LIFE IS
- 1 名前:tomato 投稿日:2003年05月10日(土)22時58分41秒
- 原作はある有名な小説です。
よかったらお付き合いください。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)22時59分38秒
- 「わたしってなんなんだろう」
白い天井に向かってふぅとため息をついた。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時02分52秒
- 今日のうたばんの収録。
わたしはわたしなりに頑張ったつもりだった。
でもふと気づけば11針も縫うケガをしたということでベットの上。
実際はただの捻挫ですぐにでも動けるんだけど。
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時04分12秒
- 最初合格だと言われたときは本当に嬉しかった。
赤点だとしても憧れの人たちといっしょに仕事するのは夢のようだった。
あいつ赤点だって目で見られても我慢できた。
でも、ダンスも歌も上手じゃないわたしはレッスンが本当につらくて。
みんなに迷惑かけてばかりで、自分に腹が立つ。
そして、今回の事故。
上手にならなきゃいけないのに
みんながどんどん先へ行ってわたしだけひとりぼっち
「ちゃんとやんなきゃダメでしょ」
あるとき飯田さんがわたしに言った。
頑張ってるつもりなのに、
一生懸命やってるつもりだったのに
- 5 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時12分05秒
- 電源を入れて携帯の画面を見た。
病院の中だからホントはだめなんだけど。
センターに問い合わせてみた。
【メールはありません。】
もう1度センターに問い合わせてみた。
【新着メールはありません】
・・・なんかむなしくなった。
- 6 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時12分57秒
- きっとわたしなんかいなくても、みんな平気で生きていけるんだ
・・・どうせ、わたしなんかいない方がみんな楽しく生きられるんでしょ
- 7 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時14分24秒
- 気づいたら、わたしは病院を抜け出していた。
とにかく遠くへ行きたい、気づけばタクシーでやってきた東京駅。
「北海道へ行く汽車はありませんか?」
駅員さんは驚いた顔で切符売り場を指差した。
わたしは急いで切符を買って、夜行列車に乗り込んだ。
- 8 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時24分19秒
- コトン、コトン。
揺れる汽車の中で横になり、携帯のメールをチェックする。
【新着メールはありません】
力の入らない右手でなんとか電源を切った。
わたしってホントどうでもいい人間なんだってことがよくわかる。
胸の中はさらにむなしくなった。
やっぱりわたしには無理だったんだ
夢を諦めて、北海道へ帰ろう
・・・でもやっぱり、家には帰れない
きっと、父さんも母さんも許してくれない
いや、もうどうでもいいと思ってるかもしれない
・・・もう、終わりにしたい
どうせ、こんなわたしが生きてても意味が無いなら、死んだって何も変わらない
なら、せめて迷惑がかからないように死のう
・・・日が開けたらわたしの最後の1日の始まりだ
- 9 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時32分16秒
- パァァ
久しぶりの光に思わず目をつぶった。
列車は暗く長いトンネルを抜けたらしい。
「もう来ちゃったんだ。」
北海道が、そしてわたしの最後の1日が
わたしは燦々と輝く太陽を手で隠した。
久しぶりに見る
海はとてもキラキラしてた
緑はサァサァと風に揺れていた
- 10 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時33分00秒
- 「次は、室蘭。室蘭です」
日が傾きだした頃、アナウンスが停車する駅を伝える。
室蘭、たしか安倍さんの出身地
前から行ってみたかったから、そこで降りてみることにした。
- 11 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時36分10秒
- 駅前はそれなりににぎやかだったけど、札幌ほどじゃなかった。
山のほうに向かってひたすら歩いた。
とにかく遠くへ行きたかったから、誰とも会いたくなかったから
日が沈む頃、山の奥でボロな小屋を見つけた。
最後を迎えるところとしてこんなわたしにはちょうどいいかもしれない
中に入ると、意外ときれいなところだった。
左にステンレスのキッチン、真ん中には木製のテーブルがあった。
靴を脱いで中に入ると、奥に小屋の雰囲気には合わない見事なつくりの本棚がひっそりと置いてあ
った。
- 12 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時37分42秒
- 「こんなところに本が?」
本棚に入っている本を手にとって見てみる。
手作りみたいで、でもしっかり製本されている。
不思議な本だなぁ なんて名前だろう
パンパンパンとついた埃を払う。
【LIFE IS】
とタイトルにはかかれてあった。
1ページ目をめくってみる。
『夢をあきらめない 愛を抱いたすべての人たちへ』
と書かれてあった。
- 13 名前:プロローグ 投稿日:2003年05月10日(土)23時39分52秒
- 夢を諦めない、すべての人たちへ・・・か
思わずふきだした。
夢なんてあるの?愛なんてどこにもないじゃない
少なくともわたしにはひとつもないじゃない
ふざけるなと思った。
・・・でもそれと同時に読まなきゃいけない、そんな気がした。
どうせ、最後だし・・・ね
わたしはゆっくりと表紙を開いた。
- 14 名前:tomato 投稿日:2003年05月10日(土)23時41分02秒
- 更新終わりです。
- 15 名前:北都の雪 投稿日:2003年05月12日(月)23時05分59秒
- 面白そう。
紺ちゃん主役ですね。
原作読んだことないし、期待します。
- 16 名前:はじまりのはじまり 投稿日:2003年05月13日(火)23時28分08秒
- 最初、世界は真っ白でした。
神様は世界が綺麗になるようにと
【夢】【知恵】【勇気】【優しさ】【誠】【愛】【希望】
の絵の具を与えてくれました。
その7つの絵の具が生み出す鮮やかな世界で人間はとても幸せに暮らしていました。
でもあるとき、人間は知ってしまいました。
神様がもう1つ絵の具を隠していることを。
きっと、いいものに違いない。
神様を騙し、絵の具を手にした人間達はさっそく中を見てみることにしました。
でも、その色は
【恐怖】【無知】【不安】【憎しみ】【怠惰】【恨み】【絶望】
の真っ黒な色だったのです。
その絵の具はあっというまに世界を包み込みます。
すると、人々は憎しみあい、妬み、殺し合いを始めました。
それを見て嘆かわしく思った神様は世界を7つに分け、絵の具を世界のどこかへ捨ててしまいました。
こうして世界は黒一色の暗黒にみちたものへとなってしまったのです。
- 17 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月13日(火)23時30分08秒
- 「ふぅ、まったく今日もかわらんなぁ」
男の人がため息をつきました。
見上げると、青いはずの空はどんより真っ黒で雲がうずまいて
遠くを見ると、青いはずの海はどんより真っ黒ですべてを飲み込み
下をみると、茶色いはずの土もどんより真っ黒で栄養なんかまったくなくて
自分の履いているタイツですら真っ黒でした。
「さぁ、続きをやるか」
男の人はいつもここでダンスを踊っています。
かつてここはとても綺麗で美しい塔でした。
今でも、塔の材料だった丸く削られている石がいくつかあって
この場所がかつて壮大な建物であったことを物語っています。
でも、今はその石も黒くよどんでかわいそうです。
- 18 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月13日(火)23時32分03秒
- 「あっ!おじさん」
男の人の足を止めたのは小さな女の子でした。
くりんとした目に、かわいいほっぺたをした女の子が男の人に向かって走ってきます。
すると、ずでんと女の子は転んでしまいました。
でも、涙を1滴も流さずにやってきて男の人の前にちょんと座りました。
- 19 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月13日(火)23時32分55秒
- 「また転んだのか、大丈夫か?」
「うん、平気。おじさんが踊ってるかなって思ってきちゃったの」
「ほんと、よくわかったな」
おじさんは笑うと、女の子もえへへと笑いました。
この少女は最近、この廃墟にやってくるようになりました。
この少女がどこから来てどこに帰るのかはわからない、とても不思議な女の子でした。
「おじさん」
「なんだ?」
「また、お話してもいい?」
「ああ、いいとも」
すると少女は目をキラキラさせて話し始めました。
「おじさんはこの海の向こうに何があると思う?」
「さぁ、なんだろな」
おじさんは苦笑いをしました。
まるで、この世界がどんなものかがわかっているかのような目をしながら。
「わたしね、お菓子の世界があると思うの」
「ほう」
「それでね、ストロベリーのランプで街が明るくてそして・・・」
おじさんは思いました。
この子はこの真っ黒な世界でもこんなに夢を希望を持っている。
そう、この少女がいつもはなすお話は赤や緑の様々な色で彩られたたくさんのものがつまった大きな物語なのです。
- 20 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月13日(火)23時34分08秒
- 「もういいよ、ありがとう」
おじさんは少女にいいました。
「えっ、まだあるよ」
少女はプクーっと顔を膨らませています。
「今度は俺に話をさせてくれないか。なんでこの場所でいつもおどっているかを」
少女がウンとうなづくのを確かめて、おじさんは話し始めました。
- 21 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月13日(火)23時42分15秒
- かつて、ここにはMORGENという12人の音楽隊がいたんだ。
音楽隊は人間達が【夢】【知恵】【勇気】【優しさ】【誠】【愛】【希望】をいつまでも忘れないようにと、歌って踊っていたんだ。
人間達はそれを見て感動して、いつも元気をもらってた。
俺も音楽隊の歌とダンスに感動して、ほんとはだめなんだけどこっそり見に行ってたんだ。
その頃は見に行ってもなんとかなってたよ。
でも、愚かな人間達が8つ目の絵の具を使って世界を暗黒に変えてしまった。
怒った神は世界を7つに分けて、MORGENの奴らを世界のどこかへ飛ばしてしまった。
俺はこんな時だからこそ、MORGEN音楽隊が必要だと長老たちに訴えにいったんだ。
でも、長老達は許してくれなかった。
だまって見に行ってたこともあって、お前のようなものは神である資格は無いと言われて
ここに連れてこられた。
連れてこられる時に長老達に力を奪われて、自力で12人を集めることができずに俺はこうして歳とってきた。
でも俺はあの音楽隊のダンスを忘れたくない。
音楽隊の歌をもう1度聴きたい。
その一心で俺はここでおどっているんだ。
- 22 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月13日(火)23時44分46秒
- 「それって、いつも踊ってるダンス?」
「そうだ。ひょっとしたら、俺の中で希望があるからこれだけは思い出せるのかもな」
そうおじさんが言うと少女も立ち上がりました。
「こう?」
たどたどしいけれど、少女はいっしょに踊り始めました。
すると、少女の足元の黒かったはずの土がみるみる茶色になっていくではありませんか。
おじさんはびっくりしながら、少女の足元を見ました。
ひょっとしたら、この子なら・・・・・。
おじさんはそんな思いを持ちました。
- 23 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月14日(水)00時01分52秒
- わたしもMORGENの音楽聴いてみたい」
少女は言いました。
「う〜ん、それには世界をもとの姿に戻さなければいけないな」
おじさんは顔をしかめます。
「それって世界を救うってこと?」
「そういうことだ。でも、死んでしまうかもしれない。今までも何度かおまえのような子が俺のところにやってきたけれど、話を聞いてみんな逃げ出してしまったよ」
おじさんは悲しい顔をして言いました。
すると少女はたずねました。
「どうすれば世界を救うことができるの?」
「【夢】【知恵】【勇気】【優しさ】【誠】【愛】【希望】の絵の具を見つけて、絵を描くんだ。そうすれば、世界はもとどおりになる。でも、見つけられるは【夢】【知恵】【勇気】【優しさ】【誠】【愛】【希望】をもった人間だけ」
おじさんはこたえました。
「わたしにできるかな」
「それははっきりわからん。でも、おまえならできるかもしれない」
おじさんはへんなポーズをとって、少女の方へ指を差しました。
「わたし・・・やってみようかな」
「本当か!?」
「おじさんも見たいでしょ?音楽隊」
「あぁ。でも、困難な旅になるぞ。それでもいいのか?」
「うん!」
- 24 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月14日(水)00時02分43秒
- 少女がうなづくと、おじさんは黒いタイツの中から真っ白な紙切れを出しました。
「これはパレットっていうんだ。今は何もかかれていないが、【夢】【知恵】【勇気】【優しさ】【誠】【愛】【希望】持った人間が手にしたら、そこにおまえが次に行く世界の絵が浮き出される。持ってけ」
「ありがとう」
少女はおじさんからパレットという名前の白い紙切れをもらいました。
「さぁ、行け!ここの裏に船がある」
「でも、おじさん。海に船乗せてもすぐに飲み込まれちゃうよ」
「大丈夫だ。パレットを見てみろ」
そう言われて少女がパレットを見ました。
すると、みるみる大陸が浮き出てくるではありませんか。
「そのパレットは地図だ。そこに書かれたとおり船を進めれば沈むことは無いと思うぞ」
「わかったよ、おじさん。じゃあ、行ってくるね」
「おう、いって来い」
バイバイと少女はおじさんに手を振ります。
やがて少女は暗闇の向こうへ消えていきました。
「・・・あの子ならやってくれる気がする。きっと、大丈夫だ」
おじさんは見えなくなった少女を思いながらそうつぶやきました。
- 25 名前:1 金の国 投稿日:2003年05月14日(水)00時03分41秒
- 黒かったはずのお月様はいつのまにか金ぴかになって少女の出発を見届けていました。
- 26 名前:tomato 投稿日:2003年05月14日(水)00時15分32秒
- 更新終了です。
- 27 名前:tomato 投稿日:2003年05月14日(水)00時49分06秒
- 从´∀`从 <レスの担当はウチがしたろ。
从´∀`从 <北都の雪さん
作者が恥ずかしがり屋で、こんな形でレスするの堪忍したってなぁ。
裕ちゃんかて、作者阿呆やと思うもん。
今回の話ちょっと重たいかもしれんわ。原作はホント素晴らしい話よ。
しかし、この文章力の無い作者のことやからなぁ〜しょっぱいもんになるかもしれん。
それでも、もうしばらくの間この阿呆なヤツに付き合ってやってくれなぁ。
- 28 名前:tomato 投稿日:2003年05月25日(日)22時06分17秒
- これを見て思い出した
札幌に住む前、すごい田舎に住んでいたことを
あの頃はお父さんの転勤が多かったから、つい忘れちゃってたよ
わたしってけっこう引っ込み思案な方だから、転校生として学校に行ってもなかなかみ
んなと仲良くなれなかった
そして、友達になれそうだなぁと思ったらまた転校しなくちゃいけなくて
その繰り返し
- 29 名前:紺野あさ美 投稿日:2003年05月25日(日)22時08分10秒
- でも、田舎の学校の時は違ったな
みんなわたしに優しくしてくれて、こんなわたしに温かく接してくれて
すごく嬉しかった
でも、わたしどうやって仲良くすればいいかわかんなくてなかなか話しかけられなかっ
たから1人でいることが多かったな
でも、全然なんともなかった
むしろ得意な方だし
- 30 名前:紺野あさ美 投稿日:2003年05月25日(日)22時15分17秒
- そうやって1人で遊んでいたら公務員のおじさんがはなしかけてくれたんだ
「おう、お花さんと話してるのか?」
「・・・うん。」
「おじさんにも話し聞かせてくれないか?」
いろいろ話した
おもちを食べておいしかったとか、前にいた街のエクレアがおいしかったとか
わたしの考えたお菓子の国のお話とか
「すごい!おもしろいぞ!」
「ホント?」
すごい嬉しくて、毎日放課後になったら公務員のおじさんのところへ行った
毎回わたしの中で考えてた物語をおじさんに話した
まぁ、お菓子の話ばっかりなんだけど
でもおじさんはいつもおもしろいと笑ってくれて
いつの間にか、なんでも言える仲になってた
- 31 名前:紺野あさ美 投稿日:2003年05月25日(日)22時17分38秒
- あるとき、わたしは
「おじさん、わたしみんなと仲良くなりたい。でもどうしたら仲良くなれるかな」
そうおじさんに聞いた
「簡単だぞ。おまえの話をみんなに聞かせてやるんだ。きっと仲良くなれる」
「でも、おじさん。わたしのお話おもしろいかな?」
「おもしろいさ。でも、困ったときのためにこの本を貸してやるよ」
おじさんは手に持ってた古くさい本をわたしにくれた
「この本は?」
「魔法の本だよ。困った時や苦しい時、つらい時にこの本を読んでみ。元気になるぞ。
まぁ、友達と仲良くなる時にこの本のお話をするのもいいけどな」
- 32 名前:紺野あさ美 投稿日:2003年05月25日(日)22時18分12秒
- 次の日、わたしは勇気を持ってとなりの子にこの本のお話をしたんだ
そしたら
「あさみちゃんすごいよ!すっごく面白かったよ!」
って言ってくれた
みんなその声を聞きつけて集まってきて
たしかその日は学校にいる間ずっとみんなにお話したんだっけ
その日の放課後急いでおじさんの所に行ったんだ
「ありがとう!おじさんの本のお話したらみんなと仲良くなれたよ!」
「そっか、良かったな。しばらく本は貸してやるから。読まなくていいと思ったら俺の
ところへ返しに来い」
「うん!」
あれから、学校がホントおもしろくてしょうがなかった
- 33 名前:紺野あさ美 投稿日:2003年05月25日(日)22時18分48秒
- そう、この物語はあの時おじさんがわたしに貸してくれた本のお話だ
- 34 名前:紺野あさ美 投稿日:2003年05月25日(日)22時19分22秒
- あの学校にいた時はわたしの生きてきた中で一番キラキラしてた
・・・ひょっとしたら、今この本がわたしの手にあるのは偶然じゃないかもしれない
でも難しいことは考えない、今はとにかく続きが読みたい
わたしははやる気持ちを抑えきれず次のページをめくった。
- 35 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時20分27秒
- 少女の乗った船は真っ黒な海を走り出しました。
「うわぁ、すっごい〜」
船はまるで生きているかのように悠然と暗黒の中を進んでいきます。
「うるさぁいな〜」
誰もいないはずの船から突然うめく声が聞こえました。
「誰かいるの?」
船の中をよく調べます。
すると、入り口のところで何かがうごめいていました。
「ふぁ、よく寝たよ。ってなんで船動いてんだよ!?」
その子は髪をおだんごにして、まんまるの顔で1人ツッコミをしています。
- 36 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時21分12秒
- 「あなた誰なの?」
少女はその子にたずねます。
「誰ってあんたこそだ〜れ?っていうかなんで船動いてるの!?ウチはやく帰りたいん
だ!なんとかして!」
ウチはあわてふためいています。
「それは無理だよ。だって出発したんだもの、わたしたち。世界を救う旅に」
「ちょ、ちょっと何言ってんの?わたしたちって何?」
「あなたとわたしのことだよ」
「もう何言ってるんだよ!?あっという間に海に飲み込まれちゃうよ」
ウチは焦りに焦ってます。
- 37 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時23分00秒
- 「大丈夫。ほら、これ見て」
と言うと少女はウチにパレットを見せました。
「大丈夫って、これただの紙じゃん!もうダメだ、終わりだ〜」
「これ地図なんだよ。ここに書かれてるように行けば大丈夫」
「あんたアホだよ!ただの真っ白な紙を地図と間違えるなんて。
神様、なんかウチ悪いことした?ウチはこのままひっそり暮らしていたかっただけなのに、
ねぇ神様」
「神様〜神様って神様疲れちゃうよ」
「ウチはもうあんたにつかれたよ」
そう言うとウチはがっかりうなだれました。
「ねぇ、なんでこの中にいたの?」
少女はウチにききました。
「あんまり言いたくないけど、まぁ、教えてあげるよ。
どうせ、陸に上がったらお別れだから。」
ウチは話し出しました。
- 38 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時25分03秒
- 「もともとウチらは2人でいたねん。ノノってやつといっしょにずっと暮らしてた。ノ
ノは勇敢っていうか、単純で言えばバカ。怖くてもなんでもないって言ってどんどん進
んでいくんだ。それに比べて、ウチは石橋をたたいても渡らない超慎重派やねん。ウチ
って頭いいでしょ?」
「う〜ん、違う気がするなぁ」
少女は首をかしげましたが、ウチは続けます。
「頭いいんだよ。いつもノノが無茶をしようとする時、ウチがいつも止める。そうやっ
て毎日暮らしてきたの。そしたら、ある日ノノが1人でどこかへ行ってしまった。海の
向こうにあるお菓子の国を見つけに行くって。んで、ウチはせいせいしてここでのんび
り暮らしていたわけ。でも、あんたのせいでまったくもう」
「ふ〜ん」
「もうわかったやろ。だから、戻ろうよ。今ならまだ間に合うよ」
「・・・あっ、うしろ!」
「えっ!?なになに!?どないしたん!?なんかおるの!?」
「ふふっ、あなた、ただの臆病者じゃない」
「うっ、ち、ちがうもん。」
「図星だね」
「・・・意地悪ぅ」
ウチは泣き出しそうな顔をしました。
- 39 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時25分44秒
- 「ねぇ、ホントは寂しいでしょ?」
「どきっ!そ、そんなことないもん」
そう言ってるウチはまたもやあたふたしています。
「きっと、ノノって子も寂しがってるよ」
「そんなことない。ノノはウチがいなくてせいせいしてるよ」
「・・・でも、心配なんでしょ?」
少女にはウチの気持ちがわかっているかのように言いました。
「・・・うん。」
「じゃあ、あなたの友達を見つけましょうよ。きっと旅の途中で会えるわ」
「いえ、結構。ウチは陸地に下りたらまたのんびり過ごすから」
「もう、それじゃあだめだって・・・」
少女はなんとかいっしょに行こうと話しかけますがウチは聞く耳をもちません。
- 40 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時27分09秒
- その時、さっきまで静かだった海から大きな波が船に向かってきます。
「あっ、後ろ。危ない」
「へへ〜ん。もう引っかからないもんね」
ウチがそう言った瞬間、船先がひどく上がり船が上下左右へとめちゃくちゃに揺れまし
た。
・・・ウチは強く頭の後ろを打ちました。
「うぇ〜ん、意地悪ぅ。頭痛いよ〜」
「だから、危ないって言ったのに」
「だから嫌なんだよぉ。どうするんだよ〜」
その時、少女の目に陸地が見えました。
「あそこ、いいわね」
すると、少女はひょいっとまたたくまに陸地に飛び移りました。
「ほら、こっちにおいでよ。早くしないと、沈んじゃうよ」
少女はウチに手を振ります。
「ウチ怖いもん。嫌や〜」
すると、さっきよりも大きな波が船に向かってやってきます。
「急いで!」
「うわぁぁぁ!」
ウチは叫びながら陸地にむかって飛び込みました。
ずて〜んと転びましたが、すぐに立ち上がると少女に飛びつきました。
少女にくっついたウチの体はぶるぶる震えてます。
- 41 名前:2 旅立ち 投稿日:2003年05月25日(日)22時28分22秒
- 「さぁ、行こう」
「行こうって、どこへ?」
辺りは真っ暗で何にも見えません。
「真っ直ぐ行けば何かあるよ」
そう言って少女は歩き出しました。
「ウチは行かへん。ここでサヨナラや」
ウチはまったく動きません。
「そう。・・・でも、ここ真っ暗だよ。怖いよぉ」
少女の言葉にウチははっとしました。
「・・・待ってよぉ〜!置いてかないで〜」
少女は半べそをかいているウチを笑うと、手をつないで歩き始めました。
- 42 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月25日(水)10時33分07秒
- 更新まってるよ
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