夜空のムコウ
- 1 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時08分53秒
- 紺野一人称でよしこんを書きたいと思います。
レスはage,sage問いませんので気軽にしてください。
- 2 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時11分15秒
- 私は携帯電話を持っていない。
両親が厳しいからというのもあったが、一番の理由は友達がいないからだ。
- 3 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時14分15秒
- 友達がいないから、カラオケにも行ったことが無いし、プリクラも撮ったことが無い。
そんな人物は多分、この高校で私だけだろう。
校則で禁止されているけど、携帯電話なんて誰でも持ってる。正直、私はクラスメイトが休み時間に携帯電話を取り出すたびに、疎外感を覚える。
みんなが携帯電話に話し掛けているのを見ると、改めて私には友達がいないのだと気づく。
クラスメイトはみんな携帯電話を通じて、網の目のようにつながってるのに、その中に私だけがいない。
私だって携帯電話が欲しくないわけではない。でも、もし買ってもらったとしても、話す相手がいない。
だから私は持たないようにしている。私に電話してくる人なんて、どこにもいないから。
- 4 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時16分41秒
- 私は話すのが苦手で、誰かに話しかけられても、上手く返事をする事ができない。そうやって話しかけてきてくれた人を失望させる。そして、相手を失望させるのが嫌で、誰かと話す事から遠ざかってしまう。
なぜ、こんな風になったのだろう。
多分それは私が人の話を信じすぎてしまう事が原因ではないかと思う。
誰かと話をしていて、真面目に返事をする。周りから失笑が漏れ、ようやく冗談だったんだと気づく。
- 5 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時18分04秒
- 小学生のとき、髪をショートにした私に、ある女の子が言った。
「その髪形、似合ってるね。」
私はとても幸せな気持ちになって、それから中学校に入るまで、その髪型を続けた。
しかし、彼女の言葉が空虚なお世辞に過ぎなかったと気づいたのは、その中学に入ってからだった。
ある日、廊下を歩いていたら、何人かの友達を連れた彼女とすれ違った。
彼女はすれ違う瞬間に私の顔を見て、友達に耳打ちをした。
「あの子、小学校のときからあの髪型だけど、全然似合ってないよね。」
聞きたくなかったのに、聞こえてしまった。
私が人と話すのが苦手になったのは、その時からだった。
- 6 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時18分57秒
- 高校に入ってからというもの、誰とも親しくなる事が無かった。
一番つらいのは休み時間だ。
みんなは仲がいい人同士集まって、話したりしているのだが、友達のいない私は当然一人で椅子にじっと座っているしかない。
昼休みになるとよく図書室を訪れた。
できるだけ人が近寄らない席を選んで座り、居眠りしたり、読書したりで、時間をつぶした。
その日は、机に突っ伏して目を閉じて携帯電話の事を考えた。
自分がもし、それを持つようになったらどんなのがいいのだろう。最近よくそんな事を考える。
色はシルバーか白がいいな。触った感じはどんなのがいいかなあ。着信音はSMAPの曲にしようかなあ。
いつのまにか、その架空の携帯電話を頭で想像するのが楽しくなっていた。
- 7 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時19分52秒
- そんなある日のことだった。
一日の授業が終わった私はいつも通り、クラスで一番に教室を出た。
部活は入ってないし、遊ぶ友達もいない。
授業が済むと学校には用が無い。
校門を出ると、そのままバス停に向かう。ちょうどバスが来ていたのでそれに乗り込む。
バスが出発してしばらくすると誰かの携帯電話が鳴り出した。
前に座っていた男の子が慌ててかばんから取り出して、電子音を止めて、そのまま小さな声で話し始めた。
私はぼんやり空想をしながら、外を見ていた。
男の子が電話を切ると、運転手がスピーカーを通して言った。
「車内での携帯電話はお控えください。」
ただそれだけの出来事だった。バスはそれからも順調に走っていた。
- 8 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時20分33秒
- しばらくすると再び携帯のものらしいメロディーが聞こえてきた。
また前の男の子のものだと思ったが、やがて様子がおかしい事に気づいた。
鳴っている音はさっきのものとは違っていた。
今度のは、私が想像していた携帯電話の音とまったく同じのSMAPの大ヒット曲だった。
誰の電話だろう?
それにもっと奇妙なのはその鳴っているメロディーに車内の誰も反応していない事だ。反応していないというよりも、気づいてないようであった。
聞こえてないはずが無い。私は急に不安になったが、もしかするとすでに予感していたのかもしれない。
おそるおそる私は目をつぶり、自分の頭の中を覗く。
予感は的中していた。
想像で作った携帯電話が着信を知らせるメロディーを私にだけ流していた。
- 9 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時21分25秒
こんなことはありえない。私は恐怖に近いものを感じた。
しかし、いつまでもこのまま電話を取らない訳にはいかない。
おそるおそる頭の中に思い浮かべた私の手が、実在するはずが無い携帯電話を手に取り、ずっと流れていた音楽を止めた。
少しためらった後に、私は頭の中の電話に話しかけた。
「あの・・・・・、もしもし?」
「あ!・・・・・本当につながった。」
私より少し低い声の若い女の人の声がした。
彼女は驚いたようにつぶやいていたが、私はそれどころではなかった。
おもわず電話を切ってしまった。
私は車内を見まわしたが、乗客たちはただバスに揺られているだけのようだった。
- 10 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時22分08秒
- どうやら本気で頭がおかしくなったらしい。
私はバス停に着くとすぐに降りて、そのまま走り自分の家に向かった。
そして、家の玄関に入ると階段を駆け上がり、自分の部屋に飛びこんで、ようやく息を整えようとした。
その時、また頭の中の携帯電話から音楽が流れ出した。
私はすぐには電話を取らず、一回深呼吸をした。
そして、頭の中の携帯を手に取る。
「もしもし・・・。」
「切らないでね!驚いていると思うけど、間違い電話じゃないから。」
さっきと同じ声だ。
私は、間違い電話と言うことばについ笑ってしまうところだった。
何か言おうと思って頭の電話に語り掛ける。
いつも他人と話すときのような苦手意識は無かった。
- 11 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時22分50秒
- 「あのう・・・どう説明したらいいのかわかりませんけど、今、私は頭の中の電話に話しかけているんです。」
「私も同じだよ。頭の中の電話に話しかけている。」
「私の電話番号はどうやって調べたんですか?」
「適当に押してみたんだ。何回もやったけど、どこにもつながらなくて、最後にしようと押した番号があなたのところにつながった。」
「あ!さっき電話切ってしまってすみません。」
「大丈夫、リダイヤル機能がついていたし。」
「あの・・・私、紺野あさ美といいます。よかったら名前教えてもらえませんか?」
彼女は吉澤ひとみと名乗った。年は私より二つ上の高三だそうだ。
私と同じように、毎日想像で作った携帯電話で遊んでいたそうだが、あまりに電話がリアルに感じられたので、好奇心から電話をかけてみたのだと吉澤さんは説明した。
「あの、すいませんが、なんだか色々なことがあって、ゆっくり考えたいんです。電話一回切ってもいいですか。」
「いいよ、私もそう思っていた。」
電話を切った私は、誰かと久しぶりに会話した充実感と、そしてそれ以上に混乱を感じていた。
- 12 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月17日(土)19時25分29秒
- 一回目の更新を終了します。
感想とかあったら何でもいいのでレスください。
- 13 名前:名無しの名な子 投稿日:2003年05月18日(日)13時27分20秒
- よしこんですかー
珍しい感じかするので期待しています。
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月18日(日)20時46分34秒
- なんでもカプに結びつけるなよ。お前が決めることじゃないだろ。
- 15 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月20日(火)23時17分22秒
- 久振りに続きが早く読みたくなるお話をハケーン
吉さんと紺ちゃんがどうなっていくのか楽しみに待ってます。
- 16 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月22日(木)00時52分44秒
- Calling Youを元ネタにつかう程度ならいいけど、
シーンやセリフがそのまんまなのが多いのはあまりヨクナイと思う。
独自の展開に広がることに期待。
- 17 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時01分59秒
- 一人で部屋にいると、急に寂しさがこみ上げてきた。いつもなら気にならないはずの一人しかいない家が何か恐ろしいもののように思えた。
私は急いで部屋の電気をつけ、見るつもりの無いテレビをつける。
ベッドで横になりながら、しばらく吉澤ひとみという人物のことを考えてみた。すると、本当に彼女は存在するのだろうかと疑問に思うようになった。携帯電話と同じで、彼女も私が頭の中で作り上げた人物ではないか。そう、心の奥底でいつも話し相手を欲しがっていた私が無意識のうちにもう一つの人格を形成したのではないか。
本当に誰かと頭の中でつながっていると考えるより、こっちのほうが現実的であると思えた。
きっと私は精神病か何かにかかっているんだ。新しい人格を作りだし、それを話し相手にして、自分の頭の中に閉じこもろうとするほど、私は壊れかけているんだ。
- 18 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時03分43秒
- 頭の中の携帯電話、これは一体何なんだろう。怖いし、不安でもあった。そして私は、この電話の正体をつかむためにこちらから電話をする事を思いついた。
でも、吉澤ひとみの電話番号は知らない。彼女はかけたとき、番号を非通知にしていた。彼女と話をするには、電話がかかってくるのを待つしかなさそうだ。
吉澤ひとみに電話する事をあきらめた私は、ためしに177にかけてみた。天気予報が聞けるのではないかと思っていた。緊張しながら耳を澄ましていると、事務的な女性の声が聞こえてきた。
「この電話番号は、現在使われておりません・・・」
次に時報にかけた。結果は同じだった。警察、救急車、実在しているはずの様々な電話番号を頭の中で押してみたが、結果はどれも同じだった。
- 19 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時05分55秒
- 今度は、適当に思い浮かんだ数字を、好きに押してみる。毎回流れるのは、電話番号が存在しない事を示すメッセージだけであった。
十五回ほど、試した後、次でだめならあきらめようと、適当に数字を押す。ほとんど期待せずに、耳を傾けていると、それまでとは違い、メッセージの代わりに呼び出し音が聞こえた。どこかにつながったみたいだ。私は誰も見てないはずなのに、つい正座をしてしまった。
「もしもし」
やがて、吉澤ひとみと違った女性の声が聞こえてきた。私は戸惑ってなかなか声が出ない。
この女性も私が作りあげた人格ではないかと思えてくる。
「あの・・・すいません。突然電話をかけたりして」
「いえ、だいじょうぶよ。どうせ暇なときだったから。ところで、あなたの名前は?」
「はい、紺野あさ美といいます。」
そう答えた後、電話の中の彼女がはっと息を飲んだような気がした。
「そう・・・あさ美ちゃんって言うのね。私はなつみ。大学生。みんなからはなっちって呼ばれているわ。だから、あさ美ちゃんもそう呼んでね。ところで、あさ美ちゃんはだいぶ戸惑っているみたいだけど、まだ、頭の中の電話での会話に慣れてないんじゃない?」
- 20 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時06分56秒
- 私はその通りだと答え、さっき吉澤ひとみという知らない女の人から電話がかかってきたことを話した。
「まだ、突然の事に戸惑ってるのね。でも、だいじょうぶだから。なっちも昔そうだったから分かるけど、あさ美ちゃんは今、なっちや吉澤ひとみさんが、自分で作り上げた別の人格じゃないかと疑っているでしょ?」
心を読まれたのかと思った。なっちさんは、その考えは間違いだということと、それを確かめる方法を優しく私に教えてくれた。
- 21 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時08分16秒
- 「今度、吉澤さんから電話がかかったときに、なっちが教えた方法を実行するといいよ。彼女が実在の人物だと分かるから。」
「本当にそんな回りくどい方法を試すんですか?」
「実はもっと簡単な方法があるけど、教えない。」
私はため息をついた。
「でも、もうかけてこないかも。」
「来る、絶対。」
なっちさんがなぜか、自信ありげに断言する。そして、この頭の中の電話について、いろいろな事を教えてくれた。
- 22 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時10分21秒
- 例えば、実際に口でしゃべったり、周りの音などはどんなに大きくても頭の中の電話の向こう側には伝わらない。心の中で、頭の電話に話し掛けた事だけが、相手に伝わるそうだ。
また、電話の持ち主はほとんどの人が自分自身の電話番号を知らない。知らない相手に電話をかけるときは偶然に頼るしかないそうだ。でも、一度かけた相手の電話番号は電話に登録できるらしい。
なっちさんの説明を聞きながら、さっきかけてきた吉澤ひとみが非通知にしていたのを思い出す。
吉澤ひとみが存在するとして、彼女は何番を押して、私にかけたんだろうか。
もちろん、私も自分の電話番号は知らない。
- 23 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時11分49秒
- なっちさんはもう一つ重大な事を教えてくれた。
「よく聞いて。電話の向こう側と、こっち側とでは、時間がずれている事が多いの。あさ美ちゃん、そっちは今何年?何月?何日?何時ごろ?」
私が今日の日付と時間を答えると、私となっちさんの間では数日ずれがあることが分かった。なっちさんによると、私が今いる時間より数日ほど未来の世界でなっちさんは話しているらしい。
また、ずれは一定なので、電話をかけ直すたびに時間を確認する必要は無いらしい。
このずれがどうして起こるのか、なっちさんにも分からないそうだ。電話をする人物の個人差かもしれないし、電話番号が関わっているのかもしれない。
「そろそろ、吉澤さんからまた電話があるかもしれないから、ひとまず電話を切ろうね。またいつでもなっちに電話してね、あさ美ちゃん。また、いろんなこと話したいし。」
なっちさんとの電話を切った。また、話したい、そう言われた事がうれしかった。
突然電話したのに、親切に答えてくれた彼女は、なんて優しい人なんだろう。私とは全然違って、他にもたくさんの友達がいるんだろうなあ。
- 24 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時13分30秒
- それから一時間後、吉澤さんから再び電話がかかってきた。今度は前より落ち着いて電話をとる事ができた。
「あのさあ、少し考えたんだけど、あさ美ちゃんだっけ・・・もしかしてあさ美ちゃんは、私が作り出した別の人格なのかもしれない。」
彼女はそう切り出した。
私といい、なっちさんといい、吉澤さんといい、やっぱり初めはそんな風に考えるものなのかと思った。
紅茶を飲みながら、なっちさんから聞かされた頭の電話の事を吉澤さんに説明する。
説明しながら、今もし両親が近くにいても、誰かと電話しているとは思わないよなあ、と思った。私は全然声は発していないのだから。
- 25 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時15分22秒
「今は私の世界では七時をさしている。」
「私の世界では八時です、吉澤さん。」
私と吉澤さんにも時間のずれがあった。ただ、それほど大きくは無い。
今話している吉澤さんは私のいる時間から、ちょうど一時間前の人であった。
「じゃあ、あさ美ちゃんが教えてもらった方法を確かめてみよう。私達が実在しているのを証明するために。」
十分後、私は近くのコンビニに着いていた。周りは暗かったが、店の中は真昼のように明るく照らされている。電話はまだつながったままだ。
二分後、吉澤さんから、同じくコンビニに着いたという知らせがあった。つまり、私が着いた時刻から、五十八分ほど前に、吉澤さんはどこかのコンビニに着いた事になる。
- 26 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時17分19秒
- 吉澤さんも家に着いたことを確認すると、私は早速質問をした。
「じゃあ、質問するけど、今週のジャンプの五七ページにはなんという漫画が掲載されている?」
適当なページ数を言う。もちろん私は答えを知らない。
なっちさんに教えてもらった方法とは、これだった。
自分の知っているはずのない事を相手に調べさせ、答えの成否により、実在しているかどうかを判定できる。
「五七ページに載っているのは・・・『ワンピース』という漫画だよ。一度、テレビで見た事もあるよ。」
吉澤ひとみが答えた。もしこれが正解なら、吉澤ひとみは実際に存在しているという事になる。
目の前のジャンプを手にとって、ページをめくる。
吉澤ひとみは実在していた。
今度は吉澤さんが質問をする番だ。
- 27 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時19分22秒
- そうして、私も、自らの存在を証明する事ができた。それでも、この調べ合いが面白くなり、私達は何度も交代して質問した。
意味の分からないせりふが出たりして、頭の中は二人の笑い声で満たされるようになった。
頭の中とはいえ、私は本当に久しぶりに笑う事ができた。
それからというもの、時々吉澤さんから電話がかかってくるようになった。
最初は五分程度の会話だったが、だんだんと時間も長くなり、それと同時に吉澤さんとも親しくなり、よっすぃ〜とあだ名で呼ぶまでになっていった
- 28 名前:スワローズ 投稿日:2003年05月24日(土)19時21分47秒
- 更新終了
>>13
一応よしこんですが、恋愛色は薄いと思います。
>>15
ありがとうございます。元ネタはあるんですが、結末は違うものにし
たいと思います。
>>16
すいません。とりあえず、結末は全然違うものにするつもりでしたが、
次の更新からオリジナルにします。
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月10日(火)03時31分14秒
- 無理にオリジナルにしなくていいと思いますよ。
更新楽しみにしてます。
- 30 名前:スワローズ 投稿日:2003年06月17日(火)22時18分22秒
- 紺野一人称でオリジナルは難しかったので、少し吉澤視点の話も載
せたいと思います。
>>29
ありがとうございます。
とりあえず遅れるかもしれませんがオリジナルでいきたいと思います。
- 31 名前:吉澤視点 投稿日:2003年06月17日(火)22時23分32秒
- 「気持ち悪いわ、よっすぃ〜」
何度目かのあさ美との頭の中での会話を楽しんで、ちょうど電話を切ったときにその声は聞こえた。
私が驚いて振り向くと、隣の家に住んでいる幼馴染の亜依がベッドに座っていた。
「なんだ亜依か、驚かせないでよ。」
「知らんわ、声をかけようとしたらいきなりにやけ始めたり、めちゃくちゃ気持ち悪いわ。一体どうしたん?」
「なんでもないよ。」
- 32 名前:吉澤視点 投稿日:2003年06月17日(火)22時25分06秒
- 私はあさ美との会話(といっても、周りから見ると何も話していないように見えるのだが)を見られた恥ずかしさで、できる限り早く亜依を追い返したかった。
「そろそろ戻らないとまたおばさんにばれて怒られるよ。危険な事するなって。」
私と亜依の家は近接していて、とくに私の部屋と亜依の部屋のベランダはわずか50cmくらいの隙間しかなく、いつも亜依はベランダを乗り越えて、私の部屋に来る。
「大丈夫、今はみんな買い物に行っていてうち一人しかおらんから、めっちゃ暇なんや。」
そう言えば隣の家の車が出て行くのを見た気がする。
私は仕方なく、亜依の相手をする事にした。
- 33 名前:吉澤視点 投稿日:2003年06月17日(火)22時27分12秒
- 三十分ぐらい二人で話したりゲームをしたりして遊んだ。
ゲームも一段落ついた後、亜依が急に真面目な顔になった。
「なあよっすぃ〜、まだ学校行かんの?」
「・・・またその話?いいじゃん、私の勝手だよ。」
私はある理由があって一年前から不登校を続けていた。
一日のうちのほとんどを自分の家の中で過ごしていた。
最近10日間のことを思い出しても家族以外に会話をしたのはあさ美と亜依、後二,三人ぐらいだ。
- 34 名前:吉澤視点 投稿日:2003年06月17日(火)22時30分15秒
- ああやって、あさ美と普通に話せたのも不思議なくらいだった。
ちなみに亜依は私と同じ高校で、あさ美と同じ高一である。
亜依だけが唯一私の不登校の理由を知っている。
「もうそろそろ学校行こうで、よっすぃ〜といっしょに登校するのが楽しみやったのに。結局一度も行けてないやん。」
「そのほうがいいよ。私なんかと一緒に登校したら亜依に迷惑がかかるよ。」
亜依はまだ何か言おうとしたが、ちょうど亜依の両親が車で帰ってきたみたいなので、何も言わずにベランダを乗り越えていった。
- 35 名前:スワローズ 投稿日:2003年06月17日(火)22時33分10秒
- すみません、これからは更新量は少なく、期間はかなり開いたりすると思います。
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月17日(木)18時38分14秒
- 保
- 37 名前:スワローズ 投稿日:2003年08月05日(火)15時28分26秒
- 翌日
この日は私にとって一ヶ月の中でもっとも大事な日だ。
午前中、あさ美から電話がかかってきたが、今日は話せないと、謝って、電話を切る。
午後になり、4日ぶりに外に出る。
行き先は家から2キロほど離れた墓地だ。
途中で、花屋に寄り、菊と彼女が好きだといっていた二、三種類の花を花束にしてもらう。
もうこれで、何十度目かの墓地までの道のりをただひたすら歩いていく。
墓地に着いても、目的の墓までまっすぐ進む。
目的の墓まで着くと、慣れた手つきで買ってきた花を供え、バケツに水を汲み、それを墓にかける。
それから、両手を合わせ、目を閉じる。
5分ほど、そのままの状態でいる。
- 38 名前:スワローズ 投稿日:2003年08月05日(火)15時33分14秒
- 目を開けた後も、なかなか私は立ち去れずにいると、大きな声で私を呼ぶ声がした。
「よっすぃ〜」
周りを見渡しても、誰も見えないが私には誰の声かすぐに分かった。
「矢口さん・・・」
しばらくすると、私のすぐ近くの墓の横からひょこっと出てきた。
なんという事はない、身長が低すぎて、墓に隠れて見えなかっただけだった。
矢口真里
私の一つ上の先輩で、1年前の事件の時、事件の後も一人だけそれまでと変わらずに私に接してくれていた。
矢口さんも私と同じように毎月彼女の月命日に墓参りをしていて、二ヶ月に一回は私と時間が重なって今日のように会うことがある。
- 39 名前:スワローズ 投稿日:2003年08月05日(火)15時36分55秒
- 「よっ!久しぶり」
「どうも」
「学校はどうしたの?」
「まだ行ってません」
「まじ!?いい加減さあ、学校行かなきゃ」
私の言葉に驚いてはいるが、どこか予想はしていたような顔になる。
「矢口さんだって、こうして毎月来てるじゃないですか」
「おいらは別に・・・ただここに来てればよっすぃ〜に会えるから」
「へ?」
矢口さんの口から出た言葉は私の予想外の言葉だった。
「おいらはずっとよっすぃ〜の事が好きだった。よっすぃ〜があの子と付き合ってるときも・・・でも、告白するつもりなんて無かった。よっすぃ〜とあの子の間においらが入る余地なんて無かった。だからずっとよっすぃ〜ともあの子とも友達のままでいいと思っていた。でも、あの子が死んで、よっすぃ〜が学校中から責められるようになっておいらを頼ってくれたとき、本当は心の奥底であの子が死んでよかったって思ってしまったときもあったんだ」
- 40 名前:スワローズ 投稿日:2003年08月05日(火)15時38分03秒
- 私はただじっと静かに矢口さんの言葉に耳を傾けていた。
「すぐにそんな事を考えた自分が恥ずかしくなった。でもその時、やっぱよっすぃ〜の事があきらめられない自分に気づいた。今でも好きです、よっすぃ〜・・・」
そう告白した後の矢口さんは一段と小さく見えた。
きっと、矢口さんも分かってると思う、私の返事がどんなものなのか。
「ごめんなさい、矢口さん。私はやっぱ彼女の事忘れられそうに無いです。そりゃあ、いつまでも過去に縛られたままでいたらいけないとは思うけど、まだ吹っ切れそうにありません・・・でも、矢口さんのおかげで、少しは前に進めそうです。ありがとうございました」
最後の二言は自然に私の口から出てきた。
矢口さんもそれを聞いて笑顔を見せてくれた。
そして、
「よかった、じゃあ過去を吹っ切ったらおいらにも可能性があるってことだね。おいらはあきらめないから、よっすぃ〜がんばってね」
と言って走って帰っていった。
私もそんな矢口さんを見ていたら自然に笑顔になった。
「矢口さん、結局墓参りして無いじゃん。まあ、矢口さんらしいけど」
私は最後にもう一度合掌をして墓地を後にした。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/11/18(火) 07:45
- ほ
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 00:19
- ほ
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