お城の中の王子様

1 名前:マウス 投稿日:2003年03月04日(火)18時43分00秒
どうも、マウスといいます。
設定はアンリアルで、大体すべてのメンバーが出てくると思います。
カップリングは見ていればその内わかると思いますので、宜しくお願いします。
感想など頂けるととても嬉しいです!
2 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)18時43分41秒



−1−


3 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)18時45分03秒



昔むかしある所に――――
といった感じの古臭い家の中に、
それはそれはたいそう可愛らしい娘が、2人おったそうな…
4 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)18時51分45秒



「あーあ、お姉ちゃん、お腹すいたよー!」

「そんなの私に言われてもさ…私だってお腹ペコペコなんだよ?
でもお父さんとお母さん、夕食取りにどこまで行ってるんだろうね…」

薄っぺらい板の上に藁を敷いて、寒さを凌いでいるこの家の次女、愛に
お風呂を沸かすために、真っ黒になりながら釜戸に火を炊いている長女、梨華。
二人共町へ出れば、非の打ちどころの無い美人だが
この森の中、鏡も持たずに暮らしていれば姉妹はそんな事にまったく気がつかない。

5 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)18時58分26秒


――パチパチッ…

「あ、火炊けたよ。愛、あんた先入る?」
「うんっ入る――!!」

愛は嬉々として風呂の準備をし、外へと出た。
(この家のお風呂は大きな樽のような物が一個、外に設置されている。)
外はもうすっかり太陽が沈み、聞こえてくるのは鳥の鳴く声や
外から入ってくるすきま風のヒューヒューという音だけになっていた。

「怖いなぁ…お父さん達、早く帰ってこないかな…」

空腹と、このたよりない家今現在一人で待っている、という寂しさと不安感からか梨華は眉毛をへの字に曲げて、その場にヘタリと座り込んだ。
6 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時06分26秒

梨華の家は、周りがすべて木で覆われている森の中に建っている。
水道も無い、TVや冷蔵庫も設置できないような最悪の立地条件が揃うこの森に家を建てようなどと思うものは一人もおらず、
たまたま借金を踏み倒し、前住んでいた所を追い出された梨華達一家は、
5年前にこの森に逃げ込み、お金もないのでその辺にあった木を切り倒し組み合わせて家を建て、住んでいるのだった。

「愛ー?…お湯かげんはどう?」

その不安を打ち消す様に、梨華は大きな声で愛に呼びかける。
…が、外から聞こえてくるのは無数のフクロウの鳴く音のみだった。
「…愛?」
あまりの静けさに梨華が心配になって立ち上がり、
外へ出ようと家の戸を開けた瞬間に

「んっきゃぁあぁああっ!!!」


森全体に響き渡るような、愛の甲高い叫び声が聞こえた。
7 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時12分12秒


「どっ、どうしたのっ!?」


梨華が勢いよく家を飛び出して行くと、
そこには半分お湯に浸かって上半身裸のまま震えている愛と、
覆面をつけた長身の人間が立っていた。
その人間の後ろには、家来ともとれる大きな男が数人付いていて
そのさらに後ろには、宝石が所々に散りばめられているとても豪華な馬車が横付けしてある。


家の前に立ち尽くしている梨華に気づいた人間は、
愛の方に向けていた体をクルリと反転させ、こちらの方へゆっくりとした足取りで近づいてくる。

一歩、また一歩と、その軽快なリズムに梨華は少々戸惑ってしまった。

8 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時18分51秒


その人間が、梨華から10数歩前まで歩いて歩みを止めた時、
梨華は震える体を抑えて恐る恐る声をかける。


「あ……あの…何か、用ですか?」


『蚊の無く声』のような
あまりの情け無い声に、自分でも力が抜けてしまった。



「初めまして。あなたが、この国で一番可愛いといわれている梨華様でございますね?」

「は、はぁ…?」


「それに、その妹の愛様も。」


返ってきた答えがあまりにトンチンカンなものだったので、梨華はますます頭が混乱してしまった。
怪訝そうな目でじっと顔を見つめていると、
その人間は「あぁ、」という声を出して被っていたマスクを取り外す。
9 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時22分13秒



――――ぅわぁ…っ!
右へサラリと流れる金髪の髪、端整な顔にある綺麗で大きな瞳が梨華を捉え、真っ直ぐに見つめてきた。
淀みの無い澄んだ輝く瞳。
そして、次の瞬間発せられる甘い響きのある声。
梨華は一瞬にしてその人間に心を惹かれてしまった―――
10 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時26分40秒



「…ここから見える、あの城の王子、ひとみです。
あなたと妹の愛様を、これからわれらの城へご招待したいと思っています。」

ふと、梨華が指差された方向へ目を向けると
そこには昼間までは無かった大きく立派な城が、その存在を主張するかのようにどーん、と建っていた。
―――これは、夢だ。
梨華は瞬時にそう考えた。
こんな真夜中に、スーパーモデルのような王子様がこんなボロ家に住んでいる娘を好んでお城へご招待――?


…ありえるわけがない
11 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時32分03秒


「なっ、なんやの…?」
愛が半べそをかきながらこっちの方を見ている。
梨華はとりあえず家の中にあったタオルを持って、愛の体を包み着替えを渡した。


「…では、準備は良いですか?」
「…えっ!?」
「失礼します」


ひとみはそう言うと、梨華を軽々ヒョイと持ち上げて馬車へと乗り込んだ。
(お…お姫様抱っこ…)
梨華はひとみの体に付いている香水の香りに恍惚となりながら、
この夢がすぐに覚めないように強く、念じていた。
12 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)19時41分47秒


その後ろに、着替えが終わり大きな男に担がれた愛が乗り込んできた。


「では、出発OK!」


ひとみがパチン、と指を鳴らすと馬車は宙に浮き、空を飛び始める。
「す、すごいな…」
愛の目が点になり、どんどん遠ざかってゆく地表をその目で呆然と見つめていた。

「綺麗なお月様…」
目の前に広がる広大な美しい景色に梨華は目を輝かせながらホゥ…と溜息をつく。
もう気分はすっかりお姫様だ。
月の光は怪しく森の木々を照らして、その真ん中にある湖からは空の星のようにキラキラと光が散りばめられている。
ひとみは梨華の肩を抱き、「梨華様の方が、お綺麗ですよ。」と優しく微笑んでいた。

「えっ、そ、んな事…」

耳元で囁かれたそのくさい台詞も、ひとみに言われたら嬉しく感じてしまう。
梨華は、すぐ隣にいるひとみに気づかれないよう赤く火照った頬を隠した。
―――さすが私の王子様。
こんなに格好いい王子様が私の傍にいるなんて――――
どうか神様、私にこの夢を1分1秒でも長く見続けられるようにさせてください…
13 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時02分23秒



お城へ着くと、
ひとみはまず、梨華と愛に『服を着替えるように』と言った。
すると何処からともなくタキシードみたいな服を着た小川、という執事が現れて、
「ご案内します」と、
ドレッサールームに梨華達を連れて行く。


「わぁ〜っ、本物のお城の中みたいだねぇ」
「…ねぇ、お姉ちゃん、一体何が起こってるの…?」

妹の愛は、未だにこの状況がよく理解出来ていないようだった。
確かに常人ならば、きっと愛のようにパニックのままいてもおかしくないだろう。

しかし、梨華は違った。


「愛、これはどうせ夢なんだから…夢の中だけでも楽しもうよ、ね?」
―――その言葉に、愛はなんだか梨華を尊敬してしまった。
14 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時16分06秒


愛は清楚な雰囲気が漂うドレスを小川に選んでもらい、
梨華は桃色をしたフリルのついたドレスを自分で選んで着ていた。
「フンフンフーン♪似合うかしら〜?」
そんなこの状況を楽しんでいるとしか思えない梨華を、愛は複雑そうな表情で見つめていた。


大広間に戻る途中、梨華は小川に話しかける。


「あの…ここに来る前に…
ひとみさんが私の事を『この国で一番可愛い』と言ったんです。
…それに、愛の事も知っていたし、これは…一体どうゆう事なんですか?」


小川はコホン、と一回咳をすると
年の割にやけに貫禄ががった声を出し、話し始める。

「この城には、王子が3人いらっしゃいます。
先程梨華様と愛様を迎えにいらしたのは、次男の『ひとみ』王子です。
毎年違う国をまわって、それぞれのお妃を探しているのですが…皆自分にあった娘がいないと大変嘆いております。
今年はコンピューター管理室で調べた所、『この国で一番素直で可愛らしい』梨華様と愛様が選出されたのです」

「そ、それはつまり…自分の婚約者を探しているって事ですかっ!?」
「そうですよ」









15 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時17分43秒


「お、お姉ちゃん…」


話を聞き終えてなぜか薄ら笑いを浮かべている梨華に、
愛は心底、この姉は……だなぁと思っていた。

16 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時24分07秒



大広間へ着くと、
正面に白いスーツとオレンジ色のネクタイをしているひとみ。
まるで町にいたホストみたいな格好だ。しかし、それがまた似合う。

階段の踊り場に、短めの黒髪で青いスーツと真っ黒なブーツを履いている者と、
その隣には赤いスーツとチェックのズボンを穿いている、茶色の髪の毛を後ろへ束ねている者が立っていた。

多分、この二人がひとみ以外の『王子様』なのだろう。


「この城にいる間は、お二人の事を『姫』とお呼びしますが
宜しいですね?」


突然のひとみの問いかけに、
梨華と愛はあまりの眩しさに一瞬声を失っていたがコクコクと必死に首だけで頷いた。

17 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時26分58秒


「……」


階段からコツコツとブーツの音をたて、颯爽と歩いてくるショートカットの人間は、
赤い絨毯を踏みしめながら、ゆっくりと梨華達の前まで来ると軽く会釈をした。
「ようこそ」
梨華と愛も、あわてておじぎをした。

18 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時31分12秒


「私は第1王子の『紗耶香』と申します。
慣れない所で戸惑う事も多いと思いますが、ゆっくり自分の家だと思って
おくつろぎしていって下さい」


『第1王子』という事は、多分長男なのだろう。
小川によると、「お妃選び」は長い間城にいる娘達の、普段の様子を見て決めるそうだ。
どんなに完璧に見せていても、長時間同じ屋根の下で暮らしていれば嫌なところも見つかるもの。
今までの中で、3人の王子に気に入られる娘はいなかったという。
19 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時34分26秒


そして、ひとみが続ける。


「私は第2王子の『ひとみ』です。
この城の庭の中に綺麗なバラがたくさん咲いていますので、
是非お美しいお二人にも見て頂きたいと思っています。」


ひとみは梨華の手を取ると、手の甲にチュッと口付けた。
再び、どんどん梨華の頬が桜色に染まる。
兄弟でも、紗耶香とひとみの性格はまったく違うようだ。
20 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時38分05秒


そして最後のもう一人―――――



「真希!」


紗耶香が下から階段の踊り場にいる人間を呼ぶ。
『真希』と呼ばれた人間は、その声で茶色の髪を弄んでいた手を止め
手すりに手をかけて、つまらなそうに梨華達の方を見た。



「下まで降りてきて、きちんとお二人に挨拶しなさい」
「……」
「真希?」
「んー…やだ、めんどくさいもん」
21 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時41分18秒


―――――え?


「すいません…ああいった奴なので。
わ、私が代わりに紹介致します。」


ひとみが必死にフォローしている間に、
紗耶香は眉間に皺を寄せながら階段を駆け上っていた。
当然それを見た真希は、2階の奥へと逃げる。
梨華達の目には、嬉しそうに声をあげ城内を駆け回る真希の姿が映った。
22 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時46分39秒


「第3王子『真希』
随分甘やかされて育っている…に加えてまだ子供なので『王子』という自覚がまったく無いのでしょう。
自由奔放な性格ですから、私達身内もいつ何をやらかすかいつもハラハラさせられております。この間なんか―――」


ひとみの話は、この場を繋げるようにいつまでも続く。
――しばらくしてから、『真希』と呼ばれる王子はフウフウ息を切らせながら家政婦達に捕まえられていた。
紗耶香は真希の耳を引っ張りながら、厳しく叱りつけているよう。
真希の表情がみるみる内に強張り、唇を尖らせながら不満そうに紗耶香の顔をチラリと見て、「だって…」を繰り返している。
23 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時52分20秒



「愛?あーいっ!」


梨かは隣にいる愛の様子がおかしい事に気づき、顔の前で手を振ってみる。
―――反応がない。


「どうかされましたか?」

ひとみは話を一旦止め、梨華の行動と、隣にいる愛の顔を見つめた。
その瞳はトロンとしていて、口も半開き。
今にも『えへへへぇ〜〜』と笑い出しそうな表情をしているのだ。
「これは…」
ひとみは?と首をかしげる。
「あいっ、ちょっとぉー大丈夫っ!?」
「……」


愛の目線は一点に集中していた。
その視線の先には―――
「や、だって!」
「嫌、じゃないだろ。挨拶するくらいサルでも出来る。
それが礼儀だ。やってみろ」
第1王子『紗耶香』が口調を乱してまで怒っている人物、
第3王子『真希』の泣き出しそうな顔があった。
24 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時55分12秒



「…すてき」


「は?」
「へっ?」

梨華とひとみの間の抜けた声が混ざり、大広間へと響く。

「え、えぇ〜っと…それは、どういった事なのでしょうか?」
「あ、愛…?どうかしたの?」
『まさか』というひとみの声を、
わけがわからない梨華は、不安そうに愛の顔を見つめながら言った。
25 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)20時59分25秒


「『真希』さん…かっこえぇわ…ありゃ」


愛は訛り100%の言葉で、夢見心地にホロリと話す。
ひとみと梨華は顔を見合わせ、未だに階段上で争っている二人(紗耶香と真希)の方へ視線を送る。


「やだよっ、ごとー、そーゆーの『ガラ』じゃないもん!」
「どんなガラか知らんが、礼儀は礼儀だ。
この城の王子である限りその役目はしっかり果たしてもらう」

「だっ…そ、そんな…」

26 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)21時01分48秒


『ごとー』?
この王子様の苗字なのかしら、と梨華はひとみの顔を見ながら思う。
ひとみはその視線に気づき、少し苦笑いをしてからゆっくりと衝撃的な事実を述べた。



「私達兄弟は、皆苗字が違います」



その言葉には、少々悲嘆な想いが込められているようだった。
27 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)21時08分06秒


「どうして、ですか…?」


梨華はそんなひとみの様子を察して、
深呼吸をして心を落ち着かせてからグッと身構え次のひとみの言葉を待つ。


「真希は、養子なのですよ」



愛ははじかれた様に、真希に合わせていた視点をこちらへ戻し、
目を見開いてひとみの話に突っ込んでゆく。
「どっ…どうゆう事ですか!?」
必要以上に焦っている愛を落ち着かせるかのように、ひとみはニコッと微笑んで一呼吸置いた。
「山で拾われてきたのです。
そうゆ私も、親に捨てられてこの城の王様に拾われた…養子ですけどね」

梨華はハッと息を呑んだ。
まさか、ひとみにそんな過去があったなんて…
梨華の表情がみるみる内に暗くなってゆく。
それとは反対に、ひとみは穏やかな顔を見せ柔らかい口調を保ちながら、話始める。


「私が5歳の時でした…」

28 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)21時08分53秒



□ □ □



29 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)21時12分18秒


「…と、いうわけで、私が今ここにいられるのは王のお陰なのです。」


ひとみは自分の過去の話を、ずっと途切れること無く丁寧に語った。
―――親からの虐待
決して『綺麗』とは言えないその過去を、
ひとみは何の感情も示さない顔で、淡々と包み隠さず言って述べる。
しかし、最後の『王のお陰なのです』と、いう台詞だけは、
妙に温かみのこもった慈愛の響きを発していた。
30 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)21時16分18秒


「…ひどい」
そう言った愛の表情が曇る。


「ひとみさん…あの…えっと、」


梨華は聞いてはいけないものを聞いてしまった気がして、
オロオロと辺りを見回しながら、ひとみの様子を伺う。

「私の事は気にしないで下さい…お姫様。
可愛いお顔が台無しですよ?」

ひとみは梨華の頭をサラッと撫でると、
そのままひるべを返し、騒々しい2階へと上がっていった。

31 名前: 投稿日:2003年03月04日(火)21時19分42秒



「…さやかさん、ごっちん!」



ひとみは梨華と愛に聞こえないよう、小さな声で二人を呼ぶ。

「んぁ、なに?」
「…なんだ?」

この二人(真希はいつもだが)も、いつのまにか素の自分が出てしまっているようだ。



「…あのお嬢さんたち、上玉ですよ。『真里』と違って。」




それを聞いた紗耶香は、なんとも人の悪い笑みを浮かべ、
真希はそれをおもしろくなさそうに、ただじっと見つめていた。
32 名前:マウス 投稿日:2003年03月04日(火)21時20分47秒
今日の更新はここで終了です。
何か、感想でも頂けたらとっても嬉しいです(○^〜^)
33 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月04日(火)21時46分09秒
3人の王子格好良いですね!
何を企んでいるんでしょうか?すごく気になります。
34 名前:名無し 投稿日:2003年03月04日(火)22時29分01秒
うぉぉぉぉーー!!
おもしれぇー!!
めちゃくちゃ続き楽しみです。
35 名前:トム 投稿日:2003年03月05日(水)15時10分14秒
うわぁ〜〜!!
すごく、おもしろそうですね☆
続き楽しみにしてます。
頑張ってください♪
36 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月05日(水)21時25分25秒
ものすごい勢いでくだらないかんじが最高です。
いや、褒め言葉です。マジで。
37 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)17時46分51秒




ー2−



38 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)17時55分13秒



『今日はもう遅いので、ゆっくりお休みになってください』



4メートル以上ある天井にはシャンデリアやダイヤが埋め込まれ、
壁には有名な絵や、とっっても高そうな壷などが無数に飾られている。


先ほど梨華は部屋に入った途端、不注意で傍にあった壷を割ってしまいそうになったが、
執事・小川の華麗な身のこなしのお陰でなんとか助けられた。
後に、その壷の値段を聞いてみると……背筋がゾッとした。
39 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)17時59分53秒


こんな一流美術館のようなこの部屋に、梨華はポツンと立っている。



「ここが梨華姫様の寝室でございます。」


―――そう言われた時はグニャリと視界が歪み、その場に倒れそうになった。
確かに、『こんなお部屋に住めたらなぁ…』と空想の中で思った事は何度もあるが
現実におころうとは思っても見なかったのだ。



「…ま、まぁ……これは、夢…だしね」



梨華は気を取り直して数歩歩き、ベットの上へと飛び乗った。


40 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時08分25秒



「うわ〜フカフカ――♪」


4人は寝れるであろう、キングサイズのベットに梨華は思いっきり寝転がる。
昨夜までは藁と薄い布の上で寝てた事が、まるでウソのようだ。
天使の羽毛のような柔らかい素材に、梨華は至福の表情で顔をこすりつける。


―――――途端に、急激な睡魔が梨華を襲った。


「そういえば昨日寝るの遅かったしなぁ…」

夢の中なのに、寝るのはおかしいな……
もしかしたら、このまま寝て起きたらいつもの家の中に戻っちゃうのかも!



そんな事を思いつつも、
掛け布団の柔らかさや心地よいぬくもりが押し寄せてきて、
ついに梨華は瞼を閉じてしまった。

「ねちゃ…ダメぇ」

梨華の最後の無駄な抵抗だった。
急激に押し寄せる眠気にはどうも勝てそうに無い。
顔を思いっきりつねっていた手の力も抜け、その手がパタリとベットの上に落ちたとき、
梨華は眠ってしまった。
41 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時08分56秒



□ □ □



42 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時09分36秒




モゾモゾ…



『んっ?』



43 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時14分24秒



梨華が何となく目を覚ましたのは、夜中の3時。
なぜ突然目が覚めたかというと、妙な音が部屋の中から聞こえたからである。
眠い目をこすりながらうっすらと瞼を上げると、
寝ている梨華の前にぼんやり黒い人影が動いている。



『きゃっ!?』



梨華はびっくりして飛び起きそうになったが、恐怖で体が固まって動かない。
叫びさえすれば、この屋敷中に響き渡るであろうその声も、
今は震えて上手く出せない状態だ。
梨華は妹の愛以上に、とんでもなく怖がりなのである。
44 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時18分11秒



梨華が恐れている間にも、
その黒い人影は梨華の方へゆっくりと近づいてきている。



『ギシッ』っとベットに揺れを感じた。
その人物はベットに手をかけ、ぬっと梨華の目の前に手を伸ばしてきた。


「…!!」



その手は、梨華の胸の辺りへ――――――
45 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時24分18秒



「っきゃぁあぁあ!!!何、やってんのよぉおっ!!」



全世界の人々に聞こえるような梨華の叫び声が、
この森の中に『のよぉお―――よぉ――――ぉ――――』と、エコーがかかりながら響き渡った。



「このっ、このこのっ、変態ぃいっ!!!」
「……ぁ、…ちょ、ちょっと、」
「いやぁっ!近寄らないでっ!!」

ボスッボスボスボスッ!


梨華は枕を振り回し、暗闇の中その人物を殴りまくった。
46 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時29分39秒


梨華のベットのすぐ傍で『ドサッ』という音が聞こえた。

人影は梨華のものすごい(?)攻撃と、その前の梨華の声の大きさに
驚いたようで、その場に倒れこんでしまった。



梨華は急いでベットから這い出し、走って電気のスイッチを入れる。

パチンッ!



「……」
「………あっ!?」




ベットの近くで腰を抜かしている人物――――――――
第3王子、後藤真希の姿がそこにあった。
47 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時34分06秒



「な、なぜ…?」


梨華は信じられない、といった表情で真希の顔を見る。


「あー…びっくりした。」



真希本人は困惑している梨華をよそに、特に取り乱したりはせずに落ち着いているようだ。
真希はサイレンのような梨華の声のお陰で腰が抜けて立てないので、
「よししょっ」っと腕を使い、クルリと体を梨華の方へ反転させた。




「なんで私の部屋にいるんですか…?」
「なんで…って?」
「……」
「?」
「………まさか、」

48 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時36分11秒



「真希さんの…エッチ」

「ふぇ!?」



梨華は頬を赤らめながら真希に背を向けた。
今度は真希が困惑する番。
突然『エッチ』と言われても、まったく身に覚えがないのである。
―――しばらくの間、部屋の中に異様な空気が漂っていた。

49 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時42分10秒




「こんな夜中に……私にエッチな事、しようとして部屋に忍び込んだんでしょう!?」
「はぁっ?」



真希は怪訝そうに眉を顰めて、梨華の後姿を見つめる。
―――なんか、クネクネ動いててキモイ―――
本人にばれないように、真希は心の中で悪態をついた。



「あのさぁ…ごとー、梨華ちゃんに『エッチ事』なんてしてないよ?」
「したよぉっ!」



突然振り返る梨華に、真希は体をビクッと揺らした。
それと同時に、昼間『紗弥香』から教えてもらった『梨華姫』と『愛姫』の
『姫』をつける事を忘れてしまっていたどころか、梨華ちゃん呼ばわりしてしまっていた事を思い出した。
50 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時47分30秒



――――これを、紗弥香が聞いていたらデコピンどころじゃ済まされない。



真希は、昼間くらった紗弥香のすさまじいデコピンの威力を思い出し
思わず眉間に皺を寄せておでこを手でさする。
あれは本当に痛かった。
マンガ的表現を借りるのならば、目が飛び出るくらい痛かった。
…あれだけはやばい、二度とやられたくない。


『そんな事より』


今は自分の目の前で、
目に涙を溜めながら怒っている(?)お姫様をどうにかしなければいけないのだ。



「うーん…ごとーは、ただ梨華……姫の布団が捲れてたから
直そうとしただけなんだけど。」


と、とりあえず正直に自分の行動を述べてみた。
51 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時52分01秒



「うそっ!」



梨華は耳まで真っ赤にして、壁へフラリと体を寄せる。
(は、激しく…か…勘違い)
自分のアホな言動を後悔し、その場にへたりこんだ梨華。
チラッと真希の方を見ると、
笑いを堪えようと必死に手で口を押さえている姿があった。


パチッと梨華と目が合うと、




「…っ…んぁっはははははは――――!!」
52 名前: 投稿日:2003年03月13日(木)18時54分06秒



と、大きな口を開けて笑い出した。
子供のような無邪気なその表情に、梨華は「なによ…」と頬を膨らませて言いつつも
顔は微笑んでいたのだった。


53 名前:マウス 投稿日:2003年03月13日(木)18時54分37秒

今日の更新はここまで。
何か、感想いただければ嬉しいです!

54 名前:名無し 投稿日:2003年03月13日(木)22時44分32秒
うんぎゃぁぁ〜〜最高にツボだ!!
この調子で頑張ってください。
55 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月14日(金)05時11分29秒
面白いです。第三王子の馬鹿っぷりが見たいな(笑
楽しみにしてるので、更新頑張って下さい。
56 名前:マウス 投稿日:2003年03月14日(金)07時56分54秒

レス返すの忘れてました。
夕方から大ボケ。


>>33 名無し読者さん

王子かっこよく書きたいな〜と思ってたので、
そう言って下さるととても嬉しいです(○^〜^)<thanks!

>>34 名無しさん

そんなに興奮して言われて嬉しいです(笑)
まだまだ未熟な点もたくさんありますが、これからも応援してくださいね!

>>35 トムさん

更新速度遅くてすいません(w
楽しみにしてくださって感謝感激です。
これからも読んで頂ければと思います。

>>36 名無し読者さん

褒め言葉ですか?マジで。(笑)
そんなに褒めないで下さいよ〜ものすごい「最高」だなんて(一部省略)
これからもこんなボケ作者の応援よろしくお願いしますです。



それでは、なるべく更新速度をあげていければ…と思いますが
今はストックがまったく無い状態なので少々時間はかかると思います。
すいません。これからも宜しくお願いします(●^−^●)


57 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月15日(土)11時15分38秒



―3―



58 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時20分08秒



「ひとみ王子、起床の時間でございます。
起きてください、ひとみ様っ!」



AM6:00
爽やかな鳥のさえずりが聞こえるこの城の朝は早い。
メイドや執事などは、朝4:30には起きて朝食の準備や昨日の後片付けやその他の雑用などをし始める。
――――この小川も、例外では無い。
若いながらこの城の執事頭になった小川も、
それらの仕事を終えてから王子達を起こしに行く任務を持っているのだ。


59 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時22分18秒



「んぅー?もう朝…?」
「何をお寝ぼけになってらっしゃるのですか……もう朝の6時でございますよ。
直ちに支度を済ませて、食堂の方へ行って下さいませ。」
「……」
「王子?」

60 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時31分04秒



「小川……もうちょ……っとだけ、寝かせてくれないかなぁ…?」



そう言いながらひとみは、
小川の黒いショートカットの髪を柔らかい手つきで撫で始めた。
白のポロシャツの首元から見える金色のネックレスより、今のひとみは必要以上に輝いている。
まさに、王子様の『ソレ』だ。



「…そんな膨大な量のフェロモンを出されても、今の私にはそんなもの効きません。無駄です」
「ちぇ――。ここに来たばっかの小川だったら、真っ赤になってすぐ許してくれたのにな。
しっかり成長してやんの。」
「あれから何年経ったと思ってらっしゃるのですか?
あ、あと2分で行く準備を済ませて頂かないと、ひとみ様の朝食は抜きますけど。」
「あーあー!わかりましたよっ!かわいくねぇーっ」



そう言って、ひとみはボサボサな寝癖を手で押さえながら
洗面所(と、いってもまるで一流ホテルの一室のようだが)にノロノロと歩いて行った。

61 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時31分58秒



□ □ □



62 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時37分39秒



「紗弥香王子、起床のお時間でございますが。」



コン、と一回ノックすると、
その直後に中から紗弥香の低い声が聞こえた。



「…もう、起きている」
「は、そうでしたか……失礼致しました。
食堂に朝食の用意がしてございます。お料理が冷める前に、席へお着き下さいませ。」

「わかった」
「…ありがとうございます、では。」



ひとみもこうだったら良いのに、と心の中で思いながら
小川は、早足で次の真希の部屋へと向かった。
63 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時44分03秒



そう、問題は『真希』にあった。




その問題とは、真希の寝起きがアウストラロピテクス並みに悪いこと。
どんな表現かは不明だが、朝は何をしても起きない。まったく反応が無い。
耳元でメガホンを鳴らしてもピクリとも動かないのだ。


どうしたものかと、
先日小川は、執事をやっている内に身についた腕力で
寝ている真希をベットごとひっくり返してみたが、それでも真希が目覚める事はなかった。



ここまで寝る事に徹底している真希を見ると、別の意味で感心してしまう。
64 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時49分13秒



今日は、
昨夜徹夜で考えた『パイルスクリュードライバー執事・小川版』を試そうと試みていた小川は
ノックをしても反応があるわけない真希の部屋のノブに、直接手をかけて部屋の中を覗いた。



ベットのあたりに丸い膨らみがある。



「……あぁ、やはり…『アレ』をやらねばならないのか…」


そう頭に手をあてて言う小川だが、
密かに、新技を試すことを楽しみにしていたという事は
一生誰にも言う事は無いだろう。


65 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時53分57秒



「ふぅ」



真希のベットの周りで、突然ピコピコ準備体操を始める執事・小川。
1・2・1・2と掛け声をあげながら体のあらとあらゆる筋肉を伸ばしてゆく。
そして十分に体がほぐれた所で、小川は『アレ』を行う体制に入っていた。



「よし。」

コキッ、と一回首を鳴らした所で。

「………せぇ〜〜〜のっ!」

66 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時57分09秒



――――――――ボフッ!!!




「…あれ?…」



辺り一面に白い羽毛とホコリが舞う。
ベットの中は、もぬけの殻だった。
布団を捲っても、ベットの下を覗き込んでも、部屋中を探しても真希の姿は見つからない。



「ま、まさか…っ、あの真希王子が、ついに時間通り起きてくださったのでは!?」




何も知らない小川は、ルンルン気分で次の『梨華』の部屋へと向かう。
67 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)11時57分42秒



□ □ □



68 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時00分59秒



「梨華姫様、起床の時間でございます。
起きて下さいませ」




「……」
「…あれ?」



小川がいくらノックをしても、
部屋の中からはシーンとした静寂ばかりが聞こえてくる。
『梨華姫も朝は弱い方なのか』、と小川は少しだけ落胆し
ゆっくりとドアを開けて部屋の中へと入っていった。
69 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時04分09秒


「梨華姫…?」
「…ZZZ」
「―――――――――おわっ!!?」




――――めったに驚かないはずの、執事のエリート小川の目に映ったものは―――――――




「…ん、」
「ZZZ…ZZZ…」



ベットの上で仲良く一緒に寝ている、『真希』と梨華の姿だった。
70 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時11分57秒



「なっ、なななっ、なにを婿入り前の『真希』様がなさってらっしゃるのですか!
り、梨華姫様もっ!…はは、はやく起きてくださいませっ!!」


「…んぅ…?」
「……ZZZ」



小川の大きな声に、
梨華はボォーッとした頭を起こしながらうすーく目を開いた。
目の前には慌てふためく小川の姿。
(なにか…あったのかな……?)
梨華は少し心配になって、昨夜遅くまで起きていたダルイ体を起こし、
それと同時に、手の上に乗っかっている暖かいぬくもりに気がついた。



「…ん…あれ?」
「……」
「………ぁ、」




「り、梨華姫様?」


困惑している小川は梨華の顔色がどんどん悪くなっていくのを見て、
ますますわけがわからなくなってしまった。
――――その後、10秒間時が止まる。
71 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時12分28秒



※10秒後に続きをお読みください。



72 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時15分21秒




「っきゃあぁあぁあああっっ!!!」




この城に着いてから、2度目の大絶叫。
梨華は横に寝ていた真希をベットから落とし、
自分はそのままドアの近くまでダダダッと走る。
小川も、キ―――――ンとなった耳を押さえながらよろめく足をなんとか堪えた。
73 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時19分53秒


「ど、どうなさいましたか?」


「なんっ、なんで…っ…この人が私の横で寝てるのよぉっ!?」
「ZZZ…ZZZ…」



寝ている真希を指差しながら、梨華は半泣きになって言う。
小川はてっきりもう二人は……な関係の仲だと思い込んでいたので、
内心、梨華のその言葉でホッとしていた。



しかし、ではなぜ真希は梨華と一緒に寝ていたのか。
ここは真希をなんとでも起こして、その理由を聞き出さなければならない。
74 名前: 投稿日:2003年03月15日(土)12時24分17秒



「梨華姫様……少し、お願いがあります。」
「…はい?なんですか?」



「あのですね…」



ゴニョゴニョゴニョ、と小川が梨華に何か耳打ちする。
梨華はそれを聞いて、
少し困った顔をして「いいんですか?」などと言いつつもやる気満々に準備体操を始めていた。
そして、
「行きますよ」と小川が言った次の瞬間、




「……っんぁあぁあっ!!?」




と、いうなんともマヌケな叫び声と共に『真希』は目覚めたのだった。

75 名前:マウス 投稿日:2003年03月15日(土)12時24分47秒


更新終了です。


76 名前:マウス 投稿日:2003年03月15日(土)12時31分22秒


レスの返事をお返しします。


>>54 名無しさん

うんぎゃぁ〜!!ツボにはまってくださるなんて!光栄です。
(●^ー^●)<ありがとうだべさ
これからも応援よろしくおねがいします。

>>55 名無し読者さん

応援ありがとうございます。
第3王子ついに目覚めました。小川と梨華のダブル攻撃で(笑)



レスありがとうございました。
更新速度を徐々に上げていければな、と思います。
では、また感想など待ってます。

77 名前:名無し 投稿日:2003年03月15日(土)18時24分18秒
素晴らしいです。
小川さんもいいキャラしてます。
ホントブラボーです。
後藤さんが無事でありますように・・・。
78 名前:ナナシ読者 投稿日:2003年03月18日(火)23時41分35秒
なんだかツボです!イイ!!
次回も楽しみに待ってますYO!!
79 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月19日(水)15時03分52秒



−4−



80 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時08分25秒



「うぇ…っ!…ぐはっ!」



梨華と小川の、『ダブル目覚ましパイルスクリュードライバー』を受け、
目を覚ますどころか死の淵まで追いやられている真希。
何度も激しく咳き込みながら、目は少量の涙で滲ませていた。
81 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時15分27秒


「……ぐ…っ…うっ……」



ハアハア、と深呼吸をしてゆっくり弾んだ息を戻してゆく。
そんな真希の様子を見て、
慌てふためいているのは梨華の方で後の小川の方はまったくもって冷静沈着であった。


むしろ、『真希』を起こせたという達成感で満ち溢れた誇らしげな顔をしている。




「少し体重をかけすぎた気もしましたけど……小川さん。」
「ちょ――――っとだけやばかったですね、梨華姫様。」
「んー…、『ちょっと』じゃ済まなかったみたいですけど…」
「そうですね…『真希』王子は、今かなり厳しい状態みたいですね。」



苦しんでいる真希をよそに、
二人は顔を見合わせてクスリと微笑みあっていた。

82 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時20分29秒



「……」



スウハアと息が通常の状態に戻ってからの真希は、しばらく無言でいた。
梨華の目には、真希の体の周りにまるでどす黒いオーラが滲み出ているかのように見えてしまう。
(ぜったい…怒ってる、よね…?)
昨日出会ったばかりの真希。
怒ったら何をやらかすのかも当然のごとく不明である。



「…『真希』さん、怒ってますよね?」
「…そぅ、ですかね」
「え、…そーゆう事ですか…?」



小声で小川に話しかけたみた梨華は、ますます混乱してしまった。
83 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時25分23秒



「あ――――――――――っ!!!」



ビクッ!と体を揺らした梨華は、
突然両手を上に上げて大声で叫んだ真希を、驚き顔で凝視していた。
その状態のままで真希の体は少しの間静止する。
そんな真希を不思議に思った梨華は、驚きながらも、真希から数メートル離れた所で話しかけてみた。



「…真希、さん?」
「……」



何の反応も示さない真希を怪訝そうに見つめると、
いつの間にか小川がベットにいる真希の傍に立っていた。

84 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時29分01秒



「真希王子、お目覚めですか?」
「んぁ、よく寝た。」




ガクリッ!!


真希は先ほどまであんなに苦しんでいたのにも関わらず、
何事も無かったかのようにケロリとしている。
その顔といったら、
『すごくよく眠れて、目覚めもバッチリ!』なような、清々しい表情だった。
梨華は激しく張り詰めていた気が抜け、その場にへナリとしゃがみこんだ。

85 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時31分19秒



□ □ □



86 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時32分46秒


「んー…、ここ、ごとーの部屋と違う……」



ゴシゴシ、と目を二回擦ってから寝起き特有のぼんやり顔で
真希は辺りをゆっくりと見渡す。

87 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時40分15秒



梨華はうな垂れていた顔をハッと上げて、その言葉で一番の疑問を思い出した。
なぜ、『真希』が『梨華』の部屋で一緒に寝ていたのか。
しかも仲良さげに二人寄り添って…(小川談)


「そ、そうよっ!なんであなたが私の部屋のベットで寝てるのよ!?」


小川も、その理由に興味津々に身を乗り出して、真希の方へ耳を寄せる。
…・・・徐々に真希の口が開かれて……
その口から出た言葉は、またしても衝撃な事実だった。





「ん、梨華ちゃんが……怖い夢見て『こんな広い部屋に一人じゃ眠れないよ…』
…ってゆーから、一緒に寝てあげたんだよ〜」



88 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時48分40秒


…そうだった。



昨夜真希は現れて、梨華のアホな誤解が解けてから話をしたら、
以外に話しやすく話がどんどん弾んでいき、『怖い夢を見た』という理由を付けて
梨華が「一緒に寝よう」と誘ったのだ。


梨華自身が『一緒に寝よう』と誘った。



なぜかその時、『真希』とは離れたくないと思い
『傍にいてほしい』という衝動に駆られた梨華。
年頃の男の子と理由も無しに同じベットで寝ることを誘うのはどうかと思いながらも、
隣でピッタリくっついている真希の寝顔を
胸がドキドキしながら見つめ続け、深い眠りにおちていったのだった。
89 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時51分41秒



「……えへ」



何となく立場が悪くなった梨華は、
可愛く笑ってこの状況を誤魔化そうとしていた。
その梨華の様子に、すかさず小川が突っ込む。



「…梨華姫は、『この国で一番素直で可愛らしい女の子』ではなくて
『この国で一番ドジで忘れっぽい女の子』だったんじゃないでしょうか?」



―――その言葉に梨華は何の反論も出来ないでいた。
90 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時52分21秒



□ □ □



91 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時55分01秒



――――――ギイイィィィ…



少しだけ開いたドアの向こう側に立っていたのは…


「…んぁ、おはよー市井ちゃん」
「あ、お、おはようございますっ!!」
「……おや?まだ食堂の方へお行きになられなかったのですか…?『紗弥香』様」
92 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)15時59分21秒


――――ビクッ!!


ドアの隙間から見る『紗弥香』の鋭く冷たい視線に
一同は一瞬にして凍りついた。


ドアは完全に開けられて、三人の元に少しずつ近づいてくる紗弥香の瞳は
まるでこれから獲物を狩る野生獣の光を放っている。
そんな紗弥香の足は確実に『真希』の方へ近づいていき、
真希は咄嗟に身構えて、逃げる準備をしていた。



「真希」
「…う、うん?」
「昨日教えた事、もう忘れたのか?」
「…??」

93 名前: 投稿日:2003年03月19日(水)16時02分36秒


真希は先ほど自分が言った言葉を、何度も自分の頭の中で繰り返してみる。



ぐるぐる…

『ん、梨華ちゃんが…怖い夢見て……』

ぐるぐる…

『ん、梨華ちゃんが…』

ぐる…

『梨華ちゃんが…』




『梨華ちゃん』




「あっ!!」



真希がそれに気づいた時には、
もうオデコに紗弥香のデコピンが発射されていた。
94 名前:マウス 投稿日:2003年03月19日(水)16時03分16秒


更新終了です。


95 名前:マウス 投稿日:2003年03月19日(水)16時12分08秒


レス有難うございました。


>>77 名無しさん

後藤は無事でした。
(´Д`)<無事でした。
こんなもの(小説)を素晴らしいと言って下さる名無し様が素晴らしいです。
これからも頑張ります。

>>78 ナナシ読者さん

初めまして。読んで下さって本当にサンキューです(○^〜^○)
今回も楽しみにしてくださっていたとか…ぐはっ!!(吐血)
本当に申し訳ない。
こんな奴ですがまた応援レスくださると嬉しいです。
ありがとうございました!



レスありがとうございました。とっても励みになります!
楽しみにしてくださっている読者様の期待を裏切らないように
これからも頑張って書きます。
それでは、また感想・意見・その他待ってます
(●^ー^)<待ってるべさ!

96 名前:名無し 投稿日:2003年03月19日(水)20時23分45秒
イイ!!
萌えるどころか、もう癒されます(w
あと、つまらないことなんですが紗弥香ではなく紗耶香だすよ。
97 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)01時22分45秒
楽しみにさせて貰ってます。
第1王子が、なかなか陰がありそうで気になります。
第3王子が、一番可愛いですが(笑
更新頑張って下さい。
98 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)01時12分52秒
面白い!
こういうコメディな感じのいいですね。
第3王子がイカしてます。
第2王子よりも第3王子に梨華ちゃんとくっついてほしいとか思ってしまいました。
(それは多分に私がいしごま推しだからなのかもしれないですけど;;)
あと、小川さんがよかったです。
99 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月20日(日)15時40分58秒
まだー?
100 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)11時55分38秒
果てしなく……長い。待つ時間は。
でも、諦めずに待っています。
101 名前:名無し読者さん 投稿日:2003年05月25日(日)22時52分58秒
もう作者さん来ないのかな……。
102 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月06日(日)18時58分28秒
待ってるよ
103 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月09日(土)00時19分26秒
hozen
104 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)16時05分32秒
楽しみにしてますたい。
後藤王子最高たい。
105 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/11(木) 02:15
まだかな?
106 名前:名無し 投稿日:2003/11/06(木) 18:12
ほぜむ
107 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/30(火) 01:48
9ヶ月か・・・作者さんになにかあったんじゃないかと心配
>>95のレスじゃ放棄する気配全く無いし・・・

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