春よ、恋。

1 名前:とみこ 投稿日:2003年03月12日(水)17時40分00秒
春よ、来い。
ふたりは桜が満開の季節に出逢った。

春よ、恋。
その季節は、ふたりの恋の季節となる。
2 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月12日(水)21時55分31秒

――――


吉澤ひとみ。17歳。


昨日

高校をやめた。


・・・・



3 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月13日(木)17時21分01秒

両親は、あたしが中2の時に交通事故で死んだ。
・・・


父親は大手の企業に勤めていて、

母親は学習塾を経営していた。


そんな両親の期待を受け、あたしは私立の有名中学に入学。

成績も学年トップクラスにたっていた。

ふたりの弟は、後々たいして頭の良くない私立中学に入学することとなった。


・・・


しかし

両親の事故死により、あたしたち姉弟は叔母の家に引き取られた。

お金もないため、公立中学に転入。




そこから、あたしは崩れていったのだ。


両親を亡くしたショックなのか

それとも両親の『期待』という重荷が消えた開放感からか。


学力もどんどん下がり、レベルの低い公立高校に入学。




しまいには



高校中退ということとなった。


4 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月13日(木)17時26分35秒

高校を中退した理由はふたつあった。


ひとつは学校というものにつまらなさを感じていたから。

勉強なんてほんの少したりともしようとも思わなかった。

女子の友達は万引きや軽犯罪を簡単にしてしまうような人ばかり。

そしてあたしは、なぜか男子にモテていた。

しかし、所詮こんな高校、まともな男子はいない。

下心丸出しの男たちを、あたしは拒み続けた。






そしてもうひとつの理由。

それは家庭の問題だ。

叔母の家に引き取られてから、

学力が下がっていったあたしは、もう用無し同然の扱いだった。

下手すればただの邪魔なガキであった。

いやみな叔母さんの元をさっさと離れたかった。


学費という弱みを握られていた。



だから高校なんてやめてしまおうと思ったのだ。



そして高校中退と同時に



今日、家を出た。


5 名前:とみこ 投稿日:2003年03月13日(木)17時56分53秒
短いですけど更新終了です。
ちなみによしごま・いしよし・いちごま・・・などなど。
いろいろ出てくる予定です。
応援よろしくお願いします。
6 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月16日(日)23時16分30秒
おっ、新作ですね。
とみこさんの作品毎回楽しみにしてるんでがんばってください。
7 名前:真奈 投稿日:2003年03月17日(月)21時04分40秒
とみこさんの新作だぁ^0^
金板でもがんばって下さい。
応援してま〜すvv
8 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時43分30秒

行くあてはなかった。

少しずつ貯金していた数万円を持って、街に出た。

新しく住む家とアルバイトを探すのだ。

・・・

高校生がバイトできるところなんて、
時給800円くらいがいいとこだ。

そんなんじゃアパートも借りられない。






その日はいいバイトは見つからず、

安いホテルに泊まった。



こんな贅沢も今日までだろう。


9 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時44分03秒


次の日は朝からバイトを探した。


でも結局高校生のバイトなんて安月給が当たり前だ。

あきらめかけていたその時だった。

・・・





街角にあるパン屋だった。



【住み込みアルバイト募集】



そんな貼り紙に目が止まった。

住み込みかぁ・・・そしたらアパート代も浮くし・・・


いいかも。

・・・

あたしは店内に入った。

10 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時44分33秒

まるでお菓子の家のように小奇麗でオシャレな店だった。

「こんなとこあったんだぁ・・・」


店内には色んなパンがキレイに並び、とても美味しそうだ。

そんなことを思いながら店内を見渡していた。



そのとき―――――




「いらっしゃいませ!」




へ?!


奥から白いエプロンをした女の子がひとり出てきた。


・・・どう見たって子供だ。

なんで子供がパン屋で働いてるんだ・・・?



「あのー・・・バイトしたいんスけど・・・」


おそるおそる女の子に話しかけた。


「あ!バイトの方ですか!ちょっと待ってください!


そういうと彼女はすごい勢いで店の奥に戻っていった。


・・・なんだか好感触・・・?

11 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時45分45秒




しばらくすると、さっきの子ともうひとり女の人が出てきた。

もうひとりは見た目的に20前後という感じだった。



「こんにちは。店長の安倍なつみと言います。」

そういってその人は深く頭を下げた。

「あ、どうも。吉澤ひとみです。」


安倍さんを見て、さっきの子も頭を下げる。

「高橋愛です。よろしくお願いします!」


あたしが愛ちゃんにも軽く会釈をすると、ちょうど安倍さんが口を開いた。


・・・

「今人手が足りないのよ〜。吉澤さん。ぜひ雇わせてもらうね。」

「へ?!もう決定で・・・いいんですか?」

「うん!だってもう全然バイト募集してもこないんだもの〜」



どうやら話は良い方向に向かっているようだ。

12 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時46分21秒



「あっそういえば!」

重要なことを聞き忘れていた。

「あのぉ、住み込みって書いてあったんですけど・・・」

「そうそう!愛ちゃんの隣の部屋が空いてるのよ。愛ちゃん、案内してっ。」

「ハイッ!」


そういって愛ちゃんはあたしの手を引っ張って、店の奥に入っていった。


・・・


店の奥はパン工房だった。その奥にはらせん状の木の階段があった。


「部屋は2階ですよっ。」

「あ、うん。」


そのまま手を引かれながら階段をのぼった。


・・





13 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時46分52秒



そこには大きなリビングと小部屋が3つあった。


「いちばん右が安倍さんで、左があたしです。」

「へぇ〜。」



ガチャ


愛ちゃんは真ん中の部屋のドアを開けた。


床はフローリングで、壁も全部木でできていた。

そういえばこの店は木のいい香りがする。

パンの香りとなんか合ってるんだよねぇー。



「ここが吉澤さんの部屋です。」

「お〜。結構広いねぇ!キレイだし。」

「はいっ。これからよろしくお願いしますね?」

「あ、うん!こちらこそ。」


かわいい妹ができたような気分だった。

14 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時48分13秒



「そうだ!自己紹介してませんでしたね!」

愛ちゃんは嬉しそうに笑った。


「あ、名前しか言ってないね。」

「吉澤さんは何歳なんですか?」

「17だよ。昨日・・・高校やめたんだ。そんで家を出た。」

「・・・そうなんですかぁ。ま、ここは楽しいですよっ。」

「そっか。それはよかった。」

「あたしは15です!ここは13の時からいるんですよっ。」

「へぇ〜。でもなんで中学生がバイトしてんのさ??」

「えっとですねぇ、あたし、両親がいないんですよ。」

「・・・え?」



・・・両親がいない・・・・



あたしと一緒だ。


「あ、今悪いコト聞いちゃったとか思いました??」

愛ちゃんは笑顔で言った。

「・・・いや、あたしもいないんだ。」

「え?」

「小さいときに、事故で死んだ。今まで叔母さんの家に預けられてたんだ。」

「・・・そうなんですか・・・あたしはずっと孤児院にいました。」


孤児院・・・

なんだか切ない響きだった。
15 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時50分00秒



「・・・じゃぁどうしてこのパン屋に?」

「孤児院の先生の紹介です!中学校もここから通ってるんですよ!」

「ほぉー。なんかすごいね。」

「そうですかぁー??ま、もちろんバイト代はもらってないんですよ」

「ははっ。中学生だもんね。」



なんだか同じようなコに出会って、嬉しかった。


なんだか愛ちゃんとは気が合いそうだ。



16 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)15時57分15秒

7時に店を閉め、安倍さんと愛ちゃんとあたしは2階のリビングに行った。


安倍さんが料理を作ってくれたのだ。


「吉澤さん、これからは毎日3人で食事だべ?」

「え、いいんですか??」

「もちろん!ね、愛ちゃん。」

「はいっ!安倍さんの料理は格別ですよぉ」

・・・


「「「いただきまーすっ」」」


―――

「おいしいっっ」

思わずあたしは声を上げた。

愛ちゃんの言ったとおり、料理は格別だった。


「あ!そういえば『吉澤さん』って堅苦しくないですか?」

愛ちゃんが突然そういった。

「そうだなぁ〜よっしーがいいべ!」

安倍さんは即座に答えた。

「え〜つまんないですよぉ〜『よっすぃ〜』にしましょう!」

「よっすぃ〜かぁ!いいべさ!ね、よっすぃ〜?」

ふたりはいっせいにあたしの顔を見た。


・・・


「はい、じゃぁ、よっすぃーで。」

少し照れながらの返事だった。
17 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時09分39秒

楽しい夕飯を終えると、安倍さんは仕事について話を始めた。


「よっすぃーには明日から特別な仕事を入れたべ!」

「特別?」

「そう!女子校の学食から仕事以来が来てるべさ。」

「じょ、女子校?!学食?!」

ど、どういうこと??

店内で働くんじゃないの・・・?


「お昼休みに女子校の学食でパンを売るべさ!」

「えぇ?!マジですか?」

「マジだべ!さっそく明日から」


まじっすかぁー!!

・・・ま、いっか。楽しそうだし。ははっ。


「はぁ。。わ、わかりました。それでどこの女子高ですか?」



「えーっと、美空女子大付属の中等部と高等部だべ!」








・・・・・・へ?

18 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時10分25秒




美空・・・美空大付属〜〜〜?!?!?!



美空代付属中学・高校って・・・

超超超超超超超超超超〜〜〜秀才校じゃん!!

ボンボンのお嬢様しか通わないと言われてる所・・・・・


そんなとこでパン売るの?!

まじですか〜〜〜〜〜

  まじですか〜〜〜〜〜

    まじですか〜〜〜〜〜







・・・まじですか?!








そして


その日の夜は更けていく。




19 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時16分41秒


次の日、さっそく朝からパンの準備が始まった。


美空女子大か・・・・ははっ。

あたしも真面目にあのまま勉強してたら、あぁいうトコ行ってたんだろうな・・・






AM 11:00

「パンの準備ができたべ!」

店中に安倍さんの元気な声が響き渡った。

「パンはそのまま向こうに送られるから、よっすぃーはそのまま行くんだべ!」

「はい!じゃぁ、あたしは向こうでパンと再会して女子校生に売ればいいんですね?」

「そうだべ!」


我ながらわかりやすい説明だ。


そして自転車で10分ほど走り、

超お嬢様校・美空女子大付属中・高等学校に着いた。

20 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時24分25秒



「あんた、アベーカリーの吉澤っちゅー人か?」


正門付近をうろついてると、白衣・金髪の女の人が歩いてきた。

「あ、はい。」

「あたしは数学教諭の中澤裕子っちゅーもんや。」


ハッキリいうと、なんだか美空女子大の教諭というイメージではなかった。

「あ、どうも。あの、パンはどこで売ればいいんでしょうか?」

「うーん、そやなぁー。中庭で売ってもらおかな。」

「はい、わかりました。」

「ん。ほんなら案内するで。」


そういって中澤先生に案内され、中庭に向かった。

21 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時31分28秒

「・・・こ、これが中庭ですか??」


案内された所は、まるでどっかの豪邸の庭のようだった。

・・・

床は赤レンガがキレイに敷き詰められ、周りは爽やかな緑の木々が囲っている。

中庭の真ん中には大きな噴水が静かに水を噴いていた。


・・・本当に中庭といっていいのだろうか・・・


「ここであんたのトコのパンを生徒に売ってや。」

「あ・・・は、はい。」

「前までは違うパン屋がやってたんやけど、店員が男やったから生徒が嫌がってなぁ。」

「あーなるほどぉ・・・」

「でもアンタ気をつけたほうがええで?」

「へ?」

「ここは女子校やで。」

「・・・はい、知ってますけど?」

「アンタみたいなカッコイイ系の女の子は狙われるで?」



・・・ん?

どういう意味だろう・・


「ま、気をつけてや。ほんならまたなぁー。」


・・・???

22 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時35分31秒


・・・

大きなオレンジのワゴンにパンをキレイに並べ、

あたしは生徒・・・いや、お客さんを待った。






こんなお嬢様校に来るのに、こんな格好でよかったのかな・・・

・・・

黒っぽいジーンズに、メンズのパーカー。

かなり男っぽい格好だった。

女子校には不似合いすぎる・・・・。


・・・ま、しょうがないか。




――――


キーンコーンカーンコーン・・・・・



その時、校舎にチャイムが響き渡った。


23 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時41分32秒

チャイムとほぼ同時に、校舎からはゾロゾロと生徒が出てきた。

もちろんみんな女である。女子校だもんね・・・。

ここの学校は、中等部の制服はセーラー服。

高等部の制服はブレザーである。最初に中庭に来たのは高等部の人たちだった。







「あれ?なんかパン屋変わってない?」

歩いてくる生徒の声が聞こえてきた。

「ほんとだー・・・って店員メッチャかっこよくない?!」

「え?・・・うわっ!ほんとだ!ヤバい!!かっこよすぎ!」



・・・ん?ん?

なんか会話が読めないんですケド・・・・





24 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時45分21秒


すると、数人の生徒がこっちに向かって橋ってきた。


「いらっしゃ・・・―――」

そう言おうとした途端―――――



「「あ、あの!名前なんていうんですか?!」」

「へ?・・・・・・・吉澤ひとみですけど・・・」

「「キャーッ名前までカッコイイ!ホレますっっ」」

「え?・・・え?え?」



ど、どゆこと???


・・・・


数分後―――――

中庭には数十人、いや、もっとだろうか。

すごい人数の生徒がわんさか集まった。



「きゃーっホントだ!すっごいカッコイイ!!」

「名前、吉澤ひとみっていうんだって!あたし狙っちゃうよ!?」

「ズルイ!あたしも絶対ゲットするんだから!!」








・・・・

やっと

中澤先生が言っていた意味がわかった。

25 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2003年03月20日(木)16時55分07秒

○月×日  

今日は初めての美空女子大でのバイトだった。

女子校は、少しこわかった。

なんていうか・・・その、あたしは女の子に好かれてしまったようだ。

中澤先生が言いたかったのは、あたしが女の子同士の恋愛対象になるかも。

という忠告だったらしい。

どうやら実現してしまったようだった。

・・・とりあえず、明日も頑張ろう。
26 名前:とみこ 投稿日:2003年03月20日(木)16時55分53秒
更新終了です。
そろそろ出会いがありそうです。。。
27 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月20日(木)23時16分26秒
おっ更新だ。
そろそろ出会いってことは、相手はやっぱり・・・?!
28 名前:真奈 投稿日:2003年03月21日(金)12時30分11秒
よっすぃーはどこに行ってもモテモテですね^0^
出会う相手といったらアノ人しかいないでしょう。
続き楽しみです。
29 名前:96の名無し 投稿日:2003年03月23日(日)13時32分45秒
 新作も読ませて頂いてます!出だしからイイですね〜。
私も出会う相手が、なんとなくわかります。とみこさんと
言えば…ですから。
 続き楽しみにしてます。頑張って下さい。
30 名前:とみこ 投稿日:2003年03月26日(水)08時34分03秒
>名無し読者さん
やっと更新です^^;遅くなってすみません。
出会い・・・出会いといえば・・・誰でしょう?!(ww

>真奈さん
>よっすぃーはどこに行ってもモテモテですね^0^
そうですね^^特にここのよっすぃーは私が強制的にモテモテにしてます(w
出会う相手はご想像通りでしょうか・・・どうでしょう^^w

>96の名無しさん
お久しぶりです。96の名無しさん読んでくださってたとは嬉しいです!
私と言えばのあの人・・・でしょうか^^
31 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月26日(水)13時50分34秒
新作、おめでとうございます。
モテよっすぃ〜、いいっすねぇ!
パン屋のなっちと愛チュンもイイ感じです。

そろそろ出会い・・
やっぱりとみこさんと言えばアノ人以外考えられません。
次回更新、お待ちしてます。
32 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時07分31秒
>名無し読者さん
レスありがとうございます。
はい、ナマイキに新作なんか立てちまいまして^^;w
更新遅いですが絶対に放置ったりはしませんので!
長い目で見てやってくださいね!

さて、そろそろ出会いですかね^^
33 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時08分54秒


美空女子大学付属中・高等学校

職員室―――――





ガラッ

「おはようございます、アベーカリーです。」

「おーよっさんやないかい。」

いちばんに出てきたのは、こないだの中澤先生とかゆう人だった。


「ご苦労さん。今日も中庭で売ってや。」

「はい、わかりました。」

「・・・ところで、よっさん。」

先生は突然、あたしの耳元でささやいた。



「どやった?生徒たちの反応は??」


「・・・あぁ、先生のおっしゃったことがよぉ〜くわかりましたよ。」

「そやろ?!やっぱりなぁ〜アンタみたいなハンサムガールはモテるで!」

「はぁ・・・。」

なんと反応していいのか・・・。

34 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時10分32秒

「ま、そゆこともあろうかと、制度付けといたで。」

「え?・・・制度、といいますと?」

「簡単に言うとな、売店に行ける日を学年別に分けるんや。」

「・・・へ?」

「ちなみに上からやから今日は高等部の3年生やな。」

「高等部の3年生以外は売店に来れないってことですか??」

「そういうことや!よっさん頭ええやん。」

「はぁ・・じゃぁ明日は高等部2年ってことですね?」

「大正解!!ってことで、がんばってや?」

「あ、ハイ、。」




こうして、あたしの1日はパンを売ることから始まるのだ。







そしてお昼休み――――

・・・

「よし、準備OK。」

ワゴンに全部パンを並べ終わると、ちょうどチャイムが鳴った。







それとほぼ同時に、生徒たちが校舎から出てきた。


「あ!あの店員さんぁだ」

「店員さんじゃなくて、名前吉澤ひとみっていうんだよ!」


この人たちが高等部3年生ってことか・・・。

たしかに、昨日の人数と比べれば、かなり人数は減っていた。
35 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時11分36秒


・・・

その時、先頭を行く背の小さい生徒に1番にあたしに話し掛けた。


「君がウワサの店員さん?」

「え?」

「オイラは矢口真里。この学校のムードメーカーさ♪」

「はぁ・・・矢口さん、ですか。」

「ん〜なんか堅苦しい!あ、何て呼べばいいかな?」

「へ?えっと・・・・・・・」


あだ名なんてないしなぁ・・・


・・・ん?

あだな??


あ!


「よっすぃーです!よっすぃーって呼んでください。」

安倍さんたちがつけてくれたあだ名を思い出したのだ。


「よっすぃーね!いいねぇ!みんな、よっすぃーって呼ぶんだゾ〜!!」


矢口さんは後ろに並んでる人たちにそう呼びかけた。

その呼びかけにみんな「よっすぃ〜!!」と連呼していた。


36 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時12分44秒


列になって並ぶ生徒に、どんどんとパンを売っていった。


「210円です。ありがとう。」

「あ、・・ハイキャーっかっこいい」


そんなことをいって去っていく生徒もいた。


「・・・??」


という感じだった・・・。


・・・

そして20分ほどでパンは売り切れ。

あたしはワゴンを片付けて帰る支度をしていた。



するとそこに、パンを買えなかった生徒が10人ほどいた。



「売り切れかぁ・・・」

「ちぇっ、また今度頑張るか・・・」


そういってトボトボ帰っていく生徒たちに、あたしは声を掛けた。



「あのー・・・」




「?!?!」


彼女たちは驚いて振り向いた。


「えーっと・・・ごめんね、せっかく並んでくれたのに。」


「「・・・え?」」


彼女たちはあたしの顔を見て、ポカンと口をあけていた。



「ありがとう。」

そういってニコッと笑った。

せっかく並んでくれたお客さんには感謝しなきゃいけないしね。

・・・

そしてなぜか彼女らの顔は真っ赤になっていた。

37 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時26分57秒

チャイムも鳴り、みんな校舎に戻っていった。

あたしも片づけを済ませて帰ろうとした。





・・・そのときだった。







中庭の端にある大きな桜の木の下に、ひとりの生徒が立っていた。





彼女は大きな大きな桜を見上げていた。






・・・


桜の木漏れ日を浴びる彼女に






いつのまにか、あたしは見惚れていた。





38 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時35分13秒



あたしが彼女をじっと見ていると、視線に気づいたようにこっちを向いた。



「・・・何か用?」

いきなり向こうから質問された。


「え?あ、いや・・・」

「っていうか誰?」

「え?」

「まさか侵入者とか?」


・・・侵入者って・・・オイ。


「ち、ちがうよ。君は?」

「ごとー。」

「へ?」

「後藤真希。」


真希・・・っていうんだ。


「へぇ。ところで何してんの?授業は?」

「サボってんの。見てわからないかな?」

「いや、わかるけど・・・。美空女子の人がサボるなんて聞いたことないよ。」

「別にいいじゃん。」

「そうだけど・・・」



なんだか彼女のペースに付いていけない。
39 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時44分30秒


「そっちは?」

「え?」

「名前。っていうかここにいる理由。」

「・・あぁ、名前は吉澤ひとみ。職業はパン屋。」

「売店の人?」

「そう、だけど?」

「みんなが騒いでるのって、あなたのことなのね。」

「あー・・・そうかもしれない・・・。」

「確かにキレイな顔してるね。」


そういって彼女は、ほんの少しだけ微笑んだ。



その笑顔は

本当に――――――








「後藤さんこそ・・・、キレイだよ。」






自然に出た言葉だった。



40 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時46分07秒




「・・・え?」


不思議そうな瞳であたしを見た。



「・・・ひと目見たときから、すごくキレイな人だと思ってた。」








まるでドラマのワンシーンのようなセリフだ。

言ってから恥ずかしかった。




・・・


そして彼女はまた微笑み


ひと言だけささやいた。




「ありがとう。」










・・・・・・










春は来た。



春は、恋の季節。
41 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)17時59分55秒


PM 5:00


「おかえりなさいっ。吉澤さん。」


店の扉を開くと、愛ちゃんが迎えてくれた。

「ただいま。あ、なんか手伝うよ!」

「あ、大丈夫ですよ。今日はさっき全品売り切れたばっかりですから」

「そうなの?よかったねぇ。」

「はいっ。最近【アベーカリー】は人気爆発中ですからねっ。」

「アハハっ。あ!シャッター閉めとくね。」

「はい、お願いしますっ!・・・ってなんか機嫌いいですね??」

「え?そうかな?」

「いいことありました??」


愛ちゃんはズイズイと寄ってきた。


「ないないないない!さ〜仕事仕事〜♪」

「ごまかしましたねぇ〜?!」


ウソだけどねっ


・・・



後藤、真希・・・・



運命の出会いかもしれないっ。


42 名前:とみこ 投稿日:2003年04月06日(日)18時02分27秒

更新終了です。

少ないです、すみません(泣
でも近々すぐにまた更新しますよ♪

ってことでよっすぃーのべた惚れから始まった「出会い」ですが・・・
これからどうなるでしょぉ!
他のカップリングも出てくる模様ですっ
43 名前:96の名無し 投稿日:2003年04月07日(月)00時34分30秒
 来ました!!ごっちんのご登場です!!超超超イイ感じですよ。
1人、学校の女の子と違う雰囲気のごっちん、好きですね。
「春は恋の季節」♪よしごま期待してます。頑張って下さい!
44 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)10時43分34秒
もうちょっと文章何とかならないですかね?
稚拙過ぎる気がするんですが…作品数の割には。
45 名前:真奈 投稿日:2003年04月07日(月)12時48分06秒
ごっちん登場!!まさに運命の出会いです☆
とみこさんのよしごまはいつもイイですね♪
他のカップリングも楽しみにまってま〜す^^
46 名前:名無し 投稿日:2003年04月07日(月)15時50分03秒
>>44
その言い方はないんじゃねえか。
他の人のレスはみな好意的だろ。

サクーシャさん、私も楽しんでますんで、続きがガンガッてね。
47 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)21時33分40秒
>>44
よっすぃ〜の一人称で進められてる文章に対して
稚拙だと言うほうがおかしいのでは?

作者さん、僕も楽しみにしてますので、がんばってください。
48 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)13時05分27秒
>96の名無しさん
やっとごっちんが出てきました^^
よしこのひとめぼれみたいな形になりましたが、これからまた色々あるもようです!
応援よろしくおねがいします!

>名無し読者さん
気をつけます。

>真奈さん
運命ですね!ハイ^^
やっぱりごっちんはいいですね!かわいいです!(w
いつもありがとうございます!がんばります!

>名無しさん
>>44
ありがとうございます!
私も色々もう少し考えて書いていきますね。

>名無し読者さん
このままよっすぃー一人称の形で行くと思うんで、
何か気づく点があったら言って下さい。
ありがとうございます^^
49 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)13時41分10秒


その日の夜


「後藤真希、か・・・。」


ベットに座って思いにふけていた。

なんであの子のことをあんなに考えてしまうんだろう。

どうしてあの時

あの子を見た瞬間・・・


ドキッとしたんだろう。


・・・

整った顔立ちに、大きな目。

スラッとした長身に、色素の薄い長い髪。


彼女のなにもかもが魅力だ。





どうして、こんなに惹かれるのだろう。

50 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)13時42分56秒



次の日の仕事には、いつもよりもっとたくさんのパンを持っていった。

だって、売り切れだと並んでくれたお客さんに悪いもん。


そんな風に、仕事を通じて人の気持ちとかもわかるようになった。

もっともっと、みんなに喜んで欲しい。

・・・前の自分だったら、こんなこと考えないだろうな。




「行ってきま〜す!」



赤い自転車にまたがり、

肌に感じる春を楽しみながら風を切って走った。



・・・そういえば、今日は高等部の2年生が買いに来るんだよね。


あっ


後藤さんって、何年生なんだろ??

ずいぶん大人っぽいけどなぁ・・・

もしかして今日、来るかな?


51 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)13時44分27秒




お昼休みになり、昨日とはちがう生徒が中庭に列になって並び、楽しくおしゃべりをしていた。


みんなこのパンをおいしいって言って食べてくれるかな。

そうだといいなぁー。


・・・


「ありがとうございましたっ!」


全員がパンを買い終わるころ、ちょうどチャイムが鳴った。

今日は売り切れで悲しそうにする人もいなくて、

まぁパンは2、3個残ったぐらい。



あたしはワゴンを片付けて帰る準備を始めた。







・・・・後藤さん、来なかったなぁ・・・。

やっぱり高2じゃないのかなぁ。

それとも、あたしに会いたくないとか。






・・・やめよ、自分で落ち込ませるのは。



52 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)13時58分12秒



大きなため息をひとつついた

その時だった――――








「パン屋さんっ。」




・・・






そこには――――――



「後藤、さん・・・?」





運命は、再びやってくるのだ。




53 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)13時58分52秒





「ど、どうしたの?またサボり?」


昨日よりは落ち着いて、でも少し緊張しながら話しかけた。


「んーん、パン屋さんに会いに来たの。」




・・・え?


あたし、に?!


ウソ・・・そんな、・・・




「後藤さんが・・・、あたしに?」


彼女は昨日よりももっと笑顔で、笑ってくれた。



「後藤さんじゃなくて、"ごっちん"でいいよ?」


「え?ご、ごっちん・・・?」

「うん、やぐっつぁんが付けてくれたあだ名♪」


やぐっつぁん????


あ、もしかしてあのちっちゃい人――――・・・?





「なんて呼べばいいの?」

54 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時21分08秒





「え?えっと・・・・」



「あ!!」



?!

彼女は突然思いついたようにそう言った。

まるで小さい子が大好きなおもちゃを発見したときみたい。



・・・


「よしこ!どーよ?!」


首を少し傾けてあたしにたずねるのだった。


でもあたしはそんなことよりも、


その仕草がかわいくて、

首を傾けたときになびく髪が綺麗で




また、彼女の「ひとつ」を知っていく。








55 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時21分43秒


「あれ・・・ダメ??気に入らなかった?」



そうやって

困ったように、言う。


子犬のような、潤んだ瞳であたしを見る。










・・・


もう、吸い込まれてしまいそうになる。






・・・











「・・・よしこぉ??」



心配しないで。





あなたのためなら

・・・もうどうなっても・・・










「いいね、そのあだ名。気に入ったよ。」




「ホント??」






「うん、ありがとう、ごっちん。」







56 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時22分27秒




「ねぇ、よしこ。海に行きたい。」

「・・・え?」


「ねぇ、いい?行きたいの。」





・・・

もはや、最初に授業に出なくていいの?なんて

気にしてたことすら、ウソのように。



彼女が望むことなら、すべて受け止めたかった。



・・・












ふたりは




海をながめていた。


57 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時23分06秒




「キレイだねぇ〜よしこ。」

「うん。電車でこんなところまで来たの初めてだよ。」

「へへっ。」



海岸に腰掛けて、あたしは気になっていたことを聞いた。

・・・


「ごっちんさ、学校楽しい?」

「んぁー・・・学校の友達は好き。」

「あぁ、矢口さんとか?」

「そぉそぉ。やぐっつぁんは年上だけどいい人。」


年上?

ってことは、


「ごっちんって何歳??」

「んー?17だよ。」

「ほんと?あたしも17だよ。じゃぁ高2かぁ。」

「ううん。ちがうの。」

「え?」


「ごとーは高3だよぉ。飛び級してるから。」

「飛び級?!!?」



まじっすか!!!!!

ごっちんてもしかして、


天才・・・?!


58 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時40分08秒


「うん。だからやぐっつぁんと同じ学年。だから仲いいのぉ。」

「そうなんだぁー・・・なんかすげぇ〜」

「そうでもないよ。じゃぁよしこは高2?」








「いや、高校やめたんだ。」

「・・・ふぅん。どうして?」


「う〜ん、なんかつまんなくってさ。バカ校だったし」

「え、よしこ頭よさそー。見ててわかるよ。」

「まぁ中学までは頭よかったって言ったら負け惜しみになるけどね。」

「そんなことないよ。勉強ができても人間的に悪い人なんかたくさんいるし。」



「そうかな?・・・なんかごっちん考えが大人だね。」


というか、

ごっちんはどこか他のコと違うオーラを持ってる感じがするんだ。

それでもって友達もたくさんいるみたいだし、うらやましいな。




59 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時41分04秒



「ごとーのお父さん、うちの学校の理事長なの。」

「え?!」


理事長?!


「そう。だからごとーはお父さんに作られたの。」

「・・・え?」

「勉強勉強って、今までずっと言われてた気がする。」


ごっちんも、親の期待を背負ってきたんだ・・・。



「あたしもだよ。親に作られて中学までやってたんだ。」

「よしこも?・・・でもなんで中学まで?」

「親はあたしが中2の時に死んだ。だからそっからあたし、崩れていったんだ。」



あたしは、ごっちんみたいに、強くないんだ。



・・・


「あたしは弱いんだ。ちっぽけな人間なだよ。」


こんなこと人の言ったのは、ごっちんが初めてだ。

どうしてだろう


ごっちんには、何でも話せる。

何でも聞いてほしい。




あたしが今まで、誰にもいえなかったすべてを。


もうひとりのあたしを、知って欲しい。





60 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時42分59秒




「よしこがちっぽけなら、ごとーなんかもっとちっぽけだよ。」






・・・・



「・・・え?」


「だって、ごとーは親のコネでやってるんだよ。今までも、これからも。
よっすぃーみたいに自分で高校やめるって決めたりするそんな強さ・・・後藤にはないよ。」





「・・・あたしが高校をやめたのは、逃げただけなんだよ・・・強いんじゃないよ。」

「でも逃げることは、弱いことじゃないよ!!」





――――――・・・





ごっちん・・・・・?





61 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時47分35秒



「よしこはね、何かカンチガイしてるよ。」

「・・・カンチガイ?」



ごっちんは大きくうなづいてくれた。



・・・








「ごとーとよしこは、仲間なんだよ。」





・・・・・



―――・・・仲間・・・




「今はただ環境がちがうだけだよ。」




・・・・
















「同じ傷をもった、仲間なんだよ。」





・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・















仲間・・・・・



あたしとごっちんは・・・・・・
62 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)14時48分20秒




仲間・・・・・・・・・?


・・・


「あたしが、パン屋のバイトでも?」



「うん。」


「あたしが、高校中退のろくでなしでも?」


「うん。」




「あたしが・・・・・・」








「ただの17歳でも・・・?」


















・・・・







「当たり前だよ。ごとー、よしこみたいな人に出会えたの・・・初めてだよ。」


「・・・ごっちん・・・・」


「よしこのそばにいたい。これからも、ずっと、ずっと・・・」







・・・・・


ずっとずっと。


この言葉は、こんなにいい言葉だったっけ。

こんなにいい響きだったっけ。






ううん、ちがう。




ごっちんだからだよ。


ごっちんだから、全ては・・・










・・・・




・・・・・







「あたし、ごっちんが好きだよ。」














・・・・・



63 名前:とみこ 投稿日:2003年04月08日(火)15時03分24秒
更新終了です。
64 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月09日(水)11時43分38秒
いしよしヲタな自分を魅了する作者様の
よしごま。よっすぃと後藤さんの今後から
目が離せません

続きも待ってます。期待です!!

65 名前:とみこ 投稿日:2003年04月12日(土)17時45分48秒
>サイレンスさん
レスありがとうございます!
そんなお言葉いただき嬉しいですvv
更新遅いですががんばります!!
66 名前:キョウ 投稿日:2003年04月13日(日)18時05分57秒
はじめまして。一気に読ませていただきました。
よしごまの関係がすごいステキです・・・
ってゆーか、カッコイイです!!
言葉を交わさなくても、2人は通じ合ってる感が伝わってきます・・・
あぁ、なんか見終わったらココロが晴れやかになりましたw
次回の更新、楽しみにしております。
67 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月14日(月)01時33分08秒
とみこさんの書かれるよしごまはいつ読んでも和みますね。
よしごま〜って感じがします。マターリな感じで。いいなぁ、よしごまって…。

これからも頑張って下さいね。応援してますよ。
68 名前:とみこ 投稿日:2003年04月19日(土)14時56分49秒
>キョウさん
レスありがとうございます。
全部よんでくれたんですか!嬉しいですvv
よしごまをほめてもらうとなんだか調子に乗っちゃいます(w
これからもがんばるので、よろしくお願いします!!

>名無し読者さん
>とみこさんの書かれるよしごまはいつ読んでも和みますね。
いやぁ、またまた嬉しいお言葉ありがとうございます。
痛いのとかたまに書いてみたいですけどね^^;w


69 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)09時57分03秒

・・・

それからごっちんとの恋は順調に進んでいた。

まぁ正式に「恋人同士」の約束はしたわけじゃないけど、
お互いの気持ちがお互いにあることがわかったから、それでよかった。


・・・


「ありがとうございましたっ!」


今日もパンの売り行きはバッチリだった。
相変わらずファンレターや突然のプレゼントも多かったけど・・・


「あ、よっすぃーじゃん♪」


そのとき、向こうから矢口さんがやってきた。


「あ、こんにちは。どうしたんですか?」

「んー教室移動だよぉ。よっすぃー今日もモテモテだねぇ。」


中庭を去るのを名残惜しそうにしている生徒を見て、彼女は言った。


「いえいえ。みんなパンが美味しいから来てくれるんですよ。」

「ホントにそう思ってんのかぁ〜??」

矢口さんはからかうようにひじで突っついてきた。


「あ、授業遅れちゃうからもう行くね!」

「はい、行ってらっしゃい。」


矢口さんは一度背を向けると、少し歩いてピタリと止まった。


・・・
そしてフッと振り向いた。









「あの、さ・・・あたしよっすぃー好きかも、。」












・・・


70 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時02分35秒


そのままあたしが何も言えないまま、彼女は走って行ってしまった。


・・・

中庭にはもうあたしひとりしか居なくて、
ただ呆然と立ち尽くしていた。


・・・矢口さんがあたしを好き?


だって、まだ会ったばっかりだよ?
そんな短い間で好きになれるものなの?


・・・


とかいって、あたしもごっちんにひとめぼれだったけど。

・・・



―――――『あの、さ・・・あたしよっすぃー好きかも、。』・・・



その言葉になんだか重みを感じた。

ひとめぼれは決して軽いもんなんかじゃないって、自分で知ってるから。

ごっちんを好きになった自分が、いちばん知ってるから。



・・・

71 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時14分55秒



お店に戻ると、店内のパンはもう売り切れていて、
愛ちゃんが売り切れの張り紙を外に貼っていた。


「あ、吉澤さんおかえりなさい!」

「ただいま。最近売り切れ多いねぇ。」

「そうなんですよぉ〜美空大の人がたくさん来ますよ!」

「美空大の人が??」

「はいっ!学校で買えなかった人がお昼休みに来てます!」


あ、そっか。
1学年しか変えないから他の学年の人はみんなお店に来てたんだぁ・・・


「すごいねぇ。売り切れないようにもっともっと作らなきゃね。」

「そうですねぇ。だから安倍さんがバイト募集するって言ってましたよ!」

「へぇー。やっぱ人手足りないもんね。」

「はい。・・・っていうか吉澤さん、なんか元気ないですね?」


・・・へ??


「何かあったんですか??」


愛ちゃんはズイズイと迫ってきた。


「え、・・・なんかって・・・」



確かに今日は矢口さんのことがあって気持ちは複雑ですが・・・


なんか前にもこんなこと言われたような・・・

たしか、あたしがごっちんを好きになった時。







もしかして、この子・・・するどい?!

72 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時27分20秒


「べ、別に何もないよ?」


「・・・ふ〜ん・・・まっいいですけどぉ〜」


そういって、ニヤニヤしながらお店の中に戻っていった。


・・・本当に中学生かぁ?この子・・・








・・・・


部屋に戻るとちょうどポケットの中で携帯が震えた。
画面を見ると、「メール1件」と入っていた。


ベットに腰掛けて、メールを見た。
そこには「後藤真希」と表示されていた。
自然と心臓が高まってしまう。

・・・

『まだバイト中かな?今学校終わったけど、会える?』

・・・

思わずギュッと携帯を握りなおしてしまった。

もう付き合って1週間が経つのに、まだメールが来るだけで照れてしまう。

・・・

一度時計に目をやると、針は夕方の4時を指していた。


『じゃぁ店の外で待ってるね。』


そう送って、すぐに安倍さんの部屋に行った。

73 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時36分30秒

トントン

「どうぞー?」


ノックのすぐ後に安倍さんの優しい声が返ってきた。


ガチャ


部屋に入ると、安倍さんはバイト募集のチラシを作っていた。


「あ、あの・・・ちょっと出かけてきていいですか?」

「いいよぉ。あ、ついでにお醤油買ってきてくれる〜?」

「あ、いいですよ。じゃちょっと行ってきますね。」


そういって部屋を去ろうとすると、安倍さんが突然言った。


「がんばってね。」




・・・


・・・・・・へ?


思わずもう一度振り向くと、安倍さんはチラシ作りに戻っていた。


「女の子って難しいからねぇ。」


机に向かってまたフッとつぶやいた。







愛ちゃんといい、安倍さんといい・・・・・



するどすぎ!!!


74 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時48分18秒

あたしってわかりやすいのかなぁ・・・

まぁたしかにごっちんと付き合ってから大分明るくなったと思うけど・・・


・・・

そんなことを思いながら店の外に出ると、ごっちんが向こうから歩いてきていた。


「ごっちんっ。」


ごっちんは手を振りながら少し早足でこっちに歩いてきた。


「ごめんね、待った?」

「ううん。今来たとこ。」

ホント、ふつーの恋人同士の会話って感じ。
なんだか照れる。


・・・

ごっちんはニコッと笑うと腕をスッと絡めてきた。


「ねぇどっか行かない?久しぶりに遊びたいな。」


近づく彼女の顔に、心臓がはちきれそうだった。


「ん、いいよ。どこ行きたい?」

「原宿かなぁ?」

「いいよ。・・・あ!お醤油売ってるかな〜?」

「お醤油??」


ま、帰りにコンビニ寄ればいっか!



「ううん、なんでもないよ。行こっか?」

「うん」


75 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時52分44秒

その日、家に帰ったのは夜9時ごろだった。

安倍さんも愛ちゃんも、遅くなった理由を聞いてくることはなかった。
するどい所も似てるけど、気遣いが上手なところも似てるのかも。






今日はごっちんとたくさん、色んなことを話したけど



矢口さんのことは、言えなかった。


・・・

ごっちんと矢口さんが友達だから言えなかったのか、

それとも矢口さんに気を使って言えなかったのか、


あたしにはわからなかった。


・・・


でも変わらないことはひとつだけ。



あたしは、日に日にごっちんを好きになっていく。


ごっちんへの「好き」が増えていく。





大好きだよ、ごっちん。


76 名前:とみこ 投稿日:2003年04月27日(日)10時53分30秒
更新終了です。
77 名前:サイレンス 投稿日:2003年04月27日(日)15時12分21秒
更新お疲れ様です。
ここのよしごま好きです。ここの作品読んでる間は自分が
いしよしヲタなのを忘れてしまうくらいです(w

全体的に甘い雰囲気に加えて
なんかゆったりした作風、好きですね。

矢口さんのこと穏便に運べばいいんですが…。
それとも一波乱あるんでしょうか?

次回も応援してます。
78 名前:たけトラマン(o|o)/ 投稿日:2003年04月27日(日)18時12分50秒
EAGLEさんのところから来ました〜。
一気に読ませて頂きましたが、こういうの好きです。
自分が書けないからかもしれませんが(w

更新大変でしょうが、同じ板の作者同士、お互いがんばりましょう!
79 名前:とみこ 投稿日:2003年05月08日(木)17時54分51秒
>サイレンスさん
>ここの作品読んでる間は自分がいしよしヲタなのを忘れてしまうくらいです(w
そこまで言っていただいて嬉しいですww
待っているのは波乱なのか、それとも・・・という感じですね^^;
がんばります!!

>たけトラマン(o|o)/さん
EAGLE師匠のところからいらっしゃったんですか!
初めましてですvv
はい、同じ板同士がんばりましょぉー!!!
80 名前:とみこ 投稿日:2003年05月08日(木)17時59分00秒
ageてしまいましたが、更新は近々に・・・
修学旅行の準備があるのですみませむ。。m(__)m
81 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時11分36秒


ごっちんが好き。

誰よりも、何よりも。

自分より大切。

・・・

今まで、そう・・・あたしが荒れてたころは、人を好きになっても、
結局は上辺だけの愛だった。相手にいくら好きと何回言っても
本当はいちばん自分が可愛かったんだよね。


でも、今はちがう。




・・・


好きだよ。

世界で一番、君が好き。

君は僕の天使だ。





もう、離さないよ、絶対。



・・・

あたしは決意を固めた。

82 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時28分17秒

あたしは美空校の正門にいた。
夕方の5時を回った頃だろうか・・・・

なぜか下校する生徒の人たちの視線はあたしに釘付けだった。
ジロジロ見るので少し目線のやり場に困るぐらいだ。


・・・


「あれ?!よっすぃー!?」


その時


向こうから見慣れたあの人がやってきた。


そう、今日の目的は彼女だった。


・・・


「あ、矢口さん!ちょっと・・・いいですか??」

「へ?!あたしを?待ってたの?」

「はい。少しお時間いただけますか?」

「う、うん・・・?」



83 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時35分58秒


あたしたちは近くのファーストフードに入って、飲み物を頼んだ。
そして一段落つくと、あたしから切り出した。

・・・

「あ、あの・・・こないだのことですけど、。」


「・・・あ、あ〜〜ごめんね、いきなりあんなこと言って・・・。」

「いや、いいえ。それに、嬉しかったです。」

「ううん、そんな・・・」



なんとなくの沈黙が、ふたりを少しギクシャクさせた。

・・・

決めたことを、すべて言えばいいんだ・・・

あたしの気持ちを、

今の、自分の「好き」が向いている人のことを・・・














・・・




















「あたし、ごっちんが好きなんです。」
















84 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時41分19秒

・・・

目を見て言った。


それなのに、うまく彼女の表情がつかみとれなかった。
泣いているわけでもないし、ひょうひょうとしているわけもない。


ただ、驚いているような、そんな顔だった。


・・・

たしかに、自分の好きな人が、自分の友達だったなんて聞いたら、

きっとあたしだって、こんな表情になってしまうと思った。


・・・











「・・・ご、ごっつぁん・・・が好きなの?」






・・・


「・・・はい。」






・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・



・・・



「・・・そ、そっか・・・。ごっつぁんが好きなんだね。」

「ごめんなさい。でも矢口さんのことは、絶対、キライとかそんなんじゃないです・・・。」

「え?」

「どっちかっていうと、これからも・・・その、仲良くしてほしいっていうか・・・」


まちがいなく本音だ。
ウソも偽りもない。



ごっちんが、世界で一番好きだということも、


矢口さんも、やっぱりあたしにとって大切な存在なことも。


本当のことだ。

85 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時45分10秒


「ダメ・・・ですか?」



もう一度、あたしは聞き返した。
うまく読み取れない彼女の表情を、必死に受け止めた。



・・・


「なんか、よっすぃーがモテる理由わかるよ。」


矢口さんは、突然吹っ切れたようにそう言った。


いつもの、あの笑顔で。




「どういう、意味ですか・・?」

「んー?なんとなくわかるの。人の気持ちとか、すごくわかる子だし。」

「・・・そんな、ことないですよ。」


照れ隠しのようにあたしは組んでいた足を逆にして組みなおした。





・・・




・・・


「ありがとーね、よっすぃー。」







そして彼女は、最後にそう言ったのだった。


86 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時53分55秒
ファーストフードを出ると、矢口さんはあたしと向き合って、

ニカッと笑った。



「よっすぃー、本当にありがとう。ちゃんと吹っ切れた。」


「・・・はいっ。」


「あ!ところでごっつぁんに伝えたの?好きって。」

「はい。いちおー・・付き合ってます、よ。」

「えぇ〜〜〜?!?!あのごっつぁんを射止めたの?!!」


へ?


「すんごい人見知りでしょ?ごっつぁん。友達になるのさえ難しいのに・・・」

「そ、そうなんですかぁ・・・知らなかったです。」

「いやいや、でもよっすぃーならやりかねないかもね。」

「え?」


「だって、よっすぃーだもん。」





87 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時54分36秒


・・・・・・・・・・・



―――――――『よしこ!よしこって呼んでもいーい??』



出会ったとき、運命を感じたのは・・・・・


もしかして、


ごっちん、も・・・・


だったり・・・?






「もうごっつぁんをひとりにさせないであげてね。」

「・・・へ?」

「ごっつぁんを頼んだぞっ!じゃ、またね!」

「え?え?ちょっ、矢口さん!?」


すごい勢いで去っていってしまった。


未だに言葉の意味はできないまま




でも、心は晴れやかで



あたしは、大きく空気を吸い込むのだった。






88 名前:とみこ 投稿日:2003年05月09日(金)22時55分12秒
交信終了。
89 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月09日(金)23時31分55秒
更新おつかれさまです。もうごっつあんを・・・続き気になる。
つぎも楽しみに待ってます。
90 名前:とみこ 投稿日:2003年05月11日(日)10時04分00秒
>名無し読者さん
気になる一言がありましたね^^
これから明らかになっていきます!
では、更新します。
91 名前:とみこ 投稿日:2003年05月11日(日)10時11分58秒

その日の夜、あたしはおつかいに行っていた。
店に戻ると、玄関の前で安倍さんが誰か女の人と話していた。



・・・ん?




「ご、ごっちん?!」


安倍さんと話していたのは、ごっちんだったのだ

な、な、な、なんでごっちんがウチに?!


「よっすぃー、真希ちゃん待っててくれたんだよー。」

安倍さんはニッコリ笑ってそういうのだった。


「おかえり〜、よしこ。」

「へ?あ、うん、ただいま・・・。」


びっくりしたぁ・・・でもこの人たち知り合いだったっけ?


「と、とりあえず部屋よっていく?」

あたしはごっちんに向かって問いかけた。
ごっちんはというと、にこっと笑ってうなづいた。


92 名前:とみこ 投稿日:2003年05月11日(日)10時15分06秒

「で、どうしたの?わざわざ。」


部屋に入ってごっちんをソファーに座らせると、まずあたしが口火を切った。


「んー?会いたかったから」

「へ?」


そ、そんなごっちん・・・・・・・・




















可愛すぎ!!!!!!(爆)



・・・


「安倍さんっていい人だねぇ。」

「あぁ、うん。すごくいい人だよ。」

「なっちって呼んでいいんだって♪」

「へぇ〜なんかもう仲良しさんって感じですね。」

「そうです家族ぐるみの付き合いです」


ごっちんは嬉しそうにそういった。


もうっ、・・・めっちゃ可愛いから!!!!
93 名前:とみこ 投稿日:2003年05月11日(日)10時27分41秒

トントン


そのとき、ドアをノックして声が聞こえた。


「あのぉ〜入ってもいいですかぁ?」


愛ちゃんだ。


・・・

あたしは自分からドアを開けて愛ちゃんを部屋に入れた。

ごっちんは首をかしげて、誰?という顔であたしを見ていた。


「紹介するね。この子は同じここで働いてる高橋愛ちゃん。中学三年生。」

愛ちゃんはペコッと少し照れたように挨拶した。
そして、ごっちんも立ち上がってニコッと笑った。

「初めまして。美空女子高校の後藤真希です。」

・・・



自己紹介が済むと、リビングに行ってみんなで食事をした。



「おいしそぉー!!」

ごっちんは安倍さんの手料理を見て、驚いていた。

「安倍さんの手料理は最高なんだからっ。」


なんだか大好きな人たちとこうして料理をかこんで、たくさん話して、



すごく、幸せだった。
94 名前:とみこ 投稿日:2003年05月11日(日)10時56分02秒

昔から

悪いことは長くは続かないという。



けど、




いいことも、長く続かないものだった。

95 名前:とみこ 投稿日:2003年05月11日(日)10時56分58秒
少ないですが更新終了です
96 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月11日(日)19時29分41秒
気…気になる。
ただでさえよしごま不足なので、悲しい話にはならないでほすぃな。
97 名前:みるく 投稿日:2003年05月25日(日)14時22分39秒
とみこさんのよしごま大好きなんです!!
まったりでいいので頑張ってください。
98 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)15時49分18秒
>名無し読者さん
>気…気になる。
気になるところで気ってすみません(w
あと、更新おそいですが、定期テスト終わったので更新します。

>みるくさん
ありがとうございます!!
まったり・・・すぎですが受験と戦いながら頑張ります!!!
99 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)16時00分06秒


今日は満開の月夜になった。

まるであたしたちを頬笑みながら見ているように。
あたしたちは家の外に出て、月のスポットライトを浴びた。


「よしこ、・・・今日はありがとう。」

「いえいえ。家族ぐるみの付き合いですから?」

「もーマネしないでよぉ〜」

プーッと膨れっ面になったごっちんは、小さい子供のように無邪気で、
またあたしをドキッとさせた。







「じゃぁ、帰るね。」

「あっ、送ってくよ?」

「いいの?うち結構遠いけど・・・」

「どこまででも行きますよ、姫。」

「ありがとう」


幸せ。

幸せすぎて、昔のこと・・・忘れちゃいそう。


死んでしまった両親のこと、

嫌味な叔母さんのこと、

高校でつるんだ不良たちのこと、




そして・・・・・・・



梨華ちゃんのこと―――――――




ぜんぶ、忘れてしまいそうなくらい幸せだ。



・・・

100 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)16時33分25秒


「かっけぇ〜〜〜!!!」


夜の月明かりに映る巨大な豪邸。


後藤家。



「パパが理事長だし、ママは弁護士なの。」

「弁護士ぃ?!?!」

ごっちんは一体どういう家庭の子なんだ?!


「ほとんど家にいないんだけどね。いつも弟とふたり。」

「へぇ〜。そうなんだ。」


ごっちんはいつも家庭のことを話すとき、ニセモノの笑顔になるんだ。
きっと色々あるんだろうな。あたしにはわからないことがあるんだろうな。
そう思う。だから、あえてそれ以上話題に触れなかった。

知りすぎることが、愛の深さに比例するとは限らないから。


それを一番知ってるのは、あたしだから。


「・・・よしこ?」

「へ?あ、ごめんごめん、ボーッとしてた。」

「疲れてるんじゃない?ごめんねわざわざ。」

「いいってことよ!あたしはいつも元気だよ!」

「そーぉ?」








ザッ




―――・・・・・



「後藤?」







現れてしまった。

101 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)16時46分52秒



「市井先生。」




ごっちんが先生と呼ぶその人は、スーツ姿の黒髪のまじめそうな人だった。

スタイル抜群で、女の人だろうケド、美少年に近い感じだった。







「こんな遅くになにやってるんだ。早く帰りなさい。」

「今帰るところですけど。」

「そいつは誰だ。」


ごっちんの返事を無視して、市井はあたしを指差した。



「・・・先生には関係ないじゃん・・・」

ごっちんは少し睨み気味で市井を見た。


「うちの学校で恋愛は禁止だと知っているんだろ?」

「恋愛?よしこは友達。だって女の子だよ?」

「うちは女子校だ。女同士の恋愛なんて今までさんざん見てきた。」

「・・・・・。」



・・・どうしよう。

ごっちん困ってるし、でもあたしが口出してもいい問題なんだろうか。



「どこの学校の生徒だ?」

市井はあたしに向かってたずねた。


102 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)16時56分22秒


なんか言い方がむかつくんだよね・・・


「高校は行ってないです。」

「中退か。」

「悪いですか?」

市井はあたしを無視して再びごっちんの方を向いた。


「高校中退したヤツなんかと付き合ってるのか。」


・・・!!

「なんだよその言い方!!」


あたしは思わず市井に食いかかった。


「よしこ!やめて!」


・・・っ!


「・・・わかったよ。」

ごっちんが止めに入らなかったらボコボコにしてやりたい。

本気でそう思った。



「好きになったらそんなの関係ない。」


ごっちんはハッキリそういった。


「後藤、お前が良くても学校は許さない。」

「うるさいな。」

「理事長からの命令だ。」




・・・・?


ごっちんの、お父さんから・・・?
103 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)17時01分38秒


「後藤、お前の恋愛禁止を命令されてる。」

「は?パパ、先生にまで・・・」

「そういうことだから、すぐにそいつとは別れろ。」

「イヤだ。パパの言いなりになんかならない。」

「聞かなければ退学させろと言われてる。それでもいいっていうのか?」


・・・退学?!

・・・そんなことまでして・・・



「いいよ、別に。退学なんてどうでもいい。」





ごっちん・・・・?



「ごっちん、何言って・・・・」

「学校より大切だもん。よしこと別れるなんて、学校辞めたほうがマシ。」

「後藤、いいかげんにしなさい。」


市井もだんだん目の色が変わってきた。


104 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)17時09分20秒


いくらなんでも学校を辞めるのは・・・・


ごっちんはたくさんの人に期待されてるんだし・・・
あたしとはちがうんだから・・・・



・・・


「・・・ん?お前もしかしてうちに来てるパン屋じゃないか?」

市井はあたしの顔を見て気づいた。

「そうですけど。」

「吉澤とか言ったな。よし、じゃぁこうしよう。」


・・・・?



・・・


「別れたくないなら、後藤にはこの学校をやめてもらう。」


・・・


「それがイヤなら・・・・・」











「パン屋との契約は明日から取り消しだ。」







・・・・そんな・・・





105 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)17時14分49秒



「・・・・それなら別れなくていいですか?」


ごっちんは市井にそう尋ねた。


「あぁ。そうだ。ただし今のどちらかひとつ守れればな。もちろん理事長にも黙っててやる。」








ごっちんとは別れたくない。


でもごっちんに学校を辞めて欲しくない。




・・・でも


美空大とパン屋の契約を切ったら・・・・


安倍さんと愛ちゃんを裏切ることに――――――








・・・・


「ごとー、学校辞める。」








106 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)17時17分22秒



・・・・??



ごっちん―――――・・・・?!



「ごっちん、何言ってんの?!」


「いいの。あたし、辞めるから。」



・・・・そんな


ごっちんに・・・


ごっちんにあたしと同じことはさせたくない――――――



高校中退なんてもう・・・・






























・・・


















安倍さん、愛ちゃん、



ごめんなさい。





















・・・・・・・・・


・・・・





・・・・・・・・


・・・







「彼女を退学させないで下さい。」




















・・・



「明日から、パン屋との契約はなかったことにしてください。」










107 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)17時19分03秒

こうして、ごっちんの退学の話はなくなった。

もちろん、ごっちんには反対された。



でも、ごっちんと別れるのも、ごっちんが学校を辞めるのもイヤだ。

だから・・・




これしかなかったんだ―――――・・・













ごめんね、ごっちん。









ごめんなさい、安倍さん。




















・・・・・・


108 名前:とみこ 投稿日:2003年05月29日(木)17時19分56秒
更新終了です。
別れることは免れましたが、このままうまくいくのかどーかは・・・・

ご想像におまかせします、、、です。・


109 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)18時20分15秒
よしこの過去も気になる所ですが…。
究極の選択だよぉ…さてはてうまくいくといいんですけどね…
いかなそう(苦笑)
110 名前:EAGLE 投稿日:2003年06月03日(火)01時33分37秒
さてと、…………オヒサ!!!
そして、ごめんなSorry(ぉ

まぢでごめんなさい。「行く、行く」言って行けなかったオイラを許してぷりーず。
今日、やっとこさ読ませてもらいました。
ん〜、やっぱりイイね。ぶっちゃけ、次が気になるもん。
いちーちゃんはそう言う役割なのか、って思ったよ。
とみこsの作品は俺にとってはいつも新鮮で良いね。まぢでそう思う。
俺もこれぐらい上手になりたいってね。
何にしても、読むの遅くなってごめんなさい。

最後に、俺は師匠なんて呼べる人じゃないよ。ヘタレでは神かもしれんけど(ぉ
111 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)08時34分39秒
>名無しさん
よしこの過去、気になりますねぇ^^
究極の選択。。。さらに登場人物が増えてゴタゴタする予定です(w

>EAGLEさん
お久しぶりっす!!師匠!w
いやいや、師匠以外のなんでもないですよEAGLEさんはw
あえて言うなら親方?親分?カシラ?(w
とにかくそんな存在ですぜ!リスペクトっすよ!リスペクト!

こんな作品を読んでもらってありがとうございます!!
これで何作目だってぐらい書きまくってますけどまだまだっすね^^;
EAGLEさんを見習わなければならぬです!!
これからも頑張りやすので、また、たま〜に見に来てくれたら嬉しいです。

では、更新しまーす


PS 今日は修学旅行の振り替え休日です(午後は部活っす。。。ちなみにバレー部w)
112 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)08時44分15秒



「本当にごめんなさい・・・!!」



土下座。

こんなことするのは、生まれて初めてかもしれない。

あたしは目の前にいる人に、本当に本当に深く深く頭をさげた。


・・・


「安倍さん・・・愛ちゃん、本当にごめんなさい・・・・」


事情をすべて話して、あたしはこういう形で安倍さんたちに謝罪した。
あたしがしてしまった勝手な行動は、どんなに最低なことだろうか・・・・・・



「これからは朝昼晩、他のバイトも行って美空大のバイトの埋め合わせします・・・」

あたしにできる償いはそれくらいしか思いつかなかった。
バカなりに考えたんだ。
それでも、許されることじゃないとは知ってたけど。

























「よっすぃー、頭上げて・・・。」



安倍さんはいつものやさしい口調であたしに言った。




・・・・そのやさしさは



濁ったあたしの心に何か感じさせた。




知らず知らず






















・・・・





涙が止まらなくなった。




113 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)08時49分12秒


「・・・・・え?」



あたしは恐る恐る頭を上げた。


そこには




いつもの笑顔の安倍さんがいた。

・・・・・・


どうして?



どうしてそこまであたしに優しくしてくれるの・・・?


社会の片隅で用無しのようなあたしに・・・・・・・




「よっすぃーの判断は間違ってないよ。」

「・・・でもっ!!」

「愛する人を守る気持ちは、みんな同じだよ。」

「・・・え?」



・・・

「吉澤さん、あたしだったら吉澤さんと同じことすると思います!」

「愛ちゃん・・・・?」

「よっすぃ、いいんだよ。大丈夫。家族なんだもん。」








・・・・
・・・・



家族・・・――――――




「これからは人一倍、うちの店で仕事がんばってね?」

















・・・・





安倍さん・・・・・・・・・―――――――










114 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)08時55分08秒


たくさんの人が歩く街中で、通行人も気づかないような片隅にある雑草は・・・
きっと、ずっとずっと誰にも気づかれないまま、枯れて死んでしまう。



あたしは、そんな雑草と同じ存在だと思ってた。










・・・


でも、安倍さんは教えてくれた。


・・・



こんなあたしでも




いきてるんだって。



家族なんだって。










10数年間忘れてた気持ちが、胸の中にあふれて、


あふれて・・・あふれて・・・



涙をたくさん流しました。




・・
・・・・


雑草なんかじゃない。



アスファルトに咲く、綺麗な一輪の花だと。


安倍さんは、そう思っていてくれたんだ。








咲き誇ろう・・・・・




精一杯生きよう。









自信を持って、咲き誇って








いつか大きな花になろう。



―――――――










「そろそろ、夕食にしよっか。」









そして安倍さんはいつもの笑顔でそう言ったのだった。







115 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)08時55分55秒


・・・・・・・







・・・・・・・・・






116 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)09時03分53秒



(後藤視点)


・・・



「失礼します。」


いつもと変わらない朝の学校。


あたしは英語準備室にいた。

暗くて、でも風通りがいい。




「おー、後藤。来てくれたか。」


「何ですか?市井先生。」



朝っぱらから呼び出されて、機嫌が悪かった。
どうせ話の内容はわかってるから、来たくなかった。
めんどくさいし、それに・・・・



ここは思い出の場所だから。

・・・

今は、その思い出を忘れたいから。









「後藤、【市井先生】なんて呼ぶなよ。」

「何で?あたしたちはもう終わったんだよ。」

「・・・寂しいこと言うな。あたしはまだ後藤が好きだよ。」



・・・・っ!



「ふざけないで!!」



バンッ



近くにあった教材を床に投げつけた。








「そんな怒るなって・・・」

「何なの?!今さらまだ好きだよって・・・・いい加減にしてよ!」

「わ、わかったよ。ごめんごめん。今日は違う話で呼んだんだ。」






・・・・



「なに・・・?」







・・・・・・・・・・・





「あのパン屋のことだ。」





117 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)09時09分51秒


「よしこのこと・・・が、どうしたの?別れる気なんかないよ。」

「わかってる。そうじゃなくて・・・・・・・」













「・・・・あのパン屋、本当に後藤に惚れてんだな。」



・・・?



「だったら何?」


意味がわかんない。

市井ちゃんは昔から、何考えてるかサッパリわかんない。

あたしの知らないところで大人ぶって。

あたしはいっつも気持ちを悟られてばっかりだった。





あたしは


市井ちゃんのこと、何も知らないまま・・・





「・・・あいつ、店の契約破棄してまで普通女を守るか?」

「よしこは、・・・あたしのことすごく大事にしてくれるから。」

「後藤はあいつのどこが好きなんだ・・・?」

「どこでもいいじゃん。」

「あのパン屋、すげぇ純粋だよな。っていうか単純。」



・・・バカにしてんの?


・・・・嫌味なヤツ。ちっとも変わってない。





118 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)09時16分16秒


「後藤はさ、あたしと付き合ってたときのことを忘れたいだけなんだろ?」


・・・・・



そんな



そんなんじゃない・・・・



「だから吉澤と付き合ったんだろ?あいつ単純だし、思い通りになるからって。」

「そんなんじゃない!」

「いや、あたしはそう思うね。だって、ずっと後藤を見てきたから。」



・・・っ!!!



「あたしの何もかもを知ってるみたいに言わないでよ!!!!」



・・・・・・・・・・








「そうだよ。あたしは後藤の何もかも知ってる。後藤は所詮まだ高校生なんだから。」

「・・・もうやめてよ!!市井ちゃんはすぐそうやって大人ぶるのやめてよ!!」




・・・


「それはどうかな。」



・・・え?



「大人ぶってるんじゃない。本当に大人なんだよ。あたしは。」

「ちがう・・・」

「後藤はずっとあたしが大人ぶってると思ってた。」

「・・・・・・。」






「でもあたしはもう大人なんだよ。ほら、結局後藤はあたしの何も知らない。」











「後藤は、あたしの何を知ってるの?」






119 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)09時21分50秒


「それはっ・・・・」


思わず言葉が詰まった。



あたしは・・・


市井ちゃんの何を知ってるの・・・・・・





「吉澤は、まだ後藤の何もしらない。」

「・・・・。」




「あたしみたいに、大人ぶったりしないから・・・都合がいいんだよな?」




・・・ちがう



ちがうもん






あたしにとってよしこはそんな存在じゃない・・・・




「じゃぁ後藤にとって吉澤は何なの?」


「・・・え?」



「所詮、都合のいい優しい恋人だろ。」






・・・・・・・・


ガラッ


バタンッ















そういって市井ちゃんは部屋を出て行った。














一人残されたあたしは

















頭が真っ白になっていた。






・・・・・


あたし





よしこのどこに惹かれたんだっけ。






・・・・





もう





忘れちゃった。
120 名前:とみこ 投稿日:2003年06月06日(金)09時22分44秒
更新終了です。

ちょっと痛いですね^^;
121 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月08日(日)11時19分23秒
い、市井さいてー!!(w
この先が気になります…。
122 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時35分10秒

(ひとみ視点)



それからあたしは一生懸命働いた。






「どうもありがとうございました!またお越し下さい!」


・・・ふう。これで今日の仕事も終わりだ。


相変わらず売れている「アベーカリー」は、すぐ売り切れて閉店時間が早まる。

人手が足りなくて、今バイト募集中のところだ。






カランカラン・・・


そのとき、店のドアが開いた。


そこには一人の小柄な女の子が立っていた。

・・・


「お客さん、すみません。もう売り切れ・・・」

「あ、あの!バイトしたいんですけど!!」
























驚くほど高い声だった。






「へ?バイトの方ですか・・・?」

「はい。チラシ見たんですけど。」

「あ、ちょっと待っててください。安倍さーん!バイトの方見えてます!」



奥から手を粉まみれにした安倍さんが顔を出した。
123 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時41分13秒


それにしても、この子誰かに似てる。


だれだっけ・・・・・・う〜〜〜〜ん・・・・・・


この高い声といい・・・

小麦色の肌といい・・・・・




「あらら!バイトついに来てくれたのね!」


あたしが思い出そうとしてると、ちょうどタイミングよく安倍さんが口火を切った。


「はい。高校生なんですけど、大丈夫ですか?」


「大歓迎だべぇ〜〜〜で、お名前は???」



その高い声はトーンを下げることも無く、


彼女は名前を言った。



その瞬間








すべての





すべての記憶がよみがえる。






























「石川梨華です。よろしくおねがいします。」

























・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







イシカワ ・・・  リカ・・・・・・・・・・










梨華ちゃん・・・・・・・・・・?



124 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時44分37秒


「梨華・・・・・ちゃん?」




思わずそう言った。



まさか





まさかあの梨華ちゃんが・・・・・



どうして・・・・・・・―――――――




「あれ?よっすぃー、知り合い?」



知り合いも何も、

彼女は・・・・・・











「ごめん、石川さんちょっと来て!」

「え?ちょ、・・・待って!」


あたしは彼女の腕を引っ張って店の裏に走った。



「よっすぃー?どうしたぁ?早めに帰ってきてね〜」


安倍さんの声も右から左へ通り抜けていた。
125 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時47分46秒

人気のない店の裏で、やっと足を止めた。


「な、なんなんですか・・・?」


息を切らして彼女は言う。


ごめんね、いきなり手を引っ張ったりなんかして。


そう思ったけれど、言えなかった。

今はそれよりも・・・・・・・・・




「梨華ちゃん!!あたしだよ!」


「・・・え?」

まだキョトンとしていた。


















「吉澤、ひとみだよ。」


























空気が感覚を切り裂いた。












彼女の表情は、一瞬で変わった。



126 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時51分39秒





「な、まさか・・・・・冗談言わないで下さい・・・・・」


彼女は・・・いや、梨華ちゃんは急に焦ったように言う。



「とぼけないで。覚えてるでしょ?梨華ちゃん!!」

「嘘だもん!!ちがうもん!ひとみちゃんは―――ひとみちゃんは・・・・・・・・・・」





























「覚えてるじゃん・・・・・。”ひとみちゃん”って、そう呼んでたじゃん。」


「・・・・・・・っ。」


「どうして?どうしてあの時いきなりいなくなったの?!」






どうして







どうして何も言わずにあたしの前から消えちゃったの?



あたしに、




深い、深い傷を残して・・・・・・・・










127 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時53分48秒



「ごめん、ごめんね・・・・ひとみちゃん・・・・・・・・。」


梨華ちゃんは泣き出してしまった。


まるで


あたしに深い傷を残したことを、償うようで、なかったことにしてしまうような涙・・・・・・












それでも彼女の涙を見たら






悲しみとか、裏切られた怒りとか




なぜか



なんでだろう・・・・・








一瞬で消えてしまった。









・・・・・・・・





















「また、会えてよかった。」











自然と出た言葉だった。






128 名前:とみこ 投稿日:2003年07月09日(水)18時55分37秒
>名無しさん
>い、市井さいてー!!(w
ほんとですね^^;よしごま推進会の私はどうしても黒い市井ちゃんしか・・・
さてさてどうなるやら・・・・






更新遅くなりましたが、すみませんでした。
励ましレス、リクレス、待ってます。最近さみしいですw
129 名前:96の名無し 投稿日:2003年07月12日(土)22時10分08秒
 お久しぶりです。更新されてて嬉しいです。とみこさんの小説
大好きなんで頑張って欲しいです。
 …今回はやや痛いと言うか、暗いと言うか。メンツがいつも決
まってる気がするのですが、設定が上手いですね。市井さんと、
石川さんがそれぞれ吉後の裏で動き出してて、カギをにぎってま
すね。これからの動きが楽しみです。
130 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時14分49秒
>96の名無しさん
お久しぶりです。
いやぁ本当に更新遅くてごめんなさい(泣)
でも見てくれてる人がいると思うと頑張れます!!
市井・石川が過去に関するキャラとして出ましたね。
ここからどうなっていくやら。。。
頑張って更新します!!
131 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時18分45秒

(後藤視点)


ひとり暗い部屋に残されたあたしは、無表情で涙を流していた。
ほほを伝う感覚が、まだ意識を保たせていた。


自分を見失いそうで

怖くて、怖くて

・・・



つい、市井ちゃんの言葉を真に受けてしまうのは

ごとーが、子供だから?







―――――――『ほら、後藤は何にも知らない。』・・・・・・・・





そんなことないもん。

よしこ・・・・あたし、よしこのこと好きだよ?

いっぱいいっぱい好きなところあるよ。



・・・・



























もう、わかんなくなっちゃったよ・・・・・・・・・
132 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時22分58秒

(ひとみ視点)


「電話、鳴ってるよ・・・」

梨華ちゃんは困ったような顔でそう言った。
まるでさっきの言葉をかきけすように。


「あ、ホントだ・・・」



ピッ

「もしもし?あ・・・ごっちん。どうした?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「・・・ごっちん?どうしたの??ごっちん?!」


プツッ

電話は切れた。






「梨華ちゃん、ごめん。さっきの話はまたあとでゆっくりしよう。」

「え?」



あたしはすごい勢いで走り出した。

彼女を残して。彼女の元へ。













133 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時28分41秒


「開けてください!!!」


あたしは美空大の前に来ていた。

大きく立ちはだかった門くを、あたしは体当たりで開けようした。


「こら!待ちなさい!!何をやってるんだ!」

警備員らしき男の人が走ってやってきた。
・・・この際、悪いけど――――――――・・・・



バキッ  ドカッ


「うっ・・・」


警備員を軽く倒して、あたしは門をするりと飛び越えた。


・・・

玄関の中に入ると、あたしはごっちんの居場所を探した。


・・・もう当てずっぽしかないか・・・


そう思って一番近いところにあった「英語準備室」から探そうとしてドアを開けた。


その瞬間――――



ガラッ




「・・・・・・・!!」




そこには泣き崩れて座り込んだごっちんがポツリと居た。




あたしは念のため扉を鍵をつけて閉め、ごっちんの元へ向かった。

134 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時33分52秒

「ごっちん!!・・・・・・・」


座り込む彼女を、あたしは強く抱きしめた。



「・・・どうしたの。何があったの・・・泣かないで・・・」


それでも彼女は、泣きながらあたしに身を任せていた。


・・・

少し落ち着くと、ごっちんはゆっくりあたしの体を手で離した。



「・・・大丈夫?」


そのあと

彼女はやっと口を開いた。











でも



その言葉はあまりにもあたしにとって絶望的な言葉だった。


















「あたしたち、どこに惹かれ合って付き合ったんだっけ・・・・・・・・・・・・・」






・・・え?









「もう、忘れちゃった・・・・・」









ごっちんから聞いた言葉は


それが最後だった。



135 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時35分48秒


そう。すぐに理解できた。

遠まわしに言えば、「別れよう。」と同じ意味なんだよね。


・・・・


あたしたちに春は突然始まり



夏、暑い季節に

溶けきって、終わった。





さよなら、ごっちん。








136 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時39分53秒

「ただいま。」


お店に戻ると、もうみんな売り切れで、中には誰もいなかった。



「あ、吉澤さんおかえりなさい!」

その時、愛ちゃんが出迎えてくれた。いつもの笑顔で。


「ただいま。あ、安倍さんは?」

「買い出しに行ってますよ。そういえば石川さんとはどうなったんですか?」

「あぁ、昔の友達だったんだよ。」

「え!!そうだったんですか?今リビングにいますよ?」

「・・・え?」



タタタタ・・・

駆け足で階段を駆け上って、リビングに行った。



「・・・梨華ちゃん。」

「あ、・・・ひとみちゃん。」




137 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時43分59秒


「待っててくれたの?あたしが帰るの。」

「うん、。なんか中途半端な再会だったし・・・」


なんだか、さっきよりもお互い一目置いていた。

あたしもイスに腰かけて、梨華ちゃんと向かい合った。


・・・


「ごめん、その・・・さっきはいきなり呼び出して。」

「ううん、あたしこそひとみちゃんにこんな所で会うなんて・・・」

「はは、本当だよね。偶然すぎだよ。」

「うん・・・。」




今はこんなに穏やかに話してるけど・・・


あたしたちはこんなに明るい再会なんてできない別れ方をした。










あれは


15の夏。






138 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時48分32秒

(過去編)




「友達になって下さい!!」


突然、梨華ちゃんからそんな告白をされたのがきっかけだった。


そのときあたしは15歳で、梨華ちゃんは隣のクラスの人。ぐらいの存在で

中学のあたしはすでに荒れていた。バカだったし。


「は?友達?なんであんたみたいなマジメさんと・・・」


正直な気持ちをズバッと言った。
はっきりいって彼女みたいなのは苦手だった。
チャラチャラしてて、遊んでばっかりのやつらといる方が楽しかったし。


「・・・・そんなぁ・・・」


驚いたのはそのあとだった。
あたしの言葉に彼女は泣き出してしまったのだ。


「ちょっ・・・アンタ何泣いてんの?!意味わかんないんだけど!」

なぜかすごく焦ったのを覚えてる。


・・・


なんでかな


ひょんなことから梨華ちゃんとは仲がよくなった。


139 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)08時53分30秒

他の不良仲間には梨華ちゃんと仲がいい事は、知られたくなかった。
知られたらあたしもなんだか気恥ずかしいし、
梨華ちゃんもなんかちょっかい出されたらかわいそうだったから隠していた。


・・・

彼女とは、昼休みに屋上で会うのが日課だった。



「いい天気だね、ひとみちゃん。」

「うん。ってか、あたし五時間目サボるからね。」

「え!!ダメだよぉ!内申さがっちゃうよ?」

「もうこれ以上下がりようがないでしょ。」


いつもそんな風に梨華ちゃんの説教をかわしていた。

そうすると彼女はいつもこう言うんだ。



「・・・じゃぁあたしもサボる。」

「だめ。」



当たり前だよ。梨華ちゃんは頭もいいし、優等生だもん。



140 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)09時05分13秒

でも所詮中学生の悪知恵っていうのはショボいもんで、

ある日あたしと梨華ちゃんが屋上にいるのを、先生が発見してしまったのだ。

当然呼び出しをくらった。



「どういうことですか?吉澤さん。」

まずはあたしの方に質問が来た。


「どういうことって・・・別に普通に話してただけだけど。なんか文句あんの?」

「そうではなくて、どうしてあなたみたいな人が石川さんと?」

「は?別に友達なんだからフツーだし。何が言いたいんだよ。」


先生はため息をついて梨華ちゃんの方を見た。

「石川さんは友達なんですか?吉澤さんと。」

「はい・・・。」

「しかも屋上は立ち入り禁止ですよ。」

「はい・・・。」

「ま、吉澤さんはともかく、どうして優等生の石川さんが―――」


・・・!!


バンッ


「どういう意味だよ!!!」

あたしは机を叩いて立ち上がった。




「てめぇらそれでも先生か!!!ざけんじゃねぇ!!」



あたしはそういって出て行った。


141 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)09時26分02秒

「ひとみちゃん!!」


出て行ったあたしを追いかけて、梨華ちゃんは屋上まで着いた。


「もういいよ・・・やっぱ梨華ちゃんとは友達にはなれないよ。」

「そんなことないもん!先生がまちがってるだけだよ!!」

「梨華ちゃんはいいよね!優等生だもん。家族だっているし!!」

「・・・え?」

「梨華ちゃんに・・・両親もいないあたしの気持ちなんてわかるわけないじゃん!」




・・・・・・・

沈黙が走った。








「あたし、ひとみちゃんが好きよ。」




142 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)09時29分12秒







「・・・・え?」


「ずっと、ずっと友達になりたかった。勉強しかできないあたしにとって、ひとみちゃんは強くてカッコイイ存在だった。」


・・・
あたしは、強くなんかない・・・


「友達になって気づいたの。あたし、ひとみちゃんのこと好きだって。」




・・・意味わかんないよ。



「っつーか、女同士だよ?うちら。わかってる?」

体験したことのない、同姓からの告白。



「わかってる。でも好きなんだもん。好きになっちゃったんだもん。」









143 名前:とみこ 投稿日:2003年07月26日(土)09時30分25秒
更新終了です。
144 名前:とにこ 投稿日:2003年07月31日(木)12時11分41秒
ochi
145 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)12時32分18秒

「友達以上の関係になりたいの。」


そんなこと言われたって・・・・・・・

確かに梨華ちゃんはいい友達だよ?でも・・・付き合うとかっておかしいよ。
女同士だよ?そういう人もいるんだろうけど、私はちがう・・・

「無理だよ、んなの・・・」


・・・
悪いけど、女同士でもいいから付き合いたいってほど
梨華ちゃんはあたしの中で大きな存在ではない。




「・・・・わかってた。」

「え?」

「ひとみちゃんの中で私がどんな存在かなんて、わかってたよ。」

「・・・どういう意味?」

「友達としか思ってないもんね。ごめん、ごめんね・・・」


そういって梨華ちゃんは走って行った。

・・・あたし、梨華ちゃんを傷つけた?


でも、そんなん知らないよ。もともとあたし
そんなに人の気持ちとか考える人じゃなかったし。
やっぱり、不良とつるんでるほうがショウに合ってるのかも。


お気の毒だけど、梨華ちゃんとの関係はこれで切りたい。
146 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)12時41分41秒

「おい吉澤。」

さっき説教をされた先生が廊下で止めた。

「なに。」

「石川は明日転校するんだ。」

「は?」

どういうこと?意味わかんないって・・・

「はぁ、最後にお前のせいで説教くらって転校するなんて石川もかわいそうだな。」


その先生のイヤミな言葉にも、今は反応できなかった。
何も考えずに、あたしは走り出したから。




147 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)12時54分45秒

なんで?どうして?

何も言わずに行っちゃうなんて・・・・
好きだとか言っといて、言い捨てかよ・・・

でも最後だから・・・・・・伝えたかったのかな?
なのにあたし、・・・傷つけた。
梨華ちゃんの気持ち考えないで傷つけた。


「梨華ちゃん!!」


校内を探してももう彼女の姿はなかった。
家ってたしか学校の近くだったような・・・・
あーもっと詳しく聞いとけばよかったよ。

行き当たりばったりで梨華ちゃんの家を探した。

その時



148 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)13時00分51秒

「ひとみちゃん!?」

制服姿の梨華ちゃんが、家から顔を出した。


「梨華ちゃん・・・・ここだったんだ、家。」

「うん、え・・・なんでここにいるの?」

なんでってめっちゃ探したんですけど・・・・

「転校するの?あたしそんなの一言も聞いてないよ?!」

「・・・だって言ってないもん。」

「はぁ?!何言ってんの?友達って普通そういうの教えない?」

「・・・だって、言ったらあたしがツライから・・・」

「んな・・・」

こっちはそんなこと知らなくてあんな断り方して・・・・・・・・・
あぁ〜〜もうワケわかんねぇよ・・・


「とにかくちゃんと話そう。」

「今は無理よ・・・」

「じゃぁ夜8時に西公園で待ってるから。」

「え?ちょっ・・・ひとみちゃん?!」


そう言い切ってその場を去った。

いったい何が言いたかったか、自分でもわからなかった。
とにかく今夜、全部決める。
149 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)13時08分59秒

そして8時に西公園に向かった。暗くて彼女がいるかどうか、よくわからない。


その時、暗い中に赤い光と大きなサイレンの音が聞こえた。
それは脳に響く、いやな音だった。


「・・・救急車?」


救急車は西公園に止まり、中からは担架を持った隊員があわてた様子で出てきた。

周りにはヤジウマがたくさん集まって・・・・・・





「・・・!まさか・・・?!」

梨華ちゃん?!


そう気づいた時にはもう救急車は公園から出発してしまった。
あたしはあわてて近くの人に声をかけた。


「あの、今ここに中学生の女の子いませんでしたか?!」

「あぁ、その子なら救急車に乗って行ったよ。知り合いかい?」


・・・そんな・・・



あたしは必至にその赤いランプを追った。


全速力で走って、走って、救急車を見失わないよう走り続けた。
150 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)13時12分08秒

「はぁ、はぁ・・・!!」

走っても走っても病院にはたどり着かない。
もちろん、救急車も止まらない。

でもここで少しでも速度が落ちたら見失っちゃう・・・・・・・・

・・・

意識がもうろうとする中であたしはただ、ただただ赤い光を追った。

・・・・・・・・・・・・・・・・



そしてようやく救急車は病院にたどり着いた。
151 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)13時16分35秒

救急車が止まり、バックのドアが開けられた。、


梨華ちゃん・・・!!


しかし。





「大森さん?大丈夫ですか?」

担架に乗っていたのは、ひとりのお年寄りだった。


・・・どういうこと?え?



「ひとみちゃん?!」

・・・?!

担架のあとに救急車から出てきたのは梨華ちゃんだった。
え、ちょっとまって・・・どういうこと・・・?


「梨華ちゃんが・・・運ばれたんじゃなかったの?」

「え?あたしは倒れてたお年寄りを助けたの・・・」

「マジかよ・・・」


あたしはそのまま力が抜けて、床に座り込んだ。


「ひとみちゃん??こそ、どうして・・・・・・・・」

「・・・バーカ。心配させないでよ。」


思わずでた一言だった。
152 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)13時22分54秒

「待ち合わせ。西公園行ったら救急車がいて・・・梨華ちゃんいなかったから。
梨華ちゃんが運ばれたのかと思って・・・・ずっと、ずっとここまで救急車追いかけて来たんだから。」


「え・・・・・本当に?」

「ホントだよ。あぁ、マジ疲れた・・・・」

「ひとみちゃん・・・・・・」


彼女の目には涙が浮かんでいた。
また、泣かしちゃったよ・・・・・・・
あたしはお詫びに彼女をギュッと抱きしめた。



「もう梨華ちゃんの涙見るのはこりごりだよ・・・」

「え・・・?」

彼女はあたしの腕の中でそういった。




「好きだよ。ほっとけないよ、梨華ちゃんのこと。」










こうして、あたしたちは恋人同士になったんだ。
153 名前:とみこ 投稿日:2003年08月11日(月)17時17分45秒
更新終了です。誰も見てないようなのでいくつかレスがあれば更新したいと思います・・・
154 名前:みるく 投稿日:2003年08月11日(月)17時25分47秒
見てます!!
更新楽しみにしてたんです。。。

これからごっちんとよしこがどうなっていくのか楽しみです。
頑張ってください!!!!
155 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月11日(月)20時10分33秒
とみこさま
今日、見つけ一気に読んでしまいました!!!
おもしろいですYO!
更新、楽しみに待ってます!!
156 名前: 投稿日:2003年08月11日(月)23時09分16秒
更新楽しみにしてました。
ごっちんと市井の間に昔何があったのか、
よっすぃ〜とごっちんはこれからどうなるのか、とても楽しみです。
更新楽しみにしてます。
157 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時16分10秒

でもやっぱり、梨華ちゃんは次の日

転校してしまった。

・・・

「もしもし?もうそっち着いたの?」
でも携帯同士で毎日電話やメールはしてるし。

「うん!大きいよ、こっちの家。」

「北海道だもんね。土地広いんだ?」

「うんっ。いつか遊びに来てね♪」

「もちろん。じゃ、今から学校だから。またね。」

「うんばいばーい」







でも

そんな幸せは長く続かなかった。
あたしは別にずっとずっと梨華ちゃんといたかった。
それだけなのに・・・・

158 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時16分58秒
・・・・・何ヶ月かしたある日突然、
電話も通じなくなって、手紙もメールも届かなくなった。
梨華ちゃんと、完全に連絡不可能になったのだ。

最初はどうにかして一生懸命連絡を取ろうとしてたけど、
だんだんそんな自分がむなしくなって・・・・


こうしてあたしと梨華ちゃんの恋は、最悪の形で終わりを告げたのだ。
159 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時17分52秒

そして今・・・・・・


ここで梨華ちゃんとバッタリ再会したってわけだ。


160 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時26分22秒

「あの時・・・なんでいきなりいなくなったの・・・?」
リビングの重い空気を彼女と半分ずつ受けながら、あたしは1番聞きたかったことを聞いた。


・・・・

「・・・本当にごめんなさい。」

「ごめんじゃわかんないってば。何でもいいから教えてよ。」

「・・・・・わかんないよ。わかんないけどっ・・・」

「・・え?」

・・・

「どこが好きなのか、忘れちゃったの・・・・・・・」



んな・・・・



「・・・なんだよ、それ・・・」

「ごめんなさ・・・」

彼女の目にはうっすらと涙が浮かんだ。

「泣かないでよ・・・・・」

「ごめん・・・」


しかも
【どこが好きなのか忘れちゃった】


なんてさ



さっき、どーっかで聞いたような気がするんですけど・・・・・・・・・


161 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時38分35秒

【あたしたち、どこに惹かれて付き合ったんだっけ?なんか・・・忘れちゃったよ】


ごっちん・・・・・・・・・・・・


どうしてあんなこといきなり言ったの・・・?


「梨華ちゃん、もういいよ。」

「え・・・?」

「あたしって、多分誰と付き合っても【どこが好きか忘れた】って言われると思うんだよねぇ。」

半分開き直ってやる・・・・
っつーか、ごっちんも、梨華ちゃんも、そんな軽い気持ちで付き合ってたの?
好きなトコ忘れたなんてさ・・・・・ひどいよ。


「もう話済んだよね?」

「あ・・・うん、。」

「送るよ。帰ろう。」

「ちょ、ちょっと待って!!」


そういってリビングを出ようとするあたしの腕を掴んだ。
なに・・・・今更なんかあるっていうわけ?





162 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時48分19秒


「あたし、やっぱりひとみちゃんが好き!」


・・・・は?


「ひとみちゃん、ごめんね。今さらって思ってるよね、ごめん・・・・でも」

「思ってるよ。ホント、なんで今さらって感じだよ。」

「え・・・・」

「付き合えないよ。もう、無理だよ。」

「・・・・・。」


自分でもなんって冷たい言葉だろう、そう思った。
なんでかな。でも全然平気だ。

「フッた方にフラれた気持ちはわからないよ。」

「でも・・・・っ」

「とにかくもう無理なんだ。付き合えない。ごめんね。」

・・・


163 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)12時55分30秒

「ただいまー」

梨華ちゃんを家まで送って、あたしは店に戻った。


「あ、吉澤さんおかえりなさい!あれ?石川さんは?」

「もう帰ったよ。送っていった。」

「そうなんですかぁーなんかリビングに暗い空気流れてたんでビビりましたよー」

「あぁ、ゴメンゴメン。」

「モトカノですか?」


?!


「え?!え、あ・・・な、何言ってんの?!」


愛ちゃん突然何言い出すのさ・・・!!

す、す、するどすぎる・・・・この子・・・・・・・・・


「吉澤さんってわかりやすいんですよねーふふっ」

ふふってアンタ!!!

「ホント、そ、そんなんじゃないってば!」

「後藤さんともあんまりうまく行ってないですね?」

「えぇ?!」

「もしかして、別れちゃったとか・・・・・・・・・」

「う・・・」




なんでここまでするどいかなぁ・・・・・・・
164 名前:とみこ 投稿日:2003年08月12日(火)13時00分40秒


「まぁ、元気出してくださいよ。」

そういってまるで彼女の方が年上のように、あたしの頭をポンポンしていた。

「・・・・はぁ。もういいんだよ。」

「石川さんとはやり直したくないんですか?」

「うん。それは、もういいんだよ。」

「じゃぁ・・・後藤さんは?」








ごっちん・・・・・・・・




「あたしは・・・・・・・・・」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

忘レられないよ・・・・・・・・・・



梨華ちゃんとの思い出よりも、ずっとずっと大きくて
深くて、温かくて、
忘れられるわけ・・・・・・・・ないよ。


・・・


「まだ、ごっちんが好き。」



「・・・そうですか。じゃぁ行きましょう!!!」

「え?」

「今から後藤さんに気持ち伝えに!行きましょう!」



・・・えぇ?!
165 名前:みるく 投稿日:2003年08月12日(火)20時54分56秒
よしこは梨華ちゃんとやり直すのかと思っちゃいました。。。
早くごっちんに会いに行くんだ〜!!
頑張れ、よしこ☆
166 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月12日(火)22時22分51秒
ochi
167 名前:とみこ 投稿日:2003年08月13日(水)17時06分35秒
>みるくさん
本当にありがとうございます!!見ていてくれて嬉しいです!
がんばります!!!

>ななしのよっすぃ〜さん
>今日、見つけ一気に読んでしまいました!!!
おお!!ありがとうございます!!
長いのに本当に嬉しいです!
これからもよかったら見に来てください!!ありがとうございます!

>Mさん
本当にうれしいです!見ていてくれてありがとうございます!
ごっちん、市井ちゃん、よっすぃー、梨華ちゃんの仲はどうなるのでしょう・・・
期待を裏切らないようにします!!

168 名前:とみこ 投稿日:2003年08月13日(水)17時08分43秒
昨日はPCの調子が悪く、レスしてくださった方にお返しレスができませんでした。
本当に申し訳ありませんでした。
改めて、更新終了です。
169 名前:とみこ 投稿日:2003年08月13日(水)17時10分11秒
>みるくさん
>よしこは梨華ちゃんとやり直すのかと思っちゃいました。。。
そうですねぇ^^;でも片思いということも・・・・・・
よしこは市井ちゃんからごっちんを取り戻せるのでしょうか!!
応援よろしくお願いします!!!
170 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 10:54
ho
171 名前:とみこ 投稿日:2003/09/29(月) 14:44

来てしまった。


「立派なお家ですねぇ・・・・って見とれてる場合じゃないですよ吉澤さん!!」

愛ちゃんはせかせかとあたしに言う。
・・・ここまで来たからには・・・・・・・

でも・・・う〜〜〜!!!


「やっぱ帰ろうよ、愛ちゃん。」

「何言ってるんですか!シバきますよ?!」

「・・・すみません・・・」

なんでこーなるかなぁー
あたしって、弱っ。


「じゃぁ、あたしは帰りますね。あとは吉澤さん次第です。」

「・・・うん。ありがとね。」

「はい!あっ、最後に・・・」

「え?」


そういってボソッとひとこと、耳打ちされた。









「わかった。ありがとね、ホント。」

「頑張って下さい吉澤さん!!!」





クライマックス。


うまくいきますよう、



この指先に願いを込めて。
172 名前:とみこ 投稿日:2003/09/29(月) 14:49

ピンポーン・・・・・・・・・


大きな門がすごく高く感じた。
でも、越えてやる!
そんな気持ちで、目を閉じた。


『よしこ・・・・?』


インターホンのマイクから、あの声が聞こえた。

懐かしい、彼女の・・・・・・・・


「うん、あたし。ちょっと会える??」


そういうと彼女は返事もせず、その代わりに玄関のドアが開いた。




・・・


「ごっちん・・・・・・・・」



あたしはただ



覚えていたはずなのに忘れかけていた彼女の顔を


見つめることしか、

できなかった。
173 名前:とみこ 投稿日:2003/09/29(月) 14:54


玄関からあたしの方に少しずつ歩いてきた。

それと同時に、心臓がドクン。ドクン。と音を立てる。

・・・


目の前に現れた彼女を見て、あたしは・・・

もう冷静では居られなかった。







「あなたが好きです。」






気が付けば、その言葉を口にしていた。





「あなたの事を・・・あきらめることは、できません。」


















「お願い・・・ごっちん・・・」




急に涙が溢れてきた。

わけもわからず、袖で強く強くこすった。




「よしこ・・・・・・あたし・・・」







174 名前:とみこ 投稿日:2003/09/29(月) 14:59


「もう、よしこ以外・・・何もいらないわ。」




・・・・・・・














え?









「学校もやめた。お父さんとも縁を切って、家も出て行くの。」



ごっちん・・?


「どういうこと・・・?」


「どうもこうもないよ。ぜーんぶ、よしこと同じ気持ち。」


ごっちん、

ごっちん・・・それって・・・







「後藤真希は、世界一・・・吉澤ひとみを愛しています。」




・・・・



「ご・・っちん・・・・・」


抱きしめたそのぬくもりは


もうすぐ忘れてしまうところだった。

蘇るあの気持ち

あの感情。





もう、離れたくない、離れない。

175 名前:とみこ 投稿日:2003/09/29(月) 15:04

数年後――――――



「なっちー!新作のパン出来たよ〜!!」


厨房から聞こえるのは、愛しい愛しい彼女の声。


「愛ちゃん、よっすぃー、ごっちん特製新作パン、並べて〜!」

安倍さんの声も、いつもと変わらず響いてます。


幸せ幸せ幸せ。

いくらいっても言い切れない。




「よしこ〜早く〜!!」

「はいはーい!今行くよ、ごっちん!」




ハートのパンに、愛を込めて。

虹のかかった空に願いを込めて。

儚い思い出にサヨナラをして。




ありがとう。





〜・・・fin
176 名前:とみこ 投稿日:2003/09/29(月) 15:09
終わりました。
受験勉強でずーっと更新できなくてごめんなさい。

そして、私はしばらくM−seekを去ります。
これからは約半年間、高校受験に専念したいと思います。
今まで応援して下さった方々、レスを下さった方々、
本当にありがとうございました。
これからもM-Seekの健康を願いまして、お別れの言葉とさせて頂きます。


とみこ

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