ホームタウン

1 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時40分41秒
緑板でも書かせてもらってました。
今回は赤板でお邪魔しますー。多分、長い話です。
レス大歓迎!!
2 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時42分24秒


ねえ、今でも思うよ。
あの日々がなかったら、私はこんなに強くなれなかったね。
楽しいだけじゃなかったけれど、全部大切だよ…今でも。

この街で、皆に出会えたコト。
忘れないよ。



3 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時42分57秒

1.女のコを拾った

4 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時43分49秒

少し、子供が出歩くには遅い時間。
都内に限りなく近い、とある町、「朝日町」。
まだ客の退かないファミレス「ゼティマ」店内。
顔見知りのウエイトレスさんが、忙しそうに料理を運んだり、
注文を取っているのが見える。
アタシ…小川麻琴はというと、いつものようにその席に座っていた。
BGMには、アタシの大好きな“浜崎まゆみ”さんの曲が流れていて、
それを口ずさみながら、人待ちをしている。
ウエイトレスの矢口さんの計らいもあって、
その“席”は、この時間は大抵アタシらの陣地になっている。
まあ、何をするワケでもなく、ほとんど毎日同じメンバーでたまってるだけだけど。
それが、アタシにとって日課になっていた。
5 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時44分47秒

「おそいよ、あさ美」
「ゴメンね〜マコ。塾だったの」
中学時代からの親友、紺野あさ美は、
ピンク色のショルダーバックを肩から下ろすと、
アタシの向かいの席に座った。
「塾ぅ〜?まだ行ってんの?」
「うん、夜遊びする条件だからね」
「あー。そーだったよね」
アタシは、納得しながら、あさ美の家の事情を思い出した。
あさ美の父親は、市のお偉いさんとか何とかで、
すごく厳しい人らしい。
そんな家なのに、こんな時間まで出歩くのは何かと問題があるらしいんだけど…。
それでも、母親に頼み込んで、成績を落とさないなら…という条件付きで、
アタシらと一緒につるんでるんだ。
もっとも、あさ美は毎回学年トップ3に入るほどの成績だし、
きちんと学校にも行ってるから、文句はあんまり言われてないみたいだけど…。
6 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時46分04秒

「一人?」
「ん」
アタシは、さっき注いだばかりのドリンクバーのコーラを飲みながら、
テキトーに返事を返した。
そして、ストローを口から離しながら、悪態をつく。
「亜弥ちゃんはカレシとデートだってさー」
「そっかぁ。里沙ちゃんは…またタレントスクール?」
「ん」
コクコク、とアタシはストローをくわえながら頷いた。
里沙っていうのは、アタシらとつるんでる後輩。
そんなに可愛いってワケじゃないんだけど、本人はタレント志望。
アイドルになりたいんだってさ。
家がお金持ちだから、パパに頼んでタレントスクールに通わせてもらってる。
あーあ、良い身分だわよ。
別にムカつくってのはないけど。アタシらの中では、完全にいじられ役だし。
「豆!豆!」とか言われてるもんね。
ま、里沙はともかく亜弥ちゃん。
元々アタシの1ツ上なんだけど、中学時代からつるんでる。
女の子っぽいのがウリで、男とっかえひっかえしては連れまわしてるのが悪い癖。
本人に悪気はないんだろうけど、結構反感買ったりしてる。
しょうがないよねぇ、あんなに可愛くっちゃさぁ。
里沙より、亜弥ちゃんの方がタレントに向いてそうだけど。
7 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時46分57秒

「何か、ここんとこ二人っきりばっかりだね」
「ん」
アタシはまた、ストローをくわえたまま答えた。

確かにねぇ…。

だいたいは、その四人でこの席に座ってるコトが多い。
たまに、誰かの友達とか先輩とか後輩とかがいる時もあるんだけど、
基本的には四人で一緒にいる。
だけど、そういう理由で最近は集まりが悪かった。
なんだかなぁ…。
8 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時49分46秒

「ヤッホー」
「ちっす」
「こんばんわ、矢口さん」
アタシとあさ美が雑談してるところに、金髪の小柄な女性がやって来た。
この人が、矢口真里さん。
こう見えてもハタチ。こんなのでハタチなんだから、世の中わからない。
矢口さんとは、このファミレスで知り合った。
矢口さんはこの店のバイトで、ディナータイムからナイトタイムで働いている。
何だかこの矢口さんという人は、とても人懐っこくて、底抜けに明るいから、
ちょっと毎日顔を出してると、自然と仲良くなってるカンジ。
アタシが仲良くなったのも、矢口さんのマシンガントークのせい。
アタシだけじゃなくて、他のお客さんとも雑談してる姿をよく見た。
そのせいか、この店には矢口さん目当てでくるお客さんも多い。
バカっぽいけど、ちゃんと自分の考えを持ってるんだからカッコいい。
その変が、人気の秘訣なんだろーな。
矢口さんは仕事が終わったらしくて、アタシらの席にドカンと座り込むと、
アタシのグラスを勝手に引っ手繰って飲み始めた。
「今日も、おマメちゃんとあややこなかったねぇ」
「そーですね」
「忙しいみたいです」
「そっかぁ…」
9 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時50分32秒

「ん〜。残念…あ、もうこんな時間」
矢口さんは座ったなり、時計を見ると立ち上がった。

腕時計はカルティエ…。チッ、いいなぁ。
カレシにでも、貢いで貰ったんだろうなぁ。
矢口さん、可愛いし明るいからモテるだろーなぁ…。
そんなコトを、チラッと考えた。

「ゴメンねー、矢口、今日用事あるんだー」
「集会ッスか?」
「集会って言い方はやめてってばぁ。
 ま。ともかくアンタたちも早く帰りなよねー。じゃっ」
「じゃあ、またー」
「おやすみなさい」
矢口さんはヒラヒラと歩きながら、他の常連のお客さんに、
「また来てねー」とか、「ごゆっくりー」とか、
愛想振り撒きながら店を出て行った。

「アタシらも帰るか」
「そうだね。もう12時回ってるもんね」
あたしとあさ美が店を出たのは、矢口さんが席を立ってから十分後。
あさ美が頼んだピザを食べ終えてからだった。
10 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時51分09秒

うー寂しい。
あさ美と別れた後、アタシは一人で道を歩いていた。
いつもなら、里沙が同じ方向だから一緒に帰ってるんだけど、
最近は会ってないからしょーがない。
夜道は怖いけど、仕方ないんで一人で歩いていた。
こんな時に限って…。

ププー。
「コラッ!」
あっちゃー…。
アタシは振り返りもせず、ため息をついた。
白バイに乗った警察。しかも婦人警官。
それも、よく知ってる人だからまたやりづらい。

「こんな時間に、何してるの?」
「もー。わかってるっしょ?飯田さん」
後ろを振り返ると、そこには婦人警官が、
ヘルメットを外して、白バイから降りていた。
11 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時52分24秒

「また矢口のトコでしょー」
矢口さんの友達で、新米の警官になったばかりの飯田さん。
長い髪に、ど迫力の身長に、すらりと伸びた長い足。
どこもかしこも長い彼女の仕事は、アタシたちのような「不良」を家に帰らせるコト。
ま、もっとも飯田さんも、高校生の頃は夜通しで遊びまくってたらしいけど。
そんな飯田さんは、決してうるさく咎めたりしない。
だから、アタシはこの新米の婦警さんがちょっと好きだった。

「ほら、送ってってやるからさ」
「え。いいよ。一人で帰れるから」
「そう?まぁ、いいけどさ。早く帰りなよ。
 家族が待ってるよ」
「わかってまーすよ」
アタシはテキトーに返事をして、飯田さんの傍から離れた。
送ってもらえるのは嬉しいけれど、遠慮した。
飯田さんも仕事中だろうし。
そのようで、飯田さんはまだパトロールが残ってるらしく、
アタシが振り返ったと同時に、また白バイのエンジンをかけていた。
12 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時53分01秒

家族、か。

アタシには、家族はいない。
正式には、半分いなくて、半分いる。
つまり、父はいて、母はいない。

母は、アタシが七歳の頃に死んだ。
重い病気を患っていて、そこまで生きたのが奇跡と言われていた。
───白血病。
そんな名前の、ポピュラーな病気だったらしい。
何一つ詳しいコトなんか知らないけれど、とにかく大変な病気だというのは、
さすがにあの頃のアタシでも理解できた。
毎日毎日、母の病室へ行っては、
「明日こそは」と母を問いただしたコトもあった。
けれど、母は一向に元気になどならず、とうとうあっけなくあの世へ逝ってしまった。

アタシは、泣かなかった。
母の死を聞いても、まだ「死」という概念を理解するには、
恐ろしく子供だったのだと思う。
「お母さんが天国へ行くよ」と言われても、頭ではわかるのに、
決して涙が流れるような感情は沸かなかったんだ。
アタシが初めて、母の死で泣いたのは、
それから一週間もしてからだった。
13 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時53分50秒

母が死んでからは父と二人暮らしで気ままにやって来た。
けれど、その父も、おととしからアメリカに単身赴任中。
アタシも父について、アメリカに行っても良かったけれど、
色々理由があって、行かなかった。
父が嫌いとか、そんな理由ではない。

だから、一人ッコのアタシは、今は一人暮らしをしている。
そんな生活が寂しくないというのは、さすがにカッコつけすぎだろう。
正直、父にも母にも頼れないのは辛い。
けれど、そんな暮らしを不自由に思ったコトはそんなになかった。
街に出れば、気の合う仲間たちがいる。
楽しく笑い合える。
けれども、そんな仲間たちも自分の家に帰って行く。
羨ましいとは思ったけれど、それも仕方のないコトだと悟った。
だから、ただ楽しいだけでアタシには十分だった。
他に望むコトは、なかった。

「…ちょっと、遠回りしようかな」
アタシは、誰に言い聞かせるでもなく、ポツリと呟いた。
14 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時54分29秒

家に帰れば、またあの暗闇がアタシを迎えるだろう。
何だか今日は、それが少しだけ辛く感じられた。
ちょっとだけ、寄り道をして落ちついたら、きっと大丈夫。

だから、少しだけ寄り道をすることにした。

住宅街の真ん中に、小さな駐車場がある。
砂利を敷かれただけで、整備も何もされていない、
狭い駐車場には、車が二台だけ止まっている。
その奥に、アタシの秘密基地はあるんだ。

駐車場の奥は雑木林になっていて、
あまり人は近寄らない。
別に何も理由はないけれど、中に入っても仕方ないからだ。
せいぜい、小学生が木登りや隠れんぼのために訪れる程度だろう。
15 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時55分01秒

その雑木林の中で、一番高い樹。
その樹は、何故か一本だけとても高くて、そして太い。
大人が何人か乗っても倒れやしないんじゃないだろうか。
絶好の穴場ということだ。
こんな汚い雑木林の中の、たかが一本の高い樹になど、
誰も注目なんかしないだろう。
だからこそ、アタシはここが自分だけの秘密基地のような気がした。
みんなが知らない、素敵な隠れ家だ。

アタシは、二万六千円もしたブランドの靴を丁寧に脱ぐと、
靴下を丸めこんで、乱暴にバッグに投げ入れた。
そのまま、バッグと靴を置きっぱなしにしたまま、
樹の幹に手をかけて、慣れた仕草で足をかける。
そして、落ちないようにゆるゆると、
てっぺんの方に向かって登っていった。
木登りなんて、小さい頃から何回もやっているから、
アタシにとってはお茶の子さいさいだ。
しかも、この樹の上から眺める、この朝日町の風景がもうサイコー!
アタシの大好きな街を、素敵な眺めで見下ろすコトができる。
だからこそ、アタシはこの街から離れられないんだろう。
一生、この町で暮らして死ぬつもりだもの。
都会のようだけれど、こんな静かな自然の残る街。
あたしの大好きな朝日町で。
16 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時55分42秒

樹の幹に手足を交互に掛けながら、1/4まで登った時。
丁度上を向いていたアタシの頬に、雫が滴った。
「つめて」
両手が塞がってるので拭うコトができない。
何だろう、雨かな…?
でも、さっきまであんなに晴れていた。
星がキレイだなぁ、と思いながら歩いてたんだから、
ちゃんと覚えてる。
じゃあ、何だろう。
ゲッ、もしかして、リスか何かがオシッコでもしたんじゃ…。
きったないなー。もうー。
そう思うと、早く一番上まで登って、頬を拭い去りたくなった。
これは一刻を争うな、と勝手に思い込んで、手足を掛けるスピードを早める。
すると、例の雫がまた落ちてきた。
それと一緒に、変な唸り声が聞こえる。
………。
ま、まっさかぁー…。
お化け…とかじゃ、ないよねぇ?
バカ言え、麻琴!!そんなワケあるかい!
アタシは、心の中で、自分の頬をパチン、と叩くと、
更に手足をかけるスピードを早めた。

そうだ。誰かが勝手にアタシの秘密基地にいるんだ。
さっさと出てってもらわなきゃ。
心の中で勝手にそう決めて、アタシはどんどん樹を登った。
17 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時56分22秒

「うぐぅ…」
そんな声が、次第にハッキリ聞こえるようになった。
ホーラ、やっぱり誰かがいるんだ。
となると、さっきのは涙か何かだよね。
…だよね。
鼻水とか、ましてやお、おし…んん、そんなワケないない!!
そんな人いないいない!こんなトコからする人なんて!!
…んでも、まさかここからするのって気持ちイイのかしら…。
バ、バカ!!麻琴!!何考えてンだよッ!!
頭の中で、そんな風にグルグルグルグル回っていた。

「あのー」
丁度、頂上まであと二回か三回手を掛ければ済むところ。
ハッキリと、今度は人影が見えた。
多分、一人。
暗いからよく見えないけど、人だろう。
そう思って、声をかけた。
そしたら、こっちがビックリするような展開。

「ンギャァァァァァ!!!?」
「ぬえええええ!?」

その驚き声…っつーか、絶叫につられて、
アタシも一緒になって驚いてしまった。
ビ、ビビったぁ…。
つーか、うるさすぎる…。
18 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時56分56秒

「あ、なんだぁ。人か。てへっ」
「…ハァ?」
上からアタシを見下ろしていたのは、アタシと同じくらいの少女だった。

「こんなトコ、こんな時間に何やってんだぁ?」
「別にいいじゃない。っていうか、そこアタシの秘密基地なんだけど」
アタシは、樹の枝に足を掛けたまま言う。
何、この女。
標準語から、遠くかけ離れたくらいに訛ってるんですけど…。
「あぁ、失礼しただぁ。私、高橋愛だ」
「…いや、名前なんか聞いて…」
「アンタ、名前なんていうんよ?」
「小川麻琴…」
アタシは、そう答えてからハッとした。
何、律儀に答えてんだ、アタシは…。
「まこっちゃんかぁ。ええ名前やなぁ」
「……ハァ?」
何、この女。頭おかしいの?
「ねぇ、ちょっと。そこ…」
「ああー!!アンタも、ここの景色見に来たの?」
「…あ、まあ…」
ダメだこりゃ。
アタシの頭の中では、もうすでに彼女との会話が不可能であるコトを感じていた。
19 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時57分28秒

「私、昨日、福井から出て来たんよ」
ベラベラとマシンガンのように訛りトークをブチかます彼女。
アタシは、その話を「うん」とテキトーに相槌打ちながら聞いていた。
まいったなぁ…。
ちょっと、景色が見たかっただけなのに。
こんな変な先客がいるなんて。
…結局、どけ!!なんて言えなかったし。

「それで、私よく考えたら、身寄りとかおらんのよぉ」
「へぇ…両親とかは?」
アタシが何気なく聞くと、愛ちゃん(本人がそう呼べってしつこいので)は、
少しだけ声のトーンを落とした。
「うち、パパもママも…誰もおらん」
「あっ…」
しまった。
そう思って、彼女の顔を瞬間的に盗み見ていた。
思った通り、愛ちゃんは沈んだ顔をして、涙を浮かべている。
なるほど、さっきも泣いていたんだ。
気丈なフリをしていても、きっと故郷が恋しいんだな。
20 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時58分21秒

「そんで…福井から出てきて、何するつもりなの?」
「ホステス」
「ブッ」
「何やぁ。汚いよー」
悪いとは思ったけど、そんな答えが返ってくるとは…。
今のは反則。
「そ、そうなんだ…頑張って」
この件に関して、アタシにはそれしか言えなかった。
ホステスって…アンタ…。
笑えるよ(笑)
「でも、身寄りないんでしょ?」
「うん。だから、困ってこんなトコに来ちゃったんやよー」
困ってこんなトコ来るなよ…。
あー、ダメ。このコ、絶対変。
変すぎ。
ホステス目指してるんなら、新宿なり六本木なりに行けっつーの!!
サルか、お前は!!
「いやぁ、何か、樹の上ってやっぱり落ち尽くし…」
サルだ、お前は!!!
21 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時59分04秒

「まこっちゃんは何してたの?」
「別に」
アタシは、愛ちゃんの質問に即答で答えた。
あんまり、あれこれ詮索されるのは好きじゃない。
「学校は?この辺のコ?あ、わかった。バイトしてるんだ!」
ハァ…。
アタシは小さく聞こえないようにため息をついて、
「友達と遊んでた帰り」と機嫌悪そうに言った。
けれど、愛ちゃんは目を輝かせて、
「友達!!ええなぁ。私も友達に会いたくなってきたわぁ」
…などと、全くお構いなしに、例のマシンガンを続けていた。

「でも、お父さんとかお母さん、怒らない?」
「あ、うち、いないから」
あっさり答えたアタシ。
実は、彼女がそういう質問するのは薄々気付いてた。
福井の田舎娘だ。きっと、夜遊びなんかしたコトないだろう。
「あ、そ、そうなんだ…」
「…ちょ、ちょっと。何、いきなり暗い顔してるのー!?」
「だ、だって…」
「いいから!別にそんなの」
「あ、うん…」
アタシが声を荒げていうと、愛ちゃんは少しだけ大人しくなった。
…ホント、変なコ!!
22 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)01時59分42秒

ふぅ…。このコ、この先どーするんだろ?
ホントにホステスにでもなっちゃのかな?
ま、アタシにはカンケーないけど。

「私、ホントは不安やよ」
「??」
突然、愛ちゃんはそんなコトを口にした。
聞いてないって、そんなの…とは思ったけれど、
深刻そうなので一応聞く事にした。
あーあ、アタシっていい娘。

「何か…。突然、育ててくれたおばあちゃん死んで…。
 福井の学校も辞めなきゃ行けなくて、遺産とかよくわからなくて…。
 それでも、働かなきゃなんないから、こっち出てきて…。
 友達も、親戚もいなくて、この先やっていけるのか心配やよ」
「そう」
「うん」
……。
……………。
長い長い沈黙。
アタシはというと、特に何も考えないで、
夜の街を眺めていた。
愛ちゃんに対して、かける言葉がわからないから、
ただ黙ってた。
23 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時00分13秒

「……そろそろ、帰らなくていいの?」
「帰るよ。明日も学校だし」
「……そう」
「……うん」
アタシが、立ち上がると、
愛ちゃんは顔を向けずに遠くを眺めていた。
まだしばらく、ここにいるつもりらしい。
…まさか、こんな所で寝るつもりじゃ…。
それどころか、こんな所で暮らす気じゃ…。
それって、丸っきりホームレスじゃん!!!
こんな年頃の娘が?
…それは、ちょっと可哀想かも。

そんな考えが、頭を過ぎったせいだ。
24 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時00分44秒

何か、似てると思ったの、自分と。
家族がいないとか、そういうのが。
そう、それだけだよ?
別に、何も変な意味じゃない。
強いて言えば、ただ…。
一人でいるより、二人の方がいいんじゃないかって。
アホだよね、アタシ。
見ず知らずの田舎娘だよ?
そこまで優しくする必要、ある?
ううん、ない。
…でも、まぁ…。
ハァ。
何か、そんな予感はしてたんだよね。
愛ちゃんを発見した時からさ。
ま、いいや。
どーにかなるっしょ…。

「愛ちゃん。ウチ、来ない?」

愛ちゃんは、大きな瞳を更に大きくして、
ビックリ顔でアタシを見ていた───。

これが、始まり。
25 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月19日(日)02時01分18秒
緑板のごまかごもよろしくw
26 名前:なしこ 投稿日:2003年01月19日(日)18時31分02秒
おもしろい!
まこっちゃんのつっこみがまさにその通りで!
作者さん期待してます!
小高〜!
27 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年01月19日(日)21時10分39秒
ごっつぁむキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
今回はおがたかか



ごまかごはないのか・・・(ボソッ
28 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月19日(日)22時51分05秒
ちゃぁみぃ早っ!

そして、ごっつぁむ新作オメ!
6期メソ加入=ヤス卒業までには終わるかな?
前作で干されたアノ人にも期待。
29 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年01月19日(日)23時13分14秒
漏れはごっつぁむの友人だから(w
このHNもここだけさ〜

のぉ、ごっつぁむ
30 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年01月20日(月)20時06分09秒
新スレ おめでとう! 「I WISH」と「ごまかご小説」は 前々からromっておりました 高橋のマシンガンにこれからも期待っす! 更新頑張ってください
31 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時02分20秒
さて、新メンが決まりました。
最初はドキュンイラネ(爆 とか思ってたんですが、
三人とも好きかも知れないです。
一押しは亀井ちゃん。ひたむきで地味なコって好きなんです。
田中麗奈は初期ごっちん&初期加護風ですね。ヤンキー好きなんです。(両極端だな)
道重は友達の彼女にそっくりなので好印象w
でも、スキル的に三人ともまだまだこれからですね。
あの演出だと、「三人がこれから成長するのが見たい!」と思わせる演出でしたが、
全くその通りでw

この小説の中で出すかは未定。下世代の登場人物って少ないんで、
もしかしたら出すかも知れないです。
32 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時05分46秒
れす。

>>26さん
えーっと、ジャンルとしてはおがたか…なんでしょうか?w
でもCPってワケでもないですね。まだ明かせないんですけどw

>>ちゃぁみぃ後藤さん
毎度どうもです。というワケで、ごまかごは…ある…かも?w
まだ秘密。

>>28さん
いやぁ、どうでしょう。長い話になりそうですからw
あの人は…出ますよ。多分。なのでレスは今回自分ですw

>>30さん
ありがとうございます!よろしければ、
これからもガンガンとレスしてください。
レスがないと、書く気も失せ…なんてこたぁないんですけど、
やっぱり励みになりますので。
33 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時10分56秒


2.二人暮らし、始まる。


34 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時11分28秒
ピーッピーッというデジタル音が、頭の中に響き渡る。
まだ機能すらしていない頭の中で、それは深く不快で、
それでいて、何かに終われるような感覚がした。

…目覚まし時計の音。

毎朝毎朝、極楽から一気に地獄に突き落としてくれる音ね。
アタシは、まだ頭の中はからっぽなのにも関わらず、
本能的に枕元の、小さな目覚まし時計のボタンを押した。
不快な音がピタッと止まり、アタシはまた、極楽への階段を見つけ始めた所だったが…。

「まこっちゃんまこっちゃん!!」

…目覚ましよりうるさいのがいた。

「おはよう!!朝やよー」

うっさいなぁ…。
頭の中では、そうやって口も動かして言っているのだけど、
多分、口は動いていないと思う。
だって、まだ頭の中寝てるもん。
アタシは寝起きが悪いんだ。
35 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時13分04秒
「まこっちゃぁーん。遅刻するよー?」
「…るさ…」
「何やて?」
「…さい」
「サイ?」
「うるさ…い」
「あぁっ、うるさいって言ったのかぁ。全然聞こえんから、わからんかったよぉ」

何でウチに泊めたんだ、こんなヤツ…。
ほんのちょこっとなんだけど、後悔してみた。

昨夜、とんでもない場所で、ありえない出逢いを交わした二人。
身寄りのない愛ちゃんを、アタシはウチに連れて来た。
「ウチに来ない?」って言った時、めちゃめちゃビビッてたけど、
すぐに子犬みたいにコクコク頷いて、アタシの後を付いてきた。
多分、本人は一夜限り止めてもらえると思ってたんだろうけど、
アタシはそんなつもりじゃなく、これからウチに住んで貰ってもいいと思ってた。

結局、夜遅くにニューヨークの父に電話をし(向こうは昼間だったけれど)、
事情を話したら、そういう理由なら全然構わないよ…とのコトで、
アタシと愛ちゃんの二人暮らしが始まった。
36 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時14分13秒
よくよく考えると、全く見知らぬ初対面の女をウチに泊める時点で、
どうにかしているんだけど。
ま、別にもういいや。
愛ちゃんも、仕事が見つかったらウチにお金入れるって言ってたし。
案外、アタシも愛ちゃんも、楽しんでるかも知れない。

…だけど、こんな朝早くに起きるのは辛い。

目覚まし時計は、まだ早朝五時を差している。
普段のアタシなら、起きる気配すらなく、
夢見心地で爆睡している時間だろう。
その上、昨晩はだいぶ遅く帰ってきたコトもある。
今日は学校には、遅刻して行くつもり満々もいいトコだった。

「ちょっと愛ちゃん…」
「ん?」
愛ちゃんは、何食わぬ顔で、
アタシの部屋に布団を敷いて寝ていた。
よっぽど寝起きがいいのか、もう身支度を整え始めている。
肩より少し長い黒髪を、ポニーテールにするつもりだろう。
アタシの部屋の、大きな三面鏡とにらめっこしていた。
37 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時14分50秒
「まだ五時じゃん!!」
「そうだけど?」
「そうだけど…って!!お前はおばあちゃんかよ!?」
「バカにするんでねぇ。福井では、皆こんな時間に起きてるんやよ」
「……まあ、どーでもいいけどアタシは八時まで寝るから!起こさないでね!」
アタシはベッドにバタン、と倒れ込むと、
頭から毛布を被った。
そして、大声で愛ちゃんに怒鳴り散らすと、再び眠りに落ちた。
愛ちゃんがどうしてるかは、知らない。
38 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時15分31秒
* * * * *

二階にある風呂場で軽くシャワーを浴び、
目をスッキリ覚ましてからリビングに下りた。
アタシの部屋に居たハズの愛ちゃんが、リビングでテレビを見ていた。
どうやら、ニュースを見てるみたい。
愛ちゃんは、まるで借りてきた猫のように、
きっちり静かに正座でテレビの画面を眺めている。
そんなに面白いニュースなのかな?と思って、アタシもチラリと目を向けたが、
「アイドルグループに新メンバー加入」なんてニュースが流れていて、
あまり興味ないアタシは、すぐに視線を戻した。
もっとも、愛ちゃんはそんなにこのアイドルグループが好きなのか、
食い入るように画面を見つめていたけれど。

アタシは愛ちゃんをそのままに放っておくと、
今度はキッチンへ移動した。
歩く時に、摺り足でスリッパをペタンペタン、とやるのは、
小さな頃からのアタシの癖だ。
よく注意されていたけれど、一向に治らない。
ま、いいや。
39 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時16分17秒
アタシは、キッチンの冷蔵庫をカラリと明けると、
卵を2つとミルクだけ取り出した。
そして、後ろの棚からお椀を取り出すと、
卵をコンコンと割って、菜ばしでかき混ぜ始めた。
卵を溶き終えると、今度はフライパンを火に熱し、
その合間にパンとトースターに二枚放り込んだ。

その数分後には、食器に盛り付けられた、
トーストとスクランブルエッグとミルクが、テーブルの上に並んでいた。

「簡単なもんだけど…」
「あ?」
まだテレビを食い入るように見ていた愛ちゃん。
どうやら、ニュースに関係なく、ああいう風にテレビを見るのが、
彼女の癖なんだろう。
政治のニュースなんか見てても、同じようにしていたから。
いや、どうだろ。政治に興味があるのかも知れない。
40 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時16分47秒
「愛ちゃん、どーするの?これから」
「はぐはぐ」
アタシの問いかけに答えず、愛ちゃんは一生懸命トーストをかじっている。
ああ、わかった。
この娘は、どんなつまんないコトにも命賭けで一生懸命やるコなんだな。
ってか、質問に答えて欲しい。

「仕事探す」
「仕事?…って、夜の仕事?」
「いやぁ、まだそれは無理でしょう?取りあえず、コンビニとかぁ…。
 あー、こっちはどこ行ってもコンビニあるからええよなぁ。
 福井では、一番近いコンビニに三十分かけて…」
「ストップ」
アタシは、頭を抱えながら話を遮った。
マシンガントーク、破れたり。
心の中で、ニヤリと微笑んだ。
「そうそう、三十分もかかってなぁ。
 ジュース買うんだって、自動販売機まで十分かかるんやよー。
 もう、全く田舎はやってられんなぁ…。
 アレ?まこっちゃん、どうしたん?食べないの?」
41 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時17分26秒
こ、こいつ人の話てんで聞いてねぇーッ!!!!
それ以降、アタシは愛ちゃんの話を遮らないコトにした。
喋るたびに一生懸命になられたんじゃ、溜まらないよ…。

「じゃあ、アタシ行ってくるから、出かける時は鍵かけてよね。
 それから、現金持ち逃げとか絶対辞めてよね。
 一晩泊めてやったお礼を、仇で返されたらとんでもないし」
「…さらっとひどいコト言うね、まこっちゃん。
 でも、安心やよー。福井の人は、みんな…」
「じゃ、行ってきます」
「はいはい」
ふっ、今度こそ勝った。
マシンガンが始まる前に、逃げ出せばこっちの勝ちだ。

「福井の話は、帰ってからするよー」

ずるっ。
その瞬間、アタシは地面に滑り落ちていたのだった。
42 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時18分02秒
* * * * *

さて、これからどうしよう…。
愛ちゃんがいるから、遊びに行くワケにもいかないよなぁ。
そもそも、あさ美や皆になんて紹介すればいいんだろう。
「樹の上で拾いました」ってか?
ありえない。
ゼティマに行くのも、当分お預けかぁ…。
ん?待てよ?
「そうじゃん!!アタシ、頭イイッ!」
「ほぅ?だったら、前に出て問題解けッ!!」
「ゲッ…」
級友たちの間から、クスクスと笑い声が漏れた。
アタシの眼前には、鬼のようなツラをした担任の中澤先生。
アタシが"とある理由"で大尊敬している先生だ。

ヤバッ…授業中だったんだ…。
アタシってば、ついうっかり叫んでしまったらしい。
どうしよー…わかんないよぉ、数学なんて〜。
これも愛ちゃんのせいだ!!
くっそぉー…。
43 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時19分19秒
昼休みになって、アタシはケータイから家に電話をかけた。
愛ちゃんを呼び出すためだ。
あの田舎娘、ケータイすら持ってなかったから、
何かあったら家に電話するね、と朝、出方に言っておいた。
でも、家にいるかなぁ…。

プルルルル…。
コール音が、耳に直で鳴り響く。
七回ほど鳴った後、コール音が途切れた。

「ハイ、高橋です」
「ちょっと待てッ!!!」
第一声、アタシはツッコミを入れた。
すっ呆けてんじゃないの!?この娘は!!
何が、我が物顔で『高橋です』だぁっ!?
そこはアタシんちだろが!!
44 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時22分35秒
「あ、いけね。間違えちゃったぁ」
「まあいいや。それより、ちょっと思ったんだけどさ」
「ん?」
「ファミレスとか、どう?」
「ファミレス?そうやなぁ、福井には、ファミレスもそんなに…」
「誰が福井の話しろって言ったんだよっ!!アホ女!!」
電話越しに、アタシは思いっきり怒鳴った。
多分、周りにいた人とかはビックリしてアタシを見ただろう。

「え?違うの?」
「違うよ。まあ、いいや。とにかく一回帰るから、家にいてね!!」
アタシは愛ちゃんの返事を聞かずに電話を切ると、
そのままカバンを持って逃亡した。
まったくー、愛ちゃんのヤツ世話が焼けるんだから…。
早く帰らないと、約束忘れて街に繰り出したりするんだよ、
きっとあの女。
あーダメダメ!!迷子になんかなられて探すの絶対無理!!

アタシは早退届けを出す余裕もなく、帰路をズンズン進んだ。
校門から出る時は、もちろん猛ダッシュだった。
45 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時24分17秒
* * * * *

愛ちゃんを連れて、ファミレス「ゼティマ」の特等席に座り込む。
矢口さんはまだ仕事に来てないみたいで、
今は知らないオバさんがフロアーでせっせか働いている。

アタシと愛ちゃんは、適当にオーダーをすると、
とりあえず、矢口さんが来るまで待つコトにした。

まだ六時ちょっと過ぎたところ。
あさ美や里沙や亜弥ちゃんが来るとしたら、
多分遅い時間になる。
できればそれまでに、矢口さんに話をつけて、
愛ちゃんを帰らせたい。

が、そうもいかなかった。

「おまたー…ってあっれぇ〜?」
「マコ、そのコは?」
あっちゃぁー…。
お前ら、こういう時くらいゆっくりして来いよ。
亜弥ちゃんとあさ美、二人同時に席にやって来た。
46 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時25分27秒
ヤバイ、と思った瞬間、
アタシの口がペラペラと激しく動いた。

「あ、うん。えっとね、このコ…そう!イトコ!」
苦し紛れの言い訳だったけれど、
そう言っておけば怪しまれないだろう。
愛ちゃんも話くらい合わせてくれるだろうし。
「へぇ。イトコかぁ」
「あんまり似てないね」
二人は口々に言ったけれど、当の本人は、
ビックリ顔でアタシを見つめていた。
(いーから黙ってて!!)
視線で会話を交わす。
愛ちゃんの目は、間違いなく「わかった」という目をしたが、
その直後、それがカンチガイだというコトに気付いた。

「ええーッ!?私とまこっちゃんって、イトコだったんだ!?」
アタシは、今すぐこの大ボケ娘を殴り倒したい衝動に刈られたのだった…。
47 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)16時26分23秒
ここまでです。
誤字が多かったですね、すんまそん。
48 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年01月21日(火)19時35分06秒
今回も高橋に爆笑!! つんくじゃないけど これからも東京に慣れないで訛ったままでいて!そんで 訛りマシンガン連射に期待!
49 名前:ななすぃ〜 投稿日:2003年01月21日(火)20時11分25秒
いやぁ、面白い!
高橋さんなんでアナタはそんなにおもろいの?と聞きたいくらいです(笑。
マシンガントーク、これからも楽しみに^^
連射してくださいね^^
50 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時30分56秒
本日二度目の更新。

>>うまい棒メンタイ味(i-mode) さん
訛りはねぇwどうでしょう。
っていうか、福井弁とか全然わかりません。
福井=田舎というイメージ付きまくってます。
福井の皆さんゴメンなさい・・・。

>>ななすぃ〜さん
愛ちゃんのボケはいいんですけど、小川のツッコミがイマイチなんですよね(^^;
小川のキャラってイマイチ掴み難くて。。。
ごっちん視点で書いてた時と、あんまり変わってない(爆
51 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時32分59秒
* * * * *

「じゃあ、居候ってコトなんだね」
「そ、そういうコト」
「ふーん」
大爆笑された後、二人にしどろもどろになりながら説明をした。
これほど恥ずかしかったコトなんかない。
当の本人は、「そんなわけないやよ」とか言っちゃってるし…。

アタシの心配とか全然余所に、三人はお互いに自己紹介をしていた。
千客万来なこの席で、愛ちゃんが来ても来なくても、
そんなに違和感はない。
普段は四人だけどもね。
二人とも、それほど興味を示さずに、
それぞれシーザーサラダとカニのドリアとミックスピザと
チーズハンバーグとドリンクバーを二つずつ注文していた。
食いすぎだっちゅーねん。
52 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時33分38秒
「あ、あ、そんなコトよりさぁ〜!!」
亜弥ちゃんが、突然大声を張り上げた。
そんなコトとは何だ、そんなコトとは。
「今日、真希さんたちの集会あるらしいよ」
「えええええーッ!!!?」
アタシは大声を張り上げた。
確かに、愛ちゃんがウチに居候してる話なんてそんなコトだわ!!

あの、真希さんたちの集会がぁーッ!?今日ッ!?
「どこどこどこ!?見に行こうよ!!」
アタシは興奮しまくっていた。
「何やぁ?暴走族かぁ?」
「ちがうっ!!」

後藤真希さん───。
この朝日町で、彼女の名前を知らない女子高生はいないだろう。
朝日町のカリスマ女子高性だ。
いや、真希さんだけじゃない。
それには、まず大きなグループの話をしなきゃいけない。
53 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時35分26秒
まず、この街には女たちのグループがあった。
『モーニング』という、すっとぼけた名前のそのグループ。
決して、暴走族ではない。
みんなで集まって、ワイワイやるという意味では似てるけれど、
少なくとも犯罪に手を染めるワケではない。
まあ、集会を開いたり、幅利かせてるっていうのは似てるかもしれないけど。

そのグループは、最初は五人で、十二年程前に結成されたらしい。
当時はまだ小学生だったアタシは、そんなグループがあるコトなんか知らなかった。
そのグループのコンセプトは、「一人で楽しいコトを皆で楽しもう」というもの。
こんな小さな街だからこそ、できた団体だと思う。

創始者は、中澤裕子という人。
そう、アタシの担任の中澤先生だ。
彼女が十八の時に、「皆で遊ぶぞ」という理由で結成された。
ちなみに、『モーニング』とは、中澤さんが朝思いついたから、
その名がつけられたそうで。
結成動機も、名づけも…安直。
でも、『朝日』町の『モーニング』といえば、説得力がある。
54 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時35分56秒
基本的に、女子高生の集いなのだが、中澤先生は二十四才まで現役だったそうだ。
そうそう、矢口さんや婦警の飯田さんもここの出身で、
今でもたまに、集会に顔を出してるそうだ。
今のリーダーが真希さんで、副リーダーに石川梨華さん、吉澤ひとみさんが就く。
カリスマ的で、独特のオーラを放っているのが真希さん。
女性的で温かくて、笑顔がチャーミングなのが梨華さん。
武闘派で、身長が高くボーイッシュなのがひとみさん。
人気の高い『モーニング』のメンバーでも、特にこの三人は別格でファンが多い。

今は、高一〜高三までという規則があり、
入団希望者が後を絶たないので、入るのも制限がある。
だから、いくらアタシらがグループに入れてもらいたくても、
簡単には入れないというワケ。
それが、矢口さんや飯田さんや中澤さんの知り合いでも。
現役メンバーの誰かに気に入られれば、入れるという噂は聞いたコトがある。
現に、アタシと同じ学年のコで、二人ほどメンバーのコがいる。
どちらも、真希さんたちと仲が良い。
55 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時36分26秒
それでも、アタシらを見ての通り、彼女たちを崇拝する者は多い。
学校ではファンクラブが作られ、取り巻きが付き、
男子たちからも大注目の的になっている。
けれど、どういうワケか、三人ともカレシがいない。
もしかして、「カレシを作らない」という裏鉄則でもあるのかも知れない。

その真希さんたちの集会!!
多分、多くのファンが押しかける。
でも、彼女たちはファンサービスが親切だから、
何か良いコトあるかも知れない。

「行こうよッ!!」
「そうだよね、行こう!!」
「待ってぇ!」
立ちあがろうとした亜弥ちゃんとアタシを、あさ美が止めた。
「な、何?」
「…ご飯食べてからね」

アタシと亜弥ちゃんは顔を見合わせると、お互いに頷き合った。
「賛成」
「同じく」

アタシは、愛ちゃんをここに連れて来た理由など、
とうに忘れていた。
そのくらい、真希さんたちの影響は大きいのである…。
56 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月21日(火)22時36分58秒
いしよしごまキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

…結局出てしまう罠。
57 名前:愛チュン☆ 投稿日:2003年01月22日(水)06時01分09秒
面白いです!愛ちゃん可愛い!何か色々起きそうですね。キタイしてます!
58 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年01月22日(水)08時02分06秒
更新早すぎ! でも嬉しいっす! ごっつぁむさんの ごっつぁんは大好きなんです! 早く続き見た〜い!!
59 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年01月23日(木)21時29分09秒
レディース物なのか、この話は・・・?
リーダー中澤ワラタ(w
60 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月23日(木)23時32分03秒
「幅利かせてる」って一体何してんだろ…。
てか、あの人はまだでつかぁ?
61 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)20時18分09秒
>>愛チュン☆さん
どもです〜。つたない話ですけど、これからもどうぞよろしくですー。

>>うまい棒メンタイ味(i-mode)
おいらもごっちんは大好きですよー。

>>ちゃぁみぃ後藤さん
いや、レディースじゃないって言ってるでしょうにw

>>60さん
ん〜、あの人はどこにいるんでしょうねぇw
でも、話の流れからすれば…。ってな感じで。
62 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時05分10秒


3.真希さんとの出逢い


63 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時05分56秒
愛ちゃんは、結局、矢口さんの紹介により、
「ゼティマ」でバイトするコトになった。
最初、矢口さんも「ん〜どうかなぁ」とは言っていたけど、
愛ちゃんの大ボケっぷりが気に入ったのか、
とりあえず店長に話つけておいてくれると言ってくれた。

当の愛ちゃんは、どうやらまたカンチガイしているらしく、
矢口さんに向かって、「店長さんお願いします」なんて言っていた。
もちろん、矢口さんは大爆笑。

その甲斐あってか、愛ちゃんがバイトするのが決まった。

んで、今日から愛ちゃんはここでバイトだ。
矢口さんが指導に当たるらしい。
アタシは、様子見という意味も兼ねて、
いつものようにこの席で、その様子を眺めていた。

「ハァ〜…」
アタシは深くため息をつきながら、この間のコトを思い返していた。
64 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時07分25秒
愛ちゃんと皆を会わせたあの日。
結局、アタシは真希さんたちの集会を見に行くコトができなかった。

というのも、真希さんたちは普段、駅前の噴水広場に溜まっている。
その日はギャラリーが余りにも多くて、見えなかったんだ。
残念だったなぁ。
その日は、真希さんたちがストリートダンス踊ってたんだって。
本人たちは、ただ踊ってるつもりなだけなんだろうけど、
とにかく芸能人のゲリラライブ並に観客が来る。
だから、いつも以上に人が押し寄せたみたい…。
見れた人、羨ましいなぁ。

いつかは、あの雲の上のような存在の人たちと、
一緒に話ができる日が来るかなぁ…。
小さくため息をついた。
65 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時08分27秒
(愛ちゃん、ちゃんと働いてるかな?)
席から愛ちゃんの方をチラッと見ると、どうやらアタシが気になるのか、
バツの悪そうな顔でモジモジしていた。
………。

アイコンタクトで、アタシは視線を返す。
(わかったよ。出てくよ!!)
アタシは席を立つと、レジに向かってスタスタと歩き出し、
矢口さんにお勘定を払って店を出た。
「愛ちゃん、十時に迎えに来るから頑張ってね」
そう言い残すと、愛ちゃんは犬みたいな顔で嬉しそうに頷いていた。

さて、これからどうしよう。
あさ美は塾だし、亜弥ちゃんはまたカレシとデート。
里沙は、ここ一週間顔すら合わせていない。
学校の友達と遊ぶのも、何か気分が乗らないし…。
しょうがない、デパートでも入ってブラブラするかな。
66 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時09分19秒
駅前のデパート、「アップフロント」の三階に、
アタシはいる。

「アップフロント」は、この朝日町から進出した大手のデパート企業で、
子会社もたくさん抱えているのだ。
だから、日本全国どこへ行っても「アップフロント」の名前を聞くことはできる。
さすがに、愛ちゃんの福井でも名前くらいは通っているようで、
初代のこのデパートを見て喜んでいた。
…そんなに喜ぶコトか?

まあ、そんなコトはともかく。
三階は婦人服売り場になっていて、今時のギャルたちの
着るような服がちんまりと売っている。
さすがに、渋谷や原宿のようにはいかないけれど、
ここでもそれなりに買い物できるから、女子高生の客も多い。
もっとも、今この時間はそんなに客もいないみたいだけど。
アタシは、その辺をブラブラしながら、
欲しい物でもないかと、物色していた。

そしたら、途端にトイレに行きたくなった。
67 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時10分55秒
トイレは、全部の階に設備されていて、
入り口側から全く反対、奥の方にある。

あまり人気のないトイレ付近。
もし中で何か起きていても、きっと誰も気付かないんじゃ…。
そんな雰囲気すら漂う、怪しいトイレ。
でも、背に腹は変えられないというでしょう。
というより、アタシは別に何の抵抗もなく、トイレに入ろうとした。

入り口に立ったその時。

「いいじゃんさぁ、2千円でいいからぁ」
「まさか出せねーとか言わないよねぇ」
カ、カ、カ、カツアゲーッッッ!!!!!?
今まさに、怪しいと思った瞬間からかよ!!
トイレの中を見ると、女のコが三人くらいの女に囲まれて、
泣きそうな顔をしている。

ど、どうしよう…。警察!?
いや、その間に逃げられたら…。
…お、小川麻琴!!
後藤さんの意志を継ぐ、朝日ッ娘だぁッ!!
ここは正義の鉄槌をくらわせなければ!!
いざ、戦陣!!!
68 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時11分25秒
「ちょっと待てよ」
アタシの言葉に、ヤンキーっぽい三人娘が振り返る。
ヤンキーたちは、「ハァ?」という顔をした後、
顔を見合わせて、ケラケラと笑った。
「なんだてめぇー」
「っていうか、カッコつけるのもいいかげんにして欲しいんですけどー」
ズン、とこちらに歩み寄るヤンキー。
アタシはそれにつられて、ズン、と一歩引き下がってしまった。

こ、怖い。
でもダメ!負けると思ったら、そこで負けなんだ!!
頑張れ、マコ!!
自分で自分を励ましてみる。
…ちょっとムナしい。

「許されると思ってんの?カツアゲとか」
アタシが、ずい、と一歩前に出る。
ヤンキーたちが一歩引く。
「いいんだけど、アタシが今ここで警備員でも呼んでくれば」
「何コイツ、うぜー」
「マジ勘弁なんですけどー」
「やっちゃいます?」
ヤンキー達は、お互いに頷き合うと、
さっきまでカツアゲしようとしていた女のコを突き飛ばして、
こちらに近寄って来た。
アタシはテコでもそこを動かないように、両足にグッと力を入れる。
69 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時11分55秒
「どう許さないんだよ?え?」
ヤンキーの一人が、アタシの髪を引っ張った。
アタシは髪を引っ張られて、グッとしたが、
すぐにそれを振り払って、体勢を立ち直した。
「どう許すんですか。え?」
その間にヤンキー二人が、アタシの後ろに回り込み、
両手をガシッと掴んだ。
アタシは不意をつかれて、それをかわすコトができなかった。

しまった!!

「やめ…」
ジタバタと抵抗するけれど、二人の人間の力にはさすがに適わず、
アタシは身動きが取れなくなった。
どんだけ力を入れても、ヤンキー二人はアタシの腕を離さない。
すぐ背後に出口があるのに、アタシは逃げるコトもままならなかった。
負ける…!!
と、思ったその時。
まるで、ドラマみたいな展開。

「どー許さないってぇ?」
70 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時12分34秒
ヤンキーたちの、更に背後───トイレの入り口付近から声がして、
あっという間に後ろのヤンキー二人をなぎ倒してしまった。

「あちょーっ」

とんでもない雄叫びをあげる誰か。
トイレの中で吹っ飛ぶヤンキーたち。
ビックリ顔のアタシ。
口を半開きで、入り口付近を見つめる、絡まれていた少女。

茶色のロングヘアー。
やや離れ気味の目に、きりりと通った鼻筋。
端整な唇をにやりと浮かばせつつ、
眠そうな表情をこしらえた、とっておきの美少女。

その人は、他でもない真希さんだった。

マジでビビった。
真希さんがいきなり、背後から登場するなんて。
さすがに、アタシもビックリした。
71 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時13分23秒
ヤンキーたちもそれに気付いたのか、
三人とも目を輝かせている。おい、お前ら…。
「キャーッ!!ウチら、真希さん大ファンなんですー!」
「かっこいいー!!」
「ヤベー!あ、あたし真希さんに殴られちゃったぁ!!」

ところが真希さんは、黄色い歓声を聞いても、
うざそうに耳に手をあてて、「あーあーあー」とかやっていた。

そして、耳から手を離すと、ヤンキーたちを一喝した。
「ごとーが幅利かせてるこの街で、犯罪行為は許さないよー」
何とも緊張感のない一喝だったけれど、
ヤンキーたちはそれで十分反省したのか(?)、
真希さんに向かって歓声を上げまくっている。
飽きれた。何なの、コイツら…。

「…あーうざい。ほら、のの。こっちおいで。もーだいじょぶだよ」
「へい」
「そっちのコも、一緒においでー」
「え?アタシですか?」
「イエ〜ス」
体をクネクネとねじらせて、両手の人差し指を前に突き出す真希さん。
…変な人。
そう言われたので、アタシは、真希さんと“のの”と一緒にトイレを出た。
ヤンキーたちは、まだキャーキャー言っていた…。
72 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月24日(金)23時14分42秒
千と千尋見てたら更新が遅れました。(五回目。。。)
ごっちんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

さて、明日あさって月曜と出かけるので、更新お休みしますー。
73 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年01月25日(土)08時17分55秒
やったー!ごま登場だ! カツアゲされてた辻の事は知ってるみたいだし もしか辻はカツアゲ常習犯!? そんで高橋の店長発言にも笑わせて頂きました 聞いてよければ 作者さんは大阪関西圏の人ですか?
74 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)19時47分31秒
ごっつぁむしゃんこーしんおつ!
これでまこぴーもチーム入りでつか?

>>うまい棒メンタイ味(i-mode)さん。
作者じゃないのにレスしてスマソ。
ののはカツアゲ被害者だと思うよん。
あと54に、ののの正体のヒントがあると思われ。
75 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年01月28日(火)00時18分59秒
ごっちんキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
なんか、今までにないごまだ・・・カコ(・∀・)イイ!!
チャーミーとよっすぃにも期待
76 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月28日(火)18時16分29秒
更新がんがれ
77 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時14分17秒
あややのアルバムを買ってきますた。メロンも初めて買おうと思ったけどなかった。

>>うまい棒メンタイ味(i-mode)さん
いえいえ。作者は関東人ですよ。福井弁はまったくわかりませんw

>>74さん
おー。するどいですねーw
その謎(?)は今回更新分にて。

>>ちゃぁみぃ後藤さん
今回のごっちんは、実はモデルあり。
実在の人物をモデルありっていうのもアレですけどw

>>76
あい、頑張りまっする。
78 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時16分48秒
* * * * *

カツアゲに遭っていたコを、アタシは知っていた。
辻希美さん。
“のの”と呼ばれて気付いたのだけれど、
このコはアタシと同じ学年のコで、真希さんのグループのコだ。
いつも、双子みたいな加護という人と一緒にいるのだけれど、
今日は単独行動みたい。珍しいな。

どうやら、気が弱くておどおどしている様子なので、
一人で行動している間に、絡まれてしまったんだろう。

辻さんは、アタシに向かってペコリとお辞儀をすると、
舌足らずな感じで、「ありがとうございます!」と言った。
とても、同い年とは思えない…。
見た目も幼いし、身長もアタシなんかより5センチは低い。
体型はアタシより、随分ふっくらしてるみたいだけど。
頭の上部にチョコン、と突き出したポニーテールが、
その幼さをさらに誘っていた。
これでも、高校一年生。…やっぱり見えない。

「んー。ののさん。アンタの一人歩きは危険だって言ったはずだよー」
「ごめんなさいれす」
辻さんは、どうにも滑舌が悪いようで、「です」が「れす」になっていた。
そんなところも、やはり幼さを感じる。
79 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時17分40秒
真希さんは、やっぱりカッコ良かった。
こんな間近に見るのは初めてだし、ましてや喋るのも初めて。
彼女の存在感は、近くにいるだけでヒシヒシと伝わってきた。

そう、なんていうか、
「おぉぉぉ…真希さんだ…」というような感じ。
本当に、もう言葉で表せないくらいに感動した。
それこそ、さっきのヤンキーたちみたいにキャーキャー叫びたいくらいだもの。

「んーとー」
とぼけた声で、真希さんがアタシを見る。
アタシは緊張しているので、その瞬間に
「ハイッ!?」と返事をしてしまった。

「あははは。きんちょーしてる?」
「ハ、ハイッ!憧れの真希さんがと思うと私…」
「んー。ぶれーくぶれーく。落ちつけー」
真希さんはそう言いながら、ニヤニヤとして、
アタシの両肩に手をかけた。
キャー!!!!
綺麗な顔が、目の前に…。
ああ、恋に落ちちゃいそうー…。
80 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時18分20秒
「えーとー。名前はー?」
「あ、お、小川です。小川麻琴」
「んー」
真希さんは、しばらくアタシの顔をジロジロ見ながら、
「んー」とか「あー」とか言いながら、考え事をしていた。
「じゃあ、まこっちゃんだねー」
「え?」
唐突に、真希さんは言う。
この人は、何を考えているんだろう…と一瞬思った。
まさか、アタシのあだ名を考えるのに、
「うー」とか「あー」とかやっていたのなら、それはそれで凄い。

「まこっちゃんだまこっちゃん」
真希さんはそう言いながら、アタシの回りをクルクルと小躍りし始めた。
「まこったんれす」
その後を、辻さんがクルクルと回っている。
なんなんだ…。
本当に変な人たちだ…。
81 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時18分58秒
「まこっちゃん。ちょっとおいでなさいな」
真希さんは、ピタッとアタシの丁度まん前で止まった。
そして、手をひらひらとアタシに向けると、
チョイチョイと手招きをする。
「はい?」
「んーとねー。これ」
「え?」

後藤さんが、自分のポケットからゴソゴソ取り出したのは───。
「じゃーん」

「えええ〜!?」

「あはははー。これねー、バッジ〜」
バッジだった。
正真正銘、何の変哲もない。
ただ、バッジにひらがなで、「も」と書いてあるだけで。
何だコレ。小汚ェバッジ…。
いくら真希さんからのもらい物でも、こんなのいらない…。
82 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時19分59秒
「これねー。メンバーズバッジ」
「ええ!?」
そりゃあ、すっごいお宝だわ!!

「…まこっちゃん、今イラネって思ったでしょ」
「え!?いや、お、思ってないですよ!全然、まったく!!
 いや、むしろ欲しい!わースゲーかっけー」
半分必死だった。
自分でも、その白々しさに笑えてくる。
「…ま、いいけどね」
真希さんは、そんな素敵なバッジをアタシの手のひらにもぐり込ませた。
「これはアンタのだよ」
その言葉を聞いたアタシは、思わずポカーンとしてしまい、
「ハァ?」と聞き返してしまったくらいだ。
「コレって…」
アタシが戸惑いながら、手のひらの中でバッジを盗み見ると、
真希さんは、アタシの手の平に自分の手のひらを重ねた。

「最近、この平和な街にも良くない事件が起きてるの、知ってるよね」
「ハァ…」
「ごとーも良く知らないんだけど、そうなんだって」
「はい…」
「だから、まこっちゃんのさっきの行動みたいのはすっげー素敵だと思うよー」
「ハ、ハァ…」
83 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年01月29日(水)01時21分00秒
真希さんは、ギュッとアタシの手を握り締め、
その力強い瞳をアタシに向ける。
アタシもそれを思いっきり直視して、一瞬ひやっとしてしまった。

光を宿した、不思議な目。
強く、優しく、冷たい瞳がアタシを見つめている。
真希さんの瞳には、全て従いたくなるような、そんな威圧感があった。

「アタシが選んだんだ。文句ある?」
「いえ、ないです」

アタシはこの日、よくわからない理由で、
『モーニング』のメンバーに抜擢されたのだった。
84 名前:うまい棒メンタイ味(i-mode) 投稿日:2003年01月29日(水)08時09分36秒
わお! メンバー入りだ! しかしクルクル回るのはカツアゲから助けてくれた時よりカッコわるい >>74さん 人の板でレスするの初めてだ・・・ 私もそう言いたかったんですよ 文章がおかしくてスイマセン
85 名前:ウィンキー 投稿日:2003年01月29日(水)21時02分23秒
ごっつぁんカッケ!
86 名前:愛チュン☆ 投稿日:2003年01月29日(水)23時36分17秒
愛ちゃん可愛過ぎますよ〜!!大ボケがすごいですね(笑)
ごっつぁんのキャラの元ネタって、ちょっと思い当たるんですが・・・。誰なんでしょうか
87 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年02月01日(土)03時13分14秒
更新はまだかぁー!!
88 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月04日(火)21時31分32秒
なんか、変なスレが乱立してるんであげますね
ごっつぁむさん、更新がんばって!
89 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時55分00秒
こんな時間になってしまいました。。。
ごっつぁむです。

>>うまい棒メンタイ味(i-mode)さん
カコワルってか、アホっぽいですねw

>>ウインキーさん
どもーはじめまして。
かっこよいごっちんは…はたして出るのでしょうか。

>>愛チュン☆さん
えーっと、それはそのうち明かしますw

>>ちゃぁみぃ後藤さん
遅くなってもうしわけないっすーペコリ

>>88さん
はーい。頑張るでつ。
90 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時56分38秒



4.メンバーズバッジ


91 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時57分11秒
真希さんと辻さんと別れた後、アタシはゼティマに戻った。

真希さんは帰り際に、ケータイの番号とメールアドレスを教えてくれ、
「何かあったら連絡するからねー」と言って去って行った。
辻さんは、それにひょこひょことくっつきながら、
時々振返ってアタシに小さく手を振っていた。
アタシも、そんな辻さんに小さく手を振り返した。

それにしても!
こんなアタシが、あの『モーニング』のメンバーに選ばれるなんて!
嬉しい!!めっちゃ嬉しい!!
どうしよう!?夢かしら!?

嬉しさが顔中からこぼれ落ちて、どうしても絞まりのない顔になってしまう。
口元はどんなに抑えてもニヤニヤしてしまうし、
目はパチパチするし、頬はプルプル震えてしまう。
今、世界中で半笑いを浮かべながら、笑いを押し殺している人物が、
どれだけいるだろう。
きっと、その中でも単独トップの半笑いみたいだろう。
ゼティマに入った時にも、アタシは気味の悪い笑いを浮かべていた。
92 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時57分44秒
「いらっしゃませやよー」
店内に、マヌケな声が響く。

声の主は、見るまでもなく、愛ちゃんだ。
ゼティマの制服に身を包んで、かれこれ三時間。
この三時間で、どれだけ仕事を覚えたのだろうか。
アタシはこの三時間で(っていうかつい一時間前に)
人生の中で最も嬉しいと思える出来事に遭遇したけれど。

「もーまこっちゃんー。このコなんとかしてよー」
愛ちゃんの後ろから、小さい人がぴょこぴょこ跳ねて来た。
…もちろん、矢口さんだ。
三時間ぶりに見る矢口さんは、やっぱり小さい。
「愛ちゃんさー面白いんだよー」
矢口さんは、愛ちゃんの顔をうかがいながら、
微妙に苦笑いを浮かべまくっている。
う…愛ちゃん、もしかして全く使えないんじゃぁ…。
93 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時58分25秒
「愛ちゃんってばさー、マジ笑わせるんだもん!
 矢口、爆笑が止まらなくって腹痛いよーキャハハ」
「笑いすぎやよー矢口さんー」
愛ちゃんがニコニコしながら、少し低い矢口さんの肩を叩いた。
その仕草が物凄くオバサン臭い。
「だってさ、"いらっしゃいませ"が"いらっしゃいませやよー"に自動変換されるんだよ!?
 そんなウエイトレスいるかよ!ちゃんと喋れよ!キャハハハハ!!」
矢口さんは、店の出入り口で、しかも仕事中なのにキャハキャハ笑った。
愛ちゃんも一緒になって、ケタケタ笑っている。
…アタシも、一応苦笑いをしておいたが、
「お前ら…仕事しろよ」と心の中でつぶやいていた。

愛ちゃんの仕事が終わってから、アタシはいつもの席で、
少し遅めの夕食を、愛ちゃんと矢口さんと三人でとっていた。
今日は、あさ美も亜弥ちゃんも来なかったようなので、
この後は何の予定もなく、すぐ帰るコトにした。
94 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時59分01秒
その席で、アタシは矢口さんに例のバッジを見せた。
すると矢口さんは、バッジを見た途端に顔の色を変え、
バッジをマジマジと見た後、爆笑をかました。

「キャハハハハ!このセンスないバッジ!!」
その矢口さんのリアクションがとても意外で、アタシは
「これ偽者なんですか!?」と聞いてしまった。
そりゃそうだ。ビックリする。
『モーニング』卒業生の矢口さんが、バッジ見て笑い出すんだもん。
でも、そうじゃなかった。
「これねー。ごっちんのセンスなんだよね」
ごっちん…?ああ、真希さんか、というのはすぐにわかった。
どうやら、このダサ…いや、素敵なバッジは真希さんのデザインらしい。
矢口さんもどうやら、こなバッジがダサ…いえ、素敵だとは思っているらしく、
バッジを見ながら「ありえねー」とか、「ダサッ!」とか言いながら、
一人でケラケラ笑っている。
95 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)03時59分42秒
「まあ。良かったじゃん?ごっちんに気に入ってもらえたんでしょ」
矢口さんは、注ぎ立てのホットコーヒーに砂糖を2つ入れて、
ガシガシと荒っぽくかき混ぜながら言った。
ミルクは入れないらしい。牛乳が嫌いだから。
ちょっと意外っぽい感じがした。

…だから、身長が伸びなかったんじゃないかという説もあるけど。

「真希さん、カッコよかったッス」
「そうでしょー。でも、変人でしょ?キャハハハハ」
「ん…。確かに」
いきなり現れて、「あちょー」はないよなぁ…。と、改めて思い返してみた。
あちょーって…。何なんだ。
そういえば、何で真希さんはいきなりあんな場面に現れたんだろう。
様子でも伺っていたのかな?
辻さんも、何であんなとこに一人で行ったんだろう…。
……ま、いいや。今度聞こう。
96 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時00分14秒
「そんで、メンバーには会ったの??」
「あ、いえ。まだです」
「そうなんだー」
「はい」
矢口さんがコーヒーを飲み干した。
コーヒーっておいしいのかなぁ、などと思ったけれど、
アタシはマネして飲む気にはなれない。
その様子をジーッと見ていたら、矢口さんと目が合った。
「見つめるなよ、そんなに…ホレるじゃん」
「え?」
「なーんちゃって、冗談冗談!キャハハハハ!!」
矢口さんは一人でバカ笑いをしていた。
…何なんだ、この人…。
やっぱ、変!
『モーニング』のメンバーは!
現メンバーも、卒業メンバーもみんな変だわ!

「ま、それはさておき。新メンバーに選ばれたっていうのは、
 すっごい名誉のあるコトだと思うなー、矢口」
「アタシもそう思います」
「うんうん。わかってるならイイけど。
 …ここんとこ、妙に浮き足だってるからね、この街も」
「そうですね…」
97 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時02分22秒
実感はあまり沸かないけど、本当らしい。

少年少女による犯罪の増加。それは、この街でも着実に増え続けている。
それでこそ、アタシもついさっき、カツアゲの現場に遭遇したぐらいだ。
その実態を、身をもって知った。
カツアゲだけじゃない。
万引き、ケンカ、窃盗…などなど。
この平和でのほほんとした朝日町でも、そんなコトが起こっているんだ。
別に、犯罪件数が増えるのは、アタシに被害がかからなきゃ別に気にはしないだろう。
でも、そうもいかない。
その犯罪集団をまとめているのが、真希さんだという噂だからだ。
もちろん、真希さんはそんなコトする人じゃないし、
先ほどの様子を見てのとおり、真希さんは正義感溢れる人だ。
実際に、真希さんのグループが犯罪を起こすという、証拠も何もない。
けれど、大人たちは、真希さんが主犯だと勝手に決めつけて、敵対心を抱いている。
そのせいか、『モーニング』の活動を廃止しろとの声もあがってきているのだそうだ。
最近では、真希さんたちの姿を街で見る回数も確かに減ってきている。
98 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時03分02秒
さっきみたいに、単独でヒョロヒョロとしている時はあるみたいだけど、
グループ全体での行動は、監視されてるせいで、だいぶ取り難いみたいだ。
こんな現実問題が起きているコトなど、アタシは知らなかった。
矢口さんが教えてくれるまでは。
それまでは、噂程度で、「真希さんたちが悪いコトしてる」とは聞いたコトはあったけれど、
一度も信じたコトはないし、信じるハズもない。
それでも、バカな大人たちは勝手にそう決めつけてるだけだ。
気分が悪くなる。
そのコトを話してくれた矢口さんも、いつになく真剣な顔で、
珍しく怒りをあらわにしていた。
そんな矢口さんを怒らせるぐらいなのだから、
真希さん主犯説は絶対に嘘なのだろう。
いや、嘘だ。アタシが認める。

誰が立てた噂かは知らないけれど。
99 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時03分54秒
「ん〜。ほら、まこっちゃん。ムズかしい話したから、
 愛ちゃんが寝ちゃったよ」
「え?」
見ると、さっきまでムシャムシャと一心不乱にご飯を食べていた愛ちゃん。
今はすっかり満足したのか、 イスに頭を乗っけて
グゴーといびきを掻いて寝てしまっていた。

あーあ。平和な人…。
100 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時04分36秒
* * * * *

矢口さんと別れて、アタシと愛ちゃんは二人で道を歩いていた。
「そんでさ!後藤真希さんっていう・・・」
ついこの間まで、一人で歩く帰り道だったのが、
最近は一緒に帰る人がいるというのも、またちょっとだけ嬉しい。
それに、今日は真希さんと出会ったコトもあって、
少しだけ浮かれモードになって、真希さんについてペラペラ話していた。
ところが愛ちゃんのことだ。
また、変なコトを言い出した。

「ごぼー巻きがどーしたってぇ?」
「バ、バカ。ごぼうじゃなくて後藤さんだよッ!!」
…一緒に歩く人にもよるか…。と、少しだけさっき思ったコトを撤回しようと思った。
101 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時06分21秒
「………」
「………」
不意に、どちらともなく無言になった。

アタシはふと思ったのだけれど、愛ちゃんのコトなど何も知らない。
同様に、彼女もアタシのコトについて、ほとんど何も聞いてこない。
愛ちゃんがどんな学校に通ってたとか、どんな男性が好みなのかも、
どんな食べ物が好きとか、本当に何も知らない。
何で突然、そんなコトを思ったのかは解らない。
けれど、何だかいきなり気になった。
別に、知りたいとか、知りたくないとかそういうのじゃないけど…。
本当に何も知らないんだ。

お互いに色々理由があって、ただ一緒に暮らしてる。
それだけの存在なんだ。アタシたちは。
この小さな街の小さな家で、時間を共有するだけの、
ただの他人…。

そう思うと、少しだけ寂しくなった。
102 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時07分09秒
「愛ちゃんさ」
「ん?」
「愛ちゃんって、アタシのコト何も聞かないね」
アタシがそう言っても、愛ちゃんは特に表情も変えなかった。
それどころか、聞こえなかったかのように、
まっすぐ前を向きながら、無言で歩いている。

………。
………。

「……愛ちゃん?」
「んえ?何か言った?」

……やっぱりね。
聞えなかったんでも、答えなかったんでもない。
案の定、彼女は聞いていないだけだった───。
103 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時08分39秒
まあ、別にそんなに急いで相手を知る必要もないかな…。
これから、どれだけの時間を一緒に過ごすか知らない。
明日かも知れないし、死ぬまで一緒にいるかも知れない。

けれど、今はゆっくりがいい。
そうだ。
これから、ゆっくり時間をかけて彼女との日々を過ごしていくことにしよう。
そう、それでいいんだと思う。

「愛ちゃん。アタシたちって友達だよねー?」
「ん??そうやよー」

素っ気ない愛ちゃんだったけれど、アタシにはそれで十分だった。
なんとなく、胸の中がほこほこしてくる。
“友達”。
うん…、そうだよね。
何をそんなに気にしていたんだろ。
変なの。
104 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時10分52秒
───。

思えば、もうアタシはこの時、戻れない道を進んでいたのだと思う。
愛ちゃんとの出逢い。
真希さんとの出逢い。
『モーニング』に入ったコト。

そして、まだ知らないコトだらけだったんだ。

気付かなかった、友人たちの変貌を。
この街での、色んな出来事を。
そして、アタシ自身のこれからのコトを。

その道が、意外と大変で、それでもかけがいのないものになるんだって、
アタシはまだ知る由もなかったんだ───。
105 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月06日(木)04時11分26秒
いい感じに終わってみました。
106 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月07日(金)02時12分15秒
レスがないぃぃぃ。・゚・(ノД`)・゚・。
今日はごまかごを更新しました。緑のヤシです。
明日また、こっちは更新するですー。
107 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月07日(金)04時58分33秒
スマソ、今見た。
確かにイイ感じやよー。

「友人たちの変貌」
一瞬、SFかホラーかと思ったのは漏れだけ?
108 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年02月08日(土)01時41分03秒
むむむ・・・
どういう展開になるのか・・・期待
109 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時09分04秒
ごっちんミュ見てきました。
なんか、自分の目指すべきほのぼのがそこにはあったと思います。
てかごっちん可愛すぎ…。

>>107さん
いや、どうでしょうw

>>ちゃぁみぃ後藤さん
さて、どうでしょうww
110 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時25分12秒



5.絶体絶命!!いきなりピンチ☆ランナー


111 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時25分43秒
どうもこうもない。
いきなりピンチとは、こういう状況だ。

後ろは行き止まり。
前にはこないだのヤンキーたち。
ガンとガンの飛ばし合いに、アタシはもはや無言だった。
…見つめ合ってお喋りできないワケではないのであしからず。
って、そんな余裕は全くない。

「ふざけんじゃねーよボケぇ」
「ブス。死ねよ」

何でこんな状況にいきなり陥ってるのか、アタシは。
112 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時26分16秒
* * * * *

ゼティマ店内で、愛ちゃんのバイトを終わるのを待っていたアタシは、
二日ぶりにあさ美と亜弥ちゃんに会った。
聞けば二人とも、塾だったりデートだったりで忙しかったらしい。

早速、真希さんからいただいたメンバーズバッジを見せると、
二人して「プッ」と苦笑いをした。

「何それ…センスのカケラも感じないんだけど」
「だっさー。あややなら欲しくなさげー」

そう言うと思っていたアタシは、右手にバッジを掲げたまま、
左手にケータイを持って、二人に見せた。
ディスプレイに映し出されている名前を見て、
二人はいちもくさんにそれを奪おうとする。
113 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時26分50秒
「はいはい、ダメダメー」
アタシが得意気にチラチラと、あっちに向けたりこっちに向けたりしていると、
亜弥ちゃんがあっちへ向いたりこっちへ向いたりした。
「見えないぃぃ」
「見えないじゃないの。見せないの」
「けちー」
「ふふーん」
アタシは勝ち誇った表情でケータイをしまうと、
何やら上の空で考え事をしているあさ美を見た。

「すごいっしょー。教えないよー?」
「あ、うん。いいよ。覚えたから」
さらり、とあさ美はそれを返した。
しかも、何事もなかったかのようにピザをかじっている。
覚えたって…。あんな一瞬でかよ!?
「ふざけんな!!頭から出せ!おら!!」
「失礼ね。オラは愛ちゃんでしょ!?」
は…?

「…??何の話よ…」
「こっちの話よ」
114 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時27分47秒
* * * * *

ってなコトがあって、数時間後。
何でかアタシは、ヤンキーに絡まれているのである。
いや、理由は簡単。
ただ単に道端で遭遇しちゃっただけ。

って、回想関係ないじゃん!!!
…ってどなたかツッコんで下さい。お願いします。
(小川さんは混乱しています)

あぁぁぁ…。
しかも、何でか知らないけど愛ちゃんとははぐれちゃったし、
こんな行き止まりに逃げ込んじゃうなんて…。
バカバカバカ、アタシのバカ!!
それでも、負けない。負けたくない。
気合いだけでも「wow wow wow」と負けないわ。
…と意気込んだのはいいんだけど、三対一。
こないだは真希さんが助けてくれたからいいけど、
今日は多分、徹底的にやられるんだろう。
115 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時28分30秒
そうしたらもしかしたら、全身にケガとかしちゃって、
ひどかったら入院とかしちゃって、愛ちゃんが途方に暮れることになって、
そんでもってもっとひどかったら、死んじゃうかもしんない。

…それはいやだ。

「あのさ、ちょっと落ちついてくんない?」
アタシは、ここで無意味だとは解っていたが、
“一応”和解を試みた。
多分、無理だけど。

…ということで、冒頭のセリフに繋がるのである。
OK?
116 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時29分03秒
* * * * *

右の頬と左の頬から、鉄さびみたいな気持ち悪い味がする。
そんでもって、傷口が舌とぶつかる度に激痛が走った。
足も背中も肩も、全身筋肉痛よりひどい痛み。
顔はボコボコに腫れ上がってるだろうし、
もう自分でも立てるのが信じられないくらいに痛い。

くそー…。
せめて、一対一で自由に動けたら負けなかったのにさー。
あんなに狭い空間で、前からめった打ちされたら、
アタシだって身動きとれないさ…。

あ、今ちょっとヤバイ。
体ガクガクしてきた。
どうしよう…。
今倒れたら…死ぬ…かも。
あ、もうだめ。
超無理。
うぅ…いた…。

………。
117 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時30分29秒
* * * * *

「あ、目が覚めたのね。良かった」
そんな、ドラマみたいなシチュエーションでアタシは目が覚めた。

薄く目を開いてみると、アタシよりちょっと年上くらいの、
綺麗な少女がアタシを見ている。
…ベッドの上?
どこ、ここ…。
ってか、この人誰…。
どっかで見たコトあるような…。

「あ、手当ては応急処置だけど、しておいたよ。
 どうしたの、そんな傷…」
「…ちょっと…」
「そうなの…あ、そうだ。ココア飲む?ね、そうしましょう。
 今、持ってくるからちょっとそこで待っていてね」

綺麗な人は、そう言うとベッドから離れて、
部屋から出ていったようだった。

まだ、目が開かない。
118 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時31分08秒
どっかで、見たことある面影だった。
それに、声もどっかで聞いたコトある気がする。
…あ、何か傷がさっきより痛くない。
……っていうか、ここ誰のベッド?
………どう考えても、さっきの人のだよな。
…………。

えっ!!?
ちょっ、ちょっと待て!?

ガバッと起きあがった直後に、彼女は戻って来た。
ココアを二つ、おぼんに乗っけて。

「あっ、寝てていいのに。傷、痛むでしょう?」
「ああああッッッ!!」

素で叫んだ。
失礼だとは思ったが。(叫んでから気付いた)
アタシは思いっきりその顔に見覚えがあった。

う、嘘嘘嘘。
絶対夢でしょ、コレ。
真希さんに続いて、この人にも助けられるなんてー!!
119 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時31分50秒
「い、石川梨華さん、ですよね?」
「ええ。そうよ」
う、嘘だぁぁッ。
アタシが、このアタシが梨華さんに介抱してもらって、
その上ベッドに寝かせてもらって、ココアを注いでもらったなんて!!
やっぱ夢。絶対夢。
じゃなきゃ、ドッキリ。

「私のコト、知ってるの?」
「そ、そんな。知ってるも何も、超有名人じゃないですか!!」
「う〜ん。そうなのかなぁ」
「そうですよっ!!!」
思った通りの人だ。
優しいし、しかも綺麗だし。

それに、部屋もよく見たらすっごく広くて豪華。
全面ピンクというのは頂けないけれど、まあ、それは個人の趣味だ。

本当に本当に…ああぁぁぁ…。
120 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時32分28秒
「でも良かった。道で倒れてたのよ、あなた」
「あ、えっと…ありがとうございます」
「ふふ。いいのよ。困ってる人を放っておけないわ」
あああ…。素でいい人だ…。
笑顔が何てチャーミング。
この人にあだ名つけるなら、そう間違いない。
チャーミーさん。
そんな素敵な笑顔だ。
はぁあ…(歓喜のため息)。

「あなたのお名前は?」
「え!?えっと、おが…小川麻琴です!!」
ちょっと緊張のあまり、かんでしまった。
失敗…。
「そうなのー。“おがおがわまこと”さんね。よろしく」
違ッッッッッ!!!!!!!!!
そんな愛ちゃんみたいなボケかまさないで下さい!!
お願いだからッ!!イメージ崩れる!!
121 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時33分01秒
「あ、いえ…。違うんです。小川麻琴です」
「あらやだー。私ったら、間違えちゃった。お・ば・か・さ・ん」
………。
何だろう。
すんごい可愛いし、こういうコトしそうだなっていうのはわかる。
それに、尊敬する『モーニング』の先輩だし。
でも何か。そう。
生理的にドツきたくなるのはなんでだろう…。
………。

「あ、そう言えばさっきからケータイが鳴ってたよ。ハイ」
「あ、どうも…」
梨華さんから渡されたケータイ。
着信がたくさん残っていた。
…ゲッ二十件全部、愛ちゃんで埋まってるよおい…。
しかも、留守電にしっかり残っている。
一応、一件だけ再生してみた。

『ピー。 う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛まごっづぢゃぁ゛ぁ゛ん〜どごぉ゛ぉ゛ぉ ゛』

ピー。
アタシは笑顔で、留守電を全部消した───。
122 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時33分32秒
「ふふ。お友達?ユニークな人ね」
「…いえ、知らない人です…」
「そうなの?ふーん。まあ、どっちでもいいか、ねっ?」
「はい。どーでもいいです」

「さて、じゃあ私はそろそろ出かけなきゃ。
 麻琴ちゃん。ばあやに頼んで送ってあげるからね」
「え?いいですよ。歩けるんで…」
「ダメよー、無理しちゃ。危険よ」
「そ、そうですか?」
アタシは思った。
今ここで断る理由はない。
ここで断ったりしたら、梨華さんのせっかくのご好意が無駄になる。
お言葉に甘えよう。
123 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時34分07秒
「じゃあ、お願いします」
「うん、わかったわッ。ばあやーばあやー」
梨華さんが大声で、部屋の外へ声をかけた。
凄いお嬢様なんだなぁ…。
ばあやに送り迎えしていただくなんて。
それにしても、ばあやさんも凄い。
多分、ちょっと年いった厳しそうなお婆さん(想像)なのに、
車の送り迎えを任されているなんて…。
「お待たせいたしました」なんて感じでさー。

「呼んだー?」
ズルッッッ。
思いっきりアタシはコケたのだった。
124 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時34分37秒
* * * * *

ばあやさんは、保田さんと名乗った。
まだどう見ても二十代にしか見えない。
でも、言われて見ればおばあちゃんに見えなくもない。
…いや、嘘。見えないよ。

それよりも凄いのは、その格好。
フリフリの…ピンクのメイド服が最強に似合わな過ぎる。
これほどまでに世にも奇妙な姿があっただろうか。
「ああ、コレ?アタシの趣味。可愛いでしょ。チュ〜〜〜」
くらっ…。
「あああ、麻琴ちゃんッ!!刺激が強過ぎたみたい…」

保田さんは石川家のいわゆるメイドで、
梨華さんのお目付け役だそうだ。
もう、4年ほどこの家で働いているらしい。
梨華さんとは幼なじみで、もう随分前から面倒を見ているそうだ。
しかも驚いたのが、保田さんの態度。
メイドとお嬢様なのに、「ほら、石川行くわよッ」ってタメ語なんだもん。
間違ってるでしょ!!とか思った。
125 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時35分17秒
保田さんの車に揺られる事、十五分。
アタシは無事、帰宅できた。
ふぅ、良かった良かった。
愛ちゃんも、さっき車の中で電話して、
家で待ってるように言ったから大丈夫だろう。
半泣きになってたけど。

「それじゃあ。ありがとうございました」
「うん、わかったわ」
車のウィンドゥを半分だけ開け、中から梨華さんが言った。
相変わらず綺麗でチャーミングな笑顔を浮かべながら。
その奥の運転席では、保田さんが例の「チュ〜」をやっている。
くらっ…。
「あら、ご愛嬌なコねぇ」
「ばあや、それはキツイわよ…」
「うるさいわねッ。ばあやって呼ぶんじゃないわよッ」
保田さん、スネた。
あははは。面白い。仲良いんだなぁ。
126 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時35分53秒
「それじゃあ、本当にありがとうございました」
アタシは頭を下げた。
「ううん。いいのよ。それじゃあ、またね」
「はい」
梨華さんは車の中から、笑顔で手を振ってくれた。
そして、ゆっくりウィンドゥが閉まると、
車はブゥゥゥンと音をたてて行ってしまった。

アタシは気付いてなかった。
梨華さんの「またね」の意味に。
そして、ウィンドゥが閉まる直前に、車の中で梨華さんが
「あのコが真希ちゃんの言ってた…」
と漏らしていたのにも、聞えていなかった。

アタシと梨華さんが再会するのは、すぐ後になるのだった。
127 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月09日(日)22時36分24秒
はい。更新しました。
128 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月10日(月)00時22分14秒
ついにで緑も更新してますです。
129 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月10日(月)03時29分14秒
チャーミー登場ですね
あとはよすぃこか・・・
130 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時38分01秒
あぅぅレスが。・゚・(ノД`)・゚・。
まあ、いいやー。

>>129さん
はいはい。よすぃこですね。お待たせです。
131 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時38分58秒


6.祭りの夜


132 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時39分39秒
電話が鳴った。
指定着信にしている、“浜崎まゆみ”の曲の着信音。
「輝き出した〜♪」なんてサビが印象的なその曲は、
真希さんからの「合図」。

とうとう、お呼び出しがかかった。

あれから、一週間。
本当に何もなかった。
電話どころか、メールすら真希さんはくれなかった。
だから、この一見ダサいバッジも、偽者なのかな…。と思っていたところだった。
そういえば、梨華さんに自分がメンバーの一員であるコトも伝えるのを忘れてたし。
うん、いかんな。
アタシはメンバーに入ったんだ。
自覚を持とう。
133 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時40分12秒
「あ、もしもし。まこっちゃん」
「ハイ!麻琴です!」
元気よく返事を返すアタシ。
そりゃそうだ。待ちに待った連絡なんだもん。
ハリキリもするさ。

「んっとね。今から駅前の噴水広場に来てくれるかなー?」
「…いいとも!!」
「じゃー待ってるね」
ぷつっ。
電話はそこで終了した。
アタシは、ケータイを丁寧にテーブルの上に置くと、
リビングから部屋に戻って慌ててバタバタしだした。
普段はうっすらしかしないメイクも、今日はちょっと頑張ろう。
服だって、いつもの服はやめて、よそ行きの服を着よう。
そして、いい匂いのする香水をつけて、
それから髪はこうしてアイロンでストレートにして…。
134 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時40分51秒
「どこいくのー?」
ゲッ。
半分開いたドアから、アホみたいに口と鼻だけが覗き込んでいる。
愛ちゃん、どうしよう…。
忘れてた、思いっきり。
やがて、ドアがキィィィと開くと、猿みたいな愛ちゃんの顔とご対面した。

「真希さんとこ」
「えええ〜?ほんまにかぁ?ねぇ、まこっちゃん…」
「ダメ」
即答。この間、0,1秒。
「…まだ、何も言ってないんやけど…」
「ダメです」
「…いいじゃんー。まこっちゃんのケチッ。プーン」
「うっさいねー。バイト行け、さっさと」
シッシッ、と犬を追っ払うように手を払った。
それを見た愛ちゃんは、顔一面膨れっ面。
あーあー。鼻の穴が広がってるよ。ねぇ。
「ぷぅー。今日は休みやよーだ。いいもん、あさ美ちゃんと遊ぶから」
「ハイハイ。行ってらっしゃいね。じゃーね」
愛ちゃんは、バタンとドアを乱暴にしめると、
ガタンガタンと階段を降りていったのだった。
135 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時41分35秒
* * * * *

すでに真希さんは、そこに待っていた。
噴水に腰掛けて、すぐ近くで売っている露店のアイスクリームをペロペロとなめている。
その仕草がとても可愛らしい。
どうやら、通行人の皆さんもそれに見とれていて、
中には、「真希さんだ」「話しかけようよ」などと会話している女子高生たちもいた。

「んあ」
「こんにちわ、真希さん」
ペコリと重々にお辞儀をしたが、真希さんは「いいよ」ってな感じに、
手をパタパタと振ってそれを促した。
「後ろのコたちは、友達?」
「え…?…ああああーーーーッ!!!」
信じられないッ。コイツら!!
何ちゃっかり付いて来てんだよ!?
「こんにちわーッ。松浦亜弥でぇっすぅ」
「紺野あさ美でーす」
「高橋愛ですよー」
それぞれ、しっかり自己紹介までしやがって…。
亜弥ちゃんに至っては、アイドルが挨拶するみたいに
ブリブリのポーズまで取っちゃってやがる。
ふざけんなよお前らー!!
136 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時42分28秒
「何してんのさ!!帰れよッ!」
「あー。別にいいよ。今、人手な足らないからねー。
 新メンバー探す手間が省けたー。らっきー」
ま、真希さん…。
あんまりですよ、そりゃあ…。
三人とも、半狂乱になって喜んでるし。
愛ちゃんなんか、何もわかってないくせに「?」って顔で踊り狂ってるし。
勘弁してよ、もう…。
頭を抱えて三人を見ると、真希さんお手製のメンバーズバッジを貰って、
更に浮かれモードな三人がいたのだった。
…ハァ…。

ということで、真希さんに連れていかれた一つのお店。
潰れたクラブのようで、場所は駅前の裏路地の一角にある。
どうやら、ここが真希さんたちのアジトらしい。
「ここねー。潰れてるように見せかけて、違うんだよー」
へぇ…。そうなんだ…。
どっからどう見ても潰れてるようにしか見れないクラブの外観。
看板は傾いてるし、ドアの立て付けも悪そう。
そっか。道理で、どんだけ多くの女子高生たちが、
真希さんたちの溜まり場を探しても見つからないワケか。
なるほどね。
137 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時43分15秒
真希さんの案内で、アタシたちは裏口に回った。
裏口への通路は狭くて、通り辛かったけれど、
何だか凄くドキドキワクワクしてきた。
それは後ろの三人も一緒のようで、三人ともまだ浮かれ顔になっている。

「じゃ、開けますよ」
真希さんが、裏口の戸をバンと開けた。

「おー、真希ー」
「真希ちゃん。こんにちわ」
「リーダー、今日もよろしく頼みますよ」
「何するんですかー?今日はー?」
戸を開けて、店の中に入った瞬間、
真希さんの周りをたくさんの少女たちが囲んだ。
店の中はまるでアパートの一室のように、
畳みが敷かれて、ソファやベッドやMDコンポやテレビまで置いてある。
部屋の広さは二十畳くらいだろうか。
そこに、約十五人程度の女のコたちが、好き勝手に時間を過ごしていた。
その中には、アタシの見知った顔も何人かいる。
138 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時43分46秒
「はい。新メンバー連れてきたよ」
つられて、アタシたち四人は一斉にお辞儀をした。
…愛ちゃんだけは「なんだー?」とか言ってたから、アタシが無理矢理頭を押しさげたんだけど。
そうすると、真希さんを取り囲んでいた少女たちが、
次々にアタシたちの周りを取り囲んだ。

「へぇー。四人とも可愛いじゃん」
「よろしく」
「ねー、名前なんて言うの?」
等々。
質問責めにされたので、取りあえずそれぞれ自己紹介をした。
一通り終えると、次は現メンバーの方たちが自己紹介をして、
そしてアタシたちは晴れて新メンバーとして正式に迎えられたのだった。

…っつーか、ホントはアタシだけのハズだったんですけどね。

「さて、親睦会といきますかね」
真希さんはスッと右手を上に突き出すと、
パチン、と指と指をこすり合わせた。

それが合図となり、メンバーたちは一斉に騒ぎ出す。
139 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時44分20秒
「麻琴ちゃん」
「あ、梨華さん…」
四人それぞれバラバラになって、色んな人と話しをしていると、
アタシのところに梨華さんがやってきた。
今日も相変わらず可愛い。
「ビックリよ。あなたがメンバーに選ばれてたなんて。ふふふ」
そう言いながら、紙コップに注がれたオレンジジュースを手渡された。
アタシは、「ありがとうございます」と軽く会釈してそれを受け取る。
「あ、えっと…すいません。この間は忘れてて…」
「そうなの。あ、ひとみちゃん。このコよ」
梨華さんはそう言うと、部屋の隅っこの方で、真希さんと喋っている人を呼んだ。
吉澤ひとみさんだ。

「おうおうおう。なんだ」
ドカドカと、ガニマタでこちらへやってくる吉澤さん。
顔も男前だし、声も低くてカッコいい。
本当に女性なんだろうか、この人は。
…アタシがそう思ってしまうくらい、この人はカッコ良さで溢れている。
140 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時44分54秒
「このコ。この間、話したでしょ?」
「ん?………忘れた」
「忘れたって…。なんでそうやってすぐ忘れるのー!?」
「はいはい。ちょっと黙っててね」
ひとみさんはそう言って、梨華さんの口をムギュッと塞いだ。
キャーキャー騒いでいた梨華さんは、いきなり口を封じられ、
それでもまだ何か騒いでいるようだった。

「んなコトより。よう。元気?」
「あ、はい。元気です」
「そっか。アタシは吉澤ひとみ。ってか、知らないワケないよね?」
爽やかな笑顔で、白い歯を輝かせる吉澤さん。
カッコいい…。
「はい〜もちろんですぅ〜…」
「えーっと…。なんだっけ。名前。
 あ、そうそう。…麻弓ちゃんだっけ?」
ガーン。
違ッ…。
141 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時45分54秒
「んなコトより。よう。元気?」
「あ、はい。元気です」
「そっか。アタシは吉澤ひとみ。ってか、知らないワケないよね?」
爽やかな笑顔で、白い歯を輝かせる吉澤さん。
カッコいい…。
「はい〜もちろんですぅ〜…」
「えーっと…。なんだっけ。名前。
 あ、そうそう。…麻弓ちゃんだっけ?」
ガーン。
違ッ…。
アタシが間髪入れずツッコもうとしたら、
横から合いの手がかかった。
「もー。バカねー」
梨華さんが、ひとみさんの手を振りほどきながら言う。
「麻琴ちゃんだ、って言ったでしょう?」
「あ、そうそう。それね」
「はい。そうです」
「琴美ちゃんね」
っておい!!!!!!
ちょっと待ってくださいな!!
「ゴメンネ、この人…ちょっとアレなの」
梨華さんのそんな言葉が、頭の中でフル回転しているのだった。
142 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時46分31秒
「まこっしゃん」
呆然としているアタシの服の裾を、クイクイと誰かが引っ張った。
「え?」
ビックリして振りかえると、後ろにアタシより少し身長の低い少女がいる。
ああ、そうか。この舌足らずな喋り方は辻さんだったんだ。
「どうしたの??」
アタシがまるで年下のコに対するように接すると、
後ろから「小川さんやな」という声がした。
その声の主を、アタシは知っている。
加護亜依さん。
いつも辻さんと一緒にいて、まるで双子のようにそっくりなんだ。
どっちかというと、辻さんよりは少しだけ大人っぽい。
けれど、やはり外見は実年齢より幼く、声もまるでアニメのキャラのように可愛らしかった。

実は二人とも同じ学校なのだが、加護さんと喋るのはこれが初めて。
だから、加護さんが関西弁で喋るなんてコトも、当然今初めて知った。
143 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時47分07秒
「あいぼんれす」
辻さんから、そうやって紹介された。
なるほど、辻さんは“あいぼん”って呼んでるんだ。
確かに、“〜ぼん”って感じがしなくもない。
何より、とても可愛らしい。
「ウチ、加護亜依いうねん。よろしくね」
「あ、えっと、アタシは小川麻琴。よろしく」
加護さんはそう言って、笑顔で握手を求めた。
アタシもそれにつられて、キュッとその手を握る。
「ま、今度またゆっくり話そうやんか。今は他のコとも話したいし」
「うん。そうしよう。学校ででも…」
「じゃ、ほな。のの行くで。次や、次!」
「わっ、あいぼん待ってれすー」

辻さんと加護さんが行ってしまったので、アタシは一人になってしまった。
ボーッとしながらオレンジジュースを飲んでいると、
突然、三人の女性に囲まれた。
144 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時47分45秒
「このコがまこっちゃんねー」
「ふーん。中の中ってカンジ」
「こら、美貴はすぐそうやって言う…」
三人とも、すごく大人っぽい。
だ、誰…だっけ…。
「あの、よろしくお願いします」
とりあえずペコペコした。
誰ですか?なんて、愛ちゃんじゃあるまいし、聞けるはずもない。
えっと、確か…。
左の身長が高くて、すらっとした人が里田まいさん…?
真ん中のちょっと気の強そうな人が、藤本美貴さんで…。
右のナチュラルな感じの人が、柴田あゆみさん…だったはず。
「なにー?もしかして、アタシらのコト知らなかったりするでしょ」
左のまいさん(多分)がニヤニヤしながら言うと、
真ん中の美貴さん(多分)がムスッとしながら、
「知らないなんて許さないケド」と怒った。
それを、右のあゆみさん(しつこいけど多分)が、「まあまあ」となだめている。
「アタシが、まい」と左の人。正解。
「私が、あゆみ」と右の人。正解。
「そんでもって、私が美貴」と真ん中の人。パーフェクト。

『三人揃って、北高美人トリオ!!』

…は?
あ、いや、確かに美人トリオですけど…。
その、三人ともウルトラマンみたいなポーズは…どうかと…。
145 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時48分27秒
「あ、ちなみに」
と、まいさん。
「あっちの三人とは一応ライバルなんで世露死苦!」
“あっち”と親指でクイクイと指差したのは、真希さん、ひとみさん、梨華さんの三人だった。
なるほど、さしずめあっちは“南高美人ト”リオか?
「っていうか、美貴たちの方が美人?だけど」
と、美貴さん。
この人は、なんだかさっきからすごく気が強い感じだなぁ。
「別に対立してるワケじゃないから、心配してね」
と、あゆみさん。
「は、はぁ…」
「よし、次!!」
呆然としているうちに、美貴さんたちが向こうに行ってしまって、
アタシはまたもや暇になってしまった。
146 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時49分00秒
一人でボーッとしてても仕方ないので、愛ちゃんの隣に寄った。
愛ちゃんも丁度、一人になっているところだったから。
「愛ちゃん」
「あッ、初めまして!高橋愛ですぅ」
「こら、アタシだよ、アタシ!!」
パコーン、と頭をドツくと、愛ちゃんはハッとした顔になって、
「あらやだ」とウキャウキャ笑った。

次第にパーティーはエスカレートしていき、
カラオケ大会が突然始り、アタシも歌わされた。
何を歌おうか迷ったんだけど、“今井絵美子”の歌を歌った。
ちなみに、愛ちゃんは“倉木ヒカル”を歌っていて、
意外と上手かったので驚いたりもした。

他の皆さん、何とも歌が上手で驚いた。
真希さんも普通に上手かったし、美貴さんやあの、辻さんも上手かった。
ただ、梨華さんだけは、みんなに「お前は歌うな」と止められていたけど。
…いや、深くは考えるまい。

そうして、アタシのメンバーたちとの初対面は終わったのだった。
147 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月11日(火)22時49分35秒
>>140->>141がかぶってしまいました…。
失礼。
148 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月11日(火)23時36分06秒
北高美人トリオ、最高だよ!ウルトラマンポーズ似合い過ぎだよ!(w
149 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年02月12日(水)03時03分21秒
俺も好きだ、「北高美人トリオ」(w
150 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月12日(水)17時25分23秒
美人トリオ面白いw
このグループなかなか好きです。
151 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)00時41分50秒
北高美人トリオ萌え〜。
この3人の辛味って見たコトねーよなー。

さて、だんだん「ごっつぁむ作品」らしくなってきますたね。
メンツも揃ったコトだし、さて今後どーする?どーなる?

っつーか、大人メンバーは放置でつか?
152 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時15分54秒
>>148さん
ええ、そうですとも。最高です。
是非、いしよしごまに対抗するにはみきまいあゆを!!(アホ

>>ちゃぁみぃ後藤さん
自分も大好きです。

>>150
まだあんまり出てきてないんですけどねw
これから活躍させます。

>>151さん
現実で絡みの見たい三人娘。です。
でも実は、この先、今までの作品っぽくない展開の予定。
大人メンバーはそれからです。多分。
153 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時17分27秒


7.変わりゆく日々を。


154 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時18分40秒
真希さんたちと一緒にいるようになって、もう一ヶ月も経った。
相変わらず、真希さんは変な人だし、
梨華さんはどこか抜けていて、ひとみさんはアタシの名前を
「麻琴」と呼んでくれない。
あいぼんは関西弁でノリがよく、ののは見ればいつも何か食べている。
「北高美人トリオ」はぶっ飛んでて笑わせてくれるし、
他のメンバーもみんな仲良くしてくれる。

アタシにとって、それは居心地のよい場所だった。

みんな優しいし、面白い。
笑いが笑いを呼んで、それがもっと面白い。
そうすると、もっと笑う。
何か、すごく幸せな気分に浸れる感じだ。
155 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時19分17秒
ところが。
パトロール中の、婦警の飯田さんに会うと、必ず注意されるコトがあった。
「最近、不審な事件が多いから、気をつけなよ」って。
それが何を意味しているかを、アタシは知らなかったし、
もちろん、飯田さんだって知らなかったんだと思う。

確かにここ最近、学校でも呼びかけがやたらと多い。
万引きが相次いでいるとか、カツアゲの被害件数が増えてるとか、
それとか…。“ウリ”───いわゆる、“援交”する人が増えてるとか。
平和だったこの街全体が、妙に浮き足立ってる感じだ。
それは、日々を追うごとに段々と重苦しくなっているみたい。
この間も、愛ちゃんと二人で一緒に買い物している時に、
男子のグループが警察に連行されているのを見た。

どうしたんだろう…。
何か、良くないコトが起きそうな気がする。

何もなきゃ、いいんだけどねぇ…。
156 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時20分30秒
そういえば、あさ美と亜弥ちゃん。それに里沙ちゃん。
ここ最近、三人とも微妙に関係が変化してきた。
里沙ちゃんは、ここ最近全くゼティマにも現れていない。
アイドルスクールに熱心に通っている模様。
亜弥ちゃんも彼氏とせっせかデートしているようで、
たまにしか見ない。会ってもすぐにどっか行っちゃうし。
あさ美は、真希さんたちと一緒にいる時には、
何故かタイミング悪く、「今日はちょっと…」と断るコトが多い。

だから、気付いてあげられなかった。
それぞれに、大きな問題を抱え始めたコトに。
今なら、まだ間に合ったかも知れないのに…。
157 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時21分04秒
* * * * *

アタシと愛ちゃんの間にも、少しずつ変化が訪れてきた。

二人で一緒に帰る回数が増えたのはあったが、
それまでよりもっとお互いのコトを知り合う機会が増えた。
愛ちゃんは、やっぱり変だ。
どこが変って、人の話を全然聞いてないとこが。
何度も何度も同じ話をしては、
「初めて言うけど…」なんて繰り返す。
それがもう、最初のうちはうざいだけだったけど、
次第に面白く感じられるようになってきた。

愛ちゃんの好みも詳しくなってきた。
実はアタシより一歳年上だったこと。
宝塚が好きとか、服は黒い服が好きとか、
あれが好きとかこれが好きとか───。
ゆっくり、少しずつだけど、愛ちゃんの好きな物がわかってくる。
158 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時21分42秒
なんか、すごく楽しい。
相手のコトを知るのが、こんなに楽しいなんて思わなかった。
アタシの中で、愛ちゃんはどんどん大きな存在になっている。

愛ちゃんは、いつもは明るく笑っているけど、実は違った。
本当は、凄く臆病なんだ。
誰かと離れるのを、相当嫌う。
だから、アタシがどこかに出かける時も、必ず一緒に
「一緒行っていい?」と聞く。
アタシも、独りの辛さがわかるから、極力一緒に行くようにしている。
だから、一緒にいる時間も自然と長くなって、
お互いのコトを知る時間も増えてきたというワケ。

それでも、いつも明るいのが愛ちゃんの素敵なトコだった。
159 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時22分13秒
例えば、ある日。
「愛ちゃん。原宿行こうか」
「え?あ、あそこやろ。私も知ってるんやよ?
 忠犬はち…」
「そこは渋谷ッッッ!!」

例えば、こんな日。
「まこっちゃん、私思うんやけど」
「…何?」
「コンビニって24時間やってたら、電気がもったいない!!」
「ハァ?…そんなの気にするコト…?」
「そうやよ!電気を無駄にしてる!私、ちょっと注意しに…」
「行くなーッ!!!」

例えば、そんな日。
「まこっちゃんまこっちゃん。宇宙の神秘知ってる?」
「ハァ?何それ」
「チッチッチ。甘いやよー。今、一番ホットな話題やよ」
「…誰がしてたのさ、そんな話…」
「あの、あの人やよ。婦警の飯田さん」
「ハァ?飯田さんが…?」
「うん。今なら、宇宙の神秘があなたを守るって…」
「知らん知らん知らんッ!!」
160 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時22分46秒
だからね、だから───。
正直、自分でもいつからこんな気持ちになったか知らない。
うんと…。
なんていうか、一緒にいるのが当たり前みたいになってたから、
アタシは…。

アタシは、愛ちゃんを好きになってた。

それが、恋愛感情なのかはわかんないけど…。
恋というのかはわからないけれど…。
別に、何かあったワケじゃない。
バカみたいに普通の毎日だったけれど、
“それ”が当たり前になっていって…。
だけど、アタシの中で日に日に“それ”は思いを増していった。
161 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時23分37秒
とにかく、いつも一緒にいたいし、そばから離したくない。
その、底抜けの明るさに、その笑顔に救われたし、
うざかったはずのあの天然ボケも、可愛らしいと思うようになっている。
それに、時々見せる寂しそうな顔が気になって…。

アタシ自身が、彼女のそばから離れないようになってた。
バイト中はずっと様子を見守ってるし、学校に行ってる時以外はずっと一緒にいた。
休日は二人で買い物に行ったり、真希さんたちのところに遊びに行ったり。

そう、ただ一緒にいすぎただけ。
そんだけ、アタシの中に入りこんでたんだ。
愛ちゃんは。

だから、アタシは、愛ちゃんを好きになったんだ。
162 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時24分37秒
そうして、アタシたちの日々は少しずつ流れていった。

これから起こる、激動の日々を待ちながら───。
163 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時26分06秒



8.恋をしちゃいました!


164 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時27分58秒
バイト中の愛ちゃんが、忙しそうに働いているのを、
アタシは横目でチラチラ見ていた。
接客にもだいぶ慣れたのか、ここのところは矢口さんから指導を受けてる姿を見ない。
それでも、天然ボケは健在で、
お客さんに爆笑を提供しながら、コツコツとバイトを続けている。

「なんや、まこっちゃん。どしたん?」
「おなかでもすいたんれすか?」
向かいの席の二人は、ニヤニヤしながらアタシに聞くけれど、
アタシはちょっとだけムカッとした顔を向けて、
「何でもないッス」と丁寧に回答した。
「なんか、隠してる?」
「何よ、あさ美まで…」
みんなして、アタシをからかってる。
もうー…。人の気も知らないで。
…って、知られたくもないけど。
165 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時28分37秒
あいぼんとののは、ここのところ毎日、ゼティマにご飯を食べに来る。
しかも、矢口さんのオゴリで。
ちなみにアタシもたまにおごって頂いているんだけどね…。

実は矢口さんと、あいぼん&ののコンビは知り合いだったんだ。
まあ、矢口さんは『モーニング』の元メンバーだし、
あいぼんとののは、中学の頃からメンバーの妹分でちょろちょろしてたらしいから、
矢口さんと知り合いというのもうなずける。

それはいいんだけど、あの二人の食欲ったら有り得ないのね。
二人で多くて五人前分くらい食う時があって、
その時はさすがに矢口さんもキレ気味だった。
二人とも、全く悪気はなさそうだったけど。
怒るくらいなら、おごらなきゃいいのに…。とも思ったけれど、
それは矢口さんが大人で、ご好意をいただいてる分、
アタシが口出しする問題じゃない。
166 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時29分08秒
「まこっちゃんたちも、メンバーの一員って感じに染まったなぁ…」
あいぼんがポテトフライをもしゃもしゃ齧りながら呟く。
それを聞いたののも、ポテトフライをパクパクと食べ続け、
さらに頭をブンブンと縦に振った。
…食うかうなずくかどっちにしなさいっての。

「まあね、もう一ヶ月も経つし」
「そうですね」
「そうやな。早いもんや」
あいぼんは「うんうん」とうなずくと、隣の食欲魔人の頭をグイっと押さえ込んだ。
「食いすぎやっちゅーねん」
「あががが…」
「ったく、誰の金やと思ってんの」
「矢口さんれす」
「…ふんッ、わかったらええねん。次はやるなよ」
「い、いたいのれす…」
む、ムチャクチャだ…。
167 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時30分03秒
「そうや。そんなコトよりな、まこっちゃんたちに話があんねんって」
あいぼんが、急に深刻な顔をした。
「…?」
「どうしたんですか?」
「いや、ちょっと妙な噂を聞いたもんやから」
あいぼんはそう言うと、ちょっと渋めな雰囲気を醸し出しながら、
話を続けた。
「実はな、あの…美貴さんたちのコトなんやけど…」
「ハァイ。お待たせー」
あいぼんが言いかけた時、能天気な声が頭上から聞えた。
この甘ったるいブリブリな声は…。
「亜弥ちゃん」

「なになにー?皆して、深刻な顔しちゃってぇ?」
亜弥ちゃんはクネクネしながら、どかどかとあいぼんの横に座った。
「オッス。あやや。今日も美人さんやな」
「オッッッスあいぼん。今日も可愛いでちゅねー」
この二人、どういうワケか気が合うようで、
よく会うたびにこんな挨拶を交わし合っていた。
168 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時30分54秒
まあ、亜弥ちゃんはともかく。

「あ、それよりあいぼん、さっきの…」
「あーーーーッ!!」
アタシがさっきの話題を盛り返そうとしたら、
横のあさ美が小さな声で叫んだ。
いや、本人的には大声なんだけど、声が小さいせいでそう聞えるだけなんだけど。
あさ美が叫んだ先には、亜弥ちゃん。
「え?あさ美ちゃん、どーしたのぉ?」
「どうしたじゃないよぅ、亜弥ちゃん!そのバッグどうしたの!?」
あさ美が指差したのは、亜弥ちゃんのバッグ。
「んっ?コレぇ?」
「それ!ヴィトンじゃない!どうしたのそれ!」
ヴィトン!?
あ、亜弥のヤツ…。金ない金ないって人にたかるくせに、
何でヴィトンのバッグなんかもってやがんだよ!
「ふっふっふー」
亜弥ちゃんは不気味な笑い声をあげながら、
バッグを抱えてニヤニヤしている。
「これねー。カレシに貰ったのーいいでしょ」
「………」
「………」
「なぁに?皆して黙っちゃって…」
あ、そうね。
カレシね。
あっそ。
多分、他の三人も同じ考えだったんだろう。(一人除く)
そのまま黙って亜弥ちゃんを睨みつけていた。
169 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時31分58秒
「うん、ウチのカレ、何でも買ってくれるから」

ふーーーーーーーん!!!!!(三人の心の声)

「あ、そうそう。ここ今日アヤのおごりでいいよぉ」
「ええええええええええええ!!!?」
「あ、亜弥ちゃんどうしたの!?」
「あの、金欠の亜弥ちゃんがおごり!?」
嘘でしょ!?開いた口が塞がらない!
あ、亜弥ちゃんどうしちゃったの!?
「これ」
亜弥ちゃんはさらっと、財布から千円札を数枚取り出して、
バンと伝票と重ねて、テーブルの上に置いた。
…何気に財布がグッチだったのを、アタシは見逃さなかった。
「じゃ、アヤこれからデートだから行ってくるねぇ。バイバイー」
亜弥ちゃんはそう言うと、ルンルンで店から出て行ったのだった。
何しに来たんだよ、あの人。
まさか、金を渡すためだけに来たんじゃ…。
……。
170 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時32分42秒
「怪しいね」
「怪しいな」
「怪しいわ」
一斉に亜弥ちゃんの残した数千円を見つめる三人。
ちなみにののさんは、わき目もくれずに目の前の食事をがっついているけど。

「ねぇ、あの噂ホントかな?」
「噂?」
「うん」
あさ美はうなずくと、亜弥ちゃんの残した数枚の“紙”をピラピラと広げた。
それから声をひそめると、静かに口を開く。
「亜弥ちゃんさ、“ウリ”やってるって噂…」
「えええええぇ!?」
「ホンマかいな!?」
二人同時に、耳を塞ぎたくなるほどの大声で叫んだ。
他のお客さんに迷惑だったのか、矢口さんが遠くから口パクで、
「静かにしやがれ」と言っているのが見える。
171 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時34分47秒
「うん。ってか、じゃなきゃあんなに羽振りよくならないよね…」
「なるほど…」
「まあ、噂が確かなら納得やな」
そう言われてみれば、確かに…。
いや、でもアイドル並みのルックスの亜弥ちゃんだよ?
年上のカレシが、貢いでくれてるのかも知れない。
ああ見えて亜弥ちゃん、世渡り上手だし。
いや、でも年上にも限度がある。
たかだか同い年か一つ二つ上のカレシが、バッグなんかくれるか?
しかも、ヴィトンだよ。
財布はグッチだし。
お金なんか、カレシから貰わないだろう。

「……裏が、ありそうやな」
「だね」
アタシたちは、呆然としながら、亜弥ちゃんの残した数千円を見つめていた───。
172 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時35分20秒
「あ、そろそろ時間やな」
あいぼんがケータイをチラチラ見ながら、席を立ち上がった。
「今から梨華ちゃんたちと約束があるんやけど…まこっちゃんとあさ美ちゃんもどうや?」
あいぼんはそう言いながら、隣でまだ食べてるののをぶん殴った。
ののは無言で立ちあがると、ムスッとした顔であいぼんを睨みつけている。
「まだ食い終わってねーれすよ」
「アホ!そんなに食ったら、また真希ちゃんに叱られるで」
「そうれした…」
「ほな、どないすんの?行く?」
アタシとあさ美は顔を見合わせたが、あさ美がちょっと遠慮がちに
「あ、私、用事あるから…」と言ったので、
アタシもつられて「愛ちゃん待つから」と言って断ってしまった。

「そっか。じゃ、行くで。勘定、頼んだッ」
「ごちそーさまれすー」
うん。まあ、亜弥ちゃんのお金だけどね。
二人はバタバタと、矢口さんと愛ちゃんに挨拶しながら店を出て行ったのだった。
173 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時36分21秒
* * * * *

「あいぼんと後藤さん、できてるんだって」
「ブッ」
口に含んだアイスティーが思いっきり噴射した。
「ちょっと、汚いよ…」
あさ美はアタシの口元をペーパータオルでゴシゴシ拭い、
それからこぼれたアイスティーを、紙に滲ませていった。
「アンタが変なコト言うから…」
「だって、聞いたんだもの。
 後藤さんはあいぼんが大のお気に入りで、二人は付き合ってるって!」
「聞いたって、誰に!そんなはずないじゃない!女同士で…」

言ってからハッとした。
…アタシ、人のコト言えない…。
ガクッ。
174 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時37分35秒
「ま、まぁ、いいんじゃない…人の勝手よね?」
「……?」
「いいじゃない、そんなの。アタシはそんなの別に気にしないよ、アハハ」
「……あ、そう……」
あさ美が微妙に神妙な顔つきでアタシを見ていたけど、
アタシは知らないフリするしかなかった…。
「じゃあ、私そろそろ行くから…じゃあね」
「うん、じゃあね。バイバイ。またね」

あさ美を、苦笑いで見送った。
一人になったいつもの席で、アタシはまたチラチラと愛ちゃんを見ている。
…忙しそうだな。
…大変そうだな…。
…あ、笑ってる…。
…ちょっと可愛い…。
……制服、似合ってるな…。
……ちょっと、いや、かなり可愛い…。

何考えてんだろ、アタシ。
175 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時38分11秒
思いっきり、気にしちゃってるんですけどね…あーあ。
これが、“恋”なのかなぁ…。

真希さんとあいぼん、どうやって両思いになったんだろ。
どーやって付き合ったんだろ…。

……いいなぁ。
羨ましい。
はぁ…。なんか、これから愛ちゃんと帰るの憂鬱だな。

…いや、嬉しいんだけど。
でも、やっぱ…なんか…。

そんなコトを悶々と考えながら、愛ちゃんのバイトが終わるのを待ったのだった。
176 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月14日(金)03時38分49秒
恋する乙女はむずかしい。
二話分更新しました。
ではではー。
177 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月14日(金)19時50分07秒
まこあい期待しちゃって良いのかな♪
更新お疲れさまです。
今回は萌えさせて頂きますたゴチソウサマ
178 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)23時17分34秒
まこあいキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
って、やっぱりかごまなんですね(w
愛を感じました(w
179 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時54分03秒
チャットに入り浸りなごっつぁむ(爆

>>177さん >>178さん
いやいや、まこあいクルーのはこれからでつよーw
ごまかごありなのは仕方ないですw
180 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時54分59秒


9.愛するということ


181 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時55分29秒
愛ちゃんへの気持ちに気付いてしまってから、
どこかその態度がよそよそしくなってしまった。

別に普段通りに接すればいいのに、何か照れてしまって。
別段、何か特別なコトがあったワケでもないのに、
こんなに気になってしまって仕方なかった。

それでも愛ちゃんは、アタシが避けようとすればするほど、
何かとアタシに絡んできたし、
決して悪気があるワケでもないのに、心配そうにすべてを知りたがった。
アタシが境界線を引けば引くほど、
愛ちゃんは心の中にズカズカと入り込んでくる。
それが、何か自分の気持ちを悟られてしまうようで、
少しだけ甘くて、それでいて苦しい。
182 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時56分17秒
「心まで入らないで 別に隠してるワケじゃないよ…
 誰かみたいに 面白く話せないだけ」

偶然つけていたラジオから流れる曲の歌詞が、グサグサとアタシの胸に突きつける。
誰の歌かは知らない。
けれど、こんなにも心に響くものなんだ。
だって、今のアタシ、その通りじゃん…。
別に隠してるワケじゃない。
でも、知られてしまうのが怖い。
それをごまかせるほど、大人でもない…。

ふぅ…。なんか、ダメだな。
何をこんなにモヤモヤしちゃってんだろ。
どーした、アタシ…。
183 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時57分00秒
「どーしたんやよー。まこっちゃん?」
「ギャッ!?」
「…そんな、驚かないでもいいでしょー?」
おっしゃる通りです…。

「なんか最近、変やよ?」
「え…。そ、そんなコトないよ…」
「どれどれ。熱でもあるんじゃ…」
愛ちゃんはそう言いながら、クリクリの目をまんまるにしながら、
アタシのおでこにピタッと手を触れる。
「ん…わかんね」
「いいってば」
手をパパッと振り払うと、今度は顔を近づけてきた。
な、なに!?
「ちょ…愛ちゃ…」
「おでことおでこをぴったんこー♪」
ゲゲッ…。
冗談じゃないわよ!!
184 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時57分39秒
あ…あ…あ…。
や、やだ…!!
それ以上、入り込まないで…。
知られたくない。
気付かれたくない!

「いやっ!!」
「あうっ」
気がついたら、アタシは愛ちゃんを思いっきり吹っ飛ばしていた。
185 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時58分20秒
「ご、ごめん…」
「あぅぅぅ…まこっちゃんのバカぁ〜!」
「ご、ごめん…」
本当にバカだ、アタシは。
それも、二回も同じ言葉を返してる。
目の前で冗談のように泣きわめく愛ちゃん。
あまり気にはしていないみたい。
だけど…。
やっぱりバカだ、アタシは。

「ごめん愛ちゃん」
「うぅぅぅ…。痛いやよー。死んじゃうやよー」
いや、死なないから。
ちょっと待ってってば。
「ごめんね、ね?」
「うん」
うわ、早ッ。
嘘泣きしていた愛ちゃんは、ようやく顔をあげた。
っていうか、最初から泣いてなかったんかい。
186 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)06時58分57秒
「で、どーしたの?」
「へ?」
「へ?やないよー。何をそんなに悩んでたんやって」
「そ、それは…」
ど、どうしましょう。
愛ちゃんいつもボケーっとしてて、やよーとか言ってるくせに、
こんな時だけ鋭くならないでいただきたいね、うん。
アタシはボソボソと「えっとえっと」と呟くと、
愛ちゃんと視線を合わせずにそっぽを向いた。
逃げ惑う視線を、愛ちゃんは自分から追ってきて、
無理矢理自分の方を向かせようとする。
「何?どうしたの、ねえ」
「…あ、だから…何でも…ないって…ば」
それでもアタシは、どうしても愛ちゃんの目を直視できなくて、
右へ向いたり左へ向いたり、あっちこっち向いた。
そんな様子だったから、愛ちゃんはすぐにそれが嘘であるコトに気付いてしまったんだろう。
自分でも恥ずかしいくらいに、無理しているのがわかった。
「嘘。まこっちゃん。嘘ついてる」
「嘘…じゃ…」
戸惑うアタシ。
まっすぐな愛ちゃん。
アンバランスに成り立ってるこの微妙な空間。
…いやだ。逃げ出したい…。
187 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)07時00分12秒
「まこっちゃん」

いやだ。
逃げたい。
知られたくない。
待って。お願い。
これ以上、踏み込まないで…。

愛ちゃんは視線を反らしてくれず、
ただアタシはひたすら愛ちゃんから顔を背けることしかできない。
それでも、その視線を感じてしまうたび、
心の中でムズムズが先走っていく。
ああ、体全身に熱が帯びていくのが自分でもわかる。
しかも熱いのに、冷や汗までかいてる始末。
もう、勘弁して欲しい。
188 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)07時00分50秒
「ごめん、愛ちゃん…」
「ごめんって、何がよ!?」
「愛ちゃんには、関係ないから…」
何気なく、ただ逃れようと発した一言。
その言葉を聞いて、愛ちゃんがとうとう砦を崩した。
小さくため息をつくと、アタシの方にはもう見向きもせず、
振り返って無言で部屋を去った。
なんだろう、この感じ。
やっと解放された気分なのに、どこか愛ちゃんの背中に哀愁を感じるのは。

それが、諦めたからではなく、ショックだったからというのに気付くのは、
それほど時間はかからなかった。

気付いたのは、バタバタと玄関の方が騒がしくなってから。
愛ちゃんが家を出て行ってからだった───。
189 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月17日(月)07時01分21秒
いったんここで切ります。
へたれまこキター
190 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月17日(月)13時54分12秒
ヤバイっすドキドキが止まりません(;´Д`)ハァハァ
最高です。まこあい最高です。作者様バソザイです。
191 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月17日(月)13時57分01秒
ヘタレなマコに、無邪気でそれを返す愛たん・・・
2人のすれ違いやいかにみたいな感じでめちゃめちゃ気になります
続きが早く読みたいです
192 名前:愛チュン☆ 投稿日:2003年02月18日(火)03時58分21秒
ひさびさに読みました!!愛ちゃんの天然ボケがすっごく面白いです!!
2人はこれからどうなっちゃうんだろう・・。
193 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月18日(火)21時41分32秒
>>190さん
いやいや、これからです。
もっとドキドキしていただけるとありがたいです。

>>191さん
さて、どうしましょう。

>>192さん
愛ちゃんの天然ボケは自分でも気に入ってます。
これからも読んでくださいッ!

され、続きをどうぞ↓
194 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月18日(火)21時42分17秒
玄関から誰かが出て行った。
…誰かといっても、うちには二人しか住人はいないから、
アタシじゃない方の一人だ。
となれば、愛ちゃん以外の誰でもない。
アタシは彼女が家を出たのをすぐに悟ると、
そのままサンダルを引っつかんで裸足のまま、門のところまで
ダッシュしていた。

アタシはバカだ。
バカでしかもヘタレだ。
多分、どう考えても愛ちゃんが飛び出して行ったきっかけは、
さっきのアタシの一言だろう。
…ホントにアタシはバカだ。
あんな言葉で自分を守ろうとした。
「関係ない」だって。
自分でもおかしくって泣きそうになる。
愛ちゃんが関係ないなら、誰のせい?
誰のせいでこんなに苦しんでる?
…あのコのため。
自分を責めても仕方ない。
今はただ、愛ちゃんを追いかけよう。
それが、ヘタレなアタシに出来る、今できるコト。
愛ちゃん、ごめんね。
って、ちゃんと言わなきゃ。
195 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月18日(火)21時43分03秒
* * * * *

『ってコトで、今日はうちに泊めるから。
 あんま気にするなよー?』
「…はい」
力なく返事をしたアタシは、微妙に震える手で電話を切った。
全身から力が抜け、ため息が勝手に漏れる。

電話は、矢口さんからだった。

愛ちゃんはどこにもいなかった。
バイト場にも、真希さんたちのところにも、
それにアタシと出会ったあの雑木林の秘密基地にも。

へこんで家に帰ると、ケータイがバイブレーションでブルブル震えながら、
アタシを待ちわびていた。
その電話が矢口さんからで、今日は愛ちゃんを預かるとのコトだった。
196 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月18日(火)21時45分39秒
ソファに倒れ込むと、自然と涙が頬を伝う。
さっき決心したばかりの心が、もうすでに崩れかけていた。

何かがショックだった。

何かが、アタシの心を打ち砕いた。

それは自分の中で少しだけ解っているけれど、
そんな風に思うのは自分が意地汚い気がしていやだ。

アタシから、愛ちゃんが奪われるようで。
もう、愛ちゃんには必要とされていないみたいで。
愛ちゃんが、矢口さんに頼って、アタシを裏切った気がした。
そんなコトないってわかっていても、考えてしまう。
そう思うと、涙を流さずにはいられない。

ああ、こんなにも…。
こんなにも、アタシはあのコを好きになっているんだ。
197 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月18日(火)21時47分18秒
私の生活に突然、嵐のようにやってきた愛ちゃん。
天然ボケで、ありえないくらい人の話聞いてなくて、
たまに聞いてたらと思ったら間違えてて、難しい話になると寝ちゃって、
ご飯食べるのにも、テレビ見るのにも一生懸命で、
でもそんな欠点が全部長所で、憎めない…。

あのコと一緒にいた時間。
出会ってから、過ごしてきた時間は、
とても大切でかけがえのない時間だったんだ。

“関係ない”なんて言葉、一番言ってはいけなかった。

ごめん…。
ごめんね…。
愛ちゃん……。

こんな時だからこそ、彼女の存在を実感せずにはいられなかった───。
198 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月18日(火)21時49分03秒
中途半端に短くてかたじけないでつ。
199 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月18日(火)21時57分53秒
ハァ―;´Д`―ン!!
切ない。切ないよマコたん…ドキドキ
心にグッっと来ますた。感動です。
200 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時11分54秒
レスがなぁあぁぁい。・゚・(ノД`)・゚・。
やはり某チャットを見て読者の方々に軽蔑されたんでしょうかw

>>199
まこあいこれからですよー。
感動なんて、そんな嬉しいです。
201 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時13分57秒


10.ほんとうのきもち



202 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時14分38秒
いつのまにか眠ってしまっていて、目が覚めると夜になっていた。
寝ぼけながら、今日は愛ちゃんが食事当番だったコトをぼんやり思い出し、
「愛ちゃん!ご飯!!」と誰もいない空間に向かって叫んでしまった。
その沈黙を聞いて、ハッとして恥ずかしくなった。

まだ頭の中がぼんやりする。

愛ちゃんのコトを考えるたび、頭がもやもやして、
失神しそうになってしまう。
もう考えるのもイヤだ…。

それでも考えてしまうのは、それほど頭の中に彼女が残ってるからだろう。
203 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時15分29秒
これから、どうしようかな…。
何気なく時計を見ると、まだ八時過ぎ。
あさ美はこの時間じゃ塾だろうし、亜弥ちゃんは捕まるか微妙。
矢口さんになんかさすがに会いに行けない。
愛ちゃんに今すぐ謝りたいけど、矢口さんが「それはやめとけ」って言ってたし…。

それでも…。
何となく、今は一人でいたくない。
誰かと…。誰かに慰めて欲しい。
真希さんに…話してみようかな…。

アタシはケータイのリダイヤルから、真希さんの番号を呼び出した。
それを少しためらいながら10秒ほど眺め、結局かけることにした。
プルルルル…。
コール音が静かなリビングに鳴り響き、
その音が続くたび不安が募った。
真希さん、出ないかなぁ…。
忙しい人だから、無理かな…。
204 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時16分21秒
ケータイを耳から離し、電源を切ろうとした。
その瞬間に、コール音が止まった。

『…んあ…もしもし?』
「…ま、真希さん」
『…どーしたの?』

「ま、ま、真希さ…うっ…」
『ま、まこっちゃん…?』

突然しゃくりあげた涙声に、真希さんは少し戸惑いを見せたようだった。
けれどアタシの涙はどんどん溢れるばかりで、
ついには酔っ払いのようにひくひく言い出してしまい、
電話の向こうで真希さんがオロオロしている姿が浮かんだ。
それでもやっぱり涙は止まらなくて、
ただ、真希さんを困らせているような気がする。
情けない。
205 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時16分52秒
『………』
「ひっく…ひっく…」

アタシはただ泣きじゃくるだけで、
その電話の向こうからはただ無言が続くだけ。

困っているなんて、とんでもない。
真希さんは…。
アタシがしばらく落ちつくまで、ただ黙って次の言葉を待ってくれた。
勘違いかもしれない。
でも、そうでないことはこのアタシが一番わかってる。
少しだけ心が楽になって、涙が引いてきた。

微妙な空間だったけれど、アタシにはわかる。
真希さんは、本当にオトナでカッコ良くて優しい。
そんなところが、みんなから憧れられる理由なんだろう。
206 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時17分37秒
『………』
「…あ、アタシ…」
『うん。どーした?』
「……アタシ、ケンカしちゃったんです……」
『…そう…』
「大事な、人なんです…。でも…それが今は辛くて…」
『…なんで?』
「…え?」
『大事な人なのに、なんで辛いの?』
「それは…えっと…」
『大事なら、そばにいて辛いことはないと思うよ』
207 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時18分07秒
真希さんのその言葉が重かった。
その言葉の意味くらい、アタシだってわかっている。
けれど…。
アタシは確実に、愛ちゃんへの想いを隠そうとしている。
女同士だし、恥ずかしくて、カッコ悪い気がする。
だからこそ、そばにいて辛い。

「ダメなんです。好きだから、辛いんです」
『…好きだから、辛い?』
「…はい…」

でも、本当はそばにいたい。
矛盾してる…。
208 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
209 名前:川o・-・)ダメです… 投稿日:川o・-・)ダメです…
川o・-・)ダメです…
210 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時20分22秒
『あたしだってあるよ。そういうのは』
叱られると思った矢先、真希さんの言葉は意外だった。
「え?」
『好きだから、辛いって…』
「え?え…」

『まこっちゃんの大事な人が、誰のコトなのかわかんないけど…。
あたしだって、そういうのはあるよ』
「真希さんも…ですか?」
『当たり前じゃんー。ごとーだって女のコだよ〜?
 …ま、あたしは関係ないけどね。
 女同士とかそう言うのは。
 好きだったら好きだし、カンケーねーよバカヤローって言える』
「そ、そうなんですか。強いですね、真希さんは…」
211 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時20分54秒
ん?
…アタシ、今なんかさらっと聞き流したような。

……ちょっと待って。
色んなことが今の発言に隠されているんですけど…。

「ま、真希さん…」
『んあ?』
「…女同士…って…」
『…………』
「…………」
『ごとーは何でもおみとおしだぜぃ!』
「うあーーーーーっ!!何でバレてんですかーー!?」
『あははは』
さすがは真希さん、と納得していいのか戸惑っていいのやら…。
212 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時21分54秒
「……でも、真希さんの好きな人も女ってコトですよね」

『ん?あぁ、あいぼんだよ』

軽ッッッ!!!
もっとためらいとかそういうのないんですか!!

あ、でもじゃあ噂は本当だったんだ…。
「あ、あ…そうですか…」
『うん。別に良くない?あたしはそんなの気にしないって』
「……」
『小川。大切なのは、本当の気持ちをごまかさずに伝えるコト。
 あんたの本当の気持ち、きちんと伝えてみな。
 …んはっ、なーんちゃってぇ〜』
213 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時22分37秒
電話越しに聞えるその声は、いつもの彼女の様子とは少し違った。
最後はちょっとだけ照れてごまかしてたみたいだけど。

でも、その時思ったね。
この人は、本当に凄い人なんだ。
やっぱり、オトナでカッコ良くて優しいんだって。
だから、アタシは安心してその心を浄化することができる。
この人に、一生ついていきたい…そうとまで思った。

真希さん、あなたはやっぱりアタシの憧れです。

「真希さん、ありがとうございます」
『ん?お礼を言われるようなことはしてないよぉ?』
「いえ。いいんです。ありがとうございます…」
『うまくいくといいね』
「はい。それじゃ、また…」
『はいよー』

真希さんは陽気な声で、電話を切った。
アタシも、ケータイをテーブルのうえに優しく置く。
214 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時23分10秒
本当の気持ち。
アタシの本当の気持ちは───。

愛ちゃんと、幸せになりたい。
愛ちゃんを、守ってあげたい。

こんなアタシの想いが通じるかはわからないけど…。
でも、伝えよう。
きちんと謝ってから、好きだよって。
大事な人だよ、って伝えよう。

少しだけ、大人になったような夜だった。
215 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)01時23分40秒
削除依頼出してきます。・゚・(ノД`)・゚・。
2回も同じとこ間違えちゃったよ…。
216 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月20日(木)15時16分23秒
これからもっとまこあいッスか…ハァハァ
んげぇ期待!!正座して待ってますw
217 名前:boiya- 投稿日:2003年02月20日(木)16時00分40秒
更新お疲れです。がんばってください
218 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年02月20日(木)19時12分56秒
ごっつぁむのチャットでの暴れっぷりにはワラタが(w
おがたか、期待してます
219 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時41分12秒
>>216さん
多分、今回更新分がかなりあれな感じですw

>>boiya-さん
いえいえ、ありがとうございます。

>>ちゃぁみぃ後藤さん
その話題に触れては。・゚・(ノД`)・゚・。
220 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時42分18秒



11.伝えたい気持ち



221 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時43分28秒
「会いたくないって…」
「えぇぇぇ!?なんでですか!!」

一人暮しの女性の部屋にしては広過ぎる、マンションの一室にて。
そこは、矢口さんの部屋の玄関先。
アタシは土足で玄関に突っ立ってて、
矢口さんは裸足で申し訳なさそうにしている。

愛ちゃんのやつめ、意地張りやがって!!
人がせっかく、こうして謝りに来たのに!!

「あがっても、いいですか!?」
ムカつきながら矢口さんに詰め寄ると、
矢口さんはちょっと引きながら、怯えてしまっていた。
「ど、どうぞ…」

「あっ…」
「なんですか!?」
「ど、土足であがっちゃイヤ〜ン…」
222 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時44分36秒
* * * * *

「愛ちゃん、帰ろう」
「いややよ」

ムカ。

「いいから、帰ろう。ね」
「いややって」

ムカムカ。

「帰りましょう。頼むから」
「いやなもんはいや!」

ムカムカムカ。

「帰るんだよゴルァ!!!!」
「いやだっつってんじゃねーかこのヴォケ!!!!」

「ちょっと二人ともッ!!
 小川ッ、小川落ちついて!!謝りに来たんでしょ!?」
ハッ。
そうだった。
矢口さんがいなかったら、このままこのオラウータンを地獄に落とすとこだった。
223 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時46分02秒
深呼吸深呼吸。
伝えなきゃ、伝えなきゃ。
ゴメンネ、って謝って、
それから、好きだよって伝えなきゃ。

「あ、愛ちゃん…」
「なんやボケェ!!?」

ムカッ。
まだ戦闘体勢かよ!
もういいよ。
愛ちゃんなんか知らない。
謝らないもん。

「あぁ!?誰が関係ねーだよこのボケがよぉ!?アゴひねってつぶしますよ!?」
「ハァア!?てめえこそ、そのオラウータンみたいなその鼻へし折られてぇのか!?」
「ちょ、ちょっと二人とも…」
224 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時48分15秒
「グダグダ言ってんじゃねーだ!このイノキ顔がよぉ!!」
「ハァァ?イノキ顔?どんな顔ですかー?ぷぷっ」
「二人とも、やめなさいって…」

「鏡見ればわかるやろ、プププッ」
「わかりません」
「何で二人してそんなワンパターンなキレ方なのさっ!!」

「頭弱いんですねー。かわいそうに。ケラケラ」
「ケラケラなんてそんな笑い方初めて聞きました」
「もう…勝手にしろよ…」

「だいたいさ、私が心配して聞いてやったのに。
 関係ない、やって。どー思います!?ありえないんやけど!」
「そ、それは…」
「おっ、ちょっと鎮圧してきたか?」
225 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時49分08秒
「だけどっ、それは!!愛ちゃんが…」
「人のせいにするでねぇ!!」
「ま、またかよ!」

「高橋愛ーーーッ!!」
「なんじゃコラァ!!!?」
「もういいよ…何とでもして…」

「お前…」
「…なんじゃこら」
「………」

「お前が好きだぁ!!!!」

……。
我に返った愛ちゃんビックリ。
矢口さんもビックリ。
アタシもビックリ。

何勢いに任せて言ってんだよアタシー!!!?
226 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時50分34秒
「……わ、私も好きやよ……」

!!!?

「は?」

待て待て待てちょっと待て。

「どういうこと…?」

もう何が何やら…。
っていうか、こんな展開…あり?

「とりあえず」
矢口さんが後ろからぴょこっと飛び出して来た。
「矢口さん、どうしよう…」
「うん…とりあえず」

「帰れーッッッ!!!」
227 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時51分19秒
* * * * *

どうやらお互いに想い合っていたというのが発覚した二人。
矢口さんに追い出されて、その帰り道。
やっぱりちょっと気まずい。

「あ、愛ちゃん…。とりあえず、ゴメン…」
「わ、わかってる…」

………。

相変わらずの沈黙。
アタシももう、どうにしかしていいかわからなかった。

「あっ、愛ちゃん…」
「ま、まこっちゃん…」

………。

「先、どうぞ…」
「いやいや、先どうぞやよ」

………。
228 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時51分59秒
「あの、アタシ…その…」
「…う、うん…」

緊張で言葉が出ない。
けれどアタシは、決めたんだ。
きちんと伝えるって。
少しだけ先を歩いて、突然立ち止まった。

「あのね、私…愛ちゃんが好きだよ」
「…うん。私も、好きだよ」

「…特別な意味で、だよ?」
「…特別やよ…」

心の中が、火が灯ったように熱くなるのを感じた。
意外な結果だったけれど、本当に愛ちゃんを好きになって良かった。
229 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時52分45秒
「…手、つなごっか」
「うん」

繋いだ手と手から、世界が広がる。
温かい手の温もりが、アタシの中に伝わってきた。

「まこっちゃん」
「ん?」

「恋人に、なろうよ」

涙が溢れた。
愛ちゃんのその言葉が、ただ愛しく感じる。
途切れ途切れの言葉だったけれど、
まっすぐにその気持ちを伝えてくれた。

アタシは、ただ泣きながら返事をしたのだった。

「…うん」
230 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時53分37秒



12.落ちてゆく心



231 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時54分11秒
「抱いて欲しい」
ゴトッ。

バスルームからあがってきた愛ちゃん。
あれから二人でご飯食べて、いつも通りだらだらした。
特に何もなく、普段通りに。

アタシが先にお風呂に入って、愛ちゃんがお風呂からあがるのに
テレビを見ながらアハハと笑っていた時。

愛ちゃんが、いきなりこんなことを言い出した。
そのせいで、口をがちょーんと開きながら、テレビのリモコンを落としてしまった。

「マ、マジで…?」
「うん、私本気やよ…」

ものすごーーーーく戸惑った。
そのせいで、リモコンを拾う手もブルブル震えている。
232 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時55分01秒
けど、パジャマ姿の愛ちゃんが、
ここまで懸命にアプローチしてくれるのに、
アタシが期待に答えないワケがない。

「わ、わかった…」

愛ちゃんの方から、しかもこんなタイミングでそんな言葉が出ると思わなかった。
アタシだって少しは、やっぱり両思いになったら、
そういうコトするのかなぁ…とは思ってたけど…。
愛ちゃんの方がしたくないと思ったから、多分しないんだろうと思ってた。

「あ、愛ちゃん…そういう…のって、したことあるの?」
「………ない、けど………」
「………アタシも、ない………」

良かった良かった、二人とも初心者だね。
なんてそんなはしゃげるわけがない。
233 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時56分23秒
とりあえず、二人とも上着を脱いで、
下着姿になった。
…ヤバイ。
二人して、緊張しまくっている。
空気がピーンと張り詰めて、二人とも口をへの字に曲げて、
もじもじしたまま何もできずに制止している。

「どうする、の?」
「ん…と…」
「キス…とか、やっぱしちゃうのかな…?」
「…そ、そうなんやないの…」
「じゃ、じゃあ…」

愛ちゃんが目を閉じた。
アタシもそれにつられて目を閉じ、
ゆっくりと顔を近づける。

唇に、温かい感触が触れた。
234 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時57分12秒
「…ファーストキス…」
「アタシもだよ」

アタシはそのまま、愛ちゃんの唇を激しく奪った。

頭の中がしびれてくる…。
甘い、それでいて刺激的な興奮が頭の中で弾ける。

雲の上に乗っているような、不思議な感覚が、
唇から脳へと発せられてる気がする。

「んんっ…」
「好きやよ…」

アタシたちは、長い長い時間、唇を重ね合った。
235 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時58分18秒
「…むぐっ…」
愛ちゃんが突然、アタシから唇を離した。
「…どうしたの?」
「息止めてたから苦しかった…」
「バカ。鼻でしろよ…」
「ん…」

再び口付けを交わし合うと、
アタシはゆっくりと愛ちゃんの髪をなでた。
いつもとシャンプーの匂いが違うのは、
昨日矢口さんの家に泊まったからなんだな、って思った。


髪を撫で、指が首筋を、背中をつたっていく。
その指で、ブラジャーのホックをするっと外した。
236 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時59分10秒
「あ、待って」
「…ん?」
「電気、消してから…」
「……ん……」
無言で電気を消すと、愛ちゃんにまたぴったり寄り添った。
肌の温もりが蘇ってくる。

もう一度、今度は軽いキスを交わすと、
胸の辺りに手をかけ、ブラジャーを外した。

「あう…ハズカシィ…」
愛ちゃんの白い胸が露にあり、
暗闇の中でもその肢体がハッキリと映し出された。
237 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)22時59分57秒
「あんま、見ないで・…」
「んん…」

アタシはまず首筋あたりに口付け、そのまま舌を滑らせる。
ぷにぷにした豊かな胸にたどりつくと、
舌で乳首をつついてみせた。

「あう…」
「…感じる?」
「…エロ娘ぇ…」

恥ずかしがる愛ちゃんが、またとんでもなく愛しく思えた。
238 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時00分27秒
舌を胸の上で躍らせて、今度は反対側へ。
同じように、まずは舌でチョンチョンとつついてみた。
ピクン!と、体が上下に激しく揺れ、
艶っぽい声が漏れる。

「はぅぅぁ…」
「くすぐったい?」
「うん…ん…」

今度は手で全体を揉む。
…なかなかボリュームのある胸で、ちょっと…いや、かなりムカつく。
羨ましい。
「痛い!」
「あ、ゴメン…」
どうやら無意識で力を入れすぎたらしい。
ちょっと強く揉み過ぎたみたい…。
うっかりうっかり。
239 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時00分59秒
さて、胸を揉んだまではいいけれど、
これからどうしていいかわからなくなった。
ハッキリ言って、アタシは一回も男のコとすらエッチしたことがない。

…とりあえず、下か。

左手で、同じように胸を揉みながら、
今度は右手を身体の上で滑らせる。
柔らかい肢体の上を通って、その…。
下着の上から、その部分を触ってみた。
240 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時01分39秒
「ひゃうっ!!」
愛ちゃんは身体をピクッと痙攣させると、
変な叫び声をあげて泣きそうな顔になった。
「ご、ごめん…」
思わず謝って手を離してしまったが、
愛ちゃんは額に汗を浮かべて、
「そ、そうじゃなくて…」と照れながら笑った。
「ン…」

お腹の方から、ゆっくりと手を滑らせ、
今度は下着の中に手を突っ込んだ。
ふさふさとした薄い感触がして、
もっと下の方へ…手をするすると下ろしていった。

ぬぷっ。
241 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時02分20秒
「うわっ!!」

思わず、下着から手を引き抜いてしまった。
指にまとわりつく、ぬるぬるした感覚。
ビックリしたぁ…。

「な、なんやよー…?」
「ぬるぬるしてるぅぅぅ…」
「し、してませんっっっ!!」
「してるぅ…!イヤだぁ…気持ち悪いぃ」

手にぬっとりした感触が、まだ残ってる。
ビックリした。
人間の女性の…その、あそこって…。
あんな感触なんだ…。
しかも、濡れてるし。
気持ち悪いよぅ…。あぁぁぁん…。

我に返った愛ちゃんは、肢体を隠すように手で覆うと、
急いで下着を身に着けていた。
242 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時03分24秒
「…なんか、やっぱり違うような気がするんやけど」
「…うん、アタシも思った…」

「今はまだ、いいよね…」
「そうやよ…。失敗やよ…」

こんな中途半端なカタチだったけれど、
一応、アタシたちの初めては終わった。

確かに行為は失敗だったけど、
その代わりに得たものは大きい。
愛ちゃんの身体のコトもわかったし、
愛ちゃんの温もりを感じるコトもできた。
それに、失敗だったからこそ、
アタシたちにはまだ早過ぎるんだ…って思える。
243 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時04分16秒
「ね、まこっちゃん」
「ん?」
「私のコト、これから“愛”って呼んで欲しいんやよ」
「いいよ。じゃ、アタシのコト…“麻琴”って呼んでよ」
「うん、わかった…。麻琴」
「へへ…愛…大好き」
「私もやよ…」

くすぐったい、二人の時間。
少しだけ、オトナになったこの瞬間。
アタシは、彼女と一緒に居続ける限り大事にしたいと思った。

「愛してる」。

244 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時04分57秒
ありえないありえないありえないありえな(ry
しばらくそっとしておいてください。・゚・(ノД`)・゚・。
ちょっと気合いれて書きました(爆

こういうのが決して好きなワケではないので。
チャットとかで晒すのやめてくださいね。
245 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時05分28秒

今回の更新は>>220からでつ。
246 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時06分12秒


レス、お待ちしております。
247 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月20日(木)23時17分08秒
やべぇたまんねぇよ最高です。
萌え氏にそうです。鼻血、でました。
今まで読んできた小説の中で一番ドキドキしました。
まこあいでエロが読めるなんて…感動です!!
248 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年02月20日(木)23時31分47秒
>>名無しどくしゃさん

読むの早いでつねw
そう言ってもらえるのは嬉しいですw
もしかして、おいらの知ってる方ですか?
249 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月20日(木)23時59分02秒
失敗して途中で止めるとこがなんか、
リアルですね…ほんとに初めてって感じで。
つづき期待してます。
250 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月21日(金)03時43分14秒
今までROMってたんですが、感想書きます。
これまでの展開、先が読めなくてものすごくいいです。
くすぐったいような甘い文章が心に響きます。
エロの中にも、作者さん特有の「ほのぼの」があって、
ただのエロシーンでないと感じました。
これからも頑張って下さい。
251 名前:りゅ(ry 投稿日:2003年02月21日(金)19時38分55秒
キタ━━(゚∀゚)━━!!!!
萌えました!スマソ、本気で萌えました!
ごっつぁむさん凄いよぉ(ノд`)・゚・。
上手いよぉ。なんていうか、二人なら本当にこんな感じで(ry
この調子だと、続き、あるんですよね?(w
もちろん、二人の、あの続き…。
とっても期待してますんで、恥ずかしがらずに頑張って下さい。
252 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年02月21日(金)23時44分53秒
ごっつぁむタンの作品でエロが見れるなんて・・・(w
(;´Д`)ハァハァ
と書きたい位良かったよ
新鮮なエロシーンだった
253 名前:愛チュン☆ 投稿日:2003年02月23日(日)01時48分40秒
萌えました!!すごいです!!続きが早く読みたいですね!
254 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時19分38秒
うわーんレスがイパーイだぁ。

>>249さん
ありがとうございます。リアルに見ていただければ幸いです。

>>250さん
ありがとうございます!これからもレスください。

>>りゅ(ryさん
続くんでしょうかねぇ。秘密ですw

>>ちゃぁみぃ後藤さん
新鮮…。というか、おいらがエロ書く自体がレアですからw

>>愛チュンさん
はい、お待たせしました。
255 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時21分03秒


13.ハッピーライフ…でも…。


256 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時21分49秒
愛と付き合い出して、特に変わったことはなかった。
けれど、いつも一緒にいられるし幸せは、
これ以上ないと言うほどに味わっていたし、
ただそれだけで良かった。

今日もこれから、駅前で待ち合わせて原宿に行く約束。

「遅いなぁ…」
ブツブツと呟きながら、ケータイのディスプレイを覗き込む。
約束の時間を、約五分ほど過ぎた。
…愛は、まだ来ない。

同じ家に住んでいるのだから、待ち合わせなんかしなくても、
家から一緒に歩いてくればいい話なんだけど…。
なんとなく、デートする気分を味わいたかったので、
今日は二人で話し合って待ち合わせすることにした。
257 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時22分21秒
遅い遅いと呟きながらも、こうして好きな人を待っているのも、
またまた楽しいものだ。

味わったことのない、ドキドキをたくさん感じさせてくれる。
…それが、恋をしているというコトなんだって、思い知らされた。

「マコーッ」
大声を張り上げて、嬉しそうに駆けてくる愛。
ご主人様を見つけた子犬のように、
一目散にこちらにやってくる姿が、すごく可愛らしい。
「お待たせやよ」
「遅いぞ」
嬉しいくせに、アタシはちょっと不機嫌なフリをしてみせた。
「…顔がにやけてるよ」
「えっ…!?バ、バレた…?」
「えへへ。…かぁいい」
「バ…バカ…。早く行くよッ!」
幸せって、こういうものなんだなぁ…。
258 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時22分54秒
* * * * *

テキトーにブラブラと歩きながら、ウィンドゥショッピングを楽しむ。
もう夏も近いから、そろそろ夏物の洋服が欲しいなぁ。
今年はどんなファッションで攻めよう?
正統派ギャル系?お姉ギャル系?それともスポギャル系かな?
うーん、悩む。
「マコ、夏物買う?」
「んー…今日はいいや。今度駅前で買う」
「じゃ、私もそうしようっと」

ブラブラと歩いた後で、喫茶店でお茶をした。
カランカランと、ドアが開くたびに鈴の音が鳴るのが可愛いお店。
コーヒーがおいしいお店だっていうから、とりあえずカフェオレを二人前。
それからお腹も空いてたから、サンドイッチを頼んで二人で分けた。
ただ、お店の人が「いらっしゃいませー」というたびに、
愛がつられて「いらっしゃいませやよー」と言っていたのが笑えた。
259 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時23分44秒
喫茶店の後で、他に行きたい所もなかったので、
カラオケに二人で行くコトにした。
こう見えて、愛は歌が上手い。
声が通ってるというか、綺麗だ。
聞けば、福井の中学にいた頃は合唱部に入っていたんだって。
凛として歌う姿は、どこかカッコ良さを感じる。
…可愛いなぁ。

「♪なんにも言わずにこれからも大切にしてね」

「ねぇ、それなんの歌?」
「へへっ、秘密やよー」
「ふーん…」
「麻琴さんに贈ります」
「…バーカ」

狭いカラオケの一室の中で、アタシはただ、幸せを感じるだけ。
そう、ずっとこれからも───。
260 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時24分20秒
* * * * *

「あー…叫びすぎて喉いたい」
「マコ、あんな歌い方するからやよーもうッ…」

カラオケから出た頃には、もうすでに夕日が辺りを包んでいる。
時間が経つのって、早いなぁ…。
さてと、これから家に帰ってご飯の仕度かぁ。
今日はアタシが食事当番だからな。
テキトーに作とうっと。

アタシが駅の方に向かって踵を返すと、
突然腕が引っ張られて、そのまま反動で倒れてしまった。
「うぁっ」
「マコッ、あれっ、あれっ」
見ると愛は、通りの街路樹に隠れて、
何かを指差していた。
「なに…?」
261 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時25分07秒
起きあがって、愛の指差す方向を見る。
こちらの通りから、道路を挟んで向こう側。
人の群れがわんさか沸きあがっていて、あれと言われても、
そう簡単に発見するコトはできない。

「あそこっ、あのコンビニの前!」
「コンビニの…前?」

看板の下にいるのは、サーファー風のイケメンの男とその彼女らしきギャル。
それに、休憩してるおじいちゃんとおばあちゃん。
それから、ケータイ電話をしきりに気にしている女子高生。

…女子高生…?

「あ───ッッッ!!!!!!」
「しっ、気付かれるって!」
「ご、ごめん」

「アレって…亜弥ちゃん?」
262 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時25分41秒
うん、間違いない。
あの手の顔はよくいるけど、アレは亜弥ちゃんだ。
こないだ自慢してたヴィトンのバックをぶらさげてる。
それに、あんなど派手なピンクのセーター着てるのもあのコくらいだろう。

まさか、“ウリ”の相手を───!?

「はぁー。じゃあ、行きますか」
愛が立ちあがった。
アタシもつられて立ちあがる。
「うん、様子を見に行こう」
「え?」
ところが愛、アタシの言葉に顔をしかめた。
「なんで?」
「は!?なんでって、お前が発見したんでしょうが!」
「うん、亜弥ちゃんにそっくりなコがいるなーと思って」
263 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時26分19秒
バキッ。
アタシの右ストレートがお見舞いされたのは言うまでもない。

「あぁん麻琴がぶったぁ…」
「アホッ!ボケッ!どこにあんなそっくりさんがいるんだよっ!!」
「ええっ!?じゃあ、本人!?」
……。
呆れてものも言えない…。
アタシは顔を引きつらせて、ただただ苦笑いをピクピク浮かべていたのだった。

ここからでもよく見える。
亜弥ちゃんは、こちらに気付く様子もなく、
コンビニの前で誰かを待っているようだった。

…っていうか、あんなトコで待ち合わせなんかするか?
仮に、“パパ”を待っているのだとしても、
あんな目立つところじゃ、誰か知ってる人にでも見られたら…。
現にこうして、アタシたちに見られてるんだし。
亜弥ちゃん、大丈夫かなぁ…。
264 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時26分56秒
「ま、まこ…ッ!!あれー!あれ!!」
「え?ああああああああッッッ!!」

亜弥ちゃんに近づく、中年オヤジ!
頭はハゲ、腹はたるんでるし、体臭もキツそう。
間違いなく、「亜弥ちゃんの実のお父さん」ではない。
亜弥ちゃんのお父さんはもっとカッコいいし、あんなに太ってない。
あれは、どう見ても援助交際!!

「ど、どうしよう愛!」
「け、ケーサツ」
「バカッ、亜弥ちゃんまで補導されちゃうってば」
「じゃ、じゃあえっと…んっと…」
「あーッ!行っちゃった…」
265 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時27分30秒
オロオロしてる間に、亜弥ちゃんとおっさんは夕暮れの街に消えていった。
どっちに行ったのかも、見失ってしまったので、
追いかけようがない。

こ、これはエラいコトになった…。

「愛ッ、真希さんだ。真希さんに相談しよう」
「ら、らじゃー!」

アタシたちは、朝日町への帰路を急ぐのだった。
266 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月02日(日)19時28分52秒
私事なんですが、この度HPを作らせていただきました。
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/2179/index.html

どうぞお書き込みください(宣伝スマソ
267 名前:名無し読者@249 投稿日:2003年03月03日(月)01時43分40秒
まこっちゃんの激しいツッコミ、愛ちゃんの
常軌を逸脱した天然…このコンビのやりとりは最高ですね!
268 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月03日(月)18時23分05秒
あややが援交なんて…ヤッテクレル!
ちなみに作者様の知ってる人じゃありまへんでぇ〜ヲイラ
HPお気に入りにいれさせて頂きます。マス。デヘヘ。
269 名前:りゅ〜ば 投稿日:2003年03月03日(月)19時38分22秒
松浦さん、どうなっちゃうんでしょうか。
ここの高橋最高にいいっすね。惚れました。
270 名前:あいず 投稿日:2003年03月04日(火)02時35分31秒
ごっつぁむさんの書くまこあい、かなり好きです。
高橋がキャラが特に際立ってます。

今後も期待して待ってます〜
271 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年03月05日(水)06時27分19秒
あややどうなる!?
更新遅れ気味だけど、待ってるぞ

HPの方も、書き込みさせてもらうよ
272 名前:名無し蒼 投稿日:2003年03月05日(水)22時36分12秒
はじめてレスします。っても飼育でではですが(w
羊とかの頃から見てました〜!
ごっつぁむさんの小説好きです、続き楽しみだ〜。
そしてあやや一体なにが!?HPも作ったんですね、見に行きます!
273 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時25分32秒
>>名無し読者@249さん
高橋のボケは気合い入れて書いてるけど、小川のボケは微妙ですw
ツッコミになってない…。

>>名無しどくしゃさん
激しく知ってる人のような気がするのだが…違うのか。
HP、お気に入りに追加したならカキコしてください(爆

>>りゅ〜ばたん
( ´_ゝ`)
そっちの高橋に負けないように頑張るw

>>あいずたん
おいらもあいずたんの作品好きッスよー。
新スレ立てたら読みます。

>>ちゃぁみぃ後藤さん
更新遅れ気味Σ
ご、ごめんさい…。でもこれから佳境に入っていきます。はい。

>>名無し蒼さん
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!!
誰かわかった!レスありがとうございます!HPにカキ(ry
あややの今後に注目☆

…なんか、身内(?)レスが増えるのは嬉しいような悲しいような…w
274 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時27分44秒



14.決裂の時


275 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時28分41秒
電車がようやく朝日町に止まって、アタシたちはソッコーで駅から飛び出した。
家路を急ぐ人たちがごった返す駅の階段を、とにかく急いで駆け下りた。
「マコ、繋がった?」
「ダメみたい」
真希さんに電話したけれど、何度かけても留守電になる。
仕方ないので、あさ美を呼び出して、駅前の噴水広場で落ち合った。

「どういうことなの?」
「知らないよっ。でも、確かにこないだから怪しかったじゃん」
「そうだけど…」

あさ美も戸惑いを隠しきれないようで、いつもは冷静なのに、
今日ばかりは焦った顔をしていた。
276 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時31分08秒
「とにかく、このコトは真希さんに報告しよう」
「え?」
アタシがそう言うと、あさ美は顔をしかめる。
怪訝に嫌そうな表情を浮かべて、黙ってしまった。
「…あさ美?」
「あ、うん。なんでもない。なんでもない…」
「…?」
そう呟く様子が、どこか変に見える…。
けれど、何の確信も持てなかったので、特に気にしなかった。
277 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時32分32秒
「ね、ねえ…」
「ん?」
「あの、真希さんと一緒に…石川さんもいるのかな…?」
「え?梨華さん??」
「う、うん…」
掠れた声で、精一杯うなずくあさ美。
…一体、梨華さんがどうしたんだろう…?
も、もしかして…。あさ美、梨華さんのコト…。
「あ、うん!一緒にいると思うよ!大丈夫、アタシがいるからねっ!
 アタシ、応援するから!」
「……な、何かカンチガイしてない?」
「してないよ。だから、大丈夫!アタシに任せて!」
力いっぱい、親指を突きたてて「グー」サイン。
「あ、やっぱいいや。私、ちょっと用事あるから…」
「ええええ?」
あさ美はそう言うなり、アタシが制止する間に去ってしまった。
足が速いせいで、簡単に追いつけない。
…あさ美、アタシはアンタの恋を応援するからね?
278 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時33分32秒
♪ティロリロン ティティティン

「マコ、ケータイ鳴ってるよー」
「ん…」
ポケットに突っ込んだケータイを、ガサゴソと漁って取り出す。
「…あ、あいぼんからだ…」

ディスプレイに映し出された番号は、あいぼんからだった。

「もしもし、あいぼん!大変な…」
『まこっちゃん!?緊急連絡や。すぐに例の場所に集合して!頼むで!!ほな!』
プツッ。ツーツー。
あいぼんからの電話は、一方的にこっちの返事を待たずに切れてしまった。
…亜弥ちゃんのこと、相談しようと思ったのに。
「あいぼん、何だって?」
「なんか、緊急連絡だって。どっちにしろ、真希さんが来るみたいだから行こう」
「緊急連絡?」
愛が顔をしかめたが、アタシだって意味はわからない。
お互いに頷き合うと、“例の場所”に向かった。
279 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時34分23秒
* * * * *

「冗談じゃないわよ!!ふざけるのもいいかげんにして!」
「そうだよ真希。それはちょっと、横暴がひどいと思う」
「私も賛成。真希の決定は、ちょっと自分勝手すぎる」

部屋に入った瞬間から、そんな罵声が響いた。
対峙する、真希さんと三人の女───美貴さん、まいさん、あゆみさんの北高美人トリオの三人。

「ちっす…」
「こんばんわやよ」

小さく声を潜めて挨拶したが、罵声の主たちはチラリともこちらに気付く様子はなかった。
アタシは、すでにその様子を伺っているあいぼんたちの隣につき、
ひじで軽く、あいぼんのわき腹を突っついた。

(なによ、これ)
(知らんわ。何か、大変なコトが起きてるんやって)
(大変なコト?)
280 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時35分51秒
ガターン!!!!

ひっ。
ビ、ビックリした…。

「ふざけんじゃねーよ!!」

美貴さんのそんな怒声と共に、机が思いっきり倒された。
その轟音にビックリしたのか、隣で愛がビクッと震えた。
アタシはそれを見て、みんなから見えないように後ろで愛の手を握る。
その手を、ギュッと愛も握り返した。

「あーあーあー」
イスにどっしりと腰かけ、あーあー言いながら耳を塞ぐ真希さん。
“何を言っても聞かない”という意思の現れだろうか…。
281 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時36分55秒
「ふざけんなよ、真希。話も聞けないっていうのか?え?」
「そうよ。だいたい、アンタ偉そうなのよ。何よその態度」
美貴さんとまいさんがそう言って、真希さんの両側からにじり寄った。
真希さんはそれでも、口笛を吹いたりして平然としている。
「ちょ、2人とも…言い過ぎ…」
「梨華。アンタが口出しする問題じゃないでしょ」
「あ、あゆみちゃんまで!なんでそんなコト…」
止めに入った梨華さんを、あゆみさんが引きとめる。
…ど、どうしたっていうの?

「真希。ハッキリしてもらうよ」
「アタシたちの意見は決まってる」
「私もだよ」
美貴さん、まいさん、あゆみさんがそれぞれ真希さんに詰め寄った。
それでようやく真希さんは、耳から手を離して、
だるそうな顔をしながら立ちあがる。

「…あのね。言っとくけど、これはあたし個人の意見じゃなくて、決定なの。
 ガキみたいにピーピーピーピー騒ぐなっつーの」
282 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時37分53秒
「ガ、ガキ!?」
「ふざけないで」
「決定なんて、聞いてないよ!私たち!」

さらに詰め寄る三人に向かって、真希さんはさらにだるそうな表情を浮かべた。
「シャラップ!」
ピンと指を張りたてて、やや冗談混じりにそんな風に彼女たちを制する。

「えーと。遅れて来た人たちもいるから、最初から話します」
真希さんがそう言うと、三人も顔を見合わせて、静かに座り始めた。

「ここのところ、よくない事件が続いています。みんな、知ってるよね?」
「し、知ってます」
誰かが答える。
すると、真希さんはうんうんと頷きながら続けた。
踵を返し、三人に向き合う。
その視線は、まるで嘲笑うかのような冷たいものだった。
「あんたたちも知ってるよね」
「し、知ってるよ…」
283 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時38分41秒
「はい。ということで、警察さんから苦情が来ました。
 後藤さんは警察に呼び出されて、一時的な活動停止を命じられます。
 そこで───」

「モーニングは、一時的に活動を休止します」

真希さんの口から、今後の意外な展開が語られたのだった。

っていうか、ええええええええええッッッッッ!!!!!???
284 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月06日(木)02時39分20秒
細々としか更新できないのが辛い…。スマソ。
285 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月06日(木)15時59分52秒
Σ( °_ゝ°)エェェェエエ!!!!
以外な展開…トリオ怖いよぉ迫力あるぅ。
ソレト更新してくれるだけでも有り難いので。えぇ。
286 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月06日(木)21時59分00秒
( ´ Д`)<「北高トリオイラネ」

とか言い出すのかと思いますた。
287 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時04分56秒
>>名無しどくしゃさま
いえいえ、こちらこそ呼んでいただけるだけでありがたいでつ。どうもでつ。

>>名無し読者さん
言いませんw
ちょっとマジメなシーンが続くので、できるだけソフトにしたいでつね。
288 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時06分30秒



15.決裂



289 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時07分48秒
「それが横暴だって言ってんだよ!!」

ガァァァン!!!

蹴り飛ばされたゴミ箱は宙を舞い、ゴミを振りまきながら
轟音を立てて崩れ落ちる。
真希さんはそれを、やれやれという呆れ顔で見ながら、
深くため息をついた。

「ブレイクブレイク☆」

「ふざけんじゃないわよッッッ!!!」

冗談混じりに真希さんが言った言葉を、真正面から叩き落す美貴さん。
美貴さんの後ろには、まいさんとあゆみさんが厳しい顔で佇んでいる。
どうやら、三人は反対派らしい。
でも、どうしてそこまで───?
アタシだって、一時的な活動停止は寂しいし、大人の言うことに従うのは、
この上なく悔しい。
けれど、美貴さんたちは何をそんなに熱くなっているんだろう。
290 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時08分25秒
「真希、どうしても聞かないの?」
まいさんが一歩前に出て、真希さんに問いた。
美貴さんほどではないけど、その声にも強さが込められていて、
やはり反対という自分の意見を強く押し出している。

「聞けません。決定だもんねーだ」

「ふざけんじゃないって言ってるでしょッッッ!!!?」
真希さんがジョークをかませばかますほど、
美貴さんの怒りのボルテージは上がっていくようで、
顔が真っ赤になってしまっている。

「アンタなんかッッ───!!」

あ。
そういうコトなのか。

いつぞや、美貴さんたちが、しかめ面で真希さんを見ている時があった。
あの時の表情に、込められたもの。
291 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時09分01秒
───嫌悪とか、嫉妬とか、そういうの。

美貴さんは、真希さんが嫌いなんだ。
嫌いだからこそ、真希さんの決定が気に食わないんだ。
まいさんやあゆみさんもそう。
そういう連帯感のせいで、真希さんの決定にここまで反対してるんだ…。

…そっか。そうなんだ…。
どこか、寂しくなる。
真希さんはとても憧れていて、手の届かない素敵な人。
美貴さんは美人で、ちょっとキツいけれどカッコいい。
どちらもアタシにすれば、憧れの存在だったし、
真希さんみたいな人は誰にでも好かれると思っていたから。
だから、ちょっとショックだった。
292 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時10分04秒
「もういいよ、美貴。やめよう」
あゆみさんが、倒れたゴミ箱を直しながら美貴さんの肩に手をかけた。
「あゆみ!?」
「あゆみちゃん…」
美貴さんは振りかえり、まいさんは驚きながらあゆみさんを見る。
梨華さんは、ホッとしたような安堵の表情を浮かべた。
けれど、そうじゃなかった。
あゆみさんの、“やめよう”とは…。

「真希、ゴメンネ。私、出てく」
「えっ!?」
誰もが驚愕して、あゆみさんに注目した。

「今まで無理してやってきたけど、限界でしょう?
 やっぱり、あの時から、私たちは袂を分かつべきだったんだと思う」
293 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時10分47秒
あの───時?
あゆみさんの声は穏やかで、静寂の部屋の中に静かに響き渡っていた。
その笑顔は、自分で怒りを抑えているのだろうか。
どこか、ぎこちなく見える。

「美貴、まい…。私はそう思う。あなたたちは?」
そう話を振られて、美貴さんもまいさんも黙ったままだった。
お互いに顔を合わせて、複雑そうな表情でうつむいている。

「あ、あゆみちゃんッ…なんで…?」
梨華さんがあゆみさんの側に駆け寄った。
そして、その手をあゆみさんへと差し伸べる。
けれどあゆみさんはスッと身を交わし、梨華さんの手を払った。

「ゴメン、梨華。私たちも、これで終わり。
 今まで友達でいてくれて、ありがと。バイバイ」

あゆみさんはそう言い残すと、一人で部屋を出て行った。
294 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時11分28秒
…誰も、追いかける者はいない。
手を払われて呆然としている、梨華さんでさえも。
その梨華さんの手を、ひとみさんがキュッと握りしめて、
あゆみさんの出て行った方を睨みつけていた。

あいぼんは、泣きそうな顔で真希さんを見ていた。
ののは、難しい話なのに、これまた泣きそうな顔であいぼんの後ろに隠れている。
他のみんなも、呆然としながら経ち尽くしたまま、美貴さんや真希さんを見ていた。

(愛…)

アタシと愛の手を握る力も、キュッと強まった。

真希さんは何も言わない。
回転イスでグルグル回ったり、髪をいじったりしたけれど、
決して何も言わなかった。

美貴さんもピクリとも動かないで、まばたきの回数をただ増やしていた。
295 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時12分00秒
「ア、アタシも…。あゆみと一緒に行く…」
あゆみさんが去って三分ほど経っただろうか。
まいさんは、美貴さんの方を気にしながら、静かに発言した。
そしてそう言ったが否や、ポケットから真希さんお手製のメンバーズバッジを取り出し、
乱暴にゴミ箱に投げ捨てた。
「これも、もう必要ないから…じゃあ、バイバイ」

「まいちゃ…ん…」
梨華さんはまた、まいさんも止めようとしたけれど、
結局追いかけなかった。

まいさんも、小走りで部屋を去った。

美貴さんは───。
ちょうど真希さんから顔を背けるように、部屋の隅を凝視している。

心の中に、葛藤があるんだろう。
アタシでも解る。
美貴さんは丁度、強い自分と弱い自分を晒し出すような、
そんな顔をしていた。
逃げたいけれど、逃げない。
…そんな、顔をしていた…。
296 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時12分45秒
「美貴」
真希さんが口を開いた。
重い言葉。

「美貴」
「………」
「行きなよ」
「………さい」
「行くんでしょ」
「……るさい」
「勝手にしなよ。あたしには関係ないんだから」
「うるさいッッ!!!アンタなんか…アンタなんか…!!!」

「何?…悔しいの?」
「アンタなんかがいなければ───ッ!!!!」

「キャッ!」
跳ね除けられた誰かが、しりもちを突いて倒れた。
美貴さんが突き飛ばしたせいで。

美貴さんはそのまま、振り返ることもなく
部屋を出て行った───。

「さて、アンタらの中にもそういう考えのヤツがいたら、あのコたちを追っかければぁ?」

真希さんは回転イスでクルクル回ったまま、アタシたちの“誰か”に問う。
もちろん、アタシはここから出て行く気はなかったし、
それが誰なのかはわからなかったけれど、
明らかにそれは、答えを知った問いかけだった。
297 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時13分25秒
* * * * *

「さて、残ったのは7人か」

ガラーンとした部屋の中。
真希さんがポツリと言う。

結局、アタシや愛、梨華さん、ひとみさん、ののとあいぼん以外は全員出て行ってしまった。
そんなにまで、真希さんを嫌いだったんだろうか。みんな。
とても、そうとは思えないのに。
どうして、こんなコトに…。

それに、あさ美と亜弥ちゃんはどうするんだろう。
ここにはいないのに。

……亜弥ちゃん?

「あ─────ッッッッッ!!!!!!!!!!」
298 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月08日(土)04時14分26秒
文章に磨きをかけたいところでつね。
でも1人称ってやっぱり難しい…。ふぅ…。
299 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月08日(土)12時48分34秒
更新お疲れ様です。
トリオ…好きだったよトリオ…
にしても読んでる間ずっと冷や汗かいてましたw
ダイレクトに伝わってくるッス。
300 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)02時56分16秒
>>名無しどくしゃさん
あははw
何かこれからもっと大事が…。
ネタバレなので先を読んでくださいw
301 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)02時57分15秒



16.亜弥



302 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)02時57分50秒
「ま、まこっちゃん…?」
「…まこっちゃん、どーかしたの?」

一瞬凝固したそれぞれが、アタシに注目の目を向けている。
それを感じてこそ、アタシは今更叫んだコトを後悔した。

亜弥ちゃんのコト、すっかり忘れてた…!

「真希さんッ、真希さんッどうしようどうしよう!」
「な、なんだよ。落ちついてよ」
「あ、亜弥ちゃんがッッ」
「え───?」
303 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)02時58分33秒
* * * * *

朝日町駅。
都心からほどよく近くて遠いその駅を、利用する人はかなりの数になる。
だが、駅自体がそれほど大きくもないので、
もしそこから誰かを探すというのもそれほど困難ではない。
二つある出入り口は北口と南口。
どちらかを必ず、亜弥ちゃんは通るはず。
そこをマークすれば、亜弥ちゃんを捕まえるコトができる。
北にアタシ、愛、真希さん、あいぼん
南に梨華さん、ひとみさん、のの。
それぞれ配置について、亜弥ちゃんが来るのを待った。

「マコ。はい。ジュース」
「サンキュ。」
愛から手渡されたジュースのタブを引き上げ、一口だけ口に含んだ。

アタシと愛が配置されたのは、北口の噴水広場。
一番人通りの多い箇所ではあるが、真希さんとあいぼんの張っている
改札付近の方がより亜弥ちゃんを発見しやすい。
つまり、こうまですれば確実に亜弥ちゃんを見つけ出せるということだ。
304 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)02時59分14秒
「なんか、大変なコトになっちゃったね」
「…うん…」
「私たち、どうなるのかなぁ」
「さあ…」

テキトーに答える。
正直、アタシにだってわからない。
どうして、こんなコトになってるんだろうか。
亜弥ちゃんは、何をしているんだろう…。

ところがその日、亜弥ちゃんが駅を通ることはなかった。

* * * * *

亜弥ちゃんは、明るくて元気で可愛いコだった。
小学校の頃から彼女を知っているけど、
誰もがその魅力的なキャラに惹かれていった。
アタシももちろん彼女が大好きで、友達になれたことを誇りに思う。

けれど、亜弥ちゃんは高校1年の時に変わってしまった。
305 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)02時59分47秒
両親が離婚したのをきっかけに、そのルックスを武器にして、
男遊びをするようになった。
アタシたちともつるんでいる横で、いつも違う男のコを連れて歩いている。
そんな風に、彼女はどこか違う人みたいになっていった。

原因はわからない。
けど、亜弥ちゃんが変わってしまったのは確実に両親の離婚があった。

いつも笑顔でキャーキャー騒いでる彼女の中に、どこか陰を見るようになった。

アタシじゃ、そんな彼女を元の彼女に戻すコトはできないんだろうか。
誰か、亜弥ちゃんを救って下さい…。
306 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)03時00分25秒
* * * * *

「マコ!大変!!大変なんだってば!!」
「…何がそんなに大変なの…」
まだ半分眠っている脳みそが、愛のわめき声で一気に叩き起こされる。
いつも起こされた瞬間からうるさいけど、今日はもっと。
いいかげんにしてくれ。頼むから。

「寝てる場合とちゃうで」
ソファに腰掛けて、ケータイのメールをピコピコ打っているお団子頭の少女。
うちに住んでる人ではない。
アタシの周りに関西弁なのは彼女しかいない。
「ゲッ。なんであいぼんがいるのさ」
「なんでもええやん。とにかく、これ見てみ」
「これっ、これこれこれ!!」
「ハァ?…新聞?」

『○×新聞
 16歳“援交少女”逮捕』

新聞の見出しには、そんな文字が書かれていた。
307 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)03時00分59秒
「ふんふん、“朝日署は約数ヶ月に渡り援助交際を続けていた朝日町に住む16歳の少女を逮捕した。
 少女は約2ヶ月半の間に200万円相当の「援助」を受けていた模様”
 ふーん…。
 “出会い系サイトで知り合った中年男性を狙い、援助交際をしていたとのこと。
 アイドル顔負けのルックスで、「パパ」の間では高い人気を誇っていたとの情報も”…。
 これって、もしかしなくても…?」

「16歳少女。アイドル顔負けのルックス。間違いないわな。
 おまけに、亜弥ちゃんは昨日から家に帰ってないらしいで」
「た、逮捕!?ちょっとあいぼん、何冷静に紅茶なんかすすってるの!?」
「冷静なワケあるかっ!今、真希ちゃんと梨華ちゃんが朝日署に行ってる」
「そんな…」

嘘───でしょ?
亜弥ちゃんが、そんな…。
嘘だよ…。

「何か裏がありそうやとは思っとったけどな…」
「亜弥ちゃん…」

その後すぐに朝日署へ行ったけれど、結局通してもらえなかった。
308 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)03時01分41秒
* * * * *

そのニュースは、その日のうちに街中に広まった。
次の日から、どこを歩いてもその話題で持ちきり。
右を向いても左を向いても、「16歳の援交少女」の話題ばかりだった。
学校でもみんなその話をしている。
中には、亜弥ちゃんだと知っている人もいるようで、
特別仲の良かったアタシに、色々尋ねてくる人もいた。

亜弥ちゃんがどうなってしまったかは、わからない。
駅前の交番に飯田さんを訪ねてみたけれど、
パトロールが一層厳しくなったせいか、不在だった。

「マコ」
「…あ、あさ美。どしたの?塾の帰り?」
「うん…」
交番から帰る途中に、バッタリあさ美に出くわした。
ピンク色のショルダーバッグを抱えているので、
どうせまた塾だろうと思ったが…その通りだったようで。

「なんか、久しぶりだね。二人きりなの」
「そうだね…」
確かにそうだ。最近は、あさ美とゆっくり顔を合わせる暇もなかった。
愛がバイト中以外は、アタシはほとんど愛と一緒にいるせいだな。
309 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)03時02分16秒
あさ美、ちょっとやつれた…?
なんか、頬がこけて、目元の感じが暗い気がする…。
やっぱり亜弥ちゃんのコトでしょげてるのかな。

「何か、大変なコトになってるね」
「そうみたい…」

「あのさ───」
「あっ、そうだ。あさ美」
「!…な、何?」
アタシが話かけると、あさ美はどこか困惑した表情を浮かべた。
「…もしかして、何か今言いかけてた?」
「うっ、ううん。何でもないの!いいよ。続けて!」
「??…ま、いいや。続けるね。
 あのさ、実は───」

アタシはあさ美に、美貴さんたちのコトを告げた。
亜弥ちゃんの件で考える暇がなかったが、
こっちも相当重要な事件だ。
310 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)03時02分57秒
「そう…なんだ…」
「そうなんだよー。もー、せっかく皆仲良くやってきたのにさぁ」
「ふ〜ん…」
あさ美、もしかしてそんなに『モーニング』に興味がないのかも知れない。
そういえば、そんなに頻繁に顔出しもしてないし、
メンバーの皆と仲が良いワケじゃない。
そっか…。亜弥ちゃんもそうだったっけ。
だから、どこか疎遠に感じてしまっていたんだ。

「あれ…」
「ん?どうしたの?」
「そう言えば…。こんな話聞いたんだけど、知ってる?」
「こんな話?」
「うん…。実は───」

ブルルルル…。

あさ美が何かを話しかけようとしたその瞬間、アタシのケータイが鳴った。
「ご、ごめん」
「あ、いいよ、うん…」

呼び出しは、愛からだった。
ゲッ!もうバイト終わってる時間じゃん!ヤバッ。
311 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年03月11日(火)03時03分33秒
『マコぉぉぉぉぉ私早く来ないと死んじゃうやよぉぉぉ。うぁぁぁん』
「な、泣くな泣くなッ。今行くすぐ行くから!
 ゴ、ゴメンねあさ美ッ、また今度!!」
「……いつも愛ちゃんの方が大事なんだね……」
『マゴォォォォォォ』

「えっ!?あさ美、何!?」
愛がうるさくって聞えない。
何て言ったんだろ。ポツリと。

「ううん、何でもない…。早く行ってあげて」
「ゴメンねッ。またねッ」
「…じゃあ…ね…」

ここでアタシとあさ美は別れた。

アタシは、またここで大きな落とし穴があったコトに気付かなかった。
あさ美の身に起きている、大変な事態に───。
312 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月11日(火)03時16分01秒
(;゚Д゚)ヒィイ…
もの凄い大変な事に…
なんか混乱してきましたよw
続きカナリ気になる…昼寝も出来ん…
313 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年03月11日(火)11時57分10秒
あ、あやや。・゚・(ノД`)・゚・。
314 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月11日(火)17時05分27秒
こ、こんこん…(゚o゚)
315 名前:74 投稿日:2003年03月16日(日)17時13分17秒
ごっつぁむ すごいね
316 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月18日(火)21時52分40秒
このあと、とんでもない事態にっ!(ガチソコ風)
317 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月20日(木)13時42分18秒
このあと、特派員が見たものは!?(古ッ!)
318 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月22日(土)22時35分12秒
続きがすごい気になります。
更新ずっと待ってますよ。

お願いしますごっつぁむ様〜

319 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時49分06秒
レスがとんでもないことにぃ〜w
えっと、長い間放置してしまってすいませんです。
今までみたいに暇でないんで、ちょっとばかりペース落ちますが
これからも続きます。イヒ。よろしくでつ。
320 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時50分12秒


17.これからの道



321 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時51分32秒
亜弥ちゃんは少年院に入れられる事になったそうだ。
詳しくは知らないが、援助交際の常習犯だったコト、
それから、アタシは知らなかったが、万引きの常習犯でもあったらしい。
ちょっと意外だった。

アタシにとっての亜弥ちゃんのイメージは
太陽みたいな爽やかな女の子だったから…。

少なくとも半年以上は出てこられない。

だから、結局あの日以来亜弥ちゃんには会えていない。

その話を聞いた時、アタシは心の底から泣いた。
愛も泣いていたから、二人でわんわん泣いた。
どんなに泣いても泣き止まないほど、泣いて泣いて過ごしていた。
322 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時52分05秒
* * * * *

街全体が暗い雰囲気になった気がする。
駅前にのたまっていた少年少女たちも何時の間にか姿を消してしまい、
活気がなくなってしまった。
「モーニング」が休止という情報を得た女子高生たちも、
今や違う話題を見つけて、すでに忘れたかのように大人しくなった。

どこか、変わった。
いつからだろう…。こんなコトになってしまったのは。

真希さんと梨華さん、ひとみさんはほとんど自宅から出て来ないそうだ。
あいぼんが真希さんに会いに行っても、いつも眠っているらしくて、
ほとんど会うことができないらしい。
やっぱり真希さんにも、今回のコトがそうとう堪えたみたい…。

梨華さんとひとみさんはよくお互いの家で会ってるらしいけれど、
それ以外ではあまり姿を現さなくなった。
梨華さんは学校へは“ばあや”の保田さんが送り迎えしているし、
ひとみさんは学校へも行っていないらしい。
323 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時52分38秒
ののとあいぼんはアタシらとそれほど「モーニング」に入った時期は変わらないので、
学校へも普通に行く。
けれど街中に出るのは忍びないようで、よく二人でうちに遊びに来た。

あさ美は、しばらく見なくなった。
そういえばあの時、何か言いかけてたのは何だったんだろう。
それに、随分と痩せこけていたし…。
大丈夫だろうか。

そんな頃、また暗いニュースがアタシたちの間に駆け巡った。

少年犯罪が、この街で火をつけたように急増しているらしい。
少し前から増え続けた窃盗、恐喝、万引き…等々の犯罪行為が増え、
警察でも手がおえなくなっているそうだ。
しかも、組織的にそれは行われているらしく、
警察ではその組織の絞り込みを調べているらしいのだが…。

本当に、どうなってしまったんだろうこの街は…。
もう二度と、皆で笑い合う日はこないんだろうか…。
324 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時53分23秒
* * * * *

気晴らしに、愛と買い物に出かけた。
渋谷でショッピングして、カラオケに行って、ご飯を食べた。
ここのところ、色々あって溜まっていたものを二人で思いきりぶちまけてきた。

その帰り道で、アタシたちは思いがけない人たちに会った。

「あ、小川と高橋じゃん」
「ホントだ。小川と高橋だ」

うっ…。
正直、声をかけられて戸惑った。
あんなコトがあった今、どう関わっていいのやら…。
美貴さんたち、北高トリオだった。
325 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時53分59秒
「アンタら、この街で暴れるのやめなさいよ」
見つけられた瞬間に三人はこちらにやってきて、
アタシと愛の周りを囲んだ。
そして、ぶしつけで失礼なコトを言う。
なんて人だ。
「え、どういうコトですか?」
アタシはわざとシラを切ってみせた。

「とぼけんじゃないって。エンコーして捕まるような女の友達だもんね、アンタ」
「ホント。やめて欲しいよねー。アタシらまで同類だと思われちゃう」
美貴さんたちが声をあげて笑うのを聞きながら、
アタシは自分の中で何かが込み上げてくるのを感じた。

怒り。

亜弥ちゃんは確かに、許されないコトをしたかも知れない。
けれど、この人たちに亜弥ちゃんの何がわかる?

亜弥ちゃんの痛み、亜弥ちゃんの辛さ。

何がわかって、こんなコトを言えるというんだろう。

グッと握った拳を突き上げようとしたその時。
326 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時55分04秒
パァァンッ。

ビンタの音が鳴り響いた。
「やめてくださいっ」

ビンタの主は、愛だった。

「いた…ふ、ふざけんじゃねーよッ田舎娘ッ何様のつもりだよッ!?」
叩かれた左の頬を抑える美貴さんは、すぐに愛に詰め寄ると胸倉を掴んだ。
けれど愛は一歩たりとも退いたりせず、鋭い視線を美貴さんに返し叫んだ。
「亜弥ちゃんのコト、そういう風に言うのはよくないと思いますッ!」
「ハァ!?バッカじゃねーの!?
 援交で捕まるような女かばってんじゃねーよ!」
「だからって、それを笑ってもいいんですか!?」
美貴さんがジリジリと詰め寄れば詰め寄るほど、愛は前へ前へと歩み寄ろうとしていた。

…カ、カッケー…。
そんな風に思わず見とれてしまうほど、その姿がカッコ良かった。
って、感心してる場合じゃないって…!

「あ、愛ッ。もういいから。ね。ほら…。
 あの、美貴さんすいません。以後気をつけますんで」
「マコ!なんでそんな簡単に…」
キャーキャーわめく愛をジリジリと引きずって、アタシはとにかくその場から退散した。
327 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時56分07秒
* * * * *

「バカマコッ!あんなコト言われて悔しくないのかよっ!?」
「バカはどっちだよ!」
家に帰ってから。
居切りだつ愛をなだめ、アタシは深々とため息をついた。
そりゃあ、アタシだってあの場で美貴さんたちの頬を数百発ぶん殴ってやりたかった。
でも…。

「愛。亜弥ちゃんのコトはさ、言わせたい人には言わせておこう…?」
「なんでッ!?」
「だって、亜弥ちゃんがそんな風にしてしまったのは事実だし。
 アタシらが騒いでも仕方ないと思う…」
「……マコ……」
そう言ったきり、二人して黙り込んでしまった。

あの日から、アタシたちの生活が変わっていく。

崩れるコトのないと思っていた世界が、
こんなにも早く終ってしまったなんて。
そんなの、悲し過ぎる…。

「ねー、愛」
「…ん」
328 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時56分51秒
「ディズニーランド、行こっか…」
「え??」

愛は顔をあげると、微妙に曖昧な表情をこちらに向けた。
「こんな時に」とか、「それでも嬉しい」という入り混じった感情が流れてる。
それがアタシにハッキリ伝わるほど、彼女の表情は複雑そうだったのだ。

「こんな時だから、だよ。ふさぎこんでても始まらない」
「マコ…」

ピンポーン。
家のチャイムを、誰かが押した。

ハッ、とアタシも愛も、同時に玄関の方を振り向く。

アタシと愛は顔を見合わせ躊躇したけれど、結局アタシが出るコトにした。

スリッパをペタンペタンとさせながら、短い廊下を歩く。

「はーい…あ、ちょっと…!」

ほんの10cmだけ開けたドアの隙間を、その手が無理矢理にこじあけた。
開いたドアから入ってきたのは…。

「お願い…助けて…」
「え!?ど、どーしたの!?」

そう言った切り倒れ込んでしまったのは、他でもないあさ美だった───。
329 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年04月02日(水)22時57分50秒
あい、久々の更新でつ。
しかし文章を荒書きしたっていうのがバレバレですね…。ひーん。
330 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月03日(木)11時59分26秒
キタ━━━━川o・∀・)━━━━ッ!!
って、いきなりシリアスな展開(;´Д`)
更新待ってますドキドキ
331 名前:ちゃぁみぃ後藤 投稿日:2003年04月05日(土)13時50分12秒
紺野ーーーー!
ごっつぁむタン、更新おつ
332 名前:まこあいwwww 投稿日:2003年04月07日(月)13時44分36秒
こんにちわぁ〜ごっつぁむ様
小説ほれました!!まこあい・・・
更新おねがいしますw
333 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月22日(火)17時03分12秒
保全
334 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時40分14秒
うむ。。。
更新が送れて申し訳ないでつ。
ちょいと更新頻度が相当遅くなるかも知れないですが
まだまだ続きます。申し訳…。
335 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時41分55秒
18.消せない傷跡

倒れ込んだあさ美の様子は、目を背けたくなるほどひどい状態だった。
乱れた服、頬や顔のあちこちに擦り傷をこしらえ、いつも持ち歩いてるバッグだけを抱えていた。
靴は履いてない。
裸足のままでここまで走ってきたようだった。

愛があさ美の看病をしている。
濡れたタオルで体を拭き、消毒液をしめらせた綿で傷口をちょんちょんと叩いている。
その様子が、見ているだけで痛々しい…。

「あさ美まで、どうしたんだろう…」
「わからない…。ぐっすり眠ってるけど…」

体のあちこちに見られる青アザ。
これはどう見ても誰かに殴られた跡だろう。
それよりも気になるのは…。
左の手首の───。

「これ、リストカット…」
ちょうど同じ部分を見ていた愛が、ぽつりと呟く。
アタシはただ、何も信じられずにその傷跡を見つめながらうなずいた。
336 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時42分30秒

あさ美が…自殺未遂を図った───。
それも、傷は一つじゃない。
幾重にも並行に引かれた傷跡が、全てを物語っていた。

アタシ、バカだ。
またここにも苦しんでる人がいた。
なのに、また気付いてやれなかった。
何があったのか詳しくは知らない。
ううん、知ってなくちゃいけなかったのに。
…何が、親友だよ…。

「マコ…」
愛の指が、アタシの髪をとかす。
その手の温もりが、今はただありがたかった。
「うん…。大丈夫…」
小さく震えるアタシの肩を、愛は優しく抱きしめてくれる。
…アタシには、愛がいるから…。
だから、頑張れる。
337 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時43分06秒
「あさ美にとって、アタシは頼れる存在じゃなきゃいけなかったはずだよね」
無意識に小さく漏らしたその声が震えていた。
自分でもわかる。アタシ、今泣きそうだ。
こうして、愛にギュッと抱きしめていてもらわなかったら、涙が溢れてるとこだった。

「マコ。あさ美ちゃん、今ここにいるよ?」
「え…?」
「あさ美ちゃん、今ここにいるじゃない。マコを頼って、来たんだと思う」
「あ…」
「だから、あさ美ちゃんが起きるまで待ってよう?ね?」

「うん…」

* * * * *

「…私、いじめられてたの…」

目を覚ましたあさ美は、いつもと同じように冷静沈着なままだった。
淡々と自分のコトを、まるで他人事のように語る様が物憂げに見える。

愛が気をつかって早めにバイトを出たから、アタシとあさ美の二人きり。
きっちり、話をつけたい。

「クラスのコたちに目つけられて…。それから、ここ1ヶ月ずっと」
338 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時43分50秒
力なく笑うあさ美の顔を、アタシはただ黙って見ていた。
何を言っていいのか、わからない。
簡単なたった一言で、全てが壊れてしまいそうだったから。
それでもあさ美は話を続け、アタシは話を聞くしかなかった。

「私、これでも何度も戦ったんだけど…。もうつかれちゃった。
 ねぇ、マコ。私もう、死んでもいい?」

え───。

「バ、バカッ!何言ってるんだよ!?」
慌ててあさ美の肩をガクガク揺さぶるけれど、あさ美は不気味に小さく笑い、
何も映っていないような瞳でアタシを見ていた。

「気付かなかったくせに。…そばにいてくれなかったくせに。」

「……ッ!!」
339 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時44分31秒
あさ美が別人に思えた。
まるでマネキンのように光のない瞳。
死んだように冷たいその瞳から放たれるのは、
アタシへの…憎しみとかそーいうのなんだろうか。

「あさ美」
「そうだよね。マコは愛ちゃんだけいればいいんだよね。
 私なんか死んでもいいんだよね。いいんだよね…いいんだよね…」
何度も何度も虚ろに繰り返すあさ美。
ただそれだけが、決められた仕事のように繰り返された。

「あさ美!聞いて!」
「聞かないよ…。私はマコを憎んで死ぬ」

「あさ美…!!」

「何も言わないでよ。私死ぬんだから。憎んで死ぬんだから」

あさ美はふらふらと立ちあがると、自分のバッグからカッターナイフを取り出していた。
瞳に映るのは、憎むべきアタシ。

アタシは、どうしたら───。
340 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時45分05秒
汗が頬を伝う。
それも、一筋じゃない。
全身から、何か嫌な汗が沸きあがってきた。

「あはは。愛ちゃんが来てから、みんな変になったんだよね。
 亜弥ちゃんは捕まっちゃうし、後藤さんたちも解散して。
 全部、全部愛ちゃんとマコのせい。愛ちゃんとマコが出会ったせい」

「あさ美、やめ…」

しゅっ。
小さな音を立てて切れた頬から、血が滲み出した。
アタシはそれをなんてことなく、指先で拭う。
アタシは、動かなかった。

「ごめんね、あさ美」
小さく、呟いた。

「謝らないでよっ!!謝ったって、何にもならないよっ…」
あさ美が膝をついて、床に倒れた。
手からカッターナイフが転げ落ちる。
彼女の悲痛な叫びを、アタシは胸の中にしまうだけだった。
確かに、あの日から少しずつ日々が変わっていた。
けれど、アタシはそれが悪いことだと思いたくない。
341 名前:ホームタウン@ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時45分43秒

……。

目の前の親友は、ただ呆然としているだけ。

アタシは立ちあがる。
ここで彼女にできることは、これくらいしかないから…。

「あさ美。行こう」
「い、行くってどこへ…」

「アタシが、ぶん殴ってやる」
342 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年04月23日(水)18時46分27秒
次はいつだろう…。
343 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月24日(木)18時30分24秒
こんこん…涙でて来るよほ。
更新マターリ待ってます。放置だけはイヤですからね・゚・(ノД`)・゚・
344 名前:読みました・・・ 投稿日:2003年04月30日(水)18時54分11秒
良すぎです!マジいいっすね!!涙でましたいやマジで・・。続きが早く読みたいっす
345 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年05月09日(金)21時16分10秒
346 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年05月12日(月)22時57分42秒
どうもです。
更新遅れてしまってスマソです。
ええと、企画なんか参加してねーで更新しる!と思ってる方多いと思います(ゴメンネ
正直ちょいとスランプでこの先どうしよう、と思ってたんですが
ちゃんと続きを書けそうになったので、書きます。
この1ヶ月の間に生活がずいぶん変わって、以前よりは更新できないぽですが
ちゃんとするからこれからもよろしくでつ。であー。
347 名前:u-dai 投稿日:2003年05月17日(土)13時09分25秒
すっごい好きなんですよ、この小説。涙がでてきます・・。
何回も何回も読み直しちゃうほどです。更新を心から待ってます!
ごっつぁむさんがんばってください!!
348 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年05月27日(火)05時18分10秒
遅れて申し訳。
ちびっとずつ再開。
349 名前:ホームタウン 投稿日:2003年05月27日(火)05時19分18秒
19.親友

あさ美とは、中学二年の時初めて出会ったんだっけ。
あれは始業式の日で、アタシもあさ美もまだ、今よりほんの少しだけ幼かった。
アタシの髪も今ほど長くなくて、あさ美はいつも勉強ばかりしていた。
仲良くなるまでは、ああ、紺野さんってがり勉だな。くらいの認識しかなくて
向こうも、まったく違うグループと一緒にいたから。

だけど、ある時から。

そう、あの時。

アタシが彼女を、守ったあの日から。
アタシたちは親友になったんだ。
350 名前:ホームタウン 投稿日:2003年05月27日(火)05時20分05秒
◇◇◇

あさ美の家は、市のお偉いさんだか何だかで
普通の家よりは少しだけ、裕福な暮らしをしてた。
あさ美は成績が良く、一年の時に学年トップを何度か取っていたせいもあって
その名前だけは何度も聞いたことがあった。
あんなすごいコが、何故こんな普通の中学にいるんだろ…と思っていたのを覚えてる。

同じクラスになっても、ほとんど喋らなかったのはさっきも言った通りで
6月頃まで一言も喋らないままのクラスメートだった。

あれは、そう。
6月の下旬だ。
水泳の授業がその日はあった。
正確にはすでに二週間も前から何度か水泳の授業があって、
その日はもう四度目になるところだった。

アタシは夏限定で水泳部だったから、水泳の授業はいつも張りきってた。
一番最初にプールに向かって、一番最初に着替えた。
だからその日、風邪でも引かなかったらあさ美と喋る事はなかったのかも。
351 名前:ホームタウン 投稿日:2003年05月27日(火)05時20分41秒
運悪く風邪を引いてしまったアタシは、その日は遅れてプールへ向かった。
見学者は更衣室の掃除、というワケのわからない規則のせいで
アタシは渋々と、規則通りに掃除をすることになったんだ。

更衣室の中は、夏だけしか使われないせいでいつもカビ臭くって
いつも使ってるのに関わらず、それだけは慣れなかった。
入るたびにうぇ…と、胸のあたりがムズムズした。

更衣室の奥がシャワー室になっていて、たった三つほどのシャワーの個室が設備されている。
デッキブラシを、これまたありえないほどの匂いが充満した掃除用具入れから取りだし、
シャワー室の掃除を始めようとした。

バンッ、と突然更衣室の扉が開いて、誰かが慌てた様子で中に入ってきた。

「どうしようどうしようどうしようー!水着忘れちゃった・・忘れちゃった…」
そんな声が、締め切った更衣室内に響いてシャワー室まで聞こえてきた。
何となく顔を出してみると、誰かが足を上下にバタバタと地団太を踏みながら
慌てふためいている。
その人物の顔を見て、アタシは絶句した。
352 名前:ホームタウン 投稿日:2003年05月27日(火)05時21分17秒
紺野あさ美。
その人だったのだから。

オロオロと、ついには濡れた床に座り込んでしまった彼女。
アタシにはどうやら気づいていないようだった。

水泳の授業に水着忘れるなんて、どうかしてる…。

声をかけるかどうかは悩んだけれど、結局かけることにした。

「あの、紺野さん」
「?」
壁からひょっこり顔を出したアタシを見つけ、あさ美はキョトンとしている。
そしてすぐに顔を真っ赤にして、立ち上がった。
「あ、あの、小川さん…今の見てました?」
「うん。もうバッチリ」
「や、や、や、やだぁ…」
恥ずかしそうに顔をしかめるあさ美。
アタシはそれを見て、初めてこの人と会話をしている事に気づく。
ああ、この人ってこんな声をしてるんだ。とか。
ああ、この人ってホントはもっと感情的な人なんだー、とか…。
初めて見つけた彼女の姿は、アタシが思ったよりももっと色づいていたんだ。
353 名前:ホームタウン 投稿日:2003年05月27日(火)05時21分48秒
「アタシ、水泳部で水着2枚持ってるから…貸してあげようか?」
「えええっ、本当?い、いいの?」
「うん。いいよ。いいから使って、ね!」
「あ、ありがとうー!」
バッグから水着を取り出して彼女に投げると、それを巧くキャッチした彼女は
すぐに自分の身体に当てて、サイズをチェックしはじめた。

「ありがとう、小川さん」
「どういたしまして」
「小川さんって、良い人ですね!」

それが、あさ美との始まりだった。
354 名前:ホームタウン 投稿日:2003年05月27日(火)05時22分23秒
続きます。
短くてスマソ…。
355 名前:u-dai 投稿日:2003年05月27日(火)18時45分02秒
イイっすね!紺ちゃんとまこっちゃんの出会い・・。
本編の方が気になります!!更新待ってます〜〜^-^
356 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年05月27日(火)19時42分39秒
更新お疲れさまです。
こんこん面白いネェー!ドジっぽい所がイケてる。
続きまってまーす。
357 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月29日(木)22時29分28秒
地団駄こんこん萌え〜。
358 名前:露天家 投稿日:2003年05月30日(金)23時28分24秒
同じくこの板で5期メン中心に書いている者です。
実はこの作品が、5期メン小説を書くようになったきっかけの1つであり、内容のすばらしさに大変感動しました!
応援してますので、これからもがんばってください!
359 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年06月05日(木)17時53分29秒
>>355さん
ごめんなさいw まだ本編には戻ってません。スマソ。

>>356さん
いつもお待たせしてすんまそん。まこあいはも〜少し待ってねー(ぇへ

>>357さん
実はここ最近、娘内の1推しは紺野さんだったりします。
ハロプロ1推しは後藤さんですがね!(小川は!?

>>538さん
いやいやいや、感動されるなんてもったいないお言葉です。
でもすっげー嬉しいんでこれからも頑張ります。
できるだけ…。
360 名前:ホームタウン 投稿日:2003年06月05日(木)17時54分36秒
◇◇◇

それからは普通の付き合いが続いて、アタシたちはよく話すようになっていた。
けれどまだ、“親友”と呼べるようなレベルではなく、あくまでクラスメートとして。
アタシとしてはそれで別に良かった。
そのうち仲良くなれば、そうなるかも知れない。そう思っていた。

秋口のある日のこと。

忘れ物をしたアタシは、もう閉まり掛ける校門を通り抜けていた。
こんな日に限って、忘れ物をしてしまったんだ。
友達から借りたCD。期限は明日まで。
それを忘れたりなんかしたら、元も子もないじゃんか。
2階の教室へは裸足で駆け上がり、靴下の裏を滑らせて走った。
361 名前:ホームタウン 投稿日:2003年06月05日(木)17時55分12秒
窓から射し込む夕暮れに気を取られ、余所見をしながら教室の後ろの戸を開けた時。
教室の中に誰かがいるのに、気がつかなかった。

「あ、あれ?」
気づいた時にはすぐに、その状況がまともな状況でないと悟っていた。

こちらを向いてる女子が3人と、それと対峙するあさ美がそこにはいた。
つまり、これって…。
イジメ!?

3人とも、あさ美のグループの子たちだ。
いつもどこか、頭のいいあさ美に宿題を見せてとたかったりしてるのを見ていて
あまりいい感じはしていなかった。
アタシらのグループをはじめ、全体的に女子グループからは嫌煙されている感じだったから。
362 名前:ホームタウン 投稿日:2003年06月05日(木)17時55分58秒
「麻琴じゃん。何してんの」
「え。いや、忘れ物とりに」
「あっそう。じゃあ早く取って帰ってよ。あたしら、取りこみ中だし」
「…あ、うん」

アタシは言われるままに自分のロッカーの所まで移動し、すぐにCDをカバンの中に入れた。
後ろから4つの視線が突き刺さってくるのが解る。
うー…。やりにくいなぁ。

「ねー。イジメとかってよくないんじゃない?」

振り向かないで、言う。

もちろん、振り向かないでも彼女らがどんな反応をしてるかは解る。
顔を見合わせて、笑いこけでもするだろう。
同い年ながら、愚かだなぁ…と思った。
363 名前:ホームタウン 投稿日:2003年06月05日(木)17時56分32秒
きちんと振り向いて立ちあがる。
予想通り、彼女らはニヤニヤと笑いながら、アタシとあさ美を交互に見つめていた。
アタシはその隙間を通り抜け、あさ美の横に立つ。

「あさ美さー。アンタたちのグループから抜けたいんだって。
 ってわけで、ウチらこれから親睦会だから。ゴメンねー。ほら、あさ美行くよ」

アタシはそうやって言いたいだけ言ってやってくれると、キョトンとしてるあさ美の腕を引いた。

「あっ。ふざけんなよ!まだ…」
「え?だってグループ抜けるんだから関係ないじゃん?ほら、行くよあさ美」
「あ、うん、うん。待ってー、おが…えっとマコ!」

教室を抜ける時は、大変だった。
何がってさ。2人して大笑いをこらえるのが!

それからアタシらは同じグループになり、今に至るわけだ。
364 名前:ホームタウン 投稿日:2003年06月05日(木)17時57分27秒
◇◇◇

最初に崩れたのは、里沙ちゃんが来なくなってから。
もうここしばらくずーっと見てない。

その次は亜弥ちゃん。
亜弥ちゃんの苦しみに気づいてあげられなくて、助けてあげられなかった。
何も、できなかった。

だから、何かの代わりとかそんなのじゃないけれど…。
あさ美だけは。あさ美だけは、アタシが護りたい。「親友」として。

もしかしたら、また傷つくかもしれない。
でも、戦わないよりは戦って負けたい。
アタシは、もう逃げるのは嫌だから。

真希さんたちに出会って知った、仲間の大切さを忘れたくないから。

「ゴメンね、あさ美」
「ううん。ありがとう…こっちこそ、何も言わなくてごめんね。マコ」

アタシたちは、友達だから。
365 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年06月05日(木)17時58分32秒
うぅ…また微妙に短くてスマソ。
続きもできるだけ早く書きます念。
366 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年06月05日(木)18時43分21秒
友情…良いっすね…涙出て来ました。
367 名前:u-dai 投稿日:2003年06月05日(木)19時45分55秒
更新ですね!待ってました!!本編は気になりますが、
今のお話も面白いですよ。まこっちゃんがぶん殴りに行くところを
ドキドキしながら期待してますよぉ〜次を待ってますぅ
368 名前:露天家 投稿日:2003年06月05日(木)20時19分56秒
更新待っておりました。
やっぱり感動の言葉なしには語れません。
自分もこんな話が書けると良いんですけどねぇ・・・。
369 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月10日(火)16時25分45秒
おもしろいっす。
期待期待。
370 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月25日(水)03時06分26秒
初めて全部読ませてもらいました。
友情や仲間をテーマにした作品というのは、娘小説ならではでとても楽しみ甲斐があります。
話の内容についての感想はネタバレになるので書きませんが、
最初の頃と比べると、格段に文章が上手くなってるなぁ・・・と思います。
本当に楽しみですので、これからも応援します。頑張って下さい!
371 名前:u-dai 投稿日:2003年06月29日(日)18時21分14秒
ごっつぁむさ〜ん頑張ってくださ〜い。
みなさん更新を心から待っていますよ〜。
僕的にはいつまでも待つんで、マイペースで
がんがってください!(叫
372 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月02日(水)17時11分18秒
マジで感動モノだし面白い
期待して升。
373 名前:ごっつ 投稿日:2003年07月10日(木)12時51分09秒
というわけで、短編バトルが終わったので久々に更新をば。
例によって短いです川つ▽`)

レスはまぁ、ぼちぼちしますが。。。
そろそろ佳境なんで、あんまりしないかもです。申し訳。
ということでいきまっしょい。
374 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時52分24秒
20.友達だからとか。

あさ美とアタシは家を飛び出し、そのままあさ美の家へ向かった。
本当は、こんな風に傷口を抉り出されるのっていい気分じゃないと思う。
けど、アタシの気が済まないから。
あさ美が何というと、アタシは絶対彼女を傷つけた奴は許さない。

「あさ美、それで相手はどんな奴なのさ?」
「……えっと、実は…」

どうにも言いたくなさそうな雰囲気を、あさ美は醸し出している。
でもそれじゃ、何の解決にもならない。

「あさ美。ちゃんと教えて」
「うん…あの、実は…」

あさ美を傷つけた相手。
それは、あさ美自身にも覚えがないらしい。
全身黒ずくめの3人組だということしか。

多分、逆恨みってやつだと思う。
誰のだかは知らないけれど、多分…あの人たちの。
375 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時53分20秒
「よし、あさ美。そいつらのところに行こう」
「うん…でも、どうやって?」
う…確かにそれが問題だ。
あさ美だって、きっとそいつらの事を知ってる訳じゃないだろうし…。
「どっか、手がかりはないの?」
「えっと、いつも…塾の帰りを待ち伏せされてて…。
 道を変えても絶対つけられてるし、車で送り迎えしてもらっても、次の日の朝に家の窓が割られてたり…」
「!?あ、あんた!そんな大変なこと、何でもっと早く言わないの!?」
「ご、ごめん…」
今度は、素直に謝ってくれた。
うん、それで大丈夫だ。

「じゃあ、塾の前で待ち伏せしてみるか…」
「あ、うん…。ごめん、ありがと」
「いいよ。気にすんな」
376 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時55分51秒
◇◇◇

あさ美は塾の入り口からまっすぐ出て、先を急いだ。
もちろんアタシがつけてる事を、バレないように。
暗闇の中であさ美の姿を追い続けるのはかなり困難。
ちょっと目をそらした隙に、距離がずんずん離れていってしまうように見えた。

あさ美が、帰り道の公園に入った。
もちろん奴らを誘導するための作戦で、騒ぎに気づかれ難くするため。
こっちが負けたら逆に危ないけど、今のアタシがコイツらに負ける気はしない。
どんなにギタギタにやられたって、絶対絶対立ち上がってやる。
あさ美が見える程度にほど遠い場所から、彼女を見守った。
あさ美がブランコにポツーンと座り、こぎ始めた時。

奴らが動いた。

どこに潜んでいたのか知らないけれど、ざわざわと彼女を取り囲んでいきなり殴り始めたのだ。
いや、正確にはあさ美がすんでのところで避けたから、当たってはいないけれど。
相手は3人。全身黒い服で覆われて、フードを目深に被ってる。
間違いない、コイツらだ。
377 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時56分36秒
アタシは拳をギュッと握り締めると、まず背を低くして彼女らに近づいた。
その間にあさ美が巧く引き付けておいてくれる作戦になってる。
ここで絶対、コイツらに土下座させてやる。
あさ美を傷つけた罰を、アタシが思い知らせてやる。

「何してんだよっ!!」

握った拳が、3人組の1人の後頭部に直撃した。
殴られた相手は一瞬よたりと前にふら付き、すぐに踵を返してアタシを見た。
こちらからは顔は見えない。けれど、きっと驚いているんだろう。
動きがほんの少しだけ止まった。
「ふざけんじゃねーよテメーら!!」
アタシの拳はそうしている間にも次の獲物を捕らえ、今度は腹の辺りに一発くらわしてやった。
いきなりの状況に対応できてないせいか、いとも簡単に3人組はへばってしまった。
というか、コイツら全然ケンカ慣れも何もしてない…?

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいいっ」
アタシが最初に殴りつけた奴が、地面に膝をつけて泣き出した。
他の2人も同様に地面にへたりこんでしまい、同じように泣き声をあげる。
…どういう事…?

逆恨みというやつ、だった。
378 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時57分31秒
フードを取った彼女たちは、あさ美の塾のクラスの知り合いだった。
それも“北高”───つまり、あの人たちの後輩。
彼女たちの言い分では、誰だかわからないけれど誰かに脅されてやったらしかった。
「ボイスチェンジャーみたいな声で、“紺野あさ美を襲え”って命令された」
アタシが一番最初に殴ったヤツはそう言った。
「いつも1位の紺野が塾やめれば、今度は私が1位になれると思った。
 私たちも紺野の存在うざかったし、やってやった」
次に殴ったヤツもそう言った。

殴らなかったヤツは、ただ泣き伏せていた。
「親に連絡しないで。塾に言わないで」と。
つまり、こいつらの本心ではなく、誰かに命令されていたそうだ。
なんでそこで、あさ美がそんな目に合わなくちゃいけないのかはわからないけれど。
正々堂々と勝負できなくなって、その鬱憤を他で晴らそうなんて卑怯すぎる。
いくら、脅されたからとはいえ。
379 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時58分18秒
多分、…多分だけど。
あの人たちの、真希さんに対するあてつけなのかも知れない。
それも、真希さんたち本人じゃなくて、その周りの人に対して。
卑怯すぎるじゃないか。
ただ、あの人たちが出てきて相手になった場合…。
アタシは多分、ズタズタに傷つけられると思う。
でも、真希さんの言う「アタシの信じる正義」というやつがアタシにも備わってるのなら。
臆する事はないんだ。ただ、負けない。負けたくない。

「ねぇ。アンタら。親には言わないからさ、ちょっと役に立ってくれる?」
アタシは彼女たちに向かって、意地悪く笑った。
さあ、次はこっちの番だよ。
380 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時59分05秒
21.隠れた満月

「それじゃ、あさ美ちゃん大丈夫なの?」
「ん。ちゃんと、家に帰って明日は学校行くってさ」
「そっかぁ〜。良かったぁ」
どうやら愛もかなり心配してたようで、バイトを早退までしてきたそうだ。
まったく、アンタがいたらもっとややこしいことになってたよ…とは、言えないけれど。

ヤツらには手筈通りに働いてもらう事になってるし、きっとこの件はすぐ解決するはず。

だから、大丈夫だ。
愛には心配かけたくないし、ここはアタシが一人でサクッと片付けちゃおう。
あさ美だって、もう大丈夫だと思うし。

「ねーマコ?」
「うーん?」
「あのねー、ディズニーランドいつ行くん?」
そう言った愛の表情は、まさに好奇心でいっぱい…という感じだった。
381 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)12時59分37秒
こいつ、そんなに行きたいのか…。まぁ、行こうと言ったのはアタシだけど。
「そだね。今度の週末にでも行く?」
「うん。…それで、お願いなんやけど」
「あ?」
「うん。えっとさー、2人だけじゃなくて、皆で行きたいって…思ってるんやって、私」
愛はどこか申し訳なさそうにそう申し出た。
ほんの些細な、お願いだ。可愛らしくて笑えてくる。
「アハハ。そんなん、全然OKじゃん。皆に言っておくね」
「ホント?」
「ん。もちろん。アタシだって、楽しみにしてんだから」
「…うん!」
愛は極上の笑顔でうなずくと、そのままベッドに入り込んで寝てしまった。
いつもながら、寝付きが異様に良いのが羨ましい。

「おやすみ」
アタシは彼女の頬に口付けをすると、自分も毛布に包まりながら眠りに就いた。
382 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時00分23秒
◇◇◇

数日経って。
アタシとあさ美、それから3人組はとある公園にいた。
もちろん、その“首謀者”をおびき寄せる作戦である。
ベンチの付近にあさ美と3人組が寄り添って固まり、アタシ一人が遠くからそれを観測する。
本物の“首謀者”が出て来た時に、飛び出して捕まえる作戦だ。
…うまく、いくかわからないけど。
まず、本当におびき寄せることができるかどうかも謎。
まぁ…やるしかない。

…という作戦を立てて早1週間。
“首謀者”からの命令の電話は、いまだに入っていなかった。
電話がかかってこなきゃ、とっ捕まえる事なんかできやしない。…うーん。
もうあきらめようよ、と簡単に立ち直れてしまっているあさ美とは裏腹に、
アタシはここまできて諦める訳にはいかないと思っていた。
だって、ムカつくじゃん!確かに実行犯の3人の顔は割れたけど(しかも微妙に行動を共にしてるし)
その首謀者の顔面を一発ぶん殴ってやるまで、絶対退かない。

根気よ、根気。
383 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時01分28秒

ということで、今日も公園でたむろしていた訳。
今日も失敗かな…と思ったその直後に、事は起こった。
ここからだと、遠目にしか見えないけれど…。
確かに、3人組のうちの1人のケータイに電話がかかってきたようで、
あさ美自身から合図があがったのだ。
ついに、きた。
失敗しないように、着実にその刻を待つ。

電話がかかってきたら、巧く理由をつけて呼び出させるのが目的。
そのために、3人組には台本まで用意して覚えさせた。
胡散臭いドラマのようなセリフしか思いつかなかったけれど、そんな事は問題じゃない。
ただ、何が何でもう呼び出せ。とだけ伝えておいた。
その刻が、今きたんだ。
電話はかなり長く続いているようで、3人組が時々声を張り上げたせいで
こっちまでその声が聞こえていた。
「そっちがその気なら、私たち警察に言います!」とかそんな事を言ってる。
警察に言ったところで、簡単に身元が割れるのかどうかは疑問だけど。
そんな危険を犯してまで、現れるだろうか…。
384 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時02分09秒
「呼び出しに成功した」
それも合図で、あさ美がそう送ってきたのが見える。
心臓の音がドクドクと早くなっていくのが自分でもわかった。
絶対、追い詰めてやる。逃がさない、絶対。
アタシの親友を傷つけた罰は、このアタシの手でさばいてやるんだから。

◇◇◇

もう辺りは真っ暗で、かろうじて3人組の姿が見えるくらいだった。
ちなみにこの時からあさ美は別行動で、ちょうどアタシの正反対…つまり、
3人組をアタシとあさ美で挟むような感じで隠れている。
多分、あっちもかなり不安だろうけど、作戦のためだ。
とにかく何度も言うけれど、アタシは絶対失敗したくない。

公園の入り口に人が現れる気配はなく、それから1時間ほど待っただろうか。
3人組のケータイの着信音が、鳴った。
ボリュームを最高にしているせいで、こっちまで聞こえてくる。
…どうしたんだろう…?

「そんなの、私たち知りませんっ」
声だけ聞こえてきた。
何か、あったんだろうか。
いや、でもここで飛び出すわけにはいかない。
385 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時02分41秒
「関係ないです、私たちっ」
よっぽどヒステリックになっているのか、声はかなり大きくて響いた。
アタシの耳にも確実に入るくらいの大きさだぞ、これ。

「いいからっあなたっ、誰なんですかっ!!」
まずい。
下手したら、逃げられる。
…まさか、アタシとあさ美が見張ってる事がバレた…?

3人組が寄ってたかって、こっちに向かって───。
え…。
バ、バカ。こっちに来たら…。

そう思う間もなく、3人組はこっちに向かって来て、
アタシの前で止まるや否や、ケータイを差し出した。
「……何?」
「いいからっ!もう、私たちっ、関係ないですからっ!!」
差し出されたケータイを受け取り、右手で耳へと近づける。
あちら側からは何の声も聞こえない。けれど、電話の先に誰かがいる気配はする。
「…誰なの」
静かに、アタシは応えた。
いつのまにか、アタシの横にあさ美もいる。
386 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時03分30秒
「何で、そんなことするの?」
『バーカ』
「はぁ!!?」
ボイスチェンジャーで変えられた声だというのはすぐにわかった。
それよりも、第一声に…。
「どっちがバカなんだよっ!気持ち悪いことしやがって!!!」
『あー楽しかった。何でそんな必死になってんの?』
「あんた誰なんだよ!!許されると思ってんの!?」
『あー。正義の味方気取り?やだやだー』
「…何言ってんの?…あたま、おかしいんじゃないの…?」
イカレてる。マジで。
意味不明な会話しかできないこんな相手、マトモに相手してらんない。
「誰なの…?」
『秘密だよ☆バレたら殺されちゃうもん』
「……どういうこと……?」
『どうもこうもないよヨ。それよりもさぁ』

『お・が・わ・ま・こ・と さん』

「───っ」

背筋が凍りつくような悪寒。
冷や汗で自分の手が汗ばんでいるのも気づいた。
どうして、アタシの名前を…。

「あんたっ、誰なの…」
『ひーみーつだってば☆ただ』
「…ただ?」
387 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時04分04秒
『後藤真希の味方する奴は、全員痛い目みてもらうけどネ☆』
「あんた、やっぱり美貴さ…」
『藤本美貴じゃないヨ』
「じゃあ、何で…」
『フフ。それよりもさぁ、もっと周りを気にした方がイイヨ』
「…?」
『キーミーの大事な人、どうなっても知らないからネ』

「!!!!」

足の力が急速に抜けていく。
頭がガクガクして、思考が鈍ってく。
まさか───。

『高橋愛はここにいるヨ。手足を縛られて、おお可哀想に。震えてるヨ』
「ふざけんなっっっ!!」
腹の底から、怒りが込み上げてくるのが解る。
それに、手足の震えも少しずつ強くなっていく。
『ヒドイなぁ。ふざけてなんかイナイのに☆
 それより、高橋サンがどこにいるか、知りたいかぁい?』
「どこだよ!?」
『アハハ。もちろん秘密だけどネ☆
 そうだなぁ。飽きるまで、待ってあげるヨ。せいぜい1時間ってとこカナ?』
「…1時間…。御願いっ、おねがいだから、愛には手を出さないでっ!!」
388 名前:ホームタウン 投稿日:2003年07月10日(木)13時04分38秒
『それはキミ次第☆さぁ、後59分くらいかもしれないヨ。早く探せバ?』

電話は、それで切れた。
けど、最後の言葉のせいでアタシはもう冷静でいられなくなってる。
ヤバイ。絶対ヤバイ。

電話を乱暴にポケットにしまい込むと(アタシのじゃないけど)、一目散に出口を目指す。

「あさ美っごめんっ、後で説明するっ。
 ただ、御願いっ。愛を探して!探してね!頼んだよ!」
「え?マコ!?」

ダメだ。ダメだ。ダメだ。
お願いだから、愛だけは。
愛を奪わないで。愛には何もしないで。
愛だけはアタシが護って、愛だけは───。

勝手と言われたっていい。エゴイストと呼ばれたっていい。
けれど、愛だけは。
愛だけは、傷ついて欲しくない。
389 名前:ごっつ 投稿日:2003年07月10日(木)13時05分10秒
そんなわけで更新完了。
次は…いつだ・゚・(ノД`)・゚・
390 名前:u-dai 投稿日:2003年07月10日(木)17時11分57秒
キターーーーー(゜∀゜)ーーーーー!!!!!!
待ってましたよ更新!いやぁ予想に反して、実行犯の裏にも
まだ黒幕がいるとは・・・電話の相手は誰なんでしょう?!
次がホントに気になります。もうハマっちゃってます自分(汗
次の更新も待ってま〜す
391 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月11日(金)07時24分53秒
誰だよぅヽ(`Д´)ノ
いやはや、ごっつぁむたん最高!!天才!
392 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月09日(土)12時04分41秒
うああ、、誰でしょう…気になりますね
続き期待sage
393 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時02分01秒
22.あいのままに。わがままに。

街中駈けずり回って、愛を探した。
バイト先にも行ってみたし、愛の行きそうなところは全て覗いた。
途中で矢口さんに電話をかけてみたけれど、来ていないと言われた。
そのついでに矢口さんにも協力をしてもらったが、一向に連絡はこなかった。
こんな時に限って、真希さんもあいぼんも誰にも連絡が取れない。
一度家にも帰って、自転車を取ってきた。
けれど、街を何周しても愛は見つからない。
…アタシは、また…。
大切な人を…それも、一番大事な人を護れないのかもしれない。
神様。どうか、どうか愛だけは。愛だけは傷つけないで。
アタシはいくら傷ついたっていい。だから、愛だけは…。

───護れない?
どうしてそう思ったんだろう。まだ、何もわかっちゃいないのに?
この足が走れる限り…ううん、走れなくなっても。
例え何があったって、絶対護り抜く。もう、誰が傷つく姿も見たくない。

「愛、待ってて。アタシが…絶対アタシが」
自分に言い聞かせるように、アタシは走った。
走れ。
自転車を漕ぐたびに足がきしむ感じがする。
だけど足の痛みなんて感じない。感じる必要もないから。
アタシは、最後まで諦めない。
394 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時03分03秒
◇◇◇

「麻琴ちゃん?ああ、やっぱり麻琴ちゃんじゃない!」
必死に自転車をこいでいる時に、後ろから誰かに声をかけられた。
よく通る、その甲高いアニメのような声。
一瞬でわかった。
「梨華さん!!」
振りかえった先に居たのは、石川梨華さんだった。
パッと見、梨華さんとわかる人はほとんどいないと思うけれど。
それというのも、ここしばらくアタシの前には姿は現していなかったし、噂では
家にこもりっきりになったまま、学校にも行っていないようだった。
どうやら今日もお忍びのようで、芸能人のように目深に帽子を被り、
黒のパーカーとジーンズという、およそいつもの梨華さんらしくない格好をしていた。

「そんなに急いで、どうしたの?」
「あーっ、あの…実は。愛が…」
「愛ちゃん?」
言うか言わまいか少し悩んだけれど、梨華さんならば信用できるので言うことにした。
「もしかしたら、愛が危険なんです!」
「き、危険!?」
「お願い!梨華さん、アタシと一緒に愛を探してください!!」
唐突なアタシの御願いに、梨華さんは少し戸惑ってみせた。
目を白黒させ(まさか本当にさせてるわけじゃないが)、「?」マークがついたような顔をしている。
395 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時04分38秒

「愛ちゃんなら、さっき見たけれど…?」
「え」
え?
耳を疑った。
「どどどどどど、どこでっっっ!?」
「え、あの、駅前で…」
「行きますよっっっ」
「え!?あ、キャー!ちょっと麻琴ちゃんっ!?そんないきなり…」
呆然とする梨華さんを自転車の後ろに無理矢理乗せ、アタシはダッシュでチャリをこいだ。
もし抜けぬけと駅前なんかでブラブラしてたら、一発ぶん殴ってやる。
…愛は別に悪くないけど。
いや、でも万が一って事もある。やっぱり先を急ぐ事に越した事はない。

アタシは、チャリを漕ぐ速度を更に上げていった。
396 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時06分26秒
◇◇◇

「んもうっ、どういう事なのか、ちゃんと説明してっ!」
自転車から降りた梨華さんは、当たり前だけどプリプリと怒ってた。
それもそうだ。いきなり出くわしたアタシに、唐突に自転車に乗せられて、
訳もわからずこんな所まで連れて来られたんだから。
ただ、じっくり説明してる場合じゃない、今は。

「梨華さんっ、あの、愛をどこで見たんですか!?」
「え…」
アタシのその気迫というか…鬼気迫る雰囲気を、梨華さんも理解したんだろう。
とりあえずフウッと息を吸いこむと、ロータリーの方を指差した。
「あの辺で、さっき見かけたのよ。それに喋ったし…」
「それで、愛はどこへ行くって?」
「ああ、そう言えば…男の人と一緒だったみたい」
「…お、男の…人!?」

そう言われて、愛の周りに男の影なんかあったもんじゃない。
となると…。さっきの電話の主なのだろうか。
そんな人と愛が、なぜ一緒に?
397 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時08分14秒
「デートでもしてるんじゃないのかな…あ、愛ちゃんに限ってそれはないかぁ」
梨華さんの言葉は耳に入らない。
愛が、そんな男とデートなんてするハズない…。
やっぱり、そいつが怪しい。
「梨華さんっ、お願い!早くしないと、愛が危ないんです!!」
「どういう事なのか、説明してよっ?」
「そんな時間ないんです!とにかく、愛を探してください!一刻を争うんですっ」
「わ、わかった…」

残り、15分。

◇◇◇

「ねぇ、麻琴ちゃん。何か、その電話の時に、何か聞こえなかったの?」
梨華さんも、アタシと一緒になって汗までかいて走ってくれている。
息は途切れ途切れで、その甲高い声が少し苦しそうにしていた。
「んっと、そう言えば…あっ!?そうだ、電車の音が聞こえた気がした!!」
「それ、本当なの!?じゃあ、ポイントはだいぶ絞られてるっ。こっちよ、こっち!」
梨華さんの指差す先にあったのは、線路沿いの川原。
確かにここは、平行になるように線路が通っているが…。
398 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時10分19秒
「この辺じゃないかなぁ。違うのかなぁ」
「こんな広いとこ…誰かいたらすぐわかるはずですよ?」
「そうよねぇ」
そうよねぇ、って…頼りない返事。
でも、梨華さんの言葉を信じるほかに手がかりはない訳だし…。
「ねぇ、なんでいきなりこんな急展開になってるのよ」
今はあまり無駄話してる場合じゃないんだけど…。
探してもらっているのに、答えないというのも悪い気がした。
「わからないんです。でも、アタシらの周りで何かが起こってるのは確かなんです」

亜弥ちゃんの援交事件に始まり、あさ美を脅していた誰か。それに、何故か攫われた愛。
まるで何者かに監視されてるかのような、アタシの周りを取り囲む事件。
…おかしい。
電話の相手は、真希さんに味方する人間を憎んでいるように思えた。
それにしても、あの不真面目な態度。
まさか電話の向こうの相手は、ピエロの格好でもしてアタシから逃げてるんだろうか。
…そんなアホな。
399 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時12分04秒
「何かって…やっぱり、そうなんだ…」
「え?まさか、梨華さんも…」
「あ、ううんっ。なんでもない!こっちの話。それよりっ!私、あっちを探すからっ!!」
梨華さんはそう慌てながら、川原のちょうど反対側の方へ駆けて行った。
恐らく、アタシに知られたくない事があるんだろう。あまり追求して欲しくないせいで、逃げたようにも見える。
「……」

どうも、変過ぎる。
梨華さんの身にも、まさか何か…。

しかも、鳴ってるのはアタシの電話じゃない」
ポケットから流れる着信音。
大音量で響くその音を頼りに、アタシはポケットに手を突っ込んだ。
さっきの3人組の一人のケータイだ。
非通知の番号でかかってきたそれは、間違いなく先ほどの電話の相手なのだろう。
アタシは躊躇う事もなく、通話ボタンを押した。

「誰なの!?」
『あーあー。遅すぎて退屈だった』
「何なのよ!?」
『ゲームオーヴァー。時間見てごらん』
「なっ…!!!」
『もう答えを教えちゃうよ〜ん☆高橋愛は、3丁目の廃屋の中にいま〜す』
400 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時13分23秒
気が気じゃないとはこの事だろうって、ぼんやりと考えてた。
足は痛いのにずっと走り続ける事ができたし、不思議と疲れてもない。
それだけ、切羽詰ってたんだろう。

何が起こっているんだろう。
何でこうなった?
っていうか、何でアタシが?
何?
何?
おかしくない?全部。
誰がこんな事するの?
何がしたいの?
変じゃない、この街。
誰が?
何が?
どこで?
どうして?

冷静な判断ができるんだったら、きっと…。

だから、愛を発見した時。
アタシは、ただ、呆然とするしかなかった。
401 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月11日(月)04時14分37秒
ガンッ。
電話を切る音でなく、ケータイを投げ捨てる音が川原で響いた。
もうアタシは、梨華さんと合流する事も忘れて急いで走って行った。
どうか、無事で…。
それだけを、願って。


瞬間的に、“スイカ割”なんていう単語を思い出してしまった。
刹那に目に涙が零れ落ちるのを感じた。
それに、胸の中から何かが込み上げてくるのも。
アタシはただ、愛の手の平を取って泣き喚くだけしかできなかった。

神様なんていないって、ずっと前から知ってた。
神様がいるのなら。
アタシと愛を、こんな辛い目に合わせるはずはないのだから。

愛は衣服を破りちぎられ、白い肌を露出させたまま床に突っ伏していた。
───頭から、紅い血を流して。
402 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月11日(月)04時16分21秒
…ということで、なんだか暗めに話が進んで参りました。
レスは佳境ということもあって勘弁させていただきます。
話の雰囲気をぶち壊したくない故。

次からの更新はちょっとずつ早めになるか、一気にラストまでするかのどっちかにするつもりです。
時間がまたかかるようなら少しずつしていくので、待っていただけると幸いです。
403 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月11日(月)04時17分25秒
スレ流し。
なんか、気の抜けた文章になってきてるなぁ…。
404 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月11日(月)04時18分00秒
age保
405 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月11日(月)08時33分51秒
更新お疲れさまです。
本気でドキドキしてました。
続き待ってます。
406 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時49分53秒
23.独白〜里田まい〜

集中治療室の手術中のランプが輝いたり消えたりするのを、呆然と眺めていた。
よく愛に、「ボーっとすると口が開いてる」と注意される事があった。
口は開いたまんま、閉じる事ができない。意識していても。

あさ美が隣で、肩を震わせて泣いていた。
いつ来たのか、梨華さんやひとみさん、真希さん、矢口さん、あいぼんとののも、アタシと同じように待っていた。

不思議と、涙は出なかった。
愛はすでに出血多量でかなり衰弱していて、意識を戻さなかったけれど。
最初に愛を発見した時、アタシは確実に愛の死を予感していた。
だからかも知れない。
まだ生きてる。生きられる可能性があるなら、と甘い考えを信じているのかもしれない。
手術室のランプが消えるたびにハッとして、今か今かとその安否を心待ちにしている自分がいた。

やがて、ランプが消えたままになった時───

次に愛を見たのは、白い包帯で頭をグルグルと巻かれ、目を覚まさない姿だった。
407 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時50分56秒
◇◇◇

意識不明の重体。だけど一命は取りとめた。
そんな状況で生きている愛の命。正直、生きている“だけ”の彼女を見るのは辛い。
それでも、生きているだけでいいと賭けた以上は、今は何も思えない。

頭の中がグチャグチャだった。
この数日の間に色んな事がありすぎて。
整理しながら強くなろう、強くなろうとしていた心が、急に崩れはじめていくのを感じる。

「愛」
話かけても愛は目を覚ましてくれない。
頭が、狂いそうになっていく。
訳が、解らない。もう…。

「まこっちゃん」
真希さんが後ろに立っていた。
振り向いて見た訳じゃないけれど、声で解る。
「はい。アタシなら、大丈夫です」
「……」
真希さんは愛ちゃんの頬を軽く撫でると、アタシには構わずに病室を出て行った。
408 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時51分36秒
「麻琴…」
「麻琴ちゃん…」
梨華さんとひとみさんもおんなじだ。
アタシには構わずに、愛ちゃんの手を握ったり髪を撫でたりして出ていく。

他の人は愛の姿を見る事もできず、病室にも入れなかった。

愛が目を覚ます事は、かなりの確率で低いのだと知った。
脳に強い打撃を受けた以上、目を覚ましてもなんらかの障害がある事も。
それすらも受け入れられる覚悟はできていても、愛はやはり目を覚ましてくれない。
「ダメだ…もう…」
愛の手を握り締めても、その手が握り返してくれる事はなかった。

「マコ…」
涙声をしゃくりあげるあさ美。
アタシの顔を見るなり、抱き着いてきた。
「私が…私がもっとちゃんとしてればっ…愛ちゃんは関係ないのにっ…」
アタシはそんな言葉を聞くと、不思議と強くなったような気がして、
「違うよ。あさ美は悪くない」なんて言ってしまうんだ。
あさ美は悪くないのは確かだけれど。
誰かにヤツ当たりをしてみてもいいかも知れなかったけれど。
誰を責めても、愛が目を覚ますまでは何の言葉も意味がない。
409 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時52分09秒
警察では、誘拐事件として犯人を追っていると聞いた。
ケータイに掛かってきた電話番号を逆探知をしてるとか、目撃情報を聞いてとか。
そんな話をちらほら聞いたけど、別に興味は沸かなかった。
警察の人が来ても、今は何も答えたくないと一点張りで通した。
どういう訳か、有力な情報も掴めていないらしい。
捕まえるんなら、さっさとして欲しい。
でなきゃ、愛が目を覚ましたらアタシが捕まえるんだから。

愛。目を覚ましてよ?
皆、待ってるよ?
傷が痛いの?
ねぇ、なんで…。なんで目を覚ましてくれないの?
愛。ディズニーランド行こうって言ったじゃん。
それなのに───

◇◇◇

アタシたち、『モーニング』のメンバーが逢う機会はぐっと減った。
アタシ自身、あれからほとんど病院以外の所に行ってはいない。

不思議と、それからアタシたちを取り巻く事件はなくなった。
真希さんや梨華さんたちがどうしているかも知らず、ただ愛の傍にいつもいた。
あさ美も、アタシと一緒に毎日病院に通って、それ以外は学校へも行っていないようだった。
花瓶に飾った花がもう、萎れかけている。
アタシはそれを取り替えようと、病室のすぐ傍の洗面所へ向かうとした。
410 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時52分52秒
病室の前で、とある人物が待ち伏せしていた。

「…時間、ある?」
即座に“ない”と答えそうになったのだが、意外な人物の訪問にちょっと戸惑った。
その人とは、“あの”里田まいさんだった。

御忍びでここへ来たのだろうか。
たまに見かけた時は、いつも派手な格好で歩き回っていたイメージがある。
今日は黒いシャツとジーンズに、頭には黒いハットを被って、サングラスをかけていた。
少し日に焼けた肌と、スタイルの良さから言うと、こっちの方がカッコいいように見える。
アタシとまいさんは、病棟から離れ、病院内の地下の喫茶店で話をする事にした。

「突然、悪かったね」
「いえ。アタシ、美貴さんは嫌いだけど、まいさんは別に嫌いじゃないんで」
「…手厳しいね、こりゃ」
イメージ通りにコーヒーをブラックで啜るまいさん。
アタシの言葉に偽りはない。
というのも、ずっと思っていたからだ。

まいさんもそうだけど、あゆみさん共々。真希さんを嫌っているようには見えなかった。
それに、対立した美貴さんに御膳立てしているようにも見えた。
あの日々は、もう相当前になる気がする。…時間はさほど過ぎていないのに。
411 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時54分30秒
「高橋、どうなの?」
「…まだ、目は覚ましてないですけど。それが何か…?」
「いや、いいんだ。アタシが勝手に知りたかっただけだから」
「そうですか」
まいさんは、穏やかだった。
そして、どこかに何かを秘めながら、アタシに話しかけているように…。
「で、何が用なんですか?」
「……その前に、話す事がたくさんあるんだ。聞くでしょ?」
「必要の、あることなら」

随分と挑戦的な態度を取ったとは思ったが、今のまいさんとなら対等だろう。
アタシは、話を聞く事にした。

◇◇◇

「アタシたち、“モーニング”ができたきっかけは知ってるよな」
「もちろん」
アタシの現担任である中澤先生が、ただ何となく作ったグループだと聞いていた。
「そう。創始者は中澤さんで、その理由は“皆で戯れて遊ぶ会”とかそんなもんだった。
 それはこの朝日町で随分長い間、親しまれてきたのさ。女子高生を中心に」
「そうだとは、聞いてます」
「そんな単純なさ、グループ活動が好きだったんだよね。この街のコたちは。
 リーダーを中心に、女子高生のネットワークとでも言うのかな。
 そんな風に、横の繋がりを大事にするものだった」
412 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時57分14秒
女子高生のネットワーク。
そう言うと、確かに納得する。

「けど、いつからか勘違いする人間も現れた。
 まぁ、言ってみれば、暴走族かなんかと勘違いする輩が出てきたって事」
「はぁ…」
「それもまぁ、少しは間違っちゃいないんだけどさ。ただ悪ぶろうとするグループとは違うワケじゃない。
 だけど、アタシたちの代に争いが起きたんだ」
「争い?」
「元からのコンセプトを大事にする派と、勘違い派の2つが対立した事があった」
ここまで聞いただけで、もう先が読めてしまっていた。
まいさんのコーヒーはなくなりかけていたし、アタシの頼んだジュースも半分なくなっている。
先を進めようと、アタシは話を促した。

「真希さんと、美貴さんですよね」
「…ま、そうなんだけどさ。真希は前者、美貴は後者だったんだ。
 そもそも美貴は、小学校の頃から手のつけられない不良で、親友のアタシも良く手を焼いたよ。
 …って、そんな話じゃなかった。そうそう、美貴。美貴はさ、不良だったんだけどね。
 高校生になったらレディースのアタマをやるんだー!なんて粋がってた事もあってさ。
413 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)04時59分19秒

 そこで、目をつけたのが“モーニング”だったわけ。そのアタマになっちゃえば、好き勝手できるからね。
 それに反発したのが、真希たちのグループだった」
「美貴さんは、自分の私欲のために伝統を壊そうとしたんですか?」
「…まぁ、言っちゃえば…そうなるな」
そんなの、勝手すぎる。
いくらあの人が自己中だからって。
「それで、まいさんは美貴さんの親友だからって理由で美貴さんの仲間になったんでしょ?」
「…それもそうなんだけど。アタシもあの頃は、美貴と一緒にレディースを作る事を考えてた。
 こう言っちゃなんだけど、楽しかったんだ。何か悪い事をしてるぞーって言うのが」
「それは、バカな人のやる事だと思います。“モーニング”とは違う」
「…ホントに手厳しいな、小川は」
まいさんは苦笑すると、ウエイトレスさんにコーヒーのお替りを頼んだ。
もちろん、ブラックで。と付け足しながら。

「アタシは別に、美貴の傍でバカやれてればどこにいたって良かったんだ。
 高校から一緒になったあゆみもそう。アイツは根がマジメすぎるから、どこか美貴に憧れてて…。
 3人一緒に、“モーニング”に入った」
「……」
414 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)05時02分22秒
「最初のうちはおとなしくしてた美貴も、徐々に権力が増えて行くと好き勝手したがった。
 真希が本来のように“楽しく遊ぶ”事を前提にするなら、美貴は“悪い遊び”を」

「美貴さんが悪いんじゃないですか」
「そうなんだけどね。まぁ、話はまだ続くから聞いて欲しい」
「いいッスよ」

「徐々に、美貴は真希の態度にキレ始めて、ついにはケンカ話になった。
 どっちがアタマ張るか勝負しろや、って事になって。
 真希はそんな事をするために、あたしたちは集まってるんじゃないって言い張った。
 だけど美貴はそんな言葉を冷静に聞けなくて、ついには真希を殴った。
 …そん時に、真希が本気でキレてさ。結局、美貴は負けたんだ。
 だからこそ、だろうな。美貴があんなに真希に固執するようになったのも」
「…確かに、そんな気配はありましたけど…」
「その時、美貴やアタシらは、決別するべきだったんだろうな。
 それからずっと美貴は野望を抱いたまま、真希たちと接して…。
 いつか隙あらば、真希をどうにかしてやろうと思ってたみたいだし」
「……」
415 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月12日(火)05時03分07秒
まいさんの独白は、呆れるものだった。
結局、アタシたちはあの人の野望のうちで踊っているとでもいうんだろうか?
それだったら、本当に憎まれるべきは、美貴さんなのではないだろうか。

「まぁ、それは前提。ここからが、本題なんだ」
まいさんが話し始めてからすでに30分程が経過し、アタシの頼んだジュースももうない。
アタシたちは追加のオーダーを頼んでから、また話を始める事にした。
416 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月12日(火)05時03分48秒
やっぱり少しずつ更新していくことにしますw
以前よりは早め、今月いっぱいの完結を目指します。
417 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月12日(火)05時04分32秒
( ‘д‘)
418 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月12日(火)05時05分05秒
( ´ Д `)スレ流し
419 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月12日(火)17時51分47秒
完結までずっとついていくよほ。
がんがっての。
420 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時05分50秒
24.独白2〜美貴〜

ガラガラの喫茶店は相変わらずシーンとしていたけれど、周りを気にする必要がないのは楽だ。
アタシの頼んだアイスティーと、まいさんの3杯目のコーヒーがやってきて、話は再開した。

「松浦亜弥の、援交の件…知ってるよね」
「そりゃ、亜弥ちゃんは友達でしたから」
「あれ、警察に通報したの───美貴なんだ」
「!!?」

「驚いてるね。そりゃそうか。
 あれはね、美貴が警察に電話したんだよ。“援助交際のカップルがいます”って」
「でも、そんな事くらいで逮捕とか…」
「ありえるのさ。松浦が、他に重ねた悪事を洗いざらいにするとね」
「そんな…」

まさか、亜弥ちゃんが…?
悪事って何?万引きの常習犯だったって事?
それとも、年偽って水商売してたって事?

「それをさせてたのが、松浦のカレシ。検挙はされてないらしいけど」
「…共犯、ってやつですか?」
「まぁ、そうなんだろうね。よく解らないけど。
 そのカレシを裏で操ってたのが、美貴って噂がある」
「!!!?」
421 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時06分42秒
いよいよ脳が回らない。
さっきまでは冷静に、且つ挑戦的に返していた言葉も、紡ぐところを知らない。
何を言えば、何を聞けばいいのかわからなくなってきた。

「これは、アタシも全く知らなかったんだけど…。
 美貴が、松浦のカレシと一緒にいる姿は何回か見たことあるんだ。
 憶測にすぎないけど」
「カレシに吐かせれば、わかるんじゃ?」
「それができれば苦労はしないんだろうけど。口を割るはずはないと思うね。
 相手はあの美貴だし」
「……じゃあ、全部美貴さんのせいなんじゃないですか」
「証拠があるわけじゃない」
「なくたって、美貴さんを問い詰めれば」
「美貴が言うと思うか?」
「……それじゃあ…なんで、まいさんはアタシにそんな事を…」

「アタシは、美貴を止めたいんだ」
まいさんは、強く鋭い瞳をしていた。
何度か、こんな強い目を見てきたけれど。
ハッキリと、意志の伝わるその視線。
本気なんだろう。
それだけは、どんなに美貴さんの行動を分かち合えなくてもあかった。
422 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時07分38秒
「美貴が陰で操ってる人間の数は、もっと数知れないと思う。
 …アタシだけじゃ、もう止められないんだ。
 アイツは、アタシたちの手の届かないところに行こうとしてる。
 その真相を、暴くために…。小川にも、力を貸して欲しい」

まいさんの話は、それだけだった。
アタシはその場で頷く事はできず、少し戸惑った。
その様子を見受けたまいさんも、「また、返事を聞きに来るよ」と言い残し、会計を済ませて出て行った。
地下の喫茶店に一人になったアタシは、どうしていいかわからずに呆然としていた。

色んな事が一気に起こりすぎて、脳がついてかない。
全部、美貴さんが起こした事?
だとしたら、今回の事だって───
真希さんはどう思っているんだろう。
まいさんの気持ちは?
当の美貴さんは?

…どうしたら、いいんだろう。
423 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時08分16秒
◇◇◇

「あ、麻琴ちゃん。今来たの?」
「梨華さん…」
愛の病室には、梨華さんがいた。
いつも、愛の部屋に飾る花瓶に花を添えてくれるのは彼女だ。
今日も名も知らない綺麗な花を、花瓶に差している。
「愛ちゃん、起きないね」
「…はい」
「あ、じゃあ麻琴ちゃん戻ってきたならもう行くわ。花、置きに来ただけだから」
「…どうも」
素っ気無い返事に、梨華さんはニコニコしながら「じゃあ」と言って病室を出て行った。
まいさんと逢って話をしたことは、結局言わなかった。

誰かに話すべきなんだろうか。
それとも、まいさん自身が美貴さんに操られてるんではないか。
…それより、まず愛が目を覚ますまで。
それまで、待ってみたい。
全てはそれから、始めたい。

まいさんとは、それから何度か病院の喫茶店で逢う事になった。
その度に、昔の話をしてくれる。
美貴さんの子供の頃の話や、中学時代の事。
真希さんたちと出会ってからの事。それに、最近の事も。
変わった事はあれ以来一つも起きていないけど、何の解決もしていない。
424 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時08分54秒
ただ、愛が目覚める時だけを待っている。

「愛が、目覚めた時に…答えを出します」
そう言いきったのは、6度目かそこらの時で、それからは一切連絡を入れてこなかった。

愛が眠りについて、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。
頭の傷は癒え、包帯ももうすぐ取れるだろう。
けど、俄然として愛は目を覚ましてくれない。
…愛。御願いだから、早く目を覚まして。
じゃないと、アタシ…ここから動けないよ。

愛…。

◇◇◇

アタシはいつも、愛の病室に行くと手を握るようにしていた。
何度も触れたその手が、また動いてくれるのを信じて。
今までは何度手を握っても、一度も動いてくれなかった。…のだが。

ピクッ

微かに、手が震えた。
ハッとして愛の顔を確かめる。目はつぶったままで、表情は一つも変わってない。
「愛…!愛っ!」
アタシは、確かめるようにその名を呼んだ。愛する彼女の名を。
425 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時09分29秒
「愛!わかる!?アタシだよっ。手を握って!ねぇ、愛!!!」
「……ま……」
唇が、震えた。
アタシの手はガクガクと震え、そして肩から崩れ落ちそうになった。
「まこ…と」
「愛!!」

少しずつ、少しずつとその両の目が輝きを取り戻して行く。
愛は重そうに瞼を開くと、すぐにアタシの顔を見つめて言った。
「…ここ…?病院…?」
「そう、そうだよっ。良かった、目、覚まさないと…」
「心配…かけてごめん…やよ…」
「バカァ…」

アタシは愛の手を握ったまま、とにかく泣いた。
ずっとずっと、泣いた。
それは、嬉しい時に出る涙だった。
426 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時10分11秒
25.見えざる敵

愛が何の障害もなく目を覚ましたのは、奇跡的とも言えた。
後遺症の一つや二つあってもおかしくない怪我だったのに、至って正常に話をする事ができる。
ボケっぷりは前と変わらないけれど、それでいい。無事だったなら。
話を聞きつけて、皆が御祝いにやってきた。
愛は誰かが来るたびに嬉しそうな顔を向けて、「大丈夫やよ」と笑顔で微笑んだ。

アタシには、これからやるべき事がある。

ケータイに登録した、まいさんの番号を呼び出して通話ボタンを押した。
5回ほどコール音が鳴ると、「高橋、目を覚ましたんだって?」と率直にまいさんは切り出してきた。
アタシは「はい」と答え、そのままの流れで「決めました」と告げた。
まいさんは「そうだと思ったよ」と電話越しに苦笑し、日を改めて逢うのを約束した。

愛が目覚めてから、3日後。
アタシは、まいさんと例の喫茶店にいた。

「高橋が目を覚ましたなら、もう時間はない」
「…え?どういう事ですか?」
席につくなり、まいさんは単刀直入に言った。
「高橋が無事だったって事は、事件の状況をどうにか分析できるだろ?」
427 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時10分56秒
「あ…」
多分、愛が目を覚ました事を警察も知っただろう。
だとしたら、愛は事情聴取の的にされかねない。
そうなった場合、犯人にとっては追いこまれるチャンスになる。
もし、美貴さんが裏で操ってたのだとすると、何らかのアクションを向こうから起こしてくるはずだ。
「今回の件、アタシはやっぱり、美貴が関係してると思う」
「…え?」
「ただ、美貴も今はあまり出歩いてなくって、裏が取れないから怪しいとこだけど」
「美貴さんが主犯だとしたら、全部の事件の線が繋がりますけどね」
「ああ。…小川、高橋に逢わせてくれない?」
「…わかりました」
アタシは頷くと、すぐさま喫茶店を出た。
まいさんは周りにバレないように、帽子とサングラスをきっちりと被って店を出る。

…大丈夫なんだろうか。ホントに。
428 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時11分52秒
◇◇◇

「じゃあ、高橋は突然後ろから誰かに殴られたっていうの?」
「はい。そうやったと思うんです…でも、曖昧なんです」
アタシとまいさんと愛の3人きりになったところで、まいさんの愛に対する事情聴取が始まった。
「私、あのとき…誰かに会った気がするんやって」
「誰かって…誰だか覚えてないの?」
「そうなんです…」
うーん。…これは、困った。
愛がこの調子じゃ、真相なんて掴めるはずはない。
だけど、余り無理はさせないで欲しいというのが、アタシの心中だった。

「その前後に、美貴とは会ったか?」
「美貴さんですか?…美貴さんとは、もうずっと会ってないと思うんやけど…」
「ふーむ…」
まいさんは唸り声をあげると、黙ってしまった。
確かに、あのとき、電話の主は美貴さんじゃないと自分で言った。
だけど…。

「結局、何もわからず終いか…」
「そうですね」
愛の病室から出ても、まいさんは相変わらず唸ったままでいる。
「とりあえず、アタシはアタシで単独で調査を進めてみる」
まいさんはそう言うと、早足で下まで降りて病院を後にした。

何か、アタシの中で引っかかってる気がする───
何か、忘れてるような───
429 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時12分34秒
◇◇◇

あの時、アタシは電話を聞いてすぐに公園を出た。
あの時にはもう、愛はその誰かに攫われたんだ。
そして30分程もして、梨華さんに会った。
梨華さんと一緒に駅前で愛を探して、その時に電車の音に気づいて川原へ行った。
川原で梨華さんと別れ、そこで再び電話がかかってきて…。

あれ?

何かおかしくないか?
何かが、抜けてる気がする…というか、忘れてないか?アタシ。
大切な情報があったはず。何だ?何だ??

梨華さんと会って、駅前に行って。
そこで、梨華さんは何て言ってた!?
思い出せ、思い出すんだ。

駅前で見た。喋った。その後…。
梨華さんは黒のパーカーにジーンズで…。

「ああ、そう言えば…男の人と一緒だったみたい」

梨華さんは、そう言わなかったか!?
アタシ、その時思ったはずだ。
愛が男とデートなんてするはずないって!!
そうだ。その男だ。その男が怪しい。絶対そうだ。
430 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時13分12秒
「愛!!」
「どうしたの、麻琴、そんなに慌てて…」
「男だよ!男!!!アンタ、あの日、男に会わなかったか!?」
「男…?」
「そう、男だ。梨華さんが見てるんだ、アンタと男が一緒にいたのを」
「……?」
愛は懸命に何かを思い出そうと、上を見たり下を見たりした。

「会って、ない」
「え?」
愛は少しぼーっとしながら、でも確実に答えた。
「男の人とは会ってないんやよ」
「本当なの?それは」
「うん」
愛は思いきり頷いた。

それじゃあ、何だっていうんだ?
梨華さんは嘘をついた。
何のために?
どうして?
梨華さんが、嘘をつく理由があるんだろうか?
それとも、ただの見間違い?
431 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月17日(日)02時13分45秒
「もしかして、愛…」
喉がカラカラに乾いて、声が掠れている。
確かめたくなかった。
でも、確かめずにはいられない。

「愛、もしかして、その日───」
「うん?」

「梨華さんに…。会った…?」

「あっ…」

愛は思い出したように、声をあげた。
それだけで十分だった。
「そう言えば、梨華さんに…会った気がする…どこでかはわからないけど…」

確信に、変わった。
犯人は石川梨華。その人だということを───
432 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月17日(日)02時14分25秒
かくしかくし

( ‘д‘)ノシ
433 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月17日(日)02時15分00秒
( ‘д‘)ああっ、あんな展開や!
434 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月17日(日)02時15分48秒
( ‘д‘)<今回の更新は>>420-431
435 名前:名無しくん 投稿日:2003年08月17日(日)12時40分07秒
更新乙です。
意外な展開ですね!楽しみに次回更新待ってます
436 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時10分50秒
嵌っていきますね…
にしても愛たん復活してヨカッター
437 名前:u-dai 投稿日:2003年08月18日(月)21時51分09秒
だんだん深くなっていきますねぇ・・
愛ちゃんが回復して本当によかったです、あのボケがもう聞けないなんて鬱ですし
真相はどうなっているんでしょうか気になりまくりです
次の更新も待ってますよぉ!!
438 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月18日(月)22時00分31秒
26.理由

夕暮れの屋上で、アタシは人待ちをしていた。
まるで告白をする時ならロマンチックな風景ではあるが、そうでないので逆に杞憂になった。
───疑ってもなかった。
というより、まだそれが真実かどうかはわからな訳ではあった。
できれば、信じたくもないけど…。
だけど、アタシはずっと前から決めてた。
例え、誰であろうと…許しはしないと。愛を傷つけた人間は、アタシが許さないと。

「麻琴ちゃんっ」
いつものようにアニメのような甲高い声で、彼女は現れた。
まだ外出を控えているのだろう。地味なグレーのワンピースで。
心の奥底から、憎しみが込み上げてゆくのが自分でもわかった。
けど、冷静にならなければ───

「どうしたのっ?愛ちゃん、また何かあった?それとも───」
「茶番は、終わりにしましょう」
「ええっ??」
少し大げさに彼女は驚いた。いや、本当に驚いたのかも知れない。
少なくともアタシには、それが演技にしか見えないのだが。
「もう、全てネタはあがってますよ」
「…何の、こと?私、別に何も…」
あくまで惚けるつもりだろうか。それとも───
「すぐ考えれば、わかるはずだったんです」
439 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月18日(月)22時01分12秒
「だから、何のこと?麻琴ちゃん、愛ちゃんが目覚めたからって嬉しくて変になっちゃった?」
「…人間って、単純ですよね。一つ簡単なことを全部忘れたら、何もわからないのに。
 一つ思い出すと、全部がそう思えてくるんです」
「……だから、何を……」

「じゃあ、なんで嘘ついたんですか?」
「………」
確かに、彼女はその瞬間に表情を変えた。
それがどんな意味をもたらしたのかはわからない。
けれど、その一言で明らかに空気が変わったのをアタシは感じた。

だけど、不信な点はたくさんある。
もし梨華さんが犯人だったとして、愛に重傷を負わせたのはどこで?
愛が目覚めて証言させれば、自分が犯人だとすぐにバレるだろう。なのにどうして?
そもそも、愛を殺すつもりはなかったんだろう。
そのリスクを負ってまで、梨華さんはなぜこんな狂言誘拐事件を起こした?

「……」
「梨華さん。アタシ、何の理由があっても、犯人を許すつもりはないんです。だから…」
「どう許さないって?」
「!!!!」
全ては、その言葉が物語った。
脳を思いきり突かれたような、その言葉。
彼女は、否定しなかった。
440 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月18日(月)22時04分32秒
「しょうがないじゃない。ちょっとやってみたかったのよ」
「!!?」
「なんでそんな顔するの?別にいいじゃない。愛ちゃん、死んでないし」
「あんた…!!!!!!」
クズ…。人間のクズだ。
アタシの目に映る梨華さんは、それまで見たこともないような…。
どこか余裕に満ちた笑顔を浮かべていて…。

「すっごく面白かったよ、あのときの麻琴ちゃん。ふふふっ…」
「……っ」
言葉も何も出さず、アタシの拳はただ空を切り始めていた。
怒りという言葉以外の何者もない。
しかし、それは梨華さんを捉えはしなかった。

「…ひとみさん!?」
アタシの拳を掴んでいたのは、あの吉澤ひとみさんだった。
いつからこの場にいたのか定かではないが、何故彼女が───
「どういうつもりですか!?」
「…小川。今は、何も…。何も言わないで欲しい」
「何がですか!?この人は、愛を…愛を!!!」
「いいからっ!!アタシだって、こんな風に止めたくない!!
 だけどっ…だけどっ、何も知らない奴に梨華を責める権利はないっ!!」
「!?」
頭がおかしくなりそうだ。
441 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月18日(月)22時05分41秒
ひとみさんの言葉は理解できる。けど…。
ひとみさんは、何かを知っているんだろうか。
それを知りうる事がないアタシには、どうすることもできないんだろうか。

「いいわ」
それを遮ったのは、今度は梨華さん自身。
もうグチャグチャに展開されるストーリーに、アタシは追いつけずにいる。
「ゴメンね、麻琴ちゃん。私のせいなの、全部。だから…ゴメンネ」
「……」
彼女はそう吐き捨てるように呟き、踵を返すと走り去った。
その後姿ははかなげで、まるで涙を流しているように───

ひとみさんはその後を追い、そしてアタシは一人、取り残されるばかりであった。
442 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月18日(月)22時07分02秒
◇◇◇

この街で一番はじめに起こったのは、愛を拾った事だった。
アタシと愛は一緒に暮らし始め、そして街では色々な事件が起こり始めた。
最初は、ただのカツアゲ事件だった。
アタシはカツアゲにあってるののを助け、真希さんと出会った。
アタシは憧れのモーニングのメンバーになって、楽しくみんなと過ごした。
真希さんに、あいぼんに、梨華さんに、ひとみさんに、美貴さんやまいさんたちもいた。
あの日々は、本当に充実していたと思う。
ほんの1ヶ月ほどだったけれど、アタシは大切な仲間たちと一緒にいた。

だけどある日、真希さんと美貴さんの決裂。
何が何だかわからず、モーニングは事実上、解散。
それを追うように、亜弥ちゃんは捕まった。
悲しむ間もなく、あさ美のイジメ事件があった。
それを裏で操る人物がいる事をしり、そしてその人物は…。
愛を誘拐し、愛は重傷を負った。

その人物は…。
今、アタシの目の前から去ったその人で───

何が、アタシの運命を変えてしまったんだろうか。
平穏な人生なんて真っ平だなんて思ってたけど、おかしい。
狂ってる───
443 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月18日(月)22時07分37秒
梨華さん。
梨華さんが、まさかそうだったなんて思いもしなかった。

はじめに会った時、梨華さんは優しくアタシを介抱してくれたっけ。
めちゃめちゃなお嬢様で、ちょっとオバさんくさい保田さんと一緒に車に乗ったっけ。
梨華さんは、いつも笑顔だった。
笑顔で、真希さんやひとみさんと連れそう姿が好きだった。
だけど、あの笑顔の裏で、彼女は何かとぶつかっていたんだろう。
ひとみさんの言った“理由”が何かはわからない。
だけど、譲れぬ何かがあったのだろう。

愛をあんな目に合わせたなんて、許せないけど。
許せないとわかってるのに───

記憶の中の梨華さんはいつも優しくて、アタシに微笑みかけてくれた。
少し耳障りなその声で、「麻琴ちゃん」と呼んでくれた。

何が、梨華さんを変えてしまったのだろうか。

◇◇◇

翌日、アタシの元へ一つの悲しい報らせが届いた。

昨晩、石川梨華は───
自宅で手首を切って、自殺した───
444 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月18日(月)22時08分13秒
( ^▽^)
445 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月18日(月)22時08分51秒
( T▽T)
446 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月18日(月)22時09分26秒
川川´▽`)ノ<更新は>>438-443
447 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月19日(火)02時53分43秒
この小説を読む時のBGMに
Mr.Children『Dance Dance Dance』をお勧めします。
448 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月19日(火)12時01分16秒
胸が痛いっす。
衝撃が強過ぎるよぉ(つД`)
449 名前:u-dai 投稿日:2003年08月19日(火)14時51分06秒
えぇ?梨華さん自殺・・?((((;゚Д゚))))ガクブルガクブル
一体何があったんでしょうひとみさんの言葉も気になります
450 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月19日(火)17時39分31秒
>>449
だからさー、ネタバレレスは禁止って書いてあるじゃん・・
他に読む人がいること考えてレスしてよ
451 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月19日(火)23時08分46秒
>>449
アフォでつね。
452 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)00時42分01秒
>>449
イ`
453 名前:ごっつぁむ 投稿日:2003年08月20日(水)03時17分51秒
荒らさないでくださーい\(T▽T)/

いや、でもマジで核心に迫ったとこなんで(?)ネタバレレスは勘弁。
削除依頼とかは出さなくてもいいんで。
454 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)05時18分56秒
最初の方でレスしてた者です
久々に読んでみたらかなり雰囲気変わりましたね・・・
文章の感じも変わってるし完結が気になります
これからも頑張ってください
455 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月20日(水)07時02分03秒
終わった━━━━(゚∀゚)━━━━!!
あとがきまでしっかり書き終わりました。

ラストまで一気に更新します。
でもなんかもったいないので、今日の夜にww

それまでに一回全て読み返すのをオススメしる(爆
↑かなり浮かれてる香具師
456 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月20日(水)15時13分45秒
更新待ってるよぉ〜
457 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時25分26秒
( ‘д‘)<完結、いくでー。
458 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時26分30秒
27.罪と、罰と。

梨華さんの死を聞いた時、アタシは呆然とするばかりで、他の事など何も考えられなかった。
それと同時に、罪悪感が沸きあがってくるのを感じた。
アタシが、梨華さんを追い詰めたんだ。だから、梨華さんは自殺なんて───
だけど愛はそれを見透かして、「麻琴のせいじゃないよ」と優しく微笑んだ。
その言葉を聞いて、アタシは静かに泣いた。
梨華さんの何を知っている訳でもなかったけれど、ただ涙を流して彼女の死を悼む。

梨華さんは、あの日の翌日の深夜。
通っていた高校の屋上から飛び降りて、自殺したらしい。
ニュースで聞いたくらいだから、それくらいしか知らずに、いつの間にか葬式の日になってた。
地面に叩き付けられて、ぐちゃぐちゃだったらしく、棺桶に横たわった彼女の全身に、重苦しく布が纏ってあった。
それを見てはじめて、アタシは彼女の死が現実である事を知った。
制服に身を包んで、葬式に参列したのはアタシとあさ美だけ。
他の“モーニング”の元メンバーは誰も来ていなかったし、真希さんやあいぼんや、ひとみさんの姿は見なかった。
愛も行きたいといっていたけれど、まだ静養中であるために外出許可が降りなかったのだ。

459 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時27分51秒
「あさ美…」
「うぐっ…ううっ…」
いつまでも涙顔のあさ美の頭を、ポンポンと撫でるけれど、自分自身も泣きたいくらい。
いよいよ、この壊れた物語も本格化してるというんだろうか。
愛の時はギリギリに済んだけれど…。
その犯人であった梨華さん自身が、こうして結末を迎えてしまった。
何も、まだ解決なんてしていないのに。

「小川」
まいさんが、葬儀場から出た所で待っていた。
中までは入らなかったのだろうが、一応制服を着て来ている。
「まいさん…。知ってたんですか?」
「…全部、話すよ。こないだ話さなかった事まで、全部。
 そのために、今日は人を連れてきた…」
まいさんが言うと、こちらからは隠れて見えないところから、人影が現れた。
「あっ…」
一人かと思えばそうでなく、一人はまいさんと仲の良い柴田あゆみさん。
そして、もう一人は───
「真希さん…」
あゆみさんの更に後ろから姿を見せたのは、紛れもなく真希さんであった。
「ごめん、小川。あたしも今回ばかりは目を背けちゃいけないと思った。
 だから、これからはあたし自身もちゃんと解決してくから…。
 小川だけに、辛い思いさせてゴメン」
「…いいんです、そんな事…」
460 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時28分30秒
真希さんの顔を見たら、色々言ってやりたい事はあったはずだった。
のに、本当に顔を見た瞬間、そんな思いはすぐ消えうせてしまった。
真希さんの、どこかが。何かが違った。
「あの」
「……?」
声をあげたのは、それまで事の成り行きをキョトンと見守っていたあさ美であった。
「いったい、何だっていうんですか?
 梨華さんの葬儀があってすぐに…。悲しくないんですか!?」
最後の方は、泣き叫ぶという表現が正しいくらいに感嘆をあげていた。
あさ美からしてみれば、置いてきぼりという状況であるものだから、しょうがないと思う。
でも、アタシは今の真希さんには何も言うつもりはない。
彼女自身が、梨華さんの死を哀しいはずがないのだから。
「紺野…」
真希さんは呟くと、そして穏やかな笑顔を浮かべていた。
「あたしは、忘れてない」
「??」
「忘れてないよ、悲しみも。全部。
 だけど、それじゃダメなんだ。この街が、それじゃダメなんだよ」
「???」
言われた当の本人は、キョトンとしている。
頭の回転の速いあさ美でも理解できない事だから、アタシにもわからなかった。
461 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時29分04秒
でも、何を言おうとしているのかはわかる。
真希さんは、諦めたくないって事。
それに、梨華さんの事をきちんと彼女は理解ってるって事。
「紺野も、着いておいで。最後まで、あたしはちゃんと役目を果たすから」
真希さんは、それだけ言った。
意味は、よくわからなかった。

◇◇◇

いつからか行く事のなくなった、モーニングの秘密基地。
少し前まではみんながいて、楽しさを分け合った場所だったのに。

そこに今、アタシはいた。
アタシだけじゃない。
アタシとあさ美、まいさん、あゆみさん、あいぼん、のの、そして真希さん。
この7人が、久しぶりにこの基地に集まった。
あいぼんとののは真希さんが事前に連絡してたらしく、アタシたちより先にここに来ていたのだが。
それから、どうしてもひとみさんに連絡がつかなくて、ひとみさんだけはここにいない。

「久しぶりに、集まったね」
「そうだね」
まいさんに、あゆみさん。
反対派だった彼女たちの仲間は、今はどこにいるんだろう?
そして、この一連の事件の主犯であると思われる、美貴さん。
今はまいさんたちですら、その行方を知らないそうだ。
462 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時29分48秒
「集まってもらったのは、他でもないよ。
 みんな、知ってるよね?梨華のことだよ」
真希さんが、単刀直入に話を切り出した。
空気が少し張り詰めた気がする。

「梨華が、死んだ」
「……」
何人かの間から、心なしかため息というか、嗚咽のようなものが聞こえた気もした。
…気のせいかも知れないけど。
「そのせいで、あたしはようやく覚悟する事ができたよ。
 …遅すぎたけれど。この事は、あたしは梨華には謝っても謝り足りない」
「……」
「梨華が死んだ日、あたしの家のポストに…遺書が入ってた」
「えっ!?」
誰もが驚いた顔で、真希さんを見た。
遺書は、両親に充てて書かれたものが自宅の部屋から見つかったと聞いていた。
まさか、それの他に───
「遺書というより、遺品だけどね」
真希さんはそう言いながら、懐からピンクのカバーのかかった手帳を取りだし、
そして何ページ目かを広げて見せた。

「梨華の、日記だよ。それに、あたし宛のメッセージもいくらかある…」
言われた通りに手帳を見てみると、なるほど確かに日記だわ。
白紙に、毎日1ページごとに几帳面に、日記が記されている。
女の子らしい文字が、梨華さんらしい。


463 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時31分02秒
「梨華が自殺した理由は…。罪を犯したから」
「……」
再び、沈黙が戻った。
淡々と一人、司会進行を勤める真希さんだけが、ミステリーの解答編といわんばかりの沈黙の隙間を縫っていく。
「紺野を脅して、いじめに合わせたのも…。高橋を誘拐して襲ったのも、梨華なんだ」
「!!!!」
アタシ以外の人は、きっと知らなかったんだろう。
まいさんも驚いた目で、アタシの方を見ていた。アタシは無言で頷く。

「梨華の日記に、こうあるんだよ…。
 『愛ちゃん、ごめんなさい 麻琴ちゃん、ごめんなさい』って」
真希さんが手帳をめくり、そのページを見せてもらった。
幾重にも重ねられた文字が、埋め尽くすように書かれている。
涙で濡れたのか、一部、字が滲んでるところもある。

「これは、アタシ宛ての遺書にも書かれてた。
 それを、今から読み上げようと思う。
 …梨華が、望んだ事だから、そうするけど───。
 梨華を、軽蔑なんてするヤツがいたら、あたしはこれを読む事はしない」
「大丈夫です」
一番最初に答えたのは、意外にもあさ美だった。
真希さんの言葉が終わるや否や、という速さで。
464 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時32分06秒
「わかった。他のみんなも、いいの?」
誰も、首を横に振る人間などいなかった。

「じゃあ、読むよ」


───
真希ちゃんに、それと、皆へ。

少し怖いけど、一人で行きます。
本当に、ごめんなさい。
麻琴ちゃん、愛ちゃん、あさ美ちゃん。ごめんなさい。
亜依ちゃん、ののちゃん、ひとみちゃん。ごめんなさい。
私、もう怖くて仕方ないよ。
あの日、私は穢されたから、それから生きていくのが辛かった。
それでも生きていこうって思ったのに、あいつは私を利用した。

藤本美貴を、心から憎んでます。

私、もう生きてく資格ない。
怖いよ、みんな。
でも、みんななら許してくれるよね?
さようなら、みんな。ごめんなさい。    梨華
                         ───
465 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時32分51秒
涙が、止まらなかった。
梨華さんの悲しみが、一つ一つの言葉に宿っているようで。
何を、迷う事があるの?
愛を傷つけた罪は、アタシだって許し得ないけど。
何故、死ぬ理由があるの?

今更、そんな風に思ってしまうのは、アタシの勘違いんなんだろうか───

「そんなのって、ない…」
そう漏らしたのは、あゆみさんだった。
梨華さんとあゆみさんは、決裂する前は大の仲良しだったんだ。
それなのに、あの件からずっと距離をおいてたみたいだった。
可哀想に…。

「美貴が、全部悪いの?そうなのっ?まい!?」
「…そうだよ。だから、アタシはあいつを止めたいっていったじゃんか」
「そんなっ…」

あゆみさんは、床に倒れて泣き崩れてしまっていた。
弱弱しい姿が、アタシの胸にも疼く。
だけど、逃げてばかりじゃいられないことは、何度も学んだ。
466 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時33分30秒
「これはもう、悪戯とかそんなレベルの話じゃない。
 立派な犯罪になるんだよ。あたしは美貴を許さない。
 あいつを、このまま野放しにしとくわけにはいかないよ」
真希さんは立ち上がった。

「ウチ、よくわからんけど。真希ちゃんがそう言うならやったる!」
あいぼんも、つられて立った。
「ののもれす!」
ののも、立ちあがった。
「でも、あんたらは危ないから無茶すんなよ」
真希さんに釘をさされつつも。

「私、私もです。個人的な恨みもありますし、やります!」
あさ美も、立った。

「アタシだって。アタシは、アイツを親友だと思ってたんだ。
 だから、親友のやる事の責任は、取るつもりだよ」
まいさんは最初から、ただそれを目指していた。

「私も行くわ…。美貴に説教してやるわよ」
あゆみさんも、思うところは色々あるんだと思う。
だけど、まいさんと一緒に頑張って欲しい。
467 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時34分09秒
「アタシは、始めから決まってます。真希さん」
そして、アタシも立ちあがった。

真希さんは満足そうに頷くと、梨華さんの手帳を胸元にしまい、
そしてピースサインを出した。
「よしっ、モーニング出動っ」
暗い気持ちでいても、しょうがない。晴れた気分で、毎日を過ごせるように。
アタシたちは、戦う。
あの日々を、取り戻すために。
468 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時34分53秒
28.哀しい仔

アタシたちは、この街が好きだった。
みんながいて、笑い合って、楽しかった。

けれどいつからかそれは崩れ去り、今は静かにその時が来るのを待っている。

ただ一人の少女の、手に寄って。

そう、一人の…。

◇◇◇

「ダメ。美貴、自宅にも全然帰ってないみたい」
「そう…」
今しがた、外から戻ってきたまいさんとあゆみさん。
彼女たちの報告は、全く持って手がかりなし、という結果を教えただけだった。
美貴さんをどうにか止めてやろうと決意したアタシたちだったけれど、当の本人は未だに見つからないまま。
まいさんとあゆみさんで自宅に出向いて、聞きこみをしたところだったのだけれど、留守だったそうだ。
美貴さんの家は母親が出て行ったきりで、父親と2人暮らしだと聞いた。
469 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時35分35秒
今思えば、アタシは美貴さんの事も何一つとして知らなかったんだ。

「どうしたもんかね。こうしてても何も始まらないし」
「うーん…」
意気込んだところで、相手が出てこなくてはどうしようもない。
「姿くらましたってのは、考えられるよね…」
「そうだね。そうなると、あたしらだけじゃどうしようもなくなる…」
誰からでもなく、不意に黙りこんでしまっていた。
美貴さん、どこにいんだよ…。
梨華さんが死んだ事は、彼女だって知っているだろう。
だとしたら、とっくにどこかに逃げ出してる可能性も低くはない。
「…挑発、するか」
まいさんが口元をにやつかせて言った。
まるでそれは、狩を楽しむ狩人のような笑いで。
「だけど、美貴がどこにいるかわかんなきゃ、どうしようもないよなー」

「あたしが知ってる」
ガチャン、と重たく扉が開く音がした。
入って来たのは、予想通りの人物。
「ひとみ」
その名を呼んだのは真希さんで、彼女は予測通りといわんばかりに微笑んだ。
「だけど、教えるつもりはない」
彼女は元々少し低い声だったけれど、その声はもっともっと…。
そう、その声は明らかにアタシの知りうる彼女とは違う。
470 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時36分24秒
「あたしは、美貴を殺す」

「!!!!!」
全員、何の言葉を発する事なくひとみさんを見た。
だけど彼女はその視線に臆す事なく、言葉を続ける。
「ダサいかもしんないけど、梨華の敵を取る」
ひとみさんは唇を噛み締めると、拳をギュッと握り締めた。
「美貴は、あたしが殺す」
「ダメだよ」
真希さんだった。真希さんが、それを制した。
当然といえば当然だったのかも知れないけど、それは叱ったわけではなく、優しく囁くような声で。
「ひとみ。そんなのあんたらしくないよ。やめときな、ね」
「真希…。ダメなんだよ。それじゃ、ダメなんだ」
「どうしてダメなの?梨華、死んじゃったけど、美貴が殺したんじゃないよ?」
「…美貴が、殺したんだ…」

やや、脳が会話についていかない。
真希さんとひとみさんの間だけで繰り広げる、謎の会話。
いや、内容は理解できる。けど、それだけじゃない。
アタシたちの知らない何かが、まだある。

「みんな、知らないだろうけど」
「うん」
「美貴が、全部仕組んだことなんだって。マジで」
471 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時37分11秒
「うん」
ひとみさんは淡々と事実のみを、包み隠さず喋ってゆく。
ある意味、アタシたちの知りたがってた裏の情報。
それを彼女は、全て語った。

「あたしも独自に全部調べた」
誰も言葉は、それから発さない。ただ一人、彼女を除いて。

「あたしは知ってたんだ。
 梨華を利用して、高橋を誘拐したのが梨華だって…。
 だから、あの時、梨華を責める小川を止めた」
「あっ…」
確かにそうだった。あの日の夕暮れがフラッシュバックして蘇る。
梨華さんが死ぬ前に、アタシは梨華さんと二人きりであの屋上にいた。
だけど、核心的な話になった時にひとみさんが割って入り、結局梨華さんは去って、そして…死んだ。
「美貴が全部仕組んだ。
 梨華を男に襲わせて、レイプさせた」
「!!!!」
「その写真を餌に、梨華を脅してた。命令を聞かないと、写真をばらまくって」
…そんな、事が…。
472 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時38分19秒
「美貴は更にこう付け加えた。命令を聞けないなら、真希を殺せばいい…って。
 もちろん、梨華にそんなことができるはずない。
 だから梨華は、美貴の言う通りに紺野に嫌がらせさせたりしたんだ」
「待ってください。じゃあ、愛が誘拐されたのは?」
「…あれも、梨華にやらせたんだ。
 小川が少しでしゃばってるのを知った美貴は、そのすぐそばの高橋を狙う事を考えた。
 少し痛い目見せるつもりだったんだろうな。だから、梨華にも高橋を殺せとは言わなかった。
 だけど、そんな事をすれば梨華が犯人だってすぐにバレるだろ。
 そうすれば、美貴だってこれまでの悪事が全部洗いざらいになっちまう」

「アイツの恐ろしいところは、ここだよ。
 全部、正体がバレないように、影でやってたんだから。
 そう、梨華が犯人だってバレても…。自分は全部悪くないようにやるつもりだったんだ…。
 あたしも美貴を尾行けて事実を知るまで、美貴だって知らなかったんだから」

「!!!」
473 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時39分21秒

「真希を陥れるために、美貴は自分の手下や男を裏で糸引いて、色々やってた。
 カツアゲや万引きの多発も、美貴の命令で地元の中学生がやらされてた。
 それに、松浦。あいつの件も、美貴が絡んでる。
 あいつさ、自分のカレシに松浦に貢がせて、それでエンコーにハメるように仕向けたんだよ?
 どうよ、この冷静な頭の使いよう。他にも色々。
 紺野の時も自分は一切表に出なかった。そんで、紺野にだけ精神的ダメージ与えてさ。
 高橋の時もそうだ。梨華を…梨華を利用して、自分は…そうだ、美貴だ。
 全部美貴が悪い。あいつが全部めちゃくちゃにした。美貴だ。美貴のせいだ。
 美貴が悪いんだろ!?ねぇ真希!あいつがいなかったら、梨華死んでないだろ?そうだろ!?」

「…ひとみ。ちょっと、落ちついてよ、ね」
優しくあやす様に、真希さんは言うけれど。
「殺す。絶対あたしは殺す。誰がなんと言おうとあたしは殺す…」
そう口癖のようにぶつぶつと呟きながら、ひとみさんは頭を抱えはじめてしまった。
狂い、出してるんだ。ひとみさんまで。
多分、これはアタシの推測だけど。
梨華さんを失ったせいで、ひとみさんは理性を保てなくなってる。
474 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時39分51秒
アタシが愛を傷つけたくなかったように、ひとみさんは梨華さんを失いたくなかった。
だけど、梨華さんは自殺した。ひとみさんを置いて。
そのもどかしさというか、悪循環全てがひとみさんの中で美貴さんに向かった。
狂った事はないからわからないけど、大事な人のため、というのはなんとなく理解できる。
アタシだって、愛があの時無事でなかったら、梨華さんを殺していたかもしれない。

人間って脆いんだな、と不条理ながら感じてしまっていた。
そんな風に哀れに泣き喚くひとみさんの姿を見て、アタシは何も言えずにいた。

「どうした、もんかね」
「…うん」
まいさんとあゆみさんは、さっきからそんな会話ばっかり続けている。
ひとみさんはしばらく発狂し続けた後に、突然気を失って倒れた。
本当に“人間の壊れていく様”を見ているようで、すごく辛かった。
今は隣の部屋で真希さんとあいぼんとのの、3人が寝かしつけて見張っている。

「マコ、マコ。ねぇ」
「ん?」
服の袖を引っ張られ、振り向くとあさ美が耳打ちをしてきた。
「思うんだけど、梨華さんとひとみさんって付き合ってたのかな」
「………」
あくまでマイペースな質問に、アタシは絶句した。
475 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時40分31秒
でもそれと同時に、どこか心に余裕というか、楽な気分にはちょっとなれたかも。
「そうかもね」
曖昧な返事しかできないけど、この一瞬のあさ美の存在にはすごく救われた。
不意に、そんなときに思い出す。

母親が死んだあの日、アタシは「ああ、ママは死んだんだ」と理解しながらも理解できてなかった。
梨華さんが死んだあの日、アタシは「梨華さんは自殺したんだ」と理解しながらも泣けなかった。

だけど、それは悲しかったからじゃなかったんだ。
認めたらいけない気がしてた。泣いたら母や梨華さんが、一人になっちゃう気がしてた。
でも違った。きっと、死してもなお、人の想いは巡るんだろう。
そうだよ、人間ってそうだよ。
誰かの存在が、凄く大事なんだ。
アタシに愛がいるように、ひとみさんが梨華さんを想うように。
美貴さんには、そんな人がいなかったのかな?
だとしたら、アタシは少し同情してしまうかもしれない。
一人の寂しさを知っていたから。

愛と出逢う前のアタシに、どこか想像の中の美貴さんのそんな姿が重なってしまった。

476 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時41分12秒
◇◇◇

ガチャン。
少し落ちついたのか、隣の部屋のドアが開くと、4人は穏やかな顔をして部屋を出て来た。
ひとみさんも、いつものように笑顔を絶やさずに「だいじょうぶだいじょぶ」なんて言ってた。
無理をしてるなんて、わかりきってる。
でも、無理をしても今はやるべきことがある。

「大丈夫。ありがとう。あたしはみんないるって知ってる。
 だから、美貴をこの手で救ってやりたい」
真希さんの言葉に、ひとみさんがまず頷いた。
この言葉は、ひとみさん自身の言葉だったのかも知れない。

「美貴は許されない事をした。
 でも、アタシはそれが何だって思う。法律なんてグッバイバイだ。
 あいつがあんなになったのは、アタシらのせいだよな…」
「そうだよ。私たち、友達のはずだったのに、気づいてあげられなかった」
まいさんとあゆみさんは美貴さんの親友だったはずだった。
だけど、いつからか一人悪い方向へと向かう彼女の道を、軌道修正してあげられなかった。
まいさんはその事を悔やんでいたし、あゆみさんはそれすらも知らない自分に感嘆した。
477 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時41分42秒
かつて、アタシがあさ美や亜弥ちゃんの痛みに気づかなかったように。
友達だからこそ、わかってあげられることがあるんだ。

「うんうん。まいもあゆみも、美貴の友達なんだから、うまくやってかなきゃねー。
 ひとみ、大丈夫?」
「ありがとう真希。やっぱ美貴は憎い。だけど、それじゃダメなんだよな…。
 正直、美貴を100万回殺しても足りない。
 実際に顔見たら、衝動的に殺意に駆られるかもしれないけど…。けど。
 マジで、ダメなんだ。それじゃ。梨華は、笑ってくれないんだ…。
 ───よし、行こう。美貴のところへ。ケリをつけに」

「よーし、最終決戦だぞー!張りきっていこーぜ!!!」
「はいっ」
「おうっ」
真希さんが高らかに吼えると、アタシたちはそれに続いた。

アタシたちは一人じゃない。
群れる事が、強さの象徴じゃない。だけど、弱くはない。
「大丈夫、きっと大丈夫」
それは真希さんの言葉だったけれど、今はそう想う。

だから、きっと。大丈夫。
478 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時43分01秒
29.独りぼっちだけど、でも、この街で。

ひとみさんに連れられやってきたのは、地下街の一角。
まるでモーニングのアジトを思わせるような、クラブの廃墟みたいな店だった。
人通りもほとんどなく、この辺りの店はどれも寂れた雰囲気がある。
それにまだ夜も遅くないせいだろうか。どの店も開いていない。
その中の一つに、美貴さんがいる。

「ここだ。しばらく前から、美貴がここを出入りしてる姿が見られてる」
「ここに、美貴が…どうする?罠があるかも」
「うーん…」
行動をゆだねられたのはもちろんリーダーの真希さんで、しばらく唸ったまま…かと思いきや。
「正面突破に決まってるじゃん」
助走をつけて走り出し、そのままドアを蹴り飛ばしてくぐっていった。
…おいおい、ドア蹴り破るってどんな脚力してんだよ…。
「突破ぁー。行くよーっ」
呑気な声をあげるのはいいけれど、ここは敵陣真っ只中。
もっと緊張感を持ってもらいたい…。

「んー。人、いないっぽいけど」
「いないですね。ここじゃないのかも」
「いやそんなはずないよ。毎日きっかりこの時間に、ここに入っていくの見たから…」
479 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時43分34秒
だけど、店の中を歩き回っても人影は一つもない。
狭い店内だけに、詮索はすぐに終わって誰もいないのは確認できた。
「なんだろう…」
「だとすると、隠し部屋しかないなぁ」
「だろうね」
まいさんとあゆみさんがまず、怪しそうなところを探った。
それにつられて、みんなも探り出す。

「…ねー」
「ん?」
隣にいたあさ美に声をかけたのは、アタシ。
「こういうのってさー、棚の後ろとかに扉あったりするよねー」
「…マコ、もっと緊張感を…」
そう言いながら、ワインセラーのような棚を少しずらした時。
ズドドドド…という何かが動く音がして、見事に棚の後ろには扉がぽっかり隠されてるのが見えた。
「…あった、ね」
「うん…」
本当に、最後の最後までこう、緊張感がなくていいのかと心配になるばかりだった。

480 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時44分08秒
◇◇◇

「美貴…?」
隠し扉を開けても、中は暗いばかりで何の音も聞こえてこない。
美貴さんはおろか、その手下が隠れているという気配もなかった。
みんなで出ようとした隙に後ろから襲われるという事態は想像しているが、それもどうやらなさそう。
「あいぼん、懐中電灯持ってたよね」
「おうっ。あるでー」
あいぼんがバッグから懐中電灯を取り出し真希さんに手渡す。
真希さんは前を見ながらそれのスイッチを入れ、中を少しだけ照らしてみせた。

少しだけ照らされた先に、まず首筋。

「ひっ。人が、いるっ」
真希さんが間抜けな声をあげたので、一瞬その首筋は見えなくなったけれど、
すぐに横からまいさんが自分の懐中電灯で部屋を照らした。
今度は、きちんと人の顔が見えた。
そしてその顔はまず間違いなく、藤本美貴その人だった。

「真希…?なんだ、来た…の?」
何か様子が変だというのは、美貴さんのその表情から読み取れる。
懐中電灯の光に照らされたその瞳は生気がなく、そして…そう、まるで幽霊のようにおぞましさがあった。
481 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時44分51秒
「…美貴?」
「やっと、来たの?待ちくたびれて、もう」
「…美貴…?」
懐中電灯だけじゃ足りなくなって、まずまいさんが電気を探してつけた。
少し手間取ったけれど、電気がつくと美貴さんの体や顔の全てが映し出された。

それは、まるで…。

「み、き…」

元々スレンダーだった彼女の肢体。
けれど今はそれは、どちらかというと醜く痩せ細っていた。
そして頬の色は青白く、瞳には生気はなく、虚ろに。
「その体っ…美貴!?」
あゆみさんが駆けより、美貴さんの腕を掴んだ。
すっぽりとその腕は指の中に納まってしまい、振りほどく力さえもないほどだったのかもしれない。
美貴さんは、全く抵抗しなかった。

正直、拍子抜けもいいところだった。
美貴さんは手下を引き連れて、アタシらに襲いかかる。…そんな展開を予想してたのだから。
今目の前にいる彼女はどうだ?
まるで、病人のように弱ったその身体は。
482 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時45分25秒
「遅いよぉ…。待ちくたびれちゃったってば…」
「美貴っ、答えて!どうしたのその体!」
「……」
あゆみさんの言葉を、彼女はしばらく呆然としたまま聞き流していた。
少し経ってから、「あゆみぃ…」と虚ろな瞳であゆみさんを見つめていた。
「ホントは…もっともっともっともっと、取り返しつかないくらい…。
 夢、見てたかった…んだけどね…。
 なんかも、う。つかれちゃ…ったからさ」
「美貴…まさかアンタっ!?」
まいさんが、美貴さんの服をまさぐった。
そしてそのズボンのポケットから取り出したのは、粉薬の入った包みで───

今、こんな状態の彼女を見て、それが何であるかくらい、一目瞭然だった。

「…こんなっ…アンタがこんなバカだと…思わなかっ…」
まいさんは悲痛な叫びをあげ、そしてその瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。
言葉にならない言葉。まいさんもそうだけど、あゆみさんも同じように口を手で塞いで震えながら泣いていた。
あいぼんとのの、あさ美は後ろで目を伏せていた。
「あは…まい、まいもいたんだぁ」
「バカっ。バカっ。バカだよ…バカ…」
あゆみさんとまいさんは、美貴さんの痩せ細った体を抱きしめ、そして泣き続けた。
483 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時46分45秒
「もうね…疲れたよミキは…。あ、そうだっけ。…梨華、死んだんだっけ…。
 あーあー…なんかぁ、悪いこと…した…なぁ」
ひとみさんは何も、その目の前の彼女の姿を見ようとしていなかった。
復讐を一番に考えていたはずの彼女に、何ができるだろう。
こんな、痩せ細った弱った彼女へ。

「真…希ぃ…。ミキ、悪い女だよ…ねぇ?…チョー。カッコいい、よねぇ?」

「バカだよ、あんたは…ただのバカだよ」
「バカ…かぁ。そうかも…ねぇ…。アハハハッ。ミキ、バカだよね」
「……」
真希さんももう何も言わず、そして美貴さんは一人で思い出したかのようにケラケラ笑い始めた。

「あーあー。バカ、ばっかりで面白いよねぇ。フフフ。
 梨華のこと、レイプさせた時は面白かったなぁ…。アハハッ。
 あ、そうそう、亜弥の事も楽しかったっけ。ああ、そうだ、楽しかったなぁ。アハハハハハ」
さっきまでの弱弱しい彼女の言葉とは、少し違った。
まるであの日のビデオを見ながら楽しむように、一人であざ笑った。
だけど、アタシを含めて誰もが知っていた。
484 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時47分37秒
彼女のみが見た、幻影であること。
誰もが彼女を今、哀れんでいるのかも知れない。
少なくともアタシは違うが、だけど、こんな風になってしまった彼女の事をもうどうにも思えなかった。

「クスリ、たんない…まい、クスリがたりないの」
「…ダメ、ダメだよ。それ以上やったら、アンタ絶対死ぬ…」
まいさんは、手にまだ包んだままの薬を、美貴さんの届かぬように頭上にあげた。
けれど美貴さんはカッと目を見開き、弱った体からは想像もつかない早さでそれを取り上げたのだ。
「なっ…」
「ダメだよ、まい。ミキの言うこと、聴かないと」
美貴さんはその封をただバリバリと開け、ものすごい勢いで口に直接飲みこんだ。

あまりの事態に、誰も何もできずにいる。

「あーあー。なんかもう、全部疲れた」
言葉はハッキリとした口調だった。

485 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時48分11秒
「真希も梨華もつまんない」

「まいもあゆみもつまんない」

「あんたたち、誰だっけ」

「あれー?ミキ、色々忘れてる気がする」

「…ミキ、何がしたかったんだっけ」

「なんかすごく楽しかった気がするんだけどなー」

「あ、そうか。そうだね」

「ミキ、眠りたい」

「ねむい」

「……」

「…なんか」

「ミキ、悪者になりたかった」

「だけど、なんかわかんないけど」

「失敗、しちゃった」

「怖かった」

「いつも」

「一人で」

「部屋で震えて」

「もう眠りたい」

「おやすみ。」

「……」

「…」

───
486 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時49分06秒
目を閉じたまま、彼女は目を覚ます事はなかった。
永遠に。

人が死ぬ時って、綺麗なんだと思ってた。
だけど、彼女の場合は決してそうではなかった。
痩せ細った醜い身体で、必死に言葉を紡ぐ姿。
きっと、彼女は死ぬ事くらいずっとわかってたんだろう。
アタシたちを、真希さんたちを待ってたんだろう。

何がそうさせたのか、わからない。
ただ、彼女の死に行く様を、アタシたちは黙って見届けたのだ。
きっと、みんなもわかってたのだろう。

彼女が、一番望んでいたものを───
487 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時49分47秒
エピローグ

今日もまた、朝日がこの街を包んでいく。
目覚ましの音。
にわとりの鳴き声。
お母さんが子供を起こす声。
お父さんが会社に行く音。
子供たちが学校へ行き、街は動き出す。
あちこちで声が響き。
その声がいくつも重なって。
生きているんだって、感じる事もあるとかないとか。
友達と会ったり。
好きな人と会ったり。
カラオケしたり。
ファミレスでご飯食べたり。
キスをしたり。
そんな普通の毎日。
今日もまた、夕暮れがこの街を包んでいく。

アタシたちの、この街を───
488 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時50分31秒
◇◇◇

少し、子供が出歩くには遅い時間。
都内に限りなく近い、とある町、「朝日町」。
まだ客の退かないファミレス「ゼティマ」店内。
顔見知りのウエイトレスさんが、忙しそうに料理を運んだり、注文を取っているのが見える。
アタシ…小川麻琴はというと、いつものようにその席に座っていた。
BGMには、アタシの大好きな“浜崎まゆみ”さんの曲が流れていて、それを口ずさみながら、人待ちをしている。
ウエイトレスの矢口さんの計らいもあって、 その“席”は、この時間は大抵アタシらの陣地になっている。
まあ、何をするワケでもなく、ほとんど毎日同じメンバーでたまってるだけだけど。
それが、アタシにとって日課になっていた。

「マコ」
「遅いよ、あさ美」
「塾、終わったの?」
「ううん。っていうか、減らしてもらったって言ったじゃん。今日は塾じゃないってば」
「あ、そうか」
「相変わらず、忘れっぽいんだね」
「そーいえば、亜弥ちゃんさぁ」
「うんうん」
「芸能界からスカウトかかったらしいよ」
「え!?マジでー!?」
「うん。あの件があるからどうするか微妙っぽいけど」
「そっかー。そうだよねー。まぁでも、亜弥ちゃんならねー…」
489 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時51分25秒
「そーいえばさー」
「うん」
「芸能界といえば、里沙ちゃんのCM見た?」
「ああ、見た見た。“マユゲ・ビーム”とかやってるやつだよね」
「せっかく芸能人になっても、あれじゃあねぇ…」

「…そういえばさ」
「…うん」
「矢口さん、結婚したらしいね」
「知ってるよ」
「飯田さん、部署変わったらしいね」
「それも知ってる」
「真希さんとあいぼん、うまくやってるみたいだね」
「…だから何?」
「まいさん、大学受験が忙しいらしい」
「……」

「えっと、あとさ」
「…マコォ」
「……何?」
「なんでそんなに、今日はせかせかしてるの?」
「…いや、別に」

「お待たせー」
「遅いしー。バカ愛」
「なんだ、もう愛ちゃん来ちゃったの。じゃあ、先帰るね」
「あ、ゴメンね。また今度」
「あさ美ちゃん、バイバイやよー」
490 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時52分18秒
◇◇◇

「んーっ、やっぱここが一番好きっ」
心臓が動機して、第一声がそれだった。
ドキドキしてるけど、でもやっぱ気持ちいい!
「それじゃ、猿やよー」
「猿はどっちよ、猿は」

「ここで、愛と出会ったんだよなー」
「そうやねー」
そりゃ、ビックリだよなぁ。
木の上に登ったら、女の子が一人で座ってるんだもん。
それも福井から出てきたばっかりの田舎娘が。

「今日、何の日か知ってる?」
「…なんやろ?」
「…わかんないなら、いい」

ふてくされたアタシを、ふふふ…と愛は笑ってみせた。
そしてアタシの頭を2、3回なでながら、「ココの記念日やよ」と耳元でそっと囁いた。
頬をすり寄らせ、アタシと愛は見詰め合い、そしてキスを交わした。

491 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時53分29秒
唇が離れてから少し気恥ずかしくなったけれど、でも、悪い気はしない。
出会えたコトに、感謝感謝。
色んなコトあったけど、それでも今こうしていられるならそれでいいや。

愛、ありがとう。
なーんて、本人には死んでも言えないけど。

「昨日パパから電話あって、アメリカに来ないか?って聴かれちゃった」
「ええええっ、じゃあ、ウチはどうなるんよ!!」
「愛も一緒においで、とは言ってたけど」
「けど?」
「断った」
「なんで!」

思いっきりVサイン。
極上の笑顔をあなたに、プレゼント。
理由はもちろん、これっきゃないさ!

「この街が好きだからに、決まってんじゃん!」

             ───ホームタウン・完───
 
492 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時54分08秒


         川o・-・)人∬*´▽`*∬人川’ー’*川



493 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時54分53秒
川´▽`)ノ<あとがき>川’ー’川

いやはや、ホントに読んでくださった皆様お疲れ様でした。
ついについについに完結いたしました。
もう半年も経ったんですねぇ…(遠い目
なんだか読み返してみると、前半のノリと後半で全く別作品くらいの勢いで違いますが。

ああ、なんだか最近多くを語るのが苦手になってきました。
とりあえず、カタチになったわけですし、一応書きたかった話が終わった!という感じです。
何度放置を考えたことか(ry

まだまだ精進すべきところはあるものですが、完結ということで。
一つ気が楽になりました(謎

思い返せば(激しくry)…ということで、
読んでくださってた皆様、本当にどうもどうもでした。
数少ない読者様に読んでいただいて、ホントに光栄です。

じゃ、またどこかで。
黄板のアレもよろしく(謎    2003年8月20日 ごっつ。
494 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時55分23秒
495 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時55分56秒
496 名前:ホームタウン 投稿日:2003年08月20日(水)23時56分33秒
…ップ

Σ∬∬´▽`)<またかよっ!

川’ー’川ノ完。
497 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)23時57分40秒
一番乗りかな?
とにかくお疲れ様でした。
498 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月21日(木)00時11分10秒
完結お疲れ様です
初回からずっと更新追い続けていました

ごっつあむさんの言う通りにずいぶん作品の雰囲気が変わってますが最後まで面白かったです
黄板の方も楽しみに待ってます!お疲れ様でした!!
499 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月21日(木)00時47分19秒
面白かったよ、お疲れ様
500 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月21日(木)01時58分13秒
手首を切って飛び降り?
501 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月21日(木)02時09分16秒
>>500
ΣΣΣ(´▽`∬∬ヤベーッッ
えーとえーと、すんません・゚・(ノД`)・゚・
直さないでそのまま投稿しちゃってました・゚・(ノД`)・゚・
後者に出てくる設定が正しいです、はい。
502 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月21日(木)02時09分54秒
まぁ、いいか(何
503 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月21日(木)02時10分44秒
( ‘д‘)<だけどネタバレレスはやめてなー。
504 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月21日(木)02時19分56秒
>作者さん

ちょっとしたミスですね^^;;
でも面白かったです
505 名前:露天家 投稿日:2003年08月21日(木)02時35分46秒
久々に感動する作品を読ませていただきました。
良い意味で意外なストーリーでした。
特に前半では、最終的にあんな方向に進んでしまうとは思っていませんでした。
初めからそういうストーリーにするつもりだったのかは聞いてみたいですね(笑

関係ないけれど、この作品は私に小説を書こうと決断させてくれたものでした。
特に初めの頃の五期には惹かれるものがありました。

最後になりましたが、本当に完結お疲れさまでした&良い作品をありがとうございました^^
506 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月21日(木)06時15分08秒
完結お疲れ様でした。
付いてったかいがありました。
こんなに素晴らしい作品を読めて幸せです。生きてて良かった。
実際、自分と重なる部分があったりしたので余計衝撃が強かったです。
まこあいも合ったし(w
あぁこの作品のマコみたいな生き方したいです。ンハハ。
最後に、本当良い作品、ありがとうございました。
507 名前:u-dai 投稿日:2003年08月21日(木)18時05分31秒
この小説に出会ってから、社会とはなんだろうと考えるようになりました
自分の生き方や将来を考えさせてくださいました
本当にお疲れ様でした、ありがとうございました(つД`)

>作者様、他読者の皆様
ネタバレレスしてしまった時は本当にすみませんでした
みなさんのご機嫌を害してしまいましたごめんなさいです
508 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月24日(日)21時33分34秒
おがたか最高
509 名前:ごっつ 投稿日:2003年08月26日(火)10時33分30秒
完結したのでochi(・∀・)
510 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月27日(水)01時16分56秒
乙かれm(_ _)m
また小高書いてほしい
511 名前:( ´ Д `)<んぁ? 投稿日:2003年08月29日(金)00時53分56秒
ごっつぁむ乙
512 名前:名無しさん 投稿日:2004/03/07(日) 11:22
保全

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