ココロの歌。

1 名前:ココロの歌。 投稿日:2003年04月30日(水)22時42分24秒
今回、『ココロの歌。』を書かせて頂きます。
頑張りますので、もしよかったら読んでみて下さい。
よろしくお願いします。
2 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年04月30日(水)22時54分16秒
とうとう高校3年生にこの春なった一人の小さな少女がいた。
このお話はそんな彼女の物語。

『1.出逢い。』

ぽかぽかと暖かい日。4月になり、3年生の教室に入ろうとする。
ちょっとドキドキしながら教室の扉を開ける。まだ誰もいないようだ。
それはそうだ、いつもより30分も早く来たのだから。
今日は始業式、そしてようやく3年生になった日。誰よりも1番にクラス
割表を見て、1番に教室に入りたかった。
オイラの名前は矢口真里。背は小さいが元気では誰よりも負けない。
「うーん、3年生かぁ」
ちょっと伸びをしながら窓の外を見る。桜の木が綺麗に咲いているのが見えた。
校章も3になり、今日この日3年生になったと実感する。
自分の出席番号の席に座り、机に突っ伏す。席は窓側の後ろから2番目。
窓から暖かい陽が差し込む。このままだと寝ちゃいそうだ。

3 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年04月30日(水)23時03分36秒
気が付くと何だか周囲が騒がしく感じた。どうやらホントに寝てしまった
らしい。目をこすりながら教室内を見回した。
「ふぁー、よく寝た〜」
「矢口、いつから来てたの?」
突然、横から話しかけられた。そこには友達の飯田圭織が立っていた。
「圭織!おっはよー、何?このクラス?」
「あんたね、クラス割表見たんでしょ?私の名前あるじゃん」
圭織は苦笑して言う。しまった、自分の名前しか見てなかった。
オイラは「あははは」と、とりあえず笑ってごまかした。よく見てみると
前のクラスで一緒だった人が案外多くいる。圭織もその1人だ。
「私、出席番号2番だったんだ」
「お、1番じゃないんだ。いつも1番だったのに」
「えーと・・・安倍なつみさんっていう人が1番だよ」
何となく聞いた事のある名前だった。今まで、一緒のクラスになった
覚えはない。
・・・ほほう、後で話しかけてみよっと。
新しい友達作りに励むオイラだった。


4 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年04月30日(水)23時19分32秒
始業式の為、体育館へ移動。圭織と一緒に体育館へ向かった。
人数が非常に多い為、体育館の中はすごく暑かった。自分達のクラスの
所を必死で見つける。オイラは背が小さい為人に埋もれてしまうので
圭織の後ろについていた。
圭織は前の方で、矢口は後ろに並ぶ。
「ふぅー、もう始業式なんかいいのに」
いつも校長の話が長く、生徒から不評の始業式と終業式。
やっぱり今日の校長の話も長かった。

───そして始業式がやっと終わり、教室へ戻る。
「長いよねぇー、疲れたよ〜」
「私はあれぐらい平気だよ」
「まぁ、圭織の話もあれぐらい長いからね」
「ひっどぉー」
笑いながら教室に入り、次の時間はLHR。新しい担任は
誰だとか、みんな騒いでいた。オイラは特に興味が無かった、圭織も同じく。
しばらくの間、他愛も無い話をしていた。するとこのクラスの担任が
入ってきた。みんなバタバタと席につく。



5 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月01日(木)16時21分12秒
おもしろそう。
続き期待。
6 名前:New 投稿日:2003年05月01日(木)21時07分29秒
担任の紹介が終わった後、一人ずつ自己紹介をする事となった。
・・・別に、3年なんだからいいのにねぇ。
オイラは1番の安倍さんに視線を向けた。いよいよ自己紹介が始まる。
安倍さんはゆっくり席を立ち、恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせていた。
「えっと・・・安倍、なつみです・・・よろしくお願いします・・」
かなり上がり症なのだろうか、安倍さんはそれだけ言い終わると席についた。
まぁ、新しいクラスだから緊張してんのかなとオイラは思った。
そして自己紹介は淡々と進み、終了した。

───で、大掃除。
オイラ達の班の担当は教室だった。1番最悪な所がくじで当たってしまった。
みんなの机を全部運んだり、黒板を綺麗にしたり・・・と忙しい掃除場所
なわけだけど、それはそれで仕方ない。
「よいしょっと!」
つい物を運ぶ時に声が出てしまう。その度、友達から「オバチャンくさい」
と言わた。
「矢口ー、終わった?」
掃除が終わったらしい圭織が帰って来た。
「見ればわかるでしょ、まだ終わってないよ〜。いいよね、圭織の班は
 化学室だもんね」
「でもちゃんと掃除したよ〜」
圭織はえっへんと威張るように胸をはった。



7 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年05月01日(木)21時20分17秒
「・・・で、安倍さんは?一緒だったんでしょ?」
「あ〜、何かね、話かけたんだけど中々・・・上手くいかなくて」
「よし!オイラも後で話かけよ!」
そう言って、オイラは掃除に戻った。もちろん圭織も手伝ってもらう事にした。
掃除は40分にわたって行い、それが終われば今日のとこはもう帰れる。
「ふぁ〜終わったぁ!」
教室の掃除も無事終了。オイラは安倍さんを探す事にした。
どうやら教室の中にはいないようだ。圭織は午後に用事があるらしく
帰って行った。
「んー、何処行ったんだろ?」
今日の午後は部活があるからカバンの中から朝買ってきたパンを取り出す。
みんな帰ったのか、部活に行ったかで教室にはオイラ一人。でも安倍さんの
机にはカバンがちゃんとあった。
・・・・ホント何処行ったんだか。
パンをもぐもぐ食べながら窓の外に目をやる。今日はホント良い天気だ。
暑くなりそうだなぁ・・・・。
太陽を細い目で見ながら思った。その時、教室の扉がガラッと開いた。
入って来たのは、安倍さんだった。


8 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年05月01日(木)21時44分04秒
目と目が合ってしまい、2人共固まった。慌ててオイラが口を開く。
「あの〜安倍さんだよね?」
「は・・・はい」
安倍さんはすごく怯えたような感じで、オイラは何とか和ませようと
必死に言葉を探した。
「オイラ!オイラ、矢口真里って言うんだ。みんなに矢口って呼ばれてるんだ」
気合い入れまくりでしゃべった。
「えと・・・安倍、です。それじゃ、帰ります」
安倍さんは顔を真っ赤にさせてカバンを持ってすぐ帰ってしまった。
その様子にオイラはちょっと凹んだ。せっかく友達になろうと思ったのに。
「いや!諦めない!絶対、友達になるんだ!」
右手の拳を上げて、オイラは一人叫んだ。

食後、オイラは部室へ向かいジャージに着替える。ちなみにオイラは
陸上部。わけあって今は部員オイラ1人。
「さて、と」
靴の紐を縛りなおして部室を出る。とりあえず校庭を走った。
桜の木の下で走るのがとても気持ち良かった。

───校庭6周目。
誰かがオイラに近づいてきた。
「あのー、矢口先輩ですよね?」
背の高い、目が大きい金髪の女の子。その子はこの学校ではかなりの
有名人。そんな人が一体矢口に何の用だろう?
9 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年05月01日(木)22時00分41秒
オイラは立ち止まった。
「何?吉澤ひとみさん」
そう、相手は吉澤ひとみ。吉澤さんがこの学校に入る前から噂はあった。
『あの吉澤ひとみがこの学校を受験する』と。
中学はもちろんモテまくり、高校でもそうだろう。
「あの!───バレー部に入部させて下さい!!」
吉澤さんは頭を下げて大きな気持ちの良い声で言った。
「・・・え?えぇぇ〜!?だってバレー部でしょ?」
確か、噂によると吉澤さんは中学でバレー部で大活躍してるって聞いた。
それが何で陸上部??
この廃部寸前の陸上部??
オイラは混乱した。

───まぁちょっと前まではこの陸上部は少ないけど10人
はいたんだ。でも、みんなやる気がないのかだらだらしっぱなし。
そこで部長のオイラが『やる気が無いんなら辞めろ!!』って怒ってしまい。
みんな辞めて行った。話を聞くとそれをこの学校を見学しに来てた吉澤さんが
見たらしい。

「それで?入りたいと?」
「はい!気合いの入ってる部なので」
「バレー部じゃなくていいの?」
「見たんですけど・・・なんかいまいち気合いが」
どうやら『気合い』が大事なようだ。驚きながらも部員が増えるのは
良い事だし、嬉しい。
「いいよ。だけど厳しいからな!覚悟してね」
「はい!部長!」
こうして急に部員は2人になった。




10 名前:1.出逢い。 投稿日:2003年05月01日(木)22時05分31秒
吉澤さんが出て来たとこで更新終了です(^−^

>5 名無し読者様。
   ありがとうございます!頑張りますので
   これからもぜひ見て下さい。

11 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月02日(金)17時50分28秒
『2.冷たい瞳。』


3年になって、やっぱ春にはいろいろ出逢いがあるんだなと思った。
「う・・・眠いー」
昨日の夜は圭織と長電話をしてしまい、寝たのは夜中の2時過ぎだった。
重たい体を起こして、よろよろと立ち上がった。
顔を洗って、着替えて。お母さんの作った朝食を食べて学校へ向かった。
高校3年生の1日目はいきなり部員が増えたりと忙しかった。
「あ!矢口先輩〜、おはよーございます」
校門のとこでいきなり増えた部員に出会う。
「お、よっすぃーおはよ!」
よっすぃーというのは吉澤ひとみさんのあだ名だ。昨日オイラがつけた。
「今日も部活あるからなぁー。用事があるなら事前に伝えるようにね」
「はい、出ますよ」
オイラはしばらく一人で部活をやっていたのでこうゆう会話ができる事が
ものすごく嬉しい。
「じゃ、また!」
よっすぃーは1年の下駄箱へ行った。オイラは3年の下駄箱へ。
ふと1番のとこに目をやるとまだ安倍さんは来てないようだ。2番のとこには
上履きでなく靴が入っていた。圭織は来ているようだ。


12 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月03日(土)21時44分48秒
教室に入る。結構来てる人は多かった。
「おはよー、矢口」
友達としゃべっていた圭織がオイラの方に来た。オイラは「おはよ」と
挨拶をしてカバンを自分の机に置いた。そして自分の席の隣にある窓を
開けた。心地よい風が吹き込む。
「圭織、眠くない?」
「んー別にそうでもないかな」
「はぁ、羨ましいよ。オイラ寝ちゃいそう」
「駄目だよ。テストなのに」
そう、今日は休み明けテストなのだ。昨日勉強してる途中、圭織から
電話がありそのまま話し込んでしまった。
・・・圭織はいいよね、頭いいから。
はぁとため息をつきながらカバンから数学の教科書を取り出す。
パラパラとみるがどうも頭に入らない。これはヤバイ。
「圭織ー、どーしよ。頭に入んない」
半ば泣きそうになりながら圭織に教科書を見せる。
「全く、ちゃんと日頃からやんないから・・・えっと、この公式と
 この公式は覚えて。あとは、この問題の解き方は良く出るから・・・」
圭織は重要なとこを丁寧に教えてくれた。オイラは真剣に聞いた。


13 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月03日(土)23時03分13秒
圭織に教えてもらったとこを完璧に無理やり頭に叩き込んでオイラは
数学のテストに挑んだ。圭織に教わったとこはほとんど出た。
良かったぁ〜・・・・圭織がいてくれて。
後のテストも圭織に助けてもらい、なんとかやった。
午前が終わり、午後は普通に授業が始まる。その前にお昼ご飯だ。
「圭織、お昼食べよ♪」
「そだね〜どうだった?テスト」
「圭織の言ったとこバッチシ出たじゃん!多分、赤点は免れたよ!」
ビシっと親指を立てた。
「んじゃ、安倍さんも誘おうよ。お昼」
圭織が言った。オイラは今までテストの事で頭がいっぱいだった。
つい安倍さんとお友達になろう作戦を忘れていた。
「おし!誘おう!」
まだ席にいる安倍さんのとこに圭織と2人で向かった。
「安倍さん!」
オイラが安倍さんの肩をポンと叩いた。安倍さんはびくっとして
振り向く。
「矢口、驚かせてどうすんの」
「あちゃー、ごめんね。っで一緒にお昼食べない?誰かと約束ある?」


14 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月03日(土)23時15分35秒
安倍さんは目をキョトンとさせて、黙ったままだった。でもすぐ下を
向いてしまった。
・・・何か、悪い事言ったかな・・?
圭織の方を見ると困った表情をしていた。
「安倍さん・・・?」
「あの、・・・ごめんなさい」
安倍さんはそう言ってカバンを抱えて教室を飛び出した。オイラ達は
呆然と立ち尽くしていた。
「オイラ、悪い事言った?」
「う〜ん、別に言ってないと思うけど」
何で安倍さんがあんな様子だったのか、今のオイラには全くわからなかった。
お昼を食べる為、屋上へ向かう。うちの学校の屋上はあまり人がいない。
まぁ、昔に転落事故があったとか無かったとかでホントは入っちゃいけない
んだけど、オイラは2年生からこの屋上で毎日お昼ご飯を食べていた。
「陸上部にあの吉澤がねー」
「すごいでしょ、あの有名人が。しかも陸上部だよ?」
話題は陸上部に入ったよっすぃーの事だ。
「いいなぁ、圭織も入ろうかなぁ」
「何言ってんの、美術部の部長が」
圭織は美術部に入っていてそこの部長だ。ホント絵が上手い。
今は詩も書いてるそうだ。
「今年は何人入るかな」
圭織はお弁当を食べながらそう言った。
オイラは別に何人入るかなんて気にしてなかった。もともと陸上部は
うちの学校は人気がない。入ったとしても練習が厳しくて辞めていく
人もオイラは何人も見てきた。





15 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月03日(土)23時34分57秒
お昼ご飯が終わり、午後の授業だ。おなかいっぱいだし窓から暖かい
陽が差し込んでる。もう昼寝日よりだろう。
数学の授業なんて全く聞かないでオイラは眠りに陥った。

───放課後。
授業は6時間目も寝続け、運が良い事に先生にばれなかった。
「部活〜♪」
オイラは掃除を終えて、部室へ向かった。何か部室前が騒がしい。
何だぁ?何かいっぱい人が・・・・。
「矢口せんぱぁ〜い・・・」
その中からよっすぃーが助けを求めるかのようにオイラの方へ来た。
「何?この人は?」
「・・・入部希望者らしいです」
「はぁ!?」
ざっと見て30人くらいはいるだろう。ちなみにうちの学校は女子校だ。
女がこんなにもいると・・・結構うざいかも。
1年生から3年生まで。目当ては分かってる。

よっすぃー、だ。

「はぁ・・・ったく、理由が見え見えなんだよ」
軽く舌打ちをして、その人達の方へ向かう。部室はその向こうにある。
オイラが現れると一斉にこちらの方を入部希望者さん達が見る。
「・・・入部希望だって?」
不機嫌極まりないオイラ。聞くと、みんな頷く。
「言っとくけど練習厳しいから。まずは校庭を最低でも20周。
 んで100mのタイムを測ったり、ハードルやったり。たまに
 学校の外出て走ったりもする。あとは筋トレとか・・・」
オイラが練習のメニューを言うと、どうやらみなさん引き気味のようだ。
「吉澤がこの陸上部に入ってる、だから入るなんて理由じゃ
 今すぐこの場から去る事だね。辛い目に遇うよ」
そしてこの場には誰一人いなくなった。



16 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月03日(土)23時51分37秒
「矢口先輩、カッケー・・・」
本人わかってるんでしょうか?よっすぃーは目を輝かせてオイラを見る。
「さて、着替えるか」
オイラは部室に入る。よっすぃーはもうジャージに着替えていた。
すぐに着替えをすませて靴をスポーツ靴に変えて部室を出る。
よっすぃーは準備運動をしていた、オイラも同じくそれをやる。
「よっすぃー陸上好き?走るのとか」
「うーん、今まであんまりやんなかったですけど。走るのは好きですよ。
 高校に入って新しい事とかやりたかったし」
「そっか・・・」
こんな綺麗な顔して性格はサバサバしてんだなぁ。オイラはよっすぃーが
部員になってくれて嬉しかった。

「あ、ごっちんだ」
「ごっちん?」
2人で校庭を走っていたらよっすぃーが下駄箱の方を見て言った。
髪の長い、茶パツの子が出てきた。
「友達?」
「はい、中学の頃からなんですけど。後藤真希って名前です。
 あんま人に心開かない子で、普通にしゃべるのはうちぐらいで」
苦笑いを浮かべながらよっすぃーは言った。ごっちんという子は
なんだかつまらないって顔をしていた。
「ごっちーん!!」
よっすぃーが手を振りごっちん(勝手にそう呼んでるけど)を呼ぶ。
「帰るの?」
ごっちんがこっちにやって来た。
「うん、よっすぃー陸上部?」
「そう!こちらが部長の矢口先輩!先輩、ごっちんです」
「ごっちん、よろしく」
オイラは笑顔で手を出した。握手をしようと思ったのだけど
ごっちんはそれを無視した。


 
17 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)15時07分45秒
「じゃ、また明日」
ごっちんはよっすぃーにそう言って歩き出した。オイラの事は完全に無視。
「・・・すみません、先輩。人見知り激しくて」
「いや、いいよ」
オイラ達は再び走り出した。よっすぃーはバレー部で鍛えたのか
スタミナが結構ある。タイムもかなり速いだろう。
こうして午後7時。部活は終了、帰宅の時間。
「よっすぃーは部員、増えて欲しい?」
オイラは制服のブレザーを羽織りながら聞いた。
「んー、別にこのままでも。大会なんて個人だし」
よっすぃーは微笑みながらジャージを畳んで言った。

それから数日間が立ち、桜の木も散り始めた。次第に気温は上がっていく。
今日はよっすぃーが用事で部活に出れない為、オイラ1人で練習。
ジャージに着替えて校庭を走って、途中で水道場に向かった。
水を出して飲み、ついでに手も洗う。今日も暑い。
「あちぃ〜・・・・・ん?」
汗を拭っていると、桜の木の下に誰かがいるのが見えた。
それは数日前に会った、ごっちんだった。
オイラはニヤリと笑ってごっちんの方へ走った。
「ごっちん!何やってんの〜?」
話しかけると反応が無い。桜の木の下に座ってるごっちんはどうやら
寝ているようだ。よくもこんなとこで寝てられるなと思う。
オイラはじっとごっちんの寝顔を見た。綺麗な顔立ちをしている。
「・・・オイラ、友達になりたいのになぁ・・・」
そっと独り言を呟く。するとごっちんが目を覚ました。


18 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)15時24分34秒
「・・・何?」
ごっちんの第一声はその一言だった。冷たく、投げやりな言い方。
「いやー、ごっちんを見つけたからここに来たんだ」
「あっそ」
ごっちんは立ち上がってスカートについた砂をはらった。
「オイラ、ごっちんと仲良くなりたい。駄目?」
「・・・・あのさぁ、別にあたしはあんたの事なんてどーでもいい。
 人とあんまり関わりたくないから」
そう言い、ごっちんは校舎の方に行ってしまった。オイラはただ立ち尽くして
ごっちんの瞳を思い出していた。

───冷たい瞳。

何も光がない、暗く冷たい瞳だった。
でも別にオイラは怖いとかそうゆうのは感じなかった。
ただ悲しみがココロの中にあった。何だかごっちんが寂しそうに見えた。
「・・・何か、あるのかな・・・」
オイラにはごっちんがただ強がってる風にしか見えなくて。
そりゃまだ2回しか会ってないけど、オイラはそう思った。
ごっちんの去って行った方に視線をやった。

「ごっちん?」
次の日の昼休みに圭織に話してみた。安倍さんとは相変わらず
避けられてる感じがする。
「うん、知ってる?」
「あー、結構、問題児らしいねぇ」
「問題児?」
圭織は食べ終わったお弁当を片しながら言う。
「授業は寝るわ、サボるわ。先生の言う事は聞かないとか」
「ほぉー・・・そりゃ問題児だ」
何となく納得できたり。

19 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)15時52分08秒
「結構、3年生に呼び出されたりしてるみたいだよ。噂だけどね」
「呼び出し・・・」
ごっちんの事だから呼び出されたりしてもどーって事ないだろう。
でも、呼び出しはオイラにとっていじめに結びつく。それは許せない事だ。
メロンパンを食べながらオイラは考え込む。
「矢口、あんまりいろいろ首突っ込まない方がいいよ。お人好しもいいけど」
圭織はオイラの性格が十分わかってるからお見通しだ。
「うん・・・わかってるよ。でも放っては置けないよ」
「私が何言っても聞かないね、この頑固娘」
「あはは、そうだよきっとね」
オイラはごっちんの笑った顔が見たいとココロの底から思った。

───んで、こうして1年生の教室の廊下をうろついてるのですが。
この学校で1番背の低いオイラは目立ってしまうわけで。
周りの視線がチクチク痛い・・・・。
「あ!矢口先輩!」
「お〜よっすぃーじゃん!」
「どうしたんですか?1年の教室にいるなんて」
よっすぃーはどうぞと言ってオイラを教室に入れてくれた。
「ごっちんの事、気になってね」
「あー、先輩も噂聞いたんですか」
「ちょっとね、小耳に」
よっすぃーとごっちんは同じクラスらしい。よっすぃーが指差す方には
机に突っ伏して寝ているごっちんの姿。
「うちにもよくわからないんです、ごっちんに話しかけて来る子たくさん
 いるんですけど、ごっちんは全員無視するんですよね・・・」
よっすぃーは悲しそうにごっちんを見ていた。

 
20 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)16時10分58秒
「そっか・・・呼び出しはどんな感じなの?」
「たまに3年生がごっちんを体育館裏に連れて、うざいだとか
 言われるみたいなんですけど、ごっちんはやっぱ無視して」
「・・・暴力とかにはなってない?」
「それは無いですね。今の所は」
「そっか、良かった」
聞く所によるとよっすぃーにもごっちんは自分の事を話さないらしい。
ごっちんに聞いても黙られるばかりだとよっすぃーは言う。
よっすぃーにでも言わないなら、オイラなんか到底話してくれないだろう。
だけど、そんなんじゃ前に進めない。
オイラは昨日の部活の事をよっすぃーに話した。
「はは、オイラ嫌われてるでしょ?」
「いえ・・・・先輩がうちに『よっすぃー』ってつけてくれましたよね?
 それをごっちんに話したら、『いいね、よっすぃーって』って言ったんです
 よ。それからうちの事、よっすぃーって呼ぶようになったんですよ。
 だから・・・嫌われてなんかないですよ」
そういえば・・・初めてごっちんに会った時、よっすぃーってごっちん
呼んでたなぁ。
オイラは初めてごっちんに会った時の事を思い出した。
「そっかぁ・・・」
ちょっと、いや、かなり嬉しくなった。
そして、オイラはちょっと良い事を思いついた。
「ねね、よっすぃー」
「何すか?」
「ごっちん、陸上部に入ってもらおう」
「うぇぇ!?」
よっすぃーの驚いた声が教室に響いた。



21 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)22時39分12秒
「っで、何?」
オイラの目の前にいるごっちんは不機嫌極まりなかった。
放課後、よっすぃーにごっちんを部室まで連れてきてもらったのだ。
「はい、コレに着替えて♪」
オイラは自分の予備のジャージをごっちんに渡した。
「・・・は?」
「陸上部、入んない?っていうか入って?」
隣でよっすぃーが困ったような顔して立っていた。
「バッカじゃないの?何であたしが陸上部なんて入んなきゃいけないの?」
ごっちんは渡されたジャージを放り投げた。そして部室を出ようとする。
「ちょ、ちょっと待って」
ごっちんの腕をオイラは掴んだ。ごっちんが睨んでくる。
「たまにでもいいんだ、毎日出なくていいよ。だからさ・・・」
言う途中でごっちんがオイラの手を振り解いて出て行ってしまった。
・・・・こりゃ、難しい・・・。
よっすぃーが落ちたジャージを拾い上げる。
「矢口先輩・・・何でごっちんを陸上部に?」
「別に廃部寸前だから人数が欲しいとかじゃないよ。ごっちんに
 矢口真里を知ってもらう為」
オイラは明るく言った。そして久しぶりにハードルでもやろうかと
ハードルに触る。
「知ってもらう為?」
「そ、オイラの事を知ってもらえば少しでもココロ開いてもらえるかなぁって」
ガシャッと音を立てて、ハードルを持ち上げた。よっすぃーはポカンと
していた。
「さ、部活始めよ?」



22 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)23時02分38秒
ごっちんの陸上部勧誘は次の日も次の日も続いた。休み時間も費やした。
最初は無視されてたけど、徐々に変わってきた。
「ごっちん、今日の放課後来ない?」
「あんたもよくやるね」
こうやって返事が返ってくるようになった。

───もうすぐ4月も終わりの頃。
「ふぁー、今日も頑張るぞぉー」
いつものように放課後、ごっちんのもとへ行く。教室をひょこっと
覗くとごっちんがいつも通り席にいた。
「ごーっちん!今日の放課後──」
「行くよ」
・・・・ん?
いつもなら軽く流されるのに、今日は何か違う。
「今何て・・・?」
「ほら、行くよ」
ごっちんは席を立ってカバンを持って教室の扉へ向かう。
オイラは3秒位、理解が出来ず立ち尽くしていた。はっと気付いて
慌ててごっちんを追いかけた。

よっすぃーはもう部室に来ていて、ジャージに着替えていた。
「ジャージ無いんだけど」
「オイラのある!はい!」
張り切って自分のジャージを貸した。ごっちんはそれを受け取った。
オイラは手早く着替えを済ませ、ウキウキで靴をスポーツ靴に履き替えた。



23 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月05日(月)23時13分44秒
「ごっちん、何で?」
よっすぃーが不思議そうにごっちんに聞く。
「だって毎日来るんだもん」
ごっちんはジャージに着替えて言う。

いつもより少し賑やか(?)な部活の始まりだ。
「まずは校庭を走ろう!」
オイラは右手を拳にして高く上げた。よっすぃーも同じくそうする。
「行くぞぉ〜」
オイラを先頭に走り出す3人。ごっちんはだらだらと走っていた。
「ごっちん、もっと足上げて!ほら止まらないの!」
「頑張れ〜、ごっちん」
よっすぃーも応援して、オイラも応援してごっちんは走る。
こうしてとりあえず校庭2周。
「もぉー、くたくただよぉ〜・・・・」
ごっちんはヘナヘナとその場に座り込んだ。いくらなんでも体力がない。
「んじゃ、休憩!」
「先輩、ごっちんに優しいっすね・・・うちがこうゆう時は休ませて
 くれない・・・」
「よっすぃーはよっすぃーだから」
「そんな・・・・!?」
「あはっ」
この時、初めてごっちんの笑った顔を見たんだ。

24 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月06日(火)16時53分26秒
おもしろいです…。けど、>>9よっすぃーがバレー部に入らせてください!って
いうセリフになってますよ。陸上部じゃ…?
25 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)15時47分14秒
>24 名無し読者様。
    はぅ!?・・・・なんて間違いを・・・・。
    ゴメンナサイ、『バレー部』でなく『陸上部』です。
    気付かない自分にびっくりです。教えて頂きありがとうございます!
    感謝です!39度もこないだ熱を出したので更新が
    出来なくて泣いてましたがやっと復活です!
    これからもぜひ見て下さい!では。
26 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)21時15分04秒

 <後藤 視点>

最近やたらとあたしの視界に入るちっちゃい先輩がいる。
何だか毎日、陸上部の勧誘に来るし、正直うざったい。
でも、どんなに冷たい言葉言ってもその先輩は絶対怒らない。
いつも笑ってて、あたしに話しかけてくる。
よっすぃーは苦笑いしつつも先輩の隣にいる。

あたしには誰にも言った事が無い出来事がある。
あたしが何故、人にココロが開けないのか。
その出来事が原因で。
あたしは笑うことさえ忘れかけていた。

───なのに、先輩が現れた。
そしてあたしは陸上部に入ってみた。

久しぶりに、笑った。

何か、楽しかった。

この人ならあたしの事を話せるかもしれない。
よっすぃーにも今なら話せるかもしれない。

あたしは、確かに変わった。

27 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)21時31分38秒

 <矢口 視点>

報告───ごっちんが正式に陸上部へ入部した。これで現在陸上部は
3人になった。あと、ごっちんがよく笑うようになった。
「うむうむ、良き事かな」
「良かったねぇ、矢口」
「おう!良かったぜ」
今は体育の時間、体育館にいる。圭織に最近の事を報告をした。
「ごっちんもオイラにだいぶココロ開いてくれてるみたいだし」
「矢口はすごいよ、私には真似出来ない」
圭織は苦笑いをしてボールをつく(体育の種目はバスケ)。
「そうでもないよ、オイラはただおせっかいなだけで──」
「そこが矢口のいい所っ」
圭織がボールをシュートした。綺麗にボールは入った。
「矢口がいなかったら私は誰にもココロが開けなかった。
 矢口のおかげだよ、感謝してる」
真っ直ぐオイラを見つめる圭織はとても綺麗だ。
「いや〜、照れるよ」
「・・・・これからも、親友だよね?」
「・・・圭織?」
圭織は下を向いて、顔を上げない。オイラは不思議に思って圭織の
目の前に立ち、顔を覗き込んだ。
「何言ってんの、これからも親友だよ!圭織がいなかったら誰が
 矢口を止めるのさ〜?」
オイラは圭織の肩をバシバシ叩きながら言った。すると圭織は
「痛いよ〜、バカ」
って笑って言った。
・・・・バカは余計なんだけど(怒)。



28 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)21時44分48秒
放課後、オイラは張り切って部活に行く・・・んだけど。
「矢口、これ生徒会室に持って行ってくれ」
いきなり担任が教卓の上にある資料をオイラに渡した。
「え〜、これから部活なのに・・・・」
「今日の日直、お前だろ?届けるだけだから、な?先生、会議あるんだ。
 じゃ、頼んだぞ!」
担任は走って教室を出て行った。オイラは怒りながら資料とカバンを持って
生徒会室に向かった。正直、あんまり生徒会室には入った事が無い。
たまに部長の集まりで行くけど。1,2回だけだし。
「あーあ、何で今日なんだよ」
愚痴をこぼしながら生徒会室に着いた。
ガラッと扉を開けて中に入る。
「あのー、資料届に来ました〜」
「あ、はい。ありがとうございます」
中に生徒会の人がいた。オイラはその人に資料を渡した。
・・・・あ、この人知ってる。テニス部時期、部長の人だ。
2年生の・・名前は確か、石川梨華。すごいなぁ、生徒会も入ってんだ。
「あ、矢口先輩ですよね」
「え?あぁ、うん」
いきなり話かけられてオイラはびっくりした。
「陸上部、1年生が2人入ったんですよね」
「あー、はい。よく知ってますね」
「部費の事とかありますからね」
部費かぁ・・・・陸上部は人数少ないから部費も少ないんだよなぁ。
ま、どーでもいいけど。
「んじゃ、オイラはこれで」
「はい、ご苦労様でした」




29 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)21時58分48秒
石川梨華ってすごいんだよね。成績も上位だし、テニス部では
期待されて、時期部長でしょ。生徒会も入ってて・・・家もお金持ちらしいし。
「すげぇー、パーフェクト!」
「何がですか?」
「うぉ!?よっすぃー?びっくりしたぁー」
いつの間にやら後ろによっすぃーがいた。ごっちんもいた。
「こっちがびっくりだよね、いきなり『すげぇー、パーフェクト!』って
 言うんだもんねぇ」
・・・ごっちん、オイラに突っ込むようになったか、うむむ。
「っで、何がパーフェクト!なんすか?」
「あ、そうそう。2年に石川梨華っていう子がいるんだけど。
 なんかねー、全てにおいてパーフェクト!なんだよね」
オイラは腕を組みながら言った。そして3人で部室へ向かった。

「へぇ、生徒会っすか」
「そ、部費は期待しない方がいいよ」
オイラはジャージに袖を通しながら言った。
「そーゆう子って家が厳しいんだよね」
ごっちんもジャージに着替える。オイラは石川についての事を2人に
話していた。
「あ、2人共さぁ、今日あたしん家来ない?」
ごっちんが制服を畳みながら言った。オイラはびっくりして一瞬固まった。
「ごっちん家?いいの?」
よっすぃーも驚いていた。
「うん、話したい事あるし」
一体・・・何を話したいんだろうか・・・?
疑問を抱きつつ部活を始めるオイラだった。







30 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)22時18分05秒
───午後7時、部活終了。
っでごっちんの家へ来てるわけなんですが。
「いーの?おうちの人とか・・・邪魔じゃない?」
オイラはこうゆう事にはかなり心配で。しきりにごっちんに聞く。
「いーから、着いたよ」
学校から近いマンションに着いた。よっすぃーも来るのは初めて
だと言う。2人でごっちんの後をついて行く。

エレベーターに乗った。3人とも無言だった。
「ここだよ」
ガチャガチャと鍵を開けてごっちんは部屋に入った。
オイラとよっすぃーも続いて中に入った。
「「お邪魔しまーす・・・」」
中は静かだった。誰もいないような。リビングに通されて
「あたし、1人暮らしなんだよね」
とびっくり発言をされた。リビングは綺麗で、白いソファにテレビに
テーブル、カーテンは青。ごっちんはもっと女の子らしい色を使うんだと
思っていた。
とりあえずソファに座って着替えていったごっちんを待った。
「・・・よっすぃーってホント知らなかったんだね?」
「はい・・・ごっちん、自分の事はマジ話さないんで」
ちょっとよっすぃーが悲しそうにみえた。
「ごっちんも何かわけがあったんだよ、別によっすぃーの事
 信頼してないわけじゃないよ」
「・・・だといいですけどね」
1分後、ごっちんが戻ってきた。ジーンズに白のパーカー姿。
「紅茶?コーヒー?」
「オイラは紅茶で」
「うちも」
ごっちんは紅茶を用意してくれた。
「じゃ・・・話そうかな」
向かい側のソファに座ったごっちんは話し始めた。

自分の過去を───




31 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)22時35分33秒
「この家もあたしのじゃないんだ」
「「えぇ!?」」
全く、びっくり発言ばっかだよ。心臓がいくつあっても足りない。
「・・・あたし、小さい頃に・・・4歳くらいかな。
 家族が交通事故で全員死んじゃって。それから親戚の家に
 預けられたんだけど、もう嫌でさー・・・」
ごっちんは苦笑いをしながら話していた。オイラはそれがとても
痛々しくて目を背けたくなった。でも今はごっちんが一生懸命
話してくれてるんだから、ちゃんと聞かなきゃと思った。
「居場所無くって、毎日辛くて・・・・逃げ出したくて。
 それをね、いちーちゃんは救ってくれた」
聞く所によると『いちーちゃん』はその頃のごっちんの近所に
住んでいた人で、この家の持ち主だと言う。
「あたしが中2の時、その頃いちーちゃんはこの家に住んでて
 事情を知ったいちーちゃんは『ここが後藤の居場所だよ。一緒に
 暮らそう』って言ってくれたんだ」
ごっちんは嬉しそうに話した。ホントにいちーちゃんが大好きみたい。
「・・・でね、一緒に住んでたんだけど・・・高校入学が決まった頃。
 いちーちゃん・・・いなくなちゃったんだ・・・」
「え?何で?」
「わかんない。高校の合格発表の次の日。朝起きたら
 『ちょっと出かけてきます。生活費は封筒の中にあるカードを使え。
 ちゃんと帰るから心配すんな、だから学校ちゃんと行けよ。 市井』
 って手紙と封筒に入ったカードがあった・・・」
 

32 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)22時47分19秒
つまり、オイラが話をまとめると。

ごっちんの家族は4歳の頃に亡くなった。それから親戚に
引き取られて過ごしていた。が、中2の頃、近所のいちーちゃんと
一緒に暮らし始めた。そして高校入学が決まった頃いちーちゃんは
突然と姿を消した・・・・という事か。

「もうすぐ・・・1ヶ月ちょっとかな。いなくなってから」
「行き先は知らないの?」
「うん、いちーちゃんの友達知らないし」
・・・それでごっちんはずっといちーちゃんを待ってるんだね。
「ごめんね、よっすぃー。ずっと黙ってて・・・」
「いいよ。話してくれて、ありがとう」
この部屋の色もいちーちゃん好みか、なるほど。
にしても普通、行き先ぐらい教えるだろうが。
「あたし、いちーちゃんいないと駄目で・・・・・
 高校行っても、何か生きてる気がしなくて・・・ずっと孤独感じてた。
 でも、最近思うんだ」
ごっちんは間を置いて。

「1人じゃないんだって」

と笑顔で言った。

「矢口先輩やよっすぃーがいてくれて・・・笑えるようになったんだ。
 あたしは1人じゃないって・・・・」

ごっちんのあの冷たい瞳は

あったかい瞳に変わっていた。

きっとココロもそうだと思う。
 

33 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)22時55分05秒
 
 <後藤 視点>

ついにあたしの過去を誰かに話した。
家族の事もいちーちゃんの事も、全て。

この2人のおかげであたしは変われた。
冷たいココロがあったかくなったよ。
この2人が教えてくれたんだよ。
あたしは1人じゃないって。

ねぇ、いちーちゃん?

あたし、1人なんかじゃないよ?

ずっとあたし待ってるから。

この家で待ってるから。

ちゃんと学校にも行くよ。

だってあたしには

最高の友達と先輩がいるから。



 
34 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)23時02分54秒

 <矢口 視点>

ごっちんの事はびっくりだらけだったけど。
嬉しくて、涙が出そうになったよ。
「ごっちん!大丈夫、いちーちゃんは帰ってくるさ!3人で待とうよ!」
「そうだよ、うちも先輩もそばにいるから」
「うん・・・ありがと」
そしてオイラとよっすぃーは帰った。

てくてくと夜道を歩く。
「ごっちん、元気になって良かったっす」
「うん、オイラ嬉しいよ」
「先輩のおかげですよ、うちだけじゃ駄目でした」
よっすぃーはぺこっとお辞儀をした。
「ありがとうございました」
「いやー・・・照れるねぇ?」


35 名前:2.冷たい瞳。 投稿日:2003年05月09日(金)23時07分06秒
こうして、彼女は1人の少女のココロを変えた。

冷たい瞳の少女のココロはとてもあったいココロに変わり

大好きな人の帰りを待っている。

その人の帰りは───そう遠くはないのかもしれない。


36 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月09日(金)23時23分51秒

 『3.切ない叫び。』

ごっちんは前よりも明るくなり、元気になった。が、相変わらず
問題児だ。誰かが起こさないと1日中寝てたりするらしい。
本人曰く『眠いから』。眠いから寝る、最もな発言だ。
「でも・・・部活はちゃんと出るね。毎日」
「んぁ、体動かすのは好きだから」
笑顔で答えられると何も言えないよ、オイラ。
何か、クラスの子達とも上手く行ってるみたいだし。
でもさぁ・・・・赤点はやばいよ?ごっちん。
「よっすぃーは?」
「何か、もうすぐ学際で。よっすぃー代表で選ばれたんだよね、
 学際の実行委員に」
そーいえば、もう5月だ。オイラの学校は6月の後半に学際をやる。
「ごっちんはやんないの?」
「寝てる間に決まったみたい。別にやりたくないけど」
「はは・・・好きな事以外はやりたくないわけね。っで実行委員の
 集まりに出てるんだ」
というわけで今日の部活によっすぃーはいないわけで。
ごっちんとオイラで校庭を走っている。

学際かぁー、3年だから今年で最後か。
最高の学際にしたいなぁ。でも実行委員は嫌だなぁ。
部活の時間削られるし、ただでさえクラスの準備の方で削られるんだから。
「よっしゃ!ごっちん、頑張ろうね!」
「んぁ・・?う、うん」
矢口真里、ただ今燃えています!!


37 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月09日(金)23時34分43秒
ごっちんの物語は終了です。ここで登場人物の紹介です。

矢口真里 この物語の主人公。陸上部、部長の高校3年生。

飯田圭織 矢口の親友。美術部、部長の高校3年生。

安倍なつみ 矢口のクラスメイト。 

吉澤ひとみ 矢口の後輩。陸上部員、1年生。

後藤真希  矢口の後輩。陸上部員、1年生。

市井紗耶香 後藤の同居人。

石川梨華 生徒会役員、テニス部時期部長の2年生。
 
・・・・今のとこ出てる人々です。
3では梨華ちゃんが出てきます。では。
38 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月10日(土)14時00分11秒

 <吉澤 視点>

あーあぁ・・・実行委員かぁ。嫌だなー。
うちは大切な放課後の時間を学際の実行委員になった為に
学際の会議に出なければいけなくなってしまった。クラスのみんなが
うちを推薦し、担任も『お前ならできるよ!』と言われ仕方なく引き受けて
しまった。
「部活がぁ・・・ちくしょー、さっさと出て部活に行かなきゃ」
ため息をつきながら廊下を歩く。目指す場所は生徒会室だ、そこで
会議が行われるらしい。
「ん?ここか?」
生徒会室の扉をガラッと開ける。しーんと静まり返った空間。
・・・1番に来ちゃった?
誰もいないみたいだ、とりあえず適当にイスに座った。時計を見ると
集合時間よりも10分早い時間だった。
「あ・・・・実行委員の人ですか?」
うちが入って来た扉に人が立っていた。
「あぁ、はい。1年の吉澤です」
慌てて立って言った。その人は「そう」と言って入って来た。
「早く来過ぎたみたいで・・・」
「そうゆう人の方が安心するわ。私、2年の石川梨華」
あ〜、この人が・・・矢口先輩が言ってたパーフェクト!の人か。
第一印象は普通に可愛いって思う。
「これ資料、見といて」
渡された資料をうちはイスに座って読み始めた。資料には今年の
スローガン、学際の準備期間、クラスの出し物などなど。
そして集合時間になり、会議が始まった。




39 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月10日(土)14時15分05秒
会議は紹介から始まった。3年、2年の実行委員長の紹介だ。
「今年の学際の2年実行委員長をやります、石川梨華です」
石川先輩はきりっとしていて、うちはすげぇーなと感心していた。
会議は進み、まだ1年の実行委員長が決まっていないという事で
「では・・・こちらで決めてもいいですね?」
と石川先輩が言った。まぁ別にどーでも良かった。
どーせ選ばれるわけないし・・・・。
うちは生徒会室の窓から校庭を見ていた。矢口先輩とごっちんが
走っているのが見えた。
・・・いいなぁー早く部活に行きたい・・・。
「じゃ、吉澤さん。お願いします」
・・・え?吉澤さん・・・ってうちじゃん!?
うちはすぐ視線を石川先輩の方に向けた。ニッコリと笑顔でうちを見る
石川先輩にNOとは言えず。
「はい・・・」
笑顔が怖いと初めて感じた。

───会議は30分ほどで終了。
「各クラス、出し物を次の会議までに決めてきて下さい。では解散して下さい」
うちはちょっと放心状態でぼーっとしていた。まさか選ばれるとは・・・。
「吉澤さん?」
「え?あ、石川先輩・・・」
うちのそばにいつの間にか石川先輩が立っていた。
「嫌だった?ごめんね、吉澤さん真面目そうだから・・・」
はは・・・真面目そうね。そりゃ仕事はちゃんとやりますよ・・・。
悲しそな顔の石川先輩。うちはもうこうなったらとことんやろう!って
感じになってきた。
「いえ、学際、頑張りましょう!」
うちがそう言うと石川先輩は笑顔になった。

 
40 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月10日(土)14時29分59秒
───部室。
「きゃはははは!!!実行委員長にもなっちゃったのか!」
「んぁー、しかも石川先輩に?よっすぃー目つけられたね」
この2人はうちの気持ちを笑って聞いていた。
「笑い事じゃないっすよ!部活の時間が削られるんですよ!?」
うちは立ち上がって言い叫んだ。
「でもさ、オイラ達もクラスの準備とかあるし。ねぇ、ごっちん?」
「んぁ、あたしは部活優先するけどね」
「オイラも!きゃはは!!」
・・・・もぉ駄目っす。うちの気持ちを理解してくれる人募集します(泣)。

こんなそんなでうちの実行委員長としての生活が幕を開けたわけなんですが。
準備期間は約3週間。うちのクラスの出し物は何故かカキ氷の屋台をやろうと。
珍しくこれはごっちんが言い出した。
「んぁ、楽だし。いいじゃん」
本人曰く、『部活優先』。まぁこれはうちとしては助かる事だ。
学際は2日ある。1日目は屋台や各クラスの教室の展示などを見てまわる。
2日目は体育館でクラスの発表を見たり、文化部の発表を見る。
うちは実行委員長であんまりクラスの準備が出来そうにない。
しかも学際の日は自分の時間さえないかもしれないのだ。
「・・・でも、やるしかない!」
そう自分に言い聞かせて立ち上がるうちだった。



41 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月10日(土)22時06分30秒

 <矢口 視点>

「圭織、オイラ達のクラスの出し物って何やんのかな?」
休み時間にオイラは圭織に聞いてみた。圭織は数学の課題をやっていた。
「さぁ、知らないけど・・・ねぇこの問題ってどー解くの?」
「よっすぃーのクラスはカキ氷の屋台やるんだって」
圭織が解いてる問題を見る。オイラは圭織の筆箱からシャーペンを
取り出してノートに解いてみた。
「あー!わかった!こーやって解くんだ・・・ってカキ氷?」
「うん、カキ氷」
「まだ夏じゃないよ?」
「ごっちんが言い出したらしいよ。楽だからって」
「ふーん」
圭織はまた次の問題の方に集中した始めた。オイラは教室を見回した。
やっぱいない・・・・。
安倍さんは休み時間、教室にいない。授業が終わるとすぐ教室を出て行く。
だからオイラは話かけられないのだ。
「安倍さんって何処行ってんだろうねー・・・」
「さぁ、生徒会の人なら生徒会室じゃない?」
「違うと思うけど・・・」
視線を窓の方へやった。空は快晴、風は穏やか。
最近、よっすぃーを見ていない。やっぱり実行委員長は忙しいみたいだ。
ごっちんは毎日部活に来てるけど。
予鈴がなった。急いで圭織の席から離れて自分の席へつく。
・・・あ、帰ってきた。
廊下側の1番前の席には安倍さんがいた。
「なんだよぉ・・・・」
オイラは次こそ必ず話かけてやると燃えながらカバンから
物理の教科書とノートを出した。
42 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月11日(日)18時31分18秒

 <吉澤 視点>

生徒会室に通うのにも何だか慣れてきた。ってほんの3日くらいだけど。
費用の計算とか、材料の確認だとかやる事はたくさんあって忙しい。
部活にはほとんど出られず、気が付くと7時回ってる時もある。
「はぁー・・・・」
「疲れた?」
今日は石川先輩と2人で生徒会室にいる。
「いえ・・・石川先輩は疲れてませんか?」
「ううん、慣れてるから。でも部活に出たいな」
石川先輩は窓の外を見た。うちもつられて視線をそっちに向けた。
「・・・うちも、部活に出たいです」
「学際までの辛抱だから、ね?」
「はい、先輩は生徒会役員でテニス部の両立。大変じゃないですか?」
「大変よ。・・・父が厳しいの、仕方ないわ」
石川先輩は悲しそうに微笑んでそう言った。やっぱり家は厳しい事を
うちは知った。
「テニスが好きで、中学の頃から。高校入ってもちろんテニス部に
 入ろうって決めた。でも父が『部活に入る前に生徒会に入れ』って言って
 両立するからって事で部活に入る事が許されたの」
「・・・・大変っすね」
「仕方ないよ、そうゆう家に産まれたんだもの。さ、仕事しよ!」
うちは再びシャーペンをノートに走らせた。ココロには何か複雑な気持ち
が残っていた。




43 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月15日(木)17時59分13秒
───午後7時。やっと今日の仕事が終わり石川先輩と一緒に
学校を出た。部活の方はどうせ終わってると思うからいかなかった。
「先輩、どっち方向すか?」
「こっちよ」
うちと同じ帰り道の方向を石川先輩は指をさした。
「あ、じゃぁ同じだ。一緒に帰りましょう」
辺りは暗くて、1人で歩くには危ない感じだった。石川先輩ならなおさらだ。
てくてくと歩く。特に会話も無かった。
静かで、何も音はしない。
「・・・先輩、毎日疲れませんか?」
何を考えてたのか、気付けばそんな事を言っていた。
「ううん、別に。それが当り前っていうか・・・慣れちゃったみたい」
「そうですか・・・」
「友達とも遊んでないし、勉強ばっか。部活も最近出てないし」
・・・・言わなきゃ良かった。
うちは何か言いたくて、でも言葉が思いつかなくて黙っていた。
「吉澤さんは?」
「え?あ・・・うちは毎日、楽しいっす・・・」
「そっか、良かったね」
数分後、先に石川先輩の家に着いた。かなりでかい家でうちは驚いた。
「じゃ、また明日。気をつけて帰ってね」
「はい。また明日」
そしてうちは家へ向かった。



 
44 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月23日(金)17時14分04秒
家に帰り、晩ご飯を食べてお風呂に入った。
「何かさぁ〜・・・なんつーか・・・」
お風呂から上がり、ガシガシと乱暴に頭を拭きながら部屋に入った。
「気になるっつーか・・・何だろこの気持ち・・」
石川先輩の顔を思い出した。かなり寂しそうに笑ってた。
うちはベットに寝転がり天井を見上げた。
何か出来る事はないか?と考えながら。

・・・・うちに出来る事っていえば。
「・・・実行委員としての仕事だよなぁ」
それしかうちには出来ない。石川先輩とうちはそんな親しくもないし。
友達でもない、先輩後輩としての関係だ。知り合ったのもごく最近。
はぁ〜とため息をついて眠りについた。

───午前8時半。
「うわぁ!?もうこんな時間!?」
目覚まし時計を見るともう午前8時半。慌てて着替えて顔洗って
歯みがいて、髪を整えて家を出た。今日は家に誰もいない。
お母さんは友達と旅行、お父さんは仕事。弟は昨日からテスト勉強とか
いって友達の家に泊まって勉強会。
ガチャガチャと鍵を閉めて、全力で走った。長距離の走りは部活で慣れている。
そして、全力で走ったおかげで予鈴と同時に教室へ入れた。
「ぜぇ・・・疲れた〜・・・」
「おはよ、よっすぃー」
「ごっちん・・・おはよ」
「珍しいね、滑り込みなんて」
うちは席について息を整えた。
「ちょっとね・・・」





45 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月23日(金)17時34分28秒
今日の授業はほとんど耳に入っていない。石川先輩の事ばかり考えていた。
「よっすぃー?聞いてる?」
「え?あぁ・・・ごめん」
昼休み。今日は購買でパンを買った。
「今日のよっすぃー変だよ。何かあった?」
ごっちんはうちの顔をまじまじ見ながら言う。
「別に・・・何もないよ」
「嘘だね、あたしにはわかる」
この時うちは「何でもないよ」と言い通して終わった。

学際の準備は順調に進み、うちらのクラスも準備は順調だ。
翌日、ちょっとした騒ぎがあった。
「ねぇ、聞いたー?テニス部の石川先輩」
「あー、聞いた聞いた。テニス部辞めたんだってね」
朝、クラスメイトの会話の内容にうちは驚いた。どうやら石川先輩は
テニス部を辞めたらしい。ごっちんも知っていた。
「んぁ、昨日辞めたらしいよ」
「り、理由は!?」
「んー・・・知らない」
昨日は・・・辞めたとか石川先輩は言ってなかった。別に普通に
学際の準備をしていた。

・・・・テニス好きだって言ってたじゃんか。

───放課後、急いでうちは生徒会室へ向かった。
ガラッと扉を開けると石川先輩はそこにいた。
「あ、吉澤さん。丁度良かった。この決算の事なんだけど───」

「先輩、部活辞めたって本当ですか?」

うちは多分、すごく怖い顔をしているだろう。石川先輩は
うちから視線をそらした。
「ええ、そう・・・昨日ね、辞めてきた」
「何でですか!?テニス好きだって」
「・・・・これでいいの」
石川先輩はうちに背を向けた。


46 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月23日(金)18時03分20秒

 <石川 視点>

最近、生徒会で過ごすのが楽しくなった。学際の準備をし始めてから。
何でだろう?別に何も変わってないのに。
ううん・・・変わった、かな?
吉澤さんという人が私の前に現れてから───

テニス部を辞める前の日。
「梨華、ちょっと話がある」
父に呼ばれて私はリビングのソファに座った。
「何?」
「テニス部を辞めなさい」

衝撃的な事だった。ショックで一瞬理解出来なかった。

「な・・・んで?」
「生徒会の方も忙しいだろう?だから部活なんてたまにしか出れない。
 それに来年は大学受験も控えている。勉強もさらに力を入れなければ
 いけない」
父は言うだけ言うと「それだけだ、もう戻っていい」と言って
自分の書斎に戻って行った。
私はむしょうに涙が溢れ出した。自分の部屋に戻って声を殺して泣いた。
でも正直、部活には出れてなかった。3年の先輩達の信頼も薄くなって
きているのは事実。

───だから、辞めるしかなかった。

そして辞めて次の日。放課後、いつものように生徒会室にいた。
すぐに吉澤さんは来た。
「先輩、部活辞めたって本当ですか?」
この日は私が部活を辞めた事が学校中に広まっていた。
吉澤さんは怖い顔をしていた。
「ええ、そう・・・昨日ね、辞めてきた」
視線をそらして私は言った。
「何でですか!?テニス好きだって」







47 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月23日(金)22時54分20秒
私は吉澤さんに背を向けた。
「・・・・これでいいの」
そうするしか私には無かった。「辞めたくないなんて」私には言えない。
「・・・良くなんかないですよ」
低い声が後ろから聞こえた。私は振り返った。
「テニス好きなら続ければいいじゃないですか!辞める理由なんて
 無いじゃないですか!!」
吉澤さんの声は生徒会室に響いた。もしかしたら廊下にも響いてるかも
しれない。私は下を向いて黙った。
「先輩・・・!!」
何で彼女はそんな事を言うのだろう?
ただの先輩や後輩なのに。どうして理由を聞いてくるのだろう?
「・・・吉澤さんにはわからないよ」
「え・・・?」
「私の気持ち!吉澤さんにはわかんないよ!!」
私は泣き叫んで生徒会室を飛び出した。当ても無く走った。

「はぁ・・・はぁ・・・」
上履きのまま校庭に出てきた。部活をしてる生徒達が見える。
あぁ、私何やってるんだろう───
まだ仕事は残ってるし、図書館にも行っておきたかった。
でも、何か涙が止まらなくてどうしていいかわかんない。
「・・・あの〜、どうしたんですか?」
後ろから声が聞こえた。振り返るとそこには背が小さい人がいた。
心配そうに私の顔を見ている。





48 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月24日(土)21時56分05秒

 <矢口 視点>

校庭を走ってたら、誰かが校庭で泣いていた。よく見てみれば
石川さんではないか。オイラは静かに近づいた。
「・・・あの〜、どうしたんですか?」
石川さんはオイラの方に振り返った。オイラを見るとすぐ下を向いて
ただただ涙を流していた。
・・・どうしよう。
とりあえず石川さんの手をひいて、陸上部の部室へ行った。声を
かけて放っておくのも可哀想だ。

「何があったの?あ!いや、無理強いはしないよ」
石川さんはイスに座って、まだ泣いていた。オイラは結構困り果てていた。
待ってみる事にした。話してくれるまで。
オイラもイスに座って、あと自分のタオルを石川さんに渡した。
「涙、拭きなよ」
「・・・ありがとうございます・・・」
そのタオルで石川さんは涙を拭いた。
「・・・私、わかんなくて・・・」
「ん?何が?」
石川さんは泣いていた理由を教えてくれた。

「吉澤さんが何で理由を聞くのかわからなくて・・・そしたら私、
 ひどい事言っちゃった・・・」
やっと泣き終わった石川さん。
「ん〜・・・・よっすぃーも心配だったんじゃない?
 テニスが好きな石川さんが急に辞めちゃうんだもん。驚くよ」
「・・・心配?」
「そ、気になってしょーがないんだよ」
オイラは思った。『よっすぃー、この子の事好きだな』と。
「よっすぃーに言ってみたら?お父さんの事とか」
「でも・・・あんなひどい事言って、嫌われたかも・・・」
「大丈夫!よっすぃー、今も心配で心配で気になってると思うよ?」
オイラは石川さんの肩をポンと叩いた。大丈夫!という気持ちを込めて。



 
 
49 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月24日(土)22時10分08秒
そして石川さんは生徒会室へ戻って行った。オイラは再び校庭を走り出した。
あの2人はきっと大丈夫だろう。上手く行く。オイラはそう感じていた。
「んぁ、矢口先輩」
「おぉ!ごっちん。来ないかと思ったよ」
ごっちんがやって来た。
「よっすぃー、今日も来ないの?」
「うん、忙しいみたい」
「これ見た?」
ごっちんはチラシみたいなものをオイラに見せた。
えーと・・・何々。カラオケバトル!そこのあなた!自慢の歌声を
ステージで響かせてみませんか?優勝者には温泉の宿泊券!!!
さぁこのチャンスを見逃すな!!!
「温泉・・・宿泊券!?」
「んぁ」
「すげぇー!初めて知ったよ」
「んぁ」
「どうしよっかなー、出ようかな〜」
「んぁ!!」
「でもなー、ステージで歌うの初めてだし〜」
「んぁ〜・・・」
「でも、温泉かぁー。行きたいな〜」
「んぁ!んぁ!」
・・・・ごっちんは何を望んでるんでしょうか?
どうやら、オイラを出させようとしてるわけね。
「・・・やっぱ、やめようかなー」
「んぁ・・・・」
あ、しゅんってなった。面白いな〜ごっちんは。
わかったよ、この矢口真里。受けて立ちましょう!
「やるよ!ぜってー優勝してやる!」
「んぁー!さすが先輩!」
こうしてカラオケバトル!に出場する事になったオイラ。


50 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月24日(土)22時20分37秒

 <石川 視点>

あの人・・・確か矢口先輩。結構この学校で有名人。
私は生徒会室に戻って来た。きっと中には吉澤さんがいる。
・・・いるかな?もういなかったりして・・。
「大丈夫、大丈夫」

初めて他の人から『心配』された。

私はいつも『いい子』でないといけなくて。

小さい頃から頑張って勉強や委員長をやった。

だから、いつもまわりから頼られていた。

『心配』なんて一度もされなかった。

『お前は何でも出来るな。期待してるぞ、梨華』父は言った。

『梨華ぁー、この問題、梨華なら出来るよね?』友達は言った。

辛い事があって泣きたくても泣けなかった。
いつも1人で部屋で声を殺して泣いていた。
次の日目が腫れても、赤くても父は何も言わない。
友達からは『勉強のし過ぎだよ』って言われた。


ガラッと扉を開けた。
そこには────

ウロウロしている吉澤さんがいた。

51 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月24日(土)22時37分52秒
「あ!帰ってきた!良かったぁ〜・・・・」
吉澤さんはへなへなとその場へ座り込んだ。
「探しに行こうかと思ったんですけど、すれ違ったら嫌だし」
「待ってて・・・くれたの?」
私はまた泣きそうになっていた。
「はい、ずっと待ってました」
吉澤さんは私の目の前に立って微笑んだ。
ひどい事言ったのに、待っててくれた。
「さっきは・・・その、怒鳴ってすみませんでした」
「ううん、私の方こそ・・・ごめんね」
何でだろう?吉澤さんといるとすごく安心する。
居心地が良くて・・・・あったかい。

私は全て吉澤さんに話した。吉澤さんは最後まで黙って聞いてくれた。
「そんな・・・お父さん、石川さんの気持ち無視してるじゃないですか」
「・・・私はね、小さい頃両親が離婚してね。父の方にきたの。
 妹や姉は母の方にいったわ。・・・だから今、そばにいる家族は
 父だけなの。だから・・・嫌われたくなかった」

そう、嫌われたくなかった。

だから全ていう通りに生きてきた。

きっと、友達に対してもそうだっただろう。

「だから・・・だから・・・・」
私は涙を流しながら言った。その時、ふわっと暖かく感じた。
「駄目ですよ・・・家族だから、気持ちを伝えないと。
 やりたい事があるのに、それを我慢しちゃいけないんですよ・・・。
 話せば、きっとお父さんわかってくれるはずですよ・・・」
吉澤さんに私は抱きしめられていた。
「でも・・・私、怖いよ・・・・」
「大丈夫、うちがいます。そばにいます・・・」

ここに1人、私の事を心配してくれる人がいた。

私の為に涙を流してくれる人がいた。

「ありがと・・・・」



52 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月25日(日)00時26分58秒

 『嫌われたくない』

その言葉に私は随分縛られてきた。
だけど、それは間違いだった。
私は、私の生き方がある。
私にはやりたい事がある。

この世界でたった1人の私。

今が変わる時。

今が前に一歩踏み出す時。


「お父さん、話があるんです」
私は家に帰って、夜に父の書斎へ向かった。
「何だ?珍しいな。まぁそこに座りなさい」
ソファに座るように言われたけど私は立ったまま話を続けた。
「私、生徒会辞めます」
「・・・・何?」
「私にだってやりたい事があります」
「梨華。今まで何の為に生徒会に入っていたんだ?生徒会長になる為
 じゃないのか?」
「私は・・・・私はそんなのになりたくない!」
「梨華!」
「私にだって・・・私の生き方がある!」
「俺は今まで梨華の為を思ってだな」
「そんなの迷惑!私はあなたのロボットじゃない!私は人間よ!
 今まで、嫌われたくないって思って全部いう通りにしてきた。
 でも・・・それは間違ってるってわかった・・・気付いた」
きっかけは吉澤さん、その人だった。
「だから、もうあなたの言う事は聞きません。私は私の行きたい方に
 生きていきます」
「梨華・・・・ちょっと待ちなさい。梨華!」
私は書斎から出て行った。

   
53 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月25日(日)00時44分28秒

 <吉澤 視点>

次の日の放課後。うちはいつも通り生徒会室へ向かう。
気付けば学際まで後1週間ちょっと。準備は順調に進んでいる。
「私ね、この学際終わったら生徒会辞めようと思うの」
「・・・えぇ!!?」
生徒会室でうちの声は綺麗に響いた。
「昨日、父に話したわ。さすがに驚いてたみたい」
「そりゃ・・・そうっすよ」
石川先輩はやけに清々しい顔をしていた。
「ここまで出来たのは・・・吉澤さんのおかげよ。ありがとう」
「いや・・・うちは別に何も」
「ううん、私ね嬉しかった・・・」
うちは照れて石川先輩の顔を見れずにいた。
「ねぇ・・・」
「はい?」
「私って1人じゃない・・・って思ってもいい?」
はっと石川先輩を見ると、上目遣いで問いかけてくるではありませんか!
可愛い・・・と思ってしまう。
「もちろんっすよ!うちがいます!」
笑顔でうちはそう答えた。

何だろう?この気持ち。

変な感じ。石川先輩といるとすごくドキドキしてキンチョーっていうか。
離したくないっていうか抱きしめたいって衝動にかられる。

「───というわけなんすよ」
久々に部室に来たうちは矢口先輩に今までの事を話した。
「ほぉ〜、よっすぃーにもついに春だな」
「はい?」
「恋愛経験は?」
「えーと・・・・無いですね」
「だよね。あったらわかってるもん。何でそーゆー気持ちになるか」
「え?え?教えてくださいよ〜」
「・・・鈍感だなぁ。モテるわりには」
矢口先輩は手を腰に当ててえばるような格好をした。
「いーか?よく聞くんだぞ」
うちはごくりと唾を飲んだ。

「それは、『恋』なのだ!」

「・・・・ふぇ?」


54 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月25日(日)13時09分19秒
「・・・恋?」
「そ、恋」
「恋・・・・うちが?」
「そ、よっすぃーが」

うちが石川先輩を好き?

恋をしていると?

「いやぁ、若いって素晴らしいねぇ」
矢口先輩は部室を出て行った。
・・・確かに、そうなのかも。否定は出来ない。
その時、部室の外から声が聞こえた。
『ごっち〜ん!ついによっすぃーにも春がぁ〜来たぁ〜!』
「ちょ、先輩!!」
うちは慌てて部室から飛び出した。
「んぁ?よっすぃーが?誰に?」
「石川さんだよ」
「あぁ、あの人か」
時すでに遅し。ごっちんはニヤニヤしながらうちの方へ来た。
「いやぁ、年上ですか。吉澤さん♪」
「ごっちん・・・」
それから数日、うちはからかわれるはめになった。

───『恋』に気付いてからの翌日。
・・・どんな顔して会えばいいんだよ。
生徒会室の扉の前でうーっと唸っていた。絶対、石川先輩の顔を直視
出来ないという変な自信があった。
「あ、吉澤さん」
ぎくっ。後ろから石川先輩の声。
「あ、石川先輩・・・ども」
「何してるの?入らないの?」
「あぁ!入ります入りますよ」
ガラッと扉を開けて中に入る。誰もいない空間に2人きり。
うちは今までにないほど緊張していた。




55 名前:3.切ない叫び。 投稿日:2003年05月25日(日)13時18分45秒
「今日はね、提案があるの」
石川先輩はカバンから何か紙を取り出した。
「提案?」
うちは少し離れた所のイスに座ってカバンから昨日出来なかった仕事の
資料を取り出した。
「これ、見て」
渡された紙には一番上にでっかく『花火大会』と記されていた。
「花火大会?」
「ほら、私学際終わったら生徒会辞めるから何か大きな事出来ないかなって」
「でも・・・先生には」
「今日は会議あるでしょ?その時に提案してみようと思う」
実は1週間に1回、会議があるのだ。それが今日あってその会議は
最終会議なのだ。
「・・・急ですね」
「うん、確かに今日は最終確認のための会議。でも言ってみなきゃ
 わからないわ」
石川先輩はすごく前向きだ。
ならば、うちも応援しよう。
「・・そうですね。提案しましょう!」
「ありがとう!」

ドキッ。

やばい・・・可愛過ぎる。

「吉澤さん?」
「え?あ、頑張りましょうね」
うちは残りの仕事の方に集中し始めた。
56 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月25日(日)13時35分10秒

 『4.花火大会。』


 <矢口 視点>

もうすぐ学際!という状況。
学校は夜遅くまで生徒が残っている。オイラもその1人。
クラスの展示、出し物は発表と屋台ってどっちか選べるんだけど
オイラのクラスは屋台に決まった。『たこ焼き』を売る事に。
屋台のセッティング、必要な材料。宣伝用のチラシや券。
忙しく、部活に出る余裕が正直ない。多分、ごっちんの方もそうだろう。
「疲れたぁ〜」
「矢口、頑張りなよね」
「だってぇー、もう7時だよー?」
「延長届け誰か出してきたみたいだから8時まで大丈夫」
「うそぉ〜・・・・」
泣きたくなってきたよ。
「まぁまぁ、最後なわけなんだし。頑張ろうよ」
圭織はバシバシとオイラの背中を叩いた。
「痛ひ・・・」
「そーだ、聞いた?花火大会」
「え?何々」
「2日目の学際に花火大会やるんだって。誰かが言ってた」
花火・・・おぉー!いいじゃん♪
「よっしゃ!頑張ろうぜぇ〜みんな〜」

57 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月25日(日)18時53分28秒

 <吉澤 視点>

『花火大会』の提案は大成功に終わった。会議で石川先輩が
提案したらみんな乗り気で先生方も快く賛成してくれた。
そして学際まで後2日────

「人数が足りない?」
休み時間、みんながわらわらとうちのとこに集まって来た。
何かと思えば学際の1日目の日に『ここが腕の見せ所』というのがあり。
その内容はトーナメント式で腕相撲対決。
略して『ここ腕』のうちのクラスの人数が足りないらしい。
「よっすぃー、お願い!」
「えー、ごっちんの方が強いよ」
「ごっちん、『マシュマロキャッチ争奪戦』に出るって言うの」
『マシュマロキャッチ争奪戦』とは、これも1日目にやるもので
とにかくマシュマロを何個キャッチ出来るかという内容。
「う〜・・・ごっちんめ、楽な方に行ったな」
うちは腕を組んで唸った。んで少し考えた後。

「・・・わかったよ」

だってみんなに囲まれてうるうるした目で見られたら断れないよ。
まぁ、『ここ腕』は1日目の午後だし。そこなら実行委員長の仕事も
ないだろう。
「あーぁ・・・」
「どうしたの?よっすぃー」
ごっちんが現れた。
「どーもこーもないよ、『ここ腕』に出る事になったよ」
「あー、あたしに頼んできた事あったなぁ」
「ごっちんの方が強いじゃん。何でうちなんだよ」
「だって、疲れるし。めんどいじゃん」
「マシュマロは出るのかよ」
「だって、どっちかって言われたんだもん」
ごっちんは「じゃぁねー」と言い消えていった。
「ごっちん、授業は!?」
・・・・どうやらさぼるらしい。




58 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月25日(日)19時06分05秒
「───ひどいですよね。うち弱いのに、腕相撲」
放課後、生徒会室で石川先輩に愚痴っていた。
「面白いね、後藤さんって」
石川先輩は笑っていた。最近、よく石川先輩の笑顔を見る。
「先輩〜、笑い事じゃないっすよ」
「いいじゃない。1日目の午後は仕事ないし。私もだけど」
「そーなんすけどね」
「じゃ、私応援に行くね」
「・・・え?」
「私も1日目の午後仕事ないでしょ?」
「じゃ、じゃぁ!一緒に・・・その!・・・見回りませんか?」
うちは立ち上がって言った。
「・・・うん」
石川先輩はにっこり笑って言った。

・・・やったぁー!よっしゃー!
うちは最高に嬉しくて小躍りしたくなるほどだった。

最高に嬉しい学際になりそうだ。
今、実行委員長になれた事にかなり感謝してます!






59 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月25日(日)23時41分47秒

 <矢口 視点>

ってなわけで、今日は学際当日。いやぁ、人がいっぱいです。
一般の人も来れるから何処を見ても人だらけ。
「おし!燃えるぞぉ〜」
オイラは張り切って屋台の準備をしていた。もう開会式は終了した。
たこを切って入れたタッパーを取り出す。たこのイラストが入った
手作りのハッピを着て、うきうき気分なオイラ。
鼻歌まで歌っちゃいます!
圭織は宣伝のチラシを配りチームの方に行っている。オイラは販売チーム。
「あ、安倍さん。楽しいね〜」
微妙に話せるようになった安倍さんとオイラは材料を準備していた。
「う、うん」
この機会にもっと仲良くなれば良いなとオイラは思っていた。
オイラは今日は午前はたこ焼き売り。午後はカラオケバトル!に出る。
昨日、ごっちんはマシュマロキャッチ争奪戦によっすぃーはここが腕の
見せ所に出ると聞いた。
「安倍さん、オイラね。午後にカラオケバトル!に出るんだぁ〜。
 良かったら見に来てよ。優勝するからさ」
「そうなんだ・・・頑張ってね」
「うん!」
そしてお客さんが来始めた。中々の盛況ぶり。
オイラ達の販売チームは一生懸命たこ焼きを作り売った。
「ありがとうございましたぁ〜!!」
「すみませーん、たこ焼きひとつ〜」
「はい!・・ってごっちんじゃん!」
「んぁ、売上げに協力しようと思って」
「自分のとこはいいのかよ」
「他の子が今やってるから」
オイラは出来上がったたこ焼きをごっちんに渡した。
「300円です」
「・・・んぁ、おごって?」
「駄目。さっき売上げに協力するって言ったじゃん」




60 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月25日(日)23時44分46秒
ごっちんは渋々ポケットから300円を取り出した。
「んぁ」
「はい!ありがとうございましたぁ〜」
ごっちんがいなくなった時、圭織達が戻って来た。
「チラシ全部なくなったよ〜。どう売上げは」
「上々!中々の盛況ぶり!」
「やったね」
そして午前の時間は過ぎていった。
61 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月26日(月)19時18分43秒

 <吉澤 視点>

うちはただ今、受付けの方にいる。今日は学際当日。
生徒の親御さんはこの受付けでチェックしパンフレットを受け取る。
それが今日の午前の仕事。
まぁ、人が来るわ来るわで。何処を見ても人だらけ。
自分のクラスの屋台の方はどうなってるのかが気になっていた。
「あの──、パンフ貰っていいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
うちは積んで置いてあるパンフを渡した。その人はショートカットで
黒のジーンズに白いシャツ。とにかくうちは・・・・。
カッケー・・・この人、と思った。
その人は「ありがと」と言って人ごみに紛れて行った。
「吉澤さん、もうすぐ終わるね」
「あ、そうですね」
腕時計を見るともうすぐ12時になる。12時になったら他の人と交代する。
早く12時にならないかとうちはそわそわしていた。

───正午、12時。
「交代しまーす」
午後の担当の人がやって来た。
「お願いします」
こうして受付けの仕事は終了した。
「石川先輩、『ここ腕』まで時間があるから屋台の方、見に行きません?」
「うん!行く」
可愛い・・・・・。
「そういえば、『ここ腕』の優勝したら何貰えるか知ってる?」
「いえ・・・カラオケバトル!では温泉の宿泊券ですよね」
「『ここ腕』は焼肉券」
「へぇー、『マシュマロ』は何すかねぇ?」
「確か・・・全部の屋台のタダ券かな?」

・・・ごっちん、それに惹かれたんじゃぁ・・・。






62 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月26日(月)19時35分54秒
「あ、あれ矢口先輩のクラスですよ」
うちは矢口先輩がせっせとたこ焼きを作ってるのが見えた。
「きゃっ・・・」
横を見ると石川先輩はいなくて後ろの方に人ごみのせいで流されて
しまっていた。うちはすぐ手を伸ばし石川先輩の手を掴んだ。
「大丈夫ですか?」
「うん・・ごめんね」
「いいですよ」
手を繋いだまま人ごみを掻き分けて矢口先輩のクラスの屋台へ。
「矢口先輩!」
「おっ!よっすぃーに、石川さんいらっしゃい!」
「たこ焼きひとつ下さい」
「あいよぉ〜300円になります」
うちは財布から300円を取り出して渡した。
「やけに仲がいいじゃん」
矢口先輩はニヤニヤ笑ってうちらを見ていた。そして矢口先輩の視線は
下へ。
「あ!」
手を繋いだままということを忘れていた。石川先輩は顔を真っ赤にさせて
下を向いていた。
「こ、これは!人ごみのせいで・・・」
「まぁ、仲が良い事はいいからさ。楽しみなよね」
たこ焼きを貰い、その場から離れた。
「すみません・・・手離さなくて」
「う、ううん。全然いいの!」

え・・・・?

「えっと・・・」
「その・・・繋いでて欲しいな。はぐれちゃったりしたら困るし」
石川先輩は小さな声で言った。うちは嬉しくてもう1度手を繋いだ。
それからたこ焼きを食べ、うちのクラスの屋台に行った。
「あれ?ごっちんは?」
「ごっちんなら『マシュマロ』行ったよ」
クラスの人はそう答えた。そしてカキ氷をひとつ買った。
石川先輩のリクエストでイチゴのシロップにした。


63 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月26日(月)19時55分21秒
そして、『ここ腕』の時間が迫ってきた。
ちなみに───

『マシュマロキャッチ争奪戦』PM12:30〜 中庭
『ここが腕の見せ所』    PM 2:00〜 中庭
『カラオケバトル!』    PM 2:30〜 体育館

中庭に行くと表彰式が行われていた。
「マシュマロキャッチ争奪戦・・・今回の優勝者は1年生の
 後藤真希さんに決定致しました〜!」
マイクを通しての司会者の声が聞こえた。表彰台を見るとなんと
ごっちんがいた。嬉しそうな顔をしている。
唖然と全部の屋台のタダ券を貰っているごっちんを見た。
「すごいなぁ・・・ごっちん」
「吉澤さんも頑張って!」
「は、はい・・・でも自信ないですよ〜」
「大丈夫、私がいるから」
「・・・はい!頑張ります!」
そして『ここ腕』が始まろうとしていた。

トーナメント表を見ると、A,B,C,D,E,Fと分かれていて
うちはCの所に名前があった。対戦相手は2年生の人だった。
・・・頑張ろう!
気合いを入れて挑んだ。

「勝者!1年吉澤ひとみ!」
判定者がそう叫んだ。うちはとりあえず1勝することが出来た。
「よっしゃ!」
石川先輩の方を向くと、石川先輩は笑顔で手を振っていた。
おし!次も勝つぞ!
そして次の試合。相手は3年生の人だった。
「始めッ!」
判定者の声と同時に力を入れる。1回目とはさすがにレベルが違った。
・・・いてぇー、いてぇよ・・・・。
だけど、ここで負けるわけにもいかず力を全て出した。



  
64 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月27日(火)20時18分55秒
2回戦も何とかクリア。そして3回戦・・・4回戦・・・・。
気が付いたら何と決勝戦まできてしまった。決勝戦の相手は体育会系の
3年生だった。
「始めッ!」
ぐわっと相手の力に押されていた。何とか力を入れようにも向こうの
力が強すぎて入らない。
・・・うわわ・・・負けちゃうよ。
痛さと負けたくないという気持ちが葛藤し、もうすぐ右手がついてしまう時。
「頑張れ〜!」
石川先輩の声が聞こえた。
「よっすぃー!焼肉〜!!」
ごっちんの声も聞こえた。

・・・・負けるもんか!

最後の力を振り絞って押し上げた。相手も疲れてきたのか
うちの方が勝ち始めていた。
「うぉぉぉ〜!!!」
唸り声を上げて右手に今ある限りの力を入れた。

「───勝者!1年吉澤ひとみ!」

わぁと歓声が上がった。まわりは人がたくさん集まっていた。

・・・勝った・・・?

「よくやったぞ〜!よっすぃー!」
ごっちんの嬉しそうな声が聞こえた。焼肉が目的だろう。
うちは表彰台に上がった。そして賞状と賞品の焼肉券を貰った。








65 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年05月27日(火)20時34分12秒
「やったね!吉澤さん」
「あはは・・・勝っちゃいました」
石川先輩のもとへ戻った。横からぬっとごっちんが現れる。
「焼肉」
「え?あぁ・・・今度ね」
「いつ?」
「いつって・・・わかんないよ」
「今日は?」
「明日の準備あるから駄目」
「んぁ・・・」
「みんなで行ける日にしようよ。ね?」
ごっちんは寂しげな目で「んぁ・・そうだね」と言った。
「あ、そうそう。矢口先輩がカラオケバトル!で残ってるんだよ」
「すげぇー、さすが矢口先輩」
そしてうちら3人は矢口先輩を応援するべく体育館へ向かった。

───PM3:30。
体育館内はすごい熱気だった。とにかく暑くて頭がくらくらしそうだ。
カラオケバトル!の判定は7人の審査員によって決められる。
「すごい人ー」
「これはすごい・・・石川先輩、去年もこんななんすか?」
「うん、カラオケは人気あるからね」

「えー、ただ今のバトルの結果が出ました。
 決勝戦出場者は───矢口真里さんに決定〜!!!!」

パッとライトが矢口先輩を照らした。ステージの上では
喜んで飛び跳ねている矢口先輩がいた。
「おぉ、これは優勝だね。よっすぃー」
「そうだね、陸上部全員優勝なんてすごいねぇ」
「あそこの席空いてるよ」
石川先輩が指差した方には3人ぶんの席が空いていた。
うちらはそこに座った。
66 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月01日(日)20時53分43秒

 <矢口 視点>

屋台の売上げは上々で、午後はオイラはカラオケバトル!の
為に他の人と交代してもらった。
ノリノリに歌ったら審査員に評判で、オイラは淡々と上へあがっていった。
・・・・見てくれてるかなぁ。
午前の屋台でたこ焼きを売っていた時。
『安倍さんは好きな歌手の人とかいる?』
『・・・いるよ』
『え?誰々?』
『JUDY AND MARYだよ』
『ジュリマリかぁー、オイラも好きだよ』
『中学の時から好きで、よく聞くんだ』
『そっかぁー、じゃぁさ!オイラがカラオケバトル!で決勝戦に行ったら
 ジュリマリの歌、歌うよ!』
『え・・・?』
『だからさ、良かったら見にきてよ。絶対優勝するし』
『・・・うん!』
───という約束をしたのだ。
でも人数が多すぎて、しかも暗いから明るいステージからは
体育館内はよく見えない。
・・・きっと、見てくれてるよね。
オイラはステージの中心に立った。マイクを持つ。
安倍さんの大好きな───歌を歌う。
67 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月01日(日)20時59分17秒


 小さな頃から 叱られた夜は
 いつも 聞こえてきてた あの小さなじゅもん
 静かに流れる 時にいつの日か
 あたしは 眠れる森に 連れ去られてた

 小さな頃から 見えない力で
 あたしを強くさせる あの小さなじゅもん
 たくさんの傷と 争う夜にも
 抱きしめるたびに いつも震えて響く

 すりきれた言葉達の かけらさえも もう
 どこかへ 消えたわ
 壊れそうなのは 夢だけじゃないの
 窓から差し込む光り もう行かなくちゃ・・・

 かわいた風に ゆきづまっても
 こわくはないわ 1人りじゃない
 
68 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月01日(日)21時08分53秒
精一杯歌った。別に優勝のためだからとかじゃない。
きっと見にきてくれてる安倍さんの為に歌っている。
何でこの曲を選んだのはわかんない。何となくこの曲は安倍さんに・・・
何と言うか、伝えたかったものがあると思った。

・・・歌い終わった。
オイラはもう一度、体育館内を見回した。やっぱり暗くて
安倍さんは見つからなかった。
そして───決勝戦でのもう1人が歌い終わり、審議が始まった。

「審議の結果が出ました!今回、カラオケバトル!の
 優勝者は────矢口真里さんに決定致しました!おめでとうございます!!」

・・・・え?オイラ?
ふらふらとイスから立ち上がり、表彰式が始まった。
賞状と温泉の宿泊券を貰った。
「今の気持ちはどうですか?」
司会者の人がオイラにマイクをむける。
「えーと、すごく嬉しいです!!」

こうしてカラオケバトル!は終わった。
69 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月01日(日)21時21分26秒
オイラは体育館を出た。するとよっすぃーやごっちん、石川さんがいた。
「矢口先輩!すごいじゃないっすか!」
「やったねぇー。これで温泉だね♪」
「えへへ、いやぁーオイラも緊張しまくりでさぁー」
この温泉の宿泊券、なんとすごい事に団体用だ。10人までOK。
さて・・・誰と行くか。
「矢口先輩〜、あたし感動した!最高!」
どうやら、ごっちんは『連れて行って欲しい』と言いたいらしい。
ま、いいか。同じ部活、オイラの後輩だしね。
「んじゃぁ、ごっちんとよっすぃーと石川・・・何かなぁー、
 1人だけ名字じゃねぇ・・・梨華ちゃん!おし、梨華ちゃんって
 呼ぶ事にした!決定!っでこれで4人か」
「んぁ、あたしも梨華ちゃんって呼ぼう〜」
梨華ちゃんは顔を真っ赤にさせてびっくりしていた。オイラはちらっと
よっすぃーを見た。何か言いたげなご様子。
だけど恥ずかしいのか、中々言えないよっすぃー。
「よっすぃーも、そう呼ぶんだぞ!わかったか?」
オイラはちょびっと助け舟を出す。
「は、はい!」
よっすぃーは何故か敬礼のポーズをした。
70 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月01日(日)21時32分09秒
それから屋台の方へ戻るともう終わりのようだった。
「あ!矢口〜どうだった?」
圭織が屋台から出てきた。
「もちろん!優勝!」
ぴらっと温泉の宿泊券を見せる。
「うわぁーすごいねぇー。矢口ならやると思ったよ」
「でしょ〜?オイラに不可能はないってね!」
ガッツポーズをしながらジャンプをした。
「・・・あ、そうそう。さっき安倍さん見たんだけど、泣いてたよ」
「えぇ!?」
「声は忙しくてかけれなくて・・・」
圭織は心配そうな表情で言った。オイラはすぐ安倍さんを探しに走った。

・・・学校って広いなぁ。
息を切らせながら人をかきわけてオイラは走る。
「はぁはぁ、何処にいるんだよ〜!!」
階段を駆け上がる。

・・・・ん?

一番上まで来てしまった。大きな扉があり、そこは屋上だ。
もしかしたら、と思いその扉を開けてみる。

───いた、見つけた。

安倍さんはテスリに手をかけ、空を見上げていた。オイラはゆっくり
歩いた。安倍さんの背を向けているので泣いてるかどうかわからない。
「安倍さん・・・?」
「あ・・・矢口さん」
安倍さんはオイラの方に振り返る。涙は流れていた。
「探したよ〜」
安堵のため息をつきながらオイラは安倍さんの隣に立った。

71 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月01日(日)21時41分42秒
「聞いたよぉ・・・歌」
「うん、安倍さんは聞いてくれてるって信じてたよ」
「私ね・・・何か聞いてたら涙が出てきてさぁ・・」
再び安倍さんは空を見上げる。オイラも同じ事をする。

「ありがとう」

笑顔でオイラに安倍さんは言った。相変わらず涙は流れてるけど。
その涙の理由はオイラにはわからない。正直、知りたい。
でも今は、その言葉を。ありがとうって言葉を。
大事に、大切にココロに置いておこう。

「いーえ、どう致しまして!」

オイラも笑顔でそう言った。2人で笑った。何か笑顔が溢れていく。

「あ、この温泉一緒に行かない?」
「いいの?」
「もちろん!安倍さ・・・何かあだ名ない?」
「なっちって呼ばれた事があったよ」
「なっち!いいねぇ。オイラは矢口でいいよ。そう呼ばれてるから」
「矢口?わかった!」
きっと良い友達になれる。オイラはそう確信していた。
72 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月02日(月)21時10分50秒
そして一日目の学際が終わり、放課後。教室の展示を片付けたり
掃除をしていた。そして圭織・なっち・ごっちん・よっすぃー・梨華ちゃん
そしてオイラの6人で早速よっすぃーが獲得した焼肉券を使おうという
事になった。6人でぞろぞろと学校を出ようと校庭を歩いていた。
時刻は6時、もうお腹がぺこぺこだ。
「焼肉〜♪」
オイラは軽くスキップしながら歩いていた。その横をなっちと圭織が歩く。
後ろはよっすぃーと梨華ちゃん、ごっちんがいる。
校門のとこまできた。そこに誰かが立っていた。
黒のジーンズ、白いシャツ。その人はこっちを見ている。
「あ・・・あの人」
「よっすぃー知ってんの?」
「はい、今日の学際に来てましたよ。あの人」
どさっと何かが落ちる音がした。音の方向を見てみるとごっちんが
カバンを落として驚いた顔をしている。

「いちーちゃん・・・・?」

ごっちんは消えそうな声でそう言った。

「よぉ、後藤」

『いちーちゃん』はごっちんに向かってそう言った。








73 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月02日(月)21時23分02秒
「な・・・いつ帰って来てたの?」
「今日の朝。学際、今日だろ?いやぁー楽しかったよ」
「・・・何で知ってるの?今日が学際だって・・」
「お前なぁ、私はこの高校の卒業生だぞ」
ごっちんは涙を流しながら、走って行った。『いちーちゃん』に
抱きついて、声を上げて泣いていた。
「いちーちゃんのバカぁ・・・ごとー、寂しかったんだからぁ・・・」
「よしよし、ごめんな。後藤、泣くな?」
「だってぇ・・・」

こっちの存在感まるで無し。いつまでそうしてるんだろうか?
「あのぉー・・・」
オイラはおずおずと話しかけた。
「あ、すみません。いつも後藤がお世話になっております。
 私は市井紗耶香です」
まるでごっちんの保護者のように市井さんは言った。ごっちんは
市井さんの腕にしがみついてる、子供のようだ。
こうして、市井さんも交えて焼肉屋へ向かう事になった。



74 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月02日(月)21時36分11秒
市井さんはとても明るい人で、話しやすかった。
「後藤、くっつきすぎ。肉が食えねぇ」
ごっちんはずっと市井さんにくっついていた。それでも自分の
お肉はちゃんと食べる。オイラもがつがつとお肉を口に運ぶ。
「いちーちゃん、何処行ってたの?」
「ん?あぁ、仕事関係とか。あと・・・故郷に戻ったりな」
「故郷・・?」
「お前のおじさんとおばさんに会ってきた」
市井さんは烏龍茶を一口飲んだ。
「え・・・!?」
「後藤の事、ちゃんと話さなきゃって思ってね。
 後藤の高校合格が決まった事や、元気にしてる事とか」
「今更・・・あの人たちは関係ないよ」
「いや、関係あるよ。高校のお金の事だっておじさん達が出してくれて
 たんだ。・・・心配してたよ、2人共」
「嘘だよ!そんなの・・・嘘だよ。どーせ、ごとーがいなくなって
 良かったって思ってるよ・・・」
ごっちんは俯いて言う。オイラの隣に座ってるごっちんの手は
震えていた。
「違う、違うよ後藤。ホントに心配してるんだって。
 後藤を辛くさせてたの後悔してるんだ、おじさん達、泣きながら
 言ってたよ。『真希をよろしくお願いします』って・・・」


75 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月04日(水)00時23分04秒
ごっちんの手に涙がポタッと落ちた。
「後藤、一回さおじさん達に会いに行かないか?」
「・・・いちーちゃん、でもごとーは・・・」
「わかってる。後藤の家はあの家だよ」
「・・・ん」
何かオイラも涙が込み上げてきた。
「何で、矢口が泣いてんの」
目の前の席にいる圭織に言われた。
「うっさいよー、わかんねぇーよ〜」
泣き笑いながらオイラは涙を拭った。

焼肉を食べ終え、ちょっとみんなでコンビニへ寄った。
オイラは外に出て、待っていた。ごっちん達ははしゃぎながら
アイスを選んでいる。
「おっす」
市井さんがコンビニから出てきて、オイラの隣に来た。
「後藤が矢口さんにはすごく世話になったって言ってた」
ジュースを渡された。



76 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月04日(水)20時33分43秒
「オイラは・・・別に何も」
渡されたジュースを見ながら言った。隣でプシュッという音が聞こえた。
「・・・これから、仕事が多くなると思う。またあいつを1人に
 させるかもしんねぇ。その時は・・・」
ぐびっと市井さんはジュースを飲んだ。
「もちろん、大丈夫ですよ市井さん。オイラ達がいるんだから」
「ん・・・ありがと。あと、紗耶香でいいよ。そう呼ばれてっから」
「オイラの事は矢口って呼んで下さい」
市井さんが手を差し出した、どうやら握手って事らしい。
オイラはその手を握り、握手した。

「んぁ、いちーちゃん。アイス買って来たぁ〜」
それから数分後、ごっちん達がコンビニから出てきた。
「はい、矢口のアイス」
なっちが袋からアイスを取り出しオイラにくれた。
「ありがと、なっち」
そしてオイラ達はそれぞれの家へ帰った。
 
77 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月04日(水)20時52分42秒

 <後藤 視点>

いちーちゃんが帰って来た。びっくりした。嬉しかった。
「後藤〜、コーヒーいれるけど飲む?」
「うん!」
久々に1人じゃない家の中。いちーちゃんがいるだけで自然と
明るくなる家。
「意外と綺麗にしてるんだなぁ」
コーヒーのカップを2つ持ってきた、1つをあたしに渡す。
「失礼だよ、あたしだってちゃんと片付けるもん」
・・・いちーちゃんがいつ帰ってきてもいいように、ちゃんと掃除してた。
「そっか、ありがとね。そーいや、後藤自分の事『ごとー』じゃなくて
 『あたし』って呼んでるね」
「まぁねー、大人になるんだよ」
さっきはごとーってつい呼んじゃったけど、いつまでも子供じゃない。
「そっか、残念だなぁ。1ヶ月もいなかったからなー。
 1人で寝るんだなー、残念だなー」
「そ・・・それはぁ・・・」
「ん?何?」
隣にいるいちーちゃんを上目遣いで見る。いちーちゃんは意地悪な顔して
あたしを見ていた。
「・・・それは・・・ぃゃ・・・・」
「ん?聞こえないなぁ?」
「・・・嫌!だってば!」
いちーちゃんから視線を外してあたしは言った。次の瞬間
頬に何か触れた感じがした。
「素直に言えばいいのに〜♪」
「い、いちーちゃん!」

78 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月05日(木)22時49分16秒
いちーちゃんはそのまま逃げてお風呂へ入りに向かった。
「もう!」
ほっぺじゃなくてさぁ・・・・口にしてよ。
久しぶりに会ったのに、まだ1回もキスをしていない。
ぽふっとクッションに顔を埋めた。遠くの方でシャワーの音が聞こえる。
あとは何にも聞こえない、ただシャワーのザーっていう音だけがあたしの
耳に入ってくる。
いちーちゃんがいる、ここにいる。
それだけで十分だよ、他に何もいらない。不満なんてない、それ以上
望んだらあたしは欲張りな人間だ。

気が付いたらあたしはソファで寝ていた。うっすら目を開けたら
いちーちゃんの顔がドアップで視界に入った。
「うわぁ!?」
「あー、起きちゃった?せっかく寝顔見てたのに」
「起こしてよねぇ、もう」
ぶつぶつ言いながら起き上がる。
「風呂、あいたよ?入れば?」
「んぁ・・・」
あたしはぼぉーっとしながらお風呂場へ向かった。
「っと、ちょい待ち」
がしっと腕を掴まれて抱き寄せられた。
79 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月05日(木)22時59分48秒
いちーちゃんの髪からシャンプーの匂いがする。あったかくて
優しい温もり・・・・いちーちゃんがいる。ここにいる。
「後藤・・・・」
「いちーちゃん・・・」
「私、1ヶ月離れてみてわかったんだよ。私には後藤が必要なんだって。
 いなきゃ駄目なんだって思い知った」
「うん・・・」
「おじさん達に会いに行くの正直怖かった・・・『真希を返して欲しい』
 なんて言われたらどうしようって」
いちーちゃんはぎゅっとあたしを抱きしめる。
「だから、私の・・・市井の勝手だけど、そばにいて欲しい。
 あ、でも無理強いはしないよ」
少し離れていちーちゃんがあたしの顔を覗き込む。ものすごく
不安そうな顔だった。あたしは笑って。
「・・・あたしは、ごとーはいちーちゃんが必要。他に考えらんない。
 ずっと一緒だからね・・・?もう何処にも行っちゃやだよ・・?」
「あぁ、もちろんだ。何処にも行くもんか」
いちーちゃんも笑って。2人で笑ってた。
ふっといちーちゃんの手があたしのほっぺに触れて、軽くキスをした。
何回も、繰り返した。



80 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月06日(金)22時58分13秒

 <吉澤 視点>

矢口さん達と別れて、梨華ちゃんと2人で夜の道を歩く。
特に会話は無く、沈黙が流れていた。
まぁ・・・うちとしてはかなり緊張してるんだけどね。
「ね、ねぇ、今日は楽しかったね、梨華ちゃん。市井さん帰って来たし、
 ごっちんかなり嬉しそうだったし」
「うん・・・・あのさ、ひとみちゃんって呼んでいい?」
梨華ちゃんがぴたっと立ち止まった。うちは振り返る。
下を向いて梨華ちゃんはそう言っていた。この時、うちは梨華ちゃんに
対して敬語を使ってない事に気付いた。
そのまま、時が止まったような気がした。
「・・・いいよ、梨華ちゃん」
そう言うと満面の笑みで梨華ちゃんは顔を上げた。

・・・そんな顔、しないでよ。期待しちゃうじゃん。

「さ、帰ろう?」
うちは梨華ちゃんに背を向けて、てくてく歩いてく。
「ま、待ってよ!ひとみちゃん!」
梨華ちゃんが小走りでうちの隣に来た。
この時、やっぱ好きだなーって改めて実感。もう梨華ちゃんがいると
楽しくて仕方ない。
「明日、花火大会だね」
梨華ちゃんが嬉しそうに言う。
「そうだねー、うちも楽しみ」
楽しく会話を弾ませながらうちらは家へ帰った。
81 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月06日(金)23時10分29秒

 <飯田 視点>

矢口となっち(矢口がいつの間にかそう呼んでたので私もそう呼ぶことに)・
よっすぃーと石川・ごっちんと市井さんはそれぞれ家へ帰って行った。
私だけ誰とも同じ方向の人がいないので、1人で帰る。
「あー・・・星だー・・・」
夜空を見上げると点々と星が輝いていた。私は近くの公園に入っていった。
誰もいない、静寂が漂う公園。ベンチに腰をおろして再び夜空を見上げる。
・・・綺麗だなぁ、星。
いつの間にか涙が流れ出た。自分でもすぐ気付かなかった。
もうすぐ夏、そして秋・冬が訪れる。
もう本番の時期なのだ。1学期に全て成績は決まってしまう。
後は受験を残すのみ。
「・・・矢口、私どうしたらいい・・・?」
いつも相談に乗ってくれた矢口。私は今・・・悩んでる。

ねぇ、矢口。『いつまでも友達』って言葉、信じてる?

私は涙を拭って立ち上がった。そして公園を出た。
家に向かい歩く、だけどだんだん小走りになって行く。
「はぁ、はぁ、はぁ」
走って走って、夢中で夜の道を走った。何処まで行っても闇ばかり、
明るい所なんて何処にもない。
まるで今の自分のココロの中みたいだ。
「・・・・はぁ、はぁ、はぁ」
立ち止まり、息を整えた。やっぱり夜空には星が綺麗に輝いていた。




82 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月07日(土)12時24分54秒
はじめてのかおりん視点めっちゃせつないですね…
かおりんどうしたんだろ…
83 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月07日(土)21時42分45秒

 <矢口 視点>

「ねぇ!なっち、星が綺麗だよ!」
オイラは夜空の星を指差しながら隣にいるなっちに言った。
「ホント、綺麗だねー」
「もう夏だね」
てくてくと家に向かって歩く。なっちとは方向が一緒だった。
オイラは上を向いて歩いていた。
「矢口、あんま上見てると転ぶよ?」
「んー?大丈夫!みんなこの星見てるかなぁ?」
「・・・見てるんじゃない?綺麗だし」

そぉーいえば、前に圭織に星の絵を見せてもらった事があった。
圭織はマジ絵が上手くて、いつも表彰されたりしていた。
『圭織、この絵にタイトルつけたら何にする?』
ちょこっと前に美術室で絵を描いていた圭織に質問した事があった。
『んー・・・ココロの星、かな』
そのキャンパスには綺麗な星が描かれていて、たくさんあった。
『ココロの星?』
『みんなココロの中には星がある。それは夢という希望の輝きね。
 それを考えて描いたよ』
圭織は穏やかで優しい口調でそう言った。オイラは絵の事はよくわからないけど
この絵は圭織の思いがつめられてるんだなと思った。

・・・圭織、見てるかな。この星。

「矢口?」
「え?あぁ、何でもない!明日、花火大会だね!」
「・・・え?」
「あぁ、これ内緒なんだっけ。よっすぃーから聞いたんだけど
 今年の学際の最後に花火大会やるんだって、これ梨華ちゃんが提案
 したらしいよー」
「へぇ、すごいねぇ」
 

84 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月07日(土)21時53分25秒
「オイラ、もうやりたくてさぁー。花火」
「まだ早い時期なのに」
「まぁ、いいじゃん。出来るんだから」
こうしてオイラ達は家へ帰った。

───そんで次の日。2日目の学際。
体育館でクラス発表を見たり、文化部の発表を見ていた。
眠い・・・・。
昨日張り切りすぎたのか、今日はすごく眠い。
ちょっとだけ寝てしまったり、起きててもぼーっとしてたりして
時間は過ぎていった。
そして、待っていました!花火大会。時刻はもうすぐ6:30。
教室で片付けをしているオイラ達。
あたりもだんだん暗くなってきた頃、校内放送が流れる。
『みなさん、今年の学際はこれで終わりではありません。
 何と、これから花火大会をしようと思います!すぐに校庭に
 集まって下さい〜!』
わぁーと他のクラスからの歓声が聞こえた。もちろんオイラ達のクラスも。
校内放送の声は梨華ちゃんだった。
この花火大会は生徒には秘密だった、知っているのは生徒会の人達や
実行委員の人達。オイラはよっすぃーから聞いていた。
「行こう!校庭!」
オイラはなっちと圭織を引っ張って走った。
「待ってよ〜!花火は逃げないって!」
「矢口!危ないから!離して!」
2人の叫び声はオイラには聞こえない。夢中でオイラは走っているのだから。




85 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月07日(土)22時04分19秒
生徒会員や実行委員が花火の準備をしていた。梨華ちゃんもよっすぃーもいた。
適当に花火をもらい、ロウソクにともした火に花火をつける。
しばらくたって赤色の光が散った。オレンジや緑など色を変えていく。
「綺麗〜!見て!圭織!」
「矢口、綺麗なのはわかるから!こっちに花火向けないでよ!」
あははと笑いながらわいわいと騒いで花火を楽しむ。
「あ、あれごっちんだ」
少し離れたとこにごっちん、あと紗耶香もいた。オイラ達はそっちに向かった。
「おーす!ごっちん!」
「んぁ〜。矢口先輩〜」
「紗耶香も来てたんだ」
「おう、後藤に誘われてな」
それから5人で花火を楽しんだ。すごく楽しかった。
時間を止めたくてしょーがなかった。でもオイラにはそんな事できない。
誰にでも、どんな奴にでも時間は止める事ができるわけがない。
「なっち、楽しいね」
「うん、楽しい」
1番なっちが楽しく過ごしてるようだった。笑顔が満ち溢れている。
「私、今までこんなに楽しい事なかったよ」
ふとなっちがそう呟いた。オイラはなっちを見た。
笑顔・・・だったけど、何か寂しそう。
でもそれは一瞬だけだった、すぐ楽しそうに笑うなっちに戻った。

86 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月07日(土)22時18分35秒

 <吉澤 視点>

花火大会は生徒達に楽しんでもらえたようだ。校庭でみんな楽しそうに
笑ってる。うちはまぁ、そう花火を楽しんではいられない。
バケツに水を用意したり、終わった花火をまとめたり。でも梨華ちゃんも
他の生徒会員も実行委員も頑張ってるんだ、うちも頑張らなきゃ。
「梨華ちゃん、水かえてくんね」
うちはバケツを持って梨華ちゃんに言った。
「あ、私も行く」
「でも・・・いいの?離れても」
「少しぐらい、大丈夫」
校庭を離れて水道場へ来た。バケツの水を捨てて新しい水を入れる。
「ね、これ」
梨華ちゃんが手に持っていたのは線香花火。内緒で持ってきたようだ。
うちはバケツを置いた。2人でしゃがんで線香花火をわけた。
持っていた花火の為のライターで火をつめる。
「わぁ・・・綺麗」
赤く光を放つ線香花火。2人でじっとそれを眺める。
・・・・ねぇ、梨華ちゃん。もし、好きって言ったらどうする?
うちはココロの中で梨華ちゃんに問いかける。当然のごとく返事は無い。
「綺麗だね、梨華ちゃん」
「うん、すごく・・・綺麗」
2人だけの時間。それはたった5分だったけどすごく楽しかった。
うちらは線香花火が燃え尽きるとそれを片付けてバケツを持って校庭へ
向かった。
87 名前:4.花火大会。 投稿日:2003年06月07日(土)22時23分57秒

>82 名無しさん様。
    読んで頂いてありがとうございます!
    せつないですよね・・・かおりん。彼女にも悩みがあるようです。
    これから徐々にわかっていくと思います。なっちの事も。
    
      
   
88 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月08日(日)21時39分04秒

 『5.叶えたい夢。』

 <矢口 視点>

花火大会はすごく楽しかった。めちゃくちゃ学際も楽しかった。
「矢口、手止まってる」
圭織に言われてはっと気付いた。机の上には数学の参考書。
放課後、図書館を利用し勉強しに来てるオイラ達なわけですが。
何故、勉強をしているというと。まぁ受験生なのだから当り前なんですが、
もうすぐ期末テストなわけで。
ホントは放課後、さっさと部活に行っちゃおうと思っていた所、圭織に
捕まっちゃいまして。なっちは用事あるとか何とか・・・・・
なっち、さっき携帯見てた時、ものすごく青ざめてた。
『なっち?どうした?』
『・・・ううん!何でもない!ちょっと用事出来たから図書館行けないや』
『あ、そうなんだ。じゃ、仕方ないね』
『うん、ごめんね。バイバイ』
なっちは急いで教室を出て行った。
「矢口、また止まってる」
「あぁ、へい」
また圭織に言われちゃった。すぐにシャーペンを走らせる。
中々手強い数学の問題。悪戦苦闘しながら解いていく。
「矢口・・・大学決めた?」
「へ?あぁ、地元の大学行くよ。圭織もそうでしょ?」
「・・・まぁね」
オイラはふと圭織の顔を見た。とても曖昧な微笑みをしてた。


89 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月08日(日)21時50分55秒
「圭織?」
「ん?あ・・・あのさ!この問題なんだけど」
すぐに明るく振舞う圭織。変だなと思ったけどオイラは深く考えず
圭織が言ってる問題の方に視線を向けた。


「先輩、最近部活来ないっすね」
たまたま帰る時に下駄箱で偶然よっすぃーに会った。
「期末近いしね、受験生だし」
『圭織に捕まって』なんて先輩としてちょっと言えない。よっすぃーは
誰かを待っているようだった。
「誰か待ってんの?」
「ええ、梨華ちゃん」
「ほーお、いいですねー。青春ですねー」
「な!何言ってんすか!まだ・・・そんなんじゃ・・・」
よっすぃーは照れたように言った。
「よっすぃー、大丈夫。押して押して押しまくれ!」
「押して・・・?」
「そう!押せ!とにかく押せ!」
オイラはえっへんと威張って『押せ!』を連呼した。その内、よっすぃーも
その気になってきたのか。
「わかりました!押せばいいんですね!」
「そーだ!」
何でオイラがこんなに強気かというと、よっすぃーと梨華ちゃんは
どー見ても両思いなのだ。2人共、鈍感だから。気付かない。
だからこうアドバイスするのだ。
そしてよっすぃーとわかれ、家へ帰った。




90 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月08日(日)21時59分49秒

 <吉澤 視点>

押すかぁ・・・・・。
矢口先輩があんなに言うんだから、押した方がいいんだよな。
「ごめん!待たせちゃって」
梨華ちゃんが来た。今日は・・・梨華ちゃんが生徒会を辞める日。
「どうだった?」
「んー、先生はもったいないって言い続けてて。時間かかちゃった」
「本当にいいの?」
「いいの、やりたい事あるし〜」
「え?何々?」
「その内、わかるわよ」
梨華ちゃんはそう言って自分の下駄箱のとこに行った。うちも下駄箱で
靴に履き替える。

学際が終わり、うちは実行委員じゃ無くなった。
でも、梨華ちゃんとは毎日会ってる。関係が無くなったわけじゃない。
まぁ・・・友達?関係。先輩と後輩関係では無いことは確かだ。
何時になったら友達以上になれるかな?
『押せ!』
矢口先輩の声が蘇える。
「・・・梨華ちゃん。あのさ・・・」
「何?ひとみちゃん」
「今度の日曜、どっか行かない?」
思い切ってうちは言ってみた。
91 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月09日(月)22時48分31秒
「え・・?」
「い、いや!用事とか、もうすぐテストだからってんならいいんだ!」
うちは早口でそう言い、梨華ちゃんに背を向けた。
「あはは、もうすぐテストなのにごめんね・・・」
「ひとみちゃん、こっち向いて?」
・・・・え?
振り返ると、梨華ちゃんが笑顔でうちをうちを見ていた。
「いいよ、何処行く?」
この時のうちの気持ちといったら言葉にあらわせないほど嬉しくて。
そして、話し合った結果。映画を見に行く事にした。

そして───日曜日。
うちは何だか眠れなく、朝を迎えた。約束の時間はAM9:00。
少し早めに家を出て、待ち合わせ場所に行く。今日は良い天気、それほど
暑くもない。
「んー・・・まだ来てないかな」
待ち合わせの場所は喫茶店。うちは窓側の席に座った。
どうやら梨華ちゃんはまだ来てなかった。まぁうちが早く来過ぎたみたいだ。
時間を見ると8:45。
コーヒーを注文して、窓の外を見ていた。休日なので人が多い。
5分前の時、喫茶店に人が入って来た。
「ひとみちゃん!・・・ごめんね、待った?」
「ううん、大丈夫」
梨華ちゃんがうちの目の前の席に座る。どうやら走って来たみたいで
息を切らしている。


92 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月09日(月)22時58分24秒
梨華ちゃんはアイスティーを注文した。映画の時間にはまだ
十分時間がある。それまで2人でいろいろしゃべっていた。
「お父さんとは・・・どう?」
「んー、普通、かな。一応生徒会辞めた日に言ったよ。
 『生徒会を辞めました』って。そしたら『わかった』の一言だけ。
 びっくりしたよ。それからは何も変わらない、いつもと同じ」
「そっか。・・・時間が解決するよ。お父さんもきっとわかってくれる」
そして時間が迫ってきたので、会計をすませて喫茶店を出た。
人ごみの中、映画館目指して歩いていく。
・・・告白なんて出来ないなぁー。ふられたら今の関係もぶっ壊れちゃうし。
うちはむぅーっと唸りながら歩いていた。
「ひとみちゃん、どうしたの?」
「え?あ、いや〜、何でもない」
笑ってごまかす。梨華ちゃんは『何〜?』としつこく聞いてくる。
「何でもないって、ほら映画館入るよ」
梨華ちゃんの手を引っ張って映画館の中に入った。




93 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月10日(火)12時21分43秒

 <矢口 視点>

今日は日曜日。一昨日、学校でよっすぃーに会った時かなりよっすぃーは
浮かれていた。どうやら日曜に梨華ちゃんと映画を見に行くらしい。
「いいなぁー、オイラも行きたい〜」
オイラはというと市立図書館に来ていた。家で勉強やっても全然集中
出来ないのでここで勉強。
今の時刻はAM11:50。もうすぐお昼の時間帯だ。
ん〜っと伸びをして、あくびを噛み締めた。
「あれ?矢口?」
後ろから声がした。振り返るとそこには何冊か本を持ってる紗耶香がいた。
「紗耶香!」
「何?勉強?大変だねぇー、学生は」
「紗耶香こそ、本借りたの?」
「おう、ちょっとね」
そしてオイラと紗耶香は一緒にお昼を食べようという事になり、
図書館を出た。
「近くにうまい定食屋があるんだ」
紗耶香はにかっと笑ってそう言った。クールそうに見えて無邪気な紗耶香。
着いた所は小さな定職屋さん。一番奥のテーブルに座った。
「何にしよっかな〜?」
「私は、鯖の味噌煮定食だな。矢口は?」
「カレー食べたいなー。カレーにする!」
それぞれ決めて注文を紗耶香がする。どうやら紗耶香はこの店の常連みたいだ。
この店のおばちゃんと仲がいい。
「今日は仕事ないのかい?」
「うん、今日は休み」
誰とでも紗耶香は仲良くなれるんだろうなーっと思った。




94 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月10日(火)13時57分28秒
しばらくたって注文したカレーと鯖の味噌煮定食がきた。
「仕事って何やってんの?」
「ん?カメラマン」
「カメラマン!?へぇー」
「まだプロじゃないけどね。でもこないだ社長がそろそろプロに
 なってみるかって言ってくれたんだ」
「ほぉー、すごいじゃん」
「その事もあって1ヶ月、後藤を1人にさせちゃったんだけど」
紗耶香は笑ってごはんを食べた。オイラもカレーを食べる。
仕事の事とか、ごっちんの事を紗耶香は話してくれた。オイラも学校の事や
友達の事を話した。
そして携帯の番号やメアドを交換した。

食べ終わって店を出る。紗耶香がおごってくれた。
「割り勘にしようって言ったのに・・」
「まぁ、いいじゃん。おごらせてよ。感謝の気持ち」
「ごっちんの事?」
「あぁ」
太陽の日差しが眩しくて紗耶香の顔がよく見えない。午前中は暑くなかった
けど午後は暑くなりそうだ。
「んじゃ、オイラ図書館戻るよ。ご馳走様」
「おう、じゃな」
オイラ達はわかれた。オイラは図書館へ、紗耶香は家へ。
何気なく紗耶香の方を振り返る。オイラは紗耶香の姿が見えなくなるまで
ずっとそこに立ち止まっていた。
95 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月10日(火)22時14分25秒
何となく紗耶香の携帯番号を見る。かけることはしない、ただ見るだけ。
図書館に再び戻って来たオイラはさっきからそんな調子で勉強は進んでいない。
紗耶香ってすごいなぁ。もう自分のやりたい事見つけて、頑張ってる。
オイラは紗耶香に憧れという感情を抱いていた。
「紗耶香・・・」
クールでしっかりしてて、でも無邪気な笑顔を見せる。
ごっちんが好きになるのもわかるなぁ・・・・・・・。
その時、携帯にメールが届いた。圭織からだ。
<今から会える?>
オイラはすぐ返事した。
<いいよ。今、何処?>
すぐ返事がくる。
<家にいるよ>
<じゃ、今から行くね>
パタンと携帯を閉じて机に広げてるノートと教科書をカバンにしまう。
そして図書館を出て、圭織の家へ向かった。
今の時刻はもうすぐPM3:00。おやつの時間帯なので途中で
ケーキ屋さんに寄ってケーキを買った。

96 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月10日(火)22時26分17秒
圭織の家についた。圭織の家はマンションで1人暮らし。
北海道から引っ越して来た圭織、家の事情で1人で暮らしてるそうだ。
ピンポーンとインターホンを押した。ゆっくり扉が開かれる。
「圭織?・・・・!?」
圭織は泣いていた。真っ赤に目を腫らして。
「矢口ぃ・・・・」
「な、どうしたの!?」
家の中に入りながらオイラは圭織に聞いた。圭織は泣いてるだけで
何も言わない、いや言えない状態なのだ。
「大丈夫だよ、オイラが来たから。ね?」
オイラより背が高い圭織がオイラよりも小さく見えた。

ソファに圭織を座らせてオイラはキッチンでカフェオレをいれていた。
買って来たケーキとカフェオレをトレイにのせて圭織のとこに持っていく。
「落ち着いた?」
こくりと頷く圭織。テーブルにトレイを置く。
「ケーキ、買って来たんだ食べてね」
「ん・・・ありがと。ごめんね」
「いいよ。さ、食べよう?」
オイラはショートケーキを食べ始めた。圭織も食べ始める。
オイラは何も聞かない。圭織が話してくれるまで待つ。
「おいしいね。あ、今日紗耶香に会ったんだ」
「市井さんに?」
「うん、今日は仕事休みみたいで。あ、そうそう。紗耶香って
 カメラマンなんだって」
「カメラマン?」
「そう、びっくりだよね。でも・・・すごいなーって
 だって、まだ19でしょ?そんな年離れてないのに」
97 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月13日(金)22時51分47秒
「うん・・・すごいね」
「だよねー。今度オイラ撮ってもらおっかな〜」
そしてケーキを食べ終え、しばらくゆっくりしていた。圭織は
何も泣いていた理由を話さない。それでもいいと思っていた。
圭織が話すまでオイラは何も聞かない。圭織のココロの準備ができるまで。
無理に聞いたって圭織が混乱するかもしれないし、それが1番いいのだ。
そしてオイラは圭織がきっと泣いていた理由を話してくれるって信じてるから。
今は、そばにいてあげる方が大事なんだ。

「それじゃ、帰るね〜」
PM6:00。そろそろ帰ろうと立ち上がった。
「うん、ごめんね。ありがと」
圭織はすまなさそうな顔をしていた。オイラは笑って。
「いいよ。また明日ね」
と言った。

98 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月15日(日)19時12分30秒

 <市井 視点>

矢口とわかれて家へ向かう。後藤は今頃、寝てるだろう。
私が今日、家を出ようとしたら『あたしも行く』とついてきた。
『お前、テスト近いだろーが。勉強してろ』
何分か説得して後藤を家に置いてきた。勉強つってもあいつは
勉強すると眠たくなるやつだ。きっと寝てる。
「ただいまー」
靴を脱いでリビングへ向かう。
・・・やっぱりな。
テーブルに突っ伏して寝ている後藤の姿が見えた。テーブルの上には
教科書やらノートがあった。
「後藤〜。起きろー」
後藤の肩を揺さぶって言う。
「んぁ・・・?いちーちゃん?」
「あぁ、ただいま」
言い終わる瞬間、抱きつかれた。後ろへ倒れそうになるが、何とか支えた。
「バカ、遅いじゃん。お昼どうしたの?」
「あー、図書館で矢口に会って、あの定食屋に行った」
「矢口先輩・・・・に会ってたの?」
何となく後藤の言葉に怒りが混じってるような気がする。
「いや・・・偶然ね。偶然。矢口、図書館で勉強してたんだよね」
「も、いい」
ぱっと後藤が離れて、そっぽを向いてしまった。






99 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月15日(日)19時20分24秒
「後藤?ごめんって。でもさー、一度お礼がしたかったんだよ」
「じゃぁ、あたし連れてってよ」
「だって・・・勉強あんだろ?」
「いちーちゃんはあたしの事なんかどーでもいーんだね」
「な・・・何言ってんだよ。んな事ねーよ」
今の後藤は何を言っても無駄なような気がした。なわけで。
後藤の顔をこっち向かせて軽くキス。
「なぁ、許してよ。何でも聞くから」
「・・・・もう!しょーがないなぁ。じゃぁ、もっかいしてくれたら許す」
笑顔になった後藤にもう一度キス。そしてぎゅっと後藤を抱きしめる。
「いちーちゃん」
「ん?」
「幸せー」
ふにゃっと笑う後藤。この幸せがいつまで続くのだろう?
今が幸せすぎて怖いくらいだ。まぁ、先の事はあまり考えずに
今の幸せをじっくり感じておこう。


100 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月15日(日)19時33分12秒

 <飯田 視点>

泣いてしまった。矢口に迷惑をかけた。
どうしたらいいかわかんなくなって。気付いたら矢口にメールしてた。
次の日。私は矢口に会ったら一番に謝ろうと思って家を出た。
「あ、飯田先輩〜!」
校門を通ろうとしたら後ろから声が聞こえた。
「よっすぃー、おはよ」
「おはよーございます!」
よっすぃーは矢口の陸上部の後輩で、最近仲良くなった。
他のみんなとも仲良くなっていた。
「・・・目腫れてますけど・・?」
「え?あぁ、夜更かししたからね。あはは」
「駄目ですよー、夜更かしは。じゃ、また!」
よっすぃーは元気よく走り去って行った。何かいい事あったのかな。

教室に入ると、矢口はもういた。なっちとしゃべっている。
「あ、圭織〜!おはよー!」
矢口がこっちへ来た。
「矢口・・・昨日はごめんね」
「いいって!あ、なっちがさーおいし〜ケーキ屋さん知ってるんだって。
 今日の放課後行かない?」
「あ、うん」
「おし!なっちー、圭織も行くって〜」

101 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月17日(火)21時27分54秒
───そして放課後。
帰りの支度をしてると教室に担任が入って来て、私のとこに来た。
「飯田、ちょっと職員室いいかな?」
「あ、はい」
私は担任について行った。職員室に入って隅にあるソファがあるスペースに
通された。
「まぁ、座って」
何の話かはわかっていた。前もこんな時があった。
「・・・決まったか?」
「はい・・・やっぱり地元の大学へ進学します」
私が言うと、担任はうーんっと困ったような顔をしていた。
「まぁ・・・あの大学もレベルは高いが、今の飯田なら十分いける。
 それぐらい成績もいい飯田なら・・・先生はな、大丈夫だと思うんだ」
「・・・でも、私は。もう、決めたんです」
立ち上がって「失礼します」と短く言い、職員室を出た。
矢口達が待ってる教室まで歩く。その距離がとても長く感じた。

私は・・・弱い。強くなんかない。
夢を叶えたい・・・でも、私は不安で。
怖くて、仕方ないんだ。

「ごっめーん。待った?」
教室に戻ると矢口となっちが待っていた。
「どうしたの?担任に呼び出されて・・・」
「ん、ちょっとね」
「ねぇ、早くケーキ屋さん行こうよ〜」
なっちが待ちくだびれたのか、頬を膨らませている。
「おし、行こう〜!!」




102 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月17日(火)21時39分49秒

 <矢口 視点>

なっちが知ってるおいしいケーキ屋さんに向かって元気よく歩いていく。
「そこのケーキ屋さんはね、奥が喫茶店みたくなってて。そこで
 ケーキ食べられるの」
「へぇー、いいねぇー!」
圭織が随分テンションが高い。でもオイラには何か無理にテンション
高くしてるみたいに見える。
・・・・さっき何かあったのかなぁ。
「矢口、何ぼーっとしてんの?」
「え?あぁ、何でもない!それよりなっちまだ〜?」
「もうすぐ・・・あ!あれだよ!」
なっちが指差す方向には小さなケーキ屋さん。比較的、学校から近いようだ。
でも、裏道通ったり曲がり角たくさん曲がったりしたからよくわかんないけど。
「ここね、あんま知られてなくて。学校の人は全然いないんだ」
「じゃ、放課後来ても混んでないんだね」
3人でケーキ屋さんに入って行く。中は落ち着いた雰囲気で音楽が
かかっていた。
「わぁー、いい感じじゃん」
「でしょ?」
「ここで食べよ〜」
ケーキを選んで奥の方で食べる。飲み物は注文した。
「もうすぐ期末だねー」
なっちがため息混じりに言う。
「嫌だなー」
「まま、しょーがないじゃん。受験生なんだしさ」
明るくオイラは言った。
「なっちは何処の大学受けるの?」
圭織がアイスティーを飲みながら聞いた。
「んー・・・地元の大学かなぁ」
「そっか・・・」
圭織の元気が無くなっていく。



103 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月18日(水)22時23分39秒
オイラは話を切り替えようとした。
「そういえばさ、よっすぃーと梨華ちゃんってどうなんだろうね?」
「え?付き合ってんじゃないの?」
なっちは驚いた顔で言う。圭織もそうだった。
「あ、でもさ。今日の朝会った時すごく機嫌良かったよ?」
圭織が不思議そうな顔して言う。
「じゃぁ・・・もしかして?」
「いやぁ、よっすぃーってさ、モテるけど恋愛に対して疎いじゃん?」
「なるほど、そうかも」
気が付くとオイラ達の他にもお客さんが来ていた。
・・・・ありゃ?
見慣れた人物がケーキを選んでいる。
「紗耶香じゃん」
そこには熱心にケーキを選んでいる紗耶香の姿。向こうもこっちに
気付いた。紗耶香はケーキを買い、こっちに来た。
「おっす、学校帰り?」
「うん。ケーキ?」
「後藤が食いたいっつーから。仕事帰りにね」
ケーキの箱をひょいと上げる紗耶香。
・・・ごっちん、かぁ。
「あの、市井さんってカメラマンなんですよね?」
いきなり圭織が聞いてきた。
「紗耶香でいいよ。えーと」
「圭織だよ。っでこっちがなっち」
オイラが手早く答える。紗耶香は「圭織になっちね」と言う。



104 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月18日(水)22時35分32秒
「うん、カメラマン。あ、今度みんな撮ってあげるよ〜」
「大変でした?カメラマンになるのって」
「まぁー苦労はしたよ。でも自分の夢だし。がむしゃらにやったよ。
 圭織は興味あるの?」
「いえ・・・そうではないんですけど」
「そう、じゃ。もう行くね」
紗耶香はそう言って店を出て行った。オイラはガラスの向こうにいる
紗耶香に一生懸命手を振っていた。
「ねー、矢口ってさぁ」
なっちが何気なく呟く。視線をなっちの方に向ける。
「ん?」
「あの人の事、好きなの?」
「うぇ!?何言ってんの!違うよ!それに紗耶香にはごっちんいるし」
オイラは慌てて否定をする。危うくコップを倒しそうになった。
「でも、何かさぁ。紗耶香見たときの矢口、かなり嬉しそうだったよ」
・・・え?そんな嬉しそうだった?
さっと顔に手を当ててみる。
「違うって、マジで。紗耶香はなんつーか・・・尊敬してる人!そんだけ!」
それだけきっぱり言って、レモンティーを飲んだ。
心臓がバクバクしてる。かなり動揺、してるのがよくわかる。
・・・違う。別に紗耶香に恋なんて、してない。
そう何度も自分に言い聞かせていた。

105 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月19日(木)22時40分36秒
この日の夜、オイラは中々寝付けずにいた。
『あの人の事、好きなの?』
・・・・んなわけないじゃん。絶対ない!ありえない!
ぎゅっと目を瞑る。必死に眠ろうとするんだけど全然眠れない。
だって、紗耶香にはごっちんいるし。あの2人はどー見ても両思いじゃん?
恋人同士なわけなんだし、オイラはその事を深ぁーく知ってるわけで。
ぱかっと目を開ける、部屋の電気はつけてないから真っ暗で何も見えない。
「・・・んー・・・」
むくっと起き上がってベットから下りた。窓を少し開けてみる。
星が輝いてた、それをぼーっと眺めていたら携帯がなった。
<起きてる? 紗耶香>
たった短い文章なのにオイラはすごく嬉しくなって。
<起きてる! 矢口>
とすぐ返信した。
次の着信は電話だった。もちろん紗耶香から。
「もしもし?」
『おっす。悪いね。こんな遅くに』
時計に目をやるともうすぐAM3:00。
「いいよ、どうしたの?」
『眠れなくて・・・』
「ごっちんはどうしたの?」
『寝てる。ぐっすりとね』


106 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月19日(木)22時52分36秒
『あいつ一回寝ると中々起きねーんだよ。朝まで』
「ごっちんらしいよ」
『星、綺麗だぁー』
いきなり紗耶香がそう言った。再び夜空を見上げてみる。
「うん、綺麗。星」
『こーゆーの見るとさ、カメラで撮りたくなるんだよね』
「オイラにはよくわかんないけど」
他愛の無い話が続いて電話を切ったのがAM5:00すぎ。
寝不足なわけですごく辛いオイラなわけですが。
「おはよ矢口、朝から機嫌いいねー」
「おはよ〜!そう?やっぱ元気でいるのが1番だよねー!」
今日から期末テストまで一週間前。部活は今日から活動が無い。
まぁそれはオイラにとって悲しい事だけど、勉強やらないといけないので。

お昼休み。借りていた本を返しに図書館へ来た。
「おー、矢口」
「あ、先生」
オイラのクラスの担任がいた。
「あ、そうそう。聞きたい事があったんだ」
「何ですか?」
担任は少し間を置いて話だした。
「あのさ、何で飯田が地元の大学に決めたんだ?」
少し小声の担任。
「はい?どーゆー事ですか?」
「え?聞いてないのか?お前らあんな仲いいのに」
「・・・・」
「飯田、留学志望だったんだよ。それがいきなり・・・」
「えぇ!?そんな事、一回も聞いてませんよ!?」
オイラの声は図書館に響いた。
107 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月19日(木)23時05分54秒
『飯田、留学志望だったんだよ』
知らないよ、圭織。オイラ一回もそんな事聞いてないよ!
オイラは図書館を飛び出して教室へ全力で走った。
「圭織!」
「矢口?どうしたの?」
ずんずんと圭織の方に歩く。圭織と一緒にいるなっちは驚いていた。
「オイラ、聞いてないよ」
「何が?」
「・・・屋上、行こ」

圭織となっちも連れてオイラは屋上へ来た。
「矢口?何がー?」
「留学の話っ」
留学という言葉が出てきたとき圭織の顔が強張った。
「さっき担任から聞いたよ。留学やめて地元の大学行くって。
 オイラ初めて知ったよ」
正直、悲しかった。何でも知り合えてると思った、オイラと圭織は。
圭織は留学という夢を持っている。言って欲しかった、オイラに。
「・・・もう、いいの。この街、好きだし」
「よくなんかないよ・・・大事な事じゃん。留学、夢なんでしょ?」
背を向ける圭織。オイラはかまわずしゃべる。
「夢なら諦めちゃ駄目だよ。圭織」
「いいの!」
「駄目だよ!」

「・・・・私の気持ちなんか知らないくせにそんな事言わないでよ!!」

───今までショックだった事はたくさんあったけど。
こんなにもココロを苦しめるショックは初めてだった。

オイラは圭織の事、何もわかってなかった。
圭織のココロの中、知ってたつもりだった。
・・・・オイラは何もわかってない奴。

それが、すごくショックだった。


108 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月20日(金)22時48分50秒
「・・・圭織」
「もう!ほっといてよ!」
圭織はそう言い、屋上を飛び出していった。オイラは追いかける事も
出来ずにただ立ち尽くしていた。
なっちは困った顔でオイラの事を見ていて、すぐに圭織の後を追いかけて行った。
はぁ〜・・・オイラのバカ。
少し視界が歪む。下を向いてぎゅっと拳を握る。
涙がポツッと屋上のコンクリートを濡らした。

圭織の気持ちがわからない。

「・・・何でだよぉ・・・」
悔しさと悲しさがココロの中に溢れ出て。
何ひとつ圭織の事をわかっていないオイラに初めて気付いて。
しゃがんで膝を抱えた。
どのくらいそうしてただろう?
ポケットに入ってる携帯がなる。おもむろに手を伸ばした。
<圭織と保健室にいるよ。 なっち>
オイラはもう午後の授業を出る気は全くなくて、コンクリートの上に
寝転がった。青空は広く澄んでいて、白い雲が流れている。
そっと目を瞑り、太陽の光を感じる。
「・・・・謝らなきゃね」
まず、圭織に謝る事が今のオイラがやらなきゃいけない事。
後で保健室に行こう。



109 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月20日(金)23時30分24秒

 <飯田 視点>

屋上を飛び出して廊下を走っていたらなっちに引き止められた。
「・・・どうしたの?」
「・・なっちぃ〜・・・」
あんな言葉言いたく無かった。大切な親友にひどい事を言ってしまった。
止めどなく涙が溢れ出る。なっちは優しい眼差しで私を見ていてくれた。

留学。私はもっと絵の勉強がしたくて、色々な国を見てまわって絵を
描きたい。小さい頃からの夢。叶えたい夢。

でも・・・・。

中学生の頃、仲がいい友達がいた。親友と呼べるほどの仲だった。
1年の頃は同じクラスで、2年生のクラスがえでその子とはわかれてしまった。
再び3年生のクラスがえ、その子と同じクラスになった。
嬉しかった。違うクラスだと全然会わないし、それに私は人見知りする
性格だったから友達もろくにいなかった。

・・・・いつまでも友達、この時は信じてた。

いざ、同じクラスになってまた前みたいに楽しくできると思ってた。
だけど違った。
その子には仲がいい友達がいた。前の私みたいな存在の子がその子にはいた。
用事がある時以外は全くしゃべれなかった。

いつまでも友達?そんなの嘘だよ。

かけがえのない親友。そう思ってたのに。
そして私は孤立した。ずっと1人で毎日を過ごした。
もう友達なんていらない、そう思って絵を描きつづけた。私は1人でも大丈夫。
大丈夫なんだよ、私は。





110 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月20日(金)23時45分10秒
今いる高校の合格が決まった。
そして私は北海道からこの街へ引っ越して来た。矢口には家の事情で
って引越しの理由を言ってるけど、私はもうあの場所にいたくなかった。
忘れたい、それだけで私は引っ越して来たのだ。両親は反対してたけど
何とか説得した。妹が泣きながら私に行かないでと言ってた。

新しい環境。私はそれを何よりも望んでいた。

私は1人でも大丈夫。しっかりやっていけるよ。
そう決心して高校の入学式に向かった。クラスわけの表が貼ってあって
人がすごく込んでいた。私は背が高いので特に苦労する事無く自分の
クラスを確認出来た。
『押すなよぉ〜見えないじゃんか〜!』
隣で声が聞こえた。ふと隣・・・下を見ると背の小さい金髪の子が不機嫌そうな顔で
必死にクラスわけ表を見ようとしていた。
じーっと見ていたらばちっとその子と目があった。その子は私を見た途端
目を輝かせて。
『あのさ、オイラの名前何処にあるか見てくんない?オイラは矢口真里!』
『あ・・・はい』
私は視線を再びクラスわけ表に向けた。
矢口・・・矢口・・・あった!
『1組です』
『さんきゅ〜。あなたは何組?』
『・・・同じ1組』
『お!同じじゃん。じゃぁ一緒に教室行こうよ〜!』
私はこの街へ来て、この時初めて笑った。

111 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月21日(土)18時14分57秒
矢口は誰よりも明るくて元気でよくしゃべる。クラスの中では1番目立つ人だ。
誰とも距離を作らない矢口。
『名前教えて?オイラの事は矢口って呼んでよ!』
『・・飯田圭織』
『圭織?おっけぇ〜。中学何処?』
『北海道から引っ越して来たから』
『北海道!?すごいねぇー、高校生で。でも圭織って大人っぽいもんね。
 オイラなんてさぁー背小さいからたまに小学生?とか言われるよぉ』
矢口は自分の事をオイラと呼んでる。それに私は驚いて最初は違和感が
すごくあった。でもそれは次第に無くなっていった。
それから高校生活がかなり楽しくて、これは全て矢口のおかげだ。

これ以上無い親友。最上級の友達。
私は引っ越して来て間違いじゃなかったと思えた。

・・・それと同時にまた不安が出てきた。
またあの頃と同じになっちゃうんじゃ・・・・そう思うと矢口の前で
中々笑えなくなってきた。

その不安を消してくれたのは、矢口だった。
『圭織!悩んでるならオイラに言ってよね!何でも力になるから!
 オイラ・・・圭織の悲しい顔、見たくないんだ』
矢口はすごく真面目な顔でそう言った。
この時何悩んでるんだろう、バカだなぁ私。
『ありがと、矢口。もう大丈夫!』
『もう〜、心配したんだからね。頼むよ!親友!』
矢口は私を心配してくれた。そして親友って言ってくれた。
何悩んでるのさ、私。

そんな事で悩むより、矢口と笑おうよ。

112 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月21日(土)18時20分07秒
かえがえのない親友。
私はもう失いたくない。
他にもたくさん友達出来た。もう失いたくない大切な人達。

私は新しい環境に入って、新しい友達が出来た。
そう環境が変われば友達も変わる。クラスがえのように。
だから不安なんだ。矢口達と離れて・・・留学して・・・
また会った時、今みたいに笑える?笑いあえるの?

113 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月22日(日)18時29分25秒

 <市井 視点>

後藤を迎えに学校へ来たんだけど、早く来過ぎた。珍しく仕事が早めに終わった。
ふら〜っと学校の中に入ってみる。全然、変わってない。
「授業サボリと言えば、この場所だったな〜」
屋上に来てみた。ん〜っと背伸びをしてみる。
・・・ん?先客?
大の字になって寝転んでる人・・・矢口じゃん。
「矢口?何してんの?今は授業中じゃ・・」
声をかけると慌てて矢口は起き上がった。
「さ、紗耶香!?何で・・・」
「後藤迎えにね、早く来過ぎた」
「ごっちんか・・・」
「おう、それよかサボリ?いいのかー?受験生がんなことして」
「いーんだよ。そーゆー気分もあんの!」
矢口の隣に腰をおろした。懐かしい景色が見える。
「・・・紗耶香」
「ん?」
「オイラさぁ・・・圭織、傷つけた」
「そっか」
「圭織の気持ち、オイラわかってなかった。圭織の事、何ひとつわかってなかった」
体育座りをして俯く矢口。少し肩が震えてるのがわかる。
「駄目だよね・・・オイラ」
「・・・矢口」
そっと矢口の肩を抱き寄せる。矢口は驚いた顔して私の方を見ていた。



114 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月22日(日)18時39分50秒
「矢口、大事なのは圭織の気持ちをわかろうとする矢口の気持ちだよ。
 そりゃ人間エスパーじゃないんだからさ、人の気持ちなんてそう簡単に
 わかるもんじゃない。人の気持ちは複雑だからね。
 これから、矢口が圭織の気持ちをわかればいい。それが大事なんだよ」
「紗耶香・・・」
「泣きたきゃ今泣け。次圭織に会った時、笑えるようにな」
矢口の目をしっかりと見ながら私は言った。矢口はスイッチが入ったように
泣き始めた。私はちゃんと矢口を支えた。
矢口の泣き声は屋上に響き渡った。

しばらくして矢口はだいぶ落ち着きを取り戻した。
「・・・ありがと、紗耶香」
「いいって、大丈夫か?」
「うん」
笑顔の矢口。やっぱそっちの方が似合ってるよ、うん。
さて、もうすぐ6時間目の授業も終わりそうだな。
「圭織にちゃんと会うんだぞ?」
「うん、会うよ」
「じゃ、私は後藤と帰るから」
すくっと立ち上がるとぎゅっと手を握られた。
「矢口・・?どした?」
「え?あ、ごめん・・・」
矢口がすっと手を離して俯く。私はくすっと笑って矢口の頭を撫でた。
「矢口、可愛いなぁ」
「こ、子供扱いすんな〜!!」
今度は笑い声が屋上に響いた。
115 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月22日(日)18時49分41秒
すでに予鈴はなっていたようで、矢口と一緒に屋上を出た。
どうやら圭織達は保健室にいるらしい、そこまでついていく事にした。
ガラっと保健室の扉を開く。矢口が中々前へ進まない。
「大丈夫だって、友達なんだろ?」
ポンっと矢口の背中を押してあげる。すると矢口は「ありがと」と言って
中に入って行った。
私はそれを見届けて、来賓用のスリッパから靴に履き替えて校門へ急いだ。

・・・あちゃー、やっぱ怒ってるよなぁ・・・。
校門にはぷくーっと頬を膨らませて待ってる後藤の姿。
「後藤!ごめん」
「いちーちゃん、何処行ってたの?何で学校から出てくんの?」
「いやぁ・・・懐かしさのあまり屋上行ってました」
「反省してる?」
「反省してます」
「じゃ、しょーがない!許す!・・・のかわりにここでキスして」
「え?ここで・・?」
「じゃなきゃ許さない」
「わかったよ・・・」
キョロキョロとあたりを見回して後藤に軽くキスをした。
「ほら、帰るぞ」
ずんずんと先を歩く。でも後藤が来ない。
「後藤・・・?」
「何で・・?何で、いちーちゃんの匂いじゃない」
矢口を抱き寄せた時、どうやら矢口の匂いが私についたようだ。
やっべぇー・・・。
当然の如く、後藤はまた怒ってしまい、何だか許してくれなさそうな雰囲気。


116 名前:和尚 投稿日:2003年06月23日(月)00時32分53秒
何事にも一生懸命の矢口さんがイイなぁ〜。
いちーさんも優しく諭してあげるのもイイなぁ〜。
でもその代償が・・・(苦笑)
ドキドキ・・・修羅場っすか?
117 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月23日(月)22時29分46秒

 <矢口 視点>

そろ〜っと保健室の中に入る。保健室の先生はいなかった。
「圭織〜・・?なっちぃ〜・・・?」
「矢口!」
ソファになっちが座っていた。その隣に圭織がいる。
オイラはおそるおそる近づいてがばっと頭を下げた。
「圭織ごめん!オイラさぁ・・・何ていうか圭織の事わかってなかった
 んだなって思って。・・・だからね?悩みあるんだったら聞くし、
 オイラでよければ力になるし・・・」
「矢口、ごめん」
顔を上げると目の前に圭織がいた。真っ赤に目を腫らしてさらに泣いていた。
そして圭織は今まで不安だった事を全て話してくれた。

「・・・そう、だったの」
「私、怖くて・・・・矢口達と離れるのが怖くて」
初めて知った圭織の気持ち。ここでオイラがしっかり受け止めなきゃ。
「圭織!」
オイラは目の前にいる圭織をしっかり見て、右手をびしっとあげた。

「宣誓!わたくし、矢口真里は親友の飯田圭織と一生友達をやって
 いく事をここに誓います!!」

するとなっちもオイラと同じポーズをとった。

「右に同じく!わたくし、安倍なつみも一生友達やっていく事を
 ここに誓います!」
満足そうななっちの笑顔。オイラもつられてへへっと笑ってしまう。
「ありがとう・・・矢口、なっち」
「泣くなよぉ〜!大丈夫だよ!オイラ達は一生友達!」
「そうだよ!」
がしっと圭織に抱きついた。
118 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月23日(月)22時38分13秒

 <飯田 視点>

矢口となっちが誓ってくれた言葉、一生忘れないよ。
嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。
「圭織の夢叶ったら、またみんなで会って、今みたいに笑ってさ。
 旅行とか行って〜・・・・ん?旅行・・・?」
矢口が何か考え始めている。
「あ〜!!!」
「な、何さ!?」
「なっち!圭織!大事な事忘れてた!」
「・・・はい?」
「温泉!カラオケバトル!で貰った温泉の宿泊券!」
「「あ〜!!!」」

不安なんていらないね。
私はいつまでも友達って言葉信じる。大丈夫、留学して
何年経って矢口達と再会したらまた今みたいに笑える自分が想像出来るから。

「夏休みにいけばいいよ」
「あ!そうだねー、圭織頭いい〜」
「団体用だから3人だけじゃもったいないよ?」
「よっすぃー達も呼んで」
私達のはしゃぎ声はいつまで経っても保健室に響いていた。
・・・その後、保健室の先生にひどく叱られた。
「保健室は遊び場じゃないんだよ!?」
「「「ごめんなさ〜い・・・」」」

119 名前:5.叶えたい夢。 投稿日:2003年06月23日(月)22時46分40秒

 <吉澤 視点>

梨華ちゃんと期末テストの勉強を私の家でやる事になった。
2人共掃除当番じゃないため早めに帰れる。
「はぁー、テスト嫌だなぁー」
「これ終われば夏休みだよ。頑張ろうよ」
梨華ちゃんに励まされると頑張れる気になる。おし!頑張ろう!
「後藤!待てよ〜」
・・・あれ?この声は。
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「いちーちゃんなんか知らない!」
「だから〜・・・これは」
市井さんがごっちんを追いかけてる図。どうやら喧嘩みたいだ。
「どうしたんだろうね?」
梨華ちゃんが首を傾げて言う。確かにあんな仲がいい2人、喧嘩見るのは
初めてだ。でも巻き込まれるのも嫌なので遠くから見守る事にした。
「じゃぁ何で・・・その匂い、矢口先輩だよね?」
「うっ・・・」
「何で?何で?」
何となく喧嘩の事情がわかった気がする。
「行こうか、梨華ちゃん」
「そうだね」
私らはごっちんと市井さんの横を通って帰った。


120 名前:作者。 投稿日:2003年06月23日(月)22時52分11秒
>116 和尚様。
     矢口さんは何事に対しても一生懸命な性格です〜。
     市井さんも優しいのがちょっと痛い時も・・・・。
     修羅場っす。書けるかどうか不安ですが・・・。
     読んで頂きありがとうございます!感想スレこれからも
     お願いします〜。

     
121 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月06日(日)00時30分45秒

『6.温泉旅行』

 <矢口 視点>

「さて、これでよし・・・」
メールの送信が終わりにんまりと笑みがこぼれる。
すっかり忘れてた温泉の宿泊券。もうすぐ夏休み、このチャンスを逃しては
ならないのだ。しかも温泉といっても近くに海があるらしいし、これは
いい思い出が作れそうだ。
もう明日から期末テスト。でも頭はもう夏休みの事でいっぱい。まぁ
一応受験生なんだけどね。
「勉強開始ぃ〜」
ベットの上から机に戻って勉強モード。だけどさっき何通も送ったメールの
返事が次々と返って、携帯がなりやまない。
「どれどれ・・・」

<OK〜。テスト頑張ろうねー!なっち>
<了解、ちゃんと勉強しろよ! 圭織>
<わかった。後藤に伝えておく。 市井>
<ありがとうございます!梨華ちゃんに言っておきます。吉澤>

「ふむふむ、みんなオッケーだね」
オイラが送ったメールの内容。

<期末テスト4日目の放課後、緊急会議を開く為オイラの家に集合!矢口>

期末テストは4日目で終了。なのでその日の放課後を使い
温泉旅行緊急会議を開く。欠席なんて事はもちろん許さないわけだが。
「おっしゃー、温泉旅行〜♪」
ウキウキな気分で問題を解く。でも頭は温泉旅行。
当然、勉強が進むわけもなく翌日の期末テストは散々な目に遇うオイラ・・・。

  
122 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月06日(日)00時47分34秒
「あーぁ・・・・」
1日目の期末テストが終わりとぼとぼと帰り道を歩く。
「何落ち込んでるの。明日から挽回だよ!」
「そうだよ、矢口。なっちの言う通り」
なっちと圭織が励ましてくれるのは嬉しいんだけど・・・やっぱ落ち込む。
「・・・っていうかなっち、暑くない?」
オイラはなっちがこんなに暑い日にブレザー着てるのが不思議だった。
まぁ、日焼けをしたくないとかそうゆう理由だと思うけど。
「い、いいじゃん。日に焼けると赤くなっちゃうし・・・」
オイラと圭織はブレザー脱いで半袖のシャツにしている。
日焼けは嫌だけど暑いのも嫌だ。
「にしても、ホント緊急だよね」
圭織が思い出したように言う。
「矢口は思いたったら即行動だよね」
「なんだよぉー、だってみんな予定とか立てちゃってさぁ、
 行けなくなったら嫌じゃん。特に紗耶香。社会人だし」
はっと圭織となっちを見る。2人共、にやにやしている。
「な、何・・・?オイラ変な事言った?」
「紗耶香ねー、やっぱ紗耶香なわけですね、安倍さん?」
「そうですねー、やっぱそこなんですよ。飯田さん」
何やら芝居じみた言い方。
「な、別に・・・オイラは!紗耶香の仕事が入って、行けなくなったり
 したら・・・1人でも欠けるのは嫌なんだよ!」
この暑さの中、叫ぶと余計疲れる。だけど2人はオイラを無視して。
「さぁ、安倍さん。行きましょうか。矢口さんの恋の行方について
 考えましょう」
「そうですね、飯田さん。まぁあんまり期待できないような矢口さんの恋ですが」
「ちょ・・・なっち?何気にそれひどくない?」



123 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月07日(月)17時32分51秒

 <吉澤 視点>

「んー・・・疲れたぁ」
1日目のテストが終わり、梨華ちゃん家で勉強会。初めて入る梨華ちゃん家。
やっぱり中は驚くほど広かった。大きな庭もある。
「ひとみちゃん、ジュース持ってきたよ」
グラスをのせたトレイを梨華ちゃんは持ってきた。
「やった!ありがとう」
シャーペンを置いて休憩に入る。ジュースを受け取って飲む。
「なんだろうね?緊急会議って・・・」
「あぁ、矢口さんが言ってたやつ?」
グラスから口を離す。
「そーいえば、夏休みの計画立てた?」
「ううん、まだ何も」
梨華ちゃんは首を横に振った。
「んじゃぁ、たくさん計画立てようよ」
「うん!」

何か、幸せだなぁって思う。特別な事は無いけど、ただ一緒にいれれば
それだけで満足。
・・・・彼女はどう思ってんだろうか?
友達以上でいられるのかな?
もし、自分が告白したら今の関係ぶっ壊れちゃうかもしんない。

今の関係が1番ベスト・・・。
友達以上恋人未満。
うちはただそれを理由にして、自分に勇気が無い事を言い分けしていた。

「夕方になったら外出ない?」
「え?」
「気分転換。あ、あと今日は父、出張で帰って来ないから」
「そうなんだ・・・。そうだね、散歩しに行こう」
微笑む梨華ちゃん。ずっとそばにいたい。
誰にも渡したくない、独り占めしたい・・・。すごくココロが苦しい。





124 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月07日(月)17時46分54秒

 <市井 視点>

最近、後藤がすごく不機嫌だ。話しかけても無視される。
矢口の匂いが私についていた事が喧嘩の原因。でもちゃんと理由は話した。
それでも、許してくれる気配が全く無い。
「後藤・・・いい加減許してよ」
「・・・・」
変に勉強に熱中しちゃって、雨ふるぞ、雨。
私は諦めて出かける事にした。せっかく後藤の為に仕事休み取ったのに。
カメラを持って外に出た。太陽が眩しくて暑い。
「あちぃーなー・・・」
ぶらぶらと歩く。近くに川が流れてるのでそっちの方に向かった。
矢口から後藤に話してもらおうかなぁ・・・。
それが1番早く仲直り出来るような気がした。でも、自分達の喧嘩事に
他の人を巻き込むのはねぇ・・・どうなんでしょう?
「ん〜♪」
まぁ何とかなるかって考えて川を眺める。
「あ!紗耶香」
振り返るとそこには自転車に乗ってる矢口。
「おう、どっか行くの?」
「帰り道、本屋行ってきたんだ」
矢口は自転車から下りてこっちの方に来た。
「・・・どうしたの?元気ないね」
「んー・・・別に」
ふいっと視線を川の方に戻す。
「嘘でしょ。何かあった?オイラ、力になるよ」
んーっと唸りながらカメラを肩にかけていたカバンから出した。
「喧嘩した、後藤と」
125 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月07日(月)18時02分41秒
「喧嘩?何が原因?」
川の方にレンズを向けて1枚パシャッと撮る。
「・・・匂い」
「匂い?何それ」
そしてレンズを矢口の方に向けた。
「矢口の」
パシャッともう1枚。
「ちょっとぉ・・・・ってオイラ!?」
私は矢口にわけを説明した。矢口は途中から複雑そうな顔をした。
「そうだったのか・・・オイラ、後藤に話すよ。ごめんね」
「いや、いいよ。後藤が一方的に怒ってるだけだし、許してくれるまで
 待ってみるよ」
「でも・・・オイラが原因みたいなもんだし・・」
「はい、矢口さん笑顔して下さいー。おもいっきし笑ってー」
レンズ越し写る矢口は少し微笑んだ。
「おもいっきりって言っただろー?笑え」
「何で命令形なんだよー」
そして矢口をモデルとして写真を撮り続けた。

「ごっちん、ヤキモチ焼きだね」
「まぁね。そーとー」
「紗耶香はどうなのよ?」
「んー、わからん。一度も妬いた事ないと思う」
「・・・ごっちんが紗耶香に一途だって事だね。大事にしなよ」
そう言われると照れるもんで、返事するのに困る。
「そうだな・・・。さて帰るか、そろそろ機嫌も良くなったかね」
カメラをカバンにしまい立ち上がった。
矢口は「もう少しここにいる」と言って私は先に帰る事にした。
「あんま、遅く帰るなよ。ここらへんは夕方暗いから」
「うん。紗耶香・・・ほんとごめんね」
矢口は消え入りそうな声で言う。私はふっと笑って。
「写真、出来たら見せるから」
と言って帰った。






126 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月07日(月)18時14分08秒

 <矢口 視点>

・・・・叶わぬ恋ってやつですか。
紗耶香がいなくなった後、オイラは静かに泣いた。
自覚してしまった。オイラは紗耶香が好きなんだ。
「何でオイラが原因で喧嘩なのかねー」
ぐずっと泣きながら言った。もうすぐ日が暮れる。
帰ったら勉強しなくちゃ・・・もうすぐ部活も引退・・・・
夏休みの温泉旅行・・・受験・・・。
やらなきゃいけない事はたくさんある。

オイラの恋は今、終わった。

少し泣いたらまた頑張れるから。

この想いはそっとココロにしまっておこう。

「わぁーーーん!!!」
誰もいないから泣き叫んだ。涙は溢れ出て止まらない。
写真撮ってた時気付くなんて、遅すぎたね。
ごっちんよりも先に出逢っていたらオイラを好きになってくれたかな?
どうしようも無い事を考えてしまう。

<出逢うのが遅すぎたねと泣き出した夜もある>

ふとこんな歌詞を思い出した。
「・・・遅すぎだよ・・・はは・・・」
空を見上げながら泣いて、そして笑った。


127 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月07日(月)18時26分10秒
───テスト終了。
やっと期末のテストも終わり今日はいよいよ緊急会議の日。
みんなに矢口家を教えたから現地集合。

まぁ・・・失恋をひきずるのもしめっぽくて嫌なもんで。
オイラは明日の希望に向かって走る方が似合っているわけで。
「さて!みなさん。何故ここに集まったかお分かりですねー!!」
いつもより何倍も高いテンション。
「何ですかね?」
よっすぃーが首をかしげる。
オイラの部屋に7人も人がいると結構広めの部屋も狭く感じる。
「これです!」
オイラは机の上に置いておいた温泉の宿泊券をみんなに見せた。
ちなみにごっちんと紗耶香も仲直りしたらしい。
「まぁ、夏休みに行ってみよー!という事で」
「矢口ーいつ行くの?」
手を挙げた紗耶香が言う。
「えー、7月の後半にいければいいなぁーと思っております」
「市井ちゃん、仕事は?」
「んー多分大丈夫かな・・・」

多分・・・・?オイラの耳がぴくっと動く。

パァンと机を叩いて。
「多分、じゃ駄目ッ!確実に休み取って下さい。ちなみに
 日にちは30、31です」
「は・・・はい・・・だ、大丈夫ッス」
「他のみなさんはいいかがですかぁ〜?」
みんな「大丈夫でーす」という声があがった。

128 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月08日(火)21時24分11秒
「んじゃ、決まり。詳しい時間とかはまた後日報告するので
 絶対にドタキャンとかがないように!」
こうして緊急会議は終わり、みんな帰って行った。だけどなっちは
何か言いたそうな顔をして部屋の扉のとこで突っ立っていた。
「なっち・・・?」
「あのさ、今日の矢口、無理してない?」
「え?・・・別にしてないよ?」
なっちは数歩こっちに歩いてきた。
「何かあった?」
その言葉を聞いた途端、涙が溢れ出た。
あれ・・・?何で涙が・・・。
「無理する事ないよ?全部聞いたげるから」
「なっちぃ・・・」

オイラは全てをなっちに言った。なっちはオイラの話にうんうんと
頷いて最後まで聞いてくれた。
「そっか・・・」
「はは・・・気付くの遅すぎでさ。片思いの相手には恋人いるしさ・・・」
クッションをギュッと抱きしめる。
「矢口、このままじゃ駄目だよ」
「うん、わかってる」
「ずっと落ち込んだままになっちゃう」
「うん・・・」
「だから、告白しよう」
「うん・・・ってえぇ!!?」
顔を上げるとなっちが真剣な表情でオイラの事を見ていた。

129 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月08日(火)21時37分28秒
「な、何言ってんの!告白なんて・・・」
「告白しないと矢口ずっと後悔するよ?例えふられるって
 わかってても、自分の気持ち相手に伝えればすっきりするよ」
「でも・・・告っても紗耶香、絶対困るだろうし・・・。迷惑なわけだし。
 それにさ、その後の関係はどうなるの?今の関係さえ壊れちゃうじゃん・・」
再び俯く。するとなっちがオイラの手をギュッと掴んで。
「矢口はいつも他人の事を考えすぎ。優しすぎなんだよ?
 たまには自分の事、大切にしなよ・・・。今の関係が壊れちゃう、
 そんなに怯えないで・・・今の矢口が元気になるためには告白して
 スッキリする事なんだよ?」
何も言えなかった、言い返せなかった。だって本当の事言うんだもん。
「うん・・・ありがと、なっち」
オイラは決心した。

告白してスッキリサッパリキッパリふられよう。
そしたらまた元気な矢口真里が戻ってくる。

「じゃ、帰るね」
「うん。なっちありがとね」
そしてなっちは帰って行った。オイラは大きく手をふって見送った。
何か、高校3年生になっていろんな事があるなぁ・・・。
ごっちんやよっすぃーの出逢い。梨華ちゃんの事。
帰って来た紗耶香。圭織の夢。そしてオイラの恋・・・・・。
「おし、頑張ろう!」
おー!っと拳を上げて家の中に入った。

130 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月08日(火)21時52分08秒
───温泉旅行当日の日。
温泉旅行計画。そしてオイラが紗耶香に告白する。
「はい!晴れました!」
空は青く、快晴なり。朝6時に集合して紗耶香がレンタカーで借りてきた
ワゴンに乗って温泉の宿に向かう。
「紗耶香って運転出来るんだねー」
1番後ろに座ってる圭織が言った。運転席には紗耶香、助手席にはごっちん。
真ん中の席にはよっすぃー、梨華ちゃん、オイラ。1番後ろには
圭織となっち。
「晴れたぁー♪晴れたぁー♪」
オイラは窓を開けてずっとそれを繰り返し言っていた。
「矢口ー、ちっこいんだから落ちるなよー」
運転してる紗耶香が言う。
「いくら何でも落ちないよ!」
むかっときて前が運転席なので手を伸ばして紗耶香の頭を軽く叩いた。
「いてっ、今事故ったら矢口のせいだからな」
「そっちが悪いんじゃ!」
車の中は笑い声が絶えなかった。

パーキングエリアで休憩をしながらやっと温泉宿に到着。
「わぁー、和風って感じ」
「ホント、温泉宿だねぇ」
「自分の荷物おろせよー」
「市井ちゃん、後藤の荷物〜」
わいわい賑やかに温泉宿に入る。


  
131 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月08日(火)22時02分59秒
部屋は2つ。部屋割りはなっち・圭織・梨華ちゃん・ごっちん。
そして紗耶香・オイラ・よっすぃー。
「・・・・」
微妙によっすぃーが不満そうな顔をしている。ちなみにこれはクジで決めた。
・・・オイラだって嫌だよぉ・・・。
「何か修学旅行みたいだね〜、市井ちゃん」
「おう、なつかしいよ」
この2人は部屋が別れても不満はないらしい。すごいなと思った。

部屋に入って荷物をおろした。
「いやぁー、いいね。畳」
「そうッスね。畳の香りっていいですよね」
紗耶香とよっすぃーはホント男って感じになっちゃってるね。
荷物のカバンをそこらへんに投げてごろんと畳の上に転がる。
「矢口ー、お茶いれてー」
「・・・自分でいれろよ」
「あ、うちやりますから」
この3人の中で1番下のよっすぃーが起き上がってテーブルの上にある
お茶をいれ始めた。
「よっすぃーごめんね」
「いいっすよ」
しばらくしてごっちんが来た。
「市井ちゃぁーん、ここ卓球あるよ」
「おぉ、さすが温泉宿」
「あとでやろうね」
・・・・人のいないとこでイチャついて欲しいもんだ。
オイラは2人を見てため息をついた。

132 名前:和尚 投稿日:2003年07月08日(火)23時33分09秒
いちーさんに告白する矢口さん。
なにやら波乱の幕開けが・・・
133 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月09日(水)17時17分17秒
現在時刻、AM11:00。
早速海に行ってみよう!という事になった。各自支度をして宿から出た。
「ここからすぐだよ。海は」
オイラが言う。隣には圭織が珍しくはしゃいでいた。
「うわー、海なんて久しぶりだよ〜!楽しみ!」
そしてみんなで海の浜辺へ向かう。やっぱ夏休みという事もあり
浜辺は込んでいた。
「んじゃ、パラソル借りてくる」
紗耶香とよっすぃーがパラソルを借りに向かった。オイラ達は場所決め。
丁度空いていた所にシートを広げてその上に荷物を置く。
「あのさ・・・私、海苦手だから・・・」
なっちがおずおずと言い出した。
「え?入んないの?」
「うん、ごめんね。ここで荷物見てるから。みんなは遊んでいってよ」
・・・こんな暑いのにまた長袖・・・。
なっちは短ぱんに長袖のTシャツを着ていた。オイラや圭織達は短ぱんに
半袖のTシャツ。
「日焼けが嫌なら、オイラいい日焼け止め持ってるよ?」
「いいの、そうじゃなくて・・・ほら!行ってきまよ、ね!」
なっちに押されるままにオイラ達はTシャツ、短ぱんを脱いであらかじめ
着ていた水着になり海へかけだした。
オイラ達は波打ち際でパシャパシャと水をかけあいっこしたりしていた。


134 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月09日(水)17時27分32秒

 <市井 視点>

パラソルを吉澤と担いで持って戻るとなっち以外は全員
海で遊んでいた。
「・・・あいつら、浮輪とか作るの全部私達にまかせやがったな・・・」
「みたいですね」
パラソルをおろしてシートの近くに穴を掘ってパラソルをさした。
穴を砂で埋めてこれで完了。
「なっちは海に入んないの?」
シートに座って一生懸命ビニールのボールを膨らましてるなっち。
「うん。海入るの嫌だから」
「水が怖いんですか?」
浮輪を膨らましてる吉澤が聞いた。
「・・・そういうんじゃないけど、ちょっとね」
「そうですか・・・」
そして膨らんだ浮輪2つを吉澤はみんなのとこに持って行った。
私と吉澤は水着の上に半袖のTシャツを着て海に入る事にしていた。
短ぱんはさすがに脱いだけど。
「いちーちゃん!早くおいでよ〜!!」
「おう!」
後藤が浮輪でぷかぷか海に浮かんでこっちに大きく手をふっている。
「なっち。暑いから、足だけでもいいから海に入った方がいいよ?」
「うん、ありがと」
私は少し気がかりだった、なっちの事が。でもあまりにも後藤が私を
呼ぶので仕方なく海に向かった。
 
135 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月09日(水)17時36分27秒
「なぁ、矢口」
「何?紗耶香」
「なっち・・・何で海入るの嫌なのかね?」
「わかんない・・日焼けが嫌ってわけでもないし・・」
「水が怖いっていうわけじゃないし」
うーむと唸りながら海に浮かんでいる。したらボールが頭にあたった。
「うわっ、誰だよ〜?」
みんな知らん顔して海と戯れている。矢口が必死に笑いを堪えてるのがわかる。
とりあえず・・・。
「おりゃ!」
後藤に目掛けて投げてみた。
「きゃ、何すんの〜。いちーちゃん」
「お前だろ、犯人は」
「違うよー、よっすぃーだよ」
「な、何言ってんの!ごっちん。ごっちんじゃんか、ボール投げたの。
 梨華ちゃんも見たよね?」
「う、うん・・・」
「やっぱりね・・後藤、覚悟しろよ」
ゆっくり後藤に近づく。後藤は浮輪にのって逃げようとする。
「ははん、おっせーんだよ。こーしてやる!」
浮輪を掴まえてひっくり返してみた。パシャーン水しぶきと共に後藤が消える。
「い、いちーちゃん!危ないでしょ!」
「元はといえば、お前が悪い」
136 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月09日(水)17時48分25秒

 <吉澤 視点>

海で遊ぶなんてみんな久しぶりだからはしゃぎまくってる。
うちは梨華ちゃんが使ってる浮輪を押したりしていた。
「ちょっとうち、上がるね」
そう言って海から上がって安倍さんがいるとこへ向かった。
「よっすぃー、上がったの?」
「はい、休憩です」
自分のカバンからタオルを出して顔を拭いた。
「何か、よっすぃー男前だよ」
「へへ、そうっすかね」
安倍さんの隣に腰をおろした。海ではみんながはしゃいで遊んでいる。
「暑くないですか?」
「パラソルがあるから、大丈夫」
そんな事言っても夏の暑さを馬鹿にしてはいけない。ふと安倍さんが
長袖のTシャツをまくってる事に気がついた。
・・・ほら、やっぱ暑いんじゃんねぇ・・・。
何気に安倍さんの腕に目をやる。そしてちょっと目を細めた。
・・・アザ?何か紫っぽいな・・・。
「安倍さん、それ・・・」
うちの視線に気付いた安倍さんが慌てて袖をなおした。
「・・見た?」
ギュッと目を瞑って聞く安倍さん。
「・・・はい。アザ・・ですよね?」
おそるおそる聞いてみる。小さく頷く安倍さん。
「お願い!誰にも言わないで・・・お願い・・・」
安倍さんは泣きそうな声で言うからうちは何も聞けずにいた。
「わかりました・・・」
やっと言えた言葉はそれだけだった。

137 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月09日(水)17時58分35秒

 <矢口 視点>

海で遊んで騒いで笑って。なっちも波打ち際で足をいれて遊んだ。
1回よっすぃーが海から上がって戻って来た時の表情。オイラと目が
あった時何か言いたそうな顔をしていた。そしてとても悲しそうな
顔をしていた。
「ひとみちゃん、どうしたの?」
梨華ちゃんが心配して聞いてるみたいだけどよっすぃーは笑顔で
「なんでもないよ」
と言って終わった。

海で遊んで時刻はもうすぐ午後3時。お昼ごはんも食べないで
遊んでいたからおなかがすごくすいた。
「海の家って何かおいしいよね」
「焼きそばとかカキ氷とかね」
タオルで拭いてみんなで海の家に言った。
「あの・・・矢口さん」
よっすぃーがオイラのそばへやってきた。すごく言いづらそうな感じだった。
「どうしたの?」
「・・・いえ、やっぱ何でもないっす」
力ない笑顔でそう言われて離れていくよっすぃー。
何があったんだろ・・・?
「おい、矢口は何にするんだよ?」
紗耶香が急に声をかけてきたのでびっくりした。
「びっくりしたぁー。オイラは焼きそば〜」
紗耶香がまとめて注文してくれた。



138 名前:作者。 投稿日:2003年07月09日(水)18時03分21秒

>132 和尚様。
     波乱の幕開け・・・ついにです。優しすぎるいちーさんは
     どうするのか・・・作者にもよくわからないのですが(汗)。
     安倍さんの方も進んできました。吉澤さん、困ってますが。
     この旅行ではたまた色々ありそうな作者の予感です。

     
   
139 名前:作者。 投稿日:2003年07月09日(水)18時04分24秒
間違えてageてしまった・・・(焦)。
140 名前:和尚 投稿日:2003年07月10日(木)00時20分30秒
いろいろな問題が浮上してきましたね。
今日の更新を読んで気になったのが安倍さんです。

(0^〜^)<・・・どうしよう
141 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月12日(土)00時00分09秒
お昼を食べてまたしばらく海で遊んで宿に帰った。もう疲れてくたくた
だった。
「うぁ〜、疲れたぁー」
部屋に戻って畳の上に寝転がった。紗耶香も同じ事をしていた。
よっすぃーは自分の荷物の整理をし始めた。畳の上でごろごろしながら
オイラはよっすぃーを見ていた。
「よっすぃー・・・何かあった?」
ぴたっとよっすぃーの手が止まる。でもそれは一瞬だけですぐに手を動かし
カバンの中のタオルを出した。
「別に何もないっすよ?ちょっと隣の部屋行って来ますね」
笑顔で言われたら何も言えなくなった。
・・・・ん?あれ?今・・・紗耶香と2人きり!?
よっすぃーの事よりも紗耶香と2人きりになってる事が気になった。
急に心臓の鼓動が早くなる。
ドクン、ドクン、ドクン。
「矢口ー、何か気になる事でもあんの?」
「え?あ、よっすぃー元気ないなぁって思って、ね」
何か返事がギクシャクしてる感じになってしまった。
うわぁー・・・どうしよ。今、チャンスだよね。言うか?
この温泉旅行で告白を決めたオイラ。今のチャンスを逃してはなるまい。
「紗耶香・・・」
起き上がって正座する。
「ん?何だよ?」
紗耶香も起き上がる。
「あのね・・・実は」
ギュッと目を瞑って告白しようとした───が。
「いちーちゃぁーん!!」
勢いよく扉が開いてごっちんが入って来た。

142 名前:作者。 投稿日:2003年07月12日(土)00時05分44秒
ちょっと時間がなく、ホント短い更新です(泣)。

>140 和尚様。
     安倍さん、気になりますね。徐々にあきらかになっていきます!
     あとは、矢口さんの告白の行方やらよっすぃーと梨華ちゃんの
     事などなど。市井さんの反応やら。2日間の旅行なのに・・・
     たくさん問題が・・・・(汗)。
     
 安倍さんの事が終わったら登場人物が増えるかもです。
 まだ誰にするか決めないんですが、その内出てきます! 
     
143 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月12日(土)23時42分05秒
そんなー!!!!・・・・ってな感じで。
「後藤、何?」
「コンビニ行こうよ。さっき約束したじゃん」
「あぁ、そうだった」
オイラは曖昧な笑顔を浮かべて何処か遠い目をしていた。
「あ、矢口。話、何?」
立ち上がった紗耶香がオイラに聞く。
「いや!何でもないさぁ〜、行ってらっしゃい〜」
「そうか?んじゃ、行ってくる」
ごっちんと紗耶香は仲良く腕を組んで部屋を出て行った。

「・・・・なんやねーん」
1人ぼっちになり、独り言を呟く。ちょっと涙目なオイラ。
いやぁ、タイミングが悪いといいますか。
そしてコンコンとノックが聞こえる。
「矢口〜?やっほぉー」
「なっちぃ〜・・・・」
なっちが来てくれた。オイラはダッシュしてなっちに抱きついた。
「どうしたの?」
オイラは今さっきの事をなっちに話した。
「んー、そっかぁ」
畳の上に正座して座るオイラ。真正面になっちが座っている。
「じゃぁさ、みんな寝静まった頃に言えばいいんじゃない?」
「えぇ〜、紗耶香寝てたらどうすんのさ」
「眠れないよーとか言って起こせばいいじゃん。いつもの元気さで」
144 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月13日(日)00時01分51秒
うーむ、そのぐらいしなきゃ駄目なのかね。まぁ確かにごっちんは
いつも紗耶香のそばにいるし、部屋割りはごっちんと紗耶香別だし。
「うん、わかった。そーしてみる」
「頑張れ!矢口」
なっちは満面の笑みでそう言ってくれたからオイラもかなり元気が出てきた。
でも・・・これが最後のチャンスだよね。きっとこれを逃したらもうオイラ
は絶対言えなくなると思う。

────そして温泉に入るわけなんですが。
やっぱなっちは具合が悪いらしく、部屋にいるという。
んでオイラを先頭に圭織、梨華ちゃん、よっすぃー、ごっちん、紗耶香
で温泉に向かう。
「いやぁ、広いねぇー」
身体を洗って、湯船へ。早い時間帯に狙って来た為人はオイラ達
以外はあんまりいなかった。
「気持ちいねー、広いお風呂は」
「もう矢口先輩に感謝っすよ」
よっすぃーが言う。横でごっちんが騒いでる。
「んぁー!温泉だぁ〜」
「後藤、うるさいぞ。温泉というものはだな、こう静かに疲れを
 癒すもので・・・」
紗耶香が何か語ってる。
そして露天風呂に入ったり、サウナに入ったりして楽しんでいた。






145 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月13日(日)00時12分00秒

 <安倍 視点>

温泉に入りに行くみんなを見送って私は1人部屋にいる。
時刻はPM6:00。みんなには具合が悪いと偽って温泉に
入ることは断った。
・・・何で来ちゃったのかなぁ。
長袖のTシャツの袖をたくし上げる。所々にある紫色っぽいアザ。
「・・・消えないよ、私は・・・一生これ隠して生きていくのかな」
アザの部分に手で触れてみる。別に痛みなんかはない。

───みんなには見せられない。私の傷痕。

矢口と出逢い、全てが変わった。圭織ともよっすぃー、梨華ちゃん、
ごっちん、紗耶香、みんなに出逢えた。
辛かった日々が楽しい毎日に変わった。
でも・・・『辛さ』は完全に消えなかった。ちゃんと残っていた。
ゆっくり立ち上がって窓辺の方に歩いた。
夏の季節だからまだ空は夕焼けだった。
「私、矢口の為に何か出来てるかな・・・?」
今まで、誰かの為になんて言葉使えなかった。いつも自分の為に
何かをしていた。
そっと袖をおろして、いつのまにか流れていた涙を拭った。
そして夕焼けの空をずっと眺めていた。


146 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月13日(日)00時23分48秒

 <吉澤 視点>

・・・・どうしよう。
昼間、安倍さんの腕のアザを見てしまった。安倍さんは誰にも
言わないでってうちに言ってきた。
でも、あれは普通自分でなんかつけるもんじゃないし・・・。
だからといって他の人に言えば、安倍さんとの約束を破る事になる。
「・・・どうすりゃいいんだ・・・」
温泉の湯船につかってうちは小さな声で呟いた。矢口先輩を見てみる。
やっぱ先輩に言うべきか・・・。
「どうしたの?ひとみちゃん」
ぬっと視界が矢口先輩から梨華ちゃんに変わった。
「んー、今日は疲れたなーって」
笑顔でごまかす。ホントはごまかしたくないけど、こればっかりは言えない。
「そうだねー。たくさん遊んだもんね」
「梨華ちゃん、浮輪押してあげてるのにきゃぁきゃぁ騒いで」
「だってー、怖かったんだもん。落ちるかと思ったよ」
いつも梨華ちゃんでいっぱいの頭も安倍さんの事が気になってる。
・・・・うちが安倍さんに聞いてみて、様子を見てみるとか・・・。
もし、最悪の事態を考えると今1番、安倍さんに聞けるのはうちだけだ。
他のみんなは何も知らない。安倍さんが助けを求めているのなら・・・。
うちしかいないだろう。
「梨華ちゃん、困ってる人は助けるべきだよねっ」
「う、うん・・・?」
矢口先輩のお人好を見習ってうちも頑張る事を決意した。


147 名前:作者。 投稿日:2003年07月13日(日)00時28分53秒
今日の更新は以上です!
 
(○^〜^)<おし!頑張るぞ!
よっすぃーの決意。それは何よりも堅い。
次はいよいよ矢口さんの告白です。何かゆったりペースですが・・・(汗
ではでは。
 
148 名前:和尚 投稿日:2003年07月13日(日)16時30分05秒
よっすぃー頑張れ!君の頑張りが安倍さんを救う!!
そして矢口さーん!告白頑張って!!
149 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月13日(日)16時32分14秒

 <市井 視点>

温泉から上がって丁度夕食時。私達の部屋の方に食事は運び込まれた。
「んじゃ、乾杯しますか!」
矢口が立ち上がって右手にはジュースの入ったグラス。みんなも自分の
グラスを持った。
「えー、第一回温泉旅行を祝って〜!乾杯〜!!」
「「「「「「乾杯〜!!」」」」」」
・・・第一回っつーことは二回目もあんのか?

鯛の刺身やザザエのつぼ焼きなど豪華な夕食をみんな騒いで食べる。
隣の後藤はもくもくと食べていた。矢口が踊りながら歌っている。
いつもいる時よりうるさくて、でもそれが私のテンションも上げていく。
「市井ちゃん、嬉しそうだね」
「ん、楽しいからな」
ふにゃっと笑う後藤。手を伸ばして後藤の頭をなでた。
そして1時間経過────
テーブルの上にある皿は綺麗に何も残っていなかった。
「食べたぁ〜もう駄目〜」
「矢口、食べ過ぎ」
「なんだよー圭織だってたくさん食べてたじゃんか」
圭織の背中を叩く矢口。
「ねぇ、みんなで卓球しようよ〜」
後藤が目を輝かせて言ってきた。矢口が「いいねぇーやろうやろう!」と
乗ってきた。という事で卓球台があるとこへ向かった。

150 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月13日(日)16時51分19秒
係りの人からラケットと玉を貸してもらった。ダブルスでやる事に。
私は後藤。吉澤と石川。矢口・圭織・なっちは順番でやる。
「んじゃー、まずは紗耶香達とよっすぃー達で」
矢口が審判を務めて、試合開始。
「ちょっと、待って!ただの試合じゃつまんないよ。何か罰ゲームいれよ」
圭織が言ってきた。まぁ確かにただ試合をやるじゃつまらない。
「そっかぁー、どうする?」
「缶ジュース全員分奢るっつーのは?」
「まぁそれが妥当だね」
・・・・自分も入れると840円も出すのかぁ。結構高くないか?
そして試合は始まった。

10分後。
「市井ちゃんの下手くそ〜・・・」
後藤が恨めしそうに私を見て呟く。向こうの方では吉澤達が喜んでいた。
「いやぁ・・・今日は調子が悪く・・・ははは」
とりあえず後藤から視線を外した。
そして矢口となっち対私達の試合。

・・・・あ、あれ?
「市井ちゃんのばーか・・・」
もう何も言えない。ちくしょー、だって矢口が変な動きするんだ。

そんなこんなで結局私達はぼろ負けで、隣にいる後藤さんが怒ってるわけ
なんですが。
「じゃ!ジュースは紗耶香達の奢り〜!!!」
いえーい!っと矢口が嬉しそうだ。
「部屋戻ってるから〜」
「これ、返しといてくださいね」
吉澤が全部私のラッケトと玉を渡す。ふと横を見ると。
「あれ?後藤?」
「市井ちゃんが悪い。あたし、悪くないもんねーだ」
そう言い残してみんなと部屋に戻っていく後藤。
・・・そりゃぁ、ミスばっかしたのは私だけどさぁー。
とぼとぼと歩いてラケットと玉を返して自販機に向かう。


151 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月13日(日)17時04分05秒

 <矢口 視点>

紗耶香を残してオイラ達は部屋の方に戻って行った。
「・・・矢口、行ってきなよ」
なっちがすすすとオイラの隣にやってきて耳打ちをした。
「え?」
「今、チャンスかもよ。寝静まるまで緊張すんの嫌でしょ?」
・・・うん、こう見えてもオイラ、緊張してます。
ごっちんは圭織と何かしゃべってるし、今なら邪魔されないかな。
オイラはなっちに「ありがと」と言ってもと来た道を引き返した。

走って戻ると自販機の前に紗耶香の姿。
「紗耶香〜」
「ん?矢口?」
両手いっぱいに缶ジュースを持っている紗耶香。
「少し持つよ。大変でしょ?」
紗耶香の手から3本ジュースを持った。
「サンキュー、悪いね。助かったよ」
2人で部屋まで歩く。
・・・言わなきゃ、今、言わなきゃ。
「そーいや、何か言いたい事あるんでしょ?」
ドクンと心臓が跳ねた。紗耶香は優しい笑顔でオイラを見ている。
・・・いきなり言うなよなぁ。
「うん・・・あるよ」
すぅっと深呼吸をして紗耶香の方を見た。足が立ち止まる。
オイラが真剣に紗耶香を見ているから紗耶香も真剣にオイラを見る。
まるで時間が止まってるみたい。このままでいられたらいいのになぁ──
そんな事をふと考えてすぐ頭から消し去る。
紗耶香のココロはごっちんの方に向いてるんだから、何考えてんだよ!
「矢口?」
「あ、あのね・・・」


152 名前:作者。 投稿日:2003年07月13日(日)17時07分22秒

ついに矢口さんの告白です!いやぁー、青春っていいなぁ・・・。    

>148 和尚様。
     矢口さん!今、頑張ってます!さてどうなるんでしょか・・。
     市井さんの反応がどうでるか、もうしばらくです。
          
153 名前:タケ 投稿日:2003年07月13日(日)17時17分27秒
いやぁおもしろいっす
リアルタイムで見ました。
矢口さんの告白が気になる・・・
154 名前:和尚 投稿日:2003年07月14日(月)12時55分00秒
ぬおおおぉぉ!気になるトコで次回更新ですか(苦笑)
ドキドキしながらお待ちしています。
155 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月14日(月)22時26分10秒
「あのね・・・オイラ・・・そのぉ・・・」
中々肝心な言葉が言えなくて顔真っ赤にしていた。それでも紗耶香は
オイラの言葉を待っていてくれた。
「オイラ、紗耶香の事がす、好きなんだぁ・・・・」
心臓がバクバクしてて、壊れるかと思うぐらい緊張している。
おそるおそる紗耶香の顔を見る。

・・・・・。

「さ、紗耶香?」
「・・・・・・」

固まってるんですけど・・・・。

紗耶香は呆然として固まっていた。視線はオイラの方に向いてるんだけど。
「えーと・・・」
とりあえず紗耶香をもとの世界に戻してあげる為、紗耶香の腕を掴んだ。
「紗耶香!」
「え?あ・・・・あぁ」
やっと気がついた紗耶香は何かキョロキョロしていてかなり怪しかった。
オイラはどうしていいかわからずただ俯いて紗耶香の言葉を待っていた。
「えっと・・・その、まぁ、何て言えばいいかわからなくて・・・・
 や、矢口がまさか・・・私を好きだなんて思わなかったから・・・
 突然の事で・・・固まってしまいまして・・・」
・・・何で敬語なんだよ。
ちょっと可笑しくて笑ってしまった。
「な、何が可笑しいんだよ!」
「・・・いやぁ、可愛いなって」
「ひ、人が真剣に答えようとしてんのに・・・」
そうだった、オイラ告白したんだった。重要な事を忘れていた。
「少し・・・時間くれ」
「え・・・?」
真顔で紗耶香はそう言った。予想外の返事だった。
だって、絶対ふられると思ったのに・・・。
「部屋、戻ろう」
紗耶香はそう言って歩き出した。今度はオイラが呆然としていた。

 
156 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月14日(月)22時38分20秒
・・・・・やっぱ、紗耶香は優しいね。
紗耶香の背中を見てオイラは少し涙ぐんだ。でもすぐ拭って紗耶香のもとへ
走り出した。

「ただいま〜!」
なっち達の部屋の方に行った。
「おっそいよー」
圭織が待ちくたびれたって感じで言った。オイラと紗耶香はジュースを
テーブルの上に置いた。ごっちんはまだ機嫌が悪いのか、そっぽを向いている。
紗耶香は自分のジュースを2本持ってごっちんのもとへ行った。
「・・・どうだった?」
なっちが小声で聞いてくる。
「・・・少し時間くれだって」
「え!?マジで・・・?」
「うん、でもねオイラわかってるから」
笑顔でオイラはそう言った。なっちは心配してる顔でオイラを見ていた。

紗耶香が何を考えてるのかわからない。
でも、あの返事は紗耶香の『優しさ』だった。オイラはそう思った。
だって紗耶香は優しい人だから。

「後藤、ほらジュース」
「いらない」
「何意地張ってんだよ。飲めよな、せっかく買ってきたんだから」
「・・・・市井ちゃんのせいで負けたんだからね」
「わーってるよ」
・・・・やっぱり、紗耶香のココロはごっちんの方に向いている。
ごっちんを見てる紗耶香の目は本当に優しい目だ。特別な視線。
オイラはそれをわかっていた上で告白する決意をしたんだ。
全て・・・わかってた事なんだ。


157 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月14日(月)22時50分48秒

 <後藤 視点>

・・・・怒ってる。
でもその理由は試合で負けたからじゃない。まぁ最初はそーだったんだけどね。
あたしが部屋に戻ってからだいぶ経ってるのに市井ちゃんは戻って来ない。
それだけならいいよ・・・市井ちゃんだけなら。
でも矢口先輩が部屋にいない。あたしが気付いた時はもういなかった。
最近、市井ちゃんと矢口先輩が一緒にいる事が多いような気がする。
こないだの喧嘩も矢口先輩が原因だった。
何で矢口先輩の匂いが市井ちゃんについてるのか。
あたしが一方的に怒ってたけど。

正直・・・・怖かったんだ。
矢口先輩を見てる市井ちゃんが。
嫌で嫌でたまらなかった。それを怒って隠してた。
矢口先輩の事は大好きだよ?矢口先輩のおかげであたしは変われた。
でも・・・あたしは市井ちゃんがいないと駄目なんです。
だから、市井ちゃんを取らないで・・・好意の目で市井ちゃんを見ないで。

あたしは部屋の隅に座って携帯をいじりながら市井ちゃんの帰りを待っていた。
別に携帯で何をしてるわけでなく、ただいじっていた。
そしてココロの中で願い続けていた。

早く・・・戻って来てよ・・・市井ちゃん。


158 名前:作者。 投稿日:2003年07月14日(月)23時01分30秒
三角関係なわけですが・・・・自分でもよくわからなくて大変です(笑)
もう温泉旅行も後半戦です!

>153 タケ様。
     おぉーリアルタイムで見てくれたんですか!嬉しいです。
     矢口さんの告白、思わぬ返事が・・・・。
     市井さんの優しさなわけですが(汗)。

>154 和尚様。
     更新です!ついに矢口さんがぁ〜告白しました。
     市井さん、固まって固まって(笑)。

あー、三角関係・・・。難しいっすねぇ・・・。
よっすぃーと梨華ちゃんもそろそろ動き始めるようなので。
あのツートップもそろそろ出ます。では。
     
 
159 名前:和尚 投稿日:2003年07月15日(火)01時20分16秒
おっし、やぐちさん頑張った!!
いちーさんの返事が気になりますが(ドキドキ)

後藤視点・・・短い文章なんですが(気に触ったらスミマセン)
ごとーさんの切ない気持ちが伝わって自分まで切ない気持ちになりました。
ごとーさん、いちーさんにもっと素直になって〜(泣)
160 名前:タケ 投稿日:2003年07月15日(火)14時18分05秒
さやまりキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
市井さん矢口さん後藤さんのこれからの関係が気になる・・・
続き期待してます。
161 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月15日(火)21時21分06秒

 <吉澤 視点>

夜中まで騒いで寝静まったのはAM2:00。梨華ちゃん達の部屋から
うちと矢口先輩、市井さんは出て、自分達の部屋に戻った。
すでに布団は敷かれていた。市井さんが奥、うちが真ん中、矢口先輩が
手前という事になった。
・・・・眠れない。
何だか目がさえてしまい、うちはもぞもぞと起き上がった。他の2人は
もう寝てしまっているようだ。
・・・・お茶でも買ってこようかなぁ。
財布から小銭を取り出して静かに部屋から出た。丁度その時、隣の部屋からも
誰か出てきた。
「「あ・・・・」」
出てきたのは安倍さんだった。
「眠れないの?」
「えぇ・・・まぁ、はい」
「私も、同じだね」
顔を合わせて2人で笑った。
「ちょっと散歩しに行く?」
「いいですね、行きましょうか」
こうして2人で散歩に行くため宿を出て行った。夜は昼間と違い
涼しくて気持ち良かった。
特に会話も無く、ただ歩いている。すると公園を見つけた。
「へぇ、こんなとこに公園がねぇ」
「昼間は気付きませんでしたね」
公園に入ってベンチに座った。夜空を見上げると星が見えた。





162 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月15日(火)21時37分54秒
「わぁ、綺麗・・・・」
安倍さんは嬉しそうに星を見ていた。
「・・・綺麗ですね」
「うん・・・」
うちは昼間の事を思い出した。安倍さんの腕のアザの事だ。
「安倍さん・・・その、腕のアザの事なんですが」
「・・うん」
「もし・・・困った事があれば、力になりますから・・・えっと・・だから」
言葉に詰まっていたら安倍さんがぷっと笑った。
「あはは・・・よっすぃーって矢口みたい」
「矢口先輩ですか・・?」
「うん。でも矢口ならもっとストレートに聞いてくるかな。
 すごい心配そうな顔してさ『このアザどうしたの!?』って・・・」
安倍さんは袖をたくし上げて手でそっとアザに触れた。うちは何も言えず
微笑む安倍さんを見ていた。
「・・・・私ね・・・いじめにあってたんだ」
「え・・・?」
いきなりの事でうちは驚いた。安倍さんは夜空を見上げて続けた。
「理由はわかんない。急に始まったんだ・・・高1の頃にね、もう
 毎日が嫌で仕方なくって、でもずっと耐えてきた・・・どんなに
 辛くても、1人ぼっちになっても、いつか終わる時がくるって
 信じて・・・耐えてきたの」
最後らへんの方は安倍さんの声が震えていた。安倍さんの大きな目から
涙が流れていた。
・・・・綺麗。
こんな時に不謹慎だけれど、うちはこんなに綺麗に泣く人は初めて見た。
ふとそう思ってしまった。
「耐えてきた証に、このアザが残ってるの・・・体育館裏に呼ばれて
 蹴られて、嫌な事言われて。仲いい友達も私から離れていった・・・。
 親にも先生にも言えなくて、言ったらもっとひどくなるのわかってたから」

163 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月15日(火)21時54分34秒
泣きながら微笑む安倍さん。うちはそれがとても痛々しく感じた。
「高3になって矢口と・・・みんなと出逢った。その頃は少なく
 なってきて・・・今はもうないよ」
「安倍さん・・・」
「でもいつもビクビクしてた。怖かったぁ・・・・。また始まるんじゃ
 ないかって。怖いんだ・・・」
聞く所によると一番初めのいじめは雨の日だったらしい。安倍さんの
傘が放課後、見るとボロボロになっていた。
「で、も。中々、矢口達に言えなくて・・・」
泣くのを必死に堪えながらしゃべる安倍さんをうちは抱きしめた。
「安倍さん、もういいです・・・もうわかりましたから・・・」
「よっすぃー・・・」
うちも気付いたら泣いていた。
「安倍さん・・・1つだけ、言いたい・・・安倍さんは1人じゃないんです。
 だから、我慢なんてしないで下さい・・・辛いなら辛いって言って下さい・・」
うちの腕の中で安倍さんは小さく「ありがと」と言った。
 
安倍さんの腕のアザはとても痛くて、悲しい事実だった。
うちは聞く前に「もしかしたら・・・」と考えていた。受けいられるのか
不安だった。でも・・・今、思う。
聞いて良かった。確かに痛くて悲しい事実だったけれど、うちは1つ
安倍さんに言えた言葉があった。
『1人じゃない』
大切な事を、言えたと思う。決してそれは間違いなんかじゃない。


164 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月15日(火)22時14分59秒

 <矢口 視点>

次の日、携帯のアラームで目覚めた。紗耶香も今起きたみたいだ。
ただ今AM8:00。昨日は夜遅くまで起きていたから何か眠い・・。
「よっすぃー、朝だよぉ」
まだ寝ているよっすぃーを起こす。
「う〜・・・・朝っすか?」
「うん・・・って、目赤いよ?どうしたの?」
「マジっすか?うわぁ〜・・・」
よっすぃーは起き上がって洗面所の方へ行った。紗耶香はテレビを
つけて、ニュースを見ていた。

今日はもう帰る日。だけどまだまだ時間はたっぷりある。
朝食を取り、支度をして宿を出発する。
・・・・あれ?なっちも目赤い・・・。
ふとなっちを見ると目が赤く腫れていた。よっすぃーも同じだ。
何なんだ・・・?
車に揺られて海沿いの道を走る。この近くに水族館があるという事で
とりあえずそこに向かっている。今の時間はもうすぐAM10:00。
座ってる席は昨日と同じ順で座っている。梨華ちゃんが不安そうな顔で
よっすぃーを見ている。
そして30分後。水族館についた。夏休みという事もある、混んでいる。
「着いたー、さぁみんな張り切って行きましょう〜!!」
何だか微妙に沈んでるみんなに元気を出して欲しくてオイラは言った。
車から全員おりる。
「矢口は元気だねぇ・・・」
圭織は眠そうな表情をしていた。
「あのね!せっかくの旅行なんだよ!?明るく元気に楽しく!」
バシッと圭織の背中を叩く。「痛い〜」っと圭織は叫んだ。
紗耶香を見てみると別にいつもと変わりない表情だった。隣には眠たそうな
ごっちんがいる。


165 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月15日(火)22時26分22秒

 <市井 視点>

昨日はなかなか寝付けなかった。確か午前3時頃、吉澤が部屋から
出て行く気配がした。私が眠り始めたのはもう午前4時近くだ。そして
その頃、吉澤が戻って来た。
・・・・矢口が、私を・・・。
矢口から告白されて、驚いた。返事はまだしていない。
あんな一生懸命な矢口を見ていたら、すぐにNOとは言えなかった。
ひどい奴だと自分で思う。私は後藤が好きで、きっと矢口の気持ちには
応えられないと思う。なのに、矢口に期待持たせるような感じにしてしまった。
「市井ちゃん、眠い?」
今日は近くの水族館に来ている。
「んー・・・微妙に」
「元気、ないよ」
「そうかぁ?いつもこんな感じだ」
ははっと笑いながら言った。すると後藤がギュッと腕を組んできた。
「後藤・・・?」
「市井ちゃん、後藤のそばにいてよ?」
小さくて今にも消えそうな後藤だった。まるで何かに怯えてるような。
「・・・・後藤」
「お願い、好きって言って?」
「・・・・好きだよ」
後藤の顔は見れずに私は言った。ココロが痛かった。



166 名前:作者。 投稿日:2003年07月15日(火)22時39分32秒

安倍さんの事が明らかに・・・市井さんの想い。うわぁ、大変だぁ。
(○T〜T)<・・・・安倍さん。
よっすぃーと安倍さんが今回は多かった(汗)。矢口さん達が進んでない・・。
時間がなく、短い更新でホントすみません。頑張ります。

>159 和尚様。
     後藤さん、短いっすよねぇ・・・でもこれから増えていくので!
     切ない気持ちをわかってもらえて嬉しいです(^−^
     市井さんの想いはどーなるのか・・・・。

>160 タケ様。
     三角関係、今回ホント短くて申し訳ないです(泣)。
     次回はいろいろこの人達に問題が・・・あったりなかったり・・
     (こんな作者ですみません(−_−;))。


     
     
167 名前:和尚 投稿日:2003年07月16日(水)13時10分12秒
ごとーさんに・゚・(ノД`)・゚・。
いちーさんホントにどーするの?
よっすぃー&安倍さんの気になります。
一瞬たりとも目が離せないです。
168 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月16日(水)21時26分17秒

 <石川 視点>

何かみんなの様子が変。そう思うのは私だけかな?
矢口先輩は妙にテンション高いし、反対に市井さんは元気ないし。
ごっちんは不安そうな顔してるし、飯田さんは交信してるし。
それと・・・安倍さんとひとみちゃん、何で2人共目赤いのかな?
聞いちゃいけないような気がして・・・・聞けなかった。
「でも気になる・・・・乙女心だわ」
水族館の駐車場で誰にともなく呟く。視線はもちろんひとみちゃん。
でも別に暗いっていうわけじゃなくて、いつもと同じ明るさ。
眠れなかったのかな・・?
「梨華ちゃん?何ぶつくさ言ってんの?」
「乙女心なわけよ・・・複雑だわ」
「へ?」
「ま、いいわ。行きましょ、ひとみちゃん♪」
「う、うん・・・」
桃色の〜片思い〜恋して〜る♪
・・・・そう、片思い。両思いじゃなくて片思い。
ひとみちゃんとの距離は近いけど微妙な友達関係。
「・・・このままじゃ、他の誰かに取られてしまうわね・・・」
「え?何?」
「ううん、何でもないよ〜」
こうして私達は水族館へ入って行った。
169 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月16日(水)21時38分10秒

 <後藤 視点>

みんなで水族館の中を見てまわる。大きな水槽の中にいろんな魚が
泳いでいた。水族館なんてホント久しぶりだったからまるでそこにいる
子供と何ら変わりなくはしゃいでいた。
「市井ちゃーん、あの魚、おもしろいよぉ〜」
「あー、後藤に似てる似てる」
「んぁ?魚に似てるって事〜?」
「あの魚、眠そうじゃん」
こうやって2人きり・・・じゃないけど遊びに行くの久しぶりだなぁ。
市井ちゃん仕事あるしね。あたしは夏休みだから暇なんだけど。
「ちょっと、トイレ行ってくる」
「わかった〜」
市井ちゃんは人込みの中消えていった。あたしは市井ちゃんが戻ってくるまで
よっすぃーと梨華ちゃんとしゃべっていた。
「よっすぃー、その目どうしたの?」
あたしが聞くとよっすぃーは言葉に詰まっていた。梨華ちゃんがすごく
興味津々な感じだ。
「いやぁ・・・眠れなくて・・・?」
「あたしに聞いてどーすんの、よっすぃー」
「んー・・・まぁそんな感じ」
「ふーん」
何か突っかかるけど、そうゆう事で納得する事にしといた。


170 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月16日(水)21時49分37秒

 <市井 視点>

トイレに行く為、人込みをかきわけて早足で歩く。
「うわぁ!?」
少し離れた所で聞きなれた声がした。見てみると矢口がしりもちをついている。
「何してんの?」
「あ・・・紗耶香」
やれやれと思いながら手を差し出す。矢口がその手に掴まって立ち上がる。
「トイレ行こうとしたら人にぶつかちゃって」
「ちっこいからな」
「ひど〜、何でそう意地悪するかな」
2人でトイレの場所へ向かう。沈黙が流れた。
そしてトイレが済んだ後、みんなの所へ戻る。私は何となく気まずくて
しゃべれずにいた。
「あのさ、紗耶香」
「・・・何?」
「返事の事なんだけど・・・なるべく早く、して欲しくて」
「あ、あぁ・・・」
「オイラさ・・・待ってるのが1番辛いから・・・」
「わかった・・・」
きっと辛いよね、私以上に。
なのに私に笑顔を見せてくれる矢口は切なくて、一生懸命で。
どうしていいかわかんなくなるよ。


171 名前:6.温泉旅行。 投稿日:2003年07月16日(水)22時04分23秒

 <矢口 視点>

水族館で遊びまくって、PM3:00に出発した。みんな遊び疲れたのか
寝ている。もう帰ろうという事になり、車は帰り道。
オイラは起きていた。今、起きてるのは運転手の紗耶香とオイラの2人。
・・・・いつ返事来るかな・・・。
オイラにとって辛いのは『待つ』事だ。
「矢口」
「な、何?」
「・・・・明日、時間ある?」
「うん、あるよ・・・」
「ちょっと話あるから・・・」
「わかった」
ついに来た。明日かぁ・・・。
数時間後、車は紗耶香がそれぞれみんなの家を回ってくれた。
圭織、よっすぃー、梨華ちゃん、なっち、オイラの順で下りていく。
「じゃ、またね」
車から下りる。ごっちんが手をふっていた。オイラも手をふる。
そして車は走り出した。
明日は、笑顔でいられるかな?ちょっと自信ないな・・・。
見上げた青空に願った。

・・・神様、明日は笑顔でいられるようにして下さい。

泣いてる姿は紗耶香に

見せたくないから。



172 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月16日(水)22時21分55秒

 『7.愛情と友情。』

翌日の午前に紗耶香から連絡があった。学校の校庭で待ってるとのこと。
何で・・・学校なのかね、もうちょっと考えてもらいたい。
オイラはそう思いながら自転車に乗って学校へ向かう。学校に着いて
自転車置き場に自転車をとめて、校庭へ。
「あ・・・いた」
紗耶香は木の下にいた。オイラは小走りでそこへ向かう。
「紗耶香〜!」
「おっす」
相変わらずラフな格好の紗耶香。風が吹いて紗耶香の黒髪が揺れる。
「・・・・考えてた。ずっと、矢口の事」
「うん・・・」
何となく顔を見れずに校舎の方を見ていた。
「・・・ごめん。矢口の気持ちは嬉しいよ?でも」
「いいよ!もう言わなくていいから・・・・」
紗耶香に背を向けた。
「オイラ・・・わかってたんだ。ごっちんと紗耶香の間に
 オイラが入る隙間なんて無いって事」
「矢口・・・」
「でも、少しでもオイラの事考えてくれて嬉しかったよ。ありがと」
くるっと紗耶香の方を向いた。笑顔で。

ねぇ、紗耶香。オイラ、うまく笑えてる?

「・・・これからも、友達でいてくれるよね?」
「・・・あたりまえだろ」
「うん!じゃね!」
オイラは走った。全力で走った。
自転車に飛び乗って学校を出た。当てもなく自転車を走らせる。



  





173 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月16日(水)22時30分51秒
わかってた事だろ・・・・矢口真里!
ダメもとで告白したんだろ!
「そうだよぉ・・・ふられるなんてわかってたんだからぁ!」

『少し時間くれ』。それは紗耶香の優しさなんだよ。
少しでもオイラの事、真剣に考えてくれた・・・それだけで満足だよ。
大丈夫。心配すんな。紗耶香と友達やっていけんだから。

「だったら・・・だったら泣くなぁ!矢口真里!」

止めどなく涙が流れつづける。それでもオイラは自転車を走らせる。
・・・・神様、ありがとう。紗耶香の前では笑顔でいられた。
ずずっと鼻をすすって空を見上げた。
「さてと、家に帰ろうか」
自転車は家路につく。

174 名前:作者。 投稿日:2003年07月16日(水)22時36分44秒

>167 和尚様。
     矢口さんの恋はこんな感じになりました。次の更新では
     市井さんと後藤さんが多くなると思います。
     あぁ・・・市井さん、ごめんなさい。ちょっと自分が
     思ってたのよりちがくなってしまいました(泣)。

市井さんの返事の決断は後藤さんにあったわけなんですが、
時間がなくそこは次回の更新に書きたいと思います!(汗)。
175 名前:タケ 投稿日:2003年07月16日(水)23時30分02秒
更新お疲れ様です。
矢口さん頑張った!・゚・(ノД`)・゚・
市井さんの決断・・・どう思ったんでしょ?
早く続きが見たいですよぉ〜
176 名前:和尚 投稿日:2003年07月17日(木)21時03分55秒
いちーさん決断しました!
やぐちさん、泣いた分だけイイ女になる!だからたくさん泣いとけ!!
そして、新しい恋を見つけるんだ!!

いちーさん、ごとーさんが多くなるんですね・・・
切なくなりそうな予感が・・・・
177 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月17日(木)21時34分44秒

 <後藤 視点>

温泉旅行の帰り道。みんなの家まで送って、最後はあたしと市井ちゃんの
2人だけになった。特に会話もなく車はレンタカー屋さんに向かっていた。
「・・・市井ちゃん」
「ん?どした?」
横顔の市井ちゃんを見る。市井ちゃんは運転してる為、あたしの方は向かない。
・・・市井ちゃんの目には誰が写ってるの?
実は今日の帰り道の途中、矢口先輩と市井ちゃんの会話を聞いた。
あたしは寝たふりをしていた。会話によると明日、会うらしい。
不安がよぎる。もしかしたら、市井ちゃんは矢口先輩を───
「どうしたんだよ?」
「あのね・・・」
聞きたいことは中々言えなくて、言葉に詰まっていた。
時刻はもうすぐPM7:00。空は暗くなっている。
「ちょっと、下りるか」
市井ちゃんはそう言って車をとめた。そこは川沿いの場所だった。
あたし達は車から下りた。市井ちゃんは黙って暗い川を見ていた。
人通りは全くなくて静寂があたし達を包む。
それからどれくらいたっただろう?数分だと思うけどあたしにとっては
すごく長く感じた。
「・・・市井ちゃん」
ギュッと自分の手を握る。そして市井ちゃんの方を向く。
市井ちゃんもあたしを見る。

目が、あう。

「・・・他に行きたい人がいるならそっち行ってもいいんだよぉ・・?」

目に涙をためて、でも流さないようにあたしは市井ちゃんを見た。
すると市井ちゃんは泣きそうな顔になって、あたしをすぐに抱きしめた。

「・・・お前の他に行くとこなんかねぇよ・・・・」

泣きながら市井ちゃんはあたしに言った。






178 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月17日(木)21時43分10秒
ねぇ、その言葉信じていいんだよね?
あたし、市井ちゃんのそばにいていいんだよね?
2人で抱き合って静かに泣いていた。その時、やっと気持ちが初めて
通じ合った気がした。
「市井ちゃん・・・市井ちゃん」
あたしは何度も大好きな人の名前を呼んでいた。
「後藤・・・」
あたしの大好きな声。ちょっと離れてまた目があった。
───そして、どちらからともなく唇を重ねる。

「後藤・・・ごめん」
市井ちゃんはそう言いながらあたしの涙を拭ってくれた。
「・・・愛してる」
「・・・あたしもだよ」
また唇が重なった。まるで何かを確かめるように。
あたし達の愛は終わらない、いつまでも。
そうこの時実感したんだ。


179 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月17日(木)21時59分06秒

 <市井 視点>

『・・・他に行きたい人がいるならそっち行ってもいいんだよぉ・・?』

後藤は目に涙をためて私にそう言った。この時、何かが切れた。
私はすぐに後藤を抱きしめた。

・・・・私は後藤にしか愛情を持っていない。

後藤の言葉が私を決断させてくれた。そこには私の本当の気持ちがあった。
矢口を傷つけたくない為に、返事を先送りしていた自分がバカだった。
私のせいで、後藤そして矢口もきっと傷つけた。自分自身にも──────
私がしっかり返事をしていなかったから、みんな泣いてる。
「どうしようもないバカだよ・・・・私」
レンタカーを返して家に帰った。疲れていた事もあり、後藤は寝ている。
私は後藤の寝顔を見ていた。
「ごめんな・・・。大好きだよ」
明日矢口と会う。今日の帰り道、車の中で約束した。
矢口はずっと待っていてくれてる・・・・辛いのに、待っていてくれてる。
だからそこ、本当の気持ちを言うんだ。偽りの無い言葉を。
部屋から出て、リビングの窓を開けてベランダに出る。涼しい風があたる。
ぼーっと夜景を見ながら、ポケットから携帯を出す。
矢口へメールを送る。

<明日、午前9時。学校で待ってる。市井>

「・・・送信」







180 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月17日(木)22時21分13秒
翌日、隣で寝てる後藤を起こさないように起きた。着替えて、髪を整える。
後藤へメモを残して、家を出た。
「・・・いー天気」
空はよく晴れていて、暑くなりそうだ。太陽が眩しい。
学校へ入る。昔の頃を思い出す。
・・・・遅刻魔だったなぁ、よく担任に怒られたっけ。
校舎、校庭、部室、自転車置き場。何ひとつ変わっちゃいない。
「・・・あの木の下で、よく部活の間寝てたなぁ」
懐かしい木の下。ちょうど日陰が出来ているから、寝る所には絶好の場所。
約束の時間はAM9:00。腕時計を見ると丁度今、その時間だ。
「紗耶香〜!」
矢口がこっちにやって来た。
・・・・うし、言う時が来た。
「おっす」

私は言った。矢口は笑顔で去って行った。やっぱりココロが痛む。
・・・でも、これが正直な気持ちだ。
ゆっくり歩き出す。矢口は最後に友達でいてくれるか聞いてきた。
断る理由なんて何処にもない。
「・・・矢口、ありがとう」
誰にともなく呟いて、私は学校から出て行った。

181 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月17日(木)22時31分58秒

>175 タケ様。
     続きです〜!市井さんと後藤さん、そして矢口さん。
     みんな、傷ついて泣いて、前へ進んで行きます。
     次は安倍さんが主に出てきます。

>176 和尚様。
     矢口さん!頑張りました!笑顔で決めました!
     そして、市井さんと後藤さん方です。どうでしょう?
     後藤さん・・・健気っす(泣)。

更新が短くて申し訳ないです(汗)。見ていてくれて感謝してます!
では、また〜。

     
     
182 名前:和尚 投稿日:2003年07月17日(木)23時05分35秒
泣けた・゚・(ノД`)・゚・。
183 名前:タケ 投稿日:2003年07月17日(木)23時17分03秒
よかった・・・
184 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月18日(金)22時23分06秒

 <吉澤 視点>

最近・・・梨華ちゃんがおかしい。何か独り言をぶつぶつ言っている。
1人の世界に行っちゃってて、隣にいるうちはどーすればいいのか。
昨日は温泉旅行から帰ってからはすぐに寝た。起きたのは翌日。
・・・腹減った・・・。
もぞもぞとベットから起き上がって部屋を出る。まだAM6:00。
家族もまだ寝ている。うちは静かにキッチンに行き、ベーグルとジュースを
持って再び部屋に戻る。
「あれ・・・メールきてる」
もぐもぐとベーグルを食べながら携帯を見ると。

<こんにちは、なっちです。私の悩み聞いてくれてありがとう。
 今日予定ある?>

「安倍さんだ・・・」
うちはすぐに返信した。

<予定ないっすよ。暇ですよ〜。吉澤>

またすぐ返事が来る。場所や時間が指定してあり、うちはすぐに
了解の返事をした。ふと窓の方に目をやる。
カーテンの間から光が差し込んでいる、どうやら晴れているようだ。
笑顔の安倍さんが浮かんできた。
「・・・・ふぁ〜、もう一眠りすっかなー」
ベーグルを食べ終え、ジュースを一気のみした。

 
185 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月18日(金)22時37分37秒
「やべっ!寝過ごしたぁ!」
時計を見るともうPM1:30。約束の時間はPM2:00。
がばっと起き上がって着替えて、寝癖を直して、財布と携帯持って
ドタバタと階段を下りる。
「あら、ひとみ。出かけるの?」
お母さんがリビングに掃除機をかけていた。
「うん!行って来ます!」
急いで靴を履いて家を飛び出した。太陽の光が眩しくて目を細める。
そして安倍さんと待ち合わせの場所に向かって走り出した。

「はぁ・・・はぁ・・・」
駅の近くにある喫茶店に入った。ここが待ち合わせ場所だ。
携帯を見るともうPM2:15。15分も遅刻している。
えーと・・・安倍さんは・・。
喫茶店の中をキョロキョロと見回すと、1番奥の席に安倍さんの姿があった。
「・・安倍さん、すみません。遅れて」
すぐそこに行き、謝った。安倍さんは怒る様子もなく、笑顔だった。
「いいよぉ、15分しか経ってないし」
椅子に座って息を整える。まだ微妙に脈が速い。そしてアイスコーヒーを
注文した。
「ごめんね、こんな暑い中に呼び出して。やっぱ午前中が良かったかな」
「いや、大丈夫っすよ。暑いのは部活で慣れてますから」
注文したアイスコーヒーがきて、ごくごくと飲む。
「・・・・今日はね、お礼がしたくて」
「お礼?」
「うん。私ね、よっすぃーが・・・あの事聞いてくれてすごく助かったんだ。
 何ていうか、突っかかってたモノが取れたような」
安倍さんは恥ずかしそうな感じで言った。
186 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月18日(金)22時51分24秒
「そんな・・・うちは別に特別な事は何も」
「ううん!私にはすごく、すごく助かったの。ホント・・・ありがとう。
 矢口達にも話す決心がついたし」
「そうですか、きっと大丈夫ですよ」
「今日は、よっすぃーに何かプレゼントしたいなって。
 でも何がいいかわかんないから・・・」
「え?そんないいですよ!」
うちは悪くて断る。が安倍さんは引かない、押してくる。
「良くない!ね?いいっしょ?」
「うーん・・・・」
「お願い!」
そう言われると・・・・断れなくなる。
結局、了解してしまった。そして安倍さんと共に喫茶店を出る。
人込みの中、歩いていく。その途中、うちの携帯がなり響いた。
「ちょっと、すみません」
安倍さんに言って、道の隅で携帯を見る。電話じゃなくてメールのようだ。

<暇だよ〜、どっか行かない? 梨華>

・・・・梨華ちゃんからだ。今日は誘われる日なのかね。
短く返事をして、顔を上げる。

「君可愛いじゃん。買い物?」
男が安倍さんにどうやらナンパしてるようだ。
「あの・・・人待ってるんで」
「いいじゃん、待たせてる奴が悪いんだよ。行こうよ」
安倍さんの腕を掴んだ男を目撃したうちはすぐさまそこに向かった。
「あの、手離してもらえませんか?」
鋭く男を睨みつけて、安倍さんをうちの方に寄せた。睨みが効いたのか
男は舌打ちして行ってしまった。
「すみません。大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫」
安倍さんの顔が赤かったのは暑さのせいだろうか。




187 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月18日(金)23時04分14秒
それからしばらく服を見たりして買い物を楽しんでいた。でも全部
安倍さんはうちの服を選んだりしていた。
「あのぉ・・・マジいいっすから」
「いいのー。あ、これなんか似合うんじゃない?」
聞くのもあれなんすけど・・・全部メンズじゃないっすか?
ま、いいかと思いながらうちは安倍さんについていく。

───1時間後。
まだうちへのプレゼントは決まらないようだ。もう気持ちだけで十分なのに。
うちは結構くたくたになっていた。
「・・・安倍さん、休憩しません?」
「まだまだ!」
「・・・そうっすか」
ふらふらと安倍さんの横を歩く。そしてまた店へ入る。
「よっすぃー、これ見て!」
安倍さんはガラスケースの方を指差した。綺麗なブレスレットがあった。
「綺麗っすね・・・」
「ひとみちゃん?」
うちが返事したのと同時に後ろから声が聞こえた。振り返るとそこには
呆然としてる梨華ちゃんが。
「あ、梨華ちゃん」
安倍さんが先に言った。
「・・・安倍さんとお買い物だったんだ」
「まぁ、うん・・・そうだよ」
そーいえば、梨華ちゃんからメールきてたんだよなぁ。
何だろう?何か見られたくなかった気がした。
「ごめんね、メール」
「え?あぁ、ううん。私、友達と来たし」
「そっか」
梨華ちゃんは「じゃ、また」と言って友達の人と店を出て行った。
・・・・何か、すっげぇ、悲しいような。
うちは何とも言えない気持ちになっていた。




188 名前:作者。 投稿日:2003年07月18日(金)23時12分35秒

>182 和尚様。
     泣けましたか!作者も泣いておりますよ〜(T〜T)。
     よっすぃーの方からスタートいたしました。そろそろ
     いしよしも進めないと・・・(汗)。

>183 タケ様。
     そう言って頂けると嬉しいです(^−^
     いちごまからいしよしに移り変わりです!
     
愛情と友情。いちごま+矢口さんからいしよし+安倍さんです。
もうすぐ200が近いですねぇ、これも見てくれてる人のおかげです!
では〜。
189 名前:タケ 投稿日:2003年07月19日(土)07時59分22秒
いしよし+安部さん・・・
一体どうなるのかが気になります!
次の更新も頑張ってください!
190 名前:和尚 投稿日:2003年07月19日(土)11時05分44秒
いしよし+安倍さんの三角関係勃発ですね。
安倍さんの押しにはさすがのよしざーさんもタジタジです(笑)
いしかーさんはよしざーさんと安倍さんをみてどう感じているのか気になります。
なにやら切ない予感が・・・・・。
191 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月19日(土)12時41分03秒

 <石川 視点>

<ごめん。他の人と今買い物してるから>

そう短くメールの返事がきて、ちょっとがっかりした。それなら昨日の
うちに聞いといた方が良かったかもしれない。
家にいても暇なので友達を誘ってこうして買い物にやってきた。
そしてさっき偶然、お店でひとみちゃんに会った・・・安倍さんにも。
まさか『他の人』が安倍さんだなんて思わなかった。
「ねぇ、梨華ちゃん。何怒ってるの?」
「え?怒ってなんかないよ〜」
この子は友達の柴田あゆみこと柴ちゃん。
「嘘だね。笑ってるけどひきつってるよ?」
「え・・・・」
上手く誤魔化そうとしたんだけどな・・・。
私は確かに怒ってる。ひとみちゃんと安倍さんに会った時から。
その理由はよくわかんない、ただあの2人が一緒にいるのがすごく嫌だった。
柴ちゃんは私の腕を引っ張って近くのファーストフードのお店へ入って行く。
な・・・何?
動揺してる私をおかまいなしの柴ちゃん。ジュースを2つ注文し、そして
空いてる席に座った。
「柴ちゃん?」
「ほら、言っちゃなよ。さっき会った人達が関係してるんでしょ?」
悩みを聞いてくれるような優しさではなくただ興味津々で聞きたいようだ。
・・・でも、抱え込んでるのも嫌だし。
ちょっと躊躇って私は柴ちゃんに何で怒ってるのかを言った。
「はは〜ん、嫉妬してるわけね。梨華ちゃんは」
「嫉妬?」
「梨華ちゃんはよっすぃーが好きで、そして今日安倍さんと一緒にお買い物。
 それがたまらなく嫌なわけで、それは安倍さんに対する嫉妬」
柴ちゃんは同じ高校で、かなりの情報通な人。私とクラスは違うけど
気が合う仲だ。


192 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月19日(土)12時54分12秒
・・・嫉妬か。うん、そうだよ。私は安倍さんに嫉妬してる。
「でもさぁ、梨華ちゃん。何でよっすぃーが好きになったの?
 今までそんな事聞いてないよ、私。あと、何で3年生の安倍さんと
 知り合いなわけ?確か安倍さんは梨華ちゃんとは何も関わりの無いはず・・」
「ちょ、ちょっと待って。そんな一気に聞かないでよね」
柴ちゃんは笑いながら「あぁ、ごめんごめん」と謝った。いつの間にか
いつも持ち歩いてる手帳を出していた。その手帳にはいろんな人達の
情報が書かれている。・・・・絶対、敵に回したくないタイプだ。
「っで、聞かせてよ」
私ははぁ〜っとため息をついて柴ちゃんに今までの事を話した。
別に話さなくても良かったけど、言わなきゃ柴ちゃんは地獄の果てでも
ついてきて聞いてくるような気がした。
「ほぉー、私の知らないとこでそんな面白い事が・・・」
納得しながら手帳に書いていく柴ちゃん。
「安倍さんとはよっすぃーの部活の先輩の矢口さんの友達なわけね。
 よっすぃーとはこないだの学際の仕事仲間で、心優しきよっすぃーに
 梨華ちゃんは惹かれていった。そして一昨日と昨日は旅行に行っていた。
 でも告白は出来なくて、旅行から帰って来た・・・なるほど」
「柴ちゃん・・・誰にも言わないでよ?」
「おうともさ!この手帳に書かれている情報は漏らさない!これが
 私のモットーだから」
・・・・いいんだか、悪いんだかよくわからない・・・。
柴ちゃんは手帳をカバンにしまい、急に真面目な感じになった。
「梨華ちゃんはよっすぃーが他の人といるのが嫌なんでしょ?」
「うん・・・まぁそう」
「じゃ、告白だ!」

193 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月19日(土)13時01分00秒
「えぇ!?」
「だって安倍さんに取られるかもしんないんでしょ?だったら
 これっきゃないでしょう?」
・・・・そうだけど、そうなんだけど。
「ひとみちゃんが安倍さんの事、好きだとしたら?」
「あぁー・・・それはわからないねぇ」
告白・・・。でも自信なんて全然ないし、ふられたら私は今までの
友達関係ではいられなくなると思うし。
「・・・むぅ、安倍さん、か」
柴ちゃんは難しい顔で呟いた。
「何?」
「え?あ、いやぁ何でもないよー。梨華ちゃん、私にまかせて!」
「・・・え?」
「梨華ちゃんの恋、絶対叶えさせてあげる!」
びしっと親指を立てて言う柴ちゃん。
・・・・信じていいんでしょうか?
そして私達は再び買い物を始めた。だけど私はつい人込みの中に
ひとみちゃんと安倍さんがいるのではないかと気になって探してしまう。
でも、結局見つからなかった。

 
194 名前:作者。 投稿日:2003年07月19日(土)13時11分22秒
情報通の柴田さんのご登場です。いやぁ、書いてて楽しいわ、柴田さん。
ここでちょっとこの物語の登場人物の確認を・・・・。

矢口さん。・・・一応、主人公なわけですが、最近出番が少ないっすね(泣)。
安倍さん。・・・よっすぃーに対してはどうなんでしょうか。
飯田さん。・・・はぅ、矢口さんより最近出番が・・・・(汗)。
市井さん。・・・後藤さんを大切に大切に。
後藤さん。・・・泣けてきますよ、このお方は。
吉澤さん。・・・自分の気持ちを素直に。
石川さん。・・・吉澤さんとは両思いなのに、お互い言えずにいるんですね。
柴田さん。・・・情報通なわけですが。作者も手帳の中身は謎なんです。

8人です、今の所。もっと増やしたい・・・・。
矢口さん、主人公なのに・・・ごめんなさい(泣)。

       
195 名前:作者。 投稿日:2003年07月19日(土)13時18分34秒

>189 タケ様。
     頑張りますよ〜。柴田さんご登場です、今回は。
     また今夜、更新するかもしれないので!(^−^

>190 和尚様。
     勃発です、まさに勃発です。そして更に柴田さんも登場です。
     吉澤さんも安倍さんの押しには勝てなかった・・・・。
     はたまた三角関係ですね(^−^;
    
作者はどうも柴田さんがお気に入りらしい・・・・(−_−)。
今回は何故か書いててテンションが高い事が判明。
では、また〜。
196 名前:和尚 投稿日:2003年07月20日(日)15時04分18秒
更新お疲れ様です。
いいですね柴田さん(爆笑)
 φ川σ_σ||<私に任せて!
(;^▽^)<信じていいんでしょうか?
いしかーさんの言葉に納得(笑)
柴田さんの登場で三角関係が柔らかくなれば良いなぁ〜と(希望)

197 名前:タケ 投稿日:2003年07月20日(日)16時23分56秒
柴田さんと登場だ〜♪
これからの展開に期待してますよっ!
198 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月20日(日)16時43分14秒

 <吉澤 視点>

安倍さんとの買い物が終わったのは夕方近くだった。
「夕飯、食べ来ない?」
「いえ、いいっす。きっとお母さんが支度してますから」
夕飯の誘いを丁重に断った。安倍さんはものすごく残念そうな顔をしていたけど。
そしてうちへのプレゼントをもらった。それは梨華ちゃんと会った店で
綺麗って言っていた銀のブレスレットだった。
「ありがとうございます」
「いいっしょ。また遊ぼうね」
「はい・・・」
そしてうちらはわかれて、家に帰った。

「はぁー、よりによって今日会うなんてなぁー」
ため息混じりに呟いて、玄関の扉を開ける。そして自分の部屋に入った。
ぼすっとベットにダイブして寝転がった。
「だぁー、ぜってぇー何か誤解されたりそーな・・・」
・・・そぉいや、明日部活だ・・・。
明日から部活が始まる。午前中だけだけど。
でも・・・梨華ちゃんには会えないんだよね。
むくっと起き上がってポケットから携帯を取り出す。梨華ちゃんの
電話番号を出した。
「でもなぁ・・・何て言えばいいんだろう。別に付き合ってないし、
 誤解も何も無かったら。安倍さんの事、説明すんの変だよなぁ」
はぁーとため息をまたついて、携帯を閉じた。

 
199 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月20日(日)16時54分21秒
翌日の朝7時。部活の為起床。
「ねみぃー・・・」
まだ回転しない頭、だるく重い体を起こしてベットから出る。
そしてジャージに着替えて寝癖直し、歯磨きをして淡々と支度をしていく。
「ふぁー、行ってきまぁーす」
まだ誰も起きていないので行ってらっしゃいの言葉は返ってこない。
晴れた空の下を自転車で通っていく。普通に学校行く時は自転車じゃなくて
徒歩。何故かというとうちは自転車通学許可をもらってないので駄目なのだ。
家が学校に近いせいでそうなっている。
「夏休みだからぁー自転車で行ってもーばれないー♪」
いつもは自転車点検があり、許可をもらってない生徒がいるとすぐばれる。
「いえーい、めっちゃホリデェ〜♪」
快調に自転車を飛ばしながらノリノリで歌いながら学校に到着。
「矢口先輩達いるかなー?」
自転車置き場に自転車をとめて、部室へ向かった。
時刻はもうまもなくAM7:10。部活が始まるのは15分からだ。
「よっすぃー!」
「あ、矢口先輩」
部室の中に入ると矢口先輩がいた。何やら漫画を読んでいるようだ。
「いいんすかー?受験生なのに。普通は参考書でしょう」
「何堅苦しい事言ってんだよ〜。家では真面目にやってるからこうゆう時
 しか漫画読めないんでしょーが」

200 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月20日(日)17時01分56秒
「ならいいですけど・・・ごっちんは?」
「まだだよ、寝てんじゃないのー?部活の事、忘れてそうだもん」
うちはカバンから携帯を出してごっちんに電話をかけてみた。
『んぁ?』
「ごっちん!寝てたの?」
『あぁ・・・うん』
「今日から部活でしょ」
『・・・んぁ!そうだった!いやぁ、カレンダーにちゃんと書いて
 おきたのになぁ』
「・・・早く来てね?」
『今から行くね〜』
ピッと携帯を切った。
「やっぱ寝てた?」
「はい、寝てましたよ」
適当に椅子に座った。すると矢口先輩は漫画を閉じた。
「さて、ごっちんが来るまで話そうか」
「へ?何すか?」
「・・・よっすぃー、何かあった?」
矢口先輩の言葉にドキッとした。何でこの人はわかるんだろう?
「・・・何でわかったんですか?」
「今日のよっすぃーの表情。何か沈んでたから」
201 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月20日(日)17時14分16秒
沈んでたのかな・・・・?別に自分ではそー思わなかったけど。
「昨日・・・安倍さんと買い物してたんです」
「なっちと?こりゃまた珍しいメンツだね」
何で安倍さんと買い物に行く事になったのは言わないでおこう。
うちは昨日の出来事を矢口先輩に話した。

「ふむ・・・・」
「でも梨華ちゃんの気持ちわかんないし、変に安倍さんの事説明
 するのもあれだし」
「・・・大丈夫だと思うよ?オイラが思うには」
「何でわかるんすか」
「・・・勘?」
にこっと笑う矢口先輩。勘ですか・・・それは野生の勘ですか?
大丈夫、か。どうゆう事だろう?
「梨華ちゃんに告ってみれば?」
「でも・・・うちはふられたら今までみたいに接する事は出来ないと
 思うんですよ」
「友達には戻れない?」
「はい」
「なら、今のままでいいの?好きなのにその気持ちを閉まっておくのは
 すごく後悔すると思うよ。気持ち言うだけでも、さっぱりすると思うんだ。
 ずっと悩んで抱え込んでたら、いつか限界が来る。そしたら友達なのに
 その人を見ることすら辛くなるよ・・・だったら言ってさ、ふられるなら
 ふられるでいいじゃん。それに友達の関係が壊れるなんて事に怯えないで
 告った後の事なんて誰にもわかんないんだから」
矢口先輩が言うと妙に納得してしまう。矢口先輩にも何かあったのだろうか?
うちは「先輩も何かあったんですか?」と聞こうとした。
202 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月20日(日)17時25分27秒
「オイラね、紗耶香に告白してふられたよ」
「え!?」
何と言う爆弾発言。知らなかった・・・。
でも矢口先輩は市井さんにふられても別に沈んでないし、失恋を
引きずってる様子も無い。
「でも・・・紗耶香にね『これからも友達だよね?』って聞いたら
 『当り前だろ』って言ってくれたんだ・・・オイラ達は何も壊れて
 なんかない。ただお互いの気持ちを知り合えた・・・。ふられたけど
 告白しなきゃ良かったなんて後悔してない。むしろ告白して良かった
 って思うよ」
矢口先輩は明るく元気に話す。
「だから、よっすぃー。頑張ってみてよ。確かにふられたら友達に戻れない
 っていうのが普通に考えられるけど、でもそんな事わかんないんだよ」
「先輩・・・」
その時、部室の扉が開いた。ごっちんが入って来た。
「ごめんねー、遅くなって」
「ごっちん!おせーぞ!」
ばしっとごっちんの肩を叩く矢口先輩。うちはこの時、すごいなって思った。
矢口先輩は強いなって思った・・・いや、ただ強いじゃなくて
『勇気』があるから強いんだ。うちには無かった。
だけど今の先輩の言葉を聞いて『勇気』を持てた。

・・・うん、頑張ろう。

「おし!じゃぁ今日も気合入れていくぞ〜!」
矢口先輩が叫ぶ。うちとごっちんは「おー!」と叫んだ。
203 名前:作者。 投稿日:2003年07月20日(日)17時41分14秒
今回は吉澤さんでした。

(0^〜^)<頑張るぞ!

>196 和尚様。
     柴田さんは謎ですからね、きっと三角関係を柔らかくして
     くれるでしょう・・・。彼女はいつも何処かに潜んでいます(笑)

>197 タケ様。
     柴田さんですよ〜柴田さん!期待に応えられるように
     頑張りますよ〜。

200いきました!結構長かったなぁと感じております。ありがとうございます!
今日のハロモニ。は面白かったなぁ。でもいくら何でも総理大臣の人数
なんてわかんないっすよ<シゲさん
市外局番やらカッパの甲羅やら、いろんな問題が出て面白かったっす。
作者はお好み焼きがご褒美に欲しいなぁ・・・。

204 名前:タケ 投稿日:2003年07月20日(日)18時26分28秒
200越えおめでとうございます。
矢口さんカッコイイ!素敵過ぎます・・・

ところで
いしよしがくっ付いたら安部さんは・・・?
205 名前:和尚 投稿日:2003年07月20日(日)22時36分14秒
素晴らしいです!やぐちさん!!
よしざーさんの表情にソコまで察知するとは・・・・ホレちゃいそうです(キッパリ)

それにしてもごとーさん部活の時はちゃんと起きましょう(爆笑)
( ´ Д `)<zzzzZZZZ
206 名前:愛情と友情。 投稿日:2003年07月21日(月)17時48分20秒
部活が始まって2日目。相変わらずごっちんは寝坊してくる。
「ったく、ちゃんと起きろよな」
矢口先輩は毎度怒っている。その度ごっちんは「んぁー、頑張る」と言う。
ごっちん曰く、最近市井さんは朝早く家を出るそうだ。つまり起こしてくれる
人は誰1人いないわけで、自力で起きるのはごっちんにとって難しいらしい。
「おし、明日からオイラがモーニングコールしてやる!わかったな」
「んぁ」
今は校庭を走ってランニング。うちはしゃべってる矢口先輩とごっちんを
追い越した。
・・・・さっきから、なんつーか・・・見られてる感じがする。
ずーっと視腺を何処からか感じるんだけど、校庭を見回しても特に
うちを見てる人はいない。他の部活の人達が練習しているだけだ。
「何だろ・・?」
ちょっと走るスピードを上げてみた。

パシャ。

・・・・パシャ?

何処からかそんな音が聞こえた。足を止める。
ここは校庭の端で横の方には木が何本か並んで立っている。
上の方から聞こえた・・・・。
木の上の方を見る。
「・・・誰かいるんですか?」
聞いた次の瞬間。

「きゃぁ!うわぁ!」
と悲鳴が木の上から聞こえてきた。
「落ちる!落ちるよ〜!」
どうやら落ちそうになっているらしい。うちは木に近づいた。
枝に掴まって今にも落ちそうになっている人が約1名いた。
ずるっと落ちてきたその人をうちは下でキャッチ。が、支えきれなくて
倒れた。
「いてぇー・・・大丈夫ですか?」
うちが下でうちの上に落ちてきた人が乗っている。
「あ・・・すみません」
その人はうちから下りた。





207 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月21日(月)18時00分29秒
「あぁ!カメラ!カメラ・・・・」
その人は慌ててそこに落ちていたカメラを持って確かめ始める。
・・・何なんだ?
「あのぉー、何すかね?」
「あぁ、すみません。私、こーゆー者です」
よく見るとうちの学校の制服だ。校章を見ると2年生らしい。
ポケットから出てきた名刺を渡された。どうやら手作りみたいだ。
「2年、柴田あゆみ?」
「はい、柴田です」
「えーと、情報部なんですか?」
「主に情報集めてますね。いろんな。それで新聞作ったりしてます」
名刺にはご丁寧に住所や電話番号も書いてある。情報の為だろうか?
「その名刺はめったにあげないんですけど。まぁ、よっすぃーだからあげます」
柴田さんはにこっと笑って言った。
「・・・で、何か用なんでしょうか?」
「はい、ちょっと取材をさせて欲しいんです」
・・・・取材?一体何の・・・。
「今度の新聞によっすぃーの・・・吉澤ひとみさんを全面的に出したいんです。
 木の上でちょっと部活の様子を伺っていました。写真も少し」
あぁ、だからカメラなのか。柴田さんは使い捨てカメラじゃなくて本格的な
カメラを持っている。
そういえば、1ヶ月に1度新聞が出ている。結構人気らしいがうちは別に
興味が無かった。
「どうですか?取材させてくれませんか?新聞に載るなんてすごい事ですよ!
 しかも私の取材ですよ?私の記事は毎回好評なんですよ」
ちょっと自識過剰じゃないだろうか。
まぁ、いいかと思い。うちは取材とやらを受けることになった。

208 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月21日(月)18時25分18秒
矢口先輩とごっちんがやってきた。
「何してんのー?・・・って!あなたは・・・」
矢口先輩は驚いた顔をしていた。
「どうも、矢口先輩」
柴田さんは矢口先輩にぺこっと頭を下げた。ごっちんは眠たそうだ。
「矢口先輩、知ってるんすか?」
「知ってるも何も・・・・まさか、よっすぃー取材受けるんじゃ・・」
「はい、そうっすよ?」
あちゃーっと矢口先輩は言った。
「じゃ、今日の所は帰りますね。また伺いに来ます」
まるで本当の新聞記者みたいな柴田さんは笑顔で帰って行った。

一旦部室にうちらは戻った。矢口先輩は「バカだね、よっすぃーは」と
うちに言う。
「いいじゃないですか、取材ぐらい。それにしつこそうだし」
「しつこいっていうのわかってんじゃん。よっすぃーあの人はね」
「あたし知ってるよ。情報部の柴田さんでしょ?」
ごっちんがカバンからペットボトルを出していた。
「何でごっちん知ってんの?」
「前にあたしのとこにも来たから。まだ高校に入ったばかりの時」
あぁ・・・あの頃か。まだごっちんが誰にもココロを開いてない時だ。
「もう、矢口先輩みたいに毎日くんの。取材させて下さいって。
 どうでも良かったし、めんどくさいから断ったけど」
「オイラみたいってどーゆー事だよぅ」
「あは、矢口先輩はあたしの為を思って来てくれてたでしょ。
 でもあの人は情報の為。ちょっと来る内容は違ったね」
「だろー?オイラはごっちんの為に行ったんだよ」
矢口先輩はえっへんと威張っている。うちは椅子に座った。


209 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月21日(月)18時36分06秒
「あの柴田って子はね、ホントしつこいの。取材に応じたら何処までも
 ついてくるよ。休み時間も昼休みも放課後も!」
矢口先輩は訴えるように言った。ごっちんが「おぉ〜」と拍手している。
どうやら矢口先輩も前に取材をされたようだ。
「写真は取り捲るし、質問攻めだし。ずっと見られるし。
 一度でも取材許可したら絶対取り消してなんかくれないよ」
ちょっと寒気がして来た。ぞぉっと背筋が震えた。
「マジっすか・・?」
「マジ、本気と書いてマジ」
うちの頭の中には後悔という文字しかなかった。

・・・・あぁー、バカだよ。

ちくしょーと叫びながらお次はハードル練習。うちの気分は暗かった。
あの笑顔に騙されたんだ・・・あの笑顔に・・・。
どりゃーっと走ってハードルを飛ぶ。

ガッシャン、ガッシャン、ガッシャン。

いつもの調子が出なくて見事全てのハードルを倒した。遠くで矢口先輩が
「真面目にやれー!」という声が聞こえた。

「うちが何をしたんだぁー!!」

空に向かってむなしく叫んだ。


210 名前:作者。 投稿日:2003年07月21日(月)18時48分22秒

>204 タケ様。
     ありがとうございます!200超えました(^−^
     矢口さんかっこいいですか?そう思ってもらえると嬉しいです。
     再度登場しました、例のお方。さて・・何を企んでいるのでしょうか。
     こっちの方は前のいちごま+矢口さんみたいな完全なる三角関係
     ではないです。これから徐々にわかっていくと思います!

>205 和尚様。
     ホレちゃいました?矢口さん、作者もホレました。
     (〜^◇^〜)<オイラにホレちゃ怪我するぜ!
     後藤さん・・・相変わらずですね(苦笑)。
     市井さんが朝早いもので次からは矢口さんがモーニングコール
     で後藤さんを起こしてくれるみたいです。
      

さて・・・例のお方登場です。石川さんの恋大成功作戦の為なのか・・・。
それとも新聞ネタなのか・・・。
吉澤さん不調になっていく。

(0^〜^)<うちが何をしたんだぁー!!


211 名前:タケ 投稿日:2003年07月22日(火)10時20分23秒
恐るべし柴田さん・・・

(0^〜^)<吉澤はどうなるんでしょうか?

続き期待
212 名前:和尚 投稿日:2003年07月22日(火)16時50分19秒
柴田さん登場!
よしざーさんの大変な日々が始まるんですね・・・
非常に楽しみです♪

|_σ||コソーリ   (0°〜°)ゾクゾクゾク

矢口さん取材されたんだ・・・どんな取材受けたんだろう?

213 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月22日(火)20時43分52秒

 <安倍 視点>

朝起きて、カーテンと窓開けて、涼しく吹き込む風にあたって。
ぼーっとしてた。
夏休みだから特に学校に行く必要もない。

こないだよっすぃーと買い物した。まぁ私がお礼をしたかったんだけど。
自分でもびっくりな行動をとったと思う。自分から誰かを誘うなんて
めったにした事なかったから。
よっすぃーは私に1人じゃないって言った。
「1人じゃない・・・」
まだ腕のアザは消えないけれど、ココロの傷だって癒えてないけれど。
それはきっといつかなくなる。
何でそう思ったのか?

・・・だって、みんながいるもんね。

よっすぃーが言ってくれたおかげで私は大切な事に気づいた。
今まで、感じていた何かがはっきりとわかった。
「・・・・確か、陸上部は部活やってんだよね」
ふと思い出すよっすぃーの笑顔。私はぱっとベットから下りて、カーテンを
閉めて着替え始めた。髪の毛を整えて、部屋を出る。
「なつみ、おはよう」
「おはよ、お母さん」
お母さんがキッチンで朝食を作ってる。お父さんはもう仕事に行ったみたい。
お姉ちゃんは旅行でいない、妹はまだ寝てるみたい。
「お母さん、今日は学校行ってくる」
「あら、何か用事?」
「図書館で勉強してくるよ」
ちょっと嘘ついた。本当は陸上部の部活を見に。






214 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月22日(火)20時54分36秒
・・・ごめんね、お母さん。
朝食を済ませてカバンに一応教科書やノートなど入れて家を出た。
暑い毎日が続く、それでも私はいつも長袖。家族にもこのアザは見られてないし
見せたくなかった。どんな事があっても。
「暑い〜」
途中コンビニに寄って部活で頑張ってるみんなの為にジュースやお茶を買った。
重たい袋を手に持って学校へ向かう。

数分後、学校に到着。補習で来てる生徒や部活で来てる生徒などなど
思ったよりも人がいた。自転車置き場も自転車でいっぱいだ。
「いるかなー?」
校庭の方を行ってみると矢口達の姿は無かった。部室かなと思って
部室の方へ行ってみる。陸上部と書かれた木の看板がある扉の前に立つ。
コンコンとノックをしてみた。ちょっと緊張した。
『はーい、どうぞー!』
と中から矢口の声が聞こえた。ゆっくり扉を開ける。
「こんにちは〜!」
「おぉ、なっちじゃん!ようこそ!我が陸上部へ!」
「矢口先輩、何か部活の勧誘みたい・・・」
「うるさい!ごっちん!」
私は中に入って扉を閉めた。
「これ、買ってきたの。良かったら飲んで」
さっき買ってきたジュースやお茶の入った袋を矢口に差し出した。
「お!マジで〜♪ありがとーなっち」
「ありがとーございまーす」
・・・・あれ?よっすぃーは?
部室の中によっすぃーはいなかった。その時後ろにある扉が開いた。



215 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月22日(火)21時08分13秒
「もぉ〜マジ勘弁してくださいよぉ〜」
「駄目!あと5枚撮らせて!」
よっすぃーと見たこと無い人が入って来た。
「矢口先輩〜助けて下さい!」
「何言ってんの。応じたからには最後までやりなさい」
「そんなぁー」
私はわけがわからず、キョロキョロしていた。するとよっすぃーが私に
気付いてくれたみたいだ。
「あ、安倍さん。こんにちは」
「こんにちは、よっすぃー」
「よっすぃー!ほら、早く!」
ずるずりと部室から引きずり出されるよっすぃー。
・・・何?あれは。
矢口が何でよっすぃーがあぁなってるのか教えてくれた。あの人は柴田さん
という人らしい。
「情報部の?」
確か過去に聞いた事ある名前だった。顔を見たのは初めてだ。
「そ、情報部。オイラも大変だったんだよねぇ〜」
「矢口先輩は何で取材されたんですか?」
「・・・・オイラさ、この学校入学してずっと1番小さいじゃん。
 しかも金髪で元気でー可愛いからー」
用は小さいから取材されたのね。
「毎日毎日、まぁ写真はいいんだけどそばにいられるのがしつこくてねー。
 毎週保健室で身長測されるわ、嫌いな牛乳飲まされるわ、いつも何食べてる
 だの、嫌いな食べ物は何だの。うるさい奴だよ。お前は研究者か!」
「でも身長伸びてないんでしょー?」
ごっちんが突っ込む。矢口が止まる。
「ごっちん・・・今度言ったら校庭5周ね」
「・・・・はい。もう言いません」


216 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月22日(火)21時20分20秒
矢口は紗耶香から返事をもらい、ふられても気持ちの整理がついたのか
ごっちんと楽しくしゃべってる。
「あぁー、もうすぐ部活も引退かぁー」
「矢口も受験生なんだから、勉強しなきゃ」
矢口が抜けたら陸上部は2人になる。今まで廃部にならなかったのは
先生達のおかげだろうか。
「まだよっすぃーは掴まってんのかね、ごっちん見てきてよ」
「んぁ」
ごっちんが部室から出て行った。

「今日は矢口目当てじゃないでしょ?」
「え?・・・」
「んー、ごっちんじゃないなぁ。さてはよっすぃーか!?」
相変わらず鋭い矢口。何も言えずに下を向いた。
「ホント?」
「・・・でも別に・・・何となくっていうか・・・。別に恋愛感情が
 あるとかじゃなくて、どーしてるかなって思って」

そう、別に恋愛感情は持ってない。好きだけど矢口が紗耶香に
対する好きっていうのとは違って。
・・・・そうだと、思うんだ。

「なっち?」
「あ、ごめん・・・」
私は何となくもう帰ろうと思った。矢口に「帰るね」と言って
部室を出て行く。




217 名前:作者。 投稿日:2003年07月22日(火)21時30分08秒

>211 タケ様。
     (0T〜T)<勘弁して下さいよぉ〜・・・。 
     そして今回も吉澤さんは柴田記者につけまとわれる(笑)。

>212 和尚様。
     吉澤さん大変な事になっちゃいましたねぇ・・・。
     これからもっと大変さが出てくると思いますよ♪
     矢口さんの取材が明らかに・・・。
     (〜^◇^)<どーせオイラはちっこいよぉ!別にいいだろぉ!

今回、安倍さん視点でしたが。ん〜微妙ですね・・・。
もうちょっと安倍さんの気持ちを書きたかったなぁ(汗)。
では、また〜。


218 名前:タケ 投稿日:2003年07月23日(水)09時21分01秒
大変だなぁよっすぃ〜
矢口さんも大変だったようで・・・

安部さんのこれからの気持ちに期待
219 名前:和尚 投稿日:2003年07月23日(水)17時30分04秒
凄いぞ柴田さん!よしざーさんの密着取材!!
よしざーさんホントに大変そう(笑)

やぐちさんの時の取材・・・想像するだけで笑ってしまいます(爆笑)
大変だったんですね(笑)
220 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月24日(木)21時51分10秒

 <石川 視点>

8月に入ったある日。久しぶりに柴ちゃんと会う約束をした。
電話での柴ちゃんはやけにハイテンションで何かあったんだろうか。
私は家を出て、駅へ向かった。
・・・暑いなぁ。
8月に入って更に太陽の光は強さを増してくる。念入りに日焼け止めを
ぬってきたけどこれじゃぁあんまり日焼け止めも役にたたなさそうだ。
「また黒くなっちゃうよ・・・」
中学時代と高校時代の前半はテニス部に入っていたせいで私の肌は黒かった。
やっと白くなってきたらまた夏がやってきて、黒くなる。きっとこれからの
人生、それの繰り返しだ。

駅について待ち合わせの喫茶店に入った。すでに柴ちゃんはいた。
「ごめん、待った?」
「あ、梨華ちゃん。おっそいよ〜」
時計を見るとそんなたいして遅れていなかった。
「2分だけじゃん、柴ちゃん」
「この2分が私にとってどれだけ長く感じたと思ってんの」
「はいはい」
「返事が適当!あと返事は1回でよろしい!」
「はい・・・」
やっぱり今日の柴ちゃんは変だ。いつも変だけど。
「っで、何で呼ばれたかわかってるよね?」
「え?何?買い物じゃないの?」
「・・・梨華ちゃん。私がこの何日間、誰の為によっすぃーを取材したか
 わかってんの?」
「あ・・・・」
そういえば、数日前に柴ちゃんが私の恋を絶対叶えてくれると言っていた。
そしてこの何日間、よっすぃーを取材してる事もメールで聞いたっけ。



221 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月24日(木)22時05分21秒
「全く・・・親友の為に毎日毎日、逃げるよっすぃーを掴まえて頑張って
 取材してたのに・・・」
いきなり暗い表情になる柴ちゃん。私は慌てて言う。
「ごめんね?っでどうだったの?」
「・・・ふふふ、聞きたい?」
「う、うん・・・」
柴ちゃんは不気味に笑いながらカバンから例の手帳を取り出した。
相変わらず中身はびっしり書き込んであった。柴ちゃんが片っ端から
よっすぃーに関しての情報を言っていく。私も知らない事を柴ちゃんは
たくさん知っててちょっと妬けた。


好きな食べ物、嫌いな食べ物、よく聞く音楽、陸上部に入った理由
・・・人間関係、好きなタイプ。

「最後、好きな人はいるか?答えは・・・YES」
いるんだ・・・好きな人。
パタンと手帳を閉じる柴ちゃん。
「誰かはさすがに教えてくれなかったよ」
「そっか・・・」
「梨華ちゃん、ネガティブは駄目だよ。よっすぃー別に今、付き合ってる人
 いないんだから。希望はあるよ」
「そうだよね」
ふと柴ちゃんの手帳が気になった。何か挟んである。
ちょっとした好奇心で手を伸ばして開いてみた。写真みたい・・・。
「あ!何これ!」
「げっ!」
写真は全てよっすぃーが写っていた。
「これはね!まぁ、一応取材で・・・ね?」
「私の為を思って取材してくれたんじゃないの?何?新聞のネタの為?」
「だからぁ・・・あ、梨華ちゃんにあげようと思って」
・・・・まぁ、もらえるならもらっておこうかな。


222 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月24日(木)22時20分18秒

 <柴田 視点>

あぁー、せっかく撮ったよっすぃーの写真が全部とられたぁー。
これでも必死に撮ったのになぁ・・・。
梨華ちゃんはよっすぃーの写真見てニヤニヤしてるし。誰のおかげだと思って
んのさ。

まぁ、写真はいいとして。問題は安倍さんとよっすぃーの関係。
よっすぃーには好きな人がいる。それはもしかして安倍さんなのかもしれない。
2人はこないだ買い物していた、結構仲良さげな感じだ。梨華ちゃんが行って
きた旅行にも2人はいた。
・・・・安倍さん。梨華ちゃんは安倍さんの事、何も知らないんだろうな。
手帳の結構前の方に安倍さんに関しての事が書いてある。今見てもココロ
が痛い。

いじめ。

彼女はそれにあっていた。結構ひどかったらしい。
現場を見たわけじゃなかったから半信半疑だったけど、私の友達が見たって
言ってたし他にも聞いてみると結構みんな知っていた。
私は何となく気になったので調べる事を続けた。安倍さんがどんな人なのか。
いじめられていた相手は誰なのか。いつからいじめは始まったのか。

今思うと、よく調べ続けられてたなと思った。今ではココロが痛くて
そのページを見る事も出来ない。

・・・よっすぃーは知っているのかな?この事を・・・。

『よっすぃー、好きな人いる?』
『・・・・いますよ』
『誰?』
『・・・ノーコメント』
『えぇ〜。じゃ、じゃぁどんな人?それだけでも・・これは別に
 新聞に載せたりしないから!ね?』
よっすぃーは恥ずかしそうに言った。



223 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月24日(木)22時34分40秒
『・・・・守ってあげたくなるような、感じ・・・』

守ってあげたくなるような感じ。それは一体誰?

よっすぃーの親しい友達リストを作ってみた。とは言ってもよっすぃーは
優しくて頼れる性格をしてるので仲いい友達はたくさんいた。
その上かっこいいのでかなりモテる。
その中で最もよっすぃーに近い人は・・・・。

石川梨華 安倍なつみ 矢口真里 後藤真希 

この中の人物で可能性がある人は2人。

梨華ちゃんと安倍さん、だ。

矢口さんと後藤さんは無いと思う。後藤さんは現在恋人がいるし、
矢口さんは私の勘で無いと感じた。

「・・・梨華ちゃん。今までさ、よっすぃーと安倍さんが何かあったっていう
 のはこないだの2人が買い物の他になにかない?」
まだ写真を見てる梨華ちゃんに聞く。
「んー・・そういえば、気になった事が1つあるよ。旅行行った時ね
 1日目が終わって2日目の朝によっすぃーと安倍さん2人共目が
 赤かったんだよね。眠れなかったのかなぁーって思ってたけど」
・・・・気になるねぇ、そりゃ。

 
 
224 名前:作者。 投稿日:2003年07月24日(木)22時49分17秒

>218 タケ様。
     矢口さんも大変ですが、よっすぃーも今大変(笑)。
     はたまた柴田さんですが、彼女にもいろいろ変化がありそうです。

>219 和尚様。
     矢口さんの取材。実は実験材料!?みたいな感じです(笑)。
     吉澤さんも大変そう・・・・。
     柴田記者、再びです。彼女にも変化がありそうです・・・。

(〜^◇^)<更新ペースが遅くなってるぞ!作者!
(0^〜^)<時間が無いからって言い訳すんなYO!

はい・・・頑張りますよ!もう明日からばんばん・・・ばんばん・・・(小声)。
では!
225 名前:和尚 投稿日:2003年07月25日(金)19時10分50秒
安倍さんがイジメにあっていたとは!!
イジメていた人は!?何で!?どうして!?聞きたいけど聞きたくない!!(どっちや!)
聞いたら泣く事必至!

いよいよ柴田さん取材が本格的に動きそうですね。何でごとーさんに恋人がいるって分かったんだろう?
矢口さんに恋人がいないのも勘(笑)で分かったし・・・凄いぞ柴田さん!!

川σ_σ||<とーぜん!!


226 名前:タケ 投稿日:2003年07月25日(金)20時18分54秒
安部さん・゚・(ノД`)・゚・
しかし柴田さんの情報量すごいなぁ・・・改めて・・・

さぁ石川さんはどう出るのか期待してます。
227 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月25日(金)23時37分28秒

 <安倍 視点>

毎日暑い日が続く中、学校の課題や矢口達と勉強会やカラオケをしたり
家族で旅行に行ったりと充実した日々を送っていた。
夏休みも中旬に入って矢口が部活を引退し、みんなでお疲れ様パーティーを
する事になった。場所は矢口の大好きな焼肉屋さん。
「えー、では矢口先輩が陸上部を引退されまして。ここでお疲れ様でした
 パーティを開きたいと思います。じゃ、矢口先輩一言何か」
よっすぃーが司会者みたいな役を務めている。
「矢口真里、こないだの大会で陸上部を引退しました。えっと、陸上部では
 いろんな事が今まであって。1人だけの部になったり、よっすぃーや
 ごっちんが陸上部に入ったり、そして毎日楽しい部活を送る事ができ、
 オイラはとても幸せ者でした。これからの陸上部はよっすぃーとごっちん
 2人だけになるけど、頑張ってもらいたいと思います!でも、オイラは
 いつまでも変わらず陸上部の部員だと言い続けていきたいです。はい」
矢口がちょっと涙目になっているのがわかった。それにつられて私も涙ぐんだ。
「じゃ、乾杯しますか。みなさんグラスを持って下さい!」
乾杯をするためみんな自分のグラスを手にとる。
「矢口先輩!お疲れ様でした!乾杯〜!!」
「「「乾杯〜!!!」」」

矢口はこないだの大会で好成績を出したそうだ。私に賞状をすごく
嬉しそうに自慢・・・いや、見せてくれた。
いつも頑張りやで、自分の事よりも誰かの為にばっか一生懸命で、
そして泣き虫で・・・。
そんな矢口がきっとみんな大好きだと思う。


 
228 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月25日(金)23時47分13秒
よっすぃーとごっちんが矢口への手紙を読んだ時ついに矢口は号泣した。
紗耶香は穏やかな目で矢口を見ていて、圭織と梨華ちゃんは矢口につられたのか
泣いていた。
私はみんなを見ていた。こんなにも温かい仲間、素敵な仲間。
今まで感じる事なんて無かったよ・・・仲間が大切だという事。
私の、なっちの大切な宝物。

「そろそろ帰りますか」
「んぁ、そだね」
焼肉をたくさん食べて、部活の思い出話に笑って、そして泣いて。
素敵な時間だね、矢口。

PM9:00。家に帰った。
部屋に入って携帯を見たら、着信暦が入っていた。
「誰だろー・・・」
誰かを確かめた時、私は絶句した。すぐにその着信暦を消して電源を切った。
「・・・・な、んで・・?」
その場に座り込んで呆然としていた。どうしていいかわかんなくて、
驚いた後は涙が出てきた。

またあの悪夢が始まるの?

まだ私は辛い目にあうの?

私、何も悪い事してないのに───



229 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月26日(土)00時02分39秒

 <柴田 視点>

「・・・・まだ、その人って決まったわけじゃないよね・・・」
安倍さんの事を調べているうちにいろいろな事が出てきた。
私は今、パソコンを開いて今年入って来た1年生の名簿を見ていた。
ちょこっと学校からフロッピーをお借りして、もちろん黙って。

・・・・厄介な人物が入ってきたもんだ。

ため息をついてパソコンを閉じた。椅子から立ち上がってベットに腰かける。
新学期が始まったらどうなるかな・・・・。
情報を聞き込めばいろんな事を知っていく。今までにもいろんな情報を
とり得てきた。良い情報もあれば悪い情報もある。
私は今まで、良い情報しか見ていなかった。悪い情報を見て見ぬふり
をしていたんだ。
「こればかりは・・・見て見ぬふりは出来ないね」

誰かの為の情報部。かつて私が持っていた理想だ。
いつしかそれを忘れていったのはいつだろう?
新聞のネタだけの為に情報を取り入れるんじゃない。

「安倍さんの為にも・・・・この子にとっても、ね」




230 名前:作者。 投稿日:2003年07月26日(土)00時09分21秒
うーむ、今回はあまり前へ進んでなく、謎ばっかり(困)。

>225 和尚様。
     安倍さんのいじめについてはちょくちょくこの物語の中で
     出てはきてましたね。明らかにわかったのは旅行中の時でしょうか。
     これからは・・・ちょっと暗くなりそうですが。
     後藤さんに恋人がいるのは彼女の聞き込みの成果です!
     勘も鋭いんですよ、インスピレーション?が。

>226 タケ様。
     柴田さん、謎ばかり残していきます。   
     石川さんの出番が・・・(汗)。次回は出ます!

謎が・・・・謎ばかり。
更新が少なくて申し訳ないです!次回はたっぷり更新しますので!

          
231 名前:和尚 投稿日:2003年07月26日(土)13時03分52秒
素敵な時間が終った後の辛い出来事。
どんなのかまだ分からないけどまた泣きそうな予感・゚・(ノД`)・゚・。
232 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月26日(土)22時14分44秒

 <吉澤 視点>

楽しい夏休みはあっという間に過ぎていき、もうすぐ新学期がやってくる。
梨華ちゃんとは何も進展しないままだ。はぁ、どうしよう。
何か今日は雨が降ってるし、気分はブルーだよ。
うちは家で夏休みの課題をやっていた。新学期になるまで部活はもうない。
家族はみんな出かけていて、家はうちだけ。
「あー、疲れた〜。ゲームでもしようかなー」
机から離れてベットに座った。その時携帯がなりひびく。
「はい?」
『・・・よっすぃ・・?』
「安倍さん?」
安倍さんの声がするが、いつもの明るい感じではなかった。
「どうしたんすか?」
『・・・・助けて・・・』
「え!?今何処ですか!?」
『公園・・・』
こんな雨の中!?公園!?
「わ、わかりました!すぐ行きますから!」
うちはすぐに支度して家を飛び出した。傘をさして公園まで走る。

雨は強くて、当分止みそうにもなさそうだ。公園には人の気配はない。
ぐるっと見回して安倍さんを探す。
「・・・あ!安倍さん!!」
ベンチにうずくまるように安倍さんはいた。傘もささないで。
うちはすぐ駆け寄り安倍さんの上に傘さして、雨に濡れないようにした。
「安倍さん、うちです。どうして・・・」
うちの声に反応して安倍さんが顔をあげる。疲れきったような、泣き顔だった。
「よっすぃ・・・・嫌だよ・・・」
安倍さんはうちに抱きついて泣き出した。声をあげてだが、その声は雨のせいで
かき消された。
「大丈夫ですから・・・」
うちは傘をさしながら安倍さんを抱きしめた。驚くほど冷たい安倍さんを
少しでも温かくなるように強く。

233 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月26日(土)22時23分43秒
とりあえずうちの家に安倍さんを連れて行った。すぐにお風呂を沸かした。
「お風呂、入って下さい。これ着替えです」
「ありがと・・・ごめんね」
「いえ」
安倍さんがお風呂に入ってる間、うちは部屋で考えていた。
・・・・もしかして、またいじめが?
前に聞いた安倍さんのいじめ。それがまた今になって始まったのだろうか。
「だとしたら、うち・・・1人で支えになれるかな・・・」

30分後、お風呂からあがった安倍さん。
「ごめんね、こんな迷惑かけて」
「いいですよ。・・・やっぱちょっと大きいですかね?」
うちのジャージを貸したのだが、安倍さんがうちのジャージを着ると
かなりだぼっとしていた。
「大丈夫」
力なく微笑む安倍さん。
「・・・・話してくれますか?」
「うん・・・」
ベットに腰かけて安倍さんは話し出す。うちはその隣に座って安倍さんの
話をじっと聞く。

雨の音がやけに部屋に響いた。
234 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月26日(土)22時37分28秒

 <安倍 視点>

悪い方に考えないようにしてたんだ。でもどうしても暗くなるから
出かけようと思って家を出た。雨が強いかなって思ったけど気にしないでいた。
駅に向かって歩いていた。

・・・・何だろ。

何かつけられてるような感じがして後ろを振り向いた。でも誰もいない。
気のせいかって思って再び歩く。
でも、誰か見てる。そんな気がしてならない。
雨だから人通りも少ない、家に出なきゃ良かったと思った。ちょっと早歩きで
駅に向かった。
その時、携帯がなりひびく。
「・・・・え・・・?」
相手を確認した途端、寒気がした。脈が速くなっていく。
・・・どうしよう。どうしよぉ。
嫌な汗をかいて、立ち止まっている。まだ携帯はなりやまない。
「・・・嫌だよぉ・・・」
怖くて怖くて傘を投げ捨てて走った。携帯を強く握り締めて。

そして───公園に来た。誰かにそばにいて欲しかった。
よっすぃーに電話をかけた。よっすぃーの声を聞いたらほっとして涙が
溢れ出た。


235 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月26日(土)22時50分16秒
よっすぃーが来てくれてよっすぃーは自分の家に私をいれてくれた。
そして私は今までの事を言った。

「またね、始めるの。何も、何も悪い事してないのに──」
「安倍さん。相手は一体誰なんですか?」
「・・・・言ったら、よっすぃーが危ない目にあう」
「何言ってんですか。こんな事、いいわけないでしょう」
「・・・・よっすぃー」
よっすぃーは私の話を一生懸命聞いてくれた。

名前・・・・。

「3年生の人ですか」
「うん。いつもグループでいる人達・・・」
「何て奴だ・・・」
「よっすぃー・・」
「大丈夫っすよ。うちがいますし、それに矢口先輩達もいるじゃないですか」
にこっと笑うよっすぃー。私は小さく頷いた。

今が話す時なのかもしれない。

もう、終わりにしたいんだ。


236 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月26日(土)23時01分22秒

 <矢口 視点>

「もぉ〜夏休みがぁ〜終わるぅ〜♪」
「変な歌」
「ひどーい。これはオイラの切ない思いが詰まってる歌なのに」
「何が切ない思いよ、課題残ってるんでしょ」
圭織の家で課題を片してるオイラ。圭織はもう終わったみたいで
他の勉強をしていた。
「っていうか、早くない?夏休み。そんなに夏休み過ごしてない気が・・」
「作者がいい加減だからよ。いきづまってきたんじゃない?」
「なるほど〜」
テーブルの上には大量なオイラの課題が山積みなわけで。これじゃ受験も
何もあったもんじゃない。
「あぁーあ、楽しい事ないかな〜」
「矢口、手止まってる」
そんなこんなで全然進まなく、たまに圭織に手伝ってもらいながら課題を片す。
鼻歌なんか歌っちゃいながらシャーペンを走らせる。

「おー、かなり片付いたね♪」
只今の時刻PM5:00。いやぁお昼からやってたからかなり勉強したぞ。
とりあえず今日はこの辺で終わりにした。
「もうあと5日だねー、夏休み」
「うっ・・・それをオイラに言わないで」

この時、のん気に笑ってる場合じゃなかったんだ。

新学期になって初めて知る事実。

オイラはこの時、何も知らずに過ごしていたんだ。


237 名前:作者。 投稿日:2003年07月26日(土)23時06分57秒

>231 和尚様。
     夏休みは終わりで次回からは新学期となります!
     また登場人物増える予定です。後、いじめの人
     が明らかになります!今回は準備期間というとこでしょうか(汗)。

(0^〜^)<・・・・安倍さん。

あ、石川さんの出番が・・・(泣)。新学期になれば出てくると思います・・。
夏休みだと難しい・・・1人1人バラバラだから(泣)。
では! 
238 名前:和尚 投稿日:2003年07月27日(日)02時16分39秒
安倍さんの心の状態が辛いですね

もう、終わりにしたいんだ・・・・終わりにしてくれい!!頼むよ、よっすぃー・゚・(ノД`)・゚・。

次の更新は阿部さんをいじめている人が明らかになるんですよね・・・必見だわ。
239 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月28日(月)21時44分56秒

 <柴田 視点>

新学期に入って始業式の日。
・・・今日から学校か。これから何も起こらなきゃいいけど。
いつもの時間に起きて支度して学校へ行く。
「柴ちゃ〜ん!」
「あ、梨華ちゃん。おはよ」
下駄箱で靴から上履きに履き替えていたら梨華ちゃんが来た。
「おはよー。何?テンション低いね」
「梨華ちゃんが高いんだと思うよ?」
「ひどーい。だって今日から学校だよ?毎日ひとみちゃんに会えるじゃない」
何か・・・梨華ちゃん、かなり積極的になってきたなぁ。
「良かったね」
「ちょ・・・良かったねじゃないよ!私にまかせて!って言ったのは
 何処の誰かしら?」
梨華ちゃんが頬をふくらませながら言う。私は「あーそういえば・・・」って
感じだった。
別に忘れていたわけではないんだけど、ちょっと今はねぇ・・・。
「梨華ちゃん。聞いて」
教室に向かいながら梨華ちゃんに言う。
「うん」
「告白というのはね、タイミングが大事なのだ」
「うん」
「そしてムードも大切なのだ。つまり焦りは禁物ね」
「ほう、なるほど!」
「だからすぐによっすぃーに告白しては駄目なのだ。向こうにも準備という
 ものがあるの」
・・・何か自分で言っててよくわかんない・・・。
でも梨華ちゃんは「わかった!ありがとう」って言った。単純な梨華ちゃんで
良かった。
240 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月28日(月)21時59分25秒
今、梨華ちゃんが告白すればどうなるか?向こうは当然驚くだろうし。
もし、よっすぃーが安倍さんの事を好きならば梨華ちゃんは失恋という事になり
梨華ちゃんはあの性格だから落ち込んで暗くなって・・・・もしかして自殺
・・・なんて事にはならないだろうけど、傷つく親友は見たくない。
「まずはよっすぃーと会わないとね・・・」
「ん?何?」
「え?いい、いや何でもないよ。ほら、始業式始まっちゃう」
教室にカバン置いて体育館へと急いだ。

始業式はいつも通り校長の長い話があって、まぁこれといって特別な事は
ないはず。暇で暇であくびが出そうだ。
やっと校長の話が終わって、あとは連絡事項だけだと思っていた。
「えー、この秋から転校生が我が高校にやってきました」
転校生という言葉に体育館内がざわつく。転校生らしき人がステージに上がってきた。
「転校してきた大谷雅恵です。学年は2年です。よろしくお願いします」
にこっと笑う表情。それを見た瞬間、何と言うか、言葉を失った。
他のとこではきゃーっと歓声が上がっている。

・・・・そうとう、やばい。

「というわけで大谷にはこのクラスに入ってもらう事になった。
 わからない事はクラスのみんなに聞いてな」
「はい」
そして大谷さんは同じクラス。
「柴ちゃーん。かっこいいよね。これは情報部としてはほうっておけないん
 じゃない?」
「ま・・・まぁね」
頭が真っ白になりそうです。
 

241 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月28日(月)22時11分32秒
「じゃぁ・・・大谷の席は〜。柴田の隣。窓側の1番後ろの柴田の隣」
「はい」
担任に言われて大谷さんがこちらへやってくる。丁度私の隣が空いていた。
ちなみに私の前の席は梨華ちゃんである。
「大谷です。よろしく」
「・・あ、柴田です」
軽い自己紹介。何か緊張して上手く話せない。
そしてHRになった。

「・・・・柴ちゃん?ね、柴ちゃん!」
「はっ・・・梨華ちゃん」
揺さぶられてはっと我に返った。
「HR終わったよ?」
「あ・・・あぁ、わかってるよ」
「変な柴ちゃん。大谷さん笑ってるよ」
ふと横を見ると大谷さんが私を見て笑ってるじゃないですか。私何も
おかしい事してないんだけど・・・。
「柴田さんっておもしろいね」
「いえ・・・そんな事は」
「そうなんですよー、いつも変で」
「梨華ちゃん!」
梨華ちゃんはからかうように言ってくる。いつもは逆なのに。
私ははぁーっとため息をついて、席を立つ。
「何処行くの?」
「ちょっとね」
教室を出て行って、1年の方に向かった。目標はもちろんよっすぃーだ。
1年の方もHRが終わったようであちこちに生徒達がいる。
「いるかなー?」
ひょこっとクラスを覗いてみる。
「・・・・あ、いた。よっすぃ〜!」
声をかけるとよっすぃーは気付いたみたいでこっちに来た。


242 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月28日(月)22時26分22秒
「何すか?・・・まさか取材じゃないでしょうね」
「まさか〜、そんなんじゃないよ。もっと重要な事」
疑いの眼差しをそそがれる。
「よっすぃー。真剣な話なのだ」
「なのだってとこが真剣に見えないですけど」
「も〜マジで真剣なんだって。午後時間ある?」
ちょっと必死になって言ってみるとよっすぃーは信じたようで。
「・・・ありますけど。何か?」
「ちょい、話があるんだ」
「・・・何関係ですか?」
私はよっすぃーに耳打ちした。
「・・・安倍さん関係」
するとよっすぃーの顔が強張った。
「・・・わかりました。何時ですか?」
「んじゃ、1時に駅の近くの喫茶店」
「はい、1時ですね」

これでよっすぃーから話を聞く事が出きる。再び教室へ戻った。
「あ、柴ちゃん。遅かったじゃん」
教室には人が少なかった。今日は午前中だけだからみんな帰ったのだろう。
「大谷さんは?」
「職員室に用事あるからって、行っちゃったよ」
「そっか。・・・・梨華ちゃん、良い事教えてあげよう」
「え?何々?」
「よっすぃーはね、ベーグルが好きなわけ」
「知ってるよ〜。基本でしょ、基本」
「こないだ2つ向こうの駅にベーグルの専門店出来たの知ってた?」
「え!?知らない〜」
「・・・・これ、地図。今日の午後にでも買いに行ってきなよ」
すっと場所を書いた地図を梨華ちゃんに出した。
「ありがと〜。やっぱ持つべきものは親友よね。もう行ってくる!」
梨華ちゃんは考えずに行動する事が多い。思い立ったらすぐ行動する。
・・・きっと今日はよっすぃーと帰ろうとしていたはずでついでに何処か
遊びに行こうとしていたかもしれない。でもこれで大丈夫。

243 名前:作者。 投稿日:2003年07月28日(月)22時34分42秒

(〜^◇^)<やっと更新!作者只今、体調不良!でも今日復活!

>238 和尚様。
     終わりにしますとも!きっとみんなが!
     えっと・・・いじめの人なんですが、今回柴田さんが多すぎた
     ため、出す事が出来ませんでした。ごめんなさいぃ〜!
     でも次回は柴田さんとよっすぃーの会話の中に名前が
     出てくるのでそれでわかると思います。予想でもしてみて下さい。
     ヒントは・・・・自分大好きな人です。
 
最近、胃腸が悪い・・・・食事がまともに取れず1日で1キロ痩せました。
食べると、胃が痛くなり吐き気をもよおす。そんな状況。
何とか胃薬で・・・・。

(0^〜^)<次回、ついに明らかな事実が・・・・。
(^▽^)<次回更新をお待ち下さい!

244 名前:和尚 投稿日:2003年07月28日(月)23時15分41秒
今回は柴田さんがキーポイントになりそうな予感。
安倍さんいじめてる人、ヒントでわかりました(多分)
次回更新がドキドキするぅ〜。

具合が悪いとの事ですが無理しないで下さいね。
245 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月30日(水)21時13分03秒

 <吉澤 視点>

学校が終わって家に帰る。さっき梨華ちゃんからメールがあって
今日は先に帰るとの事だった。
「1時か」
お昼ご飯を食べて、再び家を出た。今日、学校で柴田さんに呼ばれて、
安倍さん関係の事で話がしたいとうちに言ってきた。
あの情報通の柴田さんの事だから、きっと安倍さんについても知ってる
んではないかと思う。
黒のTシャツにジーパンの格好で駅に向かって歩いていた。夏休みは
終わったが太陽の日差しはまだ暑い。
────20分後。駅の近くにある喫茶店についた。
扉を開けて中に入る。すでに柴田さんはいて、うちに手をふっていた。
「すみません、遅れて」
前に安倍さんと待ち合わせた時も自分が遅れたなぁと思い出した。
「いいよ〜。私が呼び出したんだから」
席についてうちはアイスコーヒーを注文した。
「・・・・まぁ、早速本題に入るわけなんだけど」
カバンからいつもの手帳を取り出し、あと1枚の紙も取り出した。
テーブルの上にそれらが置かれた時注文したアイスコーヒーがきた。
「安倍さんの事でね。私、去年安倍さんについて調べた事があったの」
柴田さんは真剣な表情で話し出した。うちも真剣に耳を傾ける。
「このページに・・・」
手帳のページを開いてうちに見せてくれた。確かに安倍さんの事について
いろいろ書かれていた。
「よっすぃーは安倍さんの事、昔の事を知ってるの?」
「・・・・・はい。本人から聞きました。いじめの事」



246 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月30日(水)21時43分54秒
やっぱりそうだったかという柴田さんの表情。でも一体どうして柴田さんが
この話を出してくるのか?
「あの・・・どうしてですか?」
もし、また情報の為ならやめてほしいと思った。人の過去を再び蘇えらせる
なんてひどい事だ。そっとして欲しいものだ。
「去年、私は安倍さんについて調べてた。友達から聞いた噂。
 いじめ・・・それは事実だった。それで終わろうとしたけど、
 気になったの。それでもっと深く調べて・・・いじめていた相手や
 いつから始まったのか。全て調べて・・・・」
柴田さんは噛み締めるように言っていた。
「それは個人的な興味本位。新聞のネタとかは考えってなかったよ。
 でも・・・ひどい事だよね。人の事、ほじくり返すように調べてたなんて」
「・・・柴田さん」
「何故、今回よっすぃーにこの事を話すかというと。こないだ梨華ちゃんと
 買い物してた時によっすぃーと安倍さんに会ったよね。結構仲良さげな
 感じだったからよっすぃーなら安倍さんの事知ってると思ったんだ」
手帳をカバンにしまいながら柴田さんは言った。テーブルの上には1枚の
紙だけが残っていた。よく見るとそれはコピーみたいだ。
「それでね。まぁ・・・いじめていた人は安倍さんと同じ3年生の
 グループの人達。でも、その影で動いてる人がいるかもしれない・・」

・・・・はい?

柴田さんの言ってる意味がわからなくて、しばし硬直してしまった。
店内のざわつきがやけに耳につく。
「柴田さん・・・それは3年生の人達が言われてやった・・・って事ですか?」
おそるおそる聞いてみた。コクリと柴田さんが頷く。


 
247 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月30日(水)21時58分45秒
「それで、これを見て欲しいの」
ここで柴田さんはテーブルの上に置かれてる紙を指差した。
「これは今年入って来た1年生の名簿なんだけど・・・・この子」
この人と言われて指差す方を見る。

 1年6組 32番 松浦亜弥

「この人が・・・?」
「まわりにいろいろ聞いてみるとこの名前がよく出てきて。この子ね、
 かなり可愛いのよ。ホント男女共にモテるわけ」
知らなかった・・・・。クラス違うと、知らない人っていうのはホント
知らないから。
「安倍さんと同じ中学の出身で、家がすごくお金持ち。成績もまぁ良くて
 テニス部に入ってる。優しい性格で面倒見もいい。友達も多い方」
「え・・・ちょっと待って下さいよ。そんな子が普通、やりますかね?」
聞いてみると別に悪い子には感じない。
「だよね。聞き込みして私も最初は疑った。でも・・・中学時代に問題が
 あるのよ」
柴田さんの顔が険しくなる。そしてゆっくり口を開いた。
「安倍さんって、結構可愛いでしょ?」
「え・・・あ、はい。そうですね」
笑顔がめちゃくちゃ可愛い安倍さん。
「中学時代の時ね、松浦さんが好きだった人が・・・・その、安倍さんを
 好きだったの」
恋愛にはよくある話だ。好きな人には別に好きな人がいる。
「それで?」
「・・・松浦さんは安倍さんに嫉妬。でも安倍さんはその頃中学を卒業し、
 高校に入学した。もう自分では追う事が出来ない。だから同じ学年の人に
 お金を渡して、いじめをやってもらっていた」

・・・頭が、痛い。
248 名前:7.愛情と友情。 投稿日:2003年07月30日(水)22時15分07秒
「自分大好きな松浦さん。他に目立つ人がいるのはとてもむかつく事。
 だから、可愛いし性格も良い安倍さんがホント嫌いだったのね」
「はぁ・・・頭が痛くなります」
「っで、その松浦さんが今年、私達の学校に入学してきた。これは
 結構危ないんじゃないかなぁ・・・と」
柴田さんは紙をカバンにしまった。
「そうですか・・・わかりました」
「・・・私、今回の事あってね。何か安倍さんの助けになる事出来ないかなぁって
 思って。今まで新聞のネタとかで人に迷惑な事してきたと思う」
・・・・わかってんだ。迷惑な事って。
「でも、これからは誰かの為にしたいんだよね」
俯いて言う柴田さん。
「・・・そうですね。出来ますよ、柴田さんなら」
「そ、そうかな・・?」
柴田さんが不安気な表情で見つめられると、困るのですが。
「ええ、出来ます」
「ありがとう。頑張るよ」
喫茶店にかなり長い間いて、会計しようとレジに向かった時。
「私がおごるから」
「え・・・そんな、悪いですよ」
「いいから、いいから。今までさんざんよっすぃーに取材させてもらったし」
・・・・そうか?ならおごってもらおうかな。

会計を済ませて喫茶店を出る。相変わらず気温は暑い。
お互いに携帯番号とメアドを交換した。
「あ、あと!質問なんだけど」
「はい」
「・・・好きな人って安倍さんじゃ・・?」
・・・・何でそうなるかね。柴田さん。
「・・・いいえ、違います」
笑顔でうちはそう答えた。すると柴田さんも笑った。


249 名前:作者。 投稿日:2003年07月30日(水)22時21分26秒

(0^〜^)<更新なり。ついに明らかに・・・。

>244 和尚様。
     どうでしょう?ついに明らかになったわけですが・・・。
     具合の方はだいぶ回復しました!どうも風邪気味だったみたいです。
     
・・・そういえば、大谷さん。一応、登場してるんですよね(汗)。
石川さん出てきてないなぁ。次はついに松浦さん登場予定です。
ではでは。

250 名前:和尚 投稿日:2003年07月31日(木)13時03分24秒
やはり松浦さんでしたか・・・。読んでいた時に
(0^〜^)<頭が、痛い
(和 尚)<頭が、痛い
とよしざーさんとシンクロしてしまいました。
251 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月04日(月)21時56分12秒

 『8.仲間のしるし』

 <松浦 視点>

許さない。あたしは許さない。
あたし以上の人がいるなんてあり得ない事。

だから下にさげるの。
あたしの上に立つ事は許されない行為。
だから、あたしは────
 
今年の春、高校入学して1番初めの学力試験ではトップになり、
テニス部に入って1番手になったり、クラスの委員長を率先してやったり、
もちろん友達は多い、困ってる人には手を差し出してあげたり、相談に
のってあげたり、中間期末試験は常に上位を狙ってた。

全てが完璧なの、あたしは。

そうじゃなきゃ駄目なの。

なのに、あたしの近くにはあの人がいる。

『安倍先輩って知ってる?何かね、可愛いんだって』
中学時代、友達が言っていた。

『・・・ごめん。俺、好きな人いるんだ。・・・安倍先輩が好きなんだ』
中学時代、あたしの好きな人が言っていた。

・・・・許さない。
あたしよりも目立つなんて。

だからね、あたしは・・・・壊すの。

あの人を───壊すの。
252 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月04日(月)22時04分30秒

 <吉澤 視点>

始業式の次の日。今日から授業と部活動が始まる。
放課後、いつものように部室へ行く。
「・・・まだ、いないか」
いつもと何も変わらない部室。だだ、1つだけ違うのは矢口先輩がいない事。
ごっちんとうちだけの陸上部となった。

「んぁ、よっすぃー」
少し遅れてごっちんがやってきた。眠たそうな顔をして。
「おぉー、ごっちん」
うちはジャージに着替えてぼーっとしていた。ごっちんもジャージに
着替え始めた。

・・・なんつーかさ。

「ごっちん・・・」
「んぁ?」
「なんつーかさぁ・・・」
「・・・うん」
「・・・・やる気が」

「「出ないよね〜・・・」」

声がハモッてお互い目を合わせた。少し可笑しくて笑い出した。
2人だけの笑い声が部室の中に響く。

「練習しよっか」
「んぁ、そだね」

靴の紐を縛りなおして、部室を出た。



253 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月04日(月)22時15分48秒

 <石川 視点>

昨日の午後、買って来たベーグルを今日大切に持って来た。
柴ちゃんが教えてくれたお店はとてもいい感じで今度ひとみちゃんを
誘ってそこに行こうと思った。
「早く放課後にならないかなぁ〜」
「梨華ちゃん。浮かれすぎ」
柴ちゃんは呆れたように言う。でも私は別に構わない。
「あ、梨華ちゃん。業務報告」
「何?」
「・・・よっすぃーの好きな人。安倍さんじゃないよ」
・・・・え?
柴ちゃんの言葉を理解するのに約30秒はかかった。

「ほ、ホントぉ!?」
意外にも声が大きくて教室に響いた。みんなの視線が私に集まる。
「何で嘘言わなきゃいけないの」
「だって・・・だって」
「ホントだってば。でも!1つだけ忠告」
人差し指を立てて柴ちゃんは私を見た。
「まだ油断は禁物・・・だからね」
「う、うん」
柴ちゃんの目が悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。
私は一瞬気になったけど、すぐにひとみちゃんの事で頭がいっぱいになった。

焦りは禁物、油断も禁物。
告白は焦らずゆっくりと・・・・。ひとみちゃんの好きな人が安倍さんじゃ
なくても他の人かもしれないし。浮かれすぎはかっこ悪いし。
私の方が年上なんだから、年上の余裕?みたいなモノもひとみちゃんに
見せておかねきゃ・・・。
クールでセクシーな女を目指すのよ、今年は!

「・・・梨華ちゃん。全部、声に出てるから。あと、年上の余裕って何?」
柴ちゃんの声が聞こえたけどあえてそれは無視した。


254 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月04日(月)22時27分06秒

 <矢口 視点>

「嫌ぁ〜・・・・」
「でもねぇ・・・やらないとね。駄目だし」
「嫌だよぉ・・・」
「そんな、泣かれてもねぇ。なっち、助けてよ」
バカなオイラ。始業式の次の日から授業が始まったのだが、体育の授業
が今日あった。ついでに何かというとハンドボール。

勝ってたんだよ。オイラのチームは。
もうオイラがホームラン打ちまくりで点数入りまくりで。
『かっとばせー矢口!』
『おう!まかせとけ!』

カキーン!

『矢口!走れ!ホームラン!』
オイラ頑張って走ったよ。元陸上部だし?走りには自信があるもん。
なのに・・・・なのにー!

ぐぎっ。

『え・・・・?うわぁぁぁぁ〜!』

「全く、足首ひねって転ぶなんて」
なっちが呆れて言う。圭織も同じく。
「ほら、消毒しなきゃ。ばい菌入るでしょ」
「うぅ〜・・・」
両足の膝から血が出ていた。これ絶対しみるでしょ?
足首の方はひねったけど大丈夫だった。
「しみる!しみる〜痛い〜!」
「ちょ、叩かないでよ!」
「矢口、おとなしくしなさい」
なっちに腕を押さえられて身動きが出来ない状態。消毒された膝に
カットバンが貼られた。

・・・全く。2学期初日がこれかよ・・・。




255 名前:作者。 投稿日:2003年08月04日(月)22時32分39秒

>250 和尚様。
     松浦さんでした。作者も頭が・・・・。
     今回、松浦さん初登場しました。怖いですね。
     後はみなさんの学校生活状況でしたが、矢口さん
     主人公なのに、あんな扱い・・・。

(〜T◇T)<痛い〜!痛いってばー!(ジタバタ)

次回、松浦さん動きます・・・。
256 名前:和尚 投稿日:2003年08月05日(火)19時05分05秒
松浦さんブラックだわ・・・・
松浦さんの行動は目が離せませんです。
次の更新が怖い・゚・(ノД`)・゚・。

矢口さんは転がってるし・・・
(〜T◇T)<転んだんだよ!!

1つ突っ込んで良いですか?ハンドボールではなく、ソフトボールでは?
257 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月05日(火)22時09分17秒

 <安倍 視点>

始業式から翌日。矢口は体育の時間転ぶわで。
大した怪我でもないのに、騒ぐし、叩くし。圭織と必死になって手当てして。
放課後、久しぶりに3人で図書館に行こうという事になった。
「あ、ちょっと職員室行くから。先行ってて」
「うん。わかった」
「じゃ、後でねー!」
私は1人職員室へ向かった。

・・・・何だろ。

廊下を歩いてる中で誰かに見られてる気がした。後ろを振り向いても
私を見てる人なんて誰もいない。気のせいだと思って職員室の扉を開ける。
「先生ー。これ」
提出するプリントを担任に見せる。
「おー。じゃ、俺の机に置いといてな」
「はーい」
担任の机にプリントを置いて職員室を出て行く。
「あ、安倍先輩」
ふと誰かに声をかけられた。目の前には知らない子。
校章は1だから1年生だ。
「・・・何か?」
「あの。化学の先生に呼ばれてますよ」
「・・・え?」
「すぐ、化学室に来いって」
「・・う、うん。ありがと」
その子はとても可愛い顔をしていた。お辞儀をしてここから去って行った。
私は言われた通り化学室へ向かった。


258 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月05日(火)22時22分00秒
・・・・何かあったけなぁ。ちゃんとレポートは出したはずだし。
階段を上って化学室の前へ来た。ガラッと扉を開ける。
「先生ー、何ですか〜?」
独特の化学室の薬品の匂い。いろんな実験の機会。中には誰もいないようだ。
すぐそこに隣の化学準備室へ繋がる扉があるのでもしかしたらそこにいるのでは
ないかと思い、ドアノブに手をかけてみた。ガチャっと回すが開かない。
「あれ?開かない・・・」

何でだろ・・・?

振り返ったその時。入って来た扉がしまり、鍵をかけれらた。
「え!?誰!?」
暗い化学室の中。電気をつけようと壁の方に向かう。

「はっ、バーカ」

聞き覚えのある声。すぐそっちの方へ向く。

・・・・あ。

「最近、調子にのってんだって?」
「べ、別に・・・私は何も悪い事してない・・・」
「ふーん。あんた、気に入らないんだよね」

じりじりと近づいてくる。私は後ずさりする。ドンっと壁にぶつかった。

「何・・・する・・の?」

「何すると思う?」

また前と同じだ。何も変わってない。

「叫んだって無駄だよ。先生はいないし、鍵かかってるから誰も入って来られない」
「やめて・・・嫌・・・」
「あんたを憎んでる人がいるよ」

その人は少し笑って、表情を無くした。

そして、私の間の前が真っ暗になったんだ。





259 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月05日(火)22時25分08秒
・・・あ、間違い発見。

258の最後。 間の前→目の前

あと、和尚様が発見してくれた事も ハンドボール→ソフトボール
和尚様、ありがとうございます!

いつも・・・間違える・・・ハンドボール(泣)。
260 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月05日(火)22時37分14秒

 <矢口 視点>

「ねぇ、なっち。遅くない?」
図書館で勉強しているオイラと圭織。なっちもいるはずなんだけど
職員室に用事があるからって遅れてくるのだ。
「・・・そうだねぇ。長引いてるのかな?」
「オイラ、嫌な予感がする」
そうなっちとわかれた時に、嫌な予感がした。
「何?その嫌な予感って」
「わかんない・・・」
なっちとわかれて15分くらいが経過していた。職員室の用事・・・・。
確かなっちは手にプリントを持っていた、おそらくそれを提出しに行ったんだろう。
なのに普通15分もかかる?もしかしたら先生と何かしゃべってるのかもしれない。
図書館と職員室はそう離れてはいない。1分ぐらいでつく。
「・・・・オイラ、探してくる」
ガタッと席を立つ。
「ちょ、矢口?なっちならすぐ来るよ〜」
「・・・オイラ行かなきゃ。気になるんだ・・・」
「え?や、矢口!」
圭織の声に振り向かずオイラは急いで図書館を出た。廊下を走って職員室へ。
・・・嫌な予感が当たらなきゃいいけど。
ガラッと扉を開ける。
「失礼しまーす」
担任のとこにずがずが歩く。なっちの姿はどにもいない。
「先生、なっちは?」
「お、矢口。安倍?来たけどすぐ出て行ったぞ」
「なっちが出て行って何分たった?」
「んー、もう10分くらい経つかな・・・」
それを聞いてオイラは職員室を飛び出した。

261 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月05日(火)22時49分18秒

・・・・なっち!なっち!何処にいんだよ!

一回図書館に戻って圭織に報告した。圭織も真面目な顔になって一緒に
なっちを探し始めた。
「なっち〜!」
長い廊下を走ってなっちを探す。圭織は別のとこを探している。
「あ、矢口先輩」
「んぁ?あ、先輩」
途中でよっすぃーとごっちんに会った。2人に今までの状況を話す。
「ジュースでも買いにいってんじゃないの?」
ごっちんが笑いながら言う。
「・・・・ごっちん!探そう」
「へ・・?わ、わかった」
「先輩。うちらも探します!」
よっすぃーは真面目な顔してごっちんを引っ張って何処かへ行った。
・・・ありがと。よっすぃー・・・ごっちん。
オイラも再び走り出した。

しばらく探したけどなっちは何処にもいない。知り合いに聞くけどみんな
知らないの返事ばかりだ。
一旦圭織達と落ち合う事になった。購買前に集まった。
「あれ・・・?」
何か人数が増えていた。

圭織、よっすぃー、ごっちん、梨華ちゃんに柴田さん・・・。

よっすぃー:「1年の教室の階にはいませんでした」
ごっちん :「んぁ。右に同じく」
圭織   :「1年、2年、3年の職員室にもいなかった」
梨華ちゃん:「2年の教室の階にもいなくて、3年生の方も」
柴田さん :「トイレも見たんだけど・・・いませんでした」

・・・・みんな・・・。

262 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月05日(火)22時55分07秒
「下駄箱にはちゃんと靴があるし・・・外に行ったんではないね」
圭織が言う。
「中庭はどうですかね?」
「んぁ、見てないね」
「他には・・・」
みんな真剣な顔して話している。

やっぱ・・・仲間だよね。

「矢口!ぼーっとしてないで、考えてよ」
「お、おう」

「・・・・・もしかしたら」

柴田さんがはっとした顔になって言った。
「・・・柴田さん。まさか・・・」
よっすぃーが柴田さんを見て言う。
「全く無いとは言い切れないけど・・・」

何?何だ?

「何?オイラにも教えてよ」
「実は・・・安倍さん。前にいじめられてた事があって・・・」

絶句した。何も言葉が出てこなかった。

263 名前:作者。 投稿日:2003年08月05日(火)23時01分21秒

>256 和尚様。
     松浦さん、ブラックです。・・・・ブラック(汗
     突っ込みありがとうございます!いつも間違えちゃうんですよ。
     今回、松浦さん動きました。なっちがピンチ!
    
(゚皿゚)<ピーガガガガガ・・・・。
(〜;^−^)<圭織!電波飛ばしてなっちの居場所がわかるの!?

仲間総動員でなっちを探す!次回、なっちが見つかります。
   
264 名前:和尚 投稿日:2003年08月06日(水)21時43分21秒
いいトコで切りますね〜。
自分も安倍さんを探したい心境でした。
松浦さんブラックが似合いすぎで怖かったです・゚・ヾ((Д`≡´Д))ノ・゚・
265 名前:タケ 投稿日:2003年08月08日(金)09時43分37秒
いい所で終わってる・・・うわ〜!続きが気になる!!
安部さん頑張れ!みんなが来るから!
266 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月09日(土)17時24分13秒

 <吉澤 視点>

しんと静かになった。誰も言葉を出さなかった。

「・・・・な、なっちが・・・?」

しばらく経って矢口先輩が口を開いた。すごく驚いた顔をしている。
うちと柴田さん以外はみんな驚いていた。

だけど・・・今は、そんな事してる暇はない。

「と、とにかく!探しましょう!」
うちはそう言い、走り出した。みんなも他の所を探しに走り出した。

だんだん暗くなっていく空。廊下も次第に暗くなっていく。
とにかく片っ端から教室、トイレ全ての場所を探した。
「何処にいるんだ・・・・!」
立ち止まって息を整える。結構走り回ったから汗がびっしょりだ。
ふと、反対側の校舎を見た。うちがいる側の校舎は主に1年2年3年の
教室がある方で反対側の校舎は生物室や音楽室などがある。
「・・・・そういえば。化学室だけ・・・鍵、かかってたんだよなぁ」
うちが反対側の校舎を見た時、化学室だけ鍵がかかって入れなかった。
まぁ、普通担当の先生がいない場合は鍵がかかってるんだけど。

・・・・まさか・・・!?

ダッシュして反対側の校舎に向かった。化学室の扉の前に立つ。
扉のガラスから中は暗くてよく見えない。
「あれ・・・?」

───扉が、開いた。

267 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月09日(土)17時37分22秒
おそるおそる中に入る。化学室の独特の匂いがする。
「・・・・・安倍さん・・・いますか・・?」
とりあえず、暗くてよく見えないので電気をつけようと壁の方に向いた。

・・・・あ!

「安倍さん!!?」

電気スイッチがある壁にもたれかかるように座っている安倍さんがいた。
うちはすぐ安倍さんの方に駆け寄りしゃがんだ。
「安倍さん!安倍さん!」
気を失っているのか、安倍さんは目を覚まさない。すぐに呼吸の確認をすると
呼吸はしていた。ただ、気を失っているようだ。
そして携帯でごっちんや梨華ちゃんにかけてみんな化学室に来るように頼んだ。
「安倍さん・・・・」
うちの腕の中にいる安倍さんは、とても小さく見えた。
「すいません、助けてあげられなくて」
小さくそう言って安倍さんを抱きしめた。

知っていたのに。安倍さんが危険な事、わかっていたのに。

・・・・ちくしょー・・・・。

「よっすぃー!」
すぐにみんなは来た。最初に中に入って来たのは梨華ちゃんと柴田さんだった。
それからごっちん、矢口先輩と続いて最後に飯田さんが入って来た。
「なっち!?」
「大丈夫です。気失ってるみたいで」
梨華ちゃんが電気をつけてくれた。矢口先輩が安倍さんを見て泣いていた。
「よっすぃー・・・ここ、鍵かかってなかった?」
柴田さんがうちに言った。
「はい・・・。一回集合した前にうちが見た時は・・・」
うちが言うと柴田さんはうーんと唸る。



268 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月09日(土)17時45分49秒
とりあえず安倍さんを保健室へ運ぶ事にした。うちが安倍さんを抱えて運ぶ。
みんな無言で、保健室に向かっていた。

保健室の先生はいなかった。安倍さんをベットにおろす。
ふと、安倍さんの足を見ると・・・・アザがあった。ちょっと気になって
安倍さんの袖のシャツをあげる。
「・・・・ひどい・・・」
前に見た時よりもアザが増えていて、ひどかった。
うちのココロは怒りと悲しみしかなかった。

「・・・よっすぃー。みんなに言わないと」
柴田さんが辛そうな顔で言った。うちは頷いた。
「あたしん家、来ればいいよ。今は安倍さんが目覚めるの待とう?」
ごっちんが言った。
「そうだね・・・」
もう陽は沈んで、星が輝き始めていた。


269 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月09日(土)17時52分52秒

 <安倍 視点>

何で・・・・私、悪い事何もしてないよぉ・・・?

足や腕が痛い。この感覚・・・・昔と同じだ・・・。

また、始まったんだ。

嫌だよ・・・あんなに辛いのは、もう嫌だよ・・・。

誰か、助けて・・・・。

ねぇ・・・・お願い・・。


ダレカタスケテ・・・・・。


暗闇の中で薄れていく視界。足や腕が痛い。何も聞こえない。
涙はとめどなく流れて、終わらない。

もう・・・いいや。

もう・・・このまま、消えてもいいや。

だって、私は・・・いてもいなくても同じなんだから。

2年前の私と同じなんだから。

そう思いながら、ゆっくり目を閉じた。
270 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月09日(土)18時05分03秒
『なっち・・・お願いだから、目覚ましてよぉ・・・』

え・・・?誰・・・・?

『何で教えてくんなかったんだよ・・・オイラ、悲しいよ・・』

聞いた事ある声・・・・。

『なっち・・・・仲間でしょ?オイラ達は・・・・』

ヤグチ・・・・矢口の声・・・・。

『矢口・・・なっちは大丈夫だよ』

これは・・・圭織の声・・・。

何か、あったかいモノを感じる・・・。

私・・・1人じゃない・・・?

そうだ・・・・2年前の私とは違う。

今の私には・・・・大切な仲間が───


目が覚めると天井が見えた。消毒液の匂いがする。
「あ!目覚めた!?」
視界に矢口が入る。それから次々とみんなの顔が私の視界に入った。
「あれ・・・?私・・・」
ゆっくり起き上がると矢口が泣きながら抱きついてきた。
「もぉ!良かったよぉ〜」
「みんなで探したんだよ」
圭織が優しい微笑で言った。みんな安心したような顔をしている。

・・・・あ・・・私。確か・・・化学室で・・・。

蘇える記憶。鮮やかに広がる記憶は恐怖しかなかった。

271 名前:作者。 投稿日:2003年08月09日(土)18時12分13秒

>264 和尚様。
     安倍さん発見です。松浦さん・・・これからどんどん出てきます。
     ブラックがまた濃いブラックになりそうです(汗

>267 タケ様。 
     続きです!安倍さんが見つかりました!
     みんなが本当の事実を知る時がついに来ました・・次回です。

次回は松浦さん出るかなぁ・・・・まだちょっと先のよーな・・・。
市井さんはいつ出るのか・・・・(汗)。
272 名前:和尚 投稿日:2003年08月10日(日)22時10分18秒
安倍さんの心は恐怖でいっぱいのハズ・・・。
その恐怖をどうやって取り除くのかが鍵ですね。
あ〜次の更新がドキドキするなぁ〜
273 名前:タケ 投稿日:2003年08月11日(月)18時28分47秒
安部さんに仲間がいてよかった・゚・(ノД`)・゚・
これから松浦はどう出るんだろう?
続き期待
274 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月11日(月)20時52分58秒

 <市井 視点>

仕事が終わって家に帰ると玄関に靴がたくさんあって驚いた。大人数が
いるわりには中は騒がしくは無かった。
「ただいま〜・・・・」
時刻はPM9:00。おそるおそるリビングに入ってみる。

・・・な、何なんだ。この暗さ。

「あ、市井ちゃん。おかえり」
後藤が気が付いてくれてちょっとほっとした。とりあえず自分の部屋に
戻ってカバンを置いた。すると後藤が入って来た。
「ごめんね。いっぱい人がいて」
「いや・・・何か理由があんだろ?」
部屋の中がむっとして暑かったから窓を開けて空気の入れ替えをする。
「うん・・・後で話すね」
電気をつけてないから後藤の表情がよくわからないけど沈んだような感じだ。
何があったんだろ・・・?
後藤が抱きついてきた。優しく抱きしめ返す。
とりあえず今は何も聞かない方がいいようだ。後藤も後で話すって言ってるし。
「市井ちゃん・・・」
「ん?」
「人のココロって難しいね・・・」
「・・・まぁ、な。みんな同じじゃないからなぁ」
後藤は少し涙ぐんだ目をしていた。

275 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月11日(月)21時09分42秒

 <矢口 視点>

全てを知った今、オイラの目は涙でいっぱいだった。
よっすぃーと柴田さんからなっちのいじめの事を聞いた。なっちも自分の
事を話してくれた。
なっちは松浦さんという人物は知らなかったみたいだ。いつもいじめていた人は
3学年の人達で、オイラもその人達は苦手なタイプだった。
「・・・早く言ってくれれば、良かったのに」
そしたらなっちを守れたのに。なっちは1人じゃないのに。
「ごめん・・・矢口。・・・・もう私には関わらない方がいいよ」
「何で・・・?」
「私の友達だったコはね、私の友達だからって事でいじめられるようになって」
何だよ、それ。ふざけんな。
「みんなも。私のせいで危険な目にあっちゃ駄目だよ・・・」
なっちは無理してる笑顔でそう言った。

なっちは何も悪くないのに。悪くないのに!

「何言ってんすか」
いつもより低い声。よっすぃーが言った。
「安倍さんが危険な目にあってんのに、見て見ぬふりなんて・・・うち、出来ませんよ!」
よっすぃーの声がリビングに響く。
「私も・・・出来ない。なっちの友達やめるなんて事、絶対出来ない」
圭織が言った。その声には怒りが込められていた。
「・・・私も、出来ません」
「私もです」
柴田さんに梨華ちゃん。

「・・・・んなの、オイラにだって出来ないよ!」

しばらくしてごっちんが戻って来た。紗耶香も来た。
「なっち・・・なっちは1人じゃないんだよ?1人で抱え込む事ないんだよ?
 こんなに仲間がいるじゃん」
オイラがそう言うとまたなっちの瞳から涙が溢れ出た。



276 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月11日(月)21時22分37秒
「・・・ありがとう。みんな」
「おし!みんなでこれからの事、考えよう」
話し合いは夜遅くまで続いた。

「とにかく安倍さんを1人にしてはいけない事ですね。なるべく複数で
 3人が一番いいです」
柴田さんを中心に話し合いは行っている。みんな真剣な顔だ。
「なら、オイラと圭織がいつも一緒にいられるから大丈夫だね」
「先輩達が何か用事があればうちらがいますし」
「帰り道が1番危ないですよね。ここらへん、人通りが無い道が多いですし」
「まぁ、オイラが送るし。同じ方向だから」
とにかくなっちを1人にさせない事が大事だ。
・・・でも、それだけじゃ何も解決にならない。

「松浦ってコ。何とかさせないと。オイラが会って話そうか?」
「矢口先輩、危険っすよ。真面目に話しなんて聞いてくれそうにない相手だし・・」
「私が松浦さんについて詳しく調べます」
「柴ちゃん。私も手伝うよ」
「んぁ。でも話し合いは必要なんじゃない?避けてはいけないと思う」

言葉にしなきゃ伝わらない気持ち。

人間には言葉を話せる能力がある。

ココロん中を知るには話し合いが必要不可欠。

「よし!みんなでなっちを守るんだぁー!!」



277 名前:作者。 投稿日:2003年08月11日(月)21時29分54秒

>272 和尚様。
     いじめって怖いもんです。実際、私の学校でもあったのですが・・・。
     安倍さんの恐怖はきっと仲間のみんながなくしてくれます!

>273 タケ様。
     仲間って大切です・・・・(泣)。
     松浦さん、一体どうなっちゃうんでしょう・・・次回出てくると
     思います!

更新が少なくて申し訳ないです(汗)。市井さんがちらっと出ましたが
出したかったんです!(何)。はははは・・・・。

(〜^◇^)<守るんだぁー!!

278 名前:和尚 投稿日:2003年08月12日(火)12時33分19秒
素晴らしい仲間に支えられてる安倍さん頑張れ!!
でも背後からブラック松浦さんが来るのが怖いよ〜・゚・ヾ((Д`≡´Д))ノ・゚・

279 名前:タケ 投稿日:2003年08月12日(火)17時45分12秒
仲間ってやっぱ素晴らしい!
頑張れ!安部さん!
頑張れ!みんな!

ところで松浦さんと話し合うのはやっぱり矢口さん?
(^◇^〜)
280 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月13日(水)22時24分24秒

 <松浦 視点>

放課後───安倍さんに化学室に行かせて、あたしはさっさと学校を
後にした。

・・・楽しみだなぁ。

適当に駅周辺をぶらつきながら暇をつぶしていた。喫茶店に入って
アイスティーを飲みながら『連絡』を待っていた。
しばらく経って携帯がなる。

<任務完了!だいぶびびってたよ。>

3学年の人達に頼んで安倍さんをいじめてもらっていた。あの人達は
お金さえ見せれば喜んで何でもやってくれた。良い駒だ。1回につき
5万程度でやってくれていた。


・・・そろそろ、自分で動こうかなぁ・・・。

PM7:00。家に帰った。
「・・・ただいま」
相変わらず暗い家。『ただいま』なんて言っても無駄なのかもしれない。
2階に上がって自分の部屋に入る。カバンを放り投げて制服から私服に
着替えた。電気もつけないでベットに寝転んで天井を見上げる。






281 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月13日(水)22時38分46秒
部屋から出て下におりた。キッチンに入って冷蔵庫を開けてミネラルウォーター
を取り出す。キュッとふたを外して一口飲む。
テーブルの上にはお母さんが作ったと思われる夕食がラップして置いてあった。
ちなみに今、この家にあたし以外誰もいない。
お母さんはどうせまた新しい男といるんだろうし、お母さんはばれてないと
思ってるだろうけどあたしは全部知ってるんだから。妹は友達の家にいるだろう。
お父さんは仕事ばっかで家になんか帰って来ない。
「何が・・・家族、だよ」
とりあえず一応作ってもらった夕食をレンジで温めて食べておく。人間
食べておかないと能力が働かないからだ。それから勉強の予習と復讐を
した。ちゃんと成績を良くしてないとたまに帰ってくるお父さんがうるさい。
どっかの偉い人をやってるお父さん、あたしを一流の大学にいれたいらしい。

・・・はぁ。んな事どーだっていいよ・・・。

お風呂に入って、その後リビングでテレビを見ていた。ただ広いだけの
家の中、1人きりで生きている。
PM11:30。玄関の扉が開く音が聞こえた。
ばたばたと歩く音が聞こえ、その音は2階に上がっていった。妹らしい。
あたしは別に何も気にせずテレビの画面をぼーっと見ていた。








282 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月13日(水)22時50分53秒
気が付いたら日付が変わっていた。あたしは自分の部屋に戻って寝る支度をした。
布団の中に入ってMDプレイヤーのボタンを押した。自分の好きな曲が流れる。
暗闇の中、ずっと音楽を聴きつづけた。まるで何かにとり付かれたように。

あーぁ、生きてるってつまんないなぁ・・・・。

何度もそう思いながら、眠りにおちた。

────翌日。
目覚まし時計で起きる。また変わらない1日が始まる。
制服に着替えて下へおりるとお母さんが忙しく朝食の支度をしていた。
「あ、おはよう。亜弥」
「・・・おはよう」
いつも変わらない笑顔を浮かべるお母さん。

・・・・知ってるんだよ?あたしは。

「うわー!やばい、遅れる〜!!」
しばらくして妹が慌てておりてきた。
「朝ご飯は?」
「いらない!行ってきます!」
妹はばたばたと音を立てて家を出て行った。あたしはまだ時間に余裕が
あるから朝食を食べていた。特にお母さんと会話も無く、朝の時間を過ごしていた。
「今日、ちょっと忙しいから。夕食、外で食べてきてね」
そう言われて渡された一万円札。
「・・・うん、わかった」
あたしは無表情でそれをポケットにしまった。






283 名前:作者。 投稿日:2003年08月13日(水)22時58分53秒

>278 和尚様。
     今回、松浦さんでしたが、うーん・・・難しい。
     安倍さんは素晴らしき仲間に囲まれてますね〜。
     作者も嬉しいです。

>279 タケ様。
     矢口さん・・・・うーん、今の所そんな予感です(笑)。
     ブラック松浦さんの家の事情。いろいろあるようです・・。

更新がぁ〜短ッ。はぅー、最近ネットを長くやってる!と母親に
怒られまして・・・中々、更新が出来ませんで(泣)。
あー、自分のパソコンが欲しい・・・。

(〜^◇^)<出番無しかよ!

はい・・・無いです(泣)。
     
284 名前:タケ 投稿日:2003年08月13日(水)23時49分17秒
矢口さん出番無し(泣)
それは置いといて
暗いですね・・・松浦さんの家族・・・
安部さんをいじめる原因もやっぱりここから・・・?

(〜^◇^)<やっぱりここはオイラだろ!
期待してます
285 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月14日(木)22時53分10秒

 <安倍 視点>

みんなが守ってくれている。それが嬉しかった。
私の事で話し合ってくれて、その次の日。矢口が私ん家の前で待っていてくれた。
「おはよー!なっち!」
「おはよ!矢口。ごめんね。わざわざ来てくれて」
「何言ってんの。友達だしょ?」

矢口は優しいコ。私の自慢の親友だよ。

・・・ありがと、矢口。

それから数日間、何ら変わりなく過ごしていた。
「どうしよう。今日、オイラ担任に呼ばれてるんだ」
「・・・私も、部活の事でちょっと・・・」
放課後に矢口と圭織は困った顔して私を見ていた。
「大丈夫だよ。この数日間、何もないし」
私は笑って言う。でも矢口達はまだ不安そうだ。
「あ!よっすぃー達にも聞いてみよう」
矢口が携帯を取り出した。

───結果は。
よっすぃー曰く『今日は部長会議があって・・・すみません』
ごっちん 曰く『んぁー。ちょっと成績やばくて居残りさせられるんだよぉー』
梨華ちゃん曰く『進路の編集をやらないといけなくて・・・』
柴田さん 曰く『部長会議があるんです・・・・すみません』

「みんな駄目じゃんかぁよぉー!!」
矢口は携帯を切りながら叫んだ。
「ホント大丈夫だから!1人で帰れるよ!」
私は不安そうな2人を振り切って1人で学校を出た。



286 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月14日(木)23時11分00秒

 <市井 視点>

仕事が早く終わって家に向かって帰っていた。まだ後藤は帰ってないはずだ。
さっき携帯にメールが届いた。

<成績やばくて居残りだよぉー。 ごとー>

「・・・だからちゃんと勉強しとけよなぁ・・・せめて赤点とるなよ」
途中で本屋に寄って雑誌を立ち読みしていた。しばらく経ってそろそろ
出ようかと思った時、外に知っている人を見かけた。
・・・あれ?なっちじゃん。何で1人で帰ってんの?
ぼーっとなっちを見ていた。するとなっちは男に声をかけられていた。
なっちは迷惑そうにその男から逃げるが、男はしつこくなっちに迫る。
・・・何だ、あいつ。なっちが嫌なんだから。
私は本屋から出た。なっちがいる所は道路を挟んだ向こう側。
つまり、この道路を渡らなければいけないわけであって。
でも車は途切れる事が無い。
「弱ったなぁー」
手を挙げても止まってくれる車はいない。

はっと気付いた時。

なっちは男に掴まられていきなりあらわれた黒い車に乗せられた。

・・・やばい。

一瞬にして冷や汗をかいた。すぐさま黒い車は走り出す。
私は丁度タクシーがいたので止めてそのタクシーに乗った。
「すみません!あの!黒い車!追いかけて下さい!知り合いが無理矢理
 連れ去れたんです!」
タクシーの運転手さんはすごく驚いていた。すぐにタクシーは走り出した。






287 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月14日(木)23時23分30秒
心臓がばくばくいってる。携帯で誰かに連絡をとるも誰とも繋がらない。
・・・何だよ!
とりあえずメールをいれておいた。

<なっちが知らない男に連れ去られた!今追ってる!連絡くれ! 市井>

20分ぐらい走ったとこで黒い車は止まる。タクシーも距離を置いて止まった。
男が3人おりて来た、なっちもいた。
「すいません!ここでおります!」
私はジーンズのポケットから5千円札を取り出して運転手さんに渡した。
「つりはいりませんから!」
タクシーから飛び降りた。そこはマンション前だった。

おいおい・・・嘘だろ?

とにかく走ってマンション中に入った。エレベーターが動いていて、
見てると10階でとまった。エレベーターのボタンを押しても中々来ない。
非常階段を見つけて駆け上がった。その時携帯がなる。
『紗耶香!?どうゆう事!?』
矢口の声が耳に響く。
「どーもこーもないよ!今から場所言うから!」
私はここの場所を矢口に伝えて携帯をきった。10階についた。
なっち・・・。
息を整える暇も無く走る。すると悲鳴が聞こえて来た。
「やめて!嫌!やだぁ・・・」
「黙れよ!ほら入れ!」
扉のとこでなっちが逃げようと抵抗しているのが見えた。

「なっちー!!!」

私はそこに向かってダッシュをした。



288 名前:作者。 投稿日:2003年08月14日(木)23時28分09秒

>284 タケ様。
     ちょこっと出番の矢口さん。

     (〜^◇^)<もっと出せ!
     
     松浦家・・・問題ですね。この家族は。
     はい、この家が原因ですね。安倍さんのいじめは。
     まぁ・・・今回、すごい事になってるのですが(汗

また微妙なとこで終わりですね(^−^;
市井さん頑張ってますね。頑張って下さいね(ヲイ
     
289 名前:和尚 投稿日:2003年08月15日(金)00時18分01秒
くぁ〜やってくれますね松浦さん!こんな事するとは!!
思わず手に汗握りました!!

続きが気になる〜!!
そして・・・頑張っていちーさぁ〜ん!!
290 名前:タケ 投稿日:2003年08月15日(金)03時38分16秒
すごい事になってますね・・・
安部さんのピンチ、市井さんは助けられるのか?
そして矢口さんは・・・?

うぅぅ・・・続きが気になる
291 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月16日(土)21時54分13秒

 <安倍 視点>

───何だかわけがわからない。
いきなり知らない男の人に声をかけられて、無理矢理車に乗せられた。
ついたとこはマンションでその一室に入れられる。
力じゃ勝てるわけがなくて、抵抗してもその人達には無駄だった。
もう駄目かと思ったその時。
「なっちー!!」
誰かが私を呼んだ。扉の隙間から見えたのは紗耶香だった。
「紗耶香ぁー!!」
私は思いっきり叫んだ。すると男の人達が慌てて扉をしめようとした。
だけど、紗耶香はがっと扉を掴んで開けた。
「お前ら・・・何やってんだ?」
紗耶香は肩で息をしながら睨んで言った。
「・・・何って。別に頼まれて・・・」
1番紗耶香に近い金髪の人が言った。
「お前に関係無いだろ!」
私の腕を掴んでる茶髪の人が言う。
「・・・関係あんだよ。とにかくなっちを離せ」
紗耶香は中にわり込んで私の手を掴む。
「何だ、こいつ?感じ悪ぃな」
金髪の人が紗耶香の腕を掴む。
「・・・帰ろう、なっち」
私を見てる時の紗耶香の目はとても優しくて怖くなかった。

292 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月16日(土)22時07分45秒

 <市井 視点>

・・・これは、ヤバイな。
中に入った時そう思った。ここには4人男がいる。
簡単に帰してくれる連中ではない。
「・・・帰ろう、なっち」
なっちは怯えた目をしていた。
「帰すわけにはいかないんだよっ」
金髪男が私の腹を殴った。
「・・・くっ・・」
とにかくなっちを外に出さないと。私はなっちの手を自分の方に寄せて
扉から出させようとした。だけど男達にとめられる。
「俺達、ある人に頼まれてやってんだよね。金もらってるし、
 これちゃんとやればまた金もらえるんだよね」
「・・・いくら金に困っててもやっていい事と悪い事ぐらいわかるだろ」
私は男達を睨みつけて言った。
「はぁ?別に金になんか困ってねーよ」
「なぁ、早くやっちゃおーぜ。こいつ、邪魔だから殴っとけよ」
「そーだな。さ、彼女はこっちだよー」
なっちと手が離れる。もう1度掴もうとしても背中を蹴られた。
・・・このぉ・・・。
もう怒りもマックスにきた。私は拳で金髪男の顔を殴ってやった。
「な・・・何すんだよ!」
金髪男しか今、この場にいない。他の奴らはなっちを奥の方に連れて行った。
ついで足を蹴ってやった。
「痛っ!てめ・・・」
金髪男の拳が襲ってきた。頬らへんに当たった。
だけどひるまず私は殴った。




 
293 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月16日(土)22時17分18秒
何度か殴りうずくまった金髪男。気を失ったのか。
はっ、この市井をなめんじゃないぜ。
靴のまま上がってなっちを探す。1番奥の部屋にいた。
「なっち!」
なっちはベットに寝かされてシャツを脱がされようとされていた。
私はベットにのっかってる男に目掛けて飛び蹴りを1発。ついでに頭も殴った。
他の男は呆然としていた。すぐさまなっちを抱きかかえて走った。
玄関にまだ金髪男が寝ていたが無視して踏んづけて外へ出る。
「紗耶香ぁ・・・」
なっちは泣きながら私に抱きついていた。なっちを抱えて走るのは
ちょっと大変だったが、今はこの場を離れなければ。

マンションから出て、少し離れた公園まで来た。なっちをおろして
ベンチに座らせる。
「はぁ〜・・・良かった」
まずは最悪の事態を免れる事が出来た。
「ごめんね・・・紗耶香」
まだ泣いてるなっち。
「いいんだよ。なっちが無事でホント良かったよ」
しばらくして携帯がなった。



294 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月16日(土)22時31分19秒
『オイラだけど!何処!?わかんないよぉー』
矢口の声だ。どうやら迷ってるらしい。
『矢口、やっぱ今の道違うよ』
後ろの方で圭織の声が聞こえた。
『だから言ったじゃないっすか!右だって!』
吉澤の声も聞こえた。
『なっちは!?大丈夫なの!?』
「・・・・もう大丈夫だから。とにかく、私ん家に帰るから。来て」
そう言って携帯をきった。
空はもう夕焼け空から夜空へ変わっていた。
「帰りますかね」
私は立ち上がった。なっちの方へ向くとまだ涙目のなっちがいた。
「矢口達、何か道に迷ってるみたいだよ。だけど、心配してた」
「・・・うん」
「帰ろう。みんな、待ってるからさ」
「・・・うん」
なっちも立ち上がって公園を後にした。途中、見つけたたこ焼き屋を見つけて
買った。夜空には星が綺麗に輝いていた。

「ただいまー。上がって」
「お邪魔します・・」
家の鍵は開いていた。玄関で靴を脱ぐ。
ドタドタと足音が聞こえた。
「なっちー!?なっち!?」
「安倍さん!大丈夫なんすか!?」
矢口と吉澤が勢いよく走って来た。
「ほい、お土産」
ほかほかのたこ焼きを2人の目の前に上げる。





295 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月16日(土)22時43分09秒

 <矢口 視点>

「わーい♪たこ焼きだぁー・・・・じゃないでしょ!なっちは!?」
ばしっとたこ焼きが入った袋を取る。紗耶香の後ろからなっちがおずおずと
出てきた。
「なっち〜・・・良かったぁ」
オイラはなっちに抱きついた。よっすぃーも安心した顔していた。

紗耶香から詳しい事情を聞いた。結構もみ合ったみたいだ。
「んぁ、市井ちゃん昔っから強いもんね」
ごっちんは紗耶香の殴られた頬のとこを手当てをしていた。

・・・・にしても、こんな事仕向けるのはあいつしかいない。

「許さないっすよ!松浦ってやつ!」
よっすぃーは怒りをあらわにしていた。
「そうだっ!オイラも許さん!!」
もぐっとたこ焼きを頬張る。
むぐむぐ。むぐむぐ。
「矢口ー、全部食うなよ」
紗耶香に言われて手が止まった。


296 名前:作者。 投稿日:2003年08月16日(土)22時53分14秒

>289 和尚様。
     やっちゃいますね!この人は・・・。
     もうすぐ解決すると思いますので。多分・・・(ヲイ

>290 タケ様。
     すごい事になりました!でも無事安倍さんを市井さんも
     救った!市井さん強い・・・。

(〜^◇^)<出番少ない・・・・これだけ?

次回、松浦さんの閉ざされたココロあの人が救う!?です。

(〜^−^)<・・・・誰が?

まだ答えられませんよ、いくら矢口さんでも。

(〜^−^)<・・・考えてないんでしょ?

・・・いや・・?考えてるんですけど・・・どうやって登場させようか・・。

(〜^−^)<あぁ〜あの人?そうだねぇ、今まで出て来なかったからね。

でしょ?だから困ってて・・・・。

(〜^−^)<じゃ、オイラじゃないんだ?(微笑)。

え・・・?あ・・・いや、矢口さんも大事な役ですから。出番ありますよ(汗

(〜^−^)<ふーん・・・・。


 
297 名前:タケ 投稿日:2003年08月17日(日)16時26分55秒
「そうだっ!オイラも許さん!!」と言いながらたこ焼き食べてる矢口さん
が笑えました。
しかし市井さん強い!
(0^〜^)<かっけー!

次回ついに松浦の心を救う誰かが現れるんですね?
(〜^◇^)<やっぱここはオイ(ry だろ!
しつこいけど期待してますんで頑張ってください
298 名前:和尚 投稿日:2003年08月17日(日)20時27分13秒
ぎゃー!いちーさんの顔がぁ!!って思わず叫んじゃいました。
強いぞいちーさん!平然と傷の手当てをするごとーさん!
ペタペタペタ( ´ Д `)ノヽ^∀^ノ<モウスコシ ヤサシク・・・
いちーさんの過去に興味津々(笑)

とにかく、安倍さん無事でいかった〜。
しかし問題はこの後!閉ざされた松浦さんの心を救う人頑張って下さい!
って・・・・誰なんですか?
(〜^◇^)<誰なんだよ!
299 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月19日(火)21時16分12秒

 <松浦 視点>

・・・・何失敗してんのよ。
任務完了の連絡かと思ったら任務失敗の連絡だった。はぁとため息をついて
メールをうつ。

<もういいから。追加のお金は無し>

パタンと携帯を閉じてカバンに閉まった。今日も駅で暇つぶしして
家に帰る。びっくりした事に家の電気が付いていた。玄関の扉も開いている。
「一体何処へ行ってたんだ!?出張から家に帰ってみれば誰もいないし!
 もう9時だぞ?子供達はどうしたんだ。お前もいないし、普通子供の帰りを
 心配するだろ!夕飯の支度もしてないようだし!今頃帰って来るし!」
お父さんの怒鳴り声が聞こえた。
「何よ!いいじゃない!あの子達はもう大きいのよ!?自分の事ぐらい
 ちゃんと出来る年よ!友達との付き合いもあるだろうし。それに今日は
 遅くなるって子供達にはちゃんと伝えたわ!」
続いてお母さんの怒鳴り声。あたしはそぉ〜っとリビングを覗く。
「今日だけじゃないだろ。俺はいつも7時か8時ぐらいに家に電話
 かけてるよな。最近お前が出る回数が少ないんだよ!一体何処で何
 してんだ?」
「何したって私の勝手でしょ!?」
「それが母親の言う事か!」
「じゃぁ、言いますけどあなただって仕事ばっかでろくに家族の事なんて
 考えてないじゃない!子供達の事全部私まかせじゃない!何考えてくれたの!?」
「俺は!家族の事考えて毎日働いてんだ!」

はぁ〜・・・・。

とりあえず自分の部屋に行く。妹はまだ帰っていないようだ。
「もう・・・やだ。嫌だっ!」
クッションを壁に向かって投げつけた。




 
300 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月19日(火)21時27分28秒

 <大谷 視点>

ははは。一応登場はしてるけど出番なしって感じですかね?
やっと久しぶりの登場でちょっと興奮気味の大谷です。
「何しゃべってんの?」
「いやいや・・・」
友達の藤本美貴と一緒に遊んでいる。ライブハウスに入って適当にしゃべって
のですが。
「どう?高校楽しい?」
美貴は世間的には一応高校生の年齢なのだが、高校には通っていない。ちなみに
知り合ったのもごく最近。引っ越してきて駅周辺を探索していたら美貴に声を
かけられて知り合ったのだ。
「ん、まぁ。おもしろい人が約1名いて」
クラスメイトの柴田さん。見てるだけで面白い。
美貴は興味なさげに「ふーん」と言っていた。後ろから騒がしく盛り上がってる
人達の声が聞こえる。
「美貴は何で高校いってないの?」
「別にー・・・つまんないし。中退したんだけど」
「何で?せっかく入ったのにもったいない」
「・・・まぁね。もう嫌だし、あんな場所」
美貴の目は何処か悲しげな目をしていた。


301 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月19日(火)21時41分00秒
「あっそう・・・・」
ふと騒いでる人達の方に視線を向ける。人込みの中、1人だけつまんなさそうな
顔をしている女の子が。隣には彼氏なのかよくわからんが男が親しげに
話しかけている。別にライブを楽しんでる様子もない子。
しばらく経ってその子はここから出て行こうとしていたが男に引き止め
られた。
・・・何じゃありゃ。
ちょっと近寄ってみた。
「やめてよ!帰るの!」
「いいじゃん!帰る気無かったんじゃないの?」
「他のとこ行くの」
「何処?連れて行ってあげるよ〜」
もう目がやばいんすけど・・・その男。
「・・・んじゃ、連れて行ってよ」
「おっけー。行こうか」
女の子の肩に手を置く男。
・・・・あれ?あの制服・・・うちのガッコじゃん。
つまり高校生・・・・。
「なぁ、美貴。あれ止めた方がいいよねぇ・・・」
くいっと美貴の方を向くと美貴はそこにいなかった。
「あれ・・?美貴?」

「あんた高校生?やめときな、そんな男」
くいっと視線を戻してみると美貴がさっきの女の子を止めていた。

302 名前:作者。 投稿日:2003年08月19日(火)21時49分12秒

>297 タケ様。
     (〜^◇^)<たこ焼きが好きなんだよ〜。
     おぉっと、また新たに登場人物がっ!大谷さん久々の登場です!
     矢口さんも松浦さんのココロを救う人物となります。
     
>298 和尚様。
     市井さんの過去・・・・この人もいろいろあったわけです(泣
     まだ明かされるのはちと早いので、もうしばらくお待ちを!
     今回、新たなキャラが登場しました!重要人物(?)です!

300超えました!ありがとうございます!これも見てくれる方がいる
おかげです!感謝してます!
さてさて・・・・藤本さん登場しますた。松浦さんは一体どうなるのか?
次回、深まります(何



     
303 名前:タケ 投稿日:2003年08月20日(水)05時22分01秒
大谷さん・・・すっかり忘れてた(コラ)
藤本さんも出てきましたが過去になにがあったんでしょうか?
ますます続きが気になるな・・・

(〜^◇^)<あれ?そう言えばオイラの出番は?
304 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月20日(水)20時38分42秒

 <藤本 視点>

気が付いたら知らない女子高校生の前に立っていた。
「あんた高校生?やめときな、そんな男」
吐き捨てるように言った。するとそこの男が怒ったのか顔を歪めた。
「何だ?てめぇ、うっせーんだよ」
男は私を睨みつけて今にも殴りますよみたいなオーラを出していた。
「家に帰った方がいい」
男を無視して女子高校生に話しかけた。その子は不機嫌そうな顔をしていた。
無視されたのが嫌だったのか次の瞬間、どがっと殴られた。
「バーカ。さ、行こう。こんな奴放っておいてさ♪」
「美貴!?ちょ、大丈夫!?」
友達のマサオ(あだ名)が寄ってきた。私は起き上がる。
さっきやられたお返しに男を1発ぶん殴ってやった。
「美貴、そのへんで・・・美貴が最後までやるとそいつ生きてここを出られるか・・・」
マサオがとめてくれたおかげでここで収まった。男は怯えた様子でここを出て行った。
「いてー」
「バカ。やられたからってやり返すな」
マサオが苦笑で言う。
「あの・・・」
すっかり忘れていた女子高校生。何だか驚いた顔して私を見てる。





305 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月20日(水)20時51分00秒
「その制服、私と同じなんだよね」
隣にいるマサオが言った。
「へぇー、マサオと同じ」
結構可愛い制服なのでこれをマサオが着てるのかと思うと・・・・いや、想像しないでおこう。
「ここは、あんたみたいな子がいると危ないから」
「・・・・あんたじゃない。亜弥っていう名前があるもん」
「亜弥、ね。じゃぁ、亜弥みたいな子がいると危ないから、帰りな」
ぶーっとした顔をしてる亜弥。
「美貴、言い方悪いよ。亜弥ちゃん?マジ危ないからさー、連れ去られたら
 やばいしさ。帰った方がいいよ?亜弥ちゃん、可愛いし」
マサオが言うとちょっと機嫌をよくしたのか、亜弥の表情が笑顔に変わる。
可愛いって言葉に弱いのか・・・?
「んじゃ、私達も帰ろうよ。美貴。送って行ってあげるよ、亜弥ちゃん♪」
「何で・・・」
さっさとマサオは亜弥を連れて出て行こうとする。私も仕方なく追いかけた。

「あたし、1年生です」
「へぇー、私こないだ転校してきた2年生」
「知ってますよぉ、始業式の時、挨拶してましたよね」
「おー覚えてくれてたの?嬉しいなー」
マサオ、何気口説いてる・・・?
2人が歩いてる後ろを少し距離を置いて歩く。
「美貴も会話にまざろーよぉー」
マサオが振り返って言う。
「・・・はいはい」
ちょっと早歩きで2人の元へ行く。
306 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月20日(水)20時59分48秒
「美貴、自己紹介しなよ」
「・・・藤本美貴」
ぶっきらぼうにそう言う。
「美貴さんですか。あの、一応、さっきはありがとーございました」
一応って何だよ・・・・。
「いーえ。どういたしまして」
何でか亜弥と話すと喧嘩腰になってしまう。
「亜弥ちゃん、あーゆーとこよく行くの?」
「いえ・・・初めてです。何かむしゃくしゃしてて・・・」
亜弥は元気ない声で言う。さっきの元気のよさは何処へ行ったんだ。
「だからってあーゆーとこ行くな。夜に、しかも1人で」
「まぁまぁ、美貴。亜弥ちゃん、美貴は心配して言ってるだけだから・・・」
「心配?ですか?」
「こー見えても美貴はお人よしというか・・・優しい奴だから」
「ふーん」
「マサオ。よけーな事言うな」
ぽかっとマサオの頭を叩いた。あははと亜弥が笑う。

・・・・何だか、懐かしい感じがする。

昔の・・・何だろう。あったかい感じがする。

『美貴〜!早くー』

懐かしい声、懐かしい思い出。

亜弥を見ると、思い出す。

307 名前:8.仲間のしるし。 投稿日:2003年08月20日(水)21時15分46秒

 <矢口 視点>

「ったく!何でこんな夜におつかいしなきゃなんないんだよ!」
お母さんがいきなりプリンが食べたいと言い出し。お父さんも悪ノリしてゼリーが
食べたいだの妹はレポート用紙を買って来いだの言い出して、只今AM0:30。
自転車を走らせコンビニへ向かう事になってしまったオイラ。
学校の前を通り闇の中、自転車の光りだけが頼りだ。
「怖いよぉー。怖いじゃんかよぉー」
10分後、ようやくコンビニに着いた。
「ふぅー。お母さんのお金だからね、オイラも何か食べてやる」
ガーっと自動ドアが開いて中に入る。カゴを持ってプリンとゼリーとレポート用紙を
カゴの中にほいほいと入れる。
「美貴〜これ買ってよ〜」
「何言ってんの。貧乏な私に金を奪う気?」
「なんだよぉーケチー」
お菓子コーナーで何だか騒いでる若者達。
「亜弥ちゃんも美貴に頼めば買ってくれるかもよ?」
「ほんとですかぁ〜?」

あや・・・・?

ふとその人達を見てみるとオイラと同じ制服の女の子。

まさか・・・あいつが?
あいつがなっちを・・・?

「美貴さん!これ買って下さい!」
「・・・・わぁーったよ!だから私を見るな!」

・・・・あんな笑顔が可愛い子が?
想像してた人物と全然違った。オイラはすぐにレジを済ませてコンビニを出た。
自転車を走らせて家に帰る。
「あの子が・・・・校章、1年だったし」
家について自転車から下りた時。
「あー!自分の食べ物買ってくんの忘れたぁー!!」
・・・・なんだよ、ついてないなぁ・・・ぐすん。





308 名前:作者。 投稿日:2003年08月20日(水)21時24分49秒

>303 タケ様。
     作者も忘れてました(コラ)。
     藤本さん、今回も意味深な事思ってますが・・・。
     これからじわじわとわかってきますよ!

(〜^◇^)<オイラの出番こんだけかよー!しかも、おつかいかよ!
(0^〜^)<いいじゃないっすか。うちなんて出番の欠片もないっすよ。
( ^▽^)<私の恋の行方は?
(〜^◇^)<んなのいいんだよ。オイラの新しい恋は?
(0^〜^)<・・・・うちのは?
(〜^◇^)<(だから相思相愛なのに・・・)。
( T▽T)<私も出番・・・欲しい。
          
309 名前:タケ 投稿日:2003年08月21日(木)16時29分00秒
あやみきの予感・・・
そして藤本さんの言葉は一体?

(〜^◇^)<ってオイラの新しい恋はどうなってんのさ?

矢口さんはこれからどう松浦と接していくのか楽しみにしてますよ〜
310 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月22日(金)21時37分27秒


 『9.悲しい過去の記憶。』

 <後藤 視点>

朝から爆睡して授業をすっ飛ばして聞いてなかったら担任に放課後
職員室に来いと呼び出しがかかった。
・・・・眠いんだもん。しょーがないじゃんね。
「授業中寝るなとは言わない。俺も学生時代、寝てた事があった。眠かった。
 だけどな、お前の場合寝すぎなんだよ。いくらなんでも1日ずっと寝てるな!
 頼むよ、他の先生に言われてんだよ。寝すぎだって」
「んぁ、わかった」
1時間後やっと解放されてさすがのあたしも疲れた。職員室を出ようとした時、
職員室の扉が開いた。うぉっとびっくりした。
金髪にカラコンの人・・・・。
「おー中澤先生!お久しぶりです!」
担任が嬉しそうに言って他の先生も騒ぎ始めた。
・・・先生?この人が?金髪でカラコンなのに?
でもこの人に叱られたらマジ怖そうだな・・・・。
「・・・まぁいいや。早く帰ろう」
あたしはすぐ職員室を出ていった。
今日は夕飯何にしようかなぁ〜♪
うきうき気分で下駄箱で靴を履き替える。するとバタバタと足音が聞こえた。
「んぁ?矢口先輩」
「あぁ、ごっちん!裕ちゃん見た!?」
「裕ちゃん・・・?」
矢口先輩はとても慌てた様子で少し遅れて飯田さんと安倍さんが来た。
「矢口ー、速過ぎだよ」
「あの、金髪でカラコンしてる人!いかにも怖ッ!って感じの」
あぁー、あの人か。
「んぁ、さっき職員室で見たよ〜」
「ありがと!じゃね!」
矢口先輩は風のように走り去って行った。

  
311 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月22日(金)21時52分57秒
家に帰って夕飯支度して市井ちゃんの帰りを待つ。今日は確か8時には帰れると
昨日言っていた。しばらくは早く帰れるらしい。
「ただいまー」
「おかえり〜!」
今日は何だか疲れた様子の市井ちゃん。何かあったのかな。
すぐに夕飯の準備に取り掛かる。味噌汁を温める。
「・・・今日、何かあったの?」
テーブルにお皿を並べながら聞いた。返事は返ってこない。
「・・・市井ちゃん?」
市井ちゃんを見るとソファーに座って暗い顔をしていた。市井ちゃんの隣に
すとんと座った。
「・・・今日、ミスっちゃってさぁ・・・。社長は気にするなって言って
 くれたんだけど・・・」
どうやら仕事で何かやっちゃったらしい。人一倍責任感がある市井ちゃんだから
ずっと気にしてたんだろうな。
「・・・んじゃ、あたしと同じだね」
「え?」
「あたし、今日寝すぎでさ担任に1時間も怒られたよ」
あはっと笑いながら立ち上がってキッチンの方へ行く。すると市井ちゃんの
笑い声が聞こえた。
「お前・・・寝すぎで怒られたの?あはは」
市井ちゃんは少し元気になったようだ。あたしも笑顔が溢れる。
「あ、今日ね怖い人にあったよ〜。金髪にカラコン、でも先生なんだって。
 確か・・・中澤っていってたよーな」
夕飯を食べながらそう言った。
「中澤!?マジで・・・?」
市井ちゃんは驚いて箸を落とした。





312 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月22日(金)22時03分39秒

 <市井 視点>

裕ちゃんかぁ〜、懐かしいなぁ。私が高校3年の時の担任の先生だった。
意見が合わなくて何回も喧嘩したっけ。

裕ちゃんこと中澤先生は私が高校2年生の時、あの学校にやってきた。
金髪でカラコン。教師とは思えないほどで関西弁が抜けない人だった。
そんな人でも曲がった事は大嫌いで私はよく遅刻をしていたのでよく
怒られたもんだ。まぁ私もあの頃は反抗して言う事を聞かずにいた。
でも・・・高校3年の時、ある事件が起きた。
それのせいで、裕ちゃんは違う学校に行ってしまった。

いつまでも忘れられない過去。

いや、忘れてはいけない過去。

裕ちゃんは覚えているだろうか?きっと忘れてはいないだろう。

あの悲劇を。





313 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月22日(金)22時26分19秒

 <藤本 視点>

「美貴さん!」
・・・・何なんだ。こいつは。こないだ会ってからずっと付けまとわれてるような。
マサオから聞いたのかバイト先によく来る。私はあらゆるバイトをしてるので
まぁいろいろやってるから全部覚えてるマサオもマサオなのだが。
「何なんだよ・・・お前は。用があんのか?」
「いえ、ないんですけど。会いにきました!」
今日はコンビニのバイト。いきなり亜弥が入ってきてレジのとこにいた私に
向かって名前を呼ばれた。
「んじゃ、会えたから帰れ、な?」
「何でそー冷たいんですか!」
「お客さんがいるから騒ぐな。・・・もうすぐ終わるから、近くの
 喫茶店で待ってろ」
「・・・はい!」
亜弥は明るく返事をしてコンビニから出て行った。

『美貴は無愛想だねー。もっと笑いなよ!』
『うっせーな。いいじゃん、別に』
『駄目だよ。暗い顔してちゃ』

・・・・もう、あの頃は戻らない。

あいつはもう、いないんだ。

ごめん・・・・助けられなくて。

あいつの叫び、私には聞こえてた。いや、他の人にも届いてたはずだ。

なのに・・・・誰も、見てくれなかった。

でもあの2人だけは、見てくれていた。聞いてくれた。

・・・それでも、あいつは死んだんだ。


314 名前:作者。 投稿日:2003年08月22日(金)22時38分23秒

>309 タケ様。
     あやみきの予感です。藤本さんは嫌がってますが。
     (〜^◇^)<オイラも頑張るぞ!
     ・・・はい、矢口さんの意気込みでした!

中澤さん登場です。市井さん、藤本さん、意味深な発言でしたが。
この3人は深いつながり・・・というようなものがありまして。
過去に事件が学校であったわけです。安倍さんのような感じのが。
・・・・これから明らかになっていくと思います。
     
(0^〜^)<・・・・何だか、とても重くなってきてますねぇ。
( ^▽^)<うん・・・私達はどうなるの?
(0^〜^)<・・・多分、あるよ出番。矢口先輩より。

壁|ー^〜)<ふーん、そうなんだぁ・・・よっすぃー?

(;0゚〜゚)<え!?あ、いや・・・ありますよ!出番!矢口先輩
       これからバンバン出ますから!

(〜^◇^)<そっかなぁ♪
     
( ^▽^)<単純なんですね、矢口さんって。
315 名前:タケ 投稿日:2003年08月24日(日)01時51分41秒
中澤さん、市井さん、藤本さんの暗い過去・・・気になる・・・
一体何が起こったのでしょうか?

(〜^◇^)<オイラも頑張るぞ!
よかった(w 
これからも頑張ってください
316 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月24日(日)20時26分54秒

 <矢口 視点>

「裕ちゃん!!」
「お〜、矢口やんかぁ」
相変わらずの関西弁、金髪にカラコン。オイラはギュッと抱きついた。
「裕ちゃん、何で?」
後からやっと来た圭織が聞いた。
「ん?いや、校長がな、やっぱ生徒指導は私しかいないって言うてなぁ。
 戻って来たんや」
裕ちゃんは何処となく悲しい目をしていた。オイラにはそう見えた。
「さて、私は校長室行かなあかんから。またな」
相変わらずのいたずらっぽい笑みで裕ちゃんは去って行った。

裕ちゃんはオイラが高校2年の時、何故か違う学校に行ってしまった。
理由はわからない、誰に聞いてもみんな知らないし先生も裕ちゃんも
教えてくれなかった。
1つだけその時期にあった出来事・・・・オイラの学校の生徒が死んだ。
確か1年生だったか、あんまり覚えていない。学年が違うと何が起きた事も
わからないままになってしまう事がある。
「裕ちゃんは・・・・何をしたんだろう?圭織、なっち」
「さぁ、裕ちゃん何も話してくんないし」
「私は・・・親しくなかったし」
オイラ達はこれだけ話して、学校を後にした。



317 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月24日(日)20時46分32秒

 <中澤 視点>

久しぶりやなぁ、何も変わってないわ。まぁ1年ぐらいしか経ってないしなぁ。
しかしなー、まさか校長直々に戻って来いなんて言われるとは思ってなかったわ。
私もこの学校は好きやったし・・・その話を頂いてから悩む事もなくすぐOKした。
向こうの学校は嫌やわ、正直。みんな真面目くさって学際の行事なんて廃止するとか
言う意見が出てえらい怒ったなー。勉強が全てじゃない、それだけ教わりに学校
通ってんじゃない。
「中澤先生。どうですか?久しぶりの校舎は」
「いやー、懐かしくて。みんなの顔も見れて嬉しいですよ」
「・・・・中澤先生には申し訳の無い事をしました」
「いや、あの場合はしょーがないでしょう」
「しかし、我が学校の生徒達はあなたを必要としていましてね・・・」
「とても嬉しいです」
「それと・・・実は、あの事件が起きてある生徒が学校を辞めましてね・・」
「え?」
校長は難しそうな顔をして言う。
「まさか・・藤本ですか?」
「・・・ええ」
「いつですか!?」
「その生徒が2年生に上がる前です」
目がくらんだ気がした。何でもっとはよ言ってくれなかったんや。
藤本・・・・私を憎んでるのやろか。

・・・・紗耶香はどうしてるやろか。
自分を責めたりしてないやろか。笑う事を忘れてないやろか。

「校長先生。藤本は今、何をしてるんですか?」
「・・・詳しくは知らないのですが、アルバイトをしてるみたいです」









318 名前:作者。 投稿日:2003年08月24日(日)20時51分57秒
ごめんなさい、更新があまり出来なくて・・・・。
今回はこれだけです、あぅー時間が欲しい・・・。

>315 タケ様。
     気になりますよね・・・全くわかりませんよね、これじゃぁ(汗
     ちょびっと中澤さんの視点で過去について出てきましたが
     うーん、どうでしょう・・・。

(〜^◇^)<オイラ・・・何も知らないんだよなぁ。いつか裕ちゃん
       話してくれるかなぁ・・・・。



 
319 名前:タケ 投稿日:2003年08月25日(月)03時14分57秒
過去に死んだ生徒とは・・・?
その時に3人はどうなったのか? 

(〜^◇^)<オイラの知らない間で何が起こってんだ!?
320 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月25日(月)21時39分50秒

 <柴田 視点>

いろいろ調べていくうちにわかった事。松浦さんの友達らしき人
は別に松浦さんの事を嫌いとかそうゆう風な事は思っていない事だ。
むしろ、頼りにしてるとか、いい子だとか言っている。
『あー、亜弥ちゃんってかなりいい子なんですよ。ね?』
『そうそう、こないだなんか私図書館の掃除で大変で。困ってたら
 手伝ってくれてー、超助かって』
『いつもクラスまとめてくれるし』

・・・・なんか、ひっかかるんだよなぁ。
何ていうか、友達というかホントただのクラスメイトって感じ?

「・・・わかんないなぁ。表の性格は悪い子じゃないんだねぇ・・・」
「へぇー、そうなの?」
「でもさぁ、裏はめちゃくちゃなんだよね・・・」
「ふーん」
「・・・・ってか、何であなたがここにいんの?」

ここは情報部の部室。

「へへ、遊びに来ちゃった♪」

隣に何故かいる大谷さん。今は放課後、用が無い人は帰る時間。

「大谷さん?何故ここに?」
「だからぁ、遊びに来たの。あと、マサオって呼んでよ」
無邪気に笑う大谷さんに私は危うく殴ってしまうとこだった。震える拳を
押さえて、笑顔を作る。
「ここは情報部の部室。入れるのは部員だけ。だからとっとと出て行って下さい」
「えー、何でー?」
・・・・殴っちゃってもいいですかね?神様。



321 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月25日(月)21時47分08秒
「まーまーそんな怒んないで?」
「・・・一体何の用事?」
「んとねー、今日の夜焼肉を友達と食べようって考えてて良かったら
 柴田さんも来ないかなーなんて」
照れたように笑みを浮かべて言う大谷さん。
「結構です」
それだけ言ってもう帰ろうとカバンを持って部室を出て行った。大谷さんも
追いかけてくる。
「何でー?いいでしょ?他に友達2人きて、私も入れて3人。
 なんなら柴田さんの友達も一緒にさ・・・」
何だか必死に私を説得しようとしてるみたい。だけど私は更々行く気なんて
無くて、無視して下駄箱に向かう。
「あ、柴ちゃん」
「梨華ちゃん、帰り?」
下駄箱で靴を履き替えてる梨華ちゃんがいた。
「ねぇー、いいでしょ?あ、梨華ちゃんも来ない?」
「え?何に?」
大谷さんは梨華ちゃんにさっき私が言った言葉を繰り返した。
「焼肉?」
「みんなでぱぁーっと」
「いいね、柴ちゃん行こうよ」

・・・・思わぬ、展開になってしまった・・・。

322 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月25日(月)21時58分05秒

>319 タケ様。
     死んだ生徒の名前は次回です。次回ついに市井さん藤本さん
     が接触します。そして松浦さんも。

マジ更新が少なくて申し訳ないです・・・。
次回はもっと書きますので。

 (〜^◇^)<・・・・焼肉♪

     

323 名前:タケ 投稿日:2003年08月25日(月)23時10分16秒
次回ですか!楽しみにしてます!
あの3人とその人に何が・・・?
324 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月26日(火)11時15分09秒

<藤本 視点>

マサオに無理矢理連れて来られた場所は焼肉屋。まぁ嫌いじゃないし・・・
むしろかなり好きだし。食べたかったし。
それはいいとして・・・・。
「わぁーあたし焼肉好きなんです♪」
「そぉーなの?亜弥ちゃん」
なんでこいつがいるんだよ・・・。

頭の痛さに耐えながらも焼肉屋の中に入る。店内はもうたくさんの
人がいて、賑わっていた。
「あ、大谷さーん」
「梨華ちゃん!」
すでにみんな(ほとんど知らない人達・・・)がいた。
「美貴、亜弥ちゃん。こちらが私の友達の柴ちゃんと柴ちゃんの友達
 でーす!」
マサオが大きな声で紹介してくれる。

何だか、凍りついた雰囲気。

亜弥を見ると、すごく驚いた顔をしていた。

「・・・・あたし、帰りますね」
亜弥は突然店を飛び出していった。
「ちょ、亜弥ちゃん!?」
マサオがすぐ後を追いかける。私だけ取り残された。

・・・はぁーやれやれ。何だかね。


325 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月26日(火)11時30分47秒
「すいません。亜弥の奴、いきなり飛び出して」
とりあえず謝っておく。何だかみんなも驚いてる感じだ。
「藤本美貴です」
愛想笑いを浮かべながら自己紹介。
マサオ・・・亜弥・・・後で覚えてろよ。

「・・・・藤本・・・?」

声が聞こえた。懐かしい声だ。
視線をそっちに向ける。

「・・・市井、さん・・」

かつての先輩だった人がそこにいた。

またあの記憶が蘇える。

『先輩、私、まいを助けたいんです!』
『わかってる・・・私もだ』

私はぼーっと突っ立ていた。一応、帰るわけにもいかず椅子に座った。
「藤本、お前今、何してんの・・?」
「バイトです。変わらず」
「そっか・・・」
「・・・・市井さん!何で・・・・」
がばっと市井さんの方を見る。市井さんの顔はとても苦しそうな表情をしていた。
「・・・まいを助けてくれなかったんですか・・?」
「・・・ごめん」
「謝ってくれなくていいですよ!私は何でまいを助けてくれなかった理由を」
「・・・ごめん」
「・・・・中澤先生と、あなたは信じてたのに・・・・」
ぎりっと歯を噛み締めた。涙が溢れそうになる。




326 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年08月26日(火)11時41分37秒

 <市井 視点>

驚いた。まさかこんなとこで出逢うとは思わなかった。

・・・責められて当然だ。

藤本は高校の時の後輩。だけど、あの事件が起きて藤本は学校を
辞めていった。

『信じてたのに』

この言葉が胸に刺さった。痛くて、辛い。
だけどそれは・・・私の罰だ。
「市井ちゃん・・・?」
隣にいる後藤が心配そうに見ていた。矢口も、みんなそうだった。
「いやー、亜弥ちゃん。泣きながら帰っちゃったよ・・・ってあれ?」
藤本の友達の大谷さんが帰って来た。
「美貴・・?どうしたんだよ?」
「帰る」
「へ?何で・・・!?」
藤本は席を立って店を出て行った。
「・・・ははは、何がなんだか・・・さっぱりです」
大谷さんは何も知らないんだろう。まぁ松浦さんの事もそうだ。
さっき、なっちは怯えた顔してるし、矢口は怒った顔してた。
その時、私のケータイがなった。
「はい」
『・・・久しぶりやな』
「裕ちゃん・・・」
『学校に戻ってまた生徒指導係や』
「あぁ・・・」
『・・・藤本におうたか?』
「・・今、さっき」
『そか・・・紗耶香。自分責めるなよ?』
「・・・でも、あれは私のせいだし・・・」




327 名前:作者。 投稿日:2003年08月26日(火)11時48分22秒

>323 タケ様。
     里田さん・・・こんな役で申し訳ない(泣
     松浦さんも藤本さんもびっくりです。大谷さんも。
     次回は、中澤さんも登場。過去がついに明らかに・・・。

328 名前:和尚 投稿日:2003年08月26日(火)12時28分05秒
暫く来られない間に展開がありすぎてビックリです・゚・(ノД`)・゚・。
次回更新が気になります〜。
329 名前:タケ 投稿日:2003年08月26日(火)16時22分58秒
あっという間の急展開にビックリです

ついに3人の過去が明かされるんですね?
今からわくわくしてます

(〜^◇^)<ちゃっかりオイラも出てるしね! 焼肉大好っき♪
330 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月01日(月)16時58分11秒

 <藤本 視点>

何で、どーゆー事なんだ!
何の当てもなくずんずんと夜の道を歩いていた。ぴたっと立ち止まる。
前方に見覚えのある人がいたからだ。
「・・・・亜弥」
声をかけるとゆっくりとこっちに振り向く亜弥。その目は涙がうっすらあった。
「美貴さん・・・」
「どうしたんだよ。焼肉喜んでたのに」
そう私が聞いても亜弥は黙ったままで、しばらく沈黙が流れた。しばらくして
丁度近くにあった自販機でコーヒーを2本買った。
「ほら」
「・・・・ありがとうございます」
「あの公園のベンチにでも座るか」
公園の中に入ってベンチに座った。プシュっとコーヒーの缶のふたを開けた。
ごくっと飲み干した。
「美貴さん・・何でいるんですか?」
「亜弥こそ、何で出て行ったんだよ。・・・マサオ、置いて来ちゃったけど
 いっか」
「・・・・知ってる人がいたんです。だから驚いて」
「へぇ、奇遇だね。私もだよ。前、高校にいた時の先輩」
もう一度コーヒーを飲む。
「高校にいた時・・・?」
「中退したんだよ。高1の時に。もうこんなガッコ辞めてやるー!って
 校長に言ってさ」
ちょっと笑えてきた。懐かしく思った。あの頃は何やるにも真剣だった。
まだ、信じてたものもあった。希望もあったんだ・・・。



331 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月01日(月)17時11分15秒
「大事な親友がいたんだ。でも・・・まいはもういない」
「・・・・何でですか?」
亜弥が私を見て聞いてきた。
「・・・・まいは、成績も悪くて運動も唯一得意なのがバスケだった。
 明るいけど人見知りが激しくて、友達作るのに時間がかかるタイプで。
 だけど、誰よりも人一倍優しくて・・・あったかい奴だった」
まいの顔を思い出しながら言った。亜弥は真剣に私の話を聞いていた。
「・・・中学からの親友。お互い人見知りするから最初は何だか会話が
 無くて、でも徐々に話すようになれて・・・」

『日直なんて嫌だねー』
まいは黒板消しで黒板にずらずら書かれてる数字を消していた。
『仕方ないよ、当番じゃん』
だいぶ仲良くなった頃だった。私はまいが日直なので手伝いをしていた。
『日誌って先生ちゃんと見てるのかな?』
疑いの眼差しで日誌をパラパラ見ていた。
『さぁ、ハンコ押してあるだけだしね』
この時はいつも笑っていたのを覚えてる。

同じ高校受けて、合格発表の時は手を繋いで自分の受験番号を探した。
『あった・・・・』
『あった!あったよ!美貴!』
2人共合格ですごく嬉しかった。




 
 
332 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月01日(月)17時22分25秒
高校に入学して、バスケ部にまいと私は入部した。
『練習キツイね』
1年生だからまだ先輩達みたいな練習は出来なくて走りこみとか球拾いとか
大変だった。
『頑張ろ。レギュラー取ろうね』

高校入ってだいぶ経った頃。

「その頃・・・美貴がいじめにあうようになったんだ」
コーヒーの缶を強く握り締めて言った。亜弥は俯いていた。
「3年の奴らに、私がいない時まいは呼び出されて・・・殴られたり
 蹴られて、嫌な事言われて。まいって何気モテてたんだよね。
 だから、奴らそれを理由にまいをいじめてたんだ」
 
気付かなかった、最初は。
いつも何かに怯えてるまいを、私が気付いたのはまいが不登校になった頃だった。
『まい・・・!このアザ何だよ・・?』
まいの家に行った時、まいの腕とか足とかに無数のアザがあった。
そしてまいにいじめにあっていた事を聞かされた。

正直、自分に腹が立った。
何で気付かなかったんだ。どうしてまいを助けれなかったんだ。
当然、先生に言った。いじめてた奴らの名前も言った。何とかするとは言うけれど
何も先生はしてくれなかった。担任の先生なのに・・・・。

だけど1人だけ、真剣に聞いてくれた人がいた。

裕ちゃん。
333 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月01日(月)17時25分15秒

訂正。 332 ×美貴がいじめにあうようになったんだ
        ○まいがいじめにあうようになったんだ

        ×裕ちゃん
        ○中澤先生

・・・むぅ、すんません。少しごちゃごちゃになってしまった・・・。
 
334 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月01日(月)17時37分58秒
金髪にカラコン、関西弁。このガッコじゃ有名人の先生だ。
生徒指導の担当でいつも生徒指導室にいた。
ある日、ふらっと生徒指導室に行ってみた。まいはまだ不登校のままだった。
『なんや?』
『あの・・・・聞いてくれませんか?』
『おぉー、悩みか?まぁここに座り。今、お茶でも出すからなー』
噂で怖いとか聞いたけど全然怖くなかった。お茶まで出してくれて。
私はまいの事を全て話した。
『・・・いじめは表に出されちゃ困るからなぁ。ん、わかった。
 私が何とかしてやるさかい。もう二度と、里田に触れんようにな。
 あんたも一緒に来るんやで。それと・・・仲間は多い方がええな』
中澤先生は奥の部屋に入っていった。しばらくして出てきたけど
もう1人出てきた。
『こちら、3年の市井紗耶香』
『ども・・・市井ッす』
確か剣道で活躍してるって聞いた事があった。
事情を聞いた市井先輩は協力してくれると言ってくれた。

「まぁ、市井先輩と中澤先生のおかげで奴らはもうしないと言った。
 まいもだいぶ元気になってガッコに来るようになったんだ」

また明るく日々を送れると思っていた。
それもすぐ終わった。
 


335 名前:作者。 投稿日:2003年09月01日(月)17時43分19秒

>328 和尚様。    
     急展開ありすぎでしたね(^−^;
     久々の更新でちょっと多くの更新です♪

>329 タケ様。
     ついに過去が明らかに・・・まずは藤本さんです。
     何だかここは長くなりそうです(^−^;

はい、久々の更新でした!テスト期間があって、でももう今日から
パソコンができるので!

(〜^−^)<そうだったんだ・・・・。
(0^〜^)<うちらもびっくりですよね。
(〜^−^)<・・・・・。


 
336 名前:タケ 投稿日:2003年09月02日(火)00時12分12秒
更新お疲れ様です。
ついに藤本さん達の過去が!!
これからどうなるんでしょうか・・・
337 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月02日(火)21時22分22秒
まいがガッコに行くようになって、嫌な噂が流れ始めた。どれもまいの事ばかりで
クラスメイト達は次第に避けるようになっていった。

・・・・何だよ!何も解決してないじゃないか!

こんな噂流したのなんてあいつらに決まってる。
『まい、大丈夫だよ。私が守るから』
元気のないまいに私はいつも側にいた。
『美貴・・・もういいよ。いいよ・・・』
『何言ってんの!そんな事言っちゃ駄目。私、側に絶対いるから』

中澤先生や、市井先輩も噂の事を知っていた。
『・・・噂、やからなぁ。厄介や。出た元がわからん』
放課後の時間、まいを家に送ってからまたガッコに戻って生徒指導室にいた。
『私も噂の出所探して聞いてみたけどわかんなかった』
『そんな・・・・ッ!流したのなんてあいつらに決まってるじゃないですか!』
『でもなぁ・・・難しいんよ。あいつらを攻めてもどうせシラをきるに決まってるやんか』

まいの笑顔を取り戻すんだ。

また絶対笑ってもらうんだ。

───絶対に負けない。

『里田はどうなん?』
『まいは・・・何とかガッコに来てますけど。元気、無いです。担任は噂なんか
 気にするなって言ってました』
『そか・・・藤本は里田の側にいてやり。それが1番ええ』
『はい・・・』


 
 

 


338 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月02日(火)21時34分28秒
ある日の放課後。まいと一緒に廊下を歩いていた。
『帰ったら昨日買った雑誌、一緒に見よう!』
『うん』
下駄箱に向かって歩いて行く、向こうから数人歩いてきた。
その人達とすれ違う時だった。
『まだガッコ来てんのー?』
『マジむかつく』
『うざいんだよ』

聞き逃すものか。

私は立ち止まってその人達の中の1人の腕を掴んだ。
『謝れよ。まいに謝れよ!』
『何〜?痛いんだけど』
『あんな子に友達なんていたんだー、知らなかったー』
怒りはヒートアップしていった。

気付いたら、殴っていた。何発も殴って相手は血まで流していた。
我を忘れていた、市井先輩が途中で止めてくれなかったら多分相手を
殺していたかもしれない。それほど、夢中だったんだ。
それからぷつっと意識が途切れて目が覚めたら保健室だった。
まいが泣きながら私を覗き込んでいた。

『・・・しばらく、自宅謹慎や』
中澤先生はこう告げて黙った。
『裕ちゃん・・・私、許せないよ。許せねぇ・・・。私でも殴ってたよ』
市井先輩がくやしそうに言った。
『暴力で解決するもんなんてないんや。紗耶香』
『わかってるよ・・・だけど、このままじゃ』
私はベットに横になったまま窓の向こうの夕陽を眺めていた。





339 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月02日(火)21時45分48秒
自宅謹慎の為、家に1日中いた。昨日怪我させた先輩達はいじめの事を反省
してるから謹慎処分は無かったと朝中澤先生からメールがあった。
まいはどうしてるのか、気になってメールした。

<大丈夫だよ。学校終わったらすぐ美貴ん家に行くね。 まい>

その返事がきて少し安心した。

学校の時間帯が終わった夕方。市井先輩が家に来てくれた。
『おっす。元気?』
『はい。別に病気じゃないっすから』
『里田、学校来てたよ。クラスの人達も前みたいに戻ってきた感じ』
どうやらまいの事を見てきたみたいだ。
『先輩・・・もうしばらくガッコ行けないみたいだから、まいの事
 お願いします』
『あぁ、裕ちゃんも協力してくれてる。大丈夫だ』
『・・・はい』

市井先輩が帰って、まいが来るのを待っていた。親は2人共働いてる
ので夜まで帰ってこない。・・・謹慎の事はかなり怒っていた。

『おっそいなー。どうしたんだろ』

午後7時なっても来ない。電話してみても出ないし、メールの返事もない。

・・・・まいは、もう2度と私のとこには来なかった。



340 名前:作者。 投稿日:2003年09月02日(火)21時49分55秒

>336 タケ様。
     いろいろと明かされてるのですが・・・藤本さんの過去が
     ついにクライマックス!松浦さんの隣でこの話語ってる
     わけなんですが・・・松浦さんはきっとわかってくれるはず・・・。

(0^〜^)<出番が無いYO!寂しいYO!

341 名前:TOKOM 投稿日:2003年09月02日(火)21時55分17秒
はじめまして。今日一気に読んだんですけど、すごくつぼにはまる話で
思わずに画面にくいついてました。
まいさん一体どうなっちゃったんでしょ・・・・
めちゃ気になります!次回も楽しみに待ってます!
あっよっしぃーもだしてあげてくださいね。
あと矢口さんも・・・・
342 名前:和尚 投稿日:2003年09月02日(火)22時17分46秒
スッゴク悲しくなってきた・゚・(ノД`)・゚・。
やっぱ痛いんですね・・・。

あっ矢口さん、よしざーさんはもう少し待ってて下さいよ〜。
Σ(〜^◇^)
Σ(0^〜^)

343 名前:タケ 投稿日:2003年09月03日(水)01時36分39秒
里田さん・・・
この次はついにすべてが(?)明らかになるんですね?
期待して待ってます!
344 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月04日(木)19時36分08秒
まいが来ないままその日は終わった。次の日もまだ謹慎なのでしかも
母親が仕事が休みらしく家にいるので中々家から出る事が出来ずにいた。
どうしてもまいに会いたくて仕方なかった。不安だった。
市井先輩に電話をかけてみた。
『市井先輩?まいガッコ行ってますか?』
『・・・それが、実は・・・・』
市井先輩のためらった声は私を更に不安にさせた。時刻は午前10時だった。
『な、何かあったんですか・・・?』
『・・・里田が行方不明になったんだ』
殴られたような衝撃だった。吐き気がしてきた。
『里田の家から電話があって昨日の夜中からいないって・・・。今、中澤先生と
 私が探してるんだけど・・・』

話を聞くと。
昨日の夜中、まいはいなくなった。でもちゃんと昨日は家に帰ってきて
普通にご飯を食べて、お風呂に入って、就寝したとまいのお母さんが言っていた。
夜中、まいのお母さんがまいの部屋に行ったらまいはいなかった。

───机の上に手紙を残して。

『市井先輩!私も探します!』
『お前、今謹慎中だぞ?んなことしたらどーなるか・・・』
『自分の事よりまいの方が大事です!』
私は母親を振り切って家を出た。走って市井先輩と中澤先生の元に行った。
・・・ガッコは警察にまかせて、担任でさえも授業の方が大事だと言い
何も動いてないらしい。動いてるのは勝手にガッコをさぼった市井先輩と
中澤先生だった。
『・・・これ、お前あての手紙だ』
中澤先生の車の中で市井先輩から手紙を渡された。




345 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月04日(木)19時45分05秒

 美貴へ。

 ごめんね。私の為に頑張って大変だったよね。
 私がいじめにあって、必死に美貴には隠してたけど
 やっぱ美貴は私の事しっかり見ててくれたからばれちゃった。
 
 美貴と出逢って毎日、本当に楽しかったよ。
 いじめにあっても美貴がいたから頑張れたんだよ。
 でも・・・もう私、駄目なんだ。
 美貴が頑張って私の事守ってくれて・・・嬉しかったよ、
 だけどそれが辛い・・・美貴が辛い思いしてるから。
   
 3年の人達を殴った美貴を見て、このままじゃ駄目だと思った。
 いじめ・・・正直辛かった、いっぱい泣いた、苦しかった。
 
 何か、自分で書いててよくわかんない。ごめんね。
 美貴はもっと自分を大切にして下さい。
 もっと笑ってよ?無愛想なんだからさ(笑)。
 この手紙を読んでる頃は私はもういないでしょう。
 少し、早く旅立ちます。許して下さい。

 今までありがとう。美貴と出逢って良かった。

                  まいより。

 P,S 大好きだよ。

涙で手紙がよく見えなくなった。手が震えた。

     
346 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月04日(木)19時58分31秒
『・・・・何が美貴が辛い思いしてるだよ!そんなの決め付けんなよ!
 まいの為に頑張る事なんて辛いなんて思ってないよ!まいのバカ!』
そう叫んでも興奮はおさまらなかった。震えてる手を何とか動かして手紙を
ジーパンのポケットにいれた。
『・・・こんな事までなって、学校は動かないなんて・・・』
『ほんまやな、こんな学校だとは思わへんかったわ』
2人の言葉は何か諦めに近い声をしていた。
『とにかく!探しましょう!』
私が叫ぶと2人共はっとしたような顔をしていた。
『・・・そうやなぁ、何かないん?思い出の場所とか』
『思い出の場所・・・?』

思い出・・・・何だろう?
学校・・・・部活・・・・バスケ・・・・。

『体育館裏の!倉庫!』

無我夢中で叫び、車はすぐ動き出した。

私とまいは体育館裏にある使われていない倉庫を自分達で綺麗にして
使っていた。授業をさぼった私はよくこの倉庫に来て、気付くとまいが
怒って私を迎えにきてくれた。笑ったり、たまに喧嘩して泣いたり、
いっぱい2人の思い出が詰まってる場所。

『・・・まさかここだとしたら・・・警察が見つけれないわけだよ』
『そうやなぁ・・・』
ガッコについて体育館裏の倉庫の前まで来た。心臓がドクドクいってる。
まいがここにいなければいいと思った。本当は自分の家に来てるんじゃないかと思った。


347 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月04日(木)20時32分42秒
おそるおそる扉を開けてみる。
『あッ・・・・!』
暗い倉庫の中。まいは、ここにいた。

もう冷たくて、動かないまいは綺麗だった。

目を閉じてまるで寝ているようにまいは横たわっていた。

手首から血が流れきって、まいの肌は白く透き通るような感じだった。

2人で買った椅子やテーブル。棚には買った雑誌やどっかのゴミ置き場で
壊れて直したCDコンポ。自分達の好きなCD。私だけが読む漫画。
何も変わってないのに・・・・なのに・・・・。

私は泣きながらまいのもう動かない体を抱き上げてきつく抱きしめた。
中澤先生は倉庫から出て行き、市井先輩もしばらくして出て行った。
『まい・・・私も大好きだよ・・・?聞こえてる・・・?
 私・・・辛くなんかないよ・・?だってまいの親友じゃん・・・。
 何も出来なくてごめんね・・・』
 



348 名前:作者。 投稿日:2003年09月04日(木)20時44分28秒

>341 TOKOM様。
     初めまして!見てくださってありがとうございます!
     そう言ってくれると嬉しいです(^−^
     よっすぃーと矢口さんの出番はちゃんとありますから!
     もうしばらくお待ち下さいね〜。

>342 和尚様。
     やっぱ痛いっすよね〜。でも痛くてもそれと同じくらい
     喜びは大きいんです!そうなんです!
     (0^〜^)<綺麗にまとめてるような・・・・。
     
>343 タケ様。
     はい!ついに里田さ〜ん・・・・(泣
     微妙なとこで終わってるのは時間が無くて・・・・すみません。
     次は中澤先生視点ですかねぇ。多分(ヲイ

・・・ついに終わりを迎えた里田さん(大泣)。
痛い終わり方でしたが・・・この後、もっと痛い・・・。
すれ違うココロは元に戻るのか。また笑いあえるのか。
次回です!では!
      
349 名前:タケ 投稿日:2003年09月05日(金)08時26分32秒
里田さん・゚・(ノД`)・゚・ 痛い・・・
これを聞いた松浦さんはどんな反応を・・・?

350 名前:和尚 投稿日:2003年09月05日(金)11時03分14秒
まいたんに・゚・(ノД`)・゚・。
みきてぃに・゚・(ノД`)・゚・。

351 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月05日(金)21時10分23秒

 <後藤 視点>

変。一言で言うと変。
一体なんなの?ってな感じで。
それが誰だと言うと。

市井ちゃん。

焼肉屋で藤本さんだっけ・・?と会ってから市井ちゃんの様子が変。
何か暗くて、考え込んで黙ってる。
とりあえず焼肉を食べてるけど、市井ちゃんは何も手をつけずにいた。
「市井ちゃん、食べなよ」
「・・・いい、いらねぇ」
さっきからこれの繰り返し。おなかすいてないの?

焼肉を食べ終えてみんなで割り勘して焼肉屋を後にした。
市井ちゃんはずんずん家に向かって歩いていた。あたしは市井ちゃんの後を
ついていくように3歩後ろを歩いていた。
「市井ちゃーん・・・・どうしたの?変だよ?藤本さんと会ってから」
あたしの言葉に反応したのか立ち止まる市井ちゃん。あたしも止まった。
「・・・・忘れらんねぇよ・・・忘れるわけがねぇ・・・」
市井ちゃんはそう言って夜空を見上げた。
「助けたかったさ・・・藤本も、里田も」
あたしは市井ちゃんの目の前に出てみた。
「市井ちゃん・・・?一体何があったの?」
あたしの質問に市井ちゃんは答えてくれなかった。

352 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月05日(金)21時23分36秒
あたしは市井ちゃんの高校時代をあまり知らない。
剣道部に入っていて成績は後藤ほどじゃないけど悪くて遅刻魔で。
知ってるのはそんぐらい。

「・・・・教えてくんない」
家について、市井ちゃんに何があったのか聞いても教えてくれなくて、市井ちゃんは
自分の部屋にこもってしまった。
はぁとため息をついて自分の部屋に入った。
「何で教えてくんないかなぁ・・・・」
いいじゃん、教えてくれても。あたしの存在って何?

翌日。寝ぼけ眼でベットから起き上がって部屋を出た。
リビングに行くとテーブルの上にメモがあった。

 後藤へ。

 おはよ。目玉焼きは自分で作れよ。味噌汁はあっためてな。
 今日は仕事で遅くなるから、夕飯はいらない。
 んじゃ、ちゃんと勉強してこいよ。

                 市井より。

「・・・・ぶー」
寂しい気持ちになりつつキッチン行き、市井ちゃんが作ってくれた味噌汁
を温めて、目玉焼きを作る。
学校行きたくないなぁ・・・・めんどくさいなぁ・・・・。
朝ご飯を食べながら憂鬱な気持ちになっていった。
とその時、電話があった。家の電話が鳴り響く。
「はい、市井です」
『あ、起きてた?』
「市井ちゃん!何で今日は早いの?」
『朝早くから仕事があったんだよ。昨日言うの忘れてて』
「ホント?」
『あぁ。メモにも書いたとおり遅くなるから。んじゃまたな』
そこで電話は切られた。



353 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月05日(金)21時34分01秒

 <市井 視点>

携帯をきり、ため息をついた。
ごめん、後藤。
朝早くから仕事なんて無かった。今日は午後から仕事がある。
いつもなら家にいて後藤を見送るのだが・・・・。
「・・・・里田。お前は今の藤本をどー思う?」
ここは墓地。里田の眠る墓がここにあるのだ。
「あいつ学校辞めてさ、私と会う事も無くなって・・・。昨日、久しぶりに
 会ったんだ。でも・・・睨まれたよ」
苦笑いしながら『里田』に話かける。返事は無いけど。
「あいつ、このままじゃ駄目だよなぁ・・・・。あいつはお前がいないと
 駄目なんだよな・・・・」
空は快晴、雲は白い。色鮮やかな花の色。
里田は今何を思っているのか?藤本をどう見てるのか?
「・・・・ごめん。私、何も役に立てない奴だよ・・・。里田も藤本も
 助けてやれない・・・・」
少し、涙を流して言った。空の青さがまた目にしみた。




354 名前:作者。 投稿日:2003年09月05日(金)21時42分17秒

>349 タケ様。
     松浦さんの反応はもうしばらくお待ちを!
     後藤さんも何気痛い・・・・もう痛い人ばっかで(泣

>350 和尚様。
     泣きまくりですね、ハンカチ濡れまくりです(泣
     作者も書いてて涙目ですよ。特に里田さん・・・。

更新少なめで・・・・。
(〜^◇^)<・・・・・そんな過去が・・・。
(0^〜^)<や、矢口さん。うちらはまだ何も知らないはずじゃぁ・・・。
(〜^◇^)<うるさい!いいんだよ!出番無いんだからさ!
(0^〜^)<・・・よくないと思います・・・。

次回は後藤さん中澤先生に市井さんの事を聞く感じ・・・・。
唯一、中澤先生だけですから、市井さんの高校時代を知るのは・・・。
355 名前:タケ 投稿日:2003年09月06日(土)01時18分55秒
市井さんも痛い・゚・(ノД`)・゚・
次は後藤さんと中澤先生ですか・・・
期待して待ってます

(〜^◇^)<なんてこった・・・主人公(?)のオイラがそんな事知らないで・・・
356 名前:和尚 投稿日:2003年09月06日(土)09時55分01秒
( ´ Д `)<あたしの存在って何?
ごとーさんの気持ちわかるなぁ〜。

いちーさんもなかざー先生もみきてぃも傷を負っているんですね。
それにしてもどこの学校もイジメ問題に関しちゃ、このような対応しか取れないよな。
と感じながら読んでます。
357 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月06日(土)20時35分22秒

 <中澤 視点>

特に何をするわけでも無く生徒指導係り室にいた。ここは進路指導も
行っているので受験で悩んでいる生徒が何人か来た。
「夢、叶えたいんか?」
「はい・・・でも、親は許してくれないし・・・」
「本気で夢叶えたいならなぁ、親も振り切って行かなあかんで?夢を叶えようと
 するのはいい事やと思う。本気なら努力するんやな、死ぬ気で」
最後の生徒も入って来た時よりはすっきりした清々しい顔をしていた。
やっと終わったか・・・・。
ふぅと一息ついていたらまた誰か入って来た。
「明日にしてくへんか。さすがに10人も相談相手してたら疲れてしもたわ」
入って来た生徒の顔もろくに見ずに言った。
「・・・・市井ちゃんはどんな生徒だったの?」
「ん・・・?」
私の中で市井という生徒は1人しかいないのだが・・・。
「誰や?」
「後藤真希。市井ちゃんの恋人」
後藤は真剣な顔して私の目の前に立っていた。綺麗な顔した子やなぁと思った。
「・・・何が聞きたいん?」
「・・・事件。事件の事」

あの事件か・・・・。
今まで誰にも話した事あらへんかったなぁ。

「ええよ。まぁ、座れや」

358 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月06日(土)20時49分12秒
「紗耶香は、強い奴やった。いや・・・強がりな奴やった」
過去を懐かしむように話始めた。

紗耶香は頑固者で優しい生徒だった。私がこの学校に来て初めて衝突したのは
紗耶香だった。
『あんたなぁ、遅刻ばっかすんなや!』
『うっさいな!いいじゃん!』
何度怒っても紗耶香の遅刻癖はなおらず、授業のサボリ癖もなおらなかった。
ここまで頑固な奴も珍しいもんだ。怒りを通り越して呆れた事もあった。
当時も生徒指導係りをしていた私だが、まぁ大勢の生徒が私にいろんな相談を
して来た。恋愛・受験・夢・・・・。
だけど紗耶香の方に相談する生徒も多かった。紗耶香は困ってる人を放っておけない
タイプでな。この学校の生徒が他校の男子生徒に絡まれているとすぐに助けてやる
ヒーローみたいな存在やった。剣道やってるから男より強くてなぁ、何人か病院送り
するほど強かった。だから余計モテたんやろなー。
ある日、聞いて事があった。
『紗耶香、何で人を助けるんや?あんたが強くても何度か危ない目におうたやないか』
『・・・なんつーか、ただ助けたいだけなんだよ。他に何も理由なんかないよ』
『かっこええな』
頑固だけど優しい。そんな紗耶香。最初はココロも強い奴だと思ってた。
だけど・・・そんな人間この世にはいないんやな。紗耶香はただ強がって
ただけなんや。それを知ったのが・・・・あの事件やった。







359 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月06日(土)21時00分50秒
里田が自殺した前の日。私は何気なく里田がどうしているか気になって1年の
教室を覗いた。藤本が謹慎になって学校に来てないかと思えば、ちゃんと学校に
来ていた。まぁ・・・1人でぽつんと席についていた。
『裕ちゃん。藤本、いつ謹慎とける?』
『・・・まだわからん。1週間は堅いなぁ・・・』
生徒指導係り室で紗耶香と話していた放課後。驚いた事に里田がやってきた。
『お、里田。どないしてん。お茶飲んでいくか?』
『裕ちゃーん。お茶じゃなくてさぁ、もっとジュースとかないの?』
『何を言ってんのや。日本のココロはお茶なんや』
『意味わかんねー』

『あの・・・ありがとうございました。色々と・・・』

里田はいきなりこう言ったんや。表情は別に普通だった。
『何や。改まって。ここの先生である以上、私は里田を守るのが役目や』
『んじゃ、私の遅刻取り消してよ』
『あんたは黙っとき』
里田は私らの漫才(?)に笑ってたんや。何も変なとこなんか無かった。

なのに・・・・。

次の日、職員室に1本の電話があった。誰も職員室にいなかったので
私が出たんや。
『あの・・・!里田まいの母ですが・・・まいが・・・!』
思ってもみない事だった。驚いて声も出へんかった。
360 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月06日(土)21時16分37秒
里田が行方不明になったと校長にすぐに伝えた。
『校長先生!動かないってどーゆー事ですか!?』
『警察にまかせましょう。今回はいじめが絡んでいる為、表には出したくない』
『生徒が!この学校の生徒が行方不明ですよ!?』
『厳密に対処します。生徒にはばれないように』
『・・・・それでも!学校の校長か!』

とにかく探す為、仕事を放棄して学校を飛び出した。
『ゆ、裕ちゃん!?どうしたの?』
また遅刻して来た紗耶香がいた。
『・・・はよ車に乗れ!』
紗耶香は困惑しながらも私の車に乗った。車の中で里田の事を話した。
車は里田の家へ向かっている。
『そんな・・・・まさか・・・自殺って事も・・・』
『あり得るかもしれへん』
『藤本には・・・』
『まだ話すな。まずは里田の家に行くで』
グォンと更にスピードを上げた。

 
361 名前:作者。 投稿日:2003年09月06日(土)21時23分31秒

>355 タケ様。
     (〜^◇^)<ちょっと待って!主人公って何!?
     中澤さん・・・校長と呼び捨てがまたたまりませんね(何
     後藤さん、いつになく真剣な模様。

>356 和尚様。
     いじめというのは学校にしちゃ悪いイメージだから
     先生達も見てみぬふりをするんですよね。正直嫌ですよね。
     いじめる方も悪いけど・・・それを見てみぬふりする人も
     悪いと作者は思います。

362 名前:タケ 投稿日:2003年09月07日(日)00時45分51秒
中澤先生視点の過去ですか・゚・(ノД`)・゚・
後藤さんはそれを聞いてどう思うんだろう?
(〜^◇^)<!? オイラ主人公じゃなかったのかよ!
(○^〜^)<みたいですねぇ〜
今の話には全然関係ないですけど誰なんでしょうか?
363 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月07日(日)22時31分30秒
里田ん家に着いて里田のお母さんから手紙を渡された。2つあった。
1つは家族へ、もう1つは藤本にあてた手紙やった。
それからしばらくして紗耶香が藤本に電話した。予想通り、謹慎中にも
かかわらず藤本は私達のとこに来おった。
藤本の心当たりを聞いて、学校に向かった。体育館裏にある倉庫。
私は初めてそんなとこに倉庫がある事を知った。

中には、もう冷たくなってる里田がいた。

間に合わなかった。全ての血を流しきったような里田は最後に何を思ったんだろう?

最後に願ったのは何やったんだろう?

居たたまれなくなって私は倉庫から出た。中から藤本の泣き声が聞こえる。
『裕ちゃん・・・』
紗耶香も中から出てきた。
『里田は最後に何を願ったんやろうな・・・』
『・・・・何だろうね』
『ほな、連絡しよか。紗耶香はどないする?』
『・・・授業に出る気分じゃないよ』
この時、初めて見たんや。

紗耶香が涙を流してるとこを。

強かった紗耶香。それが間違ってる事に気付いた。

『裕・・・ちゃん。助けたかったよ!何で・・・助けれなかったんだろう・・』
『・・・紗耶香。自分を責めるな。人のココロは簡単には救えないんや』
『でも・・・自殺だよ・・・?そこまで追い詰めてたんだよ・・?』
『・・・私も、助けたかったんや・・・紗耶香も、私も・・・藤本も』

何が悪い?

誰がいけない?

なぁ・・・神様。里田は何で自殺なんかしなきゃならん?

あの子は何も悪くないんや。

どうして、死なないとあかんの?

神様、答えろや。




364 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003年09月07日(日)22時42分37秒

 <後藤 視点>

中澤先生から全てを知ったあたしは涙が止まらなかった。
市井ちゃんは今も、責任を感じてるんだ。深い傷をココロに負ってるんだ。
「・・・・市井ちゃんは、今も自分を責めてる・・・?」
「おそろらく、な。私も同じや」
「・・・・悲しいよ・・・・・」
「でも今、辛いんは藤本や。あいつは誰よりも里田の事を思ってた。
 誰よりも里田の事を必要としてた」

あたしは暗い気持ちになりながら学校を後にした。
「あれ?ごっちんじゃん」
「矢口先輩」
「暗い顔してるけど、何かあった?」
「・・・いえ、別に」
「変だぞー?」
「・・・何でもない!」
矢口先輩を押しのけて家まで走った。


365 名前:作者。 投稿日:2003年09月07日(日)22時43分40秒
時間が無いため、お礼レスはまた明日にします。ごめんなさい。
366 名前:タケ 投稿日:2003年09月08日(月)16時20分39秒
痛い・・・
市井さんのココロはやはり後藤さんが救うんでしょうか?
じゃあ中澤先生は?藤本さんは?(松浦さんかな?)
とにかく期待しております!
367 名前:和尚 投稿日:2003年09月08日(月)17時43分08秒
皆ココロに傷を負っている・・・。
この問題は一筋縄では行かないみたいですね。
次の更新が気になります。
368 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003/09/11(木) 20:32

 <松浦 視点>

美貴さんは深い傷をココロに負ってる。

あたしは全てを知った時、何てひどい事をしてきたんだろうと思った。

「はは、亜弥にはあんま関係なかったね。帰ろう」
美貴さんが立ち上がった。あたしも立ち上がる。先に歩く美貴さんの後ろをついていく。
美貴さんの背中を見ながら、涙を拭った。

家に帰ると、妹が珍しく慌てていた。
「何慌ててんの?」
「あ、お姉ちゃん!大変だよ!」
「何が?」
うざったいと思いながら玄関で靴を脱いで上がる。すたすたと廊下を歩く。
「お父さんと・・・お母さんが・・・離婚の話してて・・・」
後ろから弱々しい妹の声が聞こえて、すぐ振り返った。
「ホントなの・・・?」
そう聞くと妹は縦に首を振った。あたしはリビングの方へ歩き出した。

「亜弥、帰ってたの?」
テーブルを挟んでソファにお母さんとお父さんが座っていた。
「何?離婚って」
少し苛立ち気味に言った。
「あぁ、もうお父さん達は一緒にいても駄目なんだと思う」

何それ・・・・ふざけてんの?

あたし達はどうなるの?自分勝手じゃん。

それからお父さんはあたしと妹にどっちについていくか聞いてきた。

もう嫌だよ・・・・家族って何?何なの?あったかい家庭があるのが家族じゃないの?

「あたしは1人でいい。離婚でも何でも勝手にすれば?」
そう言い放ってあたしは自分の部屋に行った。


 


369 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003/09/11(木) 20:42

 <市井 視点>

仕事が終わって家に帰る。ちょっと足取りが重たかった。
「ただいま〜・・・」
いつもならおかえりと言って出迎えてくれる後藤の姿は無かった。私は自分の部屋に
入って電気を付けた。
「・・・うわぁ!?」
ベットの上に後藤が寝転んでいた。どうやら寝ているようだ。
「後藤・・?おーい?」
後藤の肩を揺さぶると後藤が目を覚ました。
「ん〜?」
目をごしごしとこすりながら起き上がる後藤。はっと私に気付いた瞬間、抱きついてきた。
「市井ちゃん・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
泣きながら私に『ごめんね』を繰り返す後藤をそっと優しく抱きしめ返した。
「あたし、わかってなかった・・・市井ちゃんが苦しんでるの」
「裕ちゃんから聞いたか」
「・・・あたしが・・・ごとーが傍にいるからね?市井ちゃんの傍に」
更に強くギュッと抱きしめて。
「・・・ありがとう」
そう一言、後藤に言った。

370 名前:9.悲しい過去の記憶。 投稿日:2003/09/11(木) 20:52

 <藤本 視点>

亜弥に全てを話してちょっとだけ気分が良くなった。
「まい・・・私はどーすればいいかな・・・?」
かつて一緒に撮った写真を眺めていた。その時、携帯が鳴り響く。
『美貴!何勝手に帰ってんだよ〜』
マサオからだった。
「悪かった・・・でもいたくなかったから」
『市井さん・・?』
遠慮がちに聞いてくるマサオ。
「まぁね。でも帰ったのは悪いと思ってる。ごめん」
『・・・いつになく素直じゃん。何か悪いもんでも食べた?』
・・・何でそーなるかな。

話が終わって携帯を切った。ふぅとため息をついた。
素直に謝れたのは・・・まいのおかげだと思う。まいの事を思い出すとふと優しい
気持ちになるから。

明日の希望も何も無いから、だから毎日嫌な事を思わなくて生きていけるのかな。
何も望む事なんてないし・・・・。

いや、たった一つあるかもしれない。

それは願わない事だけど。

久しぶりに見上げた夜空の輝く星に向かって願ってみようか。

「・・・まいに逢いたい」





371 名前:作者。 投稿日:2003/09/11(木) 21:01
何気切ない気分の作者です。こんばんはー。

お礼レス、遅れてすみませんでした!感謝してます!

>366 タケ様。
     今回で市井さんは後藤さんが救うみたいな感じでした!
     中澤さんや藤本さんは誰なんでしょう・・・。
     (〜^◇^)<ねぇ、オイラは?

>367 和尚様。
     一筋縄ではいきませんね・・・。松浦さんも大変です。
     皆、傷負ってるけど、それを癒してくれる人は必ず傍にいます!
     (〜^◇^)<オイラが癒してあげるよ♪
      ^∀^ノ <・・・お前が?
     煤i〜^◇^)<ひどっ!ひどい!
     
次回・・・・何だろうどうしよう(焦
藤本さんメインですかねぇ・・・・いや、矢口さん・・・・。

 
372 名前:和尚 投稿日:2003/09/12(金) 13:04
みきていはホントまいちゃんが好きだったのね・゚・(ノД`)・゚・
まつうらさんもみきてぃからの話で少し考えが変わってきたみたいだし、
このまま改心して行けば・・・って家の状態がこんなんなってる〜!?

レス中のやぐちさん・・・面白すぎ(笑)

373 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/12(金) 21:48

 『10.たった1つ願いが叶うなら。』

はい、久々の登場です。オイラ忘れられてんだと思ったよー。
何か物語、大変な事になってるし、作者は主人公のオイラ完全に無視だし。
「はははー、やっと出番が来たね!」
スキップしながら登校してるわけなんですが。

こんな浮かれモードに浸ってはいられませんね。

松浦亜弥。こないだの焼肉屋で彼女に出会った。向こうも驚いてた。
なっちをいじめて何が楽しいんだッ!マジムカツク!
まぁ・・・とりあえず松浦さんと話をしたい。
「なっち〜!おっはよ〜!」
下駄箱になっちがいた。挨拶をすると笑顔で「おはよ」って言ってくれた。
なっちと一緒に廊下を歩いて教室に向かっていた。
「あ、裕ちゃんだ。裕ちゃ〜ん、おはよー」
「あんたなぁ、教師にタメ口はあかんで」
「ぶー、いいじゃん。・・・おはよーございます」
なっちが隣でクスクス笑っていた。
「ちゃんと授業受けるんやで。特に矢口、担任から聞いたで。たまに
 授業サボるんやろ?」
「はーい。じゃぁね〜」

「面白いね。中澤先生」
なっちはまだ笑っていた。
「なっちぃー笑い過ぎだよ。裕ちゃんって呼んでいいんだよ。みんな
 そう呼んでるし。裕ちゃんもその方が嬉しいと思うから」
「裕ちゃん・・?わかった」
教室に入ると圭織が元気よく「おっはよー!」と挨拶してきた。
「圭織は朝から元気だねぇ。オイラなんて1時間目から数学でもう憂鬱だよ」
オイラの言葉に二人は笑っていた。
374 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/12(金) 22:03
数学の授業の時間、授業はそっちのけであれこれ考えていた。
・・・今日の放課後、会ってみよう。早い方がいいに決まってる。
「矢口!矢口真里!」
でもさー、何組かわかんないんだよね。柴ちゃんに聞こうかな。
「矢口!聞こえてるのか!?」
よっすぃーの方が早いかな?メールで聞いてみようかな。
バンッと派手な音が聞こえた。数学の先生が黒板を叩いた音のようだ。
・・・・何してんの?あの、先生。
「矢口・・・さっきから先生に呼ばれてたよ」
隣の席の子が教えてくれた。
「矢口、放課後、職員室に来なさい」
何だよそれー!?

「矢口ってたまにあーなるんだよ」
「そうなんだ」
お昼ご飯の時間。圭織となっちがあの事についてしゃべっていた。
「圭織だって交信してるんじゃんか」
「でもちゃんと人の声は聞こえてるよ」
「なっちはたまに人の話聞いてないじゃんか」
「それは聞こえてないからしょうがないの」
・・・・何だよそれー。

放課後。せっかく松浦さんに会おうと思ったのにオイラがいる場所は職員室。
「矢口。たるんでるぞ。いー加減にしないか」
「ちょっと考え事してたんです」
「授業に集中しろ。受験生だろ?」
「こっちの方が重大なんです!」
「重大?何が重大なんだ?」
「それは・・・・」
言葉に詰まった時だった。
「まーええじゃないですか。矢口も悪いと思ってるんやろ?」
375 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/12(金) 22:09
「いやー助かったよ。ありがと、裕ちゃん♪」
生徒指導係り室でお茶をずずっと飲むオイラ。
何とか裕ちゃんが先生に言ってくれたおかげですぐ解放された。
「でも授業はちゃんと聞きいや?」
「わかってるよー・・・・でも、友達の為だから」
ことっとお茶の入ったコップを机に置いた。
「何や?何かあったんか?」
「んー、たいした事じゃないよ。大丈夫」
「あんたも紗耶香と似てて何でも背負い込むからなぁ。何かあったら
 何でも相談するんやで?」
相変わらず心配性な裕ちゃん。
「うん、ありがと。行くね」
パイプ椅子から立ち上がった。
「また来てなー」
「おう!」
生徒指導係り室を出て、時刻はもうすぐ午後の5時。
とりあえず1年の教室に向かった。
376 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/12(金) 22:21

 <松浦 視点>

1回学校出て、でも途中で教室に忘れ物をした事に気付いて引き返してきた。
もう時刻は午後の5時だった。辺りは夕暮れ時だ。
「何で忘れるかなー」
机の中をごぞごそと探して、ノートを取り出した。
「これが無いと今日の復習が出来ないじゃん」
少し乱暴にノートをカバン中に突っ込んだ。

「・・・・松浦さん?」

聞き覚えの無い声。あたしはそっちの方に視線を向けた。
教室の入り口のとこに小さな背の金髪の人が立っていた。

「はい・・・そうですけど。あ・・!」
思い出した。あの焼肉屋で安倍さんの隣にいた人。
「ちょっといいかな?話がしたいんだ」

・・・・・知ってるよね。あたしがどーゆー人間だなんて。

「いいですよ」

窓から見える夕焼けの空。夕焼けの陽があたし達を照らす。
「オイラは矢口真里。初めまして」
自己紹介をしてきた。
「松浦亜弥です。初めまして」
矢口さんは真顔であたしのとこにつかつか歩いてきた。

「もう・・・やめてくんないかな?」

「・・・何がですか?」
知ってる。何を言われているのか。
「なっち・・・安倍なつみをいじめないでよ」
「あぁ・・・何であたしだなんてわかったんですか?」
「知り合いが教えてくれたんだよね。あなたがお金で3年の人をつって、その人達に
 なっちをいじめさしてた」

全部知ってるみたい、この人は。

あたしは少し微笑んだ。
377 名前:作者。 投稿日:2003/09/12(金) 22:28

>372 和尚様。
     藤本さんはまだ里田さんが生きて頃は自分の気持ちに
     実は気付いてなく、里田さんが亡くなってやっと気付いた模様です。
     ついに・・・ついに、矢口さんがぁ〜(嬉泣
     松浦さん、どうなるのか。次回です(^−^

(〜^◇^)<いえーい♪オイラの出番♪
(0^〜^)<・・・・いいですね、出番があって。
( ^▽^)<そう落ち込まないでひとみちゃん!私もないよ!
(0^〜^)<・・・・棒読みだよ?
( ^∀^ノ<ははは、みんな出番なんか気にしちゃって。
(〜^◇^)<・・・・紗耶香って何だかんだ言ってたまに出てるよね。
( ^∀^ノ<日頃の行いがいいからだろ!わかりきった事言うなよ!
378 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/12(金) 22:41
リアルタイムキターと思ってたらなかなか次がこないので
あれ?っと思ったんだけど
ひょっとしてコピペじゃなくて直接打ちながら更新してます?

それはさておき。
動きありそうですね。ここで矢口ですか。タイミング・・・いいのか?
続き楽しみです。頑張って。
379 名前:タケ 投稿日:2003/09/12(金) 23:22
更新お疲れ様
(〜^◇^)<やっとオイラの登場だい!!

ついに松浦さんとの一対一ですね!
頑張れ矢口さ〜ん!!
380 名前:和尚 投稿日:2003/09/13(土) 12:10
真打登場やぐちさん!
やぐちさんの猛攻にまつうらさんはどう出るのか!?気になるトコです。

やぐちさん、あべさん、いーださんの会話が漫才みたいでホッとさせられます。

381 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/13(土) 14:28
「自分がやってる事、わかってんの?」
「わかってますよ。じゅーぶん」
「じゃぁ罪悪感ある?」
「・・・・」
矢口さんから視線を外して窓から夕焼けの空を見上げた。何羽か鳥が飛んでいた。

何か・・・疲れたな。

「もうなっちと関わらないで欲しい」

はっきりとした声。

「まだいじめたいならオイラが相手するよ」

あたしは一筋、涙を流した。

ココロの底から羨ましく感じた。安倍さんを。

それは今までのとちょっと違って、憎いだとかそーゆーのは無かった。

いいなぁって、思ったんだ。

こんなにも自分の為に頑張ってくれる友達がいる。

あたしにはそんな友達、1人もいないよ。

安倍さん・・・・羨まし過ぎです。

「・・・・ごめんなさい」
「え?」

あたしの涙はとまらなかった。
382 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/13(土) 14:41

 <矢口 視点>

拍子抜けだった。松浦さんが泣いているのだ。
「ごめんなさい・・・」
「え、あ、・・・・」
とりあえず悪いって思ってるんだろう。
「・・・ちゃんとなっちに謝ってよね」
「はい・・・」
ポケットからハンカチを取り出して松浦さんに差し出した。

しばらくして泣き止んだ松浦さんと一緒に学校を出た。
「あたし、羨ましいです。安倍さんが」
「何で?」
「矢口さんと友達で」
「・・ん?」
「あんなに必死に頑張る友達。あたしにはいないです」
苦笑いで言う松浦さん。
「・・・出来るよ。すぐに」
「あたしがですか?無理ですよ。こんな性格で」

・・・・もっと素直になって、もっと自分を大切にすればいいんだよ。

そうすれば、まわりにいる人は自分を見てくれる。

自分に優しく、人にも優しく。

一緒に笑って、泣いて。

それが『友達』だから。

・・・・そう松浦さんに言ったらまた泣いちゃったよ。

「明日、放課後、安倍さんに謝ります」
「うん」
「じゃ、また」

夕焼けの中、歩いていく松浦さんは何だか小さく見えた。

オイラの方が小さいのに。

383 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/13(土) 14:53

 <藤本 視点>

朝から晩までバイトでくたくたになって家に帰った。
「ふぁー、疲れたー」
別にこんなにバイト入れなくても十分生きていけるのだが。
何かしなきゃという思いでバイトを入れ続けていた。
「・・・もう1時か」
時計を見るともう日付は変わって午前1時。何もする気がないのでベット
に寝転んだ。
・・・風呂は朝にしよ・・・。
くかーっと眠りに落ちようとした時、携帯が鳴った。
「はい・・・」
『あ、美貴さん?』
「亜弥・・?今、何時だと思って」
『あの!何か出来る事って無いですか?』
「は・・?」
『何か役に立ちたいんです。美貴さんの』
一体何を言い出すんだ・・・・こいつは。
「別に何もないよ・・・」
『え?無いんですか・・・?』
「・・・わかった。1つある」
『何ですか〜!?』
「電話切らせて。眠らせて。以上」
一方的に電話を切って携帯をそこらへんに置いた。

翌朝。何だかいい匂いがして目覚めた。
「・・・ん?・・・」
これは味噌汁の匂い・・・。
むくっと起き上がって自分の部屋から出てみた。
「あ、おはようございます!」
亜弥が何か台所で料理をしていた。
「な、何やってんの?」
「朝ご飯ですけど?もう出来ますから」
「・・・・頼んでないけど?」
「電話、疲れてるようだったんで。朝ご飯作ってあげようかなーって」
「どうやって家に入ったの?」
「大家さんに言ったら入れてくれました」

・・・・頭、痛い・・・・。
384 名前:作者。 投稿日:2003/09/13(土) 15:01

>378 名無しさん様。
     はい、直接打ってます。
     タイミング・・・いいようで悪いですよね(^−^;
     頑張ります!力がある限り!(ぇ?

>379 タケ様。
     (〜^◇^)<いえーい♪いっぱい出てるよ〜。
     矢口さん頑張った!やっぱり主人公はあなたです。

>380 和尚様。
     どうでしょう?矢口さん。いっぱい出番ありました。
     あの3人が揃うとほのぼのしますね。ボケとツッコミが
     揃って・・・・。(〜^◇^)<突っ込みオイラだけだけどね。

さて・・・松浦さん、矢口さんの言葉をちょっと間違ってとらえてますが。
藤本さんはいかに・・・・何だか、めいわくそう(w
385 名前:タケ 投稿日:2003/09/13(土) 18:25
更新お疲れ様
松浦さん・・・えらい!!
きっと友達できる!!
(〜^◇^)<(オイラが言おうと思ってたのに・・・)
松浦は大丈夫だい!!『主人公』のオイラが言ってんだからな!!

さてこれから藤本さんは松浦さんと暮らして(?)どうなるんでしょ?
期待してます!
386 名前:和尚(携帯) 投稿日:2003/09/14(日) 12:10
やぐちさんかっけー!まつうらさんに優しく諭してあげるやぐちさんに惚れました!
387 名前:378 投稿日:2003/09/14(日) 19:41
> はい、直接打ってます。
やっぱり。(^-^)
そういえば最初の頃から1レスごとの間隔長いですね。

松浦さんの(勘違い)友達作り始まりましたね。
2人の関係楽しみです。
市井も気になるところですね。
更新期待してます。頑張って。
388 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/14(日) 23:52
とりあえずシャワーを浴びた。適当にジーンズとTシャツを着て頭をタオルで
わしゃわしゃと拭きながら出てきた。
「早く食べて下さいね〜。冷めちゃいますから」
テーブルの上にはものすごく食欲をそそる朝食が・・・・。何だか早く食べたい衝動
にかられて椅子に座った。
「い、いただきます!」
久しぶりだ。こんな朝食は。味噌汁をすすりながら思った。
「どうですか?」
「おいしいよ」
「良かった〜」
亜弥がいきなり朝いて驚いたけど、何だか嬉しい気持ちになった。自分以外の人が
いるのは何年ぶりだろう。マサオは家に来た事はないし。

『美貴、起きてよ。遅刻するよー?』
『んー・・・眠い』

昔はまいがいつも寝起きの悪い私を起こしに来てくれてたっけ。
あんまりにも寝起きが悪いからたまに水かけられたりして。

「美貴さん?」
「あ、あぁ。ごめん」
はっとして我に戻った。亜弥が心配そうに私を見ていた。
「あ、それよかいいの?学校は。それにこんな早くに来て・・・家族の人には
 何て言ってきたのさ?」
私がそう聞くと亜弥は暗い顔になった。
「・・・もう、いいんです。あんな家族」
「・・・どうした?」
「いえ。あ、お茶おかわりしますか?」
「あ、ありがと・・・」
何かあったのかなぁ?喧嘩でもしたかな?
卵焼きをもぐもぐ食べながらそう思っていた。
389 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/15(月) 00:05

 <安倍 視点>

朝からやけに矢口が笑顔でニコニコしている。何だか怖く感じる。
「矢口、ご機嫌だね」
「そぉ?なっち!もう安心しな!」
そう言われても何が何だかわからないんですけど、矢口さん。
「矢口ってすぐ顔に出るからね。新たに好きな人でも出来た?」
と圭織が矢口に聞くと。
「何言ってんのー!んなわけないでしょ!」
と矢口は言って圭織の肩をバンバン叩いた。

ホント、何があったんだろ?

放課後。
「あの・・・・安倍さん」
掃除のごみ捨てから教室に戻った時、声をかけられた。
あ・・・確か、松浦さん・・・。
「少し時間いいですか?ここでかまわないんで」
「はい・・・」
今度は何だろう?何されるんだろう?と怯えながら言葉を待つ。

「・・・あの!今まですみませんでした!」

がばっと頭を下げる松浦さん。
「へ・・?」
間抜けな声を出してしまった。
「・・・ごめんなさい。謝ってすむほどじゃないけど・・・・。
 あたし、ひどい事して・・・・ごめんなさい」
まだ頭を下げてる松浦さんの肩をそっと手を置いた。
「頭、上げてよ」
ゆっくりと頭を上げた松浦さんの目は涙がたまっていた。
「・・・確かに、いじめられた事はすごく苦しくて辛かった。
 でも、今、あなたは謝ってくれた。頭まで下げて。私は許すよ。
 これからはもうこんな事しないで?いじめって言うのは自分も傷つけちゃうからね。
 約束、出来る?」
「・・・はい!ありがとうございます!」
「ん、約束だよ」

矢口はこれを知っていたんだね。

「あたし・・・安倍さんの友達みたいな人、作ります!自分に素直になって、
 人にも自分にも優しくしていきます」
「そう、頑張って」
「はい!」

ココロのもやもやが晴れた気がした。

「なっち、良かったじゃん」
矢口がいつのまにか傍にいた。
「・・・ん、ありがと。矢口」
390 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/15(月) 00:17

 <市井 視点>

仕事でもぼーっとする事が多くなった。先輩達に「大丈夫?」とよく声をかけられる。
藤本はこのままでいいのか・・・・。そんな事ばかり考えている。
「でも・・・会うのも怖いな・・・」
こんなに弱気になってるのはどのぐらいぶりだろう?

里田が亡くなって、それから今みたいにぼーっと過ごしていた。
裕ちゃんはすぐ移動させられた。生徒指導の問題だとかそーゆー事で。
事件は生徒達はごく一部の人しかしらないが、先生たちが口止めしていた。
まるであの事件が最初っから無かったようだった。里田をいじめていた奴らは
ひょうひょうとして卒業していった。

「はぁ・・・・駄目だぁ」

事件から数日後、後藤の事が気になって状況を後藤から聞いた。
『もう・・・嫌だよ。市井ちゃん・・・』
電話越しから聞こえてる後藤の声。私はすぐに後藤を自分の家に呼んだ。
私には後藤が必要なんだ。絶対、大切にする。
もし、後藤が里田みたいになったら?私が藤本のような気持ちは痛いほどわかる。

「裕ちゃん、私、藤本に会ってみるよ」
『あんた・・・大丈夫なんか?』
「あいつはこのままじゃ駄目なんだよ。そして私も」
『・・・・そか、なら私も行くわ』
電話した裕ちゃんの声は力強くて、やっぱ頼もしいなと思った。
後藤にもちゃんと話そう。
怖くても、私はぶつかっていくよ。大丈夫さ、私の隣には後藤や裕ちゃん。
他にも頼もしい人達がたくさんいるから。
391 名前:作者。 投稿日:2003/09/15(月) 00:29

>385 タケ様。
     出来ます!
     (〜^◇^)<おうよ!
     ( ^▽^)<みんな友達〜♪ずっとずっと友達〜♪(ポンキッキーズから)
     (0^〜^)<・・・梨華ちゃん、音ずれてるから。
     松浦さん、何か明るくなりましたねぇ。うん、人間って簡単に変われるもんですね。

>386 和尚(携帯)様。
     (〜^◇^)<オイラに惚れちゃけがするぜ!
     ( ^∀^ノ<・・・・けが?どんな?骨折?あ、火傷?
     (〜^◇^)<・・・・・・打撲?
     ( ^∀^ノ<・・・微妙ー。

>387 378様。
     ホント不思議な友達作りですよねぇ・・・。何か役に立ちたいんですね、彼女は。
     (〜^◇^)<友達は自然に作れるさ!
     次回も盛りだくさんな内容で・・・・うん、多分・・・・。

何だか主人公っぽい矢口さん。うん、いい感じ(ぇ?
いろいろと変化があらわれてきていますが・・・・。
次回はどうなるんでしょう・・・・つーか吉澤さんと石川さんが・・・・(汗
392 名前:タケ 投稿日:2003/09/15(月) 00:49
みんな大変だ・・・
松浦さんの家族はどうなっちゃうんだろ?
市井さんも頑張れ〜

主人公っぽい矢口さんが素敵です
(〜^◇^)<↑話変わり過ぎだよっていうか主人公『っぽい』のかオイラ?
次の更新期待してますよ
393 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 00:53
またリアルタイムだあ (^-^)
市井・藤本。動き出しましたね。
楽しみです。

(´-`)。o0(自分が藤本推しのせいか、矢口が主役ってことすぐ忘れちゃうなぁ)
394 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/15(月) 17:09

 <藤本 視点>

亜弥の作ってもらった朝食を食べて家を出た。亜弥も一緒に家を出る。
「ありがと」
一応礼は言っておこう。だけどいくら知り合いでも勝手に家には入って欲しくないものだが。
「いえ。言ってくれれば、作りますから」
笑顔でそう言われちゃ何も言えなかった。

途中まで一緒に歩いて行き、亜弥は学校へ私は駅の方へわかれる。
今日も朝からいい天気だ。洗濯していけば良かったかなと思いながら歩く。
「藤本・・・!」
声がした方を向くと、市井さんがいた。
「・・・・何ですか?」
「バイト?」
「・・・ええ、まぁ」
「今日の夜、あいてるかな?」
「・・・何か用ですか?」

何かとげとげしくなってしまうのはココロのどっかでこの人を許してないからだろう。
出来れば会いたくないし、声も聞きたくない。さっさと何処か行けばいいのに。
だけど市井さんは真っ直ぐ私を見ていた。
「話したいんだ・・・。このままじゃ駄目だと思って」
「何が駄目なんですか?」
「藤本はこのままでいいのか?」
「別にどーでも」
「里田は今の藤本見てどう思ってるかな?」
「・・・・」
「ホントにこのままでいいのか?」

いいにきまってないよ。

きっとまいは空の上で私の事を心配して見てるだろう。

だけどさ、もう疲れたんだよ。

まいがいないなんて今でも信じられないんだよ。

傍にいて欲しいんだよ。

395 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/15(月) 17:17
現実を見たくなくて、逃げてる自分がいる。
誰かのせいにして、逃げてる自分がいる。

わかってんだけど、わかってるんだけど・・・・。

「私は前みたく笑って欲しいんだよ」
市井さんはこんな私を助けようとしている。
「今更・・・先輩ぶるのもあれだけど」
「市井さん・・・どんなに願っても叶えられないんじゃ、願い事なんて
 意味ないですよね。たった1つだけなのに・・・・」

≪ほら、またそう言って逃げるんだ?≫

逃げてなんかないよ。願い事なんて持ってても意味ないんだから。

≪叶うよ。願えば≫

まいが戻ってくる?もう戻って来ないんだよ!?私の願いはまたまいと一緒に
いたいんだよ!

≪・・・・≫

無理でしょ?意味ないでしょ?

ココロの片隅から聞こえてくる声は誰んだろう?

「藤本?おい?」
「・・・・私は・・・逃げてなんかないッ」

走って市井さんから離れた。
396 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/15(月) 17:24

 <矢口 視点>

松浦さんもいい方向にいってるし、なっちもこれで安心だし。
もう大丈夫だねぇ〜。
「またニコニコしてるね・・・矢口」
「うん。私も怖いよ」
「何〜?圭織、なっち」
こんなに平和なのに何でこの2人はオイラを気味悪く見るのさ。
「平和っていいねー。やっぱ平和が1番なんだよ!」
そんなこんなしてて携帯にメールが届く。

<矢口、どうしたらいいんだろう? 市井>

「はい?紗耶香?」

意味不明な紗耶香からのメール。平和と喜んでいたオイラの顔が曇る。
とりあえずメールを送り返してみた。

<何があったの?>

<・・・・今日、会える?>

<いいけど・・・>

<んじゃ、午後の7時に近くの公園で>

一体紗耶香に何があったんだろう?

新たな不安を抱えながら、授業そっちにけで眠りに落ちた。
397 名前:作者。 投稿日:2003/09/15(月) 17:33

>392 タケ様。
     いやぁーいろいろと問題があります。松浦さん家もどうなるのか・・。
     市井さん、ネガティブで落ち込んでますよ。
     ( ^▽^)<ポジティブ♪
     (0^〜^)<いや・・・・梨華ちゃんが言っても。
     矢口さんは主人公ってよりも主人公っぽいってのが設定なので。
     (〜^◇^)<最初の時より扱いが変わってるぞ!

>393 名無しさん様。
     リアルタイムで見てましたか、いやぁ恥ずかしい(何
     動きましたね、この2人(+裕ちゃん)。
     矢口さんは主人公っぽいなのであんま気にせずに(^−^
     忘れちゃってもそれはそれで(^−^
    (〜T◇T)<ひどいよぉ!忘れないで〜!

明日からまた学校・・・・な作者です。
次回、どーなるかあれこれ考えながら授業受けようと思います(ぇ
398 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/15(月) 17:38
藤本の傷は結構深そうですね。
なんとか前向きになってくれると良いのですが。

>忘れちゃってもそれはそれで(^−^
あ、そうですか?じゃあ遠慮なく (^-^;

最後に授業はちゃんと受けましょう。 (^-^)
399 名前:タケ 投稿日:2003/09/15(月) 23:08
更新お疲れ様です
(〜―◇―)<zzz・・・
藤本さんのココロの声は誰なんだろ・・・
とにかく頑張れ〜!

市井さん・・・
(〜―◇―)<(沙耶香どーしたんだろ・・・ムニャムニャ)

とにかく続きが気になりまくりです(w
400 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/17(水) 18:14

 <市井 視点>

もう秋の季節なのに暑い日が続いている。陽が沈むと涼しくなっていく。
「はぁ・・・」
カバンを肩にかけて公園の中に入って行く。もうそこは子供達の姿は無く、ただ
静寂と闇が広がっていた。街灯の光りがやけに眩しく感じた。
腕時計を見るともうすぐ午後7時。矢口はまだ来てないのを確認し、ベンチに座った。
ここに来る途中で買ったコーヒーを飲みながら矢口が来るのを待っていた。

もう藤本のココロを助ける事は出来ない・・・?

「紗耶香!」
はっと顔を上げると矢口がこっちに向かって走って来ていた。
「矢口・・・」
私の目の前で立ち止まってはぁはぁと息をきらしていた。
「いきなりあんなメールくるからさぁ、びっくりしたよ」
「ごめん。いきなり」
あははと笑う矢口は私の隣に座った。
「何か涼しいよねー。夜は。日本の環境はどーなっちゃうんだろ?」
明らかに暗い私を矢口は明るくふるまっていた。
401 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/17(水) 18:30
「あのさ・・・聞いてくれる?」
「うん、いいよ」
私はゆっくり話し出した。
あの事件の事を。

里田があの倉庫で血を流して死んでるのを見た時。
真っ先に自分を責めた。
藤本は謹慎で家から出られない、裕ちゃんには裕ちゃんの仕事がある。
私が気付いてあげなければいけなかったんだ。
里田が死ぬ前日に、学校で里田に会いに行った。

『里田』
『市井先輩』
『・・・大丈夫か?』
『ええ、大丈夫ですよ。今日、学校終わったら美貴のとこ行くんです』
『そっか。私も行こうと思ってたんだ。なら一緒に行かない?』
『放課後、図書館に行かなきゃいけなくて・・・』
『ん、わかった。じゃ、またね』

別に何も変わりは無かった。何を里田が変えたんだろう?
何が里田を追い詰めていたんだろう?

どうして私は気づかなかった?

里田の葬式、藤本はずっと声を殺して泣いていた。裕ちゃんも泣いていた。
私はただ呆然としていた。

数日後、藤本が学校を辞めるという事を聞いた。裕ちゃんが移動させられる
のもその時、聞いた。
『藤本!何で辞めるんだよ?』
『もう嫌なんですよ。こんな学校』
『裕ちゃんも何で移動なのさ?』
『校長が決めた事や、仕方ないわ』

藤本と裕ちゃんは学校を去って行った。

気付いてくれば・・・・里田の気持ちに気付いてやれば。

こんな事にならなかったのに。
402 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/17(水) 18:43
自分のせいだ。自分のせいで・・・・。

「自分のせいで、里田は死ぬ道を選んで、藤本は学校を辞めた。
 裕ちゃんは移動させられて・・・・」

頭を抱えて歯を食いしばった。

「・・・・紗耶香」
「でも、藤本は救いたいんだ。あいつがあのまま人生送るのはあいつの
 為にならない。これが償いなんだ」
「何それ?」
「矢口・・・」
顔を上げると矢口は怒った顔で私を見ていた。
「紗耶香のせいじゃないよ!里田さんを追い詰めたのはいじめていた
 人達でしょう?紗耶香も裕ちゃんも藤本さんも悪くないよ!
 確かに・・・里田さんは自殺しちゃったよ、藤本さんは学校辞めたよ。
 裕ちゃんは移動させられたよ。でも紗耶香が悪いわけじゃないじゃん!
 それに償い?何それ。そう思っちゃうの?紗耶香は本気で助けたいんでしょ?
 だったら償いとか言わないで!」
一気に言う矢口に呆然とした。
「人のココロ、助けるのに償いなんて言葉はいらない。紗耶香は悪くないんだよ?
 そう自分を責めないで?藤本さんや里田さんの為に何かしようよ。紗耶香の為にも」

矢口は涙を流していた。私ははっと何かに気付いた感じがした。

・・・・ネカティブになってる場合じゃない。怖がってる場合じゃない。
私は、今私が出来る事をしなきゃいけないんだ。あの2人の為に出来る事を。
403 名前:作者。 投稿日:2003/09/17(水) 18:50

>398 名無しさん様。
     前向きになって欲しい・・・藤本さん、傷深いですからね。
     今回は市井さん中心でしたが、次回は藤本さん登場予定です。
     あ、授業はちゃんと受けてますよ〜(^−^

>399 タケ様。
     ココロの声・・・・多分、次回でわかるんじゃないかと(^−^
     市井さん、前向きになったような感じです。
     (〜^◇^)<やっぱオイラってすごい?
     ( ^∀^ノ<んー・・・まぁそれなりに?
      
400超えました!うわぁーすごい♪これも見ている方がいるおかげですよ♪
これからもお願いします〜。
404 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/17(水) 20:18
市井さんは1歩前に踏み出せた感じでしょうか
にしても矢口さん ⊃д`)
前言撤回あんたやっぱりりっぱな主役や!

授業中頭に入れるのが一番効率良いですからね
(嫌でも机に向かわされる時間だし)
頑張ってください
405 名前:タケ 投稿日:2003/09/18(木) 11:16
矢口さんかっけー!!
(〜^◇^)<そりゃあ主役(っぽい)からね!!
市井さん・・・きっとなにか出来ることがあるはずです!頑張れっ!!

ところで吉澤さんと石川さんは・・・
(〜^◇^)<(そう言えばあの2人・・・)
406 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/19(金) 21:25

 <藤本 視点>

「今日の夕飯何がいいですかー?」

・・・・・・・。

「カレー?それともオムライス?」

・・・・・・・。

「あたし的にはーオムライスかなぁー」

私は今、いる場所は近所のスーパー。今日はバイトが早く終わったので
夕方頃に家についた。したら何故か私の家の前に亜弥が座って待っていた。
そしてスーパーに引きづりこまれてきたのだ。

「あの、何で亜弥が夕飯を?」
「いやぁ、バイトで疲れてるんじゃないかって」
ウキウキな気分なのか亜弥はカゴの中に野菜を入れていく。
「あのさ・・・別にいいから。自分で作るし。家に帰りなよ」
「自分で作るとか言っちゃって、大したもの作ってないでしょ?」

う・・・・鋭いな。

仕方なく買い物に付き合い、再び家に戻って来た。亜弥は何だか自分の家の
ごとく私の家に入って台所を使い始めた。
「今から作りますね〜♪」
持参してきたエプロンをして、鼻歌まじりで料理をし始める亜弥。
私はしばらくそれを見て、ため息をつき、自分の部屋に入った。

一体何がしたいんだろ・・・・。

亜弥の行動が全てまいと重なる。強引な所や、私への優しさ。
だから、辛い・・・。
「はぁー・・・・」
ベットにダイブして少し眠った。
407 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/19(金) 21:35
「・・・貴さん!美貴さん!」
いきなり呼ばれて眠りから覚めた。
「出来ましたよ。オムライス♪」
満面の笑みを見せられて、一気に眠気が覚めた。

テーブルの上にはおいしそうなオムライスが。お昼もちゃんと
食べていなかったのですごく空腹感を感じられた。
「あのさ・・・何でここまでしてくれんの?」
食べる前に聞いてみた。亜弥は目をきょとんとさせて、笑顔で。
「美貴さんの為に何かしたいんですよ」
その笑顔はさっきの見せられた満面の笑みとは違って微笑みと言った
方が近かった。
「あのですね・・・あたし、今まで誰かの為にとかした事なかった
 んですよ。それとは反対に人にひどい事ばっかしてて・・・・。
 だから、変わろうと思ったんです。今なら変われるって思って」
緊張したような感じで亜弥は話した。今まで見た亜弥とは何か
違う感じがした。
「・・・・そうなんだ。で、私に?」
「はい」
「他に友達とかいるでしょ?」
「・・・・あたし、友達っていう友達がいないんです・・・」

あ・・・まずい事聞いちゃった?
でも信じられなない、亜弥って明るい性格だし友達なんてたくさん
いると思っていた。

「い、いただきます!」
暗くなった亜弥を見て慌てて私はオムライスを食べ始めた。
「うん、おいしい!」
そう言うと亜弥はまた笑顔を見せてくれた。
408 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/19(金) 21:52

 <矢口 視点>

裕ちゃん、だから移動させられたんだ。
やっと納得出来た。まさかあんな事件があるとは知らなかった。
『矢口みたいな人が3年にもいるねん』
『へぇー』
『気が強くて、たまに授業サボって』
『えー?オイラそんなん?』
『でも人のココロを1番に理解しようとして、優しいココロ持ってて』
『えー、照れるじゃんかよぉ』
かつてこんな事を言っていたのを思い出した。

3年にもって・・・紗耶香の事だったんだ。

にしても。学校ってひどくない?
生徒の事より授業が大切?そんなに仕事が大切かよ!
「だから・・・裕ちゃんがいたから・・・まだ良かったんだよね」

まだ裕ちゃんが移動させられるだいぶ前、そんなに学校の中の環境は
ひどくなかった。それは裕ちゃんがいたおかげだったんだ。
だけど裕ちゃんが移動してからはひどくなっていった。校内暴力、喧嘩
などなど多くなっていった。オイラも裕ちゃんみたくそれをおさめようと
したけど裕ちゃんみたいには出来なかった。

「・・・・悪くなにのに、誰も」

紗耶香とわかれて家に帰る。夜は涼しくて昼間の暑さとは考えられないほど
過ごしやすかった。秋なのにね。

「はぁー、いじめって何で消えないんだろう?」
誰にともなく呟いた。
すると思い浮かんだのは松浦さんだった。今頃どうしてるだろう?
校内では1年生とは全く会わないのでわからなかった。





409 名前:作者。 投稿日:2003/09/19(金) 22:03

>404 名無しさん様。
     (〜^◇^)<やったぁー!オイラが主役だぁー♪
     藤本さんと松浦さんいかがでしょうか?どうなるか作者にも
     不明です・・・(ヲイ
     明日から休み、授業から解放ですが・・・勉強しなきゃ・・・。

>405 タケ様。
     (〜^◇^)<カッケー?マジで〜?照れるじゃんかよぉ〜。
            もっと言って?(w
      市井さん、そして藤本さんですが(矢口さんはおまけ?)。
      きっと何かが変わると信じて・・・・ね?(ヲイ     

〜あの人は今〜(おまけ)。

(0^〜^)<オイラも出たいYO!
( ^▽^)<私もよ!ひとみちゃん。
(0^〜^)<作者は最近トマトが好きみたいだYO!
( ^▽^)<じゃ、送ってみよう!
(0^〜^)<これで主役の座を勝ち取るぞ!
( ^▽^)<頑張って!応援してるわ!(そして私はひとみちゃんの隣に・・)。

続く(のか?)。
410 名前:タケ 投稿日:2003/09/20(土) 09:16
矢口さんかっけー!!
いや〜松浦さん主婦みたいですね(w
藤本さんは尻にしかれそう(w

(〜^◇^)<オイラ沙耶香みたい?へへへっ(照
411 名前:たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/20(土) 18:03

 <藤本 視点>

夕飯を食べて、適当にテレビ見たりしていた。今現在、午後の10時。
「亜弥、いい加減帰らないと・・・」
「大丈夫ですよ。うちの親、いないと思いますから」
「・・・え?」
「お父さんは仕事、お母さんは遊んでるんじゃないですかね。妹はまた
 友達の家にでもいるんだろうし」

・・・・それは冷めてるはずだね。

亜弥はどうでもいいように言ってテレビの画面を見ていた。
「でも、一応電話くらいはさ・・・」
亜弥がどうこう言っても、もし亜弥が家に帰らなくて両親が心配して
警察に捜索願いでも出していたら・・・と思うと落ち着かない。
「いいんですってば!どうせ離婚する家ですから」
私を見て亜弥は言い放った。
「離婚・・?」
「もう、いいんですよ・・・」
そう言って項垂れる亜弥。

とりあえず亜弥を説得して亜弥の家まで見送った。亜弥の家はずいぶんでかくて
驚いたけど必死にその気持ちを隠した。
「ありがとうございます・・・」
「あ、あぁ」
亜弥が玄関に入って行く直前。
「あのさ!またご飯作ってよ!」
気付いたらそう叫んでいた。亜弥は少し微笑んでゆっくりと頷いた。
そして私は家に向かって歩き出した。
412 名前:たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/20(土) 18:13
・・・・私、何やってんだろ。

あんなに亜弥の事、うざがってたのに。今じゃ全然嫌じゃない。
「変なの・・・・」
家に着いて、時刻はもうすぐ11時。途中でコンビニ寄って飲み物
を買って来た。亜弥が帰って1人になった家の中は孤独をよりいっそう
強くなる。

変わってきてる自分がいる。それは確かなんだ。

あんなにまいしか見えなかったのに、亜弥の事が気になってる。

駄目だ・・・・そんなのは駄目だ。

私はまいが全てなんだ。

≪違うよ。それは違う≫

またこの声・・・・一体誰?

≪知ってるでしょ?美貴・・・≫

・・・・そうだ、知ってる。この声・・・まい?

≪ピンポーン。何でもっと早く気付かないかなぁ≫

何で・・?何処にいるの?

≪空の上≫

・・・・まい。

≪美貴。確かに私は自殺しちゃったよ。それが正解なのはわからない≫

何で・・・自殺したの・・・?私は、何も辛くなんて無かった。

413 名前:10.たった1つ願いが叶うなら。 投稿日:2003/09/20(土) 18:26
≪ごめんね。でも辛かったの・・・≫

戻って来てよ・・・・お願い。

≪もう無理だよ。私ね・・・最後に言っておきたくて、こうやって
 美貴のココロん中にいるんだけど≫

何・・・?

≪私はもう死んじゃったけど、美貴は生きてるんだよ。いつまでも
 私の事を思っていちゃ駄目だよ。美貴は美貴の生きる道がある。
 それを歩いてよ・・・私はね、美貴にそうやって生きて欲しい。
 また笑ってよ。涙目になるほどさ。そんでココロの片隅に私の事
 置いといて、それだけでいいから≫

まい・・・・。

≪亜弥ちゃんだっけ?あの子、今、辛い思いしてる。美貴が助け
 なきゃ。美貴が頼りになってるんだよ≫

・・・・ん、わかった。でも私、いつまでもまいの事、忘れないから。

≪ありがと。嬉しいよ。じゃ、もう行くね≫

・・・・まい、大好きだったよ。

≪私も大好きだったよ≫

ゆっくり目を開けた。そこにまいはいないけど、何だかあったかい気分だった。

いつまでもこんな落ち込んでもいられない、新しく前を見て歩かなくちゃ。

まいは私に一歩前へ踏み出す勇気をくれた。

市井さんにも中澤さんにも逃げてはいけないんだ。

もう大丈夫。逃げたりしないよ。


414 名前:作者。 投稿日:2003/09/20(土) 18:33

>410 タケ様。
     ( ^∀^ノ<矢口・・・調子になってきてるな。
     (〜^▽^)<そんな事ないよー♪オイラかっけーんだし。

     松浦さん主婦っぽい!っていうかそれが設定・・・?
     何だか今回はぐちゃぐちゃしちゃって・・・・ちょっとまとめられ
     なかったかなぁと後悔してるんですが・・・・。
     これで良い方向に行ってくれれば・・・(ぇ

たいふーんが上陸してます。雨がすごいですYO。
明日も雨ですかね・・・・。
次回はみんな大集合ってな感じ・・・(何じゃそりゃ
予定では藤本さん、市井さん、中澤さん、矢口さんは登場するかなぁと。
後藤さんはもしかしたら・・・・(ぇ
415 名前:タケ 投稿日:2003/09/21(日) 04:51
良かった!!
ココロの声は里田さんだったんですねぇ
さて藤本さんはどう松浦さんを救うのでしょうか?
(〜^◇^)<よっしゃ!ここはオイラが・・・
( ^∀^ノ<いや、お前の出番じゃないし

次回の大集合(w 期待しております
416 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/25(木) 17:50

 『11.君の為に出来ること。』

 <市井 視点>

今日は仕事が休み。朝から藤本にどう会おうか考えていた。
朝の後藤曰く向こうから連絡を待つしかない。確かにこないだ会った時みたく
駅で張ってても偶然に会える確率は低いと思う。
私が知ってる藤本の携帯番号は変えられていて使えない。
「裕ちゃんも知らないし・・・」
時間は刻々と過ぎていき、気が付けば夕方だ。最近はもうあたりが暗くなるのが
早い。後藤を迎えに行こうかと家を出た。

昔自分が通っていた学校までの道を歩く。学校はすぐ着いて、校門から下校する
生徒達が出てきていた。中に入って校庭を歩く。
「後藤はまだか?また補習とかさせられてんじゃねぇーだろうなぁ」
と呟いていた時携帯が鳴った。

<居残りになっちゃったよ〜。宿題やんなかったから。帰るの遅くなるよ〜。 ごとー>

にゃろう・・・・あいつめ。

<せっかく迎えに来たのに!まぁいいや、待ってるよ。しっかりやれよ!市井>

メールを送って、ちょこっと校舎の中にお邪魔する。向かう先はもちろんあそこだ。
「失礼しまーす」
「今日はもう終わりや・・・って紗耶香?何でここにおるん?」
ここは生徒指導係り室。裕ちゃんは驚いた顔でこっちを見ていた。
「先生・・・私の悩み、聞いて下さいよ」
「もう終わりや。それにあんたは生徒やない」
「ひっど〜。元生徒じゃん」
笑いながらお茶を出してくれる裕ちゃん。私は適当にパイプ椅子に座った。
「後藤迎えに来たら、居残りやってるみたいで」
「そか、じゃここで待ってればええ」
最近は寒いからあったかいお茶を出してくれた。それをずずっと飲む。
静寂だけが漂う空間。だけどそれは心地よくて何だか泣きそうになるほど安心する。
それは裕ちゃんのおかげだ。裕ちゃんはここにいるべき存在という事を改めて感じた。
「ねぇ、裕ちゃん・・・」
「何や?」
「・・・私、藤本や里田の為に出来る事するよ。可愛い後輩だもん」
「ん、私やってそうや」
「・・・でも、会える手段が無いんだよね」
「そればっかりはなー、どうにもならへん」
お茶を再び飲もうとした時、扉が開いた。

417 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/25(木) 18:00
「裕ちゃーん」
「お、うるさいのが来おった」
入ってきたのは矢口だった。
「うるさいって何よ!あ、紗耶香じゃん」
「おっす」
軽く手を挙げて挨拶。
「はよ帰らんかい。もう暗くなるのが早いから」
「いいじゃん、せっかく暇つぶしの相手してあげようと思ったのに」
矢口はぶーっという顔をしながら私の隣のパイプ椅子に座った。
「私となぁ、紗耶香は今、悩んでんねん」
「何を?」
「藤本の連絡先。わかんねーから会いようがないんだよね」
そう私が言うと矢口は少しうーんと考えて。
「柴ちゃんに頼んだら?」
「「柴ちゃん?」」
「2年生の柴田あゆみ。最近、結構仲良くなってさぁー。
 柴ちゃんはどんな情報でも掴むすっごい人なんだから」
えっへんと威張って矢口は言った。
「まぁ、オイラも柴ちゃんのおかげで大変な目にあったけど・・」
「そんな子がいたんかぁ。知らなかったわぁ」
裕ちゃんと同感。私も知らなかった。2年って事は私が3年の時1年か。
「オイラから聞いといてあげるよ。藤本さんの住所とか」
「さんきゅう、助かるよ」
「矢口も役に立つねんなー」
「何それ!裕ちゃん、オイラに失礼だよ!」
少しだけ希望が見えた。それと同時に不安もある。
だけど前に進まなくちゃ。
418 名前:作者。 投稿日:2003/09/25(木) 18:05
まず・・・ごめんなさい(T−T 全員大集合とか言っちゃって
全然やがな!しかも更新少なっ!はい・・・ちょっと時間が無く
とりあえず藤本さんに会う過程を考えてたらまだ大集合は先に
なっちゃいました・・・・ホント申し訳ないです。

>415 タケ様。
     大集合じゃなくてごめんなさぃぃぃぃ(叫
     近い内に出来ると思うんで・・・。
     (〜^◇^)<やっぱオイラって頼りになる?
     ( ^∀^ノ<・・・んー、まぁ今回は・・・。

柴田さん登場の予感。彼女がいなけれりゃ始まらない!(何
ではでは。
419 名前:和尚 投稿日:2003/09/27(土) 00:44
ご無沙汰しております&更新お疲れ様です。
いちーさん一歩を踏み出しました。
みきてぃも里田さんのおかげで一歩踏み出しました!
そしてごとーさんは・・・(笑)
( ´ Д `)φカリカリカリ
(〜^◇^)<居残りかよ!ビシッ
次回更新楽しみにしています。
420 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/27(土) 01:11
藤本さんも1歩前に踏み出せたみたいでよかった。(遅レスm(_ _)m)

大集合が近いということは
クライマックスも近づいてる感じですか?
うーん、楽しみにしてます。

あれ?でも、主役がメインじゃないからクライマックスとは違うのかな?
421 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/28(日) 22:04
やっと居残りが終わった後藤を迎えて家に帰る。矢口も途中まで一緒に帰る事
にした。もうあたりはだいぶ暗かった。
「んぁ〜、もう先生がプリント5枚もやれって言うんだよ〜。手が疲れたよ」
「お前な・・・ちゃんと宿題やんねーからこうなるんだろっ」
「オイラも1年の頃はよく居残りやってたよ」
いろいろしゃべっていく内に矢口とわかれる事に。
「じゃ、今日柴ちゃんに電話で聞いてみるから明日報告するね」
「おう、悪ぃな」
「いいって!じゃ、またね〜」
矢口は手を振りながら歩いていった。
「柴ちゃん?何か用事?」
「後藤も知ってんの?」
「んー、まぁそんな親しくないけどね」
「藤本の住所とかね。会うには直接家に行った方がいいと思うし」
夜の空を見上げながら言った。星がぽつぽつと輝いていた。
ふと左手が暖かく感じ、見ると後藤が私の手を握っていた。
「市井ちゃん、あたしは傍にいるからね」
私の大好きな笑顔で後藤は言った。それだけで胸がいっぱいになった。
「あぁ、ありがとな」
私は後藤の手を引っ張って抱きしめた。優しく包み込むようにして。
「市井ちゃん・・・あったかいね」
「うん・・・あったかい」
この暖かさを藤本にもう1度取り戻して欲しい。そう思った。
422 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/28(日) 22:15

 <矢口 視点>

「ただいま〜」
家に帰るといい匂いがしてそれと同時におなかが鳴った。
適当にブレザーを脱ぎながらキッチンへ。
「あ、おかえり。遅かったじゃない」
お母さんが忙しそうに夕飯の支度をしていた。
「先生のとこ行っててねー。夕飯何〜?」
「今日はハンバーグよ。早く着替えておいで」
夕飯のメニューを聞いて更におなかがすいた。すぐに自分の部屋に
入って着替えた。柴ちゃんには夕飯の後電話する事にした。

「勉強は最近どうなの?」
夕飯のハンバーグをもぐもぐ食べる。
「んー、まぁまぁ」
「ちゃんと食べてからしゃべりなさいよ。まー、ちゃんと大学入ってよ」
今日は妹は友達の家に行っててお父さんは出張。お母さんとオイラだけの
夕食だった。少し、寂しい気がした。
「あ、明日お母さんね遅くなるから。夕飯、自分で作ってね」
「何か用事?」
「同窓会があるの。久しぶりにみんなと会うからね」
同窓会かぁ・・・・。オイラも何年か経ったらやるのかな?
そんな事を思いながら夕飯を終えた。

夕飯の片付けの手伝いをして自分の部屋に戻った。
携帯を手に取って、早速柴ちゃんにかけてみた。
『はーい』
「柴ちゃん?オイラだよ」
『矢口さん。どうしたんですか?』
「いやぁ、頼みがあってさ」
423 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/28(日) 22:27
『頼みですか?』
「前、学校に藤本美貴っていう子がいたんだけど・・・」
『あー、知ってますよ。同じ学年でしたし。確か、中退したんですよね』
柴ちゃんと同学年・・・あ、そっか。
『事件の後、退学届け出して辞めていったんですよね』
「事件って・・・柴ちゃん知ってんの?」
『はい。もちろん!これでも情報部ですから』
自信満々の柴ちゃんの声。オイラはすごく頼もしいと思った。
「んでさ、藤本さんの今の住所とかわかるかな・・?」
『すぐにはわかりませんが、調べてみます』
「明日まで何だけどいい?」
『はい、わかりました!・・・今度何か奢って下さいね〜』
「はいはい、わかったよ。じゃ頼んだよ〜」
ピッと携帯をきって机の上に置いた。
さすが柴ちゃんだな・・・・。
うんうんと感心?しながらベットに座る。MDコンポのスイッチを
つけて音楽を流した。ぽふっとベットに横になって目を瞑った。
424 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/28(日) 22:39

 <柴田 視点>

矢口さんから頼まれた『依頼』。ここ最近、暇だったのでちょっと
燃える。
「藤本さんかぁ・・・」
不思議な人だった。不愛想で無口、だけど・・・里田さんの前だと
笑うし、よくしゃべる。楽しそうにしていた。
「さて、調べますか♪」
パソコンのスイッチを入れていると携帯が鳴った。
誰からかと思ったら・・・・こいつかよ。
「はい」
『あ、マサオでーす!』
「知ってるわよ。今、忙しいんだけど」
『えー、こっちは暇なんだけど』
お前の都合なんか知るかって感じで電話を切ろうとした。
『美貴もバイトでかまってくんないし〜』

・・・・美貴?

「もしかして・・・藤本美貴?」
『ん?あぁ、そうだけど』
ココロの中でビンゴ!っと答える。余計な手間が省けた。
「マサオに頼みたいんだけど」
『え?何々?』
「藤本さんの家知ってる?」
『うん、知ってるよ!』
「教えて」
『え・・・?何で?』
「いいから!つべこべ言わずに教える!」
マサオから聞いた住所を手元のメモ張に書き留める。
『何で美貴の住所聞きたいの?』
「・・・依頼があったの。じゃぁねー」
『え?ちょ、待ってよ。せっかく教えたのに、もっとしゃべろーよー』
「そんなの知ったこっちゃないわ。じゃ、おやすみ」
ピッと携帯を切った。それから鳴り続けてたけど無視した。
425 名前:作者。 投稿日:2003/09/28(日) 22:48

>419 和尚様。
     ご無沙汰です!良い方向に向かってみんな前進です(^−^
     ( ^∀^ノ<後藤は居残りの常連だからな!
     柴田さん(おまけで大谷さん)久々の登場でした♪
     次回も頑張ります!

>420 名無しさん様。
     いえ、まだクライマックスではないですよ〜。まだまだ登場してくる
     人も出てきますし。先は長いです・・・(^−^;
     藤本さんらが終わったら新しくまた誰かを登場させますよ〜。

明日からまた1週間の始まり・・・・(T−T;
また更新が遅くなるかもしれません・・・・。
そろそろ今の問題も解決しそうな予感。後は松浦さんと・・いしよし。
いつになったら進歩があるんだ、いしよし。
(0^〜^)<・・・進歩の前に登場すらないっすよ。
( ^▽^)<ここで出てるだけまだいいのかな・・?
426 名前:和尚 投稿日:2003/09/29(月) 22:14
ごとーさんはホントにいちーさん好きなんだな〜と思いました。
いちーさんをすごく想っているし・・・
(*´ Д `)<ポッ

柴ちゃん、おーたにさんに冷たすぎ・・・でもソコが良い!!
読んでて笑ってしまいました。
427 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/30(火) 17:55

 <矢口 視点>

翌朝、起きたらメールがきていた。誰からかと思えば柴ちゃんだった。

<住所わかったんで今日学校で。 柴田>

「おー、意外と早かったね〜」
と独り言を言いつつ返事のメールを送る。

<ありがと!じゃ、今日学校で〜! 矢口>

返事のメールを送り終え、ぴょんっとベットから飛び降りて着替え始める。
それから部屋を出てリビングへ。
「おはよー」
「おはよう。早く食べなさい」
朝食を食べて、家をいつもの時間に出た。

学校まで歩いてると前方に見覚えある人物が。ダッシュして後ろから肩を叩いた。
「おはよ!よっすぃー」
「うわぁ!?びっくりしたー。矢口先輩、驚かさないで下さいよぉ」
「あははは、よっすぃー面白いねぇ」
「朝から元気ですねー」
よっすぃーと共に学校の校門を通る。
「梨華ちゃんとはどうなのさ?」
ニヤリと笑って聞いてみた。よっすぃーの照れた顔が見れると思った。
しかしそれとは裏腹によっすぃーは暗い顔してため息をついた。
「え?どうしたの?」
「どーもこーも。会ってないんですよ、最近」
「へ?」
「何だか、色々忙しいみたいで・・・」
「そっか。でも大丈夫さ!またみんなで遊ぶ時あるし、ね?」
そう言うとよっすぃーは笑ってくれた。
428 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/30(火) 18:08
下駄箱でよっすぃーとわかれて自分の教室へ向かう。教室に入って
みんなに挨拶をしながら自分の席へ。
「矢口!おはよー」
席についてカバンを横にかけているとなっちがやって来た。
「おはよ、なっち」
「はぁ、もうすぐ試験だね」
「うわわ、止めてよ〜。せっかく忘れてたのに」
「・・・忘れちゃ駄目じゃん」
しばらくなっちと話していると時間はもう1時間目始まる5分前。
「あれー?圭織は?」
「まだ来てないみたいだね」
休みかな?と思った時、圭織が教室に勢いよく入って来た。
走って来たのか息を切らしている。
「圭織〜!寝坊?」
そう聞くと圭織は苦笑いをした。どうやら寝坊したようだ。
「珍しい〜圭織が寝坊だなんて」
なっちが驚いたように言った。圭織はだいぶ落ち着いてきたようだ。
「また交信して気付いたら朝になってて慌てて寝たんじゃないの〜?」
オイラがそう言うと圭織は「うるさいっ」と言ってぽかっとオイラの
頭を叩いた。図星のようだ。

昼休み、柴ちゃんの教室へ向かった。
「柴ちゃーん」
「あ、矢口さん。すみません、今から行こうとしてたんですよ」
「いいよ。こっちからお願いしたんだし」
柴ちゃんはカバンから紙を出した。
「これに住所と地図が書いてありますから」
「ありがと。報酬は今度ね」
「はい!期待してますよ〜」
柴ちゃんから紙を貰って自分の教室に戻る途中、階段で梨華ちゃんに会った。

429 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/30(火) 18:19
梨華ちゃんは購買へパンを買いに行ってたようだ。パンが入った
袋を抱えていた。
「梨華ちゃん」
「矢口さん、お久しぶりですね」
「ちょっとーよっすぃーっと会ってないんだって?」
よっすぃーという名前を出した途端梨華ちゃんの顔が赤くなった。
「はい・・・ちょっと、忙しくて」
「まぁしょーがないけど。よっすぃー拗ねてたよ。たまには電話とかしたら?」
「拗ねてた?」
「うん、よっぽど会いたいんじゃないの〜?」
そうオイラが言うともっと梨華ちゃんの顔が赤くなる。これは面白い。
「梨華ちゃん・・・恋は時には勢いも大切なんだよ♪」
梨華ちゃんの耳元でそう囁いて、「じゃぁね〜」と言って自分の教室に
向かった。今頃、梨華ちゃんの顔はトマトぐらいの赤さだろうか。

教室ではなっちと圭織がお弁当を食べていた。
「ただいま〜」
「おかえりー。遅かったね」
「途中で梨華ちゃんに会ってね」
椅子に座って携帯を出した。

<住所わかったよー!裕ちゃんがいるとこで待ってるねー。矢口>

紗耶香にそうメールを送った。数分後、メールがきた。

<ありがと!じゃ、夕方頃行くから。 市井>

仕事大丈夫かな?と心配してたら大丈夫なようだ。
「矢口、あと10分しかないよ?昼休み」
圭織が言って、時計を見てみると・・・・もう10分も無かった。
「うわ!?やばい!食べなきゃ!」
急いでお弁当を食べたら卵焼きがのどに詰まって大変な昼休みだった。
430 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/09/30(火) 18:32

 <市井 視点>

夕方、仕事を終えて学校へ向かう。矢口が藤本の住所を入手してくれた為だ。
下校する生徒達を逆に学校の中に入る。
「失礼しまーす」
生徒指導係り室に入る。
「紗耶香〜待ってたよ〜」
矢口が手を振っていた。その隣には後藤がいた。
「後藤?今日は居残りじゃなかったのか?」
「いつもそうじゃないよー」
「お、来たか〜」
奥から裕ちゃんが現れた。
「これね、住所と地図書いてあるから」
矢口に渡された紙を見る。そこには詳しい地図まで丁寧に書いてあった。
「すげー、こんな詳しい」
「柴ちゃんはすごい人なわけよ」
「矢口が威張るんじゃないやろが」

これで大丈夫だ。藤本はバイトしてるから行くのは夜の方がいいだろう。
紙を丁寧にジーンズのポケットにしまう。
「矢口、柴ちゃんだっけ?お礼言っといて」
「おう。じゃ、帰るね。今日はお母さんがいないから夕飯作らなきゃいけないんだ」
矢口はそう言って帰って行った。
「後藤、帰ろうか」
眠たそうな後藤を見て帰る事にした。
「裕ちゃん、次の土曜日に行ってみるよ」
「ん、私も行きたいんやけど・・・仕事がなぁ」
「大丈夫だよ」
「・・・・っていうかあんた仕事はどうなん?」
「まだまだ雑用ばっかだけど、ちゃんと仕事もあるよ」
「頑張りや」
「うん」
既に寝ている後藤を起こして引っ張って学校を後にした。
「ごと〜!起きろよー」
「んぁ・・・・」
寝ながら歩く後藤を引っ張って家に帰るのは大変だった。
431 名前:作者。 投稿日:2003/09/30(火) 18:40

>426 和尚様。
     後藤さんは一途な性格ですからねぇ。市井さんもそうですが。
     うん、この2人はこうでないと!
     柴田さんは大谷さんの事は視界に入ってないようです(ぇ?
     これからどうなるか・・・見所です♪(ぇ

準備は整った!いつでも出発できるぜ!(何
さてさて・・・いよいよ次回、ついに・・・ついに・・・・。
(〜^◇^)<長いんだよ!早く始めろよ!
はい・・・すみません(涙
登場予定人物 市井さん、藤本さん、松浦さん、後藤さん、矢口さん。
中澤さんはちょっと出ないかも・・・ね。

(0^〜^)<あ、ちょっと出れた!
( ^▽^)<やったね!ひとみちゃん!

この人らは何処へ行く〜・・・・。
432 名前:タケ 投稿日:2003/10/01(水) 15:57
更新お疲れ様
1週間くらい来なかった間に大幅に更新が・・・!
柴田さん本領発揮!!恐るべし情報網だ・・・

(〜^◇^)<へへっどんなもんだいっ!!
( ^∀^ノ<いや、だからお前が威張るなって

次の更新はついに・・・
楽しみに待ってます
(〜^◇^)<裕子の出番は少ないって?じゃあオイラがその分出るのかな?
433 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/02(木) 21:29

 <藤本 視点>

土曜日。バイトから家に帰ったのは午後8時を過ぎた頃だった。
コンビニで適当に夕食の為のお弁当や飲み物やらを買って行った。
街灯の光しかない夜の道をとぼとぼと歩く。明日は日曜日。
久々にバイトも休みなので何をして過ごそうかと考えていた。
・・・掃除してないし、そろそろやるか・・。
マサオを呼んで手伝わせようかと思った時、家のマンションが見えた。
中に入って階段を上り自分の部屋へと行く。
「あれ・・・?」
部屋の前で誰かが立っていた。
「おっす。藤本」
「市井さん・・・」
市井さんは私の目の前まで歩いて来た。
「あのさ、ちゃんと話がしたいんだ。駄目かな?」
「今更何も話すことないてないですよ。帰って下さい」
私は市井さんをどけて自分の部屋に向かって歩いた。ポケットから鍵を出した。
というかいきなり出てこられて動揺した私はそんな言葉しか出なかった。
「そんなに冷たくしなくてもいいじゃない」
聞き覚えの無い声が聞こえた。その声は多分私に向けられた言葉だろう。
私は横の方へ視線をやった。
「矢口・・・お前、何でここに・・?」
市井さんの知り合いのようだ。
「気になったから。ごっちんもいるよ」
「後藤・・・」
何だかよくわからない。矢口という人がつかつかと私の方へ歩いてきた。
顔は怒っていた。
「あんたね、紗耶香がどんだけあんたの事、考えてると思ってんの?」
わかってるよ・・・痛いほど。
「・・・中、入って下さい」
鍵を開けて扉を開けた。その時、市井さんが微笑んだように見えた。
434 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/02(木) 21:44
家の中に入ってとりあえず台所にコンビニの袋を置いた。
「適当に座ってて下さい」
そう言ってコップを4人分出してお茶を注ぐ。それをテーブルの
方に持って行った。ソファに3人が座っていた。
コップを置いて、適当に座る。
「・・・・」
何も言えず沈黙が流れた。
市井さんは何も悪くなんかない、そして中澤先生も。
まいだってそうだ。
「すみません。市井先輩」
市井さんではなく市井先輩と呼んだ。あの頃のように。
「・・・・もう、まいの事をいつまでも引きずるのは止めました。
 まいだってそんな私嫌だし」
「藤本・・・・ごめんな、私の方こそ」
「いえ、誰も悪くなんかないんです」
そう言って私は笑った。すると市井先輩も安心したように笑った。
何やってたんだか、私は。
早くからこうすれば良かったじゃないか。

いきなり携帯が鳴り響いた。私の携帯だった。
「はい」
『・・・美貴さん・・?』
「亜弥。どうした?」
亜弥という言葉に3人が反応したのは気のせいだろうか。
『家の前にいるんですけど・・・行ってもいいですか?』
「あ、あぁ。いいけど・・・泣いてんの?」
『もうあたし・・・駄目です』
とりあえず亜弥が来るのを待った。何があったんだろうか。
「すみません。ちょっと友人が来るもんで」
「亜弥って・・・松浦亜弥?」
矢口さんが聞いてきた。私は短く「はい」と答えた。
435 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/02(木) 22:00

 <松浦 視点>

気付いたら家を飛び出していた。

気付いたら泣いていた。

何も音を聞きたくなくて耳を塞いで走った。

そしたら、美貴さんの家の前にいた。

「あたし・・・もう嫌・・・」
携帯を出して美貴さんに電話した。家に行ってもいいか了解を
得て、すぐマンションに入った。

もう離婚は決まっていた。今日、離婚届を書いているお父さんを見た。
妹はお母さんについていくので荷物をまとめていた。お母さんも荷物を
まとめていた。あたしはただ呆然とそれを見ていた。
冷め切った家族。あるのはそれだけだった。

『じゃ、これでいいな。明日、出してくる』
『はい。お願いします』
事務的な口調の2人。もうこの2人が戻る事はないだろう。

あたしはこんなの望んでないよ。

今までの生き方も望んでなんかなかったよ。

あたしだって好きで勉強やってるわけじゃない、学級委員やってる
わけじゃない。遊びたいし、友達もたくさん作りたい。

笑いたいよ、幸せに。

ピンポーンとインターホンを押す。すぐに扉が開いた。
「亜弥、どうし」
言葉を遮って美貴さんに抱きついた。もう他に誰もいない。
美貴さんしかあたしにはいないの。
「亜弥・・・・」
「あたし、もう嫌。お願い、どっか連れてってよ。何処か遠いとこへ・・」
泣きながらそう言った。きっと美貴さん、困ってる。
だけどそう言わずにはいられなかった。
「わかったから。まずは中入って、ね?」
美貴さんは優しくあたしを中に入れてくれた。玄関に靴が何足かあった。
「あ・・・お客さん・・?」
「ん?まぁね。でも大丈夫だから」
おそるおそる廊下を歩く。やっぱり来てはいけなかったと思った。
436 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/02(木) 22:11

 <矢口 視点>

何とか紗耶香と藤本さんは元に戻りめでたしめでたしで終わるかと
思いきや・・・・松浦さんが泣いてやって来た。
どうやら藤本さんと松浦さんは知り合いのようだ。
「んぁ・・・矢口先輩。この子・・・」
「うん。そうだよ。でもなっちとはもう大丈夫だから」
小さい声でごっちんにそう言った。
「亜弥。とりあえず座って」
すとんと座る松浦さん。藤本さんは優しく声をかけていた。
「何があった?ゆっくりでいいから話してよ」
「・・・・離婚、決まったんです」
「「「「え?」」」」
同時に4人が発した。
「親の離婚・・・あたしはこんなの望んでなかった・・・なのに・・」

なっちへのいじめもそこからきてるんじゃないかとオイラは思った。
離婚か・・・子供にとっては辛いものだよね。

藤本さんは何も言えずにいた。紗耶香とごっちんも悲しい顔をしていた。

「松浦さんは・・・どうしたいの?」
オイラは優しくそう聞いた。はっと松浦さんがオイラを見た。
「・・・・あたしは・・・・あったかい家族がいい。離婚なんかして
 欲しくない・・・」
「よし、決まり。まだ離婚届は出してないんでしょ?」
「・・・明日、お父さんが出しに行くって・・・・」
「まだ間に合うよ」

気持ちは言葉にしなきゃ時にわからない事がある。
簡単にココロは通じるものじゃない。だから言葉があるんだ。
言ってみなきゃわかんないよ、これからの事なんて。

圭織がここにいたらまたおせっかいって言われるかな。
だけどオイラは松浦さんを助けたい。過去の事はどうであれ、紗耶香が
藤本さんを助けたように。
437 名前:作者。 投稿日:2003/10/02(木) 22:17

>432 タケ様。
     柴田さんは全てにおいてすごい人です♪
     (〜^◇^)<柴ちゃんはすごい人〜♪
     矢口さんは最後しか出番ありませんでした・・・・。
     次から次へと問題が・・・・平和な時はいつくるんだー!?(ぇ

松浦さん家ピンチ・・・・。ようやく藤本さんと市井さんが1段落ついたのに。
(〜^◇^)<んな事言ってる暇があるなら更新しろ!
はい、恐縮です・・・(T−T

438 名前:タケ 投稿日:2003/10/02(木) 23:10
お疲れ様です
よかったーと思ったら今度は離婚!?
前途多難ですね・・・

(〜^◇^)<で?オイラの出ば(ry
439 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/03(金) 10:55

 <藤本 視点>

亜弥の家がそんな大変になってるなんて知らなかった。
いや、家の事は時々亜弥が嫌だとか口にしてたのは聞いていたけどまさか
離婚までいってるなんて思いもしなかった。
なのに、亜弥は私に笑顔をくれた、料理作ってくれた。

私はまだ、何もしてない・・・。

───今がその時なんじゃない?

「行こう。今から」
矢口さんが立ち上がって言った。
「亜弥、行こう。立って」
まだ泣いてる亜弥を立たせた。
「・・・・1つ、いいか?」
市井さんが手を挙げて言った。その表情は険しかった。
「離婚して欲しくない気持ちはわかるよ。だけどもうお互い信頼も愛情も
 無いんじゃ結局、一緒にいても辛いだけであったい家族なんて作れないんじゃないか?」
「市井ちゃんっ」
「いや、でも現実を考えるとさ・・・」
確かにそうだけど。それじゃ亜弥が可哀想じゃないか。
「オイラもそう思う。だけど親が勝手に決め付けて子供が振り回されるなんて
 いけないと思うんだ。子供だって自分の意見を言う権利はあるよ」
矢口さんは市井さんを見て言う。それが何だかかっこよく見えた。
市井さんは少し間を置いて「わかった」とだけ言った。
「んじゃ、行こう」
矢口さんが亜弥の手を引いて玄関に向かって歩く。市井さんと後藤さんも
後を着いて行く。私は最後に家を出て鍵を閉めた。

しばらく歩いて亜弥の家についた。
「いい?ちゃんと自分の気持ちを言うんだよ?」
矢口さんが亜弥に言った。亜弥はもう泣いてない。
そして亜弥が自分の家に入って行く。
「矢口さん・・・」
「ここからは松浦さん・・・亜弥ちゃんが行かなきゃ。オイラ達はここまで」
「・・・大丈夫でしょうか」
「大丈夫だよ。あの子はちゃんと自分のココロ持ってるから」
矢口さんは笑顔で言った。
440 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/03(金) 11:09

 <松浦 視点>

すぅっと深呼吸して玄関の扉を開いた。中の空間は静かで冷たかった。
ゆっくり廊下を歩いてリビングに向かう。

大丈夫・・・自分の気持ちを言わなきゃ。
それにみんながいてくれる、だから大丈夫。

「お父さん」
リビングで新聞を読んでいたお父さんに声をかけた。
「・・・あたしね!ホントは離婚なんかして欲しくないの!」
お父さんは驚いてあたしの方を見た。
「みんなで一緒にいたい!あったかい家族がいい!」
自然に涙が溢れてきた。あたしの声に気付いたのか、お母さんと妹も
リビングにやってきた。
「何で駄目なの!?離婚しなきゃいけないの!?」
「亜弥・・・・」
「お姉ちゃん・・」
「あたしは嫌だよ!一緒にいたいよ・・・」
がくっとその場に崩れ落ちて声をあげて泣いた。こんなあたしを見るのは
お父さんもお母さんも妹も初めてだろう。
「亜弥・・・」
お父さんがあたしのそばに来てしゃがんだ。
「あたしは・・・みんな好きだよ・・・ひっく・・・」
最後まで自分の気持ちを言うんだ。ココロを見せるんだ。
それが、あの人に・・・矢口さんに教わったこと。
そしてそのココロを支えてくれたのが・・・美貴さん。
「すまんな。亜弥」
しばらくしてお父さんが言った。
「・・・・お前だって1人の人間だ・・・」
そしてすくっと立ち上がってお母さんの方を向いた。ゆっくり頭を下げた。
「今まですまなかった。仕事のことばかりで家族との時間を大切にしてなかった・・
 子供達のこともまともに見てやれなくて・・・。後悔してる」
お母さんの目から涙が溢れてる。
「だから、これからはもっと家族を大切にする。俺の大切な家族だ。
 ちゃんと幸せにする・・・・約束するから。もう1度やり直してくれ・・・」
まだ頭を下げてるお父さんに近づくお母さん。
「頭、上げて。私も間違ってたわ・・・」
頭を上げたお父さんにお母さんは微笑んで。
「これからはあったかい家庭にしていきましょう」
と言った。今までで初めてあったかく感じた言葉だった。
441 名前:作者。 投稿日:2003/10/03(金) 11:18
お礼レスは時間が無い為また今度で・・・ごめんなさい。
442 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/03(金) 12:44
更新お疲れ様です☆
松浦さんが幸せになってよかったです。
矢口さんかっこよかったっすよ!
443 名前:タケ 投稿日:2003/10/04(土) 15:25
仲直りしてよかった♪
これで松浦さんも救われたわけですね?

矢口さんもかっけー!!

やはり『仲間』ってのは大切ですね
続き期待してます
444 名前:11.君の為に出来ること。 投稿日:2003/10/04(土) 18:17

 <市井 視点>

松浦さんの家を私と後藤は後にした。何となく大丈夫だろうと思ったし、
後は藤本や矢口がいれば安心だと思ったから。
「市井ちゃんって現実見てるね」
後藤がぼそっと呟いた。
「まぁね・・・でも、矢口なら何か言い返すと思った」
言葉にしなきゃわからない気持ち。言ってみたら何か変わるかもしれない。
矢口はそれを信じてたんだと思う。
「・・・・矢口矢口って」
「何だよ?」
横を見ると明らかに不機嫌な後藤。
「市井ちゃん、ホントは矢口先輩が好きなんじゃないの?」
「な、何言ってんだよ!言っただろ!私が好きなのは後藤だって」
後藤は足を速めて前にすたすた歩いていってしまう。
何でこうなるかなぁ・・・。
後藤の後を追いかける。
「後藤?悪かったよ、ごめんって」
「・・・何か、不安なの」
急に立ち止まってぽつりと呟く後藤の肩は少し震えていた。
「市井ちゃん・・・また後藤を置いてどっか行っちゃうんじゃないかって・・・」
「後藤・・・」
「市井ちゃんの悩みとか苦しみとかわかってあげれなくて。矢口先輩の方がわかってて・・」
涙を流しながらも後藤の声ははっきり私に聞こえていた。
「だから・・・不安でぇ・・・」
そっと後藤を抱き寄せた。
「後藤。私の1番の支えは後藤だよ?後藤の笑顔を見るだけで元気になるんだ」

『事件』があって、いろいろ大変だったけど後藤がいるから頑張れた。
もし、後藤に出逢ってなかったら今頃、寂しい生活送ってると思う。

ぎゅっと強く後藤を抱きしめる。
「愛してる」
そうはっきり言った。
「市井ちゃぁん・・・・」
「本気で愛してるから。不安だなんて思うなよ?」
「うん・・・・」
後藤の髪をとかしてそっとキスをした。
445 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/04(土) 18:27

 『12.君が、好き』

 <吉澤 視点>

秋風が吹く中、本来ならば部活をしなければいけないのだが。
「んぁ・・・寒いね」
「うん、寒い」
部室にこもって寒さを凌いでるうちとごっちん。長袖のジャージも
着てるけど寒いものは寒い。
「ところで・・・梨華ちゃんと最近どう?」
「どうって・・・別に何も無し」
「好きなら告白すればいいじゃん」
「・・・あのね、そう簡単に言わないでよ」
ごっちんはいつもストレート。そうゆうの羨ましい。
うちは数日前の梨華ちゃんを思い出した。
『梨華ちゃん!今日一緒に帰らない?』
『ごめん!ちょっと急用があって・・・』
会ったのはその時だけで、それ以来電話もしてないしメールもない。
避けられてる?と思ったけど別にうちは何もしてないし。

「おっす!部活やってるかー?」
急に部室の扉が開いて風が吹き込んできた。
「寒い〜・・・」
「矢口先輩・・・早く閉めて下さいぃ〜」
入ってきたのは元部長の矢口先輩だった。
「何だ?お前ら〜。ちゃんと部活しろよー」
「こんな寒い中、出来ません」
「んぁ」
「だらしないな〜。よし、久しぶりにオイラが見てやる。さっさと外に出る!」
矢口先輩のせいで部活が始まった。
446 名前:作者。 投稿日:2003/10/04(土) 18:39

>441 名無しさん様。
     (〜^◇^)<マジで〜?照れるな〜。
     ありがとうございます!かっこいいっすか?
     これでやっと1段落着きました♪

>443 タケ様。
     ありがとうございます〜!これで松浦さんも安心です!
     (〜^◇^)<やっぱオイラでしょ?
     
さて、いしよしがやっと始まりました〜。いやぁ良かった。
・・・さてと、岡女が始まったべさー♪
447 名前:タケ 投稿日:2003/10/05(日) 00:32
いしよし始動!! 楽しみにしてます!!
(○^〜^)<やっと出番だー!
( ^▽^)<キャーッ!!

しかし後藤さんも不安抱えてたんですね
2人ともお幸せに
448 名前:和尚 投稿日:2003/10/05(日) 09:44
無事問題解決!矢口さんの言葉で解決になったし・・・凄すぎッス!!
悟りをひらいてらっしゃるとか?

またいちーさんごとーさんを泣かせちゃいましたね。
ここら辺でなんらかの行動を示さないとまた泣いちゃいますよ。

そしていしよし。
さっそくよしざーさんヘタレ全開・・・(笑)
頑張れ〜
449 名前:作者。 投稿日:2003/10/14(火) 11:54
只今、テスト期間の為更新が今週の木曜日か金曜日になります!
もうしばらくお待ち下さい〜(T−T;

450 名前:タケ 投稿日:2003/10/14(火) 13:02
待ってますよ〜!
451 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/16(木) 22:35
寒い寒いと思いながらハードルを飛ぶ。
『んじゃぁ、高飛びとハードルどっちがいい?』
と素敵な笑顔で矢口先輩は言った。何でそんなハードなもんをやるんだとうちは
思った。ごっちんを見ると同じような気持ちなのか憂鬱そうにしていた。
話し合った結果、ハードルをやる事に。

矢口先輩はタイムを測ってくれている。
「よっすぃー!前より遅いよ!もっと腿上げて走って!」
「へぇ〜い・・・」
「ごっちん!だるそうに走らないの!あとちゃんと飛んで!ハードル倒しちゃ駄目!」
「んぁ〜・・・・」
久しぶりのスパルタでうちらはへとへとになっていた。もう駄目だと思って胡座をかいて
座った。ごっちんは倒れていた。
「お前ら〜そんなんじゃ全然駄目だぞ!」
今日の矢口先輩はいつもと違う・・・違うよ。きっと何か間違った物食べたんだ・・・。
「矢口先輩〜キツイっすよ・・・」
「んぁ」
涙目で訴えて休憩になった。部室に戻ろうとすると一台の車が学校の校門に入ってきた。
何気なくその車を眺めていた。すると適当なとこで止まって運転してた人が降りてきた。
一瞬、目を奪われた。いや、一瞬じゃない、凝視するほどだった。
降りてきた人に、微笑んで出迎えた彼女。

・・・・梨華ちゃん?

どう見えてもその彼女は梨華ちゃんにしか見えなかった。
2人の会話はここじゃ聞こえなかった。
「よしこ〜何してんの?」
「え?あぁ、今行くよ」
うちは気になったけどごっちんの後を追いかけた。
452 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/16(木) 22:43
「よしこ?何ぼーっとしてんの?」
「そんな疲れちゃった?ごめん、オイラ久々で燃えちゃったからさ〜」
うちの頭からはさっきの場面が離れず、消えなかった。
ショック、だったんだ。
梨華ちゃんが違う人に笑顔を向けているのが。
いや・・・・そんなに気にする事はないんだ。知り合いだったみたいだし。
「よしこー!戻ってこーい!」
ごっちんの声ではっと我に返った。
「いやぁ・・・ちょっと走ってきますね」
「何だよ〜、さっきは辛そうだったのに」
うちは部室を出て校庭を走り出した。

何だ、このもやもやした気持ちは。

嫉妬してんのかな・・・・うち。

気になって仕方ない。

だって、しょーがないじゃんか。

うちは梨華ちゃんが好きなんだから。
453 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/16(木) 22:52

 <石川 視点>

私は図書館で勉強していた。たまに時計を確認しながら数学の問題を
解いていく。いつもなら、もう家に帰っている時間帯だけど、今日は
特別な日だから。
「あ・・・時間だ」
ノートや教科書をカバンに閉まって図書館を出た。下駄箱で靴を履き替えて
校門の方へ歩く。しばらく立って待っていた。
・・・ひとみちゃん、こんな寒い中部活してるのかな・・・。
もうすっかり冷え込んだ季節。こんな中、走るのは辛い。
そして一台の車が校門を通って学校へ入ってきた。
「あ!来た!」
私の2メートルぐらい離れて車は止まった。運転してた人が降りてきた。
「石黒さん!」
「おいっす、石川」
私は少し走って石黒さんのもとへ。
「お久しぶりですね」
「そうだねー、相変わらず色黒だねぇ」
「もう!それは言わないで下さい〜」
何も変わって無かった。
爽やかな笑顔をも、からかう言葉も。
「この学校は雰囲気良さそうだね」
「わかるんですか?」
「何となくね〜」

454 名前:作者。 投稿日:2003/10/16(木) 22:58

>447・450 タケ様。
         待っててくれてありがとうございます!やっといしよし
         スタートですが・・・何やら前途多難な様子・・・・。
         でも作者は断固でいしよしが好きです(爆)。

>448 和尚様。
     (〜^◇^)<オイラはすごいんだぞー!
     ( ^∀^ノ<自分で言うなよっ!
     基本的にここの吉澤さんヘタレです(笑)。
     いしよし、何だか長くなりそうです・・・。

はい!テストも終わって元気100倍!いしよしですね!
新キャラも登場・・・・おわかりの通り石黒さんです(w
むむむ・・・前途多難な様子だなぁ・・・。

         
     
455 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/17(金) 22:09

 <矢口 視点>

よっすぃーの様子がおかしい。ぼーっとしてたり、突然頭を横に振ったり溜息ついたり。
そんなにオイラ厳しかったかなぁ?と不安になってしまうほどよっすぃーは変だった。
「ごっちん、オイラ厳しすぎた?」
「んぁー・・・まぁね。でもよしこはまた別の事であぁなってんじゃない?」
「んー、そっか」
オイラは部室から出て帰る事にした。こう見えても一応受験生だしね。
カバンを持って学校を出て行く途中、見慣れない車を発見した。随分派手な車だなぁと思った。
だって、赤い車。スポーツタイプ。
こんな車学校の先生が乗ってくるか?
「早く帰ろう」
足は再び歩き始めた。

翌日。学校へ行くと何だかクラスの中はいつも以上に賑やかだった。
「おはよー矢口」
「おはよー。なっち。・・・って、何?この騒ぎは」
「あぁ、ほら家庭科の先生が産休に入ったじゃん?代わりの先生が来たんだよ」
あぁ・・・なるほどねぇ。
昨日見た車はその先生のかな?
席について1時間目の授業の教科書を出した。そこでそういえば今日家庭科ある日だと思い出した。
「なっち、今日家庭科何時間目?」
「んとねー6時間目だよ」
そう聞いて今日の昼休みは裕ちゃんのとこで食べようと思った。
オイラもどんな先生か気になったんだ。

456 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/17(金) 22:22

 <中澤 視点>

驚いたわ。こんな若い人だとは思いもしなかった。
「石黒彩です。よろしくお願いします」
放課後、職員室に突然校長が来た。用事は家庭科の先生が産休に入ったから代わりの
先生を紹介するとの事やった。
・・・・はぁー若いってええなぁ。
しかし、結構派手やなぁと思った。鼻ピあるのにはさすがに驚いたわ。
「中澤です。よろしく」
「石黒です、よろしくお願いします」
少し緊張してるのか、向けられた笑みはひきつっていた。ならこの裕ちゃんが仲良く
したろと思い、その後に夕食を誘った。
「これ、あんたの車なん?」
「はい!」
赤いのかい・・・・・。
でもええ感じの人やし、生徒で人気に出るなぁ。
私は今日は車が故障した為、乗せてもらう事にした。
「どうや?学校の雰囲気というか。ってまだ緊張してわからんか」
「いえ。いい感じの学校だと思いますよ」
「ははは、そうか?」
「明るくて接しやすい中澤先生もいますし」
「あ、裕ちゃんでええよ」
「え・・?」
「生徒にはそう呼ばれてたりするねん。こっちの方がいいから。
 ま、他の先生がおる時はちゃんと呼んだ方がええけどな」
「・・・裕ちゃん?」
「そや。敬語もええで」
「・・・面白いね、裕ちゃんって」
この時やった。この子の本来の笑顔を見たときは。

457 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/17(金) 22:37
夕食はレストランに入った。久しぶりに飲もうと思って赤ワインも頼んだ。
「何て呼ばれてるん?」
「友達とかは彩っぺとか」
「なら彩っぺでええな」
「裕ちゃんって親しみやすいね。学校の先生なんて嘘みたい」
運ばれてきた料理を食べながら彩っぺは言った。
「何や、学校の先生じゃ悪いんか」
「んな事言ってないじゃん〜。この学校で知ってる人、1人しかいないから。
 裕ちゃんがいて嬉しいんだよ」
「知ってる人?」
「生徒だけどね。2年の石川梨華っていう子だよ」
「あぁ・・・何度か見た事あるなー」
「前に石川の家の近所に住んでて。よく買い物行ったりしてたんだよ」
へぇ、そんな繋がりがあったんか。
「久々に今日会って、あの子の笑顔見て安心したよ」
彩っぺは苦笑いのような微笑をしていた。
「石川の家庭が、あんまよくなくてね」
「よくない?」
「夫婦仲が冷め切ってて・・・石川、笑顔少なくて。でも今じゃすごくいい笑顔してんだ。
 恋でもしてんのかな」
それから色々雑談をしてレストランを出た頃はもう9時を回っていた。
彩っぺはわざわざ家まで送ってくれた。
「じゃ、また明日な」
「うん。また明日〜」
赤い車を見えなくなるまで見送った。

 
458 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/17(金) 22:49

 <吉澤 視点>

んー・・・・・・。

いつの間にか矢口先輩が帰っていた。部室の中でごっちんが寝たいた。
どうにもこうにも気持ちが収まらない。
「ごっちん、帰ろうよ」
「んぁ〜・・・・」
ごっちんを揺さぶって起こす。何で何処でも寝れるんだろう?
めんどうなのでジャージのまま帰る事にした。
「よしこ〜何かあったの?さっきから変だよ」
「んー・・・ごっちんは市井さんに嫉妬したりする時ある?」
「あるよー。市井ちゃん、何気モテるから、今でもね」
「へぇー」
「でも市井ちゃんはあたしの事が1番だって信じてるから」
ノロケっすか・・・・。
うちの場合、梨華ちゃんと両思いなわけじゃないし。
1番だって信じたら、自識過剰じゃんか。

ごっちんとわかれて家に帰った。梨華ちゃんにあの人とはどうゆう関係のか
聞きたいけど聞けない、そんな状況。
だから携帯とにらめっこして終わる。
「怖いよ・・・・もし、好きな人だったら・・・・」
梨華ちゃんの笑顔を思い出す。ぼすっとベットに顔を突っ伏した。
嫌だよ・・・梨華ちゃんがあの人を好きだなんて。
もしそれが本当だったら、それ受け入れる自信ないし、今まで通り接する事も出来ないと思う。
「どうすりゃいいんだよぅ・・・・」
答えは出ないまま夜は更けていった。
459 名前:作者。 投稿日:2003/10/17(金) 22:56
少ないながらも更新です♪
(0´〜`)<どうすりゃいいんだよぅ・・・・。
吉澤さん、悩める乙女です。
(〜^◇^)<乙女ってキャラじゃないだろっ!
(●´ー`)<矢口もそうだべさ。
(〜^◇^)<な、なっち。ここでは初登場だね・・・。
(●´ー`)<出番少ないから、ここで出とこうと思って。ここの主役でもやろうかとね。
(〜^◇^)<え・・?

ミニモニ。の曲がなかなか好きだったりした・・・・そんな心境。
次回は石川さん登場です。
460 名前:タケ 投稿日:2003/10/17(金) 23:12
石黒さんの登場ですか!!
嫉妬する吉澤さん・・・イイですねぇ
早く誤解が解けるといいですね♪
これからの展開を楽しみにしてます!
461 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/18(土) 21:41

 <石川 視点>

まだ離婚していなかった頃、いや離婚寸前の時石黒さんは近所に引っ越して来た。
その頃は家の中が冷め切ってて喧嘩が絶えなくて、妹は泣くし、姉は何処かに出て行って。
私はどうしようもない気持ちで妹を抱きしめて両親の喧嘩が終わるのを待っていた。
でも、もう耐え切れなくて妹の手を握って家を飛び出した。雨が降ってたのを覚えている。
寒い中、お気に入りのピンクの傘をさして当ても無く歩いていた。
『・・・梨華お姉ちゃん』
『大丈夫だからね、お姉ちゃんがいるから』
泣きそうな妹の顔を見てしっかりしなきゃという気持ちが出てきた。
だけど何処にいけばいいかわからなくてただ歩いてるだけ。
お金は一応持って来た。5千円。父の財布からこっそり持ち出してきた。
とりあえず近くにあるファーストフードのお店に入った。そういうお店に入るのは
これが初めてだった。いつもは高級なレストランみたいなとこしか行った事がなかった。
『いらっしゃいませー!』
笑顔で迎えてくれた店員のお姉さん。その笑顔に安心してハンガーガーを二個とジュースを
買った。適当な場所を選んで座って食べ始めた。
小さな子供が2人、しかも雨の日にこんな場所にいるのは珍しく他の人達にジロジロ見られた。
『お姉ちゃん、おいしいね』
『そうだね』
それでも妹の笑顔が見れればどんな事だって頑張れる。例え両親が離婚しても私が妹を
守ってあげなきゃ。
『・・・ねぇ、お父さんとお母さんはどうしたの?』
急に隣の席にいた女の人が声をかけてきた。私はドキッとして固まってしまった。
それが───石黒さんだった。
462 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/18(土) 21:51
『・・・家にいます』
『家に?』
『まだ・・・喧嘩してると思います』
とりあえず素直に言った。
『そっか・・・家何処?』
聞かれた通り住所を答えた。緊張で手が震える。
『お!じゃぁ近所じゃん。私、石黒彩。最近ね引っ越してきたんだー』

この時、思った。

この人なら信用出来るって。

その後、お店を出て石黒さんの家に来た。
『お邪魔します・・・』
『そんな緊張しなくていいから、上がって』
玄関から入って廊下を歩く。妹の手をぎゅっと握って。
『彩、どうしたんだい?』
石黒さんのお母さんが出てきた。
『近所の子だよ。マックに2人でいてさ、声かけたらご近所さんだってわかって』
『そーかい。可愛らしい子達だね。すぐ紅茶を出すからね』
リビングに行くと今度は石黒さんのお父さんがいた。
『おー、何だ。可愛い子達じゃねーか』
『ご近所さんだよ』
『お前もこんな時があったなー。今ではうるさくなっちまって』
『うっさいなー。うるさいとは何だよ〜』

いいなって思った。

あったかい家だなって。

羨ましくて、羨ましくて。

涙が出そうだった。
463 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/18(土) 22:01
石黒さんの部屋は結構さっぱりしていた。
『コレ、何ですか?』
『あぁ、ベースだよ』
まじかでベースなんて見た事がなかったから妹と一緒にジロジロ見ていた。
しばらくして石黒さんのお母さんが紅茶とクッキーを持って来た。
3人で紅茶を飲みながら話をしていた。妹はだいぶ打ち解けてきたようだった。
『服飾の学校通ってんだ』
あぁ・・・だからミシンがあるんだ。
『自分で服、作るんですか?』
『まぁね。あ、そういえば名前聞いてなかったね』
『石川梨華です』

これが私の名前。

あの両親がつけた名前。

可愛い名前と人は言うけれど。

私は好きじゃなかった。

『もう離婚すると思います』
『え・・・?本当?』
『でも大丈夫です。妹いるし』
妹はお姉ちゃんと言い、抱きついてきた。石黒さんは悲しそうな顔をしていた。
『・・・梨華ちゃん』
『大丈夫です・・・だい・・・じょうぶ・・・』
突然涙が溢れ出て止まらなかった。

しっかりしなきゃ。

私がしっかりしてなきゃ。

あの家は壊れてしまう。

私は泣いて、今まで泣けなかった涙を流した。
妹は心配そうな顔で私を見ていて。石黒さんは私を優しく抱きしめてくれた。
464 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/18(土) 22:11
その日から石黒さんの家へ遊びにいくようになった。石黒さんの家族は
暖かく迎えてくれた。夕食もご馳走になった事もあった。
それでも相変わらず家は冷めていた。姉はいつも何処かへ行ってていなかった。

離婚が決まった日。

絶望的だった。

勝手に決められた運命。

姉と妹はお母さんの方へ。

私だけ、お父さんの方へ。

お母さんと姉と妹はすぐ出て行って。
広い家に私とお父さんだけ。

この時も雨だった。

私の可愛い妹がいない。

何の為にこれから頑張ればいいの?

『・・・ひっく・・・くっ・・・』
石黒さんの家に走って、石黒さんのとこで泣いた。
私はここでしか泣けないから。
妹には笑顔で見送った。

それから何年か経って石黒さんは引っ越していった。
私は石黒さんのおかげでだいぶ立ち直れた。
『梨華ちゃん・・・頑張ってね』
『はい、石黒さんもお元気で』
『また会おうね』
『はい。楽しみに待ってます』
もう泣く場所は無くなった。
だけど、少しだけ強くなった。

───全ては彼女の笑顔のおかげだったのかもしれない。

465 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/18(土) 22:18
そして、また何年か経って。

今に至る。

やっと会いたい人に会えるんだ。

つもる話がたくさんあるよ。

ねぇ、石黒さん。私ね、恋してるの。

早くその話がしたい。

私の好きな人はね、優しくてあったかくて。

傍にいると元気が出てくるの。

私の事をすごく心配してくれて、怒ってくれて。

私の為に泣いてくれたんだ。

その人の名前はね────

吉澤ひとみっていうんだ。



 
466 名前:作者。 投稿日:2003/10/18(土) 22:23
やっと石川さん登場。ヘビーなお話でしたが・・・。

>460 タケ様。
     嫉妬する吉澤さん可愛いっすよね♪
     さてさて、石川さんも登場しましたが。
     作者も早く誤解が解けて欲しいと願ってます・・・。
     (〜^◇^)<だったら更新しろよ!

まぁこの2人、何だかんだ言って相思相愛(w
だけどこれまたすれ違い・・・・。
(●´ー`)<早く想いが通じ合えばいいべさ。

467 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/19(日) 21:04

 <矢口 視点>

昼休みになって、圭織となっちを連れて裕ちゃんがいる生徒指導係り室へ行った。
「失礼しまーす」
「今、中澤先生ちょっと出てるんで・・・」
中に入ると見たこと無い先生がいた。
「・・・あ、あの。もしかして家庭科の変わりに来た先生ですか?」
「あ・・・はい。石黒彩です」
石黒先生は控えめな声で言って、中に入れてくれた。
「中澤先生、もうすぐ帰ってくると思うから」
とりあえず3人で並んで座ってお弁当を広げた。
「お茶!お茶飲む?」
いきなり椅子から立ち上がって石黒先生は言った。オイラ達は驚いた。
「・・・は、はい」
「すぐいれるね!」
生徒達相手に緊張しているのかなと思っていたら裕ちゃんが帰って来た。
「彩っぺー。遅くなってすまんな〜購買混んでて買うの大変やったー」
「裕ちゃん!生徒達が待ってるよ!」
石黒先生が『裕ちゃん』と呼んでる所を見ると仲がいいみたいだ。
「おぉー、何や。矢口達」
「「「お邪魔してまーす」」」
そして5人で昼ご飯を食べる事になった。
「どや?石黒先生は」
裕ちゃんがニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
「どうって・・・まだ授業受けてないから・・・」
困って圭織となっちの方を見た。2人共困った顔をしていた。
「裕ちゃ〜ん、困ってんじゃん」
石黒先生は笑っていた。
「まぁまだ会って全然やしな。これから徐々にわかっていくやろ」
「う〜何か怖いなー。試されてる感じ」
「ははは、まさにそうやな」
裕ちゃん、楽しそうだな。
そりゃこんなに仲いい先生他にいないしね。
石黒先生が来た事が嬉しいんだろうなぁ。
468 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/19(日) 21:17
昼ご飯を食べ終えて生徒進路係り室を出た。
「何か、いい感じの先生じゃない?」
圭織が言った。なっちも頷いている。
「オイラもそう思うよ」
「家庭科の授業楽しみだな〜」
「料理実習やりたいよね」
こうして昼休みは過ぎていった。

家庭科の授業が始まって最初は緊張気味の石黒先生だったけど
だんだん慣れて来たみたいで楽しそうに授業をしていた。
予鈴が鳴って授業が終わった。
「じゃぁ今日はここまでです!」
石黒先生が教室を出て行く時、廊下に梨華ちゃんがいるのが見えた。
親しげに石黒先生に駆け寄る梨華ちゃん。
「・・・知り合いなのかなぁ?」
石黒先生は来たばっかの先生だし、裕ちゃんの場合は先生繋がりだから
あんな仲いいんだろうけど、梨華ちゃんとは何も接点が無い。
「矢口、どうしたの?」
「あ、なっち。見てよ。石黒先生と梨華ちゃんが親しげに話してる」
「ホントだー。結構仲良さげだねぇ。梨華ちゃんにしては珍しいね」

・・・まさか。よっすぃーのあの変な様子はあれのせいじゃ・・・。

「うーん・・・そうかもしれないなぁ」
だとしたらあんな親しげに話している所を見たらますます落ち込むんじゃ・・。
嫌な予感しか頭に浮かばなかった。
469 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/19(日) 21:27

 <吉澤 視点>

放課後の時間になった。
掃除をダッシュで片付けてダッシュで廊下を走って2年の教室へ向かった。
もちろん梨華ちゃんと一緒に帰る為。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息を整えながら梨華ちゃんのクラスを覗いた。そこはもうがらんとしていて
2人しか人がいなかった。
「おーよっすぃーじゃん!」
柴田さんが手を振ってくれた。
「あの・・・梨華ちゃんは・・?」
「あぁ、帰ったよ。ものすごい勢いで」
「確か誰かと待ち合わせしてるみたいだよ」
柴田さんの近くの席に座っていた大谷さんが言った。

誰かと・・・・待ち合わせ・・・・。

カバンを落とした。
「そんなぁ・・・」
だったら誰かに掃除当番代わってもらえば良かった。
いや、もう6時間目サボれば良かった。
「よっすぃー?どうしたの?」
「もう駄目だ・・・・」
ふらふらと歩きながら教室を後にした。

告る前に終わる恋・・・・。

あーぁ、こんなマジになったの初めてだったのに・・・。

「でも、梨華ちゃんが幸せならそれでいいかな・・・」

そう大切なのは好きな人が幸せになる事だ。
そりゃうちが幸せにしたいけど、無理みたいだし。
あのカッケー先生の方が頼りがいあるし、優しそうだし。

ずるずるとカバンを引きずりながらうちは学校を後にした。
470 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/19(日) 21:41

 <石川 視点>

「すいません!待たせちゃって」
プリントの提出をしてから走って来た為待ち合わせ時間より少し遅くなってしまった。
「おお、いいよ。全然」
車で待ってくれた石黒さんはにかっと笑って言った。私は急いで助手席に
乗り込んだ。すぐにエンジンがかかる。
今日は石黒さんと久しぶりに話をしようという事になっていた。
「さて、行きますか」
「はい」
どんな話からしようかなとわくわくしていた。

喫茶店に入って奥の席に座った。コーヒーとアイスティーを注文した。
「何かいい笑顔してるね。恋してんじゃないの?」
いきなりそんな事を言われてドキっとしてしまった。
「・・・はい、そうなんです」
「え!?ホント〜!良かったねぇ」
「すごく好きな人で・・・でもまだ片思いなんです」
「ほぉ、片思いかぁ。青春だねー」

私はひとみちゃんの事を話した。
どんな風に出会ったのか、どんな風に好きになったのか。
思い出の事を全部話した。

「イイ奴なんだね、ひとみちゃんって子は」
「はい。・・・でも告白するの怖いんです」
「怖い?」
「振られたら私、今まで通り接する事なんて出来ないと思うし。もしひとみちゃんが
 他に好きな人と付き合ったら、受け入れる自信なんてないし」
「・・・まぁ、そうだね。誰だってそうだよ」
「なら、言わない方がいいかなって・・・ただ近くにいれればいいかなって」
「・・・でも、独占したいんでしょ?独り占めにしたいんでしょ?」

そう私・・・独り占めしたいよ。

ひとみちゃんの優しさを、あったかさを。

自分のモノにしたい。
471 名前:作者。 投稿日:2003/10/19(日) 21:48
すれ違い〜♪すれ違い〜♪

いつ気付くんでしょう?この2人。
とりあえず更新です。
472 名前:TOKOM 投稿日:2003/10/19(日) 21:59
こんばんわっす。
リアルタイムで見させてもらいました。
いや〜もどかしい・・・されど可愛らしいこの二人
いつになるのか思いが通じるかこれからも楽しみに待ってます!!
473 名前:タケ 投稿日:2003/10/20(月) 00:43
石川さんと石黒さんはそうやってであったのか・・・
石川さん、吉澤さん両方思いあってるのに・・・
どちらがどう告白するか楽しみにしてます
474 名前:和尚 投稿日:2003/10/20(月) 13:27
作者様楽しそうで(苦笑)
自分は両想いなのにすれ違いの状態が好きなので楽しみに待ってます。
475 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/20(月) 17:22

 <吉澤 視点>

家に帰って、ただいまも言わずに自分の部屋に向かった。そしたら後ろから
ただいまぐらいいいなさい!とお母さんの声が聞こえた。
「ただいまー・・・」
そう小さく言って、部屋の中に入った。電気を付けずにカバンを放り投げてベットにダイブ。
顔を枕に埋めて「う〜・・」っと唸る。

明日学校に行くのだるいなぁ・・・・。
梨華ちゃんとばったり会ったら辛いなぁ・・・。
嫌だなぁ、あの2人が話してる所見たくないな。

考える事はネガティブな事ばっかで。
初めて、人生が嫌になった。
恋なんてしなきゃ良かった・・・・とまでは思わないけど。

もう二度と、恋は出来ないだろうなと思った。

梨華ちゃんへの片思い。これが最初で最後のうちの恋。

「あー・・・寝よう」
少し、涙を流して眠りについた。
476 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/20(月) 17:36

 <石川 視点>

石黒さんに全てを話せて良かった。ココロが晴々としたような感じ。
この恋が上手く行きそうな予感がした。
「今日はひとみちゃんと帰ろう♪」
翌日の朝からルンルンな気分で学校に行った。会ったら、どんな言葉を言おうか
ちょっと喫茶店でお茶でもしようか、そればかり考えていた。
「梨華ちゃん・・・ニヤニヤして怖い」
柴ちゃんに言われてはっと思考を止めた。
「え?ニヤニヤしてた?」
「うん・・・もろ、笑顔っつーか、今日機嫌いいね」
「まぁね〜」
今は休み時間。早くひとみちゃんに会いたいという思いが募る。
「っていうか、昨日の放課後。よっすぃーが来たよ」
「えぇ!?」
「梨華ちゃんに会いに来たみたいだけど」
そんな〜・・・・。
「だけど、マサオが誰かと待ち合わせらしいって言った途端よっすぃー暗くなって」
「・・・・う〜、だって昨日は・・・」
柴ちゃんに昨日の事を話そうとした時、大谷さんがこっちにやって来た。
「梨華ちゃんさー、石黒先生と付き合ってんの?」
「えぇ!?何で!?」
「っていうか、マサオ。誰情報よ?」
「んにゃ、噂だよぅ。昨日、石黒先生と梨華ちゃんが2人でお茶してたのを
 2年生が見たんだって」
顔が青ざめていくのがわかった。寒気がする。
「ね、ねぇ!ひとみちゃん・・・噂、知ってたり・・・するかな・・?」
「さぁねぇ・・・1年生までまだ届いてないんじゃない?」
柴ちゃんはあっさり答えた。他人事のように・・・他人だけど。
まだ噂が1年まで行き届いてなきゃいいけど。もうそれを祈るしかなかった。

477 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/20(月) 17:44

 <矢口 視点>

放課後、飲み物を買いに購買の方までやって来た。途中、1年の教室前の廊下を通るんだけど・・。
まだ教室に残ってる1年の生徒がちらほらいた。何気なく見ているとよっすぃーがいた。
そして廊下には梨華ちゃんの姿が。
おぉ、一緒に帰るのかなぁ。青春だねぇー。
結構上手くいってんじゃん。オイラの嫌な予感は当たんないね。

そうだと思ったのに。

「ひ、ひとみちゃん!」
よっすぃーが廊下に出た瞬間、梨華ちゃんは声をかける。
「あ・・・」
「あのね、今日一緒に」
「すいません、部活あるんで・・・」
そうよっすぃーは言って梨華ちゃんと目を合わさずに去って行った。
梨華ちゃんは驚いてその場に立ち尽くしていた。

・・・・え?どうなってんの?

オイラも驚いて動けなかった。

よっすぃーは1度も振り返らなかった。
478 名前:作者。 投稿日:2003/10/20(月) 17:55

>472 TOKOM様。
     リアルタイムで見ていたんですか〜ありがとうございます!
     もどかしいですよね・・・書いてる作者ももどかしい(笑)。
     いつになったら通じるかわかりませんが遠い先では無いと思います(ぇ
     (〜^◇^)<遠い先じゃまずいだろ!

>473 タケ様。
     うーん、どっちが告白するか・・・作者も今の時点ではわからないんですが。
     自然に出きればいいなぁと思ってます(^−^
     
>474 和尚様。
     ホントすれ違いなもんで(^−^;
     いつになるかなぁ・・・思いが通じる日は。
     (0^〜^)<・・・梨華ちゃん・・・。

今回は最後が切ないですね・・・。
どうなるんですか〜!?ってな感じで(w
479 名前:タケ 投稿日:2003/10/21(火) 09:49
よっすぃ〜・・・切ないですね、誤解なのに・゚・(ノД`)・゚・
石川さんも戸惑ってて・゚・(ノД`)・゚・
はやく誤解が解けるといいですね
480 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/22(水) 17:49

 <石川 視点>

勇気を出して放課後、ひとみちゃんの所へ。教室にはまだひとみちゃんがいた。
中にひとみちゃん以外の人がいたから中々声をかけれなくて、ひとみちゃんが
廊下に出るまで待つ事にした。
そしてついにひとみちゃんが出てきた。
「ひ、ひとみちゃん!」
心臓がドキドキいってて、すごい緊張してるのがわかった。
「あ・・・」
「あのね、今日一緒に」
「すいません、部活あるんで・・・」

一瞬も目を合わせてくれなかった。

いつもより元気が無い声。私の頭の中でその声が繰り返される。

嘘・・・・まさか・・・。

ひとみちゃんの方に視線を向ける。一度も振り返らずにひとみちゃんは行ってしまった。
私は動く事が出来ずに立ち尽くしていた。
違うよ・・・誤解だよ。誤解なの!
そうさっき言えば何か変わってたかな・・・。
「梨華ちゃん・・・」
矢口さんの声が聞こえた。だけど今は声を返す余裕が無かった。
しばらく経って私はやっと口を開いた。
「あの・・・噂、聞いてますか・・?」
「噂?」
私は噂の事を話した。
「いや、聞いてないよ。まわりでもそんな噂してる人いないし。まだ3年にまわって
 きてないと思うよ。石黒先生と喫茶店にいた日からまだそんな経ってないから1年の
 方もまだ噂きてないと思うよ」

だとしたら・・・ひとみちゃんはどうしてあんな様子なんだろう?
学校で石黒さんと話してる所、見られたかな。

「梨華ちゃん。誤解なんだから、早く解いた方がいいよ。オイラ協力するし」
矢口さんは心配そうな笑顔で言ってくれた。

481 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/22(水) 18:30

 <吉澤 視点>

びっくりした、かなり動揺した。まさか梨華ちゃんがうちを待ってるなんて
思わなかったから。何でここにいるんだろうか?
もう辛くて、ココロが苦しくて。
うちは梨華ちゃんと目を合わさずにその場を去って行った。

うちは───逃げた。

梨華ちゃんのあの先生に対する想いを受けいられるほど大人じゃなくて。
信じたくない、信じたくなくて。それほどまでに子供なんだ。

「ごめん・・・・」

校庭まで来て小さく呟いた。

「よしこ!何突っ立ってんの?」
後ろから肩を強く叩かれた。
「ごっちん・・・」
「何つー顔してるのさ」
「もう駄目だよぉ・・・」
「・・・よしよし。あたしが聞いてあげるから。うちおいでよ」
こうしてごっちんの家へ行く事になった。

ごっちんの家へ来たのは久々だった。
「はい、上がって」
「お邪魔します」
上がって廊下を歩いてリビングに入った。ソファに座ろうとした、が。
「うわぁ!?」
「んー・・・・」
ソファでは市井さんが気持ち良さそうに寝ていた。
「あれ、市井ちゃん帰ってたの?」
「みたいだね・・・」
ごっちんが市井さんの頭を叩いた。
「いてっ・・・何だよぉ・・・」
「市井ちゃん、部屋で寝てよ」
「嫌だぁー・・・ここで寝る」
「いい加減にしてよ。風邪ひいたら迷惑」
「う〜・・・」
市井さんはずるずる床に這い付きながら自分の部屋に向かった。
482 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/22(水) 18:44
「ごめんねぇ。市井ちゃん、このソファ好きだから」
「いや・・・いいけど」
改めてソファに座る。ごっちんが紅茶を持って来てくれた。
うちは梨華ちゃんと石黒先生の事を話した。
「んぁ〜、どうりで変だと思ったよ」
「わかってた?」
「うん。変だったもん。よしこ」
そんな変だったのか・・・。
紅茶を飲みつつ、恥ずかしくなった。
「でもさー、よしこは好きなんでしょ?梨華ちゃんの事」
「うん・・・もちろん」
「だったら、ぶつかっていいんじゃない?」
「だって、どうせ振られるのわかってて?」
そう聞き返すとごっちんは「はぁ〜」と溜息をついた。
「どうしてこう・・・鈍感なんだか」
「え?どうゆう事?」
「と・に・か・く!告白しておいで!以上!」
「何だよそれ〜」
「考えたってしょーがないじゃん。よしこの気持ちは変わらないんだし
 なら梨華ちゃんに知って欲しいんでしょ?だったら告るしかないじゃん」
ごっちんは立ち上がってキッチンの方へ行った。どうやら夕飯を作るようだ。
うちはトイレを借りる事にした。
「おい、吉澤」
「うわぁ、いたんすか」
廊下に体育座りをしている市井さん。
「・・・何してんすか?」
「・・・部屋で寝ようとはしたんだけど、後藤が頭叩くから目が覚めて。
 したら中、入りづらかったから。何となく」
市井さんは自分の横をポンポンと叩いた。どうやらそこに座れという意味らしい。
仕方なく指示に従って座った。

483 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/22(水) 18:56
「告白が怖いか?」
「・・・話、聞いてたんすか」
「あぁ、全部だ。別に聞きたくて聞いたわけじゃないから。ここにいたら
 こう・・・耳に入ってきたんだ。決して盗み聞きじゃない」
「・・・まぁ、何でもいいですけど」
小さく溜息をついて、最初の質問を思い出す。
「怖いですよ・・・振られるんだから」
「・・・私は、好きな人がいるのに告白した人を知ってる」
市井さんの方を見た。何だか懐かしそうに微笑んでる市井さん。
「振られるのに、・・・それをわかってて、その人は告白をした。
 自分の気持ちを知って欲しくてね。結果は振られたけど、その人は
 告白した事に後悔はしてない・・・むしろ良かったって」
それ・・・もしかして、矢口先輩の事じゃぁ・・・。
「カッコよくない?そーゆーのって」
「カッコイイっていう問題ですか?」
「・・・でも、自分の気持ちをうじうじして告白できない奴よりはマシだ」
うちの事じゃん・・・・。
「頑張れ。石川に気持ち、伝えてこいよ。その後のことなんて誰も知らないんだから。
 現に石川がその先生を好きだなんて、本人に聞いたのか?」
首を横に振った。梨華ちゃんの口から聞いた事は無かった。
「だったらまだ可能性はあるだろ。ちゃんと真実を確かめろよ」
市井さんはそう言って立ち上がってリビングの方へ行った。

真実を確かめる・・・・・。

まだ可能性はある・・・・。

希望の光が見えた瞬間だった。

『カッコよくない?そーゆーのって』

・・・・よっしゃ。カッコよくなろうじゃんか。

まだうちにも光はあるんだ。
484 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/22(水) 19:16

 <石黒 視点>

仕事をおえて学校を後にした。家のマンションへ帰ると、誰かが
マンション下にいた。夜だから暗くて顔までわからないが制服を着ているみたいだ。
駐車場に車を止めて、車から下りた。
「・・・・ん?梨華ちゃん!?」
「石黒さん・・・」
近づくとはっきり梨華ちゃんだとわかった。
「どうしたの!?もう・・・来るんなら学校で言えばよかったのに・・」
梨華ちゃんの手を触ると冷え切っていてすぐ梨華ちゃんを連れて自分の部屋へ向かった。
鍵で扉を開けて中に入り、すぐに暖房を入れた。
梨華ちゃんはずっと俯いたままだった。
「紅茶、いれるね。座ってて」
何年か前の、梨華ちゃんが妹を失った時と今の梨華ちゃんの姿がかぶった。
一体何があったんだろう?
紅茶をいれて、梨華ちゃんの隣に座った。
「ほら、飲んで。あったまるから」
「ありがとうございます・・・」
泣いていたのか、梨華ちゃんの目は赤くなっていた。
「・・・何かあった?」
そう聞くと梨華ちゃんの目が涙でいっぱいになる。
つい最近まで、恋をしていて嬉しそうな目だったのに。
「いいよ、ゆっくりでいいから」
梨華ちゃんは自分の気持ちを吐き出すようにしゃべった。
泣いて上手くしゃべれなくても一生懸命私に伝えようとしていた。
「そんな噂があったのか・・・・知らなかった」
「私がその噂を聞いてから、ひとみちゃんに会いに行ったら・・・何か、
 避けられてる感じでぇ・・・・」
私も関係してるぶん、ココロが痛い。
「・・・なら、早く誤解を解かなきゃね」
「・・・どうやって・・・?」
「告白、しなよ。もう片思いは十分したでしょ?」
「え・・?」
梨華ちゃんは驚いて固まった。
「だってさ、一番手っ取り早いじゃん。告白が」
何か、ひとみちゃんって子も梨華ちゃんの事好きなんじゃないかなぁと思う。
何となくだけど。
「・・・私、頑張ってみます」
「おう、その意気だよ。頑張れ」
梨華ちゃんの目にもう涙は無かった。

うん・・・強くなったね。

初めて会った時は、すごく弱くていつも不安そうで。

だけど、彼女は強くなった。あの頃よりも、強くなった。

私、嬉しいよ。梨華ちゃん。
485 名前:作者。 投稿日:2003/10/22(水) 19:21

>479 タケ様。
     切ないですねぇ〜・・・・お互いのすれ違いって切ないです(泣
     早く、一刻も早く誤解が解ければいいと作者も思ってるんですが・・。
     今回はもう準備万端整いましたってな感じですね(^−^;
     誤解はもうすぐ解けますよ〜。

さて、いしよしもうすぐ終わりかな?と思う今日この頃。
何気いちごまも出ておりますが・・・・・。
(0;^〜^)<た、体育座りっすか・・・・。
( ^∀^ノ <落ち着くんだよ!悪ぃか!
486 名前:タケ 投稿日:2003/10/23(木) 10:12
更新お疲れ様です
決意を固めた2人・・・どうなるんでしょうか・・・

普段大人っぽい市井さんが今回子供っぽかったのがツボ(w
( ^∀^ノ<うるせー!
487 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/23(木) 11:17

 <吉澤 視点>

告白かぁ・・・・どうやって梨華ちゃんに会おう?
あんな態度取っちゃったから避けられてるって思っただろうなぁ・・・。
「はぁー。バカだねぇ・・・うち」
ごっちんの家を後にして自分家に帰る。溜息を出す度に息が白くなった。
「もう冬かぁ」
夜空を見上げると星が綺麗に輝いていた。

────翌日。
嫌な夢を見た。
梨華ちゃんが何処か遠くへ行ってしまう夢。
起きてたら、涙を流していた。
「・・・そんな事あるわけないっ!」
ごしごしと目をジャージの袖で拭いた。とにかく告白する事を考えた。
「ひとみ、ちゃんと食べなさい。こぼしてるわよ」
朝ご飯をうちはぼろぼろとこぼしていた。
「ひとみ、カバンはどうしたの?」
玄関から出ようとした時、自分の部屋にカバンを置き忘れていた事に気付いた。
「大丈夫?熱でもあるんじゃないの?」
お母さんは心配そうな顔でうちを見ていた。
「大丈夫だよぉ・・・」
朝から緊張し過ぎて、こんなんで告白出きるのかうちは不安になりながら
学校へと向かった。
「ひとみ!ちょっと、その靴お父さんのよ!」

何とか学校についた。
「よしこ、おはよー」
「おはよう、ごっちん」
「・・・緊張してんの?」
「な、何でわかったの?」
「や、手がめっちゃ震えてるし」
言われて手を見るとカタカタと小さく手が震えていた。
488 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/23(木) 11:31
「大丈夫〜?告白出来るの?」
「ははは、だ、大丈夫・・・大丈夫・・・」
そう自分に言い聞かせて席についた。

授業中も考える事は梨華ちゃんの事で。
そして、ふと校庭を見ると2年生が体育をしていた。
・・・あ、梨華ちゃんだ。
どうやら陸上競技をしているらしい。走り高跳びをちゃんと飛べて
嬉しそうに梨華ちゃんははしゃいでいた。

可愛い〜・・・・。

「吉澤ぁ!さっきから何回呼んでるんだと思ってんだ!」
先生の怒鳴り声でうちは現実に戻った。後でごっちんに聞いたらうちの事を
10回くらい呼んでたらしいがうちは全く気付いていなかった。
だって梨華ちゃんが可愛いんだもん。
・・・・何て理由、言える訳が無く。うちは放課後、職員室に呼び出されるはめになった。
「どうしよー、今日告白する予定だったのに〜」
「んぁ。予定は未定だね」
「・・・・ごっちん。つまんないよ・・・」
「あっは。まぁ先生の説教もすぐ終わらしてさ、さっさと告白しちゃいなよ」
うちは頷いて携帯を取り出した。梨華ちゃんにメールを送る為だ。

<大事な話があるんで、放課後の午後5時。陸上部の部室で待ってます。吉澤>

ごっちんが気をきかして今日は部活をやらない事にしてくれた。
「送信っと・・・・」
ふぅと安堵の溜息をついて携帯をしまった。
「・・・・よしこ、あたしに送ってどうすんのさ・・」
「え?」
ごっちんが自分の携帯の画面をうちに見せてくれた。
そこにはさっき梨華ちゃんに送ったはずの文章が。
「・・・梨華ちゃんに送るんだよ?」
「わ、わかってるよっ」
今度は何回も見直して送信した。

489 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/23(木) 11:41

 <石川 視点>

さっきひとみちゃんからメールがきた。

<大事な話があるんで、放課後の午後5時。陸上部の部室で待ってます。吉澤>

「何だろう・・・大事な話って」
「んー。もう会えないとか?」
柴ちゃんがこれまたのん気に言う。
「いやいや、好きですっていう告白かもよ?」
大谷さんもこれまたのん気に言う。

<放課後、5時ね。わかった。 梨華>

短く返事のメールをして、何を言われるのか考えた。
やっぱ・・・石黒さんの事?
でもその時がチャンスなのかもしれない。誤解を解くための。
柴ちゃんと大谷さんはまだあーだこーだ言ってるのが聞こえる。
・・・ちゃんと、自分の気持ち伝えなきゃね。

────放課後。
約束の時間になるまで石黒さんのとこにいた。
「そっか、頑張りなよね」
「はい。頑張ります」
これから告白する事。自分の気持ちをちゃんと伝える事を報告しにきた。
「これでどんな結果になっても後悔しません」
「おし、よく言った。自信持っていっておいで」
やっぱり石黒さんの笑顔は勇気を持たせてくれる。
私の、自慢のお姉ちゃんみたいな存在。
「あ、時間だ。じゃ、行きますね」
「おう」
私は家庭科準備室を出て行った。
490 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/23(木) 11:52

 <吉澤 視点>

やばい・・・・非常にやばい・・・・・。

「お前はいつも外見てるな。授業に集中しろ!」

時計はもうすぐ5時になる。でも先生の説教は一向に終わる気配が無い。
こっちも謝ってんのに・・・・。
早く終わらせないと梨華ちゃんが部室に来てしまう。
「反省してます・・・」
「本当か?こないだの成績もだな・・・」
話がどんどん深くなって行く。誰か助けてくれるなら助けて欲しいもんだ。
「まぁ、ええじゃないですか。反省してようだし」
神の声が聞こえた。
「むぅ・・・中澤先生。しかしですね・・・」
「吉澤は大丈夫ですよ。ただ、ちょっと抜けてるだけで」
中澤先生はそう言ってうちを見た。
抜けてるって・・・・。
「反省してんのやろ?」
「はい」
「なら、次はしないようにな」
「はい」
「よし、行ってええよ」
「・・・はい!失礼します!」
職員室を急いで出て行ってまずは下駄箱まで全力疾走しようとした時。
「頑張りやー。告白するんやろ〜?」
中澤先生が後ろにいた。
「な・・・何で知ってるんですか?」
「矢口経由で知ったんや」

多分。 ごっちん・市井さん→矢口先輩

・・・・って事はみんな知ってるわけね。
矢口先輩が知れば安倍さんや飯田さんも知ってるはずだし。
「はよ、行きな。好きな子待たせるんか?」
「あ・・・はい!」
それを知ってて中澤先生は助けてくれたのかもしれないと思った。

491 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/23(木) 12:02
時計を見ればもう5時を過ぎている。下駄箱で靴に履き替え、部室まで走った。
「よっすぃー!それ私の!」
クラスメイトの声が聞こえて立ち止まった。足元を見るとなるほど自分の靴じゃない。
「もうー抜けてるんだからぁ」
「ごめん・・・」
急いで靴を返して自分の靴に履き替えてまた走る。

いるかな・・・・もしかしたら、いないかな・・・。

不安と緊張でココロがごちゃごちゃしてる。
そーっと部室の扉を開いた。
「・・・・あ、梨華ちゃん」

いた。良かった。

梨華ちゃんは椅子に座って待っていた。うちは中に入って扉を閉めた。
「ごめんね・・・遅くなちゃって・・・。寒かったよね・・」
もうちょっと告白する場所を考えるべきだったと後悔した。
梨華ちゃんは首を横に振った。
「その・・・・大事な話なんだけどさ・・・」
緊張して手が汗ばんできた。
「あのね、私もあるの。大事な話・・・」
ここでやっと梨華ちゃんがしゃべった。
「え・・・じゃぁ、梨華ちゃんから・・・どうぞ」
「え、でも。ひとみちゃんから・・・」
しばらくお互い譲り合いっこしていた。
「・・・じゃ、一緒に言おうか」
うちがそう提案して、そうする事にした。

「せーのっ!」

「「好きです!!」」

え・・・?
梨華ちゃんの顔を見ると驚いた顔をしていた。

今・・・何て・・・・?

好きって言った・・・・?


492 名前:12.君が、好き。 投稿日:2003/10/23(木) 12:11
「梨華ちゃん・・・今、好きって・・・?」
「ひとみちゃんも・・・好きって・・・?」
驚きで何を考えていいかわからなくなった。
だけど、ちゃんと伝えないといけないわけで。

「・・・昨日はあんな態度取ってごめん。実はうち、梨華ちゃんは石黒先生の事が
 好きなんだと思ってて・・・・だってあんな親しそうに話してるから・・・。
 でもうちは梨華ちゃんの事が好きで・・・押さえきれなかった・・・えっと、
 だから・・・好きです。大好きです」
梨華ちゃんは手を口にあてて、泣いていた。
「私も・・・好き。ひとみちゃんが好き。他の誰よりも一番好き・・・」
「・・・ホント?」
「嘘言ってどうするのよぉ・・・石黒さんは昔知り合った人なの・・・」
「・・・や、やったぁ!」

ぎゅっと梨華ちゃんを抱きしめた。

「梨華ちゃん、大好き」
「私も。ひとみちゃん、大好き」

うちが幸せにするよ。

だから、絶対離さないよ?

『真実を確かめろよ』

市井さん、ちゃんと真実確かめましたよ。

駄目かと思ったけど、想いは通じ合えた。

今のうち、カッコイイかな?

493 名前:作者。 投稿日:2003/10/23(木) 12:19
いしよし!いやぁー、良かったぁ・・・終わって一安心(^−^

>486 タケ様。
     ついに決心そして・・・・ってな感じで今回告白場面でしたが。
     (0^〜^)<やったYO!
     市井さんは家にいる時は子供な設定。後藤さんに甘えてるようですよ(w

何か、告白が微妙だったかなと反省しております・・・。
次回ははたまた新キャラ登場なるか〜・・・・まだわかりませんが。
いしよしは甘々になっていく事は確かです(w
(〜^◇^)<オイラを出せよ!主役だろ!
次回は誰メインになるのか・・・もうしばらくお待ちください!
494 名前:和尚 投稿日:2003/10/23(木) 13:16
更新お疲れ様です。
読み応えタップリの告白シーンでしたよ。
告白直前までボケまくってたよしざーさんに爆笑。

矢口さんが主役だってコト忘れてました・・・(苦笑)
495 名前:タケ 投稿日:2003/10/23(木) 15:53
更新お疲れ様です
吉澤さん・・・正夢にならなくてよかったですね(w
告白までのボケも笑わされました

なにはともわれくっついてよかったです!
496 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/24(金) 10:57

 『13.聖なる夜に輝く星。』

 <矢口 視点>

「うっわー。マジ寒い」
「もう冬真っ盛りだねぇ」
気付けばもう11月半ば。受験生として追い込みの時期でもあるけど、やっぱり
冬は楽しい事がたくさんあるから嬉しい気分になるもんだ。
よっすぃーと梨華ちゃんもようやくくっついて良かったんだけど毎日イチャつく
所を見せられると何だかむかつく。
「なっちー、もうすぐクリスマスだよぉ♪」
「そうだね。今年は雪降るかなぁ」
「降って欲しいなぁー。ホワイトクリスマス〜♪」
今日は日曜日。勉強を少し休めて久々に街へと出かけているオイラとなっち。
街もクリスマスが近いせいか少しずつ派手になっていく。クリスマスリツーの飾り
やらキャンドルやら並び始めていた。
「みんなでパーティ出来たらいいね」
「そうだね〜」
適当にぶらつくのを止めて喫茶店に入った。
「あ、裕ちゃんだ」
中に入ると見覚えある姿が。カウンターでホットコーヒーを飲んでる裕ちゃんがいた。
早速近づいて声をかける。
「裕ちゃん!一人で何してんの〜?」
「わっ!?何や、矢口となっちやないの」
なっちと裕ちゃんもだいぶ仲良くなって、よくオイラの仲間は生徒指導係り室に行くようになった。
「一人じゃあらへんよ。ちゃんと一緒にいる人おるよ。失礼な」
「へぇ、誰々?」
すると奥から石黒先生こと彩っぺが登場。裕ちゃんが彩っぺと呼んでるからオイラと
なっち、圭織は彩っぺと呼ぶようになった。
「彩っぺじゃん。2人で?」
「おー矢口となっち〜」
裕ちゃんの隣に座る彩っぺ。
「いいんかー?受験生がこんなとこきてー」
「いいんですよーっだ!受験生だって息抜きは必要だもんねー」
あっかんべーをしたら裕ちゃんがオイラのほっぺをつまんだ。
「いつからこんな生意気になったんやー」
「痛ひ!痛ひ!」
497 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/24(金) 11:05
裕ちゃんと彩っぺから離れてテーブル席にオイラ達は座った。
ホットレモンティーを注文した。
「何かさ、裕ちゃん。彩っぺが来てたら楽しそうだよね」
なっちが小声で言った。
「そうだねぇ。彩っぺも楽しそうだし、いい感じじゃない?」
確かに裕ちゃんはここ最近、すごく楽しそうだ。よく笑うし。
んー、くっつくのも時間の問題かねぇ・・・。
としみじみ思うオイラ。
「さっきのパーティの話だけどさ」
なっちが急に話し出した。
「よっすぃーに梨華ちゃん。紗耶香にごっちん。2人っきりで過ごすんじゃない?」
「あぁ。うーん、でもなぁ・・・みんなでこう、ぱーっと盛り上がるパーティしたいじゃん」
「いやぁ・・・邪魔しちゃ悪いんじゃ」
「まぁまぁ、日にちを何とかすればいいんだよ」
オイラは絶対やるからね。みんなでやるパーティ。
ココロの奥底から燃えているオイラだった。
498 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/24(金) 11:20
知らない人達。

知らない街。

やっぱ引っ越したばかりは馴染めない。

「はぁー、もうすぐクリスマスやねん・・・」
溜息をつけば白くなる息。もう冬だと気付かされる。

 <加護 視点>

居場所がないんや、ここには。
でもまだ子供やから一人で生きてく力はない。
それが悔しいんや・・・早く大人になりたい。

サンタ、なんか信じてない。

欲しいものはうちは『力』なんや。一人で生きてく力。
んなもんサンタは持ってきてくれるわけない。あれは単なる童話の話。

サンタなんかおるわけないんや。

「亜依。どうや?片付いたか?」
お父さんがうちの部屋に入ってきた。
「ん、まぁまぁ」
「そか。今日は外食やからな、支度してな」
「わかった」
お父さんはうちに優しい。だけど、お母さんは違う。
うちはあの人をお母さんと認めてないんや。向こうだってそうやろな。

うちを産んでくれたお母さんは小さい頃に病気で死んでしまった。
大好きやった。
でも、5年前。新しいお母さんがやってきたんや。
確かにお父さんも仕事と家事で大変やったと思う、まだ10歳のうちを
育てて。だからってそんな再婚して欲しくなかった。
妹と弟も産まれて、うちはここに居場所があらへん。

うちは認めてない・・・・あの人をお母さんやなんて。

授業参観も三者懇談も。お父さんに全て頼んだ。
うちのお母さんは産んでくれたお母さんだけや、他にはない。
お父さんもそれを知ってる。昔はお父さんも憎んだ、だけど今思えば
仕方なかったのかもしれないと思える。
「お母さん・・・・会いたいよ」
病気で亡くしたお母さんの写真を抱きしめて、少し泣いた。

499 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/24(金) 11:33

 <吉澤 視点>

「人生ってすばらし〜ほら誰かと〜出逢ったり恋をしてみたり〜♪」
ウキウキな気分で自転車をこぐ。歌なんか歌っちゃってます。
「あぁ、クリスマスだね!いやぁ、クリスマス!」
もう頭の中はクリスマス気分。もちろん、梨華ちゃんと過ごします!
梨華ちゃんと付き合い始めて少し経つ。

しかし・・・未だに手も繋げず・・・。

普通に一緒に帰ったりはするけど、デートもするけど。
何か、緊張して出来ない・・・。
ある日矢口先輩に言ってみたら。
『お前、ヘタレだなぁ。梨華ちゃん待ってると思うよ。こうゆー時はよっすぃー
 からいかないとさ〜』
と言われた(ヘタレは余計だと思う)。

だから!このクリスマスという大イベントに大きな進歩を遂げようじゃないかと
思うわけで。

キキィーとブレーキをかけた。
それは人にぶつかりそうになったから。

「うわぁ!!!!」
危なく何とかぶつからずに済んだが相手はこけてしまっていた。
すぐに自転車を乗り捨て相手のとこへ向かう。
「大丈夫ですか?ごめんなさい」
まだ中学生ぐらいだろうか。女の子に手を差し伸べる。
「いえ・・・こっちこそごめんなさいれす・・・」
うちの手にぎゅっと掴んでその子は立ち上がった。
「怪我ない?」
「はい。大丈夫れすよ」
・・・・可愛いなぁ。
「じゃ、失礼しますれす」
舌ったらずな口調。可愛い笑顔。
一度見たら一生忘れないだろう。
「あ、やべ!約束に遅れる!!」
慌てて自転車を起こして約束の場所へ向かった。

500 名前:作者。 投稿日:2003/10/24(金) 11:42

>494 和尚様。
     (0^〜^)<緊張したYO!
      読み応えタップリでしたか!ありがとうございます!
     (〜^◇^)<オイラを忘れんなYO!
     (0^〜^)<・・・矢口先輩、真似しないで下さいYO〜・・・。

>495 タケ様。
     ホント無事にくっついて作者も良かったと安心してます(^−^
     (0;^〜^)<正夢なんて・・・怖いYO〜。
     ( ^▽^) <大丈夫よ。ひとみちゃん。私はずっと傍にいるから♪
     (0*^〜^)<り、梨華ちゃん・・・・。
     二人はこんな感じで(w

今回は新たに2人登場しましたが!これからはこの2人が問題起こすんじゃないかと・・・。
クリスマス気分で読んで下さい(^−^
(〜^◇^)<まだクリスマスじゃないだろ!こっちの世界はまだ10月だろ!
501 名前:タケ 投稿日:2003/10/24(金) 15:11
おぉ!あの2人の登場ですか!?
これからの展開にどう影響していくかが楽しみです♪
これからも頑張って下さい
502 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/25(土) 17:03

 <辻 視点>

何だかわくわくする。

これから出会う人達。

新しい街。

まだ引っ越して来たばっかだけど、早く馴染みたい。

「もうすぐクリスマス〜♪」

引越しの片付けもだいぶ出来たから少し散歩にでた。
どんな人達にこれから出会うのか楽しみにしていた。

そして最初の出会い。

自転車にぶつかりそうになって避けようとしたらこけてしまった。
『大丈夫ですか?ごめんなさい』
『いえ・・・こっちこそごめんなさいれす・・・』
自転車に乗っていた人はすごくかっこよかったのを覚えてる。
その人の手はすごくあったかかった。

また、会えるといいな。

「ただいまー!」
「おかえり、希美。どうだった?」
お母さんが玄関の掃除をしていた。
「すごくいいよ。早く馴染みたい〜」
「ふふ、すぐ馴染めるわ」
「何か手伝いする事ある?」
「あ、じゃぁリビングに掃除機かけてくれる?」
「うん!」
お父さんはまだ二階の方にいるみたいだった。すぐにリビングに向かう。
そこにあった掃除機にスイッチを入れて、掃除機をかけた。
「おー、希美。手伝いか、えらいな」
リビングにお父さんが入って来た。
「じゃ、今日はどっか食べ行くか!」
「やったぁ!」

明日はどんな日になるんだろう?

わくわくして今夜ちゃんと眠れるかな。



503 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/25(土) 17:17
夕飯を食べに外に出る。お父さんが運転する車に乗った。
「大丈夫なの?まだこの辺、道わからないでしょ?」
お母さんが心配そうに言った。
「大丈夫だよ。すぐ店なんて見つかるさ」
お父さんは自信満々に言った。
そして車は動いた。

しばらく経って駅の方まで来た。私が前、住んでた所よりもこの街は都会だった。
かといって自然がないわけじゃなかった。山もちゃんと見えるし。
ラーメン屋さんに入ってラーメンを食べた。お母さんが残した分も食べてしまった。
それから外に出て本屋さんに寄っていく事になった。
「あ、れ・・・?」
さっきまで文庫本のコーナーにいたお母さんとお父さんがいない。
うろうろしながら広い店内を歩き回る。
・・・何処いっちゃったんだろう・・・。
どんどん不安になっていった。まさか置いていったんじゃないか。
少し涙が込み上げてきた。
とその時。
「何や?自分迷ってん?」
隣から関西弁の声が聞こえた。見ると私と同じくらいの身長の女の子。
「はい・・・お父さんとお母さんがいなくなっちゃったんれす」
「・・・自分、いくつ?」
「15歳れす」
「同じやな。携帯持ってんのとちゃうの?」
「あ!」
すぐさまカバンから携帯を取り出した。見ると着信が何件か入っていた。
全てお父さんからだった。
「もしもし?」
『希美!?何処にいるんだ?』
「入り口ら辺だよ」
『わかった。もう、心配したんだからな。すぐいくから』
携帯をきってさっきの子にお礼をしようと横を向いた。
でも、もうその子はいなかった。
504 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/25(土) 17:30

 <後藤 視点>

日曜日。今日は何処へも出かけずに家でのんびりくつろいでる。
「ねー、市井ちゃん。クリスマスは休み取れるんでしょ?」
「んー・・・・多分」
「えー、ちゃんと取ってよ」
「わかんねぇよ。頼んでみるけど」
・・・・ぶー。
せっかく楽しみにしてんのに、休み取れなかったら意味ないじゃん。
怒って自分の部屋に閉じこもった。すると市井ちゃんがこそっとやってくる。
「怒った?ごめんって。でもさぁ、マジわかんねーんだよ」
後ろからぎゅっと抱きしめてくれる。
「・・・あたし、ずっと楽しみにしてるんだからね」
「わかってるよ。私だって同じだよ」
「頑張って休み取ってきてよ?」
「あぁ」
機嫌は直って市井ちゃんの方を向いて抱きつく。
「今日の後藤は甘えんぼだな」
「いいじゃん」
こうやってる時が一番幸せなんだから。
「市井ちゃん・・・大好き」
あたしから市井ちゃんにキスをして、今度は市井ちゃんからあたしにキス。
キスはいつも切なくて、あったかい気持ちにさせてくれる。
「後藤・・・・好きだよ」

何回キスしても足りない。
それほど、市井ちゃんが好き。

505 名前:作者。 投稿日:2003/10/25(土) 17:35
いぇーい、いちごま甘々〜♪

>501 タケ様。
     あの2人が登場です♪実はもっと前から出る予定だった2人・・・(^−^;
     これからどう絡んでくるのか〜♪頑張りまっす!

いちごまが出てなかったんで久々に。いしよしの場面も書きたいが、時間無し(泣
加護ちゃんと辻ちゃんの出会いも書けたとこで今日は退散です(^−^;
506 名前:タケ 投稿日:2003/10/26(日) 00:06
更新お疲れ様

いちごま甘いなぁ〜
市井さんはちゃんとクリスマス取れるのでしょうか?(w

加護さんと辻さんの出会い・・・
どうなるんでしょう?
楽しみにしてます
507 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/26(日) 21:42

 <加護 視点>

次の日、新しく通う中学校に来た。別に緊張なんかせぇへんけど。
だけどなぁ・・・・。
「辻希美れす!」
まさか昨日会った迷子の子が一緒に転校してきたなんて思いもせんかった。
しかも同じクラス。
「加護亜依です」
自己紹介もそこそこ終わらせて用意された席につく。隣の席には辻さんが。
予鈴が鳴って授業が始まった。

勉強は嫌いやない。好きでもない。
運動も普通、人並みに出来る。

だけど、一つだけ苦手なもんがある。

友達。

小さい頃から転校が多かった。だから友達っちゅー友達がいない。
どうせ友達作ってもまた転校してわかれなきゃならんくなる。
そんなん、悲しいから。

「加護さんは何処から来たの?」
「ねぇ、好きな有名人って誰?」
「数学得意?」
「何部に入る?」

休み時間は質問攻め。はっきり言って疲れるわ。
まぁ一応適当に答えておく。
隣の辻さんも同様に質問攻めにおうてるけど、楽しそうに答えてる。

何や・・・・正反対やな、うちら。
508 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/26(日) 21:54
放課後になり、別に部活も入る気にならないので帰る支度をする。
「加護さん、部活見ていかないんれすか?」
「・・・ん、まぁな。辻さんは何かやるん?」
「ののって呼んでくらさい。みんなにそう呼ばれてるから」
質問に答えんかいな。
はぁと溜息をついてカバンを持つ。
「何て呼べばいいれすか?」
「え・・・?・・・あだ名なんか特に無かったから」
「下の名前、亜依れすよね。じゃぁ・・・あいぼんなんてどうれすか?」
言葉が出んかったわ。まさか人のあだ名を考えるなんて。
照れくさそうに笑うのの。
一瞬だけココロがあったかくなった感じがした。
「・・・あいぼんなんて恥ずかしいわ」
「そんな事ないれすよぉ。あいぼん」
「帰るわ。ほな」
教室を出て行った。

苦手なんや、こうゆーの。

どうせまたわかれるんやから。

友達、なんておらんほうがええんや。

「ただいまー・・・」
家に帰ると弟と妹が遊んでる声が聞こえた。
「あ、亜依ちゃん。おかえり」
洗濯籠を持ったお母さんがいた。
「どうだった?新しい学校は」
「・・・まぁまぁ」
「そう。良かったわ」
目を合わさずに自分の部屋に向かった。
509 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/26(日) 22:11

 <石川 視点>

何だか毎日がハッピーな気分。
昨日の日曜もひとみちゃんとデート出来たし、すごく幸せだし。
「だけどね・・・まだ何も進展が無いの!柴ちゃん!」
「んな事・・・私に言われてもねぇ」
お昼休み。今日は天気がいいから屋上でお弁当を食べている。
「手繋ぐ事も無いの。どうすればいい?」
「ん〜、もっと積極的になったら?梨華ちゃん、一応年上なんだし」
柴ちゃんの言う言葉につい納得してしまう。
うん、1コ上の私がリードしなきゃいけないんだよね。
「・・・にしても、柴ちゃん。大谷さんとはどーなの?」
「は!?何が?」
「仲良さげじゃない。2人」
「別にー、マサオがついてくるから」
・・・とか何とか言っちゃって、気になるくせに。
「おーい、買って来たぞ〜」
噂をすれば何とやらで大谷さんが購買から帰って来た。
手には柴ちゃんが頼んだジュースが。
「ほい。あゆみ」
「さんきゅー、マサオって使いやすいね」
・・・・パシリ?パシリなの?柴ちゃん。
「ははは、光栄ですねぇ」
・・・・え?それでいいの?大谷さん。
よくわからない2人だなと思った。
「マサオ、梨華ちゃんがよっすぃーと進展が無くて悩んでるから相談に
 乗ってあげてよ」
「おっけい。ならば来るクリスマス。これがチャンスさ!」
「クリスマス?」
「2っきりで過ごしてみれば何か進展あるよ」
クリスマス・・・・そっか、クリスマスかぁ。
「クリスマスの前に試験だけどねぇ」
柴ちゃんの一言に一気に現実に戻される私だった。

クリスマス前には期末試験。
この前の中間試験。ひとみちゃんの成績はやばかった。
赤点ギリギリの答案用紙が何枚もあった。

「梨華ちゃん。もし、期末で落とせば、クリスマス無いね」

ひとみちゃん・・・・これは危機だわ。
510 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/26(日) 22:20
「「え〜!!!?」」
午後7時、ごっちんの家に寄っている、私とひとみちゃん。
私が期末試験で落とすとクリスマスが無い事を言うとひとみちゃんとごっちんは
見事にハモった。
「後藤、お前にもかかってるんだよ。クリスマス」
仕事から帰って来た市井さんが意地悪そうな笑顔で言った。
「梨華ちゃん、どうしよう・・・うち、自信ないよぉ」
ひとみちゃんが泣きそうな顔で言う。ちなみに私はこの顔にめちゃくちゃ弱い。
「だ、大丈夫よ。一緒に勉強しようね?」
「あたしはー?市井ちゃん、勉強教えてよ」
「ははは、私の成績は後藤並みのレベルだったんだ。無理」
「嘘ー!市井ちゃんのアホー」
「石川ぁ、こいつにも教えてやってよ。勉強」
市井さんが救いを求めるかのように頼んできた。
「お願いします」
ごっちんが丁寧にお辞儀をする。
「・・・いいですけど」
「やったぁ!なら明日からうちで勉強会しよう!」
こうして私の期間限定、家庭教師が始まった。

まだこの時の私は知らなかった。

この2人に勉強を教えてる事がどんなに難しい事かを。
511 名前:作者。 投稿日:2003/10/26(日) 22:29

>506 タケ様。
     クリスマスは後藤さんにも問題が(w
     さて、無事にクリスマスは来るのか!?
     加護さんと辻さん・・・・どうやって矢口さんと出会わせようか考え中です。
     うーん・・・どうしようか(^−^;

( ;^▽^)<どうしよう・・・・困ったわ。
512 名前:作者。 投稿日:2003/10/26(日) 22:32
間違い発見。

>509 × 2っきり
     ○ 2人っきり

です・・・。『人』がなきゃ何だかわからんじゃないか、自分。
513 名前:タケ 投稿日:2003/10/27(月) 01:17
更新お疲れ様です

石川さんにピンチ襲来?
市井さんが頭悪いのはウケました(w

それにしても柴田さんと大谷さんの関係が気になるな・・・
加護さんもなにかありそうで楽しみですね
514 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/28(火) 16:50

 <矢口 視点>

もうすぐ期末試験だなと思いつつ、遊びに行ったりしてる。
でも・・・。
「・・・な、何コレ?」
紗耶香とごっちんの家に放課後、来てみた。しかし、そこには安らぎと呼べる場所は
何処にも無かった。
「ごっちん!コレ昨日教えたばかりじゃない・・・」
「んぁ〜、忘れちった」
「ひとみちゃん!こんなの基本中の基本よ!?」
「ごめんなさい・・・」
梨華ちゃんの顔がいつもより何倍も怖かった。
「矢口、ほい」
紗耶香が紅茶を持ってきてくれた。
「ねぇ、何なの?」
「あぁ、もうすぐ期末だから。それに向けての勉強会ってやつ。ここじゃあれだし
 部屋で話そう」
リビングではくつろげないので紗耶香の部屋に逃げる。

「にしても、梨華ちゃんスパルタだねぇ」
「あんな石川初めて見たけどな」
「クリスマスがかかればあいつらも真面目に勉強するもんだな」
「そうみたいだね」
その真面目さを部活にも出して欲しいもんだが、と思った。
「あのさー、クリスマスパーティをみんなでやろっかなーって思ってたんだけど」
恋人がいる人には無理なお願いかと駄目元で話してみた。
「お、いいじゃん。やろうよ」
「へ?・・・いいの?」
「クリスマスはイブもあるし。みんな大丈夫だろ」
そっか・・・イブもあるんだ。
「ま、問題はあの2人だと思うけど。矢口は大丈夫?」
「え?あ、試験?うーん、気合いでやるしかないでしょ!」
今日から本気で勉強しようと思った瞬間だった。

515 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/28(火) 17:09

 <加護 視点>

・・・・何やねん。

帰り道。家に向かって歩いてるんやけど。
後ろからチョコチョコついてくる奴がおる。

ピタっと止まると後ろも止まる。
また歩き出すと後ろも歩き出す。

「・・・何や?うちに何か用か?」
振り返って半ば怒ったように言った。向こうは俯いて何も言わない。
「ついて来てるのはわかってんや。何か用があるんやろ?」
何歩か近づいた。
「・・・・友達になりたいのれす。あいぼんと」
怯えたようにののは言う。
「あいぼんなんて呼ぶのやめんかいな。恥ずかしい」
「可愛いのに・・・。駄目れすか?」
「・・・うちは、あんたとは違うタイプや。友達っちゅーのが苦手やねん」
「ののはあいぼんと友達になりたいだけれす!」
「・・・・はぁ、勝手にせーや」
相手にするのも疲れる。ののは笑ってうちの隣に来た。

・・・ま、ええか。

「あいぼんの家は何処れすか?」
「公園の近くや」
「ののも公園の近くれすよ!一緒に帰れるれすね」
「そーやな」
「ののの家に寄っていきないれすか?」
「はぁ・・?何であんたの家なんかに」
「いいから、来て欲しいんれす。昨日作ったケーキがあるんれすよ」
仕方なくののの家に行く事になった。まぁ別に家に帰ってもする事が無いから
いいかと思い、ののについて行った。
「上がってくらさい」
「お邪魔します。何や、誰もおらんの?」
「へい、お父さんとお母さんは仕事れすよ」
家の中はしんと静かで誰かがいる気配は無かった。うちの家では考えられない。
うちの家はいつも妹と弟が騒いでて賑やかというよりうるさかった。
「ここがののの部屋れすよ」
通された部屋は女の子らしい部屋だった。キティちゃんのぬいぐるみやらグッズやら
いろいろ置いてあった。

516 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/28(火) 17:26
「今、紅茶とケーキ持ってくるれす」
ののはそう言って部屋を出て行った。親が共働きならいつもこの時間帯は
1人で過ごしているのだろうか。でも、うちにはそれが羨ましく思った。
ののがトレイに紅茶とケーキをのせて部屋に戻って来た。
「なぁ、いつも1人なん?」
「へい。たまにお母さんがいる時はあるれすよ」
「・・・寂しい?」
「そりゃぁ、寂しいれすよ。でも今日はあいぼんがいるから寂しくないれす」
ののが作ったケーキはおいしかった。それから他愛も無い話をした。
こんなに人と話したのは久しぶりだった。
「あいぼん家は楽しそうれすね」
「どーだか。うるさいだけや」
「何でれすか?」
「うちのお母さんはうちと血繋がってないねん。昔、うちを産んだお母さんは
 死んでな、5年前やったかな。お父さんが再婚したんや。今いる兄弟とも血は
 繋がってないんや」
「そうなんれすか・・・」
ののは悲しそうな顔をした。

何でそんな同情の顔が出来るんや。
うちには出来ない。
ののはうちには持ってないものをたくさん持ってる。
だけど、そんな同情なんかせんといて。
うちは何も悲しい事なんてあらへんから。

「のの、可哀想だとか思わんといてな」
「え・・?」
「仕方ないんや。子供は親に振り回されるしかないんや」
「そんな事ないれすよ・・・」
「うちはあのお母さんを認めてなんかない。一回も口で呼んだ事なんてない。
 向こうも嫌やろうな、うちがいて」
「何で!何でそーいう事言うんれすか・・・」
ののが声を上げたのでうちは驚いた。
「あいぼん・・・可哀想れす。寂しい顔してるれす」
「うちは寂しくなんかないねん!早く大人になってあんな家出て行くんや!」
「・・・・ののには、あいぼんいつも寂しそうにしてると思うれす」
そう言われて、頭の中で何かが切れた。カバンを持ってののの部屋から飛び出した。
バタバタと階段を下りて靴を履いて玄関から出ようとした。
「あいぼん!」
うちを呼び止める声がしたけどうちはそれを無視して出て行った。

517 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/28(火) 17:41

 <矢口 視点>

いやいや、パーティ楽しみだなぁ。
なっちと圭織にパーティの事をメールで教える。
「送信っと・・・」
作成したメールを送信して携帯をポケットにいれた。さっきまで紗耶香の家に
いたけどもう居たたまれなくなり(梨華ちゃんのスパルタ模様に)出てきた。
「よっすぃーとごっちん大変だなー」
のん気にそう言いながら歩いていた。すると横の道から誰かが出てきて
オイラとぶつかった。
「いたたた・・・・」
しりもちをついてしまった。
「ちょっと、痛いじゃないのよ・・・」
ぶつかってきた相手を見ると地面に座って俯いていた。
立ち上がって近づいてみると何だか泣いてるみたいだ。よく見るとオイラが通ってた
中学の制服を着ているのがわかった。
「あの・・・どうしたの?」
「うちは・・・寂しくなんかないねん。1人で大丈夫なんや・・・」
ぶつぶつとその女の子は何かしゃべっていた。
「・・・でも・・・ののと会ってから・・・おかしいわ、うち・・」
全くさっぱり意味がわからない。
「ねぇ、大丈夫?」
肩を叩いてみた。ふっとその子は顔を上げる。
「あ・・・すんません」
「いや、いいけど・・・何かあったの?」
こうゆうのは放って置けないのがオイラの性格。
「あ、血出てるじゃん。オイラん家近いから来なよ」
その子は何も言わずにオイラについて来た。歩いて2分ぐらいでオイラん家についた。

「しみるよー、我慢してね」
足の膝に消毒液をかける。その子の顔が少し歪んだ。
「これでよし」
「・・・ありがとうございます」
「関西弁だったけど、関西出身なの?」
「ええ、まぁ・・・」
「あ、名前聞いてなかったね。オイラ、矢口真里。近くの高校に通ってんだ」
「加護亜依です・・・」
「加護ちゃんね。さっき泣いてたのは・・・あ、いいたくなきゃいいんだけどさ」
「・・・・うちは、友達らしい友達がいなかったんです」
加護ちゃんはゆっくり話し始めた。オイラは真剣にその話を聞いた。
518 名前:作者。 投稿日:2003/10/28(火) 17:46

>513 タケ様。
     まさにピンチ来襲(w あの2人の学力はすさまじく低いです。
     市井さんも後藤さんと同レベル(w
     柴田さんと大谷さんの方も追々書いていきたいと思います!

やっと矢口さん出てきた・・・良かった良かった。
加護ちゃん、辻ちゃんの話はそう長くはならないと思います。
にしても登場人物多くなってきたー・・・全員で13人・・・(−_−;
519 名前:タケ 投稿日:2003/10/29(水) 09:41
更新お疲れ様です
教える石川さん、教わる吉澤さん・後藤さん・・・どっちも大変そうですね(w
いいクリスマスが来るといいですね

加護さん・・・ついに矢口さんと出会いましたね!どうなるんでしょう?
辻さんはどうするのか
(それに柴田さんと大谷さんの関係も・・・)
って登場人物13人ですか・・・すごい
気付かないうちに増えてましたね(w

これからも頑張って下さい!
520 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/29(水) 22:27

 <柴田 視点>

言っちゃえば犬って感じ。

いつも無邪気に私についてくる犬。

すぐ拗ねるし、かと思ったら単純に笑うし。

「あゆみ、送っていくよー?」
放課後、いつも通り部活を済ませて家に帰る。そしていつも通りマサオは私について来る。
外は暗くなり始めて夜になろうとしていた。
「嫌だ。自転車だと風受けるから寒いじゃん」
そう言って歩く。マサオは自転車を押して後からついて来る。
「あ!じゃぁさ!ちょ、待ってよ」
何かと思って立ち止まる。振り向くとマサオは自転車を止めてカバンから何やら取り出した。
それはマフラーだった。私のとこまで来て私の首にマフラーを巻く。
「これならいいっしょ?」
「・・・・うん、まぁ」
「じゃ、乗って〜」
仕方なくマサオの自転車に二人乗りする。スカートを気にしながらひょいっと後ろ
の方に座った。
「腰に手回して、落ちないようにね」
マサオが私の手を握って腰に回す。
・・・・何か、変だな。
ぎゅっとマサオの腰にしがみついて背に顔をつける。

最初会った時の第一印象は最悪だった。
いつも何かとまとわりついてくるし、話しかけてくるし、おまけに部活の時間まで
傍にいるし。嫌で嫌で仕方なかったのにね。
今は・・・・何か、そんなに嫌じゃない気がする。

「あゆみってさ、好きな人いんの?」
自転車をこぎながらマサオは言った。
「別に・・・・いない」

犬みたいな奴。

「じゃぁさー、マサオと付き合ってよ」

無邪気に笑う顔がいつのまにか好きになってたかもしんない。

「・・・・いいよ」

まだ、確信は無いけど。

キキィーと急に自転車が止まった。
「ちょ・・・何してんのよ?」
「マジ?いいの?」
驚いた顔してマサオがこっちを顔だけ向ける。
「・・・・まだよくわかんないけど・・・」
「うん、それでいいよ。これからもっと気になる存在にされるから!」
親指を立ててマサオは言った。
「出来んの?」
「おう!」
再び自転車は走り出した。
521 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/29(水) 22:44

 <吉澤 視点>

怖い、こんな怖い梨華ちゃん始めてだ。今日から始まった勉強会は予想を上回るほど
『もう帰りたい度』が高くなっている。
「マジこえぇ・・・・」
ごっちん家の今はトイレに逃げ込んでいる。とにかく梨華ちゃんがスパルタなのだ。
今はごっちんが必死に勉強してるだろう。
「でも・・・頑張らないとクリスマスがね・・・」
絶対、クリスマスを補習で終わらせるわけにはいかない。絶対に嫌。

トイレから出ると市井さんが上着を羽織って玄関にいた。
「お出かけですか?」
「あぁ、ちょっとコンビニ」
あぁ、お供したいと思った。
「・・・来るか?」
「え・・・?いいんですか?」
「さっきから見てたけど、吉澤の方がもの覚えが早いと思うし。多分、
 後藤の方がやばい気がするし」
「・・・じゃ、お供しやす!」
ごっちんには悪いがうちはもう限界なので、ちょっと気分転換に出てみよう。

外はもう薄暗く、街灯の電気が灯り始めた。
「寒いなー、こりゃ冬も近いなー」
「そうですね〜」
「あ、さっき矢口が来ててみんなでクリスマスパーティしたいんだって」
「そうなんすか、いいですね」
「だろ?」
っていうか矢口先輩来てたんだ・・・・知らなかったなぁ。
コンビニに着いて中に入った。適当に飲み物やお菓子を買った。
「何だかなぁ・・・弱った事になったんだよ」
急に市井さんが真面目な顔して話し始めた。
「何すか?」
「・・・・もうちょい経ったら海外に行かなきゃいけなくてさ」
「へぇ、すごいですね。仕事ですか?」
「ん、まぁな」
コンビニを出ると空は完全に暗くなっていた。
「・・・・どんくらいで帰って来るかわかんねーんだよ」
「え・・・?」
「最低でも2ヶ月はなー、日本には帰って来れないと思う」
そう聞いて最初に頭に浮かんだのはごっちんだった。昔のごっちんの事を思い出した。
522 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/10/29(水) 22:56

 <石川 視点>

「んぁ・・・逃げた?」
「・・・みたいね」
トイレに行ったひとみちゃんがいつまで経っても戻って来ない。
トイレに行ったら中は誰も居ない、そして何処にもいない。市井さんは
コンビニへ行った。
「市井ちゃんについていっちゃったのかなぁ・・・?ずるいー」
「もう、ひとみちゃんは。やる気あるのかしら」
「ねぇー、もう休憩にしようよ〜」
・・・・まぁ、もうかれこれ2時間経ってるし。
時計を見るともう午後8時過ぎていた。
「じゃ、休憩」
「んぁー。やったぁ」
ごっちんは嬉しそうにソファに寝転がった。
「寝ないでね、ごっちん」
「んぁ、大丈夫〜♪」
私はテーブルに広がってるノートを見た。さっき授業のノートを見せてもらった。
ごっちんの方、真っ白。
ひとみちゃんの方、取ってるけど途中から文字が読めなくなっている。

はぁ・・・・こんなんで大丈夫なのかしら・・・。

「ただいまー」
「ただいまー」
やっと帰って来たらしい。ちょっと怒った素振りを見せようと思った。
「ひとみちゃん!まだ終わってないのよ!?」
「まぁまぁ、そう怒るなって。誘ったの私だからさ」
市井さんが私の前に立つ。
「ほい、石川と後藤のも買ってきたから」
「・・ひとみちゃん、今回は市井さんに免じて許すわ・・・。でも!
 次やったら・・・・その首に可愛い首輪つけてあげるね・・?」
「・・・ひぃ、わ、わかったよ!」

523 名前:作者。 投稿日:2003/10/29(水) 23:00

>519 タケ様。
     みんなにいいクリスマスが来ればいいのですが・・・(^−^;
     今回は大谷さんと柴田さん出してみました♪結構好きなんですこの2人。
     13人・・・多いですよねぇ。全然出ない人とかいるし・・・。
     はい!頑張ります!(^−^

柴田さんと大谷さんがついに・・・・いやぁ、書いてて楽しいや、この2人。
ちょっと矢口さん達は次回です。
524 名前:タケ 投稿日:2003/10/30(木) 11:55
更新お疲れ様
柴田さん・大谷さん・・・おめでとうです!! 
告白のシーンはとてもよかったです!
マターリなふたりとは対象的にいしよしのほうは・・・(w
市井さんが海外へ・・・? 後藤さんはどうなるんでしょう?
525 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/01(土) 22:30

 <加護 視点>

ののと出会ってからよくわからんくなった。何でか寂しい思いが強く感じる。
孤独感がココロの中で大きくなっていく。
「わからん・・・何でそう思うのか」
うちは矢口さんとかいう人に自分の気持ちを全て吐き出した。知らない人だからこそ
出来たのかもしれない。
「それはさ・・・・ののちゃんと出会って、楽しいっていう気持ちが出来たからじゃない?」
「楽しい気持ち・・・?」
「例えば、滅多に会えない友達と遊んで別れる時とかさ。すごく楽しかったから別れるのが
 それと同じくらい寂しいじゃん。ののちゃんと会って楽しい時間を過ごしたから、寂しい
 っていう思いが強くなったんじゃないかな」
矢口さんは優しい微笑でうちに言った。
「明日、ののに謝ります」
「早く仲直りしてね。あとさ、オイラが口出すのもあれだけど・・・お母さんの事、
 そろそろ認めて上げてもいいんじゃないかなぁ・・・」
「・・・せやけど、今更出来ませんよ」
「家族って言うのはさ、絆があるんだよ。それは血が繋がってなくても出来る。
 お母さんも頑張ってると思うよ?ちゃんとよく見てみなよ」
最後の矢口さんの言葉にはうちは何も答えなかった。

矢口さん家を後にして家に帰ろうと帰り道を歩いた。もう空は暗くなり始めていた。
・・・・のの、傷ついたかなぁ。
途中公園の前を通る。ふと足を止めた。

ブランコが揺れてる音が聞こえた。
何気なくそっちの方に目をやる。暗くてよく見えないが・・・。

「のの・・・?」

そう呟いて早足で公園の中に入る。ブランコはまだ揺れてる。

「ののなんか?」
やっとブランコは止まった。
「あいぼん・・・さっきはごめんなさいれす」
少し、声が震えてるのがわかった。
526 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/01(土) 22:44
「うちの方こそごめんなぁ・・・」
「のの、あいぼんの気持ちがすごいわかるんれす。ののもいつも鏡見ると
 寂しい顔してるから・・・・」

何や、うちら正反対って思ってたけど。

ののは無邪気に笑う裏で寂しい顔しとったんやな。

似た者同士やんか、うちら。

「似た者同士やな」
「そうれすか?」
「お互い寂しい気持ち持ってんのや」
「・・・うん」
「でもなぁ、うちののと出会って楽しい気持ちっていうの実感したんや」
うちは空いてるブランコの方に腰かけた。ゆっくりブランコを動かす。
「ののもれすよ」
「見てみぃ、星が出とるで」
「ホントだぁー綺麗〜」
見上げる夜空は星が輝いていた。ちっぽけな星だけどすごく綺麗だった。
「なぁ、のの」
「へい?」
「・・・・ちょっと旅でもせーへん?」
「旅、れすか?」
「そや。2人旅。楽しそうやんか」
「いいれすね、あいぼんとなら楽しそうれす」

ちょっと夢を見たかったんや。現実を忘れて。
少しだけでいい、もっと楽しい気持ちを味わいたい。
矢口さん、うちの考えは間違ってるかもしれへん。
だけど、うちはもう限界や。あの場所にいる事が。

「明日、朝の8時にこの公園で待ってる」
「明日れすか?・・・わかったれす」
「わかっとるか?これは家出や。まぁほんの少しやけどな」
「へい。あいぼんとなら怖くないれす」
ののはそう言って笑う。
「・・・じゃ、明日な」
「へい、また明日」
公園の入り口で別れた。家に帰るといつもと変わりない場所がそこにあった。
うちはさっさと夕飯を済ませて部屋で荷造りをしていた。
『お母さんも頑張ってると思うよ?ちゃんとよく見てみなよ』
矢口さんの言葉が脳裏にかすむ。
「・・・・わからへん。あの人がうちの中でどうゆう存在か」

・・・・それを見つける為に、旅に出るんや。
527 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/01(土) 22:57

 <矢口 視点>

加護ちゃんの事を朝から考えていた。オイラの最後の言葉に加護ちゃんは
何も答えなかった。
でも嫌だよねぇ・・・知らない人がいきなり母親になるなんて。
オイラだったら多分、認められないと思う。だけどそう言ってもらんない。
「行ってきまーす」
いつもの時間に家を出た。とことこと学校に向かって歩く。
「矢口せんぱーい!」
後ろから声がして振り返るとよっすぃーが自転車に乗っていた。
「おっす!」
後ろの方には梨華ちゃんが乗っていた。
「お前ら〜二人乗りは危ないだろ〜」
「だってー、憧れてたんですもん」
梨華ちゃんが可愛コぶって言う。
「ったく気をつけろよー!」
「はーい!」
自転車は通りすぎて行った。丁度、公園の前で。
大丈夫かぁ・・・?何かよたよたしてるけど。

ふと、公園の中に目をやる。

ベンチに誰か座っていた。

公園の時計はもうすぐ午後8時。

あれ・・・?加護ちゃん・・・?

加護ちゃんらしき人物に同い年くらいの女の子が駆け寄る。
少し、会話をした所で2人は手を繋いで公園の裏口の方へ走って行った。
それぞれの片手には大きなカバンが。

普通なら学校に行く時間。2人は制服姿だった。
だけどそれに不似合いな大きなカバン。

「修学旅行じゃないよなぁ・・・オイラが中学生の時はもっと後だったし」

嫌な予感がする。胸騒ぎってやつ?
追いかけるべきか否か。もしかしたら違う人なのかもしれない。

「矢口!何してんの?遅刻するよ?」
なっちがやって来た。
「あー・・・・うん」
「ほら、行くよ!」
オイラは学校の方へ再び歩き出した。
528 名前:作者。 投稿日:2003/11/01(土) 23:02

>524 タケ様。
     今までの告白シーン(そんなに無いけど)の中で大谷さん、柴田さんの
     シーンがお気に入りです(^−^
     いしよし、ハードですよねぇ。梨華ちゃんがスパルタだから(w
    
市井さんが海外という爆弾発言もあるのに、家出事件・・・・。
吉澤さんと後藤さんの勉強奮闘・・・・。梨華ちゃんのスパルタ指導・・・。
いろんな事ありすぎですね(^−^;
クリスマスは無事来るのか・・・?
529 名前:名無し 投稿日:2003/11/02(日) 11:36
更新乙です。
公園の時計午前では・・・
530 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/02(日) 20:50

 <吉澤 視点>

朝、梨華ちゃん家に自転車で迎えに行って、2人乗りして学校へ向かう。
途中、矢口先輩に挨拶をして快調に自転車をこぐ。
「ひとみちゃん、今日は数学の小テストだね。頑張ってよ」
自転車置き場に自転車を止めて下りた時、梨華ちゃんが満面の笑みで言った。
「・・・うん。できるだけやってみるよ」
決戦は今日の3時間目の数学。先生が期末の前に小テストでもやればみんなのやる気
が出るだろうと言って小テストをやるはめになった。

────3時間目。
小テストの紙が配られて決戦は始まった。
・・・・あ、ここ昨日教わったとこだ。
梨華ちゃんに教えられた問題がたくさんあって、うちは快調にシャーペンを走らせた。
ちらっとごっちんの方を見ると何だか必至そうな顔をしていた。
キンコーンカンコーンとチャイムが鳴った。
「止め!後ろから集めろ〜。採点して今日の放課後までに返すからなー。これは基本的な
 問題ばっかだからな、50点も取れてなかったら死ぬ気で勉強するんだな」
先生が小テストを持って教室を出て行く。うちは席を立ってごっちんの方へ行った。
「ごっちーん。どうだった?」
「んー・・・・やったけど、よくわかんない」
ごっちんは机に突っ伏していた。
「でもさ、梨華ちゃんに教わった問題が多かったね」
「そうなんだよねぇー。これで取れてなかったら、やばいよね」
「ははは、また怒られるかもね」
「あー、怖いよ〜」
時が過ぎるのは早いもので、6時間目が終わると数学の先生が教室に入って来た。
「んじゃ、番号順に取りに来い」
1番から順に取りに行く。うちは最後に受け取った。
おそるおそる紙を見る。
・・・・お!やった!82点!
「吉澤、頑張ったな」
先生にそう言われて更に嬉しくなった。
「ごっちん!やったよー、82点だった」
はしゃぎながらごっちんの元へ行く。
あれ・・・?
ごっちんは小テストの答案を見て青ざめていた。
「よしこ・・・・あたし、逃亡するかも」
「な、何言ってんのさ。・・・・!」

ごっちんの点数────43点。

531 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/02(日) 21:17

 <矢口 視点>

朝見た光景が気になって仕方無かった。
・・・・どうしちゃったんだろう。
家出なのかと不安に思いながら外を眺めていた。これは誰かに相談すべきか。
後で裕ちゃんと彩っぺに言ってみようかな・・・。
「矢口、どうしたの?ぼーっとして。圭織みたい」
「なっち。それ何気に失礼だよ。私はこんなぼーっとしてないもん」
「嘘だ〜。本人気付いてないしー、じゃ今度写真撮ってあげるよぉ」
なっちと圭織の会話にも今日は入って行く気力が無い。
「・・・・矢口?」
「いつもなら何かツッコミが入るのに・・・」
2人は固まってオイラを見ていた。
「・・・あのさ、家出ってどんな時にするの?」
しばらくしてオイラは口を開いた。
「・・・な、矢口!?何か嫌な事でもあったの!?」
「嫌だよ〜!矢口が家出したら・・・」
「だから!オイラじゃないよ!するわけなじゃん・・・」
はぁと溜息をついてから、オイラは加護ちゃんの事を2人に話した。
「なるほどねぇ」
「家出かぁ・・・・確かに知らない人がいきなりお母さんになるのはキツイ
 もんがあるよね」
「加護ちゃんがそれのせいで家出したのかな?オイラ、よくわかんないんだ」
「うーん・・・・でも家出だとしたら早く2人を引きとめた方がいいんじゃない?」
確かに、そうだけど。
無理に連れ返して解決するのだろうか?
第一居場所わかんないし・・・。
「どうしたらいいんだろう・・・」
「裕ちゃんに聞いてみようよ」
圭織が言ってオイラ達は昼休みに生徒指導係り室に向かった。

「・・・・むぅ、はよ見つけなあかんな」
裕ちゃんは険しい顔で言った。
「そうだね、私もそう思うよ」
「でもさ!無理に連れ返して解決するのかな?」
「せやけど、子供2人が家出。危険過ぎや」
「確かにそうだけどさぁ・・・2人の気持ちを考えると」
「・・・矢口、甘い事ばっか言ってられへん。あの子達は逃げてるだけや。
 ぶからなきゃあかん」
「とにかく、居場所を見つけないとね」
彩っぺがそう言って話は終わった。



532 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/02(日) 21:36

 <市井 視点>

仕事が終わって帰宅する。時間はもう午後の9時だ。
家に帰ると何だかどんよりした空気が流れていた。
リビングには背中丸めて首を項垂れている後藤の姿。
「後藤・・・?どうした・・・?」
電気も付けずに何事かと思いながら後藤に近づいた。ふとテーブルの上には
紙切れが。テストの答案用紙みたいだ。
「43?」
そう言うとぴくっと後藤が反応した。
あぁ、これが原因か・・・。
やっと理由がわかって私は着ていた上着を脱いでソファにかけた。
「これでへこんでたの?」
「・・・・梨華ちゃんに、怒られた・・・・」
「あちゃー、そうか」
「っていうか、呆れられてた・・・・」
「まぁ、あんだけやってねぇ」
「ひっ・・・く・・・」
「うわぁ!?泣くなって!」
泣く後藤を慌てて慰める。
「にしても、43点でもいい方だよ。私なんか小テストでも30いくか
 いかないかってとこだったもん」
「・・・ホント?」
「あぁ。これからもっと頑張ればいいよ。な?」
「うん・・・」
やっと後藤は泣きやんだ。ほっと一安心。
こいつが本気で泣くと、すごい事になるからなぁ・・・。

いつだったか、些細な事で喧嘩した時。
『うわぁー!市井ちゃんのバカ〜!!』
後藤は泣き騒ぎながら暴れた。とにかく物を私に投げてきたのだ。
最初はクッションとか柔らか系の物だったんだけど途中から時計とか
挙句の果てにはナイフとか飛んできた。
『後藤っ!やめろって!マジ死ぬから!』

これをキッカケにもう二度と後藤をマジ泣きさせないようにと誓った。

「あ、市井ちゃん。おなかすいてるでしょ?今、支度するから」
「お、おう」
この時、はっと気付いた。
海外の話をしたらどうなる?
・・・・・殺される気がする。

533 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/02(日) 21:53

 <吉澤 視点>

「ねぇ、梨華ちゃん・・・」
「何?」
「ごっちんもさぁ、頑張ったんだよ?」
「わかってるわよ・・・」
さっき教室でごっちんと共に小テストの答案を見せた。

『ひとみちゃん!82点なんてすごいじゃない!頑張ったね』
まずはうちの答案を見せた。ごっちんは隣で俯いていた。
『ごっちんは?』
にこりと笑う梨華ちゃん。ごっちんはおずおずと自分の答案用紙を出した。
『・・・・え?』
梨華ちゃんはそれを見て、目が点になっていた。
『・・・・ごめんなさい・・・・』
『・・・・ごっちん。ちょっとがっかりだよ・・・』
『梨華ちゃん、ごっちん頑張ってたよ・・・?ね、ごっちん』
ごっちんはただ俯いていた。よほどショックなんだろう。

「だけど、やっぱショックなの。あれだけやったのにって」
「まぁ・・・そうだけど」
「・・・これをきっかけに頑張って欲しいけどね。ほら、クリスマスはさ
 大好きな人と過ごしたいじゃない」
「・・・そーだね。頑張るさ、ごっちんは」
「ひとみちゃんも気抜かないように」
「はーい。梨華ちゃん、駅に行ってさーパン屋行かない?」
「またベーグル?」
「うん。もううちに無くてさ」
自転車に乗って駅へと飛ばす。もう日は暮れ始めていた。
今日はごっちんとの勉強会は休みにした。本人がそうとう落ち込んでいた為。

ごっちんはきっと頑張るさ。うちにはわかるよ。
だって・・・何気負けず嫌いだもんね、ごっちんは。
534 名前:作者。 投稿日:2003/11/02(日) 21:56

>529 名無し様。
     はっ!ホントだ!気付かないでいました・・・・。
     教えてくれてありがとうございます!午前ですよね・・・。
     
クリスマスに行くまで長い道のり・・・・。
次回は加護さん視点で進む模様です。
535 名前:和尚 投稿日:2003/11/02(日) 23:48
更新お疲れ様です。
いちーさん海外っすか!?(遅)
コレを見る限り、いちーさんに危険が訪れそうですね(苦笑)

へ( ;` Д ´;)ノ−=≡○   ヽ;^∀^ノ<やめろって!悪かった!!
536 名前:タケ 投稿日:2003/11/03(月) 15:12
更新お疲れ様

吉澤さん82点!すごい!まさに愛の力ですか(w
だから後藤さ(ry

市井さんの海外行き
加護・辻家出
後藤さん(と吉澤さん)の期末テスト

いやぁやっぱり前途多難ですね(w
537 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/03(月) 21:02

 <加護 視点>

夜の内に荷造りを済ませ、夜中に庭にある使わない物を閉まっている小屋に
カバンを置いておいた。朝に学校に出かけるふりをしてその小屋からカバンを
取り出し通学用のカバンは小屋に置いてきて公園に向かった。
置手紙は一応してきた。

<心配しないで下さい。 亜依>

その一言だけでええやと思った。
公園に着いて時計を見るとまだ午前8時よりも10分前だった。
早く出すぎた・・・・。
ベンチに座ってののが来るのを待っていた。公園の向こうの歩道は学生が
たくさんいた。いつもならうちもあの中に紛れて学校へ向かってるんだろうと
思った。
「はぁ・・・」
時計はもうすぐ8時になろうとしていた。
ののは来るんやろか・・・。
俯いてののが来るのを信じて待つ。
「あいぼーん!」
聞きなれた声がして顔を上げた。ののがこっちに向かって大きなカバンを抱えて
走って来た。
「のの!」
「遅れちゃったれすか?」
「ううん、全然」
「良かったれす・・・」
「ほな、駅に行こか」
「へい」
うちらは手を繋いで裏の方から公園を出て行った。

これからどうなるかなんてわからへん。
答えが見つかるかもわからへん。
だけど、何かしなきゃ前には進めない。

駅に着いてちょっと落ち着こうとパン屋に入った。ここは駅で電車を待つ
人の為のちょっとしたスペースがある。まだ朝なのでそんなに人はいない。
「のの、ちょっとした打ち合わせしとこか」
「へい?」
「今日は平日や、普通なら学校に行くはずやねん。それなのにうちらが電車に
 乗ってたらおかしいやろ?」
「あー・・・そうれすねぇ」
サービスで置いてあるお茶を注いでののに渡した。
538 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/03(月) 21:20
「そうやなぁ・・・とりあえず姉妹ってとこにしとこか」
「似てないれすよ?」
「なら従姉妹?」
「あいぼん、何処に行くんれすか?」
「そやなぁ、ずっと考えてんやけど。うちの田舎のばぁーちゃん家に
 行こうかなぁと思っとる」
「おばぁちゃん家?」
「そうとう田舎やからな。ばぁーちゃんもぼけとるから、うちが家出した
 なんて思わないやろ。聞かれたら学校の創立記念日でも言っとこ」
それから数分後、電車に乗った。ばぁーちゃん家はよく昔行ったから
道のりは覚えている。
「のの・・・手紙とか書いたん?」
「一応、そんな長くはないれす」
「そか・・・今更聞くのもあれやけど、これで良かったんか?」
そう聞くとののは笑って頷いた。
「・・・ののも旅に出てみたかったんれす」
「そか・・・」
「あいぼんと友達で嬉しいれす」
「悪友かもな」
2人で笑って、楽しく時を過ごしていた。携帯の電源は切ってるから
今が何時か全然わからなかった。でもそれでいい。
「・・・そろそろバレるかなぁ」
ののがポツリと呟いた。
「そーかもなぁ。欠席の連絡が無い場合は学校から家に連絡される
 からな」
「・・・ののん家は誰もいないれすけど」
電車を乗り継いでお昼過ぎた頃にばぁーちゃんの田舎の駅についた。
「ド田舎やろ?周り山しかないねんで」
「好きれすよ。自然がいっぱいで」
駅の改札口を出て、ばぁーちゃん家へ向かう。途中、おなかがすいたので
適当にラーメン屋に入った。
「君ら、学校はどうした?」
ラーメン屋の店長にそう言われてちょっとドキっとした。
「あ、創立記念日で休みなんですよ。だからばぁーちゃん家に遊びに」
「おー、そうかぁ。いいなぁ、こんな可愛い孫がいて」
何とかバレずに済んだ。
539 名前:作者。 投稿日:2003/11/03(月) 21:25

>535 和尚様。
     市井さんは仕事で海外へ行かなければならないんですが・・・。
     うーん、また1波乱ありそうな感じですよね・・・。


>534 タケ様。
     愛の力ですね!(0^〜^)<必ず最後に愛は勝つ〜♪
     ふぅ・・・・前途多難です(w
     まずはツートップの家出を解決せねば・・・。
     (〜^◇^)<よっしゃ!まかせとけ!

少ないながら更新です。バレーボールを見ながらやってたもんで・・・。
中々前に進まず・・・・次回はもっと頑張ります。
540 名前:タケ 投稿日:2003/11/04(火) 10:18
更新お疲れ様
家出した2人・・・おばあさんの家でなにか見つけられるといいですね!

バレーボール見ながら(w
頑張って下さい
541 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/04(火) 22:39

 <矢口 視点>

とりあえず裕ちゃんや彩っぺ、なっちと圭織の力を借りて加護ちゃんの家を
放課後、探した。公園付近をみんなで探し回った。
「あの、すいません。最近、引っ越して来た加護さんという方の家を知ってますか?」
オイラは近所の人に聞きまくった。
「あぁ、加護さん家ならすぐそこよ」
主婦の人に案内してもらった。

加護ちゃん家にはオイラと裕ちゃんで向かった。大人数だと向こうも困るし。
ピンポーンと呼び鈴を鳴らした。しばらく経って扉が開く。
「あの・・・加護亜依ちゃんの知り合いの者なんですけど・・・」
「亜依ちゃんが何処にいるか知ってるんですか!?」
お母さんらしき人が半ば叫んだように言ってきた。
「・・・・話、聞いてもらっていいですか?」
裕ちゃんが言うとお母さんも少し冷静さを取り戻したようだった。
中に上がらせてもらい、オイラは今日の朝見た事を話した。
「大きなカバン持って、学校とは逆方向に友達と向かっていったんです・・・。
 でも、人違いとか思っちゃって・・・」
オイラはちょっとした罪悪感があった。あの時、オイラが止めていればと思っていた。
「・・・午前中に学校から連絡があって、亜依ちゃん学校に来てないって言われて。
 部屋に行ったら置き手紙があったんです」
お母さんは一枚の紙をオイラ達に見せてくれた。

<心配しないで下さい。 亜依>

たった一言だけそう書かれていた。
少し、寂しい気持ちになった。

「警察には・・?」
裕ちゃんが遠慮気味に言う。
「一応、交番の方に言ったんですが・・・こうゆう家出は多いらしくて
 あまり真剣に相手してくれなくて・・・」
「何か思い当たる所は無いんですか?」
「・・・わかりません・・・あの子は私をお母さんだと思ってないみたいで、
 ちゃんと話した事もないんです」
542 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/04(火) 22:50
「友達の事も知らなかったんですか?最近出来た仲いい友達
 なんですけど・・・」
「いえ、全然・・・・」
リビングに気まずい空気が流れた。
「今、主人が仕事から家に向かってるんです」
ポツリとお母さんは呟いた。その声は少し震えていた。
「・・・あの、一ついいですか?」
オイラはお母さんを真っ直ぐ見た。
「・・・あなたは、亜依ちゃんのお母さんになる為に何かしましたか?」
「え・・・?」
「ちょ、矢口。何言ってんの」
裕ちゃんがオイラを止めようとしたけどオイラは無視した。
「亜依ちゃんをちゃんと見てましたか?寂しい思いしてるの知ってましたか?
 居場所が無くて辛い思いしてるの知ってましたか?」

誰も悪くない。
ただ、お互い見ようとしなかっただけ。
加護ちゃんも、加護ちゃんのお母さんも。

「・・・・確かに亜依ちゃんもお母さんを認めることが出来なかった。
 だけど、今必死になってお母さんの事を考えてると思います」
「矢口・・・」
「だから!あなたも一生懸命亜依ちゃんの事を考えて下さい」
オイラがそう言うとお母さんは泣いて小さく頷いた。
そして加護ちゃんのお父さんが帰ってきて、事情を説明した。
「・・・・亜依がそんなに追い詰めてるなんて知らなかった・・・」
お父さんも涙を流して今までの事を後悔していた。
543 名前:作者。 投稿日:2003/11/04(火) 22:52

>540 タケ様。
     もうちょっとで加護ちゃん・辻ちゃん視点は終わりそうです。
     次はいよいよクリスマス・・・の前に期末テスト(w
     バレーボールは燃えます!(^−^

544 名前:タケ 投稿日:2003/11/05(水) 09:56
更新お疲れ様

矢口さんかっこいい!!

一方の加護さん達はどうなってるんでしょう?
楽しみにしてます

・・・あと期末テストも(w
545 名前:和尚 投稿日:2003/11/05(水) 13:07
やぐちさんすげぇ・・・。
物事を的確に捉えているからこーゆー意見が出るんだなと思いました。

期末テストですか・・・いろんな事が重なり更新が気になります。
546 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/05(水) 21:33

 <辻 視点>

あいぼんと一緒なら何も怖くない、だからついて来た。
毎日、何か寂しくて満たされなかった。そんな毎日だったから家出する決断はすぐ出来た。
夜中に荷造りして、置手紙を書いた。でもこの手紙を見るのはどうせ夜遅くだと思う。

<出かけてます。心配しないでね。  希美>

この手紙を見たらお父さんとお母さんはどんな思いをするだろう?
心配するかな?

翌朝になり、この日はお父さんもお母さんも早く家を出なければならなくて
最後に私が家を出た。これなら大きなカバンを持って家に出れてラッキーだと思った。
少し早歩きで公園に向かう。ちょっと色々カバンに詰め込み過ぎたかな?と気に
しながらあいぼんと約束した公園に急ぐ。
「あ、いた・・・」
公園の入り口からあいぼんの姿が見えた。
「あいぼーん!」
走ってあいぼんの元へ駆け寄る。あいぼんは優しい笑顔で迎えてくれた。
そして手を繋いで公園から出て行った。

駅についてあいぼんのおばぁちゃん家に行く事になった。電車を乗り継いで
何時間もかけてあいぼんのおばぁちゃんの田舎へ向かった。
あいぼんが寝てる隙に少しだけオフにしてた携帯の電源を入れた。時刻は午前10時
過ぎだった。何通かメールが届いていた。

<今日は休み?>
<風邪でもひいた?ゆっくり休んでね>

クラスメイトの友達からのメールだった。少し、胸が痛かった。
最後の一通をひらく。

<今日は少し遅くなります。 お母さん>

・・・・やっぱり、寂しいよ。

すぐ携帯の電源を切った。そっとあいぼんの左手を握って目を閉じた。
じんわりと涙が出てくるのを我慢して眠りに落ちた。
547 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/05(水) 21:51

 <加護 視点>

何とか昔の記憶を頼りにばぁーちゃん家に着いた。ばぁーちゃんは何の
疑いもせずに喜んで迎えてくれた。
「久しぶりやねー、よー来たわ」
「急に来てごめんなぁ。こっちは友達の辻希美ちゃんや」
ののはペコっとお辞儀をした。
「学校はどうしたん?」
「創立記念日で休みなんや。しばらくおってもいい?」
「もちろんや。ささ、上がって」
ばぁーちゃん家は昔と全然変わらなかった。いつもうちは2階の部屋を
自分の部屋のように使っていた。それも変わらずだった。
「今日は賑やかやなぁ。じゃ、夕飯の買い物にでも行ってくるなぁ」
ばぁーちゃんは買い物に出かけてうちとののは2階の部屋で荷物の整理
をしていた。1階の押し入れから来客用の布団を運んだりもした。
「いいれすね、おばぁちゃん家って」
「そか?まぁうちも好きやわ」
「ののはおばぁちゃん家に行った記憶がないれすよ」
「そうなんか?」
「お母さんと仲が悪いみたいれすから」
嫁と姑ってやつか・・・・。
まぁ、新しいお母さんが来てからばぁーちゃん家なんて来た事なかったなぁ。
「ばぁーちゃん家の裏は畑になってんや」
「へぇ、何が取れるんれすか?」
「今はもう冬で寒いから何も取れないけど、夏にはトマトとか取れるんやで」
「うわぁ、いいれすね♪」

どれくらいまでバレずに済むやろか。
制限時間はそう長くない。
タイムリミットはじりじり近づいておる。
それまでうちは見つけなきゃならん。

ごろんと畳の上に寝転がる。ののも同じことをする。
「何か・・・眠くなってきたれす・・・」
「疲れたんやろな・・・」
しばらく経って隣から規則正しい寝息が聞こえた。毛布をかけてあげた。
・・・・ののはどう思う?うちはあの人をお母さんと認める事が出来る?


548 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/05(水) 22:05
夜は何事も無く過ぎていった。ばぁーちゃんの久々の手料理に感動し、
ののは大喜びをしていた。それからお風呂に入って、ばぁーちゃんと会話を
したりしていた。気が付けばもう午後10時過ぎていた。
「いつもなら9時には寝てたんやけどなぁ、亜依達が来て嬉しくて夢中に
 なってしもたわ」
ばぁーちゃんは笑顔でそう言った。うちはここに来て良かったと思った。
「んじゃ、そろそろ寝よか。ばぁーちゃん、おやすみ」
「おやすみなされす」
「おやすみなぁ、ちゃんと布団かけるんやで」
2階の部屋に戻ってしばらくののとしゃべっていた。
「明日はどうなるんれすかね・・・」
「明日の事は明日わかるわ、今考えてもしゃーないねん」
「・・・そうれすね」
布団の中に潜り込む。するとののが近寄ってきた。
「何や?」
「一緒に寝てもいいれすか?」
「ちゃんと2組敷いてあるやんか。わざわざんな狭い事せんでも・・・」
「・・・・駄目、れすか?」
ののは寂しい顔をしていた。
ののもいつも寂しい夜を泣いて眠ってたんやな・・・。
そう気付いて、ののが入れるスペースを作った。
「ええよ、夜は寒いしな」
「ありがとうれす」
笑顔でののは入って来た。またしばらく話をして眠りについたのは
日付が変わった頃だった。

翌朝、うちが先に目を覚ました。下の方で物音が聞こえる。
うっすら味噌汁の匂いがする事に気付いた。
「今、何時や・・・?」
部屋の時計を見ると午前6時。やっぱばぁーちゃんの起きる時間は
早いんやと思った。
「まだ眠い・・・」
眠気が完全に取れず再び眠りについた。

549 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/05(水) 22:20

 <矢口 視点>

お父さんも居場所に心当たりが無く、何も手がかりがないまま時間は過ぎていった。
すると加護ちゃん家の電話が鳴り響いた。加護ちゃんのお母さんが慌てて出る。
「はい、加護です。・・・はい、そうですけど・・・あ、そうなんですか・・・」
しばらくして電話が終わったお母さんが不安そうな顔で戻って来た。
「どうした?」
加護ちゃんのお父さんが言った。
「亜依ちゃんのお友達のお母さんから・・・」
話を聞くと、辻希美ちゃんも今日学校に行ってないらしい。
つまり、朝オイラが見た加護ちゃんの友達はおそらく辻ちゃんだろう。
そして辻ちゃんのご両親がやって来た。
「一体、どうしたものかと・・・こんな事は初めてで・・・」
辻ちゃんのお父さんはすごく焦っている様子だった。

何か・・・無いかな。加護ちゃんと辻ちゃんがいる場所の手がかり・・・。

「あの、加護ちゃんの部屋。見せてもらっていいですか?」
オイラがそう言うと加護ちゃんのお母さんは「いいですよ。2階です」と言った。

「矢口ー、こんな警察みたいな事せんでも・・・」
「何言ってんの!警察が動かないんだからオイラ達が動くしかないでしょ!」
加護ちゃんの部屋は女の子らしい部屋。
ふと、コルクボードに目がつく。そこには写真がたくさん飾られていた。
しかし、そこには友達との写真ではなく、おばぁちゃんのような人と写っている
写真ばかりだった。
「裕ちゃん・・・・もしかしたら、加護ちゃんはおばぁちゃんのとこに行ったんじゃ
 ない?この写真見てよ」
「ん?お、加護ちゃん可愛いなぁ」
「そこじゃないでしょ、裕ちゃん」
「お父さんらに聞いてみなわからんで」
オイラ達はそこにある写真の1枚を持って下におりた。

550 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/05(水) 22:38
オイラが写真を見せて聞いてみると加護ちゃんのお父さんははっとして
オイラを見た。
「・・・この写真・・・・亜依の部屋に?」
「はい、そうですけど・・・」
その写真には加護ちゃんとおばぁちゃんと女の人が1人、みんな笑顔で
写っていた。この女の人は亡くなられた加護ちゃんの産みの母親だろう。
「・・・すぐ祖母の家に電話してみます」
加護ちゃんのお父さんは立ち上がった。それを加護ちゃんのお母さんが止めた。
「明日まで待ってみない?」
「何を言ってるんだ。亜依とお友達の希美ちゃんを早く連れ戻さないと・・・」
「無理に連れ戻しても駄目だと思うの。私、亜依ちゃんの事をちゃんと
 見てなかったわ。きっと逃げてたんだと思う。でも、今、私はあの子の
 お母さんになりたいと本気で思うわ。例え血が繋がってなくても・・・」
オイラの言った言葉をちゃんと受け止めてくれてるんだなと思った。
「・・・・俺らも、ちゃんと見てなかったんだろうな」
辻ちゃんのお父さんがポツリと呟いた。
「いつも2人共仕事で・・・寂しい思いさせてたんだな・・・」

みんな大切な事を見失ってる。
だけど、それに気付いた今、再び大切な事を見つけれた。

「・・・優しいだけじゃ、駄目なんですよ。傍にいて、ちゃんと
 ココロの中の気持ちを見てあげなきゃいけないんです」
偉そうな事言ってんな、オイラ。
だけどホントにそれが大切だから。
見失っちゃいけないから。

オイラはいつかそれを見失ってた事があった。
だけど、ごっちんやなっち、圭織、よっすぃー、梨華ちゃん、紗耶香、
亜弥ちゃん、藤本さん・・・みんなに出会っていろんな事があって
その中でもう一度気付く事が出来たんだ。

それに気付いた今、また同じ事を繰り返してはいけないんだよね。
551 名前:作者。 投稿日:2003/11/05(水) 22:46

>544 タケ様。
     (〜^◇^)<さんきゅう!これからもかっこよくきめるぜ!
     加護さん達も・・・徐々に解決の方向へと向かってます!
     期末テスト、女神は微笑むのか!(w

>545 和尚様。
     (〜^◇^)<すげぇ?すげーよな、オイラ!
     (0^〜^)<自分から言わないで下さい。
     物事を的確に捉える、経験があってからこそ出来る事なんでしょうね。
     ホント、いろんな事が重なりつつ・・・更新頑張ります(^−^;
552 名前:タケ 投稿日:2003/11/06(木) 11:08
おばあちゃんの家で・・・なんかいいですねぇ

加護さん・・・今のお母さんをお母さんと見られるといいですね
加護さんのお母さんも・・・
あぁぁ〜続きが気になる!

>「ん?お、加護ちゃん可愛いなぁ」
さすが中澤先生、抜け目がない!(w

期末テストも控えてることですし(w
続き楽しみにしております
553 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/14(金) 20:03

 <加護 視点>

ばぁーちゃんに起こされて再び目覚めた。ののは眠そうな顔をしていた。
「おはようれす」
「・・・おはよーさん」
もぞもぞと布団から出てカバン中から着替えを出した。ののが窓のカーテンを
開けると太陽の日差しが部屋に差し込んだ。天気はいいみたいだ。
「今日も天気、いいれすね」
「そーやな。ご飯食べたら外出てみるか」
「へい♪」
着替えてばぁーちゃんの作った朝食を食べた。やっぱ朝は味噌汁やなぁと
思いつつ味噌汁をすする。うちの家は前は朝は和食やったけど、あの人が
来てから洋食に変わった。米がパンに変わった。
・・・・んー、やっぱええな。朝は和食や。
「おいしいれす♪」
ののは朝からご飯を3杯も食べていた。
「・・・のの、大丈夫なんか?3杯も」
「へい!これくらいは朝飯前れすよ!」
「・・・そ、そか」
そういえば昨日の夕飯もそのぐらい食べていたような気がする。

朝食を終えるとばぁーちゃん家を出て散歩をした。近所の人に会ったり、
小さな川で泳いでる魚を見たりした。

結局、答えなんか見つけれんのかなぁ・・・。

前の方ではしゃぎながらスキップしてるののを見ながら思った。
ここに来れば見つかれる気がしたのに。
うちは何を怖がってるのだろうか・・・・。

「あいぼーん!早くー!」
ねこじゃらしを振ってののがうちを呼んだ。うちは笑って走った。
「ねこじゃらしがあったれす」
「そーいや、ばぁーちゃんの近所にミケっていう猫がおったなぁ」
「見たいれす!」
「んじゃ、探しにいこか」
手を繋いでうちらは歩き出した。お互いが支えあってるような感じだ。
それはとても暖かくて、優しい気持ちになれた。
554 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/14(金) 20:21
ミケという猫を見つけてののが持ってたねこじゃらしで遊んだ。
「ニャー」
ミケは一生懸命ねこじゃらしを掴もうとする。
「可愛いれす〜」

いつまでもここに居たかった。ののと一緒に。

だけど、その願いは空しく崩れる。

一台の車がこっちにやってきた。見覚えある車やった。

「・・・タイムリミットやな」
「へ?」
「のの、もうおしまいや」

その車はうちのお父さんの車や。中から人が下りて来る。
後ろの方からも人が下りてきた。

「亜依!」
「希美!」
うちらのお父さんが駆け寄ってきた。うちらはぎゅっと手を繋いだ。
「あいぼん・・・」
「いつかはこうなるんや・・・」
「ののは、帰りたくないれすよ・・・」
「うちやって・・・」
ぼそぼそとしゃべって、黙った。その後、うちは怒られると思っていた
けど怒られる事無く、逆に謝られた。
「すまなかった。お父さんは亜依の気持ち、わかってるつもりでわかって
 無かったやな・・・」
「お父さん・・・何や、急に」
「希美、ごめんな。もう寂しい思いはさせないから、帰ってきてくれ」
「・・・お父さん」
ののは少し涙ぐんでいた。うちは車の方を見た。

あの人がおった。不安そうな顔をして。
少しずつ近寄って来る。

「亜依ちゃん・・・昨日の夜、一生懸命、亜依ちゃんの事を考えたわ。
 私は・・・亜依ちゃんのお母さんになりたいと今本気で思う。だから、
 チャンスをくれないかしら・・・?」

思いもせんかった言葉やった。

この時、うちは『答え』を見つかれた瞬間やったかもしれない。

「・・・・ええよ、”お母さん”」
「え・・・?」
驚く両親を横に、ののに声をかける。
「のの、帰ろうか」
「へい!」

この家出を通して、うちらはほんの少しだけ大人になれた気がする。
明日からまた新しくスタートやな。


555 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/14(金) 20:40

 <市井 視点>

時は経ち、来週の月曜から後藤は期末テスト。何だか気合いが入ってるようで
夜中まで後藤は勉強にかじりついていた。そんなこんなであまり私にかまってくれ
ない感じで、少し寂しい思いをしてる今日この頃。
「はぁ・・・どうやって伝えようか」
自分の部屋で椅子に座って考える。

『市井、お前の写真を見てなアメリカにいる私の友人のカメラマンがぜひ
 お前に会いたいと言って来たんだ』
社長に呼び出しがかかって何かと思ったらその話だった。
『アメリカ・・・ですか?』
『あぁ、どうだ?行ってみないか?』
『・・・・』
『向こうで写真を撮ってみれば、もっと成長出来るんじゃないか?
 これも仕事としてだよ。来年の2月ぐらいに、行って来い』
『2月・・・どのくらい向こうに?』
『よくはわからないが・・・2ヶ月ぐらいだな』

「2ヶ月!なげーよ!」
ぼすっとクッションを壁にぶつけた。
「仕事なんだよなぁ・・・・・蹴ったらどーなるかな」
後藤の事を考えるとかなりキツイ。アメリカで写真撮るのも憧れてたし、
今の仕事に満足してるかっていうとそうじゃない。
だけど・・・・後藤とまた離れなきゃいけない。
「愛してるから・・・・辛いんだよな。離れるのが」
はぁと溜息をついて部屋を出た。するとキッチンに後藤がいた。
すすすと近づいて後ろから抱きしめた。
「市井ちゃん、コーヒー飲む?」
「ん、いい」
「っていうか・・・邪魔なんだけど」
「こーしてたいのっ」
「あたし、勉強しないと・・・」
逃げようとする後藤をぎゅっと固く抱きしめた。
「・・・どうしたの?」
「別に。かまってくんないから」
「だって、赤点取ったらクリスマスが・・・」
「ちょっとだけいいじゃん」
ぐるっと後藤をこっちに向けてキスをする。
「ん・・・市井ちゃん、ちょっと駄目だよ・・」
「後で勉強付き合ってあげるから、今は時間ちょーだい」
そう言ってまたキスをするが、さっきより深くした。
556 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/14(金) 20:55

 <石川 視点>

来週の月曜から始まる期末テスト。今日はひとみちゃんがうちに来て一緒に
勉強をしてる。本人もだいぶ頑張っていて、この調子ならいい点が取れそうな
感じだった。
「ひとみちゃーん、コーヒー持って来たよ」
コーヒーを持って部屋に入るとひとみちゃんは教科書をおなかに乗せて
仰向けで眠っていた。
「あらら・・・まぁもう夜だしね」
時刻は午後の11時。明日は土曜だからうちに泊まっていく事になっていた。
・・・・ま、勉強の為なんだけど。
この『お泊り会』で何があるとか期待なんて持ってないし。
コーヒーをテーブルに置いてこっそり寝顔を見る。
「可愛いー・・・」
金髪の髪を撫でる。こう見ると愛しくてたまらない、胸がきゅんとするような
気持ちになる。
「ひとみちゃん・・・好き」
そう言ったらぎゅっと手を掴まれた。
「うちも、好きだよ」
「な、起きてたの!?」
「いや、好きって梨華ちゃんが言った時から」
「そ、そう・・・」
ひとみちゃんは手を離さず、私を見つめてきた。心臓がドキドキしていた。
もしかして・・・もしかして・・・キ、キス?
小さな期待はどんどん膨らんでいく。

「梨華ちゃん、隈出来てるね。今日は早く寝たほうがいいね」

え?

「あ、コーヒー持ってきてくれたんだ。ありがとー」

違うの?

期待は一気に落ちて、がっかりした。

「さ、頑張ろう〜」

もう期待しないと私は思った。

557 名前:作者。 投稿日:2003/11/14(金) 21:01

>552 タケ様。
     中澤さんは可愛い子に目がない(w 
     えーと、やっと1段落ついて、期末テストへ。
     市井さんの仕事、いしよしの進展などなど。
     (〜^◇^)<クリスマスパーティは?

昨日、修学旅行から帰ってきました・・・疲れた〜。
なので更新が全く出来なくて申し訳ありませんでした。
加護ちゃん・辻ちゃんの方が終わり、いちごまは甘く苦く、いしよしは
空回りという風な感じです(w
558 名前:和尚 投稿日:2003/11/14(金) 22:12
修学旅行お疲れ様でした。

辻加護編が無事完結。
あいぼん少し大人になりましたな〜
後はいちごま、いしよしですね。

いしかーさん・・・頑張れ・・・
( ^▽^)<・・・・
559 名前:タケ 投稿日:2003/11/15(土) 10:49
修学旅行・更新お疲れ様です

加護さん・・・よかったです
いつか本当にお母さんと思える日が来るといいですね

市井さん・・・どうするんだろう
2ヶ月も離れたら後藤さんが・・・
こちらも気になりますね

石川さんと吉澤さんの恋の進展具合にも(w
560 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/15(土) 14:53

 <藤本 視点>

相変わらずバイトな毎日。世間はクリスマスで賑やかになってきた。
「クリスマスかぁ・・・」
バイト帰り、街中はイルミネーションで綺麗に輝いていた。ふと亜弥の顔が
思い浮かぶ。
・・・クリスマスっていう行事好きそうだなぁ。
いかにも亜弥はこうゆう行事が好きなタイプだ。占いとかもよく信じている。
「プレゼント何がいいんだろう・・・」
当然の如く、私はあまりお金が無い。まいの時はクリスマスは一日遊んで
ゲーセンで取ったぬいぐるみを上げていた。まいは嬉しそうにしてた。
「んー、お金貯めようかなぁ・・・」
歩いて家に帰ると家の電気が付いていた。
あ、来てるのかな・・・。
がちゃっと玄関を開けると中からいい匂いがした。
「ただいまー」
そう言うと奥から足音が聞こえた。
「おかえりなさーい!」
亜弥には合鍵を渡してあるのでたまにこうゆう風に家にいる事がある。
「疲れたでしょ?お風呂沸いてるから」
「あぁ、ありがと」
何かと私の世話をしてくれる亜弥、とくに食事面は。
「あのさぁ・・・クリスマスなんだけど」
「うん、一緒に過ごそうね」
「う、うん・・・」
『プレゼント何が欲しい?』って一言聞くだけなのに。結局、聞けないままお風呂に
入った。湯船に浸かりながらうーんとどうしようか考えていた。

『は?プレゼント?』
お風呂に上がって早速マサオに電話してみた。
「うん。普通は何を上げるの?」
『うーん、愛情?はははは〜』
こいつに聞いたのが間違いだったか・・・・。
「真面目に答えろよ。マサオ」
『そう怒るなよ。指輪とかでいいんじゃない?』
「指輪・・・・いくらぐらい?」
『値段よか、気持ちでしょ。私はばっちし愛がこもってるよ!』
「・・・気持ち・・・・わかった。じゃぁね」
『え?ちょ、もっと話そうよ!マサオとあゆみの日々の』
途中でぶつっと電話を切った。
指輪か・・・・ふむふむ。
明日からバイトを増やそうと思った。
561 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/15(土) 15:04

 <大谷 視点>

「ったく、何だよ・・・美貴のヤツ」
いきなり電話かかってきて何かと思えば美貴だった。しかも途中で切られるし。
「どうしたの?」
今日はあゆみが家に来てる日だった。
「美貴から電話かかってきてー、途中で切られた」
トイレから戻って来たあゆみに言った。
「マサオだからね、そりゃ切るわよ」
「何だよ、それ。ひでー」
携帯を机を上に置いた。あゆみはベットに寝転がって雑誌を開いていた。
「ねぇ、クリスマスだね」
そう言うとあゆみは素っ気無く「そーだねー」と言った。
うわ・・・すごい興味なさ気・・・・。
「クリスマスっていうのはさ、恋人達の為にあるもんだよ?」
「へぇーへぇーへぇー」
「トリビアかよ!」
「32へぇ?」
「しかも低ッッ!!!」
漫才をしたわけじゃないんだけど・・・。
ちょっと拗ねてあゆみに背を向けて座った。
「マサオって面白いよね」
面白い・・・・嬉しいんだか、悲しいんだか。
「もぉ、拗ねないでよ」
へーんだ、拗ねてやる。
「ほら、こっち向いて?」
嫌だね、向いてなんかやんないもーんだ。
「せっかくかまってあげようかなと思ったのに・・・ま、いいや」
ぴくっとそう聞いて反射的に向いてしまう。
「あははー、こっち向いた」
562 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/15(土) 15:19
「遊ばれてる?」
「あ、やっと気付いた?」
「もーぉー、いいよ」
立ち上がって部屋から出ようとした。
「ごめんって。面白いから、ついね?」
手をぎゅっと握られた。
可愛いから許しちゃうんだよなぁ・・・。
すとんとその場に座ってしまう。顔が緩んでいく。
「あーゆーみー」
手を引っ張ってぎゅっと抱きしめる。
「何、いきなり」
「いいじゃん♪」
「嫌だ、雑誌読み途中なんだから」
「マサオ寂しいんですけど・・・」
「あ、そう」
「もう、かまってよ」
「はいはい・・・」
見詰め合って軽くキス。
「んー、やっぱいいね。キスは」
「マサオ親父みたい」
「あゆみだからいいんだよ」
「もう離れてい?」
「駄目。かまってくんなかった罰ですー」
あゆみの顎を持ってまたキスをする。それからほっぺやおでこに。
「くすぐったいよ。マサオ」
「愛を感じる?」
「まだ足りない」
意地悪くそう言うあゆみ。何だか悔しくてさっきより深く口付ける。
「んっ・・・」
「どう?」
「うん・・・」
「やった!」
こうして夜は更けてゆく。
563 名前:作者。 投稿日:2003/11/15(土) 15:25

>558 和尚様。
     ( ^▽^)<・・・もう期待しない!
     (0^〜^)<ん?何かした?
     こんな感じで(w
     

>559 タケ様。
     いちごま、少しこれから重めになるかもしれません・・・(−_−:
     いしよし、早く進展が欲しい(w
     

はい、今回は藤本さんと大谷さんでしたが。
やっぱ柴大はもろ好きなんですよねぇ・・・・(w
本命はいしよしなんですけどね〜。
564 名前:タケ 投稿日:2003/11/16(日) 14:53
更新お疲れ様

あやみき・・・まるで夫婦みたいで・・・よかったー!!っす
値段より愛情・・・勉強になった(え?)

柴大・・・甘甘
かなり好きになりましたこのカップル
これからも応援して行きたいな・・・と

いちごま・・・想像するだけで重そう(w

(〜^◇^)<そう言えば最近オイラ、メインで(ry)
565 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/17(月) 15:45

 <吉澤 視点>

────期末テスト当日。

燃えてます、もちろん燃えてます。この吉澤は。
だってあんなに頑張ってきた!毎日、毎日、夜中まで勉強し睡眠不足でも頑張って・・・。
それもこれもクリスマスの為!梨華ちゃんと共に過ごす為〜!!
「ね、ごっちん!」
「・・・んぁ」
朝早くから学校に来て最終確認をごっちんとしていた。ごっちんはすごい眠そうに
教科書を見ていた。
「期末が終わればクリスマス。絶対勝ってやる!」
「んぁー・・・」
そしてテストは始まった。

苦手な数学も梨華ちゃんのスパルタの指導により何とか出来た。他の教科も頑張って
白い答案用紙を埋めていった。いつもなら終わって寝てる時間もちゃんと見直して
最後まで時間を無駄にしなかった。

そして────数日間にわたる期末テストが終了した。

最後のテストが終わり予鈴が鳴った。後ろの人が答案用紙を回収し先生のとこに
持っていく。うちは1番後ろの席なので立って答案用紙を回収した。
ちらっとごっちんを見ると終わって安心したせいか既に寝入っていた。
もう明日から返ってくるんだよなぁ・・・テスト。
時間割を見ると1番に返ってくるのは数学だった。うちが最も苦手とするものだ。
「でも、中々手ごたえあったし・・・」
掃除当番で無いので早く帰り支度をした。
「ごっちーん、起きてよ」
カバンを持ってごっちんのとこへ行く。ごっちんは眠たそうに起き上がりカバンを
持って立ち上がった。
・・・・こりゃ、家まで送った方がいいかも。
今のごっちんは道端で寝る可能性がある。
「行くよ!ごっちん!」
「んぁ〜・・・・」
「ちゃんと歩いてよ〜!」
「んぁー・・・」
半分寝た状態のごっちんを引きずりながら2年の教室へ向かった。
566 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/17(月) 15:58
「梨華ちゃーん、帰ろう〜」
教室の中を覗いて梨華ちゃんに声をかけた。柴田さんと大谷さんもいた。
「どうしたの・・・それ?」
柴田さんがごっちんを見て言う。
「普段やらないこと頑張ったから疲れたみたいです」
「ははは、そんだけ頑張ったんだからいい点数取れてるよ」
大谷さんが笑いながら言った。
「どうだった?」
梨華ちゃんが首にマフラーを巻きながら聞いてきた。
「うん、梨華ちゃんのおかげで頑張れたよ」
「そう。良かった」
右手で支えてるごっちんを忘れるぐらいうちは梨華ちゃんを見ていた。
「嫌ね、いちゃつくなら家でやんなさいよ」
柴田さんがちゃかした。梨華ちゃんが「そんな事ないよ!」と言う。
「まぁまぁ、あゆみ。帰ろうよ」
「そーね。じゃ、またね〜」
大谷さんと柴田さんは最近、すごく仲がいい。
「あの2人、付き合ってるんだよ?」
「えぇ〜!?知らなかった・・・」
あの柴田さんが誰かと付き合うなんて・・・・大谷さんはどんな方法で
オトしたんだろう・・・・。
「さ、帰ろ♪」
梨華ちゃんの帰り支度が出来たので一緒に学校を出た。ごっちんの家に
寄って(本当は逆方向なんだけどね・・・)ごっちんを送って家に帰る。
「ごっちん、すげー頑張ってたよ」
「これなら赤点の心配は無いみたいね」
「だね」
会話がぷつっと途切れた。前はこんな時、何か話さなきゃという気持ちで
焦って話題を見つけていた。だけど今はそんなの必要無かった。会話が無くても
お互いの気持ちが通じ合ってるから何も不安は無かった。
「ねぇ」
梨華ちゃんが突然口を開いた。
「ん?何?」
「・・・・手、繋ご?」
横から上目遣いで見つめられる。
うわ・・・可愛すぎ・・・・。
「い、いいよ!」
右手にカバンを持って左手を差し出した。梨華ちゃんは嬉しそうに右手で
うちの左手を握った。一気に体温が上がる。
何も今まで無かったうちら。だけど少し前に進めた気がした。
・・・ほんの少し、だけどね。

567 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/17(月) 16:19

 <矢口 視点>

期末テストも終わり、みんな頭の中はクリスマスの事だけだ。
クラスのみんなは楽し気にクリスマスの話題を話していた。
「いやぁ、楽しみ〜♪」
「矢口、浮かれすぎだよ。そもそも受験生にクリスマスなんてある?」
なっちが呆れたように言った。
「あるに決まってんじゃん!オイラ、その為に頑張って勉強したんだから」
「で、パーティはどうすんの?」
圭織が聞いてきた。
「とりあえず、紗耶香と話して紗耶香の家でやろうかと」
「へぇ、誰呼ぶ?」
「んー、まずはオイラ・なっち・圭織・紗耶香・ごっちん・よっすぃー・
 梨華ちゃん・柴ちゃん・大谷さん・裕ちゃん・・・」
「裕ちゃん呼んだらすごい事になんない?お酒が・・・」
「大丈夫!オイラが飲ませないようにするから。後はー、彩っぺ・亜弥ちゃん
 藤本さんに・・・あ、加護ちゃん・辻ちゃんも呼ぼう」
「何か、すごい人数・・・」
「作者が悪いんだよ、あれこれ登場人物増やすから。だからオイラの存在感
 が薄くて読者の方に主役だって事忘れられるんだよ」
「まぁまぁ、愚痴ってもしょーがないよ。早く帰ってパーティのプラン
 考えようよ?」
「そうだね。作者の事話したらきりがないもんね」
「よっしゃ、帰ろう〜!」
オイラ達、3人は学校を後にした。

パーティは24日にする事にした。みんなに話したら全員OKだった。
料理はごっちんと梨華ちゃん、圭織、大谷さん担、彩っぺが担当。買出しは紗耶香、
よっすぃー、裕ちゃん、藤本さんが担当。飾り付けはオイラ、なっち、亜弥ちゃん、
柴ちゃん、加護ちゃん、辻ちゃんが担当。

全員合わせて15人・・・。ちょっとしたホームパーティだよ、こりゃ。
飾り付けにも力が入るなぁ!もちろんクリスマスツリーも飾るでしょ!
「早く来ないかなー、クリスマスイブ」
「もうちょい先っしょ。受験に向けて勉強するよ」
「なっち、ちゃんと矢口の事見張っててね」
「まかせるっしょ!圭織!」
「何だよ〜!!」
気付けばもう冬。この3人で笑い合っていられるのももうわずか。
特に圭織は、遠くへ行ってしまう。
だからこそ無駄に時間は使いたくない、楽しい思い出をいっぱい作るんだ。
いつか再会した時、懐かしめるように。
568 名前:作者。 投稿日:2003/11/17(月) 16:25

>564 タケ様。
     なんちゃって夫婦みたいな設定(w 松浦さんは意識してやってます(ぇ
     柴大、好きになっちゃいましたか!嬉しいですね〜。どんどん応援して下さい!
     いちごまは重くなる前にささやかな幸せな部分を・・・ね?(何
     
     (〜^◇^)<もちろん主役はオイラで(ry

次回ははちゃめちゃなパーティ模様をお送り致します。
569 名前:タケ 投稿日:2003/11/17(月) 18:54
更新お疲れさま

はちゃめちゃ!はちゃめちゃ!
確かにメンバーがメンバーなだけに文字通りになりそうですね(w

柴大はあいかわらずの仲ですね(w
石吉もだいぶ進展してきましたし・・・
次は誰かと誰かが・・・と期待

(〜^◇^)<主役♪
570 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/18(火) 18:29

 <石川 視点>

───放課後。
ドキドキしながら教室でひとみちゃんとごっちんを待つ。そう、テストが終わった
次の日からテストが返ってくる。私は赤点なんてものは無く、オール80以上を取った。
「あゆみー、お前もうちょい勉強しろよなー」
「うっさいわ!何よ、自分だって私より少し上なだけじゃん」
待ってる私に柴ちゃんと大谷さんは付き合ってくれてる。
「梨華ちゃんもそう思うでしょ?」
「うん・・・柴ちゃん、平均下はまずいよ」
「むー、別にいいの!満足してるから!数学はちゃんと85取ったし!」
「理数系は強いんだよね、問題は現文だよね」
「マサオは黙って!」

───どたどたどた!

廊下から走ってくる音が聞こえた。きっとひとみちゃんとごっちんだろう。
どうか・・・赤点がありませんように・・・。
ココロの中で祈って2人を待つ。
「梨華ちゃん!やったよ!」
「んぁ!」
2人の笑顔を見た所、大丈夫なようで安心した。
「ほらー、数学70も取れたよ!」
「あたしは62!今までの中で最高得点だよ!」
他のテストも上々な点数でこれでクリスマスは無事に過ごせそうだ。
「先生もびっくりしてたよねー」
「んぁ、すごい喜んでたよね」
「良かったね。頑張れば結果は出るんだよ」
私も自分の事のように嬉しかった。ごっちんはすぐに市井さんに電話をかけて結果を
報告していた。柴ちゃんと大谷さんも「良かったね」と言ってくれた。

柴ちゃんは大谷さんの自転車で送られて、ごっちんとは帰り道が違うのでわかれて、
ひとみちゃんと一緒に下校する。
「ホント、うち感動したよー」
「そうだね。私も嬉しいよ」
自然と手は繋がっていて、会話も自然に弾んでくる。
「梨華ちゃんがいたから頑張れたんだよ?」
何でこの人は嬉しい言葉をさらっと言ってくれるんだろう・・・。
「うん。これからも頑張ってね」
「おう!」

その笑顔を私にだけ見せて欲しいって思っちゃう。
他の誰にも見せないで。
私だけを見て。


571 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/18(火) 18:39

 <市井 視点>

後藤は赤点を取らなかった。
「おぉ、頑張ったなー」
「へへ♪」
「これでクリスマスは安心だな」
「市井ちゃん、休みは・・・?」
「取ったよ、2日。24と25」
「やった!パーティも過ごせるね」
「矢口が張り切ってたしね」
がばっと後藤が抱きついてくる。もう少しで持ってたカップを落とすとこだった。
「後藤〜、危ねーじゃん。ったく」
「んー、眠い」
「眠いならベットで寝ろよ」
「ここがいー・・・」
やれやれと後藤の背中に腕を回す。カップはテーブルにそっと置いた。
心地よい体温が伝わってきてこっちまで寝そうな勢いだ。
「市井ちゃん」
「ん?」
「もう、離れないよね・・・あたし達」
ずきんとココロが痛む。
「・・・・あぁ」
「良かった・・・」
果たせない約束。してはいけない約束をしてしまった。
後藤をそっと強く抱きしめる。
ごめん・・・・。
いつかは話さなければならない事だ。今はまだ駄目だ。
そう言い訳して後回ししてるのはわかってる、だけど今だけは・・・。
「後藤、腹減ったよ」
「んぁ。じゃ、夕飯にしよ」

許して下さい、神様。
今だけは幸せな時間を過ごしたい。
自分勝手なのはわかってます。
だけど、今だけは・・・時間を下さい。
572 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/18(火) 18:54

 <後藤 視点>

数日が経ち、待ちに待った24日。朝から準備に大忙し。
まずは全員集合して買出し班はすぐにスーパーへ向かった。料理班は食器の
数や今ある材料のチェックをしていた。飾り付け班は矢口先輩が家から大きな
クリスマスツリーを運んできたり、飾り付けにかかっていた。
初めて会う、辻ちゃんと加護ちゃんははしゃぎまわってて矢口先輩を困らせ、
怒られていた。
「ちゃんとやんないと出て行ってもらうよ!」
「「はぁーい」」
15人も今日は過ごすのであって家の中は今までにないくらい賑やかだ。
買出し班が帰ってくるまで時間があるので部屋にいた。

・・・最近、市井ちゃんが変だ。

いつもと同じだけど何か違う。何だろう?
うーん、と唸って机の上に飾ってある写真を見る。前に温泉旅行に行った時
撮った写真だ。市井ちゃんとあたしのツーショット。
「・・・何か悩み事でもあるのかな」
「そうなの?」
「ん?うわぁ!?びっくりした〜・・・」
いつの間にか梨華ちゃんが後ろにいた。
「ノックしたんだけど・・・・ごめんね、勝手に入って」
「んぁ、いいよ。どーぞ、座って」
ベットに腰かけて梨華ちゃんが隣に座る。
「市井さんがどうかしたの?」
「うん・・・最近、何か変だなって。たまに何か考え込んでる事あるし」
「仕事の事?」
「あたし、最近は勉強ばっかで・・・市井ちゃんの仕事とか聞いてなくて」
「そっか・・・ま、今日と明日は楽しんで。それからゆっくり聞いてみれば?」
「うん、そだね」
「ただいまー!!」
扉の向こうからよっすぃーの声が聞こえた。どうやら買出し班が帰ってきたらしい。
あたしと梨華ちゃんは部屋を出て行った。
573 名前:作者。 投稿日:2003/11/18(火) 19:00

>569 タケ様。
     15人という大人数・・・・さてどうなるのやら(w
     次は誰と誰でしょう〜?期待して待ってて下さい!
     (〜^◇^)<クリスマスツリー飾るぞぉ〜♪

いちごまに怪しい雲行きが・・・・。
加護ちゃんも誰かに惚れてしまいます(ネタ
さてそれは誰・・・?
(0^〜^)<ん?
574 名前:タケ 投稿日:2003/11/19(水) 09:18
オール80点・・・すごすぎですわ石川さん・・・
それはともかく吉澤さんも後藤さんも言い点とれてよかったです

さてさて市井さん・・・やってしまいましたね・・・
つらい・・・

加護さんに恋が!?
楽しみですね
575 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/20(木) 20:41

 <加護 視点>

『あ、あの人・・・』
『知ってるん?』
『ののが引っ越した日にぶつかった人れす』
矢口先輩にクリスマスパーティに誘われ付いて来た家にはすごい人数の
人でごったがえしていた。そこでののが引っ越して来た日にぶつかった日がいた。
名前は・・・吉澤ひとみ。

「うーん、届かへん〜」
「あいぼん頑張れ〜」
「加護ちゃんが届かないんじゃオイラも無理だなー」
クリスマスツリー(矢口さん家から持ってきた)を飾っている途中。とても大事な
一番上に飾る星が背が届かなくて飾れなかった。
「仕方ない、誰かに頼むか」
矢口さんがため息混じりに言って誰かを探そうとしていた。
あー・・・自分で飾りたかったのに・・・。
ちょっと残念そうに手元にある星を見つめた。すると後ろからひょいっと身体を
持ち上げられた。
「わわ!?」
「ほい、飾りなよ」
「え?」
顔を後ろに向けると笑顔の吉澤さんがいた。
「自分で飾りたいんでしょ?」
まるでココロを読まれたかのようだった。うちは顔が赤くなるのを感じつつ、星を
クリスマスツリーをてっぺんに飾った。
「あ、ありがとう・・・」
身体を下ろされてお礼をした。
「いいって。飾り付け頑張ろうね」
そう言って笑顔で立ち去る吉澤さん。
・・・・やばいかもしれん・・・・。
何か心臓が早くて、顔が熱い。
「あいぼん、良かったれすねー。さ、他の飾り付けをしましょ〜」
ののが言う言葉に返事を出来ずに立ち尽くしていた。
「おーい、圭織呼んできた・・・って飾ってある!?」
飯田さんを連れて来た矢口さんが戻って来て驚いていた。
「あ・・・吉澤さんが手伝ってくれたんです」
「そっかー、圭織ごめん。もう大丈夫」
「いいよ。さ、早く飾らなきゃね」
うちはしばらく動けないままクリスマスツリーのてっぺんにある星を見ていた。
576 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/20(木) 21:03

 <吉澤 視点>

買出しから戻って来た。大量のスーパーの袋を抱えて。
「重い〜」
どさっと台所付近にスーパーの袋を下ろした。
「ご苦労様。おかえりなさい」
梨華ちゃんが出向いてくれた。
「後の買出しは?」
「んー、とりあえずは大丈夫だよ」
「そっか。じゃぁ飾り付けの方に行こうかな」
「お前らぁ邪魔だぁ」
ダンボールを抱えた市井さんがうちの後ろに立っていた。うちらのせいで通れなく
しかもダンボールが重いらしく市井さんの顔は険しかった。
「あ、すんません」
「いちゃつくのは後にしろよー」
そう言ってダンボールを運ぶ市井さん。
別にいちゃついてなんかないっての・・・。
梨華ちゃんは台所に行って、うちはリビングに入った。最初に目についたのは
クリスマスツリーだった。クリスマスツリーはほぼ飾り付けられて後は一番上に飾る
星だけだった。
・・・あ、加護ちゃんと辻ちゃん。
辻ちゃんとは一回会った事がある。うちが自転車を必死でこいでたら誰かとぶつかって
それが辻ちゃんだった。矢口先輩に聞いた所によるとこの2人はこないだ家出をしたらしく
でも何とか解決したようだった。
隅からクリスマスツリーのてっぺんに星を一生懸命飾る加護ちゃんを見守っていた。
あれじゃ・・・届かないだろうなぁ。
矢口先輩がその場を離れた。加護ちゃんは寂しそうに手に持ってる星を見ていた。
ははーん、自分で飾りたいんだな。
自分にも昔、同じ思いした事があった。星は何か特別な飾り物。だから自分で飾りたい
という思いがあるのだ。うちは静かに近寄って加護ちゃんを後ろからひょいっと持ち上げ
てっぺんに届くようにした。
「わわ!?」
「ほい、飾りなよ」
「え?」
「自分で飾りたいんでしょ?」
加護ちゃんはそっと星を飾った。うちは加護ちゃんを床に下ろした。
「あ、ありがとう・・・」
「いいって。飾り付け頑張ろうね」
それだけ言って他のとこへ行く。安倍さんに見つかってうちは高い所に飾る係りに
任命された。
「よ、旦那」
柴田さんに声をかけられた。

577 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/20(木) 21:15
「旦那って・・・」
「どう?最近」
「何が・・・」
「梨華ちゃんと進展あった?」
「な・・・別にないっすよ」
「つまんないわねー。キスの1つぐらいしちゃいなさいよ」
ぐしゃっと飾りを潰しそうになった。
「き、キスって・・・」
「向こうだって待ってるかもよ?」
梨華ちゃんが?そうなのだろうか・・・。
柴田さんはすすすっと近づいて。
「今日、パーティが終わったらチャンスよ」
「は!?」
「ね。頑張れ、旦那。ファイト♪」
もうこの人には付いていけないと思った。

キスって・・・・。
してもいいの?もし、嫌がられたら・・・そんな事ないと思うけど。
でもなぁ、難しいんだよなー。タイミングってやつ?

「何ぶつぶつ言ってんの?よっすぃー」
「え?あ、・・・・安倍さん」
「ほらほら、飾ってよ?後、もうだいぶ飾り付け出来たからさ。料理班以外は
 出かけていいって」
安倍さんは笑顔で言った。
料理班以外・・・梨華ちゃん、出れないじゃん。じゃ、家にいようかな・・。
「辻ちゃんと加護ちゃん、すごいよっすぃーの事気に入ってたよ」
「そうですか」
「よっすぃー!!遊び行こう!」
早速、2人がぴょこぴょこやってきた。いつの間にかよっすぃーと呼ばれている。
「なぁええやろ?」
下から2人に見上げられるとNOなんて言えなくて。
「わかったよ」
そう返事すると2人は嬉しそうに笑った。
578 名前:作者。 投稿日:2003/11/20(木) 21:20

>574 タケ様。
     いい点取れていいクリスマスを迎えました吉澤さんと後藤さん。
     後藤さんは何か感づいてらっしゃいますが・・・・。
     加護ちゃんの小さな恋の物語の始まりです(w

(0;^〜^)<(キスかぁ・・・・)。
( ^▽^)<(何かいい事あるかな〜♪)←鼻歌交じりに包丁で野菜を切る。

579 名前:タケ 投稿日:2003/11/21(金) 11:18
加護さんの恋・・・どうなってくんだろう・・・

吉澤さん
(○:^〜^)<(タイミングが・・・)
石川さんとできるんでしょうか?
580 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/23(日) 22:26

 <松浦 視点>

今、あんま機嫌がよくない。多分、隣にいる美貴さんは気付いてない。
最近美貴さんがバイトばっかしてるので夜も会えない状況だった。そのまま
時間は過ぎていき今日この日を迎えた。
何であんなバイトばっかしてるんだろう・・・?
朝、待ち合わせて市井さんの家に行く時会話もそんなに無かった。
あたしの事嫌いになっちゃったのかなぁ・・?
どんどんネガティブな方向に考えが行ってしまう。
「亜弥?」
「え?」
「これさ、こっちでいいんだっけ?」
「あ、うん」
「・・・・ぼーっとしながら包丁使うなよ?」
「・・・うん」
美貴さんは用が済むと台所から立ち去っていく。何か寂しい。
はぁと小さくため息をついてるとマサオさんが話しかけて来た。
「ため息つくと幸せが1つ逃げるよ?」
「・・・もう、逃げてますけど」
「美貴と何かあった?」
あたしは自分の気持ちを話した。
「ほぉ〜、でも最後に意外な事が起きるかもよ?」
「え?」
何ですか?と聞こうとした時マサオさんは違うとこへ行ってしまった。
何だろう・・・意外な事って。
少し期待を膨らませながら料理を再開した。
581 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/23(日) 22:41

 <石川 視点>

料理は順調に進んでいき、リビングの方から飾り班が仕事を終えたのか楽しく騒ぐ
声が聞こえてきた。時計はもうすぐお昼になる。
「休んでていいよ」
石黒さんが言った。
「亜弥ちゃんもごっちんも休んでよ。後はマサオと石黒先生がやるからさ♪」
大谷さんが言う。
お言葉に甘えて私達は休憩する事にした。
「いいなー、柴ちゃん。料理出来る恋人でさー」
ごっちんがため息混じりに言う。
「市井さん出来ないの?」
「全く、全然、さっぱり」
そんなにも強調しなくても・・・。
リビングに行くと中澤先生が既にお酒を開けていた。矢口さんが絡まれて困っていた。
それを飯田さんと安倍さんが笑って見てる。市井さんと藤本さんが会話をしていて、
加護ちゃんと辻ちゃんがひとみちゃんとじゃれていた。
「こんな賑やかなの、始めてかも」
ごっちんが笑って言った。そして亜弥ちゃんと共に市井さん達の所へ行った。
私はエプロンを外してソファに座った。ひとみちゃんが気付いてくれて来てくれた。
「終わったの?」
「まぁ、1段落ついたよ」
「そっか。後で出かけれる?」
「うん、大丈夫だよ」
「あの2人がさ、出かけたいっつーから。一緒に行こう?」
『あの2人』というのは加護ちゃんと辻ちゃんの事だと思った。
「随分、気に入られてるね」
「こっちはもうくたくただよー」
おどけたようにしてひとみちゃんは私の隣に座った。するとあの2人はこっちにやって来た。
「梨華ちゃんれす。ご馳走は出来たれすか?」
「まだだよ。今、お昼だよ?」
「よっすぃー。腕相撲しよ」
「嫌だよ、さっきさんざんやったじゃん」
こうしてお昼にパスタで昼食になり、私達4人は出かける事になった。
582 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/11/23(日) 23:00

 <吉澤 視点>

「じゃ、出かけてきますね。夕方には戻ります」
「おう。行って来い〜」
「んぁ、行ってらっしゃい〜」
市井さんとごっちんに見送られて家を出た。加護ちゃんと辻ちゃんははしゃいで騒いでる。
「さぁ、行こう。・・・つっても何処行く?」
今日はクリスマスイブ。何処もかしこも混んでるに違いない。
「水族館!」
「遊園地!」
・・・・この2人は今日が何の日か知ってるんだろうか?
「あのねぇ、今の時間からそんなとこ行くなんて無理だよ」
マンションから出て道路沿いを歩く。うちの隣が加護ちゃん。後ろに梨華ちゃんと辻ちゃんが
並んで歩いている。
「じゃー、映画は?」
梨華ちゃんが言った。
「席取れるかなぁ・・」
「行ってみなきゃわからんやんか」
「そうれすよ。何事にも行動を起こすべきれす」
辻ちゃんはたまにびっくりさせられるような発言をする。
「わかったよ」

───映画館前。
近場に小さな映画館を発見した。何が見たいかは小さい2人にまかせた。
「何か、疲れそう・・・」
「いいじゃない。楽しいよ?私は」
梨華ちゃんがいてくれて正直良かったと思ってる。あの2人はうちだけじゃ手が負えない。
「ねぇー、あれがええ!」
加護ちゃんが指差したのは今、話題のCGアニメのものだった。チケットを買って中に入る。
小さな映画館だけあって人数はいるが、さほど混む事は無かった。
「ポップコーン?」
辻ちゃんが笑顔で「うん!」と頷いた。
「さっきお昼食べたばかりじゃない」
梨華ちゃんもこれには驚いていた。
「映画と言ったらこれはかかせないのれす」
「ののは食い過ぎや。太るで」
加護ちゃんも反論した。すると辻ちゃんはどんどん涙目になっていった。
「わ、わかったよ。買いに行こう」
うちが席を立って辻ちゃんと手を繋いで売店へ向かった。
583 名前:作者。 投稿日:2003/11/23(日) 23:04

>579 タケ様。
     加護ちゃんの恋・・・・吉澤さんは果たして気付くのか。
     吉澤さんと石川さんの行方は誰も知らない・・・(ぇ

何だか、和やかな雰囲気(w 1名を除いて。
(0;^〜^)<疲れたYO・・・・。
( ^▽^)<まぁいいじゃない。
こんな感じが好きだったり(w
584 名前:タケ 投稿日:2003/11/24(月) 02:37
更新お疲れ様です

最後に以外な事!?とても気になるんですけど
松浦さんの気持ちとはやはり・・・?

それにしてもやっぱり吉澤さんはモテるなぁ(w

585 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/05(金) 21:00
映画を見た後、ちょっと川沿いを散歩する。小さな二人は先を歩いて楽しそうに
笑っていた。うちの隣は梨華ちゃんが微笑んでいる。
「何か、いいね。こーゆーの」
「へ?」
梨華ちゃんの言葉につい間抜けな返事をしてしまった。梨華ちゃんは何も言わず
辻ちゃんと加護ちゃんの方へ行ってしまった。二人は散歩途中の犬を相手にはしゃいでいた。
楽しく笑ってる3人。
・・・・うん、いいね。こーゆーのって。
「おーい、待ってよ〜」
うちも少し走って3人の元へ向かった。犬は飼い主の元へ帰っていった。
「よっすぃー、競争しよ!」
加護ちゃんが目をきらきらさせて言った。
「おーし、負けないぞ!」
2人並んで立って、梨華ちゃんが「よーいドン!」と言ってスタートする。
とにかく全力で走ったら、加護ちゃんとかなり離れてしまった。
「へへー!勝った〜♪」
右拳を挙げて喜んでいた。よろよろと加護ちゃんがやってきた。
「よっすぃ〜・・・本気出しすぎやねん」
「競争と言ったからには、本気っすよ」
「もうちょい加減せ〜や〜!」
「加減して勝っても嬉しくねーだろ!」
「何やと〜!」
「ばっ、背中に乗るな〜!!」
加護ちゃんはうちの背中に飛びついてきてぶら下がっていた。うちは仕方なくおんぶした状態
になってしまった。後から梨華ちゃんと辻ちゃんがうちを見て笑いながらやってきた。
「こら〜!降りろ〜!」
「嫌や!絶対降りんわ!」
「ひとみちゃん、もう少し加減したら良かったのに」
「そうれすよ」
・・・・そうしときゃ良かった。

こうしてのどかなクリスマスの午後は過ぎていった。うちらは夕暮れになるまで
はしゃいで笑っていた。ホントに楽しくて時間を忘れていた。
「うぁー、もう駄目〜」
ごろんと草の上に寝転がった。走り疲れて息が上がっていた。
「お疲れ様」
隣に梨華ちゃんが座る。

586 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/05(金) 21:11
「若いパワーには勝てんね」
「ひとみちゃんだって十分若いよ?」
「いやぁ、あの子らには勝てんわ」
「・・・・私ね、幸せだよ。今」
「・・・・うん、うちも。幸せ」
起き上がって座り直す。ちらっと梨華ちゃんを見ると目が合った。
「「・・・」」
見つめ合ったまま沈黙。ただお互いの目を見つめてる。少しずつ心臓が速くなってく。
梨華ちゃんがふっと目を閉じた。うちはゆっくり顔を近づけた。
そして────唇が重なろうとした時───

「よっすぃー!梨華ちゃーん!」
「帰りましょうれす〜!」

・・・・いいとこだったのに・・・・。

驚いて固まったままで、梨華ちゃんが目を開けて二人で笑った。
「ったく、いいとこだったのに」
「おしかったね」
立ち上がって4人で市井さん家に帰る。
「また遊ぼうな〜!」
「へい!」
この2人の笑顔を見るとさっきの邪魔された出来事も許してしまう。
「早く帰ろ、ご馳走が待ってるよ」
「うち、もうおなかペコペコだよ〜」

何だか疲れたけど、それいい心地の疲労だった。
笑いまくって頬の筋肉が痛くなるくらい笑った。
ちょっとおしかった事もあったけど、うちと梨華ちゃんは少しずつ前に進めた気がした。
587 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/05(金) 21:24

 <市井 視点>

吉澤達が帰って来て盛大なる夕食が始まった。次から次へと運ばれてくる料理。
綺麗に飾られたリビング。楽しい笑い声。
「矢口真里!歌います!」
「いぇーい!いけ〜矢口〜!」
「裕ちゃん、飲みすぎだよ」
「彩っぺも飲め〜!」
「おかわりれす!」
「食い過ぎやん?」
こんなに賑やかなクリスマスは初めてかもしれない。後藤も楽しそうにみんなと笑ってる。
今の後藤ならもう大丈夫だよな・・・・。
後藤の周りには笑い合える仲間がいる。私が海外に行っても・・・待っててくれると思う。
「市井ちゃん?」
「ん?どした?」
「ずっとあたしの事見てるから」
「後藤が可愛いなーって」
「変な市井ちゃん」
「ひでー」

『今の後藤ならもう大丈夫』

そう思った自分を後で悔やむ事になった────

後藤のココロは誰よりも自分がわかっていたはずなのに───

また私は後藤を傷つける。

また───同じ事を繰り返してしまった。


588 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/05(金) 21:46

 <藤本 視点>

久しぶりにクリスマスという気分を味わって、『仲間』と笑い合った。
亜弥も楽しそうに喜んでいた。
そして楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

「あ〜楽しかった!」
時刻は午後の10時になろうとしていた。夜道を2人でてくてく歩いていた。
私はコートのポケットにずっと右手を突っ込んでいた。そこにはある『物』が入っていた。
いつ渡せばいいんだ・・・?
亜弥の話に相づちを打ちながら亜弥の家まで歩く。
「美貴さん・・・何か元気ないですよ?」
「え?あ、いや・・・その・・・元気だよ」
ふと亜弥が立ち止まる。私も立ち止まった。
「最近、中々会えなくて・・・ホントはすごい寂しかったんです」
俯いて言う亜弥。
「・・・ごめん。バイトで忙しくてさ」
「バイト入れすぎじゃないですか?・・・もしかしてあたしの事、嫌い──」
「そんなんじゃない!」
言葉を遮って小さく叫んだ。
「・・・・そんなんじゃ、ないから・・・。実は、さ・・」
ごそごそと右ポケットから小さな箱を取り出した。それを亜弥に差し出す。
「何ですか・・・?」
「開けてみて」
亜弥は小さな箱を受け取って開けてみる。
「安物だけど・・・あ、愛はこもってるから・・・」
マサオに負けたくなくてそんな台詞を言ってみる。耳が真っ赤になるのがすごくわかった。
しばらく沈黙が続いた。視線をアスファルトに落としてたけどちらっと亜弥の方を見てみた。
亜弥は───泣いていた。
「え!?あ、あの・・・亜弥?」
「・・・ありがとう・・・・」
「う、うん・・・」
「でもね・・・美貴さん」
「な、何?」
「サイズが・・・合いません」
「えぇぇ!?ま、マジ?」
指輪をつけた亜弥の手を見てみた。少し大きかったようだ。
「あちゃー・・・ごめん・・・」

何やってんだよ〜・・・・大事な時に・・・。

はぁと落ち込んでいると亜弥がおかしそうに笑っていた。
「美貴さん、可愛い。あたし、すっごい嬉しいよ」
「何だよ。さっきまで泣いてたのに」
ふっと夜空を見上げるとはらはらと粉雪が降ってきた。
「あー!雪だ〜!」
「ホントだ・・・・」
少し遠回りして帰り道を歩いた。
589 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/05(金) 22:05

 <柴田 視点>

クリスマスパーティも無事に終わった。みんなと食べて騒いで、かなり近所迷惑な
奴らだったと思う。
「あー、疲れたぁ〜」
「騒ぎすぎで?」
「うっさい、前見てこぎなさいよ」
「へーい」
いつも通りマサオ運転の自転車で送られる。ここが私の指定席みたいな感じになっていた。
「梨華ちゃん達、上手く出来るかな〜」
「また何か余計な事言ったんだろ?」
「だって、あの2人奥手過ぎて」
「まぁ、そーだろうなー」
夜道を自転車で走っていく。少し寒いけどマフラーのおかげであったかさを感じる。
他愛も無い会話を話して私の家に着いた。
「じゃ、寒いから風邪ひくなよ」
マサオはそう言って自転車で走り出そうとする。
「ちょ、ねぇ!」
「ん?」
離れるのが寂しくてつい声が出てしまった。
「・・・だから、その・・・・」
「何だよ?あ、離れるのが寂しいんだろ?」
「そ、そんなんじゃ・・・・」
マサオは笑って自転車から降りた。するとポケットからごそごそと何かを取り出した。
「ん、大したもんじゃないけど。喜んでくれたら光栄です」
差し出された小さな箱。私はそれが何かすぐわかった。
「はは・・・ピッタリだよ」
左手に光る指輪。ピッタリとはまっていた。
そしてそっと唇に何かがふれた。
「ん・・・ずるいよ。不意打ちなんて」
「いーじゃん」
抱きしめられてすごくマサオからの愛を感じた。
「あゆみ、大好き」
「わかってる」
「そうじゃなくてさぁ〜・・・」
「・・・大好き」
いつのまにか降っていた雪に包まれて幸せな時間を過ごしていた。
590 名前:作者。 投稿日:2003/12/05(金) 22:10
期末試験がやっと終わり久々の更新です〜♪

今回はそれぞれのクリスマスみたいな感じです。

>584 タケ様。
     意外な事っていうか・・・嬉しい事でした(w
     みんな幸せなハッピークリスマス♪(約1名を除く
     吉澤さんモテますな(w

(〜^◇^)<矢口真里!歌います!
(●´ー`)<なっちも歌うべさ♪
(゚ 皿 ゚)<カオリモウタウヨ♪
591 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/07(日) 00:05

 <石川 視点>

パーティの片付けもだいぶ終わって家の中には私とひとみちゃん、辻ちゃんと
加護ちゃん。そして市井さんとごっちん。
「中澤さん飲みすぎだよね。動けなくなるまで飲むなんて」
ひとみちゃんが笑って言う。ひとみちゃんの指はソファで眠ってる辻ちゃんのほっぺ
をぷにぷに触っていた。
「石黒さんがいて良かったね。送ってもらえたし」
私はテーブルの上を拭いていた。
「はは、辻ちゃんも加護ちゃんも起きそうにないね〜。触っても起きないよ」
「はしゃぎ過ぎて疲れたのよ」
「せめてどっちか起きてくんないかなー。さすがに2人もおぶれないよ」
「私がどっちかおんぶするよ」
「梨華ちゃんに出来るかな?意外と重いよ?」
「2人共、お疲れ。もう帰った方がいいよー」
市井さんがリビングに入って来た。
「あ、寝ちゃった?」
寝てる小さい2人を見て市井さんは言った。するともぞもぞと辻ちゃんが起きだした。
「ん〜、なんれすか〜・・・・」
「帰るよ?辻ちゃん」
「もうそんな時間れすかー・・・」
目をこすりながらしゃべる辻ちゃんはとても可愛かった。

ひとみちゃんはまだ寝てる加護ちゃんをおぶった。
「梨華ちゃん、うちのコートさぁ加護ちゃんにかけてあげて」
「え?でもひとみちゃん、寒くない?」
「うちは大丈夫だから。上からかけてもらえれば」
言われた通りコートを加護ちゃんにかけた。
・・・・もう、優しいんだから。
私はまだ眠たそうにしてる辻ちゃんの手を繋いで玄関の方へ行く。
「また来てねー」
「またなー」
ごっちんと市井さんが見送ってくれた。

592 名前:13.聖なる夜に輝く星。 投稿日:2003/12/07(日) 00:26
「うわ、雪じゃん」
外に出るとひとみちゃんは夜空を見上げて言った。はらはらと舞い降りる白い雪が綺麗だった。
「寒いと思ったら、雪かい」
「いいじゃない。ホワイトクリスマスで」
「綺麗れす〜。あいぼん、もったいないれすね」
加護ちゃんはまだ夢の中。そんなにひとみちゃんの背中が心地いいのか。
歩いて辻ちゃん家に行って、それから加護ちゃん家に行った。
「すいませんね。わざわざ送ってもらって・・・。亜依、起きんかい!」
「あ、お父さん起こさないで・・・今日はすごい楽しかったみたいですから」
「ほんまですか、ありがとうございます」
やっと無事に送り届け、2人っきりになれた。
「何か、ちょっと寂しいね」
「まぁねー、でもこれでやっと梨華ちゃんと2人っきりだよ」
そう言ってひとみちゃんは私の手を繋ぐ。
「そういや、プレゼント渡して無かったね」
「え?」
ポケットから出された『プレゼント』。
「梨華ちゃんに似合うと思って」
ちょっと照れたようにひとみちゃんは言った。細長い箱を渡された私は早速ピンクのリボン
を外して中を見てみた。
「わぁ・・・綺麗」
「・・・”天使の羽根”なんだ。それ」
天使の羽根をした銀色のネックレス。すぐにつけてみる。
「どう?」
「・・・うん。似合ってる」
もうかなり暗いからひとみちゃんの顔がよく見えなかった。白い雪がやけに鮮やかに見えた。
「私もね、あるの。プレゼント。ちょっと待って、カバンに入ってて・・・」
「その前に貰いたいものがあるんだけど」
「え?」

一瞬の隙をつかれて抱き寄せられて。
唇が重なった。

ほんの少しだけで、唇はゆっくり離れた。
「・・・さっき、出来なかったから。いきなりで・・・ごめんね」
「・・いいよ」
ちょっと名残惜しくてもう1度口付けを交わした。
「・・・大好き」
「うちも!」
出逢ったのがつい最近のように思える。初めて逢った時は生徒会室だった。
それが今───きっと多分、世界で1番幸せな私達。

そしてその瞬間を、夜空に輝く星達は見ていた。
祝福の雪を降らせて───
593 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/07(日) 00:41

 『14.大丈夫、きっと大丈夫』

 <後藤 視点>

「見てー!雪!」
窓を開けてそう叫ぶ。目の前は銀色の世界だった。
「おー!ついに降ったか〜」
市井ちゃんも嬉しそうに言った。
「やったね。ホワイトクリスマス」
「まさかそうなるとはなー」
「去年は降らなかったもんね」

去年のクリスマス。そういえばあたし達は喧嘩して最悪のクリスマスになっていた。
原因は市井ちゃんの仕事だった。雑用をまかされたらしく帰るのが遅くなるとのことだった。
あたしは電話越しに怒鳴って泣いて電話を切った。
『楽しみにしてたのに・・・・』
せっかく作った料理も意味なんか無くて、冷めていくばかり。
一人部屋で泣いていたら玄関の扉が開く音がした。
『後藤!ごめんって!』
部屋に入って来て市井ちゃんは謝った。電話を切ってから2時間くらい経った頃だった。
『・・・約束、したじゃん。今日は7時には帰れるって・・・』
『・・・ごめん。先輩に頼まれて・・・』
『後藤の事なんてどうでもいいんだ』
『なわけねーだろ!』
市井ちゃんはそう言ってあたしを抱きしめた。
『後藤がいないと困るんだ・・・』
『市井ちゃん・・・』
『約束破った・・・ごめんな?でも、ほら、後藤の欲しがってた時計』
前から欲しかった腕時計。市井ちゃんは誇らしげに見せた。
それから仲直りのキス。んで、冷めた料理でも市井ちゃんはおいしそうに食べてくれた。

「ふぁぁー、眠ぃ。風呂入るか〜」
「もうちょっと雪見ようよ〜」
「寒いじゃんか、窓閉めろよ」
「ぶー」
「ぶー、じゃねーよ。さっさと風呂入って・・・」
市井ちゃんはあたしを抱き寄せて耳元で。
「夜のお楽しみ、始めよっか♪」
・・・確実に、あの頃より市井ちゃんはエロくなっている・・・。

594 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/07(日) 21:51

 <市井 視点>

クリスマスが過ぎ、一週間が経った。一人、仕事場の休憩室で休んでいた。
「お疲れ?」
同じ仕事場に勤めるアヤカに声をかけられた。
「まぁね」
「最近、忙しいもんね」
私の隣にアヤカが腰を下ろす。そしてインスタントのコーヒーを差し出してくれた。
「さんきゅ」
「聞いたよ〜。アメリカの話」
「・・・あぁ、聞いたの」
「いい話じゃん」
「・・・私にとっちゃそーでもないけど」
コーヒーを飲む。胃にコーヒーの苦さが染み込んだ。
「彼女には話したの?」
アヤカは後藤の存在を知っている。直接面識は無いが、私が勝手に話した。
「・・・まだ。言えば、ぜってー嫌だって言うと思うし」
「でも向こうが会いたがってんでしょ?」
「社長は何か強制的に私を行かせるみたいだし・・・」
「・・・・まずは彼女に言ってみたら?」
「うん・・・そだね」
「・・・もう!うじうじしないで!そだ、今日飲み会やろうってみんなで話してたの。
 今夜は飲もう!ね!」
アヤカの押しに負けて、今夜は久々に飲みに行く事にした。

「もう一杯!」
「ちょ、紗耶香。飲みすぎじゃない?」
アヤカの言葉を無視してビールを注文した。そして運ばれたビールをぐいっと飲む。
「もうどうしたらいいんだよぉ〜、アヤカ〜!!」
「落ち着いて、紗耶香」
「後藤とは離れたくないし・・・・でも憧れてたアメリカだし・・・」
「うんうん。悩むよね」
「一緒に後藤連れてくわけにもいかないし?」
「そーだね。まだ高校生でしょ?せめて高校卒業しなきゃねぇ」
「だね」
「あー、もう嫌だ・・・誰か助けて・・・」
「何とかしてあげられるもんならしてあげたいけど」

まぁ飲み会っつっても1時間で帰るつもりだった。
気付いたら・・・・・朝だった。
今日は休みだから別に早起きしなくていいんだけど。
そんな事はどーでもよくて。

「・・・・あ、アヤカん家?」
隣でアヤカはすやすや眠ってる。何故か服は着てない。自分はジーンズと上はキャミだった。
「え?・・・はぁ!?えぇ!?」
頭痛がする頭で考えた。はっと携帯を見た。

<着信 後藤>

「だぁぁぁ!!!!」



595 名前:タケ 投稿日:2003/12/08(月) 17:02
更新お疲れ様

・゚・(ノД`)・゚・
市井さん・・・もう言うしかないんですね・・・

いしよし、あやみき、おおしば、が幸せな分この2人にも早く幸せが(今は幸せか)訪れるといいですね
596 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/08(月) 18:08
急いでそこらへんにあったシャツを着てコートを羽織った。
「アヤカ!起きろよ!おい!」
「・・・ん?何・・・?」
「昨日・・・何かあった?」
「・・・・お酒飲んでぇ・・・・うう、頭痛い・・・・」
「じゃなくて!やってないよね・・・?」
「・・・・くー・・・・」
「寝るなぁ!ごらぁ!」
もうアヤカをほっぽいて家を飛び出した。タクシーを止めて急いで家に帰る。
後藤に電話するが一向に出てくれない。
ちくしょー・・・・!
飲み会なんかいかなきゃ良かった。ただただ後悔ばかりが浮かぶ。
「つりはいりませんから!」
二千円を運転手におしつけてタクシーをおりた。走って家の玄関前まで行く。
鍵で開けて中に入る。
「後藤・・・?」
中は静かで後藤の部屋には後藤はいなかった。リビングにも、トイレにも
風呂場にもいない。
「出かけてる?・・・」
自分の部屋に入る。
「・・・・うわぉ!?」
「・・・すーすー・・・」
自分の部屋に後藤がいた。しかも寝ていた。
「後藤・・・」
「・・・市井ちゃん・・・?」
後藤が目をこすって起きた。傍に行ってしゃがむ。
「ごめんなさい・・・朝帰りして・・・」
「何処にいたの?」
「・・・アヤカん家・・・・」
「・・・・信じらんない。最低」
そう冷たく言い放たれ、後藤は部屋を出て行った。慌てて追いかける。
「ごめん!マジごめん!でも何もないから!昨日、飲み会でさ、酔っ払っちゃって
 寝ちゃって・・・・」
「何も無い?ホントにそー言えんの?」
「うっ・・・・多分」
「ほらね」
597 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/08(月) 18:18
「アヤカ寝ぼけてて・・・アヤカに聞けばわかる!」
ばっと携帯を出してアヤカにかけた。
『ん〜?もしもし・・?』
「アヤカ!市井だけど!」
『紗耶香〜?・・・あれ?何でいないの?』
「そんな事より!昨日は何も無かったよね!?」
『うん。紗耶香、爆睡で。とりあえずシャツだけ脱がせて』
携帯の音量を大きくしてるので後藤にもアヤカの声が聞こえる。
「脱がせて・・・・?」
「わわ!寝苦しいって思ってだよね!?」
『まぁね。さすがにジーンズ脱がすのはめんどうだったからやめたけど』
「さんきゅ!じゃね!」
携帯を即効で切る。
「何もないっしょ?酔いつぶれただけなんだよ」
「・・・・脱がされたけどね」
「あれは、親切ってもんでしょ?」
「でも、アヤカさんに気があったかもしれないし・・・」
「無い!あり得ないから!・・・・信じて下さい・・・」
涙目になりながら許してくれと訴える。
「・・・・わかった。あと!1つだけ聞かせて」
「はい!」
「・・・・市井ちゃん。あたしに何か隠してない?」

───後藤は気付いていた。

私が抱えてる悩みを───

「・・・・ついに話すときがきたか・・・」
「・・市井ちゃん?」
「ま、座って話そう。重要な事だから」
ソファに座って後藤が隣に座った。
598 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/08(月) 18:34
「・・・・・こないだ、社長に呼ばれてさ。アメリカに私に会いたいって人が
 いるらしくて。その人、私の写真見てぜひ会って一緒に仕事がしたいらしいんだ」
「・・・・嫌」
「そう言うと思ったよ」
返事は思い通りだった。
「あたしは嫌だよ!市井ちゃんと離れるなんて考えらんない!」
「でも、後藤。2ヶ月の間だけなんだよ」
「嫌なもんは嫌!ちょっとでも離れてると不安なの!なのに2ヶ月も離れらんないよ!」
「・・・・後藤」
「耐えらんないよ・・・・そんなの・・・・」
「お前のまわりには仲間だっている。お前は一人じゃない」
「市井ちゃんはいいの!?あたしと離れていいの!?」
「いいわけないじゃんか・・・・でも仕事なんだ」
「何それ!やっぱあたしより仕事なんだ!仕事の方が大事なんだ!」
「・・・・後藤。後藤の事はホント大事に思ってる、他の奴になんか渡したくない。
 でも、わかって欲しい・・・・私、アメリカに憧れてた。今、叶う時が来た」
「嫌!聞きたくないよ!」
「だから、絶対戻ってくるから」
「聞きたくない!」
「後藤・・・・・」
「うわぁぁぁぁぁん!!!!」

後藤は大声で泣いていつしか疲れて寝てしまった。暴れて何とか抱きしめたけど
殴られて大変だった。

「・・・・はぁ」
後藤の寝顔を見ながらため息をついた。後藤の部屋に後藤を運んでベットに寝かせた。
そっと部屋を出てベランダに出た。
「・・・・やっぱ無理か」
また後藤を傷つける結果で終わった。

しかし、今回はそれだけじゃなかった。

次目覚めた後藤は───ある”変化”をしていた。

「・・・・あれ?市井ちゃん?何してるの?」
「あ、起きた・・?」
「うん。あれ、あたしいつのまに寝ちゃってたんだろ?」
「・・・後藤。さっきはごめん」
「え?何?何かあったっけ?」

後藤は私の仕事の話を全部忘れていた。

「・・・・後藤?」
「あっは、何マジな顔してんの?」

後藤は声は笑ってんのに、表情は”無”だった。

つまり───後藤は表情を無くしてしまった。





599 名前:作者。 投稿日:2003/12/08(月) 18:37

>595 タケ様。
     他の皆様は幸せなのですが・・・・この2人だけは・・・。
     これから大変になってきます。精神的に痛めです・・・。
     (〜^◇^)←この人、これからバンバン出来てきます。

後藤さんピンチ!?市井さんどうする!?
はてさて・・・・どうるなるか・・・・。

600 名前:マコト 投稿日:2003/12/08(月) 19:34
どうも初めて読ませてもらいました!
矢口さん大好き人間なんで、矢口さんの登場待ってます!
後藤さんと市井さんに幸あれ!!
601 名前:和尚 投稿日:2003/12/08(月) 22:58
いちごまに衝撃の展開!!
リアルでは悲しい事が起きたので、幸せになって欲しい〜
602 名前:タケ 投稿日:2003/12/09(火) 15:05
更新お疲れ様

いきなりの急展開ですね・・・恐れていたこと以上の結果になるなんて・゚・(ノД`)・゚・
これから2人はどうなるんでしょう?
やはり幸せになってほしいですが・・・
603 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/09(火) 17:02

 <矢口 視点>

「んな事有り得るの・・・?」
『わかんねぇ。とにかく人形みてーで。自分では笑ってるつもりみたいなんだけど
 全然表情に出てないんだ』
「・・・・わかった。とにかく今日学校終わったら行くから」
『ありがとう。ごめんな』
「いいって。じゃね」
携帯を切るとふーっとため息をついた。

紗耶香から電話があって何かと思えばごっちんの事だった。
どうやらここ数日、よく寝るわ、記憶は飛ぶわ、無表情だわ、で変らしい。
「よく寝るのはいつもと変わんないけど・・・・」
原因は紗耶香のアメリカの話。その話をしてからごっちんが変になった。
「・・・・悪くなんなきゃいいけど・・・」
「矢口?昼休み終わるよ〜?」
なっちに声をかけられて振り返る。
「・・・どうした?」
「んー、ごっちんの様子が変みたいで。放課後家行ってみるわ」
「そうなの?病気?」
「・・・・どうだろう。まぁ・・・精神的なモノかな」
「私も行くよ。そだ、ケーキ買って行こうよ。ごっちん、モンブラン好きだよね」
「そうだね」
新たな不安を抱えつつ次の授業の為、席についた。

───放課後。
なっちとケーキ屋に行ってモンブランなどケーキを買ってごっちん家に向かった。
インターホンを押すとごっちんが迎えてくれた。
「あれ?どうしたの?」
「いやぁ、たまには遊びに来ようかと思って!最近会ってなかったじゃん!」
オイラは明るく言う。
「ほら、ごっちんの大好きなモンブラン!」
なっちがケーキの箱をごっちんに見せた。
「あは、ありがとー。上がってー」

・・・・わかったよ、紗耶香。

ごっちんは声は笑ってるけど笑顔じゃなかった。

604 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/09(火) 17:22
リビングは暗くて電気がついて無かった。
「さっきまで寝ててさー、最近いつの間にか寝ちゃうんだよね」
そういえばごっちんはまだ制服姿でいた。
「ごっちん、電気何処だっけ?」
「あー、そっち〜」
なっちが電気をつけるとリビングが明るくなった。ごっちんが紅茶を用意してくれて
さっき買ったケーキを広げた。
「んぁ、やっぱおいしい♪」
「そ、そっか!良かったー!」
なっちもごっちんの異変に気付いたらしくオイラを見ていた。
「・・・・ねぇ、ごっちん。紗耶香の事なんだけど」
「ん?市井ちゃん?」
「ほら、仕事でアメリカ行くって・・・」
そう聞くとごっちんは俯いて黙った。
「やめて・・・」
小さく呟いてそっぽを向いてしまった。
「あ、ごめん!そだ、冬休みなんだよね!もう。初詣はみんなといけるといいなぁ」
慌てて違う話題を話し出した。
「でも!矢口大丈夫なの〜?そんな初詣なんか行ってさ!」
なっちも話に合わせてくれていた。
「失礼な!初詣行かなきゃ1年が始まらないよ!ね、ごっちん」
「んぁ。矢口先輩なら多分大丈夫だよ」
普段のごっちんに戻っていた。”表情”を除けば。
「多分って何さ〜。絶対に変えてよ〜」

それから1時間くらいしてごっちんは倒れるように眠ってしまった。
オイラ達はごっちんをベットに運んだ。
「・・・・なっち、これはココロの問題だよね」
「・・・そうだね。病院行った方がいいんじゃないかな・・・」
「・・・うん。なっちはもう帰ったら?後はオイラ見ておくし」
「・・・わかった。じゃ、先に帰らせてもらうね」
「おう、まかしとけ」
なっちは家に帰って行った。オイラはとりあえずごっちんの傍にいた。
中々起きそうにもないので冷蔵庫を覗いて夕飯を作り始めた。カレーぐらいしか作れないけど。
午後7時頃、紗耶香が帰って来た。
「マジありがとう」
「いいよ。じゃ帰るね」
オイラは家を出て暗くなった道を歩き出した。
605 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/09(火) 17:32

 <後藤 視点>

「ふぁぁ・・・・また寝ちゃったよ。あれ?確か矢口先輩達と話てて・・・」
っていうか今何時!?
時計を見るともう針は8時をさしていた。
「やば!夕飯支度してない!」
慌てて起き上がって部屋を出るとカレーのいい匂いがした。リビングには市井ちゃんが
ソファに座ってテレビを見ていた。
「市井ちゃん・・・・」
「起きたか。矢口がカレー作ってくれたんだ。食おう」
「そうだったんだ・・・後でお礼しなきゃ・・・」
矢口先輩の作ったカレーはおいしかったけど、半分しか食べれなかった。
「もうやんなっちゃうよー。いつの間にか寝てるし」
「・・・後藤、もうご馳走様?」
「うん・・・何か食べれなくて。風邪でもひいたかな」
「そうか・・・今日は早く寝たほうがいい」
いつになく市井ちゃんが優しい。いつもなら『ちゃんと健康管理しろ!』って言うのに。
「今日は早かったんだね。仕事」
「お、おぉ。まぁな」
「嬉しいな・・・」
市井ちゃんが傍にいる。
「・・・・片付けやっとくから風呂入れ。んで寝ろ」
「えー、もう寝ちゃうの?」
「風邪ひいてんだろ」
「嫌だ〜、市井ちゃんと話をしたいよ」
「・・・・はぁ、わかったよ」
「やった♪」
椅子から立ち上がった途端、吐き気がした。
・・・何か、気持ち悪い・・・・。
「どうした!?」
「ん・・・大丈夫・・・」
あたしはトイレに駆け込んでさっき食べた物を吐いてしまった。
「大丈夫か!?苦しいか!?」
市井ちゃんが背中をさすってくれた。背中があったかかった。

606 名前:作者。 投稿日:2003/12/09(火) 17:38

>600 マコト様。
     読んで頂きありがとうございます!矢口さん、これから結構出ますので
     期待してて下さい!一応矢口さん主役なので・・・。
     

>601 和尚様。
     いちごま衝撃的ですよね〜。後藤さん痛いです・・・(泣
     でも必ず2人は乗り越えるでしょう!
     (〜^◇^)<オイラもいるから大丈夫だ!

>602 タケ様。
     作者も書いててびっくり(オイ
     この2人には幸せになって欲しい・・・・。
     (〜^◇^)<幸せにならなかったらオイラは許さん!
     
次回、いちごまに更なる衝撃が!?
(〜^◇^)<これ以上何があるんだよ!

607 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 06:22
CPスレから来ました。
里田目当てで来たんですけど、全部読みました。
ごっちんが今は心配ですね。

ただ、もう里田は悲しい結末を迎えたんですね・・・。
なんかこのストーリーで一番不幸人で・・・泣きました。
608 名前:和尚 投稿日:2003/12/10(水) 16:28
・゚・ヾ((Д`≡´Д))ノ<ご、ごとーさん身体大丈夫?大丈夫?

すみませんテンパってます・・・
609 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/10(水) 20:12

 <市井 視点>

「市井ちゃん・・・ごめんね」
「何言ってんだ。今はもう寝ろ」
吐いてしまった後藤。幾分か落ち着きを戻したようでベットの方に運んだ。
「寝たら・・・市井ちゃんいなくなっちゃう」
「いなくなんないから・・・傍にいるから。安心しろ」
後藤の手をぎゅっと握る。すると後藤は安心したのか眠り始めた。
くしゃっと空いてる手で後藤の頭を撫でた。

・・・・どうしら・・・いいんだろう。

翌日。大丈夫だと言う後藤を朝送り仕事場に向かった。
もうずっと後藤の事が頭から離れなかった。
「紗耶香、怖い顔してるよ」
アヤカが苦笑いで言った。
「あぁ・・・」
「真希ちゃんの事?」
「・・・うん」
「市井!社長が呼んでるぞ!」
先輩に言われて私は社長室に向かった。
「決まったぞ。年明けの1月10日に行ってもらう事になった」
「え・・・?社長・・・申し訳ないんですが、その話は無しに・・」
「何を言ってるんだ。私は君の才能を知っている。ぜひその才能をもっと
 広げて欲しいんだ」
「しかし・・・」
「いいか。これは最初で最後のチャンスだ。それを逃がすな」

結局、キャンセルは無理で。
だけどあんな後藤を残すのは心配で。

社長室を出て元の場所に戻った。すると携帯が鳴った。
「はい」
『紗耶香!?ごっちんが倒れた!』
「え・・・!?」
『病院に運ばれたんだ!今、裕ちゃんが着いて行ってる!』
「わ、わかった!すぐ行く!」
仕事を早引きして後藤が運ばれた病院へ向かった。



610 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/10(水) 20:23

 <矢口 視点>

ごっちんが体育中に倒れたらしい。よっすぃーから授業中にメールで連絡があった。
すぐにオイラは授業を抜け出して保健室へ向かった。
「裕ちゃん!」
そこには裕ちゃんがいた。
「矢口・・・」
「ごっちんが倒れたって聞いて」
ベットにはごっちんが苦しそうに眠っていた。よっすぃーが心配そうに見ていた。
「とりあえず病院に私が連れていくんや」
裕ちゃんがそう言ってごっちんを抱きかかえ、自分の車に運んだ。
オイラとよっすぃーで見送ってオイラはすぐに紗耶香に電話してごっちんの事と
病院の場所を伝えた。
「・・・・ごっちん。どうしたんでしょうか・・・」
「あ・・・よっすぃー。知らないんだっけ」
「はい?」
オイラはごっちんがどうしてあんな状態になったのか教えた。
「あぁ・・・市井さんの仕事で。それなら前に市井さんから相談されました。
 市井さん、結構悩んでて・・・」
「そうだったんだ。・・・ごっちんには乗り越えてもらいたいね」
「そうですね・・・」

離れていても大丈夫だって。
オイラはそう思う。
相手だって自分の事を想っていてくれてるなら。
きっと大丈夫だって。
寂しいかもしれないけど、そのぶん逢った時は寂しかった思い以上に
嬉しい気持ちがあると思うんだ。

「オイラ達が何とかしてあげたいね。紗耶香だっていっぱいいっぱいだよ」
「そうですね。2人のまわりには頼れる仲間がいるんだから・・・」
「うん」
611 名前:作者。 投稿日:2003/12/10(水) 20:35

>607 名無し読者様。
     読んで下さってありがとうございます!
     里田さん・・・はい、このストーリーの中で最も不幸だと思います。
     もうこれから出てくる事はありませんが彼女はいつも『仲間達』の
     ココロの中にいると思いますよ。
     
>608 和尚様。
     (〜;^◇^)<お、落ち着けって!
     テンパってます・・・作者も(泣
     あ、でもこれから良い方向に向かう予定なので(^−^
     
ついに倒れた後藤さん・・・・市井さんも限界な状態・・・。
そして『仲間達』が動き出す。
(0^〜^)<仲間だから頼っていいんだYO!

612 名前:和尚 投稿日:2003/12/11(木) 16:45
<(T◇T)><ごとーさんが病院に!?ご、ごとーさんの容態は?い、いちーさんどうします!?

更にテンパってます・・・
613 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/14(日) 20:08
放課後。ダッシュでみんなと病院へ向かった。
「こんな大人数でいいんですかね?」
よっすぃーが首を傾げて言う。ちなみにみんなというのはオイラとよっすぃー、梨華ちゃん
なっち、圭織である。
「ごっちんが心配じゃないの!?」
「や、心配っすけどぉ・・・・・」
「ならつべこべ言わずに走る!」
紗耶香へメールして病室を教えてもらう。病院の中に入って病室へ向かう。
とりあえずノックをしてみた。
「へーい」
紗耶香が出てきた。中にはごっちんが点滴をして寝ていた。
「・・・ちょっと話あるんだ」
紗耶香はそう言って廊下に出て扉を閉めた。
「貧血で倒れたんだろうって医者から言われた。あと、表情が無いのは・・・・ 
 精神的なショックで声が出なくなるケースがあるだろ?後藤は『顔』に出てしまったんだ。
 こればかりは医療では何とかならない、ココロの問題だ。でも早く治さないとこのままじゃ
 ・・・食べる事にも拒否反応が出てるから、体を壊しちゃうんだ・・・・」
紗耶香は俯いて言った。
「・・・・わかった。大丈夫だよ、紗耶香。一人で抱え込むな!オイラ達がいるんだから」
「そうっすよ!」
「ごっちんもきっと治るよ」
「・・・紗耶香はアメリカに仕事でどのくらい行くの?」
圭織が聞いてきた。
「2ヶ月くらい・・・」
「・・そっか」
沈黙が訪れる。
「みんな!暗くなってないで」
オイラが言うとみんな少し明るい表情になった。

ガラッと扉を開けて中に入る。ごっちんは目を覚ましたのか起き上がっていた。
「みんな・・・?」
「お見舞いに来てくれたんだよ。後藤、調子はどう?」
「ぼーっとする・・・・」
「そうか」
「ごっちん!もう心配したよ〜オイラ」
「矢口先輩・・・・」
ごっちんはじっとオイラを見ていた。ぼーっとした空ろな目をしていた。
細い腕には点滴が刺さって、ごっちんは少し痩せたように見えた。
614 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/14(日) 20:21

 <後藤 視点>

気付いたら病院にいて、市井ちゃんがいた。
「ほな、紗耶香が来たから帰るわ」
裕ちゃんはそう言って帰って行った。あたしをここまで運んでくれたのは裕ちゃんらしい。
点滴されて右腕がだるい。
「市井ちゃん・・・・」
「何も心配すんな。今はちゃんと治せな?」
「うん・・・・あたしどうしちゃったんだろ?・・・・記憶が途切れるの・・・」
「・・・・ごめんな。後藤」
「・・・?」
「ごめんな・・・」
市井ちゃんは何度も謝って、涙を流していた。滅多に泣かない市井ちゃんだからあたしは
驚いた。
「市井ちゃん・・・泣かないで・・・?」
「ごめん・・・ごめん・・・」
あたしは起き上がって市井ちゃんを抱き寄せた。市井ちゃんの頭を胸の方に抱きしめた。
「泣かないで・・・・あたしも悲しくなっちゃうよ・・・」

市井ちゃんが悲しいとあたしも悲しくなる。
市井ちゃんが嬉しいとあたしも嬉しくなる。

あたしと市井ちゃんは一心同体。

しばらくしてあたしはまた寝てしまった。最近、寝る時間が多い。
市井ちゃんがいなくて一人の空間はすごく寂しく感じた。ぼーっとしてたら扉が開いて
市井ちゃんや矢口先輩達が入って来た。
あれー?何でみんな・・・?
お見舞いに来てくれたと市井ちゃんが言った。

市井ちゃんの隣にいるのが矢口先輩。

じゃ・・・その隣にいるのは?その隣は?

わからない・・・・でも、あたしは知ってる・・・・。

誰なの?

「・・・・誰・・・?」
「へ?ごっちん?」
「矢口先輩の隣にいるのは誰・・・?」
615 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/14(日) 20:30

 <吉澤 視点>

・・・・ごっちん。

「誰・・・?」

嘘だろ?冗談やめてよ・・・・。

「何言ってんの。よっすぃーじゃん。ごっちんの親友じゃんか」
矢口先輩が慌てて言った。
「・・・よっすぃー?・・・」
「ごっちん・・・うちだよ!吉澤ひとみだよ!?」
そう言ってもごっちん下に俯いた。

ごっちんは市井さんと矢口先輩以外の人は忘れていた。
もしかしたら、このままじゃ、みんな忘れちゃうんじゃないだろうか・・。

しばらくして病院から出た。梨華ちゃんと一緒に帰り道を歩く。
「嘘だよ・・・あんなの・・・」
「ひとみちゃん・・・」
「信じられないよ。あんなに仲良かったのに、1番の親友だったのに・・・」
「・・・・それほどショックだったのよ、市井さんのアメリカ行きが」
「・・・あのままじゃ市井さんの事も忘れちゃうんじゃ・・・」
梨華ちゃんがうちの右手を握った。
「例えごっちんがみんなの事を忘れても、ごっちんは私達の仲間だよ。それだけは
 絶対変わらないわ」
「梨華ちゃん・・・」
「ごっちんの力になってあげようよ」
「・・・うん、そだね」
震えるうちの手を梨華ちゃんは優しく包んでくれた。


616 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/14(日) 20:47

 <市井 視点>

後藤は1日入院で翌日退院した。しばらくは学校を休むとの事で私は社長に事情を話して
5日間休みを貰った。後藤が遊園地に行きたいと言ったので遊園地へやって来た。
ジェットコースターや観覧車などなど乗り物を乗って、楽しんでいた。
「後藤?大丈夫か・・?」
「・・・ちょっと気持ち悪い・・・」
そう言う後藤を休憩室に運んだ。
「ちょっと・・・寝てもい?」
「おう」
私の肩に寄りかかり後藤は寝息を立て始めた。何枚かカメラで写真を撮ったが当然、
後藤の表情は無いだろう。後藤がどうしてもカメラを持ってけと言うので持って来たが
やっぱ持ってこなければ良かったと思った。

後藤が起きたのは寝てから1時間後だった。
「んぁ・・・」
「起きたか」
「・・・・んー、よく寝たよ」
「そっか。大丈夫か?」
「うん。もうこんな時間かー、じゃ、最後に観覧車のろー」
「わかった」

観覧車に乗る。もう日は暮れ始めているので街の明かりとか見えて綺麗だった。
「市井ちゃん、綺麗だねー」
「そうだね」
「今日は楽しかったな・・・」
「良かったよ。後藤が喜んでくれて」
後藤は私をじっと見てきた。
「ん?」
「・・・・市井ちゃん、やつれた・・?」
「は?ちゃんと寝てるし食べてるよ」
「嘘。痩せたっぽいし・・・・ごめんね、あたしのせいだね・・・」
「何言ってんだよ。後藤らしくもない」
「・・・」
「・・・近くのホテル、予約してっから。久々に温泉に入れるぞ」
そう言って後藤を抱きしめた。
「・・・・ありがと、市井ちゃん」
後藤はそう小さく呟いた。


617 名前:作者。 投稿日:2003/12/14(日) 21:02

>612 和尚様。
     (0;^〜^)<テンパり過ぎだYO〜。
     (;^▽^)<これからどうなるの!?
     もうちょいで解決しますので、もうしばらく(w

もうすぐ現実では冬休み〜♪楽しみです。
こっちの小説ももうすぐ年が明けますね。
(0^〜^)<初日の出を見に行こうYO!
( ^▽^)<え・・・・?かなり寒いよね・・・。


       

618 名前:和尚 投稿日:2003/12/15(月) 17:42
お互い想っているからかな…読んでて切なくなってきた。
619 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/16(火) 22:53

 <石川 視点>

ごっちんのココロの病気を知ってから数日が経った。何度もごっちんに会いに家に行く。
市井さんはなるべく早く家に帰って来たり、たまに仕事を休んだりしてずっとごっちんの
傍についていた。この数日間、2人の強い愛情───絆というものが強く感じれた。

こんなに人を愛する事が切ない。

私は・・・・きっとまだその事を実感した事は無い、と思う。

ひとみちゃんという大切な人が出来て、一緒に毎日過ごして。きっとこれからも変わらない。
だけど、市井さんとごっちんは離れ離れに来る日が確実に迫ってきている。
だからなのかな・・・お互いの感情が強くなるのは。

当り前だと思っていた事がそうじゃなくなる。その時、人間は初めて気がつく。

私もいつかそうなる『瞬間』が来るだろうか?

確かに離れ離れになる事は辛い事だ。だけどそれは決して悲しくなんかない。
だって───絶対また逢えるから。
また笑い合える日が必ず来るから。

もし、私とひとみちゃんが離れ離れにならなくちゃいけない時。
私達は必ず乗り越えられると思う。
その時には今の市井さんやごっちんみたいに。
もっともっとお互いを思う気持ちが強くなる。

「・・・・梨華ちゃんはそうなってもいいの?離れ離れになってさ」
学校の帰り道、私が話した事にひとみちゃんは不満を感じてるようだ。
「離れ離れになるのは嫌だけど、私は乗り越えられると思うから」
「うちはそんなに思えるほど大人じゃないよ。梨華ちゃんと離れたくないっ」
「そんな怒らないでよ。例えの話なんだからー」
「例えの話でも嫌だっ!」
こうして帰り道の時間は過ぎていく。
620 名前:作者。 投稿日:2003/12/16(火) 22:57
風邪をこじらせてしまいホント短い更新で申し訳ないです・・・・。

>618 和尚様。
     そうですね・・・・お互いが想いあってるから切ない感情が
     出てくるんですよね。それがこの2人の愛情なんですね・・・。

とりあえず何故かいしよし。
ちょっとこうゆう場面は好きなもんで・・・。
621 名前:マコト 投稿日:2003/12/16(火) 23:25
後藤さん、大丈夫っすか?!
市井さんと矢口さん意外忘れてるって・・・
ごっちんがんばーーー!!って感じっす!!
これからも見に来ますんで、頑張ってください!(w
622 名前:S 投稿日:2003/12/17(水) 21:00
初めてレスします。この作品大好きです。
市井ちゃんと後藤の今後がすごく気になります。
どうか幸せに・・・。
623 名前:タケ 投稿日:2003/12/23(火) 20:00
風邪大丈夫っすか?

久しぶりに見にきたら後藤さんが大変なことに!?
後藤さん・・・大丈夫なんだろうか・・・?

市井さん頑張れ!後藤さんも頑張れ!
624 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/23(火) 20:27
 
 <矢口 視点>

ふと授業中、屋上を見たら人がいるのが見えた。
・・・あれは・・・ごっちん?
授業をサボッているのだろうか。オイラは保健室に行くと偽って屋上へ行った。
今日は少し風が強くて屋上に出ると髪がぐしゃっとなった。
「うわぁ〜、風強いなぁ・・・」
髪をとかして押さえながらさっき見た人物を探した。すると長い茶色の髪をなびかせて
遠くを見てるごっちんがいた。
「ごっちーん」
オイラが声をかけてもごっちんは振り返らなかった。聞こえてないのかなと思って近づいて
肩を軽く叩いた。ここでやっとごっちんはオイラに気付いてくれた。
「・・・・矢口先輩」
「サボリ?」
「・・・・はい」
「オイラもねぇ〜サボっちゃった」
ベンチに座る。ごっちんも隣に座った。
風が強いから今日の空は快晴だった。でも寒かった。
「・・・何か、あたし、わかんなくて・・・」
「ん?」
「・・・自分がどうしたらいいか・・・わかんなくて・・・市井ちゃんに迷惑かけて。
 先輩、どうしらいいのかな?」
ごっちんはオイラを見て言った。その目は切なそうな目をしていた。
この時、オイラは思った。チャンスだと。
少しずつだけどごっちんに『表情』が戻って来ている。
今なら、変われるかもしれない。

「───ねぇ、ごっちんはさ。紗耶香が大好きなんでしょ?」
そう聞くとごっちんは頷いた。
「だったら、信じてあげようよ。離れても絶対にココロは離れないって」
「でも・・・不安だよ・・・」
「紗耶香の事、信じてあげよう。今のごっちんは信じる勇気が無いから不安に感じてる
 だけだよ。大丈夫だよ・・・・だってごっちんへの紗耶香の愛情はオイラにもわかる
 ぐらいに強いんだよ?」
「・・・先輩」
「大丈夫。きっと大丈夫」
ごっちんは泣いた。大声で泣いた。でも風がそれを掻き消すように吹いていた。
オイラはごっちんを抱きしめて、その『声』を聞いていた。
625 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/23(火) 20:41

 <市井 視点>

仕事を終えて家に帰る。きっと後藤は寝てると思いコンビニで適当にお弁当を買った。
鍵を開けて家の中に入る。
「あ、おかえり。市井ちゃん」
「うわ!?び、びっくりした〜・・・・」
寝てると思った後藤が洗濯かごを持って廊下にいた。
「何で驚くの?」
「や、だっていつも寝てるじゃんか・・・・」
「嫌だなぁ〜まだ8時だよ?早過ぎじゃん」
後藤は笑いながら洗面所に入っていった。

あれ・・・・?
笑ってた・・・・。
戻った!?

「後藤!」
洗面所に慌てて入る。
「何?今日の市井ちゃん変だよ」
「・・・お前、戻ったのか?」
「は?何が?」
後藤に近づいてまじまじと顔を見た。無表情ではなくそこには私を不思議そうに見る
後藤の顔があった。
「・・・良かった」
ぎゅっと強く後藤を抱きしめた。
「市井ちゃん・・・?」
「良かった、ホント良かった。ごめんな。いっぱい辛い思いさせてごめん」
「・・・謝らないで。そうじゃなくて、もっと違う言葉言って?」
いつもの後藤がいる。私の大好きな後藤がここにいる。
「あぁ・・・好きだよ」
「あたしも好き・・・」
後藤のぬくもりを感じるように私はきつく抱きしめた。
626 名前:作者。 投稿日:2003/12/23(火) 21:09
レス感謝です!

>621 マコト様。
     後藤さん頑張って復活しました!!
     見て頂いてありがとうございまっす♪頑張ります!

>622 S様。
     初めまして!読んで頂いてありがとうございます!!
     2人はきっと幸せになると思います(^−^

>623 タケ様。
     風邪は大丈夫ですよ〜。治ってきたみたいです(^−^
     (〜^◇^)<オイラも応援して♪
     ( ^▽^)<応援しなくても元気にやってるじゃないですかぁ♪
     (〜`◇´)<何か言ったぁ?
     (;^▽^)<い・・・・いえ・・・何も。

やっと復活の後藤さん。これで無事に年がこえられます。
次は・・・・市井さんの旅立ちです。
627 名前:マコト 投稿日:2003/12/24(水) 01:41
後藤さん復活!!良かった〜
今回も矢口さん格好よかったっす!
市井さんの旅立ち編(と言っていいものですかね?)も
楽しみにしてます(w
628 名前:タケ 投稿日:2003/12/24(水) 08:01
後藤さん、市井さん・・・よかった・゚・(ノД`)・゚・
さすが我らの(?)矢口さん!!かっこいいです!!

ついに市井さんが旅立ちますか・・・
ハンカチを持って待ってます
629 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/24(水) 22:33

 <吉澤 視点>

───年が明けた。うちと梨華ちゃんは夜中の1時ごろに待ち合わせをして神社に
向かっていた。
「何かさ、いろいろあったよね。去年は」
うちは去年の1年を振り返った。
「そうだね」
梨華ちゃんが微笑んで言った。

矢口先輩との出会いがあって、陸上部に入った。
それからごっちんの事があって、市井さんが帰って来て。
梨華ちゃんと出会って恋に落ちて、学際があって。
みんなに出会って、仲間が出来て・・・。

ホント───大変な1年だったけど。

「楽しかったなぁ」
「私も楽しかったよ」

人込みの中手を繋いで歩いていた。すると見覚えのある姿を発見した。
「あ、ごっちん!市井さん!」
声をかけると向こうもわかったみたいで手を振ってくれた。人込みを掻き分けて
2人の所へ行く。
「お前らも来てたのか」
「はい。市井さん達も来てたんすね。あ、出発はいつなんすか?」
「今月の10日だ」
「そうなんすか、早く帰って来て下さいよ」
「あぁ」
うちらが話してる間ごっちんと梨華ちゃんはおみくじをしていた。
「ごっちん、どうですか?」
「変わりないよ、よく食べてよく寝てる。さっきなんか年越しソバ2杯も食べたんだぜ?」
「相変わらずですね」
うちらもおみくじを引いてみんなでせーのっで見てみる。
「「「「あ!」」」」
4人共、喜びの声だった。

みんな、大吉だった。

「いいねぇ、大吉!4人共なんてすっごいね」
「今年はもっといい年になるんだよ。きっと」
「市井ちゃんは去年は凶だったね」
「おめーは去年、小吉だったくせに」

笑いながら年明けを過ごした。うちらは明るくなるまでしゃべり続けた。
630 名前:14.大丈夫、きっと大丈夫。 投稿日:2003/12/24(水) 22:49

 <後藤 視点>

年が明けて、おみくじで大吉引いて。
朝になるまでよしこや梨華ちゃん、市井ちゃんとしゃべってて。
ホント楽しい時間を過ごせた。

そして───1月10日。
丁度土曜日だったから学校は休みでみんな市井ちゃんを見送る為に来てくれた。
「紗耶香!さっさと帰って来いよ!」
矢口先輩が市井ちゃんの背中を叩いて言った。
「いってー。背骨が折れたら矢口のせいだからな」
みんなが一言ずつ声をかけていく。あたしは黙ったままそれを見ていた。
きっと今何か言葉を出したら絶対泣いちゃうよ・・・。
別れの時間は刻々と近づいている。
「ごっちん、ほら」
よしこがあたしの背中を押した。
「後藤・・・・・」

駄目だよ・・・・涙が出ちゃうよ。
『行かないで』
そう言えたらどんなに楽だろう?

『信じる勇気が無いから不安なんだよ』

矢口先輩に教えてもらった。そして初めて気付いた。
信じる勇気を持つ事。

「市井ちゃん、待ってるよ。あたし・・・待ってるから・・・
 ずっと・・・ここで、みんなと待ってるからぁ・・・っ・・・」
やっぱり涙が出て、最後は上手くしゃべれなかった。市井ちゃんは「ありがと」と
言ってあたしを抱きしめてくれた。

───市井ちゃんが乗った飛行機を見送った。
もう隣には市井ちゃんはいない。だけどココロにはいつもいるから。

ね、市井ちゃん。

631 名前:作者。 投稿日:2003/12/24(水) 22:56

>627 マコト様。
     (〜^◇^)<カッコイイ?やっぱ(以下省略
     市井さんついに旅立ちをしちゃいました。ちょっと寂しい作者(w

>628 タケ様。
     (〜^◇^)<ははは!やっぱオイラは最強(w
     ハンカチを持って待っててくれるなんて・・・・別れに涙は付き物ですね。
     
さてさて、市井さんが旅立ち、もうすぐこの物語、2度目の春です。
矢口さん、安倍さん、飯田さんは卒業を迎えるわけですが。
ここでピンチですね、主役が卒業してしまう(汗
主にこの物語はこの高校を舞台にして進んでるわけなんですが・・・。
矢口さん・・・・主役バトンタッチみたいな・・・?Σ(〜^◇^)<マジで!?

うーん・・・・どうしよう・・・。

でも、みんな主役みたなもんか!(解決?
ではでは。
632 名前:タケ 投稿日:2003/12/25(木) 07:29
市井さん・・・寂しくなりますね・゚・(ノД`)・゚・

3人さんも卒業・・・そういえば飯田さんも海外でしたっけ・・・寂しいなぁ

主役バトンタッチ(;^◇^)
ホントにそうなったら後釜は誰が?
とりあえず目は離せませんねw
633 名前:マコト 投稿日:2003/12/25(木) 10:03
市井さん海外でもガンバ!!

3人そろって卒業ですか・・・
寂しくなりますねぇ

主役バトンタッチ!?
もしそうなっても矢口さん出してくれます?
なにはともあれ次回更新もお待ちしていますw
634 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/27(土) 20:35

 『15.二度目の春。』

 <矢口 視点>

「おっしゃぁ!」
「やったぁ!!」
オイラとなっちは手をパチンと合わせた。

───本命の大学に合格した。

オイラ達はすぐに携帯で親に伝えた。それからみんなにメールで伝えた。
「やったね!なっち!」
「もうホント緊張した〜・・・・良かったぁ」
「桜が見事に咲いて良かったよ」
ほっと安堵のため息を吐きながら大学を後にした。てくてく歩いてると次々とメールが届いた。

<おめでとう!今度うちで卒業・合格パーティやろうねー! 後藤>
<やりましたね!おめでとうございます! 吉澤>

なっちの方もメールがたくさん来てるようだった。
「ごっちんが卒業・合格おめでとうパーティやろうだって」
「もう、卒業かぁ・・・早いねぇ」
もうすぐやってくる春。オイラ達が出会って二度目の春。
あの高校を通うのも後残り少ないほどになっていた。

───思えば、約1年前。

1人きりになった陸上部によっすぃーが入って来た。
それが『始まり』だった。
いろんな事があって仲間が増えた。

「大変な事もあったけどさ・・・楽しかったよね」
「私は、みんなのおかげで今笑っていられるよ。ありがと、矢口」
「・・・面と向かって言われると照れるなぁ」
「あはは、ホント感謝してるよ」

出会いがあれば、その分別れがある。

そして、それぞれの道を歩き出すんだ。
635 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/27(土) 20:56
卒業式があって、号泣しまくった。友達と、先生と写真を取りまくった。
「矢口、泣きすぎやんか。目真っ赤やで」
裕ちゃんが意地悪く笑って言った。オイラは真っ赤な目で裕ちゃんを睨んだ。
「まぁまぁ、裕ちゃんだって寂しくないの?」
「彩っぺ、大学近いんやし、会おうと思えば会えるやろ?」
「そりゃそうだけど・・・」
とりあえず裕ちゃんと彩っぺと写真を取った。
「矢口〜!写真取ろ〜」
圭織がやってきた。圭織はオイラよりは泣いてなかった。
「じゃ、私がカメラやるね」
なっちが写真を取ってくれた。でも圭織と並ぶと背の高さがすごいのでいつも圭織が
かがんでくれていた。今回もそうだった。
「なっちも〜!」
今度がオイラがカメラをやった。

それからよっすぃーやごっちん、梨華ちゃん、柴ちゃん、大谷さんが卒業式の日は休みなのに
学校へ来てくれた。
「おめでとう!矢口先輩〜」
「寂しくなりますねー、矢口先輩が卒業しちゃうと」

校庭の桜が咲き始めて花びらが綺麗に舞っていた。

「オイラ、みんなと会えて良かったよ。ありがとう!」

こうしてオイラの高校生活は幕を閉じた。
でもこれからまた新しくスタートする日々がある。
またいろいろ大変な事がありそうだけど。
それもそれで楽しいから。




天真爛漫 行くぜ 容赦なし
このまま ずっと 友達だし
卓球大会 するぜ 待ったなし
遊びと言えど むきになるし

良い 仲間だ 大好きだよ

 
「・・・・大好きだよ」

636 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/27(土) 21:14

 <吉澤 視点>

矢口先輩達が卒業した。飯田さんが一昨日、フランスの方へ行ってしまった。
やってきた春は去年と変わらず満開の桜を見せてくれた。

さて、良い事と悪い事が起きた。

まずは良い事。うちとごっちんは2年生になった。
だから後輩が出来たという事だ。我が陸上部にも1人、後輩が出来た。

そして悪い事・・・困った事。辻ちゃんと加護ちゃんがこの高校を受験し、合格した。
それはとても嬉しい事なんだけど───。
『うちな、よっすぃーの事好きやねん!』
なんて事を加護ちゃんが梨華ちゃんの前で言ってしまったのだ、昨日ね。
加護ちゃんは言うだけ言って笑顔で帰って行った。もちろん、うちは何も言えなかった。
そんなの困る、なんて言える隙が無かった。

それから・・・梨華ちゃんが何となく冷たい。

「よしこー、部活始めようよ〜。さっきから携帯ばっかいじってて何してんの?」
「・・・梨華ちゃんに仲直りをしようのメール」
「喧嘩?あたしもさぁ、市井ちゃんと昨日喧嘩したよ。ったく、いつになったら戻って来るんだか」

そうそう、市井さん。ニケ月の予定だったのだが向こうの社長さんに気に入られてしまい
もうしばらく戻れそうに無いの事。

<加護ちゃんの事は気にしないでよ。うちが好きなのは梨華ちゃんなんだから>
<別に気にしてなんんかないもん>
<嘘だ。昨日から冷たいじゃん。手も繋いでくれないし>
<外で手繋いだら恥ずかしいから>
<一昨日は公園でちゅーまでしたじゃん>
<あれは、勢いで!>

チャットのようにメールをしていた。

「先輩〜早く部活しましょうよー!」

新しく入った1年の陸上部、小川麻琴が言った。仕方なくメールを中断する。

<とにかく、部活終わったらまたメールする>

そうメールをして携帯をカバンに突っ込んだ。
637 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/27(土) 21:34
「吉澤先輩、元気無いですね〜」
「まぁね。小川は元気だね」
「燃えてますから!」
「んぁ、燃えすぎて灰にならないようにね」
「はい!」
桜の木を見ながら校庭を走る。そういえば去年は矢口先輩と走ってたのを思い出した。
「あ、あさ美ちゃーん!」
小川が少し速く走って行った。校門の方に走って行く生徒の方に小川は向かって行った。
「まこっちゃん。陸上部?」
「うん!楽しいよ。あさ美ちゃんも入る?」
「いい。塾あるし」
「えー、高校生になったんだからもうちょっと楽しくやろうよ!」
「その気の緩みがいけないんじゃない」
「もう、あさ美ちゃんは堅いなぁ。勉強だけが全てじゃないよ!」
「成績は大事なの」
うちらは遠巻きにあたふたとしてる小川を見ていた。あさ美ちゃんという子は興味が全く
無いという感じで小川を軽く無視しながら歩いていた。

「───何かさ、あれ1年前のあたし達みたい」
ごっちんが笑いながら言った。
「へ?」
「あの興味なさげな子があたしで、小川がよしこ」
「あぁ、そうゆう事か。そうだね」
「矢口先輩・・・・あたし達をこんな風に見てたんだね」
「・・・うん」
「いきなり陸上部入らない?なんてあたしに言ってさ。あたしのココロを救ってくれた」
「あれは驚いたよ、うちも」
「・・・・あの子・・・1年前のあたしと同じ目、してる」
ごっちんの横顔を見た。1年前よりも大人びた感じだった。
「じゃぁさ、ごっちん。行く?」
「行っちゃおうか?」
お互いの顔を見合わせて、うちらは走り出した。まだあたふたと小川はやっていた。
うちらは2人に近づいてあさ美ちゃんという子の肩を叩いた。
そして息を合わせたようにあの言葉を口に出した。


「「───ねぇ、陸上部入らない?」」



638 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/27(土) 21:57

 <柴田 視点>

あーぁ、3年生になっちゃった。

私は情報部の部室にいた。この部室とももうすぐさよならしなきゃいけない。
「受験かー、めんどくさいなー」
「んじゃ就職する?」
マサオが私を見て言った。
「・・・んな事無理よ。今の不況の中。第一親が許してくれないわ」
「じゃぁ、潔く受験の為に頑張る事だな」
「・・・・」
軽くマサオの頭を叩いた。
「いてっ。何すんだよー」
「うるさい」

「あのー、情報部ってここですかぁ?」

扉のとこに1年生らしき人が立っていた。
「あぁ・・・そうだけど」
そう言うとその生徒は笑顔で入って来た。
「あの!私、今年入学しました1年の新垣里沙です!入部したいんです!」
私は新垣という子の印象的な眉毛ばかり見ていた。
「えっと・・・入部希望ね。わかった」
「よろしくお願いします!私、情報なら誰にも負けませんよ!」

・・・・・何だかなぁ。昔の自分と重なる。

「今年入学した1年生のデータも全て入手してますし、そうですね、今年の注目
 すべき人は・・・・」
新垣さんはカバンから分厚い手帳を取り出した。
「やはり、紺野あさ美さんでしょうか。入試の試験もトップの成績で通ってますし、
 運動も中学時代は優秀です。えーと、他には・・・」
「ちょっと、待って」
私はふぅとため息をついた。
「あなたは・・・新垣さんは、どんな情報部員になりたいの?」
「はい!それはもちろん学校の情報をもらさずに追及していく部員です!」
はぁぁ・・・ますます、厄介だ。
「・・・・いい?よく聞いて。この情報部は人の為に情報を集めるの」
「人の為に・・・?よくわかりません」
「追及していく事は時に人を傷つけたり、困らせたりする事があるわ。それは
 絶対にしてはいけないの」
「でも・・・情報を集めるには仕方無い事だってあるじゃないですか」
「違うよ、それは。人を傷つけたり、困らせたりしたら、信頼出来る情報部は
 創れない。困ってる人を助ける、それが私のいる情報部よ。理解出来ないなら
 入部しない事ね。すぐここから立ち去りなさい」

私は変わった。ある先輩を見て、仲間を見て───



639 名前:作者。 投稿日:2003/12/27(土) 22:07

>632 タケ様。
     市井さんまだ戻って来てない(w
     春になっちゃいました。別れと新たなる出会い・・・。
     主役はとりあえず無しという事になりました。みんな主役だー!
     という事で(^−^

>633 マコト様。
     もちろん!矢口さんはこれからも出ますよ!彼女無しではこの物語は
     語れませんから(w
     市井さんは・・・いつ戻って来るのやら(^−^;

矢口さんの意思を引き継いで動き出す春。
またまた登場人物が増えますた(w
紺野さん、小川さん、新垣さん。

(〜^◇^)<オイラがいなくても大丈夫みたいだな!
(●´─`)<みんな、矢口のおかげだべ。


 
640 名前:S 投稿日:2003/12/29(月) 21:15
いちごまファンとしては、市井ちゃんがいないのは寂しいけど、
戻ってくる日を心待ちにしています。
641 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/29(月) 22:58

 <市井 視点>

・・・・ったく、いつ帰れるんだよ。

仕事が終わりビルの屋上で夜空を見えていた。何だかんだ言ってもうニケ月以上
経っていた。こっちの社長がもう少し居て欲しいだのいいやがって日本に帰れない状態。
後藤には電話で伝えた。

『そっか・・・仕事だもん。しょーがないね』
「う、うん・・・でもすぐ帰れるように頼むから」
『わかった。待ってるから』
「・・・・ごめんな」
『ううん、大丈夫。あ、そうそう矢口先輩達の卒業式があったんだー』

───いつもなら怒るのに後藤は怒らなかった。

「でも、まぁ・・・こうして離れてみると」

私の中で後藤はホント特別な存在なんだなって思う。だって今すげー会いたくて会いたくて
たまらない。会って力いっぱい抱きしめたい。
・・・だけど、出来ない。後藤は日本、私はアメリカ。
今更ながら距離が遠く感じられた。
「・・・・サヤカ?ココにいたの?」
こっちに来て何かと教えてくれる先輩が来た。日本語がわかる人だった。
「ミカ。帰ったんじゃなかったの?」
「まだ、サヤカのカバンがあったから」
先輩と言っても同じ年だが。何かと面倒見が良くてアヤカに似てるなと思った。
「何してたの?」
「ちょっと、空を見てたんだ」
「そう・・・さっき社長と話してたんだけど、サヤカ良かったらこっちにこのまま居ない?」
ミカが私の目を真っ直ぐ見て言った。
「・・・答えは、NO。やっぱり日本が好きだし」
再び夜空を見た。無数の星が輝いていた。



642 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/29(月) 23:22
「そう・・・残念」
「ミカも日本に来たら?日本語できるんだし」
「実はハワイの方に実家があるの」
「あ、そうなんだ」
「いつかは行ってみたいな、日本」
「私の友達にアヤカって言う子がいるんだけど、多分ミカと気が合いそう」
「へぇ。会ってみたいわ」
ミカとしばらく話して、家に帰った。用意してくれたマンションは広くて寂しかった。
シャワーを浴びて、ソファに倒れ込んだ。

ここには、後藤はいないんだよぉ・・・・。

『市井ちゃん、ちゃんと寝ないと風邪ひくよ?』

そんな声も聞こえない。

っていうかさ、ニケ月過ぎたんだから帰ってもいいじゃんね?

がばっと起き上がった。

「うし、帰ろう。後藤のとこへ帰ろう」

これで仕事がクビになってもかまわない。予定の日はとっくに過ぎてんだ。
もう限界だから、もう無理だから・・・。
帰って、後藤の作った夕飯を食べよう。

翌日の朝1番、社長の元へ行き自分の気持ちを言った。
社長は中々首を縦に振ってくれなかった。しぶとく私は言った。
そしてやっと日本に帰る許可が出たのだ。すぐに荷物をまとめて空港に急いだ。
643 名前:作者。 投稿日:2003/12/29(月) 23:25

>640 S様。
     作者も市井さん好きなので・・・今回は市井さんSPでした。
     やっと日本へ帰れる市井さん。
     ( ^∀^ノ<後藤の作った味噌汁が食いてー。

何気にミカちゃんが登場でした(w
さて、次回は市井さん帰国です。


     
644 名前:和尚 投稿日:2003/12/29(月) 23:28
早く帰って来てー!!
645 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/30(火) 22:27

 <後藤 視点>

部活が終わって部室でジャージから制服に着替えた。
「紺野、中々手強いね」
よしこがため息をつきながら言った。あたしとよしこは紺野あさ美という子を
陸上部に入れようと日々誘ってんだけど中々これは難しかった。
「あさ美ちゃんは中学ん時から頭がすごいいいんです。いつも試験は学年トップだし。
 でも体育で運動する時はすごい出来るんです!特に持久走はすごかったんです」
既にもう着替え終わった小川が言った。
「陸上部ならうってつけじゃん」
「でも・・・先輩達は何であさ美ちゃんを陸上部に入れるんですか?」

矢口先輩はどうしてあたしを入れたんだろ?

あたしを見てどう思ったんだろ?

「・・・・んぁ。紺野ってさ、あんま笑う事無いんじゃない?」
「そうですねー。私は笑わそうとしてるんですけど。滅多には」

あたしが初めて矢口先輩の前で笑った時、矢口先輩はすごい嬉しそうな顔をしていた。

「・・・せっかく、生きてんだから笑わなきゃ損だとあたしは思うんだよね」

だから、笑って欲しいんだ。

「紺野はそれを知らないと思う。だから教えたい」

気付いたらよしこと小川がポカンと口を開けてあたしを見ていた。
それが2人も似ていてあたしは笑ってしまった。
「ごっちん、市井さんがいなくて変になった?」
「失礼だな、よしこは。早く部室閉めて帰ろー」

市井ちゃん、あたしは元気だよ。
そっちはどう?仕事大変?
まぁ、体を壊さずに気を付けてね。

こっちは毎日、楽しいよ。

646 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/30(火) 22:40
よしこと小川とわかれて家に帰った。鍵で玄関を開けて中に入る。
「はぁ、そうだ、宿題あるんだっけ。あー、しかも明日の英語あたるじゃん・・」
靴を脱ぎながらだるそうに廊下を歩いた。自分の部屋に入ってカバンを適当に置いた。
制服から服に着替えて部屋を出た。ふとリビングの電気が付いてる事に気付いた。
あれ?電気消し忘れたのかな・・・もう、もったいない事しちゃった。
夕飯何食べようかと考えながらリビングに入った。

「あ、おかえりー。遅かったな」

頭の中が真っ白になった。アメリカにいる人が何故かここにいる。

あぁ・・・そういえば、まだカレーが残ってたっけ・・・。

何故かどうでもいい事を思い出す。

「な・・・・何で・・・ここにいるの!?市井ちゃん!」
「何でって。向こうの社長に無理言って帰って来た。毎朝、パンばっかで飽きた」

市井ちゃんはのん気にそう言ってソファで新聞を読んでいた。

市井ちゃんがいる・・・・夢じゃないんだ。

あたしはダッシュして市井ちゃんに抱きついた。
「うぉ!?な、何だよ」
「市井ちゃん・・・おかえり」
「・・・おう、ただいま。後藤」
市井ちゃんは新聞を置いてあたしを力強く抱きしめてくれた。
「あ、カレー。残ってたから食っちゃった」
「昨日の残りだよ。他に何か食べたいのない?」
「んー、味噌汁かな」
「わかった。すぐ作るね」
「ん、さんきゅ」

唇が一瞬重なって、離れた。
久々のぬくもりが嬉しかった。



647 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/30(火) 22:58

 <藤本 視点>

バイト帰り、コンビニに寄ると知ってる人を見かけた。
「梨華ちゃん」
「美貴ちゃん・・・」
梨華ちゃんとは年も同じだから仲良くなった。他のみんなとも普通に仲が良くなった。
「バイト帰り?」
「うん、まぁね」
適当に飲み物をカゴに入れる。
「元気無いね?」
「・・・・うん」
「普通『そんなことないよー』って言うんじゃない?」
「・・・・意地悪」
「別に意地悪なんかしてないよー」
梨華ちゃんが黙る。これはちょっと深刻そうだと思った。
「良かったら話聞くよ?私ん家来なよ」
そう言うと梨華ちゃんは小さく頷いた。レジを済ませて家に向かう。
「まぁ汚いけど。上がって」
「お邪魔します」
今日は亜弥がいない。家族で外食をすると昨日言っていた。
「綺麗にしてるじゃない。亜弥ちゃんのおかげ?」
「・・・ま、まぁね」
「すっかり新婚の奥さんみたいね」
くすっと梨華ちゃんが笑う。
「わ、笑うなー。せっかく話聞いてあげようと思ったのに」
あったかい紅茶を入れて出した。
「っで、梨華ちゃんが元気ないのはどうして?」
「・・・・ホント、子供みたいなんだけどね。ひとみちゃん、モテるの」
「あぁ、そうみたいだね。亜弥から聞いてるよ」
「・・・・それに嫉妬しちゃうの、私」
「あー、それで」
「うん」
梨華ちゃんは俯いた。
「まぁしょうがないけどさ。よっすぃーは梨華ちゃんが好きなんでしょ?
 それでいいじゃん」
「でもぉ・・・怒っちゃうの」
「信じてあげなよ。大丈夫だって。私が吉澤ひとみの彼女なんだ!って胸はってれば」
「・・・・ひとみちゃん、私の事嫌いになったりしないかな」
しばらく梨華ちゃんと話していた。気付けばもう9時を回っていた。
「今日は泊まる?こんな遅いし。家に電話しときなよ」
「美貴ちゃんって外見によらず優しいんだね」
「ちょっと失礼だよ、それ」

648 名前:15.二度目の春。 投稿日:2003/12/30(火) 23:10
部屋に布団をひく。ベットは梨華ちゃん、下の布団は私が使う。
「ごめんね。ベット使っちゃって」
「あぁ、いいよ。先、お風呂いいから」
「ありがとう」
梨華ちゃんに私のジャージとタオルを渡した。どうやら元気を取り戻したみたいで
安心した。私は台所の洗い物を済ませてテレビを見ていた。
ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
「こんな時間に誰だろ・・・?」
玄関の扉を開けると、そこには満面の笑みの亜弥が。
「どうもー亜弥でーす」
「・・・・今日は来ないんじゃ?」
「あはは、来ちゃいました」

・・・・まずいなぁ。非常にまずいなぁ。

固まって動けない私。

「美貴ちゃーん、お風呂上がったよ〜」

梨華ちゃんの声が聞こえる。

「・・・・どうゆう事?」

亜弥の顔が曇る。

「あのー、えーとね、梨華ちゃんが元気無くて話を聞いてあげてたら遅くなちゃって
 今日は私の家に泊める事になったわけで・・・」
「・・・・最低。他の女、泊めるの?」
「ちょ、梨華ちゃんは友達でしょ?」
「あたしの事好きじゃないの?愛してないの?」

話聞いてないよ・・・・。

「だぁかぁらぁ!友達泊めるの!別に好きとか、んなのないから!」
「美貴さんに無くても向こうにはあるかもしれないじゃん!」
「はぁ!?友達って梨華ちゃんだよ!?よっすぃーがいるじゃん!」
「美貴さんがそんな人だとは思わなかった!」
「話を聞け〜!!!」

嫉妬深い彼女は困る。

心底、感じた。



649 名前:作者。 投稿日:2003/12/30(火) 23:12

>644 和尚様。
     ( ^∀^ノ<ただいまー!
     市井さん帰国いたしました!やっぱ日本はいいですね(w

さてさて、波乱がありますが。
嫉妬深い彼女は大変ですな(w
650 名前:タケ 投稿日:2004/01/01(木) 14:04
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします

月日が経って色々変わりましたね
飯田さんはフランスですか・・・頑張れ!

紺野さん 小川さん 新垣さん
の新しい登場人物と矢口さんの仲間達がこれからどうなるか楽しみにしています!
(すでに2名が色々ありそうでw)
651 名前:S 投稿日:2004/01/01(木) 20:48
おけましておめでとうございます。
そして市井ちゃん、お帰りなさぁ〜い!!
652 名前:和尚 投稿日:2004/01/01(木) 22:22
あけおめでーす♪

いちーさんお帰りなさーい!
ごとーさん良かったねー。これで思いっきりイチャイチャして下さい〜。

>嫉妬深い彼女は大変ですな
まったくです(苦笑)
653 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/04(日) 20:23

 <加護 視点>

好きになってしもうたんやからしょーがないやろ?

相手に恋人がいようが、宇宙人がいようが、うちには関係ないわ。

「れも、無理だと思う・・・・」
「うっさいッ!やってみなきゃわからへんやろ」
うちとののはよっすぃーのいる高校に受験し見事合格。この春からめでたく
女子高校生デビューを果たした。学校に行くのが楽しみでしょうがない。
受験勉強をしながらうちはののとよっすぃーの情報集めをしていた。よっすぃーの友達を
リストアップした。それからある重大な事実に気付く事になる。

よっすぃーに彼女がいる。それは梨華ちゃん。

「梨華ちゃん、いい人れすよ」
「知ってる。だから何や?」
「間に割り込むのは可哀想れす・・・」
「うちの恋はどうなるんや!うちが可哀想だとは思わへんの!?」
「・・・・正直、思わないのれす・・・」
ののが何と言おうがうちはよっすぃーに告白するんや。
「あ、おった」
よっすぃーが陸上部という事は既に把握している。校庭の隅で何やら梨華ちゃんと談笑
しているよっすぃーがいた。うちはずんずんと歩いて2人に近づいて行った。
「よっすぃー!!」
「加護ちゃん。どうしたの?」
最高の笑顔を浮かべてうちはついに言った。
「うちな、よっすぃーの事好きやねん!」
よっすぃーは固まっていた。
「だから、近い内、梨華ちゃんから奪うからなぁ、わかってて欲しいねん」
「・・・ちょ、何言って・・・」
「ほな、また明日なぁー!」
こうして第一歩を踏み出した。
絶対、何が何でも奪ってやる。

うちは、燃えていた。




654 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/04(日) 20:39

 <小川 視点>

自分の受験番号が見つけた時、すごく鳥肌が立った。けど横にいた彼女は冷静に
『良かったね。まこっちゃん』
と言った。まぁ、あさ美ちゃんは推薦で既に受かってるから私の事なんてどうでも
いいと思う。

でも、合格発表の前日。
『あぁーついに明日だよ!落ちたらどうしよう!あさ美ちゃんと同じ高校に行きたいのに!』
私は完全にパニクっていた。私の絶望的な成績。でも何とかあさ美ちゃんに教えられて受験をした。
『・・・・明日、何時だっけ?』
『午前10時から発表されるよ・・・』
『じゃ、まこっちゃん家に9時45分くらいに行くね』
『え・・・?一緒に見てくれるの?』
『うん。いいよ』
まさか着いて来てくれるとは思ってもみない事で。すごく嬉しかった。

あさ美ちゃんに出会ったのは中学1年生の時だった。じゃんけんに負けて面倒な図書委員
になってしまった。何かと仕事が多い図書委員。私は部活に専念したかった。
『はぁ〜・・・じゃんけん苦手なんだよぉ』
放課後、本のチェックをするらしく図書委員が集められた。
『では各自、担当の場所で本の確認をして下さい』
図書の先生がそう言った。委員のみんながそれぞれの場所に向かう。
私も自分の担当の場所に向かった。
『うわ・・・こんなにあるのかぁ・・・』
終わった人から帰れるのでさっさとやって部活に行こうと思っていたが中々終わらない。
他の人達は徐々に帰っていく。
先輩に怒られるよ〜・・・・早くやんなきゃ・・・。

『手伝いましょうか?』

後ろから声がして振り返ると彼女がいた。

『・・・・で、でも、終わったの?』
『はい。で、見たら泣きそうな顔してやってらっしゃるので』

・・・泣きそうになってたんだ。恥ずかしい。

『お願いシマス』

これが初めて会った時だった。


655 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/04(日) 20:55
今は授業中。隣の彼女をちらっと盗み見る。背筋をぴんと伸ばして丁寧に黒板に
書かれている英文をノートに写している。その顔は真剣そのもの。
真面目なんだよねぇ・・・・。
中学の時も成績は常にトップクラス。本が好きな彼女は進んで誰もやりたがらない
図書委員に入ったそうだ。
「小川。じゃぁ、この英文を訳してみて」
先生にそう言われ、慌てて黒板を見た。今まで聞いてなかったので何が何だかわからない。
ど、どうしよう・・・・。
すると右端のスカートを引っ張られてちらっとそっちを見る。あさ美ちゃんが自分のノート
を指差していた。そこには言われた英文の訳が書いてあった。
「えっと、ジョンは先週から、アメリカにいます」
「はい、正解です。ここのポイントは・・・」
助かった・・・・。
ほっとして小声であさ美ちゃんに「ありがとう」と言った。
「ぼーっとしてるからだよ、まこっちゃん」
「はい・・・」
中学の時もこうやって助けられていた。3年間同じクラスだったから。
席も自由に決めていいのでいつも隣同士で座ったいた。

授業が終わって休み時間。
「まこっちゃん、授業中何考えてるの?」
「へぇ!?な、何って・・・」
あさ美ちゃんの事、なんて言えないし・・・。
「またカボチャの事でも考えてたんでしょ?」
「あ、カボチャね、カボチャ・・・・えへへ・・・」
ちょっと悲しい。あさ美ちゃんの中で私は<小川=カボチャ>の方程式があるんだろう。
「そういえば、購買でカボチャのコロッケパン売ってたね」
「マジで!?後で買いに行こう!」
「やっぱまこっちゃんってカボチャ好きだよね」
多分、こんな感じだからさっきの方程式が出来たんだろうな・・・。

656 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/04(日) 21:24

 <吉澤 視点>

うちと梨華ちゃんの仲は、まだ距離が縮まらず。加護ちゃんは相変わらず着いて来るし。
「加護ちゃん、休み時間にここまで来るの大変でしょ?」
「よっすぃーの為なら苦になんかならへんよ?」
アナタが苦にならなくても・・・・辻ちゃんが可哀想なんすけど・・・。
「ののは戻りたいのれす・・・・」
「何か言った?」
「い、いえ・・・・あいぼん、次は化学室に移動なのれもう行くれす」
「そうか。ほな、よっすぃーまたな〜」
「う、うん。またね」
明るく手を振る加護ちゃんと微妙に疲れた顔してる辻ちゃんを見送る。
「んぁ、モテモテだねぇ。よしこ」
「いや・・・モテたくない・・・。うちは梨華ちゃんにだけモテたいんだよ」
「でも、あの子さ、よしこしか見えてないって感じ?」
「・・・みたいだね・・・困るよ、ホント」
トホホと肩を落とす。ごっちんがぽんぽんと肩を叩いた。
「ま、あーゆー子はすぐ違う人見つけたらすぐそっちにいくから」
「早く見つけて欲しいよ」

授業中メールが届いた。先生に見つからないようにメールを見てみる。
<石川さんをちゃんと掴まえておいて下さい。 松浦>
は・・・?何でんな事言われなきゃいけないの・・・?
<何で?>
<だって、美貴さんの家に泊まってたんですよ?>
はぁ!?聞いてないし!
<どーゆー事?>
<知りませんよ。こっちも意味わかんないです!>

何だよ・・・梨華ちゃん・・・・。
やばいな・・・・梨華ちゃんが離れていってしまう。
美貴ちゃんに限ってそんな事は無いと思うけど・・・。
まさか・・・2人は・・・・2人は・・・・。

「よしこ、授業終わったよ?何固まってんの?」
「・・・・2人は・・・・・」
「は?」


657 名前:作者。 投稿日:2004/01/04(日) 21:38
(〜^◇^)<あけましておめでとうございます!今年も
       この物語をよろしくお願いします!!

>650 タケ様。
     あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします♪
     これからもいろいろありそうな感じです(w
     
>651 S様。
     ( ^∀^ノ<ただいまー!あけおめ!今年もよろしくな♪
     
>652 和尚様。
     ( ^∀^ノ<ただいま!めでたいな!今年もよろしくなー!
     市井さん、思う存分後藤さんに甘えてます(w

小川さん視点お初です♪
吉澤さん、パニクってるみたいですが・・・さてさてどーなるか。
次回は、加護ちゃん大爆発・・・です(w

     
658 名前:タケ 投稿日:2004/01/05(月) 18:36
おぉ!小川さんと紺野さんの昔話!
小川=カボチャですかw

吉澤さんもたいへんだ・・・加護さんに石川さんに・・・
いや、藤本さんの方が大変か?(なにせ松浦さry)
659 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/05(月) 22:11

 <石川 視点>

美貴ちゃんのおかげで何とか元気になれた。でも何だか亜弥ちゃんを怒らせて
しまい、美貴ちゃんに悪い事したなぁとちょっと反省。結局、美貴ちゃん家に
泊まった日、亜弥ちゃんは怒って帰って行ってしまった。
「ごめんね、美貴ちゃん」
「いや、いいよ。亜弥が分からず屋なんだから」
朝、学校へ行く。美貴ちゃんはバイトへ。今日は放課後に陸上部を覗いて行こうと思った。

そして放課後───。
コンコンと陸上部の部室をノックしてみる。中から「んぁ〜」と声が聞こえたので扉を開く。
「梨華ちゃん〜。どうしたの?」
ごっちんが漫画を手にして私を見て言った。
「ひとみちゃんは?」
「んとね、小川と走りに行ったよ」
なんだぁ〜・・・残念。しょげているとごっちんが椅子を出してくれた。
「待ってれば?もう帰ってくると思うし」
「じゃ、お邪魔します」
ごっちんは再び漫画に目を向けていた。私はカバンを膝の上にのせて椅子に座っていた。
「小川ー、紺野にもっとさぁ、陸上部のすばらしさをアピールしてこいよ」
「んな、無理ですよぉ〜」
「無理じゃない。出来たら購買のカボチャコロッケパン奢ってやるからさー」
「えぇ〜・・・・・頑張ってみますけど」
扉の向こうから会話が聞こえた。そして扉が開かれる。
「あ・・・梨華ちゃん」
久々に聞く声。
「後藤先輩!サボってないで部活しましょうよ」
「んぁー、これ明日返さないとさぁ、怒られるんだもん」
「漫画かいッ!ほら、早く〜」
「んぁ・・・小川、矢口先輩より厳しいよ・・・」
ごっちんは渋々立ちながら小川という子と部室を出て行った。この空間に私とひとみちゃん
だけになる。ちょっと緊張して手に軽く汗をかいた。
「あの・・・ひとみちゃん。ごめんね」
おずおずとひとみちゃんを見ながら言った。
私は笑って『いいよ』と言ってくれる彼女を期待していた。

「・・・・はぁ、わけわかんねー」

返って来た言葉は冷たくて胸に刺さった。




660 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/05(月) 22:26
「こっちの気持ちもわかってよ。うちは別に加護ちゃんに恋愛感情なんて持ってない。
 好きなのは梨華ちゃんだけだよ。それだけは変わらない。なのに、何さ?梨華ちゃん
 美貴ちゃん家に泊まったんだって?うちは必死に気持ち伝えてんのに。何でわかって
 くんないかなぁ?それともうちの事嫌になった?」

言葉は次々と私のココロに突き刺さる。

亜弥ちゃんから聞いたのかな・・・・美貴ちゃん家に泊まったこと。

「違うの、ひとみちゃん。あれはね」
「言われたよ、亜弥ちゃんに。『石川さんを掴まえておいて下さい』って。
 そっちが逃げてんじゃん。うちの事避けてんじゃん。掴まえようがないよ。
 どうしていいか・・・わかんないよ!」
ひとみちゃんはそう言って壁を殴った。
「ごめんなさい・・・・・」
涙が溢れ出てきて、やっと言えた言葉はそれだった。

そうじゃない、言いたい事はもっと違う。

「もう、いいよ・・・・」

ひとみちゃんはそう言って出て行ってしまった。私は声を出して泣いた。

もっと信じてれば良かったのに。
彼女を信じてれば良かったのに。

他の人に甘えた自分がすごく悔しい。彼女は1人で苦しんで悩んでた。

「離れていかないで・・・・ひとみちゃん・・・・」

661 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/05(月) 22:39

 <吉澤 視点>

「ちくしょー・・・・・何やってんだ」
頭がパニクっになって自分で何言ってるのかわからない状態だった。
傷つけてしまった、自分の大切な人を。

でも押さえきれず出てしまった言葉。

うちは部室を出て行って適当に歩いていた。校庭では小川とごっちんが走っていた。
「あれ?よっすぃーじゃん」
「あ、柴ちゃん」
帰ろうとしていた柴ちゃんに出会った。
「元気無いねぇ」
「うん。まぁね。そういえば部員が増えたんだって?」
「情報部の新入部員は全員で6名。まぁ上出来よ」
「部長としてもほっとしたでしょ?」
「まぁね〜。新垣って子が心配だけどね」
うちらは立ち話をしている状態になっていた。

「・・・・吉澤、先輩・・・?」

声をかけられた。誰だと思って振り返る。

「・・・・た、高橋・・・?」
「先輩・・・・」

過去の記憶が蘇える。

『先輩!優勝おめでとうございます!』
『さんきゅ。そっちも合唱部で優秀賞とったんだって?』
『はい。先輩が頑張ってたから私も頑張れました!』
『そっか。じゃ、お祝いでもするか』
『やったぁ!先輩の奢りですよね♪』
『生意気言うな!まぁ、安いモンならいいよ』

まだ恋愛もわかってないうちの前に現れた、可愛い後輩。

そう、あの頃は『恋』というものを知らずに知ってるふりをしていた。

662 名前:15.二度目の春。 投稿日:2004/01/05(月) 22:54
「この高校、受験したんだ・・・」
「・・・先輩に会いたかったから。どうしても」
「知らなかったな・・・県外で受けるんだと思ってたから」
「それは親が勝手に話してたんです。私は決めてました・・・・」
高橋愛という名前。人なつっこくて歌が上手くて明るくて可愛い。
「よっすぃーの後輩?」
柴ちゃんが遠慮がちに言ってきた。
「はい!私、高橋愛です。吉澤先輩とは2年前に付き合っていたんです」

そう、高橋とはうちが中3の頃、付き合っていた。

「つ、付き合ってた・・・?ホント?」
柴ちゃんが驚いて聞く。
「うん・・・まぁ・・・ね」
うちが言葉を濁した。
「つまり、元カノって事で?」
「うん・・・」
「梨華ちゃん、知ってんの?」
「・・・知らない」

急に現れた『元カノ』。

「吉澤先輩、私ともう一度やり直して下さい」

あの頃は知らなかったんだ。まわりに流されていたんだ。
『付き合って下さい』
顔を真っ赤にして告白する高橋を見て断れなかった。
『いいよ。うちなんかでよければ』
気付いたらそんな言葉を言っていた。

「高橋・・・・うちらは違うよ。間違ってたんだよ」
「そんな事無いですよ。上手くやれますよ」
「・・・・うちは、本気じゃなかった」
「私は本気です」

今でも変わらない真っ直ぐな視線。

うちはこの視線を避けられなかった。


663 名前:作者。 投稿日:2004/01/05(月) 22:59

>658 タケ様。
     (〜^◇^)<はーい、この方程式はテストに出ますよー!
     (●´─`)<出るわけないべさ。
     藤本さんは苦労人なので(w ガンバレ、ミキティ!

はてさて・・・・いしよし喧嘩に、元カノ登場!
加護ちゃんの存在が薄くなっていく・・・・。
小川さんと紺野さんの行方は如何に!?

何か・・・・波乱ばっか(w
加護ちゃん出番無くてごめんよ!次は出すから!
664 名前:タケ 投稿日:2004/01/06(火) 17:54
更新お疲れ様

>「・・・・はぁ、わけわかんねー」
一瞬誰かと思いましたよ・・・

しかも今度は高橋さん登場・・・と思いきや吉澤さんの元カノ!?
いろんなところでいろんな問題が・・・
作者さん、頑張れ!!
665 名前:和尚 投稿日:2004/01/06(火) 23:23
いろんなトコで修羅場発覚!
大変でしょうが見てる自分は楽しみだったりします(笑)
マターリと頑張って下さい。
666 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/07(水) 20:16

 『16.現在と過去の自分。』

 <石川 視点>

「んぁ!?梨華ちゃん!?どうしたの!?」
戻って来たごっちんは私を見て驚いていた。
「よっすぃーは?喧嘩したの?」
「・・・・私が、悪いから・・・・」
涙は収まりつつあった。

終わりたくない、と思った。

「行かなきゃ・・・・」
よろよろと椅子から立ち上がる私をごっちんは支えてくれた。そして部室を出て
あたりを見回した。すると遠くに私の愛しい人を発見した。
「柴ちゃんもいるね・・・でも、あの子誰だろ?」
ごっちんの言葉は私がココロの中で思っていたのと同じだった。私は走ってひとみちゃんの
元へ駆け寄った。梨華ちゃん!?とごっちんの声が聞こえた。

「吉澤先輩・・・・あの頃に戻りましょうよ」

聞いたこと無い声が聞こえた。

「・・・・ごめん、出来ないよ」

ひとみちゃんの声。

「ちょ、梨華ちゃん!」
ごっちんが私の腕を掴んで止まった。柴ちゃんがこっちに気付いて近づいてきた。
「あれ、よっすぃーの元カノだって・・・・」
「んぁ!?よっすぃーの元カノ!?」
またじわじわと涙が溢れ出してきた。ひとみちゃんが私に気付いて苦しそうな顔をしていた。
「梨華ちゃん・・・・」
私は辛くなってまた走り出した。当ても無く、学校を飛び出した。

667 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/07(水) 20:32

 <吉澤 視点>

「よっすぃー!何してんの!追いかけなきゃ!!」
ごっちんがうちの肩を激しく揺らして怒鳴った。高橋を見るとまだ真っ直ぐ私を見ていた。
「ちょっと!高橋さんだっけ?よっすぃーにはね彼女がいるの!元カノだか何だか
 知らないけど、あなたに勝ち目はないの!わかる?」
柴ちゃんが高橋に怒って言った。

だんだん2人の声が遠くなる。全て『無』になる。
耳元で怒鳴ってるごっちんの声さえ届かない。

過去の記憶がまた蘇えっていく。

『吉澤先輩、友達がね私達の事羨ましいって言ったんですよー』
『ははは、お似合いだって?』
『そうですよ!先輩、優しいし』
『可愛い彼女だしね』
『ヤダッ!先輩ったら〜』
登下校はいつも一緒で、デートもたくさんして、お互いの家に泊まったりして。
キスして、顔を赤くして、体も重ねて・・・・。

まさに、幸せなカップルだった。

誰からも羨ましがれるような2人だった。

何で、壊れたんだっけ────?


そう、満たされなかったんだ。

どんなにキスしても体重ねても、違うって思ったんだ。

何でそう思ったんだっけ?

「よっすぃー!!」
ごっちんの声で我に返った。冷や汗をすごいかいていた。
「大丈夫?急に倒れるんだもん」
うちはベットの上で寝かされていた。どうやら保健室のようだ。
「あ・・・梨華ちゃんはッ!?」
「柴ちゃんが追いかけて行った。さっき見つかったって連絡あったから、大丈夫。
 高橋さんは、帰しといた」
「そっか・・・・ごめん、迷惑かけて」
「それより!元カノの事とか、ちゃんとしなよ?」
「・・・・うん」
668 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/07(水) 20:46
しばらく休んでうちは家に帰った。わざわざごっちんが見送ってくれて、うちは
高橋との事を全て話した。
「・・・・どうも思い出せないんだ」
「何を?」
「・・・・別れた時の事。すっぽり抜けてて・・・」
「マジで?」
「・・・・高橋と付き合ってた時の事は覚えてる。何処行ったとか」
さっき記憶を失っていた時、夢を見ていた気がした。でも、思い出せない。
「・・・とりあえず、ゆっくり寝て。明日考えようよ」
ごっちんがそう言ってくれてうちは考えるのを止めた。家の中に入って部屋に
一直線に向かった。それから本棚に向かってアルバムを出した。
「写真はあったっけ・・・・?」
中学時代のアルバムはめくってもめくっても高橋との写真は無かった。
自分で捨てたのとかも思い出せない。でも高橋と写真を撮った事は覚えている。

何が起きたんだ・・・?

アルバムを戻してベットに寝転んだ。携帯を見ても高橋のメモリーは無かった。
消した覚えも無い。じゃ、いつ消えた?

「・・・・うちが好きなのは梨華ちゃん・・・梨華ちゃんだけ・・・・」

必死に梨華ちゃんの顔を思い出した。
そうしなきゃ壊れると思った。
梨華ちゃんの声、梨華ちゃん・・・・。

『ひとみちゃん!私ね、他に好きな人出来ちゃった!』
だ、誰・・・?梨華ちゃんの横にいる人は・・・?
『だからもう付き合えないの!ごめんね!』
嫌だよ・・・・いかないで梨華ちゃん!
『バイバイ、ひとみちゃん!』

「うわぁぁぁぁぁー!!!?」

がばっと起き上がるとそこは自分の部屋のベットの上。
いつの間にか眠ってしまったらしい。涙が流れていた。



669 名前:作者。 投稿日:2004/01/07(水) 20:49
何だかミステリー・・・・(ぇ
時間が無いためお礼レスは明日します。ごめんなさい。
加護ちゃん、矢口さん・・・いつだそう・・・。
670 名前:タケ 投稿日:2004/01/08(木) 16:34
更新お疲れ様
吉澤さんが大変なことに!?
忘れられた記憶になにが起こったんでしょう・・・気になる・・・
671 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/11(日) 13:03

 <後藤 視点>

よっすぃーの顔がやつれてきてる。あの『元カノ』が出てきてからだった。
あたしが聞く所によるとよっすぃーはその元カノ、高橋さんと別れた時の事を
覚えてないと言う。普通、そんな事があるのだろうか?

まさに、今のよっすぃーと梨華ちゃんの仲は悪くなる一方だった。

高橋さん、そしてよっすぃーにまとわりつく加護ちゃん。
よっすぃーと梨華ちゃんはずっとしゃべらない状態だった。

あたしはどうしてもあの先輩に会いたくなって高校から少し離れた大学へ
放課後、足を伸ばした。どうせ部活も続けられる状態じゃないから小川には今日の
部活は休みという事を昼休みに伝えておいた。
「・・・・来たのはいいけど、どうやって会おう・・・?」
大学の目の前まで来た。そこにはたくさんの人がいて、制服のあたしは私服の大学生
の中で妙に目立っていた。とりあえず矢口先輩にメールを送ってみた。

<ちょっと相談したいんだけど、今時間ある? 後藤>

ちょっと隅の目立たないとこで立って待っていた。すぐに返事は返って来た。

<いいよ!今何処にいるの? 矢口>

<大学の前だよ>

そうメールを送って5分後。矢口先輩は走ってやって来た。いつも制服かジャージ姿の
矢口先輩しか見てなかったから私服姿の先輩はちょっと新鮮に見えた。
「はぁはぁ、どうしたの?」
「・・・・どうしたらいいかわかんなくて・・・」
何か先輩の声聞いたら安心して涙ぐんだ。いつも問題を解決してきた先輩。

あたしはそんな風になれる?

親友を助けたい。でも人を傷つけたくない。

先輩なら、どうする?
672 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/11(日) 13:21
「どうした!?何か嫌な事でもあったの?」
「違う・・・・先輩の声、聞いたら・・・安心して・・・」
「・・・・そっか。じゃ、どっかあったかい場所いこ?近くにいい喫茶店あるから」
矢口先輩はあたしの手を引いて喫茶店へ連れてきてくれた。
「マスター!あったか〜い紅茶二つね〜!」
「はいよ〜」
「へへ、もう何回も来てるからマスターと仲良くなったんだ」
そう言って笑う矢口先輩。昔と何も変わって無かった。

テーブル席に座った。お客さんはあたし達の他には誰もいなかった。
クラッシク系の音楽がゆったりと店内に流れていてここの空間はとても居心地が良かった。
「っで?何があったの?ゆっくりでいいから」
紅茶が運ばれたとこで矢口先輩が口を開いた。あたしは今までの事を話した。
「誰も傷つけたくないよ・・・・」
そう、ぶっちゃけよっすぃーは梨華ちゃん一筋。加護ちゃんと高橋さんの気持ちは
何処にも行く当ては無い。よっすぃーも優しすぎるからはっきり言えない。
「・・・ごっちん、それは難しいよ」
矢口先輩は微笑んであたしを見ていた。
「・・・人に恋をする。それは時に自分が傷つく事もあるんだ」
「・・・傷つく事も?」
「ごっちんだってあるでしょ?紗耶香が急にいなくなったりした時とか」
「あぁ・・・でもその痛みと失恋の痛みは違うよ」
「そうかな?オイラは同じだと思うよ?だってどっちも相手を想ってるから痛みを
 感じるわけだし」
どうしてこの人はいつも納得のいく言葉を言うんだろう?
「先輩ならどうする?」
「・・・オイラがごっちんの立場だったら、何もしない」
「え!?」
「よっすぃーといつもと同じ日常を過ごしていく。授業受けて、休み時間は
 おしゃべりして、放課後は部活に励んで」
「・・・できないよ、あたしには」
「・・・オイラだったら笑う事を、忘れない」
そして先輩はすっと手を伸ばしてあたしの頬をつねった。
「今のごっちん、笑ってないんじゃないの?」
そういえばそうだ。あたしはこの所笑う事は無かった。市井ちゃんも最近、仕事で
忙しいからすれ違う生活が続いていた。
673 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/11(日) 13:33

 <柴田 視点>

衝撃的な事実を私は目の当たりにしていた。ここは情報処理の部室。
私の目の前にはパソコン。今日は極秘調査の為、部活は休みで私の他には誰も
ここにはいなかった。
「・・・どうゆう事?」
無意識に独り言を呟いた。

私はよっすぃーの『元カノ』の高橋愛さんについて調べていた。
とりあえず1年何組かどうか知りたかった。

「・・・・この学校には、『高橋愛』という人物は存在しない・・・!?」

でもあの子はうちの学校の制服を着ていた。これは確かな事だ。
なのに、この今年入学した1年生の全員のデータの中にはいなかった。
いないのだから住所も割り出す事なんか出来るわけなかった。
「・・・・おかしい。何であの子はわざわざうちの制服を着て学校にいたわけ?」
よっすぃーに気を向かせるため?
一旦パソコンを終了させた。ふぅと息を吐いた。
「・・・あの新垣って子。何か知ってるかしら・・・?」
ふと思いついた。あの元気で明るくて好奇心旺盛な新垣理沙。
私は教えてもらったメアドにメールを送ってみた。

<部長の柴田です。ちょっと聞きたい事があるんだけど、まだ学校にいる?>

返事は数秒で返って来た。

<図書館にいます!今すぐに行きますから! 新垣>

ガラガラッと扉が勢いよく開く。
「あ・・・すいません!ノックし忘れました!」
「・・・まぁいいけど。扉閉めて鍵も閉めてくれる?」
「はい!」

それから私はまた驚愕な事実を知ることになった。
674 名前:16.現在と過去の自分。 投稿日:2004/01/11(日) 13:50

 <松浦 視点>

「亜弥、まだ怒ってんの?」
「ええ、もちろんです」
ここは美貴さんの家。今日はバイト休みの美貴さん。
「じゃ、何でここにいるの?普通、怒ってたら来ないでしょ」
「・・・普通じゃないんです!」
「変なやつー」
あたしは怒っていた。あの日、美貴さんの家に石川さんがいるのを見た時から。
許せなかった。あたし以外の人を家に上がらせるなんて。
「ま、いいけど。勝手に怒ってなさい。あと明日はバイトがたて続けに入ってるから
 家にいないよ」
「え?」
「さてと、本屋にでも行こうかなー」
美貴さんはあたしの事をかまう事無く立ち上がって自分の部屋に入っていった。
あたしは慌てて追いかけた。
「ねぇ!何でそんなのんきなの!?」
「私は悪くないもん。友達家に連れてきて何が悪いの?」
・・・・何っでこの人は乙女心をわかってくれないんだろうか・・・。
それともあたしが変なのかなぁ・・・・。
「亜弥もいく?本屋」
「もぉいいです!帰ります!」
あたしは部屋を出てソファに置いてあったカバンを掴んで玄関に向かった。
「気を付けて帰れよー」
後ろからそう何でも無い声が聞こえてきて余計腹立たしくなった。
靴を履いて玄関の扉を勢いよく開けてバンッと閉めた。

「もう!何でわかってくれないのよ!!」
ずんずんと歩く。今のあたしは近くに誰かがいたら何かしそうな勢いだった。
なので誰もあたしのまわりにいる事は無かった。みんなあたしを避けて歩く。
「何よ!あたしが何かしたって言うの!?」
あたしの声に誰も返事はしてくれない。そりゃそうなんだけど。
疲れて立ち止まると視線を感じた。ふっと後ろを振り返る。

そこには、あたしと同じ制服を着てる女の子がいた。

その子は気味が悪いくらいに微笑んでいた。

「・・・誰?」

5メートルの距離があった。校章を見るとその子は1年生だった。
その子は微笑んで立ち去っていった。
「・・・何よ・・・?」
ちょっとゾッとして怖くなった。
「・・・何で笑ってたの?・・・」
目に焼き付いて離れない、あの子の笑顔。
あたしはすぐその場から離れたくて走って家に帰った。
675 名前:作者。 投稿日:2004/01/11(日) 13:59
(〜^◇^)<ミステリー小説かよ!

>664 670 タケ様。
         何だかいろんな問題が浮上してますが、謎はこれから
         明らかになっていきますよ。吉澤さんの記憶、高橋さんの
         実態・・・う〜ん、どうなる事やら・・・。

>665 和尚様。
         修羅場好きな作者(w 今はちょっとミステリーちっくですが。
         いしよしの運命は如何に!!?(ぇ

柴田さんが知った真実・・・・それは一体何なのか?
吉澤さんの過去とは?後藤さんはどうする?
高橋さんの実態は?石川さんの気持ちは?
加護ちゃんの片思いは?

(〜;^◇^)<ありすぎだろ!
(●´─`)<たまにはなっちも出たいべさ。
( ゚ 皿 ゚)<カオリモデタイナー♪
676 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/12(月) 21:45

 <吉澤 視点>

うちの精神的状態は不安定でたまに目眩がするほどだった。食事もあまり食べないで
睡眠も取れてないのだから当り前と言えば当り前。うちの前から梨華ちゃんがいなくて
苦しくて辛くて、でも会いに行く勇気も無くて。
「よっすぃー、大丈夫なん?うちな、お弁当作ってきてん。食べて?」
加護ちゃんが休み時間やってきて自分で作ったお弁当をうちに渡した。
「・・・ありがと」
こうゆう事は何回かあって、やっぱ食べなきゃ加護ちゃんが可哀想だと思って
無理矢理、胃に押し込んでいた。

高橋はたまにうちの前に現れる。

放課後とか、家に来たりとか。

ふらりと現れてはふっと消える。

うちは加護ちゃんのお弁当をカバンに閉まって次の授業はサボろうと思い屋上へ
やって来た。ベンチに腰かける。
「はぁ・・・・」
携帯を取り出してメールを見てみる。
梨華ちゃんからのメールはいつきたっけ・・・?
ぼーっと見ていると誰かの気配がした。すぐ顔を上げた。
「高橋・・・・今、授業中じゃ・・・」
「先輩がここにいるかなぁって来てみたんです」
高橋はにこにこ笑ってうちの隣に座った。風が軽く吹いた。
「・・・・先輩、覚えてます?こうやって二人で屋上で夕焼けみた事・・・」
「・・・・うん」
「初めて、キスしましたよね・・・」
「・・・・だからさ、何?」
嫌になってきたうちはベンチから立ち上がった。
「・・・戻りましょうよ。あの頃に」
「もういい加減にしてよ!うちはあの頃に戻るつもりはない!」
そう言い放ってうちは歩き出した。すると後ろから腕を強く掴まれた。
677 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/12(月) 22:00
ぞくっとした。あまりにも強く握られたから。
何か反射的に後ろに振り返った。

そして───何かが唇に触れた。

「たっ・・・高橋・・・?」
「先輩。私、先輩じゃなきゃ駄目なんですよ・・・」
高橋の顔目の前にあって、吸い込まれるような目をしていた。
・・・・今日は、そんなに寒いっけ・・・?
あまりにも高橋の唇が冷たかった。
「・・・・私と一緒にいて下さい。先輩」
「・・・・高橋・・・・」
高橋の目から視線がそらせない。身体が金縛りにあったみたいに動かない。
息が荒くなっていく。冷や汗が出てくる。
「いいでしょ?・・・先輩」

────何かがおかしい。

また記憶が────

雨が強く降り続く日。うちは進路の事で学校に残っていた。
『うわぁ、もうこんな時間かぁ』
時刻は午後6時を回っていた。早く下駄箱で靴に履き替えて傘をさして学校を後にする。
『・・・・高橋、どうしてっかな・・・』

高橋と別れてから数日後。

本気になれない事を申し訳なく思い、うちは別れ話を持ち出した。
高橋は放心状態でうちの話を聞いていた。
それから会ってない。

うちは雨の中、家に急いでいた。横断歩道が赤信号で渡れず立ち止まった。
すると向こう側に見覚えのある人物が立っていた。
『高橋・・・!?』
それは高橋だった。傘もささずにずぶ濡れで。
『先輩!私は先輩の事、愛してます!』
いきなり大声でそう叫ぶ高橋。まわりには人はいなく、車だけがうちらの前を
通り過ぎていく。
『私は本気なんです!一生先輩のそばにいたいんです!だから・・・』

うちの目の前で、ひとつの命が投げ出された。





678 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/13(火) 23:09
更新乙です。コンチキショー良いところできりやがって。次も待ってまつ。
679 名前:和尚 投稿日:2004/01/15(木) 00:20
切ない&ミステリー&ホラー・・・?
たかはしさんが怖いですー・゚・ヾ((Д`≡´Д))ノ・゚・
680 名前:タケ 投稿日:2004/01/15(木) 18:23
久しぶり(?)の矢口さん登場だ!・・・と思ったら・・・
高橋さんの謎が・・・一体何者?
続きがとてもきになるところですね
681 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/21(水) 18:15

 <柴田 視点>

「はぁ!?それどーゆう事ぉ!!?」
情報部の部室に私の声が響いた。目の前にいる新垣が驚いて私を見ていた。
「だから・・・言った通りなんですけど」
「いやいやいや・・・・だって・・・・嘘でしょ・・・?」

高橋愛は中学2年の時に事故で死んだ。

じゃぁ、私が見た高橋さんは?

「これは事実です。私、同じ中学でしたから・・・愛ちゃんとも仲良くて。
 死んだって聞いた時はホント信じれませんでした・・・」
「・・・・吉澤ひとみと付き合ってたのは本当?」
「はい。いつも一緒にいましたよ、あの2人。でも、別れた時はびっくりしました」

高橋さんはこの世にはいない。それはまぎれも無い真実であり事実だった。
私は幽霊だとかそうゆう話は信じないタイプなのだが、これは別だ。

・・・・だとしたら、よっすぃーの身が危ないんじゃ・・・。

「わかった。ありがと。もういいよ」
「はい。・・・あの、何かあったんですか・・?」
「・・・まぁちょっとね」
新垣を帰して私はカバンを持って部室を出た。もう1つの新垣の情報は高橋さんは
この学校を絶対入学するはずだった。例え親の反対を受けても。
「・・・そんなによっすぃーの事、好きだったんだ」
はぁとため息をついて廊下の窓に目をやるともう陽が沈んで暗くなりかけていた。
「あ、あゆみー。まだいたんだ?」
マサオが向こうからパタパタと走ってやってきた。
「・・・・マサオ、もしさ、マサオが死んだら幽霊になって私の前に現れる?」
「はぁ?何言ってんの」
「いいから、答えて」
「・・・ん、まぁ、やっぱねぇ、あゆみと離れるのは嫌だし」
マサオの顔が赤くなってちょっと面白かった。
「だよね、私もそうだもん」
「だから、何なんだよ?」
「とにかく、よっすぃー探すの手伝ってね」
682 名前:作者。 投稿日:2004/01/21(水) 18:18
やっとテストも終わり時間が出来たので更新です。
今から夕飯なのでまた後で更新します。お礼レスもその時にします。
お待たせしてすいませんでした!そして読んで下さってる方々、ありがとうございます!
では、またあとで。
683 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/21(水) 19:18

 <矢口 視点>

相談してきたごっちんを見送りオイラは自分の家に帰る。大学の生活も順調にきていて
なっちとは学科が違うからたまにしか会えないけど新しく友達も出来てきた。
気になるのはやっぱりあの高校にいる仲間の事だった。
ごっちんの相談にオイラは自分なりの気持ちを言ってみた。果たしてこれが正解なのかは
わからない。でも、あんな不安になってるごっちんは久々に見た。
しかもそれが紗耶香の事ではなく、よっすぃーに対してというのが驚いた。
「しっかし・・・気になるなぁ」
考えれば考えるほど心配になっていく。オイラの知らない所で起こっている何か。
ごっちんには普通でいればいいよとか言っちゃったけど、確かにそうするのは大変な事だと
気付いた。

ふいに携帯がなる。コートのポケットから携帯を取り出す。
「はいはーい、矢口でーす」
『矢口さん・・・・?』
「梨華ちゃん?」
『私、もぉ、駄目です・・・・』
次から次へと、一体ホントに何が起きてるんだ?
オイラは自分の家ではなく梨華ちゃん家の方へ歩き出した。
「すぐ行くから。待っててね」
『はい・・・すいません』
ピッと携帯を切って自分の家に電話する。今日は遅くなるから夕飯はいらないとお母さんに
伝えた。もうあたりは真っ暗でオイラは急ぎ足で歩いていた。

恋をすれば、傷つく事もある。
だから、楽しい事もあれば、悲しい事もある。
人を好きなる事はそーゆー事だ。

約15分で梨華ちゃん家についた。
「すいません、ホント」
「いいって」
梨華ちゃんの部屋に入ってコートを脱いだ。すると部屋の扉がノックされた。
「梨華。紅茶持ってきたぞ」
梨華ちゃんのお父さんがトレイに紅茶の入ったカップを乗せてやってきた。
「ありがとう、お父さん」
「じゃ、矢口さん。ごゆっくり」
「あ、はい」
パタンと扉が閉まる。
「うまくいってるね、お父さんと」
「はい、最近何か変わってきて。よく話をするようになりました」
トレイをテーブルに置く梨華ちゃん。オイラは適当に座った。
684 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/21(水) 19:32
「今日、ごっちんと会って、全部聞いたよ」
「そうですか・・・」
「よっすぃーの元カノねぇ・・・・驚いたよ」
「はい、私も・・・・」
紅茶を一口飲む。梨華ちゃんは黙って俯いていた。
「・・・・梨華ちゃんはよっすぃーの彼女なんだから。今、よっすぃーを
 支えるのは梨華ちゃんしかいないんだよ?」
「でも、私・・・自信無いです・・・」
「だからって別れるなんて嫌でしょ?よっすぃーが好きなのは梨華ちゃん。
 他の誰でもないよ。わかってあげなよ・・・よっすぃーの気持ち」

何か、元カノの高橋さんも加護ちゃんも・・・そして梨華ちゃんも。
みんな自分の気持ちをよっすぃーに押し付けてばかりだと思った。
誰もよっすぃーの気持ちをわかってない。
だから、よっすぃーは苦しんでる。

「明日、大学終わったら学校に行くよ。言いたい事がみんなにあるし」
「・・・・はい・・・」
「梨華ちゃん。もう1度ちゃんと考えて、よっすぃーの事」
オイラはコートを着てカバンを持って部屋を出た。中から梨華ちゃんの泣き声が聞こえた。
でも今のオイラにはどうする事も出来なかった。それが、悔しかった。
玄関に行って靴を履くと梨華ちゃんのお父さんが来た。
「お帰りですか?」
「あ・・・はい。お邪魔しました」
「よく梨華は矢口さんの話をするんですよ。いい先輩だって」
「・・・あはは、恥ずかしい」
「ホント感謝してます」
優しい目をしたお父さんだった。

でも、梨華ちゃんを変えたのはオイラじゃない、よっすぃーだ。
梨華ちゃんにはよっすぃーがいなきゃ駄目なんだよ。

だから2人を別れさせるわけにはいかない。

例え他の誰かが傷ついても。
685 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/21(水) 19:59

 <後藤 視点>

朝起きると市井ちゃんが朝ご飯を作っていた。
「市井ちゃん?」
「おう、おはよー。今作ってっから。顔洗ってこいよー」
最近、あたしは学校で市井ちゃんは仕事が忙しくてすれ違いの生活をしていた。
あたしは顔を洗って戻って来た。
「市井ちゃん、何時に帰ってきた?」
「あー、4時くらいだったからなぁ」
「全然寝てないじゃん、いいよ。あたしがやるから」
「いいって。たまには2人で食べたいから」
久々に見た感じがする市井ちゃんは仕事の疲れも見せないほど爽やかな笑顔だった。
朝ご飯を2人で食べるのはホント久しぶりで楽しかった。
「休みとれたらどっか行こうな」
「市井ちゃん、どうしたの?妙に優しいじゃん」
「私はいつでも優しいんだよー」
「・・・・じゃぁ、遊園地」
「わかった。約束する」
市井ちゃんに見送られて家を出て学校へ向かった。空は曇っていて雨が降りそう
だったのでもう1度家に戻って折りたたみの傘を持って再び家を出た。

教室に入るとよっすぃーはもう来ていて席に着いていた。
「おはよ、よっすぃー」
「・・・・あ、おはよ」
「反応が遅いよぉ。寝ぼけてんの?」
「・・・あぁ、そーかも」
「今日、数学当たるよ。何もしてない」
「ノート見せようか?」
「いいよー自分でやんなきゃ意味ないし」
「何か変わったねごっちん。前なら飛びついてきたのに」
よっすぃーが笑う。それを見てあたしも笑う。
「失礼だなー、飛びついてなんかないよぉ」
こうしてまた1日が始まっていく。

2時間目を過ぎた頃、雨が降り出した。それは強くて当分止みそうになさそうだ。
よっすぃーを見ると思いつめた表情で窓の外を見ていた。
・・・・どうしたのかな。
気になってけどあたしは黒板の方を見てシャーペンを走らせた。
686 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/21(水) 20:15

 <柴田 視点>

腫れた目をして梨華ちゃんが登校してきた。気になってけど触れないでおこうと思った。
「マサオ、今日英語当たるからノート見せなさい」
「命令形かよッ!残念でした、マサオもやってませーん」
「・・・・もう、役に立たないわね」
「ひっど!だいたい私は当たんないんだよーだ」
「駄目ね。予習はちゃんとやらないと」
「自分やれよ!」
いつもの漫才も梨華ちゃんは笑わない。これは重症だ。
「雨、止みそうにないね」
梨華ちゃんがポツリと呟いた。

昨日は結局よっすぃーを見つけられなかった。メールを送っても返事は無し。
今の梨華ちゃんによっすぃーの事は聞けなかった。

とにかく、もう終止符を打ちたい気持ちだった。
こんな梨華ちゃんは見ていられなくて、でもどうしていいかわからなかった。
また前みたいに戻りたい、そんな気持ちでいっぱいだった。
「あゆ、どーすんの?」
マサオにはもう全てを話していた。
「・・・・今はまだ駄目」
「んな事言っても、事態は変わらないと思うよ」
「・・・だとしても、もうちょっと」

誰かに助けて欲しかった。

そう、あの小さな先輩に────

687 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/21(水) 20:33

 <矢口 視点>

「うわぁー、降ってんなぁ」
オイラは学食でなっちとお昼をしていた。
「止まないみたいだね」
「あーぁ、今日学校行くのに」
「え?そうなの?」
「うん。ちょっとね、用事があって」
「なっちも行きたいけどレポやんなきゃ」
「大変だね。オイラはまだ提出先だから」
お昼時間が終わり午後の講義を受ける。雨は講義室に響くほど強かった。

講義が終わって大学を後にしようとする。
「矢口ー、帰るの〜?カラオケ行かない?」
大学の友達に声をかけられた。
「ごめん!用事あるからまたねー」
また急いで学校へ向かった。雨は少しだけ弱くなりつつあった。
学校へはすぐに着いた。とりあえず梨華ちゃんの所へ行こうとした。
「なんや、矢口やんか」
「裕ちゃん。久しぶり〜」
「雨の中ご苦労やな」
「ちょっと用事があってね」
「裕ちゃんに会いに来たんやないん?」
「違いますぅー」
「寂しいやんかぁ」
裕ちゃんとそこそこに会話をして3年の教室へ行く。
「梨華ちゃーん・・・?」
教室はしんとしていて誰もいなかった。
「あ、矢口さん!」
「柴ちゃん。あのさ、梨華ちゃんは?」
「・・・・それが、大変な事になっちゃって。と、とにかく来て下さい!」
腕を引っ張られて柴ちゃんの後についていく。

連れてかれたのは屋上。屋上の入り口には加護ちゃんやごっちんがいた。
心配そうな顔でオイラを見ていた。

何が起こってるの?

オイラは入り口から外を見た。

そこには、とんでもない事が起きていた。
688 名前:作者。 投稿日:2004/01/21(水) 20:44

>678 名無し飼育さん様。
     お待たせいたしました!今回も気になるとこで終わっちゃったんですが、
     次もすぐに更新しますんで(^−^

>679 和尚様。
     今回は高橋さん出てませんが、彼女とんでもない事しでかします。
     次回はミステリーとホラーでお送りしたいと思います(^−^

>680 タケ様。
     だんだん高橋さんの正体がわかってきました(^−^
     何だか・・・・ミステリー(ぇ

はい、更新です。
人がたくさんいるとちょっと書くのが大変なんだなと思った今日この頃。
次回で解決すればいいんですが・・・・どうだろう・・・(^−^;
689 名前:ヤグヤグ 投稿日:2004/01/22(木) 23:34
更新乙です
それにしても作者さんは毎回いいとこで切るなぁ
いつも次回が待ちきれません
待ってます、頑張って下さい
690 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/23(金) 21:44
何が起きてるのか理解出来なくて、頭の中が真っ白だ。

言葉を失うってこーゆー事なのかな。

「矢口さん、あの子。もう亡くなってるはずなんですよ。事故で」
柴ちゃんが後ろから声をかけた。あの子というのは高橋さんの事だろう。
「まぁ、自殺なんですけどね・・・」
雨の音がやけに耳に響く。オイラはそんな中柴ちゃんから詳しい事を聞いた。
「・・・・なるほど、ね」
「言っちゃえば幽霊ってとこですね・・・」
「わかった。オイラが何とかする」
オイラがカバンを柴ちゃんに預けて屋上に出ようとした。
「んぁ・・・先輩」
「ごっちん。大丈夫だよ。よっすぃーは必ず助けるから」
言うとごっちんは小さく頷いた。

目の前に広がってる光景。

梨華ちゃんの背中が見える。その向こうには高橋さんとよっすぃーが、
屋上のフェンスの向こうに立っていた。

ゆっくり梨華ちゃんのとこまで歩く。

「梨華ちゃん、オイラだけど」
「矢口さん・・・」
梨華ちゃんもびしょ濡れでオイラも同じだった。
「柴ちゃんから全部聞いた。きっとあの子はよっすぃーを自分のとこに
 連れて行こうとしてる」
梨華ちゃんの頬には雨と混じって涙が流れていた。オイラは梨華ちゃんの手を
強く握って微笑んだ。
「大丈夫。絶対大丈夫だから」
そうココロを込めて言った。すると少しだけ梨華ちゃんの顔から不安が無くなった。
オイラは手を離して高橋さんを見た。睨むんじゃなくて真っ直ぐ見た。
そしてまた歩く。雨のせいで服が濡れて張り付く。
よっすぃーを見ると焦点の無い目をしていた。

「あなた誰?」

「・・・・オイラは矢口真里。覚えておけ」


691 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/23(金) 21:59
「矢口さんね、何か用ですか?」
高橋さんはにこっと笑った。それが不気味に見えた。
「そこにいるよっすぃーを返してくれないかな?大事な仲間なんだ」
「大事な・・・・仲間・・・ですか」
オイラはフェンスのとこまで来た。
「私にとっても大事な人です。お渡し出来ません」
そう言い返されて、オイラは黙った。

「勝手な事言わないで!!あなたが元カノだろうが何だろうが
 私にはひとみちゃんが必要なの!失いたくないの!」

梨華ちゃんの声が雨の中響いた。

オイラはその時、見たんだ。よっすぃーの左手がぴくんと微かに動いたのを。

「嫌ですよ。吉澤先輩と私はずっと恋人同士なんです。そりゃ、喧嘩のせいで
 うまく行ってなかったけど、今はそんな事ないです」
高橋さんはよっすぃーの手を握って微笑む。
「先輩、これからは離れませんよね。ずっと一緒ですよね」

ねぇ、よっすぃー。

あなたの意思は何処にあるの?

「・・・・ふざけんじゃねぇー!!!!」

オイラは声の出る限り叫んだ。
もう爆発した。

「何がずっと一緒ですよね、だよッ!勘違いしてんのわかんないの!?
 気持ち押し付けて!よっすぃーを困らせて!そんなんでよく恋人だとか
 言えるよな!恋人って言うのはなぁ!相手の事を想いやれるから恋人に
 なれるんだよぉ!!!!」

一気に言ったら息がきれた。はぁはぁと肩で息をした。雨が口に入る。

「私は・・・・ちゃんと吉澤先輩の事、想ってますよ!」
「違う!それだけじゃ駄目なんだよ!相手も自分の事、想ってくれなきゃ
 駄目なんだよ!いい加減わかれよ!」


692 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/23(金) 22:10
オイラはフェンスをよじ登って向こうに行った。

「おい!吉澤ぁ!お前はどうしたいんだよ!?お前の好きな人は誰なんだよ!?」

よっすぃーの腕を揺さぶって叫ぶ。すると高橋さんに引っ張られて突き飛ばされた。
背中がフェンスに激突した。
「やめて下さいよ!」
「吉澤!答えろ!お前が好きなのはあそこにる石川梨華だろぉ!」
「違いますよ!」
「お前は黙ってろ!」
「黙りません!」

よっすぃーの手が動いた。ゆっくりと拳を握るように。

そして顔が動いてオイラを見た。

「・・・・矢口、先輩・・・・?」
「・・・早く気付けよな」

よっすぃーがこっちに向かってきた。

「もっかい聞くぞ!お前が好きなのは誰だ!?」

「・・・・・そこにいる梨華ちゃんです」

「もっとでっかく!梨華ちゃんに聞こえるように!」

「・・・・石川梨華です!!!!」

・・・・梨華ちゃん、聞こえた?
ちゃんと信じてれば、それでいいんだよ。

きっと答えは出るから。

693 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/23(金) 22:20

 <吉澤 視点>

気付いた時は何故か屋上にいて、雨でびしょ濡れだった。

うちは全てを思い出した。

高橋がトラックに跳ねられて死んだ事を。

ここにいるはずがない事を。

何故、アルバムに写真が無い事、携帯のメモリーが消えてる事。

うちが全部やったんだ。あの日に。

高橋が飛び出してトラックに跳ねられた日。うちは怖くなってその場から逃げ出した。
高橋の執着心が怖かったんだ。だから必死に傘投げ捨てて走った。
家に帰って高橋の全てを消したんだ。写真を燃やして携帯を壊して。

『・・・・うちが・・・・殺したんだ・・・・』

高橋は───うちのせいで死んだ。

一心不乱に高橋の全てを消した後、うちは高熱を出して倒れた。
40度の熱が何日か続いて、病院に入院して、退院した。

それからうちは自分の中で『高橋 愛』という少女を消し去った。

その罪が今きたのかな・・・・。
うちが逃げたから、消したから。

許してくれるわけないと思う。

高橋、うちは高橋の事愛してなかったんだよ。

その罰はどんなに大きいものかうちは今知ったんだ。
694 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/23(金) 22:28
・・・・・罰は受けないとね。

隣を見ると高橋が笑顔でうちを見ていた。
それで高橋がいいのなら、うちは何も言わない。

『先輩、一緒に行きましょ?』

差し出された手をうちは握ろうとした。

その時だった。

「勝手な事言わないで!!あなたが元カノだろうが何だろうが
 私にはひとみちゃんが必要なの!失いたくないの!」

あれ・・・・この声・・・・。

何か忘れてる。うちには大切な何かがある───

「おい!吉澤ぁ!お前はどうしたいんだよ!?お前の好きな人は誰なんだよ!?」

・・・・・そうだ、うちには愛する人がいるじゃんか。

向こうを見ると矢口先輩、梨華ちゃん・・・・その向こうにはごっちん。

うちは高橋の手を握らずその手を拳にした。

「・・・・うちには、大切な、大事な人がいる」

その時、完全に目覚めた。


695 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/23(金) 22:43

 <後藤 視点>

何だか見てられなくなって屋上に出てきた。雨で全身びしょ濡れだけどそんな事
どーでも良かった。梨華ちゃんの後ろまで来て立ち止まった。
「ひとみちゃん・・・戻ったの・・・?」
さっきよっすぃーの声が聞こえた。
「みたいだね・・・」
あたしは小さく呟いた。それだけで精一杯だった。

これで終わったと思ったのに。

まだ終わってなかった。

あたし達はフェンスのとこまで小走りにやってきた。

「・・・・・何もかも、狂った・・・・許せない!」

いきなり高橋さんが叫んだ。ポケットから小型ナイフを取り出して。
そのナイフは完全によっすぃーに向けられていた。そして走ってよっすぃーに
体当たりしようとした。

「嫌ー!!!!」

梨華ちゃんが叫ぶ。全てがスローモーションに見えた。

雨の音も聞こえない。

全てがモノクロになる。

「・・・・だぁ、かぁ・・・ら、よっすぃーはお前の事・・・愛してないんだよ・・・」

あたしは目を見開いた。よっすぃーを庇って矢口先輩がナイフを両手で握っていた。
赤い血が流れるのが鮮明に見える。

「・・・いい加減・・・気付けよ・・・・お前は・・・死んでるんだよ・・・」

「矢口先輩!!!」

よっすぃーは矢口先輩に突き飛ばされたのか倒れていた。
すぐに起き上がるけどどう動いていいかわからなかったようだ。

「・・・私はぁ・・・・好きなだけなのに・・・」
「・・相手の事、想ってんなら・・・・相手が1番幸せだと思う事を・・・」

ゆっくりと高橋さんの手が離れる。ナイフが落ちた。

「・・・・私は・・・・」

高橋さんが背中から、ゆっくり落ちた。

しばらく誰も動けなかった。
696 名前:作者。 投稿日:2004/01/23(金) 22:46

>689 ヤグヤグ様。
     ありがとうございます(^−^
     何だか気になるとこできってばかりで、頑張って書きます!
     次回も見て下さいね〜!

ふぅ・・・何だか、今回はすごかった(^−^;
矢口さん頑張れ!って感じで書いてますた。
次回は平和でいきたいなぁ・・・。
697 名前:タケ 投稿日:2004/01/25(日) 16:41
更新お疲れ様でした

今回は確かにすごいですね(w 重いと言うかなんと言うか・・・
とにかく圧倒されました

高橋さんはどうなってしまうんでしょう
698 名前:16.現実と過去の自分。 投稿日:2004/01/25(日) 22:01

 <吉澤 視点>

我に返ってすぐに屋上を見下ろした。下のコンクリートの何処にも高橋の姿は無かった。
「天国に逝ったんじゃないの?」
後ろから矢口先輩の声がして振り返った。
「先輩!手は!?」
矢口先輩はうちを庇ってナイフを握り締めた。早く止血をしないと大変だ。
「・・・何かさ、怪我が無くなってるんだよね。不思議な事に」
両手を上げて見せてくれる。確かにそこに怪我は無く、血も流れてなかった。
気付くとナイフもない。
「痛かったんだけど、切り傷ぐらいの程度でさ。全部幻だったのかねー」
のん気に先輩はそう言って立ち上がった。フェンスをよじ登ってみんなの方へ行く。
うちもフェンスをよじ登って梨華ちゃんのとこへ向かった。
「・・・もう、すごい心配したんだから」
梨華ちゃんは泣き顔でそう言った。
「ごめん。もう心配かけないから。絶対泣かさないから」
そう言って強く抱きしめた。
「おーい!そこのバカップル!先行ってるぞ〜!」
矢口先輩が手を振っていた。ごっちんは笑顔でうちらを見ていた。
気付くと雨は止んでいて、雲の隙間から光が差し込んでいた。

『・・・・ごめんなさい。先輩。幸せになって下さいね』

かすかだけど、空耳かもしんないけど、高橋の声が聞こえた。

・・・・うん。絶対、幸せになるよ。

「ひとみちゃん?」
「え?あぁ、行こっか。全身びしょ濡れだねー」
「人に見られたら不思議だと思うよね」
「早く帰って着替えなきゃ」

うちらは手を繋いで歩いた。離れないようにしっかり彼女の手を握り締めた。
過去の自分に捕われていた。ずっとココロのどっかで後ろめたい気持ちがあった。
だけどもう後ろは見ない、前を見よう。

うちの隣には一緒に歩いてくれる大切な人がいるんだから。

きっと大丈夫。

「梨華ちゃん、ごめんね。部室で怒鳴って」
「いいよ。私も悪かったし、ごめんね」
「これで仲直りだね」
「うん!」

幸せになろう、絶対に。

699 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/25(日) 22:24

 『17.彼女の笑顔。』

放課後、部活で校庭を走っていた。先輩達2人は何故か仲良く風邪をひいて学校を
休んでいた。話を聞く所によると雨でびしょ濡れになったせいらしい。
「・・・・1人じゃつまんないよぉー」
走るのをやめて歩き出す。部活は1人だと寂しいし、つまんない。
あぁーあ、あさ美ちゃんがいればなぁ・・・。
ふと思い出すのは彼女の顔。今日も真面目に授業を受けていた。
「そーいえば、今日は図書館に行くって言ってったっけ・・・」
掃除をしてる時、あさ美ちゃんが言ってたのを思い出した。
「行っちゃおっかなー♪」
走って下駄箱に行く。特に図書館自体には用はないのだがあさ美ちゃんがいるとなれば
用はある。ウキウキな気分で上履きを履いて図書館に向かう。
「あ、まこっちゃん」
「おー、里沙ちゃん。もう帰り?」
「うん。まこっちゃんは?何処行くの?」
「ちょっと、用事があってね。じゃーねー!」
友達の里沙ちゃんに手を振って廊下を走り出した。図書館はもうすぐだ。
・・・・ジャージ姿じゃ目立つかな・・・。
図書館の中を覗くとみんな制服姿。ジャージ姿の私は目立つ気がした。
・・・あ、いた。
お目当ての人を見つけて目立つ心配も吹き飛んだ。扉を開いて中に入る。
しんと静かな図書館は本を捲るかすかな音しかしなかった。適当に本を選んで
あさ美ちゃんに近づいた。
「・・・まこっちゃん。あれ?部活は?」
まわりの迷惑にならないように極力声を潜めてあさ美ちゃんは言った。
「先輩いなくてさ、つまんなくて」
私もあさ美ちゃんを見習って声を潜めた。
「いいのー?サボっちゃって」
「いいの」
あさ美ちゃんは数学の宿題をやっているようだ。私は隣に座ってさっき選んだ本を
開いて読み始めた。だけど隣にいるあさ美ちゃんが気になって本の内容は全然頭に入らない。
「・・・・何読んでるの?」
「え?あ、恋愛寫眞ってやつ・・・何か目に入ったから」
「あ〜、私も読んだよ。それすごいいいよ」
「そーなんだ。じゃ、借りて読もうかな」
意外だった。あさ美ちゃんがこうゆう恋愛系の本を読むなんて。
私はこの本を借りて家で読む事にした。
700 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/25(日) 22:38
「じゃ、部室戻って着替えてくるよ」
「うん」
勉強を切り上げたあさ美ちゃんと共に図書館を出た。ホントは一緒に帰りたかったけど
一度部室に戻って制服に着替えなければならない。部室に戻って制服に着替える。
マフラーをしてカバンを持って部室を出た。空はもう暗くて寒かった。
吐く息が白くなって面白くてそれで遊んでいた。昇降口の前を通り過ぎる。
「・・・あ、れ?あさ美ちゃん!?」
そこにはカバンを持ってるあさ美ちゃんがいた。驚いて慌てて駆け寄る。
「帰ったんじゃなかったの?」
「同じ帰り道だから、一緒に帰ろうと思って」
「も〜、寒かったでしょ?」
私は自分のマフラーを外してあさ美ちゃんの首に巻いてあげた。
「え、いいよ。まこっちゃん寒いでしょ」
「いーから!私はこんぐらいじゃ平気なの」
「・・・じゃ、何でマフラー巻いて・・?」
「た、たまたま持ってたから!ほら、帰ろう」
思わぬ出来事にココロの中では嬉しくてたまらなくて小躍りしたいくらいだった。
「まこっちゃんって面白いね」
「・・・それっていいんだか悪いんだか」
「いい事だよ」
横を見ると微笑むあさ美ちゃん。それにちょっと釘付けになってしまった。
・・・・か、可愛い・・・。
やっぱ笑顔が一番いい。笑わなきゃ人生損してる。先輩の受け売りだけど。
「陸上、おもしろい?」
「うん!先輩達もいい人だし、楽しいよ」
「へぇ〜」
2人で歩く帰り道。家に着きたくなかった。
「あさ美ちゃんも入ればいいのにな・・・」
「私は駄目だよぉ。時間無いし」
一緒だったらどんなに楽しいだろう。今よりも何百倍も楽しいはず。
それのためだったら嫌いな英語も頑張るのに。
「じゃね、また明日」
あさ美ちゃんの家に着いた。私の家はもうちょっと先にある。
「うん。またね」
私は名残惜しく自分の家に向かって歩き出した。
701 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/25(日) 22:53

 <藤本 視点>

ピンポーンと呼び鈴がなる。見ていたDVDを止めて玄関に向かった。
ガチャっと扉を開けるとそこには一方的に怒っていた彼女がいた。
「・・・何、どうしたの?」
話かけても亜弥は何も言わず俯いていた。
・・・・ははーん、謝りにきたわけだ。
何しにきたかわかった私はニヤリと笑った。
「用がないなら閉めるけどー」
そう言うとすぐに亜弥は顔を上げた。
「あります!用あるから・・・・」
「っで、何?」
「・・・その、・・・謝ろうかなーって思って」
「ふーん」
「・・・・・」
「早くしないと閉めるよ。暇じゃないんで」
「・・・・ごめんなさい・・・」
そう言うと亜弥はポロポロと泣き出した。
やべっ、意地悪くし過ぎたか。
「ごめんなさいぃ〜・・・・」
「わ、わかったから。中入りなよ、ね?」
泣く亜弥を家の中に入れて扉を閉めた。するとぎゅっと抱きつかれた。
「ごめんなさい・・・」
「もう、いいから。私の方こそごめん」
抱きしめ返すと安心したのか亜弥の涙が止まった。
・・・ったく、可愛いんだから。困ったもんだ。
離れて軽くキスをした。その感触が久しぶりでたまらずもう1度。
「何してたの?」
「ん?映画見てた。でも亜弥が来たから続きはいいや」
「えー、せっかく見てたんでしょ?もったいないよ」
「それより、こうしてたいから」
そう言ってまた唇を重ねる。
「・・・・寂しかった?」
「・・・うん」
「じゃ、今日はずっとこうしてよ?」
「・・・いいよ」
私も正直寂しかったから、亜弥が来てくれた事がすごい嬉しくて。
久々に感じるぬくもちが心地よかった。
702 名前:作者。 投稿日:2004/01/25(日) 22:57

>697 タケ様。
     圧倒されましたかー。多分今までの中で一番重いような気がします。
     高橋さんの出番はもう無いです(^−^; いやはや。
     
今回は平和にしてみました(w 小川さんSPのような・・・・。
今日はなっちの卒業でしたが、1回も出て来ず・・・・ごめんよ、なっち。
703 名前:タケ 投稿日:2004/01/26(月) 02:26
更新お疲れ様っす

高橋さん・・・成仏できてよかったです
いしよし、あやみきの仲も復活したようで・・・羨ましい(w

小川さんの動きも気になるところ・・・



スレ違いですが・・・
(●´ー`●)ありがとう

704 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/26(月) 22:18

 <安倍 視点>

大学での生活も徐々に慣れてきて順調に進んでいた。新しく友達も出来た。
新しい世界に入るのも悪くないなと思ってきた。何もかも新鮮に見えるから。
だけどたまに『あの頃』に戻りたいという気持ちもあった。矢口や圭織と過ごした
日々。くだらない事で大笑いしていたあの頃。
「・・・・ま、思い出は大切にしとくっしょ」
そう思って前に進む。前に進めるのは思い出があるから。

────土曜日の午後。
レポ提出も終わり時間的に余裕があった。
「もぉ、何で雨の中びしょ濡れになってー」
私は矢口の家に来ていた。詳しく言えばお見舞い。
「あははー、まさか風邪ひくとは思ってなかった」
メールで<風邪ひいた。しんどいからお見舞いに来てー。 やぐっち>と言われ
普通、自分でお見舞いに来てとか言うかなーって思いながらケーキを買ってやって来た。
本人は何だか元気そうで何処かしんどいか全然わからない。
「大体ね、びしょ濡れになったらすぐ家に帰んなさいよ」
「いやぁ、どうせなら雨の中をエンジョイしようと思ってねー」
・・・・何がエンジョイなのさ。
私は気づいていた。矢口が嘘ついてる事。矢口は嘘を付くとき目を絶対見ない。
大体、矢口は素直過ぎるから嘘を付いたってすぐに見破れる。
言いたくない事なんだろうか、でも私は矢口が話してくれるまで待とうと思った。
「あ!そうそう!圭織からさぁー、今日手紙が届いたんだ!」
ケーキを食べていたパジャマ姿の矢口はフォークを置いて立ち上がった。
「手紙?」
矢口は机の上に置いてあった手紙を持ってニコニコしながら私のとこへ来た。
手紙を差し出されて私はそれを受け取った。
「何かね、楽しいみたいだよー。友達も出来たってさ」
私は封筒の中から便箋の紙を取り出して読み始めた。

矢口そしてなっちへ。

元気?私、飯田圭織は元気です。絵の勉強も順調に進み、今は詩の方にもチャレンジ
してます。もうこっちにきてだいぶ経つけど、みんなと過ごした思い出をいつも思い
出しています。やっぱり、ものすごく会いたくなる時があるよ。だけど今は出来ない。
思い出を支えに夢を追いかけるよ!そっちの方はどう?矢口がまた暴走してないか
心配です。その時はなっち、よろしくね。

705 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/26(月) 22:34
あ、そうそう。今年の夏に日本に帰れるかもしれないからその時にまた
会いましょう!矢口のバカ笑いとなっちの天使な笑顔を楽しみしてます(笑)。
では、体に気を付けて大学生活をエンジョイして下さい!

                  飯田圭織より。

「圭織・・・頑張ってるね」
「っつーかさ、矢口のバカ笑いってなによ?なっちは天使な笑顔なのに」
「間違ってないよ〜。矢口って笑う時、ホント大笑いしてるよね」
「本気で笑うんですぅ!」
私は笑いながら便箋の紙を封筒に閉まって矢口に返した。
「ま、早速圭織の『体に気を付けて』を破ってるけどね」
「仕方ないんだよぉ〜。風邪ばっかにはさすがのオイラも勝てないわ」
矢口はケーキを食べ終え、テーブルの上に置いてある体温計を手に取った。
体温計を脇に挟んでしばし待つ、しばらくするとピピピと体温計がなった。
「何度?」
「・・・・38.4度」
「はぁ!?熱あるのにケーキ食べちゃ駄目じゃん!早くベットに入んなさい!」
「はぁ〜い・・・」
矢口は渋々ベットの中に入った。私は矢口も寝るだろうと思って立ち上がった。
コートとカバンを持って帰る支度をする。
「え!?帰んの!?」
「うん。・・・だって、矢口寝るでしょ?」
「え〜・・・・嫌だぁ〜」
「・・・子供じゃないんだからさぁ」
矢口は私のスカートの裾を引っ張る。
・・・・こんな大学生、見たことないべさ・・・。
仕方なく、ベットの脇に座った。
「じゃ、話してくれる?」
矢口の目を見て言った。
「何を?」
「嘘付いてんのバレバレなんだわ。何があったの?」
「・・・・バレバレ?」
「うん。バレバレ」
「・・・・・・・・・レバレバ?」
「面白くないから」
やっぱり気になって聞いてしまう私だった。
706 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/26(月) 22:54

 <市井 視点>

「・・・・完璧に風邪だねぇ。ま、おとなしく寝てなさい」
朝、後藤を起こしにいったらいつもと何だか顔色が違ったのでおでこを
触ってみると熱かった。熱を測ると38度あった。
「傘がなきゃ電話しろよ。迎えに行ったのに」
昨日、後藤がびしょ濡れで帰って来た。
「・・・・だってー」
「昨日何が起きたかはわかってるけど、帰る時に連絡すればこんなひどい状態に
 ならずに済んだかもしれないのに」
「・・・・ごめんなさい」
昨日、何があったのかは後藤から全て聞いた。全くミステリーな事もあるもんだと思った。
後藤のおでこに冷えピタを貼って、水枕を作った。とりあえずおかゆを作って食べさせ
風邪薬を飲ませた。
「これで寝ればよくなると思うから。それでもひどいようなら明日、病院行こうな」
ベットの脇に座って後藤の頭を撫でる。
「学校には連絡しとくな。んじゃ私は仕事行ってくるから。寝とけよ」
「んぁ〜・・・」
「行ってきます」
私は後藤の部屋を出て仕事に行く支度をした。休みたいが今日はどうしても無理だった。
早退出来れば、したいがそれも難しかった。気になるが家を出て鍵を閉めた。

駅に向かいながら学校に電話をかけて欠席を伝える。
「あ、2年の後藤の保護者ですが」
『紗耶香やんかー。後藤がどうかしたんか?』
「裕ちゃん。あのさ、後藤熱出して、今日休むから」
『全く、風邪流行ってんのかいな。吉澤も石川も今日休みなんよ』
「あ〜・・・・」
昨日後藤が言った事を頭によぎった。まぁ、あんな雨の中いれば誰でも熱は出すもんだ。
『ほな、担任に伝えておくわ』
「ん、お願いします。じゃ」
携帯を切ると丁度駅に着いた。改札口を通って電車を待つ。
するとメールが届いた。
<よっすぃーも梨華ちゃんも熱だって。 ごとー>
・・・・寝とけっつったのに。
<学校に電話したら裕ちゃんが出て、教えてくれたよ。っていうか寝とけよ!市井>
メールの返信を終えて、電車が来たので携帯をコートのポケットにしまった。
707 名前:作者。 投稿日:2004/01/26(月) 23:03

>703 タケ様。
     みんなの仲が復活したと思えば風邪でダウンみたいな(w
     (0;^〜^)<やっぱ熱出すよ、あれじゃ。
     ちなみにうちの学校でも大流行(w
     小川さんも動き出す!でもまた問題がぁ〜・・・(^−^;

平和はいいなぁと思う今日この頃(w

(●´ー`)<何処にいてもみんなのココロは繋がってるべさ。それが遠く離れても。
(〜^◇^)<オイラもそう信じてる。寂しくなったら連絡しろよ!
(●´ー`)<・・・・ありがとうだべ。
(゚ 皿 ゚)<カオリモイツモココロハソバニイルヨ!
(0^〜^)<うちもですよ、安倍さん。
( ^▽^)<ポジティブに頑張って下さいね♪

作者もスレ違いですが・・・・。
(●´ー`)ありがとう。これからも大好きな歌を歌い続けて下さい。
708 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/27(火) 01:26
更新お疲れ様!
初レスデス。。。
いや〜、みんな元に戻ってよかった!
ちなみに、私の学校でも風邪流行ってマス。。。
次は何が起こるのかな?ワクワク
まぁ、何も起こらない方がいいんですケド…
709 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/27(火) 20:23

 <吉澤 視点>

雨のせいでびしょ濡れで家に帰った。その翌日、当り前の如くうちは熱を出した。
「うぅ〜・・・・」
何とか学校に行こうと制服に着替えて頭がぼーっとする中、玄関で靴を履いていた
時、倒れた。
「ちょっと!何してるの!?ひとみ!」
お母さんに見つかって部屋に逆戻り。
「全く、ちょっと目を離した隙にアンタは・・・・熱あるんだから学校休みなさい!」
制服からジャージに着替えてベットに潜り込んだ。お母さんが部屋から出て行く。
・・・梨華ちゃんも熱出したかなぁ・・・。
携帯に手を伸ばし、メールを打つ。

<今日、熱出て学校休んだよー。 ひとみ>

数秒後、メールが来る。

<私も。やっぱ昨日の雨のせいだね。梨華>

「梨華ちゃんもかぁ・・・・じゃ、ごっちんもかなぁ?」

ごっちんにメールを送るとごっちんも今日休みだと言う。昨日の事を考えれば
当り前と言えば当り前なのだが。多分、矢口先輩も同じだろう。
うちは昼まで寝ようと思って眠りについた。

夢を見た。
すごく楽しくてあったかい夢だった。どんな内容かは忘れたけど。

「うー、よく寝た〜」
体温計で測ってみると36度代だった。これなら明日は学校へ行けるだろう。
部屋を出て下に降りてみると静かで誰もいなかった。リビングのテーブルに紙が1枚
あって見てみるとお母さんは出かけているみたいだった。昼は自分でうどんを作って食べた。
「暇だなー」
自分以外誰もいない家は久しぶりだった。うちは梨華ちゃんにまたメールを送ってみた。

<もう熱も下がったよー。 ひとみ>

<私も!よく寝たし。 梨華>

<家に誰もないくてすっげぇ暇よ>

<同じだね。私ん家も>

<じゃ、会う?>

<いいよ!何処で会う?>

<梨華ちゃん家に行くよ>

すぐに私服に着替えてコートを羽織って家を出た。鍵を閉めて自転車に乗った。
そして自転車を梨華ちゃん家に向かって発進させた。
710 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/27(火) 20:43
すぐに梨華ちゃん家に着いた。ピンポーンとインターホンを押す。
玄関の扉が開いた。
「いらっしゃい。ひとみちゃん」
「へへ、何かいけない事してるみたいだね」
梨華ちゃん家に入る。梨華ちゃんはパジャマにピンクのカーディガンを羽織っていた。
「部屋行ってて。紅茶持っていくから」
そう言われて部屋に行った。相変わらずピンク色が多い部屋だった。
うちはコートを脱いでベットに腰かけた。すぐに梨華ちゃんが紅茶を持って来た。
「梨華ちゃんは大丈夫?」
「うん。すっかりいいみたい」
「ごっちんも良くなってるかな」
「だといいね」
のんびりと過ごす平日の午後。何か得した気分になってきた。
ちょっとしたイタズラ心で梨華ちゃんを抱き寄せた。彼女のぬくもりがあったかい。
「きゃっ、ちょっとぉ〜。びっくりするじゃない」
「ごめん。こうしたくて」
ぎゅっと抱きしめる梨華ちゃんの体はすごく華奢で細い。力を込めたら壊れてしまいそうだ。
「・・・もう、離れないでね」
ポツリと梨華ちゃんが言う。
「うん。絶対、離さない。離すもんか」
ちょっと体を離して梨華ちゃんの目を見て言った。

愛しい、と思った。

「・・・・梨華ちゃん」
顔を近づけてキスをした。でもそれだけじゃ満足出来なかった。
そっと梨華ちゃんをベットに押し倒した。
「ひとみちゃん・・・?」
「・・・・いい?」
聞くと梨華ちゃんは顔を真っ赤にさせて頷いた。うちはまたキスをして今度は舌を入れた。
今までにない感触ですぐ体が熱くなった。

その時だった。

部屋の扉がノックされた。ピタッとうちの動きが止まった。

「おーい、梨華?ちょっと心配で早引きしてきた。起きてるかー?」

梨華ちゃんのお父さんの声。うちらは慌てて離れた。

・・・・どうしよう・・・。

「梨華ちゃん・・・」
「大丈夫。とりあえず出るから」
梨華ちゃんはうちに軽くキスをして扉の方へ行った。扉を開けて部屋を出て行く。
うちは今更、自分がした事に恥ずかしさが出てきた。

・・・・うわぁ・・・・もし、お父さんが来てなかったら・・・。

おしかった気持ちとちょっと安心した気持ちが混ざっていた。
711 名前:作者。 投稿日:2004/01/27(火) 20:50

>708 ミッチー様。
     初めまして!読んで下さってありがとうございます!
     きっと何処の学校も風邪が大流行でしょうね・・・作者も
     ちょっと風邪気味です(^−^;
     次は何が起きるか!平和もいいですが、やっぱこの物語は
     問題が起きてしまうので・・・・。

次回は紺野さん小川さんメインになっていきます・・・多分。
(〜^◇^)<ところでこの物語、今何月なんだ?
(●´─`)<多分、5月たべさ。
712 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/28(水) 00:16
更新お疲れ様デス。。。
よっすぃ〜、おしかったなぁ!
でも、いずれまた…ネ、
小川と紺野はどうなるのかな?
小川FIGHT!
713 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/28(水) 22:32

 <紺野 視点>

英語の授業中、横をちらっと見るとまこっちゃんは寝ていた。先生に
バレないように寝るんじゃなくて完全にうつ伏せの状態で寝ていた。
・・・・起こした方がいいのなぁ。
でも気持ちよさそうに寝てるから寝かせてあげたい。
私はまこっちゃんをそのまま寝かしてあげる事にした。

まこっちゃんの第一印象は人なつっこいなと思った。
誰にでも気軽に話しかけて誰とでも友達になれる。私はずっと羨ましく
感じて、まこっちゃんのようになりたいとも思っていた。
同じ高校に合格した時、嬉しくて仕方なかった。でも私は表現するのが
不器用で『良かったね』としか言えなかった。

「ん・・・・あれ?寝てた?」
休み時間になって教室の中がうるさくなったせいかまこっちゃんが起きた。
「うん。寝てたよ」
「マジでー?うっわぁ、やべー」
「先生も気付いてなかったみたいだよ」
「ならいいんだけど・・・」
その時、携帯のバイブがポケットの中でなった。携帯を出して見てみる。

<もう1度話がしたい。頼むからもう1度だけ会って欲しい>

それを見てため息をついた。
・・・・もう、終わりたいのに・・・。
「どうした?」
まこっちゃんが気にかけて話かける。
「ううん。何でも無いよ」
私はそう言ってメールの返事をせず携帯を閉じた。
もうすぐ梅雨時だなぁと思って窓の外に目をやる。
「あさ美ちゃん、次は化学だから移動だね」
「そうだね。いこっか」
化学の支度をして私達は教室を出て行った。
714 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/28(水) 22:44
今日の放課後はまこっちゃんが所属する陸上部に来てみた。先輩方も明るく
私を歓迎してくれた。
「いやぁ、ようこそ!我が陸上部へ!」
「んぁ。嬉しいよ」
「先輩!別に入部するワケじゃないんすから!」
・・・・何か、面白い。
3人のやり取りを見て私は笑ってしまった。
「・・・・何故に笑うの?あさ美ちゃん」
「いや、面白いなぁって」
ここの空間が心地よかった。あったい空気が流れてる感じがした。

別世界のように感じた。

ここにいたいって思った。

それは何で?

「あれ?何か音が聞こえない?」
後藤先輩が言った。吉澤先輩が部室の窓を開けた。
「うわー、雨降っちゃってるし。傘持ってねぇー」
「先輩。もう梅雨に入るんですから」
私はあのメールを思い出していた。

<もう1度会いたい>

そうしたってどうにもならないのに。
私の気持ちは変わらないのに。

「今日の部活は終わり!解散!」
「んぁ、この雨じゃぁね。市井ちゃん家にいるかなー?」
「あさ美ちゃん。傘持ってるから送るよ」
「あぁ!お前だけずりー!」
「吉澤先輩は石川さん呼べばいいじゃないですかぁ」
私はまこっちゃんの傘に入り、送ってもらう事になった。
「面白いね、先輩達」
「でしょ?」
「・・・いいなぁ。楽しそうで───」
門のとこまで来た時、そこに誰かがいた。

「・・・あさ美」

・・・・何で、来たのよ・・・・。
715 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/28(水) 22:54

 <小川 視点>

知らない男が立っていた。その人はあさ美ちゃんを名前で呼んだ。
・・・・この制服、近くの男子校の制服じゃん。
「何で来たの?」
「何でって・・・・もう1度話がしたくて」
「もう話すことなんて無いから!」
「でも!俺は別れたくないんだ!」
「あなたとはもう嫌なの!」
「何が嫌なんだよ!?教えてくれよ!」
「・・・まこっちゃん。いこ」
私はあさ美ちゃんに腕を引っ張られ歩いた。何が何だかわからず私は黙っていた。
しばらく歩いてあさ美ちゃんが口を開いた。
「・・・あの人。こないだまで付き合ってたの」

・・・・付き合って・・・・た?

「えぇぇぇぇぇ!!!?」

私の叫び声は虚しく雨の中響いた。

「・・・そんな驚かないでよね」
「だってー、そんな素振りなかったじゃん!いつも一緒にいたのに」
ちょっと、裏切られた気分になってしまった。
「毎日会わないよ。休日に会ってたりしてた」
「・・・・付き合ってたって過去形なんだね」
「もう嫌だった。でも、告白されて付き合って、性格とかがわかってきて・・・。
 あの人は人の価値は成績だと思ってる人なの。おまけに結構冷たいし。何で私と
 付き合いたいかなんて、私が・・・・学年でトップだったから・・・」

・・・・そうだったんだ・・・・。

私は初めて聞いた事にただただ驚くしかなかった。
716 名前:作者。 投稿日:2004/01/28(水) 22:58

>712 ミッチー様。
     (0^〜^)<・・・・また機会があるよね。
     何だか波乱の幕開けのよーな・・・・感じがしますが。
     小川さんの腕の見せ所は次回でしょうか(w

さてさて、紺野さん初視点でまいりました今回。
はたまた問題が出てきましたが、徐々に小川さんに惹かれていく紺野さん。
ハッピーエンドにはまだ早い!困難は大きいです(^−^;

717 名前:タケ 投稿日:2004/01/29(木) 15:20
更新お疲れ様

紺野さんに元カレ?
困難は続きそうですね・・・
小川さんはどうするんだろう

こっちも気になるけど吉澤さん達も気になる(w
718 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/29(木) 21:22

 <柴田 視点>

何だか色々あったけど平和に戻って良かった。梨華ちゃんも明るくなったし。
「これも柴田部長のおかげよね!」
手でピースを作ってカメラ目線。
「矢口さんのおかげでしょ?っつーか何故にカメラ目線?」
椅子に座ってるマサオが突っ込む。

今日は梨華ちゃんが学校を休んだ。風邪をひいたらしい。
・・・まぁ、確かにあのびょしょ濡れようじゃぁねぇ・・・。
そんで放課後はマサオが家にやってきた。
「マサオが家に来るなんて久々よねー」
「まぁね。最近、バイトで忙しかったし。トイレ借りるぜー」
「どぉぞー」
マサオがトイレに行く為部屋を出て行く。私はそこらへんにある雑誌を広げた。
すると携帯の着信音がなる。私のでは無かった。
「マサオのかな・・?」
ちょっとした出来心で私はマサオの上着に入ってる携帯に手を伸ばした。
電話じゃなくメールだった。

<やっほー。元気?昨日はありがと!また遊ぼうね〜。 めぐみ>

「・・・・誰よ、『めぐみ』って・・・・」

携帯の画面を見て呆然とした。マサオに限ってそんな事あるわけないはず。
足音が聞こえたので携帯を元に戻した。マサオが部屋に入ってくる。
私は何でも無い顔をして雑誌を見ていた。
「っにしても寒くなったもんだよねー」
マサオはそう言いながら私の横に座った。
「・・・・そうだね」
「風邪ひかないように気をつけなきゃな」
「マサオはバカだから風邪ひかないわよ」
「ひっでー」
ちゃんと笑えてるか不安だった。マサオは上着のポケットから携帯を取り出した。
私はちょっと固まっていた。マサオはメールを打ち出した。
「・・・・んじゃ、そろそろ帰るわ」
「え?」
「もう遅いし。また明日」
マサオはそう言って上着を来た。私に軽くキスをして部屋を出て行く。
・・・・ねぇ、めぐみって誰なの?
普通に聞けばきっとマサオは笑って答えてくれる。
『友達だよ。バイト先の』
きっとそう答えてくれる。
じゃぁ・・・何で聞けなかったの?

・・・・多分、ちょっと疑ってるんだ。私。
719 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/29(木) 21:34

 <小川 視点>

気になって眠れなくて次の日は隈を作ってしまった。昨日は、あさ美ちゃんの元カレ
に会った。多分そのせいで眠れなかった。
「はぁ・・・・」
何で気になるかなんて自分でもわかってる。

好きなんだよ。初めて会った時から。

今回の事で心底感じた。

学校に行くとあさ美ちゃんはもう来ていた。私はクラスメイトに挨拶しながら席に向かう。
「おはよ。あさ美ちゃん」
「あ・・・おはよう」
カバンを机の横にかけて1時間目の用意をする。数学のノートと教科書を出した。
昨日の夜は宿題も手がつかなかった状態だ。私はあと10分で授業が始まるのを確認して
宿題をやり始めた。
「・・・宿題、やってないの?」
「うん・・・忘れてて、ね」
「私の写しなよ」
「いいよ。悪いよ」
私は断って数学の宿題の問題に集中した。そのかいあって5分で終わった。
「まこっちゃん・・・昨日の事なんだけど」
「あ!今日はあれ買おうかな。限定5個のカボチャのプリン!」
昨日の事は思い出したくなくて違う話題を話始めた。
「あれってさー。昼休みが始まって5分くらいで完売しちゃうんだよねー。
 4時間目終了したら即ダッシュだよねー!」
「う、うん・・・そうだね」
「おし!陸上部の名をかけて絶対ゲットするぞ〜」
こうして授業の開始チャイムがなった。
720 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/29(木) 21:49

 <紺野 視点>

・・・・まこっちゃん。『名をかけて』、じゃなくて『名にかけて』だよ・・・。
そう言いたかったけど授業の始まるチャイムがなってしまったので言えなかった。
数学の先生が入って来て授業が始まる。
・・・まこっちゃん、昨日の事どう思ったかな。
「今日は教科書56ページから始めます」
授業を聞きながら考える。

あの人と出会ったのは中学生の時。
私は中学も女子校で、あの人とは一緒の学校じゃなかった。
ある日、まこっちゃんが部活で私は用事があって先に帰った放課後。
あの人が道端に立っていていきなり声をかけてきた。
『・・・あの!紺野さんだよね・・・?』
『はい・・・そうですけど』
『あの、俺、近くの中学に通ってる村上って言うんだけど・・・。
 ずっと紺野さんが気になってて、好きなんだ・・・付き合って下さい!』
初めて人から告白された。理解出来なくて私はその場に突っ立っていた。
村上啓介という人は、私のまわりの女の子達の憧れの存在と言える人だった。
背が高くて、成績も良くて、運動も出来て、人望もある。生徒会に入りながらも
部活はバスケで大活躍。優しくてかっこいい、つまりパーフェクトな人だった。

・・・・そんな人が、何で私を?

最初は断ったけど、啓介は諦めずに私に告白してきた。
その内に私もいいかなって思うようになってきてOKしてしまった。
付き合うとか、恋人とかって正直良くわからなかった。何となく、まわりの友達、
特にまこっちゃんには知られたくないような気がして、私達は休日を利用して会っていた。
721 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/29(木) 22:07
好きだとかわからないまま付き合ってた。啓介は優しくていつも私に気を遣っていた。
ある時、バスケ優勝の打ち上げに私も呼ばれた。
『啓介の彼女、超可愛い〜!!』
『おい、お前ら。あさ美に近づくなよ』
啓介はずっと私の隣にいてくれた。まわりは全員知らない人達ばかりで私は緊張していた
からそれに気付いてくれたんだと思う。

そしてカラオケに行った時。私は啓介がトイレに行ってしまって1人で座っていた。
『ねぇねぇ、あさ美ちゃんだっけ?啓介ってどんな感じ?』
啓介の友達の人が話しかけてきた。
『え・・・すごく優しいですよ』
『うっわー、やっぱ彼女の前だと違うんだ〜』
『啓介って、あさ美ちゃんのこと模試の成績発表で知ったんだよ』
また違う友達が教えてくれた。
『あぁ、ここらへんの中学でやる模試な。あさ美ちゃん確か5位だったよね?』
『えぇ・・・そうです』
『啓介、4位だったんだよ。啓介が『トップ5位以内に女子が入ってるよ』って言ってた』

・・・・・何で、啓介は私を彼女に選んだの?

好きだから?それとも・・・・。

打ち上げの終了後、私は啓介と家路を歩いていた。
『知らない奴ばっかでつまんなかったかな。ごめん』
『ううん・・・みんな明るい人達で面白かったよ』
『そっか、良かった』
丁度、電話ボックスの横を通った時。啓介が私を抱き寄せた。
キス、されそうになった。
『・・・・啓介、何で私を選んだの・・・・?』
『え・・・?』
私は俯いて言った。
『ホントに私の事、好きなの・・・?』
『・・・あさ美・・・』
『成績で選んだんじゃないの!?自分につり合う人を選んだんじゃないの!?』
私は啓介を突き飛ばした。
『・・・別れよ。もう2度と会わない』
そう言って走って家に帰った。
722 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/29(木) 22:23

 <藤本 視点>

亜弥と仲直りした次の日。久々に家にやってきた奴がいた。
「どうしたんだよ?暗い顔して」
「・・・・美貴、お前さ、亜弥ちゃんに携帯覗かれたことある?」
「はぁ?」
マサオは暗い顔していた。
「携帯のメールだよ。覗かれたことある?」
「いや・・・無いけど。うーん、多分」
「そっか・・・・もし覗かれたらどう思う?」
「別に何も。メールなんて亜弥とマサオぐらいなもんだし。たまに梨華ちゃんとか。
 見られても何も思わない」
「例えば、亜弥ちゃんが梨華ちゃんとのメールを見たら?」
「・・・・どうかな、こないだの事もあったし。何とも思わないとは思うけど。
 っていうか一体どうしたの?」
マサオはおずおずと携帯を出してテーブルの上に置いた。
「昨日、あゆみん家行ったんだ。私がトイレに行ってる間にメールが届いたみたいで
 あゆみそれ見たっぽいんだ」
「誰からの?」
「バイト先の友達」
「柴ちゃんは会った事ある?」
「いや、無いよ」
「そりゃー・・・・やばいんじゃん?」
私はそう言って立ち上がった。テーブルの上に置いてあるカップを持って台所に
行き、コーヒーを足した。
「やばいって事はあゆみが誤解してるって事!?」
「つまり、浮気してるんじゃないかなって思うでしょ。普通」
「・・・・浮気・・・」
「してんの?」
「してないよ!するわけないじゃん!」
「じゃ、誤解は早く解いたら?」
マサオが黙る。私はカップを持ってテーブルに戻った。
「黙るって事はホントは何かやましい事があるんじゃないの?」
「・・・・別に無いけど」
723 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/01/29(木) 22:33
「じゃぁ、こんなとこにいないで。さっさと柴ちゃんとこに行くんだな」
「・・・・めぐみってさ、放っておけないタイプでさ」
「は?」
「いつもぼーっとしてて、危なっかしい奴。・・・何か、今、彼氏いるみたい
 なんだけどそいつがひどい奴でさ。浮気してるみたいなんだ」
「・・・・おいおい」
「それでもめぐみは好きみたいなんだけど、たまに殴られた痕とかあんだよ。
 だから放っておけなくて、たまに私の家に置いてるんだ」
「・・・・でも、正直に柴ちゃんには言った方がいい」

厄介な事だと思った。マサオはおせっかいやきだから確かにめぐみさんみたいな
人は放っておけないだろう。それは、情があるからだ。愛情ではなく、友情。

「マサオは柴ちゃんが好きだとしてもやっぱ柴ちゃんは不安だから。めぐみさんの
 事は早く解決した方がいいね」
「・・・・そうだよね」
「困った時があったら私にいいな。亜弥にも言っとくし。きっと亜弥も協力してくれる」
「ありがと・・・帰るね」
マサオは最後まで笑顔を見せなかった。肩を落として帰った。

724 名前:作者。 投稿日:2004/01/29(木) 22:37

>717 タケ様。
     吉澤さんの方はいずれかチャンスがあるはず(w
     小川さんも紺野さんも大変です。

紺野さんの過去。そして柴大に危機が!?
村田さん名前だけ登場でした。

(〜^◇^)<人数、増えていくなぁ・・・・。
725 名前:ミッチー 投稿日:2004/01/29(木) 23:40
更新お疲れ様デス。。。
柴大ガンバッテ欲しいですネ。
早く誤解を解かないと…
紺野の方も気になりますね。
一難去ってまた一難、ですな。
726 名前:17.彼女の笑顔。 投稿日:2004/02/01(日) 14:42

 <加護 視点>

「あいぼんッ!あいぼん!待ってよ!」
うちはぼーっとしながら歩いていたら無意識に速歩きになっていたらしい。
立ち止まって振り返るとののがうちを追いかけて走っていた。
「ふぅ〜・・・・あいぼん、速いれす・・・」
「ごめん。無意識のうちに速歩きになってしもたわ」
「ののがいるんれすから、忘れないでくらさいよぉ」
「そやな」
あの日の雨の出来事。わかっていたのだ、全部。

よっすぃーの気持ち。

そしてその日の帰りぎわに矢口さんに言われた。

『ホントに好きなら相手の幸せだと思う事を考えてね』

・・・・・わかってたんや。

うちがいくらアピールしても無理な事ぐらい。
でも、それがよっすぃーを苦しめてたんやな・・・。

「のの、うちはもう諦めたわ。これからは新しい恋を見つけるで!」
うちは自分に言い聞かせるように言った。ののは笑顔で頷いてくれた。
「次は何の授業やっけ?」
「えーと、現文れすね」
「うげっ、うち宿題やってへんわー」
「あはは、ののもれすよー」
「何でそんなのん気なん・・・」
「あいぼんと一緒だかられすよ♪」
うちらは手を繋いで廊下を走った。
「あんたらー!廊下走んなやー!」
遠くの方で中澤先生の怒鳴り声が聞こえた。

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