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A record of a war in chaos
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時12分18秒
- お初にお目にかかります。
下手な小説を書かせて頂きます。
カップリング色はあまり強くないかも知れません。
ネタ元は、後々わかるかと存じます。
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時14分53秒
A record of a war in chaos
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時15分50秒
〜第一章 揺るぎえぬ決意〜
- 4 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時17分52秒
1. mysterious meeting(M.M.)
鞍上に伝わる微妙な違和感を梨華は見逃さなかった。
長時間の騎乗からくる疲労が、形となって表われはじめたのである。
二つの巨大な鼻孔が膨張と収縮を何度も繰り返していた。
すぐさま馬を降り、梨華は広大な鼻筋のあたりを何度も撫でてその労をねぎらった。
しばらく馬を牽きながら歩いていると、前方から小川のせせらぎの音を耳にした。
はやる気持ちを抑えることができずに梨華は急いでその場所へ向かった。
この時の梨華は強烈な喉の渇きに襲われていたのである。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時18分32秒
穏やかに流れる川。その水は清く透明に澄みきっていた。
と同時に、ひとりの人物の後姿が梨華の視界の片隅に映った。
ボロボロに使い古された頭巾を巻き、そこから黄金色の髪がのぞいている。
肩幅は広く、背丈も梨華より三寸(約9cm)ほど高かろうか。
身にまとう赤地の戦袍は至る箇所が破け、腰には二本の刀を帯びていた。
そして何よりその大きな背中から発せられる威圧感に、梨華はごくりと息を呑んだ。
どうやら相当な剣士に違いない。直感的に梨華はそう確信した。
すこしの間、梨華はその剣士をじっと眺めていた。
剣士は前屈みで必死に水を飲み続けている。
おもわず梨華はぷっと吹きだしてしまった。
凄味のある存在感の中に垣間見せる、どこか幼さの抜け切らない子供っぽい仕草。
一見相反するこの両極が、あの剣士の場合はそれでいいのかも知れない、
という印象を梨華は抱いたのだ。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時19分22秒
突如、馬が猛然と立ち上がり、次の瞬間けたたましく叫んだ。
周囲に轟く波動。だが、それはすぐに深い沈黙へと変貌を遂げた。
意表を衝かれたようにハッと振り返る剣士に、梨華は馬をなだめながら軽い会釈をした。
だが剣士の顔を見た瞬間、梨華は強い衝撃を受けた。
剣士は、女だった。
別に女の剣士がいてもなんらおかしくはない。
もともと自分はそういう偏見は持ち合わせてはいないのだから。
でも、あの風体は絶対に男の人のものだと思ってた……。
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時19分54秒
様々な思いが脳裏に駆け巡ったが、まずは馬を落ち着かせてからだ。
梨華は馬に優しく語りかけながら抑止に努めた。
だが馬はかなり興奮しているようで、手綱を引っ張る梨華など構いもせずに、
跳ねたりいなないたりして激しく暴れ回っている。
剣士はゆっくりと梨華の方に歩み寄り、そして華麗に跳躍した。
そのまま馬の背に跨り、一呼吸置いたのち手綱を引くと、
まるではじめから何事もなかったかのように馬はおとなしくなった。
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時20分25秒
剣士が背中を撫でると、馬の尾がさっと垂れた。
その様子を見届けてから剣士は馬から降りた。
その間、梨華は呆然と立ち尽くしていた。
「あの……ど、どうもありがとうございます」
「いやぁ、ビックリしちゃった。後ろに人がいたなんてちっとも気づかなかったよ。
いつもならわかるんだよ。そういう気配ってやつは……」
おどおどした口調で礼を述べる梨華。さわやかに受け答える剣士。
なんとも対照的な二人の周りを、グルグルと馬が嬉しそうに回っている。
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時21分02秒
「怪我は、ありませんか?」
「全然。へっちゃら」
「そう、ですか。よかった……」
梨華はほっと胸を撫で下ろした。そして、上目遣いで剣士の顔を見つめる。
すると剣士は照れくさそうに顔をそむけた。
「あの……」
「ん」
依然上目遣いをつづける梨華をまともに見ることができず、
剣士はそのままの姿勢で曖昧な返答をした。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時21分38秒
「あなたの、お名前を……嫌なら、いいですけど……」
「ひとみだよ」
「えッ?」
「ひとみ。吉澤ひとみ。君の名前は?」
「梨華……石川、梨華……」
「梨華ちゃんかぁ。かわいい名前だね」
カァっと頬を赤らめて梨華はうつむいてしまう。
ひとみは小川の淵に腰を下ろし、隣に梨華をうながした。
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時23分41秒
「梨華ちゃんはさぁ――」
「!」
今までの出来事に喉の渇きなど忘れていた梨華だったが、
キラキラと光り輝く水面を目の当たりにして、両手ですくって一気に流し込んだ。
そんな折に期せずして呼ばれた自分の名前。
おもわず梨華はごほっとむせ返ってしまった。
「大丈夫?」
梨華の背中をさすってやるひとみ。
一方、梨華はいまだ辛そうに咳こんでいる。
ようやく落ち着いた梨華に向かって、ひとみは笑いながら率直な感想を述べた。
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時24分13秒
「梨華ちゃんって、結構ドジなんだね」
「あなたが……吉澤さんが、急に話しかけてくるからじゃないのよ!」
「まあまあ、そんなにムキになりなさんな」
「ナニヨォ!」
唇をとがらせ膨れっ面になった梨華を至極容易に受け流すひとみ。
今日が初対面とは思えぬほど、二人の呼吸は実にピッタリだった。
- 13 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月14日(月)15時26分12秒
- 更新終わりです。
よろしければ感想お待ちしております。
家のパソコンはネット接続しておりませんので、近くのネットカフェからの更新です。
そういう理由で、更新は不定期ですがどうぞよろしくお願い致します。
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月23日(水)00時20分30秒
梨華とひとみの二人は川沿いの細い砂利道を並んで歩いている。
手綱をひとみが牽き、その様子を梨華がじっと見守っている格好である。
もちろん梨華は自分で牽くつもりだったのだが、
小川でのひとときを経て再び出立しようと梨華が手綱を握ったとき、
横からずいと躍り出たひとみが、自分にやらせてよと言ってきたのだ。
はじめは気を遣わなくてもいいよと遠慮する梨華も、
どうしてもと懇願するひとみについに根負けしてしまった。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月23日(水)00時22分26秒
砕け散った何かの破片のようにひとつひとつ異なる砂利の上を、
一定の間隔で馬の蹄が乾いた旋律を奏でる。
心地良く伝わるときもあれば、ひどく耳障りに感じるときもあったが、
一貫してどこか実体のない不思議な音種であることには変わりなかった。
自分の耳に気兼ねなく勝手に侵入してくるその音を別段気にも留めず、
梨華はもう一度ひとみの横顔をちらと覗き見た。
綺麗な顔だ、と梨華はそう思った。
少し馴れ馴れしくて強引なところもあるが、芯は素直で隠し事のできない人に違いない。
梨華はいつの間にか真剣な眼射しをひとみに向けていた。
だが梨華のその視線に気づいたのか、ひとみが微妙な笑みをたたえながら訊ねてきた。
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月23日(水)00時23分22秒
「ど、どしたの?」
「えッ !? あ、いや……」
「わたしの顔になんか付いてる?
あ、でもホクロはナシね。わたし傷ついちゃうから」
言葉に窮し、あたふたしだす梨華。
ひとみは冗談で言ったつもりなのだが、梨華のその様子を見るとおかしくてたまらない。
何か話題を変えないと必死に考え込む梨華の双眸にある物が映った。
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月23日(水)00時24分44秒
「あ、あの、それ……」
「ああ、コレ? なんだ、コレが気になってたの?」
苦しまぎれに梨華が指差した先には、腰に差された一本の刀。
長さ、反りともにごく普通の代物のように思えた。
だが梨華が少し不審に思ったのは鞘である。
淡い赤茶色に仕上げられた漆塗りのそれの全体が激しい刀傷で傷み、
中から太刀の妖しい光が不気味に覗いていた。
どうして今まで何とも思わなかったんだろう、と梨華は自分を悔やんだ。
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月23日(水)00時28分36秒
「鞘がすごいボロボロ――」
「やっぱ、気づいた? ま、そりゃそうか」
梨華の言葉を遮り、ひとみはひとり笑って腰に目を向けた。
「見せたげる」
そう言うと、ひとみは鞘から剣を抜き出した。
一部始終を見逃すまいといわんばかりの表情を浮かべながら凝視する梨華。
そのとき、少し空気の色が変わったような気配を梨華は感じた。
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月23日(水)00時29分19秒
- 更新終わりです。
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月05日(木)06時27分10秒
- おもろいです
続きを楽しみに待っています
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