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サクラサク。(いしよし)
- 1 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時01分31秒
- いしよしで書きたいと思います。甘いです。きっと(笑)
まだまだ上手く書けないので修行させてください。
下校途中の2人のお話。
- 2 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時04分55秒
- 『サクラサク。』
「ねぇ・・・梨華ちゃん・・・」
知ってる?あたしのこの気持ち。
「なぁに?」
振り返る君の笑顔は最高にかわいくて、いつも抱きしめたくなるんだ。
だからあたしはいつでも君の後ろを歩く。
「なーんでもないっ。」
「へんなのー。」
そう言ってまた笑った君の笑顔。
サラリと流れた髪が、あたしの心のドキドキを一層増幅させるかのように揺れた。
春の陽気は大地に降り注ぎ、やわらかな風を生み出す。
堤防の上を歩く2人の影は、ちょうど一本の線で繋がれていた。
- 3 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時07分50秒
- 「よっすぃーの考えてること、当ててあげよっか?」
瞬間ドキリとした。
あたしの考えてることといったら・・・
いつも梨華ちゃんのことばかり。
だけど、そんな思いはきっと伝わっていない。
「へぇーっ。それじゃ当ててもらいましょうか。」
ちょっぴりイジワルな笑顔を浮かべながら、後ろ向きに歩く梨華ちゃん
に問いかけた。
「いいよ。当ててあげる。
よっすぃーはね、今無性にベーグル食べたい!って思ってるでしょ?」
「あはは。当ったか。」
ホッとした安堵感と妙な寂しさが同時に胸をついた。
この気持ちが伝わらないのは幸せなことなのか、それとも・・・
- 4 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時10分10秒
- 「やっぱりね。さっきから妙にソワソワしてるんだもん。
おなかすいてるんだったら言ってくれればいいのに。」
「うら若き可憐な乙女が『腹へったー』とは言えないでしょ?」
「ちょっと待って。可憐ってのは一体誰のこと?」
梨華ちゃんが足をとめて、その愛くるしい瞳をわずかな距離に近づけてきた。
それは、ちょうどキスができる程の距離。
唇をくっつけたいと思わせるその距離は、友達としての存在を
保つにはあまりにも残酷過ぎた。
「もっちろん。このスーパースペシャルビューティーの
吉澤ひとみさまのことじゃない。」
あのままずっと見つめられていたら、あたしはどうにかなっていただろう。
だからわざと一歩さがっておどけたセリフを吐いた。
「やっぱり?私もそうじゃないかなーとは思ったのよ。
ね?スーパースペシャルビューティーの吉澤ひとみさん。」
そういいながら、既に梨華ちゃんは逃げる体勢に入っている。
いつものように追いかけてくるのを見越しての行動。
だからあたしはいつものように彼女を追いかける。
それがあたしの、友達として保つことができるぎりぎりの距離だから。
- 5 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時14分40秒
- 道路へと降りていく階段が見えてきたから、そろそろ本気を出して
梨華ちゃんを捕まえにかかった。
「まてーっ!!!」
「またないよーだ♪」
「そんなにムキになって走ったら転んじゃうよー。」
「ムキになってるのはよっすぃーじゃなーい。」
まっすぐに伸びた細い影の先端を踏み切りにして、
思い切りよく彼女へと手をのばした。
ほんの100メートル程しか走っていないのに、こんなにも息が弾むのは、
勢いにまかせて・・・・・・ついに彼女を抱きしめてしまったから。
捕まえる口実にしてはかなり危ない賭け。
いつもなら手首をつかまえるくらいで済んでいるから。
肩を引き寄せて、後ろからクロスさせた腕が華奢な体をぎゅっと包み込んだ。
求めていたリアリティー。
夢で見ていたあのとろけるような幸福感が、現実のものとして体を襲う。
否、それ以上にシビレるような心地よい刺激が全身を通り抜けた。
求めてはいけない、感じてはいけない、麻薬のような感覚。
一度感じてしまったら、もう二度と心の均整を保つことができないと、
警報装置が教えてくれていたのに。
その無謀な行動は、春の陽気がさせたものではないのだけれど
- 6 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時19分40秒
- 「よっすぃーやっぱ足はやいよ。結構思いっきり走ったのに。」
しかしそんな思いを知らない彼女は、抱きしめられているのを気にすることもなく、捕まったことに
対しての不平を口にしただけ。
そう。意識しているのはこちらだけなのだ。
その差は歴然としている。
どこまでいっても平行線をたどることになるこの思いは、
一思いに凍らせて今すぐ川に投げてしまった方がいいのだ。
崩れてしまった心のバランスは、いつか修復できる時がくるかもしれないのだから。
諦めることは今すぐにはできないかもしれない。
だけどあたしは、それでも側にいたいと思う気持ちから、
友達を装う一言をありったけの力で搾り出した。
「さすがに息切れたよ。ちょっぴりダッシュしちゃったし。」
つかんでいた体から、ゆっくりと力を抜いて指を外していった。
- 7 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時20分41秒
- 「もう、終わりなの?」
「うん。・・・追いかけっこはまた明日にしよう。」
「違うよ。そうじゃ・・・なくって・・・」
言葉を正確に理解することができなくなってしまったのだろうか。
梨華ちゃんが言う『終わり』の意味があたしには理解できなかった。
「・・・なに?なんの・・・こと?」
「なにって・・・・。今、よっすぃーがしてくれたこと。」
カーッと体が熱くなった。凍らせてしまった思いを溶かすには充分過ぎるほどの熱量。
「・・・・もう一度、抱きしめてもいいって・・・こと?」
梨華ちゃんの髪がかすかに揺れた。
ぎこちなく指をのばすと、今度は勢いにまかせることなく腕を巻きつけた。
- 8 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時22分23秒
- 「梨華ちゃんてすごいね。」
「ん?なにが?」
「あたしの考えてたこと本当に当ててしまった。」
言ってしまってもいいのだろうか?
友達としての存在も消滅してしまうかもしれない。
だけど梨華ちゃんがもう一度、あたしの抱擁を求めてくれたのは事実だから・・・。
そこにどんな意味があるのかは掴めないけど、
抱きしめたぬくもりがポカポカと沸いてきて、勇気を与えてくれた。
「さっきの答えのこと?」
「そう。・・・本当はベーグルのことなんか考えてなかった。
梨華ちゃんが見せてくれる笑顔がかわいいから、抱きしめたいって思ってたんだ。」
「ベーグルよりも大事に思ってくれてたんだ。」
クスクスと肩が振れて、その振動が直接体に伝わった。
- 9 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時23分42秒
- 「ひどいなぁ。あたしは梨華ちゃんのことしか考えてなかったのに。」
我ながらキザなセリフ。けれど切ないほどの本当の気持ち。
正面を向いていなかったのは幸いだった。
なぜならあたしの頬は、それとわかるほどにひどく紅潮していたから。
「本当に?」
「うん。だけど君はいつも上手にこの手をすり抜けていく。
届きそうで、掴めそうで、あと少しで手にできそうなのに。」
梨華ちゃんが不意に手のひらを空に向けてのばした。
「みて。やっとつかまえることができた。」
振り向いた彼女が見せたのは、まだ白さが残る薄いピンク色をしたサクラの花びら。
「サクラだ・・・」
近くの民家に1本だけ春を告げるその木が生えていた。
風に舞ってほんの数枚舞い降りてきたその花弁を、
梨華ちゃんの手がやわらかく包み込んでいた。
- 10 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時25分06秒
- 「風に舞うサクラの花びらって、どうして掴みたくなるんだろうね。」
彼女はただ、手にした宝物をじっと見つめていた。
「それはきっと、つかめそうでなかなかつかめないものだから。」
あたしもまた、その手を見つめていた。
「つかんでしまったら大したものじゃないってわかるかもしれないよ?」
花びらが微かに揺れていたのは、気のせいなんかじゃなかった。
彼女もまた、何かに怯えていたのだ。
「でも手にした感動はきっと忘れない。
それに、大したものかどうかを決めるのはその人自身の問題だから。」
梨華ちゃんがゆっくりとあたしを見上げた。
「一度つかんでもまた空に舞いあがっていくかもしれない。」
「そしたらまた追いかけてつかむだけ。」
サクラの話は2人のそれに置き換えられているのは互いに理解していた。
彼女は明白な言葉を待っているかのように思えた。
今度こそ、この手に握り締めるサクラはあたしだけのものにしたい。
- 11 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時26分28秒
「好きだよ。梨華ちゃん。」
「よかった・・・。もう友達じゃなくていいんだよね?」
フワフワと舞い上がった一枚の花びらは、春の風に乗って流れていってしまった。
またどこかに春を告げにいくかのように。
- 12 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時27分24秒
- 「よっすぃーのほっぺた。まるでサクラの花みたいだよ?
白いのに薄く赤みがさしている。とても・・・きれい。」
抱きしめたままで彼女がそう言った。
「それじゃ、つかんでもらおっかな。風にとんでいくことはないけど。」
梨華ちゃんがあたしの頬をその両手にはさんでくれた。
恥ずかしいけど、心地よい距離。
それは、ちょうどキスができる程の距離。
誰に教えられた訳でもなく、自然と唇が引き合うのは、
きっと、春にサクラが咲くのと同じ理由。
- 13 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時28分18秒
- 「梨華ちゃんがどこかにとんでいかないように、ずっとこの手に握り締めていてもいい?」
「いいよ。」
離してしまった唇が、もう寂しさを感じてしまっていた。
だからあたしは、もう一度手にした宝物にキスをした。
サクラを散らせる風が吹こうとも、きっとこの手にある花びらだけは、
ずっとつかんでいく。
たった一枚だけ舞い降りた、あたしだけのサクラの花びらだから。
□終わり□
- 14 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月11日(火)03時33分46秒
- 短編でしたね???(笑)
これに懲りずにまた読んでやってください。
- 15 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月12日(水)01時26分40秒
- 最高です。
- 16 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月12日(水)18時15分46秒
- >15名無し読者さま
ありがとうございます。
これからの活力になります。
また読んでやってくださいね。
- 17 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月13日(木)00時58分35秒
- イイ!すごくイイです!!
短編なのに長編モノのように、すごく密度の濃い内容でした。
いしよしのすべてが凝縮されてますねw
次回作、出来れば期待してもよろしいでしょうか?
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月13日(木)18時29分47秒
- よかった・・・。\(T―T)/
こういう繊細なテイストでほかにも書いてくださいようううう。
- 19 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)18時31分31秒
- >17名無し読者さま
うわ。お褒めのお言葉ありがとうございます。
本当に嬉しかったので、近日中にまたUPさせて
いただきたいかと思います。
この続編か、あるいは新規のもので。よろしくです。
- 20 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)18時33分55秒
- >18名無し読者さま
今ちょうどレス書いてたのでビクーリしました。
マジ嬉しいです。また書きたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いします。
(早ければ週末。遅くても来週中には。)
- 21 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)20時35分14秒
- 『サクラサク。』続編
=石川視点=
ねぇ、聞かせて。どれくらい私のこと好きなの?
私のどこが好き?どこを気に入ってくれたの?
聞きたいことは山ほどある。
あの日、好きだと言ってくれたのは紛れもない事実。
だけど、今でも不安に思う時があるの。
だからちゃんと・・・聞かせて欲しい。
- 22 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)20時36分41秒
- 「なにー?なんか暗い顔してるじゃん。」
帰り道の堤防。ポカポカとした春の日差しが気持ちよく肌に落ちてくる。
いらなくなった連絡用紙をお尻の下にひいて、ぼーっと川の流れを
眺めながら、私たちは時を過ごしていた。
「暗いかなぁ。ただちょっと考えごとしてただけなんだけど。」
2人の距離はあの告白があった後でも、特に変わるということがなかった。
離れることもないかわりに、ベタベタと急接近することもなく、
それは、以前に保っていた友達関係のそれと、さほど変わることがない。
「キラキラしてきれいだね。ずーっと眺めていたいよ。」
川に反射する光を眩しそうに眺めながら、よっすぃーは髪を耳にかけた。
きれいな横顔。あの日みせてくれたサクラ色の頬が、今日はやけに白く見える。
- 23 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)20時52分37秒
- それとは逆に、私の肌は子供の頃から黒っぽくて、色白のよっすぃーのもつ透明感は
私のあこがれだった。
はしゃいだり、追いかけっこした時にみせる紅潮した頬がとてもきれいで、
私はそれが見たいがために、わざと追いかけられるような悪ふざけを言って、
楽しんでいた。
私といる時にだけ見せてくれるその表情。
自己満足に浸れる唯一の瞬間がそれだった。
そして、必ず彼女は私をつかまえてくれていたから。
- 24 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時07分23秒
- 「今日さ、ごっちんがこんなのくれたんだけど、どう思う?」
ポケットから取り出したものは、変な顔をした、お世辞にもかわいいとは
言いがたい何かのマスコットキャラのキーホルダー。
「なにそれ?あまり・・・かわいくないね。」
「でしょ?あいつ、UFOキャッチャーで取っておきながら
いらないからあげるってくれたんだ。迷惑な話でしょ?」
ぶらんと手に吊り下げられたマスコットは、よっすぃーのかっこうのおもちゃ
となって、パチンパチンと何度もはじかれていた。
「いらないなら取らなきゃいいのにね。」
呆れ気味にそう答えたのは、ちょっぴり妬けてしまったから。
ごっちんとよっすぃーとは中学からのもちあがりで、
私よりも付き合いが長い友達だから、私の知らないよっすぃーを
いっぱい知っている。
悪友だってよっすぃーは言うけれど、そういった全てのことを含めて
私はどこかごっちんをうらやんでいた。
- 25 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時24分44秒
- 「私にも貸して。」
その手からキーホルダーをもらうと、目の前にかかげてジーッと睨んでみた。
「もしかして梨華ちゃん、それ気に入ったの?」
クスクスと笑いながら彼女はコンクリートの堤防に寝転んだ。
「別に気に入ってなんかないわよ。変な顔してるなーって思ったから。」
こんなキーホルダーにすら妬いてる自分が、妙に子供に思えた。
今この時を一緒に過ごしているのは私なのに、どこにもごっちんはいない
はずなのに、心がぎゅーっと切なくなって唇をかみ締めた。
「えーい、こんなへんなもの捨ててやるー!」
川に向かってキーホルダーを投げつけた。
いや、投げるフリをして、本当はその手にもっていたのだけれど。
「うわっ。何も捨てることないじゃん。」
よっすぃーはあわてて起き上がると、落ちてもない河原の方向へ目をやった。
- 26 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時26分03秒
- 「やーい。ひっかかってやんのー。まだここにあるもーん。」
私は立ち上がってベーッと舌をだした。
「だましたなー!」
「だまされる方が悪いのよ。」
「くっそー。あっ、また逃げたなっ!」
いつものように追いかけてくるよっすぃー。
そしていつものように逃げる私。
だけど、心はズキズキと痛んでちっとも楽しいなんて思わなかった。
- 27 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時33分43秒
- 「今日はあっさりつかまったね。いつもなら・・・・・。梨華ちゃん?」
よっすぃーは私をつかまえたまま、その場に立ち尽くしていた。
なぜなら・・・私はその時泣いていたから。
「なんで泣いてるの?腕、強く握りすぎた?」
知らないうちに涙があふれていた。
悔しい、悲しい、切ない・・・
そんな気持ちが胸の奥の方からいっぱい押し寄せてきて、
私を泣かせていたのだ。
- 28 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時41分20秒
- 「ごめんね・・・・」
私の手を握り締めて、彼女がそう言った。
「なんで謝るの?別によっすぃーが悪いことした訳じゃないでしょ?」
「悪いことしたんだと思うよ。気付かないうちに、きっと梨華ちゃんのこと
傷つけていたのかもしれないって、そう思ったから・・・。」
確かに傷ついてはいた。だけどそれは私が勝手に妬いたやきもちのせい。
よっすぃーは何も悪くはない。
なのに自分が悪いと思って謝ってくれた彼女。私はまた・・・泣いてしまった。
- 29 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時51分39秒
- 「気が済むまで泣いてていいよ。ちゃんと側にいるから。」
頭を抱え込むようにして、抱きしめてくれた。
もうなんで泣いているのかさえ忘れてしまいそうになる。
ちゃんと思い出してみよう。そうだ。私は悔しくて泣いていたのに、今は嬉しくて泣いているのだ。
「・・・っく。ひっく・・・・。もう、いいよ。ありがと。」
「ダメ。まだ肩が震えてる。」
情けないやら嬉しいやら。私は泣いているのに笑っていた。
「どっちか一つにしたら?泣くか笑うか?」
よっすぃーが笑ってそう言ったから、私もやっぱり笑ってしまった。
「ねぇ、もういいかな?梨華ちゃんがさっき考え込んでいたこと聞いても。」
ズキンと胸を射抜かれたような衝撃が走った。
彼女はずーっと、私がふせっていたことの原因を聞きだす機会を
伺ってくれていたのだ。
- 30 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月13日(木)21時57分31秒
- >作者
一時終了。
続きは、また今度にしたいと思います。
どうぞよろしくです。
- 31 名前:17 投稿日:2003年02月13日(木)23時40分34秒
- おぉ〜、いつの間にか新作が始まってたんですね!嬉しいです。
梨華ちゃん視点、こちらもイイですねぇ〜!
さり気ない会話とか何気ないシーンなんだけど、いしよしの醸し出す、
いしよしならではの空間があるなぁって感心してます。
キラキラしてる感じなんですよね。
いしよし、そしてごま、このトライアングルはやっぱり絵になりますね。
次回更新もまったりお待ちしております。
- 32 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年02月14日(金)00時54分11秒
- 一言、言わせてもらうと、作者さんのいしよし最高すぎです!!
いしよしヲタな私のツボをこんなに的確に突いてくるとは…
心情描写と空気感がたまらないです!
もうとにかく素晴らしく期待してます!!
- 33 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)18時39分51秒
- >17さま
いつもありがとうございます!
いしよしごまであっても、当方かなりないしよしヲタなので、
いつもごっちんには申し訳ない設定となっております(w
また更新しますので、是非是非読んでやってください。
>ラヴ梨〜さま
そう言っていただけて、感謝の極みです。
私も相当ないしよしヲタなので、嬉しいです。
個別で言うと、よしヲタなんですけどね。
ご期待いただきありがとうございます!
- 34 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)19時09分02秒
- 「ごめん・・・」
ちゃんと伝えたいのに、最初に出てきた言葉はこれだった。
色んな思いが胸の中でぐるぐると喧嘩して、言いたいことが
まとまらないでいたのだ。
「まだ・・・聞いちゃまずかったかな?」
よっすぃーは少しバツが悪そうにして、ポツリとそうもらした。
「違うの。聞いて欲しいこといっぱいありすぎて、うまく伝えられないから・・・」
ふーっと息をもらすと、彼女は体を離して、また座り込んだ。
「梨華ちゃんも座りなよ。考えがまとまるまで待っててあげるから。」
コクリと頷いて、私もその隣に腰をおろした。
- 35 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)19時10分20秒
- 「もうちょっとそっちに寄ってもいいかな?」
ほんのわずかな隙間さえつめて、肩が触れ合う距離にきてくれた彼女。
その優しさが身に染み渡って、どうしようもなく愛しくなってしまう。
「聞いてもらいたいとこ、聞きたいこといっぱいあって・・・笑われるかもしれないけど、
できれば笑わないでいてくれる?」
「なんか複雑っぽいけど、いいよ。なんでも聞いて。なんでも答えるから。」
やわらかい声でそう言ってくれたから、私も落ち着いて話し始めた。
- 36 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)19時11分40秒
- 「ずっと・・・ずっとね、私、よっすぃーのこと見てたんだ。
友達になってくれて、仲良くなって。いっぱい2人で遊んだよね。
いつもふざけてばかりいて、子供みたいに追いかけっこなんてして。」
「あはは。そうだね、子供っぽいかもしれないよね。うちらって。」
「うん。でもね、そんな毎日がとても楽しくて、ずっとこのままでいられたらなぁって
思ってたんだ。」
よっすぃーは私の言葉に合わせるように、何度も頷いていた。
- 37 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)19時34分06秒
- 「でも、楽しいはずの毎日も、なんだかだんだんと苦しくなっていって・・・。
このままでいたいのに、このままでいたくないって思うようになっていって。
あの日、よっすぃーが抱きしめてくれた瞬間、頭が真っ白になったの。
なんでもないようなフリしてたけど、本当はドキドキがとまらなくって・・・。」
「そんな風に思っていてくれてたんだ、梨華ちゃん。」
「その時にね、やっと気付いたの。私が求めてたのは、これかもしれないって。
友達としてのよっすぃーじゃなくて、私だけの・・・たった一人の人でいてもらいたい
んだって。だから、もう一度、抱きしめてもらいたくなったの。」
秘すれば花って言葉があるけれど、私は私の想いを伝えたかった。
どれほどよっすぃーを好きでいるか。ちゃんと、聞いてもらいたかったから。
「そっか・・・。その・・・ありがとね。」
ほっぺたをつまんでいても、その緩んだ頬が紅潮していくのが見えた。
どうやら私の胸のうちを聞いて、かなり照れている様子。
- 38 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)19時37分20秒
- >作者
すみません。タイムアップです。
続きは書ければ夜にでも。
梨華ちゃんのセリフ、書いてるこっちの方が恥ずかしいです(w
- 39 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)21時50分55秒
- 風が緩やかに髪を揺らした。
私もだんだん恥ずかしくなっていったけど、それでも気持ちを止められないでいた。
「だけどね、本当はすごく怖かった。自分の中でそれを認めてしまったら、もう何があっても友達には
戻れないって思ったから・・・。」
「それはあたしも同じこと考えてたよ。なんだか、変なとこ似てるよね。」
「よっすぃーも・・・・・・そっか。ほんと、似てるね。」
あの時ひらひらと舞い降りてきたサクラの花びらは、
きっと春を告げるためだけじゃなく、勇気も与えてくれたんだと感じた。
震えてしまっていた私に、勇気を与えてくれたのはサクラの花びらだけじゃ
ないけれど。
- 40 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)21時52分42秒
- 「気持ち、打ち明けてくれて嬉しかったよ。もう友達でいなくてもいいって。
それ以上の存在になれるのが、すごく嬉しくって。
だけどね、そうなってしまったら、今度は私のことどれだけ好きでいてくれているのか、
どこを好きになってくれたのか、そんなことばっかり考えちゃって・・・。笑っちゃうでしょ?」
よっすぃーは空を見上げた。そして目を閉じてしばらく黙ったまま、
何かをカウントするかのように、頭を揺らしていた。
「どれだけ好き・・・か。地球上にあるでっかいもの色々考えてみたけど、
ものであらわすことなんてできないし。でも、きっと梨華ちゃんがあたしを
想ってくれている以上ってのは確かだと思うよ?」
ジャリジャリとコンクリートにシューズをこすりつけながら、よっすぃーが答えてくれた。
- 41 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)21時56分55秒
- 「私のどこが好き?」
「んとね、全部っていいたいとこだけど。そうだなぁ、やっぱ振り返って微笑んで
くれる笑顔が最高にかわいいって思う・・・かな。
あたしがいつも梨華ちゃんの後ろを歩く理由って、実はそれだったんだ。」
質問したのは私だったのに、ちゃんとした答えを言われると、
恥ずかしくて逃げ出してしまいたくなりそうなほど、頭に血が上った。
「そうだったんだ・・・。ありがと。なんか・・・ごめんね。恥ずかしかったでしょ?」
大きく頷いて、よっすぃーが笑った。
「それならさぁ、あたしも質問してもいい?」
その意味ありげな笑顔にちょっとドキリとしたけれど、
私もまたウンと頷いた。
- 42 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)22時06分15秒
- 「もしかしてとは思うけど・・・ごっちんがくれたそれ、気に障った?」
よっすぃーの視線は、私が未だ握り締めているキーホルダーを見つめていた。
「・・・うん。妬いちゃった。」
「クスッ。かわいい。」
そう言ったかと思うと、彼女はすかさず頭を抱きかかえてくれた。
「嬉しいな。梨華ちゃんが妬いてくれたなんて。」
ドキドキが伝わってしまうのではないかと思うほど、私の心臓はヒートアップしていた。
「ごめんね。これ、返すね。」
キーホルダーを渡すと、よっすぃーはまたパチンとそれをはじいた。
「こいつ、ごっちんに返すね。本当はちょっぴりこの変な顔気に入ってたんだけど。」
- 43 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)22時20分58秒
- ポケットにしまい込むと、よっすぃーが立ち上がった。
「そろそろ帰ろっか。大分話し込んだから体冷えてない?」
手を差し出して、優しく微笑んでくれたのは嬉しいけど、
私はもっと彼女の側にいたかった。
「ありがと。よっすぃーの手、温かいね。」
「それはきっと、梨華ちゃんがあたしの心を温めてくれたからだよ。」
狭い堤防の上を、2人は並んで歩いていた。
私の後ろを歩くことは、これからはもうないかもしれない。
その代わりにずっと側で私を見つめてくれている視線がそこにはあった。
しっかりと握り締められた手は、サクラの花びらを握り締めた時よりも、
優しく、強く、私の心に春を告げてくれていた。
- 44 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)22時46分37秒
- 「もう少しだけ、一緒にいてくれてもいい?」
「本当はあたしもまだ帰りたくなかったんだ。」
立ち止まった2人の影は、しばらく離れることもなく、
堤防に1本の太い影となって刻まれていた。
「これからはどんな時も、ずっと2人でいようね。」
「ごっちんが聞いたら悲しむんじゃない?」
「その時は『梨華ちゃんの側にいたいから』ってちゃんと言うよ。」
「ほんとにー?そんなこと言えるの?」
「あれ?信用ないなぁ。あたしのこと信じられないの?」
「うん。信じてあげないよーだ。」
「ひでっ!怒ったぞーっ!」
笑いながら追いかけてくるよっすぃー。
そして、いつものように逃げ出した私。
- 45 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)22時55分48秒
- だけど、今日は振り向いて、よっすぃーを思い切り抱きしめた。
「大好きだよ。よっすぃー。」
「あたしも。大好きだからね。これだけは信じてよ?」
クスッと笑うと、ゆっくりと唇を重ねあった。
サクラサク、その花は風に散ろうとも、その実を残し、また花を咲かせる。
この世に春を告げる使命があるから。
『サクラサク。』続編 終わり
- 46 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月14日(金)22時58分44秒
- >作者
思わぬくらい激甘になってしまいました(w
こんなラストでよかったのかどうか・・・(笑)
もしよければ、感想、辛口批評など書いてください。
あー。ちょっぴり胸焼け状態です(w
最後に。ここまで読んでいただいてありがとうございました。
- 47 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年02月15日(土)00時59分16秒
- 最強最高です!!
これぞ、いしよしの神髄と言わせてください
激甘大歓迎、感謝御礼
悪いとこなんてホントないです(マジで)
できることならもっとこの世界観に浸りたいというのが本音です
とにかく作者さん万歳
- 48 名前:31 投稿日:2003年02月15日(土)01時17分19秒
- 完結、お疲れ様でした。
いしよしワールド炸裂でした。
こういう情景はやっぱり、このふたりが最高にマッチしますねぇ・・
メープルシロップ1年分くらいの甘さでしたが、もうクセになる甘さですw
密かに次回作を期待しています。
- 49 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月15日(土)16時43分51秒
- >ラヴ梨〜さま
大変ありがたいお言葉かけていただき、本当に嬉しいです。
上手く書けないのは口惜しい限りですが、
ここで色々修行させていただきたいので、
今後ともよろしくお願い致します。
>31さま
そう言っていただけて嬉しいです。
他の作者の方々はつわものぞろいで、かなりヘコミますが、
どうぞ見捨てないでやってください。
新作『繋いだ気持ち』UPしましたので、
よければ読んでやってください。
- 50 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月19日(水)22時46分39秒
- >作者
こちらの手違い&初歩的ミスで、新規スレをたててしまったこと、
こちらでも謝ります。
向こうにも書きましたが、こちらのスレでは
甘&シンプルな爽やかさのいしよし物を書いていきたいと
思っています。
それだけに、向こうは痛&シリアス&コメディー&etc・・・
ジャンルは決めないで、書きたいものを書いていこうかと。
エロはおそらく書けないと思います。
作者が照れるので(笑)
でもいつか書くかもしれません。
とにかく、色々書けたらいいなと思っていますので、
読んでもらえれば嬉しいです。
それでは。
- 51 名前:読者(女) 投稿日:2003年02月19日(水)23時37分00秒
- おつかれさまでした。
すごく暖かい雰囲気ですごく
好きです。これからもいろいろ
楽しみにしているので頑張ってください!!
- 52 名前:修行僧2003 投稿日:2003年02月21日(金)23時02分27秒
- >作者
読者(女)さま
嬉しいお言葉ありがとうございます。
こちらの次回作は、もう少しだけ待っていただけると
ありがたいです。
現在ブラックなよっすぃーを書いていまして(笑)、
その反動がこちらの甘スレで爆発することに
なるかもしれません(w
どうぞ、今後ともよろしくお付き合いください。
- 53 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月04日(火)21時12分29秒
- >作者
もうそろそろあちらの(wお話終わりそうなので、
こちらに新作UPできたらいいなぁーなんて
思っております。
もちろん甘で(笑)
できれば今月中にUPしたいのですが、
まだ未定です。
何話かは書けてるんですけど、
イマイチ甘さが足りないような気がしてまして。
ばっさりと捨てちゃって、全然違うの書くかも
しれないです。
爽やか甘を目指してがんばる所存でございます。
どうぞその時には応援ください。よろしくです!
- 54 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時25分51秒
- >作者
みなさまお久しぶりでございます(w
向こうの小説、一応完結いたしましたので、
今度はこちらにてUPしようと思っております。
設定はあいも変わらず高校生の2人。
いし→よしって感じです。
初恋の初々しさを爽やかに書ければいいなと思っております。
梨華ちゃん視点で話は進みます。
今日はほんの少し、さわりだけUPしたいと思います。
どうぞみなさまよろしくお願いいたします。
- 55 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時27分37秒
【コイゴコロ】
何度目かの沈黙が訪れていた。
机に肘をついたままグラウンドを眺めるあなたの横顔。
今何を考えてるの?
私といるとつまらない?
あまりにも綺麗な横顔が冷たく感じてしまうのは、
あなたとの距離がまだつかめないから・・・。
だけど私は知っている。
あなただけがもっている、さりげない優しさを。
「何かクラブ入らないの?」
ほらね。
こっちからは上手く話せないでいるのを知っているから、
話しやすい話題を探してくれていたんだ。
- 56 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時28分44秒
- 「ん・・・。入ろうとは思っていたけど。」
ちらりとこちらに視線を向けた瞬間、またドキドキと胸が高鳴る。
なんで私はこんなにもドキドキするんだろう。
「運動部は苦手かな?」
クスっと笑った顔がとても綺麗で、その度に見とれてしまいそうになる。
だけどやっぱり直視はできないから、机の上に置いていた指先に視線を落としてしまった。
「そうじゃないけど。一応ね、テニス部に入ろうって思ってたの。
でも体験入部で結構しぼられちゃったから。」
少しはにかんで答えた私。もっと上手く話したいのに・・・。
「そうなんだ。高校の部活ともなると厳しいもんね。」
「うん。ヘトヘトでついていけなかったんだ。」
「あはは。梨華ちゃん体力なさそうだもんね。」
名前を呼ばれた瞬間、ドキリと血が巡った。嬉しいんだけど、すごく照れてしまう。
- 57 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時29分53秒
- 「ひとみちゃんは?入らないの?」
そしてあなたの名前を呼ぶのも照れてしまう私。
だけど、とてもステキな感覚が胸の中に響いてきて、
ほんの少しだけひとみちゃんに近づけた気になる。
私たちはまだ出会ってから1月も経っていない、そんな仲。
「あたし?あたしも運動部はちょっとムリかな。かと言って文化部には興味ないし。」
見たことスポーツ万能な感じがするんだけど・・・。
案外運動オンチなのかもしれない。
もしそうだとしたら、見た目とのギャップがあって面白いなと思っていたところ。
「何笑ってるの?」
どうやら私のちょっとした笑顔に気付いたみたいだった。
「え?笑ってた?」
「笑ってたというより、何か考えてたっぽい含み笑いに見えたんだけど?」
そんなところまで見られていたことに、ちょっぴりドキリとしたけど、
私のことに興味をもってもらえているみたいに感じて、なんだか妙に嬉しかった。
- 58 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時31分08秒
- 「ごめんね。別に深い意味はないんだけど。
ただ、ひとみちゃんが運動苦手だとしたらギャップがあるなぁって思って。」
「あはは。そっか。別に苦手って訳ではないんだけどね。」
そう言うと、窓に視線を移した彼女。
午後の穏やかな日差しが教室に差し込んで、
彼女の栗色でストレートな髪をつややかに光らせている。
誰が見ても美少女だと認めるであろうその顔は、
女の私から見てもとても綺麗に映っていた。
ひとみちゃんと出会ったのは、この高校に入ってから。
最初は雰囲気的にとても友達にはなれそうにない感じがしていたけど、
ひょんなことからこうやって放課後の時間を一緒に過ごすようになっていた。
そして今、この教室にいるのは私たち2人きり。
ここで2人だけが残っているのには訳があった。
互いに部活に入っている友達の帰りを待っているのだ。
- 59 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時32分27秒
- 新しい友達もできつつあるけれど、同じ中学出身の仲のいい友達と帰宅しているから。
ほんの少し人見知りをしてしまう私にとって、昔からの友達は心のつてだった。
ひとみちゃんは特にそんな感じはしないけど、同じく仲のいい友達と一緒に
帰るためにここにいる訳で。
友達を待つ間、最初の頃は図書館にいたり、中庭や校内を見てまわって時間を潰していたけれど、
さすがに3日もすれば退屈になってきて。
教室で一人、本を読んで過ごそうと思っていた時に、
同じように残っている生徒がいた。それがひとみちゃんだった。
- 60 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時33分21秒
- ほとんど連絡事項的な会話しかしたことがなかったから、
座る席も気を遣って離れていたけど、そんな私をみて話しかけて
くれたのがきっかけで、今ではこうやって一緒に時を過ごしている。
上手く話せないのは今もあまり変わらないけど、
それでもなんとなく日に日に仲良くなっていけてる気がしていた。
こうして毎日彼女と過ごすことができる時間が、今の私にはとても楽しい。
友達を待つ間の時間潰しが目的だったのに、
今はひとみちゃんといられることに嬉しさを感じていた。
- 61 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月23日(日)22時36分18秒
- >作者
・・・はい。こんな感じです(笑)
だいたいのアウトラインしか考えていないので、
展開的にどう転んでいくのか作者自身わかりません。
今後どのように恋心が芽生えていくのか、
作者自身楽しみでもあります。
それでは今日はこの辺で。
ありがとうございました。
- 62 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年03月24日(月)00時56分13秒
- よっしゃ〜!!
初レスゲッツかな?
楽しみが消えなくて良かった…
いや〜いしよしってホントにいいもんですね〜(某映画解説者風)
さっそくおともさせていただきます
- 63 名前:48 投稿日:2003年03月24日(月)13時37分29秒
- おぉ〜、新作始まりましたね!
「繋いだ気持ち」も大好きでしたが、元々はこの「サクラサク。」の
世界観が大好きでしたので、また読めるのがひたすら嬉しいです。
帰宅部同士のいしよしはちょっと新鮮な感じがしますね。
お互いの部活の友達は誰なのかも密かに期待してますがw
どんなコイゴコロが芽生えるのか、ワクワクしております。
- 64 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時09分54秒
- >ラヴ梨〜さま
ようこそおいでくださいました♪
はい。初レスゲットでございます(w
ぜひぜひついてきてやってください!お願いします。
>48さま
いつもありがとうございます♪
いやぁ。マジ嬉しいです。
>お互いの部活の友達は誰なのかも密かに期待してますがw
えへへ。今回は娘。チームではなく、今最もあつい
あのグループを引っ張り出してみました(笑)
よければまた最後までおつきあいください♪
さて、それでは今日もほーんの少しだけUPしたいと思います。
かなりゆっくりなペースになると思いますが、よろしくお願いします。
- 65 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時11分44秒
- 「・・・あ。陸上部終わったみたいだよ。」
ひとみちゃんの視線の先に目を移すと、グランドからこちらに向かってくる
雅恵ちゃんの姿が見えた。
窓を開け放つと、少しまだ花冷えのする新鮮な風が吹き抜けて、
心地よく頬をなでていく。
小さく手を振ると、雅恵ちゃんが上を見上げてにっこりと手を振り返してくれた。
「さ。あたしはもうちょっと居残りだな。」
「ごめんね、いつも先帰っちゃって。」
「いいよ、気にしないで。」
「ねぇ、ひとみちゃん。私が帰った後っていつも何してるの?」
「んー?別に何もしてないけど?居眠りしてたりボケーッとグランド見てたりかな。」
「そうなんだ。」
「そんなことより、いいの?大谷さん下で待ってるんじゃない?」
「あ・・・。そうだね。」
友達が待っているのはわかっているけど、これで今日もひとみちゃんと
サヨナラしないといけないと思うと、妙に別れ辛くなってくる。
- 66 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時12分41秒
- もう少し、もう少しだけ・・・。
「また明日。気をつけて帰りなよ。」
きっとその言葉は彼女なりの気遣いなんだろうけど、
私にしてみれば早く帰って欲しいと言われたような気になってしまって、
ちょっぴり切なくなってしまうのだ。
こんな風に考えてしまうのは、おかしいのかもしれないけれど。
「・・・うん。また、ね。」
2人きりの時間が終わるこの瞬間が、いつも私の心をぎゅっと締め付けていく。
それは日を追うごとに大きくなっていく感情。
自分の中にある違和感が何であるのか。
その時の私はまだ気付いていなかった。
- 67 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時14分22秒
「おはよう。」
「おはよ。」
朝も一緒に登校している雅恵ちゃんと合流して、電車に乗る。
車内はいつも通勤ラッシュで混んでいるけれど、それでもまだ電車通学
というものに新鮮味を感じているから、別に苦にはならない。
雅恵ちゃんはとても気さくな子で、いつも楽しい話を聞かせてくれている。
専ら話すのは彼女の方だけど、私もそれにつられるようにおしゃべりになってしまうのだ。
だけど、もうすぐ降りる駅に近づくと、私はとたんに無口になってしまう。
それは、反対側のホームから滑り込んでくる電車の中に
ひとみちゃんの姿を探してしまうから。
彼女もまた、友達と一緒の電車に乗ってくるのだ。
だいたい乗る時刻と車両は決まっているから、
それほど探さなくても見つけることはできるのだけれど。
- 68 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時15分37秒
- 「あ・・・。」
私は思わず声を出してしまった。
「どうかした?」
その声に反応するように、雅恵ちゃんが私の顔を見る。
「ううん。なんでもない。」
もう一度その方向に視線を向けて確かめてみたけど、
やはり状況は変わらなかった。
いつもひとみちゃんと一緒にいる友達は見かけたけど、
肝心のひとみちゃんの姿を見つけることができなかったのだ。
「降りるよ。」
彼女の声に促されて、私は電車を降りた。
「おはよう。」
教室の扉を開けて、そこにいるクラスメイトと挨拶を交わしたけど、
私の視線はある人を探していた。
「おはよー。」
すぐ後ろから聞こえてきた声に振り返る。
- 69 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時16分57秒
- 「おはよう。」
私が探していた人がそこにいた。
「あの。ひとみちゃんお休みなの?」
彼女はすこし驚いた風にこちらを見ていた。
「あぁ、うん。お休みだよ。」
ほとんど話したことのない私が、話しかけたことにビックリしていたようだった。
おまけにいきなりひとみちゃんの話題がでたことも、
彼女にとっては不思議な感じがしたのだろう。
「そうなんだ・・・。風邪でも引いたのかな?」
「違う違う。あいつが風邪なんか引く訳ないじゃん。」
ほんの少しの違和感。
『あいつ』と呼べる関係にいる彼女に、私とひとみちゃんとの距離を感じてしまった。
- 70 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時18分03秒
- 「あの・・・もしよかったら教えて欲しいんだけど。」
「ん?たぶん病院だと思うけど。詳しいメール入ってなかったからわかんないの。ごめんね。」
「・・・病院?」
「うん。あれ?ひとみのこと聞くぐらいだからてっきり知ってるものだと思ってたけど。」
「知らない・・・。」
「そうなんだ。それより、石川さんってひとみと仲よかったんだ。ちょっとびっくりしちゃった。」
彼女に悪気がないのは、あっけらかんと笑っている表情からもわかったけど、
私はその言葉に少し傷ついてしまった。
「ひとみね、中学の頃やってたバレーで膝やっちゃってさ。
日常生活には問題ないんだけど、やっぱり激しい運動はだめみたいで。
きっと今日は定期健診みたいなものだと思うんだ。そのうちメール入るとは思うけど。」
「そうだったんだ・・・。ありがと。ごめんね呼び止めちゃって。」
ポンポンと肩を叩いて席に戻って行った彼女。
私が知らなかった事実をひとみちゃん本人からではなく、
その友人に聞かされたことで、また私は落ち込んでしまった。
- 71 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時19分16秒
「カバンも置かないで、なにボーっと突っ立ってるの?座りなよ。」
クスクスと笑いながら雅恵ちゃんが近づいてきた。
「・・・うん。」
笑顔でそう答えたけど、やっぱり心が晴れることはなかった。
ぽつんとひとつだけ空いている席。
授業中にも関わらず、私は何度その席を見たことだろう。
一緒にいる時間も結構あったはずなのに、ひとみちゃんは
膝のことは何も教えてくれなかった。
しかし、今になって気付いたことがある。
確かに彼女は体育の授業中も、どこか気だるそうにしていたふしがあったのだ。
きっとそれは膝が痛んでいたからに違いない。
そんなことにも気がつかなかったなんて・・・。
- 72 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時20分02秒
- そしてもう一つ気付いたことがあった。
いつも会話が途切れると、グラウンドに視線を落としていた姿。
きっと本当はバレーをやりたかったに違いないのだ。
他の人たちが楽しそうに部活に励む姿を見て、
彼女はどんな気持ちでいたのか。
私はただひとみちゃんと過ごせることに浮かれていて、
彼女が見ている先にあるものが何かを知ろうともしなかったのだ。
自己嫌悪が一気に心を責め立てて、また一つ大きなため息をもらしてしまった。
- 73 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月24日(月)23時21分08秒
- >作者
今日はここまでになります。
投稿、短いですよね?(汗)
それでもめいっぱい頑張って書いておりますので、
どうぞ長い目でみてやってくれると嬉しいです。
それではどうもありがとうございました。
- 74 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年03月25日(火)11時50分20秒
- むぅ、いしよしシーン温存ですね
梨華ちゃんが自分の気持ちに気付いてないというとこがカワイイよ〜
私のツボを知っておられるとしか思えない!!
- 75 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時31分15秒
- >ラヴ梨〜さま
いつも嬉しい感想ありがとうございます♪
今日はほんのちょっとだけいしよしありますので(笑)、
どうぞ読んでやってくださいませ。
それでは、続き、どうぞ。
- 76 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時32分29秒
「石川さんっ。」
お昼を済ませて歯を磨きにいこうと立ち上がったところで、ちょうど声をかけられた。
声をかけてきた人、それはひとみちゃんの一番の友人である村田さんだった。
朝、彼女にひとみちゃんのことを聞いてから、ずっと気になっていたメールのことを
教えに来てくれたのかもしれない。
「きたよ、メール。」
思ってた通りのことだったけど、胸がチクッと疼く。
携帯の番号すら知らない私に、メールは届く訳はないけれど。
「なんて書いてあったの?」
「午後から学校出るつもりだったけど、やっぱり休むってさ。
病院混んでたからって書いてあるけど、きっとズル休みだね、これは。」
カラカラと笑って携帯を閉じた彼女。
- 77 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時33分43秒
- 「やっぱり病院行ってたんだね。大丈夫なのかな・・・。」
「大丈夫、大丈夫。心配なんてしなくていいから。んじゃね。」
「あの!」
席に帰ろうとした村田さんを思わず呼び止めてしまっていた。
「ん?なに?」
「その・・・お大事にって入れといてもらえないかな・・・」
「あはは。いいよ、わかった。石川さんがすごーく心配してたって入れとくね。」
「そんな、別に私・・・」
「クスクス。なんなら自分で入れてみる?
あいつあぁ見えて結構寂しがりやだから。心配してくれる人がいるってわかったら
喜ぶんじゃないかな。」
「でも私、ひとみちゃんのメール知らないし・・・」
「それなら教えてあげるよ。」
「えっ・・・でも・・・そういうのって直接本人から聞かなくてもいいのかな・・・。」
「何遠慮してるの?別に問題ないでしょ。ほら、これ。」
そう言って番号とアドレスを見せてくれた。
「ありがと。後で入れてみる。」
「うん。ズル休みするな!って入れてみるのも面白いかもね。」
快活に笑いながら席に戻って行った。
- 78 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時34分50秒
- 「吉澤さん病院行ってたんだ。」
「みたいね。」
ずっと横で今の話を聞いていた雅恵ちゃんが尋ねてきた。
「メール入れてあげなくていいの?」
少しからかい気味に私の肩を押した。
「後でいいよ。さっ、歯、磨きにいこ?」
恥ずかしいような、照れくさいような感情が急にわいてきたから、
彼女をせかすように背中をおして、教室を出た。
「はぁ・・・。なんて入れよう。」
誰もいない教室で、独り言をつぶやく。
タイミングを逃してしまった私は、結局放課後になった今でもまだ
メールを入れることができないままでいた。
「ひとみちゃん・・・今何してるの?」
いつも彼女が座っている席を見つめて、その笑顔を思い浮かべる。
- 79 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時35分45秒
- 「なんで私には何も言ってくれなかったんだろう・・・。」
わざわざ話すようなことではないと思っていたのかもしれないけど、
教えてもらえなかったということが妙に胸に響いてくる。
毎日ここで過ごして、その瞳にドキリとして。
今まで楽しい時間を共有していたから、ここに彼女がいないことが
ぽつんと取り残されたような寂しさを連れてきた。
メモリーを呼び出したままのカーソルがチカチカと点滅して、
それはまるで私をせかすかのように目に映る。
ほんの少し、勇気を出せばひとみちゃんと繋がることができるのに。
グラウンドを見下ろすと、陸上部の選手たちが走っている姿が見えた。
校庭をさっきからもう何週も走り続けている。
その中に雅恵ちゃんもいた。
「頑張ってるな・・・。」
懸命に走る姿が私の心をとらえた。
だから私は、彼女がもう一度この下を通り過ぎる前にメールを入れた。
- 80 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時36分48秒
- 『こんにちは石川です。メールは村田さんに教えてもらいました。
病院どうでしたか? =梨華=』
送信ボタンを押すと、はぁーっと一息ついた。文字を打つのにこんなに緊張したのは初めてで。
そしてほどなく、手にしていた携帯が震えた。
『びっくりしたよ!でもありがとね。病院の方は何も問題なかった。
それよりめぐみ他に何か言ってなかった? =ひとみ=』
他にって・・・一体何のことだろう?
ほんの少し不安が心を占めたけど、聞いているのは休んだ理由くらいだった。
『定期健診とだけ聞いたけど。膝大丈夫だったの? =梨華=』
『大丈夫。ごめんね心配かけて。午後から学校行くつもりだったんだけど。
今教室だよね?一人で寂しくない? =ひとみ=』
「寂しいよ・・・。」
優しいその文字を見つめて泣きそうになってしまった。
ひとみちゃんがいないだけで、私の心はこれほどまで苦しくなっていく。
笑顔を見たい。声を聞きたい。寂しくないようにここにいて欲しい。
だけど『寂しい』という文字を送ったら、きっと彼女のことを困らせてしまうと
思ったから、何度か入れては消したその文字を送ることはしなかった。
- 81 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時38分03秒
しばらく返信の文句を考えていたら、また向こうからメールがやってきた。
『携帯かけてもいい?よかったらそっちの番号教えてよ。 =ひとみ=』
その文字をみたとたん、胸がドキドキと踊る思いがした。
声を聞きたかったのは私の方だったから、もう迷うことなく彼女の番号を押した。
「もしもし。」
「もしもし。梨華ちゃん?」
声を聞けた嬉しさと安心感に、ほっと笑顔になる。
「うん。ごめんね、番号勝手に教えてもらったりして。」
「あはは。いいよ。いつかこっちも聞こうと思ってたし。」
「それより、どうだったの?膝、本当に大丈夫なの?」
「あぁ。大丈夫だから。ありがとね。メール嬉しかったよ。」
直接見ている訳ではないのに、ひとみちゃんの笑顔が目に浮かんでくるようで、
私もすごく嬉しくなった。
- 82 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時39分10秒
- 「今、何してるの?」
「携帯で話してる。」
おかしそうに笑う声が耳に伝わってきた。
それはちょっとしたジョークなんだろうけど、とても優しく響いてきたから
私もつられて笑ってしまった。
「冗談、冗談。今ね、ボーっとテレビ見てたんだ。
梨華ちゃんは大谷さん待ってるんだよね?」
「うん。そう。彼女、今日もがんばって走ってるよ。」
「そっかぁー。めぐみは?グラウンドの端に見えるでしょ?ハンド部。」
その名前を聞いたとたん、私の笑顔はゆっくりと消えていってしまった。
なんだろう・・・とても寂しくて、ぎゅっと胸をつかまれるこの思いは・・・。
「・・・見えるよ。練習試合やってるみたい。」
「梨華ちゃん?どうかした?」
「えっ・・・なんで?」
「なんかさっきまでと声のトーン違うから。」
そう指摘されて、戸惑ってしまった。
まるで何もかも見透かされているような気がしたから。
- 83 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時40分18秒
- 「・・・ううん。どうもしないよ。」
「ホント?それならいいけど。もし何かあったら言ってね。」
「ありがと・・・。」
さりげない優しさをかけてくれるのは嬉しいけど、
それに比例するように沸き起こってくる寂しさは、一体どうしたらいいのだろう。
「・・・・寂しく・・・ない?」
黙り込んでしまった私の心に、ストレートに届いたその声。
何を思って突然そう言ったのかはわからなかったけど、
寂しいと思っていたのは紛れもない事実だったから・・・。
じわじわと広がっていく切ない気持ちが、私の胸をついた。
「・・・寂しい・・・よ・・・。」
「・・・梨華・・・ちゃん・・・・・」
「なんでこんなにも・・・なんで・・・・・」
「ごめんね・・・。ちゃんと明日は行くから。」
「うん・・・。わかった。」
「それじゃ、また明日・・・ね。」
「あ・・・。そうね・・・また。」
- 84 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時41分01秒
それでもまだ電源を切ることができないでいた私に、ひとみちゃんの声が響いた。
「明日、聞いて欲しいことがあるんだ。」
「え・・・なに?」
「電話ではちょっと言えそうにないから。明日会った時に言うよ。」
「わかった。明日、ね。」
「うん。・・・それじゃ、切るよ。」
「・・・・うん。バイバイ。」
電源を切った後、とても不安になったけれど、それは明日にならないと解けない問題だった。
- 85 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月25日(火)23時43分16秒
- >作者
今日は以上!(笑)
なかなかすすみませんね。この小説(w
さて、このあと急展開するか、
はたまたのっそりのっそり進んでいくか。
それは作者が知りたいところで(笑)
まぁ、とにかく甘ーくなることは確かなので、
みなさん砂糖吐いてもいいように、
バケツの準備をお願いいたします(笑)
それでは、今日はこのあたりで。
ありがとうございました。
- 86 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年03月26日(水)00時59分52秒
- 切なく甘く、そして極甘!!
…というポイントをおさえ、しかもその描写がもうたまらんです!!
明日への期待・作者様のおかげで1日を乗り越えられます(感謝)
今月、溶けまくり(笑)
- 87 名前:63 投稿日:2003年03月26日(水)01時16分02秒
- 更新、お疲れ様でした。
くはぁ〜、石川さんの教室でのドキドキがこちらにも伝わって来る
ようですw ちょっぴり胸が痛みます・・
吉澤さんの話したいこと・・
何やらひとつのヤマがありそうな予感がしてます。
今最も熱いグループ、来ましたね。
村さんで来るとはヤラレましたw
来るべき極度の甘さに備えて、クネクネする練習をしておきますw
メープルシロップがドバドバ出るので、とりあえず大きめのバケツも
まとめ買いしておきますw
甘さ全開のこの先を楽しみにしております。
- 88 名前:チップ 投稿日:2003年03月26日(水)01時47分33秒
- もうすでにピンクのバケツを用意してますがなにか?w
あっちもこっちもずっと読んでました、これからも砂糖を吐き続けるべく
続き楽しみにしてます。
- 89 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時23分17秒
- >ラヴ梨〜さま
>明日への期待・作者様のおかげで1日を乗り越えられます(感謝)
いやいや。それはこちらのセリフでございます♪
読んでいただける方がいる限り、作者もがんばって
毎日を過ごせますから(本当に)
ありがとうございます!
>63さま
うーむむむむ・・・。
なんで63さまはそんなに読みが深いのですか!?
作者、冷や汗かきっぱなしです(汗)
しかし、それは嬉しいという意味で♪
応援ありがとうございます♪♪♪
>チップさま
ピンクのバケツ購入ありがとうございます。
梨華ちゃんに代わりまして、厚く御礼いたします(笑)
これからもどうぞ、よろしくお願いします!!!
(向こうも読んでいただいていたみたいで、感謝♪)
それでは。続き、少し痛めですが(w読んでください。
- 90 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時24分42秒
電車がホームに滑り込む。
そしてまた今日も、あなたの姿を探す私。
肩にかかるくらいで切りそろえられているストレートの髪。
後姿をみるだけでも、ひとみちゃんだと判別できる。
よかった・・・。今日は会えるんだ・・・。
そう思っただけでドキドキと高鳴っていく胸。
だけど、昨日言っていた『話したいこと』が、少しの不安を煽り立てていく。
「降りるよー。」
「うん。」
- 91 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時25分33秒
- 通学路はうちの学校の生徒たちでひしめきあっていて、
ほんの数メートル先にいる彼女たちには追いつけそうにない。
背の高い2人の頭だけがなんとなく見えるけれど、
向こうはこちらに気付くことはないのだ。
「・・・ってさ。面白かったよね。」
「え?何?」
「もう、聞いてたの?だから、昨日のテレビの話!」
ひとみちゃんのことが気になっていたから、隣を歩く雅恵ちゃんの言葉
すら耳に入っていなかった。
「ごめんね。うん。私も見たよ。」
「んっとに。最近梨華ちゃんぼーっとしすぎ。」
「そう・・・かな・・・。」
「うん。昨日の帰りだって、なんか上の空っぽかったし。
ねぇ、何か悩みでもあるの?」
瞬間、先を歩いているひとみちゃを見てしまったけど、
彼女にそれを話すのは、なんとなく気が引けてしまった。
- 92 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時26分43秒
- 「何もないよ。」
友達に嘘をつくのは心が痛んだけど、きっと私の気持ちを正確には理解して
もらえないと思ったから。
と言うよりも、自分の中にあるこの気持ちを、自分ですら正確に捉えることが
できないでいたという方が正しいけど・・・。
だけど、雅恵ちゃんが言ったその言葉に、私は愕然とすることになってしまった。
「ほんとにー?ねぇ、まさかとは思うけど・・・梨華ちゃん恋してるんじゃない?」
ズキンと胸を突き刺された思いがした。
・・・・恋?
この気持ちが・・・・・?
「そっ、そんなんじゃないって。」
「あー。何動揺してるの?怪しいなぁー。」
雅恵ちゃんは急に色めきたって、私の肩を押した。
「ほんと、そんなんじゃないから。」
「それじゃ聞くけど、胸が痛んだり、嬉しくなったり、そんな気持ち感じない?
例えば、その人のことばっかり目で追ってみたり、頭の中その人のことで
いっぱいになったり。」
- 93 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時27分47秒
- ごくりとつばを飲み込んでしまった。
かいてもいない汗が背中に流れていくような感覚。
「・・・・もしそうだったとしたら?」
雅恵ちゃんは目を見開いたまま私のことをみていた。
「梨華ちゃん。それが恋ってものだよ。」
これが・・・恋・・・なの・・・・?
彼女の言うことは全てあてはまっていた。
私はずっとひとみちゃんのことばかりを考えている。
嬉しくなったり、不安になったり・・・。
もしそうだとしたら、私はひとみちゃんに恋をしている訳で・・・・。
でも相手は私と同じ女の子。そんなことが本当にあるんだろうか。
「うっそー。よかったじゃん。初恋、おめでと!」
私は何も答えられないでいた。
ひとみちゃんに感じるこの気持ちが、私を激しく動揺させていたから。
恋・・・・。この気持ちが・・・・。
学校に着くまで、色々質問攻めにあってしまったけど、
結局曖昧なままで話を終わらせた。
- 94 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時29分05秒
「おはよう。」
先に教室に入ったのは彼女。
後からついていくように、その扉をくぐる。
「おはよう。」
真っ先にぶつかった視線の先にいたのは、ひとみちゃんだった。
教科書をカバンから出していた手を止めると、私のところへ近づいてきた。
「おはよ。」
「おはよう。」
瞬時に血が沸き立ってきた。
苦しくなる鼓動に『恋』の一文字が頭を占める。
「昨日、ごめんね。休むつもりはなかったんだけど。」
「ううん。病院混んでたんでしょ?」
「あぁ・・・まぁ、そんなとこ。」
ほんの少し、彼女の笑顔がぎこちなくなった。
だから私はまた不安になる。
- 95 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時30分00秒
- 「本当に、大丈夫だったの?」
「うん。全然へーき。本当のこと言うとね、ズル休み。」
てへてへと笑っていたけれど、なんとなく違和感を感じてしまう。
やっぱり私には本当のことは教えてくれないのかもしれない。
「ほーらね、やっぱり言った通りでしょ?」
ひとみちゃんの後ろから現れた村田さんが、彼女の肩に手をかけて
笑っていた。
「んだよ、めぐみそんなこと言ってたのかよ。」
「だってさ、いつもひとみ言ってんじゃん。毎日が日曜だったらいいのになーって。」
「そんなの普通誰だって思うじゃん。ねぇ、梨華ちゃんもそう思うよね?」
仲よさげにしている2人を、私はどんな顔で見ていたのだろう。
目の前にひとみちゃんはいるのに、またぽつんと取り残された思いがしていた。
- 96 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時30分49秒
- 「なにー?何の話?」
そこへ雅恵ちゃんがやってきた。
「毎日が日曜だったらいいのにって話。」
村田さんが答えると、雅恵ちゃんはにやりとした表情で私の肩を組んだ。
「梨華ちゃんは嬉しくないよね。なんたって・・・・」
瞬間的に私は彼女の口をふさいだ。
結局誰とは言わなかったものの、この学校にその相手がいるということは
話していたから。
「なんでもないの。雅恵ちゃん、ほら席いこ?」
「なによー。気になるじゃん。ねぇ、ひとみ?」
ひとみちゃんは黙ったままで私のことを見ていた。
それは今まで見たことのないような冷たい瞳で。
なんでそんな目で私を見るの・・・。
- 97 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時31分40秒
- 「あっ。先生きたよ。」
村田さんのその声で、私たちの話は終わった。
「やっば。梨華ちゃんに宿題写させてもらおうと思ってたのに。」
雅恵ちゃんはあわてて席に戻っていく。
だけどいつまでもひとみちゃんはその表情を崩すことはなかった。
「ねぇねぇ、一体誰なのよ?」
歯磨きをしながら鏡越しに私を覗き見る雅恵ちゃん。
「だから、ほんとそんなんじゃないんだって。」
「でもいるんでしょ?気になる人が。」
ガラガラと口の中をゆすいでそれをごまかす。
「あぁ。なんかこっちまでワクワクするよー。」
「ワクワクしなくていいの。」
- 98 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時32分29秒
- 「でも遅いよね、初恋が高校生になってからだなんて。
あたしなんて小学校の頃にはいたけどね、知ってると思うけど。」
「クスっ。先生に恋するなんて、ほんとおませさんだったよね、雅恵ちゃん。」
「ほんと。あぁ。会いたいなぁ。先生今頃何してるんだろ?」
「そりゃ生徒に勉強教えてるんでしょ?」
「なんだよー。そんなこと言ってるんじゃないの。」
「うふふ。」
「はぁーっ。いいな、梨華ちゃんは。わたしもワクワクしたーいっ!
で?梨華ちゃんの心を奪った人って誰なの?」
話が堂々巡りをしそうな感じだったから、私は先にトイレを出た。
だけど、その扉の向こうにいた人の存在に、足が止まってしまった。
いつからそこにいたんだろう・・・。
もしかしたら今の話を聞かれてしまったかもしれない。
- 99 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時33分17秒
- 「あっ。吉澤さんも歯磨き?やっぱ歯は磨かないとね〜♪」
そう言うと、私を追い越して先に出て行ってしまった。
今、ここにいるのはひとみちゃんと私だけ。
気まずい空気が辺りを包む。
何か話しかけなきゃいけない。そう思ってはいても、
とっさに適当な話題なんてみつからない。
だから私はまるで彼女から逃げるようにその場を立ち去ろうとした。
「待ってよ。」
しかし、それは阻まれてしまった。掴まれた手首にぎゅっと彼女の握力がかかる。
「・・・なに?」
「別に逃げなくてもいいじゃん。」
「逃げてなんて・・・ない。」
けれど本当は逃げ出したかった。緊張感で体がこわばっていく。
- 100 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時34分25秒
- 「昨日は寂しいって言ってくれたのに。」
カーッと体の中に湧き上がってきた恥ずかしさ。
なんで今、そんなことを言うのだろう・・・。
「だって・・・昨日は・・・」
「あたしがいなくて寂しいって思ってくれてたんじゃないの?
それとも・・・他の誰かがいなかったから?」
やっぱりさっきの話は聞かれていたのだ。
動揺の波が押し寄せてくる。
「それは・・・」
混乱していた。
今ひとみちゃんに話すべきか否か。
私の気持ちを知ったら、彼女はどんな態度で私を見るのだろう。
友達以上の思い。
それを恋と呼ぶものだと気付いてしまった気持ちに。
- 101 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時35分20秒
- 「大谷さんには言えても、あたしには言ってくれないんだ。」
萎縮していく心と体。
もうどうしていいのかわからなくなってしまっていた。
その時、生暖かいものが頬を伝った。
「・・・・・ごめん。泣かせるつもりなんてなかったんだ。
その・・・・本当にごめん。」
それでやっと気がついた。泣いてしまっていたのだという事に。
「・・・違うよ・・・ひとみちゃん・・・・」
「ごめんね。あたし、そんなつもりじゃなかったのに。バカだ・・・。」
がやがやとこちらに近づいてくる話し声が聞こえてきたから、
そこで話を中断させた。
「ゆっくり話そう。放課後。・・・いいかな?」
「・・・うん。わかった。」
やっと離してくれた手首には、何かを伝えたかった思いがくっきりと刻まれていた。
- 102 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月26日(水)23時36分20秒
- >作者
・・・すみません。
非常に痛いところで話が切れてしまうのは
申し訳ないのですが・・・(汗)
とりあえず今日はここまでです!
それでは、また。ありがとうございました(逃げっ)
- 103 名前:サイレンス 投稿日:2003年03月27日(木)12時43分41秒
- 『繋いだ気持ち』も読ませていただきました。
いやー本当にいしよしっていいですよね?
いい話読ませて頂いてありがとうございます。
こっちの話もおもしろいです。
ぜひ続きも読ませてください。
- 104 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月27日(木)17時05分16秒
- イイ(*^。^*)
- 105 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時12分26秒
- >サイレンスさま
おぉ!ようこそおいでくださいました!
おひさしゅーございます♪
今回も甘ですが、どうぞ最後まで読んでやってください。
よろしくお願いします!
>名無しさんさま
ストレートな言葉、ありがとうございます♪
なんだか気恥ずかしい思いもしますが、
どうぞまったりと読んでやってください。
それでは、今日はきっと甘です(笑)
どうぞ。
- 106 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時14分18秒
「何から・・・話せばいいかな・・・。」
うつむいたままでひとみちゃんがそう言った。
さらりと頬に落ちている髪が彼女の表情を隠している。
「昨日、話したいって言ってたこと、聞かせて?」
「あぁ・・・うん。」
ゆっくりとあげた顔に少しの不安がみえたから、
私は目をそらさないで、その瞳を見つめていた。
「昨日、病院行ったのは知ってるよね。」
「うん。」
「検査の結果は相変わらず。悪くなってはいなかったけど、良くもなっていなかった。」
「・・・そう・・・・。」
「それでね・・・膝に抱えている爆弾、どうやったら治す事ができるのか聞いてみたんだ。」
私はただその瞳をみつめていた。
切なくなるほど、真剣に話すその瞳を。
- 107 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時15分16秒
- 「やっぱり手術しないと治らないんだってさ。それも完治する確率は半分。」
「半分・・・。」
「ある程度は予想していたけど、手術しても治らないかもしれないって思うと、
落ち込んじゃってさ・・・。」
彼女は小さくため息をもらした。
「それでモヤモヤして。とても学校なんて行く気にはなれなかったんだ。」
「そうだったんだ・・・。ごめんね、今まで膝のこと気付いてあげられなくて。」
「梨華ちゃんが謝ることなんてないよ。あたしが黙っていたのがいけないんだし。
それに・・・・。」
「なに?」
「心配かけたくなかったんだ。・・・梨華ちゃんに。」
ズキンと胸をうつその言葉。
そんな気遣いをしてくれていたなんて・・・。
嬉しい反面、だけど私はどこかでまだ嫉妬していた。
ひとみちゃんのことを私なんかよりずっと知っている村田さんに。
- 108 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時16分12秒
- 「それでもやっぱり・・・話して欲しかったよ。」
喉の奥のほうがぐっと苦しくなるような苦味が迫る。
「膝のこと教えてくれたの村田さんだった。
携帯の番号のことも・・・。寂しかったよ。何も私には直接教えてくれないんだって。」
「梨華ちゃん・・・」
「信用ないのかな・・・なんて。悲しくなっちゃった。」
「そんなんじゃないよ。ほんと、そんなつもりじゃなくって・・・。」
そのまま視線を下に落とすと、またうつむいてしまった彼女。
そして、しばし沈黙が流れた。
だけど今日のひとみちゃんは、グラウンドに視線を移すことはなく、
ただひたすら何かに耐えるように唇を噛み締めていた。
「昨日、ね・・・」
その沈黙を破ったのは彼女がもらした一言だった。
- 109 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時17分02秒
- 「昨日・・・?」
「・・・うん。メールくれたでしょ?」
「あ・・・うん。」
「すごくね、嬉しかったんだ。まさかメールもらえるなんて思ってなかったから。
落ち込んでた気持ちが、ぱっと嘘みたいに消えていって。」
「随分悩んだよ。送ろうかどうしようか。でもよかった。喜んでもらえてたなんて。」
ひとみちゃんの口元が少し緩んだから、私も少しほっとした。
「それで・・・声聞きたくなっちゃってさ。すごく話したくなって。
あの時寂しいって思ってたのは、あたしの方だったんだ。
そしたら、なんかわからないけど、もしかしたら梨華ちゃんも寂しいって
思ってくれてるんじゃないかなって・・・そんな気がして・・・」
「・・・気持ち、届いたのかな。私もひとみちゃんの声を聞きたいって
思ってたの。・・・寂しいよって・・・。」
- 110 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時18分02秒
- 「・・・本当に?」
「うん。本当だよ。」
「・・・他の・・・他の誰かのことじゃなくって?」
やっとあげてくれた瞳には、いつもの涼やかなそれとは違う、
不安げな光が映っていた。
本当の気持ち、伝えたい。
だけどやっぱり言葉にはできなかった。
震える唇をぎゅっと結んで、黙り込んでしまった私。
失いたくなかった。
きっと、ひとみちゃんが求めているのは、
村田さんとは違った意味での『友人』で。
寂しさを分かち合える『友達』を求めているだけだと思ったから。
私の心にあるその気持ちとは意識の差がきっとある。
だから全てを話してしまうことができなかった。失いたく・・・ない・・・。
- 111 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時19分00秒
- 「・・・そうだよね。やっぱりいたんだ。梨華ちゃんには。」
「え・・・なに・・・」
「好きな人。大谷さんと話してたじゃん。気になる人がいるって。
だから寂しかったんでしょ。あたしがいなかったからじゃなくって、
その人がいなかったから。」
「ちょっと、待って・・・」
「いいんだ。もう。これで全部解決したから。」
「違うよ・・・」
「何が違うの?寂しかったのはその人のせいなんでしょ!」
キリキリと胸をしめつける冷たい響き。
これ以上は、もう無理だと思った。
「・・・そうよ。寂しいのは全部その人のせい。」
「・・・やっと認めるんだ。好きな人、いるんじゃんやっぱり。」
「いるよ。好きで好きでたまらない人が。」
「それならあたしとここにいたって仕方ないじゃん。
本当は今すぐにでも会いに行きたいんでしょ。」
- 112 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時20分21秒
- 異常なほど取り乱した姿。
だから私にはわかってしまったのだ。
ひとみちゃんが求める友達は、寂しさを分かち合うための『友達』ではないということに。
「会いにいくよ。今、すぐ。」
「・・・・・あぁ。行けばいいよ。」
イスを下げてゆっくりと立ち上がる。
ひとみちゃんはうつむいたままで拳を握り締めていた。
そして私はすぐ目の前にいる彼女の隣にしゃがみこんだ。
「会いにきたよ。ひとみちゃんに。」
「・・・ふざけないでよ。からかってんの。」
「ねぇ、お願い。私の目を見て・・・。」
それでもまだひとみちゃんは、怪訝な顔つきでこちらを見ていた。
「ひとみちゃんが、好き。」
「・・・うそ・・・」
「雅恵ちゃんに教えてもらったの。この気持ちが恋なんだって。」
「・・・あたしの・・・こと・・・?」
「そうよ。私が好きなのは、ひとみちゃん。あなただから。」
- 113 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時21分25秒
- 座っていた体を横に向けると、抱きあげられて膝の上に乗せられてしまった。
「嘘じゃないよね?本当にあたしのこと・・・」
「好きよ。ひとみちゃんが、好き。」
「・・・ふぅ・・・。よかった・・・。」
ウエストに巻きつけたれた両腕が私を強く抱きしめる。
「ひとみちゃんは?私のこと、好き?」
「・・・わかってるんでしょ?言わなくても。」
「わかんない。ちゃんと聞かせて欲しいな。」
「・・・・好き。」
「・・・うん。」
「好きだよ。梨華ちゃん。」
「ありがと・・・。嬉しい。」
ほんの先日まで上手く話すことすらできなかった私だったのに。
今はこんなにも饒舌に話すことができる。
それはきっと、誰よりも本当は話したい人だったから。
- 114 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時22分46秒
- 「・・・・!ひとみちゃん、膝!」
あまりにも嬉しすぎて、すっかり膝のことを忘れてしまっていた。
しかし、青ざめていく私にかまうことなくそのまま抱きしめている。
「いいの。決めたから。」
「何言ってるの。離して。膝悪くなっちゃうよ。」
「いいって言ってるでしょ。全部治してもらう。手術、受けるよ。」
「えっ・・・」
「治らないかもしれないけど、それでも可能性は捨てたくないから。」
しっかりと組んでいた指をそれでも無理に離して、私は立ち上がった。
「きっと、大丈夫。治るよ、絶対。」
「やっぱり諦めきれないもんね。諦めたらそこで終わりだし。
バレー、もう一度やりたいから。」
「何もできないかもしれないけど、応援してるね。」
「側にいてくれるだけでいいよ。それだけであたしは勇気をもらえるから。」
優しい笑顔が胸に染みていく。
「どっちが痛むの?膝。」
「ん?・・・あぁ。こっち。」
今まで座ってしまっていた左膝を指で指した。
「ごめんね、痛い思いさせて・・・。」
そのままひざまずくと、そっとその上に手を当てた。
- 115 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時23分36秒
- 「不思議だね・・・。なんだか痛みが取れていくよう。」
「・・・うん。手当ての語源はこれだって聞いたことあるから。」
「それじゃ治してもらおうかな。梨華先生に。」
いたずらっぽい瞳をしながら私の頬に手を添えた。
「クスっ。後悔するかもよ?」
「なんで?優しくいたわってくれるんじゃないの?」
「優しくって?」
「例えばこんな風に。」
ひとみちゃんがの体が不意に動いたから、窓から差し込んでくる日の光が
ちょうど私に降り注いで、眩しくて目を閉じてしまった。
だけどそのまましばらく目を閉じていたのは、初めてのキスを唇に感じていたから。
- 116 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)00時26分20秒
- >作者
・・・いかがでしたか?
まだ甘さが足りないと思いますよね?(笑)
大丈夫です。
これからが勝負ですから!(w
ということで、まだ終わってませんので、
もうしばらく応援お願いします。(ぺこり)
今回もショートストーリーになることでしょう。
あと何回かわかりませんが、そろそろ終盤です(w
それでは今日もありがとうございました。
甘、ご期待ください。
- 117 名前:チップ 投稿日:2003年03月28日(金)01時40分40秒
- 言われる前から尼きた・・・素で間違えたし(^▽^;)
気をとりなおして、甘、期待してます。
- 118 名前:87 投稿日:2003年03月28日(金)15時02分17秒
- 更新、お疲れ様です。
いやぁ〜、始まりましたね、いしよしワールドが・・
特に最後の4行がイイですねぇ。これぞいしよし!
これからが甘さの勝負ですか?
あのぉ〜、既に自分には十分甘いのですがw
身体がクネクネの「クネ」くらいまで来てます。
これ以上の甘さを期待してよろしいんでしょうか!?
そんなのうれし過ぎる!
ということで、次回更新を期待しております。
- 119 名前:ROM読者 投稿日:2003年03月28日(金)17時09分00秒
- 隊長!またROM読者が倒れてます。
うわごとで「梨華ちゃん良かった・・」と言ってます。
いしよしからは隔離しておけと言っただろう!
- 120 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時16分47秒
- >チップさま
あはは。面白い方ですね♪
もちろん期待してもらっていいですよ!
(と、おおぼら吹いてみたり(w )
いつもありがとうございます♪
>87さま
>身体がクネクネの「クネ」くらいまで来てます。
おしいっ!あともう少しでしたね?(w
今回のは「クネク」くらいまでいってくれるのでしょうか?
ちょっぴり期待してまっす♪
>ROM読者さま
楽しい方ですね♪もう、どんどんお邪魔してやってください♪
作者的にも「梨華ちゃん良かった・・」って感じです。
いしよし好きの思いは同じですよね?ね?(笑)
それでは、今回は甘いと思います。
このまま加速度つけて全開甘でつっぱしるそー!
援護射撃お願いいたします。
- 121 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時19分19秒
「何か飲みたいものとかある?」
花を花瓶に移し終えると、簡易イスに腰掛けた。
消毒液のにおいがするこの場所は、6人部屋の病室。
そう。手術は無事、成功したのだ。
「別にないけど。そんなに気を遣わないで。」
ひとみちゃんは苦笑気味に私を見ている。
ほんの少し伸びた前髪が、せっかくの綺麗な瞳を隠しているのが残念だけど。
「何でも言ってね?遠慮しちゃやだよ。」
「はーい。わかりました。」
クスクスと笑いあう声も、少し控えめに。
病室にはあと2人患者さんがいるのだ。
- 122 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時20分28秒
- 「明日はまた雅恵ちゃんと村田さんも一緒に来てくれるんだって。」
「部活忙しいのに。いいよ。こないだも来てくれたばっかりだし。」
「無理しちゃって。本当は嬉しいんでしょ?お見舞い来てくれるの。」
「まぁ、嬉しくない訳じゃないけどね。」
ぽりぽりと頭をかいて笑っている。
「そうだ。ちょっとカーテン閉めてくれないかな?」
「ん?うん。わかった。」
隣のベッドとの仕切りとなるそれを閉めると、
すかさず私の手を引いてベッドに座らせた。
「本当はね、梨華ちゃんだけに来て欲しいんだ。」
内緒話をするようにこっそりと耳に打ち明けた彼女。
「あー。2人に言ってやろー。」
「んだよー。喜んでくれると思ったのに。」
本当はとても嬉しかったけど、どうも照れてしまって素直になれない。
だけどそんな私のことも彼女はよく知っていたから、
悔しいけど、本音を吐かされてしまった。
- 123 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時21分28秒
- 「2人でいるの嫌かな?」
「そんなことある訳ないでしょー。」
「クスっ。よかった。ねぇ、本当は梨華ちゃんも2人きりの方がいいんでしょ?」
「私は、別に・・・」
「別に?4人でいる方がいい?」
「・・・もぅ。知ってるくせに。」
こんな恥ずかしい思いをするんだったら、最初から強がりなんて言うんじゃなかった。
ひとみちゃんの方がいつでも一枚うわてなのだから。
「最初から素直に認めてたらよかったのに。」
「ひとみちゃんて結構イジワルよね。」
「あれ?今頃気付いたの?」
「ほんと、今頃気付いても遅いよね。」
「後悔してる?」
「うん。かなり。」
そんなことを言いながら、それでも2人とも笑顔でいられるのは、
じゃれあっているという事を互いに認識しているから。
- 124 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時22分26秒
- 「それじゃ、もっと後悔させてやろう。」
イジワルなひとみちゃんは、イジワルじゃないステキなキスをしてくれた。
「・・・イジワルね。」
「だってさ、好きなんだもん梨華ちゃんのこと。」
「そんなことされると本当に後悔しちゃうじゃない。」
「・・・えっ・・」
ひとみちゃんがわずかに眉をひそめたから、
私はその頬をそっと両手にはさんで言った。
「もっと前から知り合えてたらよかったのにって。」
「・・・梨華ちゃんの方がもっとイジワルだね。」
「今頃気付いた?」
「うん。本気で心配したよ。」
「ふふ。これでおあいこね。」
柔らかく笑った笑顔がとても優しく見える。
- 125 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時23分29秒
- 「ねぇ、もっと近くで見てもいい?」
「ん?何を?」
「ひとみちゃんの瞳。」
「クス。いいよ。」
ほんのりと上気した頬がピンクに染まってとてもかわいく見える。
両手で彼女の前髪をあげると、至近距離でその瞳をみつめた。
「綺麗ね・・・。とてもステキな瞳。」
「やめてよ。照れるじゃん。」
「私、ずっとこの瞳にあこがれてたのよ?」
「ぐっ・・・なんか、恥ずかしいな・・・」
「はっきりとした大きな瞳。本当はずっと見ていたかったんだけど、
見つめ返される度にドキドキして・・・。でも今はこんなにも近くに見ることができるのね。」
- 126 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時24分41秒
- 「んー。てことは、今はドキドキしてないの?」
「ドキドキしてるよ。ほら。」
手をとって私の胸に当てた。
「ね?ドキドキしてるでしょ?」
「・・・・あの・・・さ・・・。」
「え?」
「わかってる?自分のしてること。」
ゆっくりと視線をおろして胸元をみると、
ブレザーの中に滑り込んでいるひとみちゃんの手が見えた。
「あっ、そんなつもりじゃ・・・。ただ、私は・・・」
「梨華ちゃんて、結構こういうとこ鈍感だよね。それとも・・・確信犯なのかな?」
「もーっ!違うって!」
咳払いがカーテン越しにひとつ聞こえた。
「シーッ。病院では静かにしようね。」
声を押し殺して笑っている顔が妙に憎たらしく思ったけど、
ここは素直に謝った。
「・・・はぁい。」
ちょっぴり拗ねたように唇を尖らせた。
- 127 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時25分44秒
- 「ほら。また。」
「なっ、なに!?」
ひとみちゃんの唇が一瞬だけ私の唇に触れた。
「やっぱり確信犯だ。キスしたいって思うほどかわいかったよ。
今の梨華ちゃん。」
「・・・あのー。どうせなら思うだけにしてくれない?いきなりだったからビックリしたよ。」
「いきなりじゃなかったらいい訳?」
「いや、そういう事でもなくって・・・」
「難しいな、梨華ちゃんは。」
「だってぇー。」
「クス。そういうとこもかわいいけどね。」
おかしげに笑っていたけど、その瞳をキリっとこちらに向けて
私の肩に触れた。
「キスしたい。」
「・・・あ・・・」
「いいかな?」
「・・・いい・・・よ。」
- 128 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時27分00秒
- 今度はいきなりなんかじゃなく、たっぷりと瞳を見つめあってから
徐々に唇を近づけていった2人。
目を閉じて、その柔らかい唇の感触をしっかりと胸に刻み込む。
そして優しい抱擁をしてくれた。
「明日も来てね。」
「うん。必ず来るよ。」
「一人で?」
「クスクス。ひとみちゃんが望むなら。」
「うん。梨華ちゃんだけがいい。」
「私も。2人にはうまいこと言っておくね。」
いたずらっぽく笑いあう私たち。
2人だけの甘い約束が胸を溶かしていった。
- 129 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月28日(金)22時29分14秒
- >作者
ど、どうでしょ・・・?
全然爽やか甘じゃないじゃーん!
って怒らないでくださいね?(汗)
だって2人にはたーっぷり甘な関係でいてもらいたい
ですから(w
それでは今日はこのあたりで。
いつもみなさまありがとうございます。
もうしばしお付き合いしていただけると、
作者、嬉しいです。(ぺこり)
- 130 名前:118 投稿日:2003年03月29日(土)00時44分40秒
- くはぁ〜!ヤラレタ・・(ドサリと倒れる音)
今、バケツに大量のメープルシロップが流れ落ちて行きます・・
クネクネしてしまいましたw
病室の仕切りカーテンの中でイチャつくいしよし・・
見つめ合ういしよし・・
どこであろうと二人の世界を作ってしまうんですねw
現在、作者さんの後方にて待機中・・
目標を見つけ次第、後方より援護します!
パンパン!
またひとり、新しい読者を砂糖弾で打ち落としましたw
- 131 名前:ROM読者 投稿日:2003年03月29日(土)01時48分54秒
- くぅ〜っ、この絶妙な距離感がたまらん!(隊長
あっ隊長、勝手に人のブックマーク開かないで〜〜!
- 132 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年03月30日(日)00時51分39秒
- 病室での甘々…
これを読んでるときのデレデレ顔はやばいです(笑)
これ以上のいしよしパワーに果たして耐えられるでしょうか
- 133 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時17分06秒
- >118さま
援護射撃ありがとうございます♪
クネクネしていただけて、作者幸せです(w
さてさて、そろそろ作者のメープルシロップも
底をつきかけています(笑)
また次回作にむけて、たっぷりと甘パワー蓄えて
おきますので、また読んでやってください♪
>ROM読者さま
隊長もいしよし好きだったんですね?(w
ちょっぴり嬉しかったり♪
隊長ともども応援よろしくお願いいたします♪
>ラヴ梨〜さま
いつも暖かい応援の言葉、ありがとうございます。
今回のは、そんなに甘くないかもしれませんが、
どうぞ読んでやってください。
それでは、どうぞ。
- 134 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時19分26秒
- 今日は待ちに待ったひとみちゃんの退院日。
私は朝からずーっとそわそわしている。
1時間目の授業は始まったばかりだけど、
さっきから何度も時計を見てはため息をついていた。
早く学校終わらないかな・・・。
「今ので6回目。」
ヒソヒソと声をかけてきたのは雅恵ちゃん。
2人の仲を知っているのは、彼女と村田さんだけ。
そのことを話した時には、すごく驚かれたけど、
今ではしっかりと応援してくれている。
「えっ?なにが?」
「ため息の数。」
にやりと笑った顔で私を見ている。
「そんなにしてた?」
「うん。今日だったよね、確か。早く会いたいなーって顔に書いてあるよ?」
「もぅ。からかわないでよぉ。」
恥ずかしくなって視線を机に落とした。
- 135 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時21分46秒
- 「結局そんなにもお見舞い行けなかったからなぁ。悪いことしたって思ってるんだよね。」
「忙しいのに来てもらうの悪いって言ってたから、気にすることないよ。」
「とか何とか言っちゃって。本当はわたしたちが行ってもお邪魔虫だったんでしょ?」
またにやりと彼女は笑った。
「そんなことないってー。」
「クスクス。隠さなくったっていいよ。めぐとも言ってたんだけどさ、
2人って本当にお似合いのカップルだよね?」
いつの間にか雅恵ちゃんは、村田さんのことを『めぐ』と呼ぶようになっていた。
どうやら今回のことで一緒に行動する機会が増えた為に、
急激に仲がよくなったらしいけど、そんな2人になんとなく
いい予感が感じられる今日この頃。
「ありがと。ねぇ、もしかしてだけどさ、雅恵ちゃんも気になる人がいるんじゃない?」
「わたし?わたしは・・・別に・・・」
「隠さなくったっていいじゃない。ね?教えてよ?」
「まぁ・・・その・・・いない訳でもない・・・かな?」
- 136 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時23分05秒
- 「クスっ。やっぱりね。」
「そっ、そんなことより。ほら、ちゃんと授業聞こうよ。吉澤さんにノート貸して
あげなきゃいけないんでしょ?」
あわてて前を向いた彼女の頬は、それとわかるくらい赤く染まっていた。
私と雅恵ちゃんと村田さん。ひとみちゃんが入院した頃から、
お昼はこの3人で食べていた。
「やっと退院だね。毎日お見舞いご苦労さまでした。」
「ううん。こっちもいい気晴らしになったし。」
「苦労じゃないよね、梨華ちゃんにしてみたら。」
「またぁ。からかわないでよー。」
「マサオはすぐそうやって石川さんをからかうんだね。」
「・・・だから。マサオって呼ばないでよ。ひどいと思わない?梨華ちゃん。」
「あはは。でもなんか似合ってるよね。マサオって。」
「ひどい!梨華ちゃんまで。もうめぐとは口きいてあげない。」
「何怒ってるの?マサオくーん。」
机の上に置いてある携帯が震えたのは、
ちょうどそんな楽しいおしゃべりをしていた途中。
- 137 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時25分28秒
- 「おっ。噂をしてたら。吉澤さんでしょ?」
表示名を確認すると、確かにそれはひとみちゃんのメールだった。
「うん。ごめんね、ちょっと見てみるね。」
「あぁ。やっぱり私より石川さんの方にメール入れたんだ。ひとみ。」
「当たり前じゃん。妬かないの。」
「妬いてなんてないよー。」
「なんなら吉澤さんの代わりにわたしが入れてあげようか?メール。」
「いらないよ。マサオのメールなんて。」
「そう言われると入れたくなるんだよねー。」
2人のにぎやかな話し声が頭の上を通過していく。
「退院したって?」
「うん。もう家に着いたんだって。」
「へぇ。でもこれでもうお見舞いも行けなくなると思うと、ちょっと寂しくなるよね?」
「村田さんまで私のことからかうの?」
「えへへっ。」
「吉澤さん明日から学校これるのかな?」
「んー。それは何も書いてないけど。また聞いてみるね。」
- 138 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時26分33秒
- 「楽しみだね。4人でランチできると思うと。それとも石川さんは
ひとみと2人っきりの方がいいのかな?」
「やっぱりあたしたちってお邪魔虫かもしれないよね。」
「・・・2人とも私のことからかってそんなに楽しい?」
「「楽しいっ!」」
その声はやけにぴったりと息があっていて、
思わず3人とも吹き出してしまっていた。
「気をつけていくんだよ。あせって転ばないように。」
にやりと雅恵ちゃんが笑った。
「よろしく言っといてね。また夜にでも携帯入れるつもりだけど。」
村田さんはそう言うと、にっこりと微笑んだ。
「うん。それじゃ行ってきます。また明日ね。」
「はーい。」
「バイバイっ!」
2人はそのまま仲良く部活へと向かっていった。
そして私もまた、ひとみちゃんの家へと急ぐ。
- 139 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時27分33秒
- いつもとは反対側の電車に乗り込むと、
今までみたことのない景色が目の中に映っていく。
気持ちはもう既に先回りしてひとみちゃんの元へと飛んでいた。
一秒でもはやく会いたい気持ちをのせて。
「・・・ここだ。」
村田さんに書いてもらった地図を広げてたどり着いた家。
チャイムを鳴らしてしばし待つ。
「はい。」
「あの。石川ですけど。」
「あ、梨華ちゃん?ちょっと待ってね、今開けるから。」
だけどしばらく待ってもなかなかドアが開く気配はない。
おかしいな?と思っていたところ、ようやくドアが開いた。
「ごめんね。遅くなっちゃって。」
出てきたのはひとみちゃん本人だった。
その腕にはしっかりと松葉杖が握られている。
- 140 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時28分52秒
- 「あっ・・・大丈夫?」
「うん。まだこれ慣れないんだよね。」
あわてて駆け寄って、彼女の腕を肩にかけた。
「てっきりお母さんが出てきてくれるものだと思ってたから。
ごめんね。大変だったでしょ。」
「そうなんだよね。うちの母親さぁ、退院の手続きしたらすぐに
会社行っちゃって。どうしても今休みが取れないらしいんだ。」
「そうなんだ・・・。でも、よかった。」
「ん?もしかして緊張してたとか?」
「うん。それもあるけど・・・。ひとみちゃんとまた2人っきりでいられて。」
「あたしも。」
頬にキスをしてくれたのは嬉しいけど、そのせいで体がぐらりと揺れた。
「危ないよ。ほら、先に座ろう?」
「あはは。ほんとだ。」
ひとみちゃんの部屋に行ってベッドに座らせた。
- 141 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時29分53秒
- 「はぁーっ。ありがとね。やっと落ち着いた。」
「慣れるまで大変よね。私にできることがあったら何でも言ってね。」
「何でも?本当に?」
にやりと笑った顔が妙に心にひっかかる。
「・・・その。できる範囲でだけど。」
「そっか。それならまずは・・・。」
そう言ったかと思うと、両手を広げたまま私を見ていた。
「何?それ。」
「何って。抱きしめさせてよ。」
「あの・・・面と向かって言われるとすごく恥ずかしいんだけど・・・。」
「えー。何でも言ってって言ったとこじゃん。あれって嘘だったの?」
「嘘じゃないけど・・・。」
「ほら。モジモジしてないで早くきなよ。」
もう待てないという感じで私の腕を引っ張ると、
そのまま本当に抱きしめられてしまった。
- 142 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時30分56秒
- 「ひとみちゃんてこんなに甘えたさんだったかしら?」
ちょっぴりからかうように笑ってみせた。
「うん。ちょー甘えん坊。だから梨華ちゃんにめっちゃ甘えたい。」
「クスクス。面白い人ね。」
「あれ?梨華ちゃんもそうだと思ってたんだけどな。当ってない?」
反撃しようか迷ったけど、今回もまた私の負けは確定的だから、
素直に白旗を揚げた。
「ひとみちゃんだけよ。私が甘えるのは。」
「えへへ。嬉しいね。そう言ってもらえると。」
柔らかい体の感触がとても心地よくて、自然と目を閉じてしまう。
「梨華ちゃん。」
「なぁに?」
「お見舞い、毎日きてくれてありがとね。嬉しかったよ。」
「ううん。ひとみちゃんに毎日会えて、私の方こそ嬉しかった。ありがと。」
体を離したのを合図に、ゆっくりと唇を重ねた2人。
- 143 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時31分51秒
- ひとみちゃんの存在をこの唇に確かに感じる。
それはとても甘くて、溶けてしないそうなほどの心地よさ。
ずーっと、ずーっと途切れることなく重ねている唇が、
自分のものか彼女のものかすらわからなくなっていくような錯覚。
「かわいいね、梨華ちゃんて。」
「からかわないの。」
「からかってなんてないよ。本当にそう思ってるんだ。」
「・・・ありがと。」
気恥ずかしさをごまかすように、私は瞳をそらした。
そしてその視線の先にあったのは、ギプスを巻いた痛々しい足。
「よくがんばったね。偉いよ、ひとみちゃん。」
その上にそっと手をのせると、ざらざらとした感覚が手に伝わった。
- 144 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時32分52秒
- 「手術を受ける気になれたのは梨華ちゃんのお陰だよ。ありがとね。」
「私は何もしてないよ。」
「あはは。わかってないな、やっぱり。」
ひとみちゃんは大きく笑って、その手をベッドについた。
「あたしが手術までしてどうしてバレーやりたかったと思う?」
涼やかな瞳が私を捉えている。
「それはバレーが好きだからでしょ?」
「うん。当り。」
「ははっ。クイズになってないよ?前に教えてくれたじゃない。諦めきれないって。」
「そう。だけど本当の理由はもっと別のところにある。」
「本当の理由?」
「バレーやってるかっこいい姿を梨華ちゃんに見てもらいたかったんだ。」
その瞳があまりにも優しい光を宿していたから、
私は思いっきりひとみちゃんを抱きしめた。
- 145 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時33分42秒
- 「・・・バカ。そんなことの為に痛い思いをしたの?」
「バカとはひどいな。ずっと真剣に考えていたのに。」
「・・・うん。ごめんね。でも私の為に・・・」
「グラウンドでみんなが頑張ってる姿みてたらさ、なんか無性にバレーやりたく
なってきて。イキイキしてたあの頃の自分の姿思い出して。」
「・・・うん。」
「このままずーっとバレーできないままでいてもいいのかなって。
今のあたしに誇れるものってあるのかなって思ってね。」
「ひとみちゃんはステキよ?今のままでも充分過ぎるほど。」
「へへ。ありがと。でもね、やっぱり梨華ちゃんにはあたしの
輝いてる姿見てもらいたかったんだ。」
「そっか。うん。なんか・・・嬉しい。」
ひとみちゃんの思いがキューンと私の胸をうったから、
ぎゅっとその背中を抱きしめた。
- 146 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時35分15秒
- 「それにね。もしあたしがバレーやってたら、梨華ちゃんはあたしの為に
待っててくれるのかな、とか、そんなことも考えちゃってね。」
「待つよ。当たり前じゃん。」
「ありがと。そう言ってくれると思ってた。
でもバレーするとなると、2人で過ごす時間もなくなっちゃうなとか、
ほんと、色々考えちゃったな。」
「待っているのも楽しいものよ。ひとみちゃんにはバレーやって欲しいな。」
「本当?寂しくない?」
「・・・・・・ごめん・・・。やっぱり・・・寂しい。」
「よかった。寂しくないって言われたら落ち込んでるところだったよ。」
クスっと笑うと、私の髪をなでてくれた。
「でも寂しいのは我慢するよ。私もひとみちゃんのかっこいい姿見てみたいもん。」
「ほんとに!?あーっ。迷うなぁ。好きなもの2つもあると。」
「クスクス。二兎追うって手もあるよ?」
「どっちにも逃げられたりして。」
「それはひとみちゃん次第ね。」
顔をあげてひとみちゃんを見つめた。
- 147 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時36分35秒
- 「逃げたりする?」
「さぁ。どうでしょ。」
「それじゃ、逃げられないように・・・」
身も焦がれるようなキスがふりかかる。
じーんと頭の芯が痺れていくような、フワフワとした高揚感。
このままずっと離れたくないと思わせてしまう。
それはまるで魔法をかけられてしまったかのように。
私はそのとろけるような優しいキスに、完全に動きを止められてしまった。
「・・・はぁっ・・・ズルイよ・・・」
「届いた?あたしの気持ち。」
「・・・・・・・うん。」
「これからもずっと一緒にいてくれる?寂しくさせたりしないから。」
「わかった。でも一つだけ約束して欲しいな。」
「なに?」
「私よりバレーのことを好きにならないで。」
私の耳にひとみちゃんの囁きが聞こえる。
それはまたキスとは違った魔力を秘めているように、
充分すぎるほど私を固まらせるものだった。
- 148 名前:修行僧2003 投稿日:2003年03月30日(日)14時38分43秒
- >作者
うむ・・・(悩)
はたしてこんなのでよかったのだろうか。
なんかね、うーむ・・・
ま、そのうち上手く書けるようになることでしょう(笑)
ってことで、下手な小説ですが、
愛情と根性だけで書いております。
どうぞこれからもひとつよろしくお願いいたします。
次の回でラストとなる予定です。
では♪
- 149 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年03月31日(月)00時50分13秒
- 充分すぎるほど甘いですよ〜(溶解)
しかも次で最後だなんて(悲)
やっぱり好きな小説ほど終わりが早く感じられますね
- 150 名前:ROM読者 投稿日:2003年03月31日(月)01時22分23秒
- た・隊長!ROM読者が溶けかかってます!
・・今はそっとしといてやれ。多分次回で・・
- 151 名前:サイレンス 投稿日:2003年03月31日(月)20時38分59秒
- いやーいいですね。すごく甘い。
次回で最後なんですか。
最後どーなるか、ものすごく気になります。
- 152 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時43分09秒
- >ラヴ梨〜さま
またまたありがとうございます(涙)
今回で最後となりますが、どうぞ読んでやってください。
お願いいたします。
>ROM読者さま
溶けてませんか?大丈夫ですか?(w
最後にまた感想書いていただけると嬉しいです♪
>サイレンスさま
えへへ。甘いですか?
なんかそう言ってもらえるのがすごく嬉しいです。
今まで読んでくれてありがとうございました。
さて、今回で最後となりますこの小説。
よければ読んでやってください。
感想ももしいただけるようであれば、
作者かなり嬉しいので、どうぞよろしくお願いいたします。
それではまた。
- 153 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時44分37秒
頬に感じる穏やかな風。
季節は巡り、私たちは2度目の春を迎えていた。
あれからちょうど1年。
今日のこの検査の結果が良好ならば、
ひとみちゃんは晴れてバレー部に入部することができる。
リハビリを兼ねて毎日散歩したこの公園も、
新しい芽吹きが至る所に咲き誇り、春ならではの顔をみせている。
彼女をここで待っている間、私は2人の中を過ぎて行った
愛しい時間を思い出していた。
ギプスが取れてからは、ほぼ毎日のように病院にリハビリを受けに
行った彼女。
早く治したい思いがあったからこそ耐えることができた
苦しいその治療にも、決して弱音を吐くことはなかった。
使うことがなかったことで痩せてしまった筋肉も、その歩行を
困難なものにしていたけど、私はいつでも彼女の側について
この公園を歩いていたのだ。
- 154 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時45分31秒
- デートらしいデートというものには縁がなかったけど、
それでも彼女と過ごせた時間は本当に楽しくて、大切に思える時間だった。
せみ時雨を聞きながら歩いたこの道。
枯葉を踏みしめる音さえ彩を帯びていた。
冬の冷たい北風もひとみちゃんの側にいるだけで、
寒く感じることはなかったほど。
その一瞬、一秒が全て輝いて見えた。
私だけが支えていたんじゃない。
私もまたひとみちゃんに支えられていたから。
全ては今日のこの日を迎えるために。
「はぁ・・・ひとみちゃん遅いなぁ・・・。」
なかなか現れないその姿。待っている時間はとても長く感じられる。
「・・・まさか・・・。」
悪い方へ思考が傾きそうになったから、頭をブンブンと振ってそれを消した。
- 155 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時46分30秒
- 「クスっ。何やってんの?」
その声に振り返ると、ひとみちゃんがちょうど私の後ろに立って笑っていた。
「ひとみちゃん!」
「おまたせ。」
「ううん。それより、どうだったの?教えてよ。」
「・・・・あぁ・・・そのことなんだけど・・・」
彼女の顔からはとたんに元気がなくなり、伏し目がちに視線を落とした。
「まさ・・・か?」
「うん・・・。まだ使えそうにないんだって。」
「あ・・・・。」
今までの頑張りを目にしていただけに、私の気力も一気に下がっていく思いがした。
こんな時はどうやって励ましたらいいのだろう。
- 156 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時47分57秒
- 「その・・・なんて言っていいか・・・。」
「・・・なんてね。問題なかったよ。バレーしてもいいんだってさ。」
「バカーっ!」
ケラケラと笑っている彼女をポカポカと殴って、精一杯の反撃をした。
どれだけ私が心配してたのかわかっているのだろうか。
「ごめんごめん。あまりにも真剣な顔してたからさ。
ついからかいたくなっちゃった。」
「悪い冗談はやめてよ。本当に心配したじゃない。」
「そうだよね。ちょっと悪ふざけがすぎた。・・・マジごめん。」
しゅんとしてしまった彼女。それでももしかしたらって不安は私の中ではまだ消えない。
「ねぇ、本当に治ったの?」
「うん。完治した。」
「嘘ついてないよね?」
「あはは。うん。今度は本当の本当に。」
「・・・・うっ・・・よかった・・・」
ほっとした気持ちが嬉しさを増幅させ、涙の呼び水となった。
「ありがとう。梨華ちゃんには感謝してもしきれないよ。」
「もう・・・ほんとにひとみちゃんは・・・」
流れてくる涙を受け止めるように、胸にしっかりと抱きしめてくれた
彼女の温かさが、私をまた泣かせることになった
- 157 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時49分21秒
- 「心配かけたけど、これからはもう大丈夫だから。」
「・・・っ・・・うん。ほんと、よかったね。おめでとう。」
「ありがとう。・・・ほら。もう泣かないの。せっかくのかわいい顔が台無しだよ?」
「えへへ・・・なに・・・言ってるの・・・」
「梨華ちゃんは泣き虫だね。まぁ、泣かせてるのはいつもあたしだけど。」
「ほーんと。泣かされっぱなしよー。」
「はぁーっ。やっと笑ってくれた。」
やっと落ち着いて涙をぬぐうと、ひとみちゃんの優しい眼差しが
私をみつめていた。
「これ・・・さぁ。つまりその・・・なんだけど・・・。」
がさごそとカバンから取り出したものを手にして、
なにやら恥ずかしそうにしている彼女。
「なに?これ。」
「まぁ、ちょっと開けてみてよ。」
手渡された小さな包みを開くと、中からはシンプルなデザインの指輪が出てきた。
- 158 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時50分44秒
- 「えっ・・・これ・・・」
「いままでさ、迷惑かけたじゃない?だからそのお礼。」
「お礼だなんて、別にいいのに。私が好きで付き合ってたことなんだから。」
「いいからもらってよ。・・・その・・・ね。それ、実はペアリングだから・・・。」
「ペアリング?」
「うん。看病のお礼と、付き合いだして1年のお祝いと、あと色んな気持ちを込めて。」
「・・・嬉しい。ありがとう。」
「いや・・・その・・・喜んでもらえて嬉しいよ。」
照れくさそうにしている姿がなんだかかわいく見える。
「今つけてもいい?」
「もちろん。あっ。それなら。」
ひとみちゃんは私の手から指輪を取ると、左手の薬指にそれをはめてくれた。
「どう?似合ってるかな?」
その手を顔の位置にかざしてみせた。
「うん。似合ってるよ。」
「ねぇ、でもこれってなんか・・・あれっぽいよね?」
「あはは。あたしもそう思った。芸能人がよくやってる婚約指輪披露でしょ?」
「うんっ。えへへ。なんかその気になっちゃう。」
「その時は・・・もっといいの買ってあげるよ。」
- 159 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時52分14秒
- 冗談にしてはやけに真剣な表情。
だから私は真に受けてドキドキとしてしまう。
「そんな時が本当にくるのかな。」
「いつになるかはわかんない。だけどあたしは本気でそう願ってるよ。」
「信じてもいいの?」
「うん。梨華ちゃんが待っていてくれるなら。」
言葉にできないくらい嬉しさが溢れてきたから、私は指輪を見つめながらそっと頷いた。
そうなると、気になるのはひとみちゃんがはめるべくあるはずの指輪。
ちらっとみてみたけど、彼女の指にははめられていない。
「ひとみちゃんのは?」
「あたしのはここ。」
首元を探って出したネックレスにそれはついていた。
「はめないの?」
「あぁ。はめるつもりだけどね。これからバレーやるようになったら
こっちの方がいいかなと思って。一緒にネックレスも買ったんだ。」
「そっか・・・バレー始めるんだったよね・・・。」
バレーをするためにここまで頑張ってきた訳だから、
当たり前のことなんだけど、その日がもうすぐそこまで来てしまったことに
やはり寂しさを感じない訳にはいかなかった。
- 160 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時53分26秒
- 「やっぱり寂しい?」
「ちょっと・・・ね。」
「うん。わかってる。だからこれ買ってみたんだ。」
ネックレスに通した指輪が、夕日を浴びてキラキラと光っている。
「少しでも梨華ちゃんが寂しくないように。
いつでも2人は繋がっているってことわかってもらいたくて。」
「そうだったんだ・・・。ありがとう。ひとみちゃんの気持ち、
大事にするね。」
「よかった。そう言ってくれて。」
「だけど、今だけは・・・。」
胸に垂れ下がっている指輪を握った。
「一緒につけてくれる?」
「もちろん。」
外した指輪をひとみちゃんの指にはめてあげた。
「おそろいだね、ひとみちゃん。」
「あはは。だってその為のペアリングだから。」
「もぉー。ムードないーっ!」
指輪をした手を繋いで、結局いつもの散歩道を歩きだした。
これからまた始まっていく新しい日々に、不安と期待を感じながら。
- 161 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時54分26秒
「はぁーっ・・・・うまくやってるのかな・・・。」
教室には私一人分のため息。
今日からバレー部に入部したひとみちゃんは、
見学をしたいという私をここに残して部活に行ってしまった。
徐々に体を慣らしていかなければいけない為に、
『かっこいい姿』とやらには程遠いということで、
見学は却下されてしまったのだ。
「変なとこ見栄っ張りなんだから。」
ちょっぴり拗ねモードの私は結局それでもここで彼女の帰りを待っている。
帰る方向は全く逆なのに。
待つことが、私をこんなにも幸せな気分にさせてしまうのは、
その存在が私の中でとても大切なものだから。
「だけど・・・寂しいよね・・・。」
指輪に向かって独り言をもらす。
寂しくないように買ってもらったそれを眺めると、
あの日公園で誓ってくれた『約束』が思い出されて、胸を熱くした。
- 162 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時55分55秒
- 「嬉しかったなぁ。ねぇ、君もそう思うでしょ?」
指輪はただキラリと光っているだけだったけど。
2年になって校舎も教室も変わると、窓からみる景色もかなり違っていた。
ここからの方がグラウンドをよく見渡せる。
ひとみちゃんがいる体育館の中までは見ることはできないけど。
「あー。仲いいな、あの2人。」
ハンド部にいるめぐみちゃんに雅恵ちゃんがちょっかいをかけている。
「クスクス。何やってるんだろ。」
走っている時にそんなことをしていたものだから、
キャプテンにどやされてまた走り出していった。
「雅恵ちゃん、めぐみちゃん、そして・・・ひとみちゃん。」
みんな名前で呼び合えるようになった仲間。
ひとみちゃんと雅恵ちゃんとはクラスが違ってしまったけど、
それでも私とめぐみちゃんがいるこのクラスに、
今でも集まってお昼を食べていた。
大切な仲間。そして大切な恋人。
「大切なものがいっぱいあるね。私はきっと誰よりも幸せ者かもしれない。」
机にうつぶせると、自然と瞼が落ちていった。
春の暖かな空気が眠気を誘っていた。
- 163 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時57分00秒
「すごい!かっこいいーっ!」
高いポイントから大きく腕を振ったひとみちゃんが見事にスパイクを決めた。
したたり落ちる汗がキラリと光って目に眩しい。
「ね?かっこいいでしょ?」
試合中なのにこっちに向かってくるその姿。
「ひとみちゃん!試合中じゃない!」
「いいのいいの。もう勝ったも同然だから。」
「よくないよ!ほら、むこうがサーブ打ったよ!」
「言ったでしょ?寂しい思いはさせないって。」
そう言うと私のことをぎゅっと抱きしめた。
ひとみちゃんの匂い。
いつも私を幸せな気分にさせてくれる、大好きなひとみちゃんの。
「・・・好き。ひとみちゃん・・・」
- 164 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)22時58分30秒
「クスっ。あたしも。」
その声がやけにはっきりと耳に聞こえる。
「・・・もう起きたかな?」
まどろむ目を開けると、ひとみちゃんが私を背中から抱きしめていた。
「こんなとこで寝てたら風邪引くよ?」
「・・・あぁ。夢だったのね。」
「どんな夢を見ていたの?」
「ん?・・・内緒。」
「あたしの名前呼んでたけど?好きってさ。」
「もぉ。人の寝言までチェックしないの。」
彼女の腕を握りしめる。
「部活初日、お疲れ様でした。」
肩に置かれている彼女の頬にキスをした。
「ほんと、疲れたー。ここまで体なまってるとは思わなかったよ。」
お返しにしてくれたキスがくすぐったくて、小さな悲鳴をあげる。
- 165 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)23時00分07秒
- 「明日は筋肉痛かもね。」
「それならマッサージでもしてもらおうかな。」
「調子にのらないの。」
ほっぺたを軽くつまんで笑った。
「はぁ。それじゃ帰りますか。」
「うん。」
イスを引いて立ち上がると、ひとみちゃんが私の腕をとった。
「でも、その前に。」
「あ・・・」
いつもより強く感じるひとみちゃんのキス。
おもいきり抱きしめられて、体ごと崩れ落ちそうになる。
「寂しかった・・・。」
「なによぉ。それは私のセリフでしょ?」
「あたしだって寂しかったんだからね。」
「私なんてもーっともーっと寂しかったんだから。」
「クスクス。負けず嫌いだよね。梨華ちゃんて。」
「だって悔しいじゃない。夢に見るくらいひとみちゃんのこと思ってたんだから。」
「あー。やっぱりあたしのこと夢に見てくれてたんだ。」
にやけた瞳がおかしそうに緩んでいる。
- 166 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)23時01分09秒
- 「・・・悪い?」
「ううん。悪くない。夢で会えるなんて最高じゃん。」
バレーをするためにばっさりと切ってしまった短い髪に、
手を差し入れて瞳を見つめた。
「また夢にでてきてくれる?」
「いいよ。でもその代わりあたしの夢にも出てきてね。」
クスっと笑い合うと、もう一度唇を重ねた。
日の落ちた教室に響く囁きと、重なる唇が甘い空気を作り出す。
恋とはとても人を寂しくさせるけど、それ以上に
ステキな世界をもたらしてくれる。
この恋心はキラキラとした輝きと、心が癒されるぬくもりを与えてくれていた。
ひとみちゃんの優しい瞳にそう感じる夕刻の一時。
「コイゴコロ」終わり
- 167 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月01日(火)23時04分53秒
- >作者
ということで、終わりです(笑)
どうでしょう?あなたの心にあまーく響きましたか?
え?まだ響いてこないって???
・・・ううむ。
それなら次回作に期待していてください(w
ここまで読んでくださったあなた。
いつもあたたかいレスをつけてくださっているあなた。
本当にありがとうございました。
また今月中に1本UPしたいと思いますが、
果たして本当に書けるのかどうか・・・(笑)
もし待っていてくださるなら、かならず作者
帰ってきますので、その時には応援よろしく
お願いいたします。
どうもありがとうございました。では。
=修行僧2003=
- 168 名前:チップ 投稿日:2003年04月01日(火)23時19分36秒
- ティラミスにあんこつけてハチミツかけた以上に甘〜いw
次作もバケツ片手に待ってますんで、よろしくお願いします。
- 169 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年04月02日(水)01時44分43秒
- 雰囲気良かったっす!!
またも堪能させていただきました
しばしこの甘さを味わえないとは現実は甘くないっすね(笑)
- 170 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月02日(水)01時46分00秒
- この妙に「この先早く読みたいなぁ」と思わせる展開はさすがです。
今この時点で「次回作早く読みたいなぁ」と思わせるくらいに(笑)
ということで次回作も期待させてください。
- 171 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月02日(水)09時04分59秒
- 司令官訓示・・私の指導方針は「いしよし崇拝」・・。
全隊員一丸となり「サクラサク。」の精神で甘甘いしよしを
極めよ。(・・おぃ、司令の顔熔けてないか?・・コソ-リ)
- 172 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月02日(水)12時26分46秒
- 最後の更新お疲れ様でした。
そして、本当にいい話ありがとうです。
自分のが暗い話になりそうなんで
こういうハッピーエンドは心に響きました。
次回作も期待してますよ。ぜひ読ませてください!!
- 173 名前:130 投稿日:2003年04月02日(水)15時04分58秒
- 完結、お疲れ様でした。
はぁ〜、もうクネクネし過ぎて体が筋肉痛でございます・・
そして大量の砂糖弾を被弾して止まらず、バケツが足りませんw
良かったです。本当に。
今、頭の中にあま〜い愛の鐘が鳴り響いております♪
な、何ですと!次回作ですか!?
期待してお待ちしてます。
- 174 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)16時57分57秒
- >チップさま
感想ありがとうございました♪
>次作もバケツ片手に待ってますんで、よろしくお願いします。
ふふふ。次作、思ったより早くできましたので、
よければまた読んでやってください。
>ラヴ梨〜さま
ありがとうございました〜♪本当に嬉しかったです。
>雰囲気良かったっす!!
あぁ。嬉しいお言葉。ありがたいです。
よければまた読んでやってくださいませ♪
>170名無し読者さま
>今この時点で「次回作早く読みたいなぁ」と思わせるくらいに(笑)
>ということで次回作も期待させてください。
おぉ!ありがたきお言葉。
ということで、新作UPしますので、どうぞよろしくお願いします♪
>ROM読者さま
いしよし崇拝していただき、誠に感謝(w
新作UPしましたので、またついてきてくれますか?
- 175 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時03分51秒
- >サイレンスさま
いつもありがとうございます♪
>そして、本当にいい話ありがとうです。
こちらこそ!いつも励ましていただいて感謝しておりました。
で、サイレンスさまの小説はどちらで読めるのですか?
検索してみたんですけど見つかりません(涙)
よければお邪魔させてくださいね♪
>130さま
>良かったです。本当に。
あぁ。作者、130さまにそう言っていただけるのを夢見て
ここまでがんばってきました。
だから本当に嬉しいです。どうもありがとうございました!
さて、新作UPしますが、短いです(笑)
サクラサクくらいのシンプルな甘さでしょうか?
今回はいし⇔よしです。
また感想いただけたら嬉しいです。
どうぞみなさまよろしくお願いいたします。
- 176 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時06分34秒
-
『夏の海、君とともに』
その日、海に行きたいと言ったのは彼女だった。
「うそ。泳ぐつもりだったの?」
おかしげに笑っているその表情。
それとは逆にふてくされているのはもちろんこちら。
「だってさ、海って聞いたら普通水着もってくるでしょ?」
あたしの手には水着のほかに、ビーチボールやらビーチサンダル、
着替え用の下着までしっかりと収められたカバンがある。
「まだ6月なのに。泳ぐには早いと思わなかった?」
「うー・・・。おかしいなとは思ったんだよね。あたしも。」
梨華ちゃんはもちろん水着など持っていない訳で。
持っているのは日焼け止めの白いパラソルくらいだった。
- 177 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時08分23秒
- 「クスクス。一度家に戻る?」
「いいよ。別に大した荷物じゃないし。それにもし泳げそうだったら泳ぐから。」
「へぇ。泳ぐんだ。」
いたずらっぽい瞳であたしを見る彼女。
故にからかわれるのも悪い気はしない。
いや、こんなかわいいしぐさこそがあたしの心をぎゅっとつかむのだ。
「とにかく出発しよう。」
「そうね。早く行かないとゆっくり泳げないし。」
またクスリと笑った彼女の腕をとって、駅の改札をくぐった。
- 178 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時09分29秒
- 「見て。海が見えてきたよ。」
大きなカーブを曲がると、キラキラと輝く景色が開けてきた。
嬉しそうにはしゃぐ彼女の声が、あたしを幸せな気分にさせる。
「うわぁ。綺麗だね。」
梨華ちゃんの肩越しに見えるその風景は、とても眩しく見えて、
思わず目を細めてしまうほど。
「あぁ。私も水着持ってくればよかった。」
ふふっと笑ってあたしを見つめる。
「なんなら貸してあげてもいいけど?」
眉毛をあげて冗談に付き合うあたし。
「でもやっぱり今回は遠慮するわ。」
「遠慮なんてしなくていいのに。」
小さく笑い合う2人。間もなく電車が緩やかに減速していった。
駅に降り立つと、潮風が鼻をくすぐる。
「海の匂いだ。」
「ほんと。気持ちいいー。」
1時間ほど同じ姿勢で揺られていたために、大きく伸びをしたあたしたち。
海岸に近づくにつれ、ワクワクする気分が2人の足をはやめさせた。
- 179 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時10分20秒
- 「うわー。広いねー。」
目の前には太平洋を臨む大きな海と、打ち寄せる波の音が広がっている。
「はぁー。すごいなぁ。」
すーっと気持ちが晴れていく心地よさ。
思い切り潮の香りを吸い込んで、気分をリフレッシュさせた。
だけど泳ぐにはやはりまだ早かった。
夏はもうすぐそこまできているけど、今はまだ少し肌寒さを感じるから。
「少しだけ入ってみようかな。」
言うがはやいか、彼女はもうサンダルを脱ごうとしていた。
「まだきっと冷たいよ?」
「うーん。でもせっかく海にきたんだし。」
パラソルをあたしに預けると、白いサンダルを手にして波打ち際に歩いて行った。
「クスっ。本当は梨華ちゃんの方が泳ぎたかったんじゃないの?」
「そうね。当ってるかも。」
ちらっとだけこちらに顔を向けると、少し照れたように笑った。
- 180 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時11分38秒
- パラソルを開いて砂浜に腰を下ろすと、波と戯れている彼女の姿を見つめた。
白いワンピースに薄手のピンクのカーディガン。
初夏の海を先取りした可憐な少女がそこにいた。
ふわふわと風に揺れるスカートのすそを手でたくし上げると、
綺麗な足が見えて、ドキリとさせられる。
「気持ちいいよー。ひとみちゃんもおいでよー。」
キラキラと眩しく見えるのは、太陽の光が海面に反射しているせいだからだろうか。
「いいよ、見てるからー。」
「一緒に入ろうよー。ねぇ。」
誘われて嬉しかったけど、あたしはできることならずっと彼女を
眺めていたかった。
ただ彼女のことだけを。
だから大きく手でバツをつくって笑ってみせた。
「意気地なしー」
拗ねたように聞こえたその言葉。
それはせっかくの誘いを断ったあたしに対する不平だったのだけれど、
あたしの中ではまた違った何かに思えてきた。
あたしと梨華ちゃん。
周りからは仲のいい友達と映っている2人。
それは確かにそうだった。
何をするにも必ず一緒に行動している2人だから。
- 181 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時12分56秒
- 彼女といると、いつも幸せな気持ちでいられるあたし。
きっと彼女も同じように感じてくれているはず。
それがあたしの自惚れでなければ。
互いの気持ちはわかっているのだ。
だけどそれを言葉にすることはなかった。
今のこの微妙な関係を楽しみたかったのかもしれない。
恋人でもなく、友達でもない、独占することのできない危うくもろい距離を。
きっとどちらかが言葉にすればそれはすぐにでも叶えられると
わかっていて、楽しんでいたのだ。
それは時に甘く、時に苦いゲームのつもりで。
「意気地なしでいいよ。ここで待ってるから。」
パラソルを左右に振ってそう答えた。
「待っているだけ?」
「うん。見てる方が楽しい。」
「ふーん。そうなんだ。・・・後悔しても知らないから。」
一瞬見せた寂しげな視線。
あたしの体に悪い予感が突き抜けていった。
- 182 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時14分02秒
- 「梨華ちゃん!」
彼女は波打ち際からさざなみの立つ海の中に進んで行った。
手にしていたパラソルを放り出して駆け出したあたし。
梨華ちゃんはスカートのすそから手を離すと、
濡れてしまうのも厭わずに海のほうへと進んでいく。
一方のあたしは砂に足を取られてうまく走ることができなかった。
その間にも梨華ちゃんはどんどんと遠ざかっていく。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
ほんの数メートルしか離れていないのに、彼女とあたしの距離は思うように縮まらない。
無我夢中で砂を蹴りあげて、やっと波打ち際までたどり着くと、
バシャバシャと水しぶきをたてて、海の中へと走っていく。
「待って!戻ってきてよ!」
膝までつかった波が、彼女の白いスカートをプカプカと浮かせているけれど、
あたしの叫びには耳も貸さない。
ジーパンが海にひたって重く足をとるけれど、
それでもなんとかようやく彼女に追いつくことができた。
「何やってんだよ!」
はぁはぁと息をつきながら、肩に手をかけてぎゅっとつかんだ。
波はもう太ももの辺りまで濡らしていた。
- 183 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時15分23秒
- 「海の中を歩いてみたくて。」
意外にも落ち着き払った静かな声。
「だからって、こんなのおかしいよ。」
対照的に荒ぐのはあたしの声。
「おかしい?そうかな・・・」
「何考えてんだよ。心配するじゃない、呼んでも戻ってこないし。」
「心配・・・してくれたんだ。」
「当たり前じゃん。心配しないとでも思ったの?」
梨華ちゃんはそっと頭を振った。
打ち寄せる波が、体温を奪っていく。
「とにかく、一度戻ろう。」
向こうを向いたままでいる彼女の手をとって、波打ち際に歩き出した。
「・・・っ・・・ごめ・・・」
搾り出すように聞こえた声に振り返ると、彼女は泣いていた。
あたしの手を強く握り締めながら。
「なに・・・泣いてるの?」
「ごめんね・・私・・・ひとみちゃんのこと・・・」
「あたしが、どうかした?」
「・・・試してみたいって・・・そう・・・」
「わかってるよ、それぐらい。」
涙を受け止めるように、そっと震えている体を抱きしめた。
- 184 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時16分10秒
予想が確信へと変わっていく。
梨華ちゃんがあたしを試したかった理由。
2人の距離こそが問題だったのだ。
もう一歩踏み込めないでいた関係に、彼女は満足していなかったのだろう。
それはあたし自身にも言えることだったから。
いつしか苦しくなっていた。
ゲームをゲームとして純粋に楽しむことが。
いつでも側にいられる距離は、逆にあたしたちの間に壁を作っていたのだ。
互いに好きだとわかっているのに、敢えて距離をとっていたあたしたち。
そろそろゲームは終了の時を迎えていた。
- 185 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時17分05秒
- 「付き合ってみる?こんなあたしでよければ。」
彼女はひっくひっくと涙をすすりあげて、肩を上下させている。
「・・・っく。・・・ぐすん・・・いい・・・の?」
短く息を継ぎながら、それでも一生懸命に言葉を紡ぐ彼女がとてもかわいく思える。
「いいから言ってるの。それとも泳げない海に水着持ってくるようなやつは嫌いかな?」
クスッと笑って梨華ちゃんの笑顔を誘ってみる。
「そんな・・・こと・・・ある訳ないでしょ・・・好きなの・・・・知ってるくせに・・・」
「うん。知ってるよ。梨華ちゃんはあたしのこと、すっごく好きなんだよね。」
わざとからかう言葉を選んだのは、彼女の笑顔をみたかったから。
「そうだよ。ひとみちゃんのこと、すごく好き。」
思惑は外れてしまった。
梨華ちゃんは笑顔をみせるどころか、あたしの胸に顔をうずめてしまったから。
それでも涙を止めてくれたことにホッとした。
- 186 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時18分07秒
打ち寄せる波が、足首をさらっていく。
ざーっと砂を洗うその音が鼓動と同調して、安らぎを与えてくれていたから
しばらくそのまま抱きしめあっていた。
「ねぇ、そろそろ陸に上がらない?」
すっかり潮の香りが染み付いてしまった長い髪を手に取る。
「・・・うん。そうね・・・」
手にしていたサンダルがカタンと音をたてた。
「ワンピース濡れちゃったね。」
「ほんとだ。ひとみちゃんも、膝までびしょぬれ。」
あたしたちは笑い合って手を繋ぐと、荷物を置いている場所まで戻って行った。
「あっ。パラソルどっかいってる!」
キョロキョロと周りを見渡すと、はるか遠くに転がっていたそれを見つけた。
「あんな遠くまで転がっていくなんて。海風思ったよりも強く吹いていたのかしら。」
「そうかもしれないよね。それどころじゃなかったからよくわかんないけど。」
「・・・ごめんね?」
「クスっ。いいさ。それよりあれ拾ってくるよ。ちょっと待ってて。」
- 187 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時19分17秒
歩き出そうとしたあたしの体を梨華ちゃんが後ろから抱きしめた。
「ありがとね。・・・さっき、私のこと追いかけてきてくれて。」
「正直あせったけどね。でもあたしは確信してたんだ。」
「何を?」
「あたしのことだけを待っていてくれてるんだって。」
ウエストに巻かれた彼女の腕が揺れた。
「何笑ってるの?」
その振動は梨華ちゃんが笑っている証拠。
「だって・・・ひとみちゃんすごく自信家なんだもん。」
「そんなに笑わないでよ。これでもナイーブなヤツなんだから。」
「クスクス。そんなの初めて聞いたよ?」
「おっかしーなー。わかってくれてると思ってたのに。」
抱きしめられていた腕を解いて、梨華ちゃんの方に振り向いた。
「それじゃ、ナイーブなひとみちゃんの心、包んであげるね。」
白い歯がこぼれて笑顔になっている。
「うん。包んでいて。傷つかないように。」
その代わりとでも言うように、あたしは彼女の体を優しく包んであげた。
- 188 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時20分15秒
- 「ねぇ、ひとみちゃん。」
「ん?」
「夏が来たら、今度こそ本当に泳ぎにこようね。」
「そうだね。今度は水着をちゃんと持って。」
クスクスと笑い合う声が2人の心をくすぐっていく。
「でも、その前に。パラソル拾いに行かなきゃ。」
「・・・あ。ほんとだ。」
手を繋いで歩き出した2人。
ポタポタと落ちる滴さえも、今となってはどこか妙におかしくて。
もうすぐ太陽の照りつける夏がくる。
またこよう。夏の海へ、君とともに。
『夏の海、君とともに』〜終わり〜
- 189 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月06日(日)17時22分48秒
- >作者
ということで、ショートストーリーを載せてみました(w
実は書いているうちに、段々と痛い方向に走っていってしまって。
かなり軌道修正させたのがこれでした(笑)
ボツ投稿は、非常に痛くて作者すら引いてしまったので(w
次回は、どんなの書くかはわかりませんが、
また近いうちにUPしたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
=修行僧2003=
- 190 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月06日(日)21時00分08秒
- ボツも読みたい気分!
- 191 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月06日(日)22時47分50秒
- 乙女心の表現力(心理描写?)が本当に素敵です。感服致しました。
ところで、岡女で2人揃って部屋に入ってきたのを見て激萌えした
のは私だけですか?
- 192 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2003年04月07日(月)01時20分13秒
- あぁ〜なんて素晴らしい気分になれる短編!!
心地良いというか、幸せになれますね
これで新年度を迎えられそうです
- 193 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月08日(火)23時34分00秒
- おみごとな短編でした。
すいません、本当にいい話でしたので
なんとコメントすればいいのか。感動した!!
>で、サイレンスさまの小説はどちらで読めるのですか?
ええと、下手ですが2つ書かせてもらってるんですよ。
作者様ギャグお好きな方ですか?
お好きなら森へお越しください。
- 194 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月09日(水)23時08分10秒
- >名無し読者さま
ボツはきっと引きますよ?(w
っていいますか、もう消しちゃいました・・・。
また読んでやってください♪
>ROM読者さま
おぉ!ありがとうございます〜♪
作者も燃えましたよー!いしよし最高っす!
あれに萌えない人は真のいしよし好きではないですね(w
>ラヴ梨〜さま
えへへ。嬉しいです。いつもありがとうございます。
今書いてるのは「スネよっすぃ〜」です(w
どうぞまた読んでやってくださいね。お願いします。
>サイレンスさま
お邪魔させていただきましたよー♪
空の方が作者好みでした♪
またよければこちらも読んでやってください!
- 195 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月09日(水)23時09分51秒
- ってことでですねー。
実は、作者、ちょっくらアボーンな小説を
『繋いだ気持ち』スレにて今からUPしまっす♪(笑)
内容は見てのお楽しみということで(w
ROM読者さま、ぜひ読んでみてくださいね(ニヤリ)
- 196 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月12日(土)01時10分32秒
- 更新ではないのですが(w
一言お祝いの言葉をいいたくて。
よっすぃー、お誕生日おめでとう。
君のことがすっごく好きです。
梨華ちゃんに比べると負けちゃうかもしれないけど(w
男の子っぽくしてるけど、本当は乙女チックなんじゃないかな?
なんて思っているのは作者だけでしょうか?(笑)
美少女なよっすぃーが大好きです。
昔のような美少女キャラはもう見れないかもしれないけれど(w
今の君もあの時と変わらずキラキラと輝いているよ。
今日のこの日は、きっと梨華ちゃんとラブラブで過ごすんだよね?(w
2人のこと、応援してます♪
本当におめでとう。そしてありがと、よっすぃー!
- 197 名前:173 投稿日:2003年04月16日(水)15時13分43秒
- 短編完結、お疲れ様でした。
遅れ馳せながら拝見いたしました。
イイですねぇ〜、最高のいしよしワールドです!
「サクラサク。」のように情景が浮かんで来る瑞々しさに加えて、
波の彼方まで甘〜くとろけそうな二人だけの世界・・
まさにいしよしがいしよしであらんとする、最高の世界観でした。
冒頭は純文学の匂いがしましたよw
また甘くとろけるいしよしワールドをお願いします。
よっすぃ〜はいつもいつまでも何年経っても、美少女のままですね。
自分の中では今でも変わらないです。
18歳になった今、自分の無限の可能性にチャレンジしてね、よっすぃ〜。
そして梨華ちゃんと末永くお幸せに・・
- 198 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月16日(水)21時21分03秒
- >173さま
コソーリレスつけてみるテスト(w
感想、すっごく嬉しかったです♪
純文学とは程遠く汚れてますが(w、こちらは
爽やか甘を目指してますので、どうぞまた読んでやってください。
あちらにも書きましたが、いつも丁寧な感想痛み入ります。
おぉ!わかってくれてるーっ!って作者いつも
小躍りしてますが?(w
お忙しいようですけど、どうかお体ご自愛くださいませ。
そして、これからも、作者のこと見捨てないでやってください(笑)
- 199 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時51分03秒
- >作者
あーぁ。いっぱいになる前にURL書こうと思ってたのに(w
まぁ、一応お知らせしといたので、わかる方はきっとついてきてくれる
でしょう(笑)ごめんなさい。
さて、ここから読む方は一体何?と思われるといけないので
手短に書きますと、これからUPする小説は
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/moon/1045293422/
の小説「83days〜続編〜」の続きです。
もし読んでみたいなと思われた方は、是非上記にて読んでみてください。
それでは続き、書いていきますね。
ややこしくなってしまってごめんなさい。
- 200 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時53分35秒
「梨華・・・」
その手の動きを止めるように、彼女の手が重ねられた。
瞳は静かに私の唇を見ていたから、引き寄せられるように唇を落とす。
すると、ウエストに腕が伸びてきて、私もまたベッドに引き寄せられた。
「はぁーっ。抱き心地いいな。」
「なに言ってるのよ。」
ひとみちゃんの肩においた頭を揺らして笑ってみる。
「うちがいい?それともここ?それかもっと別の場所。」
彼女が言ってることは、きっとあのことで。
それは合格したら渡すはずの合格祝いの印。
「そうね・・・どこがいいかしら。」
「梨華が決めていいよ。あたしはどこでもOKだから。」
「わかった。それじゃ合格発表の日までに決めとくね。」
段々と現実味を帯びてきたそのことに、不安がない訳ではなかった。
だけどもう、迷ったりはしない。
ゆっくりとこの1年間、時間をかけて恋人としての彼女を
見てきたつもりだから。
そして、ずっと一緒にいたいと思える人だと確信することができたのだ。
- 201 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時54分56秒
「その前に。予行演習でもしとくか。」
ぎゅーっと抱きしめてからかうように彼女が笑った。
「なに言ってるのよぉ。」
「だってさ、当日うまくいくとは限らないじゃん。」
「あら。その前に、合格するかどうかわかんないでしょ?」
「んだよー。受からないとでも思ってるの?」
「思わないけど・・・。」
「もし。もしさぁ、受かってなかったらやっぱりおあずけなのかな?」
抱きしめていた腕をほどいて、私を見つめた。
「その時はその時ね。」
「なんだよ。答えになってないじゃん。」
「どうしようかな?」
イタズラっぽく見つめ返してみる。
「本当は決めてるんだろ。どっちにするか。」
「ふふ。よくわかったね。」
「梨華の考えてることぐらいわかるよ。」
「でもどっちにするかまではわからないでしょ。」
「わかるよ。」
「なら言ってみて。」
「落ちても梨華は抱かせてくれる。」
- 202 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時55分41秒
私はただ微笑んだだけ。
「当ってただろ?」
「さぁ、どうかしら?」
「言えよー。わかってんだぞー。」
またぎゅっと抱きしめられて、思わず笑顔になってしまう。
そして、耳にキスをするように、ぴったりと唇を寄せてこう言った。
「今日は勘が冴えてるのね。」と。
一週間後。
「来たよ!通知!」
その日は土曜日で、2人とも学校は休みだった。
ひとみちゃんは封を切らないままで、私の部屋に駆け込んできたのだ。
- 203 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時56分50秒
「あぁ。神様、お願いします・・・」
「開けるよ。」
「・・・うん。」
そして鋏を使うことなく、ビリビリと開封した彼女。
「・・・ごくっ。どうなの?」
「・・・・あ・・・・。」
「・・・え?・・・なに?」
「受かってる。」
「うそっ!」
「やりっ!!!合格だよっ!やったぜー!!!」
嬉しさを噛み締めながら、私たちは思いっきり抱きしめあった。
「よかったね・・・ぐすっ・・・ほんと、よかったぁ・・・」
「なんで梨華が泣くんだよ、おもしれーなー。」
「だって嬉しいんだからしょうがないでしょー。」
「クスッ。かわいいんだから。」
「よかった・・・よかったよ・・・」
「さっきから同じことばっか言ってるよ?」
「・・・そうだね・・・。でも本当に、よかった・・・。」
「あはは。うんっ。」
- 204 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時57分43秒
- 体を離すと、ひとみちゃんが涙を拭ってくれた。
「おめでとう。これからはまた一緒に学校行けるね。」
「ありがと。これも全て梨華のおかげだよ。」
「そうよー。感謝しなさい。」
「あらら。」
クスクスと笑い合って、また抱きしめあった。
「これでこっちの約束は果たした。今度は梨華の番だよ。」
「・・・うん。ちゃんと考えてるから・・・。」
「今夜頂けるのかな、ご褒美。」
「残念でした。今日じゃないよ。」
「げーっ。なら、いつ?」
「ごめんね。ちょっと先になるんだけど・・・。春休み入ってすぐにって計画立ててるんだ。」
「そっか。ちょっと先になるけど、梨華に任せたからしょうがないか。」
はーっともらしたため息が、私の肩越しに聞こえてきた。
- 205 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)22時58分56秒
- 「楽しい思い出つくろうね。」
「あぁ。飛びっきりのいい思いさせてやる。」
「クスっ。張り切ってるのね。」
「当たり前だろー。この一年ずーっと我慢してきたんだぜ?」
髪を指に絡ませながら、不平を言う彼女。
「そうね。はぁーっ。長かったような、短かったような・・・」
「はは。どっちなんだよ。」
「わかんない。」
「ま、どっちでもいいけどね。梨華を抱けることに変わりはないから。」
ドキドキと胸が鼓動を打つ。
2人だけの最初の夜を思い浮かべて。
「ねぇ、それよりも・・・お家の人に報告しなくていいの?」
「ぐあっ!忘れてた!」
ひとみちゃんは、放り投げていた合格通知をあわてて拾い上げると、
ヘラヘラと笑って部屋を出て行こうとした。
- 206 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)23時00分06秒
- 「ちょっと待ってよ。」
それを呼び止めたのは・・・。
「んぁ?なに?」
「一番に報告してくれてありがとう。」
「いや、やっぱこういうのは一番大切な人にするのが筋でしょ。」
「お母さんより?」
「うん。もちろん。梨華が一番だから。」
封を切っていない通知書を見た時から、私は思っていたのだ。
きっとひとみちゃんはこれからもずっと私を一番大事にしてくれるんだって。
「合格のキス。してもいい?」
「あぁ。」
一歩ずつ互いに近寄ると、深い口付けを交わした。
「すぐ戻ってくるから。」
「ううん。ゆっくり合格喜びあってきてもいいよ?」
「なんだよ。素直じゃないなぁ。」
クシャッと私の頭をかき乱して、ひとみちゃんが笑った。
「だって、私のところに一番にきてくれたから・・・それだけで充分嬉しかったんだもん。」
「ほんと、梨華って・・・」
「なに?」
「かわいい。」
赤面する私の顔を見届けてから、ひとみちゃんは部屋を出て行った。
- 207 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月20日(日)23時02分03秒
- >作者
はい。ということで、今回の投稿は終わりです。
さぁ、これからどうなるのか、楽しみですね(w
といっても、全くもって次回分なーんにも書いてないので
どうなるのか作者さえわからないんですけど・・・(wゞ
まぁ、またもや甘ハッピーになるのは確実です(笑)
それではどうもありがとうございました。
よければこれからも読んでやってくださいね♪
- 208 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月20日(日)23時04分21秒
- 更新お疲れ様です。
自分の更新終わって見にきたら
ちょうど更新中だったんでそのまま見てました。
よっすぃ合格おめでとう!!!
- 209 名前:197 投稿日:2003年04月21日(月)00時30分12秒
- バカ同盟員、前スレより付いて参りましたw
更新、お疲れ様です。
よっすぃ〜、合格おめでとう!よく頑張ったね。
くはぁ〜、これでようやく結ばれることが出来るのですね(遠い目)
いしよしハネムーン(死語w)はどこにお出掛けするのでしょうか?
何だかこちらまで緊張して来ましたw
ドッキドキしながらお待ちしています。
- 210 名前:チップ 投稿日:2003年04月21日(月)00時57分44秒
- いっいよいよ初夜ですか…合格よかったねよっすぃーww
ちょっと忘れかけてましたけど(オイ 一年待ったんだねぇ。
改めて思ったんですけど、ここのいしよしの甘いだけじゃなく綺麗な雰囲気が
すんごい好きです。これからも頑張ってくらさい。
- 211 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月21日(月)12時42分14秒
- 完スレ乙でした。さて、すっかり小僧になっているよっすぃ〜が可愛い
ですね。ずいぶん長くお預けをくっていたので、暴走しないように・・
- 212 名前:名無し読者79 投稿日:2003年04月21日(月)19時45分45秒
- ずーっと読んでました。
甘くて×2…読んでいると二人のいる風景がパッと出てきます。
現実の二人も甘い空間が絶えずあるのかもしれないですね。
次回楽しみに待ってます。
- 213 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時47分50秒
- >サイレンスさま
いつも応援くださってありがとうございます♪
なのに作者ったら無精者でごめんなさい(汗)
また覗かせていただきますね♪
>197さま
ややっ!ついてきてくださったのですね!?
非常に嬉しいです♪どうもありがとうございます。
今回で一応ラストとなります。果たして溶けていただけるのかどうか・・・。
>チップさま
初夜って!!!(w 思わずこちらが赤面してしまいました(笑)
なんとかやっと書き上げることができましたので、
よければ読んでやってください。お願いします。
>ROM読者さま
暴走・・・でしょうか?(w
作者かなり苦しみました。こんなの書かなきゃよかったと(笑)
でもなんとかまとめることができてほっとしております(w
>名無し読者79さま
ずっと読んでいただけてたんですね♪
ありがとうございます。
励ましのお言葉をいただけると、本当にやる気が
でてきますので、またよければ応援してやってください♪
さぁ、お待たせいたしました。
みなさま一体どのような妄想←× いやいや、
ご期待いただいていたのか気になりますが(w
それではラストよろしくお願いいたします。
- 214 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時50分57秒
=吉澤視点=
シャワールームから出てくると、梨華はこちらに背を向けるようにして、
窓の外を眺めていた。
頭をごしごしとタオルで拭いていた手を止めて、そっと彼女に近づいてみる。
「外の景色、綺麗だよ・・・。」
窓に映ったあたしの姿にどうやら気がついたようだ。
「何が見えるの?」
後ろからウエストに手を回して梨華を抱きしめる。
「キラキラと輝くもの・・・かな。」
彼女の肩越しに映る景色は、今日一日駆け回って遊んだ
テーマパークのネオンが、所々ではあるが未だ消えることなく輝いていた。
「ほんとだ。綺麗だね。」
ちらりとだけそれを確認すると、彼女の洗い立ての髪に顔をうずめた。
あたしと同じシャンプーを使ったはずなのに、
梨華の髪からは、もっと甘い香りがする気がした。
- 215 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時52分33秒
- 「キラキラしてるのはそれだけじゃないよ。」
「んー・・・他に何か見える?」
「窓、よく覗いてみて。」
よく目を凝らして見てみたけど、特別光っているものなんてなかった。
部屋の明かりが反射しているのはわかったけれど。
「わかんない。降参。」
「キラキラしてるのは・・・ひとみちゃんだよ。」
「あたしが?」
ついおかしくなって苦笑してしまう。
自分には似合わない褒め言葉だと思ったから。
「いつの間にか私より背が高くなっていた。いつの間にかこんなにも大人になって。
どんどん私から離れていくようで怖かったよ。
キラキラ眩しくて、目を細めている間に消えてしまうんじゃないかって。」
夜の帳が彼女をセンチメンタルな気分にでもさせたのだろうか。
だからあたしも、もう笑ってはいなかった。
「それは梨華の勘違いだよ。あたしはここにいる。
いつだって梨華の側にいたじゃない。そして今も。」
ぎゅっと体を抱きしめて彼女のことを想った。
消えてしまいそうなのは梨華の方じゃないかと思えてきたから。
- 216 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時53分59秒
- 「うん。わかってるんだけどね。なんだろう・・・ホームシックみたいな
切ない気持ちがここにあって・・・。どこかに帰りたいなって思うの。」
「・・・そっか・・・。ならこれから帰ってもいいけど。最終にはギリギリ
間に合う時間だし。」
本当は帰りたくなんてなかったけど、梨華をナーバスにさせるのが
つらかったから、あたしの気持ちは封じ込めることにした。
相手に嫌な思いをさせてまで、繋がる必要なんてないのだから。
だけど。
「違うよ、そうじゃないの。帰りたいっていうのは家のことじゃなくって・・・。」
「どういう・・・こと?」
「上手く説明できないけど・・・。明日になれば違う自分がいるようで。
何かが変わるような気がして。だからかな、どこかに帰りたいって思うのは。」
梨華が言いたいことは、なんとなくではあるが理解できる気がした。
きっとこの夜を越えてしまったら、もう二度と戻ることができない
別の世界の扉を開けることになってしまう。
無邪気な少女の時間を過ごすことができるのは、あと幾ばく。
彼女はそれを感覚的に捉えていたに違いない。
- 217 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時54分58秒
- 「それならどこまでもついていくよ。梨華が行きたいところまで。
いつでも戻ってこられる場所、あたしがちゃんと用意している。
だから・・・怖がらないで・・・。」
あたしの腕に自分の手を重ねた彼女。
「ひとみちゃん・・・やっぱり大人になったね。
私なんかより、ずっと・・・。」
「そう思うだけだよ。あたしは何も変わってないかもしれないよ?
梨華のことがただ好きで、追いかけていたあの頃と。」
「優しいね、ひとみちゃんは。いつでも深く私を愛してくれる・・・。」
「あぁ。だって、梨華のことだけを見つめてきたから。
こんなにも気持ちが高ぶるのは、梨華のことが好きで好きでたまらないから。」
重ねていた手にぎゅっと力が込められていく。
「・・・優しく・・・してね。」
「・・・うん。」
- 218 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時56分32秒
部屋の明かりは最小限に留めた。
現実を映し出す光よりも、より夢の世界へと近づけることが、
緊張した彼女に与えてあげることができる、あたしの精一杯の思いやり。
「梨華・・・好きだよ・・・」
「ひとみちゃん・・・愛して。私を感じて・・・。」
ごくりと喉を鳴らすと、あたしは梨華の体に優しくキスを落とした。
ずっと感じたかった、その愛しい体に。
暗闇に近い部屋の中は、深い海の底のように静寂が広がっていたけど、
2人の甘い吐息と触れ合う体の音が、その静けさを逆に支配していった。
- 219 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時57分30秒
- 滑らかな肌の感触が、あたしの指を震えさせる。
たどたどしくではあるけれど、それでも精一杯梨華を感じたかったから、
あたしはあたしのやり方で、彼女を感じていた。
そこには何もマニュアルなんて存在しない。
本能が指示するまま、ただ梨華だけを求め、ただ梨華だけを愛した。
ほとばしる感情。
全てを支配したくなる独占欲。
切なげに絡む声が、あたしを深く柔らかい世界へと誘っていく。
時折小刻みに震える体を抱きしめて、優しく、慈しむように、
梨華の全てをあたしの中に刻み付けた。
いつも聞いている愛しい声は、段々と艶やかさを帯びていき、
今まで聞いたことのない激しくもなまめかしい叫びとなって、
あたしの脳裏に響き渡った。
- 220 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時58分21秒
開け放たれたままのカーテン。
朝の陽射しは疲れきったあたしの瞼に否応なく降り注いできた。
それを背にしている彼女はまだ眠ったまま。
頬に残る涙の筋が、昨日本当に重なることができた証明のように
眩しく映し出されている。
静かな寝息が心地よく耳に響く。
乱れてしまっている髪をそっと手に取ると、声を出さないでつぶやいてみた。
「愛してるよ、梨華。」
唇だけを動かしたはずなのに、まるでそれを感じたかのように
梨華の瞼はゆっくりと開かれていった。
- 221 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)22時59分30秒
「・・・はよ。」
少しかすれている声が、昨日の甘いひと時を思い出させて、
思わずしたり顔になってしまった。
「おはよ、姫。」
恥ずかしそうに笑う表情が、たまらなくあたしを幸せにさせる。
「起きてたんだ。はやいね。」
「うん。梨華の寝顔見てやろうと思って。」
いつか同じようにあたしを見ていた彼女の気持ちが、
今になってわかった気がする。
きっとこんなにも愛しい想いをしていたのだということに。
「うーっ。なんか悔しいな。」
「あはは。なんで?」
「先に起きようって思ってたから。」
「いいじゃん別に。どっちが先に起きても。」
「そうなんだけど・・・ね。」
「なに?なんか不満なの?」
「起きるの待っててあげる方が大人って感じがしない?」
「なんだそれ。」
クスクス笑いながら、梨華の頬に触れた。
- 222 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時00分36秒
「どう?なにか変わった?」
頬に指を滑らせながら囁いた。
「・・・ううん。何も。」
「そっか。でもそれって喜ぶべきことなのかな?どうなんだろ。」
「喜ぶべきことよ、きっと。何も変わらないでいられるのは。」
「はぁーっ。梨華がそう思うんだったらよしとするか。」
「なにー?ひとみちゃんは何か変わったの?」
「もちろん、変わったさ。」
「大人になれたってこと?」
クスリと笑うと、彼女もまたあたしの頬に触れた。
「それもあるけど・・・。でもね、昨日より今日の方が確実に梨華を好きになってる。」
「そうなんだ。」
「あれ?梨華はそうじゃないの?」
「私はもう、これ以上ひとみちゃんを好きにはなれない。」
「んだよ、冷たいな。愛し方が足りなかったのかな。下手だった?」
「バカ・・・。」
上気した顔で、緩く頬をつままれた。
- 223 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時01分35秒
- 「じゃぁ、何が足りなかったの?教えてよ。」
「足りないものなんてないの。これ以上好きになれないってことは、
今の気持ちが100%だからってことよ。
それを考えるとひとみちゃんはまだ100%私を好きじゃないってことよね。」
そうか。
梨華が変わらないことを喜んでいたのはそういう事だったのか。
少女から一歩踏み出した大人への階段を昇ることで訪れるかもしれない、
あたしへの気持ちの変化を怖がっていたのだ。
「それは当ってるかもしれないな。」
だからあたしはちょっぴり意味深な笑顔を浮かべて答えてみた。
「あーぁ。そうなんだ。冷たい人ね。」
「それは外れ。」
「なによ、何が外れな訳。」
「だってさ、好きな気持ちはいつまでも溢れ続けているから。
あたしの気持ちには際限なんてないんだよ。」
ぴったりと頬に感じるのは、何もつけていない梨華の胸の感触。
あたしはその瞬間、抱きしめられていたのだ。
- 224 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時02分37秒
- 「ありがと・・・・。いっぱい好きでいてくれて。」
「愛してくよ、これからもずっと。」
「・・・うん。いっぱい愛して。」
「声がかれるまで?」
クスッと笑うと、昨日と同じように梨華を組み伏せた。
「ステキだったよ、ひとみちゃん。」
「梨華も。最高にクールな声あげてた。」
「もぅ。それを言わないでよ、恥ずかしかったんだから。」
「また聞きたいな・・・。いい?」
「いいよ。聞かせてあげる。ひとみちゃんにだけ・・・。」
ゆっくりと体を落としていくと、今日初めての口付けを交わした。
そしてまた、熱い吐息に身を焦がせるように梨華を抱く。
それはまだまだ梨華を感じ足りなかったから。
際限なく溢れる梨華への気持ちが。
- 225 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時04分03秒
「遅いっ!電車間に合わないじゃないのよ!」
玄関のドアを開けたとたん、腕を引っ張られてエレベーターへと向かうあたしたち。
「だって二度寝してしまったんだからしょうがないだろー。」
「なんのためにモーニングコール入れてると思ってるのよ。
二度寝なんてしたら意味ないじゃない。」
下へのボタンを連打しても、エレベーターが特急でやってくるはずもなく。
「階段使った方が早くない?」
「そうね、そうしましょう。」
そしてあわただしく駆け下りていく。
「はぁっはぁっ・・・もぉ・・・朝からダッシュなんてしたくないわよ・・・」
「つべこべ言わないで走るっ!」
「誰のせいだと思ってるのー。」
「しょうがないな。ほら、カバン貸せよ。」
梨華からカバンを奪って、また大きく走り出した。
「はぁっ・・・待ってよー。」
振り返ると、ラケットケースを胸に抱えてモタモタと走っている彼女の姿が見えた。
「おせーなー。おいてくぞ!」
「待ってー」
- 226 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時05分21秒
やっとの思いで駆け込んだ電車は、最悪のラッシュ車輌。
だけどこれを逃すと完全に遅刻してしまう。
混雑する人波に押しつぶされそうになりながらも、あたしは精一杯の力で
ドアに手をついていた。
それをはさむように梨華がいるから。
彼女はあたしに向き合うようにぴったりと体をくっつけている。
混雑する車内ではごくありふれた風景。
高校生活が始まってから1週間。
毎日乗っているいつもの時刻の電車は、もう少しすいているけど。
「大丈夫か?」
「う・・・なんとか。」
発車する車輌がぐらりと揺れて、体がよろめく。
「しっかりつかまってなよ。」
「うん。」
ラケットケースを足元へ置くと、あたしの体を抱きしめた。
「ちゃんと守ってやるから。」
梨華だけに聞こえるように、唇を近寄せて囁く。
「かっこいいこと言うじゃない。」
「だってかっこいいんだもん。」
「ふふふ。そうね。」
クスクスと肩が揺れている。
- 227 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時06分53秒
- そんな何気ないしぐさが、妙にあたしの心をくすぐるのだ。
「キス、したい。」
「何言ってるのよ、電車の中だよ?」
「誰も見ちゃいないって。こんなに混んでたら誰も気付きはしないさ。」
「ダメ。」
そう言われたけど、少し首を傾けるだけでキスができる距離にいたら、
聖人君子だってきっとしたくなるはず。
「梨華。」
「ダメだって。」
「梨華。」
「だからぁ・・・」
「梨華。」
「・・・わかったわよ。」
ちらりと横目で周りを窺うと、彼女は恥ずかしげにほんの少しだけ顔をあげた。
そっと音を立てないように重ねた唇は、いつもにもまして甘い感触がした。
「困った人ね。」
「なんならもっと困らせてやろうか?」
にやりと笑ってからかってみる。
「冗談!ひやひやしっぱなしだよ。もうこれ以上困らせないで。」
「仕方ないじゃん。好きなんだから。」
「はいはい。ありがとね。」
サラッと引き下がった彼女に物足りなさを感じたから、
あたしはちょっとだけイジワルしてみたくなった。
- 228 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時07分49秒
「昨日は熱く燃えたくせに。」
「あら。それはひとみちゃんもでしょ?」
「好きって言った回数は梨華の方が上だったよ。」
「キスした回数はひとみちゃんの方が多かった。」
どちっちもどっちの勝負は、やはりどちらが勝つということもなく。
いや、負けたのはあたしの方だったかもしれない。
イジワルを仕掛けたあたしの方が、結局はいじけてしまうことに
なってしまったから。
「梨華はずるいよ。いつだって追いかけてるのはこっちばっか。」
「今度は拗ねちゃったの?」
「事実を言ってるの。梨華からキスしてくれることってあんまりないじゃん。」
「だってしようと思う前にひとみちゃんがするんだもん。」
「ちぇーっ。面白くねー。」
- 229 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時08分50秒
- 頬を膨らませて拗ねていると、おかしさを精一杯我慢しているらしい
梨華の肩が揺れていた。
「なに笑ってるんだよ。」
「だってかわいいんだもん、ひとみちゃん。」
「かわいいとかそんな問題じゃないの。」
「はぁーっ。本当に困った人ね。」
そう言ったかと思うと、梨華は不貞腐れているあたしの唇にキスをしてくれた。
「電車でするのは今日だけよ。」
キラッと光った瞳が眩しく目に映る。
優しい笑顔が胸の中をとろけさせていくから、もっともっと梨華を好きになっていく。
「それなら、電車を降りたらしてもいいんだ。」
「しませんー。キスは人前じゃしないものよ。」
「それなら2人っきりになったらしてもいいんだ。」
「まぁ、そういうことね。」
乗り換えの駅に着いたあたしたちは、人の波に押し出されるようにして、
ホームに降り立った。
- 230 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時09分51秒
「ひとみちゃん、どこいくつもり?」
乗り換えの電車が止まるホームとは逆の方向へと手を引っ張って歩く。
「まだしてなかったでしょ、花見。」
「何言ってるの?学校遅刻するじゃない。」
「いいじゃん。花見ができるのはきっと今日ぐらいまでなんだから。」
改札を出ると、最後の一花を咲かせている桜並木が、
公園までの道のりを綺麗に飾っていた。
「お弁当もあることだし。たまにはいいでしょ?」
「はぁ・・・今からホームに戻っても遅刻だもんね。」
「そうそう。そうこなくっちゃ!」
呆れたように笑う彼女の手を握って桜並木の下を歩いていく。
「日曜日にああいう事するのも考え物ね。」
「なんだよ、これからは土日しかゆっくり会えなくなるのに。」
「だって今日みたいに寝坊したら毎週月曜日は遅刻だよ。」
「したいんだからしょうがないだろ。あれから数えるほどしかしてないんだぜ?
本当は毎日でも梨華を抱きたいんだから。」
- 231 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時11分10秒
そんな2人の会話を笑うかのように、桜の花が吹雪のように
ふりかかってきた。
「うわっ、すげー。学校のよりも綺麗だね、ここの桜。」
「ほんと。桜のシャワーを浴びてるみたい。」
公園に入る前に見つけた一番大きな桜の影に、そっと梨華を誘い込む。
「ほら。2人っきりになったよ。」
「もぉ・・・お花見にきたんじゃないの?」
「そうだよ。だけどさ・・・」
「なに?」
「なにって。わかってるくせに。」
「全く・・・ひとみちゃんは。」
あたしの首に両手をまわすと、深い口付けをしてくれた。
梨華はあの時何も変わらないと言ったけれど、あたしたちの関係は
微妙に変わり始めていたのかもしれない。
それはもちろんいい意味でのこと。
ちょっとしたことで喧嘩したり、拗ねたり、妬いてみたり。
それはどちらかの想いが一方通行でないことの表れで、
つまりは互いに信頼しあえている証拠なのだ。
それら全てのことは、じゃれあいの延長みたいなものだったから。
- 232 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時12分11秒
「梨華のキス、情熱的だね。」
「クスっ。ありがと。」
「はぁー・・・幸せだなぁ・・・」
まわしている腕にぎゅっと力をこめて抱きしめる。
「幸せって思ってくれるの?」
「あぁ。もちろん。梨華といるとこんなにも幸せ。」
「私も。」
見つめ合うわずかな隙間を縫うように、風に吹かれた桜の花が、
また雨のように舞い落ちてきた。
「やっぱ学校サボってよかったよ。今日できっと見納めだ。」
「あー。寝坊の言い訳してる。」
「言い訳じゃないよ。ぎりぎり間に合う時間だっただろ?」
「でも結局サボったから意味ないじゃない。」
「なんだよー。せっかくいい雰囲気だったのに。」
大げさにふくれてみせると、また梨華がおかしそうに笑った。
- 233 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時13分39秒
「ひとみちゃん。」
「んぁ?」
「桜、見に連れてきてくれてありがとう。」
「あはは。文句言ってたくせに。」
「私一人だったらきっと、こんなステキなもの見逃すところだったと思うから。」
「それはよかった。」
「今日はいっぱいドキドキしちゃった。
電車の中でキスしたり、学校サボってお花見したり。」
「あたしといると道踏み外すかもね。」
「ホントだよー。・・・でもね。」
「でも?」
梨華の瞳が眩しげに伏せられた。
「ひとみちゃんについていきたい。迷いそうになったその時は、
ちゃんと私が手を引いてあげるから。」
「梨華・・・・・・・」
「ひとみちゃんを愛しています。」
それ以上の言葉など、もうあたしたちには必要なかった。
どちらからともなく重ねた唇が、想いの全てを物語っていたから。
きっと今この瞬間も、桜吹雪は吹いているのだろう。
頬にあたるくすぐったい感触は、目を閉じていてもちゃんとわかる。
それはまるで2人を包み込む、祝福のベールの如く。
求め合う互いの心の中にも、桜吹雪は尽きることなく舞っていた。
『83days〜続編〜』 おわり
- 234 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月23日(水)23時18分13秒
- >作者
ということで、これにて終わりとなります。
あぁ。なんだか反応が怖いような待ち遠しいような・・・(w
あぅー。できれば暖かいレスお願いいたします(笑)
作者、これで結構落ち込んだりもしますので(w
次回からは短編をいくつかUPしたいなと思っております。
もうそろそろこちらのスレもいっぱいになりつつありますので(w
またその時は新規スレにてUPしたいと思います。
それではどうもありがとうございました。
ご期待に応えられなくて申し訳ないです(汗)
これに懲りずについてきていただけると、
作者かなり嬉しく思います。
どうもありがとうございましたー♪
=修行僧2003=
- 235 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月23日(水)23時20分44秒
- あ・・あのぉ、溶けていいですか?
リアルタイムで最上級の甘い攻撃を受けてしまい昇天
寸前です。良い作品に出会えて、今とても幸せな気持
ちです。作者さんどうもありがとう。
- 236 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月24日(木)00時05分04秒
- 遂に終わってしまったのですね。お疲れ様でした
このシリーズ凄い好きだったのでいつかまた番外編などで会えると嬉しいですね〜
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月24日(木)00時13分59秒
- 前々から読ませてもらってますが、作者さんの書く話やっぱイイ!!
と再確認してしまったので、思わずレスしちゃいました(w
もし機会があれば、ぜひ83daysの学校生活編?みたいの読みたいです!!
短編楽しみに待ってます!!
- 238 名前:209 投稿日:2003年04月24日(木)01時40分55秒
- 完結、お疲れ様でした。
ぐはっ、今身体中から糖分が溢れて溶け出しております・・
結ばれてからも変わらない、ふたりの関係がいしよしらしくて
イイですね。セリフのひとつひとつが深いものばかりで、いちいち
頷いてましたw
最後のシーン、情景が浮かぶようでした。
この「サクラサク。」の冒頭のシーンとリンクしてるような感じです。
(設定とかは違いますが)
短編もあるんですか!?もぉ糖分補給を期待しておりますw
- 239 名前:名無し読者79 投稿日:2003年04月24日(木)09時00分44秒
- お疲れ様です。
すばらしいとしか言えません。
二人の幸せそうな顔が浮かんでくるようです。
さくら、春はいろいろな意味がありますがこの二人は
きっと新しい何かが始まったんでしょうね。
次回作楽しみにしています。
- 240 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月24日(木)13時20分14秒
- 完結お疲れ様です。
これっ、この甘さが最高なんですよ。
なんか読んでて、本当にあるだろって
思っちゃいます。いいですね〜ほんと。
>なのに作者ったら無精者でごめんなさい(汗)
また覗かせていただきますね♪
いいえ、作者様、自分はここが大好きなんで見せて
もらってるんですよ。気を使わんでください。
でも、もしよかったら覗いてってくださいね!
(どっちなんだろ?(w
短編も期待ですね。
- 241 名前:チップ 投稿日:2003年04月24日(木)14時22分36秒
- おぉぉぉおぉぉおぉ…とろけましたぁ…
ニヤつきすぎて頬の肉が痛いです、明日筋肉痛になりそー
なんか一生好きでいられる二人なのねぇ…ってしみじみしちゃいました。
懲りるなんてとんでもない!この目が見える限りついていきます☆
えーと…暖かいですか?wサムかったらごめんなさい。
本当によかったのれす、次も楽しみにしてます。
- 242 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時41分15秒
- >ROM読者さま
おぉ!リアルで読んでくださったのですか!!!
すごーく嬉しかったです♪
感想も、ありがとうございました。本当についてきてくれて嬉しかったです。
>236名無し読者さま
えへへ。ありがとうございます♪
もしご期待くださるのなら、是非番外編書いてみたいと思います。
その時にはぜひぜひ読んでやってくださいね♪
>237名無し読者さま
わぉ♪ありがとうございます♪
本当に嬉しかったので、237さまのリクにお応えして、
学校生活編UPしたいと思います。
もうしばしお待ちくださいねー♪
>209さま
うふふ。やはりそう思いました?(w>サクラ
かぶるかな?とも思ったんですけど、
スレ自体、サクラサクなのでいいかなと思いまして(笑)
今回のはおバカ甘です。ご期待ください(笑)
- 243 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時48分27秒
- >名無し読者79さま
本当ですか!?すっごく嬉しいんですけど!!!
作者の小説って、やっぱりうまいとは言い難いんですよね。
それは自分でもわかっています。
設定あまいし、つめもあまい(w だけど一生懸命書いているので
よければこれからも応援ください。お願いします。
>サイレンスさま
非常に嬉しいお言葉、作者涙で前が見えません・・・(涙)
実はいしよし読みたいんです。
だけどね、他の人のを読んじゃうと、影響を受けてしまうのが
怖くて・・・。というよりも、うまいなぁと思うので
へこんじゃうんですよね、他の作者さまの小説に(w
こちらが落ち着いたら、必ず読ませていただきます!
>チップさま
暖かかったですよー♪もう喜んじゃって、浮かれちゃいました(笑)
チップさまにも随分励ましていただきました。
本当に感謝の言葉もみつかりません(涙)
よければまた応援してやってくださいね♪
- 244 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時52分56秒
- さて、以前より警告しておりました(w、ただ甘いだけの話、
UPしたいと思います。
ストーリーとか設定とかは期待しないでください。
きっと内容ないですから(w
暇つぶしに読んでもらえたらいいなぁって程度のものですが、
どうぞよければ読んでみてください♪
『大事なものってなーんだ?〜そんな2人はバカップル♪〜』
「はやくきてーっ。はじまっちゃうよぉ♪」
甘ったるい梨華の声が、キッチンに届く。
「うん、今いくから。」
鼻歌混じりにガスコンロの火を止める。
お歳暮にもらったドリップ式のコーヒーにお湯を注ぐと、
たまらなく香ばしいかおりが鼻腔をくすぐった。
「わぉ♪いい香りだ。」
ミルクと砂糖を一緒にトレイに乗せて、
梨華が待つリビングへと慎重に足を進める。
- 245 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時54分30秒
- 「気をつけてね。足元暗いから。」
「ホント、気をつけなきゃ。」
ここはあたしの家。
今日は休日で、おまけに家族はみんな出払っているから、
梨華を呼んで自宅でデートをすることになったのだ。
午前中なのに部屋の中が暗いのは、
借りてきたホラービデオをより楽しむための演出。
カーテンも締め切って、テレビのボリュームを上げると、
ちょっとしたシアター風で心が躍る。
お土産に買ってきてくれたベーグルは、ちょうどいいブランチになる予定。
あたしは両手に好きなものを抱えることができて、本当に幸せだ。
「お砂糖何杯にする?」
「いつもと一緒。1杯半!」
2杯と答えないところが、彼女の微妙な乙女心の表れで。
あたしはついついにやけてしまうのだ。
- 246 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時55分42秒
- 「2杯入れても変わらないと思うよ?」
「いいのっ。入れすぎると太っちゃうから。」
「はいはい。1杯半だね。」
クスクス笑ってミルクと一緒にかき混ぜてあげる。
「また笑ってるー。感じわるーい。」
「そんなこというなよ。かわいいなって思ってるんだから。」
自分の分にはミルクだけを入れると、とりあえずそれをテーブルに置いて
すかさず彼女の後ろに座り込んだ。
「ほんと、ひとみちゃんていいクッションよね♪」
「梨華はさしずめかわいいぬいぐるみかな?」
ぎゅーっと抱きしめてぬいぐるみの感触を味わう。
「もぅ、なにやってるのよ。くすぐったいじゃない。」
文句を言っているわりに、甘い声。
首元に這わせた唇が、自分の意思とは無関係に動いてしまう
のだから仕方ない。
- 247 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時56分49秒
- 「ぬいぐるみは文句言わないの。」
「キスするクッションってのも聞いたことないよ?」
「それなら一家に一台どう?」
「高くつきそうだから遠慮しておくわ♪」
「本当は欲しいくせにー。」
「はいはい。」
首を後ろに回してキスをしてくれた。
部屋の暗さも手伝って、どんどんその気になっていくあたし。
「・・・んっ・・・すぐ・・・本気になるん・・・だから・・・」
「・・・いいから・・・黙って・・・」
ウエストにまわしていた手をゆっくりとあげて、梨華の胸に触れてみる。
「ダメ・・・」
「・・いい・・じゃん・・・誰も・・・みて・・・んっ・・・っ・・ない・・し・・・」
===きゃーーーーーっ!!!===
大音量の叫び声があたしたちを固まらせた。
いつのまにかビデオの本編が始まっていたのだ。
- 248 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時57分54秒
「・・・見よっか。」
「そうだね・・・」
水をさされてしまったから、とりあえずビデオに集中することにした。
「ベーグル一個とって。」
「はぁい。」
ガサガサと紙袋から取り出してもらったそれに、ぱくりとかぶりつく。
両手は梨華を抱きしめるのに手一杯だから、
彼女がそれを食べさせてくれていた。
「うめーっ。やっぱプレーンが一番だな。」
「どれどれ・・・。うんっ、おいしいね。」
一つのベーグルを2人で食べる。
紙袋の中にはまだ手のつけていないベーグルはあるのだけれど。
「うわー、見てあれ。気持ち悪ーい。」
「うげっ。すごいな。」
とかいいつつも、しっかりと頬張るのは女の子独特の神経の太さ。
死体に群がるねずみを見てもへっちゃらなのだ。
- 249 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時58分40秒
「あ。きっとこいつも殺されるぞ。」
「わかっててもそういう事言わないの。」
ビデオにも段々と飽きてきたあたしは、梨華の気を引くのに懸命で。
逆にホラーが大好きな彼女の目は真剣そのもの。
「ねぇ、つまんないよー。」
「静かにっ。今いいとこなんだから。」
「ちぇー。やっぱアクションものにしたらよかった。」
腕を精一杯のばしてカップをとると、中途半端にぬるくなってしまった
コーヒーをすすった。
「はぁ・・・。いつ終わるんだ、これ。」
カウンターを覗き込んでも、軽くあと30分は付き合わされることになりそう。
相手をしてもらいたくてキスしたり、くすぐったりもしてみたけど、
全然反応がないから本当に面白くない。
- 250 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)22時59分39秒
「梨華ぁー。」
「んー」
生返事だけが返ってくる。
「ねぇったらー。りーかー。」
「・・・はぁーっ・・・なに?」
やっとこっちを向いてくれたのは嬉しいけど、どうやらご機嫌斜めのようす。
「つまんないよ。もっと楽しいことしようよ。」
「あと少しなんだから、もうちょっと待って。」
「ちょっとじゃないじゃん。もう飽きたよ。」
「ほら。まだベーグル残ってるよ。これ食べて待ってて。」
まるで相手にされていないことに、不満が募っていく。
「もういいや。寝てるから終わったら起こして。」
そう言って梨華の体から離れると、ふてくされるように
背にしていたソファーに寝転んだ。
- 251 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)23時00分30秒
あーぁ。こんなはずじゃなかったのに。
もっとラブラブするつもりだったのに。
今更だけどビデオの選定に失敗したことを後悔した。
天井にはテレビからもれる光が、チラチラと映し出されている。
あと少しだけ我慢しよう。
ビデオが終わったらきっとまたラブラブになれるはずだから。
おどろおどろしいBGMを聞きながら、赤や緑に染まる天井を眺めていた。
けれど。
不意に視界が遮られた。
見上げる視線に映っているのは、心配そうに見ている梨華の顔。
- 252 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)23時01分26秒
「拗ねちゃった?」
眉毛をハの字にさげている。
「べーつに。」
「やっぱり拗ねてるじゃない。」
「はぁーっ・・・終わったの?ビデオ。」
「ううん。まだ終わってない。」
「いいとこなんじゃないの?見てたらいいのに。」
「だってー・・・」
梨華はあたしの横にひざまずくと、額の上に手を置いた。
「心配になっちゃったんだもん。怒らせてしまったかなって・・・」
「ふっ。別に怒ってなんてないよ。ただちょっと寂しかっただけだから。」
「あぅ・・・ごめんね?」
額をなでていてくれた手をよけると、そこにキスを落としてくれた。
「いいよ、もう。ほら、見てきたら?待ってるから。」
さっきまでは拗ねていたけど、相手になってくれたことが嬉しかったから、
あたしはもうそれで許してあげることにした。
- 253 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)23時02分28秒
- 「そんなこと言わないで一緒に見ようよー。」
「つまんないからいいよ。別に怒ってる訳じゃないからね?」
「一緒に見て欲しいのっ。」
「なんだよ・・・さては怖いのか?」
「違うよ。こんなのは怖いうちに入らない。」
「だったら一人で見たらいいじゃん。その方が集中できるし。」
「もー。理解してよ、私の気持ち。」
髪に指を絡めて、甘える声であたしを見る。
「何が言いたいんだ?」
「だから・・・ひとみちゃんのクッションが欲しいの。」
「さっきはいらないって言ったくせに。」
おかしくなってクスクスと笑ってしまう。
「寂しいんだもん。抱きしめてくれてないと。」
「なんだよ、それ。」
「ねぇー。お願い。」
「全く・・・しょうがないやつだな。」
減らず口を叩いたけど、本当は嬉しくてたまらない。
だからあたしは体を起こして彼女を抱きしめた。
- 254 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)23時03分19秒
「高くつくよ。いいの?」
「ローンで返せるのなら。」
「あぁ、もちろん。でもさ、そう安くはないんだよね。」
「えーっ。お安くしてくれないかしら?」
「だめー。50年は返せそうにないよ。」
クスッと笑ってキスをする。
「なら一生大事にするわ。それだけ値打ちもののクッションなら。」
「交換、返品は一切ダメだからね。」
「ふふっ。誰にも渡しはしないわよ。私だけの大切なものだから。」
合わせた唇にたっぷりと利息をつけてもらうと、
あたしはまた性懲りもなくクッションになってあげた。
- 255 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)23時04分18秒
「どうですか姫。座り心地の程は。」
「そうね。なかなかよろしいのではなくて?」
「あはは。それはよかった。」
ぎゅっと抱きしめる体に愛しさを感じる。
こんな何気ない時間が、今のあたしには大切な宝物。
幸せってすごく身近にあるものだって、そう思えるから。
「ねぇ、ひとみちゃん。」
「ん?なに?」
「知ってた?」
「なにが?」
「ちなみに言うと、ぬいぐるみも返品きかないんだよ。」
***おわり***
- 256 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月24日(木)23時07分33秒
- >作者
短編でしたー(笑)
もっとおバカな甘書こうと思ってたのに、おかしーなー(w
次回こそは、おバカ甘目指してみよう♪
あ。ほどほどにご期待ください(笑)
1本書くのに大体3時間はかかりますので、
早ければ明日。筆が進まなければ3〜4日はかかりますが(w
仕事のストレスをこんなところで発散させてもいいのだろうか???
一応そういうことなので、不定期投稿になりますが、
よければこれからも応援してくださいね♪
よろしくお願いします。
=修行僧2003=
- 257 名前:シフォン 投稿日:2003年04月24日(木)23時52分33秒
- いや〜、甘くて良いれすっ!!(素)
<仕事のストレスをこんなところで発散させてもいいのだろうか???
良いんですってば(笑)
ウチは作者様の書かれる小説を読む事で、お仕事のストレスを発散させているのですから(笑)
これからもとろけちゃうくらい激甘ないしよし、楽しみにしていますね♪
無理なさらず頑張って下さい☆
- 258 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月25日(金)00時19分48秒
- 仕事のストレス発散結果が、このめちゃ甘作品って・・・
作者さんのストレスって・・一体・・。
- 259 名前:238 投稿日:2003年04月25日(金)01時16分44秒
- ただ甘いだけのお話、更新お疲れ様ですw
いやぁ〜、良い!ひたすら良い!
休日のビデオの時間をここまで甘い空間に出来るとは・・
さすがでございます。
自分も座り心地が良いクッションと、文句を言うぬいぐるみが欲しい
です、ハイw
激甘いしよしでストレスを思い切り発散して下さいね。
ロックオン♪して付いて行きますよ!
- 260 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月25日(金)13時50分17秒
- この甘く可愛い雰囲気がたまりません〜。
ストレス発散どんどんしてください♪(笑)
- 261 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月25日(金)21時35分25秒
- PVを見てやはり石吉並びは良いと再確認した今日この頃。
UFAは石吉を認めたのだろうか?
- 262 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時21分14秒
- >シフォンさま
いやはや。嬉しい限りでございます♪
またまたやる気がぐーんとUPしてきました。
どうぞこれからもついてきてやってください。お願いしますね♪
>ROM読者さま
それは内緒です(w いしよしヲタになれて
心から感謝しているのですよ、あの2人には。
ROMさまももっといしよしにはまりましょうね♪
でもベーグルの食べすぎにはご注意ください(w
>238さま
でもそのぬいぐるみ『あぶらみ食べて〜♪』
とかも言いますよ?(w それでもよければ(笑)
・・・あ。すみません。今吉澤さんに確認したところ、
絶対誰にも譲らないということでしたので、諦めてください(笑)
感想いつもありがとうございます♪
>260名無し読者さま
お褒めのお言葉ありがとうございます♪
励ましのお言葉をいただけると、本当にやる気がでてきますので、
これからも影ながらではなく、全面的に作者のこと
応援してください(w よろしくお願いします♪
>261名無し読者さま
どうなんでしょーねー。認めて欲しいっ!(笑)
理解して!いしよしって感じなのですが。
所詮アップフロント。ファンの心を逆撫でするのが趣味ですから(w
- 263 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時27分34秒
- >作者
えっとですね。調子にのって書いてしまいました。
83daysの番外編!(w
視点は梨華ちゃんから始まります。
一応2話構成の予定で、今回は1話分UPします。
え?2話目は書けているのかって???
やだなぁ。聞かないでくださいよ(笑)
ここに来てくれている人はきっとわかってくれていると
思いますが(w いつもあっぷあっぷでございます(笑)
それと、作者のストレスネタでやや賑やかしかったのが、
たまらなく嬉しかったです。
みなさん声をそろえてつっこんでくれたことに
ただただ感謝♪(笑)
これからも、がんばっていきますのでどうぞ
ついてきてやってください。
それでは『83daya』番外編、どうぞ。
- 264 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時30分59秒
『83days』〜番外編〜
=石川視点=
「今年の一年は粒ぞろいだねー。」
「ほんとほんと。」
「えーっ、よく見えないよぉー。」
「しーっ!みんな声が大きいよ。気付かれちゃう。」
お昼休み。
私を含めた、ごっちん、美貴ちゃん、亜弥ちゃんの4人は、
こそこそと廊下の階段の影に身を潜めていた。
私たちが一体ここで何をしているのかと言うと・・・。
- 265 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時32分05秒
「あっ、わかった。あの子だよね、ひとみちゃん。」
「どれどれ!?」
「あーん。だから見えないってぇー。」
「しーっ!!!」
いつも話しているひとみちゃんを、一度見てみたいと言いだしたのはごっちん。
私と彼女は2年でも同じクラスになった。
美貴ちゃんと亜弥ちゃんは隣のクラスになってしまったけど、
今でも仲良し4人組だから、便乗しての見学会になってしまったという訳。
「梨華ちゃん、ちょっと呼んできてよ。」
「そうだそうだー。」
「だからぁ・・・見えないって・・・」
「えーっ!やだよ、そんなの。・・・恥ずかしい。」
「何恥ずかしがってんの?別にいいじゃん。ほら。」
ごっちんはどうやらひとみちゃんにものすごく興味があるみたいで。
それはいつも私が彼女のことをのろけていたせいかもしれない。
- 266 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時33分44秒
- 「見るだけだっていうから連れてきたのに・・・。」
「それで済む訳ないじゃん。美貴ちゃんも亜弥ちゃんも
ひとみちゃんに会いたいよね?」
「もちろんっ。」
「わたしもー。」
「ほら、みんな乗り気だよ?」
にやりとごっちんが笑った。
こうなると、もう後には引けない訳で・・・。
「わかった。それなら呼んできましょう。」
ワッとその場が盛り上がったけど、正直それはかなり辛いことだった。
1年のクラスに2年の私が入っていくという行為に、
おそらく注目の的になるのは必至だから。
それともう一点。
ひとみちゃんを囲むように集まっているクラスの子たちは、
みんなかわいい子ばかりで、それが少なからずも面白くなかったから。
おまけにみんな、ひとみちゃんを見る目が輝いている。
それが何を意味するのかは、おのずと知れたこと。
きっとひとみちゃんは気付いてないのだろうけど・・・。
私がそこへ入っていくということは、敵地に乗り込む覚悟がいることなのだ。
- 267 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時35分00秒
「なにモタモタしてんの?なんならアタシが行ってきてあげようか?」
「だめっ!余計話がややこしくなるからっ!」
「ややこしくなる???」
ごっちんが入っていくなんてとんでもない。
私が呼びにいくよりも、きっと後で問題になるのは目に見えている。
「・・・いいの。なんでもないから。」
「なら早く行ってきてよ。ほら、照れてないで。」
はぁーっと一つため息をつくと、私はできるだけ注目を集めないように、
そっと扉を開けた。
だけど・・・。
やはり教室に入った瞬間、おもいっきりみんなの視線が集まった。
好奇の視線が突き刺さる中、それでも一人だけ優しい瞳で
見つめてくれた人がいる。もちろんそれはひとみちゃんなのだった。
「梨華!」
私の顔を見るや否や、すぐに飛んできてくれたのは嬉しいけど・・・。
取り巻きにいた子たちのほとんどが、いぶかしげに私を見ていた。
- 268 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時36分04秒
「どうしたんだ?何かあったの?」
さっきとは打って変わって心配げな瞳。
「あっ・・・ごめんね。別に何があるって訳でもないんだけど・・・。」
「はぁーっ、よかった。びっくりしたよ。」
「ごめんね?」
「なんだよー。別に謝ることなんてないじゃん。会いにきてくれるなんて嬉しいよ。」
優しく笑ってくれた瞳にきゅんと胸が高鳴る。
ここのとげとげしい空気の中に唯一咲いた、一輪のオアシス。
「あの・・・ね。それがちょっと言いにくいことなんだけど・・・。」
「なに?やっぱり何か用事があったの?」
「うん。とにかくちょっと出てくれない?」
「あぁ。いいけど。」
やっとひとみちゃんを連れ出すことに成功したのもつかの間。
待ってましたとばかりに、3人がやってきた。
- 269 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時37分56秒
「うひょー。近くで見ると」
「なかなか」
「美少女!」
3人は息もピッタリに声をそろえた。
「なに・・・一体?」
困惑気味に私を見る瞳。
「あ、あのね。みんなひとみちゃんに会いたいって言うものだから・・・。」
「ほら、ちゃんと紹介してよ。」
ごっちんが肘でつついてきた。
「こほん。では改めまして。えっと・・・」
「後藤真希です。ごっちんって呼んでくれていいよ。よろしくね、ひとみちゃん。」
「藤本美貴です。美貴でもみきてぃーでもご自由に。よろしくっ。」
「えーっとぉー。松浦亜弥ですぅー。あややって呼ばれることもあるけどぉー・・・」
「長いよ、亜弥ちゃん!!!」
的確なツッコミを入れたのはやはり美貴ちゃんだった。
いや、そんなことは今はどうでもいい。
私がちゃんと説明しようと思ってたのに・・・。
- 270 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時39分17秒
ひとみちゃんはちらりとこちらを見ると、一瞬にしてこの状況を
把握したらしく、キリっと冴えた目で3人に向き合った。
「吉澤ひとみです。ごっちん、美貴さん、亜弥さんですね。初めまして。
いつも梨華がお世話になっています。」
瞬間ピリッと空気が引き締まったよう。
その時のひとみちゃんのかっこいいことといったらこの上ない。
「へぇー。しっかりしてるんだ。」
「ほんと。すごいね。」
「すごーいっ。1年生とは思えなぁーいっ。」
3人はただただ感嘆の眼差し。
私はちょっぴり得意げになる。
だけど、教室からこちらを覗き見してるいくつかの眼差しが
気になったから、早々引き上げることにした。
「さっ、もういいでしょ。教室帰ろ。ひとみちゃんもごめんね?」
「えー。挨拶しただけじゃん。もっとひとみちゃんと話したいよ。」
「そうだよね。」
「わたしもー。」
- 271 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時40分53秒
- ちらっとひとみちゃんを見ると、彼女は優しげに頷いてくれた。
どうやら私の顔を立ててくれるらしい。
「あたしでよければお相手しますが。」
立ち話もそこそこに中庭へと移動した私たち。
それからは5人で、春うららかな陽気の下、色んな楽しい話をした。
話は専らひとみちゃんのことが中心に。
もちろん私たちの付き合いのことについても色々つっつかれて
苦笑したりもしたけど。
「さ、そろそろ引き上げるか。」
「そうだね。」
「えーっ。もっとおしゃべりしたいよぉー。」
「んとに、亜弥ちゃん。ちょっとは気をきかせてあげなよ。」
美貴ちゃんが亜弥ちゃんをたしなめるようにそう言うと、
私のことをちらりと見た。
「そうそう。これ以上お邪魔したら悪いしね。」
ごっちんがにやっと笑った。
「あー、そうかー。2人はラブラブだもんねー。」
亜弥ちゃんがダメ押しの天然キャラクターでそう言うと、
みんな一斉に笑ってしまった。
「いくらラブラブだからって、午後の授業サボっちゃだめだよ。」
ごっちんは先日の花見の話を思い浮かべたらしく、
私とひとみちゃん両方を意味深な眼差しで見ていた。
- 272 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時42分01秒
「あはは。今日はサボりませんよ。」
先に反応したのはひとみちゃんだった。
さっきから話してて思ったけど、どうやらこの2人は息が合うらしい。
それどころか、こっちが見ていてヤキモチを妬いてしまうくらい、
2人は今日初めてあったばかりとは思えない程、仲良く話していたのだ。
「私、みんなと一緒に帰るよ。」
だからだろうか。
妙な意地が出てきて、ひとみちゃんと残ることをやんわりと
拒否してしまった。
いつもべったりしていなくても、2人は仲がいいんだってことを示したかった
のかもしれない。
「無理しなくていいって。梨華ちゃんはもう少し一緒にいてあげたら?」
ごっちんはもちろんそんな私の気持ちなんてわかっていない。
本当の好意でそう言ってくれたのに違いないのだ。
だけど・・・。
- 273 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時43分07秒
「いいの。一緒に帰る。」
ひとみちゃんを見ることができなかった。
私のちっぽけなプライドが素直な心にフタをしてしまっていたから。
なんでこんなにも自分は、嫌な人間になっているのだろう・・・。
ネガが入りそうになっていた、そんな時。
「まだ帰さないよ。」
みんなが見ている前だというのに、彼女は私の手を引き寄せて抱きしめてくれた。
「ヒューっ♪ごちそうさま。」
ごっちんが口笛を鳴らした。
「わぉ♪本当にラブラブなんだ。」
美貴ちゃんはどうやら照れている様子。
「うわぁー。すごーいっ♪」
亜弥ちゃんもちゃかしているのか、聞いているこちらがくすぐったくなる声をあげた。
- 274 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時44分53秒
「ひとみちゃん・・・」
「梨華はあたしとここにいる。そうだろ?」
「・・・うん。」
私はただひとみちゃんを見上げていた。
彼女がしたウインクの先にはきっとごっちんがいるのだろうけど。
3人がここから姿を消すと、私たちだけがそこに取り残される形になった。
抱きしめられたそのままで。
「梨華は本当にわかりやすいね。」
頭を抱きかかえるようにして、ひとみちゃんがつぶやいた。
きっと私の気持ちなんてお見通しだったのだ。
「・・・だって・・・。」
「友達に意地張ってどうするんだよ。」
クスクスと笑う声が体に響いてくる。
「妬いちゃったんだもん、仕方ないでしょ。」
「あぁ。わかってるさ。そんなことぐらい。」
「だったらなんでごっちんと仲良くしたりするの?」
- 275 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時45分52秒
- 「あはは。それっておかしくないか?梨華がここに連れてきたんだぜ?
仲良くしないでどうする。」
「でも特別ごっちんとは仲よかったんだもん。」
「それは梨華が一番世話になってる相手だと思ったから。」
「本当にそれだけ?」
「はぁ?何言ってるの?」
「ごっちん・・・綺麗だったでしょ。」
私はぎゅっと彼女のブレザーをつかんでしまった。
「そうだね。話に聞いてた感じとは違ったかな。
もっと活発な感じだと思ってたけど。案外美人だった。」
「やっぱり・・・ね。」
「また妙なこと考えてるんじゃない?
美人だとは思ったよ。だけどそれだけ。誤解するなよ?」
そう彼女は言ってくれたけど、やっぱりヤキモチを妬いてしまうのは、
私の心が狭いからだろうか・・・。
- 276 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時47分00秒
「まだ妬いてるだろ。梨華。」
「・・・うん。」
「確かにごっちんとは気が合うと思ったよ。
でも友達以上の感情なんて沸く訳ないじゃない。
あたしが梨華に惚れてるの、忘れた?」
「忘れてないよ。わかってる、ちゃんと。」
「ならそんな顔しないの。好きなのは梨華だけだから。
キスしたくなるのも、抱きしめたくなるのも、梨華ただ一人。」
「ありがと・・・」
「おいおい。それでもまだネガ入ってるのか?」
ひとみちゃんは苦笑いを浮かべているに違いない。
抱きしめられていて、その表情を見ることはできないけれど。
「ううん。ポジティブだよ、いつでも私は。」
「ウソつけ。ちっとも響いてこないぞ?ポジティブな梨華の声。」
「あはは・・・やっぱりまだダメかな。」
「それなら一ついいこと教えてやるよ。」
ひとみちゃんは抱きしめていた体を離すと、私を見つめて言った。
- 277 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時48分11秒
「あの中で、一番梨華がかわいかった。」
「うそ。みんなの方がかわいいもん。」
「梨華が一番だよ。あたしの心を熱くさせるのは梨華しかいない。」
「本当にそう思ってくれてるの?」
「もちろん。今ここで押し倒したいくらい。」
「またそんなこと言ってー。」
ふわりと笑った笑顔に心が癒されていく。
ひとみちゃんは、こんなにも私のことを思ってくれてるんだって、
自惚れさせてくれるから。
「はぁーっ。やっといつもの梨華らしくなってきたな。」
「・・・ありがと。もう大丈夫みたい。」
「うん。それもわかってる。」
「なんでもお見通しなのね。」
「当たり前じゃん。好きなんだから。」
サラッと言ってくれたけど、その言葉にどれほど勇気付けられていることか。
無理にポジティブを決め込まなくても、自然と笑顔になれるのは、
いつでもひとみちゃんが側にいてくれるから。
- 278 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時49分17秒
「ひとみちゃん。」
「ん?」
「好き。」
「うん。わかってるよ。」
「本当に好き。」
「あはは。今日は『好き』の大安売りの日か?」
「もぉ。からかわないで。」
「はいはい。で?それだけ好きって言ってくれるからには、
当然してくれるんだよね?」
にやりとした目で私を見ている。
だけど、私が唇を近づけていくと、その瞳もちゃんと閉じられていった。
「好きよ・・・ひとみちゃん・・・」
「・・・・っ・・・梨華・・・・」
予鈴のチャイムが鳴り終わるまで、2人の唇が離れることはなかった。
- 279 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月26日(土)00時51分21秒
- >作者
はい、と言う事で、1話終わりです(w
次回は吉澤視点からの始まりですが。
果たしてこれって本当に学校生活編なのか!?(w
作者も疑問に思いますが、そのへんのところは
大目にみてやってください(笑)
それではまた次回。
早く書ければいいのになぁ〜♪(w
応援よろしくお願いします。
つづく。
- 280 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月26日(土)05時06分30秒
- くぅ〜〜、やきもち妬きの梨華ちゃん可愛い!(爆
>果たしてこれって本当に学校生活編なのか!?(w
んはは、生活に「りっしんべん」が付かない様に。
- 281 名前:名無し読者79 投稿日:2003年04月26日(土)09時27分27秒
- 甘いですね〜本当甘いです。
顔の筋肉が緩んでます。あまりにも梨華ちゃんが可愛すぎて…。
よっすぃーもこんな風に言われたらうれしいんでしょうね。
愛されてる証拠です!
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月26日(土)10時20分28秒
- 早くも番外編が!
友達に嫉妬しちゃう梨華ちゃんが可愛いですね〜。
帰ろうとする梨華ちゃんをよっすぃが引き留めるシ−ンが凄く好きです。
- 283 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月26日(土)15時17分23秒
- 更新お疲れ様でした。
さっすが作者様。本当に甘い恋人ないしよしに
自分、くらくら状態です。
今回のかなりやきもち妬きな梨華ちゃんも
すっごくかわいいですね。
後半も吉澤視点ということでその視点からの
石川さんのかわいさにも期待させてもらってます。
(ここの石川さんが大好きなんです
- 284 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時04分11秒
- >ROM読者さま
梨華ちゃんお褒めいただき光栄です(w
りっしんべんをつけないでも楽しんでいただけるように、
これからもがんばりますね(笑)
>名無し読者79さま
おぉ!なんだか常連さんになっていただけてるみたいで、
かなり嬉しいのですが♪♪♪
梨華ちゃん頑張ってますよぉ(笑)
よっすぃーも頑張りますのでぜひぜひ応援してくださいね♪
>名無し読者282さま
番外編、ご期待くださいましてありがとうございます♪
梨華ちゃんを止めるよっすぃー。
かなり男前だったのではと(w
これからもどうぞ読んでやってくださいねー♪
>サイレンスさま
またまたお運びいただき恐縮です(汗)
それにお褒めのお言葉、すんごく嬉しかったです♪
ヤキモチ梨華ちゃんは、作者もかなり好きで。
よっすぃーが妬くと、どうしても痛い方向に転んで
しまうので、これからはそれが課題となってくるでしょうねー。
いつも応援ありがとうございます♪
- 285 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時05分27秒
- さてさて。実は2話と申しておりましたが、
吉澤視点、思ったよりも長くなってしまって。
(おまけにまだ完結していない(w )
ですので、前編後編の2投稿したいと思います。
よければ、またりとお待ちくださいませ。
近いうちに後編もUPできるかと思いますので。
(ただいま75%くらいはできております(汗))
それでは続き、お楽しみください♪
- 286 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時11分48秒
=吉澤視点=
本鈴が鳴り終わる前に、なんとか教室に戻ってくることができた。
唇には梨華の感触がまだ生々しく残っている。
自分の唇を指で触れてみて彼女が残してくれた甘いキスの余韻を辿ると、
思わず頬も緩んでしまうのは、いたしかたないこと。
「よっすぃーさっきの人、2年生の人やろ?」
よっすぃーとは、ここにきてつけられたあたしのあだ名。
専らそう呼ぶのは彼女くらいのものだけど。
なかなかにカッケーそれを命名してくれたあいぼんが、
あたしにそっと話しかけてきた。
「んぁ?そうだよ。よく知ってるね。」
「やっぱりなー。ほんで何の用事やったん?」
「え?まぁ、ちょっとした顔合わせかな。」
- 287 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時14分43秒
- 「そうなんや。まぁ、その話はひとまずおいといて。
なぁ・・・教室入ってきた時、ここの空気ちょっとおかしいと思わへんかった?」
「別に?何か変わったかな?」
あたしの心は梨華のキスで浮かれていたから、
空気がどうのといわれても、いまいちピンとこない。
「よっすぃーが出て行った後、大変やってんで。」
「どうして?」
「あんた、ほんま鈍いなぁ・・・。みんなの憧れのよっすぃーってこと、
わかってへんやろ。」
「はぁ???」
素っ頓狂な声をあげてしまったのは、初めて聞かされる情報だったから。
「あちゃー。あれだけ取り巻き囲っといて、なんできーつけへんのかなぁ。」
「そんなこと言われても。それで、どう大変だったの?」
「あの人よっすぃーの恋人ちゃうかって、その話題でもちきりやったんや。」
「あはは。それ、正解。」
「・・・うそぉー。ほんまかいな。まぁ、うちはそんなことどうでもええねんけどな。
でも、そのことクラスの子たちには言わんほうがええで。」
- 288 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時16分56秒
- 「別に言いふらすつもりはないけど。でも隠す必要もないんじゃない。」
「あぁ・・・。ほんまわかってへんわ。女子校の怖さを。」
あいぼんはそう言ったかと思うと、頭を抱えてしまった。
「何が怖いって言うの?」
「要はかわいさあまって憎さ1万倍っちゅーことや。」
「なんだよ、それ。」
「まぁ、とにかく忠告はしといたからな。きーつけた方がええで。」
気をつけるも何も。
あたしが誰と付き合おうが、そんなことは誰の指図も受けない。
そもそもここに来たのも、梨華と一緒にいたかったから。
ただそれだけの目的で。
だけど、その忠告を守っていればよかったなんてことは、
後になってから気付いたことだった。
5時間目の授業も終わり、10分の休憩時間を寝て過ごそうと
思っていたあたしのところに、いつものメンバーがやってきた。
- 289 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時18分28秒
- 「ねぇ・・・吉澤さん・・・。」
その中の一人である斉藤さんが、遠慮気味に話しかけてきた。
「なに?」
「お昼休みに来てた人って・・・誰なの?」
一瞬だけあいぼんの言ったことを思い出したけど、
やっぱり隠す必要なんてないと思ったから、ごくシンプルに事実を伝えた。
「・・・うそ・・・。」
「本当だよ。」
斉藤さんがぽろりと涙を流すと、周りにいた子たちが彼女を抱えるようにして、
席へと戻っていった。
そこへ調度トイレから帰ってきたあいぼんが、ぽかんと口をあけて
その光景を見つめていた。
「よっすぃー・・・忠告したったのに。」
斉藤さんが慰められているのを見てピンときたのだろう。
「だって事実なんだもん、しょうがないじゃん。」
「何てゆーたかしらんけど。もっとうまいことやったらよかったのに。」
「なんであたしが気を遣わなきゃいけない訳?別に悪いことしてる訳じゃないのに。」
「そうなんやけどさぁ。まぁ、もうゆーてもうたんは仕方ないな。」
手を拭いていたハンカチをポケットに戻すと、
あいぼんは斉藤さんの席の方を、ただぼんやりと見つめていた。
- 290 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時19分16秒
バレー部の練習も、今日はただイライラしっぱなしで、
面白くもなにもなかった。
「はーっ。うぜーなー・・・ったく。」
校門で梨華を待つ間、あたしは今日あったことを思い返していた。
斉藤さんが泣いてしまったことに罪悪感を感じている訳ではなかったが、
どうも後味の悪さだけが残ってしまったのは否定できない。
こんな時ほど、梨華にべったり甘えてみたくなる。
嫌なことも何もかも、全て忘れさせてくれるだけの包容力が
梨華にはあるから。
「お待たせ。」
彼女の息が少し乱れているのは、ここまで駆けつけてきてくれた証拠。
「あぁ。帰ろうか。」
本当は今すぐ抱きしめてキスのひとつでもしてみたかったけど、
人前でするのは禁止事項だったので、ここは理性をきかせた。
- 291 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時20分28秒
「どうだった?私のこと、クラスの子に何か聞かれた?」
電車が緩やかに動き始めると、梨華は少し心配そうにそう聞いてきた。
「ん?別に。何も聞かれなかったけど。」
本当は色々あったけど、わざわざ嫌な思いをさせる必要なんてなかったから、
あたしは敢えて何も聞かせなかった。
「本当に?」
「うん。ホント。」
「そっかぁ。よかった。」
ほっと安心した表情をみて、あたしが選択した答えは
間違っていなかったことに安堵した。
「梨華の方は?ギリギリに駆け込んで冷やかされなかった?」
にやりと笑って彼女をみると、照れ笑いを浮かべたままで頷いた。
「冷やかされちゃったよ。あの後どうしたのって。」
「あはは。それで何て答えたの?」
「んー。うまくごまかせなくって。ごっちんたら鋭いんだもん。」
「言ったんだ。キスのこと。」
「うん。言ったというよりも、吐かされたって方が近いかも。
・・・話しちゃまずかったかな?」
上目遣いにこちらを見る視線。
- 292 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時21分29秒
- 「いいよ、何話しても。それは事実なんだから。」
そう。それは紛れもない事実なのだ。
あたしが梨華と付き合ってることも。
それを誰かにとやかく言われる必要なんてない。
流れ去る外の景色に視線を移すと、ただなんとなくそれを見ていた。
「ねぇ・・・ひとみちゃん。どうかしたの?」
「ん?なんで?」
「なんかぼーっとしてるから・・・」
また心配そうにあたしをみていた彼女を見て、
今度こそ本当に抱きしめたくなった。
ドアの開閉口にもたれている彼女に、そっと手を伸ばしてみる。
息ができないほど抱きしめて、ただ梨華だけを感じたかったから。
だけどそんなことは当然できるはずもなく。
今は2人だけの空間ではないのだ。
- 293 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時22分39秒
「揺れると危ないから。」
それでも彼女に触れていたかったから、あたしは苦し紛れの言い訳をして、
ウエストにだけ片手をかけた。
「・・・ありがと。」
「ううん。こっちこそ。」
「クスっ。ひとみちゃんが支えてくれているのに。」
あたしはその時、ハッとする思いがした。
確かに今梨華の体を支えているのはあたしだけど、
あたしもまた梨華に支えられていることに気がついたから。
それはもっと深い精神の部分で。
「梨華。」
だからもっとそのぬくもりを感じたくなる。
精一杯に腕をのばして。
「なぁに?」
「今夜、泊まりに行っていいかな。」
「いいけど。明日も学校あるよ?」
「いいの。ただ梨華に甘えたいだけだから。」
クスっと笑った瞳は、やはり優しげに注がれていた。
- 294 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時23分30秒
シャワーを浴びて、晩御飯をさっさと済ませると、
パジャマのままで梨華の部屋を訪ねた。
これぞまさしくお隣さんの利点。外泊もここだけはうるさく言われなくてすむ。
まだ生乾きの髪をまとめ上げて、彼女は化粧台で肌の手入れをしていた。
「よかった。はやくシャワー済ませといて。」
鏡越しに微笑むと、乳液のビンのふたをきゅっと締めて立ち上がった。
「ごめんね。ちょっとはやく来すぎたかな。」
苦笑気味にベッドに腰掛けると、頬をペチペチとたたきながら、
梨華もここにやってきた。
「いいよ、気にしなくて。」
ぽすっとベッドに腰を下ろすと、ピンクのパジャマの襟元から
ちらりと健康的に焼けた肌が見えている。
それにドキドキしてしまうのはなぜなんだろう。
梨華の全てはもう既に、しっかりとこの脳裏に焼き付けているはずなのに。
- 295 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時24分50秒
- 「梨華・・・」
あたしはたまらず彼女を抱きしめていた。
ずっと我慢していた気持ちが、一気に溢れてきたから。
「あら。本当に甘えてくれるのね。」
優しく響く声が、体全体に溶け込んでいくよう。
「ねぇ・・・してくれる?膝枕。」
「もちろんよ。だってひとみちゃん専用なんでしょ?」
「あはは。そうだった。」
「いっぱい優しくしてあげるね。」
斜め座りをした膝の上に、頭をもたげる。
「気持ちいいな。」
「そう?よかった。」
耳を指にはさんで、そっと頬をなでてくれている。
安心できる場所は、やはり梨華にしか感じることはできない。
だから目を閉じて、おもいっきり甘えてみたくなるのだ。
- 296 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時26分08秒
- 「いい女だよね、梨華って。」
「クスっ。膝枕してる時だけね、いつも褒めてくれるの。」
「そんなことないだろー。いつもかわいいって褒めてるじゃん。」
「そうだったかしら?」
「ったく。」
「うそよ。いつも褒めてくれてるものね。ひとみちゃんは。」
片目だけをそっと開けて梨華を覗き見る。
そこにあるのは、目を閉じていても感じることができた優しい笑顔。
他の誰がこんなにも優しい瞳であたしを見つめてくれることだろう。
梨華を越える存在なんて、これから先も現れることはないと断言できるほど。
「梨華はさぁ・・・」
「ん?」
「梨華はね、あたしといて楽しい?」
だから時々不安になることがある。
このままずっとあたしだけの恋人でいてくれるのかって。
「なに?急に。」
「いいから。答えて。」
- 297 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時27分16秒
- 頬をなでていてくれてた手が、ゆっくりと髪に滑り込んでくる。
「楽しいよ。ひとみちゃんといると。」
「本当に?」
「うん。楽しいし、ドキドキする。もっとひとみちゃんの側にいたいって思うよ。」
「本気にするよ、その言葉。」
「うふふ。私がうそを言ってるとでも?」
「いや、そうは思わないけどさ。本当にこのまま側にいてもらってもいいのかなって思ってね。」
髪を絡めて遊んでいた指の動きが止まった。
「そんな寂しいこと言わないで・・・。私のこと嫌いになったのかなって疑いたくなるよ・・・。」
「そうじゃなくって。・・・なんて言うんだろ。なんか時々不安に思うことがあるんだ。」
「・・・え?」
「ずっとあたしだけを好きでいてくれるのかなって。
これから先、もしかしたら他の誰かを好きになるかもしれない。
梨華が好きにならなくても、いつか誰かに取られてしまうんじゃないかって・・・。」
「ひとみちゃん・・・」
梨華はそっと、瞼の上にキスを落としてくれた。
- 298 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時28分30秒
「私が見つめてるのはひとみちゃんだけよ。
それはこれから何があっても絶対に変わらない。」
「断言できる?」
「うん、できるよ。でもそれを言うならひとみちゃんだって・・・」
「あたしが・・・なに?」
「今日、ひとみちゃんのクラスに行った時・・・」
「うん。」
「いっぱいいたよね、取り巻きの子たち。それもかわいい子ばかり。」
瞬間またあのことを思い出した。いや、本当はずっと気になっていたのだ。
あたしがナーバスになっている原因。
「あぁ・・・なんかいたね、そういうの。」
「・・・何で過去形なの?」
しまったと思ってももう遅かった。梨華はきっとそこに何かがあると勘付いたのだ。
「実はね・・・」
それで思い切って話してみることにした。
梨華と付き合ってることを話したこと。
それによって彼女が泣いてしまったことを。
- 299 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時30分18秒
- 「何かあるかもしれないとは思ってたけど・・・ごめんなさい。迷惑かけちゃって。」
「ちょっと待って。これだけは言っておく。
あたしが話さなかったのは、梨華に嫌な思いをさせたくなかったからなんだよ。
だから責任を感じたりしないで欲しいんだ。梨華のこと苦しめたくないから。」
「ごめんね。わかった。落ち込んだりしないから、ちゃんと話して。」
そして、あたしはあいぼんが言ってくれたことも含めて、
全て彼女に話したのだった。
「わかる気が・・・するなぁ・・・」
話し終わったとたん、梨華の口からため息がもれた。
「なにがわかったの?」
「その斉藤さんの気持ち。私がもし彼女の立場だったら、
やっぱり泣いていたと思う。」
「事実をちゃんと伝えただけなのに?」
「きっと本当にひとみちゃんのことが好きだったのね。
取り巻きの子たちも彼女ほどではないけれど、落ち込んでいるはずよ。」
「付き合ってないってウソ言えばよかったってこと?」
「ううん。事実は伝えるべきだと思うけど・・・。
ひとみちゃんは気がついてなかったんでしょ。彼女たちの気持ちに。」
- 300 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時32分14秒
- 「うん。あいぼんに教えてもらうまで知らなかった。」
梨華は苦笑して、あたしの髪をぎゅっとつかんだ。
「やっぱり。私の気持ちにも気付かなかったくらいだものね。」
「それを言うなよ。もう過去の話なんだから。」
「私もね、ひとみちゃんのことを好きになって。
優しくしてももらったけど、冷たい態度も感じていたから。
その時はすごく落ち込んだよ。どうしてこんな冷たい言い方するんだろうって。」
「それはまだあたしが子供だったから。好きの裏返しの表現。」
「今ならわかるんだけどね。」
そう言うと、また優しい瞳をあたしの上におろしてくれた。
「でも斉藤さんはひとみちゃんの本当の優しさを知らないと思うの。
だから、ただ冷たく聞こえたんじゃないかな。それで泣いてしまったのよ。」
「言われてみれば。きっぱり言い過ぎたかもしれないな。」
「それならもう一度、ちゃんと彼女に伝えてあげるべきかもしれない。
彼女の心を救ってあげられるような、優しい言葉で。」
- 301 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時33分23秒
- その言葉を聞いて、あたしは無性に嬉しくなってしまった。
それは、彼女の優しさが表面上のものではないということを
再確認したから。
こんなにも優しい思いやりの心をもつ人を、自分の恋人に
していられることが、本当に誇らしく思えたのだ。
「梨華は、本当に優しい気持ちをもっているんだね。」
「そうかな。ただ自分がその立場だったらって考えてみただけだけど。」
「なかなかできないよ。相手の立場になってものを考えることなんて。」
「うふふ。やっぱり今日のひとみちゃんは褒め上手だわ。」
唇に梨華のそれを感じた。
優しく包み込んでくれるような、あたたかいキス。
「ちゃんと明日伝えてみるね。」
「一人で大丈夫?」
「あはは。また子供扱いかよ。」
今度はあたしの方が苦笑してしまった。
- 302 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時34分53秒
- 「それは違うわ。ひとみちゃんはもう十分過ぎる程大人だし。」
「へぇ。そう思ってくれるんだ。」
「かっこよかったよ。凛としてて。」
「ぐはーっ。なんか照れるな、そういうの。」
「そうだ。みんなも褒めてくれてたよ。すごくしっかりしてるって。」
「まぁ一応ポーズだけでもって思ってね。」
「ポーズ?」
「梨華の恋人は頼りないやつだって思われたくなかったから。
ちょっと頑張ってみたんだ。」
柔和な笑顔が溢れている。
「ありがと。気を遣ってくれてたのね。」
「そうだよ?だって知ってるだろ、本当のあたしの姿。」
「そうね。本当はこんなにも甘えたさんなんだもんね。」
クスクスと笑うと、梨華の唇を求めて体を浮かせた。
首の後ろに手をかけて引き寄せると、柔らかい唇をしっかりと味わう。
そしてそのまましなだれるように、胸に顔を埋めた。
- 303 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時35分42秒
「梨華のことが好きだよ。」
「うん。言ってくれると思ってた。」
「読んでたの?あたしの気持ち。」
「だって・・・私も同じ気持ちだったんだもん。好きって伝えたいって。」
「梨華はさぁ・・・」
「ん?なぁに?」
「やっぱりいい女だ。」
- 304 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月27日(日)02時39分42秒
- >作者
はい。前編終わりです(w
ね?案外長かったでしょ?(笑)
後半頑張って書きたいと思いますが、
もう眠いので今日はここまでにします。
それではみなさまお休みなさい。
☆いしよしのよい夢があなたに訪れますように☆
あ。いつもごひいきいただきましてありがとうございます。
色んな人が読んでくれていると思うと、
すっごく嬉しかったです。
いつも暖かいレスつけてくださるあなた。
本当に感謝しております。
だからこれからも作者はがんがっていける気がします。
どうもありがとう♪>みなさま
それでは本当に寝ますね。おやすみなさいZzz・・・
- 305 名前:チップ 投稿日:2003年04月27日(日)02時48分50秒
- ふふふ・・・私も読めたワ、お吉の気持ち♪
斎藤さんのフラレ涙ポロリを見てなぜか笑ってしまいました、ひとみんゴメンナサイ。
らってセクシー(プラスお笑い)担当のイメージがよぎって……。
梨華ちゃんがひがまれたりしなきゃいいけど、大丈夫れすか?
もしあってもお吉が守ってくれますよね!
それじゃ私も寝ます♪作者さんおやすみなさーいZzz…
- 306 名前:259 投稿日:2003年04月27日(日)02時54分45秒
- 大量更新、お疲れ様です。
>『あぶらみ食べて〜♪』
もしやそのぬいぐるみは「足擦り付けないで」とかも言ったりする
んでしょうかw
えぇ、諦めます、諦めますとも・・では代わりにゴマちゃんをw
いよいよ吉澤さんが新入生・・
校内でも半径5m以内に入れないほど、甘甘ビームが出てますねぇw
相変わらずオトコマエで優しいよっすぃ〜、カッケ〜っす!
あいぼんがイイ味出してますね。
お互いのことを思いやるいしよし、本当に最高です♪
- 307 名前:名無し読者79 投稿日:2003年04月27日(日)09時41分47秒
- 更新お疲れ様です!今回はボリュームもすごくて読み応えがありました!!
>おぉ!なんだか常連さんになっていただけてるみたいで
毎回素敵なものを読ませていただいてるので、どうしてもレスしたくて(^-^)
よっすぃー鈍いけどなんか、にくめないですね…。
外ではかっこ良く!中では…。このギャップが最高ですね。
梨華ちゃんに何もおこらなければいいのですが…心配です…。
- 308 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月27日(日)14時38分46秒
- なんとも複雑な乙女心の渦巻く女子高生活を、はたして
オトコ前よっすぃ〜は乗り切れるのか。ちょっと怖い。
- 309 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月27日(日)15時09分39秒
- 更新お疲れ様です。
なんか斎藤さんかわいそうなことになってしまいましたね。
でも、いしよしの愛には犠牲がつきものですよ(謎
外に出るとかっこいいよっすぃー
2人の時は甘えん坊のひとみちゃん。
このギャップにやられました。
いしよし知る前には完全な石ヲタだった自分は
だんだんよっすぃーに、はまって
今ではどっちが好きなのかわからん始末(涙
でも今回はよっすぃの勝ち〜
次回も応援してます。がんばってください!!
- 310 名前:237 投稿日:2003年04月28日(月)20時47分45秒
- リクしてよかった!!!あるがとうございますm(..)m
こんなに早く書いて頂けると思わなくて、感動のあまり
口があきっぱなしになっててお礼レスするタイミングを
逃してしまいました(w
続き楽しみに待ってます。
- 311 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時32分34秒
- >チップさま
斉藤さん・・・ぷぷぷ(w
いやぁ、彼女なかなかステキなキャラだと思うのですが?(笑)
個人的には、どうだろなぁ。村田さんが好きかもしれません。
さて、よっすぃーは守ってあげることができるのか!
お楽しみにー♪(w
>259さま
・・・あ、あのぅ。褒めていただいたとこなのに、
いきなり更新遅れてしまって(wゞ
ちなみに「足擦り付けないで」←これもいいますが?(w
でも、それは周りによっすぃーとのラブラブさ加減をみせつけたいが
ための、梨華ちゃん的作戦ですが、何か?(w
>名無し読者79さま
ありがとうございます♪
レスつけてもらえるのって本当に嬉しいんですよ(照れ照れ)
感想もありがとうございます。はりきっていきまっしょい♪
(↑張り切らなきゃいけないのは作者自身ですが(w )
>ROM読者さま
そうなんですよ。複雑なのです、乙女心って(w
リアルよっすぃー見てもわかりますよね?
梨華ちゃんのこと好きなのに、わざと「きもい」
とか言ってみたり(笑)ほんと、好きの裏返しっての
見ててわかるから、見てるこっちが恥ずかしくなる(笑)
小学生レベルですよね。よっすぃーって(w
- 312 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時39分46秒
- >サイレンスさま
石ヲタだったのですね!!!
確かに梨華ちゃんすんげーかわいいです。
「ザ☆ピ〜ス」の頃は、完全に作者もやられてました(w
でもやっぱりよっすぃー好きなんですよね。
重症です(w まとめていしよしヲタで手を打ちましょう。
お互いに(笑) 感想ありがとうございました♪
>237さま
えへへ。がんばっちゃいました♪
読んでいただけて嬉しかったです、マジで。
これからもがんばりますので、どうぞ応援してくださいね♪
さて、いきなり言いにくい話なんですが、
実はまだ完結できてません・・・(涙)
今PC使える時間がかなり厳しいのです。
しかし、待ってくれている方がいてくれると
作者自惚れてますので(w 区切りのいいところまで
UPしたいと思いまして・・・。これ以上お待たせするのが
申し訳ないので、次回こそ完結させたいと思っております。
本当にごめんなさい。もうちょっと時間があれば・・・。
それではできたところまで(wですが、続きごらんください。
- 313 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時43分09秒
翌日。
教室の空気は、やはりいつもとはどこか違っていた。
どことなくよそよそしい雰囲気が辺りを包んでいたのだ。
本来ならこんなことも案外平気でいられる気質だけど、
こと梨華の話しにリンクすることとなると、やはり気になるのは仕方ない。
「おはよぉ。なんや知らんけど空気悪いなー。」
あいぼんは聞こえよがしにそう言ったものだから、
クラスにいたほとんどの子たちが、一瞬それに反応した。
「おはよ。あいぼんちょっとやりすぎだよ?」
それはあたしへの援護射撃だという事がわかっていたから、
思わず苦笑してしまった。
「ええねん、これくらい牽制かけとかんと。
そうしとかなな、群集心理みたいので連鎖反応おこして、
関係ないやつまでアホなことしてくるからな。」
「ありがと。でもさぁ、あたしとつるんでるとあいぼんまで迷惑かかるんじゃない?」
「なにゆーてんねん今更。乗りかかった船や!沈没するまで付きおうたるでぇ。」
「へぇ。案外頼もしいんだ。」
「ふふん♪そやで。」
あいぼんは鼻息も荒く、興奮気味にあたしの手を握った。
- 314 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時45分44秒
- 「クスクス。でもさ、せっかく張り切ってくれたのは嬉しいんだけど。
今日一日で、きっとこの空気換えてみせるから。」
「甘いわ。女が一度ひがむと癖悪いねんで?」
「・・・なんかすごく説得力があるんだけど???」
「まぁ、そんなことはどうでもええねん。気にせんとって。」
「そう言われると気になるんだけど。ま、いっか。」
「そうそう。気にしたらあかん・・・って。
そういやよっすぃー、あんた当事者やのにめっちゃ余裕あるなぁ。」
「え?そうかな?」
「うん。こんな空気やったら普通、大概の子は落ち込むもんやで?」
そこまで話すと、やっと席についた彼女。
「本当のこと言うとね、あたしって梨華以外のことになーんにも興味がないんだ。」
「・・・は???」
「だから、誰にどう思われようが、誰がどうしようが、本当はどうでもいいんだ。そんなこと。」
あいぼんは口をぽかーんとあけてあたしを見ていた。
「よっすぃー、ほんまに梨華さんに惚れてんねんなぁ・・・。なんかすごいわ・・・。」
「別にすごくも何もないけど?」
- 315 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時46分59秒
- 「ここまで惚れ込むってことは、梨華さんってよっぽどステキな人やねんな。」
「へへへ。そうなんだよね。」
自分のことを褒められるより、嬉しい気持ちになってしまって
思わず頬も緩みがちに。
「なんや?朝からのろける気か?」
呆れ気味にあたしを見ているあいぼんだったけど、彼女もまた頬を緩めていた。
「ほんと、いい女なんだよね。」
「そうなんやー。」
「斉藤さんのこともね、別にほっときゃいいやって思ってたんだけど。
梨華がさ、彼女の心を救ってやってくれって言ったんだよね。
だからあたしも思ったんだ。このままにしとくのはよくないかなってさ。」
「はぁ・・・。よっすぃーがベタ惚れなん、わかる気がするわぁー。」
「でしょ?」
自然と優しい瞳になっていく。梨華のことを思った、ただそれだけのことで。
「で、具体的にどないするん?」
「具体的にって・・・。別に?ただちゃんと話してみようかなって思ってるだけだけど?」
「それで納得してくれたらええねんけどなぁ・・・。」
「してくれるだろ。」
「なんか緊張感が足りひん気もするけど。まぁ、案外なんとかなるかもしれんな。」
「うん、きっと大丈夫さ。」
- 316 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時47分59秒
- 「ところで肝心の斉藤さん、まだ来てへんのんちゃう?」
辺りを見渡してみると、あいぼんが言ったようにまだ彼女の姿は見えないでいた。
「ホントだね。どうしたんだろ。」
「なぁ・・・なんか悪い予感せえへんか?」
「・・・なんだよ。」
「例えばやで。ほんまに例えばの話やけど・・・」
あいぼんがその全てを話す前に、あたしもまた直感が走った。
「見てくる!」
それだけ言うと、あたしは教室を駆け出した。
梨華の無事を確認するために。
「はぁっ・・・っっはぁっ・・・・。あ、あの、すみません。石川さんいますか。」
梨華の教室に駆け込んだけど、その姿を見つけることはできなかった。
そこにいるはずのごっちんの姿さえ。
「梨華ちゃん?あれ、さっき見かけたはずだけど。おかしいな・・・。」
不安がどんどん増していく。
一体梨華は、今どこで何をしているのか。
- 317 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時49分01秒
「落ち着け・・・。よく考えてみろ。」
予鈴が鳴り始めたけど、梨華の姿を確認するまでは、
とても教室になど帰る気がしない。
その間にも時間は容赦なく過ぎていき、焦りがあたしを混乱させていった。
それでも思考回路をフル回転させて、『もし』を繋ぎ合わせていった先に出てきた答えは。
「まさか・・・。いや、これ以上考えてる暇なんてない。」
階段を駆け下りて、保健室へと走った。
「失礼します!」
あわただしくノックを2回打って扉をあけると、
まず目に飛び込んできたのは、ごっちんの姿だった。
「あっ、ひとみちゃん。」
「ごっちん!?梨華ここにいるんですね!」
「ん?・・・うん。いるよ。」
なんとも歯切れの悪い返事に、一気に不安が頂点に達した。
ずかずかと乗り込んで、仕切りカーテンの裏へと回り込んだ。
- 318 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時50分13秒
- 「梨華っ!」
「ひとみちゃん???」
膝に消毒薬を塗ってもらっている梨華の姿がそこにあった。
「どうしたんだよ、その傷!大丈夫なのか!」
「うん。大丈夫だけど・・・。なんでここにいるの。」
「なんやうるさいやっちゃなぁー。」
手当てをしてくれている保険医の中澤先生が、たしなめるようにそう言った。
「それじゃ先帰ってるね。」
ごっちんの声が、カーテン越しに聞こえてきた。
「ごめんね。ありがとう。」
「じゃぁね。」
扉の閉まる音を確認すると、梨華が小さなため息をひとつついた。
「よし!これで終わりや。」
「先生、梨華大丈夫なんですか!?」
「さっきから梨華、梨華て。あんたは一体なんなんや?授業もう始まってるで。」
「あっ・・・あたしは。1年の吉澤です。梨華とは、その・・・。」
「こほん。ひとみちゃん。」
「とにかく。あんたが大騒ぎするような怪我ちゃうわ。ただの擦り傷やから。」
- 319 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時53分02秒
- 消毒薬と絆創膏を救急箱に片付けると、中澤先生はそれを薬品棚に戻した。
「もう帰ってもええで。歩けるやろ?」
「はい、先生。ありがとうございました。」
「うん、かまへんで。これがわたしの仕事やし。そこのそれ。吉澤か。あんたもはよ帰り。」
急き立てられてしまったけど、このまま何も聞かずに帰ることなんてできない。
きっと、この怪我には理由があるはずだから。
ぎりりと唇をかみ締めて黙っていると、
なぜかふと、中澤先生が大きな独り言を言い出した。
「あー。職員会議忘れとったわー。1時間も会議するなんてうざいなぁー。」
「・・・中澤先生?」
「そういうことや。わたしはこれから1時間ここをあける。
せやから例え腹痛の生徒がやってきても、ここにはおらんことになるな。」
「あ・・・。」
「石川ももうちょっと休んでいった方がええわ。やっぱりまだ傷痛むやろ?
ただし。わたしが会議にでるのは1時間だけやで。わかったか?」
- 320 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時54分33秒
- 「先生・・・ありがとうございます。」
「吉澤は腹痛なんやろ?ちゃんと入室記録に名前と腹痛って書いときや。」
そう言うと、中澤先生は『外出中』の札を手にした。
「ほな行ってくるわ。会議。」
ケラケラと笑いながら、扉へと向かう。
「・・・あ、そうそう。言い忘れとったけど。鍵ちゃんと閉めときや。」
それだけいい残すと、扉を閉めて出て行ってしまった。
「あいつにやられたのか。」
「この傷は、自分で転んでできたものよ?」
「うそ言うなよ。あいつなんだろ。」
「ひとみちゃん・・・」
困惑する梨華の顔を、問いただすようにじっと見つめた。梨華は確実にうそをついている。
「あいつ教室にいなかったんだ。もしかしてと思ってきてみれば、やっぱりこんなことになってる。
かばうことなんてないじゃん。こんなことされてまで。」
- 321 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)21時56分45秒
- 「不注意だったのよ、私が。だから・・・」
「やっぱりそうか。・・・っくしょー。」
怒りを募らせて立ち上がったけど、その手を梨華につかまれた。
「どこいくつもりなの。」
「今から教室帰ってシメてやる。梨華を傷つけるやつは許さない。」
「やめてそんなこと。お願い。」
「だって気が済まないよ。言いたいことがあるならあたしに直接言えばいい。
こんなの逆恨みもいいとこじゃん!」
「きっと魔が差しただけ。彼女も反省してるはずよ。」
「そういうのって優しさとは違くないか?あたしは許すつもりはないから。」
「そんなことしたら、私、ひとみちゃんと別れるよ。」
絶句してしまった。よもやそんな言葉を聞かされるとは。
「梨華・・・」
「相手を傷つけても何の解決にもならないのよ?
それに・・・。ひとみちゃんがもし怪我でもしてしまったら、私・・・。」
不安そうに見あげる視線を感じて、あたしは彼女を抱きしめた。
- 322 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時06分21秒
- 「お願い、ひとみちゃん・・・」
「梨華、どうして・・・」
「約束して。傷つけないって。」
梨華が言うことにあたしは逆うことができないでいた。
別れを口にされたことがひどく動揺させていたから。
梨華を失うことはすなわち、全てを失うことに等しい。
「・・・・悔しいけど我慢する。梨華が望むことだったら、
あたしはなんでもしてあげるよ。ちゃんと約束するから・・・。」
「本当・・・?」
「あぁ。だけどこれ以上何も問題を起こさないように、話だけはするつもり。」
「許してあげてね。きっと、彼女も傷ついているはずだから。」
「だけど。今度また同じようなことをしたその時は、許すつもりはないから。」
「ありがと・・・」
ぎゅっと体を抱きしめてくれたけど、結局は梨華を守ってあげることが
できなかった自分に、悔しさがこみあげてきた。
「ごめんね・・・。守ってあげること、できなくて。」
「そんなことないよ。ちゃんと守ってくれてるじゃない。
ここにも飛んできてくれたし。嬉しかったよ・・・。」
- 323 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時07分25秒
- 「でも梨華の体に傷をつけてしまうことになった。あたしがしっかりしてないから。」
「こんなのすぐ治るよ。先生も大したことないって言ってたじゃない。」
「だけど・・・」
「ねぇ、それなら・・・。もう少しだけ私の側にいて。
ひとみちゃんがいてくれたらそれだけで傷も癒されるから。」
梨華が望むことをしてあげたい。
それが今のあたしにできる、たったひとつの償いのような気がしたから。
「立てる?大丈夫?」
肩を貸してベッドへと移動した。
「うん、平気よ。ありがとう。」
2人が腰掛けると、ぎしっときしむ音がした。
「何かして欲しいこと、ある?」
「ううん、何も。」
「遠慮なく言えよ。なんでもしてあげるから。」
「優しいのね、ひとみちゃん。」
頭を肩の上にそっと乗せたから、あたしは肩に手をまわした。
「こうして側にいてくれるだけでいいから。」
「・・・うん。」
それからしばらくは何も話さないで、ただ寄り添っていただけの2人。
だけど梨華がポツリと言葉をもらした。
- 324 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時08分44秒
「ねぇ、覚えてる?初めて2人でこの学校に来た日のこと。」
「あぁ、もちろん。閉まっている門乗り越えて、梨華の教室見にいって。」
「ひとみちゃんが言った冗談に、本気でヤキモチやいたりしてね。」
クスリと小さく笑った。
「あれから1年以上もたつのね・・・。」
「あぁ・・・。なんかあっと言う間だった。」
「すごいよね、ひとみちゃんは。」
「ん?すごいって?なにが。」
「私が望んだこと、全て叶えてくれたから。」
「そんな大げさなことばかりじゃないけど。」
「ちゃんと合格もして、一緒の学校通ってくれて。
いつも側にいてくれて、私のこと守ってくれて。」
「最後のはちょっと違うかもしれないけど。」
「ううん。ちゃんと守ってくれてるよ。ここにひとみちゃんがいるんだって
思うだけで、私は安心していられるから。学年こそ違うけど、同じ学校にいてくれて。」
「やっぱりもうちょっとはやく生まれたかったよ。
そしたらもっと一緒にいられたかもしれないから。」
「クスッ。83日?」
「そう。83日。梨華とあたしの歳の差。」
肩にまわしていた手を、彼女の頭にのせた。
- 325 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時09分44秒
- 「たったそれだけしか離れてないのに、私の方が1年先輩って損した気分だわ。」
「あはは。別に損はしてないだろ?」
「してるよー。いっぱい。」
「例えば?」
「同い年なのに先に歳をとってしまう。」
「そうか。よしよし。」
「なんかムカツクわねー。」
そんなことを言いながらも、彼女はとても楽しそうで。
あたしの胸にあったモヤモヤや苛立ちすら、すーっと消してしまうくらいの笑顔。
「やられたな、梨華には。」
「え?」
「狙ってたんだろ。あたしがちょっとでも冷静になれるように。」
「さて。なんのことだか。」
「下手なとぼけ方だな。」
クシャッと髪をかき混ぜる。
- 326 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時10分38秒
「ありがとね、ひとみちゃん。私のために・・・」
「梨華を守るのはあたしの役目だろ?一々礼なんて言う必要ないよ。」
「すごく嬉しかった。大切に思ってくれてるんだって。」
「大事な恋人だもん。めちゃくちゃ惚れてんだぜ。わかってんの?」
顔を覗き込んで、瞳を見つめた。
「じっとみつめないで、恥ずかしいよ。」
「何恥ずかしがってんだよ。今更。」
「言ったでしょ。ひとみちゃんといるとドキドキするって。
それは今でも変わらないのよ?」
「へぇ、そうなんだ。」
からかうように、もっと瞳を覗き込む。
「やっぱりね。もっとすると思った。」
「クスっ。それだけあたしのことわかってるんだったら、言わなきゃいいのに。」
「それできっとひとみちゃんはこう言うんでしょ。『もっとドキドキさせてやろうか』って。」
思わず苦笑してしまった。それは本当に当っていたから。
- 327 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時11分22秒
「もっとドキドキさせてやろうか?」
唇が触れるぎりぎりの距離でささやくと、梨華の甘い吐息が降りかかった。
「・・・・うん。」
軽く唇を合わせてみる。
そしてあごを引き寄せて、今度はもっと深く梨華を求めた。
背中に回した腕を、苦しそうに動かす彼女。
あたしはそれでももっと、息ができなくなるほど、唇を重ねた。
ドキドキしているのは、あたしも同じだったけど。
どれくらいそうしていただろう。
重ねても重ねても、もっと梨華とくっついていたくて。
じらすように離す唇を求めて、また重ねて。
呆れたように笑う梨華を抱きしめながら、何度も口付けを交わした。
- 328 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時12分24秒
- 「クスクス。もう許してくれないかしら?」
「だめ。時間の許す限り梨華を離さない。」
「困ったわね。」
「何が困るんだよー。」
「さぁ。何が困るんでしょう。」
いたずらっぽく注がれる瞳。
「もしかして、抱いて欲しいとか?」
冗談っぽく笑いながら、それでも梨華のブレザーのボタンに手をかけた。
「まさか。ここ学校だよ?」
「だから?」
「だから・・って・・・」
ボタンを全て外し終えた。
「ベッドもあるし、時間もある。おまけに今は2人っきりだ。」
ブラウス越しにウエストに手を回して、ゆっくりと体を傾けていく。
「だめよ。ひとみちゃん。」
「誘っておいてそれはないだろ。」
「誘ってなんてないわよぉ。」
「誘ってるじゃん。この唇も、濡れた瞳も。」
首に顔を埋めてキスを落とすと、ぐっと息を飲み込んだ彼女。
- 329 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時13分41秒
- 「だめだって言ってるのに・・・。」
「じらすなよ。」
「だって・・・」
「ここじゃ嫌なの?」
「・・あ・・・・うん・・・。」
「それなら今夜、うちにくる?」
「それも・・・ちょっと・・・」
「なんだよ、それもだめなのかよ。」
「あの・・・だからね・・・」
「はっきりしなよ。」
「もぉ・・・わかってよ。」
「だから何が。」
「・・・・・・・・できないのっ。」
「あ。・・・・・・・・そういう事だったのか。」
「そういうことです。はぁーっ。知られたくなかったのになぁ。」
頬を染めてむくれると、瞳をそらしてしまった。
「ごめんね?ちょっとデリカシーがなさすぎた。」
「ほんとよ。いくらひとみちゃんだって、知られたくないこともあるんだから。」
「そうだよね、ほんとごめん。」
「はぁっ・・・。まぁいいけどさぁ、もうバレちゃった後だし。」
「でも、なんか・・・嬉しいな。」
「なにがよぉ。」
「梨華の秘密。また一つ手にしたみたいで。」
そむけていた顔をこちらに向けると、にっと笑ってあたしの鼻をつまんだ。
- 330 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時14分54秒
- 「なにバカなこと言ってるのよ。」
「バカなことじゃないよ。梨華のことなら1から10まで全て知っておきたいから。」
「ふふっ。そうなの?」
「そうだよ。梨華の全てを手にしていたいから。」
「・・・・はぁーっ。」
甘い吐息をもらした彼女。
「隠し事は許してくれないんだ。」
「当たり前じゃん。あたしだけのものになってくれたんだろ?
それとも。隠してること、まだあるのか?」
「別に・・・ないけど。」
「本当に?」
「あ・・・。ひとつだけ・・・あるかな。」
「なんだよ。」
「本当は知られたくないことなんてないのかもしれない。
独占されることがこんなにも気持ちいいものだなんて・・・。
ちょっと自惚れちゃったかな。」
「自惚れていいよ。あたしも梨華だけのものでいてやるから。」
「ひとみちゃん・・・」
「その代わり、今夜うちに泊まりにこい。強制。」
「・・・うん。」
それからは、ただ抱きしめあったままで時を過ごした。
- 331 名前:修行僧2003 投稿日:2003年04月29日(火)22時19分13秒
- >作者
・・・苦しい(w
本当に書けない時って苦しいものですね。
時間的にもそうなんですけど、いいアイデアが思い浮かびません!(笑)
あーぁ。ま、そのうちなんとかなるか(w ・・・ならないかも?(笑)
うそです。がんばってUPしますよ!約束します。
ただ時間はかかるかもしれません。
その点についてだけはご了承ください。
重ね重ね、申し訳ないです・・・(涙)
でも梨華ちゃん大したことにならなくてよかったぁ(w
作者自身、筆の進み具合で思わぬ方向に進む時がありますから(笑)
とにかくハッピーエンド目指して、頑張りたいと思います。
それでは今日もありがとうございました。
いつも楽しみにここを訪れてくださるあなた。
しばらくはご迷惑かけるかもしれませんけど、
どうぞこれからも贔屓にしてやってください(w♪お願いします。
- 332 名前:ROM読者 投稿日:2003年04月29日(火)23時15分32秒
- 恐ろしい・・・いまさら気付いたけど、斉藤さんの真顔って結構怖いかも。
段々と梨華ちゃんとよっすぃ〜の密着度が高まってきましたね。とっても
楽しみです。だけど、あまり無理をなさらないでマターリいきまっしょい。
- 333 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月30日(水)18時38分16秒
- お忙しい中で更新お疲れ様でした。
石川さんが止めてなかったら、よっすぃーの報復に
自分も加勢しているところでした(笑
でも、そのおかげで甘いいしよし見れたんで、なんとも
いえないですけど…
はい、いしよしヲタでしょうからねお互いに
それは間違いないかと(w
無理なされずに作者様のペースでの更新を待ってます。
- 334 名前:名無し読者79 投稿日:2003年04月30日(水)19時08分28秒
- 梨華ちゃんがたいした怪我じゃなくて良かった〜。
中澤先生二人の空気でわかっちゃったんですね!さすがバカップル(笑
よっすぃーやっぱり好きな人には弱いんですね。素敵です。
いつまでも待ってますんでがんばってください!!
- 335 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時06分54秒
- >ROM読者さま
今日は確かSSA見に行ってらっしゃるんですよね?
いいなぁ・・・。思いっきり楽しんできてもらえたら嬉しいです。
それと、いしよしあればぜひご報告くださいね♪(w
>サイレンスさま
お互いいしよしヲタということで(w
あぁ。今日の作者はちょっぴりロンリー。
みなさんもそうだと思いますが、圭ちゃん・・・・゚・(ノД`)・゚・
>名無し読者79さま
暖かいレスありがとうございました。
お言葉に甘えさせてもらって、今日やっと書き上げることができました。
よければまた読んでやってくださいね♪
さて上にも書きましたが、圭ちゃん(涙)
すごく寂しいよ。泣きたくなってくる・・・。
でも新旧交代は仕方ないのかもしれませんね。
梨華ちゃんいっぱい泣くんだろうな・・・。
よっすぃー優しく慰めてあげてね。
それでは大変長らくお待たせいたしました(汗)
やっと完結することができましたので、よければ
読んでやってください。お願いします。
- 336 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時09分06秒
「よっすぃー!帰ってけーへんから心配したわ!」
2時間目の授業が始まる前に、教室へと戻ったあたし。
「あぁ・・・。ごめん、心配かけて。」
「ほんまにどないしたん?なんかあったんか、やっぱり。」
「ん。ちょっとね・・・」
「今は話されへん?」
「・・・うん、ごめん。全部ケリつけてから話すよ。」
あいぼんはたったそれだけの会話で、どうやら察してくれたらしい。
斉藤さんたちのグループは、こちらを気にしながらなにやら
コソコソと話しているみたいだったけど、あたしはただ腕組みを
しただけで、何も動こうとはしなかった。
ともすれば、怒りで体が震えそうになったけど、
そんな時は、梨華の笑顔を思い浮かべてなんとか平静を保つようにしたのだ。
今はまだ、動く時ではない。
時間をかけて話さなければ、きっとまた同じ過ちを犯してしまうことになるだろうから。
- 337 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時10分04秒
そしてようやく昼休みをむかえた。
「ちょっといいかな。」
あたしの声は聞こえているはずなのに、斉藤さんは顔を上げないでいる。
異様な緊張感が空気を占め、周りにいた誰もがあたしたち2人の
ことを見ていた。
「・・・なに。」
「話、あるんだけど。」
「私はないから。」
刺のある声のトーンに、また緊張感が走る。
「・・・ちょっと、嫌がってんじゃないの・・・。」
斉藤さんの側にいるうちの一人が、ためらいがちに話に割って入ってきた。
「君は黙っててくれないか。」
だけどあたしは一瞥するように視線をむけて、それを押し黙らせた。
「斉藤さん、君も本当は気になってるんだろ。あの後、どうなったのか。」
「なんのこと。」
「なんのことだって?自分が一番よく知ってんじゃないの。」
にわかにざわつき始めた教室。
- 338 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時11分26秒
- 「とにかく、君と話ができるまで、あたしはここを動かないから。」
「好きにしたらいいわ。吉澤さんに話すことなんてないから。」
そう言って席を立とうとしたけど、あたしは腕を握って睨み据えた。
「このまま何もなかったことにするなんて言わせないよ。」
斉藤さんは、つかまれた腕をただじっとみつめていたけど、
やがてゆっくりとその視線をあげた。
「何が言いたいのか知らないけど、言いたいことがあるなら言えばいいじゃない。」
「ここで?あたしは別にかまわないけどね。でも困るのはそっちじゃないの。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
背中に感じるいくつかの視線。
結局中庭まで移動したあたしたちを追ってきた何人かが、動向を見ていた。
「話って、なに。」
苛立ちを抑えるようにつぶやいた彼女。
「君が梨華にしたこと、まずは認めなよ。」
「何の話。」
「とぼけんなよ。階段でわざとぶつかったんだろ、梨華に。」
「なんで私がそんなことしなきゃいけない訳?言いがかりはやめて欲しいわ。」
- 339 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時12分29秒
- ぐっと拳に力が入ったけど、それを何とか抑えつけた。
どう言って納得させればいいのかなんてことは、結局自分でもわからないままでいた。
話してみなければ何も始まらない。要は当って砕けろの精神で。
あるいは梨華が言ってたように、もし彼女が反省しているのであれば、
その糸口くらいはつかめそうな気がしていたから。
だからあたしは、最大限の理性を働かせて冷静さを取り戻し、
斉藤さんの中にあるはずの良心に賭けてみることにしたのだ。
全ては梨華のために。
「怪我、大したことなかったよ。それがせめてもの救い。」
「・・・・それで。」
「君の事、責めるつもりはない。ただ、自分がしたことの重さを認めてくれれば。」
「だから知らないっていってるでしょ!話になんない。帰る。」
「待ちなよ。」
「私には関係ないこと。誰がどうなろうが・・・」
「本気で言ってんのかよ・・・」
「もういいでしょ。じゃ。」
- 340 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時14分19秒
「・・・ふっ。やっぱり思った通りじゃん・・・。」
自嘲気味に笑うあたしを斉藤さんは怪訝な表情でみていた。
「なに・・・一体・・・」
「梨華は・・・こんなやつのために・・・」
「・・・・・・・」
「許してやって欲しいって・・・それなのに・・・なんなんだよ・・・」
「なにそれ。許してやってくれだって?誰もそんなこと頼んでなんかないわよ!」
「やっぱりあんたがやったんじゃない。そういうことだろ、今の。」
「・・・くっ。そうよ。私がやったのよ。」
「認めたか。だけど反省なんてしてないよね、その口ぶりだと。」
斉藤さんは唇をかみ締めたままであたしを睨みつけた。
「あの人が悪いんじゃない!吉澤さんを独り占めなんてするから。」
「なに言って・・・」
「みんなの憧れでいて欲しかった。特定の恋人がいるだなんて・・・
そんなのひどいよ・・・・知らない方がよかった・・・」
「あたしのこと、そんな風に思ってくれてたなんて知らなかったから・・・。
だけど、梨華と付き合ってるのは事実だし。
冷たい言い方だったかもしれないけどそれは許して欲しい。反省してたんだ、あたし。」
- 341 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時15分28秒
- 「すごくショックだった・・・。隠すこともしない吉澤さんの態度に。
私たちのこと・・・私のことなんて、全然見てもくれてなかったんだって・・・」
「・・・ごめん。」
「吉澤さんを独り占めにしているあの人が憎かった・・・。
だから・・・私・・・・私・・・・」
「それで・・・梨華のこと、傷つけたんだね・・・」
「・・・・・・・・・ごめん・・・なさい・・・」
斉藤さんの涙を見て、ようやく彼女の心の中にある苛立ちや後悔を
ちゃんと捉えることができた気がした。
梨華が言ってたことは当っていたのだ。
彼女は彼女なりに苦しんでいたし、反省もしていたということを。
自分があんな目にあっていながらも・・・・。
そしてポタポタと涙を落とす彼女にそっとハンカチを差し出した。
「悪いことしたって思ってくれてるんだったら、それでいいよ。
あたしも悪いところがあったのは認めるし。これ、よかったら使ってよ。」
だけど斉藤さんは首を振っただけで、結局ハンカチは受けとらなかった。
- 342 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時16分26秒
- 「・・・梨華さん・・・本当に大丈夫だった・・・の・・・」
「あぁ。擦り傷くらいだったから。大丈夫。」
「ごめん・・・私、今になって怖くなってきた・・・。
あの時はただ憎くて、どうにも自分の気持ちが抑えきれなくて・・・
梨華さんに謝りたい。私のしたこと。」
強張っていた心も、彼女の反省の言葉によって、
ようやく完全に氷解していく思いがした。
「そう思ってくれるだけでいいよ。梨華はちゃんとわかっているから。
斉藤さんの気持ちを。」
「でも・・・・」
「そうだろ?梨華。」
ゆっくりと振り返って、その方向を見た。
校舎の影であたしのことをずっと見守ってくれていた人影。
「気付いていたの・・・?」
苦笑いを浮かべながら、姿を現した梨華。
「わかるよ。それだけ心配そうな視線送ってたらね。」
「梨華さん・・・」
斉藤さんは手で涙を拭いながら、梨華に一歩近づいた。
- 343 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時17分50秒
- 「・・・その・・・ごめんなさい。」
「いいよ、わかってる。もういいから顔あげて?」
「怪我・・・大丈夫ですか・・・」
「平気平気っ!かすり傷だし。」
「あ・・・はい・・・。」
申し訳なさそうに梨華を見つめる瞳。
だけど梨華はそれすらちゃんと受け止めていたようだった。
「そんなことより・・・ひとつお願いがあるんだけど。」
「・・・なんですか?私にできることがあるなら何でも言ってください。」
「本当?」
「はい。」
そう言うと、梨華はあたしの顔をちらっと見てから斉藤さんに切り出した。
「これからもひとみちゃんと仲良くしてあげて欲しいの。」
「・・・・え?」
斉藤さんと同時にあたしもまた梨華の顔を見てしまった。
「梨華・・・?」
「お願いできるかしら?」
「もちろんです。梨華さんがそう言ってくださるのなら。」
「うん。ありがとう。ひとみちゃんは?」
「あたしは・・・ううん。あたしももちろん、仲良くしたい。」
「よし。これでこのことは終わり。それでいい?」
「もちろん!」
「・・・はい。今更だけど・・・よろしく、吉澤さん。」
「うん。こちらこそ。」
- 344 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時18分46秒
そして梨華は、本当にさりげなく斉藤さんの手を握ってこう言った。
「私が側にいてあげられない間、ひとみちゃんのことよろしくね。」
「・・・いいんですか?」
「もちろんよ。だってひとみちゃんしっかりしてそうにみえて、実は全然
しっかりしてないんだもん。」
「うわ。ひでーなーそれ。」
「クスクス。だって授業中居眠りしてるんでしょ?」
「あ。してますね、そう言えば。」
「げっ。斉藤さんまで。」
笑顔が広がっていく。梨華を中心にして。
「私、もう戻りますね。クラスの子たちにもちゃんと話します。」
「ありがとう。」
「本当にすみませんでした。吉澤さんも。」
「いや、もう済んだ話だから。そうだよね、梨華。」
「そうね。これからが大切なのよ、きっと。」
「はい!」
斉藤さんはペコリと一度頭を下げると、心配げに見ていた
仲間のところへ走って帰っていった。
- 345 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時19分54秒
「ふぅー・・・。一時はどうなることかと思ったわ。」
彼女が消えていった方向を見つめながら、梨華はそうもらした。
「ホント。」
肩を引き寄せて、あたしもまた同じ方向を眺めていた。
「いつから気付いていたの?私が見てること。」
「最初からわかってたよ。梨華の空気を感じてたから。」
「へぇ。本当かしら?」
くすぐったそうに肩をゆらす体を思い切り抱きしめた。
「本当だよ。だからあたしも冷静にならなきゃいけないって、
自分に言い聞かせることができたから。」
「・・・うん。かっこよかったよ、ひとみちゃん。」
「でも結局梨華にはかなわなかったけど。」
「そんなことないよ。」
背中にあてられていた手が、そっとあたしのことをなでてくれた。
「梨華はやっぱりすごいよ。また一歩、差をつけられたかな。」
「なに、それ?」
「大人だなーって思って。あたしじゃやっぱりああいうことは言えないな。」
「仲良くして欲しいって、あれ?」
「そう。あたしが逆の立場だったら、とても言えそうにないかな。」
- 346 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時22分21秒
梨華はそっとあたしを見上げた。
「本当言うとね、ヤキモチ妬きそうになったけど。」
「あれ?そうなの?」
「うん。だってさ、ひとみちゃんのことは私が全部みていてあげたいから。」
「あはは。ならどうしてあんなこと言ったの?」
「私はいつでもひとみちゃんの側にいられるけど、
斉藤さんは教室でしか一緒にいられる機会がないでしょ?」
「ん・・・まぁ、そうだけど。」
「ほんの少しくらいなら、我慢できるかなって思ったの。
本当に独り占めできるのは私だけだって自惚れているから。」
頬を染めながらあたしを見つめる瞳。
きっと体も心も一番傷ついているはずの彼女は、
それでも懲りることなくあたしを必要としてくれている。
「ありがと・・・」
心からわいてきた言葉をそのままつぶやいてみた。
「ふふっ。ひとみちゃんの方がきっと大人だね。」
「そうかな?梨華には負けてる気がするけど?」
「ううん。ちゃんとわかってるの。」
「褒めてくれるんだ。全然しっかりしてないあたしのこと。」
クスッと笑って梨華をからかってみる。
- 347 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時23分47秒
- 「あれはー。もぅ、そう言わなきゃ話がまとまらなかったんだもん。」
「ここぞとばかり、随分けなされた気がしたけど?」
「ごめんってー。はぁーっ、やっぱり前言撤回するわ。まだまだ子供っぽい!」
「クスッ。本音がでたな。」
そう言ったとたん、あたしのお腹がきゅるきゅると音をたてた。
「クスクス。ひとみちゃんのお腹も本音言ってるけど?」
「ぐへっ。だってさ、まだお昼食べてないんだもん。」
「ふふふ。」
「梨華もまだなんだろ?ここにいたってことは。」
「うん。私もお腹すいたー。」
「そろそろ戻らないと、食べる時間なくなっちゃうよ?」
「えーっ。これから帰ってももうみんな済ませてるよ。」
「あたしは一人でも平気で食べるけどね。」
「うー・・・。一緒に食べてくれないの?」
「一緒に食べたい?」
「イジワルー。」
「へへっ。かわいいな。」
「からかわないの。」
「よし、それならここで食べよう。教室戻って弁当とってくる。
梨華も遅れるなよ?」
「はぁい。すぐ戻ってくるね。」
「うん。ダッシュで集合。よろしく!」
そしてあたしたちは、遅いお昼を中庭で食べることになったのだった。
- 348 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時24分45秒
「よっすぃーほんまにすごいなぁ。」
またもやギリギリで駆け込んできたあたしに、
あいぼんは開口一番そう言った。
「すごい???」
「教室の空気、ほんまに一日で変えてしもた。」
ちらりと斉藤さんの席の方をみると、彼女もまたこちらを
向いて微笑んでくれていた。
「まぁね。」
「斉藤さんうちとこにも謝りにきてくれたわ。その時に大体の話も聞かせてもろた。」
「そっか。あたしが報告するまでもなかったか。」
「はぁーっ・・・。でもほんまによかったなぁ。よっすぃーも斉藤さんも。」
「うん。ありがと。これもあいぼんのお陰かもしれないな。」
「うち!?うちはなんもしてへんで?」
「してくれたじゃん。最後まであたしの味方でいてくれた。
嬉しかったよ、いっぱい勇気をもらえて。」
「よかったわ、そうゆってもらえて。なんかうちもこれで胸のつかえが
降りたっちゅーか・・・」
「ごめんね、心配かけて。」
「ちゃうねん。うちがゆうてるのはこのことじゃなくて・・・・。」
- 349 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時26分21秒
- あいぼんは珍しく表情を曇らせていた。
「他になにかあったの?」
「実はな、うちもよっすぃーとおんなじような経験したことあんねんやん。」
「・・・そうだったの?」
「うん。その時のうちは斉藤さんと同じ立場やったなぁ。
うちの周りにおった友達がしらんうちにどんどん話し大きくしてもーて・・・
そのうち収集つかんようになってんやん・・・。」
「それでどうなったの?」
「まだ中学生やったからな。どうにも仕切り用がなかったわ。
それでとーちゃんの転勤をいいことに逃げてきたようなもんやな。」
「そっか・・・そんなことがあったんだ・・・。」
「だから斉藤さんの気持ちもようわかるねん。うちは相手に怪我さす
真似はせんかったけどな。」
「うん。わかるよ。」
「せやからなんとか力になってあげたかってん。
よっすぃーの力にも、できれば斉藤さんの力にも。」
「あたしは十分過ぎるほどもらったよ。ありがと。」
「これで少しはうちも罪滅ぼしができたかな?」
- 350 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時27分12秒
- あたしは静かに頷いた。
いろんな人がいて、いろんな思いがあって。
それぞれ悩んだり、苦しんだりしながら成長していければいい。
あいぼんのことを見つめながら、大切な友達の存在を胸に刻んだ。
「膝の傷、しみたんじゃない?」
夜、梨華は約束通りあたしの部屋に来てくれていた。
もちろんお風呂をすませたパジャマ姿で。
「ちょっとだけね。」
「だよね・・・」
ピンクのパジャマ越しに、その傷があるであろう場所に目をうつした。
「気にしないの。大丈夫だから。」
「ん・・・わかった。」
太ももの上に手をおいて、ゆっくりとねぎらうように滑らせる。
- 351 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時28分42秒
「ねぇ。今日はあたしがしてあげようか、膝枕。」
「えっ?ひとみちゃんが?」
驚いたようにあげる声。
「たまにはいいでしょ、そういうのも。」
「そうね。いいかも。」
照れくさく笑う2人はいつもとは逆の位置で、体をおいた。
「ひとみちゃーん」
「ふっ。なに?」
「気持ちいいよ。」
「あはは。それはよかった。」
梨華の長い髪をもてあそびながら、優しい瞳でみつめてみる。
「あれから・・・どうだった?」
「なにも問題なし。全てうまくいったよ。」
「そっかー。よかったね。」
目を閉じて、大きく息をついた彼女。
「これも梨華のおかげさ。」
「ううん。私は何もしてないよ。」
「大活躍だったじゃん。斉藤さんともちゃんと仲直りできたし。」
「ふふっ。でも必要以上に仲良くしちゃだめよ?」
「あれ。妬いてくれるんだ。」
- 352 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時30分30秒
閉じていた目をぱちりと開けてあたしをみつめた。
「初めてひとみちゃんの教室行った時、ホントびっくりしたよー。
・・・ハーレム状態で。」
「ははっ。大げさだな。」
「みんなひとみちゃんのこと嬉しそうにみつめていて・・・
もてるだろうなってことはわかっていたけど、すごく複雑だったのよ?」
「全然気付かなかったけどね。みんな仲良くしてくれるなぁってくらいで。」
「鈍感だもんね、そういうことには。」
「だってさ、興味がないんだもん。梨華以外の子なんて。」
「嬉しいこと言ってくれるわね。」
白い歯がこぼれおちる。つやっぽく光る唇の下に。
「梨華はどうなのさ。あたしとはまた違った意味でもてそうだけど?」
「私?私は別に。」
「そうかー?気付いてないだけじゃない?」
「もしそうだとしたら、妬いてくれるのかしら?」
「妬くどころじゃないかもね。それこそみんなに付き合ってること言いまわって
誰にも手を出させないようにするかも。」
「ふふふ。冗談に聞こえないよ?」
「冗談なんかじゃないよ。その時は本気でそうするから。」
- 353 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時31分48秒
- 頬を伝って唇を指でなぞってみる。
そしてキスをしようと顔を近づけていった瞬間。
「ねぇ、ひとみちゃん。」
「なんだよー。せっかくキスしようと思ったとこなのに。」
「クスクス。あのね、本心言ってもいい?」
「んぁ?なんだ???」
「膝枕、嬉しいんだけどやっぱり居心地悪いかも。」
「んだとー。」
おかしげに笑って頬をつまんでみた。
「私にさせてくれないかな。」
「えっ。でも、傷にさわるんじゃ?」
「大丈夫。こっち側の膝使ってくれたら。」
そういいながら体を起こした梨華を、すかさず抱きしめてみた。
- 354 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時32分45秒
- 「やーねー。これじゃ膝枕できないじゃない。」
「文句言わないの。抱きしめたいんだから。」
「抱きしめるだけ?」
「ううん、もちろんキスもしたい。」
ウエストを抱えてキスをした。
何度しても幸せになれる梨華とのキス。
暖かくて優しくて、あたしをとろけさせてくれる夢のような心地よさ。
誰にも邪魔などさせたくない。
あたしだけがずっと独り占めしていたいと思わせる、梨華の存在。
「私だけのものなんだ・・・」
たった今までつけていた唇からもれる言葉。
「そうだよ。全て梨華だけのもの。」
「この唇も、優しい瞳も、全て・・・」
頬を手ではさんで、甘い吐息を落としてくれる。
「あぁ。だから手放さないでいてくれよ。いつまでも。」
「ひとみちゃんこそ。」
「手放さないさ。ずっと独占してやる。」
視線を絡めて見つめあうと、また唇を重ねて抱きしめ合った。
- 355 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時34分30秒
「ほら。この方がしっくりくる。」
梨華はあたしの頭を膝にのせると嬉しそうにそう言った。
「ホント、慣れないことはするもんじゃないね。」
「クス。嬉しかったけどね、ひとみちゃんの膝枕。」
「よく言うぜ。居心地悪いとか言っておきながら。」
「機嫌悪くさせちゃった?」
「まさか。今のあたしはご機嫌そのもの。」
「よかった。」
「やっぱこうでなくっちゃ。梨華の膝、気持ちいい。」
「私も。なんかほっとするわ。」
梨華の顔を見上げてみると、彼女もまたあたしをみつめていて
思わず頬を染めてしまった。
「何照れてるの?」
「別に。照れてなんてないさ。」
「うそ。顔赤いけど?」
いたずらっぽく笑う声が、耳にくすぐったく響いてくる。
- 356 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時35分53秒
- 「からかうなよ。」
「だってかわいいんだもん。」
「違うだろー。かわいいのは梨華なの。あたしはカッケーって言われたいの。」
「なにそれ?」
「カッケー大人。あたしの目指すもの。」
「よくわかんないけど、それじゃそういうことにしといてあげるわ。・・・かわいいから。」
「あーっ!また言ったな!」
「だって本当にかわいいんだもんっ。」
「くそーっ。」
「ふふふっ。」
笑ってかがみ込んだ体をしっかりとつかまえて、少し強引なキスをした。
「・・・どう?今みたいなキスされてもまだあたしのことかわいいって言うの?」
ぼーっと放心状態の梨華に問いかけてみた。
「・・・かわいくないかも。」
「へへっ。やっと認めたか。」
「でもカッケーって訳でもなかったよ?」
「えー。なんだよー、それ。」
唇を尖らせて文句を言ってみる。
- 357 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時36分52秒
- 「だって・・・むきになっちゃって、まるで子供みたいだったんだもん。」
「なら、こんなキスならどう?」
今度はさっきとはまるで違った丁寧なキスを唇に落とした。
優しく誘うように、かつじれったく感じるほどたっぷりと時間をかけて、
ドキドキの波に合わせるように、うまく梨華のキスを楽しんだ。
「どう?」
「・・・完敗。ひとみちゃんはカッケーです。」
「へへっ。やったね。」
「ふーっ。いっぱいドキドキしちゃったよぉ。」
「それは嬉しいね。」
「・・・ねぇ。もう一度ドキドキさせてくれる?」
甘えた瞳があたしを誘っていた。
「あぁ・・・もちろん。」
その言葉に梨華よりもドキドキしていたことは、最後まで秘密にしていたけど。
- 358 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時37分40秒
「遅いっ!電車間に合わないじゃないのよ!」
玄関のドアを開けたとたん、腕を引っ張られてエレベーターへと向かうあたしたち。
「だって二度寝してしまったんだからしょうがないだろー。」
「ちゃんと起こしてあげたのに、なんで二度寝なんてするのよー!」
下へのボタンを連打しても、エレベーターが特急でやってくるはずもなく。
「階段使った方が早くない?」
「そうね、そうしましょう。」
そしてあわただしく駆け下りていく。
「はぁっはぁっ・・・もぉ・・・朝からダッシュなんてしたくないわよ・・・」
「つべこべ言わないで走るっ!」
そしてなんとか遅刻しないでいけるギリギリの電車に飛び乗ることができた。
- 359 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時38分36秒
「あれ・・・なんかこういうのって前にも一度あったよね?」
「ひとみちゃんも思い出したんだ。桜を見に学校サボった日のこと。」
それは全くと言っていいほど同じ状況で。
だからあたしはまた梨華を誘ってあの日と同じ道を辿ってみたくなってしまったのだ。
「今日はサボりませんからね。」
「ぐっ・・・やっぱり?」
やはり梨華は鋭い。先手を打たれてしまうとは。
あたしの考えてたことなんて、とっくにお見通しだったのだ。
「ねぇ、それならさ、学校の帰りだったらいいよね?」
「ん?桜はもう咲いてないけど?」
「あはは。そんなことはわかっているよ。」
「咲いてもない桜を見にいくってこと?」
「ま、そういうことになるかな。」
クスクスと梨華が笑った瞬間、電車が大きく揺れた。
- 360 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時39分45秒
「ほら、しっかりつかまってなよ。」
体をより密着させて、梨華のことを抱きしめた。
「ありがと。・・・やっぱりひとみちゃんはかっこいいね。」
「守ってやるって言っただろ?」
「・・・うん。かなりカッケーかも。」
「それでもキスはさせてくれないんだよね?」
にやっと笑いながら梨華に囁いてみる。
「その通り。よく学習できました。」
声を殺して笑う肩が、2人分揺れていた。
車窓から見える景色は、いつもと何も変わることはなかったけど、
きっとあの桜の木は濃い色の葉を力いっぱい広げていることだろう。
あの日よりも少しだけ成長したあたしたちを見てもらいたい。
きっと桜の木に負けないくらい、あたしたちもまた成長したはずだから。
駅に降り立つと、胸いっぱい息を吸い込んだ。
「走るぞ!ついてこいよ!」
「うんっ!」
『83days』〜番外編〜 終わり
- 361 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月04日(日)15時41分58秒
- >作者
完結ですー(w
なんとか書けましたね。ヨカタです(笑)
長編ははやり今の状況だと書くのは難しいかもしれませんので、
このスレ使い切るまでは短編が多くなるかもしれません。
とか言いつつ、また何かの作品の続編とか書いてるかも
しれませんけど(w
それではどうもありがとうございました。
圭ちゃん、お疲れ様でした!!!!
- 362 名前:237 投稿日:2003年05月04日(日)16時45分19秒
- 良かったです!!
気の利いた感想が書けないんでこの一言ですいません。
忙しい中、お疲れ様でした&ありがとうございました!!
次回作、作者さんのペースで無理にならない程度で、頑張ってください!!
……といいつつ、期待してじっと待ってます(w
- 363 名前:チップ 投稿日:2003年05月04日(日)19時26分46秒
- おぉ〜地味に壊れたPCが復活したその日に更新があるなんてぇ
ありがとう神様、いや作者様!
やっぱり何事も話し合いが大事というか、暴力では何も解決しないんれすよね。
○゙ッシュさんにも読んでほしいれす。揺ぎ無い気持ちを共有できる二人の関係が
羨ましい&すっごくよかったです!
次のも楽しみに末永く待ってますんで頑張ってくらしゃい。
- 364 名前:シフォン 投稿日:2003年05月04日(日)21時03分06秒
- >作者様
お忙しい中での更新、お疲れ様でした。
読ませていただきながら、ドキドキしたり、切なくなったり、涙したり…。
作者様のいしよしワールドに思う存分浸らせていただきました☆
また作者様の作品にお目に掛かれる日を楽しみにしております♪
- 365 名前:名無し読者79 投稿日:2003年05月04日(日)21時14分40秒
- 完結お疲れ様です。
なんか現実の二人もこうこの小説のように甘いのかな〜って(^^)
ライブ今日行ってきたんですが全然見えませんでした…。
甘い甘い二人のライフ!また次回の作品も楽しみにしてます!!
- 366 名前:サイレンス 投稿日:2003年05月04日(日)23時25分01秒
- 完結お疲れ様でした。
文才の無い自分ですから、いつも感想を
書くときなんと書けばいいのか悩むんですが
本当に良い話ですね。
(毎回こんなことしか書けなくてすいません
次回もじっくりと楽しみにして待っています。
- 367 名前:ROM読者 投稿日:2003年05月05日(月)01時36分31秒
- 完結お疲れさまでした。一波乱ありながらも
春らしくほんのりとした甘さが残りとても爽や
かな気持ちになれました。
- 368 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)17時51分21秒
- >237さま
感想&励ましのお言葉いつもありがとうございます♪
お待たせしてしまったのですけれど、やっと1つお話を
書くことができましたので、よければ読んでやってください。
というか、是非お願いしたいです(wゞ
>チップさま
PC大丈夫だったのでしょうか・・・?(涙)
末永くお待たせしてしまって申し訳です(w
嬉しくなる感想ありがとうございました♪
>シフォンさま
うぅ・・・。なんて優しい方なのでしょう。
すっごく嬉しかったです。暖かい感想どうもありがとうございました。
励ましのお言葉も嬉しかったです!!!
>名無し読者79さま
いいな!!!ライブ逝ってこられたのですね!
作者は今回ノー参戦でした・・・。
これから気になるのはさくらおとめ(笑)
あーん。いしよし見れなくなっちゃうのでしょうか?(涙)
感想ありがとうございました♪
- 369 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)17時52分56秒
- >サイレンスさま
いつもありがとうございます♪
一言書いてもらえるだけでもすっごく嬉しくて、
ありがたく感じています。本当に嬉しいです。
サイレンスさまの小説、すごくステキで好きですよ。
言われていた作品、まだ味わっていないので、
また近々味あわさせていただきますね♪
>ROM読者さま
嬉しい感想ありがとうございました♪
SSAいかがでした?
圭ちゃんのためにみなさん赤のサイリウムかかげたんですってね。
あぁ。作者も逝きたかった・・・。
して、いしよし見れました?(w
さて、ヒサブリの更新ですが。
みなさまにいつ読んでもらえるのかドキドキしながら
作者待っています(w
更新遅くなってしまって申し訳です。
でも見捨てないでやってくださいね(笑)
それでは、短編。どうぞ。
- 370 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)17時57分57秒
『見上げた空に光るもの』
ムシムシと暑い夏の夜。
「こっちだよ。」
そっと私の手を引いてくれたこの人は、私が密かに想いを寄せているひとみちゃん。
「ありがとう。」
今日は近くにある神社で行われている夏祭りの最終日。
受験勉強の息抜きにと集まったメンバーは、なっちとののちゃんと私。
そして大好きなひとみちゃんの4人だった。
久しぶりにみんなと会えたのは嬉しかったけど、
特に私を嬉しくさせたのが、ひとみちゃんの存在。
夏休みは嬉しい反面、好きな人とはなかなか会えなくなるのが困りもので。
2週間前に一度偶然図書館で会ってから、それきり会うこともなく
過ごしていた私は、今日のこの日をとても楽しみにしていた。
- 371 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)17時59分51秒
- 今宵はみんな揃っての浴衣姿。
それは、夏祭りをより楽しむためにってなっちが提案したこと。
みんなそれぞれに工夫しておしゃれをしていたけど、
私はやっぱりひとみちゃんに注目してしまった。
アップした髪に凛とした清潔感を漂わせている、涼しげな美少女の姿。
普段着では感じられないひとみちゃんの色っぽさが、また格別栄えていて、
私はちょっぴり得した気分になっていた。
ここはそんなに大きな神社でもないけれど、たくさんの人が集まってくる。
おまけに最終日ともなると、混雑するのはわかっていたけど、
みんなの都合があう日は今日だけだったのだ。
そして、人の波に押されてみんなからはぐれそうになっていたそんな時、
そっと手を差し出してくれたのがひとみちゃんだった。
「梨華ちゃん見てると心配になるよ。」
冗談とも本気ともとれないことを言って、笑うその笑顔。
そんな何気ない言葉をかけてもらうだけでもドキドキと意識してしまうのに、
あろうことか今は手を引いてもらっている。
- 372 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時00分49秒
- 「いつもごめんね。心配かけちゃって。」
緊張で汗ばんでいく手のひらを気にしながら、
それでもずっと繋いでいてもらいたくて、まだお賽銭を投げても
ないのに、ひっそりと神様にお願いしてみたりした。
「金魚すくいするのれすー。」
ののちゃんの瞳は露店の金魚たちに既に釘付けになっていた。
「まだダメだよ。まずはちゃんとお参りしてからでないと。」
なっちはののちゃんの保護者のような感じで、
いつも側についていてあげている。
そんな2人の関係を、微笑ましくもどこかうらやましげに感じる私。
「はーい。わかったのれす。」
それに素直に従うののちゃん。なっちの言うことには特に物分りがいいような気がする。
ちょっと舌足らずなののちゃんはとてもキュートで。
そんな彼女を放っとけない気持ちが、面倒見のいい
なっちの中には人一倍あるのかもしれない。
- 373 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時01分42秒
長い石段を昇った上に本殿がある為に、私たちはまずそこへと
一直線に向かっていた。
遊びに来ながらも、やはり合格祈願をしたいと思うのは、
悲しい受験生の性なのかもしれない。
せめて今日ぐらいは受験のことなんか忘れて、
みんなとの時間を楽しみたいと思っていたけど。
『みんな』というのが本心であるかは目をつぶることにして。
繋いでもらっている手の力加減に気を遣いながら、
それでもしっかりと握り返して、ひとみちゃんのことを想っていた。
嬉しくて甘酸っぱい胸のトキメキ。
きっともうこんなチャンスは二度と巡ってくることはないだろうと思ったから、
その手の感触をちゃんと記憶に留めておきたかった。
いつか思い返すであろう、夏の日のステキな思い出として。
しかしそんな思いとは裏腹に、石段に差し掛かかったところで、
急にひとみちゃんが手を離してしまった。
やっぱりお賽銭はちゃんと入れなければ効果はないのかもしれない、
なんてことを思っていたのだけれど。
- 374 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時02分48秒
- 「先昇ったら?あたしは後からついていくから。」
「えっ?どうして?」
「だって梨華ちゃん転びそうなんだもん。」
おかしげに笑ったひとみちゃん。
そう言われて嬉しいような恥ずかしいような私。
からかうように笑ってはいたけど、それはひとみちゃんなりの
気遣いだとわかったから。
手を離されてしまったのは残念だけど、それはそれで
嬉しく感じることができたのだ。
運動神経は人並だとは思うけれど、大してよくもないというところ。
人混みがある上、今日は着慣れていない浴衣なんかを着ていたから、
転んでしまう可能性は確かにあった。
最大級の敵はカランコロンと鳴る下駄と石段とのバッドマッチング。
「ホント、私転びそうよね。」
だから人一倍慎重に、一歩ずつ昇ってみた。
「大丈夫だよ、そんなに慎重にならなくても。転んでもちゃんと受け止めてあげるから。」
苦笑する声が後押ししてくれたけど、ここでもし本当に転んでしまったら、
ひとみちゃんによろけてしまうことになる。
そんな恥ずかしいことだけは、絶対に避けなければならない。
- 375 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時03分55秒
「はぁっ・・・はぁっ・・・やっと・・・ついた・・・。」
結局転げることはなかったけど、石段の長さとある種の気疲れで、
大きく息をついた。
「梨華ちゃん遅いのれすー。はやくお参りするのれす。」
ののちゃんは待ちくたびれたとばかりに私の手を引いて、
本殿の正面へと向かっていこうとする。
私はと言うと、後ろにいてくれたひとみちゃんのことが気になって仕方ない。
ちらりと見ると、彼女は唇の端を少し上げて一度頷いただけ。
「ひとみちゃんも一緒にいこうよ。」
しっかりした彼女のことだから、迷子になることはないだろうけど、
これだけ混雑していればはぐれてしまってもおかしくはない。
目指す場所が決まっているからそんな心配もしなくていいのかもしれないけど、
私はやはりもう一度ひとみちゃんと手を繋いでみたかったから、
あいているもう一方の手を差し出してみた。
「ありがと。」
浴衣の袖からすらっと伸びてきた白い手が、私の手をしっかりと握り締めた。
それと同時に高鳴る胸。
おかしなことに、さっき繋いでもらった時よりも、もっとドキドキしている
自分がそこにいた。
- 376 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時05分52秒
「ののが振るーっ!」
ののちゃんが言っているのは、賽銭箱の上に取り付けられている鈴のこと。
「はいはい。ののが振っていいよ。」
がらんがらんと鈴をならすと、みんな一緒に手を合わせた。
ちらっと横目でひとみちゃんを見てみたけど、
かなり真剣にお願いしているみたいで、それが少しかわいくみえた。
「みんな合格できるといいね。」
なっちはそう言ってみんなの方へ笑顔をむけた。
「そうだよね。ホント、またこの4人でバカやりたいな。」
「絶対合格するのれす。また同じ学校みんなで行くのら。」
「きっと大丈夫よ。ひとみちゃんが人一倍お祈りしてくれたから。
ね?そうよね?」
さっき見た真剣な顔を思い浮かべて、ちょっとからかってみた。
「あはは。さて、それはどうだろう。」
「そんなこと言うとののが不安がるからやめて。」
ぎゅっとののちゃんを抱きしめたなっちは、笑顔でよしよしと頭をなでていた。
「そういう梨華ちゃんはちゃんとお祈りしてくれたんだよね?」
にやりとしたひとみちゃんの視線がぶつかった。
- 377 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時06分57秒
- 「もちろん。ちゃんとお祈りしたわよ?」
そう言ってはみたものの。それは嘘でもあり真実でもあった。
ちゃんとお祈りはしたけれど、何を願ったかはまた別の問題。
「よし、それじゃ金魚すくい大会でもしようか。」
ひとみちゃんの提案にみんなそれぞれ反応する。
「えーっ。なっちうまくすくえないかも。」
「私も、どうだろう・・・。」
「ののはするーっ!金魚いっぱいすくうのら!!!」
また石段を降りて露店が立ち並ぶ場所へと向かっていった。
「へっへーん。ののには負けないよ?」
「ののもひとみちゃんには負けないのれす!!!」
私となっちを尻目に熱く燃えている2人。
「ねぇ、なっちはどうする?参戦する?」
「梨華ちゃんは?」
「うーん。すくえたら楽しいんだろうけど・・・いつも一匹もすくえないから。」
「なっちもなんだよねー。今日は2人の応援にまわろっか。」
特に口裏を合わせた訳ではないのに、自然と応援する相手は決まってしまった。
- 378 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時07分50秒
「のの、しっかりね!」
「うぉー!がんばるのら!」
「ひとみちゃん、負けちゃダメだよ?」
「まかせといて。負ける気はしないから。」
腕まくりをした袖を帯にはさんであげると、それぞれのポジションについた2人。
「それじゃいくよ。よーいどんっ!」
なっちの掛け声ではじまった金魚すくい大会。
「ほら、のの。あれ追いかけてみたら?」
「えっ!どれ?どれなのら???」
「ひとみちゃん、あの金魚かわいいー!」
「あはは。どれも一緒じゃん。」
実際にやっている2人よりも興奮気味に応援した私。
童心にかえったようにはしゃいだ4人は、とても楽しそうに笑っていた。
- 379 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時08分54秒
「12、13・・・14匹!ひとみちゃんの方は?」
「・・・・・・14・・・・15!!!やった!」
「あぅ・・・のの負けたのれす・・・・」
「残念だったね。でも落ち込まないの。ゲームだからね?」
優しい言葉をかけてあげるなっち。
「でもいい勝負だったよ。ののもなかなかやるじゃん。」
ひとみちゃんもその辺のところはちゃんとフォローを入れている。
「2人ともよくがんばったよ。私なんてきっと1匹もすくえなかっただろうから。」
私も2人の健闘をねぎらってあげた。
「えへへ。のの、この白と赤の混じったのにするのれすー。」
おじさんに金魚を袋に入れてもらっている。
「ひとみちゃんはどれにするの?」
「あたしはこいつ。」
カネの器に残していたのは、金魚ではなくなぜか黒い出目金だった。
「あれ?金魚にしないんだ。」
「うん。だってさ、最後にすくったこいつが勝運を分けた1匹だからね。」
得意げにかかげた袋の中で、その出目金はぱくぱくと口をあけていた。
- 380 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時09分57秒
「あーっ!見つけたのれす!チョコバナナ!!!」
食べかけの綿飴を手にしたまま、ののちゃんはなっちの手を引いてかけだした。
「走らなくてもチョコバナナは逃げてかないから。」
苦笑いを浮かべたなっちは、それでもどこか楽しそう。
「梨華ちゃんはいいの?」
横を歩いていたひとみちゃんがそう聞いてきた。
「バナナって気分じゃないのよね。これだけ暑いと。」
ハンカチを襟元にあてて汗を拭った。
蒸し暑い夏の夜は、人混みでさらにムシムシとしている。
「ひとみちゃんは?」
「どうしよっかな。んー・・・。せっかくだからののに付き合うか。」
3人がバナナを買っている間、私は隣りにあったコールドパインを買っていた。
こんな時は、冷たいものが欲しくなる。
- 381 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時11分59秒
- 「あれ。梨華ちゃんパインにしたんだ。」
ひとみちゃんは私の手にしているそれに視線を向けていた。
「うん。冷えてておいしそうだったから。」
一口頬張ってみると、冷たく甘い触感が口の中に広がった。
「うー。冷たくておいしいっ。」
「どれどれ?」
それはほんの一瞬の出来事。
ひとみちゃんは私のパインにぱくりと一口噛み付いたのだった。
「へぇおいしいじゃん。あたしもこっちにしたらよかった。」
もぐもぐとおいしそうにしている彼女をぼーっと見つめてしまった私。
それは紛れもなく間接キス。
「あ、まずかったかな。勝手に食べたりして。」
私の視線を誤解した彼女はそう言って、苦笑いを浮かべた。
「う、ううん。いいよっ。」
どぎまぎして言葉をつまらせてしまった。
「あれぇ?梨華ちゃん顔が赤いのれす。」
横にやってきたののちゃんが、不思議そうに私を見上げていた。
「・・・あっ・・その・・・ちょっとのぼせてきたのかも・・・・人混みに。」
「それならラムネを飲むのれす!」
「それってののが飲みたいだけじゃないのー?」
ののちゃんの肩に手をかけてなっちが笑った。
- 382 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時12分58秒
- 「てへへ。ばれちゃったのれす。」
「あたしもラムネ飲みたい。バナナで喉かわいちゃったよ。」
「それじゃ買いに行こっか。よかったね、のの。」
4人でまた移動して、ラムネを売っている店に向かいながら、
私はひとみちゃんが口にしたパインをそっと口に含んでみた。
「さっきのお礼に一口あげる。」
結局ラムネを買わなかった私に、ひとみちゃんがそれを差し出してくれた。
「ありがとう。でも喉かわいてないからいいよ。」
また顔が赤くなるのがわかっていただけに、せっかくの申し出を断ってしまった。
「遠慮なんてしなくていいのに。」
「してないしてない。」
ぶんぶんと首を横に振って答えた私だったけど。
「あれぇ。また梨華ちゃんの顔赤いのれす。」
その一言であせってしまった私は、益々顔を赤らめてしまった。
- 383 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時14分11秒
- 「やっぱり飲んだ方がいいよ。」
半ば強引に握らされたラムネ。
なっちもののちゃんもひとみちゃんも、私のことを心配げに見ていた。
「じゃ、一口だけ・・・」
カランと音を立てたビー球が、シュワッと喉に流れていくラムネ
独特の甘味をより引き立てていく。
「落ち着いた?」
ひとみちゃんはラムネを受け取ったまま、ただ私の顔を見ていた。
「ありがとう。大丈夫みたい。」
「よかったね、梨華ちゃん。」
「よかったのれす。」
「ありがと。」
どうにか気持ちを落ち着けて答えた私。
「あ・・・。そろそろだね。」
人の流れが石段のある方向へと向かっているのを見て、
ひとみちゃんがつぶやいた。
最終日に混雑する一番の理由は、高い位置から見ることのできる
花火大会にあるのだ。
「梨華ちゃん、大丈夫?石段昇れそう?」
それでもまだなっちは心配げに私のことを気遣ってくれた。
「ホント、そんなに心配しないで。」
- 384 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時15分11秒
- そんなやり取りを見ていたひとみちゃんが、さりげなく私の手を握った。
「梨華ちゃんのことはあたしにまかせて。2人で行ってきたらいいよ。」
ひとみちゃんの突然の行為に驚きを隠せない私は、固まってしまった。
「えっ?でも・・・。」
なっちは当惑気味にひとみちゃんと私の顔を見ている。
「のの楽しみにしてたんだよね。花火。」
ひとみちゃんが優しげに微笑む。
「うーっ。でも梨華ちゃんとひとみちゃんを置いていけないのれす・・・」
ののちゃんがそう言った時、まるで何かのサインのように
ひとみちゃんが私の手をぎゅっと握った。
「い・・・いいから、私のことは気にしないで。ののちゃん、なっち。」
自分の口から出たとは信じ難いセリフが、口をついて出てきた。
なぜかその時はそう言わなければならないような気がして。
「梨華ちゃんに無理させる訳にはいかないもんね・・・。
仕方ない。行くよ、のの。」
「ごめんなのれす、2人とも・・・」
申し訳なさそうな表情をしながら、2人は花火を見に行く人混みにまぎれていってしまった。
- 385 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時16分23秒
「さて。あたしたちも移動しようか。」
「えっ・・・?」
「花火。見たいでしょ?」
ひとみちゃんは軽くウインクをすると、私の手を引いて、
流れとは逆の方向へと進んで行った。
「ここ、結構穴場なんだよね。」
神社の敷地内にあるその場所は、平地にも関わらず、ちょうどビルの
隙間に空が臨めた。
「よくこんな場所知ってたね。」
「子供の頃に偶然見つけたんだ。あたしだけの特等席。」
夜空を見上げているひとみちゃんの瞳に、たった今打ち上げられた
ばかりの花火が、キレイに映し出されていた。
「クスクス。ちゃんと見てた?花火。」
「あ・・・・」
どうしてひとみちゃんは他の2人から離れてまで、
私をここに連れてきてくれたのか。
ここに来るまでの間、そのことをずっと考えていた。
- 386 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時17分24秒
- 手を引いてもらっている間、ひとみちゃんは何も話さなかった。
ただ黙々と進んでいく足元を見ていただけの私。
その空気がなんとなく話しかけ辛いものだったから。
聞きたいけど聞いちゃいけないような気がしたから、
私は何も聞かないでいた。
その答えを自分自身で出してみようと、ずっとさっきから考えていたばかりに、
肝心の花火を見逃してしまっていたのだ。
「梨華ちゃんてさ・・・」
次の花火の爆音がひとみちゃんの言葉をかき消してしまった。
「なに?今何て・・・」
「・・・花火。あがるよ。」
私の言葉を遮るように、ひとみちゃんはそうつぶやいた。
だから私もそれ以上は聞かないで、彼女が見ている同じ方へと視線を移した。
ひゅーっと高音をたててあがっていく花火。
一瞬の静寂の後に広がるまばゆい大輪が、夜空に光をもたらす。
体に感じる震動は、花火が放つものだけれど、
今でもしっかりと繋がれている手にも、その震動は伝わっていた。
- 387 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時18分35秒
- 「キレイね・・・」
次々と打ち上げられていく花火。
「ホント。引き込まれるよね・・・」
瞬きするのがもったいないと思えるほどのきらめき。
だけど私はずっと思っていた。
ひとみちゃんが放つ光にはかなわないと。
彼女の存在はそれほどまでに私の心を捉えて離さなかったから。
夜空に咲く花火すら、越えるきらめきをもって。
「次で最後だよ。しっかり目を開けて、見逃さないようにね。」
「・・・うん。わかった。」
『最後』という言葉の響きにちょっぴり寂しくなってしまったけど、
彼女の言うように、しっかりと目を開けて夜空を見上げていた。
「んっ・・・・・」
閃光がひとみちゃんの頭越しに眩く光っていた。
最後の打ち上げ花火を見るために開かれていた私の目に
映っていたものは、ひとみちゃんの閉じられた瞳。
唇がそっと重ねられていた。
- 388 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時19分50秒
「・・・うそ・・・・・・・」
「梨華ちゃん・・・・・」
「・・・今・・・の・・・」
「ちゃんと見てくれた?梨華ちゃんのためだけに打ち上げた花火。」
体から力が抜けていく。
もう少しで地面に膝を落としそうになった私を、瞬間的に受け止めてくれた。
「クスッ。大丈夫?」
「・・あ・・・・うん・・・。」
「驚かせてしまったかな?」
驚くどころではない。
私は訳もわからず、放心状態のままでひとみちゃんに抱きしめられていた。
ぼーっとする頭の中。
まるで夢の中にいるようなふわふわとした高揚感。
- 389 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時21分45秒
花火の硝煙が、湿り気を帯びた風にのって鼻をくすぐると、
それでようやく今の状況が夢でないことがわかってきた。
そうだ。私は花火を見にここまで来たのだ。
ひとみちゃんに連れられて。ひとみちゃんだけが知っている秘密の場所に。
そして最後の打ち上げ花火が上がった瞬間、唇が重ねられていたのだ。
「どうして・・・」
「ずっと・・・好きだったから・・・。」
ひとみちゃんの告白は、にわかには信じ難いものだった。
今までそれらしい態度なんて感じたことがなかったから。
もちろん仲良くしてもらってはいた。
だけどそれは仲のいい4人組の一人として。
ずっと好きだったのは私の方だった。
ひとみちゃんの笑顔、その優しさに触れられるだけで
私の心はときめいて。
思いが伝わらなくても、好きでいられるだけでよかった。
見ているだけで幸せな気持ちになれたから。
きっと片思いのまま、成就することなく終わると思っていた、この恋。
だから彼女の告白は、あまりにも現実味が感じられなかったのだ。
片思いしていることが、私の中での『現実』だったから。
- 390 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時22分37秒
- もしかしたら私は本当に夢を見ているのかもしれない。
あるいは・・・
「ねぇ・・・ひとみちゃん・・・」
「なに?」
「冗談だったら、やめてね。私こういうの慣れてないから・・・。」
「冗談?どうしてそんな風に思うの?」
「だって・・・信じられないもん。」
ひとみちゃんの肩をぎゅっとつかんだ。
夢でないのであれば、何かの間違いかもしれない。
あるいは、やっぱり冗談だったって、今にも笑い出しそうな気がしたから。
私は先回りして予防線をはっていたのだ。
この告白が真実でなかった時のために。悲しみの淵から
這い上がる力を残しておくための。
- 391 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時23分46秒
- しかし、ひとみちゃんは真剣だった。
その声の重さが、冗談を言っているものとは到底思えないほど、
静かに響いてきたから。
「ずるいな・・・梨華ちゃん。」
「えっ・・・」
くぐもる声が、私の心に波風を立てる。
「告白するの勇気が要ったんだよ。それなのに、自分の気持ちごまかすの?」
「私の・・・気持ち?」
「わかってたんだよ、梨華ちゃんの気持ち。あたしを好きでいてくれてるって。」
私はそれでまた固まってしまった。
どうしてひとみちゃんは私の気持ちに気付いていたのか。
当たり前だけど、一度もそんなこと言った覚えはないのに。
「・・・なんで・・・そのこと・・・」
「やっぱり。好きでいてくれたんだ。」
「あっ・・・」
その瞬間、さっきまでとは比べ物にならないほど、私は強く抱きしめられた。
- 392 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時24分32秒
「自惚れじゃなかった。勘違いじゃなかったんだ・・・。よかった・・・。」
彼女の声にホッとした安堵感が窺えた。
もしかしたら私の気持ちを、100%確信していた訳ではなかったのかもしれない。
しかし例えそれが100%に満たないものでも、
私の気持ちはもう完全にバレてしまっていたから、素直に事実を認めた。
「う・・・ん・・・。でも、どうして、私の気持ちに気付いたの?」
「だって見てたらわかるよ。明らかにあたしに対する態度だけ
ぎこちなかったんだもん。」
「そうだったんだ・・・。自分では普通にしているつもりだったのに。」
「梨華ちゃんてさ、いつもあたしのこと見ててくれたよね。
だからあたしもよく振り向いてたでしょ?すぐに下向いて視線そらされてたけど。」
おかしげに笑うひとみちゃんの肩が揺れていた。
だから私もそれにつられて苦笑してしまった。
- 393 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時25分19秒
「2週間前図書館で偶然会った日のこと覚えてる?」
「もちろん、ちゃんと覚えてるよ。まさかひとみちゃんに会えるだなんて
思ってなかったから。すっごく嬉しくて。」
「あはは。あたしも。」
「ひとみちゃんもそう思ってくれてたの?」
「うん。あたしね、夏休み入ってからも毎日梨華ちゃんのことばっかり考えてて。
それで確信したのかもしれない。友達以上の思いがあったんだって。
本当はあたしもずっと梨華ちゃんのこと好きだったんだって。
でもお互い受験勉強に忙しいことわかってるから、遊びにも誘えなくて。
だからあの日会えて嬉しかったんだ。ドキドキした。」
ひとみちゃんの言葉に、私の中にある何かが変わり始めていた。
本当は見ているだけでは物足りなかったのかもしれない。
傷つくことが怖くて、自分の中にある正直な気持ちにカギをかけていた
だけだったのかもしれない。
そのことに気付かせてくれた彼女の言葉。
だからようやく私も疑うことなく、素直に聞くことができたのだ。
- 394 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時26分41秒
- 「ありがと・・・ひとみちゃん。」
「ちゃんとわかってくれたんだ。あたしの気持ち。」
「うん・・・。」
息をするのが苦しくなるくらい、ドキドキと鼓動を打つ胸。
それもきっと彼女にはわかっていることだろう。
これだけぴったりと体を重ねていれば。
「今日は絶対告白しようと思ってた。そのチャンスをずっと狙ってたんだよ。
ののがあたしたちを残して花火を見に行けないって言った時は
またチャンスを逃したかって、あせったけど。」
ひとみちゃんがあの時、ぎゅっと手を握った意味はここにあったのだ。
何かを伝えたかった彼女の思いを、感じ取ることができた自分を、
私はどこか嬉しく感じていた。
だけど。
「・・・そういやあの2人、私たちのこと探してるよね、今頃。」
やっとその時になって、ののちゃんとなっちのことを思い出した。
案外私も軽薄な人間なのかもしれないと思ったけど、
好きな人に好きだと告白されて舞い上がらない人間などいないはず。
しかし何も言わないでここまで来てしまったのはさすがに気が引けたから、
抱きしめられている腕をそっと離した。
- 395 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時27分30秒
- 「そっか。2人のことすっかり忘れてた。」
それはどうやらひとみちゃんも同じだったみたいで、
2人は苦笑気味に肩を揺らした。
「そろそろ戻らなきゃね。」
「んー。・・・そうだね。」
そう言ってはみたものの、どちらもなかなか動こうとはしなかった。
もうしばらく2人っきりでいたいと、お互いに感じているのがわかったから。
何を話すということもなく、ただなんとなく黙り込んでしまった。
じわっと出てくる汗が背中を伝って落ちていく。
居心地が悪いという訳ではなかったけど、
その空気がやけに緊張をもたらすものだったから、
私は思い切って一歩を踏み出した。
「ちょっと待って。」
ひとみちゃんは歩き出した私の手をとると、後ろから抱きしめてきた。
- 396 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時29分04秒
- 「あ・・・。」
「もうちょっと2人でいようよ。」
私も本当はまだ戻りたくなんてなかったけど、
あの2人のことが気になっていたのも事実。
「でもそろそろ戻らないと・・・。」
「うん、わかってる。わかってるんだけど・・・」
ひとみちゃんは私の肩にうなだれるように頭をおいた。
そうしてまたひと時、時間が過ぎると、彼女の携帯が鳴った。
「・・・はい。」
「ねぇ、今どこなの?」
私の肩越しに話しているから、なっちの声は私にも聞こえた。
「んと・・・。神社の端の雑木林のとこ。」
「なんでそんなとこに?場所わかんないからさっきのとこまで来てもらってもいいかな。」
「うん・・・・わかった。ごめんね。今から行くね。」
「はーい。それじゃ待ってるから。」
パタンと携帯を閉じると、ひとみちゃんはため息をもらした。
- 397 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時30分02秒
- 「なっち待ってるって?」
「うん。」
「それじゃ本当に戻らないと。」
「うー・・・」
それでもまだひとみちゃんは、私を抱きしめる手を緩めなかった。
それが何を意味するのか。
今の私には彼女の気持ちがちゃんとわかる気がした。
そしてそれがすごく嬉しかったから、咄嗟にある考えをめぐらせた。
「ねぇ、ひとみちゃん。これから私が何言っても、少しの間笑わないでいてくれる?」
「ん?うん。別にいいけど。」
「約束よ?」
「あはは。わかった。・・・あ。笑っちゃった。」
「ふふっ。今はいいよ。ちょっとだけ待っててね。」
カバンから携帯を出すと、メモリーを押した。
「誰にかけるの?」
「しーっ。」
ひとみちゃんは興味深げに、携帯にぴったりと耳をあてている。
呼び出し音が何度か鳴ると、なっちの携帯が繋がった。
- 398 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時31分02秒
「もしもし。」
「あれ、梨華ちゃん?」
「うん。あのね、そっちに向かおうと思ってたんだけど。」
「うん。」
「私やっぱりちょっと具合悪くなっちゃって。
ひとみちゃんが送ってくれるって言うから、悪いけどこのまま帰るね。」
「えっ。大丈夫なの?」
「うん。ゆっくり歩いて帰るから大丈夫。」
「そっか。気をつけて帰ってね。」
「ありがと。ごめんね、心配かけちゃって。」
「いいよ。それじゃ私もののとこのまま帰るから。」
「わかった。また連絡するね。」
「はーい。」
携帯を切ると、ひとみちゃんの苦笑する声が聞こえてきた。
「クスっ。梨華ちゃん具合悪いんだ。」
「だって・・・・」
「ねぇ、それならどれだけ具合悪いのか見せてよ。」
もじもじとする私のことを、ひとみちゃんは笑いながら振り向かせた。
- 399 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時31分49秒
- 「ははっ。これじゃあながち嘘とも言えないかも。」
「・・・えっ?」
「だってさ・・・梨華ちゃんまた顔が赤いから。」
頬に集まる熱を感じてはいたけど、ビルのわずかな光しか
届かないこの場所で、紅潮する頬をばっちり見られてしまうとは。
「そ・・・そんなに・・・赤い?」
「うん。かなり。」
「やだ・・・。」
頬を押さえて隠そうとしたけど、そうする前になぜか腕をつかまれてしまった。
そしてそのまま私の両手は、ひとみちゃんの肩にかけられていた。
浴衣の帯の上に回された彼女の腕が、しっかりと腰にあてられている。
心も体も正にしっかりと抱きしめられている状態。
- 400 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時32分54秒
- 「梨華ちゃん・・・」
「なっ・・・・なに?」
「ふっ。そんなに緊張しなくても。」
それはとても危険な距離だった。
このままキスをしてもおかしくないほどに、至近距離にある互いの唇。
さっきも一度キスはしたけれど、それはどちらかというと事故に近いもので、
ドキドキする暇もないほど突然の出来事だった。
だけど、今は・・・。
今はひとみちゃんのことを認識するには、充分過ぎるほどの時間がある。
私からしても、彼女からしても、それは今度こそ確信的なキスになるのだ。
気まぐれや、突然といった言い訳は通用しない。
唇を重ねたいという能動的な意識がどちらに早く訪れるか。
あるいは、どちらがキスを我慢できるか。そんな状態だった。
「あのさ・・・」
しかし、意識していた彼女の唇からは、キスではなく、言葉が伝わってきた。
「・・・なに?」
意識していたのは私だけだったのだろうか。
幾分、拍子抜けした自分が少しおかしく思えた。
それでもまだひとみちゃんの唇をみつめてしまう私がいたけど。
- 401 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時33分49秒
- 「まだ、聞かせてもらってないよね?」
唇の端がほんの少しだけあがっている。
だからだろうか。彼女が言わんとしていることが、なんとなく伝わってきたのだ。
「なんのこと?」
ちょっぴりとぼけた口調で答えたのは、恥ずかしさの裏返しの態度。
「さては。しらばっくれるつもりだな。」
ひとみちゃんもどうやらそれに気がついたよう。
さっきよりももっと明らかに口角をあげたから。
「もうわかってるでしょ?言わなくても。」
「うわっ。ホントずるいな。あたしはちゃんと言ったのに。」
「・・・やっぱり言わないと、ダメ?」
「当たり前じゃない。ちゃんと意思表示はしてもらわないとね。」
ひとみちゃんは私の気持ちを言葉でちゃんと確認したがっていたのだ。
ドキドキが面白いように増幅していく。たった一言伝えるだけなのに。
それでも彼女が期待してくれているのがわかったから、
私もやっと言葉にする決心がついた。
- 402 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時35分04秒
「ひとみちゃんのことが好き。」
そう言った瞬間、待っていたとばかりに見つめていた唇が動きそうになったから、
私も同時に唇を重ねたくて、ほんの少しだけあごを上にあげた。
しっかりと重なる唇。
2度目のキスは、お互いに気持ちが通じあってしたものだから、
ぴったりと組み合わせることができた。
「うふふっ。ひとみちゃんの唇、すごくやわらかい。」
「梨華ちゃんこそ。」
肩に頭を乗せて瞳を閉じた。
手を繋いでもらっただけでドキドキしていた私が、
今はひとみちゃんに抱きしめてもらっている。
信じられないことだけど、夢ではない。
ひとみちゃんの優しい唇に、確かにちゃんと触れることができたから。
「本当にまたみんなで同じ学校通えるといいね。」
彼女の落ち着いた声が降りかかってくる。
「うん。・・・だけど。」
「ん?どうしたの?」
- 403 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時36分05秒
- 「お願い事ってひとつしかかなわないのよね?」
「あー。ひょっとして梨華ちゃん。」
「・・・うん。合格よりひとみちゃんのことお願いしちゃったから。」
苦笑する声が彼女の体を揺らせている。
「なんだ。梨華ちゃんもそうだったんだ。」
「えっ?」
「実は、あたしも同じことお願いしていたり。」
思わずひとみちゃんを見上げてしまった。
「あの時真剣にお願いしてたのって、私のことだったの?」
「クスッ。そう。」
見詰め合う瞳が照れくさく感じたけど、私は視線を逸らさなかった。
「お願いごと、かなっちゃったね。」
「ほんとだね。でもどうする、合格祈願2人ともしてないよ?」
「ふふっ。それなら自力でがんばるしかないわね。」
「えーっ。自信ないなぁ・・・。」
「ねぇ、それなら。」
「ん?」
「これから毎日2人で勉強しようよ。」
ひとみちゃんの瞳が優しく緩んでいく。
- 404 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時36分52秒
- 「それはいい考えかも。また図書館で勉強しよう。」
「うん。」
「夏期講習でも勉強して。梨華ちゃんとも勉強して。
これで合格しなかったらうそだよね。」
「そうね。きっと2人とも合格するよ。」
「2人じゃなくて、4人でしょ?」
からかうように笑う声。
「ほんとだ。」
クスクスと笑い合うと、私たちはまたキスをした。
「そろそろ帰ろっか。あまり遅くなってもいけないし。」
「あれ?あたしが送っていくんじゃなかったっけ?」
にっと笑って私を見る瞳。
「本当に送ってくれるの?」
「うん。だってさ、あたしの大事な恋人だから。」
2人はまた手を繋いで歩き出した。
- 405 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時38分43秒
「あっ!」
「どうしたの、ひとみちゃん?」
「あいつのこと忘れてた。」
振り返ってさっきまでいたところに駆け出すと、木の枝に
かけていた袋をとって戻ってきた。
「勝利の女神を置いて帰るなんて、危ないとこだったよ。」
手にしていたそれは、金魚すくいの戦利品。
「女神?女の子かどうかなんてわからないじゃない。」
おかしくなってつい笑ってしまった。
「絶対女の子だよ。だってさ、こいつ誰かとそっくりじゃん。」
「・・・ん?誰に?」
「クスっ。色の黒い誰かさん。」
そう言って私のことを見つめたから、私はむくれて抗議した。
「えー。ひどーいっ。ここまで黒くないわよー。」
「いいじゃん。かわいいんだから。」
「それってどっちのこと?私?それとも・・・」
「もちろん。出目金のこと。」
ケラケラと笑っているのがにくたらしいけど、私はとても幸せな気分。
- 406 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時39分48秒
- 「死なせないようにちゃんと面倒みてあげてよ?」
「わかってるさ。だって梨華ちゃんと付き合うことができた
大切な記念日の戦利品だから。」
繋いでいた手をすべらせて、指が絡むように組み直した手。
しっかりと組み合わされた手は、ぎゅっと胸を熱くした。
「梨華ちゃんのことも大切にするからね。」
「私も。ひとみちゃんのことめいっぱい大事にしちゃう。」
舗装された石畳にさしかかると、下駄の音が気持ちよく夜風に響いていく。
私はひとみちゃんの顔をみあげながら、最後に見ることができた
打ち上げ花火のことを、そっと胸に思い浮かべていた。
見上げた空に光るもの。
ひとみちゃんの瞳は今でも消えることなく、輝いている。
『見上げた空に光るもの』 〜終わり〜
- 407 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月11日(日)18時42分24秒
- >作者
いかがでしたでしょうか?
短編というよりも中編に近い容量ではなかったでしょうか?(w
お待たせしてしまった分、ちょっとがんばってUPしてみました。
それではまた次回短編UPしたいと思います。
感想書いてくださるみなさま、いつもありがとうございます。
これからもがんばっていきますので、
どうぞ応援してやってくださいね♪
=修行僧2003=
- 408 名前:ROM読者 投稿日:2003年05月11日(日)19時06分48秒
- 本当に作者さんは上手ですね。もう、可愛くってニヤけながら読ませて
頂きました。
>SSAいかがでした?
アンコールで赤いサイリュームを思いっきり振り回してきました。
ラストの加護ちゃんの反則コメントで涙腺が決壊・・。
いしよしは・・スクリ−ンを見るのがやっとの距離だったのでちと
厳しかったです。
- 409 名前:名無し読者79 投稿日:2003年05月12日(月)17時31分46秒
- いいですね、お祭り(^^)
なんか本当情景が思い浮かぶというか、素敵な作品ありがとうございます。
>これから気になるのはさくらおとめ(笑)
まだ時間はあります。ぜひいしよしを見に行きましょう!行けたらですが…。
夏のライブはないんでしょうか…あーぁいしよし…。
- 410 名前:サイレンス 投稿日:2003年05月13日(火)13時21分33秒
- 大量の更新お疲れ様でした。
すごいです。さすが作者様です。いいですね〜この描写。
読んでてすごく心が温まります。
二人そろって同じことをお願いしちゃうあたり
やっぱりいしよしの絆の深さを感じます。
二人で同じ学校に受かるといいですね。
いや、きっと受かるんでしょうね。
次の短編も読ませていただきますね!!
- 411 名前:シフォン 投稿日:2003年05月13日(火)23時04分07秒
- 久しぶりに作者様の作品を読む事が出来て、とっても嬉しかったです♪
甘〜い雰囲気といい、綺麗な描写といい、今回も幸せな気持ちになれました☆
次回の作品も楽しみにしています!
これからも作者様のペースで頑張って下さいね♪
- 412 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月16日(金)15時20分44秒
- なんかこういう雰囲気の作品いいですね。
実はのの様が一番好きなので結構嬉しかったりw
- 413 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月17日(土)18時38分14秒
- >ROM読者さま
いつも暖かいレス感謝っす♪
ほんと、マジで嬉しかったですよ(^-^)/
さて、加護ちゃんですが・・・。
うん、泣かせてくれたね。TVでしか見れなかったけど・・・。
これからも娘。にはがんがってほしいよぉー(涙)
>名無し読者79さま
うわぁーい♪褒めてくださるのですね♪
作者が書く小説って、自分では情景描写が下手だなと
思っていたので、そう言ってもらえて、すっごく嬉しかったです☆
もしよければこれからも、応援のお言葉かけてくださいませんか?
よろしくですー♪♪♪
>サイレンスさま
いつもありがとうございますぅー♪
いしよしに関しては、ハッピーエンドしか書けないですね・・・。
サイレンスさまの小説、やはりすごく上手で、
読んでへこみましたよ・・・。
あー。作者も上手く書きたいな!!!!
- 414 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月17日(土)18時39分33秒
- >シフォンさま
えへへ。なんだかとっても嬉しいです♪(*^-^*)
いつも読んでくださってありがとうございます。
本当にね、思うんですけど、これからもしだーれも
レス書いてくれなかったら、もうきっぱり小説書くのは
やめようと思ってたんですよ。
でもこうやってシフォンさまはじめ、すごく嬉しいレスを
つけてくださっている・・・。感謝しております!!!
>412名無し読者さま
うわー♪ありがとうございますっ♪
ののちゃんはやはりなっちとのCPが最高にかわいいと思うんですよね♪
これからも、よければ贔屓にしてやってください。
ぜひぜひお願いいたします♪
さて、今回も短編になります。
ラスト、果たしてみなさまに納得していただけるのかどうか・・・。
ダメだし全然OKっす(笑)
NGであれば、また続編としてお茶を濁してみようかなと(w
それではどうぞ、読んでやってください。
- 415 名前:修行僧2003 投稿日:2003年05月17日(土)18時51分20秒
- その前に、引越し警報がでましたので、
新規スレをたてますね。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/moon/1053164879/
いしよしハッピー計画(月板)
・・・ぬるいタイトルですか?(w
これから板を立てるときは、この名前で統一するかもしれませんが、
また何かあったらカキコします。
どうぞついてきてやってくださいね。
Converted by dat2html.pl 1.0