薬籠中のモノ

1 名前:如月 投稿日:2003年01月29日(水)18時16分33秒
赤板でいしごま短編書かせてもらっている如月です。

タイトルの薬籠中のモノとは、
『かけがいのない、大切なもの』といった意味合いでございます。

これはパラレル内容となっております。
こちらのカップリングもいしごまです。

更新は、のんびりゆっくりマタ〜リとなると思いますが、
頑張りますのでよろしくお願いします。
2 名前:如月 投稿日:2003年01月29日(水)18時17分17秒

民家の建ち並ぶ街並みを抜け、
さわさわと木々がさざめく丘の道を登り続けていくと、其処には少し古めかしい洋風の家屋がある。

綺麗に手入れされた庭には四季折々の植物が並ぶ。
街で一番日当たりの良い美しい場だが、そこに近寄ろうとするものは誰一人としていなかった。

「あ〜いぼ〜ん」
「なに〜のの」
「あの丘の上に行ってみたいなぁ。」
「ああ・・・そか、ののはこっち来たばっかだからしらへんのや。」
「ん?」
「あんなぁ?あの丘にはな、近づいたらあかんねん。」
「なんでぇ?・・・おばけ?」
「お、ビンゴ」
「えぇ〜?」
「む、信じてへんな?よっしゃ。話したろ。
 あの丘の上の幽霊の話。」


もうず〜っと昔の話で・・・



3 名前:如月 投稿日:2003年01月29日(水)18時18分20秒



**プロローグ*******



「助けると思ってさ。三つ。みっつなにか願い事してよ。ごとーに。」



丘の上の幽霊屋敷と、もっぱら噂の大きなお屋敷には、
綺麗な綺麗な女の子がいた。



すごくすごく綺麗で。

あなたの言葉が信じられなかった。

あなたが幽霊だなんて。







4 名前:**1******* 投稿日:2003年01月29日(水)18時19分09秒



「結婚!?」


突然湧いて出た自分の結婚話に、少女は叫んだ。
頭が混乱して上手く。働かない。


「わ・・・たしがですか?」
「他に誰がいる。」

即答された。

「でも・・・私まだ18で・・・」

「相手は土御門の血を引く名家だ。お前自身はは不出来だが、
 良質の血をこの家に入れることくらいはできるだろう。」

淡々と話を進めるのは、少女の叔父にあたる人物だ。
幼き頃に、任務中に命を落とした両親に代わり、少女を育ててきた。

「梨華。お前は力の弱い出来損ないだ。
 お前にこの話を断る権利などない。分かるな。」

きっぱりと言い放つ叔父に対し、頷くしか術のない、梨華と呼ばれた少女。

彼女の両親の死の理由。

『任務』

それは、彼女の一族が代々行ってきた、いわゆる悪霊払いのことだった。
彼女の両親は、共に能力の高い霊媒師だった。
しかし、すすんで霊と対峙しようとはしなかった。
そのため、実践力の乏しさが原因で若くして死んだのだろうと、一族では噂された。

『臆病者』
『一族の恥』
『出来損ない』

それが、梨華が聞いた両親のすべてだった。


5 名前:**1******* 投稿日:2003年01月29日(水)18時19分41秒


ぱしんと障子を閉めて去っていく叔父の背中を見送り、梨華は深くため息をつく。
結婚のことなど考えたこともない。
ましてや相手は見知らぬ男性。

人見知りする梨華にとってはありえない話だった。


「・・・うそでしょ〜・・・?」


泣きたい気持ちを抑え、フラフラと歩き出した。



特に意識を持たず、足の向くままに歩き続けた。
どのくらい歩いただろう。

民家の並ぶ小道を抜け、気が付けば人里離れた山道に差し掛かっていた。
目の前には小高い丘。

「・・・あ、幽霊屋敷か・・・」

霊媒師の口から出るのも、なんとも間抜けな響きであるが。
この丘の上にある洋館には、長い間霊が住み着いているという、もっぱらの噂なのだ。

瞳を閉じて、スッと霊波を確認した。

「・・・霊気は感じないし」

呟くと、梨華はぽてぽてと歩みを再開した。


6 名前:**1******* 投稿日:2003年01月29日(水)18時20分11秒


長い時間をかけて、ゆっくりと。
陽が落ちかけたことにも構わず、梨華は坂道を登り続けた。

桜の古木を見つめながら、栗色の髪をさらさらと冷たい風に遊ばせる
紅く、藍く染まる夕闇に佇む一人の少女を見るまで。


このとき、もしもこれからの運命を彼女が知り得たとしたら。
梨華は少女に踵を返して、丘を下ったかもしれない。

あるいは―――

どんな運命であろうと。

彼女との出逢いを失いたくはないと思っただろうか。




7 名前:如月 投稿日:2003年01月29日(水)18時21分38秒
・・・こんな感じです。

決してシリアス路線には進まない予定です。
お付き合いよろしくお願いいたします。
8 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月01日(土)01時05分13秒
なんかぞくぞくします。期待。
9 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月01日(土)12時42分29秒
アンリアル好きです
期待待ち
10 名前:**2******* 投稿日:2003年02月04日(火)12時02分18秒



視線が絡んでいることに気付いたのはいつだろう。
綺麗な瞳が、桜ではなく自分に向いていることに。

「あっ・・・あの、ごめんなさいっ!!」

慌てて頭を下げ、謝罪の言葉を述べる。

「ん〜?誰?」

凛とした姿と激しいギャップのあるのほほんとした口調。
しかし響く声は美しい。

「あっごめんなさい!あの、あの私この下の方に住んでてッ・・・」
「んははっ。い〜よ〜。もっとゆっくり喋って。」

焦ってしどろもどろと状況を説明しようとする梨華に、少女は柔らかく笑った。
にっこりと笑う顔は、先ほどの印象よりもだいぶ幼く感じる。

11 名前:**2******* 投稿日:2003年02月04日(火)12時03分33秒


「あ・・・ごめんなさい・・・」
「うん?いいよ〜?」
「えっと・・・あの、私、この丘の下の街に住んでる者・・・。」
「うん?」
「それで・・・ちょっと色々あって・・・」
「うん?何があったの?」
「あの・・・突然叔父が、私の縁談話を・・・」

ただ誰かに話を聞いてもらいたかっただけか。
あるいはこの少女の穏やかな空気のためか。

梨華は、初対面の相手に突然降りかかった婚約話を語った。



12 名前:**2******* 投稿日:2003年02月04日(火)12時04分11秒


「そっか。つまり家出少女なワケだ?」
「あ、ハイ。」

梨華の話を一通り聞き終え、要約して頷く。

「それで?」
「え?」

にこり笑う少女。

「名前。なぁに?」
「あっ、ごめんなさい!私、石川と言います!」
「ふふ。違くて〜。名前。下の名前。」
「ああ!ごめんなさい!!梨華です!石川梨華!!」

「・・・っふ」
「へ?」
「あははははははははは!!」

慌てふためき名乗る梨華を見て、突然少女は笑い出した。

「あはははは!ごめ・・・ごめん・・・あは・・・」
「あ、の・・?」
「イヤ、ごめんね。さっきから謝ってばっかで・・・」
「あ・・・ごめんなさ・・・」
「あはははははは!!」

何がそんなに面白いのか、梨華にはわからなかったが、
自分が笑われているのは事実。

真っ赤になって俯く梨華に、少女はやっと話を進めた。

13 名前:**2******* 投稿日:2003年02月04日(火)12時05分41秒


「あは・・・ごめんね?怒った?」
「・・・怒ってないです・・。」
「ふ・・・良かった。ふふ・・・は・・・はぁ。笑ったぁ。」

は〜ぁ、と息をつき、再び柔らかな笑顔を宿すと。

「後藤です。」
「え?」
「自己紹介まだだったでしょ?」
「あ・・・ハイ。」

ペこり頭を下げて。

「後藤真希です。ハジメマシテ。梨華ちゃん?」
「はっ・・・初めまして。後藤・・・さん。」

「さん付けはイタダケナイなぁ〜。真希って呼んで?」

梨華よりも高い身体を軽く曲げ、覗き込むように言われた。
綺麗な綺麗な顔が突然近づいたことに、再び頬を染める梨華。

「?梨華ちゃん?」
「あっ・・・えと・・・初めまして。真希・・・ちゃん。」
「あはっ!なんか照れるね!」

照れながら名前を呼ぶ梨華に、真希も照れくさそうな笑みを浮かべた。

「さて梨華ちゃん。」
「ハイ?」
「突然で悪いんだけどさ。」
「・・・ハイ?」



「助けると思ってさ。三つ。みっつなにか願い事してよ。ごとーに。」




14 名前:**2******* 投稿日:2003年02月04日(火)12時06分37秒





この時
この頼みを受け入れていなければ

あんな想いをすることは無かったのかもしれないのに

甘い痛みを伴う、あんな恋は始まらなかったかもしれないのに



15 名前:如月 投稿日:2003年02月04日(火)12時13分12秒
更新終了です。
短くてすみません。

> 8 名無し読者様
ぞくぞくしていただけましたか〜。
光栄です!
あまり期待せずに待っていてくだされば嬉しいです。

> 9 名無しさん様
   (・・・この場合様はいらないのでしょうか?)
アンリアル初挑戦なので、かなりダメダメな感じですが、
楽しんでいただけるように頑張ります。
赤板の方でもカキコしてくださって。
あちらも頑張りますです。
16 名前:RYO 投稿日:2003年02月12日(水)17時08分08秒
楽しみに待ってます。
がんばってください。
17 名前:如月 投稿日:2003年02月21日(金)17時10分18秒
どうも〜・・・。如月です。
予告通り激遅ですみません。
それでは稚拙い文ですが・・・。
18 名前:**3******* 投稿日:2003年02月21日(金)17時14分42秒
カチコチカチコチ。


壁に埋め込まれている、備え付けの大きな時計の音だけが広い屋敷内に響く。


美味しい紅茶と、美味しい茶菓子。
照明は明るすぎず暗すぎず。なんというか、良い雰囲気。
テーブルの中央には可愛らしいミニバラが一輪。

そして隣りには綺麗な微笑み・・・。



・・・・・・・・・・なんて優雅なお茶会の図なんだろう。


違う。




梨華は自分の思考に自分自身で突っ込みを入れた。
頭が真っ白で、上手くモノを考えられないらしい。


「飲まないの?」
「え・・・」
「おいしいんだよ?この紅茶。」
「あ・・・いただきます・・・」

カチャ。
コク。

「・・・美味しい。」
「でしょ〜?」


再び沈黙。


「食べない?」
「あ・・・」
「オイシーよ?ごとー手作り。」
「あ、すみません・・・」

サクッ。

「・・・美味しい・・・」
「あはっ!ホント?よかったぁ〜。」


すすめられるまま、すすめられたものを素直に口に運ぶ梨華。
そして素直に感想を述べる。
そしてそれを素直に喜ぶ真希。

にこにこと見つめられ、戸惑いながら梨華は呟く。

19 名前:**3******* 投稿日:2003年02月21日(金)17時15分25秒

「あの・・・」
「ん〜?」

広いリビング。
大きなダイニングテーブル。
この空間に、とりあえず見回したところにいるのは二人きり。
けれど真希は梨華のすぐ隣りに腰掛けている。

「さっきのお話し・・・。」
「願い事のこと?」

さらに顔を覗き込むように話す真希。
至近距離に、ガラス細工のような真希の瞳。

「ハイ・・・。」
「何かないかな?」

その瞳が、梨華が言葉を発するたびに嬉しそうに輝いて。
梨華は何故か恥かしさから直視できない。

「あの・・・よく分からないんですけど・・・」
「あ〜・・・説明してなかったよねぇ。」

しかし、次に真希の発する言葉に、
梨華はガラス細工の瞳を見ないわけにはいかなくなった。

「ごとーはね、いわゆる幽霊なんだ。」

その瞳に、嘘の色が含まれているとは思えなかった。



20 名前:**3******* 投稿日:2003年02月21日(金)17時16分28秒



 そう。
 いつだってあなたの言葉に嘘はなかったから。

 だから大丈夫。
 絶対にまた逢える。
 信じてる。


21 名前:如月 投稿日:2003年02月21日(金)17時19分12秒
更新終了でございます(短)
ホントにもうチマい更新ですみません。
でも頑張りますので、見捨てないでやってください(汗)

>16 RYO様
読んでくださってありがとうございます。
超遅ですが、たまにちらりと覗いてみてやって下さい。
22 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月14日(金)22時50分49秒
続き待ち保全
23 名前:如月 投稿日:2003年03月17日(月)21時48分33秒
すみません。
ちょっとPC不調と試験が重なっておりまして・・・。
遅筆に磨きがかかっておりました(爆)
今回も短いですが・・・。
24 名前:**4******* 投稿日:2003年03月17日(月)21時51分26秒



その言葉に梨華は反応できずに、真希の顔を見つめ続けた。

「ん〜、詳しい話しをすると面倒なんだけど・・・」

でも話さない訳にはいかないよねぇ・・・、と、一人納得して、語りだした。

「ごとーは生きてるとき、・・・なんてーか、簡単に言うと霊能力者でね?」
「え・・・」

『霊能力』の言葉に、梨華が反応する。

「お?興味ある?」
「あ・・・」

思わず自分のことを話しそうになって、やめた。
真希の波動に気付けなかった梨華が、霊能力があるなどと、言えるはずがなかった。
『出来損ない』という言葉が胸浮かんで。

「んで、まぁ自分で言うのもアレなんだけど、能力は結構高かったのね?」
「・・・」

―――私は現役の霊媒師なのに、
こんな近くにいる『霊』の存在さえわからないなんて・・・。

真希が語る横で、人知れず自己嫌悪に陥る梨華。

「その能力は家系でね?で、そんな家に生まれてくるとさ、
 必然的に『お仕事』として、霊を祓ったりするわけサ。
 でもまァ・・・ごとーはその『お仕事』をしなかったのね?
 それで、なんか自分が成仏できなくなっちゃって。マヌケでしょ〜?」

25 名前:**4******* 投稿日:2003年03月17日(月)21時53分23秒


あはははは〜と、真希はそこまで一気に話しきった。
隣りの人間が、沈み込んでいることに気付かず、そのまま話しを続行。

「それでね?ごとーが成仏できる条件が、
 『生きている人間の願いを三つかなえること』なんだ。てさ。」

「・・・あの」
「ん〜?」

なんとか沈み込んだ底から這い上がり、梨華は真希に浮かんだ疑問を問う。

「何故・・・三つの願い事なんですか?」
「ん〜、よくわかんないんだけど〜・・・」
「・・・わかんないんですか・・・」


そんなんでいいんですか、と思わず突っ込みを入れたくなったが、
そこはさすがに堪えた。

26 名前:**4******* 投稿日:2003年03月17日(月)21時57分59秒


「あははー。ごめんね〜?ん〜と、なんかね?
 今ごとーには、人の願いを三つだけ叶えられる力があるんだって。」

「・・・そもそもなんでお祓いをしてなかっただけで成仏できてないんですか?」
「それは全くわからない。」

きっぱりと言い放たれては、梨華もそれ以上訊くことは出来ない。
しかし真希の答えはそこで終わったわけではない。

「世に言う『神様』ってヤツ?」
「え・・・?」
「『神様』が、罰を与えたんじゃないの?」
「・・・罰・・・」

梨華は知らず知らず、あまり霊と対峙しなかった、両親へと思いを馳せる。

「ま、悪いコトしたつもりはないけどさ。」
「え?」
「ん?だってさ・・・・・・まぁ、いいよ。そのへんは。」
「・・・はぁ・・・」

強い霊力を持っていんがら、不可解な両親の行動の理由が。
少しわかるかもしれない、と期待したのに・・・
梨華は明らかに落胆の表情を浮かべた。

「・・・別にね?大したことじゃないし、話すと長くなるし・・・」
「・・・ハイ・・・。」

自分が話さないことに不満を感じたとでも思ったらしい真希が、少し申し訳なさそうに言う。

27 名前:**4******* 投稿日:2003年03月17日(月)21時59分39秒

その言葉に素直に頷く。
梨華には、続きを強要する理由が見つからなかった。


「・・・で、どうかな。なんかない?」
「なんかって・・・」

大体そんな頼みを聞き入れるつもりはない。
断りの言葉を続けようとする梨華を遮り、真希が言う。

「あ、さっきの縁談話。ナシにするってのは?」
「えっ・・・」

思わず期待に顔を上げる梨華。
ハッと口をふさぐ。
その瞬間の反応を、真希は肯定としてとったらしい。

「どう?損な話じゃないと思うんだけど」
「・・・・・そんなこと、本当に出来るんですか・・・?」

疑問系ではない真希の質問に、梨華は覚悟を決めた。

「・・・当然。」

力強く微笑んで、梨華の手をとる真希。
そこに軽く唇を寄せる。

「じゃぁ、よろしくね?梨華ちゃん。」




28 名前:**4******* 投稿日:2003年03月17日(月)22時00分40秒




 その笑顔に、急上昇した心拍数。
 あの瞬間から、『幸せ』の欠片を感じ始めた。

 あなたに逢えて良かったと。

 その想いは今も変わることはないから。



29 名前:如月 投稿日:2003年03月17日(月)22時03分58秒
そんなわけで・・・ごめんなさい。
やっぱり短くて・・・。

読んで下さってる方(もしいらっしゃいましたら)、
次はもう少し早めに更新したいと思いますので、覗いてみてやって下さい。
30 名前:如月 投稿日:2003年03月17日(月)22時04分41秒

22 名無し読者様

お待たせしました。
短くてすみません!
31 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月24日(月)06時22分19秒
良い雰囲気の話ですね
マターリ待ち
32 名前:如月 投稿日:2003年04月12日(土)16時34分56秒
ホント・・・いい加減更新遅すぎ。
まだ話序章段階だ・・・

33 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時35分43秒
嫌な予感はした。

白いシャツと、タイトな黒いパンツ。
綺麗な髪を一つに束ねた姿で。


「ど?カッコイイ?」


と、どこか誇らしげに笑う真希を見たときから。
嫌な予感はあった。

畳の敷き詰められた広い和室に、並んで座る。
重苦しい雰囲気の中。
梨華は自分の浅はかさを後悔していた。

真希を、この家に連れてきてしまったこと。


34 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時36分13秒



「・・・あの・・・」
「ん〜?」
「・・・・・・胸は・・・」


着替える前までは確かにそこにあったふくよかなそれが、ない。


「ああ。ホラ。」


ひょい、とシャツの前を軽くはだけて、胸を見せる。
さらしで押さえられた、胸。

まさしく、世に言う『男装』という物であった。
確かに、綺麗に整った顔は中性的で、格好によっては男性に見えないこともないかもしれないが・・・


「・・・・聞いていいですか?」
「どうぞ?」
「その格好は・・・」
「男装。」


さらりと言いのけられてため息をつく。

――やっぱり。


35 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時36分48秒



「・・・もう一つ聞いても・・・?」
「どうぞ?」
「・・・男装してどう・・・するんですか?」
「言ったでしょ?縁談流すんだよ?」


『どうやって流すんですか』という問いが浮かんだのだが。
それは聞かなかった。

沈黙が流れる。
心地の良い静けさではなかった。

特に梨華にとっては。

無意識下に震える、自分の手を止めることが出来ない。
俯いた視線の先の、膝の上に置いた手は小刻みに揺れている。
不意に梨華に視界に真希の手が入った。


「ぇ・・・」
「緊張しちゃって。」


あはっ。と、独特な笑いをもらして、真希が梨華のその手を握った。


「ちょっと、繋いでてもいいかな?」


何と言ったらいいのか分からず、言葉を返すことは出来なかった。
しかし、その手を振り解くこともしなかった。

ちらり盗み見た真希の横顔に、緊張の色はなかったが。
戻した視線の先の梨華の手震えは、止まっていた。


36 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時37分28秒



すらりと開けられた障子からは、苛立たしさを感じた。
憮然とした表情で入ってきたのは初老の頃の男性。
梨華の全身が一気にこわばる。


「梨華」


名前を呼ばれ、梨華の身体はビクリと震えた。
握った手から、真希にも伝わる。


「これから見える。早く着替えなさい。」


『見える』のは、梨華の見合い相手だろう。
真希は、梨華の様子をうかがった。
深く俯いていて、表情は見えなかった。


「お友達には帰っていただきなさい。」


真希をちらりと一瞥し、言い放った。
このままでは埒があかないと判断した真希が、口を開く。


「『お友達』じゃないんです。」
「と、言うと。」


疑問系でない質問に、若干苦笑の色を滲ませながら、真希が答える。


「梨華さんとお付き合いをさせていただいてます。」
「真希ちゃっ・・・」
「と、言えばお分かり頂けますか?」


37 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時37分59秒



男は、一瞬たじろいだようにも見えた。


「では、今此処で別れていただこう。」
「それは出来ません。」


口調は互いに静かで。
一見冷静な話し合いの場、ではある。


「恋人が、嫌がる見合いをさせられそうになっているのを・・・
 許すわけにはいきません。」


その一言に、初めて男が真希の眼を見る。
突き刺すような視線に、真希は動じる風もなく、見返す。

視線を外し、再び正面を見据える。


「梨華。」


名を呼ぶ。
しかし、やはり梨華の眼を見ることは、ない。


「お前は厭などと、思ってはいないだろう。」


質問ではなく断言。
それは梨華の立場上、誘導尋問だった。


38 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時38分46秒



「・・・・・・は・・・っ」


心よりも先に頭が。
梨華に肯定の言葉を口にさせようとした。

それを、真希が片手で制す。
にっこりと微笑み、『駄目』の合図。


「僕たちはそろそろ失礼します。」
「・・・梨華。」


真希の言葉を無視して。
男は怒りの色を含め、三再び梨華の名を呼んだ。

真希はスッと立ち上がり、
その声音に恐怖を感じているであろう梨華の手を引き上げた。


「彼女は僕と行きます。」


ぐいっと引っ張られ、真希の横に立つ梨華。
イマイチ状況に着いていききれていないようだ。

男は、真希の言動を意に介さず、梨華に言葉を浴びせる。


「・・・梨華、早く支度しなさい。」


39 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時39分16秒


不安に揺れる梨華の瞳は、真希に向けられている。
その不安を、真希は優しく見つめ返した。


『大丈夫だよ』


そう言われた気がした。
心に、温もりを感じる。

それは、指先に口付けられたときと、同じ温もり。


40 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時39分50秒



「・・・行こう?梨華ちゃん」
「・・・・・・・うん。」


握られていた手を握り返して。
多分、梨華が逆らったことに驚きを隠せないでいる叔父を振り返ることなく。
真希に連れられて、部屋をあとにした。

瞳には、笑みが浮かんでいた。




41 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時40分20秒





「今日はちょっとあったかいねぇ?」


暦の上ではそろそろ春の足音が聴こえるだろうか。
現実としては、まだまだ寒い日が続いていた。
それでも、春の香りを幾分か含んだ日の光りは心地良かった。

丘に続くのどかな道を、手を握って歩く。

真希が少し先を。
その後に続いて梨華が。
しかしペースは、真希が梨華にあわせる。


「そうだね。」
「んぉ?敬語じゃないねぇ?」
「あっ・・・」
「あっ違う違う。嫌だとかじゃないよ?嬉しいなーって。」

 
『ごめんなさい』の決め台詞を梨華が口にする前に、真希は言った。
その言葉に、少し照れたように梨華が笑った。
つられて、真希も微笑む。

その微笑みに、梨華が言葉を紡いだ。


「・・・・ありがとう」



42 名前:**5******* 投稿日:2003年04月12日(土)16時41分02秒




柔らかく笑って。
はにかむように言われて。

初めて見せられた笑顔。

素直に可愛いと思う。
綺麗だとも思った。



小さく胸に響いた鼓動は、気のせいだと、流すことにした。







43 名前:如月 投稿日:2003年04月12日(土)16時43分48秒
5は、いつもより長くなってしまいました。
締め方も。すこし変えてしまいましたが。

えーと、このへんで序章中盤くらいでしょうか・・・
大まかなストーリーは出来上がっているのですが、遅筆です。
いつ終わるのかな・・・(オイ)

44 名前:如月 投稿日:2003年04月12日(土)16時47分11秒
31 名無し読者様

お待たせしました。
・・・もう待ってくださってないかな・・・。
雰囲気とノリで、強引に乗り切りたいと思ってます(爆)
カキコありがとうございます。嬉しいです。



こんな話、多分ほっとんど誰も読んでないとは思いますが、
読んでくださってる少数派のあなた様。
ありがとうございました。
45 名前:名無し 投稿日:2003年04月12日(土)20時36分52秒
文麿と石川コント好きには嬉しい話です
ROMしてる人は結構いると思いますよ
46 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月13日(日)15時13分04秒
面白い!
いや〜ごっちんいい味出してますねけ〜^^
今後とも続きが気になります!
がんばってください、応援しております!
47 名前:如月 投稿日:2003年04月20日(日)18時26分14秒
ちょっと時間に余裕が出来たので更新しとこうと思いまして・・・

お暇な方、お付き合いください。
48 名前:***6******* 投稿日:2003年04月20日(日)18時27分00秒



握る手に、変に力が入ってしまわないか、不安だった。
交わす声が震えないか。
繋がる手から、ウルサイ鼓動が伝わらないか。


梨華の笑顔を見た瞬間から。
必要以上に梨華の存在を意識している自分に戸惑う。

どうやって、どんな風に。
屋敷まで辿り着いたか、記憶が曖昧だった。
当り障りの無い会話をして、軽く笑いあって。

そして、胸のときめきに、気付かない振りをして。



49 名前:***6******* 投稿日:2003年04月20日(日)18時27分41秒




着いた頃には、すっかり日が暮れていた。
ギィと重たそうな音を立てて開けた扉の向こうは、外よりも暗かった。


「暗いのとか、ダメ?」
「あ・・・うん。」


やっぱりね、と笑うと、暗闇でも分かるくらいあからさまに、梨華は膨れた。


「・・・やっぱりって・・・なによぅ・・・」
「見るからに苦手そうだから。女の子の怖がるもの。」


ふふふ、と笑いながら、玄関で立ち往生していた梨華の手を引いた。


「まず暗いトコでしょ?それから、雷も怖いよね?」
「・・・」
「図星だ?」


あはは。と笑う。
いよいよ梨華は不満そうだ。


「ピンクとか、あと花とか?」
「え?」
「そういうものが、好き?」
「・・・・・・うん。」
「ごとーも好きだよ?」


他愛も無い会話をしながら暗闇を歩く。
壁に備え付けられた蝋燭立てに、順々に火を灯していく。
徐々に明るさを増す室内に、梨華はホッとした。


50 名前:***6******* 投稿日:2003年04月20日(日)18時28分55秒



「ハイ。もう大丈夫。」


繋いだ手を解いて、真希が梨華の頭をポンポンと撫でる。
物心ついて、初めてされた行為に、梨華は戸惑いを隠せない。


「今日は遅いし、もう寝ようか?」
「え?」
「こんな『幽霊屋敷』に来たってことは、行くあてなんかなかったんでしょ?しばらくいれば良いよ。」


ね?と微笑まれて、少しおどおどと微笑み返した。


「じゃあ、部屋は二階の・・・どの部屋でも適当に使って?」
「ありがとう・・・。」
「あ、一番早く陽が入る部屋は、階段上がってすぐ左の部屋だから」


言いながら、食器棚の下の引き出しを開けて、がさがさと物色する。
出てきたのは特大の・・・蝋燭。


「ハイ、これ。」
「ろうそく・・・」
「そう。これだけでかければ、夜中燃え尽きたりしないよ。」


ずっしりと重い質量を両手に感じながら、梨華は思わず吹き出す。


51 名前:***6******* 投稿日:2003年04月20日(日)18時29分41秒



「・・・何笑ってんの?」
「こんなにおっきくなくても・・・」
「・・・・・・大は小を兼ねるの。もういいから寝ようね!」


ハイハイハイ、と背中を押され、階段を登る。


「・・・照れてる?」
「照れてない!」
「ふふふふふ・・・」
「案外い〜い性格してんだねぇ梨華ちゃん・・・。」



52 名前:***6******* 投稿日:2003年04月20日(日)18時31分37秒





 あの時。
 照れるあなたを笑ってごめんね。

 でも、嬉しかったの。
 優しい言葉と仕草が。

 背中から伝わる温もりが。


 そう。
 今も感じる、あなたのこの温もりが。


 すごくすごく、嬉しかったの。








53 名前:如月 投稿日:2003年04月20日(日)18時32分26秒
短っ!?
・・・とりあえず更新終了です。
54 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月20日(日)20時34分26秒
イイ!
55 名前:如月 投稿日:2003年04月20日(日)22時53分14秒
えーと、梨華ちゃん、早く願い事して・・・。
話が前に進まない・・・(爆)


45 名無し様

レスありがとうございます。
ROM・・・してくださってる方いるでしょうか。

いましたら、こんな駄文読んでくださっててありがとうございます。
勿論きちんと完結させますので気長にお願いします!


46 ヒトシズク様

はじめましてー^^
面白いなんて言っていただいて・・・
感謝です。
ご期待に添えられるように頑張りますので、
見捨てないでやってください。


54 名無し読者様

短いだなんて。
コメントいただけると幸せですよー。
簡潔で(笑)
ありがとうございます。頑張ります。
56 名前:ピア 投稿日:2003年04月20日(日)23時36分59秒
 今日初めて見ましたけど、めちゃおもしろいです!
  これからも期待してます!
がんばってくださいね!!
57 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)05時52分55秒
保全です
58 名前:如月 投稿日:2003年05月05日(月)10時43分39秒
・・・お久しぶりです(爆)
如月です。

ほんと遅くて申し訳ないですー。
59 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時46分02秒



梨華が目を覚ましたのは、蝋燭など完全に必要なくなる頃だった。
陽は高く昇り、そろそろ真上に。
空気も少し暖まり始めた。

眩しい日差しに、煙たげにうっすらと目を開く。


一瞬頭が真っ白になり、そのままガバッと起き上がる。
不慣れなベッドに、体がぐらついた。


「・・・」


ゆっくりと、室内に視線を一周させる。
いつも寝起きしていた部屋ではない。

和室特有の香りも、石川家の気も、感じない。


「あ・・・」


そうか・・・。

納得して、梨華はベッドから抜け出す。
昨日着ていた服に身を包み、キィと軽い音を立てて、部屋を出た。


60 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時46分47秒



廊下に出てすぐ、下へと階段が続いている。
幅の広い階段は、それだけで一つの空間だ。

緩やかな段差を降りていく。
降りながら視線を彷徨わせるが、真希の姿は、無い。
階段の中段辺りで、足をとめた。

不安になる。
自分に都合の良い夢を見ていたのではないかと。

真希の存在が、夢だったのではないかと。

大きな天窓から差し込む明るい陽に、逆に不安が募る。


ギィ・・・と、ドアの軋む音。
ハッと、俯いていた顔を上げ、その方向を見た。


「よく眠れたみたいだね?」


・・・嫌味かな・・・


「あ、今のちょっと嫌味っぽかった?」


先にさらっと言われた。
正直に頷くと、真希はあはは、と笑った。


「もう時間的にはお昼だけど、ご飯食べる?」


それはどっちのご飯だろう。
朝?それともお昼?

梨華がちょっと考えていると。


「朝昼兼用〜。」


と、梨華の疑問に的確に答えが返る。

61 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時47分30秒



そういえば、昨日のお昼から何も食べてなかった。
空腹を訴える体に、やっと気付いた。


「・・・食べる。」


ちょっと照れくさそうに、階段の端から顔を出してから真希を覗き込む梨華。
オッケーと言いながら、キッチンに消えていった。


「え、私何か作ろうか?」


慌てて梨華が階段を駆け下りる。
泊めてもらって、さらに食事の用意までさせるのは気が引けた。


「あー・・・でもいいよ。気にしないで座ってて。」


どうせありあわせだから、大したもの出来ないし。
と、付け加えて、真希は片手を振る。

そう言われて、それ以上手伝うとも食い下がれず。
真希に言われた通り、大人しく、昨日促された席に着いた。


ホントに適当なんだけど〜と言って真希の運んできた料理は、どれも絶品で、梨華を驚かせた。


美味しい美味しいと、次々に料理を口に運ぶ梨華を見て、嬉しそうに真希は笑った。


柔らかい暖かさに、満たされる胸。
嬉しさから、素直に頬が綻ぶ。


62 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時48分28秒



「あ、梨華ちゃん?」
「え?」


食事を終えて。
片付けくらいはと、梨華も手伝い、後片付けを済ませて。

リビングで、どでかいソファに腰掛けて、一息ついたところで真希が切り出す。


「で、三つ、なんか思い浮かんだかな?」
「・・・三つ?」


昨日、実家にのり込んで、縁談話を潰してくれた。
それで一つ。


「残り二つじゃ・・・?」
「ああ〜、あんなの願い事に入んないよ〜」


あはは、と笑いながら、軽く手を振る。


「胸つぶして梨華ちゃん連れてきただけだし。」


だから、あれはナシ。
そう言って、他になんか無い?と首をかしげる。

今すぐ、何らかの答えを出さなければならないような真希の視線に、梨華は戸惑いながらも頭を働かせる。


63 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時50分42秒



「・・・なんでも、いいの?」
「なんでも。あ、でも、誰か殺せとか、そういうのは嫌かなぁ」


『嫌かな』という物言いに、梨華はソレも可能なんだという意味を感じる。
勿論、誰かの死を望むことなど、しようとは思わないけれど。


「・・・じゃあ、『家族』」
「ふぇ?」
「他の二つが決まるまで、家族してくれないかな・・・?」


黙りこくって悩みだした梨華の思考をとめようと。
真希が声をかけようとした瞬間に、梨華が声を発した。
突然動き出した現状に、真希が一瞬、着いて行けずに奇妙な声を出す。

奇妙な返し声に、梨華は『やっぱダメだよね』の色を含ませながら、同じ質問を繰り返した。


64 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時53分18秒


「あ、え?『家族する』?」
「うん・・・。」


『家族』の単語の使い方をいささか間違っているが。
勿論梨華の意図はきちんと真希に伝わった。


「『家族』・・・ね。でもごとー、家族と触れ合った記憶ないなぁ・・・」
「良いの!!」


なかなかの剣幕で梨華が食い下がる。
あ、あはは、と軽く引きつった笑みを浮かべて、真希がどうどうとなだめる。


「そうだね。梨華ちゃんがそれでいいなら。」


そう言って軽く笑うと、梨華はとても嬉しそうに笑った。
真希もつられてにっこりと笑う。


「じゃあ〜・・・よろしくね?梨華ちゃん」


差し出された真希の手。


「・・・よろしく、真希ちゃん」


そして、触れ合う手。

温もりを感じたのは、二回目。







65 名前:**7******* 投稿日:2003年05月05日(月)10時54分03秒





 家族にはなれない。
 自分は死んでる。

 それはだめだ、と断るべきだった。
 正常な判断が出来なくなっていたんだ。

 その笑顔と、可愛い声に。


 多分麻薬とか。
 その類。



 ちょっとずつちょっとずつ

 カラダ中に広がってく甘い疼きを


 心地良く思ってた。


 ごめん。







66 名前:如月 投稿日:2003年05月05日(月)10時59分13秒
更新終了です。

遅々として進まない話ですねー。
イラッイラしてきますよね。

でも、とりあえず願い事一つ、です。


56 ピア様

はじめまして―^^
レスありがとうございます。すごく励みになります。

こんな駄文読んでくださって感謝ですー。
ご期待に添えられるかかなり不安ですが・・・
頑張ります!

57 名無し読者様

・・・すみませんでした。保全・・・


更新遅いですが、放置は絶対にいたしませんので・・・。

67 名前:DK 投稿日:2003年05月05日(月)12時09分23秒
赤板の方も期待してますよ〜
68 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月06日(火)12時41分12秒
引き込まれる展開ですね
マターリ待ってます
69 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月21日(水)00時06分52秒
保全
70 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月19日(木)03時42分09秒
マターリ待ち
71 名前:名無し 投稿日:2003年07月04日(金)03時46分50秒
72 名前:如月 投稿日:2003年07月20日(日)19時14分09秒
あはは〜
二ヶ月〜二ヶ月ぶり〜(爆)

ほんっとに申し訳ありません!!
73 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時14分59秒



「真希ちゃ――ん!朝だよー!」
「・・・んぁぅ・・・」


真希と梨華が、少々変わった『家族』を始めて数週間。


朝が苦手だということが判明した真希の代わりに、朝食は梨華の担当になった。
最初は無理矢理起きて、梨華を手伝った真希だが、次第に起こしてもなかなか起きなくなっていった。


「ほらー、できたよ?ご飯ー。」
「ん〜・・・イイ匂い・・・」


無遠慮に真希の部屋に入る自分。
無防備に、眠そうな声で会話をする真希。

ちょっとした日常に暖かさを感じて、頬が緩むのを止められない。


74 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時15分39秒



「・・・なにわらってるの・・・?」
「へ?何でもないよー?ハイ起きてー」


眠そうな瞳で問われ、嬉しそうにそう答えた。
訝しげな視線を感じつつ、真希の背に手を添え、起こす。


「・・・強引だねぇ?」
「こうでもしなきゃ起きないじゃなーい。」


ぐいぐいと背中を押して部屋を出る。


「・・・やさしくないなぁ・・・。」
「だから、優しくしてたら起きてくれないでしょう?」


ブツブツ言う口調とは反対に、真希の顔も明るい。




75 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時16分20秒





「紅茶?コーヒー?それとも緑茶?」
「あー・・・お茶のみたいかな・・・」
「はーい」
「あ、いただきます。」
「あ、どーぞぉ〜。」


ちょっと離れてるキッチンから、梨華の嬉しそうな声がする。
真希は、その声を合図に、目の前に用意された暖かいスープを口にする。


「美味しいよー、梨華ちゃん」
「本当?」


嬉しそうに急須と湯飲みをお盆に乗せて、とたとたとキッチンから出てくる。





『いただきます』

の響きにも、梨華の心は躍る。



76 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時17分08秒




出されたものは残さず食べる。
口にして、ちょっと苦手なものも、いくつかあった。
ウソがつけない真希は、顔いっぱいに、それを表現した。
けれど、梨華が作ったものを、今のところ残したことは無かった。


「ごちそう様。美味しかったよ。」
「お粗末様。ごめんね。ニンジンちょっと固かったね。」


ちょっと舌を出して見せる。
その仕草に、照れながら微笑む。
『そんな事ないよ?』と、否定しながら。


むず痒い、なんともくすぐったい空気。
けれど、イヤじゃない。
不思議な気持ち。


嬉しそうな梨華と視線が合って、何となく目をそらせた。
そんな真希の様子に、梨華が微笑む。
そして、笑顔のまま、突然言い放つ。



「照れ屋さん。」




77 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時17分54秒





「んあ?」


たっぷり五秒。
唐突な梨華の言葉に、珍妙な声で返す。



「寝ぼすけだしーそれから、結構めんどくさがりでしょ?」
「・・・?」
「ちょっとね、真希ちゃんのこと、わかってきた、カナ。」



『家族っぽくなってきたでしょ?』
とでも言いたげに、上目使い。

その瞳に感じる、モヤモヤしたこの想いが・・・
それが『家族』に対する想いならば。


「そうかもね?」
「うふふふ♪」



78 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時18分59秒




この数日で、確実に育つ独占欲。
その細い腕を引き寄せて、閉じ込めてしまいたくなる衝動。
けれど、大切に大切に扱わないと、壊れてしまいそうで。


・・・これが『家族』っていうものなのかぁ。




「・・・『家族』って、結構理性との戦いなんだね。」
「へ?」
「んーん。」





79 名前:**8******* 投稿日:2003年07月20日(日)19時19分51秒









それが。

この気持ちが
もっと別の≪何か≫なんだと気付くまで、そう時間はかからなかった。


触りたい。
もっと

抱き締めたい。
ずっと

このまま、一緒にいられる未来を



願った。



『未来』なんてない私が。
神様なんて信じていない私が、誰に対して祈ったのかな。


今思えば

きっと、

それは。




80 名前:如月 投稿日:2003年07月20日(日)19時21分32秒
更新終了です。

あまりの遅筆っぷり。
これからはやっぱりsageていこうかと思いますです。
81 名前:如月 投稿日:2003年07月20日(日)19時25分56秒

● 67 DK様

赤版のほうが、まだ更新速度は速いかと・・・。
でも向こうも今は・・・。
すみません。


● 68 名無し読者様

遅くなりました〜。
保全、すみません。
遅々として進みませんが(爆)
そろそろ動き出す予定です。話が。
お付き合いください。


● 71 名無し様

お・・・お待たせしました・・・。




読んでくださってる方がいらっしゃいましたら、長らくお待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
読んでくださって、感謝です。
82 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月25日(金)02時29分33秒
甘いいしごま(・∀・)イイ!
作者さんのいしごま好きですから保全はまかせて下さい
83 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月10日(日)22時07分17秒
( ^▽^)人(´ Д ` )
84 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月28日(木)01時03分44秒
ほぜんです
85 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/24(水) 04:56
いしごま18才保全
86 名前:如月 投稿日:2003/09/27(土) 16:30
放置しすぎ・・・(汗)
申し訳ない限りです。
ごめんなさいです。
87 名前:**9******* 投稿日:2003/09/27(土) 16:31



その日は、朝からあまり天気が良くなかった。
時折雲間から太陽が覗くことはあったが、それ以外のときは、どんよりと曇っていた。



「雨降るかなぁ〜・・・」
「んー、降りそうかも。」
「お洗濯早く干しちゃわなきゃ。」



ぱたぱたと籠を抱えて、庭へ駆け出す。
冬の匂いすらする風に髪をなびかせながら、手際よく、洗い終えた布をはためかせていく。

その姿を、目を細めて見るワタシは、一体なんだろう。

真希は、どんよりとした空の下、爽やか洗濯物を干す梨華を見つめていた。
真希の視線に気付いて、にっこりと笑顔を零す。

心臓を掴まれるような衝撃。

身体が。
異常をきたしたんじゃないかと、思った。
けれど、既に此の世のものでないこの肉体が、今さら欠陥を訴えることはないだろう。



「・・・じゃあ何なんだ・・・。」



自分自身に、返答のない質問を繰り返す。
不毛な日々が続いていた。



88 名前:**9******* 投稿日:2003/09/27(土) 16:32




「?何か言った?真希ちゃん?」
「・・・・・・動悸が・・・」
「は?」
「・・・・・・・・・・んぁ?」
「??」



真希と言葉を交わすと、時々会話にならないことを、梨華は少し前に学んだ。
だから、必要以上に追求はしない。



「あ、ねえ梨華ちゃん?」
「んー?何?」
「石川って、結構名家だよね?」



洗濯物を一通り干し終わり、テラスでぼへ―っと庭を(正しくは梨華を)眺めていた、真希の隣りに座る。



「・・・・・・名家って言うか・・・」
「んー、でもお金持ちでしょ?」
「・・・それはね。」



苦笑しながら答えた。
『石川』の名を久々に意識する。



「お嬢様だ?」
「・・・・・・そんなんじゃないよ。」
「家事とか、したことないのかと思ってたもん。」



そういえば、あの後見合いはどうなったのだろうか。
やはり、叔父は怒っているだろうか。

梨華の中に、石川家の嫌な気が再び流れ込む。
身体に染み付いた空気は、なかなか離れてくれるものではない。
ちょっとしたキッカケで、鮮明に蘇る。



89 名前:**9******* 投稿日:2003/09/27(土) 16:33



「お手伝いさんとかいたでしょ?」
「・・・・・えっ、あ、・・・うん、それは何人か。」
「広かったもんね、おうち。アレじゃ掃除するだけでも一苦労だろうね。」
「・・・・そうだね。」



梨華の返答は相槌だけ。
なるべくこの話題が早く去ってくれるように。
今は寒そうな、立派な桜の幹を見つめて。



「梨華ちゃんは、お見合いが、やだったの?」
「え?」
「見合いが嫌で、家を飛び出してきたの?」



突然、微妙に真希の会話の方向がずれたことに戸惑う。



「私は・・・」
「やめよっか。」
「へ?」
「ごめんね。」



あはっ、と笑って梨華の頭をぽんぽんと撫でた。


この人は、よくこういうことをする。
人の痛いところをビシッと突っ込んでくる。
けど、深いところまでは入ってこない。
間違って入りそうになると、慌ててひょいって出てく。

と、梨華は真希のことを分析していた。
自分のことを話したがらないし、人のことを聴きたがらない人だ、と。



90 名前:**9******* 投稿日:2003/09/27(土) 16:33



「お見合いが嫌だったのよ。」



部屋に入りかけた背中に、そう言葉を投げた。



「家は、私を育ててくれたところだから。」



ゆっくりと、梨華を振り返る。



「家は、嫌いじゃない。」
「嘘つくのは、自衛なの?」
「どうして嘘だなんて言うの?」



少し攻撃的な真希の物言いに戸惑いながら、それでも即言葉を返す。



91 名前:**9******* 投稿日:2003/09/27(土) 16:34



「じゃあ嘘じゃないんだ?」
「嘘じゃないよ。」
「見合いが嫌?」
「そうよ。」



喧嘩腰の会話。
こんな風に言い争うのは初めてだ、と、梨華はどこか客観視していた。
いつも穏やかなオーラの真希が、今は。



「じゃあどうして家出なんかしたの?」
「だから、お見合い・・・」
「そんなの断ればよかったんじゃないの?」
「そんな事・・・」
「出来ないのは、家が怖いからなんじゃないの!?」



語尾を荒げて、明らかに不快感を表している。
強い口調に、梨華がビクッと身を竦めた。



「・・・ゴメン」



ポツリと言い残して、今度は立ち止まることなく、部屋にあがっていった。




92 名前:**9******* 投稿日:2003/09/27(土) 16:37








最初で最後の喧嘩。
実はあの時、ちょっと嬉しかった、なんて。


もっともっと、喧嘩してればよかったね。
もっとたくさん話したかった。

感情をぶつけて
ボロボロになってみても良かったのかもしれない。
お互いのことを、もっと分かり合えたかもしれない。

それこそ、涙を伴うほどに。


頬をつたうこの涙は


後悔のものなのか
死への恐怖なのか。

それすらも、今は分からないから。





93 名前:如月 投稿日:2003/09/27(土) 16:42
更新終了です。
ぎゃー短い。


●82-85 名無し読者様

同一の方ですよね?
ごめんなさい、ごめんなさい。
保全ありがとう御座いました。
たいした量更新できなくてごめんなさい。
当たり前ですが、絶対に完結させますのでお付き合いくだされば嬉しいです。


もし読んで下さってる方、いらっしゃいましたら感謝です。
お目汚しを。
94 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/30(火) 02:08
この先は少し辛い展開なのかな・・・
マターリ更新待ってますね
95 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/30(木) 10:58
96 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/17(月) 18:26
( ^▽^)人(´ Д ` )
97 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 01:52
98 名前:如月 投稿日:2003/12/10(水) 19:12
今年中には仕上げたいなーと思い、ちまちま書き溜めていました。
更新遅くてすみません。

遅すぎなので、ひっそりsageていこうと思います。

では、お付き合いよろしくお願いします。
99 名前:**9******* 投稿日:2003/12/10(水) 19:13




何であんな言い方したんだろう。
どうしてあんなこと言ったんだろう。

自分に怯えて、肩を竦ませる梨華を見て。

あと一度でも振り返れば、抱き締めていたかもしれない。




100 名前:**9******* 投稿日:2003/12/10(水) 19:14



『家』の話題になると、途端に口数が減る。
いつものことだった。
それは、明らかな『家』への嫌悪感。

あんな風に問い質すまでもなく、真希は理解していた。

嫌悪感への理由など、気にすることはない。
自分が昇がるための、『家族』はいわば『ごっこ』なのだから。
梨華のことを深く知る気も、またその必要も、自分にはない。

梨華を利用しようと、思ったわけではない。
しかし、下手に馴れ合うことも、望んではいなかった。


はずだったのに。

何故か『家』を庇おうとする梨華に対して憤りを感じた。
嘘をつかれて苛立たしさを感じた。
『石川』の名前を出しただけで、怯えていながら。
どうして・・・



101 名前:**10******* 投稿日:2003/12/10(水) 19:14




「・・・あーもう・・・。」



相手のことが知りたくて。
無駄に腹を立てたり。
気がつくと目で追ってたり。
些細なことで一喜一憂してみたり。



「・・・勘弁して。」



言ったことを後悔はしていなかった。
本当の気持ちではあったから。
元来、思った事を溜め込むほうではない。

かといって、あんな風に声を荒げたのは生きているときにも数回しか記憶が無かった。


そう。こんな時に、不意に自覚する。
自分の魂が、まやかしである事実。

だから、お願い。
笑顔で、心を掻き乱さないで。



102 名前:**10******* 投稿日:2003/12/10(水) 19:15




「・・・入っても、良い?」



開いたままのドア。
控えめな声の後に、コンコンと、ドアの横の壁を叩く、小さなノック音。
苦笑しながら、『どうぞ』と答えた。

真希の使っている部屋にはベッド以外はほとんど目立った家具は無い。
真希らしい、シンプルな部屋だ。
勿論、腰を掛ける椅子等もなく、梨華はそのまま窓辺に立った。



「『家』が怖いというよりも、叔父が怖かったの。」



突然語りだす。
目に見えて避けていた『石川』の話をしようというのだろうか。
梨華は、真希の瞳を見ようとはしない。



「梨――――」
「出来たら・・・、聞いて欲しいの。」



梨華の言葉を止めようとした。
それは、ほぼ無意識下の防御。
踏み込みたくないし、踏み込まれたくない境界が、曖昧になりそうで。

けれど、その言葉をさらに梨華に止められて、真希は先を促すしかなかった。



103 名前:**10******* 投稿日:2003/12/10(水) 19:15




「ごとーが聞いてもいい話なの?」



一応最後の防波堤。



「聞いて欲しいから。・・・『家族』でしょ?」
「・・・じゃあ、聞かせてください?お姫様。」



『ありがとう』と、やはり視線は窓の外に向けたまま、呟く。
外では、雨が降り出したようだった。



「騙してたつもりはないんだけど・・・黙ってるの、イヤだし、言うね?」
「うん・・・?」
「あのね・・?実は・・・・実は私ね・・・」





104 名前:**10******* 投稿日:2003/12/10(水) 19:16







意を決して明かしてくれた秘密。
反応薄かったでしょ?
ごめんね?

でもね、一応これでも『名のある霊媒師』だったから。
気付かないわけ、無いんだよ。
違う気を纏う人間は、分かる。

まして、キミに気付かないはずはないから。


初めて、自分よりも強烈な能力を持った人間に出会ったんだから。


もっとも、あの時、まだキミは自分の能力に気付いてはいなかったけど。







105 名前:如月 投稿日:2003/12/10(水) 19:19
ハイ、そんな感じで、ちょっと話し進んできました・・・よね?
でも、この調子だと、年内完結は無理ですね(オイ)。
106 名前:如月 投稿日:2003/12/10(水) 19:21

●94 名無し読者様

お、お待たせいたしました。
次回の更新は、速くできそうです。

辛い展開には、あまり持っていきたくないのですが・・・
底抜けに明るい設定でもないので、やっぱりちょっとシリアスしてしまいました。

待っててくださって、ありがとうございます。
励みに、頑張ります。


107 名前:如月 投稿日:2003/12/10(水) 19:23
タイトル、間違ってますね。
今回の更新は『10』で御座います。

こんな文章ですが、そして更新は激しく遅いですが。
絶対放置はいたしません。


お付き合いくださった方、お目汚しを。
ありがとうございました。
108 名前:如月 投稿日:2003/12/12(金) 20:12
がっつり連日更新・・・
と、いきたかったのですが、一日空けてしまいましたー。
とりあえず、更新更新・・・。
109 名前:**11******* 投稿日:2003/12/12(金) 20:13




「もー、真希ちゃん、起ーきてー?」
「んぁ〜・・・もちょっと寝かせてぇ・・・」
「ダメ。お天気良いんだから、今日は街降りてみようよー」
「えーぇぇ・・・・」




あの日の梨華の告白。



『私、真希ちゃんと同じ、霊能者なの。』


その告白は、梨華の予想と反してすんなりと受け入れられた。
と、いうよりは、真希は梨華のチカラに気付いていたようだった。

それからも、二人の関係は変わらない。
仲の良い、『家族』の関係が続く。



110 名前:**11******* 投稿日:2003/12/12(金) 20:13




高名な霊能力家に生まれながら、自分は代々の能力を受け継がれなかった。
出来損ないとして、叔父から非難され、認められはしなかった。

名高い一家の中で、自分はどうして能力がないのかと。
恥じたりしたし、嘆いたりもした。

そのことを引け目に感じ、叔父には反抗することが出来ない。
そして、両親が死んで、独り身となった自分を育ててくれたのは他でもない叔父。

叔父に対して恐怖はあるが、やはり感謝の念もある。



111 名前:**11******* 投稿日:2003/12/12(金) 20:14




梨華が語った、身の上話。
真希は疑問を抱かずにはいられなかった。

梨華がしきりに口にする、『能力が無い』と言う言葉。

そんなはずはないのだ。
爆発的な能力を、梨華は確かに持っている。

それは、初めて出会った瞬間から。



「・・・真希ちゃん?」
「ぅあ、何?」
「どしたの、ボーっとして。」
「失礼だなぁ、すごいシリアスに物思いに耽ってたんだよ?」
「え〜?」



クスクスと、愉快そうに笑う姿。
まあ、見た目は確かに、強い能力を持っているようには見えない。




112 名前:**11******* 投稿日:2003/12/12(金) 20:14




「ま、いいや。ね、お買い物行こう?」
「買い物・・・」
「今日は何か美味しいもの作ろう。ハイ行こ〜♪」



人にこんな悩みをふっかけておいて。
ずっと胸にあった塊を溶かしてしまった梨華は、なんだかすっきりとしているようで。

ぐいぐいと、真希の背中を押しやる力強さ。
とても、夜の闇に怯える人物とは思えないほどだった。



「うわっ!寒っ!寒いよ梨華ちゃん!?」
「寒いねー。」
「待って待って?もちょっとなにか着させて?」
「ハイ」
「・・・・へ?」



唐突に外に押し出された真希に、北風は容赦ない。
寒さに身を縮める真希に、梨華は手を差し出す。
その手と梨華の顔を交互に見やり、真希は不思議そうに首をかしげた。



「手、繋げばあったかいよ。」
「な・・・」
「あれ、照れてる?」
「照れ・・・・・・」



微妙に頬を染める真希の手を取り、梨華は嬉しそうに歩き出す。
その後を、梨華の歩調に合わせ、真希がついて行く。



「なんか楽しそうだね?」
「秘密がないっていいねー」



無邪気に笑う梨華に、真希の胸は、痛んだ。
それは近頃感じていた、あの甘い痛みとは別のもの。

歩くペースを落とし、ゆっくりと、足をとめた。
そして、握られた手を緩く握り返す。
振り返る、梨華。



「真希ちゃん?」
「梨華ちゃんには、秘密はないかもしれないけど。」
「ん?」
「ごとーには、あるかもよ?隠し事。」



113 名前:**11******* 投稿日:2003/12/12(金) 20:15




一つ打ち明けられれば、一つ曝け出さなくては心苦しくなる。
自分の中を、すべて出すつもりはないはずなのに。
言わない自分を、卑怯だと感じる。



「あっても、『家族』で良いの?」
「いいよ。」



さらりと返される。
しかし、梨華の眼差しは真摯なものだった。



「・・・言いたくないことなんて、きっと誰でもあるんだろうし・・・」



くるりと進行方向に身体を向き直す。



「ただ、私が言いたかっただけだから、それで真希ちゃんが気にすることなんか、ないのよ。」



首だけで、『ね』、と振り返る。

ふわりとしたその笑顔。

つられない人間は、いないのではないかと思われる。
クス、と笑みを返し、今度は真希が梨華の手を引き、歩き出した。



「夕飯?お昼?」
「え?」
「買出しの材料。どっち?」
「お夕飯のつもりだったんだけど・・・そっか、お昼まだだよね。」
「ごとーさっき起きたんですけど?」
「真希ちゃん起きるの遅いのよー。もうお昼まわってる。」
「えー?今日は結構早起きしたつもりだったのに・・・」
「じゃあ、お昼は有り合わせで済ませて、お夕飯、気張ろう。」
「んー、オッケ。」



まだまだ、蕾すら膨らまない寒そうな桜並木を横目に。
心はゆらゆらと、暖かく。






114 名前:**11******* 投稿日:2003/12/12(金) 20:15






ふわふわ ふわふわ
あったかくて、やわらかい空気に、溺れそうになってた

気持ち良くて、心地良くて

穏やかな時間の流れに、身を任せていた

そう。
確実に、流れてはいたんだ。


決して止まっていたわけじゃなかった。







115 名前:如月 投稿日:2003/12/12(金) 20:17
本日の更新終了に御座います。
『10』がやたら短かったので、『11』とあわせたらちょうど良いくらいの量ですね・・・。

てことは、『11』も短いんですね・・・。


ではでは、読んでくださった方、お目汚しを。
御付き合い感謝です。
116 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/13(土) 02:06
いぱーい更新されてる
アンリアルのいしごまって少ないから楽しみです
117 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/04(日) 19:24
新年保全
118 名前:如月 投稿日:2004/01/05(月) 13:24

あけましておめでとうございます。
この話も、だんだんと終わりに向けて動かしてゆかねば・・・。

では新年一発目の更新です。
お暇な方、お相手くださいませ。
119 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:25

その美貌を惜しむことなく活かし、梨華は店を巡っていた。
八百屋で蝶のように微笑んでは、雑貨屋で花のように笑う。

その微笑みが結果として、真希の腕の荷物を増やしていった。



120 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:25




「・・・・梨華ちゃん?」
「なに?」
「笑って買い物するの禁止・・・」
「どうして!?」
「ついてくるオマケが多い・・・。」



『お姉ちゃん可愛いから、コレおまけだ!』と。
入る店入る店で、購入した品プラスオマケcを貰っていたのでは。



「ごとー、そろそろ腕力の限界。」
「・・・分かった。」



自覚なくオマケの嵐を巻き起こしている本人。
恐らく理由は分かってはいないのだが、それでも訝しげに頷いた。



「あ、お花屋さんだ!真希ちゃん、見てきても良い?」
「んー。じゃあごとー、この辺にいるから、終わったらおいで?」
「はーい。」



121 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:26




嬉しそうに、可憐な花が立ち並ぶ店へと駆けて行く。
後姿を眺めて、思わず微笑を浮かべていることを、きっと真希自身気付いてはいない。

ヤレヤレと、石塀に背中を預ける。
下界に降りたのは、いつ以来であろうか。
しばらく見ない間に、街の風景はすっかり変わっていた。

変わらないのは、溢れる活気。
人々の笑顔は、人は変われど、やはり心地の良いものである。

しばらく、賑々しい街の空気を体に吸い込む。


ふと、視界に一人の少年が入った。
片手に飴を握り締め、たかたかと駆ける。



「・・・転びそう・・・。」



真希が呟いたその瞬間。



「あ、」



122 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:26




見事に転がる少年。
握った飴のために手をつくことが、出来ず顔面から地面に突っ込んでいった。
突っ伏したまま微動だにしない。
必死に、泣くのをこらえているのであろう。
しかし、その飴を決して手放さないところが、根性というか。

真希は悪いと思いつつも、笑を堪えることが出来ない。
片手で、緩む口元を押さえ、少年に歩み寄る。



「ホラ少年?大丈夫?」



ガサリと、買い物袋を鳴らしながら、少年の傍らにしゃがむ。
頭をくしゃりと撫でられ、彼はふるふると小刻みに振るわせ始めた。



「うわああああああああああん!!!!」
「うっわ」



優しい言葉を受けて、こらえていたものが堰を切ったように溢れ出した。
火のついたように泣き出すというのは、まさにこういうコトだと、真希は思う。



123 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:26




「ほらほら、飴は無事だから。泣き止め?」
「いたあああい!いたいよおおおおお!!!」



ぎゃんぎゃんと、まったく泣き止む気配は無い。
取り合えず袋をその場に置き、少年に手を貸し、立ち上がらせる。



「どこが痛い?」
「わか、わか、わかんな・・・」
「分かんない?」



こっくり頷く。
痛いとか痛くないとか、そう言う次元ではないのだろう。
転んだ衝撃に、ビックリしているのだ。

むせ返って呼吸が上手く出来ていない。
苦しそうに咳き込む背中を撫でてやる。



「よしよし。」
「うぐ・・・ぅぅ・・・」
「おっし、強い。」



ぐぐっと涙を止めようと、少年が頑張る。
ぽむぽむと、応援するように背中を撫で続ける真希。
しかし、何とも言えないタイミングで、遠くから甲高い声が飛んできた。



124 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:27




「真希ちゃんてば泣かせちゃったの!?」
「・・・人聞き悪いよ?」
「違うの?」



駆け寄ってきた梨華は、若干息を上げ、真希とは反対側の少年の横に座る。
その手には、可愛い花束が収まっている。

・・・これもオマケだな

と、頭の隅で真希はそんな事を思った。



「違うよ。少年が転がっちゃって・・・」
「ああホントだ。擦りむいちゃってるのね、ひざ。」
「ひざ?」
「・・・ひざ?」



真希と少年が、同時に少年のひざを覗き込む。
確かに擦り切れたそこからは、赤い血が滲んでいた。

傷というものは、意識すると痛くなったりする、厄介なものである。

少年の大きな瞳から、引っ込んでいた涙が再び豪快に溢れ出した。



「いったあああああああああああい!!!」
「えっ?えっ!?」
「ああ・・・」



125 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:27




ガンガンに泣き出した彼は、どうしたら泣き止んでくれるだろうか。
真希は。頭を抱えたくなった。



「大丈夫?痛いね?」



こういう状況下において、優しい言葉は逆効果である。
先ほど真希も実践済みだ。

なおも泣き叫ぶ少年に、梨華はハッとした様子で、花束を彼の目の前に差し出す。



「お姉ちゃんね、手品が出来るんだよ、手品。」
「・・・・手、品?」



その言葉にぴくりと反応して、覆っていた手を外し、ちらりと梨華の目を見た。



126 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:27



「そう。ホラ、このお花、まだ咲いてないでしょ?」
「うん・・・」
「よく見ててね?」



言って、梨華はその蕾に唇を寄せた。
少年と一緒に、真希も梨華の行動を見守る。
軽く口付けると、その蕾は『ポン』と音をたてんばかりの勢いで花開いた。



「わ・・・!」
「すごい?」
「すごい!すごいすごい!!」
「えへへ、ありがとー」



すっかり泣き止んで、笑顔をこぼして梨華の手品を賞賛する。
少し照れくさそうに、梨華も笑った。

『ばいばーい』と、少年がご機嫌に走り去っていく。



127 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:28



「ちゃんと前見ないと、また転んじゃうよー!」



と、笑顔で手を振る梨華の姿を、見つめる真希。
その表情は、衝撃というか、驚愕というか。

その表し難い感情は空気となり、真希を包んだ。

帰り道、たくさんの買い物袋をぶら下げながら、真希の空気は変わらなかった。
梨華はそんな真希を疑問には思いつつ。
そのことには触れず、返ってくる曖昧な返答を相手に、何となく会話を交わした。


なだらかな山道を登り続け、やっと、見慣れた桜並木が目に飛び込んでくる。
あれが一斉に咲いたら、きっと絶対に綺麗だと、梨華は思う。



128 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:28









「あ・・・真希ちゃん真希ちゃん」
「なに?」
「桜、咲かせて欲しいってダメ?」








129 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:29




『願い事』のコトだと、真希が理解するのに少し時間がかかった。
それほどに、最近二人の間でそれ関係の話題が出ていなかったのだ。

今の生活に、馴染みすぎた自分。
実は、浸りきってはいない梨華。


伝えるべきか、黙っておくべきか。
歩く梨華の後姿に、声を投げる。




「あー・・・ゴメンね?ちょっと無理かなー・・・」
「そっかぁー。んー、じゃあまた考えてみるね。」
「ごとーはね、命をどうこうするチカラは使えないんだ。」
「へぇ・・・?」



130 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:29




『また考える』との自分の返答で、この会話は終わったものだと思っていた。
続く真希の言葉に、少し驚いた様子で返す。
それは、会話が続いたことによる驚きで、真希の『チカラ』の問題ではなかった。



「と、言うより、再生系のチカラを扱えるほど、ごとーに能力がないんだよね。」
「真希ちゃんでも?」
「うん。再生を司るチカラは、かなりの能力が必要だから・・・」
「へ〜・・・」



後ろで、真希が立ち止まった気配がした。
くるりと、梨華が振り返る。
視線は、梨華に真っ直ぐ注がれていた。



131 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:29




「真希ちゃん?」
「・・・・気付かない?」
「え・・・?」



132 名前:**12******* 投稿日:2004/01/05(月) 13:30







首を傾げる梨華の手には、小さな花束が可愛らしく揺れている。

そう、それは、先ほど梨華が咲かせた、花。



133 名前:如月 投稿日:2004/01/05(月) 13:31

ハイ、更新終了です。
ちょっとは・・・進んだ・・・かな。

いつもと違う終わり方でごめんなさい。
13と、ちょっと続けやすくするためにこんなんなってしまいました。



134 名前:如月 投稿日:2004/01/05(月) 13:35

●116 名無し読者様

またまた日が開いてしまって・・・。
こんなトロいスレにお付き合い、感謝です。


●117 名無しさん

保全感謝です。

135 名前:如月 投稿日:2004/01/05(月) 13:36

それでは、今日はこの辺で。
次回は、もちょっと動きます(予定)。

のろのろ展開な話でごめんなさい・・・。

読んでくださった方、ありがとうございます。
お目汚しをいたしました。
136 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/07(水) 00:07
こ、これはもしかして梨華ちゃんも

>のろのろ展開な話でごめんなさい・・・。
全然のろのろじゃないです
半年以上保全しているスレもあります(笑
マターリ次を待ってますね
137 名前:つみ 投稿日:2004/01/21(水) 23:05
今日はじめて見させていただきました。
一年前から進行していたのに知らなかった・・・
しかもかなりつぼな作品です!
またーりまってます!
138 名前:春雷 投稿日:2004/01/22(木) 12:09
こちらの話もほのぼのしてていいですね〜。
今年も、如月さんについていきます!!←迷惑ですか?
139 名前:如月 投稿日:2004/02/02(月) 09:42
2月に入ってしまった・・・。
更新に参りました。

相変わらずタラタラですが・・・。

140 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:44



『結局、梨華ちゃんは自分の能力を正しく理解してくれませんでした。』






今、真希の頭を覗けば、多分こんなことが渦巻いては消えているはずである。


141 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:45




「・・・・遠まわしすぎたかなぁ・・・。」



呟き、指を落とすのは鍵盤の上。
暗闇に、ピアノの澄んだ音が漂う。


梨華が腕を揮った夕食は、所々焦げ付いてはいたものの、なかなかに美味だった。

素直に『美味しい』と口にすれば、梨華は嬉しそうに笑った。
その瞬間。
笑顔が、ある人物とダブった。

自分よりいくぶん年上の、仲の良かったあの二人。


142 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:45



伝えることなどないのだろうか。
彼女の中の、壮大なチカラ。

気付かないということは、そのチカラを使ったことがないということ。
それならば、わざわざ能力に悩まされるような種を植付けることなどないのかもしれない。



「・・・再生能力・・・か」



その力をもつ人間と、真希は今までに二人しか出会ったことはなかった。
今、あの二人が生きていたなら。
自分にどんな言葉を投げてくれるだろうか。

なにも、諭してなどくれはしないだろうか。



「・・・あー・・・」



考えることに疲れた。
元来、物事を深く考えて行動するタイプではない。



143 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:46




「・・・んぁ・・・・・シリアス終了。」



『なるようにしかならない』
後藤は結局そう結論付け、眼下に広がる鍵盤に両手を降ろした。

ゆっくりと鍵盤の上をすべる綺麗な指。

奏で出る音色は暗い屋敷を包む。


時間は既に『深夜』と表記できる頃。
草木も眠る丑三つ時というヤツで。

真希は時折、梨華の寝静まった後、こうして一人でピアノを弾いていた。



144 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:47




「真希ちゃんピアノ弾けたのね」
「!?」



突如降って来た声に顔を上げて振り返れば、わりと至近距離に梨華の顔があった。



「梨華ちゃん・・・ビックリした。起きてたんだ?」
「うん。なんだか寝付けなくって。」
「あ・・・起こした?」
「ううん。起きてたら綺麗な音がしたから、降りてきてみたの。」
「時々弾いてやらないと、音狂っちゃうんだよね。」
「ね、もっと弾いて?」



その言葉の響きを。
真希は、かつて聴いたことがあった。

一つ気付いてしまえば、あとはスルスルと合点が行くことばかりなのだ。

強い能力も。
優しい笑顔も。

そう、彼女のそれは、すべて、あの二人に似ている。



145 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:47




「・・・ちゃんと弾けるのは、一曲しかないんだけど・・・。」
「うんっ!弾いて弾いて?」



ゆっくりと鍵盤に指を滑らせる。
真希が奏で始めた曲は、梨華の記憶にはない曲だった。

それなのに、梨華の胸に溢れるのは懐かしさ。
音色に意識を浮かべながら、真希のピアノに心を奪われていた。



切ない音色。
柔らかい心地。



真希が鍵盤から指を下ろすのを、まるでスローモーションのように感じながら。
ただ、静かに涙を流していた。



146 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:48




「・・・梨華ちゃん?」
「あっ・・・」



呼ばれて、慌てて拍手をする。
それに少し苦笑を含ませながら、真希が笑った。



「わざとらしいなぁ?」
「あ、違うの、ごめんなさい。すごく綺麗だったのに・・・」



泣いた理由。



「音色が哀しかった・・・」
「・・・音色・・・。」



言われて、真希は100%苦笑を返す。



147 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:48




「『楽器ってのは、弾いてる人間の感情を聴いてる方に伝えちゃうもんなんだよ』」
「え・・・」
「・・・って、教えてくれた人がいてね?」
「うん・・・」
「その人のことを、考えながら弾いてた・・・から、哀しかったのかな。」



ポロンと、指先を鍵盤の上で遊ばせ。
真希は、その人に思いを馳せているようだった。



「その人のこと、大好きだったのね。」
「へぇっ!?」
「音色にのせて、想いが人に伝わっちゃうくらい、好きだったんでしょ?」



意識を戻し、見上げた梨華はすっかり涙を仕舞っていた。
その微笑を、真希は慌てて否定する。



「違う違うっ!その人、結婚してたし!」
「ああ、そうじゃなくてね?」



珍しく慌てた様子が面白いのか、梨華はクスクスと笑いながら付け加える。



148 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:49




「恋愛感情とかじゃなくて、人間として、好きだったでしょ?」
「・・・あぁ・・・なんだ・・・。うん、それはね・・・。」



気の抜けたような真希の姿に、梨華はさらに笑顔をこぼした。



「・・・笑ってるけど、ホントにビックリしたんだよ?」
「どして?」
「恋とか、そんな感情いっさいなかったから・・・」
「うん?」
「そういう対象に向けてそんなコト言われるのは・・・恥かしい。」



プイと横を向く仕草はまるで子ども。



149 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:49




「そっかそっか。ごめんね?」
「・・・梨華ちゃんて結構、人いじめるの好きだよね・・・」
「えー?そんなことないよー」



嬉しそうな笑顔に、説得力は無い。



「・・・でも、そんなに好きな人のコト想って弾いて・・・」



そこまで言いかけて、梨華は口を閉ざす。
フッと笑って、真希が続けた。



「『どうして哀しい音色になるの』?」
「あー・・・の、うん・・・でもあの・・・・・・」



真希に、自分のことを語る必要はないと宣言した手前、突っ込んでは聞けない梨華。



「ふはは」
「・・・真希ちゃん?」
「聞きたきゃ聞いていいんだよー?」
「えっ・・・いや、でも・・・」



この流れで聞き出すのは、どこかずるい気がして。



「・・・いい。真希ちゃんの過去を知りたいわけじゃないわ。」
「・・・そ?」
「うん。ピアノ、ありがとう。」
「どーいたしまして。」
「・・・それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ。」



150 名前:**13******* 投稿日:2004/02/02(月) 09:51







長くて、弱い衝撃で儚く消えてしまいそうな。
綺麗な指が奏でる音色は、弾き手の雰囲気と同じ音だった。

それは、とても綺麗で。
どこか淋しくて、哀しくて。

私は知らず、涙を流してた。


記憶の奥。
誰かが口ずさんでいた。
懐かしいその旋律。






151 名前:如月 投稿日:2004/02/02(月) 09:56

更新終了で御座います。

・・・んー・・・・・・
予告に反して、進みませんでした、あまり。
すみません。
152 名前:如月 投稿日:2004/02/02(月) 10:02

●136 名無しさん様

お待ちいただけてますでしょうか・・・。
一ヶ月ぶりです。

石川サンの能力・・・
一応、後藤サンにちょろっと語ってもらいました。
そろそろ動かしたいと思ってます、お話を。


●137 つみ様

こちらでははじめましてですね。
一年前から、ほとんど進行してないので(爆)
全然余裕で追いつけますから、ご安心ください。

つぼっていただけるよう、頑張りたいと思います。


●138 春雷様

こちらでははじめまして。
いらっしゃいませ。

つ、ついてきてくださいますか!
ありがとう御座います!
では、頑張って走りたいと思います。

153 名前:如月 投稿日:2004/02/02(月) 10:03

次回こそ、もちょっと進めます。
絶対。

それではお付き合いくださった方、お目汚しを。
多謝です。
154 名前:つみ 投稿日:2004/02/02(月) 16:15
更新待ってました!
あの2人・・・
いったいだれなんだろう・・?
まだまだごとーさんには過去が隠されていますね!
次回も待ってます。
155 名前:名無しさん 投稿日:2004/02/05(木) 17:06
2人の過去が気になります
いしごまアンリアルもいいですね
156 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/27(金) 01:10
続き期待してますね
157 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/15(月) 00:49
保全です
158 名前:名無し 投稿日:2004/04/05(月) 00:04
いしごま保全
159 名前:如月 投稿日:2004/04/23(金) 11:30
申し訳御座いません。
今、必死こいて文章を矯正してます。
近々また参ります。
本当に本当に申し訳ありません。
160 名前:名無しさん 投稿日:2004/04/24(土) 01:08
短編集ともどもマターリ待ってますね
161 名前:如月 投稿日:2004/05/21(金) 10:11
『近々』から一ヶ月経ってしまって。
もう本当に自己嫌悪です。

162 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:12




懐かしい夢を見た気がした。
遠い記憶の中で、誰かが笑いかけている。

人影は、どうやらふたつ。
ぼんやりとしていて、輪郭ははっきりしない。

歌声が耳に届く。
それは、昨夜の旋律。
柔らかい空気のなか、ひどく愛しい感覚を覚えた。



163 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:13




目が覚めたのは、いつもより少し遅い時間。
見慣れない時計の針の位置に、少し動きが止まる。



「・・・10時・・・?」



一瞬頭が白くなる。
そして、慌てて飛び起きる。
朝寝坊の習慣がない梨華には、十分に衝撃を与える時間帯。

いささか乱暴にドアを開け、廊下に出る。
シンとした屋内は、人の気配を感じさせない。



「・・・真希ちゃん・・・?」



164 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:14




ナチュラルに寝坊常習犯な真希だ。
この時間に起きていなくても、むしろ自然かもしれない。

そう思い直し、梨華はとりあえず着乱れた寝間着を脱ぐべく、部屋に戻った。


真希が『着ないから』と貸し与えてくれた衣服。
どれも本家で着ていた雰囲気に似ていて、少なからず梨華は驚いたものだ。

白いブラウスに淡い桜色のロングスカートを合わせて、梨華は再び部屋を出た。


なんとも微妙な時間に目覚めてしまったものだ。
朝食を食べるべきか、昼食まで控えるべきか。

一人、少々考えてから、優しい同居人に相談することにした。



165 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:14




「真希ちゃん、起きて?」



部屋の前に立って、まだ寝ていると思われる人物に声をかける。



「朝ご飯食べる?それともお昼まで待つ?」



返って来ない言葉に、ノックをしながら質問を重ねる。



「10時だし、軽くお茶でもする?」



やはり無言。
彼女の起床時間は著しく遅いが、深く眠るタイプではない。
起きたくないと駄々はこねても、軽く声をかければ目を覚まさないことはない。

訝しげに、再度ノック。
少し強めに。

けれど、やはり返答が帰ってくることはなく。
梨華は、失礼ではあると思いながらもドアを開けた。



「・・・真希ちゃん?」



166 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:15




ベッドに寝ているのは間違いなく真希で。
梨華はどこかホッとしたのと同時に、その異変に気づく。



「・・・・・・真希ちゃん?」



訝しげに歩み寄れば、そこには瞼を閉じた真希がいる。
そこまでは、普段同様。

が、眉根をきつく寄せ、荒く息をする真希は、どう見ても普通の状態ではない。

静かに近づき、汗ばんだ額にそっと手を押し当てる。
その熱さに、にわかに驚き手を引く。




「・・・あつ・・」
「あ、真希ちゃん、・・・起きた?」



ごろんと寝返りを打って、横向きになる。
うつろな瞳には、梨華が映って。



167 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:16




「・・・おはよ。」
「おはようございます。・・・大丈夫?」
「だいじょうぶ・・・」
「ウソばかり。あの後どのくらい弾いてたの?」



大丈夫なわけがない。
溜め息と共に言い放つ。

えーと・・・と考え出した真希。
その額に再び手を添えて、軽く撫でた。



「食欲は?」
「ん〜・・・あんまり・・・。だから梨華ちゃんひとりで食べ」
「なくても食べる。栄養つけなきゃ治らないでしょ?」
「・・・はぁ」
「お昼まで寝てて?出来たら運ぶから。」
「あの・・・」
「おやすみなさい。」



にっこり笑って、有無を言わせずに部屋を後にする梨華。
後姿を見送って、脱力したように真希は笑う。



「・・・押しが強いところはアンタにそっくりだよ・・・真里さん。」



呟いて、その音が空気に溶ける頃には。
真希はまた、沈むように眠りに着いた。




168 名前:**13.5******* 投稿日:2004/05/21(金) 10:17






久しく口にしていなかった名を呼んだ
柔らかく消えた音は、ひどく懐かしくて

アンタ達の笑顔を、今でもはっきりと思い出せる。

もしも逢えたら


そんなことを、今も思っているなんて。





169 名前:如月 投稿日:2004/05/21(金) 10:19
更新終了で御座います。
えー・・・あまりに短かったもので、『.5』ってことで(卑怯

170 名前:如月 投稿日:2004/05/21(金) 10:26

●154 つみ様

『あの二人』
今回片割れが明らかになったわけで。
ってことは、もう一人はあの人か・・・?


●155 名無しさん

た、大した過去などないのですよ〜
こんだけ引っ張っといてアレですが・・・。
アンリアル、如月大好きなので、書いてて楽しいのですが
同時にとても難しいですね。


●156 名無し読者様

お待たせしました。
遅々として進まず、申し訳ないです。


●157・158 名無し読者様、名無し様

保全感謝です。
何度も言いますが放置はいたしません。
お待ちくだされば幸いです。


●160 名無しさん

こちらで没にしたネタを、赤板でガンガン書けそうです(爆
両スレチェックしてくださっているのですか。
有り難い事です。恐縮です。

171 名前:如月 投稿日:2004/05/21(金) 10:29
頭の中は日々この話でいっぱいです。
どう書けば印象的なシーンになるだろう、とか
もう少しエピソードを削るべきか増やすべきか。

アンリアルはやはり難しいです。
模索しながらながらって感じです。

次回更新は、『14』にきちんとなるよう頑張ります。
では、読んでくださった方、多謝です。
172 名前:春雷 投稿日:2004/05/21(金) 19:21
まってましたっ!(笑)
過去の人は彼女だったんですね。で、もう一人はやっぱりあの人かな?
173 名前:つみ 投稿日:2004/05/21(金) 21:43
あの人が・・・
となるともう一人は・・
予想しつつ待ってます!
174 名前:名のナイ読者 投稿日:2004/06/24(木) 22:11
更新楽しみに待ってます。
175 名前:如月 投稿日:2004/07/07(水) 14:44

・・・あまりにも遅すぎるだろ自分。
28日期間を守ろうとは頑張ってるんですが・・・
力が及びませんで。

それでは14を。
今回はちゃんと『14』になってると思います(苦笑
176 名前:**14******* 投稿日:2004/07/07(水) 14:48
「38.5℃・・・」
「・・・・・・んー・・・」
「だ、大丈夫・・・?」
「んー・・・まかせて〜・・・」



何を任せるのだろうか。
梨華は頭をよぎる突っ込みを無視して、額のタオルをとる。

一分ほど前に乗せたそれは、真希の体温で既にぬるい。

砕いた氷の入った水を張った洗面器。
タオルを浸し、冷気を含ませる。
きつく絞りながら、梨華は呟く。



「どうしよう・・・やっぱりお医者様に看て貰った方が良いかしら・・・」



昼食をすませて、なんとか見つけ出した体温計で熱を計らせた。
思ったよりも高いその数値に、梨華は不安になる。



「いや・・・。」



ひんやりとした感覚に、真希は目を開け梨華の言葉を拒否する。



「医者はマズイ・・・。」
「へ?」
「看せたことはないけど、今の体は紛い物だから。」



淡々と言い放つ真希の言葉に、梨華はハッとして黙り込む。
本来ならば動いていてはいけない心臓。
あたたかい真希に、ついつい忘れがちになる事実。



177 名前:**14******* 投稿日:2004/07/07(水) 14:51

「じゃあ、私が一生懸命看病するから、早く治ってね・・・?」



しばらく考え込んで発せられた梨華の一言。
はふん、と笑って、真希は頷いた。



「・・・少し・・・眠くなってきた・・・。」
「うん、おやすみなさい。」
「梨華ちゃんも休んでよ・・・」
「邪魔?」
「そう言うんじゃないけど・・・疲れたでしょ?ごとーは大丈夫だから・・・」
「ならここにいさせて?風邪の時って、ひとりじゃ心細いでしょう?」



イイコイイコと、幼子にするように、梨華は真希の頭を撫でる。
少々苦笑気味に微笑んでから、真希はゆっくり瞳を閉じた。


眠るか眠らないか。
浅い意識を軽く飛ばして、人は夢を見る。

意識が肉体を離れているその時、身体を守るのはその人物が纏う気。

真希が寝入ったことを、梨華は彼女の濃くなった気で感じ取った。



おやすみなさい。



声に出さずに呟いて、すっかり氷の溶けてしまった洗面器を抱えてドアノブを捻った。



「ゴメン・・・」
「え?」



呼び止められたのかと振り向いても、相変わらず真希の気は濃く深い。
眠りに身をゆだねているのは確かで。

その言葉が寝言であると理解したのは、たっぷり10秒後。

『寝言に返してはいけない』とは、いつから言われていることだろうか。
特に理由も気にせず、というよりも他人の寝言を聴いたのはこれが初めてで。

梨華は少々好奇心を膨らませながら、真希へと再び近づく。



「・・・ん・・・ごめんなさ・・・許して・・・」



真希の寝顔を見て、梨華は自分の浅はかさを酷く厭んだ。
一瞬でも、好奇の目を向けた自分を。

苦しそうに身を捩りながらうなされる真希。
起こすべきかと、声を掛けかけて。



「許して・・・おかあさん・・・」



その言葉に、かけるべき声を失う。







178 名前:**14******* 投稿日:2004/07/07(水) 14:53


「・・・『お母さん』・・・?」
「ん・・・」



思わず梨華が寝言を反復すると、真希が反応するように寝返る。
起こしたかと慌てたが、それはただ、更に深い睡眠に入った合図だったようで。
先ほどまでうわ言のように呟いていた謝罪も、もう聞こえない。

寝息も静かに、ゆっくりと穏やかなものへと変わった。



「・・・」



共に生活をしていれば、分からない部分だって増えてゆく。
けれども、自分は『何も聞かない』と宣言した。
勿論それを後悔してはいないし、きっとこの先も後悔などすることはない。

人には触れて欲しくない部分が、多かれ少なかれきっとある。

もしかしたら、『お母さん』も、真希にとっては聞かれたくない部分なのかもしれない。


胸がつかえるのを感じる。
深く呼吸して、それを取り払おうとした。

ふと、真希が更に動いて、掛け布団を蹴り、衣服からは白い背中が覗く。

苦笑しながら、梨華がその背を隠そうと手を伸ばす。
その手がビクリと止まったのは、真希の背に、消えない痣を見てしまったから。


戻すはずだった真希の上着の裾を、梨華は恐る恐る捲りあげた。
痣は無数に残されて、真希の綺麗な背中を赤く紫に染め上げていた。



「母親だよ。」



179 名前:**14******* 投稿日:2004/07/07(水) 15:00
その声に飛び退く様に、梨華は真希の裾を離し、距離を置く。
ゆっくりと、真希と視線が合ったことに気付くまで、梨華の意識はそこにはなかった。

だから。
真希の身体を強く覆っていた綺麗な気が薄くなっていたことに気がつかなかった。



「ごとーはこんな力持ってるけど、母親は普通の人でね。」
「待って・・・」
「いーよ、話したい。」



真希を気遣ってではない。
『聴きたくない』とは言えなかった。



「梨華ちゃんちとは違って、ウチの母親はなんの感覚も持ってない人だったから。『何か』が見える娘を、気持ち悪く思ってたんだろうね。」



おずおずと歩み寄る。



「ごとーを叩くあの人は、いつだって苦しそうに顔を歪めてた。ごとーはいくら叩かれたって痛くなんかなかったのに。あの人はいつも、痛そうに泣いてた。」



淡々と語られる母親の『想い出』。



「親不孝だったね。ごとーがこんな力持ってさえいなきゃ・・・きっとあの人だって、自分の娘を可愛がる幸せを手に出来たはずなのに。」



寝ぼけた声と表情のまま、瞳の色は確かに哀しみを帯びているのに。



「・・・あは」



そこまで話して、真希は梨華を見て笑う。




「どうして梨華ちゃん泣いてるの?」
「・・・・・・・・・」
「・・・泣けなかったごとーの代わりに、泣いてくれてるの?」



今度こそその瞳から涙が溢れそうな真希を、梨華は飛びつくように抱き締めた。



180 名前:**14******* 投稿日:2004/07/07(水) 15:00


「・・・それで『ごめんなさい』?」
「え・・・」
「さっき、寝言・・・。」
「ああ・・・なんか言ってた?」



梨華は頷くだけで、真希の言葉を言おうとはしない。
真希も、特に聞こうとはしなかった。



「泣かないのは・・・お母様が真希ちゃんの分まで涙を流してたからね・・・」
「ん?」
「優しい真希ちゃんに手をあげる自分が許せなかったのね・・・。」
「ふふ、優しくなんかないよ?」



静かに首をふって、梨華が少し身体を離す。
近く、瞳を寄せて。



「優しいよ。真希ちゃんは優しい。」
「・・・」
「もしも私なら・・・愛されない自分じゃなくて。愛してくれないお母様を、きっと恨んでる・・・」
「・・・・・・それは・・・」
「きっと・・・きっとお母様もそう。」
「え?」
「真希ちゃんを受け止めきれない自分が、嫌だったのよ・・・。」



柔らかく、柔らかく。
微笑みながら、梨華は言う。



「真希ちゃんが嫌いだったんじゃない。」



梨華を引き寄せたのと、その言葉を真希が聴いたのはどちらが早かっただろうか。
力強く梨華を抱き締める真希の腕は、かすかに震えて。



「大丈夫・・・」
「・・・っ・・・・・・」
「お母様は、真希ちゃんをちゃんと愛してた。」



その言葉のどこに根拠があるのか。
しかし梨華の言葉は強く真希に届く。

久しぶりの嗚咽に苦しむ真希の背中を、梨華は優しく撫でる。



「ぅ・・・」
「・・・なに?」
「カゼ・・・う、う うつったら・・・ゴメ・・・」
「・・・ふふふ」



181 名前:**14******* 投稿日:2004/07/07(水) 15:01






あなたのお母様のことも、過去のあなたのことも。
あの時も今も、私は本当に何一つ知らないけれど。


愛をいっさい浴びずに、こんなに優しさを持てる筈がないでしょう?

今だってホラ。
たった数ヶ月一緒に過ごしただけの私の死を厭んでくれている。


だから自信を持って言える。
あなたは絶対に愛されていた。


あなたの愛は、曇った私の心にだって届いたの。


ああ

私の周りにも
愛は溢れていたのね。

もう少し早く気付けていたなら


ううん、そうじゃない。

あなたに逢えていなければ、気付くこともなかった。
だから、これで良いの。

お願いだから

そんなに哀しい瞳で、涙をこぼさないで・・・





182 名前:如月 投稿日:2004/07/07(水) 15:03

更新終了。
進みません?
今回結構進みません?

だいたい20くらいで終わらせるつもりで始めたので・・・
上手く行けばあと6回くらいで・・・・・・終わらない気がする・・・
183 名前:如月 投稿日:2004/07/07(水) 15:06

172 春雷様

・・・もう待ってさえいただけていないかと思われ(ガクブル
ま、毎日このスレを忘れたことはないのですよ(・・・ホントですよ?


173 つみ様

おそらく予想通りであろう、あの方のおかげで如月もういっぱいいっぱい。
どこがどういっぱいいっぱいなのかは、この話が完結した暁に。


174 名のナイ読者様

お待たせしました・・・。
二ヶ月突破する前になんとか更新せねばと頑張りました。

184 名前:如月 投稿日:2004/07/07(水) 15:09

後藤さんの過去一つ。
石川さんに関しては、本人よりも周りに過去がありそうです。

それではお付き合いくださった方、激しくお目汚しを。
多謝です。
185 名前:春雷 投稿日:2004/07/07(水) 21:32
待ってましたとも(笑)

謎が増えてしまいました・・・
後藤さんの存在がよくわからなくなって(爆

6回なんて言わずに、もっと読みたいです。
186 名前:つみ 投稿日:2004/07/10(土) 18:01
待ってた・・・w
少し切ない、いしごまありがとうございました。
後6回・・・どのような展開が待っているのか楽しみです!
187 名前:名無し 投稿日:2004/08/20(金) 23:40
続き待ってますね
188 名前:如月 投稿日:2004/08/27(金) 08:26
すみません、保全させていただきに参りました。
辻加護卒業後、書けなくなってしまいました。

放置はいたしません。
完結しましたら落とすかあげるかしますので、それまでお待ちくだされば幸いです。
189 名前:名無し読者 投稿日:2004/08/27(金) 10:54
またーり待ってますよ
如月さんのペースでがんばってください
190 名前:名無し 投稿日:2004/09/21(火) 21:03
待ってますね
191 名前:名無しさん 投稿日:2004/10/16(土) 10:44
保全です
192 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/15(月) 23:59
更新期待上げ
193 名前:名無し読者 投稿日:2004/12/05(日) 10:02
待ってます
194 名前:名無しさん 投稿日:2004/12/27(月) 00:58
年末保全です
195 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/23(日) 13:00
こちらも待ってますね
196 名前:如月 投稿日:2005/01/28(金) 17:28

・・・・・・
も、もうなんと言ったらいいか・・・・・・・
197 名前:**15******* 投稿日:2005/01/28(金) 17:29

ダイニングの大きなテーブルに向かい合って腰をかけて。
ホッとした様に、梨華が笑う。



「治って良かったね。もうすっかり平熱ね。」
「んぁ。梨華ちゃん大丈夫?うつってない?」
「うん!私、健康には自信有るから。」
「梨華ちゃんのおかげ。ありがとね?」
「ヤダ、看病しただけなじゃなーい。」



梨華は照れるが、真希の言葉は口説き文句ではない。
梨華の気が、真希の体を癒したのだが。

本人に自覚は皆無であるようで。

熱を出して寝込んで。
抱えていた想い出の欠片を少し梨華に手渡した真希。

泣き疲れて再び眠った後まで、梨華の優しい掌が頭を撫でてくれていた感触を覚えている。



「ねぇ梨華ちゃん、ごとーの看病、疲れたでしょ?」
「えー?そんなことないよ?」
「・・・うん、でもちょっと寝てきてよ。顔色が良くないよ?」
「・・・そう?」
「うん。梨華ちゃんが倒れても、ごとー看病なんて出来ないよ?」



子供が母親を頼るような視線を受けて、梨華は思わず真希を撫でてみる。
大人しく撫でられてやれば、梨華の瞳は『仕方ないなぁ』と細められる。



「じゃあ少し眠ろうかな。お夕食までには起きるから。」
「んー。おやすみぃ。」



トントントンと階段を上がる背中は、やはり疲労感が漂う。


198 名前:**15******* 投稿日:2005/01/28(金) 17:30


「・・・変に強がりなんだよねぇ・・・。」



部屋のドアが閉じられたのを見届けてから、真希は呟く。
ヤレヤレと息をつく真希を梨華が見れば。

『家族みたい』だと、きっと喜んだであろう。


とりあえず、下拵えをしておけばすぐに出来るような料理をあれこれと思案する。

本人に自覚がないにしろ、癒しの能力は、非常に体力を消耗させるもの。
きっとすぐに、ぐっすり寝入るだろう。

真希の予想は見事に的中して、布団に包まってものの10分足らずで、梨華は意識を手放した。



「よし、出来た。」



ホワイトソースを器に流し込み、備え付けのオーブンにいれる。
手を流して、時計を見やれば梨華が部屋に行って30分が経つ。

そろそろ寝入った頃だろうと踏んで、静かに階段を上がる。


199 名前:**15******* 投稿日:2005/01/28(金) 17:30


「りかちゃん?」



軽く声をかけてみる。
返事はなく、ホッとして真希はドアノブをひねる。

気分は夜這い。
何だか自分が最低なことをしているようで自己嫌悪に襲われる。


少々おどけた思考は、梨華の纏う気を感じ取って吹き飛んだ。

梨華の強い気を確かに感じる。
しかしそれは薄い殻に包まれたように、直接伝わっては来なかった。



「・・・・・・封印。」



呟いた言葉に納得する。

そう、これは紛れもなく封印。
人は眠りにいる間、その体を気で包むから。
ごく自然にそれを開放するのだが。

勿論梨華も例外ではなく、無意識に気を放ってはいる。
しかし直に感じ取ることは出来ない。
明らかに強力であるはずのそれが、何故かじれったいほどに閉じ込められている。


200 名前:**15******* 投稿日:2005/01/28(金) 17:31


「・・・」



自らの頤に手を添え、集中する。
必要以上に近寄れば、おそらく梨華は起きてしまうだろう。
梨華が敏感なのではなく、纏う梨華の気が恐ろしく敏感なのだ。

ドア付近から動くことなく、その封印を探る。

それは呪詛などという禍々しきものでは決してなく、むしろその逆で。
悪意を一切感じないから、真希は首をかしげる。

壁に背を預け、真希は腕を組む。

悪意がない封印・・・?
と、いうことは梨華のためを思って施されたのだろうか。

しかし、梨華はその事実をどうやら知らない。
知らず、『自分には能力がない』と思い込んでいるのだ。

能力がなかったのではない。
梨華が力を上手く扱えないのは、この封印のせいだったのだから。



「・・・どうなってんだ・・・。」



感じる霊気は一人分のもの。

つまり、一人の力で梨華の霊力を抑えつけている。
これだけ強い梨華の力を、たとえ完全ではないにしろここまで抑えることが出来るのならば。
この封印を施した人物は相当の能力の持ち主であろう。


201 名前:**15******* 投稿日:2005/01/28(金) 17:31


「・・・身内?」



梨華の直系の親族ならばこれくらいの力があったとしても不思議ではない。
長い年月をかけて梨華に気づかれることなく封印をかけることも可能かもしれない。

真希が、不可解な封印に目処をつけたところで。

スッと空気が変わる。

ああ、起きる。
真希は思った。



「・・・あれ、真希ちゃん?」
「ゴメンね、起こしちゃったね?」



壁に寄りかかったまま斜に構えたまま。
普段通りに柔らかく会話を交わすのはアンバランスさを覚えるけれど。
寝起きで、しかも薄暗がりの中で。
そのアンバランスさを梨華が感じることはなかった。

悩める思考を引きずったまま、いつもの穏やかモードに戻ることはなかなか難しい。



「ううん、起きたのよ。・・・どれくらい寝てたかな。」
「あーっと・・・一時間くらいかな。もっと寝る?」



真希の言葉に首を振る。



「これ以上寝ちゃうと、夜眠れなくなっちゃうわ。」
「そっか。」


その絡まる思考さえ包み込むような梨華の笑顔。
意図せず、真希は考えることを放棄した。
湧くような心に従って声を出す。



「ご飯食べよっか?」



その問いかけに返ってきた梨華の笑顔に、また笑顔を重ねて。

しまった。
まだ火をかけてないと。

オーブンの中で冷たくなっているであろうポテトグラタンに思いを馳せた。
202 名前:**15******* 投稿日:2005/01/28(金) 17:33



「人には生まれてきた意味がきっとあって、寿命はその意味と関係があるんだよ。」


『だからお前が泣く必要はない』と。
続く言葉が切なかった。

もしも、アンタの言ってた『生まれてきた意味』が。
本当に自分にもあるとするなら。

それはどうか、彼女の幸せを祈るためであって欲しい。


心から、そう思う。



203 名前:如月 投稿日:2005/01/28(金) 17:37

更新終了。
んー、あと5回でまとまるのかなぁ・・・

と、いうわけでお久しぶりすぎてすみません。
めっきり更新止めてたのは、普通に書けないというのもあったり。
・・・色々な事情で内容を大幅に変えなければならなくなったのと・・・。

とにかくすみませんでした。
204 名前:如月 投稿日:2005/01/28(金) 17:42

185 春雷さま

5回程度で終わらせる気でいかないと、収拾つかなくなっちゃうんですよ・・・!
助けて!!(読者様に助けを求めるな)

あはは、謎ですか?
後藤さんに謎はないですよー。
文章そのままを受け取ってやってくだ、さ・・・って、如月の文章が下手なんですよね。。


186 つみさま

目指すは切な系ファンタジー(?)。
あと5回程で何とかケリをつけたいと思ってます。
お暇ございましたらお付き合いくだされば嬉しいです。


保全ありがとうございました。
もう保全の嵐で・・・(涙)
申し訳ありません。

205 名前:如月 投稿日:2005/01/28(金) 17:45

『15』
>>197-202

物凄いブランクがあって、ちょっと文章の組み立て方とか変わっちゃってますが・・・
すみませんすみません;

完結した暁には落とします予定に御座いますので・・・。

えーと・・・お付き合いくださった方がいらっしゃいましたら・・・多謝です。
206 名前:名無し読者 投稿日:2005/01/29(土) 09:44
交信まってましたよ。
いしごまのアンリアルも好きなので毎回楽しみです。
207 名前:春雷 投稿日:2005/02/03(木) 22:16
更新おつかれさまです。
すぐに終わってしまうと悲しいので助けません!(笑
更新がゆっくりでも待ってますんで大丈夫ですよ
208 名前:Liar 投稿日:2005/02/08(火) 22:05
如月さんって、他にも小説かいていらっしゃいますよね??
文章力がさすがって感じです。がんばってください。
209 名前:名無し読者 投稿日:2005/03/03(木) 22:49
hozen
210 名前:真由 投稿日:2005/03/05(土) 10:57
更新お疲れ様です。
綺麗な文章に惹き込まれてしまいましたw
完結目指して頑張って下さい。最後までお供致します。
211 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/25(金) 22:39
一週間かけて読まさせて頂きました。 物語に惹かれましたね、最後までお付き合いさせて頂きます。 次回更新待ってます。
212 名前:名無し読者 投稿日:2005/04/18(月) 00:35
まってますね
213 名前:名無し読者 投稿日:2005/05/14(土) 06:38
保全ですよ
214 名前:名無しさん 投稿日:2005/06/19(日) 08:18
ho
215 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/21(火) 19:34
約一週間で5ヵ月となります、生存報告だけでもお願いしますm(__)m 保全します。
216 名前:ななし 投稿日:2005/07/31(日) 02:25
hosendesu

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