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ひよこの眼。

1 名前:たのけん 投稿日:2003年05月21日(水)16時22分18秒

 その転校生の目を見た時、なぜか懐かしい気持ちに包まれたのだが
それが一体どのような記憶から端を発しているのかが
私には咄嗟に思い出せなかった。

金色の髪も、小さな身長も私の目にはとまらなかった。

私は、その時まだ高校三年生だったし
その年齢で懐かしがるべきことなど、一つもないように思えたから
切ない感情が霧のように胸を覆い、心を湿らせた時
私は驚き、そして混乱した。


2 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時23分20秒



彼女、矢口真里は教壇に立ち、澄んだ瞳で教室を見下ろしていた。
私たちは、好奇心にあふれた様子で、その転校生を見つめて、
ひそひそと内緒話を続けていたが、彼女は全く動じない様子で、
担任の教師が自分を紹介するのを聞いていた。


「……というわけで、矢口は、君たちと
 同じ場所で学ぶことになったわけだ。
卒業までの短い間だが、どうか仲よくしてあげてくれたまえ。
じゃ矢口、君からも何か挨拶があるだろう。」


教師は促すように彼女を見た。
けれど、彼女はただ立ち尽くしているだけだった。
緊張してしまったのだろうかと、私は顔を上げて彼女の顔を見た。






3 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時23分51秒



ところがそうではなかった。
彼女は、落ち着いていた。
そして、その澄んだ瞳を瞬きもせずに
大きく見開いて何かを見ているようだった。
何を見ていたのかは、全くわからない。
私には彼女が、空気中にある彼女自身にしか見えないものを
見つめているように思えた。

つまり彼女は、教師の言葉などまったく耳に入れていないのを
明らかに周囲にわからせてしまうほどに、上の空だったのだ。





4 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時24分22秒



教師は、顔を赤らめて、咳払いをした。

「おい、矢口、おい、聞いているのか!?」

彼女は、ふと我に返ったように、怪訝な表情で、教師を見た。

「挨拶ぐらいできんのか、おまえは。」

彼女は、小さく肩をすくめて、頭を下げた。
私たちは、一斉に吹き出した。
同じ年齢にしては妙に超然とした雰囲気が、おかしかった。
私たちのほとんどが、担任教師を嫌っていたので
彼女のような態度は、私たちの気に入った。
教室のいちばん後ろに用意された席に彼女が歩いて行く時、
私たちは目配せを交わし合った。
こうして、矢口は、私たちのクラスの一員になった。




5 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時24分53秒



矢口は、自分から他の生徒と積極的に言葉を交わそうとはしなかったが
そのひょうひょうとした様子は、みんなの気を引くのに十分だった。
休み時間になると、何人かの生徒が彼女のところに行き
彼女を質問責めにした。
みんな、季節外れの転校生の秘密を知りたがっていた。
けれど、矢口は、個人的な事情などは、
上手い具合に避けて言葉を選びながら会話を交わしていたので、
私たちは、彼女の前の学校でのことを少しばかり知るだけだった。

「結構イイよね、矢口さんって。」
「大人っぽい気がする。」
私と仲の良い子たちは
口々に、そんなことをささやいていた。




6 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時25分30秒




転校生は、いつも見慣れた生徒たちより、
どうしても良く見えるものだ。
私はそんな風に思った。


私はむしろ、彼女の瞳に遭遇した時の
あの懐かしい感情について考えていた。
初めて出会う人間に対して何故、そんな思いが
心をよぎるのかが不思議でならなかった。
自分の内のつたない記憶をたどってみるのだが、解決しなかった。
まるで、解けない問題を一つ抱えているような気分になり
私は、自分自身をもどかしく思った。




7 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時26分00秒




その日以来、私は少しばかり苛立ちながら、毎日を送るようになった。
私は授業中、あるいは休み時間、つまり学校にいる間は
ほとんど一日中矢口を盗み見るようになった。
もちろん転校生の彼女は、いつも生徒たちの注目を集めていたが、
私が彼女を見つめるのは好奇心からではなかった。
私は、どうしても心の中のもどかしさを取り去りたかった。
思い出そうとして思い出せないものを抱えるほど、腹立たしいことはない。
私は時には、歯がみをしたいくらいの気持ちで、矢口を見つめ続けた。





8 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時26分32秒



彼女は、いつも上の空のように見えた。
上の空という言い方は正しくないかもしれない。
彼女の瞳は、いつも真剣に何かを見つめているようだったから。
けれど、その何かは実在するものではないようだった。
空気の間に、何か、彼女にとっての重大なものが浮かんでいるかのように、
彼女は一点を見つめているのだ。
彼女は、いったい何を見ているのだろう。
私は、時折、彼女の視線の方向に自分の焦点を合わせて見るのだが
もちろん、私の目には何も映らない。
瞬きすらしない彼女の瞳には、いつもうっすらと涙の膜が張っている。
私は、それを見て首をかしげずにはいられない。
彼女が、何かに関して真剣になっているのは確かだと思うのだが。



9 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時27分03秒




「ねえ、なっち、ちょっと聞いてもいい?」
友達の圭ちゃんが、ある日、言いにくそうに私に尋ねた。
圭ちゃんとは中学からの付き合いだ。
何でも相談できる、信頼できる友達だ。
「なに?」

「あのさこれ、みんなが言ってるんだけど、
あんた、矢口のこと好きになったんじゃない?」

私は、驚いて、思わず自分の胸を指さした。

「なっちが!?どうして!?」

「だって、みんな、あんたがいつも矢口の事見てるって言ってるよ。」


「そんな……。」








10 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時27分36秒



私は、困りきった表情を浮かべたまま、
なんと言ってよいのかわからずに呆然としていた。
私が彼女を見つめているのは事実だが、決して彼女に心を引かれたとか
そういう甘い気分でいるのではないのだ。

「そういうんじゃないよ。でも、そんな風に見えるの?」

「うん、見える。」

「困ったな。」



11 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時28分07秒





私は、その不本意な噂を消し去るために
彼女を見つめるのを当分やめることにした。
すると、かえって私のしぐさはぎこちなくなってしまい
自分でもわかるほどに、冷や汗をかいた。
矢口に出会ってから、数週間のうちに
私は、自分が彼女を盗み見るということを
習慣にしてしまったことに気がついた。

授業中、矢口が指名されて立ち上がると
クラス中の生徒たちは、一斉に私を見るようになった。
私には、彼女らのこらえている笑いの気配を背中で感じることができた。
私は、彼女らの思っていることが
間違いであることを悟らせるために平静を装おうとするのだが
そうしようとすればするほど、顔は赤く染まり、冷や汗が額に浮いた。
私は泣きたい気分だった。






12 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時28分39秒






どうして、こんなことになってしまったのだろう。
私は、ただ、解けない問題の答えを探るように、
矢口を見ていただけだったのに。
私は、自分があまりにも無防備であったことに
舌打ちをしたい気分だった。
受験を控えた生徒たちにとって、
恋の噂は、ちょうど手ごろな気分転換法だったのだ。






13 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時29分09秒





それは、秋の文化祭についての話し合いが持たれた放課後のことだった。
クラスの中から実行委員を各二名選出するために、
クラス委員が候補を募っていた。
ある女子生徒が手を挙げて言った。


「矢口さんとなっちなんてどう?」


一斉に拍手が起こった。
私は、誰かがその悪い冗談を口にしないように
ずっと下を向いていたのだが、やはり逃げようとすればするほど
彼女らは私の気持ちを探し当ててしまうのだ。
クラス委員は、少し困ったように言った。



14 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時29分54秒




「なっちはいいけど、矢口さんは転校して来たばかりだし、
 どうでしょう?」
「でも、卒業までに一個ぐらい
 思い出を作っといた方がいいんじゃない?」
「そうそう、二人は、息もぴったり合ってるし。」

みんな、無責任な様子で笑っていた。
どうして、こんなことになってしまったのかと
私は、うつむいて涙をこらえていた。

何度も言うようだが、私は、ただ、矢口を見て、
あの懐かしさの原因を探し出そうとしていただけなのだ。
その時、矢口が、立ち上がって言った。


「おいら、やるよ。
 転校して来たばっかでいいんなら、引き受ける。」


「やった!!」

クラスの人たちは口笛を吹いたり、拍手をしたりして
私と矢口をはやし立てた。
圭ちゃんを含めた私と仲のよい数人だけが、憮然とした表情で、
机に肘を突いたままだった。
はやし立てている声を聞き流して矢口は立ち上がって言った。








15 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時30分24秒




「もういいんでしょ。」



そして、クラス委員があっけにとられる中
鞄を抱えて、私の席に来て、私を見下ろした。


「帰ろう。歩きなんでしょ?おいらも歩きだから。」



私は驚きのあまり、彼女を見上げているだけだった。
矢口が直接、私に話しかけたのは初めてのことだったのだ。

しかも、みんなが見つめている中で。




16 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時30分55秒




私は、うなずいて、のろのろと立ち上がって帰り支度を始めた。
どうにでもなれという気分だった。
どうせこのまま、私がすねていたとしても
噂が消えることなどないのだ。
私と矢口は、二人で教室を出た。

すごいとか、やるなあとか、教室の窓から感嘆の声が、
私たちの背後から追いかけて来た。
私と矢口は、しばらく無言で歩いていたが
彼女に自分の気持ちを伝えておかなくてはと思いようやく口を開いた。





17 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時31分25秒





「あの、なっちみんなが言うようなこと、思ってないの。
どうして、あんな噂が出たのかわからないけど……。」

矢口は、ちらりと私を横目で見て笑った。

「知ってるよ。でも、いつもおいらの事見てたでしょ?」

私は、自分の頬に血がのぼるのを感じた。

「気づいてたの?」

「うん。何でかなって思ってた。」

私は、ため息をついた。彼女は、私が見つめていたことを知っていたのだ。
そして、そこには初恋とか
そのような甘い気持ちが混じっていないことにも気づいていたのだ。
私は、なんだか味方を得たような気分になり、
気持ちが楽になるのを感じた。
どうやら彼女は、物事を正確に見つめることのできる人のようなのだ。







18 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時31分56秒





「実はねえ……。」




私は、初めて彼女の瞳に出会った時から
ずっと心の中に棲んでいる疑問について話し始めた。
彼女は、興味深そうに、私の話を聞いていたが首をかしげるばかりだった。

「でもおいら、東京に引っ越して来たばっかだし、
 安倍さんと会ったことなんてないはずだよ。」

「うん。それはわかってるんだけど、絶対に見覚えあるんだよね、
 矢口さんの目に。」

「ふーん。ま、いいか。」

そう言ったきり、矢口は再び黙って歩き続けた。




19 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時32分26秒




私は、彼女が再びあの目をしているのに気づいて慌てた。
一体、どこでこの目に出会ったのだろう?

「矢口さん。」
「えっ?」
彼女はふと我に返って私を見た。
「今、何考えてたの?」
「別に何も。」
「うそ。絶対に何か考えてた。じゃなかったら、何かを見てた。」
「例えば?」
私は困惑して、首を横に振った。彼女は、笑って私の肩をたたいた。
「みんなが言うこと気にしない方がいーよ。
 大した事じゃないし、あんな噂。」
「矢口さんって、大人っぽいよね。なっち達よりも、
 ずっと先を行ってるみたい。
評判いいよ。矢口さん見て騒いでるの聞いたことあるもん。」

矢口は一瞬、唇をかんだ。
「どうってことないよ。そんなの全然大した事じゃないし。」

彼女はそう投げやりに言うと、再び口をつぐんでしまった。






20 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時32分57秒



彼女のその様子は、私などには及びもつかないことを
隠し持っているように見えた。
私は不意に悲しい気持ちになった。
彼女は、明らかに、私と必要以上に親しくなることを
拒否しているように見えて
そのことに私は同情していたのだ。
私を含めた些細な事柄に、とても興味を示すことなどできないほどに
何かに対して心を砕いている彼女の身の上を想像し
私はため息をつかずにはいられなかった。

私たちの年齢の人間が許容できる大きさ以上に
何かを背負っている彼女は、そういう人に見えた。



21 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時33分29秒



その日から私たちは、付き合っている二人として
クラス中の生徒たちに認められてしまった。
私は、言い訳をしなかった。私はみんなが思っているように
矢口と付き合っているわけではなかったが
私が彼女に関心を持ったのは確かだったし
文化祭の実行委員会のあとで
いつも、二人で帰るのは周知のことになっていたのだ。

私は、次第に彼女が気を許し始めているのを感じていた。
あの上の空の様子が、私と一緒にいる時、影を潜めるようになった。


彼女はよく笑った。そして、そんな彼女を見て私も笑った。
私は、彼女の笑顔が好きだった。
それは、あの懐かしい気分を、私に忘れさせた。
彼女は、知り合ったばかりの人として、私の心に入り込んできた。
そこには、楽しさ以外に何もなかった。




22 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時33分59秒



それでも、私は知っていた。私と言葉を交わしていない時、
矢口がやはり、瞬きもせずに何かを見つめているのを。
私は、もうその瞳を懐かしいとは思わなかった。
そう思うには、私は彼女に好意を持ちすぎていた。

その表情をする時、彼女が決して幸福ではないことを、私は知っていた。
彼女が、幸福ではないのだと思うことは、私の心を傷つけた。
私は、その時、すでに、好きな人には、
呑気な幸せを授けたいと願うほどに大人になっていた。
私は、自分に訪れた恋というものを実感していた。
それは、今までに一度も味わったことのない感情だった。
甘酸っぱいものを思い出した時に頬がくぼむ
あの時の感じに、それはよく似ていた。




23 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時34分30秒



私は、彼女を悲しい場所には置きたくないと思った。
彼女のことを心配しているというより
そうなったら、自分自身がやるせないだろうと予想したからだった。
私は、自分勝手にそんなことを思い、そしてそんな自分を許していた。
私が楽しい気分になるためには、彼女もそうでなくてはならなかった。
もちろん、彼女にはそんな自分の気持ちを伝えてはいなかった。
親しく言葉を交わすようになったとはいえ
彼女は、相変わらず自分の領域を守り続けていて
そこに、私を入れることはなかった。
私は、気のおけない友人として振る舞うしか術を持たなかった。



24 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時35分08秒




「矢口ってさぁ、随分季節外れに転校して来たけど何か理由あるの?」 

矢口は、私の質問に、一瞬、不意をつかれたような
うろたえた表情を見せたが、
きわめて明るい調子で言った。

「父親は、病気で仕事出来ないんだ。
 だから親戚に面倒見てもらえって言われたけど
何か、合わなくてさ。だから学費だけ出してもらって今は一人暮らし。」
「お父さん、そんなに悪いの?」
「まあね。借金取りから逃げて来たんだけどさ、
 もう逃げる必要はないみたい。」
「……お母さんは?」
「さあ、おいらが小さかった時にどっか行っちゃったもん。
男と逃げたらしいよ。おいらって不幸でしょ?」
「そんな……。」
私は、そういう不幸な家庭というものは、
小説やテレビのドラマの中にしかないものだと思っていたので慌てた。




25 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時35分42秒




「そんな顔しないでよ。
 今のは、全部嘘だよ。冗談。今時そんな話あるわけないじゃん!」




矢口は、そう言って、私の背中をたたいて吹き出した。
私は、不安な気持ちに包まれたままだったが
彼女の手が自分に触れられているというだけで
気持ちが楽になってしまうのだった。
目の前に、好きな人がいるというのは、
なんと気分が落ち着くものなのだろう。
とりあえず、彼女は、私の目の前で笑っている。
それだけでいいのだ。だからこそ、余計に怖くなる。
私の目の届かない所で、
彼女がもしつらい目に会っていたらと考えるだけで、
私の心には暗い影がさす。





26 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時36分15秒





「なっちは、おいらの事好きなの?」





突然、矢口は、そんなことを尋ねて、私を慌てさせた。
私は、体中の熱が、自分の顔のほうに上がって行くような気がして、
今にも倒れそうだった。



「ど、どうしてそんなこと聞くの?」



「そうかなって思ったから。おいらの事、いつも見てるんだもん。
なっちって変なんだよね。おいらとちゃんと向かい合って話してる時より
おいらが、一人でぼんやりしてる時のほうが真剣に見つめてるんだもん。
 あれ、どうして?」

私は下を向いて目を固く閉じた。
そして、言うべき事を彼女に伝えなくてはと震える声で告白した。










27 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時36分50秒



「好きだから。心配だから。」


「何が心配なの?」

「わかんない。なっちと話してる時は、
なっちが矢口の事笑わせてあげられるからいいけど、
一人の時は、そうじゃないから。」

矢口は、困った表情を浮かべて、黙っていた。
私は、彼女を不愉快にしてしまったのだろうかと不安になり、尋ねた。




28 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時37分20秒




「怒った? 余計なお世話だった?」
「まさか。」

彼女は、首を横に振った。


「おいらもなっちの事、好きだよ。」


「本当!?どうして?」
「どうしてって言われても困るけど、なっちって変な奴だもん。
おいらの目が懐かしいって言ったりしてさ。今でも、そう思う?」
「思いたくない。」
「どうして?」
「なんだか怖いから。」
矢口は、私を抱き寄せた。夕暮れだった。
公園には、何組かの恋人たちがいたが

私は、自分と矢口が一番、切ないと思った。







29 名前:ひよこの眼。前編 投稿日:2003年05月21日(水)16時37分58秒



「どんどん日が暮れるの早くなって行くね。」
「うん。でも、空気が冷たくなるほど、
夕方の空ってきれいなんだよね。
なっち、寒くなっていくのって嫌いじゃないよ。矢口は?」
「おいらは嫌いだった。なんか寂しいもん。でも、今はいいな。
これからも平気かも。おいら、寒がりだけど、
吐く息が白くなっていくってことは、
 体の中があったかいってことだもんね。」
私は、涙ぐみそうになった。
私は、この先、どんなことがあっても
矢口に寂しい思いをさせたくないなぁと思うのだった。
彼女の瞳には、相変わらず涙の膜が張っているように見える。
けれど、それは、決して上の空の涙ではない。
私がそばにいることが、彼女の瞳をぬらしているに違いないのだ。

矢口が私の手を握った。
私も、力を込めて彼女の手を握り返した。




幸せだった。お互い目が合って笑いあった。










30 名前:たのけん 投稿日:2003年05月21日(水)16時40分12秒
パクリです。
前編・後編の2つに分かれてます。
31 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月23日(金)11時24分38秒
丸写しは止めてね。人目につかないように落としておきます。
32 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月04日(水)22時24分28秒
パクリでも気にしないっす。てか、元ネタ知らないのでちっとも気にならないっす。
続き待ってます。作者さんがんばれ!
33 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月05日(木)01時45分06秒
そんなに読みたいならここでどうぞ。

ttp://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/hiyoko_text.HTM

あと、パクリでもいいとか言わないでください。
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このスレは上記作品の丸写しです。
そして著作者の承諾なしに勝手に改変しています。
これは犯罪です。親告罪ですから、告訴されない限り司直の手が及ぶことはありませんが、
プロバイダに発覚した場合、問答無用で消されます。
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このスレが速やかに削除されるよう二度とレスしないようお願いします。
34 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月05日(木)23時48分06秒
ごめんなさい…。
35 名前:/WpKNxqc 投稿日:2003年06月11日(水)09時45分17秒


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