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Mysterious Long Night

1 名前:門番 投稿日:2003年01月31日(金)10時27分45秒
短編を書いてみました。元ネタありです。
この森板、スレッドが多いのですが、短編なのでこちらに立てさせて頂きました。スミマセン

自分の中では「この人とこの人・・・」という設定は一応ありますし、
好きなカップリング、苦手なカップリングもありますが、
この短編集に書く話は全て、誰に当てはめてもいいような形で書いてみました。
なので、人の名前は一切出てきません。
それぞれが好きなカップリング、または似合いそうなカップリングを当てはめて
読んでみて楽しんで(?)いただければ嬉しいです。
2 名前:門番 投稿日:2003年01月31日(金)10時28分21秒


          【雪の降る街】

3 名前:【雪の降る街】 投稿日:2003年01月31日(金)10時29分39秒

今年最初の雪が、雨の時とは違う真っ白な空から舞い降りてきた。
足をとめて上を見上げると1つ、また1つと白いものがはらはらと落ちてくる。
道理で今日は朝から冷え込むはずだ。
ふっと首をすくめて白い息を吐く。白い息とともに出てきたのは溢れんばかりの想い出。


「寒いね」といって肩を寄せ合ってお互いを温めあっていた君は今はもういない。
君と私が利用していた通学列車はローカル線だったから、
時間さえずれれば本当にうちと君の貸切状態になっていたよね。駅も、電車さえも。
1つの車両を貸しきって、長椅子の真ん中を陣取って君と隣り合って座っていた。
ホームに行けばやっぱり私たち以外は誰もいなくて、君と二人だけの世界だった。
そんな駅の寒いホームで、誰もいないとわかっているのに
それでもこっそりとキスをしたのは君の卒業間際の、今頃だったよね。
なんだか君が不意に小さく見えて、柱の陰で強く強く抱きしめた。
「苦しいよ…」
そういいながらも君の腕は私の背中に回ってきたっけ。
体重もそっと自分に預けるようにして寄りかかってきた君。
4 名前:【雪の降る街】 投稿日:2003年01月31日(金)10時30分53秒

あの頃の二人はまだ、こんな日が、そう、くるなんて思ってもいなかった。
そんなことも考えずに「ずっと一緒にいようね」って話していたよね。
抱きしめるたびに鼻腔をくすぐった君の匂いや温もりは今でもまだ私を締め付けているんだよ。

学校の帰り道は、話したくていつも遠回りして帰っていた。
「ずっと好きでいてね」
そう言いあって、手をそっと握り合って、照れくさくておでこをくっつけて笑いあったこともあったね。
5 名前:【雪の降る街】 投稿日:2003年01月31日(金)10時31分24秒

今年最初の雪の中、一向に止む気配を見せずに降り続ける街の中を、
一人で思い出と歩いていた。
二人ともまだ高校生で、お金が無いからっていつもマックでだべっていたっけ。
たまには、と、それでもモスだったり。
ファミレスでもいいからレストランに行こうよ、と言った君を連れて行ったのは
ああ、そうだ。この先の交差点からさらにちょっと歩いた先にあるサイゼリアだった。

上を見上げて雪が静かに降り続けるのを、私は立ち止まって見上げる。
本当に静かに、聞こえてくるはずの無い音を感じながら、
その雪を手のひらに乗せてこみ上げてきた思い出と一緒に握り締める。

6 名前:【雪の降る街】 投稿日:2003年01月31日(金)10時31分59秒

きっと、君は私のたった1つだけのかけがえのないものだったんだよ。
相変わらず雪の降り続ける街の中を、コートを握り締めて歩き続ける。
思い出を辿り続けて、ずいぶんと駅から遠ざかってきている。
信号待ちのときに後ろを振りむいて今来た道を、雪の中の街を眺める。
君はもうそこにはいないけれど、なんだか雪化粧で綺麗になっていく街は、
珍しい雪で浮き足立っているようにも見える人たちを見ると、
きっと天使が夢を振りまいているようにも、そう、本当にそんな風に見えたんだ。
青信号に変わって横断歩道への最初の一歩を踏み出す前に、
手のひらを出してその天使の夢を手のひらに乗せて溶けていくのに、
私はなんでだかわからないけれど、見惚れてしまっていた。

思い出を手繰り寄せる。
こんなにも君との思い出はあったんだね。
際限なく。
街を歩けば歩くほど、君が鮮明に思い出せる。
あの時に君が言った言葉。君の顔。君の表情。君の動作。
何もかも思い出せる。
クリスマスのときのデートの道順だって、何もかもが鮮明に。
あの時にあった街角のポスターは色あせてしまっているけれど、
君と私の想い出は色あせずに、それでも静かに心の底で落ち着いている。
7 名前:【雪の降る街】 投稿日:2003年01月31日(金)10時33分26秒

きづけば母校の門のところにいた。
校庭で、あの桜の木の下で、教室の窓際で、君と私が楽しそうに笑っているのが見える。
まだまだ私の心の中は、いつか君と見た雪が降り続けてる。誰にも気づかれぬように。
でもいつかは降るのをやめ、そして積もっていた雪でさえも静かに溶けていくのだろう。
もう二度と会うことの無い君との想い出を失いたくないのに
きっと現実は残酷で、薄れていくのだろう。静かに。気づかぬうちに。
そしてそのうちに「忘れていたことに気づく」んだろう。

それでも。
あんなに恋した君の笑顔は絶対に忘れない

                    終
8 名前:門番 投稿日:2003年01月31日(金)10時36分38秒

短編というよりもショートショートですが、この後もこのぐらいのを書いてみたいと思います。
お目汚しすみませんでした。そして有難うございました。
9 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月09日(日)15時28分46秒
もっと読みたい…。

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