たぶんきっと

1 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時26分47秒
「たとえどんなアナタでも」の続きです。
2 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時27分51秒

うぅしまった・・・目ぇはれた。


「ほらっ。」

「あぁありがとう。」

でろーんとソファにねっころがったまま受け取る。

・・・なんも聞かんの?
まぁ聞かれても答えられへんけど。

腫れぼったい目にひんやり冷たいタオル。


「気持ちい?」

「うん。」


矢口がソファの横に座り込む気配。


「ねぇもう大丈夫なの?」

「うん。たぶん。」

手の中にあった砂は落ちきってしまったみたいやからな。

3 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時28分22秒

矢口がアタシの髪をいじってる。
目ぇ閉じてるときそうされるとなんかちょっと眠くなる。

なんやろ?
緊張が解けるから?


「そういえば初めてあったときも泣いてたね。」
 
「ん〜そうやなぁ。」

あん時の理由ははっきりしてる。
あれは矢口をみつけたから。

もうあわれへんと思ってた矢口にあえた。
だからや。


昨日のあれは・・・あの痛みは・・・


「あ!!」

思わず勢いよく起き上がる。
タオルも吹っ飛ぶ。

4 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時28分54秒

あれに似てた。
箱の中の触れられへん矢口を失ったときの痛みに。

なんで?
それがなんで昨日になってもう一回?


「なに?どうしたの?」

ビックリしてこっちを見上げてる矢口と目が合う。

もしかして一緒にしてるようでちゃんと分けてたんかアタシ。
この矢口とあの矢口を。

失ってもまだアタシの中にいたんや。
アタシだけの矢口はあの矢口やったから。

この矢口がアタシのもんになったら・・・
あの子の居場所が完全になくなってしまう。

それでか・・・


5 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時29分27秒

「そうか・・・」

あの子がいいひんなってポッカリ開いた胸の穴は
ずっと開いたままやったんや。

あの箱の中にあったもの。
それはアタシにとってはただのデータの蓄積やなかったんや。
人でしか埋められへんような穴を開けるデータがどこにある?

あの子は・・・


急に下からキュッて腕を引っ張られる。


「裕ちゃん大丈夫?」

そんな顔せんでも。
しゃあないか・・・昨日からおかしいもんなアタシ。

なんかニヤケてしまう。
心配そうに見上げる矢口がかわいくて。


「もう大丈夫や。」


床にペタンって座ってる矢口を自分のひざの上に引きずり上げて
ギュッて抱きしめながらほお擦りする。


「なぁに?」

「・・・アタシの矢口やなぁって思って。」

「なんだよそれ?やっぱりわかんないね裕ちゃんって。」

「アタシにわからへんのに矢口にわかってたまるかいな。」

「自慢になんないよそれ。」


あっやっぱり?
むぅ・・・その呆れたようなわらいはなに?

6 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時30分11秒

ん?
なんや・・・そんなふうに触らんといて。


「裕ちゃんアヒルみたい。」

・・・あっそ。


「もぉスネちゃってぇ・・・かわいいね。」


うぅ・・・

パクッ

「あっ!」

ふふん・・・びびったか?


「もぉ・・・」

ビックリしたくせに慌てる様子もなくて
逆に指でゆっくりアタシの舌をくすぐる。

うぁ・・・やばっ!


「ねぇ・・・裕ちゃんは矢口のだよ?」

確かめるように囁く声はちょっとだけ泣きそうで懇願の響きを含んでた。

なんでや?
そんな声聞きたぁないで?

答えるかわりに舌で動く指をなぞると
急に口の中から逃げ出してしまう。

7 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時30分44秒

なに?
こうゆう気持ちの伝え方嫌なん?


「そういうことするから・・・・・・不安になるんじゃん。」


なんでそんな顔やの?
怒らんといて。

目を覗き込むとぷいっと逸らされる。

なぁ嫌ややで。
どっか行かんといてや?
消えたりせんといて?

矢口をソファに押し付けて腕で閉じ込める。


「1人にせえへんて・・・ゆうたやんか。」

目の前のちっちゃい耳に囁きかけてから肩にアゴを預ける。


「矢口だけやん。」

「・・・なにが?」


なにがって?

8 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時31分19秒

「はじめて泊めるのにいっしょに寝よってゆうたり・・・
 こっそりチュウしたり好きやでってゆうたりするんも・・・」


「ウソ・・・」

「ウソとちゃう。そんなん矢口だけや。矢口だけにしかしてへん。」


身体を離そうと腕を突っ張ってくるから・・・必死にしがみつく。


「ウソだよ!だって・・・裕ちゃん1人じゃさみしいからって・・・」

「1人やからとちゃう。矢口がいいひんからや。」


矢口をギュッてする。
こんだけくっついてても足りひんみたいに思うのに・・・


「アカンねん。
 矢口がいいひんとアカンねんアタシ。」


アタシのもんやろ?
ほないいやんか・・・

アタシの気持ち拒否せんといて。


・・・・・・

アカンの?


9 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時32分02秒

「裕ちゃん・・・」

「ん?」

「・・・苦しぃよ。」


ほんまは解きたくない腕を緩めると
矢口が視線をガチッと合わしてくる。


「ほんとに?」

「うん?」

「ほんとに矢口だけ?」

「矢口だけや。」


子犬みたいな目でじぃっと見つめてくる矢口。

あの・・・?
なんか反応して?


「ほんとにほんとに・・・」


納得してへんかったんかい!

はぁ〜もぉ・・・


「ほなどうやったら信じるん?」

頭をなでるとん〜って頭で押し返して・・・
でそのままピトッとくっついてくる。


「そんなの・・・わかんない。」

・・・そうかぁ。


「わからんねやったら・・・」

「ヤダよ。」

10 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時32分35秒

え?

「ゆっくり考えるなんてヤダ。」


・・・・・・

距離をとると不安そうな顔が見えた。


「やっぱりウソなの?」

あぁもぉ・・・
なんでそうなるん?
まだ信じられへんのか?
なんでやねん?


アカン・・・なんか・・・・・・ムカつく。
ええ加減にせんとほんま・・・

11 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時33分08秒

「・・・ウソなんだ。」

だからぁ!!
なんでやねんって!!


「ウソのほうがええんか?」

だからそんなことゆうんか?

みつめる目が驚きで揺れるのをみてチクッて痛くなる。
でもちょっといい気味やとも思う。


「ちがっ・・・」


「ほなどうすんねんな?!
 どうやってもアタシの気持ちなんて見えへんやん!
 胸のあたりパクッて切って証明できんねやったら苦労せんわ!!」
 


12 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時33分49秒

・・・・・・

しまった。


うつむく矢口を持て余す。
この沈黙は重い。

ごめん。
八つ当たりやな。

でもなんで?
なんで信じてくれへんの?
あぁゆうふうにしたら不安になんねんやろ?
そしたらどうやって伝えるん?

どうして欲しいん?
なにを期待してんの?




おわり

13 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時34分37秒
はい更新終了です。
14 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時38分49秒
話が進まないのはちっと自分がイライラしてるせいです。
はぁ〜しんどいなぁ・・・

15 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月20日(日)00時43分06秒
今年度分がうまく走り出すまではどうも苦しいらしい。
ぼやいててもやるしかないしなぁ・・・
気合入れて乗り切るべ。

ではまた来週末。
16 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月20日(日)00時58分28秒
中澤さん・・・信じてもらえないですね、矢口さんがどういう行動にでるのか楽しみです。
この2人はどうなるんでしょう、更新たのしみです。
ちぃさん、気合を入れるのもいいですが、ご無理はなさらずに・・・
17 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月22日(火)00時59分18秒
ちぃさん最高〜♪
18 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月27日(日)00時35分37秒
申し訳ない。無理です。
いま抜け殻状態です。頭ん中スカスカです。
いやぁでも今日はいい仕込みができた。
あ〜明日も頑張るべ。

そうそう無理は出来るだけせんように。
倒れるんなら誰かがいるときに。

では今度は火曜か連休明けに。
19 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時10分42秒
更新します。
20 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時11分17秒


長い沈黙の重圧に負けたのは矢口。


「・・・・・・わかんないよ。わかるわけないじゃん。」

俯いたままちっちゃくちっちゃく呟かれた声。


うん?
それはアタシが悪いってことか?


アタシの服をキュッとつかむ。


「はじめっからずっとそうなんだよ。
 裕ちゃんは素直に感情を見せてくれるけど・・・
 どうしてそうなってるのかが全然見えないんだもん。」


・・・そっか。


ギュッと引っ張られて下から覗き込まれた。


「ねぇ矢口は裕ちゃんの中にちゃんといる?
 矢口のしらない人で埋まってたりしてない?」


・・・埋まってはないけど・・・穴は開いてたなぁ。
薄々なんか感じてたんか?

するどい子やな。

21 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時11分50秒

「いまだってそうだよ?」

「はい?」

なにが?

ちょっとまって展開についていかれん。
なんやそのわかってないでしょって顔?


「裕ちゃんは足りないんだよ。言葉が。」


あ・・・そうかも。


「教えてよちゃんと。
 なんにもわかんないままじゃ信じることできないよ?」


そうやな。
でもアタシ苦手やねんなぁ・・・

一から十まで全部説明するのとか無理。
わかる人がわかってくれたらそれでええし。

ん〜でもこの場合無理にでもわかってもらう必要がある。
矢口にだけは。



う〜ん。
どうしようかな・・・

22 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時12分37秒

不安そうな顔で見あげる矢口を抱き寄せて
そのまま後ろへ倒れこむ。


「裕ちゃん?」

「ん?大丈夫。」

ちゃんとわかったから。

逃げんと大人しく人の上に乗っかる矢口の背中をなでると
安心したように身体の力を抜く。

ちょうどいっしょに寝てるときみたいで落ち着く。


・・・・・・むつかしいなぁ。
どう伝えよ?


「あ・・・なん回もゆうようやけどほんまに矢口だけやねんで?」

なんかおかしいなこの言いまわし。
必死になればなるほど怪しいし。

あぁぁ〜なんやどうゆうんや?


「あの・・・えっと・・・好きやねん矢口が。」

うぅこれもなんかおかしい。
ほら・・・言葉じゃうまいことあらわされへん。

こんなん自分の言葉ちゃうやん。

はぁ〜

23 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時13分18秒

・・・・・・

なんかようわからん。
う〜ん。

じっとしてる矢口のサラサラの髪に指を絡めると
チラッとこっちを見てから口元を緩ませる。

そんな焦ることないか。

ほっぺたをぷにぷに押すと矢口がムッとした顔をする。

あぁもぉかわいいなぁ矢口は。
ん〜そうやなぁ。



「なぁ・・・自分の命を投げ出して守るとか
 矢口のためにすべてを捨てるとか
 そんな場面に遭遇せんとわからんもんかな?」


ちゃんと聞いててや?
こんなことあんまりゆわへんからな。

「・・・遭遇したないで?
 そりゃあそうなったらアタシもなんとかしたるがな。
 でもアタシはぬくぬくと生きてたいもん・・・・・・2人でな。」

ちゃうか?
普通そうやろ?

アタシはしってるから・・・
いっしょにいられるってけっこう幸せやってこと。


24 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時13分49秒

ん?
なんや?

寒い?

あ・・・


「・・・ごめんな。」

不安にさせてごめん。
信じさせてあげれんでごめん。

そんな気持ちを込めて頭をなでると微妙な泣き笑い。


「なぁ・・・矢口だけや。他の人じゃアカンねん。」

わかって?

視線がふっと逃げた。

まだ信じられへんか?

あれ?
耳まっかやん。



うぅかわいいよぉ・・・アカンな・・・

矢口の顔色をうかがいながらおそるおそるその唇を触る。

チュウくらい・・・いいやんな?

25 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時14分22秒

指の動きに気付いた矢口が視線を戻して・・・わらう。

「なんだよぉその顔・・・」

「ん?どんな顔?」

「・・・やらしい顔。」


はぁ?
ちゅうかなぁ・・・人の顔見てわらいなさんな。

あ・・・でもわらってるってことはいいんやんな?


背中に腕をまわすと矢口が首をかしげる。

・・・しってるくせに。
意地悪やなぁ。


「ん?するの?」

って・・・おい!
そんなさらっと・・・

そんなもんか?
納得したん?


「ねぇしないの?」

「・・・する。」

なんやこの会話?

26 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時14分53秒

「なんかさぁ・・・裕ちゃんって変なとこで照れるね。」

あれ?

この目には見覚えがある。
いつやったか忘れたけどこんな風に・・・

おでこをコツンとくっつけてくる。
その吐息が唇をかするたびに胸がキュッてなる。

アゴを上げると矢口がふいっと逃げてへへへってわらう。

「チュウしたい?」


もう・・・そんなイジメんといてや。


「したくない?」

「・・・したい。」


わかった。
要するに主導権を握りたいわけやな?


「ん〜」

チュッ


うぁ・・・

・・・・・・


「こらっ!なんか反応しろよぉ!!」


なに真っ赤になってんねんな。

はぁ〜もぉどうしよ?
どうしてくれよう?

27 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時15分23秒

「こんなん・・・・・・全然足りひん。」

「もっと欲しい?」

「うん。」


満足げに人の前髪をかきあげる。

「ちゅるちゅるだね。」

なんやそれ?
ちゅるちゅるて・・・

ちっちゃい手でぺたぺた触ってくる。

んんんぅ〜?
なに?


「もぉだめだよ?側にいてあげるからさ。
 次は許さないからね。」


・・・えらいこだわるなぁ。

「返事は?」

「あ・・・うん。」

「はいよろしい。」

チュッ

いつかのようにおでこに。
そのあとは・・・

28 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時15分57秒

「がうっ!」

噛み付かれた?
あれ?なんで?

ちゅうか人の下唇で遊ばんといて。


「んんんぅ!」

唸るとぱっと離してニヒヒってわらう。

うっ・・・・・・


急にギュって抱きついてくる。

「矢口の裕ちゃんだぁ。」

しみじみとゆう声がアタシの胸をプスッとさす。
そんな刺激与えられると・・・


グイッと矢口を押して自分からはがそうとするとジタバタ抵抗する。

「やぁ〜くっつくの!!」

その声を無視してグイグイ押して少しだけ距離をとる。

はははっ!
ぷうって膨れてる。

もっかい距離を縮めなおして・・・

29 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時16分27秒

「ん・・・っ・・・」

だいたいさっき足りひんってゆうたのにしてくれてへんやろ。
焦らすのも大概にしてもらわなやさしくできひんなるやん。

下からがっちりホールドするように抱きついて
吐息さえ奪うような深いキス。

口の中でとろけそうな舌。
苦しそうな息遣い。
ときどき震える身体。

ちょっとずつぼやけてくる思考回路。
別にクリアーにしようとゆう気もなくその原因の行為を続ける。

身体の熱と後頭部あたりの痺れがアタシに残る理性を削り落とす。


やっぱり足りひん。
どんどん欲しくなる。

・・・そうやな。
このままもらってしまおう。
そうしよ。

いままでずっと我慢したんやもん。
そのくらいええやんな。

自分の勝手な思いつきに満足する。

そろそろととりあえず服の上から。
力の抜け始めた身体は逃げる素振りをみせるものの
重力に勝てずにアタシのほうへ落ちてくる。

でもその抵抗を諦める気はないらしく
首を振って無理やりキスを終わらせてしまう。

「んやっ!」

なに?
そんな潤んだ目でいわれても・・・

30 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時16分57秒

「・・・カーテン。」


あ・・・全開や。
ジャマくさいなぁ。

矢口をソファに残して起き上がろうとしても
くっついたまま離れてくれへん。


「うぅ〜なんやもう・・・」

矢口をずるずる引きずりながらカーテンを閉めに行く。

あそうや。
見えんかったらええんやん。

方向転換してソファのすぐ後ろの柔らかい絨毯に
油断してる矢口を転がす。

「なに?」

「ここやったらよそからみえへんよ。」

「ヤダよ。カーテンしめる。」

くるっとうつ伏せになって窓のとこまで行こうとする。

お?
逃げるんか?

その身体をギュッと後ろから押さえつける。

「もぉ・・・待ってよ。」

「ん?」

体温いつもより高くない?
ふ〜ん・・・

31 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時17分27秒

チュッ

ビクンッと大きく揺れる身体。
普段から耳への刺激には弱いほうやろうけどこれは・・・

そっかそっか。

さっそく耳に舌でいたずら。

「ぁっ・・・ちょっ・・・っ・・・」

思ったより大きな反応に気をよくして
服の中に手を滑り込ませる。


「そっちこそ・・・もう待たれへんのちゃうん?」

「・・・違っ・・・っ・・・」


ウソつき。

手でやわらかい胸を包み込むとちょうど手のひらに当たる。
ウソのつけへん身体の自己主張。

指でいじると身体をよじるくせに
その吐息が乱れるのも押し殺そうとしてる。


なんで?

32 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時18分03秒

後ろから覗き込んで思わず息を飲む。

ピンク色のほっぺた。
細められた目にうっすら浮かぶ涙。
息を殺すために口に当てられた手。

それでもチラッとこっちを見て不満そうな顔をする。

あ・・・そうか。
主導権な。


ごめんごめん。

首筋にほっぺたを摺り寄せる。


「なぁいい?」

「・・・・・・したい?」

「うん。」

矢口のわき腹をなでると甘い吐息が返ってくる。

「いいよ・・・」


頑固で素直。
どうしようもなく愛しい人。


33 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時18分37秒

矢口の身体の向きを変える。

「・・・ぅちゃん?」


ぴらっと服をまくりあげると意外に引き締まったお腹。
ゆっくり指たどる。


「・・・ぁん・・・もぉ・・・」

いつもと違った声。


「・・・大好きやで?」

ささやいて耳を軽くかむとキュッとしがみついてくる。

手はそのまま一番敏感な場所へたどり着く。

あぁこれ・・・よう我慢してたなぁ。
かわいい矢口。


「・・・ぅんっ。」

「あ・・・あったかい。」


いたた!!

思わずこぼれた言葉に反応した噛みつき。
ゆうなってこと?

34 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時19分11秒

「・・・しゃあないやん。はじめてやもん。」

「え?」


またか?
また信じひんのか?

「・・・はじめて?・・・っあ・・・ぅそっ・・・」


指を動かして言葉をさえぎる。


「ウソちゃうよ。」

目を細めてキュッと反らすその首に舌を這わす。


「んやっ・・・ぁっ・・・ぅそだ・・・」

「はじめてや・・・女の子。」

こうゆうはまり方するとは思わんかったほんまに。

あっなんやそのうれしそうな顔。
やばっ・・・ギュゥって抱き潰したい。

「・・・っ・・・ねぇ・・・好き?」

なにをゆうんやこの子は。

ふぅっふぅって息を乱しながら
アタシの指に反応しながら
そんな期待を込めた目で見上げられたら・・・

壊してしまいたくなる。

「好きや。大好き。」

35 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時20分03秒

なんどもなんども口付ける。

「っ・・・ぅん・・・ふっ・・・」


頭おかしくなりそうや。
ちゃんと服を脱がしてないせいで余計に・・・

中途半端に見える白い肌に誘われるように手を伸ばし唇や舌を這わせる。
はねる身体を押さえ込んで乱暴に犯す。

呼吸も身体も心も全部奪い尽くしたくて。
なんども昇りつめる身体を飽きることなく・・・

「あぁっもぉっ・・・ねぇ・・・」

上気した肌。
潤んだうつろな目。
しがみつく腕。
指を締め付ける感触。

なぁ矢口?
主導権とかどうでもええねんアタシは。
そんな形にはこだわらへんよ。


「おねがい・・・もぉゆるしてよぉ・・・」

艶々した唇が紡ぎだす懇願の言葉。

その言葉を無視して唇をついばむと
勝手にキスを深めてくる。

36 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時20分45秒

心の一番柔らかいところへ爪をたてたい。
治りかけるとまた疼きだすような傷を残したい。

追い掛けまわすくらいなら罠を仕掛ける。
そっちのほうが得意やから。

柔らかい舌を軽く噛むだけで矢口の身体が大きく震える。
しがみついてた腕が力をなくす。

敏感になりすぎた身体。
・・・何回目かはもうわからん。


「んんんぅ・・・ぅちゃん・・・もぅダメだよぉ・・・」


やり過ぎた?


「もうやめる?」

「・・・うん。」

そっか・・・残念。


37 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時21分28秒

のろのろと乱れた服を元に戻してる。
それをちょっと手伝いながら・・・

矢口の顔色をうかがう。

怒ってない?
キライになってない?


ふぅ〜

おっきなため息をついてもっかいコロンと転がる矢口。


しんどいの?
大丈夫?

「・・・・・・」

チラッとこっちを見てむぅって唇を尖らす。

なんや?


「・・・腕枕。」


あっ・・・はいはい。

アタシの腕に頭を乗っけて身体をキュッと押し付けてくるから
身体をなでるとちっちゃく唸りながらピクンッてする。


「・・・しばらく触んないで。」

「ごめん。」

38 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時22分03秒

もぞもぞと身体を動かしてアタシの首筋に鼻先をうずめる。


「もう・・・ビックリしちゃったよ。」

「ごめん。」

「いや別に謝って欲しいわけじゃないから。」


そう?

「じゃあまたしていい?」

「うぅ・・・」


なに?
嫌なん?

スリスリ肩にほお擦りしてくる。

チュッ

ん?

「矢口だけにしてよ?あんなの。」

唇の動きが首筋に柔らかい感触を残す。

ってことは・・・


「いいの?」

「聞かなくてもわかるじゃん。いわさないでよそんなの。」


あ・・・はい。

39 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時22分43秒

「どうしてくれんだよぉ裕ちゃん。」

「なにが?」


顔を覗き込んできてからあきれたような顔をする。

はぁ〜

なんのため息やねん?


「わかんないの?次ここへ来たときさぁ・・・」

「ええやん。ここでしたなぁって・・・」


ペチッ

てっ!


「バカ!!」

なんやの?
する前とえらいちゃうな。

ふ〜ん・・・


「・・・やらしい子。」

「なんでそうなるんだよ!!」


そうゆうことやろ?

この部屋にくるとアタシがつけた傷が疼きだす。
自分からアタシに捕まりに来てくれるんや。

40 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時23分19秒

「やらしいのはどっちだよぉ・・・加減をしれってぇの。
 あぁ〜こんなとこに痕残ってるじゃん!」

1人で騒いでる。


「あ・・・それはバレるかもなぁ。」

「反省の色なしかよ!」

「うぅ・・・ごめん。」


ええやんそんくらい。
・・・それにしても元気やなぁ。
もう大丈夫かな?

ゆっくり背中をなでると気持ちよさそうに目を閉じる。

おっ大丈夫や。

急に静かになった空間。

なんやろこの安心感?
腕の中にいる矢口が警戒心まったくなしの子イヌに見えるから?


「裕ちゃん裕ちゃん。」

ん?


チュッ

おっ?


なんやの・・・かぁわいいってもぉ!!


「矢口ぃ好きやで?」

「『えへへっ矢口も。』」


41 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時24分20秒

・・・・・・あ!

そっかあれはほんまやったんやな。
プーさんと同じ。


いつかゆうてみようか?
矢口よりも先に出会った箱の中の子の話し。
矢口に似てて矢口と同じようにアタシが好きになった子の話し。


・・・必要ないか。
あの子とこの子は違うもんな。

別にしらんでいいことかもしれん。

あの子に忘れへんよってゆうてあげられへんかったかわりに
ずっとずっとアタシだけの胸に残しとこう。
もうあのころの想いとは違っても。

なぁ・・・大好きやったで矢口。
いまはもう矢口が好きやけどな。


「さてと・・・シャワー浴びてこよっかな?」

「あぁ!そうだよ浴びてないじゃん!
 裕ちゃんのバカぁ!順番が逆だよ!!」


はぁ?

なんで急に怒んねんな。
そっちかて忘れてたくせに・・・





おわり

42 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時26分34秒
はい更新終了&完結。
ちょこっと続きはあるかもしれませんが。

それもこれも休みの状況によります。
43 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時28分51秒
取れた休みは死ぬ気で休むつもりなんで。
気合いだ気合い!!

44 名前:ちぃ 投稿日:2003年04月29日(火)13時29分47秒
あ・・・アホなことゆうてんと閉めときます。

ではまた休み明けに。
45 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月29日(火)19時40分29秒
うわ〜、すっごい可愛いです、矢口さん。
完結お疲れ様でした、やっぱり文章がすごく綺麗ですね。

>取れた休みは死ぬ気で休むつもりなんで
「休む」のに死ぬ気って・・・(笑
46 名前:読者 投稿日:2003年04月30日(水)00時46分41秒
>「休む」のに死ぬ気って・・・(笑
いや、休みとったら死ぬ気で休まんとあかんすよ。
GW休みなくなったー。。
休みはないけど堪能しました。
更新ありがとうございます。。

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47 名前:やぐちゅー中毒者セーラム 投稿日:2003年04月30日(水)01時32分19秒
可愛ーい!!!
矢口さん、可愛すぎです。
休みの日にはゆっくりとご静養なさってください
48 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時14分37秒
更新します。
49 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時15分08秒

最悪の状況だ。
なんでこんなことになってんだろ?


「なぁ真里・・・やり直させてくれよ。」

「ヤダ。」

会いたくなかったのに。
よりによって裕ちゃんとの待ち合わせのときなんかに。

場所が悪いんだよ。
どうしてもってゆうから・・・

裕ちゃんとはじめてあったゲームセンター。

この人ともよく来たところだったから。


「どうしてなんだよ?オレがなにかした?」

「違うよ・・・そうじゃない。」

「じゃあなんでだよ!!」

50 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時15分46秒

なんで?

明るめの色に染められた髪。
ガッチリじゃないけどそれなりについてる筋肉。
顔だって好きな顔だし服装だって別に嫌じゃない。

そうだよねぇ。
確かに矢口はこの人のこと気に入ってた。
いっしょにいて楽しかった。

でも・・・
ちゃんと好きだった?


この人が浮気したときすっごく腹が立った。

バカにされた気がした。
矢口が一番だっていってたくせにって。
傷つけられたのは心じゃなくてプライド。


いまならわかる。


「はじめから好きじゃなかったんだよ。」

「はぁ?!バカにすんじゃねぇよ!!」

51 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時16分21秒

ドンッて突き飛ばされて壁にぶつかる。

イタって思った瞬間アゴを上げられた。


「お前・・・最悪な女だな。」


そうだ。
こんなとこがキライだったんだ。

今回は力で解決なんてできないよ?
これは矢口の心の問題だもんね。


「アンタだってサイテーじゃん。」

ゴツッ

痛いって!

壁に当たった後頭部がじんじんする。
でも下から思いっきり睨みつける。


ニヤッと嫌なわらいかた。

なんだよ?


「そんなにいいのかよ今度のヤツは?」

は?

「好きだもんなぁお前。」

「ちょっとなにいってんのさ!」


周りの人がこっちを見てるのに気がついた。

わかってていってるんだ・・・
また矢口を傷つける気なんだ・・・


最っ低だこの人。

52 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時17分00秒

「・・・嫌がってるで?そのへんで止めとき?」

すぐ近くで響く聞き覚えのある声。


裕ちゃん?!

・・・こんなの見られたくなかったのに。

待ち合わせより少し早い時間。
見つかる前に終わらせたかったけど・・・間に合わなかったね。


「んだよ!引っ込んでろババァ!」

なに?!

「やめてよ!裕ちゃんには関係ないでしょ!!」

裕ちゃんに当たらないでよ!


「なんだ知り合いか?」

「そうや。」

いいながら矢口のアゴにあった手をはずさせて2人の間に立つ。


「手荒なまねは止めてくれへん?」

聞いたことのない怒気を含んだ低い声。


「お前になにが出来るんだよ?」

「せやな・・・クソガキにゃできんことかな?」


ダメだよ!!
そんなこといったらこの人・・・

53 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時17分45秒

「なんだと!!」


ガシャン!

視界を遮ってた裕ちゃんの背中が消えてた。
その振りきった握り拳が裕ちゃんになにをしたのかはわかる。
でもその表情がなにを意味するのかはわからなかった。


「裕ちゃん?!」

空き缶が散乱する中に倒れこんでる裕ちゃんに駆け寄る。


「裕ちゃん!大丈夫?!」

肩をゆすると裕ちゃんの手がキュッと握ってくる。

え?

びっくりして顔を覗き込むと・・・わらってた。

え?なんで?
どういうこと?

『泣いとけ』ってクチパクでいってくる。

そんなのいわれなくても・・・
勝手にボロボロ涙が溢れてくる。


「大丈夫ですか?」

大きな物音に駆けつけたゲーセンの人。

涙のせいでちゃんと受け答えが出来ない。
倒れてる裕ちゃんとうろたえる彼を指差して一生懸命訴える。

54 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時18分29秒

「なんでだよ!!あの女が・・・」

囲まれて連れて行かれる様子をぼーっと見てると
周りにいた人が空き缶入れを立て直したり空き缶を拾ったりしてくれる。


「大丈夫ですか?」

「すいませんお騒がせしました。」


服のほこりを払いながら周りの人ににこやかに対応。
片付け終わるとぺこりと頭を下げてその場から抜け出す。



って裕ちゃん?!

「平気なの?」

「ん〜ちょっと肩が・・・飛びすぎたかな。」

グルグル腕を回しながらつぶやく。
でもいたずらが成功した子供みたいにニッとわらう。


「大人の女をなめんなってことやな。」

「・・・・・・やってること子供じゃん。」

「矢口よりまし。」

うっ・・・・・・


55 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時19分01秒

頭をぽんぽんってしてくれる。

「だからココ嫌やったん?ゆうてくれたら変えたのに。」

「だって裕ちゃんがココがいいっていうから・・・
 会うとも思わなかったし。」

「そっか。ごめんな。」

謝らないでよ。
裕ちゃんは悪くないじゃん。

・・・・・・

そうやって黙って頭なでられると泣きたくなる。
だけどその手から逃げたくなくって結局・・・


「あっ・・・ちょっと待って・・・アタシが泣かしたみたいやんか。」

そういいながら近くのベンチで抱っこしてくれた。


56 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時19分34秒

泣き止んでみるとものすごく恥ずかしい。
外で人の膝の上でピーピー泣いちゃってさ・・・ハタチ超えてるのに。

どこまで聞かれたんだろあの会話。

おそるおそる裕ちゃんの顔をうかがう。


「ん?なんや?もう大丈夫?」

「・・・うん。」

「じゃあほらっあれ。」


なに?

あっ!!


「プーさんだ!あれでっかいよぉ?!」

「へへへっいいやろ?見つけてん。」

「やるっ!やるっ!!」


膝から降りて走り出してからしまったって思う。
これじゃあまるっきり子供だよ。

でもさぁあれ。
穴ギリギリくらいの大きさなんだよ?


振り返ると満足そうな顔でこっちをみてる。

別にいっか。


「早くおいでよ!」

「あっ・・・うん。」


57 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時20分12秒


矢口と裕ちゃんの小銭がなくなる寸前でようやくゲット。
にっこりわらったプーさんを裕ちゃんはしばらくみつめてた。

「やっぱりこれか・・・」

納得したようにつぶやいてわらう。

やっぱりってなんだよ。
・・・わかんないね。

「これうちに置いていい?」

「プーさん好きなの?」

「うんにゃ。」

「じゃなんで?」


・・・・・・

なんで答えないの?


ポンッとプーさんを投げてよこす。

ちょっとなにすんだよぉ。
プーさんがかわいそうじゃん。

ギュッとプーさんを抱っこする。

58 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時21分01秒

「今日うちおいで?」

え?

「珍しいね。でも明日学校だよ?」

「アタシも明日会社。」


あっ・・・そんな目しないの。


「来て欲しいの?」

「うん。」

「じゃ行く。」

「ほんま?じゃもう帰ろ?」


腕を引いてスタスタ歩く裕ちゃんについていく。

どうしたの裕ちゃん?
おかしいよ?




おわり

59 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時25分20秒
はい更新終わりです。

そういえば今日保田さん卒業なんですね。
次はハロプロのサブですか?

保田さんねぇ・・・一度一緒に飲んでみたい人ですね。
あの人脈は絶対飲み友達やと推測してます。
60 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時29分11秒
矢口さん塩分と水分の補給したかなぁ?
泣くときは泣かんと次へ進めへんからね。

61 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月06日(火)00時29分57秒
ではまた来週末かもう一週後くらいに。
62 名前:Sennju 投稿日:2003年05月07日(水)08時55分53秒
いい!とにかくいいです。
最近、裕ちゃんにはまってるんです。小説はもちろん、やぐちゅう。
ちぃさんの小説最高!
あわてずのんびりちぃさんのペースで書いてください。
63 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月07日(水)19時56分58秒
泣いたり笑ったり、大変だな矢口さん(笑
裕ちゃんどうしたんですかね?
更新楽しみに待ってます。
64 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時31分44秒
更新します。
65 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時32分22秒

小さい子みたいに丸まってベットにねっころがる裕ちゃん。

なんで?
どうしたのさ?

家に着いてもテンションは低いそのままでさぁ
こんな時間にもう寝るっていいだすんだもん。

ぐずぐずいう裕ちゃんにご飯を食べさせてお風呂に入れて・・・
もぉほんと大変だったんだからね。


やっぱりおかしいよ?


「やぐちぃ・・・」

パタパタと自分の隣をたたいて催促。


「もぉ・・・なんでそんなっちゃってんの?」

裕ちゃんの隣に転がってキュッて抱きしめる。


66 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時32分59秒

「・・・・・・。」

え?
聞こえないよ?

裕ちゃんの手がプチプチプチと矢口の服のボタンをはずす。

なになに?


「あ・・・」

柔らかいほっぺでお腹にスリスリ。


なにやってんのもぉ・・・


裕ちゃんの頭をぽんぽんってする。
いつも裕ちゃんがしてくれるみたいに。


67 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時33分32秒

「・・・ごめん。」

「なんで謝るのさ?」

「もっと早く行ったらよかった・・・」


そういうことか・・・


「仕方ないよ。あれは矢口のせいだもん。裕ちゃんは・・・」

「「関係ない?」。」


はぁ〜

なに?


「・・・本気でゆうてんの?」

え?


裕ちゃんの手がお腹をなでる。


「ほんまに関係ないと思うん?」

「だって・・・」

「アタシは平気やないで?
 矢口が誰かに傷つけられるんみて。」

68 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時34分07秒

・・・・・・

そんなの勝手だよ。


「じゃあさ・・・矢口が倒れてる裕ちゃんみて平気だったと思う?」

矢口のせいで裕ちゃんが傷つくなんて耐えられないよ?


裕ちゃんの手がとまる。


「でも・・・うまくやる自信あったから・・・」

「助けて欲しいなんていってない。」

「・・・ごめん。」


違う。
こんなこと言いたいんじゃない。

ほんとはほっとしたんだよ。
裕ちゃんの背中・・・すごく安心した。

矢口こそごめん。
素直じゃなくてごめんなさい。


69 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時35分00秒

裕ちゃんの頭をなでると一瞬ビクッてして
おそるおそる視線を合わせてくる。


「あんなぁ・・・でもなぁ・・・あれが一番いいと思ってん。
 力で対抗したら負けるやん。相手は男の人やねんもん。」


子供がお母さんに言い訳するような口調で一生懸命な弁解。

あぁ〜なんだコレ?
もぉ・・・

チュッ


「あ?・・・えっ?なんで?」

ビックリした顔で額をおさえてる。


「なんでもいいのっ!」

お礼のチュウだバァ〜カ。


背中に腕を回すと身体を預けてくる裕ちゃん。

ん?

チュッ

「あっこらっ!」

「ん〜おかえしやん。」

くすぐったいんだよぉお腹は。
でも珍しいね裕ちゃんがこんななっちゃってるのって。

お酒はいってないのにね。

70 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時35分48秒


「んんんぅ・・・」

あ・・・また。
裕ちゃんのほっぺって柔らかいね。


「どうしたの?今日は甘えん坊さんだね。」


・・・・・・

あ・・・
聞いちゃダメだったかな?

「・・・なんか・・・怖いもん。」

え?

「怖いって?」

今日のこと?


「ん?おかしいか?」

「だって裕ちゃんどっちかっていうと楽しそうだったよ?」

「そりゃあまぁね。けっこう悪さしたしなぁ昔。
 あんなんお遊びみたいなもんや。」

悪さって?
なにしてたんだよ・・・ったくコイツは。


71 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時36分35秒

「じゃなにが怖いのさ?」


「単純な人やなかったらどうしよう・・・
 もし根に持って矢口のあと付けまわすような人やったら・・・
 アタシの行動は正しかったんやろうかってな。
 そしたら急に怖くなった。」


・・・ストーカー?
そういえばそんなことあったね。
圭織と一緒に捕まえて警察に突き出したっけ。



ペチッ

「いたっ!なんやなぁ?!」

大げさに頭を押さえる裕ちゃんの上に乗っかる。


ムニッ


「やからにゃんやにょ?いひゃいにゃぁ・・・」


なにニャアニャアいってんのさ?
わかってないねぇ。

手を離して裕ちゃんの目をのぞきこむ。


72 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時37分25秒

「裕ちゃんねぇ矢口のこと甘くみすぎだよ。」

「ん?」

「矢口は裕ちゃんが思ってるほど弱くないの。
 だから守ってもらいたいなんて思ってないよ?」

「・・・・・・ん。」


なに?
そのなんかいいたそうな顔。

「なに?」

「・・・ちゃうよ。あれ矢口のためやないもん。
 アタシはそんなええ人ちゃうもん。」


え?
どういうこと?


「守ったんとちゃう。我侭やで?
 触れられたくなかったんやもん矢口に。」


あ・・・うそ・・・
そんなふうに思ってたの?


73 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時38分14秒

裕ちゃんが指で唇をなぞってくる。

「こうやって触ってええのはアタシだけや。」


バカだねぇ裕ちゃんじゃないんだからさぁ・・・
そんなの当たり前じゃん。

絶対そんなこといってあげないけどね。



「明日仕事なんでしょ?・・・変なことしたら噛むよ?」

「怖っ!」


なんだよその怯え方・・・しようとしてたでしょ?

カプッ

「痛い痛い!まだなんもしてへんやん!!」

74 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時39分00秒

まだって・・・やっぱり。

そんな大げさな・・・
ちょっと首を噛まれたぐらいで。

でも案外ほんとに痛かったりして。
裕ちゃん痛がりっぽいし。

ペロッ

「んっ・・・」

「今日は大人しく寝なさい。」

「・・・はい。」


よしよしいい子だね。


頭をなでるとギュウッと抱きしめられた。


「でもええこと聞いたなぁ。」

「なに?」

どうしたのさそんなうれしそうに。


「するの好きなんやって?」


はぁっ?

75 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時39分37秒

「なに本気にしてんだよ!このエロ裕子!」

・・・・・・

なんだよぉ!
なんとかいえよ!!

「・・・キライじゃないやろ?」

「なっ・・・」

裕ちゃんの手が背中をつぅっと滑る。


「また今度な?」

「・・・バカ。」


はぁ〜・・・この人が大好きな矢口は大バカってこと?


76 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時40分07秒


はじめてあったあの日・・・
泣いてた裕ちゃん。

涙をぬぐうこともせずにただその目は矢口をみてた。
思い違いかもしれないけど・・・たぶんそう。

白黒はっきり付けたい性格のせいだよきっと。
わからないことをわからないままにしておけないんだ。

なのに裕ちゃんのことしろうとすればするほどわかんなくなるんだよ?
裕ちゃんにもわかんないなんてオチわらっちゃうよ。

どうしてくれんだよ。

この腕の心地よさから抜け出せなくなってた。
他の人に盗られることも許せなくなってた。

そうだよ・・・気付いたら裕ちゃんはもう矢口のだったんだよ。

裕ちゃんの首筋に鼻先をうずめる。

裕ちゃんは矢口の。
他の人にはあげないの。


77 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時40分57秒

「眠いん?このまま寝てもええよ?」

そういう裕ちゃんの声も眠気を含んでる。
服の中に入り込んで背中を触ってる手も暖かい。

「重くないの?」

「大丈夫。」

「じゃこのまま寝る。」

「ん・・・おやすみ。」

「おやすみ。」


ねぇ裕ちゃん。

大事にしてくれるのはうれしい。
でもね少し怖いんだ。

裕ちゃんの背中も腕も矢口の逃げ場所にしてしまいそうで・・・

そんなのヤなんだ。

だからちゃんといえないの。
ごめんね?



今日は・・・ありがと。




おわり


78 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時44分32秒
はい更新終了です。
これでこの2人ともお別れです。

今回の話は実は没にしようかなぁなんて思ってたんです。
はじめのほうのとこでどうしても非現実的過ぎるかなぁって。
でもどうやら現実にありそうな世界の話に着地できました。
79 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時50分02秒
まぁ自分の現実逃避の世界であることに変わりはないんですがね。

次の話の設定はなんとなくあります。
ずっと前に思いついたもんなんですが書くタイミングがなくて。
80 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月11日(日)02時54分13秒
読んでくれてる人。感想を書いてくれる人。
妄想話に付き合ってくれてありがとう。

では次週は確実に無理なんでまた来々週末に。
81 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月11日(日)02時55分07秒
ちぃさんのやぐちゅー・・・やっぱり大好きです。
82 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月11日(日)15時03分56秒
お疲れ様でした、でも没にするつもりだったんですね・・・
すごい面白かったです、毎回いい話を読ませてくれてありがとうございます。
次回作も楽しみに待ってます。
83 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時15分57秒
更新します。
84 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時16分56秒

すべては突然に

85 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時17分38秒

なんで連れて帰ったんやろ?
なついたからやろか?

うん・・・ここまでなついたんはじめてかな?


風呂上りのビールを片手にケージを眺める。


だいたい遺伝的に考えられへんやん。
白と白かけあわせたら白しか産まれへんちゅうねん。
なんでこの子こんな色やの?

おかしい・・・おかしい・・・

実験用に交配させたんはええけど
こんなん産まれるとは思わんかった。

成長もやけに遅いんよな。そのくせ健康そうやし。
母乳の奪い合いにも負けてへんかったな。
一番ええ場所とっててなんでこの大きさやねん。

86 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時18分45秒

ケージの中に指を突っ込む。

普通は近寄ってこうへんか少し匂いをかいで興味を失う。
やのにこの子はいつまでもアタシの指で遊んでる。

立ち上がって前足でアタシの指をつかんでるのがかわいくて
ぐいって押してやるとぽてっと倒れた。

足をバタバタさせて起き上がって
怒ったように前足でカリカリ引っ掻いてくる。

あ・・・かまへんの?

ほんまはもって帰ったらアカンねんけどな。
動物施設の資料改ざんしてしまった。


あのまま他の人に見つかったら遺伝子調べるために
しっぽ切られてたかもしれんなぁ。

めずらしいもん。

87 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時19分30秒

色の遺伝子がないはずの両親から生まれたくせに
アグーチ・・・いわゆる野生型の茶色いの被毛。
明らかな成長遅滞。

どっかに重大な変異が起こってる可能性が高い。
アタシも研究者の端くれやったらほんまはそうするべきなんや。

でも子のこのしっぽ切るんは無理やな。
だいたいなつかんから実験に使えんねやん。
こんななつかれたら無理やん。

他の人に殺されんのも嫌やったからついつい・・・


首をかしげながらクリクリした目でこっちをじぃーっとみてる。

うっ・・・かわいい。
外に出してもええかな?

よしっ窓もドアもしまってる。


ケージに手を入れると手のひらに
チョコチョコっと乗ってきて毛づくろいをはじめる。

この反応がすでにおかしいんやって・・・


そのままケージから出してテーブルの上に乗っけると
急に広がった世界に戸惑ってちょっとじっとしてる。

ふ〜ん。
これはどうや?

ぱちってきた固形飼料をテーブルに転がしてみると
うれしそうにかけよってきて前足で抱えあげようとする。

お・・・

しっぽをキュッとつまんで引っ張ってやると
急にエサに足が届かんようになってジタバタ前に進もうとしてる。

っ・・・かわいい。

88 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時20分13秒

手をぱっと離すと反動でテーブルからピョーンと飛び出してしまう。

「あっ!」


スタッと着地して・・・
さらに広がった世界にしばらく呆然としてる。

まぁケージだけの世界からすると広すぎるもんなぁ。

みたことのあるアタシの手を見つけてチョコチョコかけよってくる。
でそのままうえを見上げてびっくり?

・・・この子からしたらアタシめちゃめちゃ大きいもんな。
あっ・・・そんな伸び上がったら・・・

コンッ

ひっくり返って頭を抱えてジタバタしてる。

やっぱり。
頭うった?大丈夫か?

目が合うと急にムクッと起き上がる。
取り繕うように毛づくろいをはじめる。

とりあえず落ち着こうとしてんねんな?

身体も耳もしっぽきれいにしてピタッと止まる。
ふぅ〜ってため息ついてるようにもみえる。

落ち着いたん?

89 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時21分00秒

しっぽを上げて・・・


やばっ!

急いでティッシュを下におく。

やっぱり。
おしっこね。

プルプルって身体を震わせてから満足そうな顔で仕上げにひげを掃除すると
よしって顔でアタシを見上げる。

なんやの?
あっそうかこの子アタシの顔はしってんねんな。
いっつも覗き込みながら指でつついてたし。


床につてた手をよじ登り始める。

ちょっと・・・めちゃめちゃこそばいって!
あぁ・・・でも手を払ったらこの子とんでいくなぁ。


「くくくっ・・・」

アカン・・・ほんまこそばいって。
しかしすっごい真剣な顔やな。
おっ肩の上にたどり着いた。

90 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時21分55秒

前足でほっぺたをペタペタして鼻先をすりよせる。

ん・・・ひげがくすぐったい。
なんやその満足そうな顔。


指で突っつくとムッとしてペシッとはらってくる。

うっ・・・こけたこと根に持ってんのか?
フローリングで頭打ったときはアタシ押してへんで?


「あ・・・名前つけななぁ。」

この色なぁ。
これでしっぽがフサフサやったらリスに見えそうや。
マウスのマと・・・・・・

こじ付けっぽいけど・・・

「マリ?」

マリが声に反応する。

「今日からアンタはマリや。ええな?」

首を傾げてる。

まぁな。わからんよな。


91 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時22分33秒

はぁ〜・・・もう寝よ。

肩の上のマリを手に乗っけてケージの中に戻そうとすると
嫌がって登りついてくる。

「またあしたな?」

指で頭をなでてやると名残惜しそうに離れる。
透明な壁に前足をついて立ち上がってる。

そんな目で訴えんなて。

ケージを枕元まで持っていってから電気を消す。

「おやすみ。」


・・・・・・

忘れてたマウスって夜行性や。
ずっとカサカサ音がしてる。

「ちょっと・・・マリ・・・静かにして?」


ん?って動きを止めるマリ。
前足は床じきに突っ込まれたまま。

あぁそうか巣作りか。

「つくったらはよ寝んねんで?」


それからごそごそしてたけど
満足したのかしばらくして静かになった。

ケージの中で丸くなってる茶色い毛玉。


今度こそおやすみ。



おわり

92 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時24分05秒
はい更新終わりです。

自分を動物にたとえると?という質問に対する答えがこれなもんで。
93 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時26分14秒
いつかは書こうと思ってました。
動きもけっこううな小動物っぷりなんで。
94 名前:ちぃ 投稿日:2003年05月24日(土)23時27分58秒
来週末は無理かもしれません。
ってことでまた来々週末ごろに。
95 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時26分31秒
更新します。
96 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時27分05秒

「ねぇ名前なんていうの?」

誰や?
しらんでこの子。

「アタシに聞いてんのか?」

「そうだよ?」

「裕子ゆうんやけど・・・?アンタは?」


その子は口を尖らせる。


「裕ちゃんが付けたんじゃん。」


なに勝手に裕ちゃんって呼んでんねん。
って・・・アタシが付けた?

はぁ?


「ほらっこの色みおぼえない?」

髪をいじってみせる。


その色って・・・

「マリ?」

「えへへっ当り!」

うれしそうにわらう。

97 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時27分46秒

んぅ?
あぁこれ夢か。

ってなんで裸やねんアンタ!!
ふく!服!フク!

ポンッ

あっさすが夢やなぁ。


「とりあえずこれ着ぃ。」

「どうやって着るの?」


しらんのか?

「着せたろ。こっちおいで?」


なんやなぁ・・・
あんまり堂々とされるとこっちが恥ずかしいわ。



おかしいな。
もう20週齢くらい違ったっけ?
この子の姉妹もうぽんぽん子供うんでんで?
人にしてもこんな年頃ちゃうやん。
この子どう見ても・・・

ってアカンがなどうせ夢や夢。

98 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時28分32秒

「裕ちゃんってあんなに大きかったんだね。しらなかったよ。」


え?

ボタンをとめる手が止まる。


「・・・夢やんな?」

「ぅん?」


マリがアタシの顔をペタペタ。
ほっぺたに鼻先をツンツン。

マウスんときもやってたな。
あの茶色いクリクリ目の子は人にするとこんな感じなんか?

うぅ・・・・・・かわいぃやん。

チュッ

「ん?こんなふうにこんにちはするの?」

そうかぁさっきのは挨拶やったんやな。


「アタシは好きな人にしかせえへんよ?」

「好きって?」

99 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時29分09秒

あるやんなそんな感情?
マウスに置き換えると・・・あれが近いかな?
とりあえず・・・

グイッと押し倒す。

「こんな感じ?」

きょとんとしてる。わからへんのか?
あ・・・

マリをころっと転がしてうつ伏せにして
後ろから腰をだく。

「これでわかる?」

あっちょっと赤くなってる。

「・・・裕ちゃんってオス?」

「んにゃ。マリと一緒。」

「じゃ交尾できないよ?」

交尾ねぇ・・・
ちゅうかアタシしっぽないし。

「でけへんことないよ?」


・・・・・・

あ・・・黙りよった。
かわいい反応やな。


100 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時30分09秒

「まぁそこまでじゃないからいいけど。」

身体を起こしてそのままひざの上に抱っこする。
途中やったボタンを後ろからとめる。

ん〜お嬢はご機嫌斜めですかい?
ほっぺたプクッてなってるで?


「どうしたん?」

「なんで連れてきたの?」

「さぁ・・・・・・生きてて欲しかったからかな。」

しらんやろうけどマリは動物実験用に生まれた子やから
傷つけられた上で殺される運命の子やったから・・・

「それは・・・好きってこと?」

「あぁそういえんことはないなぁ。」

「じゃあ交尾するの?」

「だから・・・そこまでとちゃうからいい。」

まだ性周期安定する前やろ?
ようわからんけど興味はあるってところか。

あっまたプクッて。

・・・・・・

「したいの?」

「え?」

101 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時30分47秒

そうゆうことにならんか?
アタシが別にいいってゆうと機嫌悪なるやん。

顔赤いで。

「・・・・・・わかんない。」

「そっか。」

ちゃんと発情しかけてんの?

マウスやったらしっぽもってソコ見るだけでわかるんやけど
人の姿のときにそれはちょっと・・・な?


頭をなでてほっぺたに鼻先をすりよせる。
マリのまね。

「裕ちゃんお母さんみたい。」


この子のお母さん・・・殺してしまったなぁ。
実験動物としては当たり前の道。
その道を歩ませたくなかったんはただの偽善やろうか?
ただこの子が突然変異起こしてたから。
それがなかったらアタシは普通にこの子を殺してた。

でも時間の流れは一筋しかなくて・・・やったらとか・・・であればなんてない。
この子が茶色に生まれてアタシになついたから連れて帰った。
その事実しか存在してない。

アタシはマリに惹かれたんやないねん興味を持っただけ
好きなんてムシのいいことゆわれへん。

102 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時31分37秒

マリが振り返ってアタシのほっぺたをなでる。
すごく真面目な顔で。

「どうしてここは色が違うの?」

唇に触れてくる。

「あっやわらかい。」

「マリもやで?」

「え?」

自分の唇を触ってみる。


チュッ

ん?

「なんでかな?裕ちゃんのとくっつけると気持ちいいの。」

熱っ・・・聞いてるこっちがはずかしなるわ。


「あっわかった!気持ちいいとこですよって印しだ!」


案外的を得てる?

「かもしれんな。」


ペロッ

マリが唇を舐めてくる。

「ん・・・」

ペロッ

おかえし。


「へへっ・・・いいね。」

うぅストレートすぎるって。
でもマウスやったら味わえんことよなぁ。

103 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時33分08秒

じゃもうちょっと・・・

もう一度唇を重ねる。
今度は本気で。

マリが腕にしがみついてくる。

「っ・・・ふぅ・・・」

薄く開いた唇の隙間から舌を滑り込ませる。

「んぅ?」

不安げな声。
大丈夫やでって頭をなでながら舌で歯列をなぞると
腕の中の体が微妙にプルって震える。

ん・・・もうちょっとだけ。

怯えて隠れてる舌をみつけてイタズラ。

「ぅん・・・ゆぅ・・・」

ギュッてしがみついてる手がいじらしくてかわいいなぁって思うと
急に背中がゾクッてなった。

や・・・やっぱりやめとこ。

唇を離したときつぅっと繋がった透明な糸が切れて
落ちていくのを目で追ってびっくりした。

マリの服の中に侵入してる自分の手に気付いたから。

なにしてんの?
この子マリなんやろ?
あの茶色いちっこい子。

この行動はなに?
なんですか?

104 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時33分58秒

頭ん中整理できんアタシになんの警戒心も持たんマリは
ぽすっともたれてほっぺたを摺り寄せてくる。

「裕ちゃん・・・」

「ん?」

「なんかねぇ・・・身体熱いの。」

みあげる目が潤んでる?
ヤバっ・・・やりすぎた。

「ごめん。」

「もぉ裕ちゃんに食べられちゃうのかと思ったよ。」

ははは・・・


ピピピッピピピッピピピッ

んっ目覚ましか?

「もぉおきなアカンわ。ほなね。」

「もういっちゃうの?」

ん?

ギュッって抱きつかれる。

「・・・に・・・った。」

「え?」

聞こえん。


105 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時34分37秒

んっまぶしっ。

枕もとの時計を止めて・・・飛び起きる。

はぁ?!
なんでこの時間?!

ちゃんと合わせたはずやのに。


ケージの中でマリもごそごそしてる。

「おはよ。」

ケージの中に指を入れるとチョコチョコかけよってきて前足で抱きつく。
それから鼻先じゃなくて口を指に近づけて舌で舐める。

満足そうに細まる目。


「・・・ただの夢やんな?」 

キュッとしっぽをつかんで持ち上げてチェック。

・・・今日か。
やっぱり昨日発情前やったんや。

マリが足をバタバタしてる。

「あっごめん。」

手を離すと『もぉ!』って怒りながら毛づくろいしてる。


ん〜ご飯食べてるヒマはなさそう。
急いで手早く支度をする。


106 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時35分20秒

で最後にケージの前に立つ。

「マリ?仕事行ってる間おとなしくまってて?
 できるだけはよ帰ってくるから。」

クリクリした目を潤ませて見上げてくる。

「しゃあないやろ?仕事せな生きていかれへんもん。
 なんかおみやげ買ってきたるから・・・な?」

あ・・・わらった。
ゲンキンなヤツ。

「じゃ行ってくる。」





おわり

107 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時37分32秒
はい更新終了です。
108 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時38分15秒
こんな時間になにやってんやろ。
はよ寝よ。
109 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月08日(日)03時39分32秒
少し忙しいのでまた来々週末くらいに。
ではまた。
110 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月08日(日)11時30分20秒
おおー!ひさびさに来てみたら新作が!
つづき楽しみに待ってます。
111 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月08日(日)17時43分27秒
すごい面白いです!!!
続き楽しみに待ってます。
112 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時10分30秒
更新します。
113 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時11分03秒

「ただいまぁ。」


って・・・

なんじゃこりゃ〜!!

なんでこんなとこに羽根が?
枕の中身?

ケージから出てイタズラしたんか?
逃げてへんやろか?
大丈夫やろか?

くぁっ・・・なんで今日に限ってこんな脱ぎにくいのん・・・

っがぁ!
脱げた!!


そろえることももどかしくて子供みたいに靴を玄関に脱ぎ散らかして
部屋のドアを・・・

うぁっ!
ここが一番ひどいやん。

なんやこれ布団なかのん全部出した感じやで?

あれや。
マウスのケージの中みたい。


114 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時11分37秒

!!!!!

え?

マリ?

部屋の隅っこに見つけた。
羽根をかき集めてそん中で丸まって寝てる。
それはマウスの習性としては間違ってない。

でもその姿はおかしいやろ?
突然変異とかの枠を超えてる。

昨日の夢の中の・・・

なんで?


マリがふぁって伸びをしてる。


「ん?裕ちゃん?」

「マリ?」

「なんか裕ちゃんといっしょなの。不思議だね?」

いつもの毛づくろいの癖か自分の身体をなでる。
でも心なしか物足りなさそうにしてる。

115 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時12分18秒

そういえばこのあとって・・・

「こっちおいで。」

「どこいくの?」


手を引っ張ってトイレへ。

「ここ入って?」

「ん。なに?」

ちょんと押して座らせる。

「おしっこやろ?」

「うん。ここでするの?」

「そうや。ここ閉めるから終わったら呼んで?」

出ようとすると腕をとられた。


116 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時13分06秒

「ダメッ!ここにいて。」

は?

「なんで?」

「だって初めての場所だもん。落ち着いてできない。」


あ・・・そやった。
マウスってけっこう神経質やもんな。

でもその姿やとなぁ。
うぅ・・・なんか着せてから来たらよかった。

はぁ〜

あんまりみんですむように横から抱っこして頭をなでる。

「わかった。ここにいるから安心しぃ。」

「ふぅ・・・」


身体をプルッとふるわせてから・・・


「いい?終わった?」

「うん。」


117 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時13分41秒

じゃあ・・・トイレットペーパーを適当にとって・・・

どうしよ?
あっそうか自分でやってもらったらええんや。


「おしっこでたとこ拭いて?」

「ん〜じゃまくさいね。」

まぁマウスにくらべりゃね。


「あとはそこに捨てたらええから。」

「ん。」


マリがごそごそしてる。

「終わったよ?」

「んじゃ流そう。」

グイッとレバーを動かすと勢いよく水が流れる。

118 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時14分24秒

「なにっ?!」

おぉっ?

ビックリして登りついてきたマリ。

そうか。
大きい音も苦手やったな。

「ごめんごめん。なんも怖いことないよ?」

ギュウって抱きついてくるその背中をとんとんってしてやる。
しかしまぁなんでしょうなぁ・・・ほっぺたに柔らかいものが。

「ほんと?怖くない?」

「ほらもう音ちっちゃくなった。な?大丈夫やろ?」

「う〜ヤだもぉ・・・ここ怖いよぉ。」


はいはいわかりましたよ。
わがままなマウスさんやねぇ。

119 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時14分58秒

部屋に戻ってマリを床に下ろしてから改めて部屋の中を見渡してみる。

あぁ・・・奮発して買った布団やったのに。
羽毛やで?高かったのにぃ・・・

しかしどうしよ?
この羽毛の海。


うぁ・・・・・・えろっ!

ふと目にしたマリの姿に思わず目を逸らす。

なんかヤバいで?
この白い羽毛が変な雰囲気を作り出してる。
あんなんみたらアカン。

って思うのについついチラッと視線が。

気がついたら・・・
ごそごそ羽毛を集めるそのちっちゃい背中に誘われて抱きしめてた。

目の前の首筋に触れたい気持ちが押さえ切れんで
マリのアゴを右手で少し上げながら唇で・・・

「なぁに?くすぐったいよぉ裕ちゃん。」

クスクスわらうマリに苦笑い。

「ん〜なんもない。」

首筋に鼻先をうずめる。
あぁなんかいい匂いする。

もぉ・・・今日絶対おかしいわ。
なんやろ?

120 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時15分28秒

「くしゅん!」


そういえばちょっと身体冷たいかも。


「お風呂入ろっか?ちょっとあったまろ?」

「おフロ?」

そっかしらんよな。


「気持ちええよ?」

「ほんと?」

そのあと服着せよ。
目の毒や。


「ちょっと待っとき?お湯入れてくるわ。」

腕をとくと振り返ってむぅって唇を尖らす。


「なんや?」

「・・・・・・なんでもない。」


ん?
なんやろ?

121 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時15分59秒


自動お湯はりのスイッチをプチッと押して戻ると
マリは自分の身体を抱きしめてた。

「どうした?やっぱり寒いん?」

「ん違う。熱いの。」

熱い?
あっそや・・・・・・発情中や。


「そんななったんはじめて?」

「うん。」


じゃやっぱり6〜7週齢相当やな。
人でいえばまだ10代か。

おかしいなぁ・・・なんでこの子だけ。


122 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時16分32秒

「きのう裕ちゃんが気持ちいいことするからだよ?」

「あ・・・それ違う。マリはいまそういう時期やの。」

「どうなっちゃうの?」

「怖い?」

マリをひざの上に乗っけて抱っこする。


「裕ちゃんが抱っこしてくれると平気。」

そうか?


「んっ・・・」

手がわき腹あたりをかすったときちっちゃく声をもらす。

・・・・・・うぅ

やっぱり甘い匂いする。
香水とかつけてへんのになぁ。

もしかしてこれでオス誘うん?

123 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時17分08秒

ありゃ?

じゃアタシの行動って・・・

マリがアゴの辺りをアタシの腕にすりつける。
これってマーキング?

アタシ相手にその行動はおかしいやろ?
オスちゃうで?

そんな疑問をほったらかしにして好きにさせながらぼーっとする。
マリの身体があったかくて悪くない感じ。


ピーッピーッ



おっ風呂入ったみたいや。


「はいろか?」

「うん。」


えらいうれしそうやな。


「なんでそんなうれしいん?」

「だって気持ちいいんでしょ?マリ気持ちいいのうれしい。」


・・・アカンわ。
こっちが恥ずかしい。





おわり

124 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時18分03秒
はい更新終わりです。
125 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時19分45秒
来週も更新は無理かもしれんので
とりあえず来々週末あたりで。
126 名前:ちぃ 投稿日:2003年06月22日(日)02時20分19秒
ではまた。
127 名前:名梨読者。。。 投稿日:2003年06月23日(月)18時54分03秒
やっぱりちぃさんのやぐちゅ〜は最高なわけで。
来々週までも、再来年までも待ち続ける覚悟を決めている次第であり。
128 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月01日(火)22時38分26秒
マウス矢口さんイイです、可愛いです。
中澤さんが戸惑ってるのも面白いでし、更新待ってます。
129 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時07分47秒
更新します。
130 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時08分36秒

ふぃ〜

心地いい湯上りの熱気を身体に残してビールを飲む。

あぁ〜幸せ。
ん?

興味深げにこっちをみてるキラキラな目。

「ねぇそれなに?なに飲んでるの?おいしい?」


首をかしげると着せたパジャマがちょっとずれる。

まくった裾と袖からみえるまだ少しほてりの残る肌。
濡れたままの髪にかかったタオル。

・・・・・・

131 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時09分13秒


『え?おフロってお水にはいるの?』

『お水ってゆうてもこれぬくいよ?』

お湯の中でもたれて来た背中は
くすぐったいほどすべすべしてた。

ほっぺたをなでると目を閉じてふにゃ〜んってなって・・・


「・・・ぅちゃん!寝てるの?!」

おぁ?
いつの間にか目の前に・・・プクッてなった顔。


「なんで答えてくれないのさぁ!」

「あ・・・なんやったっけ?」

うぅ〜って唸り声が聞こえそうやな。
ちゅうかくっつきすぎやろ。

132 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時10分27秒

あっ・・・

「苦っ!」

勝手に飲むなやもぉ。

ケホッケホッてしてるマリの背中をなでる。

「うぅ・・・マリこれダメ。」

「そやなぁまだ早いわ。」


口をうにゃうにゃしてたマリがクスクスわらいだす。

「こそばいよぉ裕ちゃん。」


へ?

あぁもぉ・・・なんでやろ?

背中をなでる手を止める。
自分の手つきが明らかに妖しい動きに思えたから。

お風呂に入ってもあの匂いがする。
甘くてギュッてしたくなる匂い。
なんやろ?

133 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時11分02秒

「裕ちゃん・・・」

もたれてた身体を起こして下から覗き込んでくる。

ん?
どうした?

なんでそんな顔してんの?


「マリのこと好きじゃないの?」

「なんでそんなこと聞くの?」

あれ?

「ちょっと・・・もぉ・・・泣かんといて?」

ほっぺたを伝う涙を親指でぬぐってやる。


「好きじゃないならそんなふうにしないで。」


そんなふう?

「アタシは好きやで?」

一瞬驚いた顔をして・・・でもすぐに口を尖らせる。

134 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時11分32秒

「違うもん裕ちゃん。もうマリに触っちゃダメ。」

膝から降りて羽毛の中にもぐりこむ。


「もうヤダ!こんなのも要らない!」

せっかく着せたパジャマも脱ぎ捨ててこっちに背を向けて丸くなる。


あっ脱ぐなっちゅうねん。
なに怒ってんねんな?


「探してきてよ。」

「なにを?」

「マリと同じようなオス。」


は?
嫌やで。

他のヤツに盗られるために連れて帰ったんちゃうっちゅうの。

135 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時12分11秒

あ・・・そうゆうことか。

しばらくほっとこ。
ぬるくなる前に飲んでしまわなもったいないしな。

ビールの缶を傾ける視線の先にはブツブツなんか文句ゆうてるマリ。

さてどうしたもんかね。
こマウス相手に下手にでたかぁないし。

ふ〜ん。


「マリ?」

「なに?!」

かぁ・・・えらそうに。
なにキレとんねん。


飲み終えたビールの缶をグシャっとつぶす。

マリがビクッとしておそるおそるこっちを振り返る。

そうやなぁ。
マウスは小心者。びびらすと大人しくなる。

136 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時13分01秒

視線を合わせたままマリに近づくと
不安そうに見上げてくる。

怖いんか?
アホやなぁそんな弱気になるくらいやったら
はじめっから強気に出るなよ。


「他のヤツなんかに・・・わたすと思ってんの?」

「え?」

びくびくしてるマリの頭をなでる。

チュッ

「あほマウス。」

抱き上げるとそろそろと腕を背中に回してくる。

「安心しぃ。ちゃんと好きやから。」

なに赤くなってんねんな?

137 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時13分42秒

抱っこしたままもう一回イスに座りなおす。

あったかいなぁマリの身体。

あれやなぁ・・・
発情し始めのメスってオス誘っといてけって逃げるからなぁ。

アタシはけられるのごめんや。

マリの身体をなでる。
興奮をあおるためじゃなくって落ち着かせるために。


「不思議だね裕ちゃんの手。」

「なにがや?」

「いろんなふうに気持ちいいの。」


・・・そんなことゆうんはこの口か?

手でマリの口をふさぐ。

「ん・・・ん〜・・・」

なんかゆうてる。
ちゅうかなぁ恥ずかしいねんてそんなことゆわれんの。

138 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時14分20秒

カプッ

「った!!」

「もぉ!なんでそんなことするの!」

あっ怒ってる。



「なぁパジャマ着ぃ?風邪ひくで?」

「だって・・・好きくない。」

「アカンよ。アタシは獣医やないんや。
 風邪ひいたらどうしていいかわからへん。」

「ん〜わかった。」

膝から降りずに身を乗り出して
足元に投げ捨てられたパジャマを拾ってごそごそ着てる。

降りてもいいのに。
そんなにアタシのひざの上がいいん?

139 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時15分20秒

「ねぇちゃんと着たよ?」

なんや?
褒めろってこと?


「よしよし。ええ子やなぁ。」

「でしょ?でしょ?じゃぁさ・・・」

ペロッ

え?

驚いて身体を離そうとしてもガッチリ首に腕を回されて・・・

ちょっと・・・なに・・・
なんども唇を舐められると・・・
止めさせんと・・・止まれんなる。

マリの舌を捕まえて少し強めに歯を立てる。

140 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時16分00秒

「った!なにすんだよぉ!」

「なにすんだよぉって・・・それはこっちのセリフや。」

「なんでさ?裕ちゃん気持ちいいの嫌いなの?」

さすがマウス。率直な質問やな。
発情中でもあるわけやから余計に・・・

あぁもぉせっかく落ち着かせたのになぁ。


ほっぺたをアタシの身体にスリスリ。

「ねぇマリ・・・裕ちゃんのこと好きになっちゃったよ。」

え?

「ん。ありがとう。」

とりあえずお礼を。

「それだけ?」

ほかになにが?
またそんなほっぺた・・・なにがそんな不満やの?


「なんだよぉ。ウソツキぃ。」

ウソ?

141 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時16分49秒

あ・・・お土産があったんや。
あんまりびっくりしたから玄関にカバン置いたままやがな。

「ちょっと降りて?」

「ヤダ。」

即答かい。

「買ってくるってゆうたやろ?」

「お土産?食べ物?どこにあるの?」

やっぱりゲンキンやな。

「取ってくるから待っとき?」

「マリも行く。」

人のTシャツをつかんでペタペタ足音を立ててついてくる。
たいした距離じゃないのにな。


142 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時17分24秒

「なになに?なんなの?」

カバンを持って部屋に戻るアタシにまとわりついてくる。

色気より食い気でええと思うよいまは。


「ほれっチーズ。」

マウス=チーズってこれまたベタなんやけど。

とりあえず落ち着けって座らせたマリの目の前に差し出してみる。


あっそれなんかめっちゃマウスっぽい。
なんで目つぶんのかなぁ?

いい匂いする?
食べれる?


「おいしいかな?」

「たいがいの子は好きやで?」

子はってゆうかマウスはなんやけど。


チーズを持ってるアタシの手を両手で押さえて
そのままおそるおそるかじってみてる。

「んっ!んーっ!んーっ!」

なんやなんや?
なにバタバタしてんの?


「おいしぃ〜!!」

わかりにくい反応すなっちゅうねん。
びっくりするやろうが。

「もっといい?」

「あぁええよ。」

143 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時18分22秒

ぐぅ〜

ん?
あ・・・晩ご飯食べてへんやん。

もぉええわ。
今日は止めとこ。

こんな時間に食べんのよくないし・・・


ぐぅ〜


うぅ・・・じゃちょっとだけ。

チーズを持ってるマリの手を引き寄せる。


「もぉ横取りしないでよぉ・・・」

なにゆうてんのアタシの口の中にころんって落としたんはそっちやろ?


にしてもちょっとこれは・・・

144 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時18分56秒

「それ・・・明日に残しとき?」

「どうして?」

「はよねなアカンし。それと食べ過ぎると身体にええこと無いしな。」


口に入れたら次を手に持ってる姿を見ると
止めずにはいられへんやろ?


マリの手からチーズの袋を取り上げて冷蔵庫にしまいに行く。


「んんんぅ〜ケチィ!」

後ろにマリの声を聞きながら。


「また明日あげる。ほらおいで。」

腕を広げるとポスッと飛び込んでくる。


「歯ぁ磨いて寝るかぁ。」

「歯をみがくの?」

「うん。磨いてあげよ。」


予備の歯ブラシあったよなぁ?
そういえば布団がえらいことなったんやった。
夏布団ださなあかんなぁ。

一応簡単にでも部屋の羽毛掃除せなアカンか。

はぁ〜しかしなんやろう。
この状況になじみ始めてる自分が怖い。





おわり

145 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時19分52秒
はい更新終了です。
146 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時24分27秒
あっとゆうまに今年も半年終わりましたよ。

はぁ〜
147 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月06日(日)14時25分14秒
たぶんまた来々週あたりに。
148 名前:名無し君 投稿日:2003年07月06日(日)17時17分23秒
ちぃさんの作品、温かくて大好きです。
気が向いたら・・・リアルっぽいのもまた書いて欲しいな〜。
149 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時31分39秒
更新します。
150 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時32分42秒


ピピピッピピピッピピピッ

カチッ


うぅ〜朝か。

すぐに動くようにはならん身体をもてあまして
何気なく寝返りをうつ。


あ・・・・・・

茶色い毛玉。

あはは・・・もどっとる。
ちっこ。

う〜んこれはこれでかわいい。


チュッ

「おはよ。」

151 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時33分14秒

マリがもそもそ頭を抱え込むようにちっこくちっこく丸まろうとして
・・・前足がぴょこんと出た耳にひっかかった。

ガバッて身体をおこす。

ん?
気ぃついた?

自分の身体を確認してうれしそうにひげをひくひく動かしてる。
しかもみてみてって自慢げに。


「うれしいの?よかったなぁ。」


近寄ってきて唇を前足でペタペタ触ってくる。

なに?

ペロッて舐めてくる。

お返しのチュウね。
あぁなにその満足そうな顔は。

152 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時34分02秒

「ご飯食べる?」

ぱっと顔を輝かせる。


「その大きさやったら昨日のチーズめっちゃおっきいんちゃう?」

人のアゴを前足でペシペシしばいてくる。


はよせぇってか?
わがままなやっちゃなぁ。



んがぁ〜って伸びをしたあとマリを手にのっけて
冷蔵庫のチーズをとりに行く。

取り出すと反対側の手の上で後ろ足で立ち上がって催促。

そんなとこで立ち上がったらこけるで?

うぁっと!

案の定ぽろって転げ落ちるところをチーズの袋でキャッチ。

おいおい大丈夫なんか?

袋の中を覗き込むと中でチーズに溺れてる。

あっでもえらく幸せそう。

153 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時35分19秒

しっぽをきゅっとつかんで救出。
前足にはしっかりチーズをつかんでる。

ついでに健康チェックしとこ。
ふ〜ん昨日お風呂はいったからか毛並みがやけにいい。
あ・・・やっぱり発情終わってる。

ちょんと触ると後ろ足でペッペッってけられた。
キロッとにらまれる。

なんやねん昨日されたらメロメロのくせに。
このわがままマウスが。

でも逆さまのままチーズをかじってるその姿を見ると
勝手にニヤケてしまうんやけど。

なぁそんな安心しきっててええん?
首根っこ押さえてしっぽキュッて引っ張ったら・・・な?
一瞬で命が奪えてしまう。

首筋あたりがヒヤッとなる。

怖い怖い。

テーブルの上にマリを放す。

154 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時36分17秒

こうしてると昨日のことがほんまに起こったこととは思えん。
でも確かに昨日この子は人の姿をしてて散々アタシを動揺させて
しまいには人の腕の中で幸せそうな寝息を立ててた。

なによりも中身がなくなってしぼんだみたいになった羽毛布団と
ゴミ袋いっぱいの羽毛が現実逃避を許してくれへん。

はぁ〜

コーヒーだけ飲んでいこかな。


あっその前に。

「マリ?」

ん?ってチーズから口を離して見上げてくる。

「そのカッコのときはケージの中でおしっことうんこするんやで?」

よしよしうなずいてるな。

「このケージ部屋の隅にトビラ開けて置いとくからな。
 中はいって内側からここグイッて押したらカチャンって閉まるから
 怖いことあったら隠れたらええわ。」

うんうんってうなずいてるけど大丈夫かな?
抱えてるチーズのほうに気持ちが行ってるのがバレバレやで。

155 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時37分19秒

指で頭をぐりぐりなでてやる。

「わかったら食べてええよ。」

やたっ!って顔でまたかじりだす。

はぁ〜ほんまにコイツは・・・

指でツンツンってするとジャマくさそうにしっぽではたかれる。
なんやねん・・・昨日はあんなに・・・

うぅなんかおもしろないなぁ。


コーヒーやコーヒーいれよ。


156 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時38分00秒

ゆっくりコーヒーをすすりながらちょろちょろ動く毛玉をみてると
持ってたチーズをぽとって落とす。

なんや?
もう食べるの飽きた?

鼻をヒクつかせてカップに近づいてくる。
前足でアタシの持ってるカップに・・・

アチチッて前足をふってる。
焦って毛づくろい。


・・・落ち着いた?

「めっちゃ熱いやろ?しかも苦いの。ほれ。」

指につけてマリに差し出す。

クンクンかいでからペロッと舐める。
と急に身体をプルッと震わせて必死に前足で舌をぬぐう。

ふふん。

157 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時39分00秒

あぁ・・・しかしちょっとかわいそうか。
ハチミツあったかな?

戸棚の奥を探る。

「あった!これ舐めたら大丈夫ちゃうか?」


今度は匂いを確認することもなく大急ぎでペロッと舐める。
ん?って顔してから残りもペロペロ舐め始める。

「おっ気に入った?」

・・・て聞いてへんのかい?
ちょっとくすぐったい。

前足で指を捕まえたまま一生懸命。

あっそうか。
マリも水分とらなアカンねやな。

離してくれへんマリを指にくっつけたまま
小さくて浅いお皿に水を入れてテーブルに置く。
ついでに固形のエサも。

テーブルのから床に降りられるように
その辺にあった雑誌を階段状につんでおく。

よし。これでだいたいウロウロ出来るやろ。

158 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時41分41秒

「なにしてんの?」

いつまで舐めてんの?
もう味無いやろ?

ふと顔を上げたマリと目が合う。

なに?

アゴのあたりで指にスリスリ。

マーキング?
これって意味あんねやろか?
実験室のマウスで確認してみよ。


でも目があってからマーキングするって・・・
なんやな・・・ずっと素っ気なかったんは照れ隠し?
マウスさんやと微妙な表情は読み取りにくいねん。

本気でへこむとこやったわ。
もぉかわいいなぁ。

159 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時43分40秒

「そんなんせんでも他のマウスに興味持つことないんやし。」

あったら怖いっちゅうねん。
この状況もけっこうおかしな状況やねんから。

「アンタだけ特別や。」

満足げな顔。
納得したらしくようやく指を離してくれる。


そろそろ仕度せななぁ。

人の日常。
マウスほど殺される危険性は高くはない。
そのかわりせんといかん義務もあるわけやね。

コイツにはないけど。

水を飲んでるマリの背中をつつくと
キュッと指にしっぽが絡みつく。

まぁええけど。




おわり

160 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時45分34秒
はい更新終了です。
161 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時48分24秒
リアルっぽいやつですかぁ。
いまはちょっと・・・

現実問題としてあの人たちが今なにをしてるか追えてないんで。
162 名前:ちぃ 投稿日:2003年07月20日(日)12時59分17秒
ネタはあっても固まる前に状況が変化してってしまいます。
まぁでもうまくタイミングが合えば乗っけるかもしれません。

期待しないでください。

ではまた来々週末に。
163 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時43分23秒
更新します。
164 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時43分58秒

いまだに謎やな。
決定的瞬間を捉えたことはない。

人からマウスへ。
マウスから人へ。

はじめからそうであったかのように
当たり前にその姿で存在してる。
ちょっと目を離して振り返るともう・・・てこともあった。

そりゃビックリするやろ?
油断してるときに後ろから抱きつかれたから
軽いパニックに陥りそうになった。


『やっ!誰?!』

『ふ〜ん・・・怖いの?』

耳元に意地悪なささやき。

しゃあないやん。
アタシの部屋やで?
誰もいいひんはずやろ?
アンタさっきまでマウスやってんもん。

言い訳するほどニヤニヤとうれしそうにわらうマリ。
165 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時44分36秒

あれが悪かったんや・・・あれのせいで
マリはアタシを絶対的に自分より強いものとは思わんようになった。

気に入らんかったら噛んだりけったり。
まぁそれでもマウスのときはええわ。


ほらそこのちっこいの!
そんな目でみるなって・・・

問題はこれや。
ヒザの上に乗っかってるこの人。


なんとなくわかってきた。
マリは4日ごとに人になる。

それはマウスの性周期でゆうと発情期の日。
その前日は夢の中。

今日みたいに日曜と発情期が重なったら大変や。

166 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時45分20秒

「あっこら!やめんかっ!」

「なんでさぁ〜裕ちゃんだってするじゃん。」

服の中に入り込んできたマリの手を捕まえる。

ヤバイヤバイ。アタシのせいか。
いらんことしてるなぁアタシ。
墓穴ほってる。


「じゃいいよ。」

そうそう。
諦めが肝心やで。


え?

首に腕をまわしてキュッとくっついて
うなじあたりに回った手で髪をなでくる。

「・・・なにしてんの?」

「ん〜ちょっと。」

ちょっととちゃうがな。
そんな近づいたら・・・

息が浅くなる。
酸素が行き届かんようになってくる。
代わりにアタシを満たすもの。

アタシをおかしくするのはこの匂い。

167 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時46分10秒

「しっててやろ?」

「なにが?」

いや。
絶対わざとや。
意外にマウスの学習能力は高い。
恐ろしいことに。

肩に摺り寄せられるほっぺた。
目の前に差し出された白い首筋。

エサに食いつくのを待ってる。
どうしてもマリに触れたい気持ちが
抑えられへんようになるのを待ってる。


我慢せなアカン理由はない。
お望みどうりに差し出されたエサに唇を寄せる。

「ぅん・・・」

ちっちゃい身体が反応する。

168 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時46分54秒

「どうしたん?」

おかえしやおかえし。
ものすごく意地悪な顔してる自覚あり。

「ん〜ちょっとね。」

すました声。

「ふ〜ん。そっか。」


つぅっと舐めあげた先にある耳たぶを口に含む。

「っあ・・・」

ふにゃ〜んってなって軽く首を振る。

・・・・・・

「いやなん?」

ピタッて動きが止まる。
見上げてくる目が怒ってる?

「アホッ。」

なんやそれ。

169 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時48分04秒

「怒らんといて?」

だいたいわかるんやけどな考えてること。
なんとなく・・・やっぱり思惑通りに動くの癪に障る。
どうも乗り気にならん。


はぁ〜

う・・・なんやそのため息。


急に赤くなって俯く。

「どうしていつも途中でやめるのさぁ・・・」

あ・・・そうゆうことゆう?

いかんいかん。
めちゃめちゃ意地悪したくなる。


「なんの途中や?」

ん?
ゆうてみ?

・・・・・・反応なし?


170 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時49分05秒

「ぃたっ!ちょぉなに!!」

あわててマリを自分の身体から引き離す。

「なにすんのもぉ!!イタいやんか!!」


最悪!
いくら自分の思うとおりに行かんからって
思いっきり胸かむことないやん!!
このわがままマウスが!

でなんでそっちが泣きそうな顔してんの?

離れた身体。
キュウって服を握ってくる。

でも負けへんで?
ここで折れたらなんでもゆうこと聞く思われる。
あくまでもアタシのが上。

それをこのちっこいケモノの頭に叩きこんどかなえらいことになる。

「のいて。」

マリが首を横に振ってイヤだって意思表示。


「じゃあ約束しぃ。腹立ったからって人をかまんこと。」

わかった?

171 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時49分35秒

うんうんって一生懸命うなずく。

「ほないいよ。おいで。」

ポスッと腕の中に納まるマリ。

けっきょく甘いんかなアタシ。
ヤバイなぁ。


「・・・ごめんなさい。」

「ん。」

よしよし。ええ子やな。

頭をなでてやるとまた首にギュッて抱きついてくる。


う〜ん・・・わかってんねんけどなぁ。
いつでも手に入りそうなものを急いで手に入れる気にはなれんの。
ほんまに我慢できんなったらパクッといけばすむことやし。
できるだけこうやってじゃれて遊んでたい。


172 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時50分05秒

「・・・好きやで。」

「ウソだぁ。」

おっなんやそれ。


「じゃあウソ。」

「んぅ〜そんなのヤだぁ。」


お互いの肩にアゴを置いたままの会話が心地いい。
だから今はこのままがいい。


「イヤやったらもっと好きにさせて?」

そやろ?
そうしたら我慢できひんなるかもしれん。

なんだかんだゆうてアタシもそのときを心待ちにしてるから。

身体を起こして至近距離で覗き込んでくる。

173 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時50分47秒

「なにぃな?」

「裕ちゃんもっとマリのこと好きになれるの?」

いやんもぉ!
それやんそれ!

チュッ

「なれるよ。いくらでも好きになれる。」


ん〜かわいい。

ギュッて抱きしめてほお擦り。

腕を突っ張ってアタシとの距離を開けてまた覗き込みにくる。

なんやの?


「ほんとぉ?」

しつこいなぁ。
どうしたんそんな真剣な顔して?


「ほんまやで?さっきより今のほうがマリのこと好きやもん。
 あしたはもっともっと好きかもしれへんで?」

174 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時51分25秒

あ・・・なに想像した?

ポッてピンク色になったほっぺた。
恥ずかしそうにもじもじしながら目を伏せる。

うぅ・・・

アゴをなでてこっちを向かせる。
それでもこちらを見ようとしない。


なぁ・・・これは新しい罠か?

マリがアタシの視線を意識してるのはなんとなくわかる。
だからわざとゆっくりゆっくり近づいてから
下唇で耳をなぞる。

甘いため息を首筋に感じながら・・・

「あともう少しだけ頑張り?
 そしたらもっともっとアタシのこと好きにさしたるわ。」

よぉゆうわって自分で思いながらも
罠しかけんのはアタシのほうがうまいんやからってな。
ただの負けず嫌いやん。


パクッといくのはそう遠くなさそうな気がする。
覚悟しときや。




おわり

175 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時52分37秒
はい更新終了です。

176 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)01時55分28秒
事態がすぐに変化していくからってゆうてたら・・・
安倍さん卒業ですか?

ほんまに落ち着かんなぁ。
177 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月03日(日)02時04分33秒
でも悪いことやないと思うんですがね。
人生終わる寸前まで娘。さんやるって無理やし。
長い目で見るとどっかで線を引いて自分名義の人生やりはじめんとな。
飯田さんも矢口さんもいつかは・・・ね。いやほんまに。
1人の人間として好きやから。

ではまた来々週末に。
178 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月04日(月)00時25分13秒
すごい甘弱いですね、姐さん。
マウスの矢口さん積極的で、罠にひっかかるのも近そう…
179 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時41分39秒
更新します。
180 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時42分18秒

はぁ〜


「お?・・・珍しい。」

なんやねん。
人がため息ついとったらアカンのか?

「幸せ逃げちゃうよ?」

ギロッてにらんでやると逆効果。
自分のセリフがアタシにぐさって刺さったのを確信したのか
心底楽しそうにわらう。

「市井にあたんないでよね。」

「やかましいわ。」


ふとアタシの指に目をやって不思議そうにする。

「あれ?裕ちゃん噛まれたの?」

「そや。」

181 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時43分01秒

へこむわ。
ここ何年か噛まれたことなかったのに。

・・・マリは別として。

「そりゃ年だね。マウスの動きについてけなくなってるんだよ。」

新しい攻撃ポイントを見つけたっちゅう感じでニヤニヤわらう。

くっそぉ〜ムカツク。


「ふ〜ん・・・市井さんは単位が要らんようやね。」

「いえいえそんなことは・・・
 中澤先生の単位をいただかないと計算が・・・」

急に口調が改まる。へらへら愛想わらい。
ポケットに入ってた手もひざの上にきちっと置かれてた。

なにをいまさら人を先生扱いするかねぇ。


「ほなはよレポート出し。」

「え〜無理。まだできてない。」

くっ・・・開き直りやがって。


「アンタほんまに落としたろか?」

「あ〜職権乱用だ!」

「いや当然の報いやろ?」

冷たい声で言い放つ。

ブーブーゆうてる紗耶香に背を向けてこっそりわらう。
かわいい奴やなぁなんて思いながら。



トントン

182 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時43分32秒

「開いてるよ〜!」

「ってこら。なんで紗耶香が答えんねん。」


カチャッ


「なぁに?楽しそうだね?カオも入れてよ。」

「ヤダ。」

「ひど〜い!裕ちゃぁん紗耶香がいじめるぅ・・・て・・・あれ?」


圭織がまじまじと覗き込んでくる。

え?
なんや?

「裕ちゃん痩せた?」

「いや・・・わからん。どうかした?」

「カオもわかんない。」


なんじゃそりゃ。

183 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時44分08秒

「そういやノンちゃん元気か?」

「そうそう。つれて来たんだよ今日。」

「ほんと?市井も一回みたいと思ってたんだよね。」

圭織がうれしそうな顔で白衣のポケットをみせると
そこにはちょこんとちっちゃくて黒いマウスが顔を出してた。


うっ・・・かわいい。
いやっ・・・でもマリのほうが・・・う〜んでもかわいい。

紗耶香が指を鼻先に近づけると目を閉じて匂いをかぐ。

その仕草がマリとそっくりや。
マリやったらこのあとチュウしてくれるんよなぁ。


不思議そうな圭織の視線に気付く。

まずいなぁ。
口元緩みまくってたんやろうか?


184 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時44分43秒

「いやぁしかしはじめは冗談かと思ったわ。」

動物遺伝子学専攻やったのに植物へ移るってなぁ。

「うん。でもカオには無理だったよ。
 はじめての胚移植実験でノンちゃんに出会っちゃったから。」

ね?って圭織がノンちゃんにわらいかけると
ノンちゃんはヒゲをヒクヒク動かしたあと白衣をよじ登り始めた。

そうやったな。
20個の卵子を仮母に移植してたった1匹だけ無事に生まれてきた子。
『どうしても殺せない。殺したくない。』って圭織が泣いた。

「それまでも平気だったわけじゃないけど。
 他の子もノンちゃんと同じだと思っちゃうと続けられなくなったの。」
 
登ってきたノンちゃんを手のひらに乗っけて指で頭をなでる。

圭織は優しい子やな・・・・・・アタシと違って。

「お前のせいでうちの研究室は惜しい人をなくしたよ。」

紗耶香がノンちゃんを眺めながらつぶやく。

「ひどっ!カオ死んでないもん!」

185 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時45分18秒

いやほんまに。
論理的ではないにしてもその直感はなぁ・・・
あんときゃ正直へこんだわ。

思い出して思わずうつむいたときふと指の絆創膏が目に入った。


あ・・・これってもしかしてそうなんかな?
あの子がマリの同腹の兄弟やったからか?

そっか。
アタシにも少しだけあるんやなぁ圭織と似たような気持ち。



「裕ちゃん。ほらノンちゃんだよ。久しぶりだね?」

視線を戻すと目の前にど〜んと黒い毛玉。
思わず差し出したアタシの手のひらに収まる。
傷つけるつもりがないとめったに噛んでくることはない。
噛まれるのはそれだけの危機感を与えるからやな。

手の中であちこちをクンクンかいでる。
マリの匂いが残ってるのかもな。

なぁそこのアンタ。
アタシは圭織みたいに優しくないんやで?
安心してていいの?

この手は・・・

186 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時46分00秒

「大丈夫。ノンちゃんは裕ちゃんが大好きだよ?」


え?

圭織はこっちみてわらってた。


「あぁもぉ・・・どっちが年上なんだかねぇ?」

「うっさいなぁ!アンタははよかえってレポート仕上げぇや!」

「はいはいわかりましたよ中澤先生。じゃね圭織。」

紗耶香は圭織の横をすり抜けるとき手を伸ばして
自分より背の高い圭織の頭をぽんぽんてしてからドアから出て行った。


相変わらずやなぁアイツは。
口が悪いくせに憎めへん。


・・・・・・

「で?」

今日はなんや?
圭織にとったらここはもう元いた研究室なわけやし
何か用事できたんやろ?


「ちょっといいかな?」

「かまわんよ。とりあえず座って。」

187 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時46分32秒

ん〜なんか久しぶりな感じがする。
むかしはここにいるのが普通やったのになぁ。

ミーティング用のテーブルにあったお菓子を勧めようとすると
ノンちゃんがアタシの手からダイブ。

「おぁっ!」

テーブルへ着地。
そのままお菓子へ直行。


「ダ〜メ!ノンちゃん1つだけだよ?」


・・・甘っ。
全然止められてへんやん。

うちのマリなんか

・・・・・・

やっぱり同じ様なもんか。
食べもんはきっぱりアカンっていえるけどなぁ・・・


めっちゃ真剣な顔でプリッツの先っぽから
カリカリかじりだすノンちゃんを笑顔で見守る圭織。

そこだけで幸せな空間が出来上がってる。

ふと圭織の表情が曇る。

「なんかさぁノンちゃん食べ過ぎちゃうの。寂しいのかなぁ。
 カオいっつも一緒にいてあげらんないからね。」


あぁそうやなぁ。
マリがあんだけアタシに甘えるのもそのせいやな。

188 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時47分16秒

「それで?どうすんの?」

解決策があるんならアタシもしりたい。


「もう一匹いいかな?遺伝子触ってなくてノンちゃんと同じくらいの子。」

あぁなるほどね。
ほんまはほいほい持ち出したらアカンねんけど・・・
それがわかってるからアタシにいいに来るんやんな?

ちょっとかたい表情の圭織をみればわかる。

・・・・・・

しゃあないなぁ。


「いることはいるよ。そやなぁノンちゃん黒いし今度は白い子がいい?」

圭織がうれしそうにうなずく。

「それと女の子のほうがいいね。仲良くしてくれそうだし。」


うんまぁね。
オスやと相性悪かったら死ぬまでケンカするしな。

それに・・・

「子供もできひんしな。」

189 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時47分58秒

圭織がピシッて固まる。

え?
何かおかしいことゆうたかアタシ?

「どうしたん?」

「あ・・・いや・・・なんか考えてなかった。
 そっか男の子とじゃ子供できちゃうかもしれないもんね。」


・・・そんなもんか?
アタシやったらオスなんかはじめっから却下やで。
マリに乗っかろうとしてる姿なんかみかけた日にゃあ・・・その場で。

お亡くなりになってもらうわ。


「あぁ〜ほな同じくらいの子探しとくわ。」

「やった!ありがと裕ちゃん。
 よかったねぇノンちゃん。お友達できるよ?」

まだ必死にかじってるノンちゃんに話しかけながらニコニコ。

ピピピッピピピッピピピッピピピッ

ん?
圭織のタイマーか?

「あっ時間だ。帰んなきゃ。ノンちゃん行くよ?」

呼びかけられたノンちゃんが名残惜しそうにプリッツの箱を振り返る。

190 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時48分37秒

「裕ちゃんもう一本もらうね?」

「ええよ。」

「ノンちゃ〜ん。これポッケの中で食べようねぇ。」

ダッシュで圭織に飛びついてするんとポケットに滑り込んで
顔を出しくれくれって前足を伸ばしてる。

「はいどうぞ。ノンちゃんは欲張りさんでちゅねぇ。」

しかし甘甘やな。
大丈夫か圭織?

「じゃあね裕ちゃん。もらっていい子決まったら電話ちょうだい?」

「わかった。じゃあな。」

191 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時49分23秒

圭織が出て行ったドアをみながら考える。
もうそろそろ実験を始めなあかんのに。

もう一匹ねぇ・・・
でもマリは普通の子じゃないからなぁ。
比べることでマリがそのことに気付いたらどうなるかもわからへんし。

とかゆうのは結局いいわけ。
圭織とアタシの違いには気付いてしまった。

もう一匹なんて考えはじめっからなかった。
アタシがマリの寂しさを紛らわしてやるにはどうしたらいいか。
それしか考えてなかった。

要するに・・・少なくとも・・・
圭織みたいに母親的な感情でマリをみてるんじゃないってことやな。


でもそれってアタシが悪いんちゃうやろ?
マリのせいやん。

マリが誘ってくるから・・・





おわり

192 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時50分19秒
はい更新終了です。

休みだったもんでちょっと長めに。
193 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時54分20秒
私事ですが休みが今日で終わるんです。
はぁ〜短かった。
休み中毎日1日12時間以上寝てるから余計に。

うっし!明日っから気ぃ張っていこ!

194 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月17日(日)14時55分18秒

というわけでまた来々週末あたりに。
195 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月17日(日)17時06分12秒
ののとかお・・・親子みたいで可愛すぎ〜。
裕ちゃんはやせちゃったんですか・・・なぜですかね?(W

来々週の更新を楽しみに待っております。
ちぃさんの優しい作品大好きです。
196 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時39分23秒
更新します。
197 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時40分06秒

最近ずっと早く帰ろう・・・そう思って
できるだけ急いで実験を片付けてきた。

それがきょうは思うように行かんで・・・
なんとなく。そうただなんとなく帰りづらい。
いつもやったら鼻歌まじりで運転してるのにそんな気もおこらん。

血で汚れた手をなんども洗った。
それもなんとなく。

アタシの手は圭織の手とは違う。命を奪うことを止めてない。

マリに出会ったあとも。
マリの親であろうと兄弟であろうと。

気付いてるやろうか?

気付いてるか・・・めちゃめちゃ鼻ええもんな。


圭織がゆうてた。
ノンちゃんはアタシのことが好きやって。
血の匂いのしみこんだアタシのことが。

マリも好きやってゆう。

ほんまやろうか?
ほんまは他の誰かでもええんちゃうん?
他の誰かでも寂しさは緩和できる・・・
他の誰かのほうがうまく身体の熱だって・・・な?
嫌やってゆうても奪ってくれるかもしれんやん。

・・・・・・


はぁ〜
なにうだうだ考えてんねやろ。

198 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時41分14秒


あっ・・・いつの間にか着いてる。

怖っ!

運転中の記憶がないわ。
いつも通る道とはいえ気ぃつけなアカンなぁ。



車を駐車場に止めて重い足取りで家に向かう。

遅なったしもう寝てるかな?
寝てたらいいなぁ・・・

ってアカンやん!
寝てたらアカンわ!

きょう夢ん中の日ちゃうん?
うぁ〜ヤバイ・・・愚痴られる。

え〜っと鍵カギどこいった。
あった。

ガチャガチャ


199 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時41分47秒

カチャッ

「ただいまぁ・・・」


靴を脱いで寝室に直行。
そっとのぞく。

やっぱり。

すでに枕の横のクッションの上に茶色い毛玉。
足音がせんようにゆっくり近づいてみる。

ちっちゃい身体を丸めて・・・

ん?
なにを抱えてんの?


!!!

200 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時42分21秒

・・・・・・

なんやこれ?
どうしたらいい?
こんなことされたらアタシ・・・

めちゃめちゃご機嫌になってしまうで?


「マリさんもうちょっと待ってて?すぐそっち行くから。」

指で頭をちょんちょんってすると
目を閉じたまま頭をふと上げてクンクンってしてから
またくたって横になってしまう。

うぁ・・・はぁ〜もぉ・・・


冷蔵庫をあさって食べるものをレンジでチンする。

この間が待てへん。
先に顔洗ってこかな。

すっごい急いでる自分に気がついて苦笑い。
家の中で小走りっていままでしたことないわ。

アホやわアタシ。
でもしゃあないわなぁ。

201 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時43分19秒

ちっちゃい身体で抱えてたもの。
あれはアタシの香水のビン。

マリは1人やから寂しいだけじゃないんやんな?
アタシがおらんから寂しい・・・そうゆうことやんな?

目の前の鏡には自分の緩んだ顔。

「アホッ!」

自分で罵ったところで不機嫌な顔に変わることもなく。

はぁ〜

こんなんしてんと化粧おとそ。


202 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時43分56秒

ピーッピーッピーッ

おっ暖まった。
ジャストタイミングやね。

タオルを首にかけながらキッチンに戻って晩ご飯。

シャワーどうしよっかなぁ?
服の匂いをクンクンかいでみるとそう汗臭くもない。

でもあの子のほうが鼻ええしなぁ。
・・・ちょっと遅くなるけどやっぱり浴びよう。

そうや。
寝る前もう一回香水つけなおそ。

マリはあの匂い好きなんかなぁ?





おわり

203 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時45分31秒
はい更新終わりです。

204 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時54分00秒
休み明け死ぬかと思いました。
書き物の提出があるなら休み前に教えるのが筋やろ。
間に合ったからいいんですけど。

あぁ・・・ここで愚痴って申し訳ないです。
205 名前:ちぃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時54分48秒
ではまた来々週末に。
206 名前:つかさ 投稿日:2003年08月31日(日)00時37分27秒
夢の中で何するんだろ・・・・(ニヤリ)

な〜んか二週間が長くて待ち遠しくて仕方ないっす。
もう夏も終わりますね〜。
時間たつの早いな・・・・・。
207 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:30
更新します。
208 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:31

なにもないだだっ広いところにぽつんと座り込んでる。

柔らかいさわり心地の床。

手でなでてみてると視界のかなり端っこにコロコロ転がって
その感触を全身で存分に堪能してるちびっ子を発見。

発情期でない夢の中のマリはなんてゆうか・・・
マウスのときとほとんど変わらん動きやな。

ははは
気持ちいいんかわからんけど満足げに口元がゆるんでるであれ。

ふと目を閉じてあたりの空気の匂いをかぐ仕草。
ぼんやり眺めてると目を開けたマリとバチッと目が合った。


「裕ちゃん!来てるんだったら教えてよぉ!」

勢いよく走ってきて勝手に人の膝の上にあがりこむ。

マリがアタシの顔をペタペタ。
ほっぺたに鼻先をツンツン。

こんにちわのご挨拶やな。

満足したのかそのまま抱きついてくる。

209 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:31

ふぅ〜


なんのため息?


「あ〜裕ちゃんの匂いだ。」


あぁ付け直したしな。

「いいやろ?」

「うん。好き。」


むぅいかんニヤけてしまう。

あ・・・ちょっとそんな見んといて。
にしても近くないか?

「裕ちゃんは?」

ん?
マリの匂いか?

210 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:32

アゴに手を添えて動けんようにして・・・

「なぁに?」

「じっとして。」

「ん。」

律儀にカチンって固まるマリ。
クンクンするとくすぐったいのか首をすくめそうになるのを耐えてる。

「う〜ん・・・匂いせぇへん。」

「ウソだぁ。」

「ウソちゃうって。」

あの匂いがない。
クラクラするような甘い匂いが。


「・・・・・・」

あっなに泣きそうになってんねんな。

211 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:32

泣かんといてってほっぺたをなでなでする。

「だってなぁマリちっちゃいやん?
 いまこうやってしゃべってても身体はマウスさんやろ?」

違う?


「そうだけど・・・でもさぁ・・・」

うつむいてごにょごにょ文句をゆう
その頭にアゴを置く。

「・・・キレイに毛づくろいしてるのに・・・
 おヒゲだってお腹だってしっぽだって・・・」

うぅ・・・
抱きつぶしていいかアンタ?

そんなへこまんでもいいやん。


「人のときの匂いは好きやで?」

「え?」

212 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:33

おぉ?
固まった。


「どうしたん?」

「・・・裕ちゃんはあの匂い嫌いなんじゃないの?」

「なんでや?マリは嫌いなん?」


アゴをどけると不安げな目でみあげてくる。

「マリは好きじゃない。むずむずするもん。」

そうかぁ。
でもほんまは逆なんちゃう?
むずむずするから匂いが変わるんやろ?


「裕ちゃんほんとはあの匂い嫌いなんでしょ?だからマリのこと・・・」

あぁもぉ・・・

213 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:34

ギュッ

「好きやゆうてるやん。」

「だって・・・」

やかましい口やなぁ。

唇でふさいでしまうとビックリして見開いた目が
恥ずかしそうにゆっくり閉じられる。

怖がらせんように頭や背中をなでなでしながら顔中にキスを落とす。
首にからみつくマリの腕にもすこし寄り道をしながら。

「ゅぅちゃ・・・」

こぼれた声。
誘うように半開きになってる唇。

思わずじゅるってよだれが出そうになる。
・・・もうそろそろかなぁアタシも。

唇を重ね舌を滑り込ませる。

正常な欲求やろ?

214 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:34

おずおずと絡んでくる舌を受け止め・・・焦れったくなって意地悪する。
腕の中で刺激に震える身体が心をくすぐる。

舌や唇の触れる箇所から解けてしまうんちゃうかって思う。
でも全然たりん気がして深く深く。

ふと目を開けるとピンク色のほっぺた。
切なげにしかめられた眉。
乱れた息。

なんでこの子はここまでアタシを煽ってくるんやろう?

ゆっくりと唇を離すとズズズッてアタシの身体をずり落ちていく。
アタシ自身の息も少し整うまでに時間がかかる。

おでこをコツンてあてる。

「・・・嫌いなわけないやろ・・・アホ。」

ずり落ちたマリを抱っこしなおすと
ほっぺたをギューってくっつけてくる。

「・・・とろとろに混ざっちゃえばよかったのに。」

215 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:35

はぁ?

「・・・・・・喰うぞ。そんなかわいいことゆうヤツは踊り喰いや。」

「ヤぁダよ。」

こらっ耳ひっぱるなって。

「マリなんか食べてもおいしくないもん。」

「そうかなぁ?」

身体を少し離して覗き込む。

「なに?」

チュッ

「味見だけでもけっこう・・・な?」


ポスッ

お?
どした?

頭をぐいぐい肩にすり寄せてくる。

「バぁヵ・・・」

216 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:37

うあぁ・・・・・・
どうしよ?

いやぁでももったいないよなぁ。
どうせやったら夢の中やなくて・・・

しまった・・・しまったぞ。
我慢しなアカンか。

アホやんアタシ。


「ううぅ・・・」

「どうしたの?」

そんな目でみるなっちゅうねん人が我慢してんのに。
よけいに欲しくなるやん。

あれ?どした?

「なんでにらむの?怖いよぉ。」

あぁ怖かったんか。
そんな怯えんといて。

頼むから逃げんといてな。
いま逃げられたらパチンて弾ける。

217 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:38

不安げに揺れる目に苦笑する。

「・・・大丈夫や。」

いまのとこな。


ふぅ〜

とりあえず落ち着け自分。


顔色を伺いながらそろそろと
もたれて来たマリのうなじを軽く揉みほぐす。

どうも触っていたい気持ちだけは止められんらしい。


「あ・・・気持ちいい。」

「んじゃしばらくしといたろ。」

「ん。」

・・・・・・

218 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:39


あっ顔みえへんがな。
え〜っと・・・

マリをうなじに添えた手のほうにもたれさせる。


おぉ?目ぇトローンってなってんで?
口も半開きやし・・・しかもちょっとわらってるやろ?


うがぁ

逆効果や。
やっぱり触らんほうがよかった。


「裕ちゃん・・・」

「は?!なに?!」

なんでこんな焦ってんのアタシ。

なんやその目。
止めてや誘わんといてやアタシ夢ん中でやんのは・・・

219 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:40

「手。」

へ?

あぁ止まってるってか?
なんやなもぉビックリさせんなや。


再開すると満足げな顔のわがままマウス。
そのままうれしそうに見上げてくる。


ふ〜ん。発情してへんからそっちに流れへんのか。

ちょぉ待って?
てことは・・・・・・アタシ発情中か?

ぺたぺた楽しそうに人のおでこを触ってくる悩みの種。
それを文字通り抱えてるくせに口元はゆるんでた。





おわり

220 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:46
はい更新終了です。

様子が変わっててビックリですがここを管理されてる方には
勝手にお世話になりっぱなしですいません。
ありがとうございます。
221 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:49
ネタバレしないようにするのはあきらめます。
2週間の自分のネタ話で埋めるなんて手もありますが
それではなんのことやらわからんスレになりそうなんで。
222 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/13(土) 20:52
ではまた来々週末に。
223 名前:名無し 投稿日:2003/09/14(日) 10:03
思わず、
>なんのことやらわからんスレになりそうなんで
に大爆笑しました。

裕ちゃん、そろそろやばそう。
続き楽しみです。
224 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:54
今週おもったより時間があったので更新しときます。
225 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:54


テーブルをはさんだ向こうにブーたれたマリさん。
その原因は・・・

ケージに入った白い子マウス。


「なぁマリ?そんなとこおらんと・・・」

サッと両手で耳をふさいで『聞く耳持ちません』ってジェスチャー。


いやアタシだってなぁせっかく今日みたいな日に・・・
いつでもパクッていけるなんて思ってたのに
なんでこうじゃまが入るかなぁ。

昨日やで?
アタシ昨日から我慢してんねんで?
しっててやるかいなこんなこと。

226 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:55

帰ってきてからずっとそんなんやん。
飯もビールもまずかったっちゅうねん。

あぁ〜イライラする。
もぉええ。言い訳なんかするかっちゅうの。


勢いよく立ち上がるとマリがビクッてする。

ふん


「風呂はいってくる。」


あっそや。

「人くるからちょっと片付けといて。」

「ヒト?」

「ええから片付けとき。」

えぇ〜って声が聞こえたけど無視。
だいたいどっちが長く家にいると思ってんねんな。

227 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:56
−−−−−−−−−−−−−−−


とかなんとかいいながらちょっと短めのバスタイム。
もうすぐ来るかもしれんしとか言い訳しながら
やっぱりちっこいのが気になるからかも。


「あ・・・」

開けっ放しのドアの向こうにケージのフタを開けて覗き込んでる姿。
子マウスのほうも後ろ足で立ち上がってじーっとみてるっぽい。

「ねぇどこから来たの?マリと住むの?」

ん?って首をかしげる子マウスにデレデレになってる。


コンコン

リビングのドアをたたくと
パッて振り返ってしまったって顔する。

228 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:56

「かわいいやろ?」

「・・・・・・」

素直やないなぁ。


「でもうちで飼うんちゃうからな。」

「えぇ〜」

ふ〜ん。
そんな残念そうな声だすんや?

それはそれでなんかムカつく。


「あぁ〜ほらマリもお風呂はいっておいで。」

「うん。またあとでね。」

子マウスを指でなでたあと名残惜しそうにケージのフタを閉める。

えらい気に入ったみたいやな。

229 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:57

うぉ?

するっと脇を通りぬけると思いきや
グイッと首にかけたタオルを引っ張られる。


チュッ

!!!!

「ダメだよ?」

え?どうゆう意味?

当人は機嫌よさげにわらいながら行ってしまう。

なんやの?
さっきまで不機嫌やったくせに。

しかし・・・全然片付いてへんな。
人がおらんなったらすぐにケージ開けたんちゃうか?

「なぁそやろ?」

子マウスにふってみても答えは返ってこうへんねんけどな。
もうじゃまくさいしそのままにしとこ。

230 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:57

ピンポーン

おぅっ来たな。

「はいよぉ。」

カチャ

「こんばんわ。おみやげ持って来たよ。」

手にはワイン。

「おぉ気ぃきくやん。まぁ入って。」

「おじゃましまぁす。」


え〜っとチーズあったなぁ。
マリのやけどええか。

「約束の子はテーブルの上や。
 適当に座っといてグラスとってくる。」

「ラジャ。」

わくわくした顔での敬礼。
こうゆうとこかわいいよなぁ。

231 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:58

グラスを持ってリビングに戻ると
ケージのフタを開けて覗き込んでる姿。

マリと一緒やんか。


「ノンちゃん出ておいで。お友達だよ?」

ひょこっとカバンから顔を出す。

・・・アンタら手品師か?

圭織の身体を駆け上がってテーブルにたどり着く。


「ねぇ裕ちゃん。あいぼん出していい?」

あいぼん?
この子の名前?

「ええよ。」

232 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:58

テーブルの上で初顔合わせ。

クンクン鼻をつき合わせて相手を確認。
おっノンちゃんのほうが力強いな。

押されてたあいぼんがコテンッてこけた。
起き上がろうとジタバタしてるあいぼんをよそに
ノンちゃんはボディチェック。

「・・・なんかえっちぃぞノンちゃん。」

あいぼんがあわててペッペッてけって起き上がる。
キィッて威嚇。かまわずノンちゃんがタックルをかます。

「ははは。そんなにコロコロ転がってるとバターになるで。」

「なにそれ。」

そんなこといいながら圭織もわらってる。


バタンッ

ん?

233 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:59

「裕ちゃぁ〜ん。パジャマ忘れちゃ・・・・・・?」

おぉバスタオルか?
それもなかなか・・・

ってちゃうがな。


圭織が固まってる。
ころがってたオセロマウスも。

ポタポタ髪の毛から雫が落ちる。
微妙な間合いの沈黙。


「・・・このバカぁ!浮気者!!」

「あっこら!なにゆうねん・・・」

「しかもなんだよぉ〜それマリのチーズじゃん。最悪!!」

ガッてチーズの袋を奪って寝室に逃げ込まれた。


234 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 22:59

・・・・・・

残りの視線が痛い。


「あ・・・あのさぁ裕ちゃん?」

「なんや?」

「ずいぶんおっきいね。」


え?

「どうゆうこと?」

マリちっちゃいやん。


「・・・裕ちゃんにはいまの子どうみえるの?」


質問に質問で答えるんかい?

235 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:00

「いまのマリは人やろ?」

「そう。・・・じゃノンちゃんとあいぼんは?」




「マウスにみえる。」

「そっか。圭織とちょっと違うね。」

え?
なに納得してんの?
全然意味わからんで。

あ・・・まさか・・・

「なぁ圭織がマウス殺せんようなったんって・・・」

圭織が力なくわらう。
それは肯定の意味なんやろうか?

236 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:00

「はじめてノンちゃんをみたときちいさな子供に見えたの。
 それからだよ。圭織には他の子もちいさな人にみえるようになったの。」

なるほど。
殺せんわけやな。


ん?

「じゃなんでマリが人じゃないってわかんの?」

おおきいんやったら人と見分けつかへんやん。

「おおきさ一緒でもイヌとネコの見分けつくでしょ?」

そんなもんか?


・・・・・・・そんなもんかもな。

「やっぱり圭織おかしいのかなぁ。」

「どうかなぁ?」

「どうかなぁって・・・」

237 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:01

そんな不安そうな顔しなさんな。

「考えてみぃや。物を他人と全く同じにみるのって無理やろ。
 同じようでも少しずつ違った世界をみてるわけや。」

映像を拾ってくる目もそれを処理する脳も人それぞれ。
全く同じってのは可能性としてかなり低い。

「確かにそうだね。」

でも基準となるのは大多数の人がみてるのに近い世界。
ズレがあればあるほど壁を感じるのかもしれん。

まして人の多く・・・
多数派ほど自分のみてる世界が唯一のものと思い込むから
個性が強いほど・・・感性が豊かなほど孤独なんかもな。

圭織の頭をぽんぽんってする。

「おかしいとかじゃないねん。それが圭織なんや。」

圭織がわらう。
今度はやわらかく。

238 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:02

そやろ?
圭織が圭織じゃないと
ノンちゃんもあいぼんもここにいいひんって。

「残念だなぁノンちゃんもあいぼんもこんなにかわいいのに。」

ねぇ?ってわらいかけると4つのつぶらな瞳が圭織をみつめる。
この子らのちっちゃい目はどんな世界をみてるんやろうなぁ。


「そのままでもかわいいでアンタら。」

圭織も含めて3人ともな。


「そんなこというと・・・・・・」

圭織の視線がアタシの背後を差す。


振り返ると寝室のドアがパタンと閉まる。

239 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:02

え?

・・・・・・こわっ!!


「マリ?」

・・・・・・

「あのさ・・・圭織たちかえるよ。」

「え?話しあるってゆうてたやん。」

「なんかもうスッキリしちゃったし。いいよ。」

「そうなん?」


ってことはこの状況でアタシを置き去り?


「ワインは?」

「また今度まで置いといてよ。」

今度っていつやねん。

240 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:03

「ノンちゃんもあいぼんもカバンの中で我慢してね。」

もう仲良くなったらしい。
なれた感じでカバンによじ登るノンちゃん。
置いていかれんように頑張ってついていくあいぼん。

かえるの?ほんまに?

はぁ〜

「玄関まで送るわ。」



「今日はごめんね?」

「なんであやまんねんな。しゃあないやん。」

植物に移った圭織が子マウス持ってうろうろしてたら目立つしな。


「それと今度おいしいチーズ持ってくるっていっといて?」

圭織の視線が部屋の奥をみてる。
もしかしたらまたちょっとドアが開いてるんかもしれん。

「じゃまたね。」

「うん。また。」

241 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:03

玄関のドアが閉まり嫌でも問題と向き合わされる。

・・・・・・

さぁて・・・どうしよ?



おわり

242 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:07
はい更新終了です。

いつもよりなぜか時間があったのでのせてみました。
243 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:11
そのかわり来週が死にそうです。
祝日ってなんなんやろう。
244 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/20(土) 23:15
だいたいの人が休日のときふっつうに
働いてるといつもの倍疲れるのはなんでやろう?

はぁ〜

ではまた来々週末に。
245 名前:ミニマム矢口。 投稿日:2003/09/21(日) 02:17
あいのの、現役リダーとご帰還ですなぁ。
元ミニ。リダーやぐたん、子分の前で みぃだぁらぁ♪
ご機嫌斜め45度を直せるか、我らが本家リダーゆゆたん。
おらもケイジに、はいりてぇ〜
来週も更新楽しみなりよ。がんばれ おしごと
246 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/21(日) 03:34
ちょっとごめん。
247 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/21(日) 03:37
>>ミニマム矢口。さん
ごめん。やっぱりネタバレ防止しときたいかも。
意図的に名前を抜いて書いたところとかあるんでね。

248 名前:ちぃ 投稿日:2003/09/21(日) 03:38
わがままゆうてすいません。
249 名前:ミニマム矢口。 投稿日:2003/09/25(木) 22:21
作者様、ごめんなさいです。スミマセンでした。
250 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:09
更新します。
251 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:10


ガチャガチャ

むっ?
なにぃ?

寝室のドアが開かん。
鍵なんかつけてへんねんし
これって向こうから一生懸命押さえてんねやろ?

なにしとるかなぁほんまに。

少し下がってドアと距離をとる。

なめんなよ?


「うりゃっ!」

ドカッ

「イタッ!」

ん?

ケリ開けたドアをさらに開けるとフワッと甘い匂い。

252 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:10

マリがてろんって転がってた。

って・・・なんでバスタオルのまま?
しかもペロンってめくれてるし。

ん〜もうちょっとやのに。

思わずしゃがんで手でバスタオルを・・・

ペシッ

って!
なんやねん。
そんな虫を払うみたいにはたかんでもええやん。

身体を起こしてめくれてたところを直してしまう。

・・・・・・

あの・・・やっぱり怒ってはる?

でも説明聞かんヤツが悪いんちゃうの?
アタシ悪くないもん。

253 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:11


あれ?
髪ぬれたままやん。

「乾かさな風邪ひくで?」

キロッとにらまれる。


うっ・・・

「裕ちゃんが乾かしたろ。な?」

「ヤダ。」


即答&後ずさり。

傷つくなぁ。

「んなええわ。タオルそこにあるし自分でしぃ。」


わしゃわしゃ髪をタオルで拭いてる拗ねたマウスさん。

目が赤い。
唇も噛んでる。
・・・・・・鼻もスンスンしはじめた。

「・・・っ・・・っく・・・」

そのままタオルで顔を覆うようにして
身体をちっちゃくちっちゃく縮めて震えてる。


「マリ・・・」

思わず手を伸ばそうとすると気配を感じてかまた後ずさる。



なんでやねん。
なんで逃げんの?

身体をめいっぱい伸ばしてタオルをつかむ。
グイッと引っ張ると怯えた目がみえた。
とっさに後ろに下がろうとする身体。

254 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:12

逃げるものを追う。

それは本能。


逃げようとするマリの足を捕まえる。

「ヤっ!」

ジタバタするマリの腰に手をついて体重をのっけ動けんようにする。
そのまま肩で床に押さえつけようとすると腕で突っ張られる。

ふと絡んだ視線。


・・・・・・ふはは。

その必死な目にわらってしまう。


と・・・急にやんでしまう抵抗。


255 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:12

肩に添えられるだけになったマリの右手をとって

チュッ

指先に。

チュッ

ヒジの内側に。


ぼーっとアタシをみてるマリ。


「・・・・・・捕まえた。」


ビクッ

お?

思い出したかのように身体を硬くする。


「・・・気持ち悪い。」

256 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:13

へ?

「しんどいの?」

「ん。」

ぎゅっと握られた左手がみぞおちあたりを押さえてる。
辛そうにしかめられた眉。

大丈夫?

「ベットいこか?ほらちゃんとくっついて。」

「・・・うん。」

よっこいしょ。


あ・・・ちょっと冷えてる。
ほんまに風邪ひくでこの子。

257 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:14

布団をめくってベットの中に転がす。

「・・・裕ちゃんは?」

「あぁ。」

なんやねんな。
さっきあんな逃げたくせに。

「でもその前にこれ片付けて来ななぁ。」

壁にたたきつけられずり落ちたと思われるチーズの袋。
それをみたマリは布団の中にもぐりこんでしまう。

失敗したかな。

リビングには空のグラスに封切られていないワイン。
これも片付けとくか。


258 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:16
はいすいませんここで切っときます。
一気にいきたかったんですがどうも無理です。
259 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:23
>>ミニマム矢口。さん
あんまり気にせんといてくださいよ。
自分のわがまま聞いてもらってるだけなんですから。
260 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/04(土) 21:24
それではまた来々週末に。
261 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:43
更新します。
262 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:44

「ゆうちゃ〜ん・・・・・・」

寝室のほうから呼ぶ声が聞こえる。

どうしたんや?

片付けたあとあわてて寝室へ戻ると
布団に包まって胸を押さえてるマリ。
目に涙がにじんでる。


なんやなんや?
どうしたらええんや?

布団に入ってマリを抱っこする。
バスタオルをはずして身体を楽にしてから
みぞおちあたりをゆっくりなでてやる。

うわごとのように呼び続けられるアタシの名前。
そんなことされるとアタシまで苦しくなる。


263 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:44

「・・・・・・だよぉ・・・」

ん?

「なんや?」

「・・・他の子に・・・やさしくしちゃヤだ。」


なに?
そうゆうことか。



「それはちょっと無理。
 かわいい子にはやさしいのが裕ちゃんやもん。」

「・・・・・・」

苦しそうな拗ねたような泣きそうな顔。
理由がわかればそれはただアタシの口元をゆるませるだけ。


264 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:45

「ええやんそれぐらい。」

お腹をなでてた手を少し上へ移動させる。

やわらかいなぁここ。
ゆっくり手のひらで肌触りを味わう。

「・・・ぁんっ・・・」

「ゆるしてくれへんの?・・・・・・こんな好きなんマリだけやのに。」

耳元で囁くとマリがピクンッと震えた。
自分の言葉に苦笑してしまう。


「・・・マリ・・・だけ?」

「そ。マリだけ。」

指で胸の先をつんつんすると息をひそめる。
視線を感じたのかアタシを押しのけようとする。

アカンってそうされると・・・

265 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:45

押しのけようとした腕をベットに押し付け
さっき触れてたとこへ舌を這わせる。

「んっ・・・ヤっ・・・」

ぁ・・・かわいい。

潤んだ目で不安そうに眉をひそめてる。
勝手に浅く速くなる呼吸に戸惑いながらも
抵抗することをやめてる。

でもあれやな・・・ちょっと落ち着いてもらわんとな。
そんなカチカチやと感じるもんも感じひんわ。



はぁ〜

とりあえず身体を起こす。

「・・・ぅちゃん?」

「寒い?」

ふるふると首を横に。

んじゃ大丈夫かな。

266 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:46

「ん。」

横に手をついてマリの上に身体を乗り出しても
きょとんとしてる。

・・・まぁわからんわな。
これゆうの嫌やねん。
恥ずかしいやん。

視線を逸らして・・・

「裕ちゃんもぬがしてほしいなぁ・・・て。」

「え?」

え?ってなんやねん。

マリの手をつかんで一緒に1つ目のボタンをはずす。
2つ目のボタンに移るとマリの手は勝手に動き出した。

真剣な顔でボタンをはずすマリのほっぺたをなでると
こっちを見上げてふわってわらった。

よしよし。
いい感じやね。

267 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:46

ボタンが全部はずされるのを待ってから・・・

チュッ

それだけで身体を起こそうと思ってたのに。
下からガバッて抱きつかれて・・・間近に甘えた顔。

「裕ちゃんはぁマリが好き?」

「うん。」

くすぐったそうにわらう。


「ん。」

唇スレスレのところで止めると
下から少しアゴをあげて捕まえに来る。

なんども軽く触れるだけ。
その間にマリの手がそろそろとぬがせてくれる。

268 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:46

「ねぇちょっとだけ離れて?」



少しだけ身体を離すと・・・

おいこら。

もうちょっと丁寧にぬがしてくれてもいいやん。
足で下をぬがすことないんちゃう?

ゆっくり身体を重ねてから
得意げな顔してるマリの鼻をキュッとつまむ。

「お行儀悪い子や。」

それでもうれしそうにわらってる。


首筋に鼻先をうずめる。

「ん〜もぉ。くすぐったいよぉ。」

そんなこといいながらもしっかり首に腕を絡ませてくる。

269 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:47

少し高めの体温。
やわらかい。

・・・甘い匂い。
アタシはたぶんもう狂わされてるんや。

おかしいやん?
この子はいつものあのマウスさんやで?
しっぽとおヒゲが自慢のな。

それがなんでこんな・・・なぁ?

なんか面白くなってきてわらいがこみ上げる。


「なにわらってんのさ。」

「あぁ?別に・・・好きやなぁって。」

・・・・・・反応は?

270 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:47

・・・・・・

ギュッ

「もっともっと好きになってよ。」


それはたぶんはじめて聞くマリの大人の声。
背中がゾクゾクした。

ノドの渇きに似た感覚に思わず唇をなめる。
それくらいで治まるわけもないとしってはいるけど。

身体を少しひいて視線をからませながらほっぺたをなでる。

「じゃあ・・・なにされても我慢しぃや。」

「なに・・・ひゃ・・・」

あ。やっぱりいいなぁその顔。

手の中で妖しく形を変える胸。
それに妙に興奮させられてる自分。

自覚はあってもどうしようもない。

271 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:48

「ふぅ・・・んぅ・・・やっ・・・」

次第に乱れていくマリの呼吸。漏れる声。
それを煽るように上気した肌に舌を・・・

勝手に動く身体をもてあますように
アタシの腕をギュッてする。

だんだん強くなるその力に痛みを感じたときふと顔を上げた。



トローンとした・・・でも涙のうかんだ目でみつめられる。
ものいいたげなツヤツヤの唇。

吐息が熱い。

「・・・・・・」

う・・・目で訴えんなちゅうの。
無視したろ。

つぅっとお腹に手を滑らせるとふひゅって変わった息をはく。
腕を握る手の力が心なしか強くなる。
眉が下がって泣きそうな顔。

272 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:48

いかん。
意地悪したくなる。


「どした?お腹カチカチやで?」

口の端っこが上がってる自覚がある。


「んんんぅ・・・」

しかめられる眉。

恥ずかしいのか怒ってんのかどっちやろ?


ほぐすようにお腹をなでると
はぁ・・・って息を逃がしながら何かを我慢するように目を細めるマリ。
そのノドに軽く歯を立てる。

「やっ・・・ねぇやめてよ・・・こわいよぉ・・・」

はい?

身体を起こすとマリが泣いてた。

「なに?」

273 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:49

「・・・氷みたいに・・・なくなっちゃうよぉ・・・」


氷?
マリの大好きなあの冷たいヤツ?

・・・



そっかそっか。

「大丈夫やで?」

唇で涙をぬぐう。

「ほんと?」


ははは・・・

答えることをせずにその唇をなめる。



泣いたとき特有の息づかいがおさまると
唇の間に遠慮がちにピンク色の舌が顔をだす。

274 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:49

誘われるがままに口付けながら・・・


「んっ!」

ビクッとはねる身体。
指先に濡れた感触。

自分の身体の重みでマリの動きを押さえ込む。
さらに逃げようとする。

だから

「・・・我慢しぃゆうたやろ?」

「だって・・・っ・・・んっ・・・」


言い訳しようとするその唇を塞いで指で敏感なところをいじる。

ちいさく波打つように身体全体を震わせる。
あふれ出る声も身体の中に飲み込むように深い深い・・・口付け。

275 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:50

ふと目に入ったマリのキュッと握られた手。
おそらく自分をつなぎとめるために
身体に与えられる刺激に我を失うことを拒むために。

往生際の悪いやっちゃなぁ。
身体はアタシの指を追ってもっともっとってゆうてんのに。


ゆっくりゆっくり指を身体の奥に沈めていく。

「ヤっ!痛いよぉ!」

思いっきり抵抗された。
進めるとその分だけ身体ごとずり上がる。


「我慢しぃゆうてるやん。」

気がつけばベットの端っこ。
部屋の隅に追い詰めてる。

276 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:50

「ほら・・・力抜き?」

首は小さく横に振られる。


中途半端に入った指。
浅い場所を内側からなぞるように動かしてみる。

すでに座った状態でずり上がることができひんらしい。


「痛いか?」

うんって即答。

「痛いだけ?」

うんって即答。

まぁしゃあないなぁやめとこ。


277 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:51

ん〜

内ももをゆっくりなでる。

よくよく考えるとめちゃめちゃやらしい。

涙目のマリ。
開かれた足はそのままで・・・



チュッ

唇に。

チュッ

アゴに。

チュッ

鎖骨に。

胸にはほお擦り。

チュッ

おへそに。

278 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:51

で・・・

ビクッ

痛い?

「ぁんっ・・・なに?・・・やん・・・」


ちゃうか・・・

「気持ちいい?」

ちっちゃくコクンとうなずいたあと
恥ずかしそうに手で顔を覆う。

かわいいなぁ。
ええよ氷みたいに解けてしまい。

「あっあっ・・・っ・・・ッ・・・」

みあげると声を必死に殺してる。
指の隙間から見えるほっぺたは桜色。
腰は妖しく動いて・・・あふれてくる。

「・・・ヤ・・・見ちゃ・・・」

また少し力が入って硬くなったお腹をなでると目を細めて
んって身体をそらした。


279 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:52

「ふぅっ・・・ん・・・いぃ・・・」

舌やと大丈夫なん?

内ももをなでながらこじ入れた舌で中をかき回すと
マリはいやいやって頭を振った。
でもそこはキュッキュッてなってる。

髪をギュッとつかまれても痛みはそれほどなかった。

「んんぅ・・・ヤだぁ・・・ぉかしくなっちゃう・・・」

おかしくなってもええやん。
そうなるようにしてんねんから。

妖しく快楽におぼれる身体。
乱れた苦しそうな呼吸。
押し殺せない甘い声。

アタシ好きやなぁこの子。


「あっあっ・・・あああぁぁっ!」

280 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:52

フラッとマリの身体が倒れてくるのを受け止めてギュッて抱っこ。
座ってるのもなんやし寝っころがす。

まだふぅっふぅって息をしてるマリがかわいくてしょうがない。

「もっかいお風呂はいろな?」

張り付いた前髪を指でとかしてから
熱そうにしてるマリに手のひらで風を送る。

コクンとうなずいて恥ずかしそうにわらう。
そのままアタシの胸のあたりに顔を押し付ける。


うぅぅ・・・

「どうしよ・・・」

「なぁに?」

「・・・めちゃめちゃ好きやわ。」

281 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:53

約束まもらなアカンなぁ。
もっとアタシのこと好きにさしたるなんてゆうてしまったし。

頭をなでるとアゴを少し上げてふにゃっとわらう。

こらアンタ。
覚悟しときやぁ。
京女の情は強いってゆわれてんねんからな。




おわり


282 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 20:56
はい更新終了です。

書いてる自分はかなり怪しい人でした。
手酌で冷酒を飲みながらシジミの佃煮を食べながら・・・
283 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 21:00
ちなみに最後の文章についてだけ。

「強い」と書いて「こわい」と読みます。
硬いとゆういみで炊いたご飯が硬くても
「ご飯がこわい」と使います。
おこわの語源はここにあると勝手に思ってますが。


標準語じゃないですよねこれって?
284 名前:ちぃ 投稿日:2003/10/19(日) 21:01
ではまた来々週末に。
285 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/22(水) 23:49
やっとキタ――って感じですが、
一応相手は鼠だし‥‥いいのか姐さん‥‥
286 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:46
更新します。
287 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:46

「せんせぇこれ終わったら帰ってもいいですかぁ〜?」

「あぁええよ。今日の分のレポートは来週の実験始まる前に提出な。」

「「「「えぇ〜!!」」」」

うっさいなぁ。ええやんか。2週間に一回やろ?
キャッキャいいながら適当にやって後片付けもこっちまかせ。
どうせレポートも真面目にやってる子のやつ写して終わりちゃうん?


まぁ・・・アタシも似たようなことやったけど。



「よぅ下っ端。使われてるねぇ。」

むっ!

コイツはなんでこうかな。


「しゃあないやん。じいちゃん達は休ましたらなアカンねん。」

授業中とつぜん電池切れたみたいに
15分ほど空白を作るようなじいちゃん達に学生実験任せられへんやろ?
考えるだけでおそろしい。学生と教授どっちの面倒もみなアカンなるやんか。

288 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:47

しかしなんやその顔。
余裕かましよってからに。ええ身分やのう。

紗耶香の場合は圭織の机を探ったら昔のレポート出てくんもんなぁ。


「ちったぁ自力でやったらどうや?」

「やってるってば。」

ウソつけ。
話しの飛び方が圭織っぽいもんバレバレや。


はぁ・・・

とりあえず実験を終わらせるために
忙しそうに手を動かしてる背中を眺める。

なんでこんな生意気なヤツに母性本能くすぐられんのかねぇ圭織は。

289 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:47

あっそや。

「紗耶香って研究室の希望変更せえへんの?」

「しないよ。」

そうなん?

「うちでいいの?圭織おらんで?」

「いいの。てか市井のことなめてる?」


なんやいっちょ前のつもりか?


「ほな自分でレポートせぇっちゅうの。」

「・・・・・・うるさい。あっち行け。」

へいへい。
自分から話しかけてきたくせに勝手なヤツや。

290 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:47

ぼぉ〜と黒板のとこから実験室をみわたす。
受験で生物を選択できるせいか理系の割には女の子もいる。
いたるところで弾けるようなわらいが起きてる。

マリが人間やったらこんな感じか?

もうここにいる子らと変わらんぐらいの年齢になったように思う。
かわいいだけじゃなくてなんかこう・・・妙な色気が。
マウスのときはただのちびっ子やけどな。

クリクリした目がものいいたげに細まる瞬間が好きや。
あのちっこい頭にどんな世界がつまってんねやろ。
ここにいる人達とは全く違うはず。
てゆうか人とちゃうしな。


圭織が急に泣いて困ったってゆうてたなぁ紗耶香。

アタシもときどき考える。
あの子はどのくらい生きるやろうって。
マウスの寿命はだいたい2年や。
そんときアタシは・・・一緒に行ってあげられへん。

1人で寂しくないようにいっぱいいっぱい愛をあげよう。

もういらないよぉって逃げまわるマリが思い浮かんでニヤける。

291 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:48

その瞬間はまだ想像でけへん。

できれば立ち直れんくらい傷つきたいと思う。
寂しさに押しつぶされたいとも思う。

それが自分の愛の大きさと考えるのは間違いやってしってはいるけど。




「せんせぇまたねぇ!」

へ?
もうそんな時間か?

早々と実験を終えた学生が手を振りながら帰っていく。


ははは・・・
じいちゃん達と変わらんなぁアタシも。

時計をみると順調に行けばもうそろそろ終わっていいはずの時間。
残ってるのはどっかでつまずいたってことか。


「わからんとこあったら聞いてよ?はよ終わってはよ帰ろ!」


はよ片付けてはよ帰ろうや。
うちのマリさんが待ってんねん。






おわり

292 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:50
はい更新終了です。

ちょっと短めですが・・・はぁ。
疲れた。疲れたよもう。切れそう。
293 名前:从‘ 。‘从 投稿日:从‘ 。‘从
从‘ 。‘从
294 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/01(土) 02:58
はぁぐちぐちすんません。
ではまた来々週末に。
295 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/02(日) 02:05
>>ちぃさん
いつも更新楽しみに待たせていただいてます。
何か不思議な世界に癒されます(w
296 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/14(金) 13:44
めっさスキです
297 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:50
更新します。
298 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:50

ゴリゴリゴリゴリ・・・

なかなか砕けへんなぁこれ。
マリちっこいから丸ごとやったら明らかにとり過ぎやし。
でもたぶん足りてへんと思うねん。
ミネラルとかビタミンとか。

ちゃきちゃき動く身体。
ツヤツヤの毛並み。
ピカピカの歯。

いつまでも元気でいて欲しい。
これは恋心やないね。愛やろ愛。

なにげにけなげやんアタシ。
むふふ。


しかし・・・栄養学とかやってりゃよかった。
なにでどんな栄養が取れるとかわかるし。

サプリメントで済まそうとするのが間違いやろか?


はぁ〜

ぐたっと背もたれに身体を預ける。

299 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:51

コリコリコリコリ・・・

ん?


テーブルの端っこ。
ちっちゃい背中が動いてる。


「マリ?」

耳がピクンって動く。
クイッと振り向いたその手にお米。

あ・・・食事中ね。

覗き込むとおちょこの中のお米はほとんどなくなってる。


「おかわりは?」

無視してしっぽでテーブルを小刻みにたたく。


警戒?威嚇?

なんやの?


300 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:52

カシャーン

なにしやがる!

星くんとこの親父さんよろしくひっくり返されたおちょこ。
ちょっとだけ残ってたお米が乾いた音を立ててビーズのように飛び散る。


沼津産コシヒカリの新米やでそれ。
せっかく好きかなぁって・・・・・・


さらに駄々っ子のように転がってジタバタ。


・・・・・・

かわいいやないの。
でもな・・・


ぐにっ

手のひらでマリの身体を押さえつけてしまう。
噛まれんように動かれんようにきっちりと。

301 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:53

「アカンで?みんな軟らかいお腹から食べるんやから。
 そんな簡単にお腹みせるもんやないの。」


キーキー鳴きながらジタバタ。


苦しいやろ?覚えとき。
ほんまやったら一番嫌がらなアカン姿勢や。



おっ諦めたか。

うっ・・・ちょっと待って。
なんでそんなうるうるした目で・・・

アタシ悪ないで。教育的指導やん。マリのこと思ってやなぁ・・・・・・

そろそろと手をどけても動こうとはせぇへん。
押さえられてた姿勢のままてろんって転がりつつ視線で訴えてくる。

アタシがよっぽどひどいことしたみたいやん。

あぁ〜

「ごめんて。」

頭を指でなでなでするとようやく身体をおこす。
302 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:53

転がってるお米を一粒ひろって・・・

あっこら!
投げんなっちゅうの。


「しゃあないやろ?マリの歯は固いもんかじらんと伸びすぎるんやもん。」

いくら好きやゆうても炊いた白ご飯じゃ軟らかすぎんねん。


テーブルにアゴを置いて視線をあわす。

「明日。明日いっしょに晩ご飯食べよ。な?」


どや?
機嫌直ったか?



って

!!!!!


303 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:54

ガバッ

「やった!!絶対だよ?」

勢いを殺せずにソファに転がる。



・・・・・・

2人ともただただ驚いた。
そう・・・2人とも。



マリがギュってくっついてくる。
答えるように反射的に抱っこ。



まだやろ?

明日のはずや。
夢の中すらすっ飛ばしてる。

304 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:55

先に状況を理解したらしいマリは満足そうに腕の中。
視線が絡むと・・・

ん〜って・・・なんも悩まへんの?

チュッ


その背中の手触りでマリがなにも着てないことを思い出す。

あ〜もう。
風邪ひくやんか。

ソファの下に落ちてしまってたひざ掛けようの毛布でくるむ。

「寒ないか?」

「うん。」


ご機嫌なマリの髪をいじりながらいまいち納得できひん。
今日は違うはずや。



・・・・・・



あれかな?
野生動物を家畜化すると発情期が長く境目もあいまいになるってやつ。

警戒心こそが野生動物の証やと考えると
平気でお腹をみせるマリは飼いならされたってことか?

アタシに。

じわじわと名前を付けがたい感情がわいてくる。
喜びとか幸せとかだけでなく失う怖さも。

あぁなんやろう。
なに泣きそうになってんねやろ。

ははは・・・

305 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:56


「ねぇ・・・」

「なんや?」

見下ろされる感じが新鮮でいい。
締まってるのに柔らかい身体。

さわり心地もいい。


「えっ・・・ちょっと・・・」

マリさん?

押し付けられる身体。
熱っぽい吐息。

鼻腔を満たすあの匂い。

306 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:56

急に逃げ出したくなった。
なにもかもが突然すぎて・・・

身体を起こそうとしても無理な体勢。
さっきのマリみたいに。

ふとちっちゃい手がほっぺたに触れる。
ペタペタ・・・ツンツン・・・

見上げると微かに開いた唇。
マウスのときと違った意味でうるうるした目。

なんやそっちも余裕ないやん。


はぁ
なんか落ち着いた。


307 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:57

「なぁ・・・なんでマリからせぇへんの?」


少しアゴを上げて誘ってみると
マリのノドがコクンと音を立てたような気がした。

緊張のせいかぎこちなくじれったいくらいにゆっくり重ねられた。
そのくせ触れるとソファに押し付けられ噛み付くように。

ちっちゃくてもケモノやな。
匂いは甘いくせに。

好きで好きで・・・
気持ちが伝わりきらん。


ふいに終わりが来た。
目を開けると悲しそうな顔。

308 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:58

どした?

「・・・嫌なの?」

「んなわけないやろ。」

「じゃあどうして?」


あぁ・・・

「大丈夫や。気にせんといて。」

感情が大きく動くと勝手に出る涙。
それは別に負の感情からとは限らんからね。


「でも・・・」

「気にしてたらチュウできひんで?」

「そんなのヤダ!」


んん〜うれしい反応してくれるね。

ちゅうかなぁ冷静に考えてみ?
嫌なわけないやん。

誘ったんはアタシや。


309 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 13:59

ぷぅ〜ってふくれてるほっぺた。
身体を起こしてひざの上に抱っこする。

「どしたん?」

「だってせっかく・・・・・・」


確かにめったにない展開やったなぁ。

でもあれきっちり発情してないからやろ?ちゃうの?
泣いても止まるとは思えん勢いやで絶対。



おでこをコツンってくっつける。


「急がんでもずっとそばにおるよ?」

「ほんと?」

うんうんってうなづいてやる。
だっておらんなるのはそっちのほうやねんからな。

にひひってわらうマリ。

ふんわり温かくなると同時に奥のほうが痛くなる。
それも別に嫌じゃなくてアタシこの子好きやなぁって・・・

310 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 14:00

あっそや。

「マリこれ飲んでみ。」

「なにそれ?おいしい?」


そうくるか。


「おいしくはないけどおヒゲも毛並みもツヤツヤになるって。」

「ほんと?!飲む飲む!」


口の中にポイッと放り込んでお水を飲んでる。
・・・ゴリゴリやってたアタシの苦労はなんやったんかね。

まぁええか。

なぁまだしばらくは一緒におってよ?


「マ〜リさん。」


チュッ


「なんだよぉ〜もぉ。」


かわええなぁ。




おわり


311 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 14:04
はい更新終了です。

312 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 14:21
今度の更新は1ヶ月後になりそうです。
計画を立ててみただけで泣きそうでした。
313 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/16(日) 14:24
とゆうわけでまた1ヵ月後に。
314 名前:ちぃ 投稿日:2003/11/24(月) 02:13
すいません微妙な間違いを発見。

コシヒカリは魚沼産で。
沼津産のでもかまわないといえばかまわないのですが
あえて入手しようとしてること考えると魚沼産のほうが筋が通るもんで。
315 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/13(土) 11:06
楽しみに、待っております。
316 名前:つかさ 投稿日:2003/12/15(月) 23:29
ど〜ゆ〜結末にもっていくのか。
全然想像もできません(おい)
楽しみにもう一本の方も見てますんで。

自分、仕事で年末商戦魚沼産のコシヒカリ売ってたもんで思わず苦笑い。
5キロ4000円はやっぱ高いですよね(しみじみ)
317 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:45
1ヶ月以上あきましたねぇ。
とりあえずグダグダゆう前に更新します。
318 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:46

長い渋滞。
テールランプがずっと続いてる。

こんな遅くなるつもりはなかったのに。
学会最終日途中で抜けたらまだマシやったかなぁ。

「しまったなぁ・・・電車にすりゃ良かった。」

混んでても時間は正確やしな。


待ってるやろうか?
あずけっぱなしやもんなぁ。




ZZZzzz・・・

フラットシートの助手席から聞こえる寝息。
ダッシュボードに乗っけられた足。

黙ってりゃかわいいんやコイツ。
・・・態度でかいけど。


やっぱり来年は新幹線にするか。
横で寝られるときついわ。


319 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:46

ん〜っと電話入れとくか。


プルルルル・・・プルルルル・・・・
ピッ


『はいもしもし。裕ちゃん?』

「あぁ圭織?なんかちょっと遅くなりそうやねん。」

『そうなの?で紗耶香の発表どうだった?』

「まぁまぁやな。初めてはあんなもんやろ。
 お疲れでいま寝てるわ。」

『お疲れさまだね・・・あっ・・・ちょっと・・・』

ガチャッ・・・ゴンッ

うぉっ!
落とした?

320 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:47

『どこ?裕ちゃんどこ?ねぇ圭織ぃ裕ちゃんの声するよ?』


おっ?

「マリ?」

『裕ちゃん?!』

「そやで。」

『うそだぁ。裕ちゃんそんなちぃちゃくないもん。』


そりゃそうやわな。

「あとちょっとだけお利口さんにしとき?もう迎えにいくから。」

『絶対?もう来る?すぐ来る?』

「あぁもうすぐや。圭織はそこにいる?」

『うん。圭織ぃコレが呼んでる・・・』

コレってなんやねん。
ほんま・・・

321 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:47

『なに?もっと話しててもいいのに。』

「いやいやなんか悪いし。もうちょっとだけよろしくな。」

『うん。じゃ待ってる。』

「ほな。」

ピッ


322 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:48

「裕ちゃんって子供いたっけ?」

!!!


「なんや紗耶香おきたんか。びっくりするやん。
 ・・・子供もなにもその前に相手おらんがな。」

「じゃマリって?」

「あぁ飼ってんねん。」


・・・・・・

なんの沈黙や?


あ!!

323 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:48

「あの・・・あれやで?その・・・」

「いやいいよ別に無理に説明しなくて。そっか・・・ふ〜ん。」

ニヤニヤわらい。


違うって!絶対違う!!
なんか違うこと想像してるやろ?


そりゃ確かにアレやけど。

・・・でもそうゆうことか?

え?違う違う。
違うってそのためとちゃうもん。

アレはその結果であって目的ではないわけで・・・


「なに?反論しないってことは・・・」

「うっさいなぁ!余計なことゆうてるとここで下ろすで。」

「はいはい。」


くぁ・・・むかつく。




おわり


324 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 01:52
はい更新終了です。

今年ももうすぐ終わりですよ。
あっとゆう間ですね。
325 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 02:02
5キロ4000円?!!!(反応し過ぎ)
ぅあぁ・・・たけぇ・・・

今年は冷夏やったから余計高いんですよねぇ。
北の産地のものは特に。

いいコメは分厚いナベを使ってコンロで炊くとおいしいなぁ。
おつけもんさえあれば何杯でもいけます。
326 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/20(土) 02:11
色々書こうかと思ったんですが
愚痴になりそうなんでやめときます。

ではではまた来々週末あたりに。
327 名前:ミニマム矢口。 投稿日:2003/12/21(日) 02:39
更新お疲れ様です。
やぐ 可愛い!
来週また、お会いしましょう。
328 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 19:30
愛のあふれる作品ですね
329 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/26(金) 02:15
市井さんとの会話面白くて好きです。
マリがカワイイ‥‥
330 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:53
やっぱり年内にもう一回だけ更新します。
331 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:53

「いつもそんななの?」

「は?」

なにが?って聞きかけてやめる。
コートの中にもぐりこむようにくっついて離れへんから。

「うんにゃ。いつもこんなんちゃう。」

まだ一言もマリとしゃべってない。
顔もまともにみてないんちゃう?



ただいまぁって圭織ん家のドアを開けたらドスって鳩尾に衝撃。
おぇってなりながらあわてて壁に手をついたら下からギュッ。
ぶら下がるようなその姿勢にバランスを崩して・・・


誤解を招いた。


あわてて引き離そうとする圭織と紗耶香にゃ苦笑い。
くっついて離れへんマリのおかげで誤解は解けたんやけど。

どうゆうことこやこれ?
心配せんでもひとん家の玄関でなんてなぁ。
ほんまなんやと思ってんの。

アタシに失礼やん?


332 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:54

「とりあえずコート脱げば?」

テーブルの向こうからわらいを噛み殺した声。
充分寝ておめめぱっちりな人はコーヒー片手にくつろぎ中。

ありがたいご忠告やね。
けど・・・一回立ち上がらんことには脱がれへんの。


「マ〜リさん・・・ちょっと離れて?」

「ん゛ぅ・・・」

逆にしがみついてくる。


このところ影を潜めてた子供っぽさ。
しばらく離れてたせいかな?

正直なところ暑い。


子供やったら子供扱いするしかないかな。


「圭織?」

「なに?」

「ノンちゃんとあいぼんつれて来て?」


圭織がわらいながら部屋を出る。
なにがしたいかわかったらしい。

333 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:54


「ほらどうする?ノンちゃんとあいぼん来るで?
 こんな甘えん坊さんみたらどう思うかなぁ?」


どうせお姉さんぶってんねやろ?


「・・・意地悪。」


ぼそっとつぶやいてヒザから降りる。
久しぶりにみたマリの顔はすねてる顔。

ちょっとやせた?


ほっぺたをなでるとくすぐったそうにわらった。


「ちゃんとご飯食べてへんかったやろ?」


目が泳ぐ。

・・・・・・

「食べてたよ?」


はいウソ。
このうそつきマウス。


334 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:55

コートを脱ぐつもりで立ち上がるとグイッと腕をとられた。

ほぁ?

泣きそうな顔。

「今日はもう置いて行かへんがな。」

頭をなでてやる。

「ほんと?」


うぅなんやその目・・・やめてぇや。
我慢できひんやろ?


ソファの背もたれに手をついて身体でマリを隠すようにして・・・

音がしないように唇を重ねる。


「あ〜おい!なにやってんだよそこ!」


その声に顔を見合わせてにししってわらう。


335 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:55

「入っていい?」

振り返ると圭織がドアから顔だけのぞかせてた。


「ええよ。なんで?」

「だって子供にみせちゃダメでしょそういうとこ。」

ねぇってケージの中のシロクロマウスに話しかけながら部屋に入ってくる。


「なんもしてへんって。なぁ?」

ってそんな耳まで真っ赤になってたらアカンがな。
あわててコートを脱いでマリにかける。



「いやぁさっきからこの部屋の温度上がりっぱなしで困るよほんと。」

む?
なんやとぉ〜


「あぁそっかそっか・・・仲間はずれでさみしかったんや?」

「だっ誰がだよ!!」


よしよし。
まだまだ甘いわ。

336 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:56

「あれ?まりっぺちいさくなっちゃったね。」


ん?

振り返るとマリがいたところにはコートと抜け殻になった服。

めくってみると茶色い毛玉。
ちっちゃいお腹が呼吸に合わせて上下してる。


「もしかしてマリあんまり寝てへんかったん?」

「うん。安心したんだよきっと。」


ふ〜ん。
かわいいヤツ。




「っておいっ!なんだよそいつ!!」

あ?
そっかしらんかったよな。


「なにってみたままや。」

手のひらに乗っけてみせる。


「紗耶香はなんやと思う?」

・・・・・・


まぁ簡単には答えられへんわな。

337 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:56

ケージに入れようと手を斜めにすると指にしっぽが絡まった。

ケージにはいんのイヤなんか?
寝てるくせにそんなかわいいことすんなよ。

逆に指を伝ってノンちゃんとあいぼんが登って来てマリにはなチュウ。
マリも寝たままもそもそ動いてお返し。


・・・落ちるで?



「アタシにもマリがなにかなんてわからへん。」

「なんだよそれ・・・どうして平気なんだよ。おかしいよ裕ちゃんも圭織も。」


思わず圭織と顔を見合わせてしまう。
圭織の眉がさがってた。


・・・・・・・・・


「なにが普通?基準は誰が決めるん?色んなヤツがおってええんやって。」

「そんなの・・・」

「おかしいか?確かになぁ。」

338 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:57

マリのちっこい頭を親指でなでる。


「でもしゃあないやろ?コレが現実や。なぁ?」


圭織に視線を投げると苦笑いしてた。

なんや?
強引過ぎるってか?




「かわいいなぁ。ほんまよう殺すわこんなかわいいの。」

「もぉまたそんなこといいだす。」

「ん〜でもなんも思わんようになったら終わりやん。
 そんななったら怖くてこの子らに触れへんわ。」


ノンちゃんとあいぼんを床に下ろすと圭織に駆け寄っていく。
手のひらに残ったマリを起こさんように胸ポケットにこそっと入れる。



紗耶香の眉間にシワ。
だまぁ〜って俯きかげんで腕を組んでる。


考えてどうにかなる問題やないで?
事実を認めるか認めんかってだけの話や。


339 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/27(土) 23:57


「はいこの話はおしまい!圭織なんか飲むもん置いてる?」

「そういうと思って買ってあるよ。」


うっしゃ!

「飲むぞぉ〜!紗耶香!!」

「・・・うっせぇ。明日から休みだからってはしゃぐなって。」

「しゃあないやん。久しぶりやねんって2日も休みあんの。」


あぁほんま明日なにしよ?

・・・とりあえず昼までは寝るなぁ。





おわり


340 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/28(日) 00:01
はい更新終了です。

今年も終わりますねぇ。
餅つきまでには帰らんといかんなぁ。
341 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/28(日) 00:07
愛のあるって・・・

そうゆわれるとなんか逃げたくなりますね。
それは話を書く人みんなにいえることだと思いますよ?
あったかいのでも歪んだのでも何かないと書かへんやろうし。
342 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/28(日) 00:22
今年も現実逃避に付き合ってもらってありがとうございました。
また来年もよろしくお付き合いください。

では来々週末あたりに。
343 名前:ちぃ 投稿日:2003/12/28(日) 00:41
あ・・・あの・・・
愛のあふれるってゆうてくれたんですよね。
こりゃ失礼した。動揺しすぎました。
344 名前:つかさ 投稿日:2004/01/03(土) 23:24
矢口さん、まじで可愛すぎっすね・・・・。
こ〜ゆ〜ペットなら何匹(人?)でも飼いたい(違)

自分、ちぃさんの作品、愛があふれる作品であり愛のある作品だと思ってます。
あ、逃げないで下さい(笑)
今年もよろしくお願いします^^
345 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:55
更新します。
346 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:56


ん?

なんや?
くすぐったい。


あぁ・・・朝の匂いがする。
朝日にとかされた夜露がつくる独特の空気。
昔からコレが苦手や。

もうちょっといいやん。
せっかくの休みやしなぁ。





・・・!

ってなんやねんくすぐったいなぁ。


重たいまぶたを無理やり開けると・・・

347 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:56

「・・・お。」

びっくりした。
そこでなにしてんの?


2匹そろって人のお腹の上。
じぃってこっちみてる。


そっか昨日とまったんや。


ノンちゃん?あいぼん?
起こしにきてくれたんかな。


じゃ

「マリは?」


むがっ

痛いって!
鼻つまむなっちゅうの!

348 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:57

みあげると

「なんや・・・紗耶香か。」

「なんだよ市井じゃ不満?」


不満。不満やで。
どうせやったらマリか圭織にやさしく起こして欲しかったわ。

あぁ?
なにニヤニヤしてるんや?


「なんやな?」

「『もぉやめてぇやマリ。もうちょっと寝させて?』ってか?」


なんやそれ?


「ゆ・・・ゆうてないやろそんなこと?」

「そういうことにしてやってもいいけど?」


ぐ・・・



349 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:57


カチャ


「裕ちゃん起きた?」

「あぁ起きたよ。ちゅうか起こされた。」

身体を起こすと転がり落ちていくマウスさんたちを手のひらで受け止める。


せっかく昼まで寝ようと思ってたのになぁ。


手のひらからの視線。

なんやのさっきから?
アタシの顔になんかついてんの?


「なに?おちびちゃんたちも守備範囲?」

「アホかっ!」

あいた手で紗耶香をはたく。
みてみぃ圭織にわらわれたやん。


350 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:58

「はやくおいで?まりっぺが頑張ってるからさ。」


なに?


「早く来てもらわないとおあずけ状態なんだよ。」

「あぁごめん。先いっといて?顔洗ってから行くわ。」


布団を抜け出して圭織の手におちびちゃんたちを渡す。
そこではじめてジャージ着てることに気がついた。

コレ紗耶香のかな?
ちゃんと着替えて寝たんやなぁよかった。

351 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:58

リビングのテーブルの上には朝ごはん。
圭織も紗耶香もお茶を飲みながら暇つぶしてる。

鮭がこげてたり
卵の目玉が割れてたり。

・・・・・・これって。

圭織がキッチンを指差すからドアを開けてこっそり覗いてみる。


マリ?

台の上にのってナベからお味噌汁をよそってる。
鼻歌まじりのその手つきが危なっかしい。

こっちを振り向きそうになったときなんでかしらんけど隠れてしまった。
でそのままこそこそテーブルに戻る。

どんな顔していいかわからん。
普通におはようっていえへんかった。

妙な違和感に胸のあたりがざわついて落ち着かへん。


料理おぼえたんやろか?
・・・圭織か?

「教えて欲しいってお願いされちゃった。」

視線に対する答え。


ふ〜ん


352 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:58

「さやかぁ〜!ここ開けてぇ!」

「はいはい。」

むっ?
いつの間にそんな仲良うなってん。



「あっ裕ちゃん・・・おはよう。」

お盆にのったお椀。
温かそうな湯気がたってる。


「おはようさん。これ・・・」

「そだよ?」

「すごいやん。えらいなぁ。」


イヤやなぁ。
なんか言葉が上滑りしてる気がする。

俯いたままお椀を並べたあとちょこんと隣に座るマリ。

なんかちょっと照れてる?


そこから動かんようになったマリのかわりに
圭織がご飯をよそってくれた。


353 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:59

・・・・・・

えっと?
この間は?

なんとなく3人で顔を見合わせる。
圭織はお師匠さんらしく心配顔。
紗耶香はなにがおかしいのかわらいをこらえてる。


「食べていいんか?」

「・・・うん。」

「ほないただきます。」

「「いただきま〜す。」」


354 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 01:59

味はなんやろうなぁ・・・
ちょっと焦げて苦かったり塩辛すぎたり。


それでもうれしかった。


あのマリがねぇ・・・
不思議な気分。


マリはなにになりたいの?


台に乗って圭織と並んで後片づけをしてる後姿に問いかける。
声に出しては聞けへんかった。

聞いたところでアタシには叶えられへんことかもしれんしな。



355 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 02:00


「ごちそうさま。」

は?
なんやねんまたニヤニヤしよってから。



まぁなんや。
エプロン姿がなんともいわれへんねんけど。
あれって圭織にこうてもらったんやろか?

ちょっといいねんこれが。

・・・・・・

はぁ


ヤバイ。
せっかくずっと無視してきたのに。
できるだけみんように触らんようにしてきたのに。

いかんなぁ。


「アホがいらんことゆうから・・・・・・」

湯飲み片手にリビングのテーブルに戻る。


356 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 02:00


あ・・・またみてる。
なんやろう?

「なんでそんなみるん?」

なんかしたかなぁ?


「マリが裕ちゃんの話ばっかりするからだって。」

は?


「圭織がいってた。だから気になるんだよあいぼんもノンちゃんも。」


しゃあないんちゃう?
マリはアタシしかしらんもん。

でもなにをしゃべってんねやろ?
もしかして・・・

ん〜

チュッ チュッ

ビックリしたのかテーブルの端っこに逃げてった。
しかも一生懸命アタシがチュウしたとこぬぐってんの。

なにそれ?
失礼な。

357 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 02:01

「はははっ!嫌われてやんの!!」


ふんっ・・・逃げんでも襲わへんわ。
やっぱりマリのヤツいらんこともゆうたな?

自分が誘うくせに人をケモノみたいに。
ケモノはそっちやろ?


カチャ

キッチンから顔をのぞかせるちっこいケモノ。


「裕ちゃん。いつ帰るの?」

「あ・・・片付け終わったら帰ろ?」

うんってうなずいてドアの向こうに消えた。


なんかちょっとまだ言葉が浮いてる。
妙に照れがある。
2人とも。

しばらく会わんかっただけやのにな。
あれやねん。なんかかわいいねん。
んでちょっと触りにくい。

おかしいな?


隣のニヤニヤわらいはみてみぬ振りをすることにした。




おわり

358 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 02:10
はい更新終わりです。

あけましておめでとうございます。
2004年が明けましたね。

今月で安倍さんが夏に辻さん加護さんが卒業ですね。
辻さん加護さんは意外だったんですがいいことかもしれん。

飯田さんや矢口さんがいなくなったときの
辻さんや加護さんの精神的ダメージを考えるとね。
以前、精神的にきつそうなときありましたし心配だったんですよ。

359 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 02:18
夏に自分たちが卒業するとゆうことで
安倍さんの卒業も前向きにとらえることもできるでしょうしね。
他の人達、特に飯田さんと矢口さんはほんとにつらいでしょうが・・・

去年の矢口さんの体調不良も精神面の影響があってのことと
思われるので今回も大丈夫かなぁと思ったりしてます。
360 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/11(日) 02:32
変化し続けることがモーニング娘。の不変の姿なんやろうね。

今年も良い年にして欲しいものです。
もちろん自分も死ぬ気で生きていきますよ。
人が頑張ってんの応援してるだけじゃ面白くないですから。

ではまた来々週末あたりに。
361 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:29
更新します。
362 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:29


う〜眠い。

眠い眠い。

昨日も途中から意識ないし。
運転で疲れてたゆうても・・・あれはないわ。

起きたら起きたでマリと紗耶香はなんか普通に仲良くなってるし。
なんやねんアタシが寝てる間に。

圭織ん家出る前もコソコソ話してたなぁ。
妙に照れた顔して・・・


気に入らん。


「・・・だって。・・・・ねぇ聞いてる?」

「あぁ・・・」


363 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:30

グイッ

んぉ?

視界いっぱいの膨れっ面。
一気に覚醒する。

背中に寒いものが走る。


あっ・・・なに?


「ちゃんと聞いてた?」

「き・・・聞いてた聞いてた。あれやろ?あの・・・・・・」


正直さっぱりわからん。


はぁ・・・



なんやねん。
そんな睨まんでいいやん。


・・・・・・ムカつく。

364 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:30

「眠たいねん。」

「なにそれ。逆切れ?」


ほぉ・・・そんな言葉覚えたん?


「逆切れしたろか?」

眠くてしっかり開かへん目をわざとしかめてみせる。
とマリの手が視線を遮る。


なんや?

「みなきゃ怖くないもん。」


くぁ。

「もぉええ。」

・・・・・・寝よ。

365 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:31

「あ・・・どこいくの?」

「寝る。」

もともと昼まで寝るつもりやってんから。


え〜っと?
スーツは帰りのクリーニングに出したし
カバンの中身は洗濯機にほりこんだ。

うん。
問題なし。


「あ゛っ!」


忘れもん忘れもん。

「よっと。」

ぷっくりほっぺたを膨らましてるマリを抱き上げる。

うっし。寝よ。



「裕ちゃんのバカ。」

「あとでな。あとでなんぼでも聞く。」


抑えてるつもりでも外へ滲み出す不機嫌さ。
そのせいかマリの抵抗も弱い。

自分勝手なんはよくわかってる。
離れてたぶんいっぱいあると思うねん話したいことが。
わかってるけど・・・


「うぅ〜眠い。」

全部そのせいにして。


「もぉさっきからそればっかり。」

はいはいすいませんねぇ。


366 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:31


よっこいしょ。

ベットにコロンって転がす。


「ん。」

こっちに向かって腕を伸ばすから
マリの肩に顔をうずめるとわらい声がもれた。


はぁ・・・なんか久しぶり。


そうやなぁマリってこんなふうに
やわらかくて温かいもんやった。

背中を撫でるちっちゃい手の感触に力が抜ける。

ゲンキンなもんや。
ちょっとまえ触りにくいなんて思ってたくせに。


367 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:32

「一時間だけでいいから。」

「一時間?」

あぁ・・・しらんかったっけ?
時計時計・・・どこや?
どっか転がしたな。

あった。


「あの長い針がくるっとまわって同じとこに戻るまで。」

「一回まわったら起こしていいの?」

「うん。」

「ほんとに?もう怒らない?」


ん?

身体を起こして顔を覗き込むと・・・


忘れてた。
強がってても元々マウスは小心者。

368 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:32


「そんな怖かった?」


おでこをコツンって当てる。

お?
なにムッとしてんねん。


「裕ちゃんなんか怖くないもん。」

「そうか?」


ほないいけど。
裕ちゃんなんかってなんやの。
傷つくわぁ。


眉間をぐにって押される。


うれしそうにわらうなっちゅうの。
ほんまコロコロかわるな。


369 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:33

マリの腕に誘われるままにもう一回もたれると
赤ちゃんをあやすみたいにギュッてして頭を撫でてくれる。


「いいよ?寝ても。」

・・・・・・

こうゆうときなんてゆうの?
もぉかわいい子やなぁ。

待ってて?
起きたらいっぱいチュウしたるから。

妙な決意を胸にゆっくり眠りに落ちた。





おわり


370 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:39
はい更新終わりです。

明日で安倍さんの卒業ですね。
だからといって何もゆうことはありません。

371 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:42
今までどうり一歩一歩大事に歩いていくのをみてようと思います。

人のことかまってる暇ないくらい
忙しくなりそうな現実がありますので・・・
372 名前:ちぃ 投稿日:2004/01/24(土) 20:43
ではまた来々週末ぐらいに。
373 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:35
更新します。
374 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:35

両手をトレイに奪われると
自然と歩くのがゆっくりになる。

人が少なくなり始めたとはいえ
なにげにしらん人とは距離が必要なもんで席がなかなか・・・

どこがいいかなぁ。


「おっ!藤本。」

「あれ?めずらしい。いつも学食じゃないですよね?」

「あぁ今日ちょっと時間空いたからなぁ。ここいい?」


手でどうぞってしてくれるからようやく手が自由になる。


「そういえば休講になってましたね。」

「教授が用事あるゆうてな。だから今日はヒマ。」

375 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:36


ピシッとお箸をわって・・・

いただきます。


「はははっ!」

なんや?

「ちゃんと手合わすんだ。なんか意外。」


あ・・・
マリにお行儀よくしなあかんでって教えるついでに
自分のクセにもなってしまったからなぁ。


「ええやんか別にぃ・・・ほっといて。」


376 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:36

ちゅるちゅる


手持ち無沙汰なんかしらんがこっちみんのやめてくれんかな。
食べにくいやんか。




ん?
今ってもう午後の講義はじまってるんちゃうん?


ふ〜ん


「さぼりか?」

「なんですか人聞きの悪い。自主休講です。」


なんやそら。

「ええんかいな?」

「いいんですよ。同じプリント2〜3回くばるじぃの時間だから。」


あ〜あの人か。
・・・確かに。

昔はすごい人やってんけどなぁ。

377 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:37


「先生ダイエット?」

「うんにゃ別に。」


うどん食べてるからってダイエットとはいわんやろ?



「やせたんじゃないの?」

「そんなことないと思うんやけどなぁ。」


ちゃんと食べてるで?

「ふ〜ん。じゃあれじゃない?つかれてんだよきっと。」

「あぁまぁ疲れてはいるかな。」

「違うよ。そうじゃなくて。」

378 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:37

手をぶらんと幽霊みたいに揺らして・・・

「憑かれてんだよ。」

「なんやぁ?縁起でもないことゆうなっちゅうの。」

「えぇ〜きっとそうだって。先生いっぱい殺してんだもん。」


むぅ〜
人聞き悪いのどっちやねん。


「あ!バイトはいってるんだった。そろそろ行かなきゃ。」

いいたいことゆうてさっさと帰るんかい。


379 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:37

そや。

「こんどアンタが入ってるときスマイル10個くださいってゆうたんねん。」

「はぁ〜?もうマジでやめてくださいよ?」


ふふん。

あ〜あとなんや・・・
確かあの子・・・亜弥ちゃんやったけな。

「んな亜弥ちゃんでいいわ。アンタらシフトあわしてるやろ?」

「じゃ美貴でいいから。」


おぅおぅムキになって・・・


「あややスマイル100個くださいってゆうたら100回わらってくれるかな?」

あの子やったらやりかねんやろ?


「いやっ・・・させません。」


むっふっふ。
かわいいもんやな。

380 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:38


「高校生たぶらかしたらアカンで?」

「はぁ〜?なにいってんですか?」

へぇ〜んだ。
そんな真っ赤な顔でにらんでも怖ないもんね。


「亜弥ちゃん?美貴以外にそんなふうにわらっちゃダメだよ?
 とかなんとかゆうてやなぁ・・・」

「先生バカじゃないの?バカ!バーカ!!」


ダッシュで遠ざかる赤面症。

いい逃げ?
子供かアイツは。

いやいや楽しいヤツやでほんまに。


あ・・・やられた。
トレイと食器残していきよった。
片付けアタシか?

微妙な仕返ししよってからに。


381 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:38


ちゅるちゅる

ズズッ


はぁ〜

憑かれてはないと思うけど疲れてはいるわな。
ほんま盛ってるマウスは手に負えん。
ビビッたっちゅうねん。

真夜中・・・耳をくすぐる吐息。
身体を撫でてくるちっちゃい手。

眠いからってほっといたんがいかんかった。
発情したメスは欲しいときにオスがのらんかったりすると
逆にオスにのっかってしまうくらいなこともすっかり忘れてた。

気がついたときには・・・

382 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:39

ひどく熱い身体。
マリが触れるせいで呼吸がおかしくなる。

名前を呼ばれて添えられた手に促されるままにアゴを少し上げると

噛み付くようなキス。
それは与える行為ではなく奪う行為そのもので・・・

ほらやっぱり。涙なんかじゃとまらへん。


マリ自身もてあましてる感情。
それに流されそうになってギュッと抱きしめる。

クラクラするようなあの匂い。
サラサラと消えていく理性。


ふと呼吸が楽になって目をあけると泣きそうなマリ。

383 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:40

ちょっとわらってしまった。
ここまでしといていまさら・・・なぁ?

ゆっくり引き寄せて

チュッ

おでこに。

うぅぅって低い唸り声を聞いたと思ったあと
首筋にやわらかい感触。


それから・・・


384 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:40


カランッ

おっと・・・こんなとこで思い出すもんやないわ。


テーブルに落ちてしまった箸を拾う。

はぁ〜

ほっぺたを撫でるとちょっと熱くなってる気がする。
思わずキョロキョロまわりをうかがってしまう。

誰もみてないか・・・
うぅ〜アホやなぁアタシ。


マウスの学習能力を甘くみてた。
しかもマリが満足するまで寝かしてもらえへんかったし・・・


385 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:41

ふわぁ・・・はぁ

おかげさまで朝からあくびがとまらへん。


これ食べ終わったら帰ろう。
せっかく教授おらんねんし実験の予定変更してはよ帰ろ。


そんでまず2〜3時間寝よう。
たぶん今日は大丈夫なはずやから。

たぶん・・・な。



おわり

386 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:42
はい更新終わりです。

387 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:49
なんですかねぇもう2月です。
この間あけましておめでとうとかゆうてたのに。

なんだこれ。なんでこんな早いもんかね。
388 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/08(日) 00:52
あぁ今日はゆっくりしよう。

ではまた来々週末あたりに。
389 名前:らん 投稿日:2004/02/08(日) 00:54
「ちぃさん」の表現力にいつも溜め息ついています。
何気ない言葉にドキドキさせられています。

クラクラするようなあの匂い。
サラサラと消えていく理性。

この2行に、こちらまでも溶けそうです。

毎回の更新、本当に楽しみにしています。
次回もよろしくお願いいたします。
390 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:20
更新します。
391 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:20


「ただいまぁ・・・」

寝室をそぉ〜っとのぞくと
陽のあたるとこでぬくぬくと寝てる毛玉。

幸せそうに半開きになってる口。
ときどきヒクヒク動くヒゲ。


やっぱり。
ズルいなぁ自分だけ。




荷物を適当に置いて楽な服に着替えようとして
ふと鏡にうつった自分の身体にみつけた紅い跡。

指でとんとんと数えるように触れていくうちに・・・


「あ・・・」

392 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:21

フラッシュバックのように昨日の感触がよみがえる。


身体の奥に生まれる熱。


うぅ・・・アカンなぁ。

自分の身体をギュッと抱きしめてゆっくり深呼吸。
落ち着こうと壁にもたれて目を閉じる。



それが失敗やった。

身体に触れたやわらかい唇とちっちゃい手。
心をくすぐる甘い声。

はぁ・・・もぉ嫌や・・・



393 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:21


ため息混じりに目を開けると


なんや起きたん?


後ろ足で立ち上がって首をかしげるマウスさん。
不思議そうな顔してる。

・・・・・・

そうや・・・アンタのせいちゃうの。
全部マリのせいやんか。


眠いのもアタシの身体がこんななってるんも。


「アホ。」


ムッとしてしっぽで床をたたいてる。
なんだよぉ!ってとこかな?

はぁ・・・さっさと着替えよ。


394 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:21


座り込んでメイク落とし。
いつかのようにマリは肩の上。


ひそひそ話しをするみたいに鼻先を耳に近づけるから
おもわず身体をすくめてしまう。


アンタそれしっててやってる?

首のあたりをクイッと持って引き離そうとすると
髪にしがみつくからあわてて手を放す。

ぷら〜んとぶら下がるマリ。


イタタ!

ジタバタするからめちゃめちゃ痛い。

絡まる前に救出。

もう最悪。


395 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:22

手のひらですねてるマウスさん。

・・・・・・

八つ当たりやな。
自分で自分が情けなくなる。


「ごめんな?ちょっと寝るわ。」


マリを床の上に放してそのままベットへいこうとして・・・



!!!


急に背中からしがみつかれる。


396 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:22

「ねぇ・・・嫌いになった?マリのこと。」

声が震えてる。


・・・・・・

腰に回されてるちっちゃいけどヒトの腕。
なでるとビクッとした。


「なんで?」

「だって・・・」


うしろにマリをくっつけたままベットに潜り込む。

マリが風邪ひくやん。


「裕ちゃん?」

「眠いだけや。昨日誰かさんが寝かしてくれへんかったからな。」


397 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:23


ごそごそ動いてマリがアタシの上に乗っかる。

あ・・・こらっ!
もう復活か?


「ねぇいつもと違う。」

「なにが?」

「裕ちゃんの匂い。」


はぁ・・・
それでかまいに来てたんか?


おでこをくっつけてくる。

「いい匂いするの。なんで?」


なんでって・・・


・・・・・・




・・・・・・嫌やなそれ。
うすうす気付いてたけど・・・


アタシは寝る気で帰ってきた?
それとも・・・


疼く身体。
ちっちゃいケモノを誘う匂い。

う〜ん・・・・・・発情?

398 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:24

はぁ・・・




「裕ちゃん・・・このまま寝ちゃうの?」

「寝て欲しくない?」


うんって力強くうなずくからわらいがもれる。
あんまりかわいいから下からギュゥッて抱きしめる。


「裕ちゃん?」


その吐息が耳元をくすぐる。


・・・・・・

なぁ触って?
その手で・・・その唇で・・・

そんな懇願ができるほど素直じゃなくて。
治まらん身体の熱に泣けてきた。


「どうしたの?」

「・・・なんでも・・・ない。」

399 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:24

「ウソつき。」


・・・・・・

ほっぺたにスリスリして満足そうにわらう。



ん?
またごそごそしてる。



「っあぁ!」

突然の出来事に身体がビクンとはねる。
なんの前触れもなく身体の奥に入り込んできた指。

痛みもなく受け入れた自分の身体。
その事実に顔が熱くなる。


マウスのマリさん。
ヒトよりいいのは鼻だけじゃない。

確信させたのはたぶん・・・アタシの心拍数。
いつからその耳に届いてた?


「ダメなの?」


てゆうか聞くんならもっと早めに聞けよとか思ったりして。
こんな微妙な状態でどうやって普通に会話しろと?

アタシの中にあるものの感触にヒザが震えそうになる。


400 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:25

ビクッと腰を引く。

「ちょっ・・・ぁっ・・・」


答えを聞かずに動き始める指。
覗き込んでくるから逃れたくて顔をそらす。

それでも感じるマリの視線。


「いやッ・・・っ・・・みんといて・・・」


ほんとはしってる。
マリのせいなんかじゃない。

アタシの身体が忘れてくれへんかっただけ。



空いた手はアタシの服を乱して・・・
唇は肌に残る昨日の跡をたどる。

切望していたもの。


浅い呼吸のせいで足りひん酸素。
マリを呼んでるのは誰の声?

その代わりに身体の感覚は・・・敏感になる。

401 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:25

「気持ちいいの?」

ちっちゃい子みたいにコクコクとうなずく。
またちょっと涙が出た。


「ねぇ・・・マリも・・・」


離れてしまうぬくもり。


なんで?
こんなところで・・・止めるの?



402 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:25

!!

あ・・・

クチュ

背筋を這い上がるなにか。

お互いに入り込むことのできない場所。
それでもお互いを求めてあふれる。


む〜ってなにか考えてる。

んって急に身体を動かすからこっちの身体もビクッて。


「っ!・・・あ。」

なにやら腑に落ちた様子。


403 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:26

!!!


「やっ・・・あっ・・・ぁっ・・・」

自分に正直なマリの動きは簡単に追い詰めてくる。

耳に入った甘い声にみあげると桜色に染まったほっぺた。
手を伸ばすとギュッて握ってくる。

息苦しく感じるくらいの愛しさ。
それはすぐにアタシの中の渦をはじけさせる。

一回きりで止まってくれるわけもなく
けっきょくマリが飽きるまで付き合わされることになったけど。


404 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:26

洗濯機でぐるぐる回るシーツを眺める。
今日の明け方も同じことしてた気がする。

学習能力ないなぁアタシ。
うちの洗濯機が乾燥機つきでよかった。


「裕ちゃ〜ん!これどうするの?」

あ?

急いで寝室に戻ると乾いたシーツにおぼれてるマリ。


「なにやってんの?」

「だってこれおっきいもん。」


むぅ〜って尖がった唇。

かわいいからもっともっと巻きつけて動けんようにしたる。

「なにすんだよぉ!」


あ・・・

逃げようとしてシーツに足をとられてすっ転んでる。


「動けないじゃん!裕ちゃんのバカ!」


ふふふっ

怒ってる。


ジタバタしてるマリをシーツごと抱っこして一緒に転がる。


405 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:27

マリのシャンプーとシーツの石鹸の匂いが混じる。

なんか安心する。


はぁ・・・



・・・・・・


「裕ちゃん?眠いの?」

「・・・ん。」

「風邪ひいちゃうよ?」


うぅ・・・

いつもはアタシがマリにゆう言葉。


「ソファに毛布あったよね?」

「・・・うん。ある。」

「じゃソファ行こ?」

406 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:28

よいしょよいしょってシーツから抜け出してから
ぼ〜っとし始めたアタシの手を引いてくれる。


どさっと横になると当然のように一緒に毛布にくるまる。

今から寝たらたぶん夜中くらいに目が覚める。
そんなことわかってるけど今この瞬間のほうが大切。


チュッ

お?

「おやすみぃ裕ちゃん。」

「ん。おやすみ。」


あぁ・・・どうしようもなくはまってる。
このちいちゃいヤツに。




おわり
407 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:32
はい更新終了です。

最近ですが
矢口さんがホワイトムスクに凝ってる発言をしたそうな。
マウスさんが香水のビン抱えてるのとかわらんですな。

なんにせよ好きな人の匂いは好きですよね。
408 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:36
何か書こうとすると愚痴ってしまいそうなんで流すだけにします。

409 名前:ちぃ 投稿日:2004/02/22(日) 00:37
ではまた来々週末ごろに。
410 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:03
更新します。
411 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:04


「起きて!ねぇ起きてよ裕ちゃん!!」

ん?

なんや・・・
朝ちゃうやん。

昨日が申請書の締め切りでギリギリまで書き直ししてたせいで
3日で4時間くらいしか寝れへんかった。

せっかく終わってんから
脳みそとけるぐらい寝たおしたろうって思ってたのに。


「大変なの!マリが動かないの!」

は?
ほなアタシを起こしてるんは誰やねん。

412 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:04

「なにゆうてんの?」

うまく開かん目。
それを無理やりむにって開けられる。

イタタ!!
指が!指が目ん玉さわってるって!

「起きた!起きたから手ぇ離して!!」


目を擦ると右目だけちょっと涙が出てた。

なんやねんなもぉ。


「どうしよぉ・・・裕ちゃん。」

その視線の先はケージらしい。
何気なく覗き込んでみると茶色い毛玉。


え?
413 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:05


なんで?


あわてて駆け寄ってケージをコツコツたたいても反応はなく
手で触れると・・・つめたく・・・なってた。


・・・ウソやろ?
まだ・・・まだ2年もたってへんで?

あれやろか・・・あのむちゃくちゃな生活サイクルが
このちっちゃい身体に過剰な負担を強いてないなんていえるはずもない。


「マリ?」

手のひらに乗ってる子に呼びかける。

414 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:06

「なに?」

隣から返ってくる答え。


・・・そうやん。
この子に起こされたんやろ?アタシ。


「どうゆうことや?」

手のひらに伝わるつめたさが衝きつける死。
でもおっきな声でちっちゃい手で無理やり起こされた。

相容れない事象。

これはなんて考えたらいい?


ケージにそっとマウスさんを横たえる。


頭ん中がぐちゃぐちゃで吐き気がする。


415 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:06


「裕ちゃん大丈夫?」

マリが抱きついてくる。


ほなこの温もりはなんやの?


416 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:07

1つめの答えは出てしまった。

死が放つどこか甘酸っぱい匂い。
間違いはない。


「泣かないで・・・マリはここにいるよ?」

涙を紅い小さな舌でペロッとなめてくれる。
それはちゃんとくすぐったくて・・・よけい泣けてきた。


「どっこも行かへん?」


マリが安心したように身体の力を抜く。

「行かない。裕ちゃんといるよ。」


頭をなでるちっちゃい手。


417 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:07

2つ目の答えは・・・

身体をなくしたくせにそうやって存在するのは
アタシがそう望むから?

少し身体を離すとマリが覗き込んでくる。

じっとみつめてくる強い目。
ふっとわらってアタシの胸のあたりに触れる。

「マリはね・・・裕ちゃんのここで生まれたの。
 ここだけがマリの居場所。」


418 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:08

・・・・・・

あるはずのないぬくもりが・・・その笑顔が・・・
ただただ愛しくて・・・切なくて・・・


「泣き虫だねぇ裕ちゃんは。」

クスクスわらいながら涙を指でぬぐってくれるから
ギュッと抱きついてマリの首筋に鼻先をすり寄せる。

「なぁに?裕ちゃん。マリの挨拶だよそれ。」


見送ろうと思ってた。
この子を1人で行かせようと思ってた。

それができると思ってた。

でもほんまにそうやったらマリは
泡になったお姫さんみたいに消えてしまってたはずや。


「ねぇ・・・マリは裕ちゃんだけだよ。」

「うん。」

419 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:08

冷静に考えてアタシはおかしくなってると思う。
いつの頃からかはわからんけど。

ズルズルと斜面を滑り落ちる感覚に似てる。
正気に戻ってこの子を失うよりはいい。


・・・まだ時間はあるなぁ。
んなちょっと寝るか。


このマリは圭織とかにみえるんやろうか?





おわり

420 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:09
はい更新終了です。
421 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:14
どうやら娘。の皆さんはストレスフルなようで。
大変そうですね。ゆっくりお休みを取れることなんてなかなか・・・

そうでなくてもこの不景気で
ストレスを溜め込んでる人は多いしねぇ。
422 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/06(土) 21:26
まぁなるようにしかならないんでしょうが。
頑張るしかないねぇ。

ではまた来々週末に。
423 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:31
更新します。
424 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:31

「・・・よって・・・の手法を用いた解析の結果・・・ということが示されました。」

「んぅ?ちょっと今のはおかしないか?
 このデーターからそこまでは言い切ってないんちゃうかな。
 それはたぶん仮説として述べてるはずやで?」

「あ・・・確かに。hypothesis thatってなってます。」

「ほなそこからもっかい説明して。」

「はい。」


学生の論文抄録をなんとはなしに聞きく。
学生時代これが大嫌いやったなぁって思いながら。


!!

ガンッ

425 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:31

ふいに後ろから抱きつかれて組んでた足で机を蹴り上げる。


「先生?大丈夫ですか?」

「あっ?大丈夫大丈夫。続けて。」


あぁくそぉ〜痛い。
まさか付いて来てるとは思わんかった。
このまえ怒ったのに全然反省しとらんな。

周りにみえんことに気付いたらしく好き勝手しよってから。
さすがに圭織とかにみえんってわかったときはへこんどったけど。

面白いことはノンちゃんとあいぼんにはみえるらしいとゆうこと。
動物ってゆうのはやっぱり人と違った感覚を持ってるのかもしれん。
人がその感覚を失ってしまったと考えるほうがいいのかな。

視界の隅っこにこっちを見て固まってる子を発見。

ほらな。
こうやってその感覚を残してる子もいるから。


426 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:32

「はい。今日はこんなもんで終わりにしとこ。来週はぁ〜後藤さんからか。」

ビクッとしてる。
そんな怯えることないのに。

あれからずっとずっとマリから目を離せんかったらしい。
そのマリはアタシに抱っこされて居眠りこいてたけど。

「んじゃこれで。質問がある人は後でおいで。」


ガタガタ音をさせて学生達が出て行くのを見送ってると1人だけ逆流してくる。

まぁそうくるやろうとは思ってたけど。


マリの背中をぽんぽんってたたく。

「んん・・・終わったの?」

「あぁ終わったよ。それよりほらっ。」

後藤のほうを向かせる。

427 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:33

「あ・・・れ?マリのことみえるの?」

話しかけられてまた固まった。


「じゃあさぁじゃあさぁ・・・」

おかまいなしに走りよってペタペタさわってる。


「裕ちゃ〜ん!触れるよぉ!!」

ギュウってしながらご報告。


「そりゃよかった。」

「えぇぇ?!!」

おぉやっと我に返ったな。

428 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:33

「なんだこれ?」

「これってなんだよぉ。」


ぷぅって膨れてる。
どうやらご立腹らしい。

「なにってゆわれてもなぁ・・・」

元はうちで飼ってる子やった。
いまは厳密にゆうと飼ってはないね。
エサ代かからんし服もむかしの夢の中みたいに
気分でどうにかできるっぽいし。


「はいはい!マリはわかるよ。」

「ん。」

促してやるとぱっと腕を解いて胸を張る。

429 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:33

「マリはぁ〜マリ!」


・・・・・・

絶句してた後藤がふにゃっとわらう。

「後藤はぁ〜後藤。」

「ふ〜ん・・・じゃごっつぁんだ。」

・・・いまのはええんか?納得してんの?
なんかしらんけど後藤もわらってる。

適応能力のあるやっちゃなぁ。

430 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:34

「ねぇ先生・・・」

「ちがぁう!裕ちゃんなの!」

「あ・・・後藤あんまり気にせんでええで。」

「ごっつぁんだってばぁ!」

・・・そんなんゆわれても。

「じゃごっちんで。」


んって満足げにうなずいてる。


「じゃ裕ちゃん・・・マリは例のあれなの?」

「例のあれや。みえんヤツのほうが多いからな。」

「それで痩せたんだ。眠いでしょ?」

431 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:34

へ?

いつのまにか眠いが口癖になってた。
そういえば最近やせた?って聞かれるようにも。


あれはいつから?


肌が粟立つ。


いまはわかるで?
けどマリが生きてるときからそうやったやん。

人にもマウスにもみえたこの子は
そのどれとも違う別のなにかやったってゆうんか?


432 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:35

・・・・・・


「どうしたの?」

ごっちんの横でキョトンとしてるマリ。


「ん?別に。ほらっおいで?」

とてとて歩いてきてポスッと腕におさまる。


それでもいい。

マリはアタシと一緒にいるんや。
ずっとずっとな。

433 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:35

「ねぇ裕ちゃん。引っ張られるよ?わかってる?」

「わかってる。」


ここまで侵食された心。
失うとどうなるかなんて目に見えてる。


「でもなぁもう無理なんや。」

離れられへん。


「そっか。じゃあしかたないねぇ。」


ごっちんが不思議な笑顔をみせた。





おわり

434 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:38
はい更新終了です。

欲張って両方更新なんてするんじゃなかった。
でも話しは旬のときに載せないとすぐ過去の出来事になるし。
435 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:43
がんばって欲しいけど身体壊すとこまでやらすなよと思う。
手の届かないところにいる人には何もしてあげられませんしね。

436 名前:ちぃ 投稿日:2004/03/21(日) 00:43
ではまた来々週末あたりに。
437 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:14
更新します。
438 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:15

カチャ


あ・・・圭織。

「待ち伏せか?」

「・・・そうなのかな?」


そうなのかなて・・・
ひとのイスに座ってるくせに。

マリがテテテっと駆け寄って圭織の前で立ち止まる。
視線を遮るように手を動かして・・・

ちっちゃい背中がため息をつく。


圭織が首をかしげてる。

アタシの視線が圭織でないところをみてることに気付いたらしい。


439 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:16

「まりっぺいるの?」

「いるよ?ねぇここだよ?」

触ろうとしたマリの手は圭織を通り抜ける。

脳が存在を認識してないと触れんもんか?


よいしょ。

ペコッてへこんでるちっちゃいのを後ろから抱きしめる。


「あ・・・まりっぺだ。」


抱きしめたこの腕。
圭織にとってはそれがマリの存在をしる手がかり。


あぁそうか。

440 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:16

マリの右手をアタシの右手の上に
圭織の左手をアタシの左手の上に重ねる。

2人ともなにをしてんねやろうって顔してんなぁ。


「触れるで?」


ペタ

圭織のほっぺた。

ペタ

マリの頭のてっぺん。


「「あ・・・」」

「な?」

441 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:16


ペタペタペタペタ

おいおい。こら。
そんな勝手に動かされると絡まるちゅうねん。


「ほんとにいるんだねぇ。」

しみじみゆうから文句もいわれへんやん。


「裕ちゃん裕ちゃん。圭織の髪さわるぅ。」

「はいはい。」


しかしこんなとこ人にみられたらどんないいわけすんの?


442 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:17


ひとしきりその存在をアピールし終わったマリは
満足げにちょこんと圭織の隣のイスに座ってる。


「んで?なんやったん?」

「なんてことないんだけど。顔をみに。」


茶のみ友達かいな?


「大丈夫なの?」

「ん〜いまのところはな。」

後々どうなるかなんてことはわからん。


「なんや?心配してくれてんのか?」

「当たり前でしょうが。」


当たり前かぁ・・・

「ありがとうな。」

「ん。」


443 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:18

イタッ!


はぁ?

「どうしたの?」

「噛まれた。」

てゆうか噛まれてる。


「ムガッ!」

ひとの二の腕噛みながらなに文句たれとる。
無視すんなってか?

444 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:18

ガシッ

親指と中指でこめかみをロック。

「腹たつからゆうて噛んだらアカンゆうたやろ。」

「ううぅ・・・ごめんなさい!ごめんなさい!!」


手を離すと涙目で頭抱えてる。

ふん。

「謝るくらいやったらすなっちゅねん。」


445 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:18


じぃっとこっちをみてた圭織。

「わかるね・・・みえなくても。安心した。」


いじけるちっちゃい背中。


これも想像できる?

・・・できるなぁ。


「まぁね。そんなかわらん。」


振り向いたマリにヒザをぽんぽんってすると
よいしょってよじ登ってくる。

ほっこりしようとするそのほっぺたをむにって引っ張る。

「なんかいも同じことゆわすな。次は許さんで?」

無言で噛み返してやるからな。


うんうんってするからまた今回も騙されてやる。

446 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:19

みえてるアタシにはその変化がいまいちわからん。

でも圭織からみるとマリはここにおらんで
マリは圭織に触れられへん。


かわらんようにみえるけどやっぱり前とは違う。

違うんやな。




おわり


447 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:30
はい更新終了です。

春ですねぇ。眠い眠い。いやいつでも眠いんですけど。
時間が足りません。色々書きたい話があるんですが・・・

448 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:37
一日が29時間ぐらいあれば楽しいのに。
天気がよけりゃ散歩もしたいし
読みたい本もたまってきたし

あぁ休みが欲しい。
449 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/02(金) 23:39
愚痴ってる場合ではありませんな。

ではまた来々週末あたりに。
450 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/04(日) 00:04
何で見えないんすかねー、見える人もいるっていうのに。
なんかちょっと切なかったです。
451 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/17(土) 15:23
このまま中澤さんも。。。
心配です。
452 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:15
更新します。
453 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:15


なんやねん。
今日は大人しくお留守番してるなぁって思ってたら・・・


「こらっ!無視かい!」

「ん〜」

なんやその生返事は。

散々ジャマしたせいで人に背中を向けながら
テーブルに身を乗り出した状態でマンガに夢中。

そんなおもろいんか?
なんかムカつく。

454 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:16

ぺちぺち

「ん〜?」


ぺちぺち

「なぁに?」


かわいいお尻やな。


ぴらっ

いやんもぉ・・・なに?
横んとこ紐?ヒモパン?


455 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:16

「あっ・・・ちょっと!なにやってんのさ!」


ぱっと手を離す。


「ん?なんもしてへん。」


・・・わけないよな。

にらまんでいいやん。
そんなカッコしてんのが悪いんちゃうの。


あ・・・また無視?

そんなそのマンガ好きか?


456 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:16

なでなで

えへへ。



今度はすぐにクルッとこっちを振り返るマリさん。

なんやな?


「・・・ジャマ。」


マジで?
裕ちゃんショックやわ。


じとって睨まれてもなぁ。


457 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:17


手に持ったマンガはそのままに
不機嫌そうにヒザの上に移動してくる。

もたれてくる背中を抱っこしながら疑問に思う。


「なんやの?ジャマなんちゃうの?」

「ジャマ。」


のわりになんやのこれ?




ん〜


指で探る。

ふふ
ヒモや紐。

458 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:17

クイクイって引っ張ってみる。


「裕ちゃんのばぁ〜か。」

それでも止めようとはせぇへんから・・・


「違いますぅ。裕ちゃんはアホなんですぅ。」

いいながらヒモをシュルッと解く。


「アホッ!」

片手で抑えてる。

おぉ焦ってる焦ってる。
じゃもう片方も。


シュルッ

「ダメだってば!」


むっふっふ。
ようやくマンガを手放したな。

やっぱりちゃんと相手して欲しいやん?

459 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:17

なにかぶつぶついいながらくくり直してる。

ふ〜ん意外に器用やなぁって感心してると
なにかもの言いたげな強い視線とぶつかった。



ギュウッ

え?



はぁ〜

なんのため息?


「っとにアホだ。」

生意気なことばっかりゆうくせに。

なんで涙声?
どしたん?

苦しいくらいにしがみついてくるその背中を
子供をあやすようにとんとんってする。

460 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:18

ちっちゃい肩が腕の中で震えてる。
押し殺した泣き声。

どうしたん急に。
泣かんといて。

どうしたらいいかわからへんなる。


「・・・っ・・・に・・・しないでよ・・・」


なんで?
いつも独りでお留守番できてたやん。


少しだけ距離をとって覗き込む。

そういえばこうやってじぃっと顔を見るのは
きょう家に帰って初めてかもしれん。


461 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:18

っ!

あまりの勢いにガチッと当たる歯。
それでも引く気配なく腕でがっちりホールド。
侵入してきた舌はやわらかいくせに乱暴で
いろんな感情を伝えてくる。

悲しい。怖い。寂しい。
あといまいち理解できてなさそうなアタシへの怒りも。


胸が痛くなる。

そうやな。

大部分の人間が自分の存在を認識できひんなんて状況やもん。
あんまりにも能天気な反応は腹立つよな。


でもアンタもわかってへんよ。
アタシは臆病者やねん。


気が済んだらしく肩先に顔をうずめたマリの頭を撫でる。

462 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:19

アタシかって怖い。
圭織みたいにみれへんくなるかもしれん・・・触れへんくなるかもしれん。
目の前にいるはずのマリがみえんくなったら
マリはどうなる?アタシはどうなる?

だから逃げてたんや。


怒られて当然。



「ごめんな。」

「ん。」


んって?
もういいの?

463 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:19

ぎゅうぅっ

っておい!
苦しい苦しい。


急にぱっと力を抜くから

こほっこほっ


なにしよんねん。
もぉ。


あ・・・むぅってしてる。
まだ怒ってんの?





「一緒にいよ。どこ行くんでもついて来たらいい。」

な?
464 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:20

ずっと一緒。

「ほんと?」

「あっ・・・トイレはついて来たらアカンで?」


ペシッ


うぅ突っ込みは言葉でお願いしたい。

おでこ痛いわ。


「じゃお風呂はいいんだ?」

「ん〜かまへんよ。」


へへへってわらいながらみあげてくるからおでこをコツンとくっつける。

ふと目を閉じるからそのまま

チュッ



「もう大丈夫?」

「うん。」


よかった。



おわり



465 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:23
はい更新終了です。

中澤さんどうなるんでしょうね。
できるだけ想像を裏切りたいんですが・・・

466 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:27
なんか難しいです。

467 名前:ちぃ 投稿日:2004/04/18(日) 23:28
ではまた来々週末に。
468 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:29
更新します。
469 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:30

「キャー!!!」


ビクッ

なに?
なんなんいまの?


実験室をみわたすとさっきまでちょろちょろしてたマリがいいひん。
何事もなかったようにわいわい実験の片付けをしてる学生たち。
その中にキョロキョロしてるヤツがひとり。

あの子に聞こえたんやったら・・・そうゆうこと。

目があってそれをお互いに理解する。

470 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:30


ん?

「やぁだって!!美貴だって時間ギリギリなんだってば!」

「じゃあとよろしくぅミキティ。」

「あっこらっ!ごっちん!」


追いすがる声を気にする様子もなくこっちに駆け寄ってくる。


「裕ちゃんいまの?」

「ん。でもマリの声ちゃうで?」

「あーうん。梨華ちゃんだ。」


りかちゃん?

誰や?


「ちょっとみてくる。」

「あ・・・マリがいいひんねん。探しといてもらえる?」

「りょ〜かい。」


そのまま白衣を脱ぐのも忘れて出て行くから
なんとなくりかちゃんの正体が予想できた。


471 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:30

「ちょっと先生!いまの普通とめるでしょ?」

藤本がブーたれてる。

しゃあないなぁ。

「手伝ったるからはよ片付け。」

「バイト間に合わなかったら先生のせいだからね。」


なんでやねん。
学生実験の日やのにギリギリに入れるヤツが悪いんちゃうの?



472 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:31

あぁ終わった終わった。

部屋に戻ってお茶を入れて一息つく。
たらたらパソコンで論文を検索してる・・・ふり。

コツコツ指で机をたたく。
自分でやってるクセにその音によけいにイライラ。


「だぁ〜!!もぉ。」



コンコン


「どうぞ〜」


カチャッ

473 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:31

パタパタ足音。


おっ


「うりゃぁっ!」

振り返るといきなり腕の中にダイブ。


「ん〜」

鼻先でほっぺたにスリスリ。

挨拶の習性は残ったままらしい。


なんやろう。
えらい機嫌いいな。


視線を感じてドアのほうをみると覗き込む人影2つ。

474 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:31

「入ってええよ?」

「いいの?後藤たちジャマじゃない?」

なんの遠慮や?


「その辺すわりぃや。」

向こうむいて座りなおしたマリの腰に腕をまわすと
安心したように背中を預けてくる。


んで・・・

「なんでツレはそんな赤くなってんの?」

「あ。やっぱみえるんだ。」

ごっちんがうれしそうに目を細める。


ん?
てことは・・・

「りかちゃんゆうのはその子か?」

ペコリとお辞儀される。

ふ〜ん。
ほんでマリの機嫌がええんか。

じゃさっきの悲鳴は急に抱きつかれたかなんかで
ビックリしたってとこか?

475 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:32

グニッ

イタタ!


「なんで裕ちゃんが梨華ちゃんしってるの?」

「なんでってごっちんが・・・な?」

「ほんと?」

うんうんってうなずいてくれるからようやく解放される。


うぅ〜ひどい子やでこの子。

二の腕を撫でてるとわらわれた。


「講義のときとぜんっぜん違うね。」

「うっさいわ。ほんでアンタはいつまで赤いねん?」


強引に話をふったらビクッとされた。


なんやねんそんな怯えんでもいいやん。

476 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:33

「あの・・・それ・・・」


指差す先にあるのはマリの髪にギリギリ隠れるところ。


「ん?」

マリが髪をかきあげると・・・


はぁこれか。

どうせ誰にもみえへんからってな。
みえるヤツおんの忘れてたわ。


「やぁらし〜これで色々想像してたんや。」

「あ・・・いや・・・そんな・・・ね?」

かなりパニクッてるらしい。


「え〜なに?後藤にして欲しいの?」

同意を求めたはずのごっちんにも追い込まれて八の字のマユ。


「ウソだよ。」

ごっちんに頭を撫でられてる。
目が合ったときふっとわらったその顔が泣いてるようにみえた。

・・・まぁなんや。
いろいろあるんやろうけどね。

477 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:33

グニッ

うがっ!またぁ〜
しかもさっきよりキツイし。

「だからイタイって!文句は口でゆうてや。」

「バーカバーカ!エロ裕子!!」

「いやいや文句はええけど手ぇ離してって!」

「なんだよぉかわいい子みてデレデレしちゃってさぁ・・・」

「すねてもいいから手ぇ離して!」


最後にぐい〜って引っ張ってから離すから涙が出そうになる。

ごっちんが肩を震わせてわらいをこらえてる。

・・・誰のせいやねん。
アホぉ。


はぁ〜

まっ誰よりもアホなんは
こんなことされても口元の緩めてるアタシやけどな。


いやいやほんま。

アホやでアタシ。



おわり
478 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:37
はい更新終了です。

なんか予定外に忙しかったせいで間があいてしまいました。
あっちゅうまにGWも過ぎ去ってしまいましたね。
479 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:39
実家にいた頃、普通に家事を手伝ってたせいで
帰ったらついつい動いてしまうもんで休めないんです。
損な性分ですねぇほんまに。
480 名前:ちぃ 投稿日:2004/05/08(土) 22:40
ではまた来々週末あたりに。
481 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/02(水) 23:35
来々週末もとぉに過ぎてしまってますが
まだしばらくは無理そうです。

このところどうも忙しいもんで・・・
44時間起きてると視界が黄色くなることを知りましたよ。
現実逃避もままならない状況なのでもう少し落ち着いたら戻ります。

そいではまた。
482 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/06(日) 16:17
お仕事大変だったんですね。
のんびり待ってます。
483 名前:つかさ 投稿日:2004/06/06(日) 23:08
いつまでも待ってます。

仕事頑張って下さい。
身体にはくれぐれも気をつけて。
484 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/06(日) 23:35
あ・・・いまもう一個のほうに短編上げてきました。
待ってもらってると思うとどうもうれしくて。

また時間ができればこっちも進めます。
ではまた。
485 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:03
更新します。
486 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:04

『中澤が小さい子連れて歩いてるってよ。』

『えぇ〜先生の子供?』

『結婚してないじゃん?未婚の母ってヤツ?』





正直・・・・・・うんざり。

ごっちん以外にも見える子がいたゆうことやな。
まぁこんだけ人が集まっとったら考えられなくもない。

みえるヤツには普通にアタシの周りうろちょろしてるマリがみえる。
恐ろしげな様子もなくアタシがその存在を認識してるし
しかもたまにごっちんとも遊んでる。

みえてる自覚なくみてるヤツなんか特に
人外のものだと判断するのはなかなか難しいことなのかもしれん。



そんなこんなで嫌な予感がしてたら・・・

いつもは軽く挨拶だけですませるところが
事務のおっちゃんにつかまった。

でしばしの立ち話し。

487 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:04

「だから・・・部外者を大学に連れてきたりしてませんって。」

「いやしかし何件も報告はあるんですよ?」


なんて説明する?
おっちゃんの整髪料だかオーデコロンだかわからん匂いに
鼻をつまんで口だけで呼吸してる子がみえへんねんもんなぁ。

無理やろ。

でもおかしいな。
この子呼吸ってする必要ないんちゃうの?

習慣ってヤツか?



答えをせかす咳払いにイライラ。

ん〜


「実際にみたって人を集めてもらえれば説明できるかもしれませんけど・・・」

みえる人とみえへん人の主観と客観を交えたら理解できるかな。


「どうしてそんなことをする必要があるんですか?」

そうやんなぁ。
そんなジャマくさいこと事務がやるわけない。

ほんならねちねちと文句ゆうのやめぇや。


488 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:05

「先生のプライベートに口出ししようという訳ではないんです。
 ただお子さんをどこかに預けるとか・・・」

「はい?」

アタシが未婚の母って事務公認なん?
ちゅうか誰の子やねん?なにげに失礼な見解やで。

「こども産んだ覚えはありませんけど?」


おぉ・・・固まってる。
間抜けな顔。

ここに履歴書出したとき書いてないやん。
そっから後やとしてもいつお腹大きなった?


「・・・失礼します。」

できるだけ低くちょっと怒った声で
でもこっそりちっちゃい手を握って事務を後にする。


489 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:05

自分の部屋で思い返してみるとなんかわらえる。

ん〜これでしばらくあのおっちゃんからの苦情はないな。
これ普通の会社やったら使えんおっちゃんが飛ばされるいい機会やん。
噂話を鵜呑みにして事実関係を確認せんと完全なフライング。
めったにない大ポカやらかしてくれて話し流れたし。


「どしたの?」

「ん?」


ニヤニヤわらってるほっぺたをつつかれた。


あぐっ
ちゅっちゅ〜


「なにすんだよぉ!」

ちゅぽんって指が逃げてゆく。


「アホォ!アホ裕子!!」

「はいはい。どうせ裕ちゃんはアホですよぉ〜だ。」


手のとどかんとこまで逃げてううぅって唸ってる。

・・・かわええ。

ギャップありすぎ。
昨日の夜と。

490 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:06


1限目は講義ナシやから実験のほうちょろっと進める。
ちょろっと仕掛けるだけやから急いでやって即行で返ってくる。


ぬ?

ドアを開けてまたほっぺたが緩む。
後ろ手で音がせんようにドアを閉める。


いや・・・だってなぁ?

付いてこうへんなぁって思ってたら夢の中。


イスに座ってるマリを覗き込もうと少しかがんだとき
部屋の電気が少し暗くなったような気がした。

491 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:06

ん?

蛍光灯を見上げようとして・・・

視界がぐにゃっと歪む。

妙な浮遊感。
ゆうこときかん身体。
支えきらんでカクンッてヒザが落ちる。

カシャーン

やけに遠くに聞こえる音。
驚いたマリの顔。

とっさに手をついたイスの背もたれからも
ズルッとすべって伸ばしてくれたマリの腕にしがみつく。

「裕ちゃん?!」

でも答えようにもこみあげてきた吐き気でうまく声にならなくて。
ゆっくり息をはいてゆっくり息を吸う。


「ねぇ顔色悪いよ?大丈夫?」


大丈夫。
アタシはまだ大丈夫。

ゆっくり背中を這う手。
少しずつ楽になる。

492 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:07


「・・・ごめん。」

マリの腰にまわした腕をといてぺたんと床に腰を下ろす。


「なにが?」


まだちょっとクラクラする頭。
我慢してマリを見上げる。


「起こしてしまったなぁって。」

「そんなこといいよ別に。」


そっか。

「それより大丈夫なの?」

「マリがチュウしてくれたらもっと元気になるかもねぇ。」

「バカ!!」

いてっ!

もっといたわってくれても・・・

ちっちゃい手が飛んで来たあとギロッと睨まれた。


うっ・・・こわっ

493 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:07

グイッとアゴを上げられて噛み付かれた。

チュウしてってゆうてんのに。
いや・・・まじで口んなか血ぃの味すんねんけど?

ぎゅうぅって抱きつかれる。


「心配させないでよぉ。」

「・・・ごめんな?でもいつまでも座りこんでたらアカンわ。
 ほらたって?もうすぐ授業やし準備せな。」

しぶしぶ立ち上がったマリはアタシの手を引っ張ってイスに座らせる。




「裕ちゃんは座ってて?マリが準備するから。」

「でもわからんやろ?」

「なにするか教えてくれたらマリにもできるよ。」

494 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:08

ん〜いいだしたらきかん子やからなぁ。
ここはお言葉に甘えよう。


「んじゃこれ人数分コピーして?」

「ほい。」

「これ・・・やから。」

「じゃあ・・・だね。」


ちゃかちゃか動いてくれる背中が頼もしい。

ごっちんにいわれてからずっと気にはしてた。
だから栄養を充分とって運動もそれなりに・・・

それでもまた少し痩せたしおそってくる眠気も止まらん。

絶対に気付かれたくない。
それがこの子のせいなんてこと。


気付かれたら・・・側にいてくれんくなるかもしれんやん?

それだけは嫌やしな。




おわり

495 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:11
はい更新終了です。

久々の更新でした。
いやぁなんですねぇたいぶんあきましたね。

496 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:15
今後もどうなることやらわからない状況ですが
なんとか話しがきっちり落ちるとこまでは行きますよ。

497 名前:ちぃ 投稿日:2004/06/27(日) 20:16
ではまたヒマができたときに。

498 名前:名無し読者 投稿日:2004/06/28(月) 16:41
どうなるんだろ‥‥中澤さん‥。
499 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/07/10(土) 08:09
今週は更新あるんだろうか。
・・・・矢口さんも中澤さんも心配です。
500 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:22
更新します。
501 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:23

「裕ちゃん・・・・・・」

あ?

「珍しいな。なんや?テスト問題は教えへんでぇ。」


どうしたんごっちん。
そんな顔して。

研究室配属されてはじめて研究棟のほうに来る子もいるぐらいやし
1年のごっちんがこんなとこうろちょろしてるのは変な感じ。


「あれ?後藤だ。」

ん?

502 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:23

「知り合いなん?」

「後藤は市井の後輩。」

「そりゃそうやろ。」

ごっちんが紗耶香の先輩なわけがないやろうが。


「じゃ聞くなよ。」

「だからなんの知り合いやっちゅうてんねん。」


「「アウトドアサークル。」」


なにそれ?

503 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:23

「あのねぇ夏はマリンスポーツとキャンプで冬はウィンタースポーツだよ。」

「ふ〜ん。そうなんや。なんやたのしそうやな。」

「たのしいよ?裕ちゃんも来る?」

「そうやねぇヒマがあればね。」


かわいい子やでごっちん。
頭なでなでしといたろ。


「あのさ。市井のときと態度ちがくね?」

「やかましい。だぁ〜っとれ。」

「いででで・・・!」

紗耶香の頭をぐぅでゴリゴリしてると
横でごっちんがキョロキョロしてる。

504 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:24

「いまどこにいるの?」

「マリならアタシの部屋やで。」

「っておい!なんで後藤がしってんだよ?」


紗耶香はしらんのか?
ごっちんが例のアレがみえるってこと。



ふと視線を感じてドアのほうをみると隠れてるようで
きっちり見切れてる梨華ちゃん?

なにしてんの?

その視線は紗耶香とじゃれてるごっちんの背中。
いつかみた泣きそうな顔。

ん〜ごっちんに夢中でアタシの視線には気づかんってか?


505 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:24

「裕ちゃん?」

「ん?・・・あ!なんか用事あったんちゃうん?」

「そうだった。いま時間いい?」

「いいよ1時間くらいなら空いてる。
 紗耶香ぁあとこの手順どおりで。結果でてからまた。」

「ラジャ。」

いつか圭織がしてみせた敬礼。
しっかりうつっとんな。


506 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:25


とりあえずお茶でも。


「んで?どうしたん?」

「うん。」


・・・うんじゃわからんやろ?

ぐでっと背中に乗っかるマリがペチペチと
首のあたりをさわってくるからその手を止める。


「こらこら。」

アカンで。


「んんぅ〜」

ちっちゃい子みたいに拗ねた声。
もうその声にはだまされへん。

特に今日は発情期っぽいから。


507 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:25

「なんだろうねぇ?」

「なんや?」

ほんまどうしたんごっちん。


「梨華ちゃんってさ・・・そのなんていうか
 ・・・心残りとかなくなっちゃうと消えちゃうのかな?」

「さぁね。それは本人じゃないとわからんのちゃうの?」

「そうなの?」


独占欲はそうとうなもんやと思うんやけどなぁあの子。
心残り・・・未練・・・そんなもので留まってる時点でなぁ・・・


なくなるのか?
心残り。


508 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:26

「わらうんだよ梨華ちゃん。つらそうにさ。だから・・・」

照れたようにアヒル口。


だから・・・

抱っこしたんの?チュウしたんの?


アホやなぁ。
よけいつらいやん。

消えるとか以前の問題のような気がするけどな。


「ごっちんは一緒にいたいの?」

「うん。」

そっか。

509 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:26

ごっちんも答えが欲しいんじゃないんやろ?
ただ聞いて欲しかっただけ。

だからアタシは聞くだけ。
答えは用意しいひん。


だってなぁ・・・身体を蝕むものの正体は愛する人。
それは幸せなのかどうかもわからへん。

人にオススメすることはできひん。



マリがアゴを肩に乗っけてくる。

「ズルい。」

なんや?

「ごっつぁんとばっかり話して。」

鼻先で首筋をぐいぐい押してみたりしてくる。
でもきっちり無視しといたりして。



「ごっちんお茶もういっぱい飲む?」

「うん。」

「んがぁ〜!無視すんなよぉ!!」



ほんとはもうごっちんだってわかってるんちゃうの。

なぁ?





おわり

510 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:27
はい更新終了です。
511 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:32
半年が終わってしまいました。
あっとゆうまに。恐ろしく早い。

やることいっぱいあるくせに時間がぁ・・・
妄想がぽこぽこ浮かんでくるのに時間がぁ・・・
512 名前:ちぃ 投稿日:2004/07/11(日) 21:38
あぁ小さなことからコツコツと・・・
全部やりきってやる!負けへんぞぉ!

あ・・・ではまたヒマができたときに。
513 名前:名無し読者 投稿日:2004/07/21(水) 11:54
いしごまかな?
続き待ってます。
514 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:15
久々に更新です。
515 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:15

アゴをテーブルに乗っけたちっちゃい背中がすねてる。

でもな無茶ゆうたのはそっちやって。
いくら発情期やからって講義中にチュウを迫っていいわけない。

わかってぇや。


「マ〜リちゃん。」

・・・・・・

あっ無視や。

お風呂でもずっとそう。
背中を流してやったときわずかにもらしたちっちゃい声。
あからさまにしまったって雰囲気やったから
聞かんかったふりでそのままにしといたけど・・・


いいかな?


よいしょっ


「イタっ!もぉなにぃ?」

振り返ろうとする首根っこをテーブルへ押さえ込む。
ジタバタするから・・・必要以上に力が入る。

516 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:16

何気にアタシもかなりきてたらしい。
後ろから着てるものをむきむき。

「ちょっ・・・ヤ!」


ずり上げられたTシャツとヒザまで落ちた短パン。
必死になおそうともがいてる。

・・・素直やないね。

ふ〜ん





ぱっと手を離す。


はぁ〜

聞こえよがしのため息も。


突然自由になったことに戸惑いを覚えたのか動きが止まる。
しばらくして緩慢な動きで肩越しにこっちをうかがってくる。

その目が不安げに揺れてた。

517 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:16

こらっそこの小心者。
いいんかそんなカッコでそんな顔。

みえ隠れする色情の欠片。


ゆうても発情期やしなぁ。
ほんまに嫌やったわけじゃない。



「・・・逃げんといて?」


ゆっくりと背中に手を伸ばすとそれを視線で追うクセに今度はじっとしてる。
触れた瞬間身体をピクッとさせて恥ずかしそうに顔をそらしてしまう。

まだきちっと整ってなかった服をもう一度乱し始める。



「なぁもうちょっと足開かれへん?」

「・・・ャダ。」

そうか。

う〜ん・・・

518 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:17

肩に軽く歯を立てる。

「もぉ痛いってばぁ・・・」


うそつけ。
痛くはしてへんっちゅうに。

イヤイヤってするから噛んだとこをなめてやると
クスクスわらう声。


くすぐったい?


しまったウエストあたりをゆる〜くなでると
ふっと息を詰めたあとゆっくりそれを解放する。

繰り返すと抵抗が弱まって
かわりに甘い吐息と小さく震える身体。


「いい子やなぁマリ。ほら・・・」

内ももをなでながら少しずつヒザを広げていく。


「んっ・・・ゆぅちゃん・・・の・・・ばかぁ・・・」

「違うで?裕ちゃんはアホやねん。」


耳たぶを唇で軽く引っ張ると形だけの拒否。
とりあえず反抗せんと気がすまんらしい。

519 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:17



「・・・恥ずかしい?」

・・・・・・

あら?
なに固まってんの?
前は服きぃゆうてもイヤやってゆうてたくせに。
そんなかわいいと意地悪したなるやん。


マリの身体をひょいと完全にテーブルにあずけて・・・


ペロッ

「ダメッ!」

「なんで?」

「なんでって・・・だって・・・」

隠そうとする手をペシッと払って舌を這わす。


「やぁだ!ねぇ・・・やめてよぉ・・・・・・」



アタシが望むからアンタが存在するってゆうんなら
アンタはつま先から頭のてっぺんまで全部アタシのもんやろ?

520 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:18

「ぁっ・・・もぉ・・・ヤ・・・」

だんだん甘くなってくる声。
それでも繰り返される拒絶の言葉。

ん〜ほんま素直やないねぇ。
ココとろとろになってるクセに。


「マリの身体は気持ちいいって。」

「っ・・・」

聞きたくないってゆうみたいに手で耳を塞いでる。

恥ずかしかろうがなにしようが
身体は気持ちいいことは好きやもんね。
その証拠にかわいそうなくらいにぷっくりしてる。

舌先で転がすとビクッと身体がはねる。

かわいい声で鳴くから楽しくてしょうがない。


内腿を撫でてるとその指をぎゅっとつかまれた。

「・・・っ・・・ぃじわるぅ・・・」

ん?

あっもしかしてやりすぎた?

521 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:18

「っ・・・ぁあっ・・・んぅっ・・・」

マリが背中をキュッて反るから自分の指が・・・
自分の指がマリを侵すのがみえる。


指が濡れて光ってる。
手のひらを伝って滴り落ちる。

「・・・ゆぅちゃんっ・・・裕ちゃん・・・」

「ん?」

「ねぇ・・・ヤダ・・・抱っこぉ・・・」


しゃあないなぁ。



テーブルからマリをおろしてそのままヒザの上でギュッてする。

熱い身体。
乱れた呼吸。

しばらくじっとしてたらもじもじしだした。

まぁね。
こんなとこで止められるとつらいわな。

522 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:19

「続き・・・欲しい?」

コクンと頭がゆれる。


「じゃ裕ちゃんにチュウして?」


おわっ

少し後ろにひいたつもりやったのに
首にからみついた腕がそうはさせてくれんかった。

そんでキスの雨。

されるがままになってると急にぴたっと止まる。


「・・・ぅちゃん・・・ゆびぃ。」

「あ・・・うん。」


ほお擦りしてからそのツヤツヤな唇にお返しのチュウ。
素直ないい子の柔らかで敏感なとこに・・・

523 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:19

深く深くむさぼりながら酔いしれる。

やけどしそうに熱い吐息。
上気した滑らかな肌。
潤んだ目。
滴る蜜。

なぁ全部アタシのやで?

その身体も・・・心も・・・声でさえも
アンタはアタシのもんや。


アタシだけの。

抗いがたい強い感情に支配される。


524 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:19

ふいに肩を押されて我に返る。

あ?


「・・・もっ・・・いい・・・」

くたっとなったマリの目の奥に少しだけみえた・・・怯え?


しまった。
これははじめてかもしれん。


「ごめん。」

「ゆぅ・・・ちゃん?」


マリのくりっとした目が怪訝そうにみあげてくる。

なに?


伸びてきたマリの指がつぅっと眉間をさわる。


「シワよってた?」

「うん。途中からずっと。」

そっか。


「・・・ヤだった?マリとしたくない?」

525 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:20

へ?

「違う違う。」


嫌われたかもしれんって思ったん?
そんな心配することないのに。


「マリはアタシが怖い?」

フルフルと横にふられるからうれしくなる。

じゃアタシも勘違いやな。


でもなアタシは・・・なんかちょっと自分が怖い。

やっぱり考えてしまうんよ。
一応いろいろね。

そのくせ毎回その葛藤をぶっちぎりで振り切ってる。
それほど目の前のなにかわからんヤツにハマってて・・・

腕の中で壊したくなる。
壊れたら困るくせに。


526 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:20

「裕ちゃん。」

ん?


下からギュウって抱きしめられる。


「好きぃ。」

くてっと力が抜ける。


あぁどうしよう。
どうしてくれよう。


あぐっ


「いたぁい!もぉどうして噛むのさぁ!!」


う゛ぅ・・・たたかれた。

なんで噛むかってそりゃアレや。
アンタが教えたんやろ?

マリの腕をぐいっと後ろにまとめて抑える。


言葉にならん思いをぶつける方法。


527 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:21

あ〜って口を開けると痛みを予想してかギュッと目を閉じるから
ご期待に沿ってあむってアゴを軽くかじる。


「もぉ〜やぁだよぉ〜」

首をフルフルふって抵抗。



いやぁなんか楽しいね。
メルヘンな世界でいいやん。

・・・めでたしめでたしでおわろ?


あんまり調子の良くない身体で願う。
叶わないとしりながら。





おわり


528 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:26
はい更新終了です。

辻さんと加護さんももう卒業されたんですよね。
なんかあの2人なら大丈夫な気がするんです。
1人でなく2人なとこがポイント。

2人がいればそこに辻加護ワールドを召喚できる。
529 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:31
あとはその場にいる第三者がうまく操れるかどうかですよね。
暴走させすぎると浮いてしまいますから。

ともあれ2人の絶妙なコンビネーションを楽しみにしております。
530 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/08(日) 21:32
ではまたヒマができたときに。
531 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:00
更新します。
532 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:00

ここんとこ身体がおもい。

授業中立ってるのがつらくてイスに座ってるか
マリが後ろからギュッて支えてもらってたりして・・・

早くよくなってって心配そうに見上げてくるその目にすこぉしだけ罪悪感。

アタシの体調が良くなるなんてありえん話やから。

533 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:01

「で?紗耶香はこの実験でなにを証明できるって考えてるん?」

「だからこの結果が出れば少なくとも・・・が・・・てことが・・・」

「あ〜それやったら・・・な実験も入れたほうが・・・」

「そっか。じゃ・・・」


真剣な顔で考え込んでる。

なんやなぁ。
この子もだんだんしっかりしてきたんやね。


「なんだよ?」

「んや別に。」


ピピピッピピピッ

「あっ時間だ。じゃ続きまた2時間後くらいでいい?」

ん〜

「明日にしてもらえへんかな?」

今日はもう頭使うん辛いわ。


「・・・まぁいいけど。締め切り今月末からね。」

「あぁ。こっちでも考えとくわ。」

534 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:01

はぁ〜

ドアが閉まると思わず出るため息。


背もたれに身体を預けると
よしよしって頭を撫でられる。

優しい子やな。

その手を取って引き寄せる。


「どしたの?」

その目をみながらん〜ってをおねだり。

「なぁにもぉ・・・」

チュッ

「元気になった?」

「・・・ん。」

そのままヒザの上に誘ってギュッてする。



・・・しんどいなぁ。

「ごめん。裕ちゃんちょっと寝るわ。
 1時間たったらおこして?」

「いいけどここで寝るの?」

「ん。」

もう眠くて眠くて・・・

勝手に降りてくる瞼に逆らえずマリの肩を枕にする。


「・・・・・・」

マリがなんかゆうてる。

まぁええ。
起きてから聞こ。

意識はずるずると深い淵の底へ。


535 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:02


目を開けると白い天井。

え?


消毒液くさい空気。
白いカーテン。

極めつけに腕に刺さった点滴。

予想できんことじゃないから思ったより冷静。

どう考えても・・・な。
なんでってゆうよりとうとうって感じやな。

不思議なんはどうやってココにきたんかなってことくらいやな。


「裕ちゃん!」

あ?

いまにも泣きそうな顔。

でなんでそんな離れてんの?

536 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:02

「マリ?」

「・・・ダメだよ。」


伸ばした腕が行き場を失う。


なにが?
なにがアカンの?


「マリのせいだって梨華ちゃんがいってた。」


は?

「なにゆうてんの?」

「だって梨華ちゃんがごっつぁんも倒れたことあるっていうんだもん。」



いらんこと教えやがって。

537 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:03

「そやったらなんやの。マリはずっと離れてられるんや?」


マリがキュッと唇を噛む。

「でも・・・」


「ほら・・・こっちおいで?」


それでもゆるく横に首を振りながらじりじりと下がっていく。

クルッと踵を返してダッシュ。

っておいっ!

あぁもぉ!!

無理やりに身体を起こして腕の点滴を引っこ抜く。
ベットからずり落ち必死に廊下へ転がり出る。

「マリ!!」

ちっちゃくなっていく背中に叫んだとき
耳鳴りと眩暈に襲われる。

視界の端っこでマリが振り返ったような気がした。

538 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:03

あぁくそぉこんなときに。
いやこんなときやからか・・・


「中澤さん?!」「裕ちゃん!!」

見知らん女の人と・・・圭織?


「ちょっとなにやってんのアナタ!安静にしてなきゃダメでしょ?!」



廊下で回収されてそのままベットに強制送還。

しこたま怒られた。
分別のある人間のやることかと。

しゃあないやん。

正直な話しマリについては分別なんてあったもんじゃない。


「わかってるわそれくらい。わかってるんやって。」

つぶやいた声は少しおおきかったらしい。

539 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:04

「わかってるのなら・・・」

「保田先生!すいません・・・あの・・・」


圭織に呼ばれた医者ははっとした顔をする。


「あ・・・申し訳ありません。いいすぎました。」

「・・・いえ。こちらこそ・・・」


確かに点滴引っこ抜いたのはいかんかった。
おかげで内出血して点滴する腕を代えるしかなかったし。


「では私はこれで失礼しますがくれぐれも無茶しないように。」

眼鏡の奥の大きな猫の目がまだ怒ってた。



マリがあの目を見たらやっぱり怯えるやろうか?
マウスってどのレベルで猫を危険なものととらえてるんやろう?

遺伝子的なもんやったら反応できそうなくらいの目してるよな。

540 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:04

「裕ちゃん・・・」

「ん?」

「まりっぺとなにかあったの?」


あぁ・・・

「あの子に気付かれた。」

「・・・・・・」


圭織が複雑な表情を浮かべる。

ようやくわかったような気がする。
あの娘がなんでごっちんのすぐ側じゃなくて少し離れたとこにいるのかが。

541 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:05

そのあと圭織がぽつぽつと話してくれた。

夏休みやからって偶然ノンちゃんとあいぼんをポケットにいれてたこと。
2人がマリの泣き声を聞きつけてくれたおかげでアタシがココにいるとゆうこと。
2人がゆうにはマリはずっとアタシにくっついたままやったらしい。

運ばれる途中ロッカーにキャンプ道具をしまいに来てたごっちんに会ったこと。
紗耶香もごっちんも心配そうにしてたけど大学に置いてきたこと。


「なんやほんま・・・タイミング良かったのか悪かったのか・・・」

アタシにとってはどっちや?

そのまま逝ってもよかった。
自分で死ぬ気はないにしろいつかはくるんや。


そしたらアタシはマリといっしょに・・・


「カオは裕ちゃんがいなくなると寂しいよ。」


542 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:05

っ!

視線を向けると泣きそうな顔。
さっきのマリといっしょ。

「そんなんゆわれてもなぁ・・・」


アタシにどうしろっちゅうねん。


ふとみたドアの小さな窓にちっちゃい影がうつってる。
いつかみたあの娘みたいに寂しそうな顔してるんやろうね。


「アタシは・・・マリといたいんや。それだけや。」

生きてても死んでてもどっちでもかまわんねん。


「ヤだ!カオだって裕ちゃん好きだもん。
 紗耶香だってごっちんだって・・・・・・」


泣かんといて。
アタシもみんなのことちゃんと好きなんや。

でもマリはアタシのもの。
アタシが望むから存在する。

そしたらアタシはマリのもんやと思うんや。

543 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:06

「それでも・・・それでもアタシはマリがおらんとつらい。
 今日みたいに逃げられたらどうしようもなく悲しい。」

カラッ

ドアがわずかに開く。


ポケットのマウス達が過剰に反応するから圭織が振り返る。

「まりっぺ?」

みえへん圭織は懸命にアタシと2匹の視線を追っかける。


涙で濡れた目を擦る手。
しゃくりあげる肩。

「ゆ゛ぅぢゃ・・・ん゛・・・」

ほらそんな顔だってめちゃめちゃかわいい。

手の届く距離まで来たマリを抱き寄せる。


「どこいくつもりやの。アンタの居場所はココしかないやろ?」

「でも・・・でもゆ゛ぅぢゃんが・・・」

落ち着くまで背中をぽんぽんってしとく。

544 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:06

ふとみると圭織がまた複雑な表情をしてる。

「カオが預かろっか?」

「へ?」

「元気になるまでくらいは我慢できるでしょ?」


なんやその言いかた。
人を我慢できん子供みたいに。

感情がそのまま顔に出たのか圭織がおかしそうにわらう。

「カオにだってわかるよ。
 カオだってノンちゃんとあいぼんいなくなるとつらいもん。」


あぁ・・・そっか。

なんや
そうなんや。


545 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:07


んじゃ・・・お願いしよっかな。


「マリ?いいか?」

コクンとうなずく。


「圭織?栄養と休養を充分にな。」

「まかしといて。体力には自信あんだよ?」


大丈夫・・・かな?


「裕ちゃん・・・」

ん?

圭織が大きな目でみつめてくる。


546 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:07


「なんでも独りで背負おうとしないでいいんだよ?」


あぁ・・・そやな。

身体弱ってるときこんなんゆわれたら・・・


「まぁなんかわかるけどね。」

なんやニヤニヤして?


「裕ちゃんヤキモチやきだからさぁ。
 他の人に懐かせたくないんだよねぇ?」


なっ!

そんなこと

・・・あるかな?


547 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:08

やばいなぁそうやったんか。
それだけのことで命までかけるか・・・こわいな。

こわいなぁアタシ。


「ほな今日は圭織と帰り?」

「うん。」

「ちょっとの間や。すぐ元気になるから。」


頭を撫でるとほっとしたようにわらう。


「あ圭織ぃ・・・紗耶香に明日ここに来るように伝言おねがいできるか?」

「いいよ。」

打ち合わせ終わらせとかなな。

「それ終わったらゆっくり休みなよ。」

「わかった。」


・・・・・・よかった。
圭織が今日ノンちゃんとあいぼんつれててよかった。


ほんま生きててよかった。




おわり


548 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:12
はい更新終わりです。

娘。さんたちはハワイですか。
向こうはいい天気でしょうかね。
仕事ではあるんでしょうが少しは羽が伸ばせるといいんですが。
549 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:18
なにかが一段落するとまたなにかの締め切りとか
ほんまに勘弁して欲しいです。

でも身体が動くうちにやれるだけやらんとね。
後々の自分の評価に直接つながるもんで。
550 名前:ちぃ 投稿日:2004/08/29(日) 23:22
できることは何でもやろう。
それでアカンかったら諦めもつくやろうし。
明日もがんばるべ。

ではまたヒマなときに。
551 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:45
更新します。
552 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:46

病名は過労。

それくらいしか付けようがないと思う。
どこか一点が悪いんじゃなくて満遍なくちょっとずつおかしいって。

入院も今日で終わり。

なんかゆっくりな時間。
考える時間もいっぱいあった。

「中澤さん。準備できました?」

「あ・・・はい。」

そんなに長い入院じゃないから荷物も軽い。
でも欲をいえば誰かが迎えに来てくれてたら・・・なんてね。

一応連絡はいれといてけど大学の講義ももう始まってしまった。

わがままゆうてられん。


「これからは無茶しないように。」

並んで歩く先生の猫の目がキロッとにらむ。
いやにらんだようにみえるだけか。

「はぁ。できるだけ。」

神妙にうなずくと満足げにキュッと目が細まった。

・・・何気にちょっとかわいいやん。
はじめにめっちゃ怒られたからなぁ。
もっと怖い人かと思ってた。

「じゃ。もうこないでよ?」

わらって手を振りながら病院の玄関から出る。


553 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:46

まだ暑い空気。
日差しの強さにクラッとする。

「うぅ・・・きついな。」


でも久しぶりの薬くさくない空気。

なにやら上機嫌になってしまう。


タクシーに乗り込んでごそごそと携帯を探す。

あった。

久しぶりに電源を入れてとりあえず新着メールの問い合わせ。

もともと携帯をそんなに使ってないから電源を落とすことに不安はなかった。
マリのことは時々やってくる圭織が教えてくれたから・・・

別になんも・・・ってなんじゃこりゃぁ!


けっこうな件数。

圭織とごっちん?

あれ?
でも圭織って電源切ってんのしってるやろ?

554 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:47

一番古い圭織のメールを開ける。

『ゆうちんはやくげんきなて』

ちっちゃい字あらへんがな。
ひらがなだけやし。

これって・・・マリ?
え?字ぃわかるようになったん?
圭織が携帯メール教えたんか?

次々に開いていくと現れる暗号めいた片言の内容。
それはメールとゆうより日記みたいで。


『どりるはじまた』

『じむつかしい』

『おかずおぼえる』

『くらいのこわい』

・・・・・・


『なぐらりた りかちゃんごめん ゆうちゃんごめん』

は?
殴られた?

555 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:47

理由は同じ日付のごっちんのメールで判明した。

たぶんそれはアタシが入院してから何回目かのマリの発情期の日。
梨華ちゃん襲ってごっちんに殴られたと。そうゆうことやね。

ふつふつと沸いてくる感情。

ほらだから嫌やってん。


でもなんか目に浮かぶ。

殴られてビビって泣いてるマリ。
泣きながらごめんってメールしてるマリ。

悔しいけど・・・ごっちんにはちゃんと謝らなアカンけど・・・
かわいいやんか。

まぁなんや。
しゃあないわなぁちっちゃくてもケモノやし。
発情期におかしくなるのも強いものに怯えるのも。

アタシに謝るってことは悪いことしたと思ってんねやね。
その気持ちに免じて許したるか。

・・・甘いなぁアタシ。


556 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:47


そんで最後のメール。
今朝たぶん圭織が学校へ行くまでに送信されたもの。

『いえでまってる ゆうちゃんはやくかえってきて』


あ・・・

不覚にも涙が出そうになった。
タクシーの中やのに。



557 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:48


タクシーを降りると久しぶりの我が家。

鍵を取り出してドアを開けて・・・
その間がもどかしく感じる。


「ただいまぁ〜」


でも家の中には気配がなくて急に不安に襲われる。

もしかしてみえんくなったんやろうか?
いやいや大丈夫・・・大丈夫なはず。


落ち着け。落ち着いて。

そうや。
こんなときいつもマリは・・・


寝室のドアを開ける。

力が抜けてそこにへたり込みそうになる。

心臓に悪いわ。


558 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:48

めでたしめでたしで終わる御伽噺の世界じゃない。
それでもいいと思える。

過ぎ行く日々。
手に入れるものもあれば手放すものもある。
今回ほんまに人のつながりに感謝。

圭織にちゃんとお礼せなアカンな。

気持ちよさそうに眠りこける姿に口元がゆるんでしまう。
ほんまは眠る必要もないくせに。

メールのせいで期待した感動の再開とは違うけど・・・


前髪をサラサラとかき上げてそのおでこに唇で触れる。

「ん〜」

ちっちゃい腕が背中に回る。


「起きた?」

「・・・ううん。」

ほななんで返事かえってくんねん。

559 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:49

「もうちょっと寝る?」

「ん。」


昨日あんまり寝れへんかったんやろか?

その腕に誘われるままに隣に滑り込む。

アタシはここしばらく脳みそとけるんちゃうかと思うほど寝た。
だからいっこうに眠気はやってこうへん。

忙しく人が働く昼下がり。
お昼寝なんてのも贅沢やけど寝顔をみてるだけなんてもっと贅沢かな。

しがみつくように寄せてくるその身体を抱きしめる。

アタシにとっては毒であり薬でもあるわけやね
この軟らかい感触も甘い匂いも。


叶わぬ願いと思ってた。

でも改めて願おうと思う。
自分だけじゃないほかの人の力も借りて。

偶然に手に入れたこの子。
アタシの日常から去ってしまわぬように。



「好きやで。」

こっそり耳元にささやく。


「・・・・・・しってる。」

うぉっ
なんやまだ起きてるんかい。

恥ずかしそうにうれしそうにわらうほっぺたは桜色。


チュッ


「おやすみ裕ちゃん。」

「ん。おやすみ。」






560 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:50

唐突ですがこれでこの話は完結としたいと思います。
もうすぐ終わりですって予告を入れたほうが良かったんですけどね。
自分でもけっこういつ終わらせようかと迷ってたもので。

ほんとはもっと短かったんですよ。
「書きたりんぐらいがちょうどいい」が信条なんで。
今回は信条に反して長くなってしまいました。
更新スピードが落ちたもんでよけいに長く感じたりもして。

561 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:50

話を考えたとき落ち込み気味だったもんで中澤さんがすぐ死んであの世で・・・
ってありきたりすぎて精神状態が安定したときこれはナシやなぁと。

話の筋をどうにか納得できる着地地点まで誘導してるうちに
これはもしやスランプと呼ばれるものですかなんて思いながら。

562 名前:ちぃ 投稿日:2004/09/19(日) 22:51

次は難しく考える必要のない3話くらいのものを考えてみます。

ではまたヒマができたときに。

563 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/22(水) 16:12
完結お疲れ様でした。
次回も楽しみに待ってます。
564 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/22(水) 23:44
完結おつかれさま。
面白かったです。
子どもでやんちゃで、発情期になると手に負えない矢口が好きでした。
次回作も期待しています。
565 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 18:01
姐さん無事に退院できてよかった。
幸せそうでなりよりです。
566 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:08
更新します。
567 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:10

解ける糸



頭が真っ白だった。

ほっぺを抑えて涙目で小さく震えてるのを前にして
自分がなにをしたのかゆっくりと理解していく。

ごめんって謝りかけて口をつぐむ。

いやいやおかしいよ?
悪いことをしたのは後藤じゃない。


568 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:11

後藤を呼んでる声が聞こえた。

露な肩についた小さな歯形。
はだけられた胸元。

泣いてたんだよ梨華ちゃん。


「勝手なことしないでよ。」


後ろからしがみつく腕。

ねぇ。
梨華ちゃんにそんなことしないでよ。
思わずグゥで殴っちゃったじゃん。


「ごめんっ・・・なさっ・・・ック・・・い・・・」

一生懸命あやまる姿がほんとに小さい子供みたいで。
やったことの意味を理解してるのかどうか・・・
どういうつもりなのかこっちが戸惑う。

裕ちゃんと楽しそうに遊んでる姿をしってる。
裕ちゃんが入院してから元気なかったのもしってる。

じゃどうして?


うわぁ〜んって本格的に泣き出した。

「こっちが泣きたいよ。」

ほんとに。


569 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:11


散々泣いてから梨華ちゃんにあやまって圭織ん家に帰っていったけど
気がついたら襲ってたって?よくわかんないよ。

我慢できなかったの?

なにを?


お!

・・・・・・う゛ぅほっぺあつっ。
そんなものかな?


欲しくなったんだ?
でも・・・目を真っ赤にして紅茶を飲んでるこの人は・・・
そうだ・・・後藤を呼んでた。


沈黙の中ふと視線が絡んだ。
そのままじぃっとみてるとん?って首をかしげる。

570 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:12

「あのさ・・・助けて欲しかっただけ?後藤を呼んだよね?」


・・・・・・


「・・・意地悪。」

「ほへ?」

「なにを聞きたいの?」


えっと・・・だから・・・





むっ

はぁ〜なんてため息をつかれた。


ときどきそうやって泣きそうな目をするから悲しくなる。
抱きしめても腕の中で消えてしまうんじゃないかって。

梨華ちゃんはまた後藤を置いていくの?

571 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:12

その手から紅茶を取り上げてテーブルに戻す。
不安げにみつめる目に答えることもせずに引き寄せる。少し乱暴に。


「ヤダ。置いていかないでよ。」


一緒にいてくれるっていった。
ちゃんと約束したよね?

ぎゅうぎゅう抱きしめてすりすりほお擦り。


「・・・もぉ。子供じゃないんだよごっちんも。」


背中を撫でてくれる感触に目を閉じる。

ごっちんもってなにさ。
失礼だなぁ。

梨華ちゃんは子供じゃないっていいたいの?


572 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:13


「どうして?」

「ん〜?」

「どうして殴っちゃったの?」


どうして?


「だって梨華ちゃんに・・・あんなこと。」


露な肩についた小さな歯形。
はだけられた胸元。

後藤は考えたことなかった。

腕の中の人のそんな姿。

そりゃね。
頭おかしくなっちゃうよ。

ほっぺを撫でられて目を開けると・・・

573 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:13

チュッ


へ?

伏せられた睫が震えてる。
みちゃいけないものをみたような気がして目を閉じる。

繰り返される触れるだけのキス。
なんかいつもと違う。

後藤はしらない。


「梨華ちゃん?」

はじかれたように離れようとするけど逃がさない。


「ごめんなさ・・・」

「んぅ〜ん。全然ごめんじゃない。」


俯く梨華ちゃんにはみえてないんだ。
どうしても緩んでしまう口元。

こんな梨華ちゃんも悪くない。
そんなふうに思った。

574 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:15

「子供じゃないんだよね?後藤も。」


おそるおそる視線を投げかけてくるから後藤もぎこちなくわらう。

だって慣れてないもん。
変わりつつあるこの気持ちに。


不安げに揺れるその瞳を覗き込むと恥ずかしげに伏せられる。


なんかわかったような気がする。
欲しいという気持ち。

それは改めて嫉妬という感情をつれてくる。


575 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:15

「ヤッ・・・ごっちん?!」

ボタンをプチプチとはずしていく。


ヤバイ。
これはかなり。

ムカつく。

肩にうっすら残る小さい歯型。

指でなぞるとビクッと身体をすくめる。


「痛い?」

俯いたまま小さく横に首を振る。
その耳が真っ赤になってた。

ゆっくり舐める。

こんなところに勝手に印つけないでよね。
後藤の梨華ちゃんなのに。

576 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:16

「ねぇ・・・」

震える声にみあげると遠慮がちなでもそれとわかるキスのおねだり。


チュッ

「んんんぅ」

あっ怒った。

確かに。
子供じゃないね梨華ちゃんも。


あのとき梨華ちゃんは後藤を呼んでた。

後藤がしたら誰を呼ぶの?
やっぱり後藤かな?



おわり

577 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:18
はい更新終了です。

一応番外編です。
こっからやのにぃと思った方は各自妄想してください。

578 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:21
補足ですが
もともと気持ちはあったんですよきっと。
そんなに急激に変わるもんじゃないですもんね。
579 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/10(日) 02:21
次こそは新しいお話しでお会いしましょう。

ではまた。
580 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:45
更新します。
581 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:45


ひなたぼっこ


582 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:45

クロネコがふぁっと欠伸をする。

見上げたお日様はちょうど一番高いところ。
まぶしそうに目を細めてからノロノロと丁寧に毛づくろい。

塀の下からナワバリが重なるオスネコがコビた鳴き声で誘いをかけてくる。

チラッと一瞥をくれてからまた毛づくろいを再開する。


そのうち少しはなれたところで別のネコにご機嫌を伺う声。


ピタッと毛づくろいを止めフンッと鼻をならす。


塀の上から眺めた世界は今日も平和だ。

気がすんだのかシッポをゆらゆらさせながらナワバリの巡回に向かう。


583 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:46

風がない暖かな午後。
野良ネコにとってはすごしやすい日和だ。
足取りも自然とかろやかになる。

途中いねむりをしているイヌのご飯を拝借したり
石垣に身を潜めたトカゲをネコパンチで威嚇したり。

それだけで毎日の生活が成り立つわけではなく・・・


ニャ〜ン


とある家の二階の窓をカリカリする。

この時間まだそこの主は帰宅していない。
でも窓のカギはかけられてなくて・・・

カラカラッ

物騒なことにネコの前足でも簡単に開けられるようにしてある。


ストンッ

小さな音で床に飛び降りたはずだった。


ダダダダッ


驚きで背中の毛がブワッとたつ。
急いで勉強机の上に飛び乗る。


ちょうどそのとき転がり込んでくる茶色いコイヌ。


キャンキャンキャンッ

584 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:46


甲高い声が部屋に響く。

最近ここに来るといつもこの部屋にいるか
こうやって急いでやってくる。

はじめは戸惑った。
ビビってしばらくここに来なかった。
でも空腹に勝てるわけもなく結局・・・

落ち着いてみてみると自分より身体が小さくて不器用なことに気がついた。

大きな声で吠えるくせに机の上に跳びあがれないらしくその場をぴょんぴょん。
いつものご飯もうるさいやつの手の届くところには置いてなくて
気にすることなくゆっくり食べられた。


一度だけ気が緩みすぎてたせいか
シッポが机の下にたれてたみたいでそこを思いっきり噛み付かれた。

あまりの痛さに気がついたら飛び掛ってノドに食いついてた。

怯えて固まってるのを前にしてさっきのは攻撃ではなく
かまって欲しさからのものだと気がついた。

ふと嗅ぎとった匂いから身体が小さいのは
まだ子供だからだと気がついたのもこのときだった。


それからしばらくは静かだったのに・・・

585 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:47

キャンキャンキャンッ


また復活した。



フゥ〜!

身体も精一杯大きくみせながら。

コイヌはビクッとして部屋から逃げ出す。


軽くため息をついたあとご飯を食べる。

いつも同じではなくコロコロとメニューが変わるのがうれしい。

奪い合って食べるクセが抜けないのか誰もいなくても
周りを威嚇するようにウニャウニャ鳴いてしまう。

ふと視線を感じて振り返るとドアのかげにコイヌ。
そのシッポがパタパタパタパタ。



586 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:48

ご飯が欲しいのかと前足で皿からかきだして
そのまま机の下へポトッと落とす。

コイヌは走り寄ってきてペロッと食べてからまた期待を込めた目で見上げる。


クゥ〜ン

落ち着きなく立ったり座ったり。


ご飯じゃなかったのかと首をかしげる。


「たっだいま〜!!」

部屋の主の声。

コイヌはピョンって飛び上がって床をシャカシャカひっかきながら
急いで声のしたほうへ走っていった。


キャンキャンッ

遠くで鳴いてる。


出て行ったドアを眺めながらフンッと鼻を鳴らした。

ジャマされる心配がなくなったのに
食べる気をなくして毛づくろいをはじめる。

587 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:49

「あ〜ゆうちゃん来てるんだ。」


ニャ〜ン

とりあえずご挨拶。


「どう?おいしかったっしょ?」


意味がわからずとりあえず無視。
毛づくろいを再開。


「もぉ〜あいかわらず冷たいねぇ。
 もっとごっちんみたくさぁ・・・ねぇマリ?」

キャンッ

返事は元気がいい。
わかってるかどうかは別として。

588 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:49

抱えられてジタバタしてるコイヌ。


「なんだい?マリも机の上がいいの?」


コイヌはとつぜん同じ高さにやってきた。
毛づくろいの途中で固まる。


フンフン匂われてゾワッと身体中の毛を逆立てる。


「あら〜マリはゆうちゃん好きだねぇ。」


せっかくつくろった毛を乱されて思わず
身体を引いてネコパンチをくらわす。


キャンッ

その場に流れる気まずい空気。


コイヌは扱いづらい。

鼻をヒクヒクさせてクゥ〜ンて鳴くコイヌに
バツが悪くなって帰ることにした。

589 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:50

机から窓へピョーンと跳ぶ。

振り向くとコイヌがしょぼ〜んとしてた。


「ゆうちゃんももっと優しくしてあげてよ。」


なんとなく責められているような気がして・・・

ニャッ


ごまかしながら外へ出た。


屋根の上に出てすぐに茶色いネコにあった。

鼻先をくっつけて挨拶。
すれ違いざまに身体をすり寄せてそのまま別れる。

夜になればまた公園の集会で会える。

590 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:50

「あ〜ごっちん!いまねぇごっちんの話ししてたんだよぉ。」



にゃ〜ん

甘えた声。


キャンキャン

うれしそうな声。


振り返るとコイヌとネコがジャレあってた。

口の中で唸り声をかみ殺して
頭を軽く振ってから歩きはじめる。


色の濃い車を探す。
陽の当たる場所にとめられた車のボンネットはいい感じだ。

あたたかいところとすずしいところはネコが一番よくしっている。

お日様はゆっくりと傾きはじめていた。




おわり

591 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:54
はい更新終了です。

なんですかねぇついやっちまった。
出来心なんです。
592 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 01:59
初期の頃の戸惑いに似たイメージで。
むりやりに重ねる必要はありませんけどね。
593 名前:ちぃ 投稿日:2004/10/17(日) 02:01
今回は3話完結です。ピシッとしめましょ。

ではまた。
594 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:29
更新します。
595 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:29

飼い主がリードを持つ。
それだけで部屋は騒がしくなる。


キャンキャンッキャンキャンッ


ピョンピョンとんだり
周りをくるくる回ったり

小さい身体をめいっぱい使ってのアピール。

「今日も元気だねぇマリは。なっちも張り切っちゃうぞ?」


テンションの高さは互いに譲らず。



グイグイ引っ張るせっかちさんのために
首輪にではなく胴にかけるタイプのリードで外にお出かけ。

596 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:30

遠くにテクテク歩く人と
その後ろをポテポテあるくアヒルさんを発見。

「おぉ〜い!美貴つぁんも散歩?」

「あ〜安倍さん。今日も勝負ですか?」

「おぅよ!亜弥ちゃんも元気そうだね?」

クワッ!


「もうね美貴の行くとこどこへでもついてくるんです。」

その顔は全然こまった顔をしていない。

アヒルさんは飼い主のジーンズをくわえてクイクイ引っ張る。

「はいはい。畑に行くんだよね。
 じゃこれから亜弥ちゃんのご飯摘みにいくんで。」

ある意味どこにでも連れて行かされている感が漂う背中と
後ろを歩きながらどうも主導権を握っているアヒルさん。


597 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:30


「よ〜い・・・ド〜ン!!」

どうやら勝負は唐突にはじめられたらしい。

ちっこい足でちゃかちゃか地面をけって走る子イヌに
たぶん本気で張り合ってる飼い主。


そうそう続くもんでもないらしく一方の息があがってくる。


「やっぱズルいよぉ!マリ足4本もあるんだもん!」


速度をゆるめて文句をたれる飼い主を振り返って

キャンッ

余裕の勝利宣言。


「あぁ〜いまフフンッてわらったっしょ?感じわる〜い!」

それでも子イヌは誇らしげに胸を張る。


「はいはい。マリはすごいね。いい子だね。」

頭を撫でられると身体が揺れるくらい激しくシッポを振る。


598 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:31

ウォフッウォフッ

遠くから聞こえる鳴き声。


「よっちゃんだ!」

飼い主が遠くにその声の持ち主をみつけたとき
子イヌはもう駆け出していて・・・


「あぁ〜フライングだぁ!!」

性懲りもなくまた本気の勝負が始まった。



「は〜い1着まりっぺ。2着なっちぃ。」

「あぁもぉ!!また負けたぁ〜でも圭織もみたっしょ?
 フライングだからマリ失格だってばぁ!」

じゃれあうイヌの横で必死ないい訳。
それを聞き流してる人の肩の上には・・・

599 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:31

「あれっごっちん?」

「うん。さっきそこであったの。」


マフラーのように肩の上でくつろいでる・・・というか寝てる。
垂れ下がったシッポがときどきほっぺを撫でている。


「いいなぁ〜なっちもなっちも!」

「だめぇ。なっちじゃ肩から落ちちゃうよ。」

「ヤだ!したいしたいなっちもしたい!」


横でジタバタするからネコがまだ眠たげな目をうっすら開ける。

キャンキャンッ
ウォフッウォフッ

イヌたちもかまって欲しそうに騒ぎ始める。


600 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:32

「じゃまりっぺ頂戴。」

「ダメッ!」

「んじゃ圭織もダメぇ。」

「え〜なんでさぁ。よっちゃんは圭織ん家のだけど
 ごっちんは圭ちゃん家のネコでしょ?」

「なんでもダメなの。」


ブーブー文句をいわれてるほうは楽しくって仕方ないらしい。


「よっちゃん。ほらこっちおいで?圭織はごっちんがいいんだってさ。」

しゃがんででっかいハスキーをギュッとする。

601 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:32

「いいよ?よっすぃなっちとこの子になっちゃいなよ。」

でっかいイヌの動きが止まる。
口もカパッと開いたまま。

目は飼い主をじっとみてる。


クゥ〜ン

ノドの奥から絞り出すような声。


「残念だねなっち。カオのがいいって。」

頭をポフポフされて安心したようにシッポをパタパタ。


「い・・・いいもん!マリだってなっちのがいいもんね?」


キャンキャンッ

いい返事だと思いきや子イヌは遠くの木に向かってほえていた。
ハスキーは急いで飼い主の後ろに隠れる。

602 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:33


「あっゆうちゃんだね。この子いっかい鼻っ面ひっかかれてんの。」

「そうなんだ?ゆうちゃんイヌ苦手なのかなぁ?」

「ごっちんが変わった子なんだよねぇ。なっちのとこ行ってあげる?」


子イヌがほえた木に歩み寄りながら一方が少しかがんで
もう一方が背伸びをする形で方の高さをそろえてやる。

ネコはシッポでバランスをとりつつ移動。


「なに?さっきダメだっていったくせに。」

口調のわりにフカフカの感触に満面の笑み。


「仕方ないよ。なっちだもん。」

「意味わかんない。」

「意味なんてないもん。」

いいながら髪をクシャクシャする。


「や〜め〜て〜よもぉ!圭織のバカ!!」

そんな言葉に機嫌よさげな笑顔で答えるからよけいにスネる。


603 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:34

「それにしてもまりっぺチャレンジャーだね。」

「・・・うん。」


たどり着いた木の下。
なんども登ろうとしてはこけてる。

何度か目にこけたときその真上から音もなくクロネコが降ってきた。

驚きのあまり固まってる子イヌに鼻先をすり寄せ一方的に挨拶を済ませると
親ネコが子ネコにするように頭を舐める。

そのくせ子イヌが身体を起こそうとする素振りをみせると
ピョーンとさっきまで茶色いネコのいた肩に。

ハスキーは慌ててできるだけ飼い主から離れる。

604 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:34

ようやく身体の自由を取り戻した子イヌがシッポふりふりみあげてる。


「ゆぅ〜ちゃんもうちょっと優しくしてあげてよ。」

「仕方ないよ。ゆうちゃんだもん。」

「圭織そればっかり。」

ひとり納得してる人をみあげるその目も少しわらってる。


「まりっぺもカオん家の子になる?」

「あ〜騙されちゃダメだよ!ゆうちゃんは圭織ん家の子じゃないからね!」


605 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:35

なにがなんだかわからないけれどお腹の底から声を出すのは気持ちいい。


風が冷たくなってきた夕方時のお散歩。
でもそれにはお楽しみがたくさん詰まっている。

夕焼けがそれぞれの笑顔をオレンジ色に染める。

明日もいいお天気になりそうだ。




おわり


606 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:40
はい更新終了です。

動物好き丸出しですねほんとに。
607 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:50
思えばひとつ前の話「すべては突然に」の前半部分は
自分のマウスさんに対する懺悔でもありました。
実際に自分の手で命を奪ってますのでね。

はぁほんまに良い死に方せんような気がする。
608 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/01(月) 00:51
人生矛盾だらけです。

ではまたヒマができたときに。
609 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/01(月) 20:31
上手いことはまってて、面白いです。
皆がいいんですけど、ハスキーがなんか可愛い。楽しみにしてます。
610 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:34
更新します。
611 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:34

7日間に2日だけお昼にご飯を食べに行くと部屋の主がいる。
それはナワバリ内での危険人物との遭遇率と大差ない。

「あぁ〜あのクロネコやぁ!!」

「おぉ!ほんとだ!」

塀の下から大きな声。
気付かれてしまったようだ。

逃げられないことはない。
が・・・逃げる必要はあるのかと。
ナワバリ内で主が背を見せなければならない理由はない。

フゥ〜

威嚇なんかしてみたり。


612 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:35

「なんか機嫌悪いなぁ。」

「このネコいつもだよ。」


威嚇が通じたのはいつ頃までだっただろう。

塀の下から伸ばされた手に後ろ足をつかまれ
前足で必死に塀にしがみつくのもむなしく引きずり下ろされて腕の中。
どう抵抗しても力が強いほうの子につかまえられる。

ワクワクしながら自分を見下ろす瞳たち。

ネコは自身のテンションが高いとき以外は
テンションが高くパワフルな生き物が苦手なものだ。

しかし過去この生き物に散々抵抗してみたけどほとんど効果はなかった。
だから不機嫌だぞと主張するための唸り声を絶やさずじっとしておく。
無駄な体力は使わないのがノラネコ流節約術の基本である。

ぐりぐり頭をなでまわされるから首をふって一応抵抗。


613 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:35

「もぉかわいくないなぁ。のんアレある?」

「あるある。カバン中だよ。」

「よ〜し・・・ジャン!これなぁ〜んだ?」


フンフン

んにゃ

なんだかわからないがいい匂いがするらしい。


むはぁ〜

なにやら楽しくなってきたらしい。

ゴロゴロゴロゴロ


「やっぱりマタタビって効くんだね。」

「そだね。ゴロゴロいってるのはじめて見たよ。」


614 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:36

もはや逃げ出す気配というか運動能力を失ったクロネコ。
視点が定まらなくなり差し出された指にも噛み付くことなくほお擦り。

ンにゃぁ〜ん
ゴロゴロゴロゴロ

「「・・・・・・」」

「なんかこうまで違うと悪いことしてる気分やな。」

「マタタビってお酒?」

「なんかそれっぽいな。」


2人に浮かんだ一抹の不安。


615 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:36

ゴロゴロゴロゴロ

「これどうする?」

「かおりんにまかせよか。」

無責任な会話をしながら移動中。
クロネコは知るよしもなく夢心地。

幼稚園の前を通りすがったときバッサバッサ飛ぶアヒルさんと
泣き叫びながら逃げ惑う幼稚園児を1人みたような気がした。


「なんだかな。」

「なんだかね。」


しばらく歩くと遠くに見覚えのある人。


「あっふじもっちゃんや。」

眼中にないらしくキョロキョロしながらナニかを探してる。


「なんだかな。」

「なんだかね。」

そっとしておくことにして飯田家に急ぐ2人。


616 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:36

そのころ飯田家では躾け教室が行なわれていたりした。


「よっしぃ伏せッ!」

ごろん
パタパタパタパタ


「よっしぃ?」

パタパタパタパタ


「よっしぃのバカ!」

クゥ〜ン


「圭織ぃ。怒るときは名前呼んじゃダメだよ。
 よっしぃが自分の名前キライになっちゃう。」

「でもさぁわかってないんだもん。
 伏せっていったのにひっくり返っちゃって。」

617 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:37

「そんな急にできるようにならないよぉ。マリおいで!」

キャンッ

今日は躾け用の鎖の首輪に皮のリード。
これだけで躾けの時間と理解できるようになったらしい。


「伏せッ!」

短くリードを持った手をグイッと地面に下ろすと
ストンと腰を落として伏せの状態に。


「ってね。こんなふうに引っ張ってやるといいんだよ。」

頭をなでられてご機嫌な子イヌ。
実のところここまでに長い道のりがあったりする。


「そうはいってもよっしぃでかいんだよね。」

「圭織だってでかいっしょ?」

「むっ・・・なっち感じ悪〜い。」

618 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:37


ぴんぽ〜ん


「あ・・・誰か来た。」

「「か〜お〜りん!あ〜そ〜ぼ!!」」


2人は顔を見合わせる。
ケンカに発展しそうだった空気が消える。

「「のんちゃんとあいぼんだ。」」

「こっちこっち!」

「庭のほうにおいで!」

「あ!なちみもいる!」

「ほんとや!」


この場合どっちがどっちともみんな子供だ。
2人とハスキーは出迎えに駆け寄る。

619 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:38

そんななか伏せをとかれず律儀にその状態を保ったままの子イヌ。
何気にジリジリ後ろ足でもぞもぞと少しずつ前に進んでみてたりする。

と急にハスキーだけ本気のダッシュで戻ってくる。


「あ・・・裕ちゃんどしたの?」

飼い主の声に子イヌがピクッと耳を動かす。


「いやぁマタタビがここまで効くとは思わんくて。かおりんみてくれる?」

「のんもあいぼんもどうしていいかわからなくなって連れて来ちゃった。」

差し出されたクロネコを受け取ってじっと目をのぞきこむ。
その目は少しだけ焦点が合わない感じがする。

アゴの下を軽く撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。
それはいつもの反応とそんなにかわらなかった。


「ん〜大丈夫だよ。もう覚めかけてるから。」

「ほんとに?」「よかったぁ〜」

「むぅ〜なんでなっちには頼ってくれないのさぁ。」


1人だけ不満な人がいたりする。


「だってネコだもん。ね?」

「そうだよ?ネコだもん。」


2人の中でイヌ担当とネコ担当は決まっているらしい。


620 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:39


キャン

構ってくれと訴える声。
子イヌはまだ離れたところにいる。


「あっ・・・ヨ「待ってまりっぺそのまま!!」

ヨシという掛け声を心待ちにしていた子イヌがうなだれる。


「なんでさ?マリがかわいそうだよぉ。」

「いいんだって。悪いようにはしないから。」


子イヌの目の前に下ろされたクロネコ。
酔っ払いネコは少し荒っぽくほっぺをすりよせる。

子イヌはまだまだ伏せ続行中。

いつもより大人しいことに気をよくしたのか
ネコは子イヌの頭を舐める。

ふと顔を上げたその視線の先。

621 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:39

パタパタパタパタ

動けない子イヌの最大の自己主張。

揺れる揺れる。
それはとても魅力的な動き。

すこ〜しだけ下がって姿勢を低くして・・・お尻をふって距離を測る。


キャン!!


ネコは自身のテンションが高いとき
同じくテンションの高いパワフルな生き物は絶好の獲物だったりする。


わけもわからずパニクって転がる子イヌ。
追いすがってシッポにジャレまくるクロネコ。

その光景を遠巻きに心配そうにみながらオロオロしてるハスキー。


622 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:40

「あれ大丈夫?」

「しばらくしたら飽きるんじゃない?」

所詮は他人事。
それに途中からやけに楽しそうになってきたから
そのままそっとしておくことにして家の中から見守ることにする。

「よっしぃもこっちおいでや!!」

「そうだよジャマしちゃ悪いよ。」


ウォフッ

ほっとしたようにみんなについていく。

623 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:40

コロンコロンひっくり返りながらどうやらシッポが標的と理解した子イヌ。
そうなれば飼い主との勝負で負けなしの足で庭の中を駆け回る。

しかしネコというものイヌとは狩りの方法は違うもので
ふと振り向いた子イヌの視界にクロネコの姿はない。

足を止めて首をかしげていると思わぬ方向で物音がした。

慌ててそちらを振り返ると視界いっぱいにダイブしてくるクロネコ。



あっさり獲物を捕まえて大満足らしいクロネコは
そろそろ酔いもさめて来たらしく毛づくろいをしはじめる。

突然に遊びを終わらされた子イヌはクロネコの側で転がったまま。

不満そうにクンクン鼻を鳴らすとネコは鼻先をすり寄せ身体をすり寄せる。

子イヌの鼻は湿っていてとても健康だと教えてくれたし
その毛並みもツヤツヤしててお日さまの匂いがした。


これにも大満足らしいクロネコはこの温かい獲物に
身体をくっつけるように寝っ転がる。

子イヌがフンフンするのを我慢しつつシッポで
自分の目を覆うようにして深く息をついてから穏やかな眠りに落ちた。


624 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:40

「あら〜?いつの間に仲良しさんなの?」


陽だまりのなか寄り添って眠る2匹。
風が緩やかに身体を撫でていく。

なんでもない日のなんでもない時間。

でもそれは一番の幸せだったりもする。







625 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:44
はい更新終了&完結です。

なんか書いてて楽しかったですね。
無性に実家のイヌネコ達に会いたくなったり。
626 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:48
あと番外で一話だけ流された部分のお話をあげるつもりです。

ほんとになんだかね。
自分自身が気になるもんで。
627 名前:ちぃ 投稿日:2004/11/23(火) 23:49
ではまたヒマができたときに。
628 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:37
更新します。
629 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:38

親バカ

630 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:39


なかなか帰ってこないアヒルさん。
痺れを切らした飼い主さん。

「なんで美貴が探しにいかなきゃなんないのかね?」


不服そうにつぶやくがそれが本心かどうかはわからない。


631 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:39


出会いはいつかの春。

幼稚園の横を通り過ぎようとしたときに園児どうしのケンカをみかけ
いつもならみすごすところをなぜか柵ごしに口出しして止めた。

それがちょうどアヒル小屋の裏っかわ。


内側からコツコツと音を立て始めた最後の卵。
お母さんは他のヒナに気を取られていた。


ケンカがおさまってやれやれと思ったそのとき。



視線。





そのつぶらな目は口ほどにものを言う。


632 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:40


『アナタがママ?』

首をブンブンと横に振った。


『ねぇママでしょ?』


「いや。違うから。」


言葉はむなしく風に消えていく。

殻を蹴散らし金網をすり抜けてポテポテ近寄ってくる。
後ろで実の母が慌ててるのには気がつかないらしい。

おぼつかない足取りで柵のところまで来てその段差に立ちすくんだ。

困ったように見上げられる。

633 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:40


『ねぇママのとこ行きたいんだけど行けないの。』


生まれたてのちょっとだけぬれてる産毛。
アーモンドの形をしたクリクリの目。


「あの・・・え〜っと・・・美貴これから学校行くんだよね。」

後ずさりしたとき


ピィ

はじめての声。


「うぅ・・・・・・」

葛藤。


そのうちぬれた産毛が体温を奪うためヒナは小さく震え始めた。

ピィピィ


「あぁもぉ・・・だめ。」


差し伸べたその手にちょこんとおさまるヒナ。


その出会いにこれからの関係が暗示されていたといっても過言ではない。

陸海空制覇できる水鳥からヒトが逃げ切れるわけもなく
また振り切ろうとする気持ちも強くもてず・・・

ママに連れられて幼稚園に通う珍しいアヒルさんが誕生することになる。


634 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:41


「もぉ・・・いつもなら迎えに行かなくても帰ってくるのに。」


この辺りはノラネコも多い。
それでも不思議と1人で帰ってこれる。

ノラネコがなぜかアヒルさんを襲おうとしないからこそなのだけど。

あのクロネコがボスだと予測する。
ヒナの頃からしっているあのクロネコがアヒルさんのフカフカの羽を
お気に入りなせいで他のノラネコたちが手を出せないのだろう。


キョロキョロしてるとしってる人を見つけた。
腕の中には眠たげなネコを抱えてる。


「あっ保田さ〜ん!亜弥ちゃんみませんでした?」

「あぁ藤本。みてないけどまだ帰ってないの?」

「そうなんですよぉ。なにしてんだか。」

635 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:42


並んで歩くうちにどうも目的地が同じ方向だと気付く。


「どこいくんですか?」

「幼稚園。なんか最近引越してきたお隣さんの子のお迎え頼まれちゃってね。」


なんで私がとさっき誰かさんがつぶやいたような言葉をこぼしつつ
他愛ない話しをしつつネコをわしゃわしゃ触ったりしつつ。



そして目的地で目にした光景にしばし立ち尽くす。


636 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:42


バサバサッ バサバサッ

「やだぁ〜!来ないでよぉ!!」

クワッ



「・・・ごっちん行って!」

運動神経がいいとはいえない飼い主によって空中に投げ出されたネコ。
足がそろって空を向いてしまってたりする。

投げた飼い主もその連れもあわわと青ざめる。

当の本人(本猫?)は涼しい顔で空中で
クルッと回って園児とアヒルさんの間に着地。

ネコの運動神経は飼い主と反比例していたようだ。



クワッ!


それは驚きの声であったけれど怯えは含まれてなかった。


にゃぁ〜

親しげに鼻先とクチバシをあわせる。

637 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:43


そのすきに駆け寄ってくる園児を抱っこしてやると

「う゛わぁ〜ん!げぇぢゃ〜ん!!」

しがみついてくるから口元が緩んでしまう。


「梨華ちゃんは鳥さんが苦手なのかな?」

まだプルプル震えながらコクンとうなずく。



置いてきぼり気味な人が1人。
大きなため息を1つ。

そして予想する。

アヒルさんは幼稚園のアイドル。お姫様。
新しくやってきた園児はアヒルさんを鳥扱いした。

当然といえば当然のこと。


でもアヒルさんは傷ついた。


「亜弥ちゃん。」

声に反応してクリクリの目で大好きな人を見つけると
自慢のツバサで一直線に飛んでいく。

腕に抱えられてご満悦。


638 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:43


暗くなるのが早いから家路につくことにした。
それぞれに大事なものを腕に抱えて。


「梨華ちゃんだっけ?」

「うん。」

「この子ね亜弥ちゃん。美貴の・・・妹。」

アヒルさんに違うと反論するかもしれないけど自称ママではなく
いうなれば他称ママなもので娘とはいえない。
というかいいたくないらしい。


「そうなの?」

「そうだよ。この子はね藤本の家族なんだ。うちのごっちんと一緒。」


にゃ〜

妹にされたネコの鳴き声は肯定なのか否定なのか判断しかねるが
いつもと同じ表情でゆらゆらシッポを揺らしながら歩いてる。

639 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:44

「亜弥ちゃんはねお話ししたりすることはできないんだけど
 お空を飛んだりお水に浮いたりできるんだ。美貴の自慢の家族だよ?」


その自慢のアヒルさんは器用に首を羽にうずめて眠りに落ちている。


「まぁ無理やり仲良くなってとは言わないけどね。」

相性というものがあるだけに無理強いは良くない。


「うん。でもりかがんばる。」

その決意の言葉に安堵を覚え口元が緩む。

640 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:48

ある曲がり角でお別れをする。

「美貴こっちなんで。じゃあね梨華ちゃん。ごっちん。」

「バイバイみきちゃん。あやちゃん。」


なんで私は無視なのよ?!って声を黙殺しつつ手を振り返す。


腕にアヒルさんを抱えて一人歩く。
軽いため息を1つ。

そして願う。

アヒルさんが悲しい思いをしなくてすむならそのほうがいい。
そう思うのはやはり親が子に対して持つ感情に近いのかもしれない。

『いやいや違うから。ママじゃないもん。』
と反発する心の声もあるけれど。




おわり

641 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 22:56
更新終了です。

恋愛感情じゃないけどめちゃめちゃ愛してる。
そんな感情ってヒト対ヒトだとどうやっても書きにくて
いっそのこと生物種を分けたったらどうかと。

その結果がコレなんですけども。
642 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 23:09
今年も残すところ一週間きりましたね。
も〜うい〜くつ寝ると〜♪ってまだ明けてもらったら困るんですが。
毎年のように年の瀬は焦ってます。
643 名前:ちぃ 投稿日:2004/12/26(日) 23:15
とはいえ年末年始は楽しみです。死ぬ気で休みますよ。
何もかもとりあえず横に置いておいて。

ではまた来年に新しいお話しで。
よいお年を。
644 名前:sage 投稿日:2005/01/03(月) 14:54
「ちぃさん」のほのぼの話が大好きです。
ちょっと不思議な世界観もあって、気持ちふわふわになるんですよね。

長期休暇の前の「死ぬ気でやすみます」っていう言葉も好きです。
645 名前:sage 投稿日:2005/01/03(月) 14:56
ごめんなさい。
sageが効かせられなかったようです。
646 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/01/03(月) 18:16
>>645
sageは名前欄ではなくメール欄に入れましょう
647 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:02
長い間放置してすいません。
死ぬ気で休みましたがまだ生きてます。

更新速度はさらに遅くなりそうな気配ですがなんとか。

では更新を。

648 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:02




649 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:03


雲ひとつ無い青空を見上げて思わずため息。


あぁそういえばあの日もこんな天気だった。
あれからどれくらいたつんだっけ。

主のいないからっぽのお墓。

その前にお花を供える。


あのときあの子に何があったのか。
なんとなく・・・うっすらとわかってはいるけど。
信じがたいことだから。



「けぇ〜ちゃん!」

ん?


「どした?」

「いま遠くに行ってたでしょ?」

「んなわけないでしょ。圭織じゃないんだから。」


あからさまにムッて顔をする。

650 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:03

そうだ。
圭織が側にいるからあれは現実なんだと思いしる。

「帰ろっか。」

「ん。」


いまホントは少し驚いた。
彼女の口から‘私の家へ帰る’の意味でスルッと帰るという言葉が出たから。


ハナウタまじりの帰り道。

あの頃はこんなやわらかな表情が見れる日が来るとは思わなかった。
圭織は急に放りこまれたんだあの子と違って。

私にはちょっと想像がつかない。

でも最近なにか吹っ切れたのかもしれない。
あんなにこだわっていた長い髪もばっさり切ったし。


651 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:04

「ねぇ圭ちゃん。教えてよ矢口のこと。」

「へ?」

くるっと振り向いた彼女。
その目には穏やかだけど強い光。


「いいでしょ?」

「そうだね。圭織はしっててもいいかもしれない。」


満足そうにわらって腕を組んでくる。

「約束ね。」


なぜか少しくすぐったい気持ちになる。
でもそれが妙に恥ずかしくて・・・


「だぁ〜もぉくっつくな!」

腕を振り払う。

652 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:04

「・・・圭ちゃん。」


あっしまった。


はぁ〜


「ほらっ。」

差し出した手はすぐにギュッと握り返された。




「今日シチューだからねぇ。ジャガイモとニンジンがいるよ。」

「んじゃ畑よってく?」

「うん。」


彼女は無邪気にわらってて
この緑濃い森から消えた小さな親友を思い出させた。


「何がそんなにうれしいんだかねぇ?」

「自給自足っていいなぁって。」

ふふふっと抑えきれない笑みをこぼすから不思議に思う。

653 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:05

ようやく圭織はあのことを冷静に考えられるようになったのだろうか。


今度ゆっくり話しをしようよ。
お茶でも飲みながら。

だって私はほとんどしらない。

圭織の暮らしてきた
矢口が暮らしている世界を。

本当はずっとしりたかったんだ。




おわり


654 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:08
はい更新終了です。

これはプロローグのような部分です。
655 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:09
ぼちぼち書いていくつもりですのでごゆるりとお付き合いください。
656 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/12(土) 22:10
ではまたヒマができたときに。
657 名前:つかさ 投稿日:2005/03/13(日) 10:11
お帰りなさい。待ってました。
658 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:37
更新します。
659 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:37


はじめ矢口は怯えていたんだ。


660 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:37

――――――――――――――――――――――――――――――――

バタンッ

「圭ちゃ〜ん!!起きて!起きて!」

なになに?
何なのよこんな朝早くに。

眠い目を擦りながら起き上がろうとすると
ちっちゃい怪獣がダイブして来た。

いつもと違うのは震えていること。


「どしたの?」

外が寒かったとかじゃなさそうな震え具合で。


661 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:38

「もうヤダ!!オイラん家おかしいよぉ!」

「ちょっと落ち着きなさいよ。お茶入れるから待ってて。」


寝室からキッチン
キッチンからリビングへ

けっきょくずっと矢口はくっついたままだった。
強引にはがしてからお茶と手ごろなクッションを渡して落ち着かせる。

震えは一応おさまったらしいけど


「で?」

「うん?」


うん?じゃなくてさ・・・


「あ・・・うん。なんかさぁおかしいんだ。」

「ふ〜ん?」


伏目がちにぽつりぽつり語り始めた矢口。


662 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:38

矢口の寝室の壁から話し声が聞こえるということらしい。
はじめは気のせいかと思ってたんだと。

昨日寝てるときに腕が壁にコンッて当たったとき
コンコンッて返ってきたらしい。

そのときは寝ぼけててなんとも思わなかったけど
朝になって恐ろしくなって私のところへやってきたと。


「ねぇ絶対おかしいって!壁の中になんかいるんだよきっと!」

ヤダ!ヤダ!ヤダ!って駄々をこねだした。


怖いを通り越して壊れはじめてる矢口を取っておきのお菓子でなだめる。

しっかり口にほおばりながらもその表情が曇ったままなのは
根本的な問題解決ができてないせいだと思う。


矢口の家は隣の樹の上。
持っている果樹園への通路も樹冠を伝っていけるようになってたりして
まるで樹上生活をする小動物のような生活をしている。

663 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:39

「サルとかリスじゃないの?」

「だって話し声聞いたことあるもん。動物じゃないよぉ。」


ん〜

「じゃインコとか九官鳥じゃないの?」

「圭ちゃんオイラのことバカにしてるだろ?
 夜なら鳥だって巣で寝てるっつぅの。」


だからって壁の中は絶対無いでしょうが。
音がするということはそこに空間があるということだから。


「じゃ話し掛けてみりゃいいでしょ?」

「え〜!!怖いよそんなのぉ・・・」

「このままじゃ怖いんだったらそうしてみるしかないんじゃないの?」

「うぅ〜なんだよ他人事だと思って。そだ!圭ちゃんも来てよ。」

「無理。」

664 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:40


矢口はプーッとホッペを膨らます。

「や・・・だって。アンタん家階段ついてないでしょ?」

「樹がかわいそうじゃん。ハシゴで何とかなるし。」


イヤイヤあの縄梯子だって恐ろしいものよ。
地に足をつけて暮らす私にはね。


「じゃあさ。今日は泊めてよ。」

「いいよ。」



――――――――――――――――――――――――――――――――

665 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:40

あのあと2人でイモをふかして食べたっけ・・・

けっきょく何の解決にもならなくて話しが前に進むのは
やっぱり矢口が勇気を振り絞って壁に向かって話しかけてからだったけどね。





おわり

666 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:41
はい更新終了です。
667 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:51
>>つかささん
ただいまです。お待ちいただいてありがとうございます。
ゆるゆる更新ですがよろしくお付き合いください。

668 名前:ちぃ 投稿日:2005/03/25(金) 01:51
ではまたヒマができたときに。
669 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:05
更新します。
670 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:06

春がやって来た。
そうなると私は忙しくなる。

春蒔きの野菜はけっこう多いからねぇ。
いい物をつくるには土作りに妥協は許されないわけで
森の土や例のコンビがくれたもみ殻を畑にまいてクワをふるう。

それでも夕方までに終わらせないと。
話しの続きを楽しみにしてる圭織がすねてしまうから。

首に巻いたタオルで汗を拭う。



ふと顔を上げるとその視界に川をはさんで向こう側で
田んぼの横に作った苗代でイネの苗の世話をするコンビの片割れ。


「あれ?」

ののは?
今日は代掻きじゃなかったっけ?

671 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:06


あいぼんが立ち上がって大きく手を振った。

その先に・・・


あ・・・

なにやってんだあの子。


田んぼの土を起こすのに使うであろうウッシーさんにまたがるののと・・・
その小さな背中にしがみつくようにくっついてはしゃいでる圭織。


果樹園の仕事は終わったのかな?

なぜだか口元がゆるんでしまう。



ずいぶん笑顔の似合うお子ちゃまになったもんだね。
いつだって泣くのを我慢してるようなしかめっ面だったのに。
差し出した手を何度振り払われたことか。

672 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:06


戻りたい!元の世界に戻してよ!っていわれても
私にはどうしてあげることもできなかった。


髪を切ったら圭織だってわかってもらえなくなって?

そんなの・・・・・・私だったらわかるよ。

うれしそうに笑う
ムッとして膨れる
得意げに胸を張る
甘えて首を傾げる

そんなシグサは変わらない。
きっと。


673 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:07

川から田んぼに水を引き込んで土を起こし始めたらしいけど・・・
あれ必要以上にドロドロになってないかい?

泥にダイブ。泥のかけ合い。泥の中で鬼ごっこ。


なにやってんだかね。



さてと。

軍手をキュッとはめ直す。
身体を動かさないことには仕事はおわらない。


674 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:07


ネバーランドだっけ?

圭織は確かそういった。
あの人もそういったと矢口から聞いた。


じゃあここはやっぱりそうなのかもしれない。

聞かれるまで疑問にも思わなかったよ。
いつからこの生活をしているのか。
自分がいったい幾つなのか。

そんなことしる必要もなかったから。

忘れてしまっただけで
もしかしたら圭織と同じだったのかもしれない。

私も他のみんなも。


675 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:08


じゃあ壁がつないだ向こう側の世界へ行ってしまった矢口は?


ねぇ矢口。
果樹園は圭織に引き継がれて元気だよ。

矢口は元気なのかなぁ。



おわり


676 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:11
はい更新終了です。

はぁ今日モーニング娘。×つんく♂2立ち読みしてきたんですが
矢口さんを例えようとしていたものが矢口さんの口から先に・・・
ネタバレです矢口さん。
677 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:13
まそういうことなんですけどね。
ジャマくさいので話の筋の変更はしません。
そのままでお送りしていきます。
678 名前:ちぃ 投稿日:2005/04/02(土) 23:14
ではまたヒマができたときに。
679 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/29(金) 22:53
ネバーランドは永遠なんでしょうか?私はピーターパンはまだ生きてると思います
680 名前:ちぃ 投稿日:2005/08/05(金) 21:46
む?なんだ見てる人いたのか。
そうですよピーターパンは昨日も今日も明日も元気にわらってます。

どうも忙しくて更新には至りませんで・・・
でも放棄するつもりはありませんからごゆるりとお待ちください。
申し訳ないです。
681 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:40
ご無沙汰しておりました。
とりあえず更新します。
682 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:41


勇気をふりしぼった結果どうやら壁の向こうに居たのは
恐ろしいものではなかったらしい。

――――――――――――――――――――――――――――――――

683 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:41

忙しそうに木材相手に鉄鎚をふってる矢口。
ご飯食べ終わってからずっとなにやら作製中らしい。


「それで?壁の向こうの人はなんて?」

「もぉ!裕ちゃんだっていってるじゃん。」

「あぁ裕ちゃんね。」


ダイエットするんだとかいって腹筋に夢中になったり
鏡を眺めながら髪をいじる時間が増えた矢口。

少しずつ少しずつ

変わっていく。

684 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:42


はぁ〜


「裕ちゃん。裕ちゃん。裕ちゃんだもんねぇ。」

「なにが?」

「ここ最近アンタ口開くと裕ちゃんっていってるよ。」

「えぇ〜そんなことないよ。」


あるってば。


685 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:43


「あっ圭ちゃん。お願いがあるんだけど。」

「ん?なに。」

「あのさぁ・・・炭酸の湧き水あるじゃん?」

「あぁあの山の向こう側ね。」

「1人で行くの怖いからついてきて欲しいんだ。」

「いいけどなんで?」


矢口は手を止めてやけにもじもじしてた。


「ん〜裕ちゃんの髪の色とおそろいがいいんだ。」

へへへって。

686 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:44

髪の色?


「圭ちゃんしらないんだ?炭酸水でも髪の色抜けるんだよ。」


なにその得意げな顔。
どうせアンタもしらなかったんでしょうが。


「脱色するってこと?」

「うん。裕ちゃんの髪って明るい茶色なんだってさ。」


ふ〜ん。

「でも髪いたむよ?」

「そうだけどさぁカラーリング剤ないじゃん。あったら使うよ。」


裕ちゃんはそのカラーリング剤ってやつを使ってるんだ?


しかしアレだ。
矢口が私のしらないことをしってるのは・・・

自慢してくるからよけいにね。


687 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:45


「裕ちゃんってほんとに人間なの?毛むくじゃらだったりしない?」

「なっ!なにいってんだよ!そんなわけ・・・ないじゃん・・・」


あ・・・弱気になった。


「・・・人間だよねぇ?だって色は白いほうっていってたもん・・・」

「そんなの何の色が白いのかわかんないでしょ?ほら目とか・・・」

「怖っ!ヤダもぉちょっと!変な冗談やめてよ!!」


怒って木の切れっぱしを投げてくる。
そんなムキになることないのに。


「それで?なに作ってんのそれ。」

「むぅ・・・ごまかすなよ。」


ははは
まだぶぅたれてる。

688 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:46


「まぁまぁ。でなに?」

「ん?これ?」


鉄鎚でクギをトントントン。


「裕ちゃんがね圭ちゃんとも話してみたいっていうんだ。だから。」


だから?

でも矢口はその先は口をつぐんでしまう。

いわなくてもわかるような気がする。
縄梯子を嫌がる私を自分の部屋の壁に向き合わせるためにか。

裕ちゃんのためならって?
まぁいいけど。


689 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:47


「あっ普通の梯子とか下が見えるのヤダからね。」

「はぁ?ダメだよ固定式は。樹が傷む。」

「じゃ無理。行かない。」

「えぇ〜!じゃちょっと踏板広くして下が見えないようにしてあげるよ。」


もぉ木材足りなくなるじゃんとかぶちぶち文句をいいつつも
改良型梯子の作製に切り替えるところがなんだかなぁと思った。


そのとき壁はまだ矢口と裕ちゃんをつなぐものだったんだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――


690 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:48


「圭織ちょっとだけ裕ちゃんって人わかった。」

「なんで?」

「だって炭酸で脱色とかってちょっと年上のヤンキーだよ。」

「それって悪い人?」


返ってきたのは言葉ではなくあいまいな笑顔。


・・・矢口ぃ大丈夫?



おわり



691 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:52
久しぶりに更新してみました。
692 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/08(土) 23:59
なかなか書くことができなくてもどかしいのですが
ここ最近、やることが増えてしまいまして。
あぁ〜しんどい。

いやいやしかしきっちりコナして見せましょ!
693 名前:ちぃ 投稿日:2005/10/09(日) 00:01
ではまたヒマができたときに。
694 名前:ケロポン 投稿日:2005/10/09(日) 02:06
更新お疲れ様です。
久々にほんのりした空気を味わえました。
ちぃさんの描く矢口さんはいつもかわいいですね。次ヒマができる時を楽しみに待ってます。
695 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/19(土) 00:44
とってもイイ!です。
待ってます!頑張ってください!
696 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:25
更新します。
697 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:26



ガチャ



あぁ〜息が白い。
寒いわけだ。

冬の朝の匂いだね。

いつもより着込んだほうがいいかな。
まぁでも動いてるうちに暑くなりそうだからなぁ。

どうしよっか。


「どうしたの?忘れ物?」

「いやそうじゃないんだけど・・・」

「なになに?」


698 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:26

ととっ
危ないなぁ。

絡みつく長い腕。
肩にアゴ。


「重い。」

「うぁ〜しばれるねぇ!」



私の声はかき消されてしまって
しかもギュ〜っとされると寒さより恥ずかしさが勝ってくる。


「重いってば。」

「え〜せっかく暖めてあげてるのに。」


見なくてもわかる。
ぷぅっとふくれたほっぺ。




ふいに離れる温もり。

あれ?どこいくの?


699 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:27


「ほらこれ。」

手には上着。


「ふ〜ん。気が利くじゃない。」


受け取ろうと手を伸ばしても違うと首を横に振る。



あ・・・そういうことか。

圭織に背中を向けると上着を着せてくれる。


「今日は果樹園に出かけないの?」

「うん。もうワラ巻きも追肥も終わったしいいんだ。」

「そっか。」


そういえば矢口も冬の朝は外へ出ないことが多かったかな。
よく樹上の家の窓から手をふって見送ってくれたっけ。


700 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:27

着せ終わったよって合図なのか背中をポンポンってされる。
振り返るとなぜか嬉しそうにわらってる。


なんだろ?

首を傾げてるとよしよしって頭を撫でられる。


・・・だからなに?



「あとで手伝いにいくよ。お昼ごはんも持ってく。」

「わかった。じゃ行ってくるよ。」


701 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:28


仕事はこの時期もたくさんある。

霜がおり始める直前まで秋野菜の収穫が続くのはもちろんだけど
エンドウなどの豆類やほうれん草や菜の花など葉物の種まきに玉ねぎの植え付け。
春に収穫するものは今のうちに仕込むのだ。

厳しい冬が迫ってくるため追肥や防寒も欠かせない。


でもアレだな。
ここ最近で完全にお子ちゃま化したと思っていたのに。

困ったな。
なにかが違う。


油断ならない。


702 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:29


『圭ちゃんには色がない。』

矢口にいわれた言葉。


それなら
向こうからやってきた圭織には?
色があるのだろうか?




おわり


703 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:35
はい更新終了です。

はぁもう12月ですか。早すぎるって。
もう少し時間が欲しいなぁ。
704 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:38
身体が1つじゃ足りません。
705 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/03(土) 22:41
でも気合入れんなイカンでしょう。うん。

ではまたヒマが出来たときに。
706 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:20
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
707 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:32
更新します。
708 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:33


矢口の様子がおかしいなって思ったんだ。
まぁたしかに落ち込むことだったかもしれないけど・・・

――――――――――――――――――――――――――――――――

709 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:33

「どしたの?」

夕食後、いつもならすぐに洗い物を人に押し付けて
とっととうちの二階のベランダにたらした縄梯子で樹上の家に帰っているところなのに。

「裕ちゃん待ってるんじゃないの?行かないの?」

「・・・いい。」

矢口はクッションを抱えたままソファから動こうとしない。



完成した改良形梯子で矢口の家の壁に向き合ったときであった声の持ち主。
微妙にイントネーションの違う言葉で面白おかしい話しをしてくれる。

楽しいお姉さん。
それが裕ちゃんだった。

あいぼんなんかすっかり言葉がうつってて裕ちゃんにわらわれてた。
ムキになって「うつってへんわ!」って叫んだあとではっ!て口を押さえてたっけ。



裕ちゃんとなにかあったの?

いつもならさらっと聞くんだけどね。

710 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:34


「あ゛ぁぁぁ・・・・・・」

クッションを抱えて低ぅい奇声を発してる相手にそれは難しい。
分かりやすくなにやら苦悩してる模様。

とりあえずご飯の後片付けをしている間は放置しておくとして
オプションで温かいお風呂を用意しといてやるかね?

711 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:34


お風呂の準備をして戻ると矢口はソファでうつ伏せに寝転がってた。
頭の上にクッションがのっかっててその下で「うがぁ〜!」って。

ってアンタ。
なにがどうなってその状態なの?

・・・これは聞くしかないでしょ?
ってか聞けってことなのね?


「なにやってるの?」


ガバッ!!

バネの入った人形のごとく起き上がったから
クッションは数メートル空を舞う。


何よ?

こっちを憮然とした表情でみてくる矢口。


「なにがあったの?」


ふいっとそらされる視線。


712 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:35

「昨日・・・裕ちゃん泣いてた。」


へ?

「そっそうなの?」

それで部屋に帰りづらいのか。



「1人にしてくれってさ。」

へへへって自嘲気味の笑顔。


「納得できないんだよねぇなんか。」

「どうして?」

「それがわかったら苦労しないよぉ。」


むぅって黙り込む。


捨てられた子イヌみたいに寂しげにみえるから困るんだ。
普段はちっちゃい怪獣のくせにさぁ。

ズルいよアンタは。


713 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:35


飛ばされたクッションをひろって矢口の隣に座ると
当然のように人のヒザに頭を預けてくる。


っとにゴロゴロ甘えてくんじゃないわよ。


頭をぐりぐり触ると仕返しにノドを鷲づかみにされて・・・

ゲホッゲホッ


咳き込んで涙目で見下ろすと勝ち誇った顔でわらってた。

やっぱり怪獣は怪獣だ。
油断しちゃいけない。


714 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:36

「あぁ〜悔しぃ。」

「なにが?」

「だってさぁまだ裕ちゃんの中にオイラは・・・」


言葉を切って口をへの字に歪める。
そのうち大粒の涙がほっぺを伝って私のヒザにこぼれるんだ。


いつもそう。

こうやって喜びも悲しみも分け合って生きてきた。
隠す必要は無かったから。



715 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:37

落ち着いてきたのか少しずつ身体の震えがおさまってきた。


「お風呂いれといたから入ってきてもいいよ?」

「・・・うん。」


生返事で動こうとしない。


ん〜


「やっぱ先に入ってくるよ。その間ちょっと寝てな。」

「・・・うん。」


ノロノロと私のヒザからクッションに頭を移動させる。


「せめて・・・圭ちゃんぐらいになれたらなぁ。」

ボソッとつぶやくのが聞こえた。


716 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:37

「なに?」


目が合うとふてくされたように
でもどこか照れくさそうに唇を尖らせる。


「なによ?」

「だからね・・・オイラにとっての圭ちゃんぐらいになれたらって!」


いうだけいってくるっと背を向けてしまう。



・・・・・・

はぁ〜だからほっとけないんだよこの怪獣は。

ニヤケそうになるほっぺをつるりとなでる。


毛布もサービスしとくかな。

717 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:38

――――――――――――――――――――――――――――――――

「その後は矢口もいつも通りに・・・って?なにすねてるの?」

「すねてない。」

「かおりさ〜ん?」

「もぉ!圭ちゃんなんかキライ!」

「はぁあ?なんで?」




おわり

718 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:41
はい更新終了です。
719 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:51
さぶいさぶい。畳が硬い。手が痛い。
文句たれまくりの季節がやってきました。

そして忘年会シーズン。お酒は飲んでも呑まれるな!
酔いがまわってビール瓶を倒して上のもんの下半身を
ひとりビールかけ状態にしたことがあります。
今年も気をつけねばなりません。
720 名前:ちぃ 投稿日:2005/12/17(土) 00:52
ではまたヒマが出来たときに。
721 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/23(金) 03:30
面白いです!!
待ってますんで、頑張ってください!!
722 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:53
更新します。
723 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:53


「圭織ぃ〜起きた?朝ごはんどうするの?」


・・・・・・


ふ〜ん・・・


パタン


ドアを閉めると気分がめいってくる。
一晩で機嫌なおらなくて意外に長引いてるんだなぁこれが。

少し前に戻ったみたい。
笑顔を見せなかったころの圭織に。

違うところは、それが私に対してだけだってところ。
私のいないところで楽しそうにあのコンビとじゃれあってるらしいし
仕事だってちゃんとしてるみたい。

失礼な話しだね。
圭織のサイズじゃ矢口ん家のベットで寝れないからって
ずっと私のベット占領されっぱなしなんだよ?
家の主がリビングに布団しいて寝てるのにこの態度はないんじゃないの?




はぁ〜

・・・この前まであんなに優しかったのに。


724 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:54


1人でかじりつくトーストはずいぶんと味気ない。
部屋だってこんなに広く感じてしまう。

ときおり風が窓をカタカタ鳴らしていく音がするだけでやけに静か。


圭織のために入れたコーヒーはもう冷めてしまったかな。



私以外の誰もいない空間。


それ自身は珍しいことじゃない。
いつもと違うのはそれをぶち壊しにくる人がいないところ。



あぁそうか。

・・・・・・そうだったんだ。


725 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:54


矢口がいなくなっても私は独りじゃなかった。



圭織のことが心配で・・・畑仕事が忙しくて・・・

違う


理解したくなかったんだよね。


あのちっちゃい怪獣は
あのたよれる相棒は
あの泣き虫の親友は

もうここには帰ってこない。

帰ってこないんだ。

726 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:55


急にノドの奥が痛くなって口の中のトーストが飲み込みにくくなる。


嫌だな。


残りのトーストを皿に戻して少しぬるくなったコーヒーで流し込む。
ふとカップを覗き込んだら情けない顔の自分がうつってた。


あぁダメだ。


目頭が熱くなっていくのも肩が震えるのも
もう止められなかった。


もう会えない。
矢口にも裕ちゃんにも。

奪われてしまった。途切れてしまった。

私の大切な・・・大好きな人たち。




嫌だ・・・置いていかないで

独りにしないでよ


727 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:56





ガチャ


「圭ちゃん?」


あ・・・

「圭ちゃん!?どしたの?なにかあった?」


みあげるといつもの圭織。
心配そうにのぞきこんでくる。


大きな目。


「圭織・・・機嫌なおったの?」


・・・・・・

なに?


「バカじゃないの圭ちゃん。」

「は?」

ほっぺに伝った涙を服の袖でぐいぐい拭いてくれる。

728 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:56

「は?じゃないでしょ!圭ちゃんが・・・圭ちゃんがそんなだから・・・」


まだ怒ってるの?


ギュゥ



「・・・あぁ〜もぉ悔しい。バカなのはカオのほうだよ。」


やわらかく包み込まれる。

いつもなら恥ずかしくて腕からすり抜ける。
でも今はこの胸がくれるぬくもりと安心を自ら手放すことは出来なかった。


「いいんだよ泣いても。圭ちゃんだって辛かったんだから。」


あやすように背中をポンポンとされて止まりかけていた涙がまたあふれてくる。
ひとりぼっちの圭織に救われていたのは私のほうだったんだ。



声をあげて子どものように泣いた。



729 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:57


頭がぼぉーっとする。

「圭ちゃん?」

音もすこし遠くから聞こえるような気がする。

どうやらしがみついたときに圭織を押し倒したらしい。
もうちょっとだけ身体を預けたままでいたいけどね。

圭織の肩あたりでぐりぐり涙を拭くとペチッとたたかれた。


はぁ〜

「・・・圭織がいてよかった。」


つぶやいたとたんゴロンと転がされて逆に乗っかられる。
意外に乱暴なところがあるなぁなんて思っていると
ガチッとその大きな目と視線があう。


「それほんと?」

「ほんとだよ。」


一瞬泣きそうな顔をして・・・


730 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:57


うわ。なんだろコレ。


ここしばらく見ていなかった圭織の笑顔。
見たかったはずなのになぜかまともに見れない。

チュッ

だから何をされたのかわからなかった。


「圭織?」

その照れくさそうな顔でようやく理解する。


「ありがとう圭ちゃん。」

柔らかかった唇がそうささやいてもういちど落ちてくる。


そして私のしらないキスをされた。




おわり



731 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 19:58
はい更新終了です。

732 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 20:03
あけましておめでとうございます。
今年もほそぼそと更新を続けていきますので
期待せずにゆっくりまったりお待ちいただければ幸いです。
733 名前:ちぃ 投稿日:2006/01/08(日) 20:06
ではまたヒマができたときに。
734 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/10(火) 00:22
いいっすねぇ・・・
頑張ってください。
735 名前:ほっとレモン 投稿日:2006/01/19(木) 01:36
ちぃさんのやぐちゅーに惚れました。
楽しみにまってます。頑張ってください!!
736 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/01(水) 23:25
頑張ってください。
737 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 02:23
楽しみに待ってますので頑張ってください!!
738 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:46
更新します。
739 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:47

春になる前にねお祭りがあるんだよ。
みんなで春を呼ぶんだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――

740 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:48


「裕ちゃんいる?」

「いりません。間に合ってますぅ。」


壁の向こうから返ってくるわらいを含んだ声。

なに言ってんだかね。


「どうしたん圭ちゃん1人?」

「うん。さっき出かけちゃった。私も今日は出かけるけどね。」

「ん〜なんかあんの?」

「そ。お祭りだから遅くなるって言っといてだって。」

「そうかぁせっかく早めに帰ってきたのになぁ。」


741 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:48

そんな声・・・矢口が聞いてたらニヤけるよ。

姿が見えなくてもわかる。
あからさまなガックリぐあい。


「夜中までには帰ってくるから大丈夫だよ。」

「なんやな大丈夫って。別になんもゆうてへんやんか。」

「裕ちゃんは矢口がいなくてちゃみちぃでちゅって伝えとくよ。」

「はぁ?なんやそれ!」

「はははっ!じゃ行ってくるね。」


742 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:49

うちの畑や例のコンビの田んぼを抜けてぐんぐん進むと
暗くなる前に街に着くんだって人を置き去りにしていった相棒の背中を見つけた。


「やぐちぃ!」

「おっ?早かったじゃん。裕ちゃんなんて?」


振り向きざまにそれですかい。
ちいさいせいで抱えた荷物がやけに大きく見える


「帰ってこなくてもいいってさ。」

「うっそだぁ!そんなこと言うわけないってぇ。」

「だいたいねぇ自分で言えばいいんじゃないの?」


・・・・・・

なにその顔。


743 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:49


「だって・・・言い出しにくかったんだもん。」


なんだそれ。

ほほえましく思える。
その気持ちも口調も姿も。


かわいそうな裕ちゃん。

見ることはかなわないんだ。
アナタを想うこの子のこんな姿。


「どうしたの圭ちゃん?」

「なんでもない。出来るだけ早く帰ってあげようね。」

「うん。」


帰り道はあいぼんとののも一緒だ。
お月様ぐらいしか道を照らすものはないんだから
灯りを手にみんなで騒ぎながら帰るに越したことはない。

まだ帰りたくないってぐずることが目に見えてるけどね。


744 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:50


しばらくぶりの街。
通りに面した家々の煙突からはもくもくと暖炉の煙を吐き出している。

土の匂いがしないから私は落ち着かなくなるんだけど
隣のちびすけはそうでもないらしい。
人ごみをぬうようにすすむ。


「オイラちょっと工具なおしてもらいにごっつぁんとこ行きたいんだけどな。」

「う〜ん。でも今日は忙しいかも。祭司だからねぇ鍛冶屋は。」


土から鉄を作り出す。
高温の火を操る。

ある意味それは神の業。


「この祭事っていうか儀式?って必要なのかなぁ?」

「さぁ?後藤がこれやらなかったことないからわかんないね。
 祈りが春を呼ぶのか勝手にやってくるのかどっちなんだろうね。」

「あ〜じゃ工具もついでになおしてもらったらいいのかな。」

「どうかなぁ本気で祈らないと炎に焼かれるしね。」

「う〜ん・・・・・・」


どしたの?

745 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:50


ピタッと立ち止まってしまうからつられてこっちも立ち止まる。



「なに?」

「ねぇ・・・本気で祈れば本当にかなうのかな?」

「かなうんじゃないの?」

「・・・だよね。」


くりくりした瞳の色が深みを増す。


なんだかねぇ。



いつの間にか壁はつなぐだけのものではなくなっていたんだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――

746 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 01:51


「・・・・・・てか街あったの?」

「へ?」

「カオしらないよ?行ったことない。」

「だって圭織それどころじゃなかったでしょ?」

「う゛。ねぇ今度連れてってよ。」

「どうかなぁ圭織は・・・まぁいいか。」




おわり


747 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 02:01
はい更新終わりです。

後藤さん復帰されたようですね。ひと安心だなぁ。
Aぼんさんがう〜んですが・・・はぁ
ごめんなさいって謝って早く帰っておいでよね。
748 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 02:08
あ〜分身の術が使えたらと思うくらいやることが多い毎日。
えぇ負けませんよ。カッチリキッチリこなしちゃる。
ここもぼちぼち進めていきます。
749 名前:ちぃ 投稿日:2006/02/22(水) 02:13
ではまたヒマが出来たときに。
750 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/04(土) 05:42
面白いです!無理せず頑張ってください!
751 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:03
更新します。
752 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:04


カチャッ


「お邪魔し・・・」

「圭ちゃ〜ん!!」


ギュッ

のぁっとっ
だぁ〜危ない!

ベターン


「痛いってばもぉ。」


なんで鍛冶屋の戸を開けたら地面にひっくり返されなきゃなんないのかね。

少し後ろにいた圭織は呆然としてる。
っていうか助けなさいよ。


見上げている私の視線をたどって後藤の顔がきゅっと引き締まる。

「やっと連れてきてくれたね。」

よいしょっと自分だけ起き上がってしまうから
かしてくれた圭織の手を頼りに起き上がる。


753 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:04


「なかにおいで。」

後藤は戸惑う圭織の腕をとって仕事場を通り抜け奥の部屋へ行こうとする。

私はもう慣れたけどね。
後藤のこういうマイペースなところ。





「ここ座って。」

圭織を座らせた椅子の向かい側の椅子にちょこんと座る。
睨みつけるでもなく無表情でじっと圭織を眺めてる。

はじめはおろおろしてた圭織もその視線を受け止めて静かに視線を返し始める。

子供みたいな顔と表情のない顔。
こうしてみると圭織も後藤と同種の人間なのかもしれない。

入っていけない私は離れた椅子に座って適当に時間をつぶすほかない。


そういえばはじめて会った後藤はやっぱり無表情でこんなふうだった。

心を見透かされているようで怖かったんだ。

いつからだろうか
笑顔を見せるようになったのは?


754 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:05


そうか。

やめたときだ。
後藤の前で自分を取り繕うことをやめたとき。

あれ?ってなにか見つけたように目をキョロっとして
それからうれしそうにニッとわらったんだ。



755 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:05



どれくらい経っただろうか突然それは終わった。

後藤の慣れた人にしか見せないふにゃっとした顔。
圭織のここ最近で見せるようになった柔らかい表情。

圭織が手招きすると寄って来た後藤の頭を撫でる。


まぁなんだ。いいんだけどね。
圭織がすぐに正解を探り当てることはわかってたんだけどさ。

なんか悔しいわけだよ。色々とね。

圭織は簡単に後藤に触れた。
私は臆病だったんだ圭織よりも。

後藤は撫でられてるネコみたいに目を細めて。

・・・・・・


756 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:06


「・・・お茶にする?」

2人がそろって嬉しそうに振り向く。
よかった。ようやく言葉が通じる世界に戻った。

そこから改めて自己紹介とかはじめるから
なおさらさっきのはなんなんだと頭をかかえたくなった。


757 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:06


「後藤そろそろ準備したほうがいいんじゃない?」

「そうだねぇ。圭織も見るといいよ。アナタが生まれた炎をね。」

「炎って?」

「あぁ圭織はしらないんだよ。」

あのときの話し。
詳しくはしてないからね。

不安そうな圭織に後藤がやわらかくわらう。

「そっか。じゃ楽しみだね。今夜、桜も咲くんだよ。」


春がやってくるんだ今夜。
みんなで呼ぶんだ。




おわり

758 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:11
はい更新終了です。

今週末までに桜の見頃が過ぎてしまいそうですね。
ズル休みをして花見に行きたいなぁ。ま、叶わぬ夢ですが。
759 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:18
いつかゆっくり花見をする余裕が欲しいものです。
760 名前:ちぃ 投稿日:2006/04/05(水) 00:21
ではまたヒマが出来たときに。
761 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/21(金) 00:42
面白いです。ヒマが出来ることを常に願ってます。
762 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:36
更新します。
763 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:36

いやぁなんかね。強いな2人はって思ったの。
やっぱりヤダよ。寂しいのは。

――――――――――――――――――――――――――――――――

764 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:37


「へ?なんやそれ?」


「なにって・・・ねぇ?」

ベットに転がってる矢口と顔を見合わせた。


「じゃどうやって季節を回すんだよ?」

そうだよ。
お祭りもなしにどうやって?


「んなもんなんもせんでもクルッと回りよるわ。」

じゅるっと何かの音。
くは〜とか幸せなため息。


壁をはさんだやり取り。

でもだいたいなにしてるかわかるよ。

765 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:38


「あぁ!裕ちゃんまた飲んでるでしょ!」

「ん〜どうかなぁ?」


ははは

実は私もずっと壷で寝かしてた芋焼酎の初飲みなんだけどソレは秘密。
矢口お手製のロッキングチェアーでユラユラ。

裕ちゃんじゃないけど幸せなため息もでるよね。

矢口は廃糖蜜からわざわざリカーを作って果実をつけてたりして
甘いお酒を作ってる。職人だよねぇほんと。


目が合うとニヤッとわらってグラスを傾けてたりして。
完全に自分を棚に上げてるよコイツ。

私としては例のコンビが作る割り水をしていない日本酒で
つけた梅酒がオススメなんだよ。贅沢すぎるんだけどね。

766 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:38


「でもなんで回るんだろうね?」

「そこだよ!こっちは冬から春にするのに大変なんだから。」


冬には冷え切ってしまう空気。
草木も葉を落とし土も生み出す力を失う。

春にするには自然から恵みを受け取り熱を保つ人の力が必要なんだ。
きっかけを作ればまた世界は熱を帯び始め生命を生み出す。
調子乗りすぎて熱が上がりすぎる夏は考えものだけど。
でもそのおかげで恵みはもたらされるわけだよ。


「人は自然の一部でしょ?」

「まぁそれはこっちでも同じやと思うねんけどな。」

「けどなんなんだよ?」


むぅっとアヒルな矢口。


767 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:39


「なんでアタシが責められなアカンねんな。アタシなんも悪いことしてへんやん。」


「「まっそりゃそうだ。」」

思わず声がそろってわらいが弾ける。


「っちゅうかアンタらも飲んでるやろ!絶対飲んでるって!」

「「ん〜どうかなぁ?」」

「うわっ真似しよった。」


ひとしきりわらってまたグラスを傾ける。


ふと思う。

自然が勝手に季節をまわすなんて
もしかしたら勢いがつきすぎた世界じゃないだろうか?
裕ちゃんの世界でももっともっと昔は人の祈りで・・・なんてね。
よくしらないけどそんな気がした。


768 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:39

「・・・なんかうらやましいなぁそっちは。」

ぼそっと小さな声。
でもそれはトスッと鮮やかに胸を刺した。


「ちょっとだけ分けてや。なんか1つだけでもいいから。」

はははっとわらう声に矢口の瞳が揺れる。


あぁ・・・


深く座りなおしてユラユラしてみる。
グラスの中の氷をくるくる回す。


さり気にチラ見してみたら泣きそうに
でも少しだけ嬉しそうにもみえて。



見てるこっちが胸を締め付けられる。


はぁ〜


769 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:39


「あっいやいや。大人がゆうたらアカンわなこんなこと。」

「そうだ!一番年食ってるくせにぃ!」

「なんやとこらっ!」

「ダメだよ矢口。ほとんとのこと言っちゃ。」

「かぁ〜圭坊もか!」


なんて。

ほんとはお互いにちゃんとわかってただろうね。


そう。
もう壁は隔てるものになっていたんだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――

770 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:40

「無理だね私には。」

「なにが?」

「顔も見れないし触れることもできないなんて嫌だっていってるの。」

「・・・なんか意外。もっと好きの種類ごっちゃにしてる人かと思った。」

「誰が?」


呆れた顔と大きなため息。

なんなの?



おわり

771 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:40

はい更新終了です。

紺野さんと小川さんが大学進学に海外留学だそうですね。
変に慣れちゃってイカンです。そんなに驚かないのが驚きです。
嫌だ嫌だとダダをこねた過去はどこかに閉じ込めて。
戻ってこない人だってどこかで笑ってることを願うことを覚えましたもんね。

772 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:41

いわゆる現メンヲタと卒メンヲタという線引きをする人が少なからずいますよね。
自分は回顧だか懐古だかいう言葉を非難の意味で使われて
ちょっとした疎外感を味わったことがあります。
とはいえ今の娘。さんたちの批判をするマナーのなってない人も多いし。
大好きなもの批判されたらそりゃ嫌だわな。
もっと他人に優しくなれんものか。

今回のことを通してはじめて大好きなものが形を変えるショックを味わった人が
過去そんなショックを受けた人の気持ちに気付いてくれたらなぁと思いますよ。
だってねもう形を変えてしまったとしてもやっぱり大好きなままなんですから。
もう終わったんだよとかいわんでよ。勝手に終わらさんでちょうだいな。

773 名前:ちぃ 投稿日:2006/05/16(火) 01:45
先の2つのレスは誰かに突っかかる勢いではなく
ぼそっと独り言的なテンションです。
気を悪くする人がいたら申し訳ないです。

紺野さんも小川さんもまだまだこれから人生は長い。
オーディション勝ち抜く根性の持ち主ですよ彼女達は。
自分が決めた道ならば多少の困難は踏み越える強さをお持ちでしょう。
腰をすえて根気良く。失敗は成功の元くらいにポジティブに考えて。
2人の行く先に幸多からん事を願います。

ではまたヒマなときに。
774 名前:つかさ 投稿日:2006/05/16(火) 22:28
お久しぶりです。

文字の重さにちぃさんの娘。さんたちへの想いが伝わってくる気がしました。

例えば卒業は終わり、という意味あいもあるかもしれないけれど、
終わりはまた新しく始まり、という意味でもあると思います。

中澤さんが娘。を卒業してファンになった自分にとって、娘。にいた中澤
さんはあくまでも昔、なんですよね。
今の中澤さんが好きってのが前提で、昔の中澤さんも大好きで。
娘。にいた中澤さんの周りで笑っていた人たちが大好きで。
それを懐古主義と言われるならしょうがないかな、と思っています。

今の娘。を否定する気もまったくないですし、ただ、変わり続けていくのが
娘。だと。

願わくば。
まだ十代が多い彼女たちが大人の都合で振り回されないことを。
振り回されたとしてもその中で自分のベストの道を選ぶことができるように。
それだけは思います。

長々とレス、すいません。
めったにレスはつけませんがずっと読んでます。

ちぃさんのスレは自分にとって安心できる場所、のような感じで。
忙しいとは思いますがくれぐれもご自愛ください。
775 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:07
更新します。
776 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:08

微かに鳥の鳴き声を聞いた気がして
霧が晴れるように心地よく意識が浮上してくる。

目を開けるのがもったいなく思えて
もう少し味わっていたくて寝返りを打つ。

むにゅっ

やわらかい。



ん?
むにゅっ?

薄っすらと目を開けてみても視界が確保できない。
とっさに身体をひこうとしてからみつく長い腕に阻まれる。


ぬはっ!!

それでも少しだけひらけた目前に寝乱れた胸元。
距離をとろうとジリジリ後退を試みる。


「んんぅ〜」

うあっちょっと!


再びやわらかい胸とこんにちは。
圭織の腕力は案外強い。


・・・・・・


いっか気持ちいいし。
もうちょっと寝よ。


777 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:09


今度はパチッと目が開いた。
心地いい枕はもう起きてしまっているみたい。

「なによぉ。起こしてくれてもいいのに。」


よっこらしょ

かろうじて声には出さず起き上がる。


なんか久しぶりだな。

誘われてめでたくベットに復活。
なんだろうね急に。

ともかくリビングでの布団生活は終わりを告げたらしい。


ぐぃ〜っと伸びをしてボサボサな髪を手で撫で付けながら
消えた枕の後を追う。


778 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:10


テーブルの向こう側の圭織は私の嫌いな牛乳を飲んでいる。
いつもより機嫌よさげなくせにずっと逸らされたままの視線。

シャキシャキ生野菜。
ぷるぷる目玉焼き。
カリカリベーコン。
こんがりトースト。

そしてこの微妙な空気。


「圭織?」

「なななに?」

コップをガチャンと音を立ててテーブルに戻して
やっぱりこっちを向かずに目を泳がせる。


なんでそんなに動揺してるのさ。


「ちゃんと寝れた?せまかったら私・・・」

「寝れた!寝れたから!」


圭織がそういうならいいけど。
・・・・・・ていうか今日はじめて目があったんじゃない?


相変わらずおおきい目。
しっかしマツゲ長いねほんと。

779 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:10


「寂しいならもっと早く言えばいいのに。」

「え?」

あら?
なんだ違うの?

「圭ちゃんのバカ。」

そんなあからさまにプックリ膨れなくてもいいんじゃない?
はぁ〜ってまたそんな。


「えぇえぇそうですよ。私はバカですよ〜だ。」

はむっとトーストにかじりついて
モクモクと咀嚼する間フォークでサラダをつつく。


780 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:11


あの時はこんな性格だなんて思わなかった。

あの炎が消えた
その後に倒れていた人影。

したたる水滴。

そこにいるのが矢口ではない誰かだと気がついた。

艶やかな濡れ髪。
ほのかに色づいた唇。
透きとおるような白い肌。

確かにそこに力強く息づく生命。

切り取って額に入れたくなるほど幻想的だった。


目を覚ましてからはちょっとした台風のように私を振り回す。
あのちっちゃい怪獣と同じように。


781 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:11

ガタン


あ・・・

先に食べ終わった圭織。
いつもなら他愛ない話しをしながら待っててくれるのに
キッチンに食器を下げに行ってしまう。

そんなに怒ることなの?
なんか苦手だなこの状況。

フォークをおいてコーヒーを一口。
怒りん坊の彼女のところへ。


782 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:12


ターゲットはシンクの前で交信中。

どうしたらいい?
彼女が喜ぶことってなに?

そんなこともわからない。

ダメだな。


ぎゅっ


「っぁ?!なに?!」

「こらっ暴れんじゃないの!」


よしよし大人しくなったね。


「あのさ。」

「なに?」

「全然わかんない。圭織のこと。」

「そんなこと言わないで・・・・・・わかってよ。カオのこと。」


あ〜またそんな声。

困るんだよそういうの。
私だってちゃんとわかってあげたい。

783 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:13

腕を解く。
振り向いた圭織の目にやっぱり涙。

そんな顔させたいわけじゃない。


「だったらわかるように教えて私に。」


むぅっと難しい顔をする。

だからそんな顔するなっていってるのに。

ほおを撫でる。


「寂しくないんならどうして一緒に寝たいの?
 せまいでしょうに。いまさら気を使うことないよ?布団なれたから。」

そりゃ確かにベットのほうがいいよ。
でも無理にさぁ・・・


って
真っ赤だけど大丈夫?


784 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:14

「ソレは・・・言えない。」

「言いなさいよ。」

「もぉヤだ圭ちゃん。」


なにさ。


「じゃあ圭ちゃんは?カオと一緒に寝るのイヤ?」


・・・・・・

イヤ?



「ううん。圭織の身体やわらかくて気持ちよかった。」


ってなに
まだ赤くなるの?


ギュウッ

反対に今度は圭織の腕の中。
ほお擦り付き。

「う〜やっぱヤだ圭ちゃん。」

はぁ?


でもなんか圭織がかわいく思えた。

いつもよりも。



おわり

785 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:15

はい更新終了です。

レスを下さる読み人さんに対してはですね
つかささんのレスの一文をお借りすれば
めったにレス返しはしませんがずっと感謝してます。
そしてこの遊び場を提供してくれる管理人さんにはそれ以上の感謝を。

いま伝えておかないと機会がなさそうなので。

786 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:15

自分にとってこのスレは一種の精神安定剤または
トゲトゲになった気持ちをもう一回ホコホコに温かい状態に戻すリハビリ。
よろしければお付き合いください。

787 名前:ちぃ 投稿日:2006/06/25(日) 15:16
ではまたヒマができたときに。
788 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/25(日) 22:54
うわぁ!可愛い!!
789 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/22(土) 03:08
かおりん可愛いですねw
鈍感すぎる圭ちゃんもかわw
790 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/02(水) 23:56
まってます。
791 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/11(金) 01:18
生きております。大丈夫だと思いますが一応。
片付ける物ゴトがいくつかありまして、申し訳ないですが
続きはもう少しお待ちください。

ではまた。今月中にはヒマをつくります。
792 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:11
更新します。
793 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:12


私には無理だったけどもし他の人なら気付けたのかな?

――――――――――――――――――――――――――――――――

794 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:13

「ただいま。あ〜疲れた。」

まずはシャワーでも浴びてから一息つくか。
にしても外は暑いなぁ。

だいたい草のびるの速すぎるんだって。
野菜の収穫だって多いしさ。


「おかえりぃ圭ちゃん。」

ソファの向こうから涼しげな声。


あれ?

「どうしたの矢口。今日早いね?」

夏は果樹園でも仕事が多い時期なはず。

795 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:14


「あぁ今日はお休みしてごっつぁんとこ行ってきたんだ。」

「へぇ?」

「うあっ!圭ちゃんすっげぇ汗だく!!」

「あ〜もぉうるさい。これからシャワー浴びるんだから。」


タオルでグイッと汗を拭うけど根本的な解決にはならない。


「それより氷1つちょうだい。」

テーブルの上には氷のたくさん入ったグラスが置いてあるけど
そこに液体が入ってないのは始めからわかってる。

「えぇ〜矢口の分が減っちゃうよ。」

文句をいいながらも開けた口の中に大き目の氷をコロン。

「あ゛〜〜」

冷たい。

「オッサンだよ圭ちゃん。」


むっ

まぁいいか。
シャワー浴びてこよ。


796 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:15


はぁ〜サッパリした。

プシュッ


「プハァ〜」

かぁ〜うまっ。


「なに〜なに飲んでるの?矢口もなんか欲しい!」

リビングからの声。


ったくもぉ。

この時期に冷蔵庫前にいるとだいたいパシらされるはめになる。

牛乳でもあれば嫌がらせに持っていくんだけど
2人とも嫌いなため料理で使う予定があるときぐらいしか存在しない。

さっきはビールしか探さなかったからよく見てなかったけど
でかけたとき買ってきたのだろう今朝はなかったお酒の缶が並んでる。
けっきょく矢口の好きそうな甘いお酒を選んでる自分に気付いて苦笑い。

まぁね
さっき矢口の大好物わけてもらったから。

・・・・・・

いいわけしてみてもあの氷を作ったのも私だよ。

797 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:16



「ん。」

「おっサンキュー!」

ご機嫌な矢口にまた苦笑い。
よくわからないけど嫌いじゃないこの感じ。

私は矢口に弱い。
まぁ裕ちゃんにも他の誰にも基本的に弱いのかもしれないけど。

矢口が弱いのは裕ちゃん。
でも裕ちゃんがからむと逆に誰よりも強くみえる瞬間がある。

彼女のクリクリした目は
ここ最近でまたその色に深みを増した。

私は誰のためだったら強くなれる?

798 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:16

「どしたの?」

「あ〜なんでもないよ。それよりなにしに行ってきたの?」

「ごっつぁんとこ?」

「そ。」

「ごっつぁんって物知りじゃん?」

確かにね。
神がおりてくるそのときに色々流れ込んでくるって。
しっていても役に立たないことがほとんどらしいけど。


「で?」


意味ありげにわらう。

「だからちょっとね。」


なんだそれ。

799 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:17

「それよりさぁ秋の収穫後の樹の手入れ手伝ってよ。」

「また?今年に入ってから何回手伝ってるかわかんないよ。」


今までずっとひとりで管理してきてたくせに。
仕事けっこう覚えちゃったよ。


こらそこのチビっこ。
わざわざ上目遣いなんかする必要あんの?


「わかった手伝えばいいんでしょ。でも・・・」

「畑優先ね。」


なに
わかってるじゃないの。


「約束だよ?」

満足気にわらう顔に今日何度目かの苦笑い。





後から考えると彼女にとって
壁の意味がまた少し変わっていたんだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――

800 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:18

「あ!もしかして初めてかもしれない。」

「なにが?」

「圭織さぁ私に弱いとこあるんじゃない?」

「・・・・・・」

「ねぇねぇどうなの?」

「・・・・・・圭ちゃん。」

「なに?」



おわり



801 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:29
はい更新終了です。

微妙です。しかもまた飲んでるよこの人達。
そりゃあ暑い暑いこの時期、家帰ったら飲みますよ。
802 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:39
あぁミュージカル「リボンの騎士」みたかったなぁ。
なんで今年やるかな。来年なら時間作れるんです。

来年もやって欲しいなぁ。
803 名前:ちぃ 投稿日:2006/08/27(日) 01:46
またヒマを作って更新します。
ではまた。
804 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/30(水) 04:21
おかえりなさ〜い!
矢っちゃんと圭ちゃんの絡みおもしろ!w
でも切ない・・・。
かおりんかわww
あ〜・・・読んでたら甘いお酒飲みたくなってきたぁ。
805 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/05(木) 00:48
さりげなく待ってます。
806 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:12
更新します。
807 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:12


「うぁ〜力あるね。」

「はは。まぁね。いつもは鉄が相手だもん。」


そうか。そうだよね。

面白いようにおイモが堀りだされていく。


ただすこし雑で収穫後のつるの処理をしているときに残されたおイモが見つかる。
見つかるだけならいいんだけど・・・


サクッ

ほらこれだ。


808 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:13

「こらっ!ちゃんと全部掘りだしてって言ってるでしょ!!」

「ごめぇ〜ん。」


鋤の刃に刺さってしまうとすぐに腐っちゃうんだよ。


「それ後藤が・・・」

「いいって。今夜食べようよ。泊まっていくんでしょ?」


おほ?ってなによ。

「いいんだよ。」

修理頼んでた農具もって来てくれたしメンテナンスもしてもらった。
おまけに作業まで手伝ってもらっちゃってるし。


809 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:13


「でももう少し丁寧にね?」

「ほ〜い。りょぉ〜かい。」



サクッ

「っておい!」

刺さったおイモをプラプラ振ってみせる。


「だって後藤いまから気をつけるんだもん。」


だもんってアンタまた唇とんがらせて。
なにそれ・・・はぁ。

「じゃそこから端までは気をつけてよ?
 2列目の端まで行ったら終わりだからね。」

「ほ〜い。りょぉ〜かい。」


810 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:14






「ふぁ〜くったくった。」

後ろにバターンってアンタ自由ね。

「こらっ!ごっちんダメだよ。」

「えぇ〜気持ちいいよ?」

「だぁめ。牛さんになっちゃうよ。」

ぐいぐい起こされてる。
なんの親子プレイだって話しだね。


「ちょっと圭ちゃんも飲んでないでなんか言ってよ。」


え?なんかってそんな・・・

「行儀悪いからちゃんと座ってな。」


811 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:14



・・・・・・なにこの間。


「あぁ・・・そういえばさ。付け焼刃ってちゃんとやれば使い物になるんだね。」

「お?それは後藤の腕がいいってこと?」

「まぁね。」

「あは。」

ふにふにおどってるよ。そんな飲んでないよね?

ん?

「なにわらってるの圭織?」

「なんかうちのお父さんみたい。無理やり話題作っちゃって。」


なんだ私もプレイヤーか。


ふははってみんなで笑う。



812 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:15



「なんか違うね。」

「うん?」

「やぐっつぁんがいたときと。」


あぁそうかも。


「なにが違うんだろ?」

「ん〜子どもと大人の比率が逆転するんじゃない?」

「はははっ確かに。ご飯食べたら率先して転がってさ。
 圭ちゃんに怒られたら寝る子は育つんだって今更な悪あがき理由にして。」

「そうそう。じゃあ寝ころがしとくしかないでしょ?」

「後藤も便乗して転がってた。」


思い出してニヤニヤし合ってると不穏な空気が・・・

813 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:15

あ〜どした?
圭織が石になってる。

クイクイと袖を引っ張ってみる。


「・・・転がしといたほうがいい?」

そこなの?

「いいよ。後藤は十分育ったから。」

「それ矢口が聞いたらスネるね。」


聞くことはもうないんだろうけど。


814 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:16



「あのさ。やぐっつぁん元気だよ。」

「へ?!」

心臓がギュッとなる。



「お祭りのときに感じるんだ。」

コツンとテーブルに額をくっつける。

「ごめんね。後藤の中で色々あっていえなかった。」


・・・・・・そっか。

この子の感じる世界はどんなだろう。


圭織に頭を撫でられると顔をそろそろと上げてふにっとわらう。


815 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:17


「もっとよく知りたいけどあんまり意図的に力を使うとさ。ダメなんだ。」

「そうなの?」

「あれはもう絶対やっちゃダメだよ。」


後藤の左腕の袖をめくる。

息をのむ圭織。


まとわりついた炎と無数の火の粉の痕。
その腕は今も燃えているようにもみえる。

火を司る神に愛され火傷を負ったことのなかった後藤。


「怒られちゃった。」

えへっと頭をかく。


「圭織を呼んだのも後藤かもしれない。ごめんなさい。」

どういうこと?

疑問はどうやら顔にそのまま出たようで
ん〜となにやら後藤は思案する。

感じるものを説明するのはなかなか難しいのだろう。


「後藤が火なら圭織は水なんだ。」

816 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:17



妙に腑に落ちる。

あの日あの時
炎の中に生まれた大きな水の球。

後藤の腕に絡んだものを含め暴走した炎を消し去って
残されていたのは水を滴らせ横たわる圭織。


炎上する火を打ち消すのは潤下する水。


817 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:18


「熱くて痛くて・・・寂しくて。」

ふっと自嘲する。

「後藤がしっててやったことなのにね。」

「しってたの?」

そっと腕の炎に触れる。

こうなることを。


「しってたよ。」

「矢口は?」

「しらない。行けなくなるでしょ?」


当たり前だ。
後藤が傷つくことをしってたら絶対やらない。

818 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:18

「後藤はやぐっつぁんが大好きなわけさ。
 やたら真っすぐでちょっとした障害物でも乗り越えていくんだもん。」

「まぁね。あの勢いには負けるわ。」

「その障害物の突破方法が1つしかなくて
 それが後藤にしかできないことだっただけなんだ。」



・・・そっか。でも・・・ん〜

確かに急に整理がつく話しじゃないな。


はぁ

「だいたい後藤を上回るワガママっぷりとか矢口くらいだよね。」

「それだよ。ほんとびっくりするよ。」

「しかも人を選んでワガママいうの。」

「それが逆にかわいくってさ。」


ははは。そうかも。


「いいなぁカオも矢口に会いたかったなぁ。」

819 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:19

「・・・会えるよいつか。」

後藤がわらう。


って?!

「えっ!そうなの?!」

もう会えないんじゃないの?!


まぁまぁって落ち着けるかこんな話し。


「いつかだよ。いつになるかわかんないけど・・・また会えるよ。」


なんなのそれ。ちょっと待ってよ。もうなにがなんだか。


820 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:19


時は移ろい行くけども
時を重ねることはないこの世界。

ここでは何も変わらず待ち続けることができる。

でも・・・


「圭ちゃん?終わりのある世界ではまた始めることも出来るんだ。
 ながれ流れていつかここに帰ってくるよ。裕ちゃんもね。」

そういうものなの?
納得いくようないかないような。


あれ?ちょっと待ってそれって

「矢口にも説明した?」

「した。」

「じゃあアンタ腕をこんなにしてまでやること?」


・・・・・・

ん〜とまたなにやら後藤は思案する。


821 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:20


「圭ちゃん。わかりにくいかもしれないけどね
 また始められたとしてもそれは別の人なんだよ。」

「そう。だから待てなかったんだよやぐっつぁん。」


ちょっと待って。
また難しいことを言い出したね。


ここへ帰ってくる矢口とたどり着く裕ちゃんは私のしらない人?

おかえりとはじめまして。かみ合わない挨拶。
違和感ありまくりだ。

私ならそんな再会でもいい。時間をかけてまた1から作ればいい。
笑いあえる時間を。


でも・・・そうだね。
矢口はそれじゃ辛い。


ワガママ怪獣め。


822 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:20


あれ?待ってよ。

「矢口だって今はいいとして次はどうするのよ?
 次がここっていう確証はないわけでしょ?」

後藤みたいに手伝ってくれる人いないじゃないの。
どうせまたバラバラになっちゃうじゃない。

「あ。それは大丈夫。思ったよりいるんだよ。後藤たち自身も。」


は?


「あぁ同じ魂の人ってこと?」

「そう。」

え〜っとどうしてそこで分かりあっちゃってるのかな?
わかんないよ。私にはさっぱりなんだってば。

どっと力が抜ける。

もうイヤだ。

火と水だっけ?
はぁ

「どの神様にも愛されてない私には理解不能だわ。」

テーブルに突っ伏す。


「圭ちゃん愛されてないなんてウソだよ。」

「ねぇ。」


だからわかんないってば。



おわり

823 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:21
はい更新終了です。

これでほぼ話しの枠組みは作りおわりました。
後は置き去りの部分を少しずつ埋めていくのみです。
824 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:21

ある意味、他のアンリアルの話しとつながりますね。
アンリアルをリアルにする方法ってやつです。

屁理屈こねるのだけは得意だったんです昔から。

825 名前:ちぃ 投稿日:2006/10/18(水) 23:22

ではまたヒマが出来きたときに。

826 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/18(土) 23:32
ヒマが出来るのをまってます。
827 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:14
更新します。
828 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:15

もう行くことは決めてたみたい。
絶対に私にはいわないってことも。
――――――――――――――――――――――――――――――――

829 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:15

「どした?そんなとこで。」

「ん?ちょっとね。」


家の前の椅子。
逆向きに背もたれにアゴを置くようにして座ってる。

なんかけっこう長い時間そうして家を眺めてるんだ。

ったく。


「ほらっこれ着な。風邪ひくよ。」


上着を手渡すとニッとわらう。

「気が利くじゃん。」


830 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:16

肩にはおってから私の腕をポンポンってする。


「はい?」

「優しいね圭ちゃんは。」

「なんなの?気持ち悪い。」

「はぁ?!圭ちゃんに言われたくないね。」


ほら。
こっちのほうが安心する。


「みんなそろそろ来るよ。」

「そうだっけ?もうそんな時間?」


そんなビックリすること?
ボ〜ッとしてるからでしょ。


「だいたいアンタが集合かけたんでしょうが。」

「だってほら秋だからさ。収穫祭だよ。楽しみだね?ね?」

椅子からピョンッと立ち上がってくるくる回る。

831 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:16


この子テンションおかしいんだよね最近。


見てるとそのまま家に駆け戻る。

って

「お〜い!この椅子は?!」

「圭ちゃん持ってきて!」


・・・・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――

832 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:17

「・・・どれだけ鈍感なんだろ。」

「圭ちゃん。」

「今日はもう止めていい?」


自分のバカさ加減に腹が立つ。

なんで気付けなかった?
なんで・・・


なんで言ってくれなかったの?


833 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:17

はぁ〜

「なんだったんだろうな私って。後藤には相談してたくせにさ。」


コーヒーカップを少し脇へどけてテーブルに突っ伏す。

そりゃ壁を越える手伝いなんてできないけど。
なんかあるでしょ?あれだけ一緒にいたんだから。


頭をポンポンってしたあとゆるゆると撫でてくれる圭織の手。
それが優しくてよけいに胸が痛くなる。

やめてよね。そういうこと。

困る。


隣にいる圭織がただただ温かい。


834 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:18


「あのさ・・・」

「なに?」

「大事だから言いにくいことだってあるよ。」

・・・・・・


頭を撫でる圭織の手を掴んで止める。

「そんなのわかんないよ?」

「そうだね。カオは矢口じゃないから。
 誰に何を言ってお別れしようなんて悩む時間もなかったし。」



835 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:19

慌てて身体を起こすと圭織はわらってた。

「ごめん。」

「ううん。こっちこそごめんね。」


なんで?

「初めのころ圭ちゃんに散々当りちらしてたじゃない?
 しらなかったんだ。圭ちゃんにも辛いことがあったなんて。」

圭織に引き寄せられるまま胸にもたれてみたけど
居心地が・・・いや居心地はいいんだけど落ち着かなくて
ジタバタしてしまう。


「よかった。悩めるようになって。」

耳元で聞こえたその声は少しだけうれしそうだった。




おわり

836 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:23
はい更新終了です。
837 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 20:35
いつの間にか12月。妙に焦りを感じます。

突然ですが最近GAMが好きです。
グループであろうとユニットであろうとソロであろうと
本人が心底楽しんでないと見ててニヤニヤできない。
そりゃお仕事ですから楽しいばっかりじゃないだろうけど。
838 名前:ちぃ 投稿日:2006/12/06(水) 21:23
裏っ側ではいろんなことがあるとしても本とは知りたくない。

楽しく生きてこその人生でしょ。
それを体現してみせてくれることを期待するんです。
自分勝手な期待と知りつつですけど。

だから中澤さんと矢口さんのしんどいだろうなと思うときでも
グイグイ進んでいく感じに惚れたんだなぁと思わぬところで再確認。

ではまたヒマが出来たときに。
839 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/10(日) 06:09
GAMの歌とダンスは当たり前に好きで
二人のラブラブっぷりも好きですw
藤本さんの嫌そうな顔をテレビで最近見ません。
楽しいんでしょうねww

待ってます。
寒い日が続きますが、風邪を引かないで頑張ってください。
840 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/05(金) 04:03
あけましておめでとうございます
今年も待ってますよ
841 名前:名無し 投稿日:2007/01/06(土) 12:19
のんびり待ってます。

今年もよろしくお願いします(ぺこり)
842 名前:ちぃ 投稿日:2007/01/12(金) 16:27
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

新年のご挨拶が遅くなりました。
年末年始で状況が大きく変化しまして、ゴタゴタしておりました。
吉兆でいえば大吉くらいなことですが、よりMy PCと疎遠になります。
落ち着くのは5〜6月ごろかもしれません。

春ごろに完結を考えておりましたが、どうなるかちょっと。
期待せずお待ちいただけると幸いですw
843 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:13
更新します。
844 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:14

裕ちゃん達のところと違って
こっちの冬は恐ろしくこごえる。

再びあたたかい春を迎えるためにこのお祭りはあるのだ。

そしてまた土が生命を育み始める。

845 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:14

普段ついてる灯りは消され
かわりに辺りを照らすのは篝火。

広場は漆黒の闇とまるで生き物のように揺らめく炎に支配される。

まぁ炎はこのあと実際に命を得るのだけれど。

「あっ!ごっちん。」

「ほんとだ。」


人垣の途切れた開けたところ
つまり儀式の舞台となる場所の端でなにやら打ち合わせらしい。

お気楽に高みの見物で申し訳ない。

このお祭りには席があるわけではない。
三つの篝火で囲まれた場所を避け
思い思いにシートを敷いて座る。

私はいつも矢口のおススメだった樹の下を選ぶ。
今夜は春がやって来るのだから。


846 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:15


人々のお供え物は祭壇付近に置かれている。


「これがほとんど無くなるなんて不思議だね。」

「そうかな?そんなものだと思ってたんだけどな。」

圭織は首を傾げるけど
ずっと見て来た私には当たり前の光景。



私なら一番出来のいい野菜を作り出す畑の土。
圭織なら樹木を潤すこの辺りで一番澄んだ泉の水。

恵みに感謝しそれぞれの誇りを捧げて祈る。
そうすると不思議と願いは叶う。


「矢口はいつも花芽の一番多い一振りの枝だったよ。」


圭織はわらう。

「樹が元気なわけだ。」


なんだかわかんないけど納得のようだ。

847 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:15


「焼け焦げてしまうのはなんなの?」

「あぁそれは違ったんじゃないのかな。
 神様はわかりやすく教えてくれているのかもね。」

競い合い奪い合って得た一番は炎に呑まれ炭と化す。

その人の持つ誇り。
本心からの願い。

自分でそうだと思っていても違うことだってある。

うんうん。
きっとそうだ。


「だからみんな一生懸命考えて一番を神様にとっておくんだよ。」

「じゃ・・・神様にも譲れないものが一番だったら?」


848 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:16

・・・・・・

でじゃぶ?

なんかしってるこの光景。


違うや。

この前このフレーズを聞いたのは矢口からだ。
こんなふうに困った顔をしてた。


「圭ちゃんは?」

「なに?」

「ないの?譲れないもの。」


その真剣な目に戸惑いを覚える。


ペチっ

「いたぁ〜い!」

額をはたき無理やり逃れる。
ったくそんな目で見るんじゃないよ。

矢口は・・・
結局その譲れないものを神に委ねたのだろうか?
だとしたら願いは叶ったのだろうか?

疑問は尽きない。


でも後藤の様子からすると悪いようにはなってないはず。

たぶんね。

849 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:16


「圭ちゃん?」

「ん〜?譲れないものねぇ。あったとして
 なんでこんなところで公表しなきゃなんないのさ。」

「・・・つまんない。」


そんなあからさまにスネないの。
こんなにたくさんの人が集まるお祭りだっていうのに。

私が何かひどいことしてると思われたらどうすんのよ。


何回か前のお祭りのとき炎から現れた人。
ほとんどの人が覚えてる。

人々はあの夜の幻想を彼女に抱いたままだから
人間としての圭織を人前に出すことに躊躇してしまう。

なのにコイツときたら・・・

850 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:16


ふといつものお気に入りの場所にいる辻加護と目が合う。

なに?
2人してニヤニヤして?

はっ!

気がつけば腰に回された腕。


なっ?!

「ちょっと!離れなさい。」


なんなの?
さっきまでスネてたくせに。


「なんで?いつもそんなこと言わないくせにぃ。」

いやいや。
そういうことは大きな声で言わないで。

なにこれ?


「ナニかの罠?」

「フフフ。圭ちゃん顔真っ赤。」


うぅ・・・


「もうすぐ始まるから大人しくしてな。」

「はぁ〜い。」


ダメだ。
やっぱり弱いじゃない私。


851 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:17

パンッ

ざわついた広場がたったいちど手を打ち合わせただけで
こんなに静かになるものなんだろうか。


後藤の衣装は圭織に言わせると『地中海風ネオジャパネスク』なんだとか。

白い単に似た金糸の刺繍の入った巻きスカート。
赤い内掛け思わせる華やかな模様のショール。

陰影をつくり闇夜の空気を揺らす炎。


「音楽はラテン風だ。」

ボソッと隣から聞こえたつぶやきに混じる
知らない言葉に一瞬だけ胸がざわつく。


後藤が右腕をついっと持ち上げると赤い羽が広がる。

そこから時間の流れは消えた。

852 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:17


その艶やかで軽やかな舞いは音と戯れる鳥。


三方の篝火は舞いと音色に誘われるように勢いを増し
誰もが闇の中に浮かび上がる昼のように明るい空間にのまれる。


853 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:18



やがて千切れ千切れとなる炎。

触れると灼熱の痛みを伴う
愛される者のみが共演を赦される蝶。

毎年のことなのにその演舞に心奪われる。



854 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:18



闇を背景にただひたすらに鮮やかに

確かにそこに神は存在する。



855 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:19

さらに舞いが激しく荒々しくなるにつれ
無数の蝶はいつしか一つとなり轟々と音を立てる竜巻となる。


祭壇をも巻き込むまでに成長したそれは

突如として細長く凝縮し

剣となって後藤の手におさまる。


辺りは水を打ったように静まりかえる。




おもむろに逆手に持ち替えると
短い気合と共に地面へ突き立てる。

856 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:19




そこから同心円状に波動が伝わる。


遅れて音を立てんばかりに一気に周りの桜が開花する。



人々は歓喜の声を上げる。
春がやってきたのだ。



857 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:20


花灯りで辺りが明るく感じる。

見上げると満開の桜。
そのままシートに寝転がる。


「はははっさすが矢口のお気に入りだけはあるね。」

まさに圧巻だ。

ひとり悦に入ってると頭をなでられた。
見上げたら圭織もわらってた。

「圭ちゃんかわいいね。」

「・・・うるさい。」

でもいいや。
いまは誰も見ちゃいない。


誰もが酔いしれる。

やって来た春に。


おわり

858 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:21
はい更新終了です。
859 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:22
春ですよ。桜が咲きますね。
時期としては良いタイミングでした。
間に合ってよかった。
860 名前:ちぃ 投稿日:2007/03/21(水) 21:25

また少し開くかもしれませんが
あとは本編が後一回で番外編が少しです。

ではまたヒマが出来たときに。

861 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/27(水) 23:33
ho
862 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/30(月) 16:36
ho
863 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/26(日) 01:47
ho
864 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/05(水) 01:17
待ってますよぅ。

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