M。トライヴ

1 名前:英一(21) 投稿日:2003年02月12日(水)00時52分01秒

「どうして私たちのグループには曲がないんですか!」

飯田はつんくにくってかかった。
2 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)00時53分11秒

モーニング娘。の新曲、『さくらSeptember Love』。分裂後の初のシングルは、
さくら組にしかあてがわれなかった。レコーディングまで済ませていたおとめ
組リーダー飯田としては、引き下がる訳にはいかなかった。

「さくら組の方が出来が良かったんや。飯田、それは分かってる筈やで」

つんくは、飄々と言ってのけた。飯田は、それは楽曲が……と言いかけて、押
し黙るしか無かった。
3 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)00時54分22秒

ここは、武道館の控え室。

保田が卒業し、六期メン、と呼ばれる四人が加入し、そして最初の記念すべき
ライブでいきなり告げられた事実。

『モーニング娘。の新曲は、さくら組一本で行く』

楽屋に顔を見せたつんくの一言に、モーニング娘。メンバーたちは文字通り凍
り付いた。

「なら、ウチらの出番はない、ってこと? 分かりました。みんな、行くよ!」

飯田はボストンバッグを手に、つんくの傍を通り抜けて楽屋を出た。みんな、
と名指しされてぞろぞろと後を続いたのは、石川、辻、小川、そして、田中、
道重――すなわち、おとめ組の面々だった。
4 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)00時54分58秒

「ちょっと、みんな待ってよ!」

後を追って、楽屋を飛び出したのは後藤だ。

(あちゃー、いきなり内紛ですか)

どっちつかずの立場にいた藤本は、いきなり窮地に立たされていた。三すくみ
の状態で、その場から動けなかった。いや、動けないように、がっし、と松浦
に腕を組まれていたのだ。

(ミキスケ、今動いたら、負け組だよ)

松浦が、必要以上に耳元に息を吹きかけながら藤本に囁く。
5 名前: 投稿日:2003年02月12日(水)19時19分00秒
おもしろそうです!続き期待っす!
6 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時09分34秒

「飯田もしゃーないヤツやなあ」
つんくはぼそりと呟く。その様子を矢口は釈然としない気持ちで眺めている。

(なにもライブ直前に言うことないじゃん……)

テレビ東京のカメラが、緊迫した楽屋を撮り続けている。ならば当然、いきな
り告知も演出の一つなのだろう。asayan時代と同じと言えば同じなのだ
が、この空気に馴れない六期メンバーの田中、亀は凍り付いてしまっている。

(『衝撃!おとめのサンバカーニバル』は発売延期、か……)

最初から娘。の分割は波乱含みだった。事務所の指示なのか、対立させよう、
競争させよう、といった魂胆が見え見えの報道が繰り返された。曰く、さくら
組が正統な後継だ、今後ハロプロの柱として活動するだ、おとめ組は補欠だジ
ュニアだ維新軍だ、そうメディアに書き立てられた。おとめ組のリーダー飯田
を筆頭に、メンバーたちの心中は穏やかではなかっただろう。
7 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時10分36秒

「圭織、こんな記事、気にしないで」
「うん。分かってるよなっち」

「よっすぃ、見てよ! こんなヒドイこと言ってるよ」
「ん〜、でも梨華ちゃんの歌はアレだからねえ」
「よっすぃもヒドイ!」

「なんやこの雑誌。ウチらにケンカ売ってるんかあ!」
「あいぼん怖いよ。ののは補欠でいいから」

「やっぱり……私の歌唱力のせいでしょうか紺野さん」
「さゆみんは悪くないよ……悪くないから……多分」
「……」
「……」

最初は冗談で済んでいたが、次第に少しずつ二つのグループの間には溝が出来
ていった。そんな微妙な時期での、おとめ組の新曲発売延期の告知だ。実質的
な事務所からの二軍認定といって良かった。
8 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時13分52秒

「大変だよ。圭織たち、ライブをボイコットするって!」

後藤が真っ青になって楽屋に飛び込んできた。
藤本も真っ青になった。

(つまり、おとめ組のライブでの初披露をボイコットする、って訳? 私はど
うしよう……)

遠くから飯田の『迷子の藤本さーん、いらっしゃいましたらおとめ組まで合流
願いまーす』という声が響いてきた。

つんくは面白そうに藤本を見、「どうするんや?」と言った。テレビカメラが
藤本に向いた。

藤本の隣りに後藤が並んだ。松浦と後藤、両側から藤本の腕はロックされた。

「美貴ちゃんはごまっとうの曲も歌わないといけないんだよ。ううん。大切な
コンサートをボイコットする、っていうのが業界でどれだけ無茶なことなのか、
分かんない美貴ちゃんじゃないよね?」

後藤の言葉には、えもいえぬ重みがあった。イベントをすっぽかした身内が辿
った末路を思いだしているのかも知れなかった。
9 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時15分27秒

藤本は、柔らかく二人の拘束から逃れた。楽屋の出口に小走りで向かう。くる
りと身体をメンバーたちに向け、そして、頭を下げた。

(飯田さん、一生恨みますからね)

安倍はどうしていいのか分からず、ただおろおろしていた。藤本が出ていった
楽屋の扉から顔を出した。廊下を駆けていく藤本の背中が見えた。その向こう、
真空地帯のようになった空間に、彼女たち――おとめ組の6人がいた。

「遅いよ。なにぐずぐずしてたの」
「まあいろいろありまして」

6人の輪がふわりと藤本を受け入れ、そして7人の集団になった。あそこに安
倍が紛れ込んだとしても、ああはならないだろう。6人と1人になるだけだ。
そして、それはさくら組の8人にも言えることだった。安倍は、その時初めて、
かけがえのない何かが壊れてしまったことを痛いほど実感した。

飯田は、視線を安倍に向けた。貫くような視線だった。安倍はひっ、と肩をす
くめた。いや、視線は安倍のすぐ後ろにいたつんくに向かって放たれたようだ
った。

7人のジャージが背を向いた。彼女たちは、二度と振り返らなかった。
10 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時16分09秒

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11 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時17分13秒

コンサート会場前の広場を、7人は歩いていた。すでに開場は過ぎている。そ
ろそろ開演の時間だった。小走りに入り口へ向かう数人のハッピの集団を飯田
は横目に見た。揃いのジャージとボストンバッグ。おとめ組の面々は、みな帽
子を深くかぶっていて、遠目には部活帰りの女子高生の集団くらいにしか見え
ない。
おとめ組さくら組の初披露公演だったこともあって、チケットはなかなか入手
できないようだった。あぶれたファンたちが、あちこちに集団を作っていた。

「……やっちゃったね」
「やっちゃったじゃないですよ。これからどうするんですか!」

石川は飯田にくってかかった。石川は当然ボイコットなどするつもりは無かっ
た。しかし状況に流されやすい彼女はなんとなく飯田についてきてしまったの
だ。

「これからどうしよっか」
「何も考えないで飛び出してきちゃったんですか!?」
「だってさあ、歌わせない、って言うんだよ? 歌を忘れたカナリヤはもうカ
ナリヤじゃないんだよ」
「石川は元々カナリヤじゃありません!」
12 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時19分25秒

モメながら前を歩く先輩2人に遅れて、小川、田中、道重の3人は並んで歩い
ていた。

「私、もうクビですか? せっかく歌上手くなったのに」
道重が、ぼそりとつぶやいた。

「え……あ、まあ、上手くなった、のかな?」
「上手くなったよ。……前に、比べたら」
小川と田中は慌てて違うフォローをした。

とりあえず7人は駐車場へ向かっていた。移動用のミニバンも、今はおとめ組
とさくら組は別々にされていた。

会場の裏手は、閑散としていた。ここにも入場できなかったファンがいた。ま
だ若い父親と、男の子女の子の兄弟、という組み合わせで、3人とも一応気合
いの入ったハッピを着ていた。CDラジカセを囲んで座り込んでいた。

「ソロもごまっとうもあるのに、こんなことしたらもう歌えなくなる」
藤本は、ずっとブツブツと口の中で呪文のように呪いの言葉を吐き続けてい
た。藤本と腕を組んで歩いていた辻は、ファン家族の横を通り過ぎようとして、
CDラジカセからモーニング娘。の曲が流れていることに気づいた。
13 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時20分03秒

「歌ならここで歌えるよ」

辻は、いきなり乱入した。そして、曲に合わせて、あーなたーがもーおてるー
と歌い踊り始めた。なんだ、といぶかしげに辻を見上げた父親は、しかしすぐ
に乱入者の正体に気づいたようだった。


「え? え? なんで?」

藤本は、ぽかん、と口を開けて辻を見た。5秒ほどで我に返り、慌てて辻を引
き戻そうとして、

「そうだよ。ウチらはどこでだって歌えるんだよ! みんな歌えー」

背後から飯田の大きな声がした。藤本はイヤな予感がした。ばっ、と飯田の大
きな体が藤本を通り過ぎ、辻の隣りに立った。
14 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時22分10秒

「分かりました。歌います」

ゆっくりと一歩を踏み出したのは道重だ。その手にはすでにe−カラがしっか
りと握られていた。そして、

 ♪さいしょのデートの帰り道〜

と歌い始めた。その様子を、小川、田中が固唾を飲んで見守っていた。

「歌えたよ!」
「外してないよ!」
「ありがとうございます!」

きゃいきゃい騒ぐ3人に、石川が立ちはだかった。

「そんなことくらいで喜んでてどうするの! もう、ここはやっぱりチャーミ
ーがいないとダメみたいね」

よこしなさい、と道重の手からe−カラをもぎ取り、飯田のパートを歌い始め
た。そして、音を外した。

ずるいー、そこは圭織の見せ場だよー、とe−カラの奪い合いが始まった。

その様子を、親子3人はへたりこんだまま茫然と見上げていた。彼女たちがモ
ーニング娘。だ、ということは分かるが、どうしてこんな光景がこの場所で繰
り広げられているのかは理解できないようだった。

「はーい、おとめ組でDo! it nowでしたーありがとうございましたー」
15 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時25分20秒

飯田に合わせて、あとの5人も親子に頭を下げた。

(この人たちって一体……)
藤本は、1人、脳天気集団の輪の外にいて、すでに深い後悔を味わっていた。
「藤本さん、何してるんですか。7人揃わないとおとめ組じゃないんですよ」
石川がチャーミーモードで藤本に声をかけた。藤本の握りしめた拳に爪が食い込
んだ。

「何してるの、はアンタ達でしょーがッ!」

藤本はヤケクソになって、今は新垣の手にあったe−カラをもぎ取り、

 ♪電ェん話もまだ来なぁい

と伴奏無しで歌い始めた。


飯田圭織。
藤本美貴。
石川梨華。
辻望美。
小川麻琴。
田中れいな。
道重さゆみ。


おとめ組の初お披露目は、こうして、3人のファンの前でひっそりと行われた。
16 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時26分36秒

=======================
17 名前:1 投稿日:2003年02月12日(水)22時27分06秒

翌日の記者会見で、つんくは、しばらくの間、モーニング娘。の活動はさくら
組一本で行うこと、おとめ組はすべてのメディアから露出をシャットダウンさ
せることを宣言した。
18 名前:英一 投稿日:2003年02月12日(水)22時28分07秒

つづく
19 名前:みっくす 投稿日:2003年02月13日(木)03時45分09秒
かなり面白いです。
今後どういうふうになるのかとてもたのしみです。
がんばってくださいね。
20 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時32分39秒

中澤裕子は、熟睡中だった。
深夜三時。

中澤は悪夢にうなされていた。真っ白なスケジュールボードを前にただ立ち尽
くしている夢だった。現実でも、中澤の仕事は激減していた。新曲の予定もド
ラマの予定もなく、ハロプロコンの司会業も、若返りをはかって保田平家コン
ビになっていた。ついに三十路に達した今、事務所からいつお払い箱にされて
もおかしくない立場だった。

一週間ほど前のあの騒動――事務所の方針に不満を持った飯田が、おとめ組の
メンバーを引き連れ、ライブ出演をボイコットした――は、表だってはいなか
ったが業界中の噂になっていた。あれ以来、おとめ組は本当に一切テレビに映
らなくなっていた。なんやいろいろ波乱バンジョーやなあ、と他人事のように
思っていた。今は、自分の身の振り方の方が重大だった。

他人事などではなかった、と中澤が思い知るのは、もう少し先である。
21 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時33分19秒

==========================
22 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時33分52秒

「うーんうーん」
(イーイー)
「うーんうーん」
(イーイー)

夢の中、相変わらず何の予定もないスケジュールボードの前で、中澤は頭を抱
えていた。

「なんやイーイーって」

中澤はふいに目覚めた。ベッドの回りを、全身黒タイツに身を包んだ男たちが
イーイー鳴きながら中澤を取り囲んでいた。

「わあ! なんやあんたらッ!」

中澤は数人の男たちに身体を持ち上げられ、部屋から運び出された。外に待機
させてあったらしいミニバンに乗せられ、そのまま拉致された。
23 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時34分30秒

走り出した車内に、突然、ダースベイダーの曲が流れ出した。そして、1人の
黒タイツ男が、中澤に携帯用の液晶ビデオ再生機を突き出した。

そこには、背中を向けたスーツ姿の男性が映し出されていた。

「つんくさん! 何してますのん!」

『ちゃうちゃう。俺はTプロデューサーや』

背を向けたまま、Tプロデューサーは言った。中澤はツッコミを入れるのは止
めておいた。

『今から中澤にはある場所に行ってもらう。詳しい話はそれからや』
「それから、って、今何時やと思ってますん!」
『ちなみにこのビデオテープは再生終了後、自動的に消滅する』
「ビデオテープ、って、今ウチら会話してますやん」

ぷつっ、と画面は暗転した。

「あ……」
24 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時35分24秒

中澤の前に、アイマスクとヘッドフォンが差し出された。これはなんかの企画
なんか? ちゅーかパクリやんか、とブツブツ言いながら、中澤はそれらを身
につけた。


それから二十時間後。


(……まさか、飛行機に十時間も乗せられるとは思わんかったわ)

すでに中澤は抵抗する気力を失っていた。どうやら目的の場所についたらしく、
ヘッドフォンが外された。そして、つんくの、「アイマスクを取ってええで」
という声が聞こえた。

「……」

中澤は眩しさに目をしばたたかせた。明るさに目が慣れてくるにつれて、眼前
に広がる光景に絶句した。

巨大な廃墟のモニュメントが、あった。
25 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時36分30秒

「……ここは、どこなん?」

「ここは、ニューヨークの中心、グランド・ゼロ」

サングラスをかけたつんくが、いた。テレビカメラが回っていた。つんくが何
かを中澤に手渡した。車のキーのようだった。

「これが、あそこに置いてるキャンピングカーのキー。それと、撮影用のハン
ディカメラ。フィルムはキャンピングカーに積んである」
「はあ」

中澤は、ただ渡される品々を、茫然と受け取っていた。事情がつかめなかった。

「じゃ」

片手をあげ、つんくは背を向けた。カメラクルーを連れ、その場を立ち去ろう
とした。

「ちょ、ちょっとつんくさん、ウチは一体、ここでなにをすれば……?」
「そこにいたら分かる。ビデオカメラは常時回しとくんやで。あと、俺はTプ
ロデューサーやで」

そして、Tプロデューサーとその一行は、中澤1人を残し、去っていった。
26 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時37分05秒

「え? え? え?」

もちろん事情も分からず、呆けたように立ち尽くす中澤。実はまだベッドの中
にいて、悪夢の続きを見ているだけだ、というオチはどうだろう?

と、中澤の耳に日本語が飛び込んできた。この辺りは日本人観光客も多いのだ
ろうか。

「ほら、やっぱりニューヨークといえばここでしょう。ウチらもここからスタ
ートするべきだよね」
「テロはいけませんよね」
「来たはいいけど、これからどうするつもり?」
「お腹すいたんですけどお……」
「ね、ね、リーダー、とりあえずパスポートみんなに返しとこ?」

背中から聞こえる、聞き覚えのありすぎる声。
中澤は、どうかこれは夢であってください、と心から神様に祈った。

「あーっ、裕ちゃんなんでここに?」

中澤は振り返らずに、

「こらっ、悪夢あっち行け! ウチはまだ熟睡中なんやで!」

「こんな場所で会えるなんて、これってチャーミーと中澤さんの運命?」
27 名前:2 投稿日:2003年02月14日(金)21時38分23秒

中澤の祈りは、天に届かなかった。
28 名前:英一 投稿日:2003年02月14日(金)21時39分17秒

つづく
29 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月16日(日)01時47分31秒
いま一番更新が楽しみなスレです。面白いよ〜
30 名前:名無し蒼 投稿日:2003年02月21日(金)01時12分44秒
今見つけて読みました!
お、おもしろい…!!続き楽しみです
あ、後、>>15で新垣と、希美が望美になってる部分がありましたよ。
多分間違えたのだと思いますがお伝えだけしておきます。
続き頑張ってください
31 名前:英一 投稿日:2003年02月27日(木)19時18分30秒

いつの間に(ё)が……
32 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時19分15秒

「ボイコットだなんて……あの子たち……」
「いや、俺は大歓迎やけどな」

武道館の関係者通路を、つんくと夏まゆみが並んで歩いていた。先ほどまで、
おとめ組の抜けた穴を埋める為の打ち合わせでてんやわんやだった。ハロプロ
のメンバーたちはぶっつけ本番で出番をこなさなければならなくなっていた。そろそろコンサート会場では、おとめ組の出演予定がキャンセルになったことが安倍の口からファンたちに発表されている頃だ。

「モーニング娘。は、デビューしてからもう6年間も芸能界で生き残ってきた
んや。ビックリするくらいの長寿グループやで」
33 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時20分01秒

つんくは足を止め、窓から外を見た。眼下に、夜の駐車場が見えた。

「卒業、増員、を繰り返して延命してきたんやけどな、それももう限界や」

その駐車場の一角で、興味深い光景が繰り広げられていた。つんくは目を細め
て愉快そうに笑った。

「さくら組は、いわば優等生チームや。期待したことを期待通りにやってくれ
るメンバーを集めた。そして、おとめ組は――」

つんくと一緒に立ち止まっていた夏も、遠くにその光景を見つけたようだ。あ
んぐりと口を空けていた。

「つんくさん、貴方は、おとめ組を最初から予備戦力として位置づけていた、
と? モーニング娘。を変える為に? 彼女たちを使って、一体、何をしよう
としているんです?」
34 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時20分38秒

「俺にもよう分からんわ」

つんくは肩をすくめて、けどな、と言葉を続けた。

「六年前かて、俺らは田舎出の女の子五人集めて一体何やらかすつもりや、っ
て思われててんで?」

駐車場でオモチャのカラオケマイクを奪い合いながら歌い踊る、おとめ組のメ
ンバーたちを見下ろして、つくんはもう一度、愉快そうに笑った。
35 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時21分29秒

==============================
36 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時22分13秒

「朝のテレビ見ました?」
「うん、見た」
「もう私はテレビには出られないんですか?」

小川と道重と田中が、深刻そうな表情でヒソヒソと言葉を交わしている。

「つんくさんが、もう出さない、って言ったんだよね……。もう決定なのかな?」

辻が会話に割り込む。四人の話題は、今朝行われたUFAの記者会見について
だった。

「私たちが芸能界から干された、って意味じゃないの? って、どうしてあん
たたちがここにいるの?」

成田空港の出発ロビー。
飯田に呼び出された藤本は、指定された場所に、イヤな予感のする面々が集ま
っているのを見つけ、どうしようか迷っていた。が、仕方なく声をかけた。
37 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時22分50秒

「飯田さんから、ここに来るようにって電話がかかって来ました」

小川が言う。
辻が、私もー、と手をあげる。

「で、その呼び出した張本人がいない、ってどういうこと?」

藤本はなぜか、関係ない道重にくってかかった。

「さあ?」

藤本にタメグチっぽく返す、結構大物の道重だった。

「あれ? なんでみんないるの? みんな呼び出されてたんだ」

ついに、飯田を除くおとめ組のメンバーが勢ぞろいしてしまった。

「で、ここに集まって何するの?」
「誰か何か聞いてない?」
「今後のおとめ組についてのミーティングかなあ」
「空港で?」
38 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時24分23秒

「ごっめーん、準備に手間取っちゃってさ。遅れちゃったよ」

フロア中に響き渡る大きな声に、メンバーたちは一斉に振り返った。そこには、
大きなスーツケースを三つ横積みにしてゴロゴロとキャスターを押している飯
田の姿があった。

「飯田さん、なんなんですかその大荷物は」

石川が素っ頓狂な声をあげる。

「ほらさー、圭織、肌弱いじゃん? 化粧品変わると、荒れちゃうのよねー」

「いやいやいやいや、そうじゃなくて」

藤本が電光石火でツッコミを入れる。続けて、

「話が長くなるとアレですし、とりあえず、今日ここにみんなを集めた理由を
教えてもらえませんか?」

飯田は、あれ、言ってなかったっけ? とつぶやいて、

「ライブしに行くんだよ。アポロシアターってトコに」
「聞いてねえ!」

エキサイトする藤本を、石川がまあまあ、となだめた。
39 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時24分59秒


「もう飛行機の時間すぐだからさ、今からチケット配るよー」

はいこれ辻、はい石川、はい藤本、と飯田はメンバーにチケットを手渡した。

「あのー、飯田さん?」
「なに藤本。さっきも言ったけど、時間あんまりないんだから、質問なら簡潔
にね」

「……どうして、みんなのパスポートが用意されてあるんですか? あと、こ
のチケット、行き先が John F. Kennedy International Airport、ってある
んですけど……」

「だって、アポロシアターあるの、ニューヨークだもん」
「なにぃぃぃぃぃぃッ!」

ミキティメーターは、一気にレッドゾーンに振り切れた。

「洗濯機回したまま出て来ちゃったんですけどお」
「私英語しゃべれません」
「ニューヨークってアメリカ……ですよね? ……当たってます?」

ほののんとしているメンバーたちに、藤本は二度驚いた。
40 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時25分32秒

「あと、おとめ組でいるときは、私のことはリーダー、って呼んでね。リーダ
ー、と飯田、ってなんか発音似てるけどさあ」

そう言って、飯田は能天気にケラケラと笑った。藤本を除くメンバーたちもケ
ラケラ笑った。

(……負けた)

藤本は敗北感に打ちのめされ、がっくりと膝をついた。

「もう質問ない? じゃあみんな行くよー」
「おー」

元気に出発するおとめ組の面々。
41 名前: 投稿日:2003年02月27日(木)19時26分31秒

「さゆみんー、早くー」

「はーい、小川さん、すぐ行きますー。ほら、ミキティ行くよ。頑張ろう!」」

道重が、まだ衝撃から立ち直れない藤本の肩に手を置いて、言った。

道重に励まされ、藤本はより深く落ち込んでしまうのだった。
42 名前:英一(21) 投稿日:2003年02月27日(木)19時27分06秒

続きますー!
43 名前:英一(21) 投稿日:2003年02月27日(木)19時27分57秒

時代はあやみきよりも、みちみき!
44 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月28日(金)15時48分47秒
更新乙です

続きが楽しみで夜も眠れません
おとめ組最高
45 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月28日(金)21時28分33秒
更新ありがとーうございます。
おとめがジャストな人選に思えてくるから不思議。
期待してます。
46 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月28日(金)23時11分44秒
こういうこと、むしろ現実ではおとめよりも
さくら組で起きそうで(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
47 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月18日(火)18時34分24秒
待ってます。。。
48 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月31日(月)13時17分50秒
更新期待sage
49 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月03日(木)13時55分54秒
月日が経つのは早いねぇ…
50 名前:4 投稿日:2003年04月03日(木)20時31分21秒

モーニング娘。コンサートツアー2003冬。『さくら満開』

「今日も盛り上がったねえ」
「なっち、膝がくがく言ってるよ」
「もう年なんですかねえ」
「ああっ、よっすぃヒドいよ!」

マリンメッセ福岡でのツアーファイナルを迎えたモーニング娘。の面々は、関
係者通路をスタッフの拍手に迎えられて歩いた。

「ありがとうございました」
「ありがとうございました」

疲労の局地にある彼女たちは、汗びっしょりになりながらもスタッフや裏方た
ちに笑顔で頭を下げ、感謝の言葉を発していた。
51 名前:4 投稿日:2003年04月03日(木)20時32分19秒

安倍なつみ。
矢口真里。
吉澤ひとみ。
加護亜依。
高橋愛。
紺野あさ美。
新垣里沙。
亀井絵里。

今や、モーニング娘。、といえば彼女たちのことを指した。一般の視聴者にと
って、メディアに露出しない芸能人は存在しないことと同意だった。
52 名前:4 投稿日:2003年04月03日(木)20時33分15秒

「どお? そろそろ慣れた?」

吉澤が、新メンバーの亀井に声をかける。

「はい。ファンのみなさんに名まえを呼んでもらえました! すっごく感激し
ました!」

亀井は、最初こそ開始前は緊張で泣きじゃくっていたものの、ツアーも終盤に
なると会場のファンたちを見る余裕が出てきたようだ。

「うんうん。かめっちもだんだんモーニング娘。の顔つきになってきたよ」
「……ホントですか!?」

矢口の言葉に、嬉しそうに両手を頬に持っていく亀井。
53 名前:4 投稿日:2003年04月03日(木)20時33分54秒

「それに引き替えアイツら、何やってんだか――」
「矢口!」

安倍が、険しい表情で矢口の言葉を遮った。
とりあえず矢口は黙ったが、言いたいことはいろいろとあるようだった。

楽屋に戻り、メンバーたちだけになったところで、矢口は一気にまくしたてた。

「だってさあ、今のモーニング娘。を支えてるの、ウチらだよ。勝手にいなく
なっちゃってさ、タンポポもミニモニ。もメチャクチャだよ。いきなり半分の
数でさ、これまでの仕事こなしてんだからね」

まあまあ、と吉澤になだめられる矢口。しゃーないべさ、ウチらはウチらが出
来ることを精一杯するだけだよ、と安倍は言った。
54 名前:4 投稿日:2003年04月03日(木)20時34分41秒

(分かってる。本当は分かってるんだけどさ――)

矢口は、誰にも聞こえないような小声でつぶやく。

(圭織、一体どこで何やってるんだよ。こんな形でバラバラになりたくないよ。
このままだと本当にみんなに忘れられちゃうぞ)
55 名前:英一(21) 投稿日:2003年04月03日(木)20時35分49秒

ずっと停滞してた割にはちょびっとしか更新せず。
次回、軽部真一がめざましテレビを卒業!
56 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月04日(金)13時55分04秒
待ってました!
57 名前:4 投稿日:2003年04月05日(土)03時44分53秒

さくら←→おとめのメンバー間の、ありとあらゆる連絡はきつく禁止されてい
た。中にはこっそりメールを送った者もいたのだが、返事が返ってくることは
無かった。おとめ組メンバーの携帯はすべてが常に通話不能状態だった。おと
め組は、全員が失踪扱いとなっていた。その事実は、さくら組のメンバーたち
の精神を不安定にさせていた。

先日、五期だけで部屋にいた時などは、紺野が「事務所の怖い人たちの逆鱗に
触れて、まことちゃんは中近東のペド成金に少女玩具として売られちゃったん
じゃあ?」などと震える声で言い出し、高橋が泣き出す一幕もあった。
58 名前:4 投稿日:2003年04月05日(土)03時45分27秒

安倍と矢口が険悪な雰囲気なせいで、楽屋全体の空気が澱んでいる。

「ウジウジしたって仕方ないッスよお」

ずん、とお姉さんチームの二人の両肩に体重がかかった。吉澤が背後から二人
に抱きついたのだ。

「♪誰よりも信じてあげなくちゃーー」

素っ頓狂な音程でI wishを歌い始めた。どうやら、励ましているつもりらしい。

楽屋から聞こえてくるヤケクソ気味のI wishの大合唱。その扉の前を、掃除の
おばちゃんが怪訝な表情で通り過ぎていく。
59 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時46分00秒

=============================
60 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時46分39秒

場末のキャバレーに、場違いな男が二人。
一人は派手な蝶ネクタイをし、もう一人は両肩から短いアンテナを生やしてい
た。

「ほ、本当にここでいいんでしょうか?」
「指定された場所がここだからねえ」

薄暗いステージでは恰幅の良い女性がジャズを歌っている。ドリンクのお代わ
りを運んできたボーイが、二人に訝しげな視線を落としていく。

「どうして私たちはこんな格好を?」
「それがあちらさんの指定だからねえ」

フジテレビの局アナ、軽部真一と伊藤(アミーゴ)利尋である。

「もう約束の時間をかなり過ぎてるような気がするんですけど」
「……あぁ? なんか言ったか?」

一時間待たされた軽部は、すでにワインを一本空けていた。すっかり出来上が
っていた。
61 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時47分20秒

「話題づくりかなんだか知らないけどさ、まだ彼女たちは子どもなんだよ!」
「軽部さん、軽部さん、声が大きい」
「いいんだよ、本当のことなんだから!」

現在、すべての情報をシャットアウトされているおとめ組の極秘情報がある、
と匿名のタレコミがあったのが、今朝だった。さくら組のコンサートの様子
を芸能コーナーで紹介した直後に、その電話はあった。

半信半疑のまま、指名された二人は指定された格好でここにいるのだった。

「すまんすまん、遅うなったわ」

現れた情報提供者の姿を見て、軽部の酔いは吹き飛んだ。
62 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時48分18秒

「――つ、つんくさん?」

立ち上がって挨拶をしようとした二人を、つんくはええからええからと手で止
めた。

(な、なんか特ダネっぽいですね)

伊藤の耳打ちに、軽部は表情を険しくした。ソファから身を乗り出し、まっす
ぐに正面からつんくを見た。

「つんくさん、失礼ですが、一度ちゃんとお話をお伺いしたいと思っておりま
した。もちろん、失踪扱いになっているモーニング娘。のおとめ組の面々につ
いてです」

その口調は、完全にケンカ腰だった。彼は、年期の入ったモーニング娘。ファ
ンだった。芸能ニュースでハロプロ勢がよく取り上げられるのは、彼の趣味が
多大に入っていたことも少なからず影響していた。

「一説には、人身売買の噂まで流れておりますが……未成年を含む少女たちに、
貴方は何をさせているんですか?」

隣で伊藤が慌てている。ここまでストレートに質問をぶつけるとは思いもしな
かったようだ。
63 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時49分05秒

「まあ、これを見てもらおか」

つんくは何枚かの写真をテーブルに滑らせた。軽部と伊藤は、その写真を覗き
込んだ。そして息をのんだ。

そこには、ステージで歌う、おとめ組の面々が写っていた。日付はつい最近だ
った。

「でも、でもですよ。彼女たちがライブをする、という情報は一切フジテレビ
には入って来なかった……ちょっと待って下さい……」

軽部は、食い入るように写真に見入った。そして、小声で、これ日本じゃない
ですよね、とつんくに言った。

「そうや。よう分かってるやないか。そこはニューヨークはハーレムのアポロ
シアターや。この写真は、アマチュアナイトの予選の様子や。あ、アマチュア、
ゆうてもレベル低い訳やないで――」

「分かってます。ローリン・ヒルも、このコンテスト出身ですよね」

はっ、と軽部は表情を変えた。うんうん、とつんくは頷いてみせた。
64 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時50分07秒

「CDの売り上げは低下の一途。テレビの視聴率もそこそこしか取れへん。こ
のままやったらジリ貧や。モーニング娘。を二つに分けた、程度の話題やった
らもうカンフル剤にもならへんねん。ええか、俺は分けたんやないねん。モー
ニング娘。を二つ作ってん」

伊藤はさっそくメモを取り出し、インタビュアーめいてつんくに質問を飛ばし
た。

「一つは、現場で経験を積ませて、もう一つには海外武者修行をさせる、と。
ここまでは分かります。それからはどうするんですか? 最終的には、合流、
ですか?」

「それは無理や。もうきっと、あいつらは一つに戻ることは出来へん」

「ええと……つまり?」

「本当のモーニング娘。を名乗ることが出来るのは、どちらか片一方、ってこ
とになるな。あ、あとこの情報はもちろん口外したらアカンで」

えー、と伊藤はメモを手にがっくりと肩を落とす。じゃあどうして、と抗議す
る伊藤に、

「まあ大人の事情やな」
65 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時50分55秒

軽部は、二人の会話には参加していなかった。つんくから見せられた写真をじ
っと凝視していた。必死の表情で声を振り絞っている雰囲気の飯田の姿を見て
いるうちに、涙があふれた。

「確かに……確かに分かります。モーニング娘。の現状は。だけど……だけど、
彼女たちはまだ二十歳になるかならないかなんです。彼女たちが芸能界で生き
残っていく為には……こうやって、分裂させて、海外に放りだして……そこま
でやらないとダメなんですか? そこまでやらないと、モーニング娘。はもう
ダメなんですか……?」

写真をめくる。必死に歌っているのは、飯田ばかりでは無かった。石川や辻、
入ったばかりの道重でさえ、両手を広げノドを垂直に天に向け、まるで命を燃
やし尽くすかのように絶唱している様子がありありと見て取れた。

軽部はむせび泣いた。

伊藤は目を丸くして、アナウンサーの先輩の号泣を見ていた。
66 名前: 投稿日:2003年04月05日(土)03時51分29秒

十数分後。
軽部はメガネを外し、ハンカチで汚れを拭き取った。そして、大きく深呼吸を
した。

「……分かりました。私も、ニューヨークに飛びます。今は、彼女たちを報道
することは出来ない。だけど、いずれメディアに戻ってきた時に……彼女たち
の歩んできた道を、記録に残しておきたい。いや、この私が、その役目を果た
したい」

伊藤が慌てて、

「ダメですよ、局がそんなこと認めてくれる訳ないじゃないですか」

軽部は、むしろ晴れ晴れとした表情で、

「わたくし、軽部真一は、フジテレビを退社いたします」

そう宣言した。
67 名前:英一(21) 投稿日:2003年04月05日(土)03時52分47秒

次回はN.Y.おとめ組編がメイン。
きっと。
68 名前:英一(21) 投稿日:2003年04月05日(土)03時53分17秒

その前に、軽部さん旅立ち編か。
69 名前:みっくす 投稿日:2003年04月05日(土)08時23分04秒
やっと更新されましたね。
こういう展開になるとは。
続き楽しみにしてます。
70 名前:名無しの蒼 投稿日:2003年04月05日(土)11時23分20秒
おもしろい!
軽部さんが出るとは思わなかった(w
続き期待!
71 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月06日(日)00時37分46秒
軽部兄さんガンガレ!
72 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時29分31秒

グランドゼロから通りをひとつまたいだ向こうにSt.Poul’s教会があ
った。Tシャツやらポスターやら、色とりどりのお供え物がなされており、た
くさんの人たちが黙祷を捧げていた。

「圭織、ちょっとお参りしてくる!」

そう言って、飯田は輪から離れた。辻と小川も小走りに飯田について行った。

「なあ、あんたらここで何する気なん?」

事情を知らされないまま渡米させられた中澤は、一体自分が何に巻き込まれた
のか戦々恐々としながら、藤本に問いかけた。

「飯田さんったら、おとめ組でアポロシアターのアマチュアナイトに出る、っ
てきかないんですよう。逃げ出せないように、全員パスポートを取り上げられ
てるんですう」

藤本は中澤に泣きついた。中澤は額に横ジワを三本走らせて、はあ? とつぶ
やいた。
73 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時30分49秒

あまちゅあないとにでます、と一リットル紙コップを両手に抱えてコーラをす
すっていた道重が顔をあげて宣言した。きっと何も理解していないに違いない。

「……まあ、つんくさんが喜びそうな企画ではあるわな」

そこまで言って、中澤は自分の役割を思い出した。今回の仕事はカメラマンなの
だ。キャンピングカーの運転席に置いてあったハンディカメラを取り、藤本に向
けて「さっきの話、もう一回してくれへんか?」と言った。

「こんにちは。チャーミー石川です。私は今、ニューヨーカーたちの聖地、グ
ランドゼロに来ています」

「石川、お前ジャマやで。退きい!」

「ひどい、中澤さん! もっとチャーミーを撮って!」

完全に藤本を押しのけた石川はめげずに続ける。

「遺族の方たちでしょうか、今でも祈りを捧げる人たちが絶えません。……こ
の光景を見るにつけ(涙ぐみながら、タメ五秒)平和を、祈らずには、いられ
ません……」

そっと目を伏せる。

「……って、中澤さんどこ撮ってるんですかあ!」

中澤は、教会の方にカメラを向けていた。そこは、ちょっとした騒ぎになって
いた。
74 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時35分22秒


 ♪道行く人が 親切だった
         (いくよーーー)

飯田のフリに合わせて、ぐるりと取り囲んだギャラリーが手を叩いている。

『ピーース!』

うおお、と歓声があがる。異様に盛り上がっている。辻と小川の振り付けに合
わせ、外人たちもピースサインを作って頭上に掲げている。

75 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時36分22秒

可愛らしい東洋人の女の子たちが、平和を祈る歌を歌い踊っている、とノリの
いい外人がはやし立てているようだ。中には、モーニング娘。の存在自体を知
っているヲタもいたのかも知れない。

ファインダーごしにそれを見た中澤は絶句気味に、

「な……」

「なにやってるんですかあ!」

フレームインしてきた藤本が真っ赤な顔をして輪の中へ飛び込んで行き、三人
を引きずり出してきた。
76 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時36分54秒

「どうしてリーダーはそうやって騒ぎばかり起こすんですか!」

「えー、歌って、って言われたんだもの」

バーイ、プリティガール、とか言われ、辻や小川はバイバーイ、と手を振って
いた。

ちっ、と石川の舌打ちが聞こえた。どうやら、語りの部分で乱入するつもりだ
ったようだ。

中澤は、おとめ組における藤本のポジションをなんとなく理解して、同情のた
め息をついた。

77 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時38分02秒

==============================
78 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時38分55秒

中澤の運転するキャンピングカーは、ロワーマンハッタンからダウンタウンに
向けて走っている。窓の外には、小さく自由の女神が見える。

「圭織さあ、日本から持ってきた『ザ☆ピ〜ス』のCDをお供えしたのね」

マクドナルドのポテトを口に運びながら、飯田は言った。
まず腹ごしらえをすることにしたようだ。中澤に用意されたキャンピングカー
の中は、ジャンクフードの安い油の匂いでいっぱいになった。

「したら、隣にいた黒人の男の子が『何これ?』みたいなこと聞いてきたから、
でぃすいずじゃぱにーずふぇいますピースそんぐ、あいあむしんがー、って答
えたのね」

意外に飯田は英語に堪能なようだ。

「で、歌ってみた、ちゅーんやな」

ビデオカメラのフレームから目を離し、飯田の顔を見ながら呆れたように中澤
は言った。
79 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時39分54秒

「ほんで、圭織、これからどうするん?」
「そうだねえ。やっぱり、会場の下見かな」

中澤は車を止め、ハーレムかあ、と地図を広げた。そして、圭織、あんたいく
らお金持ってるん? と聞いた。

「圭織、スタッフさんから、どうしても困ったことがあったら、これを開けて、
って封筒貰ったのね。開けたら10万円入ってたよ」

すうっ、と藤本の顔から血の気が引くのを、この時中澤はまだ気づいていなか
った。

いきなり開けるなよ、と中澤は苦笑いしながら言い、この車、そろそろガソリ
ン無くなったみたいなんやけど、じゃあそのお金で給油してもエエか? と続
けた。

「え? もうお金ないよ」

しーん、とキャンピングカー内は静まり返った。石川以下のちびっこメンバー
は寝ていたからというのもあるが。

80 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時40分35秒

「あ、あの、リーダー?」

藤本が挙手して発言した。

「みんなからもお金集めましたよね。持ってるお金全部だせ、って。それも、
みんな?」
「うん。昨日のハイアットホテルの宿泊代とここに来るまでのタクシー代。さ
っきのマクドナルドでほとんど使い切っちゃった」

藤本は、こめかみをゆっくりと揉んだ。そして、ふふふ、うふふふふ、と笑い
始めた。

81 名前:6 投稿日:2003年04月07日(月)21時41分16秒

「藤本、しっかりしぃ! おーい、ふじもとーーー」

へらへらと笑う藤本を中澤は抱きかかえた。飯田は「?」という表情をしてい
た。

「絶対ムリ。絶対だめ。ムリムリムリムリムリムリムリ。だめだめだめだめだ
めだめ」

「戻ってこーい。ふじもとぉ、戻ってこーーーい」

中澤の、藤本の頬を叩くぺちぺちという音が、むなしくキャンピングカー内に
響いていた。

82 名前:英一(21) 投稿日:2003年04月07日(月)21時41分48秒

つづく
83 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月09日(水)01時41分41秒
藤本いいなぁ
84 名前:名無し 投稿日:2003年04月11日(金)21時47分32秒
ミキスケが・・・・(w
85 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月03日(土)00時32分43秒
更新期待sage
86 名前:名無し民 投稿日:2003年05月14日(水)15時15分23秒
ホント面白いです。
いつまでも待ってます。。。
87 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月23日(金)14時42分25秒
ただ待つのみ…
88 名前:HoZeNcxc 投稿日:2003年05月26日(月)13時05分53秒
月日が経つのは早いねぇ…
89 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時21分45秒

「花咲くーむーすーめー、たちはー」
藤本と道重である。
ここは、セントラルパークにほど近い、110th St.
二人の歌声が、マンハッタンAve.に響いている。

(なんで……こんなことを、せにゃならんのだ)

道行く外人が、ちら、と二人を見ては通り過ぎていく。
藤本は情けない気持ちで隣の道重を見る。必死で声を張り上げているようだが、
やはりまだ発声が甘い。
もう一時間歌い通しだ。そろそろ道重のノドは枯れ始めている。だが、彼女た
ちのパフォーマンスに足を止めてくれる人は、いない。
90 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時22分38秒

「あのさあ、やっぱり、旅費は現地調達が基本だと思うんだよね」
ハドソン川の道路沿いにキャンピングカーを止め、急遽行われたミーティング
で飯田は訳知り顔で言った。

「バイトとかするんですか?」
田中が挙手して発言する。
「小川は、バーガーキングがいいです。可愛いミニスカートの制服で、ローラ
ースケートで軽やかに注文をとります」
「辻は、屋台のホットドックを食べます!」
「圭織は、路上でポエムを売るわ。にんげんだもの」

藤本は、すっかりあきらめて、みなを遠巻きに眺めていた。いまさらながらに、
おとめ組に振り分けられてしまったおのれの不幸を深く噛み締めていた。

と、同じく腕組みをして黙っている石川と目が合った。石川は、やれやれ、と
いうゼスチャーを藤本にしてみせた。
91 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時23分25秒

(梨華ちゃんも、あんまりな無計画さに呆れてるんだろうか?)

藤本は、自分と同意見のメンバーがいることに、少し救われたような気がした。

「ストップ! みんな、大切なことを忘れてる! ねえ、私たちはなに? 私た
ちはモーニング娘。なのよ。みんな自覚が足りないよ」

てんで好き勝手なことをわめきたてるおとめ組メンバーたちを、石川が一喝した。
そうだそうだ、と藤本は心の中で同意した。

「私たちはシンガーなんだから、お金は、もちろん歌で稼がないと!」

いやいやいや、まだファーストフードでバイトの方が現実的だし、と藤本はツ
ッコミを入れたかった。
92 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時24分01秒

「確かに、その通りだよね。うん、反省した。石川に教えられたよ」

飯田が真っ先に賛同した。

「さっすが石川さん!」

小川が調子を合わせる。

「宣誓! この旅の間、旅費のすべてを歌でまかなうことをここに誓います。
おとめ組リーダー飯田圭織!」

わっ、とメンバーたちから歓声があがり、拍手が鳴り響いた。
飯田の宣言は、ほぼ満場一致で大決定した。
93 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時24分31秒

複数に別れて行動することになり、みなはそれぞれのパートナーと組になった。

飯田は辻。
石川は小川と田中。

「夕方にここにまた集合、ってことで。じゃあ、がんばっていきまーーーっ」
「しょい!」
「しょい!」
「しょい!」
「……ょぃ」

「さあ、ミキティ、行こう!」
「……」

藤本は道重。
94 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時25分08秒

夕方を過ぎても粘ったが、結果は散々だった。収益はゼロ。
(だーかーらー、英語もロクに分かんないのに、道端で日本の歌うたってお金
もらえる訳ないって。そんなにユナイテッドステイツは甘くないって)

キャンピングカーに戻る頃にはすっかり暗くなっていた。藤本組が最後のよう
だ。みな、現実という壁に打ちひしがれているだろうな、と藤本は思った。

「あ、ミキティさゆみんお帰りー。フィッシュフライとポテトあるよー」

予想は外れた。
ポテトを口いっぱいにした小川がこちらへ走りよって来た。
95 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時25分50秒

「あの……みんな、お金稼げたの?」

「えっと、私のところは3ドルだったんですけど、飯田さんチームは合計25
ドル50セントの収入だったって」
なんでも飯田の歌うオサブリオに合わせて辻がフラダンスを踊る出し物が、ア
メリカ人にバカウケだったらしい。

すごいねー、と道重が小川に言う。
「私とミキティも一生懸命に歌ったんだけど、売り上げゼロでした」

石川がキャンピングカーから出てきた。また明日がんばればいいよ、お疲れさ
ま、と藤本と道重に紙コップのコーヒーを手渡した。

コーヒーの湯気が、藤本の頬を撫でる。手のひらから伝わるぬくもりが、藤本
の不満の裏に隠された不安な気持ちを溶かしていった。
96 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時26分26秒

(私って、ぐちばっか言ってて全然ダメなヤツだ。シンガーとしても、パフォ
ーマーとしても失格だよ)

ぽたぽたと、藤本の涙がコーヒーの中に落ちた。
石川が藤本の肩に手を回す。焦んなくてもいいよ、と優しく言う。

「でも、今の私は、役立たずです」

「誰もミキティのこと、そんな風に思ってないよ。みんなは一人に、一人はみ
んなに。それがモーニング娘。のおとめイズムなんだから。みんなで、ゆっく
りゆっくり、ひとつのモーニング娘。になっていこうね」

「……はい」
97 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時27分01秒

♪天真爛漫 行くぜ容赦なし
 このまま一生友達だし

キャンピングカーでは、『卒業旅行』の合唱が始まっていた。

「ほら、ミキティ行こう。みんなも心配してるよ」
「はい!」
98 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時27分57秒

中澤は一応カメラマンとしてここにいるので、いしかわのたらしー、などと悪
態をつきつつ二人の様子をしっかりとテープに収めていた。

「藤本も娘。に取り込まれつつあるなあ。絶対あり得へんけど、ウチ、おとめ
組やなくて良かったーホンマ怖いわあ」

そうつぶやいて、ぶるぶるっ、と身体を震わせた。
99 名前:7 投稿日:2003年05月28日(水)23時28分28秒

つづく
100 名前:英一 投稿日:2003年05月28日(水)23時29分09秒

あげちまってスマソ
101 名前:名無し 投稿日:2003年05月28日(水)23時46分21秒
更新乙です。
みきてい・・・そっちにいっちゃだめだ。
あんたは唯一のつっこみやくなんだから。
102 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)17時56分13秒
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
103 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時28分01秒

翌日。
中澤は、ビデオカメラを手にハーレムをあちこち飛び回っていた。最初は、
飯田班に張り付いた。モーニング公園で飯田が歌い、辻がフラダンスを踊ると、
あっという間に人だかりが出来た。昨日と同じ戦略でいくようだ。

(でも、あれは路上ライブでお金集める、ってのとはちゃうような気がするん
やけどなあ)

まあ、可愛らしい女の子と美人のお姉さんが歌って踊っていれば、公園を訪れ
る老人や家族連れは微笑ましく思ってチップをはずんでくれるだろう。その辺
りの嗅覚は、さすがに現役で五年を過ごしたモーニング娘。リーダー、といわ
ざるを得ない。
104 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時29分00秒

次に撮影した石川班はズルかった。ハーレムの観光スポットをうろついては、
日本人観光客を探した。「私たち、モーニング娘。なんです!」とアピールし
て歌ったり握手したりして小銭を稼いだ。昨日はそのお金でヒルトンホテルで
ケーキランチなんてしていたから、持ち帰ったお金は3ドルだったのだ。

今日も、女子大生のグループを見つけたらしく、きゃあきゃあ言われながらお
昼をごちそうになっていた。

(ま、まあ、あれはあれでたくましいというか……)
105 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時29分36秒

そして、問題の正統派藤本班である。彼女たちは、大胆にもブロードウェイを
今日のストリートライブの場所に決めたようだ。
昨日は、声を揃えて歌っていただけだったが、今日は自分たちの持ち歌でダン
スも組み込んでいた。道重と藤本はそれぞれダンスのパートが違うが、指先ま
で二人の動きはぴったり合っていた。

中澤は知っている。早朝、二人はキャンピングカーから抜け出して、朝もや漂
うハドソン川のリバーサイドパークでユニゾンで踊る練習をしていたことを。

だが、ここはアメリカの中心地タイムズスクウェアだ。人種を超えて、歌やダ
ンスで成り上がろうとする若者たちが目指すショービジネスの聖地。生半可な
技術は通用しない。

それでも――
106 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時30分37秒

「ほら、さゆみん、遅れてるよ!」
「はいっ」
「視線上げて! 笑顔で!」
「はいっ!」

すでに三時間、踊り通しだった。
安物のラジカセ――藤本が腕時計を質屋に入れて買った――から流れるAS FOR
ONE DAYに合わせて踊るスウェットとTシャツの少女たちを、信号待ちのニュ
ーヨーカーたちが目に留めるようになって来ていた。

 貴方は こなーいー

汗だくで、でも満面の笑顔を、藤本は足を止めてくれた人たちに向けた。
身なりのいい初老の男性が、何か言いながら前に置かれた缶に二ドル入れてい
った。早口の英語は藤本には理解できなかったのだけど「頑張れ」と確かに聞
こえた。

藤本と道重は、何度も何度も頭を下げて、ありがとうございますありがとうご
ざいます、とお礼を言った。

二人は抱き合って喜んだ。そして、
107 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時31分14秒

「……ミキティ、これ、いいのかな?」
「良くないけど、きっと神さまも見逃してくれるよ」

遅いお昼ご飯。ブロードウェイ名物、屋台のホットドック。
二人は、初めて手にした自分たちのお金のうち、一ドルだけ使うことにした。
一本だけ買い、それを二人で分けた。

「おいしいっ!」
「ホントだ。おいしいね……。ねえ、さゆみん、私、この味一生忘れられそう
にないよ」
「私もです」

108 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時32分30秒

(ええ話や)

中澤は、遠くからそんな二人の様子を覗き見しつつ、鼻水をすすった。

「さて」
「うわっ!」

中澤は飛び上がって驚いた。いつの間にか、背後に誰かが忍び寄って――

ガツン。

「って、つんくさん、なんでここにいますん!?」
「あー、カメラでぶん殴るのは、相手を確認してからにしてや」

鼻血を流したつんくがそこに立っていた。

109 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時36分12秒

「さすがに飛び込みではアポロシアターには出れんからな。スタッフたちと俺
とで出演交渉しに来たんや。どや、あいつらようやってるか?」

中澤とつんくはカーネギーホールのカフェブースにいた。

「はあ。頑張ったり要領よかったりいろいろですけど」

まあ、詳しくは中澤のビデオ見せてもらうけどな、とつんくは言い、続けてア
ポロシアターの日、決まったで、と続けた。

「で、いつなんですか?」
「あさってや。当然、英語で歌ってもらうで?」

「はあっ?」
110 名前:7 投稿日:2003年05月31日(土)09時37分09秒
一方その頃、キャンピングカーでは、

「それでは、結果発表ー! 飯田班、33ドル」
「うちわけはののダンスで30ドルです」
「だったら圭織の女神ボイスで50ドルなんだけどね」
「計算合わないし」

「チームチャーミーは、8ドルです! 可愛さで乗り切りました!」
「あの……私たちは――」
「(石川、田中の口を押さえ)がんばりまちた!!」

「藤本と道重、3ドルでした。もっと努力します」
「ミキティは頑張ったんたけど、私のせいで――」
「そんなことないよっ。さゆみんも頑張ったよ」

中澤の帰りを待ちつつ、ニューヨークの夜は更けていく。

『チームチャーミー』が歌で稼いでいる様子を中澤のビデオで確認して、藤本
が怒り狂うのはもう少し先の話である。
111 名前:英一 投稿日:2003年05月31日(土)09時44分04秒

つづく
112 名前:英一 投稿日:2003年05月31日(土)09時48分42秒

>>103のモーニング公園、っていうのは、モーニングサイドパークのことです。
実際のココは、ハーレムとハイツを分断する、結構シビアなエリアなのですが。
113 名前:名無し民 投稿日:2003年05月31日(土)12時47分55秒
うわぁ、めちゃめちゃ気になる。
最後まで作者さんについて行きます!
114 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月31日(土)21時36分19秒
娘。版「月はピアノに誘われて」か?
でも充分おもろい。
115 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月25日(水)22時46分14秒
面白いです!早く続き読みたいっす。
がんばって下さい!
116 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月05日(土)10時59分19秒
保全
117 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月28日(月)23時23分46秒
更新期待age
118 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月09日(土)11時55分04秒
保全
119 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)14時26分43秒
もうダメかな…
120 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)18時36分33秒
と思っても待ってしまう・・・
121 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/20(土) 22:40
英タンを信じて待ってみる
122 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/10(金) 16:34
保全
123 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/09(日) 20:47
保全しておく。
124 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/03(水) 23:02
 
125 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/12(月) 12:54
 
126 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/25(日) 15:39
保全
127 名前:英一(21) 投稿日:2004/01/31(土) 10:11
続ける意志はあります。
あっちの方、先に決着つけてきます。

もし、宜しければ、もう少しここにいさせて下さい。
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 11:12
生存報告キター!!
マターリ待ちます
129 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/01(日) 22:59
八ヶ月待ったんやし、もうナンボでも
待ちますわ。
続きが読めるのが一番の幸せ。
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/06(土) 00:23
保全
あっちの小説もこっちの小説も更新期待してます!
131 名前:名無しさん 投稿日:2004/03/15(月) 19:48
更新楽しみにしてます。
>>50
>モーニング娘。コンサートツアー2003冬。『さくら満開』

去年書かれた場面ですから偶然でしょうけどビックリしました。
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 10:55

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