うららかな午後2
- 1 名前:えびちゃ丸 投稿日:2003年02月06日(木)20時41分30秒
- 白板で書いていたものの続きです。
一貫制女子学園を舞台にしたアンリアル・ドタバタもの。
事件事故はなるべく起こらない方向で。
更新、内容ともにゆるゆるではありますが、
よろしければ、おつき合い下さいませ。
前スレ:白板「うららかな午後」
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/white/1035467805/
- 2 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)20時56分05秒
- 一つ確認しときたいこと。あたしの英語はけっこう本式。
なんてったって小学生の頃、ネイティブスピーカーから直々に教わったんだから。
しかも教わったって言っても、別に塾とかに通ってた訳じゃない。
話す人が側にいたから、自然に身に付いてしまった。それだけのこと。
幼い頃に自然と身に付いた英語。紺野の言葉を借りるなら、まさに「完璧」といったところ。
…のハズだったんだけどね。
それが「完璧」なんて言えない代物だって思い知らされたのも、随分と昔。
忘れもしない、中一の春。英語の初授業の時だった。
得意気に「英語」を話すあたしを見て、目が点になっちゃった先生。
「…吉澤さん、英語風に発音しても日本語は日本語です。
それから、いちいち語尾に"L.A."を付ける必要もありません。」
クラスに広がった大爆笑。いつしか先生もこらえきれずに大笑い。
はっきりいって、ものすごくトラウマになってます。
- 3 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)20時57分42秒
- あたしに「英語」を教えてくれたのは、アヤカさんという母方の遠い親戚。
もちろん日本人だけど、幼い頃から世界をまたにかけて引っ越しの連続。
日本語と英語、ほぼ同時期に喋れるようになったって言うから、ネイティブと呼んで問題なし。
あたしが小学生の時、1年くらいの間だろうか、
父親の仕事の都合で近所に住んでたことがあった。
あまりに幼い頃のことだから良くは思い出せないけど、けっこう仲良くしてもらった記憶がある。
まあ両親の話だと、あたしがチョロチョロ付いて回ってたってのがホントらしいけど。
とにかくいっつも一緒にいたってのは確かで、
遊びの一貫みたくして「英語」を教わってたってわけ。
・あたしは「英語」をネイティブスピーカーから教わった。
・あたしはその「英語」を、大変忠実に記憶し、完璧にマスターした。
・だけどあたしの英語はめちゃくちゃである。
ってつまり、思い切りダマされていたわけだね。そのネイティブとやらに。
もちろんそれって、アヤカさんな訳ですが。
ホントに素敵で優しいお姉さんだって信じてたのに…
- 4 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)20時59分08秒
- さてさて、何故また突然アヤカさんの話をするのか。
というのも実は晴れて今日、その悪の張本人と再会することになったのだ。
一体何年ぶりになるのだろう。
アヤカさんはこの春大学を出て、通訳兼ライターとして、雑誌を作る仕事をしているとのこと。
アメリカの雑誌に、日本の紹介記事なんかを書いたりしてるそうだ。
今回は急遽、「ニッポンの女子校生」という特集を組むことになったらしい。
早々に女子校生の日常について取材しなくてはならない。
そこで親戚のつてを頼って、現役女子校生であるあたしがご指名になったって訳。
昨日の電話だと、「特別な事しなくていいから、普段通りの部活なんか取材させて。」とのこと。
「はい。分かりました。」
あたしはにこやかに答えたけどね。これは恨みを晴らす絶好のチャンスです。
外人さんが喜ぶような「ニッポンの女子校生」ってヤツを、存分に見せて差し上げようじゃないですか。
いつぞやの「英語」のお礼にね。
- 5 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時01分23秒
- 取材は放課後からって話しだから、昼休みを使ってみなに事情説明。
協力を仰ぐため止むを得ない。かつての恥を御開陳。
…案の定、腹抱えて大爆笑された。
「噂には聞いてたけど… アレってギャグじゃなかったんだ!」
ごっちん。マジも大マジ、あたしゃ真剣に信じてたんだよ…
「吉澤さん、大変お気の毒な話しですね。 …L.A.」
紺野… 笑うなら思い切り笑っておくれよ。失笑されるのってホント辛いもんだよ…
「そんなデタラメ信じるよっしーがどうかしとんねん、逆恨みやんか。」
「ののらって、そんなのウソって分かるのれす。」
あいぼん、のの。思いっきりって言ってもさ、やっぱ程度ってもんがあるでしょ。
そんな転げ回って… 何も涙出るまで笑わなくてもいいじゃん。
「もうみんな、そんな笑ったらひとみちゃん可哀想だよー。」
そう言う梨華ちゃんの肩も、さっきから小刻みに震えてる。
…とほほ。予想以上に喜んで頂けたようで、あたしゃとっても嬉しいですよ。
- 6 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時02分17秒
- ひとしきり笑い転げた後、とりあえずみんな協力してくれることに。
人をダマす、急遽降って湧いた祭りネタ。
理由はどうあれ、この手のことはウチら大好きだからね。思いっきりノリノリ。
「紺野。放課後忍者の格好で来て欲しいんだけど、準備できそう?」
「忍び装束は常備してあります、完璧です!」
「よっすぃ〜、ののは河童の格好がしたいのれす。」
「おっ! それエエなぁ、ウチも一緒に河童着たいわ。」
「じゃあ辻加護は河童ね!」
「へい!」「らじゃ!」
「ねぇひとみちゃん! 私フリフリの服着たい! ピンクの!」
「よしこ! ごとーはお姫様かペンギンの格好がいい!」
っていうか、いつの間にか主旨がわからなくなっちゃってるけど…
「ちょいタンマ。一応日本らしくないとダメだって。それにみんな仮装っておかしいよ。」
少しはブレーキかけとかないと、ただの仮装大会になっちゃう。
「でも私たちも何か着たいもん。」
「んぁ! 着たい着たい!」
- 7 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時04分13秒
- ごっちんと梨華ちゃんも必死に仮装したがってたけど、"過ぎたるは及ばざるが如し"。
こういうのにやりすぎは厳禁。高校生チームは浴衣着用ってことで手を打った。
お祭り好きのウチの部的には、浴衣はそう珍しい格好でもない。
これなら"やりすぎ"って程のこともないだろう。まあ多少時期外れではあるけど。
「じゃあみんな、正しいニッポンの女子校生ってやつを見せつけてやろうね!」
衣装も決まったところで号令をかける。
「がんばろうね、ひとみちゃん!」
「楽しみれす。」
ホントにみんな、こんな時は嬉しそうな顔するよね。
アヤカさんにはちょっと悪い気もするけど、悪ノリ大好きなのもウチらの「普段通り」の姿ですからね。
とにかく、「英語」のかたきはキッチリ取らせてもらいます。
各々が最高の「ニッポンの女子校生」を演じることを誓い合い、とりあえず昼休みは解散となった。
- 8 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時05分58秒
- 放課後、次々とみなが集合。それぞれの晴れ姿を順繰りに見回す。
中でもやっぱり注目の的は紺野。忍び装束見るの、みんな初めてだから。
「紺野ちゃん、とってもかっこいいのれす。」
「んぁ! ホントにいいねぇ、何だかごとーもいっぺん着てみたいよ。」
「ホンマ可愛いなぁ。ウチも着てみたいわ。」
「ありがとうございます。」
みなの賛辞に照れまくる紺野。でも実際、こんな愛くるしい忍者は初めて見た。
もちろん紺野以外の忍者なんて見たことないけどさ。
しかもこの格好で全く違和感ないからスゴイ。
普段から紺野は忍び装束じゃなかった? そんな風に思っちゃうくらい似合ってる。さすが本職。
そんなこと考えてたら、梨華ちゃんが一人、複雑な表情して座ってた。
「どしたの、難しい顔して?」
「あのね。私、女の子はピンクなのかと思ってたの。違うんだね。」
…梨華ちゃん。
ピンクマニアのすっとぼけ発言に、紺野が忍び装束のレクチャーを始める。
「それはアニメの世界だけです。実際は男女ともに黒が基調ですから。」
活き活きと目を輝かせて、黒であることがいかに重要か力説。
闇に潜む忍者にとり、これは譲れないポイントなのだそうで…
- 9 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時07分54秒
- 「そっか、やっぱりピンクじゃダメなんだ。」
「はい、忍者は黒です。」
きっぱり断言した紺野に、梨華ちゃんは首をうなだれる。
「でもピンクのがあったら着てみたいなぁ。」
まだ言ってる。っていうか、そんなに着たかったの? ピンクの忍び装束…
いまいちついてけないあたしを置いてきぼりに、さらに話しは遠ざかる。
「なあ、紺ちゃん。」
「何でしょう加護さん?」
「梨華ちゃんは忍者ちゃうねんから、忍び装束ピンクでもエエんちゃうか?」
あいぼんの提案に、紺野はポンと手を打って頷く。
「なるほど確かにそうですね。みなさんの場合は必ずしも黒を着る必要はないかもしれません。」
これには梨華ちゃん大喜び。
「えっ、私ピンクの忍び装束でいいの?」
「はい。石川さんはピンクで問題ありません。」
「梨華ちゃん良かったやん。」
「うん、嬉しいな!」
何このやりとり? ねえみんな、ちょっと待ってよ。
そもそも忍者じゃなかったら、忍び装束着る必要自体ないじゃん…
黒だろうとピンクだろうとさ…
- 10 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時08分54秒
- 「ののもせっかくなら水色がいいのれす!」
「ウチも実は、ピンクありやったらピンクがエエなぁ思うててん。」
「ごとーは何色にしよっかな? 白とかも結構カッコイイよねぇ。」
とほほ。結局みんな、着る必然性とかってのはどうでもいいのね…
一人唖然とするあたしを、梨華ちゃんがニコニコとのぞき込む。
「ひとみちゃんは何色がい〜い?」
「…黒でいいです。」
力無く答えたあたしだったけど、梨華ちゃんのあまりの可愛いらしさに思わずホホが緩んでしまう。
いやいつだって、のぞき込んでくる梨華ちゃんってのはとびきりドキドキする構図なんだけどね。
今日は特別。だって今年度初浴衣だもん。
時期はずれに浴衣姿が見れちゃった。とにかくかなり得した気分。
「その浴衣おニューだね。」
「うん。手芸部の子に言ったらね、せっかくだから新品着てみてって。どう? 似合うかな?」
ちょっと照れながらも、わざわざクルリと一回転してくれる。
これまたクラスの友達がしてくれたとのことで、綺麗にアップされた髪。
涼しげなうなじに、思わずクラクラしてしまう。
- 11 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時09分55秒
- 実はあたしたち、びっくりするくらい沢山の浴衣を持ってる。
恐ろしい話しだけど、まったく買ったことないってのに。
お祭り好きの企画部、しょっちゅう派手な格好をするってのは周知の事実。
だから和裁の授業で作ったヤツなんかを、物好きな人がプレゼントしてくれたりするのだ。
ホントに企画部員はみんな衣装持ち。お祭り関係は特にね。
そんな中でも、梨華ちゃんの浴衣はさらに特別。
何と正式に専属契約を結んでるから、絶対手芸部製と決まっているのだ。
"年10回以上校内で着る"・"校内では手芸部製以外着ない。"
それを条件に、毎年浴衣を提供してもらえるってわけ。
つまり浴衣を着るのも仕事の一部。まさにモデル。
実際梨華ちゃんが着れば絶対可愛く見えるから、手芸部には沢山注文が入る。
ウチらもハッピー、手芸部もハッピー。
なかなか良くできた仕組みだと思う。もちろんあいぼん考案ですが。
今回の浴衣は、紺地に鮮やかな朝顔の染め抜き。
ホントに古典的な柄だけど、梨華ちゃんが着ると特別に見えるから不思議。
今年も沢山注文はいるだろうね、やったね手芸部。
- 12 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時10分51秒
- 思わず見とれてボーっとしちゃってたあたしに、照れ照れの梨華ちゃん。
「ひとみちゃん… そんなじっと見られると恥ずかしいよ…」
「だって可愛いんだもん。」
「もうっ。」
うつむき加減で顔真っ赤。あたしだって女の子だけどさ、こんな仕草は真似できない。
「ホントに恥ずかしいよぅ。」
あらあら後ろ向いちゃって。恥じらう姿もまた格別。
何だかあたしは意地悪モード。クルリと前に回り込み、梨華ちゃんを見つめる。
「お嬢さん、逃げようとしてもムダですよ。」
「ひとみちゃんの意地悪。」
照れ隠しのふくれっ面。ホント可愛いったらありゃしない。
へへへ。ポカポカ叩いたってちっとも痛くなんてありませんよ。
サイコー! 浴衣サイコー!
- 13 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時12分24秒
- 「真っ昼間っから節操のないことやな。」
楽しくじゃれあうウチらに、すかさず入る無粋な茶々。
「いつれも同じ反応なのれす。ちっとも進歩がないれすね。」
普段から口の減らないガキどもだけど、河童姿で言われるとホントに腹立つね。
ののが黄色であいぼん緑。色違いの衣装で、お手上げのポーズ。
「うるさいなー! 進歩なくたって腹ばっか成長し続けるよりはまし。二人ともずいぶんきつそうじゃん。」
「全然きつくなんてないのれす!」
「そやそや、よっしー興奮しすぎで目がおかしなってんのや!」
口とがらせて即座に猛反論。何だかホントに河童みたいだね君たちは。
もちろんこれも、本物見たことはないけど。
それにしても、コイツらの河童姿も堂に入ったもんだ。
去年の学園祭。演劇部主催の肝試しで、ののが河童役やったのがきっかけだった。
「きゅうりくれ〜」暗い校舎の中でそんなこと言うだけの役で、ちっとも怖くなんてなかったんだけどね。
でも何故か、それが学内で馬鹿うけ。おかげで肝試しは記録的大盛況。
その大入りのお礼ってことで、河童衣装が二人にプレゼントされたんだよな。
ご丁寧に大量のきゅうりまで添えて…
- 14 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時13分33秒
- これに大喜びした二人。一時期しつこいくらい河童姿してた。
そのままのカッコで仕事行ってみたりして、
何もない平日に、理由もなく河童がうろついたりしてたんだよなぁ。
なんつー女子校だよ…
「久方ぶりに着たけど、やっぱ河童はエエもんやな。」
「なんらかホントの自分に戻れたような開放感があるのれす。」
「そやな。何でやろ。」
「カッパサイコー!」
「カッパサイコー!」
訳のわからん事を叫んで無邪気に踊り出す二人。これまた去年もさんざん見た光景。
進歩ないのはお前らだろうが…
まあ可愛いは可愛いんだけどね、何か嫌なことまで思い出しちゃった。
あろう事かガキども、河童姿のまま買い出し行きやがった。ばっちり商店街まで。
特に騒ぎが起きたりした訳じゃないけど、運悪くそれを平家さんに見つかってしまった。
- 15 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時14分27秒
- 「買い物行ったら、教え子が河童姿で踊ってんのやで。ウチの気持ち分かるか?」
…分かるような、分からないような。
「よう言わんけど、とにかくめっちゃ恥ずかしいねん。頼むわ、何とかしてや。」
何故かあたしが泣きつかれたんだ。
言って聞くガキどもじゃないし、平家さんは哀れだし。理不尽な板挟み。
何度も止めるよう哀願されたけど、結局二人の河童ブームが去るまでどうしようもなかった。
「お前ら、開放感は良いけどな! もう河童の格好で買い出しとか行ったりすんなよ!」
「「へ〜い!」」
「平家さんもの凄く可哀想だからホントに止めろよ! あたしだって恥ずかしいし!」
「「ほ〜い!」」
踊りに夢中、ぞんざいな返事を返す二人。ちっとも聞いちゃいない。
…平家さん。コイツら絶対、またこの格好で買い出し行きます。
あたしには止められそうもありません。諦めて下さいね。…とほほ。
進歩がないのはあたし? それともガキども? 諦めきれない平家さん? もう良くわからんわな。
にしてもちょっと頭痛いね。ため息がこぼれる。
- 16 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時15分34秒
- そんな気持ちなんて気にもかけず、まったく無邪気な河童たち。
突然踊りを止め、あたしの衣装を誉め始めた。
「れも、よっすぃ〜もおニューれすね。カッコいいれすよ。」
"れも"って文はどこにつながってるの? 君はいつでも脈絡がないね…
まあ河童だろうと、唐突だろうと、誉められればやっぱり素直に嬉しい。お礼にお皿をなでてやる。
「ひとみちゃんとっても素敵!」
すかさず梨華ちゃんも同調。両手を胸の前で組んで、とろけそうな表情。
これまたおねだり視線で頭を出してくるので、お礼に頭をなでてやる。
今回の浴衣は、大棒縞のシンプルな縦ストライプ。
「見て見て! 実はごとーもお揃いなんだよ、短大の家政科の人がプレゼントしてくれたんだぁ。」
ごっちんもやってきて、二人で決めのポーズを作る。
あたしは濃紺と白、ごっちんは小豆と白。同デザインの色違い。渋めだけど二人とも結構お気に入り。
「こりゃなかなか上物や。エエもんもろたな。」
緑河童も納得の上物ってか。
「…お二人とも、とてもお似合いです。」
おまけに忍者にまで誉められちゃった。嬉しいもんだね。
- 17 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時16分45秒
- そんな感じで衣装のお披露目も一段落ついたところで、あいぼんが口を開く。
「で、よっしー? このカッコでウチら何したらエエんやろ?」
「んぁ! そだねぇ。作戦教えてよ作戦。」
「…取火が必要なら早めに言って下さい。あれは支度に時間がかかりますから。」
みなが期待に満ちた目であたしに注目する。
「……」
「ののは準備OKれすよ。」
「……」
「ひとみちゃん! 私何したらいいかな?」
「……」
困った。和風な格好で驚かしてやれとは思ってたけど、その先何も考えてなかった。
「…あのさ。」
たじろぎ気味に口を開いたあたしを、みなが食い入るように見つめる。
あたし今母鳥の気持ち、しかも手ぶらの。
イタズラの種を心待ちにする雛たち、目を輝かせてあたしの言葉を待ってる。
どうしよう。
こんなにやる気マンマンになってる人たちに、とてもノーアイデアなんて言えない。
- 18 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時17分52秒
- 「今回はさ、その都度指示出す方式でやんない?」
しどろもどろのセリフに、紺野がすぐさま不安気な顔をする。
「…それだと即座に取火を使うのは無理ですが。」
「ほら… あんま大げさにやると、さすがにバレるだろうからさ。指示ないときは、普段通りでお願い。」
かなり苦しいあたしの言葉に、雛鳥たちは案の定不満顔。
「…それだと取火を使えません。」
紺野は心底残念そう。っていうかその取火って何なのさ?
ロクでもない物ってのは間違いない気がするけど…
「まあしゃあないな。でも普段通りってことは、好きに動いてもエエっちゅうことやろ?」
「うん。まあ。」
「紺ちゃんも気落としなや、取火はヒマ見てこっそり準備したらエエやん。」
「…はい。」
あいぼんの慰めに紺野もようやく元気を取り戻す。
思い切りぐずぐずな感じではあったけど、何とかその場は収まった。
そんなこんなでとりあえず、なし崩し的にお茶の時間に。
- 19 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時19分27秒
- いつも通りお茶を煎れながら、ごっちんがみなに聞く。
「芋ようかんあるけどどうする、お客さんにとっといた方がいいかなぁ?」
「今食べたーい!」
すぐさま声を揃えて返事が返り、芋ようかんは速攻ちゃぶ台に。
先ずはお茶うけの取り分争い。それが終われば、後はとりとめのないおしゃべり。
みなで芋ようかんを頬張り、笑いながらお茶をすする。
河童や忍者の格好こそしてるけど、こうなっちゃうと完全にいつものペース。
「あっ、そうら。」
そんな中、脈絡なく河童の声があがり、みながののに注目した。
「紺野ちゃん、さっき言ってた取火って何れすか?」
そうそう、確かにあたしも気にはなってた。怖くて聞けなかったけど。
どうやらみんなも気になるみたい、今度は紺野に視線が集まる。
だけど、当の忍者は芋ようかんが口いっぱい。喋りたいけど喋れない。
代わりにあいぼんが、さらりと質問に答えた。
「のの。取火っちゅーんは火ぃ吹く機械や。確かそうやろ紺ちゃん?」
「ほんとれすか、紺野ちゃん?」
火を吹く機械、何それ? ホントかよ紺野…
- 20 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時20分38秒
- ようやくお茶でようかんを流し込み、忍者がにこやかに笑う。
「はい、加護さんのおっしゃる通りです。
取火は一般的な言葉に置き換えるなら火炎放射器のようなものです。携帯型の。」
「へぇー。」
紺野の言葉に、ののが感心のため息をつく。
「やっぱりあいぼんは物知りれすね。」
…ってね。何から驚いたらいいんだろ。あたしけっこう頭が痛い。
矢口さんがいたら順番につっこんでってくれるんだろうけど…
あいぼん、そういう知識どこで仕入れてくんの?
紺野、火炎放射器で何するつもりだったの?
のの、もうちょい別の反応あるんじゃない?
ただただ茫然とするあたしに、紺野は平然と続ける。
「最近火薬調合の研究に凝っているので、少し試してみたいんです。必要なときは早めに言って下さい。」
「……」
"試す"ってあんた。お願い、使うなとは言わないから、せめて実験はよそでやってよ…
- 21 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時21分56秒
- 何だかね。お茶のみながら火炎放射器の話しはしちゃいけないような気がするんだけど…
でもまあこれも、普段通りだと言えばそうなのかもしれない。
あたしゃとにかく、早くアヤカさんに来て欲しい。
じゃないと、どんどん知りたくもない知識が増えてっちゃうような気がする…
「ひとみちゃん、今日で間違いないんだよね。?」
「記者さん今、どこおるんやろな?」
次々とみんなが聞いてくるけど、当の雑誌記者はなかなかやって来ない。
ホントにどうしたんだろ。むしろあたしが聞きたいくらいなんだけどね…
「今日なのは間違いない。仕事もないし、のんびり待とうよ。」
「へーい!」
結局は、いつの間にやら完全に平常営業モードになってしまった。
じっとしてるのが苦手なお子様たちがバタバタと走り回り始め、
ごっちんはちゃぶ台に突っ伏して居眠り開始。
あたしと梨華ちゃんは、はしゃぐお子様たちを眺めつつ雑談。
どれくらいそんな感じで過ごしたか、随分と時間が経って、ようやく扉を叩く音がした。
- 22 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時25分23秒
- 「ちょっと人手貸してくれないかな? 出荷の仕事入っちゃって。」
やっと来たのかと思いきや、入ってきたのはあさみさんだった。
有機野菜のネット販売に、トウモロコシの大量注文が舞い込んだのだという。
「出荷って今からなん?」
「うん。」
「明日の昼までにどうしてもって注文だから急がなきゃいけないの。」
まさに嬉しい悲鳴といったところなのだろう。困った困ったと言いつつも上機嫌のあさみさん。
「全員で行った方がエエやろか?」
「りんねさんも来てくれてるから、全員じゃなくても大丈夫。」
「ならウチら3人でエエか? 浴衣組は動きづらいやろから。」
「うん、お願い。ホント助かる。」
結局園芸部へは、中学生チームが手伝いに行くことに。
「ごめんね、急で。」
「何も謝るようなことないやん。商売繁盛エエことやんか。」
「特製アイス出すから。張り切ってヨロシクね。」
「やったー!」
ガッツポーズやピースサイン、大はしゃぎのお子様たちを連れ、あさみさんは行ってしまった。
- 23 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時27分08秒
- お子様たちがいなくなり、急に静かになる部室。
ごっちんはスヤスヤ眠ってるし、まるで二人っきりみたいな雰囲気。
「遅いね。」
「うん。」
「迷ったりしてないかな?」
「大丈夫でしょ。アヤカさんだって子供じゃないし。」
実は、部室で二人っきりってのは意外と珍しい。微妙に会話もぎこちない。
そんな中、突然真剣な口調になる梨華ちゃん。
「ちょっといい? 気になったんだけど。」
「何?」つられてあたしも、思わず真顔になってしまう。
「あさみさん、ちっとも驚かなかったね。もうちょい変わった格好の方が良かったかな?」
「!!」
…言われてみれば確かにそうだ。あさみさん、まったくウチらの格好気にしてなかった。
昼休みは興奮してて気づかなかったけど、浴衣や河童の格好くらいじゃ、やっぱ普通は驚かないか…
いつも騙されたり驚かせられたり、やられっぱなしのあたし。
今日は攻めに回れる珍しい機会。けっこう張り切ってたんだけどなぁ。
アヤカさんが来る前から、すでに作戦失敗確定かよ…
「あ〜あ、こんな事ならあいぼんに指示頼めば良かったな。」
今さら作戦の立て直しもきかない。正直ガッカリだ。
- 24 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時28分20秒
- お茶を煎れ直し、落ち込むあたしの隣に腰掛けた梨華ちゃん。
「ほらほら、そんなにしょげないの。」
完全にお子様扱い。優しく髪をなでてくれる。
「慰められたって嬉しくないもん。」
よっぽど面白いのだろう。スネるあたしを、愉快気に見つめている。
「そんな笑わなくたっていいじゃん。どうせあたしはドッキリのセンスないですよ。」
ふくれっ面の頬をツンツンつつきながら、諭すような口調。
「そんなことないよ。ひとみちゃんは人を驚かす天才。」
「あさみさん全然驚いてなかったじゃん。」
「でも私、ひとみちゃんの浴衣姿見れて、ドキドキしたもん。今だって凄くドキドキしてるよ。」
「……」
「やっぱりドキドキさせる天才だよ。」
話しそれちゃってる気もするけど、至って真剣な口調の梨華ちゃん。不覚にもちょっと嬉しい。
でもいじけた心は、簡単には素直になれない。
そんな話しなら、こっちにだって言い分はあるし。
「なら梨華ちゃんの方が天才じゃん。あたしかなりドキドキしたもん。」
「そっかなぁ? 絶対私の方がドキドキしたと思うけど。」
そっから先は意味不明。どっちがホントにドキドキしたかの言い争い。
- 25 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時29分43秒
- 「絶対あたしの方がドキドキした。」
「違うよ。私の方がドキドキしたもん。」
「梨華ちゃん何も分かってない!」
「分かってないのはひとみちゃんでしょ! 私のドキドキの方が凄かった。」
「梨華ちゃんの負けず嫌い!」
「あっ何よー! ひどい!」
お互いが引かずに主張し続け、いつの間にやら口調はけんか腰に。
こんなやりとり何度繰り返してみても、確かめようもない事だから話しは完全に袋小路。
いつしか膠着状態のにらみ合いになったところで、梨華ちゃんが意を決したように口を開いた。
「分かった。それならちゃんと証拠見せたげる。」
「??」
おもむろにあたしの手を引き、自分の胸に押し当てた。
「!!」
柔らかな胸を通して、梨華ちゃんの鼓動が伝わる。
「ほら。今だって。」
そして相変わらずの真剣な顔つきで続けた。
「ね。凄くドキドキしてるでしょ?」
「…うん。」
たじろぎ気味の返事に、ようやく満足気に頬をゆるめる。
- 26 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時31分32秒
- 確かに言葉通り、心臓は随分早く脈打ってたけどね。
天才は梨華ちゃんの方だと思うんだけどな。
「やっぱり私の勝ちだもん。」得意気な笑顔。
まったくね。この人はなんて可愛い負けず嫌いなんだろう。
でもね。あたしだって負けっぱなしじゃ、ちと悔しい。
「えいっ!」
勝ち誇る隙をつき、一気に梨華ちゃんを抱き寄せた。
「きゃっ!」
高い声が部室に響いたけどお構いなし。
「どう、あたしも結構ドキドキしてるでしょ?」
腕の中、あたしの胸に耳をあて、梨華ちゃんは小さく頷く。
「引き分けでもいいですか?」
再度の問いかけに答える代わり、今度はギュッと強く抱きついてきた。
自分から抱き寄せておいて何だけど、あたしの鼓動は一層早まる。
やっぱりホントの天才は梨華ちゃんだよね。
どうせこのドキドキは聞こえてる訳だから、あえて繰り返して言いはしなかったけどさ。
- 27 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時33分35秒
- あたしたち随分長い間、そのままお互いのドキドキを確認し合ってた。
だけどそこで突然の出来事。あまりの驚きに、梨華ちゃんの、そしてあたしの心臓も急停止。
だって突っ伏して寝てたと思った人が、おもむろに体起こして叫ぶんだもん。
「んぁ!?」
ウチらは抱き合ったまま、おそるおそるごっちんに目をむける。
ごっちんは眠たげにそれだけ言って、再び眠りの世界に戻ってっちゃったみたい。
「寝言… だよね?」
「…多分。」
顔を見合わせ確認し合う。
「ひとみちゃん、一瞬心臓止まってたよ。」
「梨華ちゃんだって。」
ちょっと悔しげに笑顔を作って梨華ちゃんは続ける。
「結局一番の天才はごっちんってことなのかな?」
「そうかもね。敵わないや。」
そして笑いがウチらを包んだ。
時計を見ると、もう結構遅い時間になってた。そろそろ夕飯の支度を始めなくちゃならない。
アヤカさんはまだ来ない。心配は心配だけど、ホントに大変なことになってたらきっと連絡があるはず。
ウチらは置き手紙を残して、買い出しに行くことにする。
- 28 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時35分27秒
- 買い物の間中ずっと、何故か梨華ちゃんはアヤカさんのことを聞きたがった。
「近くに住んでたのって小一の時だよ、あんまり良く覚えてないよ。」
「少しでもいいから思いだしてよ。」
あたしの言葉には一切耳を貸してくれない。
「当時の他のこととか色々思い出してみたらいいじゃない。そしたら思い出せるかも知れないよ。」
「例えばぁ?」
「何して遊んでたとか、どんなものが好きだったとかさ。」
「う〜ん。」
悲しいかな、あたしの記憶力にはかなり問題がある。
おまけに小学校に入ったばっかの頃のことなんて、一体何年前の話しだよ。
正直、しっかり思い出すのは難しい。
確かアヤカさんはもう中学生だった。とっても優しいお姉さんだってのは覚えてる。
だけど、わざわざ聞かせなくちゃならないような面白い話しなんて思い浮かばないよ…
「何でそんなにアヤカさんのこと知りたがるのさぁ。」
「別にぃ。ほら、ねえ。何か思いだした?」
「う〜ん。」
- 29 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時36分59秒
- どんな小さな事でもことでも話せというので、
断片的な当時の思い出を浮かぶ側からポツポツと話していく。
黄色い雨靴を買ってもらって、とても嬉しかったこと。
どこまで深いのか確かめようと、学校の砂場を一生懸命掘ってみたこと。
チューリップの球根がおいしそうに見えて、先生に隠れてこっそりかじったこと。
やっぱり苦いばっかで、ちっともおいしくなんてなかったこと。
「ほら。どう、他には?」
ニコニコと笑って、執拗に「ほら」を繰り返す梨華ちゃん。
「…何かアヤカさんとは関係ない話しばっかだ。本人に聞いた方が早いよ、どうせ来るんだし。」
「いいのいいの。アヤカさんと関係ない話しの方がいいの。」
あれれ、アヤカさんの事知りたいんじゃありませんでしたっけ?
怪訝な顔をするあたしに、ちっとも悪びれない笑顔が返る。
「だってホントは、当時のひとみちゃんのこと知りたいだけだも〜ん。」
「それだってアヤカさんの方が沢山覚えてると思うよ。もう中学生だったんだしさぁ。」
「いいの。それは後で別に聞くもん。」
じゃあ何なのさ。今は一体何が聞きたいのさ? 訳わからん。
- 30 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時42分13秒
- 「ほら、だから思い出して!」
「他には何かないの?」
「頑張って、頑張って!」
それからも延々と繰り返された質問に、あたしはカナリ辟易。
「いい加減にしてよ。もう止そう、ちょっとしつこいよ。」
思わず強い言葉で返してしまった。
だって、記憶力のなさを責められてるみたいな気がするんだもん。
あたしの口調に驚いたのか、梨華ちゃんはビクッと急に立ち止まる。
「ゴメンなさい。」
そしてホントにしょんぼりしながら頭を下げた。
いや、そんなあらためて謝らなくても… "思い出せ"攻撃さえ止めてくれれば。
このままネガティブモードに入られてはマズイ。あたしはなるたけ優しい口調で声をかける。
「何でそんなに昔のこと知りたがるの?」
うつむき加減のまま、細々と小声で答えが返る。
「アヤカさんは、ひとみちゃんがちっちゃい頃のこと沢山知ってるんでしょ…」
「…だったら絶対敵わないじゃない。」
「敵わないのは当たり前だし、ひとみちゃんの話聞けるのはとっても嬉しんだけど…」
ってそのまま黙り込んじゃった… 困った。
「どしたの梨華ちゃん? 何か言ってよぉ。」
訳が分からず、ただただ狼狽するあたし。
- 31 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時43分46秒
- 何度目かの問いかけに、ようやく消え入るような声で口を開いてくれた。
「ひとみちゃん、私ね。」
「うん。なーに?」
「アヤカさんに会う前に知っておきたかったの。」
梨華ちゃんは、一つ一つ言葉を選びながら、たどたどしく続けた。
「アヤカさんの知らないひとみちゃんのこと。」
「ほんの少しだっていいから…」
眉毛を八の字にして、梨華ちゃんは寂しげに笑った。
「私何言ってるんだろ。ホント訳分かんないよね。」
「自分でも嫌になっちゃう。ゴメンね。」
確かに分かりやすい言葉だとは思わない。おまけにあたしも巧くは説明できない。
だけど何だか、梨華ちゃんが言いたいことは分かるような気がした。
同じようなことがあったら、確かにあたしも少し嫌かも知れない。
梨華ちゃんの幼なじみが来て、沢山梨華ちゃんの昔話をする。
どれだけ教えてもらってたって、あたしの方がいっぱい知ってるなんて事はまずないだろう。
もちろん昔の梨華ちゃんの話を聞けるのは嬉しいし、ホントに楽しみ。だけど多分それだけじゃないはず。
きっとちょっぴり、嫉妬しちゃうと思う。自分よりも梨華ちゃんを知ってるその人に。
- 32 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時45分38秒
- 「安心して。」
相変わらず泣きそうな顔してる梨華ちゃんを手招き。そして胸に耳を当てさせる。
「聞こえるでしょ。こんなにドキドキしてるって知ってるのは、梨華ちゃんだけだから。」
「だから安心して。」
しがみつくようにギュッと抱きつきながら、小さくコクンと頷いた。
まったくこの人は、なんて可愛いヤキモチさんなんだろうね。
「梨華ちゃんが小学生の時のことも聞かせてよ、そしたらあたしも思い出せるかも。」
それから学校までの道、ウチらは沢山の昔話をしながら歩いた。
二人で次々と、小さな思い出を掘り起こしながら。
忘れかけてた些細な記憶。取るに足らないとちっぽけな出来事。
消え去りかけてた、かつての普通の毎日。
梨華ちゃんと話しているうち、みんな大切な宝物みたく思えてくるから不思議だ。
まあ他人が聞いたら、相変わらずつまらない話しでしかないんだろうけどさ。
どれ一つとってもね。
- 33 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時46分38秒
- 部室に帰っても、やっぱりアヤカさんの姿はなかった。
かわりにというか何というか、部室全体を醤油の焦げる香ばしいにおいが包んでいた。
お子様たちは既に帰宅済み、みなが夢中で焼きトウモロコシを作っている。
ホントにアヤカさんどうしたんだ?
何か起きたりしてないよね。サスガのあたしも真剣に心配になる。
連絡がなかったか、みんなに聞いてみなくちゃ。
声をかけようとしたところで、そんな必要全くないことを悟る。
「あっ、梨華ちゃんもひ〜ちゃんもお帰りー。」
ウチらの姿にようやく気づき、笑顔でお帰りを言うごっちん。
「最初焼けたんはウチらの分やから、ひ〜ちゃんたちは、もちっと待っとってや。」
「ひ〜ちゃんたちの分ももらってきたから、心配は無用なのれす。」
ニコニコとトウキビを焼く河童たち。
「ひ〜ちゃ…」
そこまで言ったところで、人の顔みて吹き出す忍者。
「えっ? ひ〜ちゃんって何なの?」
事情が分からず、梨華ちゃん一人が取り乱す。
「…小さい頃のあたしの呼び名。もう誰も使わないけど。」
- 34 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時48分11秒
- 「アヤカさん来たんだね…」
「農場の方にいらしたんです。一緒にお手伝いもして下さいました。」
「とってもいい人れすね。アイスののたちに分けてくれたのれす。」
「ずっと一緒にいたの?」
「へい。」
「ウチの学校オモロイから、編集長とかけ合って、全ページウチらの特集で行く言うてはったわ。」
「取火も見て頂くことが出来ました。完璧でした。」
一体コイツら農場で何したんだ? わざわざ特集内容変更するなんてよっぽどだろ。
詳しく聞き出しときたいとこだけど、お子様たちから情報を得ることは完全に不可能に。
トウモロコシ焼きあがっちゃったから。
「部室にも来たの?」
仕方なくごっちんに聞いてみる。
「うん、さっきまでね。いま裕ちゃんとこ行ってる。」
「そっか。」
「色々お話ししちゃった。ひ〜ちゃんの秘密もいっぱい教えてもらっちゃったよ。」
「…そっか。」
ホントに嬉しそうな顔して… 一体どんな話ししてたんだよ。あたしはかなり頭が痛い。
- 35 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時52分13秒
- がっくし肩を落としたところで、ついにアヤカさん登場。
「ハーイひ〜ちゃん、久しぶりー!」
あいさつするなり、もの凄い勢いで抱きついてきた。
ひ〜ちゃんは止めて下さい。それから早く離れて… 後が怖い。
何とかハグから逃れ、あいさつ代わりにお説教。
「遅れるならちゃんと連絡下さい。迷ってるかと思って心配したんですよ!」
「子供じゃないんだから迷子になんてならないよ。それよりほら。」
あたしの苦情は完全スルー。おみやげだと言って、マカダミアンナッツを手渡される。
「ひ〜ちゃんこれがないと、大泣きするもんね。」
確かに昔はそうだったのかも知れませんが…
「もう泣きませんって…」
呆れるあたしに、ひたすら陽気なアヤカさん。
久方ぶりの再開だってのに、まったく情緒がない。
「分かってるって冗談冗談。でも今日は来ないかと思ってびっくりしたでしょ。」
「ホントにビックリしましたよ、まったく。」
「ゴメンゴメン。でも"ドキドキさせる天才"をびっくりさせられたんなら光栄だね。」
「……」
笑顔満面のアヤカさん、思わずおみやげを落としてしまったあたし。
…ねえ。何故それを知ってるんですか?
- 36 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時53分52秒
- って犯人はごっちんしかいないか…
すぐさまギロリと睨み付けたけど、フニッと笑って受け流された。
「ごとーは無実です。」
そしてのんびりと上を指さす。指の先はもちろん天井。そして、…加護道。
今度はあいぼんを一睨み。だけどこれまたニンマリと笑顔が返る。
「ウチかてシロや。ずっと農場で手伝いしとったもん。」
「もしかしてアヤカさんが、あそこから聞いてたんですか?」
混乱するばかりのあたしに、本場仕込みのアメリカ的驚きのポーズで答える。
「違うよ〜。私も加護ちゃんたちと一緒だったよ。」
じゃあ一体、犯人誰?
みなを一通り睨み付けては見たものの、一同揃って首を横に振る。
ひたすら取り乱すあたしと梨華ちゃんをよそ目に、アヤカさんは陽気に続けた。
「ミカちゃーん、ご苦労様。もう降りてきていいよ〜。」
その言葉をきっかけに、スルスルと天井から人が降りてくる。
赤いツナギに星条旗のバンダナ。首からカメラ下げてる。誰?
「カメラマンのミカちゃんだよ。」
「Nice to meet you! ミカchanって呼んでネー。」
…もう訳が分かりません。
- 37 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時55分54秒
- 第一どうして加護道知ってるの? アメリカに噂が届くほど有名だとは思えない。
訝しがるあたしに、アヤカさんはこれまたサラリと答えてくれた。
「教えてもらったんだ。『普段の様子取材したいんやったら、工夫せなあかん。』って。」
関西弁? やっぱり黒幕はお前じゃんか、再びあいぼんをギロリと睨む。
実行犯じゃなかったら許すとでも思ってんのか。
「せやからウチは無実や言うてるやん。」
あいぼんは相変わらずの余裕の笑顔。
両手の人差し指を頭上で立て、ツンツンと小さく天井を指さす。何だそれ?
「よっしー、関西弁はウチの専売特許と違うで。」
…って、それは鬼のマネですか。黒幕はあの人だったのね…
何でもアヤカさんたち、取材のあいさつとしてまず中澤さんの所へ行ったのだという。
「あの子らのことや、どうせロクでもないこと企んでるやろな。」
そこで鬼から助言を受け、加護道に潜み取材することに。
ウチらがお茶を飲んでるさなか、ちょうど天井裏に入ったとのこと…
その後中学生チームが園芸部へ行くのに伴い、アヤカさんもこっそり農場へ。
ミカちゃん一人その場に残り、ウチらのあのシーンを目撃したんだそうで。 …とほほ。
- 38 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時57分55秒
- その晩は、取材陣に中澤さん平家さんも加わり、とても賑やかな夕食。
こうも大人数になるとは思わなかったから買い出しは少な目だったけど、
先生方の大量差し入れがあったから、みんな十分満足したみたい。
っても差し入れは、うるか・ばくらい・湯葉・ざる豆腐。酒の肴ばかりでしたが…
まあ日本的だということで、かえって取材陣には好評だったけどね。
とにかく陽気に大騒ぎ。とても初対面とは思えない位うち解けちゃった。ウチらって意外と国際派?
あたしも再会を楽しめたし、梨華ちゃんは存分にひ〜ちゃん情報を聞き出せたようでご満悦。
お子様たちに至っては、赤い河童服を送ると固く約束する程、ミカちゃんと仲良しになってた。
だからいよいよ取材陣が引き上げるときは、大ゴネして大変だったけどね。
「泊まってたら? 布団ようさんあるで。」
「中澤さーん、帰りづらくなるようなこと言わないでー。」
アヤカさんもミカちゃんも、必ずの再会を誓って帰っていった。思いっきり後ろ髪引かれながら。
「ホンマエエ子たちやった。雑誌出来るん楽しみやな。」
「れすね。」
嵐のように通り過ぎた取材の余韻に浸りながら、ウチらの夜は更けていった。
- 39 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)21時59分20秒
- 後日、小包が郵送されてきた。もちろん中身は出来上がった雑誌。
ちゃぶ台に1冊拡げて、みなで食い入るようにして読む。
写真をふんだんに使ったフルカラー。目次とか見ると結構大きな扱い。
英語力考えてわざわざ送ってくれた訳文を、梨華ちゃんが読み上げる。
タイトルは『とある女子校の一日』。
ウチらの普段の放課後を、外国人の視点で報告するってスタンスみたい。
『忍者にとり、生活の全ては修行であると認識されている。農作業もその例外ではない。』
『天井裏には縦横に抜け道が整備され、機密を要する任務に用いられる。』
けど記事はずっとこの調子。合間に河童や浴衣、酒の肴の紹介。
何だかこれじゃ忍者養成学校みたいじゃん… 面白いけど。
後からやってきた中澤さんたちも、腹を抱えて大笑い。
「理事長先生怒らないですかね?」
梨華ちゃんのもっともな不安も、まったく気にしない。
「目立ちゃOKいう人やから、むしろ喜ぶんちゃう?」
ケロリと答える中澤さん。そうですよね。
「アンタらいつも、大体こんなもんやで…」
ポロリと漏らす平家さん。そうですかね。
ともあれみなで大爆笑。飽きずに何度も、繰り返し記事を読んだ。
- 40 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)22時00分39秒
- 上手く言えないけど、みなで何度も見返すうちに思った。
実際この記事、ウチらの普通の一日を良く切り取ってるのかもしれない。
もちろんかなり、忍者色は強くなってるけど。
あたしの言葉に、みなも笑いながら頷いてくれた。
「エエ記念なったやん。ちゃんとお礼の手紙書くんやで。」
「はーい!」
中澤さんたちが出てった後、ウチらはさらに一盛り上がり。
小包の中に入ってたのは、実は雑誌だけじゃなかったから。
箱の隙間を埋めるため、様々なおみやげ。もちろんマカダミアンナッツも…
一つ一つを、大騒ぎしながら取り出す。
中でも一番の歓声が上がったのは、大きな茶封筒。開くと、真っ青で大きなアルバムが。
雑誌に載せなかった写真を、ミカちゃんが入れといてくれたみたい。
トウキビをかじる河童たち。最後にみなで撮った記念写真。賑やかな夕食。
それから、天井裏から見たウチらの昼下がり。
走り回るお子様、眠るごっちん、お茶をすする梨華ちゃんとあたし。
よもや盗撮とは思えない活き活きとした写真。やっぱプロが撮ると違うよなぁ。
- 41 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)22時02分03秒
- 最初は素直に感心してたけど、そのうちそうも言ってられなくなる。
だって明らかに理解不能な写真が登場すんだもん。
あさみさんに連れられ、手伝いに行こうとするお子様たちを捉えた一枚。
どーゆーことだよ、これ。
天井に向かい、にこやかに笑う忍者と河童。ご丁寧にピースサインまでして…
コイツらもしかして、上から撮ってるって気づいてた?
「お前らこれって…」
お子様たちには、悪びれる様子もない。
「気配をよむのは戦いの基本れす。」
「…忍者ですから。」
「鈍感な商人おるなら紹介して欲しいわ。」
異能者集団。 …知ってて黙ってたんかい。
「よっすぃ〜が普段通りにしてろって言ったのれす。」
「これがウチらの普段通りやもん。」
「…完璧です。」
そうでつか。ってもう、今さら何も言う気はしないけどさ…
「みんなスゴイねぇ、ごとー気づかなかったよ。ただ寝てただけだぁ。」
ヨカッタ。気づかなかったの、あたしと梨華ちゃんだけじゃなかった。
ごっちんの柔らかな笑顔に、すこし安心。
まあそれも、あくまで"とりあえず"にすぎませんでしたが…
とうとう次には、未掲載写真の真打ち登場。もちろんウチらの抱擁シーン。
- 42 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)22時03分39秒
- 「こりゃまた随分ぎょうさんあるなぁ。」
呆れるのも無理はない。これだけで一体何枚あるんだ?
望遠・広角、光のニュアンス。微妙に変えた写真がゾロゾロ出てくる。
恥ずかしい反面ちょっと嬉しかったりもしますが、この枚数はスゴイ…
それにしてもウチら、随分長いこと抱き合ってたんだね。
冷やかされるの覚悟してたけど、みんなポカンと口開けて黙っちゃった。
だがまたここで不覚にも、アルバムをめくるあたしの手は止まる。
再度、意味不明写真が登場したから。
「ごっちん、何これ?」
「いや、ごとーも覚えてない。面白いねぇ。」
面白いって… それだけ?
抱き合う二人を広角で捉えた一枚。傍らに写るごっちん。
やっぱりアンタも天井見てピースしてんじゃんよぅ…
これは間違いなくウチらの心臓を止めたあの瞬間。
だってこの口の形、間違いなく「んぁ!」って言ってるもん…
「サスガやなぁ。」「すごいのれす。」「感服しました。」
予想外にお子様たちからの喝采を浴び、頭ポリポリかいて照れまくってる。
「いや、ごとーホントに何も覚えてないんだよぉ。」
つーか無意識で隠しカメラにピース送るなんて、ごっちんあなた一体何者…
- 43 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)22時06分19秒
- 互いの鋭さを讃え合う人々から、取り残される梨華ちゃんとあたし。
「私たちが普通なんだよね…」
「…多分。でも多数決やったら負けるけど…」
とにかく今回良く解ったこと。ウチらの日常には、呆れるほどの異常が溢れてる。
みんな。その能力を悪用するのはイタズラ程度にしといてね…
あたしと梨華ちゃんからのささやかなお願い。
コイツら犯罪者にでもなってみろ、世界中大パニック間違い無しだもん。
「お菓子くれるって言っても、悪い人の見方したりしちゃダメだよ!」
思い切り混乱気味の梨華ちゃんが叫ぶ。
「テロリストなんて絶対ダメだからね!」
つられてあたしも、意味不明。
「何言うてるん? おかしな二人やなぁ。」
「れすね。」
「…変わり者コンビです。」
「んぁ。」
確かに混乱してるけど、原因全部君たちじゃんか…
こんな人たちに、変人扱いされちゃうウチらって何?
みながケラケラと笑う中、あたしは梨華ちゃんの手をギュッと握った。
…二人で、心を強く持って生きて行こうね。
- 44 名前:普段通り 投稿日:2003年02月06日(木)22時13分31秒
- ってまあ、それはそれ。
全ての流れをぶっちぎり、ここでごっちんがいつもの合図。
「それじゃ、おやつもたくさん頂いたことですし、お茶にしますか。」
「さんせー!」
すぐさま響くよい子のお返事。もちろん、あたしや梨華ちゃんも一緒にね。
それからは、お菓子の取り合い。愉快なおしゃべり。
なんとも変わり映えのしない、ありふれたやりとり。
ともあれこうして今日も、ウチらの普段通りの一日は、始まりを告げるのでありました。
頭痛の種も絶えないけれど、決して退屈はしない一日が、ね。
- 45 名前:えびちゃ丸 投稿日:2003年02月06日(木)22時16分20秒
- 更新しました。久方ぶりに。
全スレで、レスや保全をして下さった方、どうもありがとうございました。
これからも、ちんたらではありますが続けていきたいと思っています。
- 46 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年02月07日(金)20時39分41秒
- えびちゃ丸さま
新スレおめでとうございます&更新お疲れさままです。
しかし、この強力メンバーの中では、常識人に見えてしまうよっすぃ〜!これからも常識人なよっすぃ〜で頑張って欲しいです。
では、次の更新も楽しみに待ってます!!
- 47 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年02月28日(金)22時02分55秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 48 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年03月15日(土)10時58分10秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 49 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年03月30日(日)23時15分02秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 50 名前:えびちゃ丸 投稿日:2003年04月02日(水)23時18分20秒
- >>ななしのよっすぃ〜 さん
超わがままペースで申し訳ありません。保全どうもありがとうございます。
見限らずに何とか読み続けて頂ければ幸いです。
- 51 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時21分13秒
- ごっちんが目の前で眠りこけてる。梨華ちゃんもさっきからウトウトモード。
もちろんあたしもすこぶる眠い。何でって理由は単純。朝だから。しかも時間早めな。
昨日は6月30日、だから今日は6月31日です。
お米やさんからもらったカレンダーには、しっかり7月1日の文字。
だけど今日は7月1日ではありません。あくまで企画部的にですが。
とにかく毎年、この日は早朝出勤。今朝も6時半集合。
何とか部室までやっては来たものの、眠いもんは眠い。
そんなこんなでウチらは、しばし心地よいまどろみタイムです。
だけど幸せな時間は、けたたましい声と共に終わりを告げる。
「竹もらってきたで、目ぇ覚ましや!」
笹を抱えたお子様たちを従えて、中澤さん・平家さんが帰ってきたから。
「起きてくらさーい。」
「なー見てや、めっちゃ立派やで。」
速攻辻加護がまとわりついてくる。
朝っぱらから元気なのは老人と子供。
それが相場だとしても、ウチの老人と子供は、とびきりタチが悪い。
さっきまであんなに平和だった部室に、悪魔の号令が響いた。
「ガキども、くすぐりスタートや!」
「「「へい!」」」
- 52 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時24分14秒
- 涙が出るまでくすぐり倒され、ようやく目が覚める。
「朝っぱらから勘弁して下さいよ!」
「んぁ!」
「起きひんアンタらが悪い。」
憮然とにらむウチらの視線にも、ちっとも悪びれる様子は見せない。
…まったく。ホントに問題なのは老人の方なんだよね。
そもそも今日が6月31日なのだって、みんな中澤さんのせいなんだから…
何でも本人の弁では、6月31日が誕生日なのだそうで…
「せやからウチは年とらんねん。絶対18歳でお嫁に行く決めたんや!」
…もうホント、まったく意味は解らない。
だけど、いい大人が必死になって主張するのだから、従わないわけにいかない。
ならいっそ誕生日自体止めちゃえば…
そんな気もするけど、「寂しいやん…」これまた涙目ですからね。
とにかく今日は6月31日。そして中澤さんの誕生日。
今年もやっぱり18歳のままだそうです。
今夜は、誕生会がある。といっても実は大したことはしないけど。
特別な催しはケーキ食べたりする程度で、恐怖のOG連が来ることもない。
あくまで内々のお祝いだから、案外気楽なものなのだ。
- 53 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時25分49秒
- ただむしろ準備の方が大変だったりする。昨日からホントに大忙しだった。
モール吊して看板下げて、まるっきし小学生のクリスマス会の勢いだから。
そしてこの早朝出勤は、飾り付けの総仕上げにあたるってわけ。
「今年のはいつもよりりっぱなのれす!」
「効き目かて十分やろな!」
「…完璧です!」
「そやな。これでウチの結婚も間違いなしや!」
老人と子供は、無邪気に笹の品評会で盛り上がってる。
だけどこの早起きも、あたしはいまいち納得いかないんだよね。
だってわざわざ早起きして作るのって、何故か七夕の笹飾りだから。
それってちっとも関係ないじゃん、何で今日なの? これまた理由は分からない。
何度も聞いてみたけど「誕生日に作るんがエエんや。」「朝一番やないとアカン!」真顔で力説ですからね。
なんでも、願い事をかなえる力が何倍も違ってくるのだそうで…
そもそもホントは、誕生日ですらないじゃないですか…
まあ事の真偽はさておき、ムキになった中澤さんに逆らえるはずはないんだけどさ。
- 54 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時27分36秒
- ところでこの笹飾り、実は校内で大人気。
部室前に飾るんだけど、七夕の晩までには必ず短冊で満杯になる。
お願いの中身は、恋愛成就・合格祈願etc.何でもござれ。
とにかく、絶大な御利益があると評判なのだ。
そんな効き目あるなら、中澤さんとっくに結婚できていいハズじゃん…
あたしはそう思うけど、校内の意見は違うみたい。
何でも「中澤さんの願い事が無理な分、申し訳ないと思った神さまが頑張ってくれる」との噂。
中澤さんの結婚って、神さまにも実現不可能な難事業なんですか…
少なくとも短冊吊しに来る人たちは、可能性ないって思ってるってことだよね…
まったくもってヒドイ話でございます。
まあでも、そんな評判を知るよしもない本人は今年も大張り切り。
「どや? 笹も立派やけど短冊もなかなかやろ。」
満面の笑顔で同意を求めてくる。
この短冊ってのも、やっぱりこだわりの特製品。
「こんくらい大きかったら、サスガに見えへんこともない思わん?」
「…そうですね。」
年々巨大化していって、今では書き初めと見まがうばかりの特大サイズ。
噂だと、よ〜く見えてはいるらしいですよ… 昔から。
- 55 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時29分10秒
- ともあれ一連の準備が終わると、いよいよ緊張の時間が始まる。
世界一必死に七夕と向き合う女性による、願い事書きのスタートだ。
「ホナ行くで!」
かけ声一発。ものすごい気合いで、中澤さんは筆を走らせ始めた。
あまりの迫力に、普段はあれほど騒がしいお子様たちも思わず息をのむ。
『運命の人と巡り会えますように』
今年も恒例のフレーズを書き終えると、満足気な表情でゆっくり頷く。
短冊って、こんなにマジに書くもんなんだろうか…
つっこみたいとこではあるけど、怖くて絶対つっこめない。
とにかく、笹に吊してみなでパンパンと柏手を打ったら、ようやく緊張の場面は終了というはこび。
あとはいつも通りの大騒ぎ、今度はウチらが書く番になる。
- 56 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時30分48秒
- 御利益信じてる訳じゃないけど、実はあたしもこれは楽しみにしてる。
真っ先にお願い出来るのはいわば企画部の特権。
毎年のことだけど、ちょっと得した気分なんだよね。
さてさて、今年は何を書こうかな。
考えを巡らせはじめた矢先、早くも一番手が名乗りをあげた。
「今年はののから行くのれす!」
ののが一番乗り?
「どうしても叶えたい目標があるんれす。」
おまけに目標ですと? こりゃまた珍しいこともあったもんだ。
いつも通りだったら、考えあぐねて一番最後ってのがパターンなのに。
ののは、中澤さんと並んで御利益を心底信じる少数派。
昨日も紺野に、えらく興奮しながら説明してた。
「すごいんれすよー。絶対かなうんれすから!」
「本当ですか、それは素敵ですね!」
「れも、いい子にしてないとダメれすよ。中澤さんみたく泣きをみることになるのれす。」
「なるほど。 …わたしは、大丈夫でしょうか。」
「紺野ちゃんならきっと平気れす!」
「…うれしいです!」
二人の無邪気なやりとりは、かなり微笑ましかったけど、
実際のののお願いは、ホントに毎年実現してたりする。
いや、ウソでも誇張でもなくて。
- 57 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時32分14秒
- まあでもそれって、当然っちゃ当然の話しではあるんだけどね。
だってののが書くのは、毎年食べ物って決まってるから。
例えば去年は『ナタデココヨーグルト』と『アロエヨーグルト』の両天秤。
始業時間ギリギリまで真剣に悩んで、結局『ヨーグルト』って書いてた。
アロエだろうがナタデココだろうが関係ない。つーか書こうと書くまいと。
どのみちアンタ食べんじゃん、そりゃ叶うわなって話し。
それが今年に限っては、"目標"だなんて言うもんだから、これは気になるね。
「で、何て書くのよ?」
「書き上がってのお楽しみれす。」
質問には、得意げに黙秘権を行使。
「れは行くれすよ〜。」
つたない手つきで"目標"を書きはじめたのの。
結局短冊には、『打倒白田』の四文字が元気に踊った。
白田、何それ? 本人は随分と御満悦の様子だけど、全く意味が分からない。みんなも首かしげてる。
さっそく嬉々として笹に吊そうとするののに、中澤さんがストップをかけた。
- 58 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時34分45秒
- 「辻ちょい待ちや。白田って何やねん?」
「チャンピオンれす。」
「チャンピオン?」
「へい。大食い界の巨星なのれす。」
ヲイヲイ、結局食べ物関係かよ…
「…何やつまらん。また食いもんかいな。」
吐き捨てるような中澤さんのつぶやきに、ののは口をとがらせて反論する。
「つまらなくねーのれす。白田は偉大なチャンピオンれす!」
「アフォ、白田バカにしとるんちゃうわ。ちっとはヒネリ言うてるんや。」
おとっときの"目標"をくさされ、ののは思いきりふくれっ面。
腹立つ気持ちは分からんでもないけど、ここで信じられない言葉を口にしてしまった。
「…れも。」
「でも何やねん?」
「…中澤さんこそ、毎年ずっと同じじゃないれすか。」
「…何やと…」
のの… それは言っちゃダメ…
図星指された中澤さん。真っ赤になって怒り出しちゃったよ。
ものスゴイ形相で短冊を取り上げると、乱暴に何かを書き足した。
「オドレはこれで十分じゃ!」
たたき返された短冊には『打倒自由』の四文字。
願い事が『打倒自由』って何… よく分からんけど、ちと恐ろしい響き…
もちろん、これ以上自由になられても困るんだけどさ…
- 59 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時36分16秒
- 「ヒドイのれす。」
「黙れクソガキ! 下らんこと書くよりナンボかましや!」
「白田は下らなくねーのれす!」
「アフォか、ウチの結婚に比べたらカスみたいなモンやろが!」
「白田は世界一れす!」
「結婚のが大事や!」
何だこのやりとりは… ののは半べそ、何故か中澤さんまで涙目。
興奮した二人は、微妙にはき違えたにらみ合いを始めてしまった。
それにしても、中学生と大人の対等なケンカって、なかなかない構図だよね。
まあむしろ今日は、どっちかっていうと幼稚園児のケンカみたいな雰囲気だけど。
梨華ちゃんと目を見合わせ、思わずクスリと吹き出してしまう。
「そこなに笑ろてんねん! 何もオモロイことなんてないで!」
「石川! 今年は"ひとみちゃん"関連禁止や!」
「吉澤! アンタは『赤点脱出』書きや。赤点とって恥かくんはウチやさかいな!」
怒りが突然飛び火してくる。だけどこれは完全な八つ当たりだ、ウチらは声を揃えて叫ぶ。
「「何でですかー!」」
「何でもへったくれもない、ウチが言う通りしたらエエねん!」
「「ひっどーい!」」
「うっさい、ボケ!」
- 60 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時40分02秒
- 部室がにわかに騒がしくなったところで、あいぼんがのんびり口を開いた。
「みんな諦めや。ここは中澤さんに従うしかないやろ。」
「…あいぼん。」予想外の言葉に茫然とするのの。
おまえウチらの見方じゃないのかよ… これにはあたしも納得いかない。
「加護ちゃんはホンマエエ子やな。このアホどもとはエライ違いや。」
「こっち来ーや、ごほうびのチューしたる。」
中澤さんは猫なで声。だけどその上機嫌な手招きは、すぐさま凍り付くことになったけど。
「年取るとあたま固なるさかいな。もう何言うてもムダやで。」
平然と言ってのけたあいぼん。
「…ほぅ、よう聞こえへんかったわ。もっぺん言ってくれへん? 命惜しないんやったら。」
怒りに震える中澤さんに、なおもケロリと火を付けた。
「な、のの。相手は耳遠なってもうてるくらいの年寄りや。可哀想やけど我慢するんやで。」
「へい。」
「ゴルァ! おんどれ、真っ赤な地獄見せたる!」
…トムとジェリーみたいな追っかけっこが始まってしまった。
チョロチョロ逃げ回るあいぼんを、中澤さんが必死の形相で追いかける。
そのうち何故か、ののまで一緒に逃げ回り始めて、とりとめのない大騒ぎ。
- 61 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時41分38秒
- 「待たんかガキども!」
「待てと言われて待つマヌケはいないのれす。」
「若いんやったら、楽々捕まえられるはずやん。」
「おどれ! まだ抜かすか!」
頭に血がのぼっちゃってるから、良いように遊ばれちゃってるよ…
嬉々として駆け回るお子様コンビは、明らかに鬼ごっこを楽しんでる。
正直この二人が本気で逃げ回ったら、若かろうが何だろうが捕まえられるはず無いんだけどね。
肩で息をし始める中澤さん。何だかちょっぴり哀れな構図…
「んぁ!」
そんな時突然、今まで黙ってたごっちんが口を開いた。
事態がここまで悪化しちゃったら、収められるのはごっちんしかいない。
寸前までの騒ぎがピタリと止んで、みながその判断に注目する。
だけどごっちんは、そんな視線なんてちっとも気にせず、いつもの調子で続けた。
「ねぇみっちゃん。今年は何て書いたの?」
ん、何だ? 集まったみなの視線は、自然と平家さんへと向けられる。
大騒ぎの影で、さっさとお願い書き終えちゃったみたい。
隠れるようにコソコソと、短冊吊してるとこだった。
- 62 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時43分12秒
- 「ウチなんかほっときゃエエやん。構わず愉快な鬼ごっこ続けてくれてエエねんで。」
「教えてくれたってイイじゃん。それとも言えないような願い事なの?」
「ちゃうちゃう。ホンマ気にせんといてや。」
「んぁ! やっぱり秘密のお願い事なんだぁ。」
なぬ、秘密ですと? "秘密"が嫌いな企画部員は存在しない。この一言でみなの目つきが変わった。
「教えるのれす!」「見してや!」「…お願いします。」
中澤さんで遊ぶより、こっちの方が楽しいと踏んだのだろう。
紺野まで加わって、悪ガキトリオは興味津々。
「しっし! あっち行きや!」
平家さんは全く取り合わないけど、これは思いっきり逆効果。
もちろんお子様たちだけじゃない。
そこまで隠すなんて、一体何書いたの?
あたしも梨華ちゃんも、思わず身を乗り出してしまう。
「見ーせろ! 見ーせろ!」
野次馬たちのハートが沸点に達したところで、
ようやく息の整った中澤さんから大号令が飛んだ。
- 63 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時44分37秒
- 「辻加護! みちよ確保や!」
「へい!」「はいな!」
さっきまでの追っかけっこが嘘みたい。迅速に指示に従う二人。
左右から素早く、ぶら下がるように掴られ、平家さんはもう身動きできない。
「紺野、今のうちや。 短冊読み!」
「…はい!」
恨めしそうに平家さんが見つめる中、悠々と紺野が願い事を公開する。
「…えっと。『みんながもう少しマトモになりますように』だそうです。」
だけどその内容たるや思いっきり肩すかし。…わざわざ隠してそれですか。
「なんやみちよ。エエ年してもっと色っぽいこと書けへんのかいな。」
中澤さんは完全にあきれ顔してたけど、みんなの感想も似たり寄ったりだと思う。
…だってこれまた去年と同じじゃないですか。
がっかりとする一同に、平家さんは半泣きで言った。
「同じちゃうわ… 去年は『早くマトモになって下さい』やったんやで…」
- 64 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時45分46秒
- 「もう早くとか、完全にとか無理なことは言わん。」
「せやから、ちっと位はマトモになってや…」
「ほんの少しでエエねん。頼むわ…」
相変わらず両腕にぶら下がる辻加護に、すがるように続ける。
「今日ウチ、出張行かなアカンねん。どこ行くか分かるか?」
もちろん知るはずもない、左右に首を振る二人。
「ピアノメーカーに呼び出されてん。」
毎年ピアノを割られる平家さん。このままではいけないと、メーカーに直接問い合わせてみたのだという。
"もっと頑丈なピアノはないでしょうか"
これに驚いたメーカーが、事情聴取のために呼び出し… ご苦労様です。
「せやからもうそろそろ出なあかん。離してくれるか?」
寂しげな言葉に、辻加護はしょんぼりと頭を下げた。
「ごめんなのれす。」
「堪忍な。」
「ええねん。ええねん。この分なんかエエことあるやろ。」
クシャクシャと二人の頭をなで、平家さんは明るく笑う。
そして中澤さんに聞こえぬよう小声で一言。
「アンタらが大人にならんとあかんで。姐さんはもう変われへん思うから。」
「へい。」
- 65 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時47分20秒
- ともあれ涙さそうお話にて、大騒ぎは何とか鎮圧。
さっそく出発の準備を始めながら、平家さんは中澤さんに声をかけた。
「姐さんも出張や言ってへんかった?」
「そういやウチも出張やった。若い子らようさん来るいうてたなぁ。」
同じ出張でも、こっちは対照的に浮かれモードだ。
「最終日に飲み会あんねん。七夕の夜やで、こら素敵な出会い間違いなしや!」
他校と合同の新人研修に、指導役とやらで行くらしい。
今週中ずっと若いオトコノコと触れ合える。しかも仕事上堂々と。
絶対婿を見つけると、中澤さんは大ハリキリ。何の研修ですかまったく…
「アンタら今の内に、たっぷり"中澤さん"て呼んどきや。」
「一週間後にはもう"中澤"卒業しとるやろからな。」
「………」
ココまで来るともう相手をするのはバカバカしい。
夢見る自称18歳は置き去りにして、ウチらは今夜の打ち合わせ。
「みっちゃん夕方までに帰れるよね?」
「そやな、昼過ぎには用事済むハズやから。いろいろ準備とかヨロシクな。」
「んぁ、わかった。」
「平家さん、ホンマごめんな。」
「気を付けて行ってきてくらさいね。」
- 66 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時48分31秒
- だけど浮かれる中澤さんは、放置されてもこたえない。
ウチらの会話に割り込んできて、相変わらずの妄想モードで暴走し続ける。
「みちよ。今日パンツ紫なんやけど若い子引かへんかな、換えてった方がエエやろか?」
「何でもエエんちゃいます? まだ初日なんやし。」
「そやかて、何あるか分からんやろが!」
「どのみち姐さん美人なんですから、大丈夫ですって。」
「そりゃそやな! みちよアンタ賢いな。」
「…おおきに。」
やっぱマトモへの道のりが一番遠いのはこの人だろうね…
平家さんはもう完全に、あきらめ顔で笑ってた。
「ホナ行ってくるわ。」
「いってらっしゃーい。」
浮かれモードの中澤さん、とほほモードの平家さん。
見送りに後ろ手で応えつつ、対照的な雰囲気のまま二人は出張へと出かけていった。
- 67 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時50分56秒
- 残されたウチらは願い事書きを再開する。
みなが書き終えたらわいわいと、恒例みたくなってる願い事のからかい合いが始まる。
中澤さんが上機嫌で行っちゃったおかげで、あたしも『赤点脱出』なんて恥ずかしいことは書かずに済んだ。
だけどそれでも、十分大笑いされちゃったけどね。
やっぱり毎年真剣に考えてるつもりでも、何だか去年と似たり寄ったりのお願いになっちゃうのは面白い。
しかもみんな、その微妙な違いに妙なこだわり持ってたりしてさ。
- 68 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時53分34秒
- 「ホントは反則だけどもう一枚書いちゃいなよ。」
梨華ちゃんに耳打ちされたののも、こっそりもう一枚、短冊を追加してた。
こっそりって言ったって、みんな気づかないふりしてただけだけどね。
てっきり『打倒白田』を書き直したもんだとばかり思ってたら違ったみたい。
梨華ちゃんが教えてくれたけど、
「これれ平家さん、ピアノやさんに怒られなくてすむれすよね?」
不安気にそう言いながら『じょうぶなピアノができますように』ってお願いを吊したのだそうで。
ボヤキがよっぽど効果的だったんだろうね。何とも可愛らしいこと。
それにしても、食べ物関連じゃないのは多分史上初。
まあ、"壊さないようにしよう"とか考えないあたり、微妙に問題も感じるけど、
それでもやっぱ、さっきよりは少しいい子になってんじゃない?
平家さん、良かったですね。今年のお願い、早くも少しは効果出てるみたいですよ。
- 69 名前:笹に願いを 投稿日:2003年04月02日(水)23時55分21秒
- 願い事を吊した笹をみなで眺める。
中澤さんが何度も言ってた通り、確かに今年の笹はとても頼もしげに見えた。
何とかね。今年こそね。ホントに願いがかなうといいよね。
そんなことぼんやりと考えてたら、梨華ちゃんがぽつりとつぶやいた。
「中澤さん、今夜は上機嫌だろうけど… 七夕の晩は大荒れだろうね…」
「………」
確かに。べそべそに泣き崩れながら帰ってくる姿が鮮やかに想像できる。つーかその姿しか想像できない。
人一倍期待しちゃうから、空回りしたときの落胆も人一倍。そのツケは全部ウチらに回ってくるのだ。
思わずげんなりモードになってしまったみんなに、苦笑しながらごっちんが言う。
「ま、いつものことだから諦めよう。それにまだ一週間あるよ。」
ごっちん、それあんまフォローになってないよ…
…とほほ。あたしは再度笹を見つめる。
何とか今週中にどうにかならんもんかね。かなり無理あるの解るけどさ…
無理なものは無理。困り果ててため息をもらす平家さんの様に、
巨大短冊をぶら下げた笹は、少しだけ寂しげに揺れた。
- 70 名前:えびちゃ丸 投稿日:2003年04月02日(水)23時57分32秒
- 更新しますた。
- 71 名前:71 投稿日:2003年04月03日(木)03時34分48秒
- 更新だー。うれしいうれしい。今度もなごむなあ。
しかしつくづく「終わらない学園祭」、ですよね。
「友引高校」と並んで、入りこみたくなる世界です。
男子が入れないのが残念でならない。
- 72 名前:わ 投稿日:2003年04月04日(金)18時51分20秒
- 更新されているぅ。はっぴーぃ。
えびちゃ丸さんの文章がすごく楽しい内容で、何回も読み直しさせていただいてます。
今回のあいぽんと中澤先生のケンカ(言葉遊び?)には、すばらしくって拍手を送りたくなりました。
ところで、中澤先生の短冊は、一番てっぺんに吊るされるのでしょうか?
・・・ますます笹がうなだれてしまいますね。
- 73 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年04月06日(日)06時39分44秒
- えびちゃ丸さま、更新お疲れさまです。
笹に願いを託す中澤さんの乙女心に感動しました。(笑)
&七夕での暴れっぷりにも期待です。
>>50
>>超わがままペースで申し訳ありません。保全どうもありがとうございます。
>>見限らずに何とか読み続けて頂ければ幸いです。
大丈夫ですよ。いつまでも気長に待ちつつ読みかえしてますから。
楽しみに待ってるのは、ななしのよっすぃ〜だけでは無いと思いますよ。
これからも更新を期待しつつ待ってます!!
- 74 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年04月27日(日)16時12分35秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 75 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年05月17日(土)18時15分26秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 76 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年06月07日(土)06時43分12秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 77 名前:71 投稿日:2003年06月10日(火)04時27分10秒
- この作品を、「CP分類板」で紹介させていただきましたです。
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月02日(水)01時44分07秒
- 保
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月02日(水)02時00分07秒
- ochi保全
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月26日(土)10時11分13秒
- 保全
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月15日(金)00時55分18秒
- hoze-mu
- 82 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年09月05日(金)21時33分35秒
- 更新を期待しつつ保全!!
- 83 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003/10/02(木) 21:30
- 更新を期待しつつ保全!!
- 84 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003/11/03(月) 20:08
- 更新を期待しつつ保全!!
- 85 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003/12/06(土) 06:30
- 更新を期待しつつ保全!!
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 11:58
- 保全
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