投稿日:2003年01月16日(木)13時29分23秒
- すっかり忘れかけてましたけど(w。やぐごま切ないですね・・
ジュディオングの如く両手を広げて石川さんに迫るよしこ最高です。
私のはさっさと終わらせて、恋しちゃ最初から読み直そうと思いやす。
- 32 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-74- 投稿日:2003年01月23日(木)18時46分15秒
- −74−
抱きすくめようとしたすんでで、梨華が気づき、後ろを振り返る。
「きゃっ。ひとみちゃん?」
ひとみもびっくりして、広げた両手を、そのまま上にあげた。
「ぅわっと!」
「ど、どうしたの?」
「え? いや、そろそろ沸く頃かな〜って…」
ひとみは、行き場のなくなった手を意味もなく、ブラブラさせながら答える。
なんとも間抜けな光景だ。
「その手は?」
「んーと……。別に…。梨華が振り返るから行き場が、なくなったみたい…」
言い逃れるのも面倒なひとみは、そのまま素直に答えた。
「え?」
「だから、梨華を抱きしめたかったんだよねぇ、この両手はさ…。
私も残念だったりして…」
- 33 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-74- 投稿日:2003年01月23日(木)18時46分51秒
- ひとみは手をさげると後ろに組んだ。
「ひとみちゃん…」
「急に抱きしめたら、梨華は、どういう反応するかなって思ってさ…」
ひとみは、そのまま梨華を抱きしめる。
梨華の甘い香りが鼻について、ひとみをくすぐらせた。
「びっくりするに決まってるじゃない…」
「梨華、何だかボーッとしてたみたいだったからさ…。
気づかれないと思ったんだけど…」
「ひとみちゃんの気配が、したから…」
「私のコト、考えてくれてたら…嬉しいなぁ…」
「考えてる…よ。いつも…」
(そう、昨日から、ひとみちゃんで頭はいっぱい。)
「嬉しい! 私も梨華のコト、ずっと考えてる。でも何かうまく話せなくて…。
ごめんね…」
ひとみは更にギュッと抱きしめる。
- 34 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-74- 投稿日:2003年01月23日(木)18時47分26秒
- 「謝るコトないよ。私もひとみちゃんでいっぱいだもん」
(言っちゃった♪)
ひとみは急にガバッと梨華を引き離す。
「マジッすか?」
「ぅ、ぅん…」
梨華は目をパチパチさせながら答えた。
途端に溶ろけるような、ひとみの顔が飛び込んで来る。
何とも締まりのない顔で、矢口や真希が見たらすかさず突っ込まれているだろう。
「もぅ、言わなくても分かってる筈でしょ?」
梨華は恥ずかしそうに答える。
「いや、やっぱりちゃんと言ってくれないと分からないコトとかあるし。
例えば、今、私が何をしたいか、梨華は分かる?」
「んー? 分からないよ」
梨華は首を傾げる。
(言って間違えたら恥ずかしいじゃない?)
- 35 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-74- 投稿日:2003年01月23日(木)18時48分01秒
「梨華と同じコトかも…」
「………」
(同じって……。)
梨華が思うより先に、ひとみのくちびるが迫って来て、くちびるを塞がれた。
ひとみが梨華の腕に軽く手を添え、もう片方の手で腰元を引き寄せる。
梨華も、ひとみの背中に手を回す。
「……(ん…)」
――― ピ――――――――ッ! ―――
次の瞬間、けたたましいやかんの音で、二人は慌てて離れた。
「あ、お湯かけっぱなし!」
折角、いいところだったのに!
ひとみは、恨めしそうに、シュンシュンと音を立てているヤカンを睨み付けた。
温泉旅行まで、目前。さて、どうなりますやら?
- 36 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年01月23日(木)18時49分59秒
- 74話更新。
次から、やっと温泉旅行編に突入。
何とか週1の更新を目指したいです。
>31 チップさん
やぐごま忘れてましたかw。
ドタバタになりそうな予感?
- 37 名前:no-no- 投稿日:2003年01月25日(土)01時44分44秒
- 面白い。
- 38 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年02月03日(月)08時18分02秒
- 新スレおめ
更新乙でございます
やかんの音が最高
- 39 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-75- 投稿日:2003年02月07日(金)20時01分43秒
- −75−
きっと最初で最後の四人の旅行。
ひとみ、梨華、矢口、真希は、それぞれ色々な期待を乗せて当日を迎える。
珍しくお泊まりは、控えて朝早くに、ひとみは梨華を迎えに来る。
「梨華、おはよう。良く眠れた?」
ひとみは爽やかに挨拶する。
「ぅん…。ひとみちゃんのいない週末のベッドは寂しかったよ…」
「ぉおっ。梨華、今晩は、寝かせないよ!」
途端に、ひとみの目は輝く。
そこへ背後から鋭い突っ込みが入った。
- 40 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-75- 投稿日:2003年02月07日(金)20時02分29秒
- 「いちゃつくのは、後にしろよ。早く行こうぜぃ」
ひとみだけかと思えば、後ろに矢口もいたらしい。
小さくて気づかなかったと言ったら失礼になるだろう。
梨華は、顔を赤くさせながら挨拶した。
「矢口先輩、おはようございます…」
「おぅ、おはよう石川。お前も、結構二人ん時は…」
そう言いかけてひとみの背中越しから矢口は顔だけ出してニヤニヤする。
「そう言う矢口先輩達だって、結構イチャイチャしてんですよね?
ごっちん、結構甘えるって聞きましたよ? あ〜ん、やぐっつぁ〜んって!」
ひとみは、からかうように後ろにいる矢口に抱きつこうとする。
それに抵抗する矢口。
「吉澤、キショイんだよ! それに、お前らみたいに年中イチャついてねぇよ!」
「あ、あの、ごっちんは?」
おずおずと梨華は聞く。放っておくと、いつまで経っても、この二人も
なかなか納まらないからだ。
- 41 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-75- 投稿日:2003年02月07日(金)20時03分08秒
- 「アイツならコンビニ寄ってんじゃないかな? かなりお菓子とか買い込むって
意気込んでたしなぁ。意気込むところが違うんだよな…」
「なんだお菓子ですか。食べる目的が違いますよねぇ。夜のお菓子は、やっぱり…」
「ひとみちゃん!」
調子に乗って朝からハイになっているひとみを制す梨華。
これから先、始まる長い旅先に、先が思いやられる梨華。
「うなぎパイ! つか吉澤行くとこ、浜松じゃねぇぞ!」
キャハハと矢口は豪快に笑い突っ込む。
「ナイス突っ込みです矢口先輩! 梨華も、そんな顔しないでさぁ。楽しもうよ〜」
ホントに…。と言う顔をして、梨華は、頷いた。
- 42 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年02月07日(金)20時03分47秒
- やっと旅行編突入。
ドタバタになりそうな予感。多分
>37 no-no-さん
マターリになりますが、これからも宜しくです。
>38 むぁまぁさん
毎回レスありがとうございます。
これからも地味に更新しますw。
- 43 名前:ももたろう 投稿日:2003年02月08日(土)04時30分59秒
- キタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
設定は自分あ覚えてますw
でも無視して逝っちゃって下さい(w
いいなぁ、甘いなぁ萌えるなぁ
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月07日(金)18時58分52秒
- 保全
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月14日(金)02時25分54秒
- まだかなまだかな
- 46 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-76- 投稿日:2003年03月15日(土)21時36分12秒
- −76−
駅でコンビニの大きな袋を2つ抱えた真希と合流する。
当然のように、真希は矢口に重い方の袋を差し出した。
「なに、こんなに買い込んでんだよ、お前はよ! しかも2つも!」
矢口は顔を顰めながらも真希から袋を受け取った。
中を見れば、お菓子やジュース類、酒類なんかもある。
「だってさぁ、保田さんとこと、りんねさんとこと2つから買わないと
いけないじゃん。あれこれ選んでたら、結構いっぱいになっちゃって…」
真希は悪びれた様子もなく逆に嬉しそうだ。
「自分の働いているコンビニはいいよ別に。何も保田さんの所まで買う事ないだろ」
「保田さん、餞別になんかオマケしてくれるかと思ってさぁ。
お酒買っても何も言わずに黙認してくれたしねぇ…。ほらほら、これ!
オマケにくれたんだよ」
- 47 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-76- 投稿日:2003年03月15日(土)21時37分58秒
- そう言って真希は袋から精力剤を覗かせた。
それを見た矢口は絶句しそうになる。
「保田さん…」
「ん? なに? 何をくれたの? 保田さん気が利くなぁ…」
ひとみも梨華と一緒に覗き込む。
「「………」」
「お、大人はコレだから、厭らしいよな。そういうコトしか考えてないみたいじゃん」
矢口は良い子ぶる。
「保田さん大人! 私思わず4本も貰って来ちゃったよ…」
真希は自慢げに言うが、矢口は呆れ顔で真希を見つめた。
ひとみは苦笑い、梨華も何も言わない。
「なにみんな黙っちゃってさぁ。お楽しみは、これからじゃん。
取りあえず電車の中で宴会だよねぇ♪ 早く行こう!」
真希は矢口の腕を取ると、改札に足を向ける。
ひとみと梨華も顔を見合わせると、二人の後についていった。
- 48 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-77- 投稿日:2003年03月15日(土)21時39分10秒
- −77−
電車に乗ってから数分としないうちに、所狭しとお菓子や飲み物が積まれる。
シートを向かい合わせにして、真希は即座に足を伸ばした。
「お前、くつろぐの早すぎ!」
矢口の突っ込みも気にせず真希はお菓子の袋を幾つか開封する。
「いいじゃんねぇ? 楽しまなきゃ時間なんか、あっと言う間に過ぎちゃうんだから」
真希は手を休めずに言う。
「そりゃそうだけどよ…」
「ごっちんの言う通りですよ。食べましょう食べましょう」
ひとみも飲み物を手に取る。
梨華は妙にテンションの高い真希を窺いながら、矢口を、そっと見た。
矢口は、いつもと変わらない様子。
梨華は、ひとみの肘をつつく。
- 49 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-77- 投稿日:2003年03月15日(土)21時40分06秒
- 「ひとみちゃんちょっと…」
二人して揃って席を立つと、デッキまで移動した。
「どうしたの? 梨華。二人きりになりたい?」
ひとみは至って呑気である。
「もう。そんなんじゃなくてごっちんのコト…」
「ごっちんが、どうかした?」
「気づかないの?」
「なにが?」
梨華はため息をつく。
「ごっちん妙に明るく振る舞ってるから何か逆に…」
ひとみは、あぁと言う顔をする。
「いいんだよ。あれで矢口先輩も妙に気を遣ったりすると却っておかしくなるじゃん。
だから、ウチらはウチらで気にしないでやろうよ。逆にイチャつけば刺激になるかもよ?」
そう言ってひとみは梨華を抱き寄せる。
「ちょ、ちょっ…」
「元々二人で行こうって決めてたじゃん。ね? 梨華?」
「ぅ、ぅん…」
梨華は頷く。
「じゃぁ戻ろうか。いつまでも席外してると、また突っ込まれるからね」
ひとみは梨華から離れると苦笑混じりに言った。
- 50 名前:charmy blue 投稿日:2003年03月15日(土)21時43分29秒
- 更新しますた。非常に遅くなり申し訳ありません。m(_ _)m
>43 ももたろうさん
お久しぶりです。あくまでも甘くしたいんですが…。
>44 名無し読者さん
保全ありがとうございます。
>45 名無し読者さん
忘れずに来ていただいてありがとうございます。
- 51 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月16日(日)10時49分22秒
- よっすぃ〜と梨華ちゃんのバカップルぶりには萌えちゃいます(w
作者さんのペースで頑張ってください。
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月16日(日)12時42分57秒
- 更新待ってたよ〜。
- 53 名前:44 投稿日:2003年03月17日(月)22時29分53秒
- 待ってました!
- 54 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-78- 投稿日:2003年03月18日(火)20時17分06秒
- −78−
ひとみと梨華が戻ってくると、案の定矢口に突っ込まれる。
「二人で何してたんだよ〜」
ニヤーっとして矢口の視線がひとみに向けられる。
「何って別に何も…」
いつの間にか、お菓子に混じって酒やジュース類も置かれていた。
「もー、突っ立ってないで、二人とも早く座んなよ」
真希に促されて、ひとみと梨華は腰を降ろす。
「もしかして、既に飲んでます?」
ほんのり顔の赤い矢口に恐る恐る訊くひとみ。
「バカヤロッ! 飲んでる訳ねぇーだろっ!」
急に大きい声を出されて、ひとみは目を丸くし、梨華と顔を見合わせた。
開いている缶チューハイを梨華は手で持ち上げてみる。
既に中は半分くらい、空になっていた。
梨華は、隣の真希を軽く睨む。
- 55 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-78- 投稿日:2003年03月18日(火)20時18分44秒
- 「ごっちん、矢口先輩に飲ませたの?」
真希は、お菓子を頬張りながら頷く。
「いーじゃん別にぃー。ゴトーだって飲んだもん」
「そういう問題じゃないと思うんだけど…」
「堅いコト言わないでさぁ、石川先輩も飲んだらぁー? 気持ちいーよぉー」
そう言って真希は飲みかけのチューハイを梨華に勧める。
「………」
電車に乗って早々に未成年で昼間から酔っぱらうとは、梨華はこの先
不安を隠しきれない。二人の仲を心配したのも取り越し苦労だったようだ。
そこへ、ひとみの手が伸びて遮った。
「ごっちん、梨華に勧めないでよ」
「んぁ?」
さすが、ひとみちゃん。頼りになる! と梨華が思ったのも束の間、
「私が梨華の代わりに飲むから…」
真希から缶を受け取ると、ひとみは口に運ぼうとした。
- 56 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-78- 投稿日:2003年03月18日(火)20時19分49秒
- 「そうじゃないでしょ、ひとみちゃん!」
梨華が、かなり怒った顔でひとみを見たので、ひとみは慌てて缶を置いた。
「ヤダなぁ、梨華。冗談だよ、冗談!」
多少手を大袈裟に振って、ひとみは笑った。
「もぅ…」
梨華は頬を膨らませて、またため息を落とす。
折角の旅行と言うのに、何度目のため息だろう。
「梨華ぁ、そんな顔しないの!」
ひとみは梨華の頬を指でツンツンと突いた。
「だってぇ…」
「ウチらは、きりりで健全にね…」
ひとみは梨華に、きりりを持たせて、にっと笑った。
- 57 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-79- 投稿日:2003年03月18日(火)20時21分25秒
- −79−
約1時間後―――。
目的の駅に着く頃には、矢口の酔いは、冷めていて、逆に真希は夢の中。
矢口は酒癖は悪いが、真希と違い、すぐに冷める方だった。
「全く、しようがねぇヤツだよな…。何しに来てんだかなぁ…」
矢口は真希をおんぶしていて、端から見ると、何ともアンバランスである。
「大丈夫っすか? やっぱり代わりますよ?」
足下がおぼつかない矢口に、ひとみはハラハラしながら声を掛ける。
ここで、転倒でもされて、病院沙汰になっても困るからだ。
「大丈夫だよ。おいらに、やらせてくれよ。なぁ逆だった方がまだ見れたかもな。
重いんだよなぁ、ごっつぁん…」
真希が聞いていたら、怒りそうである。当の真希は矢口の背中で気持ちよさそうに眠っていた。
- 58 名前:をしちゃいました-4th Stage-79- 投稿日:2003年03月18日(火)20時22分03秒
- 駅前から送迎バスが来たので、矢口の任務はすぐに終了した。
駅から5分ほどで、旅館に着く。
駅周辺から何もなかったが、更に緑と山、自然に囲まれ、非常に閑散としている。
「空気が、うまいっすねぇ〜。それにやっぱり寒いかなぁ」
ひとみが深呼吸をすると、梨華も同じく深呼吸した。
再び矢口は、真希をおぶり、それどころではない。
矢口の額には、うっすらと汗が滲んでいた。
「寒くねぇよ。とにかく、大荷物を早いとこ運ばないとな…。
ほんと、全く起きねぇよな…」
大荷物こと、真希は何も知らずに、まだ夢の中のようだ。
矢口はぶつぶつ言いながら、ヨタヨタと真希を抱えた。
- 59 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-80- 投稿日:2003年03月18日(火)20時23分16秒
- −80−
やっとの思いで、真希を運ぶと、旅館の人の計らいで、既に布団が敷かれ、
真希は、爆睡モード。矢口は汗を拭う。
「悪かったな。折角来たのに、ごっつぁんが、あんなで…。
一息ついたら、お前らは、お前らで楽しんで来いよ」
楽しむって一体…。
「あの、取りあえず荷物置いて、また来ます」
矢口に挨拶してひとみは梨華と部屋を後にする。
と言っても隣りに移動するだけなのだが。
矢口達と同じ作りの8畳間の和室。
どこにでもある普通の旅館である。ただ違うのは、貸し切りの露天風呂がついていると言う事…。
勿論24時間使えるらしい。
- 60 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-80- 投稿日:2003年03月18日(火)20時23分54秒
- 荷物を置くと、ひとみは窓を開けて、チェックした。
一応、隣りとの柵は、ついているが、外だから、声を出せば丸聞こえである。
「梨華。声出したら、隣りに聞こえちゃうね…。周りすっごい静かだし」
「え?」
梨華は隣りにいるひとみの横顔を見つめる。
しばしの沈黙。
「…って、勿論、話し声だけどね」
ひとみは梨華を見て、ニヤリとする。
「あ…。そうだね」
慌てて梨華は、ひとみから視線を外した。
変な想像してるなんて思われたくない。
しかし、梨華は妙に緊張し始めていた。
沈黙が怖いから、梨華は、早口で続ける。
「荷物片づけたら、矢口先輩のとこに行こうね」
梨華は、ひとみからスッと離れる。
やっぱり、こういう場面は苦手である。しかも、まだ夜まで長いのだ。
「梨華…」
ひとみの腕が伸びて、ふいに抱き寄せられる。
それだけで梨華の身体は全身に電気が走ったような衝撃を受けた。
- 61 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-81- 投稿日:2003年03月18日(火)20時25分07秒
- −81−
その頃、壁を隔てた矢口は、真希を見つめながら苦笑いしていた。
「ごっつぁんは、肝心な時にダメだよなぁ。まぁ、いっか。
それが、ごっつぁんぽくもあるしな…。これも良い想い出になるもんな…。
良いのか、どうか、まだわかんねぇけどな」
矢口は、真希の頬に手を添えると、そっと顔を近づけていった。
矢口の金色の髪が真希の頬に落ちると同時に二人のくちびるが重なる。
と、同時に矢口は真希に引き寄せられ、のめるように真希に重なった。
「ぅわっっ…」
非常に近い距離で、矢口は真希と目が合う。
「おはよう、やぐっつぁん…」
真希は、ニーッと笑う。
- 62 名前:をしちゃいました-4th Stage-81- 投稿日:2003年03月18日(火)20時26分20秒
- 「ババババ、バカ! おはようじゃねぇよ。起きてたのかよ!」
矢口は、慌てて真希から離れようとする。
独り言も聞かれてたのかと思うと、矢口は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
「うぅん。やぐっつぁんのお目覚めのキスで目が覚めたよ」
「く…。お前はシンデレラかよ」
矢口は真希に背中を向けるとあぐらを掻く。
「うん…。3月までのシンデレラ…」
真希のトーンが落ちる。
「(3月……。)まだ先だよ…」
努めて明るく言う。
- 63 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-81- 投稿日:2003年03月18日(火)20時27分03秒
- 「あっと言う間だよ…」
「まだ時間はあるよ…」
「でも4月からは…会いたくても、すぐには会えない…よ」
「一生会えない訳じゃないじゃん…」
「やぐっつぁん……」
真希は矢口の背中に顔を埋めた。
―『行かないで』―
何度となく口から出かかり抑えた言葉。
そんな事を言って矢口を困らせたくない。
でも本心は、やはり行かないで欲しい。日が経つにつれ、その気持ちは真希の中で膨らんでいく。
「な、泣くなよなぁ!」
矢口は呟く。今、泣かれても困る。涙は、そんな事で流して欲しくない。
「泣いてなんかない!」
強気な真希は言い返す。
「うん…」
矢口の背中は、ほんのり温かかった。
- 64 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-82- 投稿日:2003年03月18日(火)20時28分14秒
- −82−
ひとみが軽く梨華の髪を指で梳き、優しく微笑む。
「………」
「梨華…」
「は。はぃ…」
身体を強張らせて梨華は、緊張気味に答えた。
今から、こんなんで、どうするんだ。と梨華は心の中で叫ぶ。
「怖いの?」
少し不安そうな瞳が映る。
「そうじゃないけど…」
「けど?」
別に初めてと言う訳ではない。
そう、本番(!)に備えて予行練習も実践したではないか。
- 65 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-82- 投稿日:2003年03月18日(火)20時28分59秒
- 黙っている梨華に、ひとみは呟く。
「やっぱり怖いか…」
ひとみは、梨華を抱きしめていた腕を緩める。
「ひとみちゃん?」
「ホントはさ、私も怖いよ。でもね、梨華のコト好きだから、もっと愛を確かめたい…」
梨華は、じっとひとみを見つめる。
ハッとしたひとみは慌てて付け足した。
「とか言ったりして。まぁ、本音なんだけどさ。
えぇと…矢口先輩のとこ行こうか。あんまり遅くなると、またいらんコト突っ込まれそうだもんね」
アハハとひとみはわざとらしく笑い部屋から出ようとした。
「ひとみちゃん! 私も……」
「ん?」
ひとみが振り返る。
「私も、ひとみちゃんと気持ち一緒だから」
梨華は小走りで、ひとみの横を素通りすると先に部屋から出て行った。
もどかしすぎる二人の夜は、まだこれからだった。
- 66 名前:charmy_blue 投稿日:2003年03月18日(火)20時34分13秒
- 78-82話更新。
今日は久しぶりに大量に書きためたので(一応ストック93話まで)
2〜3日は毎日更新出来るかも?
少し長めに更新しました。やぐごま、今後はシリアスじゃないですw。
>51 名無し読者さん
バカップルすぎて、書いてて自分で情けなくなりましたが、
今後も見守ってて下さい。更にこの後もバカぶりを発揮しますw。
>52 >53 44さん
気長にお待ちいただきありがとうございます。m(_ _)m
今後は、さくさく更新したいのでよろしくお願いしますです。
また明日も更新します。
- 67 名前:チップ 投稿日:2003年03月18日(火)23時25分02秒
- 更新わーい!なんと明日もw
二組とも甘くて胸がキュンです。切なさが甘味で中和されやした。
私の場合、しゃきりりがぬるかったのでオンザロックでドリンクしたところ、普通にウォーターでした。
- 68 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-83- 投稿日:2003年03月19日(水)20時16分15秒
- −83−
ノックして、矢口達のいる隣りの部屋に入る。
「お〜。ちょっと遅かったな」
「二人で何してたん?」
「あ、ごっちん起きてたんだ…」
「うん。まぁね」
髪を掻き上げて、真希は微笑む。
心なしか、目が赤いような感じがするのは、気のせいだろうか?
ひとみは、じっと真希を見つめ、何か言いかけようとしたが、梨華に遮られた。
微妙な空気を感じ取れないひとみに、いつも梨華はフォローに回っている。
「この辺って、周り何もないんですよねぇ。やっぱり、お風呂入るくらいしか、
ないんですかね」
「まぁ、目的は、それだからな…」
- 69 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-83- 投稿日:2003年03月19日(水)20時17分24秒
- 真希は布団から起き上がると持ってきたお菓子を再び広げる。
「ちょっとしたゲーセンとかあったら燃えますよね。
ピンポンとか、エアホッケーとか。ついムキになっちゃうんだよなぁ」
「エアホッケーだったら、私負けない」
「オイラも負けねぇ。つか、お前、また食う訳?」
呆れた口調で矢口は真希に突っ込む。
「またって、あんまり食べてないよ〜。すぐ寝ちゃったしさぁ」
「食事まで、時間あんまりないんだからよー、ちったぁ我慢しろよ」
「お菓子は別腹なの!」
「どんな胃袋してんだよ、訳わかんねぇ」
二人のやりとりを聞いていて、ひとみは立ち上がる。
「また食事ん時に、来ます」
「え? もう帰っちゃうのかよ?」
一旦中断して、矢口がひとみを見上げる。
- 70 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-83- 投稿日:2003年03月19日(水)20時18分16秒
- 「二人の邪魔しちゃ悪いし…」
矢口も慌てて立つと、ひとみに小声で耳打ちした。
「二人にしないでくれよ」
「は?」
「だからぁ…」
「何、コソコソ話してんの?」
真希が二人の間に割って入り込んでくる。
「別に…」
矢口は焦って言葉を濁す。
真希は交互に二人の顔を見る。
「矢口先輩がね、早く二人っきりにしろって…」
「お、おいおい! んなコト言ってねぇだろ!」
「あぁ、よっすぃーが、そうしたいんでしょ? 石川先輩も…」
「え?」
急に振られて、梨華は顔を上げる。
「やっぱり、そうだよね。梨華、戻ろっ。早速お風呂入ろうか?」
ひとみは、待ちきれないと言った様子で梨華の腕を掴む。
「もう?」
「何回入っても一緒だもん。ゆっくり浸かろうよ」
「あ、あのさ、おいらも入る!」
「?」
「い、いや、だからさ先に大浴場に入ろうぜ。広い方が気持ち良いじゃん」
どうしても真希と二人になるのが嫌らしい矢口は引き下がらない。
「いーじゃん。露天に入っちゃおうよ、やぐっつぁん…」
真希に首根っこを掴まれて、矢口は断念した。
「おいらは…どっちでも…いいぜ……」
- 71 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-84- 投稿日:2003年03月19日(水)20時19分09秒
- −84−
「何だか矢口先輩可哀相だったね…」
子犬のような矢口の瞳が忘れられない。
最も、なんだかんだ言っても二人きりになれば、どうにかなるのだろうが。
大浴場へと続く廊下を二人のスリッパの音がパタパタと響く。
日曜から宿泊する客は、通常だと少ないのだろうが、それでも今年は
獅子座流星群が見られるとあって、ほぼ満室状態であった。
そうなると、大浴場も、さぞや人が多いのだろうと、ひとみは半ば
がっかりしながら、やはり部屋の露天風呂にすれば良かったかと、早くも
後悔していたが、梨華の一言で、その後悔も吹き飛ぶ。
「一番乗りかも♪」
幸い、のれんをくぐり、扉を開けると、先客は、まだ誰も居ないようだった。
- 72 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-84- 投稿日:2003年03月19日(水)20時21分49秒
- 「ヤッター!」
思わずひとみは万歳のポーズを取る。
「ひとみちゃん、子供なんだから」
梨華がくすくすと笑う。
「子供の時から、銭湯って好きだったんだぁ。大きいお風呂っていいよね」
「うん」
二人は他愛のない話をしながら、服を脱ぎ始めるが、良く考えてみたら
一緒にお風呂に入る事は、今回が初めてな事に今更気づく。
「初めて…だよね…。こうやって一緒に入るの……」
ひとみは、梨華が下着姿になった時に改めて言った。
- 73 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-84- 投稿日:2003年03月19日(水)20時22分25秒
- 「うん…」
ひとみが、じっと見ているから、意識して梨華は、なかなか脱ぐ事が出来なくなる。
「あの、ひとみちゃん先入ってていいから…」
既に裸になっている、ひとみは梨華に言われて頷き、先に入っていった。
別にこれから、何をする訳でもなく、お風呂に入るだけなのに梨華は意識してしまう。
「はぁ、バカみたい。ひとみちゃん…何とも思ってないよね…」
梨華は呟くと、タオルで前を隠しながら大浴場のドアを開けた。
- 74 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-85- 投稿日:2003年03月19日(水)20時23分07秒
- −85−
「やぐっつぁん、ウチらも大浴場行こうか」
「なんだよ、さっきは露天でいいって言ったクセに…」
真希と二人になるのは嫌だと思った矢口だが、なるべく湿っぽくならないように、矢口は気を付けていた。
「やぐっつぁんだって、どっちでもいいって言ったじゃん」
「分かったよ、でも、吉澤達いるんだぜ。ま、まぁいても構わないけどな」
「なに? いると困るコトでもしちゃうわけ?」
グイッと真希が矢口に詰め寄って来て、ニヤニヤする。
「しねぇよ! する訳ないだろ。こんな昼間から…」
昼間と言っても、もう夕方が近い。
「お風呂に入る前に、しちゃおっか?」
「んえぇ?」
瞬く間に矢口は真希に組み敷かれる。
「お、おい!」
「やぐっつぁんと少しでも長い間、感じていたいもん」
「……ごっつぁ…(ん……。)」
矢口のくちびるは、真希のそれに塞がれた。
- 75 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-86- 投稿日:2003年03月19日(水)20時24分20秒
- −86−
梨華の視界に、ひとみが泳いでいる姿が目に飛び込んでくる。
「ひとみ…ちゃん……」
予想は、ある程度していたが、本当にしているとは…。
「あぁ、梨華。気持ち良いよ。梨華も泳いだら?」
「ひとみちゃん誰か来たら、どうするの?」
しっかり前は隠したままの梨華は、軽くひとみを窘める。
「泳いでました。って言うけど…」
「そうじゃなくて…」
梨華は呆れた口調で、先が続かない。
少しでも期待した自分が馬鹿だったと、梨華は後悔する。
- 76 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-86- 投稿日:2003年03月19日(水)20時25分37秒
- 「梨華も何今更前を隠してんの? 二人の間に隔たりは、ない筈だよ?」
ヒョイと、気が緩んだ隙に、ひとみは梨華からタオルを取り去ってしまった。
「あぁっ」
「梨華かわいぃ…」
間抜けな声を出した梨華に、ひとみはからかう。
「もぅ!」
梨華は屈みこむと、ひとみを睨んだ。
丁度、ひとみと目線が同じ高さになった時、ふいにひとみがくちづけた。
「……っ!」
「梨華も早く入っておいで」
「ぅん……」
- 77 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-86- 投稿日:2003年03月19日(水)20時26分22秒
- 軽く触れただけで、梨華はドキドキした。
しかし、ひとみは余裕(?)の顔。
少しだけ梨華は、そんなひとみに嫉妬する。
「(私ばっかり、ドキドキして…。もう、ひとみちゃんの意地悪!)」
口に出しては言えないが、梨華は身体を流しながら、相変わらず泳いでいるひとみに向かって
心の中で叫んだ。
と、急にひとみは泳ぐのをやめて梨華を見る。
「(もしかして聞こえた?)!!」
「梨華、なんか言った?」
「言ってないよ。空耳、空耳!」
梨華は、やはり、ちょっとだけ悔しいなと思いながら、湯船に足を入れた。
- 78 名前:charmy_blue 投稿日:2003年03月19日(水)20時30分13秒
- 83-86話更新。
明日も更新します。
>67 チップさん
胸キュンですか。ありがとうございます。
しゃきりり二度と飲まないと思われw。CMは好きですが。
- 79 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-87- 投稿日:2003年03月20日(木)18時51分31秒
- −87−
こちらの二人は…と言うと、早々に一戦交えて、部屋に付いている露天風呂に入る途中。
「シャワーの方がよくねぇ? 暑いよなー…」
「でも外だから、風が気持ちいーじゃん」
まさにムードもなく、スポーツをした後のような会話の矢口と真希。
最もえっちも、スポーツの一種ではあるが。
「やっぱり、やぐっつぁん好きぃ…」
ムードがないと言っても、真希は甘えて擦り寄ってくる。
「おいおい、汗くさいから、あんまり寄るなよ…」
「流しちゃえば、いいじゃん」
真希は構わず矢口の鎖骨や首筋にキスを落とす。
「後藤、お前目立つトコに痕付けるなよな…」
矢口は目で自分の身体を追う。
- 80 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-87- 投稿日:2003年03月20日(木)18時52分17秒
- 「私の愛のシルシが嫌だっていうの?」
真希は顔を上げ、矢口を睨んだ。
「そ、そうじゃないけどさー…」
「やぐっつぁん、淡泊なんだもん。もっと、こう余韻に浸るとかってない訳ぇ?」
「わかってるけどさー…」
矢口としては、いつひとみ達が戻ってくるかと気が気でなく、思い切り楽しめず
落ち着かなかった。
「なぁんか、上の空って感じ…」
矢口から身体を離すと、真希は寂しそうな顔で見つめた。
「そんなコトねぇって。今日は、矢口頑張っちゃうからよ! って何をだよ!」
自分で突っ込みを入れ、矢口は軽く身体を流すと、勢い良く風呂の中に入った。
- 81 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-87- 投稿日:2003年03月20日(木)18時52分53秒
- 「やぐっつぁん!」
真希も続けて勢いよく風呂に入る。
「なんだよ…」
矢口と向き合うと真希は甘えた声を出した。
「もっと甘くして…」
「甘いって?」
「例えば、こんな感じ…」
真希はゆっくり矢口にくちびるを重ねる。
最初目を開けていた矢口も目を閉じ、真希の腕に手を添えた。
- 82 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-88- 投稿日:2003年03月20日(木)18時53分42秒
- −88−
梨華が湯船に入った途端、ひとみが近寄ってくる。
「捕まえた♪」
子供が水遊びをしているみたいに生き生きとした表情のひとみに梨華も負けずに反撃に出る事にした。
梨華は逆に腕を取ると、ひとみにキスをする。
「(梨華!?)」
思わぬ梨華の行動に、ひとみは目を丸くした。
「…っ!! ひとみちゃんの馬鹿!」
梨華も自分の取った行動に驚き、パッと離れると自分も泳ぎ始めた。
(もぅ、ヤダ。私、なにやってんだろ。訳わかんないよぅ。)
変な風に思われたに違いないと梨華は思いこみ、急に落ち込み始める。
そんな梨華を、ひとみは訳も分からず見つめているわけもなく、ひとみも一緒になって泳ぎ始めた。
「(ひとみちゃん?)」
どんな顔をしてよいのか、梨華は顔をあげると、ひとみのニコやかな顔があった。
「梨華。人魚みたい…」
(ひとみちゃん…。やっぱり、訳分かんない…。)
- 83 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-89- 投稿日:2003年03月20日(木)18時54分30秒
- −89−
「んー……」
どの位の間、くちづけていただろう。
矢口の方から、堪りかねてくちびるを放してしまう。
「窒息しちゃうよ…」
甘い吐息混じりに、矢口は手を浴槽の下につきながら言った。
「それもいいかも…」
尚も真希はくちびるを寄せてくるので、矢口は手で押さえた。
「のぼせちゃうよ…。マジ勘弁…」
参ったと言う感じで矢口は情けない声を出す。
元来、あまり長風呂でない矢口は、湯船に長く浸かっている事も苦痛である。
「ホントダメなんだからぁ。これからあと何回入ると思ってるの?」
「知らない…」
「もぅ!」
「湯アタリで死んじゃうよ!」
「大丈夫。きっと大丈夫。私が死なせないから…」
「…そうじゃなくてよ……」
矢口は、心の中で、死なせて下さい! と絶叫していた。
- 84 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年03月20日(木)18時56分01秒
- 87-89話更新。
明日か明後日で、更新祭りひとまず終了。(たぶん)
- 85 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-90- 投稿日:2003年03月21日(金)20時33分04秒
- −90−
結局、あの後は、至って健全(?)に何もなく、浴衣を着て、ひとみと梨華は部屋に戻ってくる。
戻って来た頃には、丁度夕飯まで、あと少しと言うところであった。
荷物の整理をしている梨華の後ろ姿を見つめながら、ひとみは急に悶々とし始める。
今までは、何ともなかったのに、梨華のうなじや浴衣姿に欲情とまでは、いかないにしろ、ひとみは
今頃になってドキドキし始め、逆に梨華のドキドキは納まっていた。世の中うまくいかないものである。
背後から何となくひとみの視線に気づいた梨華は、振り返った。
「ひとみちゃん、どうか…し…た?」
言いかけて、ひとみの口が締まりなく開いているのに気づき、梨華は噤む。
「う、うぅん。何でもないっ」
ひとみは顔を赤らめ、視線を外した。
「何でもなくないよね?」
ひとみの行動は何となく読める。梨華は、ひとみに近づくと隣りに座った。
「何でもなくないっかな」
ひとみは素直に認める。が、視線を合わせようとはせず畳を見つめたままだ。
- 86 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-90- 投稿日:2003年03月21日(金)20時34分06秒
- 「ひとみちゃん、ちゃんと私を見て」
梨華の声に、視線を徐々に上に移動させるひとみだったが、
うっすらと開いた浴衣の合わせ目に、ひとみの視線は止まってしまった。
ノーブラ……。
当然の事なのに、訳もなくひとみは興奮してしまい、チラリと覗いた
梨華の胸に更に顔を紅潮させてしまった。
(ヤヴェェ。見ちゃった…。)
「ひとみちゃん見てよ…」
梨華の声に我に返る。
「うん。見てるよ。梨華の……」
思わず呟いてしまい、ひとみはしまったと顔を上げた。
梨華も、ひとみの視線に気づき、慌てて前を隠す。
- 87 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-90- 投稿日:2003年03月21日(金)20時34分55秒
- 「もぅ、ひとみちゃん、どこ見てるのよ!」
「だって…梨華が見ろって言うから…」
「えっち!」
「たまたま目に入っただけだってば…」
そう言いながら、ひとみの視線は梨華の胸元に集中している。
「もぅ、分かんない!」
梨華も何に腹を立てているのか自分でも分からなくなる。
さっきまで、そんな素振りも見せなかったひとみの変わり具合にも何故か腹が立つ。
どうにも二人の気持ちは、なかなか一つにならないようだ。
「梨華…。ごめん」
「なんで謝るの?」
少しばかり涙目の梨華に、ひとみは更にドキリとする。
「梨華が色っぽいから急に、こぅメーターが上がったって言うか…さ」
「メーター?」
梨華が怪訝な顔をする。
- 88 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-90- 投稿日:2003年03月21日(金)20時35分44秒
- 「梨華が欲しくなった」
ひとみは素直に白状する。
「……そんな急に言われても…」
ストレートに返されて、梨華も急に歯切れが悪くなる。
「梨華、さっき気持ちは一緒って言ったよね」
ひとみはゆっくりと確かめるように言う。
「そうだよ…」
「梨華が欲しい…」
耳元で低い声で囁かれて梨華は身震いする。
再び梨華の身体に電流が流れ始めた。
「ひとみちゃん……」
梨華とひとみの視線が熱く絡み合い、自然と二人はくちびるを重ねた。
- 89 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-91- 投稿日:2003年03月21日(金)20時37分03秒
- −91−
「なぁ、アイツら、もう戻ってきたよな?」
どうにか死を免れた矢口は、寝そべりながら、隣で音がしたのを確認して真希にも同意を求めた。
「うん。さっき音がしたもんね。そろそろ来るんじゃないの? 夕飯だしね」
真希は何となく点けているTVを見ながら相づちを打つ。
「腹減っちゃったよなぁ。もう…」
「だからお菓子食べれば良かったのに…」
矢口と真希は、暫く雑談していたが、なかなか来る気配のない二人を呼びに行こうと、矢口は起き上がった。
「しょうがねぇなぁ。呼びにいくか?」
「あー。でもやめた方がいいかもねぇ」
「なんでさ?」
「今、お取り込み中かも知れないしね」
真希は含み笑いをする。
「まさか…」
しかし、その後二人は物凄い勢いで壁に耳を張り付けたのだった。
- 90 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年03月21日(金)20時38分51秒
- 90-91話更新。
明日でひとまず毎日更新は、終了です。
- 91 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-91- 投稿日:2003年03月22日(土)19時50分05秒
- −92−
「せっかくお風呂入ったのにね…」
梨華の額の汗を指で拭いながら、ひとみは優しく微笑みかけた。
そのままなだれ込んだ為、布団も敷かずに、及んでしまったので身体も痛い。
「ぅぅん。また入ればいいじゃない」
梨華は、まだ少し乱れた呼吸を整えながら、ひとみの腕の中で答える。
「そうだね…。梨華……」
「うん?」
「凄く好きだよ…」
「私も。ひとみちゃん…」
- 92 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-93- 投稿日:2003年03月22日(土)19時51分03秒
- −93−
微かに聞こえる二人の声。良くは聞き取れないが、どうやら甘く囁き
あってるらしい事は何となく分かる。
「なんか馬鹿らしい…」
真希は壁から耳を離すと、ため息をつく。
「なんだよ。ガッカリすんなよ」
自分の事は棚に上げて、真希は面白くない顔をしている。
「私も、あーいう甘いやりとりしたいよなぁ…」
「………」
矢口は、刺すような真希の視線を感じて口を閉じた。
(なんだよ、何回も求めておいてよー。)
そうは思っても口に出す事は口が裂けても言えない矢口である。
「まだ、今日は終わった訳じゃない…ぜ」
自分で言っておきながら、体力は持つのかどうか心配になる矢口だった。
- 93 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年03月22日(土)19時52分18秒
- 92-93話更新。
後半戦は、また・・・。
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)16時30分36秒
- 更新お疲れ様です。
毎日楽しみにしているので頑張ってください。
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月15日(火)23時14分43秒
- 待ってますよー。一番楽しみなんでよろしくお願いします
- 96 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月19日(土)01時28分11秒
- >>95
作者さんはsage進行っていってるんだからちゃんと守ろうよ。
- 97 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-94- 投稿日:2003年04月25日(金)18時03分43秒
- −94−
「そろそろ行かないとまずくない?」
梨華は時間を見て、起き上がろうとした。
「ぅん。そうだね…」
まだ名残惜しそうなひとみに、梨華は優しくくちづけする。
「そんな顔しないでよ。まだ…時間は、あるよ」
そう言って梨華は、そそくさと畳に散らばった浴衣を身につける。
「うん…」
まだ、まどろみ気分のひとみは、ボーッと梨華を見つめていた。
「ひとみちゃんも早くして!」
「梨華ぁ。ご飯よりも…梨華と一緒にいたい…」
珍しく駄々をこねるひとみに、梨華は可愛いと思うが、今回は矢口と真希と
来ているのだから、ここで行かない訳にも行かなかった。
「ひとみちゃん、早くいこ。待たせてるんだから」
梨華は、ひとみの浴衣を羽織らせる。
「じゃぁキスして?」
「―――チュッ」
「触っていい?」
「……ダメ!」
「えへへ…」
ひとみは仕方なく浴衣を着直すと、隣りの矢口達の部屋へと移動した。
- 98 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-95- 投稿日:2003年04月25日(金)18時04分59秒
- −95−
二人仲良く登場で、真希は、ひやかす。
「おっそいぞ〜!」
「これから呼ぼうと思ってたとこだったんだぜ」
「マジっすか?」
呼ばれなくて良かった。と梨華は胸をなで下ろす。
「ねぇ、二人で何してたの?」
既に食事の膳は運ばれて来ていて、真希の突っ込みが始まった。
「何って…。いろいろ…」
梨華は少しづつ食べては横のひとみを見ていた。
何となくお腹はすいているような、すいていないような…。
しかし、ここで食べなければ夜中、絶対に空腹になるのは目に見えている。
ひとみは、なんだかんだで、思い切り食べていた。
今は食べるのに夢中のようだ。
「いろいろって何ですか? 後藤バカだからわかんない…」
「そういう質問すんなよ! なぁ? 吉澤?」
隣りの矢口は、真希の頭をひっぱたいた。
「いったぁ…。いいじゃん別にぃ。減るもんじゃなしに…」
「吉澤聞いてんのかよ!」
- 99 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-95- 投稿日:2003年04月25日(金)18時05分33秒
- 「え? あぁ…なんですか? これ、うまいっすよ」
ひとみは箸でさすと、また黙々と食べ始める。
「ダメだこりゃ」
「ひとみちゃん、あんまり急いで食べるのも身体に良くないよ?」
梨華は心配そうに、ひとみを見つめる。
「よっすぃー。そんなにお腹空いてんだ。さては二人で運動でもしたかぁ?」
まだしつこく真希は聞いてくる。
梨華の箸が一瞬止まる。ひとみの動きも止まる。
「「「「…………」」」」
そして何事もなかったかのように、再び動きだし…。
「食った後、どうする? 大浴場にでも行くか?」
矢口は変な汗をかきながらフォローする。
「吉澤、取りあえず寝ます。夜に備えて…」
「夜?」
「今回の目的はぁ…流星を見ながら露天風呂ですよ?
その辺の趣旨分かってますか?」
「わ、わーってるって。分かってるさ。当たり前だろ」
「そ、そうだよ」
実はすっかり忘れていた矢口、そして真希。
「怪しいなぁ。ねぇ? 梨華」
「うん」
ひとみも人の事は言えないんじゃないのかと思ったが梨華は敢えて口には出さなかった。
- 100 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-96- 投稿日:2003年04月25日(金)18時07分14秒
- −96−
そして食事も終わって、ひとみは立ち上がる。
「ん? もう部屋に戻るの?」
見上げる真希。
「だから寝ないと。身体が持たないし…。お先にぃ」
真希はニヤリとすると、ひとみの腕を掴んで部屋の隅に連れて行く。
「ねぇ、やった?」
「え?」
「疲れる位に、やっちゃったの?」
「ちょっと、ごっちん! 声大きい!」
ひとみは振り返ると梨華とバッチリ目が合ってしまった。
「そういうごっちんは、どうなのさ?」
「そりゃぁ…ねぇ…」
ニヤニヤしながら真希は答える。
「別にそんなコト話す気ないし…」
「ケチぃ…」
「そういう問題じゃないと思うけど? また、後でね!」
真希の腕をほどくと、ひとみは梨華を連れて、部屋を出て行ってしまった。
- 101 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-96- 投稿日:2003年04月25日(金)18時07分52秒
- 「なぁんだよ、つまんないなぁ。ちょっとは相手してよ」
見送りながら、真希はぼやく。
「お前もよぉ、人の詮索ばっかしてんじゃねぇよ。先が思いやられるな」
矢口は寝そべりながら、真希の行動を注意した。
「どうしてよぉ。ゴトー風呂入ってくる…」
「おい。食ったばっかりで入るのは良くないんだぜ?」
「いいもん別に。どうせ、また食べるから一緒!」
真希はタオルを掴むと部屋を出て行く。
「全く…。ぅーん。おいら眠くなっちゃった…」
矢口は一人になると、そのまま眠りに落ちていった。
- 102 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-97- 投稿日:2003年04月25日(金)18時09分42秒
- −97−
再び二人っきりになった、ひとみと梨華は―――。
部屋に戻るなり、ひとみは梨華にキスの嵐。
「ひ、ひとみちゃん。寝るんじゃなかったの?」
梨華はひとみから、やんわり離れる。
「うん。寝るし、その前にお風呂にも入るけど…」
ひとみは再び梨華を抱きしめるとキスをしようとする。
「さ、先にお布団敷くね…」
こんなに、ひとみが甘えたがりだとは思わなかった。
でも、自分にだけ、そんな表情を見せるひとみが好きだ。可愛いと思う。
だけど…。
「ひとみちゃんも手伝ってよぉ…」
ひとみの視線を背中に感じながら、押入から布団を運び出そうと梨華は悪戦苦闘
しているのに、ひとみは見ているだけ。
「梨華、可愛いなぁと思って…」
再び、えへへと笑ってひとみは頬を緩ます。
- 103 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-97- 投稿日:2003年04月25日(金)18時11分16秒
- 可愛いと言われるよりも手伝って欲しい梨華は一旦手を休ませると、ひとみに向き直った。
「真面目にやって下さい」
実際は怒ってない事は分かっているけれど、ひとみはまた甘える態度を示す。
「真面目だよ、いつも。じゃぁキスして?」
「なんで?」
「したいから」
「ダメ。布団出してくれたらいいよ」
「ほいさ!」
ひとみは手を挙げると、いとも簡単に布団を抱え込み、あっと言う間に敷いてしまった。
「どうよ?」
「はやっ…」
えっへんと威張るひとみに、だったら最初からやって欲しいと思う梨華だったが。
「あと一組出さないと…」
「いらないじゃん」
「ん?」
「布団は一つで充分だよね?」
「ぇ…」
その意味は…。もちろん……。
「ぃゃ。もう一つ出さないと…」
梨華は、その言葉を聞かなかった事にして押し入れに向く。
- 104 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-97- 投稿日:2003年04月25日(金)18時12分44秒
- 「梨華。約束…」
背後からひとみに抱きしめられる。
「?」
「キスが、まだだよ?」
ひとみの生暖かいくちびるが、梨華の首筋に落とされる。
ゾクゾクする感触が梨華の身体を再び走り出した。
「ぁ…。だって、まだ布団出すの終わってないもの…。ゃ…んっ」
いつの間にかひとみの手は浴衣の合わせ目からスルリと入り込み
梨華の胸を捉えていた。
「ぁんっ…。ダメぇ……っ」
再び気持ちよくなり始める梨華は、徐々に高揚しはじめる。
初めて梨華と身体を合わせた時の、うぶなひとみは、どこへやら。
今では、ただの甘えたがり。そんなひとみも好きだけれど、こう一日に
何度も求められては、梨華とて疲れてしまう。
肝心の流星が見れる時間帯まで起きていられるかどうか不安である。
「ゃぁっ。もぅ…ひとみ…ちゃん……。寝るんじゃなかったのぉ…」
「寝るよ…もちろん。梨華と二人で…」
優しく愛撫されながら梨華は早くも腰砕け状態。
ひとみは柔らかい梨華の胸を揉みしだきながらゆっくりと浴衣を脱がせていった。
- 105 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年04月25日(金)18時17分35秒
- 94-97話更新。約1ヶ月ぶり? ひぃスイマセンスイマセン。
>94 名無し読者さん
お待たせしてしまって申し訳ありません。m(_ _)m
>95 名無しさん
ありがとうございます。なるべくお待たせしないようにしたいです(汗)。
>96 名無し読者さん
わざわざありがとうございます。
皆様sageでお願いします。
- 106 名前:チップ 投稿日:2003年04月26日(土)00時57分24秒
- 更新お疲れ様れす。
あ、甘えたがりよっちぃに鼻血が…
梨華ちゃんがまともに見れませぬ。
実は私も忘れていましたww
- 107 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月27日(日)22時01分58秒
- うふぃー!更新乙です
待ってましたよー!さて夜はどうなるのか?期待してますよ
がんばってください
- 108 名前:紅 投稿日:2003年05月02日(金)01時52分54秒
- どうも、初めまして!
三日前にこのスレを見つけてパート1よりずっと読破していました『紅』と申します。
初めて感想を書き込みますが…最高です。大好きです。
見事にはまってしまいました(^^)
このあとの展開も気になりますね〜。
更新がんばってください!
期待しています。
でわ、また機会がありましたら感想を書きます。
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月07日(水)18時06分13秒
- 保全
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月07日(水)19時15分12秒
- それにしても廃れたなぁ、このスレ
- 111 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-98- 投稿日:2003年05月25日(日)17時18分17秒
- −98−
「やぐっつぁん、戻ったぜ〜ぃ」
タオル一丁片手に、おやじ風に真希が帰ってくると…。
「なんだ、寝てんのか…」
スヤスヤ…と寝ていれば可愛いものだが、豪快に口を開けて爆睡している矢口を見て
真希の百年の恋も一瞬にして消える…訳はなく、真希は矢口らしいやと思いクスリと笑った。
「風邪ひくよ〜」
真希は押入からタオルケットを取り出すと、矢口にかけてやる。
寝顔を見つめながら真希は顔を近づけキスを落とす。
「んぅ……」
くすぐったいと言う表情をして矢口は寝返りを打つ。
- 112 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-98- 投稿日:2003年05月25日(日)17時19分49秒
- 「最後かぁ…。あともう一回二人でどっか行きたいなぁ…」
「グーッ…ガーッ……」
「……」
「グヘーッ。…ガガーッ……」
「………」
「ゴーッ…。ググーッ……」
「一体、どんなイビキなんだよ!」
真希は可笑しくなり、寝ている矢口に足をグイグイ押しつけた。
体重の軽い矢口は、その反動でうつ伏せになる。
「いたっ。んぅ…?」
「起こしちゃった?」
自分で起こしておいて、そんなセリフもないものだ。
- 113 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-98- 投稿日:2003年05月25日(日)17時20分48秒
- 「あ。寝ちゃったんだ。今、何時?」
そんな事は知らない矢口は慌てて時間を確認する。
「まだ寝てても平気だよ…」
「んーっ!」
矢口は起き上がると伸びをする。
「あ、タオルかけてくれたんだ。ありがと…」
「うん…」
「おいらも風呂入ってくっかなぁ〜…」
「えーっ…」
真希の不満そうな声があがる。
「なんだよ。ダメ?」
「ダメーっ」
「自分は、ちゃっかり入ったくせに」
「私は、いいんだもん」
「なにがだよ。訳わかんねぇ…」
矢口は真希を無視して立ち上がる。
- 114 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-98- 投稿日:2003年05月25日(日)17時21分27秒
- 「タオル…タオルっと…」
タオルを探す矢口に真希は一言。
「ゴトーのコト、独りぼっちにさせるんだ」
「はい?」
矢口を見上げる真希の顔はとても寂しげで矢口は焦る。
「お、おい。すぐ戻ってくっから。そんな顔すんなよ」
「ウソ…」
寂しげな表情から、一気にニヤーッといつもの顔に戻る。
「ちっ。ウソかよ。一瞬マジになっちまったじゃんか!」
「ウソでもないけどね…」
ぼそっと呟く一言を矢口は聞き逃す筈もなく、再び真希を見つめた。
- 115 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年05月25日(日)17時22分11秒
- 98話更新。やぐごまのみ。
落ちボタンがあって嬉しい鴨。
>106 チップさん
いつもありがとうございます。一体いつになったら一日が終わるやら。
>107 名無しさん
ありがとうございます。夜は、どうなるんでしょうか?w
>108 紅さん
1から読んでいただいてありがとうございます(照)。
ハマッていただけて嬉しいです。最近更新が滞っておりますが
完結は絶対させますので、宜しくお願いします。
>110 名無し読者さん
底の方でひっそりと更新いたします。m(_ _)m
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月26日(月)19時45分47秒
- 更新お疲れさまです。
毎回楽しくROMらせてもらってます。
今までいきなりスレがあがってたりと大変だったと思いますが、
これからはochiボタンのおかげで困ることも少なくなりますね。
これからも更新頑張ってください。
- 117 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-99- 投稿日:2003年05月29日(木)18時47分32秒
- −99−
「ひとみちゃぁっん…」
「梨華ぁぁっっ…」
お盛んな二人は、今度は布団の中で、お励み中。
汗ばんだ身体を重ね合わせて、仲良くイチャイチャ中。
「ひとみ…ちゃん、もうダメぇ…」
「いいじゃん、梨華ぁ」
「………っ」
手を伸ばすひとみの手首を掴む梨華。
「ん?」
「休もうよ、ひとみちゃん…」
まだ時刻は夜の10時を回ったばかり。
肝心の流星が見れる頃には、夢の中…も充分あり得そうな気がしてくる。
いや、この分だとオール……。
「梨華ぁ。いいじゃんか。減るもんじゃないし、滅多に出来ないんだから…」
ひとみは、構わず梨華の胸に顔を埋める。
「ゃ。だ、だってぇ…」
そう言われると拒めない、ひとみには甘い梨華。
「ちょっとだけだから…」
梨華の胸の中心を指で弄びながら、もう片方の胸に吸い付き舐めるひとみ。
「あんっ。もぅ、ひとみちゃ…んっ。ハァッ…」
思わずひとみの頭をギュッと抱き寄せてしまう梨華。
二人の営みは、更に続くらしい―――。
- 118 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-100- 投稿日:2003年05月29日(木)18時48分47秒
- −100−
矢口は真希の目の前に再び行く。
「お前も一緒に入るか?」
「えー? 今入ったばっかだよ?」
「…だよな……」
矢口はチラチラと部屋のあちこちに目を泳がせる。
自ら、誘うのも、なんだか気が引ける。
「…やぐっつぁんも入ってきなよ〜。ゴトーも少し眠るからさ〜…」
そう言って、真希は矢口に背中を向けて横になった。
「おぅ、分かった。じゃぁあとでな…」
矢口はそう言って、出て行った。
出て行くのを確認すると、真希は起きあがり、枕を入り口に投げつけた。
「やぐっつぁんのバカぁ! ちったぁゴトーの気持ちも考えろ!!」
無造作に髪を掻き上げ、真希は叫んだ。
- 119 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-100- 投稿日:2003年05月29日(木)18時49分49秒
と、同時に出て行った筈の矢口が顔を出す。
「……!! お風呂行ったんじゃなかったのかよ!」
真希は、驚いて、そのまま乱暴な口調で続けた。
「べ、別に風呂は、この部屋にもあるしなって思って引き返したんだよ!
枕に当たるなよ!」
矢口は、枕を拾い上げると、真希目がけて軽く投げたつもりが、見事顔に命中してしまった。
「やぐっつぁんこそ、なんだよ! 顔わざと狙ったでしょ!」
「狙ってねぇよ! たまたまだって!」
真希はムキになって、再び枕を投げ返す。矢口の足を狙って。
「いてっ。て、てめぇ!」
二人は、そのまま乱闘モードに入る。
それが納まるのにさほど時間は、かからなかった。
- 120 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-100- 投稿日:2003年05月29日(木)18時50分31秒
- 「なんで、こうなっちゃうんだろうな、いつも…」
ハァハァ息を切らせながら、矢口は呟く。
「やぐっつぁんとゴトーだから…」
「はぁ?」
「でも好きだよ、こういうの。やぐっつぁんとは、いつまでもバカやってたい」
真希は起き上がると、矢口を見つめた。
切なそうな、寂しそうな視線に、矢口はドキリとする。
「バ、バカだなぁ。いつまでも出来るよ。おいらがごっつぁんの傍にいる限り…」
「やぐっつぁん…」
「ごっつぁん……」
二人は見つめ合い……そして、吹き出した。
「どうでもいいけど、前はだけてんぞ!」
「そういうやぐっつぁんもね」
二人揃って浴衣がご開帳。
「おいらは、いいんだ! これから風呂だからよ!」
逆に開き直る矢口に、真希も言い返した。
「私も一緒に入るんだから!」
そう言って、真希は矢口に抱きついた。
- 121 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年05月29日(木)18時52分51秒
- 99.100話更新。
>116 名無し読者さん
温かいレスありがとうございます。めちゃ嬉しいです。
一人でも読んでくださる方がいる限り、細々とでも更新して
いきます。これからも、宜しくお願いしまつm(_ _)m
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月30日(金)19時50分53秒
- この小説好きなんで
がんばってくださいね!
- 123 名前:チップ 投稿日:2003年05月30日(金)20時03分11秒
- おぉ次はやぐごまが…ポワワ
ガンバテクダサーイ、オトシトキマス。
- 124 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月30日(金)20時05分06秒
- 更新お疲れさまです。
ここのやぐごまのやり取りが好きです。
続き楽しみにしてます。
一番下にしておいた方が良いんでしょうか。
取り敢えず落としておきます。
- 125 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-101- 投稿日:2003年06月05日(木)18時18分01秒
- −101−
バシャッと勢い良く水しぶきがはねて、思い切り矢口の顔にかかった。
「コラッ! わざとやっただろ!」
「わざとじゃないって!」
狭い露天風呂の中で、矢口と真希は、色気もなく戯れ中。
「水鉄砲とか持ってくれば良かったよねぇ」
真希は、アハッと笑いながら、矢口に擦り寄って来る。
擦り寄らなくとも、狭いのだから必然的にくっつくカタチになるのだが。
「全く、ごっつぁんは子供なんだからな」
矢口は、顔を拭いながら苦笑いをした。
「小さいやぐっつぁんに言われたくなぁーぃ!」
プゥーッと頬を膨らませて、真希はくちびるを突き出しながら拗ねて見せる。
- 126 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-101- 投稿日:2003年06月05日(木)18時20分22秒
- 「小さいは、余計だっつーの!」
矢口はそれには応えずに、わざとくちびるを手で押しやった。
「ちぇぇーっ。つまんないのぉーっ。ここは、どうなのさ?」
真希はキスしてくれなかった事で、いきなり矢口の下半身に手を伸ばした。
ビクッと身体を揺らし、驚く矢口に、真希は、大きな声で笑い出す。
「アハハァ〜! もぅやぐっつぁんってば可愛いんだから!」
「な、なんだよ。急に触んなよ! ビックリすんだろうが!」
矢口は真っ赤になりながら、もぞもぞと真希の手を掴んで上へ引き上げた。
「嫌いじゃないくせにさあ…」
「うるせぇな、もう。そういうお前はどうなんだよ! ホラ!」
矢口も負けずにやり返す。しかし、真希の下半身ではなく、胸を掴む。
- 127 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-101- 投稿日:2003年06月05日(木)18時20分53秒
- 「いたっ! ちょっと優しくしてよ〜! 揉むとか、舐めるとか。
掴んだら痛いじゃん!」
真希はそう言いながら、矢口の手首を掴むと、立ち上がり風呂場の
ふちに座り、再び胸に矢口の手を押し当てた。
「これなら、やぐっつぁんの好きなチューチューも出来るよ?」
真希はわざとニーッと歯を見せて笑う。
本当にウチらは、エッチしてるのか、単にふざけあっているのか時々矢口は
良く分からなくなる。
「………」
矢口が黙っていると、わざと真希は矢口の頭を引き寄せ胸の中心に持っていかせた。
「んぐっ…」
胸に顔を埋めるようなカタチになり、矢口は声を漏らす。
矢口の背中に真希の腕が回ると、矢口を優しく抱き寄せた。
- 128 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-102- 投稿日:2003年06月05日(木)18時21分31秒
- お隣では、矢口と真希とは正反対に甘い時間が、ゆっくりと流れていた。
「梨華。汗でも流そうか…」
もう何回目のお風呂だろうか? と梨華は思いながら、湯アタリしそうで
精神的にも肉体的にも梨華は限界に近い状態だった。
「ひとみちゃん、一人で入って…」
とにかく少しでも休みたい梨華は、布団に突っ伏しながら、片手だけを上げた。
「えぇ…? 梨華がいないと寂しいよ」
ひとみは、うつ伏せになっている梨華に構わず上から覆い被さった。
「ぅ…。(重い…ょ。ひとみちゃん)」
「梨華だって、こんなに背中に汗かいてるじゃん…」
当然二人は裸。汗だくの梨華の背中をひとみは指でなぞる。
― り か あ い し て る ―
指文字で、描くものの、梨華は、疲れ果てて、夢を見る直前状態だった。
「くすぐったいよぅ。んぅ……」
「梨華?」
もはや、ひとみの声すら、眠りを誘う声にしか梨華には届かなかった。
- 129 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年06月05日(木)18時22分26秒
- 101-102話更新。
いい加減に終わらせますw。
>122 名無しさん
ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
>123 チップさん
やぐごまなんだか期待?されてるようなんで
書いてみました。
>124 名無し読者さん
やぐごまのやり取り、ついついギャグに…(汗)。
落ちレスありがとうございます。
- 130 名前:タケ 投稿日:2003年06月28日(土)17時48分46秒
- 面白いです! 続き待ってます。
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月08日(火)07時24分19秒
- 保全
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月08日(火)07時26分16秒
- 一週間で保全ですかぁ フーーン。
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月12日(土)17時14分42秒
- hozen
- 134 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月12日(土)19時58分06秒
- 頑張ってください。
- 135 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-103- 投稿日:2003年07月14日(月)19時00分55秒
- −103−
そして数時間後。
「梨華!」
ひとみの声で梨華は目が覚める。
どうやら、そのまま眠ってしまったらしい。
さすがのひとみも、諦めたようで、そのまま寝かせてくれたらしい。
梨華が目を開けると、浴衣姿のひとみが隣りにいた。
「もうそろそろ時間だよ。流星の…」
そう言われて今日来た目的を思い出す。
しかし、何故ここまでひとみは元気なのかと梨華は首を傾げる思いだ。
目は覚めたものの、身体はだるい。
起き上がったものの、自分はまだ裸のままである事に気が付く。
髪の毛も乱れたままだ。
慌てて梨華は布団を引き寄せた。
- 136 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-103- 投稿日:2003年07月14日(月)19時01分37秒
- 「寒いんじゃない? またゆっくりお湯に浸かりながら空を眺めようよ」
さっきまでの甘えん坊だった、ひとみは、どこへやら。
急に優しい口調でひとみは梨華を促した。
- 137 名前:名前 : 恋をしちゃいました-4th Stage-103- 投稿日:2003年07月14日(月)19時02分31秒
- 一方、矢口と真希は、仲良く爆睡中。
しかし、けたたましい目覚まし時計で、一気に目を覚ます。
「なんだよ、音でっかすぎるよ!」
矢口は余りの音のでかさに怒りながら目を覚ました。
「んぁ、良かった!」
真希は持参した目覚ましを掴んですぐに起きる。
「ビックリするじゃねぇか!」
矢口は目を擦りながら、真希に抗議する。
「絶対ウチら二人じゃ携帯のアラームじゃ起きる訳ないじゃん。
だから、家から持って来たんだよ」
誇らしげに言う真希に矢口も、まぁいいかと言うのを止めた。
「じゃぁ、また風呂に入るか」
一体何度目だろう? と矢口は数えながら浴衣を脱ぎ始めた。
- 138 名前:名前 : 恋をしちゃいました-4th Stage-104- 投稿日:2003年07月14日(月)19時03分22秒
- −104−
二人仲良く肩を並べながら夜空を眺める。
流星を眺めると言うのは聞こえはいいものの何となく根気が要る作業ではある。
それでも大好きな人と一緒なのだから、苦痛には感じない。
今か今かと待ちかまえながら、ほどよい湯加減で、梨華のまぶたは再びくっつき
そうになりそうだった。
逆に、ひとみは少年のように目を輝かせながら夜空を見つめている。
「ぁっ!」
ひとみが小さく声をあげ、指をさす。
「ん?」
梨華がハッとして目を開け、視線を上に向けたが、星空が広がっているだけだった。
- 139 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-104- 投稿日:2003年07月14日(月)19時04分29秒
- 「今、見えたよ。梨華は見た?」
嬉しそうに梨華を見るひとみに、梨華は何も言えない。
「ゴメン…」
嘘も言えずに梨華は謝る。やはり眠気には勝てない。
「幾つ見えるか数えたかったのに」
少し寂しそうなひとみの顔に、梨華は悪かったなと思う。
「流れ星が見えた数だけ梨華にもキスしちゃおっかなぁ…」
「…?」
ひとみの顔が近づく。梨華の目の前が暗くなり、くちびるが塞がった。
「流れ星の数だけじゃ足りないかもしんないね」
くちびるが離れると、ひとみが照れ臭そうに言った。
さっきまで、キス以上の事をたくさんしてたのに。
「キスだけで我慢出来るのかなぁ?」
梨華も少しだけ意地悪に返してみる。
「梨華が誘惑してくれたら、いつだって…」
もう一度キス。
- 140 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-104- 投稿日:2003年07月14日(月)19時05分15秒
- 「誘惑しなくたって、ひとみちゃんするじゃないかぁ…」
梨華も何だか恥ずかしくなり俯く。
「だって、こんなシチュエーションでしない方がもったいないじゃん?」
「ひとみちゃんは、いつだって…」
「梨華がいけないんだよ。可愛いから…」
ひとみは、また梨華にキスをする。
「ひとみちゃん…まだ、そんなに流れ星見てない…ょ?」
「梨華の瞳の中には見えてるよ」
余りに臭い台詞に、いつもだったら笑ってしまえるのに、雰囲気に
流されて梨華は、そのままひとみをまた受け入れてしまった。
- 141 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-105- 投稿日:2003年07月14日(月)19時06分05秒
- −105−
「ほら、見えた! おい。今見たか?」
矢口が指さして、隣の真希を見る。
真希は、既に飽きているのか、指で水鉄砲を作って遊んだりしている。
「なんだよ見てないのかよ!」
矢口は不満そうに言うが、真希の水鉄砲を顔面に喰らう。
「あははっ。かかったぁ!」
「子供かよ!」
矢口はムッとしながら顔を拭った。
「さっきゴトーも見たもん。でも綺麗だよねぇ。
こうして空眺めるコトなんて、滅多にないじゃん?」
真希は空を見上げながら答える。
「まぁな…」
「やぐっつぁんが名古屋行っちゃっても、空眺めて
この先には、やぐっつぁんがいるって思うコトにするよ。
続いてるんだなぁってね…」
急にしんみりと言い出す真希に、矢口は何も言えない。
- 142 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-105- 投稿日:2003年07月14日(月)19時06分47秒
- 「東京じゃ、こんなに星は見えないけどな…」
「やぐっつぁんも忘れないで空眺めてよ?」
「言い出しっぺのお前が一番忘れそうな気がするけどな」
「そんなコトない!」
「まぁ、そういうコトにしておくか…」
矢口は真希の肩に腕を回す。
そして顔を近づける…くちびるが触れそうになる直前。
「あーーーっ。ホラ!」
いきなり空を指さす真希に、矢口はキスのタイミングを逃してしまった。
「今、見た?」
「見てねぇよ」
「なんで見てないのさ!」
キスしようとしてたから…。とは言えずに矢口はくちびるを噛む。
「なんでって…さっき、お前もそうだったろ? おいらが言った時遊んでたじゃん」
矢口も悔しいから言い返す。
「なんだよ〜。まだ一度も二人一緒に同じ流れ星見てないじゃん!」
「しらねぇよ、そんなの…」
「ホントやぐっつぁんって、ムードがないんだから!」
「なっ……」
どっちがだよ! と心の中で突っ込みながら、ムスッとして矢口も空を見上げた。
- 143 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-106- 投稿日:2003年07月14日(月)19時07分32秒
- −106−
結局、全部で幾つ流星を見たのだろうか?
きっと数えるほどだったに違いない。
ひとみと梨華は他の事に夢中で、自分たちが流れ星の如く、何度も快感の波に
流されていった。
口げんかをしつつ、案外真面目に二人でその後は空を見つめていたのは
矢口と真希だった。二人にとっては、良い想い出になった事だろう。
翌朝、眠い目を擦りながら、帰路につく四人は車内では爆睡モードだった。
ひとみ、梨華、矢口、真希の四人の旅行は、無事? 幕を閉じた。
- 144 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年07月14日(月)19時11分42秒
- 103-106話 旅行編終了。
>130 タケさん
ありがとうございます。
>131-134さん
age保全禁止です。
ochi保全等ありがとうございます。
次回から少し急展開?
- 145 名前:タケ 投稿日:2003年07月15日(火)14時20分59秒
- やった!更新来た!待ってました!
旅行編お疲れ様でした。
これからの急展開に期待
- 146 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年07月16日(水)14時55分18秒
- はじめまして。
2ヶ月ほど前にM−seekを発見してから色々と見てまして、
最初から読ませてもらいました。
なんとなくCharmy Blueさんの作品は微笑ましい文章が多くて私は好きです。
これからも頑張って執筆して下さい。
急展開期待しています。
- 147 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-107- 投稿日:2003年07月18日(金)20時18分45秒
- −107−
そして約1ヶ月が過ぎようとしていた。
季節はすっかり冬。もう冬休みも間近。
今はテスト休み中。
真希と梨華はバイトに明け暮れている。
ひとみも梨華がバイトの間は短期でバイトをしていた。
クリスマス、そして1月には梨華の誕生日が控えている。
イベント目白押しなので、それなりに資金が必要だからだ。
しかし、厄介な問題も抱えていた。
梨華の働くコンビニの近くをと思い、駅前の喫茶店でウェイターを
やっているのだが、目立つひとみは、相変わらずのモテモテ振りだった。
昼休みくらい、梨華に会えるかなと淡い期待をしたものの、おかげで
忙しく、なかなか梨華と同じ時間に休めると言う事は皆無だった。
- 148 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-107- 投稿日:2003年07月18日(金)20時20分11秒
- 「はぁ…こんな筈じゃなかったのにさぁ…」
逆に真希とは、皮肉な事にしょっちゅうこうして愚痴を零しに来ていた。
真希のいるコンビニは、ご存じの通り、梨華のコンビニと目と鼻の先。
「でも吉澤先輩のウェイター姿カッコいいですよ♪」
矢口に片想いの高橋でさえ、目を輝かせて言う。
「やめてよ〜」
ひとみは本当に嫌だと言った様子で顔を顰めた。
「まぁウェイトレスって感じじゃないしねぇ」
真希は想像してるのか、笑いながら答える。
- 149 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-107- 投稿日:2003年07月18日(金)20時22分05秒
- 「うっさいなぁ。ウェイトレスだったら私やってないってば!」
「でもいいじゃん。おかげで、あの喫茶店繁盛してるみたいだし」
「ヒマな方がいいよ、ごっちんとこみたいに…あ…」
そう言いかけてひとみは、店長のりんねがいないか店内を見回した。
「平気だよ。店長は今日来ないから…」
「吉澤先輩、たまには石川先輩の方に顔出さなくていいんですか?」
「そうだよ、いっつもこっちで油売ってさぁ…」
「だって梨華忙しそうだし、それに保田さんの目が怖いしねぇ。
何も買わないから目が厳しいんだよ」
「なんかまるで、こっちはヒマそうみたいじゃん! 実際ヒマだけど」
真希は事実だから否定しない。気楽なものだ。
「はぁ。もう時間だ。じゃぁ戻るね」
ひとみはチラリと時計を見るとせわしなく戻っていった。
ひとみの後ろ姿を見届けると真希は一言。
「よっすぃー自分でモテるって分かってないんだよなぁ…」
- 150 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-107- 投稿日:2003年07月18日(金)20時22分39秒
- 「でも、ごっちん先輩もですよ?」
「え?」
「なんでもないです…」
高橋は言わなかったが、真希もウェイター姿は似合うだろうと想像しながら
顔が緩んだ。矢口が好きだからと言って、最初に好きになった真希の事は
どうでもよくなった訳ではない。両方好きなのだから、今の高橋は、かなり
幸せではないかと自分でも思う。
「やぐっつぁん、あんまり来てくんないなぁ…」
「そうですねぇ…」
ふと寂しげに言う真希に、高橋は、どう答えて良いやら返事に困る。
そして、新たな別れが、矢口の前に一つ訪れようとしていた。
- 151 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-108- 投稿日:2003年07月18日(金)20時24分08秒
- −108−
「それって急すぎない?」
梨華は戸惑いを隠せない。
バイト中に、あゆみから少し話がしたいと珍しくバイト先を
訪ねて来たものだから、何かあるとは思っていたのだが。
梨華が転入してきた時に一番仲良くなった友達、あゆみの言葉に梨華は一瞬耳を疑った。
「急にお父さんの転勤が決まっちゃったんだ」
寂しそうに言うあゆみに、梨華は何も言えない。
梨華も勿論、寂しいのだが、それよりも松浦は…。
「亜弥ちゃんには、もう言ったの?」
「…まだ」
「で、いつ…」
「来週には引っ越すと思う」
急な話に梨華も残念に思うが何よりも松浦の事が気がかりだった。
- 152 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-108- 投稿日:2003年07月18日(金)20時26分28秒
- 「亜弥ちゃんに言わないと…」
「…うん。今日これから会うから言おうと思ってる」
「柴ちゃん一人で平気?」
「平気だよ。ありがと! 梨華ちゃん」
あゆみは笑顔で答えた。
「平気ならいいけど」
「じゃぁ、バイトの時間邪魔して悪かったね。仕事頑張って梨華ちゃん」
そう言ってあゆみは松浦の家へと向かう。
松浦に、この事を話すのは、正直気が重かったが、もう時間がなかった。
- 153 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-109- 投稿日:2003年07月18日(金)20時27分32秒
- −109−
「今、なんて言ったの?」
松浦の部屋で、あゆみは単刀直入に言った。
大きな瞳を更に大きくして、目にはうっすら涙さえ浮かんでいる。
予想通りだったが仕方ない。
あゆみは深い溜息を落としながら、更に続けた。
「亜弥ちゃん。ごめんね…」
「あゆ先輩が悪い訳じゃないですけど…急すぎるから…」
「急に決まって…私も驚いてるんだ」
あゆみの話だとクリスマス前には、もう新しい家へと越してしまうらしい。
そう、終業式が終わったら、そのまま行ってしまうらしかった。
「だって…」
松浦は唇を噛み締める。
彼女の言おうとしている事はあゆみにも分かる。
クリスマス、初詣、共に約束をしていた。
「どこに行くんですか?」
松浦の声は少し震えている。
「北海道…」
「そんな遠く……」
矢口の行く名古屋ならまだしも北海道となると、かなり遠く感じる。
頻繁に、こちらに来ると言う訳にも行かないだろう。
- 154 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-109- 投稿日:2003年07月18日(金)20時29分39秒
- それよりも、あゆみはどうしたいのか、松浦は気になった。
「メールするし電話もするから…それから手紙も」
「せっかく、あゆ先輩と仲良くなれたのに…」
正式には付き合おうとは言ってはいないが、何となくそういう雰囲気で
二人の仲は近づいていった。
しかしプラトニックな関係は変わらない。
だから、他の二組のように、カップルと言う訳でもなかった。
「ごめんね…亜弥ちゃん」
こればっかりは仕方がない。あゆみの力ではどうする事も出来ない。
一人残る事も不可能だ。何よりあゆみは独りっこだし、両親が許す筈がなかった。
しかし松浦も分かっている。納得しなくては、いけない事を。
梨華の事を諦めるのにも時間がいったが、ここであゆみを困らせる事も出来なかった。
あゆみが悪い訳ではないのだから。
- 155 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-109- 投稿日:2003年07月18日(金)20時30分15秒
- 「謝らないで下さい。あゆ先輩は悪くないんですから」
「亜弥ちゃん…」
そんな事を言われて、余計あゆみも辛くなる。
「あゆ先輩とは良い想い出たくさんあるから…」
精一杯の笑顔で松浦は答えた。
あゆみが帰った後に、松浦は独り悩んだ。
相変わらずの優等生ぶった自分に、松浦は時々自分で嫌になる。
梨華の時は、梨華を困らせたりして何とか梨華を振り向かせたかったが今回は訳が違う。
「はぁ…」
松浦は頭を抱え込んだ。
- 156 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-110- 投稿日:2003年07月18日(金)20時31分30秒
- −110−
梨華は、松浦が気になり、珍しく自分から松浦の家にバイトが終わってから
出向いて行った。今日は、ひとみは遅番で、まだ仕事をしている筈だ。
「梨華先輩…」
思わぬ訪問客に、松浦は梨華に抱きついた。
「あ、亜弥ちゃん?」
「ごめんなさい…」
ようやく落ち着いたらしい松浦は目でハンカチを押さえながら梨華に謝った。
「ぅぅん。急だったんだから亜弥ちゃんが動揺するのも仕方ないよ」
慰めに来たものの、突然泣き出した松浦に梨華も動揺した。
あの気の強い松浦が人前で泣くなんて。
- 157 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-110- 投稿日:2003年07月18日(金)20時32分23秒
- 「梨華先輩は、やっぱり優しいですね」
「そ、そりゃぁ大事な後輩だもん。亜弥ちゃんは」
「だから好きだったんですよ、梨華先輩のコト…」
過去形なのね…と思いつつ梨華は微笑む。
「あ、今でも好きです。吉澤さんには負けると思いますけどね」
えへへと松浦は笑う。
「別に気を遣わなくていいよ」
「遣ってないですよ〜。梨華先輩の時は、諦めついたんですけど…」
「柴ちゃんのコトは諦めなくてもいいんじゃない?」
それが気休めだとしても、梨華はそう思う。
「でも遠いし。あゆ先輩可愛いから、きっと新しい土地で素敵な人
見つけると思うし。それに私達、付き合ってるって訳でもなかったし…」
珍しく強気な松浦が弱気な事を言う。
- 158 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-110- 投稿日:2003年07月18日(金)20時33分38秒
- 「亜弥ちゃんも充分可愛いよ?」
ってそうじゃないでしょ! 梨華は自分で突っ込みを入れながら続ける。
「諦めなくてもいいと思うよ?」
「でも、梨華先輩は知ってますよね?」
「?」
「私、梨華先輩を追いかけて、この学園に来たんですよ?
いつも一緒じゃないと私はダメなんです。だから…」
そう言えばそうだった。
松浦は梨華を追いかけて来たのだった。
その行動力に押されっぱなしの梨華だったが、さすがに今回は北海道まで
追いかけるのは無理らしい。
「それでいいの? 亜弥ちゃんは…」
「だって、そうしないときっと、あゆ先輩も困るだろうから…」
「素直になった方がいいと思うけど…」
「素直になったら、ダメだと思うから…」
「亜弥ちゃん…」
なんだか梨華の方まで切なくなってしまう。
梨華にしたってあゆみとは仲の良い友達だったのだから遠くへ行ってしまうのは寂しい。
それなのに松浦は健気な事を言うから余計梨華は胸が締め付けられる思いだった。
- 159 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-110- 投稿日:2003年07月18日(金)20時34分19秒
- 「それより…」
松浦が言いかける。
「ん?」
「いいんですか? 吉澤さん放っておいて…。
私、吉澤さんに嫉妬されたりするの嫌ですからね」
松浦はそう言って笑う。
「あ…」
梨華は時計を見る。
ひとみのバイトの時間は、とっくに過ぎていた。
梨華は慌てて立ち上がる。
「尤も…そのくらいで、吉澤さんは嫉妬するとは思えないですけどね」
「もう亜弥ちゃんたら! ご、ごめんね」
門のところまで松浦は見送ってくれた。
「梨華先輩。ありがとう」
「うん。亜弥ちゃんも元気出してね…」
ありきたりな言葉しか見つからない。
「ありがとうございます。梨華先輩…?」
「ん?」
一瞬間が空く。
「やっぱり…好きです」
「ゃ。やだぁもう!」
真面目な顔で言われて、梨華は素で照れてしまった。
「今の顔、吉澤さんに報告しますね!」
「え?」
「嘘ですよ! おやすみなさい!」
松浦は早口で言うと手を振って、玄関へと消えていった。
「はぁ…」
やっぱり松浦には敵わないと思う梨華だった。
- 160 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-111- 投稿日:2003年07月18日(金)20時36分04秒
- −111−
―――終業式の日。
それが終わると同時に、あゆみは旅立っていった。
空港には見送りに来ないでほしいと言うあゆみの願いであゆみの家の前が最後となった。
「梨華先輩。私、カッコつけすぎですか?」
最後まで涙を見せなかった松浦は、カッコいいと梨華は思う。
「亜弥ちゃんカッコいいよ」
「そうですか。ドラマみたいに、行かないで! とか言って
泣いて抱きついたら、どうなるかなって思ったりもしたんですけど…。
あゆ先輩を困らせるだけだから。最後まで泣きませんでした」
「亜弥ちゃん大人だね…私よりも、ずっと…」
自分が、もし仮にひとみと別れるような事があったとしたら、
こんな風に冷静に見送ったり出来るのだろうか?
尤も、自分よりも、ひとみの方が心配ではあるが。
「そんなコトないです。…梨華先輩?」
「ん?」
松浦を見ると、今にも泣き出しそうだった。
「梨華先輩の肩借りてもいいですか?」
「ぅん…」
この後、松浦は思いきり梨華の肩で泣いたのだった。
- 161 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年07月18日(金)20時42分38秒
- 107-111話更新。
あやゃゴメンねあやゃ。・゜・(ノД`)・゜・。
松浦さんにとっての急展開でした。
今後は、他の人物も出して行く予定でつ。
>145 タケさん
お待たせしました。
これからは、もう少し感覚を開けずに更新したいと思ってます。
>146 ヒラッペさん
最初からですか(アセアセ;。
こんな長い話につき合っていただきありがとうございます。
。・゜・(ノД`)・゜・。 嬉しいです。
微笑ましい文章だなんて照れます。
(他の話は、果たしてどうかな?w)
これからも、おながいしまつね。
- 162 名前:タケ 投稿日:2003年07月19日(土)07時51分26秒
- 更新キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
まつしば(?)痛い・゚・(ノД`)・゚・
もうすぐ矢口さんももうすぐ・・・
次の更新も期待してますよぉ!
- 163 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年07月21日(月)00時48分49秒
- あぁ・・・柴ちゃんが引っ越しちゃうんだ。
柴ちゃんも推しの一人なんで微妙に悲しいです。
今後何かの形で柴ちゃん出てくるのでしょうか?
期待してます。
他の作品も2作品読みました。
某3角関係の小説と某熱いいしよし小説を・・・
いしよしの関係がどれも現実にありそうなんで
そんなことを考えながら見ていると面白いんで好きですよ。
次回の更新まで楽しみに待ってます。
- 164 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-112- 投稿日:2003年07月21日(月)17時32分01秒
- −112−
数日は落ち込んでいた松浦だったが、その後は、いつもと変わりなく
笑顔の絶えない松浦に戻っていた。
変わった事と言えば、頻繁に、梨華の前に現れるようになった事ぐらいだろう。
そして、今、松浦が梨華の前で手を合わせている。
別にお祈りをされている訳では、ない。
松浦から、お願いをされているのだ。しかし―――。
「いくら亜弥ちゃんの頼みでもねぇ…」
休憩時間中、松浦に呼び出されて、梨華は浮かない返事をした。
「ダメですか?」
「だって私が決める事じゃないし、それは店長の保田さんが決める事だからね」
- 165 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-112- 投稿日:2003年07月21日(月)17時32分53秒
- 「じゃ、じゃぁ私、梨華先輩が出れない時に、代わりに出るっていうのじゃ
ダメですか? その辺、保田さんに梨華先輩から口添えして貰えないでしょうか?」
「…ぅ、うん…」
松浦の目は真剣。
要は、自分も、梨華と同じ場所で働きたいと言う事だった。
「一応、保田さんには言ってみるけど…。でも、直接言った方がいいと思うよ」
しかし、その必要は、なくなった。
「そんなところで私の噂話ぃ?」
「や、保田さん!」
ビクッとして梨華は振り返る。
「す、すいません。もう戻りますから…」
保田の目がキラリと光る。
- 166 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-112- 投稿日:2003年07月21日(月)17時34分54秒
- 「松浦だっけ。最近頻繁に来ると思ったら…。直接私に言えっつぅの!」
保田の目が更にギラリと光る。
「で、でもバイト募集してないみたいですし…」
松浦は二、三歩後ずさりするかと思えば、逆に保田に寄って行った。
この辺が、他の子達と違うところである。
「石川の可愛い後輩って言うなら話は別」
「はい」
鼻がくっつく程に、大接近の二人。
梨華は固唾を呑んで見守っている。
「但し、仕事だから甘えは許さないわよ。覚悟はいい?」
「はいっ」
松浦は頷いた。
- 167 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-113- 投稿日:2003年07月21日(月)17時36分09秒
- −113−
「それで簡単に決まっちゃった訳ぇ?」
その話を、夜梨華から聞いて、ひとみは納得出来ないと言った声を漏らした。
「事情が事情だから…」
「事情って私だって、梨華との事情があるって言うのに!」
ひとみもダメもとで、保田に交渉したが、敢えなく却下されている。
事情と言うのは、北海道資金を貯める為である。
「亜弥ちゃん中三だし、保田さんは中澤先生と親しいから、その辺は暗黙の了解も
あるみたい。他だと雇ってもらえないだろうしね」
バイトは特別な事情がない限り原則として認めていないのは変わっていない。
勿論、殆どが暗黙の了解で通っているのだが。
「愛ちゃんなんか、歳誤魔化してるってぇのに!」
いつの間にか話が別の方向へ行っている。
今頃高橋は、くしゃみをしている事だろう。
- 168 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-113- 投稿日:2003年07月21日(月)17時36分51秒
- 「ひとみちゃん?」
「私だって梨華と一緒に働きたいよ? 大体さ、あと少しでクリスマスって
言うのに、仕事になっちゃったし!」
これには、ひとみは納得がいかない。
何の為のバイトだと思っているのか?
梨華とクリスマスを過ごす為なのに、その日までバイトでは意味がない。
しかし
「ひとみちゃん。だから私も仕事にしたんだよ?」
「もぅ! 折角の休みなのに、二人して仕事って哀しすぎるよ」
「その分、夕方から一緒に居られるよ? だからひとみちゃん怒らないで」
梨華は、ひとみを宥める。
「ま、まぁ梨華がそう言うなら…」
まだひとみは何か言いたそうだったが、梨華に言われてこれ以上言うのを止めた。
- 169 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-114- 投稿日:2003年07月21日(月)17時39分21秒
- −114−
そして、ここにもまた、同じように矢口の部屋で不満の声を漏らす者がいた。
「仕方ねぇだろ。色々手続きとか、あんだから!」
矢口は乱暴に鞄に物を押し込めながら、真希と、いつものように口げんか。
急に決まった矢口の名古屋行き。
それを今、聞いた真希は、当然むくれる訳で。
「仕方ないって、急すぎるっちゅうの!」
真希は真希で矢口の支度の邪魔をする。
「しょうがないじゃん。呼ばれちゃったんだから」
「何も寄りによって、クリスマスじゃなくたっていいじゃんか!」
「おいらに言うなよ」
矢口はムッとしながら、真希の手を払いのけ手を休めない。
「いっつもそうじゃん」
真希は諦めると、ベッドに乱暴に腰掛け足を組む。
「遊びに行く訳じゃないんだから…」
「そうだけど…」
それは分かっていても、なぜだか腹が立ってくる。
真希は矢口の背中に突如蹴りを入れた。
当然、前のめりに矢口は倒れる。
「っつ…っ。八つ当たりすんなよ!」
矢口は振り向いて真希を睨みながら背中をさすった。
- 170 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-114- 投稿日:2003年07月21日(月)17時40分12秒
- 「一言、一緒に行くか? とか言えない訳ぇ?」
どうやら誘ってくれない事に腹を立てているらしい。
尚、懲りずに足の指で矢口の背中をグイグイと押しつける。
「だから遊びじゃないんだって!」
「一日中用事してる訳じゃないでしょ?」
「そりゃ、そうだけど…」
「夜はヒマでしょ?」
「ま、まぁな…」
「やっぱり私がいないと寂しいよね…?」
「…そ、そぅ…だ…ょな」
真希の目が段々怖くなって行くのが分かるので、とても寂しくないとは
矢口は言えず、小さく納得した。
「も〜、やぐっつぁんってば、やっぱり寂しがり屋だなぁ…」
真希は後ろから思い切り羽交い締めするように矢口に抱きついた。
「…(ぐ、ぐるじぃ…)!!」
- 171 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-115- 投稿日:2003年07月21日(月)17時41分44秒
- −115−
商談成立。
真希は打って変わって上機嫌。
矢口は涙目になりながら支度を終え、ベッドに寝そべっていた。
「でもお前、バイトは?」
「そんなの前から、その日は休みだよ。決まってんじゃん」
「そうか。ならいいけど。翌日は?」
「愛ちゃんが、何とかしてくれるっしょ」
至って呑気である。
「お前…。押しつけかよ。高橋も可哀相になぁ…」
良いように使われている高橋も不憫である。
「愛ちゃんの味方?」
真希が詰め寄る。
「まさか」
今、矢口の尤も怖いモノは、真希の嫉妬・怒りである。
矢口は思いきり頭を振った。
「ん。よろしい」
真希のくちびるが矢口のソレと重なる。
- 172 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-115- 投稿日:2003年07月21日(月)17時42分23秒
- 「浮気は許さないんだから…」
「するかよ」
「当てにならない…」
「ちぇっ…。もう寝るぞ。疲れた…」
矢口はそう言うと真希に背中を向けた。
すぐさま、真希に肩を掴まれ向き合う形になる。
「疲れたって?」
「?」
嫌な予感。
「何もしてないのに…」
「だ、だって…昨日したじゃん…!」
矢口は声を潜めて焦りながら呟く。
「そんなの関係ない」
「へ?」
矢口は微妙な笑みを浮かべる。
「今夜も、しよ♪」
真希はニッコリと微笑んだ。
- 173 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-116- 投稿日:2003年07月21日(月)17時44分01秒
- −116−
そして、ひとみもまた、梨華の家にお泊まりである。
散々不満を言っても、やはり梨華と一緒に居られれば幸せな訳で
ひとみは休み期間中、殆ど梨華の家で夜は過ごしていた。
「ひとみ…ちゃん…」
ひとみは旅行の延長戦のように、梨華に甘えるようになった。
初夜の初々しい二人は、どこへやらである。
「梨華…」
指を一本一本絡めて、汗ばんだ身体をベッドに横たわらせる。
一戦交えた後の、何ともけだるい、まったりした時間が至極幸せに感じる。
「ハァッ…」
二人は重なったまま、肩で息をしていた。
「梨華…。愛してる…」
ひとみと関係を持ってから、二人の仲は、更に深まった感じがする。
愛情も何もかも。
ひとみは優しく囁くと、梨華にキスを落とした。
梨華は幸せを噛み締めつつ、一方で自分だけ幸せでいいのかとも感じていた。
- 174 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-116- 投稿日:2003年07月21日(月)17時44分52秒
- 真希にしても松浦にしても高橋にしても、遠距離恋愛になったり、片想いだったりと
弊害が多い中、自分一人は、ひとみと…。
そう思うと、梨華は申し訳ない気持ちになる。
それをひとみに言うと、ひとみは笑うだけだ。
「幸せでいいんだよ。そんなの梨華が気にする事じゃない。これは運命なんだから。
梨華は、これからもずっと私の傍にいてくれるよね?」
「うん」
小さく頷くと、また、ひとみはキスをしてくれた。
ひとみに不満はない。
ないけれど、一つ困った事がある。それは―――。
「梨華。もう一回しよ?」
「……ぅん」
子供のように無邪気な笑顔を向けられると、疲れていても梨華は頷いてしまう。
ひとみちゃん。本当はね…もぅひとみちゃんの腕の中で寝たいの。
結局、この一言が言えずに、もう一回愛し合うと、梨華の疲労は次の日まで
残ってしまう訳で、それでも、ひとみは翌朝には、爽やかな笑顔で自分を迎えて
くれる。ひとみには疲労と言う言葉は、ないのかと梨華は思ってしまう程だった。
- 175 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年07月21日(月)17時50分55秒
- 112-116話更新。
やっとクリスマスの話に…。
えぇとストックがないので、また書きためたら更新します。
>162 タケさん
ヤグも3月で旅立つ予定です。
私も、ここの高橋は好きです。
>163 ヒラッペさん
柴ちゃんとあやゃ…。元々脇役だったんですが
最後なので、あと1回くらいは出て来るかもしれないです。
分からないですが。
他のも読まれましたか。ありがとうございます。
現実にあったら…嬉しいですがw。
では、次回・季節はずれのクリスマスイブ編で。
- 176 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年07月22日(火)00時43分01秒
- 次回はクリスマスですかぁ・・・。
エンディングにはいったい何が待っているのか・・・。
今から考え出したらキリ無いんですけど考えちゃいます。
(終って欲しくないのが本音ですけど・・・)
では、次回の熱〜いクリスマス編楽しみにしてます。
- 177 名前:タケ 投稿日:2003年07月22日(火)10時14分16秒
- 喧嘩が絶えない「やぐごま」(・∀・)イイ!!
クリスマス・イブ編では何が起こるのか期待してますよ〜♪
- 178 名前:マイキ− 投稿日:2003年07月22日(火)12時02分24秒
- 初めまして!ここまだ続いてたんですか!?
嬉しいです♪(^◇^〜)
おいら、この4人大好きなんですよ☆
(このカップリングも^^)
続き楽しみに待ってます☆★☆
- 179 名前:銀くらいで書いてる人 投稿日:2003年07月22日(火)14時22分27秒
- クリスマスかぁ〜。何が待ってるのかなぁ
楽しみです。あと、上がってたので落としときますね
がんばってください!!
- 180 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-117- 投稿日:2003年07月23日(水)18時38分18秒
- −117−
クリスマス・イブ。
朝から、ひとみも梨華も忙しく働いている。
「いらっしゃいませ♪」
ひとみの営業スマイルも板についてきた。
この笑顔を求めて来る客も少なくない。
紺野も、その中の一人だった。
「紺野…」
「また来ちゃいました。吉澤先輩♪」
コーヒーは飲めないから、いつも紅茶を頼んで一杯飲んでは帰って行く不思議な後輩。
先輩として、紺野の財布が気になってしまう。
せめてイブの日くらいは、来なくてもいいのに。とひとみは思うが
今日は一人ではなかった。
- 181 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-117- 投稿日:2003年07月23日(水)18時39分29秒
- 「まこっちゃんも連れて来ましたよ〜」
小川は軽く会釈をし席に座る。
「吉澤先輩、ブ、ブラックで!」
「え?」
ひとみは耳を疑う。
小川がブラックと言うイメージじゃなかったからだ。
「嘘です。私も、紺ちゃんと同じくミルクティで…」
「なんだ…」
「言ってみたかったんだよ」
ひとみがオーダーを取ると、小さな声で小川が紺野に言っているのが聞こえた。
紺野に誘われて、やっと来れたのがたまたま今日だった訳で深い意味はないらしい。
「なかなか洒落た店だよね…」
落ち着いた内装で、どちらかと言えば大人向き。
しかし入っている客層は、若い女性が多いような気がするのは気のせいだろうか。
「吉澤先輩が、この店の救済でバイト始めたんだって」
どこから、そんな話になったのか、そんな事はないのだが、実際
余り客が入らなかったこの店も、ひとみのお陰で、まずまずの入りとはなっていた。
- 182 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-117- 投稿日:2003年07月23日(水)18時40分31秒
- 「紺ちゃん、相変わらず吉澤先輩ラブなんだ…」
「ぅん。ま、まぁね…」
今でも紺野は、ひとみと一緒に撮ったプリクラを大事に持ち歩いている。
完全な片想いでも良いらしい。つまり、ひとみは紺野にとってのアイドル的存在。
「まこっちゃんは?」
「私は…」
言いかけて口を噤む。
「ん? 最近あんまり、そういう話してなかったよね」
「私は矢口部長が…いいかな」
「え?」
紺野は意外と言ったふうに顔を上げた。
「あぁ、後藤先輩も好きだけど…ね」
そう言って小川は外に顔を向ける。
「それじゃぁ高橋先輩と同じじゃん」
「そういう紺ちゃんだって同じじゃん」
小川は言い返す。高橋の存在が少しだけ疎ましいからだ。
- 183 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-117- 投稿日:2003年07月23日(水)18時41分21秒
- 「私はいいの! 吉澤先輩を見ていられるだけで」
「まこっちゃんは?」
「私なんか相手にされてないからね」
勿論、小川は矢口と高橋の図書館での事を真希に匿名で告げ口をすると
言った卑怯なやり方をしてしまった手前、二人には余り近づく事はなかった。
結局、この話を知っているのは矢口のみ。
矢口にも真希にも迷惑かけたと感じている小川は、これと言った行動は
取れずにいた。
「まこっちゃん私より行動派だったのにね」
物怖じする紺野とは対照的に小川は思った事は口に出して
ハッキリ言うタイプだ。それでも紺野も以前と比べたらかなりハッキリと
物は言うようになっていた。
紺野は不思議そうに小川を見つめた。
「もうこの話は止めよう」
小川はそう言ってカップに目を落とした。
- 184 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-118- 投稿日:2003年07月23日(水)18時42分55秒
- −118−
「いらっしゃいませ」
「いよぉぉ〜」
入り口から聞き慣れた声がして、小川と紺野は一斉に振り返る。
「噂をすれば…だね」
紺野は小川に目配せをする。
今噂をしていた二人が入ってきた。
「吉澤、ちゃんとやってんじゃん」
「あったりまえじゃないっすか! っていうか別に来なくても…」
「なんだよ来てほしくないみたいな言い方じゃん」
背後から矢口、ひとみ、真希のやりとりが聞こえてくる。
「いっつも賑やかだよねぇ」
そんな光景を嬉しそうに見つめる紺野。
「もう出ようか…」
小川は何となくバツが悪くなり伝票を掴みながら席を立とうとする。
「え? まだ来たばかりだよ?」
席を立った事で却って目立ってしまい小川は矢口と目が合ってしまった。
- 185 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-118- 投稿日:2003年07月23日(水)18時43分52秒
- 「おぅ。お前らもきてたんだ」
そう言いながら、小川紺野の方に近づいていく。
「「矢口部長」」
「ここいいかな…」
そう言って矢口は紺野の隣に腰を降ろす。
店内は思いの外いつのまにか混んでいた。
「なんか待ってまでってほどじゃないしな。丁度空いてるし。
ごっつぁ〜ん! こっち!」
矢口は振り返りながら手招きをする。
小川は渋々座り直した。
まさにタイミングが悪いとは、この事である。
「おお、小川ちゃんも久ぶりだねぇ」
真希は片手をあげると小川の肩を叩き、隣に座った。
「は、はい」
「矢口部長、聞いてくださいよ。まこっちゃん、矢口部長達がきた途端
帰ろうなんて言うんですよ」
「紺ちゃん!」
全く紺野は余計な事を言うと、小川は焦りながら声を大きくした。
- 186 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-118- 投稿日:2003年07月23日(水)18時44分59秒
- 「そんな事ないですよ。たまたま」
「ふぅん…」
一瞬矢口の目が光ったような気がしたが、気のせいだろうか。
小川はなるべく矢口を見ないよう、またカップに目を落とした。
「もしかして、小川ちゃん私たちが嫌いとか?」
真希も余計な事を言うから、小川はギョッとした顔で横を向いた。
「そ、そ、そんな訳ないじゃないですか!! 好きですよ! 大好きです!」
ムキになって答える小川に真希は圧倒されたようだ。
「別に本気で言ってないから。マジだったら凹むしねぇ。やぐっつぁん?」
「あ、あぁ…」
矢口は小川の様子が気になるのか、じっと小川を見ている。
「ちょ、ちょっとトイレ行ってきますね」
イヤな汗が流れ始め、小川は席を外した。
- 187 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-119- 投稿日:2003年07月23日(水)18時46分12秒
- −119−
ドアを開け、ホッとする小川。
そして大きなため息。
深呼吸をすると小川は手を洗い始めた。
そこへ当然のように矢口が入ってくる。
鏡越しで、二人の視線はぶつかった。
「小川、お前どうかしたのか?」
心配そうな視線が届く。
「あ、あのぅ、なんでもないです。たまたま紺ちゃんと二人の話してたら
丁度二人が来られたからびっくりしただけで…」
「もしかして…まだ、あの事気にしてんのか?」
矢口は小川の目をじっと見据えた。
矢口の瞳に見つめられ、小川は視線がはずせなくなる。
頷く小川。
「もう済んだ事だし、忘れろよ。後藤だってきっと忘れてる筈」
「忘れる訳ないじゃないですか」
「だったら、最初からするなよ」
尤もな話である。
小川は項垂れながら下を向いた。
- 188 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-119- 投稿日:2003年07月23日(水)18時47分05秒
- 「おいらはもう忘れてる。そんな顔されてる方がイヤだな」
「すみません…」
あれ以来、小川が変に出しゃばって来ない事は矢口も気づいていたが。
「小川、お前ダンス部頼んだからな」
「え?」
「お前のダンスはキレがある。将来的には部長候補でもいいと思ってるんだ。
まだ先だけどな。まぁその頃には、おいらはとっくにいない訳だけど」
「でも…」
「そんな泣きそうな顔するなよ。本来の小川に戻って欲しいな。
その方がお前らしいし、おいらは好きだぞ」
そう言って矢口は笑う。
「矢口部長…」
やっぱり矢口の事が好きだと小川は実感する。
「そんな情けない顔すんなよ。お前らしく行けばいいさ。
なんてカッコつけすぎか」
キャハハと矢口は笑うと小川の肩を叩いた。
- 189 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-119- 投稿日:2003年07月23日(水)18時47分48秒
- 「早く戻れよ。後藤と紺野に怪しまれるからな」
「はい。矢口部長…」
「よ〜し。今後は、この話は無しだからな」
矢口は蛇口をひねり、手を洗い始める。
「承知しました」
「堅いんだよ小川は…」
「矢口部長…」
「ん…?」
「やっぱり…大好きです!」
「え?」
そう言った時には、小川はドアの外へと消えていた。
「おいらってモテんの?」
矢口は鏡の自分に自問していた。
- 190 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-120- 投稿日:2003年07月23日(水)18時49分08秒
- −120−
その後の小川は吹っ切れたのか、上機嫌にしゃべっていた。
矢口は内心ほっとする。
せっかくのイブなんだから、小川にも楽しく過ごして欲しかった。
紺野と小川。なかなか良い組み合わせだと矢口は思っているが…。
「お前ら仲良いよな。いっそ付きあっちゃえば?」
半分冗談、半分本気で矢口は言ってしまう。
「「はぁ??」」
二人は口を開けながら、同時に叫ぶ。
変なところでは息がぴったりだ。
心外と言った顔で二人はお互いの顔を見つめるが、真希も同意の様子。
- 191 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-120- 投稿日:2003年07月23日(水)18時49分56秒
- 「そうだよねぇ。なかなか似合うかもしれないよ?」
ニヤニヤしながら真希も賛成する。
「後藤先輩、他人事だと思って! 大体、紺ちゃんは吉澤先輩が好きなんですよ?」
「そうですよ。まこっちゃんだって、さっき…」
「あ〜〜〜〜っ!!!」
小川は真っ赤になりながら慌てて紺野を遮る。
「なになに?」
興味津々で真希は身を乗り出す。
「紺ちゃん、口が軽いよ!」
「まこっちゃんだって、そうじゃん」
いつの間にか口げんか。
「まぁまぁ喧嘩するほど仲が良いって言うじゃん」
「私、吉澤先輩は好きって言うか、憧れてるだけです!
それだけです!!」
「別にムキになるなよ」
「お待たせ〜」
そこへひとみがコーヒーを持ってやってくる。
「賑やかそうでいいね」
ひとみはニコニコしている。
紺野は、そんなひとみを見て喧嘩は中断し見とれていた。
- 192 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-120- 投稿日:2003年07月23日(水)18時50分59秒
- 「ね、こんな調子だから…」
小川は苦笑いしながら、すっかり冷めた紅茶に口をつける。
「まぁ憧れと付きあうのは意味が違うからな」
「あくまでも矢口部長は私と紺ちゃんをくっつけたがってるんですね」
「別にそういう訳じゃないよ。誤解するなよ」
焦りながら矢口は弁解する。
「でも、仲良いじゃない。二人は」
真希は気にとめるでもなく、のんびりと言う。
「それ言ったら…」
そう言いかけて小川は止めた。
高橋の名前は敢えて出さなくても良いだろう。
「付きあってから初めて良さがわかる事だってあるんだから」
「ずいぶんわかったような事言うんだね、やぐっつぁん」
早速真希からつっこみが入る。
「そういう訳じゃないけどね」
「そんな簡単に言わないで下さいよ」
そんな会話が暫く続き、やっと別の話になった頃、先に小川と紺野は店を出た。
- 193 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-121- 投稿日:2003年07月23日(水)18時51分52秒
- −121−
「全く、矢口部長には参っちゃうよね…」
そう言って紺野は笑おうとしたが、小川は黙って紺野を見ていた。
「まこっちゃん?」
「…ああ」
「どうかした?」
暫く歩いて紺野は心配そうに顔色を窺うように小川に訪ねた。
さっきから口数が妙に少ない。
喫茶店で余計な事を言い過ぎたかなと紺野は早くも反省モードだ。
「ねぇ…」
「はい!」
ボーッとしていた紺野は小川に呼ばれて勢いよく返事をしてしまう。
それを見て小川は吹き出す。
「な、なに?」
「さっき矢口部長が言った話だけど…」
「うん…」
「付き合ってみよっか?」
小川は、紺野の目を見て言った。
- 194 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年07月23日(水)18時59分03秒
- 117-121話 おがこんメイン更新。
次は、少しいしよし有り。
>176 ヒラッペさん
>エンディングにはいったい何が待っているのか・・・。
あ、あっさりと終わります。たぶん。
と言うか、もう殆ど分かってるとは思いますが…。
矢口の卒業でENDになります。
その後は、スレ残っていれば番外編で、その後の話でも
書ければと。スレ残らなければ自分のサイトで時間があれば。
と早くも終わった後の話・・・w。
>177 タケさん
おがこんも少し口喧嘩。
イブ編引っ張る訳ではないんですが季節感ないので
イメージが沸きませんね。
>178 マイキ−さん
>初めまして!ここまだ続いてたんですか!?
初めまして。まだって(爆)。えぇまだ続いております。
本当だったら予定では、とっくに完結してる筈なのですが。・゜・(ノД`)・゜・。
いしよし&やぐごま好きですか。嬉しいです。
ここの、やぐごま自分も大好きです。
>179 銀くらいで書いてる人さん
落としてくださってありがとうございます。
銀では、何をお書きになってるのでしょう?
最近、殆ど読まないでの差し支えなければ教えて下さい。m(_ _)m
- 195 名前:チップ 投稿日:2003年07月23日(水)21時33分15秒
- わぁ色んなコトが起こってる…柴ちゃん・゜・(ノД`)・゜・
思わず前の番外編を読み返しました。ついでに紺野さんも読み返し
「恋しちゃ」の歴史を感じました(w マコかわいいなぁ(ww
続きも楽しみにしてます。
- 196 名前:マイキ− 投稿日:2003年07月23日(水)21時35分43秒
- 更新が早いので嬉しいです♪♪♪
マコっちゃんと紺ちゃんが!?
意外や意外☆どうなっちゃうのでしょ??
でも、みんな気になるケド、やぐごまが1番気になります!!
あんま終わらせてほしくないのですが…
ココ終わってまったら、その後みたいので
番外編はあるんですか?というか希望します!
- 197 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月23日(水)21時43分14秒
- 落とし。
- 198 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年07月23日(水)22時41分02秒
- 更新お疲れ様です。
あっさりと終っちゃうんですか・・・
ねっとりとしたので終って欲しいんですが・・・(笑)
と一応希望をしておきます。
おが紺っていうのもなかなか良いかも知れませんね。
いしよし&やぐごまのネットリとしたクリスマスシーンに期待しつつ
次回の更新を待つことにします。
- 199 名前:タケ 投稿日:2003年07月24日(木)09時25分43秒
- おぉ、おがこん。
小川の言葉はどういう意味なのか?(まんまの意味か?)
あ〜でも矢口さんは優しいなぁ・・・
>「おいらってモテんの?」
モテるのに気付いてない矢口さんが好きです(爆)
- 200 名前:銀くらいで書いてる人 投稿日:2003年07月24日(木)14時42分09秒
- いちおう、いしよし書いてるんですけどここと
作品の感じ違いすぎなんで伏せさせてください。
これからも応援してます。わがままですいません。
- 201 名前:マイキ− 投稿日:2003年07月27日(日)15時30分15秒
- 2回も書いてすいません。ココの作者さんは
他の板でも何か書いてますか??
もし書いてたら、その作品の板と作品名を
教えて下さい。
- 202 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月27日(日)15時55分02秒
- ageちゃだめだよ。
- 203 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-122- 投稿日:2003年07月31日(木)19時03分37秒
- −122−
忙しい合間を縫って、ひとみは、やっと休憩が貰えると
いそいそと梨華のいるバイト先へと足を向けた。
「やっぱり梨華が一番可愛い…」
松浦が入って数日が経ち、このコンビニの顔にもなったような松浦だったが
いくら松浦が可愛くても、やはり、ひとみには梨華が一番輝いて見える。
(贔屓目が十二分もあるが)
「「いらっしゃいませ♪」」
自動ドアが開くと同時に、二人の声が心地よくハモる。
「ひとみちゃん…」
「吉澤さん…」
「松浦さんも板に付いて来た感じだねぇ」
「そんな事ないですよ。吉澤さんはいつもカッコいいですね」
謙遜して松浦は言うが、実際松浦は飲み込みが早くすぐに仕事内容も
覚えて、人一倍働いていた。これには店長の保田も大助かりだった。
「亜弥ちゃん物覚え良いから、私も助かってるんだ」
梨華も満更でもない様子。
「さすが、梨華の後輩だね」
「総ては、あゆ先輩に会う為ですから」
ハッキリと言う松浦は逆に見ている方が清々しいくらいだ。
あゆみが旅立ってからも、松浦とはメールや電話で続いているらしい。
いわば遠距離恋愛のようなもの。そう言うと本人は否定するが
- 204 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-122- 投稿日:2003年07月31日(木)19時05分28秒
- 似たようなものである。
「目標があって働くってのは良い事だよね。うんうん」
ひとみも大袈裟気味に頷く。
そこへ背後から保田の声が響いた。
「吉澤。あんた油売ってないで、何か買うか仕事戻るか
どちらかに、しなさいよ!」
相変わらず保田の口調はきつい。
「今、私は休憩中なんですけど」
「石川と松浦は勤務中なの!」
「………」
ごもっともであるので、ひとみは黙っている。
「と言いたいとこだけど、まぁいいわ。石川、ちょっとだけならいいわよ」
珍しく保田は梨華に休憩を与えてくれた。
梨華は保田にお辞儀をするとひとみと裏に入っていった。
梨華から差し入れのジュースを受け取る。
「たまには良いトコあるね、保田さん」
「保田さんは良い人だよ。お世話になりっぱなし」
「そだね…」
ひとみは梨華を見ながらニヤニヤしている。
「どうしたの?」
ひとみはジュースを置くと、梨華の方を向いた。
「仕事終わったらどこか出かける?」
この後の事は、特に何も決めてはいなかった。
- 205 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-122- 投稿日:2003年07月31日(木)19時06分14秒
- 休みに入ってから殆ど一緒に過ごしている二人は
クリスマス・イブだからと言って特にコレと言った事がある訳でもない。
「去年は梨華の部屋で過ごしたよね」
「うん」
「今年はどうしよう? 梨華行きたいとこある?」
「私はどこでも。ひとみちゃんと一緒なら、どこだっていいし。
去年と同じく二人でのんびりとしたっていいんじゃない?」
どうせ外に出れば、人。人。人で混んでいるに決まっている。
だったら、何も疲れる為に出て行く事はない。
確かにイルミネーションやら気分的には盛り上がるかもしれないが
梨華は、それよりも、ひとみと一緒に居る事の方が大事だった。
「そうだね。でも連れて行きたいところがあるんだ」
初耳である。
そんな話、今までしてなかった。
もし、ひとみが黙って話を進めていたのなら別だが。
「どこ?」
「まだ内緒…」
ひとみはニコニコしながら人差し指を唇に当てた。
- 206 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-123- 投稿日:2003年07月31日(木)19時07分39秒
- −123−
紺野は、言った意味が暫く理解出来ないのか動きが止まっていた。
「あのぅ…黙ってられても困るんですけど…」
小川は紺野の目の前で、手を数回振ってみる。
「あ…」
紺野は小川の手を凝視した。
「"あ"って…。紺ちゃん人の話聞いてる?」
「ぅ、ぅん。聞いてるよ。空耳かと思ったからさ」
「空耳…」
せっかく告白したのに、それが答えなのかと小川はガッカリだ。
「びっくりしたから。だってまこっちゃん、そんな素振りなかったし」
「私、紺ちゃんの事嫌いじゃないし…」
「矢口部長に言われたから?」
まだ不審そうな目で窺う紺野に小川は見つめ返した。
- 207 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-123- 投稿日:2003年07月31日(木)19時08分20秒
- 「それもちょこっとは、あるけど、でもぉー、紺ちゃんの事は放っておけないしね」
何とも歯切れの悪い告白だ。
「私は別にいいよ? まこっちゃんの事好きだし」
「おぉぉ…」
小川は素直に喜ぶ。
「でもぉー…」
「んあ」
「吉澤先輩も好きだから」
「分かってるよ。私だって、矢口部長好きだもん」
「はぁ…。なんか良く分かんないけど、まぁいいか…」
「そだね」
「取りあえず握手でも、しよっか」
「うん」
本当に良く分からないまま、二人の交際は無事イブにスタート!? した。
- 208 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-124- 投稿日:2003年07月31日(木)19時09分02秒
- −124−
今日ばかりは早めに上がらせてもらって…と言うよりは今日は元々は
休みだったのだから早いと言う訳でもない。
ひとみは元気良く挨拶すると店を出て、そのまま梨華を迎えに行く。
店内に入ると松浦の声が明るく響いた。
「あ。お疲れ」
「これから梨華先輩と熱いイブを過ごすんですね。羨ましいなぁ…」
松浦は自分の事のように微笑みながら奥にいる梨華にも目配せした。
「そ、それは…」
そう言いながらひとみも満更でもない。
手にはクリスマスケーキを抱えている。
- 209 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-124- 投稿日:2003年07月31日(木)19時09分34秒
- 「私も時期ずれますけど、会いに行きますからね」
笑顔で松浦も返す。
「うん」
「梨華先輩に何あげるんですか?」
「え〜と、それは内緒だよ」
ひとみは赤くなりながらも答えなかった。
だって、これは、まだ梨華にも内緒にしているから。
「二人だけの秘密ですね」
「ぅ、ぅん。ま、まぁね」
ひとみは照れて頭を掻く。
そんなやりとりの中、梨華が着替えを済ませて出てきた。
「どうしたの?」
ニコニコ、ニヤニヤしている二人を交互に梨華は見つめていた。
- 210 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-125- 投稿日:2003年07月31日(木)19時10分33秒
- −125−
そのまま、小川と紺野は賑わう街の中へと溶け込んでいく。
さっきから黙って連いてくる紺野に、小川は手を出した。
「また握手?」
不思議そうな顔で小川を見つめる。
「紺ちゃん、それ素?」
小川は苦笑いするともう片方の手で紺野の手を引き寄せた。
「手でも繋ごうか…」
軽く小川は照れ笑い。
そう言う事か。
コクンと頷く紺野。
「迷子になると困るからね〜。紺ちゃん方向音痴だし…」
一言余計だよ。と思いながらも、少し温かい小川の手は心地よかった。
- 211 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-126- 投稿日:2003年07月31日(木)19時11分50秒
- −126−
「今年も無事梨華と過ごせて良かったよ。乾杯!」
二つのグラスが重なると、シャンパンでお祝いをする。
ささやかな二人だけのクリスマス・イブ。
小さな幸せを噛み締めていた。
「今年は、こんなので悪いけど…」
食事も終わり、ひとみは、いきなり差し出す。
そう言ってひとみはマフラーをプレゼントした。
今年からプレゼントは無しにしようと決めた筈なのに梨華は戸惑う。
「ひとみちゃん?」
「あ、これはね。ほんの気持ち。だから感謝の心。
クリスマスプレゼントとか思わなくていいから」
「でも…」
そう思ったから梨華は特に何も用意はしていなかった。
少しばかり悔やむ。
「梨華がいてくれればいいんだ」
ひとみは満足そうに微笑む。
- 212 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-126- 投稿日:2003年07月31日(木)19時12分33秒
- 「ありがとう…」
「これわざと長いのにしたんだ。二人で巻けるようにさ」
ひとみは手に取ると広げて自分と梨華の首にかけてみる。
それでもまだ余るほどの長さだった。
「ごめんね…」
「そのかわり…」
「うん」
「梨華のキスが欲しいなぁ…」
「…!!」
マフラーに巻かれたまま、梨華はひとみを見つめる。
にっこり笑うひとみの顔とぶつかった。
いつも普通に交わしているキスでも改めて言われるとキスするのも躊躇われてしまう。
ひとみは、そっと目を閉じる。
長い睫毛が二、三揺れている。梨華も目を閉じてひとみのくちびるに重ね合わせた。
- 213 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年07月31日(木)19時15分21秒
- 122-126話更新。
イブはまだ終わらない…。次はおがこん。やぐごま。
>195 チップさん
お久しぶりです。
読み返されると微妙に話が食い違ってるかもしれません(汗)。
>196 マイキ−さん
更新あまり早くなくてすみません。前よりは早くなったかな。
おがこん好きなので、最後の最後で組み合わせてみたり。
えぇと上げないで欲しいのですが。お願いします。
sageかochiで。ワガママですみません。
以前は書いてましたが飼育は、今はここだけです。
自分のサイトでひっそりと他の連載ものは書いてます。
飼育ですと倉庫に5作品くらいはある…かな?
>197&202 名無しさん
落としていただいてありがとうございます。
>198 ヒラッペさん
ねっとりですか!w。あまり引っ張るとスレがまた足りなくなるので
このまま、あまり問題なく終焉に向かう予定です。
一応ねっとりは避ける予定です。
>199 タケさん
まんまの意味でした。何のひねりもなくてすみません。
ここの矢口はあくまでも優しく良い先輩なんで。
>200 銀くらいで書いてる人さん
詮索してすみません。でも分かりましたので。
頑張って下さいね。今度一気に読みに行きます。
- 214 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年08月03日(日)16時42分31秒
- 更新お疲れ様です。
あっけなく終るんですか・・・
残念な気もしますが期待してます。
でわ、次回更新楽しみにしてますね。
- 215 名前:マイキ− 投稿日:2003年08月03日(日)17時57分38秒
- いやはや…何か余計な事、聞いてしまってすいませんねぇ^^;
更新お疲れ様でございます!
更新が早いのでスゴク嬉しいですよぉ♪
それに誕生日に見れたなんて最高です☆★☆
いしよしも気になるケド、やぐごまも気になりますわぃ!
次回の更新も期待してまーす!!!!!
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月03日(日)18時00分19秒
- だからageちゃダメ。おとしときます。
- 217 名前:名無しアゴン 投稿日:2003年08月03日(日)20時28分10秒
- >215 マイキーさん
age、sage、ochi、って、分かります?
書き込み欄の右横に、age,sage,ochiのボタンが有るでしょ
そこの、sageかochiにチェックを入れて書き込んでね。
- 218 名前:マイキ− 投稿日:2003年08月04日(月)18時15分34秒
- ごめんなさい!わかりません…!!
よくわからんけど、sageにしときました!
- 219 名前:名無しアゴン 投稿日:2003年08月04日(月)20時23分41秒
- はい! 良く出来ました。
これからはそれで宜しく。
- 220 名前:マイキ− 投稿日:2003年08月05日(火)13時32分19秒
- 名無しアゴンさん、教えてくれて有難うございます。
作者さん、いろいろ無駄にしてスイマセン!頑張って下さい^^
- 221 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-127- 投稿日:2003年08月06日(水)21時23分27秒
- −127−
小川に手を引かれながら連れて来られた場所はカラオケ。
「ごめんね。クリスマスの日までカラオケってのもなんかねぇ」
そう言いながら、やっと順番待ちで入ったカラオケボックスに二人は
腰を落ち着ける。
「まこっちゃん、歌歌うの?」
「は? 紺ちゃん…。何のために入ったのさ?」
小川は笑いながら答える。
「そ、そうだけど…」
紺野の方が逆に意識をしてしまって、なかなかいつものような感じで
話せない。ちぐはぐな事ばかり言ってしまう。それはいつもと変わらない気がする。
紺野は出されたおしぼりを、オヤジのように顔で拭った。
「紺ちゃんさぁ…」
「うん?」
「いつもと変わらなくていいんだよ。別にさっきの事気にしなくていいから」
気にしなくていいと言われても気にするだろう普通は。
- 222 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-127- 投稿日:2003年08月06日(水)21時24分19秒
- 「気にするよ! 意識するって!」
「紺ちゃん?」
「まこっちゃんの方がおかしいよ。なんで普通に出来るの?」
「わ、私だって普通じゃないよ」
小川は急に真面目な顔で答える。
紺野は言ってしまってから、しまった! と言う顔をした。
「普通にしないと…。ダメじゃん。別に私たちの関係は変わらないと思うし。
紺ちゃんも私も他に好きな人いるんだし…」
「じゃ、じゃぁなんで? 別に今のままでもいいと思うけど」
紺野も自分で言っていて、良く分からなくなってくる。
「私もそう思ったけど。でも、紺ちゃんだってOKしてくれたじゃん」
「そ、そうなんだけどね。よく分からない…」
「私もよく分からないよ」
「「なんなんだろうね、いったい…」」
そんな言葉だけが揃って口に出て二人は笑った。
「まぁ、深く考えずにいこうか〜」
紺野も頷いた。
- 223 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-128- 投稿日:2003年08月06日(水)21時25分32秒
- −128−
矢口と真希は、この日の夜から夜行バスで名古屋に向かう。
イブの夜は一緒とは言え、バスの中である。
バスの出発は夜遅いから、それまでは矢口の家で家族とパーティをしていた。
すっかり矢口家と溶け込んでいる真希。
妹ミキの突っ込みにも慣れて和気藹々と楽しんでいた。
矢口の父は居心地悪そうにしていたが…。
矢口が席を外した隙に、ミキは隣の真希に耳打ちした。
「真希ちゃん、お姉ちゃんを宜しく頼みますね」
「え?」
「まぁ真希ちゃんが居れば平気かな」
「平気って?」
「結構ああ見えて寂しがり屋だからね〜」
分かった風な口を聞いて、ミキは苦笑いする。
「こら、何話してんだ?」
ジュースを抱えながら矢口は戻ってくる。
「お姉ちゃん、名古屋から帰って来なくていいからね」
「はぁ? なんだよソレ! おみやげ買ってこねぇぞ!」
ジュースの角でミキの頭にわざとぶつけてみせる。
「いったぁ」
ミキも大袈裟に頭をさすってみたり。
- 224 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-128- 投稿日:2003年08月06日(水)21時26分25秒
- 「ミキ、お前と憎まれ口叩き合えるのもあと少しだかんな。
まぁ許してやるよ」
「ちぇっ。偉そうなんだから…」
「どっちが!!」
なんだかんだでもう12月もあと一週間で終わってしまう。
矢口と一緒にいれるのも3ヶ月しかない。
まだ現実として受け止められない真希は、矢口の居ない毎日を
考えてみるが、想像がつかなかった。
「ねぇ…」
既に準備万端の真希は荷物も持って、パーティが終わり矢口の部屋に来ていた。
「んー」
矢口は今更ながらに部屋の片づけを始めている。
「出かける間際に、掃除なんかしなくたっていいでしょ!」
「まぁそうだけど…」
取りあえず矢口は手を休める。
しかし特にする事もない。外に出れば混んでいるだけだし
家を出る時間まで中途半端に時間があった。
「早めに出るか?」
「…だったら」
そう言って真希は目を閉じてくちびるを突き出した。
- 225 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-128- 投稿日:2003年08月06日(水)21時27分22秒
- 矢口は傍にあったプーさんのぬいぐるみを真希の顔に押し当てる。
「ぁー。意地悪なんだからっ!」
少しムクれて真希はプーさんの向きを変えて矢口にお返しをした。
「散々したじゃん…」
「何回したっていいじゃん。減るもんじゃなし…」
「シーッ!!」
隣の妹に聞かれてはいないかと矢口は人差し指を立てる。
「やぐっつぁん、してー!!」
真希はわざと大きな声で叫んだ。
「バ、バカ!」
「…ん…ぐぉ…ぉ…っ」
矢口は慌てて手で真希の口を押さえ込んだ。
- 226 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-129- 投稿日:2003年08月06日(水)21時28分24秒
- −129−
「先に行ってるね」
そう言い残してひとみは、先に寒空の下、出かけていった。
あとで会おうって、一体どういうつもり?
梨華は首を傾げる。
それも行き先も告げぬまま。
連絡は、後でメールする。と言い残して。
梨華は落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たり。
しかし、なかなか時間は過ぎなくて梨華は苛々する。
やっと、ひとみからメールが来た時は、既に一時間が経過していた。
『○○まで来たら、次は右に曲がって』
そんなメールが数回。
- 227 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-129- 投稿日:2003年08月06日(水)21時29分21秒
- 一体、どこに連れて行くのかと思えば、行き着く先は、
駅の外れにある小さな教会。
教会の前は綺麗にライトアップされていた。
「ひとみちゃん?」
吐く息が白い。息を弾ませて梨華は、ひとみを探す。
「梨華…」
背後から、ひとみの声。
振り返ると、ひとみが大きな花束を抱えて立っていた。
「一体、どうしたの?」
「梨華に…石川梨華に吉澤ひとみは永遠の愛を、此処で誓います」
ひとみは礼をすると、梨華に花束を差し出す。
「…?」
「梨華の事、一生大事にするからね」
花束越しに、抱きしめられる。
思いの外ひとみの身体は冷たい。
ずっと、この場所で待っていてくれたのかと思うと梨華は胸がジンとなる。
「ひとみちゃん…」
「今まで、きちんと梨華に告白した事って、なかったから。
ちゃんとケジメをつけるために、そう思って今日告白したんだ」
「分かってるよ。私もひとみちゃんの事…」
「ぁ…愛してるよ。ずっと…これからも…。傍にいて」
ちょっと照れながら、でもしっかりと目を見てひとみは梨華に告白した。
誓いのキス―――。
ひとみの唇は、冷たかった。
- 228 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年08月06日(水)21時33分42秒
- 127-129話更新。
それぞれのクリスマスイブ。
エアコンの部屋でクリスマスの話もないもんだw。
>214 ヒラッペさん
この後は、とつとつと流れて行く予定です。
あまり話を膨らませてもスレが足りなくなるだけですし(笑)。
>215 マイキ−さん
更新早いですか?以前に比べたら死ぬほど遅いんですが(汗)。
やぐごま派ですか。いしよしも宜しくおながいしまつ。おがこんも。
>216 名無しさん
ありがとうございます。
>217 名無しアゴンさん
わざわざ説明ありがとうございました。
- 229 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年08月07日(木)01時14分03秒
- あ、今レス見てて気が付いたんですけどCharmy Blueさんってサイト持ってたんですね♪
是非見てみたいな〜(ボソリ)と言ってみたり・・・
おが紺、やぐごまも良いですけどやっぱり王道のいしよし最高です(爆)
教会の前で告白なんて・・・(照)って自分が照れてどうするんだ?(誤爆)
でわ。完結まで頑張って下さい!(そして次回作も・・・(笑)
- 230 名前:タケ 投稿日:2003年08月08日(金)09時16分07秒
- PCの調子が悪く今まで読めなかったけどやっと読めてよかった
それはさておき「おがこん」はホント意味分かりませんね(爆)
なぜか続きが気になりますね
- 231 名前:マイキ− 投稿日:2003年08月09日(土)10時32分24秒
- やぐごま最高に最高っす!(←???!)
あの二人は…もう大好きです^^
いしよしも…♪教会で告白とは!!(//^▽^)〜^●)
大胆ですねぇ。オイラも照れてしまう〜!
更新遅いんですか?でもオイラは気長に待ちます♪♪
- 232 名前:歯並び超悪い俺 投稿日:2003年08月13日(水)22時16分25秒
- いしよし・よしごま最高ー!続き期待。
- 233 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月13日(水)22時58分07秒
- ochi
- 234 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-130- 投稿日:2003年08月14日(木)18時40分43秒
- −130−
そして、矢口と真希は深夜バスに乗りこんでいた。
あとは出発を待つのみ。
「結局、眠れなかったじゃんか」
明らかに矢口は不満そうである。
「寝ようって思う方が無理。大体私がいるのに眠ろうなんて十年早い!」
「悪かったな…」
真希はジュースやお菓子を並べている。
散々食べたのに、まだ食べる気でいるらしい。
そのくせ、きっと自分より先に寝てしまうのは目に見えていた。
案の定、バスが発車して数十分後には、真希は寝息を立てていた。
車内は静かで誰も喋る者がいなかったので、真希もさすがに黙ったようだった。
寝付けない矢口は流れる風景を窓からぼんやりと眺めていた。
- 235 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-131- 投稿日:2003年08月14日(木)18時41分58秒
- −131−
仲良く手を繋ぎ、梨華とひとみは梨華の家へと戻っていく。
ひとみから貰った花束を花瓶に生ける。
ピンク色の薔薇とかすみ草。
「梨華にはピンクが良く似合うよ」
そんな事を言って、ひとみは後ろから抱きすくめると梨華の耳朶にキスをした。
「ひとみ…ちゃんっ」
今日は、あんな告白があったせいか、梨華はキスだけでゾクゾクしてしまう。
当然、今日もこのまま愛し合うものだと思っていた。
「梨華。今日は、そのまま手を繋いで寝ようか」
意外なひとみの言葉。耳を疑う梨華。
「おかしいかな?」
回した腕を緩めてひとみは梨華の肩に顎を乗せる。
「ぅうん…。そんな事ないよ」
「いつも梨華に甘えてばっかりじゃ悪いから。たまには早く寝よう…」
さすがのひとみも連日のバイトで疲れが溜まっているのだろうか?
何故か今日のような日を敢えて外すとは、梨華はガッカリした。
- 236 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-131- 投稿日:2003年08月14日(木)18時43分15秒
- 「ひとみちゃんも疲れてる?」
このまま寝てしまうのは、ひどく勿体ない気がして、かと言って
自分から誘うのも気が退けて梨華は、頷いた。
実際、梨華も疲れていたからだ。
ひとみは風呂場に入っていった。
今一歩押しが足りない梨華は、何も言えないまま、自分もひとみの後に
お風呂に入ると、ベッドへと潜り込んだ。
「おやすみ、梨華…」
「おやすみなさい。ひとみちゃん…」
指と指を絡ませて、二人お揃いのパジャマを着て眠りに就く。
今夜ばかりは、二人とも良い夢を見られそうだった。
Happy Merry X'mas!!
- 237 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年08月14日(木)18時50分45秒
- 130-131話更新。
一応イブ編は終わりです。いしよしエロは…やめました(恥)。
もう、ここでエロはいいだろう…みたいな感じなので(反省)。
>229 ヒラッペさん
サイト…名無しベーグル。で検索すれば、出て来ると思います。
別に大したサイトじゃないんで(汗)。
教会の前で告白は自分も照れました。はぁ。
次回作は・・・無いですw。抱えてる物が多すぎて。・゜・(ノД`)・゜・。
>230 タケさん
おがこんは、ひとまず終了です。最近おがこんなにげに多くて
嬉しい限りです。
>231 マイキ−さん
やぐごまって需要あるのか最近疑問なんですが大好きならば嬉しいです。
>232 歯並び超悪い俺さん
よしごまは、ここでは書いてませんがw。
やっぱり、いしよしが好きです。
>233 名無しさん
いつも落としてくれてる方かな?ありがとうございます。
- 238 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年08月15日(金)00時07分47秒
- 更新お疲れ様です。
HP>検索して探し出してみます。
クリスマス>甘いっすねぇ〜。いしよしは最高に・・・
たまにはエロの無いクリスマスも良いのかもしれませんね。
では、次回の更新も期待に期待を重ねて(笑)待ってます。
- 239 名前:タケ 投稿日:2003年08月15日(金)03時19分48秒
- やぐごま!いしよし!
共によいクリスマスが迎えられたみたいでよかったです。
続きも期待して待ってます
- 240 名前:マイキ− 投稿日:2003年08月15日(金)14時41分09秒
- 更新お疲れ様でゴワス^^
ココのいしよし・やぐごまは本当に和みます!
続きも期待してますぅ♪
- 241 名前:いしよしサイコー 投稿日:2003年08月21日(木)14時36分18秒
- あなたの小説大好きです。やっぱりいしよしですね。
続き楽しみにしてます。
- 242 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-132- 投稿日:2003年08月28日(木)17時59分33秒
- ―132―
1月も半ば。
もうそろそろ梨華と矢口の誕生日が近づいてくる。
ご存じの通り、二人の誕生日は1日違い。
1月の19,20日である。
今回が矢口最後と言う事で、梨華と一緒にみんなで祝おうと言う話になっていた。
みんなと言っても極少数ではあるが。
招待された高橋は、最初は物凄く恐縮していた。
「私が、とんでもないです!」
手を大袈裟に振り、頭まで左右に振る。
「なんで?」
「なんでって私みたいなのがお邪魔したら悪いんで…」
「そんなにかしこまる事ないのに」
「やっぱりやぐっつぁん本人直々のお願いじゃないとダメなんかなぁ?」
矢口が自分の誕生会を誘うと言うのも、おかしなものだから真希はこうして
出席の確認を取っているのだが。
「あ、そうじゃないんですよ。なんていうか私、泣いちゃうかも知れないんで」
「泣くのは、まだ早い! って言われちゃうよ? 愛ちゃん」
「はい…」
そう言った傍から高橋の目にはうっすらと涙が。
- 243 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-132- 投稿日:2003年08月28日(木)18時01分19秒
- 「愛ちゃんも勿論出席だよね?」
「私なんかで良かったら」
高橋はコクリと頷いた。
- 244 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-132- 投稿日:2003年08月28日(木)18時02分31秒
- そんなやりとりを後日、聞かせると矢口は苦笑いした。
「アイツは優しいよな」
「やっぱり私より、やぐっつぁんからお願いした方が良かったんだよ」
「んな自分の誕生日を自ら誘うヤツがいるかよ! つかおいらは別に
そんなの開いてくれなくたっていいんだぜ」
矢口はそう言う類の事が苦手だから今回だって渋々OKした位だった。
「だから招くのは、石川先輩とよっすぃーと愛ちゃんだけじゃん」
「大体お前ら勝手に決めてよ。高橋一人余っちゃうじゃんか。
そういう配慮っつうもんがないのか?」
「でも愛ちゃん来るって」
「普通断れないだろ」
高橋が矢口に想いを寄せている事は承知であるが、それで敢えて
誕生会に呼ぶと言う事に矢口は神経を疑った。
- 245 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-132- 投稿日:2003年08月28日(木)18時03分09秒
- 「じゃ、じゃぁやぐっつぁん来るなって断って来なよ」
真希は面白くないのか頬を膨らませる。
「別に来るなって言ってる訳じゃ…」
おいらは…ごっつぁんと二人で過ごしたかったのに。
矢口の本音は、やはり二人きりで過ごす事だった。
しかし、折角みんなで祝ってやると言うのにイヤとは言えない。
だったら、まだ梨華とひとみと四人なら話は分かるが、そこに高橋も入れる
神経が矢口には理解不能だった。
- 246 名前: 恋をしちゃいました-4th Stage-133- 投稿日:2003年08月28日(木)18時04分31秒
- ―133―
「結局、こういう役回りなんだよな…」
矢口はブツブツ言いながら高橋のいるバイト先へと向かう。
今日は真希はシフトに入っていないから、それを狙って来ていた。
「矢口先輩」
高橋の顔がパッと明るくなる。笑顔で返す高橋に矢口も気分が良い。
人間素直が肝心なんだよな。
「あ、あのさ。今度の休みの事なんだけど…」
「誕生会ですね。ちゃんと行きますから安心して下さい」
「て言うか。高橋無理してない?」
「へ?」
高橋はきょとんとする。
「いやいや、無理してないならいいんだ。ただ勝手に無理矢理決めちゃった
みたいなトコがあったから」
「呼ばれて光栄ですよ。でも場違いかなぁとは思うんですけど」
「ごっつぁんが勝手に決めちゃったんだよ」
矢口は悪いなと言う顔をする。
- 247 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-133- 投稿日:2003年08月28日(木)18時05分16秒
- 「私、矢口先輩も後藤先輩も憧れですから、凄く嬉しいですよ。
勿論、吉澤先輩と石川先輩もですけど」
「高橋。お前は良いヤツだな」
部員である辻加護に聞かせてやりたい位だ。
「先輩と出逢えて良かった…」
「高橋…」
涙腺が弱いのか既に目はうるうると来ている高橋に矢口は慌てる。
「あの…まだおいら居るから。つか泣くなよな!」
元気づけるかのように矢口は高橋の背中を叩いた。
- 248 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-134- 投稿日:2003年08月28日(木)18時06分51秒
- ―134―
一方、ひとみと梨華は―――。
結局ひとみは、年が明けてもそのまま喫茶店でバイトを続けていた。
やはり頼まれると嫌とは言えない性格。
それに、何かと去年の暮れからイベント続きでひとみのお財布も厳しいものがあった。
あくまでもメインは梨華の誕生日にある。
なかなか時間が合わずに、久しぶりに、ひとみが梨華の部屋を訪れた。
「なんか久しぶりだね」
久しぶりと言っても2,3日前には来ているのだが、このところ毎日のように
来ていたから、数日空けただけでも久しぶりに感じていた。
「ひとみちゃん…」
「なに?」
このところ、ひとみが遅くまでバイトをしている事は梨華も知っている。
無理をしているのではないかと梨華は少々気がかりだった。
- 249 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-134- 投稿日:2003年08月28日(木)18時07分47秒
- 「あんまり無理しないでね?」
「してないよ。何心配してるの?」
ひとみが自分の為にバイトしているのだとしたら、やはり申し訳ない気持ちになる。
梨華としては、その気持ちだけで充分だった。
「だって、ひとみちゃん遅くまでお仕事…」
「そんな事ないよ。梨華だって頑張って働いてるじゃん?」
「私は慣れてるし部活してないからいいけど。ひとみちゃんの身体」
「平気だってば。梨華が思うほど私はヤワじゃないから。ありがと梨華。
気持ちだけでも嬉しいよ」
「そう…。だったらいいけど」
それでもまだ梨華は不安げな視線をひとみに送っていた。
- 250 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年08月28日(木)18時11分42秒
- 132-134話更新。遅くなりまして申し訳ないです。
>239 タケさん
イベント押しと言う事で、次はやぐいしBDです。
ぶっちゃけネタ不足w。
>240 マイキ−さん
和みますか。
もう波乱もないと思うので(多分)このままマターリヒソーリと。
>241 いしよしサイコーさん
ありがとうございます。そう言っていただけると
非常に励みになります。
やっぱり、いしよしですよね^^;
- 251 名前:マイキ− 投稿日:2003年08月28日(木)18時28分48秒
- リアルタイムですわぁぃ^^
更新お疲れ様です!!
誕生日のも期待して待ちます♪
- 252 名前:ヒラッペ 投稿日:2003年08月28日(木)22時27分39秒
- 更新お疲れ様です。
次回はやぐいし誕生日ですか・・・
梨華ちゃんに心配されたいなぁ・・・(爆)とか思ってしまう今日この頃。
あ、HP見れました。
今度向こうにもレスさせてもらいますね。
でわ。
- 253 名前:タケ 投稿日:2003年08月29日(金)00時38分51秒
- 更新お疲れ様です。
やぐ、いしBDで何が起こるのか?
楽しみに待ってます
(高橋は泣いちゃうのかな?)
- 254 名前:いしよしサイコー 投稿日:2003年08月29日(金)18時28分21秒
- 更新お疲れ様です。
次楽しみにしています!
- 255 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-135- 投稿日:2003年09月05日(金)11時32分42秒
- ―135―
ひとみは梨華のプレゼントを買いに渋谷へと出かけたのだが、
そこでバッタリ真希と出くわした。
「あ、よっすぃー。よっすぃーもプーさんなんだ」
ディズニーストアで、偶然真希に声を掛けられる。
「ん? ま、まぁね…。ごっちんも?」
本当はコレがメインではなく、誕生日には間に合わないから一時しのぎ
ではないが、それに宛われた代物であるのだが、ひとみは黙っていた。
「うん。やぐっつぁんプーさん好きだからさぁ、あの一番でっかいヤツをね。
前に約束したの。誕生日には”シゲル”をあげるって」
店にデ〜ンと座っている大きなぬいぐるみ。
「シゲル?」
「何となくイメージで、見た時シゲルって思ったからさ」
「で、あれ持って帰るの?」
ひとみは目を丸くする。
「いや送ってもらうんだけどね」
「そっか…」
ひとみはピンク色のプーさんのぬいぐるみを抱きしめながら
自分が持っているプーさんの何倍もあるソレを眺めていた。
- 256 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-135- 投稿日:2003年09月05日(金)11時33分59秒
- 「ピンク色のがあれば、それでもいいかもしんないけどなぁ…」
「石川先輩、ピンク大好きだもんね」
「矢口先輩は、プーさん大好きだもんね」
あーだこーだと雑談をしていたら、あっと言う間に駅に着いてしまう。
「よっすぃーは、石川先輩にこの後会うの?」
「この後バイトだよ」
「マジで?」
真希は目を丸くする。
「ちょっと時間貰って来ただけだから」
「随分働くんだね。まさか、まだ隠し球があるとか?」
「ん? んぁぁ、ま、まぁ、どうかな」
真希の直球に、ひとみは動揺する。
やっぱり黙っておく事は性格上無理らしい。
「よっすぃー分かり易いなぁ」
アハハと真希は笑う。
ごっちんに言われたくないよ。と思いながら、ひとみは何も言わないでと口止めをしておく。
「口止めも何も何も聞いてないしね」
「分かったよ。言うから、誰にも言わないでよ?」
念を押して、ひとみは真希にだけは打ち明けた。
- 257 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-136- 投稿日:2003年09月05日(金)11時35分08秒
- ―136―
多少無理をしないと今回のメインの贈り物は到底足りない。
しかも思いついたのも既に日が迫った時だったから。
それは松浦の一言だった。
「夜景が綺麗なんですよ」
松浦は年末から頑張って働き、北海道にいるあゆみの所へと遊びに行った。
その時の話を聞き、ひとみは一発で決めた。
じゃぁ梨華を北海道へ連れて行ってあげよう。と―――
勿論夜景など日本各地でごろごろと転がっていると思う。
でも、ひとみは敢えて北海道を選んだ。
北海道なら、あゆみとも久しぶりに再会出来るだろうし一石二鳥。
勿論、これには自分も行く費用を捻出しなければならない。
だからひとみは何とか無理をしてでも連れて行きたかった。
但し、誕生日の日と言う訳には、いかなかったけれど。
三月の春休みに入るあたりを予定していた。
それなら、この前のように学校を休む必要もないからだ。
それまでフルに働けば、何とかなりそうでもあった。
- 258 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-137- 投稿日:2003年09月05日(金)11時35分59秒
- ―137―
真希は話を聞き終わると、ホーッと溜息。
「思われてるねぇ。石川先輩が羨ましいよ」
「いや、私も北海道行きたかったからさ…」
「ていうか、私もあゆみちゃんに会いたいなー」
「ごっちんも行けばいいじゃん。別行動で」
「冷たいな。別行動かよ」
「でもごっちんは、名古屋行く方がいいんじゃなくて?」
「あぁ、やぐっつぁんね…」
ふと遠くを見るような眼差し。
最近、真希には多くなったような気がする。
刻一刻と近づく別れの時…。
「私もバイトして週末は名古屋行けるくらい働かないとなぁ…。
ちょっと仕事増やすかな。今のバイト楽なんだけど実入りが悪いからね」
案外本気で思っているらしい真希。
「無理しないでよ」
「それはこっちのセリフ。よっすぃーもね」
「うん」
そんな会話をしながら真希と別れ、ひとみはバイト先へ向かった。
- 259 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-138- 投稿日:2003年09月05日(金)11時36分51秒
- ―138―
今日は元々休みだったのだがひとみが仕事を入れたため、梨華も
一人ではつまらないからと自分もバイトを入れた。
どうも気になる。
仕事をしていても梨華は身が入らなかった。
「石川、なにぼんやりしてるの」
保田に注意され、ハッとする梨華。
「す、すいません」
「余り口出しするのもアレだけど、気になる事があるなら
ハッキリ言いなさいよ。黙ってるのは身体に毒だからね」
「はい…」
「石川、休憩入っていいから…」
「さっき休みを…」
「いいから、ちょっと、そこのサテンでも行って茶でもしばいて来なさい」
「え…でも…」
戸惑ってる梨華に、保田はコレは命令だと言って梨華を外に出させた。
「ホントに世話が焼けるんだから…」
梨華を見送り呟く保田に松浦も一言。
「保田さん、私にも…」
「松浦は石川が、居ない分、ばりばり働いてもらわないとね!」
保田は松浦の背中を軽く叩いた。
「はぁーい」
松浦も期待していなかったらしく肩を竦めると業務に戻った。
- 260 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-139- 投稿日:2003年09月05日(金)11時37分49秒
- ―139―
休憩をもらったものの、どうもひとみのいる喫茶店には入りにくい梨華は
入り口でうろうろ。
「石川先輩、なにうろついてるんですかぁ。通行の邪魔ですよー」
背後から突然声をかけられ、梨華はキャッと声をあげた。
「小川さん…」
「石川先輩、もう〜おじゃま〜。おじゃマ〜ルシェですよー」
「紺野さんも…」
続いて紺野がポーズ付きで良く分からない言葉を発する。
どう反応してよいやら梨華は首を傾げた。
「あ、吉澤先輩呼び出してるんですか?」
「え? 違うのよ。休憩に来ただけだから」
「まこっちゃん邪魔しちゃ悪いかも」
「紺ちゃんが来たいって言ったのに…。まぁいいかー。
邪魔者は退散しますかね。紺ちゃん」
「私達が、おじゃま〜でしたか」
「じゃぁ失礼します。ごゆっくり〜」
良く分からないまま、小川と紺野は仲良く手を繋いでどこかへ行ってしまった。
「なんなんだろ、一体…」
- 261 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-140- 投稿日:2003年09月05日(金)11時38分43秒
- ―140―
梨華が入り口で突っ立っていると、急にドアが開いてひとみが顔を出した。
「梨華、どうしたの?」
「ひ、ひとみちゃん!」
梨華があまりに驚いた顔をするから逆にひとみが驚いてしまう。
「休憩?」
「そうなの。保田さんがお茶でも飲んできなさいって…」
「珍しいね…」
いつもと変わらなく、ひとみは微笑む。
「ごめん。でも相手出来ないんだ」
ひとみは水を運びながら申し訳なさそうに言った。
「ううん、いいの。気にしないで」
「レモンティでいいよね?」
ひとみはオーダーを取ると速やかに消えていった。
タイミングが悪かったらしい。梨華は逆に寂しくなる。
忙しそうに店内を動き回るひとみを目で追いながら、梨華は溜息を落とした。
- 262 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-141- 投稿日:2003年09月05日(金)11時39分43秒
- ―141―
結局、ひとみとは一言二言言葉を交わしただけ。
それでも保田の気遣いは嬉しかったから、なるべく顔には出さないように
後半の仕事はキッチリとやっていた。
「梨華先輩、大丈夫ですかぁ?」
保田が出かけた隙に、松浦が梨華を心配して声を掛けて来た。
「亜弥ちゃん。何が?」
「何がって。顔に書いてありますよ? その分だと余り吉澤さんと話せなかったんだ」
「亜弥ちゃん鋭いなぁ。仕事中だったからね。仕方ないよ」
努めて明るく振る舞っているつもりだったが、さすがに松浦の目は誤魔化せないらしい。
梨華は曖昧に微笑んだ。
「そりゃぁ、これでも梨華先輩の事、ずっと好きでしたからね。分かりますよ。
でも大丈夫。吉澤さんは梨華先輩の期待を裏切りませんからね」
「え?」
「吉澤さんと一緒に帰ったらどうですか?」
何かを知っているような言い方の松浦に梨華は聞き返すが、松浦はそれには答えなかった。
- 263 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-142- 投稿日:2003年09月05日(金)11時40分49秒
- ―142―
仕事が終わり、暫く梨華は待っていたが、どうにもひとみが来る気配がないので
梨華は、また自ら店に行く事にした。
梨華よりひとみの方が遅く終わる事も、このところ珍しくはなかったのだ。
店の裏口に回ってひとみを待っていると、丁度ひとみが出て来るところだった。
「ひとみちゃん、お疲れ」
「あ、梨華…」
ひとみは慌てて袋を隠すと、また店に引っ込んでしまった。
「あれ?」
しかし、すぐにひとみは戻ってくる。
「わざわざ待っててくれたの? ありがと」
「ひとみちゃん、遅かったんだ」
「最近はフル働いてるからね」
今日は昼間私用で抜けたから、そのせいもあるのだが、それは梨華には言わなかった。
別に今日買ってきたプレゼントも隠す必要もないのだが、何となく買いに行っていた
事が分かるのも照れ臭かったから、ひとみは自分のロッカーに仕舞い込んできてしまった。
ひとみはバイトの話に触れて欲しくないのか、梨華の気のせいなのか話題は関係のない
話に移ってしまっていた。
- 264 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-142- 投稿日:2003年09月05日(金)11時41分35秒
- 自転車に乗っているから、あっと言う間に着いてしまう。
当然、上がっていくかと思えば、あっさりひとみは「おやすみ」なんて
言って帰ろうとしていた。
「ひとみちゃん…」
これには、拍子抜けで思わず引き留める梨華に、ひとみは振り返る。
「ん?」
「あ。おやすみなさい…」
無理に笑顔を作り、梨華は片手を挙げて小さく手を振った。
「おやすみ。梨華。またね」
笑顔でひとみも手を振り返すと小走りで走り去って行く。
今日は泊まって行くと思ってたのに。
明日も連休で休みなのに、何も言ってくれなかった。
梨華は何とも言えぬ寂しさを感じていた。
- 265 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-143- 投稿日:2003年09月05日(金)11時43分35秒
- ―143―
梨華が寂しがっている事も知らずに、ひとみは翌日の午前中に松浦と会う約束をしていた。
最初はメールで何度か松浦と交わしていたが、やはり会って聞く方が一番だと思い
ひとみの方から誘って来た。もちろん、ひとみはもう少し北海道の話を松浦から聞きたかった
だけなのだが、これが思わぬ波紋を呼んでしまう事になる。
「吉澤さん。梨華先輩に、あまり心配かけちゃダメですよ」
松浦も約束よりも早く駅の外れの喫茶店に入っていた。
松浦の忠告メールにも、鈍感な、ひとみは余り気にもとめずにいた。
「かけてないって。どうしてそういう事言うかなぁ。話聞かせてよ」
「ホントにそう思ってます?」
松浦はなかなか本題に入らない。
「うん…」
「昨日、梨華先輩がどうして休憩の時に吉澤さんのトコ行ったかわかってます?」
「え?」
松浦は、やっぱりと言う顔をする。
- 266 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-143- 投稿日:2003年09月05日(金)11時44分13秒
- 「今日の事だって梨華先輩に断って来てます?」
「いや。言える訳ないじゃん。梨華には、まだ言えないもの、この話…。
それに今日は午後から会う事になってるし…」
「そういう問題じゃなくて…」
「いいから早くしてよ…」
ひとみは痺れを切らすように促す。
「吉澤さん、私は梨華先輩の味方なんですよ」
「ん?」
「内緒で会ったりなんて事出来ませんからね…」
松浦は、ひとみの背後の人物に目配せをした。
「なに言って…」
その時、背後から小さな声がポツリ。
「ひとみちゃん…」
その声は…!!
「梨華!!」
まさか背後にいたとは気づかずに、ひとみはギョッとしながら振り返った。
「松浦…」
「私、隠し事とか嫌なんですよ。この話は後日改めてしましょうね、吉澤さん。
今日は梨華先輩とごゆっくり…」
含み笑いをして松浦は立ち上がった。
「これは隠し事じゃないじゃんか!」
思わずひとみは立ち上がるが、梨華に腕を掴まれてしまった。
- 267 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-144- 投稿日:2003年09月05日(金)11時45分08秒
- ―144―
無言のまま暫く歩く二人。
ひとみは、たまらずに口を開いた。
「梨華、違うんだよ、これにはいろいろ事情があって…」
「私には言えないけど亜弥ちゃんはいいんだ…」
静かに言う分、余計に怖い。明らかに非難が混じった口調だった。
「いや、松浦じゃないと分からない話だったから」
「私じゃ駄目なんだ」
うん、駄目。とも言えずに、ひとみは黙ってしまう。
「別に亜弥ちゃんに会ってもいいけど、一言言って欲しかった」
「梨華、誤解だよ。別にやましい事してる訳じゃないよ。単に話を聞いて参考に
したかっただけなんだ」
「さっきから話、話って一体なんの話なの? 主語がないよ、ひとみちゃん」
「それは…」
今言ってしまってはネタバレが早いのもいいトコだ。
まだ誕生日まで5日もあると言うのに。
「なんで言えないの? もういいよ。帰るから」
「梨華、待ってよ」
「ついてこないで!」
ひとみは立ち止まり、何も言わずに怒っている背中を見つめていた。
- 268 名前:Charmy Blue 投稿日:2003年09月05日(金)11時46分53秒
- 135-144話更新。
思わず番外編を読み返して確認。
でかプー(シゲル)をプレゼントと公言してたよね、ごっちん(汗。
>251 マイキ−さん
リアルタイムでしたか。誕生日もうすぐです。
>252 ヒラッペさん
少しだけ喧嘩を混ぜてみました。ヲタんじょうび会は少し先です。
あっちにもレス待ってます!
>253 タケさん
高橋は読み返してたらしょっちゅう泣く言うてますねw。
>254 いしよしサイコーさん
ありがとうございます。楽しんでいただけたかどうか微妙ですが。
- 269 名前:タケ 投稿日:2003年09月05日(金)18時26分26秒
- 更新お疲れ様です。
吉澤さんも大変だ・・・(もちろん石川さんもだけど)
いしよし・・・どうなってしまうんでしょうか?
『おがやぐ』!しっかり進展してますね(w
続き楽しみにしてます!
- 270 名前:マイキ− 投稿日:2003年09月06日(土)10時08分15秒
- 更新お疲れ様です♪♪
今回も楽しく読ませて頂きました!
いしよしの喧嘩が始まりましたね^^
これが誕生日にどうなるのでしょうか♪
続きも期待して待ちます!!
- 271 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/10(水) 20:02
- 楽しみです
- 272 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/09/10(水) 23:00
- ありゃ?レス忘れてた・・・
ケンカしても仲がいいのがいしよしです(笑)
誕生日は果たして無事に迎えれるのかな?
のんびりまったりと更新お待ちしてます。
- 273 名前:チップ 投稿日:2003/09/10(水) 23:48
- 松浦さん憎いコトしますねぇ(w
無事仲直りできるかな?
続き楽しみにしてます。
- 274 名前:駒勇明日香 投稿日:2003/09/15(月) 13:30
- 期待して待ってまつ。 (’つ`)
 ̄
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 16:06
- ochi
- 276 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-145- 投稿日:2003/09/22(月) 21:35
- ―145―
暫く歩いて梨華は後ろを振り返る。そこにはひとみの姿はなかった。
「ひとみちゃんの馬鹿! 何を考えているの?」
松浦からメールをもらい、指示する喫茶店に行ってみれば、ひとみがいた。
松浦は事情を知っているらしい。松浦は梨華が好きだから黙って会う事が躊躇われた
のだろうか、梨華に事前にメールをよこしたのだ。
内緒にされていた事が梨華にはショックだった。
梨華がアパートに戻ると、ひとみが先回りをしていたらしく肩で息を切らせながら
ドアの前に立っていた。
梨華はハッとしたが無言で鍵を出すと中に入ろうとする。
ドアの前に立ちはだかるひとみ。
- 277 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-145- 投稿日:2003/09/22(月) 21:36
- 「梨華。話すからさ。中入れてよ…」
「ひとみちゃんなんか嫌い! 帰ってよ」
「梨…」
嫌いと言われてひとみはよほどショックだったのか、一瞬動きが止まる。
梨華も、しまったと思ったが言ってしまったものは取り消せない。
梨華は、呆然と立つひとみの横からドアのノブを掴んだ。
「梨華が嫌いでも、私は梨華が好きだよ」
弱々しくひとみは呟く。
―――ガツンと行けよ!
もう一人の自分が叫ぶ。
- 278 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-145- 投稿日:2003/09/22(月) 21:36
- その言葉に梨華の胸はチクリと痛む。
「梨華!」
ひとみは梨華を後ろから抱きしめた。
「ひとみちゃん…」
ひとみは梨華を自分の方に向かせ、そのまま梨華にキスをした。
ズルイ。
梨華は心の中で思うけれど、久しぶりのキスに梨華も応えてしまう。
くちびるが離れた後、梨華は決まり悪そうに答えた。
「まだ許した訳じゃないんだからね…」
「梨華…」
安堵の声がひとみから漏れた。
- 279 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-146- 投稿日:2003/09/22(月) 21:37
- ―146―
結局、ひとみは北海道の話を梨華に打ち明けた。
「言ってくれれば良かったのに…」
分かっていれば、こんなに不安になることもなかった。
「黙っておいてびっくりさせたかったんだよ。それに誕生日には間に合わないから…」
ひとみは悔しそうだ。
「でも私、行かないから」
「え?」
予想外の梨華の答え。
- 280 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-146- 投稿日:2003/09/22(月) 21:37
- 「だって、それでひとみちゃんと会う時間が減るんだったらいらない。
気持ちだけで嬉しいよ」
「梨華と行かないと意味ないのに…」
「そういうのは二人で相談して決めるものでしょう?」
「そうだけど…」
ひとみとしては、梨華を驚かせたかったのだが元の木阿弥に終わってしまった
今となっては、もう何をしても一緒だった。
「私もその分働くから…」
「梨華…」
「さっきはゴメンね。私もひとみちゃんが好きだよ」
梨華はひとみの目をじっと見ながら答えた。
- 281 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/09/22(月) 21:38
- 145.146話更新。
少し間が空きました。すみませんです。
>269 タケさん
『おがやぐ』…(汗)。
石川さんは、やっぱり優しいです。
>270 マイキ−さん
長引かせるのもなんなので、すぐに鎮火しますた。
>271 名無しさん
ありがとうございます。
>272 ヒラッペさん
そうです。喧嘩しても仲が良いです。いしよしw。
>273 チップさん
あやゃは梨華ヲタなのでw。裏切れないらしいです。
>274 駒勇明日香さん
期待に応えられてるか不安ですが。
>275 名無しさん
ochiありがとうございます。
あまり気にしなくてもいいですよ。上がっていれば更新の時に一気に
落としますので。
- 282 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/09/22(月) 23:16
- 前のBBSに慣れててsage忘れてた・・・(汗
大変申し訳ないです。
いやぁ、いしよしもやっとこさラブラブモードですか・・・(萌
梨華ちゃんに弱いよっすぃ〜に萌え(爆
「会う時間が減るんだったら・・・」の梨華ちゃんに萌え(爆
おとめのPVでもののに萌えたか・・・
最近萌えを連呼しつつあるヒラッペでした(笑)
- 283 名前:駒勇明日香 投稿日:2003/09/23(火) 02:54
- すいません。sageボタンが無くなってるのでageカキコしてしまいまつ(なら書くな(藁))
待ってまつた。甘甘いしよしヲ!
- 284 名前:sage 投稿日:2003/09/23(火) 12:23
- >>283
メール欄にsage入れることくらい覚えてください(;´Д`)
- 285 名前:タケ 投稿日:2003/09/24(水) 08:41
- 待ってますた!
甘いしよしですねぇ
喧嘩してもすぐ元通り!いいカップルです(w
『やぐごま』、『おがやぐ』はどうなるんでしょうね?
- 286 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-147- 投稿日:2003/09/30(火) 19:22
- ―147―
そして誕生日前日の金曜。
矢口を除く四名は、この日もバイト。
今日のバイトもあと少し。
「いよいよ明日ですね」
高橋は微笑みながら真希に話しかける。
「まぁ何をするって訳でもないけどね…」
真希も余裕の構えだ。
真希にとってはメインは明日ではなく、明後日なのだから。
「もう私の方が何だか緊張しちゃいますよ」
高橋は自分の胸に手を当ててドキドキしている素振りを見せる。
「多分主役の二人は全然緊張なんかしてないと思うよ」
真希は勝手な事を言っている。
- 287 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-147- 投稿日:2003/09/30(火) 19:23
- そこへ自動ドアが開いて、主役の一人・矢口が入ってきた。
「おい。今おいらの噂してなかったか?」
「やぐっつぁん」「矢口先輩」
二人の声が同時に重なる。
「もうすぐ終わるだろうと思って迎えに来てやったぞ」
遅くなる日は、いつも迎えに来てくれる優しい矢口だ。
もちろん、高橋を送り届ける事も忘れない。
「あ、あの〜今日は私一人で帰るから平気ですよ。
亜弥ちゃんとご飯食べる約束してるんです」
高橋と松浦は同じクラスで今までは、あまり喋った事はなかったが
最近はバイト先も近いし松浦もバイトを始めた事から仲良くなっていた。
- 288 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-147- 投稿日:2003/09/30(火) 19:24
- 「愛ちゃん松浦とデイトかぁ。いいな〜」
「そ、そんなんじゃないですよ〜」
真希のからかいに高橋は顔を赤くして否定する。
「松浦もアレだな。最近綺麗になったな」
矢口がしみじみ言うと高橋も頷く。
「遠恋でも充実してるんですねぇ。亜弥ちゃん楽しそうですもん」
「あ。あゆみちゃんの惚気話とかしてんの? 今度聞かないとなぁ」
真希は首を挟む。一応これでも真希と柴田は幼なじみなのだ。
「松浦も強いよな」
矢口も頷く。最初は横恋慕をする生意気な女としか見てなかった矢口だが
柴田に会う為に働いていると思うと、矢口も松浦の事を見直していた。
「あゆみちゃん全然私にメールとかくれないんだよなぁ冷たい」
「お前、元からしてなかったじゃん」
「あ、そうか…」
「そうかじゃねぇよ」
そんな雑談をしながら、梨華と松浦のいるコンビニへと移動した。
- 289 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-148- 投稿日:2003/09/30(火) 19:25
- ―148―
丁度、梨華と松浦も出てくるところで先に声を掛けられた。
「愛ちゃん。おつ〜」
「亜弥ちゃんも、おつ〜」
二人とも手を挙げてパンなんてたたき合ったりしている。
「お前ら気を付けて帰れよ。遅くならないようにな」
矢口は担任みたいな口調になっている。
「矢口さん、子供じゃないんですから平気ですよ〜」
松浦は笑顔で「お疲れ様でした」と言って高橋と帰って行った。
「石川は吉澤と一緒?」
矢口は梨華に聞くと梨華は頷く。
- 290 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-148- 投稿日:2003/09/30(火) 19:25
- 「もうすぐ来ると思うんですけど…」
そう言ってひとみが来そうな方角に目をやる。
「梨華ぁ〜〜〜〜っ」
噂をすれば…で、ひとみは自転車を漕ぎながら近づいてきた。
三人の前でキーッとブレーキをして止まる。
「矢口先輩も相変わらずマメですね」
ひとみはニヤニヤ。矢口も否定しない。
「ま、まぁな。ごっつぁんに何かあったら困るからな」
「ごっちん、想われてるよ、ごっちん」
「いいだろー」
「私も梨華の事愛してるもん」
ひとみも負けずに惚気返す。
「じゃ、お二人も仲良く。うちらも帰りますので。梨華帰ろっ」
「う、うん」
梨華を自転車の後ろに乗せると「おやすみなさい」と言って
颯爽と二人の前から走り去るひとみと梨華だった。
- 291 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/09/30(火) 19:26
- 更新しました。なかなか進まない…。
今回は落とさずsageで更新しました。
>282 ヒラッペさん
あまりagesageは気にしないで下さい。
萌えは、いいですね。最近節操ないので…(ry。
>283 駒勇明日香さん
メール欄にsageと半角で入れて下さいませ。
>284 sageさん
ご説明ありがとうございます。
>285 タケさん
いしよし安定期に入ってますのでw。
甘甘で行きます!!
『やぐごま』もいつも通り。
『おがやぐ』はありません!w
- 292 名前:タケ 投稿日:2003/10/01(水) 15:26
- 更新お疲れ様っす
久しぶりに高橋が!!
『いしよし』も安泰(?)、やはりいいカップルだ・・・
『おがやぐ』はないんですね(w?
- 293 名前:駒勇明日香 投稿日:2003/10/02(木) 14:30
- どうもついません。(反省)いしよしもやぐごまもイイ感じですね!
これからもがんがって下さい(w
- 294 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-149- 投稿日:2003/10/02(木) 19:13
- ―149―
ひとみ達が帰る姿を見届ける矢口と真希だったが―――。
「愛してるもんって良く言えるわな。なぁ? ごっ…」
矢口が言いかけて隣りの真希をなにげに見ると、自分を見つめる真希と
目が合い矢口はびびる。
「な、なに? おいら達も帰ろうぜ」
矢口は何事もなかったかのように自転車にまたがる。
しかし、いつまで経っても後ろに乗る気配がない。
「ごっつぁん?」
恐る恐る後ろを振り返る。
「もぉ〜〜〜っ!」
真希が何故か怒っていて…。
気が付けば、後ろから羽交い締めにされている矢口。
- 295 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-149- 投稿日:2003/10/02(木) 19:14
- 「ぐっぐるじぃっ……っ。な、なんだよ!」
「羨ましいっ! も〜〜〜〜っ。石川先輩羨ましすぎる!!」
更に力は強くなる。
「放せっ……っ」
ただでさえ自転車にまたがっているからバランスを崩しそうなのに
プロレス技みたいなのを掛けられては、小さな矢口が転倒するのは目に見えていた。
「あ、あぶねぇっ!!」
矢口が叫ぶのと同時に、二人は自転車もろとも矢口を下にして
折り重なるように倒れたのだった。
- 296 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-150- 投稿日:2003/10/02(木) 19:14
- ―150―
暫く走ったところでひとみが声を掛ける。
「寒くない?」
「うん。平気だよ」
ひとみの背中にピトッと顔をつけて梨華が頷く。
ひとみとくっついているだけで心は温かいのだが、どうも
そんなセリフ言えそうにない。梨華はひとみに回している腕の力を
キュッと少しだけ強めた。
「私は漕いでるから暑いけど梨華は乗ってるだけだからね。
もうすぐ着くから…コレ忘れてた」
そう言ってひとみはコートからホットの缶紅茶を取り出す。
もうホットと言うよりは、コールドに近い状態になっていた。
- 297 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-150- 投稿日:2003/10/02(木) 19:15
- 「ありがと…」
「て言うか今更遅いよね。馬鹿だなぁ…」
そう言ってひとみは舌打ちをする。
「嬉しいよ。ひとみちゃん」
梨華は受け取ると既に温かいとは言い難い缶を握りしめた。
何より、ひとみの気遣いが嬉しかった。
- 298 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-151- 投稿日:2003/10/02(木) 19:16
- ―151―
高橋と松浦が駅前のファミレスに入り席に着くと、早速松浦は柴田に、
メールを入れていた。
「亜弥ちゃん打つの早いねー」
高橋は半ば感心したように呟く。
「もうね、日課なんだ。あゆ先輩とのメールは!」
送信すると松浦は携帯を畳む。
遠く離れた二人を結ぶ唯一の手段は、主にメールだった。
「電話とかしないの?」
「たまにするよ。でも声聞くと会いたくなっちゃうから…」
松浦は携帯を見つめる。すぐに着信が光り、松浦は携帯を開いた。
「おやすみなさい…。っと」
これで今日のメールはお終いらしい。いつまでもダラダラ続けるのは
お互い好きじゃないらしく、1日5通までと決めているとか。
- 299 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-151- 投稿日:2003/10/02(木) 19:17
- 「亜弥ちゃんと柴田先輩って遠くても、ちゃんと繋がってるんだね」
高橋がしみじみと言うから松浦はクスクスと笑う。
「距離なんて関係ないよ。想う気持ちが大事なの…。なんてね」
松浦は自分で言って照れてしまう。
高橋から見ても松浦は可愛いと思うし、遠距離恋愛なんて、それだけでも
大変なのに、こうして頑張っている松浦を見ていると、自分は、どうなんだ?
と自問自答してしまう。これから、どうしたいのか? 先の事を考えると
高橋は不安になってしまう。
そんな浮かない高橋を見て、松浦は渇を入れる。
「愛ちゃんだって、矢口さんや後藤さんがいるじゃん。
それに明日はパーティ呼ばれてるんでしょ?」
「ま、まぁね。何故か私だけ。何か場違いって感じだし緊張しちゃうよ」
高橋は両頬に手を当てて首を横に振る。
「愛ちゃんが緊張して、どうするんだ〜!」
松浦は高橋の頭をコツンとやりながら笑った。
- 300 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-151- 投稿日:2003/10/02(木) 19:17
- 「そうなんだけどさ」
「私は明日も仕事だから、さっき梨華先輩にプレゼント渡して来た。
吉澤さんより先にって言うのは、ちょっと気が退けたけどね」
松浦は変なところで義理堅い。尤も梨華の事は今でも想い慕っているのだから
そのくらいは当然なのだろう。
「亜弥ちゃんは前向きだねぇ」
高橋は苦笑い。
「愛ちゃんが暗いんだよ。まだ矢口さんいるのにさ。贅沢だぞ〜」
そう言ってまた松浦は高橋の頭をコツンとやる。
そうなのだ。現に遠いところにいる柴田とうまくやってるらしい松浦に
励まされている自分は情けないと高橋は思う。
「暗くなるのは、まだ早いよね。うん。よし、食べよう」
丁度運ばれて来たので、話は一旦中断された。
- 301 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-152- 投稿日:2003/10/02(木) 19:18
- ―152―
梨華を送り届けると、ひとみは、そのまま帰ろうとする。
「明日の事もあるし、今日はコレで!」
早々に帰ろうとするひとみに梨華は声を掛ける。
「あ、ひとみちゃん。お茶くらい飲んでいって?」
やっぱり悪いかなと思いながら梨華は引き留める。
折角会ったのに、送ってくれるだけで終わりなんて寂しすぎる。
明日も会えるけれど、二人きりではないし。なんて我が儘だろうか。
「ありがと」
梨華は笑顔になるが…。
「でも、あがっちゃったら帰りたくなくなっちゃうから…」
梨華はまた寂し気な表情に変わる。
- 302 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-152- 投稿日:2003/10/02(木) 19:19
- 自転車を引いているひとみの腕を掴んだ。
「べ、別に帰らなくたって、いいじゃない…」
俯きながら梨華は呟く。
ひとみの顔をマトモに見れない。
「梨華…?」
優しいひとみの声が梨華に届く。
ひとみは自転車を置くと、ふわっと梨華を優しく抱きしめた。
「そんな事、梨華に言われたら…帰れないじゃん。
それに…お茶だけじゃ…済まないし…さ……」
「ひとみちゃん…」
梨華は顔を上げ、自然と二人のくちびるは重なる。
石川梨華。16歳最後の夜も甘く過ぎていく予感がした―――。
- 303 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-153- 投稿日:2003/10/02(木) 19:20
- ―153―
そんな甘いひとみと梨華とは逆に、矢口と真希は―――。
カラカラと倒れた自転車のタイヤが回る中、下敷きになった矢口は
真希に怒鳴り返す。
「あぶねぇだろっ! いてっ…」
起き上がろうとして、矢口は顔を顰める。手から血が滲み出ていた。
「だって羨ましかったんだも〜んっ」
「も〜んじゃねぇよ。早くどけよ!」
「も〜んっ!」
真希はプーッと膨れて埃を払うと自分も身体を起こした。
矢口は腰をさすりながら、自転車を起こす。
- 304 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-153- 投稿日:2003/10/02(木) 19:21
- 「このチャリお祓いした方がいいかもな…。それか卒業したら捨てるか」
一度真希に足蹴りされて転倒されてから、どうも歪んでいるらしく
乗りづらくはあったのだが、今倒されたので、更に歪みが酷くなりそうだ。
「捨てるんなら私にちょうだい」
「おい、そういう問題かよ。で、お前は平気か?」
矢口は文句を言いながら、真希の身体を見回す。
「ちょっと擦りむいたけど平気。やぐっつぁんは?」
「ん。おいらも平気だよ」
「嘘。さっき手から血が出てたじゃん」
そう言って矢口の手を引き寄せる。
「こんなの舐めときゃ治るさ」
「じゃぁ私が舐めてあげる」
いいよ。と矢口が言おうとするより先に真希が強引に矢口の手を口に
持っていっていた。
- 305 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-153- 投稿日:2003/10/02(木) 19:21
- 「あ…」
ぬるりと生暖かい真希の舌が矢口の傷口に当たると、矢口は肩を竦めた。
恥ずかしいような何とも言えない気持ちが矢口の中に広がる。
「い、いいったら!」
「………」
真希は無言で傷口を舐め上げる。
それをじっと見つめる矢口。
「多分、やぐっつぁんよりも私が舐めた方が早く治る気がする」
顔を上げて、真希は微笑む。
「んな訳ない…だろっ…」
矢口は顔を背ける。照れ隠しだ。ほんのり顔も赤い。
「ま、まぁでも、ありがとな」
まだ手を握っている真希の手から強引に振り払うと矢口はポケットに
手を突っ込んだ。
- 306 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-153- 投稿日:2003/10/02(木) 19:22
- 「うち帰ったらちゃんと消毒しないとね」
「あぁ…」
「やぐっつぁん。手は大事なんだから」
「ごっつぁんも危ない行為は、しないようにな」
元はと言えば、真希が悪いのに、いつも矢口は決して真希が悪いとは怒らない。
それに真希も悪気があっての事ではないから、矢口も口では文句を言っても
心から怒っている訳ではなかった。
「うん。ごめんなさい…」
真希は素直に謝る。
「素直でよろしい。おいらは、ごっつぁんの事愛してるからな」
矢口はさり気なく早口で言ってしまうと、自転車にまたがった。
「え?」
「さぁて、帰るか〜。ごっつぁん早く後ろ乗れってば」
「今、何言った?」
自転車の前に真希が立ちふさがる。
聞いてなかったのかよ? と矢口は内心舌打ちする。
「なんも言ってないから」
- 307 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-153- 投稿日:2003/10/02(木) 19:23
- 今度は自転車のハンドルを掴んで放さない真希に、また矢口は不安がよぎる。
「なんか言ったよ。ごっつぁんの事なんとかって」
「き、聞こえてんじゃんよ。何度も言わすなって」
矢口はカーッと顔が熱くなる。
恥ずかしいから早口で言ったのに、これでは意味がない。
「もう一度聞きたいぃぃ」
ガクガクとハンドルを揺さぶられて、また倒れる恐怖が矢口を襲う。
「ごっつぁんの事、愛してるって言ったの! 聞こえた?」
矢口はヤケになって叫ぶ。
真希の頬が見る見る緩んでくる。
「んにゃぁ〜〜〜っ。ゴトーも、やぐっつぁん愛してるっ!」
パッとハンドルを放し、真希は矢口に両手を広げて抱きついた。
「あっ……」
そして、二人はそのまま、またバランスを崩して道路にまた、
ご対面したのだった―――。
- 308 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/10/02(木) 19:24
- 更新しました。
やぐごま、どうしても甘くなくない…w。
>292 タケさん
高橋は今後嫌でも出て来ますのでw。て言うか書かせて下さい!
マコは、やっぱり紺ちゃんと…(ry。
>293 駒勇明日香さん
ありがとうございます。今後も宜しくお願いしまつ。
- 309 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/10/02(木) 23:18
- 更新お疲れ様です。
>やぐごま
十分甘い気が・・・(笑)やぐっつぁんの強がりがカワイイかと・・・
>いしよし
やっちゃうんですかぁ。梨華ちゃんの誘い受け?(爆)良いなぁ・・・
>あやしば(しばあや?)
遠距離の辛さ出てますね。
「声聞くと会いたくなっちゃうから…」って言われて見たい・・・(爆)
今の所柴ちゃんになりたい今日のヒラッペでした。(爆)
果たしてまともなレスになってるのか!?
- 310 名前:マイキー 投稿日:2003/10/05(日) 13:58
- 更新お疲れ様です!
ヒサブリに読んだら、こんなにあったんでビックリしました(笑)
・いしよしの今後は…どぅなるんですかぁ〜?!(by石川)
・やぐごまはいつでも輝いてますね。道路に対面ってのに笑ぃますた(w
それぞれのカッポーは甘甘です!!続きも頑張って下さい(//^▽^)〜^●)
- 311 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-154- 投稿日:2003/10/11(土) 16:09
- ―154―
1月19日。梨華の誕生日当日の朝―――。
梨華はメールの着信音で目を覚ました。
『梨華先輩。おはよう&おめでとうございます!
もう起きてますかぁ?また遊んで下さいね。隣りの吉澤さんにもヨロシク。亜弥』
「あ、亜弥ちゃん…」
梨華は途端に真っ赤になる。
昨日帰り際、亜弥から一足先に誕生日プレゼントを貰った時にも言われたのだが
『朝一で、梨華先輩に直接届けたいんですけど、もしかしたら一人じゃない
かも知れないですもんね』
なんて含んだ言い方をするから、梨華は「そんな事ないよ」と否定したものの
結局、亜弥の予想通りの結果になってしまった。
それも梨華が引き留めてである。
今日は昼から梨華の家でパーティが開かれる事になっているから
そろそろ起きる時間でもある。
梨華は軽く伸びをすると、部屋が冷えていて寒い事に気が付いた。
それもそのはず、二人とも何も身につけていないのだから。
梨華は身震いすると、隣りでまだ寝ているひとみの寝顔を見つめた。
「ひとみちゃん…」
梨華は、そっと屈んでひとみの寝顔にキスを落とした。
- 312 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-155- 投稿日:2003/10/11(土) 16:09
- ―155―
一番緊張しているかも知れない高橋は、かなり早くから目が覚めていて
特に何もする事もなく、朝からバイトで入っている亜弥のコンビニへと向かう。
「亜弥ちゃん働き者だねぇ」
感心するように高橋は呟く。
「愛ちゃん、こんなトコにいないで梨華先輩の家に行って手伝って来たら?」
松浦は手を休めないで言うと後ろから保田の声がする。
「高橋、ヒマなら手伝いなさいよ」
「あ〜すみません。やっぱり帰ります」
高橋はお辞儀をすると、出て行こうとする。
「高橋、後でまた寄りな。差し入れ持たせるからさ」
保田は笑いながら言う。
「ありがとうございます。また来ますね」
高橋は、そそくさと出て行った。
「全く落ち着きがないわね高橋は。主役でもないのに…」
高橋の後ろ姿を見ながら保田はぼやいた。
- 313 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-156- 投稿日:2003/10/11(土) 16:11
- ―156―
出たものの、まだ時間は1時間以上もある。
仕方なく高橋は、駅前のコーヒースタンドに入ろうとした。
一人で入るのは気が退けるが、時間つぶしの為だ。仕方がない。
と、ガラス張りの店内に矢口がいるのを見つけた。
「矢口先輩…」
高橋は途端に笑顔になると、駆け寄って矢口の目の前で手を振った。
矢口も気づいて「あ」と言う顔をした。
店内に入ると、矢口は荷物を持ってくれた。
相変わらず優しい。
「高橋、お前早いなぁ…」
しかし高橋は手に絆創膏をしている矢口の手を見て心配そうな顔をした。
「矢口先輩。手、大丈夫ですか?」
「あ、コレ? ん、平気平気。昨日の夜、転んじゃってさ」
さすがに真希に押し倒されたとか、二回も。なんて事は言わない矢口だったが
かなり打ったので、打撲の方が酷かった。
「それより、高橋。時間、まだ早いだろ?」
余り触れて欲しくない矢口は話を変える。
- 314 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-156- 投稿日:2003/10/11(土) 16:12
- 「矢口先輩も。まだ早いじゃないですか」
「おいら、何もやる事ないからさ。ごっつぁんも忙しいから来ないでって
言われちゃってるから。だから…暇つぶしだよ」
「私もです。早く目が覚めちゃって。でもやる事ないんで出てきちゃいました」
「そっか。なんか悪いな。折角休みなのにな」
矢口が申し訳なさそうに言うので、高橋はブンブンと首を横に振る。
「全然です。緊張しちゃってますけど、すっごく嬉しいですよ。
矢口先輩のお祝い出来るなんて、夢にも思わなかったから」
「おいおい大袈裟だよ。それにおいらは、あんまりこういうのって好きじゃ
ないって言うか苦手なんだよな。ここだけの話だけど」
「そんな事言わないで下さい! 私、楽しみにしてるんですから」
「そうだよな。悪い悪い」
でも今、二人で居られる事が一番嬉しいのかも知れないと高橋は思う。
「でも、正直言うと、今が楽しいです。嬉しいです」
「ん?」
矢口はコーヒーに口を付けながら高橋を見る。
「だって…矢口先輩と二人っきりだから」
「ぶっ…」
矢口はコーヒーを吹き出しそうになる。
「私、やっぱり矢口先輩が好きですから。で、告白しても、こうして
前と同じようにしてもらってて、凄いありがたいし嬉しいです」
「た、高橋…」
矢口が少し困った顔をしたように見えたので高橋は急に声のトーンを落とした。
- 315 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-156- 投稿日:2003/10/11(土) 16:12
- 「あ、ごめんなさい。迷惑ですよね…」
高橋は何で急にこんな事話し出したのか自分でも不思議に思う。
昨日、松浦と夜、食事をした時の話がいけなかったのか。
「や、迷惑じゃないけど、なんでおいらなのかなぁってさ」
矢口はコーヒーのカップをいじりながら答える。
「ホントですね。なんで矢口先輩なのか…」
高橋もフッと笑い、ガラス越しに映る外の風景に目をやる。
「幸か不幸かって感じだよな」
矢口は笑う。
「でも、結果がどうであれ、そんな自分が好きです。
矢口先輩が好きな自分が大好きです」
「高橋…」
さっきから傍目で聞いていると、なんだか恥ずかしい台詞をいっぱい
言っているなと高橋は思うけれど、今後あまり矢口と二人で会う機会も
ないだろうと思い、高橋は思っている事をつらつらと吐きだしていた。
しかし、それも矢口に遮られる。
「分かった。高橋の気持ちは良くわかった。もうこれ以上言わないでくれ。
恥ずかしいからさ」
案外、矢口も照れ屋だから、素直に言葉にされると、かなり弱いのだ。
「はい…」
高橋も言い過ぎたかなと思い、途端に黙り込む。
「でも、ありがとう。嬉しいよ。ガラじゃないけどな」
矢口はそう言うと残りのコーヒーを一気に飲み干した。
- 316 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-157- 投稿日:2003/10/11(土) 16:13
- ―157―
その頃、真希はキッチンが戦場と化していて、ケーキを焼いたりと
忙しく手を動かしていた。
これでも真希は料理が得意である。今日のバースデーケーキは真希の担当である。
「よっしゃぁ! あとはトッピングだけだね」
出来映えに満足すると、真希はヘヘンと言わんばかりの笑みを浮かべた。
- 317 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-157- 投稿日:2003/10/11(土) 16:14
- もう一人の主役の梨華は、一旦ひとみが家に戻った隙に、コンビニへと向かう。
松浦に直接お礼を言うのと、買い出しのためだ。
自動ドアが開き「いらっしゃいませ」といつもの松浦の明るい声が出迎えてくれた。
「亜弥ちゃん、ありがとね」
「あは。メールの通りだったですか?」
松浦はニコヤカに返す。
「もう。亜弥ちゃん!」
言い返せないのが辛いところだ。
「メールの通りって何よ?」
「や、保田さん!」
背後から保田の声がして、梨華はビクついた。
「な、なんでもないです」
「それより、さっき高橋に言ったんだけど、差し入れ持ってきなさいよ」
「高橋さん来たんですか?」
こういう話で余り突っ込まれるのは苦手だから話が切り替わって梨華はほっとする。
「凄い早くに来てたわよ。特別に石川の買い物チャラにしてあげるから
好きなもん買っていいわよ」
「保田さん…」
「保田店長優しいですね。梨華先輩、思う存分いただいちゃって下さいよ」
「こら、松浦!」
「へへ」
「ありがとうございます」
保田の気持ちが嬉しい梨華は素直に頭を下げた。
- 318 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-158- 投稿日:2003/10/11(土) 16:15
- ―158―
梨華が買い物をしていると、家から戻ってきたひとみも、こちらに来て、
高橋も真希を迎えに戻った矢口と別れて、こちらに来たところだった。
「梨華。カゴ持ってあげるよ」
「ひとみちゃん」
梨華は振り返り、ひとみに微笑む。
そんな様子をレジの方から見ている松浦は、ニヤニヤと呟く。
「相変わらず仲良しさんだよね。梨華先輩と吉澤さん」
「仲良いよねぇ…」
高橋も相づちを打つ。しかし、さっき自分も矢口と二人で過ごせたからかなり
満足の高橋だ。自然と笑みも零れる。そんな高橋を松浦が見逃す筈もなく突っ込む。
「なんかさっきより嬉しそうだね、愛ちゃん」
「え? そんな事ないよ」
しかし顔は笑顔のままだ。
- 319 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-158- 投稿日:2003/10/11(土) 16:15
- 「矢口さんと会ってたとか?」
もちろん、松浦は半分当てずっぽうなのだが、高橋が笑顔になる要因と
言ったら、矢口くらいしか思い当たらないから、そう言ったのだが。
「わっ。どうして分かったの? 亜弥ちゃん」
なんて、高橋は大きな目を更に大きく見開いて、あっさり認めるから
松浦の方も、ちょっとばかり驚いてしまう。
「ま、マジなんだ」
「え? なにそれ」
「愛ちゃんの笑顔の素は、やっぱり矢口さんなんだねぇ」
うんうんと頷く松浦に、高橋は真っ赤になりながら手を左右に振った。
「や、違くないけど…や、やだなぁ、亜弥ちゃん」
「いいじゃない。好きな人がいるって事は素敵な事だもん。
愛ちゃんの笑ってる顔好きだよ。松浦は…」
「ひゃぁ〜照れるがし…」
高橋は更に真っ赤になって両頬を手で当てた。
「がしって、なんだよ、がしって」
松浦は苦笑いしていた。
- 320 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-159- 投稿日:2003/10/11(土) 16:17
- ―159―
「しめて1444円。って石川、こんなもんでいいの?」
会計を済ませて、保田の方が心配になって聞いてくる。
「だから、もっと買おうって言ったのに」
梨華の隣でひとみが脇腹を突く。
「いいです。また足りなくなったら、ちゃんと買いに行きますから」
やはり梨華は保田に遠慮してしまう。
「じゃぁ次は119円だけオマケしてあげる」
「119円?」
「石川の誕生日に因んで、119円よ」
「せこい…」
呟くひとみに、保田の目が光った。
「金額じゃなくて気持ちの問題よ。分かってる? 吉澤」
「じょ、冗談ですよ! 保田さん…。ありがとうございます」
- 321 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-159- 投稿日:2003/10/11(土) 16:17
- 店を出る時、ひとみは松浦に一言言われた事が気になり梨華に訪ねてみる。
「ねぇ梨華、松浦さんにさぁ、さっき『吉澤さん! 今晩も頑張って下さいね』
なんて言われちゃったんだけど、どういう意味なんだろ?」
ひとみは素で言っているのか、首を傾げている。
それを聞いた梨華の方が真っ赤っ赤だ。
「亜弥ちゃんたら…」
「今晩もって?」
「知らないよ〜…」
梨華は、そそくさと前を歩く高橋の方に行ってしまった。
- 322 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-160- 投稿日:2003/10/11(土) 16:18
- ―160―
梨華の家に戻ると、既に矢口と真希が着いていてドアの前で待っていた。
「お前ら遅いぞ〜」
「ごめんなさい…」
慌てて梨華は鍵を取り出す。
中へぞろぞろと5人が入る。さすがに5人は狭いと言う感じだ。
「じゃぁ、早速準備しようぜ〜。って言っても並べるだけか」
矢口は腕まくりまでして張り切ってる様子。
色気より食い気? の5人の誕生日パーティが、これから始まろうとしていた。
- 323 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-161- 投稿日:2003/10/11(土) 16:20
- ―161―
「では、まず乾杯の音頭を…」
狭いテーブルの上には、真希が作ったケーキやら、差し入れの
ジュースやら、お菓子やら所狭しと賑わっている。
何故か仕切ってしまう矢口は真希におとなしくしてろと窘められる始末。
「石川先輩とやぐっつぁんのお誕生日に乾杯!」
オレンジジュースで乾杯をし、ひとみは一気に飲み干した。
「朝から何も食べてないからさ。お腹空いちゃってたよー」
早速、ひとみは、摘もうとするが伸ばした手を真希に、はたかれてしまう。
「よっすぃー! ただの飲み会じゃないんだから順番があるでしょ!」
「ん?」
「まずは、ケーキに蝋燭立てて、ハッピーバースデー歌って、で、プレゼントを
渡してって…あるじゃん。それからだよ」
何故か仕切りたがる真希は、ピシャリと言ってのける。
そういう順番でないと不満らしい。
「はぁーい」
ひとみも大人しく従う事にする。
- 324 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-161- 投稿日:2003/10/11(土) 16:20
- 「でも幾つ蝋燭立てるの? 17と18でしょ。…35本?」
指折り数えて、ひとみは目を丸くする。
それほど大きくないケーキの上にそんなに乗る訳もない。
「気持ち的によ。7本でいいの。今日は」
「どうして?」
「やぐっつぁんは、明日またゴトーが個人的にやってあげるから」
「え? そうなんだ」
ひとみは矢口の方を見やる。
初耳の矢口も、同じような顔をして呟いた。
「じゃぁ別に今日は石川だけで良かったじゃんかよ」
矢口はブツブツ文句を言い始める。それに正式には矢口は明日が誕生日だ。
「一緒に祝った方が楽しいでしょ? やぐっつぁん文句言わないの!」
「わ、わかったよ」
矢口の隣りに座っている高橋はクスクスと笑っている。
「まぁ歌だけは歌ってあげるけどね」
「いいよ。別に…」
矢口と真希がやりとりしている中、ひとみと梨華は、ちゃっかりと
もう甘いムード漂う雰囲気だ。
- 325 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-162- 投稿日:2003/10/11(土) 16:22
- ―162―
大きい蝋燭を真ん中に1本、その回りに7本の小さい蝋燭を立てて火を点ける。
全員がハッピーバースデーを歌い、梨華が火を消した。
口々にお祝いの言葉が飛び、拍手が響き、クラッカーが鳴った。
「ありがとう。すっごく嬉しい」
「まぁアレだな。ホントは吉澤と二人で過ごしたいんだろうけど。
悪かったな」
そう言って矢口はプレゼントを渡した。
「え? 矢口先輩からも?」
驚く梨華に、矢口は大したもんじゃないからと言う。
開けて見ると、ピンクのプーさんのストラップだった。
「石川、ピンク好きだって聞いてたからよ」
「ありがとうございます」
「やー。被りそうだった!」
ひとみは焦りながら、梨華にピンクのプーさんのぬいぐるみを梨華に渡す。
「ひとみちゃんも?」
「また部屋にピンクが増えたね」
なんてひとみも嬉しそうだ。
- 326 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-162- 投稿日:2003/10/11(土) 16:24
- 「ありがとう」
梨華も嬉しそうに受け取る。
「ゴトーもピンクだよ〜。ただし、イヒヒだけどね」
真希はニヤニヤしながら綺麗にラッピングされた物を差し出した。
「ごっちんも…」
こうもピンクづくしだと梨華も苦笑いするしかない。
でも好きなのだから仕方がない。
早速開けて見ると―――。
「ごっちん……」
梨華は顔を赤く染めながら、どう反応していいのか迷ってしまう。
「お前…」
矢口も絶句。
「ちょ、ちょっとシーンとならないでよ。笑ってよ、そこ!
いいでしょ? 夜、これで萌えちゃったりしてよ。可愛いと思うんだけどなぁ」
ピンクのスルーのアダルトな下着に、梨華よりもひとみの方が反応
していたりして、高橋も「はぁ…」と溜息をつく。
「いいよ〜ごっちん。ありがと!」
梨華よりも先にひとみが何故か感謝を述べる。
「な、なんでよっすぃーがお礼言うのよ!」
「吉澤、お前石川で想像しただろ! このスケベ!」
「ち、違いますよ! って違わないけど」
「ひとみちゃん!」
「や、それ梨華に合うと思うよ」
ひとみはニヤニヤしながらフォローする。
- 327 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-162- 投稿日:2003/10/11(土) 16:24
- 「あれでしょ。どうせ『梨華は何着ても似合うよ〜』ヘラヘラ
っていうオチでしょ?」
真希も突っ込むと、ひとみは否定もせずに、堂々と頷いた。
「ヘラヘラは余計だけど、そうだね」
「ち。惚気やがって畜生」
第二の主役? である筈の矢口も、早々に当てられて面白くない。
そして、最後の高橋は、プレゼントを出しにくくなってしまう。
「あのー…盛り上がってるところ申し訳ないんですけど、コレ…」
そう言っておずおずと差し出す。
包みを開く前から、高橋は早口で捲し立てた
「子供っぽいかも知れないんですけど、ペアなんです。使ってくれなくてもいいです。
矢口先輩達も一緒です。なんか…ありきたりですみません」
中から出て来たのは、ピンクとブルーのマグカップと歯磨きセット。
「嬉しいぞ。高橋。ありがと。ちゃんと名古屋にも持っていくからよ」
矢口は嬉しそうにそう言うと高橋の頭を撫でた。
「矢口先輩…」
それだけで高橋はポーッとなってしまう。
「高橋さん、ありがと。うちで使わせてもらうね」
「やっぱり梨華がピンクだよね」
なんてひとみも言ったり、真希は真希で、そこにあると生々しいとか、また
言っていたり、まだ何も食べていないのに、もう盛り上がっている。
- 328 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-163- 投稿日:2003/10/11(土) 16:26
- ―163―
「楽しそうでいいな〜お前ら…」
別に嫌味ではなく矢口は思った事を口にしたまでだが
「あ、矢口先輩にもプレゼントありますよ。私と梨華から…」
そう言って矢口に渡されたのは、プーさんのパジャマ。
「プーさんじゃん。ありがと」
よほど好きなのか、やっぱり矢口はプーさんが好きらしい。
「あ、ゴトーからは明日、やぐっつぁんちに、おっきいシゲルが
届くからお楽しみにね!」
「シゲル?」
矢口は怪訝そうな顔をする。
- 329 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-163- 投稿日:2003/10/11(土) 16:26
- 「おっきいおっきいプーさんだよ。やぐっつぁんにあげるって前言ったじゃん」
「マジで?」
本気で言っていた訳ではないのに、真希は本当にあげるつもりでいたらしい。
「私、それに入って名古屋まで行くからさ、連れてってよ」
「はぁ?」
「後藤先輩、入らなくても多分、矢口先輩は連れてってくれると思いますよ」
「高橋! ま、まぁちょくちょく東京には戻るからよ。
それに免許も取ろうと思ってるしな」
「マジで〜? 危ないよ、やぐっつぁん」
「どういう意味でだよ?」
「大体、運転席から見えるの?」
「し、失礼だな。そんなに小さくないやい!」
それを聞いていたひとみはゲラゲラ笑う。
「も〜、ごっちんと矢口先輩って、いっつもこんななの? 面白すぎるよ〜」
「漫才みたい」
「ち。石川まで」
いつもからかわれて矢口は面白くない。
- 330 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-163- 投稿日:2003/10/11(土) 16:27
- 「矢口先輩、気を付けて下さいね。先輩なら大丈夫ですよ」
高橋は、やはり矢口想いだから、一人元気づける。
「ありがと高橋。やっぱりお前は良くおいらの事分かってるよな」
固く高橋と握手を交わしながらうんうんと頷く。
その手を無理に外させ、高橋と握手をする真希。
「冗談に決まってんじゃん。子供なんだから。
愛ちゃん仲良くしようねぇ」
ね〜! なんて笑顔を振りまきながら真希は手をぶんぶん振る。
高橋はどう反応してよいのやら、困った笑顔を浮かべていた。
「子供は、ごっつぁんだっつーの」
「まぁまぁ二人とも、夫婦喧嘩はやめて、食べましょうよ」
ひとみはやはりお腹が減っているらしく、早く食べたいから無理矢理
中断させた。
そして賑やかに、食べながら時間は過ぎていった。
- 331 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-164- 投稿日:2003/10/11(土) 16:28
- ―164―
「じゃぁまたな!」
そう言って矢口、真希、高橋が出て行くと一気に静かになった。
有る程度、真希も片づけてくれたので、そんなに部屋は散らばっていない
どころか逆にいつもより綺麗になっているのは気のせいか?
「お疲れ様!」
ひとみは梨華に優しく声を掛け、梨華を引き寄せた。
「ひとみちゃんもお疲れ様でした。そして、ありがとう」
「どういたしまして」
無言で暫く抱き合う二人。そしてどちらともなく二人のくちびるは引き合う。
「やっと二人になれたね…」
耳元でひとみが囁くと梨華はコクリと頷いた。
耳に頬に首にひとみのくちびるが熱く落ちていく。
「ぁっ…」
梨華は堪えきれずに声を漏らす。
「梨華…」
こんな時間から…と思うのだけれど、ひとみはキスだけでは済ませて
くれそうになかった。
「ん…」
そのままベッドに倒され、ひとみのくちびるは、鎖骨に滑り落ちていった。
- 332 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-165- 投稿日:2003/10/11(土) 16:28
- ―165―
高橋を送り届けてから、矢口と真希も家へと戻る。
「今日は楽しかったよ。ありがとな。企画してくれて」
「うん」
真希も素直に受け取る。
「やぐっつぁんは本当は明日だからね。明日は私が思いっきり奉仕してあげるから」
奉仕って何だろう? なんかあまり良くない予感がするのは気のせいだろうか?
「あ、ありがと…」
「なんで、そこでどもるのよ!」
「や、何かなぁって思って想像したら身震いがしたからさ」
「失礼ね、いつも」
「んなことねぇよ…」
「また昨日の二の舞になりたい?」
「え?」
昨日の惨劇を思い出す矢口は慌てて自転車に飛び乗った。
「これ以上チャリ壊すのだけは勘弁な!」
矢口はそう言いながら真希を残して走り去っていく。
「壊してないよ! って待ってよ!!」
真希は矢口の後を追い掛けた。
- 333 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/10/11(土) 16:37
- 少し長目に更新しました。
やっと石川さんのBDが終わりました。
最近、松浦&高橋or矢口&高橋書くのが楽しいんですが…。
>309 ヒラッペさん
やぐごま甘いですかね。ほろ苦い感じを目指してますが…(どこが?)
いしよしも、そういうシーンは、なるべく避けようかと。
やる事はやってるんですけどねw。
あやしば。柴ちゃんは、いつ出てくるんでしょうか?もう少し先かな。
>310 マイキーさん
いしよしは、甘いです。ずっとずっと…。
やぐごまも良い感じで進んで行くと思います。多分(汗)。
- 334 名前:タケ 投稿日:2003/10/11(土) 16:54
- やぐたかキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
矢口さんに対して真っ直ぐな高橋さんに一票(意味不明)
それにしても後藤さん、奉仕って・・・
続き期待してまーす!!
- 335 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/10/12(日) 22:47
- かなりBDも終わり、終盤に近づいてきた・・・
>ほろ苦
かなり甘いコーヒーに仕上がってる気が(笑)
ただ、やっぱり名古屋にやぐっつぁんが行く時には苦いお話になってくるのでしょう。
(と勝手に期待)
>後藤さんの「奉仕」って・・・
やっぱりあの奉仕ですよね?(爆)
期待しちゃうなぁ〜(鼻血
かなり次の展開に期待してます。
でわ。
- 336 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/15(水) 11:12
- 昨日見つけてから読んでやっと追いついた。
疲れた。
おもしろいです。
- 337 名前:マイキ− 投稿日:2003/10/15(水) 15:59
- (^〜^●長めの更新お疲れ様です^▽^)
この後のいしよしの展開にキターィ!!(゜皿゜//)
そしてゴッツアンの奉仕にもキターィ!!(←ゥザッ;)
いつも意味不明でスンマセ…。
- 338 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-166- 投稿日:2003/10/21(火) 23:41
- ―166―
梨華が目を覚ますと、既に夜も遅くなっていた。
本当は、あの後、保田と松浦にお礼にもう一度行こうと思って
いたのだが、結局ひとみと―――。
ひとみに求められると、どうしても拒否出来ない梨華は、そのまま
ひとみと愛し合う事、数時間―――。
ふと我に返ると、自分の行為に恥じらいを覚える梨華だったが
やはり、ひとみを愛しているので、そんな自分も好きだったりする。
「また一つ梨華の方がお姉さんになっちゃったね」
自分では、あまり気にしていないのだが、ひとみにそう言われ、
ひとみは、結構自分が年下である事を気にしているようだった。
たった3ヶ月なのに…。
「ひとみちゃん…」
額にかかっている前髪を軽く指で梳きながら、梨華は、ひとみの額に
キスを落とした。
- 339 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-166- 投稿日:2003/10/21(火) 23:42
- 昨日愛されて、さっきも愛されたのに、何故だか物足りない。
昨日は本当に久しぶりだったけれど、後で聞いたら、ひとみは禁欲を
しようとしていたらしい。願を掛けるためにと。
しかし、それも梨華の誘いで、すぐに打ち砕かれてしまうのだが
ひとみが甘えん坊と言うよりは、やはり自分も甘えたがりである事が最近
良く分かるようになった。
「愛されるよりも…愛したい…」
梨華は呟くと、ひとみの鎖骨に少しだけ強く吸い付けた。
すぐに白いひとみの肌は赤い痕が残る。
「愛のシルシ…」
そこを指でなぞる梨華。
「ひとみちゃん…」
梨華はひとみの上に乗ると屈んでひとみのくちびるにキスをした。
- 340 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-167- 投稿日:2003/10/21(火) 23:42
- ―167―
夜遅く後かたづけをしながら保田は、ぼやく。
「全く石川、『後でまた来ます』とか言って結局来なかったわね」
一緒に片づけを手伝っている松浦は梨華のフォローに回る。
「多分、盛り上がってそれどころじゃなかったんでしょうね」
「高橋は律儀に挨拶に来たのに?」
「ほら、お盛んだから…。吉澤さんが手放さないんですよ、きっと」
なんだ、夕方からひとみは頑張ってしまったのか…と松浦は苦笑いする。
「松浦! アンタも、そういう言葉使わないの! まだ中学生でしょ?
ま、まぁ中学生のアンタを遅くまで働かせてる私もちょっと心痛むけどね」
「保田店長には感謝してますよ。ありがとうございます。
無理聞いてもらって…」
「松浦も頑張ってるからね。ちゃんとその点は評価してるから。
これからも頑張りなさいよ。もうあがっていいから。お疲れさん!」
「はい。ありがとうございます」
松浦は嬉しそうに言うとお辞儀をした。
- 341 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-168- 投稿日:2003/10/21(火) 23:43
- ―168―
翌朝、梨華は松浦が出勤するより前に、松浦の家を訪ねる。
ひとみは、まだ良く寝ていたから起こさないようにしてメモを置いておいた。
「梨華先輩!」
特に連絡するでもなく来たので、松浦は少し驚いたようだ。
「昨日は、ごめんね」
そう言って申し訳なさそうに手を合わせて謝る梨華に、松浦は早速
梨華が自分のあげたピアスを付けてくれた事に気づく。
「早速付けてくれたんですね。嬉しいです」
思わず笑顔になる松浦に、梨華も微笑む。
「うん。ありがと亜弥ちゃん」
- 342 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-168- 投稿日:2003/10/21(火) 23:44
- 「昨日、保田さん来ないってぼやいてましたけど、適当に言っておきました」
一緒に仕事場へ行きながら、松浦は答える。
「ごめんね。亜弥ちゃん。挨拶に行くつもりだったんだけど…」
「分かってますって。梨華先輩が幸せなら、それでいいです。
それに、昨日は楽しかったみたいだし」
「うん」
「愛ちゃんから聞きました。愛ちゃんも楽しかったって」
「そう。それなら良かった」
「それより、吉澤さん一緒じゃないんですか?」
一応松浦も気にしている。
「ひとみちゃん、良く寝てるから起こさないでそのまま来ちゃった」
「ふぅん…」
松浦はニヤニヤしている。
「なに? 亜弥ちゃん…」
「よっぽど疲れる事でもしたんですか?」
「え? も、もう亜弥ちゃん!」
一瞬間を置いて、梨華は少し口調を強くした。
- 343 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-168- 投稿日:2003/10/21(火) 23:44
- 「や、仲良い事は良い事ですよ。仮に、私が梨華先輩と付き合ってたとしたら…。
やっぱり…梨華先輩の事、手放せないと思いますし…」
「もう亜弥ちゃん何言うのよ!」
いつにも増して照れてる梨華が可愛くて、松浦は微笑む。
「私も梨華先輩の事、好きだから良く分かりますよ」
「亜弥ちゃん、今日おかしいよ…」
焦っている梨華に、松浦は更に追い打ちをかける。
「梨華先輩、綺麗になりましたよね。やっぱり吉澤さんのお陰かな?」
「亜弥ちゃん! いい加減にしないと怒るよ、もう…」
しまいには泣きそうになっている梨華に、松浦はようやく真面目に戻る。
- 344 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-168- 投稿日:2003/10/21(火) 23:44
- 「梨華先輩は、優しいから怒らないです。きっと。
17歳の梨華先輩に、もう一つプレゼントいいですか?」
「プレゼント?」
梨華が聞き返すのと同時に、松浦のくちびるが、梨華の頬に触れた。
「あ、亜弥ちゃん!!」
更に顔を紅潮させて梨華は叫ぶ。
「くちびるは、よしておきました。先に行ってますね。梨華先輩♪」
片手を挙げると、松浦は、颯爽と自転車を走らせていく。
「亜弥ちゃん…」
暫く梨華は、頬に手を当てて呆然としていた。
- 345 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-169- 投稿日:2003/10/21(火) 23:45
- ―169―
「お姉ちゃん起きなよ!」
妹の声で矢口は目を覚ます。
「うっせぇなぁ…」
うるさそうに矢口は布団を被るが、すぐにはがされてしまう。
「真希ちゃんも、そろそろ来るよ〜!」
耳元で叫ばれて、矢口は渋々目を開けた。
今日は、矢口の誕生日。昨日、梨華と一緒に誕生日会をしたものの
今日は今日で矢口家で、誕生日会があるのだ。
別にしてくれなくてもいいのに…と思うのだが、今年で最後だからと
気を利かせて? やるらしい。ありがた迷惑だと矢口は思うものの
やはり断る理由もなく、矢口は、のそのそと布団から抜け出した。
「あ〜ぁ、かったりぃなぁ…」
矢口は欠伸をしながら伸びをする。
ボーッとしていると、何やら入り口の付近で、ごそごそと音がした。
「ん?」
矢口が見ていると、いきなり大きなプーさんが顔を覗かせていた…。
「やぐっつぁ〜ん…」
プーさんが喋りながら矢口に突進してくる。
「ぐはぁ…」
そのまま、矢口は潰されベッドにひっくり返った。
- 346 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-170- 投稿日:2003/10/21(火) 23:46
- ―170―
「おめでとう、やぐっつぁん♪」
プーさんの手を取り、左右に振る真希に、矢口はようやく顔を上げる。
「順番が逆!」
「だって、でっかくて重いんだもん。シゲル…」
「シゲル…ね」
「うん。矢口家へ嫁いでいく、このプーさんの名前」
「名前まで付いてんのか…」
「おめでとう〜〜〜〜っ」
プーさん越しに、真希に抱きしめられる…筈がさすがに邪魔をして無理な様子。
ひとまず、プーさんを横に置くと、真希は矢口を抱きしめた。
「ありがとうな。ごっつぁん…」
普通に真希の胸の辺りに顔が来ていて圧迫している。
もごもごと矢口は言いながら、されるがままになっていた。
- 347 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-170- 投稿日:2003/10/21(火) 23:46
- 「今日もケーキ作って来たよ。下に置いて来たから、後で食べよう」
「いつも悪いな」
ようやく顔をあげ、矢口は照れ臭そうに頭を掻いた。
「やぐっつぁん元気ないなぁ。昨日ので疲れたとか言ったら殺すよ?」
拳を突き上げながら真希が不気味に微笑むから、矢口は身震いをする。
「んな事言わねぇよ。ごっつぁん元気だな…」
「今日も朝早くから起きてケーキ焼いて来たんだもん」
着替えようとする矢口の後ろから真希が抱きつく。
「ぅわぁっ!」
矢口はバランスを崩して、そのままベッドに顔を埋めた。
- 348 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-171- 投稿日:2003/10/21(火) 23:47
- ―171―
昼休み。最近は、松浦と高橋は学校以外でも時間が合えば一緒に
お昼を取る事が多くなっていた。
「亜弥ちゃんマジで?」
さっき、梨華にキスをした話をすると、高橋は思わず食べていた
おにぎりを落としそうになった。
矢口に頭を撫でられて喜んでいた自分とは大違いで、松浦は本当に積極的である。
尤も、松浦だから許される行為でもあるような気もするのだが。
「梨華先輩、凄い驚いた顔してて可愛かったぁ」
他人事のように言って松浦は思い出し笑いをしている。
「亜弥ちゃん、柴田先輩いるのに…」
有る意味ズルイと思ったり。ただ自分も矢口も真希も好きだから
あまり人の事は言えないのだが。
- 349 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-171- 投稿日:2003/10/21(火) 23:48
- 「愛ちゃんだって、後藤さんとキス出来たら嬉しいでしょ?」
「へ?」
そんな考えた事もない事を言われて、高橋は動揺した。
「梨華先輩は、今でも好きだから。別にほっぺただったらいいじゃない?」
くちびるでキスするのも友達同士、別に変じゃないと思っている世代だ。
あまり松浦には罪の意識は、ないらしい。
「そういう問題かなぁ…」
高橋は、意外に真面目だったりするので、松浦のようには考えられなかった。
「愛ちゃんも、矢口さんに、おねだりしてみれば?」
「おねだり!?」
キスだったら、前、一度限りのデートで、断られているし…。
と言ってもあれはカマをかけただけで本当にキスしようとしていた訳ではないが。
- 350 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-171- 投稿日:2003/10/21(火) 23:48
- 「まぁ愛ちゃんは出来なさそうだから、私がやったみたいに、キスしちゃうとか」
「も、もう亜弥ちゃん何言い出すのさ…」
高橋は動揺しまくりで、真冬だと言うのに汗を掻いていた。
「今日、矢口さんの誕生日なんでしょ? チャンスじゃん」
なんのチャンスなんだか?
「でも、昨日プレゼント渡しちゃったしなぁ」
まだぶつぶつ言う高橋に、松浦は背中を押す。
「矢口さん、あと2ヶ月ちょいでしょ? もう会える時間ないんだから
思いっきり想い出作っちゃいなよ。別にキスしたからって怒られたり
殴ったりしないでしょ?」
「それは、そうだけど…」
考えもしなかった事を言われて、高橋は考え込んでしまう。
「今夜、会う約束してさ、言ってみなよ。ね?」
いつの間にか、そんな話になり、高橋は松浦に肩を叩かれていた。
- 351 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/10/21(火) 23:49
- 更新しました。
えぇと…あまり吉澤さん出て来ません(汗)。
矢口とか高橋とか松浦がメインになりつつ…(大汗;)。
>334 タケさん
やぐたか書くのが好きなんでスイマセン。
奉仕…出来るのでしょうか?w
>335 ヒラッペさん
終盤まで、あと少しですね。
いしよし北海道旅行もありますが。
#ごっちん奉仕に期待ですか(爆)。
>336 名無しさん
1から全部読んでくださったんですか?(驚)
ありがとうございます。疲れさせてすみません(笑)。
>337 マイキ−さん
いつもレスありがとうございます。
いしよしは…(ry。って事でスミマセン。
松浦さんも積極的です。
- 352 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/10/22(水) 22:24
- 毎度毎度更新お疲れ様です。
亜弥ちゃんは果たして柴ちゃんなの?梨華ちゃんなの?
どっちが好きなの〜♪ですね。全く。
そこがカワイイんですが。
>いしよし北海道旅行
来ちゃうんだ・・・
北海道の雪を溶かすぐらいのアツアツぶりに期待します(笑)
>奉仕
いやぁ、とうとうごっつぁんの愛の劇場が・・・
次回の更新楽しみにしてます〜。
- 353 名前:タケ 投稿日:2003/11/16(日) 15:00
- 高橋頑張ってますね
次はキス!?
ちょっと期待してます(w
>矢口はバランスを崩して、そのままベッドに顔を埋めた
ついに奉仕でしょうか
(〜^◇^)<変態!!
失礼しました・・・
とにかく、続き期待して待ってます
- 354 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-172- 投稿日:2003/11/20(木) 19:57
- ―172―
パーティとは名ばかりで、単に仕事の父親を抜かして、母と妹と真希と
四人での食事会であった。
「いつもと変わりませんね」
なんて真希は言って、すっかり矢口家とうち解けていたが。
「お姉ちゃんが居なくなったら、真希ちゃんが家に来ればいいんだよ」
そんな事を言い出す妹に、母までも「料理もうまいし良い案ね」なんて
賛同して矢口は苦笑いだ。
再び部屋に戻った二人。
- 355 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-172- 投稿日:2003/11/20(木) 19:58
- 「シゲルがいると部屋が狭く感じるなぁ…」
シゲルを机の前の椅子に座らせると、シゲルの鼻を突いた。
「名古屋にちゃんと連れていってよ」
「邪魔だなぁ…」
「……っ」
矢口の言葉にジロリと睨む真希。
「う、ウソだよ。大事にするから」
矢口は慌ててシゲルを抱きしめた。
「やぐっつぁん!」
「な、なに?」
大声を出されて矢口は真希の方を向く。
「大事にする相手が違うでしょ?」
抱いていたシゲルをどかされ真希が向き直る。
矢口は、どうするのかと黙って見ていたら、そのままキスをされた。
- 356 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-172- 投稿日:2003/11/20(木) 19:58
- 「ごっつぁん…」
「今日はゴトーがやぐっつぁんを大事にしてあげる♪」
ニーッと笑う真希に矢口は昨日、真希が奉仕してあげるとか言った
言葉を思い出した。
「いいよ」と口を開く前に、真希のくちびるが矢口を塞いだ。
「む…っ」
驚く程積極的に攻めてくる真希のくちびるに、矢口はキスだけで
身体が熱くなるのを感じた。
しかし―――。
- 357 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-173- 投稿日:2003/11/20(木) 19:59
- ―173―
「真里、お客さんよ〜。小川さん…」
盛り上がりかけた瞬間に矢口の母の声で中断された。
意外な客に矢口は真希と顔を見合わせた。
「小川? 珍しいな。わりぃ。ちょっと待ってて」
真希を部屋に残して、下へ下りていった。
思わず矢口はくちびるを拭う。変に口だけが濡れているのも
変かと思ったからだ。
「矢口先輩…」
顔に似合わず、花束とケーキ? の箱を抱えて小川が玄関に立っていた。
「小川、どうしたんだよ」
「あの…ちょいと、いいですか?」
「あ、あぁ」
しかし小川はきょろきょろしている。
- 358 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-173- 投稿日:2003/11/20(木) 20:00
- 「なに? どうかした?」
「あの…後藤先輩…来てます…よね?」
「うん。それが?」
「と、ととりあえず、花束は、紺ちゃんから。あとコレは私の大好きな
カボチャのプリンです。適当に食べて下さい」
「あ、ありがと。ちょっと外出る?」
矢口は察して小川を促す。
母の「あがっていけばいいのに…」と言う声を背に受けて玄関を閉めた。
「矢口先輩、おめでとうございます」
「ありがと。良く知ってたな…」
「いろいろ情報は入って来るので…」
「そうか…」
「あの…。私、例の件、紺ちゃんに言ったんです」
「ん?」
矢口は小川の顔を見る。
「やっぱり…黙ってるの心に引っかかって。
矢口先輩は誰にも言うなって言ってくれましたけど…。
そしたら、もう一度ちゃんと謝ってきなさいって紺ちゃんに言われて」
「おいらは、もう気にしてないのに。まだ気にしてたんか?」
「だって…」
思い出したのか小川の表情が途端に暗くなる。
- 359 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-173- 投稿日:2003/11/20(木) 20:01
- 「分かった分かった。でもなんで紺野に?」
「あ、矢口先輩には報告してないですけど、一応私、紺ちゃんと
付き合ってるって言うか、そういうのなんで隠し事とかしないって
決めたから…」
「や、別に報告してくれなくてもいいけど、そうなんだ」
「でも、私、今でも矢口先輩の事好きなんで」
「え?」
矢口自身、実はもう忘れていたから、初めて聞いたような反応に小川は少し凹む。
「え? って…。そりゃぁ、後藤先輩の事も好きですけど…」
そうじゃなくて…と矢口は言いそうになり、面倒なので止めた。
「そうか。良かったじゃないか小川。お前も来年から1年だし。
先輩になるな。ダンス部頼むぞ。辻や加護よりは頼りになりそうだしな」
「ありがとうございます。紺ちゃんと力を合わせて頑張ります」
「紺野は…。そ、そうだな。小川に任せるよ」
紺野は少し不安材料だったりするのだが、小川がいるのなら安心かと矢口も思う。
- 360 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-173- 投稿日:2003/11/20(木) 20:01
- 「矢口先輩!」
背後から、紺野の声がして、矢口はビックリした。
「こ、紺野!」
「おめでとうございます矢口先輩」
「あ、ありがとう…」
突然現れて矢口も動揺する。
「ダンス部は、わたくし紺野あさ美と小川麻琴がいる限り完璧です!
矢口先輩も心おきなく引退なさって下さい」
「はぁ…」
「では、矢口先輩、お引き留めして申し訳ありませんでした」
紺野は深々とお辞儀をすると小川の腕を取った。
「じゃ、行きましょう。まこっちゃん」
「う、うん」
「じゃぁな。気を付けてな」
矢口は訳もわからず二人に手を振った。
「矢口先輩もお気を付けて」
「お前がな」
「え?」
「何でもない」
矢口はダンス部に行く末の不安を感じたのだった。
- 361 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-174- 投稿日:2003/11/20(木) 20:02
- ―174―
「それより、ごっつぁん!」
ハッとして慌てて矢口は家に引き返した。
突然の訪問とは言え、途中で居なくなった事をきっと怒っているに違いない。
「ごっつぁんゴメン!」
急いで部屋に戻った矢口だったがベッドで丸まって寝ている真希を見て安堵する。
「なんだよ寝ちゃったのかよ」
矢口は布団を掛けてやりながら真希の寝顔を見る。
「ごめんな。せっかくの誕生日なのに」
顔にかかった髪を梳きながら、矢口は前屈みになると真希の顔に近づいた。
「さっきの続き…」
そう呟いて矢口は真希のくちびるに自分のくちびるを重ね合わせた。
- 362 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/11/20(木) 20:03
- 更新しました。遅くなりすみません。
いしよしナシです。すみません。
>352 ヒラッペさん
あやゃもキャラが変わって来てしまったような…(汗)。
一応、出て来ませんが柴ちゃんLOVEです。
いしよし北海道旅行あまり考えてませんが時期的に
丁度良い季節になってきましたねw。
奉仕に囚われてこの後の更新が…。
やはり、あった方がいいんですかね。実は略してますので
中途半端な更新になってしまいました。
>353 タケさん
高は頑張ってますが、さて、どうなるやら。
>ついに奉仕でしょうか
やっぱり期待してますか?(大汗)
- 363 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/11/20(木) 23:41
- お久しぶりの更新お待ちしてました。
いやぁ・・・そりゃぁやっぱ、
読者としては期待しちゃうんですけども・・・
略して話飛んだらちゃぶ台返すかとw
やぐが可愛すぎるんですが。
やっぱりこのまま・・・ってのがあるとかなり嬉しいです。
再度ご検討していただけると・・・
でわ、次回更新楽しみにしています。
- 364 名前:マイキ− 投稿日:2003/11/22(土) 10:04
- ヒサブリ+更新乙です。(´∀`)
今回もやぐごまに萌えさせてもらいました。
ヤグッツアン大胆!!ゴチーンの寝起きを襲うなんで…(違;)
もしかして、ゴッチン起きてたりしてぇ。w(ワクワク)
さて、このまま2Rめ逝っちゃいましょうか!(ぇ)
- 365 名前:タケ 投稿日:2003/11/22(土) 19:03
- 奉仕!と思ったら小川さん・・・と紺野さん・・・
>「矢口先輩もお気を付けて」
>「お前がな」
ここのやりとりがいいっす!(w
さてさて続きどうなるんでしょうか・・・
期待してます
- 366 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/23(日) 14:49
- この間にいしやぐもチョビーと読みたいナーなんて思ってしまう・・・
- 367 名前:366 投稿日:2003/12/04(木) 16:54
- >>作者様
チョビーといしやぐっぽいのは無理でしょうか?
- 368 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-175- 投稿日:2003/12/08(月) 18:34
- ―175―
暫くくちびるを重ね、矢口は薄目を開けて、真希が実は起きて
いるのではないか? などと思い真希を見るが一向に起きる気配の
ない真希に、矢口は諦めてくちびるを離した。
―――怒るかな、ごっつぁん。
せっかく、これから! と言う時に中断されたのだ、怒っても
無理はないだろう。
矢口はベッドを背もたれにして腰を降ろし天井を見上げた。
「おいらも一緒に昼寝でもするかな」
そう呟いて振り向き真希の寝顔を見つめる。
矢口は立ち上がると布団をめくり、真希の横に滑り込もうとした。
- 369 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-175- 投稿日:2003/12/08(月) 18:35
- ―――♪♪♪―――
その時、机に置いていた携帯の着信音が鳴り、矢口は
飛び上がる程に驚いた。
―――バ、バカ! だ、誰だよ!
矢口は慌てて携帯を掴み、部屋から下へと駆け下りていく。
「はいっ」
多少ぶっきらぼうに出た矢口に先方は少し戸惑ったようだ。
『矢口先輩?』
少しばかり脅えた風な声が返って来た。
- 370 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-175- 投稿日:2003/12/08(月) 18:36
- 「なんだ、石川かよ」
『あ、すみません。昨日のお礼とまだ、おめでとうって言ってなかったので』
「わざわざ?」
『今、休憩時間なので…。まずかったですか?』
矢口の態度に、梨華は気にしている様子。
「あ、ごめんごめん。平気平気。こうなったら一も十も一緒だな」
『はい?』
小川の来客で真希とは中断してしまった。ここで家に戻っても大差はないだろう。
真希は、まだ暫く寝ていそうだし。
「これから、そっち行くよ」
矢口は小川からもらったカボチャのプリンを何個か取り出し、無造作に
袋に放り込むとと外に出て行った。
- 371 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-176- 投稿日:2003/12/08(月) 18:37
- ―176―
自転車を走らせ、ものの数分で梨華のいるコンビニへと着く。
店の裏からノックして入ると、梨華が驚いた顔で矢口を見た。
「早かったですね」
しかし梨華としては、わざわざ矢口が来た事に驚いていた。
「物凄い勢いで走って来たからな。あ、これ貰ったんだ。
石川も、吉澤と一緒に食えよ」
「ありがとうございます…。て言うよりいいんですか?」
梨華は逆に心配しているようだ。
「なにが?」
「いや、ごっちんと…一緒じゃないんですか?」
「そう思うなら電話すんなよ!」
矢口は少し怒った風に言って、梨華の頭を小突こうとした。
「すみませんっ。お昼だからいいかなって。メールよりは、ちゃんと
お礼言った方が伝わるかなって思ったので」
「サンキュ。ごっつぁんなら今寝てるよ。だから来たんだ」
「寝てる?」
梨華はそう繰り返して顔を赤らめた。
「おい! 変な想像すんなよ!」
矢口は気づくと梨華の肩を叩く。
- 372 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-176- 投稿日:2003/12/08(月) 18:37
- 「え?」
「まったく何考えてんだか。小川が来たから相手して少し出てて、
戻って来たら寝てたんだよ」
「そうですか」
「まぁ小川のせいで邪魔されたようなもんだけど」
「え?」
「あぁ、なんでもない。お前ら日曜も仕事なの?」
矢口は話題を変える。
「はい。しばらくは頑張って働くつもりですよ」
「偉いな、石川は。吉澤が言い出した事なのにな」
「ひとみちゃんだけに働かせる訳にはいきませんから。
それに、そんな事されても嬉しくないし」
「頑張れよ」
「はい。ありがとうございます」
梨華は笑顔で答えた。
そこへ、松浦が荷物を抱えて入ってくる。
「梨華先輩、これ出しておいていいですよね? あ…矢口さん」
矢口に気づくと、松浦は軽く会釈をした。
「松浦も頑張ってんだな。お疲れ!」
「ハイ! もう梨華先輩と一緒だから頑張れちゃいます」
松浦は荷物を置き、両手を握りしめて何故かガッツポーズだ。
- 373 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-176- 投稿日:2003/12/08(月) 18:38
- 「ん? 柴田のためじゃないの?」
「あゆ先輩はもちろん、梨華先輩も大好きですから!」
松浦は満面の笑みでそう言うと梨華に抱きついた。
「そう…なんだ」
その光景に矢口は特に疑問も持たず見つめていた。
抱きつかれた梨華は、少し困った表情で直立不動だった。
「あ、亜弥ちゃん!」
梨華の方が焦っていて、松浦は面白がっている様子。
「梨華先輩、チュウしましょうよ」
松浦はギュッと梨華を抱きしめるとくちびるを突き出した。
「矢口先輩っ! 助けて下さいよ〜!」
困ったと言う風に眉を八の字に下げて梨華はお願いするが、矢口は
面白いものでも見るように言った。
「石川もモテまくりだな。吉澤も大変だな、こりゃ。
松浦もその袋に入ってるカボチャのプリン食っていいから。
じゃぁな。邪魔したな。おいら帰るから」
片手を挙げ、無情にも矢口は帰って行く。
「矢口先輩っ! 帰っちゃうんですかぁ?」
「矢口さん、お誕生日おめでとうございまーす♪」
「サンキュー!」
矢口は振り返らず手を振りながら出て行った。
- 374 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-176- 投稿日:2003/12/08(月) 18:39
- そう言えば、結局お礼も言ってなかった事にこの時梨華は気づいたのだった。
そして、戻った筈の矢口がドアを開けて顔を覗かせた。
「おい、噂をすればだぞ」
含みのある言い方で、矢口は答えた。
「え?」
まだ二人は抱き合ったまま、矢口と入れ替わるように入って来たのはひとみだった。
「梨華!!」
「…ひとみちゃん…」
「吉澤さぁ〜ん♪」
凍り付く梨華。一人呑気な松浦…。動きの止まったひとみ。
三人の昼休みは、これから始まろうとしていた。
- 375 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/12/08(月) 18:47
- 更新。相変わらずの吉澤さんは出番無し。(´・ω・`)
矢口主役の小説と化してますね…。いや楽しいですが。
吉澤さんヒサブリに出たと思ったら、こんなシーンでスマソ。
(出たうちに入らないし…)
>363 ヒラッペさん
すみません。先延ばしじゃないんですけど、なかなか
事が進みません。多分、この後は、きっと…(汗)。
>364 マイキ−さん
邪魔が入りまくりです。
やぐごまシーンは、この後すぐ!(←ならない鴨)
>365 タケさん
なかなか奉仕活動にならないっぽいです。
>366-367 名無しさん
いしやぐシーン、どういうのか分からなかったんですが
更新が滞っているので、お詫びも兼ねて少しだけ入れてみましたが。
リクには基本的には応えてませんので、こんなん違う!って
言われてもカンベンして下さい。m(_ _)m
- 376 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/12/09(火) 00:17
- 更新おつかれさまです。待ってました!
いやぁ・・・どこのカップルもお熱いようで・・・w
このまま行っちゃったら鼻血でそうです(爆
亜弥ちゃんはどっちつかず?と思う所もありつつ、
次回の更新楽しみにしてます。
ゆっくり書いて下さい。
- 377 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-177- 投稿日:2003/12/09(火) 18:25
- ―177―
「ごっつぁん、さすがに起きてっかなぁ。でもなぁ…」
矢口はぶつぶつ言いながら、家へと自転車を走らせる。
今、梨華とひとみと松浦がどうなっているのか、矢口の頭からは既になかった。
- 378 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-177- 投稿日:2003/12/09(火) 18:26
- 「梨華どういう事? 松浦も!!」
ひとみの目は笑っていない。
「亜弥ちゃん! もういいでしょ? 離して!」
「ざぁ〜んねんっ。じゃぁ後は吉澤さんに任せますね」
松浦はニッコリ微笑みながら、梨華から離れた。
「ちょっと! 松浦、お昼は?」
「さっき、愛ちゃんと先に済ませましたから。梨華先輩ごゆっくり〜♪」
手をヒラヒラさせながら、種を蒔いた張本人は戻っていこうとする。
その腕を梨華は後ろから掴むと、ドアの奥へと連れていく。
「亜弥ちゃん、なんであんな事!」
「たまには、吉澤さんにも刺激を与えた方がいいかな〜なんて」
全然悪びれた様子もなく、松浦は顎に人差し指を当てながら話す。
- 379 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-177- 投稿日:2003/12/09(火) 18:27
- 「余計な事しなくていいから!」
のんびり構えている松浦とは逆に梨華は小声ながらも早口で話す。
「いいじゃないですか。そのくらいで怒るような吉澤さんじゃないですよね?」
「そ、そうだと思うけど…」
さっきのひとみの態度からするとそうは思えないのだが。
「あんまり二人でいると、また怪しまれますよ?」
松浦に指摘され、梨華はひとみのいるドアを開けた。
- 380 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-177- 投稿日:2003/12/09(火) 18:28
- 残された梨華とひとみの間に気まずい空気が流れる。
「やっとお昼だと思えば、松浦…さんと!!
朝は朝で起こしてくれればいいのに、梨華先に行っちゃうし!」
先に起きて行ってしまった事にも、ひとみは不満らしい。
その理由が、松浦の所に行っていたなどとは、今の梨華には言えなかった。
それも、松浦にキスされたなどとはひとみも思ってもいないだろう。
たとえ、それが頬だとしても梨華は思い出すと、まだドキドキしていた。
―――ホントに亜弥ちゃんは罪作りなんだから!
今は、そんな事を言っている場合ではない。
目の前にいる機嫌を損ねた恋人を取りなす事が先だった。
「ごめんね。ひとみちゃん良く寝てたから。
起こすのが可哀相になっちゃって」
「まぁ朝の事はいいよ。さっきのアレは、どういう事?」
腕組みをしてひとみが軽く梨華を睨む。
「亜弥ちゃんが面白がって抱きついてきただけだよ」
「どうして抱きつく理由があるわけ?」
先ほどの場面を思い出しているのか、ひとみはますます面白くない顔をする。
- 381 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-177- 投稿日:2003/12/09(火) 18:29
- 「柴ちゃんの代わり…かも。多分…」
「そうは見えなかったけど? 松浦は梨華の事好きだし」
「機嫌直してよ。ひとみちゃん」
梨華はひとみの手を取り、一本づつ指を絡める。
「私だって梨華とイチャイチャしたいのに」
「ん?」
ひとみは片方空いた腕で梨華を引き寄せる。
「これでも我慢してるんだから」
「ひとみちゃん?」
ひとみの顔が迫って来る。
ひとみより先に梨華のくちびるが重なった。
「梨華…」
「…我慢する事ないから」
もう一度二人のくちびるが重なった。
- 382 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-178- 投稿日:2003/12/09(火) 18:29
- ―178―
家に着いた矢口は急いで二階へ駆け上がろうとした所を母に呼び止められる。
「真里! あんた真希ちゃん折角来てるのに、出たり入ったり落ち着きないわねぇ」
「仕方ないだろ! 多分もうこれからは出ないから!」
それだけ言うと矢口は駆け上がって行った。
自分の部屋の前に着くと深呼吸して、恐る恐るドアを開け顔だけ出して
ベッドの方に目を移す。
寝ていた筈の真希が居ない。
「あれ?」
- 383 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-178- 投稿日:2003/12/09(火) 18:30
- もう一度確認しようと中に入るといきなり腕を掴まれた。
「ごご、ごっつぁん!」
「おっそ〜いよ、やぐっつぁん! どこまで行ってたのよ!」
そう言われると言い返す言葉もない。
「ごめんっ。あんまりごっつぁんが気持ち良く寝てるから
起こすの悪いと思って」
「だからって出かけていいの? 愛しい後藤さんをずーっと
放置しちゃってさ!」
「ぃや、さっきキスして反応見てたんだけど…起きないから…さ」
「キ、キスぅ!? さっきっていつよ!」
「バカ、声が大きいよ!」
矢口は慌てて真希の口を手で塞ぐ。
「大丈夫。ミキちゃんなら気を利かせて出かけてったから」
「アイツ…」
妹のニヤけている顔が想像出来て矢口は顔を顰めた。
- 384 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-178- 投稿日:2003/12/09(火) 18:31
- 「やぐっつぁん!」
「うん。ごめんな…」
何を言われても悪いのは、やはり自分だから矢口は素直に謝る。
「まぁ、やぐっつぁんの誕生日だから特別許しちゃうよ」
「マジ? サンキュ!」
真希の機嫌が簡単に直ったので、矢口はほっと胸を撫で下ろした。
「だ・か・ら・つ・づ・き・し・よ・♪」
矢口の耳元で真希が囁く。
真希の甘い髪の匂いが鼻をくすぐり、矢口は肩を竦めた。
- 385 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/12/09(火) 18:34
- 更新しました。
>376 ヒラッペさん
いつもレスありがとうございます。
あやゃは、わざと楽しんでる風です。本心は……。
散々延ばしましたが、次は、やぐごまシーンですかね。
- 386 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/12/10(水) 23:38
- 2日連続鼻血キタ━━━(゚∀゚)━━━
いやはや、お熱いカップルで・・・
やぐごまですか!
次回鼻血出しすぎて失血死しないように血液貯めておきますw
でわ〜
- 387 名前:366 投稿日:2003/12/13(土) 18:42
- >>作者様
まさか俺の石矢リクに答えてくださるなんて、思ってもみませんでした。(何
俺の考えてた石矢と似た感じに仕上がってたので、かなり嬉しかったです。
とても感謝しております。ありがとうございました!
これからは、石吉・矢後を応援して逝きたいと思います!!
次回の更新も楽しみにしております。 "(_)ペコリ
- 388 名前:マイキ− 投稿日:2003/12/17(水) 18:28
- やぐごまグハア!! ヽ(∀ )ノミ
いしよしグハア!! 三<( Д)ノ
やぐいしグハア━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
今回1番やられたのは、やぐごまとやぐいしでした。w
いしよしもキターイです♪
- 389 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-179- 投稿日:2003/12/17(水) 18:48
- ―179―
そのまま真希のくちびるが矢口の耳朶を軽く噛む。
「ゃっ…」
思わず声を漏らすと真希はクスリと笑った。
「可愛い。やぐっつぁん…」
「可愛いって言うなよ…」
照れながら俯き真希から視線を外す。
耳まで赤く染まっている矢口は、やはりこういう場面はめっぽう弱かった。
「だって、可愛いんだもん」
真希のくちびるが矢口のくちびるを塞ぐ。
優しいくちづけが、矢口の身体に落とされていく。
「ん…ぁっ…」
なんだか恥ずかしくて、身体の奥が熱くなりそうで、矢口は真希に
されるままに身体を預けた。
- 390 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-179- 投稿日:2003/12/17(水) 18:49
- *********************************
今日は……真希にリードされ、思いの外優しく愛され、矢口は
よほど満足したのか、すぐに眠ってしまった。
目をあけると、もうすっかり暗くなっていて―――。
矢口は、数時間前の事を思い出してまた、顔を赤らめた。
隣の真希も、軽く寝息を立てて寝ている。
「ごっつぁん…好きだよ」
矢口は愛しい背中を抱きしめた。
- 391 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-180- 投稿日:2003/12/17(水) 18:50
- ―180―
帰り支度をしている時、松浦から話しかけて来た。
「梨華先輩、あれから、どうでしたぁ?」
ふふふと笑顔で問いかけてくる松浦に、梨華は小さく溜息混じりで答える。
「どうでしたじゃないわよ、亜弥ちゃん。あんまり困らせないでね」
キスの一つくらいでは、ひとみの機嫌は、なかなか直らなかったのだ。
「吉澤さんも、案外子供ですねっ。でも梨華先輩、おかげでチュウ出来たでしょ?」
「ぇ?」
梨華の顔がみるみる赤くなる。
へへへと舌を出す松浦。
「亜弥ちゃん!!」
一瞬、間をおいて、梨華が大きな声を出したのは、言うまでもない。
「お先に失礼します梨華先輩! お疲れ様でしたぁ♪」
勢いよく、ドアを開けて、松浦は出て行く。
「ほんとに、亜弥ちゃんは…」
それでも憎めないキャラの松浦に、梨華は苦笑いをしていた。
- 392 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-181- 投稿日:2003/12/17(水) 18:50
- ―181―
「梨華?」
入れ替わるように、ひとみが梨華を迎えにやってきた。
「ひとみちゃんお疲れ様」
「松浦に、何かされなかった?」
ひとみは半分真面目な顔で梨華を見つめながら言った。
「何もされてないよ。まだ昼間の事怒ってるの?」
「べつに…」
ひとみはコートのポケットに手を突っ込んで視線を外した。
まだ、少しだけ気にしている様子。
「ひとみちゃん妬いてるの?」
梨華はわざと、顔を覗き込むようにしてひとみを見つめた。
- 393 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-181- 投稿日:2003/12/17(水) 18:51
- 「まさか。なんで松浦にっ? そんなのあるわけないじゃん」
少しムキになって突っかかるところが、子供みたいで、梨華はクスクス笑った。
「ひとみちゃん可愛いっ」
「ぃ?」
梨華も、ひとみのポケットに手を入れて、上からひとみの手を優しく包み込んだ。
そのままひとみの胸に顔を預ける梨華。
「私はひとみちゃんだけだから、安心してね…」
「梨華…」
- 394 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-181- 投稿日:2003/12/17(水) 18:51
- そんな甘い時間も、保田の一声で打ち破かれる。
「もーアンタ達! ラブシーンは帰ってからにしる!」
慌てて離れる梨華とひとみ…には、ならずに、ゆっくりと離れた。
「保田さん、覗き見ですか!」
ちょっと残念そうに、ひとみは皮肉混じりに言う。
「少しは悪いなって気にならないの? ほんとにもぅ…」
「すみません…」
梨華は申し訳なさそうに頭を下げるが、ひとみは更に一言。
「保田さんこそ、悪いなって思いません?」
「ひとみちゃん…」
「吉澤、アンタ偉くなったわね?」
「保田さん、お先に失礼しますっ。ひとみちゃん帰るよ」
まだ、なにか言いたげなひとみの背中を押して、梨華達は出て行った。
- 395 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-182- 投稿日:2003/12/17(水) 18:52
- ―182―
やっと機嫌が直ったと思いきや、保田のせいで、また少し不機嫌なひとみに
梨華は、家に帰ってからひとみを宥めていた。
「別に怒ってないんだよ?」
梨華の気持ちを察してか、ひとみはそう答える。
「それならいいけど…」
ひとみは梨華に近づきながら続ける。
「保田さんの言った通りにしようか?」
「ん?」
梨華は言った意味が分からず首をかしげる。
「ラブシーンは帰ってからにしろって言ったよね……」
耳元で、ひとみはそう囁いた―――。
- 396 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/12/17(水) 18:58
- 更新しました。
いしよしのこの後は…想像して下さい。
書きませんので。(書けないと言う方が正しい)
>386 ヒラッペさん
やぐごまご期待に添えずにすみません。
脳内で再生していただければ…w。
>387 366さん
似た感じでしたか。良かったです。
>388 マイキ−さん
やぐいしもヨカタですか? 心に留めておきますw。
予告。次回は、ヤグ高オンリーです。
- 397 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/12/17(水) 22:54
- ぐはぁ・・・かなりやぐごま萌え〜です。
次回ヤグ高ですかぁ・・・。動向がどうなるのか・・・
次回も楽しみにしてますね。
- 398 名前:タケ 投稿日:2003/12/23(火) 20:05
- お久しぶりです
ついにキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
久しぶりのやぐごまに萌えております(爆)
>次回は、ヤグ高オンリーです。
こっちも好きなんです(w
楽しみに待ってます!!
- 399 名前:マイキ− 投稿日:2003/12/24(水) 11:31
- やぐごまキタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!
いしよしも(・∀・)萌えっ!!
いしよしは、どげんラブシーンやったのかがトテーモ気になっちゃったり。w
まぁ2人の秘密っちゅーこって。w (ウチの方言出まくりでスマソン。)
ヤグ高も待っとります。
- 400 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-183- 投稿日:2003/12/29(月) 16:05
- ―183―
松浦に言われてから高橋は仕事に身が入らない程だった。
松浦は簡単に言うけれど、高橋にとっては一大事な事である。
しかし今日は当然真希と一緒だろうし、いつそんなチャンスがあるのだろうかと
高橋は大いに悩んでいた。
『今日、後でちょっと会えませんか?会えなければいいです。高橋』
ごく簡単に高橋はメールを送ると、ドキドキしながら仕舞い込んだ。
あまり矢口がメールも好きでない事は知っているから、滅多な事では送ったりしない。
それに真希に、こんなメールを見られて誤解されたらと思うとそっちの方が
高橋には気が気でなかった。だからメールを送る時間もわざと遅くにしてみる。
これでも気にしているのだ。
- 401 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-183- 投稿日:2003/12/29(月) 16:06
- きっと無理だと高橋は思い、これで一応任務は果たしたとほっとする。
しかし、すぐにメールが返って来た。
『おいらは構わないけど、いいの? 矢口』
「や、や、矢口先輩!」
携帯を握りしめながら高橋は小さく叫んだ。
昨日といい、幸運すぎやしないかと高橋は胸が躍る。
『ぜんぜんかまいません! たかはし』
変換するのも忘れて高橋は慌てて返信する。
すると…電話がかかって来た。
ディスプレイは見るまでもなく、矢口からだ。
「キター!」
震える指で高橋はボタンを押した。
- 402 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-183- 投稿日:2003/12/29(月) 16:06
- 『高橋? どうした? 電話の方が早いと思って』
「矢口先輩…」
昨日の今日なのに、高橋の胸は既に熱くなっている。
『何かあったか?』
電話の向こうの矢口は少し心配そうな声だ。
「あ。いや、何もないんですけど…。ちょっと会いたくなって」
早口で高橋は喋る。
良く考えたら会って貰えるとは思ってなかったから先の事を考えていなかった。
しかも電話でなんて…。
『そうか。今どこ? そっち行くから』
「え? 今ですか?」
高橋はキョロキョロして、どこにいるのか確認する。
どこもなにも矢口の家の近くなのだが、近くの公園にいると告げた。
- 403 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-183- 投稿日:2003/12/29(月) 16:07
- 『じゃぁ近くだな。ちょっと待ってて』
そう言って電話は切れた。
電話を切ってから、高橋は重大な事に気づく。
呼び出しておいて、どうしろと言うのだろう。
「ど、どうしよう…」
高橋は胸がドキドキしてくる。胸に手をやるとギュッと握りしめた。
「も、もう亜弥ちゃんが変な事吹き込むから…」
高橋はブツブツ言いながら、松浦のせいにして急ぎ足で公園に向かった。
- 404 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-184- 投稿日:2003/12/29(月) 16:08
- ―184―
入り口に来てみると、見慣れた自転車が置いてある。
高橋は公園を見渡した。
「高橋、お疲れ!」
背後から声がして、矢口が温かい缶コーヒーを投げてよこした。
「矢口先輩…」
「今日もバイトだったんだろ? ご苦労さん」
矢口がねぎらいの言葉をかけて、近づいてくる。
「す、すみません。急に呼び出したりして」
高橋は俯く。
- 405 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-184- 投稿日:2003/12/29(月) 16:08
- 「丁度、ごっつぁんと飯食って送ってた帰りだったんだ。別にいいけど?」
「あぁ…すみません」
呼び出したものの言葉が続かない。
貰った缶コーヒーを手で転がしてみる。
「どうした? 高橋?」
高橋の目を覗き込むように矢口は優しく訊いてくる。
矢口の優しさに高橋は急に込み上げてくるものを感じた。
「お、おい。高橋…」
- 406 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-185- 投稿日:2003/12/29(月) 16:09
- ―185―
いつの間にか、矢口の胸で泣いていたらしい。
顔を上げると矢口が少し困った顔をしていて…でも全然イヤな顔ではなく
ハンカチを差し出していた。気づけば頬が冷たい。
「ご、ごめんなさいっ」
高橋は慌てて離れるとゴシゴシとハンカチで涙を拭う。
何やってるんだろう。これでは、ますます言い出しにくくなってしまう。
と言うよりも、絶対言えない―――。
「何かあったか? 話聞くだけなら、おいらでも聞いてやれるからな」
自分より背の高い高橋の肩をそっと抱き寄せる矢口。
切ない。矢口に優しくされる度に、好きの度数が上がってきて切なくなる。
- 407 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-185- 投稿日:2003/12/29(月) 16:10
- 「何にもないです。あ、ありがとうございましたっ」
「はぁ?」
高橋は礼をすると公園から飛び出して行く。
「お、おい! ちょっと待てよ!」
矢口は訳も分からずに高橋を追い掛ける。
呼び出されて会って見れば急に泣かれて、なんでもないと言う。
納得するはずもなく、高橋を掴まえた。
「おかしいぞ? さっきから謝ってばっかだし」
不審がられても仕方がない。
高橋の行動は、さっきから矢口から見れば不審だらけだ。
- 408 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-185- 投稿日:2003/12/29(月) 16:10
- 「矢口先輩…優しすぎるから…もう、ダメです…」
苦しそうに高橋は呟く。
「ダメって何が?」
矢口も分からずに聞き返す。
「これ以上好きにさせないでください…」
「………」
思いもかけない事を言われて矢口は言葉を失う。
言ってから、高橋はハッとする。
「…ごめんなさい。そんな事言うつもりじゃ…」
「ごめん。おいら…自分じゃ良く分からないから」
矢口は本当に困った顔をしていて…そして、そんな矢口が高橋は好きで
高橋の目からは、また大粒の涙が溢れて来て、それを見た矢口は、慌ててハンカチを
取りだそうとするが、そのハンカチは高橋が既に持っていたから、矢口は自分の手で
高橋の涙を拭ってやる。その光景に思わず笑ってしまう高橋。
- 409 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-185- 投稿日:2003/12/29(月) 16:11
- 「なんで笑うんだよっ。そこ、笑うトコじゃないぞ」
思いの外、矢口の指は冷たくて、無意識に高橋は矢口の指を握りしめた。
「矢口先輩…。好き」
「た、高橋?」
驚くほど、急に冷静になれた高橋は、今なら素直に言えると感じた。
「この気持ち…ずっと大切にしたいです」
高橋の顔が近づいてくる。
「え? え?」
矢口は固まって動かない。
- 410 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-185- 投稿日:2003/12/29(月) 16:12
- そのまま高橋のくちびるは、矢口の頬に到達した。
指と同じく冷たい矢口の頬に、少し乾燥した高橋のくちびるが触れる。
矢口は肩を竦めた。
「ひゃっ…」
矢口の声に、高橋は魔法が解かれたように、ハッとして慌てて矢口から離れた。
「あ…。ぇ? …っ?」
自分でした行為に驚く高橋に、矢口もボーッとしている。
しかし、我に返ると
「ちょっと…ビックリするじゃんかよ…」
もちろん、矢口は怒ってる訳じゃなく、ただただ驚いている様子。
- 411 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-185- 投稿日:2003/12/29(月) 16:12
- 「あ、あの…あ、あたしも…ビックリです…」
高橋も同じように答える。
「ホントに変なヤツだな、高橋は」
矢口は照れ隠しに髪を掻く。
「ありがとうございます!」
「褒めてないぞ」
「はい!」
「はい! かよ!」
この公園での出来事は…矢口と高橋の秘密と言う事になった…筈だが―――。
- 412 名前:Charmy Blue 投稿日:2003/12/29(月) 16:16
- 更新しました。
唇にしなかったのは、後藤さんへの配慮です。とかw
結構自分では気に入ってるんですが、どうですか?(手前味噌)
>397 ヒラッペさん
こんな感じに。かなーり前には書き上げてあったのですが
やっとうp出来ました!
>398 タケさん
やぐごまは無難に。ヤグ高は控えめに。
>399 マイキ−さん
もぅ、いしよしはねぇ…(ry。
スレッドサイズ半分以上消化してますね。
1000まで消費せず終わりそうですが、終われるんでしょうか一体。
年内最後の更新でした。
来年こそは、必ず完結へと目指して頑張ります(多分…)。
来年も宜しくお願い致します。
(#´▽`)´〜`0 ) <では、良いお年を>( ´ Д `)^◇^〜)
- 413 名前:ヒラッペ 投稿日:2003/12/30(火) 00:06
- おぉ!唇に行っちゃえば良いのに(爆
「はず」って何なんでしょうか?
もしかして・・・
来年一発目の更新楽しみにしてます。
でわ。良いお年を〜
- 414 名前:マイキ− 投稿日:2003/12/30(火) 02:53
- ヤグ高に初めて萌えました。w
ヤパーリCharmy Blueさんの書く小説は凄いですね。
「はず」って、やっぱり?あの人が(ry。
◆年内最後の更新乙でした!!
また来年もついて逝きますよ〜。w(キモッ;)
でゎでゎ、良いお年をっ♪ (^〜^О(^▽^)ノシ
- 415 名前:タケ 投稿日:2004/01/01(木) 13:07
- 新年あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
やぐ高キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
新年早々(?)萌えまくりでした!!
筈?筈ですか?
まさか・・・?
- 416 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-186- 投稿日:2004/01/17(土) 22:08
- ―186―
翌日の昼休みに、しつこく聞かれた提案者の松浦には、隠せる筈もなく、また
顔に締まりのない高橋を見れば一目瞭然だった。
「愛ちゃん。良くやった!」
ヨシヨシと松浦に頭を撫でられる。
「愛ちゃん、演劇部に入れば? 迫真の演技だったんじゃない?」
「演技じゃないよ…」
泣き出してしまったのは自分でも予想外でビックリしている。
それでも色々な状況が絡んで結果的には良かったのかも知れない。
「それだったら、くちびるでも全然オッケーだったじゃん」
また松浦がとんでもない事を言い出す。
- 417 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-186- 投稿日:2004/01/17(土) 22:08
- 「そ、それとこれとは別!」
慌てて高橋はシーッと人差し指を立てて口に持っていった。
「いいじゃん。矢口さんと愛ちゃんだけの秘密なんでしょ?」
「亜弥ちゃんも知ってんじゃん…」
「同じようなもんだよ」
全然同じじゃないし…。
しかし松浦が、あんな事を言わなければこういう事は起こらなかった訳だし
高橋は少しは松浦に感謝した。と同時に自分の行動に拍手を贈りたかった。
- 418 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-186- 投稿日:2004/01/17(土) 22:09
- 「でもね亜弥ちゃん」
「うん…」
「ますます矢口先輩の事、好きになっちゃったよー…」
溜息混じりに高橋は本心を口にした。
「愛ちゃん、出来る限り協力するから! 後は矢口さんのくちびるゲットだね!」
そう言って松浦は親指を突き出した。
「それは、違うと思うよ、亜弥ちゃん」
高橋は苦笑いしながら立ち上がる。
「これから図書室行かなくちゃ。亜弥ちゃんお先」
「受付だっけ? 後藤さんも一緒だよね? 気を付けてね、愛ちゃん」
松浦は高橋を見上げながら見送った。
気を付けるって何を? 首を傾げながら高橋は、急いで図書室へと向かった。
- 419 名前::恋をしちゃいました-4th Stage-187- 投稿日:2004/01/17(土) 22:09
- ―187―
高橋が図書室に辿り着くと、珍しく真希の方が先に来ていた。
「愛ちゃん。おつ〜」
のへーっと今すぐ寝てもおかしくなさそうな真希の顔を見ながら高橋は微笑んだ。
「後藤先輩。早いですね」
「今日はさ、早弁したからやる事なくてさ〜。土曜はありがとうね」
「こちらこそ、ありがとうございました。楽しかったです」
高橋は真希の隣りに腰を降ろす。
昨日の事は、やはり真希も知らないのだろう。
何となく、高橋は真希に悪い気がして、本の整理をするからとすぐに立ち上がった。
「じゃぁ、愛ちゃんよろしく。受付は私に任せて…」
片手をあげて真希は微笑んだ。
今にも眠ってしまいそうな真希に、高橋は苦笑いしながら本を持って奥へと消えた。
- 420 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-188- 投稿日:2004/01/17(土) 22:11
- ―188―
ひとみと梨華は、いつものように屋上で昼食を取っていた。
すっかり冬なのに、寒さよりも二人でいる事を選ぶ二人。
「ねぇ、梨華。そろそろプラン決めない?」
ひとみは食べ終わると、たくさんのパンフレットを取り出して来る。
「ひとみちゃん、まだ早いんじゃない?」
そう言おうとして、北海道以外のパンフも紛れ込んでいる事に気づく。
「見てるだけで楽しいじゃん。北海道の後はさ、また二人でどっか行こうよ」
「北海道の後って、更に先の話しじゃない。ひとみちゃん気が早すぎ」
梨華はそう言いながら自分も何部か手に取ってみる。
「だって、今は梨華と旅行行けるって事だけが楽しみで生きてるんだもん」
いささか大袈裟な気がするが、ひとみは真面目に言っているようだ。
目が真剣だった。
- 421 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-188- 投稿日:2004/01/17(土) 22:11
- 「でも柴ちゃんにも前もって言っておかないとね」
「柴ちゃん!」
柴田の名前に、ひとみはハッとする。
「ひとみちゃん!?」
本来の目的を忘れていたのか、ひとみは急に思い出したのか苦笑いをする。
「そうだよ、柴ちゃんにも予定聞いといてもらってよ。
同じ時期に、東京に来るとか言う話しになったりしても困るし」
「もぅ、ひとみちゃん大丈夫?」
最近、働き過ぎて疲れているのか、ひとみは肝心な事を忘れているようで
梨華は少しばかり心配になる。
ひとみの気持ちも嬉しいし、柴田に会えるにも嬉しいが、
別に北海道でなくてもひとみと一緒なら、梨華はどこでもいいと思っていた。
「大丈夫。梨華がいるから、大丈夫だよ」
ひとみは笑顔で答えた。
- 422 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-189- 投稿日:2004/01/17(土) 22:12
- ―189―
奥の本棚へ進み高橋は、脚立に目が行く。
そう言えば、脚立から落ちて矢口に助けられた事がつい最近の事のように思い出される。
「矢口先輩……」
高橋は、思わず小さく呟くと昨夜の事を思い出し、そっと自分のくちびるに手を当てた。
今思い返しても、顔から火が出そうな程だ。
我ながら大胆な行動に出たものだと、高橋は何度も昨夜の光景をリフレインさせていた。
「高橋?」
「…はぃ」
無意識に返事をして振り返ると、そこには矢口が立っていた。
- 423 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-189- 投稿日:2004/01/17(土) 22:13
- 「ひっ! や、矢口先輩……」
思わず高橋は、積み重なった本の山を落としそうになる程、驚いてしまう。
「なんだよ、人を化け物みたいに…」
「そんな…」
矢口は慌てて駆け寄り本の山を押さえる。
「笑顔で振り向いたと思えば、いきなり引きつった顔してよ」
「私、笑顔でしたか?」
「あぁ…」
そんな顔を矢口に見られていたとは高橋は落ち込む。
「なんで暗くなるんだよ、忙しいヤツだな、お前は」
「すみません…」
いつもと変わらぬ態度で接してくれる矢口には有り難いが、逆に高橋の方が
どうして良いか分からなくなる。
- 424 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-189- 投稿日:2004/01/17(土) 22:13
- 「本、整理してんだろ。ごっつぁんから聞いてさ、こっちに来たんだ」
「はい」
しばし沈黙がある。
「あ、土曜はありがとな。わざわざ」
「いえ、そんな。楽しかったです」
「あと…昨日も…」
「ぇ? ……」
「ありがと。ビックリしたけど」
矢口も一瞬俯く。
何を指しているのかわかり、高橋は顔を赤らめた。
矢口は脚立に腰を掛ける。
「でも、高橋、誰かに言われたんだろ」
「え?」
高橋は顔を上げる。
- 425 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-189- 投稿日:2004/01/17(土) 22:14
- 「お前がそんな事する筈がないもんな。
まぁ、誰かって事は言わなくても分かってるけどよ」
矢口は足をブラブラさせながら問いただす。
「あ、でも、それは…そうですけど、それで行動起こしたのは私ですから」
「やっぱり、そうか」
「あ、いえ…」
「いいんだ別に。責めてる訳じゃないから。
ただ、何となく高橋らしくなかったからな。夜中に急に呼び出したりよ」
「すみません」
「それだけ確認したかったんだ。じゃ、おいらは戻るよ」
矢口は脚立から降りると、高橋の傍に近づく。
何か他にも言いたげな矢口だったが、諦めたのか、何も言わずに引き返して行った。
- 426 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/01/17(土) 22:14
- 更新しました。
もちろん、松浦さんでした。筈は・・・w
>413 ヒラッペさん
唇はさすがに躊躇いました。
>414 マイキ−さん
ヤグ高に初めて萌えましたかw
>415 タケさん
今年もよろしくお願いします。
- 427 名前:タケ 投稿日:2004/01/18(日) 05:45
- 更新お疲れ様
最後の矢口さんの行動があやしいっすね
続きが楽しみです
- 428 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/01/20(火) 01:20
- あけましておめでとうございます。
お!いしよし旅行の存在をすっかり忘れてた・・・
最後の矢口さんの行動ってなんなんでしょうか?
で昨日石川梨華さんの誕生日
今日矢口真里さんの誕生日
という事ですし、ここでおめでとう〜と言っておきます。
では次回の更新も楽しみにしています。
- 429 名前:マイキ− 投稿日:2004/01/20(火) 03:02
- 更新乙様です。今年もヨロシクです!!(0^〜^)人(^▽^)人(´Д`)人(^◇^〜)
いったい…、いったい何が言いたかったんだヤグーチ殿は。w
すっごい気になって授業中も寝られません。(藁)
チャーミーさん、19歳おめでとう!
ヤグーチさん、21歳おめでとう!! …今年もこの2人大好きでつ。ww
- 430 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 15:40
- 更新まだ?もう1ヶ月経ってるんだけど。
- 431 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 18:46
- 川*’ー’)
- 432 名前:はったー 投稿日:2004/02/29(日) 02:30
- 今日、偶然ここ見つけて、一日で全部読みました!!
前の作品から!!実は受験生なんだけど・・・
この話しにめちゃくちゃはまっちゃって☆
ずっげ〜いぃっすよぉ(^−^)
何か、話しの流れもすっげ〜ナチュラルに
進んでるし、構成もすっげ〜いぃと思います!!
めちゃくちゃ気に入ったので、
今日からお気に入りに登録しときます!!
それに、この先がめちゃくちゃ気になるし!
あの、すぐぢゃなくていぃんで、忙しいかもしんないけど
続き待ってますね(^−^)楽しみにしてるんで!!
頑張ってください☆
- 433 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/29(日) 03:12
- ageてはダメです。
レスはsageで。
- 434 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-190- 投稿日:2004/02/29(日) 15:56
- ―190―
放課後、高橋が帰る支度をしていると、松浦が何やら含みのある笑顔で近づいて来た。
「愛ちゃぁ〜ん」
「な、なによ」
松浦がこんな顔の時は、どうせロクな事はないのだ。
高橋は、微妙な面持ちで松浦を見る。
松浦に腕を取られて廊下へ連れ出された。
「昼休みにね、矢口さんが来たの」
「な、なんで?」
高橋は大きな瞳を更に大きく見開いて松浦を見た。
「『高橋を、そそのかしたのは松浦! お前だろ!』って
言われちゃったよ」
ご丁寧に矢口と同じリアクション付きである。
何となく想像出来るだけに、おかしい。
「そそのかしたって言い方酷いと思わない?」
そう言っている割に、松浦の含み笑いは変わらない。
- 435 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-190- 投稿日:2004/02/29(日) 15:58
- 「それで?」
高橋は松浦の腕を掴んで促す。
「でも、実行したのは、愛ちゃんですから。ってきっぱり言ったよ。
そしたらね、矢口さん、一瞬言葉に詰まってた」
「矢口先輩…」
「『後藤には言うなよ』って釘を刺されちゃった。
余計な心配かけたくないんだって」
「私、やっぱり矢口先輩に迷惑かけちゃったかなぁ」
途端に泣きそうになる高橋に、松浦は顔を近づけた。
「大丈夫。矢口さん、迷惑ではなさそうだったから」
何を根拠に言うのか分からないが、松浦が言うと妙に説得力があるから不思議だ。
「そ、そうかなぁ…」
「だって愛ちゃんに迫られて嬉しくない人なんていないよ」
「そんな理由…」
そんな事より、松浦の顔が物凄く近くて、高橋は、どういう顔を
していいのか困ってしまう。高橋の視線は泳ぐ。
と、急に松浦が高橋の耳元で囁いた。
「くちびるにされるかと思った…って言ってたよ」
途端に、高橋の身体は、サーッと熱を帯びてくる。
「しちゃえばよかったのに、勿体ないなぁ、愛ちゃんは!」
身体を離し、肩をポンと叩かれる。
「じゃ、松浦、これから部活に行って参ります!」
松浦はかしこまって敬礼すると、教室へ戻っていった。
一人残された高橋は、暫くその場所でボーッとしていた。
- 436 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-191- 投稿日:2004/02/29(日) 15:59
- ―191―
それから更に月日は流れて2月―――。
「最近、愛ちゃんの様子がおかしいと思わない?」
突然、真希が言い出すから、矢口は怪訝そうな顔をした。
「そうかな…」
矢口は、もう、とっくに冷めたコーヒーに口をつけた。
いつも鈍感な真希が、そんな事を言うので内心矢口はびくびくだ。
「やっぱり、やぐっつぁんに会えないのが寂しいのかな」
「んな事ないだろ」
矢口が速攻で返す。
3年の矢口が学校に行く回数も、もう数える程しかない。
たまにバイト先に顔を出すと言っても、たかが知れていたし、
矢口の方からは、あの後、高橋と個人的に話す事も殆ど無かった。
以来、何となく二人の間に距離が出来てしまった事も否めないのだが。
「そーぉ?」
真希が顔を近づけて矢口の事をまじまじと見つめる。
「そうだよ。おいらが居なくなったら、ごっつぁん、高橋の面倒
ちゃんと見ろよ。じゃないと承知しないからな!」
矢口は残りのコーヒーを一気に飲み干した。
- 437 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-191- 投稿日:2004/02/29(日) 16:00
- 「だったら、その前に、やぐっつぁんが、何があったのか、愛ちゃんに
訊いてみてよ」
「えー? なんで、おいらが?」
なるべく高橋の話題は終わらせようとしているのに、なかなか真希は
引き下がらない。あまり長引くとボロが出そうで矢口は内心焦る。
「なんでって、やぐっつぁんの役目でしょ?」
「役目ってなんだよ…」
矢口は小声で呟く。
「それとも、やぐっつぁん、愛ちゃんの事避けてるの?」
「えー? なんでだよ!」
殊更大きな声で矢口は答えて口を噤んだ。
真希のニヤリ顔。拙いと思った時は、時既に遅く……。
「怪しいなぁ。白状しなよ。怒らないから」
真希に腕を掴まれて、矢口は顔を顰めた。
「避けてないから!」
「だったら、愛ちゃんを勇気づけてあげてよ! 何があったのか
分かんないけどさ。私よりも、やぐっつぁんの方がいいと思うし」
更に突っ込まれると思い、半ば諦めた矢口だったが、真希は意外にも
あっさりと、そこで引き下がった。
「分かったよ。今度な」
しかし、真希は、その場で矢口に電話させて、高橋と会う約束をさせた。
そんなに信用出来ないのかと、矢口は少し不機嫌になっていたが。
- 438 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-192- 投稿日:2004/02/29(日) 16:00
- ―192―
ひとみは、来月下旬の旅行の事で頭はいっぱい。
幸い、柴田の都合もついて、あとは申し込むだけとなった。
その前に、期末テストと言うものがあるのだが、そんな事は綺麗に
ひとみの頭の中からは消えている。
しかし梨華は違う。バイトに専念していたせいで、勉強の方が疎かに
なっていて、少しばかり不安と焦りが出ていた。
成績が落ちると受験に響くから、梨華は必死である。
寝る間を削って、ここ数日前から梨華は勉強もしていた。
「梨華。最近寝不足?」
ひとみに言われ、梨華は顔をあげる。
「どうして?」
ひとみは、すっと手を伸ばし、梨華の目の下に指を置いた。
「クマさんが出きてるから…」
「大丈夫だよ。私は平気だから」
ひとみの手に自分の手を重ねる。
「それならいいけど。梨華は、もうバイト頑張らなくてもいいよ。
あとは、私が何とかする」
気を遣っているのか、ひとみは、そんな事を言う。
「ひとみちゃんだけに頑張らせるわけには、いかないもの…」
「梨華は優しいね」
「ひとみちゃんには負けるけどね」
そう言って梨華は笑った。
- 439 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/02/29(日) 16:08
- 相変わらず、遅すぎる更新で申し訳ありません。
>427 タケさん
矢口も一応、高橋の事は気になっておるのですが、
後藤がいる手前、なかなか…(ry。
>428 ヒラッペさん
いしやぐ誕生日から、既に一ヶ月以上経ってしまいますた(冷や汗;。
次の更新が、吉澤さんの誕生日ならないように…(かなり汗;。
>429 マイキ−さん
矢口が言いたかった事は、今回、松浦が言っております(多分。
>430 名無飼育さん
申し訳ないです。ひとつきに1回は最低更新しないととは
思っております。
>431 名無飼育さん
川*’ー’)←アナタには、もう少し頑張っていただきますw
>432 はったーさん
初めまして。一日で全部ですか。かなりの量だったと…。
お気に入りに登録とは嬉しいですね。
受験生だそうで、頑張って合格して下さい。
それと下の方も書かれてますが、sageでお願いします。
>433 名無飼育さん
わざわざ落としていただいてありがとうございます。
- 440 名前:はったー 投稿日:2004/02/29(日) 19:36
- sageって何っすかぁ??ごめんなさい!!わかんないっす(汗
それと、今までの全部読みたいんですけど、見つからなくて(泣
よかったら前のアドレスを載せていただけませんか??
それと、受験頑張りますね^^
レス頑張ってください!!ずっと楽しみに待ってるんで!!
- 441 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/29(日) 19:46
- >>440
sage方を知らないんだったらFAQを見よ。
- 442 名前:はったー 投稿日:2004/02/29(日) 20:06
- これで出来てますか?
すいませんでした(汗
- 443 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/29(日) 20:13
- >>440
名前の横にあるE-mail欄に半角でsageといれる。
しかし一日で読むとはスゴイ集中力だな。受験も頑張れよ。
- 444 名前:443 投稿日:2004/02/29(日) 20:15
- おもっきりアホだなヲレ_| ̄|○いってきます
>>442
できてるよ
- 445 名前:はったー 投稿日:2004/03/01(月) 17:25
- ありがとうございます^^
俺、はまちゃうとすっげぇ集中しちゃうんで!!
ここは長い事通わせていただきます(笑)
- 446 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-193- 投稿日:2004/03/07(日) 14:38
- ―193―
急に話がしたい―。だなんて…。
あれ以来、何となく矢口と疎遠になっていた高橋は
久しぶりに矢口と会える事で胸は高鳴っていた。
そして矢口と会う当日。高橋は待ち合わせ場所へと向かう。
少し早めに着いたつもりが、矢口の方が先に来ていて、高橋は
矢口を見つけると、途端に足を止めた。
「心の準備まだ出来てないのに…」
高橋が立ち止まり深呼吸をしていると、矢口は高橋に気づいたのか顔をあげた。
「気づかれちゃった」
矢口は、ゆっくり高橋の方に歩いてくる。
「よぉー。早いな」
「おはようございます」
高橋は少し大袈裟気味に頭をピョコンと下げる。
- 447 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-193- 投稿日:2004/03/07(日) 14:39
- 「おは。おいらも今、来たトコなんだ。少し早いかと思ったけど良かった。
待たせちゃ悪いからな」
そう言ってポケットから缶コーヒーを取り出し、高橋の頬に押し当てた。
今来た割には、既に暖かい缶コーヒーは、ヌルイ暖かさになっている。
「あっ。高橋も何か飲む? 寒いだろ」
「あっ。あぁぁ私はいいですっ。構わないで下さい」
多少大袈裟に左右に手を振る。
「…そっか。じゃぁ、どっか茶店にでも入るか。おいら一気に飲むから待ってて」
タブを開け、矢口は一気に飲み干す。
「矢口先輩。今コーヒー飲んで、また飲んだらお腹たぽたぽになりません?」
「ん? 別に気にすんなよ。それとも、飯食う?」
「あ、私も何かジュース買ってきます!」
そう言って高橋は、自販機へと駆けて行った。
- 448 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-193- 投稿日:2004/03/07(日) 14:39
- どこか、ぎこちなさが残っている事に、気づきながら高橋は溜息をつく。
そうさせてしまったのは自分の責任だ。
高橋は小銭を入れようと鞄から財布を出そうとした時、既にお金が入る音がした。
「高橋、何飲む?」
「え?」
びっくりした様子で高橋は振り返る。
待っていた筈の矢口が真後ろにいた。
「んな、驚く事ないだろ。おいらももう1本飲むからさ」
「ごめんなさい…」
「ん?」
「急いで飲む必要なかったんでしたね…」
余計な事をしたと高橋は気づく。
「気にすんなよ。喉乾いてたからよ。何遠慮してんだよ」
そう言って矢口は促しボタンを押した。
- 449 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-194- 投稿日:2004/03/07(日) 14:40
- ―194―
ベンチに腰掛ける二人。
2月の半ば。昼間でもまだまだ寒い時期。日が当たっていても人影はまばらである。
「あ、あの…」
持っている缶紅茶を手で遊ばせながら、高橋から切り出した。
「うん」
「矢口先輩…。気にしてるのかなぁって。ずっと考えてました」
「…あの事?」
矢口が高橋の方に向き直る。
「…気にしてるっちゅーか、ビックリしただけだよ。
それで逆に高橋が悩んでたりしてないかなっとは思ったけど。
なんか会う機会なくなっちまったしな」
「亜弥ちゃんにも言われました」
「松浦!」
矢口はハッとする。
「あいつ、余計な事言ってなかったか?」
矢口は急にそわそわしだす。
- 450 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-194- 投稿日:2004/03/07(日) 14:41
- 「あの…亜弥ちゃんに言った事って本当ですか?」
「言った事って?」
「あ…覚えてなければいいんですけど。直接言って欲しかったかなーなんて。
すみませんっ」
高橋は真っ赤になりながら俯いた。
少し沈黙が続く。
「…いや、あそこまでしたらさ、普通そう思うだろ?
それが良いか悪いかは別として…。だから、おいらはそう言ったんだ」
直接言わないが、矢口も顔が赤らんでいる。
「すみませんっ」
「別に謝らなくても。ただ高橋らしいなぁとは思ったよ。
それに絶対、誰かが、松浦しかいないけどよ、あいつが何か言ったんだ
ろうなとは思ったしな。でも嬉しかったんだぜ。んな事言ったらごっつ
ぁんに怒られそうだけどな」
矢口は照れ臭そうに頭を掻いた。
- 451 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-194- 投稿日:2004/03/07(日) 14:41
- 『嬉しい』なんて言われ、更に高橋の頬は熱くなる。
そんな事言われたら、ますます好きになる。
「ごっつぁんもさ、高橋の事気にしてるみたいでよ…」
矢口は2本目のコーヒーのタブを開けた。
「後藤先輩にも迷惑かけちゃったんですね」
「いいんだよ、アイツは。おいらが居なくなったら仲良くしてやってくれよ。
つか、ごっつぁんの面倒見てやってくれな」
「面倒見るなんて。私の方が迷惑かけないようにしないとですよね」
「高橋の方がしっかりしてるかもよ? 一応ごっつぁんには、高橋の面倒
みろよ。とは言ってあるけどな」
そう言って矢口は笑った。
その後、二人は食事をして、最初で最後の筈だった観覧車にまた乗る事になり―――。
- 452 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-195- 投稿日:2004/03/07(日) 14:42
- ―195―
その頃、真希は久しぶりにひとみの家に遊びに来ていた。
「珍しいね。矢口先輩と一緒じゃないのって」
「そう言う、よっすぃーも石川先輩と一緒じゃないじゃん」
ひとみの部屋でお菓子をつまみ、寝そべりながら真希が答える。
「勉強やらないとって言われちゃったからさー」
「振られた訳か」
「そういうごっちんは?」
「やぐっつぁんなら、愛ちゃんとデイトだよ。デイト!」
「良く許したね」
ひとみはジュースを片手に雑誌から目を離さずに答える。
「だって私が会ってこいって言ったんだから」
「ごっちん優しくなったじゃん」
「愛ちゃんだって、もう会えなくなる訳じゃん? やぐっつぁんの事
好きなの知ってるしさ。最近元気ないから励ましてって言ったんだよ」
「ごっちん大人になったじゃん」
聞き流しているのか、ひとみはページを捲りながら答えた。
- 453 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-195- 投稿日:2004/03/07(日) 14:43
- 「ホントに思ってる?」
真希はひとみの雑誌を取り上げると、少しムッとした顔で言った。
「思ってるよ」
「よっすぃーは、松浦と石川先輩の事気にならないの?」
「だって、松浦は柴ちゃんと遠恋してんじゃん」
ひとみは他人事のように返す。
「そうだけど、結構松浦積極的だったからなぁ。また石川先輩にポワワとか
ならないといいけどね」
「なんでそういう事言うかなぁ…」
そう言われると、ひとみも少し不安になってくる。
「勉強とか言って、実は松浦と会ってたりとか…」
「ごっちん!」
「…冗談だよ。石川先輩に限って、よっすぃーに黙ってそんな事しないよ」
「ちょっと出かけてくる」
「よっすぃー?」
真希を部屋に残してひとみは、駆けだして行った。
- 454 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-196- 投稿日:2004/03/07(日) 14:43
- ―196―
真希の予告は当然外れたものの、梨華は家にはいなく、
何故か休みの筈のバイトに出ていた。
ひとみを見つけるなり、梨華は驚いた様子でひとみを見た。
「ひとみちゃん!」
「梨華! 勉強してるんじゃなかったの?」
息を切らしながら、ひとみは怖い顔。
「急に保田さんから呼び出されちゃって。
亜弥ちゃん風邪で熱出したらしくて代わりにね」
普段なら、そんな事くらいで怒らない筈のひとみが偉く
機嫌が悪いので、梨華はどうしたのかと首を傾げる。
「あとで見舞いに行ったりとか、するわけ?」
「う、うん。保田さんにも言われてるし。あとで様子見て来いって」
「ふぅん。そうなんだ…」
「なに怒ってるの?」
「勉強してると思ったのに…」
それだけで怒ってる風には見えない。
「仕方ないよ。今度、亜弥ちゃんには代わってもらうから」
「当然だよ」
「ひとみちゃん?」
別にひとみと会う約束をしていてキャンセルになった訳でもないのに
何故ひとみが怒っているのか梨華には理解出来なかった。
- 455 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-196- 投稿日:2004/03/07(日) 14:44
- 「様子見に来ただけだから。帰るね」
「う、うん。ごめんね」
梨華は腑に落ちない顔をしながら、ひとみの後ろ姿を見送る。
「なに吉澤怒ってんの? 相変わらず変な子ね」
ひとみが出て行ってから、保田はつぶやく。
「私のも…分かりません」
梨華は苦笑いしながら答える。
「石川、後はいいから、ちょっと松浦の見舞いに行ってやってくれない?」
そう言って、松浦の好きな桃の缶詰やポカリスエットなど、見舞い代わりの
差し入れを梨華に渡す。
「いいんですか?」
「石川休みなのに入って貰っちゃってるし。見舞いの後に、吉澤に会って
来なさいよ」
「でも…」
「あぁいう単純なヤツは、会って甘えてやれば、怒ってる事なんか忘れるわよ」
保田はそう言って梨華の背中を押した。
- 456 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/03/07(日) 14:46
- 更新しました。
ここの公認CP書くより、他絡み書いてる方が楽しかったり(氏。
>440 はったーさん
赤板の倉庫に、1。空板の倉庫に、2,3,4そして
この赤の4が現行スレです。かなり長いので…(汗。
受験頑張って下さいませ。
>441.443さん
ありがとうございます。
では、今月は数回更新いたします(多分…。
- 457 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/03/07(日) 14:52
- >>455
「私のも…分かりません」 ×
「私も…分かりません」○
すみません。。。
- 458 名前:タケ 投稿日:2004/03/08(月) 14:50
- 更新お疲れ様
やぐ高の予感・・・と思って言いのでしょうか?
次の展開にドキドキです
それにしても吉澤さん・・・石川さん一直線ですね
こちらも今後の展開が気になります!
- 459 名前:はったー 投稿日:2004/03/10(水) 17:25
- 今日、受験終わりました(^ー^)v後はここに一直線!!
- 460 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-197- 投稿日:2004/03/15(月) 18:29
- ―197―
梨華が松浦の家(従姉妹の家に世話になっている)に行くのは、
これが二度目である。
この間は松浦が直接出て来たので家の人には何も言われなかったが、今回は
「あなたが噂の石川さんね」と言われ、一体、何の噂をされているのだろう?
と少々気になりながら梨華は松浦の部屋に通された。
「梨華先輩っ」
松浦は予期してなかったのだろう、驚いた様子で身体を起こした。
「あ、寝てていいから。保田さんが見舞いに行ってこいって」
そう言って見舞い代わりの袋を少しあげて見せた。
「すみません…」
少し顔がポーッとしている松浦はやはり元気がない。
- 461 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-197- 投稿日:2004/03/15(月) 18:31
- 「亜弥ちゃんが寝込むなんて珍しいね」
「バカは風邪引かないって言いますからね」
「そうじゃないけど。かなり熱あるの?」
ベッドの横に屈み込んで松浦の額に手を当てる。
「珍しく40度くらい出ちゃいました。さすがにふらふらしますね。
梨華先輩に仕事代わって貰って申し訳なく思ってます」
そう言って弱々しく笑う。
「気にしないでよ、亜弥ちゃん。早く元気になってね」
梨華は布団に手を入れて、亜弥の手を握りしめた。
かなり熱を持っている。外から来た梨華には丁度良い暖かさだった。
「梨華先輩の手冷たくて気持ちいい」
「私もだよ。亜弥ちゃんの手、暖かくて気持ちいい。って言っちゃいけないか」
「心細かったから、梨華先輩が来てくれて嬉しい」
病気の時、寂しくなるのは、一人暮らしの梨華も良く分かるから
松浦は実感がこもっていた。
「柴ちゃんの代わりにならないかも知れないけどね」
「えーっ。そんな事ないですよ。梨華先輩嬉しいです。だって私、今でも…」
そう言って松浦は言葉を濁す。
- 462 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-197- 投稿日:2004/03/15(月) 18:32
- 「なによ亜弥ちゃん」
「言わなくても分かってるくせに…」
松浦は途端に声が小さくなる。目を潤ませながら松浦は視線を外した。
「亜弥ちゃん?」
梨華は顔を近づける。
と、布団の中から松浦の手が伸びてきて、梨華を引き寄せた。
「私が梨華先輩の事、好きなの知ってますよね」
「あ、亜弥ちゃん…」
しどろもどろになりながら梨華は狼狽える。
松浦の顔が近すぎて焦点が合わない。
―――と、梨華のくちびるに、とても熱い柔らかいモノが触れた。
梨華は一瞬何が起こったか、分からなかった。
と、同時に金縛りにあったかのように動けなかった。
「梨華先輩…」
松浦は意識が朦朧とする中で、梨華の名前を呼びながら再び眠りに落ちていった。
- 463 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-198- 投稿日:2004/03/15(月) 18:33
- ―198―
ゆっくりと動き出した観覧車の中で、高橋は嬉しそうだ。
「矢口先輩と乗るの2回目ですよね」
「そうだな。また乗るとは思わなかったな」
矢口は伸びをして苦笑い。
「私も…あの時が最後だと思ってました」
遠くを見つめるように高橋は言う。
「そう言えば、あん時も高橋が迫って来たんだよな」
矢口に断られるのを分かって高橋はキスを迫ってきた。
「やー、もう言わないで下さいよ。恥ずかしいですからー!」
「あん時もビックリしたなー。今となっては良い想い出だけどな」
想い出―――。
今日という日も想い出となって二人の心に刻まれて行くのだろう。
- 464 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-198- 投稿日:2004/03/15(月) 18:34
- 「矢口先輩」
「ん?」
矢口が浸っていると、高橋が真面目な口調で訊いてきた。
「今、あの時と同じように…したら、矢口先輩はどうしますか?」
「あの時って…」
あの時を思い出す矢口。そして、この前の事も同時に思い出す。
除けようと思えば除けられたのに、矢口は出来なかった。しなかった。
「それは…どういう意味?」
矢口はじっと高橋を見つめる。高橋はハッとして急に冗談めかした口調になった。
「やだ。矢口先輩。真面目にならないで下さいよ。冗談で返すと思ったのに」
高橋は急に気まずくなり、外の景色に目を移す。
観覧車はもう少しで頂上に辿り着く。あとはゆっくりと下っていくだけだ。
「お前が聞いてきたんじゃないかよ!」
矢口は急に怒りだす。
- 465 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-198- 投稿日:2004/03/15(月) 18:34
- 「矢口先輩?」
「そういう事はいちいち聞くなよ」
早口でそう言うと矢口も外へと視線を移した。
「それは、どういう意味ですか?」
高橋は思わず立ち上がる。と同時にガタンと音がし、丁度一番上に来たようだった。
「いてっ」
その拍子に高橋は頭をぶつけバランスを崩す。
「おい、大丈夫かよ?」
矢口はよろけた高橋を支えた。
「は、はぃっ」
そう答えたものの、抱きついたような体勢で、息が触れ合う程近くに矢口の顔があり、
高橋は思わず見つめてしまう。
- 466 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-198- 投稿日:2004/03/15(月) 18:35
- 「高橋……」
「矢口先輩……」
そのまま高橋は矢口に抱きついてきた。
「お前、その体勢きついんじゃないの?」
なんとなく気まずい雰囲気になるのを避けるため、矢口はそう言った。
「隣りに行ってもいいですか?」
「うん…」
高橋が頭を掻きながら隣りに座り直すと矢口は高橋の頭を撫でた。
「お前もおっちょこちょいだなぁ。気をつけろよ」
「はい。普段は冷静なんですけど矢口先輩の前だと舞い上がっちゃって…」
そう言って俯く。
急にかしこまる高橋に、矢口は相手が変わっても、やはり自分は
甘い雰囲気になる事は、皆無なんだと認識した。
「ごっつぁんとは…平気だよな?」
「ぇ?」
「さっきも言ったけど、よろしく頼むよ」
「そんな…」
そんなやりとりをしていたら、もう地上に着くのは、あと1/4ほどになっていた。
- 467 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-198- 投稿日:2004/03/15(月) 18:35
- 「あぁ、もう終わっちゃうな…」
矢口はぼそっとつぶやき外に目をやる。同時に高橋も外に目を移した。
「あっと言う間でしたね…」
名残惜しそうにつぶやく高橋に、矢口は一瞬考える。
何を思ったのか、矢口は高橋の横顔に素早くキスをした。
「………っ!??」
何が起こったのか、高橋はすぐには理解出来なかった。
そうしているうちに、観覧車は丁度扉が開いた。
何事もなかったかのように矢口は先に出る。
「や、矢口先輩?」
我に返り高橋も慌てて外に出て、少し先を行く矢口を追い掛けた。
- 468 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-199- 投稿日:2004/03/15(月) 18:36
- ―199―
「それでそのまま帰ってきちゃったの? 一緒に松浦んちに見舞いに行けば
良かったじゃん」
呆れたように真希は言う。
そのまま怒りながらひとみは戻って来た訳だが、真希に指摘され、そうだよな。と
頷いた。
「そうか。気づかなかった」
梨華から松浦の名前が出て、思わずカッとなり帰って来てしまったが、
そうすれば良かったとひとみは後悔した。
「相変わらず石川先輩にラブラブなんだねぇ、よっすぃーは」
からかうように言われ、ひとみはムッとする。
「元はと言えば、ごっちんが変な事言うからじゃん」
「そのくらいで真に受けると思わなかったんだよ。まぁいいじゃん」
真希は相手にせず片手をヒラヒラさせる。
「じゃ、じゃぁ今から行ってくる!」
「よっすぃー?」
ひとみは再び梨華の元へ自転車を走らせた。
- 469 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-200- 投稿日:2004/03/15(月) 18:37
- ―200―
梨華は気づくと自分の部屋に戻っていた。
よほど驚いたのか、松浦の家からうちに辿り着くまでの記憶が殆どなかった。
「亜弥ちゃん…」
最近妙に積極的な松浦が気になってはいたが、柴田とうまく行っていないのだろうか?
そんな不安がよぎりつつ、梨華は唇に手を触れてみる。
前も自分の誕生日の時、松浦の家を訪ねた時に、松浦にキスをされたが、それは
頬にだった。
「どうしたんだろう、一体…」
- 470 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-200- 投稿日:2004/03/15(月) 18:37
- 「梨華!」
ビクンとして梨華はその声に振り返った。
「ひ、ひとみちゃん!」
今までひとみの事をすっかり忘れていた梨華は現実に引き戻された。
「なに、そんなに驚いてんの?」
はぁはぁ息を切らしながらひとみはドアの前に立っている。
「私も今、戻って来たトコなんだ…」
慌ててドアを閉め、ひとみを中に入れる。
「松浦の見舞い?」
「そう…。熱出してて辛そうだった」
「そっか…」
ひとみはそれ以上何も言わない。
- 471 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-200- 投稿日:2004/03/15(月) 18:38
- 「ひとみちゃん、どうしたの? なんかさっきも怒った風だったし…」
梨華は恐る恐る訊いてみる。
「あ、別に何でもないんだっ。梨華が松浦と何かあるってごっちんが
変な事言うからさ。変に気を回しすぎちゃって…。ごめん」
ひとみは髪を掻きながら答えた。
「何かある訳ないじゃない。ごっちんも変な事言うんだからっ」
梨華はひとみに気づかれやしないかと、内心びくびくしながら返した。
「そうだよね。さっきはゴメン」
ひとみは、そう言って後ろから梨華を抱きしめる。
「私もちゃんとひとみちゃんに言わなかったから。ごめんね」
腰から回って来たひとみの手を梨華はそっと握りしめた。
- 472 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/03/15(月) 18:42
- 更新しますた。
もう終わりが近づいていると言うのに新キャラ登場させようか迷い中でございます。
>458 タケさん
やぐ高…実は書き直しました。
この二人の関係は、ずっとこんな感じですかね。
ただ矢口も高橋の存在は大切になってきてますけどw
吉澤は石川一筋です。
が〜、ちょっと松浦の行動がぁゃιぃかも。
>459 はったーさん
受験乙です。あとは発表待つのみでつか?
- 473 名前:はったー 投稿日:2004/03/16(火) 17:06
- そうなんすよぉ!(泣)待ってる間が1番イヤっすねぇ(´д`)=3
てか、この話し何か終わってほしくないなぁ〜ずっと、続いてほしい!!
けど、やっぱ始まりがあればいつか終わるっすよねぇ〜(泣。
作者さんも大変だと思うし!!この話しが続くかぎり応援してますよ!
頑張ってくださいっす!!
- 474 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/18(木) 00:28
- おぉ!なんかずいぶん覗いてないうちに更新されてるという・・・
いやぁ、萌えですw
久しぶりに読んだらもう鼻血モノですね。やっぱり。
えっ!っていうか松浦さんが何かやっちゃうんですか?
気になる・・・
次回楽しみにしてます。
- 475 名前:プリン 投稿日:2004/03/18(木) 17:26
- はじめまして!!
恋をしちゃいましたシリーズは全部読みました。
すごく(・∀・)イイ!
いしよしが大好きなものでw
萌え萌えです。
続き頑張ってくださいね!
待ってます!
- 476 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-201- 投稿日:2004/03/19(金) 20:57
- ―201―
一人スタスタと歩く矢口を追い掛ける高橋。
「待って下さいっ!」
「あ、悪ぃ。少し歩くの早かったか?」
何事もなかったかのように矢口は振り返り、立ち止まった。
「矢口先輩……」
高橋が何か言いたげなのは分かっていたが、矢口は答えなかった。
「どっか入ろうか。寒いだろ」
「…あの……」
「ん?」
「ぃぇ。もう帰ります」
「え? どうして…」
予想に反した答えで矢口は思わず聞き返した。
- 477 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-201- 投稿日:2004/03/19(金) 20:57
- 「なんか…自分でも良く分かんないんですけど…」
急に涙を浮かべて話す高橋に、矢口は更に慌てた。
「お、おい。泣くことないだろっ!」
ハンカチを取り出し、高橋に押しつける。
「い、いやだったか?」
自分でも何でそんな事をしてしまったのか、矢口は良く分からなかった。
ただ、あの時は、そうしたかったのだから仕方がない。
「分かんない…です」
ハンカチを目に押し当てながら高橋は答える。
きっと、これは嬉し涙―――。
「分かんないって…。んな事ぐらいで泣くなよ」
バシッと高橋の肩を叩く。
「私にとっては、人生最大の事なんですけど!」
パッとハンカチで押さえていた顔を上げ、矢口を見つめる。
「ぅ…。ごめん……」
矢口も高橋を見つめる。
「矢口先輩……」
矢口はまたポケットに手を入れるとこう言った。
「高橋。鼻水も出てんぞ」
- 478 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-202- 投稿日:2004/03/19(金) 20:58
- ―202―
翌日、松浦が昨日のお礼を言いに、梨華の教室を訪ねに来たのだが、
あいにく梨華は学校を休んでいるらしい。
「休みなんですか!?」
少し驚いた風に聞き返す。
途端、それは自分のせいだと思った松浦は、そのまま梨華の家に向かった。
「梨華先輩!?」
暫くして、辛そうな顔をした梨華が顔を覗かせた。
「大丈夫ですか!」
「亜弥ちゃん…。学校……」
「そんなのは、どうでもいいんです。梨華先輩にお礼を言いに言ったら
休みだって聞いて…」
心配そうな顔の松浦を見て梨華は微笑む。
- 479 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-202- 投稿日:2004/03/19(金) 20:58
- 「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても」
「心配します! だって、私の風邪移しちゃったのかも知れないし…」
「亜弥ちゃんこそ平気なの?」
「私は梨華先輩のお陰で、もう平気ですよ!」
松浦お得意の顎ピースをして笑顔で返す。
「それならいいわ。亜弥ちゃんは、学校戻って」
「で、でも…」
松浦は、ここで自分が何も持って来てなかった事に気づく。
「あ、何かそこで買ってきます。ちょっと待ってて下さい! すぐ戻って来ますから」
「亜弥ちゃん!」
松浦は梨華の言う事も聞かずに、また走り出して行った。
- 480 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-202- 投稿日:2004/03/19(金) 20:59
- 「こんな事したら吉澤さん怒りますか?」
松浦が梨華の部屋に戻ってきて、額のタオルを交換したりしながら呟いた。
「ひとみちゃんは別にいいんだけど…。あの…亜弥ちゃんが責任感じる事ないんだからね」
「だって、それくらいしか考えられないじゃないですか」
再三念を押す梨華だったが、松浦は自分が風邪を移したと思っているらしい。
実際、どうなのかは梨華には分からなかった。
キスしただけで移るのか、それとも、その後、ひとみと……。
「ねぇ、亜弥ちゃんに一つ訊きたいんだけど…」
「はいっ」
松浦にじっと見つめられ、梨華は昨日の事を思い出していた。
どうやら、この様子では、松浦は無意識に梨華にキスしたとしか思えない。
しかし―――。
- 481 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-202- 投稿日:2004/03/19(金) 20:59
- 「亜弥ちゃん、昨日私が見舞いに来た事覚えてる?」
「んー…。大体は覚えてますけどぉ…」
松浦は少し考え込むようにして続ける。
「でも、途中から意識が…ないんですよね。気づいたら梨華先輩いなかったし…」
「あの…どの辺りから?」
「色々持ってきてくれた辺りは覚えてるんですけど…」
「その後…は?」
梨華の心臓はドキドキし始める。
「その後ですか? あんまり……」
梨華が落胆する様子が手に取るように分かり、松浦は不安になる。
「あの、私、梨華先輩に何かしましたか?」
少し探るような瞳で松浦は聞き返した。
その様子から、やはり松浦は覚えていないと確信した梨華は話を変える事にした。
- 482 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-202- 投稿日:2004/03/19(金) 21:00
- 「覚えてなければいいの。それより亜弥ちゃん…。柴ちゃんとは…」
そう言いかけた時、チャイムが鳴る。
「あ、私が出ます」
スクっと立ち上がり、松浦はドアの方に向かった。
「亜弥ちゃん…」
柴田の名前が出た時、松浦の表情が一瞬翳ったのを梨華は見逃さなかった。
- 483 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-203- 投稿日:2004/03/19(金) 21:00
- ―203―
「矢口さん!」
「松浦。なんでお前が? 学校じゃねぇのかよ?」
お互い驚いた様子で聞き返す。
「学校よりも梨華先輩が大事だから、飛んできました」
キッパリと答える松浦に、矢口は言い返す事も忘れてしまった。
「そ、そっか。おいらは取りあえず様子見に行けって頼まれてよ」
「吉澤さん? 学校より梨華先輩が大事じゃないんですか!」
急に怒り出す松浦に、矢口は首を傾げる。
「あの…おいらはヒマだから。それに吉澤も後で来るって言ってたし…」
「矢口先輩…」
梨華がベッドから起き上がって出てくると、申し訳なさそうに頭を下げた。
「おい、起きて大丈夫なのか?」
「みんな大袈裟なんだから。私なら平気ですから…。亜弥ちゃんも、もう戻って。
今からなら、午後の授業間に合うでしょ?」
時計を見ながら梨華は松浦を促した。
「梨華先輩……」
少し寂しげな表情を見せながら、松浦は尚も何か言いたそうな顔をしながら
梨華の家を出て行った。
- 484 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-204- 投稿日:2004/03/19(金) 21:01
- ―204―
「松浦のヤツ、随分最近は石川の事心配してんだな」
松浦が出ていき、矢口と二人きりなる。
「私も気になっているんですけど…」
「なんかあったんか? 柴田と上手く行ってないのかな」
ぼそっと呟く矢口に、梨華は松浦の事をどこまで話そうか迷っていた。
「私も…何となくですけど、柴ちゃんと上手く行ってないんじゃないかなって…」
「やっぱ、それなのか? 遠恋だもんなぁ。やっぱ会いたい時会えないのは
辛いんだろうな…」
他人事のように言う矢口だったが、それはあとふたつきもしないうちに
自分も現実になる人の言う言葉には聞こえなかった。
「矢口先輩だって……」
「おいらも、そうなんだよな。まだ実感わかないけど。
あんまり考えないようにしてんだ。ごっつぁんも避けてるって言うかさ…。
無理にそういう話してもな…っておいらの話は置いといて、松浦だよ」
- 485 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-204- 投稿日:2004/03/19(金) 21:01
- 矢口は話を元に戻す。
「石川から松浦にそれとなく訊いてみろよ。そのくらいは訊けるんだろ?
おいらが訊いたら変だもんな」
「そうなんですけどね…」
「それより、石川。具合は、どうなんだ? 熱出たって聞いたけど」
「あ、大した事ないんです。ちょっと疲れが出たんだと思います」
「それならいいけど。石川も大変だよなぁ」
「そんな事ないですよ。矢口先輩だって、ごっちんと高橋さんと大変じゃないですか」
「高橋か…」
少し遠い目をして矢口が答えたのが梨華は気になった。
「昨日…高橋さんと会ってたんですよね」
「さすが情報が早いな」
苦笑いしながら矢口は答える。
「あ、何となく聞いただけで詳しくは聞いてないです」
余計な事を聞いたと思い梨華は付け足した。
- 486 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-204- 投稿日:2004/03/19(金) 21:02
- 「別にいいんだ。高橋とは楽しかったよ。アイツ良いヤツだよな。
おいらがいなくなっても、石川も仲良くしてやってくれよ」
「それはもちろんですけど…」
「高橋と松浦って友達だったよな。あまり余計な事喋ると、松浦に筒抜け
なんだよな。石川も気をつけた方がいいぞ」
「何をですか?」
「良くわかんないけど。じゃ、おいらは帰るわ。石川も寝た方がいいだろ。
じゃぁな。邪魔したな」
矢口は立ち上がる。
「こちらこそ、すみませんでした」
寝ながら梨華は頭を下げる真似をした。
「いいってこった。吉澤には、すぐ飛んでくるように言っておくからよ」
そう言って矢口は笑った。
- 487 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-205- 投稿日:2004/03/19(金) 21:03
- ―205―
松浦はそのまま学校には行かず、一言、保田にも詫びを入れようと思い、
バイト先へと向かった。
自動ドアが開くと同時に、中から段ボールを運んだ女の人とぶつかる。
「いてっ…」
「いったぁ…」
チラっと見ると、同じ制服。多分バイトで保田が入れたのであろう。
しかし―――。
「良く見て歩けよ、全くよう!」
いきなり、そんな事を言われ松浦は面食らう。
「ちょっとアンタ! あ、松浦? 学校どうしたのよ?」
保田は注意しようとしたが、松浦に気づき、すぐに駆け寄ってくる。
彼女は、すぐに外に出て裏へと回って行ってしまった。
- 488 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-205- 投稿日:2004/03/19(金) 21:03
- 「保田さん…。昨日はすみませんでした…」
松浦は気を取り直して保田に頭を下げた。
「そんな事はいいわよ。それより無理しないでいいんだから」
「はい。すみません。梨華先輩にも迷惑かけてしまって…」
「松浦には頑張って貰ってるから、気にしない事。ちゃんと良くなったら
また来なさい。それまでは、休んでていいから。て言うか学校行きなさいよ」
保田は苦笑いしている。
「梨華先輩にお礼言って、そのままこっちに来たんですけど、
では、学校に戻りますね」
松浦は再度頭を下げて出て行った。
松浦はそのまま裏へと回る。さっきぶつかった彼女がかったるそうに
片づけをしていた。
「あの…」
松浦は勇気を出して話しかけてみた。
- 489 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/03/19(金) 21:04
- 最近、調子に乗って書いてますが、
微妙にメインが違う人たちになってきてます(汗)。
作者の自己満です。スイマセン。
って主役の(筈の)吉澤さんが今回出て来てないってw
>473 はったーさん
連載始まって6月で丸二年ですからねぇ(爆)。
そろそろ、終わらせないと。とかず〜っと気になってます。
少しは、ここの登場人物達も成長してるんですかねw
>474 ヒラッペさん
松浦さん、どうなるのか自分でも書いてて分からなくなって
来ました。なるようになると思います(無責任)。
>475 プリンさん
はじめまして〜。いしよし大好きですか。
全部読みましたか(恥。
すっかり脇役になってしまった二人ですが、
最後まで見届けて下さいね。ありがとうございます。
- 490 名前:はったー 投稿日:2004/03/22(月) 09:28
- そうなんすかぁ?!すげぇ長いっすねぇ!!
何か、名残惜しいですよぉもうすぐ終わちゃうなんて本当に(;−;)
あ!!あと、高校合格しましたんで!!(^ー^)v
- 491 名前:ヒラッペ 投稿日:2004/03/23(火) 23:34
- なるようになればOKです!!
ってか、よっすぃ〜が居なくても、別視点で話が進んでれば完璧ですよw
色んな視点で色んな恋が楽しめるってのが良いです。
でわ、次回も楽しみにしてます。
- 492 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-206- 投稿日:2004/04/29(木) 19:45
- ―206―
松浦のいない昼休み―――。
ここ最近は、バイト先でも時間が合えば松浦とお昼を取っていた高橋は、
久しぶりに一人で昼を過ごしていた。
と言っても、この後すぐに当番で図書室へと移動しなければならないのだが。
「愛ちゃん!」
移動の途中で真希から声を掛けられた。
「後藤先輩…」
「昨日は、どうだった?」
瞳を覗き込むように真希が近づき腕を絡ませて来た。
「き、昨日ですか…」
柔らかな真希の髪の匂いが高橋の鼻をくすぐる。
一体、矢口はどこまで真希に話をしているのか分からなかったから高橋は無難に答えておく。
- 493 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-206- 投稿日:2004/04/29(木) 19:46
- 「楽しかったです…よ?」
「ふぅん…。なんかさぁ、やぐっつぁんハッキリと言わないから…」
鼻がくっつきあう位まで近くに真希の顔がある。
こうして見ると、やはり真希も好きな高橋はドキドキしてくる。
「楽しくお話し出来ましたし…」
「そっかあ。他には?」
まるで誘導尋問のようだ。いつの間にか高橋の身体は壁に押しつけられていた。
探るような視線が高橋の目に映りこんだ。
「なにも…ないです…」
真希も悪気があるようには、見えないが、何となく心が見透かされそうな気がして、
高橋は視線を外した。
「…そっか。そうだよね」
真希は力を緩めると、高橋を解放した。
何となく萎縮している高橋に気づき、真希は謝った。
「ごめん。別に脅しじゃないんだよ。なんかやぐっつぁんも余り話さない
から気になっちゃって。でも愛ちゃんが元気になったみたいだから安心した」
「ぇ?」
「これでも愛ちゃんの事、ゴトーも気にしてたんだからね」
照れ臭そうに真希は髪を掻き上げながら答える。
- 494 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-206- 投稿日:2004/04/29(木) 19:47
- 「後藤先輩にも迷惑かけちゃってすみません。私なら大丈夫ですから!」
高橋はガッツポーズを小さく取りながら返した。
「そっかぁ。それなら良かったよ。やっぱやぐっつぁんに頼んで良かった」
真希は微笑みながら、本当に良かったと言う顔をした。
「後藤先輩? 嫌じゃないんですか?」
高橋とて、真希の存在を忘れている訳ではない。
ただ、自分も矢口の事が好きだから、理解してくれる真希にも感謝しなければ
ならないと高橋は思っていた。
「なんで? 愛ちゃんも、やぐっつぁん好きなんでしょ。
自分の好きな人がモテるのは嬉しいよ、やっぱ」
真希はかなりのヤキモチ焼きである事は有名だが、高橋は別なのだろう。
「愛ちゃんは許すよ。やぐっつぁんも気に入ってるみたいだし」
真希にまで、そんな事を言われ、高橋は動揺する。
「そんな…」
「来月から寂しくなるね。愛ちゃんは、どうするの?」
真希が振り向き、高橋を優しく見つめる。
- 495 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-206- 投稿日:2004/04/29(木) 19:49
- 「どうって…。まだ分かんないです。でも…矢口先輩を好きな気持ちは変わりません」
これだけはハッキリ言える。益々好きになる気持ちは抑えられなかった。
「だよね」
真希もフフッと笑う。
「愛ちゃんの面倒見ろって、言うけどさ。どうしろって感じだよね。
それにゴトー頼りないから、愛ちゃんに甘えちゃうかも…」
「えー。後藤先輩なに言ってるんですか! そんな事ないですよ。
それに、まだ少し先ですから…」
高橋は少し困ったような顔をする。
「そうだよね。あ、いけない。行かないとね」
真希は時計を見ると、慌てて高橋を促した。
- 496 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-207- 投稿日:2004/04/29(木) 19:50
- ―207―
「なんか用?」
鋭い眼光が光る。目つきが悪いと言うか、それだけで松浦は萎縮した。
年からすれば自分とそれほど変わらないと思う。背丈も松浦と同じくらいで
ただ、茶髪でキツそうな瞳が松浦には何故か居心地悪かった。
「いえ、さっきは…」
気を取り直して松浦は続けようとするが、遮られる。
「用ないんなら帰ってくれる? 邪魔なんだよね」
ぶっきらぼうに言い放ち、松浦の横をすり抜けようとする。
矢口も言葉遣いが乱暴だが、目の前の彼女よりは、マシだった。
棘のある物言いに、松浦も苛々してくる。
- 497 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-207- 投稿日:2004/04/29(木) 19:51
- 「そんな言い方しなくてもいいんじゃありませんか?」
しかし、彼女は…
「て言うかさぁ、なに? なんなの?」
「ぇ?」
「あぁ、アンタが圭ちゃんが言ってた例のバイトちゃん?」
「バイトちゃん…」
彼女は腕を組みながら一人納得している。でかい態度に松浦は言葉を失う。
圭ちゃん。だのバイトちゃん。だの、松浦の頭はクラクラしてきた。
なんなんだ、この人は一体…。頭の中を「?」マークが駆けめぐる。
「まだ本調子じゃないんでしょ? もう帰ったら?」
なんで知ってるんだ、この人は。あぁ、保田さんが話したのか。
なんで、こんな人にそんな事話すんだろう。
「あなたのせいで、また熱が上がりそうです! 言われなくても帰ります!」
プンプンしながら松浦も言い返した。
「あっそ。すぐに下がるといいね」
ニヤリと意地悪く笑いながら彼女も言い返した。
- 498 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-208- 投稿日:2004/04/29(木) 19:54
- ―208―
硝子越しに松浦が走り去る姿に気づいた保田はすぐに裏に回る。
「ちょっと美貴! アンタ、松浦に何か言ったの?」
「別にぃ」
のんびり振り返りながら美貴と呼ばれた彼女は手を動かしながら返事をする。
「なんかウザい事言うから、適当に返しただけだよ」
「ホントに美貴は!」
腰に手をやり保田は困り果てた顔をする。
「別に美貴は此処で働きたい訳じゃないんだからね」
「じゃぁ、どこで働くのよ?」
藤本美貴。保田の従姉妹で、北海道からこちらに上京してきて、保田の家に
厄介になっている。年は梨華と同じだが、高校には行かずにフリーターである。
- 499 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-208- 投稿日:2004/04/29(木) 19:55
- 「時給の良いトコ」
「ったく生意気なんだから」
「だって圭ちゃんのトコ、タダ働きじゃん」
「当たり前でしょ? 人んちに住まわせてもらってる癖に何言うのよ」
「部屋見つかったら出てくよ」
「そんなお金あるの?」
「ない。だから、当分は仕方ないから此処で働くけどさ」
「アンタは一言も二言も十言も多いんだよ。もっと口の利き方ってもんあんでしょ?
松浦には、もっと優しく接しなさいよ。松浦に限らず他のバイトの子にもね」
保田は釘を刺す。
藤本は根は悪い子ではないのだが、いくらか(いや、かなり)口が悪いのが玉に瑕。
「分かってるよ。でも、あの松浦ってコおっかしぃね」
藤本は思い出し笑いをしている。
「美貴!」
保田の声が一際大きくなる。
- 500 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-208- 投稿日:2004/04/29(木) 19:55
- 「分かってるって。美貴が一応、此処では一番下の扱いだからね。仲良くやるって」
「ホントかよ…」
「圭ちゃん、信じて」
笑いながら藤本は保田に抱きついて来た。
「キモ…。それと、店内では、圭ちゃんじゃなくて店長って呼びなさいよ!」
「了解っ。圭ちゃん店長〜」
ニヘラと笑う藤本を見て、保田は先が思いやられると感じた。
- 501 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/04/29(木) 19:59
- 更新してたつもりが、してなくて…1ヶ月以上(大汗;。すみません。
>490 はったーさん
高校合格おめでとうございます。って遅っ!
楽しいハイスクールライフを送って下さいw
>491 ヒラッペさん
そう言っていただけると助かります。
美貴様出してしまいました。もぅ終わりが近いのに…(;´Д`)
- 502 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/01(土) 03:37
- 高橋も後藤もいいやつですね。
いいやつ過ぎて、涙が出てくるよ・・・。
- 503 名前:マイキ− 投稿日:2004/05/07(金) 19:01
- 亜弥美貴も何気に期待しちゃったり。w(藁)
- 504 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/08(土) 01:25
- ochi
- 505 名前:はったー 投稿日:2004/05/19(水) 21:04
- いやぁ、高校って大変っすよ!!初めてのテストが
明日あるって言うのに・・・赤点とったら追試だし
進級が出来なくなるし・・・頑張らないと!!
みたいな(^^;)部活もあるし・・・。ケド、
ここだけは欠かさずに来ますよ(^^)
いつも、楽しみにしてます!!
- 506 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-209- 投稿日:2004/05/29(土) 15:06
- ―209―
学校に戻りながらも、松浦の足取りは重かった。
これからのバイトで、藤本と一緒になる確率はないとは言い切れない。
そう考えると、松浦は憂鬱になる。ただでさえ、今、柴田との仲が不安定と
亜弥自身感じている時期、梨華に甘える訳にもいかずに、松浦は悩みの種が
また一つ増えたと気が重くなるのだった。
「松浦!?」
トボトボと歩いていると矢口に声を掛けられる。
「矢口さん…」
泣きそうな顔の松浦に矢口は驚いて駆け寄ってきた。
「おいおい、どうしたんだよ、今度は」
「なんでもないですよ」
無理に笑おうとして松浦は顔を歪める。
「お前らしくないじゃん」
いつも気の強い松浦の様子がおかしいので、矢口は心配する。
「まだ調子良くねぇんじゃねぇの?」
「私は平気ですっ!」
キッパリと言い放つ松浦に、矢口は頷くしかなかった。
- 507 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-209- 投稿日:2004/05/29(土) 15:07
- 「そうか。それならいいけど…。なんかあったら、何でも言えよ。
おいらで良ければ相談乗るからよ」
矢口はそれ以上何も聞かずに片手をあげ、松浦と別れた。
別れた後で、矢口に相談すれば良かったかなと一瞬思う松浦。
しかし、これは自分の問題であり、矢口には関係ないので迷惑をかけたくない。
以前の松浦なら、この位ではへこたれは、しなかったが色々な件が絡んで松浦の自信を弱くさせていた。
- 508 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-210- 投稿日:2004/05/29(土) 15:08
- ―210―
放課後、ひとみは一目散で、梨華の元へと駆けつけた。
そんなひとみに、ベッドの中からクスクス笑う梨華。
思ったより元気そうな梨華を見てひとみは安心する。
「良かった。松浦が殊更オーバーに言うからさ、気が気じゃなかったんだ」
「ひとみちゃん、ごめんね」
ひとみは梨華の手を握りしめる。
「梨華が謝る事ないじゃん。良く休んで早く良くなるといいね」
「うん。ありがと」
「もしかしたら、私が梨華の風邪悪くさせたのかもしれないし…」
「?」
思い当たる節があるとすれば、アノコトを言っているのだろう。
- 509 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-210- 投稿日:2004/05/29(土) 15:08
- 「そ、そんな事ないよ。だって、別に寒くなかったし…」
梨華も思いだしたのか、布団を顔の半分まで引き寄せる。
「風邪は人に移した方が治るんだよね。梨華に風邪移してもらおうかな…」
「え?」
ひとみは冗談とも本気ともつかぬ顔で梨華を見つめた。
梨華が何か言おうとした時には、もう梨華のくちびるは、ひとみのくちびると重なっていた。
この光景―――。昨日の梨華と松浦に似ていた―――。
- 510 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-211- 投稿日:2004/05/29(土) 15:09
- ―211―
そして数日が経ち、梨華の具合も良くなり、ひとみは、そのくらいでは
風邪も移されずにピンピンしていた。
梨華も松浦も今日が久しぶりのバイトの日だった。
始まる前に店長の保田に呼ばれる。
「今日から一緒に働いてもらう事になった藤本紹介するから」
「あぁ…」
松浦の表情は途端に曇る。
「今日からって店長、美貴、結構前から見習いとして働いてますけど?」
すかさず挨拶する前に藤本の突っ込みが入る。
「生意気で口悪いけど、これでも私のイトコだから。
でもイトコだからって遠慮しなくていいから、こき使ってやってね。ほら、挨拶しな」
- 511 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-211- 投稿日:2004/05/29(土) 15:10
- 保田は乱暴に言うと、藤本を一歩前へ出す。
「店長の方がよっぽど口悪いと思うけどなー」
「いいから、早くしな」
保田の目が厳しく光る。藤本は肩を竦めた。
「藤本美貴。よろしくね。あなたとは、この前も会ってるけどね」
チラリと松浦の方を見ながら話しかける。
「そうでしたっけ?」
忘れる筈もないが、松浦は腹が立ち、とぼけたフリをした。
「美貴は忘れてないよ。生意気な感じが結構美貴好みだったり」
「なっ…」
そう言いながら、松浦の顎を手でサラリと軽く持ち上げる。
そんな二人の光景をただ黙って見ている梨華。
- 512 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-211- 投稿日:2004/05/29(土) 15:10
- 「美貴!? アンタ、余計な事言わなくていいから!」
保田も藤本には容赦なく言い返す。
「松浦亜弥です」
藤本の手を軽く払いのけると、じっと見つめた。
「亜弥ちゃんか。可愛い名前だね」
「…そんな事…あります」
ことごとく藤本の問いには、冷たく返す松浦。
そして、梨華の事は眼中にないかのように放置されていた。
- 513 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-212- 投稿日:2004/05/29(土) 15:11
- ―212―
更に数日が経ち、藤本の噂を聞いていたひとみも、様子を窺いに店に立ち寄る。
「石川さんにイケメン風な彼女が来てるよ」
ひとみにも聞こえる声で梨華は呼ばれ、奥から出てくる。
さすがのひとみも、ちょっと驚いた様子で藤本の事を見ていた。
「なんか、凄いね…」
奥の休憩室に入り、ひとみは腰掛けながら言う。
「私なんか、まだ良い方だよ。亜弥ちゃんは毎日張り合ってるって
言うか、なんか…」
「でも面白そうな人じゃん」
松浦が聞いたら怒り出すような事を平気で言うひとみに梨華は窘めた。
- 514 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-212- 投稿日:2004/05/29(土) 15:12
- 「ひとみちゃん、藤本さんの事良く知らないからそんな事言うんだよ」
「ちょっと声デカイけどさぁ、悪い人じゃなさそうだし…」
確かに数日一緒に働いてみて、第一印象ほど悪くはないし、藤本の返しも
もう慣れたが、梨華は苦手なタイプだった。
保田のイトコと言う手前、あまり悪くは言えないが。
「でもさ、松浦もあぁいう人とやり合ってる方が毎日が楽しいんじゃないの?」
ここ数日松浦に元気が無かった事はひとみも知っている。
結局、柴田との事は、聞けず仕舞いの梨華だったが、矛先が変わっただけで
解決はしていない事には変わりはなかった。
「ひとみちゃん、他人事だから、そんな事言えるんだよ」
「確かにそうかも。その藤本さんが、梨華にばっかりチョッカイ出して
たら、私黙ってないからね」
それはそれで厄介だと梨華は思う。
「それよりさ〜梨華、ホントに近づいて来たね、旅行」
ひとみの頭には、もう旅行の事しかないらしい。
その前に、期末テストや、矢口の卒業式も控えていると言うのに。
- 515 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-212- 投稿日:2004/05/29(土) 15:12
- 藤本が多少嫌味を含んだ物言いでドアを開けた。
「お楽しみじゃないですけど、また来るね。梨華、頑張って」
ひとみは立ち上がると梨華にウィンクした。
ひとみが出て行き、梨華も出て行こうとすると藤本に呼び止められる。
「石川さんて、あぁいうタイプが好み?」
「…ま、まぁ」
それを聞いて藤本の顔はパッと明るくなる。
「じゃぁ美貴にもチャンスあるんだ」
「何がですか?」
同い年と分かっていても、梨華は藤本に対して何故か敬語を使ってしまっていた。
「亜弥ちゃん」
「え?」
梨華は言っている意味が良く分からず聞き返した。
- 516 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-212- 投稿日:2004/05/29(土) 15:13
- 「亜弥ちゃんって、石川さんの事が好きなんでしょ? 石川さんは亜弥ちゃんの事好き?」
唐突に訊かれて、梨華は戸惑う。しかし、藤本は梨華の答えを待たずして続ける。
「でも石川さんにはイケメンの彼女がいるもんね」
「あ、あの。亜弥ちゃんは、藤本さんの事嫌がってるように見えますけど…」
それにどう考えてもタイプが違い過ぎる。
「だからいいんだよ」
「は?」
「最初から好きとか思われるより、段々好きにさせる方がやりがいがあるって
言うかさ、分かるかな石川さんには…」
「分かりません…。それに、亜弥ちゃんには恋人いますよ。遠恋ですけど」
「ぇ…」
藤本には初耳だったらしい。そこまでは知らなかったようで、本当に
驚いた顔をして梨華を見つめた。
松浦には怒られるだろうが、梨華は続ける。
「だからって藤本さんが諦めるとは思いませんけど、亜弥ちゃんは無理ですよ…多分」
梨華はそれだけ言うと先に休憩室から出て行った。
- 517 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-213- 投稿日:2004/05/29(土) 15:14
- ―213―
その夜の帰り道の事、いつもはうるさい藤本が妙に大人しいのが松浦には気になった。
いつも勝手に送るよとついてくる藤本なのに今日ばかりは様子が違っていた。
別に藤本の様子が違おうが、松浦には関係ないのだが、気になる自分に腹を立てる松浦。
「亜弥ちゃん…」
やっと藤本の方から話しかけてきた。
いつも、話すのは藤本の方だが。
「………」
松浦はコートのポケットに手を突っ込みながら早足で歩く。
「恋人…いたんだね…」
その一言で、松浦はピタリと歩くのをやめ、立ち止まった。
「石川さんが…言ってた」
柴田の話はしたくないし、それも藤本なら尚更だ。
梨華がそのことを藤本に話したのもショックだった。
「藤本さんには関係ないでしょ? それに話す事もないですから!」
松浦は振り返らずに強い口調で言う。
- 518 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-213- 投稿日:2004/05/29(土) 15:15
- 「なんで怒るの?」
多少戸惑い気味の藤本の声が背中越しに聞こえる。
松浦はそれには答えずに、また歩き出した。
「亜弥ちゃん!」
不機嫌の最高潮である松浦に、藤本は果敢に立ち向かう。
回り込んで松浦の前に立ちふさがった。
「!! 亜弥ちゃん……」
よほど凄い目で睨んでいたのだろうか、あの藤本がたじろぐ。
「藤本さんなんて大っ嫌い!」
目に涙をためて、松浦は思いっきり叫んだ。
そのくらいの言葉でへこたれる藤本ではない筈だが、今の藤本には痛恨の一撃だったようだ。
「あ、亜弥ちゃん?」
ズンズンと歩いていく松浦の後ろ姿を見つめながら藤本は情けない声を出した。
- 519 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-214- 投稿日:2004/05/29(土) 15:17
- ―214―
家に着いてから、藤本の様子がおかしいのに気づき、保田は声をかける。
「美貴? どうしたのよ、電気も点けないでさ」
「あぁ、圭ちゃん、おかー」
点けた灯りのまぶしさに一瞬目を細める。
ぼんやりと顔を保田に向けると、藤本は覇気のない顔で答えた。
「何シケたツラしてんのよ。らしくない…」
缶ビール片手に、先端を藤本の頬につけた。
「つめたっ。何すんだよ!」
「松浦に何か言われた?」
「なんで分かるのさ?」
「それしかないでしょうが」
保田はコタツに入ると、藤本の顔をじっと見つめた。
「松浦にチョッカイ出すのは、やめてくれない?」
「チョッカイかぁ。最初はさ、面白半分だったんだよ。
でも、いつの間にかマジになってた…」
そう言いながら藤本は缶ビールのタブを引き上げる。
「おい、それは私んだよ」
「ねぇ、美貴がマジになるなんて、あり得ないよねぇ?」
- 520 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-214- 投稿日:2004/05/29(土) 15:18
- 「人の話聞けよ美貴!」
「でもそれがマジなんだよ。大体生意気って感じだったんだよ、あのコ」
「美貴だって充分生意気だけど…?」
それには答えずに続ける。
「でもいちいち美貴に反応してくれるわけ。それが結構マジで返して
くれるんだ。美貴感動したね、実際」
語り出すと長い事は保田も充分知っていたから、軽く相づちを打ちながら藤本から缶ビールを奪い取った。
「別にそれだけで好きになったわけじゃないけど…」
「もう…単に、アンタの好みの顔だったんでしょ?」
ズバリ確信を突かれて、藤本は目を大きく見開いた。
「さっすが圭ちゃん! 良く分かったね」
「アンタ、北海道に居た頃からそうだったじゃない。メンクイすぎるのよ」
呆れたと言う顔で保田はビールを一気に飲み干した。
「亜弥ちゃんにマジ惚れなんて…今更信じて貰えないだろうなぁ…」
藤本はガックリと首を落とし、コタツのテーブルに顎を乗せた。
「大体、からかう度が過ぎるのよ美貴は。松浦じゃなくたって怒るのも無理ないでしょ」
しかも大っ嫌いと叫ばれた事も藤本には痛かった。
- 521 名前:ミス発見 投稿日:2004/05/29(土) 15:21
- >>514と>>515の間に台詞1行抜けてました_| ̄|○
「石川さ〜ん? お楽しみのトコ悪いんですけど、休憩は終わりですよ?」
- 522 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/05/29(土) 15:24
- 更新しました。次は矢口の卒業式です。
>502 名無飼育さん
はい、いいやつなんです。矢口は幸せだと思います。
>503 マイキ−さん
亜弥美貴どうなりますかねぇw
>504 名無飼育さん
ochiどうもです。
>505 はったーさん
テストですか懐かしい響きです(爆)。
頑張って下さい。
- 523 名前:はったー 投稿日:2004/05/31(月) 09:23
- 初めてのテスト追試なしで良かった〜(笑)
無事終えましたって感じで!!
これで、しばらくここに落ち着けますよぉ(^^)
- 524 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-215- 投稿日:2004/06/10(木) 18:36
- ―215―
更に月日は流れて3月。
今日は矢口の卒業式―――。
式の最中、周りは結構泣いていたが、矢口自身は意外と平気だった。
式も終わり、名残惜しむクラスメイトと離れて、矢口は体育館に向かっていた。
約束の時間には、まだ時間はあるが、自然と早足になってしまう。
ガラガラと静かな体育館に、扉が開く音が響き渡ると、約束した人物は
やはり先に来ていた。扉が開くと同時に、視線は矢口に注がれる。
「高橋! お前はいつも早いんだからな…」
キュッキュッと上履きの音が床に擦れて響く。
「遅れる訳には行きませんから…」
ステージに立つ高橋の目は既に赤くなっていた。
矢口も駆け上がると、高橋の前に立つ。
- 525 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-215- 投稿日:2004/06/10(木) 18:37
- 「ここ覚えてるか? 高橋が、おいらに告白した場所」
わざわざ同じ場所を指定するとは、矢口も憎い事をする。
高橋の顔は、更にくしゃくしゃになり―――。
「お前が泣いてどうすんだよ!」
「だって……」
高橋は下を向く。そうすると、また涙が溢れ出し床へと落ちる。
「おいらの旅立ちを祝ってくれるんだろ?」
下から顔を覗き込むようにして、矢口はハンカチを押しつけた。
「…ぅっ…っ」
「ったく泣き虫なんだからよ。しょうがねぇなぁ…」
高橋の頭を引き寄せるように矢口は抱き寄せた。
「強くなれよ、高橋」
「…はぃ…」
- 526 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-215- 投稿日:2004/06/10(木) 18:37
- 暫くそのままの二人だったが、矢口から口を開いた。
「高橋にあげたいもんがあるんだ…」
「?」
矢口の言葉に高橋は顔を上げる。
「お前、誕生日…まだまだ先だったよな。
おいらの誕生日のお返しっていうか、こんなんで悪いんだけど…」
そう言いながら、矢口ははめていた腕時計を外すと高橋に差し出す。
矢口の細い手首にしては、かなりごつい感じのダイバーウォッチだ。
「え?」
「おいらの高校時代ずっと一緒に時を刻んだ時計。高橋にやるよ」
「大事なモノじゃないんですか?」
申し訳ないと言った表情で高橋は聞き返す。
「何となくだけど、高橋に持ってもらいたくて…。嫌だったら捨てて構わないから」
- 527 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-215- 投稿日:2004/06/10(木) 18:38
- 矢口は照れ臭そうに鼻をこする。
「捨てるなんてとんでも無い! 大事にします」
「こんなんで悪いな、もうちょっと気の利いたもんあげればいいんだけど…」
高橋は矢口の気遣いが嬉しかった。
「すっごく嬉しいです。それと、あと一つ欲しいものがあるんですけど」
高橋は勇気を出す。
「ん? なに?」
「…制服の第二ボタンいただけますか?」
「いいよ」
矢口は笑って答えた。
- 528 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-216- 投稿日:2004/06/10(木) 18:39
- ―216―
教室に戻ると、真希が怒った顔で待っていた。
結局、高橋と別れた後、そのまま後輩達に捕まり、なかなか帰して貰えなかったのだ。
「ごっつぁん…」
「遅いよ、やぐっつぁん」
矢口の姿を見て、真希は一瞬怒るのを忘れる。
「やぐっつぁん、なにそのカッコウ」
後輩にボタンは取られるは、ネクタイもはぎ取られるは、挙げ句の果てに
ジャケットまで取られ、矢口はYシャツ1枚の寒そうな格好になっていた。
「くれくれくれくれってうるさくてよぉ。んなの貰ってどうすんだって感じだよな」
矢口は身震いすると真希に笑いかける。
「それってナニゲに、私はモテてますよ〜って言いたいわけ?」
「違うってば。何怒ってんだよ」
「怒ってないけど? 真っ先に私に会いに来るのが普通でしょ?
どんだけ待ったと思ってんのよ!」
腕組みしていた真希が構えのポーズを取り始めるから矢口は慌てる。
- 529 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-216- 投稿日:2004/06/10(木) 18:39
- 「やっぱり怒ってんじゃんか。別にごっつぁんとは、これが最後じゃないし。
まだ一緒に過ごす時間はあるじゃんよ」
違うんだと必死に説明する矢口の背後からひとみ達がやってきた。
「「矢口先輩、ご卒業おめでとうございます」」
丁度良いところへ来たと矢口はホッとしてその声に振り返った。
「あ、吉澤に石川。助けてくれよ〜」
チョロチョロとひとみの後ろに隠れる矢口。
「今日は長い夜になりそうだね、やぐっつぁん…」
にやりと笑う真希に、矢口は背筋が一瞬凍った気がした。
「相変わらず仲良いですねぇ…矢口せ・ん・ぱ・い」
ひとみは後ろを振り返りながら、わざと休み休み言う。
「お前らに言われたくねぇよ!」
「そおんな事ないですよー! ねぇ梨華?」
「う、うん…」
梨華も、ひとみに合わせる。
「やぐっつぁん待てぇ!」
あっさり真希に掴まると、矢口は羽交い締めにされた。
わいわい賑やかな中、梨華が、今ひとつ元気がない理由は、松浦の事だった―――。
- 530 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/06/10(木) 18:42
- 更新しました。そろそろ終わりも近づいて来ました。(多分)
>523 はったーさん
乙です。終わりましたか。ってまた来月テストですね?w
頑張って下さい。
- 531 名前:マイキ− 投稿日:2004/07/04(日) 13:53
- スイマセヌ、ageてましたね。 _| ̄|○
更新乙です。終わりも近づいてきましたか。
知サン、まだ卒せんでぇって感じですね。
ちなみに【吉×石】【矢×後】【藤×松】はオイラの大好物でつ。w
- 532 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-217- 投稿日:2004/07/14(水) 20:20
- ―217―
終業式も終わり、今は春休みのまっただ中。
ひとみと梨華は、目前に迫った旅行に準備を進めていた。
「良く働いたよね〜ウチら。自分にご褒美だよね、梨華」
「うん。ひとみちゃんも良く働いたよね」
一応限定と言う形で、働かせてもらっていたのだが、
店の評判も良く、今後も働いて欲しいとマスターから言われていた
ひとみは、2年になっても時間の許す限り働こうかと考えていた。
「梨華だって。風邪ひいたり大変だったのにさ」
そう言って、ひとみは梨華の髪を優しく撫でた。
「ひとみちゃんも頑張ってたから、私も頑張れたんだよ」
梨華は、そう言って俯いた。
なんだか、臭い台詞を言ったみたいで照れてしまったからだ。
「私だっておんなじ。やっぱ目標があって働くのっていいね」
「そうだね。ひとみちゃん、4月からも働くの?」
「んー、そのつもり。今よりは減らすけどね」
「そっか。あんまり無理しないでね」
「OK牧場! 身体だけは健康だからね」
ひとみと梨華は顔を見合わせて笑った。
旅行まで、あと少し!
- 533 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-218- 投稿日:2004/07/14(水) 20:21
- ―218―
一方、矢口と真希は、引っ越し準備かたわら、矢口は教習所に通う日々。
日、一刻と迫る、矢口との別れに、真希はまだ実感が沸かなかった。
毎日とは言わないが、矢口家と一緒に食事をする事が多い真希は、
すっかり矢口家に溶け込んでいた。
こんな日がずっと続けばいいのに―――。
「やっと、あとは実地試験だけになったよ。嬉しいっ!」
教習所の課程も終わり、あとは試験だけ。
これに受かれば晴れて、矢口は免許取得となる。
そんな嬉しそうな矢口を見て、真希も嬉しい半面、寂しい気持ちにもなる。
「あれ? どうかした?」
さっきから黙っている真希に気づき、矢口は真希を見つめた。
「いや、やぐっつぁん楽しそうだなーって思ってさ…」
- 534 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-218- 投稿日:2004/07/14(水) 20:21
- 真希はクッションを抱きしめながら、ぼそっと呟いた。
4月から新しい生活が始まる矢口。楽しそうな矢口に、4月から
矢口のいない高校生活を送る真希に取っては、楽しめそうな事は何もなかった。
後ろ向きに考えている訳ではないが、矢口のいない生活は、今まで
考えられなかったから、今でも真希は現実として受け止めてはいなかった。
「そりゃ楽しいさ…」
「私と会えなくなるよりも、新しい事の方が楽しいんだろうね」
「別にそんな事言ってないけど…」
急に矢口の表情が曇る。
「あ、ごめん」
真希は謝る。
「おいおい、そんな顔すんなって」
矢口は慌てて隣りに腰を降ろすと真希の肩に腕を回した。
「だって…」
「いつだって、おいらはごっつぁんの事想ってるから」
矢口の手に力が篭もる。
想ってくれていたって、会いたい時に会えないのが一番辛かった。
それは矢口も同じだろう。しかし、その言葉は真希は言えなかった。
「私だって想ってるよ!」
真希の目から涙が溢れて、頬に伝う。
真希の気持ちを察したのか、矢口は約束した。
「なるべく、こっちに戻ってくるようにするから。
だから、それを目標にごっつぁんも毎日頑張れ!」
ありきたりな言葉だったが、今の矢口にはそれしか言えなかった。
頷く真希の背中が、少し震えていた。
- 535 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-219- 投稿日:2004/07/14(水) 20:25
- ―219―
さて、気になる松浦と藤本は―――。
松浦も藤本も立ち直りが早い。もう藤本は、松浦に普段と変わらずに
ちょっかいを出しているし、松浦もマイナス思考に考えるよりかは、
適当に藤本を返しつつ、前よりも藤本の事が嫌ではなくなっていた。
あんなに嫌だった藤本だったのに、不思議だと松浦は思う。
実際、バイトでも藤本と組む事が多くなっていた松浦は、案外、
藤本もやる気を起こせばちゃんとやってくれる事にも気づいていた。
休憩は交代制なのだが、今日は珍しく保田が気を利かせて二人同時に
取らせてくれた。藤本にしてみればラッキーなのだが、松浦にしてみると
迷惑の何者でもない。まぁ以前ほど嫌ではないので、松浦は藤本に
食事に誘われたが、二つ返事でOKした。
「マジ? うっれしいなぁ」
本当に喜んでいる藤本を見て松浦はクスッと笑った。
今日は、高橋もバイトのない日だったので、どうせ一人だったのだ。
「まぁどうせ一人ですから、付き合ってあげますよ」
「亜弥ちゃん素直じゃないなぁ。奢るからさ、好きなもん食っていいよ」
「高くつきそうだから割り勘でいいです!」
頑なに拒否する。借りを作りたくないと言うのが本音だった。
「焼肉いいよね〜」
好きな物食べていいよと言った割に、もう行く店は決めてあるようだった。
松浦も焼肉は好きだったので敢えて何も言わず、藤本について行った。
- 536 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/07/14(水) 20:26
- 更新遅くてすみません。
>531 マイキ−さん
>>【吉×石】【矢×後】【藤×松】はオイラの大好物でつ。w
まさにビンゴでしたねw
あと少し(多分)なのでお付き合い下さい。
- 537 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-220- 投稿日:2004/07/30(金) 20:47
- ―220―
バイトも休みで春休み、暇な高橋は家にいるのも嫌で、何となく
外に出てきていた。かと言って、何をするでもなく暇を持て余している。
矢口に貰った時計を大事に持ち歩き、時々出しては眺めている。
そんな自分が少しだけ嫌になる。
「はぁ〜…」
出るのは溜息ばかり。
高橋はする事もなく、駅前のスタンドコーヒー屋でボーッとしていた。
「矢口先輩でも来ないかなぁ…」
思わず口に出して高橋は真っ赤になり周囲を見渡した。
最近、独り言が増えた気がする。
もう矢口にも会えないのかと思うと、高橋は気が重かった。
- 538 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-220- 投稿日:2004/07/30(金) 20:48
- これだったらバイトでもして気を紛らしている方がマシだ。
高橋は頬杖を付きながら、行き交う人達を硝子越しから眺めていた。
「ん…?」
目の前で手を振る人物。
それは―――
「矢口先輩っ!!」
大声を出して思わず立ち上がる高橋。
さっきより注目を浴びてしまったようだ。
慌てて高橋は座り直した。
すぐに矢口も店内に入ってくる。
「ど、ど、どうしたんですか?」
「どうしたも、高橋が何か覇気のない顔で外眺めてるからさー。
おいらも何か頼んでくるわ」
偶然にしては出来すぎている。高橋は神様に感謝した。
- 539 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-220- 投稿日:2004/07/30(金) 20:48
- 「もうすぐ免許取れるんだ」
嬉しそうに語る矢口の横顔を見て、高橋は羨ましいと感じた。
それに引き替え、自分は…。
「高橋も春から高校生だよな。頑張れよ」
「はい」
何を頑張ればいいのか。先生のような事を言う矢口に高橋は頷くだけだった。
「後藤の事も頼む」
「はい?」
「お前の事も心配だけど、後藤も心配だからな。仲良くしてやってくれよな」
「はい」
「元気ねぇなぁ。高橋は笑ってるのが一番だぞ」
「………」
不意に涙が零れてくる。
「お、おい高橋?」
俯く高橋に矢口は少し慌てた様子で背中に手を回した。
- 540 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-221- 投稿日:2004/07/30(金) 20:49
- ―221―
「亜弥ちゃん、気にせずどんどん食べていいからねー」
ランチが運ばれて来て、藤本は偉そうに言った。
「どんどんって食べ放題じゃないんですから」
「ご飯はお代わり自由だよ? まぁ美貴はあんまりご飯は食べないけどねー」
「私もあんまりご飯は食べないから」
「美貴と一緒かぁ。嬉しいなぁ、亜弥ちゃんと一緒って」
些細な事でも嬉しいのか藤本は笑顔になる。
「藤本さん、春休み田舎に帰ったりとかしないんですか?」
「美貴、学校行ってないから春休みとか関係ないから」
「あ、ごめんなさい」
松浦は謝る。
「気にしてないし。田舎っつってもなぁ…」
「北海道でしたよね。どの辺なんですか?」
「あー…真ん中ら辺。説明しても良くわかんないと思うからね」
北海道。柴田のいる北海道。
なんとなくメールも電話もしなくなり、結構日数が経つ。
気になりつつも、日にちばかりが過ぎていく。
「亜弥ちゃん?」
いつの間にか手も止まっていた。
松浦は気を取り直す。
「いずれ、また北海道には行きたいんですけどね…」
「亜弥ちゃんが行くなら美貴も付き合うよ」
「結構です」
「そっか。残念」
あっさり藤本は引き下がる。
「…でも、いつでも言ってね、美貴、亜弥ちゃんの事好きだからなんでもするしね」
どこまで本気なのか藤本は真面目な顔で答えた。
- 541 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-222- 投稿日:2004/07/30(金) 20:49
- ―222―
駅前でジュースやお菓子を買いに行くだけが高橋に会った為、時間がかなり経ってしまった。
「やぐっつぁん、おせぇよ!」
戻ってくるなり、矢口目がけてクッションが怒りと共に投げつけられた。
「ごめんごめん。高橋に偶然会ったからさー」
こういう事は隠さず言う矢口だが、真希は面白くない。
「だったら一言言えばいいでしょ!」
「だから偶然だってば」
クッションではなく、今度は真希自身が矢口に体当たり。
そのままベッドに重なり崩れる。
「ぅ。重い…」
「重いってなんだよ!」
「そんなに怒るなって」
矢口はそのまま真希を引き寄せるとくちびるを重ねた。
「っ。そんなんで騙されないんだから!」
怒りが静まらない真希は、まだ口を尖らせている。
「ごっつぁん…」
矢口の瞳がゆるゆると潤み、真希はドキッとする。
真希はゆっくりと自分から顔を近づけていった。
- 542 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-223- 投稿日:2004/07/30(金) 20:50
- ―223―
いよいよひとみと梨華が旅立つ日。
結局、松浦には柴田の事は何も聞けないままだった。
横のひとみを見れば、梨華に頭をもたげて既に居眠り中。
遅くまで起きていたせいか、梨華も欠伸を噛み締める。
そして、ひとみと梨華を乗せた飛行機は北海道へと旅立った。
矢口と真希と一緒に旅行に行った時とは随分と静かに時が過ぎていく。
当のひとみが、ずっと眠ったままなので、梨華も眠ろうとしたがなかなか寝付けなかった。
梨華がやっと寝かかったところで新千歳空港に到着。
羽田から約1時間半で着くのだから、本当にあっと言う間である。
「ひとみちゃん、そろそろ着くよ」
気持ち良さそうに寝ているひとみを突きながら梨華は起こす。
「ん? もう着くの? 早ぇぇなぁ」
ひとみは、伸びをして梨華にニッコリ。
爽快な顔のひとみを見て梨華は苦笑い。
自分は全く眠れず今頃になって睡魔が襲って来る始末。梨華は欠伸をかみ殺した。
- 543 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/07/30(金) 20:50
- 更新しました。
次回は、いしよし北海道編になる予定です。
- 544 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/30(金) 22:04
- 更新お疲れ様です。
いしよし編、たのしみにしてます。
- 545 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/27(金) 21:54
- 更新されるまで待ってます。
- 546 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-224- 投稿日:2004/09/15(水) 20:31
- ―224―
「すげぇ! カッケー!」
窓を流れる壮大な景色を見ながら、ひとみは素直に感動を言葉にしていた。
眠い梨華は、ひとみに相づちを打ちながらも、移動の車の中で、まぶたが重くなっていた。
「梨華? 聞いてる? 見てる?」
「う、うん。見てるよ」
慌ててひとみの方を向いて答える梨華。
ひとみは機中で寝ていたから、すがすがしい顔をしている。瞳を輝かせながら。
来て良かった。とは思うけれど、梨華は眠気覚ましに缶コーヒーを開けようとしたが、
その手をひとみに塞がれる。
「だめ。向こう着いたら、色々食べるんだからさ」
「うん…」
ガイドブック片手に、ひとみはウインクして見せた。
一体、自分はいつ眠れるんだろうかと思いながら梨華も窓に目を移した。
札幌に着き、荷物をロッカーに預けてから、二人はラーメン屋に入る。
なんに対しても、いちいち反応するひとみに梨華は苦笑い。
「ひとみちゃん。いいから食べようよ。麺のびちゃうよ」
「そうだね」
梨華に促されて、やっとひとみは箸を手に取った。
柴田に会うのは、明日である。
ひとみは気を利かせて、柴田と梨華を二人きりにしてくれるらしい。
有り難い話しだったが、松浦の事を思うと梨華は気が重くなる。
こちらのプランは二人で決めたとは言え、殆どひとみが決めたようなものだった。
あれもこれもと詰めすぎたため、到底無理なスケジュールになったため、
さすがの梨華も意義を唱えた。
のんびりどころか、過密スケジュールで疲れてしまいそうだ。
ホテルのチェックインの時間になったので、取りあえず荷物を預けるため、ホテルに向かった。
- 547 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-225- 投稿日:2004/09/15(水) 20:32
- ―225―
着いたホテルは、パックプランのため、そう豪華でもなかったがひとみも梨華も特に
不満もなかった。
荷物を置き、梨華はベッドに横になる。
このまま目を閉じると、すぐにでも眠ってしまいそうだった。
「梨華」
ひとみの声で目を覚ます。梨華が目を開けると…
「あ!」
既に辺りは薄暗くなっていた。
どうやら眠ってしまったらしい。梨華は目を擦りながらひとみを見た。
「あまりに梨華が気持ちよさそうに眠ってるからさ、起こすのが可哀相になっちゃって」
「ごめんなさい」
「いや、いいよ。梨華の寝顔見れたし」
ひとみはニヤニヤしながら答えた。
「予定が狂っちゃったね」
「いいよ。最初から、あってないようなもんだしさ」
ヤケに優しいひとみ。梨華は肩を抱かれる。
「ひとみちゃん…」
梨華のくちびるが塞がれる。
これも、予定にはない事だった―――。
- 548 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-226- 投稿日:2004/09/15(水) 20:34
- ―226―
その頃、東京の矢口家では―――。
着々と、荷物の整理が始まっていた。
「あいつら、北海道満喫してる頃かな?」
「そうだねー」
段々と片づけられて、物が少なくなっていく矢口の部屋を見ながら、
さすがの真希も、矢口が居なくなる事に現実味を帯びずにはいられない訳で、
北海道に遊びに行った、ひとみと梨華よりも、迫ってくる矢口との別れの方に
気を取られていた。
「ごっつぁん、ぼんやりしすぎ!」
わざと笑顔で矢口が茶化す。もちろん、矢口も分かっているけれど、
なるべく笑顔を絶やさず、湿っぽくならないように努めていた。
「だぁって…」
口をヘの字に曲げて、真希は唇を噛み締めた。
「あー、ちょっと休憩しようなっ。疲れただろ。朝から、ずっとだもんな」
真希の横に来て、矢口は肩を抱いた。
「別に疲れてないけどさ…」
心なしか元気のない声で真希は答える。
「なんか買いに行こっか。もうすぐ夕飯だけど、喉乾いたよな」
矢口は立ち上がり、真希の腕を引っ張った。
なるべく、真希を一人にしないように矢口は気を配っていた。
- 549 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-226- 投稿日:2004/09/15(水) 20:34
- 数え切れないくらい歩いた道を無言で歩く。
そんな見慣れた道も、あと二人で歩くのもたかが知れていた。
3月の東京は、まだまだ寒い。
矢口は真希の手を掴むと自分のコートの中に入れた。
「手袋ぐらいしろよ」
「面倒くさいもん…」
「すっげぇ手冷たいじゃん」
「やぐっつぁんが温めてくれるからいいもん」
「ま、これからは段々あったかくなってくるからな」
当然、やり返してくると思っていたからそれが違っていて矢口は焦る。
不意に手をポケットから出して握り返した。
「あ、こっちに手袋あったよ。しょうがねぇな、ごっつぁんにこれやるよ」
反対のポケットから使い込んだ手袋を真希に押しつける。
「やだ、こんな汚いの」
「汚いってなんだよ。おいらがずっと使ってたヤツだぞ」
ちょっとムッとして真希の顔を見ようとしたら、急に抱きつかれた。
「ご、っつぁん?」
「そういう事しないで。逆に寂しくなっちゃうじゃない」
それでなくても、矢口の部屋が広くなっていく寂しさを目の当たりにして
実感していると言うのに。
「そういうつもりないから。おいら鈍感なの知ってるだろ?
って、慰めになってないか」
人の目を気にして、真希から離れると矢口は落ちた手袋を拾った。
「確かに悪かったな。お古の手袋じゃな。さらば」
そう言って、矢口はゴミ箱に、手袋を捨てようとした。
「待って!」
「ん?」
「もらっておくから」
真希は矢口の手から手袋を掴み、自分のポケットに仕舞い込んだ。
「汚いけど、まだ使えるからね。行こ」
真希は矢口の手を握った。
さっきより幾分温かくなった真希の手に矢口は無言で握り返した。
- 550 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/09/15(水) 20:38
- 更新が遅くなりすみません。いしよし編とか言って、やぐごまも入ってるし…。
>544 名無飼育さん
いしよし編だけじゃなくてすみません。
>545 名無飼育さん
相変わらずの遅い更新ですみません。(謝ってばかり(´・ω・`))
- 551 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/19(日) 17:13
- ここまで一気に読ませてもらいました!
自分もいしよし大好きなんでこの小説かなり気に入りました。
次の更新も楽しみに待っています。
頑張ってください♪
- 552 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/19(日) 17:43
- とりあえず落としておきます
- 553 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/19(日) 21:52
- 矢後のやりとりが切ねえなぁ
- 554 名前:名無し飼育 投稿日:2004/09/19(日) 21:58
- うわ・・・あげてしまった_| ̄|○
作者さん本当にすいません。
- 555 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/09/29(水) 17:52
- 更新待ってますよ!
作者さんも何かと忙しいとは思いますが・・・
- 556 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/10/29(金) 19:24
- 続きがよみたいよおおおおおおおおお
お願いします!
- 557 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-227- 投稿日:2004/11/06(土) 19:00
- ―227―
ベッドにまどろむ梨華が、再び目を開けた時は、更に時間が2時間ほど過ぎていた。
「ん…ぅ」
腕をあげて伸びをする。剥き出しになった腕を慌てて引っ込めた。
来た時は感じなかったが、ヒーターが入っているとは言え、まだ寒い。
シャワーを浴びたひとみが戻ってきた。
「梨華も入ってきたら?」
「うん…」
妙に気恥ずかしくて、梨華は布団を引っ張り上げた。
髪の毛をタオルで拭いながら、ひとみが近づいてくる。
「疲れちゃった?」
「平気」
「梨華可愛かったね…」
そう言って梨華の横に腰を降ろすと、愛おしく梨華を見つめた。
「やだ、ひとみちゃん」
照れる梨華に、ひとみはそっと顔を近づける。
「場所が変わるとまた新鮮な気持ちになるね。改めて梨華が好きだって思ったよ」
「ひとみちゃん…」
二人の夜は、まだまだ続くようだ―――。
- 558 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-228- 投稿日:2004/11/06(土) 19:00
- ―228―
翌朝、梨華が目を開けると、すっかり陽が昇っていて、慌てて身体を起こした。
今日は午前中から柴田と会う約束をしている。
「キャッ」
梨華は何も身につけていない事に気づき、慌てて前を押さえた。
隣のひとみは、まだ幸せそうな顔をして寝ている。
ひとみとは午前中は別行動。午後から合流する事になっている。
取りあえずひとみを起こさないようにして梨華はベッドを抜け出しシャワーを
浴びに行った。
- 559 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-228- 投稿日:2004/11/06(土) 19:02
- 「いってらっしゃい」
半分寝惚け眼でひとみに送り出されて、梨華はホテルを後にする。
待ち合わせ場所にはギリギリ間に合ったが、息を切らす梨華を見て先に
来ていた柴田は、苦笑いで梨華を迎えた。
「梨華ちゃん、久しぶり」
「柴ちゃん。おはよ」
「別に走って来なくても良かったのに…」
「時間に遅れるの嫌だったから」
久しぶりに会う柴田は、東京にいた時とあまり変わっておらず梨華もほっとする。
近くの喫茶店に入り、お互いの近況を話し合ったりした。
松浦との事を聞きたいが、きっかけが掴めず梨華はどう切りだそうか迷っていた。
別に松浦に頼まれた訳ではないから触れなくても良いのだが、やはり気になるのも事実。
しかし、梨華は、なかなか話せずにいた。
- 560 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-228- 投稿日:2004/11/06(土) 19:03
- 「梨華ちゃんは、よっすぃーと仲良くやってる?」
「もちろんだよ。柴ちゃんは?」
話の流れからして不自然ではないだろう。梨華は、一瞬緊張して柴田を見つめた。
「あ、私?」
柴田が少しばかり詰まる。
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「うん。どうなんだろうね…」
曖昧な返事が返ってくる。
「どうって…」
「亜弥ちゃんはどうしてる? 彼女の事だから元気だよね」
他人行儀な物言いに、少しだけ梨華は苛立つ。
松浦が、北海道に行くためにバイトをしている事だって柴田なら
知っている筈なのに。
「連絡してないの?」
多少怒った口調で梨華は呟いた。
「うん。なんかさぁ疎遠になったっていうか、前は毎日メールとか電話してたんだけどね」
そう言って柴田は窓の外に目を移す。
- 561 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-228- 投稿日:2004/11/06(土) 19:03
- 「気になるなら連絡すればいいのに」
「梨華ちゃんの言う通り。でもね、なかなか言えなくてさ」
その後も、柴田と色々話をした。
当初は、東京の大学に行く予定だったが、北海道の大学を受ける事にした事。
その事は、まだ松浦にも話していないらしい。
「そんな大事な事…」
「分かってる。だから…近々、亜弥ちゃんには言おうと思ってる」
それっきり、柴田は黙ってしまった。
- 562 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-228- 投稿日:2004/11/06(土) 19:04
- 午後になり、ひとみと落ち合うまで、何となく気まずい空気が流れていた。
しかし、ひとみが来てからは、いつもと変わらない柴田に戻り、梨華も安心していた。
一緒に食事を取った後、柴田に観光案内をしてもらう事になっている。
慣れた感じで市内を案内する柴田に、ひとみは感心した。
「柴ちゃん、すっかり道民じゃん!」
「なに、その言い方。変だよ、ひとみちゃん」
「間違ってないよね?」
久しぶりの再会に、ひとみも嬉しそうだった。
- 563 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-229- 投稿日:2004/11/06(土) 19:04
- ―229―
柴田と別れ、ホテルに戻りくつろいでいると、ひとみがズバリ聞いてきた。
「松浦の事は言ったの?」
三人で会っている時は、そんな事は一言も言わなかったひとみだったが、
やはり気になるのだろう。
「う、うん。言ったけど…」
そう言って、梨華は窓に近寄り外を眺めた。
「そうか。まぁ仕方ないよね。松浦と柴ちゃんの問題だもん」
ひとみも察したのか、それ以上聞いて来なかった。
ガラス越しに映るひとみも、多少困った顔をしている。
俯く梨華に、ひとみが近寄り、抱きしめる。
「梨華が心配してもしょうがないよ、ね?」
梨華はひとみの方に向き直ると、ひとみの肩に顔を埋めた。
近いうちに、矢口と真希も離ればなれになるし、柴田と松浦の関係も
決していいものではない。高橋だって、どうにもならない恋をしている。
自分だけ幸せでいいのか? と梨華は思うと、複雑な心境だった。
- 564 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-230- 投稿日:2004/11/06(土) 19:05
- ―230―
「亜弥ちゃん、今日休みなんですか?」
藤本は、保田から当日その話を聞かされ、大きな瞳を更に大きくさせた。
昨日はそんな素振りも見せなかったのに、藤本は胸騒ぎを覚える。
「ね。理由とか聞いてる?」
カンの良い藤本は、保田に尋ねる。
「別にどう休もうが、いいじゃないの。美貴も、ほら仕事仕事!」
「だって、予定表じゃ今日は出だったよ? 病気とかだったら見舞いに行かないと!」
そわそわする藤本に、保田は腕を掴んだ。
「美貴、あんた松浦の事になると必死すぎ。仕事もそのくらいになりなさい」
そう言うと背中をバシッと叩いた。
「いてっ! 何すんだよ!」
藤本は痛そうな顔で抗議した。
- 565 名前:恋をしちゃいました-4th Stage-230- 投稿日:2004/11/06(土) 19:05
- 松浦は時計を見上げる。
まだ少し早い時間を見て、軽く溜息をついた。
急に来てしまった事に、我ながら不安を覚える。
しかし、深呼吸すると、松浦は携帯のボタンをそっと押した。
- 566 名前:Charmy Blue 投稿日:2004/11/06(土) 19:11
- かなり間があいてしまい、申し訳ありません。・゚・(ノД`)・゚・。
なかなか書きにくいシーンでして、かなり迷いながら
書いたのですが、あまり納得いくものが出来ず……orz
>551 名無し飼育さん
一気に読んでいただきありがとうございます!
更新の間があきすぎて、すみません。
>552 名無飼育さん
落としていただきありがとうございます。
でも、あまり気にしなくていいですよ。
>553 名無飼育さん
やぐごまの二人には、この後も泣いてもらいます(多分)。
>554 名無し飼育さん
あまり気にしないでくださいね。レスありがとうございます。
>555 名無し飼育さん
更新お待ちいただきありがとうです。
忙しいと言うか、あまり書きたくないシーンが続くもので…。
でも書かないと先に進まないので…ホント遅くなってすみません。
>556 名無し飼育さん
すみませんです。やっと更新しました。
- 567 名前:フェンリル 投稿日:2004/11/09(火) 02:00
- 更新お疲れ様です。初めましてフェンリルと申します。
書き込むのは初めてですが、作品は初期の頃からずっと拝見してました。
(『揺れる想い』とか『トライアングル・ブルー』とかも拝見してますよ♪)
あの頃に比べると今は『いしよし』ってジャンル自体が少しお寒い状況で
寂しい限りですね。今後も期待してますね。マターリマターリお待ちしております。
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