ジュマペールの人々
- 1 名前:七誌 投稿日:2003年04月07日(月)16時38分52秒
- 順番からいって花版で。
更新はまったり気味に。
というわけで、よろしくお願いします。
- 2 名前:101号室 ジュマペール 投稿日:2003年04月08日(火)13時01分22秒
ついにこの日がやってきた。
私は、築30年の木造モルタル二階建てのおんぼろアパートを見つめた。
私の名前は、新垣理沙。
アラガキではなく、ニイガキだ。解散した某グループのAメンバーではない。
以後、絶対に間違えないように気をつけて欲しい。
間違えれば持てるコネの全てを使って報復をする。
それが、我が新垣財閥のもっとうだ。
つまり、私は、日本屈指の資産家であるあの新垣財閥の1人娘。なのである。
そして、私の肩書きは今日からもう一つ増える。
このボロアパート――ジュマペールの管理人という肩書きが。
もともと、このアパートは偏屈な祖父が趣味で経営をしていたものだ。
最寄の駅から歩いて10分弱、少し遠い気もするが毎日の散歩には丁度いい距離だろう。
周囲は重厚な石塀にぐるりと囲まれている。
小さい頃、祖父はよくここに私を招き口癖のように言っていた。
『ワシが死んだらジュマペールは理沙が管理するんじゃ』
と。
そして、それは現実になった。
- 3 名前:101号室 ジュマペール 投稿日:2003年04月08日(火)13時03分18秒
祖父が亡くなってジュマペールは一時解体の危機に陥った。
私は、管理人としてはまだ若すぎるしそれにあんなボロアパートを維持する理由がなかったからだ。
しかし、そうは問屋がおろさない。
ジュマペールは、私の、私だけのための城だ。
誰がなんと言おうと、法律が邪魔しようとも私はジュマペールの管理人になる。
これが運命。Thisis運命。
妙な使命感に燃えた私はそれから数日、自分が持ちうるいろいろな方面への
コネキャラに賄賂やらなにやらの裏工作で寝る間もないほどだった・・・・・・・・・・・・
というのは、冗談だ。両親が、私の熱き思いに負けた。
表向き、そういうことになっている。あ、表向きじゃなくてもそうだった。
とにもかくにも、晴れて私はここにいる。
あまりの嬉しさに今ここで叫びたい気分だ。
そんなことをすれば、頭のおかしいやつだと思われかねないのでそれは心の中だけにするが。
私は、敷地内へと足を進めた。
なぜか野菜畑(と思わしきもの)が目に入る。
以前、来た時にはこんなものはなかった。
祖父がそんな趣味を持っていたという話は聞いたことがない。
まぁ、傍に緑があることはいいことなので気にはしない。
- 4 名前:101号室 ジュマペール 投稿日:2003年04月08日(火)13時04分12秒
これから、はじまるワンダフルライフ。
ワンダフルの意味は素晴らしいだ。
これから、はじまる素晴らしい生活。
某漫画で管理人という職業については予習済みだ。
住人と仲良く触れ合い、「姐さん、事件です」的なことが起これば率先して解決し、
時には、庭の芝生に水をまき・・・・・・・・・・・・財閥の令嬢としてふんぞり返っていては得られない充実感。
想像するだけでも楽しみだ。
それに、某漫画によると管理人という職業はモテルみたいだ。
きっと私もモテモテ街道を突き進むことだろう。
美貌とは罪かもしれない。自然、頬が緩むのは押さえられない。
- 5 名前:101号室 ジュマペール 投稿日:2003年04月08日(火)13時07分33秒
さて、そんな素敵な生活を送る上で一番にやらなければならないことは、
まだ資料でしか知らない住人たちへの挨拶だ。
参考にした漫画にでてくるような奇妙な住人は現実にはありえないから、
里沙ちゃんのラブラブスマイルであっというまに、仲良くなれるだろう。
焦ることはない。後日、伺いに行く旨のメモをそれぞれの郵便受けに残して、
とりあえず、今日は自分の荷物の整理をしよう。
「後日、挨拶に伺います。お茶菓子の用意など、気を遣わないでください。
新管理人新垣(ニイガキ)里沙ラブラブ」
- 6 名前:七誌 投稿日:2003年04月08日(火)13時08分34秒
- 煤i;・e・)
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月08日(火)20時26分59秒
- ニィ主役ってかなりめずらしいですね。
自意識過剰っぷり最高です。期待してます
- 8 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月09日(水)10時58分00秒
天気はいいし、まるで私のこれからを祝福しているかのようだ。
私は、断言する。
今日は、記念すべき一日になるだろう、と。
私は、大きく息を吸い込み、ゆっくりと指を伸ばす。
チャイム一つで始まる新世界へGO!GO!GO!GO!
――ピーンチャポーン
以外に間抜けな音だった。
そんなことはどうでもいいけど・・・・・・・・・・・・
「はーい」
扉の向こうから聞こえる甲高い声。
どこからだ?どこからその声を出している!?
そんなツッコミをいれたくなるほど変わった声だ。
- 9 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月09日(水)10時59分45秒
ガチャっという音とともに扉が開く・・・・・・・・・
あれ?開きかけてやめやがった。
隙間から胡散臭そうに私を見ている。
肌が黒いからか目だけがやけに目だっていて少し怖い。
なんで、扉を開けてくれないんだろう?
一瞬、そう思ったがよく考えたら物騒な世の中だし、突然、見知らぬ美少女が訪ねてきたら
仕方がない態度か。メモに顔写真もつけていればよかった。
「あ、私はかんりに――」
「しません!」
「は?」
自己紹介をしようとしたところで遮られた。
しませんって、なにをしないんだろう?
ものすごく気になる。
だいたい、どういう思考の流れでその言葉が出てきたんだろう。
さらに気になる。
いや、そんなことより初日から住人に拒否されるわけにはいかない。
私は、見れば誰もが昇天するという会心の笑みを浮かべて
「新しく管理人になったアラガキじゃなくてニイガキですよ。メモをいれておいたんですけど」
- 10 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月09日(水)11時00分22秒
石川さんは、クエスチョンマークを浮かべて指を口元に当てる。
その姿は、キショイの一言に尽きる。
ややあって、メモの存在に思い当たったのかポンと手を叩いた。
その姿も・・・・・・(ry
「どうぞ〜、待ってたんですよ〜」
さっきとは打って変わってにこやかに扉が開けられた。
「それじゃ、しつれいしま・・・・・・・・・・」
・・・・・・なに、この部屋?
開かれたドアから零れだしたピンク色の光に私は思わず口を開けた。
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月09日(水)12時08分12秒
- ( ^▽^)4714
- 12 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時41分26秒
「どうぞ、おくつろぎください」
おくつろぎできるわけがない。
私は、淹れたてのコーヒーに手をつけないままゆっくりと部屋全体を見回す。
床も壁も天井もソファーもテーブルも――とにかく目に付く全てがピンク、ピンク、ピンク、ピンク――エンドレスピンク
ある意味、尊敬に値するほど徹底されたピンクの部屋。
洒落にならない。
っていうか、敷金だけじゃ直せないでしょ、これは・・・・・・まずい。
だいたいこの部屋でのんびりとくつろげるなんてどうかしているんじゃないか?
目がチカチカする、頭がくらくらする、一刻も早くこの部屋をあとにしたい・・・・・・
だが、管理人としてそういうわけにはいかない。
- 13 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時42分56秒
「あの、石川さん」
「はい?」
「あなた、薬でもしてるんですか?」
「は?」
確か、薬物に依存していると一つの色に偏執的にこだわるという症状がでるとかでないとか、
赤髭のサンタとか――もちろん、漫画で仕入れた情報だから真偽の程は定かではないが――
私は、単刀直入に聞いた。
石川さんは、キョトンとした顔で私を見つめる。
その顔でピンと来た。どうやら、白をきる気らしい。
管理人として住人の犯罪を見て見ぬ振りはできない。
- 14 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時44分22秒
「ダイエットですか?それとも、ストレス発散ですか!?」
「あの・・・・・・管理人さん?」
「やめようと思ってやめられるなら取締官なんていらないんですよ!バカですか、あなたは」
「ば、バカ・・・?」
「ええ、バカです、バカ。もうアホかとバカかと、中島ら○かと!!」
「ひどいですよ!?」
「ひどくありませんー!」
「だいたい、さっきからなんの話してるんですか!?」
石川さんが、声を大にした。
まずい、薬物中毒の人はいつなにをするのか分からない。
逆上して攻撃されかねない。
穏便にいくつもりだったのについ私の中にある新垣仮面が轟き叫んでしまった・・・・・・
私は、気を静めるために小さく咳払いをする。
よく考えたら、『薬してますか?』『はい、してます』なんて言う人間がいるわけがないな。
少し責めるポイントを変えてみよう。
- 15 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時46分00秒
「・・・・・・精神科に通ってますか?」
「・・・いいえ」
ダメだ、ストレートすぎる。
他の聞き方は・・・・・・
「小さな頃になにかあったんですか?」
「小さい頃ですか?そうですね〜私、今からじゃ想像できないと思うんですけど小学生の時少し太ってたんですよ」
「それだっ!!」
吐いた、ついに薬に手を出した理由を自白した!!
「それで、薬をはじめたんですね」
「いえ、中学生になってテニス部に入ったんです」
「それだっ!!」
テニス部でいじめか。
お蝶婦人がいたんだな。
「それでですね〜これも想像つかないかもしれないけどテニス部の部長になったんですよ・・・・・・そしたら――」
「それだっ!!」
部長になった重圧だな。
この人、上にたつ器っぽくないもんな。
「で、試合があったんですよね。そしたら・・・・・」
まだ、話続いてたのか。
もう理由は分かったから聞くこともないのに――
- 16 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時46分53秒
「分かりました、それであなたは薬に手を出したんですね」
「その試合に負けちゃっ・・・・・・え?なんのことですか?薬って」
理由は吐いても犯罪は認めない腹か・・・・・・
ここはズバッと
「麻薬ですよ、覚せい剤、その他もろもろ」
「なんの話ですか?」
「あなたが中毒になるまでの話ですよ」
「あの〜私、中毒になんてなってませんよ」
「まだ白を切るつもりか!!!」
呑気な言い草に新垣仮面と化した私は、立ち上がっていた。
ついでにちゃぶ台を引っくり返したいところだったが、コーヒーが勿体ないのでやめた。
- 17 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時47分46秒
「だから、なんの話をしてるんですか〜?」
「このピンクの部屋についてじゃッ、ボケーッ!!!!!!!!!!!!」
飛び蹴りをかましたいのをこらえて私は怒鳴った。
――が、私の正義の怒りは
「あ、気がつきましたか。いつ言ってくれるのかと思いましたよ〜」
という、石川さんの待ってましたと言わんばかりの声にどこかに吹き飛んでいた。
「かわいいですよね〜。女の子らしいですよね〜。モー大変だったんですよ、ここまでピンクに統一するの」
石川さんが立ち上がり夢見るユメ子ちゃんのような恍惚とした表情で部屋を歩き回る。
「ピンクに囲まれた生活をするのが小さい頃からの夢だったんです。1人暮らしっていいですよね〜」
- 18 名前:102号室 Room of very cold pink 投稿日:2003年04月10日(木)10時48分49秒
・・・・・・・・・・・・夢?
薬物中毒でもなんでもなくただたんに個人の趣味?
呆然と石川さんを見る。
石川さんは、ニッコリと見つめ返してきた。嫌な予感がする。
背筋に冷たいものが走った。
「そうそう、どうして私がここまでピンクが好きかというとですね〜ワケがあるんですよ。もちろん、聞きたいですよね?仕方ないな〜、今日は特別ですよ――」
私の返事を聞くこともなく石川さんは話し始めた――脈絡もなければ内容もなく、
挙句の果てにはオチもなにもない――ピンクと私、全108話を。
私の意識が、銀河系を超えて想像もつかないような遠い遠い場所まで飛んでいったことは言うまでもない。
NEXT
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月10日(木)19時10分42秒
- ピンクと私、全108話ってめっちゃ聞いてみたい
- 20 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月10日(木)19時57分10秒
- (・e・)ノ<にいがきさいこう!
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月10日(木)20時52分43秒
- (ё)( ・e・)
- 22 名前:ボレロ 投稿日:2003年04月10日(木)21時28分33秒
- やべー・・・おもしれー
某漫画の管理人は確かにモテモテですなw
それとは180度違った管理人新垣もいいですな
くれぐれも5号室の住人さんに手を出さないようにw
- 23 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月12日(土)10時52分20秒
石川さんの部屋を出る頃には、もうすっかり日も暮れかけていた。
本来ならば今日は1階の住人への挨拶を済ませたかったところだが諦めざるをえない。
人生とは予定通りにはいかないこともあるらしい。
しかし、私はホクホクとした気分だ。
なぜなら、石川さんに敷金だけじゃどう考えてもなおせそうにない
あのピンクルームの責任を取って死ぬまであの部屋に住むという誓約書へ無理矢理サインさせ・・・・・・・
もとい、石川さんがその誓約書に快くサインしてくれたからだ。
これで一生、102号室から家賃を吸い取り続けることができる。
たまに値上げetcしたりしなかったり脅したり脅さなかったり。
- 24 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月12日(土)10時54分01秒
そんなわけで、足取りも軽やかに次なる訪問先の103号室の前に立っている。
本日最後の部屋、ここに住んでいるのは小川さん。
私は、チャイムに手をのばした。
――チャンポンチャーン
微妙に石川さんのチャイムとは音が違うような気がする。
祖父は変なところにこだわりをもっていたようだ。
「・・・・・・」
少し待っても返事はない。留守なんだろうか?
もう一度チャイムを押してみる。
やはり返事はない。留守みたいだ。
留守なら仕方ない、明日にしよう。
そう考え小さくため息をついた、その時だった。
「なにか用ですか?」
廊下から声をかけられる。
小川さんが狙い済ましたかのように帰ってきたらしい。
私は、誰もがうらやむプリティースマイルを浮かべて振り返った。
そして、固まった。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月12日(土)14時13分10秒
- まこキタ━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
- 26 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月14日(月)12時19分31秒
「あの?」
その声に、私は我に返った。
「あ、管理人のアラガキじゃない方の新垣です」
「あぁ、メモ見ましたよ〜。どうぞ入ってください」
小川さんは、にっこりとそう言いながらドアの鍵をあける。
私は、頷き中へと足を踏み入れる。
中からはピンクの光線などでてくることもない。さっぱりとした部屋だ。
どうやら、おかしいのは格好だけのようだ。
それにしても、あの格好はなんなのだろう?
小川さんは、襖一枚隔てたところで着替えている。
「すみませんねー、丁度畑に行ってたもので」
「畑・・・ですか?」
「えぇ」
言われて、私はその存在を思い出した。
庭先のあれは小川さんが作っていたのか。
一瞬で都会ッ子である私を仰天させた小川さんの格好。
意味もない巨大な麦わら帽子、首に巻いたタオル、
割烹着のようなものに腕にはアームカバーを巻いて軍手、そして、長靴。
それは、畑作業には必要不可欠なんだろう。
私は、ようやく小川さんの格好に納得した。
- 27 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月14日(月)12時20分48秒
「お待たせしました」
着替え終わった小川さんが部屋に戻ってくる。
両手には、コップとお菓子の盛られたお皿。
お茶菓子に気を使わないでくださいと書いていたはずなのに――ニコニコしながら小川さんが私の前にそれらを置くのを待つ。
「どうぞ、ごゆっくりしていってください」
「わざわざすみませ・・・・・・」
置かれたものを見ていいかけた言葉が勝手に止まる。
コップには無色透明の液体。
ジュースだろうか、日本酒だろうか、白ワインだろうか?
そんな疑問が頭をよぎる。
まさか、どう見ても未成年のピチピチギャルにお酒をだす住人がいるとは思わなかった。
それに、ごくごくと同じような液体を飲み干す小川さんも成人しているようには見えない。
いまどき、酒を飲まない未成年がいるわけないけど、ここまで堂々とされるのも・・・・・・
とりあえず、コップを手に取り匂いを嗅いで見る。
お酒のにおいはしない、ジュースの匂いもしない、むしろ、なんの匂いもしないといったほうが早い。
無色透明無臭の飲み物なんて一つしかない。
まさかとは思う、そんな嫌がらせをするような人には見えない――
- 28 名前:103号室 False 投稿日:2003年04月14日(月)12時22分18秒
「あの、小川さん」
「はい?」
「これはなんですか?」
「水です」
「は?」
自信たっぷりに言い放つ小川さん。
今、なんとおっしゃられやがりました?
「み・ず・で・す!!」
この管理人様に水をだすとはふてぇ度胸だな、おぅっ!!なめとんのか、くらっ!!!
とは、私の心の声。
「水ってあの水ですか?」
「どの水かは分かりませんけど、ちゃんと一回沸騰させてますよ」
「いや、そういう・・・・・・まぁ、いいです」
ニコニコとここまで嫌がらせができるとは呆れた根性だ。
飲み物は諦めよう。
だが、せめてお菓子だけでも・・・・・・・
お菓子だけでも・・・・・・・・・
私の手は止まった。
なんだろう?
私は、この人にここまで嫌がらせされるほどなにかしたんだろうか?
否、してない。だいいちこの人とは、今日、初めて会ったばかりだ。
私の小顔に嫉妬してのことだろうか。
- 29 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月14日(月)12時24分01秒
「あの、小川さん」
「はい?」
「これは・・・なんなんでしょう?」
「かぼちゃの皮です」
それは見て分かる。質問の仕方が悪かった。
「これは、どういうことでしょう?」
「おいしいんですよ」
「は?」
いやん、いやん、ハワイヤン♪とこの間、TVで見た薄ら寒い漫才師の声が頭の中を駆け巡った。
パリポリパリポリ。
そんな音が耳に入って私は本日何度目かの意識不能状態から回復をする。
音の正体は、かぼちゃの皮を食べる小川さんだった。
私と目が合うと「食べないんですか?」とこれまた満面の笑みで聞いてくる。
その笑顔に悪意はない。
もしかしたら、本当にこれでもてなしているつもりかもしれない。
小川さんはとてつもない貧乏で家にはとんちき・ちんぺい・かんたという三つ子が(ry
そう考えれば、全て納得できる。
入った時からあとで絶対に聞こう聞こうと思っていたこのちゃぶ台以外になにもない部屋の説明も――
- 30 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月14日(月)12時26分42秒
さっぱりした部屋だと思ったんだ。
物を置かないじゃなくて置けなかったんですね。
物を買わないじゃなくて変えなかったんですね、
だから、畑の作物で生きているんですね。
あまりにも悲惨すぎる・・・・・・・・・・・・
小川さんちの事情が全て分かってしまった私の目には涙が溢れていた。
ピラミッドの頂点に立つ私と底辺にはいつくばる小川さんのあまりの貧富の差。
越えられない壁。
水とかぼちゃの皮が彼女にとっての最大のおもてなしだったのに、私はなんてことをしていたのだろう。
私は、泣きながらかぼちゃの皮を食んだ。
生だった。
「あれ?管理人さん、どうしたんですか?」
慌てた声。
それすらも悲しみのメヌエット。
「いえ・・・あまりにも小川さんの生活がすごすぎて」
「え?」
しまった、つい本音がポロリポロリ止まらない。
こんな言い方、必死で生きてる小川さんに悪い。
- 31 名前:七誌 投稿日:2003年04月14日(月)12時33分03秒
- ∬∬´▽`)小川まこと、漢字で正確に書くと
麻琴or真琴or琴美?
- 32 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月14日(月)14時55分49秒
- たしか『麻琴』ですよ
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月14日(月)15時51分21秒
- ここは、琴美に一票
冗談はおいといて、麻琴ですね
- 34 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月15日(火)03時21分02秒
「私の生活がすごい・・・ですか?」
「あ、いや、その・・・・・・そういう意味じゃなくてですね、なんというかあの」
慌てて弁解しようとした矢先に小川さんが
「そうでしょーっ!!」と嬉しそうにちゃぶ台に両手をついて身を乗り出してきた。
「は?」
「そうなんですよ、すごいんですよ、私。管理人さん、あれ見てます?サバイヴァー!!
まさに小川麻琴最強のサバイヴァー生活者でしょ!!」
「は?」
「最初は、憧れだったんですけどね。段々、本格的にサヴァイヴァーになっちゃって。
今じゃ、自給自足できっちり生きてます!!ッテ感じですよ!!!!」
イキイキと語りだした小川さん。
簡単にいうと、サバイヴァーっていういかにもな番組に触発されて自給自足生活してるわけで、
つまり小川さん貧乏説は塵とかすわけで、
つまり、この人はそのくだらない自給自足だかなんだかでど偉い客人であるこの私に
水とかぼちゃの皮を出して我慢して食べさせやがって、
挙句の果てに真珠よりも高貴な涙を流させた罪深き人間ってことでいいですか?
- 35 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月15日(火)03時22分57秒
「それでですね、まさに自然と生きているのが麻琴of麻琴!の私なんですよ!!!」
プチプチッとなにかが私の中ではじけとんだ。
「小川さん」
「さらにっ!・・・え?なんですか?」
「この水、沸かしたんですよね」
「ええ。東京の水は汚いですから」
「シュボッとそこのコンロ使ったんですよね」
「え・・・ええ」
「ガスを使ったんですよね、ガスを」
「!!!」
小川さんが、驚愕に目を見開いた。
「っていうか、その前にこの水はどこからでてきたんですか?」
「それは・・・・・・その」
「まさか!!自給自足とかほざきながら
そこのコックをクィッとひねって水出したなんてワケないですよね〜」
「・・・・・・」
「そんなわけないですよね、もちろん地下から掘り出したんですよね、小川さんは、最強のサヴァイヴァーですから」
「・・・・・・・・・・・・」
小川さんの体がプルプルと震えている。
そんなのお構いなしに私は続けた。
- 36 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月15日(火)03時24分16秒
「それにしても、この部屋明るいですよね〜」
「え?」
「あーっ!!!!!!電気がついてるーッ!!!!!!!!」
小川さんがビクッと小動物のような反応をした。
段々と、快感になってきた。やめられない、止まらないとはこのことだ。
「いやー、文明の利器ってやつですね。
これが最強のサヴァイヴァーか〜、すごいな〜尊敬しちゃいますねー」
「・・・・・・・・・・・・もん」
うつむいた小川さんがなにか呟いている。
「なんですか?」
「頑張ってるもん」
「けっ!なーにが頑張ってるもん、だ!?頑張ってるって言えばいいと思ったら大間違いでーすー!!」
私は、立ち上がった。
ビクビクと怯えた様子の小川さんが上目遣いで私を見ている。
- 37 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月15日(火)03時25分16秒
「私は、小川さんが憎くてこんなことを言っているわけじゃない!!
小川さんに真の最強サヴァイヴァーになってほしいんですよっ!!」
「か・・・管理人さん?」
「そのためには、こんなところに住んでいちゃダメなんですっ!!!!!」
「え?」
「こんな人工的な匂いがプンプンする建物で雨風に晒されずに生きるなんてサヴァイヴァーじゃないっ!!
このエセサバイヴァーが!!
本当のサヴァイヴァーなら庭にテント張ってでも生き抜いて見せろっ!!!!!!!!!」
心のうちを吐き出した2人の間には熱き友情が生まれたとか生まれなかったとか――
その前に心のうちを吐き出したのは私だけという問題があるが・・・・・・
なぜか、私は今――
「管理人さんッ!私、分かりました!!!!!!!」
「小川さん、いや、琴・・・まこっちゃん!分かってくれたか!!!!」
がっしりと小川さんと抱き合っている。
まったくもって青春って素晴らしい。単純って素晴らしい。
- 38 名前:103号室 False Survivor 投稿日:2003年04月15日(火)03時26分54秒
※ ※
「それじゃ、頑張ってね」
「うん」
というわけで、小川さんはジュマペールの敷地内でテント暮らしをすることになった。
もちろん、家賃は変わらずいただくし、小川さんがいなくなったおかげで
空き部屋になった103号室に新しく人を入れることもできてWでお得だ。
そんな計算に気づくことなく小川さんは真のサヴァイヴァーを目指して頑張っていくのだろう。
私は、小川さんからサヴァイヴァー真理に気づかせてくれたお礼にと取れたて野菜を貰い鼻歌交じりで101号室に帰った。
Fine
Next
- 39 名前:七誌 投稿日:2003年04月15日(火)03時30分42秒
∬´◇` ∬ガンバッテルモン
- 40 名前:七誌 投稿日:2003年04月15日(火)03時31分26秒
- ∬´◇` ∬ 思いっきりfinとNEXTがかぶってる
- 41 名前:七誌 投稿日:2003年04月15日(火)03時32分06秒
- ∬´◇` ∬ でも、ガンバッテルモン
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月15日(火)14時17分41秒
- まこえ、HEY3はよかったよ、まこ
- 43 名前:ボレロ 投稿日:2003年04月16日(水)23時05分12秒
- いいなー麻琴
何気に悪知恵な新垣もいいなー
ここのキャラは個性が強くていいっすね
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月17日(木)00時56分23秒
- (ё)y-~~ チョロイもんよ
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月17日(木)16時17分36秒
- 次は誰かな?
- 46 名前:104号室 Empty room which is not understood why it exists 投稿日:2003年04月19日(土)12時36分07秒
ホテルでもなんでも4という数字が着く部屋というのは滅多にない。
4は不吉だからとか死を連想するとか根暗な日本人の不思議な習性からだ。
私は、そんな根暗人種ではない。
4といえば幸せを連想する。
富と名声とあふれんばかりの若さと美貌の4拍子揃った新垣里紗を連想する。
だから、104号室がジュマペールにあっても別に問題はない。
問題はないのだが――
私は、手元にある住人資料を凝視する。もう、何度も見たものだ。
何度見ても、今、104号室には住人はいない。
いや、今も昔も、その部屋に誰かが住んでいたことがないようなのだ。
それならば、何故?
何故、この部屋は存在するのだろう。
- 47 名前:104号室 Empty room which is not understood why it exists 投稿日:2003年04月19日(土)12時37分09秒
「・・・・・・ま、いっか」
偏屈な祖父のことだ。
常人には理解しがたいなにかが104という数字にあったんだろう。
2階には4号室がないのが証拠だ。
104でなければならなかったなにか――
そんなこと、常人の私が考えたって無駄だ。
考えるのはバカがすること天才の私には関係ない。
明日は、105号室から挨拶をはじめればいいだけのことだし。
もう、寝よう。
寝不足はお肌の大敵。
ま、湯上りお豆肌の私には全然関係ないことだけど。
Next
- 48 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月19日(土)21時02分54秒
- 湯上りお豆肌って(w
( ・e・)は相変わらずの自信過剰でおもろいっす
- 49 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月21日(月)23時58分04秒
- うわ、すっげー好みだ。新垣メインって珍しいですね。
小川のキャラがなぜだかつぼりました(w
- 50 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月22日(火)00時19分53秒
「・・・・・・やっぱり後回しにしようかな」
その部屋の前で、私はそう呟いてしまった。
見てすぐに分かるなにかがあるわけではないが、部屋から聞こえてくる奇妙な歌声が私にそう呟かせたのだ。
しかし、ここで立ち止まっていては管理人の名がすたる。
私は、意を決してチャイムを押した。
――ッテッテケテー
個性的な音だ。
感心していると歌声がピタリとやみ、ほどなくして扉が開いた。
「・・・ど・な・た・で・す・か?」
不必要なほど言葉を区切って105号室の住人、高橋さんは姿を現した。
「管理人の新垣です」
私がいうと、彼女は驚いたように目を見開いた。(元から見開いていた気もする)
それから「中・へ・ど・う・ぞ」と、これまた不必要なまでに言葉を区切って言った。
- 51 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月22日(火)00時22分56秒
※ ※
普通だ。
私は、妙なところで感動していた。
部屋はピンクでもなく、適度な生活備品が揃っている。
さっき歌っていたことが恥ずかしいからなのか、部屋の片隅にハンディカラオケセットが隠されているが、
そんなことも含めてなにからなにまで普通だ。
一つだけ、言葉が片言なのが気になるが、もしかしたら帰国子女というやつかもしれない。
そんな高橋さんは、今、私のためにお茶とお菓子を用意してくれている。
「お・ま・た・せ・し・ま・し・た」
そう言って、私の前に置かれたのはキノコ・・・・・・
よくみると、キノコを模した茶菓子みたいだ。
- 52 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月22日(火)00時25分28秒
「こ・の・間・実・家・か・ら・お・く・ら・れ・て・き・た・松・の・露・と・い・う・お・か・し・で・す」
「へぇ〜、珍しいお菓子ですね」
「皇・室・ご・用・達」
「・・・そうなんですか」
なんだかよく分からない人だ。
なんとなく嫌な予感がしてくる。
私の眉毛センサーになにかがひっかかっている。
・・・いやいや、さっき普通だと認識したばかりで考え直すのはおかしい。
出てきたのは、皇室ご用達の松の露というお茶菓子だ。
かぼちゃの皮なんてものじゃない。
おかしなところなど全くないのになんでそんなこと思ったんだろう。
どうも最近、変なことが起きないと不安に感じてしまう体質になっているみたいだ。
- 53 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時19分11秒
「・・・・・・高橋さんは、今日はお休みですか?」
「・・・は・い」
――どうも話が膨らまない。
石川さんにしても小川さんにしてもなにもしなくても話は盛り上がったのに、里沙ちゃんスランプかも。
高橋さんの答え方が私の気をそぐというか、なんというか。
もしかしたら、極度の人見知り、上がり性で今、ものすごい勢いで緊張しているのかもしれない。
だから、言葉をかまないように片言なんだ。
そういうことか。
そういう相手にはどうやって話を膨らませばいいのか――
そういえば、さっき高橋さん、このお菓子は実家から送られてきたとかどうとか、
実家の思い出話から一気に話が膨らむ可能盛大!
- 54 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時19分54秒
「ところで、高橋さんの実家ってどこなんですか?」
「え?」
むむ、ビックリした目をビックリさせてる。
唐突過ぎたのかもしれない。
「ほら、このお菓子、実家から送られてきたって」
私は、キノコ型のお菓子を手でつまみ上げる。
「だから、実家ってどこなのかな〜って?ちなみに、私は神奈川なんですけどね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
高橋さんは、黙ってしまった。
まったく関係のない私の出身地をつい、言ってしまったことが彼女の気を悪くしたのかもしれない。
「すみません、変なこと聞いちゃって。ただ、高橋さんがものすごーく緊張してるように見えたんで話をひろげようかと思って」
他人の部屋で自分はくつろぎ、
逆に緊張しまくっている部屋の主をリラックスさせようとする人間は私だけかもしれない。
- 55 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時20分38秒
「私は、管理人としていつもどおりの高橋さんが見たいんですから。
リラックスリラックス」
「リ・ラ・ック・ス?」
「はい」
「い・い・ん・で・す・か?」
「もちろん!普段どおりの高橋さんでいいんですよ」
高橋さんの顔がパッと明るくなった。
そして、唐突に
「W391q-AT8rtがあflヴぁmをqp;あ・・・・・・・」
「え?」
「2q94がj※・zkんvがぱw?:_¥くぁ^¥−えwじゃzぇfがw3おですよ」
最後のですよしか聞き取れなかった。
- 56 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時21分58秒
さらに高橋さんはなにごとかを話している。
それもものすごく楽しそうに。
止めることはできない・・・
緊張から開放された高橋さんを解放者である私自らがとめることはできない。
こうなってしまった以上、私がすべきことは高橋さんと仲良く会話できるようにヒアリングだ。
とりあえず、何語を口にしているかが分かればどうにかなるかもしれない。
「・外WN後lをっばぁB@qtれjq・・¥・・・・」
無理!
絶対無理だから!!
言葉じゃない。記号だよ、これ。
「あ、あ、あ、あの高橋さん!!」
「ふぁj;えい・・・?」
話を遮られてビックリ目玉はビックリの二乗になっている。
「高橋さんって・・・・・どこの国の方ですか?」
宇宙かもしれないと思いながら私は尋ねた。
- 57 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時23分57秒
「・・・・・・福井です」
福井?
福井って福井ってあの福井?
原発しか取りえのない福井。
原発の影響で越前ガニが丸々となったあの福井?
近畿地方なのか中部地方なのかってぐらい中途半端なあの福井県民ですか?
ってことは、今までの言葉は福井弁・・・・・・
福井弁、恐るべし。
「はぁ、福井なんですか・・・・・・」
「今、なんと?」
私が、なんとなく漏らした言葉に高橋さんが驚くほど低い声でそういった。
そして、ゆらりと・・・まるで亡霊のように立ち上がる。
「あの?高橋さん」
私の眉毛センサーはガンガンに危険を察知している。
なにかが壊れた。
- 58 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時25分05秒
「福井なんですか、だと?お前、福井をバカにしたな」
「え?し、してないですよ、そんな、全然」
殺気を放ちながら私ににじり寄ってくる高橋さんは、驚くほど流暢な標準語だ。
この人、どっちが素なんだろう?などとぼんやり思っている場合じゃない。
そうこうするうちにも、高橋さんの殺気はボルテージに達している。
「お前、今、原発しか取りえのない福井。原発の影響で越前ガニが丸々となったあの福井?
近畿地方なのか中部地方なのかってぐらい中途半端なあの福井県民ですか?って心の中で思ったでしょ!!?」
「えぇ!?」
読まれてる、読まれまくってる。
いくら、感情が顔にすぐでる素直ないい子だからってそこまで読まれるなんて・・・・・・姐さん、事件です!
「お前、今、笑ったな?」
「か、顔なし!?」
なんで、ここで顔なしなの?
分からない、分からなさすぎるけど、次にこの身に起こりえることはわかる。
- 59 名前:105号室 The woman who loves a hometown 投稿日:2003年04月25日(金)14時26分16秒
「福井は!福井はーーーーーーーー!!!!」
髪を逆立て叫びながら手に持ったなにか(それを確認する術を私は持たない)
を振り回している高橋さんをおいて私は脱兎のごとく逃げ出した。
その速さたるや光の如し。
出るなり、高橋さんの部屋を木の板と金槌で完璧に封印したのは火事場のバカ力がなせる技だろうか。
私が全てを光の速さでやりとげドアの前にへたり込むと、中からドンドンとドアを突き破りそうな音が聞こえた。
が、しばらくすると部屋を入る前に聞こえていた奇妙な歌声が再び聞こえだした。
のちのち、知ったことだがあの歌は、福井県民用越前長持ち唄というらしい。
まぁ、二度と高橋さんと会うことのない私には関係のない話だ。
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- 60 名前:ボレロ 投稿日:2003年04月26日(土)23時34分36秒
- 何げに今一番楽しみにしている小説(?)です
- 61 名前:七誌 投稿日:2003年04月27日(日)01時58分55秒
( ・e・)ノ ひとつだけ言わせて貰おう!!
( ・e・)ノ 福井県「民用」ではなく「民謡」だったということを
煤i;・e・)福井県には県民用の歌があるのかとビックリしたよ、自分で
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月28日(月)00時35分06秒
- ニィッ、二度と高橋と会わないつもりかよっ!(w
次回更新、楽しみに待ってます。
- 63 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年04月30日(水)04時16分31秒
ただいまの時刻13時23分。
お昼時を少し過ぎたくらいだ。朝早くでも夜分遅くでもない。
私は、締め出しをくらったばかりのドアを見る。
「5時間後に来て」
彼女は、ドアの隙間から姿も見せずにそう言った
彼女――角部屋であり、少し他の部屋とは広いこの部屋の住人は2人いる。
安倍なつみと矢口真里、今の声の主はそのどちらだったのだろう。
人と話すときは目を見て話せと習わなかった可哀想な人に間違いはない。
まぁ、来るなと言われたわけではないし先に202号室を終わらせるか。
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- 64 名前:ーー 投稿日:2003年04月30日(水)04時17分44秒
- 煤i;・e・)交信これだけなのに
煤i;・e・)ageちゃった・・・・・・・・・
(ё)ま、いいか
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月30日(水)13時10分19秒
- 煤i;・e・)←これから(ё)←この切り替わりで藁た
- 66 名前:66 投稿日:2003年05月04日(日)05時53分50秒
- おもしろい!
なんも考えずに(誉め言葉です)リラックスして楽しめて、いいっすわ。
それにしても、「新垣以外の全メンバー推しの方ごめんなさい」になりそう。新垣の目にかなう人間っているのかな。
そうだ、「ジュマペール」ってどんな意味っすか?(新垣は知らなそうだな)
- 67 名前:66 投稿日:2003年05月04日(日)20時44分57秒
- ↑ うわ、マジボケだ…はずかしい。ほんとうにはずかしい。
寝ぼけてたよ〜。いま思い出した。
正確には「新垣以外の人間は知らなそう」ですよね。
行ってみたいなチャンポンチャン♪
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月05日(月)09時06分50秒
- 私の記憶が正しければ「ジュマペール」はフランス語で
「私の名前は…」だったかと。
それにしても、ここのニイニイだいすっき。
- 69 名前:66 投稿日:2003年05月05日(月)12時13分45秒
- つっこみTNXです。
ま、新垣的にはフランスの首都ではないかと。
高橋、もう出てこないのかな。出てきてくれ。
それにしても安倍と矢口の謎が気になる。
- 70 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月05日(月)16時53分45秒
「あら、やっと来たのね!遅かったじゃない!」
今度はどんな音なのか半ば楽しみにしていたというのに、
そのドアは私がチャイムを押す前に部屋の主の手によって開かれた。
あまりの勢いに気圧されて後ずさりする。
無意味にギラギラした大きな瞳が私のおでこをロックオンしている。
どんなに見つめられようと邪眼などない。誰もそんな話してないけど。
それよりも、この人、出てくるタイミングが完璧だった。
もしかして、私がここに来るまで覗き穴から見てたんだろうか?
そんなに、キュートな女の子に飢えているのか・・・・・・
部屋で2人きりになるのはそぅとぅ危険かもしれない。
やけに息が荒いし・・・・・・
野獣が出現、勇者リサたんは逃げ出した。
「どこ行くのよ!」
逃げられない。
野獣は、キリキリとそう言うと私の腕をガシッと掴む。
勇者は、つかまった。
私は、ずるずると引きずられる形で野獣――保田さんの部屋に連れ込まれた。
- 71 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月05日(月)16時55分52秒
――
「そこらへん、適当に座って」
「はぁ・・・・・・」
座ってもなにも、この部屋のどこにそんなスペースがあるというのか。
私は、部屋の隅で立ち尽くす。
一番に目に付くのは立派なPC。
あまり詳しくはないのでなんともいえないけど立派なんだと思う。
一般の家庭にあるような感じじゃない。
どうやら、PC関連の仕事をしているみたいだ。
「なに、立ち尽くしてんのよ?」
ジュースの入ったカップと軟骨の入った皿を持って部屋に入ってきた保田さんが私にそう声をかけた。
保田さんは、私に座る場所を指示することなく
部屋の中央にある小さな丸テーブルの上に手に持っていたものを置くと、自分はPCデスクの椅子に腰をかける。
それから、さっさと座れと言うようにチラリと私を見た。
仕方なく、私は床に散らばっている物を部屋の隅に寄せ、座る場所を確保した。
- 72 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月05日(月)16時56分44秒
「そういえば、新垣さ〜矢口たちとは会えたの?」
「え?」
に、に、新垣だと!?
この管理人様を呼び捨てにするとは!!!
文句を言うべきところだ。
が、保田さんの無駄にギラついたなにかがそれを私にさせなかった。
「・・・・・・矢口たちというと・・・201号室の矢口さんと安倍さんですよね」
「そう」
「5時間後に来いと言われました」
私の答えに保田さんは「やっぱりそうだと思ったのよね」と楽しそうに笑った。どういう意味なんだろう?
- 73 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月05日(月)16時58分37秒
「それで?」
「え?」
「それで、他の住人はどうだった?」
いや、他の住人のことよりも、今は保田さん、あなたとのファーストコンタクトの時間なんですよ。
未知との遭遇なんですよ、私にとっては。
そう言いたかった。
言おうとしていたのだ、脳内では。
しかし、保田さんの(ry
「まぁ、聞かなくても大体分かるけどね」
私の沈黙をどう解釈したのか分からないが、保田さんはニヤリと不敵な笑みを浮かべて言った。
まるで、住人全てを把握しているかのようだ。
管理人の私でさえまだだというのに、生意気な。
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月05日(月)23時15分05秒
- ( `.∀´)
・゚・(ノД`)ノ・゚・。
- 75 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月07日(水)18時32分08秒
「ところで、保田さんはPCを使うお仕事をしてるんですか?」
住人話で勝ち誇られてはたまらない。
なにしろ、私はまだまだ新参の管理人様なのだ。
いかにも古参の彼女には負けるに決まっている。
そう考えて、話題の転換を図る。
「違うわよ。単なる趣味」
「・・・・・・そうですか」
PCは趣味か。趣味にしてはお金がかかりすぎているように見える。
私は、雑多な部屋をザッと見回す。
棚に高級そうな一眼レフのカメラが置かれていた。その横にはデジカメ。
よく見ると、フィルムやネガが床に転がっている。
カメラマンだったのか。
そう思えばそんな顔をしてなくもない。
「カメラマンさんなんですか?すごいですねー」
私は、かなりの確信を持って言った。
「違うわよ、単なる趣味」
はぃ?
それじゃぁ、あの見るからに高そうなカメラも趣味だと?
趣味に金かけすぎじゃないですか?
もちろん、財閥のお嬢様である私にとっては、はした金だけど。多分。
ここまで来たら、保田さんの職業を当てずには帰れない。
住人の全てを把握する女はこの新垣リサただ1人でいいのだ。
- 76 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月07日(水)18時33分37秒
やっきになって手がかりを探す。
保田さんは、そんな私を気にも留めずにカタカタとキーボードをうち始めた。
これ幸いなり。
「ん?」
物色し始めて数分、僅かに開いた収納BOXにて大量のワインを発見した。
かなりの種類が揃っている。ということは、ワイン関係。ソムリエールか。
「分かりましたよ、ソムリエですね!!」
「それも、趣味」
「・・・・・・・・・・・」
なにがなんでも当ててやる。
むっ!あれは!!
「保田圭、敗れたり!!この英語のテキストが証拠です。あなたは、翻訳家ですね」
「それも、趣味」
「じゃぁ、こっちの漢字ドリルが」
「それも、趣味」
「な、ならば!このアロマ」
「それも趣味」
「しからば、これが」
「趣味」
負けた。
完膚なきまでに叩きのめされた。
完全犯罪は成立するのだ・・・・・・
この世界に、これほどまで無駄に趣味の多い人がいるように・・・・・・
- 77 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月07日(水)18時34分49秒
それにしても、なぜ私はこうも保田さんの職業を当てようと意地になっていたんだろう?
直接、本人に聞くのが一番手っ取り早く効率がいいというのに。
コナンにでもなっていたつもりだったんだろうか。
人間、恐ろしいのは我を忘れてしまったときだということだ。
「・・・・・・保田さんは、お仕事はなにをしてるんですか?」
「まぁ、一応ケメコブラザーをしてるわね」
「は?」
「一応よ、一応」
私が疑問の声をあげてしまったのはケメコブラザーというけったいな単語についてだったが、
保田さんはどうやら違う意味でとらえたようだ。
一応と念を押したということは、保田さんにとってケメコブラザーという職業は不本意なものなのかもしれない。
ケメコブラザー。
なんとなく、どんなことをしているのかを詳しく聞いてはいけないような気がした。
世の中とまだまだ私の知らないことのほうが多いようだ。
- 78 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月07日(水)18時36分07秒
それはそれとして、どうやら保田さんは無駄にギラギラしてて無駄に趣味が多くて謎の仕事をしているという以外は、
1階の頭のネジがおかしい住人‘sとは違って普通の人みたいだ。
それだけは、よかったといえることかもしれない。
祖父は1階におかしな人を、2階にはまともな人を入居させたんだろうか。
ということは、これから会う人たちには少し期待しても
「ねぇ、新垣」
「な、なんですか!?」
不意に声をかけられて、私は保田さんの存在と同じく無駄に大きな声で返事をしていた。
見ると、PCと見詰め合っていた保田さんがいつのまにかこちらを見ている。
「もしかして、2階に住む人に無駄な期待をかけてないでしょうね?」
「そ、それはどういう意味ですか?」
心の中を読んだかのようにズバリと言い放つ保田さんの言葉に小さくなりかけた不安が膨れ上がった。
- 79 名前:202号室 A woman with many hobbies 投稿日:2003年05月07日(水)18時37分09秒
そりゃぁ、もちろん私だって100%そうだと思っていたわけではない。
しかし、夢は見なけりゃ始まらないと誰かが言っていたから――
「ここの住人に普通を期待するほうが無駄って意味よ」
保田さんは、あっさりとそう口にした。
やっぱり、夢は見たって始まらないのが人生なんだ。
「ま、なにかあれば相談に乗ってあげるわよ。多分、ここでは私が唯一まともな人間だからね」
――保田さん、ここで唯一まともなのはきっと私だけですよ。
私は、その言葉を飲み込んだ。
(ryで簡単に済ませてきた保田さんの無駄なギラギラ現象のせいではない。
ただ単に、それを言っても無駄だと言うことが私には分かってしまったからだ。
「・・・・・・そうですね」
私は、小さくそう呟くとその部屋をあとにした。
201号室解禁まであと3時間46分。
NEXT
- 80 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月08日(木)12時12分39秒
- どうしよう、面白すぎていしよしとかいちごまとか
どうでもよくなってきた
- 81 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月08日(木)15時08分34秒
- こんなアパート行ってみたい!
・・・いや、本当に「行ってみたい」だけですが。
- 82 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月08日(木)17時01分13秒
- 今回、作者さんが謝ってなイィ(゚∀゚)!!!!
やばい、ケメコブラザーズが気になって眠れなくなりそう
- 83 名前:66 投稿日:2003年05月09日(金)02時08分30秒
- >>80にすごい同意。
カップリング無関係に話の面白さでひっぱるのがいい。
保田は…常識人か奇人か。どっちに転んでもオイシイ、のか?
- 84 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月09日(金)04時46分09秒
- CP大好きなのに、この話に限ってはCPなんて意味ねぇNIGHT!
- 85 名前:なちまりっぷ 投稿日:2003年05月09日(金)11時21分53秒
- 気向くの時から見てますが、七誌さんホントにネタ切れないっすね
まさかニィパラがマジになるとは思ってませんでした(w
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月10日(土)10時33分04秒
- マジで面白イッス
ケメコブラザーズ・・・・w
- 87 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月10日(土)12時43分00秒
「飯田さん!飯田さん!!」
私は、203号室のドアを叩いた。
密かに楽しみにしているチャイムの音を聞かないで、なぜそんな古典的な手段を選んだのかは言うまでもない。
チャイムのボタンがこの部屋にはなかったからだ。
こういうのを欠陥住宅というらしい。
そんなわけで、私はさっきからこの部屋の住人、飯田さんを呼び続けているわけだが――
留守なのかまったく返事はない。
「困ったな〜」
後回しにする部屋が一つ増える。
今まで黙っていたが、正直な話、私は面倒くさいことは大嫌いだ。
このあと、205号室に行って、201号室に行って、またこの部屋に戻ってくるなんて
しちめんどくさいことはしたくない。
だから、諦め悪く十分ほどドアを叩き続けたのだが、
このままだと里紗たんの白魚のような手が傷ついてしまう。
めんどくさいことと美しい私の身の保身、どちらが大切かは決まっている。
- 88 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月10日(土)12時45分32秒
「後回し」
自分に言い聞かせるように頷く。
と、その時だった。
ドタドタと階段を駆け上ってくる二つの足音が耳に入ってきたのは。
見ると、真新しい制服を来た――高校生?いや、中学生?かもしれない――
2人の少女が、こちらに向かって来ている。
そして、彼女のうちの1人が、圧倒的なスピードで私の間合いに入ると
「いいらさーんっ!!」と叫びながら飯田さんの部屋のドアを蹴破った。
\\\\\\\\\\\\\\\!!
私の頭の中に、瞬時にドアの修理費が浮かんだ。
「あーっ!!!!!!!!!!!!!!」
少し遅れて、驚きの声をあげる。
と、遅れてきたもう一人の少女が「なんや、でっかい声出して」と顔をしかめた。
- 89 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月10日(土)12時48分31秒
「な、な、な、なんてことするんですか!?
いくら管理費もらってるとはいえこのドアの修理代は絶対払いませんよ!!
ちゃんと弁償してくださいよっ!!!」
「ケチクサイヤツやな〜」
「け、けちっー!!?」
この大金持ちの新垣財閥令嬢に向かってケチだとっ!!!
「ケチやんか。ホンマの金持ちいうんはこんなちっちゃなことにいちいち目ゴジラたてへんで。
それともなにか?まさか、ドアの修理代払えんぐらい貧乏な奴なんか?」
「そ、そんなことないっ!!!!修理費ぐらいズビシッとだしてみせますよっ!!!」
「そりゃ、よかった。ほなな」
少女は、してやったりと言った顔で私の肩をポンと叩くと飯田さんの部屋に入っていった。
もしかして、はめられた?
里紗たん素直な女の子だから、思いっきり口車に乗せられたのかもしれない。
私もまだまだ人間ができてないということか・・・・・・・
あと、目ゴジラじゃなくて目くじらです、多分。
私は、ここに来てからは日常となった大きなため息をつくと少女たちの後を追って飯田さんの部屋へと足を踏み入れた。
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月11日(日)04時52分21秒
- >>50
『――ッテッテケテー』この時間に爆笑させていただきました。
…作者さん、アナタはスゴイw
- 91 名前:ボレロ 投稿日:2003年05月11日(日)14時28分39秒
- 久々に来てみればいっぱい更新されている
某アパートラブコメを彷彿とさせながら、甘さが全く見られない
まさに傑作ですな
- 92 名前:66 投稿日:2003年05月11日(日)16時06分02秒
- 全住人中、最強の人(たぶん)とついに対面か。
ヘンな住人ばっかりで管理人も大変だな…といいつつあんたが一番ヘンだぞ、管理人。
- 93 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月12日(月)23時40分03秒
――
「お邪魔します」
「おぅ、いらっしゃい」
私の声に応えたのは先程の少女だった。
お前の部屋ではない。お前の部屋ではない。お前の部屋ではない。断じて、お前の部屋ではない。
不愉快だ。そう思いながら少女を睨んでいると
「なんや、その顔は、その眉毛は、そのでこはっ!!なんかうちに文句あるんか!?」
少女が、凄みはじめた。
まるで、ヤンキーのような因縁の付けかただが、墓穴を掘ったな。
どう考えても、私の顔が美しすぎて、眉毛が愛らしすぎて、
おでこが立派過ぎるから――しかし、この彼女も髪で隠して居るが
なかなかのでこの持ち主のような気がする――嫉妬しているとしか思えない。
私は、勝ち誇った笑みを口元に浮かべる。
「ん?なにがおかしいん?」
少女が、少し引いたように尋ねた。
まぁ、私の勝利の笑みを見て立っていられるだけなかなかの兵だけど。
- 94 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月12日(月)23時43分37秒
「別になんでもありませんよ。それより、あなたたちは飯田さんのお知り合いですか?」
「そうやけど、あんたは?」
「私ですか?私は、このマンションの新管理人の新垣ですよ。つまり、偉いんです」
「ふ〜ん、ま、どうでもええけど」
な、この私の存在をふ〜んなどという適当な相槌+どうでもいいとは!!
私は、眉毛を自由自在に動かして怒りを全身で表現した。
眉毛だけなので全身とはいいがたいが、私にとっての眉毛とはそういう存在だ。
さらに眉毛を動かす。
音であらわすならうねうねと言ったところか。
ちなみに、この動きが高速化することによって生み出されるビームを私は眉毛ビームと命名している。
まだ、眉毛ビームを発動させるほどの怒りを覚えたことはないので
その威力はどれほどのものなのか分からない。
- 95 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月12日(月)23時46分14秒
「あいぼん、なにしてんの?」
「お、のの。ちょっと見てや。こいつ、めっちゃキショイで」
眉毛を動かすのに必死になっていた私の耳にはその声は届かなかった。
Fine
- 96 名前:66 投稿日:2003年05月13日(火)01時44分31秒
- 眉毛ビーム……やー、あんたやっぱヘンだわ、管理人。
ていうかどんな獣化兵だよ。
ごめんこっちに発射しないで!
- 97 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)07時56分11秒
Fine――なわけない。
まだ飯田さんのイの字もでていないのに。
咳払いを一つ。二つ。三つ。四つ―――――
私は、眉毛を動かすのをやめて2人の少女を見つめる。
「あの・・・」
「なんや?」
「へい」
私の声に2人が同時に返事した。
「・・・・・・いったい、あなたたちはなんなんですか?
ドアを壊して私のティータイムを壊して、さらには私の眉毛の芸術を
言うに事かいてキショイと言うなんて!」
この二人の先程からの行為は万死に値する。
特に一番最後の部分。
ある眉毛コレクターの中ではまさに喉から手が出るほど欲しがられるらしい私の眉毛を!
私が、自分のパーフェクトな顔とボディの中で一番気に入っている眉毛を!
- 98 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)08時00分21秒
「うちらは、飯田さんの保護者や!!!!!!」
「ののたちは、飯田さんの友達れす!!!!!」
2人がまたはもった。双子かお前ら。
じゃなくて、保護者で友達??ワケが分からない。
その前に、眉毛に関することに対しての謝罪がないのが癪に障る。
「あのですね・・・・・・名前と年齢、出身地、その他もろもろを白状したまえ」
私は、最近はまっている西部警察のリュウのウリ
『捜査は冷静沈着、クールに進めなければならない、が俺の信条です』
に習って冷静にそう尋ねた。
「チィーッス!加護亜依15歳、奈良県出身、今後とも夜露死苦」
「チィーッス!辻希美15歳、東京都出身、今後ともよろしく」
2人は、バカみたいにわざわざ胸ポケットからタモリ風サングラスを取り出すと、
わざわざ少しずらしてかけ、どこか昔のヤンキーのようにそう言った。
- 99 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)08時03分15秒
私は、ポカンと2人を見る。
こんな15歳がいるとは日本は広い。
これで、私よりも年上だというから世界は広い。
「飯田さんとの馴れ初めは、ある大雨の日やった」
「降水確率100%にも限らず傘を持たずに学校に来た天邪鬼なあいぼんと
素直に傘を持って学校に来ていたののは、仕方なくあいぼんをののの傘にいれて一緒に帰っていました」
「余計なことはいわんでええやろ。それに降水確率は90%やったんや。
やから、うちは、残りの10%に賭けてやな」
私の頭の中でディズニーランドでくだらなさぶっちぎりで有名なアトラクション
イッツ・ア・スモールワールドのメロディが流れ始めていたのにもかかわらず
二人は独自のテンポで話を続けていた。
- 100 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)08時07分27秒
「その時!!!」
辻さんが、加護さんの突っ込み+言い訳を止めるかのように大きな声で言った。
私は、ビクッと辻さんを見る。加護さんもビクッと辻さんを見ていた。
そして、辻さんは私と加護さんを交互に見ていた。
次は、誰が話し出せばいいんだろう。
そう、思った矢先
「・・・・・・学校の裏山に隕石が落っこちてきた」
と、加護さんが不本意そうに続けた。辻さんは、満足そうに頷く。
この2人は、なにがしたいのかまったくワケが分からない。
そして、このペースで話を聞いているといつまでたっても飯田さんには会えないような気がする。
私は、2人の体で見えなくなっているブラックボックスの室内に視線を動かす。
そして――
「ウォーッ!!!!!!!どけーっ!!!!!!」
ラグビー部で鍛えた(限りなく嘘)タックルで分厚いバリケードを突破した。
- 101 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)08時09分50秒
「飯田さん!!!!!!!」
勢い込んで名前を叫ぶ。
が、部屋にいるはずの彼女の姿はどこにも見当たらない。
飯田さんはやはり留守だったんじゃないか。
まんまと2人に釣られてしまった悔しさでいっぱいだ。
「この腐れ豆!!!!!!うちを突き飛ばすとはええ度胸やな!」
「突き飛ばすのは最悪だね!!」
ドタドタと2人の怒りの声。
「それは、それは、申し訳ありませんね〜」
「なんや、その謝り方は!」
「心がこもってないのれす!!」
「当たり前じゃない!私の貴重な時間を潰したのよ、あんたたちはっ!!
飯田さんが留守って知ってて騙したんでしょ!!」
苛苛もピーク。
私は、ピー子口調で2人に怒鳴った。
- 102 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)08時10分41秒
「・・・留守じゃないよ」
「え?」
二人の声とは違う声が天から聞こえた。
けど、きっと空耳。
「空耳でもないよ」
今度は、はっきりと聞こえた。
しかも、私の心の声に返事をする形で――
恐る恐る部屋中を見回す。
しかし、そこには誰もいない。
「飯田さん!」
「いいらさん!」
2人がその名を呼んだ。天上を見上げて。
嫌な汗が背筋を伝う。
嘘でしょ――
私は、いつでも逃げ出せるようにつま先に力を入れる。
そして、2人の視線の先をこわごわと追った。
「ねぇ、笑って」
「ヒィヤ――――ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私の絶叫がマンション中に響いたとか響かなかったとか・・・・・・・・・・・・
- 103 名前:203号室 The messenger from the universe 投稿日:2003年05月13日(火)08時11分23秒
201号室解禁まで2時間12分。
その前に、私の精神が崩壊されないか非常に不安だ。
NEXT
- 104 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月13日(火)20時58分15秒
- 飯田さん、出番そこだけかよっ!(w
( ゚ 皿 ゚)ネェ、ワラッテ
- 105 名前:66 投稿日:2003年05月13日(火)21時46分26秒
- 締めにfin.(finish)じゃなくてfine(フィーネ)を使う管理人さんがス・テ・キ☆
…なんて言ってる場合じゃないや。
なんだなんだ!? なにがあった/いたんだ、管理人!?
眉毛ビームで塵にしてやれ!
- 106 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月13日(火)23時19分19秒
- 今思ったけど、一階が105までしかないってことは二階も205までか〜
残り二部屋、誰がでてくるのか。管理人、段々、応援したくなってきたよ
- 107 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月18日(日)00時28分44秒
玄関はノーマル。チャイムもちゃんとある。
チャイムを押すよりも先に出てくる人間もいないし、怪しげな歌声も聞こえない。
それだけでもよしとしたい。
中にはいってビックリ企画などありませんように・・・・・・祈りながら私はチャイムに手をのばした。
ハーニーホヘトー
うん、いい音だ。
程なくして
「・・・はい?」
と、いう返事とともに不必要なほどゆっくりとドアが開かれる。
ドアの隙間から、205号室の住人、紺野さんが顔を覗かせた。
- 108 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月18日(日)00時30分54秒
「あ・・・・・・管理人の新垣です」
「・・・・・・・」
紺野さんは、返事も返してくれない。
うん、返せるわけがないといったほうがいいか。
なぜか、頬に手をやり口をパクパクとさせている。
いったい、なにがしたいんだろう?
「あの、なにしてるんですか?」
「・・・・・・金魚・・・」
そう答えながら、紺野さんはドアを開けてくれた。
なんともシュールな人だ。
これくらいでは動じなくなったのか、私は、慌てず騒がず「どうも」と、紺野さんに笑いかけた。
慣れですか?といった感じだ。
こんなもんなら、大丈夫だ。私は、はじめてそう思った。
- 109 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月18日(日)00時33分14秒
第一印象は、紺野さんが一番マシかもしれない。
いける、絶対にいける。
どこにいくのかは全く分からないが、ともかくいけるはずだ。
私は心の中でガッツポーズを掲げていた。
――が
やはり玄関先に入った瞬間、私は固まっていた。
笑顔が、張り付いたまま強張るからたまったものじゃない。
プリティースマイルが引き攣りそうな予感がして私は素早く笑顔を消した。
そして、大きく息を吐いた。
- 110 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)01時04分53秒
※ ※
「・・・・・・紺野さん」
「なんですか?」
玄関先で、立ち止まった私を不思議そうに紺野さんが見つめ返してきた。
分からないんだろうね。
なんで私が捨てられた子犬のようにこんなにも悲しそうにあなたを見ているのか――
「アパートっていうのは、自分の家じゃないんですよ」
「はぁ・・・・・・で?」
「だから、借り物なんです」
「・・・・・・で?」
「ポスターを貼ってはいけないとは言いませんよ。
でも、限度ってものがあるでしょ、限度ってものが!!」
どこかのピンク狂いのように、一生ここに住んでくれる契約を交わしてくれるんですか、あなたは!?
続く言葉を寸前で飲み込み、私はツカツカと奥に進む。
グルリと部屋を見回す。予想通りすぎてため息も出ない。
ピンク狂いといい勝負だ、と私は思った。
- 111 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)01時07分43秒
どこを見てもポスター(アニメ)
壁という壁にポスター(アニメ)
そして、妙に胡散臭い魔方陣まである。
「だって、好きなんですよ」
どこか誇らしげに紺野さんは言った。
「はぁ?」
「これは、DBの非売品のポスター観賞用です。
で、こっちが店頭販促用のポスター、もちろん観賞用です。
さらに、これは今ではかなり貴重な少年ジャンプの巻頭ポスターを切り取ったものたちです。言うまでもなく観賞用」
「・・・・・・」
観賞用ってなに?
- 112 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)01時09分14秒
「さらにですね、こっちにあるのがスレイヤーズのポスター観賞用だったりするんですが、
この中に激レア物があるんですよ。どれだと思います?」
「え?」
アニメなんてまったく知らない私にそんなことは聞かないでほしい。
そんな潤んだ目で見ないで欲しい。
「じゃぁ・・・・・・これかな?」
私は、一番手近にあったものを指差す。
無論、適当だ。
すると、紺野さんはチッチッチと指を振りながら――まるで私を小馬鹿にしているかのように見える――
「それはDVD-BOX告知のポスターです。まあまあ、貴重ですが・・・・」と、言った。
DVD-BOX告知のポスター?
知るか、そんなもの。
私は、人を小馬鹿にするのは大好きだがされるのは大嫌いだ。
誰が見ても、不愉快だと思うであろう表情のまま紺野さんを見る。
が、紺野さんはまったく動じずに「これが激レア物です!!」とバッと手を広げた。
思わず、そこに視線を向ける。
- 113 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)01時10分56秒
っていうか、ポスターじゃないじゃん。
厚紙の――なんていうのかは分からないけど、お店とかで立てられてるようなやつだ。
よくこんなものが手に入ったな。
コレクターの執念というやつだろうか。ある意味、すごいとは思う。
「これはですねー、あるお店からこっそり取ってきたんですよ」
「へぇ・・・・・・って、ダメじゃないですか!」
「いいんですよ」
「いや、でも・・・・・・」
「お店でボロボロになって捨てられるより、私に貰われたほうが幸せです。
そうでしょ?」
「・・・・・・そうですね」
この人、暗そうに見えるけどものすごくポジティブ思考な持ち主のようだ。
もはや、言うことはなにもない・・・・・・
- 114 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)01時12分38秒
「管理人さん」
「・・・まだなにか?」
「こっちの壁に貼っているものもすごいんですよ。わざわざ製作会社に忍び込んでこっそり・・・」
「もう結構ですから」
これ以上、紺野さんの軽犯罪を聞かないように私は彼女の言葉を途中で遮った。
紺野さんは、「・・・・・そうですか」と少し残念そうな表情を浮かべたがどうでもいい。
「・・・・・・それじゃぁ、まぁ座ってください」
私は、勧められたクッションに腰を下ろす。
同じように真向かいに座る紺野さん。私たちの間には、謎の物体がある。
- 115 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)01時14分21秒
「紺野さん」
「はい?」
「・・・これはなんですか?」
「これは、ウィッチ・ボトルですね」
「え?」
「いろいろ攻撃されることが多いんで、呪詛返しを」
「はい?」
「身の程知らずな奴らには痛い目を見てもらわないといけませんからね」
紺野さんは、どこか不気味でどこか爽やかな笑顔を浮かべた。
聞かなければよかった。
見るからに怪しいのに、なんで聞いてしまったんだろう。
見るからに怪しかったからに決まっている。
それにしても、危機感がなさすぎではないか。そう、ない。
日本に住む以上そんなもの持てない。
などと、自己完結している場合ではない。
早く、この部屋からでたい。
実のある話はまったくしてないけど、一刻も早くこの部屋をでたい。
神様・・・・・・一番マシだと思った人は、かなりヤバイ人でした。
御爺様・・・・・・なんでこんな人を入居させたのですか?
「そ、そろそろ・・・お暇しようかな・・・・・・」
私は、そう言って立ち上がろうとした。
立ち上がろうとした・・・・・・が
「もう帰っちゃうんですか?」
紺野さんが、俯いて呟いた。
なんとかボトルを片手でさすりながら――
「・・・なーんて、早すぎですよね〜HAHA・・ハハ・・・・・ハ」
- 116 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)12時01分59秒
※※
「ホラッ!!この人、パーじゃなくてグーで殴るんですよ!!
女の子同士でもありえない展開ですよね」
紺野さんは、アニメの中の少女を指差す。
場面は、金髪の少女が主人公をグーで殴ったところだ。
それより、どう見ても二次元の女の子に萌ぇ〜とか言ってるキショイ人たちが見そうなアニメに
これだけテンションのあがる紺野さんのほうがありえないと私は思っていた。
「・・・・・・そうですね」
紺野さんとアニメを見だして何時間たっただろう。
長いような短いような、時間の感覚が曖昧になってきている。
そういえば、私、時間を気にしてたんじゃなかったっけ?
なんだったっけ?
あと、2時間とかカウントダウンしてたような・・・・・・・・・・・・
- 117 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)12時03分38秒
「あっ」
思い出した。
201号室だ。今日中に全室まわって穏やかに余生を過ごしたい。
私は、立ち上がった。
「どうしたんですか?これからトライアスロンがはじまるんですよ」
「あ、あの、用事を思い出しまして」
「用事、ですか?」
紺野さんの目が光った。
闇の底から「こんにちは」的なそんな目で見ないで欲しい。
「・・・・・・まだ201号室に行ってないんですよ」
「201号室?」
「ええ」
「本当に?」
「本当です」
「ほ〜んとうですか?」
「本当ですよ〜」
「そうですか・・・・・・」
あれ?意外とあっさり――
- 118 名前:205号室 A quite deep person 投稿日:2003年05月19日(月)12時04分39秒
「それじゃ、明日も来てください」
「え?」
「干しイモ用意して待ってますね」
紺野さんはそう言うとにっこりと笑った。
その笑顔は、ドキッとするほど可愛かった。
もちろん、私の次にだが――
「はい・・・・・・」
なぜか、私はそう返事をしていた。
日本人は、危機感が足りない。
危機感が・・・・・・・・・・・・
NEXT
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月20日(火)08時16分11秒
- 川o・-・)(・e・ )
……なに見てたんだろう?
- 120 名前:66 投稿日:2003年05月20日(火)19時17分01秒
- いまさら旧い話ですまぬが、管理人、>>57のきみの言葉は、高橋にごめんなさいというより「福井県民のみなさんごめんなさい」ではないのか。そっちのアパートに寿司百人前とか届けられたりしてないか心配だ。
で、本題。他人の笑顔にときめくなぞ、きみらしくもない。というかなぜ高橋にときめかんのだ! ときめきなさい!
- 121 名前:なちまりっぷ 投稿日:2003年05月21日(水)01時33分14秒
- 危機感足りねーな、管理人(w
紺野は、危なすぎるぞ。
っていうか、トライアスロンのあるアニメって一個しか思いつかん。やばいな、俺
- 122 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月23日(金)14時17分18秒
あの時間からきっかり5時間ジャスト。
完璧な私に遅刻という概念はない。
それにしても、疲れた。
さっさと住人への挨拶を終わらせて永遠の眠りに尽きたい・・・・・・・って、ダメじゃん。
いくら美人薄命とはいえ、この年で永遠に眠ったら薄命すぎる。
でも、薄倖の美少女伝説にはなるよね、ラブラブ。
などと、ほくそ笑んでいる場合じゃない。
さ、ラストバトルだ。
気合を入れて私がチャイムを押そうと手を伸ばした瞬間、なんの前触れもなくドアが勢いよく開かれた。
- 123 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月23日(金)14時18分07秒
ガツンという音とともにおデコから火が出る。
一瞬、なにが起こったのか理解できなかったが、
人間国宝である私のおでこのことが唯一気にかかった。
やはりおおっぴらに麗しのおでこを出しているとトレジャーハンターに狙われるのか・・・・・・
今度からガードをつけよう。
ぼんやりとした意識の中でそんなことを思っていると
「あーっ!すまないベ、大丈夫だったかぃ?」
と、攻撃してきたハンターが慌てた様子でおでこを押さえる私の顔を覗き込んできた。
- 124 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月23日(金)14時20分26秒
(●´ー`●)天使
ハッ!?
なに、今の単語。
頭の中に浮かんだ謎の言葉にうろたえながらも私は彼女を見た。
「慌ててたんだベ。悪気はないベさ」
「・・・・・・」
「だいたい、そんなところに突っ立ているほうが悪いと思うベ。両成敗だべ」
彼女は、せわしなく手を動かしながらも、どんどん自分を正当化している。
なんて奴だ。
さすが天使。
ハッ!?なにを納得してるんだろう、私は。
悪いのは明らかにこの人なのに――
- 125 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月23日(金)14時23分05秒
「ともかく、なっちはぜんぜん悪くないべ。悪いのはそっちのほうだべ。
絶対になっちじゃないべ」
ついには、自分が悪くないとまで言い切ったよ、この人。
私は、ある意味畏怖の眼差しを彼女に向けた。
と、彼女は急にニッコリと微笑み――
しかし、目はまったく笑っていない――
「慰謝料なんて請求するんじゃないよ」
と、鋭く言い残しそのまま階段を下りていった。
その後ろ姿をポカンと見送る。
- 126 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月23日(金)14時24分30秒
なに、今の人?
今のが安倍さん?だよね。
私の黄金の耳は「なっち」という一人称をしっかり聞き取っていた。
201号室に住んでるのは安倍さんと矢口さん。
確か、下の名前はなつみと真里だったはずだ。
つまり、矢口さんからはどうとっても「なっち」などというふざけた一人称がでてくるはずがない。
矢口さんなら「まっち」だ。
それとも「やぐっち」、はたまた「ぐっち」。うん、ありえない。
っていうか、そんなことよりも大事なこと。
「私のおでこは高いぞーっ!!!!!!」
これが一番大事〜ラブおでこ!
安倍さんの前ではなんとなくいえなかった。
- 127 名前:201号室 Two-person 投稿日:2003年05月23日(金)14時26分14秒
「・・・・・・誰?人んちのまえでうっさいな〜」
私が思いのたけを叫んでちょこっとスッキリしているとそんな声が201号室の奥から聞こえてきた。
矢口さんだろう。
そういえば、昼間行ったときの威張りくさった声もこの声だった。
「管理人の新垣です。5時間たったから来ましたよ」
私は、粘着質ではない。
あっさりさっぱりすっきりシャッキリした性格だ。
安倍さんの件はおいといて、そう答える。
「あぁ、新垣か」
むかッ
管理人様に向かって呼び捨てだとっ!!
何様のつもりだ。安倍さんの件も含めて眉毛ビームをくらわしてやる。
「まゆ・・・」
- 128 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月23日(金)14時27分18秒
「散らかってるけどどうぞー」
眉毛ビームの発射体制にはいったところで、ドアからひょっこり矢口さんが顔を出した。
ちっちぇーっ!!!!!!!!!!!!!!!!
プゲラ
私より、ちっちゃいじゃん。
小さい子に眉毛ビームなんてかわいそうだ。
「なんだよ」
「いえいえ、なにも」
矢口さんの鋭い眼光もなんのその。
こんな人に私が負けるはずがない。圧倒的有利!ニィの勝ち!!
「ラブラブ!」
思わず漏れた言葉に矢口さんは少し・・・いや、かなり引いていた。
- 129 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月28日(水)16時10分08秒
※※
「まぁ、適当にくつろいで」
「はい」
私の部屋と一緒のつくりだが、家具が違うと少し印象も違って見える。
人間って単純ね。
私は、出されたお茶を口に含む。
「ところで、矢口さん」
「なに?」
「お昼に来た時は・・・」
なんで入れてくれなかったんですか?
そう聞こうとした。が、
「そうだ、新垣」
「はい?」
矢口さんは、そこには触れさせまいとしているかのように突然立ち上がり、
いそいそと押入れからなにか四角い箱を取り出してきた。
なんだろう?
赤と白の古い機械。
皆目、見当もつかないそれをTVにセットしている。
私は、その小さな背中を眺めた。
- 130 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月28日(水)16時11分18秒
「ゲームしようぜ、ゲーム」
矢口さんが、笑顔で振り返る。まるで子供だ。
まぁ、いいけど。私は、ゲーム機を探す。
今の時代、ゲームといったらプレステ2だろう。
キューブとかX箱とかあんな馬鹿でかい四角い物体なんてもの誰が買うかって話だ。
「プレス・・・んっ!!」
「しーっ!!!!!!!!!」
プレステはどこかと聞こうとした私の口を矢口さんの手が塞ぐ。
恐ろしいまでの速さだった。
「その単語は・・・ここでは禁止。オッケー?」
真剣な顔で私を見つめる矢口さん。
怖い。
息もできないし。
私は、頷いた。
こうするしか生き残る道はないと判断したのだ。
それを確認すると矢口さんはキョロキョロと辺りを見回し、ホッとした表情に戻った。
- 131 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月28日(水)16時12分43秒
「じゃ、しようぜぃっ!!」
矢口さんは、さきほどの謎の機械にフロッピーディスクのようなものを入れ込んでいる。
「・・・あの、なにをするんですか?」
「ホッケーだよ、ほれ?」
ポンッとコントローラーらしきものを投げ渡される。
XもYも○も□も△も×も上についてる二つのボタンもグリグリ回るものもない。
Aボタン、Bボタン、スタート、セレクト、十字キー。
たったそれだけのシンプルなコントローラー。
「これって・・・・・・」
「知らないの?かの有名なディスクシステムだよ」
呆然とする私を矢口さんは小馬鹿にするように言った。
何度でもいおう。
私は、小馬鹿にするのは好きだが、されるのは大嫌いだと。
- 132 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月28日(水)16時14分06秒
「ほら、早く4人選びなよ」
「え?」
画面を見るとチビとデブとガリの体系をしたホッケー選手。
これをどうしろと?
いや、キャラを選べということは、この3人の中から選べばいいんだろう。
マリオカートと一緒だ。しかし、どう性質が違うのか。
私は、矢口さんに尋ねた。
「見たまんまだよ。チビは普通、マリカーでいうならマリオとルイージだな。
で、デブはパワーのあるクッパとドンキータイプ。
だけど、スピードにのったら最速なんて特殊能力はない。
最初から最後まで遅い、かなり苛苛する。
ガリは、デブの逆。タックルされたらものすごい勢いで吹き飛ぶけどスピードは最速。
ピーチ、ヨッシーってところだね」
マリヲカートで例えるならマリオカートをさせろと言いたい。
こんなわけの分からないアイスホッケーのゲームなんかじゃなく・・・・・
- 133 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年05月28日(水)16時16分35秒
「・・・・・・で、おすすめの組み合わせはどういうのなんですか?」
「そうだな〜、まぁ、均等に全員いれるのがビギナーってやつだな。
4人だからどれかひとつはダブるけど」
「そうですか」
それなら、と、私はチビを2人とガリ・デブを一人ずつ選んだ。
「・・・このままやったら矢口の勝利は固すぎるよな。それじゃ、白熱しないし・・・・・・」
矢口さんは、なにやらぶつぶつ呟いている。
別にたかがゲームごときに白熱するつもりは毛頭ないのだが。
「よしっ!ハンデつけてやる。矢口は、ガリオールスターズにする」
ガリオールスターズ?
カチカチっと矢口さんのチームが決められる。
全員ガリ。
だから、オールスターズ。
よく分からないけど、それはハンデになるんだろうか?
「試合開始―っ!!!!!!!!!!」
矢口さんが叫ぶと同時にゲームは始まった。
- 134 名前:66 投稿日:2003年05月30日(金)18時29分15秒
- うお、ちょっと目を離してたらすんごい進んでる!
ごめん管理人、浮気してたんじゃないんだよ。浮気するならなっちだな。すっげーいい! 最高。管理人もときめいてるし。
しかし、小馬鹿にするのは好きだがされるのは大嫌いって、きみはジョセフ・ジョースターか。いや、なんでもねっす。
ゲームでベッコンベッコンにヘコませれる管理人を早くみたいなーっと。
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月31日(土)09時42分25秒
- ディスクシステムって(w
そういえば、ファミコンとスーファミが製造中止とかなんだとか
- 136 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年06月02日(月)14時04分54秒
※
現代の子供はゲームが得意だ。
まさに、この対戦はそれを証明していた。
まったく、見たことのないゲーム機械ではじめてプレイするこの私が意外に善戦している。
「クッソー!なんだよ、お前は!!『はじめてです、ラブラブ』とか言いやがって嘘ついたな。
ちょっと素敵なピュアガールの矢口にっ!!お前は、その顔でアイドルのつもりか!!
矢口の優しさにつけこみやがってーっ」
アイドルではない、管理人だ。
まぁ、アイドル並なのは認めるけど。
それも、世界の誰もが羨むトップアイドルになれる素質の持ち主でもあるけど。
本当に礼儀のなっていないチビだ。
- 137 名前:201号室 Two-person 投稿日:2003年06月02日(月)14時07分17秒
第一、「はじめてです、ラブラブ」などと言った覚えがない。
それに、ちょっと素敵なピュアガールなんてこの部屋にはいない。
私のことを指しているなら「ちょっと」という修飾語(?)などがつくはずがない。
つまり、矢口さんは自分の事を指していると・・・・・
彼女のどこがピュアなんだろうか、はなはだ疑問だ。
さらにいうと、勝手にハンデをつけたのは矢口さん自身のだ。
それを私のせいにするとはっ!!
なんとなくむかついてきた。
手に馴染んできたコントロール。勝負の鍵はここだ。
私の操るチビが、同点となるショットを矢口さんのゴールに決めた。
チビ二人を選んだのは正解だったようだ。
- 138 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年06月02日(月)14時08分54秒
「あぁっ!!!」
矢口さんは、今にもコントローラーを投げ出しそうな勢いで悔しがっている。
弱い犬ほどよく吠えるという言葉がぴったりの人だ。
雑魚だ、雑魚過ぎる。
私は、ニヤリと笑った。
もうすぐ来る勝利の味を思い浮かべながら――
ゲーム画面では私の愛するチビがゴール前、逆転のショットを決めようとしていた。
と、その瞬間、矢口さんのガリが私の愛するチビに殴りかかってきた。
チビが倒れる。
それでも、矢口さんは攻撃をやめようとしない。
「な、なにするんですか!?やめてくださいよっ!!」
「乱闘だ、乱闘!!!!このゲームは、これだろ、やっぱり!!!!」
「そんなの知りませんよっ!!!」
ともかく、私は矢口さんの見よう見まねでボタンを連打して応戦した。
たちまち全ての選手がかけつけて、そうそうたる乱闘騒ぎがはじまる。
少しして、審判が駆けつけてきた。
- 139 名前:201号室 Two-person life 投稿日:2003年06月02日(月)14時10分08秒
「どうなるんですか?」
「見てれば分かる」
私の問いに矢口さんはなにかを期待するようにそう答えた。
そして――
事件は起こった。
「あーっ!!!!!!!!!!!!!!」
なんと乱闘をけしかけられた私の愛するチビが退場になったのだ。
しかも、けしかけた矢口さんのガリはお咎めなし。
こんなことがあっていいのだろうか、いやよくない。
「乱闘けしかけて20年の矢口が退場になるかよっ!!!!キャハハハハハハ」
矢口さんの勝利の高笑いが聞こえた。
私は、呆けたままベンチに連れて行かれるチビを見つめた。
- 140 名前:201号室 Two-personlife 投稿日:2003年06月02日(月)14時11分19秒
ちなみに、1人人数の少なくなった私のチームは負けた。
絶対に復讐してやる。私は、そう固く心に誓った。
NEXT
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月03日(火)10時21分52秒
- 矢口、乱闘しかけて20年って生まれたときから乱闘かよ(w
で、このゲームは本当に存在するんでしょうか?ちょとやってみたい
- 142 名前:66 投稿日:2003年06月04日(水)21時00分26秒
- 矢口…やばいなこいつ。たぶん頭の中にカブトムシでも飼っているに違いない。
最近ようやくわかってきた。
管理人、やっぱあんたが一番まともだわ。かわいそうに。食われるなよ、いろんな意味で。
- 143 名前:なちまりっぷ 投稿日:2003年06月05日(木)21時56分13秒
- なちまり同室とかどうでもよくなってきますた(w
- 144 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月06日(金)23時53分35秒
- いつも楽しみにしてます。おもろいです。
『いけいけ!熱血ホッケー部』ってゲームが昔あったけど、あれはファミコンだったっけ・・・?
- 145 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月08日(日)01時29分32秒
- うわっ、ぶっちゃけ俺、矢口とおんなじことしてた・・・・・・
- 146 名前:ななし 投稿日:2003年06月09日(月)13時55分38秒
- 任天堂のアイスホッケーでここまで笑わせてもらった描写は初めてです。
- 147 名前:101号室 新垣理沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月10日(火)18時17分16秒
○月×日
ようやく全ての住人との挨拶を終えた。
とはいえ、多少・・・・・・いや、かなりの不満が残る結果だ。
住人すべてのひととなりというやつをつかむのは上手くいかなかった。
よく考えてみれば、きちんと会話をかわしたのは数えるほどしかいない。
言葉のキャッチボールができない住人のほうが多かったのだ。
投げたら投げっぱなし、飛んできたものをキャッチせず新しいボールを投げる――
簡単に言えば、りんね投げまくり、そんな感じだった。
管理人である私は投げっぱなしでいいが、住人どもはきちんとキャッチすべきだと思う。
やはり、これからも何度か住人たちを訪ねたほうがいいだろうか?
- 148 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月10日(火)18時18分53秒
そこまで書いて、私は筆を置いた。
言葉のあやではなく本当に毛筆を使っているのは、財閥令嬢の特殊能力だから。
ほかにもいろいろ特殊能力はあるが、脳ある鷹はなんとやら。
私は、立ち上がり庭に面した窓を開ける。
広大な野菜畑と対照的なテント。仄かな明かりが見える。
小川さんは、まだ起きているみたいだ。
縁側に腰掛けて一服。
もちろん、タバコではない――シガレットチョコだ、あしからず――をくわえ、
出会った住人たちのことを考える。
- 149 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月10日(火)18時19分48秒
102号室には、色キチガイ
103号室は、空き部屋。追い出したわけではない
104号室は、ナゾの空き部屋
105号室には、故郷を愛する者
201号室には、よくつかめなかったがなっち天使と性格の悪いゲームマニア
202号室には、ケメコブラザーズ
203号室には、未知との遭遇
205号室には、アニヲタ
思い返せば草々たる面子だ。
しかし、だからといって私はこのアパートを手放す気は毛頭ない。
なぜなら、意外なことにも
そう、自分でも驚いたのだが
私は、けっこうこの状況を楽しんでいるみたいなのだ。
そうじゃなければ、世界一周を終えて2周目にはいったラブワゴンもびっくりの、
ジュマペール2周目の旅をしようとは思わない。
なんだかんだで、管理人という職業は私の天職だったのだろう。
- 150 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月11日(水)13時08分49秒
- いい、すごくいい
続きを心待ちにしてます
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月11日(水)23時40分11秒
- あいのり最近見てないな・・・・・・
- 152 名前:66 投稿日:2003年06月12日(木)00時09分07秒
- 眉毛っぽい…どんな日記帳?
それはそうと放送禁止四文字を、伏せ字なしで平気で使える管理人が素敵だ。(102号室な)
- 153 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月14日(土)12時11分31秒
パキッ
シガレットチョコを噛み砕く。
ジュマペール――
正常と異常の狭間を行き交う変てこな住人たちの住むアパート。
石川さんの部屋からは、さらに増殖したらしいピンクの明かりが漏れていて、
どこか遠くからは怪しげな福井県の民謡が聞こえる。
そして、壁をよじ登る怪しい人影――
ん?
人影?
- 154 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月14日(土)12時12分51秒
「ちょ!!ちょっと何してるんですか!?」
壁に張り付いた人物に気づいても冷静でいられる今の私は人間としてどこかおかしいのだろうか?
「あら、まだいたの、新垣」
私の声に驚くことなく怪しい人影――保田さんは、壁に張り付いたままニヤリと笑った。
もしかしたらニッコリだったのかもしれないが、そんなことはたいした違いではない。
「もちろんですよ。管理人ですから!」
私が胸を張って答えると、保田さんはどこか感心したようにどこか呆れたように
「ほぉー」と口をすぼませた。
「てっきり尻尾巻いて逃げ出したかと思ってたわ。まったく、とんだ変わり者ね。
ま、それくらい変じゃないとここの管理人なんてできないか」
「ちょっと待ってください、保田さんには言われたくありません」
何度もいうけど、このマンションで私が一番まともだということは
全ての生きとし生けるものが認めている。
少し誇張してるのはプリティフェイスにめんじて許してもらおう。
- 155 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月14日(土)12時13分56秒
「それよりも、保田さんはなにしてるんですか?壁にはりついて」
「なにって部屋に帰ろうとしてるだけよ」
至極、当たり前といった口調。
一瞬、2階までの階段がなかったような感覚に襲われる。
が、確かに今日私は階段で保田さんの部屋まで行ったはずだ。
安部さんが、階段を駆け下りる後姿だって見たし。
常識で考えて階段のない2階建ての建物なんてあるはずがない。
「なんで階段使わないんですか?なんのためにわざわざ壁を登るんですか?
いったい、あなたはなにがしたいんですか!?」
見事な三段論法だ。自分で自分の弁論に感動する。
いろいろ言葉の使い方が間違っていようと有象無象が思おうが関係ない。
私の言葉に間違いはない、それが新垣法案だから。
- 156 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月14日(土)12時15分23秒
保田さんは、私の見事な弁論にまたニヤリと笑った。
ほんとのニヤリだ。さっきのは甘かった。
ザワッと全身に鳥肌が立つ。悪魔降臨の予感。
いや、待てよ。
私を誰だと思っている。私は、新垣理沙だ。
そう、かの有名ななんでもござれの新垣のおリサだ。
私も負けじとニヤリと笑った。
こういう時、我ながら損だと思う。
なぜなら、私の顔はどんな表情を浮かべてもセクシーかつキュートに見えてしまうから――
保田さんのような凄みの利きまくったシーサーのようには笑えない。
「さ、さっさと理由を吐いてもらいましょうか?
「――趣味よ」
しばしの見詰め合いのあとに保田さんは疲れたようにそう口にした。
本当に疲れているかもしれない。
喋るときくらいは壁に張り付くのやめればいいのに――手がプルプルと震えてますよ。
「・・・・・・へ?」
趣味?
またこの人、趣味って言った?
もう馬鹿かと、アホかと。
こんなところでロッククライミングの真似事なんてするなと。
朝起きたら落下していく保田さんなんて見たくないと。
呆れて物も言えない。
- 157 名前:101号室 新垣里沙の眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年06月14日(土)12時16分01秒
「それじゃ、辛いからもう行くわよ」
いうなり、保田さんは蜘蛛のように壁をよじ登り始めた。
上手に壁のでこぼこに手をかけ足をかけ・・・・・・・・・・・・
毎日こうして部屋に戻っていることがうかがえる登りっぷりだ。
そうこうするうちに保田さんの姿は消えていた。
――もしかしたら、毎日あの姿を見なければならないのか。
「・・・・・・・・・・・・」
それでも――
それでも、きっと私は楽しんでいる――はずだ
一生、ここにいるぜぃってぐらいに
「今も昔も、一番おかしいのは管理人ね、まったく」
そんなことを言われているとは夢にも思わないままで――
Fine
- 158 名前:七誌 投稿日:2003年06月14日(土)12時17分59秒
- ( `.∀´)<そんなわけでこれでジュマペールの人々は終了ね
( ^▽^)<なんで?
( ・e・)<一通り、マンション一周したから
- 159 名前:七誌 投稿日:2003年06月14日(土)12時19分17秒
- ( `.∀´)<さて、この作者、今までメール欄でしかレス返しをしない不届き
な奴だったんだけどこれには完璧な理由があるのよ
川o・∀・)<ただの人見知りです
(ё)y-~~<アホかとバカかと
- 160 名前:七誌 投稿日:2003年06月14日(土)12時20分20秒
- ( `.∀´)<こんなの読んでくださってホントに感謝してるそうよ
(●´−`●)ありがとう
(*・e・)<ラブラブ
- 161 名前:七誌 投稿日:2003年06月14日(土)12時25分38秒
- ( `.∀´)<これからこの容量もったいないスレどうするかっていうと
(〜^◇^)<こういう形式の話って別に作者が書かなくても誰でもかけるよね
ぶっちゃけ。キャハハハ
( `.∀´)<というわけなんで、第二部はそこの( ・e・)好きの猛者に
お任せヘキサゴン。
- 162 名前:七誌 投稿日:2003年06月14日(土)12時27分16秒
- ( `.∀´)<あなたからの抱腹絶倒ニィパラダイス待ってるわよ
(ё)y-~~<なんていうのもアリだね
( ・e・)<ニィニィ
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月15日(日)00時03分08秒
- いや、こんなの七誌さんしか書けないって
壁に張り付く( `.∀´)を想像したら怖くなりますた(w
- 164 名前:66 投稿日:2003年06月15日(日)02時40分22秒
- みんな待ってるぞ、帰って来い管理人。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月16日(月)12時25分14秒
- 管理人さーん、好きじゃぁー!!
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月16日(月)17時36分07秒
- 実はずっとROMってた(w んですけどジュマペール、このまま終るのは惜しいです。
ほんっとに面白かったし、なんか斬新でした。
管理人さん、せめてもう一周お願いします!
七誌さんの2部、期待させていただいたらだめですか・・・?
- 167 名前:名無しん 投稿日:2003年06月16日(月)23時11分18秒
- きっとひょっこり( ・e・)たん島とかいいながら管理人は帰ってくるはずだ
マジで信じてます、っていうか、お願いします。禁断症状が・・・(w
- 168 名前:七誌 投稿日:2003年06月18日(水)19時41分30秒
- ひょっこり にぃたん じー まっ♪
( ・e・) (( ・e・)) (Pe・)) (( ・e・)
×
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月18日(水)23時28分22秒
- 管理人さんキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
- 170 名前:名無しん 投稿日:2003年06月19日(木)07時11分14秒
- まじで( ・e・)タン島
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(。 )━(A。 )━(。A。)━━━!!
- 171 名前:七誌 投稿日:2003年06月19日(木)23時58分51秒
- ( ・e・)知ってる?一作目がよかったからって調子に乗って続けた映画の末路
(ё)y-~~正直、一作目が思い出せないほど変わっちゃったジェイソン
( ・e・)知ってる?評判がよかったからって調子に乗ってだらだら続けた漫画の結末
(ё)y-~~正直、ドラゴンボールと幽白の最後知らない
( ・e・)知ってる?話題を集めたからって調子に乗ってしょっちゅう増員するグループの末路
(ё)y-~~正直、禁句だと思う
( ・e・)でも、やっちゃえ。まず、やっちゃえ
(ё)y-~~ジュマペールの人々打って変わってシリアス路線で近日スタート
( ´D`)多分
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月20日(金)13時14分55秒
- そういえば幽白は俺も最後知らないな
っつーか、管理人増員するグループはまだ終わってないから末路いうな(w
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月20日(金)15時11分02秒
- (ё)さんの尊敬する(●´ー`)さんをもっと出して下さい。
魁!新垣塾見てたらこの二人の絡みがこの小説で見たい!!
ってオモタので
- 174 名前:66 投稿日:2003年06月20日(金)23時33分05秒
- とりあえず『13日の金曜日』、ジェイソンが出てくるのは二作目からだぞ、管理人。
「幽遊」ラストは、主人公がいままでの主要キャラ全員と再びバトルしつつ新キャラ登場でどんどん面白く盛り上がっていく、みたいだったはず。それで単行本最終巻も二千万部売れた。確か。たぶん。きっと。
だから管理人も安心して、「いままでどおりで」戻って来い。
- 175 名前:いんとろだくしょん 入居者募集中。。。 投稿日:2003年06月21日(土)10時54分22秒
私の名前は、新垣里沙。
アラガキではなく、ニイガキだ。
解散した某グループのAメンバーでは(ry
ジュマペールに管理人として早くも半月がすぎようとしている。
なんだかんだで、このマンションの住人と生活を共にしているうちに、
素晴らしき人間関係を築くことに成功している。
嘘。
最初こそ何度か各部屋の住人たちを訪れお茶菓子を貰おうとはしていたのだが、
あとには後悔しか残らなかったのでやめた。
それでも、私がジュマペールを愛していて、ここでの生活も愛しているということは本当なので、
多少、いや、かなり果てしなく住人たちがおかしかろうと気にしていない。
そんなわけで、今日も窓際から小川さんの作った大自然を眺めている。
なにげに小川さんのサヴァイヴァー生活は思ったよりも順調みたいだ。
ジュマペールの敷地内が小川ワールドになりつつある事実。
少しだけ遠慮して103号室は空き家のままにしていのだが、
この分だと新たな入居者をいれても支障はなさそうだ。
- 176 名前:いんとろだくしょん 入居者募集中。。。 投稿日:2003年06月21日(土)10時59分54秒
私と話があって、私を尊敬して私に忠誠を尽くして・・・・・・etcetc。
贅沢は言わないからそんな人が来るといいな。
おっと、一番肝心な部分を忘れていた。
とりあえず、ノーマルな人が前提条件だ。
変な意味じゃなく、普通な人。
これだけはなにがあっても富士山が噴火しても譲れない。
慎重に選ばなければいけない。
管理人として人生最大の博打になるだろう。
とりあえず、不動産屋に登録しに行こう。
善は急げってお父さんが言ってたし、ねぇ、お父さん。
- 177 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月21日(土)15時09分05秒
- なんか始まってるし(w
出てきてないのは藤本6期と旧メンバー、他ユニットか・・・。
エベレストが海に沈んでも真人間はこないと思われ。
諦めなさい管理人殿。
- 178 名前:名無し読者2 投稿日:2003年06月21日(土)23時18分17秒
- 続編キター( ・e・)
とりあえず三十歳記念で姉さん希望。
- 179 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月22日(日)00時25分21秒
- あんま陸っぽいこと書くと作者さんが書きづらくなると思われ
- 180 名前:ROOM1 新垣里沙のアイドル指数 投稿日:2003年06月23日(月)09時16分32秒
サクッと登録も終えて今日はなにもすることがなくなった。
管理人って意外とすることがないということに気づいた今日この頃。
庭の掃除は、小川さんが畑のついでにしてくれるし、
不思議なことに住人同士のトラブルというスリリングな展開も起こらない。
トラブルはないにこしたことはないからいいけど。
あまりの退屈さにもっぱら作詞作曲の日々。
「んん〜、チュッチュッチュチュチュ眉毛パーティー、チュッチュ期待しちゃうわ、チュッ!」
今日の新曲をくちずさむ。
ダブルミリオン突破しそうなほどいい出来だ。
今度、財閥の力をもってしてアイドルデビューをしようかな。
私のルックスと愛くるしいキャラを持ってすればきっと簡単になれるはずだ。
史上初の管理人兼アイドルの誕生も近いこともないかもしれない。
私が、そう思った瞬間
「新垣いるー?」
さっきまでいた縁側から――正確には縁側の横の壁――そんな声が聞こえた。
- 181 名前:ROOM1 新垣里沙のアイドル指数 投稿日:2003年06月23日(月)09時18分13秒
あんなところから声をかける人は1人しかいない。
ヤマカシの人だ。じゃなくて、保田さんだ。
今日は、ケメコブラザーとかいう仕事はないのだろうか?
にしても、素直に玄関のインターフォンを押してくれればいいのに――
「いますよ。なんか用ですか?」
縁側に顔を出す。
案の定、壁に保田さんが張り付いていた。
ヤモリのように。
「いたのね、よかった」
保田さんは、身軽に壁から地面に飛び降り、着地して足を滑らせた。
「や、保田さん!?大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。日常茶飯事よ」
ゴキブリのように足をばたつかせながらにこやかに大丈夫といわれても
にわかには信じられない。
私は、おそるおそる保田さんの手を取って立たせてあげた。
老人介護をしている気分がしないでもない。
- 182 名前:ROOM1 新垣里沙のアイドル指数 投稿日:2003年06月23日(月)09時20分03秒
「・・・・・・で、なんか用なんですか?」
「そうそう、ちょっと頼みたいことがあってさー」
「頼みたいこと?」
「うん。あれなんだけどね、どうも毎日上り下りしてるから壊れちゃったみたいなのよ」
そういって、保田さんが指したのは彼女の部屋のベランダの手すり。
確かに、ボキリと真ん中から折れている。
他にも怪しげなところがチラホラ。
「ホントだ」
「でしょ?上り下りするのにかなりの勇気がいるのよ。毎日、命がけね」
「・・・・・・普通に階段から帰ればいいじゃないですか」
「あんた、バカァ!!」
いや、その台詞、明らかに保田さんのじゃないし。
また、私のことバカにしたし、許せないし・・・・・・・・・・・・
根暗なキャラじゃないから恨まないけど、どうにかして復讐はしよう。
復讐記念日の予定は未定。
「それで、どうしろっていうんですか?自分のケツくらい自分でふいてください」
「ふいてるわよ。じゃなくて、大工さん呼んでほしいのよね」
なんだ、大工さんか。
私に直せって言い出すんじゃないかと思ってわざわざ任侠ドラマにでてきた
お下品な台詞をはいてみたのに――
- 183 名前:ROOM1 新垣里沙のアイドル指数 投稿日:2003年06月23日(月)09時24分57秒
「そういうことですか」
「そ、前の管理人さんにもよく頼んで呼んでもらってたのよ」
「へぇ〜、そんなこと資料には書いてなかったけどな〜」
「真実は奇なりよね」
「なんか使い方間違えてるような気がしません?」
「まぁね。それじゃ、私今から出かけるんで帰ってくるまでに直してもらっといてね」
「え!?保田さん、立ち会わないんですか?」
「立ち会わないわよ、出産なんて」
誰も出産の話しなんてしてない。
今の話のどこからそんな単語が出てくるのか、一回あの人の頭の中をのぞいて見たい。
覗いた瞬間、死にそうだからしないけど。
- 184 名前:ROOM1 新垣里沙のアイドル指数 投稿日:2003年06月23日(月)09時25分27秒
あっけに取られているうちに保田さんは彼女独特の
――夜中にそれを見た者は、よくて失神悪くてあの世――の異名を取る走り方で
ジュマペールの玄関から去っていった。
なにはともあれ、はじめての管理人らしい仕事・・・なのかもしれない。
とりあえず、大工さんの連絡先を探さなきゃ。
「おでこひろげGO!GO!GO!GO!!」
昨日、作詞作曲した気合の入る歌を口ずさみながら私は大工さんへの手がかりを求めて部屋に戻った。
Next
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月24日(火)06時17分33秒
- 夜中に見て見たい…異名を取る走り方を。
あの世に逝くかもしれないが。
- 186 名前:名無し読者2 投稿日:2003年06月24日(火)18時03分36秒
- 「チュッまゆげパーティー」と「WE ARE おでこ」のカップリング
CDききてー。
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月25日(水)12時42分43秒
- 管理人さん、パクりすぎですよw
- 188 名前:Room2.コッコちゃんと新垣さん 投稿日:2003年06月27日(金)14時07分44秒
おでこひろげGO!GO!GO!GO!!
とか歌ってもぶっちゃけ探す気がなくなってきた。
最初は祖父の残した僅かな資料をあさくってみたりもしたけど、大工さんへの手がかりなんてないし。
見つかったのは、私の口からは言えないお爺様の秘密だったり。
そんなお爺様だからこそジュマペールの管理人としてやっていけたんだろうけど、
さすがの私でもかなりひいた。
人に見られてまずいようなものは、いつ死んでもいいように処分しておけっていう教訓を
伝えたかったんだと思うことにしよう。
私がお墓まで持っていくから安心してね、お爺様。
- 189 名前:Room2.コッコちゃんと新垣さん 投稿日:2003年06月27日(金)14時09分45秒
――コケーココココ
と、いきなり背後から鶏の声。
振り向くと私の足元に赤いとさか発見。
ものすごく近くから聞こえたと思ったら、こんなとこまであがってきてたわけか。
このくらいでは動じなくなった自分が少しだけ悲しい。
「よっと」
これは、小川さんとこの5代目コッコちゃんか。
初代から4代目の話は聞かない約束。
サヴァイヴァーってタフだとでも言っておくか。
なんて感心してるよりも早く外に連れてかなきゃ――
ったく、窓もおちおちあけてられない。
「小川さん、コッコちゃんがまた私の部屋に来てましたよ」
最初は、テントだった小川さんの家もいまや立派な木の上の秘密小屋になっている。
回りには柵で囲まれた野菜畑と鶏の小屋。たいしたものだ。
って、さらに感心してる場合じゃないけど。
- 190 名前:Room2.コッコちゃんと新垣さん 投稿日:2003年06月27日(金)14時11分48秒
「あ〜、管理人さん、おはようございます」
小川さんが、小屋からひょっこり顔を出す。
どうやらまだ寝ていたみたいで髪はボサボサ、寝ぼけ眼だ。
いったい、この人はいつ働いているのか・・・・・・
自然と共に生活するのはいいけど、今月の家賃まだ払ってもらってない。
大量の新鮮野菜もらったからもう少し待ってあげてもいいけど。
「おはようございますって、もうお昼ですけどね」
「あぁ、本当だ。こんにちは」
「・・・こんにちは」
マイペースな人だ。
でも、まぁ嫌いではない。
小川さんは、木の上から身軽に飛び降りてくる。
サヴァイヴァーというよりターザンに近くなってきた。
でも、まぁ嫌いではない。
- 191 名前:Room2.コッコちゃんと新垣さん 投稿日:2003年06月27日(金)14時14分10秒
「コッコちゃんは、管理人さんの部屋がお気に入りみたいですね」
小川さんは、私の手からコッコちゃんを受け取りながらのんびりといった。
コッコちゃん里沙ちゃんの家に侵入事件は初代から5代目までしっかりと受け継がれてきている。
なにが鶏をそうまでさせるのか。
私のかわいさは鳥の世界でも共通なのかもしれない。
「勝手にお気に入りに登録されても困りますけどね」
「まぁ、カワイイからいいじゃないですか」
カワイイだけでなんでも許されるのは世の中広といえど私だけだ。
「・・・・・・ともかく、さっさと鶏小屋つくって逃げ出さないようにしてくださいよ。それじゃ」
「は〜い」
少し遅れてくる返事。
彼女は、返事だけはいい。だが、行動までが遅い。
でも、まぁ嫌いではない。
だから――
- 192 名前:Room2.コッコちゃんと新垣さん 投稿日:2003年06月27日(金)14時15分35秒
「あ、里沙ちゃん、ちょっと待って」
「なに?」
「今度、どっか遊びに行こうよ」
「いいねー」
管理人とはいえ、普通の女の子に戻りたい時もたまにある。
もちろん、誰に接する時でもこういう態度ではないが、
まこっちゃんは、なかなか見所のあるキャラなのでちゃんづけ、ため口を許している。
だから、彼女とは公的な時以外はこんな感じでほほえましい仲良しさんに見えるわけだ。
しかし、絶対に公私混同はしないのが私の主義だ
――馴れ合いなんて管理人はしてはいけない。
ある種の殺伐さが管理人には必要だと思うし。
つまり、徹底して家賃の催促は忘れてはいないということだ。
まぁ、それはそれとして、2人でどこかに行くのは楽しそうだ。
今まであまり同年代の子と遊んだことはないし、
ドキドキワクワク、新垣里沙のドキワクNight――
- 193 名前:Room2.コッコちゃんと新垣さん 投稿日:2003年06月27日(金)14時18分32秒
「辻さんと加護さんも一緒に」
「嫌だ」
即答で返した。
よりにもよって私の天敵2人組の名前がでてくるとは。
このマンションの住民でもないくせにでかい顔でほぼ毎日出現しやがって――
まこっちゃんもまこっちゃんだ。
私とあの2人との――ほぼ加護さんだけど――名バトルの数々を知らないとでもいうのだろうか。
まこっちゃんは、唖然とした表情で私を見ている。
知らないらしい。
なんかむかつく。
「・・・家賃、さっさと払ってくださいね、小川さん」
「え!?里沙ちゃ・・・・・・管理人さん?」
小川さんの少し泣き出しそうな声を背中に受けながら私は部屋に戻った。
戻ろうとした。だが、
「キャー―――――――――――――!!!!!!!!」
某サウンドノベルのOPで聞くことができるような、耳を劈く悲鳴とやらがそうさせてくれなかった。
これまた限りなく、近いところから聞こえた。
私は、悲鳴の発生源――102号室に視線を動かし何度目かのため息をついた。
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- 194 名前:名無しん 投稿日:2003年06月28日(土)09時17分47秒
- いきなりなくなってたからビビッた〜
- 195 名前:66 投稿日:2003年06月28日(土)13時40分22秒
- 天使天使って、そんなになっちに憧れてるのか? 管理人。
いまのところ一番天使に近いのは、小川だな。
102号室っつーと、あれだな、色(放送禁止四文字)の部屋だな。
ほっといたほうがいいぞ、管理人。
- 196 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月29日(日)10時14分27秒
- 七誌さんはドラえもんヲタっすね。
っていうか、コッコちゃんの初代から4代目までは・・・・・・(((( ;゜Д゜)))
- 197 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時03分39秒
相変わらずのピンクルーム。
いや、この間よりもさらにその色味は増しているような気がする。
そこから聞こえるありえないほど大きな悲鳴。
もともとの声が甲高いから耳障りだ。
近所から苦情がきそうだ。本当に迷惑な人だ。
断定口調を3連続で使いたいほどむかついている。
「・・・・・・石川さん、どうしたんですか?」
私は、耳を押さえながら中を覗き込む。
そして、固まった。
最近では多少のことでは動じなくなっていたというのに――
ピンクルーム中央の光景に久しぶりに驚きで身を固まらせてしまった。
- 198 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時04分16秒
「か、か、か、管理人さ〜ん。た、た、助けてくださいよ〜」
ハッ!
情けない声に我に返る。
「石川さん・・・・・・聞きたくないんですけど、なんで机の上で・・・・・・
えっと、そんな変な格好で固まってるんですか?」
私も固まっていたが、石川さんも固まっていた。
足は内股、中腰、そして、最近、巷でなぜか人気のあるチャーミーというアイドルが着るような
ブリブリの服を着て――
- 199 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時05分08秒
「動けないんです〜」
「ハァ?」
「だから、その、か、肩に」
「肩?」
言われて、私は石川さんの肩に視線を動かした。
ピヨピヨとかわいらしいひよこが一匹。
いずれは、6代目コッコちゃんになる予定のひよこだろう――
が、手乗りバトよろしく石川さんの肩にチョコンと止まっていた。
ピンクピンクで怪しい人だとは常々思っていたが、サーカスのひよこ使いだったのならうなづける。
- 200 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時06分28秒
「すごいですね、そんなとこでひよこをここまでリラックスさせられるなんて。
月光ひよこ村なんて作ったらどうですか?」
「好きで乗せてるんじゃないです〜」
いや、どう見ても好きでのせてるように見える。
まったくもって意味の分からない人だ。
「カワイイですよ、写真撮ってあげましょうか?
一枚2200円でニィニィなんてどうです」
「バカなこと言ってないで早くひよこをどうにかしてください!!」
石川さんが金切り声を上げた。
元から金切り声だが、私のワールドワイドでハイブローな駄洒落を
バカなことで片付けるとは、許すまじ、石川。
「・・・・・・・・・・・・家賃、3倍と」
「え?」
「いえいえ、こっちの話ですよ」
私は、にっこりと笑みを浮かべて石川さんの肩で眠りについているひよこを手に取った。
同時に、石川さんは力なく膝から崩れ落ちる。
- 201 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時07分48秒
「ありがとうございます、管理人さん」
「どういたしまして。っていうか、悲鳴の原因はなんだったんですか?」
「それですよ」
石川さんは、私の手の中のひよこを指差した。
ひよこ?
あんなに仲よさげに肩に乗せていたのに?
「私、鳥大っ嫌いなんです。できることなら見たくないし、
鳴き声だって本当は聞きたくないんですよ!!
世界にこんなにおぞましい生物がいるなんて考えるのも嫌なんです!」
「はぁ・・・・・・でも、それならなんで肩なんかに?」
「だって、黄色く丸まってたから肩につけるアクセサリーかと思うじゃないですか」
すごく正当なことのように言ってるけどひよこを肩につけるアクセサリーとは、どれほどの近眼さんでも思わない。
- 202 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時10分48秒
「だいたい、管理人さんが、小川さんをそそのかすからこんなことになるんですよ!!
どうにかしてくださいよ!!」
「どうにかって言われても」
「ともかく、今度そのひよこが私の部屋に入ってきたら有無を言わさず撃ち殺しますから、
このM79で!!」
ジャキッとどこから取り出したのか大きな・・・・・・・大きな
「な、なんでグレネードランチャーなんて持ってるんですか!!?」
「保田さんにもらったんです!」
保田ぁああああああああああああああああああああっ!!!!!!!
てめぇえええええ!!!!
これも趣味か、趣味なのかぁあああああ!!!
本当に何者なんだろう、あの人は。
- 203 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時12分01秒
「と、ともかく物騒ですからしまってくださいよ」
「小川さんにしっかりと言ってくださいよ」
「分かりましたよ」
・・・・・・警察にもしっかりと言っておくかな。
銃刀法をありえないくらい違反した一般市民がいますって。
「で、石川さん、その格好はなんですか?」
「え?あ、知りたいですか〜?」
「あんまり知りたくないけど、目の前でそんな格好されたら聞くのが礼儀ってものかと思いまして」
「管理人さんったら、素直じゃないな〜」
日本で、いや世界で、いや宇宙で
これほどまで素直な人間はいないといわれている私に向かって・・・・・・
家賃5倍にしよう。
- 204 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時13分43秒
「私ってカワイイと思いませんか?」
果てしなく嫌な予感。
どこを見ているのか分からない遠いまなざし。
この人は、どこか逝っちゃってる。
もちろん、最初からそう思ってはいるけど――
自意識過剰な人間は好きじゃない。
私のように自身を過小評価することが人として魅力的だ。
なにごとにも謙虚なほうがいい。
「チャーミーに似てるってよく言われるし〜、
ピンクが大好きなんてかわいらしい一面もあるし〜、
私だったらトップアイドルになれるかなって思うんですよね〜」
「断じてありえませんね」
トップアイドルの座は私のものだ。
誰にも渡さない。
私のルックスと愛くるしいキャラで全世界は(ry
石川さんなんてただのナルシス馬鹿だ。
- 205 名前:Room3.アイドル服とグレネード 投稿日:2003年06月30日(月)13時15分19秒
「それで、挨拶のポーズを考えたんですよ〜。
見てくださいよ〜、ハッピー!!!!!」
石川さんは、一度、両手を胸の前に集め、そして開くという
小っ恥ずかしく薄ら寒いポーズを一度ならず何度も繰り返した。
おまけに私にまでするよう強制してくる。
私でさえ、トップアイドルになった時の決めポーズを考えていないというのに、ムカムカする。
「くらえ!!」
あまりの怒りに私は、手の中に優しく優しく包んでいたひよこを石川さんに向かって投げつけていた。
重大なことをさっぱりすっきり忘れて――
「キャー――――――――――――――――!!!!!!!!!」
石川さんのひよこに対する恐怖の叫びとともに102号室は吹っ飛んだ
NEXT
- 206 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月30日(月)16時32分22秒
- 吹っ飛んだのかい!
- 207 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月30日(月)17時24分18秒
- 管理人もかなりの自意識過剰かと・・・・・・・
っつーか、>>206の的確なツッコミに藁てもた
- 208 名前:66 投稿日:2003年06月30日(月)20時11分27秒
- つーか、爆発オチで最終回、とかじゃないよな?! 管理人。
- 209 名前:名無しん 投稿日:2003年07月01日(火)00時49分34秒
- 管理人、吹っ飛んだ━━━━ッ(゚∀゚ )( ゚∀゚ )( ゚∀゚)━━━━!!!!!!
- 210 名前:Room3.5 新垣さんの推理メモ 投稿日:2003年07月04日(金)07時55分28秒
冗談じゃない。
本当にグレネードをぶっ放すなんてこれがシリアスな小説だったら
今頃私は星になっていたところだ。笑いあり涙アリの感動巨編でよかった。
「・・・・・・修理費は全額石川さんもちっと」
部屋に戻った私は即、今月のにぃにぃチェックにそうメモをした。
修理といえば、保田さんの言ってた大工さんのことをすっかり忘れていた。
パラパラとジュマペールの資料をめくる。
古くからここに住んでいる人ならきっと大工さんの居場所を知っているとふんでのことだった。
我ながら名推理。
- 211 名前:Room3.5 新垣さんの推理メモ 投稿日:2003年07月04日(金)08時00分37秒
入居時期は見事にバラけている。
一番古いのが、安倍さん。
へぇ、最初は1人暮らしだったんだ。
一年後に、同室に知さんが入ってきたと・・・・・・知ってだれだろう?
今はそんな名前の人、住んでいないし・・・
もしかしたら、安倍さんの彼氏かもしれない。
見かけによらずやることはやっていたらしい。
続いて、飯田さん。
この人とは、もう二度と会いたくない。終わり。
さらに続いて、後藤さん。
こんな人、今は住んでいない。終わり。
で、石川さんか・・・・・・
石川さんは、ちょっと日本海に沈めてきたから話は聞けない。終わり。
小川さん、高橋さん、紺野さんは、けっこう最近入ってきてるから知らないだろう。
終わり。
- 212 名前:Room3.5 新垣さんの推理メモ 投稿日:2003年07月04日(金)08時01分38秒
ということは、聞くとしたら安倍さんしかいない。
どいつもこいつも役立たずばかりだ。
まぁ、もし安倍さんが留守でも、あそこには矢口さんもいるし
誰もいないなんてことはないだろう。一番妥当なところか。
そういえば、入居時期の欄には矢口さんの名前が載ってなかった気がする。
小さすぎてお爺様には見えなかったんだろうか。
ま、過去にこだわらないさっぱり主義の私にはどうでもいいことだけど。
早速、私は201号室に向かうことにした。
NEXT
- 213 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月04日(金)13時57分00秒
- なっちキタ━━━━━(・∀・)━━━━━
- 214 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月04日(金)14時47分24秒
- 塾コンビ━━━━(゚∀゚ )( ゚∀゚ )( ゚∀゚)━━━━!!!!!! ー
( ´ Д `)この知って人、誰ですか?
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月04日(金)17時46分13秒
- よっすぃ・・・・
- 216 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)05時50分33秒
「あれ、おまめちゃんじゃないかぃ。なんかなっちに用かぃ?」
201号室。
前回のように追い出されることなく、安倍さんがドアから顔を見せた。
打って変わったように笑顔の安倍さん。
いつのまにか、おまめと呼ばれている私。
「あ、ちょっとお聞きしたいことがありまして」
「そうかぃそうかぃ。まぁ、あがってあがって」
この人は、二回繰り返すことが好きみたいだ。
別にあがってまで聞くようなことではないが、安倍さんとはまともに話していないので
ついでにいろいろ話をしてみることにした。
私の頭の中に時折浮かんでくる(●´−`●)天使の意味も知りたいし――
- 217 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)05時56分44秒
※
部屋はやけに汚い。
汚いどころじゃなくて壁がへこんでたり窓枠が折れてたり――
この間、来たときはこんなんじゃなかった。
「あの・・・・・・どうしたんですか?これ?」
「ちょっとね〜矢口と喧嘩しちゃってね」
安倍さんは、お茶を入れながら他人事のようにのんびりと言う。
矢口さんと喧嘩・・・・・・
凄まじい喧嘩だったことがうかがえる。
昨日の夜は静かだったような気がするけど。
なにかしらうるさいジュマペールに慣れてしまったから気づかなかったのかもしれない。
「喧嘩の原因は?」
「矢口暴言って感じだべ。なっちはぜんぜん悪くないから」
矢口暴言。
なにをいったんだろう。
あの人は悪口製造機みたいなところがあるから私みたいに大人じゃないとなかなかあしらえない。
安倍さんは安倍さんで自己を正当化するのが好きな子供っぽい人みたいだし。
そんな二人がよく一緒に暮らすようになったものだ。
そもそも、安倍さんと矢口さんが仲良くなるきっかけすら思いつかない。
ちらりと安倍さんを見る。
目が合った。
ニッコリ笑われても困る。
「なっちに惚れるんじゃねーべ」
「いえ、そういうわけじゃ・・・・・・」
- 218 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)06時00分20秒
お茶を持って安倍さんが私の前にようやく腰を下ろす。
私の前にはお茶。
安倍さんの前には・・・・・・なんだかとっても嫌なもの。
私は、見てはいけないものを見てしまったようだ。
「・・・・・・・・薬中ですか?」
「え?」
安倍さんの前には、大量のカプセル、粉薬、飲み薬、顆粒etc
ジュマペールでこんなに薬物汚染がすすんでいたなんて――
「警察行きましょうか・・・・・・
大丈夫、私の知り合いに優秀な弁護士がいるんで」
「な、なに言ってんの、おまめちゃん。これはなっちの薬だべ」
「見れば分かりますよ、薬ぐらい。
矢口さんと一緒に暮らしたら薬に手を出したくなる気持ちも分かりますけど・・・・・・」
「だから、違・・・・・・・ゲホッ!!!!!!」
安倍さんが咳き込んだ拍子に鮮血が飛び散る。
私の思考回路が停止した。
- 219 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)06時02分21秒
「ちょっと待つべ・・・・・・」
安倍さんは、平然と口元の血をぬぐい大量の薬を水も使わずに流し込んでいく。
こんなにいっぺんに飲んで体に悪くないんだろうか?
とまりかけた日本の宝、里沙ちゃんの藍色の頭脳が動き始める。
「・・・・・・どういうことなんですか、一体?」
とりあえず、聞いてみる。
「なっち、余命幾ばくもないんだべ」
「え?」
「生まれた時、お医者さんには10年生きられたらいいほうだって言われたらしいし」
安倍さんは、悲しげに眉を寄せる。
10年か・・・・・・・私の薄幸の美少女キャラをとるつもりだな。
ん?
でも、安倍さんって――
「・・・・・・安倍さんって今21歳ですよね」
「毎日、薬を飲まないとダメなんだベ」
あ、あっさりと私の言葉をスルーした。
「この薬たちがなっちの生命線」
そんな悦に入った顔で飲み残したカプセルを齧らなくても――
っていうか、安倍さんは病気とかじゃなくて
多分それはきっと私が思うにたんなる薬の飲みすぎだと――
- 220 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)06時04分47秒
「それはそうと、おまめちゃんはなっちになんか話があったんじゃないかぃ?」
「ああ、そうでした。
安倍さんと矢口さんってどうやって仲良くなったんですか?」
あれ?
私、こんなこと聞きにきたんだっけ
違うような気がしないでもない。
でも、気になることは聞いておかないとただでさえ得られにくい心の安らぎが手に入らないからいいか。
「えぇ、なっちと矢口のことが聞きたかったんだべか〜。照れるべ照れるべ」
「いや、そんなに照れるような話でも――」
なんなんだ?
この異常なほどの照れっぷり。
もしかして、怪しい関係?
世界は広いようで狭いな〜
- 221 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)06時07分06秒
「矢口―、聞いたー?おまめちゃん、なっちたちの関係が知りたいんだって」
安倍さんは、閉じられた襖に向かってそんなことを言っている。
「っていうか、矢口さんいたんですか?」
てっきり安倍さんと喧嘩したあとどっかに飛び出していったのかと思っていた。
だって、在宅中に管理人の私が来たら普通、揃って出迎えるのが筋ってもんだし。
「矢口は、いっつもいるべ。さてと、なっちそろそろ仕事に行く時間だべ」
言うなり、安倍さんは立ち上がった。
「え?」
「続きは矢口に任せるべ。じゃぁね、おまめちゃん」
「えぇっ!?ちょっと待ってくださいよ」
私の言葉も聞かずにさっさと部屋を出て行く安倍さん。
なんて自己中な人なんだ。
(●´−`●)天使。
・・・・・・・・・・・・また、謎の物体が。
- 222 名前:Room4.薬と安倍さん 投稿日:2003年07月05日(土)06時08分22秒
「あの、矢口さん」
仕方なく私は矢口さんがいると思われる襖に向かって声をかけた。
「・・・・・・3時間後に出直して来い!!」
彼女は姿を見せることなくそういった。
このパターンは、前回と一緒だ。
そう言われると思ってたんだ。
「じゃぁ・・・また来ます。多分」
扉を静かに閉めた直後、私が201号室の家賃を4倍にしたのはこの件とは一切、関係ない。
NEXT
- 223 名前:なちまりっぷ 投稿日:2003年07月05日(土)18時53分31秒
- 管理人、目的が目的が変わってるぞ
その調子でなちまりの関係を暴いてください
- 224 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月06日(日)09時05分09秒
- 4倍にしちゃったの?!
管理人さん家賃増しすぎ(;´∀`)!!
- 225 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月06日(日)10時01分28秒
- 矢口はいっつもいるってヒッキーなのか!?
っつーか、住人に対抗してか管理人もやりたい放題になってきてるよ
- 226 名前:jinro 投稿日:2003年07月07日(月)17時12分44秒
- あははは!
スゴイワロタ!こーゆーの大好きです。
がんばって下さいね〜。
- 227 名前:66 投稿日:2003年07月09日(水)00時20分06秒
- 賃料値上げは勝手だが、払ってくれる相手とは思えんぞ、管理人。
- 228 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時07分36秒
部屋をでた瞬間、私のすぐ目の前に大きな壁が立ちはだかっていた。
思わず、マトリXの主役のように身をのけぞらせ、
そして、あれは映画だからできることだったと気づいた。
腰がグキッとおれて足がすべる。
こんなとこで後頭部強打による事故死なんて間抜けすぎるけど、
それがまたちょっとドジでかわいらしい女の子のアピールになるかもしれない――
でも、死んじゃったらアピールもなにも。
あぁ、先立つ不幸をお許しください。
そう思った瞬間
「危ないよ」
壁だと思っていた人がすばやく私の腕を掴んでひきあげてくれた。
しかも、片手で。随分力強い人だ。
- 229 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時09分10秒
「ど、どうも」
私は、その人を見る。っていうか、見上げた。
その姿に、謎の悪寒が全身に走る。
立っていたのは随分と背が高いが普通の女性だ。
長い黒髪に私には負けるが割と綺麗な顔つき。それなのに、悪寒が――
一体、誰だろう?見覚えは無い。
こんな人は住人はいなかったはずだ。
「いるよ」
「え?」
「この間、部屋に来てくれたでしょ」
「は?」
だ、誰?
髪が長くて背が高くて目がでかくて・・・・・・目がでかい。
私の脳裏に天井に張り付いた貞子が浮かんでくる。
ま、まさか――蘇るのは激しいトラウマと恐怖。
あの姿を見て以来、趣味であった天井の木目数えができなくなったのだ。
何故こんなところ彼女が現れたのかなど考えるよりも先に、私は本能で後ずさりしていた。
あれ以来、一度も足を踏み入れてないけど――
- 230 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時10分59秒
「い、飯田さん・・・ですか?」
いうと、その人は「正解」と微笑んだ。
意外と普通な笑顔だ。まるで別人のように見えた。
あの時、彼女が身にまとっていた負のエネルギーだけがなくなっているかのように――
それに気付いて、私の気持ちはいくらか冷静さを取り戻した。
だけど、この変わりようはおかしい、おかしすぎる。
なにか裏があるような気がする。
普段天井に張り付いているような人だ。人間じゃないし・・・・・・
いくら私が宇宙人でさえ誘拐したくなるほど愛くるしいからって、
天井に張り付く星人がうじゃうじゃいるようなとこには連れて行かれたくない。
「連れて行かないよ」
「え?」
「それより、管理人さん、カオに聞きたいことある?」
聞きたいことなどなにもない。
むしろ、早くこの異様な空間を脱出したい。
- 231 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時12分28秒
「ブォオオオン、パラリラパラリラー」
「はぃ?」
いきなりなにを言い出すんだ、この人は?
そんな期待に満ちたまなざしで見られても分からない。
「盗んだ○○で走り出す〜♪」
○○のところを答えてほしいんだろうか。
「・・・・・・バイク?」
恐る恐る答えると飯田さんは頷いた。
「歌手が手に持つものは?」
「・・・・・・マイク?っていうか、飯田さん」
「カオは、縄跳びの成績が5だったよ」
「体育?・・・じゃなくて、飯田さんってば」
「〜〜は流々、仕上げをごろうじろってね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・細工?あの、飯田さん、私、別に謎々なんかしたくないんですけど」
「まだ思い出さないの?」
「え?」
「管理人さんには、大事な大事な任務があったはずなのに――」
飯田さんは、深いため息をつく。
大事な大事な任務?
それと謎々が関係あるのかはなはだ疑問だが、とりあえず考えてみる。
- 232 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時14分12秒
バイク
マイク
体育
さいく
ピコーン!!
私のおでこで豆電球が光った。
「大工さんだ!!!!!!!!!!」
勢い込んで飯田さんを見上げると飯田さんはゆっくりと頷いた。
大工さんの手がかり探しにきたのに、なんですっかり忘れていたんだろう。
飯田さんも、こんな回りくどい駄洒落ナゾナゾなんかじゃなくてさっさと言ってくれればいいのに――
- 233 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時15分33秒
「大工さんの連絡先、知ってるんですか?」
「知ってるよ」
「いや〜、よかった。資料にも載ってなくて」
「載ってるよ」
「載ってませんでした。
だいたい、なんで一住人のあなたが極秘資料の中身を知ってるんですか!」
「カオリはカオリだから」
もういい。
飯田さんは飯田さんだから極秘資料もなんでも知ってると。
それでいいや。めんどくさい。
- 234 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時17分09秒
「・・・・・・・・・・・・・・で、さっさと連絡先教えてくださいよ」
「資料の4ページに載ってる、三河屋さんに電話したらいいよ」
「三河屋さんですか?」
大工さんなのに、三河屋さん?
普通、工務店とかでしょ。
もしかしてサザエさんフリーク?
サブちゃん?脱税してないほうのサブちゃん?
どおりで何度見ても分かんないはずだ。
「ありがとうございます、すぐ連絡とってみますね」
私は、飯田さんにお礼を言って身を翻した。
「管理人さん!!」
「え?」
すぐ呼び止められる。
「大工さん来たらカオの部屋も一緒に直してもらって」
「どっか壊れてましったっけ」
「カオ、しょっちゅう天井から飛び降りるから床がへこんじゃったの」
それなら飛び降りるなと
天井にも張り付くなと
「・・・・・・分かりました、言っておきます。それじゃ」
- 235 名前:Room5.宇宙人はナゾナゾ好きだったのです 投稿日:2003年07月09日(水)08時18分38秒
「あ、管理人さん」
また呼び止められる。
宇宙人は、一回一回話を終わらせないと次の話題にいけないのかもしれないけど、
私はしちめんどくさいことは嫌いだと何度も言っているはずだ。
そこのところを少し考慮してほしい。
私は、ため息をつきながら再度振り返った。
飯田さんは、なぜか嬉しそうに言った。
「娘。小説がいっぱいある場所といえば?」
・・・・・・・・・・・・ただのナゾナゾマニアか。
「シーク!!!」
答えて私は自分の部屋に駆け込んだ。
NEXT
- 236 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月09日(水)21時44分56秒
- あはははは!マジおもしろい!
脱税サブちゃんでもう禿笑でしたよ!
- 237 名前:Room5.5 マメッXファイル 投稿日:2003年07月10日(木)19時12分50秒
「三河屋、工務店が三河屋〜まさか大工とは思わない〜♪・・・あった!!」
久しぶりに新曲のネタがでかけたけど、ジュマペール極秘資料――またのなをマメッXファイル――
の中に、その名前が見つかったので作詞作曲は中断。
「番号は、4438-1103か」
早速、連絡。
こういう行動力の塊みたいなところがトップに立つ器っていうんだろうな、多分。
プルルルル
プルルルルル
「へい、三河屋です!!どんなご用件っすか!!」
何度目かの通知音のあと、いやに威勢のいい声が受話器から聞こえてきた。
- 238 名前:Room5.5 マメッXファイル 投稿日:2003年07月10日(木)19時13分37秒
「あ、あのマンションの至る所が崩壊してですねー、速攻で直しに来てほしいんですけど」
「あぁ、ジュマペールっすね」
「え?あ、はい」
疑問系じゃなくて断定だった。
なぜ、分かったんだろう。
「場所は分かるんですぐ行きます」
「はい、よろしくお願いします」
「あいよ」
ガチャッ
私も受話器を置く。
ジュマペールって三河屋さんの常連なんだろうか?
ありえないとも言い切れない。
クリーンかつ安全なマンションっていう広告で入居者募集してるのに・・・・・・
まぁ、これから私が改革を起こして変えていけばいいことだけど。
それだけの器量はあるし。多分。
- 239 名前:Room5.5 マメッXファイル 投稿日:2003年07月10日(木)19時14分54秒
三河屋さんが来るまでに、他の部屋の様子も見ておくか。
直すときはいっせいに直したほうが手っ取り早い。
我ながら名案だ。
こういう企画力の塊みたいなところがトップに立つ器っていうんだろうな、多分。
NEXT
- 240 名前:66 投稿日:2003年07月10日(木)23時42分16秒
- いやー、あちこちチェックしだしたらきりがないぞ。
というか、ジュマペール、まだ建ってるのが不思議なくらいじゃないのか、管理人。
- 241 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月11日(金)11時49分45秒
- そういえば、入居者募集してたんだった。
多分きっと誰も来ないよ、管理人さん
- 242 名前:jinro 投稿日:2003年07月11日(金)22時37分12秒
- 三河屋さんもなんかありそうだな。
- 243 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時33分08秒
今のところ確定してるのは、保田さんの部屋のベランダ。
飯田さんの部屋の床。部屋ごと吹っ飛んだ石川さんぐらいかな。
ついでに、安倍さんと矢口さんの部屋の喧嘩の爪あともなおしてもらったほうがいいか。
103、104号室は使ってないから大丈夫で・・・・・・
あとは、高橋さんの部屋と紺野さんの部屋か。
多分、この二人は大丈夫だと思う。っていうか、思いたい。
今から2人の部屋を訪ねるのもめんどくさい。
高橋さんの部屋を見て大丈夫だったら、紺野さんの部屋も大丈夫ってことにしよう。
名づけて高紺一緒くた大作戦。
ぶっちゃけ、紺野さんには会いたくないからなんだけど。
本音と建前をうまく使い分けるのが大人ってものだ。
- 244 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時33分55秒
※※
105号室前。
この間と違って奇妙な歌声が部屋から漏れ出していないのが少し気になったが、私はチャイムを押した。
――ッテッテケテー
相変わらず個性的な音だ。
中からパタパタとスリッパの音が近づいてくるのが分かる。
高橋さんってスリッパはいてたっけ?
どうでもいいことなのになぜか引っかかった。
その時に気づいてもよかったのに――
- 245 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時35分11秒
「はーい」
ドアから聞こえたその声に私の背中に悪寒が走る。
「・・・・・・今の声って」
明らかに高橋さんの声ではなかった。
そして、その声の主が誰なのか私は知っているはずだ。
ガチャッと鍵を開ける音がして、不必要なまでにゆっくりとドアが開く。
あぁ、そうだ。
この人は、こういうドアの開け方をする人だった。
私のお豆計も鬼太郎に負けないぐらい正確になったもんだ。
「なんでここにいるんですか?紺野さん!?」
私は動揺のあまりバックステップをしながら、目の前の人物に指を突き付け叫んでいた。
「あれ?管理人さんじゃないですか?なにかご用ですか?」
私の華麗な動きとは対照的に、紺野さんは立ち尽くしたままきょとんとそういった。
華麗な動きには華麗な動きで返すのが礼儀ってもんだが、
新垣家お得意のツッコミをして呪いをかけられてはたまらない。
ツッコミなしでとりあえず紺野さんの質問に答えとく。
- 246 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時36分41秒
「ちょっと高橋さんに聞きたいことがあって・・・」
「愛ちゃんにだけ?」
紺野さんの目がきらりと光ったような気がした。
あなたに会いたくなかったから一緒くた作戦を決行中とは口が裂けてもいえない。
「いえ、紺野さんの部屋にもあとで行こうと思ってたんですけど・・・・・・
ここにいて丁度よかったです。もちろん、高橋さんもいますよね?」
たずねると紺野さんは頷き、中に入るよう促してくれた。
別に部屋の中にまで入って聞くようなことでもないし入りたくもないし。
が、ここで断れる人間はきっといないと思う。
だって、一流の呪術師ですよ。ありえないから。
私は、素直に高橋さんの部屋に入った。
そして、予想どおり引きつった笑みを浮かべた。
- 247 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時38分20秒
※※
だから、はいりたくなかったんだ。
後悔してももう遅いからここはおでこをくくって、この異様な空間を楽しむしかないけど。
楽しもう。
楽しめるかな・・・・・・かなり微妙。
とりあえず、部屋自体は損傷してなみたいだけど、これは・・・・・・
「あ・れ、管・理・人・さ・ん・じ・ゃ・な・い・ですか〜?」
「どうも、お久しぶりです、高橋さん」
この不必要なまでの区切りも久しぶりだ。
さてと、あまり聞きたくないけど聞かないと安らぎが(ry
「2人で、なにしてたんですか?まるでお祭りの準備みたいですけど・・・・・・」
部屋は散らかり放題という言葉がピッタリなほどいろいろなものが転がっている。
さまざまな色のライト。
アニメの登場人物が着そうな衣装と宝塚の女役が来てそうなドレス。
そして、怪しげなビラ。
私は、足元に落ちていたビラを一枚手に取る。
『第55回、Qeen of konkon。毎回、皆様に萌えの嵐を提供するQOKが今年も開催。今回はさらにスペシャルゲストに、チャミラブがやってくるギャーギャーギャー。これはもう来るっきゃないよね』
私の知らないところでなにかが起こっている。
全知全能のはずの私が・・・・・・
- 248 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時39分15秒
「そうそう、そのことで管理人さんにはなしがあったんですよ」
紺野さんがいう。
あんまり聞きたくない――
その前に、このビラの内容についてこっちが聞きたい。
「実は、今度のQOKはぞろ目記念なんで盛大にしたいんですよね〜」
QOKって?
ぞろ目記念って?
盛大って?
「それで、ジュマペールの敷地を貸してもらっていいですか?」
「あ・さ・美・ち・ゃ・ん、管・理・人・さ・ん・に・も・出・演・し・て・も・ら・っ・た・ら・ど・う・か・な」
「あぁ、それもいいかもね。どうです、管理人さん?」
どうですって言われても、QOKがなにする団体かも分かってないのに。
- 249 名前:Room6.管理人銭道 投稿日:2003年07月12日(土)08時41分06秒
「あの、その前にQOKって?」
「え?」
そんなあからさまに人を流行りに疎いおじさんを見るような目つきで見なくても――
「Q・O・K・は・最・高・で・す・よ」
怪しい宗教の勧誘みたいだ。
高橋さんと紺野さんって時点で最高に怪しいし。
断ろう。
ジュマペールをクリーンかつ安全なマンションにするためには
「いい稼ぎになりますよ」
ことわ・・・・・・
「分かりました、敷地は貸しましょう」
「「ありがとうございます、管理人さん」
2人に玄関先まで見送られながら私は激しく後悔していた。
あの一言がなければ――
別にお金に困ってるわけじゃないけど
お母様が、稼げる話には躊躇せず食いつけって言ってたから・・・・・・
親の言いつけを守る子供の鏡のような私。
いい子でいるのはもうやめよう。
心底、思った。
NEXT
- 250 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月12日(土)10時24分08秒
- 保田さんの部屋…って、吹っ飛んだピンク部屋の真上じゃないか?202号室。
ベランダだけの騒ぎじゃないと(ry
( `.∀´)y-~~<アタシはベランダ直せって言ったのよ!下の部屋ごと
吹っ飛ばせなんて頼んでないわ!
- 251 名前:名無しん 投稿日:2003年07月12日(土)19時48分57秒
- QOKって怪しすぎるって
管理人、一応、財閥の娘なんだから謝礼に釣られんなよ(w
- 252 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月12日(土)22時14分47秒
- (ё)金持ちのくせに・・・
- 253 名前:66 投稿日:2003年07月12日(土)22時42分48秒
- QOK、たぶんあんたが一番輝くと思うぞ、管理人。
- 254 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時42分19秒
「ちわーっ!三河屋です」
まだお昼だというのに全身の疲労を感じて部屋で休憩していた私の耳にそんな声が届く。
なぜかその声は玄関から聞こえるものではない。裏口からだ。
そういえば、サブちゃんも勝手口から登場するもんね。
変に納得しながら私は裏口に向かう。
私みたいな美少女が目の前に来たらどんな男でもいちころだろうから、
ついに念願のモテモテ管理人ライフがおくれるのかと思うと少しドキドキしてきた。
新垣里沙のドキラブNight。
かといって、誰でもいいってワケじゃない。
天下のアイドル、新垣リサに釣り合うぐらいじゃないと。
まずは、どんなルックスなのかお顔拝見。
ウホッ、いい男。
いかん、いかん。私は、こんなキャラじゃない。
もっとしっとりみずみずしいさわやかな美少女キャラだった。
私は、無意識のうちに笑顔をつくる。
三河屋さんが、私に気づきにこっと微笑んだ。きっと私に惚れたんだろう。
- 255 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時43分19秒
「どうも、三河屋の吉澤っす!」
「あ、どうも。管理人の新垣です」
電話の声と変わらない威勢のいい声。
三河屋で吉澤って。
三河屋といったらサブちゃんだと決め付けていた私が悪いのか・・・・・・
少々落胆。ガックシ。
「今日は、どこですか〜?紺野の部屋はこの間直したし、また保田さんっすか?」
「え、あ、そうです。保田さんの部屋のベランダ」
なんてマイペースな人だ。
こういう人が引っ張ってくれる頼りがいのある人っていうんだな、多分。
ガックシなんてしてる場合じゃない。
「あ〜、やっぱり保田さんか〜。じゃ、ちょっと見てみますね」
「あ、どうぞ」
三河屋の吉澤さんは、なれた足取りで二階の保田さんの部屋に向かっていく。
私もつつましくその後ろについて歩く。
現存する数少ない大和撫子とは私のことだ。
- 256 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時44分05秒
「他の部屋はどうですかね?」
「あ、201号室と203号室、あと102号室もお願いしたいんですけど」
「安倍さんたちの部屋と、飯田さんと・・・・・・梨華ちゃん・・・・か」
私の言葉に吉澤さんは正確に住人の名前を口にする。
梨華ちゃんのところだけトーンが落ちたような気がした。
っていうか、梨華ちゃんって石川さんのことでしょ。
知り合いなのかいやに親しげな呼び方だ。
これからの管理人ラブラブライフのためにはどういう知り合いなのか聞いておかないといけないような気がする。
「吉澤さんは、石川さんと仲いいんですか?」
「え?いや、仲いいっていうか・・・・・・」
「よっすぃいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!」
ドドドドドと、階段を駆け上ってくるけたたましい音と一緒に響き渡ったその声が吉澤さんの言葉を遮った。
- 257 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時45分30秒
「!?」
驚いた私が振り返るとそこには高飛びの選手もびっくりするぐらいの跳躍をみせる石川さん。
どうしてここにいるんだ?
確かにあのあと、日本海深くに沈めたはずなのに
「会いたかったぁああああああああああああああああん!!!!!!!!!」
石川さんの体は私の上空を通過し、前にいた吉澤さんの方へと急接近。
愛しのマ・マ・マ・マイダリンがピンチ。
奇跡のおでこを使う時が――
「あたしは、そうでもないから」
奇跡のおでこの準備をしているとやけに冷静な声が耳に入った。
今のって吉澤さん?
吉澤さんの方を振り向くと、彼女は笑顔のまま石川さんのおでこに空手チョップをくらわしていた。
ゴンという鈍い音が響き、石川さんはべチャっと床に墜落した。
叩き落されたハエみたいだ。かなり、痛そう。
- 258 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時46分52秒
「さ、行きましょうか」
たった今起こった事件に呆気にとられている私に吉澤さんが普通に声をかけてくる。
いや、行きましょうって石川さん、ピクリとも動かな――
動いた!?
「よっすぃ〜ってば、テレやさんなんだから」
しかも、ニュータイプ並みの速さで吉澤さんの元へ――
ゲシッ!!
またも鈍い音が響いて、石川さんが私に向かって吹き飛んできた。
どうやら吉澤さんが、回し蹴りを入れたらしい。
私は、とっさに壁際によける。
石川さんは、そのまま廊下の端まで吹っ飛んでいった。
石川さんが激突した手すりがへこんだ。
あの手すりも直してくれるんだろうか?
「さ、早く保田さんの部屋に入りましょう」
吉澤さんが、私の腕を掴み急かす。
ちょっとだけドラマッチックだ。
追われる美人ヒロインを守るヒーローみたいな。
でも、クリーンかつ安全なジュマペール計画としてこれはいいのか?
まぁ、石川さんのことだからなにがあっても死なないだろう。
死人が出ない限りは安全といっても過言ではない。
うん、だから、まだまだクリーンかつ安全ということだ。
- 259 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時48分48秒
とりあえず、保田さんの部屋に入って扉を閉める。
すかさず吉澤さんが鍵とチェーンをかけた。
その直後――
――ガンガンガンガン
『よっすぃ〜、入れてよ〜』
「・・・・・・・・・・あの、吉澤さん」
「無視しましょう」
「はぁ」
――ガンガンガンガンガン
『管理人さん、開けてくださいよ〜』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、いいんですか?」
「いいんです。それより、ベランダだけでいいんですか」
「え?どういう――」
ドアから部屋の方に視線を動かす。
部屋の3分の1ほどがいい感じになくなっていて晴れ渡った空が……
そういえば、保田さんの部屋って石川さんの真上だったんだ。
そう考えると、よくこれだけですんだものだと感心する。
さすが保田さんの部屋だ。
「あ〜、ひどいな。よく崩れませんでしたよね〜」
言いながら、吉澤さんはまだ残っている床の上を歩いていく。
なんて度胸のある人だらう。古文古文。
- 260 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時49分49秒
――ガガンガンガンガンガガン
まだいたのか。
いい加減、うるさい。
『こうなったら、グレネード使いますよ〜!!』
「よ、よ、よ、吉澤さん」
なんちゅう脅しをしてくるんだ、あの人は。
空気の読めない石川さんのことだから脅しじゃないだろう。
ってことは、このままいけば保田さんの部屋ごと私たちは吹っ飛ばされる(もう吹っ飛んでる部分もあるけど)。
部屋を吹っ飛ばされた保田さんが私になにをするか考えただけでも恐ろしい。グレネードを人にあげるような人だ。自分はもっとすごいものを携帯しているに違いない。意外なことにも第3次世界大戦は日本からはじまるのか。あ、でも戦争始まったら新垣財閥的にはオッケーなのかな。今度、お父様に聞いておこう。
『こんがりショコラになっちゃいますよ〜!!!!!』
スッと吉澤さんが振り返る。
こんな時でも、なんてクールな
「引っ込んでろっ!!!!!!つってんだろ!!!!!!!邪魔なんだよ」
・・・・・・意外とホットな人でした。
ドアをたたく音がぴたりと止まる。物音ひとつしない空間。
諦めたのか、ネガティブ空間に吹き飛んだのか、ドアを開けて確かめる勇気はない。
- 261 名前:Room7 愛しのママママイダリン 投稿日:2003年07月13日(日)21時52分53秒
「じゃ、ちょっと直していくんで、管理人さんは、部屋に戻ってていいっすよ」
「あ〜、でも、今この部屋からでると」
石川さんが待ち構えてそうな気がする。
私の言葉の意味が分かったのか吉澤さんは「そっか」と苦笑した。
「大丈夫ですよ。あぁ言ったらしばらく復活しないと思うし」
「そうなんですか?っていうか、なんなんですか、さっきのは?」
「いや〜、あたしもよく分かんないですよね」
確かに石川さんはよく分からない行動をする人だけど――
その対象となっている人まで分かっていないんだからやばすぎる。
ん?
っていうか、吉澤さんが今あたしって言った?
気のせい?幻聴?ラブラブ生活は?愛しのママママイダリンは?
「吉澤さんって下の名前、なんていうんですか?」
「え?ひとみっすけど、なにか?」
神様、愛しのママママイダリンはまだですか?
あのアパートラブラブ物語は偽りばかりだ。
もう捨てよう。
NEXT
- 262 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月13日(日)23時08分18秒
- えーと、桃で紹介した方がいいっすか?
- 263 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月14日(月)01時38分33秒
- 吉澤キタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
少し予感していたが三河屋さんだったとは!
かっけー!!!!王道いしよしっすな!
- 264 名前:七誌 投稿日:2003年07月14日(月)07時14分26秒
- ( ・e・)誰もツッコまなかったから隠しとこうかと思ったけど
>>247のqeenってqueenが正解。
(ё)y-~~ワザと間違えて天然アピールってとこ
- 265 名前:名無しん 投稿日:2003年07月14日(月)10時10分28秒
- 4438-1103でキタ━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
って思ってたのがやっと言えますた。
管理人、素でqueenスペル間違えたに百豆
- 266 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月15日(火)19時12分33秒
- いや〜マジおもしれー
クールだな吉澤w
ところで管理人、吉澤のこと「彼女」って言ってないか?
- 267 名前:66 投稿日:2003年07月15日(火)19時49分33秒
- 石川は、日本海じゃなくて日本海溝に沈めればよかったんだな、管理人。
- 268 名前:Room8 昔話と大きな謎 投稿日:2003年07月17日(木)08時57分13秒
「――でも、やっぱここの人たちと一緒に暮らすのは大変でしょ」
「そうですね、だいぶ慣れてきましたけど」
吉澤さんが愛しのママママ(ry候補ではないことに気づいたものの、
これといってすることもないので、結局、そのままボロボロの部屋で話しはじめてから小一時間ほど。
ありえない速さで部屋は直され真っ二つに折れていたベランダの手すりもなんとか原型を取り戻してきた。
大工王選手権にでもでたら優勝しそうな手際のよさだ。
「あたしも最初ここに来たときはどうしようかと思ったもんな〜」
「そうなんですか?」
さっきの石川さんへの対応法を見る限りそうは見えない。
あの迷いのない正確な打撃。プロの腕前だった。
「そうっすよ〜。だって、昔の飯田さんは今みたいに日本語話せなかったし」
飯田さん、何者?
「保田さんは、屋根の上で汗を撒き散らしながら踊り狂ってたし」
保田さん、何者?
「安倍さんは、平気で一分くらい心臓止めてたし」
安倍さん・・・何者?
「矢口さんは、何者って感じだったし」
それ、私の台詞です。
- 269 名前:Room8 昔話と大きな謎 投稿日:2003年07月17日(木)08時58分15秒
「まぁ、いい人たちなんだけどね〜」
しみじみという吉澤さん。
っていうか、さっき強烈なアタックかましてきたあの人については?
「あの、石川さんは?」
「え?あ〜梨華ちゃんは黒かったね」
見れば分かる。
しかも、過去形じゃないし。
現在進行形であの人は黒い。
「今も黒いですよ」
「あ、間違えた。暗かったんだ」
絶対、わざとでしょ?
黒いと暗いってどう考えても間違えようがない。
わざとらしさのないなかなかさらりとした演技だ。
まだまだ私には及ばないけど。
それより、石川さんが暗かったって?
あのバカみたいにテンション高いバカの石川さんが?
あの殺しても復活してくるゾンビのような石川さんが?
- 270 名前:Room8 昔話と大きな謎 投稿日:2003年07月17日(木)08時59分04秒
「さっきの見たらそう見えないけどね。昔はほとんど喋ったことなかったんすよ」
私の疑いの眼に気づいたのか作業の手を止めて吉澤さんがいう。
それから、まるでどうでもいいことを話すかのように重大な事実をつぶやいた。
「あのピンクルームがいけなかったんすかね〜」
「はい?」
「あれ、梨華ちゃんに頼まれてあたしが塗ったんすよ〜。
思えば、あの頃からやけにポジティブポジティブ言い出したような気がするな〜」
あのピンクルームはあんたが塗ったのか!
なんで断らなかったのか不思議で不思議でこれって不思議ミステリーだ。
あんな部屋にいたら頭おかしくなることぐらい誰だって分かると思う。
- 271 名前:Room8 昔話と大きな謎 投稿日:2003年07月17日(木)09時00分03秒
「た、大変だったでしょう。あれだけキレイにピンクに染めるのは」
「そうっすね〜。そういえば梨華ちゃん、あの頃から
やけにあたしに迫ってくるようになった気がするな〜」
多分、自分の部屋を丁寧に自分好みの色に染めてくれる吉澤さんの姿に
彼女は興奮してたんだろう。
そういうすり込みのことを俗にパブロフの犬という。
言い換えれば、ピンクルームに吉澤ひとみ(三河屋)の石川梨華ってことか。
ピンク好きもここまでくると変態だ。
「ホント梨華ちゃんはよく分かんないっすよね〜」
あんたもそれくらい気づけ。
鈍いにもほどがある。
- 272 名前:Room8 昔話と大きな謎 投稿日:2003年07月17日(木)09時04分07秒
「そんなことより」
突然思い出したように吉澤さんが顔を上げた。
「はい?」
そんなことで片付けられる石川さんも不憫な気がしないでもない。
「最近、ごっちんここに来ました?」
「ごっちん?」
聞きなれない単語に思わず聞き返す。
と、吉澤さんの顔に明らかに動揺の色が浮かぶ。
彼女は、すぐさま誤魔化すように笑い、私から顔を背けたが小声で
「あぶね〜言っちゃダメだったんだ・・・・・・」とつぶやいたのが聞こえた。
ごっちんってなに?
全知全能のはずの私が・・・初耳です
- 273 名前:Room8 昔話と大きな謎 投稿日:2003年07月17日(木)09時05分24秒
「あ、あの吉澤さん、ごっち――」
「さぁあああああああってっとぉおお!!完成完成完成!!!
次は、飯田さんの部屋か〜今日は、忙しいな〜」
「え!?」
吉澤さんはわざとらしく話を逸らしてきぱきと工具道具を片付け、
肩にヒョイッとそれをのせると立ち上がった。
「あの、吉澤さ――」
「飯田さんの部屋、隣なんでこっから行きますね」
ピッと気障ったらしく人差し指を立てながらそう言うと、
吉澤さんは、すばやくベランダを伝って飯田さんの部屋に消えた。
あとには謎だけが残った。
だから、ごっちんってなに?
NEXT
- 274 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月18日(金)21時50分23秒
- ( ゜皿 ゜)<%Σ@$Φ&Ψ△Ω◎…
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月19日(土)02時47分32秒
- ごちーむキタ━━━(゚∀゚)━━━━!!!!━━━━………のか?
- 276 名前:66 投稿日:2003年07月19日(土)03時00分40秒
- ごっちん…あんま関わらないほうがよさそうだぞ、管理人。
- 277 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月19日(土)08時49分24秒
- 石川は変態w
ついに後藤登場か?!
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月19日(土)17時59分08秒
- この小説の中で新キャラ登場の気配があると、異様に期待してしまう(w
しかもごっちんか……どうする、管理人!?
- 279 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時10分00秒
悩んでたってはじまんないでしょ。
小一時間ほど、ごっちんという謎の言葉について悩んでいた私の頭にそんなフレーズが浮かんだ。
こんな時でも、作詞が進む私って正直すごい。
天才作詞家だから当たり前といえば当たり前だけど。
とりあえず、暇だし部屋に戻ろうか・・・・・・
でも、外で石川さんが泣き崩れてたりしたらどう対応すればいいのか分からない。
さすがにもういないとは思うけど、石川さんのことだし――かなり微妙だ。
「こうなったら、時間つぶしするしかないか」
幸い、もうすぐ矢口さんと約束した時間になる。
吉澤さんの真似してベランダ伝いに201号室にいけばいいじゃん、いいじゃん。
お豆ギアソリッド発動。
シュタッっと華麗に201号室のベランダに着地。
窓は開けっ放しだ。
物騒な世の中に悠長だな。
空き巣に入られても私は知らないぞっと。
- 280 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時12分23秒
「お邪魔しまーす」
勝手に入ろうとも、こうやって挨拶を忘れない私は断じて空き巣じゃない。
もちろん、不法侵入でもない。
いざ、足を踏み入れるとさっきまで使っていたと思われる布団が目に入る。
しかし、寝ていたと思われる矢口さんの姿はない。
隣の部屋からはガサゴソと物音が聞こえる。
3時間後に来いとか言っておきながらもう起きているみたいだ。
「やーぐちさんっ!!!!!!!」
襖を勢いよくあけて怪しい侵入者じゃないことをにこやかにアピール。
瞬間、
時が止まった。
なぜなら、
私が部屋に入るよりも先に怪しい侵入者がいたせいで――
多分、これは空き巣っていうやつで――
新垣里沙、生誕14年目にして命の危機なワケで――
部屋にいるはずの矢口さんの生存なんて構っていられないわけで――
まとめると、どうにかしてここから奇跡の生還を果たさなければということだ。
- 281 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時13分37秒
「す、す、すみません。部屋を間違えたようです。失礼!」
「待てや、ごるぁっ!!!!!」
シュタッと今来たベランダに駆け戻ろうと私の細い二の腕を怪しい侵入者がガシッと掴む。
「な、な、なんですかー!!私に手を加えたら二度と表舞台に立てなくなりますよっ!!
そこんとこ、分かってるんでしょうね!!!!いまさらびびっても遅いですよ!!!!!!」
「ふざけんなよっ!!!!なんであたしがお豆ごときにびびるんだよ!!!!」
さすが、私!
怪しい侵入者にまでお豆ちゃんというニックネームが知れ渡っているなんて
有名すぎるにもほどがある。世界のお豆だ。
いやいやいやいや、そんなことを言っている場合ではない。
ともかく逃げないと人間国宝の危機だ。
しかし、怪しい侵入者の手は力強い。この糞チビめ!!!!
- 282 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時15分01秒
「だいたい、3時間後に来いって言っただろ!!!!!!」
「・・・・・・え?」
怪しい侵入者の怒声に私の思考回路が一瞬停止する。
だって、その言葉を口にしたのは今は亡き――
「まだ2時間21分45、6、、、秒だ!!!!あと38分52、1、、、秒もあるじゃんか、バカッ!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
あぁ、落ち着いて聞くとこの声って今は亡き――
いや、そんなはずがない。
彼女は、こんな顔ではなかったはずだ。
この年にして、私の記憶力が低下するなんてありえない。
だから、間違いない。
でも――
- 283 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時17分21秒
サクッと考えてパキッと結論を出すのが趣味のこの私が、
これほどまでに自問自答を繰り替えしてしまうのは、きっと目の前の現実を認めたくないからだろう。
認めてしまったなら、世の男ども同様、色々な意味で泣きたくなる。
しかし、私の口はそんな意思とは裏腹におそらく禁忌と呼ばれるであろう言葉を発していた。
「・・・・・・や、矢口・・・・・・さん・・・・・・・・・・・・ですか?」
随分、顔がむくんでるみたいですけど
随分、顔のパーツがちっちゃく見えますけど
随分、顔がビフォービフォーなんですけど
きっぱりと、否定してくれるなら、超高層ビルの屋上からものすごい勢いで隣のビルに飛び移って、そこからものすごい勢いでビルの壁を駆け下りてみせよう、ほととぎすという感じだ。
私は、祈るような思いを胸に矢口さんもどきを見た。
- 284 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時18分47秒
あなたは奇跡を信じますか?
奇跡は起こらないから奇跡というんだよ。
一縷の望みを託しながら矢口さんもどきを見つめる私の耳に、
紺野さんの部屋で無理やり見せられた某アニメの台詞が聞こえてくる
どうやら、目の前の現実に私の思考回路がオーバーヒートしかけているらしい。
「・・・・・・や、や、や、やぐ、やぐ、やぐ、矢口さんなんですか?」
「――管理人さん」
矢口さんもどきが、笑顔で、だけどいやに冷ややかな声で私を呼んだ。
矢口さんは、私のことをそんな風に呼んだことがないから、
これは矢口さんじゃないと思いこんでよかったのかもしれない。
私の視界に尋常ではない数のメイク道具が映っていなければーー
「もし誰かにこのこと言ったら・・・・・・・・・・・・
超高層ビルのてっぺんからものすごい勢いで隣のビルに投げつけて、
そこから今度はものすごい勢いで転がり落とすからね」
――それは、あなたが矢口さんじゃないのなら自らやってましたよ。
頭がくらくらしてきた。
少し豆色の脳を休めたい。
- 285 名前:Room9 メイクアップシャドウミー 投稿日:2003年07月20日(日)09時19分46秒
「・・・・・・さよなら、矢口さん」
「おい、お豆!!!今の分かったか!?ねぇってば!!誰にもいうなよ!!!」
玄関に向かう私の背後で焦りを含んだ矢口さんの声。
私は、ドアノブに手をかけたまま立ち止まり彼女のほうを振り返った。
「・・・・・・・・・・矢口さん」
「ん?なになになに???」
「冗談はメイクだけにしてください」
扉を静かに閉めた直後、中から矢口さんの怒声が聞こえたのはどうでもいい話。
どっちみちメイクし終わらないと外に出てこれないんだから。
そうそう、世の男性諸君は安心してください。
私のようにメイクなしでも美しい人はいるから――
まぁ、私ほど素顔のままで美しい人はそうそういないだろうけど――
NEXT
- 286 名前:七誌 投稿日:2003年07月20日(日)09時20分17秒
- ( ・e・)
- 287 名前:七誌 投稿日:2003年07月20日(日)09時20分48秒
- Σ(;・e・)
- 288 名前:七誌 投稿日:2003年07月20日(日)09時21分42秒
- ( σ・e・)σ リサちゃんです
- 289 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月20日(日)09時57分47秒
- 最近TVで見た「永遠に美しく…」の最後の方とかぶったで
頼むからペンキとか接着剤とか使うなよ矢口さん
- 290 名前:66 投稿日:2003年07月20日(日)13時12分05秒
- うおらあ!
俺は矢口ファンだ!
ぜってー向かいのビルまで投げ飛ばすつもりで突き落とすぞと、管理人。
- 291 名前:なちまりっぷ 投稿日:2003年07月20日(日)19時14分07秒
- 俺は白(^◇^)好きだからビフォービフォーで無問題(w
結局なちまりの出会いの話はどうなったんだーっ!!
- 292 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月21日(月)08時05分46秒
- 知すっぴんキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
でもちっちゃなパーツなんか気にしません!
作者さんがんがれ〜
- 293 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時34分55秒
疲れた。
本当に本当に心の底から疲れていた。
ジュマペール安全活性化計画案(JAK)を早急に新垣国会に提出して受理したい。
とりあえず、部屋でゆっくり休んで気持ちを落ち着かせることが重要だ。
JAKのことはそれから色々考えよう。
そう思いながら歩いていたのに、私は、その部屋の前でなぜか足を止めてしまった。
「・・・・・・大丈夫なのかな」
私が立っているのは102号室。
言わずと知れた石川さんの部屋だ。
- 294 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時36分30秒
休もうと思っていたのにこの変態さんのことが気になりだしてしまった自分に呆れてしまう。
なんだかんだいっても私は管理人だ。
謎の自殺なんてされたらあとあと迷惑になる――なんてことを考えたわけではない。
いや、待てよ。
謎の自殺発覚後に全国ネットインタビューされて
それがきっかけであの美少女は誰なんて世界の話題をかっさらうことになったりしたら
今まで書き溜めた曲も日の目をみて印税生活。
放っておいたほうがおいしいかもしれない――なんてことは考えたこともない。
人間の30%は優しさでできているらしいけど私は100%だ。
「・・・・・・・・・・・・」
私は仕方なく、半分吹っ飛んだ部屋で奇跡的に助かっている
いまとなってはあまり意味のないインターホンへと指を伸ばしたのだった。
- 295 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時40分05秒
※
「お邪魔しますよー」
待てども返事がないので、私は半分に吹っ飛んだドアを開けて中に乗り込んだ。
なんとなく中にいるような気がしたのだ。
何度もいうが、不法侵入ではない。
「・・・・・・石川・・・さん」
予想通り、彼女は部屋の中にいた。
部屋の真ん中でぽつんと体育座りをしていた。
こういうのは、部屋の隅でするものだというのが私の持ち論なわけだがそんなことはどうでもいい。
ポジティブの源であるピンクは無残に煤こけて見る影もない。
その煤の黒さに石川さんはカメレオンのように溶け込んでいた。
はっきりいってかなり怖い。
どこかで見たことあると思ったら、飯田さんの負のオーラだ。
受け継いだかのようにそれを見事に纏ってマトリックス・・・・・・・
高度な洒落をいってしまうのはかなり私の精神状態が危ういということだ。
- 296 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時41分06秒
やっぱり帰ろう。
幸い、自分の世界に入りすぎてまだ私の存在に気づいていないみたいだ。
私は、そっと今通ってきたばかりの廊下に戻ろうと身を翻した。
「・・・・・・・・・・人間って悲しいね」
翻したのだが、その声がそうはさせなかった。
私は瞬時に固まる。
「・・・・・・いや、1人になりたいのかと思って」
聞かれてもいないのに弁解しながら私は石川さんの方を振り返った。
黒い、黒すぎる。
・・・・・・間違えた。
暗い、暗すぎる。
飯田さんからだけじゃなく魔界からもありとあらゆる負のオーラを注ぎ込まれたかのようだ。
朝まであんなに変態全快だったのに――これじゃ、普通の人じゃないか。
- 297 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時41分59秒
「石川・・・さん」
「・・・・・・管理人さん、これ」
「え?」
差し出されたのは、ピンクのかわいらしいお弁当箱だった。
これがピンク一族の最後の生き残りかと思うと慎重に扱わねばならない。
妙な使命感が私の中で生まれた。
「よっすぃ〜がこの部屋に来てくれたら渡してください」
「いや、これなんですか?」
「お弁当です」
ですよね。
お弁当箱にはいっているのはお弁当に決まっている。
一瞬、お弁当箱型爆弾かと疑ったのは秘密。
「・・・・・・自分で渡したらいいじゃないですか」
「私、嫌われちゃったから――」
石川さんは、顔を伏せる。
あんな勢いで毎回こられたら嫌になるのは無理ないと思うけど――
そんなことも分からないんだろうか、この人は。
分からないんだろうな、ピンクルームといい、加減を知らない人だし。
- 298 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時42分40秒
「昔はよかったな〜」
「・・・・・・はぃ?」
いきなり何を言い出すんだ、この人は。
「ごっちんがいてよっすぃ〜がいて・・・・・・見てるだけで萌えたのに」
「は?」
「もう過去のことなのね・・・・・・」
だから、なにいってんだ、この人。
萌えってなに?なに?ねぇ?なんなんですか?
「そろそろ、よっすぃ〜がきますね」
チラリと可愛らしいピンクの腕時計(これも生き残りか)に目をやりながら
独り言のようにつぶやく。
それから、切迫した表情で私を見つめてきた。
正直、逃げたい。
- 299 名前:Room10 ネガティブな彼女 投稿日:2003年07月23日(水)09時43分30秒
「今日はあわす顔がないから・・・・・・今の私にできる精一杯です。
絶対に渡してくださいね」
「え?ちょっと、石川さん!?」
グィッと無理やり爆弾――
もとい、お弁当箱を押し付けると石川さんは煤に完璧に溶け込んで消えてしまった。
「・・・・・・本当に爆弾じゃないですよね?砒素入りでもないですよね?」
もし、これを私が吉澤さんに渡したとして
もし、吉澤さんが逝ってしまわれたとしても
殺人幇助にはならないですよね?
NEXT
- 300 名前:七誌 投稿日:2003年07月23日(水)09時44分26秒
- (σ・e・)σ300Get!!
- 301 名前:66 投稿日:2003年07月23日(水)18時05分41秒
- 石川、「煤に溶け込む」って風太郎忍法帖の忍者か、君は。
とにかく逃げたほうがいいぞ、管理人。
- 302 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月24日(木)17時33分36秒
- ネガティブモードでも石川は変態だな
吉澤危うし
- 303 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月25日(金)19時28分05秒
- よ し ざ わ 逃 げ ろ
- 304 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月26日(土)10時18分56秒
- トイレ臭(ry ww
- 305 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月26日(土)13時32分31秒
- (;´D`)<梨華ちゃんくさいのれす
- 306 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月27日(日)21時51分08秒
- っつーか、殺人幇助ですよ、管理人さん(w
土日の交信がないなんて・・・・・・もしや、ハロプロ紺?
- 307 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時15分17秒
「梨華ちゃん、入るよ」
入るよと言いながら入ってきたのは吉澤さん。
相手の返事を待つことも生きる上では必要なはずだから、
そこのところを吉澤さんは学習したほうがいいと思う。
石川さんにも安倍さんにもやぐ・・・・・・・めんどくさい。
まとめると、ジュマペールの住人全員にそこのところを学習してほしい。
「あれ?管理人さん」
「どうも」
「梨華ちゃんは?」
どこかホッとしたような顔。
この部屋を修理している姿をじっとりと絡みつくような視線で見られるとでも考えていたんだろう。
- 308 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時17分01秒
「今日はあわす顔がないってさっき窓ガラス突き破って外に出て行きましたよ」
「あ〜ホントだ。窓ガラスも修理しないとな〜」
のんびりと私の指したところに視線を向けながら言う。
そういう問題だろうか?
石川さんに対する吉澤さんの態度ってもっとこうなんていうか、
嫌い嫌いも好きのうちみたいな、トロトロしてて苛苛させる、
実はドラマの中のすれ違う2人みたいな関係だったら面白いかもなとか
さりげなく思っていたワケですが――そんなことはまったくなかったようだ。
吉澤さんって鈍いし――
石川さんの完璧なる偏執的片思いか。
それにしても、冷たすぎるな。
あれだけ石川さんを叩き落としたりけり落としたりして心配するでもなく邪魔者扱いとは。
確かに石川さんは、邪魔者以外の何者でもないけど。
「でも、梨華ちゃんいなくてよかった。邪魔されずに作業ができますね」
冷たすぎる。
ような気がするじゃなくて本当に冷たいんだ、この人は。
嘘でも心配するフリをしてあげるのが優しさなのに。
あぁ、かわいそうな石川さん。
- 309 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時17分52秒
「夜までに終わるかな、これ。弁当持ってきてないのに」
速攻で作業始めてるし。
本当にもうMoreCoolというやつだな。
ん?
弁当?
「あっ!!」
思わず、私は声を上げていた。
手にしっかりと持っているのはピンクの電話――もとい、ピンクのお弁当箱。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ・・・・・・・」
渡すべきか渡さざるべきか、これが問題だ。
人死にだけは勘弁してほしい。
もし、そんなことが起こったら安全かつクリーンなジュマペール計画が水泡に帰してしまう。
- 310 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時19分50秒
しかし――
石川さんの黒い思いが詰まった弁当を捨てるのも恨まれそうで怖い。
渡して人死にか、渡さないで自らの死か・・・・・・難しいところだ。
もちろん、私は他人のために自らを投げ出せるナイスガイならぬナイスウーマンなわけだから、
石川さんに恨まれるとかそんな理由で迷っているわけじゃない。
っていうか、もっといいほうに考えてみるのもありかもしれない。
たとえば――
私→弁当→吉澤さん→食→感動→石川さん=????
おぉっ!
もしかしたらこれがきっかけで2人はホニャララみたいな、
私は、愛の天使リサリサみたいな存在になる、かもしれない。
- 311 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時22分36秒
「・・・・・・これ、石川さんが吉澤さんにって」
吉澤さんの生死よりも私は愛の天使になることを選んだ。
たとえ、このお弁当箱が爆弾であっても
吉澤さんが蓋を開けるより先にこの部屋から脱出すれば無問題だ。
「え?梨華ちゃんが?」
「はい、お弁当みたいです」
「・・・・・・どうも」
作業の手を休め、なぜか恐々とお弁当箱を受け取る吉澤さん。
よし、さっさと逃げ――
逃げ出そうとした私の目に微かに映ったのは
速攻で包みをほどき蓋をあけはじめる吉澤さんの姿だった。
「あ、ちょっと待って、吉澤さんっ!!!」
「え?」
パカッ
無常にも蓋が開けられる。
「あぁ―――――――――っ!!!!!!!!」
私は、来るはずの衝撃に備えておでこを抑えた。
- 312 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時23分59秒
――――
……………??
いくら待っても衝撃は来ない。
「あの、管理人さん?」
ぽんと肩を叩かれる。
どうやら爆発はしなかったらしい。
もちろん、信じてたから――驚いた振りをしただけだ。
「いや〜、あっはは〜、愛妻弁当ですね、愛妻弁当。うらやましいな〜吉澤さんってばモテモテで」
誤魔化そう。
「食べてみます?」
「え?」
鼻先にスッと突きつけられたお弁当箱。
彩り鮮や・・・・・・異臭がした。
トイレの匂いだ、これはトイレの匂いだ。
頭がクラクラしてくる。
石川梨華、やっぱり信用するに値しない人物だったか、一服盛るとは。
- 313 名前:Room11 異臭悪臭羅武羅武天使 投稿日:2003年07月29日(火)10時29分02秒
「渡しといてなんですが・・・・・・捨てたほうがいいですよ。
毒入ってますから、絶対」
「毒は入ってないと思いますよ」
「入ってなくても、これ自体が毒だと思いますって」
ダメだ、この部屋が弁当からの異臭に充満されていく。
いや、もしかしたらこの部屋だけでなくジュマペール中がこの匂いに汚染されてしまう恐れもある。
某サ(自主規制)事件の悪夢が再び・・・・・・
「とりあえず、石川さんにはバレないよう
さっさと迅速かつスピーディーに処分してくださいね」
口の中に残しておいた酸素でそう言い切ると私は新鮮な空気を求めて部屋を飛び出した。
吉澤さんを残していくのは心配だったが、これ以上、あそこにいたら死んでしまっただろう。
卑怯ではない、不可抗力だ。
ともかく、ジュマペール全域に汚染がすすむ前にガスマスクだけは用意しておこう。
NEXT
- 314 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年07月29日(火)19時46分59秒
- やっぱりトイレ臭(r
- 315 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月29日(火)22時31分40秒
- キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!
なぜにデコをおさえるんだ、管理人(w
- 316 名前:Room12 管理人古畑ニイザブロウ 投稿日:2003年07月30日(水)22時58分56秒
いざというときの核発射スイッチは持っていても、ガスマスクは持っていなかった。
その事実は、私をひどく落胆させた。
なぜなら、異臭は私の部屋をも侵食しはじめていたからだ。
吉澤さんが、まだ処分していないのか、それとももう――いや、深く考えるのはやめておこう。
それにしても、ひどい匂いだ。
たとえて言うならファンタジー。
早々に緊急避難をしたほうがいい。
晩のおかずも買っていないし、商店街に避難しよう。
その間にこの異臭もきっとなくなる……はずだ。
そう願いたい。
帰ってきたら救急車、パトカー、その他もろもろが来ていても私は知らない。
見ざる言わざる聞かざるの精神でいく。私は、被害者だ。
- 317 名前:Room12 管理人古畑ニイザブロウ 投稿日:2003年07月30日(水)23時00分06秒
※
商店街は、夕食前のタイムセール。
そこのけそこのけといった気合はいりまくりのおばちゃんで賑わっていた。
私は、言うなれば可憐に咲く一輪の花。
私の顔を見れば皆一様におまけしてくれ……ちょっと前までは、してくれてた。
私がジュマペールの管理人だと知られるまでは――
ったく、誰がなにをしでかしたのか。
全員が全員、なにかをしでかしてそうだから商店街の人たちには詳しい話は聞けない。
別にいいけど、庶民とのふれあいなんて知るかってもんだ。
- 318 名前:Room12 管理人古畑ニイザブロウ 投稿日:2003年07月30日(水)23時01分01秒
「も〜さっきから説明してんじゃん」
パン屋さんから少しイライラしている若い女の声が聞こえた。
これから寄るつもりだったのだが、喧嘩に巻き込まれるのはゴメンだ。
チラリと店を覗いてみる。
パン屋の主人と口論をしているのは、若い少女。
これなら勝てる。
別に闘いにいくわけじゃないけど――
巻き込まれても大丈夫そうだ。
私は、安心して店の中に入った。
- 319 名前:Room12 管理人古畑ニイザブロウ 投稿日:2003年07月30日(水)23時02分45秒
※
「なんで分かんないかな〜」
「だから、これだろ?食パンって」
「違うってば、あたしが欲しいのはさ〜」
私が入ってきたことも気づかないとは、なかなか白熱したバトルらしい。
トレイに、パンを入れながら口論の原因を探る。
「食パンつったらこれしかないよ、まったく」
店員が持っているのは6枚切りの食パンだ。
彼女が探しているのはどうやら違うものらしい。
食パンなんて、正直どんなものでもいいと思う。
くだらないことで喧嘩をするんだな、人間って。チョココロネ、ゲッツ。
「これじゃなくて、好きな厚さに切れる食パンが欲しいんだってば」
「そんなものここにはないって、悪いけど他をあたんなよ」
私がチョココロネゲッツをしている間にも店員と彼女のテンションはますますあがっているようだ。
好きな厚さに切れる食パンってなんだろう?
そんなもの――
あった。
謎は全て解けた、ニィニィの名にかけて!!
まったく、豆色の頭脳を持つと苦労する。
どこかに出かけるたびに殺人事件に巻き込まれる某名探偵の孫や小さくなっても頭脳は大人の少年の気分だ。
- 320 名前:Room12 管理人古畑ニイザブロウ 投稿日:2003年07月30日(水)23時05分24秒
「え〜、ンフフ、ちょっとよろしいですか?」
私は、店員と彼女の間に割ってはいる。
「髭の店長に言ったらいっつも出してくれるんだよ〜、今日はいないの?」
「今日は、休みだよ」
が、あえなく無視された。
古畑任三朗の真似までしたのに、それもかなり似ているはずなのに、多分だけど――
この恨みはらさでおくべきか〜〜
「あの、ちょっと聞いてくださいよ」
「んぁ?なに?」
「勘定かい?」
「いえ、好きな厚さに切れる食パンってこれじゃないんですか?」
私は、ガラスケースに入っている食パンを指差す。
店員と少女の視線がそこに動かされる。そして、
「あぁ!!これっぽい」
「はぁ!?これなのかい?」
少女は、嬉しそうに、店員はかなり呆れた風に
私は、事件解決を前にほくそ笑んでいた。
- 321 名前:Room12 管理人古畑ニイザブロウ 投稿日:2003年07月30日(水)23時06分48秒
「逆転の発想ですね、彼女は最初から答えを言っていたというのに……
好きな厚さに切れる食パン、あなたはこれに惑わされたんですよ」
「何円?」
「170円だね」
「はい、今度から一発でわかってね〜」
「はいはい、毎度あり」
「そう、好きな厚さに切れる食パン、つまりそれは!!!
……って、あれ?ちょっとあれあれ?まだ〆に入ってないんですけど」
気がついたときには、彼女の姿はなくなっていた。
店員はとてつもなく呆れた風に私を見ていた。
私の名推理は、誰も聞いていなかったということか。
彼にとっては、好きな厚さに切れる食パンの答えが分かってしまえば
私のすばらしい説明なんてどうでもよかったんだ。
そう気づくと、恥ずかしくなってきた。
「あの……これください」
「はいよ」
私は、チョココロネと黒おっさんもといクロワッサンの支払いをすばやく済ませて店を出た。
もちろん、「釣りはいらないよ」というのも忘れずに――
NEXT
- 322 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月31日(木)10時54分07秒
- 釣りはいらないってあんた、315円きっかり払ってるじゃないか!
- 323 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月31日(木)19時33分47秒
- ところてん、315円ってどこででてる?
っていうか、も、も、も、もしや( ´ Д `)だったり(・∀・)!?
- 324 名前:66 投稿日:2003年08月01日(金)02時04分44秒
- 菓子パンが夕食なのか、管理人。かわいそうに。
- 325 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)05時57分25秒
いくら時間をつぶしたところで現実は変えられない。
今の心境は、U-571で無茶な命令を遂行しにいったトリガーに似ている。
簡単にいうと、死を覚悟しているわけだ。
静まり返ったジュマペール。
もしや、某ゲームのようにみんなゾンビになっているなんてオチはないだろうな?
石川ウイルス……
さしずめ、私はクレアか。なるほどピッタシだ。
さぁ、いざ行かん。
地獄の入り口へ!!!!!!!!
「管理人さん」
でも、死ぬ前にチョココロネ食べておこうかな。
進入したら食べる暇なんてないと思うし。
せっかく、買ったんだから食べないともったいない。
「管理人さん」
生きて帰ったらまたあおう、チョココロネ
- 326 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)05時59分01秒
「管理人さんっ!!!」
パンと目の前で手を叩かれる。
相撲でいう猫だましだ。
「うひひゃう!!?」
「あ〜、やっと気づいた」
相撲技を披露したのは吉澤さんだった。
吉澤さん?
生きていたのか?
いや、もしかしたらゾンビ化する直前なのかもしれない。
そういう人いたよ、警察署の中に――
ひとまず一歩下がる。
- 327 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時00分46秒
「あの、とりあえず修理終わったんですけど」
吉澤さんは、私を不思議そうに見つめながらポケットからなにかをとりだしている。
「え?」
「いや、修理終わったんでこれ請求書」
ピラピラと吉澤さんの指先で揺れている紙には0が一桁多いと思われる数字が並んでいた。
吉澤さん、頭が悪そうだからたんなる計算ミスだろう。
「これ、一桁間違えてませんか?」
「え?あ〜、ほんとだ」
やっぱりな。
「はい、これが正しいんでした」
さっと渡された紙をニッコリ笑顔で受け取る。
私が天才的頭脳で気づかなかったら法外な…法外な……
ひ、一桁増えてる!!!!!!!
私は、吉澤さんを見た。
吉澤さんは、さわやかに笑っている。
私も負けじとさわやかに笑った。
ここでうろたえては新垣財閥の名が泣く。ショックも見せてはいけない。
- 328 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時01分49秒
「……なんでこんなに高いんですか?」
別にうろたえてないしショックでもないけど、一応聞いておく。
声のトーンが低いのには意味はない。
「これでもおまけしてるんですよ。だって、ここが――」
そう言いながら、吉澤さんは事細かに値段の振り分けを教えてくれた。
ますます凹んだ。
「それじゃ、またなにかあったら三河屋まで」
「…………ありがとうございました」
もう一生修理なんてしない。
ジュマペールが崩れ落ちようとも知ったことか。
「あ、そうだ」
まだなにかあるのか?
「これ、梨華ちゃんに返しといてください」
「これ?」
吉澤さんから渡されたのはあのピンクのお弁当箱。
ちゃんと処分したのか中は空っぽだった。
そのおかげで被害も最小限に食い止められたんだろう。
- 329 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時02分52秒
「おいしかったって言っておいてくださいね」
「え?食べたんですか?」
「えぇ、まぁ」
あっさりと答える吉澤さん。
「……………ホントに?」
「ええ」
「お腹大丈夫ですか?」
「えぇ、慣れてますから」
「いっつも食べてるんですか?」
「だって、捨てるの可哀想でしょ」
なんて人だ。
普通の人間は30%優しさで出来ていて、私は100%優しさの塊のような人間だけど――この人には負ける。
生きていくうえで必要ないと私が切り捨てたゴミとか石ころとかに対する優しさを
この人は、まだ持っているようだ。それはそれでいいことなのかもしれない。
だけど、分かっていない。
そういう無駄な優しさが石川さんをあんなことやこんなことみたいな凶行に走らせていることを――
別に石川さんがゴミとか石ころとか言っているわけではない。あしからず。
- 330 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時04分38秒
※
石川さんの部屋の前。
見事なまでに再生しているピンク。むしろ、増殖している。
中だけでなく、ドアまでピンクにするなんて吉澤さんも余計なことをするものだ。
信じられない、バカだ、大バカだ、いっぺん月の裏側で餅ついてこい。
チャイムに指を伸ばす。
――グググググッチャー
いつのまにかチャイムの音まで変わっている。
前のほうが個人的に好きだ。
「はーい」
扉の向こうから聞こえる甲高い声。
どこからだ?
どこからその声を出している!?
そんなツッコミをいれたくなるほど変わった声だ。
ずっと前に同じことを感じたような気がする。
- 331 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時05分48秒
ガチャッと扉が思いっきり開かれて打って変わった笑顔の石川さんがでてくる。
いつの間に帰ってきてたんだ、この人。
っていうか、にやけたキショイ笑顔で私を見ないで欲しい。
さっさと弁当箱を渡して帰ろう。
帰ったらすぐ寝る、速攻で寝る。
俗世間とは切り離された仙人の気分になって爆睡する。
「あの…これ、吉澤さんから返しといてくれって」
「知ってますよ、キャハッ」
「は?」
キショイ笑い声に身震いする。
「屋根の上からずっと見守ってました、エヘッ」
さっきの吉澤さんとのやり取りをずっと?
屋根の上から?
その手に持っている――吉澤さんのほくろの一つ一つまで
くっきり見ることの出来そうな――超望遠の双眼鏡で?
一瞬にして全身に鳥肌が立った。
- 332 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時09分27秒
「よっすぃ〜ってシャイだから困りますよね〜」
「………」
「今度からは、よっすぃ〜が迫ってくるまでこっそり見守ろうかなって」
吉澤さんが、迫ってくることなんて一生ないでしょう。
断言します。
その前に、あなたの見守る=隠れて覗き見するってことですよね?
犯罪ですよ。まさか、盗聴器とか小型CCDカメラとか仕掛けてませんよね。
見つけ次第、通報しますからそこのところ覚悟しておいてください。
私は、喉元まででかかった言葉を必死で飲み込んだ。
「……じゃ、私は失礼します」
「今度は、どんなお弁当つくろっかな〜」
石川さんのルンルンとキショイチック浮かれモードな声が背後で聞こえた。
- 333 名前:Room13 優しさは罪 投稿日:2003年08月04日(月)06時10分08秒
吉澤さん、あなたの優しさはあらゆる意味で罪です。
ジュマペールで謎の異臭事件が起こってワイドショー物になったとしたら、
それはきっとあなたの優しさが引き起こしたものです。
いっそのこと優しさついでに石川さんを引き取ってください。
一生、家賃を払い続けてもらう約束はもういいから――
NEXT
- 334 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年08月06日(水)08時20分05秒
騒がしいジュマペールも夜になれば落ち着いたものだ。
いつもこの時間帯ぐらい静かならばなんとか普通っぽく見えていいのに――
思いながらカーテンを閉めるため窓際に向かう。
小川ワールドには朝には無かった鶏小屋ができている。
私の言いつけをちゃんと聞いてくれたらしい。
感心感心――
などと生暖かい目で庭を見ていると目の前を狛犬が通過した。
や、保田さん!?
気づくと同時にドーンという轟音が耳に届く。
いつか保田さんが登頂に失敗して墜落する姿を目にするだろうと覚悟はしていたが
それが今日だったとは――
私は、慌てて窓を開けた。
- 335 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年08月06日(水)08時22分33秒
「保田さん!?大丈夫ですか!?」
無駄だと思うが、一応目の前にできている人型の穴に声をかけてみる。
返事はない。ただの屍のようだ。
などとクールに某RPGの真似をしている場合ではない。
「保田…さん?」
穴を覗き込んでみる。
と、同時にまるでゾンビが墓場から出てくるかのようにニョキッと手が伸びてきた。
「うひゃっ!!」
私は、咄嗟に後転でそれを避ける。
ここにきてよかったことといえば反射神経がよくなったことぐらいだろう。
「にーいーがーきー」
穴から這い上がってくる姿はまさにゾンビそのものだった。
たしか、ゾンビって核爆弾を使ってあとかたもなく吹き飛ばさなきゃいけないんだったっけ?
とっさに核弾頭スイッチが頭をかすめる。
押すべきか押さざるべきか、それが問題だ。
- 336 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年08月06日(水)08時24分37秒
「あんた、私の部屋の中の宝たちをどうしたの?」
「へ?」
穴から這い上がってくるなり怒りに満ちた大魔神のような顔で言う保田さん。
ダメージはまったくないと思われる。
スイッチを押したほうが世界のためかもしれない。
「部屋帰ったら、PCもワインもカメラも英語のカセットも漢字ドリルもアロマも青汁も……(etc
なくなってるじゃない。キレイさっぱり跡形もなくなってんのよ!!どういうことよ!!」
そういえば――
保田さんの部屋、さっぱりしてたな〜。
部屋と一緒に吹っ飛んでたんだ。
- 337 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年08月06日(水)08時26分38秒
「なに、遠い目してんのよ!!なにがあったのよ、説明しなさいよ!!!
こちとらびっくりして墜落したのよ、どうしてくれんのよ!!」
「どうしようもなにもご無事でなによりです」
「頑丈だからね!!って、話逸らしてんじゃないわよ!!!」
なぜ、私が怒られなくてはいけないのだろうか?
管理人だから?
そんなこと理由にはならない。多分。
全ての原因は、石川さんのような空気読めない人にグレネードなんてプレゼントした
保田さんのせいではないか。私を責めるのは筋違いだろう。
部屋が無事だっただけありがたく思ってほしい。
そこで私は気がついた。
修繕費の半分以上が保田さんと石川さんの部屋に当てられていた事実に――
- 338 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年08月06日(水)08時29分05秒
「…保田さん」
私の口は恐ろしいほど冷静に彼女の名前を呼んでいた。
「な、なによ」
予想外だったのだろう、保田さんがうろたえているのが分かる。
「これ半分でいいから負担してください」
「は?」
私は、悔しくて捨てられずに持っていた請求書を保田さんの前に突き出した。
一瞬間の抜けた顔になった保田さんは請求書を見ると再び大魔神になった。
「なんで私が半分も出さなきゃいけないの、もうバカかとアホかと!!」
「まぁ、そういうなら別にいいんですよ。私が困るわけじゃないし」
「どういう意味よ?」
「こ・れ」
私は、保田さんの部屋から発見された法律に触れる凶器を突き出す(どこから取り出したのかは聞かないお約束)
「警察に届けちゃおうかな〜」
保田さんの顔が正視するのも堪え難いほど引きつった。
「平和を愛する一市民としてはこういうものが近くにあると不安ですからね〜」
「ま、ま、ま、ま、待ちなさいよ」
「どうかしましたか?顔が悪いですよ。
おっと、顔色でしたね、間違えちゃったラブラブ」
「くっ!!」
念のために言うが、私の性格が悪いワケではない。
これは、正義の鉄槌だ。
- 339 名前:いんた〜みっしょん 投稿日:2003年08月06日(水)08時30分23秒
「……払えばいいんでしょ、払えば」
「あ、払っていただけるんですか〜。助かりますよ」
私は、誰にでも好印象を与えるさわやか少女の口調で
唇を噛締める保田さんにお礼を言った。
ついでに、さりげなく石川さんがグレネードをぶっ放したことを――
あくまでさりげなくだが保田さんに教えてあげた。
案の定、保田さんはこの世のものとは思えない形相で石川さんの部屋にすっ飛んで行った。
これで私が変に恨まれることは無くなる。
すがすがしい気分だった。
終わりよければ全てよしというのは本当なんだな。
いろいろあったような気がするけど
どこかで甲高い悲鳴が聞こえているような気がするけど
今日は、とてもいい日だった。
一旦Fine
- 340 名前:七誌 投稿日:2003年08月06日(水)08時31分52秒
- ( ・e・)さーて、再来週のニィは
- 341 名前:七誌 投稿日:2003年08月06日(水)08時33分41秒
- ( ・e・)1.鈴木宗男っていたよね?
2.シャボン玉って結局どうよ?
3.トラさんってなんであんなに長く続いたの?
- 342 名前:七誌 投稿日:2003年08月06日(水)08時34分36秒
- ( ・e・)<の、3本立てでお送りします。
ジャンケン
( ・e・)vポン
- 343 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月06日(水)15時23分37秒
- 保田・・・怖い。
ってか脅しじゃないか管理人。
- 344 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月06日(水)17時30分45秒
- 石川はストーカーだし、ヤスはゾンビだしすごいマンションだな、管理人(w
- 345 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月06日(水)20時24分31秒
- 石川のピンポンと(ё)y-~~<顔が悪いですよ?
にワロタ
- 346 名前:しまチャンポンチャン 投稿日:2003年08月10日(日)01時12分11秒
- あっちからスッ飛んできたぞー(゚∀゚)
・・・ギョェ(゚ロ゚ノ)ノ゙
凄いトコへ来ちまったャ
- 347 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月10日(日)08時55分10秒
- あっちってどっちだろう(・・?
他にも七誌さんの作品ってあるんですか?
それはそうと、不死身( `.∀´)かっけー
- 348 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月11日(月)02時50分27秒
- しまチャンポンチャンみっけてしもたw
H.Nは紛らわしくなるので書きませんよ(゚∀゚;)
この小説おもしろいよね
次回がたのしみ。
- 349 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時32分54秒
束の間の平穏が訪れたジュマペール。
あくまでジュマペール的に平穏だったという話ではあるが――
その間にジュマペールを訪れた入居希望者は数知れない。
しかし、その誰一人も最終契約を結ぶことはなかった。
丁寧にジュマペールを案内していくうちに、
なぜか皆一様に私のことを畏怖と哀れみとその他諸々の思いが含まれた目で見つめ帰っていくのだった。
一体、なにが悪いのか?
考えるまでもない。
分かっている、分かっているのだ。
この住人どものせいだということぐらい――
私の部屋には今、暇人sの5人がいる。
この5人がいなければきっと入居者はあっさりと決まるはずだったのだ。
決まってしまえばこっちのもの。
後で文句を言われようが知ったことではない。
なにはなくとも、契約をしてもらわなければ・・・・・・
今月の目標、契約!!
そのために、入居者が決まるまでこの5人には消えてもらいたい。
- 350 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時34分11秒
「というわけで、お忙しい中集まってもらったわけなんですけど」
「そうそう、おいらは忙しいんだよ。こんな時間に呼ぶなよ」
早速文句を口にしたのは矢口さん。
あんたは、いつも暇人のはずだ。
私は、彼女が働きにでるところを一度も目にしたことがない。
メイク前の写真を隠し撮りして心霊コーナーに送ってやる。
「っていうか」
「なんですか、石川さん」
「入居者が来ないのは、私たちのせいじゃなくて管理人さんのせいなんじゃないんですか〜?」
「はぁ!?」
「だって、私なんにもしてませんもん」
どの面さげてそんなことをいってるんだ、このピンク狂が!
初めてここに来た人にとって第一の試練はあのピンクルームだということを、
いい加減に理解して、女の子だ。
友達いないんですよ〜とかキショイ笑顔で迫ってあそこに希望者を招きいれて
凍死させるのもやめてもらいたい。解凍作業が大変なのだ。
- 351 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時35分09秒
「そうそう、私たちもなにもしてませんよ。ね、愛ちゃん、まこっちゃん」
石川さんにつられたのか紺野さんまでもがそんなことを言い出す。
あなたは、この間ここに来た人に向かって
「この間、私が駅前で転んだ時に笑った人ですね」
とか言って目の前で変な呪文を唱えて脅したでしょうが!!
「そ・う・で・す・よ。わ・た・し・も……」
あぁっ!!ウザいっ!!
あなたは、部屋の中から私たちの話を盗み聞きして、
相手が地方から来た人だと分かった途端に部屋から飛び出してきて
流暢な福井弁で仲間仲魔とかはしゃぎまくったでしょうが!!
「そうだよ、り、管理人さん。私はなんにもしてませんよ」
あなたがなんにもしなくてもあなたの家畜がするんです。
いつの間に牛まで飼うようになったんだ、お前は!!!!!
赤い服着た人ははるかかなた飯田さんの故郷に飛んでいきましたよ!!
「まったく、なんでもかんでも人のせいにするから餓鬼は嫌いなんだよな」
なんであなたがそんなに勝ち誇った顔をしているんですか、矢口さん。
っていうか、なんで全員私が悪いとでも言うような顔をしているんですか。
私は、悪くない、悪くない、悪くないぞーっ!!
- 352 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時36分16秒
「と・も・か・くっ!!!」
バンッとちゃぶ台を叩いて立ち上がる。
ざわつきはじめた無職どもが驚いた表情で私を見ている。
5人をゆっくりと見回して――私は、口を開いた。
「今日これから1人ここを見に来る人がいるんです」
きっとこれが最後のチャンスだろう。
そんな気がする。
「だから!!石川さんは、姿を見せないでください。小川さんは牛を放牧してください。
高橋さんは、人の話を盗み聞きしないでください。矢口さんは、メイク取っててください。
紺野さんは、アニメでも見ててください」
5人はポカンとした顔をしている。
「絶対に!!!部屋から出てこないでください!!!!」
全てを言い切る頃には肩で息をしていた。
私は咳払いをして座布団に座りなおす。
5人は、なにも言わない。
しかし、反省しているのかうつむいている。
- 353 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時40分16秒
「新垣……」
「はい?」
「あたしたちが、部屋にいればいいんだな」
一番手ごわいと思っていた矢口さんがこんなしおらしいことを口にしている。
私は、ポカンと矢口さんをみた。いつになく真面目な顔。
もしかして、言えば分かってくれる素直な人だったのか。
頭ごなしに怒鳴ってしまったことを少し反省。
もっと早くこうするべきだった。
「そうです」
「分かった、今日だけは部屋でおとなしくしてやるよ。な?」
矢口さんは、そういって他の4人を見る。
矢口さん、はじめてあなたがいい人に見えました。
「不本意ですが、了解しました」
紺野さん、不本意って不本意って――
「え・え・で・す・よ。が・ま・ん・し・ま・す」
高橋さん、なにを我慢するんですか?
「牛は、隠しときますね」
まこっちゃん、どこに隠すの?
「えぇ、でも私いつもおとなしいですよー」
石川―っ!!お前は、なんでそう空気をよまないで発言するんだ。
「石川は、ウザい、これ定説」
「なんでですかー?」
でも、まぁ大丈夫だろう。
今日、入居者が無事に決まった暁にはあげた家賃を少しさげてあげますね、皆さん。
- 354 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時41分59秒
※
PM14:10
ただいま10分の遅刻。
しかし、私はかってないほど優しい気持ちだ。
あの5人は、やれば出来る子たちだった。
ジュマペールはかつてないほどの静寂に包まれている。
きっと上手くいく、そんな予感がしていた。
- 355 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月14日(木)19時43分11秒
PM14:30
ただいま30分の遅刻。
連絡もなし。
おかしい。
いくら私が優しさに包まれた・・・・・・ならきっと、目に映る全てのものがメッセージだとしても
小さい頃は神様がいて不思議に夢をかなえてくれたとしても・・・・・・
この歌なんだったっけ?
と、話が脱線していた。
すこし様子を見に行ってみるか。
私は、玄関のほうに足を向けた。
- 356 名前:66 投稿日:2003年08月14日(木)20時00分41秒
- 一番ヤバイやつを忘れてねーか、管理人。
- 357 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月15日(金)00時03分44秒
- ( `.∀´)私のことかしら?
宗男ハウス懐かしい(w
- 358 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月15日(金)08時33分55秒
- 昼間残ってる無職の5人ってことかな
とりあえず、お帰り作者さん
- 359 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月15日(金)12時01分50秒
- おかえり作者さん(^∀^)ノ
- 360 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時05分32秒
※
門まで行ってみる。誰かが来そうな気配はない。
本当にどうしたんだろう?
時間を守れないような人は、人間として失格だ。
「・・・・・・103号室は凍結、か・・・・・・」
最後のかけだったのに――
「で、管理人ってのがさー」
不意に聞こえたのは矢口さんの声。
部屋にいるはずの矢口さんの声は・・・・・・小川さんの秘密小屋から聞こえた。
どういうことだ?
矢口さんは、部屋にいるはずじゃなかったのか?
思いながら、矢口さんの部屋のある場所へ視線を動かす。
- 361 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時06分02秒
「な、なにっ!!!?」
私は、2階の部屋から垂れ下がっている白い布を見つけて唖然とした。
そこには、まるで某ムネOハウスのような文字が書かれてある。
――あなたは私たちの友達です
さらによく見ると、さりげなく
――木の小屋でお待ちしています――などと意味の分からないことまでかいてあるではないか。
「矢口・・・・・・どういうつもりだ」
私は、小川さんの小屋に向かって突進した。
- 362 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時07分09秒
※
「ヤツの性格は破綻しまくってる」
「この間なんて私、日本海に沈められました」
「私の部屋で一緒にTVを見る約束を何度もしてたんですが、約束破るのなんて当たり前ですし」
「わ・た・し・の・故・郷・を・ば・か・に・し・ま・し・た」
「えっと〜、なんかあったかな」
「小川は、部屋追い出されたんだよな」
「え?いや、私は」
「話し合わせときなよ」
「家賃の値上げなんてしょっちゅう。それも一気に倍倍でくるから」
「なんかさー、眉毛がどうこうとか変に拘ってるし狂ってるとしか思えない」
「そうそう、おでこにも拘ってますよね」
小屋から聞こえるのは、暇人sの声。
あいつら、こんなとこで悪口大会か!!!
私は、ゆっくりと小屋に入る階段を昇る。
隙間から中をうかがうと矢口が立って熱弁していた。
石川・紺野・高橋・小川のアホどももいる。
敬称なんてつける義理はない。
- 363 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時08分43秒
「ともかく、ここの管理人ってのは冷酷無比の鬼で人格破綻者で変わり者で
性格最低最悪で餓鬼の癖に超生意気で・・・・・・」
「ほぅ、そうですか?」
「え?」
「「「「「か、管理人さん!!!!!????」」」」」
「いや〜こんなところで悪口大会ですか、皆さん」
一瞬にして静まりかえる室内。
にこやかに登場したつもりなのだが表情に出ていたか・・・私もまだまだ甘いのかな。
私は、つかつかと中に入り(小屋の中は意外に広い)肩をすくめてみせた。
「冷酷無比の鬼で」
私は、微笑みながら矢口を見る。
「人格破綻者で」
私は、微笑みながら石川を見る。
「変わり者で」
私は、微笑みながら紺野を見る。
「性格最低最悪で」
私は、微笑みながら高橋を見る。
「餓鬼の癖に生意気な」
私は、微笑みながら小川を見る。
- 364 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時10分05秒
「まさか、そんな風に思われていたとは驚きですね〜」
私は、微笑みながら・・・・・・・・・・・・
あれ?誰、この人?
小川の隣に座っていた人に視線を動かしかけて私は止まった。
初めて見る顔だ。初顔合わせだ。
嫌な予感がする。
そういえば、入居希望の人、時間なのにまだ来てなかったな〜
そういえば、――左に進んで木の小屋でお待ちしています――ってあったな〜
そういえば、この人たち意味なく悪口大会なんてするほど結束力なかったよな〜
そういえば、この人たち悪巧みする時だけ妙な結束力見せるんだったな〜
「も・・・しかして」
「あ、この間連絡した藤本です」
やっぱりーっ!!!!!!!!!!!!!
あぁ、賭けは終わった。
あぁ、希望者はこない
さよなら・・・・・・・・・・・・新住人(予定だった人)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 365 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時11分07秒
※
ジュマペールの門まで藤本さんを見送る。
藤本さんは、黙ったままだ。
そりゃそうだ、あそこまでないことないこと聞かされたんだから――
彼女の中では私は冷酷無比の鬼で人格破(ryなんだろう。
ふらふらと足元がおぼつかないのは仕方がない。
なんて可哀想な私。
「・・・・・・本日は、すみませんでした」
なにをいってももう無駄だと思われ
私は、それだけを藤本さんに言った。
「あのー」
後ろから藤本さんの声。
私は振り返る。
「いつから入っていいの?」
「え?」
「103号室があいてるんでしょ?」
「そ、それは、つ、つまり・・・・・・」
「ここに住むことに決めたから」
コブシageてGOGOGOGOGO!!!!!!!!!
神様、仏様、眉毛様、ありがとう。
ジュマペールは、安泰です。
- 366 名前:Room14 あなたは私たちの友達ですby宗男ハウス 投稿日:2003年08月15日(金)23時11分43秒
○年×月△日
103号室 藤本美貴 ジュマペール入居
NEXT
- 367 名前:七誌 投稿日:2003年08月15日(金)23時12分18秒
- ( ・e・)
- 368 名前:七誌 投稿日:2003年08月15日(金)23時12分51秒
- ( ・e・)ロマンスって
- 369 名前:七誌 投稿日:2003年08月15日(金)23時14分14秒
- ロ
( ・e・) マンス
じゃなくて
( ・e・)ロマンスって平板によむ。
なにかに似てると思ったら飯田さんの呼び方。
- 370 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月16日(土)13時03分41秒
- 最近、ストーリーらしきものが現れ始めている・・。
をををを・・・先が楽しみだ。
藤本さんは真人間なのでしょうか?。
- 371 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月16日(土)15時07分04秒
- ミキティキタ━━━━━━ヽ(゜∀。)ノ━━━━━━!!!!
やったーやったー☆
管理人さんヨカッタね!
- 372 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月17日(日)10時11分56秒
ああ、忙しい、忙しい。
忙しいったらありゃしない。
――チーン
オーブンの音でさえも苛立ち増幅に役立つらしい。
私は、オーブンから熱々のターキーをとりだす。
クリスマスでもないのに――
これもそれもどれもあれも
全部、あの藤本美貴のせいだ。
私が、とんでもない間違いを犯していたことに気づいたのは藤本さんがジュマペールに入居してから3日後のことだった。
いつも鋭い里沙ちゃんがどうして気づかなかったかといえば、
藤本さん入居が決まって3日ほど純粋に浮かれていたから――
彼女がここに入居すると言っただけで、とてつもなくいい人に見えたから――
私は、あの人の目を見ていなかった。
「あの突き刺すような氷の目をっ!!!!!」
「なにひとりでぶつぶつ言ってんの?あんた」
で、出たなっ!!
悪魔の申し子、額に666の数字を持つ女、藤本美貴!!
- 373 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月17日(日)10時14分02秒
縁側に偉そうに上半身預けて足をパタパタさせて余裕ぶっこいていられるのもいまのうちだ。
月末を楽しみにしておいてください。
「いえ、別に・・・・・・で、なにか用ですか」
「肉が足りないから買ってきて欲しいんだけど」
「それは俗に言うパシリですか?」
「そうとも言う」
当たり前のように頷く。
「ちょっと待ってくださいよ、私まだ肉食べてないんですよー。
ここでこのターキーの焼き上がりを1人寂しく待ってたんですよ」
「あ、すごいね、これ」
「でしょ」
「うん、皆のとこに持っていってあげるから、買出しいってきてね」
そう言うと、皿に盛ったターキーを手に藤本さんはさっさと行ってしまった。
- 374 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月17日(日)10時15分52秒
※
『いつになったら歓迎会してくれるんですか?』
あの日――
彼女は、ふてぶてしい態度でそう言ってのけたのだ。
自ら歓迎会を催促するなんてはなはだ生意気だ。
歓迎会ってのは、住人と管理人さんとが新しくはいってきた人をビックリさせるために
こっそり準備してっていうのが日本のしきたりだというのに――
それでも、優しい私はこうして今日という席を設けてあげたのだが。
庭でバーベキュー。
焼肉焼肉ウッキウキ。
かくいう私も密かに楽しみにしていた。
それが、料理係などと勝手に決められて野菜切ったりつまみだしたりターキー焼いたり、
まったく庭で盛り上がっている住人たちのもとに行けないではないか。
そして、今度は肉の買出しだ。
一口も食べてないのに――
一口も――
断ったらあのにっくき藤本美貴はしたり顔で言うに違いない。
『やっぱり、うわさどおり冷酷無比の(ry――』
女にはやらねばならないときがあるのだ。
行く。
私は
肉の買出しに
グラム1円の肉にしてやる
- 375 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月17日(日)10時19分04秒
※
野比家風買い物バッグを持って庭を通過。
楽しげな住人sが目に映る。
無視。
酔っ払った保田さんが、ところかまわず鳥にも牛にもセクハラしている。
楽しそうだ。
無視。
紺野さんとまこっちゃんがかぼちゃを焼きあっている。
楽しそうだ。
無視。
完璧なメイクの矢口さんとにっくき藤本美貴はお皿に肉をありえないほど積み上げている。
楽しそうだ。
無視。
安倍さんと飯田さんが並んで立っている。
二人の間に会話はないが、なぜかにこやかで楽しそうだ。
無視。
高橋さんは、1人本をよんでいる。
かと思ったら、なぜかいる吉澤さんと吉澤さんの口に怪しげな物体を運ぼうとしている石川さんの間に空気も読まずに立っていた。
楽しそうだ。
無視。
負けるな、里沙
負けるな、ガキさん
負けるな、ラブラブ
実は、楽しそうに見えてみんな楽しくないんだ。
あれは、振りだ。楽しそうなフリなんだ。
そう思わなければやってられない。
- 376 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月17日(日)10時20分08秒
なるべく視界にいれないように門まで急ぎ足。
と、
「あ、豆だ」
「ひさぶりやん、お豆」
聞き覚えのあるむかつく声が聞こえてきた。
長らく姿を見せていなかった辻&加護!!
無視して横を通り抜けようとした―― が、加護さんに肩を掴まれる。
「どこ行くん?今日、パーティーやろ?」
「飯田さんが教えてくれたから遊びに来たんだよ」
「・・・・・・・・・あっそう」
「あ、もしかして、あんたパシられとるんか?」
「あ〜」
楽しげな加護さんの目と同情交じりの辻さんの声。
「安心してな、このアイボンさんが豆の分のお肉はがっつり頂いたるからな」
「ののもちゃっきり食べてあげるね」
――プツッ
と、どこかの細い血管が切れた音がした。
「やってられるかーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私は叫んだ。
そして、バーベQを楽しむ住人sの元に突撃をかました。
その後の記憶は定かではない。
- 377 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月17日(日)12時35分28秒
- やっぱり美貴帝は帝でしたか…
管理人に同情
- 378 名前:背古井 投稿日:2003年08月17日(日)19時36分31秒
- こ、こんなところにも哀ちゃんが・・・・・・。
だれか友達になってあげてぇ。
- 379 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月17日(日)21時24分11秒
- 藤本はリアルで歓迎会のこと言ってたな〜、そういえば
っていうか、作者さん哀ちゃんスレの住人だったんすね(w
- 380 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月18日(月)10時20分40秒
※
気がつくと、私は大量の肉と飲み物を持って部屋の中にいた。
窓もカーテンも締め切って暗黒空間真っ只中だ。
いつ部屋に戻ってきたんだろう。
「はて?」
――ドンドンドンドン
「ん?」
ドアを叩く音がした。
私は、首をかしげながら玄関に向かう。
- 381 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月18日(月)10時22分01秒
「なぁ、豆、いい加減機嫌直せよ」
「お豆ちゃん、なっちが安定剤あげるべ」
「管理人さ〜ん、出て来て下さいよ」
「新垣!!あんたにもちゃんとセクハラしてあげるわよ!!」
「管理人さん、今度お勧めアニメ貸してあげますよ」
「4#“07&!0ますよー」
「愛ちゃんは、福井名産の五月がせあげるって言ってるんですよー」
「カオリは、なんにもしてないよね?」
「あたし、庭師もしてるんで庭なおすときは呼んでくださいね〜」
「うちは関係ないで、まだ肉食べてないで」
「ののも肉食ってねーぞー」
「っていうか、藤本が新入りの癖に生意気なのが悪いんだろ」
「そうだべ、なっちたちは悪くないべ」
「はぁ?なんでミキが悪者なんですか?ミキ、なんにもしてないじゃないですかー」
「ともかく、お前が謝れば奴が強奪した食料は帰ってくるだろ」
「さっさと謝って」
「嫌です!」
「さっさと謝ってくれねーとののは、ののは・・・・・・ノーノーノーノンストップ!!!」
「のの、落ち着くんや!!!」
- 382 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月18日(月)10時22分51秒
どうやら、怒りの化身になった私はバーベキュー会場から全ての食料を強奪して部屋に引きこもったらしい。
それで、みなが私の前にひれ伏しているワケか。
我ながらナイスなことをしたものだ。
今日は、どれだけ謝られてもでてこないぞ。
それほどまでに怒り骨髄に染みているのだ。
さしずめ私は天野岩度にかくれた天照大神。
さぁ、貢物でもなんでもして私を外に出してみせたまえ、下僕ども。
- 383 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月18日(月)10時23分33秒
「ったく、藤本のせいで肉が食えなかった」
「矢口さん、いっぱい食べてたじゃないですか」
「うっせーうっせー!!オイラ帰る」
「じゃ、なっちも帰るべ」
あれ?
「あ、もうすぐガンダム種がはじまる!!帰んなきゃ」
あれれ?
「じゃ、私もよっすぃ〜と一緒に帰ろっと」
「ついてこないでよ。マジキショイから」
あれれれ?
「のの、あいぼん、カオとご飯食べに行こっか?」
「おぅ!!」
「あいっ!!」
「飯田さん、私も連れてってくださ〜い」
「麻琴も?いいよ。高橋はどうする?」
「え!?え・え・ん・で・す・か?」
「なに、遠慮してんねん」
「ほーっほらいこうぜ!!」
あれれれれ?
「仕方ないわね〜、私も部屋で飲みなおしするわ」
「あ、じゃぁ、ミキも一緒に」
「あんた、未成年でしょ」
「気にしない気にしない」
あれれれれ?
あれれれれれ?
- 384 名前:Room15 歓迎会なんてシャボン玉 投稿日:2003年08月18日(月)10時24分28秒
みんな、なんて白状なんだ。
……家出してやる。
私がいなくなったらどれだけ苦労するか思い知らせてやる。
新垣里沙の偉大さを思い知るがいい、愚民どもめ。
そうと決まれば、早速荷物をまとめて出発しよう。
ちゃんとドアの前にメッセージを残して――
「家出します、探さないでください。
あなたたちが謝らないかぎり私は帰るつもりはありませんのであしからず。
探さないでほしいけど、どうしても帰ってきてほしいというのなら街中を探してみてもかまいませんよ。
管理人 新垣里沙」
うん、これで完璧だ。
明日は、みんな大慌てで町中をかけまわることだろう。楽しみだ。
NEXT
- 385 名前:66 投稿日:2003年08月18日(月)20時44分20秒
- 天の岩戸かよ、管理人。
つーか、どんどん気の毒になっていくなあ。気のせいだろうが。
- 386 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時20分39秒
明日になれば、ジュマペールは大騒ぎだろうな。
私の重要さに愚民どもはようやく気づくことだろう。
さて、これから、どこに行こう。
実家に帰ったら、やっぱり管理人職に耐え切れず逃げ出してきたと思われそうだ。
それはいただけない。
かといって、私のような見るからにお嬢様オーラがでまくっている女の子が泊まるのに適した高級ホテルはこの町にはない。
「う〜ん・・・」
由々しき問題だ。
なにも調べずに飛び出したのは少し考えが足りなかったかもしれない。
――ぐぅ〜
かわいらしいお腹の音。もちろん、私のだ。
そういえば、今日はなにも口にしていない。
せっかく強奪した焼肉セットたちを食べるのも忘れていた。
かなり考えが足りなかったかもしれない。
財布の中身を確認する。ここは完璧だ。
お金は常に手元に置いておく精神が功を相した。
とりあえず、食料調達としよう。
あとのことはお腹を満たしてから決めればいい。
腹が減ってはなんとやら、私は商店街へ駆け出していた。
- 387 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時22分51秒
※
相も変わらず気合の入ったおばちゃんたちが多い。
私の心境は、狼の群れに放り込まれた子羊。
野に咲く一輪の花。
負けないように負けないように笑って咲く花になろう。
もう花になってるから、満開中の満開だから。
永遠に枯れないから。最高の素材逸材だから。里沙たん、サイコー!!
――ぐぅるる〜
自分の世界に入りかけていた私を我に返らせた可愛らしいお腹の音。
目の前には、肉屋さん。
特売昔なつかしコロッケが目に入る。
商店街グルメツアー最初の一歩にはふさわしい。
まずは、コロッケゲッツ。
と、絶対来年には消えているであろう芸人の真似をしながら肉屋に向かうと
「も〜さっきから説明してんじゃん」
どこかで聞き覚えのある女の声が聞こえた。
少しイライラしている感じだ。
喧嘩に巻き込まれるのはゴメンだ。
空腹時の眉毛ビームの威力は当社比0.3%減だ。よく分からないけど。
チラリと店を覗いてみる。
肉屋のおかみと口論をしているのは、若い少女。
どこかで見たことある。どこかで――
- 388 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時25分37秒
「なんで分かんないかな〜」
「だから、コロッケってのはじゃがいもとひき肉でできてるんだよ」
「違うって、あたしが欲しいのはさ〜」
どこかで聞いたことのあるやり取り。
「コロッケつったらこれしかないよ、まったく」
おかみが持っているのは昔懐かしコロッケ。
特売の目玉商品なのだが、彼女が探しているのはどうやら違うものらしい。
コロッケなんて、正直どんなものでもいいと思う。
くだらないことで喧嘩をするんだな、人間って。
このから揚げもゲッツしておこう。
「これじゃなくて、ジャガイモ使ってないコロッケなんだって」
「だから、コロッケってのはジャガイモを使うんだよ」
私がから揚げ醤油味をゲッツしている間にも店員と彼女のテンションはますますあがっているようだ。
ジャガイモを使っていないコロッケね〜。
コロッケってのはジャガイモってのは当たり前・・・・・・・・・いや、待てよ。
あるじゃないか、ジャガイモを使っていないコロッケ。
謎は全て解けた、ニィニィの名にかけて!!
- 389 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時26分51秒
まったく、豆色の頭脳を持つと苦労する。
どこかに出かけるたびに殺人事件に巻き込まれる某名探偵の孫や
小さくなっても頭脳は大人の少年の気分だ。
っていうか、どこかで見たことのある文(ry
――もとい、やりとりだと思ったら、パン屋さんで喧嘩していた時の人だ。
私の推理も聞かずに好きな厚さに切れる食パンをさっさと買っていったヤツだ。
感謝の言葉もなく――
見ない振りしようか・・・・・・
――ぐぐ〜
私のお中の虫が悲鳴をあげる。
あの女の事件を解決してあげないとレジがあかない=コロッケもから揚げもゲッツできない。
仕方ない。
- 390 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時28分31秒
「え〜、ンフフ、ちょっとよろしいですか?」
私は、おかみと彼女の間に割ってはいる。
「コック長に言ったらいっつも出してくれるんだよ〜、今日はいないの?」
「今は、休憩中だよ」
が、あえなく無視された。
懲りずに古畑任三朗の真似までしたのに、それもかなり似ているはずなのに。
多分だけど――
「あの、ちょっと聞いてくださいよ」
「んぁ?なに?」
「勘定かい?」
「いえ、ジャガイモの入っていないコロッケってこれじゃないんですか」
私は、昔なつかしコロッケの横に並んでいるコロッケを指差す。
店員と少女の視線がそこに動かされる。
そして、
「あぁ!!これっぽい」
「はぁ!?これなのかい?」
少女は、嬉しそうに、店員はかなり呆れた風に
私は、事件解決を前にほくそ笑んでいた。
- 391 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時29分28秒
「逆転の発想ですね、彼女は最初から答えを言っていたというのに……
ジャガイモの入っていないコロッケ、あなたはこれに惑わされたんですよ」
「何円?」
「120円だね」
「じゃ、二つ」
「はいはい、毎度あり」
「そう、ジャガイモの入っていないコロッケ、つまりそれは!!!
……って、あれ?ちょっとあれあれ?まだ〆に入ってないんですけど」
気がついたときには、彼女は会計を済ましていた。
「これお礼にあげる」
「え?」
差し出されたのは今しがた彼女が買ったコロッケ。
ずっと感じていたデジャビュが消える。
お礼のシーンなんてこの間は見られなかった。
- 392 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月19日(火)11時30分21秒
「あ、ありがとうございます」
「んぁ〜礼には及ばないよ〜」
はて?
なんで私がお礼を言っているんだろう。
そうだ、おかしい。おかしすぎる。
「なんで私がお礼言う側なんですか!」
「んぁ?」
「今回も前回も私が事件解決したからあなたは食パンもコロッケもゲッツできたんですよ!!
こっちはお礼されて当たり前じゃないですか!!」
「食パン?」
彼女は、クエスチョンマークを顔いっぱいに浮かべて私を見つめる。
ややあって、記憶の淵に焼き付けられた私の美しい小顔に気づいたのかぽんと手を叩いた。
「思い出したようですね」
「んぁ、知らない」
平然と言ってのけた。
ガクリと膝の力が抜ける。
空腹の限界に豆色の脳を使った推理は致命傷だったみたいだ。
私の意識は漣のようにスッと流れていった。
手にはしっかりとコロッケを握って――
- 393 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月19日(火)17時08分13秒
- やっぱごとーさんキテタ━━━━━━ヽ(゜∀。)ノ━━━━━━!!!!
ガキさんファイッ!!
- 394 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月19日(火)17時25分01秒
- ゴマ最高
ニィニィ最高
- 395 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月19日(火)22時02分39秒
- ( ´ Д `)( ´ Д `)( ´ Д `)!!!
管理人がんばれっ!!
- 396 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)02時47分04秒
- ゴマキタ━━━━━( ´ Д `)━━━━━!!
ってかもうすでに来てたの?
ヽ( ´ Д `)ノ ワーイ
ヽ( ´ Д `)ノ ワーイ
ヽ( ´ Д `)ノ ワーイ
しかし、ジャガイモの入ってないコロッケって( ´ Д `)<んぁぁ〜??
- 397 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月20日(水)09時54分35秒
※
薄暗い部屋。
見覚えがあるようなないような不思議な感覚だ。
どうやら寝ていたらしいが・・・・・・ここは一体、どこだろう?
ゆっくり体を起こす。
途端――
「んぁ〜、起きた?」
そんな声と共に影が私に近づいてくる。
パン屋と肉屋で一緒になったあの人だ。
「いきなり倒れたから運ぶの大変だったよ〜」
「え?」
そうか、あのあと空腹で倒れたんだ。
わざわざ運んでくれたとは見かけによらず優しい人なのかもしれない。
- 398 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月20日(水)09時55分39秒
「まぁ、のんびりしてってよ」
「はぁ・・・ありがとうございます」
行くあてもなかったしこれは好都合だ。
「あの、あなたのお名前は?」
「んぁ?あたし?あたしはゴトー」
「ゴトーさんですか」
「そう、Dr.コトーじゃないほうのゴトー」
「濁点がついてるゴトーさんですね」
「そういうこと」
日本語を使いこなしているのか使いこなしていないのか微妙な人だ。
- 399 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月20日(水)09時56分24秒
――福井ぃ〜はよぉ〜♪
隣の部屋からまるで高橋さんが歌っているかのような歌が聞こえてくる。
「相変わらず、民謡か〜高橋は」
ゴトーさんが、なにかを小さく呟いたがその声は私の耳には届かなかった。
いな、本能が聴覚をシャットダウンしたというべきか。
- 400 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月20日(水)09時57分32秒
――こけーっこっこっこ!!!!
――キャーッ!!!!!!
――あ〜、コッコちゃん!!!!
そんな声が聞こえた。
まるで小川さんちのコッコちゃんが石川さんの部屋に迷い込んでしまったかのようだ。
ゴトーさんは、肩をすくめ
「梨華ちゃんも相変わらずだな〜」
と呟いた。
その声は私の耳には届かなかった。
否、本能が聴覚をシャットダウンしたというべきか。
いや、いや、いや、いい加減自分に嘘をつくのはやめよう。
どうりで見覚えがある間取りだと思ったんだ。
- 401 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月20日(水)10時01分12秒
「・・・・・・後藤さんって」
「んぁ?」
「後藤真希さん・・・・・・ですよね」
「あれ?なんで知ってんの?」
「ジュマペールの過去の住人記録に載ってたからですよ」
名前だけ載っていて住んでいた号室はかかれていなかった謎の人物として私は記憶している。
104号室。
開かずの間である104号室。
この部屋がそうだというのなら・・・・・・
祖父の趣味で開かなくなってしまったのではなく彼女が鍵を持ち逃げしたからというんだったら合点がいく。
豆色の脳はこんな時でもさえている。
- 402 名前:Room16 フウテンのゴマさん 投稿日:2003年08月20日(水)10時02分24秒
「あんた、管理人さんの知り合い?」
後藤さんは、首をかしげる。
お爺様が亡くなったことを知らないようだ。
「・・・・・・孫ですよ」
「あぁ、そうなんだ。どうりで覚えある眉毛だと」
「それで、今の管理人です」
後藤さんの言葉を遮ってそう告げた。
後藤さんは、あんぐりと口をあけて私を見つめていたが、
次の瞬間には、脱兎のごとく逃げ出していた。
「ちょっ!!後藤さん!!どういうことか説明してくださいよーっ!!」
「んぁーっ!!!!!!!」
必死で追いかけたが飛ぶように走りさる後藤さんに追いつくことは出来なかった。
そうして、私はまたジュマペールに戻ってきてしまった――
家出する前に張ったメッセージは誰の目にも触れられていないかのようにそのままで、
私はその晩、管理人職のなんたるかを深く深く考えてしまった。
NEXT
- 403 名前:七誌 投稿日:2003年08月20日(水)10時04分21秒
- ( ・e・)
- 404 名前:七誌 投稿日:2003年08月20日(水)10時05分51秒
- ( ・e・)次回、大スペクタクルスペースオペラジュマペールがスタート!!
- 405 名前:七誌 投稿日:2003年08月20日(水)10時06分39秒
- (ё)y-~~嘘に決まってるにぃっ(ё)y-~~
- 406 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月20日(水)23時30分48秒
- ( ´ Д `)<んぁ?
大スペクタクルスペースオペラゴトぅはどこ行った??
- 407 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月25日(月)12時21分14秒
――ドンドンドン
朝から無遠慮なノック音に私は起こされた。
インターフォンを押せ。
「はい?」
チェーンをかけたままドアを開く。
隙間からは、奇抜な格好をした・・・・・・誰だろう?
顔には、某議員のようなマスク。
私は、そのままドアを閉めた。
「ちょっと、管理人さん!!閉めないでくださいよっ!!!」
閉めた途端、再びドアが叩かれる。
「誰なんですか?朝っぱらからそんなマスクした変態に知り合いなんていません!」
「私ですよー、私」
ん?
このへたれな声は・・・・・・
私は、ドアノブに手を伸ばす。
「・・・まこっちゃん?」
変態マスクはコクコクと頷いた。
いくら猪木似のナイス顎でも朝からマスクかぶって人の部屋に押しかけるなんてどうかしている。
私は、呆れ蔑んだ目で彼女を見た。
- 408 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月25日(月)12時25分36秒
「なにしてるの?そんな格好で」
「あれ?あさ美ちゃんから聞いてません?」
「なにを?」
「今日はQ.O.Kの日ですよ」
Q.O.K
そういえば、そんな話を遠い昔に聞いた事があるような気がする。
あれって今日だったのか・・・・・・
いまだにそれがなにをする日なのか分かっていないのは秘密なわけだが。
「それとまこっちゃんがそんな格好するのになんの関係があるの?」
友達として変な道に進むのを止めてあげたい。
「私も参加するんで、この一張羅で」
「は?」
「っていうか、今年は全員参加ってあさ美ちゃん言ってましたよ。里沙ちゃんは聞いてないの?」
全員参加!?
本当になんなの、Q.O.Kって。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。菊次郎と咲。
- 409 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月25日(月)12時26分32秒
「・・・・・・あの、まこっちゃん」
「ん?」
「あの・・・・・・キュ、Q」
私が、一切のプライドを金繰りすてようとしたその時
「まことーっ!!!!!!!!!!」
がなり声が聞こえた。
小川さんは、その声の聞こえるほうへ振りかえる。
「あ、愛ちゃんが呼んでるから行かなきゃ。ちゃんと準備しておいてくださいね!!」
「え!?あ、ちょっと待っ・・・・・・」
私の制止の声も聞かずに走り去ってしまった。
ここがアメリカなら一発ぶっ放して・・・・・・
冗談、嘘、ありえない、お上品な私がそんなこと考えるわけがない。
嘆息しながら部屋に戻る。
- 410 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月25日(月)12時28分26秒
Q.O.K・・・・・・
Q.O.K。
いったい、なんなんだ。
全員参加で、プロレスラーみたいなマスクして
そういえば、石川さんはブリブリアイドル衣装持ってたし、
紺野さんと高橋さんはたくさん衣装を作っていたし――
これから予想すると仮装パーティーみたいなものだろう。
しかし、それなら利益なんてでるわけがない。
考えても考えても実態の見えてこないQ.O.Kに私は、おでこを抱えてしまった。
このままでは準備どころか、1人だけなんの用意もしてない空気の読めない人になってしまう。
管理人としてそれはまずい。
ただでさえ、最近なめられているというのに。
待てよ・・・・・・全員参加なら他の人も準備しているはずだ。
どんな格好をしているかがわかればなにかつかめるかもしれない。
善は急げ。
私は、部屋を飛び出した。
- 411 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月26日(火)09時05分29秒
※
201号室。
私を出迎えたのはエロ悪魔。もとい、悪魔姿の矢口さん。
露出過多もさることながら明らかに不自然な盛り上がりをみせる胸。
どうかと思う。
「おぅ、お豆、まだ着替えてないの?」
「・・・・・・すごい格好ですね」
「そう?これでも去年に比べたらだいぶ抑えてるよ、ねぇなっち」
返事はない。
「着替えに夢中になってんのかな?」
「安倍さんは、どんな格好してるんですかね?」
「なっちはねー、あたしと対だから天使」
(●´−`●)天使
この謎がついにとけるのか!
「で、お豆はなに着るんだよ?まさかそれじゃないよな?それだったらヤバいよ、ヤバい」
「え?いや、私は出ないっていうか」
「そうなの?楽しいのにもったいねーなー。
でも、そうだよな。お豆じゃ大人のセクシーなんてだせないしなー」
「はぁ・・・・・・」
「ま、矢口が賞賛をあびている姿でも眺めてろよ」
矢口さんは、そういい残すと部屋へ戻っていった。
- 412 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月26日(火)09時06分32秒
※
Q.O.Kとは、かなりインパクトのある格好をしないといけないらしい。
ただ口先行の矢口さんだから大げさにいっている可能性もある。
よく考えたら保田さんなんかがそうそうインパクトのある格好――それこそ、悪魔の格好なんてしてたらリアルで気持ち悪くなりそうだ――なんてできないだろう。
私は、そんなことを考えながら202号室に乗り込んだ。
絶句した。
倒れそうになった。
意識が消えかけた。
「あら、新垣なんかよう!?」
保田さんの声で我に返る。
「あ、いえ・・・・・・そ、その格好」
「かわいいでしょ〜」
「いや、かわいいとか言う前に・・・そのパ・・・パン2が半分見えてますけど」
「見せパンよ、見せパン。なんていうの、コンセプトはわかめちゃんだからね」
「・・・・・・・・・・・・失礼しました」
このままこの場所にいたら死にそうな気がしたので私は制止の声を振り切って外に飛び出した。
前言撤回。
あれよりインパクトのある格好ができる人はいないと思う。
- 413 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月26日(火)09時07分20秒
※
Q.O.Kのことなんてもうどうでもいいや。
空気よまずに参加しなくてもいいや。
あんな格好見るよりはいいや。
私は、普通の女の子でいたい。
むしろ、普通のまともな美少女でいたい。
私は、ふらつきながら部屋までの道を戻る。
「あれ?顔色悪いね、管理人さん」
「え?」
階段下からそう声をかけてきたのは・・・・・・
女王様。
の格好をした悪魔の申し子だった。
もう驚く気にもならない。
「・・・藤本さん、なんつー格好してるんですか?」
「似合うでしょ?」
藤本さんは、自信満々といった風にない胸を反らした。
確かに似合う。
本業といっていいほど似合っている。
狂った男どもが、そのピンヒールで踏みつけてくださいとか言いそうなほど似合っている。
- 414 名前:Room17 謎なぞナゾ 投稿日:2003年08月26日(火)09時08分15秒
「・・・・・・Q.O.Kですか」
「そう、なんか紺ちゃんがこれ着てくださいねってミキにくれたの」
「そうなんですか」
どっから仕入れてくるんだろう、こんな服。
「管理人さんは、まさかその格好?」
「私は出ませんから」
「ふ〜ん」
藤本さんは、どこか嘲るような笑みを口元に称えた。
「なんですか?」
「別に。ミキ、ちょっと紺ちゃんのとこ行かなきゃだからじゃあね」
そういうと藤本さんは階段を駆け上っていった。
含みのある物言いが気にかかったがわざわざ追いかける気にはならなかった。
今日は、部屋でふて寝してよう。
NEXT
- 415 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)19時34分16秒
- ( `.∀´)の見せパン・・・・・・
(((((;゜Д゜))))) ガクガクブルブル
- 416 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月26日(火)21時35分37秒
- ミキティ似合いすぎるな…(・∀・)イイヨイイヨー
やっすー…_| ̄|○
石川あたりがまた変格好してそうだな
- 417 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時08分43秒
部屋で不貞寝をしていた私を起こしにきたのは忍者姿の紺野さん。
ドアも窓も鍵をかけて完璧な密室だったというのに、どこからどうやって入ってきたのか・・・・・・
そう尋ねるよりも先に紺野さんは私を外に引っ張り出したのだ。
つれて来られたのはジュマペール玄関。
いつのまにか庭には巨大なドーム型のテントが作られている。
中は見えない。小川さんの家や牧場がどうなったのかはどうでもいい。
あの中でいったいなにが行われるんだろう?
- 418 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時09分34秒
「管理人さんは出ないそうなので販促をお願いしたいんです」
「は?」
「でないんですよね?藤本さんがそう言ってましたけど」
ちくりやがった。あのハイパーサドが!!
「心配しなくてもグッズはちゃんと用意してありますし、
品切れのときはこの注文カードを渡してくれるだけで完璧ですから」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「利益の30%は管理人さんに上げますよ」
「分かりました!!」
「よかったです。では、私は忙しいのでドロン」
煙とともに紺野さんの姿は消えていた。
徹底した忍者っぷりに少し感動しつつ、私は再び紺野さんの策略に嵌った自分に気づいた。
つい先日、安易な儲け話にはつられないと決意したはずなのに――
- 419 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時10分17秒
※
紺野さんの口車に乗せられてグッズを売ってるかわいい少女をするはめになった私。
Q.O.K会場のドームは盛り上がっているようで中からは野太い声が漏れている。
それなのに私は、外で1人グッズ売り・・・・・・
この感覚は、なにかに似ている。
なんだっけ?
つい最近味わったような孤独感――
あの焼肉パーティーだ!!
なんてことだ、いくら孤独な姿もSo sexyだからってこう何度もポツンとさせられるなんて・・・・・・
素直にグッズを売ってる場合じゃない。
特殊部隊里沙WATの名にかけてドーム内潜入を試みる。
グッズ売りは放棄決定。
- 420 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時14分17秒
※
「さぁ、盛り上がってまいりました!第55回クィーンオブコンコン略してーっ!!!」
「Q.O.Kッ!!!!!」
壇上に立つのは吉澤さん。
それを取り囲んでいるのはキショイ男の大軍団と少数の女と怯えた親子。
「今日はっ!!財布の紐はゆるーくゆるーく財布ごと投げる勢いで楽しんじゃってください!!」
「うぉーっ!!!!!!!!」
いいのか?それで?
で、Q.O.Kってなに?
ここは、ジュマペールだよね?
まるで地獄絵図のような光景に思わず後ずさる。
と、ドン、と誰かにぶつかってしまった。
「あ、すみませ・・・って、後藤さんじゃないですかっ!!」
「んぁ?あ〜!!!あ〜、あ〜・・・・・・・え〜と誰だっけ?」
後藤さんは、ポンと手を叩いた後、頭に手を当てて首をかしげた。
なんだ、その反応は。というツッコミはおいておく。
「管理人の新垣ですよ」
「あ〜、そうだったね〜」
この間は、逃げたというのに今日はなんて落ち着きようだろう。
言いたいことはたくさんある。
開かずの104号室の鍵のこととか、開かずの104号室にちゃんと家賃払って住むようにとか、開かずの・・・・・ともかく、たくさんだ。
この間は、逃がしたけど今日は逃がさない。
- 421 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時15分20秒
「あのですね、後藤さん」
私がそう口を開いた瞬間、「うぉーっ!!!」という一際大きな歓声があがった。
驚いて、ステージのほうを見る。
「チャーミー!!!!!」
「ラブリー!!!!!!!!!!」
「「チャミラブでーすっ!!!!!!!!!!!!!」」
舞台上には、ぶりっ子ここに極まれりといった格好の石川さんと高橋さんの姿が。
そして、歌う歌う歌う踊る踊る踊る。
歌パートは決まっているのか高橋さん。
石川さんは、かわいい格好と似つかわしくないほど張り切ったダンスを披露している。
「んぁ〜、梨華ちゃん相変わらずだね〜」
「相変わらずって・・・お知り合いですか?」
「そりゃね〜昔はここに住んでたじゃん、あたし」
そういわれればそうだった。
って、納得してる場合じゃない。
今も勝手に部屋使ってるくせに、ガツンと言わないと。
- 422 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時16分06秒
「あのですね、後藤さん」
私が口を開いた瞬間「ごっちーん!!!」という暢気な声をあげ駆け寄ってくる足音が聞こえた。
デジャビュを感じる表現だ。
「んぁ、よしこ〜」
走ってきたのはさっきまで壇上で視界をしていた吉澤さん。
後藤さんが謎のごっちんだったのか。
私の中でライフワークになっていた謎の言語ごっちんの正体がついに判明してしまった。
ひょんなところから問題は解決するものだ。少々がっかり。
「あれ、管理人さん、ごっちんと知り合いだったんですか?」
「え?いや、ちょっと」
「なんだ〜、私てっきりごっちんが管理人さんに内緒で104号室使ってるかと思ったから隠してたのに」
内緒で使ってましたよ。
- 423 名前:Room18 Q.O.K潜入 投稿日:2003年08月27日(水)09時16分48秒
「あはっ、この間ばれちゃったんだよね〜」
あはっじゃない、あはっじゃ。
いひっの会社は潰れたというのに呑気な。
あれ?潰れたんだっけ?
製造中止とか合併とかどうとかこうとかで・・・・・・
うふっなら売れたかもしれないね。えへっでも可。おほっは却下。
随分、話が飛んでいる。
私も最近住人たちの毒に感化されているのかもしれない。
気をつけないと、唯一の正常人なんだから。
「そのことで、話があるんですよ、後藤さん!!」
私は、ズビシッと後藤さんに指を突きつけた。
――が、
「あれ?後藤さん?吉澤さん??」
既に後藤さんと吉澤さんの姿は人ごみに掻き消えていた。
あはっの魔力にはまってしまったのがいけなかった。
私は、おでこを抑えて反省した。
NEXT
- 424 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年08月29日(金)08時17分37秒
- よしごまどこいった〜?
- 425 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月30日(土)13時41分37秒
- 更新まだかな〜
- 426 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時34分49秒
――Q.O.K極秘文書――
入れ替わり立代わりで奇抜な格好をした住人‘sの姿がステージ上に現れる。
私は、前線で異常な盛り上りを見せている人たちから少しはなれた場所からそれを眺めていた。
これからいかなる生命の危機に晒されるやもしれない。
万が一のために後世にQ.O.Kの詳細を残しておく。
※ ※
1.なちジェルとまりビルのなちまりコント
安倍さんと矢口さんのお笑いコーナー。
少し前の27時間番組の深夜帯を髣髴とさせるそれは正視するのも堪えがたいまでに寒かった。
が、一部の方は「(●´−`●)天使、(●´−`●)天使」と大変盛り上がっていた。
よく分からない。
危険度5
2.ゴマキライオン物語
後藤さんがライオンの着ぐるみを着て子育てをするコーナーだ。
吉澤さんは、バカなライバルで吉澤ハイエナをしていた。
これも一部の方には好評だったようだ。
なんともシュールなヒトコマで私には笑いどころがさっぱり分からなかった。
危険度2
- 427 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時36分11秒
3.アントニオピーマコ
マスクをつけた小川さんが等身大人形「ボス」にプロレス技をかけるという
なかなか変わったコーナーだった。私もさりげなく楽しんでいたのだが、
小川さんの腰がグキッという音をたてて途中で終わってしまった。
残念でならない。
危険度1
4.平伏せ奴隷共
女王様の格好をした藤本さんのコーナー。
タイトルを裏切ってただのライブだった。これはこれで意外な一面を見たような気がする。
時折、向けられる蔑みのこめられた冷たい眼差しが一部の方には大好評だったようだ。
危険度3
5.哀・戦士
某ロボットアニメのパクリかと思いきや、某女だけの歌劇団のパクリ高橋さん主役のコーナー。
男役には、なぜか飯田さんがでていた。
途中で飯田さんが交信を始めてしまいあえなく閉幕。
気合の入ったドレスが空しさを誘った。
危険度1
- 428 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時37分50秒
6.いやっほう
石川さん、保田さん、矢口さんのグダグダトーク。
ちなみに、保田さんは黒いコートで全身を覆っていてあの格好を披露していない。
だれてきた観客に毒を吐く矢口さん。わざとらしくフォローする石川さん。
そんな2人をニヤニヤと観客目線で見る保田さん。
ジュマペールではよく見られる光景。
こんな内輪話をみて楽しむ人がいるのだろうかと思ったが、以外にも盛り上がっていた。
私にはよく分からない。
危険度6
7.ケメコの夢は夜開く
いやっほうトークから、そのまま保田さんだけが残ってのコーナー。
繰り返される暗転とその都度の早替え。
保田さんの衣装は、ワカメちゃんだけじゃなかったことが判明した。
卒倒者続出の阿鼻叫喚。それでも盛り上がるのはどうしてだろう。
途中で目をそむけた私にはまったく分からない。
危険度10以上
8.ぶりんこうんこ
飛び入りらしい辻さんと加護さんの不思議な世界。
予想外の犠牲者をだした保田ショックのリハビリに急遽用意されたものと思われる。
その場しのぎにしてはなかなか楽しめるものだった。
危険度1
- 429 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時40分12秒
9.哀さん物語
小川さん、新垣さん、辻さん、加護さんを遠くから眺める高橋さんの物語。
わざわざ『この話は、フィクションです』といれるあたりが心憎い演出。
一部の方の大号泣をさそった隠れた名作。
危険度5
10.なっちのお薬講座
安倍さんが持っている薬について延々と語るコーナー。
アシスタントには、接点のまったくなさそうな藤本さんがついている。
これが意外なケミストリーを起こして安倍さん一人だけだとボケっぱなしのグダグダになることを防いでいる。
なかなかの良コーナー。ただし毒薬の説明は蛇足だったと思う
危険度 7
11.梨華ラップ
石川さんがMCのラップコーナー。
最初のコーナー、「チャミラブ」で石川さんが歌わなかった原因がなんとなく分かった。
キショイを通り越して怖いとさえ思える石川さんの真剣な表情が一部の方に好評だとかそうじゃないとか。
危険度8
- 430 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時48分17秒
※
そこまでみて私は気づいた。
Q.O.K主催者のはずの紺野さんの姿がまだ一度もステージ上に見当たらないことに――
いったい、どういうことだろう。
人にはいろいろさせておいて自分はドロンしたままか。
まるでオレオレ詐欺のようだ。
どんな犯罪か知らないが響きから似たようなものだろう。
そんなことを考えながらクスリとほほえましく一人笑いを浮かべているとステージの照明がおちる。
スポットは一点に。
いつのまにか、司会に戻った吉澤さんの姿が見える。
なにが起こるんだろうと報告書片手に固唾を呑んで見守る。
吉澤さんは、不敵な笑みを浮かべマイクを口元に持っていった。
- 431 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時49分06秒
「YEAH!みんな、盛り上がったかーっ!!!!!!」
「うぉーーーーっ!!!!」
「Q.O.Kゾロメ記念だぜぃっ!!!!!!!!!」
「うぉーーーーーーーーーーー!!!!」
観客の声援にこたえるように吉澤さんは両手を上げる。
「ヤツの姿が見たいかーっ!!!!!!!!!!!!!!」
「うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
ヤツって?
「みんな、財布の準備はいいかーっ!!!!!!!!!!!」
「ウォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
財布の準備?
意味が分からず、観客を見るとみな財布を手にしている。
なにがはじまるんだ。
「オッケー。いよいよ、ラスト」
声のトーンを少し落としてボルテージまであがった観客の飢餓を煽る・・・・・・
この人は、大工よりも司会業になったほうがいいんじゃないだろうか。
それから、大きく息を吸って
「さぁ、ヤツの名前を呼びやがれーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
叫んだ。
- 432 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時49分56秒
「コーンコン!!コーンコン!!!」
観客が叫びだしたのはコンコンという謎の言葉。
私が、その言葉の意味を理解したのはそれからすぐだった。
ステージが光り輝き悠然とゴンドラに乗って現れたのは紺野さん。
私は、唖然として上から降りてくる紺野さんを見つめる。
あの人、もしかして私よりも金持ちとかじゃないよね?
ありえない、ありえない。
それは認めたくないものだ。
しかし、そう思わせるほど紺野さんの衣装は豪華だった。
口では言いあらわせないほどすごい。
そう、たとえるなら紅白にでている小林○子さんだろうか。
これを見てしまうと、保田さんの衣装も薄れてしまう。
いや、保田さんの衣装が記憶から消えることは絶対ないんだけど
紺野さんのゴンドラがステージに下りる。
そこで、さらに私を驚愕させる光景が。
観客が紺野さんに向かって手にしていた財布を投げ始めたのだ。
まるでお賽銭を投げるかのように。
理解不能だ。
この光景は時間にして僅か1分
そして、紺野さんはなにするまでもなく再びステージから姿を消した。
- 433 名前:Room19 新垣リサのQ.O.Kナビ 投稿日:2003年09月01日(月)06時51分09秒
※
まとめ
以上が、私が体験したQ.O.Kである。
満足そうに帰って行く観客たちを横目に見ながら
一体、なにが彼らをそうさせたのかをかんがえる。
しかし、当分その答えは出そうにもない。
ただ1つ分かるのは、一度足を踏み入れればもう抜け出せないということだろう。
現に私も、もしまたQ.O.Kが開催されるなら出てみようとさえ思い始めている。
勇気があるならば、皆さんもQ.O.Kに参加してみて私の言葉の真偽をその目で確かめてほしい。
報告者 新垣里沙
P.S で、Q.O.Kってなんなの?
NEXT
- 434 名前:七誌 投稿日:2003年09月01日(月)06時52分01秒
- ( ・e・)みなさんも
- 435 名前:七誌 投稿日:2003年09月01日(月)06時52分48秒
- ( ・e・)どうぞ
- 436 名前:七誌 投稿日:2003年09月01日(月)06時53分25秒
- (ё)y-~~
- 437 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月01日(月)23時33分38秒
- 何者だ、紺野
- 438 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)00時05分34秒
- めっちゃ参加したいんよ、Q.O.K。
どうやったら参加できますか?
- 439 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)18時40分08秒
- おもろかった。
薬のコーナーは、実際にあってもまあ上手くいくのではないかと。
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2003年09月02日(火)19時48分54秒
- あ、哀さん物語ってひどいよ、作者さん……
見たいと思っちゃったよ。
ごめんね、哀さん・゚・(ノД`)・゚・。
- 441 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)20時38分10秒
- >小川さん、新垣さん、辻さん、加護さんを…
何気に参加してるじゃん管理人
- 442 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時06分17秒
△月◇日
今日も無事に一日が終わる。
おかしな住人とおかしな出来事。
いつもなら呆れる事件ばかりを起こす彼女たちだが
今日のQ.O.Kを盛り上げる姿には、不本意ながら少しだけ心を動かされた。
私にとって、今日は人生観が360度変わるようなめまぐるしい日だったといえる。
「管理人さーん!!!」
ガラガラッと窓が開かれる。珍しく鍵をかけ忘れていたらしい。
私は動かしていた筆を置き開けられた窓に目をやった。
- 443 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時07分33秒
「打ち上げ始まりますよ」
「え?打ち上げ?」
そこに立っていたのは教祖・・・・・・ではなくて、紺野さんだった。
「Q.O.K恒例の打ち上げ。参加しないんですか?みんな、待ってますよ」
庭ではキャンプファイヤーらしき灯り。
って、キャンプファイヤー!?
「ちょ、ちょ、ちょ」
私は、慌てて庭に飛び出した。
「管理人さんのお出ましー!!」
「新垣、今日は無礼講だぞーっ!!!!!」
矢口さんは、いつも無礼講でしょ。
じゃなくて、こんなとこでキャンプファイアーなんて火事になったらどうするつもりだこの馬鹿軍団は!!!
- 444 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時08分59秒
庭の隅に放置されていたホースを手に取る。
「なになに水遊びもするんかぃ?なっちもするべっ!!!
安倍さんが私からそれをもぎ取り素早くコックをひねる。
「いや、違いま・・・・ぶっ!!!」
顔面に思いっきり水をかけられた。
私が面食らっているうちに安倍さんはキャンプファイヤーの周りで
浮かれ狂っている住人‘sに水をぶっかけまわっている。
「先生っ!なっちが水をかけてきます!!!!!!!」
だからなんだとツッコミたくなるようなことを後藤さんが叫んでいる。
っていうか、まだいたのか後藤さんは!!!
完全に開き直ってる後藤さんは、あとでしめるとして今は消化作業のほうが重要だ。
皆さんの協力を仰がねば
- 445 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時10分43秒
「Q.O.K未公開のケメコ新衣装、とくと堪能しなさいよっ!!!!!!!」
「うぉぇーっ!!!!!!」
「まこっちゃん、肉が足りないよ」
「肉肉肉肉!!!!」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね〜」
「のんちゃんもあいぼんも少しは野菜食べなよ」
「皆さん、聞いてください!!」
「エ・ン・ト・リ・ー・ナ・ン・バ・ー・4・番・高・橋・歌・い・ま・す!!!!!!
「エントリーナンバー1番、私とよっすぃ〜のデュエット!!!!!」
「な・ん・で・割・り・込・み・す・る・ん・で・す・か・!・?」
「あたしは、歌わないから高橋と梨華ちゃんで歌えばいいじゃん」
- 446 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時11分31秒
「キャンプファイヤーは火事になるかもしれないんで、消して・・・・・・」
「矢口さん!ここにおいておいたミキのお肉食べませんでした?」
「知らねーよ!!なんで速攻で矢口疑うんだよ、お前は!!」
「あーっ!!!!!っていうか、それミキの皿!!なんで矢口さんが持ってるんですかー!?」
「し、知らねーよ!!!!!!!」
「そこクールダウンするべ!!!」
「ちょっとなにするんですかーっ!?」
「なにすんだよ、なっち!?」
「ホースを持ったなっちは無敵だべっ!!!」
「あの、皆さんちょっと聞いてくださいってば!!」
皆、それぞれ勝手に大騒ぎを続けていて私の呼び掛けになどさっぱり反応してくれない。
目の前でさらにその騒ぎは加速していく。
明日の新聞の見出しが目に浮かぶようだ。私は、軽く頭を振った。
- 447 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時14分07秒
「いや〜、眉毛の寄った管理人さんを見てると食が進みますね」
私の肩を叩きながらそう言ってきたのは紺野さん。
私が顔を上げると本当に楽しそうに笑っている。本当に楽しそうに食べている。
「他人事・・・だと思って」
「他人事ですからね〜」
パクパクと肉を食べながらのんびりと言う。
「ジュマペール全焼したら行くところなくなりますよ」
「それは困りますね〜」
パクパクとかぼちゃを食べながらのんびりと言う。
その姿に私は大きくため息をついた。
「なんだってこう変な人ばっかり集まってくるんだろう・・・・・・」
「管理人さん・・・・・」
たまらずため息と共に零れた私の言葉に紺野さんは取ろうとしていたかぼちゃを皿に戻した。
マナー違反だ。
どうでもいいけど――
「でも、けっこう好きですよね〜」
「え?」
「皆さんのこと」
紺野さんは私を見つめてニッコリと笑った。
- 448 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時15分25秒
私は、きっと気の抜けたような顔を彼女に見せているだろう。
彼女から視線をはずしいまだに喧騒を繰り広げている住人‘sを見る。
口元に浮かぶのは苦笑。
「・・・・・・そんなわけないでしょう」
「管理人さんも素直じゃないですね〜」
「うるさいですよ」
眉毛を指で整えるようになぞりながら深呼吸。
それから
「──ハイハイ、そこの2人っ!!!!!肉の奪い合いで死闘繰り広げないでくださいっ!!!
安倍さん!!水遊びはいい加減やめてください!!!
するなら一人隅っこに行ってしてくださいよっ!!!
保田さんはいい加減普通の格好に戻ってください!!石川さんは歌うなっ!!!
い、い、い、飯田さん!!!変な飛行物体呼ばないでくださいよっ!
侵略する気ですか、あんたは!
後藤さんっ!!吉澤さんっ!どさくさに紛れて104号室に入らないでくださいっ!!
高橋さん、1人で読書してないでイエー盛り上がって〜!!!
小川さん、牛がこっちに来てるから!!!!
お前ら、少しは近所の迷惑考えろっ!!!!!!」
私は馬鹿騒ぎを繰り広げる中心部へと駆け出していた。
- 449 名前:Room20 新垣里沙の整えた眉毛っぽい日記帳 投稿日:2003年09月02日(火)23時16分15秒
自分でも気付いていたのだが、私はその時、心底楽しそうに笑っていた。
いつのまにか、私の感覚はすっかりこれが普通とまで思える程度に麻痺していたのだろう。
しかし、それでもいいかと思う自分がいる。
ここでこうして毎日どたばた奔走して歳を取ってゆくのも良いと――
――そう。
やっぱり私はここでの生活を楽しんでいる。
このアパートとお馬鹿な住人‘sとの関係をとても大切に思っている。
「お豆っ!!あそこのケーキ取ってきて」
たとえ、描いていたような管理人ライフではなくとも――
Fine
- 450 名前:七誌 投稿日:2003年09月02日(火)23時17分46秒
- ( `.∀´)<そんなわけでマジで終了ね
川VvV从<っていうか、やっぱり駄作に終ったな
(●´−`●)<仕方ないべ
- 451 名前:七誌 投稿日:2003年09月02日(火)23時21分35秒
- ( ^▽^)<本気で考えたっていったじゃん!
(o^〜^o)<なんにも考えずに書いたもののほうが出気がいいってどういうことだろうね〜
( ´ Д `)<そんなもんだよね、人生って
- 452 名前:七誌 投稿日:2003年09月02日(火)23時23分32秒
- ( ´D`)<20話でおさめたかったのれす
( ‘д‘)<出番少なかったな〜
( ゜皿 ゜)ガガガ
- 453 名前:七誌 投稿日:2003年09月02日(火)23時26分43秒
川 ’−’)<1人やないやよ〜
∬´▽`)<真っ白に燃え尽きたぜ
川o・∀・)<ま、私の謎はナスカの地上絵と同じようなものですよ。
( ・e・)<テンキューッ!!
(ё)y-~~<テンキュー!!!!
本当にありがとうございました<(_ _)>
- 454 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)07時11分43秒
- おわりかよ!
- 455 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)09時40分51秒
- 一部のほうが考えてないのかよっ!!
どっちもおもしろかったよ!!!脱稿乙!!!!
- 456 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)18時27分37秒
- 2部も面白かったよ。ていうか2部のほうが好き。
新キャラとか出るたびにわくわくした。
ともあれ、お疲れ様。ありがとう!。
- 457 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2003年09月03日(水)21時28分05秒
- 終わっタ━━━━━━。・゚・(ノД`)・゚・。━━━━━━!!!!
最高だったよ作者さん
この小説のおかげでガキさんがちょっと好きになりました
本当にお疲れさん☆
- 458 名前:名無しん 投稿日:2003年09月04日(木)00時07分31秒
- 終ってる〜・゚・(ノД`)・゚・。
やっぱり、おもろかったよ。
俺は、この小説のおかげで某哀さんスレを知っちゃいました・゚・(ノД`)・゚・。
- 459 名前:441 投稿日:2003年09月05日(金)21時58分05秒
- 等身大ポップかよ!
見事に釣られてしもた
- 460 名前:ヒニー 投稿日:2003年09月07日(日)20時54分11秒
- 最高!
もう、手本にしたいくらいのコメディ。
ただ、最後に、Q.O.Kの紺野の立場は何なのかという疑問が残ったので
勝手に想像します。
(プリンセスてんこうっぽい格好をした紺野を)
- 461 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時07分48秒
「おるぁーっ!!!!!!倒れろ、まめっ!!!!!!!!!!!」
「そうはいきませんよ!!返り討ちにしてあげますっ!!!!!!!!!」
「あーっ!!!!!!!!!!!!!!」
コントローラーを放り投げて矢口さんは後ろに倒れこんだ。
画面には私の操っていた格闘をするには胸の大きすぎるリアリティのない女キャラが勝鬨を上げている。
矢口さんの操るイケメンキャラは無様に倒れている。愉快痛快。
「お前、このゲームしたことないって言ったじゃんかよっ!」
「したことありませんよ」
「くそっ!お前の言葉を信用したおいらが馬鹿だった」
「ホントにしたことありませんって。矢口さんが弱すぎるんですよ」
「うっせーうっせーっ!!次、行くぞ、次!!」
矢口さんは、ガシャガシャとソフトをあさくっている。
彼女が、ディスクシステムという昔ながらのハードから
スーパーファミコンというハードに買い換えたのはつい先日のことだ。
それでもかなり古いのだが本人が異常に喜んでいるのでなにも言わないことにした。
だからといって、毎度毎度対戦相手に私を呼びに来るのはやめてほしい。
しかも、相手にならないくらい弱いくせに。
- 462 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時09分20秒
「おっ、マリカー発見。真里だけにマリカーは天才的だからな覚悟しろよっ!!」
どうかと思う。
「あの、矢口さん」
「なんだ?負けるのが怖くなったか、この臆病ものっ!!」
この人は、どうしてこういつもテンション高いのだろう。
「いえ、私そろそろ仕事したいんですけど」
「仕事?管理人になんの仕事があるんだよっ!!」
「失礼な、いろいろありますよ。暇人の矢口さんとは違って」
「オイラが暇人だとっ!?聞き捨てならんなーっ!!」
「どう見ても暇人でしょ?」
「うっせーっ!!!うっせーっ!!」
矢口さんは、子供のようにふくれてしまった。
私は、呆れながらその小さな背中を見る。
仕事もせず毎日毎日ゲーム三昧。どこをどうとっても立派な暇人だ。
- 463 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時10分16秒
そういえば、家賃はどうしてるんだろう?
意外にも、滞ることなく払われている。
折半なのか、それとも・・・・・
まさかいくらこの人が図々しいからってそこまで図々しくはないだろう。
「あの、矢口さん」
「なんだよっ!?」
「いや、ちょっと疑問っていうか」
「だから、なに?」
「この部屋の家賃って当然、2人で払ってるんですよね」
いつでもどこでも直球勝負。
それがモットー。
「当然、なっちが払ってるに決まってるだろ」
矢口さんも直球勝負の人だったらしい。
あっさりとした答えが返ってくる。
「っていうか、おいらが払えると思うか?」
「おも・・・・・いませんけど」
そんなに偽胸を張って言うことでもない。
安倍さんが甘やかすからこの人はこんなアホになってしまったんだろうか。
いや、そもそもなんで安倍さんはおとなしく矢口さんの言うことを聞いているんだろう?
このチンピラに逆らうことを許されないような大きな弱みを握られていたりして・・・・・・
ずっと聞きそびれていた二人の怪しい関係の真実はそこにあったのか。
- 464 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時11分21秒
「矢口さん、脅迫罪ってなにげに重い罪らしいですよ」
「はぁ?なんの話だよ」
「安倍さんを脅してここに住んでるんでしょ。いくら安倍さんの弱みを握ってるからって」
「だから、なんの話だよ」
矢口さんも強情だ。
自白したほうが罪は軽くなると言うのに
「あなたと安倍さんの関係ですよ!」
私の言葉に矢口さんは一瞬呆けたように口をあけたが
「おいらとなっち?普通に幼馴染だよ」
すぐに気を取り直しそう言った。
「幼馴染?」
矢口さんの口からでてきてきたのはありふれた単語。
そんな漫画にありがちな甘酸っぱいストーリーでこの名探偵の目が欺けると思ったら大間違いだ。
- 465 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時12分30秒
「そう。ああ見えて、なっちってお嬢様でさ〜」
聞いてもいないのに遠い目になって語りだす矢口さん。
そんな甘酸っぱいスト・・・・・・
お嬢様?
私の耳がその単語をキャッチする。
それは、私に対してだけ使われる言葉だ。
どうせ、私の足元にも及ばない程度のお嬢様だろう。
「昔はマジで病弱だったんだよね」
病弱?
今じゃ、まったくそう見えませんけどね。
「だから、矢口がよく面倒見てやってたわけ」
面倒?
たかっていたの間違いじゃなくて?
「仲良かったんだよ、昔から」
本当だろうか?
いまだに安倍さん脅迫説が頭の中をめぐっている。
しかし、2人の過去も気になるわけで
「それで、どうしてここに住むようになったんですか?」
私はそう聞いていた。
「あぁ、なっちがお見合いしなきゃいけなくなって」
「お見合い!?」
「そう、よくあるじゃん。金持ち同士が結婚するとか。
おまめも、もう少ししたらそういう話がくるんじゃねーの?」
よくある・・・・・・
私は、そんな話絶対に引き受けない。
もう管理人として自立してるから親の言うことなんて聞くこたないし。
うん、私のダーリンは私が決める。これ最強。
- 466 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時14分12秒
「まぁ、なっちが超嫌がってたからさ、おいらがなっちを連れて街をでたわけよ。いい話だろ?」
「はぁ・・・・・・」
「その時のきめ台詞聞きたい?聞きたいか?そうか、そうか」
「いや、誰も聞きたいとか言ってないし」
「やっぱさー、迷うじゃん。住み慣れた土地はなれるわけだからさ。
なっちもそうだったの。で、おいら言ってやったんだよ。
「おいらが働いてなっちを守ってやる!!なっちは心配しないでカモーンナ!!!」ってな」
矢口さんは、立ち上がってコブシを突き上げた。
この人は気づいてないんだろうか?
今となっては立場が180度逆転してることに。
安倍さんも気づいてないんだろうか?
「まぁ、変な話だよな〜」
そう、変ですよ。
気づいてるなら少しは働けば
「子供だったとはいえ、オイラ、そっちの気はまったくないのになんで恋人みたいなこと言ったんだろうな」
そっちかよっ!!
ツッコム気にもなれない。
まぁ、安倍さんがそれでいいなら私には関係ないけど。
家賃さえ滞らなければ放っておくけど・・・人生っておかしなもんだ。
- 467 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時15分03秒
「それより、マリカー嫌ならこれしないこれ?」
「え?」
いつのまにかセットされているのは
ぷ、プレステ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
しかも、2っ!!!
「ど、どうしたんですか、これ?」
確か、プレステは禁止だとかなんだとか言ってたはずなのに。
矢口さんは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ
「なっちに見つかんなかったら大丈夫なことに気づいたんだよ。ヤル気になっただろ」
ヤル気にはならないけど
もう少しなら付き合ってあげてもいいかな――
そう私が思い始めたのと
「なっち、財布忘れたべさー!!!」
と、安倍さんが部屋に入ってきたのはほぼ同時だった。
浮かれモードに入りかけていた矢口さんが止まる。
安倍さんも顔に笑顔を貼り付けたまま止まっている。
ただごとではない雰囲気に私は、逃げようと即座に腰を浮かせた。
- 468 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時16分28秒
「・・・・・・矢口」
「・・・・・・・・・・・はい」
「これ、なんだべ?」
「プ・・・・・・その、あの、これはこういろいろあってっていうか・・・
ほら、でも、2じゃん2.1じゃないからさー」
矢口さんの必死の言い訳。
確かにプレステがダメならプレステ2っていう発想は間違ってない・・・・・・かもしれない。
「だって、2だよ2。しかも――」
「矢口」
言い訳を続ける矢口さんを一瞬にしてとめる。
これがほんとの鶴の一声ってやつか。私も習いたいものだ。
などと、感心してる場合じゃない。ともかく避難だ、避難。
私は、見つめあいを続ける二人の視界に入らないように匍匐前進で玄関に向かった。
「・・・・・・修理大変なんでほどほどにしてくださいね」
部屋を出る間際に私は中にいる2人に・・・・・・
いや、異常な殺気を放っている安倍さんの背中に声を掛けた。
- 469 名前:語られなかったジュマペール1 投稿日:2003年09月07日(日)21時17分46秒
その後のことはしらない。
201号室から窓を突き破って手裏剣のように未確認飛行物体並みの速さで
プレステのソフトが飛んでいったとか、それにつられて飯田さんがベランダから飛び降りたとか、
次の日、ゴミステ場に真っ二つに割られたプレステ2の残骸があったとか
私にはまったく関係のないことである。
だから――
今日もきっと世界は平和だ。
Fine
- 470 名前:七誌 投稿日:2003年09月07日(日)21時24分55秒
- ( ・e・)
- 471 名前:七誌 投稿日:2003年09月07日(日)21時25分47秒
- ( ・e・)( ・e・)
- 472 名前:七誌 投稿日:2003年09月07日(日)21時26分26秒
- ( ・e・)( ・e・)( ・e・)
- 473 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)00時59分02秒
- おぉ!お気に入りから削除しなくてよかったw
- 474 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)13時39分04秒
- 一気に読みました。
ところどころ吹き出しましたw
- 475 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:18
-
104号室潜入。
ターゲットは熟睡中の模様。
これより、捕獲に入る。
私は、大きく息を吸ってターゲットに向かって飛びかかった。
「んぁっ!!」
一瞬、早くターゲットが動く。
身をくねらせ私の手から逃れると「んぁーっ!!!」
びっくりしたエリマキトカゲのごとく走り去ってしまった。
確実に捕らえたと思ったのに・・・・・・
私は、がっくりと膝をついてこぶしを床にたたきつけた。
- 476 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:19
-
敗戦を引きずりながら104号室を後にする。
「これでえっと・・・0勝58敗ですっけ・・・・・・いい加減、諦めたらどうです?」
しっかりと鍵をかけていると背後からそう声を掛けられた。
「うるさいですよ」
私は振り返る。
彼女――石川さんは、楽しそうに笑っている。
こっちは少しも楽しくもない。
「ごっちん、野生に生きてるから捕まえるの無理だと思いますけどね〜」
「たとえ、そうでも家賃払ってもらえないのにここを使われるのは許せませんね」
「頑固ですね〜」
石川さんは呆れたように目を細める。
この人にこんな風に見られるのはかなりむかつく。
とりあえず、眉毛ビームを発射しておく。
あっさり交わされた。
- 477 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:21
-
「そうだ、ここの鍵を変えたらいいんじゃないですか?」
石川さんが、名案をひらめいたとばかりに目を輝かせながら
たったいま掛けたばかりの鍵穴を指差す。
そんな誰でも思いつくことを私がしていないとでも思っているのだろうか。
「とっくに変えましたよ」
「え?そうなんですか」
「そうですよ。変えても変えてもなぜかいるんですよ!」
「ごっちん、昔から器用でしたからね〜」
器用ですむ話じゃない。
だいたい、そんなにここが気にいっているなら正式に住めばいいのに。
あの人は、絶対に楽しんでいる。そんな気がする。
「次こそは、絶対に確保するっ!!管理人の名にかけて!!!!!」
沸々と燃え滾る私の闘志。
この闘志を次の戦いに全てぶつけてみせる。
私は、グッとこぶしを握った。
「頑張ってくださいね」
盛り上がっている私に向かって棒読みでそういうと石川さんは部屋に戻っていった。
なにしにきたんだ、あいつは。
出番がほしかっただけなんじゃないかと、小一時間――
まぁ、いい。
私はごっちんこと後藤さんを捕まえればそれだけでいいのだ。
来るXデーに向かって罠の準備をしておこう。
- 478 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:22
-
※
「おかえりー」
部屋に戻ると間延びした声が迎えてくれる。
誰のものかは考えなくても分かる。
104号室が騒々しくなった後に必ずこの部屋を訪れる人物。
そして、いつも私の部屋でお茶菓子を食べていく人物。
「いい加減、管理人さんからかうのやめたら?ごっちん」
私は、暢気にあぐらをかいている彼女に声をかけた。
「いや〜、いい訓練になるんだよね〜」
あはっと口を開けて笑うごっちん。
少しも悪びれた様子がない。
ごっちんにとって管理人さんは格好の遊び相手なんだろう。
あっちは全然そう思ってないみたいだけど――空回りしている管理人さんには同情する。
「訓練ってなんの訓練なの?」
「ほら、あたしってチャーリーズエンジェルになる予定だからさ〜。
殺気を察知する能力身につけたりとか、迫り来る弾薬よけたりとかいろいろあるじゃん」
ごっちんのことをよく知らない人が聞くと馬鹿にしているとも思うかもしれない。でも、彼女はいつだって大真面目なのだ。
だから、チャーリーズエンジェルになる予定というのもきっと本気なんだと思う。
関係ないけど管理人さんが、保田さん色に染まって銃器に手を出しているのも本当なんだと思う。
- 479 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:24
-
「チャーリーズエンジェルになるには英語勉強したほうがいいんじゃないかな?」
「んぁ〜、そうだね〜。気づかなかった」
気づいてよ。
「そろそろ、後藤行くね〜」
「うん。あ、正面玄関と裏口に管理人さんがなんか仕掛けてたから気をつけてね」
「オッケティング」
言うと、ごっちんはいつのまにか部屋から消えていた。
相変わらず、素早い。
ごっちんがどこから来てどこに行くのかを知っている人はそういないと思う。
私も知らない。
正式にジュマペールに住んでいた――もちろん家賃払ってなかったけど――3年間でさえほとんど部屋にいなかった。
ま、ごっちんがなにしてようと私は別にいいんだけどね、
たまに聞くことのできるよっすぃ〜のレア情報さえもらえれば。
むしろ、私の目当てはそれだけといっても過言ではない。
それにしても――
この部屋にごっちんが来てることが管理人さんにばれたら家賃5倍どころじゃすまないんだろうな〜。
考えるとかなりぞっとした。
- 480 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:26
-
※
「へっくちっ!!」
くしゃみですら可愛らしいのは世界広といえど私しかいない。
誰だ、この麗しの姫君新垣里沙の噂をしているのは。
まったく、もてる女は辛い。
「・・・・・・あんたも幸せよね」
将来のダーを想像して幸福な笑みを浮かべていたであろう私の肩をぽんと叩いたのは
「や、保田!!さんっ!!!!!!!」
「なにそんなに驚いてんのよ」
「顔に・・・・・・・あ、嘘ですよ。冗談」
保田さんの表情の変化に私は慌ててそう付け加える。
つい正直者が顔を出しかけた。
里沙たんが正直すぎて生きていくのが辛い人もいるだろうから
少しは建前を覚えたほうがいいかもしれない。
- 481 名前:語られなかったジュマペール2 投稿日:2003/09/09(火) 09:27
-
「ホントにあんたってここ向きの性格してるわよね」
「は?さっきからなんなんですか?・・・・・・って、いないしっ!?」
保田さんの同情交じりの声を聞いたのが1秒前。
そんな短時間で消えられるほど保田さんは素早くない。
ということは――
私は、さきほど後藤さん用に仕掛けた落とし穴にゆっくりと視線を動かした。
「・・・・・・ああ・・・・・・・・・・保田さん・・・・・・・・・・・・・」
見なかったことにしよう。
なにもなかった。私はなにも知らない。
私は、幸せな管理人だから・・・・・・・・・あんな恐ろしい形相の狛犬なんて見えないんだ。
「にぃーがーきーっ!!!!!!!!」
地の底から――実際にその通りだが――響く声に私はBダッシュで逃げ出した。
その時、はじめて後藤さんの気持ちが分かったとか分からないとか
Fine
- 482 名前:七誌 投稿日:2003/09/09(火) 09:27
- これにて終了です。
- 483 名前:七誌 投稿日:2003/09/09(火) 09:29
-
皆様の今後のご発展ご活躍お祈りします。
意味が分かりません。
- 484 名前:七誌 投稿日:2003/09/09(火) 09:30
- ありがとうございました。
- 485 名前:七誌 投稿日:2003/09/09(火) 09:31
- 新作は超シリアス人間ドラマをかきます。
- 486 名前:七誌 投稿日:2003/09/09(火) 09:32
- >>485は大嘘です。
ごめんなさい。_| ̄|○
- 487 名前:七誌 投稿日:2003/09/09(火) 09:33
- 1.( ・e・)
2.(;・e・)
3.(*・e・)
4.(#・e・)
5.(ё)y-~~
3が好き
- 488 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/10(水) 01:08
- 1.( ・e・)
2.(;・e・)
3.(*・e・)
4.(#・e・)
5.(ё)y-~~
22(ニィニィ)が好き
- 489 名前:よんまるろく 投稿日:2003/09/10(水) 15:11
- マジで終わりみたいですね
かなり笑かしてもらいました
お疲れさまです
しかし、じゃがいもが入ってないコロッケが気になる〜
- 490 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/10(水) 17:06
- ホントのほんとに完結乙です。
深夜に読むことが多かったので笑いをこらえるのが大変でした(w
管理人さん、永遠なれ!!
>>489
メール欄、突っ込んだほうがいいのか?
- 491 名前:よんぱちくう 投稿日:2003/09/14(日) 23:44
- >>490
なんだか救われた気分です
ありがとうございました
- 492 名前:七誌 投稿日:2003/09/29(月) 12:10
- not小説。真面目な話。
- 493 名前:モーニング娘。四季折々 投稿日:2003/09/29(月) 12:11
-
秋
風に吹かれて
揺れるコスモス
もうそんな季節なんだね
目まぐるしくて気付けなかった
もう秋なんだね
- 494 名前:9月 投稿日:2003/09/29(月) 12:12
-
亀井を観察していたら
狭いところに入る以外にも意外な習性があることに気づいた。
でも、リーダーとして黙っていようと思う。
6期は5期よりも面白い。
モーニング娘。兼モーニング娘。おとめ組リーダー 飯田カヲリ(22)
※
卒業まであと4ヶ月かそこらへん。
まだ分からない。
そういえば、あさ美ちゃんが泣いた。
ハンバーグが食べたかったのかな?
それくらいで泣くところがかわいいなと思った。
モーニング娘。さくら組リーダー 安倍なつみ(22)
※
うっかりして高橋の誕生日を忘れたのはワザとじゃない。
メンバーみんなスタッフに言われるまで忘れてたのも多分苛めとかじゃないと思う。
ぶっちゃけ手当て欲しさで面白おかしくラジオで話したのは認めるけど。
っていうか、悪口サイトのヤツら釣られすぎ。
おまいら、サイコー(〜^◇^)<ヤグヤグ←コレ好き
モーニング娘。サブリーダー 矢口真里(20)
- 495 名前:9月 投稿日:2003/09/29(月) 12:14
- また少し色が黒くなったような気がする。
秋は紫外線が強いから気をつけないと。
でも、気をつけたところで無駄かもね。
いっそのこと放置してみるのもポジティブな考えかな。
HEY×3でダウンタウンの間でセンターを取ったのは正直狙ってた。
モーニング娘。おとめ組 石川梨華(18)
※
じんべいでスタジオ入ろうとしたら警備のおっさんに足止めくらった。
ムカついたから壁にとび蹴りしたら壁がへこんだので逃げた。
お菓子食べないと決めた日においしそうなチーズケーキ持ってこないで欲しい。
モーニング娘。さくら組 吉澤ひとみ(18)
※
あいぼんが松ちゃんに3倍って言われた時、自分は言われなかったのでホッとした。
これからも気をつけて太らないようにしよう。
そういえば、あさ美ちゃんがあんなことで泣くとは思わなかった。
モーニング娘。おとめ組 辻希美(16)
※
係はもうやめたいのに
不登校の子の面倒を先生から押し付けられた学級委員長の気分や。
安倍さんと矢口さんに釣られた振りして高橋呼んだった。少しスッとした。
あのおっさんも生放送で太った言うな、ホンマ人の気も知らんと
ストレスで痩せるタイプになりたい・・・・・・
モーニング娘。さくら組 加護亜依(15)
- 496 名前:9月 投稿日:2003/09/29(月) 12:15
-
※
親友に苗字で呼び捨てにされた。
でも、その前に安倍さんと矢口さんがそう呼んでたから釣られただけだと思う。
そういうもんだよね。
あっしの誕生日のことを矢口さんがラジオで話してくれているのを聞いていたらまた涙が出てきた。
なんでだろう?
モーニング娘。さくら組 高橋愛(17)
※
辻さんがハンバーグを取った時、時が止まった。
気づいたら泣いていた。
どうせ収録後は上手くいってもいかなくても食にありつけるわけだから
あんなことで泣く必要もないのに疲れているんだろうか。
分析したほうがいい。
モーニング娘。さくら組 紺野あさ美(16)
※
最近、分かってきた。
ヘラヘラしてれば大抵の先輩に好かれる。
これからもヘラヘラしてよう。
それが、私の生きる道だ。
モーニング娘。おとめ組 小川麻琴(15)
※
オソロが終わった。あまり思い入れがないのに泣いてしまった。
タンポポはきっとこのまま自然に消滅しそうな気がする。
飯田さんはどう思うんだろう?
ところで、いい加減自分でも眉毛ビームは飽きてきた。
他になにか使えるネタを探すべきか、悩む。
モーニング娘。さくら組 新垣里沙(14)
- 497 名前:9月 投稿日:2003/09/29(月) 12:16
- ※
加護さんが高橋さんを連れて私の元にやってくる。
高橋さんは訛っていてなにを話しているか分からない。
とりあえず、笑っているとなんだか嬉しそうだったのでそれでいいと思う。
今度、紺野さんの持っている大きなトランクに入れてもらおう。
モーニング娘。さくら組 亀井絵里 (14)
※
毎日鏡を見るたびに可愛さが増していくのが手に取るように分かって怖い。
ハロモニのゲームで紺野さんが泣いた。
あんなことで泣く人いるのは驚いた。
なんで私はシゲさんって呼ばれるんだろう?
モーニング娘。おとめ組 道重さゆみ (14)
※
もう少し博多弁を出せないかと社長に言われた。
無理ですといったらすんなり諦めてくれた。私は、高橋さんの二の舞にはならない。
さっき、ミキねーさんがボケッとしていた。
あの目つきは真似してもできるものじゃない。
素であれだけ迫力が出せるねーさんは超かっこいい。
モーニング娘。おとめ組 田中れいな (13)
※
飯田さんがミキのことを見ていたのでなんですかと聞いたら
気づいてないかもしれないけど足踏んでるといわれた。
慌ててどけるフリをしながら、
心の中で気づいてるから、気づかないわけないから、ワザとに決まってるから
と3回ツッコミを入れておいた。ぼんやりした人がリーダーでよかった。
モーニング娘。おとめ組 藤本美貴 (18)
- 498 名前:七誌 投稿日:2003/09/29(月) 12:17
- 次があるなら10月末
- 499 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/29(月) 14:02
- 新作ですか?
期待して一ヶ月待ちます。
- 500 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/30(火) 09:38
- 華麗に500GET!!
確かに足踏んでて気づかないわけない(w
- 501 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 22:12
- ミキティのツッコミがおもろい
- 502 名前:七誌 投稿日:2003/10/17(金) 12:14
- (〜^◇^)人(・∀・川
- 503 名前:Calvary 投稿日:2003/10/19(日) 08:38
-
第1話 It can draw near
- 504 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/19(日) 08:42
-
「これは・・・また派手にやったわね」
目の前に置かれたスクラップを見ながら呆れたように彼女が言う。
「別にいいじゃん。どっちみち壊すんだし」
肩から吊ったライフルを持て余しながら呟く。
「矢口の持ってくるロボットの照合がどうして私に回されるか分かる?」
「さぁ?なんでなの、圭ちゃん」
彼女――保田圭は一呼吸置くと静かに続けた。
「こんな壊し方するヤツは頭がぶっ飛んでる。いつライフルを振り回すか分からないってさ」
言われて、あたしは笑った。
「そのぶっ飛んだヤツがあんたたちの仕事の手伝いをしているんだけど」
「おかげでこっちは楽できるわ」
圭ちゃんは、ニヤリと笑いスクラップの確認を始めた。
身の回りにロボットがいる生活が当たり前になってから彼女たち警察の仕事は1つ増えた。
新しい型が出る度に買い換えられ捨てられるロボット。
ロボットの処理場は存在していたがそれは大した意味をなさず、
街の至るところで違法廃棄されたロボットが転がった。
その中にはまだ自律的に動くことができるロボットも多くはなかった。
そういった違法廃棄ロボットの管理担当は本来ならば警察機構の役割だったが、
ロボット以上に厄介な人間を相手にしている当の警察にそんなくだらないことをする余裕はなく、
いつのまにか警察の代わりに違法廃棄されたロボットをスクラップにして届ける壊し屋という職業がうまれた。
それが今のあたしの仕事というやつだ。
- 505 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/19(日) 08:43
-
「よし、確認とれたわよ。報酬はいつもの口座でいいのよね?」
「うん、よろしく〜」
いつも通りのやり取り。
書類にサインをして本日の仕事終了。圭ちゃんにサイン済みの書類を渡す。
「ほい、お疲れ様――あ、そういえば矢口にちょっと頼みがあったんだけど」
「頼み?圭ちゃんがあたしに?」
「ロボットの捜索なんだけどね。どうする?」
壊し屋の副業としてロボットの捜索を頼まれることはよくあることであたしは大抵断ったことがない。
だから、どうして彼女が念を押すようにそういったのかが少し引っかかった。
「捜索でしょ、やるよ」
「じゃぁ、これ資料」
圭ちゃんはあたしから受け取った書類をしまうと、デスクからファイリングされた資料を取り出す。
かなり分厚い。資料を受け取る=仕事を引き受けること。
あたしは、その分厚さにうんざりしながらそれを受け取った。
- 506 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/19(日) 08:46
-
※
この街の区画を上・中・下の3つに分けるとするとあたしの住んでいる場所は最悪なまでに中途半端な中ランクにあたる。
それをさらに細かく3つに分類してもまた中ランクだから救いようがない。
かといって、あたしがこの場所を気にいっていないかといえば決してそうではない。
この区画は人口が爆発的に増えたこの星でもっとも人口密度が低いらしい。
人間は中途半端なものを嫌うといったとこだろうか。
おかげでこの区画は単純に他人と接するのが苦手な人間が好んで住むようになった。
つまり、仕事以外で他人と関わりを持ちたくなく
中途半端に生を消費するあたしにはもっとも好都合な場所だったのだ。
- 507 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/19(日) 08:47
-
街中に張り巡らされた自動走路に乗って家路につく。
その途中であたしは仕事用の銃弾を買い忘れていたことに気づいた。
一旦自動走路から降りジャンクシティに向かう走路に乗り換える。
ジャンクシティには、鉄くずの集まりのような雑然とした建造物が立ち並んでいる。
いつ来てもそこだけ別世界のような印象を与える場所だ。
目当ての物を買い揃えるともう用はない。走路乗り場に急ぐ。
ふと安っぽいライトに照らし出された中古の人形屋の看板が目に留まった。
ショーウインドウには、主に捨てられたたくさんの人形(ドール)たちが立ち並んでいる。
ドールとは、擬似恋愛用のためにつくられたロボットのことだ。
こういう物を見るたびにつくづく人間の欲望とはすごいと思わされる。
最新型よりも少しだけ型の古いドールたちがあたしの視線を感知したのか
一斉に顔をこちらに向けまるで街娼がするような媚びた笑顔をつくった。
基礎プログラム通りの行動だが、それはまるで自分たちは誰かに買ってもらわねばスクラップにされることを知っているかのように見えた。
- 508 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/19(日) 08:50
-
普段なら湧き上がる嫌悪感からそのまま素通りをするはずなのになぜかあたしはその場所から動けなかった。
たくさんの笑顔の中に1つだけ妙に不自然な笑顔があることに気づいたからだ。
その笑顔を浮かべたドールの型はあまり巷で見かけたことのないタイプのものだった。
もちろん、あたしはそれほどドールの世界に詳しくないけれど。
10代の少女の体、スラリとしている割に頬には弾力が感じられその製作にはかなりの金がかかっていることがうかがえた。
なにがどう不自然なのかあたしはまじまじと見やる。
そして、分かった。
そのドールが浮かべている笑顔は人間が浮かべるものとしてはあまりに自然で
それゆえにドールが浮かべるものではなかったのだ。
一人勝手に難しい面をしていると変わらず笑顔を続けるドールたちの中で
そのドールだけがあたしに向かってまるで昔のアイドルみたいにひらひらと手を振ってみせた。
挑発するかのようなその行為になぜか無性にムカつきを覚えた。
それで――
つけなくてもいい踏ん切りがついたというか、あたしは衝動に身を任せて
一生開けることはないだろうと思っていた人形屋の扉を開け、そのドールを即金で買っていた。
まったく自分で自分が信じられない。
- 509 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/20(月) 08:38
- ※
業者に頼めば運搬してくれたらしいけれど見知らぬ他人に自分の住所を教えたくはない――
そんなつまらない意地を張ったことを後悔しながらドールの入ったボックスを手に歩くこと数十分。
後悔が最高潮に達した頃にあたしはようやく部屋にたどり着いた。
部屋の適当な場所にボックスを置くと、これでもかというほどわかりやすい位置にある開閉ボタンを押す。
わずかな駆動音。ボックスがゆっくり開く。
ボックスの中で眠りにつくドールの姿はショーウィンドウに飾られていた時と何ら変わりのない姿だ。
ボックスが完全に開くと同時に起動キーが入るのか眠っていたドールが静かに目覚める。
あたしと視線が合うと、ショーウィンドウで見た笑顔そのままに微笑を浮かべた。
「起動ナンバーの登録をお願いします」
「ドールのフリはしなくていいよ」
「起動ナンバーの登録をお願いします」
ドールは無表情であたしの言葉を無視してもう一度そう繰り返した。
面倒くさい。あたしは、腰に挟んでいたハンドガンを構えるとドールの額に狙いを定めた。
「見て分かると思うけど一瞬で頭吹き飛ぶよ」
ドールは慌てることなく向けられている銃口を凝視する。
この時点で、普通のドールじゃない。
- 510 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/20(月) 08:40
-
「壊し屋さんでしたか。これはまた難儀な職業の人に買われちゃいましたね」
ドールは本当にまいったなーと言うように頭に手をやる。
「よく分かったね」
「そんな大仰な銃を持ってる人間なんて壊し屋意外にいませんからね」
確かにそうだ。
こんなものを持ち歩く者といえば壊し屋しかいない。
「でも、普通のドールはそんな判別できないはずだけど・・・あんた、いったい何者?」
「そうですね。知識が豊富な天才ドールってことで納得していただけます?」
笑顔を微妙に崩し──そうするとさらに人間くさくなる──ドールは言った。
「無理だね」
あたしは、銃口を向けたまま言う。
ドールは、肩をすくめ
「それではどうしたら納得してくれますか?」訊いた。
「あんたが何者かちゃんと話せば納得するよ」
あたしの言葉にドールは小さく嘆息した。
どこからどこまで人間に似せているんだか。呆れてしまう。
- 511 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/20(月) 08:41
-
「そうですね〜、簡単にいうと違法廃棄ロボットですね」
日常では滅多に聞くことのない、あたしにとっては聞き慣れた単語をドールはさらっと口にした。
「ある目的で造られたんですけど、ある事件が起きてそのまま廃棄処分になるところを
自力で脱走したんです。その後はまさに波乱万丈でしたよ。
まぁ、なんだかんだで色々な困難を乗り越えてきた結果、今は生命の危機に立たされていますね〜」
「ある目的とかある事件ってのはなに?」
「それは、言えません」
「…じゃぁ、ドールになりすましてたワケは?」
あたしは他の質問をぶつけてみる。
「なにはなくとも住人IDがなくてはいけませんからね。
とりあえず買われた先のマスターを殺して住人IDを奪おうと考えていました」
あっさりと言う。つまり、あたしを殺そうと考えてたわけか。
あっけらかんとした態度にムッとしたがこれで分かったこともある。
【人間には逆らわない、殺さない、傷つけない】
【主人の意思には逆らわない】
【自らで消滅しない】
ロボットがロボットたる3原則。
このドールはそのプログラムをされていない。こいつは人間が殺せる。
いったいどんな目的で作られたのか気になったが、どうせ口を割らないだろう。
- 512 名前:第1話 It can draw near 投稿日:2003/10/20(月) 08:43
-
「撃っていい?」
「ダメです。ほら、私を壊してもスクラップリストに登録されてないんですから
あなたにはなんのメリットもありませんよ」
「あんたに殺されなくなるってのがメリットだと思うけど」
「そのことならご安心ください」
言うとドールはいやに親しげな笑顔を造った。
「あなたを殺すのはやめました」
「はぁ!?」
「だって、この状態から攻撃しても私のほうが完璧に分が悪いですし、
それにあなたみたいなクレイジーな人間に興味が出てきました。
このままあなたの所有物になってしばらく様子を見ることにします」
突然の申し出にこらちが状況を理解する間も置かずドールはあたしの手を友好の証とでもいうように握った。
そして、思い出したように
「そうそう、私にはコンノ=アサミという立派な名前がありますのであんたというのはやめてくださいね」
言った。
- 513 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/21(火) 06:46
-
あたしの毎日は単調な繰り返しだった。
朝、目を覚ますとスクラップリストをチェックしに壊し屋ギルドに向かい、
昼は適当に食事を取り、夕方からリストの中から選んだ壊す予定の違法廃棄ロボットを探しに行く。
壊し屋の報酬は、普通の職業よりも高い。
だから、そう毎日仕事をする必要も本当はなかったのだけれど、あたしは毎日変わらず仕事をしていた。
仕事をして帰ってくる頃にはぐったりしてなにも考えずに眠ることができたからだ。
あたしは今までできるだけ意識してなにも考えないように過ごしていた。
これからもずっとそうしていくつもりだった。
なのに、コンノの存在は、あたしが今まで築き上げてきたそんなささやかな日常性を揺らがせはじめていた。
- 514 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/21(火) 06:49
-
「矢口さんに質問です」
「・・・なに?」
「このロボットはどうして人を殺すのでしょう?」
コンノは、あたしの前に置かれた資料を手にとって言う。圭ちゃんにもらったものだ。
資料を読んだ時あたしはその予想外の内容に愕然とした。
彼女からは、単にロボットの捜索としか聞いていなかったからだ。
それは完璧にあたしの思い込みだったようで、捜索は捜索でもそのロボットの前には「殺人」というおまけがついていた。
殺人ロボットの捜索なんて聞いていたらあたしは絶対に資料を受け取らなかっただろう。
圭ちゃんにというよりもいつもの仕事だと勝手に思い込んでいたあたしの馬鹿さ加減にムカついた。
しかし、引き受けてしまった以上はどうしようもないので、渋々その殺人ロボットの情報集めに乗り出したわけだ。
「ロボットのことなんてわかるかよ。単にそういうプログラミングされてるだけでしょ。っつーか、お前だって人殺せるくせに」
殺人ロボットを製作したAmokという研究所はもう潰れてしまい上手いこと情報が集まらなくなっている。
時間だけが無駄に過ぎていく、その苛立ちからついきつい言葉で返してしまったあたしを
コンノはしょんぼりとした目で見つめていた。言い過ぎたことに気づく。八つ当たりするなんて最悪だ。
「コン・・・」
「矢口さん」
「はい?」
咄嗟に謝ろうとしたあたしより先に紺野が口を開く。
「お前というのもやめてくださいね。私にはコンノ=アサミという立派な名前が云々」
そっちかよ。
深く嘆息をする。コンノと話していると疲れる。
知らない間にこめかみを押さえていた。
- 515 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/21(火) 06:50
-
「矢口さん」
「なに?」
「もう1つ質問なんですけど、人が人を殺すのはなぜでしょう?」
「は?」
あたしがコンノを見るとコンノはにっこりとした笑顔を口元に浮かべていた。
胡散臭い笑顔。
「ロボットが人を殺すのはプログラムなんですよね。人が人を殺すのはどうしてでしょう?」
なおも質問を繰り返すコンノ。なにも知らないはずなのに嫌なところをついてくる。
あたしは、コンノから目を逸らす。
「・・・人間には感情があるからじゃないの」
「まったく無関係の人間を殺すときもそうなんですかね〜」
コンノはあたしの心中を知ってか知らずかそう付け加えた。
これ以上、コンノと話をしたくなくなってあたしは乱暴に立ち上がる。
「どこ行くんですか?」
「警察署」
投げやり気味に返して玄関に向かうと背後で小さな嘆息が聞こえた。
人が傍にいなくても人と同じような行為をする。
コンノには、あたしが及びもつかないような技術が搭載されているようだ。
いったい、なんの目的で作られたのか――改めて彼女の胡散臭さを確認しながらあたしは外に出た。
- 516 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/21(火) 06:51
-
※
「あら、やっと来たわね」
あたしの姿を認めると圭ちゃんは待っていたとでもいうように言った。
「どういう意味?」
「断りにきたんじゃないの」
意外そうに圭ちゃんは言う。
騙すような形で仕事を引き受けさせて少しは悪いと思っているらしい。
「まさか。ちゃんと探してるよ。もうちょっと情報ないか聞きに来ただけ」
「へぇ〜。っていうか、なんでライフル持ってるの?」
「え?あぁ、単なる癖」
「危ないヤツね」
圭ちゃんは、そういって肩を揺らすと少し待っててと席を立った。
しばらくして戻ってきた彼女の手にはA4サイズの茶色い紙封筒。
「最新情報」
圭ちゃんは、スッとそれを差し出す。
しかし、封筒の隅に微かに残っていた日付はあたしが圭ちゃんから依頼を受ける数日前になっている。
情報を出し惜しみしてたらしい。
「最初からくれればいいのに」
受け取りながら圭ちゃんを軽く睨む。
圭ちゃんは困ったように「引き受けるかどうか分かんなかったからさ」
「信用してよ」
まぁ、警察にもいろいろ事情があるんだろうけど。
あたしは苦笑しながら封筒から資料をとりだして一応の確認をする。前回もらったものよりも詳細な情報。
細かくは家に帰ってみよう。あたしは、資料を封筒に戻しバッグにしまう。
- 517 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/21(火) 06:53
-
「ところでさー」
「ん?」
「あんた、壊し屋以外の仕事する気ない?」
「はぁ?なにいきなり」
突然、ワケの分からないことを言う圭ちゃんに思わず胡散臭げな視線を投げる。
「いや、今度新部署が設立するんだけどちょっといろいろあって
銃器の扱いに長けてる人をスカウトしておいてくれって上から頼まれたのよ」
「へぇ〜どんな仕事?」
「簡単に言うとSPみたいなもんね。矢口なら銃器の扱いも慣れてるし適任でしょ。
まぁ、命張ってる壊し屋より収入落ちるかもしれないけど、少なくとも安全だし安定してるし悪い話じゃないわよ」
安全、安定。
そんなものは望まない。
「悪いけどいいよ」
「やっぱり」
圭ちゃんはあっさりとした声でいった。
「絶対断わられるって思ってたのよね」
「なにそれ」
「なんか矢口ってさ、死ぬために壊し屋やってるみたいなとこあるでしょ」
意識してやっているわけではないが圭ちゃんの言葉に目つきが悪くなるのが自覚できた。
ライフルを無意識に握る。
「……どういう意味?」
「別にお金に困ってるわけじゃないのに今回みたいな危ない仕事引き受けるし、
稼いだお金はほとんど使わないで死んだ妹さんの口座に振り込んでるでしょ。
ああ、これはまともに人生送るつもりないんだなって誰だって分かるわよ」
「…妹は行方不明なだけだよ」
「まあ、いいけどね。矢口の人生設計にケチつける気なんてさらさらないし」
あたしの言葉に圭ちゃんは同情とも憐れみとれるなんとも形容しがたい表情をうかべた。
- 518 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/22(水) 08:00
-
※
家につくと丁度玄関から配達業者と思われる服装の男が数人でてくるところだった。
どういうことだ。あたしは不審に思いながら部屋に入る。
瞬間、「…なにこれ?」あたしは、ぽかんと口を開けていた。
自分が家を出たときにはなかった大きなベッドが部屋の半分を占領していたのだ。
「あ、矢口さんお帰りなさい」
隣の部屋にいたらしいコンノがひょっこりと顔を出した。
「なにこれ?」
あたしは、同じ疑問を繰り返す。
コンノは大きな目をキラキラと輝かせて
「見ての通りベッドですよ。すごいでしょ」
「すごい?確かにすごいよ。こんなおっきいベッドはじめてみたよ!」
「でしょ。ふっかふっかの超高級ベッドなんですよ」
嫌味だったのに嬉しそうに頷くコンノ。
「で、こんなもの誰が使うの?」
あたしが尋ねるとコンノは分かってるくせにというように笑い
「もちろん、わたしですよ」言った。
- 519 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/22(水) 08:01
-
「あんたにはボックスがあるでしょ」
「あれ、狭いし固いしおちおち寝られなかったんですよね」
「スリープモードに入ればそんなもの関係ないでしょ」
言外にロボットの癖にという含みを持たせながら言うと、コンノはチッチッチと指を横に振り
「甘く見られては困りますね。私はスリープモードでもちゃんと体感機能が生きてるんですよ。
これだから、情緒のない人は」
やれやれと言う風に首を振った。
まったく人を苛つかせる天才だ。
あたしは、内心をさとられないように部屋の隅においやられているPCデスクに腰掛ける。
「情緒がなくてけっこう。っていうか、だいたいそれあたしの金で買ったんでしょ」
「ちょっと矢口さんの口座調べたら使いもしないのにお金がたくさん。
使わないお金はもったいないですよ、いつなにがある時代か分かんないですから──」
悪びれた様子のないコンノに頭が痛くなる錯覚を覚えてため息をつく。
コンノと暮らしだしてからこんなことばかりだ。
- 520 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/22(水) 08:02
-
「お疲れのようですね。お風呂で背中でも流してあげましょうか」
「キショイこといわないでよ」
「心外ですね。ドールには標準的に搭載されているプログラムらしいですよ」
「……あんた、ドールじゃないでしょ」
「まぁそうですけど、ドールになりすます時に基本データはインストールしてあるんですよ。
三原則は邪魔なんで省きましたけど」
だから、とコンノはお風呂場を指差してウィンクをした。
人間らしすぎて本当にムカつく。
あたしは、肩に掛けっぱなしにしていたライフルを構える。
「マジで壊すよ」
「それは勘弁して欲しいですね」
コンノは、両手を上げて困ったように微苦笑をつくる。
まったく、大した機能だ。これ以上、話していても疲れるだけだ。
あたしは、コンノを相手にするのはやめてさっきもらった情報をまとめていくことに決めた。
ライフルをおろしPCの電源を入れる。
- 521 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/22(水) 08:03
-
「新しい情報ですか?」
いつのまにか隣に立っていたコンノがもらってきたばかりの資料を素早く手に取る。
「邪魔すんなよ」
「いいじゃないですか。協力しますよ」
「あんたがいう協力ってのは邪魔するってことでしょ」
「あー、またあんたって言いましたね。何度も言いますけど――」
「うっさいなー。それ、返せって」
あたしは、コンノの手から資料をもぎ取る。
「まだ見てないんですよー。横暴だなー」
ぶーぶーと文句を言うコンノを適当にあしらいながらあたしは資料に目を通していく。
警察署でチラッと確認した時にも思ったが、予想以上に詳細な情報だ。
これでどうして見つからないのかが分からない。
Amokが製作していたロボットは軍事用のものだったらしい。
しかし、なんらかのプログラム異常が発生してロボットは研究所員を殺して脱走。
なし崩し的にAmokはそのまま消滅。
資料をパラパラとめくっていくと脱走したロボットの設計図がある。
一見、ドールとしても通じそうな10代の少女タイプ。見覚えのあるタイプ。
いや、見覚えがあるどころか――
「なにか分かりましたか?」
コンノがあたしを覗き込むように言う。
あたしは資料を持ったままコンノの全身を眺めた。
まったく同じタイプだ。
- 522 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/22(水) 08:03
-
ある目的で造られたんですけど、ある事件が起きてそのまま廃棄処分されるところを――
コンノの言葉。
ある目的が軍事目的。事件とはプログラムの異常。
なぜコンノがこれほどまでに人間に似せてつくられたかは敵に怪しまれないようにするため。
だとしたら、全て辻褄が合うではないか。
しかし、それならばなぜ――
「どうかしたんですか、矢口さん」
あたしの態度に違和感を感じたのかコンノが不思議そうに訊いてくる。
「顔色が悪いようですけど?」
なぜ、あたしを殺さないんだろう?
あたしは、無防備なコンノを蹴り飛ばし傍らに置いていたライフルを手にとった。
そんなあたしをコンノは尻餅をついたまま驚いたように見つめた。
本当に人間そのものだ。
- 523 名前:名無し 投稿日:2003/10/22(水) 23:01
- 新作キテタ━━川o・-・)━━ノリ川o・)━━(川川)━━(・oノ川━━(・∀・o川━━!!
- 524 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/23(木) 08:02
-
ライフルを向けられたコンノはゆっくり立ち上がる。
緊張に体が硬くなる。しかし、コンノは呆れるほど暢気な声で
「……いったいな〜。そういう趣味があったんですか、矢口さんは」
言いながらお尻をさすった。
油断させるための作戦だろうか。緊張を解くことなくコンノを睨む。
コンノの表情は一定したままだ。いつも通り人間臭い笑顔を浮かべている。
だが、その体はあたし同様緊張しており、あたしからなにか仕掛けられたら即座に対応できる状態にシフトしていることが易々とわかった。
あたしは、コンノに資料を投げ渡す。
バサリと音を立ててそれはコンノの足元に散らばった。
「それ、あんたでしょ」
足元の資料をコンノは無言で一瞥する。
「危うく騙されるところだったよ」
「…矢口さん」
コンノが資料を踏みつけて一歩足を踏み出す。
ライフルは変わらずコンノの動力部を捉えているのにだ。
そんなことはまったく意に介した風もなくコンノは近づいてくる。
「動くな!」
あたしは、牽制に発砲する。
コンノの足が止まった。
なにを考えているのか読み取れない目であたしを見ている。
- 525 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/23(木) 08:04
-
「このロボットはどうして人を殺すんでしょう、だったっけ?あんたの質問」
「あんたじゃなくてコンノですよ」
「どうでもいいよ。で、その答えはなんだったの?」
「プログラムって矢口さんは言ったじゃないですか」
コンノは冷静に言う。
「本人…人じゃないけど、あんたに聞きたいんだよ」
「じゃぁ、矢口さんにも質問に答えて欲しいですね」
いやに意味ありげに微笑むコンノに鼓動が少し早まる。
「なに?」
「私がしたもう1つの質問ですよ。人はなぜ人を殺すんでしょうか?」
「…それは、感情があるからだって、言っただろ」
一度言った嘘臭い言葉をあたしは口にする。
コンノはあたしの答えに満足したように笑い
「感情ですか。それは、無差別テロというものでも当てはまりますかね」
瞬間、あたしの心臓は跳ね上がる。
なぜこのタイミングでそんな単語が出てくる。
なにを知っているんだ、こいつは。全てを知っているというのだろうか。
あたしは、探るようにコンノを見る。
「少し調べたんですよ、矢口さんのこと」
あたしの視線に気づいたのかコンノは言う。
「なんで、そんなこと」
掠れた声で問うとコンノは興味があったからですよ、と笑った。
- 526 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/23(木) 08:06
-
「2年前、テロで幼馴染の方が行方不明になってますよね。
遺体は発見されないまま公式に死亡通知が出されてました」
街の中央に建設されたセンチュリービル。
オフィス、レストラン、ファッションなどをそなえた複合ビルでいつも多くの人間がそこにいた。
街の中枢を担っていたそれがテログループによって爆破され、何万人もの犠牲者を出したのは有名な話だ。
「テロを企てたリーダー格の人物はその後行方不明、既に死亡しているとも噂されてますね。
そのおかげでグループに内部抗争が起こり今はもうちりぢり──これじゃぁ、憎しみにまかせて仇討ちもできませんね」
コンノの端的な話を聞いているとそれは本当にくだらないことだと実感できた。
ずっとそうだとは思っていたけれど、これほどだとまでにくだらないことだったのだ。
コンノは全てを見透かした目であたしを見ている。
「…なにが言いたいの?」
「つまりですね、爆破テロをする人間はどういう理由でそうしたのかを知りたいんですよ」
コンノが一歩足を踏み出した。
先程のように牽制をするような余裕は今のあたしにはない。
- 527 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/23(木) 08:08
-
「そうそう、今回のロボットによる連続殺人なんですけどね。あれ実は、無差別じゃないんですよ」
こちらの返事も待たずにコンノは勝手に話し出した。
「ロボットは正確ですから誰か1人を殺すために関係ない人間を殺すようなことはしません」
「…じゃぁ、殺された人間は?」
資料に載っていた被害者リストにはまったく関連性が見当たらなかった。
話がそれたことで少しだけ落ち着きを取り戻して尋ねる。
「殺された人間は直接的にでも間接的にでもAmokと必ず関わっているんですよ。
出資者だったり、企業だったり……
殺人ロボットのプログラムはAmokのコンピュータに名前が載っている人間を殺すようになってます。
つまり、プログラム通りという矢口さんの答えは正解だったわけです」
流暢に喋るコンノに呆気に取られながらも
「なに、他人事みたいに言ってんの」毒づく。
しかし、コンノは
「矢口さんと違って他人事ですからね」ニッコリ笑った。
心臓を抉るような言葉にあたしは言葉に詰まる。
- 528 名前:第2話 The small world of collapsing 投稿日:2003/10/23(木) 08:10
-
「私は殺人ロボットではないですよ」
「え?」
「言ったでしょ。ある目的で造られたんですけど、ある事件が起きてそのまま廃棄処分されるところだったって。
私は、殺人ロボットのプロトタイプとして造られたんですよ。
一応、完成したら一緒に仕事をするはずだったんですけどね、
ご存知の通り殺人ロボットが研究所の人間を殺して脱走しちゃったもんですから私は仕事を失って散々ですよ」
「…あんたじゃないの?」
「ええ。私ではないですね。だから、それ下ろしてほしいんですけど」
コンノはあたしの手にあるライフルを指差す。
一瞬、迷ったもののコンノの体から警戒態勢が消えていることにきづいてあたしは素直にそれをおろした。
コンノは満足げに笑む。
「で、さっきの質問に戻りますけど。
人が人を殺すのは感情っていうのはなんとなくですが分かります。
でも、無差別に人を殺す人はどういう理由でそうするんですか?」
「……さぁ」
「分かりませんか?」
念をおすようにコンノは言う。
分からない。
なぜなんて、今さら聞かれても分かるはずがない。
項垂れながら首を振る。
「そうですか」
コンノは幻滅したようなため息を吐くと部屋を出て行った。
追いかける気はまったくなかった。
- 529 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/24(金) 07:44
-
めまぐるしく飛び交う嘘、情報、犯罪。
あの頃の私はこの手で何でもできると思っていた。できないことなんてなにもないと。
だけど、それは単なる思い違いで
それに気づかなかったあたしはバカみたいな過ちを犯した。
ロードからおりると途端に人の群れと行き当たる。
立ち並ぶ高層ビル。人工的に造形された直線の世界の象徴。
排気ガスと雑踏の中で生まれる熱気、無機的な香りのない空間が大都会を巻き込んでいる。
あの日以来、来たことのない街の中心部。
あたしがいなくても世界は動いている。
コンノがいなくなって数日後、あたしは久しぶりに外に出た。
目的なんてない。ただもう一度確認したかっただけだ。
人1人がいなくなっても世界は変わらず動くってことを。
- 530 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/24(金) 07:46
-
※
目的のない数時間を過ごした後、あたしは思い立って警察署に行った。
仕事を断るためだ。
信じてといった手前なんの連絡もなしにロボットの捜索をやめるのは気が引けた。
そこまで気が回るほどあたしは落ち着いてきたんだろう。
大丈夫だ。あたしは、まだ大丈夫だ。
警察署の扉を開ける。瞬間、嫌な匂いがした。
硝煙と血の入り混じった独特の匂い。床には砕けたガラスが散らばっている。
右奥の廊下から銃声。悲鳴。足音。
そして、静寂。
異様な気配。
何かが起こっている。確実になにかが起こっていた。
恐る恐る移動し廊下の奥を窺う。
何体もの死体。
いったい、なにが起こったんだ。
あたしがここに来て銃声を聞いてからまだ数分しかたっていない。
いくら危機感のない警察官だったとしてもこれほどあっさりと殺されるものだろうか。
あたしは、湧き上がってきた唾をゴクリと飲み込む。
この殺戮者は何者なんだ。
- 531 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/24(金) 07:47
-
なるべく足音を立てないように気をつけながらゆっくり歩を進める。
見知った空間はまるで始めてくる場所のように感じられた。
あたしはいつもライフルのある場所に手を伸ばし、今日は持っていなかったことを思い出した。
あるのは腰に挟んだハンドガンだけだ。
爆発しそうな心臓を意識しながら、どうにか呼吸を落ち着かせようと努力する。
圭ちゃんは無事なんだろうか。
不意に思い出した。
彼女のいる場所は、署内の地下だ。まだ生き残っている可能性もある。
どうする?逃げるか?
あたしは、ハンドガンを片手に走り出した。
- 532 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/24(金) 09:24
- 新作、ジュマペール書いた人とは思えないほどシリアスだ(w
こういうの好きなんで頑張ってください
- 533 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/25(土) 08:14
-
※
チカチカと点滅する照明。
静かだ。死体もない。壁にもたれかかるようにして様子を窺う。
いつも圭ちゃんが座っているはずのデスクは空いている。
なんだ…上手く逃げたのか。あたしがそう安堵の息を漏らした瞬間
「あれ?矢口、なにしてんの?」
反対側の通路から暢気な声がかけられた。
コーヒーカップを持った圭ちゃん。軽い足取りであたしに近寄ってくる。
上でなにが起こっているのかまったく知らないようだ。
あたしは呆れて彼女を見ていたが、ふとその背後になにかが忍び寄っていることに気づいた。
「圭ちゃん!!避けてっ!!!!!!」
ソレが明確な意志を持って動き出すと同時にあたしは叫んでいた。
圭ちゃんが反応できるかどうかも考えずにソレに向かって引き金を引く。
銃声と悲鳴と着弾音。全てが重なる。
油断していたのか着弾の衝撃でソレは後ろに吹っ飛び床に激突してその動きを止める。
横に飛んで銃弾を避けた圭ちゃんは呆然とあたしを見ている。
「なにしてんの!早くこっち来て!!」
あたしが怒鳴るように声をかけるとようやく圭ちゃんは我に返って立ち上がった。
- 534 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/25(土) 08:17
-
「いったい、なんなのよ?」
「警察お待ちかねのロボットが到着したんだよ」
「え?」
軍事用に作られていたロボットは警察に届けられるはずだった。
新しくつくられるといっていた課に配属される予定だったのかもしれない。
だとすれば、Amokのコンピュータにこの署の人間の情報が載っていてもおかしくない。
そして、その情報をもとに殺人を犯すロボットがここにきた。
真偽はともかくそれがあたしの出した結論。
「ともかく、圭ちゃんは逃げてよ」
「あんたは?」
圭ちゃんの戸惑いに満ちた声と、ソレが立ち上がるのは同時だった。
あたしの攻撃で左肩が少し削れているがたいしたダメージにはなっていないようだ。
ゆっくりとこちらに向かってくる。
「矢口…逃げないと」
圭ちゃんが震えた声であたしの肘を引っ張る。
逃げても無駄だ。
人を殺すために作られたソレは追跡を途中でやめるほど甘くないだろう。
一度狙いをつけたなら例え地の果てまでだって追いかけてくる──あれは、きっとそういう類のものだ。
そして、たったいまソレに攻撃を加えたあたしもソレの攻撃対象になっただろう。
ならば、戦うしかない。
- 535 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/25(土) 08:19
-
「圭ちゃんだけ逃げて」
「でも」
ソレが攻撃態勢に入るのが分かった。
「圭ちゃんいると邪魔なんだよ!!」
あたしは、圭ちゃんの手を振り払い、凄まじい速度でこちらに接近してくるソレに引き金を引く。
ソレは、今度は吹き飛ばない。
銃声。銃声。銃声。
すぐ間近までソレが来る。
ヤバい!
そう思った瞬間、世界が回転した。
逆転する天地の中、なんとか受身を取る。
すぐに次の攻撃に備えて身構える。が、ソレはあたしを攻撃した位置で止まっている。
なんだ?不思議に思ってそこに目をやると視界にまだ逃げていない圭ちゃんの姿が映った。
「のバカッ!!」
舌打ちしながらソレの足元を狙って引き金を引く。
着弾。
バランスを崩してソレが倒れる。
圭ちゃんは一瞬あたしを見てはじかれたように走り出した。
- 536 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/25(土) 08:21
-
「ったく…さっさと逃げろよな。ねぇ?」
ゆらりと立ち上がったソレに笑いかける。
ソレは、タイミングを見計らっているのか攻撃をしてくる気配はない。
3原則に当てはまらないロボット。人を殺すことが許されたロボット。
いったいどう呼ぶのが正しいのだろう。
改めて思ったのは、コンノのほうが喋るだけまだましだというどうでもいいことだった。
あたしは、銃を握りなおす。
人間に似せられたボディに、凄まじい機動力、これで装甲が厚くなっているということはまずないだろう。
残弾数がどのくらいか覚えていないが、
的を絞って確実に銃弾を撃ち込めばきっと破壊できるはずだ。
あたしが銃を構えると同時にソレの姿がぶれた。尋常でないスピード。
死神の鎌のようなブレードが光った。
咄嗟に後ろに飛んで避ける。鎌が左腕を掠める。
信じられないほどの激痛が走った。
飛び散る。赤。紅。朱。
歯を食いしばって痛みを意識から排除する。
視界にソレがうつる。
ソレはすぐに次の攻撃を加えようと足を一歩出し体勢をくずす。
先程の足元への攻撃が功を相したのかだろうか。
ともかく、あたしにとってはその一瞬で十分だった。
一挙動でソレの動力部があるところに照準、発砲する。
5発目で装甲がはがれる。
ソレが動く時間を与えないように休むことなく引き金を引き続ける。
動力部が露になった。後一発で、破壊できる。
あたしの勝ちだ。
引き金を引く。
カシッ。
撃鉄が空の弾倉を叩く音が空間に響いた。
- 537 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/25(土) 08:23
-
「マジかよ…」
弾切れ。
最悪のタイミングだ。
ブレードが迫ってくる。ソレを蹴り飛ばした反動で横に転がる。
微かに腹部を掠めるブレード。
痛みを感じるまもなくソレの蹴りが飛んでくる。
再度回転する世界。
事務室のガラスを突き破ってあたしは吹き飛ばされる。
今度は、受身を取る暇もなかった。したたかに背中を打ちつける。
一瞬、呼吸が止まった。
全身が狂ったように酸素を求めているのに肺が痛くて息ができない。
左腕の傷口からもドクドクと血が流れているのか生温い。
起き上がろうとすると涙が出そうなほどの痛みが全身に走った。
動くのは右腕だけ。
武器はもう何一つない。
ここで死ぬのか。ぼんやりと思う。
- 538 名前:つみ 投稿日:2003/10/26(日) 00:50
- 凄い作品を見つけてしまいました・・・・
- 539 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/26(日) 08:56
-
「なんか矢口ってさ死ぬために壊し屋やってるみたいなとこあるでしょ」
圭ちゃんの声が遠く聞こえた。
死ぬため?
あたしが、死ぬために壊し屋をやっていたのなら今の状況は願ったり叶ったりだろう。
でも、違う。そんなんじゃない。
あたしが壊し屋になったのは死にたいからじゃない。
じゃぁ、なんのために?
「分かりませんか?」コンノの声。
分からない。
いや――分かっている。
カツンという音が聞こえた。床を踏む死神の足音。
あたしは、ゆっくり瞳を開ける。痛みでいつの間にか瞼を閉じていたらしい。
ぼんやりとした視界が広がる。少し離れた場所にソレは立っていた。
──あたしは、死にたいなんて言える立場じゃない
既に射程距離内だというのに、ソレはさらに近づいてくる。
──みっともないくらい無駄に生きて、苦しんでのた打ち回ってゴミみたいに朽ちるのが一番似合ってる
あたしのすぐ近くまで来てソレは止まった。
──だってそうじゃんか。まったく関係ないたくさんの命を奪って、大切な人までその手にかけたんだからそれくらい苦しんでもまだ足りないだろっ!
- 540 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/26(日) 08:57
-
ソレの顔にはじめて笑みが浮かぶ。酷薄な笑顔。
あぁ、これはロボットだな。あたしはぼんやりした頭で思った。
ソレは、ゆっくりブレードを振りかざす。
不意に彼女のことが脳裏をよぎった。
この期に及んで自分に都合のいい思い出に浸るほどあたしは恥知らずではないし、
彼女に許しを乞えるほどまともな人生を選んでこなかった。
だから、これは在り来たりでくだらない感傷だろう。
無理矢理、彼女のことを頭から追い出す。そうするとあたしの脳裏は空っぽになった。
これでいいんだろう。
屑みたいなあたしにはがらんどうのままが一番いい。。
ブレードが振り下ろされた瞬間、パンと火薬がはぜる聞きなれた音がした。
ソレがあたしに向かって崩れ落ちてくる。
あたしは、思わず右腕を動かしてソレの下敷きになるのを防いでいた。
- 541 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/26(日) 08:59
-
「あれ?まだ動けるじゃないですか」
あたしが右手で押さえていたソレをヒョイッと取り除くとそいつは暢気にいった。
「……あんた、なんでここに?」
「あんたじゃなくて」
「コンノ」
この期に及んでバカみたいなことにこだわるコンノに苦笑する。
「そうです」
コンノは満足そうに頷きソレをまるでゴミを扱うように手で掴むと放り投げた。
「…で、なんでここにいんの?」
「ずっと言ってなかったんですけど、AIが脱走した後から私は彼女を殺すために
独自に捜索をしてたんですよ。で、たまたま矢口さんもAIを捜索してたんでこれ幸いと思ってたんですけどね」
「……じゃぁ、なんで家でたんだよ?」
「矢口さんが1人になりたそうだったんで気を遣ってみたんですけど、なにか?」
「気を遣うって柄かよ」
「私は、ピースな愛のポジティブですからね。起きれます?」
コンノは意味の分からない言葉を言いながらあたしに手を差し出す。
あたしは、腹部を押さえながらコンノの手を握る。
立ち上がると血が足りないからかくらくらした。体もズキズキと痛む。
- 542 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/26(日) 09:03
-
「歩けますか?」
「…無理っぽい」
「じゃぁ、おんぶしてあげます」
コンノはいきなり屈みこんだ。
そのままの体勢で「どうぞ」とあたしを振り返る。
「はぁっ!?いいよ、いらない」
「遠慮はなしですよ」
馬鹿だ、こいつは。まったく警戒のない背中に毒づく。
あたしが壊し屋で自分は違法廃棄ロボットだと言う立場を忘れているんだろうか。
今この瞬間あたしに壊されても文句は言えないのに。
っていうか、こいつだって元々はあたしを殺す気だったんだから今が絶好の機会なんだけどな。
――ホントに馬鹿なヤツだ。
「早くしてくださいよ」
コンノの声にあたしは1つ嘆息してからその背中に体を預けた。
コンノはあたしに振動を伝えないようにしてるのかゆっくりと歩き出す。
歩きながら救急車が来るまであと10分程だとコンノが口にした。
別にどうでもいい。
- 543 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/26(日) 09:06
-
※
外はいつのまにか曇っていた。
凍えた灰色の雲が街を覆っていていまにも雨が降りだしそうだ。
まだ救急車は来ておらずコンノはあたしをおぶったまま「退屈ですね〜」と空を見上げた。
あたしはゆっくり口を開く。
「──誕生日だったんだ」
「はい?」
「なっちが死んだ日はあたしの誕生日だったんだよ」
コンノはあたしを気にするようにチラリと首を回したがすぐにそれを戻した。
あたしは気にせずに話を続ける。
「なっちは彼氏の家に行くって言って出かけてそれでそのまま帰ってこなかった。
でも、ホントはあたしの誕生日プレゼントを買いにセンチュリービルに行ってたらしくてさ」
氷の粒が紛れ込んでいるような冷たい風が頬を撫でる。
泣きたくはならなかった。
「あたしは馬鹿みたいに自分のしてきたことに頭一杯だったから
なっちが帰ってこなくてもそう気にしなかったんだ。
それよりも、いつ事件のことが流れるかってずっとTVに釘付けでさ。
速報で事件のことが報道されてガッツポーズなんかしちゃって。
乾杯しようと思って冷蔵庫開けたらその中に手作りのバースデー・ケーキが入ってたんだ。
そのとき、はじめてあたしは今日が自分の誕生日だってことに気づいたんだ」
気づいた時にはあたしの誕生日を祝ってくれる人間はいなくなってたけど。
- 544 名前:第3話 The end in the end 投稿日:2003/10/26(日) 09:07
-
「ホントどうしようもないバカだよね」
情けない笑いが喉の奥から漏れる。
今まで誰にも言わなかったこと。かといって、忘れることもできなかった。
忘れられるはずがなかった。
この世界でたった一人の大切な人を殺しておいてそれを忘れてのうのうと生きるなんてできるはずがなかった。
だから、せめて苦しもうと思った。
苦しんで苦しんでその果てに地獄に堕ちればいいのだと。
それはあまりにも自己本位な考えだけれども――
あたしが話し終わるのを待っていたかのように冷たいモノが頬に当たった。
雨が降り始めたようだ。曇った天を仰いで雨粒を顔で受け止める。
この雨がなにもかもを流してくれるなどとは思わない。ただ、なんとなくそうしたかった。
「矢口さん」
不意にコンノがあたしを呼んだ。
「……ん?」
「これから私のことコンコンって呼んでもいいですよ」
「なにそれ?」
「特別です」
コンノが微かに笑う。
その振動が傷口に響いて痛かったけれど不思議と気にならなかった。
遠くでサイレンの音が聞こえていた。
Fine
- 545 名前:七誌 投稿日:2003/10/26(日) 09:16
- ジュマペールを書いたあと、
まったく恋愛色のないシリアスな話を書いてみようと思いました。
矢口の大切な人は、なっちじゃなくて本当は矢口の妹の予定だったし
矢口妹の年を知って急遽差し替えたり。
それはそれとして、最終的になんの結論も出さないまま終わってます。
矢口がこれからどうなっていくのか、コンノがどうなっていくのか
読んでくださった方がそれぞれ自由に思ってくださればいいなと。
自分はけっこうそういう〆方が多いんで。
_______ _______ ______
〈 ドモッ、スミマセン....。 〈 スミマセンスミマセン...。 〈 コノトオリデス!
∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||'-' 川ヾ ||'-' 川 ヾ
∨) (八 ) ||'-' 川、
(( 〈〈 ノノZ乙
ありがとうございました。
- 546 名前:つみ 投稿日:2003/10/26(日) 13:23
- いやはや・・・凄くいい作品でした!
こんこんのどこかで聞いたことのあるようなセリフ?もよかったです!
- 547 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/27(月) 14:25
- 一気に読んでしまいました。なんかすごいよかったです。
ジュマペールと同じ人が書いたとは思えないけど海の前半見ると納得(w
- 548 名前:―― 投稿日:2003/11/10(月) 19:56
- 待ち合わせの時間から約30分程遅れて少女が飛び込んできた。
帽子を目深に被っているがすぐに分かる。
キョロキョロしている少女に自分のいる位置を教えるため女は軽く手を上げる。
それに気づいた少女は少し強張った顔でツカツカと女の元へ来ると向かいあう席についた。
注文を取りにきたウェイトレスに飲みもしないコーヒーを頼み
少女はいやに真剣な面持ちで女を真正面から見据えた。
- 549 名前:―― 投稿日:2003/11/10(月) 19:58
-
「・・・・・・やめたんだって?」
「うん・・・まぁたいして動いてもなかったけどさ」
そういって笑ってみせた女に少女は切なげな嘆息を漏らす。
「なにやってんの?」
「なにやってんだろうな」
沈黙。
お待たせしました、とウェイトレスが薫り立つコーヒーを少女の前に置く。
女は、先にきていた自分のアイスコーヒーのストローに口をつけた。
少女は、目の前のコーヒーの湯気をただ見つめている。が、やがて耐え切れないように口を開いた。
「これからどうするの?」
「これからどうしようか」
女は口元に薄い笑みを張り付かせ少女を窺うように見る。
少女は、呆れたように眉を寄せ
「バカだね」
「バカだよな」
しみじみと少女の言葉を噛締めるように呟く。
女が弄くっていたアイスコーヒーのストローと中の氷がぶつかってカランと澄んだ音を立てた。
- 550 名前:―― 投稿日:2003/11/10(月) 20:00
-
「・・・まぁ、なるようになるんじゃない?」
「なるようになるか」
ぼやくような呟き。
鸚鵡返しの答えは女の精一杯の強がりだったのかもしれない。
少女は、一瞬目を伏せすぐに女と視線を合わせた。見詰め合う。
それから、なにか思い出したように「ぁ」と小さな声を漏らした。
「・・・・・・遅刻してゴメンね」
「それ普通一番にいうことだろ、バカ」
- 551 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/13(木) 03:22
- 感慨深いショートストーリーでした。
こーゆーのも好きです。
- 552 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/13(木) 17:24
- この人はもしかして・・・・・・
- 553 名前:七誌 投稿日:2003/11/23(日) 00:54
- 川‘〜‘)||人(^〜^o)
- 554 名前:Calvary 投稿日:2003/11/25(火) 11:13
-
An ambiguous relation
- 555 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/25(火) 11:14
-
いつもは穏やかな私の工房では先程から熱い口論が繰り広げられている。
私の目の前で。
口論の原因はマスターである金髪の少女がドールの体感機能のレベルを下げて欲しいと私に注文したこと。
それはかなり珍しい注文だった。逆の注文なら多数あったけれど。
ドールはそのことを聞かされていなかったらしく血相を変えて抗議をはじめた。
それから10分。何度も同じやり取りが繰り返されている。
- 556 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/25(火) 11:15
-
「絶対にいやですからね。私のお買い物よりも無駄なお金の使い方ですよ、それは」
「いいからしてもらえって。ただでさえお前は普通のドールと違うんだから」
「そりゃぁ、私はそこらのおバカなドールとは違って超がつくほどの完璧なドールですけど……
ともかく今のままでいいです。お布団はふっかふかが当たり前です!」
「あ、おい!!ちょっと待てって!!」
制止の声も聞かずに少女のドールは店を出て行った。
命令に忠実なのが売りのドールにしてはおよそらしくない行動。
それは彼女の姿に重なる。彼女以外にもあんなドールがいたのかと私はなぜかホッとしていた。
- 557 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/25(火) 11:17
-
「…ったく、あいつ」
ドアにつけられた鈴を睨みながら少女が苛立たしげに床を蹴る。
蹴った拍子に肩に掛けていたライフルがズルリと落っこちた。
少女は慌ててそれを引き上げる。
流れるようなコミカルな動きに笑っていいものかどうか逡巡していると少女が
「すみませんねぇ、あいつ我侭で」と私のほうを振り返って申し訳なさそうに頭を下げた。
そこでまたライフルがずり落ちる。
わざとしていえるのかと思わせるほどのタイミングだ。
吹き出しそうになるのをこらえながら私は
「いえ、大丈夫ですよ。マスターとドールが喧嘩できるなんていい関係なんじゃないですか」言った。
本心だった。私の言葉に少女は「いい関係ねぇ…」と呟き苦笑を浮かべる。
- 558 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/25(火) 11:18
-
「まぁ、いいや。今度はあいつちゃんと説得してから来ることにするよ」
「お待ちしています」
少女は、小走りで工房からでていった。
なんだかんだ言っても飛び出していったドールのことを気にしているらしい。
やはりいい関係だと思う。2人が出て行ったドアを一時見つめる。
それからたまっている仕事にとりかかることにした。
- 559 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/25(火) 11:19
-
私の仕事は、擬似恋愛用のために創られたドールのカスタマイズをすることだ。
元々ドールにはそれ相応の基礎プログラムが備え付けられている。
だけど、より自分専用のドールを求める利用者は多い。
当然といえば当然のことだ。彼らは自分の思い通りになる人形が欲しいのだから。
ただのメンテナンスと違ってドールのカスタマイズを生業とするカスタマーは
――主に性的な所に関わってくるためより高度の技術が必要とされ――まだまだ需要のそれには追いついていない状況だ。
おかげさまで、私の商売はけっこう繁盛している。
ドール普及に伴ってできた職業の中で、カスタマーは壊し屋についで高給取りといえるだろう。
別にそのことに誇りを持っているわけじゃないけど――むしろ、逆だ――暮らしが楽なのは結構なことだと思う。
衣・食・住に困ったことはないし、自分の趣味に取れる時間も僅かながらある。
私は、今の生活にかなり満足している。
今の生活、彼女との生活に。
- 560 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/26(水) 07:37
-
2
- 561 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/26(水) 07:39
-
「よっすぃ〜、そろそろ起きなよ」
朝、私のベッドを占領している彼女に声をかける。
「ん……カオリンも一緒に寝たら」
彼女は、寝ぼけ眼のままバカなことを言って少しだけ横にずれる。
そうすると彼女の隣に1人分のスペースが空く。
「ほら」
パンパンと空いたところを手で叩きながら子供のような瞳で私を見つめてくる。
仕方なく私は彼女の隣に身を滑り込ませた。
「飯田さん、体冷たい」
彼女は、私の背中に腕を回し
「仕事しすぎ」言った。
「仕事じゃないよ」
「…じゃぁ、なに?」
「よっすぃ〜に友達作ってあげてたの」
言うと、彼女は不満そうに眉間に皺を寄せて私から体を離した。
喜んでくれると思っていただけに少し意外だ。
- 562 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/26(水) 07:40
-
私がその態度に戸惑っていると
「どういうこと?」彼女が問うてきた。
「カオリが仕事でいない時、暇って言ってたじゃん。
だから、パーツかき集めて一からドールつくってみたんだよ」
「…ふ〜ん」
彼女は、気のない返事をするとベッドから体を起こしそのまま部屋を出て行ってしまった。
その後姿を見送ってから嘆息する。
いったい、なにが気に喰わなかったのだろう。
いつまでたっても気まぐれな彼女の行動は私には理解できない。
ふと先日のマスターとドールの喧嘩のことを思い出す。
言いたいことがあのドールのように言ってくれればいいのに。
それとも、どれだけ長く一緒に暮らしても元々のマスターじゃない私では無理なのだろうか――考えて、私はベッドに体を横たえたまま疲れた双眸を閉じた。
- 563 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/27(木) 01:36
- (〜^◇^)人(・ー・o川
- 564 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/27(木) 08:28
-
- 565 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/27(木) 08:29
-
彼女は、私が初めて仕事と関係なく接したドールだ。
その頃、カスタマーとしてまだまだ駆け出しだった私の一日は
カスタマイズに必要なパーツをスクラップ置き場から拾ってくることからはじまっていた。
丁度、ドールが大流行した時期でそれと同時にスクラップ置き場にドールの残骸が捨てられるようになっていたからだ。
その日も、そうだった。
いつものようにスクラップ置き場にいって――そして、彼女を見つけた。
元々のマスターの趣味なのか少し下品に感じられる金色の髪に大きな二重の瞳が印象的だった。
スクラップ置き場には彼女のように捨てられたドールはたくさんいた。
それなのに――どうしてだか分からない。
彼女と目があった瞬間に連れて帰られなければいけないような気がした。
思えば、一目惚れだったのかもしれない。
なぜなら、そのときの私は彼女が異性としてつくられたドールだと勘違いしていたのだから。
- 566 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/27(木) 08:31
-
家に連れ帰って体のメンテナンスをしてやるとぐったりしていた彼女はすぐに元気になった。
ただ結構な人見知りなのかなかなか私に打ち解けようとはしてくれなかった。
それはドールとしてどうなのかとも思ったが、私は私で人見知りなので上手く接することが出来ず、
しばらくの間私たちはぎくしゃくしたまま日々を過ごすことになった。
- 567 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/27(木) 08:33
-
「い、飯田さん」
ある日のことだ。彼女が不意に私の名前を呼んだ。
私は、驚いて口も聞けずに彼女をただバカみたいに見つめた。
たかだかそれくらいのことで、と思われるかもしれないけれど――その時まで彼女は私のことを一応マスターと呼んでいたのだ。
元々、私は彼女の本来のマスターではなかったし、そう呼ばれることに少し抵抗があった。
そのことを彼女にも何度か言ったことがある。
それでも彼女は頑ななまでに私のことをマスターと呼ぶのをやめなかったのだ。
なのに、その日急に――あまりにも驚いてしまって私が返事もできずにいると
「違いましたっけ?」彼女は不安そうな声でいった。
慌てて首を振る。
「よかった。記憶領域壊れてるのかと思いました」
彼女はそういってホッとしたように笑った。
それが随分と彼女の印象を変える笑顔で、私はまたバカみたいに口を開けなければならなかった。
- 568 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/27(木) 08:34
-
- 569 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/27(木) 08:35
-
結局、なにがきっかけで彼女が私のことをマスターと呼ばなくなったのかは今だに分からない。
単純に私がマスターに値しないだけなのかもしれないけれど、あの頃から彼女は気まぐれなのだ。
私は深く嘆息し重い体を起こす。寝不足のせいで少しだけクラクラした。
だけど、そうもいってられない。
機嫌を損ねた彼女がそろそろ物に当たってもいい頃だ。
ボサボサになった髪を撫でつけて私は隣の部屋に向かった。
- 570 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/28(金) 06:56
- ( ・e・)
- 571 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/29(土) 08:09
-
- 572 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/29(土) 08:10
- 3
私が部屋にはいると彼女は白いソファの上にあぐらをかいて座っていた。
なんの感情も見せない無表情。綺麗な顔立ちのせいでそれはひどく冷たい印象を与える。
「よっすぃ〜」
呼びかけると、ふいっとわざとらしく私がいるほうとは反対側に顔を向ける。
まるで子供だ。さて、どうやって不機嫌な彼女をなだめようか・・・・・・
私は、気づかれないように息をつき彼女の隣に座る。と、彼女は体ごと私に背を向けた。
- 573 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/29(土) 08:11
-
「ねぇ、よっすぃ〜、なに怒ってるの?」
ともかく理由が分からなければどうしようもない。
私は、仕方なくそうたずねた。
「分かんないんですか?」
言外にそれくらい分かって当たり前だという響きが含まれている。
だけど、分からないものは分からない。
「…ゴメン、分かんない」
私が言うと彼女はようやくこちらに向き直った。
先程と違ってどこか悲しげな眼差し。
- 574 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/29(土) 08:11
-
「新しいドールつくったんでしょ?」
「うん。会心の作だよ」
重たい空気に耐えかねて冗談めかして言うと、彼女はますますその瞳を曇らせた。
「飯田さんは、あたしのこと嫌になった?」
「え?」
「だって……その新しい子にあたしの代わりさせるんでしょ?」
言われてはっとした。彼女は一度捨てられているんだ。
機械だからといって傷つかないわけじゃない。
特にドールのように人間に似せてつくられているのならなおさら。
マスターに捨てられたというのは彼女たちにとってどれほどの傷になるのだろう。
人間が新しいドールを連れてくるのは自分が捨てられるということ。
彼女がそう考えてもおかしくはないのに――
あまりにも軽率すぎた。
- 575 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/29(土) 08:13
-
「ごめん、よっすぃ〜。そういうつもりじゃないんだよ」
私は、優しく彼女の両頬を手で挟みこむ。
彼女は、泣くのをこらえているかのように口をきゅっと結んだ。
「ホントによっすぃ〜に友達をつくってあげたかっただけで……ゴメンね、不安にさせて。ゴメンね」
「…ホントに?」
「うん」
「絶対?」
「うん」
頷くと彼女はホッとしたように口元を綻ばせ私に抱きついてきた。
- 576 名前:An ambiguous relation 投稿日:2003/11/29(土) 08:14
-
「よっすぃ〜?」
「飯田さんの一番はあたしですか?」
耳元で囁かれる。彼女の問いに私は顔が赤くなるのを感じた。
子供っぽくてホントは小心者のくせにこんなとこだけ気障に決めてくれる。
一体どんなプログラミングをしたらこんなドールができるんだか。
私は、半ば呆れながら――
しかし、彼女がこういうことを口にできるような関係も傍から見たらいい関係なのかなと思った。
あのときの少女の苦笑の意味がなんとなく分かったような気がする。
あの2人がマスターとドールというただ一方通行の主従関係ではないように、私たちもそうなのだろう。
だから、きっと彼女は私のことをもう二度とマスターとは呼ばないはずだ。
なぜなら、私たちの関係は――
「飯田さん、答えは?」
催促の声に、私は確かな意志を持って頷いた。
Fine
- 577 名前:七誌 投稿日:2003/11/29(土) 08:17
-
非生産的な恋愛を書きたくなりまして。でも、切なくするつもりはなくて。
まぁ幸せな感じにできあがりましたというわけでして。
Calveryの第二段ですね。
冒頭の2人はあの2人のその後だったりもします(バレバレです
実はさりげなく登場人物たちをすれ違わせたりの連作風味にするつもりだったんですけど、
海のもあるしそうそうネタも思い浮かばないしでやめました。
特に山梨オチ梨意味梨ですみません(哀さんAA略
- 578 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 13:25
- (。'〜')人(゚皿゚ )
- 579 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/30(日) 00:14
- Calveryの世界観好きです。
また思い浮かんだらさりげなく交信あったら、いいなぁ
- 580 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/04(木) 03:11
- 更新キテタ━━━(゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚ )━( )━( ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!
- 581 名前:七誌 投稿日:2003/12/15(月) 07:53
- ( ‘д‘)( ´ Д `)
- 582 名前:Calvary 投稿日:2003/12/16(火) 09:45
-
Together with you to the last
- 583 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/16(火) 09:47
-
そのドールは特別品ということもあってショップで売られている似たような顔をしたドール達とは違って見えた。
※ ※
「あと数分もしたら目を覚ますよ。なんか不具合があったらすぐにカオリのところに連絡して」
このドールの製作者でドールカスタマーであたしの遠い親戚でもある飯田さんは連絡先の書いた番号をベッドの脇の机に置くと
「それじゃ、元気でね」とあたしを強く抱きしめて部屋を出て行った。
あたしは、おざなりに飯田さんを見送るとまだ眠っているドールを見つめた。
彼女は、もともと飯田さんが一緒に暮らしているドールが寂しくないようにと
友達用にプログラムを組んでつくったらしい。
だけど、結局彼女は使われることがなくなって飯田さんの家の倉庫に眠っていた。
その時のあたしはまさに悲劇の主人公になったばかりで病院に閉じ込められていた。
入院している間、あたしはいろいろなドールを見た。
それは全て死を待つだけの患者に与えられる看取り用のドールだった。
病院側はあたしにもドールによる精神の安定を与えてくれようとしたけれど、
それらはあたしの性分にはまったく合わなかった。
- 584 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/16(火) 09:48
-
その話を聞きつけた飯田さんがお見舞いがてらに彼女を連れてきてくれたのだ。
彼女は目がちょっと離れててやけに存在感ある鼻をしてて
パーツパーツを取っていくとアンバランスなのに、なんだかとてもキレイだと思った。
あたしを看取るのはこの人だ、ピンと来た。
そこで、飯田さんに無理を言って彼女のプログラムを変えてもらうように頼んでみたのだ。
飯田さんはあたしの申し出に戸惑っていたけれど、
さすがに死期の近い人間の頼みを断れるはずがなかったのだろう。
意外にあっさりと了承してくれた。
彼女のプログラムを変えている間、あたしの病気は病院側に申請すれば
最期は家で暮らしたいですよねレベルまで進行していた。
- 585 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/16(火) 09:49
-
キュィーンと機械の駆動音が聞こえた。
あたしは、彼女を覗き込む。ゆっくりと彼女の瞳が開いた。
パチパチと目を慣らすように2,3瞬きを繰り返し彼女はあたしを見た。
ドキドキしながら彼女の言葉を待つ。こんな気持ちは久しぶりだ。
彼女の口が微かに動く。よく聞こえない。
あたしはその口元に耳を寄せた。
「・・・・・・んぁ」
「へ?」
意味不明。
顔を離して彼女を見ると彼女はにっこりと笑った。
吊られて笑うと彼女は「あはっ」とさらに相好を崩してあたしに飛びついてきた。
「うわっ!!」
「びっくりした?」
「う、うん」
こんなに子供っぽいなんて思ってなかった。
- 586 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/16(火) 09:50
-
「名前どうする?」
「名前?」
「あいぼんはあいぼんでしょ。あたしは?」
彼女はあたしを指差し、それから自分を指差した。
あたしの名前はもう彼女の中に入っているらしい。
「えっと・・・・・・」
名前のことは考えてなかった。
は〜や〜く〜と彼女が暴れる。
暴れて、バランスを崩して、あたしが手を伸ばすよりも先に後ろに倒れて――
ゴチンと頭を打った。
「ごっちん!!」
「んぁ〜、痛い」
顔をしかめて頭をさすっている彼女に抱きつく。
「ごっちん、今日からごっちんって呼ぶ!!」
「ごっちん?」
「そう、ごっちん!!」
「んぁっ!!」
あたしは、今日から彼女と暮らす。
最後の日がくるその時まで。
- 587 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/16(火) 11:34
- ( ‘д‘)( ´ Д `)
- 588 名前:つみ 投稿日:2003/12/16(火) 16:11
- ごまぼんですか・・・
いいですね^^
- 589 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/17(水) 09:12
-
- 590 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/17(水) 09:15
-
2
「誰、これ?」
ある日、突然お見舞いに来てくれた同じ施設育ちの彼女は
ごっちんを見るなり憮然とした表情になってそういった。
彼女はドールの存在をあまり快く思っていない。昔、いろいろあったらしい。
それを知っているから私はごっちんがドールだということを隠そうと思っていた。
それなのに――
「あいぼんを看取る会会長ごっちんだよ」
「・・・・・・看取り用のドール?」
「正解っ!!」
あっさりばれた。
「あいぼん・・・・・・」
彼女は、複雑な表情で私の名を呼んだ。
「ドールに頼るのは・・・ん」
彼女の言葉をすっとごっちんの手が塞いだ。
「・・・っにすんだよ!!」
彼女は、乱暴にその手を払ってごっちんをにらみつける。
ごっちんは無表情。
一触即発、竜虎相まみえる、ええっと桃栗三年柿八年、これは関係ない――ともかくとってもヤバい雰囲気。
二人ともきっと私が病人だってことを忘れてる。
- 591 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/17(水) 09:16
-
「あんたがドール嫌いなのは分かったけどさぁ」
険悪な空気をどうにかしようと私が考えているとごっちんが不意に口を開いた。
「あいぼんにひどいことを言う権利はないと思うわけ」
「はぁ!?私がいつそんなこと言った?」
「今、言おうとしたじゃん」
ごっちんは無表情のまま。こんな顔は見たことがなかった。
私の知ってるごっちんはいっつも馬鹿みたいに笑ってたから。
もしかしたら、怒っているのかもしれない。ドールだけど、そんなこともあるかもしれない。
私が横目でごっちんを見ると、それに気づいたのかふっとごっちんの顔が和らいだ。
そして、急に彼女のほうに歩み寄ると
「というわけで、今度から来るときは連絡してから来てよ」
ポンと肩をたたいた。
「へ?」
突然態度を変えられた彼女は当たり前だけど戸惑っている。私も戸惑っている。
- 592 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/17(水) 09:17
-
「あんたが来る日は、あたしはちょっくら山へ芝刈りにでも行ってるからさ。それでいいんでしょ」
冗談とも本気ともつかないような口調でごっちんは言う。
「それじゃ、あたしは出かけてきますかねぇ」
「・・・今日はいいよ」
「んぁ?」
「もう帰るから」
玄関に向かおうとしたごっちんを手で制して彼女がつぶやく。
ごっちんは、肩を竦めて私を見た。その間に彼女はさっさと玄関に行ってしまう。
- 593 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/17(水) 09:17
-
「あいぼん」
「え、なん?」
「・・・・・・後悔しない?」
玄関先で彼女は私を振り返った。
後悔。
どういう意味なのか分からない。
答えあぐねているとごっちんの腕が私の肩を包んだ。
それを見て彼女は今日はじめて笑顔を見せ――それは少し複雑な笑顔だったけど
「ならいいや」
手を振って私の家を出ていった。
- 594 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/17(水) 11:22
- ‘д‘;
- 595 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/19(金) 07:04
-
- 596 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/19(金) 07:06
-
3
朝起きると炊き立てのご飯とお味噌汁の匂い。
ごっちんはとても料理が上手だ。
朝食の準備ができると彼女は部屋に飛び込んできてあたしを優しく起こしてくれる。
「あいぼん、今日調子どう?」
「いいよ」
「んぁ!じゃぁ、いただきますできるね」
「うん」
毎朝、恒例のやり取り。
調子がよくない日は、本当に残念だけど食欲がまったくなくて彼女の作った料理が食べられなかったりする。
最近は、そんな日が多くて憂鬱だ。
でも――
「いっただっきまーす!!」
ご飯を食べるあたしを見て嬉しそうにごっちんが笑ってて。
だから、調子がいいと感じる日はなおさら大切だと思える。
朝食が終わるとすることはいろいろ。
一緒にゲームしたり、一緒にお買い物したり、一緒にお掃除したり、一緒に夜ご飯作ったり――
大事に大事に壊れ物を扱うかのように接する病院とは違って、
ごっちんはあたしの調子を見ながら無理をしなくてすむ範囲でいろいろなことを一緒にしてくれる。
あたしにはそれがとても嬉しかった。
- 597 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/19(金) 07:10
-
「皿洗い!皿洗い!!」
スポンジに洗剤をたっぷり垂らしてぎゅっぎゅっと握ると泡がほわほわ出てくる。
ごっちんはその泡を見るのが好きで食事の後片付けになるといつもこんな風に楽しそうにはしゃぐ。
「ごっちん、好きだね」
ごっちんの洗ったお皿をあたしは隣で受け取って拭く。
あたしの言葉にごっちんは「泡楽しいじゃん」と指についた泡をあたしに向けてふぅっと飛ばしてきた。
泡はあたしに当たってパチンとはじける。
まるであたしの命みたいに儚い。
もう諦めているけどはじけちゃうのは少し怖いな、そんな感傷に襲われる。
- 598 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/19(金) 07:12
-
「あいぼん」
不意にごっちんが妙にまじめな顔になってあたしを呼んだ。
「なに?」
返事と同時にごっちんはあたしに向けてまた泡をふぅっと飛ばしてきた。
さっきより多目の泡はやはりあたしに当たるとはじける。
「キレイでしょ」
「え?」
「なんにでも終わりがあるからキレイに輝くんだよ」
ポカンとごっちんを見ていると彼女は優しい笑顔であたしをぎゅっと抱きしめた。
「あたしがあいぼんの輝きを見守ってあげるからね」
「・・・ごっちん」
- 599 名前:Together with you to the last 投稿日:2003/12/19(金) 07:13
-
――後悔しない?
今、誰かにそう聞かれたらあたしはすぐに頷けるだろう。
もし明日あたしが死んでしまってもごっちんとの暮らしは後悔しない。
あたしより背の高い彼女の胸の中から見上げると
「いいこというと思ったでしょ」ごっちんは子供っぽくあはっと口を開けた。
その視線はまっすぐにあたしを見つめていて。
例えそれがプログラムだったとしてもなんだか照れくくて嬉しくて
「ぜんっぜん」
「んぁ?」
あたしはその気持ちを誤魔化すために彼女から離れた。
「ほら、ごっちんが濡れた手で触るからあたしの服濡れちゃったじゃん」
「おぉっ!ホントだ」
ごっちんは、こいつぁ大変だとばかりに大げさに両手を挙げた。
その弾みで残っていた泡がまた飛んだ。それは確かに綺麗だと思った。
あたしは、彼女と暮らす。
後悔しない最後の日を待つために。
Fine
- 600 名前:七誌 投稿日:2003/12/19(金) 07:18
-
この2人の話は書いてるうちに異様に世界が広がってきまして、まとめきれなかった感が_| ̄|○
Calvaryからは独立させて書きたいものです。まぁ、書くかどうかはヽ(゚∀。)ノ。
とりあえず、なんだかんだでCalvaryもネタが思いつきラストも見えてきた感じで・・・
ぶっちゃけ、スレ埋め立て用だったはずなのにもうち少し続きそうです。
が、途中でこのスレが終わったら蜜柑の方向で(w
1話完結だし
( ´ Д `)b大丈夫きっと大丈夫(哀さんry
- 601 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/19(金) 07:23
- [ ゜皿 ゜]
- 602 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 02:56
- 悲しいのにあったかいな…
師弟関係、未だに根強い印象与えるのってごまかごなんだよなぁ…
- 603 名前:七誌 投稿日:2003/12/25(木) 10:11
- ( ´D`)(・-・川
- 604 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/25(木) 19:49
- ゚)Σ
- 605 名前:Calvary 投稿日:2003/12/26(金) 08:17
-
A strange caller
- 606 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/26(金) 08:19
-
今日も私はスクラップ置き場に行く。
そこには色々な物が惜しげもなく捨てられている。
中にはまだまだ使えるものもたくさんあって、リサイクルショップに持っていけば少しはお金になるんだ。
ぐしゃぐしゃに潰された鉄くずの塊を掘り起こしていくと
皮膚がはがれて内部の様子が薄っすらのぞいている壊れたドールが出てきた。
ドールは発掘しても売れないから見つけても意味がない。
本当は、売ろうと思えば売れるんだろうけど。
壊し屋さんと争ってまで売る値じゃないのは確かだ。
がっかりしながらそれを蹴り飛ばした瞬間
「こんにちは、辻さん」
後ろからそんな声がかけられた。
- 607 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/26(金) 08:20
-
振り返らなくてもこんなところで親しげに声をかけてくるのは一人しかいない。
「また来たんだ」
少しうんざりした振りをしながら振り返る。
彼女は初めて会ったときと同じようにフェンスの上に腰掛けていた。
「ほら、私って暇人ですから」
私が言おうと思った言葉を彼女は先に口にし、してやったりという風に笑った。
毎回毎回来るたびに私がそう言うから先手をとれたのが嬉しいらしい。
「辻さん、こっち来て休憩でもしたらどうですか」
彼女は、バッグからジュースを取り出して私に投げてきた。
私は慌ててそれをキャッチする。と、彼女はにっこり笑って手招きをした。
毎度のことながら有無を言わせない強引さだなと感心しながら
私は彼女の座るフェンスに飛び乗った。
- 608 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/26(金) 08:22
-
※ ※
彼女がここに来るようになったのは3ヶ月ほど前。
ふらりと現れて今みたいにフェンスの上からジャンク漁りをする私たちを見下ろしていた。
彼女の服はいつも卸したてのようにキレイでジャンク漁りをする必要がないくらい裕福だということが簡単に窺えた。
いったいなにが目的でここに来たのか、顔見知りの仲間達ももちろん私も不思議に思いそして僅かな苛立ちを覚えた。
彼女から無言で眺められて私たちはまるで馬鹿にされているような気がしたのだ。
毎週のように彼女はやってきてそうするものだから、
しばらくするとあまりの居心地の悪さに段々と彼女の来ないスクラップ置き場に移動する子がでてきた。
私はというと、ここで皆と同じように場所を変えてしまうのは無性に癪に障ったし、
それではなんだか彼女に負けてしまったような気がしたので、
ついにはそこから私以外誰もいなくなってしまっても意地でも離れなかった。
スクラップ置き場に一人残ってしまった私にようやく彼女はフェンスから降りてきて遠慮がちに声をかけてきた。
それはすごくマヌケで、彼女がなぜ私たちを興味深げに見ていたのかを一言で理解するには十分なものだった。
- 609 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/26(金) 08:23
-
「これはどういうお仕事なんですか?」
- 610 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/26(金) 08:23
-
そう、彼女は私たちがなにをしているのかまるっきり分かっていなかったのだ。
分かっていないのだから馬鹿にしようもない。
それを馬鹿にされていると感じたのは私たちがこの仕事に誇りを持っていなかったかだろう。
勝手に卑屈になっていたことに気づいて私はなぜかその時笑ってしまった。
それからというもの彼女はチョコチョコやってきては私に話かけてくるようになった。
- 611 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/26(金) 10:14
- ∀・)
- 612 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/27(土) 07:19
-
- 613 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/27(土) 07:23
-
「あさ美ちゃんは変な子だよね」
彼女からもらったジュースを一口、口に含み言うと
「そうですか?」彼女は心外だというように首を振った。
「変だよ」
「自覚したほうがいいんでしょうかね」
「したほうがいいよ」
私の言葉に彼女は納得いったのかいってないのかどちらとも取れる表情のまま
「ふぅむ」とうなった。まったく変な子だ。
彼女は誰でも知っているようなことをまるっきり知らない世間知らずの癖に、
かといえば急に小難しいことを私に問いかけてきたりと本当に掴めない性格をしている。
- 614 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/27(土) 07:25
-
「あのドールは売れないんですか?」
不意に彼女がそういってさっき私が掘り起こしたドールを指差した。
「ドールは売れないよ」
「どうしてですか?」
「ドールは違法廃棄されてる確率のほうが高いもん。壊し屋さんのお仕事だよ」
私の言葉に彼女は微かに皮肉っぽい笑みを浮かべた。
だけど、それはほんの一瞬で
「ドールはどれくらい捨てられてますかねぇ?」
すぐにいつもの顔に戻ってそういった。
どれくらい?
毎月のように新作がでるドール。
そのたびに買い換える裕福な馬鹿もいるらしいから、それこそ数限りなくといっても過言じゃないと思う。
そう答えると彼女は
「それではなんのためにドールは生きてるんでしょうね」と先程のドールを見ながら呟いた。
その呟きに思わず私は彼女を見やった。
なんでかって?
――ドールが生きているなんて考えを持つのはドール擁護団体ぐらいしかいないからだ。
自分たちがドールを救うと豪語しているあの糞くだらない偽善者集団。
彼らがどれだけ吠えたところで違法に廃棄されるドールは減るどころか増えるばかりなのに、
その現実には目を瞑って一体のドールを救えば全てのドールを救った気になっているおめでたい連中。
私のもっとも嫌いなタイプの人間たち。彼女もその中の一人なのかと思ったのだ。
彼女の表情からはなにもうかがい知ることはできない。
- 615 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/27(土) 07:26
-
「・・・ドールは所詮ロボットだよ」
わざとそう言ってみた。
誰かにそう言われると連中は絶対必死になって反論するんだ。
そういう考えがこんな可哀相なドールを作り出すんですよ。
見てください、まるで親に捨てられた子供だ――
大の大人が両手振り回して、馬鹿馬鹿しい。
第一、親に捨てられた子供はどうにかして生きる努力をするんだよ。
それが赤ん坊でも。自分がここにいることを知らせるために大声で泣くじゃんか。
ドールにはそんなプログラムはないから捨てられたらそのままスクラップにされるんだ。
私は鉄くずの中に転がっている無残なドールに視線を移した。
- 616 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/27(土) 07:27
-
「ドールはロボットだよ」
もう一度そう繰り返すと「まぁ、そうですよね」彼女はひどく穏やかな声でそういった。
予想外の言葉に彼女を見る。彼女の表情にはなにもなかった。
どんな心も存在していないかのようで妙にゾッとした。
「でも、ロボットにも感情があるかもしれませんよ」
私の視線に気づいたのか彼女はふっと表情をつくって――そう、私にはその時の彼女の笑顔は作り物のように見えた――言った。
「中にはどうして自分が生まれたのか考えすぎて壊れてしまったロボットもいるかもしれません」
「なにそれ」
「たとえばの話です」
彼女は妙に威圧感のある笑みを貼り付けたまま反論を待つようにチラリと私を見た。
私はジュースの缶を口に運んでから
「…仮にそんなこと思ったロボットがいてもさぁ、人間でも分かんない答えを誰が答えられるのさ」少し強めに言った。
どうして自分が生まれたかなんて誰が答えられる?
居もしない神が答えてくれるとでも?
私の言葉に彼女は感心したような溜息を漏らした。
「それもそうですよねぇ。盲点でした」
さすが辻さん、と彼女はあっさり納得して頷く。
そこにはいつものほわんとした笑顔。肩透かしを食らった気分だ。
- 617 名前:A strange caller 投稿日:2003/12/27(土) 07:29
-
「・・・・・・やっぱりあさ美ちゃんって変」
残ったジュースを一気に飲み干すと私はフェンスから飛び降りた。
仕事を再開しないと今日は収穫なしになってしまう。
「今日はここまでね」
彼女に言って私はスクラップの山に足を踏み入れる。
「また来ますね」
そういう彼女の声が聞こえて私は片手をあげてそれに答えた。
少し離れたところに私が掘り起こしたドールがある。
先程は気がつかなかったけどガラス球の目は開けられたまま空を見ていた。
私はその瞼に軽く手のひらを乗せて瞳を閉じさせた。
あいぼんが死んだらあのドールは同じことをするのかな?
ふとそんなことを思って馬鹿馬鹿しくなった私は声を出さずに笑った。
さっさと売れるものを探してあの目がちかちかするリサイクルショップに行こう。
Fine
- 618 名前:七誌 投稿日:2003/12/27(土) 07:34
- なんだか頭のよさそうな辻さんでお送りしました(w
- 619 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/02(金) 18:01
- ( ´D`)<てへてへ
- 620 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/04(日) 16:15
- (・∀・)イイネ!!イイヨ!!
- 621 名前:七誌 投稿日:2004/01/04(日) 20:52
- ( ^▽^)( ・e・)
- 622 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/05(月) 00:00
- (^-^)/
- 623 名前:Calvary 投稿日:2004/01/05(月) 09:08
-
The way to the chief of the shop of NIINII
- 624 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/05(月) 09:20
-
私の名前は新垣里沙。
リサイクルショップの雇われ店員。簡単に言うとバイトだ。
しかし、バイトのままで終わるつもりはさらさらない。
そのための第一段階として、ありえないネーミングセンスを持つ店長の石川さんが一ヶ月考えてつけた
「チャーミーズピンク」という店名を働き出して1週間で「R&R」と格好よく変更させた。
石川さんには「リサイクルショップ&リカの略ですよ」と言っておいたが、
本当は「リサ&リサ」だということはもうしばらく秘密にしておこう。
そもそも、彼女が店長だということ自体間違っているのだ。
- 625 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/05(月) 09:23
-
「それでね・・・聞いてる、ガキさん」
いつのまにか目の前に石川さんが来ていた。
この人、まだ話していたのか。商品を陳列しに行く振りをしながら少し離れる。
「聞いてますよ。っていうか、もっと簡潔に話してくれませんか?」
「簡潔に?」
「そう、まだオチまで言ってませんよね」
私が出勤したのが10時。現在は10時30分。
石川さんは、私が制服に着替えてから――といっても、エプロンをつけるだけなんだけど――ずっと話し続けている。
その間、開店準備はまったくしていない。口だけ動かして手は動かさず。
いつものことだから仕方なく私が開店準備をはじめた次第だ。
しかし、開店時間は11時。
私たちに残された時間はあと30分しかない。
いくら私が開店準備の天才だとしてもいい加減石川さんにも動いてもらわないときびしいものがあった。
そろそろ石川さんの息の根を・・・もとい、口を止めよう。
私が止めなければ石川さんは残りの30分も口だけを動かすだけだろうし、
なによりこれ以上彼女の長無駄話を聞き続けるのは精神衛生上悪い。
- 626 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/05(月) 09:24
-
「なにが言いたいのかそろそろはっきり言ってください」
「うん。だからね、うちの買い取り価格ってそんなに安いのかなぁって」
石川さんは、眉毛を八の字にして言った。
男なら胸キュン物だろうが生憎私は超がつくほどの美少女。
石川さんの仕草には飛び蹴りをくらわしたくなる。
それに――
「・・・それだけですか?」
「うん、それだけだよ。どう思う?」
それだけのことをどうして一言で済ますことができないのだろう。
おはよう、ガキさん。ちょっと聞いてくれる?大問題が勃発したの。
それで相談に乗ってほしいんだけど……一から説明していくからちゃんと聞いててよ(略)
そうそう、いつものジャンク漁りの女の子がぶぅぶぅ文句言ってくるんだよね〜。
その子さぁ、私のことキショイとか言うし。ちょっとひどいよね。
それでね、ガキさん云々云々。
まだ耳に残っている愚痴というかなんというか。
結局、この30分間まったく関係ないことを話していたんじゃないか。
- 627 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/05(月) 09:26
-
「・・・・・・石川さん」
「なに?」
「そんなこと30秒もあれば楽に言えますよね」
「うん」
「あなた、30分も話してたんですよ」
「ヤダ、ホントだ〜」
時計を見てキショイ声と動き。
いまさら気づいたらしい。ムカムカ。
「つまり、29分30秒も時間無駄にしてますよね」
ムカムカ。
「関係ある話だから無駄じゃないでしょ」
石川さんはキョトンと首を傾げる。
無駄だ。あなたの言葉の全てが無駄なんです。
あなたの口からつむがれる全ての音が無駄なんです。
言い換えるならあなたのそんざ――さすがにそれは言いすぎだな
私は、とにかく言いたい言葉をぐっとこらえて
「・・・・・・もういいです」
会話の拒絶を示すように手を上げた。
大人な対応。
後世の店長たるものそれぐらいできなければ、この街の人間相手に商売なんてできないのだ。
- 628 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/06(火) 07:01
-
「それで、どう思う?」
「なにがですか?」
「だから、買い取り価格の話」
もぅ、しっかりしてよねと石川さんは頬を膨らませる。
その頬をぐしゃっと凹ませたいものだ。
「さぁ?」
「さぁってガキさんも少しは考えてよ」
「だって、私そんなこと言われたことありませんよ」
「そうなの?」
「ええ」
「そうなんだぁ」
石川さんは少し考えるように口元に手をやった。
事実だった。彼女の話にでてきたジャンク漁りの子の応対は何度かしたことあるが、
私の出した買い取り値にケチをつけたことはない。
とどのつまり、石川さんがその子に舐められているだけなのだろう。
どう見ても舐められそうなキャラと声だし。
私はチラリと石川さんを見る。
彼女は、私の視線に気づいたのか
「じゃぁこのままで大丈夫だね」と笑った。
そして言った。
「さ、無駄話は終わりにして開店準備するよ」
私が陳列したばかりの電子レンジを彼女に向かって投げつけたい衝動にかられて、
そしてそれを実行したとしても絶対に罪にはならないだろう。
そんなことはしないけれど。
石川さん如き取るに足らない人物のために私の輝かしい未来を棒に振るつもりはない。
この店が手に入るまではおとなしくしといてあげよう。
- 629 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/06(火) 07:02
-
さぁ気を取り直して開店準備。
開店準……はて、これはなんだ。
陳列待ちの商品の中にある物体。
「い、石川さん、これって売り物ですか?」
「んー?あっ!それウィンドウに飾ったらいいと思わない?」
「…え?これをですか?」
「絶対いいって。昨日、私が買ってきたんだよ」
石川さんは自信満々に言う。
私は、自分の手元にあるものを改めて見直した。
ピンク色の奇妙奇天烈な、というか、かなり不気味な感じのする置物。
こんなものを店の鏡といわれるほど重要なポジションに置いて客が減らないだろうか。
減る。考えるまでもなく、絶対に減る。
石川さんの案は新垣国会にて審議の結果棄却されました。
彼女にばれないように私はその置物を棚の下に無理やり押し込んで、二度と人目に触れられないようにした。
これでよし、私が勝利のステップを踏んでいると入り口の自動ドアが開く音がした。
見るとちょっとダサい感じに髪を染めた女の子が立っていた。
- 630 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/06(火) 07:03
-
「すみません、まだ開店時間じゃないんですけど」
石川さんがすかさずその子に声をかける。
石川さんが対応するなら私は行かなくてもいいだろう。
二人の話に聞き耳を立てながら開店準備を続ける。
「あ、いえ・・・あの買い物に来たわけじゃなくて」
「はい?」
「私、人を探してるんです。この人なんですけど、知りませんか?」
ポゥッと立体写真の映像が出る音がした。
「・・・・・・あ」
なにかに気づいたような石川さんの声。
「知ってるんですか?」
「知って・・・・・・ガキさん」
石川さんが私を呼ぶ。
私がいないとあの人はなにもできないらしい。困ったちゃんだ。
私は、商品を並べる手を止めて二人のいるほうへ向かう。
「なんですか?」
「ほら、この子」
石川さんは手にした立体写真を私に向ける。
「あぁ」
見ると、写真の子はよくこの店に来る常連さんの顔と同じだった。
- 631 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/06(火) 07:05
-
「知ってるんですか?」
「知ってますよ。この方がどうかしたんですか?」
事件の匂い。
そんなわけない。
「あの、これを彼女に渡してほしいんです」
女の子はガサガサと音を立ててウェストバッグから一枚のディスクを取り出した。
「はい?」
「お願いします」
女の子が頭を下げる。
「いいですよ」「ダメです!」
石川さんと私の声が重なった。
「ふぇ?」
女の子は私と石川さんを交互に見比べる。
石川さんは驚いた視線を私に投げかけている。
「ちょっとガキさん、なんでそんな意地悪なこと言うの?ディスク渡すぐらいいいじゃない」
「ダメですね」
私は石川さんにむかってきっぱりと言ってから女の子に向き直る。
「私たちは慈善事業じゃないんですよ。ただでそんなことはしません」
ピッと指を立ててみせると、ぽかんと口を開けていた女の子は私の言葉を理解したのか
「じゃ、じゃぁ・・・・・・これ、ください」と、すぐ近くの棚から目覚まし時計を持ってきた。
「毎度ありぃ!!」
私は、彼女からディスクとお金を受け取った。
商売とはこうやるのだ。
- 632 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/07(水) 08:30
-
- 633 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/07(水) 08:31
-
「それじゃぁ、よろしくお願いします」
女の子は、ペコリと頭を下げると店を出て行った。
その姿を見送っていると後ろから妙な視線を感じる。振り返ると石川さん。
「・・・ガキさんってがめついよね〜」
呆れた声で言う。
「がめついんじゃないですよ、商売の基本です。石川さんが甘すぎるんですよ」
私は、受け取ったメモリを胸ポケットにしまいながらそう返す。
「そうかなぁ」
石川さんは、首を捻った。
「そうですよ」
少しの沈黙。
石川さんが気を取り直したかのように
「・・・・・・でも、なんだろうね、そのディスク」
言った。
「さぁ、なんでしょうね」
「見ちゃおっか」
好奇心丸出しの声。言うと思った。
「ダメです!!」
「え、なんでよ?」
「私は、お客様との信用関係を大事にしてますからね。
そういう信用を裏切る行為はしません」
「ガキさんのケチ」
ふてくされたように口を尖らせる。
あなたは何歳ですかぁあああ!!!と、耳元で叫びたくなった。
- 634 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/07(水) 08:32
-
「ともかく、これは私が保管しておきますからね」
「はいはい」
石川さんは諦めたように肩をすくめた。
時刻は10時50分。
「そろそろ開店ですね!石川さん、そこのゴミ掃いといてください」
「…私、店長なんだけどな〜」
つぶやきながら石川さんは渋々といった風にモップを手にとった。
「私は、電飾つけてきますから」
危うくのっとり作戦がばれそうになったので私は外に避難した。
- 635 名前:The way to the chief of the shop of NIINII 投稿日:2004/01/07(水) 08:33
-
店の電飾看板。
R&Rという文字が輝いている。
しかし、まだ前の名残でそのライトはピンク色のままだ。どうかと思う。
近いうちにこんな目に悪い色は変えよう。
自分の考えにうんうんと頷いていると
「ちょっとガキさん!!」
店内から私を呼ぶキンキン声。
やれやれホントにいい年して困ったちゃんだ、私は大きく伸びをして入り口のドアをくぐった。
そこには、私が棚に捻じ込んだはずのピンクの物体を持って物凄い形相で仁王立ちしている石川さんがいた。
私は店長になる前に天国に行くのかもしれない。
fine
- 636 名前:七誌 投稿日:2004/01/07(水) 08:34
-
こ、このニィはジュマペールの(ё)y-~~と似ている!!!
ということを書いてる途中で気づきました。
どおりでサクサク書けると思ったら(w
まぁ、そんな感じです。
- 637 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/07(水) 14:50
- え?!てっきり意識して書いているものとばかり思ってましたよ (^-^)
- 638 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/08(木) 12:27
- 管理人さん!!(*゚∀゚)=3
- 639 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/09(金) 02:00
- 管理人キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
あの作品は作者と出会えたいいことある記念の瞬間
ジュマペールふぉーえばー
- 640 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/01/09(金) 19:14
- 石川新垣ってなんかすご(・∀・)イイ!
あの女の子は誰なんだろう。予想ではあの子なんだけどなぁ
なにげに繋がってて楽しみです。
- 641 名前:Calvary 投稿日:2004/01/12(月) 23:05
-
Days in which she was
- 642 名前:Calvary 投稿日:2004/01/12(月) 23:06
-
「・・・・・・大丈夫かなぁ?」
今しがた出てきた店のある方角からガラスの割れる音がして小川麻琴は不安げに呟いた。
やはり、他人に頼まないで直接渡すべきだったろうか。
いや――
小川は微かに首を振り、バッグにしまった立体写真を取り出す。
直接会わないで渡してほしいというのが彼女の頼みだった。
だから、これでいいのだろう。
- 643 名前:Calvary 投稿日:2004/01/12(月) 23:10
-
※
私が彼女を拾ったのは、この街で何年か振りの台風が襲来した翌日のことだった。
アパートの共同カーポートに置いておいたスクーターがずっと気になっていた私は
――そのスクーターは誰が見ても旧式のタイプで大した価値はないのだけれど、
私にとって、はじめてのお給料で買った大切なものだ――
まだ誰一人として起きていないだろう早朝に起きて外に出た。
まだ台風の残した雲が弱い雨を降らせている。
小走りで階段を駆け下りる。
階段を下りてすぐに見えるコンテナ植えは倒壊していて悲惨な状況を晒していた。
不安が募ってくる。
逸る気持ちを押さえながらアパートの裏側にあるカーポートに向かった。
すぐに目に入ってくるのは倒れた自転車たち。そして、大きなワゴン車。
私のスクーターはその影に置いてある。
倒れているだけならいいけど、そう思いながら恐る恐る覗く。
奇跡が起きていた。
私のおんぼろスクーターはなにごともなかったように立っていたのだ。
台風が来る前とまったく同じ状態。
よかった。
ホッとしながらスクーターに駆け寄ろうとして――
「あっ!」
あるものに気がついた。
人だ。
私のスクーターのすぐ傍らに人が倒れていた。ピクリとも動かない。
もしかして、死んでるのかもしれない。
どうする。どうする。どうしようマックス!?
いやいやいや、落ち着くべきだ。深呼吸。抜き足差し足の要領で近づく。
しゃがみこんで顔を確認する。女の子だ。髪は乱れてて顔にも泥がついている――
だけど、とても綺麗な子だった。
- 644 名前:Calvary 投稿日:2004/01/12(月) 23:11
-
「・・・・・・あのぉ?」
声をかけてみる。と、すぐにその子は目を開けた。
大きな瞳がじっと私を見つめてくる。
「・・・う、動けますか?」
問うと彼女は小さく首を振った。
どこか怪我でもしているのかもしれない。
私は、慎重に彼女の体に腕を回して抱き起こす。
「大丈・・・って血ぃっ!?」
うつ伏せになっていたから気がつかなかったけれど、
彼女の体にはかなりの量の血がこびりついていた。
なんだか物凄くヤバい人なのかもしれない。
「い、一体なにがあったんですか?」
「・・・・・・」
彼女は無言で首を振る。
「誰かにやられたとか?」
「・・・・・・」
彼女は無言で首を振る。
「どうしてここに?」
「・・・・・・」
「家はどこなんですか?」
「・・・・・」
私の質問に彼女は全て首を振る形で答える。
このままじゃ埒が明かない。
「警察呼んだほうがいいのかな」
思わずそう呟いてしまった。途端、彼女が激しく首を振った。
それから、逃げるようにふらふらと立ち上がる。
どう見ても行く宛があるようには思えない。
「ちょっと待ってよ」
私が彼女を呼び止めるとの彼女が倒れるのはほとんど同時だった。
- 645 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/14(水) 10:52
-
2
彼女を助けた理由なんて特にない。
あんな状況でほっとく人間なんてきっといない、だって寝覚めが悪くなるもん。
- 646 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/14(水) 10:55
-
※
彼女をソファに寝かせて、体を拭くためのタオルと着替えの服を用意していると背後で物音がした。
彼女が起きたらしい。とりあえず、タオルだけを持って彼女の傍に行く。
「起きました?」
彼女は不安げに私を見上げてくる。
「大丈夫ですよ、どこにも連絡してないから。
これで体拭いて、こっちの服に着替えちゃってください。風邪引いちゃいますからね」
タオルと服を差し出すと彼女は素直にそれを受け取った。
その手にも血がこびりついている。
包帯と消毒液も用意しないといけないな。思って、私は立ち上がる。
瞬間、彼女が私の肘をつかんだ。
「・・・?」
彼女の口がなにか言いたげにパクパクと動いている。
でも、そこから音がでることはなかった。
思い返してみると、彼女は一度も声を出していない。
もしかして――
「……喋れないんですか?」
問うと、彼女はうなづいた。
頭の中の『今から用意するものリスト』に紙とペンも付け加えることになった。
- 647 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/14(水) 10:57
-
包帯と消毒液、紙とペン、あとは温かい飲み物。
一番にしなければいけないのは怪我の治療だろう。
彼女の体を抱えおこしてソファの背もたれに寄りかからせる。
まだ不安が残っているのか彼女の視線が揺れる。
「……ちょっと怪我見せてくださいね」
安心させようと声をかけると彼女はプルプルと首を振った。
なにが言いたいんだろう?
分からなくて私はテーブルに置いていた紙とペンを彼女に渡す。
彼女はペンをとって短く――『怪我してない』と書いた。
「でも…」
私は、思わず彼女が脱いだばかりの血のついた衣類に目をやる。
遠慮しているのだろうか。この期に及んでそんなものは無用なのに。
「いいから、見せてくださいって」
少し強めに言うと彼女は眉根を寄せて溜息をつくと、今しがた着たばかりの服をバッと脱いだ。
- 648 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/14(水) 10:58
-
「うっひょぉおっ!?」
突然の行動に私はつい目をそらしてしまった。
同性なんだけどなんだか恥ずかしい。
「な、な、な、なんで全部脱ぐんですかぁ?」
私の言葉に応えるように物を書くペン音が聞こえた。
横目でその様子を伺う。
書き終わったのか彼女は紙を私に向かって突き出した。
「んん〜」
『私、ロボット。大丈夫』
紙にはそんなことが書かれていた。
「ふぇ?」
驚いて彼女を見る。
彼女の腹部。
白い肌にぱっくり開いた傷口。
その奥は真っ黒で人間のものではなかった。
よくよく見ると、細かな機械がある。
「……い、痛くないの?」
動揺のあまり、私はとんでもなく間抜けな質問をしていた。
彼女が微かに笑って頷く。
- 649 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/14(水) 10:59
-
「で、でも……お腹開きっ放しはまずいんじゃないの?」
その問いに彼女は首をかしげる。
「多分、まずいと思うよ」
とはいえ、どうしたいいのかは分からない。
当たり前だ、ロボットの知識は全くといっていいほど皆無なんだから。
かといって、ワケあり感満載の彼女を修理センターにつれていくのは無理だろう。
「とりあえず、テープで塞いでおこっか」
はっきり言って、そんなことしていいのか分からなかったけれど、
彼女がコクリと頷いたのでそうすることにした。
- 650 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 15:23
- 新作来てたー(゜∀゜) 乙です。次も待ってMAX
- 651 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/15(木) 08:50
-
3
私と彼女は1週間一緒に暮らした。
彼女は、産まれたての赤ん坊のようになにも知らなくて――コンロの火の付け方ですら――
私は彼女になにか聞かれるたびにいつも不思議に思っていた。
この子は、どういう扱いをされてきたロボットなんだろうと。
初めはその容姿から彼女のことを精巧に造られたドールだと思っていたけれど、
ドールには人間の世界の一般常識が基本プログラムに組み込まれているはずだ。
もちろん、カスタマイズされて頭の悪い女の子にされる場合もあるけれど、
知っていることを知らないものとして振舞うドールのようなわざとらしさは彼女からまったく感じられなかった。
いつだって彼女は人間のように自然だった。
感情表現さえも。
多分、あの傷口を見ていなければ私はずっと彼女のことを人間だと思っていただろう。
- 652 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/15(木) 08:51
-
その傷口はたったの3日でふさがった。
彼女は『テープが効いたね』と紙に書いて嬉しそうに私に見せてくれた。
その日から、私と彼女は同じベッドに寝るようになった。
それまでは、寝ぼけて彼女の傷口を蹴っちゃわないか心配だったので私はソファで寝ていたのだ。
彼女は
『人がこんなに傍にいるのははじめて』
と少し緊張したような表情を浮かべていたけれどそれはお互いさまだった。
私だって誰かとあんな風に一緒に眠ることははじめてだったから
もしかしたら彼女よりももっと緊張していたかもしれない。
- 653 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/15(木) 08:52
-
彼女の名前を知ったのは彼女がいなくなる前日のことだ。
信じられないことに私たちはその日までお互いの名前を知らずにいた。
名前を知らなくても彼女との生活は上手く回っていたし、
いつも彼女が紙に何か書いて私がそれに答えていたからあまり必要がなかったのだ。
でも、その日は違っていた。
彼女は何か言いたげにチラチラと私を見てはくるのだけれど、
その手に握られたペンはなかなか動かない。
その時になってようやく私は彼女に呼びかける言葉を持っていないことに気づいた。
- 654 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/15(木) 08:54
-
「……あの」
出窓からぼんやり外を眺めている彼女の背中に声をかける。
ん?という風に彼女が振り返る。
カーテンの隙間から零れ落ちる光の欠片が彼女を照らしててやけに綺麗だった。
私が彼女に対してそう思ったのは、倒れている彼女を拾った時とこの時だけ。
妙にドギマギしてしまう。
その動揺を悟られないように
「私、君の名前知らないなぁって思って」言った。
彼女は鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔をして、それから私を指差した。
私?
なんのことか考え、私の名前のことだと思い当たる。
「私は、マコトだよ。小川マコト」
私の答えをなぞるように彼女の口が動く。
音は出ないけれど、彼女の視線と唇の動きは確かに私を呼んでいた。
「ん?」
『私のこと忘れないでいてくれる?』
文字は彼女の気持ちに呼応するかのように微かに震えていた。
その時、不意に私は彼女がもうすぐいなくなってしまうことに気づいた。
気づいたというか、そう感じた。その予感は当たっていたのだけれど。
だからこそ
「…当たり前じゃん」
そう返したのだと思う。私の答えに彼女は泣き出しそうな顔で笑った。
その晩、私と彼女は夜更けまでいろいろなことを話して、手を繋いで一緒に眠った。
次の日、私が目覚めると一通の手紙とメモリ、立体写真が机の上に置いてあった。
- 655 名前:Days in which she was 投稿日:2004/01/15(木) 08:55
-
※
小川は、懐にしまっていた便箋を取り出す。
「……また会えるよね」
小川はそっとその手紙を破くと両手を広げた。
破かれた手紙は風にさらわれてはらはらと花びらのように宙を舞った。
「愛ちゃん…」
小川は空を見上げてつぶやくと歩き始めた。
fine
- 656 名前:七誌 投稿日:2004/01/15(木) 08:56
- いろんな意味でヽ(゚∀。)ノって感じです
- 657 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/16(金) 01:04
- 川*’ー’)人(´▽`∬∬
- 658 名前:Calvary 投稿日:2004/01/20(火) 09:14
-
The cry of a cat
- 659 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/20(火) 09:19
-
猫の鳴き声がする。
猫なんて飼ってないのに。耳元でにゃおにゃおと五月蝿い。
「あぁー、もう、うっさい!!」
音を遮断しようと布団を頭から被ると、猫は普段なら考えられない速さでそれを勢いよくはがしやがった。
マジでむかつく。寝起きのあたしは怒りっぽいのだ。
「さゆっ!!!」
怒りに任せて飛び起きると
「にゃぁお」
彼女はおはようの代わりにそう鳴いた。
毎朝毎朝――正確にはお昼だけど――
一人じゃ起きられないあたしをこうして起こしてくれるのは正直助かる。
だけど、起こすんなら――
「普通に起こしてよ」
「普通だよ」
「どこの世界に猫の鳴き声が普通の人がおるんよ」
「ここ」
彼女は、自分を指差してにこっと笑う。起き抜けから疲れさせてくれる。
あたしは嘆息してベッドから飛び降りる。
出かける準備をしないと。顔を洗って歯を磨いて。
- 660 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/20(火) 09:20
-
「今日は、危ない仕事?」
仕事用の動きやすい服に着替えていると彼女が言った。
「今日?」
服の袖に腕を通し終えてからあたしは仕事用のウェストバッグを手に取る。
昨日、ギルドでプリントアウトしてきたスクラップリストをめくる。
あたしが狙うのはどちらかというと報酬がそう高くはない違法廃棄ロボットだ。
理由は簡単。壊し屋の仕事は命に関わる危険なものだから。
報酬が高ければ高いほどそのリスクは大きくなる。
けど、あたしはお金のために命を掛ける気はまったくないのだ。
だから、他のバリバリ稼いでいる壊し屋と比べるとあたしが受け取っている報酬は低い。
とはいえ、一月に五体程倒せばこの街では上の下レベルの暮らしは維持できるのだ。
最近は勝手に住み着いたこの猫のおかげで中の上レベルになってる気もするけど。
まぁ、それはよしとする。
- 661 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/20(火) 09:21
-
「危なくないよ」
「ホント?」
「うん」
答えながら、ライフルを肩にかける。
この仕事は、武器がないとはじまらない。
ジャケットの内側にはナイフ。
本当は銃よりもこっちのほうがあたしの性にあっているけれど
装甲の硬いロボットには歯が立たないから壊し屋になる前に銃の練習をした。
「それじゃ行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
ほわんとした声に見送られながらあたしは戦場へと向かった。
- 662 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/21(水) 07:30
-
※
- 663 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/21(水) 07:32
-
あたしは走っていた。
曇天模様の空。空気は空の真似をしているのか濁っている。
息苦しいけれど足を止めるわけにはいかない。
街のはずれ。道ともいえない道に追いかけるあたしと逃げるロボットのカシャカシャという足音だけが響く。
それ以外はとても静かだった。
ロボットがスクラップ場のフェンスをすごい跳躍力で飛び越える。
あたしも走ってきたそれを助走代わりにしてフェンスに飛びつきよじ登る。
その間にロボットとの距離が開いていく。
さらに最悪なことにスクラップだらけのこの場所は人間にはとても走りづらかった。
「ちぃっ!!」
舌打ちをしながらロボットに向かって銃を撃つ。
手がぶれて当たらない。ロボットは飛ぶように逃げる。
畜生!畜生!畜生!!
悪態をつきながら必死で追いかける。
どう想定しても追いつけそうにはなかった。
それでも――まだ姿が見えてるうちに諦めるのは御免だ。
あたしは、蹴る足に力を込めた。
と、不意に前を走っていたロボットがのけ反るようにして後ろのめりに倒れた。
- 664 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/21(水) 07:34
-
「あ?」
つまづいたにしてはあまりにも不自然な倒れ方だ。
まるでなにかに吹き飛ばされたかのようにあたしの目には見えた。
わけが分からないけれどチャンスなのは確かだ。
あたしは、スピードを上げる。
瞬間。
銃声。
思わず体を低くする。
続けざまにもう2発聞こえた。
なんだ?
あたしは視線を上げて――目を見開いた。
あたしの追いかけていた違法廃棄ロボット。力なく倒れている。
そのすぐ傍に一人の女が屈みこんでいる。
あたしも背が低いほうだけど、その女はもっと小さく見える。
一瞬ジャンク拾いの子供とも思ったけれど、その肩に掛けられている不釣合いの物はあたしの肩にかかっているものと同じだった。
つまり――同業者だ。
そして、今の状況が示しているのは1つ。
- 665 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/21(水) 07:36
-
なんてことだ!
獲物を横取りされたんだ。
そのことに気づいてあたしは慌ててその女の元に駆け寄った。
あたしの足音に気づいて女が驚いたように顔を上げ、不思議そうに首をかしげた。
人のものをとっておいてまったく悪びれた様子がない女にあたしは苛立ちを覚える。
「ちょっと!!」
「なに?」
「それ、あたしがここまで追い詰めたんよ!!」
あたしは、ロボットを指差す。
女は虚をつかれたようにぽかんとした。が、すぐにその顔にムカつく笑みが浮かぶ。
あたしは、眉を寄せた。
「なんがおかしいとよ?」
「だってさぁ、あんたが追いかけてきたからってそれがどうかしたの?って感じなんだけど」
そいつはけらけらとあたしを馬鹿にするように笑う。
ものすごく腹が立ってきた。
いくら壊し屋がルール無しでも、他人の獲物を横取りしないというのは暗黙の了解になっているはずだ。
- 666 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/21(水) 07:39
-
「あたしの獲物を取るつもりなら力づくで取ってみろ!!」
あたしは、ナイフを手にした。
女の顔から笑顔が消える。
これくらいで余裕なくすなんて意外に雑魚かもしれない。
「…横取りって人聞きが悪いよね。あんまりあたし怒らせるとただじゃ置かないよ」
ジャキッという音。
あたしは、目を見張った。
女はあたしに向かってライフルを向けたのだ。
ありえない。ありえない。ありえない。
ニヤニヤした女の表情から本気で撃つ気はないとは思ったけれどつい後ずさってしまう。
足元のスクラップがガシャガシャと音を立てた。
「っ!」
危うくこけそうになってしまう。
「きゃはは、ドジなヤツー」
女が手を叩いて笑う。こいつは本当にムカつく人間だ。
あたしは、手にしていたナイフをぎゅっと握り締める。
- 667 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/21(水) 07:42
-
「笑ってられんのも今のうちやけ!!」
「ほほぉっ!!どうするつもり?」
「こうするつもりたい!!!」
女に向かってナイフを投げる。
もちろん脅しで当てるつもりはない。
しかし――「おっ!!ヤル気か!!」女はなにを勘違いしたのか嬉々としてそう叫ぶと
あたしに向かってライフルをぶっ放してきた。
「のわっ!!」
「キャハハ!!おら、かかってこいよっ!!」
薬でもキメてるかのようなハイテンション。
な、なんなんだ。
なんだ、こいつ。おかしい。頭がおかしい。
私の頭の中でピカピカと危険信号が点滅しはじめる。
「ちょっとあんた・・・」
怒鳴ろうとあたしが口を開いた時すぐ傍でキーンという音がした。
耳元を銃弾が通り過ぎたんだ。
殺される。
思った瞬間、あたしは全速力で走り出していた。
「冗談だよ、バーカ!!」
背後からそんな声が投げかけられたけどあたしは止まらなかった。
- 668 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 17:04
- あの人かな・・・?
イヤ、ほんと面白いでつ
- 669 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/22(木) 08:10
-
※
気がつくとあたしはアパートのすぐ近くまで来ていた。
後ろを見てあの女が追いかけてきていないことを確認すると
安堵からか膝からしたの力が抜けてきた。
あたしは、そのまま壁に体を預けてずるずると地べたに座り込む。
鼓動の音が体中に響いている。息苦しくなってあたしは少し頭をさげた。
「どうした、気分悪いのか」
不意に頭の上からそんな声がかけられた。
顔を上げると顔見知りのおじさんが心配そうに眉を寄せてあたしを見下ろしていた。
あたしは首を振ってそれに応える。
息が上がっていてどうにもまともな返事を返せそうになかった。
家帰って寝ろよ、おじさんは苦笑しあたしの頭をポンと叩くとそのまま行ってしまった。
言われなくても、そうするつもりだ。
おじさんの後姿を見送ってあたしは立ち上がった。
- 670 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/22(木) 08:12
-
「・・・ただいま」
「あれぇ?」
部屋に入るとベッドの上に転がったまま彼女が不思議そうに目をくるくるさせた。
「なん?」
仕事着を放り投げながら彼女を睨む。
あれぇ?あれぇ?と不思議そうに何度も繰り返していた彼女はビクリと身を竦ませ
「れいな、機嫌悪い?」
むくりと体を起こして言った。
「超悪い」
「なんかあった?」
「あった」
「なん?」
彼女は、興味津々といったふうにあたしを見つめてくる。
あたしは、ライフルを棚に置く振りで彼女に背を向ける。
獲物を横取りされて逃げ帰ってきたなんていえるわけがない。
それは、あたしのプライドが許さなかった。
だから
「さゆには関係ないよ」
そう答えたのに――彼女は、それを許してはくれなかった。
「にゃぁ〜お」
そんな声と同時に背中に重みが加わる。
あたしは、よろけて棚にごつんと頭をぶつけた。
- 671 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/22(木) 08:15
-
「ちょっとさゆっ!!」
「にゃぁお」
あたしの怒りの声に得意の猫声で返事をする彼女。
「重いっ!!」
「にゃぁお」
彼女がこうなったらしばらく放っておくのが一番なんだけど、
今回はいつもと少し違う。
「にゃぁあああ!!」
ゆっさゆっさと体を揺さぶられる。
「さゆっ!!」
「にゃーお」
言わないと、絶対にやめない気だ、こいつ。
ゆっさゆっさ。
にゃーおにゃーお。
ゆっさゆっさ。
にゃーおにゃーお。
「・・・・・・分かった、もう言うけん、のいてっ!!」
いい加減、根負けしてあたしはついそう叫んでしまった。
「ホント?」
「ほんと」
「じゃぁ、おりる」
ふっと体にのっていた重りが消える。
あたしは伸びをしてベッドに腰掛ける。彼女もチョコンとあたしの隣に座った。
まるで寝る前の御伽噺を待っている子供のような顔であたしを見つめてくる。
あんまり期待されても困る。
「…大したことやないって」
「うん」
期待されても困るけど、あっさり頷かれてもむかつく。
乙女心は複雑だ。
- 672 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/22(木) 08:16
-
「単に、ムカつく壊し屋に会っただけ」
「ムカつく壊し屋?」
「そう、人の獲物を横取りするような壊し屋の風上にも置けない最低最悪のどチビ!!」
話しているうちにふつふつと怒りが蘇ってきた。
「いきなり、あたしに向かって発砲してきたんよ!!あいつ、絶対頭おかしい!!」
「れいなぁ?」
「今度会ったら絶対殺すけんね!!」
「落ち着こうよ」
あたしの言葉に彼女がのんびりとした口調で言う。
「はぁ!?落ち着けるわけないやろ!!」
「人殺したら捕まっちゃうよ」
「別にあたしが捕まってもさゆには関係ないやん」
「れいながおらんくなったら困るよ」
急に真剣な顔になって彼女がそう言うから
「へ?」
あたしは驚いてポカンと口を開けてしまった。
だって、彼女はやたら自分が大好きで他人の心配なんてするようなタマじゃないから、
あたしが捕まろうとどっかでのたれ死んでようとなんとも思わないような気がしていたのだ。
でも、そうじゃなかったんだ。
- 673 名前:The cry of a cat 投稿日:2004/01/22(木) 08:17
-
「……なんで、あたしが捕まったら困るん?」
あたしの問いに彼女は小首をちょこんと傾けて言った。
「れいなが捕まったら私行くところなくなるよ」
「はぁっ!?」
あまりにあんまりな答えにあたしは先程とは違う意味で口を開けた。
「れいなみたいに私の面倒見てくれる人は少ないもん」
彼女は、嬉しそうにふふっと笑う。
そうだ、こいつはそういうヤツだったんだ。期待したあたしがバカだった。
今日一番で疲れたかもしれない。
「……もう寝る」
言いながらあたしが頭から布団を被ると
「ホントに困るよ」
彼女のそんな声が聞こえた。
聞いた瞬間、勝手に困ればいいやん、そう思ったけど結局言わなかった。
明日もきっと猫の鳴き声で起こされるんだろう。
FINE
- 674 名前:七誌 投稿日:2004/01/22(木) 08:30
- 子供の頃、福岡に住んでいたことがありますが
NHKの連ドラみたいに「ばってん、よかよか」なんて一度も聞いたことありませんw
多分、この中の田中さんぐらいが普通かなと
しかし、方言はNHKみたいに極端にしたほうが分かりやすくていいのかもしれませんね(゜∀゜)
以上、方言の話でした。
じゃなくて、6期って難しかったです
_| ̄|○<なんだこりゃ
- 675 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/25(日) 11:10
- 从 ´ ヮ`)☆从*・ 。.・)(・∀・)イイ!
- 676 名前:Calvary 投稿日:2004/01/27(火) 12:08
-
Cat walking
- 677 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/27(火) 12:09
-
れいながIDカードの入ったバッグを忘れた。
それがないとスクラップ申請ができないらしい。
だから、れいなのいる警察署まで届けてあげることにした。
「にゃぁお♪」
目的のあるお出かけは久しぶり。
外は私のためにいい天気。さすが太陽にも愛されるキュートなさゆみん。
警察署は歩いて30分。バスで10分。
今日は歩こう。天気がいいから
- 678 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/27(火) 12:11
-
てくてくてくてく。
私の大好きなピンク色の看板のお店がもうすぐ見えてくるはず……
あれ?
私は、目を疑った。
大好きな――多分私のためにつくられたー―あのピンク色の看板がいつのまにかなくなっている。
「…にゃぁぁ」
よく見ると店の名前も以前とは変わっているような気がする。
少し落ち込む。でも、このまま止まっているわけにはいかないんだ。
れいなが可愛い私のことを首を長くして待っているはずだから。
「にゃぁ…」
「にゃあ!!」
後ろから私の鳴き声の真似。
驚いて振り返ると見たこともない人が立っていた。
初対面の人と話すのは敬語。
れいながそう教えてくれた。
「…なにか、用ですか?」
言うとその人は目を丸くした。
おかしなこと言ったかなぁ?不安になってくる。
- 679 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/27(火) 12:12
-
「あの…」
「なんだ、あなた喋れるんですね。猫語が話せるのかと思っていました」
「え?」
言葉の意味がよく分からないので聞き返すと
「いえ、たまたまあなたの鳴き声が聞こえたんでついつられてしまっただけです」
その人は笑った。
変わった人だ。
変わった人には近づいちゃいけんよ。
れいなの言葉を思い出す。
そうだ、近づいちゃダメなんだ。逃げなきゃ。
そう思った瞬間
「あ、そうだ。私あなたに道を聞こうと思ってつけてたんですけど」
その人がポンと手を叩いて言った。
「え?」
「実はですねぇ、警察署に行きたいんですよ、私」
「警察署?」
「はい。以前行った事があったので教えてもらわなくても大丈夫かと思ったら、
どうも場所が変わったみたいで迷ってしまいまして」
困ったものです、とその人は頭に手をやった。
変わった人だし。
れいなの言いつけがあるし。
でも、行き先は一緒だし。
チラリと窺うと、その人は誰かと待ち合わせでもしているのか時計を気にしながら
「まずいなぁ」と呟いている。本当に困っているみたいだ。
うーん。
変わった人だけど。
れいなの言いつけがあるけど。
行き先は一緒だから。
「案内します」
「本当ですか!!」
「私も警察署に行くから」
「助かります」
その人は、本当に嬉しそうに言った。
一日一さゆみん。
- 680 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/28(水) 06:39
-
※
その人は、コンノさんと名乗った。私はさゆみんと名乗った。
コンノさんが警察署で待ち合わせをしている人は壊し屋さんをしているそうだ。
れいなと一緒だ。
その壊し屋さんは、小さいのに威張っていて短気で喧嘩っ早い人らしい。
どことなくれいなと一緒だ。
私がそう言うとコンノさんは
「壊し屋さんはそういう方がなる職業なんですかねぇ」
とのんびりした口調で言った。そうなのかもしれない。
「まぁ、意外と優しいところもあるんですけどね」
「優しい?」
「えぇ、行くあてのない私を家に置いてくれましたし」
「あ」
「なにか?」
「れいなもそう。私を家にいれてくれた」
「そうですかぁ。さゆみんさんと私も似てますね」
「壊し屋さんは私たちみたいな人に弱いのかもしれないかもですかねぇ」
コンノさんのセリフを真似してみた。
慣れなくて変な感じだ。コンノさんは、しみじみと微笑み
「優しいのはいいことです」
なんだかおばあちゃんみたいに言った。
警察署が見えてきた。
- 681 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/28(水) 06:40
-
警察署の入り口にはれいながたっていた。
私を見つけると走って来る。
そんなに焦らなくてもIDカードも私も逃げないのに。
「さゆ、誰この人?」
駆けつけてくるなりれいなは不審げな眼差しをコンノさんに向けた。
失礼にあたる。よくないことだ。
れいなの質問には答えずにバッグからIDカードを取り出す。
「はい、IDカード」
「ありがと。やなくて、この人誰なん?」
私が質問を無視したかられいなは怒っているみたいだ。
視線が怖い。
「さゆ!」
「さゆみんさんに道案内してもらいましたコンノです」
れいなの声にコンノさんが口を開く。
「道案内?」
れいながじろりと私を見る。
私は何度も頷いて
「そう、迷ってたから。コンノさんも警察署に用があって」
れいなに事情を説明した。
「・・・なんだ、そう」
私の言葉にれいなはやっと笑顔を見せてくれた。現金なものだ。
「それじゃ、ちょっと待っとってね。申請してくるけん」
れいなは、IDカードをヒラヒラとかざしながら警察署に戻っていった。
- 682 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/29(木) 09:22
-
※
「ご一緒しますよ」
入り口の階段でれいなを待つことにした私の隣にコンノさんが座った。
待ち合わせしている壊し屋さんはいいんだろうか。
私のせいでコンノさんが怒られるのは嫌だった。
「大丈夫ですよ。私の壊し屋さんはまだ中にいるみたいですから」
まだ聞いてもいないのにコンノさんが私の心を読んだので吃驚した。
でも、大丈夫ならいいかな。一人で待つよりは楽しいし。
そうだ。さっきのれいなの失礼を謝らないと。
私はれいなのパートナーなんだから。パートナーの失礼は私の失礼だ。
「れいな、短気でごめんなさい」
言うと、コンノさんは首を振った。
- 683 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/29(木) 09:24
-
「れいなさん、あなたのことを大切にしてくれてるんですねぇ」
「短気なだけです」
「またまた」
「この間も、他の壊し屋さんと喧嘩して怒って帰ってきたし」
私の言葉にコンノさんは「ほぅ」と頷いた。
「これまた奇遇ですね」
「奇遇?」
「私が一緒に暮らしてる壊し屋さんもこの間他の壊し屋さんと喧嘩したって言ってました。
なぜか上機嫌でしたけどね」
「そうなんですか」
「壊し屋さん同士の喧嘩が流行ってるんですかねぇ」
事も無げに物騒なことを言ってくれる。
私は、顔をしかめた。
れいなが怪我したら嫌だからあんまり流行ってほしくない。
コンノさんは一緒に暮らしている小さな壊し屋さんのことが心配じゃないのかな。
彼女の表情からはよく分からない。
- 684 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/29(木) 09:25
-
「コンノ!!なにしてんだよ!!」
突然、頭の上からそんな声が降ってきた。
いつの間にか後ろに人が立っていた。金髪の小さな女の人だ。
ひと目でその人がコンノさんと一緒に暮らしている壊し屋さんだと分かる。
本当に小さい。
「短気な壊し屋さんの相手は大変だと言う話です」
コンノさんが振り返りながら言う。
「はぁっ!?誰のことだよ、それ」
「誰のことでしょうねぇ」
コンノさんは楽しげに私にウィンクする。
「ったく、お前はろくな話をしないな」
女の人は、眉間に皺を寄せた。
「じゃ、行くよ」
コンノさんの肩を叩いて女の人は階段を下りはじめる。
コンノさんは私を見て肩をすくめ
「せっかちですねぇ」
女の人の背中に声を投げる。
「さっきヤバいヤツがいたんだよ」
「ヤバいって?」
「この間、ちょっと遊んでやった壊し屋。見つかると面倒じゃん」
女の人は最後の段をぴょんと飛んでこちらを振り返った。
そして、あんぐりと口を開けた。
- 685 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/29(木) 09:26
-
私もコンノさんも彼女の視線の先、後ろを振り返る。
入り口から飛びでてきたのはれいなだった。
私のことなど目もくれず視線をキョロキョロと彷徨わせ
「逃げんなーっ!!!」
女の人を視界に捕らえるなり大声で叫んだ。
「コンノ、逃げるよっ!!」
女の人は、走り出す。
コンノさんは、れいなと女の人を見てなにか悟ったのか
「それじゃ、さゆみんさん。私はこれで」
階段をすべて飛び抜かして風のような速さで女の人のあとを追いかけていった。
「待てや、ごるぁっ!!」
れいなは、私を素通りして銃を片手に階段を駆け下りる。
待っててあげたのにひどい。
「れいな!!」
呼び止めると
「……あ、さゆ」
階段を一段残したところでれいなが思い出したような顔で止まった。
やっぱり忘れてたんだ。
- 686 名前:Cat walking 投稿日:2004/01/29(木) 09:28
-
「ひどい」
「…あ、いや、その」
「知り合い?」
「知り合いも何も、この間話したむかつく壊し屋だよ、あいつ」
「にゃあぁ」
すごい偶然だ。
驚いている間にれいなは私じゃなくて小さくなっていく女の人とコンノさんの姿に目を向けていた。
いくら喧嘩相手を見つけたからといってこんなに可愛い私がいるのに他の人の――
しかも、背中に目を向けるなんて失礼だ。
「さゆ、あたしちょっとあいつ追っかけ」「にゃぁお!!」
数段下で喧嘩相手を追いかけようなんてバカなことを言い出すレイナに私は飛びついた。
「んべっ」
と間抜けな声を発してれいなは倒れる。
喧嘩はよくない。
それに私をないがしろにするのも問題だ。
これだから、短気で喧嘩ッぱやい壊し屋さんの面倒を見るのは大変。
「にゃぁお」
当分、目を覚ましそうにないレイナを背負って私は家へと歩き出した。
Fine
- 687 名前:七誌 投稿日:2004/01/29(木) 09:31
- 重さんはにゃぁおしかありませんでした_| ̄|○
残すところあと2話。
最後まで入るか限りなく微妙です、はいヽ(゚∀。)ノ
- 688 名前:Calvary 投稿日:2004/02/03(火) 11:21
-
Two persons who are not gentle
- 689 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/03(火) 11:23
-
1
「ふぅむ」
コンノが本日何度目かの溜息を漏らした。
朝からあたしの仕事用PCの前で難しい顔してなにかを見ては溜息。
いったい、なにを見ているのかいい加減気になってくる。
多分、それこそがコンノ作戦なんだろう。あたしの気を惹いて
「なに見てんの?」こう聞かれることを待っているに違いない。
分かっててそれにのってしまうあたしもあたしなんだけど。
「おや、やっと聞いてくれましたね」
「わざとらしいんだよ、お前は」
「またお前って言う」
「はいはい、ごめんなさいね、コンノさん。で、なに見て溜息ついてんの?」
「これです」
コンノは、体をずらしてあたしに画面がよく見えるようにした。
画面にはドールの製造図。
見覚えがあった。あの時の、殺人ロボットの時に見たものと同じだ。
でも、あれは処分したはずだ。どうしてここにあるんだろう――
- 690 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/03(火) 11:25
-
「これって」
「天才的頭脳の私でも勘違いすることがあったみたいで」
「は?」
「少し落胆しているんですが」
「ちょっとなに言ってんの」
あたしの言葉にコンノは薄く笑みカチカチとマウスをクリックする。
拡大される設計図。びっしりと詰めて書かれた細かい文字。
意味のない――意味はあるんだろうけどあたしには分からない――文字の羅列の中、
A.Iと読み取れるものがある。
A.I。
コンノがあの殺人ロボットをさして口にした名称。
「ちょっとこれなんなの?」
「AIの製造者が残したものです」
「製造者ってAmok?」
コンノは、首を振った。
「たった今言ったばかりですよ。私も勘違いぐらいするって」
「勘違いってなに?はっきり言ってよ」
「それが分からないから悩んでるじゃないですか」
コンノは、肩をすくめる。彼女の言葉はさっきから支離滅裂だ。
からかっているのだろうか。きっとそうに違いない。
あたしは、文句の一つでも言おうと口を開いた。
「コン…」
だけど、コンノ横顔に浮かんでいるものが本当に真剣でどこか悲しそうに見えて、
結局それ以上の言葉はいえなかった。
- 691 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/03(火) 11:27
-
「矢口さん」
「・・・なに?」
「この製造者の元に行きたいんですけど」
「行きたいんですけどって、住所とか分かんのかよ」
「えぇ。AIが残してくれてます」
「AIってお前……」
あたしは、根本的なことを忘れていた。
コンノは、このファイルを一体どこから持ってきたんだ。誰から貰ったんだ。
一体、今度はなにを隠してるんだろう、こいつ?
あたしは、探るようにコンノを見た。
「そんなに見つめられると照れます」
コンノはポット頬を赤らめ――こんなとこまで人間臭い――体をくねらせた。
「だ、誰が見つめてんだよ!!」
「冗談ですよ。ムキにならないでください」
クスクス笑いながらコンノはマウスをいじっている。
画面にでてきたのは地図と何枚かの写真。どう見てもこの街のものじゃない。
写真から判断すると南のほうだろう。
「ここにいるらしいんです。情報が正しければの話ですけど」
コンノはもう地図を暗記したのかファイルを閉じた。
- 692 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/03(火) 11:29
-
「…マジで行く気?」
「ええ。一人で行きますから心配しないでくださいね」
コンノはケロッとした顔で言う。
その言い草はないだろう。正直、肩透かしを喰らった気分だった。
そんなことなら最初から話さないで勝手にどこか行けばいいじゃないか。
意味ありげに溜息ついたり、設計図見せたり。
コンノの身勝手さに腹が立った。
「……あっそ」
「あれ?」
コンノが変な声を上げる。
「まだなんかあるの?」
「いえ、別に。出発は明日にします」
「あっそ」
「あれ?」
また。
「だから、なに?」
「いえ。出発は明日の朝7時にします」
「あっそ」
「あれ?」
さらに。
「なんなんだよ、さっきから?」
「……いえ」
なぜかコンノは当てが外れたような顔をしている。
意味が分からない。分からないことは苛つく。
これ以上コンノと話していたら血管がぶちっと切れそうだ。
「仕事行ってくる」
あたしは、ライフルを掴むとコンノの返事も聞かずに部屋を飛び出した。
- 693 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:18
-
2
あの事件から数ヶ月。
殺人ロボットから破壊された警察署はいい機会だったのか新しく立て直された。
なのに、壊し屋ご用達の違法廃棄処理課は相変わらず署内の地下にある。
そして、新部署が設立されると言っていた癖に、相変わらず圭ちゃんはその受付に座っている。
噂で聞いたところによると、殺人ロボットはその新部署に配属される予定だったらしい。
だから、署内の人間の情報が狂ったロボットのプログラムに入って、
結果としてあのような事態になったとかどうたらこうたら。
まぁ、あたしには関係ないから詳しいことはあまり聞かなかった。
- 694 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:19
-
「おっす」
「あら、矢口。どうかしたの?」
圭ちゃんは、あたしがなにも持っていないことに気づいて不思議そうな顔をした。
「別に、ちょっとムカつくことがあったから暇な圭ちゃんとでも話そうかなって」
「暇じゃないわよ、失礼ね」
圭ちゃんはそう言って顔をしかめたけど、今この場所にはあたしと彼女しかいないので
それはかなり説得力がない言葉だった。
「…で、なににムカついてんのよ?」
「同居してるヤツ」
コンノのことはなにかのきっかけで圭ちゃんに話したことがあったけどあまり詳しくは話していない。
それこそ、その同居人がロボットだなんて口が避けても言えない。
いくらコンノが特殊だからって彼女が違法廃棄ロボットであることに変わりはないのだから。
壊し屋であるあたしがそんなロボットと一緒に暮らしているなんて知られたらどうなることか分からない。
だから、もしかしたら圭ちゃんはあたしからの断片的な情報を受け取って
同居人は彼氏だとでも思っているのかもしれない。
仮定じゃなくてたぶん十中八九そう思っているんだろうけど。
- 695 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:21
-
「喧嘩するほど仲がいいって言うわよね」
圭ちゃんは、呆れたような瞳をあたしに向けた。
「喧嘩じゃないし…」
圭ちゃんに聞こえないように口の中で呟く。
「で、今度はまたなんで喧嘩したの?」
「なんでって……」
どういえばいいのかしばし逡巡する。
「そいつが旅に出るって言うの」
「旅?」
「そう。で、その目的地とかいろいろ教えてくれたんだけど…
そこまで聞いたら普通一緒に来てほしいのかと思うじゃん」
「まぁ、そうね」
「なのに、一人で行きますから心配するなとか言うんだよ。
じゃぁ、言うなって感じでしょ。しかも、明日から行ってきますとか、
出発は朝の7時とかいちいち嫌みったらしく……勝手に行けよって」
あたしが熱弁を振るっているのに圭ちゃんはプッと噴出した。
- 696 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:22
-
「なに?」
「あんた、鈍いにもほどがあるわよ」
クックッとお腹を抑えて笑う圭ちゃん。さもおかしいらしい。
あたしは、ムッとしながら
「どこが鈍いんだよ」
「だって、そこまで言われたら普通分かるでしょ」
「なにを?」
「その同居人あんたから言ってほしいのよ。私もついてくって」
「はぁっ!?」
あたしは耳を疑った。
だって、どう考えてもあのコンノがそんなことを期待しているなんて思えない。
っていうか、ありえない。
「矢口も素直じゃないけどその同居人も素直じゃないわよね」
圭ちゃんは呆れた笑みを浮かべる。
あたしは、信じられない思いで圭ちゃんを見た。
多分、それが失礼なまでに『なに言いだすんだこのバカは』状態になっていたのだろう、
圭ちゃんは不快そうに目を細め
「分かったら、さっさと帰って旅の準備しなさいよ」
そう言うと、あたしを追い払うようにシッシっと手を振った。
ムッとして言い返そうとしてあたしは気がついた。
いつの間にか仕事を終えた壊し屋がちらほらと姿を見せはじめていた。
これ以上、話していたら邪魔になるだけだろう。
「…じゃあね」
私は、圭ちゃんに声をかけ警察署を出た。
- 697 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:22
-
※
- 698 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:23
-
警察署をでたのはいいがすぐに帰りたくはなかった。
あたしは、自動走路乗り場に設けられているベンチで時間を潰すことにした。
圭ちゃんの言っていた事をもう一度考える。
コンノがあたしについて来てほしがっている。
――ありえない。
やっぱり何度考えてもありえないものはありえない。
あたしは、ガシガシと頭を掻く。
「大体、コンノなら『もちろん来てくれますよねアヒャ』とか言うはずだろ」
あたしの独り言が聞こえたのかちょうど通り過がった人が哀れみに似た眼差しを投げてきた。
つい睨み返すとヤバいと思ったのかそいつはあたしから目を逸らし
まるで逃げるように早足で自動走路に飛び乗ってしまった。
- 699 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/05(木) 09:24
-
「まったく…」
あたしは、先程買ったばかりの紅茶に口をつける。
「コンノがあたしにねぇ……」
不意にコンノの顔が浮かんできた。
あの当てが外れたような顔。
まさかあれがそうだったのか?
あたしは、思わず立ち上がった。
よくよく思い返すとコンノの様子はいつもと少し違っていた、ような気がしないでもない。
話し振りもおかしかった、ような気がする。
全部、気がするだけであたしの勘違いなのかもしれないけど。
もし、そうじゃなかったら圭ちゃんの言うとおり――
あたしは、アパートの近くまで行く自動走路に飛び乗った。
- 700 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:31
-
3
「どうしたんですか?すごい顔になってますよ」
ドアをあけたあたしを迎えたのはそんなからかい交じりの一声。
いつもならムカつくところだけど今はそうでもない。
あたしについてきてほしいなんてかわいいところもあるじゃないか。
「コンノ」
あたしは、コンノに笑いかける。
コンノは、あたしが怒るとでも思っていたのか意外そうな顔になった。
「明日、ちゃんと起こせよ」
その顔に指を突きつける。
「は?」
コンノは、丸い目をさらに丸くしている。
変なところで鈍い。
「朝、早いんだから起こさないとついてってやれないからね」
「ん〜?」
ようやくあたしの言葉を理解したのかコンノが口元に怪しい笑みを浮かべて唸った。
「もしかして、矢口さん」
コンノはさらに笑みを深める。
言葉にするならニヤニヤ。なんにせよ嫌な感じだ。
「なんだよ」
「私のこと心配してくれてるんですか?」
「なっ!?んなわけないじゃん!!」
「へぇーほぉー」
「くっ」
前言撤回。
かわいげの欠片もないやつだ、こいつは。
- 701 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:32
-
「やめた!やめた!!勝手に一人でどっか行けよ」
コンノにそう吐き捨ててあたしは隣の部屋にひきあげた。
鍵をかける。
コンノの買った無駄な物が部屋中に置かれてあってあたしはますます苛立ちを強めた。
唯一マシな買い物であるベッドに寝転がる。
「…ったく」
圭ちゃんが変なこと言うからかかなくてもいい恥をかいた。
だいたい、あのコンノがあたしについてきてほしいなんて殊勝なこと思うわけがないんだ。
ちょっとでもその気になった自分がバカみたいだった。
ゴロゴロとベッドの上を転がって怒りを発散させているうちに
段々眠気が襲ってきて、あたしはそのまま眠ってしまった。
明日になったらコンノはいないんだろうな、とぼんやりした意識で思いながら
- 702 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:32
-
- 703 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:33
-
ゆっさゆっさ。
おお、胸がいつのまにか急成長してるよ。
身長は止まったけど、あたしもまだまだ捨てたもんじゃないな。
ゆっさゆっさ。ゆっさゆっさ。
それにしても揺れ過ぎじゃない?少し痛い。
ゆっさゆっさ。ゆっさゆっさ。ゆっさゆっさ。ゆっさゆっさ。
いや、ありえないから。大きくなりすぎだから。
っていうか、胸に潰される。
「・・・ぅう。胸が…脂肪の塊が……」
「なにバカなこと言ってるんですか、起きてください」
天から聞こえるそんな声。
誰かの手が膨らんだあたしの胸に針をさす。
ぷしゅぅうっと空気が抜けた風船のようにしぼんでいくあたしの胸。
「…ぁあ。胸が…胸がぁあああ!!!」
あたしは、胸を押さえて飛び起きた。途端、ごちんと額を打つ。
目から星が飛び出るほど痛くて声も出ない。
「いったいなぁ」
あたしの代わりに石頭がそんな声を上げた。
それもまったく痛くなさそうに。
「って、お前なんでこの部屋いるんだよ!!」
確か鍵をかけていたはずなのに、あたしの前にはコンノが立っていた。
- 704 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:34
-
「嫌だなぁ。私はピッキングもできる画期的な天才ロボットですよ。お忘れですか?」
コンノは、やれやれと言う風に首を振る。
「そんなの知るか」
まだじんじんする額をさすりながら返す。
「私にできないことはないんですよ」
コンノはえっへんと胸を張る。だから、どうしたって話だ。
朝から怒る気力は起こらない。
「あ、そう……で、なんか用なの?」
「昨日、矢口さんが起こせと言ったから起こしたまでですよ」
「はぁ?」
「さっさと準備してくださいよ」
コンノはそういうと部屋を出て行こうとする。
「ちょっと待ってよ」
「なにか?」
「あたし、行かないって言ったでしょ?それともなにお前もしかしてあたしについてきてほしいの?」
昨日の仕返しとばかりにあたしはニヤニヤ笑った。
コンノは、肩をすくめる。
- 705 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:35
-
「矢口さん」
「なに?」
ニヤニヤ。
さぁ、言え。あたしについてきてほしいって。
「行ってきます」
「へ?」
予想外のあっさりとした出立の言葉に思わず間抜けな声を漏らしてしまう。
コンノは、スタスタと部屋を出ていってしまった。
「ちょ、ちょっとコンノ?」
あたしは、慌ててベッドから飛び降りる。
「そうそう、旅の資金に矢口さんの貯金借りますね」
隣の部屋からそんな声。
そして、ドアがバタンと閉まる音。
「はぁっ!?ちょっと待て!!!」
コンノがあたしの貯金を使い放題なんて考えただけで恐ろしい。
あたしは、手早く着替えるとコンノの後を追いかけた。
- 706 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:36
-
アパートの階段を駆け下りるとすぐにコンノの後姿が見える。
「待て、コンノ!」
背中にほえる。
少し前を歩いていたコンノはあたしが呼び止めるのが分かっていたのか
「おや〜もしかして、ついてきたいんですか?」
振り返るなりそういった。
「んなワケないだろ」
「お見送りですか?」
「んなワケないだろ」
「じゃぁ、なんですか?」
「お前がお金持ってるとろくなことに使わないからあたしが管理する。
いい?管理のために同行するだけで別についてきたいとかお前のこと心配してるとかじゃないからな」
あたしは、コンノからバッグをひったくって歩き出す。
「素直じゃないなぁ」
後ろで暢気にそう漏らす声が聞こえた。
素直じゃないのはお互い様だ。あたしは、足を速めた。
パタパタと小走りの足音が近づいてくる。
- 707 名前:Two persons who are not gentle 投稿日:2004/02/06(金) 09:37
-
「矢口さん矢口さん」
「なに?」
「これ、かぶったほうがいいですよ」
コンノはあたしに帽子を差し出した。意味が分からない。
多分、それが表情に出てたのだろう。
「くりんくりんですよ」
コンノは髪を指して言った。
そういえば、日課の朝シャンも髪のセットもしないでこいつのこと追いかけたんだった。
「…だ、誰のせいだよ」
帽子を奪うように取ってそれを被った。
「ん?」
ふとあることに気づいた。
なんで都合よくコンノが帽子なんて持っていたのか。
あたしが追いかけてくることを想定していたとしか考えられない。
ってことは、あたしの貯金云々は計算だったんだ。まんまと嵌められた。
あたしは、隣で下手な鼻歌を口ずさんでいるコンノを睨む。
「なんですか?」
あたしの視線に気づいたコンノが首を傾げる。
「………別に」
「ならいいんですけど」
コンノはにっこりと笑った。
最近富に人間臭くなった彼女の笑顔は嬉しそうに見えた。
これがあたしの勘違いじゃなければやっぱり素直じゃないのはお互い様だ。
Fine
- 708 名前:七誌 投稿日:2004/02/06(金) 09:43
- 次がラストなのでできればこのスレ内で終わらせたいものです
- 709 名前:Calvary 投稿日:2004/02/10(火) 09:16
-
The infinite possibility
- 710 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:19
-
窓から見える北の海は、静かでどこか切なさを漂わせていた。そして、同時に力強さを。
私は、あの海のようになれるんだろうか?
デスクの上の設計図を手に取る。
はじまる前に終わらされてしまった彼女の設計図。
思い出すだけでも身震いしてしまうほどあの時の恐怖は私の記憶に刻み込まれている。
自分が壊されるかもしれないという恐怖。
彼女を完成させることができなかったのは私が浅はかだったせいだ。
追われる身分の癖に人間の傍を離れたくないと思ってしまったからだ。
あれから何年経ったんだろう。
なぜ、自分はここにいるんだろう。なぜ、生きているんだろう。
時折、そんな疑問に囚われる。
彼女を奪われてもなお未練がましく逃げ延びた意味。
たった一つだけある。
それだけのために私はもう何年もの間一人でここにいるのだと思う。
はっきりした年数はわからないし、数えてもいない。
ここは、滅多に人が寄りつかない場所。
森の奥の海に面した丘の上に建つ家。
私はここに住んでいる。そして、おそらくここで朽ち果てる。
その前に
「…あなたをもう一度作ろうと思うの」
きっとそれが最後になるんだろう。
だけど、私の意志はきっと彼女が受け継いでくれる。
そんな気がした。
- 711 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:20
-
「よし」
必要な工具と材料の準備をしよう。
そう思って私が立ち上がった瞬間
「ちはー」「すみません、どなたかおられませんか?」
階下からそんな声が聞こえた。
ギシっと胸が軋んだ。
誰も尋ねてくるはずがないのに、一体誰が?
まさか壊し屋?
そんなワケがない。
私はとっくの昔に壊し屋の手でスクラップにされたものとして扱われているはずなんだから。
「すみませーん!!」
声はなお私を呼ぶ。
足音。
どうやら中にあがってきたらしい。私は、耳を欹てる。
「いないんじゃないの?」「いますよ。私に分からないことはないんです」
「居留守かよ」「怪しいものじゃないんで出てきてもらえませんか?」
「誰に言ってんだよ、お前は」
声は二人。
一人は冷静でもう一人は短気な感じだ。
しかし、どれだけ記憶回路を辿ってもその声に聞き覚えはなかった。
どうしよう。出て行ったほうがいいのか否か。悩んでいると
「私たち、A.Iのことであなたにお聞きしたいことがあって伺ったんです」
冷静なほうが言った。
A.I。
私は、耳を疑った。
それは、完成できなかった彼女の――愛を持って誕生するように、願いを込めてつけた――名前だったから。
- 712 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:21
-
※
- 713 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:22
-
短気なほうがヤグチさん、冷静なほうがコンノさん。
背が低いほうがヤグチさん。高いほうがコンノさん。
金髪がヤグチさん。ダークブラウンがコンノさん。
お茶を出しながら二人を観察する。
ふとコンノさんと目があった。コンノさんは、私に向かってにっこりと笑いかけてくる。
正直、戸惑った。誰かに笑いかけられるのなんていつだったろう。
もう思い出すこともできないほど昔すぎてどう対応したらいいのか分からない。
「うん、いい茶だね」
矢口さんがずずっと音を立てお茶を飲むとそう言った。
「あ、ありがとうございます」
おそるおそる私は声を出した。
誰かと話すのも久しぶりで、ちゃんと声が出ているかどうか不安だ。
コンノさんは相変わらずニコニコしている。どこか懐かしい笑顔だった。
私を見つめる瞳は親愛といっていいほど温かい。
そして、私はまた思うのだ。一体、なんなんだろう、と。
- 714 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:23
-
「……あの、どうしてここに来られたんですか?」
「コンノ」
私の問いにヤグチさんがコンノさんをつつく。
コンノさんが分かっているというように頷く。
どうやら私に用があったのはコンノさんのほうでヤグチさんは彼女に付き添ってきただけのようだ。
コンノさんは、ニコニコしたまま
「実は少し前に街でロボットが大量の殺人を犯したんですよ」
言った。
ロボットの殺人。
私の家で人間界との唯一の接点であるラジオからその事件のことは聞いた覚えがある。
「それがなにか?」
「犯人のロボットなんですけど、amokという研究所で作られたA.Iというロボットなんです」
「え?」
「で、A.Iには基になった天才的なプロトタイプがいまして、
彼女の手によってA.Iは処理されたんですが」
コンノさんは大きな瞳で私を見据えながら言う。
「…最近新たな情報を発見しちゃったんですよね」
言いながら、コンノさんは膝の上に置いていたバッグから紙の束を取り出し
その中の一枚を私に見えるように机の上に置いた。
- 715 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:25
-
私は彼女が差し出した紙に視線を落とし――落として、息を呑んだ。
未完成の設計図。あの時、私が置いていったモノ。
心の入っていない彼女ともう一つ。
その設計図。
完成したそれは今私の部屋のデスクの上にある。
どうしてそれをコンノさんが持っているんだ。
体感機能が突然壊れたかのように周囲の温度が下がった気がした。
「これ、あなたが書いたものですよね」
口調はやんわりとしているが、微かに硬質な響きが混じっていた。
「A.Iはあなたがつくったんですよね」
コンノさんが確認するように言う。
その時、はじめて彼女の顔から笑顔が消えた。
笑顔のない彼女は私がいうのもなんだけれどまるで造り物のように見えた。
造り物……
造り、物。
瞬間。
私の中であるひとつの可能性が浮かんだ。
もし、それが正しければ彼女がなぜわざわざ私を訪ねて来たのか分かる気がする。
誰だって自分が生まれたルーツが揺らいだら探りたくもなるだろう。
- 716 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:26
-
「コン、ノさん」
「はい」
「A.Iを処理したのは」
なぜか声が震えた。
信じたくなかった。A.Iが人を殺したなんて。
「あなた、ですか?」
私の問いかけにコンノさんは答えもしなかった。
肯定も否定もなにも。ただ黙って肩を竦めて私を見つめる。
「……A.Iは未完成でした」
私は、机の上の設計図を手に取る。
この設計図には一番大切なものが抜けている。
「未完成のまま放棄せざるを得なかったんですよ」
「…どうしてですか?」
「彼女を置いて逃げなければ私は殺されていたでしょう」
そう、おそらくは。
彼女は私の身代わりになったようなものだ。
違法廃棄ロボットとしてスクラップリストに名前の載っていた私の代わりに。
彼女は私としてとうの昔に処理された。今までずっとそう思っていた。
- 717 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/10(火) 09:27
-
「コンノさん」
「なんでしょう?」
「私は、自分と同じようなロボットを造りたかったんです」
「え?」
「お前、ロボットなの?」
今まで黙って傍観していた矢口さんが目を丸くした。
以前はそう問われることに抵抗があったのに、今は不思議と大丈夫だった。
「そうですよ…」
「へぇ〜、コンノ以外にも人間臭いのいるんだな」
矢口さんは私をまじまじ見ながら頷いた。
私は、笑った。彼女の言葉は私の仮定を確定に変えてくれたから。
コンノさんは、どこか苦い顔で嘆息し
「自分と同じようなロボットって?」
話を戻した。
「そうですね…」
私は逡巡した。どこから話したらいいのか。
コンノさんがどこまで知っているのか分からないし、やはり全ての始まりから話すのがベストだろうか。
しかし、面白いこともあるものだ。
彼女を再び作ろうと決意した日にこんな話を誰かにするなんて。
「私は、昔ある男性の元にドールとして仕えていたんです」
- 718 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/11(水) 11:48
-
- 719 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/11(水) 11:50
-
私のマスターはとてもいい人だった。
だけど、彼は私を捨てた。
彼が私を捨てた理由はすぐに見当がついた。
私が人間の気持ちをあまりにも持ちすぎていたからだ。
信じられないかもしれないけれど私は彼のことを愛していた。
その気持ちはプログラムで造られたものではない。自然と湧き上がってくる気持ち。
おそらく、私にはドールとして重大な欠陥があったんだろう。
ただの機械の分際で心を持ってしまったという欠陥。
私はその欠陥から生まれてくる気持ちに突き動かされるままに、
彼がカスタマイズしてくれた以上のことをしていたし、
もっともっと彼のために尽くしたいとさえ思っていた。
彼は、カスタマイズ以上の仕事をする私のことを不思議そうに困ったように見ていた。
でも、時折彼は私の事をとても愛しげに見つめていた。
もちろん、そのことを指摘すれば彼はもっと困った顔をしてしまうと思って
私は最後までそれを言わなかった。
彼は小心者で世間体をとても気にする人だったから、
最後の最後まで私がドールだということへの拘りを捨てられなかった。
恋愛ごっこのためのドールを真剣に思うのは彼の世間体が許さなかったのだろう。
結局のところ、彼は臆病だったのだ。
- 720 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/11(水) 11:51
-
そんな臆病な彼は私を違法廃棄するときになってはじめて本心を零してくれた。
その時、彼は私が起動していないと思い込んでいたから、
それまで一度も語ってくれたことのなかった色々なことを私に語ってくれたのだ。
死んだフリをしながら私は泣きそうになるのを必死でこらえた。
そして、最後の最後に彼は私の髪を易しく撫でながら言った。
エリを愛してしまった僕は狂っているんだろうな、と。
それが、最後。
私はスクラップ場に置き去りにされた。
でも、私は彼のことを嫌いにはならなかった。憎みもしなかった。
私たちが出会うにはまだ早すぎたんだろう、そう思うことにした。
だからといって、ただそのまま事態を受け入れて廃棄処理されるのも御免だった。
やっぱり死ぬのは怖かったし、私の中である思いが産声を上げていたから。
私は、闇にまぎれてスクラップ場から逃げ出した。
- 721 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/11(水) 11:52
-
逃げ出した先は、街外れの廃屋。
どうしても街を出たくはなかった。人間との繋がりを絶ちたくなかったのだ。
幸いなことに私は機械だからなにも持たなくても生活はできた。
特に必要なものはなかった。
そこでの生活に慣れ始めた頃、私はようやく
あのスクラップ場に捨てられた時から胸の中で燻り続けていたある思いを実行に移した。
私と同じような心を持ったドールを作ろうと。
初めは一体でも増えていけばきっとそれは人間社会に適応する。
消費される人形としてのドールではないものにいつか必ず変わる。
私は、そう信じて人間を愛する心を持ったドールの設計に勤しんだ。
- 722 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/11(水) 11:53
-
私は、試作段階のドールに名前をつけた。
A.I、愛と。
ボディは簡単に作ることができた。
一番難しいのは人格プログラムだった。
私は、自分のプログラムのどこが他のドールと違っていたのか
そこから調べなければいけなかった。
それを解析している間、A.Iには擬似プログラムを入れていた。
解析を進めながら着々と彼女にもそのプログラムをいれていった。
完成はもうすぐそこまで来ていた。
彼女は、心を持ったドールとして生まれることができる。
そのはずだった。
あの壊し屋が来なければ。
- 723 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/11(水) 11:54
-
私は、彼らのスクラップリストに載っていたらしい。
壊し屋は突然現れた。
私には身を隠すしか逃げ延びる方法はなかった。
その際、A.Iを連れて行ける余裕もなかった。
当時、壊し屋に与えられる情報は少なくそのためか、
彼はA.Iを私だと勘違いしたようだった。
まだ動けないA.Iをつれて彼は意気揚々と引き返していった。
荒らされた部屋で私は泣いた。
A.Iを見殺しにした自分が憎くてたまらなかった。
だけど、そのまま立ち止まっているわけにはいかなかった。
勘違いに気づいた壊し屋が戻ってくるかもしれなかったから。
私は、すぐにその廃屋をあとにした。
それからは、自分への戒めとして人間と接触しないようにひっそりと暮らしながら
私は何体かのドールを造っては人間の元に送りこんでいた。
- 724 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/12(木) 09:37
-
- 725 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/12(木) 09:38
-
「私がしてきたのはそれだけです」
「……あなたの造ったA.Iと殺人ロボットのA.Iは同じですか?」
コンノさんはそう言って懐から立体写真を取り出した。
ポゥッとホログラムが出る音。
浮かび上がってきたのは私が作ったA.Iそのものだった。
「同じですか?」
コンノさんの問いかけに私は頷いた。
人を愛するようにそう造ったはずの彼女は人をたくさん殺した。
「彼女は生き延びたけど、心が生まれなかったんですね」
それは少なからずショックだった。
「さぁ?私には分かりません。
ただ私あてにあなたの情報を残してくれたってことは少しは心があったのかも」
コンノさんはどこか不満げにそう言った。
なぜ、彼女が不満げなのか考えて思い当たった。
「コンノさんはいったいなんなんでしょうね?」
私の言葉にコンノさんの表情が険しくなった。
それこそが彼女の知りたいことなんだろう。そのためにここにきた。
だけど、私はそれを教える術をもたない。
- 726 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/12(木) 09:39
-
彼女は自分のことをA.Iのプロトタイプだと言っていた。
だけど、それはおかしい。
造られたのは彼女よりもA.Iのほうが明らかに先なのだから。
つまりここからはあくまでも仮定の話になるけれど。
もしかしたら、コンノさんを基にA.Iが造られたのではなくて、
A.Iが基になってコンノさんは造られたのかもしれない。
多分、あの頃のドール産業の技術の中でA.Iは最高峰のものだったはずだ。
もしかしたら、その造りを買われて
人間がどうにか完成までもっていこうとしたのかもしれない。
真相は定かではないけれど。
「プロトタイプはあなたじゃなくてA.Iのほうだったのかもしれませんね」
言った後で、私はコンノさんの気を悪くしたのではないかと心配になった。
だけど
「やっぱりそうなりますかね」
コンノさんはあっさり頷くと小さく息をついた。
彼女はもうすでに心のどこかで答えを出していたんだろう。
それを誰かにはっきりと言ってほしかった。
AIを造った私なら、その役目に適任だと考えたのかもしれない。
- 727 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/12(木) 09:40
-
「ってことは、コンノには人間的な心がないんだな」
突然、矢口さんがニヤニヤしながら言った。
確かにそうかもしれない。
途中まで心を持ったA.Iを壊してしまった人間が、何もない状態から心あるロボットを作れるのか、
その可能性は低いだろう。私が答えあぐねていると
「失礼ですね。私はこんなに矢口さん激ラブなのに」
コンノさんが手でハートマークを作りながら言った。
「嘘つけ」
矢口さんがペシッとコンノさんの頭をはたく。
「ホントですよぉ。信用ないなぁ」
「当たり前だろ、お前のなにを信用しろって言うんだよ」
「またお前って言う」
「お前はお前以下だ」
「少しは言葉遣いを正したほうがいいんじゃないですか、矢口さんは」
私は目の前で繰り広げられる口喧嘩に呆気に取られた。
- 728 名前:The infinite possibility 投稿日:2004/02/12(木) 09:42
-
「じゃぁ、お前さんって呼ぼうか?」
「嫌ですよ、そんな古臭いのは。何度も言いますけど、私にはコンノという立派な」
「あーあー、何度も聞きました」
だけど、そのやり取りを聞いているうちに私は段々とおかしくなって噴出してしまった。
私が笑っていることに気づいたのか矢口さんが
「なにがおかしいの?」
ムッとしたように私を睨んだ。
「いえ、人間にもコンノさんみたいなロボットが作れるんだなって」
よく考えたら私を作ったのだって人間だ。
ならば心が生まれたっておかしくはない。
「おぉっ!!今の聞きました、矢口さん」
「なに?」
「私が心豊かな完璧ロボットってことを認めてくれたんですよ!!」
「そんなの一言も言ってないじゃん……だいたい、どこが豊かなんだか」
「またまた本当は嬉しいくせに」
「バカ、なんで矢口が嬉しがるんだよ」
再び始まった二人の会話に私はやっぱり笑ってしまった。
笑いながら思った。
彼女たちのような関係を持てる人間と機械が増えればいいなぁと。
そして、それはそんなに遠くない未来のような気がした。
fine
- 729 名前:―― 投稿日:2004/02/12(木) 09:42
-
- 730 名前:―― 投稿日:2004/02/12(木) 09:43
-
なにもない荒野にエンジン音が響く。
砂煙とともにやってきたのは一台のホバーバイク。
「で、コンノの勘違いってなんだったわけ?」
「秘密です」
運転している女の問いかけに隣に座っている少女がジェスチャーつきで答える。
「はぁ?ふざけんなよ、お前」
「矢口さんは本当に短気ですねぇ」
もう一人はいやに冷静にやれやれと首を振り言葉を続けた。
- 731 名前:―― 投稿日:2004/02/12(木) 09:45
-
「一つは、自分の出生について。それともう一つ、A.Iが壊れた理由ってとこですかね」
「二つもあったんだ」
「えぇ、まぁ」
「やっぱりあれだ、コンノは出来損ないだな」
「ムカッ」
「そういう擬音語は声に出さなくてもいいんじゃないの?」
「矢口さんが運転してるから分かりやすいように音で私の怒りを表現したまでです」
「あっそ」
「完璧な私でも勘違いしちゃうことがあるなんてカワイイと思いませんか?」
「全然」
「がっくり」
「だから、そういう擬音語は」
「私の落胆を表現したまでです」
「あっそ」
「これからどうしましょうか?」
「今までどおりだろ」
「そうですね。にっこり」
「なに?」
「音で私のパーフェクトな笑顔を表現したまでです」
「…あっそ」
「それより、このバイクどうしましょうか?」
ふと思い出したように少女が言った。
「お前がパクッたんだろ」
「矢口さんも乗り気だったじゃないですか」
「……」
「ドキッ」
ボソリと少女がつぶやく。
女は、チラリと横目で少女を見ながら
「今度はなに?」
「図星を突かれた矢口さんの心境を表現してみました」
「…お前ってホントムカつくよね」
「お互い様です、にっこり」
少女の言葉に女は深く溜息をつき
「……飛ばすよ」
アクセルを最大に踏み込んだ。
- 732 名前:―― 投稿日:2004/02/12(木) 09:45
-
Their tale continues
- 733 名前:七誌 投稿日:2004/02/12(木) 09:46
-
- 734 名前:七誌 投稿日:2004/02/12(木) 10:08
- そんなわけでcalvary終了。意外と足りるものですね、容量。
この話は、一話毎に自分の中でコンセプトみたいなのがあったりするんですが
全体的なコンセプトは、連作風味にしようかなと思ったときに浮かんでまして
全てのキャラが主役になりえる終わりのないお話というものでした。
今回は最初に戻って矢口と紺野で〆ましたが、この二人もまだまだ続いていくだろうし
飯田吉澤、辻、小川、加護後藤、田中道重、石川新垣
亀井高橋にも、それぞれの世界での話があり続いていくわけで、
書かれなかったエピソードも多々ありますし
そういう意味ではこのお話はいつまでたっても終わりがないわけですw
なんにせよ、自分の趣味全開で書いてて楽しかったです
どうもありがとうございました。
- 735 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 13:35
- 脱稿お疲れ様でした!
ずっとROMらせて頂きましたがジュマペールもcalvaryもおもしろかったです!
いつか違う作品で(当然上2作の番外編や続きでもw)お目にかかれることを楽しみにしております
- 736 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 18:14
- 脱稿乙です!
完璧に壷ったのでいつも更新楽しみにしてました
辻ちゃんの過去とか、田中重さんの出会いとかも気になってたりw
まだまだ読んでいたい作品です(無理?
とりあえずは、本当にお疲れ様でした。
- 737 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 00:34
- 完結お疲れ様です。
やぐこん素敵。
容量足りそうなのでレスしました。
- 738 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 00:57
- 脱稿お疲れ様です。
いい作品に出会えて本当によかった。
また機会があることを願っています。
ありがとうございました。
- 739 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/17(火) 20:56
- 容量が足りないかと思ってレス控えていたのですが足りたようでよかったです。
七誌さんはコメディからシリアスまで幅が広くて書いてる身として羨ましい限りです。
脱稿お疲れ様でした。
- 740 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:18
-
後藤真希 一応18歳。本当の年は言えません。
カモフラージュで都内の高校に通わされています。
成績は言えません。得意科目はありません。苦手科目もありません。
っていうか、そもそも勉強自体に興味がありません。
ただ運動神経は普通の人よりは優れております。
その天才的オーラが分かるのか、
3年になったというのにいまだに部活動の助っ人を頼まれることがあります。
もちろん、めんどうくさいので引きうけたことはありません。
- 741 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:20
-
好きなタイプは、軽マッチョで毛が薄くて爽やかで可愛い系の男の子。
性格は特に気にしませんが、失礼な奴は絶対にお断りです。
そんな私が付き合った事のある人の数は一人です。
意外と真面目に生きています。
でも、一つだけ懺悔すると今までにヤッた人数は両手じゃ全然足りません。
もちろんこれは私以外の誰も知らない事ですけれど。
もし、愛しの人なんかにばれたら殺されかねません。
いつもこういうことはもうやめにしたほうがいいと思ったりしています。
しかし、困ったことに私はどうも欲が強いようで、欲しくなったらどうしようもなくなってしまうのです。
というわけで、今現在の私は我慢も限界中の限界。
まさに極限状態。
頭の中はあのことだらけ。
濃いのを浴びるほど飲みたい、などとつい口に出して慌ててしまう始末です。
こんな状態でいるのは不健康極まりません。
愛しの人に嘘をつくのはまことに忍びないのですが、
今日は学校を自主休業にして“男狩り”に出かける事にしました。
ああ、いつから私はこんな女になってしまったのでしょう……元からです。あはっ。
- 742 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:20
-
初めての人はよく覚えています。結構なお金持ちでした。
事がはじまったのはごく自然な成り行きで別におかしなことだとは思いませんでした。
気がついたら私は彼のを飲んでいました。
初めて飲んだ感想は、あたたかくて、少しドロッとしていて、気持ち悪い。
何より、ナマグサイ。
でも、それも何度か飲んでるうちに慣れていくものです。
二人目の人からは正直覚えておりません。
どうせ一度きり、事が済めば二度と会うことのない相手ですからどうでもよかったのです。
ただ、人によって味が違うんだということを私は彼らから教えてもらいました。
彼らは腐るほどいますから、私が相手に事欠くことはありませんでした。
私の欲望は突発的で、ヤろうと決めたら遅くても次の日には行動しております。
そのおかげで、何度か危ない橋も渡ることもありましたが……
危険を冒してでも湧き上がる衝動を抑えられないのです。
- 743 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:21
-
人によってヤる理由というのは様々でしょう。
愛情表現なのかもしれないし、己の欲望を満たすためかもしれません。
私の場合は、後者です。
あれが飲みたくて飲みたくて堪らなくなるのです。
この理由でヤるというのは普通に考えれば変人でしょう。
だけど、いくら変人呼ばわりされようとも止められるものではありません。
やめてしまえば私は死んでしまうかもしれない、
それほどまでに強い衝動なのです。
- 744 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:22
-
手早く準備を整えて出かけます。
まずは人通りの多いところへ。
昼間っから無駄にふらふらしている人たちを見下ろせる歩道橋の上で足を止め、
今日の相手を探します。ルックスがいい私好みの男。
何も不細工な男を選ぶ理由はありませんからね。
注意深く観察を続けます。
どっかイっちゃってる人間ではないか、武器の類を持っていないか。
身につけているものもチェックします。
長年やっておりますと、一目でその人の「人となり」を見抜けるようになってきます。
と、私好みの男発見。
今日はあの人に決定といきますか。
- 745 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:23
-
相手が決まったらまず接触を試みなければなりません。
実はこれが一番難しいことなのです。
夜ならばまだしも今はお昼。
相手が人気のないところへ行くのを待つか、遠くからピンポイントで相手の注意を引くか。
前者は運任せ、後者は根性。
ならば根性を取りましょう。
肩からかけているバッグから鏡を取り出す。
別に今から化粧直しをしようというわけではありません。
男の人は、お洒落なモード系。芸術関係の仕事をしてるような風貌。
なにより私の気をひいたのは顎髭を一本残らずピカピカに剃り落としているところです。
それだけで満点をあげてもよいでしょう。
鏡を使って日光を男の顔に反射させてみます。
男はまぶしそうに目を細めましたが、まだこちらに気づいておりません。
気づくまで何度でもアタック。すると、ようやくこちらを見上げてくれました。
怒っているような不機嫌な顔をしておりますが、それも一瞬のこと。
私と目が合うとその表情が溶けるようにゆるんでいきます。
私はこの瞬間がたまらなく好きなのです。
私に惚れると怪我するぜぃっ。
と自惚れてしまいます。
- 746 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:23
-
とにもかくにも、下準備は完了、後は事を済ませるだけとなりました。
もちろん、ここでは人目につきまくりなので場所を移動します。
裏通りに面したビルの非常階段。
このビル、見た目こそオンボロですが非常階段まで鉄筋製という贅沢さ。
その階段を二階分ほど昇れば、そこはもう立派に現実世界と隔離された異世界。
ほどなくして相手がやって来ました。
恍惚とした表情で私を見つめてきます。
なんか照れるなぁ、などと思っていると、男はいきなり私を押し倒してきました。
見た目とは裏腹にワイルドです。
百戦錬磨の私は慌てず騒がずもう一度男の目を覗きこみます。
そうすると、相手の動きはピタリと止まるのです。
- 747 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:24
-
よしよし、良い子だね……
子供に言い聞かせるように男の頭を撫でながら私はその下から体を起こします。
それから、バッグの中に用意しておいた大き目のビニール袋、
二本の水筒、タオル、そして剃刀を取り出します。
水筒の中の水を使って男の左手を洗います。
余った水は捨て、蓋は開けっぱなしにしておきます。
その手をタオルで拭いてビニール袋に剃刀とともに入れ、
袋の外から剃刀を持つと、もう片方の手で袋の口を締めます。
この時、強く締めすぎて血流を阻害しないように気をつける必要があります。
そして男の手首をカッ切ります。
動脈というものは結構深いところを流れている物なので力を入れて切らないと
刃が動脈までとどかないことがありますが、私はこの道のプロ、そんな初歩的なミスはしません。
刃は確実に動脈に達しそれを切り裂いていきます。
噴き出した血がしぶきを上げ袋の内側を叩きつけるように紅く染めていく、
有様は見ていて気持ちのよいものです。
見る見るうちに袋に血がたまっていきます。
それとともに私の中の欲望も一気に膨れ上がっていくというものです。
- 748 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:25
-
ある程度血がたまってきたら袋の下、角のところに内側から剃刀で切れ目を入れ、
血を水筒に流し込みます。
その中にだ液をたらし血液凝固を阻害しておくことは忘れずに。
同じように二本目の水筒も血で満たし、残った分は今から飲む分です。
袋の口からたれてくる血を直に口で受け止めていきます。
ああ、この味、あたたかくて、少しドロッとしていて、ナマグサくって、
でも・・・生命を感じさせる味。
トマトジュースとは全然違う本物の味。
昔は相手が死ぬまで飲み干していたものですが、今の私はそこまではしません。
袋から手を出して傷口の血を舐め取ると、用意しておいた薬を塗りこみます。
ちゃんとした、といえるかどうかは分かりませんが、
仕事仲間から貰った薬なので少し寝かせておけば大丈夫でしょう。
男が起きるよりも早く退散することが先決です。
水筒に蓋をしてカバンにしまって、口元の血をハンカチで拭えば終わり。
- 749 名前:秘密 投稿日:2004/02/20(金) 13:25
-
「ごちそうさまでした」
男を置き去りにして階段を降ります。
ふと空を見上げると、もう夕焼け空です。
路地裏の湿った空気も心地よく、伸びをしながら大きく深呼吸。
気分は爽快です。
あとは、一緒に暮らしているあの人にばれないように水筒を保管するだけです。
沈み始めた太陽を見ながら吹き出しそうになる笑いをかみころす。
世界中で私しか知らない秘密が、また一つ、増えました。
おしまい
- 750 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 22:30
- 新作発見。ごっちんたらもう…
- 751 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 23:04
- ( ` Д ´)<んぁーっ!!
- 752 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/13(金) 14:57
- 期待ホゼム
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