作者フリー 短編用スレ 4集目
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月06日(木)21時29分35秒
- このスレッドは作者フリーの短編用スレッドです。
どなたが書かれてもかまいませんが、以下の注意事項を守ってください。
・アップするときはあらかじめ“完結”させた上で、一気に更新してください。
・最初のレスを更新してから、1時間以内に更新を終了させてください。
・レス数の上限は特にありませんが、100レスを超えるような作品の場合、
森板(短編専用)に新スレッドを立てることをお薦めします。
なお、レス数の下限はありません。
・できるだけ、名前欄には『タイトル』または『ハンドルネーム』を入れるようにしてください。
・話が終わった場合、最後に『終わり』『END』などの言葉をつけて、
次の人に終了したことを明示してください。
・後書き等を書く場合は、1スレに収めてください。
・感想、感想への返レスはこのスレに直接どうぞ。
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- 2 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時23分36秒
新スレ移行記念に急いで書き上げたので誤字脱字あるかも。
気にしないで読み飛ばしてください。
- 3 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時25分03秒
収容人数オーバー気味なベッドの上で
整いつつある息の下でポツリと言ったよね。
けだるい熱を孕んだままのカラダを
同じようなカラダで抱きしめながら
幸せだなって思ってたよ。
過去と今とを比べたら
今の方がはるかに重要だし幸せなんだけど。
あの頃の熱が今の熱に繋がってることを考えてて、
どっちがより幸せなのか考えてたから
軽く聞き流すみたいになっちゃいそうになって焦ったよ。
- 4 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時26分26秒
「前に、さ・・」
「ん?」
「結構前のコトだけど、矢口、急に冷たくなった時期あったっしょ?」
「えー?そうだっけ?そんな時あった?」
おどけた口調が少し棒読み。
傍らにいる愛しい人は思ったより穏やかな顔。
「うん、あったよー。かなり前のコトだけど」
――それまでベタベタしてたのに急に絡んでこなくなって、
口利いてもなんか素っ気ないし、すぐ他の人んとこいっちゃうし、
なんか怒らせちゃったのかなーってなっち結構悩んだのよ、
「せっかく仲良くなったのに
なんか知らないうちに怒らせて嫌われちゃったのかも・・って」
「・・・はー?矢口はぁ、なっちを嫌いになったことなんてないですぅ・・」
そうだよ、
嫌いになんか、なったことないよ。
なってしまいたかったよ、なろうとしたよ、いっそのこと。
- 5 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時27分40秒
嫌いになって
目も合わせないで
側にいるのが苦痛だと思えればいいとさえ思ったよ。
側にいても苦しいだけだったから。
あふれ出そうとする気持ちを抑えるのが、
手の握り方一つにややこしいコト考えるのが、
たかだかオンナノコ一人に自分の感情を凄い勢いで揺さぶられるのが
苦しいと思ってた時期もあったんだよ。
なっちは知らないだろうけど・・
- 6 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時29分12秒
ホンとにね、結構前から、
かなり前から好きだったんだよ。
ずうっとそぉっと見てたんだ。
叶わないハズだって諦めかけて、
でももしかしてって期待して、
なっちの一挙手一投足に意味を見出して浮かれたり、
落ち込んだりしてたんだ。
トモダチじゃ我慢できなくて、
シンユウでも物足りなくて、
自分にとってのアナタの存在にこれでもかなり悩んでたんだ。
「でもさ、話かけようとするとすぐへらへら笑ってどっかいっちゃうし、
遊びに誘っても『忙しいから』って結構何回か断られたし」
「だってホンと忙しかったんだもん。」
「んー・・・そっか」
「そうだよ、矢口だってさ、ホンとは一緒にいたかったよ」
―――ウソつき、逃げ出そうとしたくせに
- 7 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時30分49秒
時折向けられる
物言いたげな視線にもホンとはちゃんと気付いてた。
でも問い詰められたときの答えを、
理由を尋ねられた時の答えを、
模範解答しか用意していなくて。
けどそれだけは言いたくなくて、かなり必死に悩んでた。
言い訳染みた告白ならしない方がいいやって
この思いを断ち切ろうとした事も何回かあったよ。
・・・結局無理だったけどさ。
- 8 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時32分38秒
- 「でもさ、なんつーの?結果オーライじゃん。
急に冷たくなったからなっちも追いかけたくなったんでしょ?矢口のこと」
「なにそれぇ・・何?なっちはまんまと作戦にハマっちゃったワケかい?」
「別に仕組んだわけじゃないけどぉ・・・でも、そぉゆぅことになりますかねぇ?」
「やられた〜」
ぼふぼふと枕代わりのクッションを叩いて悔しげなそぶり。
なに?コウカイなんてしないでよ?
イヤだっていわれてもすぐに手ぇ離す覚悟ないよ。
いや、してはいるけど出来ないよ。
――――まだ、今は、当分は
想いが通じたコトと心が一つに溶け合えることは
必ずしもイコールじゃないってこともわかってきたけど
やっぱりまだどこかで溶けたがってる心があるのも事実で。
もっともっと心に触れたい、知り合いたい。
ずっと、側にいたい。
――でもそれが怖い。
- 9 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時33分59秒
「なっちは単純だからなぁ〜」
「ひど〜い。結構悩んだのに〜」
ていっていっと小さなチョップを繰り出す
矢口より少しは大きな手を掴んで指を絡ませる。
くすぐったそうに笑う鼻先に掠めるようにキスをした。
なっちは一瞬目を見開いて照れたように笑って
「なんだよ〜」って頭突きのフリ。
「まぁ矢口の方はそれだけ前から好きだったってコトですよ」
都合のいいように話を締めくくって何か言葉が帰ってくる前に唇を塞ぐ。
ホンとにさ自分でも呆れるくらい好きだったんだ。
結構長いこと片思いだったんだ。
冗談のような告白で、
ふざけてした軽いキスで、
何気なく絡ませた腕で、
ホンとの気持ちを測ってた。
どこまでなら許されるのか、
保険みたいに逃げ道みたいに友情を盾にして君の気持ちを測ってた。
気付かれることに怯えながら気付いて欲しいと願ってた。
―――気付かせていいのか迷ってた。
- 10 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時35分25秒
「ごめんね・・やぐち」
少し弾んだ息の下
唇が離れた瞬間に
君が漏らしたその言葉をどう受け止めたらいいのか、
――今もアタシは迷ってる。
〜END〜
- 11 名前:なちまりとか 投稿日:2003年03月08日(土)14時36分44秒
以上なちまりでした。
どうも、一作目からお目汚し失礼しました(ぺこりー)。
- 12 名前:ダンデライオン 投稿日:2003年03月08日(土)20時23分45秒
- 「はい、矢口、誕生日プレゼント〜」
「お〜!、ありがッと〜!何かな・・・」
「矢口の好きそうな物・・・」
「イヤ〜ン!!、何にこれ〜、Tバックじゃない〜」
「ね、欲しかったでしょ!」
「これ、後ろ、細〜!!、お尻丸出し〜」
「ねえ、今晩、家こない・・・家で試着してみれば・・・」
「イヤ〜ン!・・・行こう!!。」
終わり。
- 13 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時04分21秒
- はじめまして、初小説です。中学生の幼稚な文ですがよろぴこ
- 14 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時05分16秒
- 吉澤ひとみ26歳。
昨日、うちが住んでいるアパートの隣に誰か引っ越してきたみたいなんだなぁ。
夜中までバタン、ギャー、ドンとか。
うるさいったらありゃしない。
あした、仕事早いんだけどなぁ・・・なんて思いながら眠りについたんだ。
- 15 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時06分49秒
- ぴんぽ〜ん。チャイムに起こされた。
眠いのに、しかもこんな早くからなんなんだよぉ。
眠気眼でドアを開ける。
「あの〜、朝早くからすみません、昨日隣に越してきた市井です」
彼女が顔を上げた瞬間、心臓がとまるのではないかと思うくらいびびった。
何故って、彼女は中一の時同じクラスメイトだった石川さんだったからだ。
今、市井って言ってたよなぁ。まだ結婚しているんだ・・・
良かったじゃない、うまくいっていて・・・
なんて、考えていたら「あの〜、もしかして中学の頃同じクラスだった吉澤さんじゃあないですか?」
なんて聞いてきやがった。
ふ〜ん、いちおー私の事覚えていてくれたんだ・・・
なんて、ぼ〜っと考えていたら、後ろから小学生低学年位の女の子と男の子が飛び出してきた。
- 16 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時08分46秒
- 「おはようございます!麻美です!小学校2年です!宜しくお願いします!完璧です!」
はきはきとした、まさしく長女って感じの子だ。
「おはようございます・・・望夢です。小学校1年生・・れす・・・」おねえちゃんの影に隠れてびくびくしている、かわいい男の子。
「二人とも私の子供なの。似ていないでしょう・・ふふ、仲良くしてね、吉澤さん」
石川さんが、2人の子持ち。
まぁ、結婚したことは聞いていたし。子供が2人いても不思議じゃないし。
もう、あれから13年も経つんだし。
「あの〜、吉澤さん?覚えている?私の事。」
忘れるわけがないだろう、なんて思ったのだけどここは穏便に(子供もいることだしね)
「もちろん、覚えているよ、石川梨華さん」
うちはこれ以上無いくらいの笑みを返した。
- 17 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時13分25秒
- 今日はどうにもこうにも仕事が手につかない。理由はわかっているんだ
隣に越してきた元クラスメイト石川梨華のせいだ。
元クラスメイトかぁ、あれから13年。早いよなぁ
初めて彼女を見たのはクラス発表の張り紙の前で、だ。
うちの中学校は3つの小学校出身者でなりたっていて、
大抵は同じ学校グループ同士でかたまっていて。
でも彼女、石川さんは友達があまりいないのか、一人でいることが多くて、なんか気になっちゃって。
でも声もかけられずただ、見ているだけだったんだ。
- 18 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時15分05秒
- その彼女にもだんだんと友達が増えていって、観察していて解ったこと
@彼女は見かけによらず負けず嫌いである
A可憐な容姿なわりには言葉遣いが乱暴(実はかなりショックだった)
B成績は良い方
C運動音痴だ
気になって気になってしょうがない。気になりすぎていっつも彼女のことを怖い目で見ていたみたい。
まぁ、その時にはまだ恋愛感情だとは思っていなかったんだけど。
「石川さんの事、嫌っているの?いっつも怖い顔で見ているよね。石川さん、吉澤から嫌われてると思っているみたいよ」
ぐっ・・なんと。かなりの衝撃だった。
友達から注意された事から、なるべく彼女を見ないように努力して。
結局、友達にもなれぬまま彼女は学校の分離で新しく出来た中学校へ2年の時にいっちゃった。
- 19 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時15分54秒
- 結局、会話らしい会話一つしなかったな。なんて
2年生に進級してからも、もちろん忘れることなく、
彼女と同じ塾に入って「石川さん、ひさしぶり〜」なんっていちゃってさぁ
仲良くなる予定だったんだけど・・・
結局、声をかけれずジマイで。石川さんから声をかけられることもなく。
まぁ、つまり結局これが片思いってやつなのか!
女同士なんでね、誰にも相談できなくてさぁ。
- 20 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時17分09秒
- あれよあれよという間に高校生になり、大学に進学したんだけど。
でも、やはり石川さんが頭の隅に住んでいて、
「吉澤〜、石川梨華って覚えてる?」
石川、梨華・・・友人が言うには近くのレストランでアルバイトをしているらしい。
未練がましく、彼女が働いているレストランに友人と行って。
私の脳裏には(ここから彼女と私の第2の出合いで、今度こそ声を掛けて友達に、そして、どうにかこうにかして、恋人同士になってと)思いをめぐらせて。 きゃ〜
しかし、彼女の発した一言に私の名前は無く「後藤さん、久しぶり〜」
私は?ねぇ、石川さん、私の事はやはり覚えていない?
言いたいことがまた、言えない。たった、その一言さえも。
- 21 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時17分52秒
- しかも、彼女は高校を中退して結婚して子供もいるらしい。
悔しいな。悔しいって思うほど何もしていないけどさ、もうちょっと勇気があれば、時間はたくさんあったはずなのに、さぁ・・・
勝手に思って勝手に思いを閉ざしたあの頃。
- 22 名前:初恋のお話 投稿日:2003年03月09日(日)10時19分52秒
- 帰宅途中、「市井って言ってたな。」ぼそっと発した一言
後ろから「ん〜、吉澤さん?私の事?」
後ろを振り向くと石川梨華がいた。
「あはは、実は離婚してここに引っ越してきたんだよ〜、子供の為に姓は前の旦那のを名乗っているんだよ。」
「あ、ごめん・・・」
もしかして、これってチャンスだと思って宜しいのでしょうか?神様
おしまい
くだらね〜
皆さん、本当にすみません、すみません
- 23 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時50分32秒
- あれ?なんか、目が回る…?
そう思った時には、もう遅かった。
「よっすぃー!!?」
どたーん!!
梨華ちゃんのアニメ声を聞きながら、ウチは…床に倒れた。
…痛ェ。
しかもどんどん目の前が暗くなって行く。
「よっすぃー!?どうしたの、よっすぃー!!?」
んもぅ、やめてよ梨華ちゃん。頭にキンキン響いて…。
そう思った瞬間、梨華ちゃんの顔が驚いたように歪んで…それから涙ぐんで、黙った。
口には出してないはずなんだけど…。
ああ、でも、それどころじゃない。
「…吉澤ッ!!」
「よっすぃー!!」
みんなの声を聞きながら…ウチの目の前は、真っ暗になった。
- 24 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時52分10秒
目を覚ましたら…そこは、花畑だった。
「…うっわ。嘘でしょ?」
まさか死の淵に立ってるの?あたし。
「…意外と冷静ね。」
「え?」
聞き覚えのある声に、あたしはがばっと振り向いた。
「もっとうろたえるかと思ったのに。」
声の主は、つまらなさそうに言う。
あたしは、その聞き覚えがあり過ぎる声の主に向かって言った。
「…梨華ちゃん、こんなトコで何してんの?」
すると梨華ちゃんは、にっこりと微笑む。
「…そう。あなたには、わたしが『梨華ちゃん』に見えてるのね。」
「はぁ?何言ってんの?」
「それじゃ、良いわ。わたしのことは『リカちゃん』って呼んで。」
「???」
変な梨華ちゃん。…あ、リカちゃん、か。
…あ、わかったぞ。これは夢だ。だから変な事が起きるんだ。
- 25 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時53分13秒
- 「で、リカちゃんはここで何してんの?」
「わたしは、精霊。あなたは大事なモノを忘れてしまっているの。だからそれを思い出させてあげる。」
「忘れてる?あたしが?」
「そう。」
リカちゃんはにっこり笑ったまま、続けた。
「大切な事。大事な事よ。ここは、神様がお創りになられた『記憶の保管庫』。」
「…はぁ…。」
なんかファンタジー入りまくりな夢だなぁ…あたし、最近そーゆー本読んだっけ?
首をかしげるあたしにお構いなしに、リカちゃんは続ける。
「わたしは、ナビゲーター。
あなたのように大切な記憶をなくしてしまった人が、無事に記憶を取り戻すようにお手伝いをするのがわたしの仕事。」
「・・・・・・。」
「そしてわたしは、あなたがなくした記憶の『ヒント』でもあるの。
あなたはわたしが『石川梨華』に見えるんでしょう?」
「う、うん。」
- 26 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時54分01秒
- どう見ても梨華ちゃん。…その服装は、確か一昨年の10月に一緒に遊びに行った時に着てた服だよね?
リカちゃんは笑顔のままで続けた。
「だとしたら彼女が、あなたのなくした記憶のヒント。」
「…梨華ちゃん関係の記憶って事?」
「そう。でも、完全にそうとは言い切れない。これはあくまでヒントだから。」
リカちゃんはくるりとあたしに背を向けた。
「ついて来て。一緒に記憶を探しましょう。」
- 27 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時54分39秒
小人になった気分だ。
ものすご〜く背の高い本棚が一つ、どどんっとそびえたっている。
「これが、あなたの記憶。」
「はぁ!?」
驚くあたしに、リカちゃんはやっぱり笑顔で答えてくれる。
「この本棚にある本に、生まれてから今までのあなたの記憶が記されているわ。」
「…上の方がガラガラなんだけど。」
そう。この本棚、上の方には全然本が置いてない。
「そりゃそうよ。この本棚は、下から順に本が置かれるの。
まだ十七年しか生きてないんだから、ガラガラなのは当たり前でしょ?」
「…って事は、これからうめられて行くって事?」
「その通り。」
リカちゃんが本棚に手をかざすと、一枚の紙が出現した。
「…これが、記憶の空白部分。2001年10月、ね。」
「・・・・・・。」
「あなたは大事な事を忘れちゃってる。だから最近、迷ってるんじゃない?」
「は?迷ってる…?あたしが?」
リカちゃんは穏やかに微笑んで見せた。
「『加護亜依』。」
心臓が、掴まれたみたいだ。体中がぎくっと反応する。
「…迷っているんでしょう?」
「・・・・・・。」
口の中がカラカラに渇く。
- 28 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時55分18秒
- そう、あたしは確かに迷っている。
梨華ちゃんと付き合い出して、早一年が経った。梨華ちゃんは女の子らしくて可愛くて…。
でも、最近自分の気持ちがわからない。梨華ちゃんが好きなのか嫌いなのか…それとも、そんな興味すらないのかもわからない。
そんな中途半端な気持ちを引きずりながら付き合っているけど…実はあたしは今、浮気をしている。
相手は、あいぼん。梨華ちゃんも多分気付いてるだろう。
…あいぼんとはそんな深い仲じゃないけど、キスはしてるし。それも軽いのじゃなくて濃厚なの。
深い仲になるのも、時間の問題だろう。
「迷うのは、悪い事ではないわ。」
リカちゃんは、慈愛のこもった…母親みたいな眼差しを向けて来る。
「…あたしが、どんな事で悩んでるか…わかってんの…!?」
「もちろん。『石川梨華』と付き合い続けて、『加護亜依』と別れるか。
『加護亜依』と付き合い続けて、『石川梨華』と別れるか。それで迷っているんでしょう?」
「・・・・・・。」
図星だ。カラカラに乾いた喉がひっつく。
「もしかしたら、失った記憶は…そんな迷いに決着をつける事ができるかも知れない。」
「!!」
- 29 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時55分51秒
- あたしはリカちゃんの二の腕を掴んだ。
「ほ、本当に…!!?」
するとリカちゃんは、まるで踊るようにあたしの腕を振り払う。
「…だけど、最終的に選ぶのはあなた。」
「・・・・・・。」
「すべての判断を他に委ねるのは、間違った事だわ。」
そう言った直後、リカちゃんがぱちんと指を鳴らす。
「…見つけた。あなたの『失った記憶』。」
「え?」
「見ていらっしゃい。そして…選びなさい。」
それと同時に、あたしはまた意識を失った。
- 30 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時56分23秒
「な、なんなんだよ、もう…!!」
目を開けると、そこは…梨華ちゃんの部屋だった。
「!!?」
驚いて跳ね起きると、梨華ちゃんの甘い香りが香って来る。
『あ、よっすぃー。起きた?』
「!!?」
驚いて振り返ると、そこには…さっきのリカちゃんと同じカッコをした梨華ちゃんがいた。
「り、梨華ちゃん!!?」
上ずった声で叫ぶけど、梨華ちゃんは無反応。
「!?!?!?」
困惑しながら背後を振り返ると、そこには…
『うん…ごめん。ウチ、いきなり倒れたりして。』
…あ、あたしィ!!?
そんな時に、上から一枚の紙が落ちて来た。
<これは、過去。あなたが忘れてしまった、大事な記憶。>
そう書かれた紙を見てから、ばっと顔を上げる。
…た、確かに、一年半前のあたしだ…。
『ごめんね、体調悪いのに付き合わせちゃって…。』
『ううん、良いんだよ。ウチも遊びたかったし。』
…そうだ、この時あたし貧血起こしてて…。
梨華ちゃんは貧血起こしたあたしを、タクシーでここに連れて来てくれたんだっけ。
- 31 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時56分55秒
- 『…ねえ、よっすぃー。』
『ん…?何?』
『・・・・・・。』
黙ってしまった梨華ちゃん。…そうだ、この状況、確かに覚えてる。
この後、どうしたんだっけ?
何を話したんだっけ?何をしたんだっけ?
「…お、思い出せない…!!」
呟いた直後、もう一枚紙が落ちて来た。
<よく見て。そして、記憶を取り戻して。>
「そ、そんな事言われても…!!」
もう一回、ベッドの上に横たわるあたしと、ベッドに腰掛けた梨華ちゃんを見る。
『・・・・・・。』
『・・・・・・。』
見詰め合う。
そう、この時は言葉なんかいらなかったんだ。
そして…。
「思い出した…!!!」
そう叫んだ直後、あたしは光に包まれた。
「うわっ!」
あまりの眩しさに、目を手で覆う。
- 32 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時57分36秒
- 「…思い出したわね。さあ、答えて。あなたは何をした?」
リカちゃんの問いに、あたしは言う。
「キスを、した。ただ触れるだけの…。」
「そう。それで、どうしたの?」
「…唇を離した後、梨華ちゃんが…何事もなかったかのように話しかけて来て…。」
あたしはぎゅっと目をつぶる。
「あたし…ずっと梨華ちゃんが好きだったんだけど、ずっと隠してて…だけどそのキスが忘れられなくて…!!」
目を見開くあたしに、リカちゃんはにっこりと笑ってくれた。
「…それであたし、半年後に…梨華ちゃんに告白したんだ…!!!」
それと同時に、またあたしは光の洪水に包まれた。
- 33 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時58分10秒
「…すぃー!!よっすぃー!!!」
目をあけると、あいぼんが泣きながらあたしにしがみついていた。
「…あいぼん…?」
「よっすぃー…!!」
むくっと起き上がると、あいぼんはわっと泣き出した。
「もう、なんやねん!!ビックリしたやないか!!いきなり倒れて…原因不明とか言われて…!!!」
「…ごめんね、あいぼん。」
そして、部屋の中を見渡す。
「…梨華ちゃんは?」
その問いに、あいぼんは不機嫌そうに言う。
「梨華ちゃんなら、収録中や。のんきに『チャーミー石川でぇす』やっとる。」
「…そっか。」
「そんな事より、よかった…!!もう目覚めないかと思った…!!」
しがみついてくるあいぼんを、あたしは抱き返せないでいた。
- 34 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時58分43秒
- 「あいぼん。今まで、ずっとごめん。」
「…え?」
「あたしは…あたしは本当は、あいぼんの事好きなんじゃなかったんだ。」
「・・・・・・ッ!!!」
「…梨華ちゃんに、やきもち焼かせたかっただけ。」
あたしは今、激しくあいぼんを傷付けてる。
それはちゃんとわかってるけど…正直に言わなきゃいけない。
そうでなければ、あたしもあいぼんも先に進めない。
「でもさ…あいぼんもそうでしょ?ごっちんにやきもち焼かせたかっただけでしょ?」
「・・・・・・ウチは…!!」
「わかってたよ、あいぼん。それに、あいぼんだってわかってたでしょ?」
「・・・・・・。」
「梨華ちゃんが好き。だけど、梨華ちゃんがどれくらいあたしの事好きなのかわかんなくて…
試したくて、こんな事した。」
「・・・・・・。」
「あいぼんは、ごっちんにだね。」
- 35 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時59分17秒
- 「・・・・・・。」
あいぼんはすっくと立ち上がり、こう言った。
「…アホらし。気付いたら終わりやねん。」
「…そうだね。でも、気付かなきゃいけなかったんだよ。お互い。」
梨華ちゃんは、負けず嫌いで意地っ張り。
だから、どんな時でも強がって…感情を見せないフリをする。
…あたしが気付いてあげなきゃいけなかったんだね。
「殴ってくれてかまわないよ。」
「…殴る気も起きんわ。こんなヘタレ相手じゃ。」
「そっか。」
笑うあたしに、あいぼんが背を向ける。
「…お互い、もう迷わないように気を付けようね。」
「…せやな。」
あいぼんが姿を消してから、あたしはちょっと泣いた。
自分が情けなくて。
- 36 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)17時59分47秒
「・・・・・・っ!!」
収録を終えて、楽屋に戻って来た梨華ちゃんは、あたしを見て身を硬くする。
「…お疲れ。」
「う、うん…。」
梨華ちゃんはちょっと黙ってから、口を開く。
「…大丈夫?その、気分は。」
「うん。」
しばらく沈黙した後、あたしは梨華ちゃんを…唐突に抱きしめた。
「!?」
おーおー。やっぱビビッてる。
「な、何するの!?」
「何って…自分の彼女を抱きしめるのに、理由がいるの?」
「・・・・・・ッ!!だったら、あいぼんにやりなさいよ!!」
「あいぼんとは、別れた。」
「はぁッ!!?」
もがく梨華ちゃんを、強引に抱きしめながら…あたしは囁く。
「梨華ちゃんが、好き。何があっても、どんな時でも…あたしは梨華ちゃんが大好きだ。」
「・・・・・・!?」
- 37 名前:キオク 投稿日:2003年03月10日(月)18時00分18秒
- 「もう、迷ったりしない。試したりしない。だから…!!」
「・・・・・・。」
「お願い。あたしを嫌いにならないで。」
恐る恐る、と言った感じで…梨華ちゃんが抱き返して来る。
「…なれるわけないじゃない。嫌いになんて…!!」
「梨華ちゃん…!!」
「大好きよ。…たとえわたしが、よっすぃーの一番でなくても…。
嫌いになれないの。ううん、好きでいるのをやめられないの。」
その言葉の後、梨華ちゃんの唇を強引に奪う。
ウチらに言葉なんかいらない。もう間違えない。迷ったりしない。
そんな決意を込めて。
〜FIN〜
- 38 名前:アイラブチャーミー 投稿日:2003年03月18日(火)22時17分13秒
- 締め切りが迫っているのに、思うように書けずに、つい
いらついてしまい、じゃれついてくるチャーミーを
じゃけんにしてしまった。
僕に邪魔ものにされて、チャーミーはぷいとどこかへ
行ってしまった。
それから、数時間たってようやく、書き上げ、ほっと
一息ついていると、チャーミーの姿が見えないことに
気づいた。
あわてて、部屋を出て、名前を呼んで見るが、どこにも
見当たらない。
夜になっても、チャーミーは帰ってこない・・・。
ただのネコなら、別に心配は無いのだけど、チャーミーは
心はネコなのだが、外見は女の子なのだ。
僕は、焦燥感にかられて、部屋の中を歩き回った。
この2、3日のことを思い出し、チャーミーの行き先の
心当たりを考えた。
- 39 名前:アイラブチャーミー 投稿日:2003年03月18日(火)22時36分47秒
- すると、あることが思い浮かんだ。
昨日だった、階下の住んでいる若い男がチャーミーを
じっと見つめていたことを思い出した。
その男の部屋はわかっていた、直ぐにそこに向かった。
チャイムを鳴らし、ドアを叩いた。
その男がドアを開けた時、僕はかまわずに男を押しのけて
中に入った。
チャーミーは、ちょこんと座っていた。
僕は、振り返ると男の胸ぐらを掴んで締め上げた。
「おい・・・どういうつもりだ。」
「・・・すいません、妹さんと話がしたかったんです。」
チャーミーは、妹ということにしている。
ただのネコなら、ふらっとよその部屋に遊びに行くことも
あるだろう。
- 40 名前:アイラブチャーミー 投稿日:2003年03月18日(火)22時51分27秒
- しかし、チャーミーは普通のネコではない。
外見は、17、8歳の女の子なのだ。
ひたすら、謝る男を尻目に、チャーミーは僕にじゃれついて
くる。
僕は、チャーミーを抱えて出ようとして、あることを
思いいたり、戻って男に問いだした。
「あんたは、チャーミー、妹と話したのか・・・」
男は、うなづいた。
「・・・どうやって」
妹は、口が聞けないことにしてある。
ネコは、喋れない・・・。
「なんか、声を出してましたが、何となくわかるのです。」
僕は言った。
「あんたは、ネコが好きか・・・」
男はうなづいた。
ネコは、ネコが好きな人間がわかるのだ・・・。
終わり。
- 41 名前:誕生日の朝 投稿日:2003年03月21日(金)17時34分48秒
- 朝、俺が目を醒ますと、彩が起きて何か作っていた。
まだ、6時前だった。
煙草を吸おうと、枕元をさぐったが、中身はカラだった。
袋を握りつぶして、ゴミ箱目がけて投げつける・・・。
彩が気づいて、ゴミ箱に入れた。
四畳半の何も無い部屋。
「彩・・・どうしても行くのか」
「今日、一次と、面接があるの・・・」
「やめちまえッ!、年を考えたことがあるのか・・・」
「・・・・」
「他の子は、中学生や高校生ばかりなんだろ。自分の年を
考えろ。もう、24歳なんだろ。受かるわけがない!」
彩は、ハンドバックから、煙草、セブンスターを取り出した。
「ハイライトはねえのかよ・・・」
- 42 名前:誕生日の朝 投稿日:2003年03月21日(金)17時49分44秒
- 俺は、仕方なくセブンスターを咥えた。
彩が、マッチで火をつけてくれる。
「小さい頃からの夢だったの・・・歌手になりたいって。
それだけを想って、来たの・・・」
「フン、いったい、どれだけオーデションを落ちれば
気がすむんだ。年も年だが、自分の面を鏡で見たことが
あるのかよ・・・」
「自分が美人じゃないことは、わかってるわ・・・、
だから、ずうと歌や踊りのレッスンを受けてきたの。」
「どうだか、いくら歌や踊りがうまくても、年増の
何のとりえのない、女がどうなるものか・・・」
「・・・書類審査が通ったのは、初めてなの。
今度は、何とかなりそうなの。チャンスを逃したくないの。」
- 43 名前:誕生日の朝 投稿日:2003年03月21日(金)18時03分24秒
- 「どうせ、落ちるんだ!よせよせ!、それより・・・」
俺は、彩の手を掴んで引き寄せようとした。
彩は、抵抗して、手を振り払った。
「歌手になりたい・・・それだけが夢なの。それだけを
支えに生きて来たの。行かせて・・・」
「俺と、オーデションとどっちが大事なんだ!」
彩は、黙ってうつむいていたが、やがて立ち上がり、
部屋を出て行った・・・。
ふと、気がつくと、枕元にリボンのかかった箱が置いてあった。
今日は、俺の誕生日だった・・・。
俺は、その彩のプレゼントを掴むと、壁に投げつけた・・・。
なにか、彩がもう帰って来ないような、嫌な予感がした。
終わり。
- 44 名前:ラストキッス 投稿日:2003年03月22日(土)13時59分45秒
- 「のの、後を頼むね。これからは母さんと二人だけなんだから
母さんのことも頼むね・・・」
「・・・・」
「ののも、私が教えたように、お家のことを頑張ってね。」
「イヤだ!・・・」
「イヤって、何に言うの・・・あなただけが頼りなのよ。」
「イヤだイヤだ!なっち姉ちゃん、行くのイヤだ!」
「・・・のの、私を困らせないで、私だって行きたくないけど、
あの人が、急に九州に転勤になったんだもの・・・それで、
結婚式を早めて・・・夫婦だもの、一緒に行かないと。」
希美は、なつみに強くしがみ付いた。
「イヤだー!九州なんて遠い所へなっちが行っちゃったら
めったに会えなくなるよ・・・イヤだよー!!」
希美は、泣き出した・・・。
「のの・・・私だって、ののと会えなくなるのは寂しいし、
イヤだよ・・・だけど・・・」
「母さんは、スナックのお仕事で夜はいないし、なっちが
いなくなったら、ののは、一人で寂しいよ〜・・・」
「のの・・・」
- 45 名前:ラストキッス 投稿日:2003年03月22日(土)14時27分36秒
- 希美は、姉のなつみにしがみついて、大声で泣き出した。
なつみも泣きながら、希美を強く抱きしめた。
「のの、なっちでだって、ののと会えなくなるのは寂しいよ。
悲しいよ。でも旦那さんを一人には出来ないの・・・、4月から
ののも高校生だね。もう子供じゃないんだから、我慢出来るね。」
「・・・ののは、大人になんか、なりたくない・・・」
なつみは、涙をぬぐいながら、笑った。
「誰でも、いつかは大人になるのよ・・・夏休みになったら、
必ず九州へ遊びに来ればいいじゃない・・・」
「ウン・・・」
「お姉ちゃん、行くよ・・・」
「なっち姉ちゃん、最後にあれをして・・・」
「あれって・・・」
希美は、なつみの首に腕をまわして、キスをした。
小さい頃、二人だけの密かな遊びとして、キスをよくしたのだ。
二人は、唇を合わせて抱き合った・・・。
ようやく唇を離して、なつみは言った。
「もう行くね。フフフ、こんなとこ旦那さんに見られたら、
大変だ・・・」
希美も、機嫌を直して言った。
「なっち姉ちゃん、バイバイ。またキスしようね・・・」
終わり。
- 46 名前:わかってないじゃない 投稿日:2003年03月22日(土)20時01分45秒
- 俺は、テレビを見ていた。
オーデションの最終段階の11人が発表されていた。
この中から一人だけ、選ばれるのだ。
「東京から、福多明日香12歳。札幌から、阿倍なつみさん16歳。
飯多圭織16歳、仲澤裕子19歳。大阪から平家充代18歳、そして
山田彩24歳・・・」
なんと、彩は11人の中に残っていた・・・。
そして、合宿が始まった。
俺は、合宿の行われているお寺に向かった。
山田彩の兄と偽り、母が危篤だと、でまかせを言って、
強引に彩に会った。
スタッフや、合宿している女の子の前で、叫んだ。
「この彩という女は俺と同棲している!」
- 47 名前:わかってないじゃない 投稿日:2003年03月22日(土)20時26分37秒
- 「この女は、毎晩俺に抱かれてヒーヒーよがっている、
スケベ女なんだ!そんな女が歌手になんかなれっこない!」
彩は、顔を引きつらせて俺に迫って来た。
「帰ってよ!どこまで私を困らせたら氣がすむのよ・・・、
あなたは、なんにもわかってないじゃない!私の気持も、
私の夢も・・・わかってないじゃない。」
「彩、俺と帰ろう。お前は歌手なんかなれないんだ・・・」
「お願いだから、帰ってよ・・・帰って」
彩は俺を泣いて叩きながら言った・・・。
その後、合宿が終わり、平家充代一人が合格した。
俺は、床に這いつくばって彩に謝った。
「あなたのせいじゃないわ・・・」
彩は、無表情に言った。
終わり。
- 48 名前:スキ 投稿日:2003年03月25日(火)16時34分12秒
- 僕が昼休み、校舎の裏に腰掛けてパンを食べようとしていたら
その子がやって来た。
僕の側に腰掛けて、僕を見ながら、
亜依「・・・そのパン美味しそうね。ちょうだい。」
高橋「ちょうだいって、・・・」
その子は、僕のアンパンをひったくると、代わりに
ハンカチで包んだ、四角い物を僕の膝の上に置いた。
高橋「え〜!?・・・」
亜依「代わりにそれを食べて良いよ・・・」
開けると、お弁当だった。
いかにも、女の子らしい色とりどりのお弁当だった。
その子は、アンパンをむしゃむしゃと食べ始めた。
亜依「どうしたの、お弁当食べちゃいなよ。いつも、
こんなアンパン一個だけで、お腹すかないのかな〜」
東京の学校に転校して来て、一週間目だった。
- 49 名前:スキ 投稿日:2003年03月25日(火)17時02分28秒
- 初めて東京に出てきて、途惑う事ばかりだった。
その子、亜依が僕のことを見ていたのは気がついていた。
次の日だった。僕はクラスの吉澤と石川にからかわれていた。
石川「おめェ〜、なに言ってんのかわかんないよ〜!」
吉澤「や〜い、田舎もん、田舎もんだよ〜!」
その時、亜依がやって来て、いきなり石川のお尻を
蹴り、吉澤の頭をぶん殴った。
二人は、驚いて逃げて行った。
そして、僕の隣に腰掛けた。
亜依「君は、どこから来たの・・・」
高橋「僕は、福井だども・・・」
亜依「そうなんだ〜、うちは奈良から来たんだよ〜」
そのわりには、亜依は関西弁ではなかった。なんで、
僕に近づいてくるのかわからなかった・・・。
- 50 名前:スキ 投稿日:2003年03月25日(火)17時14分48秒
- 授業の時、ふと気がつくと、亜依が僕を見ていた。
僕もそっちを見ていると、
中澤「高橋君!何によそを向いてるの。」
高橋「はい、すみません、先生・・・」
中澤「あ、良いの良いの。あんたは可愛い!」
高橋「・・・・」
放課後、僕は亜依を呼び止めた。
高橋「どうして、僕のことを見るの・・・」
亜依「どうしてって、スキだからよ・・・」
高橋「ええ〜!!、どうしてェ〜?」
亜依「どうしても、君の事がスキだから。」
亜依はそう言うと走って行った。
終わり。
- 51 名前:片想い 投稿日:2003年03月25日(火)21時55分46秒
- 「ねえ、圭織。お願いがあるの・・・」
「なによ、麻琴。」
「これを渡してほしいの・・・」
「なになに!手紙〜!まさかラブレターとか・・・」
「ウン。」
「ウソ〜、誰よ誰よ!」
「実は・・・保田先輩なの・・・」
「ええ〜!マジでェ〜!保田さんなの・・・」
「先輩、もうすぐ、卒業でしょ。この機会を逃したら
後が無いでしょ。前から憧れてたの〜」
「でも、彼のどこが良いの・・・」
「学園祭で、歌ってるのを見てからよ〜、それも、
フランス語で。「イパネマの娘」素晴らしかったなァ〜」
「なんだ、それならあたしだって・・・」
「なんか言った・・・」
「ううん、何でもない・・・」
- 52 名前:片想い 投稿日:2003年03月25日(火)22時08分05秒
- 「圭織は、保田先輩と幼馴染でしょ。お願い。」
「わかった、渡してあげるよ。」
「わあ!ありがとう。」
「あ、保田さん、ちょっと・・・」
「なんだよ、かおりん、保田さんって、いつもは、
圭ちゃんっていってるのに、気持悪いな〜」
「・・・そうだね。あのさ、これ・・・」
「なんだよ、手紙?」
「あのさ、うちのクラスの小川ってのが、渡してくれって、
ラブレター・・・」
「え〜!弱ったな〜、困るよ。」
「なにが困るのよ〜、もてる人は違うね。」
「・・・俺さ、好きな人がいるんだ・・・」
- 53 名前:片想い 投稿日:2003年03月25日(火)22時20分56秒
- 「えー!、好きな人って、圭ちゃんのクラスかな、
稲葉さん、前田さん、わかった!中澤さんでしょ!!」
「・・・え、その、そんなところかな・・・」
「そうか〜、じゃ、中澤さんはどうなの、圭ちゃんのこと、」
「その、片想いさ・・・相手の彼女は俺のことは、何とも
思っちゃいないさ・・・」
「片想いか・・・、私もそうなんだ。好きな人がいるんだけど、
彼、私のこと、何とも思ってないみたい・・・」
「へ〜、かおりんもかい・・・偶然だな。」
「彼ね、私がこんなにも、想っているのに、気ずいても
くれない・・・こんなにも好きなのに、わかってくれない、
私のことは、なんとも思っていないみたい・・・」
「・・・・」
- 54 名前:片想い 投稿日:2003年03月25日(火)22時43分56秒
- 「私が、いつもいつも、必死の想いで見ているのに、
振り向いてもくれない、いつも片想いのまま・・・」
「・・・その彼は、同級生なの」
「彼、卒業するの・・・」
「俺と同じか・・・でも、きっと、かおりんの想いを
わかってくれるよ。」
「どうかしら、このまま卒業したりして・・・圭ちゃんは、
どうなの、中澤さんに告白するの・・・」
「かおりん、俺、思い切って告白するよ!彼女に好きな人が
いても、このままじゃ、後悔するよ。」
「そうよ!、圭ちゃん!彼女に好きな人がいたって、
かまわないわよ!、私の彼も、好きな人がいるけど・・・」
- 55 名前:片想い 投稿日:2003年03月25日(火)22時53分00秒
- 「かおりん!俺が好きなのは・・・」
「中澤さんでしょ・・・」
「俺が大好きなのは、かおりんだ!!」
「え、??、私・・・え、え、ウソ〜」
「ウソなもんか。かおりんが好きだ〜!」
「圭ちゃん・・・」
「あ〜、すっきりした。かおりんも好きな人に告白すれば
良いよ、思い切って。」
「圭ちゃん、私が片想いしている人は、圭ちゃんよ・・・」
「え?、今なんと言ったの」
「私が大好きなのは、圭ちゃんよ〜!」
「じゃあ、二人ともとんだカン違いを・・・」
「そうよ!、二人ともバカね・・圭ちゃん・・・」
「かおりん・・・」
「あー!!、いけない、まこっちゃんになんと言えば、
いいのかな・・・」
終わり。
- 56 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時41分00秒
- 電車の中あたしが彼女を見つけたのは偶然だった。
彼女のほっぺたは柔らかそうで、触ってみたいなあなんてぼんやりと思ったんだっけ。
- 57 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時42分37秒
- いつも放課後は友達と街をぶらつき、帰るのは夜十時過ぎ。
どうせ一人暮らしだから早く帰ってもすることないし。
友達と街を歩いてれば暇そうな男達が寄ってくる。
とりあえず顔が良くて面白そうだったら、ご飯奢ってもらったりカラオケ行ったりする。
食事代は浮くし暇つぶしにはなるし、ほんと助かる。
女子高生ってだけで寄って来るんだもんなあ…男って、単純。
遊ぶだけなら楽なのに。本気になるとろくなことがない。
前の彼氏の束縛が半端なくウザくて、しばらく男を作るのは勘弁って状態だった。
でもそんなあたしだけど、久しぶりに人を好きになったんだ。
- 58 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時43分42秒
- ある日の放課後あたしは追試を受けていた。
大きな声では言えないが…全部で三教科…。
勉強はどうしても苦手。はっきり言ってこれに関しては既に諦めている。
人間向き不向きがあるんだよ、うん。
時間になりあたしはすぐさま教室から出ようとしたら、電話が掛かってきた。
ディスプレイを見ると親友の吉澤ひとみからだった。
いつもならあたしと一緒に追試を受けるほどの学力レベル。
ただ今回はどの教科も上手いこと赤点ギリギリで追試は無しだった。
あたしは歩きながら電話に出た。
「もしも〜し」
「もしもし、真希?あたし、ひとみ。ねぇ追試終わったんでしょ?」
「うん、今ちょうど終わったところ。」
「お疲れ〜あたし良かったギリで。てか、終わったんなら今から駅前のカラオケ来なよ。
ちょっとまじ今日はいい男ばっかだよ?真希が気に入りそうなのもいるし。」
- 59 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時44分59秒
「う〜ん…。」
今はそんなに男が欲しいわけじゃないし。いつもは暇つぶししたいだけ。
それに昨日は追試のために勉強して遅く寝たからちょっと眠い。
とは言ってもほとんど雑誌やテレビを見たりで実際勉強したのは三十分もなかったが。
そんな訳でカラオケに行く気にはなれなかった。それより睡眠、睡眠。
「ゴメン、今日は止めとくわ。ちょー疲れたし。」
「え〜まじで?まぁしょうがないかー。仲良くなったら真希にも紹介するし。じゃあ追試お疲れ!ばいばーい。」
「ん、ばいばい。」
電話を切ってブレザーのポケットに無造作に入れるとちょうど玄関に着いた。
上履きを脱いでかかとを潰したローファーを履き駅へと向かった。
- 60 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時47分47秒
駅についてホームに並んだ。携帯を見るとまだ六時を過ぎたところだった。
ふぁ…んん、眠い。座れたらいいなあ…。
なんて思ったのが間違いだった。この時間はどうやら帰宅ラッシュらしい。
乗ったのはいいけど周りはおじさんだらけでクサイし暑苦しいし…最悪だった。
もう…こんなことならカラオケ行けばよかったかな…。
軽く溜息をつきドアに寄りかかる。
ふと座席に目をやると、一人の女の子が目に入った。
顔は俯いてて見えないけど髪の毛は真っ黒でサラサラしていてキレイだなあと思った。
あたしとは大違い。少し髪の毛を手にとって見ると枝毛がチラホラ。
あ〜あ、トリートメントしなきゃ…っていうか、あの制服って…。
それはここらでは偏差値がトップレベルのお嬢様学校のものだった。
あたしの学校も一応お嬢様学校だとは言われてるけど…実際はただのバカ女子校だ。
みんな親は金持ちだけどあたしみたいな子達ばっか。
まぁマンションで一人暮らしさせてもらってるのは気楽でいいけどね。
- 61 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時50分26秒
あたし達と違って向こうは“本物のお嬢様”って感じ…品があるっていうか。
特に意味もなくあたしはその子を見続けた。
電車がガタンッ、と揺れた。
彼女は突然がばっと顔を上げると周りをきょろきょろと見回した。
そして窓の外を見るとホッとしたように胸を撫で下ろした。
…もしかして…寝てたの?
今の行動はうっかり寝過ごしたのかと焦った人、そのものの様子だった。
あたしはその子のその行動が何故かとてもおかしくて笑いをこらえるのに必死だった。
ひとみに見られたら「真希って笑いのツボ絶対おかしい」って言われるんだろうなぁ。
その時だった。その子がいきなりあたしの方を向いた。
そして、そんな彼女を見ていたあたしとモロに目が合った。
- 62 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時51分57秒
あっ…ヤバ。
あたしはなるべく不自然にならないように前を向き目を逸らす。
その後ゆっくりと視線だけを戻すと彼女はもうこっちを見ていなかった。
あたしはその時初めて彼女の顔をまともに見た。
あのほっぺた…なんか柔らかそう。プニプニしたら気持ちよさそうだなあ。
ぼんやりと眺めていたら次の駅でその子は電車を降りて行った。
もう降りちゃった…。
そのことを残念に思っている自分がいて、あたしは驚いた。
何考えてんの…女の子相手に。
女子校に通っていたため、女の子同士の恋愛に抵抗はなかったけど。
ひとみなんかどっちもいけるし…さすがうちの学校の人気ナンバーワン。
まぁあたしも女の子に告られたことは何度かあるけど…。
それでも自分はずっとノーマルだと思ってたから、突然のこの気持ちに戸惑っていた。
- 63 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時54分23秒
「はあ…何なんだよ、一体…。」
あたしはマンションについてからもずっとあの子のことが頭から離れずにいた。
さっきまで疲れて眠かったはずなのに、今はちっとも眠くない。
ぼーっとしてても仕方ないからとりあえず何か食べようと思って冷蔵庫を開ける。
「…何も入ってないし。最悪。」
以前はちゃんと自炊していたから、常に何かかしらの食材はあった。
料理は嫌いじゃないし、実はそれなりに自信があったりする。
しかしその冷蔵庫を見て最近はずっと外で食べていたんだ、と気付かされた。
しかも他人に奢ってもらって。改めて考えるとバカだよなぁ、と思う。
実を言うと、そろそろそんな生活にも飽きてきた頃だった。
「買い物行ってこよっ。」
- 64 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時55分20秒
あたしは財布を掴むとマンションの近くのスーパーに買い物に行った。
久々の買い物は楽しくてついついたくさん買いすぎた。
おかげでその日の夕食はちょっと豪華になった。
料理にハマるのもいいかなあと思った。
でも本当は気付いてたんだ。他にハマれるものができたかもしれないってことを。
一回見ただけなのに…また会えるとも限らないのに。
- 65 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時57分17秒
次の日からあたしはひとみ達の誘いを断るようになった。
みんな急にどうしたの、って聞いてきたけど。
まさか…あの子に会うためだとは言えなかった。
適当に言い訳をしてみんなと別れる。
ひとみはいつまでも怪しい、怪しいとしつこかったけど。
自分がこんなにも恋をして一生懸命になるなんて思わなかった。
今までの相手とも本気だったと思うけど、それは勘違いだったのかもしれない。
こんなにもドキドキして相手を想っているのは初めてだった。
しかし、一週間経ってもあの子を見つけることができなかった。
あたしは焦っていた。
いざとなったら、学校はわかるわけだし直接行けばいいんだけど。
ちょっとそこまでの勇気はなかった。
っていうか、あたしなんか行ったら追い出されそう。
やるせない気持ちでこの間と同じ時間、同じ車両の電車を待つ。
- 66 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時58分24秒
電車が来ると、車両の中をじぃ〜っと見る…。
……あ…いた!
彼女は向こう側のドアにもたれるようにしていた。
我先にと駆け込み、彼女の近くまで何とか行く。
一息ついて、おじさん越しに彼女を見る。
うん、やっぱり頭は良さそうだ。真面目そうだし。
でも…ちっちゃいなぁ。なんか守ってあげたいっていうか…。
改めて近くで見てみると、子犬のような目に、やっぱり柔らかそうなほっぺた。
胸がとくん、と鳴った。
次の駅に着きあたしと彼女の間にいたおじさんが降りていく。
奥からも降りてくる人が来て、あたしは彼女の方に追いやられた。
気が付くと、彼女はすぐ目の前にいた。
- 67 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)05時59分22秒
さりげなくあたしも彼女の横に行ってドアにもたれた。
…さて、と……どうしよう…。
あれこれ考えていると電車の揺れで彼女の肩にぶつかった。
…これはこれは…チャンス。
「あ…ごめんね。痛くなかった?」
身長差のせいで覗き込むようになる。なるべく優しく言ったつもり。
「い、いえ。大丈夫です、完璧です!」
「あはっ、何完璧って!ちょーウケるし!」
思ってもみなかった反応にあたしは普通に笑ってしまった。
なんか…和むなぁ、この子。
「あの、そんな笑わないで下さいよ…。」
「えっ、いや…おかしくてさぁ。」
彼女はやっぱり真面目そうで、でも話してみると意外に馴染めそうだと思った。
「ね、名前なんて言うの?あたし後藤真希、高三。」
「あ、えと、紺野あさ美です。この春に高一になりました。」
「ふぅん、紺野か。よろしくね?」
「は、はい!完璧です!」
「あはっ、だから何なの、それ?」
- 68 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時01分01秒
その後も取り留めの無い話ばかりして電車に揺られていた。
しかしその間何故か紺野のほっぺたはうっすらと赤く、俯き気味だったのが気になった。
あたしのこと怖いのかなぁ…いきなり馴れ馴れしく話し掛けてきたりしたから…。
どこかうかない顔の紺野の横顔を見ていると、何を考えているのか知りたくなった。
迷惑だとか思ってるのかなぁ…。
あたしの頭の中はもう紺野のことでいっぱいだった。
そのことに気付き、やっぱりあたしは紺野のことが好きなのかなと思った。
でも…まだ紺野のこと何も知らないのに、好きとか言えるのかな?
また本気で好きだなんて勘違いしてるんじゃないのかな?
いや…本当はわかってる。
女の子相手だからってまだどっかで戸惑ってる自分がいる。
そうやって、下らない意地を張っていたのかもしれない。
でも自分の気持ちをごまかす事が出来ないほど、気持ちが溢れてくる。
あたしは…紺野のことが好きだ。
- 69 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時02分16秒
「後藤さん…どうか、しましたか?」
あたしがゴチャゴチャと考えていると、紺野が心配そうに覗き込んできた。
上目遣いにこっちを見てくる紺野は文句なしに可愛かった。
「ううん、何でもないよ?」
もっと話せたら。自分の気持ちを伝えられたら。
ほんのちょっとの勇気を出せば、きっと出来るはずなのに。
そうは思っても好きな人を目の前にすると、みんな臆病になるんだ。
「なら、いいです。」
そう言ってニッコリ笑う。
無邪気なその笑顔を見てあたしの胸はドクン、と高鳴る。
体は正直なのにな…と思う。
もしこの鼓動が紺野に聞こえたなら、あたしの気持ち…わかってくれるかな?
- 70 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時03分57秒
こんなあたしにとっては夢のような時間もすぐに終わりがやってくる。
次は紺野が降りる駅だ。結局、どうでもいい世間話しかしてない。
恋ってやつは、なかなかうまく行かないなぁ。
「紺野…次降りる駅でしょ?」
何気なく言ったつもりだった。でも紺野はあたしの言葉にすごく驚いたようだった。
「なんで…私が降りる駅、知ってるんですか?」
「えっ?…っと、それは…。」
こんなの適当にごまかしておけばいいのに、あたしは何故かそれができなかった。
プシューっという音が鳴り、ドアが開く。
あたし達がいたほうのドアが開いたため、あたしまで後ろから押され降りてしまった。
そのまま二人、黙っていた。もう電車は発車していた。
- 71 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時05分08秒
「…後藤さんまで降りちゃいましたね。」
紺野はおかしそうにそう言った。
あたしはまだ黙ったまま、紺野を見つめていた。
紺野はそんなあたしに戸惑ったようだった。
「えっと、あの…あたし帰りますね。それじゃあ…。」
あたしは、そのまま後ろを向き帰ろうとする紺野の腕を咄嗟に捕まえた。
「ご、後藤さん?」
「紺野のこと見てたからだよ。」
「…?」
紺野は何だかわからない、という顔をしていた。
「…さっきの答え。」
「ああ。…って、え?…私を…?」
ますますわからない、といった様子の紺野。
- 72 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時06分20秒
そんな紺野を見ていると無性に愛しさがこみ上げてきた。
あたしはもう無意識に、言葉を発していた。
「好きなんだ、紺野のことが。」
不思議と気持ちが落ち着いていて、自分でも驚いた。
紺野は固まったままだった。たっぷり三十秒は待ったと思う。
「…へっ?…」
紺野はようやく理解したようで、一瞬のうちに顔が真っ赤になった。
やっぱり可愛いなぁと思って、そっと近づく。
「紺野、顔真っ赤になっちゃってるよ?」
そう言ってゆっくりほっぺたに手を伸ばす。そして優しく触れてみた。
「…返事聞かせてくれる?」
ほっぺたの手はそのままに尋ねてみる。
「あ…。」
そう呟いた瞬間、紺野の目から涙がこぼれ落ちた。
- 73 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時08分02秒
「え!?ちょっと何で泣くの?あたし何かした?っていうか、あたしの告白嫌だった!?」
紺野の涙で軽くパニックになったあたしはよしよしと頭を撫でながら焦りまくっていた。
「ちが…違うんです…。」
「ん?じゃあどうしたの?」
告白が嫌だった訳ではないと知って、あたしはとりあえず一安心した。
「びっくりしたんです…私も後藤さんのこと、好きだったから。」
「ああそう。あたしのことをねぇ…。」
一回落ち着きを見せたあたしは、その一言でまた頭が混乱しかけた。
「ここここ紺野?今…何て…。」
「好きだったんです、私も。高校に入学してから、電車の中で毎朝見てました。」
「…ええ!?」
ってことは…あたしより先に好きでいてくれたってこと?
「…嘘じゃ、ないですよ?」
「両想いなの?…ほんとに、あたしを好きなの?」
- 74 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時09分31秒
コクン、と頷くその顔は相変わらず真っ赤で。
あたしはまた無意識に手を紺野のほっぺたに伸ばしていた。
今度は両手で包み込むように触ってみた。やっぱり柔らかいんだなぁ…。
しばらくそうしていると紺野がまた泣きそうになって、こう言った。
「…好きな人に触れられるのって、すごく幸せなことなんですね…。」
「紺野……好きだよ。」
東の空は徐々に青みがかってきていた。
夕日はそろそろ沈みそうで、二人の影はどこまでも長く伸びているように見える。
そして…やがて二人の影はゆっくりと、寄り添うように一つに重なった。
- 75 名前:恋、ひとつ。 投稿日:2003年03月28日(金)06時10分30秒
― END ―
- 76 名前:恋、ひとつ。の作者 投稿日:2003年03月28日(金)06時19分24秒
後紺初挑戦でした。色々細かい事は気にしないで下さい。
ほら、誰にだって間違いはあるものですし(汗
てか、自分の立てたスレの小説の更新もろくにせずに何してるんだろう。
一回ageちゃってかなりカッコワルイ。
元ネタっていうか、ケツメの「はじまりのうた」のカップリングの
「門限やぶり」という歌を元に考えました。
これは後紺ソングですよ。後藤さんがちょっと遊び人の感じで(w
でも実はそれ以上に石吉ソングだったり…。
では、ここまで読んでくれてありがとうございます。
- 77 名前:ペット 投稿日:2003年03月29日(土)12時27分33秒
- ども、はじめまして!
後紺だぁー!作者さん、最高でした!はい、もう!!
なんか柔らかい雰囲気な文章で、自分かなり好きです!
ああー、後紺最高…
後紺ラヴな私にとってたまりませんでした…。川o・-・)b
- 78 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時29分12秒
- これでもう、何度目になるんだろう。
「梨華ちゃん、ごめんってば!!」
必死で謝る彼女の姿を見るのは。
「……。」
「ごめんってば!もう絶対しないから!!」
「……。」
付き合い始めて、一年。
「…聞き飽きた。」
「へ?」
ぽつりと私が呟いた言葉に、彼女…よっすぃーは目を丸くする。
「聞き飽きた、っつってんの。」
「り、梨華ちゃん?」
驚くはずよね。だって今まではずっと「仕方ないわね」で済ませて来たんだから。
だけど、もう今日と言う今日は許さない。
付き合って一年目。八度目の浮気。
ここまでされたら、もう良いわよね?耐えなくても。
「もーいいよ。よっすぃーには、愛想が尽きた。」
「…梨華ちゃん…!?」
「別れよう。よっすぃーの望み通りに。」
「ちょっと待ってよ、梨華ちゃん!!」
捕まれた腕を振り払う。
「触らないで。」
「梨華ちゃん、話を…」
- 79 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時29分44秒
- 「聞き飽きた。」
この一年間、浮気がバレる度に聞いて来た言い訳。
もう八回目ともなると、いい加減うんざりだわ。
「もーいらない。浮気するような恋人なんて。」
そう言って、私は指輪を外してよっすぃーに押し付ける。
「ばいばい。」
呆然とする彼女を残して、私はその場から去った。
出会って、付き合い始めて一年。
誰よりも愛しい彼女に、私は別れを告げた。
- 80 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時31分00秒
最初から軽い人だな〜とは思ってた。
だって、付き合い始めたきっかけもナンパだし。
そのナンパして来たヤツが女だってわかった時は…たまげたわ。
「……。」
なんだか、眩暈して来た。
私は、すぐ側にあった喫茶店に入る事にした。
ま、別れた場所からもうかなり離れた所まで来たし。歩き過ぎて疲れたし。てゆーか私、あれから三時間も歩き続けたのね。
席に着くと、ウェイトレスらしき女の子が駆け寄って来た。
「いらっしゃいませ〜!こちら、メニューです。」
「…ホットコーヒーを。」
「かしこまりました〜♪」
ウェイトレスの後姿を見送りながら、思う。
…今の子、どう見ても中学生くらいにしか見えなかったんだけど。
ま、でも…たまにいるからね。中学生くらいにしか見えない高校生とか…。
「お待たせしましたー!!」
コーヒーを持って、ウェイトレスは再び姿を見せる。
テーブルにコーヒーを置き、そのウェイトレスは言った。
「おねーさん、悩んでますね?」
「……。」
- 81 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時31分40秒
- 驚いてウェイトレスを見ると、満面の笑顔を浮かべてこう言った。
「私、小川麻琴と言います!!」
「…は、はぁ。」
「石川梨華さん、ですよね?」
「な、なんで!?」
「私にはわかるんですよ。」
ウェイトレス…いや、小川さんは得意げに言う。
「石川さんは、今さっき恋人と別れたばっかり。」
「!!」
「それも、恋人の浮気が原因で。」
「な…!!」
「ま、仕方ないですよね〜。一年間に八回も浮気がバレちゃ。」
「ちょ、ちょっとあなた!!」
立ち上がった私は、気がついた。
この店、客が私しかいない!!
困惑顔で小川さんを見ると、変わらぬ笑顔でこう言った。
「ようこそ、喫茶「プッチモニ」へ。」
「……。」
「ここは、なんでも望みが叶う喫茶店。探し当てたあなたは超ラッキー!!」
「……。」
「さて、あなたの望みは何ですか?金銀財宝…地位、名誉。望みは全て叶いますよ。」
眩暈がひどくなって来た。
- 82 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時32分30秒
- 「…何の冗談よ。」
「冗談なんかじゃないですよ。」
小川さんはぱちん、と指を鳴らした。すると、テーブルの上のコーヒーが…一瞬にして紅茶に変わる。
「!!」
「私は魔法使い。どんな望みでも、魔法で叶えて差し上げます。あ、お代はいりませんよ。」
「……なんで?」
「私は、ハッピーエンドが見たいだけですから。」
小川さんの笑顔を見ながら、眩暈はどんどん強くなって行く。
…そっか。これは白昼夢か。
「…なんでも、叶うのね?」
夢だと思ったら、なんだか気が軽くなった。
「ええ、叶えます。」
「じゃあ、お願い。恋人が欲しいの。カッコ良くて優しくて、私だけ見てくれる恋人が。」
「了解しました。」
小川さんは嬉しそうに、壁から鏡を外す。
「はい、コレ持って下さい!」
「……。」
「今からここに、あなたの注文ピッタリな恋人が映りますからね〜♪」
夢だとわかっていても…緊張の一瞬。私はごくりと唾を飲む。
「えいっ!!」
小川さんが、どこから取り出したのか…いつの間にか持っていた杖を振る。
鏡に映った私の顔が、ぼやける。そして…だんだんと別の人間の顔を映し出した。
「はい、この人があなたのお望みの方です。」
- 83 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時34分09秒
- 「…!!!」
私は目を見開く。
「ちょ、ちょっと!!これ、よっすぃーじゃない!!」
小川さんを見ると、ただ微笑むばかり。
「…なんでよ!!言ったでしょ!?「私だけ見てくれる人」って!!」
「ええ、条件は揃っています。彼女こそ、あなたの求める方。」
「…冗談じゃないわよ!!!」
私は鏡を床に投げつける。ピシッと、鏡に亀裂が走った。
「もう嫌よ!!苦しむのは!!」
「…苦しむ?」
「そうよ!!私は苦しんでたのよ!!この一年間!!」
思い出して、涙がこみ上げて来る。
「毎朝起きる度、毎晩寝る度に「今日は誰と過ごしてるんだろう」って…そればっかり考えてたのよ!?
まさに地獄だったわよ!!」
「…本当に、彼女の事を愛していたんですね。」
「そうよ!!…本当は、ナンパされる前から好きだったの!!」
小川さんに言ってもどうにもならないって…わかってるんだけど、言わずにはいられない。
「ずっと好きだったのよ!もう、二年も前から片思いしてたの!!
…あの道にいつもいるって知って、それで…遠回りなのにあの道通って…!!
ナンパされて付き合い始める事になった日は、嬉しくて嬉しくて…!!!」
ぐっと、拳を握る。
- 84 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時34分59秒
- 「それなのに、浮気しまくって…!!!裏切られ続けて!!でも、嫌えなくて、その度許して!!
それの繰り返し…もう嫌なの!!だから別れたの!!」
「……。」
「もう、よっすぃーに振り回される事もないんだと思うと、せいせいするわ!!」
「……。」
小川さんの微笑が、寂しそうなモノに変化していた。
「それでも石川さん、まだ好きなんですね?」
「……。」
答えられない。認めたくない。
小川さんは笑いながら、私の頬に触れる。
「大丈夫ですよ。吉澤さんは、石川さんしか愛してません。」
「…なら、なんで浮気なんか…するのよぉ。」
私、こんな年下の子相手に、みっともないくらい泣いてる。でも止められない。
「浮気じゃないんです。あれは、仕事なんです。」
「…は?」
小川さんは申し訳なさそうな笑顔になった。
「…ごめんなさい。実は私…吉澤ひとみの…妹なんです。」
「は!?」
ずざっとあとずさる。
「あ、あの、落ち着いて聞いてくださいね?」
「……。」
「ウチ、家族全員が魔法使いなんですよ。
で、さっき私が石川さんにやったみたいに…迷い込んで来た人の望みを叶えるって仕事で、魔法の修行してるんです。」
- 85 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時37分18秒
- 「……。」
「…で、よくいらっしゃるんですよ。「かっこいい人とデートしたい」って望みのお客様。
ひとみお姉ちゃんは、そーゆーお客様の担当で…。」
「……。」
「ちょっと前に姉から電話が来て…「梨華ちゃんにフラれた」って泣きじゃくってて…。」
「……。」
「…ご、ごめんなさい。」
小川さんは、ぺこりと頭を下げた。
「…私を騙してたって事…?」
「違うんです!!本当の事を知ってもらいたかったんです!!
ひとみお姉ちゃん、いつもいつももうしつこいくらいに石川さんの事しか話さないくらい、石川さんの事好きだから…。」
「……。」
- 86 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時37分50秒
- 「それだけど、守秘義務があるから…浮気だって言われても仕事だって言えなくて。言い訳するしかできなくて。」
おろおろする小川さんは、さっきまで悠然と微笑んでいた魔法使いとは同一人物とは思えない…。
なんだか可愛く見えて来て、私は小川さんの頭をなでた。
「…お姉さん思いなのね。」
ぽっと赤くなる小川さんに、私は言う。
「…わかったわ。もう一度、よっすぃーと話し合ってみる。」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。…今、よっすぃーがどこにいるか、わかる?」
「はい!!」
小川さんが浮かべた笑顔は、よっすぃーそっくりの明るい笑顔だった。
- 87 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時38分27秒
「…何してんの?」
ベンチでうな垂れてるよっすぃーに声をかけると、よっすぃーは弾かれたように顔をあげた。
「り、梨華ちゃん!!」
「…情けない顔しちゃって。」
「…だって…。」
頬に、涙の筋。目は真っ赤。
あーあー。やっぱり袖で拭いたのね。まぶたまで赤くなってる。
私はハンカチを取り出して、よっすぃーの前にかがんだ。
「…もう、馬鹿ね。」
「……。」
よっすぃーの涙を拭いながら、私は苦笑する。
「仕事なんだったら仕事だって、言えば良いのに。」
「!!」
驚いた顔のよっすぃーと、目が合う。
「妹さんに聞いたわよ。全部。」
「ま、麻琴が…!?」
「うん。」
よっすぃーは、また泣き出しそうな顔をする。
「…だって梨華ちゃん、アタシの話も聞いてくれないし…。」
「うん。」
- 88 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時39分03秒
- 「…さ、最初がナンパだったから…軽いヤツとか思われてるのわかってたし…。」
「うん。」
「だけどさ…だけどさぁ。アタシ本当に梨華ちゃんが好きなのに…信じてもらえないし。」
「ま、あそこまで浮気されちゃーね。」
「だから、浮気じゃないんだってば!!」
「うん。」
よっすぃーは、恐る恐る私の頬に触れる。
「ずっとずっと、好きだったんだよ。初めてあの道で見かけてから、ずっと。」
「…私も、よ。」
驚きの表情を見せるよっすぃーに、私は笑顔で言った。
「知ってた?私の家、あの道通ると遠回りになるの。」
「え!?だ、だって、二年前からずっとあの道…!!」
「よっすぃーを見たくて、遠回りしてたの。」
「……!!!」
私はそっと、よっすぃーに抱き付いた。
「…もう、私が誤解するような事はしないでね?私、すごい苦しかったんだから。」
「……うん、そうする。」
- 89 名前:魔法使い 投稿日:2003年04月03日(木)23時39分42秒
- 抱き返してくる手の感触が、すごく愛しい。
「好きよ、よっすぃー。」
「…アタシも、梨華ちゃん大好き…。」
もう、苦しまなくて済むのね。私。
そう考えたら、なんだか涙が溢れて来る。
二人で泣きながら…ちょっと、笑う。
なんだかとっても、清清しい気分になった。
〜FIN〜
- 90 名前:センチメンタル南向き 投稿日:2003年04月04日(金)11時43分11秒
- 日曜日の朝。
「真里ちゃん、今日もあの人の所に行くの・・・」
「うん。行くよ・・・」
「どこか、行くの」
「今日は、行かない。ずっとあの人の家にいて、
お料理したり、洗濯したり、お掃除してあげるの。」
「真里ちゃんのお料理が心配だな〜」
「あ〜、それを言うかな〜、おいらの料理、あの人に
評判なんだぞ〜」
「真里ちゃん・・・どうして、あの人を好きになったの」
「どうしてって言われても・・・」
「20歳も年上で、しかも子持ちのバツいちの人なんか・・・」
「・・・好きになっちゃったんだもん、仕方ないじゃない。」
- 91 名前:センチメンタル南向き 投稿日:2003年04月04日(金)12時01分35秒
「真里ちゃんだったら、他に素敵な人がいくらでもいるのに、
よりによって、あんな人なんかと、もしかして、同情では
ないの・・・」
「同情なんかじゃないよ。それだけは言える。」
「そうなの。私は別に反対してるわけじゃないよ。ただ、
真里ちゃんのことが心配なの・・・」
「・・・ありがとう。あの人が好きなのは、おいらと
価値観が同じなの。年の差なんて感じたことなんて
ないの。あの人も夢を持っていることもわかったし。」
「そうなの。真里ちゃんも夢を持ってるもんね。」
「そうだよ。あの人の夢は、おいらの夢なんだ・・・」
「真里ちゃん、今、幸せなんだ。」
「そう。幸せ!とっても充実してる。じゃ行って来るね。
ミキもいつかわかる時が来るよ・・・」
終わり。
- 92 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時33分52秒
- 2000年四月の話・・・・
「今日は親睦会ちゅーことで飲むぞ、食べるぞ、騒ぐぞ!」
桜の木の下で裕ちゃんが騒ぎながら、メンバー全員に促した。
何で花見をしているのかというと、この間加入した4期メンバーとの親睦を深めようと裕ちゃんが企画したものだった。
と、いっても裕ちゃんは企画しただけで料理を作ったのは圭織、圭ちゃん、やぐっつあんとごとー、
飲み物はなっつあんといちーちゃんが準備したんだけど・・・・
「ほら、何遠慮してんの?食べへんやったらウチが全部食べちゃうで」
裕ちゃんがそういうといちーちゃんが食べ始めた。
「モグモグ・・・・おっ、美味しいじゃん。ほら新メンバー達も早く食べな」
いちーちゃんに言われ新メンバー達は食べ始めた。
- 93 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時35分04秒
- 「このオニギリおいしーれす。誰が作ったのれすか?」
「ん、圭織だよ。このオニギリは圭織のお母さんに教わったんだ」
「へーそうなのれすか」
辻は美味しそうにパクパクと食べている。
「グッ!?」
「慌てて食べるから、ほらこれ飲みなよ」
ウーロン茶が入ってるコップを差し出すと辻は慌てて飲みほした。
「はあ〜ビックリしたれす」
辻は圭織に向かって笑った。
圭織も笑った。
- 94 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時35分54秒
- 「保田さんってお料理上手なんですね」
「え?これくらい誰だって作れるでしょ?」
圭ちゃんは自分が作ったコロッケを指差した。
「石川は料理できないんです。いつも失敗ばかりなんです」
「それならあたしが料理を教えてあげるわよ」
「ほんとですか?」
石川さんがパッと笑顔になった。
「でも、最初にダンス、歌・・・いろんな事を教えてから、その後に料理を教えるわよ」
「はい!よろしくお願いします!!」
「キリキリ行くわよ!」
圭ちゃんは石川さんの背中をバシッと叩いた。
- 95 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時36分41秒
- 「・・・・・・・」
「吉澤〜、な〜に緊張してんの」
吉澤さんが何も話さないので、やぐっつあんが緊張ほぐすように話しかけた。
「は・・・何か私がココにいていいのかな・・・って」
「何言ってんの(笑)吉澤だって娘。なんだからココにいたってい〜んだよ」
「はあ、そうなんですけど・・・テレビで見てた人が目の前にいるから・・・・」
やぐっつあんは少し考えてから力強く吉澤さんに言った。
「よし決めた!まず最初に矢口のする事は吉澤の性格を変える事だ!」
「私の性格を?」
「吉澤は歌とかダンスとかは結構出来ると思うのね。だけど、内気の性格を直さないと苦しむ事になるよ」
やぐっつあんは真剣な表情で吉澤さんに言った。
吉澤さんもやぐっつあんの話に真面目に聞いていた。
- 96 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時37分15秒
- 「後藤さ〜ん、このドラ焼き今まで食べた中で1番美味しいです。どこで買ったんですか?」
「これ?ごとーが作ったんだよ」
ごとーもドラ焼きを食べながら加護に言った。
「後藤さんが作ったんですか!?」
「うん、簡単だよ。ホットケーキ作ったことある?それに似たような感じで作れるんだよ」
「凄いなぁ・・・。後藤さんは歌もダンスも出来て、料理も作れて・・・何でも出来る人なんですね」
加護が俯いて呟く様に言った。
「それは違うよ。最初ごとーは全然できなかったんだよ」
「そうなんですか?」
「うん、でも教育係のいちーちゃんが何も知らなかったごとーを一生懸命教えてくれたんだ」
ごとーは加護に娘。に入ったばっかりだった頃の事を話した。
「ごとーも一生懸命加護に教えるからよろしくね」
「はい!よろしくお願いします!!」
加護は元気いっぱいに挨拶した。
- 97 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時37分47秒
- 一時間後、新メンバー達と打解けてきた頃、ごとーはいちーちゃんがいなかった事に気付いた。
「いちーちゃんどこに行ったか知らない」
ごとーは裕ちゃんとなっつあんに聞いた。
「そういえばいつの間にかいなくなってたな」
「その辺を歩いてるんでないの?」
「・・・心配だからごとー探してくる」
加護を圭織にまかせてごとーはいちーちゃんを探しに行った。
- 98 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時38分27秒
- 「いちーちゃああああん!どぉぉぉぉこぉぉぉぉ!!」
ごとーはいちーちゃんを叫んだ。
花見の場所が裕ちゃんが言ってた穴場で、
花見客が少ないとはいえごとーの叫び声で花見客はジロジロとごとーを見た。
15分ほど歩いただろうか、大きな桜がごとーの視界に入った。
その桜の下でいちーちゃんは目を閉じてパーカーのポケットに手を突っ込んで立っていた。
「いた・・・いちーちゃああああん」
ごとーはいちーちゃんを呼んだ。
だけどその直後ぶわっと風が吹いた。
風と一緒に桜の花びらが舞い散って、花びらがいちーちゃんを隠し始めた。
いちーちゃんが桜に飲み込まれそうで・・・・
ごとーは走っていちーちゃんを抱きしめた。
桜がいちーちゃんを連れて行きそうだったから・・・・・
- 99 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時39分14秒
- 「な・何だ〜!?」
いちーちゃんはビックリしてごとーをつかんだままドスンと倒れた。
「後藤か?いきなり抱きつくなよ。ビックリすんじゃん・・・・後藤、なした?」
いちーちゃんの上でピクリと動かなかったごとーを変に思ったいちーちゃんは優しく話しかけた。
「んっく・・・・・ひっく・・・・」
「な〜んで泣いてんだよ・・・どうしたんだ〜」
「なんか・・・ひっく・・・ちーちゃ・・・がどっかに・・・すん・・・行っちゃい・・・そうで」
「なんだそりゃ?まあ娘。脱退したら留学すっから留学先に行っちゃうけど」
「そんなんじゃ・・・ひっく・・・ないの・・」
いちーちゃんは起き上がるとごとーを抱きしめた。優しくごとーの頭を撫でている。
- 100 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時40分20秒
- 「落ち着いたか?」
いちーちゃんはハンカチを出して、ごとーの涙を拭いてくれた。
「ありがといちーちゃん」
「まったくビックリしたよ。ココで目をつぶってたら後藤に抱きつかれて、その拍子に倒れて、後藤が泣いてんだモノ」
いちーちゃんは苦笑してごとーに言った。
「なんかね・・・桜がいちーちゃんをどっかに連れて行っちゃいそうで・・・」
「ばーか、そんなワケないだろ?市井はここにこうして後藤を抱きしめているんだし」
いちーちゃんはもう一度ごとーを抱きしめた。
いちーちゃんに頭撫でられているだけでごとーの不安は小さくなっていく・・・・。
- 101 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時41分24秒
- 「そうだよね、いちーちゃんはここにいるよね」
「そうだよ。市井が留学に行って会えなくなっても、毎日メールするし、電話・・・は高いから週1でする。
後藤が寂しくない様に市井は一生懸命努力する・・・・だって・・・後藤が好きだから」
「いちーちゃん・・・」
いちーちゃんの言葉が優しくてごとーはまた泣いてしまった。
「ごとーも・・・ひっく・・・いちーちゃんが・・・好き」
「ありがと」
いちーちゃんは笑いながらごとーにキスをした。
キスした後、いちーちゃんは頬を赤くしながら言った。
「寂しさに負けないおまじない」
「いちーちゃん、大好き!!」
ごとーはいちーちゃんを力いっぱい抱きしめた。
- 102 名前:桜が開花したらしいので・・・・ 投稿日:2003年04月06日(日)03時43分05秒
- そして5月21日、いちーちゃんは娘。脱退し留学へ旅立った・・・・
その半年後、新聞に『市井紗耶香ー留学先で行方不明!死亡か!?』の記事が出回り・・・・
ごとーは悲しみに襲われた・・・・
終
- 103 名前:和尚 投稿日:2003年04月06日(日)03時44分41秒
- 和尚でした。
一応いちごま・・・・
- 104 名前:たんぽぽ 投稿日:2003年04月06日(日)18時38分35秒
- 水の記憶という言葉があります。
生まれるてくる前、母親の胎内の羊水の記憶です。
ようやく喋り始めた子供のうち、10人に1人ぐらい、
まだ胎内にいる時の記憶がある子供がいるそうです。
「お母さんが、出ておいで言ったから、夢中で出て来た
んだよ・・・」
と、出産の状態を話す子もいて、驚きです。
他に、小さな子供には妖精が見えると言われます。
妖怪のひとつ、座敷わらしも小さい子だけに見えると
言われます。
そんな子供も、大きくなるにつれて胎内の記憶もうすれ、
妖精も見えなくなっていきます。
しかし、稀にまだ妖精が見える人がいます。
多くは、錯覚や幻覚なのですが、そうでない人もいます。
13歳のあさ美と、二人の姉あゆみ、めぐみは山へ
ハイキングに行った。
- 105 名前:たんぽぽ 投稿日:2003年04月06日(日)18時53分45秒
- 二人の姉は、あさ美の制止もきかず、どんどんと山奥へ
入って行きました。
しばらくして、案の定、道に迷ってしまいました。
蒼くなった姉たちは、やみくもに歩き回りましたが、
ますます、わからなくなるばかりです。
疲れ果てた姉たちは、座り込んで泣き出す始末。
あさ美は、落ち着いてあたりを見回した。
太陽の位置で、方角を知ろうとしたが、あいにく、
雲が出てきて、太陽を隠してしまう。
時間だけが過ぎていき、ぐずぐずしていると暗くなって
しまう。山の中で闇をむかえるのは、子供にとって、
恐怖としかいいようがない。
姉たちは、座り込んで動こうともしない。
飲み物や食べ物は、ほとんど無くなっていた。
- 106 名前:たんぽぽ 投稿日:2003年04月06日(日)19時07分58秒
- あさ美は、非常用に持っていたチョコレートを二人の
姉に食べさせて、何とか歩けるようになった二人を
せかせて歩き出した。
先頭に立ったあさ美は、注意深くあたりを見回して
進みだした。
山の中には、二つの道があると言われている。
けものが歩いた、けもの道と、人間が歩いた人道である。
あさ美は、なにやら草木が倒れていて、道らしきものを
見つけた。
しかし、よく見ると、なにやら動物の毛が落ちているのを
発見する。
がっかりして、あたりを見回していた時だった、
なにか、羽根をつけた虫の様な物があさ美の前をよぎった。
よく見ると、それは銀色の羽根をつけた小さな女の子だった。
- 107 名前:たんぽぽ 投稿日:2003年04月06日(日)19時20分39秒
- その妖精のような物は、光ながら宙を飛んでいく。
あさ美は、それを追って歩き出した。姉たちもあさ美の後を
追って歩き出す。
やがてあたりが暗くなる中、、あさ美は必死に妖精の
後を追いかけた。
やがて、道に出た。明らかに人が通る道だった。
姉たちが喜びの声を上げた。
あさ美は、妖精の姿を探した。
ふと、ポツンと光る物を見つけた。
近づいてみると、そこには、一輪のたんぽぽが咲いていた。
あさ美は、たんぽぽの前に膝まづくと、
「ありがとう・・・」
と、たんぽぽの妖精にお礼を言った。
終わり。
- 108 名前:恋をしちゃいました! 投稿日:2003年04月07日(月)10時36分24秒
- 友達の紹介であの人にあったのは
今から2ヶ月前のこと。
最初は少し怖い人かと思ったけど
話してみるとすごくおもしろくていい人
そして真面目な人。
メル友から始まって
今日は2人きりっで会うはじめての日
初デート。
歳は私が1つ上でもあの人のほうが大人っぽいかな。
ここは原宿。ちょうど12時
お昼どきってこともあって人がいっぱい
あの人どこにいるのかな?
- 109 名前:恋をしちゃいました! 投稿日:2003年04月07日(月)10時37分07秒
- そんなとき、携帯がふるえだして
メールが来たみたい。
『後ろにいます』
振り返ればあの人の笑顔
恋にならないかなぁ?
恋になればいいのに。
『楽しいですね』
暗記してるあの人のアドレスに送信。
- 110 名前:恋をしちゃいました! 投稿日:2003年04月07日(月)10時37分43秒
- あの人といて今気付いた
私って無口なんだ。
あの人がせっかく話してるのに
なんもいってあげられない
あの人が言ってくれることにはうなずいて
その上手な冗談には笑ってばっかり。
いろいろ迷ったあげくラーメンを一緒に食べて
大好きな映画も一緒に見ました。
味も内容も全然覚えてないけど…
- 111 名前:恋をしちゃいました! 投稿日:2003年04月07日(月)10時38分18秒
- これって恋なのかな?
これって恋なんだ。
でもあの人はどうなんだろう?
もう楽しいデートもお終い
私はあの人に手を振って後ろを向く。
携帯がふるえた
毎日見ている人からのメッセージ
『君が好きです』
END
- 112 名前:某作者 投稿日:2003年04月07日(月)10時42分24秒
- 自分のと作風かけ離れてるんで
ここにのっけさせてもらいました。
この曲好きだったんで。思いつきで
いしよしに当てはめて書きました
- 113 名前:ONE STEP 投稿日:2003年04月08日(火)16時40分02秒
- 「里沙!少しは片づけなさい!ホントだらしないんだから、
里沙も、もうすぐ3年生なんだから、しっかりしてよ・・・」
「あ〜、うるさいな〜、いい加減にしてよ〜」
里沙は、そう言って自分の部屋に入った。
ベッドに寝ころがると、さっそく、携帯を取り出し
メールが来てないか、確かめる。
「アッ!先輩からメールが来てる!」
『里沙へ、この間の試合は頑張ったね。里沙はちいさいけど、
動きが速いから、すごい!これで、僕も安心して卒業出来ます。』
それは、バスケ部の先輩からだった。
里沙がひそかに憧れている先輩だった。
「あ〜、先輩、嬉しいでちゅ〜!!」
里沙は携帯を抱きしめた。
- 114 名前:ONE STEP 投稿日:2003年04月08日(火)16時58分56秒
- 次の日、授業が終わり、部室に行くと先輩が顔を出していた。
「吉澤先輩・・・」
女子部員に囲まれていた吉澤先輩は、里沙を見つけると
声をかけてくる。
里沙は思わず顔を赤らめ、下を向いた。
「あ、里沙、頑張ってるかい・・・」
「ハイ・・・」
里沙は、先輩の前だと何も言えない自分が恨めしかった。
練習が終わり、帰ろうとした時、吉澤先輩を見かけた。
先輩は、テニス部の石川先輩と話していた。
二人は、とても楽しそうに笑顔で話している。
- 115 名前:ONE STEP 投稿日:2003年04月08日(火)17時13分56秒
- 「やっぱり、あの二人、つき合ってるって、ホントなんだ。」
振り返ると、麻琴がいた。
「ねえ、里沙なんか、吉澤先輩に憧れてんじゃないの・・・」
「そんなこと、ないよ!」
里沙は、その日、どうやって家に帰ったか、全然覚えて
いなかった。
部屋に入って、カギをかけると、ベッドに突っ伏した。
自然に涙がこぼれ落ちる。
・・・そりゃ、石川さんは、綺麗でテニスも上手い。
自分はと言えば、バスケ部にしては、チビで、頑張っている
つもりだけど、下手かもしれない・・・。
里沙は、涙をぬぐって、天井を見上げた。
昨日よりも、今日。今日よりも、明日。
きっと、吉澤先輩も感心するような女の子になってやる・・・。
終わり。
- 116 名前:Motto 投稿日:2003年04月10日(木)16時58分35秒
- オーデションに落ちた後、彩は実家へ帰ると言って
この部屋から去って行った。
ただでさえ何も無い部屋が彩がいなくなったことで、
ますます空虚になり、俺は自堕落な毎日を送っていた。
彩の夢を思った。あんなにも歌手になることを夢見て
いた、彩。俺にだって夢があった。
漫画家になる夢が。 毎日コツコツと漫画を書き、
折を見ては出版社へ持ち込みをして来た。
しかし、ひとつとして、ものにならなかった。
実家からのわずかな仕送りやアルバイトで食いつないで
来たが、もう気力が失せていた。
あらためて、彩を失ったことが俺をどん底に落としていた。
- 117 名前:Motto 投稿日:2003年04月10日(木)17時14分12秒
- そんなある日、テレビを見ていて俺は仰天した。
そこには、5人の女の子が並んで、CDを手に持ち、
声を張り上げていた。
モーニング娘。・・・。
なんと、1人は彩だった・・・。
俺は思わず起き上がり画面を見つめた。
5万枚の自分たちのCDを売ることが出来れば、
メジャーデビュー出来る・・・。
5人の女の子たちは、見事達成し、メジャーデビューを
果たした。
少しずつ、自分の夢を果たし行き輝いていく彩を
見ていて、俺は複雑な思いだった。
結局、彩の夢の障害は俺だったかもしれない。
俺からの足枷から解放されて、彩は夢を果たしたのだ。
- 118 名前:Motto 投稿日:2003年04月10日(木)17時34分36秒
- そんなある日、俺はこの都会から足を洗うことを
考えていた。
ここに俺の居場所はなかった。
年明けのまもないある日、突然の訪問者があった。
彩だった・・・。
自堕落に寝ていた俺の側に、彩は腰を降ろした。
彩は、希望に満ちて輝いて見えた。
「・・・なんで来たんだ。」
「帰って来たのよ・・・」
「なにをバカなことを、まさかデビューは・・・」
彩は首を振った。
「1月28日にデビュー曲のシングルCDがでるの・・・」
「俺の惨めな姿を見物に来たのか・・・お前はこんな所に
来てはいけないんだ。」
彩は、持っていた大きなバックを開けて、衣類を出し始めた。
「早く帰れ!こんな所を他人に見られたらどうする!
今、お前は一番大事な時期なんだ・・・」
彩は、寝ている俺の首に腕をまわした。
- 119 名前:Motto 投稿日:2003年04月10日(木)17時53分22秒
- 「高層ビル並ぶ都会でも、夢は叶うと教えて
くれたのは、あなたよ・・・」
「・・・一度は、お前の夢の邪魔をした俺を
許してくれるのか・・・」
「もう忘れたわ。やっぱりあなたを愛しているから。
今度は、あなたの夢を果たす番よ・・・」
俺は、彩と娘。たちの夢のストーリーを漫画にして、
漫画家としてデビューを果たし、俺の夢を実現した。
2年後、彩は娘。を卒業して俺と結婚した。
「後悔はしないのかい・・・」
「夢を果たして、少しも悔いは無いわ。」
彩は俺の子供を宿していた。
終わり。
- 120 名前:比較的な恋愛 投稿日:2003年04月12日(土)18時10分20秒
( ^▽^)<ごっちん、好きだよ。
( ´ Д `)<…ん。あたしも…。
( ^▽^)<「あたしも」じゃなくてちゃんと言ってよう。
( ´ Д `)<ええ〜。
( ^▽^)<言ってくれないの?
( ´ Д `)<や、えーと愛してる、よ?(恥ずかしいって!)
( ^▽^)<本当に?(疑問形ってどういうこと?)
( ´ Д `)<愛してるよ、比較的(つまり世界の誰よりも)
( ^▽^)<ひか……これからもずっとあたしが好き?(比較的ってどうry)
( ´ Д `)<愛してるよ、比較的(つまり昨日より今日、梨華ちゃんのこと…)
( ^▽^)<ひか……本当にあたしが好き?(比較的ってry)
( ´ Д `)<ん。むしろ愛してるよ、比較的(好きっていうより、もう愛なんだ)
( ^▽^)<………(どうしてだろう、泣きたい)
( ´ Д `)<………(今日は恥ずかしいこといっぱい言っちゃった)
〜 END 〜
- 121 名前:よっすぃー誕生日おめ! 投稿日:2003年04月13日(日)00時42分18秒
- 「あれ?よっすぃー、どこ行くの?」
「どこって……通しリハじゃん?」
ステージに続く階段を駆け降りようとしたら、耳慣れた声に呼び止められた。
振り向いて見上げると、梨華ちゃんが怪訝そうに眉を寄せている。
「その前に打ち合わせがあるから、楽屋で待機って言われなかったっけ」
「え、うっそマジで?」
慌てて引き返して、今降りた所を一段飛ばしで駆け上る。
梨華ちゃんが立っている踊り場に、たん、と飛び乗って。
「あ」
その感覚。
- 122 名前:よっすぃー誕生日おめ! 投稿日:2003年04月13日(日)00時43分12秒
- 「……どしたの?」
「や、今の感じ」
追いついた。立ち並んだ。その感じ。
それがとても、何かに似ている気がした。
4月12日。
- 123 名前:よっすぃー誕生日おめ! 投稿日:2003年04月13日(日)00時44分20秒
- 不意に足を止めて笑顔になったウチを見て、梨華ちゃんは首を傾げる。
「よく分かんないけど、早くしないと遅れるよ?」
先に歩き出した華奢な背中を一瞬だけ見つめて、それから大きく踏み出して隣に並ぶ。
先に一つ歳を取る相手にはたぶん分からない、ちっぽけな充足感。
18歳になったことを嬉しいと思った記念の瞬間。
-END-
- 124 名前:the little ange 投稿日:2003年04月13日(日)21時57分24秒
- 何が言いたいんだろう
何を伝えたいんだろう
分からない
分からないけどきっと、この気持ちは本当
本当だから、私は今ここに立っている
光り輝く雲の上で、ただあなただけを待って
でも知ってる それが全て空想なんだってこと
あなたはここへは来てくれない
ここはあなたが来れる場所じゃない
そう、ここはあなたのような天使が来れる場所じゃない
ここは私のような…堕落者が来る場所
だから全ては妄想
本当は、いつも雲の上で笑ってるあなたに伝えたかっただけ
いつかこの想いが届けばいい…でも、それはどこまでいっても、夢の話だから
だからお願いです そんな顔で笑わないで下さい
決して届かないこの場所からあなただけを見てる私を、これ以上苦しめないで下さい
- 125 名前:the little angel 投稿日:2003年04月13日(日)21時58分07秒
- ………
「吉澤ぁー。さっさと歩け。早く行くぞ」
「あ、はい」
でも、やっぱり私は待ってます
いつも希望と勇気を与えてくれたあなたに、いつか出会えるまで…
その日まで、私は待ってます
だからその時には言わせて下さいね
あなたの顔を見て、面と向かって言えるように、毎日練習してるんですよ
いつもおまじないのように心で唱えてる言葉
偶然あなたの名前を知ったあの時以来、毎日のように呟いてる言葉
「安倍さん、大好きです」
FIN
- 126 名前:あたしと彼女の『好き』の量 投稿日:2003年04月17日(木)09時19分11秒
- あたしの方が先に惚れて。
あたしの方から告白して。
だから、わかってる。あたしの『好き』の量の方が絶対多い。
重さにしたら、梨華ちゃんの『好き』が100gなら…あたしの『好き』は100t。
長さにしたら、梨華ちゃんの『好き』が50cmなら…あたしの『好き』は50km。
・・・・・・重々承知してるけどさ。
でも、この仕打ちは酷いんじゃない?
「…ヨッスィー、ごめんってば…。」
申し訳なさそうな梨華ちゃんから、あたしはぷいっと顔を逸らす。
ここは、梨華ちゃんが一人暮らしをしてるマンション。
「怒らないでよ、ね?せっかくのお誕生日祝いなんだから。」
「・・・・・・今日は誕生日じゃないしィー。」
「…だ、だから…ごめんてば。」
困りきった顔も可愛い…って、いや、そーでなくて。
あたしは怒ってるんだ。
あたしの誕生日は四月十二日。
今日は四月十七日。
「・・・・・・キレイサッパリ忘れてたクセに。」
梨華ちゃんの眉が八の字になる。
そう。今年のあたしの誕生日を、この最愛の恋人は忘れ去っていたんだ。
- 127 名前:あたしと彼女の『好き』の量 投稿日:2003年04月17日(木)09時19分44秒
高校の入学式の日に校庭の桜の木の下で出会った。
最初は『なんて甲高い声したヤツだろう』くらいにしか思ってなかったんだけど…だん
だん、その仕種や表情があたしの心を捉えて離さなくなった。
好きで好きでたまらなくなって…その当時、梨華ちゃんには彼氏がいたんだけど…玉砕
覚悟で告白した。
告白してる最中は、体中の震えが止まらなかった。
OKもらった時は、貧血起こした。
「…ヨッスィー、本当にごめんってばぁ。」
ふてくされるあたしに、梨華ちゃんの涙声が聞こえた。
う・・・・・・っ!!か、可愛い…!!
いや、いかんいかん。ここで許しちゃいかん。
だってさ、あたしは梨華ちゃんの誕生日、ものすごい勢いで祝ったんだよ?『これでも
か!これでもかッ!!』ってくらいにロマンチックに演出したりしてさぁ。準備には一ヶ
月かけたんだよ?
…まぁ、梨華ちゃんにそこまでしろ、とは言わないけどさぁ…それなのに忘れてたなん
て、超酷くない?
「…良いよ、別に。」
梨華ちゃんの顔を見たら、絶対許しちゃう。
それがわかってるあたしは、クッションを抱えてごろりとベッドに横たわる。もちろん、
梨華ちゃんには背を向けて。
- 128 名前:あたしと彼女の『好き』の量 投稿日:2003年04月17日(木)09時20分48秒
- 梨華ちゃんがあたしの誕生日を思い出したのは、今朝の朝の二時。
慌ててメールをくれたけど…その頃には、あたしのヘソは極限まで曲がっていた。
「・・・・・・ヨッスィー、ってばぁ。」
梨華ちゃんは静かに、あたしの近くに腰掛けた。
「本当に…ごめんね?わたしの時はあんなにやってくれたのに…。」
その言葉に、なんだかすごく情けなくなって来た…。
「・・・・・・。」
無言を返す。
…自分がすごく子供じみた事してるってわかってるよ?
本当だったら平気な顔で『気にしてないよ』くらいは言いたい。だけど…こうせずには
いられないんだよ。
あたしの今年の誕生日は、土曜日だった。学校は休み。
友達やクラスメイトから、祝いの電話やらメールやらがじゃんじゃん入る中…あたしは
ずっと、梨華ちゃんからの電話やメールを待ってたんだ。
・・・・・・梨華ちゃんから何も言って来ないまま、十三日になった時のあの落胆…。
言葉ではどう表現して良いかわからない程ヘコんだ。
「・・・・・・ぐすっ。」
はっと気付くと、梨華ちゃんが鼻をすする音が聞こえた。
- 129 名前:あたしと彼女の『好き』の量 投稿日:2003年04月17日(木)09時21分23秒
- 条件反射でバッと起き上がり、ギュッと抱きしめる。
「…よ、ヨッスィー!?」
驚く梨華ちゃん。だけど、あたしの方がよっぱど自分の行動に驚いてる。
・・・・・・ホンットに条件反射だよ…。
「・・・・・・はぁ。」
ため息を吐く。
わかった。わかりましたよ。
良いよ別に。スカーン!と忘れてても。あたしの『好き』の量のが多くても。
ワガママ言わないよ。…側にいてくれるだけで良いよ。
離れて行かれちゃったらあたし、多分もう生きて行けないから。
「…梨華ちゃん。泣かないで。」
「ヨッスィー…うっく。」
誕生日から五日過ぎてからでも、思い出してくれただけで十分じゃん。
・・・・・・本当は、違うけど。あたしが梨華ちゃんを好きなのと同じくらいあたしを
好きになって欲しいけど。
…でもまぁ、ソレはあたしのワガママだし。
「ご、ごめんね?ヨッスィー…本当に…。」
「いや、あたしも大人気なかったよ。」
「ううん、わたしが忘れちゃってたのがいけないのぉ…。」
梨華ちゃんはぎゅっと抱き付いて来る。
- 130 名前:あたしと彼女の『好き』の量 投稿日:2003年04月17日(木)09時22分03秒
- そんな梨華ちゃんの耳元で、囁く。
「…大丈夫だよ。梨華ちゃんだったら、全てが許せるから。」
「ヨッスィー…!!」
「大好きだよ、梨華ちゃん。いや、愛してるってゆーのか?こーゆーのは。」
「ヨッスィー!!」
梨華ちゃんはあたしの胸に、頬擦りをした。
それを感じながら、あたしは思う。
あたしの腕の中にいてくれるだけで、今は良いから。
いつかあたしの事、本気で愛してね?
「…ヨッスィー大好き!!」
今はそれで良いよ。
でもいつか、『愛してる』って言ってね?
「…来年は忘れないでね?」
「・・・・・・がんばる。」
どうやら、努力が必要らしい。
…い、今はそれで良いもん。
だけど、いつか…いつか絶対、あたししか見えなくしてやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
心の中で拳を握った、四月十七日の夕方。
…先は…ちょっぴり長そうだ…。
おわれ。
- 131 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時45分26秒
ベッドに並んで座り、テレビを見る。
こないだの、番組の企画で宝塚と競演したヤツだ。
…それを見ながら、だんだんと隣に座る彼女の機嫌が悪くなって行くのがわかる。
「り、梨華ちゃん?」
「なあに?ヨッスィー。」
「・・・・・・なんでもない。」
ウチは黙って、ジュースの缶に口をつけた。
うーむ。二人っきりでいるのにウチを『ヨッスィー』と呼ぶとは。なんか知らんが、めっ
ちゃ怒ってるなぁ。
「・・・・・・や、やっぱさすがだよねー!宝塚の人たち!!」
「そうね。」
「なんてゆーの?本物の男みたいでさぁ。」
「…そうね。」
「でもさ、いいよねー高橋。リフトとかしてもらっちゃってさぁ。」
そこまで言って、ウチは言葉を切る。何故なら、梨華ちゃんがいきなり立ち上がった
から。
「り、梨華ちゃん?どしたの?」
「・・・・・・わたし、保田さんのお部屋に行く。」
「な・・・・・・ッ!!?」
ウチは焦った。
- 132 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時46分23秒
- 「なんでだよ!!ちょ、ちょっと待ってよ!!」
スタスタと部屋を出て行こうとする梨華ちゃんの腕を慌てて掴む。
なんで!?しかも保田さんって…危険過ぎるよ、梨華ちゃん!!
「離して。」
「だから、なんでだよ!?」
ぐいっと引き寄せると、梨華ちゃんの顔が見えた。
梨華ちゃんは、泣いていた。
「・・・・・・な、なんで泣いてんの!?ウチ、なんかした!?」
「…ひとみちゃんの馬鹿ぁ!!」
ワケわかんねぇよ!!
なんでいきなり保田さんのトコ行くとか言い出して、しかも泣いてて、更にウチが馬鹿
なんだよ!?
「梨華ちゃん、落ち着いて!?何でそんな泣いてるのか、ウチにはサッパリだよ!?」
「なんでサッパリなのよぉ!!馬鹿ぁ!!」
ここまで来ると、さすがのウチもカッティーンと来ましたよ?
「…なんだよ!!もうワケわかんねぇよ!!」
- 133 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時47分09秒
- 「なんでワケわかんないのよぉ!!」
「だって…ワケわかんないじゃん!!」
「もう、嫌いっ!!ひとみちゃんなんて大嫌い!!」
なんだとぉ!?
そ、そんな事言われちゃったらウチ、マジで傷つくんだからなっ!?
「…あーあー、わかりましたよっ!!嫌いなんだったらしょうがないね!!さっさと保田
さんの所でもどこでも行けば!?」
言っちゃってから、しまった、と気付く。
がばっと梨華ちゃんの方を振り向けば、梨華ちゃんは拳を握り締めてはらはらと大粒の
涙を流していた。
・・・・・・まずった…。
「…うああああああああ、もう!!」
ウチは頭をがしがしとかいて、梨華ちゃんに近寄る。
「・・・・・・ごめん。言い過ぎた。」
「…うひくっ…ふえっく…。」
必死に止めようとしてるような泣き声。
梨華ちゃんのこんな泣き声聞くのは久しぶりだ。たしか前に聞いたのは、ごっちんの卒
業ライブの時だった。
ウチはなんだか、胸が締め付けられるように痛くなって…梨華ちゃんを抱きしめる。
「ごめんってば…泣き止んで。」
「うひっく…あうぅ…ら、らってぇ…き、嫌われちゃうぅ…」
- 134 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時47分48秒
- 「は?誰に?」
「ひっ、ひとみちゃん、怒らせちゃってぇ…うひっ、き、きら、嫌われちゃうよぉ…。」
「何言ってんだよ。」
抱きしめなおして、耳元で囁く。
「大好きだよ、梨華ちゃん。ウチが梨華ちゃんを嫌うなんて、ありえないから。」
「ご、ごめんなさ…、ごめんなさいぃ…わ、わたし…。」
ようやく抱き返してくれた梨華ちゃんは、か細い声でこう言った。
「だって…高橋がうらやましかったんだもん!!」
・・・・・・はい?
「ひ、ひとみちゃんにテレビの前で口説かれるなんて…宝塚の人と取り合いされるなんてぇ!!
た、高橋ずるいよぉ…!!」
それを聞いた時…ウチはなんだか、笑いがこみ上げて来てしまった。
「…あはははははは!!!それであんなに機嫌悪くなってたの!?」
「わ、笑わないでよぉ…。」
泣き声のまま、ウチの腕の中の梨華ちゃんは言う。
「でもさぁ、アレ一回きりじゃん?」
「・・・・・・それでも、嫌だったの。」
「それなら小川なんかどうなるのさ?ミスムンが最新曲だった時は、毎日のように小川に
アレやってたんだよ?」
「・・・・・・決まってるじゃない。あの頃は毎日小川に嫉妬してたわよ。」
- 135 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時48分29秒
- 「マジで!?…プッ!」
「ちょ、ちょっと!!なんで笑うのよ!!」
決まってるじゃん。梨華ちゃんが可愛いからだよ。
そう言いたかったけど、笑うのにいっぱいいっぱいで言えなかった。
・・・・・・ひとしきり笑った後、あたしは梨華ちゃんを離した。
そして手首に巻いていたゴムで髪を一つに束ね、前髪を上げる。
更にジャージの上を脱いで、準備オッケー。
梨華ちゃんの手を取る。
梨華ちゃんのきょとんとした目を覗き込んで、ウチは口を開いた。
「OH!心が痛むというのかい?
う〜ん、BABYそれは恋…恋煩いさ。」
「ひ、ひとみちゃん!?」
驚いた顔の梨華ちゃんに、目元が緩む。…いかん。あくまで真剣に。
「きっと、僕と出会ったから…君は恋をしたんだね。
さあ、もう大丈夫、僕はここにいるよ」
「・・・・・・。」
「…踊る?」
「・・・・・・いい。」
梨華ちゃんは小さくそう言って、ウチに抱きついて来た。
- 136 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時49分07秒
- 「ありがと、ひとみちゃん…。」
「喜んでもらえた?」
「うん!!すごーく!!」
梨華ちゃんは眩しいくらいの微笑を浮かべて喜んでくれた。
…ウチもやった甲斐があった、ってモンだ。
笑みを交わし合い、キスをする。
そうしてる内に、梨華ちゃんは赤い顔でポツリと言った。
「・・・・・・やっぱりわたし、ミスムンではひとみちゃんの相手役じゃなくて、良かった。」
「え!?なんで!?」
ひとむ、ちょっとショックなんですけど…!!
そんなウチに、梨華ちゃんは言った。
「だって…そんな事言われた後に『踊れ』って言われたって無理だもの。
もう、離れたくなくなっちゃう…。」
ウチは耐え切れなくなって、梨華ちゃんの唇を奪った。
そして、そのままベッドに倒れこむ。
- 137 名前:心が痛むのは、君のせい 投稿日:2003年04月22日(火)14時49分56秒
- 「ちょ…ひとみちゃんっ!?」
「梨華ちゃんのせいだよ。」
そう、梨華ちゃんのせい。全ては梨華ちゃんが悪い。
こんなに可愛い梨華ちゃんが悪いんだ。
こうしなきゃいられないくらい可愛い、梨華ちゃんが悪い。
だけど、そんな言葉を紡ぐのももどかしくて…ウチは、梨華ちゃんの服を脱がす。
大好きだよ、梨華ちゃん。
精一杯の想いを込めて、今日もウチは梨華ちゃんを抱くのであった。
オワリ
- 138 名前:ごまかご 投稿日:2003年04月24日(木)18時06分04秒
- 『あいぼんってごっちんの事が好きなんだよね!』
楽しくおしゃべりしてる時、急にののが言い出した。
…今ここにいるのは4にん。
ののと梨華ちゃんとあたしと………ごっちん。
「えっ、えっと…」
なんで本人の前で言うかなぁ。
そんなあたしも「好きだよ〜」って軽く返しとけばいいのにビックリし過ぎて言葉が続かない。
言った張本人はてへてへ笑ってるし、梨華ちゃんはニヤニヤしながら含み笑いしてる。
…そして渦中の人物は。
「( ´ Д `)<…………。」
真っ直ぐ、目をそらさずにあたしの顔をじっと見てる。
笑ってもいないし、困ってもいない、いつもと同じ顔。
…それはどうとらえたらいいものなの?
恥ずかしくなって目を伏せると頭の上に手が置かれた。
この匂いはごっちんの匂い。
「…かごぉー、好きだよぉー」
「…へ?」
顔を上げると目の前にはにこっと笑うごっちん。
…も、もしかして、両想いだったんですかぁーー??!
- 139 名前:ごまかご 投稿日:2003年04月24日(木)18時06分39秒
…と思った瞬間。
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
え。
………ごっちんが壊れました。
好きって言ってくれたのは嬉しいんですが止まらなくなりました。
目が逝ってます。
「ご、ごっちん…?」
ちょっとその光景が怖くてののと梨華ちゃんに助けを求めようと振り向くと。
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
「かごぉー、かごぉー、かごぉー」
………2人も壊れました。
3人とも目が逝ってます。
「だ、誰か助けてぇーーーー!!!」
- 140 名前:ごまかご 投稿日:2003年04月24日(木)18時07分10秒
- *
*
*
*
*
- 141 名前:ごまかご 投稿日:2003年04月24日(木)18時07分43秒
- 「…ごぉー、起きろー」
「かごぉー、かごぉー」
「ぅわあ!!」
飛び起きると目の前には大きな大きな黒い物体。
これってもしかして…。
「…ひとみカラス」
「やっと起きたねぇー、かごぉー」
「…よっすぃー、耳元でなんか言ってた…?」
「うん、カラスの鳴きまねをアレンジして「かぁごぉー!」ってずっと言ってた」
「………よっすぃー〜〜〜〜!!!!」
ギロっと睨むと笑いながら逃げてった。
……夢かぁ。
夢で良かったような残念なような。
ぼーっとしてると遠くから声が聞こえた。
「でも一番最初に声掛けたのはごっちんだよー」
「…え?」
振り向くとそこにはひとみカラスと……ゴマキスズメ。
こっちを見て笑ってる。
最初…?
…それって、つまり…。
おしまい
- 142 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時48分15秒
- 「・・・プリクラぐらい?・・・・・・・もーいいよ!!ひーちゃんなんて大っ嫌いだ!!もう別れよう!!」
「あー別れるよ別れるよ!!梨華ちゃんなんて知らねーよっ!!」
「馬鹿っ!!」
そう言って梨華ちゃんは部屋を飛び出した。・・・最後に見た顔は涙を流している顔だった。
1時間前・・・
「梨華ちゃん初めてだよね?ウチの部屋入るのは。」
「うんっ♪・・・それにしても殺風景な部屋だねぇ。性格が現れてるよ。」
「うっるさいな〜!これぐらいシンプルの方が住みやすいんだって!」
「別にけなしてないじゃ〜んっ!ひーちゃんらしくて好きだよ、この部屋。」
ウチは初めて梨華ちゃんを部屋に招待した。いっつも梨華ちゃんの部屋に
お邪魔させてもらってばっかだったんだけど、
梨華ちゃんが『ひーちゃんの部屋みたいなぁ〜♪』
なんていうもんだからウチの部屋に招待することになったのだ。
けど、問題が一つあった。ウチの今まで付き合ってきた男や女の思い出の品が部屋に散乱している。
これがバレたら、梨華ちゃんの超ヤキモチっぷりからすると、確実に修羅場になる。
私は注意に注意を重ねて、厳重に物品を片付けた・・・・・・はずだった。
- 143 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時49分19秒
- 「ねぇ、ひーちゃん。私の事どれぐらい好き?」
梨華ちゃんを背を向けるように座らせて、ウチが股ではさんでる感じに座っている。いわゆる『恋人座り』ってやつだ。
私は梨華ちゃんを後ろから抱きながら、首元に頭をうずめる。
「う〜んとねぇ。富士山より高くて、タイタニックが沈没してる海底より深いって感じかな〜♪」
「なにそれぇ〜。相変わらず変な例え方ぁ〜♪」
「なぁ〜に言ってんのっ!わかりやすいっしょ?すっごい好きってのをあらわすにはさっ!」
梨華ちゃんは私の顔を見つめる。
「梨華わかぁ〜んなぁ〜い♪」
頬を膨らます梨華ちゃん・・・マジかわいい!!
「じゃあ、いっちばんわかりやすい事してあげるよっ!」
- 144 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時49分59秒
- そう言ってウチは梨華ちゃんの唇を奪う。
「〜〜〜っ!!」
ちょいと濃厚なキスをし終えると、梨華ちゃんの目はトロ〜ンとしていた。
「もぅ・・・ひーちゃんのバカ。」
「バカってヒドイなぁ〜。梨華ちゃんがキスして!ってビーム出してたからしたのにぃ。」
「もー恥ずかしいなぁー!!」
梨華ちゃんは顔を真っ赤にしながらうつむく。赤い顔を隠したいからだろう・・・二人っきりなのにね。
私は梨華ちゃんの抱きしめる腕に力を入れる。
「ず〜っと一緒にいようね、梨華ちゃん」
「うん・・・ずっと一緒だよ、ひーちゃん♪」
- 145 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時50分40秒
- 梨華ちゃんとテレビを見ながらくつろいでると、ベッドの下にあったモノを私は見つけた。
(やべっ!あれって元カノのプリクラ貼ってある手帳じゃんっ!!どーしよ、どーしよ・・・よしっ!)
私はベッド寝るふりをしながら右手を床にたらし、手帳を捜索する。
「ひーちゃん、何してんの?」
「いやっ、別に・・・なっ、なにもしてないよ。ちょっとストレッチをねぇ〜」
苦しい言い訳をしてしまった・・・絶対疑われてる。だって目、目がぁ〜・・・
梨華ちゃんが私に近寄った。そして顔を覗き込む。
「なんか隠し事してるでしょ〜?ひーちゃん、すぐ顔にでるんだもん。」
「そ、そんな〜・・・隠し事なんてしてるはずないじゃん!!だって約束じゃん、隠し事だけはしないって。」
梨華ちゃんは私の顔を見ながらベッドにあるモノを先に見つけてしまった。
「じゃ〜コレなによっ!!」
梨華ちゃんの手には手帳が握られていた。表面には『1999』と書いてある。
- 146 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時51分29秒
- 「そ、それは、なんだろ〜な〜。メモ用紙じゃないかなぁ〜。ほらっ!ウチって結構メモる事多いじゃん?」
「・・・ひーちゃんにメモるという言葉はありませんっ!私の話だって聞いてないときあるじゃんっ!!」
私は目が泳いでしまった・・・。もっとましなウソをつける人に生まれたかったよ〜・・・
梨華ちゃんはソレを開けて貼ってあるプリクラをチェックした。
「な〜んもないって。ホラ、友達とのプリクラしかないし・・・」
すると、梨華ちゃんの目が見開く・・・見つけてしまったようだ。
「コノ人誰なのっ!!こんな事しちゃってさぁ!!」
梨華ちゃんは一つのプリクラを指差している。それには私が元カノとチューをしながら抱きしめあっている。
「いや、それは・・・そのぉ〜・・・元カノってやつで・・・」
梨華ちゃんは立ち上がって手帳を私に投げつける。
- 147 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時52分06秒
- 「イタッ!なにすんのっ!?」
「フツーさぁ、昔の恋人の写真って捨てるもんじゃん!!なんでそんな大事に持ってるのよ!!」
「いや、これは捨て忘れてただけで・・」
「違うね。まだその子好きなんでしょ!!私なんか、ただの遊びだったんでしょ!!」
梨華ちゃんは顔を真っ赤にして私に怒鳴る・・・目も真っ赤で涙をためている。
私は頭をポリポリかきながら体を起こした。
「なんでそんなふ〜に極端に考えるかなぁ〜。たまたま捨て忘れただけじゃんよ!!」
「たまたま?たまたまで4年間もおいてあるってゆーの?!」
「そーだよ、梨華ちゃんだって知ってるじゃん!!ウチが中々、モノ捨てないクセ。」
「知っててもコレとは関係ないもんっ!!」
私はキレてしまった。
「もーいいよ、知らねーよ!!なんで信じねーんだよ!!何、プリクラぐらいでキレてんだっつーの!」
私は後ろを向いた。梨華ちゃんの顔なんて見たくなかったから。
「・・・プリクラぐらい?・・・・・・・もーいいよ!!ひーちゃんなんて大っ嫌いだ!!もう別れよう!!」
「あー別れるよ別れるよ!!梨華ちゃんなんて知らねーよっ!!」
「馬鹿っ!!」
そう言って梨華ちゃんは部屋を飛び出した。
- 148 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時52分36秒
10分ぐらいたって私はハッと気づく。
「やべっ!ついついキレちゃった・・・梨華ちゃん何も悪くないのに。しまったぁ〜!!」
キレやすい私は些細な事でプッツンしてしまう。で、いっつも後で後悔してるヒト。
「とりあえず探さないと!!」
私は靴を急いで履いて部屋を出た。
「えっと、こっから近いのは、公園、駅・・・とりあえず、公園っ!」
適当に頭に浮かんだ公園に行ってみる。もう夜遅いので街灯の光が道路を照らす。
「梨華ちゃ〜ん?梨華ちゃんいる??」
返事はなかった。私の声が闇に飲まれていくだけだ。
「いないか。どこいっちゃったのかなぁ〜梨華ちゃん・・・もう帰った??・・・駅??」
今度は駅に向かった。こっから徒歩10分のところにある駅。超ダッシュして5分でつく。
「梨華ちゃんは・・・」
キョロキョロ周りを見渡すがやっぱり梨華ちゃんの姿はない。
「やっべぇ・・・マジでやべぇ。どーしようか。梨華ちゃん泣かせたままのウチ・・・最低だ。」
私は肩を落としてマンションに戻る。もちろん超ブルーで・・・。
- 149 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時53分06秒
「ちょっと屋上いこ・・・」
呟きながら階段を上って屋上のドアを開ける。
「梨・・・梨華ちゃん?」
屋上に梨華ちゃんはいたのだ。ちょっと強めの風にキレイな髪がなびいている。
梨華ちゃんは振り向こうとしない。ただ、ただ、空を見ている。
「梨華ちゃん・・・ごめん。ウチ、別にキレるつもりじゃなくって・・・」
私が近づこうとすると梨華ちゃんは怒鳴った。
「こないでっ!!お願い・・・今はこないで・・・」
声が震えている・・・まだ泣いてるんだろう。
「じゃあ、ここで話すから。聞いててくれないかな?」
「・・・」
返事はなかったけど、私は梨華ちゃんから5メートル離れた地点で空を見上げながら話し出した。
- 150 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時54分28秒
- 「ごめんね、梨華ちゃん。キレちゃったりして。せっかく2人きりを台無しにしちゃって・・・。
でもね、ウチ信じてほしーんだよ。梨華ちゃんに。」
「・・・」
「そりゃー、ずっと手帳を捨ててなかったウチに全責任があります。それは謝る。
謝ってすむかわからないけど謝ります。ごめんなさい。」
「・・・」
「やっぱり、その時はその時の彼女とラブラブだったわけで。そーゆうこともしちゃうわけよ。ラブラブだからさ。
「・・・」
「けど、けど!!今は梨華ちゃん一筋だよ。ってゆーか、
付き合い始めてからずっと梨華ちゃん以外のヒトは好きな感情ないから!!マヂで!!!」
「・・・」
「だからってゆったらなんだけど、許してくれないかな?もちろん手帳はすぐ捨てるよ。」
「・・・当たり前でしょ・・」
震えた小さな声で梨華ちゃんは返事をしてくれた。返事をしてくれたことに驚いてしまった。
- 151 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時55分03秒
- 「えっ?!」
「だから、私以外のヒトに好きな感情がないのはとーぜんでしょ。」
「う、うん。」
梨華ちゃんは振り返って私に笑顔をみせる。
「許してあげる・・・今ここにいる、ひーちゃんが私のひーちゃんだから。大好きなひーちゃんだから。」
「梨、梨華ちゃん・・・」
私は梨華ちゃんを強く抱きしめた。
「・・・もう怒ってないの?」
私の胸に顔をうずめている梨華ちゃんが顔を上にあげて私の顔を見る。
「怒ってないっていったらウソになるかな。あんなふーなイチャ×2してるプリクラ持ってないし・・・」
私は微笑みながら梨華ちゃんのおでこにキスをした。
- 152 名前:嫉妬×ケンカ×仲直り♪ 投稿日:2003年04月25日(金)08時55分33秒
- 「あんな事ならいくらでもしますよ、大好きなイシカワさんっ♪」
「ホントですか?ヨシザワさん。」
「ええ。大好きな恋人のお願いを聞かない人がいると思います?」
「いいえ。思いません。」
「じゃあ、今度プリクラ撮りにいこっか。もうい〜よっ!って思うぐらいたくさん。」
「うんっ♪」
梨華ちゃんはカワイイ返事をした。まるでちっちゃい子が遊園地にいくよーな期待感溢れる声で。
「じゃあ、約束のキス♪」
そう言って唇を重ねる。優しい仲直りキスの味は少ししょっぱい味がした。
星空をバックに私たちはキスをした。
この星に私たち2人しかいないと錯覚してしまうほど、キレイな星に見守られて・・・。
おしまい。
- 153 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時18分08秒
「あのさぁごっちんはさぁ、もうちょっとあたしに心を開くべきだと思うんだ」
「はぁ?」
唐突に、しかも突拍子のない話題を振ってきた彼女に、私は返す言葉も無く
ただただ呆然とその整った顔を見つめ返すことしか出来なかった。
「芸能人」という特殊な環境に数年身を置いているにも係わらず、私は咄嗟のリアクションが
薄く、しかもアドリブに弱かった。
いや、今は気の効いた、というか笑いを取らなければならない状況にあらず、
何故ならここはテレビカメラを通じて全国に放映されるそれとは違い、
ごくプライベートな日常を切り取った一場面、何のことかって
平たく言えば「彼女」の家に居るワケなので。
- 154 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時18分53秒
で、先程の一言。
日本屈指の、有数の、最強にして完璧なアイドル、
既成の枠を飛び出して当初会社の上層部が考えていた(であろう)以上に巨大な存在に
なってしまった「彼女」を形容すべき言葉なら幾らでも思い当たった。
最も今のところ私が1番耳にするのは「アイドルサイボーグ」、なんて
褒めてるんだか貶してるんだか分かりかねる表現だ。
身近で一緒に仕事をしていると、どうして彼女が「サイボーグ」などという
非人間的な呼ばれ方をされるのかは甚だ疑問で、
嬉しければ目一杯笑うし、悲しければ普通にぼろぼろ泣くし、
唯一本気で怒ったところ、なんてのは目にしたことはないけれど
「アイドルサイボーグ」はとことん人間らしい素直な女の子だった。
- 155 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時19分28秒
その彼女が言う。
ああもう意図的に名前を伏せる必要もないだろう、
サイボーグ、なんて呼び名も古い、専ら世間的に彼女はこんな愛称で親しみを込めて呼ばれる
「いきなりなんだよー、“あやや”?」
「……どしてあやや、なの?急に」
「何となく」
「変なごっちん」
怪訝そうに顔をしかめて、“あやや”ことスーパーアイドル松浦亜弥がコーヒーを私の
目の前に差し出した。
クマのマグカップ。彼女の親友であるこちらは“ミキティ”こと藤本美貴にプレゼントされた
ものらしい ―――― から白い湯気が立ち上り、その香りが鼻腔をくすぐった。
- 156 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時20分04秒
それで、何の話題なんだっけ?
「そうそう、『ごっちんはあたしにもっと心を開かなくてはならない』、だっけ?何で?」
「そんな強制するよーな喋り方してないよ」
同じクマの柄のマグカップを両手で包み込むように持ちながら、
松浦亜弥は少々不満げな声を上げた。
「ごっちんは、もっとあたしに心を開くべきだ、って言ったの」
「別に変わらないじゃん」
「全然、違うよ!」
ぷるぷると可愛らしく首を振って、彼女は口を尖らした。
普通の女の子がやってもまぁそこそこ、なんて仕種もそこはさすがのスーパーアイドル、
日本中が注目するのも納得な超プリティーガールぶりを発揮する。
(…馬鹿みたいな英語を使ってるせいで、本当に自分が馬鹿っぽく思えるなぁ…)
にしても、全くもって彼女の言いたいことが理解できない。
そりゃ私も他人から『ごっちんて変わってるよねー』なんて言われることは多々あるけど、
松浦亜弥だって相当変わってるとこあるもんなぁ。
- 157 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時20分47秒
美貴ちゃんが遊びに来たときとか、米研いでもらって炊いてもらって食事後の
食器洗いまでやってもらったらしいし。普通できないでしょ?そんなこと。
“あやや”だから許されること。
その境界線を、彼女は無意識のうちにちゃんと捉えているのだ。さすがスーパー(ry
「でもさー、私、亜弥ちゃんに心開いてると思うよ?そりゃ亜弥ちゃんと美貴ちゃんみたく、
大親友ってとこまではいかないにしても、普通に仲良いと思うし。
でなきゃ家まで遊びになんか来ないもん。
私、こう言っちゃなんだけどホントに仲良くなきゃ遊ばないよ?」
(こう見えて、人見知りする性質だし)
「そーなんだけどー」
かなり頑張って説明した割に、松浦亜弥嬢はそれでも納得しかねる、そんな顔。
一体彼女が何を私に求めていて、どんな答えを返せば喜ぶのかが見えてこない。
- 158 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時21分21秒
「ごっちんはー、娘。が好きでしょ」
「そりゃ好きだよ」
当たり前じゃん、と続けようかと思ったけど、何となく寂しそうな松浦亜弥の表情が気に
かかって、喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。
一緒に成長して一緒に苦難も逆境も乗り越えてきた仲間、なんて存在を
日本を代表するアイドルにのし上がった彼女は持っていない。
「じゃぁ、あたしとミキたんのことは、好き?」
「そりゃ好きだよ」
即答した。
松浦亜弥も藤本美貴も娘。にはいないタイプだったけど、濃い付き合いを始めたのは
ここ1年くらいからだとしても、友人がさほど多くない私的にはかなり仲が良い
部類に入る2人。好きだよ、当たり前じゃん。
私の答えに松浦は一呼吸置いて、別の疑問を投げ掛けた。
「ミキたんとあたしは、どっちが好き?」
「は?」
即答できなかった。
というか、質問自体に答えられないそんなの。
- 159 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時21分53秒
返事に窮した私の代わりに、松浦がどこか人形を思わせる表情を無くした顔で口を開いた。
「ミキたんの方が好きでしょ」
「え?何で?」
「ミキたんの方が、付き合い易いって思ってるでしょ」
「そんなこと誰も言ってな」
「雑誌でもテレビのインタビューでもっ」
反論しようかと思った私の口上を遮って、松浦が続けた。
「いつもそーだもんね、ごまっとうの時もそう!
『美貴ちゃんはなんか自分と似たところがあって』、とか
『メールをよくやり取りしてたんですけどー』、とか。
他にも色々、ミキたんとは仲良くしてるってことばっか強調して、じゃぁあたしは?
松浦は?って思うでしょ、ごっちんいつも言うんだよ、
『亜弥ちゃんは本当に女の子らしくって可愛いと思いますねー』って」
- 160 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時23分02秒
頭の回転の速い彼女らしく、
元々抱えていた思いなのか興奮して激昂した思いを吐露しているのかは図りかねるけれど、
とにかく松浦亜弥はそれを一息にぶちまけた。
そう大声を出しているわけではないのに、よく通る声は広くない部屋によく反響した。
しかし、そんなこと思ってたの?この子は。
「だって真実だよ。別に変なこと言ってないし本音語っちゃってるだけだよ。
私と違って、松浦亜弥はめちゃくちゃ可愛い女の子ですよーってさ」
「何かそれってすっごい他人行儀みたいじゃん、
他に話すことがないみたいじゃん、もぉーっ」
極上のアイドルスマイルを振り撒いているブラウン管の向こう側に写っている松浦亜弥からは
想像できない、とうか滅多にお目にかかれないザ・ネガティブシンキング亜弥ちゃん。
一昔前の梨華ちゃんみたいだ。
どーしたんだ一体、らしくない。
- 161 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時23分42秒
「いや、でも、それで心を開いてない、とか思われてもさぁ」
「だってそうだよ、ごっちん、あたしに対してはなんか、なんてゆーか…」
「ちょっ、泣く、え、泣くの?ちょっと亜弥ちゃんてば」
ぶわっと溢れた涙、
スーパーアイドルもとい今現在は只の16歳少女に戻った松浦亜弥が、
ぼろぼろと大粒の涙を流し始めた。
無表情だとか無感動だとか(失礼極まりないよ全く)、物事に動じないだとか言われがちな
私だけど、さすがに目の前で泣かれて動揺しないはずがなく、
腰を浮かせて彼女の頭を撫でた。取り合えず他にどうすればいいのか分からなかったし。
「やだぁ、もうーごっちん、の、ばかぁ、ひーき、だぁ、ミキたん、とかよし、ざわさんとかー、ッ、
かごちゃんの、こと、とかすごいなかよく、っ、ヒッく、してるのにー」
「分かんないって、何言ってるか」
困惑して思わず口を滑らせた。マズイ。
「ふわぁーんごっちんのばかぁー」
やっぱり。
ますます泣かれた。なんて馬鹿、私の馬鹿、キングオブ馬鹿。
- 162 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時24分25秒
にしてもこんなに子供みたいに泣かれると、逆に落ち着いてくるから人間て不思議だ。
子供をあやすみたいな気分になって、そうなると常に甥っ子に接してきた私は強い。
「はいはい、存分に泣けばいいからねー」
「ひっ、ばか、ごっちんは、ひーき、してっ」
そもそも、“贔屓”なんて考え方が間違ってるよ松浦さん。
確かに美貴ちゃんは話し易いし何となく自分と似通った思考の持ち主だってのはあるけど、
亜弥ちゃんと比較して付き合ってるわけじゃない。
それによっすぃとか加護の名前も出してきたけど?
2人は何ていうか、もう姉妹みたいなもん。仲良い悪いってよりは、一緒にいるのが自然な付き合い。
- 163 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時25分07秒
けど、それを今泣きじゃくる子供/松浦亜弥に言って聞かせるのはどうも不可能に思えた
ので、しばらく頭を撫で続けながら見守ることにした。
すぐに、彼女の真意は見えてきた。
しゃくり上げながらぽつりぽつりと彼女が漏らしたのだ。
「ミキたん、娘。に、入っちゃって、やっと、できた、ともだち、だったのに」
――― あぁ、なるほどね。
「1人の、辛さとか、寂しさとか、何でも、言えたのに、……
ごっちんと、ちょっとだけ、仲良くなって、楽しいなって、思ったのに、」
――― そういうことか。うん、納得したよちょっと。
なんか可愛いじゃん。
嗚咽と共にそう吐き出す松浦亜弥は、年相応の不安定な感情の揺れをそれは見事に
体現していて、どんなに完璧に作りこまれた笑顔よりも可愛らしく見えた。
観客は、もちろん私1人だけど。
- 164 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時28分01秒
「けっきょく、みんな娘。なんだ、ずるい、よぉ。あたしには、分からない、世界、
みんな、で、そっちにいっちゃう、あたしには、分からないもん、……うぅー」
「よしよし」
「ミキたんがぁ、ミキたん娘。に入っちゃうんだよぉ、もう何で、何で、やぁだぁー…
さびしーんだもん、あやには、ミキたんいなくちゃダメなのに、」
顔を真っ赤にして泣きじゃくりながら、
舌足らずな子供が癇癪を起こして喚くように、しばらくの間彼女はぽろぽろ涙を流した。
ちょっと、グラッときて、慌ててそれを打ち消した。
あんまり可愛すぎるのも問題だ。泣き顔見て萌える自分、かなりヤバめ。超危ない。
- 165 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時28分55秒
つまり、ですね。
結論的には、松浦亜弥は親愛なる(自他共に認める)大親友藤本ミキティが娘。入りすることに
多大なる不安を抱いていて、
何故かって娘。内のメンバー同士の付き合いが、それはもう世間の邪推するそれを
嘲笑するかの如く深く親密な関係性を抱いているからで。
ハロプロという一個の組織の中、個々のグループの中、またその中での仲良しグループ、
それに親友を奪われてしまうという焦燥があったんだ、松浦亜弥には。
いくら最強のアイドルと謳われようと、いかんせん彼女は弱冠16歳の多感な年頃。
滅多に口に出せない不安や疑問や苛立ちが、今回ついに爆発してしまったと、
そーいうわけなのでしょう。
- 166 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時29分37秒
美貴ちゃんが娘。入りを果たすということは、実質ハロプロ内のソロ歌手は松浦亜弥以外は
私・後藤真希だけで、
え、裕ちゃん?裕ちゃんは……ごめん裕ちゃん、何とも言い難い、こういう場合。
圭ちゃん?圭ちゃんも…………ごめん圭ちゃん、上に同じ。
そんでもって、松浦亜弥が藤本美貴を失ったと想定した場合、その後釜的存在として
白羽の矢を立てたのた私だったと。
なるほどね。
何でも真っ向勝負!ってイメージ強かったけど亜弥ちゃんって、
意外と繊細で脆いところもあるんだね。なんてしみじみ思ったりして。
もしかしたら、美貴ちゃんはそういうところもひっくるめて亜弥ちゃんとの友好関係を
築いていて、だから亜弥ちゃんもべったり美貴ちゃんに依存するくらい
心を許していたのかもしれない。
今更そんなことに気付く私は、やっぱり松浦亜弥に心を開いていなかったのかもしれない、
でもまぁそれは ―――― お互い様ってことで。
- 167 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時31分32秒
「しかし随分回りくどい手を使ったね亜弥ちゃん」
もう落ち着きを取り戻し、目の端に赤いものは残るけれど取り合えず泣き止んだ亜弥ちゃんに
いささか辛辣な言葉を投げ掛けると、彼女は口を屁の字に曲げた。
「だって……何か素直に寂しい、とか言い辛かったんだもん」
「いいじゃん、素直に言えばさ」
「言えないよ!だってごっちんが、弱音吐かない人なんだもん。
あたしばっかり辛い、みたいなコト、言いたくないよ。……泣いちゃったけど」
「泣いてたねぇー激しく」
「もう、笑わないでよ恥ずかしいんだから!」
「ハイハイ」
ふう。
全く、世話が焼けるっつーか何つーか、
何で今日の松浦亜弥はこんなにも子供じみているんだろう。
それとも、今までより2人の距離が近付いているとして、見えてなかったものに
気付き始めているのだとしたら?
- 168 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時32分23秒
「ねえ亜弥ちゃん。まっつん。あやや。松浦さん。あやっぺ」
「…何言ってるのごっちん?」
だとしたら、きっとここがスタートライン。2人でここから始めてみるのもいーんじゃない?
何だか古臭い学園ドラマみたいだけど、逆に新鮮だよ、うちらにはきっと。
「キミはね、もう少し私に心を開くべきだと思うんだよね」
- 169 名前:ここから・2人で 投稿日:2003年04月26日(土)01時33分02秒
-
【終わり】
- 170 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月26日(土)01時34分33秒
物珍しいほんのり「リアルあやごま」テイスト “ここから・2人で”
以上お目汚し失礼しました。>>153-169
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月26日(土)13時48分39秒
- あやごま(・∀・)イイ!
とてもリアルな感情が良かったです。
これからが気になりました。
- 172 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時00分44秒
なんとなくやすかご。
- 173 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時02分10秒
あの子があんまり笑わなくなった事にだいぶ前から気付いては、いた。
「はーい、みんなぁこっち見てー」
前に何かの番組でもらったデジカムを構えてメンバーを映す。
「うわーケメコだー!逃げろー」
「いえ〜い」
「ちょっ、ちょっと困りますっ!止めてください!」
「あはは、矢口思いっきりカメラ目線だよ!」
それぞれのリアクションと甲高い嬌声。
ライブが終わり、興奮が冷めないまま、皆ハイテンションで応えてくれる。
体の疲れよりも高揚感と達成感でいつもより一段と騒がしくなるメンバー達。
この生き生きとした表情を一瞬たりとも逃さず全て残しておきたいと思う。
この空気、笑顔、声、仕草、愛すべき仲間達の全てを。
- 174 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時04分13秒
今まで何度もライブをしてきた。
逃げ出したいほど緊張することもあった、
不安で押しつぶされそうなときもあった、
しんどくて怒りっぽくなったときも、
始まるのが楽しみでしょうがなかったときも、
体調がいいときも悪いときもライブはあった。
今までいろんなライブをこなしてきた。
―――誰かと、別れるためのライブも。
- 175 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時06分04秒
もうすぐ自分にもその舞台が回ってくる―――
それまでに沢山のものを残しておきたいと思った。
みんなあえて口に出さない。
何も知らないフリをして今までと同じように過ごしている。
だけど、変えられないタイムリミットは確実に迫ってきていた。
楽屋で、ダンススタジオで、収録現場で、リハーサル中にも、
可能な限りデジカムを持ち込んでメンバーをフレームにおさめた。
センチメンタルに浸りたいわけじゃなくて、
何か証を残しておきたかったら。
このメンバーと過ごした時間を、分け合ってきた多くのものを
少しでも形に残しておきたかった。
自分がここにいた事、確かに皆が存在していたこと。
それらは、今後の自分にとって必要なものを与えてくれるだろうから。
「保田さ〜ん」
「圭ちゃ〜ん、こっちもー」
笑顔に、振られる手に、呼び声に次々と応えて、
ときどきデジカムを人に渡して、今まで日常だった風景を収めていく。
―――ふっ、と視線を感じてそちらへ目を向ける。
- 176 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時08分37秒
その子は目が合う瞬間、ふいっと逸らしてしまった。
彼女らしい上手な逸らし方。
相手を傷つけることなく、そのくせ注意を引くような。
「か〜ご!あんたもこっち来なさいよ」
声をかかられた加護はしぶしぶといったカンジでのろのろと移動してくる。
けれどたちまちメンバーに囲まれて
わいわいとカメラに向かってアピールする輪の中に引き込まれる。
どこか視線が定まらない様子で、それでもいくつかポーズをとってくれた。
周りが何かリクエストしたのかモノマネも披露してくれた。
加護らしいちょっと落ち着きのない動作で、なのに可愛らしい動き方。
辻や吉澤とふざけてカメラにぶつかりそうになる。
皆が笑う。
メンバーも、回りにいたスタッフも。
なのに、フレーム越しの加護は、ちっとも楽しそうじゃない。
こっちが見ているだけで顔が緩んでしまうような、
内側から元気が弾けるような、そんな加護の笑顔じゃなかった。
- 177 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時10分59秒
初めて会った頃はホントに正真正銘の子供だった。
傍若無人で怖いもの知らず、
礼儀とか常識なんかとは別次元にいるようだった。
あたしと違って何をするにも器用で内心悔しい思いをした事もある。
騒ぐのが好きで、無邪気で、照れ屋で、
そのくせ妙に大人びたところもあって、
ドキリとするほど女らしい部分も持っている。
最初はお約束みたいに怖がられて、
なかなか近寄ってくれなかったけど
最近じゃすっかりいい玩具として寄ってきてくれる。
口にだしていったことはあまりないけど
その無邪気な笑顔とたわいないイタズラに
救われたことも何度かあった。
なのに・・・
「加護、なんか悩みでもあるの?」
「悩みなんてないですよ?」
「どうしたの?元気ないみたいだけど?」
「大丈夫です、なんでもないです」
「聞いて欲しいことあったら聞くわよ?」
「ん〜、あんまないですね」
- 178 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時12分48秒
浮かない表情、
時折する遠くを見るような眼差し、
小さなため息。
そのたびに気になってさりげなく水を向けてみても小さく笑って否定する。
無意識なのか演技なのか、
気付いて欲しいのか欲しくないのか判断しかねる笑顔。
追求の手を軽くかわすように、
それ以上触れて欲しくなさそうに向けられる笑い。
―――この子はあたしと同じく不器用なのだ
そう気づいたのは随分たってからだった。
- 179 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時14分07秒
帰り支度をしていたら隣で携帯をいじる加護がいた。
「加護」
「なんですかぁ?」
「あたしが今ここで大泣きしたらどーする?」
加護は一瞬キョトンとして目だけを上の方で動かす。
「えー?う〜ん・・・・・笑う。大笑いする」
顔に浮かんだのは彼女特有のからかうような悪戯っぽい笑顔。
「何よー、慰めたりとか、一緒に泣いたりとかしてくれないの?」
「泣かない。指差して笑う」
「なんでよー?それちょっとひどくない?」
「だってぇ、加護が泣いたら保田さん、慰めようとするでしょ?
そしたら『なんで加護が泣いてんのよ』って思ってまた怒って、
加護が泣いて怒ってるのとー、泣かせた自分に怒ってるのとー、
っていっぱいになってますます悲しくなって嫌でしょ?」
「・・・あぁ・・まぁ・・んん?」
彼女の説明は端的過ぎるというか端折りすぎてときどき良く分からない。
加護は困ったようにうーんと唸りながら前髪を撫でる。
- 180 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時15分37秒
「だからー、加護が泣いたら保田さんが泣けなくなって、
『泣きたいのはこっちだよ』って思って、思ってるけど泣くの止めて、
そしたらなんか気持ちが中途半端になって嫌じゃないですか。
で、それで余計に悲しくなるでしょ?」
「はぁ・・・でも笑われても怒ると思うけど?」
「そしたら『なんで笑ってんのよ』ってなって、
『あたしはこうで、こうで泣いてんのよ』って
ちゃんと言えるじゃないですか、
なんか・・泣いてても困らせてないから安心じゃないですか」
あたしは少しの間黙って加護の言ったことを考える。
- 181 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時16分50秒
「それに、加護が笑ってたら保田さんも泣き止んだら一緒に笑えるでしょ?」
―――なんでもないことのようにあっさりと、笑顔で加護は言ってのけた。
- 182 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時18分07秒
「加護・・・」
ポン、と頭に手を載せると加護は迷惑そうにしながらも笑って見上げてくる。
「あたしが卒業するときは、思いっきり泣いてもいいわよ」
『卒業』というキーワードに一瞬加護の表情が曇る。
何かを思い出すのか、今にも泣き出しそうな、困った顔。
「・・・なんで?」
「あたしが笑って見ててあげるから。だから我慢しないで泣いてもいいわよ」
素直に泣きなさいよ、そんな風に誰かのことなんて気にしないで。
あんたはまだ、子供みたいに泣いてもいいんだから。
いろんな想いを込めてガシガシと頭を撫でたら加護はその手を軽く払う。
そしてそのまま手を握ってぶんぶんと振り回した。
- 183 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時20分00秒
「泣かないよー、ケメちゃんが泣くの見て笑うよ!」
「じゃぁ、あたしも泣かない」
「じゃ、皆泣かないね」
「いいじゃない泣いてくれても」
「ヤだよー」
「泣きなさい」
「泣きませんー」
「とか言って泣くんでしょ?」
「泣かねぇよ!」
「はぁーあんなに面倒見てあげたのになぁ?ねぇ?」
「・・・ふふっ、じゃぁちょっとは泣くよ」
「ホントに?」
「うん、だから保田さんもちょっとは泣いていいですよ?」
「そしたら加護は笑うの?」
「うん。笑って、待ってる」
- 184 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時22分38秒
見上げてくる加護は相変わらずいたずらっぽい笑顔。
からかっているのか、嬉しいのか、それとも他に何かあるのか、
器用に隠された感情をあたしは読み取れなかった。
―――本当に、不器用なコだと思う。
「じゃぁ、二人で一緒に笑おうか?」
そう言った後の加護の表情を、
あたしはデジカムで捉え損ねたけれど
多分一生忘れない。
カメラでは捉えきれない何かが確実に、強く心に刻まれたと思うから。
あたしと彼女の間にあった、見えなくても確実な何かが・・・
〜END〜
- 185 名前:やすかごとか 投稿日:2003年04月29日(火)14時23分24秒
以上、やすかごでした。
- 186 名前:非常階段 投稿日:2003年05月03日(土)02時35分40秒
- 本番までの空き時間。
紺野は一人で控え室を抜け出した。
「どこへ行くの?」
小川の問い掛けに
「ん…ちょっと」
言葉を濁して誤魔化した。
小川は少しだけ不審そうな顔をしたけれど、それ以上突っ込んでくるこ
ともなく、紺野は明るい廊下を一人で歩き、一つの扉を押し開ける。
非常階段へと続く扉を。
扉を開けると風が吹き込んだ。
建物の外に設置された非常階段を使う人は皆無。
一人になれる数少ない場所である。
- 187 名前:非常階段 投稿日:2003年05月03日(土)02時36分29秒
- 東京の空は曇って見える。
太陽の陽射しもなんだか濁って見えた。
北海道は…もっと空気が綺麗で……。
こんなにごちゃごちゃしていない。
乱立する高層ビル。
賑やかな大都会。
ものすごいスピードで物事が動き、昨日正しかったものが今日は間
違っているような、そんな気分になってしまう街。
生暖かい風がさらりと髪を揺らして後方へ流れた。
え…?
振り返ると扉が開き……。
うそ…。
紺野は大きな目を見開いた。
- 188 名前:非常階段 投稿日:2003年05月03日(土)02時37分10秒
- 「後藤、さん……」
「――紺野?」
後藤は驚いたように動きを止め、そしてちょっと笑った。
「偶然だねぇ。……邪魔かな?」
紺野はぶんぶんと思いっきり首を横に振る。
邪魔だなんてとんでもなかった。
少し、いや、かなり緊張するけど、モーニング娘。を卒業した後藤にこう
して会えるのはとても嬉しいことである。
「そう? 一人になりたくてココにいるんじゃなかった?」
パタンと後藤の背後で扉が閉まる。
後藤はゆっくりと紺野の横に並び、首を傾けて顔を覗きこんできた。
「いえ…。はい。でも…後藤さんに会えて、嬉しいです」
そう、確かに一人になりたくてここに来たわけだけど。
後藤が現れた瞬間、驚きとともに感じたのは確かに喜びだった。
「ふぅん。――ゴトウも紺野に会えて嬉しい」
柔らかく後藤は目を細めて笑みを浮かべる。
- 189 名前:非常階段 投稿日:2003年05月03日(土)02時38分04秒
- あぁ…後藤さんだ。
紺野はほっと心が穏やかになるのを感じた。
さっきまでやけに殺伐としていた東京の街並みも、今はまぁいいか、と
思える。
落ち込んでいたのが少しだけ浮上した。
「――非常階段って」
「え?」
唐突な言葉に紺野は後藤を見上げる。
「非常階段ってさ、非常時に役立てるんだよねぇ」
後藤が悪戯っぽい表情で紺野を見つめた。
紺野は後藤が何を言いたいのか分からないまま、曖昧に頷く。
「うん。さすが非常階段だ。ゴトウは助けられたよ。……ソロになって
…――。やめた。これは愚痴だなぁ。うん、だからありがとうって言わ
せて」
「…………。はい…?」
「キミはゴトウの非常階段。んで、ゴトウも紺野の非常階段になりたい」
- 190 名前:非常階段 投稿日:2003年05月03日(土)02時38分37秒
- 相変わらず後藤は柔らかな笑顔で紺野を見つめた。
見つめられて、紺野はぼーっとしてくる自分を感じる。
(後藤さんの目…綺麗…)
「紺野ー?」
「…っ! はい!! 非常階段です! 完璧です!!」
焦った末に、勢いだけで返した返事。
「……?! は、あはははは……っ!!」
きょとんとした後藤は次の瞬間明るい笑い声を響かせていた。
耳に心地よい後藤の声。
紺野はなぜ笑われるか分からなく、頬を微かに染めた。
でも悪い気は全然しなかった。
と、紺野のポケットで携帯電話が着信を告げた。
ごめんなさい、と後藤に断ってから、紺野は通話ボタンを押す。
「はい。………あ、うん。…分かった、すぐ戻るね」
- 191 名前:非常階段 投稿日:2003年05月03日(土)02時39分15秒
- 「仕事?」
紺野が電話を終えると同時に後藤が尋ねてきた。
紺野は頷きながら後藤との時間が終わるのを寂しく思った。
尊敬する先輩で、一緒にいて緊張もするけど、でもそれ以上に楽しくて
ドキドキする。
「紺野ー。今度さ、一緒に遊ぼう? また連絡するからさ」
「は、はい!」
心を読まれたようなタイミングでの誘いに、紺野は迷う間もなく頷く。
輝くような笑顔を浮かべ、ペコリと一礼した紺野はパタパタと扉の向こ
うに姿を消した。
残されたのは後藤一人。
紺野の後姿を見送った後藤は、ほぅっとため息をついて空を見上げる。
「長期戦だろうなぁ。紺野、鈍そうだし……」
――FIN――
- 192 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)15時05分58秒
- おぉう!!
おもしろい!!ごまこん大好きです。
続き激しく希望します!!
- 193 名前:非常階段作者 投稿日:2003年05月05日(月)19時51分03秒
- >>192 名無し読者さま
ありがとうございます。レス嬉しかったです。
突然思いついたワンシーンなので、残念ながら続きは考えておりません。
私もごまこん大好きです! 紺野イチオシです!!
- 194 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時14分13秒
- 紺野と高橋のお話しです。
カップリングじゃなく、友情もの。
補足(蛇足?)ですが、>>186-191で「非常階段」を書いた者です。
- 195 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時14分56秒
- 都内某スタジオ。
紺野は、音楽を流していたラジカセを止めた。
壁際に置いた自分の荷物からタオルを取り出し、崩れるように座り込んで流れる汗を拭う。
室内に響くのは一人分の荒い呼吸だけ。
ダンスの自主レッスンの最中なのだ。
「………っ、しんどー……」
壁に背中を預けて天井を仰いだ。
煌々と明るい電気。
少し視線を戻すと鏡張りの壁が目に入る。
体を動かすのは嫌いじゃなかった。
むしろ好きな方。
運動神経も悪くはないと思ってたのにな。
……ダンスは運動神経と関係ないのかな。
清涼飲料水のペットボトルを口に運び、ごくごくと水分補給をする。
壁時計を見上げると、すでに二時間は経過していた。
本当に覚えなきゃいけないことが山のよう。
一日の時間が足りなくて、ついでに体力も足りない。
ダンスはもちろん、歌のレッスン、スタッフとの顔合わせ、雑誌の撮影、インタビュー、エトセトラ。
だけど、先輩たちはもっと忙しくしている。
ユニット活動や、単体で入ってくるインタビューや…。
こうして自主レッスンの時間が取れるのも、今のうちだけなのだろう。
- 196 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時15分42秒
- ため息をついて正面を見ると、頬を紅潮させ、髪を乱した自分が映っていた。
二つにくくった髪はこの二時間でだいぶぐちゃぐちゃになってしまっている。
『アイドルなんだからね。身だしなみにも気をつけて』
マネージャーの言葉が不意によみがえり、紺野は髪をまとめていたゴムを外した。
(私の人生、予測以上に波乱万丈)
北海道で暮らしていた頃はこんなことになるなんて予想もしていなかった。
勉強をして、空手をして、友達と遊んで…。
高校へ進学して大学へ行く予定だった。
なのに、今、東京にいる。
しかも芸能界なんて華々しい場所に――。
この世界では、北海道で培ってきたことはほとんど役に立たない。
古典の文法も、二次関数も、明治維新も、化学反応も……。
苦手だった英語の文法に悩まされることはなくなったのはちょっとラッキー。
でも、国語や理科や数学より、英会話や語学は身に付けていると役に立ちそう。
(まぁ、歌やダンスの方が明らかに重要であることは間違いないんでしょうけど…)
- 197 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時16分19秒
- ふと紺野は同期のメンバーを思った。
生まれついて芸能界に必要な華を具え持ち、バレエなどの鍛錬を積んだ高橋愛。
器用で、アイドルとしての自分の見せ方を知っていて、しっかりしている新垣里沙。
明るくて、表現力があって、歌もダンスもつんく♂さんに評価された小川麻琴。
対して。
「……赤点の紺野あさ美、ですもんね――」
(…落ち込む。――やめときましょう)
ふるりと頭を振ると、後ろ向きになりかけた思考を切り替え、弾みをつけて立ち上がった。
髪は簡単に一つにまとめる。
スタスタとラジカセの前へ行き、スイッチを入れると、何百回と聞いたイントロが流れ出した。
「Do it now」である。
リズムに乗れていないと何度もダメ出しをくらったダンス。
少しでも上達するため、紺野は鏡に映る自分を見据えながら踊りだした。
◇ ◇ ◇
- 198 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時16分52秒
- 「―――頑張るなぁ、あさ美ちゃん」
高橋はそんな紺野を入り口からじっと見つめていた。
練習しようとスタジオに来て、壁際にしゃがみ込んでいる紺野を見つけたのだ。
すぐに中に入って声をかけるつもりだったのだが、彼女の独り言が耳に飛び込んできたのだ。
「赤点の紺野あさ美ですもんね」
不思議と自嘲的な響きは少なくて、ただ事実を客観的に述べているような淡々とした声だった。
思わず足を止めて気配を殺してしまった。
一人だと思って呟いた言葉なのだと思う。
それは他人には聞かれたくないはず。
特に同期の人間には……。
それは高橋にも身に覚えのあるプライドだったから。
同期は仲間であり、最大のライバルだ。
そんな人間に泣き言を聞かれるのは嫌だ。
泣き言を聞いてもらうために喋るのなら話は別だろう。
だけどこんな形は反則に思えた。
- 199 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時19分48秒
- タイミングを探しながら入り口で立ち止まっていると、不意に紺野が立ち上がった。
そして曲を流し始めて鏡の前で一人踊りだす。
確かに上手とは言い難い。
けど――。
高橋にとって紺野はある意味脅威だった。
ダンスも歌も、今彼女が下手なのは経験が少ないせいだ。
自分は、娘。に入る前からレッスンを積んできた。
そしてそれが評価されてオーディションに合格した。
紺野は、歌もダンスも赤点と言われ、なのにやっぱり合格した。
補欠だろうがなんだろうが、合格は合格で、スタートラインに並んだのは一緒である。
それはつまり、それ以外に評価できるものがあったということに他ならない。
雰囲気とか、期待とか。――おそらく天性のもの。
そして、彼女は真面目である。
運動神経もいいし、頭もいい。
こうやってダンスも歌もレッスンを繰り返せば上達する。
結果、具え持った天性のものに加え、歌もダンスも手にいれる日が来るかもしれないのだ。
いや、かなり高い確率で来ると思う。
- 200 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時20分22秒
- (その時…、私はあさ美ちゃんに太刀打ちできるのかな)
紺野を見るたび、高橋はそんな不安に襲われるのだ。
自分のピークは今かもしれない。
努力と下積みで合格したけれど、これからどれだけ成長できるのだろうか。
きゅっと高橋は唇を噛み締めた。
不安を追い払うように頭を振る。
(負けるもんか。あさ美ちゃんが成長するなら、同じだけ、いやそれ以上、私も成長してみせる)
- 201 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時20分54秒
- 決心を胸にスタジオに足を踏み入れた。
鏡の中で紺野と高橋の視線が交わる。
紺野は踊りをやめて高橋を振り返った。
ふっくらとした顔にふわりと柔らかい笑みが乗る。
「愛ちゃん。愛ちゃんも練習ですか?」
「そう、練習。あさ美ちゃんには負けないからね」
「――……そんなの、愛ちゃんはとっくに勝ってますよ」
さっきまでの考えが尾を引いているのだろう。
困ったみたいに、自嘲するみたいに、紺野は目を伏せた。
高橋はまっすぐ彼女を見つめる。
さっきまで自分が考えていたことを言おうとして――やめた。
自分の弱音をこんなとこで話すのは嫌だし、まだそれを話すには時期が早い気がする。
だから、高橋はいつもの通り、くるっとした大きな瞳を少し細め、形のいい唇をきゅっと吊り上げた。
文句なしの美少女の笑顔。
「あさ美ちゃん、だめだよ? 目標は高く! ほら、いっしょに頑張ろう。教えられるとこは教えるからさ」
- 202 名前:ライバル 投稿日:2003年05月05日(月)20時21分50秒
- 紺野の顔がゆっくりと上がる。
そしてこくんと頷いた。
大きな黒い目に宿るのは前向きな輝き。にこりと顔を綻ばせておっとりとした柔らかい微笑を浮かべる。
「うん。ありがとう、愛ちゃん」
お互いがお互いの考えていることをどれくらい理解しているのかは分からないままだった。
今はそれでいい。
これからゆっくり話す機会が増えるだろう。
愚痴とか、喧嘩もあるかもしれない。
そうして本当の仲間となりライバルとなって…。
いつの日か、「あの時はねー」って話せる日が来るだろう。
そんな未来を現実にするために、今は練習を繰り返して汗を流そう。
――FIN――
- 203 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)21時56分35秒
「なぁに?よっすぃー・・・わたしに話って。」
梨華ちゃんは、きょとんとした顔でウチを見る。
ちょっぴり首を傾げたその姿が、とてつもなく可愛い。
日曜日の朝。
喫茶店は、まだそれなりに空いている。
もーちょっと時間が経つと、待ち合わせの人たちでいっぱいになるんだろう。
「・・・あのね、実は・・・。」
そこまで言って、言葉が出なくなってしまう。
・・・ああ、ウチの意気地なしっ!!
昨夜、あんなに練習したじゃんか!!こう言おう、ああ言おうって!!
ウチは、すぅぅっと息を吸い込む。
「ちょ、ちょっと待って!!あ、頭の中整理するから!!」
「・・・?うん、わかった。」
梨華ちゃんは首をかしげながらも、にっこりと笑ってくれた。
ああ・・・優しいな、梨華ちゃんは。本当に。
でも、これはウチ限定ではない。梨華ちゃんは誰にでも優しい。
・・・ウチは・・・それじゃ嫌なんだ。
- 204 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)21時58分36秒
梨華ちゃんを、ひとりじめしたい。
そう、ウチは梨華ちゃんが好き。大好き。
ともすれば溢れ出そうになるこの想いを抱き始めて、もう一年。
梨華ちゃんへの想いが高ぶり過ぎて、眠れない夜なんて何度もあった。
梨華ちゃんが他のヤツと仲良くしてるの見て、ムカムカする事だって死ぬほどあった。
梨華ちゃんは優しいから。
本当に、誰にでも優しいから。
でもウチは、「みんなの中の一人」なんて嫌だ。耐えられないんだ。
・・・だから今日、こうやって梨華ちゃんを呼び出した。
想いを、伝える為に。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
考え込んでしまったウチを前に、梨華ちゃんは変わらずにこにこしている。
ああ、優しいな、梨華ちゃんは。
きっと、居心地悪いよね。
いきなり呼び出して、いきなり黙って考え込むなんて・・・かなり態度悪いよね。
それなのに、にこにこ待っててくれる。
優しい。そんな梨華ちゃんが、大好き。
- 205 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時00分14秒
「・・・あ、のさ。」
「うん?」
「・・・・・・梨華ちゃんって、どんなタイプの人が好きなの?」
・・・自分のヘタレっぷりに、涙が出て来る。
なんなんだ、その中途半端な質問は・・・。
だけど優しい梨華ちゃんは、にっこり笑って答えてくれる。
「・・・そうだなぁ。優しくてあったかくて・・・それから、一生懸命なひと!」
「い、一生懸命?」
「そう!・・・一途、って言うのかな?」
「・・・・・・。」
「そんな人って、きっと・・・わたしだけを愛してくれそうじゃない?」
ウチだって、梨華ちゃんだけを愛してる。
机の下で組んだ手に、ぎゅっと力を入れた。
中指にはめている指輪が、ぐぐっと食い込んで痛みを伝える。
だけどそれ以上に、梨華ちゃんの夢見るような表情が・・・ウチの胸に痛みを与える。
「・・・もしかして梨華ちゃん、好きな人いるの?」
すると梨華ちゃんは、何も言わずにこくりと頷いた。
幸せそうな笑顔で。
痛い。胸が痛い。
- 206 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時01分15秒
「つきあって…るの?」
「ううん。わたしの片想い。」
ちょっと安心した自分に、自己嫌悪がつのる。
泣きたくなった。
梨華ちゃんには好きな人がいる。
もしかしたら告白しても、無駄かも知れない。
・・・ウチはきっと顔を上げて、梨華ちゃんを見据えた。
「な、なあに?・・・どうしたの?」
「梨華ちゃん!!」
言わないで後悔するより、言って後悔したい。
伝えないで傷付くより、伝えて傷付きたい。
これはもしかしたら、ウチのエゴなのかも知れない。
伝えてしまったら、優しい梨華ちゃんは悩むだろう。困るだろう。
それでも、伝えたい。
梨華ちゃんの心の隅っこにでも、ウチを残したい!!
「・・・・・・好きだ。」
その言葉に、梨華ちゃんの目が見開かれる。
「え・・・?」
「好き。大好き。梨華ちゃんが好き。」
「ちょ、ちょっと、よっすぃー?」
- 207 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時02分15秒
机の上に置かれた梨華ちゃんの手を、握り締めた
梨華ちゃんの手には、指輪は一つもはめられていない。
だからこそ、柔らかくてあったかい感触を満喫できる。
「・・・好きなんだ。本当に。」
「・・・・・・。」
「梨華ちゃん、好きな人いるみたいだけど・・・それでもウチ・・・!!」
涙がこみ上げて来る。
な、泣いちゃ駄目だ。ますます困らせるだけ。
俯いて顔を隠し、ぎゅっと目を閉じる。
「ばか・・・。」
「え?」
空耳かと思った。
だって、梨華ちゃんの声も涙混じりだから。
そして、次に聞こえた言葉も・・・信じられない言葉だった。
「わたしの好きな人は、よっすぃーだよ・・・。」
涙が出掛かった目を、ぱちぱちと瞬かせる。
今・・・なんて言ったの!?梨華ちゃんは・・・!!
ウチが好き!?本当にそう言ったの!?
- 208 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時03分23秒
「・・・・・・嘘。」
「嘘なんかじゃないもん・・・!!」
梨華ちゃんは、ぎゅっとウチの手を握り返した。
その顔は、真っ赤。
「ずっとずっと、好きだった。だけどよっすぃー、みんなに優しいから・・・。」
「え・・・!?」
「よ、よっすぃーこそ、本当なの!?わたしが好きって・・・ほ、本当なのぉ!?」
高くて甘い声に、本格的に涙が混ざる。
ウチは、もう・・・溢れ出て来る感情を抑えきれなくなった。
「好き・・・本当に好きだよ。梨華ちゃんが好き。」
「よ、よっすぃー・・・。」
「独り占めしたい。ウチだけの梨華ちゃんにしたい・・・!!」
梨華ちゃんの手を持ち上げて、口元に運ぶ。
手の甲にちゅっと口付けて・・・ふと梨華ちゃんの顔を見る。
・・・まっかっかだ。
可愛い・・・!!
もっと真っ赤な梨華ちゃんが見たくて、更にくちづける。
「も、もう!よっすぃーってば・・・。」
「・・・だって梨華ちゃん、可愛いんだもん。」
「・・・・・・。」
そしてウチは思い出す。
そうだ。きちんと言ってなかった。
名残惜しいけど、梨華の手を口から離す。
そして、今度は両手をがっちりつかんで言った。
- 209 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時04分53秒
「石川梨華さん。大好きです!付き合ってください!」
梨華ちゃんは、真っ赤な顔のまま・・・涙を浮かべて、微笑んだ。
その顔は、ウチの胸をうるさいくらいにどきどき言わせるような笑顔だった。
「・・・わたしも好き、です。大事にしてね?」
よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
拳を握り、ガッツポーズをとって、心の中で叫ぶ。
ウチは、右手の薬指にしていた指輪を引き抜いた。
そして、梨華ちゃんの左手を取って・・・それをはめる。
「あげる。それ。」
「く、くれるの・・・?」
「うん。ウチのカノジョだって、目印。」
「・・・・・・もう・・・。」
梨華ちゃんは、右耳のピアスを取った。
そしてそれをてのひらに乗せてウチに差し出す。
「じゃ・・・わたしからはコレ・・・。」
ウチは左耳のピアスを取って、ソレをつけた。
なんだか、耳たぶが熱く感じる。
「・・・ヨシ。コレ、一生外さねー!!」
「わたしも・・・一生外さない。」
- 210 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時06分08秒
目線を合わせた後、二人で同時にクスクス笑った。
幸せ。
なんだか、言葉じゃ伝えきれない想いが湧き上がるのを感じた。
「じゃ、出ようか。」
「え?」
「ふたりきりになりたい。」
その提案に、梨華ちゃんはまた真っ赤になってこくりと頷く。
立ち上がったその瞬間・・・ウチは机に手をついて、身を乗り出した。
そして、梨華ちゃんの唇を奪う。
「・・・・・・!?」
「へへへ。いただき♪」
「・・・よ、よっすぃーの馬鹿・・・こんな所で・・・誰か見てたら・・・!」
「かまわないよ。梨華ちゃんはウチのカノジョなんだ。みんなに宣伝したいくらいだよ。」
「・・・・・・もうっ。」
仕返し、と言わんばかりに梨華ちゃんも唇を重ねて来る。
そしてくすくす笑いあう。
ふと気がつくと、ウェイトレスさんがこちらをにらんでいた。
- 211 名前:喫茶店 投稿日:2003年05月11日(日)22時06分38秒
「・・・続きは、あとでね。」
「そんな事言うと、期待しちゃうよ?」
「もう、よっすぃーってば・・・。」
そして、手をつないで喫茶店から出る。
左手に、梨華ちゃんの手の感触。
・・・ああ、ウチ、今までよりもずっと梨華ちゃんが好きになってる。
ぎゅっと手を握ると、梨華ちゃんもぎゅっと握り返してくれた。
それが、すごく幸せに感じた・・・日曜日の朝。
END
- 212 名前:恋愛というなの友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時17分14秒
- 夜、人気の少ないスタジオ。
遅くまで続いたダンスレッスン。
他のメンバーは帰ってしまい、2人だけがスタジオに残っていた。
居残り練習の美貴となんとなく居残り練習のひとみ。
明るい電灯が2人を照らす。
窓の外はすっかり真っ暗で、2人の息遣いと床をキュッキュとならすスニーカーの音だけが響く。
「そろそろ帰った方がいいよ」
区切りの良いところでひとみが美貴に声をかけた。
美貴は大人数でのダンスに慣れないらしく、何度も動きをチェックしている。
- 213 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時18分05秒
- 「ねえ美貴ちゃん。そんなに焦ることないって。無理するの良くないよ」
踊るのをやめて床にペタッと座ったひとみが美貴を見上げる。
新規加入メンバーだからといって、ソロでやってきた美貴はダンスが出来て当然。
そのような周りからのプレッシャーや、ソロでやってきたのに娘。というユニットに入らなくてはならなかった悔しさ。
そういったことに対する美貴の意地が、こうまでも練習させているということはひとみにも良くわかっていた。
けれどもこれからが長いのだから、今ここで無理する必要はない。
「ねえ、明日もあるんだしさぁ。そんなに突き詰めちゃうと体壊すよ。
ほら、うちらってグループじゃん?1人が体壊したりすると周りにも迷惑なんだよねぇ」
床に寝転がるようにして美貴の顔を覗き込む。
ヘラヘラっと笑っているひとみを見て、美貴もフッと笑って動きを止めた。
「そうだよね。ごめん」
肩で息をしながら、ひとみから渡されたタオルで汗を拭く。
- 214 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時19分18秒
- ハロプロでしか一緒になることのなかったひとみと美貴は、それまではそんなに話などしたことがなかった。
そして美貴が娘。に加入してから1ヶ月。
2人の会話の回数が増え、お互いの共通点を見出していた。
体育会系なノリ、わりと醒めた性格、男っぽい感覚。そして、寂しがりなところ。
それらはお互いの距離をぐんと縮め、仲良くなるにはそれほど時間がかからなかった。
- 215 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時19分54秒
- 美貴はゆっくりとひとみの隣にペタッと座ると、ペットボトルの水をゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
その様子をぼーっと見つめるひとみの様子を面白そうに横目で見ながら、さらに飲み続けた。
水を飲み終えると美貴は頭にタオルを乗せ、体育座りで額を膝につけた。
じっと体を丸め、なにかを考えるようにして。
ひとみからは美貴の表情は全く見えず、ただ黙って美貴の様子をうかがうしかなかった。
最近の美貴はメンバーからも孤立しつつあり、さらにはここ数日は少し様子がおかしかった。
しかし美貴から何か言ってこない限り、ひとみからは聞くつもりは無かった。
人から相談とか受けるのが得意ではなかったし、それに自分だったらあまり人から干渉されたくなかったから。
自分と似た性格の美貴もまた、そうなのではないかとひとみは考えていた。
- 216 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時20分39秒
- 「ねえ、よっすぃ〜?」
しばらく黙って座っていた後、ふと美貴が声をかけてきた。
体育すわりのまま、顎を膝に乗せて足元を見ている美貴。
「ん?」
「好きな人とかっている?」
「ん〜、今は…いないかな」
「そっか」
2人の間に少しの沈黙。
「どした?突然」
「ん〜〜〜」
なにか言いにくそうな美貴。
「美貴ね、あんまり友達とかいなくってさ、よっすぃ〜が初めてなんだ。こんなに仲良くなれたのって」
ひとみは美貴の言葉に相槌を打ちながら、美貴の横顔を見る。
少し照れくさそうに足元を見ながら、言葉を選ぶようにゆっくりと話す美貴。
「よっすぃ〜は?よっすぃ〜は美貴のこと、どう思ってる?」
「え、ん〜と、大事な仲間だし友達だよ」
あたらめてそんなことを聞かれて、少し照れくさいひとみ。
けれども美貴の目は真剣だ。
- 217 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時21分15秒
- 「そうじゃなくって、ね?」
「え?」
「だからぁ、わかんないかな?美貴は、よっすぃ〜が好きだよ?」
「うん、ありがとう。あたしもだよ」
「だからぁ、そうじゃなくって、だよ」
なにが違うのかわからないひとみ。
美貴が何を言おうとしているのか、自分に何を求めているのか。
「ね、よっすぃ〜の中で、美貴は一番?いま、彼とかいないんだよね?」
「うん、そうだね。今は美貴ちゃんが一番かもね」
「じゃあ、さ」
そう言って、ひとみとの距離を少し縮めてくる美貴。
「え、と…ごめん。言ってる意味が、よくわかんない」
「だからね、美貴にはよっすぃ〜が一番なの」
そう言ってゆっくりと美貴の唇がひとみのそれに触れた。
ああ、そういうことか。
ひとみはやっと美貴の言わんとすることがわかった。
けれどもなぜか驚きはなかった。きっと今の話の流れでうっすらとそれを感じてはいたからだろう。
- 218 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時21分47秒
- ゆっくりと視線が合う二人。
何かを言おうとするひとみに、不安そうな目の美貴が映る。
今までに見たことの無い表情。
そんな美貴を見て、ひとみは今までとは違った感情が芽生えてきた事を感じ始めた。
まだそれを恋愛感情と呼ぶには弱すぎるけれども、今ここで美貴を傷つけたく無いという気持ちは強かった。
「そうだね、あたしも今は美貴ちゃんが一番かも」
不安を取り除かせるために、ゆっくりと微笑んで見せる。
けれどもはっきりと言ってあげることが出来ない自分が歯がゆい。
それは、ほんの一瞬別の人の顔が浮かんだから。
「今はって、美貴より好きな人ができるかもってこと?」
「そうじゃないよ。もしね、あたしに好きな人がいたとしても、きっと美貴ちゃんは一番なんだよ。
それは、恋愛だけの順位じゃないから。でも…ちゃんと考えたこと無いからよくわかんないや」
ちょっと冗談ぽく投げやりに言って笑って誤魔化す。
- 219 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時22分27秒
- 半分は嘘。半分は本当。
今のこの瞬間、美貴を一番大切に思っていることは本当だし、美貴の気持ちに応えてあげたいと思っている。
けれどもひとみの心のなかには、そんなランキングにすら入らないくらいの人がいる。
何があってもどんな事をしても守りたい人。
自分の命以上に、そして他のものとは比べ物にならないくらい大切な人。
それを恋愛感情なんていう簡単な言葉では言い表せない。
3年間ずっと支え合ってやってきた。
他のどのメンバーよりも、その人は精神的に一番近いところにいた。
だからこそ、恋愛対象には絶対になり得なかった。
- 220 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時24分23秒
- 「美貴はよっすぃ〜に傍にいてほしいよ。でもやっぱり、よっすぃ〜は梨華ちゃんが…」
「梨華ちゃんは、そういうんじゃないよ。それに、梨華ちゃんには圭ちゃんがいるしね」
ためらい気味な美貴の言葉に重ねるようにそう応えると、ひとみは美貴の肩を引き寄せた。
「そう言う美貴ちゃんには、亜弥ちゃんがいるじゃん」
少し冗談まじりで意地悪っぽく微笑むひとみ。
それに対して、軽くフッと笑う美貴。
「あぁ、亜弥ちゃんね。関係ないよ、あの子は」
すこし投げやりな言い方で、一瞬冷たい表情。
ひとみはその一瞬の表情に、『孤独』という二文字を見た気がした。
しかしその表情はすぐに消え、美貴は再びゆっくりとひとみを見つめた。
- 221 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時25分25秒
- ひとみは直感で今、美貴が何かに深く傷ついていると感じた。
今日の美貴は、いつものクールな美貴とは全く違う。
しかも、年下のひとみにこのように甘えてくることは今まで一度もなかった。
きっと美貴の中で、自分ひとりでは立っていられない様な出来事があったのだろう。
誰かに傍にいてもらいたい時に、たまたまひとみが一番近くにいた。
そして美貴は傍にいてほしいと願った。
ひとみはそれに応えたいと思った。
それを人は恋愛とは呼ばないかもしれない。
けれども1人では出来ないことも2人ならば乗り越えられるとしたら、助けてあげたい。
- 222 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時26分11秒
- ひとみはゆっくりと美貴の唇へ自分の唇を寄せると、ふたりのそれがあと数ミリで触れ合うかというところで、
「いい?」と美貴の表情を伺った。
その前に既に、美貴からしてきたのだから良くないはずは無いのだけれども、自分からして良いものか迷ったから。
ここでキスしてしまえば、美貴を受け入れたことになる。
けれども本当に美貴はそれを望んでいるのだろうか。
自分が勝手に美貴の気持ちを解釈しているだけではないのか。
そんな自信の無さの現われだった。
「フハッ。あ、うん」
その言葉がおかしかったのか、美貴は軽く吹き出した。
そしてゆっくりと瞼を閉じた。
- 223 名前:恋愛という名の友情 投稿日:2003年05月12日(月)02時27分02秒
- ふたりの唇が離れると、ひとみは自分の唇を人差し指でなぞった。
乾いた唇のガサガサとした感触が気持ち悪い。
「唇…」
「あ、ごめん。唇、乾いてたかな。緊張しちゃって…」
ひとみの言葉と仕草に、美貴が慌てたように反応した。
「いや、違うんだ。あたしの唇乾いてたから、気持ち悪くなかった?」
「ううん、全然大丈夫だよ」
「なら、良かった。そろそろ帰ろっか」
ひとみはもう一度軽く美貴の唇にキスをすると、美貴の手を取って立ち上がった。
たぶんこれで良いんだ。
美貴が自分を必要としているのが心に深く負った傷のリハビリのためだとしても、美貴の傍にいよう。
美貴が自分から離れることがあるまでは。
これを周りが恋愛ごっこだと言ったとしても、この「ごっこ」を美貴の気が済むまで続けよう。
ひとみはそう心に決めて、美貴の手を強く握った。
指を絡ませるように繋ぐかどうか、ためらいながら。
fin
- 224 名前:ドント 投稿日:2003年05月17日(土)21時03分07秒
いつからだろう?、この気持ちに気づいたのは・・・・
いつからだろう?、あなたになら殺されてもいいと思ったのは・・・
あなたに会ったのは四年前、モーニング娘第四期メンバーを決めるオーディションの時、
あなたはとっても女の子らしくて、ネガティブで、ちょっと色黒で、でもすっごく守ってあげたいと思ってた。
それが・・・少しずつ変わりはじめたんだ。
「私の事、好きなんでしょ」
あなたは、とっくに私の気持ちを知っていて、私はあなたにとって、
ただの・・・・
「んぅ、やぁっ、・・・あっ・・」
「抵抗しないの?」
「・・・・・・」
「ふふっ、できるわけないよね」
ただの、玩具でしかないんだ。
それでもいい、あなたが私を見てくれるなら、
あなたが私に触れてくれるなら。
完
- 225 名前:『あなたのことが大好き』〜収録中にて〜 投稿日:2003年05月20日(火)22時36分16秒
- 司会者「1位は・・・紺野ー!!」
・・・こういう企画はっきり言って面白くもなんともないんだよね。。。
今日も【モーニング娘。学力テスト】とかいうコーナーをやってるけど、もうすでに[頭がいい]とか[劣等性]っていうキャラが成り立っててるから今更やる必要なんてないのにな。。。
ボーっとそんなこと考えてたら急にドキッとしてしまった。。。大好きなあの人の声が耳元で聞こえたから・・・
高橋「どしたの?収録中だよ。そんなボーっとしちゃダメじゃん?」
紺野「え?いや、その・・・」
矢口「ちょーっと紺野!!ボーっとすんなよ!!しかも高橋も!二人の世界入らないのー!」
私が喋ろうとしたら矢口さんにさえぎられた。矢口さんはトークしながらさりげなく注意するの得意なんだよね。今も私達に注意しながらみんなの笑いをとってるし・・・
飯田「ちょっとー!紺野ー?もしかして交信中?」
安倍「かおり、全然説得力ねーべ。(笑)」
あ、また怒られた。つーか、喋ってないの私だけ?なんか喋んないと!・・・あ、もう終わっちゃった。今日最後の仕事がこんな風に終わるなんて・・・あと味悪いなー・・・
- 226 名前:『あなたのことが大好き』〜楽屋にて〜 投稿日:2003年05月20日(火)22時37分23秒
- 安倍・飯田・矢口「「「紺野ー!!!あんた何ボーっとしてんの(怒)!!」」」
普段、見られないような3人のハモリ・・・完璧です。ってそーじゃなくって!・・・あ、一人でつっこんじゃった。そーだ。私怒られてるんだった。いけないいけない。
安倍・飯田・矢口「「「紺野聞いてるのー!?(怒)」」」
紺野「はい・・・すいません。」
あーあ、吉澤さんと加護さんそれに麻琴ちゃんまで楽しそうにこっち見てるよ。他のメンバーは、と。石川さんと辻さんは半泣きだ。私が怒られてるのに・・・悪いな。
愛ちゃんは・・・!?いた!里沙ちゃんと心配してくれてる!!
おもわずにやけてしまった私に、容赦なく雷が落ちた。
矢口「紺野聞いてないでしょ!それに高橋も!あんたたち収録中に喋ってたでしょ。(怒)」
高橋「え!?あぁ、はい!すいませんでしたぁ!」
どうしよう。私のせいで愛ちゃんまで怒られちゃったよ〜・・・でも二人で怒られるの嬉しいかも。そう思ってたら
愛ちゃんと目が合った。こっそりピースしちゃってるよ・・・でも可愛いなぁ。
矢口「高橋!!紺野ー!!(激怒)」
- 227 名前:『あなたのことが大好き』〜1時間後〜 投稿日:2003年05月20日(火)22時39分58秒
- その後もこっぴどく叱られ続けてたら楽屋にいるのは私と愛ちゃんと矢口さんだけになってた。
矢口「それじゃあ、オイラそろそろ帰るわ!次からは注意しろよ!じゃーなー。」
高橋・紺野「「さ、さよなら・・・」」
高橋「もう誰もいないね。一緒に帰ろ!」
紺野「あ、ご・・・ごめんね。。。私のせいで愛ちゃんまで怒られちゃって。」
高橋「・・・別にいいよ。私はあさ美ちゃんと怒られて嬉しかったから・・・///」
紺野「うん。私も嬉しかった。。。って愛ちゃん!?」
高橋「分かんないかなぁ。」
紺野「えっ!?いや、あ、あの・・・」
高橋「タ、タッチ風に言うと・・・ね。えっと、いい?い、言うよ?・・・ 私、高橋愛は紺野あさ美を愛してます。」
- 228 名前:『あなたのことが大好き』〜1時間後・2〜 投稿日:2003年05月20日(火)22時40分30秒
- 一瞬何が起きたか分からなかった。そっか。これは夢なんだ。うん。きっとそう。こんな時は、ほっぺたを・・・
紺野「痛た・・・!?痛いよ?愛ちゃん。」
高橋「あ、ゴメンゴメン。そんな強くつまんだつもりはなかったんだけど。・・・それよか、これは夢なんかじゃないよ。
女同士だって分かってるし、今の日本じゃダメだってことも分かってる。けど、この気持ちはずっと伝えたかったから。。。それだけは知ってて?」
愛ちゃんには私の行動なんかお見通しですか。。。でも愛ちゃんにも私の行動で分からないことがあるんだよね。それを見たら喜んでくれるかな?というより、本当に夢じゃないのかな?
私にとっては天と地がひっくり返ることよりありえないって思ってたことが、今現実に目の前で起きてるのに・・・。でも、夢なら夢でいい。目が覚める前に私も伝えなきゃ。
『あなたのことが大好き』だってことを。・・・目の前の世界で一番愛しい人に。
END
- 229 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月21日(水)01時21分40秒
- 高紺(・∀・)イイ!!
数少ないので嬉しいです(w
- 230 名前:きれぎれ 投稿日:2003年05月24日(土)03時59分15秒
- ここから眺める月が好きだった。趣味なのか、隅っこに並べられた、いくつもの植物があって、職業柄なのか
洗濯物がひとつもかかってることなく、きれいなままで、いつの間にか矢口用に椅子が用意されていて
素直に喜んでそこに座ってマンションの下で繰り広げられる日常の明かりを眺めたり、植えてあ
る花を触ってみたり、月をみたり、部屋の中にいるなっちをガラス越しに見つめてみたり。
いつだったか、夏。夏の蒸し暑い日に、窓をあけたまま矢口はベランダの椅子に座って、なっち
が部屋の中で用事をしながら楽しそうに話していて、ふんふんと頷きながら月を眺めてた矢口に
きいてんのぉ?なんて言いながら、なっちは片手にアイスを持っていて、ひとつで、ふたつのアイスのやつ。
あれを手にもってて、食べるっしょ?っていいながら割って片方を矢口にくれた。
蒸し暑くて、じっとりとした空気の中で口の中だけがいやにひんやりして、ソーダー味の甘ったるさが爽快だった。
おいしーっと笑うと、なっちも楽しそうに笑った。
アイスを食べ終わると口寂しくて、キスしたら、ひんやりと冷たくて甘くて、気持ちよかった。
- 231 名前:きれぎれ 投稿日:2003年05月24日(土)04時01分06秒
もう、終わりなのかな?
いつもの椅子に座って、それでも何も見てなくて、一人昔話なんて思い出していた。
今日も窓があいていて、そこから数メートル先に置いてある、地味だけど、なかなかセンスのある麻のカバーが
かけてあるソファーにいつものように、なっちは座っていて、いつも以上に寂しそうだった。
そもそも、何かはじまってたんだろうか、なんていう思いが一瞬よぎって打ち消す。
もうね、好きじゃなくなっちゃった。
- 232 名前:きれぎれ 投稿日:2003年05月24日(土)04時02分02秒
- 一番傷つく言葉をわざと選んで、辛そうな、なっちの顔をみて、吐き気が込みあがってくるくらい自分の胸も苦しかった。
じゃあ、とかいってここで部屋を出て行くのがベスト。冷静な自分はそう判断するけれど
どうしても、さっき回想していた風景が幸せすぎて、もう1度味わいたくなる。
じゃあ、と、玄関で靴を履いて振り返った時に、なっちと目が合った。
最後にちゅーしよっか。なんて言葉が喉まで出掛かっていて、おもわず飲み込む。
じゃあまた、うん、またね、また明日。
うんうん。と無理に二人とも笑顔で別れる。だって、明日もあさってもこれからも、毎日のように顔をあわせるもんね。
変な風に大人になっちゃったなぁ、と帰り道にため息をついてみたりする。
がやがやとうるさい人ごみの中に埋もれて、みんな、それぞれ色々あるんだろうな、なんて安心してみようと思うんだけど。
やっぱり、あの彼女のベランダの矢口の椅子から見下げる程、安心はしなかった。
おわり。
- 233 名前:距離 投稿日:2003年05月25日(日)23時18分16秒
- 石ころを蹴飛ばしてみた。
予想外に高く飛んで、思ったより遠くへ飛んだ。
弧を描いて前に歩いてるあいつの頭に当たった。
後ろ頭を掻きながら振り向いた。
「…痛いじゃないですか、どうしたんですか?今日、機嫌悪いですね?」
ううん、と首を振ったらそうですか、と言ってまた前を見て歩き出した。
本当は声が聞きたくて、話しかけて欲しくて。
でも素直になれなくて。もどかしくて。
- 234 名前:距離 投稿日:2003年05月25日(日)23時18分51秒
- また石ころを蹴り上げた。
予想外に低く飛んで、思ったより遠くへは飛ばなかった。
前を歩いてるあいつには当たらなかった。
あいつは気がついてくれない。振り向いてくれない。
あーあ、って声が出た。嘆きの声。
私の事なんて気がつかないで前を歩いて行っちゃうんだ。
ばーか、気がつけ。私の気持ちに早く気がつけ。
- 235 名前:距離 投稿日:2003年05月25日(日)23時19分33秒
- 「…後ろから変なオーラ放つのやめて下さい、飯田さん」
「吉澤が悪いんです」
ふう、とため息をついてまた前を歩き出す。
その後ろについていく。
さっきと一つ変わった事は前を歩くあいつは喋り続けている事。
「飯田さんて大人っぽいのに子供っぽいですよね」
「…何それ意味わかんない」
私よりも5歩は前を歩いてる。
その差はいつまで経っても縮まらない。
早く歩けばいいのに。遅く歩けばいいのに。
この距離は何を意味してるの?
- 236 名前:距離 投稿日:2003年05月25日(日)23時20分58秒
- 「なんで並んで歩かないんですか?」
「なんとなく、意味は無い」
「何すかそれ、意味わかんないです」
これぐらいが丁度良い。
近くもなくて遠くもなくて居心地が良い。
ただそれだけなんだと思う。
石ころを蹴飛ばしてみた。
予想通りに高く飛んで、思ったとおり遠くへ飛んだ。
弧を描いて前に歩いているあいつの頭に当たった。
- 237 名前:距離 投稿日:2003年05月25日(日)23時21分46秒
- 「…本当は近くに来たいんでしょう?」
振り向かないで歩いたまま言った。
「わかんない」
そのまま後ろを歩きながら言った。
「わかんないけど、吉澤の事は好き」
前を歩いていた足が止まった。
そして肩を震わせて笑ってた。
「…うちも、わかんないけど飯田さんの事は好き、かな」
また歩き出した。
それをまた追いかけた。
END
- 238 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月26日(月)17時34分05秒
- こういうマッタリ話好き。
- 239 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月26日(月)21時13分08秒
- >>233-237
タイトルとおりな距離感がいいですね!
面白かったです
- 240 名前:あひるの子 投稿日:2003年05月27日(火)20時48分32秒
- ごとーはあひるの子だった。
大きな白鳥たちの中に1匹だけ混ざった
小さなあひるの子。
ぐえ ぐえ
ごとーは白鳥たちが嫌いだ。
だってごとーをいじめるから。
- 241 名前:あひるの子 投稿日:2003年05月27日(火)20時49分24秒
- そんな白鳥たちの中にひときわ
かわいくてきれいな子がいた。
吉子っていう子。
最初は吉子も他の人たちと同じだと思ってた。
でも違った。
吉子は優しくて一人だけ違うごとーにも
普通に接してくれた。
そんな吉子がごとーは大好きだった。
- 242 名前:あひるの子 投稿日:2003年05月27日(火)20時50分06秒
でも吉子は死んだ。
ごとーとのお別れ。でもまた会えるはずだった。
なのに本当に会えなくなっちゃった。もう二度と。
ごとーの転校した次の日、ごとーとはなれた次の日。
吉子は車に轢かれて死んだ。
本当のお別れ。もう手も触れられない。
話すことも、会うことも。
一緒に笑ったり泣いたりすることも。
大好きな吉子。いまでもずっと。
吉子がいなきゃごとーは何も出来ないのに・・。
- 243 名前:あひるの子 投稿日:2003年05月27日(火)20時50分42秒
もう会えないの?
会いたくて、会いたくて、
会いたくて会いたくて会いたくて仕方ないのに。
小さな小さなあひるの子は
今から空に飛び立とうと思います。
すぐに行くから待っててね、吉子。
イヤな顔しないでよ?
- 244 名前:あひるの子 投稿日:2003年05月27日(火)20時51分21秒
- おわり
- 245 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時35分03秒
- 彼氏にフラレて、気分はどん底だった。好きな気持ちが残ったまま別れるのがこんなに辛いなんて・・・
その時、いつもそばにいてくれたのは彼女だった。何も言わずに抱きしめてくれたし、黙って愚痴も聞いてくれた。
彼女の重みになってる事なんて感じもしなかった。ずっと親友でいられると思ってた・・・。
- 246 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時36分32秒
陽が傾き、窓の外はオレンジの優しい色をしていた。
私の部屋もその光によってキレイなオレンジで着飾った部屋にかわっている。
小さなクリーム色のソファーに二人ちょこんと座って話し込んでいた。
いや、話し込むというより、私が一方的に話していると言った方が正しい。・・・それも泣きながら。
「もう・・・ダメだわ。あたし・・・」
「へ?」
「これ以上、梨華ちゃんの泣き顔見れないよ・・・」
親友は目をそむる。ピンクのクッションを掴んでいた彼女の腕はクッションにめりこむ。
急に態度の変わった彼女を見て、私は慌てて頭をさげた。
「ご、ごめんなさい。・・・いっつもひーちゃんに甘えちゃって・・・」
いつも隣にいてくれて優しくしてくれた、一番大切な友達。
キレイな顔で微笑んで私の気持ちに安堵感を与えてくれる。
そんな彼女にいつも甘えていた。
- 247 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時37分19秒
- 彼女は小さく口を開いた。
「梨華ちゃん。あたし、梨華ちゃんをずっと見守ってあげれればイイと思ってた。
一番近い距離で、梨華ちゃんを守ってあげてればいいと思ってた・・・けど・・・」
彼女の目には涙が溢れ、涙に耐え切れなくなった目は瞬きと共に頬へと伝って、一本の線ができる。
「あたし、梨華ちゃんが好きなんだ。だから泣き顔を見てられない。傷つく梨華ちゃんを見ていられないんだ・・・」
「えっ・・・」
私の胸の鼓動が早くなる。・・・目の前にいる彼女は女の子。それなのに、それなのに鼓動はどんどん早くなっていた。
「・・・でもあたしは梨華ちゃんに何もしてあげられない・・・もうあたしは・・・」
彼女は木製のテーブルに置いていた、携帯と財布を取ると、私の部屋をあとにした。
私は何も声をかけられず呆然としていた・・・。私を・・・・好き・・・・・・?
陽はもう地平線まで落ちて、部屋には真っ暗な衣を着ていた・・・
- 248 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時38分38秒
月の淡い光をまとった部屋で私はベッドに仰向けになって天井を見ていた。
殺風景な天井に彼女の顔を写していた。
「私を好きだったひーちゃん・・・・・・それに気づかないで・・・ずっと・・・甘えてた・・・・私・・・・」
口からはさっきからこの言葉しか出てこない。無意識にこの言葉だけリピートしていた。
今まで気にかけなかった彼女の存在。いつも側にいてくれて、それが当たり前で。
『空気』みたいな存在だった。なかったら生きてはいけない。けど、重要性を感じていなかった。
なくなったら気づく、この感情・・・。
「私・・・ヒドイ事をしてきた・・・気づかなかったなんて・・・・言い訳・・・」
私は起き上がって、テーブルに置いてあった携帯を手にとり、彼女のメモリーを探し、かける。
『―――おかけになった電話は 電波の届かない所にあるか 電源が入っていないためかかりません・・・・・』
繋がらない・・・。電話を切ってもう一度かけ直す。・・・でも繋がらない。
- 249 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時39分32秒
- 私の側から彼女がスゥーっと遠くに行ってしまった気がした。そう思ったら急に涙が止まらなくなった。
手の甲で拭っても拭っても流れ続ける涙。そして膝に入れていた力もフワッとなくなってその場に座り込んだ。
「私・・・あの人を好きだって思ってた・・・・フラレた時はすっごい悲しかった・・・・だから・・・だから・・・
ひーちゃんに甘えた・・・それが普通だと思った・・・・ひーちゃんに甘えるのが普通だって・・・・
けど・・・気持ちのいい安堵感を・・・・与えてくれるのは・・・ひーちゃんだけだったね・・・・
私・・・・ひーちゃんの事・・・・好きだったんだ・・・」
口に出した言葉は部屋に響きわたる。その音以外の雑音はこの部屋には存在しなかった。
自分の気持ちに素直になれた途端、私はそのまま声を上げて泣いた。
散々泣いて、泣きつかれると、私はだんだんと意識がなくなっていった・・・
- 250 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時40分04秒
気づいた時には、まぶしいの光が私にぶつかってくる。
鳥の鳴く声が耳に入って私は起き上がった。
「私、寝ちゃったんだ。」
小さく呟いて、握り締めていた携帯のディスプレイを覗く。
『新着メールが届きました』
私はボタンを押してメールを確認する・・・彼女からだった。
『昨日はイキナリ変な事言ってごめん。もう逢わないって決めてたんだけど、
ムリを承知でお願いします。今日、10時に梨華ちゃん家の近くの公園で待ってます。
ひとみ』
私の心の中にもまぶしい光が差し込んできた。
今から1時間後には彼女に会える。そう思うと心が躍る。
右手で小さくガッツポーズをとって近くにあった鏡を見た。
すると、そこには目の腫れた私の顔。そこで後悔の気持ちが押し寄せる。
「もっと早く気づいてたら、こんな目の腫れた顔で逢わなくてすんだのに・・・」
そう思いながらも急いで出かける準備を開始した。
- 251 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時40分47秒
10時5分前に到着した私は公園をキョロキョロと見渡す。
奥の木陰のベンチに座っている彼女を見つけて、急いで駆け出した。
「ひーちゃん・・・ごめん。待った??」
「ううん。あたしも今来たところだから・・・」
「隣・・・いい?」
「うん。」
私は彼女の隣に座る。距離は少し置いた、昨日の今日でいきなりひっつかれても彼女が困るかなと思ったから。
本当は、今にでも抱きつきたかったけど・・・。
彼女は俯いたまま口を開いた。
「あ、あのさ・・・昨日は・・・その・・・ごめん。
イキナリ変な事言われて・・・ビビッたでしょ?」
「・・・うん。ビックリした・・・」
申し訳なさそうに喋る彼女はいつもの調子ではなかった。一歩後ろに下がっているというか、一線置いている。
・・・ちょっと寂しいかった。
「別にね、あたしを好きになってって気持ちは少しもない。
だって、女の子同士なのに、こんな感情持ったあたしがいけないんだから・・・。
うん・・・今日梨華ちゃんを見れただけで、よしこは充分・・・。」
- 252 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時41分51秒
- そう言って笑って見せた。明らかに頑張って作っているという感じだったので私はクスクスと笑った。
「な、なんで笑うんだよ。」
「だって、ひーちゃん、笑ってないじゃん。私、前からわかってたよ。私に気遣って笑顔でいてくれたって。」
え?という驚きの声と顔を出す。
「ひーちゃんが私の事を・・・その・・・好きって気持ちはわからなかったけど、
私の為に一生懸命笑顔を作ってくれてたのはわかったの。私を支えてくれる笑顔・・・好きだった・・・」
彼女は驚きの表情は変わらない。
「・・・私、ひーちゃんに告られて気づいた事があったんだ。」
「・・・なに?」
「お日様の匂いがいっぱいの毛布にくるまってるのが好きなんだって。」
「・・・へ?」
「落ち着くの・・・ひーちゃんの腕の中・・・」
赤くなって言うと、彼女もスゴイ勢いで赤くなっていく。
「それって・・・」
「グチいっぱい聞いてもらうし、すぐ抱きついちゃうから・・・ね。」
「・・・うん、慣れてるから平気」
- 253 名前:お日様の匂い 投稿日:2003年06月01日(日)20時42分50秒
鳥の声、はしゃいでる子供達の声、様々な音があったけれど、その音は全て私達を祝福してくれるよに思えた。
木々の間から零れる光が彼女と私の顔を照らす。日差しもまた、私達を祝福してくれるよう・・・
・・・おわり。
- 254 名前:名前を呼べない人 投稿日:2003年06月04日(水)22時10分03秒
- 「ひとみちゃん」
よしこは驚いた顔してこっち見てる。
多分アタシが梨華ちゃんしか呼べない名前を呼んだから。
恋人しか呼べない名前を呼んだから。
「ごっち〜ん、いきなり何だよ〜。びっくりするじゃん。」
「ん〜?呼んでみただけ〜。」
「何それ。」
よしこはちょっと苦笑したような、困ったような
微妙な顔を浮かべてた。
やっぱりアタシが呼んじゃいけないんだよね?
わかってたんだ。わかってた、けど・・
言葉の一つ分の時間でも、アタシはよしこの恋人になりたかった。
叶わない恋を叶えたかった。
- 255 名前:名前を呼べない人 投稿日:2003年06月04日(水)22時11分30秒
「ちょっとトイレ行ってくる。」
「うん。」
雑誌に夢中なよしこの背中に声をかけて
別に行きたくもないトイレに向かった。
狭い個室の便器に座り込んで声を殺して
アタシは泣いた。
バカみたいに、好きだ好きだ、って言い続けた。
届かないアタシの声と気持ち。
いつかは消えてくれるかなあ・・・・・
終わり
- 256 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時16分38秒
- 静かな夜だった。
風もない、空一面に星空が広がっている夜。
私はいつも通り、仕事を終えたその足で中澤さんの家へとやってきた。
それからすぐに、二人でスパゲッティーを作って、
今日あった他愛ない事を話をしながら食べた。
けれどその後、中澤さんは急に黙り込んでしまう。
そこで気が付くべきだった。
これは嵐の前の静けさなんだって事に。
「なっ。今、何て言ったんすかっ」
沈黙を破った中澤さんのその一言を理解する事ができない。
「やから、結婚するんや、私」
いたずらがばれたばつの悪い子供のように、
中澤さんは左右に視線を揺らしながら言った。
肩くらいまで伸びた髪が、本人の意思に寄り添うように揺れる。
食べ終わってそのままになっている皿に残ったミートソースが妙に赤くて、
なんだか現実感がなかった。
- 257 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時17分09秒
- 「結婚、て何ですか?」
「そんなもん、男と女の人生の一大儀式に決まっとるやん」
いつもならほほえましい冗談も、ちっとも面白くない。
もっとも中澤さんも楽しくて言ってるわけじゃなさそうだけど。
苦りきった顔、わなわなと震える手。
どう見たって普通の状態じゃない事は明白。
だけど、私だって普通じゃなかった。
「なんで急に…」
「…」
返事をしない中澤さんに畳み掛けたい衝動に駆られた。
あんなにキスしてくれたじゃないですか、抱いてくれたじゃないですか、
「好き」って言葉に笑ってくれたじゃないですか。
けど、言葉が口をつくより先に、静かな部屋に音が響いた。
お風呂が沸いたことを知らせる機械音。
- 258 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時17分44秒
- これは、悪い夢なのかもしれない。
目が覚めたら、いつもと同じような日々に戻っているのかもしれない。
そう思いたかった。
だけど、心と体は知っていた。
これは夢や幻なんかじゃなくて現実なんだって事を。
だから、考えるよりも早く私は立ち上がっていて
この手は中澤さんの右手をしっかりと掴んでいた。
「納得いく答えを返してくれるまで放しません」
そもそも、納得いく答えなんてあるだろうか。
確実に頭に血が上っているであろう今の私に
どんな答えも通用しない可能性の方が高いというのに。
- 259 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時18分14秒
- 「…たら…」
「何ですか?」
「せやったら、子供が欲しいからや。
家庭を持ちたいからや。
そう言うたらあんたは納得するん?
せえへんのやろ?!」
思わず謝ってしまいそうだった。
こんなに声を荒げている中澤さんを見るのは初めてだったから。
それに、中澤さん自身がその結婚に
全面的に賛成しているって訳じゃないようだったから。
顔にそう書いてあった。
「でも、でも、あんまりじゃないですか。
急すぎますよ。
なんでいきなりそんな…」
- 260 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時18分48秒
- 中澤さんの事情は分からない。
だから、私は私の事情を貫くしかないと思った。
繋がっている中澤さんの手を握る力を強める。
中澤さんが顔を歪めるのを、どこか遠くから眺めている気がした。
中澤さんは私の心を読み取ったかのように、
さっきまでの荒々しいオーラを身体から取り払った。
どこかあきらめているような、言葉にすると悲しくなるような雰囲気に、
私の身体が震える。
中澤さんを困らせているのかもしれない。
そう思ったら、今自分のしていることは間違っているかもしれないと思えてきた。
中澤さんだって女の人なんだから。
結婚したいに決まってる。
辛そうな顔をしてても、内心は嬉しいんだ。
でも、せっかくの私の考えを中澤さんは綺麗に裏切ってくれた。
無理に自分を納得させようとする事を拒むかのように。
- 261 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時19分28秒
- 「吉澤…」
繋がれた手が引かれ、私の身体が中澤さんの方に流れる。
そのまま胸に倒れこんだ私の顔をゆっくりと起こし、
「ん……」
卑怯なくらい、私を揺さぶるキスをした。
例えばこのキスが今までの思い出をつき返すものだとすれば
私ももう何も言ったりしない。
けどこれは明らかにさよならのキスではないと感じた。
繋がっていた手の付け根を辿り、背中へと回されたその両腕が
きつく、きつく私を抱きしめるから。
その時、私の頬に一滴のしずくが落ちた。
驚いて目を開けると、中澤さんの目蓋から
無数の涙が溢れ出していた。
- 262 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時20分12秒
- 「えっ、あのっ…。どうしたんですか?」
訳が分からず、その涙を拭うことしか出来ない。
「吉澤…」
危ない。
出来るだけ中澤さんの言葉を冷静に聞こうと思っていたのに、
中澤さんが望む未来へ進もうって思っていたのに、
それが揺らぎ始めている。
きっと、この一言だけは言ってはいけない。
この局面で言うのはルール違反だって知っている。
けど、
中澤さんがキスを交わしてくるから。
中澤さんが涙するから。
中澤さんが抱きしめてくるから。
「結婚、しないでください」
私は、言ってしまっていた。
- 263 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時20分53秒
- 時が止まった錯覚。
視界が揺れる現実。
中澤さんは動かない。
私の肩口に額を押し当てたまま、控えめの嗚咽を繰り返しているだけ。
間違ってしまったことを改めて思った。
やはり言ってはいけなかったのだ。
女にとって結婚は人生の最大行事の一つ。
私にそれをやめさせる権利などあるはずがない。
私は中澤さんをゆっくりと押し戻した。
「あの、ごめんなさい。
吉澤、困らせちゃってますね」
身を切る、なんてモノじゃなかった。
まるで自分が自分でなくなっていくような感覚にとらわれる。
中澤さんを笑顔で送り出そうとしている自分なんて自分じゃないと思いながら、
それでもやっぱり困らせたくないというジレンマに縛られる。
- 264 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時21分35秒
- 「やっぱり、中澤さんには幸せになって欲しいから…」
「本気で言うてるの?」
「…本気、です」
目を逸らさずに言ったつもり。
声を震わせずに言ったつもり。
お願いだから気付かないで。
この言葉が本心じゃないってことに。
私だって、自分で自分の心にナイフを刺し込んでいるように苦しかった。
けど、まだ今なら間に合う。
私がまだこうやって正常な判断力を持っている間に、中澤さんの背中を押してあげたいと思った。
きっともうすぐブレーキが利かなくなるから。
そうなる前に私のことを手放して欲しかった。
後悔なら後でいくらでもする覚悟はあるから。
- 265 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時22分20秒
- そんな私の決意とは裏腹に、ついさっき、やっとの思いで放した距離を再び中澤さんは詰めて、
私の首に両腕を絡ませる。
さっきのとは違う、抱きしめるというよりも包み込むような抱擁。
そして、
「…私は吉澤が好きやのに」
私のことを完全に掻き乱させる言葉を発した。
- 266 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時22分55秒
- もう、なんだかよくわからなくなった。
「…ムチャクチャ言わないで下さいよ。
いい加減にしてくださいよ…。
中澤さんは何がしたいんですか?
結婚するんでしょ?
その男の人をどう思ってるとか、そんなこと関係無しに結婚するんでしょ?
何なんです?
中澤さん、吉澤のことどう思ってるんです?
さっきから言ってること訳わかんないですよ。
吉澤のこと困らせたいんだったら、どれだけだって困ってあげますよ。
困ってあげますから、はっきりしてくださいよ。
遊びですか?
本気ですか?
結婚するんでしょ?
結婚するのは分かりましたから、吉澤のことどう思ってるか、
ホントのことを言ってください」
- 267 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時23分35秒
- 「吉澤と…恋愛しときたかったんや…。
もう、吉澤と付き合う前から結婚するんは決まっとった。
やけど、好きで…どうしても吉澤のことが好きやったから
最後に吉澤と恋愛しときたかった…」
私と付き合っているのに結婚する、ではなくて、
結婚することが決まっている上で、私と付き合い始めていたんだ。
「誰より、吉澤のことが好きやから…。
それは、嘘やない…」
中澤さんはそれでいいのかもしれない。
片手に結婚、もう一方の手に私。
両方とも手に入れられてそれは満足なんだろうけど、
じゃあ、私の気持ちはどうなるんだろう。
何で…どうしてそれをくみ取ってはくれなかったんだろう。
「…。吉澤は、いっそあの日、好きって言ってくれなかった方がよかったです」
- 268 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時24分16秒
- 中澤さんの顔を見る気が起こらなかった。
こんな適当な人だなんて思っていなかった。
中澤さんが何か言おうとしたのか、息の音が聞こえたけれど、私はそれを制した。
「何も言わないで下さいね。
もう、今更何いわれても、言い訳にしか思えないですから。
ごめんなさい。
吉澤がバカだったんですね。
一人で浮かれてて、ホントバカみたい。
中澤さんには、優しい、やさしーい旦那さんがいたのに」
もう、自分でも何を言ってるのか分からない。
ただ全てを口に任せ、溢れ出る言葉を遮る事はしない。
それだけで、どんどんと中澤さんが離れていく事を実感できた。
「…結婚、おめでとうございます。
式には行きませんから、招待状は結構ですので」
もう、溝は埋まらないと思った。
- 269 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時24分56秒
- テーブルの上で2人の会話を聞いていた食器を流しへと運んで、
ソファーに置いてあったカバンを拾い上げた。
まさか、こんな形で終わりを迎えることになるなんて思ってもみなかった。
まるで、好きって言われた事も言った事も、全部否定されてるみたいだった。
「もう2度とここに来ることなんてないでしょうから、
これが本当のさよならですね。
…お風呂、入るんでしょ?
ついでに今日までの日々も洗い流してください。
吉澤もそうしますから。
さようなら」
そう言って中澤さんに背を向けて、玄関へと歩き出していたら、
たすき掛けのカバンの紐をつかまれた。
「違う…そうやないわ…。
こんな事になるために吉澤に言うた訳やないのに…」
- 270 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時25分33秒
- 中澤さんの瞳は潤っていた。
玄関前の照明は薄暗くて、目元の水が、細やかな光を作り出している。
けれど私には、その光が少しも美しくは見えなかった。
「…なんですか?」
もう、意識しなくても冷たい声が出せているはずだった。
今見ているこの人は、中澤裕子さん。
ただそれだけの人。
「悪かったと思ってる。
けど、ホンマに好きなんは吉澤だけや。
それは嘘やない…」
「結婚する予定の男の人、なんていう人です?」
中澤さんの言葉を遮って聞いた。
中澤さんは一瞬動きを止め、おそるおそる言った。
「杉本さん、やけど…」
「ああ、ごめんなさい。
私には、杉本裕子なんて知り合いいませんから」
今度はきっと、さっきより愛想良く喋れてたはずだ。
綺麗な薔薇にはトゲがあるように。
- 271 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時26分11秒
- 「何で、そんな事言うん…?
今ここにおる私は吉澤の知っとる私やろ?
やのに…」
呆れて溜め息が出そうだった。
「違います。
もう吉澤の知ってる中澤さんはどこにもいませんから。
今、吉澤の目の前にいるのは、
中澤裕子さんっていう容器を持った知らない女の人ですから。
まあ、もうすぐその器もお捨てになられるみたいですけど」
「…捨てへんよ」
「捨てるじゃないですか」
「私は…吉澤の知っとる私でおりたい」
「もう手遅れです」
私はあなたを目の前にしてひとかけらの愛しさも感じなくなっているから。
愛しさどころか、怒りも悲しみも感じない。
それは、私が、中澤裕子さんに対する感情全ての回線を切った証拠だった。
- 272 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時26分48秒
- その後は、淡々と流れた。
玄関へと歩みを進めた私に、中澤さんは声をかけなかった。
振り向かなかったから知らないけれど、抜け殻みたくなっていたのかもしれない。
だけどもう関係ない。
私は、きっともう二度とお目にかからないであろう玄関の風景を、
少々名残を惜しみつつ見回した。
二十九歳のプレゼントに渡した、小さなガラスのオブジェが下駄箱の上で侵入者を見
張っている。
今までの私はお客様だったけれど、これからはきっと侵入者になるんだろうな。
そう思ったら、途端にそのオブジェが汚らわしいものに見えた。
だけど、叩き割ったりしない。
そんなのは、敗者のやる事だから。
「お幸せに」
我ながら厭味ったらしい。
けれど、心から言えたセリフだった。
外に出て、後ろ手でドアを閉めると、頬を撫でる風がやけになれなれしく感じた。
- 273 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時27分29秒
- あの日からどれくらい時間が過ぎたのか、よく覚えていなかった。
私は楽屋で矢口さんと二人きり、他愛もないお喋りに花を咲かせていた時だった。
私と矢口さん以外の音は何一つ聞こえない楽屋に、その言葉はしっとりと馴染んだ。
「あ、よっすぃ、会場分かった?」
「は?」
矢口さんはごく自然に言葉を紡ぎ出した。
朝起きたら顔を洗うのと同じように、出るべくして出た言葉のように聞こえ私は戸
惑った。
何を言っているのか分からない。
「なんですか?会場?」
「会場、裕ちゃんの結婚式の」
今度は「は?」の音も出なかった。
回路の一部がショートしてしまったらしく、一切の思考の流れが切断を余儀なくされ
てしまった。
- 274 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時28分28秒
- 「よっすぃ?裕ちゃんが結婚するの知ってるでしょ?」
矢口さんが不思議そうに私の顔を覗きこんできた。
そこでようやく、私は少しばかり冷静な思考を取り戻す。
そうだ、当の本人から聞かされていたではないか。
「え、ええ、知ってます」
「でしょ?その会場。
あいつ手紙送るとか言ってたくせにまだこないんだよね。
なにやってんだよ」
矢口さんがパイプ椅子の脚を腹立たしげに足で叩きながら漏らした。
矢口さんは、いや、矢口さんたちは中澤さんの結婚をどうやって知ったのだろう。
そんなごく当たり前の疑問は思った瞬間に立ち消えしてしまった。
本人から聞いたに決っている。
それでも、私はそれが気にかかって矢口さんに聞いてみた。
- 275 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時29分03秒
- 「あの、それ中澤さんが言ってたんですよね?」
「何を?会場の事?
まぁ、結婚の報告の時に後で手紙送るって言ってたんだけどね」
矢口さんは何が嬉しいのか微笑みながらペットボトルに手を伸ばした。
薄いプラスチック越しに揺れる茶色い液体が、妙に遠くに見えた。
「で、よっすぃ会場知らない?日取りでもいいんだけど」
矢口さんが執拗に私に問いかける理由は分からなかった。
私と中澤さんの関係は極秘裏のものだ。
いや、ものだった。
「…矢口さんがわかんないもの、吉澤が分かるわけないじゃないですか」
自虐的な笑みが浮かんでいたかもしれない。
自分で表情が作れないまま私はそういった。
矢口さんは口をつけかけたペットボトルを放し頷いた。
「…そっか」
- 276 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時29分43秒
- 矢口さんの言葉を耳で受け止めながら、私は自分自身に呆れ返っていた。
下げた顔が上がらないのだ。
目の前にいる矢口さんの顔を見ようと思っても、一ミリも顔が動いてくれない。
じわりと瞳に浮かんだ温かい雫に慌てて顔を下げた罰なのか。
よくわからないまま、私は思い通りに動かない私の身体に苛立っていた。
「ねぇよっすぃ」
そんなところに追い討ちをかけるように、矢口さんが話しかけてきた。
私は頭をあげないまま言葉を返す。
「なんですか?」
「…んーん、なんでもないや」
矢口さんは不自然にそういうと、お茶のペットボトルを手にしたまま、
ジュース買って来るねと言い残して楽屋を出て行ってしまった。
矢口さんが多分後ろ手で閉めたであろうドアの音が消え、部屋に静寂が訪れる。
その静寂を破ったのは、私の嗚咽だった。
- 277 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時30分16秒
- 鼻の奥からせり上がって来る何かに耐え切れず、激しく咳き込む。
重力にしたがって、涙の水滴が頬を伝う。
胸と頭が、拷問のように同時に締め付けられる。
未だに言う事を聞かない頭をもたげたまま、私は泣いた。
その涙の意味を完全に理解し、我ながら支離滅裂な思考回路と行動にへきえきしながら、
それでも泣いた。
心の底から嫌いになっていた。
あんな自分勝手な女、と軽蔑していた。
それなのに、涙は流れる。
中澤さんに対する涙だと思うことに疑問はなかった。
中澤さんの何に対する涙かは考えもしなかった。
流れる涙、こみ上げる嗚咽を抑えるのに精一杯で、頭の中は真っ白になっていた。
- 278 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時31分01秒
- 落ち着きを取り戻すまでにどれくらいかかったのかよくわからなかった。
気が付くと、自然に顔が上がり、矢口さんの顔が目の前にあった。
心配そうに見つめるその瞳は、私の心を余計に締め付けた。
矢口さんは私の涙を見なかったかのように、行くときに持っていたペットボトルの栓
をひねり、
口をつけながら言った。
「今、自販機のところで裕ちゃんにあってさ。
結婚式は再来月にサイパンだって」
矢口さんの言葉に、私の目からはまた水が流れ出した。
矢口さんと二人きりの楽屋にもう一人、背中に幻影を背負いながら、
私は惜しげもなく声を張り上げ涙を流した。
- 279 名前:なかよし 投稿日:2003年06月07日(土)02時31分32秒
- おしまい
- 280 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時29分27秒
- 「…今日、めぐちゃんちに泊まりに行ってもいい?」
上目遣いで、様子を窺うようにあゆみがそんなふうに言ってきたときから、
何か相談したいことでもあるのだろう、と、うすうすは感じていた。
だけど、彼女自身がそれを感付かれたくなさそうだったので、あたしはいつも通りの答えを笑顔で返した。
「いいよ」
どこかホッとしたように息を吐き出した彼女が、
一歩あたしに踏み出すように顔を近づけてきて、そのまま耳元に唇を寄せてくる。
「ひとみんと、マサオには秘密だよ?」
あのふたりにも知られたくないような内容なんて、いったいどんな相談だろう?
「判った」
小さく呟いて頷くと、あゆみはまたちょっと安心したように息を吐いて、あたしの横を擦り抜けて行った。
- 281 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時30分22秒
- 本当に、深くは、考えなかった。
こんなふうにあゆみがあたしだけに相談、なんてことは今までにも何度かあったし、
それはあたしがメンバー内で一番年上で、リーダーだったからってのも勿論あったと思うし(今は瞳がリーダーだけど)、
相談されても、あたしがあゆみにとって頼りないアドバイスしか出来なかったときは瞳やマサオにも相談したりしていたし、
満足できるアドバイスが出来たときも、結果的には話をしていたこともあったから。
だから、今、あたしの部屋でふたりしてのんびりとくつろぎながら、あゆみがまだ何にも話してこなくても、
それはまだあゆみの中で、相談したい内容が整理されている途中なのだろう、と思っていた。
ゆったりした洋楽の流れる室内で、会話なんてほとんどなくても、
時間はゆるやかに、穏やかに過ぎていて、別に居心地は悪くなかった。
あゆみがあたしにとって気を遣うような人間ではなかったから、というのもある。
そしてそれは、あゆもみ同じなんだと、あたしはそう思い込んでいたんだ。
- 282 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時30分57秒
- 「…喉渇いちゃったなー」
独り言のように呟いて、テーブルの上に広げていた雑誌を閉じた。
そして、ソファの上で膝を抱え、その抱えた膝の上に顎を置いて、なんだか小さくなっているあゆみに目を向ける。
「あゆみも何か飲む?」
あたしの声を聞いた彼女の、床へと落ちていた視線がつい、と上がる。
「うん」
こくん、と、声とともに頷いたのを見届けて、あたしは立ち上がってキッチンに向かった。
向かう、といっても、間取りがそう広くないあたしの部屋のリビングからキッチンまでの距離は短くて、
立ち上がればすぐそばなんだけど。
- 283 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時31分35秒
- 冷蔵庫を開けて、少し冷えたストレートティーのペットボトルを取り出す。
戸棚からグラスをふたつとって、シンクに並べてからそれを注いでいたとき、
視界の端で、あゆみが抱えていた膝を下ろしたのが判った。
「…めぐちゃん」
「ん?」
抑揚を考えるような時間も与えず、あゆみは続けた。
「好きなの」
このとき、この瞬間のあたし自身を、あたしはあとで死ぬほど情けなく思うのだけど。
「へえ? 誰を?」
注ぎながら何も考えず、あゆみに視線も向けずに答えたあたしに、あゆみの少し困ったような声が届く。
「めぐちゃんが」
- 284 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時32分54秒
- あたしの名前が出てようやく、あたしはあゆみに目を向けた。
眉根を寄せたあたしに、あゆみはますます困ったような笑いを浮かべて。
「今のめぐちゃんなら、誰が? とか言いそうだから、ちゃんと言うね。…あたしが、めぐちゃんを好きなの」
告白されたのだと気付くまで、数秒かかった。
けれど、答えるより先に、あたしの足に冷たい液体が零れたのが判って、
あたしは慌てて持っていたペットボトルを放してしまった。
「う、わ!」
「えっ、ちょっと、めぐちゃん!?」
放したボトルがその口を解放されたまま床に転がる。
グラスからもかなり溢れていて、シンクには赤いその液体が広がっていた。
- 285 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時34分02秒
- 「やばいやばい、ティッシュ、どこだっけ」
「そんなんじゃ追いつかないよ、ふきん! タオル!」
動揺してるあたしを見かねてか、あゆみはさっさと風呂場へ向かって数枚のタオルを引っ張りだしてきた。
キッチンの床にどんどん広がっていく液体を吸い込んで、その染みを広げる白いタオルの鈍い赤。
床を拭き取るあゆみの頭上で、それをぼんやり眺めながら、
シンクの上のグラスを片付けたあたしの足に、あゆみが突然触れてきた。
「あーもう、めぐちゃんの足も濡れてるじゃない」
自身の足にもかかっていたことを忘れていた、ということよりも、あゆみが触れた、ということのほうが重大だった。
- 286 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時34分52秒
- 状況を把握して我に返ったあたしは、
シンクの淵に腰から上を預けるようにして、あたしを見上げて来たあゆみを見下ろした。
あたしの視線をどう解釈したのか、目が合った途端、あゆみの目の色が暗くなる。
「……コレ、洗濯機の中でいい?」
答えなんか期待してない口調で言って、
紅茶の染みの広がったタオルをもって、あゆみが再び風呂場のほうへ向かう。
けれどすぐに戻ってきて、あたしから少し離れた場所に真正面に立って、静かな視線であたしを見つめてきた。
身動き取れないような、そんな場所にいない。
あゆみの視線がそんな威力を持ってるワケじゃない。
なのに、あたしはあゆみに見つめられたまま、シンクに腰を預けたまま、動けなかった。
- 287 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時35分38秒
- 穏やかに流れていた洋楽がアップテンポの別のアーティストのCDに切り替わり、
室内の空気がほんの少し変わったけれど、あたしとあゆみとの距離感はひどく微妙で、
会話という言葉のない空間は、次第に息苦しさをつれてくる。
何か言葉を発してこの空気をどうにかしたいのに、どんな言葉も見つからなくて唇だけが潤いを失い始めていく。
「……そんな、困った顔しないで」
真剣な目であたしを見つめていたあゆみの口元が薄く綻んだけれど、その表情は決して『笑顔』と呼べるものではなくて。
「…だって、あゆみ……」
目線を床に落とし、ますます苦笑いと呼べるような笑いを口元に浮かべて、あゆみが一歩ずつあたしに近付いてきた。
- 288 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時36分09秒
- 「どうして、とか、なんで、とか聞かれても、あたしも答えられないよ」
「…あゆみ?」
「気付いたら、好きって気持ちが育ってたの。最近、めぐちゃんに触りたくてたまんなくて、夢とか見たりしてさ」
「夢って…」
何となくどんな夢か想像出来たあたしは、想像力豊かな自分自身がひどく浅ましい人間に思えて、
少しずつ近付いてくるあゆみから逃げるように、なのにカラダはどこにも逃げ場なんてないことを判っているみたいに、
そのまま床へとしゃがみこんだ。
「………どんな夢か、知りたい?」
すぐ目の前まで来たあゆみが、すとん、というふうにあたしの目線に近付くように腰を降ろした。
床に膝をつき、手で這うようにあたしの目の前まで顔を近づけてくる。
「お願い…。…イヤなら、逃げて」
- 289 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時36分50秒
- 次第に近付く距離に、逃げ場のないあたしは身動き出来ない。
それを知っているのに、更に自由を奪うように、
あゆみの手があたしの両手を掴んでそのまま押し留めるように床へ押し付けられる。
「……嘘。今だけ、逃げないで」
吐息が感じられるくらいまで近付いてきたあゆみの声が震えていた。
「めぐちゃん…」
切なげな声というのは、こんな声を言うのだろうか、
と、頭のどこかで考えたあたしの唇に、柔らかい感触がそぅっと触れてくる。
啄ばむように軽く挟み込まれ、思わずカラダを揺らしてしまったあたしに、
あたしの手を押さえつけているあゆみ手にチカラが入る。
キスをされるとき、
それを強く拒絶していない限り意外と唇は薄く開かれていることを、あゆみは知っていたのだろうか。
- 290 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時37分24秒
- 窺うように、唇の隙間を舌先が滑り、咄嗟に顎を引いてしまったあたしの顔を固定するかのように、
あゆみは両手をあたしの頬に添えた。
上向きにされ、更に開いた唇から覗く歯を軽く舌先で辿られて、あたしは知らずにあゆみの舌を受け入れていた。
幼いキスだと言えるほど、あたしだってキスの回数は多くない。
それでも、あゆみよりは幾つか多く歳を重ねているあたしにとって、
そのキスはどこかぎこちなくて、けれどとても情熱的なものを感じるものだった。
甘く噛むように唇を歯で挟み、舌で内側を滑り、軽く吸いあげて。
どこで覚えたのか、それとも教えられたのか。
少なくとも、カラダの芯に熱を灯すような、そんなキスを続けられては、あたし自身の理性の箍がやばくなる。
そう思いながらも、それさえも巧みなものに思えるようなぎこちなさに、
あたしはいつのまにか、自由になった手をあゆみの背中にまわしていた。
- 291 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時37分55秒
- 「………めぐちゃん」
ゆっくり、とても名残惜しそうに唇を放したあゆみがあたしを見下ろす。
唇の端から零れたであろう唾液が頬を伝って喉へと滑ったのが判り、その淫らさを想像して、一気に恥ずかしくなった。
「…めぐちゃん…」
もう一度呼んで、今度は瞼に口付けを落とされる。
そしてそのまま、床へと押し倒された。
「……抵抗、しないの?」
「…したら、やめてくれる?」
「やめてほしい?」
「やめたいの?」
答えを知っていて聞くあたしの狡さに気付いたのか、
あゆみは少し怒ったように唇を噛んで、そしてすぐまたあたしの唇を塞いだ。
ほんの、一瞬だけ。
- 292 名前:欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない 投稿日:2003年06月09日(月)15時39分40秒
- 「やめない」
心地好く耳に届いた、あゆみの声。
「めぐちゃんがやめてって言うまで、やめない」
なら、言わないでいようか、最後まで。
「………嘘。…言っても、もうやめられない」
なら、どんな言葉も、今は必要ないということになる。
あゆみが欲しい言葉以外は、何も。
けれどあたしは、それさえも喉の奥に押し留めて、
服を脱がそうとしているあゆみの手を止めることもせず、ゆっくりと、瞼を閉じた。
――――――――end
- 293 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月10日(火)07時25分13秒
- >欲しがる言葉を知ってて言わない狡さは愛とは呼べない
萌えますた!
- 294 名前:bicycle 投稿日:2003年06月10日(火)20時52分33秒
今日はめちゃくちゃいい天気!
「こら!ちょ…危ないからじっとして乗ってなさーい!」
自転車に二人乗り。ごっちんが自転車をこいでウチは後ろに乗ってるだけ。
今時の若者みたいに後ろに立ったりはしません。危ないから。
そう言ったらただ怖いだけだろ、なんて言われちゃったけど。
後ろの席に横を向いて乗って、右手はごっちんの腰へ。
少しおしりが痛いけどそれは我慢しましょう。
2人でどっか行きたいって駄々をこねて、半ば呆れ気味のごっちんと海へ行く事にした。
この街から海までは自転車で30分くらい。
- 295 名前:bicycle 投稿日:2003年06月10日(火)20時53分08秒
- 「あー!あの犬めっちゃかわいい!」
「え〜?どれよ?」
「危ないからちゃんと前を見て走ってくださーい」
「はいはい…」
ごっちんとはお家が隣同士で言ってみれば幼馴染。
でもウチはそれ以上の感情を持っていて。
正直ごっちんは何考えてるのか全く分からない。
ぼけーっとしてたり、また違う日はてきぱきと行動してたり、
何年経っても理解できない人物なのである。
ウチが恋心を持ってる事気がついてるかどうかはわからないけど、
それなりに好きだという事はアピール。
「ごっちんのタイプはー?」
「えー?おとなしい子かなー?」
うぐっ。早くもウチとは違うタイプ。
でもこう見えてもウチおとなしいんやで。ホント。
「年下がすきー?年上がすきー?」
「…んー、好きになったらどっちでもー」
よしっ。これはOKや!
「ねぇー?あいぼんのタイプはー?」
「え、う、ウチ?ウチは…」
「あー、海見えてきたー」
…聞く気ないな、ごっちん。
- 296 名前:bicycle 投稿日:2003年06月10日(火)20時53分42秒
- 自転車を停めているごっちんを置いて砂浜へと走った。
まだ海水浴はできないから人なんて誰もいない。
砂浜はウチとごっちんの2人だけのもの。
そう考えたら嬉しくてついニヤニヤと笑みを浮かべた。
「気持ち悪いな、あいぼん」
「な…!」
「今笑ってたでしょ」
「わ、笑ってなんかない!」
照れ隠しで靴を脱ぎ捨てて足だけ海の中へ入った。
まだちょっと冷たかったけど気持ちよかった。
「帰りはあいぼんが自転車こいでくれるんだよねー?」
「えーまさかー」
「えー」
ぶーぶー文句を言うごっちんに一つ提案。
「ウチの事捕まえられたらええでー」
「ホントー?」
そう言って走るウチをごっちんは追いかけてきた。
ウチの想像してたのはよくドラマとかである浜辺を楽しそうに走るカップルの絵。
ほほえましいのを想像してたんだけど。
- 297 名前:bicycle 投稿日:2003年06月10日(火)20時54分19秒
- それはもう真面目に。物凄い速さで走ってきた。
その姿が恐ろしくてウチもめちゃめちゃ走った。
気分は陸上の短距離選手。
もともとごっちんは足が速くてウチが敵うはずもなくあっけなく捕まってしまった。
捕まったのはいいとして、問題は捕まえられ方。
後ろからガバッと抱きつくもんだからウチの頭の中はパニック。
(どうしようどうしよう。心臓が口から出てきそうや…!!)
…なんて思ってるうちに腕はウチから離れていった。
「捕まえたからあいぼんが自転車こぐ事ーけってーい」
「…あぁー…」
この「あぁ」は自転車こぐ事になって嫌だな、って言う「あぁ」じゃない。
せっかくあんなに密着…。
「ああ!あそこ!カニだよカニ!」
嬉しそうにはしゃいで岩場に向かって行くごっちんの背中を寂しく見つめた。
- 298 名前:bicycle 投稿日:2003年06月10日(火)20時54分57秒
- ◇◇◇
- 299 名前:bicycle 投稿日:2003年06月10日(火)20時55分38秒
- 日も傾いてきてそろそろ帰る時間。
捕まってしまったから自転車こぐのはウチ。
ていうか体格的にアンバランスだよねぇ…。
「はーい、気合入れて自転車こぐー!」
「はーい…」
座席に乗った瞬間腰に回るごっちんの腕。
…これはこれで、いいかもしれない。
30分で家に着く道のりをわざと遠回りして1時間かけて帰った。
「楽しかったねー、また行こうねーあいぼん」
「うん」
笑顔のごっちんが見れただけでもウチは嬉しい…。
いい気分で家に入った。
翌日、筋肉痛で動けなるという事はウチはまだ知らない。
END
- 300 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時24分26秒
超短編ですが、ごまこんです。
- 301 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時25分20秒
「おはようございます」
「おはよっ!」
「はよ〜」
朝、楽屋に来て元気に挨拶をすれば、大好きなメンバー全員からちゃんと返事が返ってくる。
娘。に入って1年とちょっと。
思えば時が経つのがやけに早かった気がする。
- 302 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時25分54秒
初めて経験する事や、勉強になる事がたくさんあったし
同年代の子よりは少しだけ大人になった気分だった。
苦しいことや悲しいことも乗り越えてきた結果、モーニング娘。は近年ますます国民的アイドルとしてその名を全国に轟かせている。
そんな有名なアイドルグループに入った当初私を待ち構えていたのは、
元々苦手だったトーク・ダンスレッスン・歌のレコーディングなど……本当につらいことばかりだった。
- 303 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時26分27秒
失敗ばかりで落ち込んでいるとき、そっと肩に手を置いて励ましてくれた大好きな先輩。
今はいないけど、娘。を脱退してからもソロとしてとても頑張っている先輩。
本当に尊敬していました……
――その名も、後藤さん。
娘。にいた時は常にセンターで輝いていた後藤さんは、TVで見せない笑顔を私達の前では見せてくれた。
私が風邪を引いてしまった時さりげなく『無理すんなよっ』って風邪薬を渡してくれた。
入って間もないときは、そんな些細な事がすごく嬉しくて、それは今でもだけど…
憧れ・尊敬を通り越した私の後藤さんに対する感情は、時間が経つにつれてどんどん大きくなっていった。
- 304 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時26分58秒
- 305 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時27分29秒
「…大丈夫?」
大丈夫です
「だって…、泣きそうだよ?」
あ、これはなんでもないんです…気にしないで下さい
「…紺野。」
はいっ
「大好きだよ。」
………
- 306 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時28分02秒
脱退直前。
娘。として最後のコンサートを終えようとしていた後藤さん。
いつもと変わらないその笑顔で、私の体をギュッと抱きしめた。
不意打ちで、何が起こったのかよくわからなかった私は、ただ呆然とされるがままの状態になっていたのを覚えている。
- 307 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時28分38秒
大好きでした。
後藤さん。
なんで辞めちゃったんですか?
最後にあんな事言われて、私がどれだけアナタとの別れがつらかったか分かりますか?
- 308 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時29分09秒
大好きでした。
もう、過去形ですが。
あの時の想いは一生心にしまっておこうと思っています。
それが、アナタの為でもあり、今の私の為でもあるから。
- 309 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時29分45秒
大好きでした。
本当は過去形になんてしたくない。
けど、後藤さんは誰にも縛られずにこれからもどんどん大きくなっていくんです。
私は、それを楽しみにしています。
私も、いつか、後藤さんと肩を並べられるくらい、歌も上手になって、ダンスも一番に覚えられるようになって、後輩に頼られる優しい先輩になったら…
- 310 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時31分00秒
…また、アナタの優しい腕の中に、抱きしめてもらって良いですか?
FIN
- 311 名前:名無し作者 投稿日:2003年06月19日(木)12時31分48秒
終了します。
駄文失礼しました。
- 312 名前:縁は異なもの…味なもの? 投稿日:2003年06月24日(火)20時46分54秒
- キミには判らないかもしんないけど、アタシは凄く逢いたかったんだよ。
感情が読み取りにくい、とかクール、とか色々言われるアタシだけどさ。
こうやって、足蹴もなくキミの楽屋に来るのがその証拠。
なのにキミは…。
「このホシイモ、美味しいんですよねぇ〜」
アタシよりも、その手に持った食べ物に夢中。
はぁ…、まぁ、食べてるときのキミは凄く幸せそうでカワイイんだけどね…。
でもさ、折角こうして一緒にいるんだし、もっと…なんかこう…ねぇ?
大体、ここにくるのも結構大変だったりするんだよ?
忙しい中さぁ…いつも、モーニング娘。の楽屋に、元・モーニング娘が行ってるんだから。
「この間、地方に行ったときに買ったパンプキンパイも美味しかったんですよ〜」
「…あーそー…」
つまんない。
そんな食べ物より、アタシを見てよー…。
…なんて言えないか。はぁ…。
- 313 名前:縁は異なもの…味なもの? 投稿日:2003年06月24日(火)20時47分31秒
- 「あのさー、こんのー」
「? なんですか?」
「あ、食べながらでいいよ」
「あ…はい」
なんかホント幸せそうだから。
「紺野はさー、好きなヒトとかっている?」
「えぇっ?」
あ、目を丸くして驚いてる。
結構目が大きいから、またその表情が可愛く見えるんだよなー…。
…じゃなくて。
今は、それは関係ないんだ。
「まーいいや、いるとして」
「…後藤さん、適当ですね…」
「いーから、いーから。それでさー、その相手ってのが簡単には逢えないヒトでー」
「はぁ…」
「ヘタしたら一ヶ月逢えないのも当たり前だったりしてー」
「はぁ…」
「それでも、すっごい逢いたくて逢いに行ったりしてー。でも、その肝心の相手は
全然自分を見てくれなくて、食べ物に夢中になっていたりします」
「? は、はぁ…」
「そうしたら、紺野はどーしますか?」
- 314 名前:縁は異なもの…味なもの? 投稿日:2003年06月24日(火)20時48分05秒
- これだけ具体的に言えば、わかる?
今のアタシの気持ち。
ホラ、アタシってば、キモチを口に出すのって苦手だし。
遠まわしに言ってみたんだけど?
「うーん…大変ですね、その好きになった人は」
ガックシ。
遠まわし過ぎたみたい…。
紺野は、ホシイモをとりあえず食べるのをやめて、真剣に悩んでしまった。
はぁ…これは長期戦だなぁ…。
まー、そんなトコだと思ってたけどね。相手が紺野だし…。
「はぁー…、紺野、もういいよ。忘れて」
「え?」
「じゃ、アタシは楽屋に戻るわ」
言って、アタシはイスから立ち上がると扉に向かって歩き出した。
まだ収録まで時間あるし、ブラブラして気を紛らわせようかなー…。
と、思ったその時。
- 315 名前:縁は異なもの…味なもの? 投稿日:2003年06月24日(火)20時48分36秒
- 「ご、後藤さんっ」
「んぁ? なに…?」
呼び止められて振り返ると、ちょっとソワソワしてる紺野。
『あのーあのー』って言いながら、ホシイモとアタシを見比べてるし…。
「今の質問ですけど…その…」
「あーヘンなコト訊いてごめんね、忘れていいよ」
「そ、そうじゃなくてっ。あのー…」
「?」
ちょっと小首を傾げてみせると紺野は、あたふたとして…それからホシイモを1つ
袋から取り出して、アタシに差し出してきた。
「私が、その相手だったら…一緒にその食べ物を食べ…ます」
「え?」
「だから…その…一緒に…食べるかなぁって…」
反応の薄いアタシに、だんだん紺野は不安そうな顔になって俯いてしまった。
…って、ちょっと待って。
それってー…もしかして、もしかするの?
- 316 名前:縁は異なもの…味なもの? 投稿日:2003年06月24日(火)20時49分35秒
- もう一度紺野の顔を覗き込むと、白い頬を真っ赤に染めていた。
なんだ……イケるじゃん。
アタシはもう嬉しくなって頬を緩ませると、紺野が恐々と差し出していたホシイモを
取って口に含んだ。
「あ…」
「んー…美味しいねー」
「あの…」
「一緒に食べるんじゃないの?」
「あ…っ、はいっ」
その返事、OKってコトだよね?
あはっ、言ってみるもんだねー。
まー…縁をとりもったってのが、ホシイモってのがアレだけど、こうやって紺野と一緒に
時間を過ごせるんだったら、良しとしますか。
多分…これからもお世話になるんだろうし、ね。
――――END――――
- 317 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時24分03秒
今、モーニング娘。の楽屋はとてつもなく重い空気でいっぱいである。
それは…あいつら二人のせい。
「してないっ!!」
「したっ!!」
「してないってば!!」
「したでしょ、あたし見たもん!」
主語が一切出てこない口喧嘩。もう何度目になるのだろうか。
メンバーの皆も呆れ果てて完全に無視していた。
でも矢口はこの喧嘩、好きだけどなぁ…。
なんでかって…?それはもうすぐわかるよ。
「梨華ちゃんはなんでごとーの事信じてくれないのさ!!」
「だって…だってごっちんモテるんだもんっ!!仕方ないじゃない!」
お、いいね!
- 318 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時28分09秒
なんで好きかって言うと、この二人止めなきゃR指定の発言も
スラスラでてくるからなんだよな。それに思わず顔を覆いたくなるような
発言も飛び出たり…。
「ごとーが好きなのは、梨華ちゃんだけ!!言ったでしょう?!」
「じゃあなんで美貴ちゃんとキスしてたのよ!」
「「「えっ?」」」
興味を示していなかったメンバー達も、ようやく出てきた主語に
思わずびっくりしていた。
- 319 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時32分09秒
「ごっちん、ミキティとキスしたの?」
辻がごっつぁんの近くに寄って行く。
あぁ、危ないぞ!!辻!
「子どもは黙ってなさいっ!!」
おいおい…ごっつぁんも子どもじゃんか…。
「うぇええええ〜〜〜ん。ごっちんが、ごっちんが…。」
「よしよし、辻ちゃん向こうに行こうね。なっちとジュース買いにいこ?」
なっちに引きずられ、辻は楽屋を出た。
ご愁傷様。
- 320 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時35分44秒
「石川、落ち着きなって。後藤は今まで石川一筋だったじゃない。
今更そんな藤本とキスなんて…。」
「保田さんの言う通りだよ!ごっちんはそんなことしないって。ね、ごっちん?」
どうなんだ?ごっつぁん。
「……キスは、した。」
俯いて、吐き捨てるようにいった。
- 321 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時39分56秒
「後藤?!」
「ごっちん?!」
したんかいっ!!じゃあなんでしてないなんてウソつくんだよ。
石川が可哀相じゃん。
「したよ、キスは。美貴ちんが、それでもうごとーのこと諦めてくれるって
言ったから…。」
「後藤……。」
圭ちゃんは驚いたように言った。
「キスしたのは、悪いと思ってる。だけど、美貴ちんがそれで吹っ切れるって
言ったから…忘れてくれるって、いったから…!!」
- 322 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時46分47秒
「ごめん。」
ごっつぁんの気持ち、わからなくもないなぁ…。
紗耶香も、そうだったし。
「けど浮気なんてしてないから。」
「ごっちん?」
よっすぃーがごっつぁんの顔を覗き込むように呼んだ。
「あたしはっ!梨華ちゃんの事が本っ当に好きだから!!
変かもしんないけど、だからキスしたの!!梨華ちゃんだけを想ってたかったの!」
ごくっ
石川…どう来る…?
- 323 名前:浮気、した? 投稿日:2003年06月25日(水)18時51分22秒
「……わかった。」
「梨華ちゃん…。」
安心したような、ごっつぁんの声。
良かった、良かった。
「今から一緒に美貴ちゃんに会いに行って、本当だったら許してあげる。」
「「え、えぇえっ!?」」
矢口とごっつぁんの声が、見事にハモった。
「だ、だめなのぉ〜?」
「ごっちんウソ上手だから。ほら、行くよ。」
「ふぁ〜い。。」
トボトボ手を引かれて楽屋を出るごっつぁん。
あんな性格の石川のどこがいいんだろう?
ミキティに乗り換えれば良かったのになぁ…。
END
- 324 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月25日(水)18時55分39秒
- >>300-316ごまこん!良い。
>>317-323なんかいしごま久しぶりに見た…すげーモテごまも良い感じ。
続きキボンヌ
- 325 名前:Angel Wing 投稿日:2003年06月29日(日)14時21分23秒
- 「やばい………落ち、る………」
傷ついた羽を一生懸命に羽ばたかせているがその高度に自分の身体を保つことも高度を上げることも出来ずに天使は地上に降りてしまった。
「…はぁ……はぁ……」
傷が付いた天使の羽。その傷は癒える事は無い。人を幸せにするために傷が増えていくせいだ。
「………駄目だ…しばらく飛べそうにないや………」
天使は苦痛の表情を浮かべ傍にある椅子に手を掛けて立ち上がろうとするも立ち上がれない。
「しばらく………人間に化けなきゃいけない……回復するまで…何日かな………」
天使は翼をたたみ光に包まれた。光が収まるとソコには人間と変わりない姿をした天使がいた。
「もう………動けないや………」
最後にそう呟いて人間の姿をした天使は倒れこんだ。
『あの……大丈夫ですか?』
天使は最後にそんな言葉を聴いた気がした。
- 326 名前:Angel 投稿日:2003年06月29日(日)14時22分18秒
Angel Wing-恋の許されない傷ついた天使-
- 327 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時24分04秒
「あさ美ちゃん。もう置いていくよ」
「あぁ!待ってよ愛ちゃん!」
あたしの名前は紺野あさ美。現在私立モーニング女学園、中等部3年生。
「あさ美ちゃん早く!!」
「ごめん!鍵回らなくて」
そして隣の子があたしの親友。高橋愛ちゃん、同じく中等部3年生。
それで今あたしがその愛ちゃんに何を急かされているのかと言うと…。
「戸締りぐらい早く済ませなよ。ホントにあさ美ちゃん言っちゃ悪いけどトロイよ?」
そう。あたし本当に何をするにもトロくて、いつも愛ちゃんに迷惑掛けてるんだ。
「ごめん。お待たせ」
「本当に待ったよ。」
でもあたし達はそんな些細なことぐらいじゃ崩れない強い絆で結ばれてる親友なんだ。
だから二人で一緒に図書委員になったりして。
「あさ美ちゃん。職員室に鍵返しに行かないと。今そのまま帰ろうとしたでしょ?」
「あ、そうだった」
そしてドンくさい。
今は放課後。
放課後5時までは曜日ごとに図書委員が残って放課後の図書開放をするんだ。
それで5時になってみんないなくなったから帰ろうと思ってた所。
職員室に行って指定の場所に図書室の鍵を吊るした。
「よし。じゃあ帰ろ」
「うん」
- 328 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時24分50秒
あたしと愛ちゃんは小学校のころからの友達。いわゆる幼馴染って言うやつ。
家も近くてよく一緒に帰るんだ。
「じゃあね」
「うん。バイバイ」
でもこの頃愛ちゃんには彼女が出来たらしくて途中で違う道に行ってしまう。
家までの一人で歩く道が少し長くなっちゃったんだ。
だからたまに思っちゃうんだ。恋人欲しいなぁって。
でもあたしトロいし、ドンくさいし、こんな子好きになってくれる人なんかいないよなぁ。
そんなことを考えながら歩いているといつも通る公園の前に差し掛かった。
「あれ?」
公園は少し開けていて外側からでも中の様子が凄く分かる。
だからこの公園では子供がさらわれたりとかそんな事件は一切おきたことない。
それで中の様子が見えたんだけど。
公園の真ん中。噴水の傍で倒れているような人影が見えた気がした。
もしかして誰か倒れてる?
あたしはそう思って公園に入っていった。
公園には時間のせいか全然人がいなくて倒れている人に気づかくてもしょうがないのかなって思った。
- 329 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時25分49秒
「あの………大丈夫ですか?」
そう声を掛けたけど返事は返ってこなくて心配になる。
もしかして、死んでないよね?
そう思って倒れている人がうつ伏せになっていたので仰向けにする。
心がときめいた感じ。
女の人ですごく美人で、何でこんなところに倒れているのか不自然なほど。
ヒトメボレ。
あたしはあわてて生きてるのか確認した。
口の傍に手を持っていって呼吸を確認する。
息はあるみたいだ。
でもどうしよう。
救急車呼んだほうがいいのかな?
いったん携帯に119の『1、1、』とまで入力して手を止めた。
あたしはメモリーから愛ちゃんの番号を呼び出して発信ボタンを押した。
「もしもし。紺野?どしたの?」
「あれ?安倍さんですか?愛ちゃんは?」
「あ、今紅茶入れてるけど電話かわろうか?」
「あ!あの、今公園にいるんですけど愛ちゃんと二人で来てもらえませんか?」
「二人で?良いけど何で?」
「あの!倒れてる人がいるんです。」
「倒れてる人?生きてるの?」
「生きてるんですけど………家に運ぼうと思っても一人じゃ担げないし………」
「分かった。すぐ行く」
「お願いします!」
- 330 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時27分22秒
電話を切った後、保険の授業で習ったとおり「大丈夫ですか?!」とか声を掛け続けて数分。その人は目を覚まさないまま安倍さんと愛ちゃんが来た。
「あさ美ちゃん!」
「紺野!」
「愛ちゃんと、安倍さん」
愛ちゃんと安倍さんに事の状況を説明した。
「あの、とりあえずあたしの家に運ぼうと思ってるんですけど、手伝ってもらえませんか?」
「分かった。じゃあ紺野は左肩かついで愛は右肩。」
「うん」
安倍さんの指示する中あたしと愛ちゃんであたしの家まで倒れていた人を運んだ。
あたしの家には前までお婆ちゃんが住んでいた家なんだけど、
おばあちゃんが無くなった時にお父さんが処分しようかと思ったときにあたしの学校のすぐ近くだって事に気が付いてあたしが一人で住むことになった。
で、あたしの家には使ってない部屋があって、その部屋に布団を敷いて倒れてた人を寝かした。
「病院とか連れてかないで大丈夫かな………」
「大丈夫だと思うんだけど………」
「でもこんなに顔色良いんだから大丈夫だべ」
心配するあたしと愛ちゃんをよそに楽観的な考えをする安倍さん。
そんな考え方が出来るのが少しうらやましい。
- 331 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時28分12秒
電話を切った後、保険の授業で習ったとおり「大丈夫ですか?!」とか声を掛け続けて数分。その人は目を覚まさないまま安倍さんと愛ちゃんが来た。
「あさ美ちゃん!」
「紺野!」
「愛ちゃんと、安倍さん」
愛ちゃんと安倍さんに事の状況を説明した。
「あの、とりあえずあたしの家に運ぼうと思ってるんですけど、手伝ってもらえませんか?」
「分かった。じゃあ紺野は左肩かついで愛は右肩。」
「うん」
安倍さんの指示する中あたしと愛ちゃんであたしの家まで倒れていた人を運んだ。
あたしの家には前までお婆ちゃんが住んでいた家なんだけど、
おばあちゃんが無くなった時にお父さんが処分しようかと思ったときにあたしの学校のすぐ近くだって事に気が付いてあたしが一人で住むことになった。
で、あたしの家には使ってない部屋があって、その部屋に布団を敷いて倒れてた人を寝かした。
「病院とか連れてかないで大丈夫かな………」
「大丈夫だと思うんだけど………」
「でもこんなに顔色良いんだから大丈夫だべ」
心配するあたしと愛ちゃんをよそに楽観的な考えをする安倍さん。
そんな考え方が出来るのが少しうらやましい。
- 332 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時29分06秒
「じゃあ、愛。帰るべ」
「え、帰るの?」
「いいから!」
安倍さんは愛ちゃんを引っ張るように帰って行った。
最後に「頑張って」と言う意味深な発言を残して。
どういう意味だろう?
安倍さんが最後に残していった言葉を考えて数分。
バッ!
急に布団が起き上がってきた。
違った。公園であった人が急に起き上がったのだ。
「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
急に起き上がって掛ける言葉も見つからずそんなことを喋った。
その人は自分の身体を見回して「あ。あぁ、大丈夫」と、答えた。
「あなた誰?」
その人は部屋を見渡した後あたしにそう聞いてきた。
「あ、あたし紺野あさ美です。あの………あなたが公園で倒れてたんで、心配でつれてきました。」
そういうとその人は「あぁ」といった感じで、でも、表情からは『しまった』っていう感じが読み取れた。
- 333 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時30分12秒
- 「あの、あなたは?」
あたしはその人に同じ質問をする。
「あ、えっと。あたしは後藤真希。17歳。」
「あ、もしかしてモーニング女学園ですか?」
「えっと、・・・うん、そう。そうだよ」
「あたしもなんですよ!奇遇ですね」
あたしがそういうと後藤真希さんはまた『しまった』って言う顔をした気がした。
「あ。ごめんね、迷惑掛けて。帰るよ」
眼が覚めて早々に後藤さんは立ち上がって部屋から出ようとした。でも、
ダン!
後藤さんは部屋の扉の前で膝を折って壁にもたれかかるように倒れた。
「だ、大丈夫ですか?!」
あたしはすぐに近づいて声を掛ける。
「だ、大丈夫だよ………これ以上迷惑掛ける訳行かないし………」
「あの………あたし一人暮らしなんで迷惑とか掛からないんで、身体が回復するまでウチにいませんか?」
あたしはそう言った。
うまく動くことの出来ない後藤さんの返事は決まってる。
「良いんだったら………ちょっとの間お世話になるよ。」
奇妙な出会いからあたしの恋は始まった。
- 334 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時31分20秒
あたしの家に後藤さんが居候し始めて三日目。
「ねぇ。紺野って一人であたしを運んだの?」
「違いますよぉ、一人で運べるわないじゃないですか。友達一人と先輩一人に手伝ってもらいました。」
「計三人か………」
「それがどうしたんですか?」
「え?あぁ、紺野ってそんなに力持ちに見えないなぁって」
朝起きて、後藤さんとあたしの二人分の食事を作って、自分のお弁当と後藤さんの昼食を作って学校に出かけて。
学校から帰ってきたら後藤さんとお話をして夕ご飯を作って。
なんとなく恋人といるみたいで憧れの生活が出来た。
「紺野。後藤さんだっけ?あの人どうなった?」
昼、屋上で愛ちゃんと安倍さんとお昼を食べていたときに安倍さんに話をふられた。
「まだ身体が回復してなくてあたしの家にいますよ」
「じゃあ、今日愛ちゃんと一緒に遊びに言って良い?」
「だ、駄目です!」
「えー?なんでー?」
安倍さんは私の持っている気持ちを知りながらもあたしにちょっかいを出してくる。
「………なんでもです」
「冗談だよ、行かない。なっちは人の恋路邪魔するほど意地悪じゃないからね」
その言葉を聴いてほっとしたっけ。
- 335 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時31分52秒
「ねぇー。こんのー」
「え、はいっ、何ですか後藤さん?」
「さっきからボーっとしすぎ。人の話し聞いてる?」
「あ、えっと………」
何かボーっとしてたみたいで後藤さんの話を聞いてなかった。
「あたしこんなに長く居て大丈夫なの?」
「あ、大丈夫ですよ。前にも言いましたけどあたし一人暮らしですから誰にも迷惑掛からないんで。」
「そうじゃなくて紺野が迷惑じゃないかって」
何か後藤さんはあたしが思っていたとおりずうずうしくなくていつもあたしの心配してくれてるみたいで。
何か嬉しかったりする。
「後藤さんは学校とかには連絡しなくて良いんですか?」
「もう連絡した」
「親とか家族の人とか心配しませんか?」
「あたし一人暮らしだから。」
後藤さんの周りのことを聞いてもなんだかよく分からなくて、
でも後藤さんのことを疑ったりとかはしなかった。
惚れちゃった身でそんなこと出来なかった。
- 336 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時32分33秒
「よし。もう動ける、ありがとね、今まで。」
2週間がたった頃。後藤さんの身体は回復してしまった。
『してしまった』と言う言い方は不謹慎かもしれないけど、後藤さんが家に帰っちゃうと思うと寂しかった。
「じゃあ、お礼はまた今度するから、ほんとにありがとね」
後藤さんが帰ろうとしたとき。もうこの想いを止めることは出来ずに全てを告白しようと思った。
「あの、後藤さん!」
あたしの声に後藤さんは立ち止まって振り向いた。
「あの、もう少し、居ませんか?」
でもすぐに想いを告白することは出来なくてまわりくどい言い方をしてしまう。
「え、なんで?」
『なんで?』と聞かれると本当のことを話すしかない。うその言葉は思いつかなかったから。
「あの………あたし後藤さんのことが好きなんです!」
とうとうあたしは告白してしまった。
「ずっと好きだったんです!あの公園であったときから!」
数分その空間に沈黙が流れた。
そして後藤さんは、
「返事、一日………待ってよ」
そういってあたしの家から去ってしまった。
- 337 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時33分25秒
「告白したの?」
「はい。」
次の日のお昼休み。あたしは安倍さんと愛ちゃんに相談した。
「んー。一日待ってって事は、嫌いじゃないんじゃない?」
愛ちゃんの意見はそう。
「一日待ってって事は・・・なっちも愛と同意見だなー」
安倍さんの意見もそう。
じゃあ、ちょっとは期待して良いのかな?
学校が終わってすぐに家に帰った。
でも後藤さんは居なくて、いつ返事に来るんだろうと思った。
もしかしてこのまま放っとかれちゃうのかな、って心配もした。
でも後藤さんはちゃんと6時。あたしの家に来てくれた。
でもすぐには返事はくれずに意外な言葉をあたしに伝えた。
「紺野。遊びに行こう!」
「え?」
半分強制的にあたしの腕を引っ張って後藤さんは夜の帳が折りきらない遊園地に来た。
- 338 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時34分18秒
「紺野乗りたいの無い?」
「あ、えっと。あれ、あのジェットコースターとか」
「よし!行こう!」
営業時間ギリギリまで後藤さんと遊園地内を散策したりして今まで遊んでなかった分、15年分ぐらい遊んだ気がした。
「最後に観覧車乗ろうか?」
「あ、はい」
後15分で閉園する所で一周17分掛かる遊園地の目玉、観覧車に乗った。
「綺麗だね、夜景」
「そうですね」
観覧車が回って上のほうに上がっていくと、夜の街の光がすごく綺麗だった。
でも観覧車の中の空気は何だか静かなせいかすごい重くて暗い感じになってしまった。
「紺野への返事。まだだったよね」
観覧車が全体の4分の1ぐらいまで回ったところで後藤さんが話し出した。
「はい………」
あたしは後藤さんの言葉の続きを待った。
「あたし、紺野とは付き合えない」
後藤さんはそう言った。
聞いた瞬間。かなりつらかった。
こうして遊園地で一緒に遊んでくれたのは最後の思い出とかなんだ。
何かそう思うと悲しくなってきた。でも………。
- 339 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時34分59秒
「ほんとは………好きなんだよ………」
ポツリと後藤さんが呟いた。
「好きなんだよ………」
後藤さんは泣いていた。
「ど、どうしたんですか?」
泣きたいのはこっちなのに。
「あたしは………紺野の家に居るうちに………紺野が好きになった。あたしは紺野が好きなんだ」
さっきフラレタけど、その言葉は嬉しかった。でも、意味が分からなかった。
「天使が居るんだ、恋愛が成立する側には」
後藤さんは急に話し始めた。
「天使は自分の能力を使って人と人との架け橋になって恋愛を成立させたり。フラレタ人の悲しみを癒したりするんだ」
あたしは黙って後藤さんの話を聞いていた。
「でも天使は人を幸せにするほど自分の羽根が傷ついていくんだ。だから、地上に落ちた」
その話を聞いても理解できない。まさか後藤さんは………
「紺野」
「はい」
急に名前を呼ばれたので返事をした。
「最後に抱きしめさせてよ」
後藤さんがそういったのであたしは座ったままだと無理と思って立ち上がった。
- 340 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時36分58秒
ギュッ
後藤さんは暖かかった。
抱きしめられてすごく気持ちがよかった。
「天使は羽が傷ついて使い物にならなくなると人間になることが出来るんだ。」
後藤さんはあたしを抱きしめたまま話の続きを話し始めた。
「いつか、人間になれる日が来たら………また会いにくるよ」
バサッ!
後藤さんの身体が光り始めて背中からは白い大きな羽が、沢山の傷が付いた羽が広がった。
- 341 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時38分34秒
- 「いつになるか分からない。だから。紺野に寂しい思いはさせないよ。」
天使の羽があたし達二人を包み込むように広がる。
後藤さんは一本だけ羽を抜いた。
「紺野の中のあたしの記憶を消す。」
後藤さんはそういった。
「な、なんで?」
「さっきも言ったけどいつになるか分からないんだ。だから。ずっと紺野を寂しい思いをさせたままのわけには行かないんだ。それに、天使がいる事を知られちゃったし」
納得するしかなかった。
でも心の中で納得はいかなくて、あたしの頬を涙が伝っていった。
「あたしのことは忘れちゃって良いんだ。もともと恋なんて出来る身分じゃないから。」
後藤さんは涙を流したままそう話す。
観覧車はいつの間にかもう半分以上回っていてもう頂上を回り降り始めていた。
- 342 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時39分31秒
「あの」
「何?」
「お願いがあるんです」
あたしはさっき後藤さんに『抱きしめさせて』とは言われてそれに答えた。
だから今度はあたしが答えてもらおうと思って言った。
「ちゃんと、心のどこかで覚えているように………魔法を掛けていて欲しいんです」
少しまわりくどい言い方。あたしはすぐにストレートな言い方で言い直した。
「キスしてください」
後藤さんの目を見てはっきりと言った。
後藤さんはゆっくり目を瞑ってキスしてくれた。
絶対忘れない。
いつか後藤さんが迎えに来てくれるのをずっと待ってる。
だから、絶対迎えに来て、またキスしてください。
約束ですよ?後藤さん………。
- 343 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時40分37秒
「さよなら」
「さよなら」
二人とも涙を流したままだった。
「また………会えるから」
後藤さんが羽を1本振るうと辺りが光に包まれて。眼を開けると、あたしは一人だった。
手の中には1本の白い羽と、頬に残る涙の後だけを残して、後藤さんは消えてしまった。
もう忘れてしまっていた。
記憶が消えたことも分からず。一人で観覧車を降りて帰っていった。
家に帰ると、何が悲しいのか分からないけど、涙が止まらなかった。
「あさ美ちゃん!」
「あ、愛ちゃん・・・と安倍さん。」
「なんだべ?人をついでみたいに」
「えへへ、すいません」
あたしの中には空白の2週間と言うものがあって、愛ちゃんと安倍さんにも同じ空白の2週間があった。
「あさ美ちゃん恋人とか作らないの?」
「えー、あたしみたいな子好きになってくれる人なんか居ないよー」
「あれ。紺野前誰かと付き合ってなかったっけ?」
「え?居ましたっけ?」
「あさ美ちゃん自分のことでしょー?」
- 344 名前:Angel Wing-紺野あさ美 投稿日:2003年06月29日(日)14時41分31秒
あたしの中に付き合っていた人が居たような居なかったような。よくわからない感情もある。
それは空白の2週間のあとに出来たもので自分でもよく分からなかった。
でも、空白の2週間の最後の日。あの日自分が持っていた1本の羽。
あれが記憶を取り戻す鍵だと思って今でも家の自分の机の上に飾ってある。
いつか記憶が戻ること信じて。
『また………会えるから』
『いつか、人間に戻れる日が来たら………また会いにくるよ』
『紺野が好きになった。あたしは紺野が好きなんだ』
何か…誰かの声が……聞こえた気がした。
- 345 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時42分33秒
起き上がると見慣れない景色が眼に飛び込んできた。
「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
目の前に居た少女があたしに聞いてきた。
あたしは自分の身体が天使の格好のままでないか確認して答える。
「あ。あぁ、大丈夫」
人前に、しかも家にまで入り込んでしまっているようだ。かなり厄介だ。
「あなた誰?」
先ず目の前に居た少女の正体が分からないので聞いてみる。
「あ、あたし紺野あさ美です。あの………あなたが公園で倒れてたんで、心配でつれてきました。」
「あぁ」
しまったな、いきなり人に見つかるとは思わなかった。
「あの、あなたは?」
紺野という少女に聞かれたので名前と年齢だけを答える。
「あ、えっと。あたしは後藤真希。17歳。」
「あ、もしかしてモーニング女学園ですか?」
間髪いれずに次の問い。でもこの近くの学校のことなんか分からない。
「えっと、・・・うん、そう。そうだよ」
「あたしもなんですよ!奇遇ですね」
しまった。適当に答えたのがあだになった。これじゃあいろいろ詮索されたらすぐ気づかれちゃうな。
- 346 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時43分21秒
「あ。ごめんね、迷惑掛けて。帰るよ」
いろいろボロを出してしまわないうちにココを去ろうとする。
あたしは布団から抜け出して立ち上がると部屋の唯一の出入り口であろうと思われる扉に向かって歩いた。
ダン!
自由に動けなかった。空から落ちたぐらいだ。
身体にたまっている疲労は半端じゃないようだ。
「だ、大丈夫ですか?!」
心配されてるようだけどすぐに返す。
「だ、大丈夫だよ………これ以上迷惑掛ける訳行かないし………」
「あの………あたし一人暮らしなんで迷惑とか掛からないんで、身体が回復するまでウチにいませんか?」
………なんかこの子の話し方を聞いていると安心できた。
少しぐらいなら大丈夫かと。あたしの心を緩ませた。
「良いんだったら………ちょっとの間お世話になるよ。」
天使界で前例の無い、人間との同居が始まった。
- 347 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時43分54秒
「ねぇ。紺野って一人であたしを運んだの?」
ココに住まわせてもらうようになって3日、あたしはあたしの情報が出回ってないかの詮索をしていた。
「違いますよぉ、一人で運べるわないじゃないですか。友達一人と先輩一人に手伝ってもらいました。」
「計三人か………」
最後に記憶を消さなきゃならない人物は紺野を含め3人。
「それがどうしたんですか?」
「え?あぁ、紺野ってそんなに力持ちに見えないなぁって」
紺野にはばれちゃいけない。ただでさえあたしは危険な状態だと言うのに。
「ねぇー。こんのー」
「え、はいっ、何ですか後藤さん?」
「さっきからボーっとしすぎ。人の話し聞いてる?」
「あ、えっと………」
何故かあたしは紺野とよく話していた。
詮索じゃなく、天使としてではなく、対等な立場で、人間として話していた。
あたしの心の中には、何か変化があった。
- 348 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時44分53秒
「あたしこんなに長く居て大丈夫なの?」
「あ、大丈夫ですよ。前にも言いましたけどあたし一人暮らしですから誰にも迷惑掛からないんで。」
「そうじゃなくて紺野が迷惑じゃないかって」
あたしは早くココを去らなければと思っていたのに、いつの間にかココに依存していたのかもしれない。
「後藤さんは学校とかには連絡しなくて良いんですか?」
「もう連絡した」
「親とか家族の人とか心配しませんか?」
「あたし一人暮らしだから。」
でも本当のことを話すわけにはいかなかった。
やっぱり、話せなかった。
- 349 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時45分40秒
「よし。もう動ける、ありがとね、今まで。」
2週間がたった頃。あたしは身体が治ってココを去ることにした。
それに、これ以上ここに居ると変な気分になりそうだったから。
「じゃあ、お礼はまた今度するから、ほんとにありがとね」
そしてあたしが紺野の家を去ろうとすると。
「あの、後藤さん!」
紺野に呼び止められた。
「あの、もう少し、居ませんか?」
「え、なんで?」
『もう少し居る』理由なんて無いはず、身体も治ったんだし。紺野にとっては迷惑でしかないはずなのに。
「あの………あたし後藤さんのことが好きなんです!」
「ずっと好きだったんです!あの公園であったときから!」
………そうか。あたしの心の中にあった気持ちも多分この子と同じなんだ。
あたしの心の中には、初めて触れる人間の心が、芽生え始めていたんだ。
「返事、一日………待ってよ」
天使が人間と恋をするわけにはいかない。
天使は人間を幸せにしなきゃいけないんだ。
でも、すぐに断ることは出来なかった。
もう自分でも分かっていた。
あたしは紺野が好きということを。
- 350 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時46分11秒
次の日。
紺野が家に帰るのを確認してからあたしは校舎の中に入っていった。
周りの人の中から聞こえてくる情報を頼りにあたしは『安倍なつみ』を『高橋愛』を探していた。
そして高等部校舎の屋上でその二人が仲良さそうに話しているのを発見した。
屋上には二人だけだったのでやり易かった。
「あの………」
「ん?あ!この前の人ですよね?………って言ってもそっちは気を失ってたから分からないか」
「安倍なつみさんと高橋愛さんですよね?」
「「そうですよ」」
あたしは二人が本人であることを確認すると、背中の羽を広げた。
「悪いけど、あたしのことを知ってる時点で記憶を消さなきゃいけないから。」
二人の驚いてる顔を見るのもつかの間。あたしは羽を抜いて天にかざすと二人の記憶を消した。
- 351 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時46分45秒
「紺野。遊びに行こう!」
「え?」
あたしは二人の記憶を消した後、紺野の家にいって紺野にそう言った。
あたしは遊園地に紺野を招待した。
「紺野乗りたいの無い?」
「あ、えっと。あれ、あのジェットコースターとか」
「よし!行こう!」
紺野は結構はしゃいでいて、見ているだけで楽しかった。
けど、別れのときは近かった。
「最後に観覧車乗ろうか?」
「あ、はい」
あたしは最初から時間の計算をしていたのでちゃんと閉園時間ギリギリになるように観覧車に乗った。
「綺麗だね、夜景」
「そうですね」
観覧車に乗ってすぐには本題は話せなかった。
でも話さなきゃいけない。あたし達は分かれなきゃいけない。
あたしは意を決して話し始めた。
- 352 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時47分28秒
「紺野への返事。まだだったよね」
「はい………」
「あたし、紺野とは付き合えない」
あたしは言った。ちゃんと言った。無理だと伝えた。
「ほんとは………好きなんだよ………」
でも、つい、口に出てしまった。
「好きなんだよ………」
あたしの目からはぽろぽろと涙がこぼれ始めた。天使も涙を持っているんだとはじめて知った。
「ど、どうしたんですか?」
話さずに入られなかった。自分の想いを。
「あたしは………紺野の家に居るうちに………紺野が好きになった。あたしは紺野が好きなんだ」
出来れば離れたくない。でも離れなきゃならない。
- 353 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時48分34秒
「天使が居るんだ、恋愛が成立する側には」
「天使は自分の能力を使って人と人との架け橋になって恋愛を成立させたり。フラレタ人の悲しみを癒したりするんだ」
「でも天使は人を幸せにするほど自分の羽根が傷ついていくんだ。だから、地上に落ちた」
天使は人を愛してはいけない。天使は人を愛させるものだから。
天使は人に愛されてはいけない。使命をまっとうできなくなるから。
「紺野」
「はい」
「最後に抱きしめさせてよ」
紺野が立ち上がって、あたしはゆっくり紺野を抱きしめた。
ギュッ
紺野は抱き心地がよかった。ずっと離れたくない。
あたしの目から流れる涙は止まらなかった。
「天使は羽が傷ついて使い物にならなくなると人間に戻ることが出来るんだ。」
「いつか、人間に戻れる日が来たら………また会いにくるよ」
人間に戻れるなんてずいぶん先の話だ。でもそう言って安心させてあげたい。
- 354 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時49分24秒
バサッ!
あたしは変化をといて本当の天使の姿になった。
大きな翼が観覧車の部屋の中を埋め尽くしていく。
「いつになるか分からない。だから。紺野に寂しい思いはさせないよ。」
そう、記憶を消して、紺野には私のことを忘れてもらう。
あたしは自分の羽の中から1本だけ羽を紡ぐ。
「紺野の中のあたしの記憶を消す。」
「な、なんで?」
「さっきも言ったけどいつになるか分からないんだ。だから。ずっと紺野を寂しい思いをさせたままのわけには行かないんだ。それに、天使がいる事を知られちゃったし」
あたしにつられてか紺野も涙を流し始める。あたしは紺野のそんな顔を見たくないんだ。
「あたしのことは忘れちゃって良いんだ。もともと恋なんて出来る身分じゃないから。」
これからもあたしが天使としての使命を果たしていく中でもきっと紺野は目に映る。
そんな時あたしは紺野の悲しい顔を見ても何も出来ない。
記憶を消してあげることしか出来ないんだ。
- 355 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時50分10秒
「あの」
「何?」
「お願いがあるんです」
紺野のお願いは、あたしがしたかったものと同じだった。
「ちゃんと、心のどこかで覚えているように………魔法を掛けていて欲しいんです」
ただ、忘れないようにさせてあげることは出来ないけど。
「キスしてください」
あたし達は、自分の羽に包まれている中。キスをした。
あたしは絶対あなたのことは忘れないから。
あたしが人間になれたなら、まだあなたが一人だったら、幸せになってなかったら。
絶対会いに行くから。
「さよなら」
「さよなら」
最後のお別れをして、あたしは記憶を消すために羽を天にかざした。
「また………会えるから」
最後にそういって、あたしは紺野の記憶を消して、その場所を離れた。
- 356 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時51分05秒
「よっすぃ、あたし………」
「梨華ちゃん………」
あたしは空を飛びながら手に持つ羽を振るっていた。
あたしはあの時紺野に嘘をついた。
あたしは紺野の記憶の全てを消すことは出来なかった。
それが何故かはあたしにも分からない。
ただ唯一喜べるのは。
あたしの羽の傷はドンドンと増えていき、人間になれるのが近いこと。
大天使様が知った。あたしが恋をしてしまったことを。
そして更に知った。あたしの羽に付いた傷より、心に付いた傷のほうが大きいと言うことを。
- 357 名前:Angel Wing-後藤真希 投稿日:2003年06月29日(日)14時51分45秒
だからあたしはドンドン羽の傷が増えていった。
人間をドンドン幸せにしていった。
でも彼女の回りには行かなかった。
彼女がもし誰かにときめいていたらそれをくっつけなきゃいけない。
それは嫌だ。
彼女のためかどうかは別にして、やらなくて良いことはやらない。
天使なのに人間のエゴのような考えを持ってしまった。
それだけで天使失格かもしれない。
あたしはもうすぐ人間になる。
あたしが人間になったら、あなたを幸せにして見せるから、
だから、他の天使も。アノ子にだけは近づかないでよ。
「紺野。もうすぐだよ」
後少しで、あなたの元に………。
Angel Wing END
- 358 名前:Angel Wing-作者 投稿日:2003年06月29日(日)14時55分36秒
- 指輪、天使、ラブソング。に関連する。そんな駄文書いてる作者です。
初めて挑戦のゴマ紺で5時間ぐらいであっという間に書き上げてしまいました。
何か失敗等あるかもしれませんがご了承ください。
>>325-344 紺野編
>>345-357 後藤編
です。
後書き END
- 359 名前:名無しROM 投稿日:2003年06月30日(月)06時36分23秒
- >「よっすぃ、あたし………」
>「梨華ちゃん………」
このセリフの意味がわからん?
- 360 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月30日(月)16時00分36秒
- >>359
天使なんだから恋人同士にする
そのときの二人の様子じゃないの?
- 361 名前:Love&Hate 投稿日:2003年06月30日(月)18時47分38秒
- 別れるだとか、別れないだとか、そんなややこしい話は面倒だよ。
寂しいとか、寂しくないとか、そんなややこしい感情はいらないよ。
私のこと嫌になったのなら、考える前にさっさとふって。
綺麗にお膳立てられた台詞を舞台俳優よろしく言われても、
私にどんなリアクションを求めてる?
生憎、私はその舞台を欠伸をしなが眺める観客に成り下がっ
てる、あさ美ちゃんに返すべき台詞などないから。
呼び出された公園、月に照らされたそこは、まるで本当の舞台
みたいだった。
あさ美ちゃんはこちらに背を向けてブランコに座っていた。
この光景、なんか見覚えがある、記憶のノブに手を忍ばせた時、
あさ美ちゃんは振り返った。
ちょっと驚いた顔をして、背後に立っているのが私だと分かると
笑顔になった。
ごめん遅れたわ、約束の時間よりも早く着いたのだけれど、
待たせたことに変わりはないから謝る。
あさ美ちゃんは何も言わずに頷いた。
- 362 名前:Love&Hate 投稿日:2003年06月30日(月)18時51分07秒
- 後はお互いに無言で、でも、息苦しくないのはもう答えが出ているからだと思う。
互いを探りあって急ぐ必要がない、あとは終わるだけなんだけど。
まんまるの月の上でウサギが餅つきでもしている音が聞こえてきそう。
ぺたん・・ぺたん・・ぺたん・・ぺたん。
ふざけて、英会話スクールのCMに出てくるウサギが餅つきをしているところ
を想像したりして相手が喋りはじめるのを気長に待っていたが、いい加減に
耐えられなくなってきた。
あさ美ちゃんはいつもそうだ、グズグズで、頼りなくて、そのくせ自分勝手
で、付き合いだした最初の頃もなかなか私の気持ちを信じてくれなくて
半信半疑といった様子でいた。
あさ美ちゃん。
何か言いたいことは何と咎めるように名前を呼ぶ。
考える前にさっさとふってよ、余計なこと考えずに、考えたところで思い
浮かぶのはどうせろくなことじゃない、ややこしいのは御免だ、
私のがらじゃない。
- 363 名前:Love&Hate 投稿日:2003年06月30日(月)18時52分43秒
- あさ美ちゃんは空を見上げ、彼女独特のスタイルでやっと話しだした。
ごめんね、去年の夏祭りのこと思い出しちゃってた、あの時も今日と同じ
くらい月が綺麗だったよね、よく憶えてる、今みたいに此処で愛ちゃんと
待ち合わせしたことも・・・。
あぁ、だからか、さっきのあさ美ちゃんの後ろ姿に憶えがあるのは。
あの時もあさ美ちゃん待たせちゃったんだっけ、浴衣着るのに手間取って、
そのお詫びに夜店でわた飴とか焼きそばとか買ったけ、金魚すくいの店で
金魚のマネをしたりして、つい一年前のことなのに遠い昔。
今のあさ美ちゃんとの距離に比例して思い出が私から離れていっているの
かも、だったら頷ける。
ばいばい、愛ちゃん。
あさ美ちゃんは、ゴテゴテに飾り付けた陳腐な別れの台詞を口にはしなか
った。
また明日ね、とでも言われたような気持ちになった。
- 364 名前:Love&Hate 投稿日:2003年06月30日(月)19時00分33秒
- 考える前にさっさとふって。
まさに自分が望んでいたカタチで彼女は幕を下ろしたのに、どこか納得で
きない、いや、受け入れられないんだ。
あと、最後に、そう言って突然あさ美ちゃんは右手を振り上げた。
叩かれる。
なんで叩かれるんだと思う一方、それもしょうがないと思った。
ふざけあってする程度のビンタが頬を打つ。
軽く触れられただけだったが、おもいきり叩かれたみたいにクラクラきた。
目の前を火花が散る。打ち上げ花火みたいに鮮やかな火の粉がちらちらと。
この感じ、あさ美ちゃんを好きになった瞬間に似てる。
あさ美ちゃんは今度こそ振り返ることなく私の元からいなくなった。
でも、私の中にはまだ彼女がいる、彼女の息遣いを胸に抱いている。
私が思うほどあさ美ちゃんは弱くなかったのかもしれない、だって、別れ
に涙しているのは私の方だ。
それとも、あさ美ちゃんも今頃は泣いてたりする?
- 365 名前:Love&Hate 投稿日:2003年06月30日(月)19時02分44秒
- 考える前にふられなよ、考えたところで思い浮かぶのはどうせろくなこと
じゃない、ややこしいのは御免だ、しかし、ややこしいことに慌てふため
くのはこの上なく自分らしい。
私の方がよっぽどグズグズで、頼りなくて、そのくせ自分勝手で、自分の
大切な娘ひとり満足に愛せない、自身の負の部分を押し付けて、嫌ならさ
っさとふってくれときた。
ブランコに立ち乗りしておもいきりこいだ。
『去年の夏祭りのこと思い出しちゃってた、あの時も今日と同じくらい月
が綺麗だったよね』
ほんと、ろくでもないことが思い浮かぶ。
月は確かにきれいだ。
金属が擦れ合う耳障りな悲鳴は祭ばやしに代わり、夜風に踊る青葉は祭り
に酔う人のざわめきになる。
私はそっと瞼を閉じた。
- 366 名前:Love&Hate 投稿日:2003年06月30日(月)19時05分57秒
- 今回のオムニバスのボツネタ。
- 367 名前:無題 投稿日:2003年07月01日(火)21時21分38秒
「紺ちゃーん」
名前を呼ばれて見ていた雑誌から目を離し、前を向くと視界を遮られた。
私の事を『紺ちゃん』なんて呼ぶ人はそういない。
「だーれだ?」
後ろからの声はいたずらっこっぽくてなんだか楽しそう。
「うーん、誰だろう…。ヒント下さい、ヒント」
「え?ヒント?」
本当は誰だか正体なんて分かってるけれどあえて聞く。
すると後ろからはうーん、と唸り声。
正直、こんなキャラの人だとは思っていなかった。
なんていうか…、もっとクールで必要以上は喋ったりしなくて、
こんなにじゃれたりもしないと思ってた。
笑ったりするのはあの子の前だけだと思ってた。
- 368 名前:無題 投稿日:2003年07月01日(火)21時22分20秒
- 「えーとね、ヒント。紺ちゃんと出身地が同じです」
「うーん…」
「え、まだわかんない?」
「もっとヒント下さい」
「えー…?」
ここまで来るとどっちがいたずらなのかわかんなくなってくる。
それでも真剣にヒントを探す表情が目に浮かぶ。
娘。に加入するって聞いたときは本当に驚いた。
嫌だ、とかそんなんじゃなくて…なんだろう。変な気持ち。
そして一緒にカントリー娘にも加入。これにも驚いた。
驚いたけど嬉しかった。
- 369 名前:無題 投稿日:2003年07月01日(火)21時23分05秒
- 「えー…と、あ!シャッフルが同じ!」
「シャッフル…?あ、飯田さんですか?」
「え〜、違うよ〜!」
「えー、じゃああさみさん!」
「……紺ちゃん?わざと言ってるよね?ね?」
視界が急に明るくなって横から私の顔を覗き込む。
その顔は唇を尖らせて怒ってる。
「ばれました?」
「このー!」
怒ってた顔は笑顔に変わって私の頬を軽くつねる。
「いたいでひゅよぉ」
「おしおきです」
そう言ってまた笑う。
- 370 名前:無題 投稿日:2003年07月01日(火)21時23分47秒
- なんていうか、普段笑わない人が自分の前で笑ってくれると物凄く嬉しくないですか?
きっとあの子は今まで凄くいい思いしてきたんだなぁと思うとちょっと妬けた。
「紺ちゃんホント金魚みたいだねー」
「藤本さんは猫っぽいですよね」
「いいかげん敬語やめてくれませんか?先輩?」
「だって藤本さんの方が年上じゃないですかー」
「娘。内では下っ端だもん。気にしないでよ」
「じゃあ、今度から気にしないようにします」
「ほら、今も敬語」
そう言ってまた笑う。
今度からこの笑顔を独り占めできたりするのかな、なんてちょっと期待を持ったり。
「あ、電話。あー!亜弥ちゃん?」
かなり手ごわいライバルがいるけれど。
オワリ
- 371 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月01日(火)23時02分50秒
- いいね〜。
個人的には好きなCP(w
マイナー最高
- 372 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時35分32秒
- 線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火
- 373 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時36分22秒
丁度夜の帳が下りた、宵の始まりの合図と共に、加護は母親に適当な理由を言って家を後にした。
今日はクラスのはっちゃけた奴らが仕切って提案した、交流と親睦を目的とする
花火大会が学校のすぐ近くにある△△公園で催される予定だった。
だけど、加護はそれを適当な理由をつけて断った。
今までクラスを纏めていた奴らは、自分や辻や紺野といった、
所謂、一つ下のグループの人間に対しては完全に度外視を決め込んでいたのだ。
それが、何か心変わりがあったのか、それとも罪悪感に苛まれたのか知らないが、
突然さも、善人ぶった面でお誘いをしてきた。
一緒に遊ぼう。仲良く花火しよう。ばかばかしい。季節はもう春ではなく、夏だ。
とっくの昔に仲良しグループは完成していて、加護と辻と紺野の三人は
別段、仕切りグループの奴らと揉め事をやらかした訳じゃないが、
やっぱりクラスからはみだし者扱いにされていた。5月にあった校外学習のバスの席割は
三人だけ隔離されたように、周りの席はガラリと空いていて、辻が辛くて泣きそうになって
いたのを加護は思い出す。
- 374 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時38分26秒
加護は気に食わなかった。そうやってクラスの端にいた自分達を
まるで、新学期で後ろの席に座っている子に緊張しながら始めて話し掛ける
ように、優しく、警戒心を解き、作り笑顔を施して接してきやがった。
それがとても理不尽な行為だと思ったのである。
そして、加護はそんな奴らにちょっとでも苛められるのではないか?と
心のどこかで恐怖心を抱いていた自分が、とても滑稽で情けなく思えたのだった。
辻も紺野もこの機会にクラスみんな仲良くなろうと加護に提案した。
いつまでもはみだし者なんてのは加護だって嫌だったが、そうすると三人が
これまで固く支え合ってきた関係が壊れてしまいそうで、それもまた嫌だった。
広く浅い関係よりも、狭くても深くて、頑強な関係の方がいい。
季節は夏。このまま三人ぼっちでも、今までの深い関係を維持したいと加護は思った。
だから加護は辻と紺野に言った。
『ウチはその日××公園で花火する。ののとこんこんはどっちか好きな方行ったらいいよ。』
- 375 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時40分13秒
- 正直、加護には二人を誘える勝算が無かった。資金でも魅力でも格段に向こうの方が上。
加護は今月の小遣いをマンガ本に殆ど使ってしまって、派手な花火を買う金なんてのは
残っていなかった。それも正直に伝えた。だから近所の雑貨屋で線香花火を
一袋だけ買ったんだと。
一方のはっちゃけた奴らは、クラスの生徒から300円ずつ、事前に資金を募っていた。
40人のクラス。加護達を除いて、単純計算してもざっと10000円は集まる。
それで馬鹿でかい打ち上げ花火を誇示するように打ち上げたり、手持ち花火だって
ビニールのバッグにいろんな種類の花火が詰まった、上等のやつを買うのだろう。
お菓子やジュースを買ってみんなで仲良くお喋りでもして、電話番号を交換なんかしたり
するのだろう。加護は嫉妬心から涌き出たそんな想像に駆られながら、公園へと急いだ。
鉄棒と砂場とブランコしかない小さな公園だった。
集合時間はどっちも7時半。加護は10分前に着いたが公園には誰もいなかった。
一人、二つある内の一つのブランコに腰掛けてゆっくり揺らした。
ギーコ、ギーコと間接が錆びたせいで不愉快に軋んだ音が、辺りに寂しく響いた。
- 376 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時41分20秒
空を見上げると、黒の中にたった一つの丸い月と瞬く綺羅星の群れ。
加護の黒目がちな瞳もそれに呼応するように煌めいた。
時折吹く風は本来のそれよりも、幾分冷たい感じがした。
鉄棒の裏手に一本だけ植えられてる柳の木の枝が、公園の電燈の光を含んで、
怪しくさわさわと揺れているのがとても無気味で、加護は絶対そこを見ないように心掛けた。
ぼんやりと空を見上げながら、加護は二人が来るのを待っていた。
もし二人が来なかったら、これからは一人ぼっちになってしまうのだ。
そう思うと、いよいよ加護は寂寥感に押し潰されそうになった。
向こうの連中だって本当に本心から自分たちを誘ってくれたのかもしれない。
仲良くなりたくない訳でないのだ。ただ、三人の築き上げた関係を冒されたくなかった。
それが今になって完全な後悔へ変わった。
- 377 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時43分23秒
オーバーオールのポケットの中から、雑貨屋で買った80円の線香花火を取り出した。
表面が濁ってカサカサしたビニールの包装だったので、加護は本当にちゃんと火が付い
てくれるのか不安になった。右手にそれを握り締め、
気を紛らわすようにギーコギーコと大きくブランコを揺らした。
その時だった。
向こうの空に、丸くて大きな極彩色の光が上がった。ドンと光って消え、また上がった。
加護はそれをとても不思議な気持ちで眺めていた。打ち上げているのは
クラスの連中に決まっているが、どうもあまりに綺麗過ぎて心が置き去りにされる。
人間というのは、美しいモノにはとても無防備な存在で、ただ感動する生き物で。
下らない意地を通した自分の気持ちが、何時の間にやら嘘みたいになっているのに
加護は気付いてしまった。そのうちに、辺りは元の、耳鳴りするような静寂に包まれている。
だけど、しばらく加護は向こうの空を何かを待ち焦がれるように、ジッと凝視していた。
時刻は8時を過ぎていた。
ちぇ、と呟いて加護は線香花火の包装を乱暴に破った。
二人はやってこない。今の時期はまだ夏の入り口。夜風は一人だと冷え込んだ。
- 378 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時44分52秒
ごそごそとポケットからライターを取り出して、線香花火の細い雫の
ような形になっている、火薬の詰まった先端に火を点けた。
その時、加護の背後に怒号のような轟音がまた響いた。今度のはまた一段とでかい。
振り返ればきっとそこには大きい輪郭をしている極彩色の楽しさがある。
パチパチと火薬に引火すると、線香花火は音を無くして、さらさら優しく光り輝いた。
出来るだけ加護はその光に顔を近づけてみる。後ろからまたドンと言う轟音が響く。
そしてある事柄を発見した。こうやって間近で見る線香花火の輝きは
大空を彩るソレと比べても全然見劣りしない。だけど、その光は大勢の騒音の中に
いては絶対に気付かないモノなんだと思って加護は一人、勝ち誇った。
自分が正しかったとか、間違っていたとか、そんな事を一旦忘れて、
加護はたった一人、夜空を彩っているであろう、打ち上げ花火の轟音を背に、
線香花火の大きさに耽った。顔は焦げ臭くなりそうだな、と思って一人笑った。
「あいぼん・・・」
辻の声が聞こえて加護は振り返った。
見ると、辻と紺野が気まずそうに、公園の入り口で俯いていた。
- 379 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時46分11秒
「こっち来てもいいん?」
素っ気無い加護の問いに答えないまま、辻と紺野は気まずそうに加護に歩み寄った。
「ねえ、○○さん達、あいぼんのこと待ってるよ?」
「うん。あいぼんと仲良くなりたいって言ってた。」
二人は一人ぼっちになっている加護に優しく諭すように話しかけた。
加護が参加しないのなら、自分達も参加しないと告げて二人はここにやってきた。
去ろうとする二人を呼び止めて、向こうのはっちゃけたリーダー格の一人が、
それなら是非加護を連れてきて欲しい、と二人に頼んだのだった。
加護は話しかけ辛い雰囲気があったから、今の今まで仲良くなりたいのに
その機会を掴めずにいたのだと言う。
それを聞いて、加護は意地っ張りの自分が、ただの馬鹿だったのだと認めた。
元々、何も貫く必要なんてなかったのだと、今さっき打ち上がった空に輝く
三原色の光に答えを聞いた。
「なあ、二人とも、今からウチが火点けるから顔近づけてみ。」
「え?」
「いいからいいから。」
- 380 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時47分08秒
- 辻と紺野は顔を見合わせ、怪訝そうに首を傾げてから加護の隣に腰掛けた。
加護は残り三本だけになった線香花火の一本に火を付ける。
パチパチと音が鳴って、そして音は消える。その無音の光に加護は
思いっきり顔を近づけた。
「こうして見るとな、打ち上げ花火にも負けないくらい、線香花火やってでかいねん。」
「・・・本当だね。」
「・・・うん。綺麗。」
「そうやろ?」
加護はにっこり笑った。そして消え行く線香花火の最期と共に立ち上がった。
「行こうか。でもウチ、300円持ってへん。」
「私達も払ってないけど、そんなの気にしなくていいって言ってた。」
「あいぼんさ、みんな優しいんだよ。」
夜空にまたでかい花火が打ち上がった。
それを見て加護は思う。打ち上げ花火は大きい。
線香花火は小さいけれど、本当はとても大きいのだ。
まず最初に話すきっかけにその事を言おうと思った。
みんなにその秘密を教える瞬間を思うと、加護はワクワク胸が高鳴った。
星が瞬き、月が笑い、そして打ち上げ花火と線香花火が静かな夜を耽美に彩っていた。
終わり。
- 381 名前:線香花火と夜空を彩る打ち上げ花火 投稿日:2003年07月05日(土)05時51分52秒
>>372-380
昨日の晩、何時の間にか書いていました。
- 382 名前:Angel Wing作者 投稿日:2003年07月05日(土)20時47分38秒
- >>359さん
あれ、間違いです。
本当は>>356
「よっすぃ、あたし………」
「梨華ちゃん………」
地上では、新たなカップルが抱き合っていた。
そう、あたしが天使としての能力を使ってくっつけたのだ。
カップルが地上で抱き合っている時、
あたしは空を飛びながら手に持つ羽を振るっていた。
となるはずだったんです、。
失敗してすいません
- 383 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時34分42秒
「ねぇ、ごっちん」
「んー?」
「美貴のバージン…貰って?」
「はぁ!?」
ある晴れた昼下がり、美貴ちゃんが遊びに来てというので後藤は彼女の家を訪れていた。
美貴ちゃんとは醸し出す空気が少し似ていて、リラックスしながら雑誌を読んでいる最中の事だった。
突然かつ、流れが読めない言葉に後藤は目が点になる。
「ってゆうか貰え」
「強制!?…その前に美貴ちゃんって処女だったの?」
後藤的にはそっちも驚きなのですが…。
「…悪い?どうせ美貴はヤリマンのDQNに見えますよーだ」
「いや、そうゆう意味じゃなくて…」
なぜだろう?後藤と同じニオイがする(汗)
- 384 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時35分26秒
「じゃあどうゆう意味?」
「彼氏いたんじゃなかったっけ?」
「…あれはお姉ちゃんの彼氏だもん」
「そう、なんだ」
って事は本当に処女なんだ。
「だからごっちん、貰って?」
「…何で貰ってほしいの?」
「へっ?」
「だって何かいらないモノみたいに言うからさぁ」
つーか投げやり?
早くバージン捨てたい、みたいな。
「…だって18歳にもなって処女なんてカッコワルイじゃん」
「!!!!!!……そ、そんな事ないよ!」
お、落ち着け!後藤の心臓!!
- 385 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時36分03秒
「何でごっちん、そんなに焦ってるの?」
「えっ!?い、いや、後藤は普通だけど?」
「…はぁーん、分った」
「(ギクッ!!)」
大丈夫!きっと大丈(ry
「ごっちんも処女なんだ!」
「!!!!しょ、処女じゃないも―――ん!!」
簡単に見破られた―――!!
「隠さなくてもいいじゃん。何だ、ごっちんもかぁ」
「ち、違うってばぁ!!」
その後いくら後藤が否定しても美貴ちゃんは信じなかった。
はぁ…諦めよう。
美貴ちゃんも処女なんだし…隠す必要ないか。
つーか、いいじゃんよぉ…まだ処女でも。
そんな事を考えていたら、隣に座っていた美貴ちゃんがソファーに倒れこんで溜息を1つ。
- 386 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時36分36秒
「はぁ…困ったなぁ。予定が狂っちゃった」
「何?」
「いやね、ごっちん慣れてるって思ってたからさ…ヤってもらおうとしたんだけど」
「……」
「ごっちんも経験ないんじゃ…どうしようかな」
「お役に立てずにすいませんね」
「…じゃあさ、こうゆうのはどう?」
「な、何?」
美貴ちゃんが後藤の顔を覗き込んでくる。
「2人で奪い合いっこするの!」
「はい!?」
「だからぁ、ごっちんが美貴の処女奪って、美貴がごっちんの処女奪うの」
「……」
本気で言ってるんだろうか。
いや、目を見たら本気なのは分った。
- 387 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時37分12秒
「ね!いい考えでしょ?」
「…ねぇ美貴ちゃん…1つ言っていい?」
「何?」
「かなり重要な事だと思うんだけど」
「だから、何?」
「…女同士って……カウントに入るの?」
「……あ」
こりゃ考えてなかったな?
美貴ちゃんは黙り込んでしまった。
諦めるかな?と思ってたんだけど…
しばらくすると美貴ちゃんは立ち上がり、自分の部屋へと行ってしまった。
部屋からは何やら物をひっくり返すような音が…。
「あった!」
部屋から出てきた美貴ちゃんの手には分厚い辞書が。
それが一体何なんだろう(汗)
「処女がどうゆう意味なのかちゃんと調べてみる!」
「ほぇ!?」
少し目を吊り上げて美貴ちゃんは辞書をテーブルに置いた。
- 388 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時37分52秒
「しょ、しょ、しょじょ…あった!」
「……」
何か…すごい空間。
こんなの他の人には見せられないね。
もはやアイドルとは呼べない(汗)
でも、ちょっと後藤も気になった。
一緒に頁を覗き込んでみる。
すると―――
しょじょ【処女】
(1)〔家に処(い)る女の意〕未婚の女性。男性と交わったことのない女性。きむすめ。おとめ。バージン。
「「……」」
何か…見れば見るほどむなしくなってくるような…。
やっぱり男性経験の有り無しの事なんだよね。
「まだ続きが書いてる。望みを捨てるな!」
「美貴ちゃん…元気だねぇ」
もうかなり絶望的だと思うけど。
- 389 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時38分30秒
(2)他の漢語の上に付いて用いる。
「ごっちん、漢語って何?」
「ご、後藤が分かる訳ないじゃん」
「…でもほら!男とか関係無い事も書いてるよ」
「どれ?」
(ア)人が一度も手をつけていないこと。
「―雪」
(イ)初めての経験であること。
「―演説」
「…人は関係ないじゃん」
「言うな…」
どんよりとした空気の中、美貴ちゃんは辞書を閉じた。
- 390 名前:女のプライド!? 投稿日:2003年07月11日(金)16時39分19秒
「そんなに焦らなくてもいいじゃん。20代でも処女の人とかいるんだし…」
「……」
う、沈黙が逆に怖い。何か企んでそう(汗)
「そ、そろそろ後藤お暇しよっかなぁ」
「…ごっちん」
「はい!」
「男になれ!」
「はぁ!?」
「もうそれしかない!」
ガッチリと体を掴まれ逃げる事は許されない状況。
美貴ちゃん目が怖い…(汗)
「お、落ち着いて!?」
「それなら美貴もごっちんも処女と童貞を卒業出来る!」
「いや、あの、だから藤本さん???」
誰か助けて(泣)
何でこんな展開に…。
「モロッコ行って性転換手術してこ―――い!!」
−Fin?−
- 391 名前:書いた人 投稿日:2003年07月11日(金)16時43分22秒
- 初挑戦の組み合わせなのでここに書かせて頂きました
個人的にはアリな2人ですが(w
もうほとんど某ネタスレ状態だけど書きやすかったです
- 392 名前:もし、5期の4人が一つ屋根の下に暮らしていたら・・・ 〜おがたか〜 投稿日:2003年07月12日(土)19時13分58秒
- 午後7時―――。
高橋が風邪をひき、一日中寝ていた今日。4人とも仕事がなかったため、晩ご飯の時間がいつもより早かった。
「よっしゃ。出来たぁ。MADE IN 麻琴 の晩ご飯〜。」
机の上には、一部分を除いておかずやらご飯やら、所狭しと並べられていた。(しかし、そのわりにはコンロの上に白い湯気を出している小さな鍋が見えたが・・・)
「もぉ〜。遅いよ、まこっちゃん。おなか減った〜。てか、何その MADE IN 麻琴って。」
少し頬を膨らました仕草をした後、紺野はくすりと笑った。
「まぁ、いいじゃん。珍しくおいしそうだし。」
「何それ。里沙ちゃん、ひどっ・・・」
「はは・・・。私、愛ちゃん呼んでくるね。」
新垣が軽く流しながら、(目を輝かせて)意地悪そうに笑い、小川と喋っていると待ちきれなかったのか、紺野は早速高橋を呼びに行こうとした。そんな紺野を小川は止めた。
「あ、別にいいよ。呼ばなくても。愛ちゃんの分のご飯作ってないし。」
「「えっ!?」」
「おかしい!!」
「そうだよ!おかしすぎるよ!!」
今度は麻琴が驚く番だった。
- 393 名前:もし、5期の4人が一つ屋根の下に暮らしていたら・・・ 〜おがたか〜 投稿日:2003年07月12日(土)19時14分28秒
- 「へ?・・・まぁ、そりゃ一人分だけ作ってないのはおかしいけど。。。」
「「違ぁぁぁぁぁうぅぅぅぅっ!!!」」
「は、はぃっ。」
「あの、あ・の。あの、愛ちゃん大好きまこっちゃんが!!」
「あのまこっちゃんが!愛ちゃんの分のご飯を作ってないなんてぇ!!」
「「おかしすぎる!!」」
「いや。まぁ、その、ねぇ。」
小川と高橋は付き合っていた。小川が食事当番の日は高橋の分が。高橋が食事当番の日は小川の分が、他の二人の2倍くらいの量で丁寧につけられていた。(食べれないけど・・・)
そのうえ、同じメニューなのに他の二人より何故か豪華に見えた。(紺野と新垣可愛そう・・・w)
それなのに今日は、「高橋の分を作っていない。」と言うのだ。
「愛ちゃんが風邪ひいてるってのに、ご飯作らないなんて・・・」
「まこっちゃん。熱があるんじゃないの? あ、洗濯物今のうちに洗っとこ。」
小川がすばらしきコンビネーションの二人に感心してる間に、洗濯当番の紺野がリビングから出ようとドアを開けた。
- 394 名前:もし、5期の4人が一つ屋根の下に暮らしていたら・・・ 〜おがたか〜 投稿日:2003年07月12日(土)19時15分02秒
- ―――と、そこには・・・ 高橋がすごい形相で立っていた。。。
「「「あ、愛ちゃん。」」」
高橋は何を言うでもなく、ただ小川を睨みながら立っていた。しかし、すぐに部屋へと走って行った。
「ど、どうしよう・・・。」
「が、がんばれ。まこっちゃん。」
「ああっと。洗濯しなきゃ。洗濯。」
いつの間に食べたのか二人は綺麗なお皿を残して去っていった。
「てか、はやっ。・・・じゃなくて!今はこんなこと言ってる場合じゃないんだよぉ。。。」
部屋で一人キレている高橋。
「もぉ。なんやの。麻琴は・・・。・・・私のこと、実は嫌いやったんや。嫌いやけど、しょうがなく付き合っとったんや。。。」
目に溜まる涙を抑えきれず、泣いてしまった。部屋の外にいる、白い湯気の立つおかゆをのせたおぼんをしっかりと持って困っている小川に気づかずに・・・。
「どぉしよう。入れないよぉ。・・・いいや、分かってくれるよね。」
一度しっかり深呼吸をした後、小川はゆっくりとノックをした。
- 395 名前:もし、5期の4人が一つ屋根の下に暮らしていたら・・・ 〜おがたか〜 投稿日:2003年07月12日(土)19時15分43秒
- コンコン。
「・・・」
返事はない。
「愛ちゃん?・・・入るよ。」
決心し、小川は部屋に入ろうと、ドアを開けた。その瞬間。
ガチャッ。
「入るなぁ!!麻琴の馬鹿ぁぁ!!」
小川にクッションが飛んできた。
そして、見事。顔面にヒットした。
「ふべしっ。て、熱っ!!あっつぅ!熱い熱い!」
小川は持っていたおかゆを落としてしまった。そのうえ、足に少しかかってしまい、テンパっていた。
高橋はただ唖然とし、口をぽかんと開け、その光景を見ていた。
「麻琴・・・?」
「あ、愛ちゃん。。。その、ゴメン!誤解なんだよぉ。おかゆ作ってただけなんだよ。。。」
「へ?おかゆ?・・・おかゆだ。」
麻琴の足元にこぼれているおかゆ。そして、小川が自分のためにわざわざおかゆを作ってくれていたことに気づいた。
「麻琴。私こそゴメン。ごめんね。てっきり麻琴は私のこと嫌いなのかと思っちゃったよぉ。ごめんね。。。」
その後、しばらくした後、小川はこう言った。
「私、まだご飯食べてないんだ。だからさぁ・・・」
「愛ちゃんが食べたいな♪」
少し早い夜が始まろうとしている。
- 396 名前:もし、5期の4人が一つ屋根の下に暮らしていたら・・・ 〜おがたか〜 の作者 投稿日:2003年07月12日(土)19時17分28秒
- おかゆ、多いな〜。w
まぁ、しがない厨房ってことで許してやってください。
・・・ENDつけるの忘れた。。。ってことで END です。
- 397 名前:読んだ人 投稿日:2003年07月13日(日)08時02分47秒
- >>363-390最高。また是非書いてください
- 398 名前:上↑ 投稿日:2003年07月13日(日)08時04分02秒
- 訂正。
>>383-390の間違いでした
- 399 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月15日(火)23時22分17秒
- >>383-390
続きとか期待しちゃってよいのかな?
- 400 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月15日(火)23時30分41秒
- >>363-390 面白いッス!
ネタッぽいといえばそうだけど、テンポもいいし読みやすかったです
ハロモニでは小学生カップルとしてコンビ組んでたし
これからに期待のCPですね!!
- 401 名前:書いた人 投稿日:2003年07月17日(木)17時47分22秒
- >>397-400
意外に反応あってびっくりしました…ありがとうです
自分もこの組み合わせ気に入ってるので
また書ければ書きたいと思います(フリー短編スレで書くかは分りませんが)
- 402 名前:満月 投稿日:2003年07月18日(金)22時23分43秒
- ────その日の夜空にはとても綺麗な満月で、キミにも見て欲しかったんだ。
必死にペダルをこぐ。
足なんてもう動かないんじゃないか、って位疲れてぼろぼろなのにこがずにはいられない。
タクシーで行ったら音でばれてしまうから、ひっそり、こっそりキミの家に向かう。
途中の信号機につかまってイライラして、
もしかしたら満月が消えてしまうんじゃないかと夜空をチェックしながら。
そんな事あるわけないのに。
額に浮き出た汗を乱暴に右手で拭くとバランスを崩し自転車もろとも転びそうになった。
ひょっとしたらもう満月に気がついてるかな?
もうとっくの昔に見つけたかもしれない。
綺麗だな、って思ったかな?
アタシとおんなじこと思ったかな?
焦る気持ちを抑えながらあと少し、もう少し。
上り坂は辛いけど、これを越えたらもうすぐ。
- 403 名前:満月 投稿日:2003年07月18日(金)22時24分32秒
- 家の前に自転車を止めて、キミの部屋を見上げると淡い色のカーテンの向こうに人影が見えた。
街灯の灯り、電信柱の陰に隠れてしゃがみ込み、キミに電話を掛ける。
必ず3コールする前にキミは出るんだ。
『もしもし?みきたん?』
「亜弥ちゃん、空、見てみて?」
なになに?なんて言いながら窓が開く音が聞こえる。
「満月。綺麗だよ?」
『うわぁ…ほんとだ〜!』
「…知らせたくて。亜弥ちゃんにも見て欲しくて」
『わざわざ電話してくれたの…?』
今背もたれにしてる塀の向こう側にはキミがいて、
窓から空を見ている。
壁一枚を挟んでアタシがいる事はキミは気がついてない。
- 404 名前:満月 投稿日:2003年07月18日(金)22時25分27秒
- 『……みきたんに会いたいなぁ…。
声、聞いたら会いたくなっちゃったよぉ…』
「…じゃあさ、満月にお願いしてみなよ」
『お願い、って普通星に、でしょ?』
「こんなに綺麗だから願いも叶うかもしれないじゃん」
向こうからの音がなくなる。
きっと今目を瞑ってお願いしてるんだろう、と思うと顔がほころんでつい笑ってしまった。
『…人が真剣にお願いしてるのに笑ったなぁ!』
「ゴメン、で、お願いし終わった?」
『うん。でも叶わないよ…』
アタシは立ち上がり、一歩、二歩歩くとくるっと振り向いた。
目に見える光景は携帯を耳に当てながら空を見上げるキミの姿。
- 405 名前:満月 投稿日:2003年07月18日(金)22時26分46秒
- 「亜弥ちゃん、今度はさ、もうちょっと視線落として下の方見てみて?」
『…?下の方…?』
見上げてた顔が下がっていき、ばちっと目が合う。
キミはとても驚いた顔をして、でもすぐに笑顔になった。
「お願い、叶った?」
「みきたんのばかっ!いるならいるって言ってよ!」
大声でキミは叫ぶと視界から姿は消え、驚くほど早く家の扉が開いた。
パジャマ姿で健康サンダルなんておかしな組み合わせの格好。
きっとアタシしか見た事ないよね?
あ、家族は見てるか。ちょっと残念。
走ってきてアタシに抱きついてくるキミを思いきり抱きしめた。
────その日の夜空にはとても綺麗な満月で、キミにも見て欲しかったんだ。
ううん、キミと一緒に見たかったんだ。
オワリ
- 406 名前:まえがき 投稿日:2003年07月19日(土)09時01分46秒
- 初めまして。私は某板で作品を書いている者ですが、先日の日曜日に突然この話を思い
つき、構想5分、妄想15分、執筆時間延べ400分(遅っ!)で書き上げました。
日にちはずれましたが、『道重さゆみちゃん14歳おめでとうウイーク』と言うことで、
道重主役のお話です。ミキティといしよしもちょっと出てきます。題して、『吉澤先輩の
秘密』です。
では、暫くの間おつきあい下さい。
- 407 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時02分59秒
- その時、あたし達6期メンの3人は着替えを終え更衣室でおしゃべりをしていた。学校
のこと。お仕事のこと。最近見つけたアイスクリーム屋さんのこと。そしていつしかその
内容は、モーニング娘。の先輩達の話になった。
芸能界に入る前にも、学校であたしはモーニング娘。の噂話をよくしていた。でも、今
ここでしているそれは、テレビや雑誌なんかのあやふやな情報を元にしたものじゃない。
実際に見聞きしたことなんだ。今までブラウン管を通して見ているだけの存在だったモー
娘。だったけど、握手して貰ったり、勇気を出せば抱きついたりだって出来るんだよ。そ
うなんだ。だってあたしも、モー娘。の一員なんだから。いつの間にかあたしは、そんな
ことを考えながら二人の話を聞いていた。
「え〜っ!?やっぱりそうだよ」
「そうかな〜?」
「ねえ、さゆみはどう思う?」
いきなり話を振られ、あたしはビックリした。
- 408 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時04分25秒
- 「あれ!?交信してたの?飯田さんじゃあるまいし」二人はケラケラと笑った。
「何の話?」
「吉澤先輩よ」
「吉澤先輩さん?」
「さんは余計だよ〜」
「吉澤先輩ってさー、いつも一人だけ、おなか隠してるでしょ」
「うん」
この前見た明治座で歌う時も、他の先輩達はみんなおなかが見える衣装だった。矢口さ
んなんか腹筋が凄かったし、ドカ喰いの辻さんだっておなかはスッキリしていたし、胃拡
張と言われている紺野さんだって、なにげに腹筋がちらついていた。だけど、言われてみ
れば吉澤さんはずっとおなかの部分を隠していたっけ。
「きっと人目に晒せないぐらい肥っちゃったのよ。だから」
「そうかなあー、あたしにはそれほど肥った様には見えないけどな」
- 409 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時06分15秒
- 「だからおなかだけ集中的に、なのよ。ひょっとして二段腹だったりして」
「ヤッダ〜」
その時あたしの後ろで誰かの気配がした。あたし達は話に夢中になっていて、人が入っ
てきたのに気づかなかったらしい。
「楽しそうだね、何やってるの?」
「「「藤本先輩!」」」
「あっはははは。確かに芸能界では先輩だけどさ、モー娘。では同じ6期なんだから先輩
はよしてよ」藤本先輩は気さくに話しかけてきた。
「じゃあ、なんて呼んだらいいんですか?」
「美貴でいいよ。あるいはミキティかな?」
「はい」
「で、何してたの?」
「あのね、美貴」あたしは素直にそう呼んだ。だって藤本先輩がそう呼べって言ったから。
- 410 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時07分48秒
- 「馬鹿、おまえいきなり何言ってるんだよ!」
「空気読めよ!」
空気!?そういえばなんだか変に緊張した雰囲気が漂っていた。
「ええっとー」あたしは訳が分からなかった。どうして?
「わっははははは。面白〜い。最高だよ」藤本先輩が豪快に笑い出した。緊張していた二
人も、それにつられるようにヘラヘラと笑いだした。
やがて笑い終えた藤本先輩があたしに向かって言った。
「分かった。じゃあミキティにしよう。それならさん付けもいらないだろ」まるで男の子
みたいに藤本先輩が言った。あれ、なんだか今、あたしドキッとしたけど何でだろう?ま
あ、いいかっ!
未だに意味が飲み込めなかったけど、ここはハイと言うべき所だとは分かった。あたし
だって空気読めるんだから。
- 411 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時09分27秒
- 「で、何してたの?」
「え〜とぉ、吉澤先輩の話です」
「よっすぃーの話?」
「吉澤先輩いつもおなか隠してるでしょう。だから肥ったの気にしてるんじゃないかって」
二人はどういう訳か、また慌てていた。どうしたのかな?
ミキティの顔から笑いが消えた。あれ、怒ってるのかな?ミキティは怒るととても怖い
って聞いていた。あたし達の使う更衣室にはどこにでも、ひとつだけボコボコになったロ
ッカーがあった。それはミキティ専用のロッカーだそうだ。あたし達は見たことはないん
だけど、怒ったミキティが殴ったりするんだって。だからあたしはミキティが怖かった。
いつも怒らせないようにしていた。普段は優しそうな先輩だから。あっ、でもなんか怒っ
てるのとは違うみたいだけど。
- 412 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時11分08秒
- 「あんた達、秘密を守れるかい?」ミキティは真面目な顔であたし達に聞いてきた。
「モーニング娘。にはメンバーだけしか知らない、いくつかの秘密があるんだ。もちろん
マネージャーも事務所も知らないことなんだ」
「どうしてミキティは知ってるんですか?」あたしは聞いてみた。ひょっとしてまた余計
なこと言っちゃったかな?と思ったけど、もう遅い。だけどこの時は他の二人も同じこと
を考えていたみたい。だから突っ込みはなかった。
「あたしは落ちちゃったけど、4期メンとは幻の同期だからね」ミキティは気を悪くした
風もなく言った。
「たぶんこの秘密を全部知った時が本当のモー娘。のメンバーになれる時なんだと思うな」
「ロープレのゲームみたいですね」
「あっははは。そうだね」
「で、どう?知りたくない?」いたずらっ子のような表情でミキティが聞いた。
- 413 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時12分54秒
- 「知りたいです」「本当のモー娘。になるためなら」「あたしも」あたし達は口々に言っ
た。秘密を共有する仲間か。なんかいいな、そう言うの。
「よし。じゃあ教えてあげる」ミキティは辺りを見回して他に誰もいないのを確認した。
つられてあたし達も周りを見回した。うん、誰もいない。
そしてミキティは声を落として話し始めた。
「あんたたち、よっすぃーがおなかを隠してるのは、肥っているからだって言ってたよね」
あたし達は頷いた。
「実はね、そうじゃないんだ。もっと他に理由があるんだよ。これが秘密さ」
「「「えっ!?」」」
「よっすぃーのおなかにはね、タトゥーがはいってるんだよ」
「「タトゥー!?」」
「バックレ二人組?」
「田中〜ぁ、ちょっと面白いけど、無理にボケなくてもいいぞ!」ミキティが突っ込んだ。
- 414 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時14分27秒
- 「だって、目立たないと・・・・・、ゴメンナサイ」れいなちゃんが謝った。そうか、空
気を読むって、こういうこともしなきゃダメなんだ〜。
「刺青のことだよ」
「恋吹雪!?」
「桜吹雪だろっ!」れいなちゃんと絵里ちゃんのボケと突っ込み。あたしもなにか言わな
きゃダメかな?
「よっすぃーのおなかには、二人の名前入りのハートマークの絵柄が彫ってあるんだよ」
れいなちゃんたちを無視してミキティが続きを話した。
「二人!?」誰のことだろ?
「よっすぃーと梨華ちゃんだよ。決まってるじゃん」
「ええ〜!!」
「いしよしってホントにつき合ってるの!?」
「当たり前じゃん」
- 415 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時16分20秒
- 『いしよし』ってなんだろう?でも聞かない方がいいみたい。うん、空気読めてるな。
えらいぞ、あたし。
「あんたたちは気づいてないかもしれないけど、よっすぃーがいつもおなかを隠すように
なったのは、保田さんの卒コンからなんだ」
「それまでも時々よっすぃーは隠してたけどさ。多少は肥っているのを気にしてたからね」
「保田さんの卒コンツアーの始まる前日に、モー娘。のメンバーが梨華ちゃんの部屋に集
められたんだ。特別にあたしも呼ばれてたんだよ。そこで、よっすぃーと梨華ちゃんの秘
密の婚約が発表されたんだ」
「「「!!!」」」
「もちろん一般に発表できるような事じゃないけど、いしよしの二人は真剣で、その仲人
と言うか立会人として、保田さんが指名されたんだ。きっと卒業する保田さんへの仲間意
識もあったんだろうね」
- 416 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時18分35秒
- 「はじめは驚いたあたし達だったけど、以前から二人の仲は知ってたし、なんたってお似
合いの二人だからみんなで祝福したよ。矢口さんなんか涙を流して喜んでたよ」
「で、その婚約の証として二人の永遠の愛を誓うはタトゥーを、よっすぃーはおなかに彫
ったってわけさ」
暫くの間あたし達は黙りこくっていた。婚約!?スッゴ〜イ。正に芸能人って感じです。
はぁ〜、もう何も言えないよ〜。
「って、事だから。いい、これはモー娘。メンバーだけの秘密だからね、じゃあ、お疲れ!」
ミキティはさわやかに言って帰っていった。
残されたあたし達は茫然としていた。
- 417 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時19分12秒
- 3日後、あたしは独りで楽屋に向かっていた。帰り際携帯を忘れたことに気づいたから
だ。れいなちゃんと絵里ちゃんは先に帰るねって、あたしは置いてきぼり。いいもん。寂
しくなんかないよ〜。(えへっ、後藤さんゴメンナサイ)
楽屋に入ろうとして中に誰かがいるのに気づいた。いけない、あたしまたノックしなか
った。部屋にはいる時はノックしなさいって、いつもマネージャーさんに言われてたのに。
「きゃっ!」甲高いアニメ声が聞こえた。見なくても解る。この声は石川先輩!
あたしは固まった。だって下着姿の二人が抱き合っていたから。もちろんその二人とは
石川先輩と吉澤先輩だ。
石川先輩は恥ずかしそうに身体を腕で隠した。でも、そんなことで隠しきれるわけはな
い。色黒だけど綺麗な肌。そして大きな胸。あたしも成長したらあのくらい大きくなれる
のかな?
- 418 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時20分27秒
- 一方吉澤先輩は全然隠そうとしない。むしろ腰に手を当てて、どうだ!とばかりに胸を
張っている。そのカッコウはお風呂上がりの、ウチのお父さんを連想させる。あれ、なん
だかこっちが恥ずかしくなって来ちゃった。
「道重、何か用?」
「あの、あたし、その〜、携帯を忘れて・・・・・」
そう言いながら、あたしの目は吉澤先輩のおなかに釘付けになる。だってその色白のお
なかには、ミキティが言ったように絵が描いてあったから。それも3つも!あたしの視線
に気づいた吉澤先輩があたしに聞く。
「どう、これ?かっけぇー?」
「あっははははは」ミキティとは少し違うけど、吉澤先輩も豪快に笑う。
「ミキティそんなこと言ったのか」結局あたしは、ミキティから聞いた話を吉澤さん達に
した。だってなんだか言わないといけないって思ったんだモン。
「ホントに困った娘(こ)ね〜」石川先輩も相づちを打つ。
- 419 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時21分25秒
- 「梨華ちゃん、クレンジングクリーム貸して」やがて吉澤先輩は石川先輩に向かって言っ
た。石川先輩はドレッサーまで行き、そこからクリームの容器を投げて寄越した。
「いい、よく見てな」クリームをたっぷり付けた手で、吉澤先輩は自分のおなかのタトゥ
ーのひとつを撫でた。あれ!?絵が消えていく。
「解った、これ自分で描いたんだよ。いくらあたしでも刺青なんかしないよ」
「?????」
「これはねお守りみたいなものさ。毎回本番前に自分で描いているんだ。慣れたから20
分もあれば3つぐらい描けるんだよ」
「こうしているとさ、梨華ちゃんが身近に感じられて落ち着くんだ。だからどんな大きな
ステージでもあがらないんだよ」
「えっ、つまりそれは・・・」
「あたし達がつき合ってるのは本当だよ。だけどそれ以外はミキティの冗談。道重、から
かわれたんだよ」
- 420 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時22分19秒
- な〜んだそうだったんだ。あたしの脳裏にいたずらっ子のように舌を出すミキティの顔
が浮かんだ。もう、ミキティのばか。あれ、また胸がドキドキして来た。どうして?
「それじゃ、あたし帰ります。失礼しました」
「待てよ、シゲ!」しげ?それってあたしも事?
「忘れ物よ」石川先輩が優しく携帯を渡してくれた。そうだ。あたしこれを取りに来たん
だっけ?
「じゃあな、シゲ」
「あの〜、シゲってあたしのことですか?」
「モー娘。はね、メンバーからニックネームで呼ばれるようになったら、それがホントの
仲間になった証拠さ。だからお前はシゲ、名付け親はあたし、な」ウインクして吉澤先輩
が言った。
「はい、解りました。よしざ、じゃなかったよっすぃー」
- 421 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時23分21秒
- 「おっ、言うね〜。じゃーなシゲ!お疲れ!」
「お疲れ様です」あたしは石川先輩に手を振ると楽屋を出た。
帰り道、あたしは絵里ちゃんとれいなちゃんに本当の事を教えてあげようかなと思った
けど、やめておいた。だって、なんだかもったいないモン。よーし、早く他の先輩達から
もシゲって呼ばれるように、頑張るぞ!!
「帰ったみたいね」あたしはよっすぃーに言った。
「うん」
「もー、本当にドッキドキだったんだから〜」
「いいじゃん、うまくいったんだから」
「何よ、よっすぃーのばか」あたしは拗ねた振りをする。
「ごめんね、梨華ちゃん」そう言いながらよっすぃーはあたしを優しく抱きしめてくれた。
「ううん、いいの」暫くあたしはよっすぃーに甘える。
- 422 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時25分34秒
- 「だけどミキティには釘を刺しておかないとね」そう言いながらよっすぃーは自分のおな
かのタトゥーを撫でた。手に残っているクリームのせいでそれは掠れたけど、ひとつだけ
全然変わらなかった。当然だ。だってそれは本当のタトゥーだから。
「ダミーを描いておいて良かったよ」
よっすぃーは本物のタトゥーを彫っていた。婚約の話も本当だ。最初はビックリしたメ
ンバーだったけど、みんな祝福してくれた。スケジュールが合わなくて来られなかったご
っちんには電話で報告した。そうしたら次の日わざわざお祝いに駆けつけてくれた。
- 423 名前:吉澤先輩の秘密 投稿日:2003年07月19日(土)09時26分55秒
- あ、でも1人だけ、怒っていた人が居た。それは誰あろう中澤さんだ。やっぱりスケジ
ュールが合わなくて事後承諾になっちゃったんだけど、そうしたらなんだか凄く怒っちゃ
った。ハロモニでの視線も暫くの間、随分きつめだった。でも、わかってる。本当はちょ
っと拗ねてるだけだって。だってあたし達4期にとっても、中澤さんは特別だから。
ごめんね道重。アンタを信じてない訳じゃないけど、ホントのことを教えるのはもう少
し先の話。その時まで待っててね。
よっすぃー、あたし今幸せだよ。これからも秘密を共有する仲間に囲まれて、頑張ろうね。
『吉澤先輩の秘密』完
- 424 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月19日(土)10時56分42秒
- >>402-405
(・∀・)イイ!
情緒纏綿で情景描写も簡潔でそれが逆に鮮やかでした。
満月って潮の満ち引きと一緒で心躍る何かがありますね。
やっぱりあやみきは絵になるなぁ。
- 425 名前:Silence 投稿日:2003年07月21日(月)12時41分00秒
- >>406-423
つられてこっちも見に来ました。すげ〜よかったです。
先輩の秘密かぁ〜。なるほどね〜。にしてもやっぱいしよしが
よかった〜。楽しみました。お疲れ様でした。
- 426 名前:token 投稿日:2003年07月23日(水)19時55分44秒
- >Silence様
ありがとうございます。読んだ頂いて感謝!です。
はい、いしよしです。変則ですけど(笑)
- 427 名前:token 投稿日:2003年07月23日(水)19時59分15秒
- ごめんなさい。ageてしまいました。申し訳ありません。
- 428 名前:仲直りと電話 投稿日:2003年07月23日(水)21時51分53秒
- 電話してほしかった。
メールなんかじゃなくて、
まこっちゃんの声が聞きたかったんだよ。
ケンカして別れてすぐにもらったメ−ルを
あさ美はわざと無視した。
数分後またメールが届く。
これも無視。
その次も、そのまた次も。
メールの着信は全部無視することにしていたあさ美は
中身は見ても送り返しはしなかった。
- 429 名前:仲直りと電話 投稿日:2003年07月23日(水)21時52分49秒
- ━━メールじゃなくて電話してほしいな。
かれこれ1時間くらい、ずっと無視していた。
手の中で数分毎に鳴る携帯。
電話の着信音で鳴ることはない。
━━なんで電話してくれないの?
そんなメールを書いてはみるものの
送ることができない。
それから数分間、急に携帯が鳴らなくなった。
さっきまで騒がしいくらい鳴っていたのに、と
あさ美はさすがに心配になった。
気がついたらディスプレイには「まこっちゃん」の文字。
無意識のうちに手が動いていたのだろう。
あさ美は通話ボタンを押そうとした。
そのとき
- 430 名前:仲直りと電話 投稿日:2003年07月23日(水)21時54分28秒
家のチャイムが鳴った。
あさ美はひとまず携帯を置いて
突然の来訪者を迎えた。
「は〜い」
ガチャ
「あ・・さ・・・みちゃ・・ん!」
顔がぐしゃぐしゃになるくらいボロボロ涙を流した麻琴が
勢いよく泣いて謝ってきた。
「ご・・めんね・・ごめ・・ん・・」
「まこっちゃん!?」
「ご・・めん・・ね・・。おこっ・・・てる・・よね。
・・嫌いに・・ならないで」
よっぽど泣いたのだろう。嗚咽がひどく聞き取るのがやっとだ。
幼い子供が泣きじゃくるように、ひたすらあさ美に謝ってきた。
「嫌いになるわけないよ。ごめんね、私が悪かった。」
麻琴をなだめながら、落ち着かせながら、
優しくあさ美は言った。
「許してくれる?」
「もちろん。」
- 431 名前:仲直りと電話 投稿日:2003年07月23日(水)21時55分02秒
- その言葉を聞くと麻琴ははホッとした様にニコッと笑って
よかった、と言った。
その顔を見たあさ美は顔が真っ赤になっていくのを感じた。
麻琴はあさ美を抱きしめて、優しく頬にキスをした。
「許してくれてありがとう、大好きだよ。」
あさ美の顔は真っ赤に染まった。
恥ずかしがりながらもあさ美は麻琴を抱きしめた。
「・・・・私も大好き・・・」
おわり
- 432 名前:仲直りと電話 投稿日:2003年07月23日(水)21時57分14秒
- お目汚しすいません。これからも書かせて頂くことがあると思うので
そのときもよろしくお願いします。
- 433 名前:かつらぎ 投稿日:2003年07月24日(木)07時52分05秒
- 初めまして、かつらぎと申します。
これが初小説になります。
いずれは長編も、との野望も持ってますが、
まだまだなのは今回のを読んで読んでいただければ、
目の肥えた読者様方には明らかかと。
お目汚しになりますが、いきます。
タイトルは「笑顔の中に」
- 434 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)07時53分50秒
- 「……どうしよう……」
隣に横たわったあなたが困ったようにつぶやく。
しかしながらその口調には、
こういうことに鈍感な私でも気がつくほどに甘い響きも潜んでいて、
私は少し安堵する。
あなたに、悲しみと後悔の中で同じ言葉を言わせたとしたら、
私はそうさせた自分を許せなかっただろう。
自分でもその響きの甘さに気がついたのか、あなたは上目遣いに私の顔を窺う。
が、視線が絡まった瞬間に目を伏せ、
少し頬を紅潮させ照れたように私の胸に顔を隠す。
可愛いね、とても年上には見えないよ。
「ん…なに?」
私はあなたの背中に手を回し、先を促すようにその滑らかな肌を優しく撫でてみる。
「…こんなことしちゃホントはいけなかったんだ…
だって私は…カオリはリーダーなんだもん…」
…そんなこと言いながら身体は抱きついたままなんですけど。
って、こんな事口に出したら顔真っ赤にして飛び退きそうだから黙っておこう。
さて、どう返答したらいいのやら…
- 435 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)07時55分37秒
- でも、あなたはよくそんなことを言ってたね。
『私はリーダーなのでメンバーと均等に接するように心がけてます。
特定のメンバーと親密だとそうじゃないメンバーは相談しにくいだろうし。
他のメンバー同士が仲良く遊びに行ったりするのを見るとちょっとうらやましいですけど。』
特に最近、自分に言い聞かせるように何度もコメントしてるの知ってるよ。
でもね、あなたがそう言う度に、私は逆に、
『寂しいよ、ホントは仲良くしたい、遊びにも行きたい』って
あなたが心で叫んでるような気がしてた。
そしてあなたにそう言わせてる「原因」は私なんじゃないかって、
密かに期待してちょっと自惚れてもいたんだ、実は。
そんなにメチャメチャ的はずれでもないよねえ?
- 436 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)07時58分01秒
- 私たちって二人ともちょっと頑固なところあるよね。
でも、それぞれの質は大分違う。
あなたは、「こうあるべきだ」って理想があれば、自分の気持ちは二の次で、
それに向けて一生懸命頑張れる人。
私は逆に「こうしたい」っていう自分の感情が伴わないと頑張れない人。
まあ、単に私がまだ子供なだけかも知れないけどさ。
だけど、あなたの中にも「甘えんぼで子供のカオリン」
がずっと住み着いてるのも、知ってるよ。
だから子供なのはお互い様かも…
あなたは「一緒にしないでよ」と笑いながら否定するだろうけど。
あなたが「リーダーだから」と、自分をコントロールしようとしてるのはわかってた。
同時に私に対しての「これ以上近づいちゃダメ」って警告でもあったんだよね、多分。
それでなくても私たちの間には越えるのが難しい壁が何枚も存在してる。
同性であること、何かあればマスコミに書きたてられる芸能人であること、
同じグループに在籍してること、e.t.c.
- 437 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)08時00分21秒
- だからね、私もあなたの気持ちを尊重して、
プライベートであなたを誘ったり電話したり、ってのはしないようにしてた。
一緒に仕事できて休憩時間にちょっと雑談したりじゃれあったり…
それで十分って思ってた。
これはね、ごっつぁんの卒業から学んだ事でもあったんだ。
親友のごっつぁんの卒業後、私は彼女と顔を合わせる機会が大分減った。
暇を見つけては一緒に遊んだりもしてるけど、
お互いのスケジュールが違うから前のように毎日のように顔を見るのは無理になった。
だからその分、時々一緒に仕事できる時間をすごく大切にするようになってる。
同じようにあなたと一緒に仕事場にいる時間を大事にしようと思ってたんだ、
この間までは。
でもそんな時間にも限りがあって。
秋には私たちはそれぞれ、おとめ組さくら組として別グループになる。
一緒の仕事場にいることさえ少なくなっていくだろう。
私の中に少し焦りにも似た気持ちが芽生え始めてた、と思う。
ごっつぁんに引き続く圭ちゃんの卒業で、
少し感傷的にもなってたかも。
- 438 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)08時02分01秒
- ツアー中の地方でのホテルの一夜…つまり今夜だけど、
少しあなたと話して明日のライブへのエネルギーをもらおう、
なんて考えて部屋を訪ねた。
いよいよツアーも後半戦になり、一日2回公演も多い私たちは、
アルバムと新曲のプロモーションが重なったこともあって、
疲れのピークに達していた。
本当は今晩も明日に向けて、なるべく早く身体を休めなければいけなかったけど、
寝る前にちょっとあなたの顔を見て安らぎたかったんだ。
ドアを開けたときあなたはちょっと驚いていたようだけど、
にっこり笑って部屋に入れてくれたね。
「もう寝るところだった?」
「ううん、カオリもちょっと誰かと話したいな、と思ってたとこ」
「でしょ〜!カオリンからの電波キャッチしたもん」
「カオリ、電波なんて出してないよ〜」
と、いつものじゃれ合いモード。
- 439 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)08時03分35秒
- 私たちはお茶を飲んで会話していっぱい笑った。
寝る前の食べ物は厳禁だったけどちょっとだけクッキーをつまんだりもした。
笑うたびに溜まった疲れもスッスッと抜けていくようで。
ああいうのを「天使が通った」っていうんだっけ?
二人でさんざ笑い合って、ふと会話がとぎれた瞬間。
パッと目が合った途端、視線をはずせなくなってしまった。
油断した。
普段はこういうことのないよう、心のどこかで気構えている自分がいるのだけど、
久しぶりの二人だけの会話が楽しくてうれしくて、
私の中の人もすっかりリラックスしすぎてた…
何故かあなたも視線をはずそうとしないし。
何秒間見つめ合っていただろうか…
感情を抑えることに関しては鉄壁の守備を誇ってるつもりだったけど、
そういう奴ほど一度崩されるともろい、てのを実感した。
気がつくと私はあなたのその長い髪に触れていた。
私の唇があなたのそれに触れるのが先だったか、
あなたのまぶたがすっと閉じられるのが先だったか…
- 440 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)08時05分15秒
- そして今現在、ベッドの上で二人、という状況に至るわけだけど。
「私はさあ、難しいことはわかんないんだけど、」
「うん…知ってる。」
オイ。 …っと気を取り直して、
「しちゃいけないって思ってた事をしちゃった時の対処は二つあると思うんだよね。」
「・・・」
「一つは反省してスパッとやめて元の道に引き返す。」
私の腕の中の体がかすかに強張ったように感じた。
「もう一つは『しちゃいけない事じゃなかったんだ』と思えるようにこれから頑張る。」
「・・・なんか単純すぎ・・・」
と、あなたはちょっと拗ねたようにつぶやく。
「シンプル・イズ・ベストだよ」
と、負けずに言い返し、
私は微笑みながらあなたの顔を覗き込む。
「で、カオリンはどっち?」
- 441 名前:笑顔の中に 投稿日:2003年07月24日(木)08時08分15秒
- 「……すぐには教えない。」
あなたは私の胸に顔を伏せたまま、くぐもった声で答える。
「へ?!・・・なんで?」
ちょっと慌てる私。
「だって、よっすぃ、調子に乗るもん。」
と言うと、顔を上げて私を見ていたずらっぽい笑顔を見せる。
「なんだよ、それ〜!」
私も笑いながら、あらためてあなたを抱き寄せる。
いいよ、答えはしっかりもらったよ、
あなたのその笑顔で十分。
終わり。
良ければ強烈な批評、お待ちしてます。
- 442 名前:summer again 投稿日:2003年07月28日(月)04時33分38秒
- 俺の名前は杜若菖蒲。
高校三年生。
この物語の主人公。
今日は購買で買ったサンドイッチで簡単に昼食を済ませ、一人で屋上に来ている。
別に友達がいないわけではないのだが、こうして一人でいるのが好きだ。
誰もいない屋上で寝転がっていると、ポカポカ小春日和が気持ちいい。
ブレザーの内ポケットからタバコを取り出し、火を付ける。
大きく吸い込み、吐き出す。
- 443 名前:summer 投稿日:2003年07月28日(月)04時34分11秒
- 「あ〜!やっぱりここにいた。しかもタバコなんて吸って。この不良!!」
素っ頓狂に高い声の一本調子。
声の主が誰かを確かめる必要なんてない。
石川梨華。
担任の瀬戸に俺のお目付け役を押し付けられて以来、何かにつけて干渉してくる、少し迷惑な女。
顔は可愛い方だと思うのだが、恋人はいないようだ。
内気な性格のせい、と友人は言うのだが、今のこの姿を考えたなら想像つかない。
「未成年じゃないからいいんだよ。」
そう、俺は二十歳。
下らない理由で未だに高校生をやっている。
「もう、そういう問題じゃないでしょ?ここ学校なんだから。」
頬を膨らませて言うこいつも留年生。
早生まれだからまだ18だが、立派な高校4回生だ。
長期入院したとかで留年したらしいが、詳しいことは知らない。
- 444 名前:summer again 投稿日:2003年07月28日(月)04時34分58秒
- 「ねえ・・・ねえってっば!」
俺は梨華に背中を向けるように寝返りを打つ。
──もう。どうして振り向いてくれないの?
梨華が小さく呟いたのが聞こえたが、敢えて聞こえないフリをした。
キーンコーンカーンコーン・・・
ウトウトしていると、五時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「あ〜あ、授業始まっちゃった。またサボるの?いけないんだー」
「・・・まだいたんだ。」
「もう、バカぁ。」
「で、授業は?」
「えへへ、私もサボっちゃおうっと。」
何故か嬉しそうな梨華は、寝転がっている俺の隣に小さく体育座りする。
「こうして二人で授業サボるって、ドキドキするね。アハッ、悪いことしてるせいだけじゃないかも。鵜糞、私ったら、何言ってるんだろ。ブハァっ。」
キャラに綻びが見え始めた梨華を無視して、俺は二本目の煙草に火を付ける。
大きく吸い、吐き出す。
- 445 名前:デザート 投稿日:2003/09/23(火) 07:17
- 目の前に出された山盛りのご馳走を目の前にカワイイ後輩は怖気づくこ
となく、むしろ目を輝かせてGOサインを待ってい……待っていなく。いただ
きまぁす!と威勢良く言って、かぼちゃのプリンを手に取った。
「ちょ、麻琴!それデザート!」
たまに矢口になっちのツッコミはタイミングが早いだとか言われるんだけ
ども。
満面の笑みでスプーンを口の中へ入れようとしたところで、世界が
滅んじゃったってくらいに絶望的に顔を崩す麻琴を見て
『ナイスタイミング!』と心の中で自分にエールを送る。
「デザートはね、最後にとっておくと最後に幸せな気分になるのだよ」
「なるほどぉ」
心底感心したみたいに頷かれると、多分。という言葉を付け足すこと
も出来ず、これおいしそうだよね!とかぼちゃのリゾットを指差す。
麻琴は首がもげるんじゃないかと心配してしまうほど、ウンウンと頷いて
目をキラキラさせる。
ハイって目の前へと差し出すと、フォークでリゾットをモクモクと湯気をた
たせて器用にすくい上げて口へと運ぶ。
「ふぁっ!…おいひいです」
熱いのか涙目でそう言って、またすくい上げて口へと運ぶ時はふーふー
としていた。
- 446 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/23(火) 07:18
-
「安倍さん食べないんですか?」
こんなにおいしそうなのが目の前にあるのに?と、心底不思議そうに首
を傾げる。
麻琴を見てるだけで楽しいから。と、言えば多分、彼女は怒るだろうと思
う。
「食べるべさー」
そう言って、かぼちゃのピザを手に取ると、麻琴は満足げに「食べるべさ」
とマネしたので軽く睨むと、ワザとらしく
「このかぼちゃのグラタンおいしそう」
と言って、ひょこひょこと身体を動かせて食べた。
(本当にひょこひょことしてたので思わずピザを噴出しそうになった)
午前がまったくのオフで午後からも少し遅め開始の今日。
スケジュールをマネージャーから伝えられた後、すぐに麻琴をランチに誘っ
た。
食べ物の恨みは恐ろしいと、よく言ったもので、モーニング娘。になってから
実感すること約5年。揉め事と言えば食べ物と連想できるまでになっている。
そんなわけで、ハロモニでこのカワイイ後輩から訴えられた、
”教えてくれた、かぼちゃのお店は無かった。嘘つきだ”
という恨み(?)を清算すべく、スケージュールが空いたら真っ先に誘おうと
思っていた。
案の定、元々メールをやり取りしたり、最近では悩みまでも打ち明けてく
れる彼女は喜んで誘いを受けてくれ、今日に至る。
多分、普段なら残念!の一言で逃げてしまうようなこの出来事に反応す
る自分はヤッパリ卒業するんだという意識があってかもしれない。
- 447 名前:デザート 投稿日:2003/09/23(火) 07:19
-
その甲斐あってか、目の前で幸せそうにかぼちゃが至る所に使われてい
るメニューを平らげている後輩を見て、誘って良かったと嬉しい気分にな
る。
「これおいしい!ほら!安倍さんも食べてください」
目の前に突き出された、かぼちゃが練りこんであるというオレンジ色した
パスタ。うん、なっちもうかぼちゃしばらく見る気にもならない気がする…。
と思いながら口をあける。
「ん。おいしい」
クリーム仕立てのソースはかぼちゃの香りをとても甘いものにしていた。
「でしょでしょ」
ふふふ。と楽しそうに麻琴が笑うので、かわいいなぁと自然になっちの顔
も綻ぶ。
3,4人前あったんじゃないかと思う、かぼちゃ料理は全て綺麗に平らげて
テーブルには綺麗なお皿が並んでいた。
「お腹イッパイですよぉ」
「なっちも…。これからダンスレッスンなのに…」
そういうと、同じ運命を控えてる麻琴は心底悲しそうな顔をした。
- 448 名前:デザート 投稿日:2003/09/23(火) 07:19
-
目の前にはかぼちゃのプリンが1つ。
なっちの分は注文しなかった。デザートを頼む前に麻琴が、リゾット、グラ
タン、ピザ、パスタにサラダを注文したからで、当然のごとく食べきれるこ
とは無いと思ったから。
しかし、目の前に置かれているのは、綺麗に平らげたお皿と、1つのプリン。
デザートは別腹ですから!と言い切った麻琴をすごいと思った。
身体をリズミカルに動かして「最後の幸せ〜」と鼻歌交じりにプリンを手に
取る麻琴。
その時、丁度横を通り、ふらついて麻琴にぶつかった店員さん。
無常にも麻琴が持っていたプリンは床へと一直線。そして
ぐちゃ
一連の出来事をスローモーションで見届けたなっち。
最後に麻琴の顔が明日、世界からかぼちゃが滅亡するみたいに悲しそう
に歪んだのが見えた。
謝り続ける店員を無視して、プリンを見つめる麻琴。
「いえいえ、大丈夫ですか?あと、プリンもう1個お願います」
そういったなっちを麻琴は嬉しそうに見つめる。
「すいません!今日もう無くなっちゃって」
表情がほんとにコロコロと変わる。
麻琴は明日はあるから!と励ましたくなるほど暗い顔をした。
- 449 名前:デザート 投稿日:2003/09/23(火) 07:20
-
謝り続ける店員に
「いいですよぉ」と儚げに繰り返す麻琴をひっぱって店を出る。
「また今度、紺野とか愛ちゃんとかお豆ちゃんとね、行くといいよ。お店も
う分かったよね?」と笑うと、麻琴は少し寂しそうに笑った。
…と、いうことで、安倍さんは、今日1日中、悲しそうにしている麻琴を見て。
明日も早いというのに、かぼちゃのプリン作りに必死になってる訳で、
なっちの所為じゃないってわかってるんだけど、
どうもあの悲しそうな麻琴を思い出すと、ダンスレッスンを終えた後に自然
と本屋に足がよって買ってしまった本を片手に奮闘。
麻琴は喜んでくれるかな、と思いつつ、作業をこなし、
見事に綺麗に出来上がったかぼちゃプリンを目の前に、あと1年はかぼ
ちゃは見たくないと思うのでした。
- 450 名前:デザート 投稿日:2003/09/23(火) 07:21
-
「昨日、残念だったから。かぼちゃのプリン作ってきたさー!」
と、包みを開けると、総勢十数人いる女子がめいめいに歓声をあげる中、
一番喜んでくれるはずの麻琴は悲しそうに黙ったまま。
「どうした?うれしくない?」
と聞くと、俯いて沈黙。
この大きいの、ののがたべるー!
小川ずるい!なっちの手作り!
まりっぺウルサイ!
- 451 名前:デザート 投稿日:2003/09/23(火) 07:22
- 騒然とする楽屋を抜けて、麻琴の手を取ってロビーに出る。
「どーしたのー?」
そう聞くと、麻琴は俯いたまま。驚きすぎちゃった?
3分程の静寂。
なっち余計なことしたっけかー。そんなにあの店のかぼちゃプリンが…。
と思い始めたときに、麻琴はポロポロと涙を零して言った。
「ごめんなさい」
「どーしたのさぁ?麻琴のために作ったのに喜んでくれないと、なっち困る
よ?」
出来る限りの優しい声をだして頭を撫でると。
「安倍さん、卒業して、もう、あのお店一緒に行けないと思うと寂しくて…」
昨日の同期で行くといいよ?って言葉が、小川の顔をさらに暗くした理由
だということに気付いて、カワイイなぁと苦笑い。
──なっちとだと気を使うと思ったのさ。
「ね、麻琴?また今度、オフの時あの店行こう?卒業してからでも、時間
があるとき何度でも行こう?ね?」
嘘か真か…。自分では良くわからない、でも行ければいいなと思う。そう
いうことを考えちゃうのって大人って汚いなと思うけれど、一緒にまたあの
店行きたいとホントに思うよ。
「卒業とかさ、しちゃっても。ずぅーっと仲間だよ?」
抱きしめると、麻琴は曇った声で
『絶対ですよ、最後の幸せじゃないですよね?』と顔を埋めた。
─おわり
- 452 名前:RULE TO ME 投稿日:2003/10/04(土) 01:32
- 狭かった。
光も差し込まないぐらいとても狭くて暗い場所。
それでも窮屈さよりも安堵感がこの身体を包んでいるから、
背中に感じる暖かさがとても嬉しくて、思わず笑顔になった。
いつからこんな場所が好きになったんだろう。
元々布団に潜り込んでもぞもぞと動物みたいに転がるのは好きだった。
そういうものと同じ感じなんだろうか。とにかくここに居ると安心出来た。
目の前に広がる布地に頬を摺り寄せながら、その柔らかさを何度も楽しむ。
首筋に何かくすぐったいものが落ちてきた。
無理やり頭を振ってそれから逃れようとするけれど、
狭いからそれすらもままならなくて、変な感じがずっと残る。
それでもその場所から抜け出そうとしない私はどこか矛盾している気がした。
くすぐったいのは嫌だ。胸骨に触れられるとエビになってしまうぐらいだ。
だけど今感じるこのくすぐったさはどちらかというと何かもどかしくて、
身体を落ち着きなく動かしていると、少しだけ今居るスペースに余裕が出来た。
でもそうやってやっと出来たはずのその空間にまた身体を滑り込ませる。
暖かい。熱が直に伝わってくるようで。
私はこの狭い場所が大好きだ。
「絵里」
「うん?」
「もうそろそろ足、痺れてきたんだけど」
「…えっと…あと少しだけ…ね?」
「えぇー…」
れいなの膝の上で。
ぬいぐるみみたいに抱っこされるような体勢で。
私はただ目を閉じ、この暗くて狭い腕の中で眠るのが、大好きだ。
- 453 名前:RULE TO ME 投稿日:2003/10/04(土) 01:34
- えんど。
初れなえりとか書いてみたかっただけですけど。
- 454 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:37
- CP分類の「カントリー」or「ココナッツ」絡みの
スレはビクともしないんで、自分で作ってみました(w
里田×アヤカは初かと思いますが、ROMANS絡みで
リアルも仲良しなんで、その雰囲気を楽しんでもらえれば嬉しいです。
- 455 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:38
- 「来てるよ、マジ・・・」
そうつぶやくまいちゃんの顔は、今まで見た事のない表情。
あのまいちゃんの、私にだけ見せた弱気な表情。
「絶対泣くって」このツアーのリハーサルや移動中、散々言ってたけれど
冗談っぽかったし、まさか本当に泣くなんて想像も付かなかった。
- 456 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:39
-
お互いに気がかりだったなりにも、それぞれのステージは気丈に乗り越えた。
そして今からアンコールが始まる。出番の終わった自分たちは
卒業の瞬間を舞台袖から見守る為に集まっていた。
卒業。何度も繰り返されている事なのに、
いつもその瞬間が来ると悲しい気持ちが襲ってくるのだ。
特に、今回は私も仲のいい圭ちゃんだけあって尚更だ。
二度と会えない訳じゃないけれども、会える機会が確実に減ると思うと寂しい。
- 457 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:39
- 「あれ?まいちゃん?」
ふと、顔を上げるとまいちゃんの姿が見えない。
同時に背中に気配を感じたので、振り向くと、顔を伏せたまいちゃんが居た。
まるで、私の背後に隠れるかのように。
「泣いても・・・いい?」
「そんなのいちいち許可得なくても」
「アヤカちゃんの背中で、泣いても・・・いい?」
有無を言う前に、まいちゃんの頬は濡れはじめていた。
同じユニットの相方じゃなくて、その他大勢の仲間たちじゃなくて、
どうして私の背中を選んだのだろう。
- 458 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:40
-
思わず目についた、暗闇で死角になっている所に
まいちゃんを誘い込んだ。
ステージとは逆の方向で、誰一人こちらを見る気配はない。
声を押し殺して泣きじゃくるまいちゃんを、
子供をあやすかのように頭を撫でながら、そっと抱き締めた。
しっかりしてそうに見えて、まいちゃんの骨格は意外と華奢だった。
抱き締めると折れそうで・・・と言う、定番の表現がピッタリと当てはまる。
男前な彼女の、女の子らしい部分を一つ見つけた瞬間。
何だか嬉しくて、震える肩を、力の限り抱き締めてみた。
背後からは、泣き声混じりの歌声と歓声が聞こえてくる。
近くのはずなのに、遠く聞こえる。塞ぐものは何も無いと言うのに。
- 459 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:40
- 卒業式と言う厳粛な儀式の中。
そんな中での自分の行為は不純極まりない。百も承知している。
だけど、今しかないと思った。
目の前の彼女に対して抱いてた、自分の感情と向き合う事。
圭ちゃんごめん。心の中でつぶやく事がせめてもの償いだった。
- 460 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:40
- 「どうして私なの?あさみちゃんは?」
「・・・恥ずか、しい・・・もん・・・」
「よっすぃーは?」
「モーニング、入ってけない・・・」
「だから私なんだ?」
「そんなんじゃ、ないよ・・・なんつうか・・・
まいは、あんまり、人前で・・・泣いたりとか、しないから・・・
戸惑ってるし、見られるの・・・恥ずかしいし、色々考えたら・・・」
- 461 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:41
- 顔を上げて、涙を手でぬぐって、大きく息を吸って。
私の目をまっすぐに見て、ゆっくりと言った。
「こんな所見せられる人、アヤカちゃんしかいない」
泣き出しそうな、照れてるような変な顔。男前にはありえない。
今まで見たことの無い表情。「特別」がまた一つ増えた。
彼女は可愛い年下の女の子。私をこんなにも夢中にさせる。
愛しい。
答えがやっと言葉になった。今まで探し続けてた気持ちを表す言葉。
あぁ・・・この気持ちをどうやって表現すればいいのだろう。
- 462 名前:里田×アヤカ 投稿日:2003/11/08(土) 04:41
- 再び、まいちゃんの顔が歪み始めた。あふれ出す涙があっと言う間に頬を濡らす。
その頬に唇を寄せた。唇の先が熱いものを捕らえ、そして軽く濡れた。
「もぉ・・・何やってんのさぁ・・・保田さんの卒業だってのにぃ」
まいちゃんは、一瞬だけ泣くのを止めて、唇をアヒルみたいに突き出した。
軽くすねてみせたらしい。可愛い子がやれば絵になるが、男前にその表情は滑稽だ。
「・・・ごめん」
「今は保田さんの事で泣かせてよ」
唇を尖らせたまんま、私の耳元に寄せて、大きく深呼吸して言った。
「その答えは・・・あとでするから」
まいちゃんは再び、大きな声で泣き始めた。私の肩に顔を埋めて。
いつの間にか私の腰に手が回っていた。強く強く抱き締められている。
改めて答えさせるまでもない。それが既に答えなのだから。
- 463 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/14(金) 22:09
- うわぁぁー!!!里田×アヤカ(・∀・)イイ
最近すこしずつ気になる二人だったもので・・・
作者さんありがとです。
今後より一層二人を見ることが楽しみになりそうですw
- 464 名前:作者です 投稿日:2003/11/17(月) 04:05
- 463さん、ありがとうございます!
私は藤本ヲタで、最近この2人が気になるんですよ。
カン紺藤のせいです〜。敢えてアヤカで書いてみました。
私でよければ、このCPを普及させてくべくまた書いてみたいと思います。
- 465 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/24(月) 15:15
- アヤ里いいですね〜。
また書いてくれるのですか?
楽しみにしてます!
- 466 名前:呪ディ怨グー 投稿日:2003/11/26(水) 15:05
- 今話題の和製ホラー。あたしは恐いからやだ。
って言ったんだけど、あさ美ちゃんは恐いからいいんじゃんって、
無理矢理借りて家に来た。
今日はお婆ちゃん久々に新潟帰ってて、
どうしてもの用だったし、あたしもコドモじゃないからいいよ
って言ったんだけど・・・・・。
やっぱ淋しくなってあさ美ちゃんを家に呼んじゃった。
駅まで迎えに行って、帰り何かビデオ借りようかって話になって、
あたしはディズニーの新しいヤツ、見てないからコレがいいなぁなんて言ったのに
あさ美ちゃんは例のホラーを片手に
「寒い日に恐いのもオツだよ」
なんて。あさ美ちゃんだって恐がりのくせに。
「ふたりなら平気かなって、気になってはいたんだよねー」
あっけらかんと。無理矢理家に誘った手前強気に出られず
そのまんまソレと私要望のディズニー二本借りて帰ったワケだ。
- 467 名前:呪ディ怨グー 投稿日:2003/11/26(水) 15:07
- ご飯はふたりでお互いの好きなの作り合った。
あたしはお芋の、あさ美ちゃんはかぼちゃの料理。
甘い食卓だねぇ。なんて笑いながら。幸せな時間。
そんでお風呂入って、寝る準備と飲み物とお菓子を完璧にして、
枕持ってテレビの前へ。
先にディズニー見て、感想言い合って
「やっぱディズニーランド行きたいねー。」
とか、
「ディズニーショップにクリスマスの商品出てて可愛かったんだよ。」
とか楽しくおしゃべりしてた。
のに…あさ美ちゃんがアレに手を延ばして
「次いっちゃいますか!」
って来たよ…。やだよー。あ、目瞑ってよう。枕被って。
「あとで感想聞くよ」
あああ…。お見通し。
- 468 名前:呪ディ怨グー 投稿日:2003/11/26(水) 15:09
- 「こーゆーのってさ、横に恐がってる人居ると案外冷静に見れるんだよねー」
そぉゆう意図ですか!
ことば出なくて口をぱくぱく酸欠の金魚みたいにさせてる
あたしを横目にDVD入れ替えてスタート。
(っわー。恐い!グロい!うわっ!痛いっ!)
枕で顔を半分隠し隠し見る。最初は恐かったけど、
ストーリー読めなくて次ぎどうなんの!?
ってつい見入っちゃってた。
物語の中盤、すっかり物語にのめり込んでるあたしの肩にこつん、
と何か当たって体がビクっと反応する。
「麻琴驚きすぎー。」
吹き出すあさ美ちゃん。あさ美ちゃんの肩だったんだ…。
あたしとあさ美ちゃんの距離知らずにこんな近付いてたんだ。
あ、手、握ってた。
「こーゆーの見るとさ、親密度が上がる気するよね」
あさ美ちゃんは手をにぎにぎしながら笑った。
- 469 名前:呪ディ怨グー 投稿日:2003/11/26(水) 15:10
- 「こんな恐いの見なくてもくっつけるでしょぉ?」
もいっこの意図を見付けて呆れる。
わざと、こんなん見なくてもさぁ…。
「あと麻琴の恐がる顔見れるし」
さらに、ですか…。恋人つなぎしてる手を唇に持って行ってちゅう。
しながら笑うあさ美ちゃんを、あたしは可愛い悪魔だと思った…。
そしてこのホラーより恐いかもと思った…。
言ったらあとが更に恐いから言わないけど、ね。
おわり。
- 470 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/26(水) 15:56
- いじょぉこんまこでした。
- 471 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/26(水) 21:50
- メロン、柴村を書かせていただきます。
- 472 名前:sunny side up 投稿日:2003/11/26(水) 21:51
- 早起きは、苦手。寒い日は尚更。
なのにいつからこうなったのかなぁ?
ぼんやりとした頭を軽く振って、
隣で幸せそうに眠る彼女を起こさないように静かにベッドを抜ける。
ダイニングのカーテンを開けて、
晴れを確認したら洗濯機のスイッチを入れる。
顔洗って、髪を軽く結んで。
パジャマの上からエプロンしていざキッチンへ。
在り来たりだけど、トーストとコーヒーとサラダ、あと目玉焼き。
そんな朝食。
ああ、紅茶でもいいなぁ、昨日紅茶専門店行って冬限定の紅茶買ってきたし。
うん。そうだ紅茶にしよう。
キッチンに広がるトーストの匂いとフライパンに落とした卵の音。
ひとりじゃ絶対、適当にしちゃう朝ご飯。
でも彼女がいるから、早起きして頑張っちゃう。
ちょっと若奥さん、みたい?
- 473 名前:sunny 投稿日:2003/11/26(水) 21:53
- テーブルに出来上がった朝食たちを乗せ、
紅茶はまだもうちょっと蒸らして。
彼女の様子を見にそっと寝室へ入る。
相変わらず幸せそうにすやすやと寝入る横顔。
ああ、可愛いなぁ。年上なのに・・・・。
普段、発言はちょっとメルヘンだけど、
真っすぐに見つめられたらくらくらしちゃう美人なのに。
寝顔はこんなに可愛い。
で、それを独り占めしちゃってるわたくし。嬉しい。幸せ。
晴れた空、
トーストの匂い、
まぁるく綺麗に出来た目玉焼き。
そんな小さなことに幸せを感じられるようになったのは、
貴方のお陰なんだね。
「む、ぁぁー」
寝顔を眺めてたら、彼女が小さく身じろいで、
ゆっくりと目が開いた。
「あぅみー?」
まだ良く回らない舌で第一声。これも独り占め。
「おはよ、めぐちゃん。ご飯出来てるよ」
「ふぁー。あぃがとう。早起きだねー。」
上半身起こして、いいこいいこするみたいに
私の頭くしゃくしゃして。
- 474 名前:sunny side up 投稿日:2003/11/26(水) 21:55
- 幸せ。ちっさくてもおっきくても、
めぐちゃんとの時間が幸せで、
苦手な早起きも好きになる。
もうこれは、『恋の病』だね。
でも、こんな嬉しい病は治らなくていいや。
「ごはんたべて、今日も頑張りましょう。」
「あ〜い」
終わり。
- 475 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/30(日) 20:22
- 村柴をありがとう
- 476 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:54
-
「ねぇねぇ、ごとー、夜デートしようよぉ。」
私は、ここの医者で。
「市井先生前どいてください。」
彼女は、ここの看護士さん。
「はいって、言ってくれるまでどかなーい。」
ファイルをもっとナースセンターに戻ろうとする彼女を、
帰らせないように立ちはだかる。
「………。」
むすっと私を見る彼女。
「そんな顔もかわいいよぉ。」
かわいくて、かわいくて仕方ない。
彼女のことを好きで好きでたまらない。
こうなったのは、いつからだったかな…。
- 477 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:55
-
私は、何故か知らないけど、よく女の子にもてた。
まぁ、男にもまぁまぁかな。
比でいったら女6の男4と言った所か。。。
何故か知らないと最初に言ったけど、本当はその理由をよく知っていた。
私の家は、いわゆる医師家庭だ。
父親は、こことは違うけど、ちょっと大きな病院の院長をしている。
母は、看護士だった。
兄は、歯科医で、個人の病院をもっている。
姉は、内科医。
因みに言うと、私は、小児科医だ。
とそうじゃない、私と彼女のことだったね。
- 478 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:55
-
彼女と出会ったのは、2年前のことになる。
新人として入ってきた、その彼女は、
とてもひょうひょうとして、おくした風もなく。
『後藤真希です、よろしくお願いします。』
ちょっと、眠たげで、ちょっとやる気あんのかって、
不安になったのが最初の印象だった。
だけど、彼女は、印象とは180度違っていた。
まぁ、たまに、寝坊したりとかはあったみたいだけど、
患者にも評判よかったし、何よりも、ナースセンターで
真剣に先輩ナースから何かを教えられていたのを、
見かけた時、あんな真面目な表情になるのかと思った。
そして何よりも・・・。
- 479 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:56
-
確か、去年の11月くらいだったかな。
段々寒くなってきた時期で、私は、お昼休みに向かう途中。
中庭を通りかかったんだ。
『よかったね、さなえちゃん明後日退院できるよ。
ホント、よくがんばったね。』
彼女の声がした、なんとなくそちらに視線がいっていた。
『うん、ありがとう、真希ちゃん。でも…。』
『ん?どうしたのそんな暗い顔しちゃダメだよ?』
『だって、明後日から真希ちゃんと会えなくなっちゃうんでしょ?そんなの寂しいよ。』
『あはっ、それは私も寂しいけど、大丈夫、私はいつでもここにいるから、
もっともっと元気になって、一人でお出掛けできるようになったら、また遊びに来てよ。』
待ってるからと、言った彼女に、女の子はとても嬉しそうに、
『うん!真希ちゃん大好き!』
元気いっぱいに笑った。
その笑顔に、彼女も笑った。
- 480 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:57
-
『…お日様みたいだ。』
私は、呟いていた。
彼女のあんな笑顔、見たこともなかった。
飲み会とか、医師と看護士の間であったりしたけど、
そういう時に見る彼女は、いつもつまらなそうで、
やっぱり少し眠たそうで。
私に言い寄ってくる他のやつらとは外れて、
黙々とご飯を食べ、他の奴にお酒を勧められれば飲んで…。
そういった彼女みたいな人は、今まで私の周りで初めてであったと言うのもあったと思う。
だからこそ、あの満面の笑顔がとてもとても眩しかった。
そこには、見たこともない表情のとても温かなお日様のような彼女がいたから…。
看護士の中では、あわよくば医師と結婚して、玉の輿なんて、考えるやつもいる。
彼女は、そういう奴等とは違っていた。
何よりも、その仕事が好きなんだと、その表情が言っていた。
- 481 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:57
-
恋に落ちるのは、唐突も無く突然だった。
それからだ、私の、彼女へのアタックが始まったのは。
- 482 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:58
-
「ね、今日は早く終るんだ。一緒に夕食食べいこうよ。」
「…イヤです。」
と、いつもこんな調子。
どんっと腹にファイルを当てられて、彼女は出て行ってしまった。
「ぐはっ、うぅぅー。」
ちょっと、溝に入った。
気難しい、それでも好きで仕方ない。
「ごとー…。」
がらっと扉が開いた、もしやと思って顔を上げたら、
「さーやか、まーた振られたの?」
「なんだよぉ、期待しちゃったじゃんかよぉ…矢口かよ。。。」
それは、私と同期でここの病院に入った矢口真里。
因みに、後藤の教育係でもあった、その人である。
「悪かったわね、後藤じゃなくて、それよりも、市井せんせお仕事してください。」
「あぁー、やぐちー、ごとーが冷たいよー、冷たいよー、冷たいよー。」
ちっちゃい矢口にすがり付いて頭を振る。
「ちょっ、そんなんだから、ダメなんだってば。」
「こんなにこんなに好きなのにー!!!」
「えーい、公私混同するな、このぼけなすー!!!」
すかーんと頭を殴られて、渋々デスクにつく。
外来の診察時間が近い。
- 483 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 12:59
-
「しっかし、紗耶香さぁ。」
「うん?」
矢口が、新しく持って来たファイルに目を通す。
「前は、もっとクールで近寄りがたいって、それでもそこがいいって、
看護士達にも大人気だったのに、キャラクター変わりすぎ。」
「そうかなぁ。」
次々に目を通していく。
その表情は、真剣そのもの。
「はぁ、そうやって真面目にしてれば、後藤も惚れると思うよ?」
ピクッ
「マジマジマジマジ!?それマジ??」
その言葉に、弾かれたように、がっと矢口に掴みかかる。
目は限りなくマジだ。
「って、あのねぇ…。」
と、タイミングがいつも悪い。
- 484 名前:君が、好き、好き、好き!! 投稿日:2003/12/09(火) 13:00
-
“コンコン”
「失礼しま…」
後藤が、戻ってきた。
そこには、市井の手はしっかり矢口の肩に置かれ、顔は限りなく近い。
数秒とまる。
市井も矢口も後藤も。
「…失礼しました。」
そして、後藤の取った行動はこれだ。
………。
「ご、誤解だー、ごとー!!」
しまる扉に向かって叫ぶ。
「うわぁーん、ごとー、好きなんだよー、私の好きなのは、ごとーだけなんだよー。」
「うっさいわ、ぼけー!!」
次に入ってきたのは、隣の診察室にいた産婦人科医の中澤だった。
そんなこんなで、市井と後藤が付き合い出すのは、ちょっとかなり先の話…。
おわっとけ。
- 485 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/09(火) 13:03
- あほぅな市井が書きたかったのです。
はい、すみません。
ごめんなさい。
失礼しました。
- 486 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:23
- 風邪を引いた。
昨日の寝る前からあんまり調子がよくなかったけれど
夜中あまりの寒さに目が覚めると
なぜか身体は汗をかいていた。
朝になって熱を測った。
38.2℃
でも今日は寝込んでしまうわけにはいかなかった。
大事な約束があったから。
大事だって思っているのはあたしだけかもしれないけれど。
- 487 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:25
- 「遅いよ〜、まいちゃん!」
ごめんねよっすぃー。
身体がフラフラするから準備に手間取っちゃった。
「あれれ?アヤカは?」
「忘れ物したから先に行っといてってさ。」
アヤカらしいね。
アヤカはいっつも忘れ物するんだ。
よっすぃーが丸一日空いている日なんて珍しい。
その貴重な一日をあたしたちの為に裂いてくれるんだね。
とりあえずあたしたち二人は先に入場する。
久しぶりの遊園地。
- 488 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:25
- 「アヤカが来るまで一発ジェットコースターでも行きますか!」
ちょちょちょちょっと待ってよ、よっすぃー。
今そんなもんに乗ったら倒れちゃうかもしれないよ?
「やっぱコレしかないでしょ?」
「んだね!」
って、オイ!
まだ自分に突っ込める余裕があるからなんとかなるかな?
でもよっすぃーと隣同士でジェットコースター乗れるなんて
アヤカが来ちゃったら無理だもんね。
だって、よっすぃーは女の子らしいアヤカの横に座るに決まってる。
あたしは結構男っぽいから、放ったらかしてても平気なキャラ。
- 489 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:26
-
「おおお!!なんかいい感じ!!」
興奮状態のよっすぃー。
どんどん坂を上がっていく。
この坂を登り切ってからがジェットコースターの楽しいところ。
ヤバイ・・・。
これは結構ヤバイかもしれません・・・・。
・・・・・・・・・・・。
- 490 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:26
- 「まいちゃん結構ダメなんだね。」
そんな事ない!そんな事ないんだよ・・・いつもは。
でもね今日はちょっと辛いっすよ。
だからそんなに笑わないでよ。
真っ直ぐ前を見ても周りの視界は回転中。
「も〜情けないなぁ。」
よっすぃ〜はあたしの腕をグッと掴む。
「大丈夫?」
「大丈夫・・・大丈夫・・・」
よっすぃー、そんな事したらあたしの熱はどんどん上がっちゃう。
だからもうちょっとお待ち下さい。
- 491 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:26
- 「ごめんねぇ!よっすぃ〜、まいちゃ〜ん!」
アヤカが来た。
「あれあれ、もう何か乗った?」
「今ね、ジェットコースター乗ってきた。」
「へぇ〜!」
「それがまいちゃん全然ダメなんだよぉ!」
「え?」
おっとアカヤちゃん。そんなところに敏感に気が付かなくてもいいんだよ。
「まいちゃん好きじゃなかったっけ?」
「いやいや、さっきのはちょっとキツかったんだよ・・・」
「そっか。」
単純な友達を持ってよかったと思う瞬間。
そしてあたしたちはいろいろ乗り物に乗った。
あたしとアヤカが隣になる事はなく、どっちかが必ずよっすぃーの隣だよ。
乗り物に乗る度にどんどん言うことを聞かなくなってくるあたしの身体。
- 492 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:27
- でも肝心要。
お化け屋敷はアヤカちゃんがよっすぃーの隣。
あたしも実はコレだけはどうも苦手だったんだ。
「まいちゃんは大丈夫なの?」
「平気だよ・・・。」
「さっすが、やっぱ男前は違うね。」
意地っ張りだなって、自分でも嫌になる。
前方から聞こえるアヤカの悲鳴。
それをあやすよっすぃーの優しい声。
わかるよ、よっすぃーの気持ち。
あたしでもアヤカは守ってあげたくなる、そんな瞬間があるんだもん。
でもあたしもこれはちょっと怖いね・・・。
しょうがないから目を瞑って、耳も塞いで・・・。
- 493 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:27
- 「あー、怖かった。」
「アヤカはキャーキャーうるさいよぉ。」
「だって、怖いんだもん!」
こんな時のアヤカはすっごくカワイイ。
よっすぃーの顔もなんだかニヤけちゃってさ。
何だかんだいいつつ嬉しいんだ、よっすぃー。
「最後はじゃあ観覧車!」
いいねいいね、ソレなら大賛成だよ。
- 494 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:28
- 「なんかポップコーンでも買って行こうか?」
「じゃ、私も買っていこう!」
「まいちゃんは?」
え?
あたし、さすがに食欲ありません。
どんな時でも食欲旺盛の里田まいも、今日ばっかりは・・・。
「じゃぁ・・・ソフトクリーム!」
「え?寒くない?」
「大丈夫大丈夫。」
「わかった、牧場が懐かしくなったな?」
よっすぃー・・・遊園地に来て牧場に思いを馳せるなんて
あたしはどんな人間に映ってるんだ・・・。
- 495 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:28
- 観覧車。
ここではゆっくり話せるね。
でも向かい合わせだったね。
よっすぃーは率先してアヤカの隣をゲッチュウ。
「また来たいね・・・。」
「うん、この3人でずっと一緒でいたいね。」
「もっと寒くなったら鍋パーティーしようよ!」
「まいちゃん食べることばっかじゃん!」
「いいじゃんよぉ!おいしいもん食べて暖かくなりたい。」
でも楽しかった。
あたしはアヤカもよっすぃーも大好きだ。
- 496 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:28
- 「そろそろ帰んなきゃ・・・」
まだ夕方なのにね。
でもそっか、よっすぃー明日朝早いもんね。
3人並んで歩く。
真ん中はもちろんよっすぃー。
と、その時あたしの目の前は一瞬真っ白になった。
「おっとっと・・・。」
「どうしたまいちゃん?」
フラつく足元。
もう限界かもね・・・。
さっきのソフトクリームが身体を冷やしちゃったかな?
「ちょっと酔ったみたい。」
「観覧車に??」
「・・・うん。」
「なんだよなんだよ・・・。」
よっすぃーはあたしの腕に自分の腕を絡ませてきた。
あとは家までもう少し。
もうちょっとだけ待ってて・・・家に帰ったらどうなったっていいからさ。
- 497 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:29
- ここでお別れ。
あとはみんなバラバラな方向。
「じゃ、またな!」
「よっすぃー明日仕事頑張ってね!」
「・・・・・・。」
「どうした?まいちゃんそんなによっすぃーと別れるの淋しい?」
「ん?あ?いやっ・・・。」
思わず声が裏返る。
ちょっと脳みそも朦朧としてまいりましたワタクシ里田まい。
そして最後にいつも握手。
3人一緒にガッチリ。
「ん?まいちゃん手、熱くない?」
「へ?・・・そんなことないよ・・・。」
ちょっと迂闊だったかな。
でももういいんだ。あとは帰るだけだもん。
「それじゃ!」
「うん。」
「またネ!」
あたしたち3人は別れた。
- 498 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:29
- 家まで、どうやって辿り着いたのか覚えてない。
でも自分の足でちゃんと自分の部屋に戻っていた。
あたしは着替えることもできずにベッドに倒れ込んだ。
我ながらよく頑張りました。
と、携帯の音。
相手はアヤカ。
「もしもし?」
「おう・・・今日大丈夫だった?」
「へ?」
「ほっぺが真っ赤だったよ。」
「あー・・・」
「具合悪かったんでしょ?」
「うーん・・・・。」
「あんまり無理しちゃダメよ。
悪いけど、今日はこれからラジオの収録あるから看病行けないけど。」
「いいよいいよ。」
「じゃ、暖かくして寝ろよ。お大事に。」
優しいな・・・アヤカ。
やっぱ付き合い長いだけある。
でもちょっとだけ期待しちゃったよ・・・。
よっすぃーから電話がかかってくること。
- 499 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:30
- 体温計が鳴った。
39.7℃
ヤバイ・・・数字にされるとさすがに参るね。
もうダメかも・・・。
身体中が痛み、寒さで震えが止まらない。
あたしは知らない間に眠ってしまった・・・。
- 500 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:30
- ピンポーン!
ドンドンドンドンドン!
ピンポーンピンポーン!
ドンドンドンドンドン!
???
その音で目が覚めた。
「まいちゃーん!開けて!吉澤だよ!!」
!!!
よっすぃーだ!
でもどうして??
- 501 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:30
- あたしは覚束ない足でやっとの思いで玄関に辿り着く。
ドアを開けると、肩で息をしたよっすぃーが立っていた。
「アヤカから連絡あってさ。まいちゃんダウンしてるかもって。」
アヤカ、ありがとう。
あたしはよっすぃーの顔を見てホッとしちゃった。
一瞬にして身体から力が抜けていくのがわかった。
「ちょ、ちょっとまいちゃん!?」
あたしは思わずよっすぃーに倒れ込んだ。
でも、いいよね。こんな時くらい甘えても。
それからの事は覚えていない。
- 502 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:30
- 目が覚めるとあたしはベッドで寝ていた。
ちゃんとパジャマにも着替えさせてもらったみたい。
額の上にはタオルが乗っかってて、
よっすぃーはベットに寄っかかって眠っていた。
よっすぃー、ずっと傍にいてくれてたんだね。
あたしは思わずよっすぃーの髪をなでる。
「・・・んん・・・あれ?起きた?まいちゃん?」
ゴメン、よっすぃー起こしちゃった。
よっすぃーはあたしの額に手を置くと
次に自分の額をあたしの額にくっつけた。
今までの最高至近距離ですよ・・・・里田さん。
「だいぶ下がったね・・・。でもまだまだ寝てなきゃだめだよ。」
「・・・うん。」
よっすぃーはそれからもう一度タオルを水でかたく絞って
あたしの額に乗せてくれた。
- 503 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:31
- でももう朝だね。
「じゃ、もう行くわ。」
「うん。ごめんね。」
「なーに言ってんだ?まいちゃんらしくないぞ!」
よっすぃーはジャケットを羽織ると立ち上がった。
そして起きあがろうとしたあたしを制して、こう言った。
「もうすぐアヤカが来るから。」
2人とも優しいね。
やっぱ二人とも大好きだ・・・。
「帰ってくるまで大人しく寝てるんだぞ!」
よっすぃーはドアをあけて出て行った。
- 504 名前:体温 投稿日:2003/12/09(火) 21:31
- !!!
え?今なんて言った?
あたしはまだぼんやりした頭でさっきのよっすぃーの言葉を思い出す。
たまにはこういうのもいいかもしれない。
あたしはベットの中で一人でニヤニヤしてしまった。
こんなに幸せな日は始めてかもよ、あたしってば。
そして・・・
ピンポーン!
「まいちゃーん!」
アヤカだ!!
END。。。
- 505 名前:名無しの作者 投稿日:2003/12/09(火) 21:41
- 「体温」の作者です。
今、旬な三人を里田視点で書いてみました。
作者がよっすぃー大好きなので
よっすぃーを好きな里田さんでいってみました。
即席文章ですいません。
- 506 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/12(金) 23:13
- 吉里アヤいいですね。
まいちゃん可愛いです。
アヤカが来た後も見てみたいなーなんて思ったりしました。
- 507 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:41
- 本当はね・・・結構もうヤバかったんだ。
60m決勝も無理だとわかってた。
だって真っ直ぐに歩けないんだもん。
実は60mの予選を走る前から
言うことが聞かなくなっていたアタシの左足。
でも棄権できないんだ、アタシは。
前回MVPだよ、一応。
ある意味、今回は悪者にならなきゃいけない。
知ってるよ、自分が勝たない方が盛り上がる事も。
でもね、本気出しちゃうんだ。
真剣勝負だもの、スポーツは。
だから感動するんだよ。
- 508 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:41
- よっすぃーと同じチーム。
よっすぃーは出場できない。
アタシが頑張らなくて、誰が頑張る!
今日だけは、モーニングとカントリーじゃない。
「里田、無理ならいいよ・・・本当・・・」
ありえないくらい差がついて、チームは負けていた。
保田さんはもう半泣きだった。
でも答えは一つ。女に二言なないのです!
「走ります。」
フットサルのユニホーム。
アタシの背番号はラッキー7。
かっこいいじゃん?
よっすぃーとずっと一緒だった朝練。
楽しかったね。そんなアタシたち仲間の象徴。
だからアタシは着替えないよ、今日は。
このまま走るんだ!
- 509 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:42
-
迫ってくる前走者。
アタシのチームは先頭を切って・・・
鼓動が聞こえる・・・・。
アタシは・・・
もう戻れない・・・・。
バトンを・・・
やるしかない・・・・。
受け取った!!
- 510 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:43
- 後ろから走ってくる亜弥ちゃん。
わかってるんだってば!わかってる!
でもこれは個人競技じゃないの!
みんながつないだ1つのバトン。
よっすぃー、見てて・・・。
カーブを曲がる。
バランスが取れない。
・・・痛い・・・
アタシの左足は聞き分けがわるく
もう力が入らない。
亜弥ちゃんが横に並ぶ。
神様、お願い!
最後に・・・・
もうあとは歩けなくなったっていいから・・・
ラストスパート・・・熱血!!
- 511 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:44
- 白いテープを最初に切ったのは・・・
亜弥ちゃんじゃなく、アタシだった。
満面の笑顔で迎えてくれたのは安倍さん。
嬉しくって照れくさくって・・・。
みんなアタシに寄ってきてくれたね。
でも・・・よっすぃーの姿はそこにはなかった・・・。
ごっちん、心配だもんね・・・。
クライマックスもあっけなく終了。
- 512 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:44
- あれ?
こりゃちょいとマズイよ・・・
あたしの足はなまりのように重く、
左足は一歩も前に出てくれない。
立ち止ってしまうアタシ。
みんながアタシの横をすり抜けていく。
「大丈夫??」
見上げるとあさみちゃんが心配そうに寄ってきた。
そういう顔されちゃうと、逆に甘えられない厄介な性格だから、
「平気平気!」
とか何とか言っちゃって。
激痛が走る足に芝居をさせるなんて。
本当にバカだね・・・。
でも流石にもう限界だった。
華やぐ表彰式を背にアタシは控え室に戻る。
振り返ると、よっすぃーがそこには並んでたね。
よっすぃーの後ろ姿を確認して、
アタシもよっすぃーに背を向けた。
- 513 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:45
- ライブ最中もアタシの左足は泣き続けた。
ごめんよ、左足・・・引きずってごめん。
ちょっと無理しすぎたね。
アタシも痛いよ。
もちろん、気持ちもね・・・。
たった一曲だったけど
みんなの声援もらって、アタシたちは去る。
楽しかったね。
本当、楽しかった・・・。
控え室に戻る、カーテンを開けて中に入った瞬間
あたしはとうとうバランスを崩して壁によっかかった。
・・・あ〜あ、もう歩けねえや・・・
ここからわざわざ大きな声出して
誰か呼ぶっつうのも格好悪いしさ。
もう最悪じゃーん!って・・・・え?
- 514 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:46
-
「何やってんの?」
「はっ?!」
「何やってんの?まいちゃん・・・」
「えと・・・あっと・・・」
よっすぃーの体があたしの左側に入ってきて
あたしの左手はよっすぃーの肩にまわされた。
「お!お!お!」
「何つぅ声出てんの・・・」
よっすぃーはアタシの左側に来て
肩を貸してくれた。
「無理するからだよ!」
「よっすぃーも怪我してんじゃないの・・・?」
「あたしはまいちゃんみたいにバカみたいな無茶はしないもん。」
- 515 名前:MVP 投稿日:2003/12/14(日) 06:47
- ちょっぴりチクッと針刺すわりには優しいんだ。
アタシは左足を浮かせて、よっすぃーに体を支えてもらいながら
控え室までの道を歩いた。
ちょっとばっかし幸せだった。
いいや、これだけで。
多くは望まないよ。
モテる人を好きになったアタシの負けだ。
「リレー、かっこよかったよ。」
「・・・・・・。」
今日のMVPはアタシの左足です。
- 516 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/14(日) 06:48
- おしまい。
流行の里吉。
同じ事考える人がいるもんですね・・・(汗
- 517 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003/12/14(日) 15:32
- ステキなお話でした。
実際こんなことがあったんじゃないか、って思わせるような話・・
大好きですよ!
- 518 名前:tuyoshi 投稿日:2003/12/25(木) 18:37
- 「裏番刑事」
秋のツアーに向けて、娘。たちのリハーサルが
行われていた。
娘。たちにとって、差し入れのフルーツ、お菓子、
ケーキなどは楽しみのひとつだった。
やっと、休憩時間になり、5期メンの4人は、控え室に
向かった。そこには、差し入れのケーキが待っている。
と、夏先生が、あさ美を呼び止めた。
「紺野さん、パコパコについて、話があるの。」
「ええー!、何なのですか・・・」
結局、あさ美は一番遅れて控え室に入った。
部屋に入った、あさ美は、茫然と立ち尽くした。
楽しみにしていた、ケーキが無くなっていたのだ。
圭織と真里のところに、あさ美の手を引いた里沙がやって来た。
あさ美は、泣いていた。
「リーダー、酷いじゃないですか。あさ美ちゃんが
可哀相です!何とかしてください!」
里沙は、眉毛をピクつかせて言った。
「何とかしろって言われても、ケーキは15個しか、
ないのだから・・・」
「だから、誰かが二つ食べたんです!犯人を突き止めて
ください!」
- 519 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 18:40
- 「でも、たかが、ケーキ一個で・・・」
「あさ美ちゃんにとっては、ケーキが食べられない
のは、大変なことなんです!」
あさ美は、泣きながらうなづいた。
「わかったけど、犯人って、紺野以外の人の
ケーキが無くなったのなら、簡単なのだけど。」
「そうだね・・・」
と、圭織と真里は、あさ美を見た。
里沙とあさ美が出て行くと、圭織は、
「矢口ィ、私は忙しいから、この件は、サブの
矢口が調べてよ。」
と、圭織は出て行った。
「もおう、面倒なことはおいらに押しつけるん
だから。サブリーダーはつらいね。」
ふと、真里はドアの外から誰かが覗いている
のに、気がついた。
「誰だよ!そこにいるのは!」
- 520 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 18:46
- すると、田中れいなが入って来た。
「矢口しゃん、えらいやね。犯人ば調べるのは。
うちも手伝いましょうか。こうゆうの好いとぉんとよ」
「え〜!田中さん、何を言ってるのかサッパリ
わかんな〜い。」
「あ、すみません。ケーキを食べた犯人を調べる
そうで。私も手伝いましょうか。」
「ええ〜、手伝うって、ひょっとしてあなたが、
食べたんじゃないの〜」
「そんな!めっそうも無い、うちが食べるはず
がないですよ。うちら、新人はどんなにお腹が
すいてても、先輩のものは食べないですよ。」
「ふ〜ん、とすると誰かな、まず圭織は、まず
絶対にそんなことはしないだろうけど。
新人の4人を外すと、すると・・・」
「何でも、無くなったケーキは、パンプキンケーキ
という、カボチャのケーキだそうですよ。」
- 521 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 18:49
- 「カボチャのケーキねえ・・・」
「だから、あの大食いの人と、あと、カボチャの
大好きな人がいましたね。」
「れいなちゃん!、あんたは、先入観でものを
言うのは、良くないよ!」
「すいません・・・」
真里は、れいなに手伝わせて、リハの合い間に
みんなの聴き取り調査を行った。
「私は、辻とよっすぃーと食べたよ。」
と、圭織。
「私たちは、絵里ちゃんと一緒に食べたけど」
と、美貴。
「私も、藤本さんの後に、れいなちゃんと
食べました。」
と、さゆみ。
「私は、真里っぺと、一緒に食べたけど。」
と、梨華。
- 522 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 18:58
- 「私は、ののと二人で食べたよ。」
と、あいぼん。
「私と里沙ちゃんと食べました、まこっちゃんは
お手洗いに行って、少し、後で食べてたけど。」
と、愛。
「どうやら、一番ケツに食べたのは、小川しゃんの
ようやね。やっぱ、小川しゃんが怪しいんや
なかやろか」
「やっぱ、小川しゃんが・・・、違う!、れいなちゃん、
証拠も無いのに、まこっちゃんを疑うのは
良くないよ!」
「すいません・・・」
真里は、最後に残った、なっちの話を聴いた。
「え〜と、私は5期メン3人の前だったかな。
残ったケーキは、ちゃんと人数分あったよ。」
- 523 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 19:01
- 真里は、あることを聴いた。
「あれ?そうだったかな・・・」
なっちは、首をひねった。
「これで、真相がわかったよ。」
真里は、満足げに言った。
「やっぱ、小川しゃんが・・・」
「違うね、まこっちゃんは、無実だよ。」
れいなは、みんなの話を思い浮かべた、
「アッ!!、わかった!、ケーキを二つ
食べた人がいる!その人が犯人だ!」
「あ〜、惜しいね〜、金田一君。違うんだな〜」
「?、うちは田中ですけど・・・」
真里は、かまわずに、真相をれいなに
語った。
ことの真相は、最後に。
- 524 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 19:05
- 「さすが、矢口しゃん、県で三番目の学校を
出ただけのことはありますね。」
「あら〜、れいなちゃん、おだてないでよ〜」
「さすが、裏番ですね・・・」
すっと、真里の目が細くなった・・・。
「裏番って、なにを言ってるの・・・」
「矢口しゃん、隠さなくても、ほんまの事ば言って
くださいよ。モーニング娘。の裏番は矢口しゃん
なんやろ。」
「・・・・」
「なんでも、裏番は、代々受継がれている
そうやないですか。矢口しゃんで三代目だそうで。」
「なんで、そんな事知ってるのよ・・・」
「うちは、これでも、地元では番ば、はらせて
もろうておったとよ。それで、スケ番とか、
裏番とかゆうのは、ニオイでわかるんとよ。」
- 525 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 19:09
- 「初代は、多分、最初に卒業したあん人やろ。
二代目は、去年の9月に卒業した人やろ。」
「ちょっと、れいなちゃん、そんないい加減な
ことを他の人に言いふらさないでよ・・・」
れいなは、真里の鋭い眼光に、震え上がって
言った。
「はいッ、わかってます。誰にも言いません。」
『・・・おいらが裏番だなんて、まあ、勝手に
思ってればいいさ。なんせ、おいらは今、
セクシーユニットや、キッズの面倒も見なくちゃ
いけないし、サブリーダーも大変だし、そんな
のやってるヒマなんてないよ・・・』
- 526 名前:裏番刑事 投稿日:2003/12/25(木) 19:12
- ケーキ事件の真相。
あさ美の分のケーキを食べたのは、なっち。
なっちは、ダイエット中なので、辻ちゃんに自分の分
のケーキを食べて良いよと言ったのだ。
それで辻ちゃんは喜んでなっちの分を食べて、その後、
自分の分をあいぼんと一緒に食べたのだ。
なっちは、リハで踊ったりしているうちに、お腹が
減ったので、すっかり、辻ちゃんに自分の分の
ケーキを譲ったのを忘れてしまい、あさ美の分の
ケーキを自分の分だと思って、食べてしまったのだ。
なっちのボケのせいでの出来事だったのだ。
れいなは首をひねった。
「矢口しゃんが裏番じゃないなら、誰なんだろう・・・」
終わり。
- 527 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 15:30
- 「なっち、今日はこれからごっつぁんとデート?」
今日はクリスマスイブ。
でもこういうお仕事をしているあたしたちにはあんまし関係のない話で。
年上チームだけの収録がおしてやっと終わったのが夜の10時。
帰り支度をしているあたしに同じように帰り支度をしながらやぐちが声を
かけて来た。
「違うよ〜。今日はね、ののとあいぼんとデートだべ」
ごっちんはお仕事で今日は会えないんだって。
ずいぶん前から言われてたから、昼間に届いたののからのメールにあたしは
二つ返事でOKした。
『なちゅみ、おしごとおつかれさま。
今日、おしごとおわったらののとあいぼんとデートしましょう!』
簡潔な、平仮名ばっかりのメールにくすくすと笑いがこみ上げてきて、隣にいた
藤本にツッコまれたっけ。
- 528 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 15:36
- お疲れ様、と楽屋を後にしてスタジオを出ると、おそろいの白いモコモコ
のコートを着たののとあいぼんがニコニコ笑顔でこっちに駆け寄ってきた。
この寒い中、待っててくれたのかい?
それにその格好…ふたりとも羊みたいだべさ。
「なちゅみー!おしごとおつかれさまれす!」
「お疲れ様ー!」
ののが左腕に、あいぼんが右腕に自分の腕を絡めてくる。
両手に花だね、こりゃ。
「…ところでどこに行くんだい?」
タクシーに乗り込んでから、奥に座ったあいぼんに尋ねたけど、あいぼん
は「ないしょー♪」と笑うだけで教えてくれなかった。
あ、そういえば…。
- 529 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 15:41
- 「ふたりとも、おなかは空いてないのかい?なっちはペコペコ」
「なちゅみ!今日は食い気より色気なのれす!」
言いかけたあたしの言葉を遮るようにののが少しだけ声を大きくして
言った。
食い気より色気?なんだべかそれは…?
そんなことを考えているうちにタクシーが着いたのは、クリスマスの
イルミネーションが煌びやかなベイサイド。
木々に取り付けられた電飾のイルミネーションを見上げてたら、いきなり
目の前に突き出されたココアの缶。
「はい、安倍さん」
「あ、ありがと、あいぼん」
それから暫く、あたしたちはそのイルミネーションをガードレールに座って
眺めていたんだけど。
「なちゅみ、今日はなんの日れすか?」
- 530 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 15:47
- 目の前を通り過ぎるカップルを見送ってからののが突然聞いてきた。
「今日は、クリスマスイブっしょ?」
いきなり何を言い出すんだろ、この子は。
「ピンポーン♪じゃあクリスマスイブといえば?」
今度は反対側からあいぼん。
クリスマスイブといえば…この子たちなら。
「わかったー!ごちそうだべ?やっぱりふたりもおなか空いてたんじゃ」
「ちがうのれす!」
「ちゃうって!」
ありゃ?違うのかい?
仲良くののとあいぼんはガードレールから飛び降りて、あたしの正面に
立った。
「じゃあなんだい?あ!プレゼント?なっち用意してあるよ〜。毎年二人
にはあげてるもんね」
言いながらあたしは、かばんから小さな包みをふたつ、取り出す。
この間、ごっちんと一緒に買いに行ったブレスレット。
ちょっと大人っぽいかな、と思ったけど、ふたりももう16才だから。
- 531 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 15:51
- 「ちがうのれす!」
「ちゃうって!」
「…へ?」
違うの?でもこれ…、お店のラッピングが気に入らなくてさ、包装紙とか
リボンとか、なっちが全部揃えて自分で包んだんだよ?
「なちゅみ。クリスマスイブと言ったら好きな人と過ごす大切な日なのれす」
「安倍さん、どしてごっちんと過ごさないの?」
――そんなこと言ったって。
「ごっちん、お仕事だからさ、しょうがないっしょ」
あたしだって会いたかったよ。
でもあたしの方がお姉さんだし、ごっちん困らせたくないし。
せっかく忘れてたごっちんのことを思い出して、あたしはしょぼんと俯いて
しまう。
- 532 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 15:58
- 「なちゅみ。コレ、ののたちにくれるんれすよね?」
落ち込んだあたしの手から信じられない速さで包みをうばったののは、あの
可愛らしい八重歯を覗かせてニヒッと笑った。
「…そーだけど…」
あたしからプレゼントを奪ったくせに、ののとあいぼんはそれらしいものを
持っていない。
それに気づいて咎めようと立ち上がったら、いきなり聞き覚えのあるクリスマス
ソングが流れてびっくりした。
「――はいはい。あ!うん…だいじょうぶ。待ってるで!」
それはどうやらあいぼんの携帯の着メロだったみたい。
あいぼんは簡単に話を終わらせると、ののと顔を見合わせて。
「せーの…」
「「今日は娘。最後のクリスマスイブを一緒に過ごしてくれてありがとー!」」
声を揃えて言うと、あたしの手から奪った包みを掲げる。
「プレゼントもありがとー」
- 533 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 16:03
- 「ののとあいぼんからのなちゅみへのプレゼントは」
そこまで言ってから、ののは広場を挟んだ向こう側を指差した。
そこにはゆっくりとした足取りでことらに向かってくるすらりとした
人影がひとつ。
「あれなのれす!」
「大事にしたってやー!」
――見間違うはずがない。
でもどーして?今日は会えないって言ってたのに。
「それじゃあうちらはタクシーそのまま待たせてもらってるんでー」
あいぼんがののの手を引いてその人影のほうへ走り出す。
すれ違いざまになにか会話を交わしてたみたいだけど、こっちまでは
聞えなかった。けど代わりに。
「「メリー・クリスマース!!!」
その声と同時にあたしの正面にたったひとを見上げる。
- 534 名前:リトル・サンタクロース 投稿日:2004/01/10(土) 16:06
- そのひとはちょっと困ったみたいな笑みを浮かべてて。
あたしはかける言葉も見つからなくて。
「――なんだべか、もぉ…」
小さなサンタクロースたちがくれた、素敵な素敵なプレゼントの肩に
そっと顔を埋めた。
ヲワリ。
- 535 名前:jinro 投稿日:2004/01/10(土) 16:08
- 今更クリスマスネタですみまそん。
自分のサイトにうpしたものはサンタはののだけだったんですけど、
やっぱりいろいろあったので(笑)ここでは辻・加護ふたりにしま
した。
- 536 名前:satsuki 投稿日:2004/01/20(火) 01:07
- 初めて投稿させて頂きます。
なちごまです。
- 537 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:08
-
いつの間にか歩き慣れた、マンションへと続く坂道。
――初めて歩いたのは、いつだったかなぁ?
さぁっと傍を抜けていく風の心地良さに、ふっと目を細める。
視線を上げると、暖かな光に包まれた白い建物が、物静かに佇んでた。
坂の向こう、建物の向こう。
透けるように滲んだ、グラデーション。
この時間、この場所で、見つけた風景。
今頃、晩ご飯の用意してるのかな?
あなたのいる部屋へ続く、この坂道の向う。
- 538 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:09
-
「ただいまぁ」
「おかえり」
玄関のドアを潜ると、いつも通りの笑顔が迎えてくれる。
ほんのりピンクな頬が愛おしい。
えへへー、って抱きついたら、よしよし、って頭を撫でられた。
「お腹すいたよー」
「ちょっと待つべさ、もうすぐできるから」
「ごとー、何か手伝う?」
「ごっちん疲れたべ?いいから手洗っておいで」
「はーい」
言われた通り手を洗って、いい匂いにつられるようにリビングに向かう。
リビングのドアから洩れる、光。
その中に、鼻歌を歌う彼女の、小さな背中。
- 539 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:11
-
「…やっぱり、似てる」
心の中が、ほわってする。
…同時にほんの少しだけ、切なくなる。
「んー?何がだべ」
カーテンを開け放した大きな窓から差し込む、柔らかなオレンジ色。
テーブルの上に肘をついてぼんやり呟いた、あたしの声に反応して振り返る彼女。
「この時間の空となっち」
坂の向うに見える景色。あなたのいる部屋の窓にも映ってた。
「あはっ、なっち、顔に『?』って書いてるよー」
「だって何のことかわかんないっしょ」
変なごっちん。
そう言って首を傾げたままの彼女に手招き。
あたしのいる椅子の上を指差したら、困ったように笑う。
「なっち、ご飯の準備中」
「座ってくれたら教えたげる」
「どう関係あるのさ〜」
渋々と、でも照れくさそうにあたしの腕の中に収まる柔らかな身体。
そぅっとその髪に唇を埋める。
「なっち、あったかーい」
「…今日のごっちんは甘えたさんだねー」
「ちーがーうーのー…それはいつもだもん。じゃなくて」
- 540 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:13
- 「…今日のごっちんは甘えたさんだねー」
「ちーがーうーのー…それはいつもだもん。じゃなくて」
あったかく、なるの。
視界に入った床が、オレンジ色に染まってた。
「なっちと夕焼けって似てるね、って」
「ん〜?何だべ、それ」
「…なぁんかね、あったかーい、色」
なっちの呼吸と一緒に、火にかけたお鍋がぐつぐつ言ってる音が微かに聞こえた。
- 541 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:15
-
オレンジと、蒼と。遠くの濃紺。
絵の具を水に溶いたような、透明な色。
たくさんの色が空に混ざり合う、夕暮れのこの時間。
透けるように濃い蒼に、切なくなって。
滲むように鮮やかなオレンジに、安堵して。
迫る闇が、未だ幼く、紫がかった濃紺と漆黒の狭間にいるのを見つける。
だんだんと近づいてくる闇に、怖くなって。
安堵した陽溜まりの色に、あなたを思い出したんだ。
- 542 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:17
- 「…すごーく、ほっとするの」
「……ごっちん?」
ただ。同時に、少しだけ、胸がきゅってする。
「何で泣きそうな顔してるんだべ?」
あたしは、あなたの暖かさに包まれてる。
でも。あたしはあなたを、包めてるのかなぁ…?
「ごっちん」
椅子から立ち上がった彼女が、あたしの腕の中でくるりと向きを変える。
ぽんぽん、と頭を撫でる優しい手のひら。
「ね、ほら、見て」
目の前でひらひらと振られた手は、窓から差し込む光に染められている。
――なっちの、色。
「…ごっちんも、きれーな夕焼け色してるよ?」
「……んぁ?」
降ってきた声に顔を上げる。そこには、暖かな色に包まれた、彼女の笑顔。
視線を下すと、彼女の腰に回した、オレンジに染まった、あたしの手。
「――今だけじゃなくて、いつも」
「なっち」
- 543 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:19
- 「なっちには、ごっちんが夕焼けだなぁ、って。あったかーい気持ちになる」
照れるべさー、ってそう言いながら。
なっちはくしゃっと、あたしの髪を撫でた。
「でもね、青空でも曇ってても、雨が降ってても、なっちは全部ごっちんのこと思い出すよ?」
笑顔とか、泣き顔とか、はにかんだ、ふにゃってしてる顔とか。
「夕焼けに負けないくらい、なっちは、ごっちんといるとあったかい気持ちになれるべさ」
暖かな、光の中。
そう言う彼女は、あたしが何よりも幸せになれる笑顔をくれて。
さっきまでの不安が、すうっとオレンジ色に溶けていく。
敵わないなぁって、そう思った。
「…うん、ごとーも、そう」
あたしの体温で、少しでも彼女が暖まってくれたら、って。
彼女とあたしの色に包まれながら抱き締めた彼女の身体は、
お日様のにおいがした。
- 544 名前:夕焼け色 投稿日:2004/01/20(火) 01:20
-
ベランダから見下ろす、見慣れた、マンションへと続く坂道。
その坂の向う。あなたの部屋の窓の向う。
ゆっくりと広がる、色の世界。
大好きで、切なかった風景。
柔らかな光の中に、あなたを見つけて。
その隣にいるあたし。
――陽だまりの中、夕焼け色の、あなたとあたし。
…夕暮れ時、あなたの部屋に、見つけた風景。
歩き慣れたあの道を、
あの景色を見ながら、
これからも、手を繋いで歩こうね?
―END−
- 545 名前:satuki 投稿日:2004/01/20(火) 01:26
- 以上です。
ありがとうございました。
>539−>540 2行ほど被りました…。
すいません。
- 546 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/25(日) 16:29
- 夕焼け色>>537-544いいですね。
切ないようですごく暖かい。世界が完成してる感じで情景が浮かびました。
- 547 名前:satsuki 投稿日:2004/02/06(金) 21:59
- >>546 名無飼育さん さま。
感想ありがとうございます。感想頂けるとは思ってなかったので、
めちゃめちゃ嬉しいです。
ちょっと切ない面もありつつ、やっぱりほのぼの暖かい。なちごまのイメージでした。
情景とそんな雰囲気を感じて頂けたようで、作者冥利に尽きます。
ありがとうございました。
- 548 名前:名前 投稿日:2004/02/12(木) 05:45
- 「ねぇ、紺野?うちらってさぁーもし同じ学年で同じクラスだったら
出席番号近かったのにねぇ〜」
そんな後藤さんの一言から会話は始まりました
「たとえば〜掃除の班が同じだったりぃ給食当番が同じだったりするじゃん?」
給食当番は高校ではないですよ…後藤さん…
「体育の授業でもグループ組んだり、ストレッチの時、ペア組んだりするよ!!」
うーーん、そうかなぁ…
「プリントをまわすときに、目が合ったり、何かと仲良くなれるっしょ?」
後藤さんの話はまだまだ続く・・・
だんだん訳がわからなくなってきた
失礼だとは思いながらも曖昧な返事をして話しを流そうとした
- 549 名前:名前 投稿日:2004/02/12(木) 05:45
-
「と、後藤は思うわけ!!ん?紺野聞いてる?」
半ば意識を夢のなかにとばしていたとき
気づくと後藤さんの顔が目の前にあった
「うっっ!!驚かさないでくださいよ!!聞いてましたから…」
「うーん、怪しいなぁ…じゃあ、紺野も後藤と同じこと思う?」
「そうですね。私もそう思います…」
聞いていなかったのがばれない様にごまかしながら相槌をうつ
・・・これがいけなかった。
- 550 名前:名前 投稿日:2004/02/12(木) 05:46
- 「そうだよねぇやっぱり後藤あさ美のほうがいいよねぇ」
・・・はい?
「あ、あの・・・いま、何て言ったんでしょうか?」
慌てて聞きなおす。
後藤あさ美?
「あー!やっぱり紺野聞いてなかったんじゃん!!
後藤あさ美か紺野真希のどっちがいいかって話だよぉー」
い、いつの間にそんな話に・・・
「まぁ後藤的にはどっちでもいいんだけどねー『紺野』と『後藤』て呼び方にてるし。」
出席番号の話はどこに・・・?
- 551 名前:名前 投稿日:2004/02/12(木) 05:47
-
「だから紺野が後藤の籍に入りなよ!ね?」
なんだか話が全然つかめないけど、紺野あさ美はいつの日か
後藤あさ美になるらしいです・・・うーん・・・。
「紺野、ずーーっと一緒にいようね♪」
でも後藤さんが幸せそうに笑いかけてくれるから
それもいいかなって思いました。
「はい、後藤さん…」
おしまい。
- 552 名前:『名前』書いた人。 投稿日:2004/02/12(木) 05:50
- 後藤さんと紺野さんのオハナシ…
二人ともボケボケコンビで矢口さんあたりが
(〜`◇´)<わけわかんねぇよ!!
とつっこんでくれることでしょうw
後紺って素敵やん?w(逃
- 553 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:30
- アタシなんかしましたか?
風邪で二日間学校を休んだ。
やっぱ休むと友達も心配してくれて
結構メールがきてた。
- 554 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:31
-
もちろん亜弥ちゃんからもきてて
始めは
『風邪大丈夫?みきたん居ないと
さみしいよ〜(泣) あやや』
『大丈夫だよ〜。
ミキも亜弥ちゃんに会えなくてさみしいよ〜!!』
なんて休んだ時は定番になってる
やりとりだったんだけど
その後来たメールが
『良かった。明日は来てね。
私のこと嫌いじゃないよね?』
って
- 555 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:31
- 「・・・・・はいっっ?!!」
思わず部屋で叫んじゃって
お母さんに心配されたじゃん。
だって、ねえ?
意味分かんないから。
全然話し繋がってないし
そりゃ今まで冷たいとか
相手にしてくれないとかで
「嫌い?」
って聞かれたことはあったけど
- 556 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:31
- あの時は
確かに態度悪かったからしょうがないんだけど
最近何もしてないよ?
本当に自分で言うのもなんだけど
めちゃめちゃ優しくしてるよ?
そりゃもう甘すぎるってくらいさ?
- 557 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:32
- それに態度悪かった時だって
別に嫌いで避けてた訳じゃないし・・・
てゆうかむしろ好きだからみたいな
あの時はさ
自分の気持ちに気付いたばっかだったから
その・・・好きって言う気持ちにさ。
だって普通好きな子に
抱きつかれてほっぺにキスされたりしたら
動揺するッしょ!!
なのにあの子は
こっちの気も知らないで
べたべたチュッチュしてきてさ
ミキが逃げるのも仕方ないと思うのよ。
まあ結局泣かれて
「何で逃げるの?嫌いになった?」
なんて言われて
「ごめんね。ついつい亜弥ちゃんが
可愛いから意地悪したくなっちゃって
大好きだよ。本当にめっちゃ好き!」
て、告白まがいなことを
言っちゃったから、
スキンシップがさらに激しくなったんだけどね。
- 558 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:33
- それでも逃げるのはやめて
平静をよそおってがんばってるのに
今度は何で目あわせてくれないの?
なんて言ってくるし
ていうか近いんだよ!顔が!!
そんな至近距離で目見て話せるかい!!
まあ、どんなにしんどくても
結局亜弥ちゃんに泣かれて
全部克服しましたよ・・・(泣)
- 559 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:33
-
本当こっちが泣きたいよ!
絶対泣けば何でも言うこと聞いてくれるって
思ってるんだよあの子は!
・・・ああそうさその通りだよ。
こんなアタシを笑うがいいさ!
ちくしょー!!
みんな泣かれたことないから笑えるんだ。
本当反則的なんだって!あの涙は!!
泣かれて困ったって気持ちと
泣いても可愛いなあ〜。
なんて気持ちが入り混じってもうパニックだよ
頭なでながらひたすら優しい言葉をかけ続けるのが
どんなに体力消耗することか・・・
女の涙は怖いってマジだよ。
亜弥ちゃんにあって初めて分かったよ・・・。
- 560 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:33
- まあそんな訳で
泣かれるのはマジ勘弁だから
めちゃめちゃ優しいはずなのよ
それがなんで
『私のこと嫌いじゃないよね?』
なんてことに?
まあ理由は分からないけど
質問自体はよくある事だから
対処方法はばっちりなんだけどね。
- 561 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:34
- 凄く些細なことでも
すぐに
「嫌いになった?」
て聞いてくるからね。
その度に甘い言葉をかけるのも慣れてきたよ。
そんな訳でこういう時は
・・・電話したほうが早いよね。
絶対長引くだろうしなあ〜
・・・・・正直疲れるんだよね
ミキ熱あってしんどいんだけどな(泣)
よっしゃ!気合だ気合!!
優しく優しく。泣かさないように。
よしっ。準備完了!かけるぞ!!
- 562 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:34
-
トゥルルルルトゥルルルル ガチャ
「もしもし?亜弥ちゃん?」
「・・・みきたん」
「どうかしたの?ミキ何かしたっけ?
最近何もしてないはずなんだけど・・・」
「・・・最近ヨッスィー達に
色々言われたから気になったの。
それにみきたん二日も休むし・・・」
- 563 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:35
-
あいつら何言いやがったんだ!!
絶対しめてやる〜!!
「何言われたか知らないけど
そんなの気にしなくていいから。
ミキめちゃくちゃ亜弥ちゃんすきだよ?」
「本当?」
「マジで。むしろ愛してるね!
ミキの言うことが信用できないの?」
「ううん。信じる!!
私もみきたん大好きだよ!!」
「へへへっ。ありがと〜
じゃあまた明日ね。」
「うん。また明日!おやすみ〜」
「おやすみ」
ガチャッツーツー
- 564 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:35
-
あーっミキがんばった!!
誉めてほしいよ・・・胃が痛い。
・・・・・とりあえず明日のために寝よ。
- 565 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:35
-
次の日
まだ熱があるのに学校行って
よッちゃんを問いつめたところ
「ミキティーの熱あややのせいなんじゃない?
抱き付かれるたび大変そうだったし。(笑)」
て言ったのが原因だそうで。
・・・亜弥ちゃん勘違いもいいとこだよ。
ミキが亜弥ちゃんのこと好きって意味のからかいじゃん?
何で嫌いだと思うかな〜。
- 566 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:36
- でもミキが告白すればとける誤解かな?
- 567 名前:勘弁してよ 投稿日:2004/02/13(金) 14:37
- 終わり
えー一応あやみきです。
- 568 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:42
-
時は流れて気が付けば6年とちょっと、
今年の夏は暑くないねって言い合ってると思えば
あっというまに冬になっていた。
自分のこの時間の流れ方って全人類共通なんだろうかと疑問に思う。
北海道に居た頃はもっとのんびりだった気もする。
仕事始めてからは急激に早くなった気がする。
ずっと最初から、そこにいたはずの人は一人、一人、また一人と消えていく。
ずっといるはずだった最後の一人も消えてしまった。
- 569 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:43
-
「圭織さぁ、寂しいよ」
ねえ?ガキさんそう思わない?と圭織が聞くと、里沙は
まー、安倍さんが卒業したばっかりですしねぇ、と嫌に大人な意見を言った。
「ちがーう。ガキさん違う。そこは安倍さん帰ってきませんかね?って言わなきゃダメ」
「はぁ、すみませんね、それは」
謝っておきながら言い直す必要もないと思ったのか里沙は、
まったく飯田さんは寂しがりやなんだからなんて暴言を吐いて携帯をいじってる。
- 570 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:49
-
「ガキさん冷たい、構ってよ」
「なんですか?喋ってるじゃないですか」
「そんな携帯片手にヒドイ。
藤本に似てきたね、ガキさん昔はそんなんじゃなかった。
いつも飯田さん、飯田さん、って泣いて付いて来たのに」
「どこのガキさんの話ですか?それ」
まったくもって22歳の圭織と14歳の里沙との会話と思えない内容だけれど
精神年齢の低いオリメンを2人抱えていた娘。内では特に変わったことではなかった。
だいたい、なつみも圭織もそうやってワザと年下メンバーに絡んでいる節がある。
- 571 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:50
- 圭織が里沙に何か言い返そうと口を開いた時、
里沙が持っていた携帯が、愛あらばIT'S ALL RIGHTのメロディを奏でた。
「あ、ホラ来ましたよ」
里沙はそういうと、圭織の目の前に携帯のディスプレイを突きつけた。
「なっちも寂しいよー圭織ーガキさーん、だそうです」
里沙はなつみの口調を真似してメールの内容を読み終えるとニッコリと微笑む。
どうやら圭織がいじけている間になつみにメールを送っていたらしい。
- 572 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:51
-
「ガキさん…あんた本当に大人になったね、カオは嬉しいよ。涙がとまらない」
「出てませんけど」
「心のネ、涙が」
「へええ」
軽く流すと里沙はまた携帯をいじりはじめた。
「そっか、なっちも寂しいか。圭織も寂しいよ。さすが運命だね。
あ、ガキさん、返事打つなら愛してるって打っといて」
「はいはい」
さっきまで里沙にも寂しがるように強制していた癖に、
急に自分だけが寂しいかのように言い始める。
リーダーは単純。里沙はつくづくそう思う。
- 573 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:53
-
「ねえ、春の音連れが聞きたいな」
「圭織?それは部屋の中じゃ無理だよ」
「だって、まだ寒いじゃん。外、出たくない」
次の圭織の的にあたったのは、真里らしい。
その様子をみて里沙は苦笑を漏らした。
楽屋を見渡すと、みんなそれぞれ雑談したり、お菓子食べたり、踊ったりして
次の収録までの時間を潰している。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14。
- 574 名前:どうにかなる日々 投稿日:2004/02/17(火) 12:54
-
安倍さん、桜、まだ咲きませんかね?
そしたら、ちょっとは寂しいのに耐えられるようになるかもしれません。
おマメ的に夏は、まだまだ来てほしくない気分です。
あ、後、飯田さんが愛してるって言ってました。
飯田さんも相変わらずですね。
おわり。
- 575 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 18:06
- 「顔」
縁日にお面を買いに行った。
ひょっとこと般若とピカチュ―で30分悩んだけど結局買わなかった。
夜になって、花火大会が始まって、煩わしいので川端の外れの腰掛けて
花火と反対の空の星を見ていた。
花火は好きだが、近くで見たくないのだ。
大輪の花が咲いてから何秒か後に聞こえる轟音が心地いいのだ。
音と花と別々でなければいけない。
真下で見る花火は、音が光を、光が音を邪魔する。
だから今すぐ近くに居るので、音だけを楽しむことにした。
星の光は花火の音なんかで揺らがないので好きだ。
なんとも相性がいい。
夏草の匂いが鼻を擽る。
川の水面は深々と黒い。
しばらくそうしていると、横に人が座った。
「お面はいかが?」
そう言ったのは、妙に鼻にかかった甘い調子の声だった。
「いらない」
私は応えた。
「だってお面を買いにきたんでしょう?結局買わなかったみたいだけど」
「もう、買うの辞めちゃったから、そのお金でりんご飴買っちゃったもん」
「ただでもいいよ」
「ほんと?どんなお面?」
「こんなお面」
女の人は自分の顔を指して言ったが、どこにもお面らしき物はなかった。
からかわれてるのだと思って、女の人を睨むと、大げさに肩をすくめて見せた。
「どうしてお面が欲しいの?」
「?顔が隠せるから」
「どうして隠すの?」
「見られたくないから」
女の人は笑った。
私はいよいよイライラした。でも女の人はなお笑った。
- 576 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 18:07
- 「笑い事じゃないよ」
「ねえ、私の顔どう思う?」
訝しく思いながら女の人の顔を覗き込んだ。
なるほど、その人の顔は女の人というより私と同年代くらいらしい。
それに、ちょっとドキリとしてしまうほどの美少女さんだ。
どうといって、よく整っているが、派手な顔ではない。
それなのに、薄闇の中に浮かぶその笑顔は、闇夜に突然閃く花火のような
衝撃てきな綺麗さがあった。
「ねえ、どうして顔を見られたくないの?」
「だって、みんな顔しかみないんだもん。顔で人のことを値踏みする。
男の子なんて得にそうだし。私は綺麗じゃないから嫌なの」
「私の顔はどう思う?」
「凄く綺麗だね」
- 577 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 18:08
- そう、と言って女の子はまた笑った。その笑顔があまりに似合いすぎていた。
「真希ちゃんは綺麗だよ。自分で気付いてないだけ。
周りの人も気付いてないだけ。それに、顔で値踏みする人なんか
相手にしなければいいのよ」
女の子は続けて
「これあげるわ。お面をあげる約束だもんね」
と言って、彼女自身の顔に手を掛けた。
それから、すっと顔を剥がした。
いや、違う。お面を取ったんだ。女の人の顔だと思っていたのは、実はお面だったのだ。
私の前の闇夜にまた、全く見知らぬ女性が現れた。
お面の顔よりもだいぶ年が上がって見える。大人の女の人だ。
猫のように釣りあがった鋭い目が、どこか抜け目無く光っている。
女の人は、さっきと全く違う印象に変わった。
「ほら、受け取りなさい」
声も違う。さっきと全然違うやや低い落ち着いた声だ。
呆気にとられながら促がされるままにお面を受け取る。
蝋のような手触り。冷たくて、正真正銘のお面である。
「被ってみなよ」
言われるままに、顔に宛がってみる。
ヒンヤリとした感じ。
お面をつけたときのあの内なる開放感が沸き立つ。
自分がさっきの少女の顔になったのだ。
なんだかとても嬉しくなった。
「あなたに、全部の仮面をあげるわ。でも、いい?
心が清くあること。忘れるんじゃないわよ」
女の人の声が夢心地に聞こえた。
やがて女の人は居なくなって、花火大会も終わっていた。
家に帰って、ワクワクしながら鏡を見ると、そこには見慣れたいつもの私が居た。
不思議に思って今つけているお面を外すと、見知らぬ人の顔が
そこにはあった。
おわり
- 578 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:19
-
「ねぇ、ねぇ、紺ちゃん。今日、この後どうせ暇でしょ?」
今日の仕事は早い時間に終わり、大人気分で一人、映画でも観て、ずっと前から気になっていたアイスランド料理屋に行こうと思っていたところだった。
急に肩が重くなって振り返ると、お澄まし笑顔の美貴ちゃんがいた。
「なんでそう決め付けるのさ」
「いや、なんとなく。何か用事あった?」
そう言われると、口ごもってしまう。
今日の予定を話して、一人上手とか言われたら困るし。
- 579 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:19
- 「美貴さー、実は今日・・・」
「知ってるよ。誕生日でしょ?さっきみんなで祝ったじゃない。それに6期のみんな、これから美貴ちゃんに──」
左手で遮られ、右手が指差した方向を見る。
「ナノニ、ドコイッタンダヨー!」おとめモデルの田中ちゃん。
「トウキョウノヒトッテキレイダネ」さくらしなやか亀井ちゃん。
棒読みをネタにされたシゲさんは、口元だけで器用に怒りを表現し、あとは知らん顔。
「あぁ」
「ね?だからさ、今日は美貴に付き合ってよ」
「『ね?』って言われても・・・」
他のメンバーを探すも、同じ仕事場だったみんなは帰ってるみたいだ。
いろいろ誘われたけど、断っちゃったしな。
- 580 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:20
- 「なに、美貴とどっか行くの、嫌なのぉ?」
「そんなことないよ、全然」
「じゃ、美貴と行こ?」
美貴ちゃんに引っ張られるまま、楽屋を出る。
後ろの方で、藤本さ〜ん、なんて声が聞こえてきたけど、美貴ちゃんはもう走り出していた。
「で、こっからどうするの?」
「電車で渋谷まで」
「いや、そういうことじゃなくてね。なにするの?」
「ひみつー」
美貴ちゃんは悪戯っぽくはぐらかす。
こうして、私と美貴ちゃんは一路、渋谷へ。
- 581 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:21
-
──
天気がいいせいなのか、今日の渋谷はいつもよりも人が多い気がする。
「ねぇ、どこ行くの?」
「ひ・み・つ」
「じゃあさ、その前にごはん食べに行こうよ」
今度は私が美貴ちゃんを引っ張り、来た道を戻ってデパートの最上階へ。
なんでかはわからないけど、ものすごーくおそばが食べたい気分だった。
- 582 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:21
- 中途半端な時間帯のせいか、店は閑散としていて、私たちは運良く窓際の席に座ることができた。
「ねぇ、なんで蕎麦なの?」
ちょっと怪訝そうに美貴ちゃんが聞いてきた。
「えー、なんでだろう。なんか急におそばが食べたくなって」
「なら、富士そばでいいじゃん。うまい、やすい、はやい、の三拍子揃ってるのに」
そう言われてみると、そんな気がしなくもないけど、やっぱりここは譲れない。
デパートのそば屋じゃないと、せっかくの一食を無駄にしてしまう気がする。
「そういえばさ、さくらの新曲って、デパートの蕎麦屋で流れてそうだよね?」
美貴ちゃんの言葉に、私はそれだ!と思った。
そして、同時にカチンとくる。
「・・・そんなことないもん」
「あれ、コンコン怒っちゃった?ごめんね。でも、あんまむくれてると、ほっぺたぷにゅぷにゅしちゃうよ」
最初はただの思いつきだったのかもしれないけど、途中からは悪意100%で、しかも私をからかって遊んでる。
でも、ほっぺじゃなくて、何故か私の上唇を引っ張る美貴ちゃんの笑顔は屈託ない。
どうしても、つられて頬が緩んでしまう。
「あ、笑った。コンコン笑ったぁー!」
せっちゃんとりんちゃんの間の声色で、手を叩く美貴ちゃん。
おそばも運ばれてきたことだし、別にさくらがデパートのそば屋さんでもいいような気がしてきた。
- 583 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:22
-
そば湯もしっかり飲んだところで、ようやく一息。
「そろそろ今日の目的、教えてよ」
さくら組の曲をそば屋と言ったことに引け目を感じているのか、すんなり教えてくれる。
「美貴さ、10代最後の気合入れに、ちょっとTATOOを入れようと思って」
「はぁっ?」
「背中にバーン、と不動明王でも」
「ふごっ」
「不動明王ね。よっすぃも19になったら入れるって言ってたよ。昇り竜にするって。さすがに梨華ちゃんはやらないみたいだけど」
あ〜、これはもう無理、異次元。
私がやるわけじゃないけど、ホントにだめ。
「あの、紺ちゃん?聞いてる?冗談だからね、不動明王とか」
「え、嘘なの?よかったぁ」
「刺青は入れるけど」
「あ〜、やっぱりぃ」
「なんで紺ちゃんが痛そうな顔してんのさ」
そうだよね。
ちょっと落ち着こう。
- 584 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:22
-
- 585 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:24
- 「ね、紺ちゃん?固まってる?」
「・・・いや、うん。大丈夫。持ち直した。マネージャーさんとかに怒られちゃうよ」
「平気。見えないところに入れるから」
「どの辺?」
「え?この辺」
腰ともお尻とも太ももとも言えない辺りをさする美貴ちゃん。
すっごい不安なんだけど、颯爽と席を立つ美貴ちゃんの後を、ただ追うしかなかった。
- 586 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:24
-
───
──
─
「ね?そんな落ち込まなくても・・・」
「いや、いいんだ。美貴はずっとああなんだ。あの先端の恐怖。これまで美貴が経験してきた、どんな戦慄にも敵いやしない。はぁ、美貴はTATOOすら入れられない、臆病者なんだ・・・紺ちゃん、絶対明日みんなに言うでしょ?」
「言わないよぉ」
「い〜や、絶対に言うね。で、矢口さんがさ、ラジオで、ちょっとですねぇ、最近、藤本の可愛らしい一面を知りましてねぇ、なんて言っちゃって。あの藤本が!みたいに強調されて。で、最後に、いやぁ可愛いと思いましたね、ホント。とかって締められるんだよ。して、これからの美貴は、おいmiss.TATOOとか言われちゃったりするんだよ。間違えても失敗してもないのに。あ〜ぁ。これまでのキャラが台無しだよ。あははは」
がっくり肩を落とした美貴ちゃんが、かつてないネガティブ娘。になっている。
いつかのマコっちゃん以上だ。
針を入れた瞬間、「美貴むり、マジ無理」と言い残し、そそくさとその場を後にしてしまった美貴ちゃん。
店を出るなり、落ち込んでしまい、どうにか漫画喫茶まで連れ出すことに成功した私は、姫ちゃんのリボンを片手に懐かしさに浸りつつ、美貴ちゃんの弱気発言を聞いていた。
- 587 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:25
- 「太陽が悪いんだ。外、微妙に明るいんだもん。なんかじゅわ〜っときちゃったんだもん。店、暗かったんだしさ。まだちょっとチクッとしてるしさ。どうすんだよ。もし、色ついてたりしたら。消せないじゃん」
地の底から聞こえてくるような暗い声は、両隣の個室には確実に届いているだろう。
それとなく、こちらを窺っている様子が伝わってくる。
陰々滅々と不穏なオーラを撒き散らす、美貴ちゃんは沈み続ける。
「美貴はこれから一生、中途半端な黒点と過ごしていくんだね。衣装とか着てたらわかんないだろうけどさ、着替えてる時なんかに亀井ちゃん辺りが目ざとく見つけて、これが青春の過ちですね、とか言っちゃったりするんだよ。あー、もう美貴、マジ耐えらんない」
止まんないかなぁ。
そろそろバレちゃいそうな気がするんだけど。
こんなとこでモーニング娘。だって知られたら大変。
- 588 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:25
- 「あの、美貴ちゃん?・・・これ、よかったら。シール。ほら、卵とか、ハートとか、けっこう種類あるんだよ。あと、これがオススメ。よくわかんないけど、ワンピースのなんだって。あと、キティちゃんのもあるよ」
俯いた美貴ちゃんが、髪の隙間から情けない目で、私を見てくる。
私は美貴ちゃんの施術前に、面白そうだったから買っておいたシールを広げる。
「ほら。ね?これも一応TATOOだよ」
「へ?なに、こんなのあるんだ。なぁーんだ。紺ちゃん、最初から言ってくれればいいのにぃ」
目を爛々と輝かせて、あれこれシールを見比べたりしている。
簡単に上機嫌の美貴ちゃんは、すっかり立ち直った様子。
こんなんでよかったんだ、と私もホッと一息。
- 589 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:25
-
──
「じゃあ、また明日ね」
「あ・・・」
「ん?」
「・・・誕生日、おめでと」
「うん、ありがと。今日は嬉しかった」
美貴ちゃんの顔が、くしゃっと綻んだ。
誕生日の人なら誕生日の人らしく、もっとストレートにワガママすればいいのに。
駅構内へと向かう人ごみに紛れた美貴ちゃんが振り返り、大きく手を振ってくる。
私は小さく返すと、晴れ晴れとした気持ちで歩き出す。
どうして私を誘ったのか聞こうと思っていたけど、そんなことは重要じゃない。
明日が楽しみな今日がまた過ごせて、それがとても嬉しかった。
- 590 名前:さらっさら 投稿日:2004/02/26(木) 19:26
- おわり
- 591 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/26(木) 23:54
- ムカツクくらい萌えましたw
- 592 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:40
- あたしはあの人をどうしようもなく好きで
あの人はお姉ちゃんがどうしようもなく好きで
お姉ちゃんは…。
- 593 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:40
- せめてあと少しずつ
少しだけでも誰かの気持ちが弱ければ
誰かは幸せになれたかも知れないのに
上手くいかないもんだね
アナタガスキ
違う場所に運ばれ続ける空しい言葉
- 594 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:41
- 「ミキ、抱いてもいいよ」
雨に濡れて、お姉ちゃんに会いに来たあなた。
「出来ないよ、ヤグチさん」
あなたの瞳に映る姿は、恐らくあたしに似た人で
それでも止めようもない至福に、躰中引き裂かれるだけ
愚かなただの傷痕にするのはイヤ。
- 595 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:41
- お姉ちゃんはすごく優しくて、あたしを側に置きたがった。
小さい頃からずっと
小さいままならそう出来たけど
あたしだって大人になってしまった。
どこにも行くなと言われた。
『ミキティが悲しまずにすむのは、ナッチの隣だけだよ』
正しいよ
お姉ちゃんがいないとあの人も離れる。
逃げられない。
- 596 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:42
- お姉ちゃんを抱こうか
あの日の彼女とそっくりな想いで
血とか姉妹とか、口にするには
今更、轍を離れすぎてる。
ただあの人に近い躰を
あなたの想い人を
傷つけたいのか、傷つきたいのか
どちらだってやっぱりよく似すぎている。
- 597 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:42
-
幸せになるために生まれたんじゃないみたい
幸せになるために愛したんじゃないみたい
幸せは掴めない
あなたは掴めない
あなたに幸せを掴ませてやらない。
アナタガスキ
- 598 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:43
- 息がつまる
この世界はもう酸素が少ない
お姉ちゃんが苦しむといい
その苦しみはあなたに届くから
あたしのせいであなたが痛むなら
もしかしたら生まれ堕ちた意味はあったのかもね。
あなたに逢ったのも、お姉ちゃんが側にいすぎたのも
全部全部決め事だった
- 599 名前:雨降って 投稿日:2004/02/27(金) 14:43
- 終りのあとでいい。
そう思いたい。
時は病んで。
低い空が覆う暗雲。見つめていたら雫がさした。
このは雨もう止まない
おわり
- 600 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:15
- 『蓮華の華』
- 601 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:15
- 病室を出て、中庭に下りる。
車椅子に腰掛け看護婦に押されながら高い声で談笑を続ける老婆の間や、
仄かに頬を赤く染めこちらを眺めている少年の目をすり抜け、
病棟から最も離れたベンチに腰を下ろす。
春の匂い、圭織はそれは桜の匂いに違いないと常々夢想していたが、
ベンチからは桜の大樹が程近い位置にあり、
竦むほどの春の匂いが圭織を取り巻き、風に乗って流れていく。
視界が淡い桃色に染まっていくような感覚に囚われる。
なつみの病室を見上げる。
少しくすんだ色の壁一面に嵌め込まれた窓の中で開いているのはその窓だけだった。
白いカーテンが風にはためく。
圭織はその光景に既視感を覚える。
それが何かわからないまま、少し前の病室でのやり取りを思い出す。
- 602 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:16
- 「蓮華が見えたんだ」
半身を起こしベッドに佇むなつみは云う。
圭織は椅子に腰掛け、医療器具らしきものの何一つ無い殺風景な部屋を眺める。
リノリウムの床に黒ずんだ汚れを見つけた。
「しかも、いろんな色」
笑っていない時になつみから発せられる声は諦観の念を含んでいる。
彼女の意思に関わらない、特性のようなものなのだろう。
圭織がなつみと視線を絡める。
黒い瞳は諦めた笑みを浮かべている。
「珍しいから、欲しかったの」
なつみにはそう云うところがある。
我が侭とも称される、後先を顧みない行動をする癖は、圭織にどうこうできるものでもない。
一つだけ頷いた。
- 603 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:16
- 「不思議な患者さんですな」
病室より先に通された会議室のような場所で、医者はメガネを押し上げながら云う。
剃刀のような顔立ち、と云うと聞こえはいいが、詰まるところ悪人面だ。
「こちらに収容された理由はご存知ですね?」
「はい」
「では話が早い。
どうにも、彼女は変わっていますね。
誤解を恐れずに云えば、精神的な何かを感じさせます。
私は専門ではないので詳しいことを無責任には申せませんが、
一度検査を受けてみることをお勧めしたいですね」
圭織は曖昧に頷く。
同じ言葉はもう片手の指で足りないほど聞かされている。
なつみはまた拒否するだろう。
- 604 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:16
- 「検査、受けないよね?」
ピッチャーから紙コップに水を注ぎ、手渡してやる。
なつみは圭織の顔を覗きこみ、小さく笑う。
「ヤダ」
「わかった」
圭織も笑い返す。
その時、なつみの歯に僅かな黄ばみを見つけた。
「お昼のあと、歯、磨いてないの?」
「磨いたよ?
まだ汚れてる?」
「うん、ちょっとね」
口を窄め、不満を露わにしながらも歯ブラシに手を伸ばす。
その光景に、圭織の頬が緩む。
なつみは昔から、歯磨きの苦手な子供だった。
- 605 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:17
- 異母姉妹だと云うと、決まって似ていないですねと云われた。
誕生日が二日しか違わないと云うと、訝しがられた。
圭織もなつみも、お互いの真の親についてのことは想像の域を出ない。
育ての親は、どちらの産みの親とも重なっていない。
二人の間に相違が訪れたのは早かったと圭織は記憶している。
圭織は早くから背が高く、なつみはいつまでも小さかった。
圭織は内向的な面が強く、なつみは外向的だった。
育ての親は、どちらも母親似だと語った。
ギリシア神話やグリム童話をよく読んで聞かせてくれる、優しい養父母だった。
父親に似ないで幸福だ、が口癖だった。
- 606 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:17
- 養父母の語った父親像を繋ぎ合わせると、典型的な優男が出来上がる。
気弱な男、悪いことが出来ない男、女性を前にしたらろくに口も聞けないような男。
そんな男が偶然に二人の女性に同時に愛され、そしてほぼ同時に身篭らせた。
自分のしたことに耐えられなかった男は、夜を跳んだ。
圭織となつみを産んだ女二人も、戦いに疲れた身体を癒そうとするかのように、
冷たいコンクリートに身を委ねた。
悪い男でなくても、あんなけじめのつけ方では非難するより仕方がない。
養父は決まってその言葉で話を打ち切った。
けれど、圭織もなつみも、想像の世界に住む父親を好いていた。
圭織は養父の言葉に、グリム童話に出てくる心優しい父親の影を重ね、
なつみは、ギリシア神話で太陽を目指し空を跳んだイカルスを重ねた。
- 607 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:18
- 「空を飛びたいんだ」
なつみがはっきりと圭織に告げたのは、一年ほど前のことだった。
圭織は驚かなかった。
人が悠々身体を縛り付けることのできるような大凧をテレビ画面に認めるたび目を輝かせ、
蝋の翼の白さに思いを馳せるなつみのこと、云いだしたのが遅すぎるほどだった。
「いいね」
「うん、頑張る」
- 608 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:18
- 「鳥になりたかったの?」
歯を磨き終えたなつみに向かって圭織が訊く。
なつみは一瞬呆けたような表情を見せた後、ああ、と表情を崩す。
「そうだね。
飛ばなきゃ、取れなかったから」
「取れなかったし、飛べなかった」
「飛べそうだったんだよ」
なつみは口惜しそうに視線を遠くへ向ける。
マンションの二階から植え込みに落下したばかりの人間にはとても見えない。
「赤とか、青とか、黄色とか、白の蓮華の華がさ、こうね、ふわぁって広がってたの。
綺麗だなぁって思ってね」
「綺麗そうだよね」
圭織が云うと、なつみが悲しそうな表情を向けて云う。
「カオなら、きっと飛べるよ。
何でもできるんだもん」
そして、窓に視線を向ける。
- 609 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:18
- 養父母が相次いで亡くなった時、圭織となつみは十八歳だった。
環状線の線路の上で肉塊になった二人が手を繋いでいた可能性があったと云うことを聞けば、
理由を察することまでは出来なくとも、
それが心中であると推測を立てることくらいはできる年齢だった。
身寄りの無い二人は葬式を出すことはしなかった。
ただ何もわからないまま、悲しみに暮れるべきか怒りに身を震わせるべきか決めかねたまま、
遺品整理の最中に、預金通帳に挟まった走り書きの一文を目にしたのだった。
──お前達は生きなさい。
八桁の残高とその一文が、養父母が二人に残したものだった。
以来、二人はどうしても養父母を非難せざるを得なくなった。
- 610 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:19
- 大学に進み、二人暮しを始めてからは、家事は専ら圭織の担当だった。
なつみも台所に立つことはままあったが、大概は意欲が空回りし、
圭織に慰められながら食卓で身を縮める有様だった。
圭織自身は全く気にしていなかったが、なつみは相当気に病んでいたらしく、
よくごめんねと云う言葉を口にした。
「カオは何でも出来て凄いね。
なっちは何も出来ないや」
- 611 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:19
- 「見える?」
ふっとなつみが呟き、圭織はなつみの視線を追う。
視線の先には青く澄み渡った虚空。
圭織はなつみの方に向き直り、云った。
「蓮華の華?」
「そう、圭織にも見えたんだ」
圭織はそれには答えず、窓に寄った。
千切れた雲がいくつか、亀の歩みで通り過ぎていく。
圭織の目には、青と白以外の色は映っていない。
「窓、開けてくれる?」
なつみの言葉に頷き、窓を開ける。
心地よい風が流れ込み、圭織の長い髪が踊る。
「また、取りに行くつもり?」
目を向けずとも、なつみが頷いたのが分かった。
- 612 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:20
- 何処からか噂が流れたらしく、二人は一時期陰湿ないじめの被害にあった。
自殺一家と書かれた紙を背中に貼り付けて帰ってきたことが数度、
まだ生きてるのか、と家の周囲を囲う壁一帯にペイントされたこと数度、
塗料で色づけされた蓮華の華が大量に贈りつけられ、
極楽浄土へいけますように、と手紙が添えられていたことも一度。
二人はどれも、笑って受け流した。
紙は破り、ペイントは流し、しかし蓮華は寿命が尽きるまでは部屋に飾った。
仏教色の強い学校の学生らしい気の利いたジョークだと、青い蓮華を愛でながら笑った。
極楽浄土にいけるなら悪くないと、赤い蓮華を愛でながら笑った。
本当にこんなにカラフルな蓮華があればいいのにと、黄色い蓮華を愛でながら笑った。
言葉が見つからず、白い蓮華を愛でながらただ笑った。
- 613 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:20
- 「そろそろ帰るね」
振り向き、圭織が云う。
室内の空気は重く変わっている。
なつみは頷き、それから思い出したように付け加える。
「なっちが取れなかったら、圭織が取ってよ、蓮華の華。
それで、なっちにも分けて」
なつみの瞳は怯えている。
口から出た言葉を取り消したいと叫んでいるようにも見える。
圭織は小さく、唇の形だけで笑みを作ると、
ベッドのなつみの側により、ペットの子犬にするように、髪をくしゃくしゃと撫でた。
「いいよ、約束する」
圭織は云うと、なつみの顔を見ないまま病室の入り口へと目を向けた。
- 614 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:21
- 圭織がベンチに腰を下ろして五分ほどした後、唯一開かれた窓に動きがあった。
短く切り揃えられた髪が顔を出し、辺りを窺っている。
いや、きっと蓮華の華を捜しているのだ。
圭織は立ち上がり、病室の方へと歩き始める。
芝生を踏みしめる足元が軽く感じる。
病院の通用口に辿り着き、病室を見上げると、なつみと目があった。
お互い小さく笑い、片手を上げ、圭織は建物内へと入る。
炒り卵を誤って床に落下させてしまったような、
固体とも液体ともつかないような音が中庭に響いたのは、それからすぐのことだった。
- 615 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:21
- 静寂と喧騒の入り混じった非常識の空間を、圭織は歩いて登った。
なつみは蓮華の華を掴んだのだろうか、考える。
掴めていればいい、そう思いながら、五階のなつみの病室に入った。
人の気配は無く、人影も無い。
カーテンが風にはためき、その向こうの風景を広く圭織の視界に流し込んでくれる。
圭織は、口笛を吹き鳴らしたい衝動に駆られた。
青い虚空には、黄色い蓮華の華があった。
数え切れない程、一面の蓮華畑とも称したくなるその風景にはしかし、
赤や青や白の蓮華は無かった。
なつみは三色の蓮華を掴んだらしい。
圭織はおめでとう、と小声でベッドに向かって呟いた。
聞く対象のいない言葉は漂いどこかに消える。
圭織は窓に寄り、眼下を見下ろした。
黒山の人だかりが出来ている。
しかしそれは、圭織の思っていた以上に、病室から離れていた。
もしかしたら、なつみは本当に飛んだのかもしれない。
助走をつけ、祈りを込め、身体を弾けさせて。
- 616 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:21
- 圭織は首を引っ込めた。
なつみのように遠くまで飛ぶ必要は無い。
手近な黄色い蓮華を掴めれば、それで充分だった。
- 617 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:22
- *
- 618 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:22
- *
- 619 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/27(金) 17:22
- >>600-616
- 620 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:09
- 『結婚しようよ』
- 621 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:09
- 「結婚しようか」
「はぁ?」
「はぁ?はないでしょ。まあ、聞いてよ。ごっちん」
「んあ?」
「美貴てきにはね」
「うん?」
「結婚したいわけなのよ、ごっちんと」
「なんで」
「好きだから」
「はぁ」
アホだから、の間違いじゃないかしら。
「そんなこといきなり言われても困るし。大体、あたし女だよ?」
「じゃあごっちんはあたしのこと嫌い?」
「え…」
「嫌いなの?」
「嫌いとか、そんなんじゃなくて…好きだよ?好きだけど…
って、なに言わせるの」
「自分で言ったんじゃんか…」
- 622 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:10
- 「てゆうか、何で私なの?あやちゃんとかカオリとか紺野とか
亜弥ちゃんとかいるじゃない」
「亜弥ちゃん2回言ったよ」
「なんで?」
「ごっちんが好きだから」
「罰ゲームとか?」
「ごっちんが好きだから」
「ドッキリ?」
「ごっちんが好きだからだよ。罰ゲームとかどっきりだったら
ごっちんリアクション最悪だね」
「ごめん、知らなかったから…って、本当にそうなの?」
「違うってば。ごっちんが好きだから、私はごっちんとケコーンしたいの」
「ケコーン?」
「結婚だよ、結婚。いいそこ間違いだから、気にしないで」
「結婚けっこんって。結婚ってそんなに簡単にできるの?」
「さあ」
殴っていいかしら。
- 623 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:11
- 「まあ、怒らないで。美貴の話を聞いてよ」
「何?」
「美貴はごっちんのことが好きなのよ。そりゃあもう、胸が割れるほど好きなの」
照れる。
「それで、これはもう、結婚しかない、と思ったのね。
で、ごっちんも美貴のことが好きだったらもう結婚してしまえ」
ちょっとまて。
「そりゃね、美貴ちゃんのことは好きだよ?
でもね、なんて言うか…そういう、結婚の対象としては見れないっていうか…」
「美貴ショック」
あんまりショックそうに見えない。
「じゃあ、結婚の対象ってどういう人なの?」
「え、えーと、やっぱりまず男の人で…」
「どうして」
美貴ちゃんの顔がニヤついてて怖い。
「どうしてって…」
「そもそも、結婚するってどういうこと?」
あんたが言い出したんだろうが。
「つまり、その、籍をいれること…?」
「あれですよ、後藤さん。」
勝ち誇ったように笑うな。怖い。
「二人の人と人が愛し合い、住まいを纏め、財産を纏め、相互に全てを預け合うことですよ。
戸籍とか法律とか、関係ナシ」
それでいいのか?
「だから、ごっちん」
そんな、ニッコリ笑われても。
- 624 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:11
- 「ちょっとまってよ」
「ん?」
「住まいはいいけど。あたし借金あるけどいいの?」
「OK牧場」
ジャブ食らわせてやろうかしら。
「それに、愛し合ってないよね?あたしたち」
「これから育めばいいのよ。大丈夫」
「預け合う、って、何を?」
「すべてを。心も身体も」
なんかやらしぃなぁ。
「なんでそんなに私が好きなの?」
「わかってるくせに」
いや、知らない。
1人で照れないで。
「もう無い?」
なんかないかなぁ。おかしい所が。
「無いかなぁ」
いっぱいありすぎてわからないだけのような気がするけど。
「じゃあ、結婚しようよ」
「うん…ん…?」
「じゃあ、誓いのキッス」
「うぁ」
- 625 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:12
-
「照れちゃって、可愛い」
うるさいなぁ。
「じゃあ、さっそく新居さがさなくっちゃね。あ、な、た」
「んあ…あなた?」
「いや?」
「うん」
「じゃあ、真希さん」
「…」
腕、絡ませないでよ。胸が当って。
あたしのが、だけど。
「あのね、美貴ティ?」
「美貴って呼んで」
「み、美貴…?」
「なあに?」
「あたし、だまされてないかなぁ」
「うふふ」
おわり
- 626 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:06
- 「第2ボタンください!!」
名前も知らない後輩が顔を真っ赤にして言ってきた
はあ、またか・・・。
「ごめんね。全部とられちゃってもう無いんだ」
つーか見て分かるだろーが。
一応笑顔で返事したが、内心めんどくさいから早く帰りたかった。
これで何人目だろう。
何でみんなボタンなんか欲しがるのか理解できない。
今、美貴のブレザーはボタンがひとつも無い。
なぜかというと、先ほどのように言ってきた子に
全部あげてしまったからだ。
- 627 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:07
- だからもう無いのは見たら分かるのに
それでも寄ってくる子が多くて疲れてしまった。
まあ、もっと凄いことになっている人がいるので
美貴はましなほうなんだが・・・。
とりあえず、これ以上捕まらないうちにさっさと帰ろうとしたら
「美貴たーん!」
と誰かから呼ばれてしまった。
帰るところだったのに・・・
まあこんな呼び方をするのは一人しかいないので誰かは分かっているのだが。
- 628 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:07
- 「何?亜弥ちゃん」
と言った瞬間にものすごい勢いで後ろから抱き付かれた。
むしろタックルと言ったほうが良いかもしれない・・・
「えへへ、一緒に帰ろ?」
この子は同じ部活で後輩の松浦亜弥ちゃん。
なぜか美貴になついていて、やたらベタベタしてくる。
こちらとしても好かれているのは悪い気がしないので良いのだが
それでも凄い勢いで抱き付かれるとかなりしんどい。
・・・本当にきついんだって。
- 629 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:08
- 「うん、一緒に帰ろっか」
そう言うと、亜弥ちゃんは凄い笑顔になった。
さて、帰ろうとして歩き出した時
横にきた亜弥ちゃんの顔が一瞬驚いて暗くなった気がした。
どうしたのかと思ったら
「ボタン全部無いんだね。」
と言われた。
「ああ、美貴結構もてるんだよこれでも。びっくりした?」
美貴としては普段あんまり先輩扱いしてくれない後輩に対して
少し自慢しただけのつもりが、なぜか亜弥はものすごく落ち込んでしまった。
- 630 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:08
- しかも軽く目を潤ませているので、凄く悪いことをした気分である。
美貴はそんな亜弥の様子にうろたえて、
「亜弥ちゃんどうしたの?美貴何か悪いこと言った?」
と、ものすごく心配している。
そんな美貴の様子を見て、亜弥は
「ちがうの。私も美貴たんの第2ボタン欲しかったから・・・」
「ふぇっ?!」
思いもよらぬ亜弥の告白に美貴は驚いた。
「だから美貴たんは何にも悪くないよ・・・。
私が勝手に落ち込んでるだけだから気にしないで。」
- 631 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:09
- いや〜気にするなと言っても、
今にも泣きそうな女の子を無視できるわけが無いでしょうに。
さて藤本さん、どうでるでしょう?
「ね〜え?亜弥ちゃん。ボタンはないけどかわりに
美貴のブレザー貰ってくれない?」
「ふぇっ?!」
おっと今度は松浦さんがマジ驚きですね。
「あ〜でも邪魔になるか。矢口さんが先輩に貰ったブレザー捨てられなくて困ってるって言ってたしな〜。
う〜んじゃあ、交換しよっか?サイズ一緒だし大丈夫でしょ?
いい考えじゃん。美貴あったまいい〜。」
- 632 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:09
- 藤本さん勝手に話を進めてますね。まあわりといい考えですね。
松浦さんが藤本さんのブレザーを。
藤本さんが松浦さんのブレザーを。
二人のもとに思い出の品が残るわけですね〜。
・・・松浦さんはボタンの無いブレザーで学校行くことになりますが。
もしくはボタン買ってきて自分でつけないといけませんね。面倒ですね〜。
ところで松浦さんの返事は?
- 633 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:09
- 「美貴たんいいの?」
「いいの?って美貴はもう卒業だから制服なんてようないし。
亜弥ちゃんさえ良ければ、かえっこしよ?」
「うん!」
「とりあえずこんなとこじゃ脱げないし家行こっか?」
そんなこんなで二人仲良く藤本さんちへ帰りましたとさ。
- 634 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:10
- ちなみに藤本さんちに着いた松浦さんはブレザーどころかスカートまで交換して、
ついでに藤本さんのものになったもとは松浦さんのブレザーの第二ボタンをちゃっかり貰ったんだとさ。
- 635 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:10
-
良かったですね松浦さん。
まあもとは松浦さんのボタンなんですが・・・。
- 636 名前:卒業 投稿日:2004/03/01(月) 23:12
- 終わりです。
あやみき?分かりづらくてすいません。
一応卒業の季節と言うことで・・・。
- 637 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 17:21
- 「藤本さぁ 最近梨華ちゃんとやけに仲良ぃよねぇ」
なんて見上げて嘆くは矢口さん
「そぉですかぁ?別に普通ですょ
もしかして妬いてんですか?」
「そ、そんなんじゃねぇょ!」
ってどもってるし、説得力ゼロ
やっぱ梨華ちゃんのこと好きなんだぁ
ちょっとからかっちゃおうかなっ
「あ、でもよく電話とかメールとかはするかな
ツアーの時とかは美貴の部屋で一緒に語ったりぃ」
「…そぉなんだぁ」
- 638 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 17:30
- 興味無い風に気取っちゃってぇ
ほんとは気になるくせにぃ
「でね、梨華ちゃんってほら
面倒くさがりじゃないですかぁ
だからそのまま一緒に寝ちゃうことも多々あるかな」
「ふぅ〜…ん」
平常装っちゃって
なんか可愛いっ6hearts;
「梨華ちゃんってよく見ると可愛いし」
「えぇ?そぉかぁ?」
はっ?なにこれ
なんか本心っぽいんですけど
「う〜ん」
「よく見ると可愛いっつーか
パッと見可愛いけど よく見るとキショくない?」
キショい?
たしかに番組とかでは矢口さん言ってる言葉だけど
本音?
「…ノーコメントで
ってか美貴より矢口さんのが仲良くないですか?」
「一応ね 仲良いんじゃない?」
- 639 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 17:36
- 一応ってあなた
好きなんじゃないの?
「ふぅ〜ん。。。
一応なんだ てっきりめちゃA仲良いのかと思ってましたょ」
「もしかしてさ…もしかしてなんだけど
ミキティなんか勘違いしてない?」
「はいっ!?」
「おいらが梨華ちゃんのこと好きとか…」
「あ、バレました?」
ははっ
なんて空笑顔で笑って済ませる
「バレましたって…それ違うからな!?」
ん?なにそんな必死になってんだろ
たしかに思い込んではいたけどぉ
「そぉなんですか?」
「全然っ有り得ないから」
そこまで否定しなくても…
なんか梨華ちゃんが可愛そうじゃん
- 640 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 17:43
- 「そぉなんだ じゃぁ矢口さん好きな人とかいないんですか?」
「…ノーコメントで」
それってあり?
なんか顔赤くなってる気がするのは気のせい?
「そんなぁ!あ、もしかして美貴だったりしてぇ」
このこのっなんてかんじで肘で矢口さんをつつく
ただちょっとからかいたかっただけなのに
「…どぉでもいぃじゃん」
俯き加減でボソっと嘆いたその言葉は
とても否定するものとは思えない
「…えっ?」
聞き返したくなるのも当たり前
「おいらのことはどぉでもいいだろぉ?」
ちょっと怒ったって説得力も無く
怖くも無く 飼ってたチワワが吠えました
ってぐらぃ あ チワワじゃなくてパグか
- 641 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 17:49
- そんな上目遣いで言われたら
なんかリアルじゃん
「どぉでもなんてよくないですょ」
そんなわけないですよね?
はっきりと否定と取れる言葉が欲しい
「ばぁか!」
「ハッ!?」
なに?今コメカミがピキっていったんですけど
「だからバカっつってんの
ほんと梨華ちゃん以上なんじゃなぃの?」
ゴラァくそチビ!!
- 642 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 18:00
- 「はっ!?なに言ってんすか?」
たぶん今の美貴の目つき最悪
っつーかあともう1回言われたら
殴りかかってる
先輩だろうがんなの関係ないし
「藤本が好きだっつってんだょ ばぁ〜か!!」
んだとゴラァ
もいっぺん言ってみ………
………って
「はぁ!!!????」
今なんて?
「じゃぁねぇ♥」
手を振り足早に走り去っていく矢口さん
ってちょ、言い逃げなんてずるぃじゃなぃですかぁ!!
「ちょ、待ってくださいよぉ 矢口さん」
「やだねぇ」
追いかける美貴から逃げるように
スキップする矢口さん なんかご機嫌?
スキップて…そんなんじゃ簡単に捕まえられるんですけどぉ
美貴は猛スピードで走って追いかける
手を差し伸ばし小さい腕を掴んだ
だって 捕まえて欲しかったんでしょ?
〜end〜
〜〜
- 643 名前:刹那 投稿日:2004/03/02(火) 18:02
- やぐみきでした その場での思いつきなので流してやってください
- 644 名前:知恵の輪 投稿日:2004/03/18(木) 01:25
-
「ちょっと出てくるね」
レギュラー番組の収録前の空き時間。
笑顔が絶えない娘。の楽屋を出て、フラッと立ち寄った"あの人"の楽屋。
まだ一緒に活動してた頃もそうだったけど、一人でいる時もやっぱり静か。
周りを気にしながらドアをノックすると、返ってくるいつもの低い声。
「ど〜ぞぉ」
その何気ない返事に安心する私。
可笑しいですよね、つい一年前までは同じ時間を共有していたのに。
「いらっしゃい。珍しいね、一人で来るなんて」
そう言いながらも、目先と神経は自分の手元でカチャカチャと暴れまわる玩具
――子供の頃、誰もが一度は手にして遊んだ記憶のある、知恵の輪に集中してる。
緒先輩方がおっしゃるように、不器用な貴方は何をするにも全力投球で、
今もこうして遊びに来た私を尻目に、知恵の輪相手に知恵比べ。
眉間に皺、よってますよ?
- 645 名前:知恵の輪 投稿日:2004/03/18(木) 01:25
-
「こういうのって一度やり始めると、外すまで止めらんないんだよね」
何事にも妥協しないで最後まで努力することが信条の貴方。
どんなに些細な事でもその信条が揺らぐことはなくて、
そうして今日までやって来たのを短い時間ながらも、間近で見てきた。
けれど、それは仕事だけに限った事で、恋とかにもそうであって欲しいって思うけど、
そうしないところが貴方らしい。
「ん〜、あ〜、もうちょっとで外れそうなんだけどなぁ……」
試行錯誤を繰り返す貴方を私はじっと見つめてる。
普段はみんなから怖いイメージを持たれる貴方の目つき。
その真剣な眼差しで、私の恋の輪にもチャレンジしてくれないかなって思う。
タネも仕掛けもない一途な恋の輪だけれど、そんじょそこらの輪とはちょっと違うんです。
愛の形が誰かさんのせいでこんがらがってしまってるから……。
- 646 名前:知恵の輪 投稿日:2004/03/18(木) 01:26
-
「あっ! これをこうして、ここをこうすれば……おおっ、解けた!」
物凄く嬉しそうな顔で達成感に浸ってますけど、まだ私の恋の輪を解いてませんよ?
恋が絡んだ目に見えない不思議な知恵の輪。
貴方と出逢ってから胸に降り積もった片想いの結晶でできた恋の輪。
組み合わせの基本は気持ちですよ、本当の気持ち。
もし、今ここでお願いしたら、さっきみたいな眼差しで解いてくれるのかな?
「意外と難しいもんだね。見た目は簡単そうだけど」
それはそうですよ、知恵の輪って言うくらいですから。
でもですね、恋の輪はもっと複雑なんです。
毎日毎日、手を変え品を変えながら蠢いてますけど、
優しくされたら意外と簡単に外れるかもしれませんよ?
形が曖昧だし、それにその輪を作った本人が傍にいますから。
- 647 名前:知恵の輪 投稿日:2004/03/18(木) 01:26
-
知恵の輪――色々な形の輪を、知恵を働かせて繋いだり外したりして遊ぶ玩具。
ホンとは誰にも解けないほど貴方とくっ付いていたいんですけれど、
万が一、解けたら……解けてしまったら、拍手の代わりに告白します。
"保田さんが好きです"
私じゃ期待外れになるかもしれませんけど、でもそんな私を「愛」して欲しいな……。
〜FIN〜
- 648 名前:知恵の輪 投稿日:2004/03/18(木) 01:35
-
かなり前に書き綴ったものです。
恥を承知で晒してみました。
この辺で失礼します。
- 649 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:04
- 「あー寒。寒いの大っ嫌い」
「夏は夏で、暑いのイヤって言うんでしょ」
隣で梨華ちゃんがお見通しだと笑う。
ちょこっと空いた時間に、コンビ二でも行こうと2人で外に出た。
多少の雨粒が肩に落ちるのを承知の上で、傘はひとつ。
傍にいたいでしょ。
雨は良い口実。
そろそろ春と呼ばれていい時期なのに、今日はやたらと寒い。
吐きだす息が白く色づいている。
人のいない桜並木の下を歩く。
桜の蕾が凍えて寄せ集まってるように見える。
- 650 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:05
- さすがに手をつなぐわけにいかないけど
左腕はピタリと梨華ちゃんにくっついている。
小さく幸せ。
「早く春になんないかね」
重たい空を透明な傘ごしに見上げながら私は呟く。
「うーん。でもさ、ゆっくりで良いやって最近は思う、かも…」
梨華ちゃんも真似するように空を仰いだ。
寂しげな横顔。
- 651 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:06
-
言いたい意味は判るよ。
うん。
でも沈んだりしないで。
変えられない未来に、大切なことはちゃんと残るでしょ
「そうかな?」
そうだって。変るものなんてきっととても少ない。
そう思ってる、私は。
彼女の視界に広がる、銀鼠色した空を吐息で白く塞いだ。
梨華ちゃんは悪戯を咎めるように私の肩を叩いた。
「お菓子いっぱい買ってこうよ」
「よっすぃ奢りね」
「……いいよ。今日くらい」
- 652 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:06
-
コンビにで大きな袋を受け取り外に出る。
「梨華ちゃん傘持ってよ」
帰り道の雨の音は重たくなっていた。
梨華ちゃんが油断する度、頭に傘がガシガシあたる。
「あのさイタイ」
「あ、ゴメン」
何度か繰り返しつつ。
諦めて首を傾けて歩く。
- 653 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:07
- 「暖かくなったらどこか行こうよ」
「とりあえず花見?」
「みんなで来たいね」
ののとあいぼんがはしゃいでる姿が簡単に想像できて
同じ事を考えていただろう梨華ちゃんと目があう。
うん、絶対楽しいね。そんなの。
2人きりってのも捨て難いけど、みんなで騒ぐか。
あ、二回来れば良いのか。
花見の予定を考えてるのに、手は悴んでる。
落とさないように気合いを入れて
賑やかな連中に食い荒らされる運命のコンビニ袋を大げさに振った。
- 654 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:08
-
ちょうど桜並木に戻ったとき、
「あ、雪になってない?」
「ホントだ…そりゃ寒いわな」
「何だか桜カワイソウだね」
静かに落ちてくる白が薄紅に重なる。
冬が春に譲り渡すのを、空の上で抗ってるのかもね。
花冷えだったけか?
桜のしんどそうに枝先を撓らせている。
- 655 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:08
- 「梨華ちゃん。これ桜吹雪って言うんだっけ?」
「……これは違うでしょ」
自信なさそうに少し眉尻を下げる彼女に、私は口元が緩んでしまう。
「じゃただの吹雪か」
「……吹雪ってほどでもないでしょ」
まあどれでもイイや
私は梨華ちゃんの手ごと傘の柄を掴んで。
「ちょっとぉ、急に走んないでよ」
文句を言う声は柔らかい。
- 656 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:10
- そうそう。笑っていよう。
大丈夫。
まだ春も遠いんだから。
ゆっくりとね。
季節は巡るけどさ。
楽しい事たくさんしようよ、ね。
家族じゃないの。なんつってね。
終
- 657 名前:春遥 投稿日:2004/03/23(火) 15:12
- 寒さにつられ。
夏はもっと先です。
- 658 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 11:58
- 辻と加護の話を一つ
吉澤視点で
『Chain』
- 659 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 11:59
- 走る、走る、二人の少女。
追う、逃げる二人の関係。
大切な人だからこそ追うし逃げる。
あたしも何年も会っていない二人にそろそろ会おうかな。
- 660 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 11:59
-
毎日通う喫茶店の窓から最近毎日見かける走る少女。
小さい体で人と人との間をすり抜ける。
顔は忙しく横に振り何かを探しているようだった。
半分泣きそうな顔で、切羽詰った顔でひたすらこの窓の前を通りかかる。
小動物みたいでその姿は可愛らしく黙ってみていた。
ある日、たまたま、あたしは店から少し早く出た。
いつもより混み合っているみたいで長居するのは迷惑だと思ったから。
ドアを引いて外の空気を吸った。
一歩二歩歩く、とあたしより小さな二つ結びの少女とぶつかった。
すいません、と一言いうか言わないかの間に気がつく。
この子はいつものあの子だ。
上目使いでこっちを見上げた。黒目の片目と黒に近い茶の片目があたしの顔を映した。
なぜかあたしは無意識に口走っていた。
「いつも何を探しているの?」
ガヤガヤと周りから声や車の音、歩く音が混ざって聞こえた。
他人には入れない世界、入ろうと思わない世界をそれぞれ持っている。
暗黙のルール、それはこの子だから安易に壊せた。
話しかけやすい、おそらくもう十五、十六なのに年相応に見えない表情。
顔のつくりは違うけれど中性的な顔立ち。
- 661 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 11:59
-
「あいぼんを探しているの」
「なにそれ」
人か物かわからない。何それとしか言いようがなかった。
「のんの親友、のんと同じくらいの身長で同じ年なの、見なかった?」
少女は「のん」というらしく「あいぼん」というのは親友だ、ということがわかった。
彼女の言うあいぼんという子を見た事はないはず。
「みてないよ」
少女の顔が曇った。涙目は一層ひどくなってうるうるしている。
可哀想に思えてきた。
「見かけたら教えてあげるよ」
からりと表情は一変しあどけない笑顔を見せた。
あまりよくない不揃いな歯並びの中に可愛らしい八重歯があった。
「これであいぼんもきっと見つかる」
とても嬉しそうな顔をして彼女はまた走り始めた。
去り際にありがとう、が聞こえた。
ところでどうやって連絡を取ろうか。
- 662 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 11:59
-
これもある日のことだった。
喫茶店から出て外の空気を吸い一歩二歩歩いた。
いつかと同じ。走る二つ結びの少女とぶつかった。
「すんません」
独特な訛りと無機質な声。
身長もあの子と同じ、体型はややふっくらしているが。
あの子と違う大人びた、周りと比べても浮かない雰囲気。
外見だけでまさかと思った。
「あいぼん?」
走り出そうとする背中に思い切って声をかけてみた。
「なんであんたが知ってる」
振り返る、鋭い目つきで。
片目は焦げ茶、もう片目は綺麗な透明感のある緑だった。
大人びた顔のどこかに尋常じゃない必死さが見えた。
- 663 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:00
-
「のんが探してるよ」
「知ってるよ、知ってて逃げてる
って、なんであんたがのののこと知ってん」
「ついこの前知り合ったから、
何で逃げてんの」
「あんたには関係ない」
刺々しい言葉が尚更彼女を必死に見せた。
入れてもらえない領域。会ったばかりだから当然なのだけれど。
「のんのこと嫌いなの?」
「嫌いなわけない、親友やもん」
「なら会ってあげたらいいじゃん」
「そんなんできひん」
「なんで」
「だからあんたには関係ないっていうとるやろ」
最初にはあまり出なかった訛り、勢いが増す言葉。
重大な理由が彼女を縛り付けている。
「ほなな」
彼女はまた走り出した。
二つに結ばれた髪がゆらゆら揺れていた。
- 664 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:00
-
「あいぼん」がこの近くを通るとき「のん」はいつもいない。
逆に、「のん」がこの近くを通るとき「あいぼん」はいつもいない。
定期的に片方ずつ見かける。
そう気づいてあたしは「のん」に話しかけた。
走ってくるのを見計らい店から出る。
「のん」
「あ、この前の」
この前からは大分経つ。彼女は覚えていてくれた。
「あいぼんは見つかったの?」
「見かけたって言う人はいるんだけどまだ見つからないの」
しょんぼりとして俯く。
どうしても会わせてあげたかった。そう思う理由は、どこにもないのだけれど。
「あたしこの前見たんだけどさ」
「ほんとっ?どっちに行った?」
期待した目であたしを見上げた。
あたしの頭に一つの作戦が浮かんだ。
「のん、・・・・」
- 665 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:00
-
もう一度、1週間後、見計らって店を出た。
当然、彼女を見つけたからだ。
「あいぼん」
「なに、またあんたか」
ふう、とため息を一度ついて立ち止まりあたしの方へ向く。
「ののには会わないからな」
声は鋭く、あたしを睨む目によく似合っていた。
「そのことはもういいんだ、だって、のん、」
わざとだ、わざと間を空けた。
そのほうがより、らしいから。
「あたしが殺したもの」
鼻から空気を出してくく、と笑った。
目は形だけ三日月になっているだろう。
肩を上下にわずかに動かして、いかにも、いかれてるように。
「あいぼん」は震えた。
口は開いたまま拳には力がはいっていないようだ。
「なんや、それ」
「だって可哀想じゃない
必死に探してるのに逃げるんだよ?」
- 666 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:01
-
唖然とする彼女に言葉を吐き続ける。
「だったらさ、あいぼんのこと見つけたと思って死んだほうが幸せじゃない
どうせ会えないんだから」
へらへら笑うよう努めた。
もともとへらへらしているほうだからそれはとても楽なことだった。
「あの路地裏であいぼん見つけたって言って殺してあげた
「お前、ぶっ殺したる」
襲い掛かる獣のように瞬間的に近寄りあたしの胸倉を掴んだ。
台詞はうなり声、力が入りすぎて震える右手は牙だ。
けれどここは現実だ、童話の世界でもなんでもないのだ。
あたしを殺したからってのんは帰ってこないだろう、
狼の腹を切って子山羊が出てきたとしても。
「そんなの意味ないよ、のんはもう死んでる
死体はあそこの木に埋めた、見たいなら、見れば?」
あたしが遠くの木を指差すと、小さな拳はあたしの胸倉から離れ静かに下ろされた。
のの、と小さい呻き声とともに彼女は走り出す。
目には涙が溢れて、小さい背中は泣いていた。
あたしはその背中を追いかけた。
- 667 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:01
-
速い、速い。
追いかける「のん」より、逃げる「あいぼん」より。
景色が飛んで木に近づいていく。
人ごみを蹴散らして走る後姿は必死で、彼女にとっての「のん」がどれだけ大切かわかるような気がした。
事情はわからないけれど、きっとそれはとても重要なことで。
じわりと背中に汗がにじむ頃にはもう木のそばについていた。
- 668 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:01
-
ふらふらと木に近づく。
「あいぼん・・・?」
彼女の姿を見たとたんにのんの目が潤んだ。
「・・のの」
切れた息の中、のんを呼ぶ。
周りの音にかき消されはしない、二人だけの。
揺れ動く人に流されず確かにある二人の間の鎖は絡まったまま切れずにここにある。
引き合うように近づいた。
「あいぼん」
頬を涙が伝った。子供の顔に。
「のの、よかった」
たくさんの不安が消えたように声が漏れた。
そして走り出したのんに抱きつかれた。
抱きついて顔が自分より下にあるのんをのんよりもずっと強い力で抱きしめる。
ぼろぼろと目からは涙がこぼれて嗚咽をもらす。
よかった、よかった、と抱き合う二人を見届けてあたしはその場から立ち去った。
- 669 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:01
-
あの日、のんに伝えた作戦は単純なものだった。
「のん、あたしが会わせてあげるから、
1週間後あの木の下で待っててくれる?」
うん、と大きく首を縦に振った。
真剣な目が幼さを強調させた。
こんなに少しも嘘だとも疑わずに人はいられるものだろうか、
それとも少しの可能性を信じているのだろうか。
この瞳を裏切ることはできない、と心の中で決心して別れた。
- 670 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:02
-
後日、彼女達と会った。
もちろん二人一緒で。
あいぼんは少し怒っていたように見せていたけれど単に照れていたんだと思う、
のんは素直にありがとうといった。
二人そろった顔を見るとあることに気がついた。
あいぼんの片目と、のんの片目は同じ瞳。
繋がってる二人。どこまで行ったってきっと切れない鎖で結ばれてる。
繋いだ手と手が幼くて可愛かった。
逃げることも、追うことも、もうしなくていい彼女達は
しっかり和解して元通りにくっついた。
あたしも何年も会っていない二人にそろそろ会おうかな。
- 671 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/03/31(水) 12:03
- おわり
お目汚し失礼しました。
- 672 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:23
- 宛先:mikity-SORO@ybbb.com
件名:藤本さんへ
お久しぶりです。
さっきヤフオクで小顔マシーンを落札しそうになって、
ぎりぎりのところで止めた紺野ですw
- 673 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:23
- こないだのメールでは、田中ちゃんについて私の思うところを書きましたけど、
今回は重さんについて少し。
重さんというと、可愛いとか天然とか鏡ばっか見てるとか正直者とか、
そういうイメージですよね。
可愛い、ってのは重さん自分で言ってるし、実際可愛いなと思うので当たりです。
天然、も間違いないでしょうね。本人気づいてないみたいですけどw
鏡ばかり見てる、正直者ってのはそのまんまですね。
私も天然って言われてますけど、
私のは緊張しすぎで変なこと言っちゃうって分かってるんで、
ホントは天然じゃないんですよ! ほんとはね(byより子)。
……ってまあそんなのはおいといて。
今回ここに新しい重さんワードを足したいと思うんです。
- 674 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:24
- 重さんっていうと、すごいナルシスト、って思っちゃうんですけど、
あれは自分で自分に言い聞かせてるようなとこあると思うんですよね。
重さんがスゴイのはそこじゃなくて、トークで飛び出る、一風変わったものの見方です。
少し前になるんですけど、ハロモニの六期トークのときに飯田さんが、
自分で自分を可愛いと思ってる? って聞いたじゃないですか。
そしたら重さん、
「自分ではそこまで思ってなかったんですけど、
モーニング娘。の一次審査に通ったって聞いて、あ、かわいいんだなあって」
って答えてましたよね。
重さんは見抜いてたんです。
モーニング娘。のメンバーはいまやルックスのみで選ばれている、っていう事実を。
だからこそ、真性音痴(最近治ってきたみたいですけど)でも、
モーニング娘。に応募できたんだと思います。
- 675 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:25
- これは自ら言いたくないんですけど、
私や石川さんを見て、あと歌唱力のいらない楽曲を聴いて、
歌の上手さなんかいらない、ってことを無意識に分かっていたんじゃないでしょうか。
重さんの友達は重さんに、あんたが受かると思わなかった、って言ったそうです。
友達の意見は一般的ですよね。
あんなに音外してた子が歌手になれるなんて、普通の人は思いません。
重さんは先入観なく見てたから、
モーニング娘。の本質を分かっていたんだと思います。
- 676 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:26
- あと、重さんのことでもうひとつ気になったことがありまして。
ミュージカルの取材で、省エネについてコメント取ったじゃないですか。
みんなが、テレビを主電源から落とすとか、冷蔵庫を長く開けないとか言ってたけど、
重さんは、
「早寝早起き」
って。
みんな笑ってましたけど、天然だー! っていっちゃうのは早いです。
この早寝早起きには、多分重さん自身もちゃんと説明できない、
考えの道筋があると思うんです。
重さんはきっと、
<省エネ→電気を使わない→夜更かししなければいい→夜は早く寝て、
太陽と共に起きる→早寝早起き>
って考えたんです。テレビや冷蔵庫を細かく気にするよりも、
ぐんと省エネになりますよね。
小泉さん風に言うなら、抜本的解決、ってとこです。
- 677 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:27
- さらに重さんはもう一つ、
「夜景を見て、綺麗だなーって思うだけだったんですけど、
あそこにも電気いっぱい使われてるんだなーって今は思うようになりました」
って言ってたんです。
これを聞いて、不肖紺野あさ美、驚愕ガクブルでした。
アナウンサーが省エネについて聞いたのは、
テレビ的なコメントが欲しいからじゃないですか。
なのに重さんは、自分で考えて、正直な意見を叩きつけたんです。
さっきの飯田さんとのトークでもそうなんですけど、
重さんは、聞かれたことを一度自分の中に深く沈めてから、
答えを見つけようとしているようです。
他人の意見に左右されずに、自分で考えられる子なんだと思います。
前に藤本さん、道重は天然作ってんじゃねーの、って言ってましたけど、
私は違うと思います。狙ってやってるんじゃなくて、
物事に対して自分なりの答えを探してて、
その結果として、個性が出てるんだと思います。
- 678 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:28
- 今回重さんについてまとめてみて、頭に浮かんできた単語があります。
『天才』
そうです、重さんはきっと天才なんですよ。
天然でなく天才。
自分で言うのもなんですけど、私は秀才キャラですよね。
嬉しいんですけど、それは秀才どまりってことなんです。
天才の重さんにはかないそうもありません。
なんか悲しくなってきたんで、正拳突きと上段蹴りをセットで放ってから寝ます。
では、おじゃま〜。
紺野あさ美より
- 679 名前:紺野が藤本に送った、道重さゆみ論。 投稿日:2004/04/09(金) 05:30
-
- 680 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/11(日) 00:13
- なるほど!と思わず言いそうになりました。自分も道重さんは天才だと思いますw
- 681 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:16
- 「藤本さん、これ飲んでみてくれませんか?」
唐突に、紺ちゃんから声をかけられた。
その手には紫色のラベルを貼った缶ジュースらしきもの。
「何これ?」
楽屋の畳の上に寝そべっていた身体を起こし、その缶を手にとって見る。
ぬ・・・なんか、いやな暖かさ・・・。
「ほれ薬です」
「はっ?」
しれっと言う紺ちゃんにちょっとめんを食らった。
ほれ薬?なんで、んなもんがあるの?
「私が研究を重ねて作ったんですよ」
「ふーん、そうなんだ・・・って、なんでミキの考えてることが分かるの?!」
「・・・完璧だからです」
ニヤッと笑う紺ちゃん。
僅かに身が震えた。
- 682 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:16
- 「・・・まあ、いいや。で、なんでこれをミキが飲まにゃいかんのさ?」
「今ここにいるのが、私と藤本さんだけだからです」
これまたしれっと・・・。
確かにこの楽屋にいるのはミキと紺ちゃんだけだよ。
でも、それだったらさぁ・・・。
「紺ちゃんが飲めば良いじゃん」
言ってから紺ちゃんを見る。
肩を落として、やれやれといった感じで頭を左右に振っている。
む、むかつく・・・っ!
「分かってないですねぇ、藤本さん。偉大な発明の裏にはいつも犠牲者がいるものなのですよ」
「いやいや。ミキ、犠牲者なんかになりたくないし。だいち、分かりたくもないし」
「むっ。でましたね、ツッコミキティ」
はぁ・・・。
つきあってらんないよ、このえせマッドサイエンティスト・・・。
缶を置いて立ち上がり、流れるように出て行こうとした。
でも、出る寸前で手首を掴まれて後ろ向きに倒された。
「いだっ!」
すると当然頭打つ訳で・・・それって、すっごい痛いわけで・・・。
とにかく・・・。
「何すん―――モガッ!」
怒鳴ろうかと思ってあけた口に何か突っ込まれた。
ちょ、ちょっと!ツッコミはミキの仕事なのに!
…って、そんな場合じゃないつーの!!
- 683 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:17
- 「んぐ、もが、ン゛ーーーー!!!」
静かに流れ込んでくる、生ぬるい液体。
いっやー!飲んでる、飲んでるよー!!この暖かさ、キモいーー!!
あ・・・でも味は結構・・・。
「ぷはっ!げほっ、がほっ」
ようやく開放。
ほとんど無理やり飲まされたせいで、少しむせた。
横をチラ見すると、優しく笑う紺ちゃん。
「どうです?美味しかったでしょう?」
…コノヤロウ・・・っ!
ミキはヤクザもちびると言われている鋭い眼差しで、紺ちゃんを睨んだ。
「・・・無理やり飲ませるなんてひどいじゃん」
なるべく声を低くして。相手をビビラせることに力を入れる。
「すいません。でも、藤本さんが飲んで・・・っ!!」
それでも全然臆することなくニコニコとしていた紺ちゃん。
すると突然様子が変わった。
驚いたように目を見開いて、口を半開きにしているの。
「おーい、紺ちゃん?」
顔の前で手を振ってみる。
するとハッとしたように後ずさる紺ちゃん。
- 684 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:18
- ―――?
いよいよ狂ったの?
「どうしたの?」
訊ねるとびくっと身を震わせる。
そしてミキのほうを、恐る恐るといった感じで見る。
ドキッ!
…何、その顔?何、その目?
―――可愛すぎ・・・。
これはミキ以外の人が見てもそう思うよ!
だって、だってよ!目がすごく潤んでるんだもん!今にも泣き出しそうなんだもん!!
例えるなら・・・ほら。あのアイ○ルのCMのチワワ。そんな感じ。
「藤本さん・・・」
ドキドッキーン!!
何、その声!?か細くて、切なくて・・・どこか妖艶で・・・。
- 685 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:18
- 「私、藤本さんになら・・・」
「―――え?」
静かに紺ちゃんが立ち上がる。
で、何をするかと思ったら・・・。
「ちょ、ちょ、ちょ!ちょっと、何してんのさ!!??」
一枚、また一枚と脱いでいく紺ちゃん。
ついに純白のブラとパンティーだけになった。
…やっぱり白か・・・じゃなーい!!
「・・・私、藤本さんだったら・・・」
潤んだ目をして近づいてくる紺ちゃん。
はっ!まさか、さっきのジュース・・・本当に惚れ薬だったの!?
「藤本さん・・・」
ミキを呼ぶ声も妙に色っぽい。
普段の紺ちゃんからは想像もできないほど・・・。
「・・・さあ、一つになりましょう」
- 686 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:19
- 「ひぃ!」
今までは色っぽかった紺ちゃんの瞳に、怪しい光が灯った。
一歩、また一歩とミキに近づいてくる紺ちゃん。
「藤本さん・・・」
じり・・・
「一つに・・・」
じり、じり・・・
ぎらっ!
紺ちゃんの瞳・・・今明らかに怪しい光が・・・。
「なりましょー!!」
「いぃぃんやあアぁぁぁぁぁ!!!」
楽屋の扉を乱暴に開けて、廊下に飛び出し、すぐさまトップスピードまで持っていった。
「まてや、ゴルアー!!」
ちょ、ちょっと待ってなんかものすごい速さで追いかけてくるし!
しかもいつもの紺ちゃんじゃないし!
あれ、獲物を狙う獣の目だし!
下着だしぃぃぃ!!
「ひぃい!タスケテー!!」
- 687 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:20
- ******
- 688 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:20
-
「ふじもとさーん!どこですかー」
ん・・・言えるわけ無いじゃん。
言ったら、絶対食われるもん・・・。
「ふじもとさーん・・・」
お、行った行った。
「ぶあはっ!きつかった〜」
いや〜、自販機と自販機の間の隙間もたまには役に立つよね。
亀ちゃんじゃないけど・・・。
「・・・藤本、何してんの?」
「ひゅあ!?」
隙間から抜け出して、ついた埃を払っていたら突然声をかけられた。
振り返って見ると、そこには娘。一小さな先輩が・・・。
「なんだよ、その反応は・・・」
「あ、矢口さん。いや、ちょっとびっくりしたもんで」
しら〜っとした目で見つめられる。
い、痛い・・・。あれっ?
「矢口さん、なんともありませんか?」
「はっ?なにが??」
- 689 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:21
- 「いや・・・ドキドキしたり、脱ぎたくなったりとか・・・」
「ぬぎっ?!バ、バカ!何言ってんだよ!!」
顔を真っ赤にして、必死な様子で言う矢口さん。
結構軽く見られがちだけど、意外と純情乙女なんだよね〜。
「やぐち〜。ご飯一緒に食べるべさ〜」
独特な北国訛り。
言わずと知れた、あの人だ。
今年娘。を卒業し、ソロ活動を始めた童顔の先輩。
「あ〜い、今行くよ〜なっち〜!」
パッと笑顔を咲かせ、ミキのことには目もくれずに小さな身体を弾ませながら矢口さんは駆けていった。
「・・・・・・」
…ん〜、これは・・・。
「あ、藤本さん!」
首を傾げて悩んでいたところに、下着姿の紺ちゃんが戻ってきた。
頬はほんのり桜色。目は潤んでいて、やっぱり妙に色っぽい。
- 690 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:22
- 紺ちゃんはミキを見つけるが早いや、じりじりと距離をつめ始めた。
「藤本さん、もう逃げられませんよ。観念―――」
「・・・ねぇ、紺ちゃん」
もう飛びつかれたら確実につかまる距離で、ミキは紺ちゃんの息の荒い言葉を遮った。
真剣(自称)な眼差しで紺ちゃんを見つめる。
紺ちゃんも動きを止めてミキを見つめる。
「あれ、本当に惚れ薬だったの?」
「・・・何のことですか?」
言葉の駆け引きの合間に生じた、僅かな、本当に僅かな『間』。
ミキは心の中でニヤリと笑った。
「さっきね、矢口さんと会ったんだ。でも、矢口さんは平気みたいだった。ついでに言うと、ここに来るまで何人かのスタッフさんとすれ違ったけど、みんな平然としてたよ」
…ま、全速力で走るミキに訝しげな視線投げかけてたけどね・・・。
「おかしいんじゃない?紺ちゃんだけに効果があるなんて」
「・・・・・・」
紺ちゃんは俯いて何も答えない。
―――こりゃ、図星かな・・・?
「紺ちゃ―――」
「―――う・・・っ」
…ん?
「うっ、ぐすっ!ひうっ・・・うぅ」
ちょちょちょちょ、ちょっとー!
何で何で何でー???!!!
「なななななななんで泣くのー??!!」
突然ぺたんと座り込み、手で顔を覆い嗚咽を漏らし始める紺ちゃん。
だもんだから、ミキはどうしていいかわからずオロオロ・・・。
- 691 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:23
- 「うう〜・・・あうぅ〜・・・」
「はぅあ!」
今気づいたんだけど、これってものすごく誤解されそうなシチュエーションじゃない!?
下着姿の紺ちゃんが泣いていて、その前に立つミキ・・・。
や、ヤバッ!!
「ふんらあぁぁぁ!!」
すぐさまミキは紺ちゃんを抱え、もうダッシュ!
近くの楽屋に飛び込んで鍵を閉め、ソファを扉に立てかけ、テーブルを―――。
「はっ!何やっとんじゃ、ミキはー!」
ま、まあ、それは良いとして・・・ミキは紺ちゃんに向き直った。
まだしゃくりあげていたけど、涙は止まったみたい。
…とりあえず、一安心かな・・・?
「で、どうしたの?いきなり泣いたりなんかして・・・」
「―――グスッ」
ズッガーン!!
おい、てめえ!そりゃ反則だろう?!なんだよ、その儚げな表情は!
…はっ!いけないいけない・・・地が出ちゃった・・・。
「・・・ど、どうしたの?本当に・・・」
「くすっ・・・私は・・・」
- 692 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:23
- また俯いて、か細い声で呟く紺ちゃん。
普通に聞いてちゃ聞こえませんよー。耳を澄ませてみましょう!
「私は・・・」
ふむふむ、何かね?
「私は・・・藤本さんのことが好きです・・・」
そうなんだぁ。藤本さんのことがねぇ。へえ〜、そっかそっか。ほ〜・・・。
………はい(゜▽゜)?
「藤本さんがソロのときから・・・大好きなんです・・・」
「・・・・・・・・・」
ザ・ワー○ドォォォォォォ!!!時よ止まれぇ!!
五秒間の間、ミキは完全にフリーズ・・・。
そして・・・、
そして、時は動き出す・・・。
「ぬあんですとォォぉぉぉぉ!!!???」
思いっきりの腹式呼吸で絶叫。
ビクッとする紺ちゃん。
ミキは口をあんぐり、目をぱちくり。
- 693 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:24
- 「な、あぇ、ほあ、うえお?いは・・・はあーーー??!!」
ミキ・・・壊れちゃったよ・・・。
「すいません・・・素で言うのは中々勇気が出なくて・・・それで、惚れ薬開発したって嘘ついて、勢いにのせて言ってしまおうかなと・・・」
申し訳なさそうに言ってから立ち上がる紺ちゃん。
ミキに深々と頭を下げてきた。
「迷惑ですよね・・・すいません・・・忘れて、ください・・・」
力なく微笑んで、ミキの横をすり抜けていこうとする紺ちゃん。
…目から光るしずくが零れ落ちた。
―――・・・ちょっと・・・。
「・・・待ってよ」
気づいたら紺ちゃんの腕を掴んでて・・・しかも睨んでて・・・。
「あ・・・ごめんなさい・・・」
ビクッと身を震わせ、また謝る。
- 694 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:25
- 「あのさぁ、ミキがいつ迷惑なんて言った?」
「―――えっ・・・?」
「確かに騙されたのは腹立つけどさ、そうやってミキが言ってもいないのに迷惑だとか・・・勝手に決め付けられるほうがもっとムカつくんだけど。ミキも、ミキもさー・・・」
あれ・・・?なんか、ミキかっこいい・・・?
ってゆーか、どこまで言っちゃうの?!自分ー!
「・・・ミキも紺ちゃんのこと、好きなんだけど」
うっぎゃー!言っちゃったよー!!しぬぅ!恥ずかしくて死ぬぅ!!
なんで勢いにのせて言うのさ!?自分のバカー!
「え?あの、その・・・えぇ?!」
はい、紺ちゃんも壊れました。
壊れたもの同士、暫く無言で見つめあい、そして・・・
「・・・本当、ですか・・・?」
顔を真っ赤にし、恐る恐るといった感じで、紺ちゃんは呟いた。
ゆっくりとミキはうなづく。
「・・・それは、友達と―――」
「恋人としてに決まってんじゃん」
んなこと聞かないでよ・・・。言うの、はずいンだから・・・。
「・・・・・・」「・・・・・・」
再び無言の見つめあい。と、思ったら・・・。
- 695 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:25
- ブワッ!
「わっ!泣かないでよ〜」
「だ、だって〜・・・グスッ!うれ、ひう・・・嬉、いん、ですもん・・・うっ・・・」
泣きながらも紺ちゃんは笑顔。それを見てミキも苦笑。
―――なんだかね〜・・・。
ミキたち、結構前から相思相愛だったんだね。
でも二人とも鈍くて、中々伝わらなくて・・・。
それがつらかったんだね・・・。
「・・・ごめんね。紺ちゃんの気持ち、気づいてあげられなくて」
そっと彼女の身体を抱きしめる。
以外に華奢で・・・少し力を入れたら壊れそうなくらい柔らかかった。
「・・・いいえ。でも、その分これから幸せにしてくださいね?」
潤んだ目の上目遣い。
…まったく、どこで覚えたんだか・・・。
「勿論!藤本美貴はここに紺ちゃんを幸せにすることを誓います」
「はい・・・んむ・・・」
ある意味誓いのキス。触れるだけの、優しいキス。
唇を離して、額をコツッと合わせる。
「・・・これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ!」
笑いあってから、二回目のキス。
今度は深く・・・どこまでも深く・・・。
- 696 名前:真・恋の媚薬?? 投稿日:2004/04/22(木) 23:26
- その後は・・・みんなの想像に任せるよ(笑)
- 697 名前:ちなみに・・・ 投稿日:2004/04/22(木) 23:27
-
紺ちゃんがくれたジュース。
あれ、リアリティを出すためにいろんなものを混ぜたらしい。
イモリやら、下剤やら、ミミズの干物やら・・・。
次の日、ミキは一日トイレから出られなかった・・・。
死にそうだった・・・いや、実際死んだよ・・・(泣)
- 698 名前:我道 投稿日:2004/04/22(木) 23:30
- こんにちわ。
某版でちょこちょこっと書いてるへぼ作者です・・・。
これは息抜きの意味を兼ねて書きましたが、例に漏れず駄文となってしまいました・・・。
一言、申し訳ありませんでした。
それではお目汚し失礼しました。
- 699 名前:我道 投稿日:2004/04/22(木) 23:35
- すいません・・・
ENDと入れるのを忘れていました_| ̄|〇
本当にすいませんでした・・・。
- 700 名前:飛べない鳥 投稿日:2004/04/22(木) 23:38
- 純情jなのか大胆なのかわかんない紺野さんがいいですね
- 701 名前:名も無き読者 投稿日:2004/04/23(金) 17:35
- どうも、いつものアホ読者です。
紺ちゃん可愛すぎ・・・。w
ミキティの壊れっぷりも最高でした。
あっちも頑張って下さいね。
- 702 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/25(日) 00:28
- ↑パンティーの色にこだわりすぎw
紺ちゃん嘘ついて勢いにまかせれば下着姿になれるくらいなら普通に告白できるんじゃ・・・
とにかく面白かった、ありがとうございます!某板のほうもがんばってください。
- 703 名前:つんく♂重大発表 投稿日:2004/05/10(月) 00:55
- どもーっ、つんく♂でーす。
安倍と結婚することになりました。
イェーッ!
まぁ、あれや。一目惚れってやつや。
最初に見たときに「嫁さんにしたい!」って考えたわけや。
そんで「あんなやつが裏でタバコとか吸うてるはずや」とか適当なことを言うて、不合格にしたんやな。
それがいつの間にかデビューすることになって、俺の知らんとこで話が進んどった。
そんなこんなで色々あったけど、ようやく結婚することになりました。
ファンのみんなには悪いと思てるけど、許してほしい。
じゃぁ、彼女にも挨拶してもらうか。
お〜い、あさみ〜ん……。
妹かよっ!/END
- 704 名前:つんく♂重大発表 おまけ 投稿日:2004/05/10(月) 00:56
- どもーっ、つんく♂でーす。
後藤と結婚することになりました。
イェーッ!
(中略)
真希、今日から「おとーさん」と呼んでくれ……。
母かよっ!/END
- 705 名前:その日… 投稿日:2004/05/24(月) 20:36
-
つんくさんに呼び出されたあたしと梨華ちゃんと飯田さんと矢口さんは、
落ち着かない気分で会議室の椅子にならんで座っていた。
でも、何の為の呼び出しかは、なんとなく想像ついてた。
たぶん…それはここにいる誰かの卒業で、
そしてそれに伴う娘。の新体制の発表。そんなところだろう。
卒業は、飯田さんと矢口さん、かなぁ。
そして新リーダーにあたしか梨華ちゃんのどっちかがなるんだ。
- 706 名前:その日… 投稿日:2004/05/24(月) 20:38
-
もう何度もこんな事があって、
その度にメンバーはとりあえず笑顔でそれを受け入れる。
でも、サスガに辻加護のときは笑えなかった。
ただただ驚いて、そして梨華ちゃんと信じられないねってしばらく呆然としちゃった。
加護ぉ〜、運命とか言うなよぉ〜って、
いつものようにからむあたしに加護は弱々しく笑ってしがみついた。
『ほんとはめちゃ怖いねん』 耳元にこぼれた小さな呟きに、
あたしは涙を堪えるのに必死だった。
- 707 名前:その日… 投稿日:2004/05/24(月) 20:39
- カチャ
ドアノブの乾いた音のあとに、
つんくさんとマネージャーさんが部屋に入って来て、
あたし達四人の前に座った。
「忙しいとこすまんな」
「いえ」
「吉澤、ドラマのほうどうなん?」
「はい、だいぶ慣れました」
「そか…」
つんくさんはテーブルの上に組んだ自分の手に目を落として、
ひとつ深呼吸をすると、静かに話し始めた。
- 708 名前:??? 投稿日:2004/05/24(月) 20:40
- 「ほな、本題にはいるわ。
飯田には去年から言ってあったんやけどな、
飯田は来年一月のハロプロコンで、
そして、石川も来年の四月の娘。コンで卒業ということになったんや」
え? 石川って…梨華ちゃんが? 卒業??
って何言ってるんすかつんくさん、それ違うでしょ?
「マジですか?」
「吉澤、これはマジや。
卒業後は飯田はソロで、石川は新ユニットで活動してもらう。
新リーダーは矢口、サブリーダーは吉澤。
公式発表は矢口のラジオの生放送で………
そんな…そんなのって…ありかよ…………
目の前が真っ白になって、なんの音も聞こえなくなった。
- 709 名前:??? 投稿日:2004/05/24(月) 20:40
- ポンっと肩を叩かれてハッとする。
「よっすぃ〜、終わったよ、帰ろ」
梨華ちゃん…
もう力の入らなくなったあたしの腕を引っ張って、
タクシーに乗せてくれた。
- 710 名前:その日… 投稿日:2004/05/24(月) 20:41
- 「飯田さん達は?」
「先に帰ったよ、たぶんどこかに寄り道してると思うけど」
ふふって小さく笑う梨華ちゃん。
何で、何でそんな風にひと事みたいに言ってんの。
もう一人の当事者じゃない、梨華ちゃん。
「石川はショックじゃないの?」
「ショックだよ…当たり前じゃん…」
そう言って唇をぎゅっと結び、顔を上げて窓の外を見る梨華ちゃん。
あたしにはもう何の言葉もない。黙ってこの時をやりすごすしかない。
明日はMステだし、もうすぐミュージカルもはじまる。
立ち止まってる時間なんてないのが逆に救いだと思った。
手を伸ばして触れた梨華ちゃんの手は、ひんやり冷たかった。
- 711 名前:その日… 投稿日:2004/05/24(月) 20:42
- そしてあたしは急激にスリムになった。
食事制限もジムもなかなか効果があがらなかったのに。
『離れないで』
あれはあたしが誰かに言って欲しい言葉じゃない。
あたしがみんなに言いたい言葉だった。
市井さん、中澤さん、ごっちん、保田さん、安倍さん、
辻、加護、飯田さん、梨華ちゃん。
ゼッテー泣かないけど、やっぱりあたしは寂しいんだ。
- fin -
- 712 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 20:49
- 「じゃぁそぉいうことで石川と飯田卒業な」
「「はい」」
すべてを聞かされたのはつい最近
“卒業”この言葉に何度涙を流してきたんだろう
あたしの“卒業”でも誰か涙を流してくれるのかな
- 713 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 20:54
- 他のメンバーよりも一足先に呼び出されて
そのことを聞かされた
ごっちんみたぃに上手にみんなに嘘を突き通すことが出来るかな
上手に笑えるのかな
「梨華ちゃん おはよっ」
美貴ちゃんがいつものように軽く挨拶をしてあたしの隣に座る
「おはょぉ」
あたしはいつものように美貴ちゃんに挨拶を返す
- 714 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 20:58
- 「なに?なんかあった?」
「え?なんで?別に何も無いけど…」
いつものように
返しているはずなのに何かが違ったみたい
キョドってなんかないのに
どもってなんかないのに
「ならいぃけど 疲れてる?」
「んぅ 最近忙しいしね
疲れてないって言ったら嘘になるけど」
「元気だしなょ せっかくうちらメイン取れたんだからさ」
「うん そぉだね」
あたしは上手に笑えてますか?
- 715 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:06
- ありがとね 美貴ちゃん
口に出してはいえないけど
“ありがと”
「ごめん あたしちょっと電話してくるね」
「ぁぃよ」
ソファを立ち廊下に出る
いつもと同じ廊下でさえもなんか違って見える
歪んで見える
トゥルルルル
………
……
…
「もっしぃ」
「あ ぅん」
「んぁ?どしたの?」
「え?あ ぅん…ね」
- 716 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:07
- 「んぁ?」
「あの …あたし…さ」
「うん?」
「“卒業”する…んだって」
「………誰が?」
「だから…あたしが」
「ん?…………あたしって…“石川梨華”さん?」
「うん“石川梨華”さん…あのね?カオタンもなんだけ」
「え゛ぇ゛!?!?!?」
受話器の向こうで絶叫が鳴り響いた
- 717 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:13
- カオタンのことはスルーだし
「うん そぉいぅことなんだ…それでね?」
「……………………」
「あの…ごめん 聞いてる?」
「ん?んぁ!?ごめんトリップしてたゎ」
「もぉ〜 だからそれでね
ごっちんにどぉしたらいいか相談の電話したんだけどぉ…」
「…どぉしたらいいかって?」
「だからぁ みんなに知られるまでどぉやって過ごそうかなって」
「あ〜… ごとーは嘘突き通したけどね」
「うん」
「梨華ちゃん以外には」
- 718 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:17
- 「え?」
「あたし梨華ちゃんにしか言わなかったんだよ?
今まで言ってなかったけど」
「どぉ…して?」
「んぅ…どぉしてって聞かれてもなぁ…
大切な人だったから そのときのあたしにとって」
「…え 今は?」
「そんなん言わせる気?ホントばか」
「えぇ?なんでよぉ」
「天然」
「もぉだからぁ!なん」
「今もに決まってんじゃん…」
- 719 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:28
- 「……………………」
「あのぉ…石川さん?」
「え? あ ごめん トリップしてた…」
「梨華ちゃんもかよっ」
ごっちんのあはっって笑う笑い声がとても無邪気で
あたしも自然と笑みが零れた
「だから梨華ちゃんは梨華ちゃんらしくでいぃんじゃなぃ?」
「え?」
「隠すのも梨華ちゃんの優しさだろぉし
あたしみたぃに大切な人にだけ伝えるのだって
大切な人に隠しきれない優しさなんだとあたしは思うし…」
「うん…」
- 720 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:29
- 「んまぁ今日 梨華ちゃん家行くからそんとき詳しく聞くわぁ」
「うん…え?家?」
「うん 嫌だって言っても行くから」
「え でも汚いし」
「気にしない」
「今日お仕事遅いし」
「待ってる」
「明日も朝早いし」
「あたしも早い」
「あと……」
「ひとりにしたら泣くでしょ?」
- 721 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:51
- 「え…」
「だって電話来たときから鼻声だったし」
「あ…」
「今日はひとりにできなぃょ」
「ごっちん…」
「だからさ うん なんていうか
ひとりで考え込んじゃダメだょ
梨華ちゃんのまわりには魅力ある人間がいっぱぃいっぱぃ
溢れてるんだからさ」
「うん」
- 722 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 21:51
- 「たまには甘えてみるのもいぃんじゃなぃかな
あ それは言っちゃうってのとは別でね」
「うん…」
「メンバーじゃなくても ほらあたしって人もいるしぃ」
「クスっ ごっちん…ありがと」
「うん んまぁ じゃ待ってるからさ
なんかひとつ行動して帰ってきなょ」
「うん そぉしてみる」
「そっか んじゃ またあとで」
「うん ありがとね」
「ぁあい」
ブチッ
- 723 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 22:01
- いつもの廊下が
いつもと同じに見えた
いつの間にかあたしの目の雨は止んでいた
ガチャ
重い扉を開け
あたしは新しい1歩を踏み出す
“今更”
そう“今更”
いつものあたしの指定席
ソファの右端
そんなあたしの隣にいる
美貴ちゃんの指定席
ソファの左端
「ねぇ 美貴ちゃん 伝えたいことがあるんだけど いいかな?」
- 724 名前:一人じゃない 投稿日:2004/05/24(月) 22:05
-
ねぇ ごっちん これでいいんだよね?
〜end〜
- 725 名前:mun 投稿日:2004/05/25(火) 12:08
- 素敵です!!!
- 726 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/02(水) 03:06
- その日 一人じゃない書いた人って違う人!?
凄くいい感じ
他でスレ立ててないの!?
作者さん来てたら教えて欲しいな
- 727 名前:つり橋理論。 投稿日:2004/06/17(木) 22:49
- ねえ、よっすぃ。知ってる?
『つり橋理論』って。
昔、つり橋の上で実験をした人がいたんだって。
橋の上で出会った男女の相手への感情を調べてみたの。
そしたらね。
普通の状況よりも、橋の上の方が相手に対して興味を持つ確立が高かったんだって。
それはね。
人が恐怖のどきどきと恋愛のどきどきの区別が出来ないからで
つり橋を渡っている恐怖のどきどきの状態を恋愛のどきどき状態と
勘違いしちゃうからなんだって。
おかしいでしょ。
人間って……悲しいね、よっすぃ。
- 728 名前:つり橋理論。 投稿日:2004/06/17(木) 22:50
- それでね。
考えたくはないけれど。
私は、私たちの恋を振り返るとどうしても『つり橋理論』を思い出ちゃうの。
私たちもさ。
ある意味危機的状況の中で出会って。
ある意味危機的状況の中を今まで手を取り合って走ってきたよね。
日々、どきどきしながら。
恐怖刺激と戦いながら。
信じたい。
これが、本当の恋だって。
運命だって。
だけどね。
思ってしまうの。
もしかしたら、これは錯覚なのかなって。
危機的状況で出会った私たちの起こしてしまった、おかしな錯覚。
一番近くにいて。
一番力を合わせて。
一緒にこの4年間乗り切ってきたから。
スキャンダルを恐れ、事務所に抑圧され、異性との友好的な接触すらも
憚られるような生活の中だから。
だから起きてしまった、悲しい錯覚。
信じたい。
そんなんじゃない、と。
これが、本当の恋だって。
運命なんだって。
でもね。
反面で、まだその可能性を拭いきれない自分がいる。
その部分を残している限り、私はまだ戻ることが出来るから。
私って……愚かだね、よっすぃ。
- 729 名前:つり橋理論。 投稿日:2004/06/17(木) 22:52
- ねえ。
あれから、私の顔を見ないね。
あれから、私のこと避けてるよね。
よっすぃ。
つり橋の上で出会った男女は、橋から降りたらどうなっちゃうのかな。
そのまま、ずっとどきどきを持続していられる?
それを恋愛のどきどきだって勘違いし続けられる?
よっすぃ。
私が、ここからいなくなったら。
この私たちを取り囲む危機的状況からいなくなったら。
あなたは、もう、私にどきどきしなくなる?
離れていってしまう?
よっすぃ。
私を見て。
そして、答えを頂戴。
私たちの愚かで美しい錯覚は、今、終わろうとしているの?
私は。
私は、あなたのくれる答え次第で決められるのに。
待ってるの。
あなたの言葉を。
- 730 名前:つり橋理論。 投稿日:2004/06/17(木) 22:53
- たった一言、くれれば。
約束なんかじゃなくていい。
優しい、甘い言葉をひとつくれれば。
私は、つり橋に火をつけられる。
戻る道を、完全に断つことができるの。
後戻りなんて、ほんとはしたくない。
あなたと一緒に、前だけを見て進んで行きたい。
よっすぃ。
私を見て。
そして……いつかのように、優しいキスをして。
よっすぃ。
それとも。
あなたはもう、一人、この錯覚から醒めてしまったの?
間もなくくる別離の時。
最終審判。
私はまだ、降りてないよ。
つり橋の上で、まだあなたの隣りにいる。
この手を離さないで?
私から離れないで。
よっすぃ。
私は、あなたの答えを待ってます。
- 731 名前:つり橋理論。 投稿日:2004/06/17(木) 22:54
-
〜END
石川嬢卒業発表に寄せて。
石川視点でお送りしました。
- 732 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2004/06/21(月) 00:17
- 久々にグッときました
つり橋理論の比喩もうまいし、それ以上に梨華ちゃん視点の言い回しにやられました
- 733 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/21(月) 22:04
- うわぁやばい。。
梨華ちゃんの想いが・・泣けてきますね。
- 734 名前:ある日の楽屋… 投稿日:2004/07/22(木) 18:47
-
「ふじもと〜、こんなところで寝てるとカゼひくぞ〜」
「んぅ…?」
うわっ怖っ!
絶対ヤンキーの目つきだよ、この子は。
普通の時にこんな顔されたら絶対逃げるね、おいらだったら。
つーか、楽屋で堂々と寝るなっつーの。
もう収録終わったんだから、帰ればいいのに………
「矢口さん……おはようございます」
「はい、おはよう。っていうか、帰って寝ろよ!」
「いや、なんか疲れちゃったんで………」
「それにしたってこんなところで……ほら、帰るよ」
「え〜、かえりたくな〜い。美貴の家遠いも〜ん…」
なんだコイツ、小学生か?
いや、最近の小学生のほうがよっぽどマシだな。
キッズの子たちのほうがしっかりしてるもん、マジで。
- 735 名前:ある日の楽屋… 投稿日:2004/07/22(木) 18:47
-
「じゃ、おいらのウチ来るか?」
「いや、それもっと遠いじゃないですか………」
「それがイヤだったらさっさと立て〜!」
「え〜〜、……………あっ!!」
「な、なに!?どうしたの?」
なにかをひらめいたらしく、携帯をとりだしていじっている。
そうかと思えば耳にあてて…電話?
「あ〜、もしもし。今、テレビ局いるの。そう、収録終わったところ。
家まで帰るのめんどくさいから今からそっち行くね」
それだけ言うと、さっさと電話を切ってしまった。
呆れているおいらの顔とは対照的に、いつのまにかはじけそうな笑顔になっている。
- 736 名前:ある日の楽屋… 投稿日:2004/07/22(木) 18:48
-
「じゃ、そういうわけなんで。おつかれさまでした〜矢口さんっ!」
おいらのことなんか目もくれず楽屋から出て行く。
急にテンション上がってるし。
電話の相手はどうせあの子だろう。
……まったく、ラブラブなこって。
「まったく………あれじゃ、あややも大変だ」
从‘ 。 ‘从人川VvV从 〜fin〜
- 737 名前:ある日の楽屋… 投稿日:2004/07/22(木) 18:48
-
お粗末さまでした。
なんか唐突に書いてみたくなったんで書いちゃいました。
何気にseek初挑戦だったりします。
- 738 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/29(木) 14:04
- あやみき(・∀・)イイ!!
- 739 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:35
-
「ふぅ・・・暑っつ〜」
ここはあたしんち。時間は午前1時。
部屋のベッドでは矢口さんがスヤスヤと眠っている。
反対になかなか寝付けなかったあたしは、こうしてベランダに出て夜風に当たっていた。
まぁ、あんなことした後だし、それに久しぶりだったから
気持ちが高ぶってて眠れないのかもしれないんだけど・・・
なんとなく原因は他にある気がして。
- 740 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:35
-
いつもの癖で空を見上げる。
無限に広がるこの空はどんなときでもあたしを包んでくれる。
見るたびに心が洗われてすごく落ち着くから、あたしはなにかあると夜空を見る。
月はコロコロと表情を変える。
今の月は、なんだか寂しげ。ついでにあたしの心も。
- 741 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:36
-
なんでだろう、なんでなんだろう・・・
あたしには矢口さんという愛しい人がいるっていうのに。
仕事に行けば14人の仲間が、今はハローのみんなも一緒だっていうのに。
・・・こんなにも寂しいのはなんでなんだろう
薄々気づいてはいるんだけど、それを認めることができなくて。
認めてしまうとあたしが、あたしの心が壊れてしまう気がして。
それが怖くて、いつものように思考を止める。
- 742 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:36
-
「よっすぃ〜・・・どうしたの?」
ぼんやりと風に当たっていると矢口さんが起きてきた。
まだ半分夢の中にいるのか眠たそうな目をこすりつつ、
フラフラした足取りでこっちにやってくる。
「すいません、起こしちゃいましたか?なんか眠れなくて・・・空、見てたんです。」
そう言ってまた外に目を向ける。
その瞬間、横からギュッと抱きつかれた。
- 743 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:38
-
「矢口さん?どうしたんですか?」
「・・・だってよっすぃ〜、すごく悲しそうな顔してるんだもん」
その言葉にあたしは苦笑いを浮かべる。
矢口さんの方がよっぽど泣きそうな顔をしているのに。
「何言ってんすか。矢口さんと一緒にいるのに悲しいわけないっすよ」
心の中を悟られないように、少しふざけて正面から抱き返した。
- 744 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:39
-
「そうじゃなくて・・・よっすぃ〜、最近悩んでるみたいに見える。
いつも通り振舞ってるからみんなは気づいてないかもしんないけどさ、
矢口、一応恋人なんだよ?
いっつも見てるのに気づかないわけないじゃん」
矢口さんはまっすぐあたしの目を見つめている。
ははっ・・・全部ばれてら。
さすが矢口さん、勘が鋭いですね。でも打ち明けるつもりはないんです。
今はまだ、このままがいい。
訴えかけるように笑顔を向ける。
そんなあたしを見て、矢口さんはまたさっきの表情に戻ってしまった。
- 745 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:40
-
「矢口さ・・・」
「よっすぃ〜・・・お願いだから矢口の前で無理しないで。
無理して笑わなくていいんだよ。
同期にしかわからない想いってあるよね。
でも矢口ね、よっすぃ〜の気持ちは痛いくらいわかるんだよ。
去年の5月、圭ちゃん卒業の時の矢口と一緒だから・・・
今度は矢口が支えてあげる」
矢口さんのその言葉が、その優しさが、
あたしの中で知らず知らず我慢していた感情の糸をプツリと切ってしまった。
突然溢れてくる涙で目の前がぼやけてくる。
- 746 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:41
-
「あたし・・・あの2人の卒業、聞いたとき、すごいショックだった、んです・・・
なのになんか、淡々と、そのこと聞き入れてる自分がいて・・・
梨華、ちゃんが、泣いちゃって、そしたらつられて、辻も加護も大泣きして、
あたしがしっかりしなきゃって、3人を支えていかなきゃって、思って・・・」
矢口さんはつっかえつっかえ話すあたしをしっかり抱きしめていてくれた。
話しながらも流れ出す涙は止まることを知らない。
「楽屋とか、収録とかでは別に普通、なんですけど、
なんか、1人になったとき、とか家に帰ったりすると、寂しくて仕方なくて・・・
でも4期の4人でいる、のも、もう少しだから、楽しく、明るく過ごそう、って思って・・・」
「うん・・・よく頑張ったね、よっすぃ〜」
「・・・っく、うぅ・・・」
もう止まらなかった。
矢口さんの肩に顔をうずめて必死に声を抑える。
- 747 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:57
-
どれくらいそうしていただろう。
数分にも数十分にも感じられた沈黙を先に破ったのは、矢口さんの方だった。
「矢口はね、ミニモニ。もあったから、結構長い時間あの子達と過ごしてきたんだ。
だから他のメンバーよりも・・・なんていうんだろ、情が深いっていうか・・・
とにかく本当の妹みたいに思ってるのね。
いたずらしたり人の話聞かなかったりして、矢口怒ってばっかだったけどさ、
なついてくれてすごく可愛かった。
楽屋からあのうるさい2人がいなくなっちゃうなんて、まだ信じられないけど・・・」
「でも大丈夫だよ。辻加護はもちろん、娘。だってどんどん新しくなって輝いていくんだから。
今までだってそうだったでしょ?
裕ちゃんが卒業しても、ごっつぁん、圭ちゃん、なっちが卒業したって
うちらは走り続けてる」
「よっすぃ〜が思ってる以上に同期の絆って強いんだよ。
今はつらいけど・・・前見てさ、頑張っていこうよ。
・・・よっすぃ〜は1人じゃないんだから。
みんなもいるし、矢口がいる。みんなに頼っていいんだよ。忘れないで」
- 748 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:58
-
なんでこの人はあたしの欲しい言葉をくれるんだろう。
なんでこんなにも優しいんだろう。
なんでこんなにも・・・
あたしは泣いた。ずっと我慢してきた感情をすべて吐き出すかのように、泣いた。
その間も矢口さんはずっと、あたしの手を握っていてくれた。
小さくて大きな手にやっぱり大人だなぁ、って、頼れるなぁ、って思った。
- 749 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 21:59
-
「・・・すいません。もう平気です」
「ん、よかった。なんか飲む?とりあえず部屋は入ろっか」
なんかお互い照れくさくってまともに顔が見れない。
でもこれだけは伝えたくて。
部屋に戻ろうとする矢口さんの手を引いた。
振り向いた矢口さんの唇に短いキスと・・・
「ずっとそばにいてください。矢口さん・・・愛してます」
- 750 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 22:01
-
- 751 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 22:01
-
「よっすぃ〜、早く早く!!」
「待ってください!もうちょっと・・・」
「遅刻しちゃう〜!もう、収録9時からなんてすっかり忘れてたよ」
「はい、おっけーっす」
「よし!じゃあ今日も1日・・・」
「「頑張っていきまっしょい!!」」
- 752 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 22:05
- ―END―
- 753 名前:レイラ 投稿日:2004/08/01(日) 22:07
-
ありがとうございました。
代々木に行けなかった寂しさをこのストーリーにぶつけてみました。
4期、本当に大好きだぞー!!
お目汚し失礼いたしました。
- 754 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:00
-
いいらさん
- 755 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:00
- 久しぶりになっちの顔を見た瞬間ぶあっと涙があふれてしまって、その場で声を上げて泣きじゃ
くってしまった。その間、なっちは困ったようにあたしの頭を撫でていた。
クーラーのしんとした空気が心地よい。外を出たときの眩暈がするほどの強い日差し。木々に
宿る生命が輝いている。生きてるなぁなんて思う。毎年色々起こって、それでもこの季節がくる
と湧き上がる高揚感。なっちは嫌いだというけれど、それでもあたしはこの季節が1番好きだと思う。
わんわんと泣いた後に、そんで、どうしたのさ?なんてわかりきってるようなふりしたなっちと、
窓から見える夏の太陽が、重なって。あたしは、いいだかおりは、この人の中にいっぱい影を
みているんだなと思った。
泣いたのには理由がなくて、でもただ苦しくて悲しくて痛くて辛くて、もうだめだ、泣ける。泣く。
太陽にあたると、影は、いっそうと濃くなる。
- 756 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:01
- なっちが好きだ、愛してる。そんなことはずいぶん前から知っている。死にたくなるくらい好き
だったり、のんちゃんの次くらいに好きだったり、タンポポくらい愛しかったり、道に生えてる雑
草くらいしか好きじゃなかったり、松田聖子の方が好きだったり、そんな色々な時期を越えて、
今も好きなんじゃないかな?
そんな長年の葛藤をこの人はずっと見透かしてきているんじゃないかとたまに思う。口には絶
対ださなくて、いつも知った風に微笑むだけで、腹が立つ。
泣き終わったあたしを愛しそうに見てるこの人の前で、勘違いしないでと、久しぶりにあったの
が嬉しいとかじゃなくて、混乱したとかじゃなくて、ただ込み上げてくる、あたしという人間が、生
が、苦しくて悲しくて辛かったから泣けたのだと叫びたくなる。違うんだとこの人の自信を崩した
くなる。でも、伝えない。口から出る言葉は違う言葉。
「あいしてる」
「しってる」
- 757 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:02
-
あべさん
- 758 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:03
- あのね、なんかさ、アンタ見てると苦しいの、辛いからもう見たくない。なんていきなりキレ気
味のメールが仕事終わりのケータイに入ってて困った。
今年は去年より暑くていらいらする。暑いのヤダ。本気でイヤだ。太陽が憎い。でも涼しくなっ
てきた夜は好き。月とか綺麗に見えた日にゃあ最高だべってスタジオの窓から見えた夜空に、
込みあがってきた笑みのまま、ケータイチェックしたら4件くらいはいっていて、一番に名前みつ
けて開いてみたら、またいつもの不思議ワードで、眉毛が一気に下がった。
- 759 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:03
- 玄関からでてきたかおりはいつもと一緒で、というか、いつもより数段ごきげんさんで、なんだこ
いつと思う。振り回したいのかな?なんか、いつもなっち振り回されてる気がする。人の顔見て
泣いたりすんだよ、この人、たまに。死人のような扱いだ。何考えてんだろう。不思議だ。綺麗
なのに。変。メール読んで慌ててかおりの家に来たなっちを笑ってる。ムカツク。
かおりはいつもそうだ、いつも、いつもいつもいつもいーっつも、自分だけのセオリーつくって世
界つくって、それにはみ出したら、暴走する。怒る。サラダにごまドレッシングをかけたら怒るし、
から揚げにレモンしぼっても怒る。ひどい。
でも、ほんとにだめなときとか、この人がいないとだめだ。
癒しとかじゃなくて、家族じゃなくて仲間じゃなくて友達じゃなくてさ。
- 760 名前:まんなからへん 投稿日:2004/08/09(月) 04:05
- ソファーに腰を下ろして、かおりの横でかおりが好きだという気持ち悪い色したハーブティーを
飲んでいる。暖かい。ほくほくする。隣ではハーブティーを一口飲んでホッて安心したような、リ
ラックスしたような、心底和んでるようなため息をついているかおりがいて、さっきのあれはなん
なのだ、おまえはなにがしたいのだ、なっちになにをしてほしいのだ、このままじゃ嫌なのかと
かそういうことをぐるぐる考えて、ムカツクようなでもハーブティーのせいか、いらいらしなくて、
むにゃむにゃする。
窓に目をやると部屋の中まで入ってきそうなくらい輝いてる月が微笑んでる。
ソファーの上に正座して、かおりのほうを見ると、呆けた顔したかおりがなっちを見る。
「なっちも苦しい、切ない、ドキドキして、苦しい、辛い」
じっと見つめたら、ぎょっとした顔して目をまんまるに大きく見開いて固まってる。
ほんとに失礼。
かおりは?と聞いたら、ふくれた顔して、苦しいよと答えた。変な人。
オワリ
- 761 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/17(金) 21:28
- 誰か、みきやぐを書いてもらえませんか?
- 762 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/05(火) 10:28
- 「まんなからへん」がすごくよかったです。
言葉では言い表せないくらい、すごくよかった。
こういう文章書けるようになりたい。
- 763 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 00:28
- めっちゃ短いやぐみきです。
- 764 名前:青 投稿日:2004/11/06(土) 00:28
- 「藤本、ちょっと・・・」
おいらは、撮影が終わって楽屋に向かおうとしていた藤本を呼びとめる。突然、呼び止めたもんだから藤本は撮影の時のスマイルから素の顔に戻っていた。
「 ? なんですか、矢口さん?」
「ちょっとこっちで・・・・」
藤本の衣装の裾をちょこっと引っ張って、スタジオの片隅に連れて行く。藤本はきょとんとした顔をしているが、これから話す内容はおいらにとって大マジメだ。
周りに誰もいないことを確認して話を始めることにした。
「・・・藤本に聞くけどさ。・・・松浦、何があったんだよ?」
「へ?亜弥ちゃんですか?」
「そう。最近、明らかにおかしいだろうが」
「そう・・・ですか?」
小首を傾げるミキティ。・・・・・・てか、なんだよ。結構、女の子らしい仕草出来るじゃんか。
「そうだよ。松浦、あんなぶっ壊れキャラだったか?もっと、おしとやかな、まさに『アイドル』って感じだったじゃんか」
「いやぁ・・そ〜ですかぁ・・・前々からあんな感じでしたよ」
「そりゃ、藤本の前ではそうかもしれないけど、テレビではあんなコトしなかったじゃんか」
「あんなこと?」
「ほら・・・ちょっと、梨華ちゃんっぽいこと!」
さらに小首を傾げるミキティ。・・・・・・なんでその仕草を本番中にやらないかな〜。その仕草を本番中にやったら、今の梨華ちゃんのポジション狙えるんだけどな。ま、無理があるか・・・。
- 765 名前:青 投稿日:2004/11/06(土) 00:29
- 「矢口さんの考えすぎですよ〜」
「そうかなぁ〜。それにしてはちょっと変だと思うんだけどなぁ・・・」
でも・・・松浦に一番近い存在のミキティがそう言うならそうなのかもなぁ。おいらの考えすぎか?でも・・・・・・。
「・・・矢口さんって、優しいんですね」
「へっ?・・・・・な、なんで?」
「ほら、メンバー以外の亜弥ちゃんにまで気を使って・・・」
「そ、それはさ、おいら面倒見がいいから・・・」
そうそう、おいらは昔から面倒見だけは良くて・・・
「・・・・・・なんで、美貴だけを見てくれないんですか?」
・・・・・・はい?
「ふ、藤本・・・おまえ・・・」
「さ、先に楽屋に帰りますねっ」
それだけ言うと藤本は顔を赤らめてその場を走り去っていってしまった・・・。
・・・な、なんだよっ!松浦だけじゃなくて、今日の藤本もいつもより変じゃんか!なんであんな女の子っぽいんだよ!なんであんな可愛いセリフ言うんだよ!ふ、藤本らしくないぞ!
でも、ほんのちょっと。
ほんのちょっとだけ、おいらの頬も赤くなっちゃったってことは藤本に秘密。
『青』おしまい
- 766 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 00:29
- ほいっ
- 767 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:44
-
あなたが
身動きがとれなくてしまって、縮こまっている私に
差し出した手。
本当に、本当に、あったかかった。
その手を取った瞬間から
私は
- 768 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:47
-
「こら、人の話聞いてんの?」
「…ごめんごめん。」
まったくもう、しょうがないなぁ。そう言って笑う美貴たん。
出会った時から変わらないその笑い方。
彼女の愛情が、優しさが、慈しみが、ほわ〜って滲み出てくる様な、笑い方。
私は左手にぎゅうっと力を入れて、視線をそらした。
「どうしたぁ?何かあった?最近…」
「…なんでもありましぇ〜ん。」
フッと目を細めて、心配そうにあたしを見てくる。
- 769 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:47
-
…ただ、あの頃に戻りたくて…
なんて思った事口に出せなくて、私は誤魔化す様に繋いだ手をブンブンと振った。
- 770 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:48
-
空は真っ暗で、どんより雲。
外灯が煌々と幾つもついている。
雨がほんの少しパラパラと降ってて、行き交う人はちらほらと傘をさしている。
私達は一つの赤い傘を分け合って。
ここは紫陽花が有名な所。
- 771 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:50
-
『明日のオフさ、紫陽花見に行こうか。』
昨日そう言われて、たんとデート♪デート♪なんてはしゃいでた私は、
てっきり昼からラブラブで行くと思ってたのに
…うちを出たのは午後5時。
…あのね、お花を見に行くんだから、明るい内に見るのが普通ってもんじゃあないんですか?
こんなんじゃお花なんて見るどころか、お花かどうかさえもわかんないじゃーん!!今日雨だし!!
5時以降出発とか、まだアフターファイブを楽しむOLじゃないって〜の!!ばかーー!!
- 772 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:51
-
って家を出る前にぎゃーぎゃー噛み付いてしまった私に、たんはな
んだか含み笑いを浮かべて仁王立ちして、人さし指をぶんぶんと横に振った。
『チッチッチッ…甘いよ、亜弥ちゃん。』
『何が!!』
『ふふん…亜弥ちゃんの機嫌を損なう事を、美貴がすると思う?』
『するね。』
ははっとあの笑い方で笑って、しょうがないなーとか言って顔を近
付けてきて、くしゃくしゃぁっと私の頭を優しく撫でるたんはこう言った。
『魔法にさぁ…かかっちゃってみたくない?』
ふっ、何をそんな、嬉しそうに言っちゃって。
って口では皮肉を言うものの、ちゃっかり美貴たんの笑顔にこう…
でも上手くあやされた気がしないでもない。
- 773 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:53
-
「ついたー、ここ、ここ。」
そんな事を思いながら、目線を足下に流していたあたしは、たんの声で顔を上げた。
「…うっ…わ…ぁ」
暗闇の中、ライトアップされた沢山の白と紫が、階段の側で高貴に
映えている。
紫陽花の、花。
視界に飛び込んでくるその様に、声にならない声をあげた。
- 774 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:55
-
「行こ。」
入り口の階段を二つぐらい先に上ったたんが、私に手を差し出す。
その左手をきゅぅとなりつつも取り、引っ張ってくれているたんの後ろ姿を見つめる。
石でできた風流な階段を上り終えると、そのまま道が遠くまで続いている。
その道をなんだか守る様に咲いた花々が、風でふわりと舞った。
道の周りは見渡す限り紫陽花で埋め尽くされている。
この道を私達は、ホワンと歩いていく。
足が地に着いていない感じがして、まるで現実味の無いこの景色に
何故か竦んでしまって、歩くペースが遅くなる。
たんは一度私を見て、手の繋ぎ方を変え、何も言わずに歩調を合わせてくれた。
- 775 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:57
-
たんの横顔を見ると、彼女は遠くの景色に目を細めていた。
その表情がなんだか儚くて、そのまま背景に溶けて行って、消えちゃいそうな気がして…
「たん…」
「んー、何?」
「ずっと…ね…」
「一緒にいるよ?」
私が言おうとしていたことを先に言ったことに驚くよりも、紫色に笑う彼女の
艶やかさに、目を見張った。
右手をきゅっとされる感覚が走って、脈がトクントクンと早くなる。
たんにドキドキしているのかな?
親友なのにね…今日は私、おかしいのかな?
立ちこめる紫陽花の匂いで更に、酔ってしまう。
クラクラする。
心音が増す。
- 776 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 01:59
-
しばらく歩いていると、右手の方に少し高台になっている広場が見えた。
二人で、眼下に広がる景色を暫く眺めていた。
遠くに、車の行き交う大きな橋が見える。
木々が、呼吸をしているかの様に、生きて見えて。
照明が紫陽花に反射して、あたりを紫色に淡く染めて。
なんだか色んな事を思い出してしまう。こんなに奇麗だから。
暗闇の中、頑張って、咲いているから。
- 777 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 02:01
-
風がひゅんと一瞬通って、たんの造形を崩した。
「亜弥ちゃん」
「…?」
「紫陽花の花言葉って知ってる?」
紫陽花の花言葉って “永遠の愛” なんだよ
「亜弥ちゃんがこれから大人になっても、遠くに行っちゃったとしても、何があっても…
美貴からの愛情は変わんないよ。」
「雨が降ったら、美貴んとこにいつでも雨宿りしにきなよ」
- 778 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 02:02
-
どうしてこの人は。1番分かっていてくれて。
そう言って笑うあなたに、私は音も無く涙が溢れてきて、止まらなかった。
- 779 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 02:03
-
- 780 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 02:04
-
あなたが
身動きがとれなくてしまって、縮こまっている私に
差し出した手。
本当に、本当に、あったかかった。
その手を取った瞬間から
私は魔法にかかった様に
また、動き出す事ができるんだ。
- 781 名前:紫陽花 投稿日:2004/11/10(水) 02:05
-
「わたーらせ、ばーしでー見る夕日を♪」
おうちへの帰り道、美貴たんが私の曲を口ずさんだ。
たん…ゆっくり、一緒に。
〆 終 〆
- 782 名前:黒猫 投稿日:2004/11/10(水) 02:10
-
最近のあややを見て一つ。
最近書き始めた作者です。失礼しました。
- 783 名前:黒猫 投稿日:2004/11/12(金) 06:10
- 紫陽花の花言葉について補足
一般的に移り気、冷淡等と言われているみたいなのですが
何があっても愛し続ける、辛抱強い愛という説もあります。
永遠の愛について、黒猫はそう解釈をいたしました。
再度お目汚し、失礼しました。
- 784 名前:名無し川 投稿日:2004/11/12(金) 16:54
-
ここにあげさせていただきます。
いしよしです。
- 785 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:55
-
―――ねぇ、梨華ちゃん
ミモザ、っていう花を知ってる?
タンポポによく似た、とっても綺麗な花なんだよ
そして、ミモザの花言葉はね・・・
- 786 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:56
-
『ミモザ』
- 787 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:56
-
11月の秋の空。
コンビニには一足早くクリスマスツリーが飾られ、街は冬を迎えるために浮き足立つ。
恋人たちは寒さに肩を寄せ合い、愛の言葉を交わす。
あたしも一応オンナノコなわけで、そういう雰囲気に弱かったりするんだ―――
「・・・冬って白って感じがするね」
突拍子もない彼女の発言には4年も経つと慣れてきて。
あたしは雑誌の新作映画の記事に目を走らせていた。
クリスマスのページなんてとっくに熟読していて、
向かいに座るのんきな彼女とクリスマスの過ごし方について語り合いたかったけど、
モンブランにパクつく彼女にはまだ打ち明けられなかった。
- 788 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:56
-
「よそ見するとこぼすよ」
2、3秒発言に悩んだ挙句突いて出た言葉がコレだった。
最近何だか立場は逆転していて、あたしは保護者のようだった。
「よっすぃーって、お母さんみたい」
ふふって微笑んで、その表情にも見とれてしまうけど、
素直じゃないあたしはまだまだ梨華ちゃんにはかなわないって思う。
年齢を重ねるごとに落ち着きを得て、今じゃ彼女の考えてることもうまく掴めないでいる。
「肝っ玉母さんって、よく言うでしょ? そんな感じ」
冗談を付け足して紅茶を口に含むと、梨華ちゃんはどうでもいいように外の景色を見た。
あたしは少しだけムッとする。
とっくに新作映画なんてどうでもよくなっていた。
- 789 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:57
-
きっと仕事が入っているだろうから。ふたりだけのクリスマスを過ごそう?
去年は梨華ちゃんの提案で今頃だっただろうか、少し早めのクリスマスを祝った。
キリストを振興しているわけじゃないのにね、何て皮肉を言ってみるあたしに、
まぁいいじゃん、って笑いながらキスを求めた彼女。
今年は?
来年は?
その先は?
大人びた彼女の表情から答えを探すけど、その答えどころか今の気持ちまで分からない。
- 790 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:58
-
そんな彼女は大事そうに鞄から台本を取り出して、見て見てって見せびらかす。
「何、ソレ」
「今日もらったの、台本」
その仕事が決まったとき、嬉しそうに一番にメールを届けてくれた。
普段メンバーから棒読みってからかわれるだけに、今度のドラマは少し気合が入っている様子。
「・・・ガラシャって何なのさ」
「えっとね、明智光秀の娘で・・・」
得意気に話すのを見て、あたしはハッキリ言って面白くない。
聞いてみると結婚式のシーンとかあるらしい。
分かってる。
分かってるんだけどさ。
結婚・・・っていう現実を突きつけられると、彼女のことだからすぐ影響されるのが目に見えている。
- 791 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:58
-
「よっすぃー!ちょっと聞いてるの?」
「あー・・・歴史とかあたしキライだし」
「まったく・・・」
「バカで悪かったね」
ぐいぐいと、持っていた情報誌を鞄の奥底に突っ込む。
クリスマスなんて、大嫌い!
「ウチ、来る?」
「・・・やめとく」
一度曲がったヘソはなかなか直ってくれない。
乱暴にジャケットのポケットに喫茶店のレシートを突っ込み、ずんずんと歩き出す。彼女を置いて。
「ねぇー、どうして怒ってるの?」
「別に、怒ってない」
「私、何かしたかなぁ」
「・・・・・・・・・」
長い時間をかけて分かり合っていたつもりでも、
うまくかみ合わないこんな時、どうすればいいのかなんてあたしは知らない。
もっとオトナで梨華ちゃんを守ってあげれるような人ならば、気の利いた台詞のひとつでも言えるのに。
- 792 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:59
-
「白無垢でも何でも着ればいいじゃん!」
別れ際に放った台詞は理想とはかけ離れ、嫉妬そのものだった。
- 793 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 16:59
-
次の日仕事で会えるから、きっと梨華ちゃんは分かってくれるから、
なんて勝手な思い込みで連絡を取らないことが多い。
だけど。
それはぜんぜん間違いで。
ホントに言いたいことを伝えることは重要で、でも予想以上に難しくて。
それでも今一緒にいるのは、どうしてだろう?
愛の形なんて確かめようもなくて。
あたしはやっぱり、携帯に触れることはできなかった。
- 794 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:00
-
曖昧に事を濁すのは知らない振りをしていれば勝手になるわけで。
案の定次の日も、会えば笑って話せることができた。
だけど日が経つにつれて、あたしの心のモヤモヤは増す一方で。
「えへへ。」
「気持ち悪ィんだって、石川」
「石川とか呼ばないでよ」
「だって石川じゃん、名前」
梨華ちゃんは『石川』と呼ばれることを嫌う。
彼女の中で呼び名はどんな位置づけなんだろう?
呼び名やあだ名なんて、他の人と区別するためのものじゃん。
ね?
- 795 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:01
- 「そんなこと言ってると京都から帰ってきてやらないから」
「っそ。どうぞご自由に。」
そう。彼女はもうすぐ例の白無垢を着に京都へ仕事に行く。
「かわいくないわねー。」
「かわいくなくって結構ですっ」
「もう、知らないっ!」
ズカンと椅子から立ち上がり、こんこんたちの元へ駆けていく。
あたしは足を振り上げて、机の上にデンと構えた。
何だよ。
何だって言うんだよ。
「花嫁衣裳くらいでキャーキャー騒ぐなよ!」
「・・・・・・?」
あたしに向けられた梨華ちゃんの背中に、あたしは呼び止めるようにしてその言葉を投げつけた。
振り返った梨華ちゃんは、目を見開いて驚いていた。
あたしだって、何でこんなことを言ってるのかわからない。
けど、仕事だとしても、ヤだったんだから。
断れない事だって、分かってる。
分かってるからこそ、梨華ちゃんの意気込みとかも分かってるからこそ、イラついてるわけで。
- 796 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:02
-
「そんなに花嫁衣裳が着たかったら、あたしが着せてやるよ!!!」
・・・はっ。
あたし、今何を口走った・・・
ちょ・・・。
「なっ・・・!何言ってんの、バッカじゃない?!」
「ち、違う。」
「どういう意味か分かってんの?しかもこんなトコで叫んで!」
「待ってよ。今のは・・・!」
「信じられない。コドモじゃんよっすぃーって!」
「違ッ」
- 797 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:03
- バタバタとマコトを連れて楽屋を出て行った。
何で、そこでマコトを連れてくんだよぉ・・・
あたしはそんなことよりも、さっきの自分の発言に落ち込んだ。
いくら、ヤだったからって、あんなことを口走るなんて。
梨華ちゃんの言う通り、あんなことで嫉妬すれば、子供だっていわれても仕方がない。
視界に入ったミキティのニヤニヤした顔が、イライラをつのらせた。
あたしは机に伏せて、MDのイヤホンを耳に突っ込んだ。
くそっ・・・。
昔から、聞き分けの言いおとなしい子だってよく言われた。
ヤなことも、体外は我慢することができたのは、弟の存在があったからだろう。
オトナに混じって、真剣に仕事をするようになって、その大切さを学んだ。
初めは躊躇っていたことも、仕事だと割り切れるようになってからは神経が麻痺したように何でもできた。
- 798 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:03
- だけど。
梨華ちゃんのこととなると。
梨華ちゃんが絡んでくると。
あたしは保っていたバランスを崩される。
ただの同期だって、
ただの仕事仲間だって、
ちょっとカワイイ身近なオンナノコってだけなのに。
あたしの中の知らない『吉澤ひとみ』が、メキメキと頭角を現す。
こんな嫉妬深くて、ワケわかんないことを口走ったりするし、
だけど一番手放したくないのはどうやっても梨華ちゃんだし、
ただ、可愛くて。
可愛くてしょうがない。
カッコ悪いあたしが、どんどん見えるようになった。
- 799 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:04
- 「―――恋って、カッコ悪いもんじゃない?」
「恋とか言うな。キショイ」
「恋だって。よっちゃんさんのは明らかに恋じゃん。」
レッスン室で、フロアに座って、あたしとミキティは話していた。
少し遠めでは後輩たちに熱心にダンスをしている梨華ちゃんが見えた。
「ヤキモチとかって、嬉しくない?」
「カッコ悪ィよ、んなもん」
「梨華ちゃんは嬉しいはずだよ?」
「・・・・・・・・・」
「くくく。」
「何だよ!」
「いや、『あたしが着せてやるよ!』って。プッ。」
「うるさい!」
真っ赤になって怒鳴るあたしを、ミキティはずっとからかった。
絶対面白がってんな、コイツ。
あたしの落ち込みは、どん底へ。
- 800 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:04
- 「あ。」
「何。」
「いいコト思いついた!」
「絶対ヤだ。」
「ちょっと耳貸して、よっちゃんさん」
「ヤだっつってんのに・・・」
「あのね・・・・・・すんの。」
「アホか!できるわけないじゃん、んなの!!!」
「梨華ちゃん、泣いて喜ぶよ。」
「恥ずいってば」
ミキティの名案は、あたしにとったらこっ恥ずかしくてとてもできそうになかった。
どこが名案なんだよ、どこが。
耳まで赤くなっている気がして、ぴんっと耳を触ったら、梨華ちゃんと目が合った。
で、できるわけないよ。
あたしは慌てて目をそらした。
少し気になって、もう一度梨華ちゃんを見たら、矢口さんに嬉しそうに腕を絡めていた。
『梨華ちゃん、泣いて喜ぶよ。』
ミキティが、もう一度あたしに囁いた。
- 801 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:05
- あたしはその日ダッシュで仕事を終えて、閉店間際の宝石店に駆け込んだ。
汗だくになりながら、必死で商品を選ぶ。
もっと、ちゃんとしてじっくり選びたかったけど、そうは言ってらんなかった。
今日、彼女が旅立つ前じゃないと。
誰かのモノになる前に、あたしがずっと手を離さないように、しっかり捕まえておくんだ。
「こちらでよろしいでしょうか?」
「は・・・はい」
店内の明るい照明に照らされて、キラキラと輝くリング。
まるで梨華ちゃんみたい。
シンプルで、それでいて梨華ちゃんの小さな手に似合いそうな。
あたしはすごくどきどきして、それを受け取った。
「そのままでいいですっ!」
包装も何も断って、ぎゅっと手のひらに握り締めた。
- 802 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:05
- 見上げれば、11月の秋の空。
星も、少しずつ瞬き始め、油断しているとくしゃみもでる。
早く。早く。梨華ちゃんの元へ。
これを手渡したとき、どんな表情をするのだろう。
人ごみも掻き分けて、がむしゃらにひた走る。
ぐちゃぐちゃになる髪も、零れ落ちる汗も、忘れていた。
頭の中は、梨華ちゃんだけ。
いろんな梨華ちゃんの顔を思い出していた。
気づけばあたしは、梨華ちゃんのマンションの前まで来ていた。
着ていたパーカーを脱ぎ、上がりきってしまった息を落ち着かせようと努力する。
だけど、これから自分のしていることに緊張して、まったく落ち着かない心臓。
- 803 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:06
- 意を決して、梨華ちゃんに電話をかける。
告白したときよりも、ずっとずっと緊張した。
『・・・はい』
4コール目で電話に出る梨華ちゃんは相変わらずで。
舞い上がっていた自分が、少しクールダウンしたような気がした。
「今、マンションの前にいるんだけど」
『上がってきたら?』
「ううん、下で会いたい」
『・・・わかった、今行く』
もう一度、ポケットの中で拳を握る。
丸い形をしたそれは、勇気をくれる。
梨華ちゃんに、想いを伝えたかった。
それは、たった一つの願い。
どうか、伝わりますように・・・。
- 804 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:06
- 「なんでよっすぃー半袖なの?!」
素っ頓狂な叫び声を上げた梨華ちゃんは、あたしに駆け寄ってきた。
あたしはそんなことも頭に入らず、目の前の梨華ちゃんを映すだけ。
「汗、すごいかいてるじゃない。風邪引くよ・・・。」
「・・・梨華ちゃん」
「何?」
「大好き」
「・・・うん」
ちょっと照れたように俯いて、あたしの手を取った。
当てもなく、歩き出す。
- 805 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:07
- しばらく歩くと、少し大きな公園に着いた。
湖のある、綺麗な公園。
「ごめんね」
「?」
仕事なのに、嫉妬しちゃったりして。
わけわかんないこと、叫んだりして。
本当に、梨華ちゃんが好きなだけなんだ。
だから、だから・・・。
「もう、いいよ」
「えっ」
ずっと繋いでいた手を解かれて、梨華ちゃんは湖に向かって歩き出す。
あたしはその後姿さえも、美しいと思った。
- 806 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:08
- 「星が、湖に映って、キレイ」
「うん・・・」
蒼く、動きが止まったように静かな湖が、
チカチカと小さく輝く星たちを、鏡のように映していた。
誰も通りそうにない夜の公園。
しんと静まり返ったこの場所は、そう、あたしが初めて梨華ちゃんに告白した場所でもあった。
きっと、今梨華ちゃんも同じことを思っているだろう。
やわらかく微笑んで湖を見つめ、愛しそうに手すりをなでていた。
- 807 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:09
- 「上」
「?」
「上見て、梨華ちゃん」
「あっ・・・」
あたしが指差した方に目を向けて、キレイ、と呟いた。
そっと背後に近寄って、きらきら光る星を二人で眺めた。
「東京の空でも、ちゃんと見えるね」
「うん・・・」
あたしは絶対、この東京の星空を忘れない。
いくつになっても、しわくちゃのおばーちゃんになっても、絶対。
本気で梨華ちゃんを愛した、この時を。
- 808 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:09
- 「・・・取ってあげようか?」
「星を?」
あたしは うん、と力強く頷いた。
始め冗談だと笑っていた梨華ちゃんだったけど、真剣なあたしの表情に何かを感じたのかもしれない。
少し表情を固くした梨華ちゃんを確認して、あたしは口を開いた。
「取ってあげるよ。ひとつだけ。」
「じゃあ、一番キレイなのを取ってください。」
「リクエストにはお答えできません。
ついでに言うと取ったその星は、梨華ちゃんが気に入ってくれるかどうか自信がありません」
「ふふふ。絶対文句は言いません。」
ニッコリ微笑みあって、あたしはちゅっとキスを落とした。
「ちゃんと、見てて・・・」
あたしはぐっと地面にしゃがみこむと、思い切り高くジャンプした。
本当に、空に手が届くくらい、それを願って高く飛んだ。
- 809 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:10
- もしも背中に鳥のような翼があったなら。
簡単に、星なんて取ってあげれるのかもしれない。
もしも背中に鳥のような翼があったなら。
寒さに震える梨華ちゃんも、包み込んで暖めてあげられるのに。
ひゅっと空中で星をつかむ仕草をして、握り締めた右手を梨華ちゃんに差し出す。
「いっこだけ、取れたよ。星。」
あたしは自慢気に、梨華ちゃんを見つめた。
不思議そうな顔をして、梨華ちゃんはあたしの右手を両手で包み込む。
触れ合ったところから伝わる、お互いの痛いくらいの緊張。
ひとつひとつ、小指から丁寧にほどかれてゆく。
- 810 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:10
- 「あ・・・」
梨華ちゃんが、小さく呟く。
広げた手のひらには、梨華ちゃんのためを想って買ったシルバーリング。
「梨華ちゃん。あたしと、結婚してください。」
「・・・・・・・・・」
「この星、ずっと梨華ちゃんの薬指にはめてて欲しいんだけど。」
「・・・よっ・・・すぃ・・・!」
「ずっとずっと、側にいて欲しいんだ。」
強く強く、見つめ合う。
月明かりに照らされる漆黒の瞳が、あたしを吸い込んでゆく。
この瞳に、あたしは恋をした。
見つめ合うだけで、あたしと梨華ちゃんは恋に落ちたんだ。
- 811 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:11
- 指輪を受け取った梨華ちゃんに思い切り抱きつかれた。
握り締めたグーで、ドンドンとあたしの背中を叩く。
ちょっと痛い。
「キッ・・・キザだよ、よっすぃー!」
「ヘ・・・ヘヘ。」
あたしの腕の中でバカとかキザとかありったけの言葉をぶつけてくる。
「嬉しい、嬉しいよぉ・・・」
「よかったぁ」
優しく抱きしめた。
あたしの肩が少しあったかく濡れているのは、きっと梨華ちゃんが泣いちゃってるせいなんだろうな。
この世にたった一つだけの星を、最愛の人に受け取ってもらえた。
あたしも込み上げてくる何かに、涙せずにはいられなかった。
- 812 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:11
- 「・・・でね。梨華ちゃん」
「なぁにー?」
部屋の電気に左手をかざして、こっちを見てくれようともしない。
ひどくゴキゲンな彼女。
あたしはモジモジと、部屋の隅っこで落ち着かない。
だけどさぁ・・・もイッコ、残ってるんだよね・・・問題が。
「仕事で白無垢来ちゃう前にさ、着て欲しいんだけどなぁ。あたしと」
「へぇっ?!」
「だって、だってさ。一番に着るのは、どっかの俳優と一緒じゃなくって、あ、あたしと」
「だけどないじゃん、そんなのここに」
「う。実は・・・」
ミキティがどこから持ってきたのか知らないけど、
タキシードとウェディングドレス、貸してくれたんだ。
彼女が思いついた名案は、コレだった。
『あのね・・・梨華ちゃんが仕事で白無垢来ちゃう前に、よっすぃーとコスプレすんの。』
- 813 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:11
- そおっと紙袋を差し出すと、きゃあきゃあ言って梨華ちゃんは喜んだ。
「やぁーん、カワイイ!」
「ほ、ほんと・・・?」
「結婚前に着ちゃうと行き遅れるってジンクス、聞くじゃない?ちょっと気にしてたんだ、実は」
「・・・・・・・・・」
「あたしが着せてやる、って言われたのも嬉しかったよ。」
「あがっ!!!」
忘れかけていた昼間のことを思い出して、あたしは猛烈に照れた。
「恥ずかしくて、怒っちゃった。ごめんね。」
きゅうっとドレスを抱きしめて、上目遣いで謝られても。
吉澤、何でも許しちゃいますよ・・・。
てか、こんな情けないあたしのワガママ、聞いてくれるんですか?
- 814 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:12
- ハッキリ言って、びっくりするほどキレイな梨華ちゃんに、あたしは何も言えなかった。
「キ、キレイだよ・・・」
というのが精一杯で。お腹もいっぱい。
おふざけで撮った結婚写真。
案外お似合いじゃないか?あたしたち。
なんて思ったりして。
胸の奥で、幸せの鐘が鳴り響く。
次の日、梨華ちゃんは京都で白無垢姿を披露した。
誰よりも花嫁姿を先に見たのは、このあたしなんだけど。
白無垢姿も最高にキレイでした。
神様、あたしは今最高に幸せです。
- 815 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:13
- 「ね、クリスマスどうする?」
「え?」
「私、欲しいものがあるんだぁ」
「ちょっとカンベンしてよ!あの指輪すっげ高かったんだから!」
「何か言った?」
「イエ・・・何でもありません。」
吉澤家の財布は、奥様に握られることになるの、かな・・・?
- 816 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:13
-
ミモザの花言葉:優雅、友情、秘密の愛
ミモザの花が咲く春、それを花束にして 最愛のあなたへ、心を込めて贈ろう
最愛の女性、石川梨華へ―――――。
- 817 名前:ミモザ 投稿日:2004/11/12(金) 17:14
-
『ミモザ』 fin.
- 818 名前:名無し川 投稿日:2004/11/12(金) 17:16
- 失礼いたしました。以上です。
梨華ちゃんは綺麗です。それだけです。
- 819 名前:くろ 投稿日:2004/11/12(金) 18:36
- 素敵な話をありがとうございます。
冒頭から引き込まれました。
よっすぃ〜のことだから、本当にこんなことしてたりして…。
- 820 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 00:28
- そうですね、梨華ちゃんは綺麗でよっすぃはカッケーと思います。
- 821 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/10(金) 21:14
- 紅
- 822 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:14
-
目が覚めたときに目の前に広がる光景にあたしは愕然とした。
よくあるよねぇ・・・
ほら、ドラマとかでね、好きでもない人と、『勢いで』みたいにな。
でも、よくよく考えたらあんなの実際にあるわけないと思うじゃない?
・・・・・・えっ、あったらどうするって?
ないってぇ!
・・・少なくともあたしはありません。
あるわけないはずだったんだけどね・・・・・。
まさかねぇ・・・・・・
- 823 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:15
-
・・・確かぁ、昨日は中澤さんが娘の楽屋に入ってきて
「そーいやー、石川もうすぐ二十歳になるよなぁ・・・」と。
そんなことを言ってた気がするの。その時にすでにいやな予感がしたのよね、あたし。あの、中澤さんの目。そして、おもむろに人数を確認し始める指。
「ん〜、ヤグチ、カオリ、圭ちゃん・・・あとは・・・」
そしたら見事に予感的中!!あたしって、すご〜い!・・・って言ってる場合じゃなくて。
そんなこんなで飲みに連れ出されたんだよねぇ。あたし、嫌だったのに。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。梨華は悪い子です。
「・・・お〜、石川飲めや〜、飲め!・・・・」
そんなこと言ったって、無理です。
保田さんみたいにいきなりホッピーとかありえません!中澤さんも飲みすぎです!結婚できませんよ。まったく、もう・・・・
・・・でね、3杯目あたりかな?意識が飛んだの。もうヨレヨレにね。『ヨレヨレ梨華ちゃん』の出来あがり♪
・・・思い出したくないんだけど、あたしちょっと勢いあまって服を脱ぎ始めた記憶があるの。中澤さんからは「脱げ!脱げ!」って煽られたけど、確かまりっぺとかおたんが止めてくれたの。まぁ、もうその時にはほとんど下着姿だったんだけどね。確か昨日は、ちょっとすけすけでえっちな・・・・・・キャッ、恥ずかしい♪
あとぉ、ホントはデザートに白玉食べようと思ってたのにぃ、酔って意識が無かったから食べれなかったの。あのお店の白玉おいしそうだったのになぁ・・・・。残念っ!あたし、酔ってましたから!写真集買ってね♪斬りっ!・・・・・なんちゃって♪
- 824 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:15
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んで、こうなったわけなのよ。わかる?
あたしはベッドの中で何も身につけてないわけ。つ・ま・り、生まれたままに格好♪
なんかね、ちょっと肌寒いし、なんかカラダがだるいんだよね・・・。
えっ・・・どこがだるいって?
それはその・・・・・
・・・言わなくてもわかるでしょ!
部屋じゅうに脱ぎ散らかされた服やら下着やら。
あちこちに飛んだ使用済みのティッシュ。
そして・・・・
隣でね、ス〜、ス〜、寝息をたてている人がいるの。
実は・・・この隣で寝ている人、あたしが密かに恋心を抱いていた人だったの♪
『好き』って言う前に
既成事実だけ先に作っちゃったね。キャッ♪もう、梨華恥ずかしい♪
あれっ、どうやら起きたみたいです。あたしと愛し合っちゃった人が。
- 825 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:15
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「ん・・んん・・・んんっ!・・・・・」
こちらを向く愛しき人。もう、そんなに布団をはいじゃったら全てが丸見えですよ♪
「・・・梨華ちゃん・・・?」
「まりっぺ、おはよう♪」
「あれ・・・おいら・・・・・ハダカ・・・?・・・・へっ?・・・え、ええっ!えええっ!」
起きた瞬間、壊れだす矢口さん。これって・・・
「・・・矢口さんも覚えてないんですかぁ?」
「覚えてるわけないじゃんか!あんなに裕ちゃんに飲まされて・・・・。てか、梨華ちゃんは覚えてんの?」
「実は石川も覚えてないんですよ」
「そ、そーなの?」
きょろきょろと辺りを見渡す矢口さん。
もうそんなに慌てたってどうしようもない事実ですよぉ、ヤ・グ・チ・さん。
「あ、あのさ・・・」
「なんですかぁ?」
「あの・・・その・・・おいらたち、昨夜・・・・愛し合っちゃったの?」
「そうみたいですねぇ」
「梨華ちゃんと?」
「いかにも」
「マジで?」
「もしかして・・・イヤでしたかぁ?」
・・・沈黙が流れます。
まさか、矢口さん、「イヤだった」とか言わないですよね!言ったら悲しすぎるわ、矢口さん!
「あのね・・・」
「はい・・・」
「なんて言うのかな・・・その・・・・・・・・イヤだった」
「えっ!?」
・・・もう生きていけません。
さよなら・・・矢口さん・・・。
石川、あからさまに矢口さんに拒まれましたから!切腹ッ!
- 826 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:17
-
「・・・あ、あのね・・・その梨華ちゃんがイヤだったとかじゃなくて・・・その・・・」
「なんですかぁ(涙)?」
「なんでおいら、記憶がないんだろうって・・・」
「 ? どういう意味ですか?」
「だからその・・・・おいら・・・・梨華ちゃんが好きだから・・」
「!?」
「記憶がないなんて・・・・おいらのバカバカ・・・」
恥ずかしそうに下を向く矢口さん。
真っ赤になった顔もまた可愛い。
「まりっぺぇ♪」
「うわっ!いきなり抱きつくなっ!おっぱいがモロにあたる!」
「嬉しいくせに♪」
「キショッ」
「好きなくせに♪」
さらにきつく抱きしめちゃいます♪
「・・・り、梨華ちゃんはどうなのさ。おいらのこと、どう思ってんの?」
「はい?」
「好きなの?」
「・・・・決まってるじゃないですか。まりっぺのこと大好きですよぉ♪だから・・・」
「だから?」
「愛し合いましょうか?」
「へっ?・・って、うわっ!・・・」
おしまい
- 827 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:18
-
- 828 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:18
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- 829 名前:紅 投稿日:2004/12/10(金) 21:19
- 隠し
- 830 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/12(日) 15:45
- 隠すほどの話じゃないような…
とりあえず、(涙)とか寒いんで止めた方がいいと思います>紅作者さん
- 831 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/13(月) 23:25
- 紅作者さん>>やぐいし、久しぶりに見ました。面白かったです!
830>>ナニサマデスカ?作者さんがsageにしたんだから、それでいいと思います。
- 832 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 02:49
- 自分の中でいしよしが高まっておもわず書いてしまいました。
お目汚しの文章かと思いますが、おつきあいいただけたら幸いです。
- 833 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 02:49
- 「運命と呼べるもの」
side R
- 834 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 02:50
-
久々だった。二人きりの空間。
ガラス張りの向こうに座っているスタッフに見守られているという緊張感はあるものの。
最近は二人きりで話すなんてことも数えるほどになっていたから・・・。
あの子たちの卒業前、なんとなく自然に4人で固まるようにはなっていたけど、
それでもあの子たちを送り出してからは、これもやっぱり自然に離れていった。
彼女はミキティとじゃれあい、私は下の子たちとつるんでいたり。
特に意識したわけではなくて。
二人にとって、それがちょうどいい距離感だったように思う。
スタッフに告げられた、あの時。運命はまわり始めたのかもしれない。
「よっすぃをゲストに呼ぶことにしたから。」
- 835 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 02:56
-
いつかは来る様な気はしていた。そんな希望のメールがたくさん届いているのも
知っていたし。自分もちょっとは期待していたところもあったし。
「ひっさびさだよねー。何つっこませてもらうかなー。」
なんていう彼女の言葉に、あの時は単純にわくわくした気分だった。
なんだろう・・・この緊張感とやすらぎとが織り交ざった不思議な感覚・・・。
放送が始まってからも私のテンションは上がる一方で、
よっすぃは逆に落ち着いてて。私の声はどんどんうわずっていき・・・。
自分でもハイテンションぶりがわかるけど、どうしても止まんない。
よっすぃの声は低く安定してたけどーーでも時折みせる、甘えた口調や、私の名を呼ぶ
ちょっとはにかんだ感じ、ちょっと舌ったらずなところ。
そんなささいなことが驚くほど鋭敏に感じられて、
私の中でどんどん膨らんでいく。自分で話していながら、おいおいって
突っ込みたくなるような、もう一人の自分が暴走していく感覚。
話しながら感じる、同期っていいなっていう「絆」みたいなもの。一緒にいろんなこと、乗り越えて
きたっていう誇りみたいなもの。それが心の中にどっとなだれこんできて。
平然と話しているように演じたけど、心の片隅がきゅんと締め付けられるようなかんじで。
それを打ち消すかのように、がんがんしゃべりまくって、どんどん声が上ずって。
生放送なのに、緊張してるはずなのに、この空間だけが私の中で浮かび上がっているようだった。
この放送の自分の声だけは、あとで聞きたくないかも・・・。
- 836 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 02:59
- 「『よっすぃがくるから梨華ちゃんはおめかししてきたんだよ 、このやろう!
よっすぃ、憎いよ! すみにおけないよ』 ほっ・・・」
「へっ?」
「なんだろう」
「すみにおけないよ〜!」
ふざけて繰り返すよっすぃ。意味わかってる・・・のかなあ・・・?
勢いよく読み始めたものの、思わず間があいてしまって。まさかこんなメールが選ばれてるなんて
思いもしなかったし。
今日は洋服の中にピンクを入れるのはやめよう、とか、もしかして、もしかすると
食事なんか行っちゃったりしてていう期待もどこかにあって。
いつもより時間がかかってしまった洋服選びも、人に指摘されると
すごおく恥ずかしくって。かーっと頬がほてってくるのを押さえられない。
「これ、すごいねー、番組中にメールがーーーー」
なんてうまくかわしてくれたよっすぃ。
自分じゃうまく切り抜けられなくって、言い訳にもならないようなことを
口走ってしまいそうで、ちょっとだけ事務所のお偉いさん方の
カオが目に浮かんで、消えていった。
- 837 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 03:01
- 「石川、メシ、行くとしますか!」
マネージャーが手配してくれる車を断って、二人でタクシーに乗り込む。
よっすぃの手についた水性ペンの跡。放送中もずっとくるくるペンをまわしたり、
台本にあれこれ書き込んだり。
「めしっつても、こんな時間じゃなあ・・・。」
「ほらまた、メシなんて言わないの!目指すんでしょ?大和撫子!」
「だって来年の抱負じゃん!」
あいかわらずタクシーの中でもハイテンションな私。
「で、なんにしますか?石川さん。」
わざとらしく覗き込んでくるから
「あんまりおなかに負担にならない、軽めのものがいいなー」
と答えて、あとはよっすぃに任せてしまう。
「久々なのにファミレスってのも味気ないしなあ。かといってこんな時間で
あいてるってとこも限られてるし・・・。」
「いいってばあ、どこでも」
タクシーをおりたものの、なかなかいい場所が思い当たらず、
ゆっくりした歩調で考えるよっすぃとはうらはらに
私は妙に浮かれたようなステップで、半歩先を歩いている。
結局、よっすぃが選んだのは、以前保田さんに教えてもらった、大通りから
一本入ったお店。保田さんはここのマスターとも飲み友達で。
さすがにお酒は私たちは無理だけど、個室もあって軽めの食事なら
とれる。
太るかなー、でも弁当食ったの、7時前だったしなーなんてぶつぶつ言いながら、
カルボナーラを頼むよっすぃ。いつもだったら飲み物だけなんだろうけど、
妙にハイテンションだったせいか、気がついたら想像してた以上に
おなかがすいてしまっていて、明日の胃もたれを気にしつつも
クラブハウスサンドとレモンティを
注文する私。
- 838 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 03:02
- 「はっやいなー、一時間って。あっという間じゃない?」
あったかいおしぼりで、ペンの跡を消しながら、よっすぃが話し掛ける。
「うん、すっごいはやかったあ。」
「なあんか、いいよねー、生って。反応がダイレクトに返ってくる
感じ?やっぱ、翌週よむメールとさ、勢いが違うよねー。」
「そうっしょ〜?あとでふりかえるとさ、恥ずかしくなっちゃうような
失言だって多いんだけどね・・」
「そりゃ、いっぱいあるでしょう。そこがそれ、石川さんだもん。
みんな、期待してんじゃないの〜?」
妙な猫なで声で言って、目を細めるよっすぃ。
さっきまでのスタジオさながらに、軽快なやりとりが心地いい。。
バイブにした携帯が、バックの中で自分を主張する。
「あっ、ののから、メールだ・・・」
向かい合わせに座る私は、よっすぃからも自分からも読めるように
携帯を横向きにして着信メールを開いた。
『聞いたよー、梨華ちゃん!なに、あのテンション??キショッ!!
しかもあいぼんとのケンカなんてさ。本人がいないからって言いたいこと
言っちゃってー。ま、いいけどさ。こんどはかならず私たちも
呼んでね』
身近な人に指摘され、なんだか妙にはずかしい。
「だってさ。今度は4期みんなで出れるといいね。」
そんなよっすぃの言葉に、元気よく、うん、と答える。
- 839 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 03:03
- 「それにしてもさ、ケンカしたことなかったんだなー。指摘されるまで気付かなかったよ。」
パスタを口にほおばり、もごもご言う彼女。
「うーん。ほんと・・・。そんな暇、なかったよねー」
携帯を折りたたみながら、バックにしまう私。
でも本当はそれだけじゃないってことくらい、口に出さないだけでわかっていた。
いつでも、大きく私のことを受け入れていてくれたから・・・。
泣いたときも、怒ったときも、笑ったときも。
いつもすこしだけ笑みをうかべながら、私のことを包み込んでくれる。
最近じゃ、直接感情をぶつけることは少なくなってしまっていたけれど、
それでも私の帰る場所はここだなって思ってしまう暖かい場所・・・。
- 840 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 03:06
- 私たちの間に恋愛感情がなかったかといえば嘘になる。
はっきりと言葉にしたわけではないけれど・・・。
無邪気にじゃれあっていたころ。
私が「女の子役」で彼女が「男の子役」で。
まわりが作り上げたイメージ。
まるで女子高の恋人ごっこのように。
それでも私は彼女の腕に平気で絡まり、
多分あのころの私たちにとって、それは、一番自然な形だったと思う。
お互いの家を泊まりあい、ちょっとどきどきしながら、一緒のベットで眠って。
キスまがいのことも、した。
「愛してるよ〜」なんて大げさにささやいて
ふざけて軽く唇に触れ・・・
たった、それだけのことで充分満たされて・・・。
外との接触がほとんどない私たちにとって、それは一種の恋愛ごっこだった。
- 841 名前:運命とよべるもの 投稿日:2004/12/14(火) 03:07
- でもそんな子供の遊びに、ある日、大人たちが介入した。
事務所からの制約。
あくまで、『男性を惹きつけるのが仕事』の私たちにとって、
興味の対象が女性であると限定されるのは
夢を奪ってしまうこと。
一切、関わりを絶てと言ってるんやない、ほのかににおわしてもええけど、
あくまで、私たちは男性が好きですよって顔してなあかんのや。
身近にいた女の子が、磨かれてどんどんきれいになっていく。
もしかしたら手が届くかも知れへん。
そう思われるのがモーニング娘。やろ。
それが夢を見させる人間の務めや。
彼の言葉にただうなずくしかなかった私たち。
それを乗り越えてまで自分たちの気持ちを通すほど大人でもなかったし、
そのままごっこ遊びを続けていいなんて考えるほど子供でもなかった。
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