あいどる

1 名前:モチカニ。 投稿日:2003年01月29日(水)01時59分08秒

色々とモーニング娘。に起こっている事を見守りながら、書いていましたが、これ以上は…
一段落しそうなので、載せ始めさせていただきます。
書き始めてから6ヶ月はたったかな…

一応リアル系として、ごっちんが主人公です。
カップリング色としてはごっちん×梨華ちゃんかな…

あと、予定では3部構成の予定ですが、自分の欠点として話が長すぎるって事です。
もしかしたら4部にも…
挫折せずに頑張ります。(ただ、ホントショッキングな出来事が起こらなければ…)

おっと、最初のプロローグは全体としてのプロローグなので、第1部としては関係ないかも…
あまり気にせずに(苦笑

それでは、ヨロシクお願いします。
2 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時02分37秒


〜ぷろろーぐ〜


01〜【あいどる】〜


 あたし、後藤真希、ごとーは1985年9月23日生まれ、A型の17歳の女のコで、ごく普通の女子高生をやって…は、なくって…実はアイドルなんです。それも、普通のアイドルなんかじゃなくって、国民的アイドル。
 まさか自分がここまでくるとは思っていなかったけど…
 ただ、あくまで自称、【国民的】アイドル。

 アイドルと言えば聞こえはいいけど、色々な意味で現実には厳しい仕事が待ち受けているんだよね。

 そう、あたしは【アイドル】…
 あたしは【偶像】…

 色々な人たちの、時には男の人に対しての【擬似恋愛】の対象(つまり【理想の女のコ】)だったり、時には女の人に対しての【憧れ】の対象だったり。
 その全てをあたしは受けとめていかなくてはいけない。

 【アイドル=偶像】でなくちゃいけない。
3 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時03分27秒

 もし、それを崩してしまえば、その瞬間に自分のアイドルとしての人生も崩しかねない。だからこそ、その自分の言動にはホント注意をしなくちゃいけないって事だね。
 あたしがこの世界に入った頃なんて、ホントよくマネージャーさんや先輩の人に教えられていたよ。今じゃ、もうベテランだからほとんど何も言われないけどね。(まぁ、暴走してる人がいる時もあるけど…当然のごとく後でマネージャーさんにこっぴどく叱られてます…あはっ…)

『ファンの人や、憧れてる女のコを裏切るような言動は絶対にしてはいけない』
『自分の身体はもう自分だけのものじゃない』
『自分たちがいることによって、スタッフや関係者を含めて何人…何十人…何百人…何千人…何万人…の人間が生活できているって事も覚えておきなさい』

 自分の立場を何回も叩き込まれた覚えがあるよね…あの頃は…

『きちんと考えて行動しなさい』

 そう、特に【恋愛】なんかは御法度…
 一番してはいけないことで、決して人のものになってはいけない。

 みんなのモノ。

 ある意味【アイドル】の暗黙の了解。

 それが【アイドル】…
 それが【偶像】…
4 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時06分49秒


02〜【もーにんぐむすめ。】〜


 
 あたしは、今ではソロとして1人で頑張っているけど、去年の9月までは、【モーニング娘。】っていう国民的アイドルグループに所属してました。
 【モーニング娘。】、略して【モー娘。】は、下は1988年10月20日生まれのB型で14歳、とぉ〜っても小さくてキュートなお豆ちゃんこと新垣里沙から、上は1980年12月6日生まれのA型で22歳の、色々な意味でいつも話題の中心にいるグローバルケメコ…おっと、圭ちゃんこと保田圭までの計12人、幅広い年齢層で構成され、何回もの増減を繰り返した、今までのアイドルとはひと味もふた味も違う国民的アイドルグループなのです。圭ちゃんも含めた12人って言ったけど、圭ちゃんも今年の5月でソロ活動。その圭ちゃんの脱退を期に、今年の1月に決定した新メンバー3人と、今までソロで確実にトップアイドルに登りつめていった藤本美貴ちゃんを、今までにない【編入】で加え、本格的に15人で活動予定。更に秋には本体を分割してのユニット活動まであるとの事。

 常に動き続けているアイドルグループ。

『もう、【モーニング娘。】っていう存在は、普通のアイドルグループとわけが違うから、その辺のキモチの持ちようには特に気を付けなさい。』…その言葉を何回マネージャーさんから聞いた事か…それくらいのアイドルグループなのです。

 そこから脱退したあたし…
 その話を、脱退が発表された1年前、一番最初に聞いた時はすごいショックだった。
5 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時08分22秒

 だって、絶対にないって思ってた。
 


 ううん…『あり得ない』と思ってた。
 そりゃ、前例はあったけど…



 って言うか、完全にムスメから離れてソロで働くなんて考えた事もなかったから。
 そんな、今まで在る【アイドルグループ】みたいに、売れたら【ソロ】なんて単純なグループだとは思ってなかったから。
 みんながユニット活動で別々に頑張って、【モーニング娘。】という1つの名前の下に集まって、1つの事をやり遂げる。だからソロ活動があっても、ムスメを脱退するなんて事は、あり得ないと思っていたんだ。
 【モーニング娘。】はもうそんなグループより遥かに上の方の存在だと思ってたから。

 それに…イヤだった…
 ずっとみんなでムスメを大きくしていくものだと思い込んでいた。
 それから外れてしまうって事が、イヤだった。
6 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時09分04秒

 あたしは【モーニング娘。】の下に集まる事を許されなくなったんだ…って…
 あたしは【モーニング娘。】の曲を歌う事を許されなくなったんだ…って…
 あたしが歌ってきた【モーニング娘。】の曲が全て自分の【モノ】じゃなくなる…って…(実際、あたしが脱退して初めて他のメンバーが自分のパートを歌ってる時、何とも言えない切ないキモチでいっぱいになっていたんだ)

 そんな事を考えてしまってる自分も、イヤだった…

 みんなと一緒に仕事が出来なくなるのも、イヤだった…
 (まぁ、番組で一緒になる事もあるけど…)
 
 そして…泣いちゃった…


 一緒に脱退する圭ちゃんも、それを聞いた時は泣いていた。
7 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時09分48秒
 
 その日にみんなで一緒に焼肉を食べに行ったのだけど、圭ちゃんだけは何も食べずに、アルコールをずっと喉に流し込み…ずっと溜息をつき…そして、一滴の涙が頬を伝っていた。そしてそのまま裕ちゃんの家に行ったのは…言うまでもないね…
 圭ちゃん自身ショックが大きかったっていうのは言うまでもなく、それ以上にすっごい心配なんだって…

 あたしはある程度ソロ活動はしてたけど、圭ちゃんは全くの初心者。だから余計に心配心が上回って…
 もちろんそれ以上に、自分はソロをして大丈夫なのか?って事の方を心配していたんだよね。自分はソロとして存在する価値はあるのだろうか?って…

 アルコールが回りきってあたしの膝で横になってた時にぼそっと出た圭ちゃんの一言…
『わたしって明らかにクビじゃん…』
『そんな事あるわけないじゃん!』
 そっこーで返したその言葉に、圭ちゃんからは何も返事が返ってこなかった…


 ごとーだって…


 何も面白い事言えないし…


 ごとーの方が…

8 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時10分22秒

 みんなで慰めても、あたしが慰めても、マネージャーさんが気合入れても、つんくさんが褒めても、ソロ活動の近付いている今でも怖いって…よく言ってる。


 【アイドル】の人生の先なんて全く分からない。

 いつ人気が急激に落ちて、仕事がなくなるか…
 いつ人気が急激に出て、仕事が山のように入ってくるか…
 いつ人気が頭打ちになって、大幅なテコ入れがされるか…
 いつグループを脱退させられるか…
 いつ仲間と離れ離れにさせられるか…
 いつクビになっちゃうか…

 全くわからない人生…

 そんなのを含めてわからないのが【アイドル】…
 いつ【この世界】から消えてもおかしくないのも【アイドル】…
9 名前:【ぷろろーぐ】 投稿日:2003年01月29日(水)02時10分52秒
 
 でも…

 それが【アイドル】…
 それも【アイドル】…
 それでも【アイドル】…



 そんな圭ちゃんのソロ活動まで、あと3ヶ月。
 新メンバー本格活動まで、あと3ヶ月。




 ごとーのソロ活動、【モーニング娘。】脱退から、3ヶ月。




 今はそんな時…


10 名前:モチカニ。 投稿日:2003年01月29日(水)02時15分46秒

 と言う事で…
 なんだ?ってカンジですが、ある意味全体的なプロローグってカンジで。
 プロローグをしっかり頭に入れられた方は、明日からはえっ?ってなるかも…(w
 でも、ヨロシクお願いしますm(_)m
11 名前:第01話〜【あいどる】の【しごと?】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時19分06秒


第1部〜【めんばーあい】と【れんあいかんじょう】〜


第01話〜【あいどる】の【しごと?】〜


01〜【りかちゃん】〜


 
 あたしの脱退からもう完全に落ち着いたムスメ。
 じゃぁ、とりあえず、圭ちゃんと新垣以外の残りのメンバー紹介を…増減の順番にね。

 ん…?えっ…?

 いいって?
 もうみんな知ってる?

 12人プラス4人もいるのに全員知ってるの?
 あっ、そうなんだ…もう全員知ってるんだ…ごめんごめん。
 まぁ、確かにムスメは国民的アイドルグループだから、知ってて当然かもね…

 なぁ〜んだ。


「どぉ〜したの?ごっちん?」
「ひぇ?」

 隣から聞こえた甘いアニメ声に、思わず裏返る声。

「ふふふ…ぼぉ〜っとしちゃって…早く、次のページ見ようよぉ」

 何ともいえないカワイイ笑みを浮かべながらの梨華ちゃんの言葉に、あたしは現実を思い出した。全ての喧騒が耳に飛び込んでくる。

12 名前:第01話〜【あいどる】の【しごと?】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時23分30秒

 そう、今日は大阪でのハロプロのコンサートの日だったんだ。それで、1人で楽屋にいるのも淋しかったから、ここに遊びに来たって訳。
 普段はムスメが忙しすぎてあまり会えないから、こういう時がチャンスとばかりに、ムスメの楽屋に来るんだよね。

 今、あたしがいるそんなムスメの楽屋では、女のコが数人も集まれば当然かもって思われるけど、静けさの瞬間(とき)というのが一瞬でも訪れる事がない。いつもどこかしらで笑い声や喚声が起こり、またまたどこかしらで地面がきしむ音(?)がする。とくに、ムスメが12人全員+3人+新メン3人、楽屋で揃うなんて事が起こりようものならば、楽屋の中は女子校の休み時間もビックリの騒がしさが生まれてしまうくらいだ。
 他の楽屋にいても、そのうるささは地鳴りのように響き、賑やかさが羨ましくなって、思わず遊びに来たくなるくらい。この4月からムスメでの活動が決定している美貴ちゃんに、ハロプロの保護者の裕ちゃんも遊びにきてるんだね。

 楽屋中に響き渡る子供チーム&美貴ちゃんの声と、そのコたちと一緒に遊んでると保護者みたいになっちゃう、なっちとよっすぃーにカオリに裕ちゃんの無邪気な笑い声が聞こえる中、左奥には、新メンバーが3人緊張した面持ちで見学に来ていて、マネージャーさんに教育を受けている最中、更に入り口の近くでは、そんなみんなの表情とは1つ違った表情をしたやぐっつぁんと圭ちゃんに、女の人のマネージャーさん2人が、何やら真剣に話し合っていた。4人顔を寄せ合い、コソコソと…

13 名前:01〜【りかちゃん】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時26分48秒

 そして、一番右の奥の壁にもたれているのが、あたしと梨華ちゃんです。さっきまでは、あたしも子供チームの渦の中にいたのだけど、梨華ちゃんに袖を引かれてね…


 カワイイ仕草に…ぐさっ!
 

 そんな2人で何をしているかというと、別に怪しい事はしてなくて、さっき大量のお菓子と共に買ってきたファッション雑誌に一緒に目を通していただけなんだよね。
 あたしが膝の上に雑誌を開いて、それをあたしの肩に頭をコトンと乗っけた梨華ちゃんが横から見てるってカンジ。さっきの梨華ちゃんのセリフはその催促って訳でした。
 
 脱退してしまうと、梨華ちゃんとの距離がちょっと遠くなっちゃうかなぁって思ってたあたしだったけど、今から考えるとその心配自体無用ってカンジだったよ。距離が遠くなるどころか、梨華ちゃんからは以前よりも沢山メールがきて、更に、あれだけ忙しいのに、その合間をぬっては遊びにきてくれたりもして、脱退前の一番仲が良いかなぁって思ってた時よりも、更に距離が縮まったような気もするんだよね。
 もちろん、みんなも暇をみては遊びにきてくれたりするのだけどね。でも、楽屋の中だと梨華ちゃんが一番多いんだよ。こうやって遊びにきても、よくそばにぴたって♪
 まぁ、だいたいあたしの方から梨華ちゃんの方に話しに行ったり、メールを送ったりってのは、あたしの性格上、恥ずかしいからってのもあるからなのか、ちょっと少ないんだよね。だから梨華ちゃんから話し掛けられると、結構…かなり嬉しかったりもね… 
 
14 名前:01〜【りかちゃん】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時28分31秒
 
 そんな時って(今みたいな時だけど)梨華ちゃんがあたしだけのものになってるってカンジがしてね…

 へへへ…

 梨華ちゃんっ!愛してるよっ!!

 …ん?
 …ヘン?

 ヘンじゃぁないよぉ〜
 ムスメの中にいたら、『スキだよっ!』、『愛してるよっ!』って言葉なんて、日常茶飯事の事なんだからさっ♪
 みんなホントメンバーの事を家族の事のように【愛してる】んだからさ♪

 あっ…じゃぁ、ムスメがヘンか…

 うんやっ!やっぱヘンじゃないってばっ!

 あっ…でも、そう言えば…さっきから…

 うん…

 そう、この梨華ちゃんとあたしの光景は、ハタから見れば何でもない日常ってカンジなんだけど…

 実は…

 あたしはさっきからドキドキと激しく打ち付ける心臓の鼓動に参ってたんだよね。そうなんです。梨華ちゃんにこのドキドキと打ち付ける鼓動が届かないか心配しているって訳…

15 名前:01〜【りかちゃん】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時29分51秒

 どきどき…?
 ドキドキ…?

 そう…あの【どきどき】…

 みんながよくメンバー同士で『スキッ!!』なぁ〜んて言ってる、それとは…
 たぶん、それとは…
 ちょっと違うようなカンジかも…
 
 だってドキドキしてるなんて…

 うん…ムスメの中でも特にあいぼんといる時なんて、ずぅ〜〜〜っと構ってあげたくなって、すっごい大スキなんだけど、そんな時の【キモチ】とは違うような気も…
 そうなんだよね…そんなあいぼんや他のメンバーに感じてる感情と、梨華ちゃんに対して持ってる感情は、やっぱり違うような気もするんだよねぇ…
 それに、ときどき梨華ちゃんが、やぐっつぁんや圭ちゃんや他のメンバーと仲良くじゃれ合ってるのを見ると、ちょっとズキッってきちゃう時もあるのが、自分自身が分からなくなって、それさえ辛い。
 それだけだと、ホント【男女間の恋愛感情】みたいになっちゃうんだけど…


 でもでも、やっぱりそんな【変】な【キモチ】でもないと思うよなぁ…


 たぶん…

 
 えっ?女のコだってぇ?

 
16 名前:01〜【りかちゃん】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時31分02秒

 
 うん…そうなんだよね…だから…
 『たぶん』なんだよね…




 男女間のような【スキ】じゃないと思うんだけど…




 ん〜ん…

 でも…




 分かんないんだよねぇ…
 梨華ちゃんを見て時、話してる時のあたしは…

 

 
 やっぱ、【男女間の愛】かなぁ…
 



 うん…【女のコ】だもん…
 違うよね…

 このドキドキは…



 
 で、でも…でもね…
 
17 名前:01〜【りかちゃん】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時33分06秒
 

 うん!


 そう!でもさぁ、んなぁ事言ったってさぁ、梨華ちゃんを間近で見てみなヨッ!
 ほぉ〜んとっカワイイんだからさっ!!

 艶やかな唇に、こっちをすがるように見つめてくる瞳…可愛く整った顔立ち…
 そして、ちょっと黒いけど抜群のスタイル…きめ細かいすべすべしててキレイな肌…

 こんなコがいたら誰だって見惚れちゃうってば…そう、気づいてないと思ってるかもしれないけど、ごとーは気づいてるぞっ!実は、よしこにやぐっつぁんだって…圭ちゃんだって…時々、梨華ちゃんをぼぉ〜っと見てる瞬間があるんだからっ!!

 そうなんだよね、それほど梨華ちゃんは女のコから見たってカワイイって事。
 容姿、性格抜群だもんね…
 からかってる時のリアクションもイイし♪
 クルクル変る表情も見ものだよっ♪


 梨華ちゃんさいこぉ〜っ♪


 隣から覗き込んでる梨華ちゃんの横顔を見て、思わずわずムフフ♪



 …。


18 名前:01〜【りかちゃん】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時34分11秒

 って、はぁ…

 でも、これだけ近いと…嬉しいやら、キツイやら…

 うん…

 だって…とぉ〜ってもカワイイ顔からちょっと視線を落とすと…
 梨華ちゃんの胸元の谷間が見えちゃってるってカンジで…

 はぁ…

 身体に毒だ。

 って、これだけ聞くとホント【男の考え方】だよね。(←バカ)
  
 じゃぁ、やっぱり【恋愛感情】?




 う〜ん…ホント…これは、どんな【キモチ】なんだろ…


 やっぱり【メンバー愛】?
 それとも【恋愛】?

 はぁ…【メンバー愛】の方がどっちかっていうと都合がいいかも…
 マネージャーさんも【メンバー愛】なら許してくれると思うけど、【恋愛】なら許してくれないだろうね…

19 名前:02〜【おもわせぶり】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時36分31秒


02〜【おもわせぶり】〜


「あっ、ごっちん?」
「ん?」
「メール…」

 小さく呟く梨華ちゃんの視線の先、つられるようにそっちを見ると、机の上の折りたたみ式の携帯の小窓のイルミネーションが青く光ってるのが目に入った。

 そして、スッと消えるライト。

 仕事の合間はサイレントにしている携帯の小窓がブルーライトの時はメール、レッドライトの時は普通の着信、もう梨華ちゃんは全部分かってくれていたんだね。


 なんだかそれが嬉しくて、思わずココロに温かいモノが溢れ出す。


「ありがとう…」

 そんな自分のキモチが相手にバレてしまわないか…それに、少しのテレから、ちょっと声を小さく、ぶっきらぼうにお礼を言い、携帯を手に取った。

 【From : やぐっつぁん】

 えっ…
 思わず視線を上げると、マネージャーさんはもういなくなっていたけど、やぐっつぁんと圭ちゃんが視線を落として、何かを覗き込むようにして話し込んでいるのが目に入ってきた。さっきと全く変らないその姿と、こんなに近くにいるのにと、不思議に思いながらもメールを開く。

 【Subject : お仕事だよ〜ん】
 【Date : 03/02/01 07:55】

20 名前:02〜【おもわせぶり】〜 投稿日:2003年01月29日(水)21時37分16秒

 ん?
 マネージャーさんが何か言ったのかな…?

 【今日の夜、予定ない?ちょっと仕事の事で相談があるんだよねー
  コンサートの後、どっか食べに行かない?
  当然のごとく、明日も激早だからそんなに遅くまでは食べられないけどー
  あとそれにいつものメンバーとはちょっと別で、って事になっちゃうんだけどね♪
  おっと、ちなみに隣の、ごっつぁん愛しの石川には内緒だぞ♪】

「なっ!?」

 思わず吹き出そうになったあたしに、梨華ちゃんの怪訝な表情が『どうしたの?』って訴え掛ける。そのキレイな瞳に吸い込まれそうなり、思わずぼーっとなりこの内容を口からもらしてしまいそうになったけど…

 ダメダメ…

 その視線を、ちょっと無視し、梨華ちゃんに雑誌だけ手渡すと、『やぐっつぁんの方にちょっと行って来る』の言葉を残し、やぐっつぁんと圭ちゃんの方に四つんばいで向かった。

「…えぇ〜…ごっちん…」

 ちょっと泣き出しそうに瞳をウルウルさせてる梨華ちゃんに、ぎゅぅ〜〜っと胸の奥の果てしないココロを鷲掴みにされながら…


 グフッ…


 …実は、こういう梨華ちゃんの【変】な【思わせぶり】な態度に、あたしの【キモチ】も【そんなアブナイ方向】に動かされつつあるのかもしれないね…

21 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月29日(水)23時16分07秒
こうゆう(おバカな感じ?)後藤さん大好きです。
先が楽しみです。
22 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月30日(木)01時30分11秒
いしごまいいっす〜。
どなんだろなー…こういう感じ好きです
23 名前:03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時21分31秒


03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜



「やぐっつぁーん、どーしたのさ?」
 四つんばいのままやぐっつぁんと圭ちゃんが頭を寄せて話しているトコロに突入したあたしは、2人の間にあったノートに自然と視線が落ちていった。

 なになに…?

 ばちっ!!

「どわっとっ!!」

 妙な笑みを浮かべた圭ちゃんが慌ててノートを閉める。

「なにそんなに慌ててんのさー?」
「まぁまぁ、ごっつぁん」

 圭ちゃんのあまりにもの慌てぶりが面白かったのか、やぐっつぁんが少し笑いながらあたしの肩をポンポンを叩き、そのままクイを肩を抱き寄せ、更に囁く。
 
「梨華ちゃんとの楽しぃ〜い時間を潰しちゃって、怒ってるかもしんないけどさぁ」

「なっ!なにさっ!そ、そんな事…」 
「そんな事…ないの?」
 
 うりうりとごとーの肩を揺すり、更にイジワルそうな表情で覗き込んでくる。


 くぅ〜っ!!
 ワザとだ…ごとーがはっきり言えないの分かってて…

24 名前:03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時22分33秒

 って言うか、やっぱりあたしの梨華ちゃんへの【不思議なキモチ】ってバレバレってカンジなのだろうなぁ…
 圭ちゃんだってこの状況をすっごい楽しんでいるみたいで、すっごいニヤニヤしてるしー
 

 くっそぉ〜


 …何とかして、一矢報わなければ…





 おっ…そだっ!


 まだ、確信ないけど…
 …あと、この際開き直って…


「あぁ〜やぐっつぁんさぁ〜もしかしてさぁ〜」

 急に表情の変ったあたしに、たじろぐやぐっつぁん。

「な、何?」



「梨華ちゃんがぁ〜ごとーのそばばっかりにいるからぁ〜嫉妬してんのぉ〜?」
「なっ!!」

 一気に真っ赤に染まるホホに、確信を持ったあたしは、更に攻撃の手を休めずに突撃っ!!

25 名前:03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時23分39秒

「おっ!図星?真っ赤になってんじゃんかぁ〜」
「どーしてオイラがっ!?あんなに色が黒くって、キショくて、びみょーで、何言っても寒いイシカワをっ!?
 キショッ!キショッ!」

 ふ♪ふ♪ふ♪

 引っかかってる♪引っかかってる♪

 普段のやぐっつぁんと梨華ちゃんを見てると、そんな事を本心で思ってる訳がないって事が明らかに分かるんだよね。真っ赤になりながら、シドロモドロに言葉を吐き出すやぐっつぁんは、明らかに無理をしてますよって顔に書いてあるしー。

 そこで…

 更に追い討ちを…

「梨華ちゃん…悲しそうにこっち見てるよ…」
「えぇっ!!??うそっ!?」

 慌てて梨華ちゃんの方を振り返り、両手を胸の前に持ってきて謝ろうという素振りをしたやぐっつぁんに向かって一言…

「うそ」

26 名前:03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時24分37秒

 あたしの残酷な一言に、唇を突き出し、抗議の表情のやぐっつぁんのその向こうでは、不思議そうにこっちに視線を向けた梨華ちゃんが、ニッコリと微笑んで『何ですかぁ?』と口を開いていた。その笑顔と甘い口調に真っ赤になる2人は、当然のように(?)固まり、それを見た圭ちゃんが笑いながら『何でもないよ』とフォローの一言を。
 それでも不思議そうな表情をしていた梨華ちゃんだったけど、やぐっつぁんが圭ちゃんの方に視線を戻すと、何でもなかったかのように、もう一度手元の雑誌に視線を落としていた。

「ごっつぁん、ひどいよ。むーかーつーくー」

 ほっと胸を撫で下ろしたやぐっつぁんは、一息ついたのか、ホッペを膨らませてジト目でごとーの方を見ると、子供のように抗議の声をあげた。

 ひどいよ…って…暗に認めてんのかな?

「って言うかー、【メンバー愛】の事なのにー」
「なっ…」

 あたしの言葉に、今度は言葉に詰まるやぐっつぁんは、更に動揺しているカンジがした。

 はぁ…

 やっぱりやぐっつぁんは梨華ちゃんの事…
 かなり、可愛がってるもんなぁ、梨華ちゃんの事…

 スキなのかなぁ…恋愛感情で…

27 名前:03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時25分26秒

「まぁまぁ2人共、もうそれくらいでいいじゃん」
「あっ、そうだね。あんまり時間ないかもしんないしー」

 圭ちゃんの一言で、やぐっつぁんもあたしが来た元来の目的を思い出したのか、ポンと両手を叩き、こっちの方に視線を向けた(少し、ホッと胸を撫で下ろしているのは明らかなわけですが…)。そのまま、あたしと圭ちゃんの肩を抱くと、小さく円になる。

「でさ、仕事って…何?どーゆ事?
 なんでやぐっつぁんの方からくんの?
 スケジュールはもう決まってると思うんだけど…」
「まぁまぁ、落ち着きなってば、ごとーは。」
「うんうん、知ってるよ。ミュージカルでしょ?
 でも、一応こっちの方もマネージャーさんの方からきたんだよ。」

 ごとーのマネージャーさんからか…

 やぐっつぁんは『安心しな』ってカンジで片目をつぶると、そのまま話を繋ぐ。

「で、本題の方は…実は、この事は、オイラとけーちゃんになっちとカオリと裕ちゃんしか知んないわけなんだけどー」
「お姉さまチームだけってわけよ。」

 2人は遠くで、子供チームの中で、お母さんのように一緒に遊んでいるなっちとカオリの方を一瞬チラリとみると、優しそうな微笑を浮かべ、もう一度視線をあたしの方に戻してきた。
 そして、表情も少し仕事用の真剣なものへと変り…
 
28 名前:03〜【やぐち】【ぶいえす】【ごとう】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時25分57秒
 
「今回の仕事は、今までになくってさ…」

 ごんごんっ!!

 と、やぐっつぁんが本題を口にしようとした時に、急に楽屋のドアを激しくノックする音に固まった3人。それと同時に告げられた、リハの準備の声。


 …。


 ちゃんちゃん♪
 

「げ…」


 結局、この話し合いは今日のコンサートが終わってから外に食べに出た時にでも、ってカンジで、締めくくられ、その時は、もちろんのようなカンジだけど、梨華ちゃんは呼ばない、と…

 はぁ…

 結構コンサートが終わってからメンバーみんなと食べに出るの楽しみにしてたのになぁ…
 って、お姉さんチームだけで食べに出るのがイヤって訳じゃないからねっ!

 やっぱり、梨華ちゃんとね…

 まぁ、みんなで食べに出るのが一番楽しいけどね♪

29 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時29分08秒


第02話〜【おさけ】は【まほうのくすり】〜


01〜【おさけ】〜


 コンサートが終わった後、あたし達は昼間の約束通り、ごとー、やぐっつぁん、なっちに圭ちゃん、裕ちゃんとカオリでホテルの近くにある、大阪では馴染みの焼肉屋に繰り出していた。
 
 あれ…?
 子供チームは放ってきたの…?

 って言われそうだけど、その点は大丈夫だよ!
 年少チームの方はしっかりマネージャーさんに任せました。

 まぁ、いわゆるグルってわけだね…あはっ♪



 …。



 今ごろ梨華ちゃんどうしてんだろうなぁ…
 別れ際の『ごっちんは一緒に食べないんだぁ…』って言う梨華ちゃんの悲しそうな瞳に…


 ぐさっ!ぐさっ!


 はぁ…

 カワイイよなぁ…


 ほぉ〜んと梨華ちゃん、大スキ♪


30 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時29分54秒

 やっぱりこれも【思わせぶり】な態度なのかなー
 ごとーの【勘違い】の原因とか?


「くぅ〜〜〜っ!!!!やっぱコンサートの後の一杯は格別に美味いねぇ〜〜っ!!」
「ホンマやなぁ〜〜〜っ!!!ほらっ!ヤグチも飲めやー」


 …。


 まぁ、こっちはこっちで楽しんでるけどね♪

 さっきからぐいぐいと飲んでる圭ちゃんの隣で、それ以上にハイペースな勢いで飲んでいる裕ちゃんは、今度はやぐっつぁんにお酒を勧め始めているという状況で…ある意味酔っ払い…(圭ちゃん以上のハイペースって言っても、裕ちゃんがホントに酔っちゃうと、すっごい甘えてくるから、まだまだ酔ってないんだよね)
 そんなやぐっつぁんの方は、まだお酒にあまり興味はなく、ずっと焼肉の方に手を伸ばしつつ、うまい具合に酔っ払い2人の相手をしていた。
 まぁ、やぐっつぁんはもう二十歳を過ぎちゃったから、飲んでも大丈夫なんだけどね。

「オイラはまだ食べるのー」
「つれないなぁ〜」

 裕ちゃんの泣きそうな表情に、隣からカオリが苦笑いを浮かべながら、ポンポンと背中を軽く叩いてあげる。

「まぁまぁ。食べ終わってからカオが軽いので相手したげるから。」
「そうそう。なっちだって食べ終わってからは、しっかり相手したげるからさー」

31 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時30分37秒

 そっか…

 ここにいるメンバーで飲めないのはあたしだけだったんだ…
 やぐっつぁんも今年の1月で二十歳になって飲めるようになったし…


 う〜ん…いいなぁ…

 そんなに飲みたいのかって?


 違うよ。


 お酒を飲みたくって『いいなぁ』って言ってるんじゃなくってさ…


 う〜ん…何て言うんだろ…

 
 そうだなぁー


 うん…そう…ああいう会話が羨ましいんだよね。
 なんか仲間はずれってカンジがしないことない?

32 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時31分29秒

「ん?」

 フトなっちと視線が合う。
 目を細めてニッコリと微笑むと、ほんの少しだけ減った自分のチューハイを手に取り、スッと立ち上がると、あたしの隣に腰を下ろしにやってきた。

「ごっつぁんも飲んでみる?」

 いたずらっ子のような笑みを浮かべ、そう言うとソッとグラスの縁に口を付ける。

「う〜ん♪おいし♪
 フツーのピーチでかなーり割ったから、甘くてあんまりアルコールは感じないよ?」

 なっちのカワイイ仕草にポォっとなりつつも、反対側の席で楽しそうに飲んでいる裕ちゃんの方に視線を向けるあたし。


 すごいおいしそうに飲んでるよなぁ…


 いいかなぁ…ちょっとくらい…

 
 少し頷いたあたしは、なっちからグラスを受け取ると、ジッとそこに波打っている神秘のピンクの液体を見つめた。

 見たカンジ普通のピーチのジュースだよね…

33 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時32分06秒

 Peach♪
 ももいろーの♪ かたおもーい♪
 
 …。

 ごくありふれたピーチのジュ−ス…

「う〜ん…」

 チビ…


 …。


 口の中に広がってくる未知の味に、体を強張らせる…ってカンジの事を想像していたあたしだったけど…



 あれ?



 …その味に肩透かしを受けたような、不思議な表情になっていた。

 フツーのピーチのジュースじゃん…

 なっちと視線があうと、『だしょ?』と子供の様に得意満面の表情を浮かべていた。

「どう?おいしいでしょ?」
「…うん…」

34 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時33分01秒

 へぇ〜…

 なぁ〜んだ…【普通のピーチのジュース】じゃん…

 お♪い♪し♪い♪

 そう感じたあたしの行動は単純だった。

 一口グイ。
 二口グイ。
 三口グイ。

 あはっ♪普通のジュースじゃん♪

 四口目グイ。

 隣であたしを楽しそうに見つつ、焼肉に手を伸ばし始めたなっちに微笑み、『おいしいね♪』とアイコンタクトすると、もう一度グラスに口を持っていた。

 グイ。
 グイ。

 あはっ♪

 焼肉焼肉。

 グイグイ。
 グイグイ。

 焼肉焼肉。

 グイグイ。
 グイグイ。

 いけるいける。

35 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時33分54秒

「あっ…ごっつぁん…そ、そんなに飲んだら…」
 少し【遠く】で聞こえたような気がしたなっちの声に、『全然大丈夫だよー』と手を振りながら、さらにグラスを口に近付ける。
 そして、自然に零れ出た言葉…

「なっつわぁ〜ん。こんなに美味しいの独り占めにしてズルイよぉー」

 そう、それくらい美味しいんだよねぇ〜

 う〜ん♪

 ホント、おいしい♪




 …。




 ん…?

 あれ…?

 なっち、泣いてるの?
 なっちの瞳がユラユラしてるよー

 ごとーが、『独り占めしてズルイ』なんて言ったから?

 うー…ごめんねぇ〜なっつぁ〜ん

36 名前:01〜【おさけ】〜 投稿日:2003年01月30日(木)21時34分25秒

「あっ…ごっつぁん…どうしたの?」

 ごめんねぇ〜

「ちょっとアルコールが回っちゃったかな?」
「大丈夫?」

 かわいそうななっち。
 ごとーが抱擁してあげるよー

「あれ…?」

 なっつぁ〜ん

「………ふ♪ふ♪ふ♪………」
「よしよし♪」
「カワイイなぁ〜♪」
「赤ちゃんみたいだね♪」

 ふ♪ふ♪ふ♪
 なっちってー、やわらかいねぇー

「ん?えっ!?」
「こ、これっ!!」
「ごっつぁんっ!!」
「ドコ触ってんのよぉ〜っ!?」



 キモチいいよぉ… 



「…やっ…」

 

 んぁ?



 ふにゃ…zzz



37 名前:モチカニ。 投稿日:2003年01月30日(木)21時43分20秒
ちょっと早すぎですね…次回からちょっと動きますんで、少しアプを抑え目で^^;

>>21:名無し読者さん
 レスありがとうございます。
 よくごっちん自身が言ってる【自分】って、こういうカンジかなーって^^
 これからもヨロシクお願いします。
>>22:名無し読者さん
 レスありがとうございます。
 自分も一番スキなのがいしごまです^^
 これからもヨロシクお願いします。

38 名前:02〜【なっち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時03分20秒


02〜【なっち】〜


〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜

「ここは?」
「ん…いいよ。」

 なっちのヤワラカイ唇の感触に溶けそうになるあたし。胸に優しく口付けをくれているなっちを、ぎゅっと抱き締める。
 右手に感じるなっちのすべすべした背中。左手に感じる髪の毛。髪の毛に手でクシを通すと、サラサラと気持ちいい音が聞こえてきそう。それさえもシゲキになる。
 なっちとあたしの間にこだまするHな音も、更にあたしを熱くする。

 あったかい、なっち…

 なっちを抱き締めてると、ホントキモチいいね…

 でも、あたしの胸の桃色の突起を口に含むなっちは、まるで【赤ちゃん】のみたいだ。
 そして、そのなっちを優しく抱き締めているあたしは…さしあたり【お母さん】ってカンジかな?
 
 あっ、お母さん代わりって言っちゃったら、あいぼんが嫉妬しちゃうか…

 そんな事を考えていると、思わず笑みが浮かんでしまった。

39 名前:02〜【なっち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時04分03秒

 なっち、カワイイ…
 なっち、大スキ…
 なっち、愛してる…
 なっち、絶対に離さないから…

 なっち…


 なっち…



 なっち…




 …。





 えっ…?
 なっち…?





 
〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜♪☆♪〜

40 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時06分14秒


03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜


 突然部屋中に響き渡ったあたしの携帯のアラームの音に、思わず跳ね起きる。
 それと同時にクラクラとなるあたしの頭の中。

 グワングワン。

 う〜ん…揺れる…

 さらに襲ってくる冷気に耐え切れなくなったあたしは、携帯のアラームだけ止めると、もう一度ノックアウトされたように布団の中に潜り込んでしまった。

 冬の朝の布団の中ほど気持ちイイ【トコロ】はないっていつも思っていたけど、この頭痛と相まってか、人生で一番気持ちイイ朝の布団を味わってるのかも…

 いつものユタンポにヌイグルミちゃんも、今日はしっかり働いてくれてるしね♪

 ん?
 あれ?

 
 ごとー、裸じゃん…?


 フト、全身に感じる毛布の温もりが、直接肌に感じられているモノだと気が付き、それと同時に自分が裸である事にも気が付く。気が付き、少し考える…

41 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時06分59秒




 …。




 あっ、そうか…昨日、お酒飲んじゃって…




 …。




 なぁ〜んにも、覚えてないや…




 う〜ん…
 ま、いっか。


 に、しても…いつ自分のホテルの部屋に戻ってきたんだろう…
 誰が送ってきてくれたのだろ…?

 お酒飲んだのバレなかったかなぁ…
 裕ちゃんがうまい事してくれたのかも…
 バレちゃったら大問題だもんね…

42 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時07分37秒

 そんな事を考えながらも、頭までスッポリと被った布団から、少し頭だけを出すと、視線をいつも荷物を置いてあるすぐ近くのフロアに落とした。

 もうちょっとだけ寝よっかな…

 ん…?

 と、そこで【ある違和感】を感じる。



 ううん、おかしい。

 

 って言うか、気付くの遅いぞ、ごとー。

 大抵ホテルに泊ると、そのごとーの部屋というのは散らばるのだ。


 それなのに…


 思わず跳ね起きると、その部屋を見回す。
 案の定、その部屋は、かなり綺麗に整頓され、足元の荷物もキチンと整えられていた。
 そして、その荷物は…


 もちろんのように、あたしの荷物じゃなくって…


43 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時08分14秒


 そう、これは…



 なっち!



 そう、なっちの荷物だ…
 って事は…


 なっちの部屋…?


 ここがなっちの部屋だと気付いたあたしは、もう1つ…ううん、もう2つ…とんでもない【コト】を思い出してしまった。

 1つ目は、昨日の記憶で一番新しいのは、なっちに抱きついたこと。

 そして、2つ目、それは…


 さっきの【夢】。

 
 【夢】…
 
 ホントに【夢】?


44 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時09分07秒


 梨華ちゃんの事が気になってるって思ってたのに、相手はなっちだった【あの夢】。
 なっちとごく自然に愛し合ってた【あの夢】。 
 なっちと普通にHをしてた【あの夢】。

 相手がなっち…
 
 そして、そんななっちの部屋で、今のごとーは裸…
 下着の下だけ穿いてる…






 なっちの部屋で【そんなカッコ】って…
 普通になっちの部屋で寝ていたなら別に何でもないけど、あたし、裸だよっ





 ちょ、ちょっと待ってよっ!!





 その2つの【コト】は、実はものすごく関係が深くない?

45 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時10分51秒

 そ、そう…よくドラマなんかであるベタベタな【アレ】…

 って言う事は、隣を見れば…


 恐る恐る自分の隣を見たあたしの目に入ってきたのは、少し盛り上がった掛け布団から覗くブラウンのサラサラの髪の毛だった。見慣れた、その髪の毛。
 そう、一目みて分かった…
 
 【なっち】

  




 ま、まて…まだ確認してないよ。
 そう、確認しなきゃ…

 あたしだけ裸なら、自分で脱いじゃった場合もあるもんね。
 なっちも裸だったら…



 ヤバイかも…


 
 そっと掛け布団の端っこの方を手にとり、ゆっくりと【そこ】を覗き込んだ。

46 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時12分10秒







 …やっぱり、なっち…







 と、そこで、寝起きにそばにある(?いる?)のが【ユタンポ】と【ヌイグルミ】なんて思っていたのが、実はなっちだったって事に今初めて気がつく。



 ぐふっ…



 そして更に、さっきまであたしを悩ませていた頭のクラクラが、いつの間にか消え、それと代わるかのように起こったのが、胸のドキドキ…

 そのドキドキは2つ。



 そこにいる女のコを見て、その愛らしさに思わずドキドキしてしまった、そのドキドキ。
 そして、自分がその女のコと、どんな関係になってしまっているかを暗に感じ取ってしまった、ドキドキ。

47 名前:03〜【なっち】に【ひとばん】の【あやまち】〜 投稿日:2003年01月31日(金)21時13分04秒




 ヤ、ヤバイ…




 何か夢を見ているのか、とても幸せそうな微笑を浮かべながら眠りについてるなっち。
 女性特有の柔らかい丸みを、惜しげもなく見せ付けながら眠りについてるなっち。
 見てるこっちが思わず恥ずかしくなってしまうような、【生まれたまま】の姿のなっち。




 ヤバイ…




 裸の女のコが2人同じベッドで寄り添うようにして眠っていた。




 ヤバイよ…




 これを見て全てを悟ってしまったあたしは、恥ずかしさのあまりか、自分の体全体がすごく熱くなっていくのが、手に取る様に分かりつつあった。
 それと同時に、ものすごく混乱してる頭が、何をどうしたらいいのか、全く浮かばなくなっているのも分かりつつあった。




 これって、今までの人生で一番ヤバイんじゃないの…?



48 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月01日(土)13時17分43秒
石川後藤を中心に面白い展開ですね
お馬鹿な後藤好きかも
49 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時50分00秒


04〜【なっち】の【みりょく】〜


 まてまて、考えろ。

 そう、だいたいおかしい…なっちはお姉ちゃんみたいなもの…
 なっちだってあたしの事を妹みたいに見てたはずだから、そんなHなんて…

 って言うか、あたしはホントになっちと寝ちゃったの?

 イコール。

 Hをしちゃったの?


 そこで、現実を見つめなおそうとするあたしは周りを見回した。

 ごく普通の、綺麗に整頓されたホテルの部屋。
 でもなっちの部屋。
 
 すぐそばにいるのは、なっち。
 すっごい可愛いなっち。
 圭ちゃん曰く、男の人をハマらしちゃいそうななっち。
 そばにいるととっても温かくなるなっち。
 辻ちゃんと一緒にいても違和感がないくらい無邪気ななっち。
 
 でも、裸のなっち。

 そして、裸のあたし。

 更に、【あの夢】。

50 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時50分56秒





 完璧じゃん。





 …そ、そんなぁ…





 って言うか、別になっちがイヤって訳じゃなくってさ…何て言うか、複雑なわけなの。どんな人とでも、こんな状況になったらかなり混乱すると思うよ。
 まだ、なっちが相手だったってのが救いかな?

 あ?でも、ある意味救いじゃないかも…
 
 こんな事、梨華ちゃんに知られたら、完全に軽蔑されちゃうかもしれないし…
 梨華ちゃん、メンバーにはベタベタしたがるけど、【こういうHな事】は嫌いかもしれないんだよなぁ…
 
 ううぅぅぅ…どうしよう…

51 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時52分17秒

 やっぱりなっちと付き合うのかなぁ…
 って言うか、もう付き合ってる事になってるのかなぁ…


 女同士で付き合うって事になるんだよねぇ…


 世間にはバレるはずがないと思うけど、やっぱりみんなにはバレちゃうのかなぁ…

 なっち、やぐっつぁんとかに言っちゃいそうだしなぁ…
 やぐっつぁんに言ったら圭ちゃんに行きそうだし…
 圭ちゃんに行ったら梨華ちゃんの方にも行きそうだし…

「う〜ん…」

 すぐ隣で聞こえたなっちの色っぽい(?)声に、思わず身構える。寝返りをうち、なっちのサラサラの髪の毛が揺れると、より一層心臓の鼓動が高鳴ったけど、少しの間見守ってもなっちが起きる気配がないと分かると、ホッと胸を撫で下ろした。
 ホッと胸を撫で下ろして少し安心すると、今度は朝の冷たい冷気が思い出したかのように、もう一度襲ってきた。
 リモコンに手を伸ばそうとして、ぎゅと我慢する。まだ、なっちが眠ってるんだし…
 そう、あたしたちはプロって意識があるのか、そういう事には特に気を付けたりしてるってわけです。特に冬場はね…まぁ、よっぽど寒い時は、ヒーターを付けるかわりに、お風呂場のお湯を出しっぱなしにして寝る時もあるんだけどね。
 
 それはご愛嬌って事で…あはっ♪

52 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時52分59秒
 
 手で肩を抱くようにして、ブルブルと少しカラダを震わすと、布団の中に逆戻り。
 なっちの温もりがさっきよりもより一層感じられ、またまたカラダ全体が熱を持ってしまった。
 思わず、カラダをなっちとは反対の方に向け、布団を頭から被り、溜息。

 はぁ…

 ホント、マジでどうしよ…

 なっつぁん〜〜〜〜〜〜教えてよぉ〜〜〜〜〜〜

 しばらく色々考えたけど、どうしても答えが出てこない。ついに半ばヤケ気味になったあたしは、なっちの方にカラダを向けた。
 
 なんでごとーがこんなに悩まなきゃいけないんだよっ!
 なっちのせいだよ!
 ホント!


 むむむむむ。


 隣でスヤスヤと静かな寝息を立てているお姫様なっちに文句を言うかのごとく、ぐっと近付いたのはいいのだけど、ステキな寝顔に、魔法に掛かってしまったかのように、そのキモチが飛んでいってしまった。

 …カワイイなぁ…
 
 幸せそうな天使のような寝顔にしばらく見惚れてしまうと、ぽぉーっとなったあたしは、そのまま自然に視線が落ちてしまった。そのなっちの胸の谷間が見えそうになった瞬間、恥ずかしさからか、思わず目を閉じる。

53 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時53分55秒


 やっちゃったんだ…


 あたしはなっちとHしちゃったんだ…


 そう考えると、やっぱりまともになっちの【カラダ】は見れなかった。
 
 でも、今まで温泉とかでお風呂に一緒に入った事があるから、別に何でもないと思うのだけど…やっぱり、今の状況は全然違う。自分でもどうしてこんなにドキドキしてるのか、分からないくらいだ。
 
 このドキドキ…はっきり言って、超邪魔…
 なっちに届いてしまうんじゃないかってくらいの高鳴りだから。

 その高鳴りを押さえるように、1つ息を飲み込むと、ソッと目を開けた。
 すると、今まで普通に見れていたなっちのカラダが、別のモノのようにして視界に飛び込んできた。自分の蕾を隠す様に腕でカラダを抱え込んでいるその姿に、さらに高鳴る心臓の鼓動。

 なんか、すごいHなカッコだ…なっち…

 ちょっと触ってもいいかな…

 そう思ってしまった後、フト手が止まった。

 『どうしたんだろう、あたし…』ってカンジでだ。

 普段じゃなっちに対して思うはずもない、そんな変な思いが頭の中に少しでも浮かんでしまったあたしは、もうすでに【男】の考え方。ちなみに【男】と書いて【バカ】と読む。
 どうしてだろう…梨華ちゃんにすら感じたことのない、このキモチ。
 
54 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時54分46秒
 
 こんな状況になったから、出てきちゃったのかな…

 って事はやっぱり…あたしは女のコが【スキ】。
 【H】な事も含めてスキなの?


 うそだぁー




 …。




 うん、違う…違うよ…

 そう、あたしはなっちやムスメのみんながスキ。
 もちろん梨華ちゃんが一番スキ。

 でも、それは【男】みたいなバカみたいな【H】な事ばっかり考えてる【スキ】じゃなくって、家族みたいに【愛してる】ってカンジの【スキ】。

 今はただ【この状況】にドキドキしてるだけ…
 今まで体験した事のない【この状況】に…



 うん…



55 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時55分28秒

「う〜ん…ん?…ごっつぁん?…」

 ひぇっ?

 なっちのうっすらと開いたパッチリまつ毛の瞼が、すぐ横でなっちを見つめるように横になっていたあたしの瞳を捕らえる。
 一瞬何かヤバイ事でも言われるのではないかって動揺してしまったあたしだったけど、そのなっちの顔にみるみる笑顔が浮かんでいるのを見ると、何とも言えない複雑な感情が湧き上がってきた。

 朝、女のコにニッコリ見つめられた男のキモチが分かったかも…
 
 なっちは『おはよう』とつぶやき、あたしの上ずった『おはよう』を聞くと、ゆっくりと布団から上半身を起こしたけど、自分が裸だったのを思い出したのか、急に顔を真っ赤にし、『ご、ごめんっ!』って一言だけ叫ぶと、再び掛け布団を頭から被り布団の中に潜り込んでしまった。
 その一連の動作を、なっちと同じように布団から上半身だけを出し、ただただ呆然と見守っていたあたしだったけど、なっちが布団に潜り込むのと同時に、羞恥心が復活。同様に潜り込む事に…もちろん反対の方を向いて。

 ヤ、ヤバイ…

 今の、ちょーカワイイじゃん…
 梨華ちゃんより、ある意味可愛かったかも…

「ご、ごめんねっ!すぐ服着るから…」
 
 背中から聞こえてくるなっちの声にコクコクと頷く。

56 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時56分19秒

 静かな部屋に、なっちの服を着る音だけが聞こえている。その音がやけ気まずい雰囲気を作り出し、何か言わなきゃって焦りが起こるけど、何も気の効いた言葉が浮かんでこない。ますます焦る気持ちを感じながら…

「ひ、ヒーター、付けよっか?」

 散々悩んだ挙句に出てきた言葉がこれ。更に、何だかやぐっつぁんに『付き合い始めたばっかりの恋人かよっ!』ってつっこまれそうなくらいの、震えた声だし。でも、これってごとー的にはかなり気を利かせた言葉なんだけど。

「あ、ありがと…」

 その言葉を聞くと、なるべくなっちの方をみないように、手探りでリモコンを探すと、ピッと電源を入れる。入れてからまたまた沈黙。


 気まずい…
 マジで気まずいよ…


 なっちと一緒にいて、こんなに気まずい雰囲気は初めてだよ…


 ん…?
 って言うか、やっぱ答え出てんじゃん…


57 名前:04〜【なっち】の【みりょく】〜 投稿日:2003年02月01日(土)21時57分37秒



 
 これだけなっちの態度が変って事は、H、やっちゃったって事…?


 

「あ、あのさ…」

 なっちの突然の言葉に、思わず跳ね上がり、なっちの方に正座して座る。

「あっ…」

 何か言われるのかと思ったあたしだったけど、なっちのたった一言だけの後に続いた沈黙に、少し上目づかいで問題の人の方を見る。すると、あたしの目に入ってきたのは、なっちが顔を真っ赤にして、あさっての方を見ている姿だった。
 『なっちの方から呼んだのに…』って思ったあたしだったけど、やけに肌寒い事に気が付く。そして、やっと気が付いた自分の姿。

「服、着て…」
「ご、ごめんっ!」

 何やってんだよぉ…
 ホント、ボケちゃってるよ…

 これから運命の宣告を受けるって時なのに…



 はぁ…



58 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月01日(土)21時59分49秒
>>48:名無し読者さん
 レスありがとうございます。
 ちょっとお馬鹿すぎなのかな…(苦笑
 これからもヨロシクお願いします。
59 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時45分25秒


05〜【なっち】が【すき】〜


 あたしはなっちの前で正座。
 それを見て、何故かなっちも同じく正座。

 そして、そんな状況にピッタリ、2人して視線を合わせぬまま、しばしの沈黙も続く。少ししてあたしがなっちの目を見ると、なっちもあたしの方をチラっと見ていたのか、バチっと視線がぶつかった。その瞬間、顔を赤らめ視線を逸らすなっち。

 まるで、ステキな憧れの人をジーッと隠れて見てたのに、ハタと目が合い、思わず視線を外してしまった恋する乙女のように…

 なんとロマンティックなタトエっ!

 …って…はぁ、何か言ってよ…

「あのさ…」

 更にどれだけ沈黙が続いたのだろうか、もうこの沈黙が慣れてしまった頃、なっちが急に口を開いた。

 とても言いにくそうに…
 恥ずかしそうに…

 そして、なにかしら少し怖さを含んでいるかのように…

「うん…」

 何を言われるのか分からないあたしの怖々な雰囲気を含んだ返事を聞くと、1つウンと頷き、そして意を決したようにあたしに視線を合わせてきた。

「ごっつぁんさ…昨日の事…覚えてる…?」


60 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時46分15秒




 …やっぱり…




 なっちは明言はしてないけど、何を意に含んでいるかは明らかだった。

 覚悟はしてたけど、こうやって改めてこんな事言われると、やっぱりショック。
 なっちも、昨日のあたしを知ってたから今の行動になっているのだろう。

 はぁ…

 どうしよ…何て言えばいいんだろう…

 もし、『何も覚えていない』なんて言ったら、やっぱりショックを受けちゃうのかな…?こんな言葉は結構ヒドイ言葉だもんね…
 これだったら、お酒の勢いでHをしちゃったっていう、バカ男の行動だもん。
 あたしもバカ男と同じって事は、絶対ヤだし。

 でも、実際に覚えてないのは確かだし。

 あっ、お酒のせいにしたら、梨華ちゃんの方にはこの話はいかないのかもっ。
 …でも、これを梨華ちゃんが知ったら完全に軽蔑か…

 なっちは言わないと思うけどなぁ…

61 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時48分03秒


『ねぇねぇ矢口、聞いてよー
 ごっつぁんってば、ヒドイんだよっ!』


『お酒飲んでたっていっても、なっちとHした事全く覚えてないんだよっ!』


『ヒドイと思わない!?』


『ごめん、忘れて…だってっ!』


 これは言えないと思うけど…
 ある意味、【これ】で梨華ちゃんまで行ったら…


 考えるだけでも…怖い。


「ごっつぁん…?」

「んぁ?」

 自分の世界に入り込んでしまっていた為、なっちの呼びかけに間抜けな返事で返してしまったあたし。
 なっちの表情が曇る。

「…やっぱり覚えてないんだ…」


62 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時48分50秒


 どうしよ…


 なっちも【ごとーが覚えてる事】を半分諦めてるようなカンジだし、このまま『ごめん』って言って、あとはその後の雰囲気に任せようか…
 それとも、何も言わずに、その場の状況に任せるか…


 どっちがいいのかな…


「…ひどいよ…」


 うっ…
 答えは後者になったけど、かなりズキってきた。
 
 なっちの言葉に、心臓にナイフを刺されたような痛みが走ったけど、その当の本人は、あたし以上のショックを受けたのか、唇を少し尖らせ、悲しそうに俯いたその姿を見てると、こんな自分の痛みなんてってキモチになる。

 なっち…

 確かにそうだよね…
 あたしが反対の立場でも、絶対にそうだし。

 そんななっちを見てると、思わず次の言葉が口から出てきてしまった。

63 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時49分43秒

「ごめんなさい…」

 この言葉は、これらの全ての事を認めてしまうって事になっちゃうけど、こんな悲しそうななっちを見てたら、自然と【この言葉】が口から出てきちゃうよ。

「あたし、嬉しかったのに…」

 うっ…

 正座をしているなっちは、両膝の上で握りこぶしにギュと力を込めている。そして、少し涙目になった目で、あたしの事を何とも言えない表情で見つめていた。


 『素直に認めたらよかった…』


 こんななっちを見てて、思わず頭の中をよぎった言葉。

 何を?って…
 そりゃ…なっちとHをした事。
 
 朝起きて、もっと普通に接してればよかった…
 『覚えているよ』って言ってあげたらよかった…

 
 こんななっちを見るなら…


64 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時50分54秒


 色々な事が頭をよぎってる中、目の前のなっちの口からポツリポツリと本音みたいなものが零れ出してきていた。



「なっちだけが【女のコがスキ】って思ってたから…」
「ごっつぁんも【女のコがスキ】だって聞いてホント嬉しかったのに…」

「女のコとHするなんて初めてで、すごい怖かったけど…」
「ごっつぁんが『大丈夫だよ…』って優しくしてくれたから…」

「ごっつぁんの優しさがホント嬉しかったのに…」

「愛されてるって思って…」

「やっぱりお酒のせいだったんだね…」

「女のコなら誰でもよかったんでしょ…?」

「ホントは他にスキな女のコがいたんじゃないの…」
「でも、ムリだったからなっちと…」

「なっち、ホント嬉しかったのに…」

「ごっつぁんの事、スキになっちゃったのに…」

「なっちだけスキにさせといてズルイよ…」



 どんどんなっちの口から飛び出してくる衝撃的な言葉の一つ一つが心に突き刺さっているなか、あたしはただ俯いてその言葉を聞くだけだった。

65 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時52分03秒


 あたしはなんて事をしてしまったのだろう…


 なっちをこんなに悲しませちゃって…


 どうしてなっちに迫っちゃったんだろう…
 こうなる事、分からなかったのかな…


 ごとーのバカ…
 お酒のバカ…


 そんな色々な事を心の中に思いながら、あたしの頭の中には、別の考えも浮かんできていた。そう、なっちの言葉を聞いているうちに…



 『そうだ…なっちと付き合ってあげたらいいんじゃなにのかな…?』



 って考えが。
 なっちがあたしの事をスキになってくれて…

66 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時53分34秒

 女のコ同士で付き合うなんて事、絶対にチャンスが少ないと思うもの…
 そう、こういう【女のコがスキ】なんて人間が、他人にその自分の【オモイ】を告白するなんて、場の空気とかも考えて、そんなチャンスなんてホント少ないと思う。
 友達とかにでさえ、自分は【女のコが恋愛感情でスキ】なんて滅多に言えないと思うし… 
 ううん、逆に友達に言う方が辛いと思う。

 それなのになっちは…

 特にムスメなんてトコは、みんなよくお互いに『スキッ』『愛してるよっ』なんて言葉を簡単に口にしてるから、余計に【恋愛感情でスキ】なんて言葉を口にしてもホンキで取られないトコだと思う。『あたしもスキだよ』で返されるだけのトコ。


 そんななっちからの言葉…

 
 大変だったよね…
 ずっとそのキモチを自分の中に閉まっていたんだよね…
 かわいそうななっち…

 そんななっちにヒドイ事をしちゃったあたしは、ホントバカだ。



 付き合ってあげた方が…いいのかな…?



 ううん…付き合ってみたいなぁ…
 なっちなら付き合っても…

67 名前:05〜【なっち】が【すき】〜 投稿日:2003年02月02日(日)21時54分15秒

 そりゃ、梨華ちゃんの方がスキかもしれないけど、でも、梨華ちゃんとだったら、ずっと付き合えそうにないと思うし、それ以前に、あたしのキモチを伝える事だってムリかもしれないしね…


 いいよね…


 なっちだもん…


 なっちだって…スキ。


 カワイイなっち。
 無邪気ななっち。
 素直ななっち。
 あったかいなっち。
 子供ななっち。




 なっちなら…




 この時あたしは【現実】を忘れていた。
 そう、あたしたちはアイドルだっていう【現実】を…


68 名前: 投稿日:2003年02月03日(月)13時13分36秒
なっちじゃだめだぁぁぁ〜〜〜(w

すごい楽しみです。がんがってください。
69 名前:nana 投稿日:2003年02月03日(月)15時55分52秒
なちごま(*´Д`)ハァハァ
70 名前:06〜【しまっとこう】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時48分31秒


06〜【しまっとこう】〜


 覚悟を決めたあたしは、俯いていた顔をあげ、なっちの瞳を見つめた。
 少し潤んだなっちの瞳を…

 あたしから視線を逸らして、ジッと窓の外を見つめるその瞳は、何を考えてるのか…どのような憂いを含んでいるのか…あたしの事をどう思っているのか…



 でも、今からあたしが告白するよ…



「なっつぁん…」

 あたしの言葉に静かにこちらの方に顔を向けるなっち。

「ごめんね…あたし…」

 なっちと視線が合いそうになると、気まずさから一度視線を落とす。


 
 でも…



71 名前:06〜【しまっとこう】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時50分02秒

 と、もう一度視線を上げ、なっちの顔を見た時、あたしはなっちの様子が少しおかしい事に気が付いた。さっきまで今にも泣き出してしまいそうな様子は少し残ってはいるものの、何か笑いを必死でこらえてるような…なっちの柔らかいホホがピクピクと。
 そして、今までこのホテルの部屋を覆っていた気まずい雰囲気も、どこか薄れ、いつものムスメの中に一緒にいる時と同じ様な和んだものになっていた。



 あれ…?



「な、なっつぁん…?」

 動揺して思わず出たあたしの声は、何ともドモッてて、自分でも情けないものだった。
 すると、自分で聞いてて情けなかったんだから、なっちにしたらもっとおかしかったんだろう。いきなり1つ吹き出すと、その後は連鎖反応のように笑いだし、どこかツボに嵌ったように笑い出してしまった。

 いつものように…ううん、いつも以上に笑い転げてるなっちを、あたしは呆然と見つめるだけだった。




 …。



72 名前:06〜【しまっとこう】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時50分52秒

「ご、ごめんねぇ〜〜〜
 ごっつぁ〜〜〜ん」

 何とかその言葉だけを言うと、もう一度笑いはじめる。
 目じりにはうっすらと涙まで浮かべながら…




 んぁ…
 どうしたの…?

 なっち…
 何でそんなに笑ってるの?




 どーゆ、意味…?




 ごとー、何か面白い事言ったっけ?




 とうとう、あたしに抱きつくようにしてまで笑っているなっち。条件反射のように背中をヨシヨシと撫ぜ続けていると、徐々にある言葉が浮かんできた。


73 名前:06〜【しまっとこう】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時52分34秒


『だ・ま・さ・れ・た』…の?


 えっ…でも、何で?

 なに、なに、なに…?
 なに、なに?
 なに?


「はぁ…」


 笑い疲れたのか、なっちは溜息をつき、あたしの両腕を掴んだまま少し離れると、潤んだ瞳をあたしに向け、もう一度謝罪の言葉を投げかけてきた。

「ごめんね」

 謝るの…?

「これには訳があってね」 

 って事は…全部ウソだったの…?

「ヤグチのせいだから」

 あたしをスキって言ってくれた事、ウソだったんだ…?

「ヤグチがこれだと手っ取り早いって言うからさー」

 なっち…

74 名前:06〜【しまっとこう】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時53分35秒

「後でヤグチに奢ってもらってねー」

 この事自体が…ウソ…?
 イワユル、【ドッキリ】ってヤツ? 

「ヤグチー、入ってきてー」

 あたしの返事を聞かずにずっとしゃべっていたなっちは、上を向いてその言葉を少し大きめに声に出すと、もう一度あたしの顔を見て、ペロっと可愛らしく舌を出した。

「カメラはないよ。マイクだけ仕掛けてたから、そのへんは安心してね」

 そう言うと、耳にはめていたイヤホンらしき小型の機械を取り出し、いつもの太陽の様な微笑みを零した。


 そんななっちとは反対に、なっちのその微笑にドキドキしていたのはあたし。
 そんなあたしの『キモチ』を全く感じ取っていなかったのはなっち。


 何だか、まだ夢の世界にいるような浮遊感を感じる、今。
 でも、【現実】は…



 なっちに『スキ』って言われた声が、まだあたしの頭の中でリフレインする。



75 名前:06〜【しまっとこう】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時54分24秒


「はぁ…」


 思わず出てきた溜息に、なっちの『成功した!』ってキモチがたくさん含まれた楽しそうな視線を感じる一方、やっぱり何だか胸にポッカリ穴が開いてしまったような『キモチ』が溢れているのは…隠せそうにないかも…

 ヤダナ、この『キモチ』…
 
 でも、まっ。
 いっか…
 よかったってカンジだよね。

 結局、なっちとHしたって事実はなかったんだしー

 梨華ちゃんに軽蔑されるって心配はないんだしー
 さっきまでの心配は全部解消されたんだしー

 よかったじゃん。

 うん、よかった…


 …。


 なんかやりきれない『キモチ』は残っちゃったけど…
 うん、そのちょっと残念だったって『キモチ』は、しまっとこう…




 しまっとこうね…
 あたしのココロの中に。



76 名前:07〜【どっきり】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時56分02秒


07〜【どっきり】〜


「ホントビックリしたんだからねー」

 『ごめんごめん』とハンディーカムカメラ片手と、手提げのトートバックを持ち、腰低く部屋に入ってきたやぐっつぁんのいつもの笑顔を見たら、あたし自身、普段の自分を取り戻したのか、さっきまでの少し沈んだ気持ちを表情に出す事なく、いつの間にか普通になっちややぐっつぁんと会話していた。
 冗談っぽい口調で、少しHな会話も含んで。
 いつも通りに。

 で、ところで…
 結局『これ』は何だったのか…って事だけど…

 やぐっつぁん曰く、昨日の昼に【お仕事だよ〜】のメールの事を簡単に知ってもらう為に、なっちと2人で仕組んだ事だったんだって。 

 まぁ、なっちは『ヤグチが言い出しっぺ。』って言ってるけどー
 やぐっつぁんは『なっちの方が言い出しっぺだよー』だって。

 子供みたいに言い合いをしてる2人を見てると、ホント仲がいいんだろうなぁって感じられて、ホンのちょっと嫉妬を感じてしまう自分がいた。
 そんな自分にハタと気付き、恥ずかしくなる。
 さっき少しだけでもなっちに【恋愛感情】を感じてしまったあたしが引きずってる事からくるジェラシー?

77 名前:07〜【どっきり】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時56分51秒



 はぁ…

 忘れよ忘れよ。



 で、実際、【その仕事】っていうのは、もう分かると思うけど、早い話【ドッキリ】なんだよね。ドッキリはドッキリでも、よく昔からフジさんでやってたドッキリじゃなくって、テレ東さんでやるゴールデンのハロープロジェクトだけの特番って事。
 それぞれのグループで仕掛け人とターゲットに分かれてドッキリを仕掛ける番組なんだって。で、ソロのあたしと裕ちゃんはOGとしてムスメの中に組み込まれたわけです。
 もうすでに、昨日やぐっつぁんと圭ちゃんとマネージャーさんで、相談の上決まった事だけど、一応モーニングのお姉さんチーム(1期〜3期までのメンバー)が仕掛け人で、子供チーム(4期〜5期までのメンバー)がターゲットって事でするんだそうです。
 で、更に、その仕掛け人の中でも2つのグループに分かれてて、裕ちゃんと圭ちゃんが1つのグループ、なっちとやぐっつぁんにあたしでもう1つのグループ、で、カオリが両方を掛持ちってカンジに分かれてするみたい。
 ただ、普通に準備されたドッキリのTVの収録じゃないんだ。



 普通のドッキリの収録じゃない…


78 名前:07〜【どっきり】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時57分37秒

 そう、今回のはほとんど自主制作みたいなカンジで、台本とかはなく、【自分達】で全てのシナリオを決めて、【自分達】で撮らなきゃならないんだって。一応、隠しカメラの仕掛けとか色々なややこしい準備の方は、きちんとスタッフの方がしてくれるみたいだけど。
 まぁ、あと当然だけど、その準備してる様子も自分たちで撮るってのも仕事のうちに入るみたい。って言うか、それが一番の番組内容になるのかもしれないってのは、やぐっつぁんの想像。

 そして、そんなドッキリの事をあたしに手っ取り早く知ってもらう為に、プラス、これからのドッキリの予行演習を兼ねて、面白半分になっちとやぐっつぁんが仕掛けたって訳です。
 ちょうど、あたしがお酒の飲みすぎでフワフワになって、なっちの胸を揉みながら(ある意味ハズカシイ…)寝ちゃった時に、これを考え付いたんだってさ。その後、あまりお酒を飲んでなかったカオリに手伝ってもらって、あたしをなっちの部屋まで運び、実行に。


 そして、見事にハマッタあたしでした。




 はぁ…




 ホント見事なほど、ハマッテしまいました。
 自分のキモチまでしっかり持っていかれたし…

79 名前:07〜【どっきり】〜 投稿日:2003年02月03日(月)21時58分19秒


「一応シナリオは出来上がってるんだけど…」

 なっちが、ずっとカメラであたしとなっちを撮ってるやぐっつぁんの方をチラッとみて、『もう見せちゃう?』と小さな声で聞く。そんななっちに、やぐっつぁんは『もちろん』と頷き、カメラをなっちに渡すと、自分のバックをゴソゴソし始めた。

「ただ…ターゲットがね…誰がいいのか決めてないんだけど…今から決めようと思って…
 でも、だいたい決まってるような気もするんだけど…」

 バックを調べてるやぐっつぁんをカメラ越しに見守りながらのなっちの言葉に、やぐっつぁんも頷く。そんなやぐっつぁんは、プト顔を輝かせると『あったあった』の言葉を小声で口に出すと、その探していた【それ】をあたしの前に置いた。
 【それ】はノート。


 昨日の【あの】ノートだ。


「で、ある意味、この台本が出来上がってたから、ごっつぁんに【それ】に近いドッキリを仕掛けて、どんな反応がくるかってのを知りたかったってのもあるんだよ。」

 やぐっつぁんの言葉に、ウンウンと頷くと、今度はカメラを構えてるなっちから今回の事について聞くことになった。

80 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月03日(月)22時02分46秒
>>68:@さん
 ありがとうございますm(_)m
 結局は…^^;こんなんでした(w
 これからもヨロシクお願いします〜
>>69:nanaさん
 自分も結構なちごまハァハァなんで(w
 いしごまが中心ですけど、これからもヨロシクお願いしますm(_)m
81 名前:カイト 投稿日:2003年02月04日(火)00時59分29秒
初めまして〜^^
どんな台本の内容なのでしょうか!?気になります。
がんばってくださいね〜
82 名前:01〜【きんちょー】〜 投稿日:2003年02月04日(火)21時50分05秒


第3話〜【さくせん】は【りかちゃん】を【おとせっ!!】〜


01〜【きんちょー】〜


 テレビ局の廊下に響く自分の足音が緊張した自分の心臓に響き、更に緊張させる。

 これから起こるであろう出来事の為に…
 たぶん人生で一番緊張してる瞬間かもしれない…

 少し落ち着かせるために自販機でホットコーヒーを買い、ベンチに座る。綺麗にラッピングされた箱と、さっきお菓子を大量に買い込んだコンビニの袋を膝の上、自分のバックを自分の隣に置き、まだまだ湯気の漂う熱いコーヒーのカップの縁にちょっと口を付け、フーフーと冷ますと、少し口に含んだ。熱すぎて苦さも味も分からない液体が口の中に広がり、思わず溜息も出る。


「はぁ…」


≪なっち的には、ターゲットは梨華ちゃんでいいと思うんだけど≫
≪オイラもそう思う…って言うか、梨華ちゃんしかいないでしょー≫

≪そう、消去法ね…≫

≪5期メンをターゲットにしたら、絶対に【断れない】と思うし≫
≪逆に、ホント憧れて入ってきたコもいるから、ホンキで喜んじゃうかもしれないし≫

83 名前:01〜【きんちょー】〜 投稿日:2003年02月04日(火)21時50分47秒

≪で、辻加護は『スキーッ!』で終わりそうだし≫
≪消去法で、残るのはよっすぃーと梨華ちゃんだけだけど…≫
≪やっぱり、どー考えても、梨華ちゃんでしょー≫
≪梨華ちゃんなら、女のコらしくいいリアクションを返してくれると思うよ≫
≪テレちゃって、モジモジしながら、さりげに【断るのは可哀想】って頑張ってくれると思うし≫

≪ウチ等が一番望んでるリアクション返してくれると思うから…ね?≫

≪それに、ごっつぁん自身も、自分に似た性格のよっすぃーより、女のコな梨華ちゃんの方がやりやすいでしょ?≫
≪んで、最後のネタバレの時の、なっちの【アレ】にもいいリアクションをしてくれると思うしねー≫

≪あれ?≫
≪やっぱりごとーが…≫

≪んー≫
≪文麿さまぁ♪≫

≪…。≫

≪よぉ♪≫
≪ろぉ♪≫
≪しぃ♪≫
≪くぅ♪≫

84 名前:01〜【きんちょー】〜 投稿日:2003年02月04日(火)21時51分29秒


 どうしよ…
 あの時は、その役が結構嬉しかったから、何も考えずにオッケー出しちゃったけど…
 今更考えるとなぁ…



 もう遅いか…



≪実行の日は、ごっつぁんのミュージカルの東京での公演が終わってからで、大阪に出発するまでの間、2月14日、バレンタインね≫
≪もちろん、ごっつぁんは【本命チョコ】持参って事で≫

≪梨華ちゃんは午後からモーニングで仕事だけど、午前はソロでのテレビ収録の撮影って事で仕事。≫
≪他のメンバーは午前中は休みになってるから安心して≫
≪その午前中のテレビの収録は架空で、その収録の前にごっつぁんが仕掛けるの≫

≪あと梨華ちゃんには、マネージャーさんから『そろそろモーニングを離れて、カントリーの新メンバー決定と共に、石川も完全移籍をするかもしれないから、ココロの準備をしてて欲しいってつんくさんからの伝言があったよ』ってその日に聞かされるから。≫
≪一応これもドッキリね。≫

≪題して、【イシカワを色々な意味で落とせっ!!】≫
≪あーんどっ、【女同士の友情は恋愛に変わるのかっ!?】≫
≪ぷらーすっ、【イシカワはモーニング娘。を愛してるのかっ!?】≫

85 名前:01〜【きんちょー】〜 投稿日:2003年02月04日(火)21時52分59秒

 片手に持ったチョコを眺める。



 はぁ…



 ある意味本命チョコ。
 キモチはマジで本命チョコ。

『大丈夫だよ!ごっつぁんなら出来る!』
『出来るぞっ』
「うん…」

 耳の小型のイヤホンから聞こえてきたやぐっつぁんとカオリの励ましの言葉に頷くけど…

「ムリだよぉ〜」
『なぁ〜んでっ』
 
 『うん』と頷いてそっこー出てきた泣きそうなあたしの言葉を胸元の奥に隠された小型マイクが拾うと、やぐっつぁんの少し苦笑いしたような声が聞こえてきた。

「だって…」
『大丈夫…やった通りにしたら大丈夫だから…絶対に成功するってばっ!』
『そうだよっ!ごっつぁんなら。
 なっちもイイタイミングで入るようにするしね♪』

86 名前:01〜【きんちょー】〜 投稿日:2003年02月04日(火)21時53分50秒

 やぐっつぁんに続いて、やぐっつぁんとは別に、梨華ちゃんの楽屋の2つの隣の楽屋でスタンバってるなっちの声も聞こえてきた。
 そんな2人の声を聞いてると、いつも元気がどこかからか生まれてくるんだけど、今回も例外じゃなかったみたいだ。そして近くにいるカオリ…


「うん」


 さっきよりも明るめの声で答えを返すと、手に持ってた紙コップに口をつける。少しぬるくなったコーヒーが、さっきより味もはっきりし、甘味も感じられるものになってきた。

『よし。いつものごっつぁんの声だぞ。』
『頑張れー』
『頑張れっ』

 一気にコーヒーを飲むと、グイと紙コップを握りつぶし、改めて気合を入れる。



「よしっ」



 1つ声に出し、耳に聞こえてきた少し笑ったカンジのやぐっつぁんからの『最初のパンチでかなーり凹んだ梨華ちゃんが到着したよ』の言葉に『おっけー』と気合の入った言葉で返すと、ポンと膝を1つ叩き立ち上がった。そして自分で作ったチョコを抱き締め、お祈りする。

87 名前:01〜【きんちょー】〜 投稿日:2003年02月04日(火)21時54分33秒



 お願い…



 …そっこーで断らないでよ…



 せめてちょっとでも迷ってよね。
 んや、一番イイのは、おっけーくれるってのが一番だ。

 でも、それはそれでNGになっちゃうか…
 やぐっつぁんもちょっとショック受けちゃうかも。

 あはっ

 ん?…ドッキリの成功以前より、そっちの方が心配?
 そりゃそうでしょ?

 コクってそっこー断られたら、たぶん立ち直れないかも…
 だって…梨華ちゃんにしたらマジでコクられた事に対しての返事だもの…
 
 これでそっこー断られたら…




 ぶるぶるぶる




 考えただけでもヤダ。

 お願いだよ。
 お願い。


88 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月04日(火)21時58分35秒
>>81:カイトさん
 レスありがとうございますm(_)m
 台本の内容全体が分かるのは最後かな…(苦笑
 これからもヨロシクおねがいしますー
89 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月05日(水)06時48分44秒
更新早いですねお疲れ様です
次も楽しみにしてます
しかしドッキリで告白すると石川の心境はいかに(^^;)
90 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時12分04秒


02〜【しゅうろく】〜


『裏はオイラたちと、マネージャーさんだけだから、少々ヘマっても大丈夫っ。
 行こうっ』

 梨華ちゃんのいる楽屋の扉の前で少しためらってたあたしの腕が、やぐっつぁんの声で動かされる。

『梨華ちゃんがNG言っても、後で何とかできるし、大丈夫』

 続いて聞こえてきたカオリの声。


 うん…


 一番緊張する瞬間。
 大きく3回深呼吸をして、ゆっくり扉をノックした。

「はぁ〜〜いっ」

 一瞬の間をおいて、廊下中に響いてしまうんじゃないかってくらいの高いアニメ声が聞こえてきた。【梨華ちゃんらしい】って思い、思わず笑みが零れてしまう。

 久しぶりに聞いたこの声だけど、やっぱりスキ。

91 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時12分50秒

 久しぶり…
 そう、このドッキリが決まってからは、やぐっつぁんからの提案で『極力接触はしない事』って言われてたから…その間の接触は、メール2回と、ムスメのメンバーが全員でミュージカルを見にきてくれた時に、楽屋でメンバーと一緒に会った時の2回。
 だから、実際会っての会話はミュージカルの時以来になる。

 ドキドキを押さえるようにして、声を絞り出した。

「ごとーだよー」

 当然のごとくか、少し声が震えるのが分かり、『やっぱり』と、ちょっと情けなくなる。

 こんなに緊張しなくてもいいのにー

「えっ?」
『立ち上がったよ』

 梨華ちゃんのちょっとビックリしたような声が聞こえ、しばらくして扉が開いた。そこには、たった1週間前に会ったのに、ずいぶんと久しぶりに感じられる梨華ちゃんが、今までと全く変らず、カワイイ笑顔をして扉の向こうに立っていた。
 そして、あたしの顔を見て、更に表情を崩す。

「ごっちーん、今日ココでお仕事だったんだー?」
「うん、まーね」
「マネージャーさん、ごっちんがココでお仕事だって何も言ってなかったよー」
 
 可愛く少しホホを膨らますと、斜め上を見て怒った様な表情を作り溜息を1つ、また次の瞬間にはあたしの顔を見て笑顔が戻る。
 コロコロ変る梨華ちゃんの表情に、あたしのココロも、落ち着きがなくなりそうだ。

92 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時13分36秒

「久しぶりだねー」

 そう言い、抱きついてきた梨華ちゃんは、いつもの挨拶代わりの抱擁を。
 あたしもポンポンと梨華ちゃんの背中を軽く叩き、いつも通りの挨拶を、いつも通りに交す事が出来ると、少しキモチに余裕が出来た。

「あはっ」
「まぁ、久しぶりって言ってもミュージカル以来だね?」

 『入って』とあたしを部屋に招き入れながらの言葉に、『そうだね』と相槌を打つと、部屋を見回す。あらかじめやぐっつぁんから聞いてた隠しカメラの位置を、さり気無く確認。

『何か、適当に話して、徐々に機会を見て、本題に入ってこうー』
「なんかさ、1週間会わなかっただけだと、それほど久しぶりってカンジしなくなっちゃったね」

 やぐっつぁんの言葉もあり、少し仕事モードになってたあたしだったけど、そう言って静かに笑う梨華ちゃんのどこか淋しげで、あたしの前で見せてくれる表情の中ではあまりない、そんな表情に、また私情をはさんでしまいそうになる。

 冗談を言う。。
 冗談でブリッコ。
 可愛く笑う。

 こんな表情とは違う、『悲しい』という表情。


 こんな表情も見せるんだ…
 あたしが卒業したLIVE以来の表情か…

 あの時は、ボロボロに泣かせちゃったもんなぁ… 

93 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時14分21秒

 最近じゃ全く見せなくなってた梨華ちゃんの表情を、新しく知り、少し嬉しくなる一方、こんなに距離もあるんだなぁって気持ちも再確認、少し切なくなる。
 メールだけじゃ、表情は分かんないよ…


 会えない…
 忙しすぎる…


「ごっちんがソロになっちゃった時なんて、2、3日会わなかっただけですっごい久しぶりってカンジがしてたんだもの」

 もしかしたらやぐっつぁんの前だと、こんな表情を出したりするのかな…

「うん…あたしも…」


 はぁ…何か思い出しちゃった…
 いつもメンバーと一緒にいる事の出来た、あの『楽しい時』を…


「あっ、何かごっちん、いつもと違うよー」
「ん…?そんな事ないけど…」
「はっははぁ〜ん…もしかしてわたしに久しぶりに会えて、2人っきりだから嬉しさのあまり、ちょーキンチョーしちゃってるの?」
「なっ…そ、そんなわけないじゃんっ」

 『どうだ?』と言わんばかりの梨華ちゃんの表情に、恥ずかしさのあまり慌てて返事を返してしまう。

94 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時15分01秒


 そんな事あるけど…


 あたしが言えるわけないじゃん。
 そんなあたしの言葉に、ちょっと残念そうな顔をすると、『なぁ〜んだ…』と後ろをクルッと向き、鏡台の前の椅子に無造作に掛けられていたコートとマフラーを綺麗にたたみ始めた。


 なんか今日の梨華ちゃん、すごい変…
 こんなにツッコミ、厳しい方だったかな…


「わたしは、けっこードキドキしてるのになぁ〜」



 えっ…



『ご、ごっつぁん、イシカワのペースに巻き込まれすぎー』

 やぐっつぁんの苦笑いの入った声に、ハッと現実を気が付く。

 あっ、そっか…
 ヤバイヤバイ…

 ごとーが梨華ちゃんを攻めなきゃいけいじゃん。

95 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時15分42秒

『イシカワの冗談にしても、まだこんなカンジのネタは早いから、何とか別の話にもってこーよ』

 別の話って…

『”ごとーに会うのに緊張するなんて、ショックー”ってのは、どう?』
『カオリのそれも変だよー』

 今度はカオリの声が聞こえ、なっちの『変』って言葉が聞こえる中、頭が混乱してるあたしは思わずカオリの案に合わせる。
 
「えぇ〜
 ごとーに会うのってキンチョーするのー?
 けっこーショックゥ」
「えっ?違うってばぁ
 何で今更ごっちんと2人っきりになる事にキンチョーするのよー」

 そう言って、手を口元に持っていって可笑しそうに笑う梨華ちゃん。この笑顔を見てると、ホントにそう思っているみたいだ。
 ちょっとその辺は安心したかな…?
 あたしと2人っきりになるのがイヤってカンジじゃないみたいだからね…

 でも、こういう時、つい自分の本音を話してしまう。
 梨華ちゃんがどんな風に思ってるかも知りたくて。

「だってさ…ごとーってさ、あんまり面白い事言わないじゃん?」
「そんな事ないよ」

96 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時16分20秒

 あたしの言葉と同時にすぐに言葉を返すと、さも当然のような表情をして鏡越しにあたしの瞳を見つめてきた。
 梨華ちゃんの【それ】に思わず嬉しくなり、ホホが熱くなる。

「ありがと…」

「なーに言ってるのよー」

 もう一度笑い、今度は『らいしくないぞ』と振り向くと、あたしに近付いてきて、人差し指であたしのホッペをツンツンとつく。

「ミュージカルの掛け合い、面白かったよ。」
「あれは台本だってばー」

 あたしの言葉に、『そー言えばそーだね。でも、あたしはごっちんと一緒にいるのスキだよー』と笑うと、楽屋においてある急須を指差し、『お茶飲む?』と聞いてくる梨華ちゃんに、あたしは少しテレたカンジで『ありがとー』と答える。そして、急須にお茶の葉を入れてる梨華ちゃんに、コンビニで買ってきたお菓子類を見せて『さしいれー』と言うと、ニッコリ笑顔で『ありがとー』、ポットに急須を沿え、お湯を入れ始めた。その間、あたしはコンビニの袋からお茶にあうものを適当に取って、楽屋の真ん中にある大きな机の上においていく。

『何か、いつものイシカーさんと違うね。しかも、ごっつぁんが来る前の編入の話でのヘコんだ様子は消えちゃったしね…』
『うん。でも、おかしーのが、お茶飲む?だってさー』

 やぐっつぁんのしんみりした言葉とは対称的に、カオリの少し笑いが入った声が、あたしの耳に聞こえてきた。

97 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時16分57秒

『メンバーだけの時なんてめったにないんじゃないの?』
『えっ…そうだっけ?』
『えっ?ヤグチと一緒の時は飲むの?』
『まぁ…たまにね…』

 頭の中に聞こえてくる会話はどんどん2人だけの会話に移っている中、いつの間にかあたしは、急須を動かしてる梨華ちゃん手に目がいっていた。

 綺麗な指…
 あたしの様に男の人みたいにおっきくなくて…
 女のコっぽくて、ちっちゃな指だなぁ…

『なっちも、あったかいお茶飲みたくなっちゃった』

 フト自分の世界に入りかけていたあたしの耳に、さっきまで静かだったなっちの『はぁ』という溜息と共に聞こえてきた、シンミリした声。そんななっちの声が、もうすでに急須にお茶を入れはじめてるホノボノした光景をあたしの頭に浮かべ、思わず笑みが浮かんでしまう。
 お茶の飲んでるなっちを想像してると、ののまで膝の上で一緒にお茶を飲んでそうな光景が浮かび、更に笑ってしまいそうになる。
 あの2人って親子みたいだからね…

「どーしたの?笑っちゃって」

 急須をクルクル回していた梨華ちゃんが、いつの間にか笑みを浮かべながらも不思議そうに顔を傾け、こっちの方を見ていた。
 その仕草の可愛さに思わずホホが赤くなる。
 
 なんだかお母さんチック…

98 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時17分40秒

「お母さんみたいだね」

 フトもれてしまったあたしの言葉に、一瞬『えっ?』と不思議そうな表情を見せるも、すぐにあたしの言葉にノッテくれたのか、笑みを浮かべながら『真希ちゃん、お茶出来たわよー。熱いから気を付けなさいね。』とお母さんチックに湯呑に注いでくれた。

「ありがと…」

 梨華ちゃんの冗談に素でしか返せないあたし。

 こういう時って、やぐっつぁんとかだったら更にノッテあげるんだろうなぁ…
 っていーか、『キショッ』だろーなぁ


 どーしてあたしって梨華ちゃんの前だと、こうも不器用なんだろ…


 こんなんだから梨華ちゃんに飽きられちゃうんだよなぁ。

「どーいたしまして♪」

 その言葉の後、『ハイ』とあたしの前に湯呑をおいてくれると、『何がいいかなぁ〜』とお菓子を選び始めた。あたしも適当にガサガサと漁る。
 何か自分の納得したものを選んだのか、その袋を開けると、ポイと口に入れ、幸せそうな笑みを浮かべながら、あたしに視線を向けてきた。

「そー言えばさ、そろそろフリつけてるトコだよねー?」

99 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時18分26秒

 梨華ちゃんのモゴモゴした口調での言葉は、つい最近発売された1stアルバムの曲の振り付けの事で、4月から1stソロコンサートが始まる事もあって、そろそろ振り付けを始めてるんじゃないの?って話です。
 アルバムは結構前に梨華ちゃんに渡してあげたんだ。この前の大阪で2人で話してた時に、『よかったよー』って満面の笑みで言ってくれたのが、かなり嬉しかったのを覚えてる。

「うん?まぁね」
「どんなカンジなの?」
「どんな感じかなぁ…
 あんまり激しくはないよ…」
「そーなんだ」
「うん。
 ミュージカルで体力はついたんだけどさ。
 夏先生とつんくさんがさ…激しいとまだまだキツイだろ?って…」
「あぁなーるほどっ」
「どっちかって言ったら…マッタリかな…」

 その言葉に、『マッタリって…』『なんでよー』って笑い始める梨華ちゃん。

 どうも今日の梨華ちゃんはあたしの些細な言葉に簡単に笑ってくれる。
 でも、そういうのが結構嬉しかったりするんだよね。あたしからの会話もハズムってやつ。普段でも結構笑ってくれてる方だと思うけど、今日はやっぱり特別のような気がする。どんな言葉を話してても、梨華ちゃんとの会話がうまく成り立ちそうな気がするんだよね。

「失礼だぞー」
「ゴメンゴメン」

100 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時19分14秒

 そう言いながら、更に笑う梨華ちゃん。さっきのあたしの冗談っぽい、ヘンな口調なだけで、また楽しそうに笑うんだもん。

 
 やっぱり梨華ちゃんスキー


「でも、まぁ…先に大阪でミュージカルの方があるから、まだまだフリを覚えるってのは先かな…今は頭に入れるだけで、軽くってカンジ。」
「あっ、そっか…そーだよね
 20日からだよね…」

 そう言うと、さっきとは全く反対の、少し寂しそうな表情を浮かべ、『当分の間、大阪なんだね…』の言葉を呟き、俯く。そんな梨華ちゃんにつられるように、あたしの表情も曇ったものになっていった。丁度、自分の思っていた事を思い出して、そして俯く。

「20日から23日までだけど…こんなに長いのに、【1人】なんだよね…」
「えっ…」

 少し梨華ちゃんの驚いたような声を聞き、俯いていた顔を上げると、梨華ちゃんのビックリした表情と視線が合う。


 ちょっと考えると、フト思い出した。


 もしかして、あたしが実際に、梨華ちゃんにこんなに【ソロが寂しい】なんて言葉を口にしたのは、卒業してから初めてなのかもしれないって事を。自分は結構強がりなトコがあるから、ソロになっても、その寂しいってキモチを言葉にして、メンバーに直接言った事はなかったと思う。
 
101 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時19分59秒


 そっか…初めてかも…


 そんなキモチが溢れ出ると、もう後はカギが外れてしまったかの様に簡単だった。
 自分のキモチがドンドン溢れ出てしまう。

「こんなに大阪で泊りなのに…楽しみってキモチがすくないんだもん…完全に【仕事】だよ
 そりゃ、舞台も楽しいし、今までの成果を出せるから…
 でも…」

 今の自分は、ちょっとカッコ悪いかも…
 あんまり梨華ちゃんに見せたくないけど…

 でも、どこか自分の中に、梨華ちゃんに慰めて欲しいってキモチもあるのかもしれない。
 普段なら言えない言葉も簡単に出てきそうだ。

「ムスメでいた時だったら、こんなずっと続く泊りの時ってホント楽しかった…
 毎日が修学旅行みたいでさ…
 こんなの言ったらいけないんだけどさ、【仕事】の【辛さ】を半分以下にしてくれてたくらいだもん。
 それが当然だと思ってた…」

 あたしの言葉をジッと真剣な表情で聞いてくれている梨華ちゃんに、頬杖をつき【こんな自分にちょっと呆れてしまった】カンジの苦笑いを見せる。

「メンバーがいないって事が、こんなに淋しい事なんて…
 たぶんそうなるだろーなぁーって思ってはいたんだけどね…」

 溜息を1つ付き、視線を斜め上に持っていく。

102 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時21分12秒

「なんかさ…時間が経てば経つほど、淋しくなってくるんだよ…
 最初の頃はさ、余裕がなくって、必死に毎日頑張ってたから気付かなかったんだけど…」

 もう一度視線を戻し、梨華ちゃんを見ると、あたしに何て言葉を掛けたらいいのか分からないといった、困った様な表情を浮かべていた。
 そんな梨華ちゃんを見て、こんな話題を出してしまった自分がイヤになり、おもわず俯いてしまう。

「ごめんね…なんかグチっちゃってさ」
「ううん。」

 あたしの謝罪の言葉に、すぐに返事を返してくれた事に、少し胸の中が軽くなる。そして、その後に口にしてくれた言葉に、更に嬉しくなるあたし。
 
「わたしがごっちんのグチ聞いてあげるよ。こんなあたしでよかったら毎日グチのメール送ってよ。1分以内に返信してあげるからさ」
「ありがと…」
「それにさ…なんかメールってさ、いっつもわたしの方から送ってるしさ…
 ごっちんの方からも、もっともっと何でもいいから送ってよ…」

 少し恥ずかしそうにその言葉を出す梨華ちゃんに、強い愛しさを感じてしまい、おもわず抱き締めたくなってしまったけど、そんな事はあたしのキャラ上出来るはずもなく、グッとそのキモチを自分の胸の奥深くに静める。

『オイラにもグチってよ』
『カオでもいいよ』
『うん…なっちも…』

103 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時21分56秒



 あっ…そっか…

 

 あたしはいつの間にか、みんながあたしと梨華ちゃんを見ているという事をすっかり忘れてしまっていた。みんなに聞かれてるという事を思い出し、さっきまで言っていた言葉が急に恥ずかしいものに思えてき、自分の顔が真っ赤になるのが明らかに分かった。


 恥ずかしー
 後でNGだしてもらお…


 でもみんなありがと。
 後でしっかりメール送っとかなきゃ。
 自分の口からじゃ、恥ずかしくて言えないけど…

 その現実の全てを思い出したあたしは、顔が熱い中、本題の方に会話の方向転換を謀る。

「こんな暗い話もういいよねっ
 そだそだ。
 今日、何の日か知ってるよねー?梨華ちゃん。」
「あっ…」

 あたしはごそごそと袋をあさると、自分で綺麗にラッピングした袋を取り出し、『ハイ』と梨華ちゃんの前に置いた。

「ごとー渾身の手作り。大本命チョコだぞっ♪」

104 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時22分53秒

 恥ずかしかったけど、『ここからは女優に戻らなきゃ』ってキモチで、精一杯可愛く梨華ちゃんに笑顔を見せる。少し首を傾げ、普段のあたしじゃ絶対に見せないような女のコな可愛い仕草で。
 これだと冗談みたいに思えるから、大丈夫でしょ。
 
 あっ…でも梨華ちゃんはクールな人の方がスキかも…
 クールに言った方がよかったのかな…

「あ、ありがとっ」

 あたしの心配をよそに、梨華ちゃんは満面の笑み。『ごっちん渾身の手作りチョコなんだぁ♪きっと、おいしーんだろね♪』と、とても嬉しそうにチョコを眺めるけど、フト何か気付いたのか、みるみるその顔にはどこか浮かない表情となっていた。



 あれ…?



 急に浮かんだそんな表情を見ていると、なにやら不安が襲ってくる。

 どうしてそんなに困ったような表情するの?
 もしかして、冗談に聞こえなかったのかな…

「ごめん…」


 えっ…?


105 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時23分42秒

 その言葉を聞いた瞬間、自分の頭の中が真っ白になるのが明らかに分かった。
 何も考えられない状況。

『マジにとったの?』

 やぐっつぁんもあたしと同じ事を感じ取ったのか、少し緊張した声になる。
 

 ヤバイ…
 マジで…


 どうしよ…

 これって、ある意味、ふられる直前ってやつ…


 うっ…


「ごっちんと今日会えるって思ってなかったから、ごっちんに渡そうと思って作ったチョコ持ってきてなかったんだ…」


 …。


 ハハ…

106 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時24分37秒

 一瞬涙まで出てしまいそうになっていたあたしは、梨華ちゃんの言葉に急に力が抜けてしまったかのようになってしまった。
 その次に聞こえてきたやぐっつぁんとカオリの言葉にも素直に納得する。

『オイラも焦ったよ…』
『ごっちん、すごい顔してた』

 ホント、さっきのあたし、すごい顔してたと思う…

「わたしも一生懸命作ったんだけどねっ
 ごめんねっ」

 両手を胸の前に合わせて、一生懸命謝る梨華ちゃんは『ごめん』を連呼しながら、あたしの顔を切なそうに見つめてくる。
 どうしてこんなに真面目なんだろ…梨華ちゃんって…
 【マジメ】って書いて【ヤサシイ】って読むんだけど。
 でも、それがイイトコであって、欠点でもあるんだよね。
 笑って『今度マネージャーさんに渡しておくね』って言えばいいのに…

 そんなに気にしなくていいよ。

 その言葉があたしの口から出かけるけど、一瞬ヒラメキ、口をつむぐ。
 そう、こんな梨華ちゃんを見ると、やっぱりイジリたくなっちゃうんだよね…

 あはっ

「ごとー、一生懸命作ったのにー」
「うううー」
「まっ、梨華ちゃんのごとーへの愛が足りなかったって事だねっ」

107 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時25分18秒

 頬杖をつき、少し怒った様な表情を作って、フンッとばかりに、顔を横に向けるあたし。
 そして、梨華ちゃんのリアクションを待つ。

 まっ、だいたいどんなリアクションを返してくるのか分かってるんだけどねー

 しばらく沈黙が続き、梨華ちゃんを横目で見ると、あたしの思った通り、なんだか悲しそうに視線を下に落としていた。


 あはっ♪やっぱり♪


 思わず笑みが浮かびそうになったあたしだったけど、その次の瞬間には、梨華ちゃんは何かを思いついたのか、キッと視線を上げ、まるで子供のように声を高らかにあげた。

「じゃー、今日の夜ごっちんんチに持ってくっ」

 ホントは年上じゃないんじゃないの?

「はいはい、今から買いに行って、それを持ってきてくれるんでしょ?」
「ちっ、ちがぁーうっ。」
「じゃぁ、今持ってるスタッフさんの残り物を持ってきてくれるとか?」
「じゃなぁーいっ
 ちゃんとごっちんの為に作ったんだってばぁーっ」

 半泣き状態の梨華ちゃん、面白過ぎ。
 何でこんなに表情がコロコロ変るんだろ。
 ある意味、いいよね…

108 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時28分31秒

『カワイーね、イシカーさん。やっぱいつもと違う。』
『子供っぽいね♪
 なんだかカオリたちには見せそーにないよね。特に、ヤグチにはないよね』

『オイラが遊ばれるもんなぁ…』


 これ以上からかってたら、ホントに泣き出しちゃいそうだから、あたしは笑顔を出した。

「あはっ。もういいよー」
「えぇー、だって…」

「今度マネージャーさんにでも渡しててー」

「うっ…ちゃんとごっちんの為に作ったんだよっ」

 必死に訴えかける梨華ちゃんのホホをツンツンとし、『はいはい、ありがと♪』と言ったあたしを、まだ梨華ちゃんは納得いかないのか、『ホントに作ったのに…』と呟きながら、何かを訴えかける子供の様な瞳であたしの事を見つめ続けていた。
  
「ありがとね。」

 と、あたしがもう一度その言葉を言った時、自分のバックの中で携帯のバイブの震える音が聞こえてきた。

109 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月05日(水)22時29分27秒



 あれ…?



 連続的に震え続けるバイブに、あたしも梨華ちゃんもメールじゃない事に気が付く。

「電話?」
「うん…みたいだね…」
「バイブにしてるんだ…」

「うん…ちょーっと待っててねー…」

 バックを拾い上げ、ゴソゴソを漁る。

『オイラたちじゃないよー』
『誰だろね…なっち掛けてないよね?』

『うーん。掛けてないよ。』

 実際にやぐっつぁんたちかもしれないって思っていたあたしは、みんなの言葉に『あれ?』と思いながらも、自分のバックの中から、見つかった携帯を取り出した。そして、その震え続けている折りたたみ式携帯の小窓を見たあたしの目に入ってきた名前は、【藤本美貴ちゃん】。

110 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月05日(水)22時35分17秒
うーん…切るに切れなかった^^;
ちょっと中途半端に…
>>89:名無し読者さん
 レスありがとうございます^^
 一応第1部は完成してからスレを立てましたんで、ちょくちょく手直しをしつつ出してます。
 (ごっちんの卒業前から書いてましたからね…^^;)
 今、第2部を書いているのですが…
 第1部をアプすればするほど自信が…消失…
 なかなか書けなく…
 レスは励みになります^^ありがとございます〜
 これからもヨロシクお願いしますm(_)m
111 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月06日(木)13時43分30秒
各キャラがリアルでテンポもいいし面白いですよ>作者さん
楽しみにしてます
112 名前:超体育会系野郎 投稿日:2003年02月06日(木)16時16分26秒
ちわっす!
美貴帝何をする気ですかっ?!
更新はやくて嬉ッス。このペース(話の流れ)ドキドキもあって最高ッス。
続き楽しみッス!ウッス!
113 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時17分02秒

「あーっ、美貴ちゃんだぁ…」
「えっ?」

「なーんかさ、結構連絡取ってるんだよねー」
「そーなんだ…」

 梨華ちゃんの少し不思議そうな表情を見て、一瞬出ようかどうか迷ったけど、出ないのもそれはそれでおかしいし…
 あたしは話してる間に梨華ちゃんと目が合わないようにと、さりげなく横を向くと、すぐに携帯を開け、耳に当てた。
 と、当ててから、自分の耳にイヤホンがある事に気が付き、慌てて反対の方の耳に携帯を当てる。一瞬冷や汗が流れそうになったけど、その辺はウマイ自分。特別表情を変えずに、いつも通りに応対する。

「はーいっ、ごとーだよっ」
『おっす。ふじもっちゃんでーす』
「うーん♪」

『あのさー、今仕事中?』

 びみょーな質問に、一瞬考えるけど、何を迷ってるってカンジだ。

「まーね」 

 梨華ちゃんは、あたしはココに仕事できてるって思ってるんだから、どっちにしても『仕事』でいいんだよね。
 ウソは言ってない。

114 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時17分58秒

『どこー?』
「テレ東さんだよ」

『そーなんだ。
 今日、あたし昼からだけだけど、ずーっとあいてんだー
 んでさ、仕事終わってから会えない?』
「んぁ?遊ぶ?」
『チョコ♪』

「チョコ?」

 美貴ちゃんのとっても可愛い猫なで声(ある意味こわーい)に思わず声が裏返る。すると、隣で梨華ちゃんがクスクス笑ってる声が聞こえ、そんな笑ってる梨華ちゃんに、あたしにも笑みが浮かんできた。

『そっ。作ったんだー、ごっちんの為っ』
「あはっ♪ありがとっ」

『でさっ、どーかな?』
「全然いーよ。でも、仕事いつくらいまで掛かるか分かんないからー、分かり次第連絡いれるって事で、どー?」
『おっけーおっけー。あっ…晩ご飯も一緒にってどーお?』

 この後、梨華ちゃんとはどうなるのか全然想像がつかなかったけど、とりあえずってカンジであたしは返事を『了解』で返した。
 もしかしたら今日の仕事の出来次第だと、梨華ちゃんと食べに行くって選択肢も出来るかもしれないけど…


 まぁ、美貴ちゃんとは後で何とでもなるでしょー


115 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時18分50秒

『ホント優しいね♪だからごっちんスキー。
 愛してるヨッ♪』

「あ、ありがと…」

『ほらっ、ごっちんも言ってよー』
「はは…はは…」

『ほらーっ』

 あたしのシドロモドロな様子に、梨華ちゃんはこっちの方を変な目で見ている。
 でも、言わないのも、可哀想だしなぁ…

「あ、あいしてるよ…」

『う〜ん、だからごっちんスキッ』
「はは…はは…」
『じゃぁ、あとでねー、
 バイバーイ』

「…バイバイ…」

 切れた携帯を、自然と洩れてしまった溜息に気付かないくらい【ぼぉー】っとした表情で見つめていたあたし。1つ溜息を付くと携帯をパチンと閉じた。

 ふぅ…疲れた。
 2人だけの時だったら、別にいいけど…
 梨華ちゃんが近くにいたから、余計に疲れてしまった…

『ごっつぁんっ!!』

116 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時19分39秒


 …っ!!…


 イヤホンに聞こえてきた大きな声に思わず返事を声に出して返してしまいそうになったけど、自分の現実を思い出し、グッと喉の奥に押し込む。

「美貴ちゃん、どーしたの?」
「ん…?ごめん…ちょ、ちょっと待ってね…」

 そして、やぐっつぁんの言葉を聞くために、閉じた携帯をもう一度開き、それをいじるフリをして、少し梨華ちゃんとの会話を中断する。

『ちょっと聞いてね。最初の予定へんこー。
 カオリの役をフジモトにへんこーするから。どっちかっつーたら、そっちの方が不自然じゃないっしょ?
 なーんかー、今の聞いてたら、かなりごっつぁんイイカンジに話してたしー、相手はカオリよりいいかもしんない。』

 なるほど…確かに年も近いからカオリより不自然じゃないし…

『カオ、ショッキー』
『まぁまぁ。でさ、内容はそのままで、相手だけフジモトに変更ね。当然の如く、オイラの役も一番仲がイイ、マツウラにも変更。マツウラも、フジモトもモーニングじゃややこしっくなっちゃいそうだったから、メロンのトコの仕掛け人にしてて、後で何でも言えるから大丈夫っぽいしー
 どー?それでヨロシクー』

117 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時20分38秒

 さっきの会話を聞いてたら分かると思うけど、実際に美貴ちゃんはそれっぽいし…(ちなみに、けっこー梨華ちゃんみたいに、あたしが勘違いしちゃうくらいベタベタしてくる事を言ってます。ただ、言葉での攻撃に関しては、梨華ちゃんはあまりないけど。)

『あっ、あと、うまい事話が繋がるなら、アドリブでもいいから、何とか話をそっちに持っていってね。』
『じゃぁ、なっちもそれにあわせて出て行ったらいいかなー?』
『うん。まぁ、オイラが一応出るタイミングは言うから。』
『りょーかい』

『よし。カオは台本をちょい変更しとくね。』
『うん、ヨロシク
 ごっつぁんは、続けてー』

 アドリブか…けっこー難しいなぁ…




 でも…さっきのチョコの話から持ってけるか…




 よぅしっ。

 ある【1つのセリフ】が頭の中に浮かんだあたしは、パチンと携帯を閉じると、梨華ちゃんの方を向き、笑顔を見せた。

118 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時21分32秒

「ごめんごめん。
 なーんかさっ、美貴ちゃん、あたしの為にチョコ作ってくれたみたいなんだけどー、今日渡したいから仕事終わってから会いたいんだってさー」

 ちょっと困ったような表情を作り、あたしは肩を竦めた。

「恋人みたいだね…」

 梨華ちゃんの悲しそうだけど、不思議な作り笑いを浮かべた表情で言うその言葉に、少し驚きを覚えた。
 そう、実際にあたしはその言葉を言うつもりだったんだ。
『恋人同士みたいでしょ』って…



 よしっ



 少し順調すぎるけど、続ける。

 そっから計画通りにいけそうだし…
 
 あたしは梨華ちゃんのその言葉を聞くと、少し悲しそうな、困ったような表情をした。そして、真剣で悩んでるようなそぶりをし、少し視線を落とす。

「あのね…」

 と言い、口をつぐみ、もう一度何かを考え込む。
 もちろんフリだけど。

119 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時22分22秒

「ん…どーしたの?」

 梨華ちゃんのその言葉を聞くと、ソソっと椅子を、座った姿勢のまま持ち上げ、梨華ちゃんのすぐ隣に移動した。
 そして、可愛く首を傾げる仕草の梨華ちゃんを真剣な表情で見つめたあと、人差し指を自分の口の前に持っていき、『これから話す事は、ホントの事だけど…誰にも言わないでね…』と囁いた。

「あっ…うん…」

 不思議そうな表情をしながらも、少し緊張した様子の梨華ちゃんに、落ち着かせる為に1つ笑顔を見せる。そして、梨華ちゃんも微笑んでくれたのを確認すると、あたしはもう一度前を向き、鏡に向かい合ってる梨華ちゃんの方に視線を動かした。


≪とにかく、カオリが自分にホンキで気があるようような事をオイラから聞いたって事から、話をイシカワが【その事】に関してどう思ってるかに持っていくのが大前提≫
≪たぶん梨華ちゃんなら、優しいから、メンバーの誰かが【そういう感情】を持ってても【引かない】と思う。≫

≪で、【引いてる】様子がなかったら、作戦はほぼ成功で、そっからどんどんイシカワに迫っていくのが最終段階だね≫

≪一応オイラたちが考えたように言ってくれてもいいけど、ごっつぁんがもっと【見てるこっちが寒くなるくらいのセリフ】がありそうだったら、それでいっちゃってよ≫
≪むしろ、寒いくらいの方がテレビ的に面白くてイイかもってくらいだからさっ≫

120 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時23分29秒


「結構美貴ちゃんとは仲いいんだよね…」
「うん。」
「ごとーの方が年下だけど、ごとーの事慕ってくれるんだぁ…」


 鏡越しの揺れた笑顔があたしの事を見つめる。


「でもさ…なんかさ…」
「うん…」
「亜弥ちゃんから聞いたんだけど…」


 笑顔の消えた顔があたしの事を見つめる。


「美貴ちゃんさ…」
「うん…」
「ごとーの事、ホンキでスキっぽいんだ…」


 動揺した瞳があたしの事を見つめる。


「みんながごとーに言ってくれる【スキ】じゃなくってさ、恋愛感情でごとーの事を【スキ】みたいなんだ…」
「亜弥ちゃんが言ってたの…?」
「うん…ホンキで、らしいよ…」

 あたしの言葉の後、鏡越しの視線があたしの瞳からそらされ、口元も閉じられてしまった。
 
121 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時24分42秒
 
 ホンの少し自分のココロの中に、不安が渦巻く。色々な悪い考えが自分の中に浮かんでは消えを繰り返す。梨華ちゃんの沈黙が続く限り、その状態が続く自分。
 そして、そんな沈黙に耐え切れなくなったあたしの方から口を開く事にした。

「梨華ちゃんはさ…そーゆーの、どー思ってる?」
「えっ?わたし?」 


「うん…気持ち悪い…?」
「そ、そんな事ないっ」

 その梨華ちゃんの慌てたような言葉だけど、あたしにとって安心、その言葉にホッと胸を何故下ろし、自然と自分の表情に明るいものが零れていた。そのあと、思わず『よかったぁ』という安堵の言葉を呟く。
 やぐっつぁんの台本の中にこの言葉はあったけど、さっき出たあたしの言葉は本心。
 つい呟いてしまった言葉だ。

 そして、そんなあたしを見て笑みを浮かべる梨華ちゃん。

『ちょっとシンミリしすぎだね…』

 そんな事言ったって…

 やぐっつぁんの言葉に、胸の中で少し反論する。
 けど、すぐに現実の方に自分のココロを持っていく事にした。

「じゃぁー、けーべつ、しないんだ…」
「うん。全然。
 わたしはそーゆーの何とも思わないから…別にいーと思う…そんな恋愛も。」

122 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時25分28秒

 そうは言うものの、まだ困ったような表情の梨華ちゃんの本心は全然分からないけど、その言葉を聞けたから、とりあえず一安心ってカンジだ。一応、このドッキリでの進行にも影響しないし、実際、自分のキモチにも、その梨華ちゃんの言葉で余裕が生まれてきた。最初からその言葉を言ってくれるって予想をしてはいたのだけど、実際に聞けると嬉しいんだもの。
 ホンキで梨華ちゃんがスキかもしれないっていう、あたしのココロの奥深くにある本心が、その梨華ちゃんの言葉に喜んでいるのかもしれないから…

「安心した。」

 演技半分、本心半分の言葉を口にし、鏡の梨華ちゃんではなく、真横にいる梨華ちゃんの方に視線を向け、少し笑顔を見せた。



「うん」



 でも、そんな少し笑顔を見せているあたしとは対称的に、あたしの目に映っている前の鏡の中のあたしを見つめているであろう梨華ちゃんの瞳には、どこか暗いものが生まれていた。その理由を知る由もないあたしは、そのままやぐっつぁんの作ったシナリオを続けるだけ。
 と、あたしが次のセリフを言おうとした時、フト悲しそうな表情の梨華ちゃんがこっちの方に顔を向け、可愛い口を開いた。

123 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時26分26秒

「美貴ちゃんはさ…」

「うん…」

「ごっちんの事、【憧れてる】だけじゃ、ないのかな…」
「う〜ん…」

「だって、もともとモーニングに入りたがってたわけだし…
 憧れてたのがごっちんってのでも分かるじゃない?」
「まー…」

「でさ、わたしもね…
 さっきけーべつしないって言ったけど…」

 少し視線を泳がせる梨華ちゃん。

「わたしもね…女の…【ヒト】でスゴイ【憧れてる】ヒトがいるんだけどさ…」



 えっ…



 梨華ちゃんの思ってもいなかった告白に、あたしの胸にズキッと痛みが走るのが明らかに分かった。これは完全にやぐっつぁんの用意してあった台本の中には存在しないもの。
 
 ただでさえこんな状況の中、自分にとって辛いであろう告白を受けるなんで…
 
 でも、と、その痛みを押さえるように、あたしは、自分の事を見つめていない梨華ちゃんの瞳を見つめた。

124 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時27分47秒

「その【ヒト】にさ、構って貰いたくてさ…
 たとえばさ、その【ヒト】が、他のコをカワイイとか言っちゃってると嫉妬しちゃうくらいで、『わたしの方がカワイイよっ』ってさりげーに訴えたり…
 あっ、なんだかちょっと違うかもしれないけどね」
 
 そこではにかんだ笑みを浮かべ、少しあたしの方に視線を向けた。

「なんかー、”もし”美貴ちゃんがごっちんに【憧れ】てたら、わたしも美貴ちゃんの【その】キモチ分かるかもしれないよ…」

 梨華ちゃんの引き続き続いているその言葉に更にショックが大きくなり、思わず頭の中が真っ白になる。

「ホントに【恋愛感情】でスキなのかな…?」

 この最後の梨華ちゃん言葉は、やぐっつぁんのセリフの中にあったけど、動揺したあたしは何も浮かばなくなる。
 何ともいえない沈黙が訪れ、どれぐらいたったのだろうか…

『ほらっ、ごっつぁんっ。【亜弥ちゃんが言ってたから】って。【相談されたって】って。』



 あっ…



「亜弥ちゃんが言ってたんだ。美貴ちゃんにそー言われたって…そーだんされたって…」
「そっか…ホントなんだ…」

125 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時28分41秒

 ちょっとヤバイかも…
 さっきの【憧れのヒトがいる】っていう梨華ちゃんの言葉が、そーとーショックだったみたいだ。全部セリフが飛んでしまってたあたし。思わず俯く。

 誰だろ…憧れのヒトって…
 構って欲しいって…

「ごっちんも…美貴ちゃんの事…スキな、の…?」
「えっ…?」
「結構嬉しそうにさ、さっき【あいしてる】って言ってたけど…」

 まだ動揺しているあたしだったけど、今は仕事。
 【それ】に自分のキモチを切り替える事にした。
 用意してあったセリフを1から思い出し、全て頭の中で一通りリフレインする。そして、整理をし、梨華ちゃんの方に視線を戻した。
 
「スキな事はスキだよ。」

 そして、笑顔を見せる。

「みーんなスキ。
 あいぼんもスキだし、やぐっつぁんもスキだし。なっつぁんだってスキだし。もちろん梨華ちゃんもスキ。
 メンバー、みーんなスキだよっ」
「ち、違うよっ」

 少しだけ笑顔の浮かんだ梨華ちゃんに、ホッと胸を撫で下ろすと、あたしも飛びっきりの笑顔を見せた。

126 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時29分51秒


「どーちがうの?」
「だーかーらー」

 そう笑いながら口を開く。

「そのメンバーがスキってやつじゃなくってさ、さっき話してた【恋愛感情】での【スキ】ってやつだよぉー」

 『もぉー』とホッペを膨らます梨華ちゃんに、『ゴメンゴメン』と笑顔。
 でも、その笑顔は一瞬だけ。次の瞬間には、悲しそうな表情を浮かべ、あたしは頬杖をつき鏡の中の梨華ちゃんに視線を向けた。

「だから困ってるの」
「だからって…やっぱりスキだから困ってるんだ…」

 うーんと眉間にシワを寄せ、真剣な表情で何かを考え込もうとしている梨華ちゃんに『ちがうちがう』と、首を振ってみせる。

「あっ、スキじゃないから困ってるんだ…」
「そう…」

 あたしは頬杖を解き、梨華ちゃんの方を向き、神妙な面持ちで頷いた。
 そして、やぐっつぁんの用意してあった台本通り、『あたし…スキな人がいるから…』という告白をしようとしたその時だった。

127 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時30分37秒


『ちょっと待ってーっ!!』


 耳に派手に聞こえてきたカオリの声に、思わず固まるあたし。
 梨華ちゃんもちょうど考え込んでいるトコロで、話が途切れててよかったかもしれない。あたしも梨華ちゃん同様俯いた。

『あのさ、ちょっと考えたんだけど、早いかもしれないんだ。
 結構イイカンジになってきたと思うから、もうちょっと時間を使ってもイイかもしれないって相談してるトコでさ。
 ごっちんがよかったら今回はこの辺にしといて、今日これから予定してたトコは、次の機会にでもってカンジはどうかな?
 その間に色々準備とかも出来そうだし…』

 カオリの言葉に思わず安心感が生まれたあたしは、考える間もなく携帯を手に取った。
 やっぱりこんな事は少しでも遅らせたいっていうのが誰でも思う事だと思うし、他にも、梨華ちゃんともっと一緒に仕事が出来る時間が増えるっていうのも、嬉しい。もちろん梨華ちゃんだけじゃなくって、やぐっつぁんやなっちやカオリや、みんなとも一緒にできるしね。

『たださ…次はたぶんごっつぁんのミュージカルが終わってからの休暇の日になりそうなんだけど…その点はいいかな?
 もし休暇に予定が入ってるなら、これから予定通り告白してってもイイよ。』

128 名前:02〜【しゅうろく】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時31分22秒

 次に聞こえてきたやぐっつぁんの言葉にも、あたしは特別悩む事はなく、さっき取った携帯を開けると、【新規メール】を開き、やぐっつぁんのアドレスを入れ、【Subject】に【了解】だけ書くと、すぐに【送信】を押した。
 そのままやぐっつぁんの言葉を、俯いたまま、考え込んだフリをして待つことにした。


 そして30秒もしない内に、再びやぐっつぁんの声がイヤホンを通して聞こえてきた。

『うん。おっけー。
 じゃぁさ、これから梨華ちゃんとごっつぁんのマネージャーさんを送るから、ごっつぁんは後でオイラたちのトコまで戻ってきてね。』
『もうー、ちょっとさー、なっちの予定も聞いてよねー
 ぶーぶー』

 後ろでなっちの文句を言う声が聞こえるけど、やぐっつぁんは『なっちは、いーの。ごっつぁん優先なんだからー。なっちもオイラたちのトコに戻ってきてね』との言葉。
 なっちのカワイイ言葉使いに少し笑みが浮かんでしまいそうになっていたけど、少し我慢をして、梨華ちゃんの方に笑顔を見せた。
 
 まだ後ろでなっちのぶーぶー言う声が聞こえてる中、あたしは梨華ちゃんとの会話を、完全に普段話してるような内容に変え、マネージャーさんの到着を待った。

 ただ、その待っている間も気になる事が1つ。
 それは…このいきなりの話の変化に、どこかホッとしたような様子が梨華ちゃんに生まれたのを覚えたのは、気のせいかな…
 それに、もしホントにホッとしてるとしたら…どうして…


129 名前:03〜【がくや】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時34分07秒


03〜【がくや】〜


 まだ疲れ切ったままの表情のあたしは、マネージャーさんに、自分の顔を指差すようにしての『笑顔笑顔』の注意を受ける。

「もうヤグチがカメラ回してるから、先に入って」

 不自然な笑顔を携えたあたしは、そのままマネージャーさんに押し込まれるようにして、やぐっつぁんたちが待機している楽屋に入った。そして、口々に『おつかれさまー』の言葉を掛けてきてくれるみんなに、『おつかれさまー』で答える。
 この久々の状況に新鮮さをカンジ、なんだか嬉しくなるあたし。さっきまでの疲れ切った表情はいつのまにか消え、いつもの笑顔に戻っていた。
 考えてみれば、自分の楽屋に戻ってメンバーが待ってて、『おつかれさまー』の言葉を掛けてくれるっていうのは、あの卒業の時以来だ。そう、それ以来一緒の仕事になっても必ず楽屋は別だし、こうやって仕事の後の楽屋でみんなの笑顔を見れるのも久しぶり。
 そんな状況に思わず本当に浮かんできてしまった笑みのまま、『あー、づ・が・れ・だ…』の言葉をダミ声で出し、椅子にどてぇーと座り込むと、なっちが『はいおつかれさまー』の言葉と共に、お茶を入れてくれた。

「まぁ、梨華ちゃんほど【美味しくない】と思うけどねぇーだ」

 なっちの入れてる隣で、カメラを持ってるやぐっつぁんの思いっきり嫌味っぽい冗談に、『なっつぁんもおいしーよーだぁ』とイィーって返したあたしは、なっちに笑顔で『ありがとう』と言うと、湯のみを口元に持っていき、ふーふーと冷ます。

130 名前:03〜【がくや】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時34分50秒


「ごっちん、予想以上の大成功だよっ」


 カオリが机にペンを走らせながら、あたしに向かってピースサイン。あたしもそんなカオリにピースサインで返す。

「もっとさ、イイ方向に持って行きたくってっさ…
 って言うか、最初の予定変更で、このままイシカワをマジで落としちゃおうかって話してたくらいだよ。それくらい、ごっつぁんよかったよ。」
「ありがと♪」

 今度はやぐっつぁんにピース。

「でさ、ごっちんには、もうちょっと頑張って欲しいんだけど…」
「いーよっ」
「ありがと。
 で…その頑張って欲しいってのは…
 もう今日からでもいいから、頻繁に梨華ちゃんにメールでも送ってほしいんだ。」

 まだ一生懸命書きながら話していたカオリに代わり、やぐっつぁんが言葉を繋いだ。

「で、内容だけど。
 どっちかって言ったら、さっきのような内容の方がいいかもしれないけど…フジモトとの恋話とか…作り話でいいからね」

131 名前:03〜【がくや】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時35分49秒

 そんなやぐっつぁんの言葉を聞きながら、一口お茶を口に入れ、カオリの向かってるテーブルの奥に置いてあるモニターに視線を送ると、もう録画は止められてはいたけど、そこには梨華ちゃんが用意されていた衣装に着替えてるシーンが映し出されていた。
 見慣れてはいたとはいえ、久しぶりの梨華ちゃんの着替えを見て、胸が高鳴ってしまったあたしに、自分自身がイヤになる。
 こんなモニターで見るなんて…





 ぶるぶるぶる





 やめよやめよ。ヘンタイじゃん。


「う〜ん…作り話でも、いいの?」
「うん、もう、すぐにでもフジモトに話してさ、その都度連絡を入れて、話を合わせてもらったらいいから。フジモトも、今回の仕事の事をもう聞かされてて、ドッキリの撮影に入ってるみたいだから、もう大丈夫だからさ。」
 
 そう言って片目をつぶるやぐっつぁん。

132 名前:03〜【がくや】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時36分32秒

「で、梨華ちゃんの方は、もし、話がなかったら、もう何でもいいから、とにかく梨華ちゃんとずっと連絡を取り続けるくらいでってカンジでさ。大変かもしれないけど、ミュージカルの間中もずっと頑張って、メールを送って欲しいんだよね。
 なるべくオイラたちもネタが浮かんだらごっつぁんにメールで送ったりして協力するし。」
「…ただ…やっぱり、梨華ちゃんとの距離を【女と女の本当の恋愛関係的】な方に精一杯近づける為にして欲しいから、一番イイのは恋話がいいんだけど…」

 あたしの隣に座ってるなっちも、自分で入れたお茶を飲みながら、ボソッと呟き、会話に参加してきた。その言葉にやぐっつぁんも頷く。

「うん…ホントはね…
 だから、フジモトとの関係で困ってるみたいな事を、メールで送ってみたらイイ様な気がするんだよね…」

 その後、みんな何かを考え込み、しばらくの間沈黙がこの楽屋を覆う。
 そして、その沈黙をやぶるように、ペンを置いたカオリが口を開いた。

「あっ、そうそう…
 でさ、その中に、ごっちんが梨華ちゃんの事をスキかもしれないって事実を徐々に入れていって欲しいんだけど…」
「あぁ…なるほど…」

 やぐっつぁんの納得顔に、カオリも頷くと、更に続けた。

133 名前:03〜【がくや】〜 投稿日:2003年02月06日(木)21時37分09秒

「なんとなく【それ】を梨華ちゃんのココロの中に匂わせておきながら…ミュージカルが終わってから、今回みたいな状況を作って、そこでガツンと行くっ」
「ごっちん、もしかしてわたしの事スキなのかなぁ
 だ、だめぇ。わたしたち女同士なのよっ
 そ、そんなのダメよッ」

 カオリの向こうで両手を胸の前に当て、チャ−ミーばりの口調でマネをするやぐっつぁん。あたしは自然に零れた笑顔のまま、カオリの方に視線を向けた。

「わかったっ。何だか楽しそーだねっ
 だいじょーぶっ♪
 ガンガン送っちゃうよー」

 これは本心。ホントに梨華ちゃんと恋人同士くらいに頻繁にメール交換をする機会が出来たなんて、結構ラッキーかもしれない。こんな仕事でなかったら、ホントに恋人同士じゃないと、あたしはそこまでメールを送れないと思うもの。



 よしっ



 隣でも、なっちとやぐっつぁんが『面白くなってきたぞぉー』と子供みたいに口を合わせているのを聞きながら、あたしは早速自分の携帯を手に取った。




 仕事の為。
 ある意味、自分の為。

134 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月06日(木)21時43分54秒
ちょっと調子に乗って^^;
>>111:名無しさん
 ありがとうございますm(_)m
 リアルでテンポもいいって…
 ホント嬉しいお言葉ありがとうございます^^
 これからもヨロシクおねがいしますm(_)m
>>112:超体育会系野郎さん
 レスありがとうございますm(_)m
 結局ミキティーはちょい役でした…^^;
 やる気の湧き上がるレスありがとうございやすっ!
 これからもヨロシクお願いします〜m(_)m
135 名前: 投稿日:2003年02月07日(金)15時37分40秒
更新早いですねぇ。。。。
うちんとことは全然違うや。尊敬します(w
個人的にミキティー好きなんですけど
こういう状況だとややこしいですね(w
136 名前:01〜【どとう】の【めーるこうかん】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時51分55秒


第04話〜【さくせん】は【こいをしちゃいました!】〜


01〜【どとう】の【めーるこうかん】〜


 その日以来、あたしは怒涛のように梨華ちゃんにメールを送り続けた。

 
 暇を見つけてはメール。
 

 それくらい沢山のメールを送ると、鬱陶しがられるかなぁってフト不安になったりもした日もあったけど、そんなあたしの大量のメールに、梨華ちゃんは、その都度キチンとした返信メールを返してくれた。やっぱりこの前の楽屋での2人っきりの会話がよかったみたい。
 時には梨華ちゃんの恋愛感まで教えてくれたり。
 今まで3年近く一緒にいたけど、初めて知った事実まであったのには、少し寂しさも覚えてしまったのも、それも事実。だいたいムスメの中だと、そんな【恋話】で盛り上がるなんて事はないから、仕方なかったのかもしれないけどね。

 ミュージカルの間は、夜とかが特に暇になり、メールを送る事ができたんだ。そう、1人だけで部屋にいると、ごく自然に自分のキモチを送る事ができたりしたから。その点は結構楽だったけどね。
 まぁ、そのかいもあり、自分で考えたもの、やぐっつぁんやなっちにカオリが考えてくれた内容とか、ホントに沢山のメール交換が出来たんだよね。
 
137 名前:01〜【どとう】の【めーるこうかん】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時52分41秒
 
 そんな最初の頃のあたしの相談事には、梨華ちゃん自身が憧れている【ヒト】を、あたしと美貴ちゃんとの関係に当てはめて考えてくれたり、『わたしなら…』と、ホント真摯に考えてくれていた。それくらい真面目に考えてくれてメールを送ってくれた梨華ちゃんに、時々罪悪感が芽生えてしまったあたしだけど、そこは【仕事】と、ココロを鬼にして、更に梨華ちゃんに相談のメールを送り続けた。
 ちなみに、その憧れてる【ヒト】については、どっちかっていうとあまりあたし自身は聞きたくなかったような気もするけど…そんなキモチが出ていたあたしだったからか、個人的な名前を聞く事もできなかったくらいだしね。

 そして、カオリが言ってた通り、最初は美貴ちゃんとの事を、相談の形式で送っていたけど、ミュージカルが終わり、東京に戻る頃には、その内容も、あたしが梨華ちゃんの事を【スキ】かもしれないって【思わせぶり】なメールを送るようになっていた。
 【寂しいよー】や、【梨華ちゃん、慰めてよっ】ってカンジのメールを送るあたしに、ホントの恋人同士のようにあたしにメールを返してくれた梨華ちゃん。冗談を含んでいるとはいえ、その間は結構梨華ちゃんとの恋人気分を満喫できたような気も。


 
 まんざらでもなかったね。
 
138 名前:01〜【どとう】の【めーるこうかん】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時53分12秒
 
 ただ、これはやぐっつぁんやなっちやカオリに報告できないような気が…
 メールの内容が結構自分で書いてて恥かしいものばっかりだったていうのもあるけど、テレビで【これ】が公開されるっていうのは、いくら【テレビでの仕事】とは言え、かなり恥かしくて抵抗があると思う。

 この辺はあとでしっかり釘をさしておかないとね。

 そんなあたしと梨華ちゃんとの一番新しいメール交換の内容は…


 【デートの約束】


 と言えば聞こえがいいけど、ただ遊びの約束。

 ミュージカルが終わってから一番最初に取れた休暇に、梨華ちゃんの休暇が重なり、丁度遊びに行こうって話がまとまったわけです。ただ、それはあたしと梨華ちゃんとの話し合いじゃなくって…梨華ちゃんと、あたし、なっちにやぐっつぁん、カオリ連合軍との話し合い。

 そう、この日が【ドッキリ】の撮影日であり、あたしが梨華ちゃんに告白する日でもある、ある意味運命の日。

139 名前:02〜【さくせんしれいぶ】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時55分36秒


02〜【さくせんしれいぶ】〜


「とどめは?」
「とどめは…」
「何赤くなってんだよー」

 カオリの質問に一言だけ呟き俯いてしまったあたしに、やぐっつぁんの容赦ないツッコミがささる。『まぁまぁ』と肩をポンポンと叩いてくれる、いつもよりキレイな服を着たなっちが優しく『テレビだからさ』と声を掛けてくれ、あたしは恥かしいけど、その梨華ちゃんへの【とどめ】のメールを口にした。

「【梨華ちゃんが恋人だとイイのになぁ】」

 案の定、口もとを押さえて笑う3人に、あたしはホテルの一室、隅の方に移動してカメラから外れた。


 ホーント恥かしい。
 どーせ笑うと思ってたんだよっ


「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん」

 カメラをあたしの方に向け、カオリが『こっちにきなー』と手招き。そしてフォローの一言を掛けてくれる。

140 名前:02〜【さくせんしれいぶ】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時56分16秒

「って言うか、それが一番だと思うよ、カオは」
「うん、まぁ、そだね。オイラも。考えてみれば、それが限界だと思う。」

 カオリのフォローに、なっちややぐっつぁんもウンウンと頷いて、一応あたしの事を慰めてくれた。それを聞いて、ジト目ながら、あたしはもう一度みんなの輪の中に戻った。

「あっ、その返信は、どんなんだったん?」

 戻ったあたしに、今度は、フト何かを思い出したかのように、やぐっつぁんの言葉が突き刺さってきた。


 そ、それは聞かないでよ…
 って言うか、聞きたくなるよね…


 沈黙の続くあたしに、『どんなんだよー』と迫りくるやぐっつぁん。そんなやぐっつぁんの言葉の後ろ、またまたなっちの『テレビだからさ』の言葉に、仕方なくあたしは口を開いた。

「【ありがと〜♪わたしもごっちんが恋人だとイイなぁ〜☆】…です…一応ごとーの名前の後ろにハートマークが付いてたりも…」

 『おぉ〜』と歓声と共に笑いも起こり、更に今度のやぐっつぁんは『ひゅ〜ひゅ〜』の冷やかしの声、それにまたまた自分の顔が赤くなるのが分かった。

141 名前:02〜【さくせんしれいぶ】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時57分14秒



 だから、言うのがイヤだったんだよぉー



「すごいねごっちん。そこまで行けたんだ」

 あたしの、みんなにからかわれての憂鬱そうな表情とは対称的に、まだ少し笑ってるカオリは、ウンウンと頷きながらも、片手にカメラ、もう一方の手にペンを持つと、何やら【ノート】に書き始めた。そして、書きながらもあたしの事を褒めてくれるのを聞いてるうちに、なっちややぐっつぁんもあたしの事を褒めはじめ、何だか自分の憂鬱なキモチも飛んでいったような気分になったのは…乗せられてるの…?

「ホント、イシカワ落ちちゃってるんじゃないのー?」

 フトした時、褒め言葉の1つとしてのやぐっつぁんのそんな冗談が聞こえた。でも、この時ばかりは少しドキッてしてしまうあたし。


 ホントだったら…


 嬉しいけど…


「やめてよー、やぐっつぁん。そんなわけないじゃーん」
「ごめんごめん。でもさ、イシカワ、満更でもなかったりしてー」

 その言葉に笑い合う4人。
 それぞれの本当のキモチは分からないけど、自分の中だけは分かる。

142 名前:02〜【さくせんしれいぶ】〜 投稿日:2003年02月08日(土)18時58分04秒

 やぐっつぁんの【その】言葉にちょっとした幸せを感じていたのは自分。
 恋愛感情とは別に…

「っていう事は…」

 そんなあたしを褒める会話も一段段落したとき、少し真剣な表情の浮かんだなっちがその言葉を口にすると、同じく真面目な顔をしたやぐっつぁんも頷き、なっちが思っているであろう言葉を、自分が繋いだ。

「…【恋をしちゃいました!】作戦…」

 4人が顔を見合わせ、頷く。

「…順調に、実行できそうだね。」

 カオリが最後の言葉をしめ、そのカオリの言葉と共に、4人は手をそれぞれ重ね合わせ、いつもの気合入れをした。
 普段のカッコをしたカオリ、やぐっつぁん、いつもよりオシャレなカッコをしたなっちとあたし、4人の声が、原宿のある一角に在るホテルの一室に響き、その声と共に、あたしのココロに【仕事】という言葉がはっきりと浮かんできた。



 よしっ。



 それと共に湧き上がる緊張感は、仕事の緊張感ともう1つ。
 その仕事とは別に浮かんできているのは…もう、分かるよね。


143 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月08日(土)19時11分35秒
>>135:@さん
 レスありがとうございますm(_)m
 更新が早いのだけがとりえなんで^^;
 ミキティーがスキなんですか…
 レスを2回も頂けた感謝もありますし^^それなら…ってカンジで今考えてるのですが…
 この第1部ではもうムリですが、第2部で登場を考えてみます。
 何か今ちょっと面白いネタが浮かんできかけているんで(謎
 でも、まだ確信してないんで、一応あまり期待はしないで下さいね^^;
ps.楽しみに読ませて頂いてますんで、頑張って下さい^^
   何回かレスはさせていただいてますよー^^
144 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月08日(土)20時12分23秒
本当に更新早いです
ついつい、2日に1度は覗いてしまいます
次楽しみにしてますね
145 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時39分07秒


03〜【ふつー】の【じぶん】〜


 ホテルを出て、平日の原宿に繰り出したあたしは、少し駅の中で、待機する。
 梨華ちゃんが到着するまで。
 
 実際、梨華ちゃんとの待ち合わせは、原宿駅の前だけど、ある一芝居の為に、梨華ちゃんより先に到着したらダメな事になっているんだよね。一応原宿駅の周辺はカメラで監視されてて、その画はやぐっつぁんたちがいる【作戦司令部】に送られているから、梨華ちゃんが到着したら、もうお馴染みになってしまった小型のイヤホンを通してあたしに連絡がくる事になっている。
 それまで原宿駅の隅の方で待機をしているわけです。

 で、とりあえず、カメラの数だけど、原宿駅を監視してるカメラとは別に、今日あたしが行く予定をしている場所に数台と、あたしのバックの中に1つだけ、途中で合流する予定のなっちには、胸元に1つとバックに1つの、計2つ持っている。一応、当然だけど、なっちとあたしは1つずつマイクも持っている。
 あと、他の場所を監視するカメラは局のスタッフの方がカメラを回しているから、その辺は注意しなくちゃいけないって事だね。ただ、そのスタッフの方に回して貰っているカメラっていうのは、場所を遠めから監視しているだけで、部屋の中を監視する隠しカメラはやぐっつぁんたちが全部操作してるから、NGな事言っても、まだ大丈夫ってカンジかな。
 他にも出来るだけの準備をして、今日に挑んだあたしたち。
 今日行くお店や場所を全て決め、そのお店は梨華ちゃんの好みまで反映させたもの。
 梨華ちゃんが飽きないように…

146 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時39分51秒

 そんな気合が空回りしそうなくらい力の入ってるあたしは、カメラの回っていない原宿駅の構内、デートの前、自分をチェックしにトイレの中に入った。
 やっぱりこれは当然でしょう。

 マフラーの巻き方、ヘアースタイル…一通り確認する。
 あと、あたしの今日のファッションなんだけど。
 今日は結構気合を入れて頑張ったんだよね。自分が芸能人だという事から、ニットキャップかキャスケットでも被らなきゃって思っていたけど、それ以上に梨華ちゃんとのデートという事実が気になったあたしは、メイクさんに手を掛けて貰ったり、芸能人ご用達のニットキャップを被らずに、髪の毛をアップさせ、自分が一番スキなヘアースタイルにしたり、ある意味勝負服でかなり気合を入れている。ただ、やっぱり帽子系統を被らなきゃ、一般人にバレて危ないから、一応薄めのサングラスだけはしているんだけど、これだって外したいくらいだ。

 マフラー…メイク…ヘアースタイル…


 よしっ


 と、気合を入れたあたしは、午前11時を10分前、人ごみでごった返している原宿駅の隅の方に移動し、梨華ちゃんを待つ事にした。もちろん梨華ちゃんに見つからないようにっていうのが前提だけど。

 約束の時間は午前11時にしているから、梨華ちゃんの性格から考えると、もうそろそろ到着しててもおかしくない時間だけど、まだやぐっつぁんから何も連絡がないって事から、到着してないのだろう。

147 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時40分31秒


「まだー?」

 あたしは周りの人が自分に関心を持っていない事を確認すると、バックの口の部分に付けられているマイクの方に口を近付け、やぐっつぁんに聞いてみた。

『まだ確認できないんだよね…駅からくるってのは分かってるから、見落としはないし…』

 そのやぐっつぁんの言葉を聞いたあたしは、暇な時間をもてあそぶ様に、携帯を取り出すと、【受信メール】欄を開いた。

 開くと同時に画面に映し出された、すごい数の梨華ちゃんの名前。



 何だか恋人同士みたい…



 その言葉が浮かぶと、思わず笑顔まで浮かんでしまったあたし。ヘンな人って思われないように、慌ててびみょーな笑顔を押し込み、今までの梨華ちゃんとのメールを開いて、眺める事にした。
 やたらとハートマークや、♪マークに顔文字に絵文字が多い、女のコらしい梨華ちゃんのメール。でも、所々にある真剣なメールの内容の時は、それなりに真面目な文面になっていて、やっぱりここでも梨華ちゃんは【ド】が付きそうなくらい真面目な性格って事が分かった。って言うか、【ド】が付くくらい優しいって事だね。

148 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時41分09秒

 改めて梨華ちゃんの真面目さを再確認しつつ、【遊びの約束】関係の、一番新しいメールから順々に開くにつれ、本当にこれらの【出来事】が現実に起こっていたら、どれだけ幸せなんだろうってキモチでいっぱいになってきたのは、ココロの奥底にあるホントウのあたしの心裏。
 幸せなキモチが溢れ出てしまいそうになっているあたしだったけど、その幸せとは対称的なキモチもフツフツと湧き上がってくる。
 
 そう、【この仕事が終わったらどうなるのだろう】っていう不安。
 【ド】がつくくらい真面目な梨華ちゃんだもの。
 そして、【終わって欲しくない】という希望。

 それら全てが、全く想像もつかない。
 って言うか、梨華ちゃんが今、あたしの事をどのように思っているのかさえ、想像できないから。もし、梨華ちゃんがあたしの事を、【ホント】に【スキ】だというキモチがあるなら…

 ただ、ホントに梨華ちゃんのキモチが自分の思ってるような【コト】であっても、自分には【ソレ】は想像できないのが、現状。自分としては、梨華ちゃんの事スキだけど…

 そう、矛盾してるよね…
 
 でもさ、ムスメにいたら、【メンバー愛】と【恋愛感情の愛】が分からなくなっちゃうと思うよ。壊れちゃうから…



 この前なんて、なっちだってスキかもしれない思っちゃったくらいだからさ…



 はぁ…

149 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時41分57秒


 結局は、【メンバー愛】があれば結構クラクラしちゃうって事かな… 

 まぁ、だからって言うか、今回の仕事は結構あたし自身、自信があるんだよね。
 『自信持ちすぎっ』ってツッコミ受けそうだけど…
 やっぱりね…

 たださ、【メンバー愛】とは別にさ、どんな人でも、そういう関係って結構分かるでしょ?『あっ、この人自分にきーあるなぁ』とか…元メンバーだったから、特にね。


 まぁ、勘違いってのもあるけど… 


 でも、梨華ちゃんは…


 たぶん、今日梨華ちゃんは落ちてくれると思う…

 ある意味、これで落ちなかったら、あたしはこれから一生恋人は作らないってくらいだよっ
 ホント、それくらい自信を持ってもイイと思うんだけどね。

 あっ、これ以上は言わない方がいいかな…
 落ちなかった時に、ヤバイからね…

 落ちなかったらヘコムだろーなぁ…


 はぁ…


150 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時42分43秒



 あっ、でも、落ちたらダメなんだよね…

 台本だと、【落ちる】のを撮るんじゃなくって、あたしの告白にアタフタしてる梨華ちゃんを撮り、その後のなっちのネタバレが一番のポイントだから。



 複雑…



『ごっつぁんっ、イシカワが着いたよっ』

 自分の世界に入り込んでしまっていたあたしの耳に、急に聞こえてきたやぐっつぁんの声。そのあたしの緊張感にスイッチを入れる言葉に、思わず携帯を落としそうになり、慌ててお手玉。でも、クールに決める。

「わかったよっ」

 小さくバックの口元のマイクに囁くと、あたしはさっきまで開いていた携帯の【受信メール】欄から、梨華ちゃんの【受信メール】を開き、【返信】を押す。そして、【Subject】に長く連なってる【Re>】を消すと、そのまま【♪】を入れ、本文には【後ろにいます♪】と打ち込んだ。徐々に高まっていく緊張感。

 あとは、いつ送信するか、だけ。

「準備おっけーだよー」

 それはやぐっつぁんの合図しだい。

151 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時44分27秒

『うん、わかった。
 それよりさ…』
「何?」

 ホンの少しやぐっつぁんの声が笑ってる事に、さっきまでの緊張感が多少薄れたあたし。こんな状況でどんな事を言うのか、イヤホンに聞き耳を立てた。

『イシカワ、イイっ』



 …へ?



 思ってもいない言葉と共に、いつものより更に高い笑い声がイヤホンから外に零れんばかりに聞こえてきた。その内容に拍子抜けするあたしは、思わず情けない声で返す。

「な、なんで…」
『ちょーキメちゃってるだよー。
 いつものびみょーなファッションじゃなくってさ…
 誰かに合わせて貰ったんじゃないの?柴田かな?オイラ初めて見たヨってくらいだよっ
 イシカワのカッコがあそこまでマトモだと、逆におかしいよね』

 そう言うと、今度は含み笑いをする。
 その隣でカオリも笑ってるのが聞こえてきた。

152 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時45分09秒

『ホント、カオも初めて見たかも…
 すんごいマトモ…』
『ホントだ…
 気合入ってるね…』

 それに、なっちまで…
 いったい、梨華ちゃんどんなファッションで来たのだろ…
 今までにない、マトモなファッションって…
 3人が見た事ないって事は、あたしだったら全然見た事ないよね…

『でも、あれじゃー、周りの人にばれちゃうよね』
『うんうん。絶対ばれるよ』

「そーなの?」

 なっちとやぐっつぁんのやり取りに横から入る。

『うんうん。ニットキャップはしてるけど、サングラスはしてないし…』

 あたしの質問に、カオリの声。

『それに、明らかに、ニットの帽子とマフラーは、隠す為じゃなくって、可愛く見せる為ってカンジにつけちゃってるよね。まさに、【勝負服っ!】ってカンジだよー』

 そして、今度のなっちの声で、何となく今日の梨華ちゃんのカッコが見えてきたあたしは、ちょっとヤバイかもって不安が出てきた。
 そう、あたしも結構周りの人にバレちゃうようなカンジだし…

153 名前:03〜【ふつー】の【じぶん】〜 投稿日:2003年02月09日(日)21時45分52秒



 なにげに自分も勝負服だし。



 でもなぁ…
 今日のヘアースタイル結構気に入ってるんだよなぁ…
 梨華ちゃんに見せたいし…


『なんだかヤバイから、ごっつぁん、早く行ってあげて』

 自分のこのバレそうなカッコをどうしようか考えていたあたしだったけど、そのやぐっつぁんの言葉に、『もうどうでもいっか』ってキモチになり、さっさと梨華ちゃんの方に行く事にした。

「うん。どの辺で待ってる?」
『駅出たすぐのトコで、駅と反対向いてるから、駅の中の方から回ったら大丈夫。』
『もうメールは書けてる?』

 やぐっつぁんに続いて聞こえてきたカオリの確認の言葉に、『大丈夫だよー』と返すと、最後にもう一度台本をバックから取り出し、一通りチェック。
 そして、カオリから『行こうか…』の言葉が聞こえると、自分自身を最後のチェックとして手鏡ですると、あたしは、【たった一日だけ】の梨華ちゃんとの【デート】に、少し高鳴ったココロを弾ませ、飛び出した。

154 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月09日(日)21時50分01秒
>>144:名無し読者さん
 レスありがとうございます^^
 毎日覗いていただいてもいいくらいのキモチで書いてますんで^^
 これからもヨロシクお願いします〜m(_)m
155 名前: 投稿日:2003年02月10日(月)17時27分52秒
違うんですよ。言い方が悪かったみたいですみません。
森と銀でいしごま小説書いてるぐらいいしごまonly馬鹿なんです(w
でもミキティは個人的に好きです。はい(w
デートがどうなるのか楽しみです。
156 名前:04〜【ぜんとたなん】〜 投稿日:2003年02月10日(月)21時56分58秒


04〜【ぜんとたなん】〜


 壁から頭だけを少し出し、梨華ちゃんの様子を見る。
 とりあえず仕事モードに入っていたあたしだったけど、その梨華ちゃんの後ろ姿を確認した瞬間に、全部が飛んでしまった。

 頭がぽぉーっとなる。

 後ろ姿だけで、十分カワイイ女のコって事が想像できる、それくらいの女のコが立っていた。ううん、佇んでいた、かな…

 やぐっつぁんが言った通り、普段の梨華ちゃんのびみょーなファッションとは違って、かなりマトモに見える、そんな梨華ちゃん。
 カワイイニットキャップ、そこから流れ出るストレートヘア、そのストレートヘアにキレイなコントラスト描くように巻かれたマフラー、ハーフコート、生足…おいおい…結構ミニスカートなの…?
 そう、順番に上から降りてきたあたしの目に映ってきたのは、フトモモ丈くらいのハーフコートの下からすぐ落ちているスラッとしたキレイな足。そして、ブーツ。


 寒くないの?


 じゃないや。


『イシカワらしくないでしょ?』

 頭の上から聞こえてきたやぐっつぁんの笑いを含んだ声に、現実に戻され、さっきまでのポワポワしたキモチがいっぺんに吹き飛ぶ。

157 名前:04〜【ぜんとたなん】〜 投稿日:2003年02月10日(月)21時57分45秒

『って言うかさ…ごっつぁん…』

 と、何やら笑いを押し殺しているのか、含み笑いをしたやぐっつぁんは、半分呆れたようなカンジ、驚きも含まれている様子で、その言葉の続きを口にした。

『ごっつぁん、そのままのカッコで街に出るつもりだったんだ…』

 モニターに写ったあたしを見たのだろう。何を言いたいのかすぐに分かったあたし、痛いトコロを付かれた事に恥かしくなるけど、この状況に感謝、返事が返せない事をイイ事に、やぐっつぁんの言葉を無視する事にした。

『ナンダカンダ、ごっつぁんも気合入ってるねー』

 半分冷やかしのなっちの言葉に、顔が赤くなるのが明らかに分かり、思わず溜息も洩れる。
 溜息ついでに、しなくてもいい言い訳を、小さくマイクに囁いた。

「ごとーは、梨華ちゃんを落とさなきゃいけないだもんっ」
『まぁまぁ、って事で、どう?今、丁度携帯いじってるよ。今なら大丈夫かも…』

 カオリのその言葉を聞いたあたしは、さっきの【メール送信】欄のまま閉じた携帯を、もう一度開いた。そして、最後にその言葉をもう一度読み返し、あたしは【送信】を押し、送られたのを確認すると、そっと駅の建物の外に回りこみ、壁に体を預け、梨華ちゃんがこっちに気が付くのを待つ。

158 名前:04〜【ぜんとたなん】〜 投稿日:2003年02月10日(月)21時58分20秒

 その間、じーっと梨華ちゃんの事を見つめていると、また頭がフワフワし、それに気が付き、少し自分の神経が麻痺してるのかもしれないって事まで、考えるようになってしまったあたしだった。
 それくらい梨華ちゃんは魅力的かもしれない。
 後姿だけで、これだもの…
 前を見たら…

 あたしのそのお願いが叶ったのか、俯いて立っていた梨華ちゃんは、ハッと頭を上げると、驚いた様子で、こっちの方を振り向いた。

 そして、視線が合う。
 案の定こっちを向いた梨華ちゃんにドッキリし、びみょーな笑みになってしまったあたしだったけど、とびっきりの笑みを浮かべると、手を振った。
 そんなあたしの姿を確認した梨華ちゃんも、満面の笑みになると、手を振り、あたしの方に嬉しそうに駆け寄ってきた。




 その姿は、恋人に会える、とっても幸せな女のコの姿…




 っていうのは、あたしの都合のイイ勝手な解釈だけどねー

 あたしは、壁に凭れ掛かっていたカッコから、ぽーんと離れると、すぐ目の前に立っている満面のスマイル梨華ちゃんに敬礼。梨華ちゃんも敬礼で返してくれる。

159 名前:04〜【ぜんとたなん】〜 投稿日:2003年02月10日(月)21時59分03秒

「おはよーっ、ごっちん♪」
「おはよっ」

 朝の簡単な挨拶を済ませると、寒さの為か少しホッペを赤らめ、いつもより余計に可愛さを増した梨華ちゃんは、あたしの腕に自分の腕を絡み合わせ、『行こうよっ』の言葉。
 ムスメの時だったら、なんでもないその行動だったけど、今は、梨華ちゃんを落とす事に一生懸命になってるあたし、どうしても恋人同士ってイメージが付いてしまう。

 そうなると、もうダメ。



 ココロはドキドキ。
 隣の【ヒト】との関係は、友達じゃなくって、片思い相手。



 『あっ、うん…』って言いながら引きずられるようにして歩き始めるあたしのキモチは、当然のごとく梨華ちゃんに無視される。
 どんなキモチで今日を迎えているのか、今のあたしにはさっぱり分からない。そんな梨華ちゃんは、どんどん南の方に、渋谷の方に足を進めようとした。

 今日1日、まだ始まったばっかりだけど…
 梨華ちゃんに会っただけで、今のあたしの動揺のしよう。 


 まさに前途多難ってやつだーね

160 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月10日(月)22時06分55秒
更新量が難しい…
>>155:@さん
 きちんとそう理解して返信レスをしたんで、大丈夫ですよー^^
 気にしないで大丈夫です^^
 一応、ミキティーは第2部で出そうなカンジに…
 もしかした2人の間のキーキャラに…でもまだ(謎
 これからもヨロシクお願いします〜
161 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時08分23秒


05〜【あたしは…】〜


 澄み切った大空。
 冬とは思えない心地よい、少しだけ傾いたけどまだまだ暖かい太陽。
 街路樹の、こんな陽気に勘違いで芽を付け始めた木々。
 全てが今日のあたしと梨華ちゃんの【デート】を最高に演出してくれているみたいで、なんともキモチがいい。これくらいイイ天気だと、これからもドコのお店にも入らずに、ずっと散歩をしててもいいくらいだね。
 
 そして、隣でずぅーーっと話し続ける梨華ちゃん。
 あたしは、ずっと頷き、聞き続けているだけだけど、それでも幸せなキモチにさせてくれる梨華ちゃん。

 はっきり言って、話そのものは、面白くなくて、オチのない話で、決して笑えるものじゃないけど、必死で話し続ける梨華ちゃんを見てたり、ただ梨華ちゃんと一緒にいる、それだけで面白くて、思わず笑みが浮かんでしまう。
 やぐっつぁんなんか、『ごっつぁん、よくイシカワの話でそんなに笑ってられるよねー』って、呆れ口調で話し掛けてきたくらいだ。

 でも、ホント自分でもそう思う時が、時々あるんだよね。

 だいたい、話してて面白いっていうのは、相手と話が合うとか、気が合うとか、そんな相手と一緒にいる時がそうだと思う。そして、そんな友達とは別に、一緒にいてもそれほど楽しくないけど一緒にいるなど、他にも沢山の種類の友達がいると思うよね。
 そんな、【一緒にいたい】意味が違う…友達。
 そんな友達の中の1つに、ある意味【コイ】に近い感情が入るような気もする。

162 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時09分09秒

 ムスメのメンバーとは【一緒にいたい】ってキモチが強く働くけど、そのムスメの中でも、メンバーによってそのベクトルが違うと思う。
 カオリ、圭ちゃんは、頼れるお姉さんで、一緒にいてあたしのキモチをホッとさせてくれるメンバーで、大スキ。
 あたしは、子供。
 よしこ、やぐっつぁん、なっつぁんに美貴ちゃんは、気の合うヒトとしてホントに楽しく、ウキウキしたキモチにさせてくれ、気兼ねなく何でも話せるメンバーで、大スキ。
 あたしは、同級生。
 あいぼん、辻ちゃんは、あたしの事を真摯に慕ってくれ、いつでもじゃれ合えるメンバーで、大スキ。
 あたしは、お母さん。
 5期メンバーは、あたしの事を尊敬の眼差しで見てくれ、こっちをしっかりしなきゃって思わせてくれるメンバーで、大スキ。
 あたしは、センパイ。
 
 そんなメンバーとは別に、1人梨華ちゃんは違う。梨華ちゃんは、他のメンバーの時は分からないけど、あたしと一緒にいる時だと、スキンシップばっかりで、特別面白い事を言うわけでもない。
 でも、一緒にいたいと思う。
 でも、頻繁に【あたしの方】から連絡は取れない。
 でも、梨華ちゃんからお呼びが掛かれば、忙しくても断れない。
 一緒にいるだけであたしのキモチを落ち着かせてくれて、時には昂ぶらせてくれたりもするメンバーで、大スキ。
 あたしは…
 あたしは…

 あたしは…




 あたしは…何?

163 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時09分50秒




 フト隣で話し続ける、その問題の【ヒト】を見つめた。

 パッチリまつ毛に二重のキレイな目、少し薄いけど、紺野の大スキな眉毛と、スッと通った鼻筋に、キレイな形をした、ぷにぷにした唇の梨華ちゃん。全体的に整った顔立ちで、女のコから見ても素直にカワイイと思う。

 時々、ニットキャップから出ている髪の毛をしきりに気にし、手グシで整える梨華ちゃん。
 時々、何もないトコでつまずき、慌ててあたしにもう一方の手も絡めてバランスを取ろうとする梨華ちゃん。
 時々、あたしが梨華ちゃんの事を見つめていると、こっちを見て、目が合ったとたん、急に視線をそらし、挙動不審になる梨華ちゃん。


 ホラ、今も…


「そ、そんなに見つめないでよぉ…」

 顔を真っ赤にして、あらぬ方向を見つめ、あたしの腕をブラブラさせる。

「梨華ちゃんのリアクションって、面白いよねー」
「もぉー、からかわないでってばっ」
「そっかなー」


 うーんと、指を鼻の頭に持って行き、トントン、考える。


164 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時10分37秒





 梨華ちゃんはあたしにとって…何?





『ホント、イシカワ、いつものリアクションと違うよねー』
『ホントだね』

 今日だけでも4回目のやぐっつぁんの言葉に、もうカオリも完全に苦笑いが入った口調で、相槌を打っている。
 やぐっつぁん曰く、全体的に普段ムスメで一緒にいるときとリアクションが全然違うらしい。特に、あたしの梨華ちゃんをカワイイって言う言葉に対する、梨華ちゃんのリアクションが一番おかしいって事らしい。たまーに、やぐっつぁん自身がそんなカンジの言葉でからかうと、それにのってくるらしいのだけど…

 まだ、あたしの頭の中で『おかしい』『おかしい』を連呼してます。

「それよりさっ、これからどーしよっか?」

 今日買ったばかりの服とか、アクセサリの袋をぷらぷら揺らせながら、あたしに一瞬視線を向け、その言葉を口にすると、さっとまだ前方に持って行く。

「まだまだ、だいじょーぶだよねっ?」

165 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時11分16秒

 今日、梨華ちゃんと出会ってからは、一番最初に、お昼ご飯としてラーメンを食べて(『ここのラーメンってちょー美味しいらしいよー』ってカンジで偶然を装って誘い)、次に梨華ちゃんオススメの映画を見て、そして、梨華ちゃんたっての願いの、あたしのショッピングルートめぐりをしてってカンジだったんだよね。
 結構梨華ちゃんが気に入ったものがあったらしく、あたしが思ったよりも、沢山のアクセサリや服を幸せそうに買っていた梨華ちゃんは、アイドルとしてのいつもの表情はなく、ホントにそのあたりにいる普通の女のコの表情をしていたのには、あたしも連れてきてよかったなぁってのが、素直な感想です。
 今度は収録なしで連れて行きたいよね…

「うん♪もちろんっ」

 ここまでは台本通りに進んできたあたしたち。
 これからの予定だと、晩ご飯を食べて、お台場の夜景を、カップルを冷やかし半分見に行って…ってカンジなんだけど…

 まだ、時間は16時すぎ。いくら朝昼兼用の食事をしたとしても、16時は早いよね…
 もうちょっとショッピングかな…

 と、あたしがそんな事を思った時だった。急に梨華ちゃんが、輝いた瞳をあたしの方に向けると、嬉しそうに口を開いた。

「じゃーさっ、カラオケ行かない?」
「えっ、カラオケ?」

 いくらアイドルでも、もともと歌が好きなあたしたち。やっぱりそういう言葉を口にするときは、自然を顔に笑顔が浮かんでいた。 

166 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時12分00秒

「うん♪」
『えーっ、イシカワの歌声聞くのー』

 …後ろで聞こえたやぐっつぁんの失礼な言葉に、ちょっと笑ってしまいそうになったあたしは、そのまま聞こえてきた言葉を面白半分口にした。

「梨華ちゃんの歌声聞かなきゃいけないんだ…」
「えっ、そ、そだね…ごめん…」

 えっ、ちょ、ちょっとまってよっ!
 どーしてそんなに凹んでるの?

『やっぱりリアクション違うね…』

 そう、あたしもテレビとかで梨華ちゃんを見てたら、歌がヘタなのを自分の持ちネタにしてたから、こんなカンジで言っても全然大丈夫だと思っていたんだよね。
 それなのに、この凹みよう。

「そーゆーわけじゃないってばー」
 あたしは笑いながら梨華ちゃんのオデコを小突き、ぎゅっと腕に力を入れた。
「そんなにホンキで取らないでよー冗談に決まってるじゃんっ」
「あっ、そーなんだ♪」

 さっきまでの落ち込み様はどこへやら、もう満面の笑みで、チャ−ミースマイルをあたしに向け、『なぁーんだっ。ホッとしたぁ』と可愛らしく舌をペロっと出した。


 ふぅ…

167 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時12分39秒


「じゃー、行こーよー、ごっちん♪」

 カラオケかぁ…
 大丈夫かなぁ…

 何を心配しているかっていうかは、もちろん梨華ちゃんの歌声を聞く事を心配しているのじゃなくって(失礼)、これからの進行を気にしているだけ。
 晩ご飯は七時に食べて、そのままマッタリして1時間半、そこから夜景って事は…

 七時までにカラオケを終わらすって事だから…
 今から2時間くらいかぁ…

 2人でも2時間以上は簡単に歌っていられる自分たち。
 たぶん今からカラオケに行くと、確実に7時を越してしまうような気もするけど…

 その事を心配しているわけです。あたしは全然なんとも思ってないんだけど…
 


 やぐっつぁん…命令してよ。



「どうしよっかなぁー」

 その言葉を口にし、あえてそれで自分がどうしたらいいのか返事を待っているという空気をみんなに流したあたし。
 しばらく沈黙。
 
168 名前:05〜【あたしは…】〜 投稿日:2003年02月10日(月)22時13分11秒
 
 そんな妙な計算をしているあたしの隣で、あたしの腕を揺らす梨華ちゃんは『行こう』『行こう』とずっと言い続けている。それはある意味恋人同士ってカンジを連想させ、思わず顔が赤くなったあたし。それを隠す様に、梨華ちゃんから顔を背ける。

 そして、顔を背け、梨華ちゃんの『お願い』を聞く中、どれくらい歩いたのか、梨華ちゃんの声がいつの間にか消え、揺れていた腕の幅も小さくなった頃、やぐっつぁんではなくカオリからやっと言葉(命令)が届いた。

『だいじょーぶだよっ。なんとかマネージャーさんから了解を貰ったよ。
 夜景の方は遅くても大丈夫。よっぽど遅くなるようだったら、到着と同時にすぐ近くにマネージャーさんを送るし、安心して。
 あと、カメラの方は、バックのを自分で頑張って上手に2人が映るようにセッティング、ヨロシク。
 カラオケでいいでしょー』
『えぇー、イシカワの歌声聞くのかー』

 今日2回目のやぐっつぁんの冗談を含んだ声が届く中、あたしは梨華ちゃんに『いいよ♪行こう♪』の返事を返す。

 すると、その言葉を聞いた瞬間に、少しづつ落ちこんだ様子が手に取るように分かり始めてた梨華ちゃんの表情がぱぁーっと輝き、満面の笑みが浮かぶと、あたしに『ありがとー♪』と、恋人同士のように、ぎゅっと抱きつく仕草で、胸のあたりに頭を預けてきた。

 そして梨華ちゃんは、『れっつごー♪』の言葉を口にすると、あたしの腕を引きずるように歩き始めた。

 ホントカワイイ梨華ちゃん。
 この辺は【おこちゃま】だね。


169 名前:RYO 投稿日:2003年02月11日(火)21時45分53秒
更新速いのうれしいです。
これからもがんばって下さい。
170 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時31分23秒


06〜【からおけ】〜


 思ったとおり…

 もう2人でどれくらい歌い続けたのだろうか。何曲歌ったのかは分からないけど、それでも、時間だけは、ココに入ってから1時間半以上はたっている事を示していた。
 それでもまだまだ衰える事のない、あたしと梨華ちゃんの曲を入れるペース。特に悩む事無く、相手が歌い始めるとすぐにボタンに手が行く。

 そんなあたしと梨華ちゃんの歌っている曲は、最近の曲も多いけど、やっぱり一番多いのが、あたしと梨華ちゃんのオーディションを頑張っていた時のヒット曲。ある意味夢をかなえる前に、必死で頑張っていた時の事を思い出す事ができ、夢を手に入れる事が出来てからも【青春】だけど、まだまだ夢が叶う前の【青春】の事を思い出し、フトたそがれたりも。
 そして、大分【この世界】の【アイドル】として慣れ始めた2人に、新鮮なキモチをくれたりする。

 それ以外にも、途中からはやぐっつぁんやなっちにカオリのリクエストまで答えるようになってきたあたし。なんだか途中から選曲が古くなったのは…梨華ちゃん、気付いてるかな…?

 と、あたしがなっちのリクエストを歌ってる時、フト1つのメールが入ってきたのに、バイブで気が付いた。その時は特別何も思わず、誰かだろうと思っていたあたしだったけど、自分が歌うのが終わり、すぐ隣、テレビに近い方で歌う梨華ちゃんにバトンタッチし、自分の曲を選ぶ前に、何となしに携帯を開いてみた。今は梨華ちゃんとの【デート】の間だから、開こうという意識もなかったけど、何だか開いといた方がイイというキモチが出てきたのだ。


171 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時32分17秒

 そして、今日まだ開かずに貯まっていたメールの一番上を見て、飛び込んできた名前、あと、その内容に、思わず小躍りせずにいられなくなった。

 【From : 梨華ちゃん】
 【Subject : ♪】
 【Date : 03/02/25 18:56】
 【楽しいですね♪】

 あたしは梨華ちゃんがモニターの歌詞を見る為にあたしの方を見ていない事を確認すると、それを分かるように、やぐっつぁんに【転送】した。それと同時に、【返事は返す?】って質問も加え。

 数秒後、一緒に梨華ちゃんに合わせ、ハモってたやぐっつぁんの歌声が止まると、『よっしゃー』と、1つガッツポーズを取っているのが手に取るように分かる、一際大きな声が飛び込んできた。その後ろで聞こえてきた、カオリとなっちのハイタッチに手を重ねる音。

『やっぱり、イシカワも気付いてくれてたんだねっ』
『ごっちん、何も返しちゃダメだよっ』

 やぐっつぁんに続き、聞こえてきたカオリの声は、相当興奮してるみたいで、上ずったものだった。

『イシカワには焦らすんだよっ』

 カオリの言葉に、あたしは小さく頷くと、一際緊張したココロを落ち着かせるように、本を手にとり、【タンポポ】を探した。そして、見つけた【タンポポ】の中から、1つの歌を探し出し、番号を見て、リモコンを手に取った。

172 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時33分08秒


【恋をしちゃいました!】


 モニターの画面には番号だけが流れ、何の曲が次に歌われるのか分からないのが、ネタバレにならずに少しの救い。梨華ちゃんの歌っていた浜崎あゆみさんの曲が終わると、ドキドキしたあたしの心臓とリズムがあうように、今日初めて歌うあたしたちの曲が、流れ始めた。

≪Ya Fuー≫

 その部分からテンポのいいイントロが流れた瞬間、ぱっと梨華ちゃんがビックリしたかのようにこっちの方を振り返り、あたしと目が合うと、手を口に持っていき、可笑しそうに笑い始めた。
 そして、あたしの腕に自分の腕を絡めると、頭をあたしの胸のあたりに預けてきた。
 イントロが終わる部分、歌が始まる前、少し上を見上げるように、梨華ちゃんはあたしの方に顔を近づける。一瞬【【Kiss】されるのっ】って焦った自分だったけど、その梨華ちゃんの口はあたしの耳元へ。そして、『ありがとー♪』の言葉を口にする。その声の様子から分かるのは、幸せそうな梨華ちゃん。
 その一連の行動にドギマギしたあたしは、暗闇なのが幸い、ヒーターが強く効く中、その熱以上に自分のホホが熱を持ってしまった事を感じていた。
 その梨華ちゃんの行動のせいで、出だしの音を外してしまった事は、言うまでもないね…

 あたしの音を外した≪友達の紹介で♪≫で始まった歌に、時々モニター画面からあたしの方を顔を向け、ニッコリと微笑み、自分でも歌を口ずさむ梨華ちゃん。そして、手だけの振り付けに、あたしもマイク片手に手だけの振り付け。
 見つめ合っては微笑みあう2人はまさにイイ雰囲気としか言い様がないくらい。
 
173 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時34分08秒

 そんな歌も、1サビ部分、≪恋になればいいな(いいな)≫≪恋になればいいな(いいな)≫≪デートの途中メールした≫≪『楽しいですね』≫の部分が画面に流れていた。
 
 その部分が流れている時、梨華ちゃんは引き込まれたかのように、じぃーっと画面の方に見入っていた。ある意味、梨華ちゃん自身これからのストーリーを考え、≪どうなるのですかー!?!ですか???≫状態なのかもしれないんだよね。ホントにそう思っていたら最高だけど、事実は梨華ちゃんしか知る由なしってカンジだ。
 でも、それ以上に≪どうなるのですかー!?!ですか???≫なのは、自分。

 ≪恋をしちゃいました(やっちゃった)≫≪恋をしちゃいました(やっちゃった)≫≪デートの最後メール来た≫≪『君が好きです』≫の2サビ部分に、自分が恥かしくなる。
 そりゃ、やっぱりこれって告白だよね。
 今日の梨華ちゃんとのデートの最後は…

 間奏部分に入ったトコで、梨華ちゃんがこっちの方にもう一度顔を向けたのがあたしの視線に入ってきた。何か言うのかなぁと思ったあたしは梨華ちゃんの方に視線を向ける。その顔は、薄暗い中、それほど表情は分かり難かったけど、切なそうに何かを訴えかけている事だけが分かったと思う。そして、不思議な表情の梨華ちゃんは何かを口にしたのが分かった。
 けど、よく聞こえなかったあたしは、『なに?』を尋ねる様に首を傾げたけど、あたしのその仕草を見たにもかかわらず、梨華ちゃんはまたすぐに前のモニターの方に顔を向けただけ。
 やっぱり、どんな事を考えているかは、分からない…

174 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時35分30秒


「♪きーみーがーすーきーーですー♪」


 歌が終わりマイクを置いた後、あたしに腕を絡ませたまま、梨華ちゃんが手を叩いた。そして、しみじみと『やっぱり、ごっちん、ウマイやっ』の言葉をすると、何を思ったのか、1つ大きく溜息をつく。悲しそうな表情の一方、パッと顔に笑顔を浮かべると、『ごっちんがウマすぎるから、あたしもハモりたかったけど、やめちゃった』と、ペロっと舌を可愛らしく出す梨華ちゃん。そんな梨華ちゃんに『ありがとー』と返した妙に照れてるあたしは、目の前の本に手を伸ばした。
 
 パッと電気がつき、何も予約されてない機械から今一番流行ってる歌が流れている音だけが小さく響いているこの部屋。
 一番困る空気。
 あたしもこれからの事を考えてるし、梨華ちゃんもたぶん、これからの事を考えてるから、選曲し忘れているのだろう。

 そんな微妙な空気の中、ハッと自分が何も曲を入れてない事に気が付いたのか、『ゴメンゴメン』と言うと、あたしから腕を離すと、本を手に取り、急いで自分の目当ての曲を探し始めた。

 そして、パラパラと本がめくる音が少し大きく聞こえる中、フト梨華ちゃんが恥かしそうに口を開いた。


「次、『I WISH』歌って欲しいなぁー」


175 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時37分03秒

 そう言うと、こっちの方に顔を向け、『だめ?』と顔を赤らめ、小首を傾げる。恥かしそうなカワイイ仕草だけど、その表情の中にはどこか淋しそうな様子が入っていた事は、やっぱりあたしが卒業した時の事を思い出したのかな?
 それはそれで嬉しいけど…

「久しぶりに、生でごっちんの『I WISH』を聞きたいなぁー」

 その寂しそうな仕草は一瞬だけ、少し笑顔を浮かべると、すぐにリモコンを手にし、自分が選曲した曲を機械に入れようとした。




 『I WISH』か…




 梨華ちゃんがこんな風に聞きたいって言ってくれると、やっぱり嬉しい。
 たぶん歌えるけど、ちょっと音外しちゃったら恥かしいし…




 どうしよっかな…



176 名前:06〜【からおけ】〜 投稿日:2003年02月12日(水)00時38分03秒


『こっちのみんなも聞きたいってさっ』


 フト聞こえてきたやぐっつぁんの恥かしそうな声に、また嬉しくなるあたし。ここまで言われたら、もう歌うしかないでしょうってカンジだ。

 番号を入れ終わった梨華ちゃんからリモコンを受け取ると、パラパラと【モーニング娘。】を探し始める。と、その時、梨華ちゃんの歌う曲のイントロが流れ始めると、思わずハッと顔を上げずにいられなかった。そして、こっちを振り向いてた梨華ちゃんと視線が合うと、お互いに微笑みあう。

「ヘタだけど、ゴメンね」
 
 その梨華ちゃんの言葉に、あたしは『うん』と笑いながら答え、手を差し出してきた梨華ちゃんの小さな手を、握り返した。
 暖かくて、柔らかいその【手】。
 梨華ちゃんがどんなキモチで手を差し出してきたのか分からないけど、【あたしは】愛しさを込めて、梨華ちゃんの手を握り返した。






 流れてきたのは【手を握って歩きたい】。




177 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月12日(水)00時41分01秒
>>169:RYOさん
 レスありがとうございますm(_)m
 毎日小出しに更新ですが、そう言って頂けるとこちらも嬉しいです^^
 今週中に終わってしまうと思いますが、これからもヨロシクお願いします〜
178 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月12日(水)19時14分48秒
期待age
179 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時13分52秒


07〜【よわいぶぶん】〜


 【I WISH】、【Do it! now】の梨華ちゃんのリクエスト、【ちょこっとLOVE】、【やる気!IT’S EASY】のあたしのリクエストから先は、テンションが上がってきたのもあり、適当に、ムスメ、プッチ、タンポポ、あたしの曲を入れまくって、そして歌いまくったあたしたち。
 あたし&梨華ちゃん(&カオリ&なっち&やぐっつぁん)の熱唱は、完全制覇を達成した、夜8時半近くまで続き、結局、何回延長して貰ったのだろうかってくらいだ。
 久しぶりのムスメのコンサート、まぁ観客はマネージャーさんだけだったけどね、その久しぶりのコンサートに大満足のあたしは、こちらも同じく大満足らしく、さっきから興奮冷めやらぬ状態の梨華ちゃんと、一緒に手を握って歩いていた。
 ちなみに、今向かっているのは、予定を大幅に遅れてしまったけど、最初の予定通り、原宿の少しオシャレなイタめし屋さん。やぐっつぁんにカオリになっちの、知恵と経験の集大成より選び抜いた1つのお店で、かなりイケルらしい。『たぶん梨華ちゃんも気に入ってくれるでしょう』とのカオリ談。

「おなかすいたよぉ」

 お店の事を考えていると、急におなかが空き始めたあたしは、思わず悲鳴。あたしの悲鳴に梨華ちゃんも笑って『すいたぁぁぁ』と、手をブラブラさせ、更にぎゅっと抱きついてくる。

「歌ってる時は、やっぱり何とも思わないよねー」
「うんうん。
 ののくらいだよー。コンサートの間も『すいたすいた』ってうるさいのはねー」

 そう言う梨華ちゃんの言葉に、顔を近付け合い、そして、笑い合う2人。

180 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時14分28秒

 昼の暖かさが随分薄れ、肌寒くなってきたけど、その分、あたしたちがバレにくい時間であり、スキンシップが簡単に出来る時間にも入ってきた。夜の街灯が照らされ、一日中眠る事のない街を歩くあたしと梨華ちゃんの目にも、カップルとは別、簡単に引っ付いて、ラブラブしてる女のコ同士も見かけるくらいだ。
 あたしたちが手を繋いで歩いていると、ガードレールに座る女のコの後ろから、別の女のコがおぶさり、2人の世界に入ってるコたちの前を通る事も多い。
 でも、2人の世界って言ってもただ単に、これからのダブルデートの待ち合わせをしているだけなのか…ナンパ待ちなだけなのか…はたまた、やっぱりあたしの考えてる通りなのか…全く分からないんだけどね。
 梨華ちゃんを落とそうと考えてて、ちょっと頭がヤバイ方にいっちゃってるあたしだから、余計に【そう】考えてしまってるだけなのかもしれないよね…

 
 うん、ムスメの中にいたらみんな【そう】なっちゃうもんなぁ…
 

 と、夜の街のそんな事が気になり始めたとなると、今度は隣の梨華ちゃんの考えてる事が気になるのが普通。こっそり隣の梨華ちゃんの事を盗み見たあたしの目に写ってきたのは…


 ごく普通に、これからどんなお店に行くのか楽しみにしている梨華ちゃん。
 特別そんなコたちの事を気にしてる様子もない梨華ちゃん。



 
 何を考えてるのかな…?


181 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時15分31秒




「ホントよかったなぁ」
「えっ?」

 あたしがぼーっと梨華ちゃんの横顔を見つめていると、突然梨華ちゃんがこっちの方を向き、ニッコリ微笑んだ。突然の事に、慌てて顔を逸らし、前に視線を持っていく。

「ごっちんのムスメの曲を聞けてさ…」

 そう言うと、横目で見るあたしの視線の中、更に寒くなったのか、笑みを浮かべている梨華ちゃんの口元から白い息が零れているのが分かる、そんな街灯の下、少し顔を赤らめ、また前方の方に視線をずらすと、『それだけで大満足ってカンジかなー』と、視線を落とした。

「ありがとう…」
「ううん…」

 その後、2人の間の会話がどういう訳かハタと止まり、しばらく沈黙の時間が訪れた。お互い何かを考え込んでいるのか…ゆっくり目的地に向かって歩くあたしと梨華ちゃんは、自然と視線を落としながら進む。




 あたしはこれからの2人の関係。




 梨華ちゃんは…




182 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時16分23秒

 そして、その沈黙が寒さ共々耳に痛くなった頃だった。
 両手で自分の口元を隠す様に覆うと、暖めるように息を吹きかけ、寒さをしのぐ仕草をした梨華ちゃんが、フト小さく呟いた。
 考え込んだ様子で、寂しげに…

「どうして、つんくさん…ごっちんを辞めさせちゃったんだろね…」



 えっ…



「今日、生で聞いて、改めて分かった…」



 あっ…



「みんなさ…わたしも含めてだけどさ…ごっちんのパートをホント一生懸命頑張ってさ…自分自身の【モノ】にしようとしてるんだけどさ…
 やっぱりごっちんには負けちゃうよ…
 もう大分たつけど、まだまだ足りないと思う…」
「そんな事ないよっ!」

183 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時17分10秒

 思わず大きく声に出してしまい、ココが街中だという事を思い出し、慌てて周りを見回すけど、幸い、誰もあたしたちに関心を持っている様子はなかった。それを確認すると、こんな事を言うのは少し恥かしいかなぁってキモチも出てきたけど、とにかくあたしは自分の本心を口にした。
 ある意味、【こんな事】は【ド】がつくくらい真面目で優しい梨華ちゃんだから、言えるのだと思う。真面目で優しいから【これからあたしの言う事】にも笑わずに、恥かしがらずに、きちんと受け取ってくれると思うから。
 他のみんなだと、言ってるこっちもテレちゃうし、聞く方もテレちゃうと思うから…
 それに、梨華ちゃんだけじゃなくって、やぐっつぁん、なっちやかおりにも聞いて欲しいから…あたしは口にした。

「みんな頑張ってると思うよ。
 もうあたしの曲じゃないし…
 もうあたしが歌っていた時以上にイイ曲に仕上がってると思うよ…うん…」

 ニッコリ微笑み梨華ちゃんを見つめ、組んでいる腕に力を込めた。

「ありがとう…みんな聞いたら喜ぶよ」

 そんなあたしの笑みに、梨華ちゃんを目を細めてくれた。そして、大きく1つ息を吐くと、テレた口調で次の言葉を口にする。

「あぁーあ…もっとごっちんとムスメをやってたかったのになぁー」

 テレながらも、どこか遠くを見ながら儚げそうに言う、その梨華ちゃんの言葉に、あたしのココロの中は1つ一際大きく跳ね上がった。あたしにとって、とても嬉しい言葉に。

184 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時17分59秒

「つんくさんもヒドイよね…」


 でも…この梨華ちゃんの言葉…


「次は保田さんだし…」


 フト冷静になる自分。


「まぁ、美貴ちゃんが入ってくるのはいいけど…」


 完全にNGだよねぇ


 だいたい普通の人は、自分の学校の先生とかの悪口は簡単に言う。けど、同じくあたしたちにとっての先生であるつんくさんの事を悪く言うムスメはいない。って言うか、【言えない】。【言えない】、じゃない。【そんな事】を【思う】って事すらしない。つんくさんは尊敬に値する人だから…
 つんくさんが言う事は【絶対】。
 あたしたちは逆らえないし…ううん、逆らうなんて言葉すら浮かばないくらい、あたしたちは何も言わずに信じて行動する。
 【それ】が最良の方法と信じて。



 つんくさんの言葉に逆らう=辞めると言う選択肢にも繋がるくらい。


185 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時18分46秒

 ってそんな事を思ってる自分に気付き、フトそれがイヤになる。梨華ちゃんはあたしの事を信用しきっているから、【こんな話】をしているのに…と。


 はぁ…


「その次は…」

 そこで大きく溜息をつくと、今度は立ち止った梨華ちゃん。あたしも引っ張られる様にして立ち止ると、梨華ちゃんの方に顔を向けた。そして、『んぁ?』と首を傾げ、質問、梨華ちゃんの目を見ようと、視線を上げたあたしの目に映ってきたのは…

 えっ?

 ぽろぽろと涙を流しながら、嗚咽をもらしている梨華ちゃんだった。

「ど、どうしたの?」
「ご、ご…うっく…ごめん…ね…」

 その言葉と共に、あたしの胸に頭を預けてきた。
 


 そっか…



 梨華ちゃんには別のドッキリも仕掛けられていたんだ。この瞬間まで、自分はその事すら忘れていたんだよね。そんな自分の事が少し情けなくなったけど、今はそんな事はどうでもよかった。とにかく、目の前の梨華ちゃんの小さな体を抱き締めた。

186 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時22分33秒



 やっぱり不安だったんだ。



 ずっとずっとあたしの相談には真摯に乗ってくれたけど、その間もずっと自分の事で辛かった梨華ちゃん。ドッキリとはいえ、そんなトコでも梨華ちゃんのイイ部分を見つけてしまい、また自分のココロの中に暖かい【モノ】が溢れ出てしまいそうになっていた。
 そして、この街中で、人目をはばからず自分の弱い部分を出している梨華ちゃんを目の前にして、今回の事に対する罪悪感が一番強く感じてしまっていたのも事実。どうしたらいいのか分からず、ただただ梨華ちゃんの背中をさすってあげる事しか出来なかった。

『ちょっとイシカワが可哀想だけど…一応、用意してあった台本通りにね…
 あっ、あと、たぶん2人って事には気付いてないとは思うけど、なんだか周りの人が立ち止って見てるから、移動した方がいいかも…』

 話の繋がりから、同じく梨華ちゃんの涙の理由に気付き、そんな罪悪感を感じているのか、やぐっつぁんも少し沈んだ様子の声で、あたしに指令を出してきた。やぐっつぁんたちが用意してあった台本の中に、今の状況の事も入っていたからって事からきた言葉に、あたしは小さくココロの中で頷くと、もう1つのやぐっつぁんの言葉に、少しだけ周りを見回す。
 すると、やっぱり何人かが立ち止り、あたしたちの方を物珍しそうに眺めているのが、目に入ってきた。確かにそれはあたしたちの事に気が付いたって事から眺めているのじゃなくって、街のど真ん中で抱き締めあっている2人の事を眺めているといった感じだった。
 
187 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時24分00秒
 
 それを確認したあたしだったけど、まだ罪悪感を強く感じてしまっていたあたしは、台本通りに話を切り出す事も、移動するように話を振る事も出来ずにいた。
 
 梨華ちゃんを抱き締めながら、その話を切り出すタイミングを待つ。
 
 どれくらいたったのだろうか、抱き締め、背中越しにあたしの手に感じる梨華ちゃんの温もりが揺れなくなった、梨華ちゃんが落ち着いた頃、あたしはゆっくりと口を開いた。

「梨華ちゃんは、ムスメを離れるのがイヤなの?」
「えっ?」

 梨華ちゃんはビックリした表情で顔を上げた。そして、あたしの肩を抱き締めていた腕を、あたしの腰辺りに下ろすと、あたしの顔を見つめながら、口をパクパクと動かし、何か言葉を発しようとしたが、驚きのあまり言葉が出てこなかった様子。

「紺野みたいだね」
「どうして知ってるの…?」

 少し冗談を言ったあたしだけど、それを無視した梨華ちゃんの言葉に、思わず笑みが零れる。そして、『ちょっと目立ち始めたから、歩こうよ…』と囁き、梨華ちゃんの腕を引き、歩き始めた。

 歩き始めると、さっきまであたしたちの事を遠巻きに見ていた人も離れる。それを確認し、少しホッとなったあたしは、隣で黙り込みながら、腕を組み、一緒に歩いている梨華ちゃんの方に顔を向け、口を開いた。

188 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時24分41秒

「なんでもないよ…」

 あたしの言葉に、何も反応しない梨華ちゃん。

「ただ、マネージャーさんから聞いたの。」

 少し反応があり、あたしの方に視線を向けるけど、まだ口は動かない。

「今日、梨華ちゃんと遊ぶって予定を話したらさ、【その事】を教えてくれたの。」
「そうなんだー」

 単純な理由に、納得顔だけど、どうも暗い顔をしてる梨華ちゃんに、あたしは微笑んで見せた。そのあたしに笑みを返してくれるのを確認すると、もう一度シナリオを続けた。

「そうだよー
 マネージャーさんに頼まれてさー
 『激凹みなイシカワを1日掛けて慰めてあげてー』だってさー
 『ごとーにしか出来ないからっ』って熱弁されちゃったよー」

 その言葉を聞くと、『えぇー』と言いながら、口元に手を持って行き、可笑しそうに笑い始めた梨華ちゃん。そして、そんな笑みを零しながらあたしの腕をブラブラさせてる梨華ちゃんは、『今日はわたし、家に返してくれないんだー』と、これからあたしが言うはずであった言葉を口にして、自分でその言葉を話しながら、その言葉に『いいねー』と1人でそのまま納得し始めて、1人で照れて、1人でツボに嵌まったかのように笑い始めていた。
 少し『アレ?』ってなるあたしだったけど、これだけ笑ってくれてると、あたしが笑わした気分になれて、なんだか気分がよくなるよね。
 
189 名前:07〜【よわいぶぶん】〜 投稿日:2003年02月12日(水)23時25分14秒
 
『壊れた。壊れた。イシカーさん壊れたよー』

 と、少し幸せなキモチになっていたあたしの耳に、向こうでも壊れたかのように笑ってるやぐっつぁんの笑い声が、まるで『タチの悪い目覚ましかよっ』ってツッコミたくなるくらい、けたたましく聞こえてきた。そして、ノリに乗ってるのか、『『今夜は寝かさないよ』って囁いてやれー』と、激しく笑いながらその言葉を口にしていたやぐっつぁんの言葉に、どういう訳か、あたしの口も自然とそのやぐっつぁんの言葉に動いていた。
 照れてる梨華ちゃんを想像して…

「今夜は寝かさないよ…」

 梨華ちゃんの耳元で囁く…

 結構恥かしそうにしてくれるかなーって思ってたあたしだったけど、当の梨華ちゃんは、ぽっと顔を少し赤らめるだけで、またまた可笑しそうに笑い始めて、『やめてよー』ってお腹を押さえ笑う始末。


 あれ…?


『やっぱり壊れてるよー』

 後ろで聞こえてきたやぐっつぁんの言葉に、少し苦笑いを浮かべるあたしは、この梨華ちゃんのリアクションに少し不安を覚えながらも、笑っている梨華ちゃんに幸せなキモチになりながら歩いていた。原宿にあるイタめし屋さんに向かって。




 隣には、まだ笑っている梨華ちゃん…



190 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月12日(水)23時27分40秒
次回はやっと告白。
>>178:名無しさん
 期待ageありがとうございますm(_)m
 自分でageるんは恥かしいですから…^^;更新がしやすくなりました(w
 これからもヨロシクお願いします〜
191 名前:RYO 投稿日:2003年02月13日(木)12時47分42秒
ついに告白かぁ。
どうなるんだろう。
なにかどっきりには裏がありそうな予感ですが、気のせいかな?
192 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月13日(木)21時36分03秒
>>191:RYOさん
 またまたレスありがとうございます^^
 裏は…答えを言いたいのですが、ネタバレになりますんで…^^;
 終わってからって事で^^;
 これからもヨロシクお願いします〜
193 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時38分00秒


08〜【こくはく】〜


 とうとう、場面はこのドッキリのクライマックスに差し掛かってきた。
 
 緊張しっぱなしのあたしと、何だかびみょーな笑みを浮かべて、あたしの隣を一緒に腕を組みながら話している梨華ちゃんの2人は、電車で揺られながら、もう少しでお台場に到着するトコロだ。
 あたしたちの雰囲気がヤバクなった時にいつでも飛び出せるなっちは、イタメシ屋さんを出たトコで、あたしたちの事を発見したって声があったから、あたしたちのすぐ近くまで着て、待機しているはず。
 そして、やぐっつぁんにカオリは、なっちのその声より大分前に、番組のMCを兼ねての、『では、これからオイラにカオリもお台場に向け出発しまーす』の声が聞こえ、少し途切れ、またMCが復活しているから、たぶんバスの中で、原宿のホテルからお台場の方に移動している状況だと思う。そう、やぐっつぁんとカオリは、モニターが設置された移動車に乗り、あたしたちのすぐ近くまできて、ネタバレと共に出てくる予定になっているんだね。

 どんどん終わりに近付いている中、みんなも緊張し始めているのか、あたしと梨華ちゃんがお台場に入ってからは、すっかり自分の耳に届いてくる3人の声は少なくなっていた。少なくなっていたって事は、全然なくなったって事じゃなく、少しはあるって事。けど、それはテレビのMC的な内容がほとんどであり、これまで時々あった個人的に話し掛けてきてくれるって事じゃない。
194 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時38分59秒

 そんな3人に触発されるかのように減ってきている自分の口調。
 更に、そんなあたしにも影響されてるのか、梨華ちゃんの口数も減ってきていた。ただ、梨華ちゃんの【それ】の理由は、これから起こるであろう【想像出来る事】が原因かもしれないけど。
 って思ってるのは、あたしの勝手な妄想。
 でも、その梨華ちゃんの今の態度からの【答え(妄想)】を一番望んでいるのも自分。


 その答えはこれから出てくると思う…
 この何日間のあたしと梨華ちゃんの集大成のプライベートの結果が…


 そして、あたしたちは、周りがカップルだらけの【公園】の一番【奥】に足を踏み入れた。

 と、その時、あたしの耳になっちの慌てた時特有の訛りが入った声が聞こえてきた。

『ごっつぁーんっ。
 ちょ、ちょっとー
 そ、そっちまで行っちゃダメだべさー』

 慌てて立ち止まろうとするあたしだけど、時すでに遅し。梨華ちゃんが一瞬不思議そうな表情をして首を傾げたけど、あたしが特別何も言わないのを確認すると、更に腕をグイグイ引っ張り、足を奥に進めた。

195 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時39分32秒

『そっちまで行ったら、告白した瞬間になっちが乱入できないっしょっ』
『あぁ…なるほど、確かにそーだよ、ごっつぁん。
 オイラもすっかり忘れてたわ…』

 やぐっつぁんの納得した声と共に、あたしも納得。

 そう言えばそうだった…
 ここから奥に入ってしまうと、【なっちがあたしを偶然発見する】っていうシナリオが不自然になってしまうよね。だから一番入り口に近いトコにいなきゃいけなかったんだ…
 すっかり忘れてた自分に、ちょっと呆れる。

『う〜ん…』

 カオリが考え込む。
 
 どーしよ…

『じゃぁさ、コクった後に『まだ返事はいいっ』『聞くの怖いから…今度でいいから…また会いたいし…』とか…どう?』
『ナイスッ、カオリッ!
 そーだね…イシカワだったら、返事はどっちにしろ即断出来ないだろうから、間が出来るからその時に【その言葉】をね。
 それだったら告白の返事は聞かなくていいから…聞かないで押し切って、出たトコでなっちと偶然出会って、あとは台本通りって事だね。
 オイラもそれでイイと思うよ。』 

 なーるほど…
 さすがっ

196 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時40分22秒

 なっちの『それでいこうっ』声を聞き、気を取り直したあたしは、梨華ちゃんを追い越し、前に立った。

 そして、2人に訪れた静かな空間。
 【そこ】を訪れる2人の間に、言葉はいらないといった空気が流れているその場所。

「やっぱりカップルばっかりだよぉー」

 あたしの耳元で恥かしそうに囁く梨華ちゃんは、更にあたしに体を密着させてきた。さっきから緊張でドキドキしっぱなしの心臓に悪い、梨華ちゃんのその行動。


 でも…


 【仕事】が打ち勝ち、笑顔で答える。

「当たり前じゃーん」

 耳元で囁いた後、寒さと恥かしさで赤くなってるホッペを梨華ちゃんの【ソレ】にくっつける。柔らかいマシュマロみたいな感触があたしを襲い、一瞬クラッ。
 マネージャーさんがオッケーを出してくれた、このドッキリでのあたしと梨華ちゃんとの距離が一番近付いた瞬間だ。


 
 キスはダメ。
 もちろんホッペにさえダメ。
 
197 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時41分40秒
 
 『普段あいぼんとかとしてるから…』って抗議の声をあげたあたしややぐっつぁんにピシャと『ダメ』。『元メンバーでも、加護たちとするのと、石川たちとするのとでは全然違うからダメ。オナイでしょ。カメラのないトコならまだしも、全国放送で映っちゃうんじゃーね…』とのお言葉です。更に別のマネージャーさんからは、『後藤には男のコの様に応援してくれてる女のコのファンも多いんだから、その辺を考えなよ。このドッキリの内容でさえ考えた方がよかったのにさ。石川にも女のコのファンが多いしね…』って…最後にカオリが言った『キスまでいった方が番組的にも面白いと思うのに…』の言葉にも、マネージャーさんがみんなでハモって『ダメ』。
 仕方なしにあたしたちは【密着まで】に納得したわけ。
 って事で、これからあたしが梨華ちゃんを落とすのにも、【それ】で落とさなきゃいけないんだね。


 うん…


「ねぇ…あそこあいてるよ」

 梨華ちゃんの言葉に、そっちの方を見ると、丁度腰丈ベンチが空いたとこだった。うまい具合にまるまる1つのベンチが空き、あたしたちはそこに腰を預ける事にした。
 あたしが腰を預け、そのあたしの前に梨華ちゃんが身体を預ける。別に狭いって訳じゃないから、隣同士で座ってもいいけど、やっぱり【ココ】ではこれでしょう。

198 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時42分35秒

 梨華ちゃんがパシュと缶コーヒーのフタを開けるのを確認すると、あたしより少しだけ小さい身体を後ろ、腰から手を回し、抱き締め、肩口から顔を預け、梨華ちゃんのホホに自分のホホをなるべく近づける。一気に2人の体温が交じり合い、梨華ちゃんの温もりが伝わってきた。あたしの胸に感じる梨華ちゃんのハカナイ背中。そして、梨華ちゃんのその背中にあたしの胸を押し付ける。
 このカッコは、あたしが一番スキな体勢で、女のコの柔らかさが一番気持ちよく感じられるけど、その相手が梨華ちゃんとなると、また別。



 ヤバイ…
 頭がオカシクなりそう…



 胸のドキドキが止まらなくて、身体が熱い…




 缶コーヒーの回し飲みをしながら、あたしはドッキリとは別に【この瞬間】を楽しんだ。




 永遠に続いてくれればイイと思う【この瞬間】を…



199 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時43分13秒


「キレイだね…」
「うん…」

 そして、梨華ちゃんの言葉にも、曖昧になるあたしの言葉。夜景の事を言ったのに、一瞬【自分の事?】って思ってしまい、『バカ』って頭の中で呟く。
 目の前のキレイに展開している夜景より、隣の梨華ちゃんのキレイなのは言うまでもないよね。梨華ちゃんは夜景を見てるけど、あたしは梨華ちゃんを見てる。
 ううん…見惚れてる…か。

 缶コーヒーに口を近づけ、そこから零れる白い息。
 そこに付けられる、少し薄暗い中でも、グロスで艶やかな唇。
 
 触れたい…

 現実のあたしはこれだけ梨華ちゃんを見てるのに…
 どうして…

 反対に、梨華ちゃんはあたしの事を見ているのかどうか分からないのが現実。



 『やっぱり』あたしって…



 そして、梨華ちゃんに見惚れてるあたしの耳に、やぐっつぁんの『オイラたちも近くまで着いたから、そろそろいこうか…』の言葉が聞こえ、あたしはココロを1つに決めた。

200 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時43分46秒


 【仕事】だから…何でも言える。
 

 大丈夫…

 それに、フラれる事はない…

 
 よしっ


 その気合と共に、あたしは台本の中にある言葉の内の一つを選び、そこから攻める事にした。

「梨華ちゃんの方がキレイだよ」

 ある意味テレビだから言えるあたしの寒い口説き文句に、梨華ちゃんは、珍しいあたしの冗談だと思ってるのか、笑みを浮かべながら『ありがとう♪』とあたしの方に顔を向けた。
 純粋なその瞳が、あたしのココロの中を射抜いているかのような感覚を覚え、思わず顔を背けてしまったあたし。


 どうして…?

 
 オカシイあたしのその行動。梨華ちゃんを落とさなきゃって思ってる半面、ドッキリでも自分が梨華ちゃんがスキってキモチをバラしたくないって思ってるあたし。
 梨華ちゃんをじーっと見つめて、『見つめないでよー』のセリフを期待し、その後に、『カワイイから見つめちゃったっ』って言わなきゃいけないくらいなのに…

201 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時44分26秒


 いったいどうなってるんだろうって…


 色々な葛藤がココロの中に生まれ始めたけど、現実は一歩一歩だけど、確実に時を刻み続けている。
 今もそう。
 前を向いたまま、あたしは本題を口にした。

「梨華ちゃんはさ…恋人とココに来たいって…思わない…?」

 『えっ?』と不思議そうな小さな声をあげた梨華ちゃんが、こっちの方を一瞬見るけど、すぐにあたし同様、前に顔を向け、『う〜ん』と唸る。

「恋人かぁ…」
「うん…」
「そーだなぁ…」

 グッとあたしに体重を掛け、足をプラプラ。
 そして、何か言葉が浮かんだのか、足を下ろすと、顔をあたしの方に向け、口を開いた。

「わたしたちってさ…(アイドルだから)ムリじゃない?」
「寂しくない…?」

 その梨華ちゃんから出てきた【現実】に、また用意してあった言葉を返す。【仕事】には真面目な梨華ちゃんだから、あたしの口からこの言葉を言えるのだ。やぐっつぁんも『こんな会話しても大丈夫だろう』というリサーチ済みの内容を台本に書き、そして、今はまだ台本通りに進める事が出来ている。

202 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時45分04秒

「今はお仕事が楽しいから、寂しいなんて思わないけど…
 そんな時ってない?」
「そんな時?」
「うん…何かに打ち込んでいると、別に恋人がいなくても何とも思わないって【トキ】」
「あぁ…どーなんだろ…」

 あたしは『う〜ん』と唸ると、考え込むフリをした。しばらくその仕草をしてると、フト梨華ちゃんが疑問を投げかけてきた。

「ごっちんは…欲しいの…?」

 その言葉を言う梨華ちゃんは、あたしの都合のイイふうに考えると、寂しさを含んだ口調だったけど、ホントの梨華ちゃんのキモチは…分からない。
 あやふやなキモチのまま、台本の言葉を口にした。
 ただ、この言葉はあたしのキモチを言葉にする様に呟いて、梨華ちゃんに【ソノ】方向に話を持っていく伏線。

「欲しいっていうか…」
「うん…」
「梨華ちゃんの言う事は分かるけど…」
「うん…」
「欲しいっていうかね…」

 あたしはタメてから、梨華ちゃんの方を向き、勝負の言葉を口にした。

「スキな人がいるんだよね…」

 案の定、ビックリしたような表情をした梨華ちゃんと視線がぶつかる。
 2人の距離がいっきに近付いた。

203 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時45分50秒

「我慢しなきゃいけないってのは分かってるんだけど、その人がいけなくて…
 距離が近付けば近付くほど、スキになってっちゃうんだよね…」

 何を思っているのか分からないけど、梨華ちゃんはジッとあたしの目を見つめ続け、そして、あたしも梨華ちゃんの目を見つめ続ける。
 その梨華ちゃんの瞳を見つめ続け、ただ1つだけ分かった事。

 それは、瞳が確かに揺れていたこと…

「ごとーをハマらしちゃったんだ…」

 そのあたしの考えた告白文句からどれくらい時間がたったのか、気恥ずかしさからか、まだあたしの事をじーっと見つめている梨華ちゃんから視線を逸らし、前を見た時、やっと梨華ちゃんが一言呟いた。言葉にならない言葉を。

「そっか…」

 そこから更に時間が経った時、大きな溜息と共に、腕を離し、あたしからポーンと離れた梨華ちゃん。立ち上がるとあたしに背を向けた。手を後ろに組み、あたしから離れるように前方にしばらく歩き、距離が出来るとパッと振り返る。薄暗い街灯の下、微かに梨華ちゃんの口が動くのが分かった。けど、何を言ったのかは聞こえる事はなかった梨華ちゃんの言葉。それくらい小さな声。
 そして、あたしを見つめ『よしっ』と呟くと、また近付いてきて、口を開いた。

 あたしの事を、とっても優しく見つめながら。
 今まで感じた事がないくらい、優しい梨華ちゃんの瞳。

「羨ましい…」

204 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時46分36秒


 えっ…?


「ごっちんをそんなにハマらしちゃうなんて…」
 
 その言葉のあと、くるくるあたしの前を回る梨華ちゃん。何かを考え込んでいる様子で、歩きながら円を描く。

 軽く10周は回ったとき、『うんっ』と楽しそうに笑顔を浮かべると、あたしの方にもう一度近付いてきた。そして、今度はあたしの隣に腰を預けると、『きーめたっ』と腕を絡める。

「おねーさんが、コノそーだんにも乗ってあげるっ」
「えっ…?」
「おねーさんさ、美貴ちゃんのそーだんに乗ってあげたでしょ?
 だから、コノそーだんにも乗ってあげるんだよっ。きょーりょくもしたげるっ」

 そう楽しそうに話すと、『さっ、話してみよー』と『誰の口真似だよっ!?』ってツッコミたくなる声で言葉を口にすると、人差し指をピーンと『どうぞっ』とあたしに向けた。
 ちょっとビックリしてるあたしを見て、『ごめんごめん』とテレると、気恥ずかしさからか、あたしに体重を掛けてきた。

「寒いね。」

 そんな明るい梨華ちゃんに少し安心感を覚えたあたしだったけど、それは一瞬だけだった。

「ごっちんは真剣なのに…」
 
 そう…

 もう次の瞬間には、腕は組んだままだけど、ちょっとあたしから離れると、さっきまで浮かんでいた笑顔はほとんど消え、そんな表情とは全く逆の、真剣な表情を浮かべていたんだ。
 そして、口を開いた。

205 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時47分15秒

「ってゆーか…」

 全く関係ない接続詞のあとに、梨華ちゃんはあたしの瞳を子犬のような目と例えるのがピッタリな目で見つめると、視線を落とし、呟いた。

「ごっちんがスキな人って…どっち…?」

 普通なら主語が分からなくて、意味の通じないこんな質問も、今のあたしは関係ない。

「女の人…?」
「うん…」

 続いて梨華ちゃんの口から出てきた言葉に、すぐに頷く。

「そっか…」

 そう言葉を呟く梨華ちゃんは安堵の溜息なのか、1つ大きく溜息を吐く。
 でも、次の梨華ちゃんの行動で、さっき持ったあたしの疑問はすぐに解消された。

 笑顔を浮かべ『安心した』と言ったから…

「ごっちんの口から【男の人】って言葉が出てきたら、わたし自身、なにげーにショックだったりしてー」

 そう言うと、ペロと可愛らしく舌を出す。
 その仕草に思わず笑顔が浮かぶあたし。

 自然な笑顔が浮かんだあたしだったけど、次に聞こえてきた梨華ちゃんの言葉に、真剣な表情を作った。

206 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時48分11秒


「知りたいなぁ…」


 そう、ここからは告白に繋がっていくから、大切なトコロ。

「ごっちんがそんなにスキになった人…知りたいかも…」

 笑顔を見せながら、顔をもう一度あたしの方に向けた梨華ちゃんだったけど、あたしの表情が真剣なものへと変わっていたのに気付いた時、その梨華ちゃんの表情にもどこかまた真剣なものが生まれていた。
 そして、その真剣な中に、どこか暗いものも含まれている事に気がついたのは、余裕があるあたしだからか…


 でも、その後、フト気付く。
 これって…あたしが自分に都合のイイ方に考えてるだけ…だよね?


『いいよ、ごっつぁん。
 でも、もうちょっとだけ暗い表情を作った方がイイと思うから、頑張って作ってっ』

 少し自分の思考がどこか遠くに行きかけた時、ハッとやぐっつぁんの声で現実に戻される。それと共に、さっきより更に近付いてきていた梨華ちゃんにも気付く。あたしの目の前に梨華ちゃんの切なそうな顔がドアップで写り、思わず高く跳ねるあたしの心臓。
 さらに、潤んだ瞳があたしのココロに突き刺さり、かき乱される。

207 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時49分13秒


 距離が近付けば近付くほどスキになるって…あたし言ったけど…


 ホントかも…?


 そう、この数週間であたしの頭はおかしいくらい梨華ちゃんの事で占められてきた。
 梨華ちゃんのせいで…


 いつでも考える事は梨華ちゃんを落とす事。
 落とす為に、梨華ちゃんに対して【恋愛感情】も持たそうとした…
 元々【メンバー愛】を持っていたあたしだもの。
 その結果が…


 前から思ってたけど、それは【疑問】だった。
 でも、今は【確信】に変わりつつあった。




 ヤバイ…
 熱い…



208 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時52分12秒

「ごっちんのスキな人って…わたしも知ってる人…?」

 急に耳元で囁いた梨華ちゃんの声にゾクッとなったあたし。
 これ以上私情を挟んでいるとシナリオ通りに進める事は不可能になりそうって判断したあたしは、完全に私情を遮断し、【仕事】のモチベーションに持っていこうと決めた。

 仕事…仕事…

 うん。

「まぁ、一応ね…」
「へー
 って事は…ハロプロのメンバー…なの?」

 あたしの微妙な言い回しに勝手に判断を下した梨華ちゃんは、『うんうん』と1人で頷いたはいいものの、また『う〜ん』と考え込む。
 確かにそうだろう。あたしももし今梨華ちゃんの立場だったら、絶対に頭に浮かんでこないのが現状。まず出てくる名前としたら、ムスメは外れると思う。一番あたしから遠い存在の人から…それくらいムスメの存在感ってのは、家族みたいに強いキズナでメンバーみんなが結ばれていて違うから。

 どんな事が頭の中に浮かんでいるのか分からないけど、梨華ちゃんは更に質問の幅を広めようとした。

「年齢って、ごっちんに近いの?」
「近いよ…」
「近いんだぁ…」

 『うん』と1つ頷くと、指をアゴに持って行き、考え込む。

209 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時52分47秒

「近いって言えば…お似合いでもある人から言っていくと…
 美貴ちゃん…でも違うから、亜弥ちゃん、?」

 首を振る。

「うーん…まいちゃんとか…」

 振る。

「えっと…あさみちゃんも、いちおー…」

 更に振る。

「タカハシもそうだけど…」

 メンバーの名前を口にし、少し心配そうな梨華ちゃんに対して笑顔を浮かべ首を振る。

「まさか、よっすぃー…じゃないよね…」

 笑いながら首を振る。

「しばちゃん…」
「大丈夫だよっ」

 最後の方は大親友に入るから余計に複雑だったんだろう、あたしの笑顔で首を横に振るのを見て、ホッと胸を撫ぜ下ろしたのが手に取るように分かった。
 でも、ホッとしたのはいいものの、頭は混乱し始めているはず。

210 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時53分37秒

「えー…でも…
 16歳から18歳のコだよね?」
「まーね。」
「えーと…」

 そう言ったきり、誰も思いつかないのか、完全に首を傾げてしまう梨華ちゃん。少し頭をあたしに預け、『他には…』と言ったまま口をつぐんでしまった。
 そんな、梨華ちゃんの耳元であたしは囁く。

「もっと大事な人忘れてるよ…」
「えー」

 その言葉に更に首を傾げ、考え込む。『ごっちんにとっては大事な人だけど…』と言う梨華ちゃんの言葉を遮るように、あたしは口を開いた。

「ごとーの、こーはい」
「んー」
「でも、年齢じゃ1個上で、せんぱい。」
「えっ…」
「年齢じゃセンパイだけど、あたしの前だと、子供みたいでカワイイ。」

 少し目を見開き、あたしを見つめる梨華ちゃんの頭の中には、少し『自分』という選択肢が浮かんできたのだろう。
 あたしの腕に感じる梨華ちゃんの身体。



 今にも鼓動が感じてきそうなくらいだ。



211 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時54分30秒

「みんなに『サムイ、サムイ』って言われてるけど、あたしは一緒にいるだけでアッタカイよ。」
「ごっちん…」
「顔は可愛くって…スタイルはよくって…もちろん性格もカワイイ。」
「で、でも…」
「一緒にいるだけでドキドキするんだぁ」


 あたしは今までで一番真剣な表情で梨華ちゃんを見つめた。


「今もドキドキしてる…」
「そんな…」
 
 梨華ちゃんの揺れてる瞳を見つめながら、あたしはバックの中から携帯を取り出し、開いた。そして、【新規メール】を開き、【アドレス】を入れ、梨華ちゃんに見えるように、何も書かれていない【本文】を画面に表示する。

「今から梨華ちゃんにメール送ってイイ?」

 携帯の画面を見つめる梨華ちゃんの横顔が微かに頷くと、あたしは梨華ちゃんに見えるように文字を打ち始めた。

【き】【み】【が】【す】【き】【で】【す】

 そして、変換。

【君が好きです】



 送信。

212 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時55分22秒

 送信ボタンを押し、送信されたのを確認すると、携帯を閉じた。
 そして、あたしは梨華ちゃんに視線を移すと、そっと見守った。
 
 数秒後…時間として数秒だろうけど、実際あたしと梨華ちゃんにとってはとてつもなく長い時間に感じられたというのは確かだろう。数時間とも感じられる数秒後、梨華ちゃんがバックから携帯を取り出し、開き画面を見つめる。
 携帯の明かりが梨華ちゃんの横顔を微かに照らし、少しだけその表情が見えた。

 と、その時、自分の胸がチクリと針が刺さったような感覚を覚えたあたし。
 それは、梨華ちゃんの瞳から涙が零れているのが、あたしの目に入ってきたからだ。それと同時に嗚咽も洩れている。その後聞こえてきた声は、『ズルイよ…』。

 泣かれるとは思っていなかったあたしは、思わず驚きの声が洩れそうになる。



 えっ…?


 
 と、そして、頭が真っ白になるのが分かったあたし。
 【フラレル】の4文字が一瞬頭をよぎる。
 そう、人が涙を流す時というのは、ほとんどの理由が【悲しい時】というイメージがインプットされているあたしの頭の中だもの、思わず『ごめんっ』という言葉が零れるあたし。

213 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時56分06秒

「違うの…」

 すぐに返してくれた梨華ちゃんの言葉にも、ショックを受けていたあたしには意味が分からず、もう一度呟いた。
 そして、あたしの頭の中に聞こえてきた『どっち?』と言うやぐっつぁんの言葉の意味も今は分からない。
 
「ごめんね…」
「違うの…」


 どうしよ…


 やっぱりフラれちゃいそうか…


 キツイなぁ…


「ごっちんはー…わたしのことね…あんまりね…スキじゃ…ないって…思ってたの…
 ふつーのね…友達だと…思ってたの…」

 嗚咽を漏らしながらの途切れ途切れの梨華ちゃんのその言葉が、あたしの死んでいた耳に届くと、少し復活するあたし。

214 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時56分41秒

「卒業…してからもさ…よっすぃーとはさ…よくさ…遊んでたりしたのにさ…
 わたしはさ…わたしから…連絡しないとさ…くれないでしょ…?」
『ヤバイ…?』
「だから…ね…」
「うん…」

 あたしの事を見つめる梨華ちゃんを、あたしはジッと見つめた。
 梨華ちゃんの次に発せられる言葉を待つあたしは、もう仕事という事を半分忘れてしまっているくらいだ。

 どっち?

 って。梨華ちゃんはあたしの事がスキなの?それとも…

 そう、梨華ちゃんの言葉より先に聞こえてきたやぐっつぁんの言葉を、無視したくなったほど、あたしは目の前の梨華ちゃんとの関係が知りたくなっていた。

『ごっつぁん、イシカワの様子がヤバイから、はやくっ。
 告白の返事を聞いたら、全てが水の泡だからさっ
 『いいっ』って言わなきゃ。』

 でも…


 聞きたい…


 ただ、次に聞こえてきたカオリの言葉に、少し冷静になる。

215 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時57分34秒

『たぶん、イシカワ、完全に落ちちゃったと思うよっ。だからっ』


 ホントー?


 一瞬疑心が生まれるけど、確かにさっきの梨華ちゃんの言葉はあたしの言葉をイヤがってる感じじゃなかったとは思う。だからあたしは復活したんだよね。

 でも、ホントかなぁ
 梨華ちゃんってホント優しいから、あたしの為に…

 そう言うものの、カオリややぐっつぁんの言葉を聞いて、一気に胸のつかえが落ちたのは確か。冷静になると、【仕事】という言葉が再び頭に浮かぶ。
 【それ】が頭に浮かぶと、不思議とあたしの口は自然に動いていた。

「梨華ちゃん…いいよ…」
「えっ…」
「いい…」
「でも…」

 まだ涙の止まらない梨華ちゃんを抱き締めた。
 ギュって力強く。

 
 そして、耳元で囁く。


「あたしのキモチは【これ】だからさ…
 もう梨華ちゃんと会えなくなるのはヤだし…
 また今度会って、その時に返事聞かせてよ…」
「えっ、でも…でも…」

216 名前:08〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月13日(木)21時58分21秒

 なかなか言葉が上手に出てこない梨華ちゃんは、あたしに背中をさすられながら、なされるがままにあたしに抱き締め続けられていた。そう、嗚咽を漏らしている状況が、逆にあたしたちにとってイイ方向に進んでいるといった感じだろう。
 梨華ちゃんもそれ以上言葉を話そうとはしなかった。ただ、立ち上がろうとしたあたしの腕を引っ張ると、途切れ途切れにやっと言葉を口にした。


 あたしにとって最高の言葉を…


「今度…告白の…返事はするから…
 まだ、一緒にいようよ…もうちょっと…いたい…」

 顔を赤らめながらその言葉を口にする優しい梨華ちゃんは、あたしにとって世界で一番カワイイと感じた瞬間だった。
 そして、【幸せ】とも感じた瞬間。


 あと、数分間しかもたない幸せな【時間】。


 ただ、そんな幸せなキモチのあたしの頭に聞こえてきたやぐっつぁんの現実的な頭を抱えてるかのような言葉に、あたし自身苦笑いを浮かべるだけだった。

『びみょーな…カットラインだね…
 うーん…こーなりゃ、こっちも開き直るか…』




 …ごめんなさい…。


217 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月14日(金)12時11分53秒
胸がすっげ−ドキドキいってったよ‥(*´д`*)
218 名前: 投稿日:2003年02月14日(金)17時50分18秒
ついに言っちゃいましたね。
梨華ちゃんの心境が気になります。
219 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)22時53分30秒


09〜【らすとしーん】〜


 ここを出ると、ここ数週間の今までの関係が全て終わり、この仕事も全て終わる。

 今、梨華ちゃんは今まで見た事がないくらい幸せな表情を浮かべながら、あたしの腕にヒシッと掴まっている。そして、その細い指先は、あたしの指と絡ませている。
 イワユル、【恋人つなぎ】ってヤツだ。
 今までも何回かあったけど、今は全然違うキモチになれる。
 
 少なくとも梨華ちゃんはあたしの事をキライじゃない。
 たぶんスキな方に入る。

 けど…

 この恋人つなぎは期待していいのかな…
 あたしと同じキモチなの…?

 それともただ優しさから同情して…

 ただ、あたしの手に感じる梨華ちゃんの温もりは、梨華ちゃんのホントのキモチはどうであれ、あたしの幸せをくれている。そう、たぶんこの辺りは、マネージャーさんからすれば完全にNGに入っちゃって、もしかしたらカットされるかもしれないと思うけど、そんな事より、あたしは今一番幸せな瞬間だった。ムスメに入れた時くらい幸せなのかもしれない。



 でも、終わる。



 もうすぐなっちがあたしたちの前に現れ、そして…



 ゴメンね…梨華ちゃん…



220 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)22時55分44秒

≪なっちとごっちんは恋人。≫
≪でも、最近のごっつぁんは、なっちより梨華ちゃんの事が気になり始めていたんだね。≫
≪なっちがいるから…って言い聞かせてはいるけど、ここ数週間の事でイシカワの事を恋愛感情で見るようになっていたんだ。≫
≪汚い話、フジモトの事は、イシカワとの仲を深くする為に利用したって訳。≫

≪そんな悶々とした日々を送っていたごっちんだけど、実は梨華ちゃんとのデートの日は、最初はなっちとのデートの予定だったんだね。≫
≪なっちとのデートの予定が決まっていたんだけど、後からイシカワとのデートの約束が取れて、思わずなっちには【仕事】って言ってデートを断ったんだ。≫

≪ごとーって悪役だね…≫
≪まーその辺はアリガチなドラマって事でね。≫

≪2人が一緒にいるトコロを発見したなっちは、『今日は仕事じゃなかったの?』。≫
≪何も言えないごっつぁんに、思わず詰め寄る。≫
≪そこでごっちんは、全ての事をなっちに告白するって訳。≫

 あたしの目に、驚いた表情のなっちが写ってきた。まだ離れているけど、梨華ちゃんも気付いたみたいだ。『安倍さんだよー。珍しーね。』って嬉しそうにあたしに声を掛けてきた。
 これから梨華ちゃんに起こる事を考えると、気の毒なキモチが一層大きくなる。

221 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)22時56分37秒

≪その時に初めて、イシカワは、ごっつぁんとなっちが付き合っていたという事実を突きつけられるんだね。≫
≪ごっちんに告白された事への【キモチ】は【ドッチ】であれ、たぶんかなり動揺はしているはずだよね。≫
≪そんな3人は、人気の少ない路地に入る。≫
≪もちろん、ごっつぁんはあらかじめ下見だけはしといてね。≫
≪と、入ると同時に、ごっつぁんを取られたと思い込んでいるなっちは、急にイシカワに詰め寄り始めるんだ。≫

 少し薄暗い路地裏だけど、少しづつ梨華ちゃんの表情が変わるのが手に取るように分かった。さっきまでの幸せな表情は全く消え、あたしと繋がれていた手も、もうすでにその存在の主を失ってしまったかの様に宙を彷徨っていた。

≪何て詰め寄るの?≫

≪最初は梨華ちゃんに一方的に『ごっつぁんはなっちのモノっ!』って言い寄る。≫
≪どれだけ自分がごっつぁんの事をスキなのかを。≫

≪でも、しばらくすると興奮してきて、訛りの入った口調で、今度は『梨華ちゃんが悪いっ!』って詰め寄るんだ。≫
≪『横取り女っ!』とか…≫
≪『気を引くような事をしてたんでしょっ!』とか…≫
≪『寝取ったんじゃないの!?』とか…≫
≪『梨華ちゃんがごっつぁんをこんなんにしたんだっ』とか…≫
≪とにかくこんなカンジの罵声を浴びせるの。≫

222 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)22時57分18秒

≪ふつーに…ありえなく…ない…?≫
≪まぁ、ドッキリだから、こっちの方がイイじゃん?≫

≪なっちに反論したら…?≫

≪イシカワは、優しいからあり得ないよ≫

 さっきから梨華ちゃんは、俯いてなっちの言う事をじっと聞いていた。ずっと耐え忍んでいる感じだ。
 もう、その姿だけで胸にチクリと針が刺さるような痛みが走るけど、あたしはどうする事も出来ないように、ただ梨華ちゃんの隣に立ち、見守る事しかできない。
 
 ただ、見守るフリをするだけ。
 現実に、台本を崩せないから…
 あたしは、現実ではあり得ないなっちのセリフを聞き続けていた。

≪で、最後には、泣き出して、泣きながら『こんな簡単に人の恋人を寝取るような人と一緒に仕事出来ない…』『梨華ちゃんが辞めないなら、もうなっちがモーニング辞める』って言い出すってわけ。≫

≪…それは…≫
≪まぁ、明らかに変だから、逆にいいんじゃない?≫
≪ホントありえないもんね≫

≪他にも、『つんくさんにチクってやる』とか…≫
≪『週刊誌に暴露してやる…』とか…≫

≪なんか笑っちゃいそう…≫
≪ダメだよ、笑っちゃー≫

223 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)22時57分57秒

 なっちの言葉に耐え切れなくなった梨華ちゃんは、とうとう泣き出してしまった。
 今まで見た事がない姿で泣く梨華ちゃんに、激しく罪悪感が浮かぶ。『もう早くネタバレをしてあげたいっ』、その言葉だけがあたしの頭の中をグルグル駆け巡っていた。『やぐっつぁん、カオリも早く来てあげてっ』って。更に、梨華ちゃんを抱き締めて、慰めてあげたくもなっていたが、やはり、それさえ出来ないのがシナリオ。
 ただただ待つ。

≪もしかしたら泣き出しちゃうかもしれないけど…≫
≪イシカワが泣き出すか、それとも、なっちが【そこ】まで言ったら、オイラとカオリが偶然通り掛ったかのようにソコに現れるから。≫
≪オイラたちがそんなトコに揃っているってのもオカシイじゃん?≫
≪って事で、カオたちが現れたら、なっちが『ねえねえ、ヤグチ聞いてよー』って。≫
≪それが合図でネタバレ。≫
≪【ドッキリ】って書かれた看板を持ったマネージャーさんが、ネタバレと同時にカオリたちの後ろから出てくるから。≫
≪混乱しない?≫
≪一応、マネージャーさんプラス事務所の人を総動員してくれるって≫

≪あと、その裏路地の【通り】の方にあたしたちのロケバスを置いてあるから、まぁ、ネタバレの後、少しMCだけして、そのまま【通り】の方へって感じ。≫
≪その辺は、安心してくださいな…っと。≫
≪頑張ってね♪≫

≪まぁ、最後は一番頑張るのは、女優さんなっちだねー≫
≪ごっつぁんの時みたいに笑っちゃだめだかんねー≫

≪りょーかいっ≫

224 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)22時59分10秒

「あれっ…」
 
 あたしの耳に、やぐっつぁんの何とも言えない間抜けな、ホンワカした口調が聞こえてきた。思わず安堵が零れる。

「珍しーね、こんなトコでさー」
「あっ…ヤグチ…カオリも…」

 やっぱりドッキリでの役とはいえ、かなり辛かったのだろう。大役を務めたなっちもどこかホッとした口調で、その言葉が口から出てきたのだと思う。あたしも『やぐっつぁん…』と呟く。
 そんなあたしたち同様、梨華ちゃんの涙が零れたままだけど、少しやぐっつぁんとカオリの方に視線を動かすと、複雑な表情を浮かべた。
 確かにそうだろう。
 一番最初に何を思うのか。
 さっきから信じられない出来事が立て続けに起こっている中、こんな街中でムスメのメンバーに立て続けに出会うという、摩訶不思議な出来事まで続いているのだし。
 とても複雑な表情の梨華ちゃんは、涙を隠すように、普段ではしない仕草、袖で涙を拭うと、『珍しいですね』と不自然な笑顔で声を掛けた。
 
 その痛々しさに思わずズキッと痛みが走ったあたし。
 
 そして、次になっちの口から出たネタバレの合図の『ねえねえ、ヤグチ聞いてよー』の言葉に、今までなっちに掛けられた言葉を思い出し、やぐっつぁんたちにまでバラされると思った為か、梨華ちゃんは更に顔をシカメ、あたしの方を、辛そうに見つめてきた。
 
 『助けて…』、その言葉が今にも聞こえてくるくらいの視線で。
 
225 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時01分55秒
 
 と、その時、その梨華ちゃんの向こうで、カメラを持ったマネージャーさんと、看板を持ったマネージャーさんが現れたのが、あたしの目に入ってきた。



 やっとだ…

 これで全て終わる…



 そう思った瞬間、あたしは一気に疲れがドッと押し寄せてきた為か、辛そうな表情から、思わず顔に笑みが零れてしまった。
 それを敏感に感じ取った梨華ちゃんが、不思議そうな表情を浮かべ、あたしが笑みを零した視線の先を追いかけるように、視線を向ける。
 そんな梨華ちゃんの目には、【ドッキリ】と派手に書かれた看板と照明を手に持っている見慣れた自分のマネージャーさんに、その手前には、カメラをまわす、更に見慣れたマネージャーさん、更にその前で笑みを零してるやぐっつぁんにカオリ、普段では見せないほど険しい表情を、今さっきまでしていたなっちの笑みを零している姿が入ってきたのだろう。一瞬硬直した後、全てを悟ったのか、脱力したかのように地面にペタリと座り込んでしまった。一気に照明があたしたちに照らされると、やぐっつぁんが笑顔で口を開いた。

「そーゆ事。」

226 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時02分50秒

 そのままマネージャーさんから看板を受け取ると、座り込んでしまった梨華ちゃんの前に看板を見せ、『お疲れ様』の声を掛けた。そして、梨華ちゃんに手を差し伸べ、立ち上がらせる。放心した表情の梨華ちゃんは、立ち上がるも、フラフラと足元がおぼつかない様子で、やぐっつぁんに思わず抱きつく。
 目の前で抱きついている可愛いイモウトの背中をポンポンと叩いてあげ、『ホントお疲れ』の言葉を掛けてあげると、一気に張り詰めていたモノが切れたのだろう、さっきまでと同様に激しく泣き出してしまった梨華ちゃん。

 子供のように泣きじゃくる。

 たださっきまでと違うのは、責められる悲しさではなく、その涙は安堵の為だと思う。あたしたちは梨華ちゃんが泣き止むまで見守った。

 そして、どれくらい時間がたったのか、あたしたちの事を聞きつけた人が、人だかりの山を築き始めた頃、完全に涙が収まってきた梨華ちゃんにも笑顔が零れていた。『ヒドイですよー』と笑顔を見せた梨華ちゃんにホッと胸を撫ぜ下ろしたあたしたちは自然と笑顔が零れていた。
 そんなあたしたちを見て、更に笑顔を浮かべる梨華ちゃん。

「安倍さん、怖すぎでしたよー」

 梨華ちゃんのその言葉になっちは、ピシッとピースをカメラに向け、『うまかったっしょ?』と、ニッコリ。

「女の人って恋になると怖いなーって…」

 梨華ちゃんのその抜けた口調の言葉に、『何だよそれー』と満面の笑みを浮かべるやぐっつぁん。そんなやぐっつぁんを見て、梨華ちゃんも更に笑顔を浮かべる。
 と、その時、フト何かを思いついたのか、『あれ…』と声をあげると、考え込む仕草をし始めた。

227 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時03分30秒

「どーしたの?」

 そう聞くカオリに…『あのー』と口を開くと、また考え込む。そして、しばらく見守るあたしたちに向け、何とも神妙な面持ちで口を開いた。

「【全部】ドッキリですか…?」
「えっ…」

 何を言われるのかと、緊張していたあたしたちは、一瞬虚をつかれたかのような表情を浮かべる。でも、いつも通り【周りの空気を止める】、何とも梨華ちゃんらしい【抜けた】言葉を耳にし、思わずみんなに笑いが洩れた。

「さすがイシカワ。遅いよっ」

 やぐっつぁんの言葉に笑顔を浮かべるも、もう一度みんなを見回し、首を傾げる。そんな梨華ちゃんを見て、カオリが『うん、全部だよ。』とさっきの梨華ちゃんの質問の答えを口にしてくれた。なっちも『バレンタインの日に起こった事から全部ね…』とウインク付きでカオリの言葉に付け加えた。

「美貴ちゃんとの事も?」

 あたしの方を見た梨華ちゃんに、あたしが代表して頷く。

「全部…?」
「まぁね…」

228 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時04分14秒

 すると、次の瞬間、そのあたしの答えを聞いた梨華ちゃんの表情が変わるのが明らかに分かった。たぶんみんなも気付いているはず。さっきまでの笑顔は少し消え、どこか沈んだ様子さえ感じられる表情になっていた。
 やぐっつぁんが慌てて声を掛ける。

「あれっ?
 イシカーさん、びみょーにリアクションおかしいんですけどっ」
「えっ…」
「凹みすぎーっ」

 あたしたちの不思議そうな表情を見て、慌てて笑顔を浮かべた梨華ちゃん。

「うん。ドッキリでよかったですよー」

 どこかぎこちない表情の梨華ちゃんに、更に思いっきりイジワルっぽい口調でやぐっつぁんがツッコム。

「ってゆーかー…何?…ドッキリで残念だった事でもあるのかなー」

 『ないですよー』とおばさんみたいに手を振る梨華ちゃんの背中を、『んー?オイオイ』と肘で突付くと、『はっはぁ〜〜〜ん』と手を叩いた。そんなやぐっつぁんの表情は、完全にいつもの梨華ちゃんをイジルモノへと豹変していた。楽しそうにイヤラシイ笑顔を浮かべながら。

「ねぇ、ぶっちゃけ…ぶっちゃけさ…」
「ぶっちゃけ…?」
「マジで惚れちゃってた?」

229 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時05分17秒


 えっ…?


 一瞬緊張が走るあたしの胸の中。


 やぐっつぁんの冗談っぽい口調のその質問に、ドキッとなったのはあたしだけじゃなく、梨華ちゃんもそうだろう。顔を赤らめ下を俯いてしまった。
 でも、やぐっつぁんにイジラレルのはよく慣れているからなのか、梨華ちゃんも冗談で返そうと、パッと満面の笑みを浮かべると、冗談っぽい口調で口を開いた。
 まぁ、簡単な話、やぐっつぁんの冗談にノッタってやつかな?

「まぁ…ぶっちゃけ?ぶっちゃけですよ?」
「うん」
「ぶっちゃけ、安倍さんに敵対心メラメラ、とか?」

 そう冗談を口にする梨華ちゃんに、『なっちの口撃より、なっちとごっつぁんが付き合ってる方がショックだったんだー?』と、やぐっつぁんやみんなはツボに嵌まったかのようにお腹を抱えていた。

「って言うかー。ヤグチさんだって絶対にイシカワの立場だったら落ちてますってばー
 メールで【君が好きです】ですよー」
「あーあれね…」
「あんなのごっちんにされたら…」
「まー…ごっつぁんなら…ごっつぁんならね…」

 1つウインクであたしを見つめるやぐっつぁんに、一瞬ドキッとなったあたし。
 それに気付き、また思わず溜息が洩れる。
 なっち、梨華ちゃん…で、やぐっつぁんまで…


230 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時05分55秒


 ヤバイなぁ…
 病気かも…


 そんな沈みそうになっていたあたしだったけど、仕事のキモチはまだ残っていた事もあり、一応やぐっつぁんの言葉にノル事が出来た。

「やぐっつぁんなら、いいかもー♪」

 そして、その言葉が言えた事に思わずホッとなり、笑顔が出ると、次に聞こえてきた梨華ちゃんの猫なで声に、また笑いが零れる。

「えぇっーっ、ごっちーん。イシカワは?」
「はいはい。イシカワはやっぱりごっつぁんにフラれました」
「ちょ、ちょっと待って下さいよぉーぉ」

 ドッと、笑いが零れるあたしたち。

「まぁ、これ以上話してたら、イシカワさんのバケの皮が【剥がれまくり】なんでね。」
「はーい」
「まぁ、今回の教訓。
 イシカワさんはアイドルとしての自覚が足りなかったって事で、しっかりアイドルとしての自覚を持ちなさいね。恋愛にウツツを抜かしている暇はありませんからね。」

 そのやぐっつぁんの言葉に、また笑いが零れたあたしたち。
 ある意味一番締めらしい締めになったそのやぐっつぁんの言葉に、『はぁーいっ。これからは気を付けまぁーす』と舌をペロッと出し、笑いながら言う梨華ちゃんは、カメラに向けて敬礼を1つ。最後はその梨華ちゃんの恥かしそうな敬礼のアップ。

231 名前:09〜【らすとしーん】〜 投稿日:2003年02月15日(土)23時06分28秒

 そして、ホントの締めの為に、やぐっつぁんが、みんなを輪になるように集めた。
 その間ストップするカメラ。

「じゃぁ最後は『さて、以上っ。モーニング娘。と後藤真希でしたー』で締めようよ。」
「うん。じゃぁ、『さて、以上っ。モーニング娘。と』はなっちたちで、『後藤真希でしたー』はごっつぁんでいいんじゃない?あー、あと、最後に『だいせいこー』ってみんなで言ってもイイんじゃない?」

 やぐっつぁんとなっちの提案にみんな頷くと、もう一度さっきの立ち位置に戻る。
 そして、やぐっつぁんの言葉のその後、全てが終わる為に、カメラが回り始めた。

 すると、一瞬『ホントに終わるんだぁ』と切なくなったあたし。
 でも、自分だけ切なくなっても、終わりは終わり。

 キチンと締めなきゃ。

「さて、以上。モーニング娘。と」
「後藤真希でしたー」

 あたしは、今までの全てのキモチを吐き出すように、大きな声を出した。
 切なさを吹き飛ばすように…

「だいせいこーっ」

 うん…

 カットが掛かる言葉が、2月の空気同様、あたしの胸に冷たくいつまでもあたっていた。
 更に、ロケバスの温かい空気に包まれてもなおまだ…

232 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月15日(土)23時12分25秒
次の第5話が最終話です。
>>217:名無し読者さん
 そうですか^^そう言って頂けると書いてる方としても嬉しいです^^
 結構…一番気合入れて書いてたトコなんで(w
 これからもヨロシクお願いします〜
>>218:@さん
 レスありがとうございますm(_)m
 梨華ちゃんのキモチは…もうちょっとしたら出てくるかも…?
 遅くてもあと四回の更新で終わりますが、ヨロシクお願いしますm(_)m
233 名前:RYO 投稿日:2003年02月16日(日)00時44分21秒
ついにばらしちゃいましたねー。
ごっちんと梨華ちゃんはどうなっちゃうんだろう。
うまくいくことを願ってます。
234 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時30分04秒


第05話〜【うちあげ】は【じごく】?〜


01〜【いかりまーく】〜


 キャスケットを被り、日が落ちてから少し歩きやすくなった東京の街を進む。ただ、今日は初めて通る街だ。やぐっつぁんから貰った、最寄の駅から【そこ】までの道順を示してくれたメールを見ながら、周りを不自然に見回しながら歩くあたし。

≪打ち上げ?≫
≪そー≫
≪一応、大成功で終わったんだし、オイラたちだけでやろっかってさっ≫
≪マネージャーさんにも内緒でさっ≫
≪へー≫
≪いいねー≫

≪でしょ?≫

≪ドコに行くの?≫

≪圭ちゃんに教えて貰ったんだけど、美味しい焼き鳥屋さんがあるんだってさー≫
≪焼き鳥かぁ♪≫

 ずっと進むと右手にコンビニがあって…そこを右。

 普段だと絶対に1人で足を踏み入れないような居酒屋群。あたしは不思議なものでも見るかのようにして、両側に居並ぶそれらの森をくぐる。

235 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時30分41秒

≪ごっつぁーん、聞いてよー≫
≪オイラ、急に仕事が入っちゃってさ、遅れそうなんだよねー≫
≪だから、とりあえずカオリとなっちと梨華ちゃんで先にやっといていいよ≫

≪そーなんだ≫
≪待つけど?≫

≪いーよいーよ。≫
≪30分も掛かんないしー≫

 どれくらい進んだのだろうか。
 やぐっつぁんのメールだと、【4つ信号を越した辺りの、右上に赤の看板が出てるから、すぐ分かるよ】って書いてあったけど、なかなかその【4つの信号】をクリアーできないあたし。
 
≪ごめーん、ごっつぁーん。≫

≪どーしたの?≫

≪カオリも仕事が入ってさ、ちょっと遅れるみたいなんだよねー≫

≪そーなんだ…≫
≪じゃ、遅らす?≫

≪ううん、梨華ちゃんと、なっちで先に入ってテキトーに頼んでていーよ。≫

≪んぁ、分かったー≫

 いつまでたってもあたしの前に現れてくれない、3つ目の信号。
 もういい加減やぐっつぁんに電話でもして聞いてみようかと思ったその時だった、微かに信号の赤が2つ連なって立っているのが、あたしの目に入ってきた。

236 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時31分24秒

≪ごめーん、ごっつぁーん≫

≪なになに?≫

≪今度はさ、なっちにも仕事が入ってさー≫

≪ホント遅らせよっか?≫

≪ううん、いいよ。≫
≪どうせさ、3人共遅れるって言っても、30分も掛かんないくらいだしさ。≫
≪予約をヘンコーする方がめんどーでしょ≫

 あっ、ここかぁ…

 そして、やぐっつぁんからのメールの通り、その信号の右上あたりに視線を移したあたし。そのメールの通り、そこには赤い電光看板にそのお店の名前が書かれていた。
 その名前だけだと、とても高級な雰囲気はないように思えたあたしだったけど、その予想は見事に覆されたカンジだ。ある意味、お店の名前がちょっと損をしてるんじゃないの?って。
 
≪梨華ちゃんと2人だけだからって、からかっちゃダメだかんねっ≫

≪なにをー?≫

≪たぶん、まだごっつぁんの事…≫

≪もーやめてよー≫

≪ごめんごめん≫
≪まぁ、ウチ等が着くまで、何かテキトーに頼んで、ゆっくり2人で語っといてよねー≫

≪うん。≫

≪んじゃ、ヨロシクー≫

237 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時32分00秒

 ただ、やっぱりその外観は、高級感溢れるモノになっていた。
 たぶん普通のカッコ、及び子供だけだとお店の中にでさえ入れてくれそうにないくらいに。

 圭ちゃんが教えてくれたって言ってたけど…
 やっぱりその前は、裕ちゃんかな…

 あたしはキャスケットを少し目深にすると、お店の中に足を踏み入れた。
 少し人の目が気になるこの瞬間、少し緊張感を持たせたあたしだったけど、入って一気に拍子抜けする。そして、その時になってやっと、やぐっつぁんの言葉をもう1つ思い出した。

≪あっ、そうそう。≫
≪【そこ】って、ちょー高級ってカンジ?≫

≪そーなんだー≫

≪うん。≫
≪芸能人ご用達の高級店ってヤツらしーの≫

≪へー≫

≪だから、【焼き鳥屋さん】っていっても、心配しなくていいってさ≫
≪けーちゃんが言ってたよ≫

 なるほど…
 それが今になってやっと実感出来たってカンジだ。

 そう、入ってすぐにお客さんがいる店内に入ると思っていたあたしだったけど、【そこ】から気を利かせているお店みたいだった。

238 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時32分48秒

 入ってすぐは受付があるだけで、すぐ近く、一番手前に一枚の扉があり、その扉を隔てた向こうが一般のお客さん用のフロアらしく、賑わっている雰囲気がよく感じられた。
 そして、その1階以外の上の階、5フロアーは全部個室という、プライバシーをかなり尊重してくれているお店で、それが一番の理由と言う事もあり、芸能人に人気があるみたい。
 あと、店員さんもキチンと教育されているのも、その人気の内の1つに入るそうだ。
 
 現実にあたしはすぐにその恩恵を受けた。
 丁寧な物腰の若い店員さんに、『5人で予約していた【ヤグチ】ですが…』と言うと、ごく一般のお客さんのようにあたしを案内してくれ、やっぱり、こういうお店だと、普段から芸能人とかを見慣れているのか、案内されている間にも、色々な店員さんと出会うけど、特別驚く表情を見せる事なく、お辞儀をし、あたしが通り過ぎるまでよけてくれる。

 へー

 【焼き鳥屋さん】でもこんなトコあるんだー

 それがあたしの素直な感想。
 思わず感嘆の溜息が洩れる。

「こちらです」
「あっ、どーも」
「お連れの方は、お1人だけいらしています。何かあれば、いつでもお呼び下さい」
「あ、はい」

 キレイなお姉さんのあまりにもの腰の低さに、こちらも思わずお姉さんに頭を何回もさげつつ、別れ、部屋の方に足を向けた。
 そして、ドアを開けたあたしは、靴を置き、もう1つある襖を開け、中に入ろうと手を伸ばそうとしたが、そこまできて一瞬ためらう。
 イヤな考えが頭の中をよぎった為。



 そー言えば、梨華ちゃんと話すの【あの日】以来かな…

239 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時33分52秒

 そう、あの日以来梨華ちゃんとは、会ってもいないし、メール交換もしていなかった。
 って言っても、あの日から6日しかたってないんだけど。

 まぁ、それでも、やっぱりその日までは、恋人同士くらいにメール交換をしていたから、どうしても6日【も】と気分的に思ってしまうんだよね。
 あたしは【あの】直後、結局は梨華ちゃんをずっと騙していた事にもなるから、みんなと別れてからでも、何かメールを送っておきたかったと思ったんだけど、携帯に手は伸びるものの、どうしても指が動かなかった。
 それに、もしかしたら梨華ちゃんから、メールが来るかもしれないという、甘い考えもあったから。

 いつかくるかな…いつかくるかな…って…
 そのまま6日。

 あのあたしが告った直後の梨華ちゃんはすごい嬉しそうだったから、何となくあたしの方が立場上【上】と思っていたからってのもあるのだと思う。
 結局は、勘違いだよね…梨華ちゃんからはメールもこなかったし…

 あっ…もしかして怒ってたの…

 一瞬、そんな暗い考えが浮かんだあたし。襖に伸びかかっていた手まで、ダランと垂れる。


 【怒る】


 その選択肢はあたしの頭の中に全く浮かんでこなかった選択肢。
 それぐらい、梨華ちゃんがあたしに対して【怒る】なんて思いつかない事だったから。


 あるわけないよね…

240 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時35分17秒




 でも…全くメールまでこなかったんだし…




 はぁ…




 と、ぼぅっと考え込んでいたあたしの目の前の襖が急に開き、思わずビクッと後ろに下がる。目の前には、不思議そうな表情をした梨華ちゃんが、首を傾げ、立っていた。

「どーしたの?」
「えーっと…」
「早く入ったら?」

 その当然のごとく口から出てきた梨華ちゃんの言葉だったけど、あたしは凹みそうになる。その梨華ちゃんの言葉使いは、あたしが今まで聞いた事がないくらい、梨華ちゃんとは不釣り合いな口調だったから。

 やっぱり、怒ってる…?

 そう、今まで…っていうか、あたしが梨華ちゃんと出会ってから、梨華ちゃんがあたしに対して【こんな】口調で話し掛けてきた事がなかったからだ。いつもいつもあたしに気を使うかのように、『キショイ』とか、どんな事を言っても、ニコニコ笑っていた。冗談で【怒る】という事もなかったんだ。イヤな顔1つせずに、笑顔をたやさず、あたしの相手をしてくれていた。
 いつでもあたしの事を腫れ物に触るかのように…

 
 それなのに…
 
241 名前:01〜【いかりまーく】〜 投稿日:2003年02月16日(日)21時36分31秒
 
 どうしても、怒ってるように感じられたその口調に、あたしは思わず敬語で返す。
 
「あっ…はい…」

 そんな梨華ちゃんの前を俯きながら通り抜けると、梨華ちゃんが荷物をおいてある方とは反対の方にソワソワと正座で座り、そのあたしの心配の元である【ヒト】があたしの前に座るのを、様子を探るかのように、上目使いでジッと見つめた。

 これから、どんな言葉を掛けられるか…

 あたしの心配をよそに、当の本人はあたしの心情を更に落とすかのように黙って座ると、携帯を取り出し、座椅子の背もたれに体重を掛け、ラフな姿勢になる。
 そして、カチカチとメールを一生懸命打ち始めた。
 まるであたしがその場にいないかのように。


 はぁ…


 ソワソワしたあたしと、まるでオデコに怒りマークを浮かべながらメールに熱中する梨華ちゃんの2人だけの部屋。ものすごい気まずい雰囲気が、この部屋一帯に包まれる。

 って、それはあたしが思ってるだけなのかもしれないけど…




 どーなってんだよぉー




 あたしのココロの叫びが空しくこだまする。

 
242 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月16日(日)21時41分05秒
>>233:RYOさん
 レスありがとうございますm(_)m
 梨華ちゃんとごっちんはどうなるのでしょうか…
 もうしばらくお付き合いしていただけると嬉しいですm(_)m
243 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月16日(日)22時27分04秒
まぁ普通は怒りますよね(^^;)
本気ならなお更・・・
頑張れごっちん
244 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時48分36秒


02〜【こくはく】〜


 あたしがこの部屋に入ってから何分くらいたったのだろうか…

 相変わらず梨華ちゃんは携帯をイジル。
 それをチラチラ見ながら、あたしも仕方なく携帯をイジル。


 その間、全く会話ナシ。


 やっぱりマジで怒ってたんだ…
 
 この数分でそう確信したあたしは、会話を作る機会を作ろうと、思案に入った。
 と、すぐに頭に案が浮かぶ。そう、皮肉にも、この梨華ちゃんとの数日間のドッキリで、こういう状況で瞬時に【ドラマ的】な【駆け引き】や【判断】を持つことが出来たあたしだから。
 そんなあたしが出した結論は…

 まぁ、大げさに言ったけど、やっぱ単純に、メールだよね。

 普通に話し始めるより、一番簡単で、一番自分のキモチ伝えやすい手段。

 【Subject : あのー】
 【やっぱ怒ってる?】

 携帯にそう打ち込み、【送信】ボタンを押し、数秒待つあたし。梨華ちゃんの携帯のバイブが震えるのが分かり、少し上目使いで梨華ちゃんを見る。すると、その梨華ちゃんの顔が緩むのに気付き、少しホッとなった。でも、あたしがホッとしたのも束の間、梨華ちゃんの表情は次の瞬間には、また憮然としたモノになり、そしてこっちに顔を向けた。

245 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時49分24秒

 バチッとぶつかり合う2つの視線。

 片一方は、相手を睨むもの。
 もう一方は、今にも逃げ出しそうな弱々しい【それ】。

 しばらくその2つの目がぶつかり合っていたが、前者の力強い目に、後者の揺れる目が敗れたのか、視線を落とす。そして、思わず呟く。


「ごめん…」


 あたしのその弱々しく呟いた言葉に、梨華ちゃんは小さく溜息を吐くと、パチンと携帯を閉じ、視線を落とした。

 カチカチと部屋に置かれた時計の音がやけに大きく聞こえ、耳が痛くなる。1,2,3…その沈黙に、ついつい胸の中で数を数えてしまっていたあたし、その数が50を数えるくらいになった時、やっと梨華ちゃんの重たい口が開いた。

「ごっちんは、悪くない…悪くないよ…お仕事だったんだもん。」

 悲しそうにその言葉を口にする梨華ちゃんにホッとなるあたし。
 微かに笑顔を浮かべ、梨華ちゃんを見つめる。
 でも、次に聞こえてきた言葉に、少し混乱する。
 
「悪いのは、わたし…」

 『どーして…』と口からその言葉が出掛かるも、梨華ちゃんの悲しそうに浮かべた笑顔に、思わず口をつぐんでしまう。

246 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時50分11秒

「夢物語みたいな事が現実に起こってさ…」

 夢物語…?

「自分だけ勝手に浮かれてさ…」

 浮かれて…?

「【現実】に勝手に怒ってさ…」

 怒る…?

「それをごっちんにアタルなんてさ…」

 あたしを見つめ、もう一度溜息をつく。

「わたしって、ワガママだよね…自分勝手だよね…」


 えーっと…どーゆ意味…?


 あたしの都合のイイ方に考えちゃって…いいの?


「ごめんね…」
「あっ…うん…」

 梨華ちゃんの沈んだ謝罪の言葉に、無意識の内に頷くあたし。そして、あたしの頷いた事に対してか、笑顔を見せると、『ごっちんの隣に座っていい?』と、顔を赤らめ聞いてきた。
 そんな梨華ちゃんの久しぶりの可愛い仕草に、思わずカクカクとロボットのように頷くと、腰を少しずらす。それを見た梨華ちゃんは、『ありがと♪』と嬉しそうに言い、腰を上げた。

247 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時50分45秒

 数秒後、『よいしょっ♪』の声と共に、3日ぶりの梨華ちゃんの香りが左から届く。
 香りと共に、梨華ちゃんの柔らかい感触も届く。
 そう、腕を絡めてきたって事。
 そして、あたしを斜め下から見上げると、とても幸せそうに笑顔を見せた。その笑顔は、まるで恋する乙女が、その相手を見つめる時のようだ。


 あれ…ちょっと…おかしく…ない…?


 クラクラとなるあたし。


 そう…確かにヤバイよ…


 また3日前の【恋愛ごっこ】の感覚が頭の中をよぎる。あの【恋愛ごっこ】をする前だったら、梨華ちゃんが隣に来るだけで、こんな感覚になるなんて事は、余程の事がない限り滅多になかったのに、【あれ】のせいで、今、結構あたしのココロは恋愛的な要素でドキドキしてる。
 そして、なんだか梨華ちゃんが告白してきそうっていう、現実じゃありえない、あたしの妄想でしか考えられない事が起こりそうな予感も。

 ありえないよ…
 梨華ちゃんがあたしに告白してくるなんてさ…

 あたしたちは家族みたいにお互いを愛している【メンバー愛】だもの。
 梨華ちゃんもどうせ【そう】思ってるはず…

 そんな簡単に、都合よく…女子校みたいな事が起こるなんて…

248 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時51分30秒



 あっ、でもムスメもある意味女子校か…
 しかも憧れる要素は、女子校以上にありえそうかも…


 
 って、何都合のイイ方に考えてんだよっ、ごとーはっ



 はぁ…



「わたしね…」

 少しテンパッてるあたしを尻目に、梨華ちゃんは可愛い口を小さく開いた。
 囁くように。 
 ただ、その声はどこか緊張した様子で、上ずったもの。いつも一緒にいたメンバーなら分かるといった具合だけど、今のあたしも同じく、声を出したら緊張しているのがバレバレなくらい緊張してるから、分かるような気もする。
 これから何を言われるのか…今にも心臓が飛び出してしまいそうだ。
   
「ホントに嬉しかったんだぁ」

 そう言葉を発すると、真っ赤なホホを更に赤くさせた。
 チラッとあたしの方を見て、じーっと梨華ちゃんを観察、ううん、見惚れているあたしと目が合うと、慌てて俯き、指遊びを始める。


249 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時52分33秒


 カ、カワイすぎ…


 キュウって今にも心臓が鳴っちゃいそうなくらい、その梨華ちゃんの仕草にココロを持っていかれそうになったあたし。その言葉が発せられる可愛い口に、あたしの視線は注がれていたけど、それよりも、これから梨華ちゃんが言う言葉の方が気になるのが自然、じーっと聞き耳を立てずにいられなかった。

 そんなあたしを知ってか知らずか、しばらく指遊びをした後、少し落ち着いた声で『うん』と1つ頷き、もう一度あたしの方に顔を向けた。


 見つめ合う事、数秒。


「ごっちんの事…スキ…」

 その梨華ちゃんの口から発せられた甘い響きの言葉を聞いた瞬間、あたしのココロにズシンと重いモノが落ちた。そして、何かがハジケ、頭の中が真っ白になった。

「…アイシテルんだぁ…」

 あっ、フラレテも、コクられても、頭は真っ白になるんだ…
 ビックリしたらなるんだね…

 一瞬、そんなバカげた思考が浮かび、慌てて頭を振る。
 しばし見つめ合う2人。あまりにも長い沈黙が続いて、気まずい雰囲気に梨華ちゃんが口を開いた。

250 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時53分08秒

「ごっちんから美貴ちゃんについて相談されてる時、ホントにショックだった…」

 そっか…

「それ以上に、ごっちんからスキな人がいるって告白を受けた時、泣きそうだったの…」

 梨華ちゃんの1つ1つのその言葉が、あたしに暖かさをくれ、ココロを落ち着かせてくれた。

「その時に確信したの…」

 もう一度、俯いていた顔を上げると、真剣な表情であたしの目を見つめてきた。その目は、とても強い意志が込められ、圧倒されそうになるあたし。
 その次に聞こえてきた言葉にも、思わず声が詰まる。

「この前言ったから…今度会った時に告白の返事をするって…」
「で、でも…あれは…」

 そう、今、自分は、自分でもすごい動揺しているのが、明らかに分かった。確実に嬉しいのに、どうしてか素直に喜べないあたし。

 だって…【ありえない】もん。

 こんな事…

「でも…」

 すごい動揺しているあたしを見て、さっきまでの少しだけ浮かんだ微妙な笑顔が急に消えるのが分かった。悲しそうに俯くと、『ごめん』と呟く梨華ちゃん。

251 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時55分28秒



 あっ…



「まってっ!」

 思わず叫ぶあたし。


「ちがうの…ビックリしたから…【ありえない】って…」


 2人の息使いだけが聞こえそうで、それくらい近い2人の距離に、あたしはそれっきり言葉が出てこなくなってしまった。
 そんなあたしを見つめる梨華ちゃんと、しばし見つめ合う。

 と、フト梨華ちゃんがあたしに体重を掛けてきた。
 それと同時に『あっ』の声を零し、倒れ込む。

 あたしを下にして、梨華ちゃんが体重を掛ける。梨華ちゃんの右手があたしの腕から、背中の方、左手は自分の体重を支えるかのように、あたしの頭のすぐ隣、あたしの腰あたりに馬乗り状態になる。そんな梨華ちゃんの驚きの突然の攻撃に、なすがままの状態で、倒れ込んでしまったのはあたし。

 さっきよりは顔の距離は少し離れたけど、更に危ない状況になったのは言うまでもないよね。さっきよりもドキドキと高鳴る心臓が、今にも口から飛び出してきそうだ。

252 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時56分17秒



 どうしよ…



 この状況が嬉しいはずなのに、あたしの頭の中は複雑だった。やっぱり【現実】の事が占められているからなのか、それとも、【女同士の現実】って事が占められているのか、複雑なキモチ。たぶん、【アイドル】じゃなくって【普通】の【女のコ】だったら、おおはしゃぎで…このまま、なすがままだと思うけど…
 あたしたちはアイドルだし…
 普通の恋愛でさえダメなのに…女のコ同士なんて…



 あれ…?
 なっちの時はこんな事思わなかったのに…

 あっ、もしかして…
 恋愛感情って一方通行の時は、受け入れて欲しいってキモチが強いけど、ホントにココロの底から大スキな相手も自分の事がスキだって分かったりすると、【現実】を考えてしまうものなのかもしれないよね。



 結局はあたしもワガママな女ってやつかな…



 と、そう思ってから、少し冷静になったあたしに、自分で驚いてしまった。

 あぁ、そっか…
 あのドッキリのおかげで、なっちの時よりこんな状況に落ち着いて対応できるようになっちゃったのかもね…って。

253 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月17日(月)22時56分58秒

「ごっちんの事…スキでスキでたまらないの…」

 梨華ちゃん…

「いつもいつもごっちんの事ばっかり考えて…」

 ホントは…あたしもそうだよ…

「ごっちんの事抱き締めたくて…」

 あたしも…

「一緒にいたくて…」

 そーしそーあいって…やつだったんだ…
 いいのかな…?

「あたしだち、ホントはダメだけど…黙ってたら大丈夫…」
 
 いいの…?

「2人だけのヒミツにしようよ…」

 梨華ちゃんとあたしだけの…ヒミツ…

 あたしたちは…
 いいの…?




 夢みたい…だけど…




 ホントに、いいの…?




「ねぇ…キス…して…いい…?」


254 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月17日(月)22時59分36秒
>>243:名無し読者さん
 レスありがとうございますm(_)m
 たしかにホンキなら…ですよね…^^;
 ごっちんにはもうちょっと頑張ってもらいます(w
 次回で最終回ですが、よろしくお願いしますm(_)m
255 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月17日(月)23時06分25秒
これも…ドッキリ企画とかじゃないよね(w
256 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月17日(月)23時23分37秒
あぁ〜幸せな展開(^^)
次回で最終回って寂しすぎるかも
257 名前: 投稿日:2003年02月18日(火)17時55分14秒
梨華ちゃんの本心ですよね。
ハッピーエンドに直進しちゃってください(w
258 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時32分45秒





 えっ…?





 突然の梨華ちゃんのその言葉に、落ち着き始めた自分の心臓がもう一度激しく鼓動し始める。潤んだ瞳であたしの事を見つめる梨華ちゃんを、ただただ見つめ返す事しかできないあたし。次に聞こえてきた梨華ちゃんの言葉も、夢物語の続きのように感じられた。

「よかったら…目…閉じて…」




 キスを受け入れてくれるのなら、目を閉じて欲しいって事だよね…

 


 あたしは拒む事なく瞳を閉じた。




259 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時33分57秒


「ご、ごほっ!!」

 と、あたしが目を閉じて数秒たった時だった。突然、咳払いが聞こえ、ビクッとなり思わず目をあけたあたし。目の前の梨華ちゃんも、驚きの表情で玄関の方を見つめていた。つられるようにして目を向けたあたしの視線の先には…苦笑いを浮かべたカオリとなっち、そして憮然とした表情のやぐっつぁんがあたしたちの事を見つめていた。

 ヤ、ヤバイッ!

 そう思った次の瞬間には、飛び起きようと、体を起こそうとしたあたし。
 ところが、あたしの上にいた梨華ちゃんは、特別慌てた様子はなく、やぐっつぁんと同じく、ちょっと可愛くぶーたれた表情で3人の方を見つめていた。
 そして、次にその梨華ちゃんから聞こえてきた言葉に、自分の頭の中にハテナマークが浮かび、思わず『えっ?』と声が零れたあたし。

「もうちょっと続けたかったなぁ」
「ダメダメ。天下の後藤真希がこーなっちゃったんだからさっ」

 カオリの苦笑いを浮かべながらのこの言葉に、一瞬【ある】言葉が頭に浮かんだあたし。

「って言うか、ごっつぁん、ホント素直でいいコだよねー
 何でも信じちゃうんだもん」

 やぐっつぁんの言葉に確信。一気に張り詰めていたモノが抜ける。
 そう…『またやられたのっ?』ってカンジだ。みんなの顔をキョロキョロを見回すと、みんな笑顔を浮かべ、あたしの事を優しく見つめていた。
 そして、『はいっ』とやぐっつぁんが襖の向こうから、あの時と同じ看板を取り出し、ニッコリあたしに見せた。
 一気に顔に熱がこもったあたし。

260 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時34分47秒




 ぐっ




「もぉ〜マジでぇ〜っ!?」

 思わず出た悲鳴が部屋に響き渡る。
 そんなあたしを楽しそうに見つめている梨華ちゃん、やぐっつぁん、なっちにカオリ。




 ひ、ひどい…




「ごめんね、ごっつぁん。今回のは、オイラのせいじゃないよ。
 ぜーんぶ、イシカワのせいだからさ。
 こんな素直なごっつぁんを騙そうなんて、イシカーさんヒドイよねー」

 そう言って、苦笑いを浮かべるやぐっつぁんは、部屋の中に入ってくると、梨華ちゃんの頭を小突くマネをして、さっきまで梨華ちゃんが座っていた席に腰を下ろした。そのやぐっつぁんの言葉に梨華ちゃんは、ペロッと可愛らしく舌を出すと、『ごめんね』と両手を合わして謝り、やぐっつぁんの席の隣へ。

261 名前:02〜【こくはく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時35分34秒

 そして、カオリが顔を崩しながら、あたしの隣に腰を下ろし、その隣には、『ちょっとごっつぁんのリアクションがホント残念そうで、なっちと違うくて、なにげーにショックだよー』と満面の笑みのなっちも座る。

「安倍さんに勝ったッ」

 そう満面の笑みでピースをする梨華ちゃんは、さっきまであたしにコクってた時の【オンナノコ】な姿は完全に消え、いつものムスメにいる時のモノになっていた。
 その後に聞こえてきたカオリの言葉にも、いつものムスメの中でからかわれている時と同じように、少しホッペを膨らます。

「ごめんね、ごっちん。
 イシカワがね、どーしても【リベンジドッキリ】をしたいってうるさくってさー」
「飯田さんも結構乗り気だったじゃないですかー」

 少し怒った表情だったけど、その中には当然のごとく、あたしの事を騙せたという事からくる満足感からなのか、笑顔を隠す事は出来なかった。そして、みんなも同様。

 そんな楽しそうなみんなに合わせるように、あたしも笑顔を浮かべていたはずだけど、やっぱりココロの底からは笑えてなかったと思う。



 やっぱり夢みたいな話なんてある訳ないよね…



 苦笑いを浮かべながら、みんなに話を合わしているだけのあたしは、横目でしか梨華ちゃんの事を見れずに、人知れず溜息を零すだけだった。


262 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時37分01秒


03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜


 今回の事は、ほとんど梨華ちゃんだけで仕組んだ事なんだって。
 もしかしたら、あたしがやってきた【ドッキリ】の撮影自体が【ドッキリ】で、『梨華ちゃん、やぐっつぁん、なっち、カオリにバレンタイの時からずっと騙されてたの?』っていう考えが一瞬自分の頭の中に浮かんだけど、それは違うみたい。
 あの日、あたしたちの収録が終わってから、ずーっと一晩中考え込んで、『どーしても納得がいかないっ』って。『悔しいっ』って。『ごっちんに一泡吹かせたいっ』って。
 次の日に仕事場で、打ち上げの舞台を利用して、【リベンジドッキリ】を仕掛けたいってカオリたちに提案したわけ。やぐっつぁんとなっちはそれほど乗り気じゃなかったけど、カオリがかなり乗り気になっちゃってさ。梨華ちゃんとカオリが台本を書き、なっちとやぐっつぁんはほとんどノータッチ。やぐっつぁんは、あたしへの連絡係だけだったわけ。
 ただ、今回のはホント小さなドッキリ。ある意味この前あたしにこのドッキリの事を教える為に、なっちとやぐっつぁんで仕掛けたドッキリくらい小さく、マネージャーさんにも内緒、隠しカメラも梨華ちゃん自身に1つ、バックに1つだけで、特番での放送もどうなるか分からないんだって。

 あたしとしては放送して欲しいわけないんだけど…



 はぁ…結局、梨華ちゃんはあたしの事を…



 ホント、どー思ってるんだろ…
 あの梨華ちゃんの告白を受けた時は、実際、ホント、マジで嬉しかったのに、やっぱりドッキリだったって事は、梨華ちゃんはセリフであの言葉を言ったって事になっちゃうんだよね。



263 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時37分59秒



 やっぱり【現実】だね…



 女同士だし…
 アイドルだし…



 あるわけないじゃん。



 その言葉が自分の胸に大きく圧し掛かって、そして、しみ込んだ。
 近くで零れている梨華ちゃんの笑顔は、あたしのモノじゃなくって、やっぱりみんなのモノ。



 そう…梨華ちゃんが自分だけのモノになるなんてある訳ないんだよね。
 そんな都合のイイ話なんて…
 


 うぅ…梨華ちゃんのばかぁ


 
 はぁーぁ…あたしだけのモノにならないのかぁ…

 
264 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時38分44秒

「じゃー、まぁまだまだ納得いかないと思うけど…とりあえず飲み物だけでも注文しようよ」
「そーだね。」

 1人だけ沈んだあたしの隣から聞こえてきたカオリのその言葉に、みんなそれぞれメニューに手を伸ばす。みんな好みのモノを探しながら、何を飲むかを決めようと考えていた時、フトやぐっつぁんが冗談っぽく口を開いた。

「ごっつぁんはお酒ダメだよねー」

 普通だと、当然の言葉だけど、やぐっつぁんのその口調に、一瞬で何が言いたいのかを気がついたあたし…と、カオリになっち。なっちも『そーだね♪』と言うと、あたしの方に視線を動かし、『ごっつぁんがお酒飲むとねー』と、目がイヤラシクなる。


 青くなるあたし。


「なんですかー?なんですかー?」

 と、気になったのか、身を乗りだした梨華ちゃんに、カオリが『えーっとね…』とあたしの方を見つめる。あたしが必死で首を横に振ったのは当然。
 ところが、そう簡単にこんなオイシイ【ネタ】を黙っておくやぐっつぁんじゃないよね。ニタとイヤラシイ笑顔を浮かべ、なっちの方に視線を送った。

「なっちもショックだったよねー」

 なっちもなっちで『うんうん』と頷くと、胸を抱くようにして『ショックだべさー』と悲しそう俯き、溜息を1つつく。

265 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時39分54秒


「もーやめてよー」


 そう思わず情けない声を上げたあたしに、みんな笑顔を浮かべると『ごめんごめん』と口々に謝罪の言葉を口にしてくれる。もうこのネタはヤバイと思ったあたしは、頭をフル回転させ、何かしらの話題を出す事にした。それで浮かんできたのは、さっきまでしていたあたしたちに関係している仕事の事。
 やっぱ、頭の回転が速くなったよねぇ…

「そー言えばさ…」
「なになに?今なら話題を変えれるよ
 って言うか、変えたげるよ」

 やぐっつぁんの言葉に、苦笑いを浮かべる。

「裕ちゃんたちはどんなドッキリするの?」
「あー、びみょーにごーいんだけど、イイ話題変換だね。」

 『もー』と抗議の声を上げるあたしを、カオリが『よしよし』と撫ぜてくれる。そして、『一応2つを掛持ちしているから』と『ホントはダメだけど…言わないでね』と人差し指を口元に持っていった。

「2つやるみたいでさ。
 1つは5期メン相手で、内容は【ポルターガイスト現象】だってさ。」
「【ポルターガイスト現象】?」

 思わず声をあげたなっちの方を向くと、『うん』と1つ頷く。

266 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時43分20秒

「そう。スタッフさんに全面的に協力してもらってさ。
 1つの部屋に4人を集めて、外からドアに鍵を掛けるの。
 で、圭ちゃんがサクラになってね。掛けてからが本番で、電気が急に消えたり、カタカタ物音がしだしたり、物が急に落ちたり、お経が流れ出したり…」

 怖がりなやぐっつぁんが『もーいいよー』と今にも泣き出しそうな声で言うのを、カオリは優しく見つめた後、『でも、面白そうでしょ?』とみんなの方に笑顔を見せた。

「そーですねー♪」

 少しだけ怖そうな表情を浮かべていたなっちとあたしと対象的に、ホラー映画も大スキな梨華ちゃんは、笑顔で目を輝かせながら、『イシカワも行っていいですかー?』まで言葉を口にしていた。カオリは、そんな梨華ちゃんの言葉に笑顔を浮かべ、『いいよ』と頷くと、もう1つのドッキリについて話し始めた。


 もう1つはというと。


 ターゲットはののとあいぼんによしこの3人で、仕掛け人は裕ちゃん中心に、紺野と新垣と小川と高橋の5期メン。最初に5期メンのドッキリを仕掛けて、その収録が終わってから5期メンも仕掛け人としてよしこたちのドッキリに参加するんだって。

267 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時44分03秒

 で、内容の方は…題して、【裕ちゃんマジ切れドッキリ】だってさ。ちょっと題名から笑っちゃいそうだけど、ある意味一番怖いドッキリかもしれないってのが圭ちゃん談。よしこたちと5期メン、裕ちゃんが時間が出来たからって、一緒の楽屋にいる時に、5期メンの面々が冗談で裕ちゃんの事をおばちゃん扱いするんだって、それにマジ切れする裕ちゃん。ビンタもカマスみたいだって…まだ誰にカマスのか決まっていないけど、今から譲り合いが起こっている事は、容易に想像できるけど…
 マジ切れした後、裕ちゃんは部屋と飛び出し、その後の気まずい雰囲気の中、仕掛け人の1人がまず謝りにいくの。その後、戻ってきた仕掛け人が『『1人ずつ全員謝りに来い』って中澤さんが…』って。



 これは、確かに面白そうだよね…

  
 
 みんなと一緒にいれるっていうのが一番嬉しいのだけど、【それ】と同じくらい別の興味も湧き上がったあたし。そう、今回の【ドッキリ】はずっと【現場】の方にいたから、一度でいいからモニターの前にいたいってキモチもあるんだよね。
 思わずあたしもカオリに『ごとーも行っていい?』と口にしていたくらい。
 そのあたしと梨華ちゃんの言葉に、やぐっつぁんとなっちも『ウチラも行きたいよっ』とカオリにおねだり。結局みんなも行くようなカンジに、だ。



 そんな光景に自然と零れてきた笑顔。

 
268 名前:03〜【やっぱり】【めんばーあい】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時44分38秒

 
 そう、ムスメのメンバーと一緒にいると、あたしの顔にも自然と笑顔が零れる。
 ちょっと凹んだ事があっても、それをすぐに癒してくれる。



 あたしたちを慈愛に満ちた瞳で見つめてくれるカオリ。
 あたしたちを笑顔に導いてくれるやぐっつぁん。
 その太陽の様な笑みであたしたちに幸せを分けてくれるなっち。

 そして…もう言うまでもないよね…梨華ちゃん。



 やっぱり、メンバーって…いいよね…
 自然と笑いあえるし…涙も見せられるし…

 たった4人だけでこんなにあたしに幸せをくれるんだもの…
 みんなあつまったら…

 久しぶりに長い間一緒に仕事をしたけど、その脱退前のキモチを改めて思い出す事が出来た今回の仕事。仕事があるって事は、何物にも変えがたく感謝の気持ちでいっぱいなモノだけど、こんな仕事ならホント大歓迎ってカンジだ。

 届いた飲み物。あたしはみんなに感謝のキモチも込めて、カンパイ。
 
 部屋に響くみんなの声。
 あたしは幸せでいっぱいだ。

269 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時45分49秒


04〜【えぴろーぐちっく】〜


 夏場はビアガーデンで盛り上がっている様子が十分想像できる屋上は、あたし同様、外の空気を吸いたくて上がってきたのだろう、数人の人が静かに物思いに耽っていた。
 ただ、とても冷えてて、少しだけ外の空気に当りたくて出てきたけど、コートを持ってこなかった事にちょっと後悔する。両手で肩を少しさするように、あたしは近くの椅子に腰を掛けた。
 夜景が一望できる、といった事を期待して来たわけではないけど、見事に期待を裏切られたキモチになってしまう、その景色。あたしは、真っ黒な空に目を向けた。

 東京のど真ん中の夜空は星が全く見えない。ただ、東京でも街外れまで行くと星は見えるみたいだ。そんな、あまり見た事がなかったって事が理由の内の1つに入るのもあるけど、結構地方にコンサートで出かけた時に星空を見るのは楽しみな方だと思う。よく、バスでのホテルまでの帰り道、疲れたメンバーが多くて静かな時は、窓から見える星空を見つめては物思いに耽ったりもしたあたし。
 今もそんな気分。

 やっぱり考えている事は、梨華ちゃんの事…
 色々な梨華ちゃんが頭に浮かんでは、あたしに色々な表情を見せてくれる。


 笑って…
 泣いて…
 むくれて…


 色々な梨華ちゃん。


270 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時46分38秒

 そして、さっきまであたしに見せてくれていた、【あたしだけ】の梨華ちゃん。
 完全に恋人同士の2人だった…あたしと梨華ちゃん。


 幻に消えた梨華ちゃん。




 はぁ…




 あたしが子供の頃から見慣れたその景色を見つめていると、フト後ろから誰かが近寄ってくる気配に気がつき、振り返る。
 すると、そこには、あたしのコート片手に、もう一方の手にお手玉をしながら缶コーヒー、脇に抱えるようにもう1本缶コーヒーを持ったやぐっつぁんが『よっ』と缶コーヒーを上げ、笑顔を浮かべて立っていた。
 
 かけがえのないメンバー…【カゾク】の登場に、さっきまでの凹んだキモチはドコへやら、思わずふにゃとした笑顔になるあたし。

「ありがと…」
「大事な身体なんだから…
 ごっつぁんらしくないぞ」

271 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時47分19秒

 そう言うと、あたしにコートを肩から掛けてくれ、そして、お手玉をするように手に持っていた缶コーヒーをあたしのホッペに当てて、『お土産』とニッコリ。
 身体の芯から冷え切ってきたあたしには、そのやぐっつぁんにしたら熱すぎる缶コーヒーが丁度よかったみたいだ。ホッとなるあたし。でも、それを受け取り、両手で握り締めると、その温度がさっきより随分熱めに感じられ、少し両手を開け空気を入れる。
 
 甘い匂いと、温もりを隣に感じる事が出来るまで近付いてきたやぐっつぁんは、腰をあたしの隣に下ろすと、缶コーヒーのフタを開け、一口口に含み、『はぁー』と溜息を零す。
 少し見守った後、あたしも缶を開け、『いただきまーす』とやぐっつぁんの方に顔を向けた。そして、『どーぞ』と言ってくれるのを待ち、ふーと小さな缶の口に当てて冷まし、口に含んだ。

「大人なのか、子供なのか、ホントわかんないよ」

 あたしが一口飲むトコロをみたやぐっつぁんは、そう言葉を口にし、可笑しそうに笑った。何が可笑しかったのか分からないけど、あたしも笑顔を見せる。

「まっ、そこがごっつぁんのカワイイトコなんだけどさ」

 その言葉に、少し顔が熱くなるのが分かったあたし。小さく『どーも』と呟くと、顔を背け、もう一度コーヒーを口に。

「そんなんでテレるなよぉー」

 と、あたしの背中を派手に叩くその声は、明らかに自分の方がテレてるじゃんって思わずツッコミたくなるくらい、びみょーな口調。『イタッ』と声をあげた後、反論しようと思ったあたしだったけど、次に聞こえてきた『散々イシカワに言っといてー』のその言葉に、一瞬たじろぐ。

272 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時48分01秒

「あ、あれはっ」

 その後が続かず、俯く。隣から聞こえてくる『ほらぁー』と勝ち誇ったかのようなその口調にも、『だって…』しか言えないあたし。
 そして、次のやぐっつぁんの言葉に、より一層固まったあたし。さっきまでの冗談のような口調ではなく、どこか真剣な表情も入り、マジメに聞いてきたからってのもあるけど、それ以上にその内容の方に。

「ごっつぁんはさ…
 けっこーさ…本心だったんでしょ…?」

 そう…
 省かれた言葉は多かったけど、何を言いたいのかすぐに分かったあたし。驚きのあまり、何も言葉が口から出てこず、ただあたしを止めたその人の顔をじーっと見つめるだけだった。
 
「イシカワにコクられた時、ホントに嬉しかったん…でしょ…?」

 その言葉と共に、視線をあたしから外す。
 その後に訪れた何もない世界。
 ただ、風の音がやたらと痛く、考え込んでいるあたしの耳に届いていた。

 何でこんな話をし始めたのか…
 何か意図があるからだと思うけど。



 どうして…

273 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時48分38秒

 前々から薄々と感じ取っていた事で、疑問に思っていたと思うけど、今のやぐっつぁんははっきりと確信してるように思える。

 あたしにその事を聞いてくるって事は…


 どーして…?

 
 何が言いたいの…?

 『諦めな』なのか…
 それとも…
 『協力したあげる』なのか…

 あたしの頭の中は、そんな色々な考えが駆け巡った。
 そして、ほんの数十秒足らずだったけど、かなり長く感じた、次のやぐっつぁんの言葉に、全体の話の繋がりはそのままだけど、さっきの言葉とは違う切り口の言葉で、更にあたしの頭を混乱させる。

「イシカワね…かなり凹んでた…」

 その言葉の後、あたしを見つめ、何かを探ろうとするやぐっつぁん。あたしもその意味が分からず探ろうと、目の前のつぶらな瞳を見つめる。

 普通に考えたら、そりゃ梨華ちゃん、凹むけど…
 なっちにあれだけ言われたら…
 それに、あたしの相談に真剣に乗ってくれてたし…それがウソだったなんて…凹むよね…
 
 それは誰だってわかってる事…
 それなのにこんな事をあえて今更言うわけがないのに…

274 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時49分26秒

 と、その時、悪い考えが浮かんだあたし。
 一瞬、ものすごく凹むのが、明らかに分かった。

 梨華ちゃんは、女のコ(=あたし)に告白された事に対して、凹んだ…って考えが浮かび。



 気持ち悪くて…



 だから…『諦めた方がいいよ』…

 

 えっ…
 でも…



 あたしは、その考えを恐る恐る口にした。

「あたしがコクった…から…?」

 ところが、そのあたしの言葉に、やぐっつぁんはさも当然のような口調で、『んなわけないじゃん。』とだけ言うと、コーヒーの残りをグイッと一気に飲み干し、呆れ口調で呟いた。

「ある意味、ごっつぁんも、かなーりネガティブだよなぁー」

275 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時50分55秒

 少し安心はしたけど、その意味さえあいまいなあたしは、首を傾げ、分からない事をアピール。そんなあたしを見て、更に呆れてしまったのか、『まっ、いっかっ』と大きく溜息をつくと、立ち上がった。
 そして、立ち上がると、あたしに言ったのか、それとも自分自身に言ったのか分からないけど、夜空を見上げながら、シンミリと口を開く。

「難しい関係………、…………運命だったら、…………結ばれる…………。
 2人に………未来が………………、お互い…守……って……………」

 ただ、小さなその声は、冷たい風にも邪魔をされ、途切れ途切れにしかあたしの耳には届かなかった。最後の言葉だけは、はっきり聞こえたけど。

「そーなるから、おせっかいは…いっか…」

 その言葉を言い終わると、こっちの方を振り返り、ニッコリと笑顔を浮かべた。ほんの数分前までの真剣な表情はどこへやら、いつものやぐっつぁんのその笑顔に、さっきまでの出来事が夢の中のよう。


 何を言いたかったんだろ…


 その言葉が頭の中をよぎったその時、あたしを見下ろしていたやぐっつぁんは、フト何かに気が付いたのか、パッと顔を上げると、あたしの後ろ、エレベーターの方を見て、ニッコリと微笑み、手を振る。
 メンバーの誰かかな…と思ったあたしも笑顔で振り返ると、その目に入ってきたのは、さっきまで話題の中心と言ってもイイ、あの人。その人が、可愛らしく少しホホを膨らませて、立っていた。
 

 あたしの笑顔もぎこちないモノへと大変身。

276 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時52分06秒

「もぉ…
 遅いから心配しましたよぉー」

 そんな膨れっ面をした梨華ちゃんは、コートの前を止めながらあたしたちの方に近付くと、『安倍さんと飯田さんが、2人だけでほっかいどーの話に盛り上がっちゃって…』と、申し訳なさそうに首をすくめた。

「なんだ。
 心配したわけじゃなかったんじゃん。」

 そう拗ねた言い方のやぐっつぁんに満面の笑みを浮かべる梨華ちゃん。

「もちろん心配しましたよっ♪まりっぺ♪」

 いつも以上にカワイク作った声に、当然の如くやぐっつぁんからは『キショッ』の洗礼を受けるのは当たり前。阿吽の呼吸の2人のやり取り、思わず笑いが零れる。
 でも、次の瞬間にはチクリと胸に痛みが走ったのが分かった。


 そう…あたしと2人っきりだけだと、全くって言ってイイ程、見せない梨華ちゃんの【こんな】姿に。
 ここに来てからずっとあたしの事を笑わしてくれている梨華ちゃんは、やぐっつぁんとのやり取りを生き生きとした表情で楽しんでいるから。

277 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時53分05秒


 あたしだけの前だと…子供。

 
 そりゃ、それはそれでイイけど…


 やっぱり色々な梨華ちゃんを見たい。


 って言うか…やっぱ、スキな人は、その人の全てを知りたいっていうのが、当然。
 あたしのその対象は、梨華ちゃん。


 あたしは確信している。
 この数日の出来事で。


 あたしの梨華ちゃんへの【愛】は【メンバー愛】じゃなくって、【恋愛】。

 かなりキツくて、困難な【恋愛感情】だけど…
 普通の人の女同士以上に困難な障害があるけど…





 それでもいつの日か… 



278 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時53分44秒

「ごっちんも行こう?」

 いつの間にか終わっていた2人の漫才。目の前に来て、そう言って手を差し伸べてくれた梨華ちゃんは、優しくあたしの事を見つめてくれていた。
 そして、少し向こうにあるエレエーターの前でやぐっつぁんは、ボタンを押した後、こっちに振り返ると、ニッコリ微笑んでいる。

 2人を見て、ココロに暖かいモノが湧き上がる。
 でも、今の瞬間、それは【メンバー愛】の暖かさだ。

 この数週間でまた思い出させてくれた【強いメンバー愛】。
 あたしのココロを暖かくしてくれる【メンバー】。

 【恋愛】もいいけど、【メンバー愛】のままでもいいかも…
 
 ふと頭をよぎったそんな言葉は、あながちウソじゃないかもしれない。

 あたしは、テレずに、梨華ちゃんの差し出してくれた、暖かい手を握り締めた。スッとあたしのココロが癒される、その手。

 あたしのココロを暖かくしてくれる、それが【メンバー】。

 そして、もう一度部屋に戻ったあたしは、夜遅くまでみんなの楽しそうな笑い声にココロを癒された。さらに、いつの間にか隣に移動してくれ、あたしに最高の笑顔を振りまいてくれる梨華ちゃんにも。

 あっ、そうそう。あまり言いたくないけど…

 その後、結局は梨華ちゃんに、なっちの胸を揉んだって話はバレテ、けーべつの眼差しを貰ってしまったけどね…

279 名前:04〜【えぴろーぐちっく】〜 投稿日:2003年02月19日(水)00時54分47秒





 はぁ…





 でも、まぁ。
 ココ数週間の事で、色々な収穫があったからね♪

 今以上にみんなの事が大スキになったし…♪
 ホントっ、みんなアイシテルっ♪





 そして、やっぱり梨華ちゃんの事…





 いつの日か…
 




 たった一つでいいので、あたしのお願いが叶いますよーに…




 
 かみさま。





 〜【第1部】FIN〜

280 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月19日(水)00時58分21秒
>>255:名無し読者さん
 スミマセンm(_)m
 やっぱりドッキリでした(w
>>256:名無し読者さん
 そういっていただけると嬉しいです^^
 でも、幸せな展開は…スミマセンm(_)m
>>257:@さん
 スミマセンm(_)m
 梨華ちゃんの本心かどうかは…ご想像にお任せします^^
 ただ、ハッピーエンドはまだまだ…ごっちんも試練が…

応援してくださった方、今まで本当にありがとうございましたm(_)m

281 名前:モチカニ。〜あとがきみたいなものです。 投稿日:2003年02月19日(水)00時59分19秒

 と、言う事で第1部は終了しました。
 この【ドッキリ】という内容は1年半位前から書こうと思っていたのですが、自分のその当時別に書いているのがあったので…その当時では、主人公をよっすぃーで、よっすぃーを含めたムスメを仕掛け人、ターゲットをヤグチで、ってカンジの事を書こうかって予定でしたが(w
 歳月が流れ…
 今自分が一番スキなCPで書きました。

 途中でも少し言われた事ですが…
 >>191:RYOさん
 >ドッキリには裏がありそうな予感…
 にドッキリしてしまいました(w最初は、ドッキリには裏があって、ヤグチたちだけじゃなく、梨華ちゃんも仕掛け人で、後藤がホントのターゲット。梨華ちゃんがごっちんの事がスキで、ヤグチたちがドッキリがてらその2人をくっつけるようなカンジで書こうと思ってました。なので【裏】がありそうな書き方を(w裏を匂わせといて興味をそそり、でも…期待された方スミマセンm(_)m

 で、結局は…
 それとは別にもう2つ話を思いつき、それら3つを組み合わせたらもっとイイストーリーになると思いまして。今回のような話になりました。なんだか中途半端なCP小説で、不満を感じた方が多いと思いますし、興味がわかなかった方も多いと思いますが…一応3部構成の予定なんで^^;

 この第1部では、ごっちんが梨華ちゃんへの【愛】を【メンバー愛】ではなく【恋愛】の【愛】である事を気付かせるって事までに。

282 名前:モチカニ。〜あとがきみたいなものです。 投稿日:2003年02月19日(水)01時00分31秒

 まー、自分としても結構この【メンバー愛】っていうのを書きたかったってのもあるのですが(wたぶんカゾクを愛してるってカンジでメンバー同士がそれぞれ愛してるような気がして…
 ここ数ヶ月、親友達と離れて生活してる自分のある種の体験談(ごっちんの心情部分)だったりして(wまぁ、会おうと思えば会えるのですが(w
 なので、自分と親友達との関係より、ごっちんと娘。のメンバーとの関係の方が、(カゾク以上に一緒にいた時間が長かったはずなんで)比べ物にならないくらい深いと思いますんで…比べ物にならないくらい淋しいってキモチがあるような気も…

 まっ、自分の事はどーであれ。
 
 で、次回の第2部ですが…

 ごっちんの【愛】は梨華ちゃんに届くのか…っ!
 それともそれに障害が…っ!
 そして、第3部では…2人にどんな運命が…
 って…大げさな…

 ホントは第1部をアプしている間に第2部を完成させようと目論んでましたが…結局出来上がりませんでした^^;なので第2部の開始はいつになるのか、まだまだ未定です。末永く見守っていただけるとありがたいですm(_)m(ちょっとおかしい?)ただ、だいたいの話の筋を出来上がっているので、あとは書くだけだと思いますので…でも、『あとは書くだけ』って言っても…第1部を書き上げるのに3ヶ月は掛かった作者なんで…
 ははは…^^;

 最後に、この小説を出来るだけたくさんの方に読んで頂きたいのと、自分の糧にと、できるだけたくさんの方から感想を頂きたいと、願いを込めてageさせて頂きます。
 
 それでは、また次回もヨロシクお願いしますm(_)m


283 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月19日(水)12時32分31秒
1部完おめでとうございます
話のテンポが良くて更新も早かったので読み応えありました
2部の再開を楽しみにしてます
284 名前:RYO 投稿日:2003年02月19日(水)12時48分51秒
第1部お疲れ様でした。
どっきりに裏はなかったんですね。作者様の思惑にはまってしまいました。
ごっちんの【愛】が、梨華ちゃんに届くのを心待ちにしています。
第2部、第3部もがんばって下さい。
285 名前:チップ 投稿日:2003年02月19日(水)15時25分09秒
今日初めて見つけて一気に読んじゃいました。
面白い!ごっちんも梨華ちゃんもメチャクチャかわいいですね。
一部完結お疲れ様です。
続きも楽しみに待ってます。頑張って下さい。
286 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月20日(木)05時49分07秒
はじめまして、モチカニ。さんの作品拝見していました。
いやー良いですね、いしごま好きですしそれ以外にもほのぼのとしてて自分はこの感じが好きです。
メンバー愛、実際もこんな感じなんだろうな〜って思いながら読んでました。
こちらの作品はまだ第一部だそうで、いしごま…楽しみにして?いますw
気長にお待ちしております、頑張ってください
287 名前: 投稿日:2003年02月21日(金)17時52分56秒
ものすごくよかったです。予想とは違いましたが
メンバー愛ってやっぱいいですよね。第2部も楽しみに待ってます。
288 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月22日(土)01時30分33秒
>>283:名無し読者さん
 ありがとうございますm(_)m
 そう言って頂けますと嬉しいです^^
 次回も再開すれば、今回くらいの勢いで一気に行きますんで、その時はヨロシクお願いしますm(_)m
 まだまだ未定ですが^^;

>>284:RYOさん
 ありがとうございますm(_)m
 自分としても、ごっちんの愛が梨華ちゃんに早く届いて〜ってカンジで書いてますんで(w
 再開後もヨロシクお願いしますm(_)m

>>285:チップさん
 ありがとうございます〜m(_)m
 かわいいって言って頂けますと嬉しいです^^
 今度はいつ始まるのか分かりませんが、次回もヨロシクお願いしますm(_)m
289 名前:モチカニ。 投稿日:2003年02月22日(土)01時32分03秒
>>286:名無し蒼さん
 はじめましてです^^
 ご感想ありがとうございますm(_)m
 【メンバー愛】はごっちんと梨華ちゃんとの愛の次に書きたい内容なんで、次回も出したいと思います^^まぁ、メンバー愛で一番似合うのは、加護ちゃんと辻ちゃんでしょうけどね(w
 ごっちんも含めたムスメ。のお姉さんチームに特に愛されてそうですもんね^^
 なんか、ずーっと語れそう…(w
 次回もヨロシクお願いしますm(_)m
PS.
 このHNは使ってないんですが…
 沈んでいたんで、初めて読ませて頂きました^^
 上でも言ったんですが、この1年自分は同じ学年だった親友と時々しか会えなかったって事があったんで…
 なんだか読んでてう〜ん…シミジミ〜なカンジに…(←よくわからない表現(苦笑))
 でも、イイ意味で、です^^
 沈んでるとレスも少なくなるのは自然だと思いますが、結構楽しみなカンジで、期待してます。これからも応援しますんで、頑張って下さいね〜

>>287:@さん
 ありがとうございます^^
 メンバー愛はいいですよ〜^^(力説)
 また語りたくなってきた…(w
 あっ…美貴ちゃんをキーパーソンにするかも…って前に言いましたが、ちょっとびみょーに…(汗まだちょっと悩んでますんで…
 いい具合に話がまとまらなくって…
 もうちょっとかかりますが、第2部もできるだけ早く仕上げられるように頑張りますんで、これからもヨロシクお願いしますm(_)m


 
290 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月11日(火)01時05分59秒
後藤、石川、藤本で映画等 色々動いてますが
続き期待保全
291 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月11日(火)20時19分32秒
は、早く続きが読みたい;;;
くぅー。
292 名前:のの 投稿日:2003年04月01日(火)03時50分35秒
保全sage
293 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月06日(日)17時48分28秒
294 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月09日(水)17時54分23秒
こんな面白いのなんで今まで見逃していたんだろう・・・
一気に読ませてもらいましたが萌え氏にそうですw
第2部期待して待ってます。
295 名前:名無し蒼。 投稿日:2003年04月19日(土)01時39分49秒
ぬぉ、レス遅くなってすいませんm(_ _)m
読んでくださってたんですか?驚きです(w
最初の頃書いたので描写がまだ下手ですが頑張って上手くなるので
モチカニ。さんの作品もお待ちしています!^^
296 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)05時52分12秒
保全
297 名前:名無し読者さん 投稿日:2003年05月12日(月)23時50分48秒
保全
298 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月13日(火)19時39分50秒
保全
299 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月26日(月)22時55分43秒
保全だ。
300 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月01日(日)09時20分46秒
保全。
301 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月01日(日)10時46分30秒
第2部ってどこにあるんですか?
302 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月01日(日)20時14分12秒
まだないよ。
みんなそれを待ってる。
別スレで始まってたりとか……しないよなぁ……?
303 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月20日(金)22時18分49秒
保全
304 名前:保全協会 投稿日:2003年06月24日(火)18時26分47秒
保全中
305 名前:保全娘。 投稿日:2003年07月08日(火)07時50分31秒
保全。
306 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)11時36分09秒
保全
307 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月10日(日)13時20分36秒
名作。
308 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月27日(水)23時41分39秒
太鼓判。
309 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月30日(土)17時49分04秒
がんばれ!
310 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)15時03分39秒
放棄なら放棄宣言してほしいよな。
こんだけの人間がチェック入れてんだし。
無駄な期待ならさせないでほしいよ。
311 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)20時06分17秒
期待ochi
312 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/17(水) 11:04
保全
313 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 00:51
314 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/30(木) 11:03
315 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/22(土) 17:38
316 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/03(水) 00:13
保全
317 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 22:19
2部が始まるまで保全!!

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