小さな丸い好日2

1 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年01月31日(金)17時59分54秒
短編書きだったんですが長編書いたら足りなくなってしまったので引っ越してきました。

前スレ
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/wood/1035431382/

よろしくお願いします!
2 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年01月31日(金)19時00分40秒
新スレおめでとーございまーす!
めっさ楽しみにしてますYO
3 名前:チップ 投稿日:2003年01月31日(金)21時26分35秒
おめでとうごじゃいます!
同じく楽しみにしてます、頑張ってください。
4 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時51分27秒
仕事に行く前にあたしはある人に電話を掛けた。
携帯のディスプレイ現れた人物の名前。

小川麻琴。

3コールくらいすると電話に出た。

「もしもし、おはよー小川」
『あ、安倍さん!?おは…おはよう…ちょっ…待っ…』
「…小川?」

小川の声の後ろではなにやら人の話し声。
麻琴ー、と呼ぶ声が聞こえる。

「…高橋?」
『…すいません!どうしたんですか!?』

あー、ごめんねぇ。
今日も一緒でしたかー。

「あ、ちょっと聞きたい事あって」
『何でしょう?』
「入れ替わってた時さぁ…、ごっちんとなんかあった?」
『え?……………あぁ!!な、何もないですっ!!』

めちゃめちゃなんかあった風だね、小川。

5 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時52分23秒
『そんなっ!キスとかっ!されてないですよ!…………あー!!!』

キス。
キスって言ったね、今。
…なるほど。
【昨日はいきなりごめんね】の意味はキスか。
で…、ごっちんはあたしの事が好きだ、と。
それに対して【気にしないで】って返事はないね。
やっとわかったよ。

あたしが考えていると電話の向こう側では「キスって何?!」って言ってる高橋の声。

「小川ー?」
『は、はい!』
「ありがとう、わかったからー」

頑張ってねー、と言って電話を切った。

きっと今もめてんだろうなぁ。
ごめんね、小川。
合掌。
6 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時53分50秒
「おはようございます!」

楽屋に入ると今日は矢口の姿がなかった。
そういえばオフって言ってたなぁ。
ごめんね、矢口。
あたしも会いたかったんだよ?

一通り挨拶を済ますとあたしは真っ先に机に突っ伏して寝てる彼女に声をかけた。
こんなとこはごっちんとそっくり。

「よっすぃー?おはよ?」
「…あ、安倍さん、おはようございます」
「ね?ちょっと話があるんだけど…いいかな?」

よっすぃーは目を丸くして起き上がった。

「あたしにっすか?」
「うん」
「いいですよ」
「ちょっとね、長くなりそうなんだ。だから仕事終わったらでいいかな?」
「はい、わかりました」

よっすぃーと約束を交わしてあたしは椅子に腰掛けて楽屋を見回した。

今思うと…ごっちんがいた頃、よく目が合う事があった。
矢口や…他のメンバーと話してる時ふいにごっちんと目が合う事が多かった。
あたしは特に気にしなかったけど…、ごっちんはあたしの事見ていたんだろうか?

どんな気持ちであたしと矢口を見ていたんだろうか…。
7 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時54分54秒
仕事中もそんな事をぼんやり考えてたら圭ちゃんに怒られて、ののに心配された。
今は仕事に集中しなきゃ。
考えるのはこれが終わってから。
力強い相談役もいるんだし。

あたしはいつもと同じくらい気合を入れて仕事を終えた。

「じゃあ、どっか行って話します?」
「うん、そーだね。…でさぁ一つ聞きたい事あるんだけどいいかなぁ」
「なんですか?」
「なんで梨華ちゃんもいるの?」
「夫婦ですからー」

嬉しそうによっすぃーに腕を組んで言った。

「……そう」
「邪魔だったら置いていきますけど」
「『邪魔』って何よー!」
「ん、まぁ別にいいよ、一緒に行こう?えーと、うちに来る?」
「あ、じゃあお邪魔します」

あたしとよっすぃーと(何故か)梨華ちゃんはタクシーに乗って家に向かった。
タクシーの中で2人(と言うより一方的に梨華ちゃん)はずっといちゃいちゃしてた。

「「おじゃましまーす」」
「汚い部屋ですけど、どうぞ」

あたしは2人に紅茶を出すと早速本題に入った。

「あのね、相談って言うのは…ごっちんの事なんだけど」

一言話すと2人は顔を見合わせ複雑な表情を浮かべた。
8 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時56分22秒
「…もしかして、ごっちん…安倍さんに告りました?」
「え!なんで知ってるの?」
「だって『ごっちん』『相談』『安倍さん』と来たら…、ねぇ…?」
「ねぇ…?」

2人は苦笑いを浮かべている。

よっすぃーは知ってるんだろうなぁと思った。
きっとごっちんは話してると思ったから。
でも梨華ちゃんまで知ってるとは意外。

「ずっと聞かされてましたからね、ごっちんから」
「あたしは本人からは聞いてないですけど…、ひとみちゃんから聞いてました」
「そう…」
「で、どうするんですか?」
「どうしようか困ってるから相談してるんだけど…」
「あ、そうですよね…」

あたしは下を向いて黙った。

「…でもおかしいなぁ」
「何が?」
「ごっちん、あたしに言ったんだよ。「絶対告白する事はない」って」
「でも実際してるじゃない」
「うーん…」

2人の会話が遠くの方で聞こえる。

ごっちん…初めて会った時から好きだって言ってた。
そんなに前から見ててくれたのに気がつかなかったなんて。
矢口と3人で遊んでた時…どんな気持ちだっただろう。

その時のごっちんの気持ちを考えると悲しくて泣きたくなった。
9 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時58分30秒
「それで、あたし思うんだけど!」

梨華ちゃんがいきなり立ち上がった。

「な、何を?」
「ごっちんは寂しくなったんですよ!」
「…寂しく?」
「そうです!今までは当たり前のように毎日会ってたけど、卒業したらそんな訳にはいかないじゃないですか?」
「うん…」
「告白するつもりはなかったんだけど、会えない寂しさや一人になっての不安とかいっぺんに押し寄せてきちゃってどうする事も出来なくなったんですよ、きっと」

…ごっちんの事はよく知ってる。
クールに見えるけど実は全然違う。
甘えん坊で、でも強がりで弱音を吐かない…寂しがり屋。
知ってるくせにあたしはごっちんの事よく見てなかったのかも知れない。

「安倍さんに告ったのは…もちろん本心なんだろうけど、ある意味ごっちんからのSOSだったのかも知れないですね」

…相談して良かったと思った。
あたしが見えてなかった所を2人はちゃんと見ていた。
…2人よりあたしの方がごっちんと長く付き合ってるのになぁ。
10 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)19時59分13秒
「…ごっちん、寂しいならうちに相談してくれればいいのに…」

よっすぃーは少ししょんぼりしながら俯いた。
それを見て梨華ちゃんは「よしよし」とよっすぃーの頭を撫でている。

「甘えたかったんだよ、ごっちんは。同い年のよっすぃーには言えなかったんだよ、きっと」
「そうかなぁ…」

なんだか梨華ちゃんがお姉さんに見えるなぁ。

「で、結局どうするんですか?」
「…うん、もう一度話してみる。ごっちんはあたしに会いたくないかもしれないけど、話さないと始まらないし」
「そうですね。…うちとしてはごっちんには幸せになって欲しいです、でもそれは第三者が口を出す事ではないと思ってるんで何も言いません」
「うん、ありがとう。相談してみて良かった」
「力になれたかわかんないすけど、頑張ってください!」



じゃあ、うちらはこれで…、と言って2人は帰って行った。
11 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月01日(土)20時13分01秒
更新する度に間違いに気がつきます…。
石川さんが「ひとみちゃん」と呼んだり「よっすぃー」って呼んだりしてますけど「ひとみちゃん」の方が自分としては正しいです…。

2>名無しどくしゃ様
引き続きありがとうございます。嬉しいです!
やっとなちまりごま・おがたかこん以外の人が書けました。
もっといろんなメンバー出したかったんですけど私には無理でした…。
3>チップ様
どうも、ありがとうございます!
嬉しすぎて泣きっぽくなります(涙
( ´Д`)<さ〜みしくないよ〜。
…寂しいんです!

引き続き長ーい目で見てやってください。
12 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月02日(日)11時33分25秒
いしよしイイですな(*°∀°)ニ3
ごっちん…寂しいんだねごっちん…
なっち助けてヤッテクレェ!!続き楽しみにしてまーす
13 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時31分19秒
2人が帰った後、無性に矢口の声が聞きたくなった。
寝る前に携帯を取り出し電話を掛けた。

「もしもし」
『なっち?!どうしたの?なんかあった?!』
「ううん、矢口の声が聞きたくて…電話しちゃった」

少し沈黙。

『…なっちがそんな事言うの珍しいね?』
「そっかなー…?」
『そーだよ、…でもまぁヤグチとしては嬉しいけどさ』

あはは、と電話の向こうで笑ってる。

「…ねー?矢口」
『なんだー?』
「あたし、矢口の事好きだよ?」
『……おぅ、知ってる』
「あはは、ね?矢口は?あたしの事好き?」
『そんなの当ったり前だろー?今更聞くなよー』
「…そーだね」
『うん』
「ね?」
『ん?』
「…ありがとう」
『…っは、意味わかんないっての』
「じゃあね、矢口。おやすみ」
『ん、おやすみ』

電話を切った後、カーテンを開けて空を見た。
星が沢山あって、月が…とても綺麗で…。
14 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時32分08秒
この空を矢口は見ているだろうか?
…そしてごっちんも…見ているだろうか…?



明日はきっといい天気になるだろう。



「…寝よう」

寝る前にごっちんにメールした。

【こらー逃げるなよー!(笑)
 ごっちんに話があります。
 都合の良い日にまたあの店で】

あたしは棚の上に置いてある、矢口と二人で撮った写真を見てから眠った。
15 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時32分43秒
朝、起きて目を覚ましてカーテンを開けると眩しくて目が開けられないくらいの晴天だった。

「いー天気だー!」

今日もいつもと変わらずお仕事だけど、あたしの気分はスッキリしていた。
…ううん、まだ終わってない。
ごっちんにあたしの気持ちを言わないと終われない。

メールチェックすると一件受信していた。

見なくてもわかる。
きっと相手は、

【ごめん。あたしも最後まできちんと話したい。
 今日の夜7時頃、あの店で待ってる
 来てくれるまで待ってる】

今日のスケジュールを見ると7時には間に合いそう。

今のあたしの素直な気持ちを言えば、ごっちんだってわかってくれるはず。
【了解!】とメールを送った。
16 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時33分13秒
今日は他のメンバーと会う事のない仕事。
だから一人で心の準備とかちゃんとしておこう。

「えっと…」

鞄の中に財布と携帯と…矢口の写真を入れて、家を後にした。

仕事は順調に終わって7時には余裕で間に合いそう。
まだ時間に余裕があったので店に向かう途中にあった雑貨屋さんに入った。
気に入ったものがあったので買い物を済まし、時計を見ると7時になりそうだったのであたしは待ち合わせ場所に急いだ。

お店の戸を開けるとカランカランというベルの音がした。
この前苦笑いした店員さんに「もういらっしゃってますよ」と言われ軽く会釈した。
17 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時33分55秒
「お待たせ」
「…久しぶり」
「二日ぶりくらい?」
「…いじわる」

ごっちんはあたしの言葉を聞いていじけた。
その姿を見て笑うとごっちんも少し笑った。
飲み物を頼んで上着を脱いでごっちんと向き合うように座った。

「困らせて…ごめんなさい」
「…うん」
「ほんとはね、あんな事言うつもりじゃなかったんだ」
「…うん」
「でもさぁ、告白したのに【気にしないで】とか返すから!なっち…あたしの事全然気にならないのかな、とか思って…」
「えーと…、その事については謝る。ごめんなさい」

知らなかったんだよ、と心の中で思った。

「…なっちと…会う事少なくなったから…あたしの事どーでも良くなったのかなぁ、って不安で」
「そんな事は絶対無いよ?」

顔を覗き込むとごっちんは照れたようで顔をそらした。
18 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時34分59秒
「ごっちんが好きって言ってくれた事凄く嬉しい」
「…」
「…でもね?あたしには矢口がいるんだ」
「…ん」
「矢口の事凄く大事」
「知ってるよ…、知ってて言ったんだもん」

ごっちんは小さいため息をついて下を見た。

「…で、ごっちんの事も矢口と同じくらい大事」
「……え?」
「ごっちんが卒業する時悲しくて悲しくてしょうがなかったよ?」
「…」
「でも会えなくなる訳じゃないでしょ?今みたいに会いたかったら会えるんだし」
「…」
「ごっちん?…恋人にはなれないけど…ごっちんはあたしの大切な人だよ?」
「…っく、…うん」
「これからもずっと大事な人」

あたしは自分の鞄の中からさっき雑貨屋さんで買った物をごっちんに渡した。

「…これ?」
「開けてみて?」

ごっちんはぐすぐす鼻を鳴らしながら小さな包み紙を開けた。
19 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時35分49秒
「…ゆびわ」
「ホラ!」

あたしは右手をごっちんに見せた。
右手の薬指にはごっちんの手の上にある指輪と同じ物。

「いつでもごっちんの傍にいるよ?」
「…う」
「寂しくなって辛くなってどうしようもなかったら会いにおいで?」
「…うう」
「もちろん、寂しくなくてもいつでも会いに来ていいんだよ?」
「…うう〜、なっちぃぃ〜〜!!」
「ぅおおう!」

ごっちんは「なっち〜!なっち〜!」と叫びながらあたしをぎゅうっと抱きしめた。
テーブルを挟んでるから物凄く遠いんだけど。
さすがに店員さんもお客さんも驚いてチラチラ見ている。
あたしはまた苦笑いを浮かべ、泣いてるごっちんを宥めた。

店から出るとごっちんは恥ずかしそうに笑って鼻をこすった。
目は真っ赤。

「あはは〜、恥ずかしいなぁ、もう…」

笑ってるごっちんを見てあたしも笑った。
20 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時36分30秒
「ね?…指輪、大事にするね?」
「うん、…あー、そんな高価なものじゃないんだけどさ…」
「ううん、ごとーにとってはダイヤモンド何百キロにも匹敵するほど高価だよ」
「あはは、それは言いすぎだよ〜」

横に並んでたごっちんは少し走った。

「ごっちん?」

振り向いてにこりと笑った。

「なっち!」
「んー?」
「やぐっつぁんと幸せにね?」
「……ごっちん、……ありがとう」

「じゃあねー!」と言ってごっちんは右手をひらひら振って走っていった。
右手の薬指にはお揃いの指輪が光っていた。

家に帰って矢口を呼んで全部報告した。
矢口はずっとごっちんの気持ちに気がついていた。
でも明るく振舞う事しか出来なかった、と言った。
…ずっとごっちんに辛い思いをさせていた、と泣いた。
あたしは矢口を抱きしめて、その夜は手を繋いで一緒に眠った。
21 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時37分41秒


あの指輪は愛情じゃなくて友情の証。


…違う。


愛はあるよ?





…ねぇ?ごっちんの前にもきっと現れるはずだよ?






嬉しい事も

悲しい事も

共有できる





運命の人が。
22 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月04日(火)16時49分38秒
えー、一応番外編なちまりごま・Good for you・はおしまいです。
あまり突っ込まないようにお願いします(W

森板198>LOVE様
読んでくれてどうもです!なちまり好きの方が来てくださると嬉しいのですが、こんな駄文でいいのだろうか…?
12>名無しどくしゃ様
いしよし苦労しました。吉澤さんより石川さんの方がアフォっぽ(ry
夫婦万歳ー!

次回からはおがたかこんですか。
おがたかこんについては全く話考えていないので時間かかるかもしれません…。
しばし、お待ち下さい。
…見てる人がいるのか謎ですが。
23 名前: 投稿日:2003年02月04日(火)17時47分46秒
こんちわっす。
ずっとROMってましたが現れました(笑)
って、ことで見てる人いますよ(笑)
最初っからずっと見てますがすげ〜いいっす!!
これからも頑張ってくださいまし。
おがたかこん気長に待っています。
24 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月04日(火)21時34分44秒
ホロリ…よがったねぇ〜ごっちん・゚・(ノД`)・゚・
エヘヘ次はおがたかこんッスか楽しみにしてますよぉ〜
五期好きになってしまったんで終わるまで付いて逝きますw
25 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月05日(水)23時11分36秒
23>清様
どーも見てくださってましたか!ありがとうございます!(感涙
嬉しすぎておがたかこんUPしますよぅ!
24>名無し読者様
五期好きですか〜!私も正直こんなにはまるとは思いませんでした。
おがたかこんて最強だと思います。
小川さんがへたれすぎて(W

何も考えてないとか言いつつ、なんか出来ちゃったのでUPします。
完結はしてませんけども…。
26 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月05日(水)23時13分57秒
小さな丸い好日 side story by ogataka+kon

・フェイクファー・

「……わかったんだけどさぁ…」

元に戻って安倍さんの家から自分たちの家に帰る途中。
隣には愛ちゃんがいて、手を繋いで帰ってるんだけど。

「ん?」
「あたしがあさ美ちゃんと直接話をしたわけじゃないんだよねぇ?」
「うん」

帰ってる途中、愛ちゃんから大まかな話を聞いた。
安倍さんと入れ替わってる時、あたし(安倍さん)とあさ美ちゃんの間で何かあった様で。
それとなーく安倍さんがあさ美ちゃんを振ったっぽい。
愛ちゃんも詳しくはわからないみたいだった。

「そこであたしがもう一回あさ美ちゃんに付き合えないって事言うのってどうなの?」

結構それって酷な事では…。

「うん…。でもさ!麻琴がちゃんと言って欲しいんだよ…」
「愛ちゃん…」
「あたしだってあさ美ちゃんとは仲良くやって行きたい。でもやっぱり気になるもん…」
「…うん、まぁ明日…本人に会って、どういう感じなのか見て…それからどうするかよく考えてみるよ」
「うん…」

愛ちゃんは繋いでた手を離し、腕に抱きついた。
27 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時15分23秒
…そして上目遣い。

「ね?今日家に泊まりに行ってもいい?」
「え、明日しご……」

さっきのシリアス顔がガラリと変わってなんだか甘えモード。
少し涙目で首を傾げて聞いてくる。

…あのねぇ、そんな顔されて…断れるわけないでしょーが。

「…いーよ」
「やったぁ!」

愛ちゃんは「早く行こ!」と走り出した。

「待ってよ!」



走り出す2人の事をお月様は見ていた。
28 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時16分09秒
家に帰るとおばあちゃんが心配していた。
結構遅い時間だったから。
一緒に愛ちゃんがいる事にも驚いて心配していたが、なんとかごまかした。

部屋に入ると愛ちゃんは思いっきりベットにダイブした。

「あー!麻琴の匂いがするー!」
「ぅあー!ベットが壊れるー!!」

同時に全然違う事を叫んだ事に顔を見合わせて笑った。
部屋で少し話をしているとおばあちゃんがおにぎりを持って来てくれた。
なんにも食べてなかったあたし達は喜んでそれを受け取った。

…あ、食べたっけ。めちゃくちゃ辛いカレー。
あれどうなっただろ…?安倍さん食べたのかなぁ…?

ぼーっとしてると「いただきー!」と言って持ってたおにぎりをかじられた。

「あー!愛ちゃん自分のあるじゃん!」
「麻琴のの方がおいしそうだったんだもん」
「一緒だって!」
「いつもおいしそうに食べるからさー」
「もぅ…」
29 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時16分39秒
食べた後、皿を片付けてお風呂に入った。
…さすがに一緒には入りませんけどね。
「一緒に入ろう〜!」って駄々こねられたけど。
そこは丁重にお断りして。

あたしの使ってないパジャマを渡すと嬉しそうに受け取って着替えた。

「似合う?似合う?」
「似合う?って言われてもあたしのだし…、パジャマだし…」
「似合うって言っておけばいいの!気が利かないなぁ、麻琴は」
「何〜?」

あたしは怒ったフリをして愛ちゃんをくすぐった。

「あははっ…!ごめ…、許して〜!」
「許さーん」

時間も忘れて愛ちゃんと遊んだ。



今だけはあさ美ちゃんの事は忘れよう、と思った。
30 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時17分18秒
「ぅえっくしょん!」

目を覚ますと布団の上じゃなく、床の上にいた。

…ていうかそもそも布団なんか敷いてないし。

かろうじて毛布がかかってたけどあんまり関係なかった。
隣を見ると毛布に包まって眠る愛ちゃんがいた。
幸せそうな寝顔を見て少し顔が緩んだ。
寝癖を直しながら…ふと、時計を見た。

え。

「ぅぅうあーーーーーー!!!」

愛ちゃんはあたしの叫び声にびっくりして「何?!何?!」ときょろきょろしている。

「時間が!時間が!」

あたしは時計を愛ちゃんに見せた。

「……あーーーー!!!」

飛び起きてなぜか髪をとかし始めた。

「…いや、まずやる事が違うと思うんだけど…」
「え?え?」
「まず着替えようよ…」
「ああ!」

なんだかとても混乱してるようだった。

訳わかんない行動をしてる愛ちゃんをとりあえず引っ張って仕事場へ急いだ。
31 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時18分22秒
着くとそこにはすでにみんな集まっていた。

「遅くなりましたー!」
「すみませんー!」

2人とも全速力で走ってきたから『ここにいるぜぇ!』をフルで歌ったみたいにはぁはぁ息を吐いた。
すると矢口さんに「大遅刻だぞー!おまえらー!」と言われた。

すいません!ってもう一度謝ろうとしたら。

保田さんが「あんたが言える立場じゃないでしょ!」と言って矢口さんの頭を叩いた。
「イテ!」と言って矢口さんは頭をさすっている。
みんなその光景を見て笑っていたが、あたし達2人はポカーンとその様子を見ていた。
するとトントンと背中を叩かれた。
振り向くと里沙ちゃんが立っていた。

「おはよう!」
「おはよ…」
「矢口さんたちもさっき来たばっかなんだよ」
「…あー、なるほど」

遅刻のお小言は全て矢口さんに言ったみたいであたし達はあまり怒られなかった。

愛ちゃんは里沙ちゃんと一緒にあさ美ちゃんの所へ行った。
32 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時19分05秒
あたしは安倍さんを見つけて声をかけた。

「安倍さん、おはようございます」
「おはよう、小川。調子どう?」
「もうばっちりですよ、やっぱいいですね、自分の体は」
「うん、なっちも同じ」

安倍さんがニコッと笑ったのでつられてあたしも笑った。
そろそろ着替えようと思ってその場を離れようとすると声をかけられた。

「あのさ、小川…」

ん?と振り向いた瞬間。

『早く着替えて準備してくださーい!』

スタッフさんの声。

「何ですか?安倍さん」

尋ねると少し考えたポーズをしてから「あ、後ででいーや」と笑った。
なんだろう?と思ったけど「?はい」と返事をした。
33 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時19分55秒
安倍さんに返事をしてくるりと前を向くと誰かとぶつかった。

「…あ!ごめ…」
「おはよ、麻琴ちゃん!」
「あ、あさ美ちゃ…」
「早く着替えないと遅れるよ?…先に行ってるね」
「う、うん」

あさ美ちゃんは里沙ちゃんと一緒に歩いていった。

いつもと変わらないあさ美ちゃんだった。
本当になんかあったのかなぁ?と疑問に思うくらい。
安倍さんはあたしになんか聞こうとしていた。
何の事かわかんないけどあたしも聞いてみよう。

収録中もあさ美ちゃんに変わった様子はなかった。
34 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時20分25秒
「まこっちゃん!」
「辻さん?」

楽屋に戻って次の仕事の移動の支度をしていると声をかけられた。

「なんかね、あさ美ちゃん最近元気なさそうなんだけど…なんでか知らない?」
「え…」

…どきっとした。

「たまにため息とかついてるし…」

心配そうにうつむく辻さんに声をかけることが出来なかった。
原因はなんとなくわかるんだけど…。

「なんかおいしい物食べ損ねたのかなぁ?」
「は?」
「あ!もしかしてののが勝手にあさ美ちゃんのお菓子食べたから?!」
「いや…それは違うと…」
「謝ってこよう〜!」
「あ〜…」

…行っちゃった。
でも…あさ美ちゃん元気ないのか…。
あたしの前では無理して元気に見せてるんだろうか…。

35 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時21分15秒
顔を上げてあさ美ちゃんを見ると、辻さんに謝られて困っていた。
ああ、違うんだけどなぁ〜…。

「麻琴!」
「ん?」
「もう仕事終わり?」
「いや、あたしはまだ…」
「そう…、あたし終わりなんだ。ってことで麻琴ん家で待ってるから」
「うん…、って!」

今日も泊まる気満々ですか!
って言おうとしたけど、そんな事言ったら後々うるさそうなのでやめた。

「じゃあね〜」
「ばいばい」

愛ちゃんは帰って行った。
はっと気がつくと楽屋には数人しかいなかった。
帰った人と次の現場に向かった人と。
その…数人て言うのが…。

「小川ー、はやくしろー」

矢口さんと。

「……」

あさ美ちゃんで。




矢口さん頼むから余計な事はしないで下さいね、と心の中で祈った。
36 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月05日(水)23時22分12秒
移動中、考えてみれば今日まともにあさ美ちゃんと喋ってない事に気がついた。
それとなく避けられてる気もしてきた。
あたし、…なんだ。

原因は。

安倍さんに聞いておけば良かったな。
でも誰かと電話して急いで帰っちゃったからなぁ。
…嫌だなぁ、こんなにギクシャクするの。
愛ちゃんは今回の件でますますくっついて来る様になったし。

…別にそれは嫌じゃないんだけど。

車の中で真剣に下を向いて考えてたら、少し酔った。
睡眠不足もあるしなぁと思ってとりあえず寝とこうと思って体を楽な姿勢に変えた。

「…具合悪いの?」

あさ美ちゃんに話しかけられて心臓が飛び出るくらいびっくりした。

「う、ううん。大丈夫!少し酔っただけだから」
「そー…」

たった一言だけの会話に物凄く緊張した。
その後、話は続かず、あたしも寝れる訳がなく。
寝たふりをして早く現場に着かないかなぁ、とかずっと考えていた。
ここで話を盛り上げときゃ良かったのになと後悔しながら。
37 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月05日(水)23時24分18秒
と言う事で更新終了。
38 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月06日(木)17時23分48秒
更新お疲れ様です。
イイ…やっぱイイっすねぇまこあい(ポッ
大変続きが気になるッス!!
39 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月10日(月)00時24分07秒
マターリ更新待ってます。
40 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時19分32秒
「小川ちゃん?」

とっても嫌な予感。
振り返るとそこにはニヤニヤ笑う矢口さん。

「紺野さんと喧嘩でもしたのかな〜?」

知ってるくせに!と思ったけど口には出さなかった。

「まーね、悩み事ぐらいあるよね〜?」
「矢口さんもですか?」

あたしはわざとトゲトゲしく返した。
すると案外矢口さんの答えは静かだった。

「ヤグチにだってあるよ〜…」

「後藤さん…ですか?」
「なんで!…わかるの?」
「それは…なんとなく…」

キスした事はさすがに言えなかった。
言葉を濁したあたしを見て、矢口さんはそれ以上聞いてくる事はなかった。

あー、いわなきゃ良かったかな、なんて後悔。
でも今は自分の事だけ考えさせていただきます。
すみません、矢口さん。

41 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時20分32秒
あたしは思い切ってあさ美ちゃんに話しかけた。

「あ、あのさ、あさ美ちゃん?」
「ん…?」
「えー…と…」

思い切って話しかけたが、特に何を話すかなんて考えてなかった。
ばかだなぁ…。

「どうしたの?麻琴ちゃん…?」
「あー、のさ!今日終わったらご飯食べに行かない?」
「え…」

…今、なんて言った?あたし。
何言ってんだ?

あさ美ちゃんは落ち着かない様子で大きな瞳を動かしてる。
どこの世界にほんの二、三日前に振られた相手とご飯食べに行く人がいるだろうか?

「うん、いいよ…」



……ここにいた。
42 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時21分12秒
あたしはあさ美ちゃんと約束をして、仕事を続けた。
仕事が終わると、矢口さんは一目散に帰って行った。

「えっと…、じゃあ行こうか?」
「うん…」

どこをどう歩いて店に辿り着いたか全然わからない。
行く途中話した内容だって薄っぺらい会話。
店に着いたって沈黙は続いてるわけで…。
そして今に至る。

「……」
「……」

だめだ、この空気…、絶えられない。

「あの…!」
「あの…!」

あ。

「何?あさ美ちゃん!」
「何?麻琴ちゃん!」

…ああ。
このままだとずっと繰り返しそう。
43 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時21分47秒
「えっと…、あたしから言っていい?」
「うん…」
「愛ちゃんの事…」
「うん…」
「あたし、愛ちゃんの事が好きなんだ」
「ん…」
「あさ美ちゃんの気持ちは嬉しいんだけど…」

そこまで言うと、俯いてたあさ美ちゃんは顔を上げてにこっと笑った。

「そんな事知ってるよ。麻琴ちゃんは愛ちゃんの事好きだし、愛ちゃんも麻琴ちゃんが好き。二人が付き合う前から知ってた」
「ん…」
「でも好きになっちゃったんだ。…でももう吹っ切れてるの。あたしも愛ちゃんの事好きだし、これからも仲良くしたい」
「うん…」
「だから…、告白した事は忘れて?」

笑ってる顔は、決して本心ではなく。
瞳には涙がたまってて…見ていて苦しくなった。
44 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時22分28秒
「…忘れないよ。付き合う事…出来ないけど、好きになってくれた事は嬉しいから…」
「うん…」
「これからもずっと仲良くしよう?」
「うん」
「約束」

指切りした手を離すと、大きな瞳からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
でも表情は穏やかでなにかすっきりしたように笑っていた。
…あたしもすっきりした。
その後、軽く食事をしてあたし達は店を出た。

「じゃあ…。麻琴ちゃんは明日オフだよね?」
「あー、うん」
「愛ちゃんもオフだね?」
「あー…」
「…夜更かしは肌荒れるから頑張り過ぎないようにね?」
「うん……えぇ!!」

あさ美ちゃんがまさかそんな事を言うとは!
うろたえるとあさ美ちゃんはくすくす笑っていた。

「じゃあね!麻琴ちゃん」
「うん、ばいばい!あさ美ちゃん!」




あさ美ちゃんも幸せになって欲しいな。


あたしの大切な親友。


あたし、応援するよ?



空を見上げ、星に願いをかけた。
45 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時23分14秒
『早くあさ美ちゃんにも運命の人が現れますように!』
46 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時23分54秒
家に帰ると愛ちゃんは当たり前のようにいて、今まであった事話した。
「あたしもあさ美ちゃんの事好きだもん…」って呟いてた。
こんな時思うのもなんだけど、可愛いって思った。

「愛ちゃん?」
「ん?」
「好きです」
「…あたしも」

これから波乱なく、穏やかな毎日がおくれますように。
願いを込めてあたし達は眠った。
47 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時24分33秒
次の朝、電話の音で目が覚める。
着信音がうるさくて、慌てて電話に出る。

『もしもし、おはよー小川』

電話の主は安倍さんで。

「あ、安倍さん!?おは…おはよう…ちょっ…待っ…」
『…小川?』

愛ちゃんは寝ぼけているのか、あたしの名前を呼びながら抱きついてくる。

『…高橋?』
「…すいません!どうしたんですか!?」

抱きつく愛ちゃんをひっぺがして話を続ける。

『あ、ちょっと聞きたい事あって』
「何でしょう?」
『入れ替わってた時さぁ…、ごっちんとなんかあった?』

なんか…?
なんか。

「え?……………あぁ!!な、何もないですっ!!」

もしかして!キスの事!!!?

「そんなっ!キスとかっ!されてないですよ!…………あー!!!」

キス。
キスって言っちゃった、今!!
…しまったー!!。
48 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時25分03秒
あたしがキスという単語を出すとぱっちりと目が覚めたらしい彼女。

「キスって何?!」

いや…違うんだよぉ…。

焦っていると電話の向こう側からの天使から出た悪魔の言葉。

『小川ー?』
「は、はい!」
『ありがとう、わかったからー』

頑張ってねー、と言われ電話も切られた。

そんな〜〜!!
助けてくださいよ〜〜!!

目の前には角を出してる愛しい彼女。





どうやら平穏な毎日はまだ来ないようです…。
49 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時25分35秒
***
50 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時26分46秒
**
51 名前:フェイクファー 投稿日:2003年02月17日(月)20時28分01秒
52 名前:運命の人 投稿日:2003年02月17日(月)20時28分57秒
小さな丸い好日 side story by ??????

・運命の人・

後藤は事務所の廊下を歩いていた。
廊下は夕日が差し込んできていて、眩しくて目を細めた。
数メートルくらい先に誰かの姿が見えた。
窓の外をじーっと見ている。

二つまげをして、赤いマフラーをした女の子。

「…紺野?」

後藤が呼ぶと紺野は少し驚いた様子で振り返った。

「久しぶりだね、会うの」
「はい、お久しぶりです」
「あはっ、相変わらずで」

後藤もその場で足を止めて窓の外を見た。

「綺麗だねぇ…」
「はい…」

2人の間に沈黙があったが、それは居心地の悪いものではなかった。
53 名前:運命の人 投稿日:2003年02月17日(月)20時29分37秒
「紺野、振られたからって落ち込むなよぉ?」
「…っ!なんでそれを?!」
「んー?ごとーさんはなんでも知ってるのさ」
「……」
「…なーんて、ごとーもつい最近振られたんだけどね」
「後藤さんも…?ですか…」
「まぁ、それぞれお互いに運命の人じゃなかったんだよ」

後藤は愛しそうに指輪をさすりながら続ける。

「どこにいるんだろうなぁ〜、ごとーの運命の人〜」
「…運命の人…かぁ」

『後藤〜!』
『紺野〜!』

2人を真ん中と考えて、右から後藤を呼ぶ声。
左から紺野を呼ぶ声。

「あ、またね、紺野!」
「はい、お疲れ様です!」

後藤が走りだすと指輪がマフラーに引っかかりほつれてしまった。

「ごめん!紺野!マフラーが…」
「…あ、気にしないで下さい!」
「……今度、新しいの…一緒に買いに行く?」
「え…、………はい!」

2人は今度会う約束を交わし、その場を立ち去った。
54 名前:運命の人 投稿日:2003年02月17日(月)20時30分26秒
******





ねぇ?ごっちん?
ねぇ?あさ美ちゃん?






運命の人って









案外…近くにいるかも知れないね?
******
55 名前:運命の人 投稿日:2003年02月17日(月)20時31分06秒
-FIN-
56 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月17日(月)20時37分47秒
お久しぶりの更新です。
『小さな丸い好日』はこれにておしまいです。
最後の方(特におがたかこん)が物凄い簡単に終わっちゃいましたが…(悔
こちらの方もまだ空きが沢山なので新作近々UPしようと思います。
新作の方ばっか一生懸命になりすぎてこっちが雑(ry

読者の皆様、ありがとうございます!
57 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月17日(月)20時41分18秒
38>名無しどくしゃ様
まこあいはやっぱこんなイメージですね。
押せ押せ高橋とへタレ小川で!!マンセー!!

39>名無し読者様
マターリ待たせた挙句こんなんで申し訳ない…。
58 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月17日(月)21時50分12秒
イヤーホットな気持ちになりますた。素晴らしいッス。
ヘタレ良いですねぇ〜エヘヘエヘヘ(狂
新作楽しみにしてます!!∬∬*´▽`)
59 名前:チップ 投稿日:2003年02月17日(月)22時27分47秒
ご馳走様でした、ほのぼのなラストでとっても嬉しかったです。
何気にごまこんも最近好きなんで、ハッピー♪って感じでした。
お疲れ様&新作楽しみに待ってます。
60 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月18日(火)14時06分09秒
58>名無しどくしゃ様
ここまで読んで下さってありがとうございます!
感謝感激・゚・(ノД`)・゚・
へタレばんざーい!
59>チップ様
実はごまこんにしたくてこの2人を出したわけでして(w
この2人も幸せになることでしょう…。

えーと、新作UPします(早っ
今までとはちょっと違う感じなので好き嫌いありそうなんですが頑張りますです、ハイ。
61 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時07分56秒
*七福社へようこそ!*

とある街の、とあるビルの地下。
その会社は人目に触れない所にひっそりとたたずんでいる。
ドアの横の壁には木で作られたボード。
そこには手書きでこう書かれている。

【七福社】
*お困りの方は是非どうぞ*

…物凄くうさんくさい。

気を取り直して、説明。
社員は全部で七名。
会社社長の名前は矢口真里。
しかし、これは仮の名前。この会社の社員は仮の名前を使っている。
本当の名は『恵比寿天』。

『恵比寿天』とは?
…そう、彼女たちはあの『七福神』なのだ。
天界の生活に飽き、困ってる人を救うため下界に降りてきたのだ。

彼女は仲間とともに会社設立。
初めは社長になることを拒否していたが、商売の神なのだから!という理由で社長就任。
巧みな話術と人望の厚さは天下一品。
しかし、時に口が悪くなるのが玉にきず。


「…しっかし、客来ないなぁ〜」


設立場所が悪い事にいまいち気がついていないどこか抜けてる人物。
62 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時09分03秒
「こんなとこに建てるからだべさ」


恵比寿天につっこみを入れるこの少し訛った人物。
『布袋尊』改め安倍なつみ。
円満の神の彼女は温厚にしてマイペース。
この中では一番年上だが、みんなをまとめるのは苦手だ、と平社員に属する。
彼女の微笑みはどんな凶悪犯も屈する天使の微笑み。

「だってあんまり客来てもまずいからさ〜」
「誰も来ないのもまずいべ…」
63 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時09分33秒
「まぁ、いいじゃないですか。人間っていうのは願いが叶うと知ったら欲が出るものです。世界中の人全部の願いを叶える事は無理ですし、いい人かどうか厳選してお客を選びましょう」


2人の会話に入ってきた人物。
仮の名は紺野あさ美。
いつでも片手には何やら食べ物を持っている食いしん坊な『大黒天』。
礼儀正しく、マイペースであまり話す事も少ないが、話し始めると長い。
この会社の経理を担当しているが、収益金のほとんどが食べ物で消えているとかいないとか。
64 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時10分11秒
「客ならきっちゃんが連れてきますって!」


元気のいいハスキーボイスな人物。
スポーツ万能『毘沙門天』改め吉澤ひとみ。
頭で考えるより、まず行動な武力の神。
会社設立も毘沙門天の押しがあったからこそ。
それはただ退屈な毎日から抜け出したかっただけの話。
彼女の言う『きっちゃん』とは彼女の恋人の『吉祥天』。
仮の名前は後藤真希。

「あいつ手当たり次第連れてくるからなぁ〜」
「でもいつもうまくいってるじゃないっすか!」 
「まーね…」
65 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時10分42秒
「いいなぁ〜…、恋人ぉ〜」


いきなり出てきたアニメ声。
彼女の名前は『弁財天』。
今は石川梨華。

「あたし、恋愛の神なのになんで恋人いないのかしら?」
「キショイから」
「あ、それは言えるべさ」
「そうですね」
「うまいっすね!恵比寿さん!」
「………ひどーい!」

みんなのいじられ役。
何を言われてもへこたれず、口癖は『ポジティブ』。
憎めない存在。
しかし露出度が高かったり、言う事も面白くなかったり、あらゆる意味で寒い。
手先が器用でいろいろなグッズも作っている。
が、全てセンスがない。
66 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時11分26秒
「なんかお腹すいたな〜」
「そうですね、何にも働いていなくともお腹はすくものですからね。大体なぜお腹がすくのかというと……なんたらかんたら………」
「…長ぇ〜〜〜」
「じゃああたしなんか作るべ!」
「あたしもお手伝いします!」
67 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時12分04秒
「べんちゃんの焼きそばトイレの味がするねん」
「ほていさんのあんにんどうふも寒天と牛乳だったのれす」


特徴のある話し方の2人。
まずは関西弁の方。
天界に住んでて何故関西弁なのかは不明。
名前は『福禄寿』加護亜依。
そして舌っ足らずな方。
名前は『寿老人』辻希美。
いつもともに行動している悪ガキコンビ。
2人とも長寿の神で自分たちも長寿の為、もう何年も人間で言うと15歳くらいを維持している。
68 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時12分49秒
「も〜、ちょっと失敗しちゃっただけじゃん」
「そうだよ〜」
「布袋さんは完璧失敗作やけど」
「べんちゃんのはトイレの味がしたのれす」
「あれはまずかったね」
「そうですね」
「まずかったすね!恵比寿さん!」
「もう!!!」







***

「あー、一つ。これからはお互い本当の名前で呼んじゃだめだからね」
「「「「「「はーい!!」」」」」」

…こんな七人の会社にもうすぐお客さんが参ります。 
69 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時14分25秒
ドアを叩く音で目が覚める。

『中澤さ〜ん?平家さ〜ん?いるんでしょ〜?出てきてくださいよ〜?』
『借りたものは返さないとだめでしょ〜?お二人さ〜ん』

「…ねぇさん、どないしよう…」
「しっ、もうすぐしたらあいつらあきらめて帰る、それまでじっとしとき」

2人は息を潜め借金取りが帰るのをじっと待った。
程なくして『ちっ』と舌打ちが聞こえた。

『隠れても無駄だからな!!店にだって行ってやるからな!!』

怒鳴り声を上げ、借金取りは帰って行った。

「…帰ったみたいやな」
「店にも来るて…」
「…」
70 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時16分04秒
中澤裕子、平家みちよは、とある居酒屋ではじめて会い、そこで意気投合。
そこで2人とも「居酒屋開きたいんや!」と同時に口にしたため、ますます意気投合。
共同投資で三年前店を構えた。
しかし初めはうまくいってたものの、この不況で店に客は数える程しかなく、創立した時の借金も残っている。
毎日のように借金取りが2人の家にやってくる。
今までは家だけだったが、今回は店にも来ると言った。
そんな事されてはますます客は来なくなる。
2人はぎりぎり崖っぷちにいた。

「…店閉めません?ねぇさん…」
「それだけはあかん…。店は…たとえ小さくてもウチらの『城』や!苦労してここまでやってきたやんか!」
「でも…もう無理ですわ…」

平家は完全に諦めモードに入っていた。
心の中では続けたいと思っているが、片隅には三年も続いたんやしもうええか…と思っていた。
しかし、中澤は諦め切れなかった。
安定した収入をもらっていたOLも辞めてやっと手に入れた『城』を手放す事は出来なかった。
71 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時17分26秒
「…そろそろ、店…準備せんと…」
「ねぇさん…」

2人は無言のまま、支度を初め、家を出た。
店に向かう途中、地面に膝をつき、何かを一生懸命探している女の子が目に入った。

「…どうかしたんか?」

中澤が声をかけると女の子はふにゃっと笑った。

「お金落としちゃって…」
「お金?しゃあないな、ウチらも探したるわ」
「ありがとう!」

三人であらゆる隙間を探す。
自動販売機の下や車道の方も。

「ないなぁ〜…」
「…みっちゃんの方はどうや?」
「ん〜、一円なら拾いましたけど…」

「それーーー!!!!」

「え?え?」
「そのお金、ごとーの!」
「…落としたのって一円かいな…」

2人はどっと疲れが出た。
72 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時18分26秒
「一円を笑うものは一円に泣く!ですよ?ま、友達の受け売りですけど」
「若いのにおかしいやつやな〜」
「珍しいですねぇ」

三人はお互い顔を見合わせて笑った。

「あ、ごとーもう行かなきゃ!探してくれてありがとうございます!…えっとお礼、お礼」
「えーよ、一円のお礼なんて」
「だめですよ!ちょっと待って下さい?」

女の子はごそごそとポケットから一枚の名刺を取り出した。

「はい!お困りの事がありましたらこちらへどうぞ!じゃあ、ありがとうございました〜!」
「あ、ちょっと…」
「なんや、せっかちやなぁ…。なんやこれ…」
73 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時19分50秒
【七福社
 何かにお困りの方は気軽にお越し下さい。
 住所***********  TEL**-****-****】
74 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時20分39秒
「「……」」
「宗教かいな…」
「なんでしょうね…」
「あ、ウチらもはよ店の準備せんと!」
「急ぎましょ」

中澤は貰った名刺をポケットの中へ入れた。

いつも通り店を開けると常連のお客さんがちらほらと席に着く。
中澤と平家はいつも以上に張り切って仕事を始めた。

「今日もきちゃったよ〜」
「二人に会わない日はないよね」

「お客さん、嬉しい事言ってくれるわ〜、まぁ、どんどん飲みぃや」

お店はとても明るい雰囲気になり、二人とも朝の出来事などすっかり忘れていた。
そんな時である。

『中澤さ〜ん?平家さ〜ん?こんばんわ〜?』
『ちょっと邪魔しますよ〜』

「…あんたら…」
「ねぇさん!」
75 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時21分28秒
そこに現れたのは朝やって来た借金取りの2人組みだった。
店内は2人が現れた事により周囲はざわつき、帰る者もいた。

『うちらもね、お金、あげた訳じゃないんですよね?わかります?』
「…お金は必ず返す」
『先々月、先月と未納なんですよね〜』
「ちょっと待ってくれ…、必ず…」
『まぁ、私たちも鬼ではありません。…一週間待ちましょう?もし払う事がないようならこちらも考えさせていただきます』
「一週間…」
『借金取りが乗り込んでくるような店に客が来るとは思えませんが…』

2人組みは笑いながら帰っていった。
店内には中澤と平家の2人しか残っていなかった。

「ねぇさん!…やっぱり閉めましょう!」
「……くっ」

悔しさで手が震えた。

くしゃっという音がポケットから聞こえた。
中澤は中に入っていた紙を取り出した。

「困ったら…七福社…」

中澤は紙をを握り締めて目を瞑った。

「ねぇさん?」
「…みっちゃん、ちょっと一緒に来ぃ」

すたすたと店を出て行く中澤を平家は慌てて追いかけた。
76 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時22分08秒
【七福社
 何かにお困りの方は気軽にお越し下さい。
 住所***********  TEL**-****-****】

「ここか…」

ついた場所はあのおかしな女の子から貰った名刺に書かれた場所。

「行くで…」
「はい…」

2人は階段を下りて行った。

薄暗い建物。2人は本当にここに会社があるのか不思議に思う。
程なくして目の前にはドアとプレートが見える。

【七福社】
*お困りの方は是非どうぞ*

宗教だったら帰ろうと中澤は決めていた。

ドアをノックする。

「は〜い!」
77 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時22分47秒
中から女性(女の子?)の声が聞こえ、中澤はドアを開けた。
そこにはルームランナーで走ってる女の子とファッション雑誌を見ている女の子がいた。
少なくても宗教ではなさそうだが怪しさは依然として変わらない。

「あの…」

「おきゃくさんれすか!!」
「お2人様こちらへどうぞ〜」

後ろからの声に振り返る暇もなく2人は女の子2人に押されて中に入り、ソファーに座らされた。

「どうぞ、のみものれす!」
「あ…おおきに…」
「ありがとう…」

会社の中はなんと言うか趣味の悪いものが沢山飾られている。
78 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時23分35秒
「梨華ちゃんが飾んねん。趣味悪いやろ?」
「もー!あいぼん!それより!お客さんですよね?どんなご相談ですか?」
「ご相談…て、あんたらが社員か?!」
「そうですよ?」

中澤はガバッと立ち上がった。
隣に座っていた平家はもちろん、辻、加護も驚いた。

「子供の遊びに付き合ってる暇はないんや!…あてにしたウチがアホやった。帰るで!みっちゃん!」
「えぇ?!」

平家も立ち上がり中澤の後を追う。







「子供の遊びではないいんですけどね〜」
79 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時24分15秒
奥からの声に反応し、振り返る。
そこには社長が座っていそうな椅子にちょこんと座る金髪の女の子。

「ここは立派な会社です。社員だって有能な者ばかり、若くたってそこらへんの使えないオヤジよりは全然使えます」

中澤の握った拳が震えているのに平家が気がつく。

「ねぇさん、どうしたん…」




「かわいいーーーーーーー!!!!!」




「え?…うわぁ!!ちょっ…やめろよ!!」

中澤は矢口に抱きついていた。
嫌がる矢口を見て平家と安倍は必死に2人を離した。

「はぁっ…、もう!なんなんだよ!この…!」
「矢口、暴言は禁止」
「くそぅ…」

「かわえぇなぁ、もって帰りたいわ」
「ねぇさん…、それはあきません」
「そうか…残念…」
80 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時25分51秒
矢口は乱れた髪形を直し、再び椅子に座った。

「…で、ご用件はなんでしょう…?」
「あ、女の子にここの名刺貰ってな…」
「きっ…。……後藤か…」
「困ってる事がある…。店が潰れそうなんや!でもあれはウチらの大事なモンや!子供みたいなもんなんや…」
「ふぅん…店か…。オイラの出番って訳ね」
「出番…?」
「あ、こっちの事です。なんとかしましょう!…その代わりと言っては何ですが報酬の方は頂きます」
「…いくらや?」
「どんな願いも一律1万2千円です。もちろん願いが叶わないと言う事があれば全額お返しします。…いかがですか?」
「安っ!しかも中途半端な値段やな…」

中澤は迷った。
しかし一週間以内に未納分を払わなければとんでもない事になる。
こうなったら怪しさは拭いきれないが頼るしか道はない。

「…お願いするわ…」
「ありがとうございます、契約成立です」

中澤は1万2千円払った。

「じゃ、こちら領収書です」
「どうも…」

矢口は手をぽんと打った。
81 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時26分44秒
「あ、言い忘れてた。依頼を受けるのは一生に一度きりです。依頼どおりに行かなかった様な時は再度仕事をしますが、それ以外は受け付けませんのでご了承ください」
「あぁ、店が無事やったら願う事など何もないわ」
「わかりました」

「じゃあ、矢口頑張って行ってくるべさ」
「会社社長の矢口さんなら必ずあなた方の願いを叶えて下さると思います。そもそも願いというのは……なんたらかんたら……」
「長ぇ〜〜…。…頑張ってきてください!矢口さん!」
「ファイト!矢口さん!」
「「いってらっしゃ〜い」」

「ちょっ…、みんなでなんとかするんやないんか?!」
「それぞれ分担があるんで、今回はオイラが仕事します。とりあえずお店の方見せていただいてもいいでしょうか?」
「あぁ、じゃあ行くか」

三人は中澤たちの店に向かった。
82 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時27分27秒
店に着いて矢口真里は絶句した。

「なんなんだよ?!これ〜!??」
「何…、てウチらの店や」
「………はは…」

店内は全て豹柄。
壁、机、椅子はもちろん、皿まで全て。

「…趣味悪ぅ…」
「なんやて!あんたらの会社の方が趣味悪いわ!」
「あれは全部梨華ちゃんの仕業なんだっつーの!!ていうかこんな落ち着かない店はじめて見たよ!!」
「…うちは止めたんですけど…」

平家が言いにくそうに呟くと、中澤はキッと平家を睨んだ。
それに恐れて小さくなってしまった。

「よく三年も持ったなぁ…。常連がいたってのが信じられないね」
「失礼やなぁ、何とかしてくれるんやろ?早くしてぇや!」
「うーん、まずさぁリフォームするよ。豹柄も全部無くします」
「えぇ!!!それは…。それにリフォームするにしてもその資金もないしな…」

豹柄を無くすと言う言葉を聞いて平家は小さくガッツポーズをした。
83 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時28分14秒
「ま、そこはオイラにまかせなさい!ちょっと時間かかるからさ、店開くための買出しにでも行ってきてよ」
「あ?あぁ…」

2人は矢口に追い出されるように店を出て行った。
残された矢口は腕まくりをし、右手を前に出した。

「オイラにかかればこんな店の一つや二つ、繁盛させるのなんて目を瞑ったって出来るっての!」

手のひらには金色に輝くオーラのようなものが出ていた。
それを上に投げると、店内は光で覆われ瞬く間に趣のある素敵な空間になった。

「内装はこんなもんだね、さっすがヤグチ!天才的!」

仕事を終えた矢口は2人の帰りをテレビを見ながら待った。

「「ただいま〜…、ええ!!」」
「おかえり〜」

驚く二人を尻目にのんきに出迎えた。

「…驚いた…。ウチらが出てたの一時間くらいやで?それなのに…」
「丁寧、確実、早急がうちのモットーですから」
「ほぉ〜…」

感心している2人を見て立ち上がり、小さな鞄の中から何かを取り出した。
84 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時28分53秒
「…言っておくけど、これも別に矢口の趣味じゃなくて梨華ちゃんが作ったんだから勘違いしないでね…」
「なんや…?」

手渡されたものは金色の一円玉がついたキーホルダー。
なんとも悪趣味なキーホルダーである。

「…趣味悪ぅ…」
「だからオイラ作じゃないんだってば!それと一円を馬鹿にするなよ?『一円を笑うものは一円に泣く』んだからな!」
「わかったよ」
「じゃ、これで仕事は終わり。そのキーホルダーは大事に店にでも飾っといてね。絶対無くさない事!」
「…って!リフォームしただけか?!」

言い寄る中澤に矢口はチッチッと指を動かした。

「夜になったらわかるって!何も変わらないようならまた来てよ。ま、そんな事はないと思うけど」

矢口が帰った後、2人は店を開ける準備をしていた。
中澤は貰ったキーホルダーを神棚にあげた。

「ほんまにうまくいくんかい…」
「…ねぇさん?なんか外が騒がしくありません?」
「ん…?」
85 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時29分46秒
確かに外は大勢の人の話し声が聞こえる。
もしかして借金取りと一般人がもめているのだろうか?と心配になり、店の扉を開けた。

「あ、やっと開店なの?」
「早く入れてよ〜、もう三十分は待ってるんだよ〜」
「まだか〜?」
「腹減った〜」

中澤と平家は自分の目を疑った。
店の周りには長蛇の列。
老若男女問わず大勢の客が今か今かと開店を待っている。

「…!い、今から開店です!いらっしゃいませ〜!」
「いらっしゃいませ〜!」

店を開けるとぞろぞろと客が入って行き、席はあっという間に満席になった。

「こっち!注文お願いしまーす!」
「はーい!!」
「次こっちね〜!」
「はーい!!」

平家は店内をくるくると動き回り、猫の手も借りたいほどの忙しさ。
一方厨房の方の中澤も同じ心境。
店の外に仮のテーブルと椅子も出して営業した。
ちらりと借金取りの姿も見えたがあまりの客の多さに驚き、すぐに帰って行ってしまった。

営業が終わり収益金を計算すると信じられないような額が手元に出来た。
先々月、先月分の未納金はもちろん今月、来月分も払ってしまえそうな額だった。
86 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時30分26秒
「す、すごい…」
「すごいですよ!!」

2人は喜び合ったが、これは今日一日だけではないかと不安に思った。
その不安は的中する事はなく、次の日もその次の日も客の足は止まらなかった。

−一週間後−

『こんにちは〜、お2人さん。随分繁盛してましたね〜、お金のほ…』
「借りてた分、全額お返ししますわ!」
『な、何?!』

テーブルの上には未納分と借金全額が置かれていた。

「これでいいんですよね?」
『お、おぅ…、返してもらえればそれでいいんだ。じゃあ…邪魔したな』

借金取りはおとなしく帰っていった。
これでもうあいつらと会うことはないだろう。

「ねぇさ〜ん!バイトの面接の子たちが来ましたで〜!」
「おー、今行く」





これからこの店はどんどん大きくなる。
しかし、高くはなく、派手ではなく庶民に親しまれる店のままで。
2人の笑顔も消える事がなく…。
神棚に上げられたキーホルダーは淡い光を放っていた。
87 名前:一話 つぶれかけの城 投稿日:2003年02月18日(火)14時33分39秒
*****
「…あのグッズ、何とかならないの…?」
「なんでですか?」
「趣味悪いんだよ」
「えー…ヒドイ…」
「まぁ、幸せになれるんだからいいべさ」
「でも渡すとき恥ずかしいんだよ〜」
「それもそうやな」
「もっとがんばっていいものつくるのれす!」
「センスのない石川さんに良いものを要求するのは無理があると言うものでして…。だいたいなぜセンスがないのかと言いますと……なんたらかんたら……」
「長げぇ〜〜〜…し、何気に毒舌だな〜紺野」
「もう!じゃあ次の時にはもっといいもの作りますよ!」
「…期待してないけど頑張って」
「ヒドイ!!」








七福社の仕事はまだまだ続きます。
88 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時34分56秒
つづく
89 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月18日(火)14時36分36秒
こんな感じです。
90 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月18日(火)14時39分36秒
上、題のままだった(鬱
詳しい事は良くわかんないんで「違うだろ!」と思う事もあると思うのですが、大目に見てください。
あと作者、関西圏じゃないんで関西弁多分おかしいと思うのですが気になっても気にしないで下さい…。
て、事でageてみる。
91 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月18日(火)23時02分33秒
新作カコ(・∀・)イイ!!
最強の面子ッスね。好き(ぉ
続き楽しみにしてます!
92 名前:なしこ改め空海 投稿日:2003年02月19日(水)07時59分17秒
『小さな丸い好日』お疲れさまでした!
後紺になりましたかv幸せになって良かった〜v
なちまりもおがたかもいい雰囲気で(w

次に始まった『七福社へようこそ!』すっごい期待大です!
姐さんに逆らえず小さくガッツポーズなみっちゃん最高です!
楽しみにしてます(w
93 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月21日(金)03時36分02秒
はじめまして。ごーしゅさんの作品、森の頃から見てました。
いやーいいです。新作もなんか予想してなかった!w
どんなお客が次々来るのかな〜?楽しみです^^
94 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年02月22日(土)18時22分21秒
*****
「今日の食事当番って誰だっけ?」
「うちと梨華ちゃんでっす!」
「ぅげっ…、よっすぃーと梨華ちゃん…」
「なにか文句でもあるですか?!」
「いや…」
「もっとおいしい物食べたいですね」
「真希ちゃん、料理人でも連れてこーへんかな?」
「そんなにうまくいかないべさ〜」








「…どうでもいいけどおなかへったのれす…」
95 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時24分31秒
「また失敗だね…」
「はぁ…」

2人の他には誰もいない厨房に嘆きは響いた。
高橋愛と小川麻琴は料理人見習い。
ゆくゆくは一流のコックになるのが2人の夢。
しかし、いつも失敗ばかりでなかなかうまくいかない。
料理も作らせてもらえず、ひたすら皿洗いの日々。
先輩には罵倒され、料理長もあきれている。

『2人で力をあわせてでもいい!これだという作品を作ってみろ!場合によっては解雇も考える』

三日前に言われたオーナーの言葉を聞き、仕事が終わった後も2人は必死で作品作りをしていた。

「コックに向いてないのかな…」
「……」

時計の針は長針も短針も『12』を指していた。
時間ばかりが過ぎていき、何の成果も出ていない。
96 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時25分12秒
「このままじゃクビになっちゃうよ…」
「……」

幼馴染で親友の2人は田舎から上京し、小さなアパートで2人暮らし。
親の反対を押し切って出てきた為、そう簡単には帰れない。
しかし、2人はクビの一歩手前。

「……頑張るしか…ない、か…。頑張ろ!麻琴!」
「…そうだね」


また2人は料理に取り掛かった。

朝になってやっと一品作品が出来た。
見た目も味も2人の納得できるものではなかったが、自分たちの精一杯だった。

『どれ、こちらに持ってきてみなさい』

三日前から作った物をオーナーに提出している。
でも昨日も一昨日もあまりいい顔はしなかった。

「「お願いします…」」

オーナーは差し出された食べ物をじっくり見ている。
そして、一口食べてため息をついた。
97 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時26分01秒
『ダメだね…。味は確かに良くなってはきているけれど…』

2人もため息をついた。

【クビ決定】

小川の脳裏にはその言葉がよぎった。

『…残念だけど、キミたち…』
「待って下さい!!もう一度だけ!…一週間後に…チャンスを下さい!お願いします!!」

高橋は深々と頭を下げた。

『…でもなぁ…』
「…あたしも!お願いします!!」

小川も深々と頭を下げた。

『……わかった。じゃあ、一週間後に。そこでもし出来なかったら解雇で…いいかい?』
「「はい!」」

それから2人は一睡もしてない体で仕事を続けた。
そして、今日はいろいろ考えよう!という事で、仕事が終わるとすぐに店を出た。
小川は出る前にオーナーに提出した作品をタッパーに入れて持ってきた。
98 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時26分46秒
アパートに帰る道で小川はため息をついた。

「…とは言ったものの、どうしようか…」
「何にも考えてないけどさ、あのままだったらクビだよ?あたし達の夢だってなくなっちゃう!」
「でも一週間しかないし…、いきなり料理の腕が上がるとも思えないし…」
「もう!麻琴!しっかりしてよ!クビになったらアパートだって出てかないとだし、親が知ったら絶対連れ戻されちゃう!それだけは嫌!」
「うん…、ゴメン。考えよう?」

2人は近道をするために路地裏を通っていた。
話しながら曲がり角を曲がるとそこには一人の女の子が倒れていた。

「わっ!!」
「だ、大丈夫ですか!?」

高橋が駆け寄り話しかけると、女の子はもぞもぞと動き出した。

「……か………いた……」
「え?」
「おなか……すいた…」

2人は顔を見合わせた。
99 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時27分25秒
「あ!…そういえば」

小川は鞄の中からタッパーにつめた食べ物を取り出した。

「あの…口に合うかわからないですけど…」

目の前に出すと女の子はキラキラと目を輝かせている。

「食べて良いの?」
「あ、はい。どうぞ…」
「わーい!」

女の子が一口食べて、その様子を見ていた二人も唾を飲んだ。
おいしいのかおいしくないのか、無言で食べ続けている。
そして全て平らげた。

「…どうでした?」
「ん〜、ちょっと味が濃いかな〜。でもおいしかったよ、ありがとう」

女の子は立ち上がり、洋服のしわを直している。

「お礼にこれ!」
「…なんですか?」 
100 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時29分20秒
【七福社
 何かにお困りの方は気軽にお越し下さい。
 住所***********  TEL**-****-****】
101 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時30分16秒
「お金取るけどさ、そんなに高くないし、必ず良い方向に行くと思うんだよね」
「はぁ…」
「困った事があったら行ってみてよ。じゃあ、ごとー行くから、ありがとね〜」
「あ…ちょ…」
「…行っちゃったね」

2人は貰った名刺を見つめた。

「困った事…」
「…ねぇ?試しに行ってみない?」
「えぇ?絶対怪しいって!愛ちゃん。やめよう!」
「でもさ、あの女の人そんなに怪しくなかったし、それにおいしいって言ってくれたし」

この飽食の時代に街中で空腹の為倒れているなんて怪しいにも程がある。
おいしいと言ったのもきっと社交辞令なもの。
小川はそう思ったが、今の自分達は藁にもすがる位困っている。

「…じゃあ、行ってみようか。ここから近いし…」
「行こう!」

2人は名刺を頼りに『七福社』へ向かった。
102 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時30分50秒
「ここだけど…」
「え…、ここ?」

目の前には今にも崩れそうなビル。
下に下りる階段が見える。

「………なんか、幽霊が出そう…」
「や、やめてよ!怖い事言うの!幽霊なんていないよ!」
「でも、あたしはかまいたちにひっかかれた事があるよ?」
「…それは愛ちゃんの勘違いかなんかでしょ…」
「あー、信じてないの?!」
「はいはい…、信じてますって」

小川は高橋を置いて階段を下りていった。

「待ってよ!!」

高橋も後を追いかけた。

【七福社】
*お困りの方は是非どうぞ*

「入るよ…?」
「うん…」

小川はドアを開けた。
103 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時32分06秒
「あの〜?……すいません…?」
「はい?」

奥からとても小柄な女の人が出てきた。

「あの、えっと、女の人から名刺貰って…きたんですけど」
「あぁ!お客さんですね、こちらへどうぞ」
「は、はい」

2人は案内され、ソファーに腰をかけた。

「ねぇ…」

高橋は小川の服を引っ張った。

「…何?」
「なんかこの部屋…」
「趣味悪いやろ?この人が飾るんやで」
「もう、いいってば!…紅茶…どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

2人が紅茶を一口飲むと目の前に座っていた矢口が口を開いた。
104 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時32分44秒
「初めまして、ここの社長の矢口真里です。で、今日はどのようなご用件でしょう?」
「あの…実は…」
「あたし達、料理人見習い中なんですけど…一週間後オーナーに作品を作って認められないとクビになるんです!」


「「「「「「「料理人!!!」」」」」」」


7人全員がその言葉に反応した。

「え、い、いえ、まだ見習いですけど…」
「でも料理人なんだよね!?」
「はぁ…、一応…」
「…コホン。初対面で、しかもお客様にこんなこと言うのはなんなんですけど…」
「「?」」

「「「「「料理、作ってもらえませんか!?」」」」」

5人が一気に2人の周りに集まった。
残りの2人は…というと。

「えー、うち作りたかったのになぁ〜」
「うぅ…、そんなにあたしの料理はまずいのね…」

小川は首をぶんぶんと振った。
105 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時33分18秒
「とんでもない!あたし達…下手くそで…だからクビになりそうなんで…」
「でも素人よりはマシやな」
「おいしいもの!おいしいもの!」
「のの、あんまりはしゃぐと梨華ちゃんに悪いべさ」
「食べ物系の依頼は紺野担当だよね?」
「はい。是非今後の仕事にも関わるので作ってはもらえないでしょうか?」

小川は困ったように隣の高橋を見た。

「愛ちゃ…」
「わかりました。作ってみます!」

「「「「「やったー!!」」」」」
「えぇ!??」

小川は目を丸くして高橋に何か言おうとしたが、当の本人は作る気満々なので諦めた。

「台所、お借りします」
「どうぞ!」

7人の社員は料理が出来るのを今か今かと待っていた。
106 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時33分48秒
「出来上がりました!!」
「おお!!」
「おいしそうやん」
「じゃあ…」

「「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」」

「「……どうですか?」」

2人は恐る恐る聞いてみた。

「…おいしいよ?」
「うん、おいしいべさ」
「んめーのれす」
「うまいやん」
「くやしいけど…」
「うめー!カッケー!」
「………」

「本当ですか!」
「うん、おいしいよ。別にうちに来なくてもこれだったらオッケーなんじゃないの?クビにもならないんじゃない?」
「…でも、こんなんじゃダメなんです…」
「へぇ…、大変なんだなぁ〜」
「お願いします!あたし達本当に困ってるんです!」
 
2人は深々と頭を下げた。
107 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時34分20秒
「うん、わかりました。依頼を受けましょう。…いつもは依頼料1万2千円貰うんだけど、おいしいものも食べれて気分がいいので特別に免除しますね」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「…んじゃ、紺野!出番だよ」
「はい」

紺野は一歩前に出た。

「初めまして、紺野あさ美と申します。お2人の依頼、私が責任を持って承りますので、よろしくお願いいたします」
「は、はい!」

紺野は振り向いた。

「石川さん、頼んでおいたもの出来てますか?」
「え?あぁ、出来てるよ」
「二つ…いただけますか?」
「うん」

石川は何かを取りに行った。

「…今回も趣味悪いかな?」
「多分ね」

矢口と安倍はこそこそと話している。
小川と高橋はなんだかわからないといった感じで首をかしげている。
108 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時35分01秒
「おまたせ!今回は自信作よ!」
「ありがとうございます」

紺野は手渡されたものを見た。
緑色のフライパンがついたキーホルダー。
前回と何が変わっているのかさっぱりわからない。

「………全く改善されていないようですね」

辻と加護は笑いをこらえている。

紺野は軽く息を吐くと小川と高橋に見えないように後ろを向いた。
手のひらから緑色のオーラが出ている。
そのオーラはキーホルダーに吸い込まれていった。

「……これをどうぞ」
「「へ?」」

2人に手渡した。

「これは…?」
「そのキーホルダーには食の神の御加護がついています。必ず力になると思います」

【こんなもので料理がうまくなるんだろうか?】

2人の頭には同じ言葉がよぎった。
しかし、ここで料理を作った事によって少しは自信がついた事は確かだし、特にお金も払ったわけでもない。
損をしたわけでもないので

【よくわかんないけど、ま、いっか】

と結果が出た。
109 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時35分53秒
2人はとりあえずお礼を言って会社から出て行った。

「まぁ、あのキーホルダーはともかく紺野の力が入ってれば大丈夫じゃない?」
「しかし、ひどいグッズだったね」






みんなが談笑する中、紺野だけは二人の出て行ったドアをいつまでも見つめていた。
110 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時36分40秒
「このキーホルダー趣味悪いね〜」
「愛ちゃん、そんなこと言っちゃ悪いよ…」
「こんなんでうまくいくとは思えないけどなんかやる気は出たよね?」
「そうだね」
「よし!これから食材買って練習しよう!」
「うん!」

2人はスーパーに寄って食材を買いあさった。
家に帰り早速料理に取り掛かった。

「…?愛ちゃん、包丁さばきが良くなったね…?」
「麻琴こそ…」

2人に変化が現れていた。
今まで作った事のないようなレシピがポンポンッと浮かんできたり。
いつもは何を作るにも時間がかかっていたが、いつもの半分くらいの時間で出来た。

「いつもと…違うよね?」
「うん…!」
「食べてみようか?」
「うん!」

一口、口に含んだ。

「おいしい!?」
「何…これ?あたしたちが作ったんだよね…?」
「そうだよ!」
「うそー!!おいしい!信じられない!」

小川はハッとしてポケットに入れていたキーホルダーを取り出した。
111 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時37分25秒
「もしかして…これのおかげ?」
「もうなんでもいいよ!これならオーナーだってOKって言ってくれる!クビにもならないよ!」
「そうだね!」

2人はそれからも毎日作ったがどれも良いものばかりだった。

そして、約束の一週間後。

『自信作は出来たかい?』
「「はい!!」」

出来上がった作品をオーナーの目の前へ差し出した。

『ほぅ…、これは…いつもと違うようだね』
「お願いします…」

オーナーは一口食べた。
2人の間に緊張が走る。

『……!!信じられないくらいおいしいよ!』

とても驚いてるオーナーを見て2人は喜んだ。
だが。

『でも…、なんか足りないんだよな…。確かにおいしいんだけど…』
「え…」

『まぁでも解雇の話はなかった事にするよ。これからも精進してくれ』
「「はい…、ありがとうございました…」」

クビはなくなった。
しかし、なんとも後味の悪い感じだ。
2人は仕事が終わると近くの公園のベンチに座り考えた。
112 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時38分13秒
「何が足りないんだろう…」
「塩?それとも…違う調味料かな…?」




「料理人にとって一番大切な物をお2人は忘れていますよ」




「「え?」」

声の方向に振り向くとそこには紺野が立っていた。

「あなたは…」
「それは一体…?」
「お2人は料理を作ってるとき何を思って作っていましたか?」
「それは…」

二人が思っていた事。
113 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時38分49秒
【うまく作ればクビにならなくて済む】


「今だから言いますけどお2人が料理を作って下さった時、…失礼ですけどあまりおいしくありませんでした。言ってみれば普通です」
「……」
「でも、お2人は私たちの為においしいものを作ろうと一生懸命作ってくださいました。だからみんなおいしいと言って食べていました」」
「……」
「足りない物…わかったでしょうか…?…それでは失礼します」

紺野はその場を立ち去った。

「……」
「愛ちゃん…、あたし達…一番大切なもの忘れてたね」
「…足りないもの…今度は忘れないようにしよう!」
「…うん!」
「でさ!またオーナーに食べてもらって…」
「うん!」
「で…、またあの会社の人たちにも食べてもらおう!」
「うん!!」

2人は空を見上げた。

「これからも頑張るぞー!!」
「おーー!!!」






2人はお互い良い親友、良いライバルとして成長して行く。
キーホルダーは大事にしまってあるそうだ。
いつか…キーホルダーがなくてもみんなが喜ぶものを作れるように。
小さなコックはやがて一流のコックとなる。
114 名前:二話 小さなコックたち 投稿日:2003年02月22日(土)18時40分16秒
*****
「もう石川さんの作るもの期待しない事にしました」
「オイラはもうとっくに期待してないけど」
「頑張ったのに…」
「一回頑張らないでみたらどうだべ?」
「気合入りすぎなんじゃない?」
「…それより真希ちゃん一回もここに来てへんけどちゃんと向かってるん?」
「たぶんまよってるのれす」
「地図は書いたんだけどなぁ〜」
「まぁそのうち来るだろ、勝手についてくる方が悪いって事で」
「矢口さんが置いて行くって言うからですよ」
「だって毎日いちゃいちゃされたらたまったもんじゃない」
「そんな…しませんって」



七福社の仕事はまだまだ続きます。
115 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月22日(土)18時41分34秒
更新終了〜。
116 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月22日(土)18時48分50秒
91>名無しどくしゃ様
カコ(・∀・)イイ!!ですか!(w
こうゆうの書いてみたかったんですよ。なかなか好評のようでよかったです(安堵

92>なしこ改め空海様
あえいがとうございます!
みっちゃんよかったですか!なんか私の中ではあの2人はあんなイメージでして。
へたれみっちゃん(・∀・)イイ!!

93>名無し蒼様
はじめまして〜!森板から読んで下さっててありがとうございます。
これからもあの人やあの人も出るので楽しみに待っててください!
あ、でもおもしろいかどうかは…。

てことでage!
117 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月22日(土)18時50分16秒
×あえいがとうございます!
○ありがとうございます!
激しく鬱(w
118 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年02月23日(日)11時37分21秒
まこあいキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
感動。すんばらすぃ友情っすね・゚・(ノД`)・゚・
こゆの憧れますエヘヘ。次も楽しみにしてます。
119 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月23日(日)19時49分24秒
ホノボノ系キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
次は誰が来るのかワクワク待ち。
120 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時36分28秒
『朝比奈学園 市井紗耶香さん 全国大会進出です』



市井は大きな拍手が鳴り響くフィールドに立っていた。
高校生活最後の陸上競技県予選が終わり全国大会への切符を手にしていた。

「おめでとう!紗耶香!」
「おめでとうございます!先輩!」

部の仲間や後輩が次々に市井に声をかけている。

「ありがとう!これで最後だから悔いの残らないように精一杯頑張るよ!」

市井は高校三年生。
競技種目は走り高跳び。
初めは無名の選手だったが努力に努力を重ね、やっとここまで辿り着いた。
部内での人望も厚く、部長も務めていた。
121 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時37分02秒
「…最後…なんだよね……」

高跳びのバーを見つめ、首を振り、競技用スパイクを袋の中に入れて競技場を後にした。

「これから紗耶香の全国出場を記念してなんか食べに行きますかー!」
「いいですねー!行きましょう!」

部員が盛り上がる中、市井は申し訳なさそうに手を挙げた。

「わるい!パス!」
「えー!主役がいなきゃ〜!」
「いろいろと…さ、準備があったりさ…」
「あ…!、そっか。仕方ないね…」
「うん、折角なのにゴメンね!じゃ!お先に!」

市井は輪の中から外れてみんなとは別方向に歩き出した。
少し歩くと市井のお気に入りの河川敷に辿り着いた。

「ここに来れるのも…もうちょっとだよね」

草の上に座り、ごろんと寝転んだ。
夕日が眩しくて目を瞑り吹き付ける風を感じた。

「ここに初めて来たのは…中二だっけ…」

いつも人一倍練習して、学校を出るのも一番最後。
それでもうまくはなれなくて悔しくていつもここで泣いていた。
122 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時38分36秒
『どうしたの?』








泣いてる時、声をかけてきたのはその日初めて会った人。
…後藤真希。

「後藤…」

市井は寝ながら空に向かって両手を伸ばした。

「…すごいだろー、全国大会だよー?後藤にも市井の凄いとこ見せたかったなー…」

後藤は市井より一つ年下で。
しっかり者で少しせっかちで頭も良くて喜怒哀楽もはっきりしてる子だった。
いつも市井の帰る時間にいて、いつも話を聞いてくれた。
いつも完璧なアドバイスは年下とはとても思えなくて驚かされた。

「後藤に…見てもらいたかったよ…」
123 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時39分08秒
二年前。
市井が高一、後藤が中三の時。
後藤は市井の目の前で大型トラックにはねられ、死んだ。
2人が付き合って間もない頃だった。
待ち合わせの時間も一度も遅れた事がなかったのにその日は遅かった。
少し経って前方から走ってくるのを捉え「遅ーい!」って声をかけようとした瞬間。
居眠り運転のドライバーによって一つの命がなくなった。

気が狂いそうだった。
いや、少しは狂ってたのかもしれない。
いつも夢の中には後藤が笑ってて。
近寄って抱きしめると頭から血を流してぐったりとして動かなくなってた。
思い出すのは2人でいた日々。
自分も死のうかと思った時、後藤のお母さんから貰った写真。
それは背面跳びをしてバーを飛び越える瞬間の市井の写真。
写真の下には『後藤は高跳びやってるいちーちゃんが大好きだ−!』と書かれていた。
それから市井はがむしゃらに練習を続けた。



そして、今日ようやく全国大会出場が決まった。
124 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時39分59秒
「上で市井の活躍するとこ、ちゃんと見てろよー?」

市井は立ち上がり、荷物を持ってその場所を後にした。

「あ、そういえば…」

くるりと方向転換をして来た道を戻った。

「今日は陸上マガジンの発売日だっけ…」

駅前の本屋に向かった。
駅前は本当は来たくなかった。
あの【場所】だから。
しかし品揃えのある本屋がここにしかなかった。

「……」

信号にひっかかり市井は立ち止まった。
ふと前を見るときょろきょろと何かを探している女の子が目に入った。
目があまり良くないので顔は見えないがなぜか懐かしい感じがした。
125 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時40分39秒
突然、あたりに大きなクラクションの音が鳴り響いた。

ハッとして見回すと青いスポーツカーが暴走していた。
その車は確実に女の子の方へ向かっている。

「やばい…!」

市井は赤信号中の横断歩道を渡り走った。
女の子が車に気がついたが暴走する車は止まらない。
周りの人が誰もが轢かれる!と思った時。
間一髪、市井は女の子を抱きながら横へ倒れた。

(……つぅ)

右足に鈍い痛みを感じた。
そして倒れた時、頭をぶつけ気を失った。

「……大丈夫ですか!?大丈夫ですか!!」






女の子は必死に市井に呼びかけたが市井は倒れたままだった。
126 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時41分23秒
*****
「やっぱ遅いな〜、ごっちん。辺り見てこようかな…」

吉澤はうろうろと動き回っていた。
辻はその様子をずーっと見ていて少し目が回った。

「じきに来るって。今に「よっすぃ〜!!」って言いながらドアから入ってくるよ」

矢口はいたってのんきだった。

「う〜ん…」
「捜しに行くんやったら付き合うで?」
「う〜ん…」

加護の言葉は耳に入っていないようだ。

「まぁちょっと落ち着いて紅茶でも飲むべさ」

安倍は人数分のカップをテーブルに置き、ソファーに腰をかけた。
みんなも集まり紅茶を飲もうとした時。

ガン!ガン!と階段を誰かが降りてくる音が聞こえた。

「なんだか随分荒っぽい人が来たわねぇ?」
「怖い人ですかね?」

石川と紺野ものほほんとしている。
127 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時41分58秒
バァン!!という音とともにドアが開いた。
みんなが一斉に振り向くとそこには涙でぐしゃぐしゃな顔の後藤だった。
しかも背中には市井を担いで。

「「「「「「「後藤(ごっちん)!!!」」」」」」」
「…よっすぃ〜!!」

「「「「「「よっすぃー(吉澤さん)だけかよ!!」」」」」」

とりあえず、背中の市井をソファーに寝かせて後藤から事情を聞いた。

「…なるほどね」
「ご、ごとーを…っく、助けてから起きないから…よく、わかんないけど…ひっく、担いできちゃって…」
「泣き止んでよ〜、ごっちん」

吉澤はずっと後藤を慰めている。

「後藤さんのせいじゃないですよ」

紺野が『後藤』と言った瞬間、市井の体がぴくりと動いた。

「う、うごいたのれす!」

辻の声に反応して、市井は目を覚ました。
128 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時42分46秒
「……あれ…?…ここは……?」
「目が覚めましたか?市井紗耶香さん」
「…何で名前?」
「失礼だとは思いましたが鞄の中を少し調べさせて貰いました。私は矢口真里と申します」
「…はぁ…。………そうだ!!あの女の子は!?」

市井は起き上がり矢口の手を掴んだ。

「無事ですよ、ごっつぁん!起きたよ」

矢口が振り向いて後藤を呼び寄せた。
その姿を見た市井は目を見開いた。

「後藤!!?」

「え?」
「「「「「「「ええ!?」」」」」」」

市井は後藤の手を掴み自分の方へ引き寄せた。

「痛…!」
「!なにするんだよ!ごっちんに!!」

吉澤はすかさずその手を振り解いた。

「…なんで…?あたし…も死んだの…?」
「……よろしかったら詳しく教えていただけませんか?」






市井は今までの事を全て話した。
129 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時44分09秒

「…後藤にそっくりだ。名前も同じだし…、声だって瓜二つだ…」
「凄い偶然…、こんな事もあるんだべなぁ」
「偶然というより奇跡に近いですね。こんなに一致しているのは」

矢口はまだ少し興奮している市井に話しかけた。

「後藤はうちの会社の…なんていうか…社員ではないんですけど…まぁ、そんな感じでして…。市井さんの言う後藤とは全くの別人物なんですよ」
「……そうですよね。わかってます、後藤はもういないんです…」

市井は下を向いてため息を吐いた。

「……ここは七福社という…言ってみれば何でも屋みたいなものです。お困りの事があればいつでもお越し下さい」

矢口は市井に名刺を渡した。

「…はい。…すみませんでした、それとありがとうございました…」

市井は立ち上がり荷物を取ろうと一歩足を踏み出した。
130 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時44分49秒
「痛ぅ…」
「どうかしましたか!?」
「……いえ、なんでもないです…」

市井は振り返り、後藤の事を懐かしそうに見つめた。
後藤は恥ずかしくなって目をそらした。
隣の吉澤は市井を睨んでいる。

市井は少し笑い、ぎこちない足取りで部屋を出て行った。

「……足、悪いのかな?」
「え?でも陸上用のスパイクがあったけど…」








市井が帰った部屋の中は異様な雰囲気と化していた。
131 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時45分47秒
市井は足をひきずりながら家に帰った。
自分の部屋に入り、名刺を見つめた。
自分の愛した『後藤』とさっき会った『後藤』が重なった。
名刺を握り潰し、ゴミ箱へ投げた。

「…あれは、後藤じゃないから…」

じんじんと痛む足を冷やしながらベットに横になった。

次の日になっても痛みはひかなかった。
部活を休み、医院に行った。
今まで疲労がたまっていた所に大きな衝撃を受けたため右足にはひびが入っていた。


全国大会出場は危なくなっていた。


顧問にばれたら即出場停止だろう。
なんとか隠してでなければならない。
高校最後の大会。
後藤も楽しみにしていた大会。




…日本での…最後の思い出。
132 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時46分35秒
市井はこの大会が終わったらすぐに両親の待つロスへ行かなければならなかった。
父親の転勤で家族で向こうに住む事になっていた。
本当は一緒に行くはずだったのだがどうしても大会に出てからという願いを両親は聞いてくれたのだ。
こんな終わり方はしたくない。

市井の足は自然に七福社へ向かっていた。

ドアを開けるとそこには吉澤と後藤しかいなかった。

「…!あんた!」

吉澤は後藤を隠すように前に出てきた。
その姿を見て市井は笑った。

「…その子にはなにもしないよ…。それより頼みがあるんだ。困ってる事があったら…だろ?」

市井は苦痛の表情を浮かべその場に座り込んだ。

「…用件はなんですか」
「…足を治して欲しいんだ。どうしても大会にでなきゃならない。そんな事…できるか…?」

右足をさすりながら吉澤に話しかける。
その様子を見て後藤はハッとした。
133 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時47分12秒
「もしかして…助けてくれた時に…?」

市井は後藤を見てニコッと笑った。

「あなたのせいじゃないよ、自分で転んだんだ…」

その笑顔を見て吉澤も後藤も足の怪我は後藤が原因だと察した。

「…出来るよ、治す事」
「本当!?お願いだよ!頼む」

吉澤は奥の部屋に入って行った。
部屋には後藤と市井、二人きりになった。

「……あの子はあなたの恋人?」
「……うん」
「そうか…」
「…よっすぃーはね、ごとーと似てるの。マイペースだし、天然だし、頭もあんまり良くないとことか」
「そう…。ははっ…、後藤とは全然違うな…」
「?」
「…なんでもないよ」

奥から吉澤がやってきた。
134 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時47分53秒
「…はい」

手に持っているのは青い剣の様なものがついたキーホルダー。
淡く光っている。

「…キーホルダーねぇ……」
「信じる信じないは別だけど、持ってた方がいいよ」
「……」
「…あたしは何かに負けないように頑張って戦ってる奴が好きなんだ。…市井さん」

名前を呼ばれて顔を上げた。

「…頑張ってよ。……真希さんの為にも」

吉澤は照れくさそうに市井に手を差し伸べた。
市井はその手を掴み起き上がった。
そしてキーホルダーを受け取った。
少し足の痛みがなくなった気がした。

「…暇だったらさ、大会見に来てよ」
「…暇だったらね」
「行くよ!絶対!頑張って!市井さん!」

部屋を出て行く市井に後藤は声をかけた。
市井はまた笑って帰って行った。




この後、2人は報酬料を貰わなかった事を紺野に叱られる。
135 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時48分43秒
全国大会の日まで市井はキーホルダーを自分の傍から離さなかった。
もちろん競技中は持っていることは出来ないが、練習中ポケットの中に入れていた。
…しかし、問題が一つあった。



そして、全国大会。
足はすっかり完治していた。

「…馬鹿にしたものじゃないね」

市井はキーホルダーと写真を鞄に入れ、会場に向かった。

競技が始まり、次々とライバルたちが跳んでいく。
市井には不安要素があった。
怪我をしてから跳ぶ時に自然と右足の怪我の部分をかばう様に踏み込んでいた。
今までとタイミングも合わなくなり、跳べない日々が続いていた。

「…大丈夫。後藤が見てる。…見てくれてる」

市井は空を見上げた。
そして大きく深呼吸をした。
136 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時49分25秒
その頃。
吉澤と後藤は観客席にいた。

「遠いねー」
「そうだね」
「…怒ってるの?」
「…怒ってません」

行くのを嫌がっていた吉澤を後藤が無理矢理連れてきていた。

「市井さん、まだかなぁ〜」
「次の次」
「…怒ってる」
「…怒ってないって」

吉澤と後藤の目に市井の姿が目に入った。

「あ!次だ!」

市井は走り出すとバーの前まで来て跳ばずに通り過ぎた。

「あれ…?どうしたんだろう…?」
「……恐怖心だろうね。体は治っても脳は痛みを覚えてるから思いっきり踏み込めないんだ」
「そんな…」
137 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時49分59秒
その時市井も感じていた。
思い出すのはあの時の痛い足。
それまで大きな怪我をしたことがなかった市井にとって相当な痛さだった。

「くそ…、足が治っても、あたしがしっかりしなきゃ…」

一巡目は結局飛ぶことが出来なかった。
遠い吉澤たちの席からでも市井が落ち込んでる事がわかった。

「…だめだね。きっと次も跳べない」
「そんな…!」

二回目。
市井は深呼吸をした。

そして、走り出した。

(また…ダメだ!!)

と、思った瞬間。
138 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時50分37秒







「跳んでーーーー!!いちーちゃん!!!!」







139 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時51分08秒
遠くから声が聞こえた。
市井の耳にはその声しか聞こえなかった。
そして市井は思い切り踏み込みバーを飛び越えた。
その姿はまるで背中に翼が生えている様で。
一瞬時間が止まったような気がして。
ドサッとマットの上に落ちた。
バーは落ちていない。

「……よっしゃー!!!」

市井はその場でガッツポーズをした。
観客席の吉澤と後藤も手を叩いて大喜びをした。
140 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時51分52秒
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「…残念でしたね?」
「いや、ここまで来れたらもう十分だよ」

結局市井は予選で敗退した。
しかし、どこか顔はスッキリしていて嬉しそうだった。

「見に来てくれてありがと、ね」
「うちは無理矢理連れてこられただけ…」
「…まぁまぁ、よっすぃーだって喜んでたじゃない」
「う…」

少し前を歩いていた市井は振り返った。
141 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時52分49秒
「吉澤、…後藤。ありがとう。多分もう会う事もないと思う。元気でね」
「市井さん…」
「いちーちゃん!ごとーは後藤さんじゃないけどいつでも会おうと思えば会えるよ」
「後藤…」
「今度、高跳び教えてね!」
「………あぁ」





市井はその後、両親のいるロスへ旅立った。
【後藤】によく似た【ごとー】と旅立つ時、一緒に撮った写真と
【後藤】と一緒に撮った写真を握り締めて
飛行機の中、眠りについた。
…夢の中の後藤は笑っていた。
最後に何故ごとーはいちーちゃん!と叫んだのか?
それは謎のままだった。
142 名前:負けない心 投稿日:2003年02月28日(金)23時53分33秒
*****
「どうでもいいけど出番少なかったなオイラ達」
「そうれすね」
「誰のせいや?」
「作者の陰謀です」
「作者って誰だべ」
「そんな事言っちゃダ・メ」
「…キショッ」




七福社の仕事はまだまだ続きます。
143 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年02月28日(金)23時57分43秒
話の流れが速すぎ…・゚・(ノД`)・゚・
…えっと作者競技に詳しくないです。結構適当かも・゚・(ノД`)・゚・
あと県大会と全国大会の間メチャ短いです。
あんまり長くちゃうとね、市井さん治っちゃうからね…。
144 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月01日(土)00時02分40秒
118>名無しどくしゃ様
まこあい大好きなようですね(w
まこあいはもう出ないかも…出るかも…(謎

119>名無し読者様
ほのぼの系来ましたよ(w
今回は…何系だ?(謎 その2

145 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月01日(土)00時03分13秒
更新age!
146 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月01日(土)11時54分22秒
涙出てきましたよアウ・゚・(ノД`)・゚・
いちごまで感動なんて初めてですがな。
まこあいまた出るんですか(;´Д`)
147 名前:七福社へようこそ! 投稿日:2003年03月03日(月)19時19分29秒
*****
「のののアホー!!」
「あいぼんのばかー!!」
「なんだ?なんだ?喧嘩か?」
「ののがうちが大事にしてたアイス食べたぁー」
「あいぼんだってのののクッキー食べたのれすー」
「…くだらねぇ」
「私にはわかります。食べ物の恨みは怖いですよ」
「でもぉ〜、2人ともそれぞれ食べちゃったんだからおあいこって事で…」
「「梨華ちゃんは黙ってて!」」
「…はい」
「こぉら〜、2人とも喧嘩はダメだべ〜?」
「「だって…」」
「ね?2人とも?仲直り!ね?」
「…う〜、しゃあないな。安倍さんに言われちゃあ」
「そーれすね。仲直りするのれす、ごめんね、あいぼん」
「うちも悪かったな」
「さすがなっち!日本一!世界一!天界一!」
「矢口!あんまり褒めると照れるべさ〜」
「……(泣)」
「何泣いてんの?梨華ちゃん」
「……なんでもないの(泣)」
148 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月03日(月)19時20分41秒
ここは校内の中庭。

「みきたんのばか!もう知らない!」







藤本美貴、高校三年。
ある事に悩んでおります。

「亜弥ちゃん…」

松浦亜弥、高校一年。
明るくて、可愛いあたしの恋人、…なのですが。
少々彼女はヤキモチ妬き屋で困っています…。
149 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月03日(月)19時21分15秒
ちょっと聞いてくださいよ、皆さん。
昨日、確かにデートの約束をしたんですよ。
一昨日の夜なんかは嬉しくて眠れなかったくらいで。
遅くまで起きてた訳ですよ。
それが災いしたのか気がつくとぐっすり熟睡してしまって、目覚ましも止めてたみたいで。
朝起きると時計の針は待ち合わせ時間を指していたんです…。
急いで服に着替えたんですね、そりゃもうすごい早さですよ。
で、慌てて階段を降りようとしたら足の小指をぶつけたんです。
2、3分そこから動けなかった訳で…。
それから痛さがなくなって「よしっ!」と意気込んで家から飛び出して走ったんです。
まぁこれが前兆だったんだと今は思うんです。
信号機には捕まるわ、

道を聞かれるわ、

街頭インタビューみたいのにつかまるわ、

迷子の子供に会うわ、

自分が迷子になるわでもう大変だったんですよ。
そしてやっとついた頃にはご立腹な彼女が立っていて…。

「…何回も電話したんだけど」

慌てて鞄から携帯を見ると何十件もの着信記録。

「…あ、サイレントにしてた…」
150 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月03日(月)19時22分57秒
あはは、と笑ってごまかそうとした瞬間、彼女の右手がグーになってあたしの左頬に飛んできました。
マジです。


「浮気者ーー!!」


彼女は捨て台詞を吐くと走って行ってしまいました。
『浮気者』の意味がさっぱりわかりません。
彼女はどうやらあたしの友達のまいとの仲を前々から疑っていた様なのです。
いつまでも電話に出ないのであたしがまいと浮気していたと勘違いしたんでしょう。
その後も電話を掛け続けたけれどことごとく無視。
そして今日学校で会って…今に至るわけです。

「はぁ…、なんでかなぁ〜…」

…イライラ。
いろいろ考えてたら言い訳すらさせてくれない彼女に呆れ、というか怒りが沸々と湧き上がってきた。

「…って言うか!寝坊したのは悪いと思うけどさぁ!一生懸命走ってきたのにさぁ!」

近くにあったバケツを蹴っ飛ばすと中には草がいっぱい入ってたみたいでその辺に散らばった。
151 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月03日(月)19時23分42秒
「な、何…?ま、いいか…」

そこから立ち去ろうとすると、トントンと肩を叩かれた。
振り向くとそこには稲葉先生が立っていた。
眉をひくひくさせてひきつって笑っている。





「…今な、草取りしてたんやけど」





「あ…はは、すいません…」
「…直してから帰ってや。…全部」
「………はい」

運が悪いのは誰のせいなのか。
…誰か教えてくれませんか?
152 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月03日(月)19時24分55秒
「おーい?何してんの?」

顔を上げると、今回の喧嘩の原因の友達。
里田まい。

「……まーね、いろいろとね…」
「ふーん?よくわかんないけど手伝おっか?」
「いいの?」
「いーよ、まだ時間があるから」
「ありがとー!助かるよ〜!」

やっと運もこちらに向いてきたのだろうか、とうきうきしながら草を2人で拾っていたら。



「……やっぱり、そういう事」



中庭への通路に立っているのは亜弥さんで。

「…ちょっと言い過ぎたかなと思って戻ってきたらやっぱり!」
「ち、違うよ〜!ちょっといろいろ訳があって…!」
153 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月03日(月)19時25分34秒
亜弥ちゃんの方へ走っていって目の前に立った瞬間、痛烈な右ストレートが左頬に。
…あの、出来れば左右平等に殴ってもらえませんか?
昨日から左ばっかり…。

「もうほんとに知らない!!!」

大声で叫んで走って行ってしまった。
…だからさ、少しは話を聞いてくれませんか…?
後ろから誰かが走ってくる音がした。
きっとまいが「元気出して!」とか励ましてくれるのかと思ったら。

「ごめん、美貴!これからあたし絢香さんとデートなんだ!先に帰るね〜!」

あの…今あなたの目の前で起きた光景は無視ですか?
そしてこんな状況であたしを置いていくんですか?

「もう…さ、ははっ…笑えるね…」

あたしは戻って草を拾い集めた。
その最中携帯に電話してみたけど思ったとおり繋がらなかった。
そして全部拾い集めた。

「帰ろ……」



重い足取りでその場を後にした。
154 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月03日(月)19時34分16秒
今回は一気に更新しません。
疲れるので(w
松浦さんが暴力的です。
そして私の趣味が出てきてます。里アヤ。
皆さん知ってるとは思うのですが『絢香』さんはアヤカさんです。一応。

146>名無しどくしゃ様
『冗談』の意味が激しく気になるんですが…(w
赤板のフリー作者スレに何気にオガタカ載せました。
良かったらそっち見てみて下さい!
aikoが好きな方ならすぐにわかると思います(w
155 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月04日(火)21時20分50秒
Σ(;゚д゚)あ、あやみき!!!
良い所で切っちゃって!もう!作者様のいぢわるぅ
ソレトフリーの方読まさせて頂きました。えぇ。
先輩後輩の仲ってイイでつな(*´д`)
おちゃめなマコたん最高。デヘヘ(狂
156 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月04日(火)22時02分31秒
うpしませんが、現れました。ゴメンなさい。

155>名無しどくしゃ様
今回いじわるしました(w
特に意味はないんですけどね(w
157 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時41分10秒
帰り道、暗ーく一人で歩いてると鞄の中からメール着信音。
この音は一人しかいない。

亜弥ちゃん!

急いで鞄の中から携帯を取り出してメールを開いた。

【別れよう 亜弥】



「………は?」



某番組の某コーナーじゃないけど口に出してしまった。
急いで電話を掛けると繋がって電話に出た。

『…なに』
「『なに』じゃないよ!どういう事?」
『もう嫌なの!みきたんいつも自分勝手すぎる!』

自分勝手…?
あたしが?

『だから疲れたの!もぅ別れる…』

疲れた…?
あたしの方が。

「…わかった。亜弥ちゃんがそうしたいならそうしよう…?」
『え…?…みきた………』
158 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時41分54秒
あたしはだらりと携帯を持ってた右手を下げて電源を切った。
最後の方、なんか声が聞こえたけどもうどうでも良かった。
なんだよ、疲れた、って。
あたしの方が疲れたよ、ちくしょう。

その場に立ち止まっていると曲がり角から女の子が飛び出してきた。

「きゃ!!」

女の子はその場にしりもちをついた。
手に持っていた荷物がどさっと落ちた。

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「あ…こちらこそ、ごめんなさい」

荷物を拾ってるともう一人やってきた。

「愛ちゃん、大丈夫?」
「あ、麻琴。走ってたらぶつかっちゃった」
「もう…危ないなぁ、…すいませんでしたー」
「いいえ、こっちもぼーっとしてたんで…」

2人は沢山の荷物を持って歩いていった。
159 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時42分47秒
「麻琴ー、これも持ってー」
「えー、愛ちゃんの方が軽いのに…」
「お願いー」
「はぁ、しょうがないなぁ」
「えへへ…」

とても仲睦まじく。
今のあたしには剣で心臓を貫かれた感じ。

…はぁ。
亜弥ちゃんもあんな感じだったよなぁ。
いっつも「みきたん!みきたん!」ってさ…。
荷物持ってあげたり、
ジュース買ってきてあげたり、
宿題してあげたり。


………パシリじゃん。


「…でも、もう別れたしな…」

ため息をつくと地面に何か落ちている。
なんだろう?と思って拾って見てみた。
160 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時43分27秒
【七福社
 何かにお困りの方は気軽にお越し下さい。
 住所***********  TEL**-****-****】
161 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時43分59秒
「七福社?」

さっきの子が落としたんだろう。
辺りを見回すともう姿はなかった。

「お困りの方…ね」

別にもう困ってないから。
これから困る事だってもうない。



…けど。

好きなんだ。
まだ。
…だってまだ携帯握り締めてる。
また掛かってくるんじゃないかって期待してる。
なんだか手も震えるし、涙も出てくる。




別れたくないのに。




名刺を見ながらふらふらと歩き出した。
162 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時44分39秒
大きなビルの前に立つと、なんだか入りづらくて少し行ったり来たりした。
やっぱり帰ろうと思って振り向くと女の人が立っていた。

「なんか用だべ〜?」

独特の訛りをもつ人だなぁと思った。
そして可愛いな〜と。

「あの…ちょっと、相談っていうか、なんていうか…」
「あ、お客さんかぁ、どうぞー、今なっちしかいないけど…」

ニコニコしながら案内してくれた。
『なっち』とは自分の事だろうか?

「まぁ、座ってくつろいで下さい」
「はぁ…」

なっちさんは常に笑顔で紅茶やらお菓子やら持ってきた。

「それで、ご相談というのはどのようなお話でしょう?」
「え…と、…恋人と喧嘩したんです。それで別れるって話になっちゃって…」

今までだって喧嘩はいっぱいした。
…いっぱい殴られた。
でも亜弥ちゃんから『別れる』という単語が出てきたのは初めてで。
163 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時45分11秒
「なるほど、それで仲直りしたい…って事ですか〜」
「はい…」

…ていうか、こんな事なんで赤の他人に話してんだか。

「お話を聞くのも仕事ですから」
「………え」

なんで喋ってないのにこの人…。
疑いの目を向けると変わらずニコニコ笑顔。

「仲直りするにはやっぱり自分の力でした方が良いと思うんです。私達はその後押しをする感じなんですけど…」

なっちさんは席を立ってデスクの上をきょろきょろと見回している。

「どこにあるんだろう?………あ!あった。…今回は趣味良いべさ、梨華ちゃん」

ボソボソひとり言を言いながら何かを持って来た。
「あ!」と言って振り返って、何かをしてまたこっちへ歩いてきた。

「これをどうぞ」

手渡されたのは淡い白色の光を放つペアリング。
164 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時46分05秒
「あなたラッキーだべさ!成功作品みたいだから」
「はぁ…」
「その指輪には不思議な力が宿ってるから大切にして下さい。もう一個の方は是非亜弥さんに」
「…はい」
「それでは健闘を祈ります!」

なっちさんは親指を立ててニコッと笑った。

建物から出てきて辺りを見回すともう薄暗かった。

「…結局なんだったんだろう…?」

………。
……なんであの人『亜弥さん』って…。

振り返って階段の下を見ると真っ暗で、なんだか気味が悪くなったので足早に立ち去った。
165 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時47分15秒
*****
「あ〜!ここにあったペアリングは!?」
「え?お客さんにあげちゃった。だってあれ梨華ちゃんのグッズじゃないの?」
「あれはごとーがよっすぃーとペアでつけようと思って買ってきたのに…」
「ご、ごめん!どうりで梨華ちゃんにしては趣味が良いなと思ったべさ〜」
「……(泣)」
「ぅう〜、ペアリング…」
「ごめん、ごっち〜ん…」
「ごっちん!今度2人で買いに行こう?ね?」
「…うん!!」
「……一件落着みたいだけど、なっち、報酬金は?」
「貰わなかったべ。っていうか気になってたんだけどお金なくたって暮らしていけるのに何でお金取るの?神様がそんなことしちゃダメだべ」
「……なんとなく、その方がかっこいいかな、と思って…」
「大体一万二千円ってなんなんですか?」
「ヤグチの誕生日…」
「………」
「………」








「……誰かつっこめよ!!」
*****
166 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時47分52秒
指輪を手にしてあたしは走っていた。
どこに?
もちろん、目指すは亜弥ちゃんち。
自分の想ってた今までの気持ちを全て伝えて…、それでもダメだったらしょうがないか、と。

「はぁ…はぁ…」

亜弥ちゃんちの目の前に来てメールを送る。

【今、亜弥ちゃんちの前にいるから出てきて! 美貴】

………。
メールを送るとすぐにドタドタ階段を降りる音が聞こえてドアが開いた。
走ってきたようで呼吸が荒い。

「………なんの用?」

素直じゃないなぁ、なんて思って笑ったらムッとした表情になった。

「…用がないなら帰って!」

家に入ろうとする亜弥ちゃんの右手をぎゅっと掴んだ。
167 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時48分42秒
「ねぇ、たまにはあたしの話も聞いて?」
「……」

向こうを向いたままこちらを見ない。

「まいはさぁ、恋人いるんだよ。絢香さんっていう大学生。あたしは友達としか思ってないし、向こうだって同じ」
「……信じられない」
「信じられないならそれでもいい!聞いて欲しかったから、…ただそれだけだから」

右手を引っ張って亜弥ちゃんを抱きしめた。
少し暴れたけどすぐおとなしくなった。
あたしは亜弥ちゃんの肩を掴んで少し距離を置くとさっき貰った指輪を取り出した。

「…あたし、やっぱり亜弥ちゃんの事好きだし別れたくない。もし、まだ付き合う気があるならこれを左手の薬指にはめて欲しい…」

指輪を差し出すと亜弥ちゃんは手に取った。

「あたしはもうはめてるから…」

左手の薬指を見せると自分の手に持っている指輪と交互に見ている。

「…みきたん」

指輪はあたしの手の中に返された。
これが亜弥ちゃんの返事。
そっか…。
168 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時49分35秒
泣きそうになって顔をそらすと亜弥ちゃんは左手を差し出した。

「みきたんがはめて…?」
「え…」
「……お願いします…」

あたしは亜弥ちゃんの左手をとり、薬指に指輪をはめた。



……結婚式みたいだね



うん



みきたん



ん?



…ごめんなさい。…あたしも別れたくない…です



…うん



もう一回抱きしめると抱きしめ返してくれた。
169 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時50分23秒
松浦亜弥、高校一年。
頑固でやきもち妬きで明るくて可愛いあたしの恋人。

藤本美貴、高校三年。
その恋人に振り回される可哀想な少女。



……なんてね。

2人の指輪は淡く光っていた。

一つだけ言わせて。
これからはあんまり殴らないで欲しいなぁなんて……無理かな。
170 名前:四話 仲良し? 投稿日:2003年03月05日(水)21時51分03秒
*****
「そういえばあの指輪、ごっちんが用意したとは知らなくていたずらで少し力入れちゃったよ」
「え!よっすぃー、…それホントだべか…?」
「一個だけですけど。安倍さんが力入れたんなら多分消えてると思いますけど…」
「……」










亜弥の方に武力の力がいってない事を祈りつつ、
七福社の仕事はまだまだ続きます。
171 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月05日(水)21時56分10秒
なんだかコメディータッチだったなぁ。
そんなつもりはなかったのに…(w
激しくなちまり不足。
172 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月05日(水)21時57分53秒
初書きでしたがみきあやは難しいですね。
精進してきます。
173 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月05日(水)21時58分32秒
何気に隠してます。
すみません…。
174 名前:名無し蒼 投稿日:2003年03月05日(水)22時34分09秒
あやみきキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
ちょっと久しぶりに来たら更新してあって嬉しかったり(w
推しCPだったので更に♪
次は誰がお世話になるのかな〜?楽しみに待っています
175 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月05日(水)23時30分32秒
良かった良かったよあやみき(つД`)
んで何気にまこあいキテル━━(゚∀゚)━━ッ!!
上手い巧いよ作者様。
176 名前:naka 投稿日:2003年03月05日(水)23時49分33秒
更新、おつかれ。
次は…期待大?
177 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月06日(木)21時47分51秒
ごめんなさい、また更新しませんけど現れました。
これからちょっと遅れるかもしれません…。

174>名無し蒼様
あやみきカキマシタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
私も最近気になる存在です。
ことミックDVDは絶対買う!!

175>名無しどくしゃ様
うひひ、おがたか入れちゃいました(w
喜んでもらえて何よりです。

176>naka様
期待大…。
あわわわ…、期待されてる…、そんな…たいしたものは…。(どうしよう)
なちまり書きてー!(この話の流れ上)…書けねー!(泣
178 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月07日(金)00時45分14秒
あやみき最高!
話的に無理だと思うけどなちまり期待しときます。
179 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時22分23秒
「ぅええぇっくしょおんっ!!」



オイラがいきなり大きなくしゃみをしたのでなっちはびっくりして見ていた雑誌を落とした。

「…風邪?」
「いーや?オイラどっかで「神様なんて信じない!」とか言ってる奴がいるとくしゃみがでるんだ」
「ふーん?初めて聞いたべ」

なっちは落とした雑誌を拾い、また読み始めた。

「ねーえ?」
「んー?」
「せっかく今2人きりだしさぁ…」
「んー」
「いちゃいちゃしません?」
「しません」
「…そぅ」

つまんねーの。
オイラも雑誌でも読むか。
…古い雑誌ばっか。
ペラペラめくると動物占いってのがあった。

「ふーん…」
180 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時22分57秒
オイラは『コアラ』か…、なになに…?
【集中力を持続させるためには、ボーっとして、休憩する時間がないと頑張れません。】
…そりゃそうだろ……。
【とにかく楽しい事に目がない。物事の最終的な判断は、「楽しいかどうか」で決める事が多い。】
ん、まぁ当たってる。
【失敗したときの言い訳が大得意。スラスラとその場を取りつくろう言葉が出てくるので、相手はすっかりダマされます。】
…嫌な感じだな、オイ。
【南の島や温泉など、暖かい所ででのんびりするのが大好き。】
あー、温泉は好きだねー。
【自分を守る為に他人を信用しすぎない用心深い面があります。】
そうかなぁ〜?
【映画のような恋を夢見るロマンティックな面を持つ一方で、つきあう相手の年収や住居をしっかり把握するといった現実的な面もあります。】
…当たってるかも………。

ふっと振り向いてなっちを見るとまだ雑誌に没頭中。

「なっちはなんだろ…」
181 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時24分28秒
なっちは『ライオン』。ライオンって感じしないね。
【自分に対しても厳しいけれど、他人にも同じようにキツくあたりがち。】
自分には厳しいよな…。オイラにも厳しいけど…。
【百獣の王だから、特別扱いが好き。】
ふーん…。
【眠かったりお腹が空いている時は、他人にイライラをぶつける事も。】
あー、あー、わかるわかる。
【礼儀を重んじるライオンは、外ではきちんとしているように見られるけど、
家ではルーズ。部屋もグチャグチャ。】
当たってる!
【しゃべる時、「すごい!」とか「絶対!」とか強調したり、
大げさに言ったりするのが好きなようです。】
当たってる!!

くっくっ、笑ってると不審そうな目で見られた。
ゴホンと咳払いをしてページを進めた。

「相性…」

気になる!
コアラ(オイラ)とライオン(なっち)の相性は…!!

デケデケデケデケデケデケ(ドラムロール)デーーーーン!!
182 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時25分18秒











相性 40%










……………。
・゜・(ノД`)・゜・
びみょー…っていうかあんまり良くないじゃん…。
…くそう他の奴らは…!!
183 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時26分02秒
よっすぃーは『ゾウ』か、なんかわかるようなわからないような…。
【 落ち着いた雰囲気を持っていて一見恐そうな感じがしますが、
見かけとは違って実は心配性だったりします。】
ほうほう…。
【不満があっても、簡単には口に出さないタイプ。キレると怖い。】
…当たってそうだな。
【地道に努力するがんばり屋さん。でも誰かに「がんばってるね」
「努力家だね」と言われるのは嫌いです。】
難しい奴だな…。
【会話の最中に違う事を考えていたり、人の話を聞いていない事が多いです。】
うん!!当たり!!
【頼まれると、すぐOKしてしまう損な性格。嫌と言えません。】
うんうん。

結構当たってるかもなぁ〜。
…で、ごっつぁんは…。
184 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時26分42秒
ごっつぁんは『たぬき』。…それっぽい!!
【「わかりました」「やっておきます」なんていい返事をしておきながら、
返事をした事すら記憶の彼方へ…。忘れっぽい性格です。】
当たってる!
【突然奇妙な行動をして笑いをとる、天然ボケなキャラクター。】
ぷっ…、くく…当たってる。
【あまり表舞台で目立つのは好きではありません。
それよりも、陰で支えたり、人を操ったりする方が好きです。】
これはどうなのかな〜?当たってるのかも。
【自分よりも立場が上の人や、年上の人からかわいがられるタイプ。】
当たってるね。

問題はね、相性だよ。相性。
ゾウとたぬき…、ゾウとたぬき…。
185 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時27分14秒










相性 10%










へ…へへ……。
勝った…!ってか低!
10に比べたら40ってすごいじゃん!!
186 名前:番外編 とある日の休日 投稿日:2003年03月12日(水)23時28分01秒
「…何さっきからブツブツ言ってるのさ、矢口」
「あ、なっち。あのね!占いなんだけどなっちとの相性良いんだよ!!」
「へぇ…、どのくらいなの?」
「あのね!あのね!…………相性は40%!!」



「………全然良くないじゃん」



なっちは一言だけ言い残すとまた見ていた雑誌に目を落とした。

「…!違うんだよ!!よっすぃー達と比べたらね…!!」
「矢口、うるさい。集中するから黙ってて」
「………ぁい」

なっち、眠いの?
お腹すいてるの?
とりあえず今日のなっちは裏なっちみたいなのでそっとしておこう…。






そんなある日の昼下がり。
187 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月12日(水)23時34分42秒
自給自足なちまり。
ネタは古いし、くだらねぇし、リアルの世界みたいだし。
気が向いたらよしごま編、辻加護編、石紺編も書くかも…。

気が向いたらの話。

178>名無し読者様
なちまり書いてみました。しょぼいですが…。
なんだかあやみきの反響が思ったよりあって、喜んで良いのか複雑な心境です(w
(作者は一推し・なちまり、二推し・おがたか)
188 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月12日(水)23時35分19秒
一個隠し。
189 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月12日(水)23時47分06秒
なちまりよかったです!
また読みたいなぁ!
190 名前:naka 投稿日:2003年03月13日(木)01時24分21秒
なちまりキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
おいらも1推しなちまりです。
191 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月13日(木)01時55分48秒
なちまり待ってました!
私も一推しなちまりです(w
期待してて本当によかったです。
また読みたいです。
192 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月13日(木)07時30分16秒
動物占い…なつかすぃ…
やぐっつぁんオモレー!!良い味出てるぅ
193 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月13日(木)16時54分45秒
かわいい!なちまり!
194 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月19日(水)21時25分12秒
Σ
レスいっぱいだ!!

189>名無し読者様
良かったですか!良かったです(意味不明
やぐはなっちに弱いんです。

190>nakaさん
なちまりキタヨ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
なちまり最高っす!

191>名無し読者様
期待した作品がこんなんで良かったんだろうか…。
また書きます、なちまり。今のが終われたら…。

192>名無しどくしゃ様
懐かしいネタでしたね。
ちなみに作者はチーターです(どうでもいい

193>名無し読者様
かわいいですか!かわいいと言われると嬉しいです。
なちまりはかわいさが命ですから(謎
195 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)10時52分28秒
作者さんのなちまりがもっと読みたいな
196 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時16分22秒
*****
「よっすぃー!あーん…」
「あー…ん、うまいよ!さすがごっちん!」
「…あー!もういちゃいちゃするなー!」
「矢口さんもいちゃいちゃすればいいじゃないですか」
「……だって、なっち嫌がるから…」
「あたしが解決しましょうか!!?」
「いい、鬱陶しい」
「石川さんが出てくると余計ややこしくなりそうですよね」
「………・゜・(ノД`)・゜・」
「うわっ!梨華ちゃん出て行ったで」
「やぐちさんがいじめたのれす」
「……矢口、見損なったべ」
「…ち、違うんだよぉ〜!紺野も…」
「矢口さんそれはいいすぎですよ」
「……紺野ぉ〜〜〜(おぼえてろよ…)」
*****
197 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時18分33秒
今日こそ…告白するんだから…!!





あゆみは本屋の前で拳を握り締めた。
憧れのあの人の事はリサーチ済み。

大谷雅恵、21歳。
自分よりも2コ上の大学生。
短髪がカッコイイ、でも笑顔は超カワイイ。
ずっと外から見ているだけだったけど今日は絶対告白すると決めていた。

「いらっしゃいませー」

店内に入ると雅恵は微笑みながらあゆみに声を掛けた。
あゆみは今にも卒倒しそうになったがそれをこらえて店の奥へ入っていった。

(やばい…、かっこよすぎる…。やっぱり話しかけたりなんかできない)

本棚の横からチラチラとレジにいる雅恵を覗き見。
他の客はあゆみの事を不審に思っているがそんなのは関係ない。

「ありがとーございましたー」

本を買って出ていくお客へのスマイルがたまらない。
とりあえず本を買って話しかけるきっかけを作らなければ、と本を選び始めた。
198 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時19分18秒
「…漫画とかは…かっこ悪いから…、ファッション誌でいいかぁ…」

きょろきょろと周りを見渡すとファッション誌が置いてありそうなコーナーではない事に気がつく。
探しに行こうとした時、事は起こってしまった。

「何かお探しですか?」
「…え、……えぇ!!」

目の前にはさっきまでレジにいたはずの雅恵が自分のすぐ目の前に立っていた。
きっとうろうろとしている不審人物極まりないあゆみに気がついたのであろう。
願ってもないチャンスだったがあゆみにとっては思ってもいない出来事。
頭が真っ白になって出た言葉と行動。

「あ、あの本を探してて…!!」

苦し紛れに指をさした所に置いてあった本。


『これであなたも人気者!一発芸のすべて!』


「………」
「…あれですか?」

雅恵はその本を手に取った。
199 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時19分59秒
「どうぞ」
「………どうも」

あゆみは自分の行動を呪った。

それからレジに並んでその本を買った。
1500円もした。
そして進展もなかった。

「…完全にヘンな奴だと思われたよ……」

挙動不審で買った本が『これであなたも人気者!一発芸のすべて!』。
とぼとぼと肩を落として帰る帰り道、公園に立ち寄ってせっかく買ったので本を開いてみた。

「…『なんだコノヤロー!』『アイーン!』『OK牧場!』……なにこれ…?」

文字の横には丸文字で『これでつかみはOK!』とか書いてある。

「…OKな訳ないじゃん!!てか全部誰かのネタじゃん!」

あゆみはゴミ箱に向かって本を投げた。
その時ちょうど走ってきた女の子に当たってしまった。
200 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時21分33秒
「痛…!」
「…!!あ!ご、ごめんなさい」
「…うう、鬱陶しいとか言われたり、本をぶつけられたり…あたしってなんて不幸なのー!」
「…あ、あの悪気があった訳じゃないんですけど…、本当にごめんなさい」
「…悪いと思ったら少しあたしの話を聞いてくれない?」
「……はい?」

それから1時間びっちり見知らぬ女の子の愚痴を聞き続けた。
あゆみは思った。

今日は厄日です。

「…って訳なのよ〜!!」
「……はぁ」
「…あー、でも全部話したらスッキリした。そういえば名前も言ってなかったね?あたし石川梨華」
「…あ、あたしは柴田あゆみです」
「柴ちゃん、今日はありがとう!!また今度話聞いてよ!」
「…え」
「あたしここにいるの、良かったら遊びに来てね!」
「はぁ…」
「あ!ねぇ?この本捨てるの?」
「あぁ、別にいらないから…」
「貰ってもいい?」
「いいですよ」
「ありがとー!じゃあねー!!」

女の子は少しスキップをしながら帰って行った。
201 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時22分03秒
「なんだったんだろう…」

手渡された紙には
【七福社
 何かにお困りの方は気軽にお越し下さい。
 住所***********  TEL**-****-****】
と書かれていた。

「あの子働いてるんだ…」

とりあえずあんな本は要らないので少しほっとしたあゆみだった。
202 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時22分41秒
*****
「『なんだコノヤロー!』」

「「『アイーン!』」」

「『OK牧場!』」

「…うるせぇ……」
「吉澤さんや辻さん加護さんまで鬱陶しくなりましたね」
「…紺野、毒舌だべ……」
*****
203 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時23分12秒
次の日、またあゆみは本屋に来ていた。
しかしレジには雅恵の姿はない。

「今日はお休みか〜…」

くるりと方向転換すると目の前に私服の雅恵がいた。

「ぅわあ!!」
「わ、ビックリした!いらっしゃいませ…かな?」
「き、今日はお休みなんですか…?」
「あー、うん。ちょっと忘れ物したから取りに…。で、人気者にはなれた?」
「…は…?」
「昨日の本」

顔から火がでるんじゃないかって位熱くなった。

「あ、あれは!その…間違ったって言うか…」
「え、そうなの?返品?」
「いえ…、知り合い…にあげたんで」
「そっかぁ」

あゆみははっと気がついた。
普通に話せてる…!
あのヘンな本のおかげで…!!
ほんの少しだけあの本に感謝した。
このままの勢いで話し続けようとした時、またまた事は起こってしまった。
204 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月21日(金)21時23分46秒
「あれ〜?マサオじゃん?」
「あー、ひとみん」

…あたしはこの人の事知ってる。
斉藤瞳、雅恵とは同い年で仲がいい。

「…じゃあ、またよろしくねー」

雅恵は瞳と一緒に歩いて行った。

「…年下には興味ないのかなぁ…」

興味ないのかなぁも何も相手があゆみの名前すら知らない事を気がついていない。
あゆみはまたがっくりと肩を落とした。
誰か友達に話を聞いてもらおうと思い、鞄から携帯を取り出すと一緒に紙切れが出てきた。

「あ…、昨日のヘンな子の…」

あゆみは思った。
昨日1時間も話を聞いたんだから自分も話を聞いてもらおう。
紙に書かれた住所を頼りに歩き出した。
205 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月21日(金)21時30分49秒
とりあえず更新しました。中途半端に。
明日あたり続きかけたら書きたいですが…(予定は未定
この人達初書きなんで多分おかしいと思うのですがスルーでお願いします(w

195>名無し読者様
なちまり気に入っていただけたようで嬉しいです。
この話(辻加護まで)終わったらまたあんな感じの超短編を書いていきたいと思ってる次第なので、もう少々お待ちいただければ嬉しいです。
…日本語変かも。
206 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月21日(金)21時32分35秒
しばしお待ちを。
207 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月22日(土)13時05分45秒
更新キタ━━━━(*ё)━━━━ッ!!
作者様不足だったよぅ…エグエグゥ
こ、今度は大柴か…………最高ですよ。
もうっ毎日チャックしちゃうんだから!
208 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時47分41秒
「…薄暗い」

あゆみが階段の下を覗き込むと下の方から何か聞こえる。
OKとかコノヤローとか。

「…絶対怪しい」

でもせっかくここまで来たので話は聞いてもらおうと階段を降りていった。
ドアをノックすると中から数人の返事が聞こえた。

「…あの〜」
「あ!柴ちゃん!!来てくれたんだ!入ってよ!」
「柴ちゃんって…」
「ん?どうかした?」
「いや…」
「今日もお話聞きに来てくれたの?」
「え!ち、違う!今日は聞いてもらおうと思って…」
「なぁんだ〜、ま、いっか。座って〜」

促されて座るとテレビを見ていた吉澤があゆみに話しかけた。

「ねぇ?梨華ちゃんの話何時間聞いた?」
「え、…1時間くらい…?」
「へぇ、短いね、うち最高3時間」
「さ!3時間!?」
209 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時48分21秒
その会話を聞いていた辻、加護も話に加わる。

「うちはなぁ、2時間ちょっとやな」
「ののはじゅっぷんくらいれす」
「短いな!?」
「ねむくなるのれす」
「あはは…」
「もう!柴ちゃんはあたしに用があって来たんだからみんなはあっち!」

石川は三人を隣の部屋に追い出した。

「で、今日はどうしたの?何の話?」
「実はね…、今好きな人がいて…告白したいんだけど…」
「…………」

話の最中、石川は下を向いて黙り込んでしまった。
あゆみは不思議に思い、顔を覗き込んだ。

「あの…?」
210 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時49分00秒
「…………キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!」




いきなり大声を上げた石川にあゆみは驚いた。

「あ、ごめん、嬉しくてつい」
「…はぁ」

ここに来たのは間違いだと思った。

「ね!あたしに任せてよ!」
「え?」
「恋のキューピットになるって言ってるの!」
「え…、でも話もあまりした事ないし…、向こうはあたしの名前も知らないし…」
「ま・か・せ・て」

石川はデスクの引き出しを開けて何かを探し出した。

「これ!」

出てきたのはピンクのハートがついたキーホルダー。

「え」
「これをお守りとして持ってて!」
「えー…」

あゆみは露骨に嫌そうな顔をした。
211 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時49分45秒
「絶対捨てたりしちゃダメよ!じゃ、ファイトー!」
「え、ちょ…」

半ば追い出される感じで外に出された。

「…結局話聞いてもらえなかったし…」

ヘンなものは貰うし。

とりあえずキーホルダーをもって家に帰った。
明日こそ告白するぞ!と誓って眠りについた。

次の日、本屋に行くと知らない人がレジを打っていた。

「…あれぇ、今日も休み…?」

店に入って行き店員に雅恵の事を聞いてみた。

「あの…、…大谷さんは…?」

「大谷?あー、昨日付けでバイト辞めたよ」
「え……」
「なんでも恋人が引っ越すからついて行くって」

衝撃を受けたあゆみはフラフラと店から出て行った。
212 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時50分15秒
(そんなぁ〜…)

(告白しようと思ったのに〜…)

いつも見ていたのにわからなかった恋人の存在。
いや、本当は気がついていた。
きっと相手は斉藤さん。

泣きながら歩いて公園に辿り着いた。
ベンチに座って一通り泣きじゃくって鞄からハンカチを取り出そうとした時。
ヘンな子から貰ったヘンなキーホルダーが出てきた。

「…もぉ〜!全然お守りなんかじゃないよー!!」

あゆみはキーホルダーをゴミ箱に向かって投げつけた。
涙で視界がぼやけてた為キーホルダーは放物線を描いて前のベンチに座っていた人にあたった。

「痛!」
「…あ」

その人物はポリポリと頭を掻いて、キーホルダーを拾い上げてこちらに近づいてきた。

213 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時51分04秒
(どうしよう…怒られる…?)

「はい、これあなたのだよねぇ?」
「はい…、すいません!」
「いいよぉー、気にしないで〜」

その人物はとてもスローで話す人で、

「柴田あゆみさんだよね〜?」
「え…?」

笑顔が可愛くて、

「あたしね〜、ずっとかわいいなぁってキミの事見てたんだ〜」
「えぇ?!」

動物に例えるなら……馬?

「もしよかったら付き合ってください〜」
「…えええ!?」
214 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時51分36秒
−−−
失恋した後だったからすぐには返事はできなかった。
その事に了承してくれて友達から始まった新しい恋。

でも最近わかった事。

あたしはこの人に惹かれている。
憧れの人は憧れのままだったけどこれで良かったって今は思ってる。
きっとあの人もどこかで恋人と幸せに暮らしてるはず。

「…お〜い?映画始まっちゃうよ〜?」
「ごめんなさーい!もうちょっと待ってー?」

髪型をチェックして、靴を履いて、手を繋いで。
あたしは…ううん。
…あたし達は映画館まで走った。
215 名前:五話 憧れの人 投稿日:2003年03月22日(土)21時52分36秒
*****
「あ!!」
「どうしたの?梨華ちゃん」
「柴ちゃんにあげたキーホルダー…力入れてない…」
「はぁ?意味ねー」
「どうしよう…」
「苦情もないみたいだからいいんじゃない?」
「…え、そんな簡単に解決していいんだべか?」
「なんかあったら梨華ちゃんのせいだしね」
「石川さんは即刻解雇ですね!」
「あさ美ちゃん、むずかしいことばしってるのれすね!」
「…そんなぁ」











「のの!外に遊びに行こう!」
「いーねぇ!クレープたべにいこう!」
「暗くなる前に帰ってこいよー?」
「「はーい!!」」



七福社の仕事は…きっと次が最後です。
216 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月22日(土)21時57分39秒
あー、やっぱ書いた事ない人はむずかしかったよほ…。
もっと勉強しなきゃ…。

207>名無しどくしゃ様
ありがとうございます!待ってていただいたのにこんなのでごめんなさい。
ホントにさ…(鬱
>もうっ毎日チャックしちゃうんだから!
【チャック】キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!(w
ごめんなさい、笑いました。

217 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月22日(土)21時58分43秒
てことで今回はageません(w
218 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)02時13分31秒
石川さんの
「…………キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!」
に笑った!作者さん最高!
次で最後ってのが気になるなぁ…。終わっちゃうんですかぁ?
219 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月23日(日)19時56分58秒
218>名無し読者様
石川さん全然活躍してないんですけども気に入っていただけたようで良かったです。
次で終わっちゃいます……が!詳しくは下!



作者気まぐれ企画!
突然ですが先着2名様(微妙)のリクを受付けます。
超短編になると思いますが「こいつらの話を見せろよゴルァ!」ってのがあったらどうぞ!
一応この世界(七福社へようこそ!)での話を書きます。
この世界で既にCPになってる人達がいますが
(なちまり、おがたか、みきあや等)
「なちみきでやってみろゴルァ!」って言われれば書きます。
(ただし『なちまり』『みきあや』前提の話になります)
今まで通りの駄文に仕上がると思いますがそれでもいいよって方はどうぞ。
登場人物が決まってからじゃないと書けないので更新遅くなるかも知れませんがご了承下さい。
あと2番目の人は1番目の人と被る登場人物は避けて下さい。
なちまり・なちまりとか。
書いてもいいんだけどね、連続するとつまんなくなりそうだから。
何もリクがない様なら勝手に番外編書きます。
…でもそれは悲しすぎる………。

長くなってすいません。
3番目になってしまった人もごめんなさい。2人で限界です。
220 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)21時17分19秒
まじですか?
はじめまして、いつもたのしみに読ませていただいています。
森板から楽しみにこっそりと読んでいました。
いきなりでとても失礼だとは思いますが、「なちまり」をお願いしたいと思います。
それでは、失礼します。
221 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月23日(日)22時02分56秒
いつも楽しませてもらってます。
リクいいんですか?
やぐごまでお願いします。
222 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月23日(日)22時16分49秒
早!(w
もう決まりましたね(w 良かった…。
それでは『なちまり』『やぐごま』で行きます。
書き上げるまでしばしお待ち下さいませ。

220>名無し読者様
全然失礼じゃないですよ!こんなとこに来ていただいて嬉しい限りです。

221>名無し読者様
一応この世界『なちまり・よしごま』で成り立ってるのでそこら辺はよろしくお願いします。
223 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年03月24日(月)13時28分57秒
梨華ちゃんオチョコチョイネーそんな所が面白い(w
ソレモ次で最後ですか…ショゾーン…でもでも、続き期待してます。
アト、ヲイラのレスワラタですか(w ウレシイ
224 名前:番外編 矢口感謝デー 投稿日:2003年03月24日(月)21時44分57秒
「なんでなっちはそんなに冷たいんだよーー!!」




…と言われたので考えてみる。
決して冷たくしている訳ではないんだよ、矢口さん?
なっちだってねぇ、甘えたりとかしてみたいんだよー?
でもね、一応ここでは一番年上だし?浮かれてばかりじゃいけないじゃない?
そういう事はキミは全然わかってないみたいだし。

「…いっつもあんな態度じゃ…可哀想かな…?」

矢口の方を見るとソファーに座って漫画本を読んでいる。
…よし、今日くらいは。
都合のいい事に今は2人きり。



本日矢口感謝デー開催します!
225 名前:番外編 矢口感謝デー 投稿日:2003年03月24日(月)21時45分46秒
「やーぐちっ!」
「…ぅわあ!!」

後ろに回りこんで抱きしめると大きな声を出して目を丸くして振り返った。
心なしか少し顔も赤い。

「ど、どうしたのさ!なっち!」
「別にぃー?いいじゃない、なっちが甘えたって」
「…いいけどさ珍しいから…」

回り込んで矢口の隣に座るとなんだか落ち着かない様子できょろきょろと辺りを見回してる。
かなり挙動不審だよ、矢口。

「えー…なんか気持ち悪いなぁ…」
「気持ち悪いって何さー」
「雨降るかもー」
「…このぉー」

矢口のほっぺたを両手でぎゅうっとつねると「イテテ!」って言いながら笑った。

「…いつもさー、『冷たい』っていうからさぁ、たまにはこーゆうのも必要かなぁと思って」
「………なっち」
「えへへ…、矢口救済企画?ってやつ?」

あたしが話し終わるとさっきまでおどおどしてたのに急ににやりと笑って手を繋いできた。
…嫌な予感がするんだけど。
226 名前:番外編 矢口感謝デー 投稿日:2003年03月24日(月)21時46分46秒
「…じゃ〜しっかり救済してもらいましょう!!」

手を引っ張って引き寄せられるかと思ったらそれはフェイントでソファーに押し倒された。
腕を立てて逃げれないようにがっちり固定されてしまった。

「ちょ…っ、矢口…!」
「キスする時は目ぇ瞑る!」
「…む…ぅ……ん…」

ほっぺたやおでこにキスされて、最後に唇に軽くキスされた。
あたしがさも不満げに矢口を見ると意地悪く笑った。

「なっちが企画したんでしょう〜?なっちからは何もないわけ〜?」
「……調子に乗ると怒るよ」
「なっちの怒ってるとこも好きだも〜ん」

…この企画大失敗。
結果的には矢口を調子に乗らせてしまった。

「…上から降りなさーい」
「えー」
「いいから!」

上に乗っかる矢口をどかしてわざとらしく大きなため息をついて起き上がった。
227 名前:番外編 矢口感謝デー 投稿日:2003年03月24日(月)21時47分34秒
「……もしかして、本気で怒った?」

さっきまでの笑顔が一変、不安顔であたしの顔を覗き込む。



……矢口。
言ったよね?矢口救済企画だって。



「……ん!?」

覗き込む大好きな人の唇に唇を重ねる。
大サービスで首に手をまわしたりなんかして。

腕を解いて矢口の顔を見るとゆでだこ状態。

「kづんfkdbfkbんkjが!!」
「…何言ってるかわかんないよ、矢口さん?」

にやりと意地悪く笑うと拗ねたような顔になって、目と目が合って二人で噴き出した。
228 名前:番外編 矢口感謝デー 投稿日:2003年03月24日(月)21時49分06秒
「…してやられちゃったなぁ」
「たまにはこんなのもいいでしょ?」

お姉さんぶって強気に言ったのに矢口さんの最後の一言。

「…なっち、顔真っ赤だよ」
「え?!」

顔を両手で押さえた瞬間また押し倒された。






「…まだ救済企画中でしょ?」












その後の事は…ヒミツって事で…。
229 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)02時16分26秒
なちまり━━━━(●´ー`)^◇^〜)━━━━!!
二人ともマジで反則的にかわいすぎです。
『矢口救済企画』というか、むしろ私が二人に救済されましたw
230 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)16時18分49秒
うあー!
こーゆー感じのなちまり読んだのは初!ですね。
231 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)18時23分32秒
二人ともか・わ・い・い!
作者さん、最高です!
232 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月26日(水)01時17分56秒
うおー!
作者さんの書かれるなちまりめっちゃ好きです!!
やっぱなちまり最高〜!!
233 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月27日(木)07時32分14秒
もっとなちまりお願い!
234 名前:番外編 いたずら 投稿日:2003年03月27日(木)21時39分34秒
よしこと買い物から帰ってきたらうざったいくらいのノロケの嵐。
終始笑顔のやぐっつぁんに対して困ったような怒ったような表情のなっち。
あまりにもやぐっつぁんの話がしつこいからなっちは怒って隣の部屋に行ってしまった。
しかも何故かよしこを連れて。
…ふたりっきりでなんか怪しい事しなければいいけど…。

「ごっつぁん!もっと話聞いてよ!なっちってばさ〜!」
「もう聞き飽きたよ〜、違う話しようよ〜」
「聞〜け〜よ〜!」

肩を掴まれてブンブン揺さぶられて頭がくらくらした。
思いっきり不満顔をしてるのに全然気がついてない。
もう!ごとーだってよしこといちゃいちゃしたいのになんでやぐっつぁんに捕まらなきゃなんないのさ!

この怒りを晴らすべく、後藤真希、いい事思いつきましたぞ。
235 名前:番外編 いたずら 投稿日:2003年03月27日(木)21時40分25秒
「…そんなになっちの事がすきなの?」
「え?…好きだよ〜」
「ごとーと比べてどっちがすき?」
「え、何言ってんのごっつぁん?」

上目遣い涙目ウルウル攻撃!
…よしこと喧嘩した時はこれでイチコロだったんだからね!

「…ずっと前からごとーはやぐっつぁんの事が好きだったんだよ…?」
「え!だ、だって後藤にはよっすぃーがいるじゃんか!!」
「よしこはごとーの失恋の痛手を癒してくれているだけなの…」
「な…?なに…?」

そのままやぐっつぁんに近づいてまたまた上目遣い涙目ウルウル攻撃!

「そ、そんな事言われても…」
「…やぐっつぁんは…ごとーのこと…嫌い?」
「き、嫌いじゃないけど…」

ソファーに追い込んで顔を近づけると凄く動揺してる。
面白くなったのでもっと騙しちゃいます!
236 名前:番外編 いたずら 投稿日:2003年03月27日(木)21時40分58秒
「やぐっつぁん…」

手を引っ張ってソファーに寝転んでやぐっつぁんを上にしてじっと見つめた。

「…ごっつぁん、オイラはなっちがいるから…」
「…じゃあお願い、最初で最後。キスして?そしたらあきらめるから」
「う……」

やぐっつぁんは少し息を吐くとあたしの首を抱えるように持って近づいてきた。
10cm…。
5cm…………。
あともうちょっとで唇に触れようとした瞬間。









「よしこーーー!!なっちーーーー!!たすけてぇーーーーー!!!」








大声を出すと隣の部屋からよしことなっちが出てきた。
そして2人ともあたしとやぐっつぁんの様子を見て硬直。

今の光景はあたしの上にやぐっつぁんが乗ってる状態。
237 名前:番外編 いたずら 投稿日:2003年03月27日(木)21時41分39秒
「な、な、何言ってんだよ!!ごっつぁん!!??」
「何してるんですか!矢口さん!うちのごっちんに何しようとしてるんすかーー!」
「誤解だって!オイラまだ何もしてない!」
「……まだ?」

背後に黒いオーラを漂わせたなっちがゆっくりとこっちに近づいてきた。
ごめん…、やぐっつぁん。ごとー…やりすぎたかも…。

なっちはやぐっつぁんの襟元を掴んでにっこり微笑んだ。

「矢口?お話があるからあっちの部屋に来てくれない?」
「だから!誤解なんだって…」
「いいから、早くね」

顔は笑ってるけど目が笑ってない。
怖い。
怖いよ、なっち。

やぐっつぁんはなっちに連れてかれた。
あたしは心の中でご愁傷様と手を合わせた。
238 名前:番外編 いたずら 投稿日:2003年03月27日(木)21時42分43秒
……やぐっつぁん。
ちょっと前までは本当だったんだよ。
でもやぐっつぁんはいつもなっちの事見てたからさ。
だからって訳じゃないけど…。


「ごっちん大丈夫?」
「うん、へーき」
「そっか〜、良かった〜」
「…よしこ」
「ん?」
「ごとーはよしこの事好きだよ」
「うちもごっちんの事好きだよ〜」


こんな事誰にも言えないヒミツだけどね。
239 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月27日(木)21時55分46秒
レス沢山で正直びびってます。

229>名無し読者様
矢口さんは結局救われなかったと、そうゆうオチです(w
229さんを救えて良かったです(w

230>名無し読者様
ホントは裏行こうかなとか思ったんですけどやめました。
過去にも書いた事ないしこの2人はホノボノ系でいいかなと思って。
…つーか、裏なんて書けねーよ(w

231>名無し読者様
最高と言っていただけると嬉しいです。
イチオシのCPの話を褒められると良い気分!

232>名無し読者
なちまり最高ーーー!!
めっちゃ好きですか!…なちまりばっか書いてようかな、褒められるから(w

233>名無し読者様
…いやー、こんなになちまり反響あるとは思いませんでした。
一応これ以上脱線すると本編がいつまで経っても進まない気がしてきたので本編が終わったら
(多分このスレまだまだ余るので)ショートストーリーを書きたいなと思ってます。
それまで気長にお待ちください〜。

240 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月27日(木)21時59分00秒
上のレス232の名無し読者様に『様』つけるの忘れてました(汗
すみません!

て事で本編をお待ち下さい〜。
241 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月27日(木)22時00分07秒
ageとこう。
242 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月28日(金)03時05分24秒
こういうやぐごますげぇ好き!
あの後のなちまりがかなり気になります(笑)
243 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月28日(金)10時31分33秒
やぐごまをリクした者です。
とってもよかったですよー!
ありがとうございました。

やぐごまとなちまりが好き!
244 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月28日(金)13時23分11秒
242さんと同意!
なちまりがどうなったのか知りたいっす!
245 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時06分16秒
もうすぐあたしの最初で最後の個展。
…絶対成功させたい。
だから、もう少しだけあたしに時間を下さい…。










「ののー、クレープこぼれてるで」
「あー、もったいないのれす」

希美は手にこぼれた生クリームをなめる。
それを見て亜依はけたけた笑う。

2人は同い年で親友。
性格は違うが気も合う、いつもワンセットな神様ズ。
公園のベンチに座って仲良く二人でクレープを食べようと思い、場所を探していた。

「…あ、あそこのベンチ空いてる!あそこいこ!」
「あ!待ってよ〜」

亜依が走り出すとそれを追いかけるように希美も走り出した。

246 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時06分46秒
「あ!!」

亜依は急に立ち止まった為、ぶつかって希美が持っていたクレープが亜依の背中についた。

「あ〜…!、クレープ〜…」
「のの!それよりあれ!」

指をさした方にはふらふらとベンチに横たわる一人の女性。

「具合…悪そうやな…。なぁ?のの…」
「…クレープ……」
「…あとで買ったるわ!!」
「ほんとれすか!?ぜったいれすよ!!」
「……はぁ…」

2人はベンチに近づき声を掛けた。

「あの〜、大丈夫ですか〜?」
「いきてますか〜?」
「縁起悪い事言うなや…」

女性は起き上がりふぅ、と息を吐いた。
247 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時07分36秒
「…大丈夫、ちょっと気分が悪くなっただけだから」
「そか、そんならえーけど」
「おねーさん、それはなに?」

希美が指をさしたのは一冊のスケッチブック。
ずいぶん使い込んであってあちこちぼろぼろだった。

「…お姉さんね、絵描きさんなの。…今度個展を開くんだけどね…」
「すごいやん!見に行ってもええ?」
「ののもみにいきたい!」
「………」

下を向いて黙ってしまったのを見て二人は顔を見合わせた。

「…なんか、訳アリなん?」
「…ののたちにおしえてくれませんか?」
「………お姉さんね、あとちょっとしか生きれないの。個展の日まで生きれるかどうかもわかんなくて…」
「「………」」

三人は黙ってしまった。
そして続けて話し始める。

「神様がいるならば病気治してくれないかなぁ…、…なんて。神様なんている訳ないよね」

一言ぽつりと話した後、希美が大声を上げた。
248 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時08分19秒
「おねーさん!ののたちかみさまなのれす!」
「…!バカ!なに言っ…」
「…でもののたちはびょうきを治す事ができないのれす…」

『おねーさん』は優しく微笑むと「ありがとう」と言って希美の頭をなでた。

「…ののちゃん?」
「あい!」
「…あなたは?」
「亜依…」
「あいぼんれす!」
「あいぼん…?…あたしは飯田圭織。二人にも個展に来て欲しいな」

圭織は個展のチケットを2人に渡した。

「…この日に会えるといいけど…」
「……なぁ?…さっきの話本当なんや。信じてもらえへんかも知れへんけど…」
「うん…」
「病気を治す事は出来ない…、けど寿命を延ばす事やったら出来る。…少しやけど」
「寿命を延ばす…?」
「個展開くまでなら…ウチらの力でなんとか…」

亜依は信じてもらえない事をわかっていながら話を続けた。
希美がすでに正体を明かしてしまった以上素通りする事は出来なかった。
249 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時08分51秒
「…もし、もしな、信じてくれるんやったらここに来て欲しいんや、…のの?」
「あい!」

希美は名刺を取り出して圭織に渡した。

「七福社…?」
「…うちら七福神なんや!…ベッタベタなネーミングの会社やけど…」
「きっとおねーさんの力になれると思うのれす」
「ありがとう…、今度遊びに行くね。そろそろお姉さん帰らなきゃだから…」
「あぁ…」
「ばいばーい!」

圭織は帰っていった。

「ねぇ…、あいぼん、…クレープ…」
「のの!今すぐ帰るで!」
「ええ!?」

亜依は凄い勢いで走っていった。
唖然と立ち尽くしてる希美は今にも泣きそうだ。
250 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時09分26秒
*****
「正体ばらした〜〜〜!!!??」
「ののがぽろっと言ってもうてな」
「てへてへ…」
「「てへてへ」じゃないっつーの!」
「…で、名刺渡してきた」
「名刺も渡したの!?正体もばらして?!」
「…あの人の力になりたくて……」

亜依と希美は黙って下を向いた。
矢口は大きなため息を吐いた。

「…最後の仕事だな、…でもそろそろ帰らなきゃだったしな」
「でもその人本当にうちにくるのかしら?」





「くるよ、ぜったい…」
*****
251 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時09分59秒
名刺を貰った。
あの子達は自分達は神様だと言った。
普通はこんな話、子供の作り話だと思って信じないだろう。
けど、あたしには時間がなかった。
何かが変わるなら、…もう少し生きることが出来るのなら。



圭織は七福社の前に立っていた。

階段を降りてドアの横のプレートを触る。
ドアを開けると八人の女の子がずらりと並んでいた。
その中には二日前に会った女の子2人もいた。

「お待ちしていました、飯田圭織さん」
「こちらへどうぞ」

誘導されソファーに座ると、目の前に希美と亜依が座った。

「…信じて貰えたんやろか…?」
「うん…、あいぼん、のの、…よろしくお願いします」
「あの時も言ったけど…病気を治す事はうちらには無理。…寿命を少しだけ延ばすことは出来る。でもどれぐらい延びるかはうちらにもわからない」
「でもせいいっぱいちからをだしてできるだけながくのばします!」
「…お願いします」
252 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時10分39秒
もう隠す必要もなくなった為、2人は圭織の前に手をかざした。
2人の手のひらからは黄色の光が発せられ圭織を照らした。
やがて光はなくなり消えた。

「…個展はいつなんですか?」
「…三ヵ月後です」
「…成功することを願っています」
「ありがとうございます…」

「ねぇ?おねーさん!ののたちおともだちだよね?」
「うん」
「…そして依頼人や」
「うん」
「こてんがひらかれるまでいっしょにいてもいい?」
「いいよ」


それから三ヶ月希美と亜依は圭織と暮らした。
家族に見つからないように姿を消して。

「おねーさん?それはなんのえ?」
「うーんとね、出来上がってからのお楽しみ」
「えー、なんやろなー」

圭織の病状も良く、病魔に怯えることなく三ヶ月は過ぎた。
そして個展が開かれる二日前。
253 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時11分25秒
「いよいよ明日やなー」
「そうれすねー」
「ありがとう…、あいぼんとのののおかげだよ」
「そんなことは…」
「あるけどな?」

三人は笑った。

「明日一旦会社戻らないといけないから帰るけど…、体大丈夫だよね?」
「うん、なんとかもちそうだよ」
「よかったのれす」
「…本当に感謝してる。ありがとう、神様」
「「へへへ…」」

2人は向かい合って照れくさそうに笑った。
そして翌日、2人は帰っていった。
2人を見送った後、圭織は部屋に戻り血を吐いた。







明日は個展の開催日。
254 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時12分07秒
翌日、2人は個展会場へ走った。
会場には多くの人がいた。

「凄い反響やん!」
「…おねーさん、どこかなぁ?」

希美は受付の席に座っている人に聞いてみた。

「あの〜、おね…、…いいらさんはどこにいるんですか?」

その人は涙目で言った。

「圭織は…昨日の夜…亡くなりました……」

その瞬間、希美と亜依は言葉を無くした。
周りの音も全て聞こえなくなった。

「…う、うそや!だって昨日あんなに元気で…!うちらのこと見送って…!」
「………」
「…病院、病院どこ?!」

亜依は掴みかかった。

「…○○総合病院……です…」
「いくで!のの!」
「ぁい…!」

2人はふっとその場から消えた。
255 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時12分55秒
病院について病室に行くと顔に布をかけて横たわる圭織の姿があった。
隣には家族らしき人達が泣いている。

「…うそや」
「…おねーさん」

呆然と立ち尽くす2人に後ろから誰かが声を掛けた。

「お姉ちゃんの…知り合い?」

振り向くと同じ年くらいの女の子が目を腫らせて立っていた。
そして2人の顔を見ると驚いた。

「絵の…子と同じ…!」
「絵…?」
「…個展、どうしてもして欲しいって…、出ること出来なかったけど飾って欲しい絵があるからって…。…お姉ちゃんの個展…、是非見に行ってください…」

2人は無言で個展会場に戻り、会場に入っていった。
会場にはいくつもの『おねーさん』の作品が並んでいる。
奥へ入っていくと大きな人だかりを作る場所があった。
人ごみを掻き分けて2人は入って行き、絵を見上げた。

「「…!」」
256 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時13分25秒
それは白い翼の生えた二人の女の子達がこちらに手を差し伸べている絵。
とても優しい表情で微笑んでいる。













「…ののたち…れすか…?おねーさん…」






257 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時14分08秒
結局、願いを叶えてあげる事は出来なかった。
落ち込んでいる2人をみんなは励ましたがいつもの元気は戻らなかった。
そんな時、一人の来客者が現れた。

「…すみません?ここ…七福社ですよね?…あの、あたし飯田圭織の妹の里沙って言います。…お姉ちゃんの部屋片付けてたらこれが見つかって…」

里沙は鞄の中から手紙を取り出した。
そこには『あいぼん、ののへ』と書かれた手紙があった。

「上にここの名刺が乗っていたので多分ここに出そうとしてたのかなぁって思って…。じゃあ…あの、あたしまだいろいろやらなきゃいけない事があるので…失礼します…」
里沙が帰った後、手紙を開いてみると弱弱しい字が書いてあった。
きっと倒れてから必死に書いたのだろう、便箋の端には少し血もついている。
そこには一言だけ、こう書かれていた。


【ありがとう 天使さんたち】


手紙をたたんで亜依は涙をこぼしながら少し笑った。
258 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時14分55秒
「…うちらは天使じゃなくて神様だって言ったやん……」

それを見た希美も後に続けた。

「…そうれすよ、てんしよりも…うえなんれすから…」



泣き続ける2人の頭を矢口はぽんぽんとたたいた。


きっと今圭織は笑っているだろう。
向こうで大好きな絵を描いているに違いない。

「あ!」

後藤が突然大きな声を出した。

「どうしたんだよ?」
「ねぇ、ごとーたち神様だよ?天界に住んでるんだよ?…きっと圭織さんに会うことできると思う!」
「…そっか!言われてみればそうだよ!加護!辻!…いや、福禄寿、寿老人!良かったね!」
「きっちゃん冴えてる〜!さすがうちの恋人!」
「……では、人間界ともさよならですね」
259 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時15分32秒
八人は社内を見回した。

「…相変わらず趣味悪い部屋だったよなぁ」
「……どうせ…」
「…でも、嫌いじゃなかったよ…」
「恵比寿さん…」
「今までのお客さん…みんな幸せになるといいべな〜」
「そうですね…」

しんみりしてる中、手をパチンと叩く音。

「早く帰ろう!」
「そうれす!はやくおねーさんにあって…いいたいこといっぱいあるのれす!」










「はいはい、わかったよ、…じゃあ、帰ろうかみんな」
260 名前:最終話 最後の光 投稿日:2003年03月30日(日)22時16分04秒
***
261 名前:七福社、ご利用ありがとうございました! 投稿日:2003年03月30日(日)22時17分30秒
「…あれ?ここにあった七福社はどこいったんや?」
「何処行ったんでしょう?移転でもしたんですかね?」


「あれ〜?建物なくなってる…」
「食べてもらおうと思って作ってきたのにねぇ…」


「…せっかくわざわざ帰ってきたのにつぶれたのかなぁ?」


「あれ…ここのビル……」
「みきたーん!はやくぅー!映画始まるよー!」


「どうしたの〜?あゆみちゃん」
「ここにあった会社…、ううん…、なんでもないです!行きましょう、りんねさん!」







みんな幸せになれますように…。







「おねーさーん!」
「飯田さーん!」
「…のの!あいぼん!」





おしまい
262 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月30日(日)22時20分25秒
というわけで『七福社へようこそ!』はおしまいです。
今まで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。
いろいろ矛盾点や意味不明な点も多々あったと思います。
今まで短い物しか書いてなかった私にはやはり力量不足でした。
263 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月30日(日)22時32分03秒
223>名無しどくしゃ様
激 し く すみません!レス見落としていてレス返ししませんでした。
常連さんなのになんてことを…(鬱
是非今度こんなバカに小説リクしてください。
条件なしで名無しどくしゃ様のリク、書かせて頂きます!
しかし駄文だから罪滅ぼしにもならない罠。

242>名無し読者様
良かったですか、やぐごま。
なんか心配だったんですよ、「結局なちまりやんけ!」って言われたらどうしようかと。
その後は…ご想像におまかせで…。えへへ…(笑ってごまかす

243>名無し読者様
良かったです、リクされた方に良かったと言われて(安堵
私なちまり、やぐごま、なちごまトライアングル大好きです。

244>名無し読者様
うおっ、その後パート2!
…き、きっと甘いひと時をすごしたんだと思いますよ…、えへへ…(笑ってごまかす
264 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月30日(日)22時40分41秒
と言う訳で、今また新作を書いたりしています。
またちょっと長くなりそうな予感。でも次スレまではいかないと思いますが(多分…
なので『こんなスレを見てくれて読者さん、どうもありがとう企画』をやろうと思います。
てことでリク受付です。
えーと、リクされたものはきっちり仕上げたいのでとりあえず5つリクがあがったら締め切りたいと思います(勝手でスマソ
駄文になりますが是非どうぞ。
265 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年03月30日(日)23時18分51秒
夜中に泣かせるねぇ…。キーボードに涙がパタパタ落ちましたよ。
さっそくですが、リクをお願いしたいと思います。
『やぐごま』で。更新楽しみにまってます!
266 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月30日(日)23時23分35秒
わーい!
リクいいんですか?
なちまり、お願いします!
作者さんのなちまり好きなんです。
267 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月31日(月)01時02分27秒
自然と涙がでてきちゃいました…。
久しぶりに小説読んで泣きました!
最高でした☆
新作が楽しみです!

リク…していいですか?
え〜っと、『あやみき』で!
268 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月31日(月)01時28分31秒
更新お疲れさまです!
リクお願い…なちごまで!
269 名前:チップ 投稿日:2003年03月31日(月)15時12分50秒
泣いちゃうよぉ……すっごくよかったです。
リクは〜じゃあいしよしで!よろしくお願いしまっす。
270 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年03月31日(月)17時30分45秒
おおぅ!リク承りました。
『やぐごま』『なちまり』『あやみき』『なちごま』『いしよし』で書きます!
えーと、先に言っておきます。順番バラバラで書くかもしれません。
一番に『いしよし』になったりとかするかもしれないのでそこんとこはご了承くださいませ〜。
ではしばしお待ちを。
「感動した」と言うお声、とても嬉しいです。
ありがとうございます!
271 名前:知能犯 投稿日:2003年04月01日(火)20時53分35秒
肩をトントンと叩かれて振り向くと肩に指が置かれていて頬にささる。
くるりと後ろを向くと満面の笑み。

「みきたん、ひっかかったー!」
「…亜弥ちゃん古いよ」

ここは美貴の家。
2人っきりでDVD鑑賞してるのに全然画面なんか見てないこの彼女。
さっきから部屋をうろうろしたり、今みたいに美貴にちょっかい出してくる。

「…この映画亜弥ちゃんが見たいって言ったから借りてきたんだよー?」
「だってぇ、つまんなくなったんだもん」

…つまんなくなったって……。

「美貴はこれ、見たいから。おとなしくしていなさい」
「えー…」

またテレビの方を向いて集中。
どうやら観念したのか歩き回るのはやめたみたい。
でも何故か美貴の座ってるソファーの後ろから動かない。
気にしないで見続けていると、再度後ろから名前を呼ぶ声。
272 名前:知能犯 投稿日:2003年04月01日(火)20時54分13秒
「み〜きた〜ん!」

またきた!同じ事二度もひっかかるほど美貴はアフォではありません!
左肩に手を置かれているので思いっきり右側に振り向いた。

「…っぃた!」
「痛ーい!みきたん、突き指したらどうすんの!」

ご丁寧にどちらにも指が添えられていたみたいで思いっきり右頬に指がつきささる。
痛い…ちょっと涙出たよ…。

「…亜弥ちゃん」
「何〜?」

膝をポンポンと叩いて呼び寄せて座らせる。
とは言っても足の上に乗られるのも重いので足を広げて間に亜弥ちゃんを挟み込む。
そして後ろから抱きしめる。
これで逃げらんないだろー…。

「じっとしてテレビ見なさい!」

嫌がらせのつもりで動けなくしたのに何故か満面の笑み。
273 名前:知能犯 投稿日:2003年04月01日(火)20時55分14秒
「なんで笑ってんのさー?」
「んー?作戦成功〜!って思って」
「作戦?」
「しつこくみきたんにちょっかい出してればこうなるだろうなぁって思ってたの〜!」
「……」

…結局その後も映画なんて見れなくて途中でテレビは電源を消される。

「みーきたん、ちゅーしよー?」
「…はいはい」
「なんかやる気なさげー」
「…これから映画は一人で見ることにするよー」
「え?あるの?」
「は?何が?」
「だからー、『一人』になる事なんかあるの?」
「……」








多分、いや絶対。
美貴はもう落ち着いて映画を見る事は出来ないんだろうなぁと思いました。
274 名前:悪夢? 投稿日:2003年04月02日(水)16時47分06秒
「ふぇ…?」

気がつくとあたしは森の中でひとりぼっち。
薄暗くて不安で泣きそう。

「……!……………!!」

前を見ると遠くの方でなっちが必死に何かを言ってる。
でも全然聞こえない。
首を振って口をパクパク動かしてるけどやっぱり何も聞こえない。

「なっちぃ…!なっちぃ!何言ってるの?わかんないよぉ!」

なっちはあたしの右手を指差している。
ふとおろされている自分の右手を見ると何故か拳銃をもっている。

「…なんで?な…に?」

右腕は自分の意思とは関係なく前に出された。
銃口はなっちに向いている。

「い、嫌だ…!なっち!逃げて!」

勝手に引き金を引こうとする指を必死に止めようとするけど力が全然入らない。
なっちは静かにあたしを見据えて口を開く。
275 名前:悪夢? 投稿日:2003年04月02日(水)16時47分58秒
【 は ず さ な い で 】






心臓に指を置いてここだ、とあたしに指示をする。

「嫌だ!逃げて!なっち…!」

叫んだ瞬間、銃から激しい音が聞こえて数十メートル離れていたなっちが倒れた。
耳がキーンとしてあたしはなっちの元へ走った。
なっちを抱き上げてもだらりと腕を落としたまま動かない。

「目…開けて…。なっちぃ…」

『…ごっちん?』

「なっち…」

『ごっちんてば!!』

体の揺れを感じて目を開けるとそこは見た事がある場所。
自分の家じゃない。
なっちの家だ…。
276 名前:悪夢? 投稿日:2003年04月02日(水)16時48分44秒
「…泣いてるよ?怖い夢でも見た?」

目の前には泣いてる子供をあやすように優しく微笑むなっちの姿。
思わず抱きつくとなっちは「よしよし」と言って頭を撫でてくれた。
そして手を繋いでベットの上に座って並んだ。

「…どんな夢だったの?」
「…なっちを銃で撃つの。撃ちたくないのに体が勝手に動いて…血がいっぱい出てて…」

言葉に詰まると背中を優しく撫でてくれた。

「人を殺しちゃう夢ってストレスとか感じてる時に見るんだって。きっとごっちんも疲れてたんだよね」
「でも何もなっちを殺さなくても…」
「知ってる人を殺す夢は悪い夢じゃないんだよ、確か。…詳しい事わかんないけど」
「でも…」
「…なっちごっちんになら殺されてもいいよ?」
「いやだぁ…」
「例えばの話だよ」
「……」
「ね…?このまま手を繋いで寝れば悪夢なんて見なくなるよ」
「絶対…?」
「絶対。もしごっちんに撃たれそうになったらひょいひょい避けちゃうから」
「…あは」
277 名前:悪夢? 投稿日:2003年04月02日(水)16時49分22秒
***
278 名前:悪夢? 投稿日:2003年04月02日(水)16時50分17秒
結局その後眠りについて見た夢はさっきの悪夢の続き。
あたしはなっちの手を握って一緒に倒れている。
あたしの頭からは血が流れていて、でも幸せそうに眠っている。






そう、これは悪夢。
目を覚ませばまたいつものなっちの笑顔が傍にあるから。
きっと。
279 名前:いい加減呆れます 投稿日:2003年04月03日(木)21時21分30秒
「今日こそデートしてもらうんだからね!」

ぼけ〜っと窓の外を眺めていると声と同時に後ろから何かに衝突された。

「おっ!落ちる…!」

窓の外に落ちそうになったのを後ろから抱きしめてもらって危機一髪助かった。
後ろを振り向くとちょっと焦った表情の愛ちゃんがいた。
ごまかすように「いひっ」と笑って。

「…落ちたらどうすんの、ここ2階。シャレになりません」
「だからー、助けたじゃん」
「誰のせいですか!」

少し強めに怒るとしゅんとして小さな声で「ごめんなさい」と言った。
でもすぐに表情は変わって怒ってるような表情になる。

「ねー、遊びにいこー」
「遊びに…?」
「…いっつもあさ美ちゃんとばっか遊びに行ってズルイ!あたしも遊びたい!」
「別に良いけどー?」
「い、いいの!?」
「うん。ていうかいつでも誘ってくれたら良いのに」
「だってさー…。ボソッ…(…あさ美ちゃんは強敵なんだよね…)」
「…ん?なんか言った?」
「別に…。それより!いつ遊ぶ?何処行こうか?」
「んー?そうだねぇ…」
280 名前:いい加減呆れます 投稿日:2003年04月03日(木)21時22分20秒
腕を組んで考えるポーズをしていると目の前を突風が通り過ぎた。
いや、厳密に言うと突風のように走ってきたあさ美ちゃんが。
隣にいた愛ちゃんの手を引っ張って走っていった。

「…麻琴おぉぉぉぉぉ!!!助けてぇぇーー!!」

2人の姿は消えた。

「…なんなんだ?一体…」

…あ、そうか。
『…いっつもあさ美ちゃんとばっか遊びに行ってズルイ!あたしも遊びたい!』って言ってたな。
きっと愛ちゃんはあさ美ちゃんの事が好きなんだな。
いつも声をかけてこなかったのはきっとあたしがお邪魔だったからだね。あらあら。

…で、きっと今のあさ美ちゃんの行動はあたしと愛ちゃんが話をしてたから嫉妬したと。
あれあれ?そんじゃあ2人とも両想いなんじゃないの?

「…いいねぇ、青春って感じ」

風に吹かれて窓の外を見つめるあたしってなんだか哀愁漂っててかっこいい!

「あたしも早く恋人みつけようっと」







何処まで鈍感なんだ、小川麻琴。
鈍感にも程があるぞ、小川麻琴。
前途多難な愛とあさ美。
三人に明るい未来は待っているのか?
次回に続く!

(多分続きません)
281 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月04日(金)00時54分07秒
良いです!作者さん!
悪夢?は一体どっちが夢なんだろう…気になります
自分的にはおがたかこん続編キボンヌ
282 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月04日(金)05時03分18秒
突風紺野最高〜〜〜〜!!!笑
続き…読みたいです。
283 名前: 投稿日:2003年04月06日(日)19時30分06秒
静かな部屋に二つの荒い呼吸が聞こえる。
一つはヤグチ。
もう一つはなっち。

ベットの中では…いわゆる『そーいう事』が行われてた訳で。
ついさっき終わった行為に感動って言うか、なんていうか。
…今はそんな余韻に酔いしれて隣にいるなっちを抱きしめる。
なっちの顔はきっと真っ赤。

「…やぐちぃ……苦しいよ…」
「…あ、ごめん」

別に初めてなわけじゃないのに終わったあとはてれくさくてくすぐったい感じ。
いつもはつれないなっちもこの時だけは素直にヤグチの言う事を聞いてくれる。
体を少し起こして手を伸ばし、カーテンを開ける。
空は真っ暗で月が淡い光を放っている。

「…ちょっ……やぐち、…見えるから…」
「んー…」

体を起こしたから布団がめくれてヤグチの身体もなっちの身体も月明かりに照らされる。
その光景がとてもえっちな感じがしてちょっと動揺した。
なっちの身体は白くて、ところどころに赤い痕が残っていた。
…って言っても全部ヤグチがつけたんだけど。
284 名前: 投稿日:2003年04月06日(日)19時31分01秒
「なっちの身体きれーだね」
「やだぁ…」

必死に自分の身体を隠そうと布団を引っ張ってるなっち。
指を絡ませてなっちに覆い被さり、右胸にある痕を舐めると声にならない声を上げた。

「ん…っ、…また……?」
「ん…、する」

顔を上げてなっちを見ると切なそうな表情でヤグチの目を見つめる。
額に張り付いてる髪を触って唇にちゅっ、とくちづけた。
そしてもう一回顔を見ると切なそうだけど少し笑みがこぼれていた。







体を伸ばしてカーテンを閉める。
だってなっちの姿はたとえお月様でも見せる事は出来ないから…。
285 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月06日(日)19時37分10秒
微エロ…?
…いえいえエロくはないはず。ものすっごい消化不良な感じがしますが…。

281>名無し読者様
『悪夢?』はどっちが夢なのか私もわかりません(w
幸せな方が現実だと良いですねー。

282>名無し読者様
おがたかこんは書いてて楽しいです。
もしかしたら続くかもしれないですけど未定です…ごめんなさ〜い!
286 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月06日(日)23時39分35秒
めっちゃイイ!!
やっぱなちまり最高だぁ〜!
最後の一行かなり好きです。
287 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月06日(日)23時58分54秒
なちまりお願いした者です。
作者さん、サイコー!
ふたりのほのぼの感がイイ!
また読みたいなぁ!!
288 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)19時26分29秒
作者様の書かれるなちまりの雰囲気、すごく好きです!
287様とは違う者ですが、
自分もまた読ませていただきたいです。
289 名前:知らない苦悩 投稿日:2003年04月07日(月)23時24分15秒
オイラの彼女は約160cm。
オイラとの身長差、約15cm。

…それはいいんだ、別に。しょうがない、小さく生まれちゃったんだから。
親を恨んだりとか…、爽やかな矢口さんはそんな事はいたしません。
でも二人並んだらやっぱりそれは目立ってしまうから。
一応小さくても年上だし、やっぱいろいろこっちがリードしたいのに。

「んー?あの本が欲しいのー?」
「…うん」
「はい!」
「……ありがと」

今だって買いたい本だって自分で取れやしない。

抱きしめてもいつのまにか抱きしめられて腕の中に納まってるのはオイラだし。
どんなに大人な発言したって見下ろされてりゃカッコつかないし。

…別に今の現状が嫌だって言ってるんじゃない。
でも年下の彼女に頭を撫でられると嬉し……じゃなくて!ちょっと傷つくんだよ。
ほんとはオイラが頭を撫でてあげたい。
290 名前:知らない苦悩 投稿日:2003年04月07日(月)23時24分46秒
「そんなの今更まだ気にしてんの〜!?」

…とか、言うけどごっつぁんスタイルいいし、カワイイし。
オイラといるより紗耶香やよっすぃーといた方が絵になるし。
ホラ…、今も。いじけるとすぐオイラの頭を撫でるだろ?それがちょっとチクッと来るんだよ。

「やぐっつぁんは変なとこで意地っ張りだよね〜」
「…うるさいな」
「そんな所も好きなんだけど」
「………………うるさいよ」

ごっつぁんよりも背が高かったら良かったのにな。
高い所に置いてある物なんかヒョイっと取ってさ。
…キスする時だって背伸びしなくたって出来るしさ。
だからって別れる事なんて…出来ない。
好きだからしょうがない。
かっこ悪くたって釣り合わなくたって好きなんだから。





…ごっつぁんにはこんな悩み言ったってわかんないと思うけど。
291 名前:知らない苦悩 投稿日:2003年04月07日(月)23時25分19秒





292 名前:知らない苦悩 投稿日:2003年04月07日(月)23時26分02秒
ごとーの彼女は約145cm。
ごとーとの身長差、約15cm。

…それはいいんだ、別に。しょうがない、好きな人より高く生まれちゃったんだから。
ていうか、ごとーは全然気にしてないんだけどやぐっつぁんは凄く気にしてて。
どんなにフォローしたってやっぱり意味ないみたいで。
背が高いからとか低いからとか関係なくて、ごとーは『やぐっつぁん』が好きなのに。
ごとーだって頭とか撫でてもらいたいのにいつも気にしてて撫でてくれない。
それがごとーは寂しくて、悲しくて泣きたくなる。
泣きそうになるとやぐっつぁんは困った顔してごとーを抱きしめる。
抱きしめて…頭を撫でられて、そしてごとーが抱きしめ返すとやぐっつぁんは不機嫌になる。

「…オイラが抱きしめてるのに」

…ごとーがもっとちっちゃかったらよかったのに。
そしたらやぐっつぁんも傷つかないし、頭も撫でてもらえたのに。









…やぐっつぁんにはこんな悩み言ったってわかんないと思うけど。
293 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月07日(月)23時37分09秒
中途半端!…でもこんな感じで終わらせたかったんです、すみません。

286>名無し読者様
なちまりは癒し系です(断言。
安倍さんより矢口さんの方が頭が良い所が自分的には萌え。
(でもいつも振り回される矢口さん…)

287>名無し読者様
おお!なちまりリクされた方!
…どうでしょう?気に入っていただけたのなら嬉しいです!

288>名無し読者様
ありがとうございます!
なちまり好きさんたちがいっぱいですね、嬉しい事です。
なちまり小説ってあんまりないですもんねぇ…。
自分、頑張りまっす!なちまり普及!
( 〜^◇^)<駄文だけどね。
(●´ー`)<駄文だべ。
294 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月08日(火)14時14分36秒
ありがとうございます〜!!!
( ´Д`)<感謝感激雨嵐です。
二人の小さな悩みが可愛いです(w
この二人のカプはどこまでもほのぼのしてますね
こんな自分のリク聞いてもらえてどうも有難うございました!
次回作も期待しています
295 名前:幸せの 投稿日:2003年04月08日(火)20時23分56秒
「なにやってんのー?」
「う〜ん…」

今日は天気も良い事だしのんびりと公園デート。
ひなたぼっこしながらいちゃいちゃするはずだったのに愛しい人はあたしの5mくらい先でうずくまる。
必死に何かを探してるように見える。

「なんか落としたのー?」
「違ーう」

顔も上げないで探し続けてる。
仕方がないので立ち上がって梨華ちゃんの隣まで歩いていって横に座った。

「どうしたんだよー?」
「……あのね、クローバー探してるの」
「…クローバー?」
「うん、…四つ葉の。見つけたら幸せになれるんだよ?」

今だって十分幸せじゃん、って言おうと思ったけどやめた。
こんなに必死に探してるのに水を差すような事言わない方が良いかなと思ったから。

「…手伝おっか?」
「うん!」
296 名前:幸せの 投稿日:2003年04月08日(火)20時24分29秒
2人で手分けして探すけど四つ葉のクローバーなんてすぐに見つかるもんじゃない。
あった!…って思っても重なってるだけだったり。
突如五つ葉のクローバーを見つけたり。
一枚取っちゃえば四つ葉なんだけど『あるもの』を取った幸せなんて嫌じゃない?

…例えば、梨華ちゃんとあたしは『娘。』を辞めるの。
忙しくなくなった分一緒に居られる時間は多くなるけど、…そんなのってなんか違う。
……よくわかんないな。たとえ話とか苦手だし。考えるのやめよ。

「ないねぇ…」
「うん…」

時間が経つにつれ元気がなくなっていく梨華ちゃん。
ここはあたしがバシッと見つけて元気付けたい所なんだけど全く見つかりません。

「あ」
「え?あったの?!」
「あ…、ごめん、ないんだけど」

あたしはさっきまで座ってた所に置きっぱなししてた鞄を取りに行った。
中からメモ帳とスティックタイプののりを取り出した。
え?なんでのりなんか入ってるんだって?……あたしもよくわかんない!
297 名前:幸せの 投稿日:2003年04月08日(火)20時25分05秒
「これをね…」

じーっとあたしの行動を見てる梨華ちゃんを横目にあたしは三つ葉のクローバーを紙に貼った。
そして他のクローバーの葉を一枚失敬して空いてる場所に貼り付けた。

「ほら!四つ葉のクローバー!」
「……なんか、ズルイ…」

不満げな梨華ちゃんに吉澤さんが用意した名ゼリフ行きます!

「幸せってのは…自分で作るんだよ…?」

梨華ちゃんは驚いた顔をして目を丸くした。
も、もしかしてあまりのセリフの臭さに引いた…?

あたしの心配は要らなかったみたいで梨華ちゃんはすぐに抱きついてきた。

「ひとみちゃん…かっこいい…」
298 名前:幸せの 投稿日:2003年04月08日(火)20時25分51秒
この一件で梨華ちゃんはますますあたしに惚れたそうで。
嬉しそうに紙に貼ってある四つ葉のクローバーをメンバーに自慢していた。
梨華ちゃんがいなくなってメンバー全員に言われた言葉。











「よっすぃー、キザすぎ!」


…はい、わかってます。
299 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月08日(火)20時32分17秒
リク消化!…したよね、忘れてないよね自分。

294>名無し読者様
やぐごま良かったですか。
甘えさせたい( 〜^◇^)と甘えたい( ´ Д `)。
もっと甘い話にすれば良かったなぁと思いました…。
300 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月08日(火)20時36分37秒
またちょろちょろと短めのをいくつか書いてから長めの行くかも知れません。
これから更新ペース多分遅くなると思います、すみません。

一応区切りがついたのでage。
301 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月10日(木)20時26分18秒
短編オモロかったよぉ〜
更新マターリ待ってます。
302 名前:チップ 投稿日:2003年04月11日(金)21時54分24秒
いしよしありがとうございましたぁ。
キザなよっすぃよかったれす。
次作も楽しみに待たせてもらいます。
303 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月15日(火)16時08分00秒
超短編書こうと思ったんですけどネタがな(ryので長めの行きたいと思います。
と言ってもそんなには長くないですが…多分。

301>名無しどくしゃ様
ありがとうございます・゜・(ノД`)・゜・
ほんとに言い尽くせないほど感謝しております。
次の話は名無しどくしゃ様の好きなあの…(ry

302>チップさん
いしよし気に入っていただけたでしょうか。
あのネタはたまたまテレビつけてたら前回のこちら本池上署の再放送しててその中の話のネタな訳です。
…ドラマ見てな(ry
304 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月15日(火)16時16分30秒




少女は学校の屋上にいた。




305 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時17分30秒
【遺書 先立つ不幸をお許しください。 愛  】

愛は靴を脱いでそろえて置き、遺書を添えてフェンスを乗り越えた。
日は傾き始めていて少し薄暗い。
屋上は風が強くて少しでもバランスを崩したら落ちてしまいそう。
(…ていうか飛び降りに来たんだけど。)

「…お父さん、お母さん…ごめんなさい…」

下を見ると中庭の植え込みがとても小さく見えた。
それと同時に心臓がドキドキしてめまいがして足がガクガク震えた。

「…吉澤先輩……」

目を瞑り、深く深呼吸をすると決心したように頷いた。
(みんな…バイバイ…)
目を開け、さて、飛び降りようとした時。
306 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時18分05秒
『あ〜!ちょっと待って〜!』


愛は声に驚き、振り返った。
しかしどこにも人は見当たらない。
(死ぬ前って幻聴が聞こえるのかな…?)
少し首をかしげ、もうため息を吐いた。
そして、もう一度飛び降りようとした時。


『ちょっと待ってってばー!』


さすがに二回目ともなると幻聴にしてはおかしい。
しかし辺りを見回してもさっきと同じ、誰もいない。
愛はまた首をかしげた。


『上だよ、う・え!』


「え…?」

見上げるとそこには自分と同じくらいの年であろう少女が…浮いていた。
その少女は呆れたような顔で愛を見ている。

『どうも!』
「…う、浮いてる〜〜〜???!!」

愛は驚きのあまり足を滑らせたがなんとかフェンスにしがみついた。
少女はその様子に慌てて反応したが、無事だとわかると少し笑っていた。
307 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時18分53秒
『ま、とりあえずこっち来てよ、危ないから』
「は、はい…」

言われるがままにフェンスを乗り越え、元にいた場所に戻った。
少女はスタッっと地面に降りた。

『え〜と…、高橋愛さんだよね?』
「はい…」
『…危なかった〜!もうちょっと遅かったらアウトだったよ〜』

少女は安堵の表情を見せ、胸をなでおろしていた。
そして何かブツブツひとり言を言っている。
「資料が足りないだとか」「言うのが遅すぎる」とか。
で、一人置いてきぼり状態の愛は混乱していた。

「あ、あの…あなたは…?う…浮いてましたよね…?」
『あー、今から説明するからこっち来てください!』

ちょいちょいと手を動かし、愛を呼び寄せその場に座りあぐらをかいた。
愛も促されるまま少女の前に座った。

『あたしの名前は小川麻琴っていいます。よろしく』

小川麻琴と名乗る少女が握手するポーズをとったので愛はとりあえず握手しようとした。
しかしその手はすり抜けてつかむ事が出来なかった。
308 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時19分33秒
「あ…」
『…まぁ実体がないからつかむ事とか出来ないんだけど』

麻琴は何かを確かめるように手を握ったり開いたりした。
そして明るかった表情が少し曇った。

「ど、どういう事なの?!」
『まぁまぁ』

詰め寄る愛をなだめ、話を続けた。

『あたしね、三日前交通事故に遭ったんですよ。で、生死の狭間をさまよってる時、頭の上に輪っか乗せたヘンなおじさんが出てきて、「このままだとお前は99%死ぬ」って言われてー、「死にたくない!」って言ったらある事と引き換えにお前を助けてやろうって』
「ある事って…?」
『2003年4月×日午後5時24分に一人の女の子が自ら命を絶とうとしてるからそれを救え、と』

愛は慌てて時計を見た。
現在の時刻午後5時30分。

「それって…あたし…?」
『そう!高橋愛さん、あなたです!…ちなみに今あたしは植物人間状態で病院で眠ってます』

麻琴はビシッと人差し指を愛に向けた。
向けられた本人は口をあけてぽかんとしていた。
309 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時20分10秒
『…お〜い?起きてます〜?』

ひらひらと愛の目の前で手を振ってみる。

「…信じ…られないんだけど…、でも…あなたに触れる事が出来ないし…」
『あたしも信じられないんだけど〜、でも事実だし』

ここは屋上。強い風も吹いたりする。
愛の髪は否応なしに乱れるが、麻琴の髪は微動だにしない。

『で、なんで飛び降りようとしたの?なんか理由があるんだよね?』

麻琴の言葉に愛の表情は曇り、俯いた。

『…イジメ?』

愛は首を振る。

『…虐待とか?』

首を振る。
310 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時21分44秒
『じゃあ、何?』
「…振られたの」
『え?』
「振られたの!吉澤ひとみって言ってね…部活の先輩なんだけど…いつの間にか好きになってて。告白したけど「そんな風に意識した事ない」って。しかも「他に好きな人がいる」って…」
『それで…飛び降り?』

愛は頷いた。
一呼吸間が空いて、次の瞬間麻琴は大爆笑した。
それを見て愛は少しポカンと目を丸くした後、怒った。

「笑う事ないじゃない!ホントにショックだったんだから!!」
『ゴメン!ゴメン!…いや〜、どんな理由かと思ったら振られただけか〜』

麻琴はお腹を抱えて笑っている。

「もう!!」
『振られたくらいで飛び降りようとするなんて、あたしなんか過去何回飛び降りたらいいかわかんないよ』

麻琴は微妙なフォローを入れたが、愛の機嫌はまだ直っていない。

「そうだよね!振られただけで飛び降りなんてばかげてるよね!もうしないよ!これであなたは元に戻れるんでしょ?!早く戻ったら?!」
『えーと、そういう訳にもいかなくて…。もう一つやらなきゃいけない事があるんだよね』
「何よ!」

311 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時22分21秒
『「高橋愛さんを救う事」と「高橋愛さんを幸せにする事」。あなたを幸せにしなきゃいけないって訳』
「幸せ…って、なんでそこまであなたがするの?」
『あたしだって知らないよ。あのおじさんの言う事聞かなきゃ元に戻れないし』
「幸せ…」

愛は考えた。
憧れの吉澤先輩と両想いになる事が愛にとっての幸せだった。
しかしその幸せは断たれてしまった。

『そのさ〜、「吉澤ひとみ」って人とつき合えれば幸せ?』
「…幸せだけど…無理だよ。もう…」

愛は今にも泣き出しそう。

『ん、じゃあさ!新しい恋しよう!』
「新しい恋…」
『恋人が出来れば幸せになれる!ね?』
「う、うん」

愛は完璧に麻琴の勢いに押されている。

『決まり〜!じゃああたし愛ちゃんに恋人が出来るようにサポートするよ』
「よ、よろしく…」

握手しようと手を出したが出来ない事に気がつき苦笑いをした。
312 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時23分07秒
『あたしどこにでもいけるんだけど、とりあえず愛ちゃんちに居候するから』
「え!」
『大丈夫!ご飯も食べないし、愛ちゃん以外の人には見えないから』
「うん、じゃあ…改めて…よろしく、…麻琴ちゃん」
『麻琴でいいよ。おじさんから貰った資料によると愛ちゃんあたしの一個上みたいだから』
「じゃあ…、麻琴」

麻琴はニコリと笑い、次の瞬間ハッとした顔をした。

『あ!一つ、言い忘れてた』
「何?」
『あたし一応恋人いるからあたしに惚れちゃだめだよ?』
「…それは絶対にないなぁ」
『あ〜…そう』

麻琴は少し残念そうに笑った。
313 名前:Remember 投稿日:2003年04月15日(火)16時23分51秒
「誰かいるんか〜?」

扉が開き、出てきたのは古典教師の中澤裕子。
古典教師の癖に口が悪い。
だが、言いたい事も言い合えるので生徒には慕われている。

「お?B組の高橋か、そろそろ鍵閉めんで、はよ出ーや」
「は、はい!」
『わ〜…、関西弁の人はじめてまじかで見たよ』

麻琴は珍しい物を見るかのように裕子を見ている。
下から覗き込んだり、宙に浮いてぐるぐると裕子の周りを飛んでいる。

「そうなの?」

愛はつい、麻琴に話しかけてしまった。

「そうなの?て、なんやねんな」
「い、いえ!なんでもないです!」
「…ヘンな奴やな」

必死にごまかす愛を見て麻琴はくっくっと笑った。




これが愛と麻琴の出会いだった。
314 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月16日(水)21時52分20秒
面白いじゃねぇか!!ヽ(`Д´)ノ
イヤー楽しませてもらっているので、
こちらからもありがとうございますです。
続き楽しみにしてまーす
315 名前:Remember 投稿日:2003年04月18日(金)22時59分44秒
家に着くとすぐに麻琴は出て行ってしまった。

「どこ行くの?」
『ちょっと用があって…、大丈夫。一回来たからこの家の場所は覚えてる。すぐ帰ってくるから』

そう言って窓から飛んで行ってしまった。

「…おかしな事になっちゃったなぁ…」

愛は嘆きとも取れる言葉を言い残し一人部屋で立ち尽くした。



そのころ、麻琴はというと病院に来ていた。
とある病室の壁をすり抜けて入り、ベットに横になっている人物を見下ろす。

『…はやく戻れるといいなぁ…』

そこに眠るのは麻琴だった。
麻琴が眠っている自分の頬を触ろうとすると部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。

「まこっちゃん!今日も来たよー!聞いてよ、今日ね…」

眠っている自分に必死に話しかけている少女。
楽しそうに、でも少し悲しげな表情で自分に話しかけている。
316 名前:Remember 投稿日:2003年04月18日(金)23時00分35秒
『あさ美ちゃん!……あさ美ちゃん…』

あさ美には麻琴の声は聞こえない。
目の前に立っても気がつかない。
手を伸ばして頬を触ろうとしてもすり抜けてしまう。

「…まこっちゃん…、早く目を覚まして…」

ベットに寝ている自分の手を握り、泣き出したあさ美の頭にそっと触れる。
物を触ってる感覚なんて何も感じない。
でもそうしたかった。

『ごめんね…、あさ美ちゃん。すぐに戻るからね』

一言だけ言い残し、部屋から出て行った。
麻琴はポケットから紙を取り出した。
そこには今回の【高橋愛救出計画】が書かれている。
紙の一番下にはこう書かれている。

【タイムリミットは3ヶ月】

今日から3ヶ月後までに愛を幸せ=恋人が出来なかったら元には戻れずそのままあの世行き決定。

『…それだけは嫌だ』

早く愛の相手を見つけようと心に誓って空に舞い上がった。
317 名前:Remember 投稿日:2003年04月18日(金)23時01分25秒
麻琴が愛の部屋に戻ると部屋は真っ暗でベットの上にはすぅすぅ、と寝息を立てている愛がいた。
布団なども掛けずにそのまま寝ている愛に何かを掛けてあげたくて布団を掴もうとするが手からすり抜ける。
ため息をついて顔を覗き込む。

『………結構かわいいよなぁ、愛ちゃんも…。まぁあさ美ちゃんには敵わないけど、ね』
「ん……」
『あ、起きた?おはよう、愛ちゃん。ただいま』
「………………」
『どうしたの?寝ぼけてるの?』
「…いや、夢かと思ったんだけど現実なんだなぁって実感して…」
『夢じゃないんだってば!早く見つけるよ!幸せ!…とりあえず、明日どっか出かけて見つけよう、ね!』
「う、うん、そうだね!頑張るよ」
『その意気だよ!』
「うん!…は……は………」
『?』
「…は、はっくしゅーーん!!!……風邪ひいたかな…?」
『…何も掛けないで寝るからだよ。ちゃんと布団掛けて寝なよ』
「うん、そうする」

愛はベットの中にもぐりこんだ。
麻琴は部屋の隅に行き壁にもたれて座った。
318 名前:Remember 投稿日:2003年04月18日(金)23時02分19秒
「…?寝ないの?」
『え?寝るよ?』
「布団の中…入れば?」
『え、べ、別にいいよ!寒くないしそれに布団を掛けてるっていう感覚もないから…』
「そう…、じゃあ…おやすみ」
『…おやすみ』



………………。



(…気になって眠れないんですけど)
愛はベットから起き上がり麻琴を見る。
目を瞑ってすぅすぅ、と寝息を立てている。
隣に座って顔を覗き込む。
319 名前:Remember 投稿日:2003年04月18日(金)23時02分53秒
「……結構可愛いね」
「…幽霊じゃないんだもんね?生きて…るんだもんね?」
「……はやく…戻りたいよね…」

「…麻琴、あたし、頑張るからね?」

愛は麻琴が起きないように小声で呟くとまたベットの中にもぐった。


『………………』




麻琴はちらりと愛の方を向いた後、窓の外を見た。
そしてまた目を閉じた。
今日は星がとても綺麗に輝く夜だった。
320 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月18日(金)23時08分17秒
文章が少し変です。今始まった事ではないですが…。

314>名無しどくしゃ様
いつもありがとうございます!
でもおがたかってTVであんまり絡みないですよね…。
なので私が絡ませます!自己満足で!(W
321 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月19日(土)17時02分27秒
ドキドキの予感(;´Д`)
もうっ作者様サイコ!!大好き!(ヲイ
322 名前:チップ 投稿日:2003年04月20日(日)20時19分37秒
わぉーおがたかぁ〜と喜んだらこんこんいたー切ないー泣くなよぉー
マコの体、床ズレとか心配だなぁ…
続きが気になってしかたないれす、楽しみっす。
323 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時27分50秒


「っくしゅん!」


『ぅん…?』

朝一番、大きなくしゃみの音で目が覚めた。
眠い目を擦りながら愛の方へ行くと頬を赤くしていた。
覗き込むとなんだか目も虚ろ。
眠たそうなんじゃなくて…具合が悪そう。

『もしかして…』
「うん…」
『……やっぱり、風邪ひいた?』
「うん…」
『しょっぱなから…』
「…ゴメン……」

昨日何も掛けないで寝ていたため案の定風邪を引いてしまった。
体温を測ってみると38度ちょっとあった。
愛は申し訳なさそうに布団を鼻まであげて顔を隠す。

『…しょうがないなぁ、あたしが探してきてあげるよー』
「え…?」
『街中飛んでみてー、良さそうな感じの人がいたら教えるー、みたいな』
「…うー…ん…?」
『あぁ!もう!ゆっくり寝てなさい!』
「はー…い」

麻琴は苦笑いを浮かべると昨日と同じく窓から出て行った。
その姿を見届けた後、愛はもう一度眠りについた。
324 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時28分36秒


『…とは言ってもねー』

麻琴は空を飛びながら道行く人々を眺めた。
(愛ちゃんってどんな人がタイプなんだろうなー?)

というか男を探した方がいいのか女を探した方がいいのか。

(吉澤さんは女だから女の人かな…?)
急降下して地面に降りた。
歩く人々はみんな麻琴の体を透り抜ける。

『…あんまりいい気分はしないねぇ……』

きょろきょろと辺りを眺めた。
ふと振り向くと一人の女の子とばちっと目が合った。
…と言っても実際向こうは麻琴の事は見えていないから合うはずないのだが。

『…あの人……結構良いんじゃない〜?』

近づいて顔を覗き込むとなかなかのカワイさ。
キリッとしてる姿はかわいくもあり、かっこいい。
麻琴も好きになりそうなタイプ。
でもなにやらソワソワして落ち着きがない。
ブツブツひとり言を言ってるし、かなり怪しい。
325 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時29分18秒
『なんなんだろう…?この人…』

疑問に思ってると遠くの方から誰かの声がした。
声の方向を向くとこれまたかわいい女の子。
その声に気がついた途端、キリッとした顔はふにゃっと緩む。
その姿もなんだか怪しい。

「みきた〜んごめんねー!待ったー?」
「亜弥ちゃん、20分も遅刻ー」
『おぉう?みきたん?亜弥ちゃん??』

【みきたん】と呼ばれたこの人と【亜弥ちゃん】と呼ばれたあの人。
2人は仲良く手を…いわゆる恋人繋ぎをして何処に行くかの相談をしている。
ものすっごいいちゃいちゃしてて誰かが入れそうな隙間は微塵もない。

『恋人同士ですかー。残念』

麻琴は別の所へ行く事にした。
326 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時29分52秒


一方、愛はと言うと…。

「うー…体おもぉい…あつぅい…」

部屋から這いずるようにキッチンに出てきて水を一口飲む。
冷たい感覚が喉を通って少し気持ちよかった。
時計を見ると時計の針は2時を回っていた。

「…遅いなぁ、麻琴ぉ…どこまで探しに行ったんだろぉ…」

人の心配なんかしてられる程余裕がなかった愛はすぐにベットの中へと戻った。
そしてぼぅっと天井を見つめながら思った。

(…麻琴って一個下なんだよねぇ…)
(て言う事は高1…?でも学校で見たことないから違う学校なのかなぁ…)

「んぅー……」

もう一回体温を測ってみたらさっきよりも上がっていた。
思わず絶句。
無言で体温計を見つめた。
けれど表示されてる数字が下がるわけでもなし。

「寝よう…………」

もう一度目を閉じた。
327 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時30分39秒


少し飛び回りすぎて疲れた麻琴はベンチに座っていた。
行き交う人々はみんな忙しそうでのほほんと座っている自分に少し苦笑いを浮かべた。

『タイプ聞かなかったのはまずかったなぁ…、全然わかんないや』

一人で探しに来たのはあまり意味がなかったかもしれない。
そう思ってきた。
ぼーっと前を見てると急に視界に人が映り自分の上に誰かが乗ってきた。

『うわあ!』

融合のようになってしまって慌ててベンチから立ち上がった。
女の子がたくさんの荷物を横に置いてジュースを飲んでいる。
表情は疲れていてため息をついている。

『…かわいいじゃん。年上かなぁ?…それにしてもちっちゃ…』
「矢口!まだ終わってないよ!」
328 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時31分11秒
振り向くと不満げな表情の女の子。
その子の手にもたくさんの荷物。
(…この街はかわいい人だらけですねー)

「なっちまだ買うのー?もうオイラ疲れたよー」
「荷物持ちでいいからデートしてくださいって言ったのはー?」
「…オイラです」
『…パシリ?』
「じゃー今度はあそこの店行くよー」
「はー…い」

可哀想な矢口さんは張り切って歩いていくなっちさんの後ろをとぼとぼとついて行った。

『恋人にもいろいろな形があるんだなぁ…なんだかいろいろ勉強になったかも』
(あたしとあさ美ちゃんはどんななんだろう?)

二人が去って行った後も愛ちゃんの恋人候補を探してみた。
が、探すも何も何を探しているのやら自分でもよくわからなくなってきた。

『あ、そうだ!愛ちゃんの学校行って吉澤さんを見てみよう。タイプがわかるかも』

時計を見ると4時すぎ。
まだ学校に居るかも。
麻琴は愛と初めて出会った学校へと向かった。
329 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時32分17秒
学校に着くと下校中の生徒もちらほら。
もしかしたら帰った恐れもあり。
麻琴は校内を探し始めた。
廊下を歩いていると前からきゃーきゃー騒ぎながら走っていく女子生徒が数人。

「吉澤先輩かっこいいよねー!」
「バスケしてる姿も素敵ー!」
『バスケ?バスケ部?』

麻琴は体育館へと走った。
取り巻きのせいで中が全然見えない。
歓声は全て吉澤へ向けられている。

『こうゆう時は便利だねぇ』

人を透り抜けて中へ入った。
声援のせいもあるけどなんとなく吉澤が誰なのか麻琴はわかった。
かっこいい。そしてずば抜けてうまい。
みんなが下手なのか吉澤が上手いのか。
あまりバスケには詳しくない麻琴の目から見ても差は歴然だった。

『…ていうか、愛ちゃんこんなライバルたくさんの人に告白したんだ…』
330 名前:Remember 投稿日:2003年04月20日(日)21時32分57秒
近くで見てみたかったがいくら透り抜けると言っても試合中の中に入る気にはなれなかった。
麻琴は練習が終わるまで体育館の隅っこでその様子を見ていた。
その間、一つ気になった。
吉澤が点を入れるたびにちらりとどこかを見ること。
そんな大げさに見るわけでもなく目線だけを向ける感じ。
目線の先には女の子らしい女の子が吉澤を見て微笑んでいる。
多分マネージャーだと思われる。

『…なーるほど』

麻琴はにやりと笑みを浮かべた。
吉澤の好きな人というのは多分あのマネージャー。
で、マネージャーは吉澤を見てる。

『ていうか恋人同士じゃん、どう見ても』

吉澤の手首には黒のNIKEのロゴ入りのリストバンド。
そして相手の手首には見えにくいが白のNIKEのロゴ入りのリストバンド。
周りの連中は気がつかないんだろうか。
…そして愛ちゃんも気がつかなかったんだろうか。
練習を見ながら麻琴はそう思った。
331 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月20日(日)21時42分59秒
毎日は無理かもしれないけど一日おきのペースで
書けたらいいなぁとか思ってる次第であります。…出来たら。

321>名無しどくしゃ様
ドキドキして下さい!(w
私がドキドキさせます(爆 私も名無しどくしゃ様大好き!(寒

322>チップ様
床ズレ(w
確かに心配だ(w
おがたかときたらこんも出さないとねー。
最高!小高紺!
332 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月21日(月)14時34分06秒
更新お疲れ様です。
マコの独り言楽しいw
愛たん苦しそうだよ愛たん
333 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月21日(月)23時11分33秒
さりげなくみきあやとなちまりが!
続きが気になります。頑張って下さい!
334 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月21日(月)23時12分58秒
ageてしまった!
作者さんスマソ…
335 名前:Remember 投稿日:2003年04月22日(火)19時25分29秒
練習が終わったようでみんな体育館から出て行く。
取り巻きも一気に吉澤についていくが吉澤は逃げるように早歩きで出て行った。
キャーキャー騒ぐファン達にニコリともせずに。
愛想のない吉澤は大人気なようだ。

『…クールな方なんですね〜。まぁ確かにかっこいいけど…』
(あたしはやっぱり可愛い方が…)

吉澤は部室に着くとさっさと着替えて出て行った。

「お疲れ様でしたー」
「ひとみ、おつかれー」
「先輩!お疲れ様でした!」
『あれ?一緒に帰らないのかな』

あのマネージャーは携帯を持って何かをしている。
麻琴のターゲットはとりあえず吉澤なので吉澤についていった。
どんどんひと気のない校舎の中に入っていく。

『どこ行くんだろ、帰らないのかな?』

なにやら携帯を取り出してメールを打っている模様。
3年C組と書かれたプレートのかかる部屋に入っていった。
疑問に思った麻琴だがしばらく様子を見ることにした。
336 名前:Remember 投稿日:2003年04月22日(火)19時26分01秒
程なくして一人の女子生徒が教室に入ってきた。

『…あ!』
「ひとみちゃん!」
「梨華ちゃぁ〜ん!!」
『へ?』

さっきまでのクールな吉澤はどこへ行ったのやら。
無愛想な表情が一気に変わる。
頭を撫でてもらって甘えている。

「ひとみちゃん、かっこよかったよー!」
「そうでしょう〜?もっと褒めて〜!」
『………詐欺だ』

多分、犬だったら尻尾をぶんぶん振っているだろう。
本性はこっちなんだろう、麻琴は思った。
2人が携帯を持っていたのもここでの待ち合わせ。
いちゃいちゃしてる2人を見てなんだかよくわからない気持ちがふつふつと湧き上がってきた。

愛ちゃんはこの人に振られて飛び降りようとしてたんだよね…。
そりゃわかるよ、恋人が居るんだもん。そりゃ断るよ。
…でもさ。
337 名前:Remember 投稿日:2003年04月22日(火)19時26分44秒
『愛ちゃんの気持ちも考えてやれよー!!』

吉澤を殴るがすり抜ける。

『飛び降りするくらい好きだったんだぞー!!』

すり抜ける。

『昨日の今日なんだからいちゃいちゃするの自粛するとかー!!』

すり抜ける。

『……………』

声は届かない。
立ち尽くす麻琴を尻目に二人の世界は甘い世界。

『もう帰ろう………』

その場を後にした。
出て行くときに聞こえた言葉。

「梨華ちゃん好きだよ〜?」
「あたしもー!」




『はいはい……』
338 名前:Remember 投稿日:2003年04月22日(火)19時27分20秒


部屋に戻ると愛は椅子に座って何かを見ていた。

『ただい………』

言いかけてやめて愛の後ろに回りこんだ。
愛が見ていたのは吉澤とバスケットボールを持って写っている写真。
取り巻きに見せていたような無愛想な顔。
それでも隣の愛は嬉しそうな、緊張してるような、そんな表情。

『……ただいま』
「ぅわあ!!びびびび、びっくりしたぁー!…帰ってきたならもっとはやく声掛けてよ!」
『あー、うん』
「ぎゃ!」

麻琴の方は見ずに必死に写真を机の中へと隠そうとする。
引き出しに指を挟んで痛がっている。
その行動が麻琴の心をチクリと刺す。

『…大丈夫?指』
「うん…」

少しの沈黙。
その沈黙を破ったのは愛だった。
339 名前:Remember 投稿日:2003年04月22日(火)19時27分58秒
「…あたしの恋人候補さんは見つかった?」
『いや、タイプとか聞いてなかったから誰がいいのかわかんなくて』
「あー、そうだよね」
『…だから、吉澤さん、見に行ってきた』

【吉澤】という言葉に少し反応した。
それでも愛は表情を変えずに「そう」と呟いた。

『…恋人居た事知ってた?』
「……石川先輩でしょ…、知ってたよ」
『でも好きだった、と』
「でももうなんとも思ってないからね!」

笑って言うけど笑ってない。
依然麻琴の方は見ないまま。

『……そーかぁ。ねぇ!凄いんだよ、吉澤さん。その…石川さんの前じゃ犬みたいでさ』
「………」
『取り巻きの前じゃクールに決めてるけど…あれ詐欺だよねー』
「………」
『でれでれしちゃってかっこ悪いったらありゃしない』
「………」
『あんな人より愛ちゃんにはもっといい人が……』
「麻琴!!」

握られた愛の右手がふるふると震えていた。
340 名前:Remember 投稿日:2003年04月22日(火)19時28分28秒
「吉澤先輩の事悪く言わないで…!」
『……なんとも思ってなんでしょ?じゃあいいじゃん』
「でも!」
『…愛ちゃんが進まなきゃ恋人なんてできない。幸せにもなれないよ』
「…好きだったんだもん!すぐに忘れるなんて出来ない!」

また沈黙。
そしてそれを破ったのはまた愛。

「…出て行って」
『…はぁ?』
「大体なんなの!幸せ幸せって!麻琴にそんな事される筋合いもないし、言われる筋合いもない!」
『………』
「早く出て行ってよ!…あたしはあたしで幸せ探すから!!」

麻琴は何も言わずに出て行った。
一人取り残された愛はやりきれない気持ちでいっぱいだった。
八つ当たりって事も分かっていた。
麻琴は今日一日自分のために飛び回ってくれていた事も。
言い過ぎたって事も。

「………麻琴…?」

振り向くと麻琴の姿はない。
当たり前だ。自分が出て行けと言ったのだから。

「麻琴………」




笑顔で頑張ろうと言ってくれていた麻琴はそこには居なかった。
341 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月22日(火)19時34分53秒
展開が速いんですよね、私が書くやつって。
分かってはいるのですが…。

332>名無しどくしゃ様
なんだか小川さんの出番が多そうです。
そのうち高橋さんも出しますんで…お待ちを…。

333&334>名無し読者様
なちまりとみきあやは押しCPなものでちょこっと出しました。
age、sageは特に関係ないので気にしないでくださ〜い!
342 名前:空海 投稿日:2003年04月22日(火)22時56分01秒
うにゃー!!
こちらではお久しぶりです!
やばいですよ!修羅場に涙しちまいました!
ごーしゅさんもう最高ですよ!
爪の垢煎じてのんじゃいたいですよ!
そしてなちまり!みきあや!
文才をわけてほすぃです…ほんと…
ハイテンションなレスで申し訳ない…(汗
343 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月23日(水)18時36分44秒
ノォオォオオオォオオ!!マコターン!w
ヤバいよヤバイよ待っちゃうよハァハァ…
344 名前:Remember 投稿日:2003年04月25日(金)21時03分34秒
『うーん…』

出て行ったもののどうすればいいか分からない。
気がついたら雨も振り出した。
濡れる事はないし、寒くもないけれど困った。

愛ちゃんを幸せにする事ができない=元に戻る事ができない
元に戻る事ができない=そのまま死…

考えた頭をぶんぶん振って打ち消した。

『けんかとかしてる場合じゃないんだけど…』

雨は次第に強く振り出した。

少し調子に乗りすぎたかもしれない。
元気を出して欲しかったからおもしろおかしく話してみたけど愛ちゃんはまだ傷ついていたんだから。

『女の子の気持ちってむずかしい…』
(…ていうかあたしも女だけど)

とりあえずこれからどうするかが問題で。
出て行けといわれたから出てきたもののやっぱり戻るしかなくて。

『…もうちょっとしたら帰って謝ろう』

麻琴は人ごみの中へと姿を消した。
345 名前:Remember 投稿日:2003年04月25日(金)21時04分16秒


「………」

手の中にはさっきの写真。
慌てて机の中に入れたもんだから少しくしゃくしゃになった。
めちゃくちゃ笑顔の愛と真顔の吉澤。

【……そーかぁ。ねぇ!凄いんだよ、吉澤さん。その…石川さんの前じゃ犬みたいでさ】

…見た事があった。
石川と一緒の所。みんなには見せた事がないくらいの笑顔。
振られるなんて百も承知だった。

「あたしには…吉澤先輩をあんな表情にさせる事は出来ない…」

写真にポタッと水滴が零れ落ちる。
泣きたくなくても零れてくる。

「な…、なんで泣くんだろ…」

顔は笑ってるのに。
愛は思い出した。
自分は泣くよりも先に飛び降りをしようとしてた事。
振られて、頭真っ白になって、気がついたらご丁寧に遺書付きで屋上に居て。

「…そっか。泣いてなかったんだ」

なんで泣かなかった?
こんなに辛くて苦しいのに。
346 名前:Remember 投稿日:2003年04月25日(金)21時04分46秒
「麻琴…?」

麻琴に会ったから…泣かなかった?
元気付けてくれたから?

昨日、麻琴が眠っていた所に目をやる。
もちろんそこには麻琴はいない。
もう帰ってこないかもしれない。

「あ…」

麻琴は帰ってくる。
あたしを幸せにしなきゃ元に戻れないんだ。
それなのに…出て行けと言ってしまった。
「がんばる」と言ったのに。

「………」

愛は上着を取り出してそれを羽織り、部屋を飛び出した。
…熱があることも忘れて。





『…ただいま!ごめんね!愛ちゃ……、…あれ?いない…?』

麻琴が戻ると部屋に愛の姿はなかった。
347 名前:Remember 投稿日:2003年04月25日(金)21時05分41秒


「はぁ…はぁ…」

探しに出たもののどこにいるのか皆目見当もつかない。
麻琴がどこに住んでる人なのかも分からない。
もしかしたらこのへんの人じゃないのかもしれない。
麻琴についての知識が全くない事に愛は気がついた。

「…どこに…いるの…?」

麻琴は空を飛ぶことが出来る。
もしかしたら今も空を飛んでるかもしれない。
空を見上げてもすっかり暗くなってしまった空は麻琴の姿を映してくれそうにない。
それにざあざあ降り続ける雨。

傘なんて持って出てこなかった愛は上着のフードを被る。
しかし雨は染み込んで熱で熱くなった愛の体を冷やす。
道行く人々は愛を物珍しげに見ている。

「…ごめん!麻琴ぉ!お願い!帰ってきて!!」

叫ぶが麻琴は現れない。
探すにも探せない。
範囲が広すぎる。
日本全国、いや世界中。
そして空。
地面の中にいるかもしれない。
頭もボーっとする。
思考能力が落ちてて何も考えられない。
348 名前:Remember 投稿日:2003年04月25日(金)21時06分38秒
「麻琴ぉ…」

一時間ほど探してみたが見つからなかった。
息をする事も苦しい。
愛は一時家に戻る事にした。
重い足取りで家に帰り、自分の部屋の扉を開ける。

『あ!愛ちゃ…どうしたの?!びしょぬれで!?』
「麻琴ぉ…?いた…」

膝からガクリと倒れた愛のもとへと麻琴は駆け寄る。

『どうしたの!?…もしかしてあたしを探しに…?』
「ごめ…んね、出て行けなんて言って…」
『なんで!?愛ちゃん悪くないよ!』

苦しそうに肩で息をする愛に触れようとするが掴む事は出来ない。
愛は眠るようにその場に倒れた。

『愛ちゃん!!』

……神様でも悪魔でもなんでもいい!
生き返らなくてもいい!
今!愛ちゃんを抱き上げてベットに寝かせてやりたい!
愛ちゃんに…触れたい…!
…なんでもする!

『…だから…今この瞬間だけでもこの願いを叶えてよ!頭に輪っかのせた変なおじさん!!』



麻琴は倒れた愛の前で叫んだ。
349 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月25日(金)21時14分40秒
早速一日おき更新できなかったわけですが…。
出来ない事は言わない事にします…。

342>空海様
空海さんキター!いつも読んでもらって嬉しいです!
空海さんのも激しく期待してますよ!
爪の垢は汚(ryので飲まないで(w

343>名無しどくしゃ様
高橋ピンチです!まこがんがれー!
しかし私雨ネタ好きだな(w
350 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月25日(金)21時18分29秒
雨が「降る」ですね…。
「振る」になってたや…。あはは…。
351 名前:チップ 投稿日:2003年04月26日(土)01時07分51秒
たっ高橋!?マコ、私の体をつかいなさいマコ!
ん?いりませんか…。
触れられないってのは切ないれすね、高橋ちゃん早く元気になってくらさい。
そんなワケで頭に輪っかのせた変なおじさんの活躍に期待ww
352 名前:麻ーチ 投稿日:2003年04月26日(土)12時22分41秒
感動しました…マコー!!
353 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年04月26日(土)16時07分03秒
雨ネタ好き。
またも良い所でお切りになるハァハァ…
じらされるのイイ!(w
354 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月27日(日)20時31分16秒
ちきしょう、泣かすなよ……。
ごーしゅさんが書かれる小川は可愛いですね。
続きを楽しみにしています
355 名前:Remember 投稿日:2003年04月30日(水)22時01分40秒


目を開けると天井が目に入った。
濡れてたはずの服もパジャマに着替えられていて、おでこには冷たく濡れたタオル。
そして左手には誰かの手の感触。
見てみると手を握ったまま眠る麻琴の姿。

「………触ってる…?」

温かいような冷たいような不思議な感覚。
でも確かに握られてる感触はある。
少し手を動かすとビクッと反応があった。

『……ん、…愛ちゃん!?大丈夫!?』
「うん、もう大丈夫だよ…、それより…」
『ん…?』
「手…、触ってるよね…?」
『うん、やっぱね、願い事って言うもんだと思った』
「…?」
『なんでもないよ。…ごめんね、愛ちゃん』
「…ううん、こっちこそ悪かったから…ごめんね、麻琴」
『…じゃあ、仲直り、ね?』

もう一度ぎゅっと手を握った。

『もうちょっと寝てなよ。熱…完全に下がったわけじゃないから。それにまだ夜中だし』
「………じゃあ、ずっと手を握っててくれる?」
『…わかったよ』

愛がそういうと麻琴は静かに頷き微笑んだ。
356 名前:Remember 投稿日:2003年04月30日(水)22時02分16秒
「……っ!」
『…?どうしたの?』
「な、なんでもない!」
『顔赤いよ?また熱上がったのかなぁ?』
「…ううん、寝る」
『うん…?』

顔を隠すように布団を深く被った。
顔が熱くなったのは麻琴を見てどきどきしたから?
…おかしいな。
なんでドキドキしたんだろう?
麻琴の事…。

手を繋いだまま布団をずらして様子を伺うと目を瞑ったままゆらゆらと揺れていた。
(ずっと看病してくれていたんだ…)
そういえばずっとあたしの為に飛び回っててくれてたんだ。
疲れてるよね…?
髪の毛を触ると手の中からさらさらとこぼれた。
長いまつげと少しだけ潤った唇。
それを見た瞬間、また鼓動が早くなる────。

「…わあ!わあ!わあ!!!」
『何!?どうしたの!??』
「…………なんでもない」
『…なんでもないなら大声出さないでよー、びっくりするじゃんか。もう寝なってば』
「…う、ん」


…なんだか眠れそうにないんだよ、麻琴。
357 名前:Remember 投稿日:2003年04月30日(水)22時02分50秒


鳥の声と枕元に射す光で目が覚めた。
時刻は7時。
横を見ると麻琴はいなかった。
(昨日のは夢!?)
どたどたと階段を降りると台所に麻琴が立っていた。

『…あ〜、おはよー。…その様子だと元気そうだね。…お、…やっぱり』
「………??」

麻琴はフライパンを右手に持った。

「何がやっぱりなの?」
『いやぁね、愛ちゃんにご飯でも作ってあげようと思ったんだけど全然物が掴めないんだよね』
「うん…?」
『どうやら愛ちゃんが近くにいないと掴む事とかできないみたい』
「…え?じゃあおでこに乗せてたタオルとかはどうしたの?1階に降りなきゃでしょ?」
『2階に上がってきた愛ちゃんを1階まで連れてって、濡れた服を着替えさせて、洗面器とタオルを持ってまた愛ちゃんをおぶって上がった』
「…なんでそんなめんどくさい事を…」
『だからその時も離れたら掴めなかったの!』

……ていうか。

【着替えさせた?】

って言った今?
358 名前:Remember 投稿日:2003年04月30日(水)22時03分23秒
………。
病人だったわけだし…深くは考えない事にしよう…。

『今から作るからさ、近くに居てよ』
「あたしも手伝うよ!」
『病人はじっとしてなさい!』
「…はい」

麻琴の横で見ているととても慣れた感じでどんどん作っていく。
大分慣れてる。

「ほー…」
『何?』
「料理できるんだー、と思って」
『失礼だなぁ、出来るよ、これくらい』
「へー…」
『よく一緒に料理とかしてたし』
「…?誰と?」
『…………彼女と』
359 名前:Remember 投稿日:2003年04月30日(水)22時03分56秒
小さい声で呟くとぷいっとそっぽ向いてしまった。
そっと覗き込むと頬が少し赤かった。
照れるんだったら【彼女】とか言わなきゃいいのに。
そうかー、恋人いるんだっけ。
麻琴って。

「ねぇ?」
『さっきから…黙って待ってられないんですか』
「麻琴を見てみたい」
『はぁ?見てるじゃん』
「じゃなくて、実物の方。病院に寝てる方」
『…同じだよ』
「よーし!決定!今日は麻琴の病院へ行きまーす」
『え!?風邪は?』
「治りましたー」

麻琴はあたしを見て呆れたような表情をしたがすぐに笑ってた。
あたし、麻琴の笑顔って好きなんだ。
360 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年04月30日(水)22時16分25秒
レスいっぱいでありがたいです!

351>チップ様
是非チップ様の体をマコに…(w
頭に輪っか乗せた変なおじさんは登場しませんでした(w

352>麻ーチ様
麻ーチ様ってあの麻ーチ様でしょうか(謎
マコ必死だよマコ

353>名無しどくしゃ様
じらしちゃいましたね、フフフ(w
雨ネタは書きやすいです。
というか今までの作品見たらやっぱ雨ネタ多いことに気がつく…。

354>名無し読者様
小川さんかわいいですか!
おかしいな、かっこよくさせてるつもりが(w
私が書く小川さんはかなりヘタレですからね(w

えーと、諸事情により少し更新が遅れるかもです。
かも、というか遅れます、すみません…。
361 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年05月01日(木)17時59分45秒
微笑ましい…癒されるよぅ!!
更新、マターリ待ってますやよ〜
362 名前:麻ーチ 投稿日:2003年05月05日(月)22時09分18秒
二人ともほのぼのしてて可愛いよぅ。
麻ーチはあの麻ーチです(笑
363 名前:Remember 投稿日:2003年05月07日(水)09時08分06秒


半ば強引に病院行きを決定されてなんだかなぁって思う。
元気になったならいいけど…こんな事してる場合じゃなかったり。
時間が限られてる事、愛ちゃんに言ったらプレッシャーを感じてしまうんじゃないかと思って言ってないけど。
早く見つけないとあたし、元に戻れない。
そんなあたしの不安をよそに隣では何を着ていくか迷ってる愛ちゃんが居て。

「ねぇ?これの方が似合う?」
『…うん』
「やっぱこっち?」
『…うん』
「どっちなの?!」

『どっちでもいいよ…』

最後の一言が気に入らなかったらしく部屋から追い出された。
姿が見えなくなるとやっぱり何も掴む事が出来なくて、花瓶に入った花を取ろうとしても取る事は出来なかった。

『…これはこれで不便なものがあるなぁ』

ひとり言を言っていると部屋から愛ちゃんが出てきた。
…なんていうか、凄く可愛い格好で。
364 名前:Remember 投稿日:2003年05月07日(水)09時08分48秒
「ねぇ?似合う?可愛い?」
『うん…かわいい…』

素直に一言言っただけなのに目の前の愛ちゃんは一瞬にして顔を真っ赤に染めた。
そんなに露骨に照れられるとこっちも恥ずかしいんだけども。

『…じゃあ、行こうか』
「あ!ずるい!」

宙に浮かぶと服の裾を掴まれた。

「歩いて行こうよー」
『えー…、だってせっかく飛べるのに…』
「いいからいいから」

いつのまにかペースが愛ちゃんに取られてる気がする。
家のドアを閉めた時、あることに気がついた。

『そうだ、愛ちゃんが一緒だと姿は見えないけど実体化するみたいだからやっぱり浮かんでおくよ。人にぶつかったりするかもしれないし』
「そっかぁ、それもそうだね」

愛ちゃんと話をして前を向くと近所のおばさんが不審そうな顔で愛ちゃんを見つめていた。

『……会話はしないほうがいいかも』
「……そうだね」
365 名前:Remember 投稿日:2003年05月07日(水)09時09分26秒


病院へ行く途中の道は愛ちゃんを魅了するモノで溢れかえっているみたいで予想以上に時間がかかりそうだ。

『……まだぁ?』
「(もうちょっと!)」

小声で話してるものの…小声の方が怪しさを増すような気もするけど。
本人があまり気にしていないようなので良いとしようか。
愛ちゃんは気に入った洋服があったようでその場から離れようとしない。
あたしはわりと気に入ったものがあったらそれ!ってすぐ即決するタイプだからこういう買い物ははっきり言って苦手だ。
そんな事を言ったらまた怒られそうなので黙って様子を見ていた。

『はぁ………、……ん?』

洋服を見ている愛ちゃんの後ろに3人の男の影。
なにやらひそひそと話している。
1人の男が愛ちゃんの隣にやってきた。
真上にあたしが浮かんでいることも知らずに。
366 名前:Remember 投稿日:2003年05月07日(水)09時10分06秒
「ねぇ?1人?良かったらさぁ、一緒に遊ばない?」
「…え?」
『…え』

…ナンパ?
その男は愛ちゃんの手を掴み連れて行こうとする。
手に持っていた洋服がハラリと地面に落ちた。

「や、やめてください!」
「いいじゃん暇なんでしょ〜?」

いつの間にか遠くにいた2人も近くに寄ってきていた。

「ちょっ…、やだってばぁ!」
「いいじゃんか!」

…まぁ、この光景はあたしの足元で起こっているわけで。
この後あたしがとる行動と言ったら…これしかないでしょう。
思いっきり右足を振り上げて1人を蹴っ飛ばした。
男は数メートルぶっ飛んでった。
蹴られた本人は倒れたまま。
隣に立ってた男達は唖然。
愛ちゃんも目を丸くして立っている。

そして、3人男は店から即効で出て行った。
「幽霊だー!」とか叫びながら。
…幽霊とは心外なんですけど。
その後姿を見送った後、愛ちゃんの方を振り向くと、また洋服を見ていた。
367 名前:Remember 投稿日:2003年05月07日(水)09時10分43秒
『……一体いつになったら病院にいけるんだか…』


あたしの嘆きは彼女には届いてはいないようだ。
…と思ったら。

「(麻琴、麻琴!)」
『…んぁ?』
「(もう見終わったから行こう?)」
『うん』

店から出る時はもともと持ってた鞄以外手ぶら。
あれだけ長時間見ておいて何も買わないのは何故なんでしょう?
女の子ってこうゆうものですか?
368 名前:Remember 投稿日:2003年05月07日(水)09時11分14秒
「(ねぇ?)」
『ん?』
「(さっき、かっこよかったよ)」
『そ、そう…』
「(助けてくれてありがとう)」

愛ちゃんの言葉に深い意味なんて無いのはわかってるはずなのに。
なんでこんなにもドキドキするんだろう。
…あぁ、そうか。人なんか蹴っ飛ばしたのなんてはじめてだもんね。
それできっとドキドキしてるんだな。そうだ、きっと。

「(麻琴?行こう?)」
『あー、うん』


とりあえずやっと病院にいけるので深い事は考えないでおこう。
369 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月07日(水)09時20分19秒
更新終了〜。

361>名無しどくしゃ様
癒されますか!
更新に時間かかってすみません。更新量少ないのにね…。

362>麻ーチ様
うおぅ!初めまして(?)見てました!某板作品!
うわぁん、こんな駄スレにレスありがとうございます…!
感謝…。
370 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年05月07日(水)21時57分33秒
更新お疲れ様です。
マコかっけー!ヘタレなのにカッケー!

>>…あぁ、そうか。人なんか蹴っ飛ばしたのなんてはじめてだもんね。
ここワラタ
371 名前:Remember 投稿日:2003年05月17日(土)14時31分44秒


建物の中に入るとさすがに天井が低くて、誰彼構わず蹴ってしまいそうなので降りた。
とりあえずぶつからないように人をよけながら。
人が一生懸命すり抜けて歩いてるのに隣ではくすくすと笑い声。

「(麻琴、歩き方変)」
『しょうがないじゃん、よけなきゃなんだか…わっ!』

曲がり角を曲がった時女の子とぶつかった。
倒れてしまった女の子をまさか起こす事も出来ずそのまま見てると女の子は顔を上げた。
その顔を見た時、一瞬時間が止まった気がした。
愛ちゃんが心配して声を掛けているのが遠くの方から聞こえた。
そしてその光景もなんだか遠くの方で起こってるように見えた。

「大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です…、あれ?変だなぁ?何かにぶつかったと思ったのに」
『…あさ美ちゃん』

あさ美ちゃんは疑問を残した表情をしながら、愛ちゃんにぺこりと頭を下げてあたしの横を通り過ぎて行った。
あさ美ちゃんが気に入ってると言っていたシャンプーの香りがした。
372 名前:Remember 投稿日:2003年05月17日(土)14時32分56秒
できれば…腕を掴んで、あたしはここにいるよって教えたかった。
隣にいるよ、って。
でもそれはできなかった。
あさ美ちゃんにはあたしの姿は見えない。

「(麻琴?どうしたの?)」
『…なんでもない、早く行こう』

つかつかと先に歩くあたしを愛ちゃんも足早に追いかけてきた。

もし、さっき通り過ぎる手を掴んでいたらどうなっていただろう。
愛ちゃんから事情を説明してもらってあさ美ちゃんに触れる事が出来たら…。
…そんな非科学的な事は誰も信じない。
あたしは実際宙に浮かんだり愛ちゃん以外には見えなかったり信じざるおえない状況下にいる。
愛ちゃんもそれを目のあたりにしてるから同じ事。
でもあさ美ちゃんには何も見えない、聞こえない。
例え事情を話して触れたとしても気持ちが悪いだけだ。

『……っつ………』
373 名前:Remember 投稿日:2003年05月17日(土)14時33分31秒
あたしは何をしてるんだ。
こんなことしている場合じゃないんだ。
早く戻らないと…!
あさ美ちゃんに…会いたいよ…。

「(ここ?病室…)」

終始無言で歩いていたあたしに申し訳なさそうに愛ちゃんは聞いてきた。
さっきまで明るかった表情もなんだか暗くなっていた。
それが自分のせいだとあたしはわかっていたから無理矢理にでも笑顔を作った。

『そ…うだよ!ここが病室。っていうかさー、あたしはここにいるんだから意味無いって言ってるのにさー』
「…いいの!早く入ろう!」

大声で叫ぶもんだから周りの入院患者は驚いていた。
が、ここは大きな病院。
外科、内科、小児科等の他に…精神科。
みんな「あぁ…」と納得したような表情で通り過ぎて行った。

『…愛ちゃん、多分勘違いされてるよ』
「………」
374 名前:Remember 投稿日:2003年05月17日(土)14時34分03秒
扉を開けて部屋に入るとベットの上で眠る自分がいた。
初めは「信じられない!もう二度とこんな体験はできない!」と少しは感動と喜びがあった。
でもあさ美ちゃんの姿を見た瞬間初めのような感情はなくなった。
そして今の境遇を呪った。
死ぬよりは良いかもしれない。
死んだら二度と会えないし。
でも自分がいることを気がついてもらえないのは辛い。

「麻琴…だねぇ〜」
『…へ?』
「いや、だからやっぱり麻琴だな〜って」
『はぁ…』

…人が真剣に考えてるのにこの人は。
大体愛ちゃんが何とかしてくれないといけないんだけど!!
でも愛ちゃんへ怒りの感情はない。
なんだか肩の力が抜けたような気がした。
375 名前:Remember 投稿日:2003年05月17日(土)14時34分58秒
『ははっ…』
「何、急に?」
『なんでもないよ』

枕もとの横のテーブルの上には花が飾られていた。
まだ新しい花。
あたしは再度あさ美ちゃんへの想いを認識した。

「ぷにぷに〜」
『……』

あたしの頬を楽しそうに突付く愛ちゃんを見て本当に大丈夫なんだろうか、という疑問を残しつつ…。
376 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月17日(土)14時37分03秒
相変わらず短い更新で申し訳ない…。

370>名無しどくしゃ様
今回はへたれじゃないですね、マコ。
マコかっこ良いのも好きだよマコ。
でもへたれの方が好きだよマコ(w
377 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年05月18日(日)17時15分40秒
プニプニしてる愛たんに爆笑。
不安になってるマコに萌え(w
続き、飛び前転しながら待ってます。
378 名前:チップ 投稿日:2003年05月20日(火)15時01分32秒
高橋さん、プニプニもいいけど床ズレの確認を(ry
私くしもへたれマコ好きれすwってゆーかマコが好きれす。
マコよ、幸せに…☆
379 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月23日(金)21時53分58秒


さっきの麻琴の言葉をあたしは聞き逃さなかった。
隠したそうだったから何も言わなかった、聞かなかった。

         『…あさ美ちゃん』

きっとさっきのぶつかった女の子が麻琴の恋人の『あさ美ちゃん』。
表情が暗くなったのも気がついていた。あたしだってそこまで能天気には生きてない。
それでも麻琴は無理して笑った。でもきっと心は泣いてる。
ここであたしも気を使った言動をしたら麻琴が気にするだろうと思って深くは聞かなかった。
…違う、きっと聞けなかったんだと思う。
麻琴が話してくれてもきっとあたしには掛ける言葉が見当たらない。見つけられない。

『そろそろ帰らない?もう暗いしさ、愛ちゃんがあんなに長く買い物してるせいだけど…』
「…そーだね」

反論が返ってくるだろうと身構えてた麻琴はあっさりしたあたしの言葉に拍子抜けしてるようだった。
あたしは座っていた椅子から立ち上がり、窓の方へと歩いた。
そして窓を開けた。心地よい風が頬を通り過ぎる。
ドアの方に向かっていた麻琴はあたしの行動に疑問の言葉を投げかける。
380 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月23日(金)21時54分48秒
『出ないの?』
「…ちょっと、麻琴に話があるから先に行ってて!」
『はぁ?あたしならここに…』
「いいからいいから!」

ドアを開けて麻琴を追い出した。
すり抜けてこっそり入ってくる事も出来るだろうけど、
多分麻琴はそんな事はしないだろうと確信があった。
どうしてだかわからないけどそんな気がした。
今ここにいるのはあたしと眠り続ける麻琴だけ。
乱れる髪を直してもう一度ベットの隣においてある椅子に腰をかけた。
すぅすぅ、と呼吸の音が聞こえる。
生きてるけど生きてない状態。
眠る麻琴の髪を触った。指の間からさらさらと流れた。

「…早く、戻りたい?」
「…早く、…あさ美ちゃんに会いたい?」
「……元に戻ったら、もう、あたしとは会う事は無いの…?」
「あたしの事は、忘れちゃうのかなぁ…?」
「なんかそれって、寂しいよね…」
381 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月23日(金)21時55分21秒
どんなに話しかけても返事が返って事は無いけど聞きたかった。
本人には聞く事が出来ないから。
麻琴は元に戻ったら元の生活に戻る。
学校も違えば住んでる所も違う。
この病院だって3つ駅を通り過ぎた所。
きっとこの近くに住んでるはず。
遠いわけじゃないけど、こんな事が起こらなければきっと出会う事は無かった。

「麻琴と、離れたくないなぁ…」
「ねぇ、ずっとこのまま……、ううん、なんでもないよ」

あたし気がついてきたよ。
麻琴の事が好きなんだ。
一緒に居ると楽しくて、どきどきして。
おかしいよね、まだ出会って間もないのに。
でも麻琴、体元に戻らないね。
今、あたしにとっての幸せは麻琴といる事。
でも麻琴には恋人がいて。
…あたしが幸せになる事はあるかな…?
立ち上がり窓を閉めた。
風は止んだ。
382 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月23日(金)21時55分52秒
ベットを通り過ぎてドアノブに手をかけた。
けど、くるりと方向を変え麻琴の隣に行き、顔を覗き込んだ。
そして。

「…………」

キスをした。
どうしてかわからない。
したかったから、ただそれだけ。

ドアを開けると麻琴は窓の外をじっと見ていた。
なんとなく悲しそうで、その姿を見て悲しくなった。

『あ、愛ちゃん、なにしてたのさー』
「麻琴とお話してたんだよ」
『…ふーん、変なの。じゃあ帰ろう?』
「……麻琴はどこに帰りたい…?」
『え?なに?』
「…なんでもない。帰ろう」
383 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月23日(金)21時56分26秒
2人で並んで歩く帰り道。
相変わらず麻琴の歩き方はおかしいけどそんなのに笑える余裕もなく。
ひと気のなくなった道に出た時、麻琴は話し始めた。

『でもさ、どう体が戻るんだろう?愛ちゃんが幸せを感じた瞬間に戻るのかなぁ?』
「…さぁ」
『なんかさぁ、こういう話にありがちだけど記憶とかなくなるのかなぁ?今の時間の』
「…なくなるかもね」
『もしそうだったら寂しいな…せっかく仲良くなれたのに』
「じ、じゃあ!ずっとこのままっていうのは…」
『………』
「…ごめん。そんなわけにはいかないよね」
『…ごめんね』
「麻琴が謝る事じゃない」
『記憶がなくなっても会いに行くよ』
「ん、ありがとう」
『とりあえず元に戻らないとなぁ。頑張ろうね、愛ちゃん』

麻琴はあたしの手をぎゅうっと握った。
神様お願いです。
もし元に戻ったらまた麻琴と会いたいです。
記憶がなくなるとか、そういうオチだけはやめてください。
384 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年05月23日(金)22時05分30秒
あ、名前のまま更新してしまった。かっこ悪。

377>名無しどくしゃ様
飛び前転!頭打たない様に気をつけてください(w
今回高橋さんが切ないです。修学旅行良いなあ〜。

378>チップ様
床ズレ(wかなり気になってますね(w
多分大丈夫でしょう(w
マコも高橋も幸せになるんでしょうか。

記憶がなくなるかそのままかは神様(私)次第です(w
385 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年05月27日(火)19時52分26秒
か、カミシャマ!!
切ないよ!せつな過ぎるよ!
愛たーん・゚・(ノД`)・゚・
386 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時35分04秒


『…………』

…あれから何の変化もなく二ヶ月が過ぎた。
相変わらず愛ちゃんの幸せは見つからなくて宙に浮かぶ毎日が続いた。
あたしの目から見て愛ちゃんは真剣に幸せ(恋人)を探してるようには見えなかった。
それにいらだちも感じたけど、本人にその気がなければ無理強いする事は出来ない。
タイムリミットは刻一刻と近づいていた。

『愛ちゃん、幸せはみつかりそう?』
「うーん…まだ…」
『はぁ…』

これは本当にあと一ヶ月であたしは死んでしまうかもしれない。
こうなったら愛ちゃんが気になる人片っ端からくっつけるしかなさそうだ。
あたしは本当に切羽詰ってた。

『今好きな人とかいないの?』
「……」

否定しないところを見ると好きな人がいるんだ。
387 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時35分54秒
『だれ?誰なの?』
「……教えない」
『教えてくれなきゃ協力できないし、あたし元に戻れないじゃん』
「……」

最近わかったこと。
あたしが「元に戻りたい」という意思表示をするとなぜか愛ちゃんはむっとする。
その理由がイマイチわからないけどあたしは早く元に戻りたい。

『ねぇ〜、その好きな人のところに行ってみようよ〜』
「…ダメ」
『なんでさ?』
「…ダメなものはダメ」

どうしたらいいかわからなくて、腹が立ってわざとらしく大きなため息を吐いた。

『…ちょっと出かけてくる』

いらいらしてる気持ちを落ち着かせるために窓から外に出た。
愛ちゃんの声が聞こえたような気がしたけど聞こえないフリをした。
388 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時36分46秒
『こんな時は飛び回って苛立ちを無くすしかないなー』

太陽に向かって一直線に上昇した。
眩しくて目を瞑ったけど、風が気持ちよくて身を委ねた。
こんな心地よいのは久しぶりだ。
あさ美ちゃんの膝枕で眠った時以来かも。
そんな事を思ってたあたしの頭はピーンと閃いた。

『そうだ!あさ美ちゃんに会いに行こう!』

あさ美ちゃんの家へと急いで向かった。
何回か行った事はあるし、空を飛んでるからか予想外に早くついた。
家の前で降りてインターフォンを押そうとして押せない事に気がつき苦笑い。
不法侵入だとは思いつつ、二階の窓からすり抜けてはいるとあさ美ちゃんの姿はなかった。

『あ、れ?学校かな?や、でも学校はもう終わってるし……。…病院?』

もしかしたらあたしのお見舞いに行ってるかもしれない。
あたしは病院に向かう事にした。
病院に行く途中、学校の上も通るので久しぶりに学校も見て行くことにした。
389 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時37分36秒
『…どうせ暇人だしね。まぁ暇でもないんだけど…』

学校のグラウンドの上空に来て下を眺めると部活動中の生徒達の姿が見えた。
でもあたしもあさ美ちゃんも部活には入ってないからこんな時間まで学校にいることは滅多にない。
いつもなら放課後デートの真っ最中だ。
なんだか新鮮に感じたので降りてみてその辺を見て回る事にした。
愛ちゃんもいないので人にぶつかる心配もないし。
放課後で誰も居ない教室に入った。薄暗くてなんか怖かったけど見慣れた自分の机と椅子。
すり抜けるので座ったり出来ないけど久しぶりで懐かしくて触れてみた。

『…触れられないけどね!』

頭の中で愛ちゃんが「あたしがいないと触れないでしょ!」ってつっこみが聞こえた気がしたので答えてみた。
誰にも聞こえないけどね!
もう一度心の中で自分につっこみを入れた瞬間、教室の扉が開く音が聞こえた。
振り向くとその人物は担任の保田先生だった。
390 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時38分21秒
『うわっ、ケメコだー』

ケメコというのはうちらの間でこっそり呼んでる保田先生のあだ名。
目力があって怖く見えるが喋ってみると天然ボケなおもしろい先生。
保田先生は乱れた机や椅子を綺麗に並べ直している。
そして今あたしが立っている横の席、つまりあたしの席に来た。
学校に来てないから特にあたしの席は乱れてないんだけど保田先生はちゃんとあたしの席も直してくれた。
手が止まりぼうっと机を見つめている。

『?どうしたん……』
「早く、目を覚まして学校に来なさいよ、小川」

一瞬ビックリした。心臓が飛び出るかと思った。
けど目線はあたしを向いてないのであたしが見えてるという事はなさそうだ。
その後違う席を直して保田先生は教室から出て行った。
照れ屋でぶっきらぼうの先生だけどなんかあったかかった。
みんなあたしの事忘れてるんじゃないか、とか思ったけどそんな心配はいらなそうだ。

『ありがとー、保田先生。戻ってくるからね』
391 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時38分59秒
あたしも教室から出てぶらぶらとまた校舎を歩いた。
とりあえず階段を上がっていくと3年生の教室が並ぶ階についた。
あんまり来た事ないからわからなかったけど廊下の窓から眺める景色は結構きれいだった。
そのまま廊下を歩いていると一つの教室から話し声が聞こえた。
2人いる。1人は聞いた事がある声、もう1人は…?

『あさ美ちゃん…?』

中に入ると椅子に座って泣きながら話すあさ美ちゃんともう1人、
この人、あたし知ってる。
あさ美ちゃんちの隣に住んでる2つ年上の先輩。
あさ美ちゃんはいつも「お姉ちゃんみたいで頼りになるの」って言ってた。
あたしも何回か話した事がある。
頼ってるわりにはお互いの事を名字で呼んでる事にあたしは笑ったっけ。
近づいていくと会話が鮮明に聞き取れた。
392 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時39分52秒
「…麻琴ちゃん、もう目を覚まさないかもしれない…」
『……!』

そうか、あたしの事相談してたのか。
頼りになるお姉ちゃんだもんね。
2人のすぐ隣で会話を聞き続けた。

「このまま目を覚まさなかったら、あたし…」
「元気出してよ、紺野。小川はきっと目を覚ますから…」
「でも……」

沈黙した2人。ここにいるのは3人。あたしの声は聞こえない。
次に口を開いたのは先輩。

「…紺野をこんなに悲しませるなんて許せないな」
『……あたしだって好きでこんな状態になったんじゃないですよ先輩』
「あたしだったらこんなに泣かせたりはしない」
『………』
「いつも紺野のそばにいるし…」
393 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時40分31秒
『…ちょ…っと…?』
「小川と付き合う前から…紺野の事好きだったし…」
『はぁ…?』
「こんなときに不謹慎だとは思うけど」
「……後藤さん」
『ちょっと…やめ…』
「………」
『お願い、やめて…!』

あたしが隣にいることを知らない二人は、
あたしの目の前でキスをした。
あさ美ちゃんも抵抗しなかった。
首にまわされた後藤さんの腕と後藤さんの腰にまわされたあさ美ちゃんの腕。
めまいがした。吐きそうになった。ぐるぐるする。
ここにはいられない。
なんでだろう、こんなにあさ美ちゃんの事が好きなのに、
あさ美ちゃんに会うために頑張ってきたのに。
こんなんじゃ、

『意味が、ない』
394 名前:Remember 投稿日:2003年06月04日(水)19時41分18秒
2人をそのまま残して教室を出た。
本当は2人を引き離して後藤さんを殴りたかった。
なにするんだ!って、あたしのあさ美ちゃんになにするんだ!って。
…あたしの?あたしの、なのか?
後藤さんの?昔から後藤さんの?
今のあたしには2人を引き離す事も、怒る事もできない。
いなくなったらすぐに恋人の事なんて忘れるものなのかな。
寂しかったから?寂しかったからキスをした?
なんかもうわかんないや。
とりあえずもう…あたしが生きる意味は。
校舎から飛び立って愛ちゃんのいる家へと飛んだ。
395 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年06月04日(水)19時46分28秒
久しぶりの更新になってしまった…。

385>名無しどくしゃ様
愛たんせつねえ!そして今回は…。
修学旅行は楽しかったでしたか?(w
396 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年06月04日(水)19時47分20秒
隠し
397 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年06月04日(水)19時47分55秒
スマソ、もう一個
398 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年06月04日(水)21時53分18秒
マコたん…・゚・(ノД`)・゚・
作者様はどうしてここまで読者を切なくさせるのか!w
399 名前:Remember 投稿日:2003年06月11日(水)14時59分49秒


「怒って出て行っちゃた…」

好きな人は出来たよ。出来たけど。
好きな人のところに行ってみよう?…目の前にいるんだよ。
言えるわけないよ、麻琴が好きです、って言うの?
恋人がいるの分かってるのに言うの?付き合ってって?
あたしと付き合ってくださいって?
麻琴と付き合う事があたしの幸せだって?
答えはNO。付き合えません。わかってます。
という事はあたしも幸せになんてなれないし、麻琴だって元になんて戻れない。
しかもその後の空気はどうしろというの?
告白した後の空気は。
そのまま何も無かったように麻琴と一緒に恋人探せって言うの?

「…無理に決まってるじゃんかー!」
400 名前:Remember 投稿日:2003年06月11日(水)15時02分25秒
ベットに置いてあるかぼちゃのぬいぐるみを壁に投げつけた。
叩きつけられて横になってるかぼちゃのぬいぐるみはこの前麻琴と一緒にゲーセンに行った時、
UFOキャッチャーで取ったもの。
かわいいとは思えなかったけど麻琴が欲しがっていたので1200円も使って取った。
あたしといる時は物を触れる麻琴は寝るときは必ずぬいぐるみを抱いて眠っていた。
周りから見たらそれは宙に浮いてるようにしか見えないんだろうけど。
重い足取りで歩きぬいぐるみを拾ってベットの上に投げた。

それと同時に自分もベットへダイブ。
正直に言った方がいいのかな、それとも麻琴の事は諦めて他の人を探した方がいいのかな。
最初は「早く元に戻れるように頑張る!」とか言ってたくせに今では足を引っ張ってばっか。
日に日に麻琴が焦ってきてるのは感じてる。
あんな宙ぶらりんな状態がずっと続くなんてあたしだって耐えられないもんね。

「…がんばるかぁー…」

何であたしが好きになる人はみんな恋人がいるんでしょう…。
401 名前:Remember 投稿日:2003年06月11日(水)15時03分23秒
吉澤先輩といい、麻琴といい。そしてどちらもラブラブな仲。
なんでだよー、とかぼちゃに問いかけても答えは返ってくるはずもなく。
むなしいのと恥ずかしいのが合わさってバシバシとぬいぐるみを叩きまくった。

『…おぉーい、あたしのぬいぐるみ叩くのやめてもらえませーん?』
「ぅえ?」

うつ伏せになってた体をごろんと反転させると麻琴が宙に浮いてこっちを見ていた。
そしてあたしからぬいぐるみを奪い取るとよしよし、と子猫を撫でるように触った。

『よしよし、痛かっただろう〜あたしのかぼちゃん』
「かぼちゃんってなによー。しかもそれあたしが1200円も出して取ったんだから!
 しかも急に現れないでよ!大体あたしが一緒だと壁とかもすり抜けられないんじゃないの?」
『すり抜ける前は姿見えないじゃん。姿見えた瞬間はじかれるけどさぁ。
 ばーん、て。特に痛くないからいいんだけど。
 …しっかし1200円も使うとは愛ちゃん下手くそだよねー』
「なぁにぃ〜〜!!」

麻琴をポカポカ叩くと痛い痛い、って言いながらケタケタ笑った。
402 名前:Remember 投稿日:2003年06月11日(水)15時04分08秒
あれ、怒って出て行ったんじゃなかったっけ?って思ったけど楽しいので気にしない事にした。
2人で大笑いした後、急に麻琴は真面目な顔をしてあたしに話し出した。

『愛ちゃん、幸せ探し急かしてごめんね』
「え…?」
『そう簡単に見つかるものじゃないよね』
「…う、うん」

ほんと言うと目の前にいるあなたなんだけどね。
…とか言えるはずないだろう!

『愛ちゃんはもっとゆっくり、ちゃんと相手を見つけてよ。…愛ちゃんには本当に幸せになって欲しいから』
「う、ん」
『…いつまでもあたしが見守ってあげるからさ』

正直、嬉しかった。
麻琴はいつも早く戻りたい、そればかり言ってたのに。
しかもいつまでもあたしが見守るって…。
…あれ?でもそれじゃあ…。
403 名前:Remember 投稿日:2003年06月11日(水)15時04分50秒
「…麻琴元に戻れないじゃん」
『…ん?あぁ…まぁそれは気にしないでよ。別に愛ちゃんが幸せになればいつだって戻れるし』
「でもあさ美ちゃんに会いたいでしょ…?」
『あさ美ちゃんとの仲は会えなくたって不滅なんです〜』
「…あ、そうですか!お熱いですね!熱い熱い!」

おどけて言う麻琴に嫌味っぽく言うとふっと笑顔が消えてどこか寂しそうな表情になった。

『………ごめん、疲れたからもう寝るや』
「…え、あ、うん。おやすみ…」

麻琴はぬいぐるみを抱いたまま、部屋の隅に座り目を閉じた。
時計を見るとまだ7時を回ったばかり。
さすがにこんな早い時間に眠れないのであたしは電気を消して部屋を出た。

…なんだろう。
嬉しいのに何かが引っかかる。
麻琴は一緒に探してくれるんだよね?
ずっと一緒なんだよね?
でもどうして?あれだけ戻りたがってたのに?
あたしの事を思ってくれてそう言っただけ?
明るくなったり、暗くなったりするのは何で?

嬉しいのになんか喜べないよ。
404 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年06月11日(水)15時08分44秒
更新速度がどんどん遅くなってますねー。
申し訳ない…。一日おきで更新してた自分はどこへ…。

398>名無しどくしゃ様
2人とも切ないです。
私甘い話も好きですが切ない話の方が書きやすかったり(w
405 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年06月11日(水)16時40分38秒
もっと切なくしてぇー(ハゲワラ
なんで切ないのが好きなんだろぉ…ナンデダロー
406 名前:チップ 投稿日:2003年06月15日(日)22時02分54秒
・゚・(つД`)・゚・。
407 名前:Remember 投稿日:2003年06月16日(月)22時52分16秒


愛ちゃんが部屋を出て行った瞬間、手に持っていたかぼちゃのぬいぐるみは落ちた。
必死に拾おうとするけど無理だった。

『なんで…!なんで触れないんだよっ!』

なんで見えないんだ。
なんで聞こえないんだ。
なんであたしはこんな目に…。
…もう諦めた。
元に戻っても待っている現実があれならばあたしはもう生き返る意味はない。
このまま愛ちゃんと一緒に時が来るのを待って消滅してしまえばいい。
ポケットの中から計画の紙を取り出し、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。
そしてまた目を閉じて眠る努力をした。

目が覚めたのは2時間後くらい。
部屋が明るくなった事で目が覚めた。
408 名前:Remember 投稿日:2003年06月16日(月)22時53分00秒
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
『…ううん』
「…泣いてるの?」
『え…?泣いてなんか…』

ぽたっと瞳から零れ落ちた涙。
はっ、としてそれを乱暴に右手で擦った。

『あくびしたら涙出ただけ』

心配されないように、悟られないように出来るだけ笑顔で。
でもそれはとても不自然だったみたいで愛ちゃんの顔を曇らせた。

「何か、隠してるでしょ…?」
『…何にも隠してなんかないよ』

その言葉を言った後、あたしの脳裏にはさっき捨てた紙の事がよぎり、
なにげなくゴミ箱の方をちらりと見た。
愛ちゃんはそれを見逃してはいなかった。
409 名前:Remember 投稿日:2003年06月16日(月)22時53分43秒
「…?」

静かにゴミ箱に近づいていき、見下ろしたゴミ箱の中から小さく、
丸まった紙を取り出して中を見た。
止めれば良かったのかも知れないけど今のあたしにはそんな余力も残ってはいなかった。
最後まで読んだのか、愛ちゃんの手はわなわなと震えていた。

「何…これ…」
『…あはは、ばれちゃった。…まぁそういう事』
「だって時間まであと一ヶ月しかない…!」
『そう、だね』
「そうだね、じゃないよ!どうしよう…、だって…知らなくて…」
『あのね、もういいんだ。このまま消えちゃっても』
「……え…?…だって!あさ美ちゃんは!?あんなに会いたがってたじゃない!あさ美ちゃんだって…!」
『…もう、嫌いになっちゃったんだ。だからもう会わなくてもいいかな、ってね』
410 名前:Remember 投稿日:2003年06月16日(月)22時54分33秒
パァン!!
にこにこ笑いながら話すあたしに向かって愛ちゃんは睨み、あたしの右頬を思いっきり叩いた。
愛ちゃんの瞳からは涙がこぼれていて思わず手を伸ばして拭こうとするとその手も払われた。

「…麻琴、全然分かってない…!麻琴がいなくなったらあたしはどうしたらいいの?!」
『愛ちゃん…』
「麻琴がいなくなったら……!!」
『愛ちゃん』

泣き崩れて座り込んでしまった愛ちゃんをあたしは抱きしめた。
小さくて震えてる背中をただ何も言わずただ撫でるだけ。
そして頭の中にはあの紙をゴミ箱に捨ててしまった事の後悔。
いや、本当はこの事実に気がついて欲しかっただけかもしれない。
遅かれ早かれ、いずれは知ってしまう事実なのだから。
411 名前:Remember 投稿日:2003年06月16日(月)22時55分13秒
残り一ヶ月をどう過ごそうか。

『愛ちゃん、ずっと傍にいるから』

多分、居れないけど。

『幸せ探すの手伝うから』

多分、あと一ヶ月の間だけだけど。

『頑張ろうね』

ぐしぐしと鼻を鳴らす愛ちゃんの頭を撫でておでこにキスを落とした。
412 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年06月16日(月)23時00分24秒
短い更新についてはもう何も言うまい…。
そろそろラストに向かいそうです。

405>名無しどくしゃ様
切ないの好きなんですよね〜。
この話のラストも2通りあってどうしようか考え中なんですよ(w

406>チップ様
泣かないで!(w
きっと2人とも幸せに…!…なるのかなァ…(ぇ
413 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年06月17日(火)20時36分47秒
Σ(;゚д゚)モシカシテバッチョエンド…?
神様!2人をどうか幸せに!!(w
414 名前:Remember 投稿日:2003年06月27日(金)22時43分19秒


それからあたしは一生懸命幸せ探しをした。
麻琴を死なすわけには行かない。
自分のせいで麻琴が死んでしまう。
焦りとプレッシャーにも負けずに頑張った。
麻琴もそれとなくサポートしてくれた。
だけど前のような覇気は無く、何も言わずただ見ているだけの事が多かった。

運命の日まで一週間後に迫った時、あたしに恋人が出来た。
あたしの事を好きでいてくれて、とても優しい人。
これからこの人を好きになって幸せにならなければいけない。
…けれど思えば思うほど幸せには近づく事が出来なかった。

『…幸せじゃないんだね?』
「…え?」
『あたしが元に戻らないって事は、愛ちゃん幸せじゃないんだよ』
「……ん」
『焦らなくていいからさ、ゆっくりでいいか…』
「…だって!!あと一週間だよ!?一週間後、麻琴は消えちゃうんじゃないの!?」
『…ん、そうだね。でもさ、もう…』
415 名前:Remember 投稿日:2003年06月27日(金)22時44分02秒
麻琴は俯き、あたしに背を向けた。
何でこんなにも麻琴はやる気を無くしてしまったんだろう。
前、麻琴は言った。
あさ美ちゃんの事を嫌いになった、と。
でもその言葉は信じられない。
あれほどまでに好きだった人なのに急にどうして?

「…ねぇ?あさ美ちゃんにはもう会いたくないの?」
『……』
「どうして?」
『…だから嫌いになったって…』
「そんなの嘘!」
『…もう!放っておいてよ!あたしなんか!どうせもうすぐこの世からいなくなるんだよ!
 もう愛ちゃんに付きまとうこともないから安心してよ!もう嫌なんだ!生きる意味なんてないんだから!』

目の前の麻琴の目からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
こんなに泣いているのを見たのは初めてかもしれない。
だって、いつも麻琴は笑っていたのに。
416 名前:Remember 投稿日:2003年06月27日(金)22時44分41秒
「…何があったの!麻琴!…あたし、わかんないよ!前の麻琴、そんなじゃなかったじゃん!
 はやく元に戻りたい!っていつも言ってたのに…!」
『…もう……あさ美ちゃんは…あたしの事なんて、忘れたんだよ』
「…え?」
『一番見たくない現実を見てしまった。それは死ぬ事よりも辛い事。だからもういいんだ。
 あたしが今消えてなくなればあさ美ちゃんの事も許せるかもしれない』

麻琴の言ってる意味がわからなかった。
だけどあさ美ちゃんの事を嫌いになったわけではなさそうだ。
どうする事も出来なくて立ち尽くすあたしに麻琴は笑顔で言った。

『…最後の時まで一緒にいて欲しいんだけど』
「…!最後って!」
『お願い』
417 名前:Remember 投稿日:2003年06月27日(金)22時45分39秒
深く頭を下げて懇願する麻琴を見てどうしたらいいかわからなかった。
このまま麻琴と一緒に居れるのは嬉しい。けれどそれは後一週間の話。
あと一週間このままだったら麻琴はこの世から消えてしまう。
あたしはどうすればいい?

『…勝手な願いだって事も分かってるよ。すぐにうん、わかった、って納得できる話じゃない事も。
 知ってるんだ。このまま消えてしまいたかったら愛ちゃんの前から姿を消して一週間過ごせばいいって事』
「な…!?」
『愛ちゃんは今の恋人といても幸せじゃないんでしょ?もうこれから探そうなんて無理だよ。
 第一、自分の為に幸せを探さなきゃいけないのにあたしの為に探してるでしょう?
 人の事を考えながら自分も幸せになるなんて無理な話なんだよ』
「…っ!」
『勝手だけど、…最後は愛ちゃんと一緒に居たい』
418 名前:Remember 投稿日:2003年06月27日(金)22時46分32秒
大事なことをあたしは忘れていた。
麻琴の言ったとおりだ。
麻琴を死なないようにさせるんじゃ麻琴は元には戻らない。
自分が幸せになる事によって麻琴は元に戻るんだ。
あの紙を見てからあたしは自分の事よりも麻琴を元に戻す事しか考えてなかった。
自分の幸せなんかよりも麻琴の事だけを思ってた。
でもそれじゃだめなんだ。
気がつくのが遅すぎた。
違う。
だってあたしが好きなのは麻琴なんだもん。
周りを探したって幸せなんてどこにもない。
だって、あたしの目の前にそれはあるんだから。
419 名前:Remember 投稿日:2003年06月27日(金)22時47分24秒
「…麻琴」
『ん…?』
「あたし、麻琴が好き。麻琴があたしの幸せ。ずっと前からそうだった」

あたしの言葉に麻琴は目を丸くして固まった。
そしてその瞬間、麻琴の体は光りだした。

『…なんだ!?なにが!あ、愛ちゃん!!』
「…!麻琴!」

目を擦りながら開けると目の前にいた麻琴の姿はなくなっていた。

「…なんで…?あと一週間あるのに…?消えたの?麻琴?!」

何度名前を呼んでも返事は聞こえない。
シーンと静まり返った部屋でただ呆然と立ち尽くすだけだった。
420 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年06月27日(金)22時51分55秒
展開が速くて自分でもなんだか訳が分からなくなってきた…。
次回で多分ラストです。
完結したら落とします(w

413>名無しどくしゃ様
幸せになるでしょうか…?(w
(いまだにラストどうしようか迷ってる作者(w)
421 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月01日(火)19時56分05秒
(;´Д`)ハァハァ…
神様ヲイラも幸せにしてぇ〜(w
422 名前:名無しだぴよ〜ん 投稿日:2003年07月01日(火)23時20分01秒
2人を幸せにしてくれ〜!!!!
423 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月02日(水)03時15分39秒
ageないでくれ〜!!!!
424 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時32分15秒


目を開けると真っ白な世界に見覚えのある人が立っていた。
どこでみたんだっけな…?
頭の上に輪っか乗せたヘンなおじさん…。
……。


『あたまのうえにわっかのせたへんなおじさん?』


「あー!!あんた!」
「気がついたか?」
「…どこここ?天国?もう死んだの?あたし…」
「違う。元に戻るんだ。元の体に」
「…はぁ!?なんで?!愛ちゃん幸せになってないじゃん!」
「お前が元に戻れば幸せになる。と、言う事はお前には元に戻って貰わなければいけない」
「は!?そんな簡単なことでいいの?…第一あたしはもう戻る気は…」
「お前ももう気がついてるんではないのか?自分の気持ちを」
「え…?」

へんなおっさんはあたしに向かって手のひらを広げた。
425 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時32分58秒
「でもこんなにあっさり戻すわけにも行かない。お前には事故前まで戻ってもらう。
 ただしお前の記憶はこのままで。しかし、愛の記憶は消える」
「ええ?!ちょっとまっ…!」
「お前が愛を幸せにするんだ。じゃあ、頑張れよ」

手のひらから光が出た瞬間、またどこかへ飛ばされた感覚がした。

「…お互いがお互いの事を想いあってるという事は好きなんだよ。
 …愛の事をよろしく頼むね」

最後にへんなおっさんの言葉が聞こえた。
…大体この人なんで愛ちゃんの事をこんなに気にするんだ?
426 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時33分47秒
そして、気がつくと目の前は道路だった。
この道の事は覚えている。
ここであたしは交通事故にあったんだ。
携帯を見ると4月△日。
愛ちゃんに会う3日前だ。

「まこっちゃーん?」
「…え」

声に反応して前を見ると道路を挟んだ向こう側にあさ美ちゃんの姿が見えた。
そうだ、この後あさ美ちゃんがこっちに渡ろうとした時、車が来て…それを助けてあたしは…。

「待って!あさ美ちゃん!あたしがそっちに行くから!!」

少し離れた横断歩道まで走って行き、あさ美ちゃんの元へと辿り着いた。
もちろん、あたしに怪我はないし、あさ美ちゃんにも怪我はない。
427 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時34分22秒
時間が戻ったんだ。
という事は3日後に愛ちゃんは屋上から…。

「まこっちゃんてば!どうしたの?ぼーっとして」
「え、あ、あぁ」

このまま何も無かったように過ごせばずっとあさ美ちゃんといれる。
あたしがちゃんと隣にいれば後藤さんがあさ美ちゃんに言い寄ってくる事もない。
428 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時34分55秒

     …これでいいの?

あたしが好きなのはあさ美ちゃんで、

         本当にこのままでいいの?

そもそも愛ちゃんとは一度も会った事のないような赤の他人で、

     本当に好きなのは?

同じ使命を持った仲間って感じで、

         「麻琴!」

違う!あたしが好きなのは!
429 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時35分42秒
握りこぶしをぎゅっと握りなおしてあさ美ちゃんの目を真っ直ぐ見た。
「…あさ美ちゃん!ごめん!あたし、好きな人がいるんだ」
「…え?」
「ごめん!本当に勝手だと思う。でもその人の事が気になるんだ」
「………」
「殴ってもらってもいい、本当に…ごめん…」
「そっか…。…殴ったりなんかしないよ」
「ごめんね、あさ美ちゃん…」
「もう…、いいから。じゃあね、まこっちゃん」

あさ美ちゃんは繋いだ手を離し、歩いていった。
語尾が震えていた。泣かせてしまった。
なんて最低な事をしてしまったんだろう。
ゴメン、ゴメンね。あさ美ちゃん。
遠くなる後姿にあたしは謝り続けた。
430 名前:Remember 投稿日:2003年07月11日(金)20時37分02秒
そして3日後、あたしは愛ちゃんの学校へ向かった。
時刻は午後5時20分。
こっそり学校に侵入し、屋上の扉を開ける。
強い風が吹きつける中、フェンスの向こう側に立つ少女。

あたしは今までの出来事を思い出しつつ、声を掛けた。

「あ〜!ちょっと待って〜!」

驚いて振り向く愛に麻琴は笑顔で話しかけた。

「はじめまして、高橋愛さん。小川麻琴です」

目を丸くして呆然と立ち尽くす愛ちゃん。

愛ちゃんはあたしの事知らないけど、
絶対幸せにして見せるよ。
だってあの時間があったのは確かに真実で、
今でも鮮明に思い出される。
これからきっと違う出来事が起こるだろうけど、
愛ちゃんとずっと一緒にいたい。




のちに、あのへんなおっさんが愛ちゃんの亡くなったおじいさんだと言う事をあたしは知る。

END
431 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月11日(金)20時46分19秒
…なんちゅう中途半端な終わり方なんでしょう…。
期待してた読者の方には申し訳ない…。
もしかしたら番外で続きを書くかもしれません。
でも書かないかもしれません。

ウワァン。

とりあえず小さな丸い好日、終了します。
読んで下さっていた読者の皆様、ありがとうございました。

421>名無しどくしゃ様
幸せになってるんでしょうか?(苦笑
最後までありがとうございました!
レスがとても励みになりました!!

422>名無しだぴよ〜ん様
ageてあってビビリました(w
読んでてくださって感謝です!

423>名無しさん
私も同じ事思いました(w

完結したら落とすといってたんですがもう充分落ちてるので、
このままでいいや(w
432 名前:OGAフリーク 投稿日:2003年07月12日(土)12時07分19秒
お疲れ様でした。
いや〜おもしろかったっす。
できれば後日談。二人がもう一度恋人同士になるまでを読みたいです。
って贅沢かな〜
433 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月12日(土)13時14分36秒
お疲れ様でした。
知人に面白いと紹介され、一気に読みました。
むちゃくちゃ面白かったですよ〜!!
しかもタイミングよく完結した直後に読めて、ちょっとびっくり…

番外編、期待してます。
434 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月13日(日)09時33分05秒
ぶあぁ゙!・゚・(ノД`)・゚・しゃあーせだよぅ!
こんなに良いまこあい読めてヲイラは本当幸せもんです。
毎日更新されてるかなってここに来るのが楽しみですた。
番外にささやかな期待をしつつお疲れ様でした。
また良い作品を書いてくださーい。
435 名前:名無しだぴよ〜ん 投稿日:2003年07月14日(月)22時29分21秒
お疲れ様でした!!!!!
また期待してます!!!!!
なちまりだめですか???
436 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月16日(水)22時04分41秒
すみません、また現れちゃいました。作者です。
番外編!と思ったのですが、番外を書くと同じ事の繰り返しな気がしてあれなんで番外は書きません。
楽しみにしていた方本当に申し訳ありません。

432>OGAフリーク様
こんな駄文にもったいないお言葉ありがとうございます。
続きは…スミマセン(ノ Д`)・゚・。

433>名無し読者様
白m人の紹介ですか!キャー!!ありがとうございます!!
番外は…スミマセン(ノ Д`)・゚・。

434>名無しどくしゃ様
いやもう最初から今までありがとうございました!
毎日来ていただいてたようでもう感謝です。
やっぱまこあいですよね!

435>名無しだぴよ〜ん様
読んで下さってありがとうございます!
なちまりは…うーん…。
気まぐれでフリーとかに載せたりしちゃったりするかもしれません(汗
437 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月16日(水)22時11分39秒
このスレ終了しました、とか書いておきながらまた新作書いてしまいました。
新スレ立てようと思ったのですがもう一つのスレが放置気味になってる中立てるのは気が引けたのでこのスレを使い切ろうと思います。
このスレ内で終わらない気がするのですがとりあえず始めたいと思います。

とりあえずマイナーCPだらけになると思います。
よろしくお願いします。
あまりにマイナーなのでohiで行きます(w
438 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時13分35秒

目の前には綺麗で大きな建物が立っていた。
周りはきゃあきゃあと女子生徒の声。ここは女子高。
4階建てで設立されてまだ間もないこの学校に私は今日入学する────。
439 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時15分01秒
「おーい!あさ美ちゃーん!」
「あ、まこっちゃん!おはよう!」
「おはよー!ねぇ?クラス発表見た?同じクラスだったよー!」
「ほんとー?よかったー」
手を繋いで飛び跳ねながら喜ぶ2人組。

一人は紺野あさ美。今日からこの学校へ通う高校一年生成り立てホヤホヤ。
目の前にいるのは小川麻琴。通称まこっちゃん。
中学からの親友でこの学校に行くのも2人で決めていた。
嬉しくてはしゃぐ2人の耳に新入生は体育館へ集合、との放送が耳に入った。
2人は荷物を教室へと置き、列に並んで体育館へと向かった。
440 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時15分49秒
式が始まると早速校長先生の長い、ありがたいのかなんなのかわからない話を聞く羽目に。
周りの生徒は携帯電話をいじったり、おしゃべりしたりと全然話なんか聞いちゃいない。
あさ美はちょっとかわいそうだなと思いつつ、自分も話を聞き流しながらステージの横に目を移した。
その時2人の生徒があさ美の目に入った。見た感じ新入生ではないだろう。
黒っぽい大きめなトレーナーとジーンズという金髪の人と、
白っぽいパーカーのついたトレーナーとジーンズという茶髪の人。
この学校は私服OKだがなんだかあんなに似てる格好されると制服っぽい。

「…なんであんなに似てる格好してるんだろう」
疑問の声が隣の人に聞こえないよう小さい声で呟いた。
校長先生の話が終わると次は生徒会役員挨拶だという。
するとそこにいた2人組がステージの上へと上がっていった。
生徒会役員だったんだ、とあさ美が思った瞬間。
441 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時17分44秒
「いえーい!当学園入学オメでとー!生徒会長吉澤ひとみでーす!ハロー!」
「…や、やっほー、ニュウガクオメデトウ…学校生活楽しんでね…生徒会副会長の藤本美貴です…」
立ち位置は前と後ろで生徒会長は右へ体を捻り、後ろの副会長は左に体を捻って大声で自己紹介をした。

シーン、と静まり返る場内。
ステージ上ではミキティの元気がないからだ!とかこんな恥ずかしくてできるか!とかもめてる声が。
おかしくてぷっと吹き出すと隣の子も笑い出し、伝染したようにみんな笑い出した。
結果的には場内大盛り上がりとなった事に会長、ひとみは嬉しそうな満面の笑みを浮かべ手を振り、
隣の副会長、美貴は呆れたような恥ずかしそうな表情を浮かべいた。
その様子がおもしろくて笑っていると隣の子達がひそひそと話し始めた。

「…ねえ…?かっこよくない?あの2人」
「だよねぇ!思った!会長マジタイプかも!」
「えー、あたしは副会長だなー」
その声に反応して前を見る。
442 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時18分43秒
今は真面目に学園の事を話してる副会長と、隣で新入生に手を振ったり笑顔を振りまいている会長。
普通は会長が話をするんじゃないかと疑問に思い、その光景にまた笑いそうになったけどこらえた。
話が終わりステージから降りる二人。
ひとみはドタドタと軽く走るように階段を降りて、その後ろを美貴が静かについていった。

「え…?」
不意に目が合った気がした。
降りる瞬間横をちらりと向いた美貴と。
それは一瞬の事ですぐに美貴は顔をそむけてしまったけど、あさ美の心臓はどくどくと音を鳴らした。
美貴はステージ上の笑った表情ではなく、なんとなく冷たい無表情を浮かべていた。
隣の子は超クール!だと歓喜の声を上げていた。

式も終わりぞろぞろ列を作りと体育館を後にする途中、出入り口には二人が立っていた。
すでにみんなのハートをゲットした2人は新入生に囲まれていて、列は滅茶苦茶になり渋滞が起こっていた。
443 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時20分14秒
凄いなぁ、と思ってた時、前にいた麻琴が流れに逆らいあさ美の元へとやってきた。
「すごいね、あの人達。大人気じゃん!」
「ねー」
「1人はめっちゃ軽そうだけどねー」
「あはは」
2人の話し声が聞こえたのか、ひとみはこっちに指をさした。
隣にいる美貴もこちらを振り向き、またあさ美の胸は高鳴った。
「そこー!吉澤は軽くないぞー!勘違いするなよー!吉澤には愛する人が…痛っ」
「…うるさいから。早く整列させなって」
「殴ることないだろー?!ミキティ!」
「ミキティって呼ぶな!」
漫才をしてるような2人にまた黄色い声が飛び交っていた。
444 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時21分00秒
ひとみは両手を挙げイエーイ、とピースサイン。
周りが盛り上がる中、美貴は無表情であさ美を見ていた。
「あ、あの…?」
「…え?」
「私の顔に何かついてますか…?」
「…あ、いや。何もついてない。ぼーっとしてただけなんだ。ゴメンね」
無表情は和らぎ笑顔に戻った。
どこか作られた笑顔が気になったけれど後ろから押されてあさ美と美貴は離れていってしまった。
445 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時21分52秒
教室に着くと担任の先生の話が始まった。
先生は安倍なつみと言う。
先生に成り立てでこの学校には去年来たそうだがクラスを持ったのは初めてらしい。
緊張しているのかつまずいて転びそうになったり、出席簿を逆さに持ったりと早くもみんなに笑われていた。
教室の右端から五十音順で席についた結果、運良くあさ美の隣の席は麻琴になった。
すでにハイテンショントークで飛ばしてる麻琴の周りには沢山の人が集まり、
結果的に隣の席のあさ美とも話すようになり、初日で沢山の友達ができた。

ホームルームも終わり、この後は部活のミーティングがあるらしい。
部に入りたい人はおのおのミーティングの開かれる教室に行き、入らない人はそのまま下校。
あさ美は特に部活に入りたいとも思ってなかったので帰る支度をしていた。
「あさ美ちゃんは部活入らないんだっけ?」
「うーん、入りたいなっていう部もないし…まこっちゃんは?」
「あたし入りたいのは山々なんだけどバイトもしてみたいしパスかなー」
「そっか」
446 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時22分44秒
2人で鞄の中に荷物を詰めていると教室の外が凄くにぎやかだった。
なんだろう、と疑問に思っていると扉が開き、そこにはひとみと美貴が立っていた。

「あの〜?小川麻琴ちゃんと紺野あさ美ちゃんてこのクラス〜?」

名前を呼ばれた事に驚き、2人同時に顔を上げるとこちらに気がついたようで、
いたいた、と呟きながら中に入ってきて2人の前に立った。
「な、なんですか?」
「君たち2人は生徒会書記&会計に決まりました〜!」
「はあ!?」

揃って声を上げた瞬間パァーン、と後ろから美貴が不服そうにクラッカーを鳴らした。
中から出てきた紙やら何やらがあさ美と麻琴の頭に掛かる。
「な、なんですかそれ!聞いてないですよ!?」
「そ、そうですよ」
麻琴はひとみに詰め寄り、あさ美もそれに同調する。
447 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時23分25秒
「まァまァ、決まっちゃったもんはしょうがないと」
「…ちゃんと説明してやってよよっすぃー…。あのね、この学校全学年から生徒会役員を選出するんだけど
 一学年からは誰も立候補がなくて。そこで、調べた結果2人が入学試験で一位、二位を取ったのね。
 …本当の事言うと立候補ってのが一番いいんだけどちょっと忙しくて早めに決めたくて。
 それで勝手に決めたんだけど…どうかな?」

────美貴のこの説明は実際の所少し違った。
実は入学式で美貴が話してる時、生徒会役員募集の事も話していた。
入学式が終わった後、生徒会室には新入生が殺到し一時騒然となった。
こんな沢山の人の中から選ぶの面倒臭い、とひとみが言ったので
手っ取り早く首席とその次で手を打ったのだった。

あさ美と麻琴は顔を見合わせた。
クラスのみんなは全員この会話を見ている。
そして1人の子が「やればいいじゃん!」と発言するとみんながそれに賛同した。
448 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時24分15秒
「…え、まじで…?」
「よっし!んじゃあ決定って事で!これから生徒会役員の集会があるから生徒会室集合ね!
 じゃあ行くぞ!ミキティ!」
「だからミキティって呼ばないでって…」
2人はきゃあきゃあ騒ぐ女の子達に手を振って(手を振ってるのはひとみだけだが)出て行った。
出て行く時、美貴はあさ美の方を向き何かを言いかけて声を発しそれに反応しあさ美が顔を上げると
目が合った。しかしニコッと微笑むだけで何も言わなかった。
2人が出て行って、麻琴がなんでみんな賛同するんだよー!と叫ぶと

「だって生徒会室行く口実が出来るじゃん」

とクラス全員に言われてショボーンとしていた。
449 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時26分21秒
ブツブツと文句を言いながら歩く麻琴の隣をあさ美は一緒に歩いていた。
あさ美は別に生徒会に入るのが嫌なわけじゃなかった。
気になる事があったから。
美貴は何故あんなにも自分を見ているのか。
好かれていると思うのは自惚れだろうか。
生徒会室の前に着き、扉を開けるとあの2人はいなかった。
いたのは3人の生徒。
ピンク系の服でスカートをはいてる女の人がこちらを見てニコッと笑った。

「もしかしてあなたたちが新しい会計さんと書記さん?」
「は、はい。そうです」
緊張したように話すと女の人の後ろからもう1人ひょっこりと顔を出した。
「うちは高橋愛っていうんやよ〜。書記を担当してます、よろしくね〜」
変わったイントネーションの喋り方をする人だった。
よろしくおねがいします、と話しているとその後ろからもう1人やってきた。
「あたしは松浦亜弥っていうの。あたしは会計で愛ちゃんとあたしは2年だよ」
2人とも自己紹介を終えるとニコニコとこちらを見ていた。
450 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時27分28秒
「あ、えとあたしは小川麻琴って言います!」
「わ、私は紺野あさ美です!」
「よろしくねー、あ、あたしは石川梨華。3年です。あたしも一応副会長なの」
「あれ?でもいませんでしたよね?入学式の時…」
「だってあんな恥ずかしい事できないもん」
「あー…、確かに」
そんなやり取りをしていると扉が開き2人がやってきた。
「おー、偉い。ちゃんと来たね」
「強引で悪かったね、嫌だったら断ってもよかったのに」
美貴が苦笑いを浮かべながら言うと隣にいた麻琴が大声を張り上げた。

「嫌だなんてとんでもないです!喜んでやらせていただきます!書記でも会計でも!」
「え!?」
さっきと言ってる事違うじゃん!とツッコミを入れようとあさ美が麻琴を見ると、
ぽーっとした顔で愛を見ていた。
451 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時28分17秒
「そりゃ頼もしいね。それじゃあ小川にはいろいろと頑張ってもらいますか!」
「はい!私、小川麻琴は高橋先輩について行きます!」
「はぁ?」
「え、あたしに!?」
「はい!高橋先輩!よろしくお願いします!」
完全に麻琴の目には愛しか映ってないようだ。

「…ふ〜ん、そういう事ね。まァ一緒の書記だし頑張ってよ」
ひとみはなんだかおもしろくなさそうに呟いた。
「紺野さんはあたしと同じ会計だよね?」
「は、はい。よろしくお願いします!松浦先輩!」
「先輩、って呼ばれるのなんかヤダから普通に名前で呼んでよ。あと『さん』付けもやめてね。
 『亜弥ちゃん』とか『あやや』とかでいいよ!」
「あやや…?ですか…?」
「あーそれ、あたしも同じやわ」
「じゃあ!愛ちゃんって呼ばせていただきます!!」
麻琴の興奮は全く冷める事がない。
452 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時29分04秒
「うちらもさ、先輩、って呼ばれんの固っ苦しいからやめてね」
「分かりました、吉澤さんて呼びますね」
「…小川…お前、分かりやすすぎるよ…」
明らかに声のトーンが低くなった麻琴にひとみは静かにつっこんだ。

ふとあさ美が横を見ると無表情の美貴と美貴の腕を握って笑顔で話す梨華が目に入った。
付き合ってるのかな?と思ったけどなんであんなに無表情なんだろう?
「藤本さん恋人いたんだぁ…」
「え?何?あさ美ちゃん」
「な、なんでもない」
自分の事を見ていたのはやっぱり勘違いだったんだと思い少し残念だった。

そんな事を思ってると誰かの携帯が鳴った。
みんな一斉に自分の鞄を見る。
「あ、ごめん。あたしだー!」
そう言って亜弥は嬉しそうに携帯で話し出した。
「…どうせごっちんだろー、早く切れよ」
ひとみがそういうと亜弥は近くにあったボールペンをひとみに投げつけた。
大げさに痛がるひとみを見てみんなで笑った。
ただ1人、美貴だけを除いて。
453 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時29分56秒
亜弥は電話を切ると荷物を持って立ち上がった。
「おいおい、どこ行くんだよ。今から話があんのに」
「これからデェトなんです!なので帰りまーす!じゃああさ美ちゃん、あとよろしくね〜!
 あ、あとみきたん!お母さんがたまには遊びにきてって言ってたから」
「え、あ、わかった。今度行きますって言っておいて」
軽くスキップしながらひとみの引き止める声も無視して亜弥は部屋から出て行った。

「あのやろう…今度ごっちんとキスしてやる…」
「その『ごっちん』って誰なんすか?」
麻琴の敬語は最初の時よりも明らかに砕けてきている。
「松浦の恋人でうちの中学の時の友達!学校違うからね。
 ごっちんは頭良いの、進学校だよ」
「へー、恋人ですか。……愛ちゃんって恋人いるの?」
「あたし?いないよ」
その言葉を聞くと愛には見えないように麻琴はガッツポーズをした。
…ほんと、わかりやすいよ。まこっちゃん。
454 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時30分46秒
「吉澤さんって恋人いるんすか?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた小川君。…いるよ。めっちゃかわいいんだよ〜〜〜」
「え、同じ学校の人ですか?」
「ま・あ・ね。誰かは教えてあげないよ」
「えー、ケチだなあ」
もう一回言うが麻琴の敬語はかなり砕けてきている。
「ケチとはなんだよケチって!」
「藤本さんは?いるんすか?恋人」
ひとみを無視して麻琴は美貴に聞いた。
…まこっちゃん、あなた大物になるよ…。

「…え、美貴?」
「も〜う、小川ったら。見てわかんないの?」
梨華はぎゅうっと腕を組み美貴と密着した。
「ああ、なるほど。そうなんですか!」
麻琴は手をぽんっと叩き納得した表情を浮かべた。
愛もそうそう、と頷いていたがひとみは後ろ頭をポリポリと掻いて下を向き、
美貴も少し愁いのある笑顔をこぼすだけだった。
455 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月16日(水)22時31分41秒
なんなんだろう、この空気。あさ美はこの空間に流れる少し不穏な空気を感じ取っていた。
しかし麻琴と愛は気がついてないようでまたすぐに別の話題で盛り上がっていた。
「…まァ、今日は話って言ってもたいした事なくてさ、顔合わせって事で集まってもらっただけだから
 もう解散でいいよ。せっかく張り切ろうと思ったのに力抜けちゃったよ、全く」
「じゃあ愛ちゃん一緒に帰ろう!」
「え?あ、うん。あさ美ちゃんは?」
「あ、えーと、私図書室に寄って行きたいので先に帰ってください」
さすがに三人で帰るのは勘弁してもらいたい、あさ美は思った。
「そう、残念だなァ〜」
全然顔が残念がってないよ、まこっちゃん。
456 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月17日(木)19時26分01秒
作者様ありがとう・゚・(ノД`)・゚・
めっちゃ最高でんがな!!
続き楽しみにしてまっせー
457 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)20時56分45秒
2人が出てった後、出るタイミングを無くしたあさ美はまだ生徒会室にいた。
そして困っていた。ひとみ、美貴、梨華。この3人は何かを隠している。
3人とも笑顔で会話はしているもののどこかピリピリしている。
2人と一緒に出ればよかったと心の底から後悔した。
「紺野はさぁ、恋人とかいるの?」
「え、い、いません」
「付き合った事は?」
「それもないです」
「へぇ〜」
再び沈黙。なんとも言えない空気。その空気を破ったのは耳に残る高い声。
「美貴ちゃん、あたし達も帰ろうか?」
「…ん」
美貴は気だるそうに小さく返事をすると荷物を持って梨華より先に部屋を出た。
458 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)20時57分25秒
「あぁ、もう待ってよ、美貴ちゃん!」
追いかけて手を握り、梨華はこちらを振り向きバイバイ、と手を振った。
あさ美はペコリと頭を下げた。
2人きりになってしまった部屋でひとみは大きなため息をついた。
「…疲れたぁ……」
あさ美に聞こえるか聞こえないか、それくらい小さな声でひとみは呟いた。
あさ美はそれが聞こえ、3人に何があるのか聞こうと思ったが余計な詮索はしない方がいい気がしてやめた。
「あの、あたしもそろそろ帰ります。これからよろしくお願いします!」
「はいよー。紺野だけだよ良い子は…」
「吉澤さんは帰らないんですか?」
「ん?あーあたしはね、…まぁいいんだよ。じゃあ気をつけてね」
ニコニコと笑いながら手を振るひとみに頭を下げてあさ美は生徒会室から出た。
出る時、かしゃん、と音がなった気がしたけど気にしないでその場を立ち去った。
459 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)20時59分14秒
あさ美は電車通学で、時間までまだ何分かあったので校舎を回る事にした。
自他共に認めるほどの方向音痴なので今のうちに覚えておこうと思ったからだ。
3階や4階は上級生の教室なので行くのはやめた。
上級生と鉢合わせ、なんて入学早々あまりしたくない。

この学校は新しく設立されたばかりだが隣には旧校舎も残っていて、
美術室や音楽室などはそっちの方にあった。
渡り廊下を歩いて旧校舎に向かう途中、中庭が目に入った。
木々は綺麗に手入れされていてそこに置いてあるベンチには恋人同士と思われる2人がまったりしていた。
「なんか、いいなぁ…」
あんまり積極的な方じゃないあさ美は自分から告白する事はないし、されても混乱して断ってばかり。
高校に入ったらこんな自分は変えようと思っていた。
「あれ?」
中庭に美貴と梨華の姿が見えた気がしたが影はあさ美の視界から消えた。
「気のせいか…」
何かの見間違えだろうと自分で納得し、また歩き出した。
460 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)21時00分08秒
「…そういえばまこっちゃんはどうしたかな?」
ふっと思い出しメールでもしてやろうと鞄をみると閉めていたはずの鞄が開いている。
中を探ると携帯はどこにも見当たらない。
「…えぇ、なんでぇ?!」
あ、思い出した。亜弥の携帯が鳴った時、あさ美も鞄を開けていた。
そして生徒会室から出る時に鳴ったかしゃん、という音。
「落としたんだ…」
あさ美は急いで階段を駆け降りて生徒会室へと向かった。

生徒会室はまだ電気がついていた。
まだひとみが残っているいるのだろう。鍵が閉まっていたら面倒な事になっていた。
あさ美が扉を開けようと手を伸ばした瞬間、中から声が聞こえてきた。
461 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)21時01分38秒
「…ん…はぁ…よ…っし…ん…!」
「…なっち」
バサバサっと部屋の中から何か本が落ちたような音が聞こえた。
手を伸ばしたまま固まっていたあさ美はその音にハッとした。

「…いゃ…だぁ…んぅ…」
「愛してます…」

アイシテマス…?顔がボボボボっと音が出るんじゃないかって位熱くなった。
そして急いでその場から走って立ち去った。
あの声は…。どちらの声も聞き覚えがあった。
ひとみとなつみだ。
2人は生徒会室で。
付き合った事はなくてもそれなりの知識はあさ美は持っていた。
2人は恋人同士で、今……。
「…どうしよう、携帯…」
誰も居ない廊下であさ美は立ち尽くした。
462 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)21時03分05秒
────結局あさ美は校舎の中をぶらぶらして時間を潰した。
うろうろしてると前から顔を赤くしたなつみが前から歩いて来た。
「…あ、紺野さん、まだ帰ってなかったの?」
「は、はぁ」
「気をつけて帰ってね」
「はい、さようなら」
あなた達のせいで帰れなかったんですけど。あさ美は心の中でつっこんだ。
生徒会室に行くとひとみは椅子に座り、漫画本を読んでいた。
「あれ?紺野、まだ帰ってなかったの?」
「あ、はい。携帯ここに落としちゃったみたいで…」
「携帯?」
探すとロッカーとドアの隙間に携帯が落ちていた。
463 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月17日(木)21時05分38秒
「あ、これです」
麻琴とおそろいで買ったかぼちゃの飾りがついた携帯ストラップを指で引っ掛け、
拾い上げるとひとみはニヤニヤしながら聞いてきた。
「まさか…さっき来なかったよね〜?」
「き、来てないです!ついさっきなかった事に気がついて…!」
「…ふーん、まあいいや。あたしももう帰るからさ、鍵閉めるから、いい?」
「あ、はい」
ガチャリとなった音がやけに大きく聞こえた。
「じゃあねー」
ひとみは玄関とは逆方向に歩いていった。
「…せんせぇと…一緒に帰るのかな…」

学園初日早々波乱の幕開けの予感がした。
464 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月17日(木)21時11分57秒
初めの頃の更新速度だ…。
視点などコロコロ変わるので読みにくいかもしれませんがご了承下さいませ・゚・(ノ Д`)・゚・。 

456>名無しどくしゃ様
早速レスありがとうございます(w
まこあいはサブみたいな感じになると思いますが、
この2人のお話も考えていますので(w
465 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月18日(金)18時33分46秒
マイナー好きには、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
って感じかもです(w
しかし好きなCPもあるのでなんか複雑な気分…(w
466 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月18日(金)21時15分00秒
コウシン(;´Д`)ハァハァ
まこあいワショーイまこあいワショーイ!
サブでもいいです。えぇw
467 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時36分42秒
***

────不意に目が合っただけ。
ただそれだけ────。



「もう!美貴ちゃん!ボーっとして!あたしの話聞いてるの?」
「…あ、ごめん」
気のない返事をすると梨華は決まって美貴にこう言う。
「……また、お仕置きされたいの?」
美貴が力いっぱい首を振ってもにやりと笑うだけ。
そして強引にどこかへ連れて行かれる。

…今日はドコなんだろう…?

毎日の事なのでもうこんな事には慣れてきた。
でもその行為は慣れるという事を知らない。
468 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時37分59秒
強引につれてこられたのは中庭。
人もまだいるというのにここを選ぶとは彼女は本当に性質が悪いと思う。
壁と壁の隙間、1メートルもないような狭い場所。
頭の中で冷静に梨華の事を分析してる途中で美貴は壁に押し付けられる。
「痛……んぅ…」

肩を強く掴まれて強引に口付ける。
何度も何度も角度を変えながら、軽くはない、とても深いキス。
唇を離すたびにちゅ、ちゅ、となる音がたまらなく嫌だ。
でも抵抗してはいけない。この数年間ずっとそうだった。
ただこの時間が過ぎるのを待つだけ。

「…はぁ…ん…ふっ…」
唇の端から流れる二人の唾液を梨華は嬉しそうに舐める。
469 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時39分00秒
「…美貴ちゃんってほんと可愛い。…その冷たい目もあたしは大好きよ?」
トレーナーの裾から侵入してくる梨華の冷たい手に少し体が震えた。
冷たい?などと聞いてくる声も何故だかとても遠くから喋っているように聞こえる。
ガバッと下着を上に上げられて少し声が漏れたけどじっと耐えた。
胸の頂点を執拗に攻め、美貴が声を出すのを待っている。
トレーナーは着ているから周りからは見えない。

でもこんなことしてるという事はもしかしたら見られてるかもしれない。
そんな事実に顔は熱くなり、触られてると言う事で声も漏れる。
頭の中ではこんな事したくないのに体は反応してしまう。

「…美貴ちゃん、今凄くいい顔してる…」
嬉しそうな表情で梨華は美貴に言う。
自分でも想像できる、今どんな顔をしているのか。
それが嫌で、吐き気がして、何も考えないように目をぎゅっと瞑る。
470 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時40分20秒
梨華はくすくすと笑い、突然ジーンズの上からそこを触る。
「……ぃや……っ…!」
「嫌なの?ほんとに嫌?」
ファスナーとボタンをはずす最中も激しいキスが続く。
思考能力はもうないのかもしれない。
虚ろな目で見られるのが梨華はたまらなく好きらしい。
急に膝までジーンズを下げられ驚いて身構える。

「はぁ!…やめ……っ」
「やめていいの?こんなになってるのに?」
薄い布の上からさらりと軽く撫でる。
濡れてる感触がわかっていやいやと首をふる。
それでも笑顔を浮かべ中心には触らないように内股を撫でたりしてる。
足はもうガクガク震えて自分の力では立っていられない。
471 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時41分14秒
「大丈夫?美貴ちゃん?あたしにつかまっていいんだよ?」

梨華に触れるのは嫌だった。
後ろの壁にもたれ、荒い呼吸をただ吐くしかできなかった。
「…意地っ張りなんだから」
「ん…!あぁ…っ、はぁ…ん…ぃやぁ…」

下着の横から進入する手は美貴の部分を執拗に撫で回す。
その時に出る水音が壁に反響して大きく聴こえる。そして自分の声も。
どうしたらこの音を聴かなくて済むだろう。

美貴の心を闇に連れて行く音。
472 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時41分58秒
────────








「帰ろっか?一緒に車に乗ってく?」
「……いい、歩いて帰るから」
「…そう、じゃあまた明日」
くるりと振り向きちゅっと軽く美貴の唇にキスを落とし、不敵に微笑みを浮かべ帰って行った。
その場にぺたりと座り込んで少し放心する。これもいつもの事。
梨華が何を思っているのか美貴には分からない。
力を無くした足を奮い立たせて立ち上がり、荷物を持って何事も無かったように歩く。
473 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時42分57秒
「藤本先輩さよーならー!」
「…さよーなら」
出会った生徒に挨拶も忘れずに。
たかが挨拶に何が嬉しいのかきゃあきゃあ歓声を挙げて通り過ぎていった。
きっと君らには悩みとかないんだろうね。
玄関に行き、下駄箱の扉を開けると二通手紙が入っていた。
それを開かずに自動販売機の隣にあるゴミ箱へと捨てる。
どんなに好かれようと、どんなに好きになろうと
梨華が美貴に付けた首輪がはずれない限り自由にはなれないのだ。
履き潰した靴の踵を直し、歩き出した。
474 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時43分38秒
学校から家までの道のりは決して近くはない。
前まで自転車に乗っていたがいつの間にかなくなっていた。
よっすぃーはミキティのファンの仕業だよ〜、とあっけらかんに言ってくれたが盗まれた方は困る。
何故かというと、うちは。
少し古くなった平屋の前に立ち止まり、鍵を取り出し扉を開けた。

「…ただいま」

返事が返ってくる事はほとんどない。
きっとまだ仕事なんだろう。台所に行きコップに水を注ぎ、一口飲んだ。
テーブルの上には遅くなるので先に食べててください、と母からの書置きが残されていた。
母と2人きりなのは物心ついた頃からずっとだった。うちは父親がいない。
母は毎日遅くまで仕事をしてなんとか美貴を養いながら生活している。
決して裕福な方ではなく。
475 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時44分55秒
数年前、母は梨華の親が経営している会社に勤め始めた。
その時初めて2人は出会った。
第一印象は『かわいい』。それだけだった。
それに悪い意味はなく本当にそう思った。
年も同じだった美貴と梨華はすぐに仲良くなった。

しかしその仲の良さもある日を境に異常な物へと変化していった。
何が彼女を変えてしまったのか美貴には分からない。
ずっと2人で笑いあって楽しくしていたのに。
梨華が変わってしまった日、彼女が発した言葉。

『うちのパパのおかげで美貴ちゃんは高校に入れたんだからあたしのお願い聞いて!』

その言葉は美貴の頭の中から『抵抗』という言葉を抜き去った。
476 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時45分56秒
いっそのこと学校を辞めることも考えた。
しかし母の事を思うとそれも美貴には出来なかった。
美貴は棚に置いてある写真立てを手にした。
そこに映っているのはピースをして肩を組んでいる美貴と梨華。
「この頃には…戻れない…?」
一緒に買い物に行ったり、映画に行ったり、遊園地にも行った。
もう楽しい日々は戻ってこないのだろうか。
言い様のない悲しさが美貴を取り巻いていた。

そんな美貴と梨華の関係を知ってしまった人物がいた。
吉澤ひとみ。
美貴が入学した時から同じ新入生だというのに常に目立っていた。
その時すでに梨華の檻の中に閉じ込められていた美貴はひとみの事など知らずに毎日を送っていた。
いつだったか、2クラス合同の体育の授業があった。

その時初めてひとみと美貴は話をした。
477 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時47分20秒
話は他愛のないもので、足も速く、そしてあまり表情が変わらずクールな所が気に入ったと言っていた。
美貴自身、自分がそんな風に思われているとは知らずに必死に弁解した。
自分はクールでもなんでもなくて、凄いヘタレで、絵も幼稚園児並みに下手くそで、カツゼツも悪い。
そんな事を羅列していったらますます気に入られて何故か仲良くなってしまった。
ひとみといる時だけは素の自分に戻っていた。
居心地がよくて、昔梨華と過ごした時間を思い出したりもした。

そんな時だった。
いつものように梨華に攻められた後、帰ろうとすると唖然とした表情で立ち尽くすひとみの姿があった。
事情を聞かれ、話すとひとみは怒り今にも梨華を殴ってしまうんじゃないか、という風な感じで
美貴はそれを必死に止めていた。

あの時、ひとみを止めていなかったらまた何かが変わっていたのかもしれないがもうどうでも良かった。
478 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時47分55秒
それからことあるごとにひとみは美貴をかばい始めた。
美貴を生徒会に入れたのもひとみだった。
自分の目に付く所に置いて美貴の事を守りたかったんだという。
しかし梨華も美貴を追いかけて生徒会に入り、その計画はあえなく失敗。
それでもなるべく2人にならないように気を使ってくれていた。

今回の変な新入生歓迎挨拶も多分その事があったからだろう(と思いたい)。
479 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月19日(土)19時48分53秒
一度美貴はひとみに聞いた事があった。
何故自分の為にそこまでしてくれるんだ、と。
答えは簡単なものだった。

『だってミキティと吉澤は親友でしょ?』

けろっとした顔であっさり言うひとみを見てその時初めて美貴は人前で涙をこぼした。
それから少しは気持ちは軽くなった。

しかし、した後はやりきれない気持ちでいっぱいになる。

美貴は台所に向かい、夕ご飯を作り始めた。
「今日は何たべよーかな…」
ぽつりとひとり言をもらし、冷蔵庫のドアを開けて中を見る。
ほとんど空っぽの状態の冷蔵庫を見てガックシした美貴だった。
480 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月19日(土)19時58分00秒
今回はホントアレですね(何
ミキティが哀れだったので同情して(?)
赤板フリースレに『満月』でみきあやモノを書きました。
よろしかったらそちらも見ていただけると嬉しいです。
いつもと同じ駄文ですけどね(w

465>名無しさん様
名無しさん「様」っておかしいな(w
マイナーですよ!作者はマイナー好きですよ!
マイナーCPが5つ出てきます。
だから「FIVE!」にしたんですがやっぱりネーミングセンスがないようです、私。

466>名無しどくしゃさま
サブですがマコはハチャメチャキャラになると思います(w
高橋はわりと正常(w
481 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月20日(日)19時10分29秒
ここの美貴様いいですねw
可哀相なんですが気にいっちゃいますた。
もの凄い楽しみです続き待ってます。
482 名前:チップ 投稿日:2003年07月21日(月)00時29分41秒
おぉ久しぶりに見れたと思ったら完結&新作が!嬉しいっす。
前作がマコ・゜・(ノД`)・゜・って感じだったので今回のマコのハツラツ振りが
すんごい愛しいれす(w
でもミキティー…・゜・(ノД`)・゜・・゜・(ノД`)・゜・ ・゜・(ノД`)・゜・
483 名前:ノッキ 投稿日:2003年07月21日(月)14時48分12秒
初めまして。いつも読ませて頂いてました。
ってゆーか、作者様最高です!!!!!
やばいっす。超好みの文体で読みやすくて話もおもしろいっす(w
マイナーでも構いません!これからもずっと応援させて頂きます。
484 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時03分11秒
***

大きな家の前に立派な車が止まった。
中から1人降りていくと50代くらいの女性が駆け寄る。
「お帰りなさいませ、梨華お嬢様」
「…ただいま」
「お食事は何時ごろ…」
「いいよ。適当で」
話しかけてくる家政婦にそっけない態度で梨華はすぐに自分の部屋に入った。

ただ広いだけで冷たい部屋。
テレビだってビデオだってDVDだってゲームだってコンポだってパソコンだってある。
洋服だって沢山あるし、不自由なものなんて1つもない。
だけど寂しくて冷たい部屋。
友達が来るなんて事は滅多にないし、両親だって部屋になんて入ってこない。
というかここ最近姿も見ていない。
485 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時03分59秒
パパは結構名の知れた企業の社長。
仕事大好き人間で家庭の事など顧みない。
ここ数年は姿を見ていない。会社の近くのマンションに住んでいるらしい。
ママは一言で言えば遊び人。
働いてるわけじゃないのに家にはいつもいない。
この前、使用人たちが若い男と歩いてるのを見たと言っていた。
多分恋人だろう。

「…別にいいんだけど」
梨華は頭の中で思ってる事に返事を返した。

愛情なんてものは生まれた時から両親から貰ってない。
物心ついた頃から梨華の周りに居たのは家政婦だった。
それが普通なんだと思い、生きてきた。
486 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時05分01秒
違うと気がついたのは小学生の頃。
授業参観の時に来るのは当たり前のように家政婦で、
あきらかに親とは違う人が来る事をみんなに指摘されたのだ。
みんなにはいつも父親か母親が来てるのに梨華だけにはいつもいなかった。
そのせいで元々明るかった梨華は内向的な性格になってしまった。
父親はその頃から家に居なかったから、母親に聞いてみた。
なんでうちはパパもママも来てくれないの?と。
ママは面倒だと言っていた。
その時は意味がわからなかったけど大きくなってその意味がわかった時
自分が愛されてない事を知った。
487 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時06分08秒
そんな時1人の女の子と出会った。
藤本美貴。
美貴の母親と梨華の父親は古い友人らしい。
恥ずかしくて父親の影に隠れた梨華に照れながらもニコニコと笑ってよろしく、と言いながら手を差し出す美貴。
おそるおそるその手を握ると美貴は

『別に食べちゃったりとかしないからそんなに怯えないでよ!』

と、大笑いした。
2人は友達になった。

美貴はよく笑うコで梨華のおもしろくない話にも笑ってくれていた。
クラスでは話し相手が居なく、
いつもお決まりの事しか言わない家政婦と
ろくに話もしない両親としか接してなかった梨華にとって美貴は新鮮だった。
いつも2人で出かけてたし、2人で夜中に家を抜け出して川原で花火なんかもした。
488 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時07分18秒
梨華には美貴しか居なかった。
しかし美貴には沢山の友達が居た。

学校が違った美貴とはそう頻繁に会えるわけではなかった。
梨華は毎日のように美貴の家に電話した。
美貴もそれを嫌がらずに梨華の話をちゃんと聞いていた。

梨華が壊れたのはそんな楽しい時のある日。
久しぶりに家には両親の姿があった。
梨華もその日はわくわくしていた。

1月19日。梨華の誕生日。
いつもは2人とも家に居ないのにその日は珍しく顔を合わせていた。
当然誕生日を祝ってもらえると思っていた。
489 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時08分00秒
けど聞こえてきた声は違った。

     別れ話、怒鳴り声、泣き叫ぶ声、親権問題。

梨華、誕生日おめでとう、という言葉が2人から出る事はなかった。

梨華は耳を塞いで家を飛び出した。
もちろん向かう先は美貴の家。
美貴に会いたい。
その一心だけで走った。
ようやくついた美貴の家。
扉を開けようとした時、中から楽しそうな笑い声が聞こえた。
窓から中を覗くと友達と楽しそうに笑ってる美貴の姿。
490 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時08分50秒


      あたしがこんなに辛いのに何で笑ってるの────?


よろよろと後ずさりをしてまた来た道を帰った。
頭の中が真っ白だった。
あの時何かが壊れてしまった。

その後、美貴に嘘をついた。
学園に入れたのはパパのおかげだ、と。
そんな訳はない。
父親と母親は離婚する事はやめたようだ。
けれどあれ以来2人とは顔を合わせていない。
梨華が父親にそんな事を要求する事は不可能なのだった。
でも美貴はこの言葉を信じてしまった。
491 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月21日(月)21時09分39秒
美貴はおとなしく梨華の言う事を聞いてくれる。
でも笑ってくれなくなった。
無表情か、泣いてるかのどちらか。
必死に明るく振舞っても笑ってくれない。
それでもいいと思った。
美貴がいてくれるならばそれでも。

でも知っている。
美貴は自分の居ない所では笑ってる事。
自分には向けられない笑顔を誰かに振りまいている。
それは当たり前の事。
元々美貴はよく笑うコだったんだから。

「……」
机の上にある写真立て。
家族の写真なんか無い。
あるのは美貴との写真だけ。

その写真立てを壁に投げつけた。
パリンと音がしてガラスが散らばった。
梨華は布団に顔を埋めて声を殺して泣いた。
492 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月21日(月)21時22分26秒
なんか暗いなぁ…。
次回更新は明るくなる…はず。
そろそろお引越しを考えなきゃかしら。

481>名無しどくしゃ様
悲劇の藤本さんとブラック石川さんですよ!
藤本さんは元々明るい方なので(この小説内で)これから明るくなっていく…はず…。

482>チップ様
おー、どーも!前作も見ていただいたようでありがとうございます!
マコはかなりのハイテンションキャラになりそうです。
男前の部分は…あるかなぁ?(w

483>ノッキ様
わーい!初めまして!そんなに褒めていただけるとは…嬉しいです(w
マイナーもマイナーですがこれからも読んでいただけると嬉しい限りです。
493 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月22日(火)20時27分45秒
ちゃんとチャックしてますから(´ー`)ニヤリ
にしても暗いよぉ暗過ぎるよぉ…
そんな暗い所が好きなんですがねw
本当更新お疲れ様です。
494 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時10分54秒
***

イライラしていた。
イライラが伝染して空まで曇ってきた。


「ごめん、遅くなって!」
「…遅いです、遅すぎです。空だってこんなに真っ暗ですよ?
か弱い女子高生をこんな時間まで待たせるなんて…」
職員玄関の脇、ちょうど死角になるような所にしゃがみこんでるひとみに申し訳なさそうになつみは声をかけた。
「保田先生に捕まっちゃって…、
愚痴聞かされちゃってさぁ…用があるんで、って言ったんだけど…」
「…もう、ケメコなんて振り切ってきてよ〜。
どうせ同じ事繰り返して言ってるだけなんだからさぁ」
「…ごめん〜」

ひとみは服についた埃を払い立ち上がり、うつむくなつみの顎を上げ唇に軽くキスをした。
いきなりの事で驚き目を丸くするなつみにニカッといたずらっ子のような笑みをこぼした。
495 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時11分42秒
「まァ、そんな愚痴も聞いてあげる優しいなっちが好きなんだけどね」
「…な!?」
頬を押さえてしきりにあたりを気にする。
大丈夫、周りに人はいないようだ。
「こんなとこでしたらだめだべ…」
「はーい。吉澤、おなか減っちゃいましたよ。クレープ食べましょ!もちろんなっちのおごりでね」
「もう…。…わかりましたー。じゃあ帰ろっか」

2人並んで歩く姿を他の生徒に見られたりしたらどうなるだろうか、なんてもう今更なのかな。
そんな心配をよそに能天気な年下の恋人は数メートル先で鼻歌なんか歌ってる。
496 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時12分20秒
先生と生徒。

自分が学生時代の時は特別な感じがして、友達が先生と付き合ってる、なんて話を聞くと凄く動揺したものだけど。
実際自分がその立場になってみると普通に付き合ってるのと同じだった。
もちろん、学校にばれたらいけないので隠さなければいけないけどあとは普通の恋人同士と同じ。

校門を出た瞬間にひとみは歩くのを遅くして隣に並び、なつみの手を探り当てて握る。
これはいつもの事。

「…とっくにばれてるのかもなぁー…」
「へ?何が?」
「よっすぃーと付き合ってるコト」
「うーん、どうだろねー?噂とか聞いたことないよ?」
噂ってあんまり本人達の耳には入りにくいような気がするけど。
「だって絶対一緒に帰ってるとことか絶対見られてるべさ」
「別にいいじゃん、ばれたって。あ、そっか。ばれたらなっちもしかしてクビ?」
「い、嫌な事言うなぁ…。そうだね…クビかも…ね…」
ひとみは繋いだ手を離し、なつみの前に回りこむ。
497 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時12分51秒
「そしたらさ、一緒に暮らそうよ」
「……なんか、話が繋がってないような気がするんだけど」
「吉澤がなっちを養ってくから」

ね?と満面の笑みで首を傾げるひとみ。
その姿にいちいちドキドキするなつみ。
これではどちらが年上なのかわからない。

「…学生のくせにー」
照れ隠しでデコピンすると口を尖らせて批判を言う。
「なんなら学校辞めて働きますからー」
「それはダメ。ちゃんと卒業して?ね?」
「う、うん」

急に真面目な顔になったなつみにひとみはまさか冗談だよ、とも言えず素直に頷いた。
498 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時13分35秒
もうちょっと歩くといつも行くクレープ屋さんがある。
「ねぇ?競争しようか?勝った方がおごるってのは?」
「えー?なっちがおごってくれるんじゃないの?」
「なっちは安月給なんですー。はい、スタート!」
喋ってる途中でなつみは走り出した。
「あ!ずるい!」
それを負けじと追いかけるひとみ。

でもなつみにはわかっていた。
どう考えてもなつみよりひとみの方が足が速い。
負けるのはわかっていたけど、こんな風にじゃれあったりしてみたかっただけ。
499 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時14分11秒
「はぁ…はぁ…勝ったぞー…なっちー…」
「はぁ…っ、よっすぃー本気出しすぎ…!」
「へへへ…」
なつみは鞄の中から財布を取り出した。
「しょうがないなぁ、何がいいの?」
「あのねー…」

少し不満げな顔のなつみと笑顔でメニューを見てるひとみは
周りから見たらどういう風に映るのか。
500 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時16分09秒
────そんな仲睦まじい2人を見ている人物がいた。




「…相変わらずなんていうかやる事が幼稚だよねぇ」
クレープを頬張りながらベンチでまったりムード。
「ですねぇ。あ、ごっちんそれ一口ちょーだい!」
「んあ?はい。そっちのも食べてみたい。交換しよう」
501 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時16分49秒
集まりの時さっさと帰った亜弥とその恋人真希。
2人は軽く買い物に行った後、同じくクレープを食べに来ていた。
「こっちに気がつくかな?よっすぃー」
「気がつかないですよ。安倍先生といる時は安倍先生しか見えてないもん」
「だね、目が安倍さんに固定されてる。おもしろい」
亜弥から学校の話なんかを聞かされてるから大体状況は分かったりする。
もちろんなつみの事なんかは耳にタコが出来るほどひとみから聞かされてる。
いつも楽しそうに話す亜弥を見てちょっと寂しかったりするのだが仕方がない。
「…あーあ。亜弥ちゃんがもうちょっと頭良かったらなぁ」
「…うぅ、それは言わないで下さい…」
「うっそ。冗談だよ」
502 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時17分22秒
真希は大学まで直通の付属高校に通っている。
亜弥が通っている学校よりも2ランクほど上の学校で、一緒の学校に行きたい、と言っていた亜弥に勉強を教えたりもした。
が、勉強を教えても全く人の話を聞かず、真希の顔をじーっと見てたり、
お喋りに夢中になったりで勉強なんて全然出来ちゃいなかった。

結果、見事不合格だった訳で、さすがにその時は亜弥も落ち込んではいたが持ち前のポジティブパワーで難なく復活していた。
そして今は楽しい学園生活を送っている、と。
真希はその事に少し不満を感じ、どうせなら自分もランク下げて受験すればよかった、と後悔するのだか、
自分が受験の時はまだ亜弥とは出会ってなかったので仕方がない事なのである。
503 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時17分55秒
そもそも2人が出会ったのは、亜弥が中学3年、真希が高校1年の時だった。
本屋で立ち読みしてた真希は後頭部付近に突き刺さるような視線を感じた。
不審に思い振り向いても特に変わった人はなく、首をかしげまた本に集中した。
少し経つと右側から先ほどのような気配がした。
パッと振り向くとそこには驚いたような顔をした亜弥が立っていた。
驚かせてしまった、と思いその時は軽く謝り店を後にした。
だが、次の日もまた次の日も必ずいる亜弥を不思議に思っていた。

そんな日が何日も続いたある日。

『あのっ!あたしと付き合ってもらえませんか?』
『んぁ?!』
『あ、あたし!松浦亜弥って言います!』
『え?あ、あた…しは後藤、後藤真希』
『はい!知ってます!』

あの時はまさか自分の事が好きで亜弥が毎日通っていた事など知る由もなかった。
504 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時18分34秒
「もっと勉強すれば良かったなぁー…。そうすればごっちんと同じ高校だったのに…」
「まぁ、ごとーももっと厳しく教えてれば良かったんだよねぇ」
「…だってぇ、…ごっちんと一緒に居たら勉強なんてしてられないもん…」
「だね、ごとーも亜弥ちゃんと一緒だと勉強なんて教えてられないなぁ」
「…な、なんで?」
「んー…、…多分理由は亜弥ちゃんとおんなじ」

亜弥は照れてしまう。
愛や友達と話す時はごっちんの事めちゃめちゃ好き!とか言えるんだけど、
本人の前ではやっぱり照れる。
だからそれとなく好きだっていうアピールを照れながらも言う。
しかしその言葉に真希はあっさり返してくるのだ。
特に表情も変えずに言う真希を見て、果たして照れを隠してるのかあまり深く考えてないのか
少し疑問に思う亜弥だった。
505 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時19分08秒
「…あ、ごめん、ごっちん。…全部食べちゃった」
「あ、ごとーも全部食べちゃった」
「じゃあ、おあいこってコトで」
「だね」

さっぱりした真希に惹かれたのだがあまりにもあっさり過ぎる。
そしていつもはぐらかされて真希の本心が聞けない。
思い返してみれば真希から「好き」と言われた事なんて数えるくらいしかないかもしれない。
なんとか言って欲しくて、
でも面と向かってはやっぱり照れてしまうからメールで聞き出そうとした事もあった。
頑張っていろいろ考えて打ち込んだ長文メールも真希からの返信メールを見ると

【うん、わかった。ごとーも同じ。じゃあオヤスミ】

…これだけなのだ。
506 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月23日(水)21時19分50秒
確かに自分が好きになったのだから「好き」の重さは亜弥の方が重いのは自分でも分かってはいるのだが
どうも釈然としない。
「…ごっちんは、あたしの事好き?」
「んぇ?何、急に?」
「……なんでもないです」
「そ?んじゃ、そろそろ帰ろうかぁ」
真希はベンチから立ち上がるとくるりと振り向き亜弥に手をさし伸ばす。

「…え?」
「え?じゃないよ。……手、繋がないの?」

鼻を少し擦る真希。その声にはほんの少しだけ照れが見えた。
「あ…。うん!!」

その手を掴み強く握る。
重さなんてどうでもいいかな、と思うゲンキンな亜弥だった。
507 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月23日(水)21時23分42秒
よかった。少し明るくなった。
藤本さんは多分暗いままですが(w

493>名無しどくしゃ様
そういえばマコの出番が全然ありませんね(w
次回は…次回は…っ!(何
508 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月23日(水)21時26分35秒
次回更新から新スレに引っ越すかもしれないです。
案の定、足りませんでした。
というか全然足りませんです、ハイ(w
その時にはお知らせしますので引き続き読んでいただけると嬉しいです。
509 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月23日(水)21時27分06秒
一応隠しておこうっと。
510 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年07月24日(木)19時38分37秒
んーなんか新鮮。あやごまってほのぼのしますなぁ。
新スレ(゚∀゚)クル!!2ゲットしちゃる(w
511 名前:ぷりん 投稿日:2003年07月24日(木)21時48分15秒
さっき見つけて前スレから読みました!
すっごくおもしろいです!!
頑張ってください!!
512 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月24日(木)23時01分16秒
>>511
なんでageるだ…
ochiにしておきますね(w

続きが凄く気になるーマイナーでも(・∀・)イイ!!
美貴様が早く幸せになって。・゚・(ノД`)・゚・。
513 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月25日(金)22時35分52秒
お引越ししましたー。
これからもよろしくおねがいしまーす!

http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/white/1059138775/
514 名前:謎の館 投稿日:2003年08月21日(木)04時00分32秒
このHPは情報時代の最先端を目指しているHPです。 これからもどんどん取り込みするのでよろしく!


http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=0909887330



(パソコン&携帯電話全社に対応しています。)
515 名前:作者 投稿日:2003年08月21日(木)22時05分47秒
・゚・(ノД`)・゚・。 
516 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/09/12(金) 22:40
ヒソーリ参上。。。
サイズも増えた事だしヒソーリ超短編スレに利用。。。
517 名前:のどあめ 投稿日:2003/09/12(金) 22:41
「あー…あー…あ?……うー…」

買ってきた缶ジュースを抱え、楽屋の扉を開けると、
口を開けて鏡を見ながら唸ってる麻琴がいた。

「あれ?みんなは?」
「さぁ…?」
「…どうしたのその声?」

ジュースをテーブルの上に置いて顔を覗き込むと、しかめ面しながら喉を指差した。

「なんか、クーラーの効いてる部屋にずっといたら喉が痛くてさ…ぁ…」

確かに語尾がかすれていて何回もあー、あー、と声に出している。
隣に座りおでこに手をあてると開いていた瞼は静かに閉じた。
518 名前:のどあめ 投稿日:2003/09/12(金) 22:42
「愛ちゃん…手ぇ…冷たくて気持ちいい…ね…ぇ」
「…熱は、ないみたいだけどねぇ」

手を離すと麻琴はあぁ、と残念そうに呟いた。

「何?」
「冷たくて気持ちよかったのにさ…ぁ」

喋るたびに悪くなっているような気がする喉に手をあてた。
麻琴はくすぐったかったみたいでウワァ、と声を上げて逃げた。

「冷たいよ…!」
「気持ちいいって言ってたじゃん」
「…………」
「あ、そういえばのど飴があるよ。いる?」
「いる〜…。ちょーだい?」

がさがさと鞄の中を探すと一個だけ残ってたのどあめ。
あとで食べようと思って大事に取っておいたんだけど。
519 名前:のどあめ 投稿日:2003/09/12(金) 22:43
「最後の一個だったぁ」
「え、じゃあいいや…ぁ。愛ちゃんもいるでしょぉ…?」
「や、あたしは別にいいけど…」
「いいよぉ、あとで買うからさ…ぁ」

貰う事を拒否する麻琴を見て一つ思いついた。

「…じゃあ半分こする?」
「半分?…割るの?バラバラになるんじゃな…い…?」
「割らないよ。…こうするの」

包み紙を取ってぽいっと自分の口の中に飴を放り込んだ。
麻琴はぽかんと口を開けてあたしの様子を見ている。
手を伸ばして頬を触り、唇を重ねた。
520 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/12(金) 22:43
「む…!?ぅ……」

目を大きく開いた麻琴の口の中にのど飴を送る。
途中に舌が絡んで麻琴の味がした。
唇を離すと放心状態の姿。

「おいし?」
「………まぁ。…おいしい、です…」
「それは良かった」

ポンポンと頭を叩くと真っ赤な顔でこっちを見上げてきた。

「ん?なに?」
「愛ちゃんって、時に大胆だよね…」
「女は大胆にならないとね」
「…参りました」

ガクッと頭を下げた麻琴の向こう側にある鏡。
それに映るあたしの耳は真っ赤だった。
521 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/09/12(金) 22:44
題名がFIVE!になった_| ̄|○ 
522 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:45
「みきたーん!」

夏休みの真昼間。
クーラーの効いた部屋で課題をしていた手がピタリと止まる。
最初からあまりやる気のなかったそれはほとんど真っ白で。
そんなモノよりももっと魅力的な声にあたしは耳を傾けた。

「みーきーたーん!いるんならでてこぉーい!」

さっきより鮮明に聞こえた声に少し笑みをこぼし、部屋の窓を開けた。
瞬間、生ぬるい風がまとわりつく。

「うっわ、暑い〜。…どうしたのさ、亜弥ちゃん?」
「これー!しよう?」

額に張り付いた髪を鬱陶しそうに掻き揚げながら、
右手を高々と上げた。
ビニール袋が太陽に反射して眩しさにあたしは目を細めた。

「…それって花火じゃん。…ねぇ?今昼間だよ?夜まで待とうよー」
「えー…、だって早くやりたいんだもん…」

下唇を突き出して拗ねるような仕草は可愛いのだけれど、
出来ればこんな暑い真昼間に花火なんて勘弁して欲しい。
523 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:46
「それは夜にしよう?とりあえずうちに来なよ。涼しいから」
「いいの…?」
「は…?良いに決まってるじゃん」
「…家の人とかは…?」
「え…?今美貴しか居ないけど…」
「2人っきり……、…やっぱダメダメ!!2人きりはダメ!一旦帰る!
 また夜に来る!バイバイみきたん!」

くるりと振り返り、パタパタと音を立てて走っていった。
その姿を見てクスリ、と笑う。

「抱きついてきたり、好きとか言ってくるくせにこういう所で奥手なんだよなぁ」

姿が見えなくなった事を確認して窓を閉めた。
さっきまで冷え切っていた部屋が暑くなっていた。
あたしはだらだらと歩いて椅子に座った。

「夜までに課題終わらせないと、ね」

真っ白なそれを見てあたしは苦笑した。
524 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:46
夜になってあの後来たメールに書かれていた待ち合わせ場所に行くと彼女はもうそこにいた。
あたしの姿を見つけるとしっぽを振った子犬のように目を輝かせて走ってきた。
その姿を見て笑うと頬を膨らませて彼女は怒ったポーズをした。

「遅れてきたくせに笑うってどういうこと〜?!」
「遅れてないじゃん、亜弥ちゃんが早く来すぎなの!」

顔は笑って、でも口調は怒って言うと彼女は小さな声で呟いた。
聞こえるか聞こえないかわからないくらい小さな声で。
でもあたしにはその声ははっきり聞こえたんだ。


────………だって…早く会いたかったんだもん…


伏目で、口を尖らせて言う姿がかわいくて、あたしはイジワルしたくなるんだ。
525 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:47
「え?何?なんて言ったの今?」
「…うるさぁい!なんでもない!はやく花火するよ!!」
「はいはい」

ぷいっと後ろを向いて歩いていく彼女の後ろをついていく。
耳が真っ赤なのがよく見える。
それがおかしくて笑うとくるっと振り向き、こちらを見て睨んだ。
あたしと違って睨んだって全然怖くないんだけど。

「…何笑ってんの、みきたん」
「べーつーにー?」
「…ばかみき」
「あ、言ったなぁ」

手を振り上げて追っかけるときゃーきゃー悲鳴を上げながら彼女は逃げた。
通り過ぎる人たちに不審な目で見られたけど構わずに走り続けた。

程なくして小さな公園に辿り着いた。
着いた頃には息も切れ切れで。
呼吸を整えてる最中目が合って、笑った。
526 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:48
「…これからなのに疲れてどうすんの」
「…みきた…が…本気でっ…追いかけるから…っ!」
「呼吸荒すぎ。運動不足だねぇ亜弥ちゃん」
「なーに…?おばさんに言われたくないよ!お・ば・さ・ん!」
「なっ!2コしか変わらないじゃん!」
「やーいやーい!おばさーん」

悪態をつく彼女をギロリと睨むとシュンとなってしまった。
もちろんこれもイタズラ。

「…ごめんなさい」
「ぶっは!怒ってないって!亜弥ちゃんすぐ引っかかるんだから」
「うー…!!」
「亜弥ちゃんは美貴には勝てないよ」

ひらひらと仰ぐと悔しそうにあたしを見つめていた。
ちょっとやりすぎたかな。
すぐ泣くからな、亜弥ちゃん。
イジワルはこれでおしまい。

「花火、しよう?ね?」
「………」

無言で花火の袋を開けてろうそくに火をつける彼女。
どうやら怒らせてしまったみたい。
一本手に持ち火をつけると、トコトコと歩いていってしまった。
527 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:48
「…あーあ、怒っちゃったか」

あたしも一本手に取ると彼女を追っかけた。

「ね、火ちょうだい」

花火を彼女の花火とくっつけようとするとサッと手を引きぷいっと顔をそむけた。
本格的に怒らせたみたいで口も利いてくれない。
仕方がないのでろうそくの所まで戻ろうとすると服の裾を引っ張られた。
振り向くと口を尖らせたままの彼女。右手には花火を、左手は裾を。

彼女の花火はやがて小さな炎となり消えていった。
辺りは暗くなって周りの音もなくなった。

「…花火、消えたじゃん」
「…ばかみき」
「はぁ?まだ言って…」
「…ばか、…みきたんと…楽しく花火しようと思ったのに…」
「…ごめん。…いじわるしすぎた」

ふるふると震える左手を見て心が痛んだ。
昼間から楽しみにしてたのにくだらないいたずらで彼女を傷つけてしまった。
どうしていいかわからなくて俯く彼女の顔を覗き込むと彼女は
528 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:49
笑っていた。

「…あはは!引っかかった!みきたん!」
「…な、なにー!?」
「みきたんはあたしには勝てないよね?」

そう言って笑う彼女にあきれて、でも

「…参りました」

その時のあたしにはこの言葉しか見つからなかった。

一本、また一本と減り、残すのは線香花火だけになった。

「やっぱこれが最後だよねぇ」
「美貴はドカーンドカーン言うのがいいけどね」
「…風情なさ過ぎ」

また軽く怒られて、でも顔は笑っていたからあたしは安心した。
線香花火に火を灯すとパチパチと音を鳴らし輝き始めた。

「きれいだねぇ…」
「ん、そうだね」

微笑みながら線香花火を見る彼女の方がきれいだけれど
そんな事言ったら調子に乗るからやめとこう。
529 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:50
「…ね、みきたん」
「ん?」
「大学、楽しい?」
「…んー、まぁね」
「……ふーん…」

ほんと言うとあんまり楽しくないんだ。

「…亜弥ちゃんは?」
「え?」
「高校、楽し?」
「……」

黙り込んだ彼女の持つ線香花火の先の炎の固まりは震えて地面に落ちた。

「…楽しくない」
「…え?」
「みきたんのいない高校なんて楽しくないよ…」

力なく呟いた彼女の手から消えた線香花火を取り上げ、
まだパチパチと音を鳴らすあたしの線香花火を差し出した。
530 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:51
「一緒に持って」
「……」

恐る恐る手を伸ばしあたしの持つ手の少し上を彼女は掴んだ。

「美貴もね、おんなじ」
「え…?」
「美貴も楽しくない。亜弥ちゃんのいない大学、つまんない」

そう言うと照れたように笑って彼女はあたしの肩に頭を寄せた。

「課題だって終わんないし」
「…それ、関係なさそう」
「…まぁね」

やがてあたしの線香花火も消えた。
少し悲しそうな表情をする彼女に聞こえないように
でも聞こえて欲しいという願いも込めて小さな声で呟いた。


────美貴達の仲は消えたり、終わったりしないから。


ふっと横を見ると彼女は笑い、あたしに抱きついた。
しゃがんでいたから彼女の体重を支える事が出来なくて一緒に倒れた。
531 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:52
「うぁ!…危ないなぁ!」
「…キザみきはいいね」
「…聞こえた?」
「…ばっちり」
「うっわ…恥ずかし」

右手は彼女の背中に手を回し、左手で顔を隠すと
彼女は左手をどかしてあたしに笑いかけた。
532 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:53

好きだぞ!みきたん!

                   あたしも

      …そうじゃなくて

                       なに?

好きって言え!…あたしの事

                   好きだよ、亜弥ちゃん

  ……

            言わせといて照れるの反則ー

…うるさい


月はてっぺんに昇り、あたしと彼女は手を繋いで歩いて帰った。
ゆっくり。一歩一歩。一緒に。
533 名前:花火と彼女 投稿日:2003/09/12(金) 22:55




…あーあ、結局課題は真っ白なんだけどね。




534 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/09/12(金) 22:57
意味のわからないもの書いてしまった_| ̄|○
推しCPのわりにまともに書いたのは初めてかもしれません…。
535 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/09/13(土) 14:45
|▽`*)コソーリ
自分的にかなり好きな雰囲気だったのでお気に入り。両方とも。
夏に素敵な作品ありがとうございます。
536 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/21(日) 16:19
おもしろいっす
537 名前:あの子へ 投稿日:2003/10/08(水) 20:53
ピピッという電子音が聞こえてあたしは目を覚ます。
目を擦り、小さくあくびをした。
ベットにもたれていた体を起こそうとすると右肩に重さを感じる。
隣からはすーすーと寝息が聞こえ、シャンプーの良い香りがあたしを包んだ。

昨日の夜から見てたビデオはいつの間にか巻き戻されていて、砂嵐が広がっていた。
起こさないように手を伸ばしてリモコンを取り、テレビの電源を消した。

あたしが一番じゃない事、わかってる。
きっと二番でもない事も、わかってる。

それでも一緒に居たいから、あたしはあなたの優しい嘘に付き合っている。
優しい嘘。
あたしの事好き?って聞くとあなたは笑って好きだよ、と言う。
でもその時、一瞬、表情が曇る事をあたしは知っている。
あたしが悲しまないように傷つかないように、優しい嘘をつく。

一番それが傷つけてるの、知らないんだね?

隣の体はまだ規則正しい呼吸を続けていて、
このまま時が止まればいいなんてふと思う。

あなたの寝息と暖かさを感じれるのはあたしだけだったらいいのに。
538 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/08(水) 20:58
短っ!
最近ちょっとスランプ中でして…。
誰と誰の話なんだろうか…(謎

535>名無しどくしゃ様
見つかっタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
いえいえ、こんな駄文で申し訳。

536>名無飼育さま
おもしろいと言ってもらえて嬉しいです。
539 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:47
夜、あたしは玄関で靴を履いていた。
試験勉強が思うようにはかどらなくて、気分転換にと公園に行った。
お母さんには夜道は危ないから行くのはやめなさい、と止められたけれど
少しイライラしてたあたしはその言葉を振り切るように家を出た。

自宅から5分くらいで着くその公園はあまり大きくはないけれど
草花はちゃんと綺麗な状態に保たれていてあたしは好きだった。

「ちょっと寒いな…」

一応上着を羽織ってきたものの風は冷たい。
冷えた手に息を吹きかけると少し温まった。
公園内の小さなベンチに座って空を見上げた。
あいにく今日は曇り空で星は見えなかった。
540 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:48
「…うーん、残念」

空から目を落とし前を見ると誰かがこちらに向かって歩いてくる。
もしかして変質者!?と気づいた頃にはもう遅くって、
その人はあたしの目の前で止まった。
ウインドブレーカーにスポーツシューズ。
公園にある街灯のせいで逆光になって顔が見えない。
でもその華奢な体つきは誰が見ても女の人だろうと思わせるものだった。

「こんな夜に1人で公園にいるなんて危ないなぁ」

少し癖のある声で笑いながら話しかけてきた。
あたしはこの声を知っている。
541 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:49
「…藤本…先輩…?」
「そうそう、藤本センパイ。何やってんの?紺ちゃん」
「…藤本先輩こそ」
「美貴?美貴は毎日走ってんの、体力づくりでさ。もう部活引退しちゃったけど
 卒業しても大学で続けるつもりだからさ」

つい最近までバレー部のエースとして輝いていた藤本先輩。
何も接点のなかったあたしと藤本先輩が知り合ったのは今年の春だった。
元々目立っていた先輩の事はあたしは良く知っていた。
友達と試合を見に行ったり、連れられて体育館まで練習を見に行ったりもした。

その時、ボールがあたしの脳天に直撃し、あたしは先輩に担がれて保健室へ行ったらしい。
なんとも間抜けな出会いだったけどそれを機会に仲良くなった。
名前も覚えてもらったし、校内であった時は声を掛けてくれるようにもなった。
それからなんとなく、あたしの中で気になる存在になった。
542 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:50
「勉強しなくていいのー?って紺ちゃん頭良いっけ?じゃあ勉強しなくても余裕って訳か」
「そんな事ないですよ!先輩こそいいんですか?勉強しなくて」
「美貴は推薦が決まってるから良いんですー」

汗で張り付いたおでこの髪を払い、イタズラそうに笑った。
もう少ししたら先輩は卒業して、もう会う事もないんだろうな。
あたしも笑顔を見て少し笑うと先輩は眉を寄せた。

「なんか元気ないね?」

そういいながら腰につけていたスポーツドリンクを一口飲んだ。

「…どうしたらいいかわからないんです」
543 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:51
あたしは先輩と違って将来なりたいものが見つかってない。
ただ学校に行って勉強して眠って、また学校に行っての繰り返し。
不安を感じていた。
このまま学校生活を送って、なんとなく選んだ学校へ行って
なんとなく仕事に就くんだろうか。
友達にこんな事言っても
まだ1年生なんだから気楽に行こうよ、っていう言葉しか返ってこなかった。

「そっか…、そんな時もあるよね」
「先輩が羨ましいです」
「…美貴が?」

驚いたようにあたしを見つめて軽く息を吐いた。
ため息じゃない、少し笑った感じ。

「美貴は…頭あんまり良くないから…これしかないんだよ。
 紺ちゃんはさ、道がいっぱいあるじゃん」
「そんな事…」
「美貴は紺ちゃんが羨ましいけどな」

そう言うと手に持っていたスポーツドリンクを飲み干した。
544 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:52
空になったペットボトルを見つめ、それを高く掲げた。

「ね?これがさ、あのゴミ箱に入ったら紺ちゃんの悩みはなくなる!」
「…え……?」

ベンチから少し離れたゴミ箱は決して近くはなく、昼間だったら入りそうだけど
薄暗い今では入るかどうかは微妙な所だった。
ちらっとあたしを見ると先輩は思いっきり腕を振り上げペットボトルを投げた。
それは大きな弧を描き、ガコンっという音とともにゴミ箱へと吸い込まれていった。

「あ、入った。凄い。これで紺ちゃんの悩み事は綺麗さっぱりなくなったよ」
「ほんとですかー?」

根拠もないのに自信満々で言う先輩に笑いながら疑問の声を掛けると
うーん、と大きく伸びをしながらあたしに言った。
545 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:53
「こういう風にするとほんとになりそうじゃない?
 もし、この信号機、今のうちに渡れたら良い事がある!とかね。
 くだらないけどさ、楽しめるじゃん?」
「あはは、そうですね」
「紺ちゃんも笑ってくれたし」

そういえば、さっきまで重かった心がペットボトルの音とともに軽くなった気がした。
イライラした気持ちもどこかへ行ってしまった。

「さてと…そろそろ帰った方がいいんじゃない?大分遅い時間だし。
 美貴送ろうか?」
「…大丈夫です!1人でも帰れますから」
「そっか、じゃあ…」

先輩はウインドブレーカーのチャックを少し上げて歩いて行った。
小さくなる影を見つめながら、その背中に何度もお礼を言った。
するとくるりと振り返り、大きく手を振って走って行った。
546 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:53
あたしも立ち上がり魔法の呪文を唱える。

「…もし、試験の成績が良かったら…」



先輩と両想いになれる。

心の中で唱えた最後のフレーズが本当になりますように。



家に戻ってから勉強がはかどるようになったのは
あたしが単純だからなのかもしれないけど。
547 名前:ペットボトルと秋の空 投稿日:2003/10/08(水) 23:54
END
548 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/09(木) 17:41
こんみきハァ━━━━;´Д`━━━━ン!
片想いなこんこんがたまらん。
549 名前:ひとりとふたり 投稿日:2003/10/09(木) 23:05
ダンスレッスンが終わり、外はすでに真っ暗だった。
夕飯でも食べに行こうと誘う梨華ちゃんになんとなく断りの返事をして鞄を手にした。
外に出ると肌寒い風が頬を突き抜ける。

           早く帰ろう。

空車のタクシーを待つ間、目の前を通り過ぎる車をただぼうっと眺めていた。
ふいに右半身に風を感じた。
誰かの気配を感じ、振り向くとそこには。

「おつかれ」
「あ、おつかれさんです」

一言声を交わし、すぐに帰るだろうと思っていたその人物は
あたしの隣から離れようとはしなかった。
疑問に思い顔をしかめるとふふっと笑われた。
550 名前:ひとりとふたり 投稿日:2003/10/09(木) 23:06
「…帰らないんですか?」
「そんな顔しなくてもいいじゃない、…ちょっとさ、時間あるかな?」

右手に握っていた携帯を見た。
見たかったテレビ番組までまだ時間はある。
それに、こんな事は今までになかった。
疑問、不審感よりも好奇心の方が勝った、と言えばいいだろうか。

「いいですよ」
「よかった、ありがとう。じゃあちょっと歩こうか?」
「はい」

隣ではなくて少し斜め前を歩く背中を見つめながら歩いた。
自分に悩み事があったって強がって誰にも言わないような人だから
内心何を言われるかドキドキしていた。
やる気がないって注意されるんだろうか。
ダンスレッスンの出来が芳しくなかった事、気がついたんだろうか。
551 名前:ひとりとふたり 投稿日:2003/10/09(木) 23:06
「ねぇ?」

急に声を掛けられてがばっと顔を上げると立ち止まり空を見上げていた。

「…はい?」
「……ひとりぼっちになっちゃうなぁ」

一瞬、言ってる意味がわからなくて言葉が出なかった。
顔をしかめて同じように空を見上げるとキラキラ輝く一番星。
そして頭に浮かんだのは、安倍さん。

「…あーあ、これで最年長1人だけかぁ」

月明かりに照らされて振り向く姿はとても綺麗でまたあたしは言葉を無くした。
伏目で、その長い髪が揺れるさまは儚くて。
あたしよりも大きいはずなのにとても小さく見えて
震える手と無理矢理笑う姿があたしを悲しくさせた。
それでもあたしは一言も声を発する事が出来ない。
552 名前:ひとりとふたり 投稿日:2003/10/09(木) 23:07
「…なーんか言えよ!」
「痛てっ!」

その辺に落ちてた小石を拾い飯田さんはあたしに投げつけた。

「…なんか、言いたいんですけど、なんて言ったらいいかわかんないです」
「元気出して?とか1人じゃないですよ?とか、いろいろあるでしょ?」
「そんな上辺だけの言葉みたいなのは掛けたくはないです」

あたしがそう言うとまたふふっと笑って生真面目だね、と言った。

「飯田さんは辞めないんでしょう?」
「…え?」
「飯田さんは娘。辞めないんでしょう?飯田さんがいなくならない限り
 あたしは飯田さんの傍にいますよ」

なんとなく、面と向かっては言いづらかったから出来るだけ顔を見ないように
あたしは飯田さんに言った。
553 名前:ひとりとふたり 投稿日:2003/10/09(木) 23:07
返事はない。
偉そうな事言っちゃったかな、とか思ってると急に右腕を捕まれた。

「うぉ!」
「…よーっすぃ!なんか食べて帰ろっか?」
「…え、あの、あたし今日のドラマ…」
「ん?」

そんな屈託のない笑顔で見られたら。

「…いいですよ」
「やったー!よっすぃー大好き!」

しょうがないなぁこの大きな子供は、なんて思いつつ
この手のぬくもりはなくしたくないな、と思った。
554 名前:ひとりとふたり 投稿日:2003/10/09(木) 23:07
END
555 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/09(木) 23:12
スランプリハビリ週間(w
他板の方はもうちょっと更新お待ち下さい…。
ごめんなさい…。そして私は「夜」が好きみたいです(w

548>名無しどくしゃ様
見つけるのハヤー(w


556 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/09(木) 23:13
レス隠し…
557 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/09(木) 23:13
同じく…
558 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/10(金) 22:51
なんてリアルな・゚・(ノД`)・゚・
そしてオイラも夜好きヽ(´ー`)ノ
559 名前:ヤキモチ女と鈍感女 投稿日:2003/10/15(水) 21:03
今度という今度は絶対許してなんかやらない!
さっきから携帯が鳴りっぱなしだけどそんなの無視無視。
だって初めて聞いたんだもん。

『はだけててドキドキしました!』

なに笑ってんだよ、と。
ニヤニヤニヤニヤしやがって。
大体同じ部屋ってだけで嫌な予感はしてたんだよね。
あさ美ちゃんだって絶対わかってて麻琴を誘惑してるんだ!
絶対そう!あたしの目は騙されない!
だって麻琴が事実を明かした時うれしそうだったんだもん!!
してやったりって顔だったよ!!!
とぼけて初めて知ったみたいなフリしたってあたしにはわかるんだから!
560 名前:ヤキモチ女と鈍感女 投稿日:2003/10/15(水) 21:03
麻琴と付き合ってるのはあたしなのに。
実際ラブラブなのはあたし、高橋愛なのに。
辻さんと仲良かったり、飯田さんや安倍さんや美貴ちゃんにも可愛がられてるし。
人懐っこいから誰にでも好かれてる。
それがダメだって言ってるんじゃない。
自分の恋人が周りの人たちに好かれてる人だったらなんとなく嬉しいし。

でも、これとこれは話が別。

恋愛って好きになった方が負けなんだよなぁ…。

鳴り止まない携帯にいい加減イライラ。
一言だけ怒鳴ってやろうと通話ボタンを押すとやっと出たぁ、とかのほほんと言ってる。
561 名前:ヤキモチ女と鈍感女 投稿日:2003/10/15(水) 21:03
誰 の せ い で こ ん な に イ ラ イ ラ し て る と 思 っ て ん の ?

『愛ちゃんさぁ一緒に帰ろうって言ってたのに先に帰っちゃうんだもん。
 どうしたのさぁ?お腹でも痛かったの?』

ぷち。
えっと、何かの線が切れました、私。
あまりに怒りが頂点に来すぎて言葉も出ません。
でもそんなのには全然気がついてない麻琴は話を続けます。

『愛ちゃん先帰ったからさぁ、あさ美ちゃんと辻さんと夕飯食べてきたんだよー。
 すっごいおいしかった!あのね、かぼちゃの…』
「………うぅー…」
『…?愛ちゃん?』

麻琴のバカぁー…。
あたしはこんなに好きなのにー。
なんでわかってくれないの?
くやしくって涙が止まらない。
562 名前:ヤキモチ女と鈍感女 投稿日:2003/10/15(水) 21:04
『…泣いてる?』
「…泣いてない!」

その時、家のインターフォンが鳴った。
こんな時間に誰だろうと思ったけどこの電話を切るには絶好のチャンス。
…今、このまま麻琴と話を続けるのは無理。
ひどい事言っちゃいそうだから。

「…誰か来たから…切る…」

返事も聞かないまま電話を切った。
玄関へ行き、覗き穴を見るとそこに立っていたのは麻琴だった。

「……っ…」

きょろきょろと辺りを見回してみたり、前髪を直してみたり。
ソワソワと落ち着かないようで携帯を見つめていた。
563 名前:ヤキモチ女と鈍感女 投稿日:2003/10/15(水) 21:04
「まこ…っ!」

扉を開けるとビックリした顔で口をポカンと開けたけど、
あたしの顔を見てすぐにニコッと笑った。

「これさぁ、すっごくおいしかったんだよね。
 だから愛ちゃんにも食べて欲しいなーって思ったから買ってきた」

ホラ、と小さな箱をあたしに見せる。
中を開けてみるとかわいらしいパンプキンケーキが二つ入っていた。

「えへへ、あたし実は食べてきたんだけどもう1個買って来ちゃった。
 だってさぁ愛ちゃんが食べてたら食べたくなるじゃん?」
「……バカ」
「うぇぇ、せっかく買ってきたのにバカとはなんですか、バカとは」
「…違う。バカなのはあたしだ…」

ぎゅうっと抱きつくと少しうろたえながらあたしの背中に腕を回す麻琴。
ポンポンと優しく背中を叩いてる。
564 名前:ヤキモチ女と鈍感女 投稿日:2003/10/15(水) 21:04
「よしよし、愛ちゃんはバカでちゅね〜」
「…その発言は怒る」
「あああ、ご、ごめんなさい」
「…許す」
「よかったぁ。ね?とりあえず中に入れてよ」

コレコレ、とパンプキンケーキの箱を指差してニコニコ笑う。



あたしよりもケーキかよ!と思ったけど
まぁ、…いっか。
565 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/15(水) 21:07
こんな感じだったんじゃないかなぁとか妄想。
中途半端に終わってますけどね…。

558>名無しどくしゃ様
夜好きイタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
夜の静かな雰囲気が好きなんでつ(謎
566 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/15(水) 22:04
まこあいキタ━━━━(*´∀`*)━━━━ッ!!
大変最高です。作者様本当にありがとう・゚・(ノД`)・゚・
そして夜の静かな雰囲気同じく好きです。たまりません。
567 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:50


寒いよぅ、寒いよぅ。
ここはどこなの?────



「?」

真希は気配を感じて振り向いた。
けれどそこには誰もいなくって、道路脇に固められたゴミ袋と
暖かさも少ないひなたで寝そべる猫しかいなかった。

「…気のせい、か」

振り向いた時にずり落ちた鞄を直して歩き始めた。
一歩、二歩、三歩。


助けて。
寒くて死んじゃいそうだよ────


やはり空耳ではない声に反応して辺りを見回した。
もう一回後ろを振り向くとそこには女の子が立っていた。
今の季節には寒いだろうと思われる服装で、
しかも私服にしては物凄い派手な格好で。
568 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:50
「…さっきからあたしに話しかけてるのはあなた?」

すこし眉を顰め、女の子に声を掛けると、
その子は驚いた顔をして真希の元へと駆け寄ってきた。

「あたしの事見えるの!?」
「……はぁ?」

目を輝かせて聞く少女と言ってる事が理解できない真希。
2人の噛み合わない思考を進めてくれたのは目の前の少女。

「良かったぁ、あたしの声、誰にも聞こえてないみたいで。
 みんな素通りしていっちゃうんだぁ。
 でもね、あなただけあたしの声に振り向いてくれたんだよ」
「…はぁ」

絶対ちょっと危ない子だ。
真希は思った。
へんてこな格好だし、言ってる事もよくわかんないし。
真希は面倒な事はさっさと終わらそうと話を続けた。
569 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:51
「で?あたしに用?知り合い…じゃないよね」
「ああ!そう!ねぇ?今は『ハル』じゃないの?」
「は?春?春って春夏秋冬の春?」
「よくわかんないけど、こぅ…ポカポカして…暖かい『ハル』!」
「…今、秋だよ。まだ冬も来てないのに」
「ええぇ!!」

少女は真希の言葉にひどく落胆してペタリと道路に座り込んでしまった。
その様子を周りの通行人がジロジロと見ていくのを見て、
真希は慌てて少女の腕を掴み立たせた。

「や、やめてよ。恥ずかしいなぁ…!…そういう事だから」

やはり言ってる事がわからない。
大体真希とそんなに年もかわらなそうなのに春夏秋冬の違いすらわからないとは。
あまり関わらない方がいいと思った真希は足早にその場を去った。
どれくらいか歩いた後、後ろを見ると少女の姿は消えていた。
570 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:51
アルバイトを終えて帰宅すると何件か留守番電話にメッセージが入っていた。
一つは母親。ちゃんと食べてるのか、ちゃんと学校行ってるのか、その程度。
友達みたいに仲の良い家族も好きだったけど、
大人ぶって高校に入ってから1人暮らしをしてみた。
それはなかなか充実していて、1人でのんびりできるし、寝そべってご飯食べても怒られないし。
家賃と食費も負担してくれてるからバイト代なんかも全部自分のお小遣いだし。
寂しい事もあったけど、そこそこ家事も出来るようになったから良かったんだと思う。

コンビニ弁当をテーブルの上に置いてテレビの電源を入れた。
座ってさて食べよう、と袋の中を覗くと割り箸が入っていない。
仕方ないので台所まで箸を取りに立ち上がった。

「とりそぼろ〜♪とりそぼろ〜♪」

気分良く鼻歌を歌いながら戻るとテーブルの横には、
昼間見た少女がちょこんと座りコンビニ弁当を食べていた。
571 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:52
「…あ!?弁当!…っていうか何であなたがここにいんの!?」
「…やっぱりあなたにしかあたしの姿見えないみたいで…探しました!」

満面の笑みで弁当を手づかみでパクッと食べた。
真希はガクッとうなだれた。

「…ていうか…不法侵入……」
「あたし!亜弥って言います!」
「…今そんな事聞いてな……」
「あなたは?」
「…………後藤、真希…」
「後藤真希さんかー。真希さん!春まであたしの面倒見てください!」

真希は目の前の光景と出来事に頭を抱えて座り込んだ。
572 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:52


「…とりあえず、言ってる事の意味が理解出来ないからわかる事を詳しく教えてくれる…?」

真希がため息混じりで言うと亜弥はハイ、と良い返事をして向かい合った。

「あたし、春の精なんですね、実は」
「……あのさぁ、こっちは真剣なんだから冗談とかやめて欲しいんだけど」
「冗談なんかじゃないです!」

亜弥はむっとして言葉を続けた。

「春の精ってのは冬から春になる時に凄く働いてるんですよ!
 …何をしてるかは企業秘密ですけど…」
「…仮に春の精?だったとする。…今、秋だけどなんでいんのさ」
「……あたし、まだ新米で…初めて下界に下りてきたんだけど…。
 どうやら早かったみたいで…」
「…早すぎるね」

ここまで話を聞いたけどまだまだ全然理解できない。
というか頭が痛い。
ちょっとメルヘンチックな頭おかしい子なんだろう。
もしくは素性を知られたくない家出少女かどちらかだ。
それにしても春まで置いてくれなんて勘弁して欲しい。
573 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:52
「…そんな事言われてもさ、信じられないし、春まで置いてくれとか迷惑なんだけど」
「何でもします!家事とか…出来ることなら何でも!」
「何でもとか言われても…」

どうしようか困っているとインターフォンが鳴った。
部屋にこのまま残しとくのも嫌だったがとりあえず玄関へ向かった。
扉を開けるとそこに立っていたのは隣に住む一つ上の大学生の美貴。

「…はい」
「なんだ、辛気臭いなぁ」
「……ミキティ。…大変なんだよ、実はさぁ…変な子がうちにあがりこんでて…」
「変な子?」

どれどれ、と勝手に部屋に入って行った。
変な格好だし、さぞかし良いリアクションをしてくれるだろうと思っていたのに。
574 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:53
「…?どこにいるのさ、変な子」
「え?」

部屋から聞こえてきた声を聞き、真希は美貴の元へと向かった。
美貴の丁度目の前にちょこんと座っている亜弥。
キョトンとした顔で美貴の顔を眺めている。

「そこ!そこにいるじゃん」
「はぁ?何もないじゃん。これ、クッションでしょ?」

美貴の目線は明らかに亜弥を通り越していて、
と言うより全く姿が見えてないようだった。

「真希さん、この人誰?」
「ほら!喋った!ミキティ!喋ったよ!」
「………」

美貴は真希を見て眉を顰め、そして哀れんだ表情で真希の肩を叩いた。
575 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:53
「…ごっちん、疲れてるんだよ。早く寝な?」
「………」
「あ、寝る前に塩貸して?」
「………勝手に持ってって…」
「サンキュー」

美貴は台所から塩を持っていくと部屋から出て行った。

「……」
「…?真希さぁん?」
「……今の人あなたの事見えてなかったね…」
「だから!真希さんにしか見えないんですって!」

美貴が演技してたようには見えない。
本当に何も見えてない感じだった。
と、いう事は目の前にいるこの少女は本当に春の精という事なのか。

「…はぁ。…わかったよ、信じるよ」
「じゃあ、ここに置いてもらえますか?」
「…言っておくけど春までだからね!誰かを養うほどお金も持ってないんだから」
「ありがとうございます!真希さん!」

こうして真希と亜弥の生活が始まった。
576 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:54


「…これ、何?」
「…一応…この本見て作ったんですけど…」

目の前にあるのは真っ黒い食べ物のような物。
ご飯作りますよ!と張り切っていた亜弥が台所から持ってきた物。

「…料理はいいや」
「ゴメンなさい…」

冷蔵庫の中は結構食材が入ってたはずなのに、
得体の知らないもののせいで空っぽになっていた。
仕方なく真希はコンビニまで走った。

帰ってくると目の前が泡だらけだった。

「…な、何やってんだー!?」
「ゴメンなさい!お洗濯しようと思ってこの粉入れたら泡が凄くって…っ!」
「……洗剤は1箱も入れないで…」
577 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:54
_| ̄|○ 

膝を突いてガックリとうなだれると目の前の亜弥は涙を浮かべて真希を見ている。

「…うっ、ヒック…ごめ……なさい」
「うわぁぁ、…もう、泣かなくてもいいけどさぁ…」
「でもぉ…ック…」
「…亜弥ちゃんの好きなとりそぼろ、買ってきたから一緒に食べよう?ね?」
「…うん……!!」

頭をポンポンと叩くとゴシゴシと裾で涙を拭き、赤い目をしながら笑った。
テーブルを囲んで2人で手を合わせてご挨拶。

「いただきまーす」
「いただきます」

そういえば、誰かと一緒にご飯を食べるなんて久しぶりかもしれない。
いつも目の前にはテレビの中の芸能人しかいなかったし。
578 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:55
「真希さぁん?食べないんですかぁ?」
「んぁ、食べるよ」

こういうのも悪くないのかもしれないな。
パクリと一口食べて少し笑みがこぼれた。
そんな真希を見て亜弥は首を傾げたが、真希が笑ってるのを見て
自分も笑った。


「じゃあ、バイト行ってくる。お腹減ったらテキトーに買ってきたお菓子でも食べてて」
「うん!真希さん、いってらっしゃい!」
「…真希、でいい」
「え…?…うーんと、じゃあ真希ちゃん!」
「……いってきます」

扉を開けて外に出る。
いってきます、とか言ったのも久しぶり。
ふふ、とまた笑みがこぼれるとたまたま外にいた美貴と目が合った。

「…ごっちん…まだおかしいんだ…」
「おかしくないよ!!」
579 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:55



────そして、秋が過ぎて。
冬が来た。



580 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:55
「寒いよー!真希ちゃぁーん!あたし死んじゃうよぅ」
「だって亜弥ちゃん薄着だし…春の精なんだったら冬はきついよねぇ」
「人間の洋服とかは着れないんだもん…」

いつも通り布団を敷いてこれから眠ろうという所。
たまたま布団は2組あったから今までは別々で寝てたんだけど。

「…一緒に寝る?」

寝転んで布団をめくり上げると満面の笑みで飛びついてきた。
もぞもぞとあたしの隣に寝転んでえへへぇ、と嬉しそう。

「…亜弥ちゃん体冷たいなぁ」
「真希ちゃんはあったかいね」

自然に背中に回された腕と回した自分の腕。
首筋に息がかかってくすぐったいけど暖かかった。
581 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:56
一緒に雪も見て、
クリスマスも祝って、
初詣も行って。
着実に近づいてくる春に向かって2人の時間を過ごした。


天気予報で雪のマークが出るか出ないかというくらいになった時、
亜弥はポツリと呟いた。
それは思いもよらない言葉だけれどいつかは来る事を知らせる言葉。

「…真希ちゃん、あたし、仕事しなきゃ」
「…仕事?」
「うん…」

ご飯を食べてる最中、箸を置いて小さい声で亜弥は言った。

「もうすぐね…春になるんだ。だから、仕事しないと。だからね…」
「………」
「だから……」
582 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:56
その後の言葉が出てこない。
いつかは言わなければいけなかった言葉が亜弥には出せない。
だって、離れたくない。好きになってしまった。
目の前の人間を。優しい人間を。

「……そっか。じゃあそろそろお別れかぁ」
「……」
「そうだよねぇ、元々仕事しに来たんだもんねぇ」

わざと明るいフリをして。
寂しくなるね、なんて言ったらきっとこの子は進めない。
元々住む世界が違うのだから別れだってあるんだ。
真希は必死に自分の心に言い聞かせた。
583 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:56


────雪も解けて、暖かい春がやってきた。


584 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:57
亜弥は毎日のようにどこかに出かけて夜に帰ってくるようになった。
真希は亜弥と少しでも長く居れる様にバイトの回数を減らした。
一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、一緒に笑えるのも春が終わるまで。

天気予報で梅雨前線が出た頃、亜弥は部屋で真希の帰りを待っていた。

「ただいま」
「おかえり、真希ちゃん」

バイトから帰ると亜弥は少し愁いのある笑顔で真希を迎えた。
あぁ、今日なのか、と真希は心の中で呟いた。

「…あのね、あの…真希ちゃん…」
「…うん」
「もう…ね、行かなきゃなの…」
「うん」

喋りながら俯き、声も震え、肩も震えている。
それでも言わなきゃ、って気持ちが亜弥からあふれてくる。
585 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:57
「…また。…また来てくれるんでしょ?来年の春に」
「……え…?」
「来年はうっかり間違えないようにね?」
「……うん。あの…」
「亜弥ちゃん、約束しようか?」

瞳に涙を浮かべてる顔の横に右手を差し入れ、髪をさらさらと流す。
頬を触ると涙がこぼれて真希の右手を濡らした。
指でそれを拭いて静かに目を瞑り、ゆっくりひとつ口付けを。

「…また来てね。約束。亜弥ちゃんの好きなもの置いて待ってる」
「…真希ちゃぁん!!」

がばっと抱きついてわんわん声を上げて泣く
亜弥の背中をポンポンと軽く叩いて、そして抱きしめた。
586 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:57


次の朝、目を覚ますと亜弥はいなかった。
おはよう、って言葉がなくて、一緒にご飯を食べてくれる人もいなくて。
真希の目の前にはまたテレビの中の芸能人がいた。

テレビを消して、学校に行く支度をする。
扉を開けて、振り向く。
そこには誰もいないけど。

「…いってきます」

扉を閉めて鍵を閉める。
そこにはいるだろうと思ってた人物がいた。

「ごっちん、おはよう」
「おはよう、ミキティ」
「病気治った?」
「…治ったよ、でも」
「でも?」
「多分来年も再発するかも」
「はぁ?」

眉間にしわを寄せた美貴を置き去りにして、真希は階段を駆け降りた。
587 名前:ただ春を待つ 投稿日:2003/10/17(金) 23:58





────またキミに会う日を楽しみに
              ただ、春を待つよ────




588 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/18(土) 00:02
566>名無しどくしゃ様
レス早っ(w
おがたか大好き。これからもおがたかヲタは貫きますよ!
あやみきヲタでみきこんヲタでなちまりヲタですけど(w
というかDD(ry
589 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/18(土) 00:03
そろそろ本スレ更新しないとやばそうなので気分転換はやめます(w
…がんばろう。
590 名前:リエット 投稿日:2003/10/19(日) 04:39
更新お疲れ様です!
あやごまとかなかなか見ないcpですが思わず引き込まれて読んでしまいました。
凄く面白かったです。
本スレも応援していますので頑張ってください!
591 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/19(日) 23:13
ややや。感動です。
いやー正直泣きましたヴァー。
気分転換たくさんしてくださってもええでっせ(w
592 名前:かわいい?彼女 投稿日:2003/11/11(火) 21:52

「れいなー」

振り向くとはぁはぁ、と息を切らせて絵里が隣に並んできた。
なんだろうと思って次の言葉を待ってると絵里は笑った。
ほわぁ、っとした笑顔で見られると正直弱いんだけどそういう素振りは見せないようにする。
だってコイツ調子に乗るから。

「どうしたん?絵里」
「れいな、誕生日おめでとう」
「さっきも聞いたよ」

そう言うと両手に乗るくらいの箱を渡された。

「え?さっきみんなといた時に貰ったけど…」
「あれはみんなと居る時用。こっちが特別」
「…んな、わざわざいいのに…」
「あたしがそうしたかったから良いの!」

頬をぷくっと膨らませて拗ねる絵里の頭をポンポン、と叩いた。
あたしの行動に?マークを浮かべてる絵里。
593 名前:かわいい?彼女 投稿日:2003/11/11(火) 21:53
「…ありがと、嬉しい」

それだけ言って顔をそむけると、絵里は笑いながら顔を覗き込んできた。

「照れてんだ?」
「照れてない」

あたしは絵里のおでこにでこピンしてべー、っと舌を出した。

「…それより、開けても良い?」
「うん!いいよ!開けて!」

少しだけわくわくしながらスルリ、とリボンをはずす。
箱に手をかけて開けた。
594 名前:かわいい?彼女 投稿日:2003/11/11(火) 21:53

(・∀・) ビョーン
  )
 □


箱の中から『出てきた』のは変な顔したやつ。
いわゆるあれだ、ビックリ箱ってやつか。

「……これは嫌がらせとして受け取っていいの」
「…!!あ!!!間違った、それ新垣さんにやろうとしてたんだった!」

慌ててあたしの手から箱を取り上げてどっかに投げた。
…ていうか新垣さんにやるつもりだったのかよ。
新垣さんに嫌がらせかよ。
…別にどうでもいいけど。

「こっち!こっちだった、あはは」
「……」

手渡されたのはさっきよりも明らかに小さい箱。
…普通間違えるか?え?

「…開けるよ」
「どーぞ♪」

恐る恐る箱を開けると、そこに入ってたのは。
595 名前:かわいい?彼女 投稿日:2003/11/11(火) 21:54
「…………明太子」
「嬉しい?嬉しい?ちゃんとスーパーに行っていいやつ選んできたんだよ?」

にこにこ笑いながら話す絵里にニコッと笑顔を返す。
絵里はちょっと照れたみたいで顔を赤くする。

「絵里」
「なぁに?」
「絵里って誕生日12月だよね」
「うん♪」
「…楽しみにしててね」
「わかったぁ!!」

嬉しそうに腕を組んでくる絵里を見て微笑む反面、
心の中では「コイツの誕生日何送ってやろうか」とほくそ笑むあたし。

周りから見たらラブラブに見えるかもしれないけど、
ちょっと抜けてる絵里と付き合っていくのは結構苦労いるんだよ。




でも離れられないんだから、仕方ないけどさ。
596 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/11/11(火) 21:58
AAずれた_| ̄|○
というわけでれいな生誕。マコ生誕書いてないのにね…。
おがたかは本スレで書いてるので…とごまかす。
10分くらいで考えたので突っ込まないで下さい_| ̄|○

590>リエット様
読んでくれてサンクスです。
某所でお話できて嬉しかったです(w

591>名無しどくしゃ様
気分転換しますた。
どくしゃさんは田亀もお好きなようで(w
597 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/11/12(水) 05:06
ヽ(´ー`)ノバレテーラ
めちゃくちゃ和む(*´д`*)
えぇ田亀好きです。でもまこあいが一番だもん(w
598 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:52
あの人の傍にいたい。
いつだってそう願ってた。
だから流れ星にお願いしたんだ。
あの人の傍にいさせて下さいって。
もちろん、翌日がコンサートの時だって。






でも神様はうっかり者みたい。
599 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:53
朝起きるとめちゃくちゃ布団が重かった。
一生懸命抜け出すとパジャマが脱げていた。
辺りを見回すと周りの物が大きかった。
鏡を見ると映し出されたのは小さな子猫だった。

「うそ…、だよね…?」

かろうじて言葉は話せるみたい。
だけど目の前には人間のあたしはいなかった。
真っ白な毛皮とピンク色の肉球。
どうしよう。今日はコンサートなのに。
もしかしてこの猫の姿のまま出なきゃなの?
ていうかあたしが誰だかわかってもらえるの?

起こった出来事についていけなくて混乱していると部屋の扉が開いた。
驚いて布団で身を隠して誰が入ってきたのか見ると
ひょっこり顔を出したのは愛ちゃんだった。
600 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:54
「あさ美ちゃん?あれ?麻琴ぉーあさ美ちゃんいないよー?」
「えー?ほんとー?」

愛ちゃんの後ろからまこっちゃんも現れた。
2人だった事に安心してフルフルと首を振りながら布団をどけた。
布団の上にいたあたしと2人の目はばちっと重なり合い
その瞬間、愛ちゃんは笑顔になりあたしの傍にやってきた。

「や〜、超かわいい!なんで子猫がいるの〜〜〜?」
「ほんとだ〜!なんか目がウルウルしててあさ美ちゃんみたい!」
「……あたしだよぉ…まこっちゃん…」

あたしを抱き上げようとしていた愛ちゃんの手がピタッと止まる。
あたしの頭を撫でていたまこっちゃんの手もピタッと止まる。

「…今、あさ美ちゃんの声しなかった?」
「…し、したね、しかもこの子猫から聴こえたんだけど…」
「まさかぁ」
「…だからぁ、あたしなんだよぉ」

2人は一緒にあたしを見た。
まこっちゃんは口が開きっぱなしで、愛ちゃんは大きな目を丸くさせている。
601 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:54
「あさ美ちゃん!?」
「そうだよぅ…」

綺麗にハモッた2人の声と弱弱しく出たあたしの声。
鏡をもう一回見ると耳もたれちゃって尻尾も元気なく、動かない。

「ま、まじであさ美ちゃんなの…?」
「うん…」
「な、なんで猫になってんのさ!?」
「わかんない…」
「わかんない、って…」

ベットの上で震えるあたしを覗き込む2人。
なんかあまりにも大きくて小人になった気分。
や、実際は子猫なんだけど…。
心配そうな顔してるわりにあたしの頭を撫でるのをやめないまこっちゃん。
602 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:55
「ね、ねぇまこっちゃん…撫でるのはやめてくれないかな…」
「え?あ?ごめん!つい…可愛くて…」
「…かわいい?あたしよりかわいいって言うの?麻琴!!」
「ち、違うよ!愛ちゃんの方が可愛いけど子猫のあさ美ちゃんも可愛いから…」
「麻琴は浮気しすぎ!!」
「う、浮気じゃないよ!!」

目の前で痴話喧嘩が始まった。
絶対この2人あたしの事心配してない。
ガクッと首を落としてため息をついた。

「…とりあえず、どうしようか…。今日昼からコンサートだし…。
 猫のまま出るわけにもいかないし…」
「当たり前だよぅ…!」
「…とりあえず」

よいしょ、とおばさんくさい掛け声をして愛ちゃんはあたしを抱き上げた。
これからの案でも浮かんだのかな?なんて思いながら愛ちゃんを見つめると
ニコッとあたしに笑いかけた。
603 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:55
「…あさ美ちゃん、可愛すぎ!みんなにも見せてこよう!」
「…え!?ちょっ…!!?」
「あー!!愛ちゃんだって浮気じゃんかー!!!」

愛ちゃんに抱きかかえられてあたしは部屋から出た。
抜け出そうにも人間の力には子猫のあたしの力じゃ太刀打ちできない。
絶対楽しんでるよ、この人たち…。
最初に見つけられたのがもっとしっかりした人だったらなぁ…。

そんな事を思ってると前からあたしが一緒にいたいと願っていた相手が歩いて来た。
小さな心臓はドクドクと大きな音を鳴らしている。

「あ、藤本さん!」
「おはよう…って子猫じゃん!可愛い〜!どうしたのこの子?」
「えっとですね〜実は〜」

ニヤニヤしながらまこっちゃんが話そうとした時遠くからマネージャーさんの声が。
604 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:56
「高橋ー小川ー!ちょっとこっちに来てー!」
「え?あ、はーい!今行きまーす」
「藤本さん、ちょっとその子見ててくれませんか?」
「え?別にいいけど…」
「お願いしまーす!」

2人はばたばたとマネージャーさんの方へ走って行った。
その途中2人はくるっと振り返り、口をパクパク動かした。

『藤本さんと2人きりだね!』
『頑張って!あさ美ちゃん!』

…そうだった、2人はあたしが藤本さんの事好きだって事知ってたっけ。
ありがたいようなありがたくないような。
確かに一緒に居たいと願ったけど、こういう事じゃないんだけどなぁ…。
605 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:56
「ん?眠いの?」

置いてあったソファーに座り、首の辺りを撫でながらあたしの顔を覗き込む藤本さん。
か、顔が近い…!!すっごい微笑んでるし…!!
どうしよう。
猫でもいいかもしれない。

でもそんな訳にはいかない。けれど戻り方もわからなくて。
困ってしまってにゃんにゃんにゃにゃーんにゃんにゃんにゃにゃーん、って犬のおまわりさんかよ!
ノリ突っ込みなんてしてる場合じゃないのに…。
また小さい耳は垂れ下がり、泣きそうになった。

「おまえ元気ないなぁ?どっか痛いの?」

心配そうに優しく背中を撫でてくれる藤本さん。
いっその事話しちゃった方が楽になるのかなぁ、とか思ったけど
心配は掛けたくない。
どうやって元に戻るかは後回しにして、とりあえず猫のように振る舞う事にした。
606 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:57
「…にゃ、にゃ…ーん」
「あ、鳴いた。なんか変な泣き声だなぁ。声がかすれてるよ」

Σ(゚д゚lll)ガーン 変って言われた…。

「でもかわいい。なんかねぇ、おまえ美貴の好きな子によく似てるよ」

再びΣ(゚д゚lll)ガーン 好きな子…。
いたんだ…。そりゃいるよね…。

「なんかその弱弱しい所とか…」
「目がウルウルしてるとことか…」
「声も似てるかもね、あはは」
「…ってなんで猫にこんな事話してんだか」

ちょっと顔を赤くしながらあたしの頭をポンポンと軽く叩いた。

藤本さん。
それって誰の事言ってるんですか?
…ひょっとしたら、自惚れてるのかもしれませんが…。
607 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:57
藤本さんは抱き方を変えてあたしと向かい合うように抱えた。
本当に顔が近くてドキドキする。
そう思ってるとだんだん近づいていく!!
もしかして藤本さん!??

きききき、キスしようとしてますか!?

確かに今は紺野あさ美の姿はしてませんが心の中は紺野あさ美で外見だけが子猫だから
かわいい子猫がいればキスしたくなるのもわからないでもありませんが
ちょ…ちょっとそれはー!!

混乱してる隙に藤本さんは軽くあたしに唇にキスをした。
や、やわらかい…。

その瞬間あたしの体は大きくなり藤本さんの膝に乗っかるような形で人間に戻った。
608 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:58
「……!!……え」
「…あ、あは…ど、どうも…」

目を丸くしてあたしの姿を見る藤本さん。
そりゃそうだ、子猫が一瞬のうちに紺野あさ美になったんだから。
目の前の藤本さんの顔はみるみる赤く変わっていく。

「…?どうしたんですか…。…あああ!!」

そうです。
そうなんです。
今のあたしは全裸なんです。

ガバッと体をちぢこませて見たものの、隠せるわけもなく
恥ずかしくて情けなくてどうしたらいいかわからなくて泣いてしまった。
藤本さんの膝の上に座ってるという事も忘れて。
そんなあたしを見て藤本さんはあたしを隠すようにぎゅうっと抱きしめて、
着ていた上着を脱いであたしに掛けてくれた。
609 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:58
「と、とりあえず…よく、わからないんだけど、み、みえちゃうからさ」
「…ヒック、…う、ごめんなさ…」
「み、美貴はべ、別にいいんだけど…」

そんな事をしているとマネージャーさんに呼ばれていた二人が戻ってきた。

「キャー、こんな所でえっちな事してる人たちハケーン!!」
「藤本さんたち…そういう事は人のこない所でしましょうよ〜」

2人とも…。
2人がからかうと藤本さんはソファーを右手でバシンっと叩き、
物凄い目つきで2人を睨みつけた。
その様子に2人は怯えている。

「いいから、なんか服持って来てくれると嬉しいんだけど、センパイ」

センパイと呼んでるもののこれは明らかに命令。
怯えてる2人はハイ!と返事をしてそそくさと走っていった。
610 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:59
「…変な事聞くかもしれないんだけど、もしかして子猫は紺ちゃん…?」
「……ハイ…」

表情は物凄くなんで!?って顔してる。
ツッコミ気質だからなぁ…。
あたしが返事をすると藤本さんは頬の辺りをポリポリと掻いてまいったなぁ、と苦笑いした。

「という事はさっき美貴が喋ってたことも聞いてたよね?」
「……ハイ…」
「…紺ちゃんにキスしたよね、美貴」
「………ハイ…」

藤本さんはうわぁぁ、と声に出して両手で自分の顔を覆った。
回されてた腕がなくなったせいでずり落ちそうになったあたしを慌てて抱きとめた。
611 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/17(月) 23:59
「…こんな事ってあるの〜…」
「信じられないですけど…神様にお願いしたんです…」
「…なんて?」
「好きな人と…一緒に居たいって…。あは…形は変だけど願い、叶っちゃいました」

もうこんな恥ずかしい思いもしたんだし、言っちゃえ!みたいなノリで明るくさらっと言いました。
この前の時点で顔から火が出るほど恥ずかしい思いもしたんだし、もうどうにでもなれ、と…。
目の前の藤本さんはあたしの言葉を聞いて目を丸くした。

「…好きな人って?」

きょとん、とした感じで聞いてくる藤本さんに向かってあたしは人差し指を向けた。

「…藤本、さんです」

そう言うとへ?と間抜けな声を出した。
と、同時に力が抜けたのかあたしの体はまたずり落ちそうになって、
今度はあたしの方から落ちないように藤本さんを抱きしめた。
612 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/18(火) 00:00
「あ、あのあたし、藤本さんの事が…」
「……ちょっとストップ」

顔を背けてあたしの目の前に手のひらをかざす。
それ以上言うな、って事…?
そっか、そうだよね…。藤本さんには亜弥ちゃんがいるもんね…。

「…ごめんなさい、迷惑ですよねいきなり…」
「…違う、そうじゃなくて。美貴だって紺ちゃんが好きなんだから…ってばらしてるし。
 あはは…」
「じゃあなんで…」

あたしが問うと、藤本さんはちらっと下の方に目をやった。
そして顔を赤くする。

「…紺ちゃん、今裸だし…紺ちゃんの口から今それを聞いたら
 美貴何するかわかんないから…なぁ…」
「……ぁ…」

藤本さんの言葉を聞いて、思い出す。
…はやく服持ってきてよ〜!まこっちゃん愛ちゃん〜!
613 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/18(火) 00:00
「遅いね、2人とも」
「はい…」
「…忘れてるって事はないよね」
「たぶん…」
「…もう一回キスしていい?」
「…はい、……ええ!?」
「…だってさっき猫だったし」

藤本さんはあたしの顔を覗き込み、優しく笑う。

「キスで止まらなかったらごめんね」

返事を返す前にあたしの唇に藤本さんの唇の感触が伝わった。
さっきは藤本さんの唇の方が大きかったから今と感触が違う。


数秒目を閉じて、唇が離れる。
目を開けると目の前の藤本さんは大きかった。
614 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/18(火) 00:01
え?大きい?


「…え?」
「……ふぇ?」

あたしの背中には大きな藤本さんの手。
あたしの体はふわふわ。

「…また」
「…猫になった…?」

2人で放心状態に陥ってるとやっと2人が戻ってきた。
あたしの服を持ってこっちに向かってくる。

「も、持って来ました〜ってあれ?」
「また子猫になってる!」

2人はさっきのようにまたかわいい、って言いながらあたしの頭を撫でる。
この2人、やっぱり全然心配してない…。
615 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/18(火) 00:01
「あ、でもやばいですよ!もう少しで時間…」
「大丈夫」

まこっちゃんの言葉を静止して藤本さんはあたしを抱いたまま立ち上がる。
優しく、力を入れないように抱き上げてくれる。
手から腕から体から藤本さんの体温を感じる。

「服貸して」
「あ、はい」

服を受け取ると無言で藤本さんは歩き出す。
そして部屋の前で止まった。
ここは、藤本さんの部屋だ。

藤本さんはあたしをベットの上に乗せて隣に座り、腕を組んでいる。
首を傾げて見ていると、ふっ、と笑った。
616 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/18(火) 00:02
「…子猫紺ちゃんもかわいい」
「……んぇ?」
「でも人間の方がいいな」
「…藤本さん…?」
「キスすると変化するって事でいいんだよね?」

さっ、と抱き上げてちゅ、と軽く触れた。
その瞬間あたしはまた人間になる。
…もちろん裸。

「…集合まで時間まだあるよね…?」
「ふ、ふじもとさ…」




その後、何があったかはご想像にお任せします。
617 名前:アニマルライフ 投稿日:2003/11/18(火) 00:03
神様、あなたはうっかり者です。
いつでも一緒に居たいと願いましたがこんなのではないんです。
ところで、あたしの体はいつ治るんですか?





END?
618 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/11/18(火) 00:11
激しく意味わかんねぇ!!!!
ただ甘いみきこんが書きたかったんです…それだけです…。
あぁ、でも楽しかった(w

597>名無しどくしゃ様
どくしゃさんのまこあい好きは物凄いわかります(w
あの2人は真実ですよね!某所の投票では落ちたけど_| ̄|○ 
619 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/11/18(火) 18:49
お、おもしれぇえっ!!!なんてこったい!イケてるよ!(;´Д`)ハァハァ
もぉーさりげなくまこあいだしぃー(w
そして凄まじく理解者居たー。そうよそうなのよ。
真実だ!!あの2人は!!ヽ(`Д´)ノ
620 名前:つみ 投稿日:2003/11/24(月) 17:59
これいい!!!
うわ〜〜!
画面見てにやけちゃってますよ〜・・・
このシリーズ続き物でみたい・・・
621 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/26(金) 13:11
面白いです!!
作者さんのなちごま見てみたいです!
622 名前:アンコ 投稿日:2003/12/26(金) 13:53
こんみき最高ですね!!!
また猫っていうのが・・・
また書いてください!!!
623 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/27(土) 02:41
この作者さんは新スレたててますよ。
なのでここはおとしておいた方がいいと思います。

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