GIVE ME A LOVE
- 1 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年02月23日(日)13時41分11秒
- はじめまして、ヒトシズクですっ!
青板で「2番目」という作品を書いていました。
こちらで、石川さん主役の物語を書きたいと思います。
CPは主にいしよしですが、他にも書きたいと思っています。
更新は不規則ですが、よろしくお願いします。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2003年02月23日(日)13時43分36秒
- 真っ白なキャンパスに真っ黒な絵の具を塗りつぶした。
隙間一つとして無いように
私の心を表すかのように
不安・絶望・切なさ、全て表れるように
あなたという愛しい人と愛という形無いもの隠してしまうように・・・・
- 3 名前:第1話 夜の顔 投稿日:2003年02月23日(日)20時48分57秒
- 夜ということが分からないほど光り輝く街
そこに溢れかえるほどの人、人、人・・・
その人だかりを避けるようにして、逃げ込んだ細い路地
その奥をずんずん突き進む・・・
・・・そう、何も考えないようにするために。
――――すると、見える1件のクラブハウス。
私は、その中に吸い込まれるようにして入っていった。
夜の街に消える。
- 4 名前:第1話 夜の顔 投稿日:2003年02月23日(日)20時54分00秒
- 入った瞬間に鼻をつく酒臭いにおい
それと同時に目に飛び込んでくる、思わず目を背けたくなる画像。
それは、グデングデンに酔っ払ったおやじ達。
私は、顔をしかめてバーカウンターで涼しい顔をしてグラスを拭いている人にポケットから出したカードを見せる。
その人は一瞬、ビクッとしたがすぐに元の涼しい顔をしてあごで奥の扉を指した。
私はカードをポケットにしまうと、その扉に向かって歩き出す。
そう、ゆっくりと。
何も
誰も
心の中わからないように。
- 5 名前:第1話 夜の顔 投稿日:2003年02月23日(日)21時00分25秒
- 扉をゆっくりと開けると、甘い香りが鼻をつく。
私は、扉を後ろ手で閉めるとゆっくりと彼女がいるはずの場所に向かう。
数台あるビリヤード台のところで、ぺちゃぺちゃ話している2人組み
バーカウンターでマスターと何か静かに話している人
赤いソファーに座って何かを飲んでる人・・・・
!
とうとう、見つけたお目当ての人。
その人はゆっくり歩いてくる私に右手を上げて微笑む。
「やぁ、梨華ちゃん」
黒い大人っぽいドレスを身にまとった人
その人は、髪をかき上げると綺麗なハスキーボイスで私の名前を呼んだ。
- 6 名前:第1話 夜の顔 投稿日:2003年02月24日(月)00時38分50秒
- 「こんばんは、ごっちん」
黒いドレスの人、ごっちんこと後藤真希はふにゃ〜とした笑顔を見せて、ゆっくり口を開く。
「今日は来たんだね〜。何か飲む?」
「招待状来たからね。あ、オレンジジュースね」
「んぁ〜」
ごっちん独特の声というか、うなり声というか・・・そういう声を出して「ジュース取ってくる」
と言ってバーカウンターの方に歩いていった。
その後姿を見ながら、近くにあった赤いソファーに座ると腕時計で時刻を確認した。
- 7 名前:第2話 秘密 投稿日:2003年02月24日(月)21時16分50秒
- 周りをぐるっと見渡すと、いつものようにドレスやスーツに身を包んだ人達。
それは、どこかのパーティーのようで・・・と言っても、パーティーなのだが・・
何故、私たちがこんな真夜中にそれもこんな場所に集まっているかって言うとパーティーがあるから。
まぁ、詳しく言うと都内有数のお嬢様学校の中澤女子学院の中学・高校・大学の生徒会員と私の通う平家女子学院の中学・高校・大学の生徒会員の交流パーティー。
学園長の平家さんと中澤さんが昔から仲が良くて、お互い学校を持った時生徒を交流させようと言うことで交流パーティーが出来たわけ。
もう1つ、何故こんな真夜中にパーティーがあるかって言うと、それは私たちの仕事に関係があるから。
その仕事を簡単に言うと『売買』
その売買の品を、このパーティーの中で行われるオークションで落とす。
その品ってのが普通じゃないから私達流。
品は情報。
- 8 名前:クロイツ 投稿日:2003年02月24日(月)21時23分39秒
- 新スレ、おめでとうございます!!
いつもの事ながら…かっけ〜!全体的な雰囲気が超カッコ良くて、めろめろです♪
そしてごっちん!!黒いドレス!!!
せくすぃ〜!!!
先が楽しみです!!ワクワクしながら待ってます♪
- 9 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年02月25日(火)00時39分26秒
- クロイツ様・・・レスありがとうございますっ!!!
これからも、よろしくお願いします。下手な文章ですが・・・・
【お知らせ】
25日(火)からテストのため更新を休みます。
勝手ながら、本当に申し訳ありません。
次回更新するのは、たぶん、27,28か、夜中に更新するかになります。
本当に申し訳ないです・・・
ホント、テストの方もヤバイんで・・・(汗。
では、失礼します・・・
- 10 名前:tsukise 投稿日:2003年02月27日(木)19時57分41秒
- 初めてレスさせていただきますっ!
何気に某所にて、ヒトシズクさんの短編集を見てかなりハマりましたっ。
こちらの小説もクールなカンジで、早速お気に入りに…っ。
更新、マターリ待ちますんでテストなど頑張ってくださいね。
- 11 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年02月28日(金)00時40分38秒
- テストもあと1日となりました〜^^
長い間、更新してませんで本当に読んでくださってる方に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
更新は明日からとなります♪
本当に申し訳ありませんでした(−−;
レスのお返しです!
tsukise様・・・レスありがとうござます!!!
短編集読んでくださったのですか!!!あんなものを・・・(−−
ハマっていただけて嬉しい限りです^^
それに、この作品もお気に入りと・・・もぅっ!!!嬉しすぎます!!!
これからもよろしくお願いします♪
- 12 名前:第2話 秘密 投稿日:2003年02月28日(金)21時17分51秒
- 例えば、どこかの政治家がワイロをしてるとか、どこかのお医者さんが医療ミスを起こしたとか・・・
新聞を見れば溢れかえっている記事たち。
毎日のように同じような文字が紙の上に並べられているのを、ほんの16,7歳の少女たちが集めているなんて誰も知るはずが無いだろう。
まぁ、そんな仕事内容だし、私たちは一応学生ってことで昼間からオークションをしてるのは無理があって、時間的にも仕事をするのに適した真夜中にこうして集まっている。
- 13 名前:第2話 秘密 投稿日:2003年02月28日(金)21時23分23秒
- 毎日のように集まっているのはいつ、どこで情報が入るか分からないから。
皆思ってることは簡単。
誰よりもいい情報を見つけたい。
誰よりも金儲けをしたい。
そんなとこだろう。
それは、何も知らない天使が罪と言う罰にいつの間にかはまっていって
深く深く
そして、ゆっくりと
落ちていく
『天使墜落』
その文字が私は好きだった。
どことなく、私に似ていて。
そして、あの頃のあなたと私のようで。
- 14 名前:第3話 集う人々 投稿日:2003年02月28日(金)21時32分58秒
- 「あ!梨華ちゃんやんか」
独特の関西弁が静まり返った空気に震えてそして私の耳に聞こえてきた。
私は、そっと後ろを振り向く。
私の名前を呼んだ人は分かる。
その人は、私を罪と言う罰に落とした張本人で
そして、この商売を作った人物。
その人の顔が私の目に映る
そう、ゆっくりと、揺れた水面に映る景色のように次第にはっきりと。
「あいぼん」
その人、いや、少女の顔がはっきりと映ったところで私は彼女の名前を口にした。
その少女は、毎回オークションの招待状を送ってくれてる人。
営業用のニコニコスマイルであいぼんは私の真後ろに立っていた。
いつものように髪をおだんごにして、関西弁をあたりに振りまく彼女。
誰よりも私に近い場所にいて
誰よりも私に遠い場所にいる彼女。
- 15 名前:第3話 集う人々 投稿日:2003年02月28日(金)21時39分50秒
- 「久しぶりやな〜。梨華ちゃんウチが招待状送ったときしか着てくれやろ?」
ニコニコスマイルを崩さずに彼女は器用に喋る。
「そうかな?まぁ、あいぼんを信じてるからね。あ、今回も招待状ありがとね。毎回助かってる」
「別にええで。今回はまたでかいもん見つけたからな。高く落としてな」
あいぼんこと、加護亜依はオークションの品、情報を集めてくる情報屋だ。
どこからそんなに情報を集めてくるのか聞いたって答えはいつも「秘密」
そんなこともあってか、あいぼんのあだ名は『なぞの情報屋』って言われてる。
中学3年とは思えないほどの子供なのに、いざオークションになると目の色を変える。
- 16 名前:第3話 集う人々 投稿日:2003年03月01日(土)21時08分30秒
- 私の嫌いなタイプの人。
「うん、まぁ気に入ったのがあればね」
私は苦笑いを浮かべてあいぼんに答える
「でも、師匠が許さへんやろ?梨華ちゃんの気に入ったのっていつになるか分からんしな〜」
てへてへ笑いを浮かべる姿はホントに子供で、少し苦手だ。
そう、子供は苦手。
すぐ泣くし
すぐ笑うし
すぐ悲しむし
よく分からない。
「まぁ、そうだけどね。それより、ののは?」
いつもいるはずの人
ののってのは、辻希美
あいぼんといっつも一緒にいる子だ。
「腹壊したんやって。また食いすぎたんやろ?」
はぁ〜とため息をついて、もう知らんわと言いながら首をかしげる姿。
でも、顔にはこぼれる笑顔。
「そっか、お大事にって言っといてね」
「分かったわ。それじゃ、まだあいさつ回りがあるんや。また後でな」
あいぼんはそう言うと私に手を振りながら人のいる方に駆け出していった。
- 17 名前:第3話 集う人々 投稿日:2003年03月01日(土)21時19分46秒
- 「はい」
そう言って目の前に差し出されるワイングラスにつがれたオレンジジュース
ワイングラスから垂れる一つの雫が私の膝に落ちてズボンに染み込んで消えていく
「あ・・・ありがと、ごっちん」
顔があるはずの場所を見上げて、ふにゃ〜とした笑顔を見つける。
「いえいえ」
ごっちんはそう言ってオレンジジュースを目の前にあるテーブルに置き、私の隣に座る。
ワイングラスにささったストローをぐるぐる回しながらどこか宙を彷徨う視線。
「ねぇ〜さっきのあいぼん〜?」
まだ、視線を宙に彷徨わしたまま私に聞く。
「ん、そうだよ」
ストローを口にくわえながら答える私。
ふと、ごっちんを見ると視線はワイングラスの中の氷に注がれていて
その浮き沈みする氷を楽しそうにつっついていた。
- 18 名前:第3話 集う人々 投稿日:2003年03月02日(日)12時10分52秒
- 時々、人のことがわからなくなる。
何を考えてるのか
何を思っているのか
別にどうでもいいと思っていることも時々、そう瞬間的に考えたくなって分からなくなる。
今のごっちんも。
まぁ、どうでもいいけど・・・
「ねぇ〜・・・今回はどんなのがあるか言ってなかった?」
いつの間にかごっちんのワイングラスには数滴のオレンジ色の水と小さくなった丸い氷だけが残っていた。
透明のストローはポキポキ折ったり、反対に折ったりされて所々パックリと開いていた。
「いいのがあるってしか聞かなかったよ?どうしたの?」
いつもらしくないごっちん。
いつもなら、「さっきのあいぼん?」って聞いて「ふ〜ん」と興味なさそうに呟いて黙り込むのに。
- 19 名前:第3話 集う人々 投稿日:2003年03月02日(日)12時36分01秒
- まぁ、いいや。
自分に言い聞かせて考えてたことを流れる風に乗せるように小川を流れる水に乗せるように消した。
私の手の中で汗をかいたワイングラスの水滴が手をつたって、1滴、1滴落ちていく。
その水滴をズボンで拭き取ってそのグラスにささっているストローを口に含む
すうっと深呼吸の時の空気を吸い込むようにすると、オレンジ色の水は透明のストローを通って私の口へと注がれる。
それは、いつもと変わりないことのようだけど今は不思議に満ちていた。
その水は口の中で広がりすっぱさだけを残して消えていった。
- 20 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月02日(日)13時43分59秒
- ををっ!更新されてるっ♪
テスト終わったんでしょうか?…駄目ですよ〜テスト中に更新なんて、私みたいな事しちゃ(爆笑)
今回もかっこええ…!!
なんか全体的な雰囲気が超!かっこ良いですよね!!うう〜ん、素敵☆
つーかこーゆーあいぼん大好きです♪
次回も楽しみにしてますねっ!
- 21 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月02日(日)16時21分26秒
- クロイツ様・・・レスありがとうございますぅ〜^^
テストはなんとか終わりました。心配どうもありがとうございます♪
と、言いたいところなのですが、実はテスト中更新してたりして・・・(笑。
血が騒ぐんですよねぇ〜(誰だよっ! 更新しなきゃって・・・(笑。
かっこいいですか?どうもありがとうございます^^もう師匠に言っていただけるなんて・・・嬉しい限りです!
では、続きもよろしくお願いします。
- 22 名前:第4話 後藤真希という人物 投稿日:2003年03月02日(日)16時35分08秒
- 「別に・・・」
そう言いながらせわしなく、氷を転がすごっちん。
その氷が転がるたびグラスに当たりカランと心地よい音が響く。
その音は静かな部屋に充満した暖房で温められた空気に広がり、本当の音の何倍もの音を立てた。
――――後藤真希という人物はよくわからない。
それは私が今まで幼稚園の頃から思ったコト
そっけない態度の時
子供のように笑う時
悪魔みたいに意地悪な時
泣きそうな顔の時
何も考えたないような無表情の時
・・・・
数えたらきりがない程の表情
それは表情が豊だってコトじゃない
気の上下が激しい
そんなカンジ
昨日、悪魔みたいに意地悪だったのに
今日は天使みたいに優しかったり・・・
私が今まで出会った中でこれほどまで不思議な人はいないとそう思うぐらい。
その考えが『後藤真希とはよく分からない人物』という結果を導き出すのだ。
- 23 名前:第4話 後藤真希という人物 投稿日:2003年03月02日(日)16時44分24秒
- 「梨華ちゃん〜?今何時〜?」
いまだに氷をころころ転がし続けるごっちんは私を見もしないでのんびりとした口調で言う。
「ごっちん時計持ってないの?」
また、数滴垂れてきた雫を指の上にそっと、とりながら答える。
ふと、見ればごっちんの腕には時計が時刻を指し示していて主が見てくれるのを待っている。
「あるけど〜・・・めんどい」
カランとした音が止んだと思えば、こんどはそう答える。
アンタは何者だよ!?
一人心の中で突っ込んでおく。
ごっちんはと言えば、今度は小さくなった氷を口に含み、ワイングラスを照明で反射させて、遠くにいるあいぼんに光を当てようとしていた。
ワイングラスで遊ぶぐらいなら時計見てよ・・・と喉まででかかった言葉を空気を一緒に飲み込む。
例え、言ったとしてもごっちんは絶対、いやもしくは90パーセントの確率で見ようとはしないだろう。
長年の勘で感じた私はため息と共に自分の腕時計を覗き込んだ。
- 24 名前:第4話 後藤真希という人物 投稿日:2003年03月02日(日)16時48分38秒
- 「12時45分30秒」
秒まで言うことなかったかな?と思いながらごっちんを見る
ごっちんは遊び疲れたのだろうか、焦点の合わない瞳で天井を見ていた。
何も表情の浮かばない顔で・・・
「ん〜・・・まだ時間あるじゃん・・・ごとー眠いから寝る〜」
そういい終わらないうちにごっちんはごろんと横に寝転ぶ。
生徒会副会長、これでいいのか?
頭に浮かんだ疑問を私は瞬間的に消し去っていた。
- 25 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月03日(月)21時01分17秒
- ワイングラスで遊ぶごっちん、可愛い〜♪
すぐ寝ちゃうのも可愛い〜♪
素敵ですねぇ、ごっちんも梨華ちゃんも!
ミステリアスな感じが良い感じです。
そして…
>血が騒ぐんですよねぇ〜(誰だよっ! 更新しなきゃって・・・(笑。
すっごい良くわかります!!私もそうですから(笑)!!
次回も楽しみにしております♪
- 26 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月03日(月)21時33分37秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます♪
いやぁ〜ごっちんにはてこずりました・・・(−−;
ごっちんは動作が多いんですよねぇ〜・・・(苦笑。
血が騒ぐの意味がわかるんですか!!!?
おぉぉ、同士ですか〜^^ありがとうございます。
では、次回もよろしくお願いします♪
- 27 名前:第4話 後藤真希という人物 投稿日:2003年03月04日(火)20時59分07秒
- 考えても考えても答えは闇の長い長い迷路の奥の奥にあるそんな感じがしたから。
答えは私が生きている間に出ないかもしれないし、それとも明日ふとした瞬間に出るかもしれない
そう思うから、考えるだけ時間の無駄と自分に言い聞かせた。
ふと寝転がったごっちんの幸せそうな横顔を見ると、まぁいっか。と思ってしまう。
マイペースで訳のわからない時もあって、すごいクールな時もあって、何も考えてないような時もあって・・・
こういう人こそが私には苦手なのかもしれない、とふと思った。
数秒すると聞こえてくる安らかな寝息。
毎回のコトながら寝るの早いねぇ〜・・・
しばし、そんなことを思いながらごっちんの寝顔をもう1度見た。
「・・・綺麗な顔してるのに、どうして自分のランク下げたがるんだろうね・・・」
そう、この後藤真希と言う人物はどうしても自分のランクを下げたがる。
寝癖がついたまま学校に来たり、わざとテストで悪い点を取ったり、喋り方を何処かの方便にしてみたり・・・
考えれば次々に浮かんでくる。
これまた謎の人物だ。
少し赤味が差したごっちんの頬に私は少し手で触れて、ソファーから立ち上がった。
- 28 名前:第5話 仮面パーティー 投稿日:2003年03月04日(火)21時10分29秒
- 空になったワイングラスを2つ手に持ってバーカウンターへ急ぐ。
別に急ぐ意味があるわけではないが時間が迫ってるから。
時々腕にある時計を見ては時間を確認して、自分の心臓を確認する。
ちゃんと動いているか
苦しくないか
いつもこの時間帯になればしてる行動。
バーカウンターの周りだけに赤いじゅうたんがひかれていて歩くたび響くハイヒールの音は消されていく。
バーカウンターで熱心にグラスを磨く黒い服で統一された人に向かって歩く。
そう、一直線に。
遠回りも近道もしないように。
「稲葉さん、ありがとうございました」
黒い服の人―――稲葉さんに私はそう言ってワイングラスをカウンターに置く。
「・・・今回は100%にしてみたんだけどどうだった?」
稲葉さんはワイングラスを水につけながら私にニコッと微笑みながら聞く
「ちょっと酸っぱかったですね」
カウンターの椅子に座りながら私は答える。
「そっか、じゃ、今度は違うのにするよ」
何か失敗した子供のように舌をぺロッと出して稲葉さんはまたグラスを磨きだした
- 29 名前:第5話 仮面パーティー 投稿日:2003年03月05日(水)21時07分06秒
- 「じゃ、次回おまかせします」
私は簡潔に答えて時計に目を落とす。
1秒1秒時間は時刻とコクコクと刻んでは過ぎていく。
- 30 名前:第6話 どうして――― 投稿日:2003年03月05日(水)21時19分06秒
- 「その時計、石川の?」
遠慮がちに上から降ってくる声はどことなく緊張感を感じさせた。
ビクッと私の体は一瞬にして緊張してギギギギ―――と音を立てるように首をゆっくりと動かす。
あごを下に引いて上を見る
そこに浮かぶ稲葉さんの顔
その顔に映る笑顔はいつもと同じなのにどことなくひきつっているように見えた。
「・・・・ええ」
私の手首に巻きついているシルバーのシンプルな時計。
それを隠すかのように右の手のひらで覆った。
―――――あの人と交換した時計
今も離せず身に付けているのは今もあなたが好きだから?
ねぇ、どこにいっちゃったの?
私を一人置いて
映画の中の2人のように永遠を誓ったのに
ねぇ、どうして
どうしてこんなにも好きなのにあえないの?
- 31 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月05日(水)21時25分56秒
- をををっ!!今回もまたかっこいいっ!!
そして時計っ!!時計っ!!
誰と交換したの!?誰ダレだれっ!!?も、もしや…!!
期待しまくっております(笑)次回も楽しみにしてますねぇ〜♪
- 32 名前:第6話 どうして――― 投稿日:2003年03月05日(水)21時30分35秒
- ねぇ、どうして?
たった1人の
たった1人の
初めて私を好きになってくれた人なのに
こんなとりえもない私を好きになってくれたのに
初めて私が心を開いた人なのに
親よりも先に、世界ではじめて心を開いた人なのに
ねぇ、どうして?
「彼氏さんの?」
時計を覆った手のひらに私の視線が刺さる
稲葉さんの上から降ってくる言葉が矢のように私の胸に刺さる
痛さなど一つもない
だって、私の心は凍てついてしまってるから
誰も溶かせないほどに
・・・そう、あなた以外の人には溶かせられないように
――――あなたがかけた魔法
「・・・そんな感じの大切な人のです」
うつむいた顔に苦笑を浮かべた。
ねぇ、誰もこの心見ないで
触らないで
気づかないで
私の心なんか誰も知らなくていいの
――――あなた以外の人は。
この心はあなたの――――市井さんだけに見せるものだから。
ねぇ、あなたが伝えてくれた言葉なら1つ残らず覚えてる
ねぇ、今もあなたを想っている、ずっと。
この胸の中行き場のない想い、いっぱいであなたを想っている
ねぇ、どうしてこんなにも想ってるのにあなたに会えないの?
ねぇ、誰か教えて
どうしてあえないの?
やっと、両思いになったのに
ねぇ、どうして?
- 33 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月05日(水)21時32分14秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます。
やっと、名前出てきました〜(汗。
前書きが長いんですよ・・・ホント。
これからもよろしくお願いします♪
- 34 名前:第6話 どうして――― 投稿日:2003年03月05日(水)21時34分58秒
- 今、乾いた涙がもう1度流せるのなら
この心これ以上傷ついてもいい
もう1度あなたに会えることならば
私はこの人生ゲームを終わらせてもいい
ねぇ、神様
どうして私は
どうして私だけ
こんな想いをするのですか?
- 35 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月06日(木)12時34分09秒
- すみません…更新の真っ最中にレスをしてしまいまして…(大汗)
ごめんなさぁぁぁぁぁいッ!!!
時計の人は…い、市井さんッ!?
うわ〜!!どうなっちゃうんだっ!!?続き、楽しみにしております♪
- 36 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月07日(金)21時06分08秒
- クロイツ様・・・いえいえ、ちんたら更新してる私が悪いんですよ。気にしないでください!
やっと、時計の人出ました〜って感じです^^
これからもよろしくお願いします♪
- 37 名前:tsukise 投稿日:2003年03月07日(金)21時06分14秒
- 更新お疲れ様ですっ!
久しぶりに自身のモノを更新して、見てみたらすでに大量に更新されてるしっ!
う〜、やっぱりヒトシズクさんの小説はツボです。
心理描写が綺麗で…って、市井ちゃん登場ですねっ!
早くも続きが気になります! お待ちしていますので頑張ってくださいねっ。
- 38 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月07日(金)21時10分15秒
- tsukise様・・・レスありがとうございます〜♪
ツボですか〜・・・もう褒めていただけて嬉しい限りです!!!
とうとう市井ちゃん登場です!登場までが長かったです・・(−−;
これからもよろしくお願いします♪
- 39 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月07日(金)21時21分57秒
- 市井さんと交換した時計を隠していた右手をカウンターから約20cmくらいの高さまで一気に持ち上げる
その手に握りこぶしを作って、それを力の限り振り下ろした。
バンッ!!!
大きな音が静けさを増していた店内に嫌になるほど響く
それからすぐ後に襲ってくる痺れに似た衝撃の痛み。
ふっと力なく笑って見上げたそこには驚きを隠せない稲葉さんの顔。
私はその大きな音で悲しい思考とおしゃべりを中断しただけ。
それは私が弱いから
あなたを思い出すことを怖がってるの私の心が
この心の中覗かれることを嫌がってるの
土足で踏み込まれるのを怖がってるの
―――だからよ
だから、私は、自分を守るために、心を覆う壁を作った
何十もの分厚い硬い壁を。
ふと見た稲葉さんの顔は金魚みたいにパクパクしてから戸惑うようにかすれた声で言葉を発した。
- 40 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月07日(金)21時24分29秒
- 「・・・・あ〜・・・そろそろ時間じゃないの?」
その声は聞けばすぐわかるほど震えていてそれ程驚いたのだと私は実感する。
それもそうか・・・
いつもは人形のようにおとなしい私がこんなことをするのだから。
操り人形のように言われたとおり文句もいわない私が初めて反抗したから。
- 41 名前:蒼乃 投稿日:2003年03月08日(土)01時46分00秒
- 初めてレスさせていただきます。
ミステリアスな雰囲気が漂っていて、かなりツボです。
某HPの短編集から入らせていただいたのですが、いいものに当たることができました。
続き、楽しみにしておりますので、頑張ってください。
- 42 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月08日(土)20時31分41秒
- 風邪を引いてしまいました・・・(汗。
熱が38℃・・・やばいっすねぇ〜・・・
でも、更新はするんで!!!(バカ。
これからもよろしくお願いします♪
蒼乃様・・・レスありがとうございます♪
ツボですかぁ〜・・・このままミステリアスな感じが続けばいいのですが・・・(笑。
がんばります!では、これからもよろしくお願いします♪
- 43 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月08日(土)20時37分05秒
- 「そうですね」
心の動揺が見透かされてしまわない様に冷静な声を出す。
ジンジン痛みが手から腕へと伝わってくる。
ふと、時計を見て椅子から立ち上がる
時計の針は1時5分前を指していて秒針はコクコクと進む
――――瞬間に襲ってくる眩暈に似た罠
今日はくるのはやいじゃん・・・
心の中で舌打ちと共に言葉を吐き出した。
- 44 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月09日(日)12時18分33秒
- 目の前が白黒のモノクロに変わっていく
明るすぎる電球の光も目の前にいる稲葉さんの顔も綺麗な赤色のソファーも・・・全て。
黒と白に分かれる。
「・・・あ〜・・・これいるんやろ?」
いつものように差し出されたコップに並々と注がれた透明な液体
透き通るほど綺麗なのに今はただの白い液体としか見えない
「あ・・・どうも」
くらくらする
右も左も分からないほど
いつか小さな頃地面をじっと見てくるくる回っていた感触に少し似ている
・・・でも。
違うのはその感触がすぐ治るか治らないか。
まぁ、薬を飲めば治るけど。
必死に作り笑いを浮かべてコップを掴む
冷たい感触が手からどんどん吸い込まれていって体内に入っていくような・・・そんなカンジ。
頭の中で黒と白が混ざり合っては1つの形を作り出す。
それは深い深い深い―――海の底でにっこりと微笑を浮かべている人の姿に変わり
私に訴える
【早く来て】
【さびしいよ】
【1人にしないで】
【私を忘れないで】
私に向かって差し出される白い細い手は次第に骨だけへと変化する
暗いく暗い海の底で私を待ってるの
私があなたの傍に行くまで
あなたは一人っきりで
寂しさに飲み込まれながら
微笑を浮かべたまま
――――――私を待ってる
- 45 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月09日(日)12時28分37秒
- 作り出す画像が全て幻想だと分かっているのに消せないの。
頭の中から
体の中から
私の中から
もう染み付いて離れないの
いくら忘れよう、消そうとしてもその度に私なんかどうにも出来ない力で押さえつけられるの
【忘れるなんて止めなさい】
【あなたは忘れてはいけない】
って、呪文のように呟かれる
私であって私ではない人に。
「石川・・・?」
その言葉にハッとする
心配そうに私の顔を覗き込む稲葉さんの顔
そして、伸ばされる手
「・・・どうしたん?顔色悪いで・・・?」
私の頬にその手が触れる数センチ前で私はその手を自分の右手で払った。
パンッ
切れのいい音が私たちだけの間に木霊する
「・・・・あ・・・」
行き場のない稲葉さんの手は宙をさまよう
稲葉さんの手を払った私の手は無意識のうちに握りこぶしが作られていた。
「・・・すいません。私は大丈夫ですから・・・」
- 46 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月09日(日)12時58分29秒
- 視線を何処か宙にさまよわして私は苦しく呟く
どうして私にかまうの!?
心は叫び続ける
幻想と共に。
「あ・・ああ・・」
稲葉さんはそう呟くと宙を彷徨っていた手をカウンターの上に静かに乗せた。
「それじゃ・・・」
私はそう言うとくるっと後ろを向き走り出した。
正直言って立ってるだけでもしんどいのに走るなんてありえないほどしんどい
それでも走るのはもう嫌だから
皆、私にかまうのが
何で私に干渉するの?
何でほっといてくれないの?
――――心配してくれてるって分かってるの。
ねぇ、だからほっとて。
私のことなんか。
心配なんかしないで、干渉なんかしないで
お願いだから
私を一人にして・・・・
数十センチ先にある扉を私は力の限り思いっきり開ける
その扉の中に吸い込まれるように入って扉を後ろの手で閉める
「・・っ・・・はぁ・・・っく・・」
途切れ途切れの呼吸
それは力を少しずつ奪っていく
立っていることもホントにしんどくなって私は扉をつたってずるずると床に座り込んだ。
- 47 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月10日(月)20時28分40秒
- 【タイムリミット】
そう思った瞬間に苦しくなる呼吸
それは息も出来ないほどに苦しくて恋の病にも少し似ている
そして、追い討ちをかけるように襲ってくるせき
苦しさで少しずつ薄れていく意識の中で必死にジーパンのポケットを探る
ビニールの袋を引っ張り出してその中から3錠のカプセルを取り出す
赤・白・黄色のカプセルを一気に口に入れて稲葉さんから貰った水で無理やり体内に流し込む
―――――――
しばらくして乱れていた呼吸が次第に平常に戻っていく
手足をだら〜と床へ伸ばして背中をドアにもたれかけて私はこういう時だけ癖になった呼吸の数を数える
- 48 名前:第7話 タイムリミット 投稿日:2003年03月10日(月)20時32分49秒
- 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10・・・・・
大丈夫。
元に戻ってる。
ため息を1つ吐いて私は足に力を入れて立ち上がる
まだフラフラするが、すぐ元通りに平常に戻るだろう。
そう、何もなかったかのように・・・
―――私の本当のタイムリミットが近づいているのは知ってる
嫌になるほど
胸に刻み付けられたから。
だけど、怖くなんかないよ。
むしろ楽しみさ
タイムリミットが。
だってあなたに会えるもの
永遠に・・・
- 49 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月11日(火)21時21分23秒
- 風邪復活〜!!!
何か治りが早いですね〜ぼそぼそ言いながら更新中。
これからはバカみたいに更新するかも・・・・
これからもよろしくお願いしますね♪
- 50 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月11日(火)21時32分16秒
- コンコン♪
ドア越しにノックの音が響く
背中をドアにもたれかけていたせいか、振動が体に伝わっては体内で響く
まるで、鐘のように
体内で何回も響いてる
気持ち悪いほどに。
一つため息を吐いてもたれていた体を起こしてドアを開く
開いた隙間から見えた1人の少女のような人
「こんばんは」
にこっとその人は笑う
その笑顔はひまわりのようでその周りだけ輝いているような気がした
「こんばんは、もう時間?」
ドアの隙間を人一人入れるように広げて私はそっと微笑んだ
この人―――安部さんと一緒にいると心が温かくなる
それは一瞬だけの気の迷いと知っているけど
本当に心が温かくなることないと知っているけど
そう思いたかった
ほんの一瞬でいいから。
この人といる間だけ・・・そう心の奥でいつしか自分は願ってた。
安部さんは私が開けた隙間をすり抜けるようにして通って部屋の中に入るといつものようにぐるーっと周りを見回した。
- 51 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月11日(火)21時41分34秒
- 安部さんは私の先輩で今は大学院に通いながらメイクの勉強をしているらしい。
毎回オークションのたびに開かれる『ショータイム』に出る私にメイクをしに来てくれている。
『ショータイム』というのは簡単に言うと柴ちゃんと飯田さんの戦い。
飯田さんも柴ちゃんも服を作るのが好きでいくつか賞を貰ってるほど。
その2人が闘志をお互い燃やしあっていたところに中澤さんが来て「ショーしてみたら?」と言ったのが始まりだった。
それで、お互いが集まるこの場でショーを開くことになった。
そしてモデルが必要になって選挙の果てにごっちんに決まったけど、ごっちんが「太った」「太った」言いまくり、
「太った人がモデルしてもせっかくの服が台無しになるよ。こんな時は細い梨華ちゃんがいいよ」
――――その1言だった
柴ちゃんはまんまとごっちんの罠にはまり、私が嫌々モデルをする羽目になった。
その瞬間だった
その時初めて罠にはまった動物たちの気持ちが分かったような気がした。
- 52 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月11日(火)21時54分38秒
- そして、ごっちんへの苛立ちが芽生え始めたのもその頃だった。
―――そして、今に至る。
「今日はちょっと早いかな?さっき柴ちゃんに会って服貰ったから早速来ちゃったべ」
ひまわりのような微笑みで安部さんは持っていた黒いドレスを私に嬉しそうに見せる。
「それですか?」
後ろ手でドアを閉めながら私はゆっくりと安部さんに近づく。
カツカツカツ・・・・
歩くたび響くハイヒールの音
それが嫌に耳に響いて私は思わず顔をしかめた
「梨華ちゃん?どうしたべ?今日は何か変だべ」
安部さんとの距離が1歩で止まった私に安部さんは手を差し出す
ふわっとその手は私のおでこに触れた
それはぽかぽかの太陽の下に干した布団のように暖かくて
生まれたての鳥のふわふわした羽毛のように気持ちよくて
思わずそっと目を細めた。
安部さんはくすっと笑って私を抱きしめる。
数センチ背が高い私の頭をぽんぽんとただ無言で優しくなでる姿は聖母のように優しく、温かった。
伝わる体温
「こんなに・・・安心したの・・初めて」
ぼすっと安部さんの肩に顔をうずめて呟いた
「・・・うん」
「何かあったら、なっちに相談してして欲しいべ。梨華ちゃんは何でも溜め込むから心配するんだべ」
独特の北海道弁で小さな子に話す様にゆっくりと優しく安部さんは話す
私の頭をなでる手は休めずに。
- 53 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月11日(火)21時59分35秒
- 何でこの人だけ私はこんなに心を許すのだろう
ふと、そう思った。
さっき稲葉さんに触れられそうになった時は逃げたのに安部さんのときは逃げなかった。
時間はあったはずなのに、稲葉さん以上に。
何故こんなに心を許すのか自分でも分からないけど
安部さんは私を一番知っているからだと思う
市井さんと私のことも一番初めて知った人だし、市井さんがアメリカに立った時も安部さんが傍にいた。
悩んだ時も気づけば安部さんに話してたし、唯一私の病気のことを知っているのも安倍さんだった。
だからかな?
分からないけど。
- 54 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月12日(水)16時59分17秒
- 風邪、なおってよかったですねぇ〜。私は今年は風邪ひきませんでした♪
かわりに花粉症になった気配…(泣)
なっちかっけー!!おかあさーんっ!!て感じでナイスです!!
そして梨華ちゃん…どーしたんだぁぁぁぁっ!!
気になります…。
次回も楽しみに待っておりますねぇ〜☆
- 55 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月12日(水)20時45分42秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます〜師匠♪
花粉症ですか〜・・・私も風邪&花粉症でマジできついです・・(泣。
なっち、今回かっけぇ〜くしてみました^^聖母のようななっち1階かきたかったんですよね^^
梨華ちゃん・・・もうすぐ原因が分かる・・予定です^^
それでは、次回もよろしくお願いします♪
- 56 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月12日(水)21時19分00秒
- 「小さい頃からそう・・・なっちはずっと梨華ちゃんを見てきたべ。だから誰よりも梨華ちゃんのことを知ってるつもりだべ。
だから、話してほしいべ。頼ってほしいべ」
力強い言葉は私の頬に当たり消えていった。
私の肩に当たるなっちの顔は影で隠れているせいか見えなかった。
それでも、肩越しにじわっとしたものがあって、涙を流しているんだとやっと気がついた。
「・・・なっち。今は話せないけど、絶対いつか一番になっちに話す。だからそれまで待ってくれる?」
ひっく、ひっく、なっちが息を吸うたびなっちの肩が小さく震える
その肩に頭を預けてなっちだけに聞こえるようにそっと呟いた。
さっき、なっちが私に言ったように子供をあやすように優しくそっと言い聞かせるように。
「・・うん」
かすかに聞こえる声でなっちはそう言った。
私は誰にも、傍にいるなっちにも、もしかすれば私にもわからないようにそっとため息をついた。
ついた嘘の罪悪感と共に。
なっちは私の腰のあたりに回していた手を離して涙を手の甲でぬぐうと顔を上げて私を見つめた。
「・・・なっちは・・・いつでも待ってるべ。梨華ちゃんに必要とされるならどこでもいつでも駆けつけるべ」
さっきまで涙を流していたなんて分からないほどにこ〜っといつものように微笑んでなっちは1歩私から離れる
それでも、頭をなでる手は休めずに微笑みも絶やさずに。
「こんなにも大きくなっちゃったんだね。沙耶香がいた頃はもっと小さかったのに・・・」
母親みたいに少しさびしげに笑った。
まるで卒業式に涙を流す母親のように、さびしくそして嬉しそうに。
- 57 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月12日(水)21時27分49秒
- 「さぁ、そろそろ着替えないと時間が足りないべ」
そしていつの間にか先ほど手に持っていた黒いドレスを私の目の前に差し出す。
「・・・そうだね」
少しは穏やかになった私の心は今もなお砂漠に吹く風みたく風が吹いていた。
なっちからドレスを受け取り部屋の奥にある個室へと向かった。
―――――――――
「さすが柴ちゃん・・・」
鏡に映った姿をぼーっとしばらく見つめてから呟いた言葉はそれだった。
それは感心とあきらめの狭間の言葉
サイズもぴったり
センスもばっちり
何も言えないほどの出来上がり
そんな完璧な服が何故あんな人に作れるのか分からなかった。
いつもはぼーっとしてて何を考えてるのかわからない人が作れるのだから。
ホントに人間ってものは分からないものだ。
ごっちんにしても柴ちゃんにしても。
私の『分からない人リスト』に柴ちゃんが載ったのは言うまでもない・・・
- 58 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月14日(金)21時05分59秒
- ため息を1つ吐いて、着ていた服をたたみ何も入ってないクローゼットの中に押し込むようにしまった。
別に普通に置いても入るのだが何となく気分的に押し込みたくなったのだ。
ふと、見上げた天井。
真っ白な天井にクリーム色の染みが所々ついている天井
何も変わらないはずなのに何処か違うように感じるのは私が動揺しているから?
考えた疑問に答えも出さないで作ったような笑いを浮かべた
その笑いはこんな時まであいつに似ている私自身への悪意に似た絶望感かそれは私も知らない。
それでもただ感じるのは――――悪意
あいつと血がつながっていると考えるだけで鳥肌と殺意が生まれてくる
いっそのことこの体に流れている血全て取り除いて、他の誰かの血に入れ替えたかった
この体もこの血も私の全ていらなかった
- 59 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月14日(金)21時12分22秒
- 全て『あいつ』に関わることだから。
だから、この全て何処かかなたへ投げ出してしまいたかった。
『あいつ』に関わること全て
どうせ生き物は『生』があれば『死』がある。
それは必然に。
そして、人間も『生まれ』たら『死ぬ』
――――死は時が来たら訪れる。それはただの必然
だから、死ぬのなら早くても遅くてもいいと思った
あいつに関わること全てを私から取り除けたら
ただ、それでよかった。
私は死んでもいい
人はどうせいつかは死ぬものだから
だから、あいつの全てを私から取り除きたかった・・・・
- 60 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月14日(金)21時24分32秒
- 親とも呼べない『あいつ』
まぁ、正確に言うと『あいつら』なのだけど。
親とも呼べない程自分勝手で
家の外には愛人をたくさん山ほど作って
人前では仲のいい夫婦演じて
子供にただ金だけを押し付けていればいいと思っているあいつら。
――――全てが憎かった
何故、私はあいつらのもとに生まれたのだろう
答えが出ない疑問を幼い私はいつもいつも心の中に抱いていた
子供が親を選べないと知ってもその疑問は心の中にあった
あいつらのもとにいるよりも戦争しているどこかで生まれたらよかったと
そこまで思った。
―――いつしかその疑問は心の中でゆっくりと形を変えて『悪意』と『殺意』に変わった
別に殺しはしない
殺したら私自身が困るから
ただ、あいつらから離れたかった
金だけで問題を解決するあいつらから・・・
コンコン♪
リズムよい音が私の思考を邪魔する。
いつの間にか握りこぶしが作られていた手は色が白くなるほど強く握られていて
その力を抜いてそっと手のひらを覗くと伸びた爪の後が赤く型となって残っていた
「梨華ちゃん?着替えた?」
あぁ、そっか・・・
赤くなった跡をぼーっと見つめながら耳の中に入っては出て行く声を聞いていた
力なく微笑んで私はもう1度手のひらを握りこぶしに変えて口を開いた
「・・・着替えたよ。もう出るから」
その言葉と共に私は足を進めた
扉へと。
- 61 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月16日(日)12時55分16秒
- 1歩扉から外へ出るとさっきまでメラメラと燃えていた怒りの炎が嘘のように消えてなくなり
燃えていたと言う跡形だけ残して私の胸から去っていった。
なっちは目の前で私を見てコクコクと上出来だと言うように頷きながら笑みを浮かべていた。
「うん、いいべ」
独り言ともとれる呟きに似た言の葉は嫌に静かな空気に消えていった。
「さぁ、最後の仕上げをしなきゃ。こっちの椅子に座って」
椅子を指差し、なっちはそう言うとガチャガチャといつの間にか持っていたカバンをあさっていた。
私は作っていた握りこぶしを吐いた息と共にゆっくりと力を抜いて徐々に広げていった。
強く握りすぎて白くなった手は次第に赤い色に染まっていって爪の跡をまた多く深くつけていく
その動作ともいえる動きをしばらく見つめてから私はなっちの横に置かれた椅子に座った
- 62 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月16日(日)13時06分18秒
- 手に感じる開放感に似た脱力感
ふと、手に力が入らない感触に襲われる。
「梨華ちゃん、前向いて」
目を前にある鏡に映ったなっちの顔はどこか寂しそうに感じた。
いつもの優しさから感じられないような命令形に一瞬びっくりして背筋をピンッと伸ばして顔を真正面に向けた
「そう、そのままでね」
耳元で囁いた言葉はあなたに似ていて思い出が溢れ出しそうだった。
心の奥の奥の奥に鍵を何十にもかけて鎖も頑丈にかけていた所から暴れ出すように
溢れ出そうとする。
あなたは優しかった
他の誰よりも一番優しかった
いつも私の傍にいて
私を支えてくれていて
私を必要としてくれていた
ねぇ、どうして想いは過去になろうとするの?
ねぇ、どうして時は進むの?
私を連れたまま一歩一歩
時計の針の秒針のように刻々と
止まりもしない
振り返りもせずに
私の叫びなど無視して
―――――想いは思い出になろうとする
永遠の永い眠りにつこうとする
- 63 名前:ななし〜 投稿日:2003年03月17日(月)17時34分14秒
- おぉっ!ヒトシズク様、探しました〜
何か切ないですね・・・クールな感じなのに・・・
続き楽しみにしております
頑張ってくださいませ。
- 64 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月17日(月)20時49分36秒
- ななし〜様・・・レスありがとうございます☆
クール&切ない系を目指してますのでそう言って頂いて嬉しい限りです。
これからもよろしくお願いします♪
- 65 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月17日(月)21時08分06秒
- 私の頬を撫でるように移動していくなっちの温かい手
そして肌に乗せるようにふわっと落ちるファンデーション
その温かい感触を確かめるように感じながら私はふと鏡の中に映る私を見つめた。
鏡の中の私も私を見つめ返してきてどこか不思議な感じがした。
そう言えば昔、遊園地で鏡だらけの館に入ったことがあった
どこを見ても私だらけで鏡に手をくっつけながら1歩1歩、歩いていた
そのときも感じた、不思議な感じ
私が私を見ている
じっと見つめているうちにどっちが本当の私なのか分からなくなる
そんな感じ
ふと見つめた鏡の中の私
その瞳は恐れるほど冷たくて何も映ってなかった
悲しいほどに
暖かい色も、寂しさも色も悲しさの色も楽しさの色も眠気の色も
何も映ってなかった
まるで感情のない人みたい
ふとそう思った。
確か・・・そう昔、3年程前一番落ち込んでいた頃お見舞いに来た女の人が言ってた。
長いロングストレートの髪を揺らして大きな瞳で私をじっと見つめてあの人は言ったわ。
つまらなさそうに
どこか寂しげな音色で
そして、突き放すように
「アナタ、いつまでそんな死んだ人の目してるのよ。アナタは生きてるのよ。
生きてるうちから死んだ人の目してどうするのよ」
ふうっとため息に似た呼吸を吐いてその人はまた私を私の瞳を一瞬たりとも逃さずに
優しい音色で言った。
「アナタがそんな瞳の色をしても沙耶香は喜ばないわよ。それにそんな瞳の色をしても
アナタの悲しみは楽にはならないわよ。先には進めないわよ」
その人はそれだけ言って長い長身と髪を綺麗に180度回転させて私の視界から消えていった。
- 66 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月17日(月)21時14分11秒
- 最初は何だこいつ、と思った。
知らないうちに現れて、知らないうちに消えて
勝手に言うだけ言って
――それでも私を泥沼のどん底から救いの手を差し伸べてくれたのはあの人だった。
あの人は帰り際に小さくぽつんと言ったわ
独り言との様に誰に言うわけでもなく
「沙耶香がゴメンね」
何が言いたいか分からなかった
でも、それは幼馴染のあの人の私へのたった1つの心遣いだったかも知れない
今は少しだけ分かる気がする。
確か。
あの人の名前は
―――――飯田・・・さんだと言ったと思う。
遠い遠い先輩で遠い遠い親戚だと後からなっちに聞いた。
もう、あれから・・・3年前から一度も会ってないけど。
- 67 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月18日(火)21時07分36秒
- 「さぁ、これで終わり」
独り言のようになっちの口からこぼれた言葉は私の思考をまた止めた。
その次の瞬間に唇に塗られる淡いピンクの口紅。
唇に完璧に口紅が塗られるとなっちは最後の仕上げと言うように私の頭を3回ぽんぽんと軽く叩いた。
「さぁ、これでメイクは終わり」
メイク道具をまたバッグにそそくさとしまう、その後姿をそっと盗み見た。
「あの・・・」
「ん?」
道具を右手に持ったままなっちは振り返り私の瞳を真っ直ぐなその瞳で捕まえた。
「・・・飯田さん。元気にしてますか?」
小さく呟いた。
でも、私から出て行った声は予想以上に私たち2人の体温で暖かくなった空気に響いた。
「うん、昨日も徹夜して今日のために服を作ってたよ。
梨華ちゃんに勝つんだ〜って燃えてたよ」
少しおかしそうになっちは笑った
「・・・そうですか」
私は目のやり場を無くして視線を空中に彷徨わせながら椅子から立ち上がった
「・・・お礼、言っといてもらえますか?」
「ん?いいよ」
今度は振り返らずに答えが返ってくる
これもなっちの優しさなのだろう
「・・・あの時はありがとうございました、って。お願いします。
あと、ごっちん起こしといてもらえますか?今日は忘れてて」
自虐的に笑って私はなっちの背中にまた視線を集めた
「うん、分かったよ。じゃ、なっちはこれで行くべ。ショー見とくから頑張って」
「はい。ありがとうございました」
振り返らずに進むその背中を見つめたまま私は答えた。
意味なんてないただ少しだけ素直になれた気がきたから。
- 68 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月19日(水)11時26分54秒
- かっけぇぇぇ〜!!!すっごいかっけ〜〜〜!!
流れる雰囲気が、超かっこいいですねっ!!
ヒトシズク様の香りみたなのが、すご〜く漂って来てますYO!!
ううう、どうなっちゃうのか…飯田さん登場するんでしょうかっ!!
わくわくしながら待っております!!
- 69 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月19日(水)20時52分53秒
- クロイツ様・・・毎回ありがとうございます、嬉しい限りです!!!
かっけぇ〜っすか?いや〜嬉しいです!かっけ〜&クールが基本ってことなので・・・(苦笑。
飯田さんはもーすぐ登場の予定です^^
これからもよろしくお願いします!!!
- 70 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月19日(水)21時06分39秒
- 音も立てず開いてなっちを吸い込んで閉まって行く扉をずっと見つめた。
視界から消えていく後姿もずっと。
こういうところに性格が出るのだろうか?
ふと、そう思った。
扉が音も立てずに閉まったのもなっちが物静かだからだろう。
答えが簡単に出る問題を自分に突きつけて分かりきった問題を答えた。
こんなことが時間稼ぎにしかならないことだって知ってる。
それでもしてしまうのは、どこか焦っているのだろう、自分が。
表面上は何もない風に仮面をつけて猫かぶってるの
バカみたいね
いくらそう思ったって、胸の中に落とされた鉛のような不安はどんどん重たさを増すだけ
- 71 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月19日(水)21時11分20秒
- 「え〜放送します。あと5分でショータイムが始まるで。やさかい、参加する人はもう集まってな」
いきなりかかった放送。
呼び出し音もないままかかるのだから心臓に悪い。
放送がプッと切れた後もまだバクバク言っている心臓の音を感じていた
「・・・時間か・・」
徐々に普通の速さに戻っていく心拍数を感じながらぽつんとため息と共に言葉を吐き出した。
- 72 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月21日(金)14時19分12秒
- ショータイム、どーなるんでしょうかっ!!
どきどき。
物静かななっちも素敵!!
続き、楽しみにしてますね〜♪
- 73 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月21日(金)17時50分00秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます。
8話長すぎですよねぇ〜・・・(汗。
物静かななっち、いいですよね〜。私も好きです。
これからもよろしくお願いします。
- 74 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月21日(金)17時56分55秒
- 誰もいない部屋にぽつんと1人残されていた
ただ広いだけの部屋に必要とされるものの最小限の家具が置かれている部屋で
今さらながらに思った
最初1人でいて、なっちがきて、なっちが出て行って、また1人
当たり前な計算だった
小学1年生ぐらいがするような簡単な1+1というぐらいの計算
妙にほのぬくい空気に苦笑を浮かべた。
遅れる、その言葉が頭の中を支配して私を動かす
これも自分の意思に入るのかな?
そうバカみたいに考えながら私は広い広い部屋を出た
部屋に残ったほのぬくい空気など知らぬうちに
- 75 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月21日(金)18時01分55秒
- 扉から1歩外に出てみたら、誰もいなかった
はりつめたような、1言でも喋ってはいけないようなそういう雰囲気が漂っていた
1言で片付ければ『重苦しい』と言うのだろう。
浮かべられたままの苦笑にまた新しい苦笑をかぶせた。
仮面の上に新しい仮面をかぶせるような、そんな感じで。
- 76 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月22日(土)19時54分38秒
- 音一つない世界
どこか好きだった
音はあなたを奪っていってしまったから
私から永遠の愛を奪い去っていったの
秋に吹く風のように一気に駆け抜け
春に吹く風のように後味として苦さと悲しみを残して
夏に吹く風のようにいつまでも悲しみと苦さで私を苦しめて
冬に吹く風のように私を地獄に落としていった
音楽なんて嫌いよ
音なんて嫌いよ
そう何度も夜に飲み込まれそうな日は呟いて
暗い暗い闇の底にその言の葉は消えていった
- 77 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月22日(土)20時03分21秒
- そして私は笑うの
自虐的に
人は私を私が望めば一人にしてくれた
それでも音は私を1度も1秒たりとも一人にはしてくれなかった
もう、あなたのことを忘れたかったのに
重く私にのしかかってきて
私に低い低い声で耳元で囁くの
『忘れるな』
ただその言葉が呪文のように何度も繰り返されていくの
私が苦しむ程その声はだんだんと大きくなっていって
そして最後には消えていく
「石川?」
緊迫した空気もカケラとも感じさせない声が私を呼んだ
びくっと私の体は一瞬に緊張してその声の下方向を振り向いた
「・・・・」
しばしの沈黙
交差する目線は何も私には語ってはくれなかった
「・・・何してるの?」
沈黙を破ったのは私を呼んだ本人だった
「・・・飯田さんこそ」
長身のロングストレートの人、飯田さんは私をまじまじと見つめる
「カオリは遅刻しちゃってギリギリセーフってとこかな?」
- 78 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月22日(土)20時32分46秒
- 何か意味が繋がってない・・・・
遅刻なのにギリギリセーフって・・そんなバカなことをふと思い浮かべた。
「石川、行かなくていいの?ショー遅れるよ」
気がついたときには飯田さんは私より数歩前にいて私を振り返るようにして見ていた。
「あ〜、いきます」
駆け足で飯田さんに追いついて、それからたわいもない話をしてショー会場まで歩いていった
イラク戦争や、もぐらは何故死んだ時に地上に出るのか、イルカは寝るのか、
そんなたわいもなさすぎな話だった。
もう、イラク戦争以外はどうにでもいい話なのだが・・・
ショー会場のだだっぴろい部屋に着くと壁にもたれるようにして足を組んで私をじっと見ている人物と目が合った
セミロングの黒い綺麗な髪の側面の部分を後ろで1つに結って、私をじっと見つめる人
切れのいいちょっと吊り目の瞳を細めているのは怒っているの様に見えるが
口元に浮かぶ微笑で怒っているのか笑っているのか分からない
その人物はその微笑をよりいっそう浮かべて身にまとっていた黒いドレスをひるがえして1歩、1歩と私に近づく
私の横にいた飯田さんはその人物に気がつくと『先行くね』と小さく私の耳元で囁いてあさっての方向の人ごみの中に消えていった
- 79 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月23日(日)17時55分42秒
- 1歩、また1歩。
彼女は私に近づく
周りで騒ぐ無数の人の話し声も話し掛けてくる人たちも見向きもしないで
ただ、彼女のその瞳で私だけを捕らえて
1歩、1歩私に近づくたびその表情を変えていく
怒れば笑い悲しめば嬉き
喜怒哀楽といったところ。
彼女はやっとその唇を少し開き言葉を発する
「先輩」
その声が彼女と私の間の空気を伝わって私の耳に届く
どこか懐かしい声が私の右耳から入ってそして左の耳へと抜けていく
彼女は癖のように頬にかかる垂れた黒髪を耳にかけると
私を見てまた微笑み、そして立ち止まった。
「先輩、メール見ましたか?」
どこか抑えめな声がまた空気を伝って私に届く
その時間はたった0,0001ぐらいだというのだから空気はすごいと
いつか昔、理科で空気のことを習った中学生の頃思った。
ふと、昔のことを思い出してしまうのだ。
ふとしたほんの1瞬のことで。
- 80 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月23日(日)18時05分34秒
- 「時間なかったから見てないの。ごめんね」
私は彼女の問いと微笑に答えた。
「亜弥、いっぱいメールしたんですよ〜それでも返ってこないから心配で心配で
ここまで来ちゃったんです」
少し恥ずかしそうにはにかんで彼女は言う
「そう。ごめんね」
私の瞳にはいつまで立っても彼女は映らないのだ
それでも彼女は必死に映ろうとする
彼女は嘘でもいいから愛して欲しいと私に言った
秘密が欲しいと、愛が欲しいと
泣きながら雨の中傘もささず私に言った
―――それももうほんの昔の思い出
「先輩の声が聞きたかったんですよ〜だから今聞けて嬉しいです」
えへっと可愛らしく彼女は笑う
モノクロの彼女はいつまでも私の瞳に映ろうとする・・・
「そっか、ごめんね。最近電話してなかったね。また今度するね
じゃ、もう帰ろう。遅くなると明日遅刻するよ。出口まで送ってあげるから」
早口に私はそう言って彼女に右手を差し出す
彼女はまだいたいという感じにすねた表情をするが少しするとあきらめたように私の右手に彼女の右手を重ねてきた。
- 81 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月23日(日)18時14分02秒
- 「何かお話しようか?」
つないだ右手は温かかった
今だすねた表情を浮かべた彼女に私はふうとため息をついて彼女に言った。
「・・・」
彼女は何も言わずただうつむいて私に引っ張られるようにして歩いている。
「・・・もぅ・・・亜弥。今日は早く帰れると思うから家にいる?」
自分の家の鍵をポケットから出して彼女のすねた表情を浮かべた顔の前に差し出す
「ね?これでいいでしょ?今日は一緒にいてあげるから」
すねた子供をあやすような口調で彼女に私は言う
彼女はぱぁぁっと言う風に顔を明るく笑顔に変えると私の手からそっと鍵を受け取る
「うん!亜弥待ってるから早く帰ってきてね!」
「出来るだけ早く帰るようにするから。それじゃ気をつけてね」
いつの間にかついていた出口でつないでいた手を離して右手を彼女に振る
「うん!」
彼女はそう言うと走り出してしまいそうな感じでスキップして闇の中に消えていった
- 82 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月23日(日)21時36分12秒
- うおおっ!!あやや登場!!
可愛いですねぇ、あややっ♪
そして、あややになつかれてる梨華ちゃんも可愛いです♪
何気に飯田さんもかっけぇ〜!!
がんばってくださいねっ!応援してます!!
- 83 名前:蒼乃 投稿日:2003年03月25日(火)12時43分43秒
- ヒトシズク様、更新お疲れ様です。
梨華ちゃん、いろいろと抱えててつらそうなのが、文章からも充分伝わってきます。
心理描写が繊細で、はっきりいってその技量をもっていらっしゃることが羨ましいです。
物語の方も、緊張感が高まってきて、何かが起こりそうな気配が。
では、頑張ってください。応援してますよ。
- 84 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月26日(水)10時11分43秒
- やっと〜!!!春休み入りました!!!
ウチの学校休み入るの遅いんですよねぇ〜・・・(−−;
と、ここでレス返しです。
クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます☆
あやや登場ですよ〜。そしてもうすぐあの人が登場・・・の予定です。
飯田さん何気にかっこよく、それがモットーですから^^
では、これからもよろしくお願いします。
蒼乃様・・・レスありがとうございます。
色々と褒めていただいてありがとうございます。ホント感謝感激です。
いや、褒められると調子に乗るんで・・・(汗。
物語、これからちょっと一波乱でも・・と考えております^^;
それでは、これからもどうぞよろしくお願いします。
- 85 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月26日(水)10時20分07秒
- その後姿が闇に消え、私の視界から消えてから数秒後
私は気がついたようにため息を一つ音一つないような世界に落とした。
「―――梨華」
何もなかった世界に何かが落とされた。
その言葉は必要以上に響き、私へと伝わった。
私はその音が静まり返った世界に飲み込まれるのを待って静かに振り向いた。
私の視界に映る人。
ショートの髪をどこからか吹く風に好き勝手に揺らさせながら
私をじっと見つめていた。
ギラギラと、と表してもおかしくないような猫目
その瞳の奥で逆さまになった私がいた。
「―――保田さん」
自分の喉から出た声はかすれていて、そこで喉がカラカラだと分かった
その渇きは猫目のせいなのか、それともさっきの少女のせいなのかそれは私にも分からなかった。
- 86 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月27日(木)15時51分06秒
- 「久しぶりね、元気にしてた?」
保田さんは着ていたスーツの襟を立てると、壁にもたれながら私に言った。
「元気じゃなかったら、こんなとこには来てないですよ」
私を見つめる猫目につかまらないように視線を宙へ彷徨わす
「はは、そうだよね。ごめん、ごめん」
保田さんは何か漫才でも見て笑うかのようにして笑う
それを見てどこか腹が徐々に立ってきていることを知る。
「それにしても・・・大人っぽくなったわね、梨華」
壁から離れて保田さんは私を見て、そう呟く
「・・・・梨華って言わないで。もう終わったんだし」
私を見るその瞳をじっと睨んで吐き捨てるように彼女に言った。
体の何処かが熱をもったように熱く燃え、真っ赤な炎をあげていた
彼女は大きな瞳をよりいっそう大きく開き私を見た
それからくすっと笑う。
どこか大人びた唇をすぐ触る癖が今となっては燃える炎のせいで憎かった。
「はは、そうだよね。ごめん。で、私は貴方のことを何と呼べばいいのかな?」
子ども扱い的な言い方。
この人はまだ別れた原因を知らない、理解していないのじゃないか?と疑ってしまう
- 87 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月27日(木)20時47分30秒
- 「別に何でもいいですけど・・・呼び捨ては止めてくださいね」
起こったときに出る自分の癖。
同級生でも下級生でも年下でも怒ると敬語を使ってしまう。
まぁ、別にどうしたってわけでもないけど。
「うん、分かった。石川」
これでいいでしょ?とでも言う風に私を上目遣いで見る保田さん。
こういうところが猫に似てるなぁ〜と改めて思う。
猫目以外でも。
「―――そういえば。保田さんから話し掛けてくるって珍しいですね」
腕時計で時間をちらちらと確認しながら、私は薄笑いを浮かべている保田さんに言う
壁に背を預け足を組んで薄笑いを浮かべる姿はどこか怖かった。
「そう?まぁ色々と石川に話があるからね」
どことなく変な意味を持つ言葉は私の耳へと届かず瞬間的にやってきた人によって遮られた
「梨華ちゃん!!!」
はぁはぁと荒い息をしながら来た人は私の腕をつかむ。
瞬間的なことに私は一瞬だけ顔を曇らせた
「何やっとんねん!こんなとこで。あぁ・・・」
早口でその言葉を言うとその少女は私を見つめる人に気がつく
「――おばちゃん何かと何話してたん?」
少女は保田さんを一瞥するように見てから興味の無さそうに視線を私に戻す
「特に用はないんだけどね。偶然に会って」
私は少女の目線と自分の目線を3秒ほど絡ませて『偶然』のところだけ強調して少女に言う
頬にかかる髪の毛を耳にかけながら少女こと、あいぼんは微笑みながら私と保田さんを交互に見て言った
「ううん。そろそろショーに行こうかなって思ってた所だから。さ、行こ」
- 88 名前:tsukise 投稿日:2003年03月28日(金)06時36分00秒
- 更新、お疲れ様ですっ。
圭ちゃんと梨華ちゃの微妙なバランスが手に取るようにわかりますねっ。
ヒトシズクさんの書かれる、さりげない仕草が、かなりツボです…っ。
続き、楽しみにしていますので頑張ってくださいっ!
- 89 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月28日(金)12時32分00秒
- やっと春休みに入ったのに課題と部活と睡眠で過ごしているヒトシズクです(汗。
いや〜今日はMステスペシャルですね!!!
ごっちんと娘。が出るので今からビデオをセットしてました^^;
つーことで、レス返しです。
tsukise様・・・レスありがとうございます。
梨華ちゃんと保田さんの微妙な関係わかって頂けましたか。よかったです!
自信がなかったもので・・・(汗。
ツボですか!?いや〜ありがとうございます。ホントうれしすぎです!
では、これからもよろしくお願いします。
- 90 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月28日(金)12時42分09秒
- 「そか。じゃ、おばちゃんまた後でな」
あいぼんは背を向けていた保田さんに向かってそう言うと私の腕を痛いほどひっぱった。
――――――
「何かあったん?」
走ったせいか呼吸が荒いことを隠そうともせずあいぼんが私に言う
つかまれていた腕はついさっき離されていた。
保田さんにあいぼんが最後の言葉を言って私達は離れるように走って、ショーの行われる会場の裏にいた。
あいぼんにつかまれていた腕の一部が淡い赤色を映していた。
「何かって、保田さんと?」
次第に収まりつつある呼吸を深呼吸で通常に戻しながら私は答える。
会場の裏口をあって照明は暗く無いに等しい、そのためあいぼんの表情がいまいち分からない。
普通なら声だけでも相手の気持ちがわかるのだが、会場に声がもれると何かと困るので私たちは声を抑えて話している。
そのため、声からも気持ちを読むことはできなかった。
- 91 名前:第8話 ショータイム 投稿日:2003年03月28日(金)12時56分11秒
- 「それ以外何があるん?」
抑えた声が少し大きくなったように感じた。
その口調からどこか怒っている、とだけ分かった。
「まぁそういえばね。別に何もないよ。ただ偶然に会っただけってさっき言ったじゃない」
また『偶然』のところだけ強調してあいぼんに言った。
「それはさっき聞いた。ウチが聞きたいのは過去や」
スッパリと切られた。
私が出したトリップはまんまと抜けられたという訳か。
トリップをかけたのも過去の話を知られたくないから。
「言いたくないのに話さなきゃいけないの?」
トリップをまんまと抜けられたことに少し自分がいらだっている事に気がつく
少し怒ったような声が自分から出たのもそのせい。
「・・・そうやったら別にええんやけど。最近梨華ちゃん変やで。
どこか冷めともたみたいな感じが漂ってるんや」
ウチに相談してくれてもええんやで。
あいぼんはそう付け足すと「もうすぐ始まるから」とその言葉を残して見えない闇に消えていった。
冷めた感じ・・・か。
言葉に出さず心の中で呟いた。
確かにあの時から私は何にも興味がわかなかった。
それは今でも変わらない。
いや、たぶんこの先も変わらないだろう。
歯車は少しずつ狂い始めているのだから。
少しすると柴ちゃんが駆け足で私に駆け寄ってくる。
「今日もがんばってね!」
そう言うと、私の背中を押して光の世界へと押し出した。
- 92 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月28日(金)12時57分23秒
- はい。えっとこれで8話終了です。
長くてホントもうしわけないです。
では、9話『歯車』です。
- 93 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年03月28日(金)13時12分12秒
- 一度狂いだした歯車は止めることはできても
元に戻すことはできない
回転はゆっくり回るのに
狂うのは速くて
1つ1つ、砂山が崩れるようにゆっくりと崩れる
歯車は動き出すと止まらない
「あ、石川〜!」
ショーが終わって私はいつものようにバーカウンターにいる人に呼び止められた。
金髪の髪の毛はどこにいても目立っていた。
「あ、矢口さん」
金髪の人は矢口さんというバーテンダー。
この辺りでは結構有名な人
特定のお店に勤めず、御呼ばれした店に顔を出しシェーカーを振る。
なんとも自由気ままな人だ。
有名と言うのはまぁ、腕が上手いということもあるが、その性格もある。
誰にでも楽しく話し、嫌な顔一つしない。それにいつも笑顔ということも人気のひとつ。
そんな自由な人はこの集まりには1日も欠かさずやって来ている。
学校の元卒業生で生徒会長をやっていたからだという噂もあるが本当のところは誰も知らない。
「相変わらず人気だな」
シェーカーを片手に矢口さんは私に目で座れと指示して話す。
「いえ、そんなことないですよ。矢口さんのほうがよっぽどですよ」
椅子に座りながら私は答え、周りを見渡す。
「あれ?今日は安部さんと一緒じゃないんですか?」
いつもは安部さんと矢口さんは2人一緒で1つといった感じで一緒にいる。
それは矢口さんがバーカウンターにいるときも同じだった。
それが今日は安部さんの姿が見当たらない。
「あ〜なっちはごとーを起こしにいってるよ。かなりあいつ寝起き悪いからてこずってるんじゃないの?」
- 94 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月28日(金)16時00分28秒
- 九話突入〜♪
なんだか、読んでて鳥肌立ちますね〜!!わっくわっく
やっぱりこのあいぼん好き過ぎです!!
なんか梨華ちゃんの周囲が固まって行くのが、すごいカッコイイですね!!
次回も楽しみにしておりまっす☆
- 95 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年03月29日(土)03時04分06秒
- クロイツ様・・・レス毎回ありがとうございます!!!がんばる気力になっております。
あいぼん好きですかぁ〜私もです。最近あいぼんにハマってまして・・・(笑。
基本的に、気に入った人物しか出さないんですけどね(苦笑。
では、これからもどうぞよろしくお願いします♪
お知らせです。
たまーに(たぶん気が向いたら)人物紹介でもしようかな?と考えております。
年齢などはあまり気にしないでください。
では、1回目〜!!!!
No,1
石川梨華 高校3年、17歳
3年前に市井と離れ、人間恐怖症になる。
高校近くのマンションに1人暮らし、1週間に1度病院に通う。
他人を嫌い、市井の話も嫌い、他人から1歩離れている。
親は石川建設の社長。両親ともに愛人を幾人も作り、家庭的に不安定である。
しばしば親との喧嘩もある。
- 96 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年03月29日(土)21時12分42秒
- 歯車は時計の針と同じようにいくら進んでも戻ることはない
時が戻ることなど無いと同じくらい。
2つの歯車は少しずつ離れていって、少しずつその間に溝を作る
その溝は次第にゆっくりと幅大きくなり、ついには歯車を飲み込む・・・
「そうですか」
そう言えば、ごっちん起こすの頼んだっけ、と頭の中をフル回転させて考える。
矢口さんは相変わらず絶えないお客さんに笑顔を振り撒きながらシェーカーを振り続ける
腕が痛くならないのだろうか?
ふと浮かんだ疑問を自嘲的な笑みで打ち消した。
人は人、自分は自分だと自分に言い聞かせながら。
「あ、そういやさっき加護が今回のオークションは目玉があるとか無いとか言ってた」
相変わらずシェーカーをカシャカシャ心地よい音を立てながら振り続ける矢口さんがポツンとつぶやく
肩の位置まであったシェーカーをカウンターに置き、その中身を綺麗なワイングラスに注ぐ
氷がグラスにあたりカランと音を立て天井からの光を受け光を反射させる
淡いピンクのような赤色のような液体にミントの葉を乗せ、グラスのふちに切ったオレンジを載せる
- 97 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年03月29日(土)21時25分22秒
- 光の加減で液体の色がピンクや赤色に見える
そのグラスを矢口さんは軽く1回転させると私の目の前に置く
「ちょっとぐらいの飲酒は暗い気分を明るくさせてくれる」
何かの歌詞みたいなその言葉は雑音の中にまぎれることなく私に届く
矢口さんらしくない言葉だと、不覚にも思う。
口調もそうだが、いつものはしゃいでいる矢口さんを見続けていると大人っぽい矢口さんに変な違和感を感じる
まぁ、どちらも矢口さんには変わりないのだが。
「未成年に飲酒はダメなんですよ」
いつもの口癖のように私は矢口さんを見ずグラスを見つめて言った
いつも矢口さんは私達にお酒を飲ませようとする。
いくら未成年だとしてもちょっとだけと言って飲ませる。
それでお酒に意外に弱いごっちんを私が連れて帰らなければいけない
それも楽しい日常の1コマ
「わーってるよ。だからちょっとだけって最初言ったじゃん」
またシェーカーをシャカシャカ言わせている矢口さんが笑いながら言う
「はいはい」
そう答えて私はグラスの淵に飾りつけとして飾られているオレンジを手にとる
皮と身の間に綺麗に曲線にそって切れ目切れ手あるために黄色っぽい身は不安定に揺れる
それを一口に口に入れる
甘酸っぱい味が口いっぱいに広まり瞳に涙を浮かばせる
身とはなれた皮をカウンターにおいてグラスに口をつけた
甘酸っぱさが残る口の中に甘さが広がる
- 98 名前:蒼乃 投稿日:2003年03月31日(月)12時23分21秒
- ヒトシズク様、更新お疲れ様です。
圭ちゃん、それは謎の似合うヒト、って感じですね。
梨華ちゃんと(確実に)何かあったのでしょうが、人物紹介でそこに触れられていないところが、また心憎いと言いましょうか。
まだまだ、明らかになっていないことが多そうで、雰囲気もcoolで最高です!
では、更新頑張ってくださいませ。
- 99 名前:クロイツ 投稿日:2003年03月31日(月)15時56分42秒
- シェーカーを振る矢口さんがかっけ〜!!
人物紹介、ナイスです!!No.2も楽しみにしております(笑)
先が読めない所が、ものすご〜く楽しいです!!
しかもやっぱり、描写がかっこ良過ぎでんもぅ!!
次回も楽しみにしてますねっ!
- 100 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月01日(火)16時48分16秒
- お久しぶりです〜皆様。
大阪までハロショに行って、中華街で食いすぎて腹を壊しました(汗。
胃薬を持っていくべきでした・・・(そーゆー問題か?)
つーことでレス返しです。
蒼乃様・・・レスありがとうございます☆
圭ちゃんと梨華ちゃん何があったんでしょー!?(笑。
もうすぐしたらバラすつもりです!
では、これからもよろしくお願いします!
クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます!!!
やっと矢口さん登場です^^
人物紹介、うけてよかったです^^うけなかったらどうしようかと・・・(汗。
かっこいいと言ってくださってうれしい限りです!!!!
では次回もよろしくお願いします!!!
- 101 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月03日(木)02時04分23秒
- 光の加減で淡い桜色の液体が光をピンク色に染め私の手に映し出す。
口の中の甘さと酸っぱさは時計の針が動くたび、時間がたつたび味か薄くなっていく
そして、遅れるようにして苦さが溢れて来る
その苦さに甘さのせいかいつもより苦く感じてそっと顔を苦さでしかめた
だが、苦さもすぐに消え、残された体に広がる熱だけがしぶとくまだ体中に充満していた
「今日は・・・どうした?」
少し遠慮がちに、でもどこか興味津々と言った感じで矢口さんがシェーカーを振る手を休め私に聞く
くりっとしたその瞳はただ私を捕らえていた
逃げられないよ、とその瞳は私にゆっくり言い聞かせるように。
- 102 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月03日(木)02時18分10秒
- 「特に何も。ただちょっと最近眠れなくて疲れてるだけ」
嘘をついた。
逃げられないのなら、どんな手を使ってでも逃げる
鬼ごっこのときに『待て!』と言われて待つ人などいないように『逃げられないよ』と言われると逃げたくなるもの。
それは隠したい気持ちがあっても、無くても同じ。
「―――そう。コーヒーでも飲みすぎてるんじゃないの?寝ないと体に毒だよ。ちょっとぐらいは寝なよ」
矢口さんはクラッカーをひとつ箱から取り出して自分の口に放り込む
それを見て、最近食欲なかったなぁと思い出すように思う
「大丈夫ですよ。最近仕事が多いだけですから」
余計な心配などさせないように慌てて笑顔を作って言葉を付け加えた。
手が触れているグラスは少量の液体をまだ蓄えていた
相変わらず光をグラスが反射しては外側についた水滴が光を受けて光る
その水滴のひとつがゆっくりと流れ落ち、テーブルに落ちる瞬間矢口さんは言葉を発した
「―――圭ちゃんにさっき会ったよ。心配してた。あいつ心配事とか自分で抱え込むタイプだからって」
そこまで言うとまたクラッカーを口に入れ、もう飲まないであろう私のグラスの残りを矢口さんは口に含んだ。
「それに最近病院行ってないんだって?親御さんも心配してるみたいだって」
そう圭ちゃんが言ってた。と矢口さんは付け加え空になったグラスをシンクの台所に置く
蛇口から出る透明な濁り一つない水でそのグラスを満たし、溢れた水が排水溝へと流れた。
- 103 名前:クロイツ 投稿日:2003年04月03日(木)14時39分13秒
- ほ〜…か、かっこいい…!!
描写がかっこ良過ぎて…ため息が出ます〜!!
なんだか、一枚の絵を見てるような気分ですねぇ♪ヒトシズク様の作品って♪
まったりと流れる感じが、心をとらえて離しませんねぇ♪
次回も楽しみにしてます!!
- 104 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月03日(木)20時23分10秒
- こんばんは。ヒトシズクです。
今日、ラジオで娘。の新曲『AS FOR ONE DAY』聞きました!!!
梨華ちゃん、かわいぃ〜・・・!!!
叫びそうになりました(笑。
ということでレス返しです。
クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます。励みになっています!!!
ため息出していただけましたか〜よかったです。深夜遅くまで悩んだかいがありました。
一枚の絵ですかぁ〜・・・もうぅマジでうれしいです!!!
ではゆっくりですがこれからもよろしくお願いします♪
- 105 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月03日(木)20時54分45秒
- 矢口さんは蛇口から勢いよく流れる水を止めるとまたクラッカーの箱に手をつける。
今度は1枚口に入れるだけではなく、ザザーっと底の深い皿にクラッカーを流し込んだ
その中から1枚手に取り口の中に放り投げる。
そして口をもごもご動かしながらまた1枚クラッカーを手にとり私の方に差し出す。
「石川も食べる?」
口の中にある物を全て無くしてから言葉を言ってください、と言いたかったがそう言っても聞かないし。
と思い喉まで出掛かった言葉を空気と共に飲み込んだ。
「いや、いいです。食欲なくて」
笑顔を浮かべながら言ったけど、自分でも笑顔がひきつっているなぁと気がついた。
その理由は分かっていても言わない。
考えない。
「そっか。じゃサラダは?」
また新しいクラッカーを口に入れたのだろう、矢口さんは口をさっき以上にもごもごさせながら手を動かす。
カウンターの端っこのほうに遠慮がちに置かれている小さな冷蔵庫からサラダの盛られた小さな皿を取って私に見せる。
新鮮そうな色のレタスが皿からぽっこりと盛り上がるほど盛られ、その周りに赤いミニトマトが散らばって盛られていた。
「色んな種類のドレッシングもあるよ?」
少しはにかみながら言う矢口さんに私は小さく頷いた。
「じゃ、一番小さいの下さい」
一番、という単語に少し力を入れて言った。
その瞬間に矢口さんの表情は明るくなり、ウキウキしたような表情で頷く
「OK、一番小さいのね。ドレッシングは?」
冷蔵庫の中から小さな木の皿に入ったサラダを取り出して私の目の前に音も立てないで置く
- 106 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月03日(木)21時07分21秒
- 「さっぱりしたのがあったらそれでお願いします」
サラダと共に置かれた銀色のフォークを手に持ちミニトマトを突っついた。
新鮮な緑に、赤、オレンジ色。
そう言えば最近食べてないなぁーとつくづく思った。
まぁどうせ食べても気分が悪くなるか吐くんだからプラスマイナス0
「これはどう?ノンオイル青じそ」
ずらーっと並んだ数々のドレッシングの中からひとつ選んで首だけ振り返って私に言う矢口さん
「あーじゃそれで」
手を伸ばして矢口さんからドレッシングを受け取った。
ドレッシングのビンの蓋を右に回して開かして、数滴レタスに落とす。
茶色っぽい液体は幼い頃飲んだ苦い薬を思い浮かばせて、苦笑いを浮かばせた。
小さく切られたレタスを1枚フォークに刺して口に入れる。
青じその味とレタスについていた水滴が口に広がる。
そして襲ってくる吐き気。
あぁやっぱりダメか。
吐き気を抑えるために矢口さんに水をもらって体内に流し込みながら思う。
ここ数ヶ月、形のあるものを少しでも食べると吐き気が襲ってくる。
それは急に。
そしてふと見つけた、人影。
吐き気と共に怒りの炎がゆらりと私の中で動いた。
- 107 名前:クロイツ 投稿日:2003年04月04日(金)15時35分38秒
- どーしたんだ梨華ちゃんっ!!!
はらはらどきどきです!!
うう〜、なんだか辛そうな梨華ちゃんが心配…。
感情移入しまくりです(汗)
ああ、どうなってしまうのかっ!!
次回も楽しみにしております!!
- 108 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月04日(金)16時07分55秒
- クロイツ様・・・レス毎回ありがとうございます!!!
梨華ちゃんの謎は!?って感じで今思っていただけるとうれしいです。
感情移入しまくりですか・・・私もです!もー悲しくって(おいおい。
では、これからもよろしくお願いします!
- 109 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月04日(金)16時13分36秒
- 光のない場所にいるせいかその人の影しか見えない
その影はゆっくりと音も立てずに私たちに確実に向かってくる。
私は影をただじっと見つめた。
感情の入ってない瞳と表情で。
その表情に気がついたのか矢口さんがクラッカーを口に含みながら言う。
「どーかした?」
ただ、その何気ない一言に何か引っかかるものを感じた。
それはちょっとすれば消えて見えなくなるほど繊細で小さな突起。
「いえ・・・ちょっと」
影から目を離さずに私は答える。
声が投げやりに自分でも聞こえたのがわかる
それと同時にカウンターに置いていた左手をぎゅっと握り締めた。
- 110 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月04日(金)16時26分58秒
- 矢口さんはふと私の視線の先にあるものを見るように目を細めるその姿が横目にちらっと映る。
「――――圭ちゃん」
その人の名を呼ぶ。
ホントは呼んでほしくなかったのに、と心の中で消えそうなほど小さな声で自分につぶやいた
矢口さんはその人と私を交互に見つめて心配そうな感情を表情に出していた。
「久しぶりね、矢口。元気にしてた?」
その人が光に当たって、色を取り戻す。
その人がいった言葉は私と矢口さんの間に木霊したように感じた。
「あ・・・まぁ。圭ちゃんこそ、どう?」
矢口さんが答える。
「まぁまぁよ」
その人は簡単に答え、私の2つ隣の椅子に腰掛ける。
「ショー終わったみたいだから来たのよ。話がある」
その人、保田さんは私に向かっていってから矢口さんにオーダーする。
「甘いのを。一番甘いの」
そう言ってから、来ていた黒いジャケットの懐からタバコを取り出す。
白い箱に黒のインクで短い文字が少し
そしてその文字の周りには真っ赤な赤色。
「―――話って?」
感情を悟られないように、声のトーンを落として私は尋ねる
保田さんはタバコの箱から1本タバコを抜き取ると、マッチで火をすりタバコに火をつけた
そして、苦いような臭いと共に白い煙が辺りを充満する
- 111 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月06日(日)11時07分39秒
- その臭いに私は顔をしかめた。
保田さんはふふっと笑うと大きく息を吸い口を開く。
「石川の今の瞳には何が映ってるの?
まだ、あの頃のままなんじゃない?モノクロで何も映ってないんじゃないの?」
保田さんはそう言うと、さっき付けたばかりのタバコを灰皿に押し付ける。
しゅーと気弱な音を立てて、タバコの煙がだんだん消えていく。
―――最初、何を言われているのか分からなかった。
いや、分かりたくなかった。
その言葉が、怒りの炎を一段と燃やすの。
火に油を注ぐように。
あんたに何が分かるの?って胸倉を掴んで言いたくなった。
私が何を失ったか、この気持ちがどんなにつらいか分かりもしないくせにって
どんどん歯車が動き出すの。
きしむ音を立ててゆっくりとそして時には速く。
- 112 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月06日(日)11時35分21秒
- はぁ、とため息が聞こえる。
私はうつむき、自分の足元をただじっとにらみ付ける。
怒りの炎が爆発しないように抑えながら
じっと微動すらしないで一点を集中して見つめる。
「ねぇ、もう時は進んでるのよ。あのことはもう過去なのよ。それに石川は悪くないのよ。
あれは事故なのよ。誰の責任でもな―――――」
「止めなよ。圭ちゃん」
保田さんの声を遮ったのは矢口さんだった。
その声に少しびっくりして顔をあげる。
私の瞳に映ったのは、矢口さんが保田さんを睨んでいる姿だけ。
「もうその話はいいじゃん。それより圭ちゃん言いたいことあるんじゃないの?」
その声は少し柔らかく、そして少し強く微妙な感じを持っていた。
保田さんはごめん、と小さく誰にいうかわからないように呟いてまたため息を吐く
「ホント、矢口にはかなわないわね・・・」
切なそうに言った言葉は何故か空気にこだました。
「石川、ホントは私謝りにきたのよ。気持ちの整理できてない石川に無理言って付き合って
それで仕事の都合とか言ってほったらかしにしていて又石川を傷つけた。ホントにごめん」
それだけ、と保田さんは付け加えて言うとさっき矢口さんに注文したカクテルを一口、口に含む。
「・・・・じゃ・・・で・・」
自然と私の口から溢れ出すようにして出て行った言葉。
「え・・?」
保田さんが聞き返すのと同時に溜まっていた怒りが爆発した。
- 113 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月07日(月)21時11分20秒
- お知らせです。
いやはや、またテストがありまして・・・・今回は実力とか言ったような・・・(汗。
10日なんですけどね^^;
それで、ちょっとは勉強しないと、と思いまして・・(もう3年ですから・・・)
今日からたぶん更新はできないと思います。
まぁ、出来ても夜中に・・と言う感じなのでしばらくの間お休みさせていただきます。
誠に勝手で申し訳ありません。
と、お詫びの代わりに(なりませんが)人物紹介NO,2です。
No,2
名前:加護亜依
年齢:15歳ぐらい(本当のところは秘密。正し中学生)
一口メモ:パーティーでの商品を一人で仕入れる中学生。
パーティーでは『謎』が付く言葉で呼ばれている。
私生活などは一切謎だが、辻望美とよく一緒にいる。
一日10食は食べるという大食いで、大食い選手権に出たこともあるらしい。
意外と顔が広く商店街などを歩くとよく声をかけられるらしい。
奈良から上京してきて、今はいとこと一緒に暮らしている。
昔、後藤と付き合っていたが今は友達関係に。
- 114 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月09日(水)20時25分02秒
- と、言いながらちょい更新・・・
- 115 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月09日(水)20時31分56秒
- 「謝るんなら、じゃ出てってよ!!!」
自分でも考えられないほど大きな声が出た。
それを冷静に感じている私、怒っているのに冷静。
「私言ったわよ?あの時、最後の日に、もう一生私の目の前には現れないでって。
それであなた、うん、って頷いたじゃない?何?約束破るの?
嘘つきじゃない。嘘つきが嫌いなのに自分が嘘ついて言い訳!?」
早口に頭の中を駆け巡っていた言葉が私の口から溢れ出す。
それは機関銃のように、相手に喋る時間を与えないほどに。
保田さんは、呆然と信じられないと言うほどに目を大きく見開いて私をじっと見つめる。
馬鹿らしいほど口をぽかんと大きく開けている姿はどこか笑えそうだったのに笑う気力さえ私には無かった。
- 116 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月09日(水)20時40分14秒
- 「ちょっと石川・・・そんな今怒らなくてもさ」
矢口さんの金髪が視界の端っこにかすかに映り、声が耳に入ってくる。
もう、少し下を向いて矢口さんの顔を見ることなんてどうでもよくなった気分だ。
「ねぇ?あなたは言ったわよね?市井さんのことは忘れないでもいいからって。
それでもいいから付き合って、って。もう一生離さないって。別れないって。
映画を見て真似したじゃない?永遠の愛を。
ねぇ、何であなたは私にこだわるの?私は干渉してほしくないのに。
気にも止めてほしくないのに・・・」
いつの間にか頬を流れる涙など気にせず保田さんを睨み付けた。
もう、頭の中はパンク寸前で自分で言っている事さえ分からなかった。
ただひとつ分かるとしたら頭の中がだんだん霧がかかるように白くなっていってその向こうに人影が見える、ってことだけ。
頬を滴る涙が落ちて、私の手に作った握りこぶしに落ちる。
ぽつん、と小さな水溜りを作って涙はまた握りこぶしから落ちていった。
- 117 名前:クロイツ 投稿日:2003年04月09日(水)21時42分21秒
- うあああああ〜ん!
なんか梨華ちゃんが…梨華ちゃんの精神状態がヤバイのが、痛い程わかりますぅぅぅぅ(泣)
でも、怒る梨華ちゃんも素敵…(笑)
ここの梨華ちゃんは「可愛い」よりも「綺麗」って感じですね♪
だけど気になる事が一つ。
こんな綺麗な梨華ちゃんでも、怒鳴り声はキンキンなんでしょうか(笑)?
テストがんばってください!次回も楽しみにしてます
- 118 名前:蒼乃 投稿日:2003年04月10日(木)12時30分06秒
- ヒトシズク様、更新お疲れ様です。
梨華ちゃん、怒りモード炸裂っすねぇ。
いろいろと抑えてたものが一気に吹き出たって感じがして、こちらも目頭が熱くなってしまいます。
テスト、大変でしょうけど頑張ってください。
あ、もちろん、まずはテストの方ですよ(笑)
- 119 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月10日(木)20時54分04秒
- やっとテストが終わり、一安心です!
いや〜あとは帰ってきて親の雷が落ちるだけなんですがね・・・(汗。
では、レス返しです!!!
クロイツ様・・・毎回どうもありがとうございます☆
今回の梨華ちゃん、マジで怒ってます^^;私のテストへの怒りもちょっと表してたりして。
「綺麗」ですかぁ〜・・・もぅ嬉しいですねぇ〜^^ありがとうございます!
梨華ちゃんの怒り声はいつも通りキンキンと言うことでお願いします。
そうじゃなかったら梨華ちゃんじゃないような気がしますしねぇ〜
では今後ともよろしくお願いします♪
蒼乃様・・・度々足を運んでいただいてありがとうございます^^本当にうれしがってます!
梨華ちゃん怒りモード炸裂です^^そーゆー梨華ちゃんも可愛いですよねぇ〜^^
では次回もよろしくお願いします♪
- 120 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月10日(木)21時01分11秒
- 「梨華ちゃん」
霧のような白いものが頭をどんどん覆っている中で優しい声を聞いた。
暖かくて、優しい音色
その音色は頭に白い霧に響き、そして木霊する。
その木霊が消えかかったころ暖かいものに包まれた。
それが抱きしめられていると分かった。
でも、抵抗はしなかった。声の主がわかったから。
耳元で聞こえる綺麗なアルトは頭の中を覆う霧を少しずつ晴らしていくようだった。
「落ち着いて、梨華ちゃん。圭ちゃんは帰ってもらったから。もう誰も干渉しないから。
ね?ゆっくり息を吐いて、そう、吸って」
背中をさする暖かい手が上下に動いて、そして私の息がゆっくり普通に戻ると強く抱きしめられた。
- 121 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月11日(金)00時55分03秒
- 「今日はもう帰って休みなよ。最近寝てないでしょ?」
そう言って暑くもなく冷たくもない体温は離れた
その体温が離れると同時に疲労感が急にやってきて私に襲い掛かる
抵抗などいくらしても無駄なように、どんどんと黒い影が襲ってくる
ふと、視線を彷徨わした
目の前にあるのは、いつもと変わりないごっちんの顔でその横では矢口さんが心配そうに見つめている。
その矢口さんの視線を自分の視線が一瞬絡む。
心配そうな表情はどこか疲れを誘って、私には重く感じた。
そして、私は力なく笑った。要らぬ心配などかけないように。
「疲れてるんだよ。きっと。最近何も食べてなかったし。タクシー呼んであげるから、着替えきな」
後ろから声がかかった。
ゆっくりと後ろを振り向くと何も浮かばない表情で突っ立っている飯田さんが視界に入った。
長い髪、綺麗な長身、大きな瞳――――
まるで小さな頃遊びに使ったリカちゃん人形のようだと、ふと思う。
まだ完全には消えていない霧のような白い雲にその思いは吸い込まれ見えなくなる。
その彼方には貴方がいて私に微笑む
消えそうな右手を差し出してアナタは私を待ってるの
私に聞こえない声で言うの、おいでって。
一人にしないでって。
さびしいよって。
早く会いたいよって。
アナタは顔色一つ変えず微動すらしないで私を見てるの
訴えてるの
怒ってるの
だって私があなたと一緒にあなたのそばにいかなかったから
それでね私は謝るの
あなたに聞こえない声で
- 122 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月11日(金)01時05分06秒
- ねぇ、どうして叫んでも呟いてもあなたには聞こえないの?
ねぇ、どうしてあなたが言ってるのに私には聞こえないの?
それはあなたが死んだから?
それは私が生きてるから?
ねぇ、誰か答えてよ。
私いつまで答えの出口のない迷路でさ迷うの?
私いつまであなたに向かって叫ぶの?
つぶやくの?
泣くの?
弱音を吐くの?
ねぇ、どうして私は生きてるの?
あなたがいない世界で動けずにいるのに
微動すらできないでいるのに
どうして私は生きてるの?
あなたがいない世界なんてつまんないだけなのに
あなたと一緒にいないと意味がないのに
ねぇ、どうしてあなたは死んだの?
どうして私も一緒じゃなかったの?
映画の真似をして永遠を誓ったじゃない
ずっと一緒だよって。
指輪も交換したじゃない。
時計も交換したじゃない。
数え切れないくらい愛したじゃない。
数え切れないくらい愛されたじゃない。
ねぇ、どうして皆私たちの邪魔ばかりするの?
私はあなたを忘れたくないのに
皆、あなたのことを過去に、記憶にしようとしてくる
私は忘れたくないの
あなた以外のことなんてどうでもいいの
ねぇ、どうして会えないの?
あなたが暗いくらい海の底で私を待ってるの
微笑んで両手を私に差し出して
私の聞こえない声で、おいでって言ってるの
ねぇ、どうして行けないの?
あなたのそばに行きたいの
私は何を失ってもいいから
何もいらないから
あなたに会いたいの
- 123 名前:クロイツ 投稿日:2003年04月11日(金)18時01分02秒
- ぐあおおおおう…(泣)梨華ちゃんの心理描写に引き込まれ過ぎて、こちらまで胸が痛いのれす…(泣)
>>122は、なんだか歌を聴いてる気分になれますね。
描写が歌詞みたいって言うのもありますが…なんかメロディまで聞こえて来そうな臨場感です!
すばらしい♪
次回も楽しみにしてます!!
- 124 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月11日(金)20時57分41秒
- どーも!ヒトシズクです!!!!
いや〜さっそくテスト(社会)が返ってきてびっくりしてます!
あ〜90点台なんて久しぶりすぎて親に驚かれました(汗。
私だってやればできるんですよ!・・・たぶん・・・(汗
ではレス返しです!
クロイツ様・・・毎回レスどうもありがとうございます♪
今回は梨華ちゃん切なくなっていただきました^^;早く幸せにしてあげたいのですが・・・
歌を聴いているよう・・・ですか!?あぁ〜どうもありがとうございます☆
ではこれからもよろしくお願いします〜♪
- 125 名前:第9話 歯車 投稿日:2003年04月11日(金)21時10分21秒
- いくら願ってもこの願いだけは叶わないってこと知ってた
それでも願うの
願いたいの
あなたに1歩近づくために
ねぇ、私はあなたのそばに行けるためなら何だってするよ?
本当。
親友だって友達だって親だってお金だって命だってあなたに比べれば安いもの。
いや、あなたとなんて一生比べられないわ
だってあなたが一番だもの、私の中で一番はあなただけ。
例え何があっても。
歯車が
回る
回る
回りだしてしまう
私なんかどうしようもない力で
歯車が少しずつ回って 速くなる 遠くなる
あなたは止まったままなのに
私は進む
あなたは私に背を向けたまま
私がいくら振り向いたって背を向けたまま
いくら私が叫んだってあなたは振り向かない
ずっと私に背を向けたまま
いくら手を伸ばしたって届かない
あなたと私の距離
その距離は1日1日遠くなるの
――――歯車は回る それは必然よ だって歯車は回るためにあるのだから 回らない歯車なんて無いのだから
- 126 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月11日(金)21時17分08秒
- 飯田さんが闇に消えていって後姿が見えなくなると、安部さんが目の前に現れた
「さ、着替えよ」
ただ、それだけの言葉なのに少し嬉しかった。
そっけなく聞こえるのに優しく聞こえるその言葉。
目の前に差し出された手に自分の右手を差し出してその小さな手を握った。
そして引っ張られるように椅子から立ち上がり、安部さんに引っ張られて着替えた部屋に入った
- 127 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月13日(日)15時05分15秒
- 部屋の中に入った私はなっちがいそいそと動き回る姿をじっと見ていた。
何も浮かばない
何も考えられない
自分の体で。
「はい」
いつの間にかなっちは私の着替えの服を持って目の前に立っていた。
「着替えておいで」
差し出された服を両手で受け取って、なっちに背中を押され個室に入った。
服を床に落とす
そして、だらんと力の入らない両手は肩からぶら下がり揺れる。
壁に背中をもたれかけて、ふと見上げた天井
その瞬間に頭に浮かぶ一つの疑問
――――何故私は生きてるの?
その9個の文字は私の頭の中を駆け巡る
まるで必死に答えを探しているように
私は薄く力なく天井に微笑みかけた
「意気地なしなんだね・・・私は」
自然とこぼれた言の葉が静かにその場に落ちていった。
意気地なしなんだよ、私は。
自殺もできなくて、手首を切ることもできなくて・・・・
そして、あなたの後を追うこともできなかった。
考えれば簡単なのにね
マンションの屋上から落ちたら終わりなのに
睡眠薬をビン全部飲めば終わりなのに
青酸カリを飲めば終わりなのに
できないのね、私は。
悲しむことも、笑うことも、さびしむことも・・・全部忘れちゃったの
あの頃から。
もう何もないのよ、私には。
迷った迷路でただ1人、最後が来るまで迷い続けるのよ
あなたを恋しく思いながら、ずっと。
「梨華ちゃん?着替えた?」
外から聞こえる声にはっとして、天井を彷徨わしていた目線を床に落とした。
身に付けていた黒いドレスのチャックを開けて脱ぎ、それから床に落ちた服に着替えた。
- 128 名前:蒼乃 投稿日:2003年04月15日(火)12時49分01秒
- ヒトシズク様、更新お疲れ様です。
梨華ちゃんの心の声(詞)が重く、せつない思いになってしまいます。
僕も、早く彼女に幸せになってほしいです。
こんな彼女を救えるのは、やはりあの女性なんでしょうか?
- 129 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月15日(火)20時25分18秒
- 蒼乃様・・・レスありがとうございます♪
これからどんどん梨華ちゃんには切なくなってもらう予定です^^;
あぁ〜幸せになる日がくればいいのですが・・・(おいおい。
梨華ちゃんを救う人はあの人なんでしょうかね〜?(笑。
それではこれからも宜しくお願いします!
- 130 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月17日(木)21時01分22秒
- いつの間にか頬を伝って流れていた涙を手に作った握りこぶしで乱暴に吹き払った
そして、意味もなく深く深呼吸するとドアに手をかけ、右に半回転、そして引く。
「・・・着替えたよ」
ドアを開けてすぐ見えた心配そうな顔に私は言葉をかける
涙で濡れた手の甲を反対の手のひらで隠した
「・・そう、圭織がさっきタクシー捕まえてきたべ。さ、行こ」
そう言い終らないうちに右手を捕まれ、半分引きずられるようにして個室を出て行った。
その間も頭を駆け回り続ける言の葉
【何故私は生きてるの?】
【何故あなたがいないの?】
いくら私が叫んだって泣き喚いたってこの言葉は何も関係ないようにいつものように駆け巡るの
ねぇ、これが私への罰?
これがアナタのそばに居なかった私への罪の謝罪?
- 131 名前:クロイツ 投稿日:2003年04月19日(土)14時42分43秒
- 切ない…す、すごい切ないです…!!
でもなんか癖になりそうな切なさ(笑)
早く梨華ちゃんに救いが訪れますように…。
・・・・・・そして手を差し伸べるのは『あの方』だったらうれしいなぁ、とか思ったりして(笑)
次回も楽しみにしてます!!
- 132 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年04月20日(日)19時25分12秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます☆
切ないですよねぇ〜・・・癖になりそうですか?癖になってください(笑。
梨華ちゃんが早く救われるといいんですがね・・・(おいおい!
「あの方」はもうすぐ登場・・・って感じですかね?
これからも宜しくお願いします♪
- 133 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月20日(日)19時37分23秒
- 「ねぇ・・・何で何も聞かないの?」
ふと疑問に思ったことを口に出した。
なっちは私の手を引っ張って歩き出したまま何も言わない。
私が言葉を発するとなっちはびくっとして私を振り返る
「・・・なんでって・・・」
なっちが口をもごもご言わせながら下を向くのは、少し可愛くてくすっと笑ってしまう
「も、いいよ。最近ストレス溜まってただけだし。気にしないで」
私は笑いを浮かべたまま下を向いてしまったなっちの頭にぽんっと手を乗せて、くしゃっと髪を掻いた
「ありがとうね、心配してくれて」
なっちの頭の上においた手でもう1度ぽんっと頭を軽く叩くと私はなっちに手を捕まれたまま歩き出した
なっちは何も言わない。
何も言わずただ私にいつの間にか引っ張られるようにしてついてくるだけ。
そして、途切れ途切れ聞こえてくる小さな言の葉
『ありがとう』
どうして私にその言葉がかけられるのか分からない
ただ、その言葉を聞き流した
これ以上悩み事を増やしては頭がパンクしてしまうと思ったから。
自虐的に声も出さずに笑って、外に出るドアに手をかけた。
- 134 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月20日(日)19時54分19秒
- その瞬間ぱちんっと私の手とドアとの間に発する静電気
一瞬のことにびっくりして引っ込めた手をまたドアノブへと伸ばした。
ゆっくりと右に半回転
そして引く。
習慣的なことに疑問を抱くのは、もう終わりが近いから?
最後になって何かを懐かしむの・・・なんて言ったっけ?
ふと沸いた疑問をまた頭の中で紙に書いた文字を消しゴムで消して跡形なくするのと同じように打ち消した。
頭に浮かんだ疑問という文字を。
全て。
――――――
ドアを開けるとふわっと体を包むように吹いた春の風
それと共に宙を舞う、淡いピンク色の桜の花びら
いつの間にか咲いて、いつの間にか散って、いつの間にかつぼみをつけて、いつの間にかまた咲く
それの繰り返し。
「また咲いてまた散ったか・・・」
独り言のようにつぶやいてドアから2歩ぐらいのところで足をとめた
近くに桜の木があるのか、その辺りの地面には桜の花びらが散乱していて少し綺麗で目を細めた
黒いアスファルトに淡いピンク、そして赤い花びら。
黒にピンクが綺麗に映えて少しばかり桜を見ていなかったな、と思い出した。
「前に見たのはいつだっけ・・・」
ふと思った言葉はいつの間にか口からこぼれて暗い暗い夜空と暑くもなく寒くもない空気に消えてった。
- 135 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月27日(日)10時53分22秒
- 生ぬるい風が地面に散り落ちた花びらを浮き上がらせ、宙で躍らせる。
黒色と淡いピンク色
どこか神秘的だなぁと思って、そして止めた足をまた進ませる。
少し進むと飯田さんとタクシーの点滅するライトのオレンジ色の光が目に映る
飯田さんは私たちが目に見えたのか、早く早くという風に手を大きく振る
私は小さく手を振り返して、歩く速さを少しだけ速めた。
風が私たちの行く手を邪魔して、髪が風によって揺れる
そう言えば、最近外に出てなかったな、と過去を思い出すようにふと思い出した。
最近は生徒会室にこもってばっかりだったもんね。
少し馬鹿らしく思えて、薄い笑いを浮かべた。
飯田さんの傍に着くとすぐにタクシーのドアが開いて私は飯田さんに押されるようにして入る
いつの間にか、なっちにつかまれていた手は解かれ、少し赤く手の跡が残っていた。
- 136 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月27日(日)11時00分39秒
- 少し開いたドアから飯田さんの顔がのぞき込むように出てきた
「一人で帰れる?」
柔らかいその声は、どこかしらアイツを思い出させて一瞬にして鳥肌が立つ。
そして、消えたはずの赤い炎と新たに燃え始めた青い炎がじわじわと怒りを思い出させる。
「あ、はい。大丈夫です」
作った笑顔を心の奥底から引っ張り出してきて、表情として貼り付ける。
飯田さんはその笑顔に安心したのか少しはにかんだように笑ってドアを閉めた。
バタン、大きくもなく小さくもない音を立ててしまったドアの音を聞いてから運転手さんは行き先を問う。
感情のこもってない声がどこか安心して、私はため息を一つ吐いて亜弥が待っているだろう家の住所を答える。
- 137 名前:第10話 迷路 投稿日:2003年04月27日(日)11時08分01秒
- 今どこだろう
抜け出せない迷路のどこ?
入り口に近いところ?
それとも、出口に近いところ?
それとも・・・どこにも近くないところ?
それとも、あなたに近くてあなたに遠いところ?
ねぇ、いつまで彷徨ってるの?
行き先もわからないまま
いつまでも心の中過去が覆い尽くしたまま
このままじゃダメだって分かってるのに
過去は思い出にしなきゃいけないってわかってるのに
どうして何も出来なくて
その場に座り込んで動けないまま
何もやる気がなくて
ただ私だけを置いて進んでいく時を何も映らない瞳で見つめるだけ
どうして過去は思い出にしなきゃいけないの?
どうして時は進むの?
どうして時は私を連れて進むの?
止まっているあなたから私を一歩一歩遠ざけていくの?
- 138 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年04月27日(日)20時17分21秒
- 行き先を言ったら、勝手に行き場所に連れて行ってくれる便利なタクシー
たびたび揺れる揺れと白い座席カバーから感じる洗剤の匂いで少しずつうつらうつらしてくる
さいわい、タクシーの運転手が静かな人で私は車が止まるまでと自分に言い聞かせながらまぶたを軽く閉じた
ラジオだろうか、控えめな音楽が静かな空間を静かにゆっくりと埋め尽くしていく
確か・・・ロシア語だったかな。いつか留学した時覚えた言葉をゆっくりと思い出す。
思い出の引き出しは一つ思い出すと、あとは簡単に思い出せる
嫌な思いでも、楽しかった思い出も。簡単に。
途切れ途切れ聞こえてくる言葉を淡々と頭の中で和訳していく。
ふと、目を開けて窓から外を見る。
明るい光が満ち溢れ、暗さなどあまり感じられなかった。
ふと、目に映ったコンビニを見て、私は自分でも気づかないうちにタクシーを止めていた。
運転手から領収書を受け取って、開いたドアから外へと足を踏み出す。
- 139 名前:tsukise 投稿日:2003年05月05日(月)22時13分27秒
- 更新、お疲れ様です。
す、凄く切ない展開で読んでいてハラハラしてしまいました…。
過去から乗り切れないってキモチが痛いです…っ。
続き、楽しみにしていますので頑張ってくださいねっ。
- 140 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月01日(日)15時39分25秒
- PCが不調でしばらく(長い間)更新が出来ませんでした。
本当に申し訳ありません!!!
これからは出来るだけがんばって更新していくつもりですので、応援宜しくお願いします!
tsukise様・・・毎回レスありがとうございます!
ハラハラしていただけましたか?ありがとうございます。
そう言って貰えると、やる気が起こるので・・・・(笑。
では、次回からも宜しくお願いします!
- 141 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月01日(日)15時57分29秒
- 外の暗さと対照的な明るさを持つ光は私の目に次々飛び込んできて、頭痛を頭の奥から引っ張り出してくる
そして、その頭痛もほんの少ししたら眩暈と同じようにすぐ消えてなくなる。
コンビニのドアをだるい右手で押して、中に入る。
今の時代、自動にしてよ、と心の中で不満を一つため息と共に吐き出して店内を見渡した。
レジでめんどくさそうに立ちながら、片手に持ったマンガに目を向ける店員
コンビニにしては数多くそろっているペットボトルたちの前で腕組をし、悩む人
おかしを手に取り、それを次々カゴに放り込んでいる人
夜中にしては人が多いな、と静かな空気に言葉を放り投げて雑誌のコーナーに足を進める
似たような名前が並ぶ、週間雑誌、週間コミック
何が面白くて毎週同じ金額を出してこんな分厚い本を手に入れるのか分からない。
皮肉っぽい言葉を頭の中で駆け巡らせて手にとっていた分厚い本を元あった場所に置く
誰かが置き去りにした空っぽのかごを手にとって、面白そうな単行本と雑誌をカゴにいれる
- 142 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月01日(日)16時01分14秒
- 店内をぐるっと回りながら、適当に気になるものをカゴに詰め込んで、レジに置く。
私がレジについた頃には店内にいた数人の客はいつの間にか居なくなっていて
ただ、がらんとした空気だけが私と店員を包んでいた。
ピッ、ピッ・・・・
無機質な機械音がだるさを増加さしていくようで、ポケットに詰め込んでいた携帯を取り出してみる。
- 143 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月03日(火)17時58分44秒
- 「1543円になります」
いつの間にか買った品物は半透明のコンビニ袋に詰められていて、店員は涼しげな表情で私に言った。
携帯から目を離して、ポケットに手を突っ込む。
さっき急いでおつりを突っ込んだのだろう、お札は少々曲がっていた。
2枚の千円札を、差し出された店員の手のひらに置く。
ふと見えた店員の肌は、まるで色がないように白く青白い蛍光灯の色が混ざって
余計、白く見えた。
「493円のおつりです」
その声にはっとして、手を差し出しおつりを受け取り、いっぱいに入った袋を取る。
よく見れば、店員は色が白く、ハーフの人のような顔つき。
一瞬で見ればあの人と似ているなぁ、と思い、おつりをまたポケットに突っ込んで早足にコンビニを出た。
- 144 名前:クロイツ 投稿日:2003年06月04日(水)21時09分23秒
- わーい!!更新だ〜♪やっぱりヒトシズク様の書かれる文章は芸術的で素敵ですね♪
…って、それだけでもうれしいのに、まさかっ!!!まさかもしかしてこの店員さんって!!
・・・・・・どきどきどきどき(笑)
もしかして彼女なんですか…?
ああ、もしも彼女じゃなくても先が楽しみです!!
がんばってくださいっ!!
- 145 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月06日(金)22時52分23秒
- クロイツ様・・・レスありがとーございますっ!!!
文章、芸術的ですか???うわぁ・・ありがとーございます!!!
師匠にそう言って貰えるとめちゃめちゃ嬉しいです!!!
この店員さんは・・・そうです!あの人ですっ!!!やっと出ました〜^^
長かったですよ(笑。
では、今後ともよろしくお願いします!
- 146 名前:蒼乃 投稿日:2003年06月07日(土)22時54分15秒
- ヒトシズク様、更新お疲れ様です。
ご無沙汰しております。諸事情によりネットから離れざるを得ませんでしたが、
復帰早々更新されてて嬉しいです。
白い肌、ハーフのような顔付きとくれば、もうあの女性しかいないでしょう!
と思ってたら、それで正解のようですね。
それでは、これからも頑張ってください。
- 147 名前:蒼乃 投稿日:2003年06月07日(土)23時55分17秒
- ・・・・・・すみません、ヒトシズク様にもご無礼を働いてしまいました。
ご容赦ください。
- 148 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月08日(日)11時39分03秒
- 蒼乃様・・・レスありがとうございます!無礼・・・ですか???
あ〜・・・気にしてませんよ(笑。気にしないで下さい!
と、遂にあの人登場です!あぁ、ここまでが長かった(苦笑。
ではでは、これからも宜しくお願いいたします!
- 149 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月08日(日)12時14分03秒
- ふと見上げた空には月が浮かんでいた。
真っ黒な夜空に黄色く輝くお月様
あの人と別れたとき、私は月を恨んでいた、憎んでいた。
一人にして欲しかったのに、お月様はずっと私の傍から離れてはくれなくて
いつも泣き顔を見られたくないのにお月様だけ見られたいた。
公園に一人いたって、土管の中に隠れてみたって、一人電気もつけずに部屋の中に閉じこもったって
お月様は私から離れてはくれなかった・・・・
ふわっと風が吹き、私の髪の毛を揺らして去っていく。
揺れた髪が頬に辺り、それが合図のように私は歩き出す。
ほんの100メートルほど先にある高級マンション
そこで待っている人に会うために。
- 150 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月08日(日)12時25分50秒
- 昼間はにぎわっている道も深夜近くになると人っ子一人いない。
いつもはさびしく思って早足か駆け足でこの道を通るのに、今日は何故か優しく感じる。
ぼやっとしたお月様の光
静寂と暗闇
「まるで、私の心、みたい」
ぽつんと暗闇に途切れ途切れの単語を落としていく。
ねぇ、暗くて先が見えない
早く、私の傍にきて
あなたがそう言ってるみたい
風があなたの言葉を私に届けてくるの
こんな夜は、あなたがいつも傍にいてくれるみたいで安心するの
「――――先輩っ!」
暗闇の向こうから声がして、誰か走ってくる音がする。
その音が近づき――――誰かが抱きついてくる。
その振動で手首にぶら下がっていた重いコンビニ袋が揺れる
「亜弥」
抱きついた瞬間、感じるフローラルのシャンプーの匂い
暖かい体温が徐々に伝わってくるのを感じながら、私は彼女の名前を呟く。
「先輩遅い」
少しすねたような声が彼女の名前を呼んだ次の瞬間返ってくる。
その声に少し安心しながら私は彼女言い訳をする。
「ごめん、コンビニ行ってた」
- 151 名前:tsukise 投稿日:2003年06月09日(月)08時14分34秒
- 更新お疲れ様ですっ!
コンビニでの一連の動作が、目に浮かぶようですねっ♪
そしてっ!ハーフな顔立ちとくればっ!!
これからの展開も目がはなせないですねっ
期待しつつ、ゆっくりお待ちしていますので、頑張ってくださいね♪
- 152 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月11日(水)18時29分09秒
- tsukise様・・・レスありがとうございます!励みです!!!(笑。
ハーフの顔立ち・・・そうです!あの人です!やっと登場(笑。
更新はゆっくりですが、出来るだけたくさん更新する予定です!
今後ともよろしくお願いします♪
- 153 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月11日(水)18時34分58秒
- コンビニ袋がぶらさがっていない手を彼女の腰の位置に回し、強く抱きしめる。
「ごめんね、遅くなって」
夜空を見上げながら言った。
お月様が笑っていた、一人じゃないよって。
もっと早く気づけばよかった。
お月様は私を一人にはしてくれなかった。一人じゃないよって言ってくれてた。
口の両端を少し上げてお月様に心の中で言う。
「ありがとう」
――――
「中、入ろっか?風邪引くよ」
- 154 名前:蒼乃 投稿日:2003年06月16日(月)01時53分03秒
- ヒトシズク様、更新お疲れ様です。
マンションで待っている人、即ちあやや、ですよね?わざわざ迎えに走ってくるなんて、なんて健気な・・・・・・。
でも、ここからもう一ひねりありそうな気がします。勝手に、ですが。
先週の金曜日は、満月でしたね。人から教えてもらうまで、知りませんでした。
帰り道に空を見上げると、月が夜空に浮かんでいて、地上の光に負けないくらい、輝きを放ってました。
・・・・・・コンビニのシーン以降を読んでて、なぜかそのときのことが脳裏に浮かびました。
では、これからも頑張ってください。応援してます。
- 155 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月16日(月)22時45分25秒
- はい、ヒトシズクですっ!
最近、何故か忙しく図書館に駈けずり回っています・・・(謎。
ま、理由は簡単!(笑。
タトゥーが来日っ!(←実はファン)っつーことでインタビューなどでロシア語を聞き取れるように・・・
と、そんな感じです(汗。
つーか、始めるの遅すぎ・・・と言うこの頃なヒトシズクです。
更新は明日します♪では、レス返しです〜
蒼乃様・・・毎回レスありがとうございます☆
マンションで待ってる方はもちろんその方です^^
一ひねり・・・何で分かったんですか?!(汗。
蒼乃様、もしかして超能力者・・・・?って・・・(大汗。
金曜日はすごい綺麗な満月でしたねぇ〜満月を見て思い出して下さってありがとうございます!
めちゃくちゃ嬉しいです!では、次回も宜しくお願いします〜
- 156 名前:tsukise 投稿日:2003年06月16日(月)23時19分51秒
- 更新お疲れ様ですっ!
うあ〜!『一人じゃないよ』にジーンときましたっ!!
あやや…いい子ですね〜…って、一ひねりあるんですかっ!?
うぅっ、これからも目が離せませんねっ!楽しみにしてますっ!
そしてっ!t.A.T.uファンだったんですねっ!ヒトシズクさんも!
私も実は、小説書いてる時はBGMにしてたりして…(^^ゞ
来日、楽しみですねー! ロシア語の勉強、がんばってくださいね(^^
- 157 名前:第11話 特別な人 投稿日:2003年06月18日(水)00時14分56秒
- 小刻みに揺れる揺れとひっく、ひっくという泣き声の象徴とも言える声。
それが直に伝わってくる。
分からなかった。
何故、彼女が泣いているのか。
でも、どこかでは気づいてたのかもしれない。
ただ、気づかない振りをしてたのかもしれない・・・・・
「さ、入ろ。カギ、開いてるんでしょ?」
彼女とくっついた体を少し離して、彼女の顔を覗き込みながら問う。
両頬を伝う、1筋ずつの涙
それを右手の甲で拭き、頭を撫ぜて微笑む。
「さぁ、行くよ」
まだ、ひっく、ひっくしゃくりあげている彼女の右手首を掴んで歩き出す。
夜空には、お月様がにっこりと笑ってた。
ねぇ、ホントはね
彼女を、私にとって特別な人を誰にも見せたくなかったんだ。
誰よりも私に近くて
私と同じ傷跡を持っていて
私にそっくりな、特別な人。
もう、大切な人を失うのは嫌だから
彼女を独り占めしたいから
早く部屋に入ろうと、言ったの
彼女をね、お月様にも見せたくなかったの
だって、誰かにとられちゃうような気がしたから
ねぇ、いいでしょ?
少しぐらい我侭でも。
彼女ならきっと笑ってくれるから
彼女ならきっとやきもちを焼いてくれるから
ね?
私の特別な人。
- 158 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月18日(水)00時20分47秒
- はい!11話やっと終わりです^^
では、次、第12話 「眠れない夜には―――」です。
次の更新は、またふらっと・・・(笑。
では、レス返しです^^
tsukise様・・・毎回レスありがとうございます♪本当に励みになっております^^
一ひねりは12話に出そうかな?と思ってるところです。
あまり期待しないでくださいね(笑。
っと!tsukise様もt.A.T.u.ファンでしたか!?
何かすごい嬉しいですねぇ〜^^
ロシア語頑張ってます・・・(たぶん)来日までに間に合えばよいのですが・・・
では、これからも宜しくお願いします♪
- 159 名前:クロイツ 投稿日:2003年06月18日(水)14時39分55秒
- あやや可愛い!!なんかもー、めろめろに可愛いっ!!
そして、歌のような描写にウットリ…
情景が、目に浮かぶようです。本当に、読みながらうっとりしてしまいましたYO!!
コンビニの彼女とどうカラむのかも楽しみです!!
がんばってくださいねー!!
- 160 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年06月18日(水)22時49分12秒
- クロイツ様・・・レスありがとうございます〜☆
うっとりしていただけましたか?!ありがとうございます〜^^
ホント、クロイツ様にそう言って頂けるだけで嬉しいです♪
では、次回からも宜しくお願いします♪
- 161 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年06月22日(日)14時28分46秒
- 眠れない夜には
月を見上げて
暗い夜空に浮かぶ無数の星の数を数えて
窓辺で思いをはせる
青白い光と
真っ暗な世界の入り口の部屋に
一人たたずんで
ただ、じっとあなたを想う
想いを抱きしめて
まぶたを閉じれば
涙が溢れて
床に静かに水溜りを作る
月と星たちのささやきを聞いて
いつか昔読んだ童話を思い出す
時は進み
あなたは去って
私は置いていかれたまま
あわただしく進んでいく周りの景色をただ、ぼーっと見て
流れる雲の行方を考えて
時が過ぎるのを焦りもせず見ている
差し出される手を握りもしないで
その場に突っ立ったまま
あなたが迎えにきてくれること待つ
眠れない夜には
ただ、あなたを想い
夜明け近くに
涙を流し
ベッドに顔をうずくませる
- 162 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年06月22日(日)14時35分14秒
- いつの間にか泣き止んだ彼女はエレベーターの中ですごい早さで喋る
「―――でね?柴田さんが大谷さんを―――」
「ホント、すごかったんだから―――」
機関銃のような言葉を少しだけ聞き取って、頷いて、そうすると彼女は嬉しそうな顔をする
ピーン
目的地に着いたことを知らせるエレベーターの機械音がして、すぐにドアが開く
喋ることに熱心な彼女の手を引いて、第2の我が家への道を歩く。
コンクリートの地面に2人分の足音が響いて独特の音を創る。
手すりの外を見ればまだ真っ暗な空がちょっと遠くの家やマンションを飲み込む。
- 163 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年06月29日(日)20時07分54秒
- 「あ、カギ」
誰に言うわけでもない独り言を発っして、ポケットに手を突っ込む。
カギを穴にさして右に45度
そして、音がすれば左へ45度
用の済んだカギはポケットの中へもう一度眠らせて、ドアを開けて彼女の手を引っ張って中に入る
真っ暗な空間
壁にあるはずの電気のスイッチをパチンと押して闇を追い出す。
- 164 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月02日(水)22時31分00秒
- 急な明るさに瞬きを数回繰り返して、明るさを調節する。
暗さと明るさの狭間は嫌い。
目の前が真っ白になって一人になるから・・・・
真っ白な霧のせいでズキズキと体中を駆け回る痛み。
それは、しばらくして頭にやってきて私を苦しめる
「・・・っ・・・」
いくら経験しても慣れない痛み
それに、歯を食いしばって痛みを耐える
握っていた彼女の手を離して目元に手をやる。
- 165 名前:tsukise 投稿日:2003年07月03日(木)20時38分14秒
- 更新お疲れ様ですっ!
マシンガントークが目に浮かぶようですね〜(笑
情景が浮かぶような描写に、いつも感情移入して読ませてもらっていたり♪
更新、楽しみにしていますので、これからも頑張ってくださいねっ
- 166 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月04日(金)22時52分26秒
- tsukisu様・・・毎回ありがとうございます☆ホント、嬉しいです♪
最近、文章力がなくなってる気がしてる今日この頃です(汗。
更新速度が大幅に減っていますが(笑)これからも宜しくお願いします
- 167 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月04日(金)23時01分38秒
- 横からぬくもりが消えて、すぐにパタパタと廊下を走る音が聞こえる。
また、彼女はいつも通り慣れた手つきで戸棚からコップを取り出し、飲み物を入れて私の元へ戻ってきてくれるだろう
戻ってきてくれる―――
そう確信できるのは、彼女と私、同じ傷を持っている人だから。
同じ傷を持って、未だに癒えない傷跡を背負ってる。
やっと見つけた、私と同じ人。
―――だから、きっと戻ってきてくれる。
「―――大丈夫?」
優しい声
そして、もう一度戻ってきたぬくもり
手に握らされたコップを口元に運ぶ。
冷たい水が喉を通って食道を通っていくのが分かる
目元にやっていた手をどけて心配そうに私の顔を覗き込む彼女の顔を見て微笑んだ。
「もう、大丈夫。ありがとう」
- 168 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月04日(金)23時09分17秒
- ねぇ
あなたと言う空に
私と言う雨を降らして
思い出という地を濡らしてはくれないだろうか
悲しさが地を荒らして
私の心にまた新しい傷跡をつけていく
地が乾いて
想い出はカギの閉まったドアの奥深くに少しずつ戻っていくけど
後遺症のように私はあなたを求め続けるだろう
一つ思い出せば
それが、きっかけの様に次々と
次から次へと思い出が溢れて
全てが混ざり合って
あなたの姿を浮かびあがらせる
いくら手を伸ばしたって手の届かない距離
分かっているのに、あなたの幻に手を伸ばす私
微笑むあなたはずっとあの頃のままで
色白く、細い手足も、ショートカットの黒髪も、涼しげな笑顔も
全てあの頃のまま
涙を流して
その水で地を固め
あなたを封印する
―――――・・・・その繰り返し
- 169 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月05日(土)09時11分32秒
- 切ない感じが、すごーくすごーく心に響きます。
先が読めないし、どうなっちゃうのか想像もつかない…だから読むのがすごい楽しみです♪
出てくる人たちがみんな、じーんとさせてくれますね♪
次回も楽しみにしておりまっす!!
- 170 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月05日(土)15時03分12秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます☆ホント、励みになっています!
「切ない」というのが今回のお話のテーマなのでそれが伝わってホント嬉しいです♪
では、次回からも宜しくお願いしますっ!!!
- 171 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月05日(土)15時15分31秒
- 「なら、よかった」
本当に安心そうに彼女は私に微笑み返して、その手を私の頬へと伸ばす。
あったかい体温が徐々に私の体に流れ込んでくるみたいな感じが私を襲う
そして、近づいてくる彼女の唇に目を閉じて彼女の首に手を巻きつける―――
――――
「―――疲れた〜」
リビングのソファに体を沈めながら、キッチンでいそいそと動く彼女の姿を見ながらポツンと言う。
目の前の小さなテーブルの上に置かれたペットボトルを手にとってしげしげと眺める
色づかない綺麗な透明な水
蛍光灯の薄青い色が水に注ぎ込む
汗をかいた容器をその辺りに投げちらかされていたタオルで水分をぬぐって、またタオルをどこかに投げる
- 172 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月07日(月)18時28分06秒
- 「またぁ散らかしてぇ」
食器棚の向こうから彼女が顔をひょこっと出して少し伸びた声で私に言う。
その姿をちらっと見てから、のんびりと答える
「分かってるって。・・・何作ってるの?」
ソファの腰の位置を少しずらして半ば寝ている状態と同じような格好でふと、瞼を閉じる。
――――そう言えば、もう水曜日か。
頭の中のカレンダーで日付を確認して明日があの憂鬱な1週間で一番嫌な日である水曜日だと言うことに落胆する。
「カレー!先輩も食べる?」
匂いで分かってたけどね、という言葉は喉から空気と一緒に飲み込んで閉じていた瞼を薄く開ける。
「ん・・・どーしよ。また、後でいいよ」
そろそろしんどくなってきた体制
今度はソファにちゃんと座ってから、ゆっくりと立ち上がりリビングテーブルの上に置かれたコンビニ袋を開ける。
その中のものを1つずつテーブルの上に出していく。
ポッキー、ミネラルウォーター、ガム、アメ、半分溶けたアイス・・・・
よく、こんなにも買ったなぁと自分に半分あきれ、半分ある意味で感心していく。
- 173 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月12日(土)12時23分52秒
- 半分溶けて、容器に水滴が無数についているアイスを冷凍庫に入れる。
もう1度、アイスが固まるかは不安だったけど、入れとけば何とか成るだろうと半ば強引に不安を取り除いて冷凍庫に入れた。
リビングテーブルの上に置かれていた、コンビニで買った物はいったんもう1度コンビニ袋の中に入れて、
テーブルの上に置かれていた数個のビタミン剤のビンを自分の傍に引き寄せる。
袋から出しておいたミネラルウォーターのキャップを右に1回転まわしてふたを開ける。
カチッと乾いた音が小さく鳴って、彼女が戸棚からひょこっと顔を出してくるけど、なんでもないよ、と笑って誤魔化す。
- 174 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月14日(月)17時05分30秒
- ビタミン剤のキャップを次々くるくると回して開けていって、そしてそれぞれ3錠ずつ取り出して、手のひらに載せていく。
白い錠剤・黄色がかった錠剤・灰色っぽい錠剤・・・・
いつも見慣れているはずの色たちがたまに私を不安にさせてイライラさせる。
それは訳のわからない苛立ちと不安で、どう説明したらいいかさえ分からなくなる。
くるくる頭の中を駆け巡る言葉を追い出すように、目をきつく閉じて深呼吸を数回する。
少しでも気を抜けば襲ってくるモノタチ―――
ふうっと息を吐き出して右手に載った錠剤を何個か口に含み、ミネラルウォーターで流し込む。
何回か、その行動を繰り返して手のひらの錠剤をなくして、最後にもう1度ミネラルウォーターを飲む。
そしてしばらくして、胸の奥から、食べ過ぎの時にくるむわっとした感じに似たものが押し寄せてくる。
それは、食べ物を受け付けない私への罪のように最近感じる。
- 175 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月16日(水)17時26分54秒
- これでも、この罪には慣れたほうだと自分でも思う。
最初の頃は、泣いてばかりだったから・・・
ふと、過去を思い出して懐かしむ自分に、苦笑いを返してビタミン剤のキャップを閉めにかかる。
全部のキャップが閉めれた頃には、亜弥が自分用のカレー皿とお茶の入ったコップを持って、こちらに向かっていた。
- 176 名前:tsukise 投稿日:2003年07月16日(水)22時36分23秒
- 更新、いつも楽しみにしていますっ。
…の割りに、レスが遅れてしまってますね…(^^ゞ
錠剤を口に含む姿が、痛々しくて切なくなりますね…っ。
ちょうどいい距離を保っている二人の情景が、かなり好きですっ。
次回更新もがんばってくださいねっ。
- 177 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月16日(水)22時38分30秒
- ――――今日もあなたはそんな瞳をして私を責めるのね―――
あの人に似た冷たい瞳で
私を地獄に落とすかのように
あなたはいとも簡単に
私を地獄に落とす
その冷たい瞳で
私の心に降る雨をさらに強くして
私に悲しみの色に染まった冷たい瞳で言う
「こんなにも雨が降ってるから、何も見えないよ」
と。
空を仰いで
両手で雨を受け止めて
溜まった水をゆっくりと落とす
――――ねぇ、あなたはまだ私を許してはくれないのね。
- 178 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月16日(水)22時45分14秒
- そんな瞳をして
何も無いような顔をして
でも、寂しさや悲しみを私に押し付けて
眠れない夜を誘う
ねぇ、雨が降ったら流れていってしまうような思い出も
太陽の光にかざせば消えていってしまうような思い出も
なくなってしまうよう思い出なら1つもいらないわ。
とても大切な事だって
平凡な事だって
簡単な事だって
難しい事だって
――――なくなってしまうのなら、最初からいらない
最初からそんなもの望まないし
いらない。
ねぇ、あなた分かるかしら?
犯した罪の重さ。
犯した罪から皆、逃れようとするけれど
付きまとうついた嘘から逃れようとするけれど
どんどん闇がせまってきて
走っているのに、歩いているように遅くて
やがて、罪と罰は同時に私を襲い
闇の中へと引きずり込む
- 179 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月16日(水)22時49分14秒
- tsukise様・・・毎回レスありがとうございます☆
錠剤の場面は、ふと思いついて書いてみたところなんですが
そう言って頂けて嬉しいです♪
松浦と石川は微妙な関係ですねぇ。また、あとで色々な事が出てくる予定です
では、お互い頑張りましょう!!!
次回からも宜しくお願いします。
- 180 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月16日(水)23時00分07秒
- 「先輩?」
気が付くと、亜弥は私の額に手を置いて顔を近づけていたところだった。
「・・・あぁ・・あ――」
私の言葉はそこで中断された。
それは、亜弥が私の唇を塞いだから。
軽く、十数秒はあっただろう口付けは亜弥によって終わりを告げる。
「どうしたの?」
また、顔を近づける亜弥に市井さんそっくりの瞳の色はもう1つもなくて
ほっと胸をなでおろす。
「―――何か最近疲れてるみたい。先、ベッド行っとく」
自嘲気味に笑って、前髪をかきあげて亜弥に「おやすみ」と呟いてリビングを出る。
- 181 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月17日(木)07時57分36秒
- 梨華ちゃんの「痛み」みたいなものが、すごく伝わって来ますねぇ…。
幸せになって欲しいと、心の底から思います。
そして、そんな中で無邪気なあややがすごく光って見えます(笑)
いいですねぇ、幻想的で詩的な表現…いつもうっとりとしながら読んでます。
次回も楽しみにしてますっ!!
- 182 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月18日(金)14時46分29秒
- クロイツ様・・・毎回レスありがとうございます☆本当に励みになってます^^v
無邪気なあややとダーク石川さん、ちょっと差がありすぎかな?
と思っていましたが何とか好評のようで^^;
では、次回からも宜しくお願いします♪
- 183 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月18日(金)22時40分20秒
- 薄暗い廊下を一人で歩く。
同じ家の中に亜弥が居るのに音は聞こえなくて、何故か一人ぼっちになった気がした。
廊下の電気は付いているはずなのに薄暗くて、一人ぼっちの寂しさをより引き立てる
ふと、立ち止まって電気を見つめ、チカチカする電気に面倒くささを感じる。
「あぁ・・・また電気変えなきゃ・・・」
ポツンと呟いて、止まった足取りをまた進める
何個かドアを見過ごして、白い何も書かれてないプレートがぶら下がったドアを開ける。
白いプレートに何も文字を書かないのはただ何となく。
理由なんて一つも無い。
それは、私がアナタを忘れられないのと同じ
ドアを開けてすぐに見える2つのベッド
その片方に倒れこむように寝転んだ。
―――疲れた、なんて理由の一つも無い嘘
ただ、一人になりたかった
ただ、何も考えずにいたかった
それに、理由なんて必要なのかな―――?
- 184 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月18日(金)22時50分25秒
- 小さい頃付いた嘘は今でもたまに思いだす。
いくつも
いくつも
いくつも
一つ思い出せば、それがきっかけのように
―――あのね、テストで100点だったよ
本当は45点だったのに。
―――鉄棒でね、逆上がりできたよ
本当は誰より運動オンチで逆上がりなんて出来ないくせに
―――テスト、学年で1番だったよ
嘘ばっかり、25番だったくせに
思い出すのはバカみたいに簡単な嘘で
全ては親を喜ばすためのものだった。
あの頃の私は、ただ褒めて欲しかっただけなのかもしれない。
と、今思う。
あんな奴ら、喜ばしたって何の特にもならないのに・・・
バカみたいと、笑い飛ばして
私は、うつぶせになったまま目を閉じる。
- 185 名前:tsukise 投稿日:2003年07月18日(金)23時43分54秒
- 更新、お疲れ様ですっ!!
うあぁぁっ!痛い、痛すぎですっ!梨華ちゃん…(泣
悲しい嘘の数々が、なんだか自分を痛めつけているみたいで
本当に切ないです…っ。でも、目が離せないんですよねっ!
続き、楽しみにまってますっ!!
- 186 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月19日(土)16時20分08秒
- tsukise様・・・毎回のレス本当に励みになっています!ありがとございます☆
はい。痛いですねぇ・・・書く方も痛くて痛くて・・・(苦笑。
>でも、目が離せないんですよねっ!
ありがとうございます☆本当に感謝ですっ!!!!
では次回も宜しくお願いします〜
- 187 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月19日(土)16時31分39秒
- このままじゃ、服に皺がいくなぁーと朦朧とした頭でも分かるけど、起き上がる気力も無くて
その思考を停止させる。
そのまま私は時の流れにのって、眠りにつく―――
――――
ふと、目が覚めた。
体の周りをまとわりつく生暖かい空気と、汗。
亜弥がかけてくれたのか、お腹の辺りにはタオルケットが乗せられていて今更ながら
それを重たく感じ、だるい手でそれをどこかに放り投げる。
そのまま、ぼーっと天井があるはずの暗闇に視線を彷徨わせる。
いつもなら見えるはずのクリーム色の天井が見えなくて、ただ見えるのは薄暗い闇と真っ暗な闇
耳を澄ませば、亜弥の寝息であろう、規則正しい呼吸の音が聞こえる。
いつもなら、私と同じベッドで寝るのだけれど、今日は遠慮したのだろう、いつもは使わない
もう1つのベッドにタオルケットに包まれて、眠りの世界に落ちている。
- 188 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月20日(日)12時52分39秒
- 一通り部屋の中を見回して、重たい上半身を起き上がらせる。
もう慣れた、頭の中を回るくらくらする感じも、目の前が暗くなる瞬間がどこかいつもとは違うように感じる。
しばらくすれば、すぐにそれらはなくなって、私はベッドから抜け出す。
- 189 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月21日(月)22時45分34秒
- そして、隣の亜弥が寝ているベッドに腰掛けて、天使みたいに眠るその髪を撫ぜる。
黒のセミロングの痛んでもない髪は寝る前にシャワーを浴びたのだろう、少し濡れていて
それすらも、今は何故か愛しく感じる。
亜弥の髪を撫ぜて何分たっただろう。
ふと、亜弥の顔を覗き込んでみると彼女はくすぐったそうに笑っていた。
「起きちゃった?ごめんね」
- 190 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月25日(金)22時10分57秒
- 黒髪に触れていた手を白いシーツの上に移動させる。
皺がいくつも付いたシーツはさわり心地を触るたびに良くしていって
その気持ちよさに少し目を細める。
シーツを少しつまんで、自分で皺をまた1つ付け加えて、その繰り返し。
そこに亜弥の細い指先が加わって、もう1つ、2つと増えていく。
- 191 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月25日(金)22時12分39秒
- かなり、不定期な更新ですみません。。。
反省しております。
明日にでも溜まっている分を書ければいいなぁと・・(あくまでも、予想ですので(笑)
では、また明日にでもっ!
- 192 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月26日(土)13時28分00秒
- しばらくすると、シーツを触っていた手と手が絡まる。
指と指の間に指を滑り込まして、その指に絡ませる。
そして、徐々に伝わっていく体温
「ねぇ」
甘いその声は、闇夜に響いて甘ったるい後味を残していく
「何?」
壁にかけてあるはずの絵があるはずのところをじっと見つめて、答える。
真っ黒なペンキで塗りつぶされたみたいに何も見えなくて
どこか落胆する、気持ち。
あるはずの場所に何かが無い。
それは、小さな頃何度も味わった切なさを思い出させる。
いつも、見慣れたものが見えなくなると、どこか焦る気持ち
「何かあった?今日の先輩、おかしいよ」
眠そうな声と不安そうな感情が混ざって、甘い声がいつも以上に甘く感じる。
「何でそう思うの?」
内心ドキッとした。
それが声に出ないように、声のトーンを1つ落として慎重に答える。
亜弥は、こういうことになるとすごく気が利く
- 193 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月26日(土)13時55分08秒
- 「いつもの先輩じゃないもん・・・」
その言葉を聞いて、亜弥に気づかれないようにそっとため息を吐いた。
何で分かっちゃうのかな?
一番、知られたくない人に。
そういう気持ちをこめて。
絡んだ指を、元に戻して、シーツを握り締める。
数本の線が力を入れるたびにきゅっと浮き出るのを目の端で見ながらまたため息を吐く
「――先輩?」
遠慮がちなその声に今さっきまでは甘く感じていたのに、今は何故か疎ましく感じる。
「――ごめん、何も無いから」
早口でそう言って、握っていたシーツを離して、部屋を早足で出た。
- 194 名前:tsukise 投稿日:2003年07月26日(土)18時37分46秒
- 更新お疲れ様ですっ!いつも楽しみにさせてもらってますっ!
甘い声で心配げに訊ねるあややが、すっごい目に浮かびますねっ。
そして二人の微妙な距離とか、壁とか…見ててまた切なくなってしまいました…。
きっと、奥に秘めてるものが大きすぎるんでしょうね…うぅっ
続き、楽しみに待っていますので頑張ってくださいねっ!
- 195 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年07月30日(水)14時13分35秒
- tsukise様・・・毎回のレス本当にありがとうございますっ!感激です^^
あややが今回は活躍(?)してます(笑。
この小説、いしよしなのですが、吉が出てきてない・・・(爆
と、思うのです・・・(笑。
では、次回もどうぞ宜しくお願いします〜!
- 196 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月30日(水)14時20分17秒
- 寝室のドアに背中をもたれかけて、そっと宙を仰ぐ
いつの間にか胸の中に現れた曖昧な感情が心の片隅に転がって、得体の知れない感情が胸の中を渦巻く
どうして、私はいつもこうなのだろう?
いつも、嫌なことから逃げ出して
自分を傷つけたくないから、人を傷つけて
感情を隠して・・・・
――――まるで、ピエロみたい
上辺だけ取り繕って、中側は一切見せずに暗い闇の中に隠したまま。
「―――バカみたい・・・」
誰に言ったのか分からない言葉をそっと口から吐き出して私はそのまま家を出た。
- 197 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月30日(水)14時25分55秒
- 明かりも付けずに、サンダルをつっかけて音が彼女に聞こえないようにそっと開けて、閉める。
もう夏に近いと言うのに、真夜中の空気は少し冷たくて、感情が高ぶった私にはちょうどよかった
コンクリートの道をペタペタ、サンダルで音を鳴らしながら歩く。
そのまま、エレベーターに乗り込んで1階のボタンを押して瞼を閉じる
何か、消臭剤の匂いだろうか、淡いレモンのような香りが漂い、機械音が響く。
チン♪
と、機械音が目的の場所に着いたことを知らせて私は瞼を開けて、外の世界へと出る
- 198 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月30日(水)14時31分10秒
- マンションのエントランスを抜けて、少し立ち止まりどこへ行こうか考える。
その間も、少し冷たい風が私の頬を撫ぜてどこか遠くへ過ぎていく
冷たい風に空を仰ぐと、薄い曇り空が広がっていた。
もう1度、風が私の頬を撫ぜたとき私は幼い頃遊んだ小高い丘に行こうと、決めた
別にどこでも良かった。
ただ、一人にさえなれれば。
丘へ行こうと決めたのはただの偶然。
ふと、小さい頃のことを思い出して、最近は丘にも行ってないなぁと思ったから。
ふと、自嘲気味に笑って、止めていた足をまた歩き出す。
- 199 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月31日(木)17時38分06秒
- 数年間、あるいは十数年、行ってなかった場所なのに私の頭はその丘までの道のりを
鮮やかに思い出させる。
頭の中の地図に従って、出来るだけゆっくりと足を進める。
きちんとある一定間隔で道路につったっている電柱や
壁1つの隙間で区切られた住宅街
いつもとは見慣れない景色に私はじっくりと見ながら歩く。
――――――
- 200 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年07月31日(木)17時43分25秒
- 丘の緩やかな坂道をゆっくりと登っていると、かすかながら歌声が聞こえた。
少し立ち止まってみるが、音は聞こえなくなって、私はまた足を進める。
丘、と言っても公園の半分ぐらいの大きさの場所の真ん中に大きな木が1本立っているだけのところ
幼い頃、鬼ごっこやかくれんぼ、だるまさんが転んだをする、と誰かが言い出せば
決まってここに来たことを覚えている。
そのうち「明日おにごっこするから10時にね」と、それだけでここに皆が集まる
ような場所になっていた。
―――そして、あなたとの出会いもここだった・・・
- 201 名前:tsukise 投稿日:2003年08月02日(土)22時41分53秒
- 更新お疲れ様ですっ!そして200ゲットおめでとうございますっ!
おおっ!ついに、核心に迫る話につながるのですねっ!
どんな昔話が飛び出すのか、今からワクワクしてます♪
次回更新待っていますので、頑張ってくださいねっ!
- 202 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月03日(日)23時46分10秒
- え〜今日、大阪城ホールのハロプロのコンに行って参りました!
マジで皆可愛えぇ・・・とぽかんとしておりました^^
その内容(たぶんノロケ)が知りたい!という方はメール欄のアドまで。
名前を書いていただけると嬉しいです!
tsukise様・・・毎回のレス本当にありがとうございます♪感謝感激です(w
遂に核心に触れるところまで来ました^^;
今までが長かったですね・・・(反省
では、次回からも宜しくお願いします♪
- 203 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月05日(火)14時01分30秒
- ゆるい坂道を登りきって、顔をあげれば平べったい緑色の空間がずっと広がってる
様な気がする。
全ては始まりがあれば終わりがあると言うのにそんな錯覚に陥る。
「―――疲れてるのかな?」
少し呆れ気味に声に出して呟いて、右手で目の下まである前髪をかきあげる
平べったい芝生が広がる広場に足を踏み入れて、真ん中に聳え立つ大きな木にゆっくりと
近づく。
そして、木にそっと触れる。
―――あの頃のままだね・・・
懐かしむように目を細めて、木に背中を預けるようにして座り込む。
思い出というのは一つ思い出してみれば、違う思いでも一緒になって出てくるもの
それが忘れたい思いで封じ込めたモノでも
いつの間にか忘れてしまった楽しいモノも
関係なく何か紐でつながれているような感じでぽっこりと出てくる。
- 204 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月05日(火)14時07分20秒
- 薄紫色に少しずつ変化していく空を仰ぎ見るように顔を上に向けて、そのままゆっくりと目を閉じる
風がゆっくりと通り過ぎる
風で木の葉が揺れる音がやけに大きく、耳に響いた。
ここの空間とここに来る前の空間とが切り離されて、ここだけ時間がたつのが遅い。
そんな感じがした。
――――音がした。
―――声がした。
私のではない少し低い、そうアルトっぽい声
でも、その声は優しく耳に響いた―――
- 205 名前:通りすがり 投稿日:2003年08月06日(水)07時46分42秒
惜しいな、文体にもう少しリズムが有れば良いのだが。
それと、文章の装飾を少なくした方が良いかも。
- 206 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月07日(木)11時45分40秒
- 通りすがり様・・・ご指摘どうもありがとうございます。
できるだけ改善させる努力をしますが・・・期待しないで下さいね(笑。
では、更新します〜
- 207 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月07日(木)12時00分07秒
- たぶん、私がもたれている木の反対側にいる人の歌声だろう。
いつになく冷静に私は判断して、驚いて目を開けるという行動をとらずに、そのまま
瞼を閉じたままその歌声を聞いた。
Idon't understand you,You don't understand me.
(私にはあなたが分からない、あなたには私がわからない)
I keep asking myself,wondering how.
(私、自問し続けてるの、どうしたらいいんだろうって)
I keep closing my eyes but I can't block you out.
(私ずっと目を閉じているのにあなたを追い出せない)
Will,all my hope is gone.
(ねぇ、希望なんか全て消えてしまったわ)
I don't know which one to choose.
(どれを選んだらいいのか分からない)
I meet you all over again.
(私もう1度あなたに会いたいの)
Allday,allnight・・・All the time,I think you.
(1日中、一晩中・・・いつも私はあなたのことを考えてるの)
I all alone.
(私はずっと一人ぼっち)
Everyday annoys me.
(毎日イライラしてばかり)
- 208 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月07日(木)12時15分28秒
- そこで歌声は切れた。
そして、人が立ち上がるような気配とともに私の目の前に人が現れた。
こげ茶色のショートカットの髪が風ですこし揺れる。
―――あぁ・・あのコンビニの店員さんだ。
直感で思った。
透けるような白い肌も、綺麗な大きな瞳も、ハーフのような顔つきも
一目見て脳裏に焼きついた、あの店員さんだった。
片足に重心を乗せた崩れた立ち方。静かで凛とした気を漂わせる。
「・・・隣、いい?」
その人から出た言葉はさっきの歌声と同じハスキーボイス
歌っていた人と目の前で首をかしげている人が同一人物だと考えながら、頷く。
細身なのにダボっとしたカーゴパンツを穿いてぶかぶかな黒いカッターシャツを着ている。
この暑いのにカッターシャツは長袖で腕のところで何回か折られてる。
たまに吹く風が、彼女の服の余った部分をなびかせて、その度に細い体の線が浮き出る
- 209 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月07日(木)12時24分46秒
- 私の隣に彼女はどかっとあぐらをかいて座り、風が髪をなびかせているのもお構いなしで
猫のように目を細める。
その姿がさっきの凛とした姿とは考えられないほどかけ離れていてビックリする。
凛としたときはどこか新宿にいるホストみたいな綺麗な麗人で
猫のように目を細める姿はそこらにいるただの少女のような気がする。
ちらちらと彼女を横目で見ながらも私は冷静を保って、先ほどと同じように空を仰ぎ見る。
「―――石川・・・梨華・・さんだっけ?」
唐突に彼女が口を開く。
訳がわからない。
彼女にはまだ何も、挨拶の一言すらしていないのに
彼女の口から名前を言われた。
しかも、フルネームで・・・
私がぽかんとしていると彼女は焦ったように、あ、とかあーいやなど言葉のような
言葉でないような単語を繰り返す。
「あ・・・いや・・・そう。あの・・・・」
いつまでたっても埒があかない。
そう、私は考え、飾らない言葉を出した
「何で名前知ってるの?」
そう、出来るだけ落ち着いた言葉で、感情で。
驚きなど微塵にしてでも出てこないように―――
- 210 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月07日(木)12時33分16秒
- 似ていた
いや、似すぎだ。
まるで瓜二つ、といった所
慌てて意味のない単語を出すしぐさや
困って眉をへの字にするところも
困った時には手で遊ぶしぐさも
全て、あの人と一緒だった―――
「――え、と。うちは吉澤ひとみって言って・・・あのそう。あなたの名前を知ってる
って言うのは、うち明日からあなたの学校に転入することになって・・・
えーで、その学校にうちの従姉妹がいて・・・あ、後藤真希って言うんだけど。
その子から色々教えてもらって・・・それで知ってるって訳です」
彼女はそれだけ言うと下を向いて黙りこくる。
その姿に安堵と笑いを感じながら、私は知らずのうちに微笑んでいた。
「そう、じゃ、明日から宜しくね。えーと・・・ごっちんと同い年なの?」
ごっちんと同い年なの?
その質問は少し言い換えれば、私と同い年なの?と聞いてることになる。
何か、バカみたい。
こんなこと明日になれば嫌でも分かることなのに・・・
- 211 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月08日(金)22時58分56秒
- ヒトシズクさま
お久しぶりです。『2番目』保存させていただきました、ななしのよっすぃ〜です。
ずうずうしくも再び保存のお願いにあがりました。
是非、保存させていただきたいと思います。
こちらで保存させていただく予定です。
http://kuni0416.hp.infoseek.co.jp/text/index.html
よろしくお願いいたします。
- 212 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月09日(土)14時43分23秒
- ななしのよっすぃ〜様・・・2番目の時、大変お世話になりました^^;
今回の作品も保存していただけると・・嬉しい限りです♪
どうぞ、宜しくお願いします。
- 213 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月09日(土)14時58分02秒
- 「うん、真希と同い年。石川さんも同い年だよね?」
彼女はゆっくりと立ち上がりながら言葉を紡ぐ。
お尻に付いた芝生をパンパン叩き落して、お尻をつけないで私の目の前にしゃがみ込む
そして、手を差し出して微笑む。
「明日からよろしくね」
囁いた、と言ってもいいほど小さかった声なのに私にははっきり聞こえて
何故か悲しくなる。
「うん、こちらこそ」
訳の分からない悲しみを紛れさす様に答えて、彼女の手を握る。
彼女は手を痛いぐらい握ってブンブン上下に何回か揺らして、いきなり手を離した
そして、彼女は立ち上がりゆっくりと口を開く。
「―――生徒会長で優しくてテストもいつも上位で、運動も出来る石川梨華。
親は有名な会社の経営者で今は一人暮らし。3年前に飛行機事故で恋人を亡くす。
生徒会でのオークション。闇金。売買―――」
まるで、何か週刊誌などで出ている記事を棒読みした、とか夜中のニュースで
司会者が何も感情のない声で台本どおりに進めているとか・・・
そんな声で彼女は言った。
- 214 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月09日(土)15時54分32秒
- ヒトシズクさま
更新お疲れ様です&保存の件ありがとうございます。
さっそく保存させていただきました。
では、次回更新も楽しみに待ってます!
- 215 名前:tsukise 投稿日:2003年08月11日(月)18時17分49秒
- 更新お疲れ様ですっ!
いよいよ、接触ですね…っ。
ちょっと緊迫している展開にハラハラしながら、読みましたけれど…。
うぅ…続きが凄く、気になりますっ!
楽しみにしていますので、頑張ってくださいね。
あ…そして、サイトですが…えー…URLの方を記載させて頂きますね。
問題があれば、ちゃちゃっと削除しちゃってくださって結構ですんで。
http://members.aol.com/tsukise/iriguchi.html
です。
- 216 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月12日(火)21時16分06秒
- ななしのよっすぃ〜様・・・保存の件、ありがとうございます★
更新、頑張ります!では、次回も宜しくお願いします!
tsukise様・・・毎回のレス本当にありがとうございます★もうホント励みになっております!
サイトの方教えていただきましてありがとうございます!
さっそく飛んで行きますので・・・(ぇ
では、次回も宜しくお願いします♪
お互い頑張りましょう!
- 217 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月14日(木)19時44分20秒
- 青板の作者フリー短編集に「crime」と言うお話を載せました。
後藤、藤本、松浦の微妙な三角関係物で、暗めです。
もしよければ見てやってください。
では。
- 218 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月15日(金)14時28分30秒
- 「―――それが何?」
別に何も無い感情で言った。
あの人のことが出るといつもそうなる
避けて避けて、いつかは分かるのに避けて・・・
その繰り返し。
「いや、別にさ意味ないんだけど・・・ね、今回のオークションで目玉があるって
あいぼんから聞いた?」
彼女はめんどくさそうに髪をかきあげて、私に目を向ける。
「聞いたけど・・・それが?」
大きい瞳に吸い込まれそう、とはこんな感じなのかと思った。
綺麗過ぎるほど透明で、でもどこか黒い影が潜んでいる大きな瞳。
「――その目玉、ってのウチなんだよね〜あ、意味わかるかな?」
何を言っているんだ、この人は。とこれがごく単純な私の感想。
目玉が人のはずが無い・・・だって今までにそんなことは無かったから。
それにオークションでの生きている物の売買は禁止されている、と中澤さんに
この生徒会に入ってすぐに言われた。
「―――意味微妙に分かんないんだけど・・・その目玉が吉澤さんって?」
ありえない、心の中でそう呟いて私は芝生を一握り握ると、それを引きちぎる。
「そう。簡単に言えばね。あ、話、長くなるけどいいかな?」
- 219 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月18日(月)14時44分23秒
- 「うち、去年まで3年間ぐらいかな?ロシアにいてね、そこで、情報収集の仕事を
してたんだ。毎日のようにその仕事してたから、結構力がついてね、たまたま
ロシアに旅行に来た中澤さんと平家さんにあって、日本に来て学園でその力を発揮
しないか?って誘われたんだ。ロシアでは結構生活がしんどくて、日本に来れば
結構、金になるって言われたから帰国して・・・それはよかったんだけど。
中澤さんの学園か、平家さんの学園か、どっちかに入ることを決めなくちゃいけなかった。
もともと、何かを決める、ってことが好きじゃなかったからそのことを2人に言ったら
‘オークション’ってのがあるって聞いたんだ。で、その商品にしてもらったって訳」
そこで彼女は区切って、私を見る。
その目には、どう?分かる?って感情が見えて私は微妙に頷く。
「―――でも、取引には生きている物はダメだって・・・」
「そう。それが問題だった。だから、うちは提案した。商品に出すのは、うちの持っている
情報収集力と今まで集めてきた情報ってことはどうでしょう?ってね」
「―――ふぅん・・・」
なんだ、とばかり言うように私は呟いて、握っていた芝生を放り投げた。
芝生は綺麗に各1つずつ弧を描くように、浮かんでは落ちていった。
「―――で、その商品を買った学園に転入する、って訳なんでしょ?」
「まぁね」
彼女は私を見て、にこっと笑う。
まるで、小さな子供が宝物を見つけたときみたいに。
- 220 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月18日(月)14時47分53秒
- ふと、彼女の肩越しに空を見つめると、青黒い空は紫色のペンキをかけられた様に
綺麗に変わっていて、何故か少し悲しくなる。
「―――もう・・・夜が明けるね」
彼女はポツンと呟いてまた私の隣に腰をおろす
「ねぇ、今度はさ石川さんのこと教えてよ?うちのことは教えたんだし」
興味津々、と言った感じで顔を覗き込んでくる彼女に私は渋々、頷く。
「夜が明けるまでね」
そう言って―――
- 221 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月18日(月)14時49分16秒
―――この時私は彼女にほんの少し、私の心の中を覗き見ることを許していたのかもしれない
- 222 名前:tsukise 投稿日:2003年08月19日(火)23時05分47秒
- 更新お疲れ様ですっ!
ちょっとダークっぽいよっすぃー…かっけーですっ!(笑
気だるい感じの二人のやりとりが、凄く読んでて面白いですねっ。
梨華ちゃんの心の隙間に、よっすぃーがどんな風に絡むのか楽しみです。
期待して待っていますので、更新頑張ってくださいねっ!
- 223 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月20日(水)14時24分19秒
- >tsukise様
毎回のレスありがとうございます〜☆ホント、感謝感激ですっ!
よしこと梨華ちゃんにはこれからどんどん絡んでいってもらう予定です♪
なにしろ、このお話は、いしよしですから・・・^^;
では、次回からも宜しくお願いします♪
- 224 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月23日(土)13時35分43秒
- 「じゃあ、最初に聞くけどあなたは私のことどこまで知ってるの?」
芝生を手で引きちぎったせいか、自分の右手は薄緑色が少し付いていて、しかも臭い。
好奇心で手の匂いを嗅いだのが悪かった、と一人心の中で思って彼女に尋ねる。
彼女の知っていることを話しても、時間の無駄だと思ったから。
「んー・・・・所々浅く広く知ってるからね・・・」
真剣に顎に手を乗せて、『考える人』のポーズをとる彼女を見て少しだけため息を吐いた。
「じゃあ。私が言うことに知ってるか知らないかで答えて」
いい?と言うようにポカンと口を開けて私を見る彼女に言う。
「あー・・うん」
分かったか分からないかそんな返事だったけどまぁ一応分かってると仮定して彼女に言う。
「まず1つめ。私と市井さんのことは?」
「少しだけ」
「・・・・2つめ。私の家のことは?」
「知ってる」
「3つめ。オークションとかそういうことは?」
「知ってる」
それだけで十分だった。
彼女が知りたがってるのは、市井さんのこと。
- 225 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月23日(土)13時44分17秒
- 「―――分かった。言うよ。3歳ぐらいのときだったかな?私ねそれまでずっと家に
閉じ込められてた、ってか外に出してもらえなかったの。ずっと窓の外から見える
私と同じぐらいの子が遊んでるのを見てるだけだった。それが嫌で嫌で、誰も人が
いなくなった時にね、こっそり家を抜け出したの。それで、皆が遊んでるここに来た
の。それはよかったんだけど、誰も知らなくて、独りぼっちで立ってた時にね一人の
子が話し掛けてくれたの。「一緒に遊ぶ?」って・・・・それが市井さんだったの。
それから皆と一緒に遊んだけど、私は市井さんの傍にずっと居たの。初めての友達み
らいに感じたからだと思うけどね。それから毎日のように遊んだの。でも、少しした日に
見つかったの。親に。こっぴどく叱られたわ。泣いて泣いて・・・そんな時にね。市井
さんが家まで迎えに来てくれたの。「どうしたの?」って。それで私はもう遊べない、って
言ったの。そしたら市井さんがね「うちが明日から遊びに来るよ」って何でもないように
話してくれて・・・・それからよ。好きなっていったの」
- 226 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月25日(月)22時47分40秒
- 私はそこで区切って、小さく深呼吸する。
「私はずっと独りぼっちだった。小さい時も今も。私の親はねあなたも知ってると思うけど結構金持ちで小さい頃から何でも与えられてきた。
親は忙しくて私と一緒に居られないから、と思っていろいろしてくれたんだと思うわ。
私の周りには親が選んだ優秀な大人たちがいっぱい居て、『お友達』にはお金持ちの優秀な勉強ばっかりしてる子供たちだった。
いっぱい居たわ。名前なんて覚えられなかったし、覚えたとしても顔と一致しないなんてことがたくさんだった。
でもね・・・私はずっと独りぼっちだった。笑顔で話してても、一緒に居ても、苦しくて苦しくて寂しかったの。
そんな私に市井さんと言う人はたった一人の私の友達で恋人だった。市井さんと居れば独りぼっちの寂しさも無くなった」
- 227 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月25日(月)22時57分15秒
- 「―――そうして、あなた達は想いを通じ合って恋人になった。何もかも順調だと思って時に市井さんに絵の話が来たってとこかな?」
彼女、吉澤さんは静かにそう言った。
空気さえも揺れるのを忘れているように静かで、さっきまでよりも低いハスキーボイスは変な痺れを私の体中に流した。
痺れは電流のようで、でも電流とは違って柔らかかった。どんな最高級の羽根布団よりも、私が今まで柔らかいと思っていたもの以上に柔らかかった。
「そう。市井さんはお母さんが画家だったし、市井さん自身も画家になるのを夢見てたから、その話が来たときすごく嬉しそうだった。
だから、言ったの私は。『あなたが立派な画家になって帰ってくるまでちゃんと待ってるから』って。
それで、市井さんは安心して行ったわ。でも―――」
「―――もう帰らぬ人となった」
彼女は何も感じさせない声で私の言葉を繋いだ。
- 228 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月25日(月)23時05分06秒
- 「私は何も信じたくなかった。でも、信じなくちゃいけなくてやっとそのことを受け入れた頃に亜弥ちゃんがやって来た。
彼女は失恋したばかりだった。その痛みを忘れるためにかな、私に言ったの『市井さんとあなたのことをばらして欲しくなかったら毎月1万払って』って。
もう市井さんのことは誰にも言われたくなかったから私は彼女の言うとおり払ったわ。
お金なんて親が余るほどくれるから、不自由なんてしなかったしね。
そうやって彼女とのやり取りが数ヶ月続いた雨の日にね、彼女は傘も差さずに雨に濡れながら私に言ったの。
『お金は要らないから、愛を下さい』って。その時私は彼女のことを妹のように思ってたからかな?
彼女に何でもあげたい、って思ってたの。私に出来ることなら。って感じね。
だから、私は彼女に愛を上げたの。偽物の愛を―――」
- 229 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月26日(火)21時44分58秒
- 彼女は何も言わなかった。
ただ、じっと右足のつま先を睨んでいた。
少し俯いた横顔からは表情が読み取れなくて、私はまた小さくため息をついた。
「ただ、それだけよ」
短くそう言って私は、両手を芝生の上について立ち上がる。
前方に見える薄赤い雲も空も、夕焼けのような太陽も何故か色あせて見えた
モノクロでもなくカラーでもない、微妙な色合い。
今の私の色かな?とふと思って、体からこみ上げてきた笑いをため息に乗せて逃した。
「過去にすがり付き過ぎだって、よく言われるんじゃない?」
やっと口を開いた彼女から出た言葉は私が予想していたもののどれでもなかった。
でも、それで驚きもしなかった。
何故か・・・・そう。
嬉しかった。
場違いな思いに、ふっと自嘲気味に笑って後方に居る彼女に首だけでふり返った。
「前に付き合ってた人にも言われたわ」
そう言って笑うと彼女も笑った。
- 230 名前:第12話 眠れない夜には――― 投稿日:2003年08月26日(火)21時56分21秒
- 彼女はゆっくりとした動作で立ち上がって私の隣に立つ。
「思うんだけど・・・キミの・・・石川さんの市井さんへの思いは同情の延長上みたいな感じがするんだ。
っても、ただ話を聞いただけだし見たわけでもないからちゃんとは言えないけど・・・
何か、恋愛的って感じでもないんだよね。石川さんの市井さんへの思いはすっごい伝わってくるよ。うん、話だけではすごいくらいに。
でもさ〜何か恋愛とは違うんだよ。3歳ぐらいの妹と20歳ぐらいの姉って感じかな?」
「――――同情の延長上の思いは恋愛とは言わない」
その時何かが壊れた気がした。
いや・・・もう歯車はゆっくりと回りだしていて、時が来た、だけの話。
さっきまで色鮮やかに見えていたものが、全てモノクロに何も無い色に変わってしまったみたい
―――――壊れるのは、もう時間の問題。
それも、もうすぐ。
近々
明日かもしれない、明後日かもしれない、明々後日かも、来年かもしれない。
そんなのは知らない。
壊れるんだったら壊れればいい。
壊れかけだったら壊してしまえ。
壊れたら壊れたで、それで終わり。
最初っから壊れないものなんて無いのだから。
――――壊れるんだったら、壊れてしまえ。
それに依存なんて一つもしないからさ。
- 231 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年08月26日(火)22時00分16秒
- はい。ここで12話 眠れない夜には―――は終わりです。
長い話や短い話など極端すぎだなーと毎回思いますね。読み返して見ると(笑。
明日からは13話に入ります。GIVE ME〜はあと2分の1ぐらいの所まで来てます。
一応、新作の方も書き始めてますので・・・(たぶんこのスレで書くことになるだろうな〜
では。
- 232 名前:第13話 憂鬱DAY 投稿日:2003年08月27日(水)21時49分41秒
- ――――
憂鬱だ。
さっきからそれしか思わない。
伸びてきた前髪を掻き上げて、私はため息をついた。
―――ここは車内
馬鹿デカイ車内に、私と専用の運転手。
毎月第2水曜日に私が親の病院に行くために、親が手配したモノ
毎回思うのだが、こんのデカイ車は役に立つのだろうか?
ただ、自分たちが金を持っていることを主張したいだけのように思えてくる。
「・・・あー・・ムカツク」
それもこれも、吉澤とか言う奴のせいだ。
昨日、勝手に同情の延長上の思いは恋愛とは言わない、とか言って何を思ったか「もうすぐ夜が明けるね、帰ろうか?」なんて言った。
それから何故か家まで送ってもらった。
- 233 名前:第13話 憂鬱DAY 投稿日:2003年08月27日(水)21時57分05秒
- 「お嬢様。そんな口の利き方は止めてください。あなたはあの石川家のご長女様なんですよ?」
いつものことながら、運転手の福田さんがいつもと同じ言葉を私にかける。
静かなのにどこか圧力をかけられてるような感じがこの人独特の話し方らしい。
アノイシカワケノゴチョウジョサマナンダカラ
その言い方が一番嫌いだった。
何か自分を否定されてるような、そう。あいつらの思うとおりに動いてるお人形様みたいな感じ。
私はただの石川梨華で居たいから、あいつらの前から逃げ出したのに現実はそうではないらしい。
まるであいつらの手の上でしか動けないような―――
「――お嬢様?着きましたよ、早く降りてください」
- 234 名前:tsukise 投稿日:2003年08月28日(木)20時52分13秒
- 更新お疲れ様ですっ!
よっすぃー…クールでかっけーですっ!!
梨華ちゃんの痛い所をつく瞬間、凄くドキっとさせられました…。
二人のやりとりの今後も期待しつつ、お待ちしていますねっ
- 235 名前:ヒトシズク 投稿日:2003年09月01日(月)13時43分57秒
- 【言い訳(ぇ。】
私事情により(テストも含め)こちらの更新がいつもに増して遅れそうです(泣。
代わりという感じで赤板の方を早く更新したいと思っています。
では。
レス返しですっ♪
>tsukise様
毎回のレス本当にありがとうございます☆
レスの度、PCの前で喜びの舞を・・・(ry
2人のやり取りはもうすぐ始まります〜
では、更新いつもに増して遅れそうですがこれからも宜しくお願いします!
- 236 名前:第13話 憂鬱DAY 投稿日:2003年09月06日(土)14時52分08秒
- 「・・・え?あぁ・・」
福田さんに促されて、私は開けられた車のドアから降りる。
それから、何人かの家政婦さんにお帰りなさい、を言われて部屋に入った。
真っ白なソファに体を沈めて、ただ思いにふける。
ヨシザワヒトミ
どこかで聞いたことのある名前
でも、思い出せない。
―――いや、思い出したくないと体が脳が訴えてくる
それは・・・たぶん市井さんに関係があるから―――
- 237 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003/10/24(金) 21:43
- 更新を期待しつつ保全!
- 238 名前:tsukise 投稿日:2003/11/18(火) 08:23
- 保全させていただきます〜
- 239 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/11/19(水) 22:12
- >237、ななしのよっすぃ〜さま
>238、tusukiseさま
保存ありがとうございます。
やっとのことで下書きが終了しまして、次の休みにでも再開できそうです。
では。
- 240 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003/12/23(火) 21:42
- 更新を期待しつつ保全!
- 241 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/29(月) 19:54
- 「お嬢様!何をぼーっとしてらっしゃるんですか?吉澤先生がお待ちですよ」
ぽんっと肩を軽く叩かれて、少しきつめのでも優しい福田さんの声が響く。
「あー・・・ごめん。最近寝不足で」
茶色く染めた髪を耳にかけて、言い訳をする。
言い訳をしたって彼女には私のココロなんて丸見えなんだろうけど。
「――そうですか・・・お気をつけてくださいよ」
にこっと笑顔を浮かべて部屋を出て行く福田さんに愛想笑いを返して、身体の力を抜いてソファに倒れる。
もう、何も考えたくない。
何が狂ってしまったんだろう?
あいつに会ったから?
私がこの家から抜け出したから?
―――あぁ。
最初から狂ってたんだ。
だから後は壊れるしかないんだ。
ゆっくりと
でも急速に
壊れるための日を迎えてるんだ
- 242 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/29(月) 20:04
- コンコン
遠慮気味なノックが嫌なほど部屋に響いてうるさい。
バカみたいにデカイ部屋なのに外部からの音だけはうるさい程聞こえてこの部屋の構造を1度見て建設者に文句の1つでも言いたい気分だ。
「はい。どうぞ」
義務調の言葉で曖昧な言葉を発して目を閉じる。
人工的な光を放つ蛍光灯は目が痛いほどまぶしい
「入るよ、梨華ちゃん」
ハスキーな声。どこかの合唱団の人みたいな声
あいつの父親
「身体の方は大丈夫?薬は足りてるかな?」
椅子に腰掛ける音が聞こえて私はゆっくりと目を開ける。
「えぇ。おかげさまで」
ココロなんて関係ない愛想笑いをまた浮かべて私は誰もが望むいい子ちゃんに変身する
「検査とかは前回にしたし・・・今日は特に無いんだけどね。心配で」
にこっと笑う先生はあいつにそっくり。
「どうもありがとうございます。お忙しいなかいつもすみません」
外国人が覚える日本語の単語の本に載ってるみたいな会話。
いつも嫌になる
本当の自分と違う私を演じる度、自分の心が離れて行って見えなくなる
厚い雲や霧に隠されたみたいで曖昧で、時には生きていることすら憂鬱。
「いや、いいよ。じゃ、そろそろ戻るね。後で薬は家政婦さんに届けさせるから」
ゆっくり休むんだよ、と言い残して先生は部屋を出て行く。
嫌なほど思い出した。
あいつと市井さんは後輩と先輩の関係
確かバレー部だっけ。
- 243 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/29(月) 20:12
- 一度、市井さんの引退試合を見に行った時あいつを見た。
モテてたらしくて、色んな女の子の真ん中にいたのを見ただけ。
「―――みんな、大っ嫌い」
先生は私が知らないと思ってしてるんだろうけど、そんなの一目見たときから知ってる。
私に与えられてる薬は全部ビタミン剤でレントゲンも検査も必要ない。
だって、もう助かる術なんて世界中探しても無いもの、ってありふれたこと。
そして、吉澤ひとみ。
あいつは大っ嫌い。
冷めた瞳、ふとしたとき見せる表情。
そして、確実なことばっかり言うから。
みんな大っ嫌い
「―――いい響きじゃん・・・・」
手の平の隙間から差し込む人工光は見えない。
- 244 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/29(月) 20:16
- 夢を見た。
子供でも分かるような夢。
あなたは白く透明で
あなたの周りは真っ黒
あなたは優しく微笑んで
私に触れようとするけれど、透けて触れられない
悲しく伏せた瞳は
私をただ責めるだけ
―――もう、何もかもなくなっちゃえばいいのに
ふと思った言葉は目覚めても心の中に根付いていて
あなたは心の中からどんどん消えていく
- 245 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/29(月) 20:17
- 久しぶりすぎる更新ですっ
あと少しなんで今年中に終われるか、終われないか・・・です(ぇ
まぁ気長に待って頂ければ嬉しいです。
では。
- 246 名前:tsukise 投稿日:2003/12/30(火) 20:23
- お待ちしていましたっ!更新お疲れ様ですっ!
い…痛いですね…っ!否定するキモチが…凄く…。
あと少しという言葉に、終わって欲しくない気持ちもあったり…。
マターリお待ちしていますので、頑張ってくださいねっ
- 247 名前:ヒトシズク 投稿日:2003/12/30(火) 20:29
- >tsukiseさま
有り難いお言葉本当にありがとうございますっ(泣。
このお話は痛い&悲しいなどの気持ちで書いておりますので・・・
あと少しです、今年中には終われそうにはないんですがっ
では、これからもよろしくお願いしますっ
- 248 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/30(火) 20:41
- 「あ・・・」
ふっと気が付くと私は手を伸ばして、何かを叫んでいた。
「あぁ・・・夢」
ソファに寝転がって、自分に何か言い聞かすように何度も呟く。
その言葉を。
『夢』
そして、目の前の状況も夢だと思いたかった。
ありえない、そんな単語が目の前に浮かんでふっと消えていく。
まるでさっきの夢の再現みたい
あなたが消えていくときに私に降りかかってきた白い羽根
それは柔らかくて、そして痛い
「―――お目覚めはどうですか?」
にこっとどっかのホストみたいに微笑みかける彼女。
「最悪よ」
彼女に背を向けるように寝返りを一つ打って、目を瞑る
あの人がいなくなってからするようになった癖の一つ
何か嫌なことがあったら目を瞑って、暗闇の中に身を委ねるの。
そしたらほんの少しだけはあの頃の私のままに戻れそうな気がしたから。
―――それは、私が変わっている、ということを自分で分かっていて認めている証拠。
もう、戻れないの?
――人は生きる術を求めるために変わる
もう、生きたくない
――何も見えない世界
何も怖くない
――自分すらも見えなくて
怖いのは
――どろどろしたまどろみの中
ただ
――本当のヒトリボッチ
孤独になることだけ
――あなたもいない
そして
――私もいない
死ぬことは怖くない
――誰もいない
ただ
――ゼロニンボッチ
生きることは怖くて
怖くて
- 249 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/30(火) 20:53
- 「ね、食べないの?家政婦さんが用意してくれたんだよ」
「当たり前よ」
「ね、食べていい?」
「―――どうぞ。好きなだけ」
何をしにきたのだろう、この人は。
まぁ、私には関係の無いことだけど
「―――市井さん」
ぽつんっと呟かれた言葉
その言葉はどんなこの世界で溢れてる言葉より私が欲しくて
私が憎んでいて、それでも愛しい言葉
「それが何よ」
ぐっとお腹に力を入れて起き上がる。
最近運動なんてしてなかったからほんの少ししんどい
大量のお皿を目の前に座っている彼女はどこか遠い目で
何も映ってない瞳はそれだけで鋭い
「―――朝、ごめん。何かカーっとなってて・・・ホントごめんなさい」
きりっと頭を下げる姿は運動部ならでは。
その姿さえも似ていて、今すぐにでも追い出して
頭を抱えて、一人泣いて、思い出に浸りたい
「――もういいわ。それに気にしてないし」
太ももの上に肘をついて顔を手で隠して、小さく言った。
「悪いけど、帰ってくれないかしら。気分が悪いの。料理は適当に持って帰っていいから」
早口にまくし立てる。
冷えた手の温度が額の温度を少しずつ下げていく
けれど
ココロの温度は熱く熱したまま
でも
すぐに冷めて、北極よりも冷たくなるわ
- 250 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2003/12/30(火) 20:58
- 「――あ、じゃ」
いそいそと立ち上がる彼女
「せっかく来てくれたのに、ごめんね」
浮かべた愛想笑いは綺麗に笑っていただろうか?
まぁ、そんなことは気にしない。
それに関係ない。
ねぇ、そろそろ
しんどくなってきたわ
ねぇ、もう生きることは
私にはつらくて怖くて不安で
―――どうして、あなたのいない世界で生きなきゃいけないの?
私、この世界で生きたいなんて望んでないのに
神様って意地悪ね
みんな、死んじゃえ
みんな、大っ嫌い
―――ねぇ、早く迎えに来て
忘れちゃいそうなの
溢れ出て、なくなっちゃいそうなの
早く迎えに来て
早く私の中に思い出溢れさせて
―――じゃないと消えちゃいそう
あなたが
私が。
- 251 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2004/01/11(日) 21:25
- 「―――待って!」
身体の半分以上ドアの向こうに隠れた彼女が顔だけで振り返る。
その表情はあの人と同じと言ってもいいほど似ている少し困った笑顔。
「――話したことがあるの、今日の夜あの丘で会えない?」
すらすらと口から出てきた言葉は自分のものとは思えなかった。
人に干渉することをさけてた私が彼女に干渉しようとしているのだから。
「いいけど・・・今日じゃなきゃダメなの?」
困ったように頬をかいて、眉を下げる。
「時間が無いの・・・・」
そんなこと分かってた。
誰も言わなくてもそれが自分の運命であるかのように知ってた。
本当は知りたくなかった。
知らないまま
何も分からないまま
あの人のそばに行けたら、こんなにも苦しまないのに、と何度も思った。
そしていつか死にたくない、と思った。
でも、もう時間が無いの
だから死ぬことなんか怖くない
- 252 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2004/01/11(日) 21:30
- 「―――そっか。じゃあ夜10時にいるから」
バイバイ、優しく紡がれた言葉は誰のものなんだろう。
あの人か、それとも彼女か。
「うん、ごめんね」
完全に扉の向こうに消えた彼女は見えない
でも、向こうで彼女が困ったように微笑んだ姿が目に浮かんだ。
「―――もう、時間が無い、か」
くすり、と微笑んだ私。
どうして、こんなことになったんだろう。
元は市井さんが死ななければ
私が愛さなければ
彼女と出会わなければ
―――そう、よかったのに。
- 253 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2004/01/11(日) 21:33
- 苦し紛れの金魚ね
まるで。
呼吸のできるほうへ出来る方へ
もがいてもがいて
人魚姫が泡になった湖に溺れて
泳ぎ方も知らないで
いつか泡になれれば、と思う。
いつもそう。
ちゃんと呼吸をしてるのに酸素が入ってないみたいで苦しくて
まるで毒の酸素を吸ってるみたい
だから、金魚みたいに溺れながらもがいて
解毒剤を探してる
そんなもの最初っから形も影も無いのに
その面影だけ夢に見て
いつも苦し紛れの金魚。
まるでそれは雪山の遭難者みたいで
でも、その遭難者には助けのヘリコプターが来る事は無い。
―――もう夢を見るのは止めにしたの。
- 254 名前:第14話 あなたと私のココロ 投稿日:2004/01/11(日) 21:35
- 「バッカみたい」
呟いた言葉は寂しげに響いて私の周りにまとわりついて消えていく
「―――いくら面影を重ねたって別人なのに・・・」
どうして
どうして
どうして
あなたはあなたなのですか?
- 255 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/01/11(日) 21:36
- 今日の更新終了。
このお話の終わりまであと数回ぐらいです。
さぁ、がんばろー(笑。
- 256 名前:tsukise 投稿日:2004/01/12(月) 18:28
- 更新お疲れ様ですっ
うぁ…痛いです…。過去に囚われてしまっている姿が…(涙
あと数回で終わりですか…!?
さ、最後までお付き合いさせていただきますのでがんばってくださいねっ!
- 257 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 21:23
- がn
- 258 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 01:03
- 同じく
- 259 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/13(金) 22:48
- 申し訳ありません。
今、受験の真っ最中でPCに触ることすら難しい状況です。
なのでしばらく受験が終わるまで更新を延期したいと思います。
私情で勝手ですが、どうか温かく見守っていただけると嬉しいです。
では。
2004.2.13
- 260 名前:ヒトシズク 投稿日:2004/02/13(金) 22:55
- しばらくの休止にしたがって少し更新。
- 261 名前:第15話 あなたはあなただけ。私は? 投稿日:2004/02/13(金) 23:04
- いつまで突っ立っていたのか
痺れ出した足と、痛くなってきた背中に気づき、近くのソファに腰掛ける。
ふぅ、と短くそして深いため息をついても胸の中で増殖し始めているモヤモヤ感は消えない。
もともとハッキリしないと苛立つ性格なのかこういうのだけは妙に気になって、嫌がりながら勉強をしている子供の心のようだ。
最近の私は変だ、と思う。
それもかなりの重症で、病気で心がイカレてしまったのか、と思うほど。
バカバカしい言葉もさらっと砂のように吐き出して
思い出すのも苦痛だった想い出もついさっき出会った他人に話そうとしている。
まぁ、他人だからこそ変な同情をされる心配はないのだけれど。
コンコン
ノックが鳴る。
「石川ー?」
- 262 名前:第15話 あなたはあなただけ。私は? 投稿日:2004/02/13(金) 23:11
- 「あ、はい」
声だけでその人の顔が思い浮かぶなんて嫌だな、と思いながらドアを開ける。
今日は来客の多い日だ。
そう思って笑ったのは、この際隠しておこう。
「よ!」
そう言って、部屋に足を踏み入れたのは小さなセンパイ。
「矢口さん、どうしたんですか?」
矢口さんが家に来るのは滅多にないことだ。
前に来たのも、もう思い出すのも難しい結構前だった。
「んー・・・なんとなく。ごっちんがさ」
そう言って、ソファに身体を埋める。
私は向かいのソファに腰をおろして、矢口さんを見ているようで見ていなかった。
相変わらずな金髪は目を引くほどで
あの人は矢口さんの金髪の話をよくしてたっけ。
『矢口は金髪じゃないと矢口じゃない』とか
『トレードマークだよなぁ』とか
とても嬉しそうに、何か新しい玩具を見つけた子供のように話してた。
それはきっと、親友とも呼べる人のことを話すからで
他の誰かの話をする時の表情とは全然違っていた。
―――あぁ
まただ。
また、思い出してしまう。
嫌なのに
苦しいのに
愛しいのに
- 263 名前:第15話 あなたはあなただけ。私は? 投稿日:2004/02/13(金) 23:17
- 「なぁ」
急に真剣な声で矢口さんが話す。
顔は見ない。いや、見れない。
何か思い出してしまいそうなの
「お前、アメリカ行く気ない?」
あまりにも唐突で、飾り気の無い言葉だった。
「え?」
「だからー。アメリカ」
アメリカがどうしたんだ。
合衆国、ジーパン、大きいハンバーガー、大規模農業
どんどん言葉の羅列が頭の中を走っていく。
「何で急に・・・・アメリカがどうかしたんですか?」
溢れ出す言葉を押さえて、言葉を繋げる。
どうも今日の私は変だ。もう確信している。
いつもならもっと的確に、すばやく対応が出来ているはず。
「今日さ、偶然後藤に会ってさー・・・お前病気なんだって?もう治らないって、って話聞いて」
眩暈がする。
それも、大きなヤツだ。
もう目の前が暗い。
「アメリカだったら技術とか発達してる、って聞いた」
「――行けよ、アメリカ」
- 264 名前:tsukise 投稿日:2004/02/17(火) 18:26
- 遅ればせながら、更新お疲れ様ですっ。
うぁ…。もうただただ梨香ちゃんが痛いんですが…(汗
あ、寒いって意味でなく(笑
ハラハラしつつ…マターリ続きをお待ちしていますです…。
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