あした
- 1 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年01月27日(月)22時08分48秒
- 森板で小説書いてる途中なんですけど、アンリアルが書きたくなったのでこちらにお邪魔します。
森板の方と違って内容はあまり明るくないです。
紺野さん中心です。sageでお願いします。
- 2 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時09分52秒
- 『…もって、あと半年ですね…』
…あたしは
もうすぐ死ぬ。
- 3 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時13分09秒
- 1、
「あさ美ー!早く起きなさーい?遅刻するわよー!」
「…はーい…」
あたしは紺野あさ美、15歳、高校一年生。
お父さん、お母さん、なつみお姉ちゃんの四人家族。
東京都在住のごく普通の…どこにでもいるような、普通の家庭。
…あたしを除いて。
「今日の調子はどう?」
「…ん、大丈夫!完璧」
「あはっ、その口癖どーなのよ?」
パンをくわえているお姉ちゃんにデコピンされる。
「なつみ、今日は何時頃になるの?」
「んー?バイトが10時頃終わるから10時半位かな?」
「そう、気をつけて帰ってくるのよ?」
「はーい、完璧でーす」
あたしの口癖を真似して、あははっと笑った。
- 4 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時14分02秒
- お姉ちゃんは大学生。
結構レベルの高い学校で毎日遅くまで勉強してる。
あたしが病気だからお金がかかる。
貧乏ではないけれどそれでもやっぱり経済的には無理してるみたいで。
一度は大学行くのも諦めてたけどそれではいくらなんでも可哀想だ、とお父さんが無理して大学に入れた。
お父さんは単身赴任中。
お姉ちゃんも負担はかけられないと言って本屋さんでアルバイトをしている。
負担をかけているのはあたしなのにね?
「行ってきます」
「気をつけてね?具合悪くなったらすぐに帰ってくるのよ?」
「わかってる、何年病気と付き合ってると思ってるの?」
「それでも心配なの!薬持った?」
「持った」
「そう、じゃあ、いってらっしゃい」
生まれた時からあたしの心臓は欠陥品だった。
小さい頃はずっと病院で入院していた。
小学校に上がるくらいには普通の子達みたいに元気だった。
…でも治る事はなかった。
- 5 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時15分37秒
- 「…最近調子良かったのになぁ
半年かぁ。
15年も生きれたらいい方だったの」
かもね。
「「おはよー!あさ美ちゃん!」」
「おはよう、希美ちゃん、亜依ちゃん」
「大丈夫?」
「うん、元気」
「そっか、良かった」
みんな必ずあたしに「大丈夫?」って聞く。
大丈夫じゃないよ!って言いたいけど言えない。
…本当は全然大丈夫なんかないって…言いたい。
希美ちゃんと亜依ちゃんは中学の時からの友達。
…と言っても中高一貫の学校だからみんな顔見知りなんだけど。
「ねぇ?転入生が来るらしいよ?」
「へぇ、珍しいねぇ、転入生なんて」
「どんな子かなぁ?ね?あさ美ちゃん?」
「うん、どんな子だろうね」
…はっきり言って、興味がなかった。
どうせあたしは死ぬんだもん。
仲良くなった所で無意味だから。
適当に相槌を打った。
- 6 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時17分34秒
- 2、
希美ちゃんと亜依ちゃんとはクラスが違うのでそれぞれ自分のクラスへ向かった。
「おはよー、今日は平気?」
まただ。
「うん、完璧」
笑ってみせると友達はほっとしたような顔になる。
心配されるのって嫌だ。
贅沢かもしれないけど。
「みんな、席に着けー!今日はこのクラスに新しい仲間が入りまーす」
教室の中はざわざわとどよめいてた。
あたしは特に興味がなかったのでずっと外を見ていた。
「小川麻琴です、よろしくお願いします」
「小川は〜、紺野の隣だ」
名前を呼ばれた事に反応し、あたしは前を見た。
転入生がこちらを見てニコっと笑ったので、あたしも軽く会釈をした。
そしてまた外へ視線を移した。
休み時間になると転入生の周りにはクラスメイトがたくさん来ていた。
- 7 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時18分42秒
- 小川麻琴さん。
新潟からお父さんの転勤で越してきたらしい。
明るい性格ですぐにみんなと仲良くなっていた。
放課後になっても彼女の周りからは人が消えなかった。
人気者のオーラがあるんだね、きっと。
「じゃあ、ばいばい」
友達に声をかけると数人だけ返事を返してくれた。
いつも「気をつけてね」とか「大丈夫?」とかうるさいくらいに言われるのに今日はあまり言われなくて良かった。
だってその度に「大丈夫」って嘘つくの疲れるから。
少し小川さんに感謝した。
あたしは放課後時々屋上に行く。
いろんな嫌な事忘れられるから。
空を見上げてると嫌な事なんて吹き飛んでしまうから。
- 8 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時19分55秒
- 「鳥になりたいなぁ…」
心臓が悪いから走る事も出来ないあたしにとっては夢のまた夢だった。
まぁ、人間は飛べないけどね。
自嘲気味に笑った。
「ここにいたんだ」
声をかけられて振り向くと小川さんが立っていた。
「なんか元気なかったから気になってさぁ」
「紺野さん…だよね?」
「……紺野さん?」
「紺野さん!!」
頭がぐらりとした。
倒れた時の痛みと小川さんの呼ぶ声。
「…あさ美ちゃん!!」
…あたしは気を失った。
- 9 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時21分16秒
- 3、
気がつくとベットの上にいた。
「気がついた?」
保健の保田先生。
「貧血だと思うんだけどね…、あなたは病気の事もあるし…一応病院で見てもらった方がいいわね」
「はい、すみませんでした」
「あ、あとあなたを運んできてくれた子にもお礼を言っておきなさいね?」
「…小川…麻琴さん?」
「そう、必死な顔で運んできたのよ?」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
ベットから起きて保健室を出ると小川さんがあたしの荷物を持って立っていた。
- 10 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時21分52秒
- 「大丈夫!?」
「うん、ありがとう、荷物と…運んできてくれて」
「たいしたことないよ、それより本当に大丈夫なの?」
「うん、貧血だから」
「貧血?あー、紺野さん細いからー。もっと食べなきゃダメだよ?」
「そうする」
「あー、じゃああたし帰るね。まだ引っ越してきて荷物とかもぐっちゃぐちゃだからさ」
「うん、じゃあ、またあした…」
「ばいばーい」
【あした】あなたに会えるだろうか?
そんな事を思いながら小川さんを見送った。
……?
小川さんは左足をひょこひょこ引きずって歩いていった。
「怪我でも…してるのかなぁ?」
あたしもその場を立ち去った。
- 11 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時22分54秒
- 4、
昔は病院の匂いは嫌いだった。
早く家に帰りたかった。
…今はもうなれてしまったけど。
「調子あんまり良くないみたいだね?」
お医者さんはすごいね。
隠したってわかっちゃうんだから。
嘘つけないね。
「本当は…手術した方がいいんだけどね…」
手術して治る確率は数パーセント。
膨大な治療費と治る確率を比較すると手術なんて受ける気にもならなかった。
家族も本人の意思を通します、と言ってたから。
「薬、また増えるけど…頑張ろうね?」
「はい」
診察室から出て、薬をもらう為に待合室で座っていた。
- 12 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時23分44秒
- 注射を嫌がって泣く子供。
お姉ちゃんはもう数十本は打ったんだよー?とか心の中で思ってみる。
今日はいつもよりも空いていた。
だから目に入った。
「…小川さん」
引きずった左足で母親らしき人と診察室から出てきた。
とっさにあたしは身を隠し、遠くに離れた。
別に会ったってどうって事ないのに。
神様はあたしからマイナス思考を植え付け、プラス思考を抜き取りその上、命まで抜き取ろうとしていた。
家に帰るとお母さんが物凄い勢いで走ってきた。
「倒れたんだって!?」
「うん、貧血」
「貧血…」
お母さんは自分も倒れるんじゃないかって位青ざめていた。
「…あしたは学校休む?」
「…ううん、行く」
あしたがあるなら行きたい。
…ううん、生きたい…。
- 13 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時24分44秒
- 5、
あたしがベットに入る頃、お姉ちゃんは帰ってきた。
これから勉強して…寝るのは1時か2時くらい。
それでもお姉ちゃんは一言も文句は言わない。
お姉ちゃんの妹で良かったって思う。
優しくて大好き。
目を開けると明るかった。
夜が明けた。
【あした】が来たんだ。
今日も生きれるんだ。
でもまた夜になれば【あした】が来るか怯えなければいけない。
あたしは首を振って頬をぺちっと叩いた。
「おはよう」
「おはよう、昨日倒れたんだって?大丈夫?」
「うん、大丈夫、完璧」
「そっか」
頭をくしゃくしゃっと撫でられる。
「いってきます」
「…無理しちゃダメよ?」
「…わかってる」
わかってる。
自分の体だもん。
靴を履いて家を出た。
- 14 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時25分39秒
- 6、
教室に向かう途中声をかけられた。
「もしかして…あさ美ちゃん?!」
振り向くと見たこともない人が立っていた。
「あ、えっと、あたし愛。覚えてる?何年か前に新潟に来た事があるでしょ?」
…何年前だろう。
当時今よりも全然体の調子が良くて家族でスキーに行った事があった。
まぁ、いくら調子が良いといっても滑ったりはしなかったけど。
お父さんとお姉ちゃんが楽しそうにはしゃいでた気がする。
その時あたしは迷子になった。
「一緒に行こうか?」というお母さんの言葉を無視してあたしはトイレへ行こうとしてた。
初めて来た地で迷子になるのは当たり前ってことであたしは半べそかいていた。
『どうしたの?』
『迷ったの?』
『あたしも一緒に探してあげる!だから泣かないで?』
一緒に親を探してくれた同い年くらいの子。
名前は…。
思い出せない。
「あの時さぁ、あ、迷子になったあさ美ちゃんを連れてきた…あれ、うちの妹」
ずっと泣いてるあたしを励ましてくれてた子。
- 15 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時26分35秒
- なんとなく思い出してきた。
「あたしと妹、昨日転校して来たばっかなの」
転校…。
「小川麻琴、覚えてる?」
鮮明に思い出した。
あの後、無事にお母さんに会えて…そのかわりに麻琴…ちゃんが迷子になったんだっけ。
麻琴ちゃんも家族に会えて…その後親同士意気投合しちゃってご飯食べに行ったっけ。
「…思い出しました。愛ちゃん…ですよね?」
「よかった〜、間違えたかと思ってひやひやしたよ〜」
「なんで覚えてたんですか?」
「東京に住んでるのは知ってたし…、それに変わってないから。麻琴もすぐ気づいたと思うよ?」
…だからあの時「あさ美ちゃん」って呼んだのか。
「姉ちゃん!」
「麻琴、あ、あたし行かなくちゃ、じゃあまたね?あさ美ちゃん」
愛ちゃんは手を振って行ってしまった。
愛ちゃん…なんて呼んでいいんだろうか?
愛さん?小川先輩?
…別にいいか、長く付き合うわけでもないし。
- 16 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時27分37秒
- 7、
「思い出してくれたんだー」
麻琴ちゃんは嬉しそうに笑った。
「早く言ってくれれば良かったのに」
「いや、同姓同名で似てる人だったらどうしようかなーと迷って」
「同姓同名で似てる人なんてそう滅多にいないよー」
真剣に悩んでる姿を見ておかしくて笑った。
「あ、笑った」
「え?」
「昨日笑ってなかったから」
「…笑ってたよ」
「ううん、笑ってない」
心の中を見透かされた様な気がした。
まっすぐな目にあたしは怖気づいた。
「…足、どうしたの?」
あの時、スキーしてたよね?
「あぁ…、2年前に交通事故で…なんつうの?麻痺状態?治らないみたい」
わざと明るく話す麻琴ちゃんは自分と重なった。
「ま、死ぬわけじゃないしね」
最後の一言であたしとあなたの違いをはっきりとした。
- 17 名前:あした 投稿日:2003年01月27日(月)22時38分17秒
- 5番目失敗した…。
「最近調子良かったのになぁ」
半年かぁ。
15年も生きれたらいい方だったのかもね。
です。正確には。
こんな感じなので下がってきたら更新します。
- 18 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年01月27日(月)22時40分07秒
- 題名のままだった…(鬱
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)20時00分10秒
- 続きを期待してます!!
- 20 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年01月29日(水)20時50分05秒
- 19>名無し読者様
そう言ってもらえると本当に嬉しいです!頑張ります!
しっかし…ちっとも下がらんなぁ(W
…まぁいいか、更新します。
- 21 名前:あした 投稿日:2003年01月29日(水)20時51分05秒
- 8、
何も知らないという事は時に残酷な答えを出す。
一生足が不自由なまま生きる人ともうすぐ死ぬ人。
どちらが可哀想だろう。
比較なんか出来るわけないからあたしは考えるのをやめた。
…仲間だと思った。
【普通】じゃない麻琴ちゃん。
【健康】じゃない麻琴ちゃん。
あたしと一緒だと思った。
でも違った。
麻琴ちゃんは死なない。
あたしは死ぬ。
「あさ美ちゃ…」
「授業を始めるぞー、席に着けー」
あたしは麻琴ちゃんの呼ぶ声を無視して席に着いた。
授業中、ずっと空を見ていた。
水色の絵の具をそのまま塗ったみたいに青かった。
このまますーっと吸い込まれて消えちゃえばいいのに。
生きてる限りあたしの存在は消えない。
…生きてる意味さえわからないあたしの存在。
- 22 名前:あした 投稿日:2003年01月29日(水)20時52分25秒
- 「ねぇ?ずっと外見てたでしょ?」
声をかけられてはっとした。
授業はもう終わっていた。
「…鳥を見てたの」
「鳥…?」
「あたし、鳥になりたいの…」
あたしは再びはっとした。
こんな事言うつもりじゃなかった。
昔…、友達に話したら大笑いされた。
将来、何になりたいか。
みんなはお嫁さんとか、歌手とか言ってた。
あたしだけ「鳥になりたい」と言った。
「将来の話だよー?」って言われたけど、あの頃からあたしに『将来』なんて物は無いと知っていたから。
笑ってる友達の中で…あたしも笑った。
「…鳥かぁー」
また…笑われると思った。
「あたしね、雲になりたいんだ!」
「え?」
「あたし、いろいろな所に行ってみたいんだ。いろんな所に行って、いろんな物見たいんだ。それが夢なんだー」
「…うん」
「でもさ…、足がこんなだからそういう訳にもいかなくてさぁ」
「…うん」
「雲になればいろんな所行けるじゃん?んー、じゃああれだね、あさ美ちゃんが鳥になったらあたしも雲になるからさ」
一緒にどっか行こうよ!!
…この人は今まで会った人とは違ってた。
- 23 名前:あした 投稿日:2003年01月29日(水)20時53分59秒
- 9、
「あさ美ちゃん!」
「…小川…先輩」
「やだなぁ、昔みたいに愛ちゃんでいいよー」
「…愛ちゃん」
「そうそう」
この姉妹は相当明るい性格のようだ。
「あのさぁ、麻琴見なかった?」
「麻琴ちゃんなら友達に連れられて行きましたよ、すでにクラスの人気者ですから」
「…そうなの、良かった」
「え…、何がですか?」
「…あ、えーとね…麻琴、前の学校でいじめられてたから…」
麻琴ちゃんが?
あの、明るくて人懐っこい麻琴ちゃんが?
「どうして!?」
「麻琴、おじいちゃんとかおばあちゃんの面倒とか見るのが好きでね、ボランティア活動とか積極的にやってたの」
「…それが?」
「足…、悪いじゃない?それなのに偉いね、って先生とかにも凄い褒められたりしてて…それが目に付いたらしくてね」
- 24 名前:あした 投稿日:2003年01月29日(水)20時54分44秒
- 「そんな…」
「偽善者って言われてたらしい」
「そんなの!全然麻琴ちゃん悪くない!」
「うん、みんなそう思ってる。でもいじめっていうのはさ、ターゲットがいなくなったら次は自分の番かも…って思って関係ない人まで加わっちゃうじゃん」
「……」
「だから誰も助けてはくれなかったみたい。そもそも、いじめられてた事を知ったのは引っ越してくるほんの少し前だったんだから」
「……っ!」
「ずっと隠してたみたい」
腹が立った。
いじめたやつらが許せなかった。
怒りで手が震えた。
「でも、良かった、こっちではうまくいってそうで」
愛ちゃんは少し息をはいて安堵の表情を見せた。
それでもあたしの手の震えは止らなかった。
一体、これが何の感情なのか…わからなかった。
「あさ美ちゃん」
「…はい?」
「麻琴の事、よろしくね?あの子…結構つらい事とか隠すから…、見ててあげて?」
…少し前のあたしなら「あたしには関係ないから」と言っていただろう。
「…はい、わかりました」
あたしは少しづつ…変わり始めていた。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月02日(日)23時32分08秒
- こんこん…・゚・(ノд')・゚・
- 26 名前:なしこ改め空海 投稿日:2003年02月17日(月)22時24分39秒
- やっと見つけましたァー!
怪我人オガーと病人コンコンにズギューン(w
密かに小川愛に萌えてます(笑
- 27 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月18日(火)15時10分35秒
- 25>名無し読者様
こんこんめちゃネガティブです。
考えます、暗く。
26>なしこ改め空海様
ってか!なしこさんは空海さんだったんですか!(w
それにびっくり(w
こっち更新遅れてますけど必ず完結させますんでマターリお待ち下さい。
- 28 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時51分27秒
- 10、
教室では隣同士だし、体育の時間なんかは一緒に過ごす事が多かった。
あたしは病気で麻琴ちゃんは足が悪いから。
今日はマラソンらしい。
友達から「いーなー」って羨ましがられる。
「いいでしょう?」って笑って話すけど、あたしも走りたい。
…走ってみたい。
「いいなー、みんな走れてさぁ。あたしも目一杯走りたいよー」
隣にいた麻琴ちゃんはみんなを羨ましそうな目で見て呟いた。
思ってた事が一緒だった。
…麻琴ちゃんの足、良くなって欲しいな。
そう思った。
あたしが心臓病だと言う事、麻琴ちゃんには隠していた。
でもクラスの友達はみんな知っているからあたしの病気の事…もう知ってるかもしれないけど。
隠したかった。
知られたくなかった。
麻琴ちゃんに同情とか…されたくなかった。
- 29 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時52分48秒
- 「ね?あさ美ちゃん?」
「何?」
「今度さぁ…家に遊びに行ってもいい?」
「え…」
「なつみさんに会いたいなぁ…と思ってさ、ははっ…」
麻琴ちゃんは照れくさそうに頭をぽりぽりと掻いた。
もしかして麻琴ちゃん…お姉ちゃんの事…。
「だ、だめかなぁ?」
あたしの心の中はなんだかわからないけどもやもやした。
「うん、いーよ。遊びに来て」
「ほんと?やったぁ!」
ガッツポーズをしてにこにこしてる麻琴ちゃんを見て、あたしは素直に笑えなかった。
授業が終わって放課後になってもあたしの心の中には曇り雲がかかっていた。
いつものように屋上に来ると、空もあたしの心と同じようにどんよりとして暗かった。
…あたしはもうこの気持ちがなんなのか気がついていた。
あたし、麻琴ちゃんの事が好きなんだ。
その場にしゃがみこんで少し笑った。
…そっか、これが恋か。
でも多分麻琴ちゃんはお姉ちゃんの事が好き。
- 30 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時53分36秒
- 「…初恋して失恋かぁ」
たとえそれが思い込みだったとして、もし麻琴ちゃんと両思いになれたとしても。
…あたしはすぐに死んでしまう。
仕方がない事。
生きてた中で何回あきらめただろう。
運動会だって一度も出た事ないし、
修学旅行だって行った事ない。
それはしょうがない事なんだって割り切る事が出来た。
恋は、…恋はしないでおこうって決めてたのに。
…会わなければ、良かったのに。
ぽたり、と涙が手の甲に落ちた。
- 31 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時54分23秒
- 「泣くなよぉ…」
いつもこうだったじゃない。
別に特別な事じゃない。
あたしにとって笑う事は『嘘』。
本当は泣きたかった。
あたしの手の甲には涙とは違う粒が落ちてきた。
見上げるとぽつりぽつりと雨が降ってきた。
「…けほっけほっ、はぁっ…」
胸が痛くなってその場にうずくまった。
このまま雨に打たれたら死ぬのかなぁ、とか思った。
「あさ美ちゃん?!」
バン!と物凄い勢いで屋上の扉が開いた。
そこには血相を変えた愛ちゃんが立っていて。
姿を見た後、あたしは気を失った。
人前で倒れるのは二回目。
しかも同じ場所で。
違う所と言えば…麻琴ちゃんではなく、麻琴ちゃんと同じ血が流れてる人の前で。
- 32 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時54分58秒
- 11、
「びっくりしたよ…」
目が覚めるとそこは保健室のベットの上で、隣には愛ちゃんが座っていた。
また倒れたのかぁ…。
お医者さんの言うとおり体…良くないんだな…。
「あさ美ちゃんが屋上に上がっていったのが見えて…特に声かけなかったんだけどやっぱり気になって見に行ったら…」
「…すいません」
謝ると愛ちゃんは下を見ながら呟いた。
「保田先生から…聞いたんだ。あさ美ちゃんの病気の事…」
「…そうですか」
「でもさ!こうして学校に来てるわけだしそんなに重くないんでしょ?」
クラスメートも保田先生も知らない。
あたしの命があと半年しかない事。
知ってるのは家族だけ。
- 33 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時55分52秒
- 「はい、今日はたまたま調子が悪くって…」
「そーだったんだ、ダメだよ雨の中にいちゃあ」
…また笑って嘘をついた。
必死でシーツをつかんで震える手を隠した。
「ね?なんか力になれることがあったら言ってね?」
愛ちゃんはにこりと微笑んだ。
「一つ…お願いがあるんですけど…」
「なに?」
「麻琴ちゃんには病気の事秘密にしててもらえませんか?」
「え…?あ、うん。いいけど…」
「お願いします」
もう知ってるかもしれないけど…まだ知らないかもしれないし。
…会わなければよかったなんて思うのやめよう。
じゃなきゃ、どんどん嫌な人間になりそうだから…。
帰って行く愛ちゃんの後姿を見ながらそう思った。
- 34 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時56分35秒
- 12、
家に帰るとまたお母さんが血相を変えて走ってきて、なんだか申し訳なかった。
普通の体だったらこんなに心配する事もないだろうし。
「あさ美…」
「ただいま!お腹すいた〜、今日の晩御飯はな…」
顔を上げるとお母さんは泣いていた。
「…お母さん、泣かないで?」
「…っく、ごめ…、ごめんねぇ、あさ美…」
「いいよ、お母さんのせいじゃないよ?お願い泣かないで?」
お母さんが泣いたら、あたしが死ぬって事がとても近くに思えて嫌だよ。
お願い。
だから泣かないで?
そこへバイトが休みだったお姉ちゃんが帰ってきて驚いていた。
「ど、どーしたの?2人とも!?」
「なんでもないよ、おかえり!お姉ちゃん」
「た、ただいま…?」
あたしは二人を置いて二階にあがった。
お母さんはまだ泣いていて、でもお姉ちゃんがついてるから大丈夫だろう。
安心しなよ、お母さん。
あたしがいなくても立派な娘がいるからさ。
- 35 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時57分23秒
- 荷物を置いてベットに座るとトントンとドアをノックする音が聞こえた。
「あさ美、あたし。入っていい?」
「…いーよ」
お姉ちゃんは部屋に入るとあたしの隣に座った。
「あさ美」
「何?」
「…入院しなさい」
「え…?」
「お母さんもお姉ちゃんも…もちろんお父さんも凄く心配なんだよ。ここの所あまり良くないじゃない」
「………病院に縛り付けるの…?」
「っ!違うよ!何回も倒れるなんて心配で…!」
「あたしは!…あんな所で死を迎えたくない!みんな…!普通に生活して良いって言ったじゃない!どうして?あたしが邪魔になったの?!ねぇ?!」
あたしはいつの間にか泣いてたけど、目の前のお姉ちゃんも泣いていた。
「…あさ美に生きて欲しいんだよ…。このまま生活してたらどんどん悪くなるような気がして不安なんだよ…」
「お姉ちゃん…」
- 36 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)20時59分27秒
いつもあたしの事ばっか考えてて、やりたい事も我慢して。
小さい頃からお母さんやお父さんの目はあたしに向いていて寂しい思いだってしてきたはずのに。
なんでこの人こんなに思ってくれるんだろう。
ばかだよね。
ばかなお姉ちゃん。
…一番ばかなのはそんなお姉ちゃんを泣かせてるあたし。
「…お姉ちゃん?あたし死ぬのは怖くないよ?…ううん、それは嘘。でも自分のやりたい様にして死ねるなら本望だよ?」
「でも…!」
「やりたい事もできないで死ぬなんて嫌。死んでも死に切れない。だからこれはあたしのわがまま。…お願い」
「……」
お姉ちゃんは黙り込んでしまった。
- 37 名前:あした 投稿日:2003年02月23日(日)21時00分39秒
- あたしは今日の事を思い出した。
「ね!愛ちゃんと麻琴ちゃんの事覚えてる?」
「……?」
「何年か前に…スキーに行った時に会った…」
「……あぁ!…覚えてるよ。一緒に迷子になってた子とそのお姉ちゃんだよね?」
「転校して来たんだよ、同じクラスなの」
「そうなんだ…!」
「でね、…今度遊びに来たいって…。麻琴ちゃんがお姉ちゃんに会いたいって…」
「そっか…。うん、是非遊びにおいでって伝えておいて?」
「…わかった。…お姉ちゃん、ちょっと疲れたから横になりたい。いいかな…?」
「あ、…うん、わかった」
お姉ちゃんは部屋から出て行った。
まだ何か言いたそうだったけど。
ベットに寝転んで天井を見つめた。
…とても、眠くなった。
- 38 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月23日(日)21時03分10秒
- やっとこっちも少しだけど更新できた…。
話が全く進んでませんが…。
紺野さんの人格もおかしいしなぁ…困った作品だ。
- 39 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月23日(日)22時27分41秒
- 更新お疲れ様です
こちらの作品も読んでおりました
紺ちゃんどうなるんだろう…
全然良い作品ですよ!続きマータリとお待ちしてます。頑張ってください
- 40 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時05分33秒
- 13、
目を覚ますと部屋は真っ暗で毛布がかけられていた。
時計を見ると9時半位だった。
のどが渇いて下に下りるとリビングでお姉ちゃんがテレビを見ていた。
あたしに気がついた様でくるっと振り向いた。
「おはよう〜」
「おはよ…」
「って!今夜だっての!普通に返さないでつっこんで欲しかったなぁ」
「あ、ごめ…」
「いや、謝られても困るんだけどねぇ」
ほんの何時間前とは違ういつもの明るいお姉ちゃんになってた。
…無理してるんだろうなぁ、とか思った。
「お母さんは…?」
「お風呂。夕御飯ならあるから食べな?」
「うん」
台所に行くとちゃんと用意されていて、電子レンジで温めて食べた。
食べてるとリビングからお姉ちゃんが来て向かい側に座った。
「…?」
「一人で食べんのさみしいっしょ?お姉さんが話し相手にでもなるよ」
「…今日は勉強は…?」
「気にしな〜い。今日はお休み」
ニコニコと笑ってるお姉ちゃんにいつも疑問に思ってた事を聞いてみた。
- 41 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時06分08秒
- 「なんで…、そんなに優しいの?」
「へ?」
驚いたように目を丸くしてまた笑った。
「あたしの大事な妹だからだよ?」
「……」
「あれ?答えになってないかな??」
目の前のお姉ちゃんがよく見えなくなってきた。
なんか…ぼやけて見える。
「あさ美?…なーに泣いてんのさ?」
あたしは無意識のうちに泣いていた。
お姉ちゃんは「泣き虫〜」って言いながらパジャマの袖で拭いてくれた。
そしてぎゅうっとあたしを抱きしめて頭を撫でてくれた。
「お姉ちゃんはね〜、シスコンなんだよ。多分」
お姉ちゃんがそう言って笑うからあたしもなんだかおかしくて笑った。
お風呂から出てきたお母さんは抱き合ってるあたし達を見て驚いてた。
それを見てあたしとお姉ちゃんはまた笑った。
お姉ちゃんがシスコンなら多分あたしもそうだよ?
なんだか恥ずかしくて言えなかったけど、そう思った。
- 42 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時06分49秒
- 14、
朝起きるとなんだか体が軽かった。
今日は調子がいいみたい。
昨日の夜いっぱい笑ったからかなぁ?
軽く伸びをしてベットから起き上がった。
いつもと同じように服を着替えて学校へ向かった。
歩いてると前の方に麻琴ちゃんと愛ちゃんの姿が見えた。
無理しないように走って追いかけた。
「おはよう!愛ちゃん、麻琴ちゃん!」
「お、おはよう」
「おはよー」
2人とも驚いていた。
こんな元気なあさ美ちゃんを見たのはひさしぶりだ、って。
あたしも驚いてた。
でも昨日泣いた事で嫌な事が少しだけ飛んでいった。
麻琴ちゃんがお姉ちゃんの事好きなるのも当たり前な話だから。
あたしだって血がつながってなかったら好きになってたもん。
恋人として。
- 43 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時07分41秒
- 「ねぇ?今日うちに遊びに来ない?」
「え!いいの?」
「うん。あのね、お姉ちゃんと…お母さんにも二人の事話したの。そうしたら是非遊びにきてって」
「うん、いくいく!」
「姉ちゃん部活があるじゃん」
「サボるよ!」
「悪いヤツ…」
楽しかった。
いっぱい笑った。
久しぶりに体の事気にしないでいられた。
これから…一緒にいられる時間は短いけど仲良くしてください。
愛ちゃん、麻琴ちゃん。
授業が終わると誰かが走ってくる音が聞こえてドアの方を見た。
そこには息を切らせてる愛ちゃんがいた。
「なにやってんの?姉ちゃん」
「追われてて…!早く行こう!」
「追われてる?」
あたしと麻琴ちゃんが顔を見合わせてると愛ちゃんが走ってきた方向から凄い勢いでだれか走ってきた。
- 44 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時08分32秒
- 「入部したてでサボる気ー?!」
「あ、亜弥…」
「先輩に怖いんだから早く行くよー!」
「あああああ…!麻琴ー!あさ美ちゃーん!」
愛ちゃんは引きずられて行ってしまった。
「…愛ちゃんって何部?」
「…バスケ部」
バスケ部といえば熱血主将と吉澤先輩と熱血体育教師飯田先生。
そんな部に入っててサボろうとするとは…。
あ、でも転校したてだから知らなかったのか。
「あははっ」
「あはは、アホな姉だ。恥ずかしいヤツ」
あたしが笑うと麻琴ちゃんも嬉しそうに笑った。
愛ちゃんは解放されそうにないので二人で家に向かった。
- 45 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時09分19秒
- 家にはすでにお姉ちゃんが帰ってきていた。
「ただいま、あれ?バイトは?」
「急にシフト変更。今日も休み」
「おじゃまします!」
「あ〜!麻琴ちゃんでしょ?変わってないねぇ〜、身長は追い越されちゃったけど」
「えへへ…」
照れくさそうに笑う麻琴ちゃんとお姉ちゃんを見るのはさすがに少し辛かった。
「…なんか飲み物でももって来るね」
あたしは台所へ。2人はリビング。
笑い声が聞こえる。
飲み物を持ってリビングのドアを開けようとした時、中から小さな声で2人が喋っていた。
…もしかしてお姉ちゃんが麻琴ちゃんに話してしまったんだろうか…?
その場から動けなくなってドアの隙間から見える2人が遠く感じた。
ぼーっとしてると中からお姉ちゃんの笑い声がしてハッとした。
中に入ると麻琴ちゃんの顔は赤くって、お姉ちゃんはニコニコしていた。
…あたしの事話した訳ではなさそうだけど…。
なんだか不自然な2人に疑問を感じた。
- 46 名前:あした 投稿日:2003年02月26日(水)21時10分07秒
- その後、昔の話をしたりなんかして時間が過ぎた。
「あ、そろそろ帰ろうかな?」
「もうそんな時間?」
「あんまり遅くなるとアホ姉がうるさそうだから」
「愛ちゃんが?」
「自分ばっかりずるい!って」
「あははっ、じゃあ気をつけてね?またいつでも遊びに来てね」
「はい。あの、おばさんによろしく言っておいて下さい!あさ美ちゃん、また明日ね!」
「うん、ばいばい」
2人で玄関まで見送ると隣に立っていたお姉ちゃんがニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「どうしたの?」
「ううん、別に〜。お母さん遅いね〜?」
話をはぐらかすように家の中に入って行ったお姉ちゃんを疑問に思いながらドアをしめた。
- 47 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月26日(水)21時14分22秒
- こんなお姉さん欲しいんですけど、どこにいますかね?(w
39>名無し蒼様
こちらも見ていてくださってありがとうございます!
少しづつですが話が進行して来ました。
駄文ですけどこれからもよろしくお願いします…。
- 48 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月26日(水)23時08分07秒
- 更新お疲れ様です。
私もあんなお姉さんが欲しいです(>_<)
こんこんみたいな妹もいいですねぇ…。
- 49 名前:あした 投稿日:2003年03月09日(日)20時18分45秒
- 何を話したのか気になったからお姉ちゃんに聞いてみた。
「ねぇ?麻琴ちゃんと何話したの?」
「え〜?まぁいろいろさ〜」
「いろいろって…!」
「まぁまぁ、興奮すると体に悪いから落ち着いて」
「だって…」
好きな人の事は気になるし、
好きな人の好きな人がお姉ちゃんってのも気になるんだよ。
「いつかわかるよ」
お姉ちゃんは笑って言いながら自分の部屋に入って行った。
「………答えになってないよ」
あたしも自分の部屋に入った。
机の上には沢山の薬が置いてあって。
もうすぐ死ぬって知った時は壁に薬を投げつけて泣いたっけ。
その時に比べたら大分心は安定してるのかな…。
あたしは薬の袋を持って1階に降りた。
お母さんが帰ってきたみたいだった。
- 50 名前:あした 投稿日:2003年03月09日(日)20時19分19秒
- 「おかえり。遅かったね?」
「ごめんね〜、ちょっとお祖母ちゃんのとこ行ってたのよ」
「おばあちゃんちに?」
「今からご飯作るからもうちょっと待っててね」
「うん」
もう一度部屋に戻ったらお姉ちゃんがいた。
「わっ!びっくりした。どうしたの?」
「なんかねぇ、アルバム見てたらこんなの出てきて」
手渡されたのはあの時のスキー旅行の写真。
後ろにはお父さんとお母さん達。
前にはお姉ちゃんとあたしと愛ちゃんと麻琴ちゃん。
「懐かしいっしょ?あげるよ」
「ありがとー…」
笑顔でピースをしている麻琴ちゃんとその横で笑ってるあたし。
まさかまた会えるとは思ってなかったから
嬉しいような悲しいような複雑な心境だよ。
- 51 名前:あした 投稿日:2003年03月09日(日)20時19分52秒
- 15、
今日は休日だから遅くまで眠っていた。
頭の中で何故か救急車のサイレンの音がしてはっと目が覚めた。
「……せっかくの休みだっていうのに…」
夢まで悪夢とは本当に神様なんていないんだね。
カーテンを開けて外を見ると外は雨だった。
1階に降りると書置きが置いてあった。
『買い物に行ってきます 母
バイト行ってくるよ 姉 』
…心配する割には奔放主義だなぁ、うちの家族は。
そこがいいとこだけど。
冷蔵庫から牛乳を取り出し、飲んだ。
パジャマのまま少しうろうろして、特にやる事もなかったのでまた部屋に戻った。
そしてまたベットにもぐりこみ目を閉じた。
- 52 名前:あした 投稿日:2003年03月09日(日)20時20分29秒
- ピーンポーン
「ん…」
ピンポンピンポンピンポン
「んん…」
…うるさいなぁ。
ベットから起きて玄関に向かった。
「はい…?」
ドアを開けると。
「あさ美ちゃんおはよー!!」
「…うるさいって…」
- 53 名前:あした 投稿日:2003年03月09日(日)20時21分15秒
- そこには愛ちゃんと麻琴ちゃんがいた。
麻琴ちゃんが言うには、麻琴ちゃんが帰ると思いっきり拗ねた愛ちゃんが出迎えていたらしい。
そして寝るまでずっと「ズルイ、ズルイ…」と言われ続けたらしい。
そのうち黙るだろうと放っておいたら「明日行く!」と言い出し止めても聞かなかったらしい。
…なんとも愛ちゃんらしい…。
「…ごめんね、寝てた?」
「ううん、大丈夫だよ」
「綺麗な家だねー」
「……姉ちゃん」
なんだか漫才を見ているようだ。
あたしは昨日お姉ちゃんから貰った写真の事を思い出した。
「あ、ちょっと待ってて」
部屋から写真を持ってきて二人に見せると懐かしそうに話し出した。
「ぅわー!懐かしー」
「…ホント」
あたしは聞き逃さなかった。
写真を見て明らかに麻琴ちゃんの声のトーンが下がった。
二人の手にある写真を覗きこんで、その原因に気がついた。
- 54 名前:あした 投稿日:2003年03月09日(日)20時21分51秒
- 麻琴ちゃんはスキー板を持ってピースをしている。
まだ足が不自由じゃなかった頃。
…なんでこんなに自分は無神経なのか。
「麻琴、この頃足良かったもんね〜」
…な!
「まぁしょうがないよ、怪我しちゃったモンは」
…え!
なんて軽い姉妹なんだよぅ…。
「この頃からずっと麻琴ってば…モガモガっ……」
「…うるさいから、ほんとに」
麻琴ちゃんは愛ちゃんの口を押さえている。
「…?」
「…気にしないで…、それよりさ、なつみさんって医大に行ってるんだって?凄いね〜」
「え!そうなの?」
麻琴ちゃんはそれから何かとお姉ちゃんの事を話し続けた。
わかってたけどなんだか辛くてちゃんと笑ってたかどうかもわからない。
麻琴ちゃんがあたしの知らない人の事が好きだった方がいくらか良かったんだろうか。
(………っつぅ……)
暗い事考えたりすると体も悪くなるみたいだ。
- 55 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月09日(日)20時26分16秒
- 久しぶりなのにこの少なさ…。
頑張ります、ほんとに。
48>名無し読者様
上に安倍さん、下に紺野さんがいたら緊張して生活できない…(w
- 56 名前:あした 投稿日:2003年03月10日(月)13時46分54秒
- 16、
次の朝は予想通り調子が悪かった。
頭はくらくらするし、体も重かった。
いい事があると体も良くて、悪い事があると体も悪いなんて単純な体だなぁと思った。
ここで具合が悪い事がばれたら入院させられるかもしれない。
必死に制服に着替えて下に降りた。
いつもと同じようにお姉ちゃんもお母さんも「おはよう」って言ってきたからあたしも「おはよう」って言った。
「今日…、病院寄ってから帰るね」
「どこか具合でも悪い?」
「ううん、薬がなくなりそうだから」
「…そう」
薬なんて沢山ある。
「いってきます」
家の扉を閉めた瞬間、ドアにもたれ掛り、目を閉じた。
もうすぐなのかもしれない。
死期は着実に近づいてきている。
- 57 名前:あした 投稿日:2003年03月10日(月)13時47分39秒
- 学校に行く途中、あたしは周りの景色を眺めながら歩いた。
あと何回この道を通る事ができるだろう。
車通りが激しくて、空気も悪いこの世界にいつまでいられるだろう。
天国ってどんななのかな?
…車なんて走ってないよね。
食べ物とかあるのかな…。
死んでるんだから食べなくてもいいか…。
学校について、教室に行くといつもの様に友達が挨拶してきた。
「おはよう!今日は大丈夫?」
「うん、大丈夫」
いつまでこの会話もできるんだろう。
席に座ってふと隣を見るとまだ麻琴ちゃんが来ていない。
鞄もない。
前に麻琴ちゃんは言っていた。
『足が悪いから家はかなり早く出てるんだ。だから毎日一番!』
友達に聞いても麻琴ちゃんの姿を見たっていう人はいなかった。
少し気になってあたしは教室から出て麻琴ちゃんを探した。
その間も頭はくらくらしていた。
- 58 名前:あした 投稿日:2003年03月10日(月)13時48分14秒
- 「どこにいるんだろう…?休みなのかな…」
昨日は元気だったのに。
校舎の裏側のあまりひと気のない所まで来てしまった。
「…こんなとこにいるはずないか…」
引き返そうと振り向いた時、誰かの話す声が聞こえた。
声のする方へ歩いていき、覗き込むとそこには麻琴ちゃんと…二年の先輩がいた。
「あんたさぁ、転校してきたばかりなのに目に付くんだよねぇ」
「足悪いのアピールして同情してもらって嬉しい?」
「…あんた達には関係ない。あたしがやりたいようにしてるだけだから」
「『あんた達』だって。先輩に向かってさ」
「大体その目が気に入らないんだよね、ガンつけてんの?」
「生まれつきですから」
「偉そうな態度も気に入らない」
「…話にならない。もういいですか、授業始まるんで」
麻琴ちゃんが歩き出すと一人が腕を掴み、麻琴ちゃんを引っ張った。
- 59 名前:あした 投稿日:2003年03月10日(月)13時48分53秒
- 「何…!」
「あんたの姉もムカつくんだよ。来たばっかなのに吉澤先輩に気に入られてさぁ」
「姉ちゃんの事なんかあたしと関係ないだろ!」
「うるさい!」
もう一人が腕を振り上げた瞬間、あたしの体は動いていた。
全てがスローモーションに見えて、その腕は麻琴ちゃんをかばったあたしの頭にあたった。
「……っ!」
「…あさ美ちゃん!?」
見上げると先輩達は動揺してるみたいでこそこそ話してる。
「…麻琴ちゃんはあたしの大事な友達なのでいじめるのはやめてください!」
大声を出すと胸がドキドキした。
…違う。
ドクドクして痛くて、呼吸ができなくなった。
胸を押さえて倒れるあたしを見た先輩達は走って逃げて行った。
- 60 名前:あした 投稿日:2003年03月10日(月)13時50分38秒
- 「っあ…、あ…」
「あさ美ちゃん!あさ美ちゃん!」
「…はぁ、っ…ぁ、麻琴ちゃ……」
苦しい…。
ねぇ…、このまま…。
麻琴ちゃん…。
……助けて。
- 61 名前:何番目かの名無し読者 投稿日:2003年03月10日(月)23時38分11秒
- 更新乙です
すッごく切なくてたまらないです
次回も楽しみに待ってます、頑張って下さい
俺は上に高橋さん、下に小川さんだったら・・・(設定に無理あるけどw
- 62 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時42分05秒
- 17、
…夢を見た。
そこには死んだおじいちゃんと昔飼っていた犬のシロ。
懐かしくて、嬉しくてそこへ走っていくとおじいちゃんは首を左右に振った。
シロもあたしに向かって吠え続ける。
「どうして…?」
急に目の前が真っ暗になって誰もいなくなった。
「おじいちゃん…?シロ…?」
前の進もうとしても真っ暗で何も見えない。
何も聞こえない。
「おじいちゃん!」
「シロ!」
「…誰か………」
「………………麻琴ちゃ…、…麻琴ちゃん!お願い…!誰か……」
泣き叫んで、その場に座り込んだ。
ふっと周りが眩しい光に包まれた。
眩しくて…目を瞑ると遠くから声が聞こえてきた。
- 63 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時42分55秒
- 「……さ美」
お…母さん?
「……あさ美!!」
お姉ちゃん…?
「あさ美ちゃん!!!」
麻琴ちゃん……!
目を開けるとそこは病院だった。
横にはお母さんとお姉ちゃん。
…それと麻琴ちゃんの姿があった。
お母さんとお姉ちゃんは泣いていて、麻琴ちゃんは心配そうな顔だった。
「…よかった…」
「……お母さん、お姉ちゃん…少し麻琴ちゃんと2人にさせてください…」
2人は了承してくれて部屋から出て行った。
2人きりの部屋は少し沈黙が続いた。
- 64 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時43分32秒
- 「麻琴ちゃん、…あたし」
「…知ってるよ」
あたしを見つめて一言だけ、麻琴ちゃんは喋った。
「…そう」
「ね、話があるんだけど聞いてくれる?」
麻琴ちゃんは寝ているあたしの手を探して、強く握った。
「…あたし、あさ美ちゃんが好き」
「え…」
「あの日からずっと忘れられなくて…。会えてびっくりした。…嬉しい」
あたしを見て微笑む麻琴ちゃんをあたしは真っ直ぐに見る事ができなかった。
- 65 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時44分15秒
- 「…あたし、もうすぐ死ぬよ…?」
「心臓が悪いって事はさ、遊園地とかは行けないよね、ってかあたしも足悪いから無理か」
「麻琴ちゃ…あたし…」
「あ!返事も聞いてないのにデートどこに行くかとか考えちゃったよ」
「もうすぐ……」
「あさ美ちゃんの返事が聞きたいなぁ」
「死……」
「あさ美ちゃんは死なない!!……死なないよ」
麻琴ちゃんから笑顔が消えていて、目には涙があふれていて、声も枯れていた。
それでも無理して笑ってあたしにもう一度聞いてきた。
「あさ美ちゃん、あたしはあなたの事が好きです。付き合ってもらえませんか?」
…嬉しかった。
諦めようとしても諦められなかった好きな人。
その人が自分の事を「好き」といっている。
普通なら「あたしも好きだったの!」とか「喜んで!」とか「こちらこそ!」とか言うのかな。
- 66 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時45分00秒
- あたしの口から出た言葉は。
「…ごめんなさい、………付き合えません」
…だってあたしは死ぬんだもん!
自分でわかるんだもん!
…もう少ないこと!
「…諦めない」
「え…?」
「あたしの事嫌い?」
「………」
「…あたしは諦めないよ。もしあたしと付き合えない理由が病気なんだったら諦められない」
「……っ」
「…一緒に頑張ろう?」
麻琴ちゃんの顔にはすでに笑みはなく、ぽたぽたと涙をこぼしていた。
繋いでいた手を離して、麻琴ちゃんはあたしの頬を触った。
「…泣かないで、あさ美ちゃん」
「…え……?」
いつのまにかあたしも泣いていた。
あたしは何で泣いてるんだろう。
両想いだった事が嬉しいから?
もうすぐ死ぬのが怖いから?
- 67 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時45分44秒
- 「あさ美ちゃん…」
「…ごめんなさい……、今日は帰って…」
「…でも!」
「お願い…」
強引に麻琴ちゃんを帰して布団をかぶってあたしは泣いた。
麻琴ちゃんはあたしの事が好きだと言ってくれた…。
あたしが病気じゃなかったら良かったのに…!
あたしは…あともうちょっとで…!!
…誰か…!
麻琴ちゃんと一緒にいたいです。
一緒に遊園地に行ったり、映画館に行ったりしたいです。
いっぱい笑って…、時には喧嘩したりしてみたいです。
…いっぱい泣くと胸が痛みます。
あたしはもうすぐ死ぬんです。
- 68 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時47分02秒
- 18、
次の日から、あたしは学校へ行く事が出来なくなった。
入院って言われて、反論する元気もなくなってた。
先生は心配させないように笑顔で接してくれるけど、あたしはもう見てしまっていた。
険しい表情の先生と涙を流すお母さんを。
無理して学校通ってたから死期が早まっているのかなぁって思った。
お姉ちゃんにお願いして、ノートとシャープペンシルを買ってきてもらった。
これから死ぬまで日記を書こうと思う。
何日分書けるのかわからないけれど、長く書ける事を望んで。
***
○月×日 はれ
昨日、とても嬉しい事がありました。
素直に返事してあたしが死ぬまで一緒にいてもらえば良かったのかなって
思った。でも、最後に辛くなるのは嫌だったからまた嘘をついた。
多分麻琴ちゃんへの最後の嘘になると思う。
***
最初のページはこれだけでやめた。
- 69 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時47分38秒
- 窓の外を見ると、木があって細い枝に一枚だけ葉がついていた。
「あの葉が落ちたらあたしも死ぬ」とか言わない。
だってあの葉は新しい葉だから。
これからもっと大きくなって行く新芽だから。
ベットから降りてカーテンを閉めた。
そしてまたベットに仰向けで寝た。
「あさ美…?」
ドアの開く音がして顔を向けると家からいろいろと使うものを持ってきたお母さんだった。
「あさ美ちゃん!」
その後ろから顔出したのは麻琴ちゃんだった。
あたしはとっさに窓の外を見た。
顔をそらすように。
お母さんは麻琴ちゃんに「よろしくね」と言って部屋から出て行った。
よろしく…って。
- 70 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時48分22秒
- 「…具合どう?」
「………」
「これ…今日分のノート…」
「………」
「あと……」
「………」
あたしが何も言わず顔をそらしてるのが気に入らないのか大きなため息が聞こえた。
出入り口側に座っていた麻琴ちゃんは窓側へ移動してきた。
「…!」
「やっと顔が見れた。あ、そっち側向いたらダメだからね」
「……何しに来たの?」
「言ったでしょ、諦めないって。好きになってくれるまで通い続けるから」
ねぇ?
麻琴ちゃん、足悪いんでしょう?
ここまで来るの大変でしょう?
どうして。
「…なんで、なんでそんなに……」
「ずっと好きだったって言ったじゃん、そう簡単に諦められないから。…ね、一つだけ聞かせて?」
「……なに」
「あたしの事は嫌い?好き?」
…そんなこと………。
「……………………………嫌い…」
- 71 名前:あした 投稿日:2003年03月11日(火)21時49分14秒
- 必死に泣くのを我慢して、鼻がツンとして、のどが痛くなって出た言葉。
一番つきたくなかった嘘をついてしまった。
日記は訂正しなきゃ…。
多分これが最後。
「…だから、帰って。もう…ここには来ないで」
麻琴ちゃんは何も言わずに部屋から出て行った。
出て行った出入り口を見るとすぐ横のテーブルの上に花束が置いてあった。
紫色の星型の花。
『桔梗』
…知ってるよ、花言葉。
【変わらぬ愛】
麻琴ちゃんは知ってたのかな…?
- 72 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月11日(火)21時55分12秒
- 61>何番目かの名無し読者様
応援ありがとうございます!
「何番目かの」って事はずっと読んでてくれてるんですね…。
嬉しいです。
もうちょっと心の葛藤を書きたいのですがダメですね。
作者が健康体じゃ(w
もっと勉強せねば。
- 73 名前:何人目かの名無し読者 投稿日:2003年03月12日(水)00時11分01秒
- ずっと読んでいたのですがレスするのは61が初めてなんです。誤解させてしまってスミマセン(汗
心の葛藤、すごく伝わってきますよ。読んでて胸がキューン、鼻がツーンとなりましたし。次回更新を心待ちにしております、頑張って下さい。
P.S.
健康体がいちばんですよ、ご自愛下さいw
- 74 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時00分37秒
- 麻琴ちゃんが帰ってすぐ、お母さんは部屋に入ってきて花を花瓶に入れていた。
「きれいね」とか言いながら。
あたしはまた窓の外を眺めた。
さっき見た細い枝には小鳥がとまっていた。
忙しそうに羽繕いしている。
それを見ていたあたしは自然に微笑んでいたのだろう。
お母さんが少し笑いながら話しかけてきた。
「あさ美、鳥好きなの?」
「………うん。いいなぁって思う、自由に飛べて」
一言言った後、お母さんから言葉が返って来る事はなかった。
きっとどう返したらいいのかわからなかったんだと思う。
もうそう長くはないし、嘘をつくのはもうやめた。
あたしだって強くないし…。
- 75 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時01分26秒
- 「…お母さん?今日はもう帰りなよ、お姉ちゃん待ってるよ」
「…!?何言ってるの?」
「あたしは一人でも大丈夫だから。…看護婦さんだっていっぱいいるんだよ?
だから安心して?お姉ちゃん勉強大変だしちゃんとご飯とか作ってあげてよ、ね?」
「でも…」
「一人になりたいの…、今あんまり人と会いたくない…」
あたしがそう言った後、お母さんは「そう…」と一言呟いてから帰る支度をした。
心配してくれてるのにゴメンね、お母さん。
「じゃあ…帰るから…」
「うん、ばいばい」
お母さんが部屋から出て行った。
一人ぼっちになった部屋はとても静かで心地良かった。
テーブルの上の花を少し見つめてあたしは立ち上がり、その花をゴミ箱へ捨てた。
外は薄暗くなって、電気もつけていないこの部屋はとても暗かった。
「死んだら真っ暗な世界かな…」
一度はプラスに向いていたあたしの心はマイナスに向いてきている。
心が元気なら体も元気になる。
そんな単純な話じゃないけどそんな気がする。
- 76 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時02分21秒
- 19、
麻琴ちゃんの事が好き。
麻琴ちゃんもあたしの事が好きだと言ってくれた。
…きっと夢なんだ。
あたしがここに生きている事も夢で、…みんな夢。
覚めることのない悪夢。
- 77 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時03分02秒
- 今日はあいにくの雨。
外を眺めても鳥が飛んでいない。
鳥が飛べない世界とあたしが今生きてる世界はきっと同じ。
晴れれば元気に飛びまわれるんだ。
病気が治れば元気に飛びまわれるんだ。
突然扉をノックする音。
「…はい?」
そこには。
「やっほー!あさ美ちゃん!」
…そこには愛ちゃんがいた。
「お見舞いに来たんだー、あ、そのまま寝てていーよ!ね?座ってもいい?」
「…はい」
「…これ預かってきてて…」
鞄の中から愛ちゃんが取り出したのは一通の手紙。
少しくしゃくしゃに折れ曲がっている。
- 78 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時04分03秒
- 「麻琴から。…えと…全部聞いた…」
「……」
「…でもおせっかいだと思うけど一つ言わせて」
愛ちゃんはふと下の方を見て歩きながら話し出した。
「麻琴、ずっとあさ美ちゃんの事好きだったんだよ、初めて会った時から。あさ美ちゃん達が新潟から帰った後もずっとあさ美ちゃんの話とかしててね…」
…あたしは麻琴ちゃんの事忘れてた。
だって何年か前に一度だけ会った人だもん…。
「東京に行く事になって「あさ美ちゃんに会えるかな!?」っていつも言ってた。そして…また会う事ができた」
「………」
「…わかってあげて欲しいな、…あーんな生意気な妹でも…かわいい妹だから」
「…はい」
「麻琴は同情とか…そんな気持ちで言ってるんじゃな…」
「わかってます…」
雨の音しか聞こえない部屋で2人きり。
あたしの瞳からは涙が止まらなかった。
こんな泣き虫じゃなかったのに。
- 79 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時04分46秒
- 「…ほいっ!」
愛ちゃんはハンカチを差し出してくれた。
それを借りて涙を拭いていると愛ちゃんはゴミ箱に手を入れて捨てた花を拾い上げた。
そして花瓶に水を入れて花を中に入れた。
「…ちょっと、枯れちゃったね」
「…麻琴ちゃんが持ってきてくれたんです。でも忘れるために捨てました」
「忘れる…?」
「麻琴ちゃんを忘れるために…」
「……もしかして、あさ美ちゃん…麻琴の事」
「…好きです。でも好きになっちゃいけないんです。…もうすぐ死んじゃうから…」
「…………あたし、そろそろ帰るね?…その手紙、すぐに読んで。麻琴が思うこと全部書いてあるから」
あたしの手の中にぎゅっと手紙を押し込んで愛ちゃんは出て行った。
一人になった部屋であたしは手紙を見つめた。
そして手の中にある手紙を開けて読んだ。
- 80 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時05分26秒
- 【あさ美ちゃんへ
本当は行きたかったんだけど来ないでって言われたので手紙で話します。
病気の事、あさ美ちゃんが新潟に来た時にもう知っていました。
もうすぐ死ぬとか言わないで欲しいな。そんなの悲しいよ。
好きなのは同情とかじゃないから。本心だよ?
あさ美ちゃんといっぱい話がしたいよ。
本当にあたしの事が嫌いだったらこの手紙は捨てていいよ。
もし、あたしにまだ望みがあるのなら…………………………………………】
「……『外を見てください』…?」
ベットから起きて窓の外を見ると青空みたいな色の傘が一つ。
そして少し小降りになったのでその傘はたたまれた。
そして見上げる顔。
「…麻琴ちゃん…!」
麻琴ちゃんはこちらに向かって手を振って何か叫んでいる。
急いで窓の鍵を開けて下を見た。
- 81 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時06分12秒
- 「あさ美ちゃーん!!一緒にガンバロー!頼りないかもしれないけどー!!」
あたしは部屋から飛び出して階段を駆け下りた。
看護婦さんやお医者さんに呼び止められたけど、それも振り切って走った。
玄関に出ると左足を引きずってうろうろしてる麻琴ちゃんの姿が見えた。
「…っ!麻琴ちゃん…!!」
「あさ美ちゃん!?だ、だめだよ!走ってきちゃ!」
あたしは麻琴ちゃんの元へ走って、麻琴ちゃんはあたしの所へ歩いて。
あたしは麻琴ちゃんに飛びついた。
「わぁ!!」
体重を支えきれなかった麻琴ちゃんと一緒にその場に倒れた。
「あさ美ちゃ…」
「…好きだよぉ…、でも好きになったら別れる時悲しいよ!苦しいよ…!」
泣きながら話すあたしの背中をさすりながら優しい声で話し始めた。
- 82 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時07分04秒
- 「…楽しい事だっていっぱい出来るよ?あたしだって足が悪いけど…、でもそれを理由にいろんな事諦めるのは嫌だ!」
「あさ美ちゃん…」
「…来てくれたって事は…OK…なんだよね?」
「………」
何も言わないあたしの頭を麻琴ちゃんは撫でた。
「…今の事だけ考えよう?未来なんて自分次第で変わるんだよ?変えよう?明るい未来に」
「………うん」
「病室に戻ろう?…まさか走ってくるとは思わなかったから驚いたよ」
「…だって」
「…看護婦さんに怒られるぞ〜?」
「…えぇ〜…、…麻琴ちゃんのせいだよ…?」
「そっか、じゃあ一緒に謝ってあげるね」
「…うん」
手を繋いで部屋に戻ると案の定怒られて、麻琴ちゃんも一緒に謝ってくれた。
その姿を見て面白かった。
外は青空が広がって、鳥も羽ばたいていた。
- 83 名前:あした 投稿日:2003年03月26日(水)21時08分00秒
- ***
○月×日 あめのちはれ
麻琴ちゃんと恋人同士になりました。
嬉しくて、ちょっと恥ずかしくて、不安もいっぱいあるけど
一緒に頑張ろうって言ってくれた麻琴ちゃんと生きてみようと思う。
この日記が楽しい出来事で埋まります様に。
***
日記を閉じた。
- 84 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月26日(水)21時15分00秒
- うっかりミスだ…まぁいいや…。
あややがカワイイから悪いんだ!!
73>何人目かの名無し読者
読んでる人少ないだろうなぁと思っていたのでレスいただけると嬉しいです。
マターリ更新なんでマターリお待ちください…すみません…。
- 85 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月26日(水)21時18分46秒
- 隠し。
- 86 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月26日(水)21時19分25秒
- もういっこ。
- 87 名前:◆HoZeNcxc 投稿日:2003年04月22日(火)13時21分27秒
-
- 88 名前:nanashi 投稿日:2003年04月29日(火)09時42分34秒
- いつでも待ってるよ。
- 89 名前:あした 投稿日:2003年04月30日(水)21時37分15秒
- 20、
「おはよう!あさ美ちゃん!」
「おはよう、麻琴ちゃん」
付き合ってから数日経った。
相変わらず完璧!…とは言えない状態だけどなんとか生きている。
麻琴ちゃんは毎朝早く来て、それから学校へ向かうのが日課になっていた。
「毎日大変でしょ…?」
「ううん、別に。あたしも病院には用があるしね」
そう言って少し笑いながら左足を指差す。
…そうだった。
自分の事しか考えてなかったけど麻琴ちゃんも足が悪かったんだ。
「ごめんね…」
「ま〜た、ネガティブになるし!明るくしなさい!ね?」
「…はーい」
先生のように偉そうに注意する麻琴ちゃんと目が合って二人で吹き出した。
「…あ、そろそろ時間だ」
「うん、いってらっしゃい」
離れてしまうのは寂しかったけど自分のわがままで引き止める訳にはいかない。
今だって充分わがままを聞いてもらっているのだから。
出て行く後姿を見つめているとふいに振り向いてまたこっちに歩いてきた。
- 90 名前:あした 投稿日:2003年04月30日(水)21時37分59秒
- 「…?忘れ物?」
「うん、忘れ物」
一言呟くとあたしの頬に軽くキスしてにこっと笑った。
「………病院でそーいう事するのやめてくださーい」
「病院以外ならいいんですかー?」
赤くなる顔を隠して必死に言った嫌味もあっさり返された。
「いってきます!」
部屋にひとり残されても顔の熱さはなくならなかった。
…で、やっぱり一人で病室にいたところで暇だったり。
病人なんだから静かに寝ていろ!って思われるかもしれないけれど本当に最近のあたしの体は順調で。
パジャマの上に上着を着て、薬品臭いベットから起きて少し歩く事にした。
- 91 名前:あした 投稿日:2003年04月30日(水)21時38分30秒
- 今日に天気は良好。
ポカポカ陽気で眠くないのに眠くなる。
病院の中庭のベンチに座って目を閉じた。
具合が悪かったとかそういうんじゃなくてなんていうか風を感じていたい。
そんな感じ。
頬に暖かい風が吹いて、小鳥の声も聞こえて。
麻琴ちゃんと一緒の空間も好きだけどこんな空間も好き。
前は目を閉じると何も見えなくて…一人ぼっちな感じがして嫌だったけど最近は落ち着くようになってきた。
それは麻琴ちゃんのおかげ。
『あさ美ちゃんはね、いろんな事見すぎなんだよ』
『そしていろんな事考えすぎ』
『何も見ないで…何も考えないで…、難しいかもしれないけど』
こんな穏やかな感情になれたのもきっと麻琴ちゃんのおかげだよ?
今、死にたくないなぁ。
でもそういうわけには…いかないんだよね。
最近元気なのに眠くなるんだぁ。
なんでだろうね?麻琴ちゃん…。
- 92 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月30日(水)21時41分36秒
- 一ヶ月も放置した挙句、この量です…。
ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・
これから頑張ります・゜・(ノД`)・゜・
保全されてるし・゜・(ノД`)・゜・
88>nanasi様
ごめんなさい・゜・(ノД`)・゜・
頑張ります・゜・(ノД`)・゜・
- 93 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月30日(水)21時42分23秒
- 綴り間違えてるし・゜・(ノД`)・゜・
nanashi様…。
- 94 名前:nanashi 投稿日:2003年05月01日(木)01時20分28秒
- 保全おまかせあれ。ごーしゅさんの作品好きですので。
森・黄板の作品を見て、やすごま好きからおがこんに、
ハマった自分です。(W
こんこんの心の葛藤伝わります。まこの心の葛藤も
あるはずなのに、感じさせないまこの優しさ。
最後に、更新乙。
- 95 名前:nanashi 投稿日:2003年06月02日(月)01時01分46秒
- 保全
- 96 名前:konkon 投稿日:2003年06月17日(火)21時21分58秒
- 待望
- 97 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月17日(木)18時17分34秒
- ふぉ
- 98 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月27日(日)15時23分11秒
- ぜうぇ
- 99 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月01日(金)20時10分04秒
- ん
- 100 名前:09 投稿日:2003年08月12日(火)22時17分48秒
- !!!!!!!!
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月18日(月)23時22分24秒
- 待ち続けますよ…1ヶ月でも2年でも待ちます。
- 102 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時31分04秒
- 21、
目を開けるとベットの上だった。
心配そうに覗き込むお姉ちゃんとお母さんがいた。
「あさ美!」
なんだ、また倒れちゃったのか。
あたしもう自分自身元気なのか元気じゃないのかよくわかんないや。
右手は点滴のせいでなんだか重く感じた。
「何で1人で出歩いたりしたの!!心配するでしょう!」
「そうだよ!」
お母さんの声は最後の方は涙声で震えていた。
お姉ちゃんも涙を浮かべていた。
「ごめんなさい…」
なんか謝るのも慣れてきちゃったなぁ。
ほんとにごめんね、心配してくれてるのに本人はあんまりこたえてないみたい。
病院は嫌い。好きになれないもん。
どんなに看護婦さんに優しくされても、
どんなにお医者さんの腕がよくても嫌いなものは嫌い。
- 103 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時31分45秒
- 謝った後何も喋らなくなったあたしを見てお母さんは無言で出て行ってしまった。
こんな娘を呆れてしまったのだろうか。
それもまぁしょうがないかと笑みがこぼれた。
「なぁ〜に笑ってのよ!怒られてるんだからね!」
「…わかってるよぉ」
くしゃくしゃにされた髪を戻す。
「最近、楽しそうだね。なんか良い事あったの?」
「…あのね、麻琴ちゃんと付き合う事になったの」
「…え、そ、そうなんだ。よかったじゃん!」
お姉ちゃんはどもった。
それはそうだよね。心臓病のあたしと左足が麻痺状態の麻琴ちゃん。
そしてこれからのあたしの運命を知るお姉ちゃんの目にあたし達は一体どう映ってる?
明るい未来?それとも?
- 104 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時32分29秒
- 「…あさ美ちゃーん!あ、なつみさん!こんにちは!」
バンと大きな音を立てて開かれた扉。いきなりの事であたし達は目を丸くする。
麻琴ちゃんは荒い息でそこに立ってニコリと笑った。
「びっくりしたよー」
「すみません、早く会いたくて走ってきました!」
「走って、って…」
「あ、ほんとには走れないんで、気持ちは走って来ました。そしたら自然と息もあがっちゃって…」
照れながら頭を掻く麻琴ちゃんが可愛かった。
お姉ちゃんは腰に手をあてて呆れ顔、でも笑い顔。
病室には3人の笑い声が響いた。
その後、お姉ちゃんは気を使ってくれたのか病室を出て行き、二人きりになった。
- 105 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時33分23秒
- 「今日の授業はね〜、結構進んだよ〜。はい、ノート」
「ありがとー。…わぁ全然わかんないや〜、まいったなぁ…」
「わかんないとこあったらあたしが教えてあげるよ、…ってあさ美ちゃんの方が頭いいじゃん」
「そんな事ないよ!……英語は苦手だし…」
「…あたしも英語は得意じゃないや」
「…じゃあ教えてもらえないじゃん」
「あさ美ちゃんに教えるために英語猛勉強するから!」
「それってなんか変だよ?」
────ずっと続けばいい。
- 106 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時34分01秒
- 「あの通りにね、おいしいクレープ屋さんができたんだよ、今度行こうね!」
「うん。…て事はクレープ食べたんだね?この前ダイエット宣言してたのに」
「…!え、と、ホラ!食べに行ってまずかったら嫌じゃん?だから下調べをと…」
「…ふぅ〜ん」
「ハイ、誘惑に負けて食べました。…すみません」
────こんな他愛もない話をいつも出来たらいい。
「そういえば姉ちゃんも今日来たがってたんだ」
「愛ちゃん?」
「うん、うるさいから置いてきた」
「愛ちゃんにも会いたいなぁ」
「えー、…そう?じゃあ今度声掛けてみる。うるさいからねあいつ」
「にぎやかで楽しいよ」
────もう少しこんな話ができるかな。
- 107 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時34分39秒
- 「……あさ美ちゃん、悩んでない?」
「…え?悩んでないよ?なんで?」
「眉間にしわがよってるから」
麻琴ちゃんはあたしの眉間に人差し指を置いてぷぅっと口を膨らませた。
「悩み事はなし!なんかあったらあたしに言う事!
で、どしたの?」
「…うーん、えっと…その…」
口ごもると険しい表情が更に険しくなった。
きっとあたしが言えない事、判ったんだと思う。
そりゃそうだ。
点滴なんかしてるんだもん、気がつくよね。
- 108 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時35分24秒
- 「……また、倒れた?」
「…でもね、そんなにひどくないよ?苦しくもなくって…」
あたしがしどろもどろに話していると麻琴ちゃんはテーブルの上に目線を向けた。
そこにはあたしの薬が置いてある。
「増えた?…薬の量」
「…ちょっとね。でもほんとに大丈夫なんだよ?」
なるべく明るく、右手をヒラヒラと振ると突然掴まれた。
驚いて目を見開くとそこには寂しそうで、
今にも泣き出してしまいそうな顔で麻琴ちゃんはあたしを見つめていた。
その瞳から目をそらす事が出来なかった。
- 109 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時35分56秒
- 「麻琴ちゃん、そんな顔しないで?」
「…あたしは今、あさ美ちゃんに何をしてあげられるかな…。
こんなやってバカみたいな会話してていいのかな…。」
握られた右手は強い力を感じ、何も握ってない麻琴ちゃんの手はブルブルと震えていた。
その手を左手で取り、硬く握られた手を包み込むように触った。
「ずっと一緒にいて?」
「…え?」
「何もしてくれなくてもいいから、あたしの傍にいて?」
「…うん。いつでもあさ美ちゃんの傍にいる」
「それだけで充分だよ?」
あたしが笑うと泣き出しそうな顔は少し緩み、笑みをこぼした。
- 110 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時36分26秒
────そう。
麻琴ちゃんは笑顔が似合うんだから。
いつまでも笑ってて。
もしあたしがいなくなっても笑顔だけは絶やさないで。
- 111 名前:あした 投稿日:2003年09月02日(火)22時37分03秒
- ***
○月×日 くもり
もう先は長くないんだろうと自分でもわかる。
その日まで近い。
麻琴ちゃんはずっと傍にいてくれる事、約束してくれました。
ちょっと死ぬのが怖くなくなりました。
だって傍にいるって言ってくれた時の麻琴ちゃんの顔は
本当にあたしの事を思ってくれてる顔だったから。
きっと天国に行っても麻琴ちゃんの思いはついてきてくれる。
死んだら麻琴ちゃんは泣くかなぁ。泣いたら悲しいなぁ。
***
- 112 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年09月02日(火)22時41分19秒
- 保全してくださった方々、本当に申し訳ありませんでした。
今後の更新も未定なんです…。
多分また間が空くかと思われますが完結目指して頑張ります…。
本当に申し訳ない・゚・(ノД`)・゚・。
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)12時14分00秒
- 更新キター
嬉しいっす!
またーりでもいいのでガンガッテ下さい!
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/26(日) 22:54
- hozen
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 23:52
- ほぜん
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/05(月) 21:41
- 最近知った。いいね。
- 117 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:22
-
妙に体が軽くて、凄く楽しくて。
走り回ったり飛び跳ねたり。
いくら動いても息切れする事もなくて。
今なら凄く早い陸上選手にだって勝てちゃいそう。
行きたかった遊園地に行って乗りたかったジェットコースターやなんかにも乗った。
もちろん隣には麻琴ちゃんがいて、手を繋いで。
楽しい?って聞くと笑顔で楽しい!と答えてくれた。
不思議な事に麻琴ちゃんも走り回ってた。
なんだろう?夢かな。
どっちでもいいや。楽しかったら。
こんなに楽しいのはホントに久しぶりだもん。
コーヒーカップを指差して走ってると目の前を綺麗な鳥が横切った。
その鳥はあたし達の目の前の木に止まり、あたしに話しかけた。
それはとても綺麗な声。
『キミももうすぐぼくらのなかまだよ』
────そうか、やっぱり夢なんだ。
- 118 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:22
- 振り向くとさらさらと砂がこぼれていくように遊園地は消えていった。
ジェットコースターもコーヒーカップも。
あ、あの乗り物まだ乗ってないのに。
あたしはそれをただぼうっと見ていた。
夢なのになんてリアルな夢だろう。
リアルな、孤独。
隣には気配を感じない。
繋いでいたはずの手のぬくもりもなくなった。
傍にいるって言ってくれたのになぁ。夢の中までは無理か。
麻琴ちゃんも消えてしまった。
違う。
消えたのはあたしだ。
消えるのはあたし────。
何も無くなってあたしの周りは真っ暗になった。
みんな元の場所に戻ってしまったんだ。
あたしはこれから1人で────。
- 119 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:23
- …1人で何しようかな。
どうせ夢なんだし、体は苦しくないし好きな事しよう。
そう思って前を見たけれど何もないから何も出来ない。
何もない?
何もないから何も出来ない?
今日がないなら明日は来ない?
そっか。
あたしは右足を一歩前に出した。
けれど自分自身、進んでいるのかわからない。
「これ、夢じゃないね」
もう死んだのかも。
意外とあっさりだなぁ。
もっとこうドラマでよくあるグッとくるシーンとかしてないんだけどなぁ。
そう思った瞬間、とても眩しい光に包まれた。
とても温かくて心地良い。
あたしは眩しさに目を瞑り、そして目を開けた。
- 120 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:23
- いつもと同じ病院の天井だった。
「おはよう」
「…はよ」
「…って言っても今夕方だけどね」
右手はいつものように握られていて隣にはいつものように麻琴ちゃんがいた。
すでに特等席になっているその椅子にはかぼちゃの形をしたクッションが置かれていた。
「…それにしてもビックリした」
「…何が…?」
「あたし今来たとこなんだ。でさ、座って手を握った瞬間あさ美ちゃんが目を開けたからさ。
起こしてごめんね?」
「……そっかぁ。…麻琴ちゃん凄いね」
「え?何が?」
「暗くなった場所が一気に明るくなったよ?」
「え、何?何の事だろ?教えてよ」
「ううん、なんでもない」
「えー、そんなこと言うとプレゼントやらないぞー?」
「プレゼント?」
聞き返すと麻琴ちゃんはニヒっと笑い、鞄の中から一枚の封筒を取り出した。
- 121 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:24
- 「はい、これ。見た瞬間感動したからあさ美ちゃんにも見せようと思って」
「なんだろう…」
「開けてみて?」
封筒の中を見ると一枚の写真が入っていた。
それを丁寧に取り出して表面を見た。
「…うわぁ」
「ね?凄いでしょ?」
「……うん…!」
その写真は真っ直ぐ、空に向かって羽ばたく青い鳥。
空には真っ白な雲も架かってて青と白の二色が鮮明に映った。
でもこの鳥、夢の中に出てきてた…。
「これがね、あさ美ちゃんでこれがあたし」
そう言って鳥と雲を指差す麻琴ちゃんにあたしは驚いた。
「覚えてたの?あの時の事…」
「…え?あさ美ちゃん忘れたの?」
「忘れてないよ!」
「良かった」
そう言って微笑む麻琴ちゃんを見て鼻がツーンとした。
泣いたらダメ。泣いたらきっと心配する。
心配されたくない。
- 122 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:24
- 無理して笑ったら涙がこぼれた。
…ばか。あたしのばか。
「……どうした?どっか痛い?誰か呼ぼうか?」
「…ううん、どこも痛くないの…。嬉しくて、泣いちゃった」
「そっか、泣くほど嬉しかった?えへへ、嬉しいな。持ってきてよかった」
麻琴ちゃんが笑うと心の中が明るくなる。
いつまでもその笑顔見てたいな。
写真を枕元にあるテーブルの上に立てかけるとまた麻琴ちゃんは満足気に笑った。
「あー…今日さ、実はもう一人いるんだけど…」
「…もう一人?」
麻琴ちゃんは左足を引きながら歩いて行き、扉を開ける。
そこには腕組みして不服そうに立っている愛ちゃんの姿が。
「…あたしの存在忘れてたでしょ、麻琴」
「つーかラブラブな空間を邪魔しに来る姉ちゃんが悪いんだろうと思う」
「あぁもううるさい。あさ美ちゃんゴメンね、邪魔しにきました」
右手を顔に添えてゴメンのポーズをしながら病室に入ってきた。
邪魔だなんて思ったりしない。
愛ちゃんがいなかったらきっとあたし達はダメだったから。
- 123 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:25
- 「久しぶり、愛ちゃん。元気だった?」
「そりゃあもう元気ですよ!聞いて!あたしレギュラーになったんだよ!バスケ」
「わぁ、すごい」
得意気に話す愛ちゃんの頭に麻琴ちゃんは一発食らわす。
「あのね、体が不自由な人の前でそんな話するなっての」
「…あ、ごめん、あさ美ちゃん」
しゅんとなってしまった愛ちゃんにあたしは首を振って笑う。
「ううん、全然気にしないで!おめでとう、大会頑張ってね」
「うん!ありがとうあさ美ちゃん!あさ美ちゃんの分まで頑張るからね!」
意気込む愛ちゃんの頭に麻琴ちゃんはもう一発食らわす。
「ていうかあたしも体不自由なんで、気を使ってください。
あとあたしの分も頑張って下さい」
「…もうこの子ホントにうざったくて困るでしょ?あさ美ちゃん」
「え…」
「もう帰っていいよ…」
ホントに、この2人漫才でもしてるみたい。
同じ姉妹だけどうちとは違う。
なんか姉妹って言うより双子って感じかな?
- 124 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:25
- くすくすと笑うと麻琴ちゃんは苦笑いを浮かべていた。
「はいはい、邪魔者はさっさといなくなりますよーだ。
あさ美ちゃん、元気そうで良かった。また来るね。
今度はうるさい人がいない時にでも、2人っきりでね」
「早く帰れー」
「あは、ありがとう。嬉しかった、またね」
手を振ると愛ちゃんは大袈裟に右手をぶんぶん振って部屋から出て行った。
愛ちゃんがいなくなった事に安心したのか麻琴ちゃんは長いため息をついていた。
「…はぁ……嵐が去った…」
「あはっ、おもしろいよね愛ちゃん」
「あんなのが姉だと思うと気が病めるよ。その点なつみさんは良いよねぇー。
なんかこうお姉さん!って感じ」
「自慢の姉ですからー」
「…マジで羨ましいです」
倒れこんでベットに頭をポフッと置いて唸ってる麻琴ちゃんの頭をそっと撫でた。
初めて会った時からくせっ毛だった髪はさらさらのストレートに変わっていた。
高校生活にも少し慣れたから、と言って少し染めた髪はほんのり茶色で、
窓からそそぐ夕日に照らされてオレンジ色に見えた。
少し見上げると右手に挿していた点滴が終わりそう。
何の薬なんだろう、といつも思う黄色い液体。
いろいろ話を聞いたけど面倒臭くて聞いた振りしてたからわかんないや。
- 125 名前:あした 投稿日:2004/01/08(木) 23:25
- 「そろそろ終わるから看護婦さん呼ぶね?」
指をさして言うと麻琴ちゃんは時計を見て立ち上がった。
「あ、あたしも今日診察なんだ。診察と言うかリハビリ?だから今日はもう行くね?」
「そっか、じゃあ…」
「…そんな悲しそうな顔しない」
「…してた?」
「してた」
両手で頬を軽くぺちぺち叩いてると小さく息をついて麻琴ちゃんが言う。
「でも良かったよ。前は隠そうとしてたもんね?素直に感情が出てるってのは良い事だ、うむ」
「麻琴ちゃん、偉そうー」
「だってそうさせたのはあたしでしょ?偉いじゃん、あたし」
えっへんと胸を張って腰に手をあてる姿にあたしは笑いながら偉いね、と言った。
程なくして部屋に看護婦さんが来た。
麻琴ちゃんも愛ちゃんがやったみたいに大袈裟に右手を振って出て行く。
やっぱり似てるね。
なんて言ったら怒られるかも。
- 126 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/01/08(木) 23:28
- 大変遅くなりまして…_| ̄|○
今年もきっと激マターリなので落としておきます。
保全してくださった方ありがとうございます。
ダメな作者ですみません。
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/09(金) 01:46
- 更新キテタ-(゜∀゜) 乙です。
- 128 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 12:58
- イイ!すっごく!涙が…
- 129 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/02(月) 17:14
- 更新マダー
チンチン
- 130 名前:ロマンチスト エゴイスト 投稿日:2004/02/09(月) 02:23
- いい話だ・・・・涙
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/29(月) 21:16
- ho
- 132 名前:あしたファン 投稿日:2004/03/31(水) 03:10
- はじめまして。
いい話ですね、一気に読んでしまいました。
ぜひ続きを書いてほしいのですが…
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/18(日) 00:38
- 続きはまだでしょうか?
待ってます。
- 134 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/04/24(土) 18:57
- はじめまして。見てのとうり紺ちゃんファンです。
これからのまこっちゃんと紺ちゃんの展開、どうなるんだろう?
病気、かわいそうだなー・・・。
つづき、楽しみにしてます。
がんばってください!!!
早く見たいです!!
なんせ今日はじめて見たもんですから。
- 135 名前:我道 投稿日:2004/04/24(土) 19:19
- >134 紺ちゃんファンさん
あの、レスはsageでお願いしますよぅ・・・。
更新待ちの人たちの心臓に悪いですから。
おねがいします。
スレ汚し失礼しました・・・。
作者様、がんばってください。
- 136 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/04/25(日) 10:46
- あの・・・。sageってなんですか?
- 137 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/25(日) 11:29
- >136 紺ファン
メール欄にsageって書くんだよ。そうするとこのスレが上がらないから。とりあえず自治FAQ読めそして半年はROMれ。
- 138 名前:uranai師 投稿日:2004/04/25(日) 11:59
- >136紺ちゃんファン
半角でね。
- 139 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/04/26(月) 20:59
- ごめんなさい・・・。
- 140 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/02(水) 19:54
- 改めまして・・・。
作者さま、がんばってください。
更新待ってます。
- 141 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/30(水) 12:00
- ほ
- 142 名前:七誌さん 投稿日:2004/07/19(月) 20:36
- ほ全
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