恋吹雪

1 名前:ビビオ。 投稿日:2003年05月26日(月)22時37分31秒

お暇なときにでも。


2 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時38分36秒

Mステのリハを終えて戻った楽屋。
いつもなら頭が痛くなるほど賑やかな場所も今日は違う。

今日は私一人だけ…。




3 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時39分37秒

おけいさんと安倍なつみ(モーニング娘。)
私の初めてのソロは母と娘のデュエット曲だ。

誰が言い出したのかわからない企画物。
何故私が歌うことになったのか今も理解できない。
どうせなら辻や加護が歌った方が、何倍も可愛らしい親子ソングになっただろうに。
もうすぐ22歳になる私がこんな歌を歌うはめになるとは…。

隣で歌ってる女の人のことだって、な〜んにも知らない。
昔活躍していたのかもしれないけど、突然『パートナーです』って言われてもね。
無理矢理作り出した営業用の笑顔で『よろしくお願いします』って言うのが精一杯だった。



4 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時40分22秒

だからといって私は手を抜いたりしない。
どんな仕事も無条件に受け入れベストを尽くす。

それが娘。にいて培われた仕事への姿勢だから。

納得いかないこの歌だって、最高の笑顔で歌うことができる。

それって、いいこと?
いや…、悲しいことだよね。



5 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時41分02秒

その分、歌い終わった後の疲労感はかなりのもの。
娘。のような激しいダンスがあるわけでもないのに心底ぐったりしてしまう。
精神的なものだね、きっと。

母親面で親しげに語りかけてくるおけいさん≠ゥらどうにか逃れて、楽屋に
駆け込む私。

はあ〜っ…。
なにやってんだか…。



6 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時41分42秒

それにしても一人の楽屋は退屈で寂しい。
この環境はおしゃべり好きな私にはかなり辛いかもしれない。

ふと以前読んだごっちんのインタビュー記事を思い出す。

『楽屋で一人でいるとすっごくさびしいですね。賑やかなのが当たり前でした
 から、ずっと』

ごっちんのこの気持ち、今わかった。

一人は…、嫌だね…。



7 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時42分30秒

とくに何もすることがなくて、バッグからケータイを取り出しメールチェック。
5件の着信があった。

最初はののだ。
『なちゅみ〜、さびしいだろうけどがまんするだよ!がんばってね!』

次は矢口。
『なっちー!緊張するなよ〜!みんなで見てるから!がんばれっ!』

新垣からも来てる。
『安倍さーん、がんばってください!まゆげビーム!』

梨華ちゃんからも。
『がんばってくださいね!音はずさないように!』



8 名前:恋吹雪 投稿日:2003年05月26日(月)22時43分30秒

そして最後のメールは…。
えっ!?
…ごっちんからだ。

『なっちを見てます。これからもずっと…』


まさか、ごっちんから来るなんて。
スケジュール知ってたの?

っていうか、なにこのメール…。

意味不明…じゃなくて意味深。
単なる激励メールに思えないんだけど…。


激しく動揺した私は、本番で歌詞を間違えるという滅多にないミスを犯してし
まった。



9 名前:ビビオ。 投稿日:2003年05月26日(月)22時44分27秒

まずはここまでです。


10 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月27日(火)23時21分56秒
おもしろそっ
なちごま?なちごま?
がんばってくださいな。
11 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月28日(水)16時41分55秒
好きなCPかも!
続き楽しみにしてます。
12 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月28日(水)23時06分52秒
(・∀・) イイ!!
早く続き読みたいっす
13 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月01日(日)15時33分19秒

次の日、ハロモニの収録日。

遅れ気味に楽屋に入ると、そこはメンバーのかん高くて楽しそうな笑い声で溢
れていた。

やっぱりいいな、静寂より賑やかな方が不思議と落ち着く。
習慣って恐ろしい。


14 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月01日(日)15時34分14秒

すぐにののが駆け寄ってきて、タックルのごとくしがみつかれた。

「なちゅみー、きのう間違ったよね〜!」
「言わないのぉ!反省してるんだから」

少し前までは一番近くにいたのは矢口だったんだけど、最近はののとべったり。
気づくとこの娘はいつも膝の上に乗っかってる。

なんだろう、一緒にいてすごく楽なんだよね。
こんなに歳が離れているのに…、波長が合うんだろうな。



15 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月01日(日)15時35分08秒

矢口は基本的に誰とでも仲良しだ。
意識的に下のメンバーにも声をかけてコミュニケーションをはかっている。
そういうとこ、素直にエライなって思う。
最近は梨華ちゃんと一緒にいることが多いかな。
『まりっぺ〜♪』『キショッ!』なんて会話がよく聞こえてきて、みんなの笑い
がそこから広がって場を和ませていく。

梨華ちゃんも矢口と同じで、やたらと気を配るタイプ。
自虐ネタはすっかり板について、最近は後輩からもつっこまれるようになった。
いじられて喜んでるところが、梨華ちゃんらしいね。

この二人が、娘。を引っぱって行ってくれれば、まだまだ大丈夫だと思う。

うん、安心。


16 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月01日(日)15時36分10秒

奥の方では加護とよっすぃーがキスしながらじゃれ合ってる。
私たちは見慣れてるけど、よその人がアレを見たら引くかも…。
だんだん濃厚になってるしね…。


「あっ…」

思わず声が漏れたのは、その二人の後ろにいる人影を見つけたから。

「どうしたの?」
「ううん…、べ、べつに、なんでもないよ…」

はっきりしない返事にののが不思議そうに首をかしげたけど、私は気づかない
振りをして笑顔でその場を流した。


ごっちん…。




17 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月01日(日)15時37分26秒

私とごっちんは世間で思われているような不仲では決してない。

確かにごっちんが加入したことで、当時一人でメインを張っていた私は複雑な
思いをたくさん味わった。
だから『安倍は後藤が嫌い』って思われるのは当然なのかもしれないけど。

でもね、普通なら抱くであろう敵対心なんか吹っ飛ばしてしまうほど、ごっちんは
とってもイイやつなんだ。

4期が入ってくるまでは末っ子キャラ爆発で、めっちゃかわいかったし。
今は大人っぽくなったけど、内面は全然変わってない。
素直で、穏やかで、やさしくて、照れ屋で、嘘つけなくて。
家族が大好きで料理が趣味なんてとこは、まったく私とおんなじで。



18 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月01日(日)15時38分59秒

新メンバーになったごっちんの教育係には紗耶香がついたけど、プライベート
では矢口を含めた3人でよく遊んでいた。
街の中を手つないで堂々と歩いて、見つかってはキャーキャー大騒ぎして逃げ
たっけ。
くすっ…おもしろかったなぁ。

4期が加入してからは、自然と3人で遊ぶ回数は減ってしまった。
ごっちんは同い年のよっすぃーと仲良くなったしね。

そしてごっちんが卒業してからは、3人で一度も遊んでいない。


あんなにいつも一緒だった矢口も、いつのまにか少し離れた存在になっていた。





19 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月01日(日)15時40分02秒

更新しました。

短いな〜、ごめんなさい。
20 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月01日(日)15時43分08秒

レスありがとうございます。感謝!

>10 名無し読者さん
初レスありがとうございます。
興味を持っていただけたようで嬉しいです。
今回は話が全然進んでなくて…もう少しお待ちを。
たぶん、なちごま…いや、なちま…!?

>11 名無し読者さん
レスありがとうございます。
好きなカップルだと良いのですが…。
続きが楽しみだなんて、めっちゃ嬉しいです。

>12 名無し読者さん
レスありがとうございます。
とても励みになります!
早く更新できなくてすいません。
がんばりますね〜!


21 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月03日(火)11時33分24秒
おもしろそうな作品みーっけ!
楽しみにしてますね!
22 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時39分55秒

『バスがくるまで』の収録が終わった。

なんとなく一人になりたかった私は楽屋へは戻らず、そのままロビーへと足を
向けた。

なにか冷たいものを…と自販機の前に立って気づく。
自分がかわもち君の衣装のままで、お金なんて持っていないということに。

「は〜っ、お金ないや…」

ため息とともに呟いた独り言。
と同時に背後から聞きなれた声が重なった。

「紅茶でいい?」
「え…」

振り返るとそこには学ランを凛々しく着こなしたごっちんが立っていた。



23 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時40分36秒

答える間も無く、ごっちんはコインを入れてボタンを押した。

なんでごっちんがここに…?
予期せぬ展開に心拍数が上がる。

「はい」
「あ…、ありがと」

受け取る手が少し震えてしまったのは動揺の表れ…。
気づかれてはいないみたいだからよかったけれど。


ごっちんも同じものを手にして、私たちは椅子に座った。

24 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時41分21秒

「変な画だよね」
「え?」

「え?じゃなくて画…かわもち君と文麿のツーショット」
「あ…だね」

いつもならたぶんそこで笑ってるんだろうけど、今は無理。
ごっちんがすぐ隣にいるってことが、胸をざわめかせる。
なんだろう、この感じ…。

そうだ、そんなことよりまず謝らなきゃ。

…きのうのメールのこと。


25 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時42分03秒

『どういう意味?』

私がごっちんに送ったメールは、そんな素っ気無い一行だった。
わざわざ激励のメールをくれた人にそんな言い方ってないだろうに。

でもあのときは訳わかんなくて、カーッと頭に血が上ったような感じがして。もっと違う言い方があることに気づかなかった。

返事はとうとう返ってこなかったから、ごっちんも気を悪くしてるに違いない。

そのことが朝からずっと気になって、私は一日中落ち着かなかった。



26 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時42分42秒

「ごめんね、なっち」

「な、なに…?」

先に謝られてしまったことに驚いて思わずごっちんの顔を見る。
すると彼女は私を避けるかのようにすっと眼を伏せた。
そういえば今日まだ、一度も視線を合わせてない。

「余計なことした…きのう」

激励のメールは決して余計なことなんかじゃない。
私の返したメールがおかしいんだ。



27 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時43分26秒

「ちがうよ、あやまるのはなっちのほう…。なんであんな言い方…」

ごっちんは紙コップを見つめたまま微動だにしない。

長い髪を後ろで一つに結んでいるごっちんの横顔。
あごのラインが綺麗だな…なんて場違いなこと思ったりして。

「わざわざ本番前に励ましのメールくれたのにさ…」

前から綺麗だと思っていたけど、こうしてあらためて見ると大人っぽくて色っぽい。
私より4つも年下なんてとても信じられない。

28 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時44分07秒

「ちがうよ」

「…え?」

ごっちんの強い声。

「あれ、励ましじゃない」

「え?あの…じゃあ…」

「ごとーの気持ちだから」

胸がドキンと跳ねた。
と同時に頬がカーッと熱くなる。

な、なに…?
どうしたの?


29 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月05日(木)00時45分01秒

「ごっちんの…気持ち…?」

「うん…」

今日初めて眼が合った。
大きな瞳は少し潤んでいるせいか、いつも以上にキラキラしてる。
逸らすことを許してくれない強い眼差し。

「どういう意味かまだわかんない?」

「……」

「ごとーは…、ごとーはなっちが…」


ごっちんの声が震えて、私の胸の鼓動も最高潮に達した。



30 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月05日(木)00時45分48秒
更新しました。
( ´ Д `)<中途半端で切ってごめんなさ〜い。
31 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月05日(木)00時46分44秒
レスありがとうございます。感謝!

>21 名無し読者さん
レスありがとうございます。
とても励みになります。
おもしろくなるようにがんばりますっ!


ではまた。
32 名前:読者 投稿日:2003年06月05日(木)03時21分55秒
ごっちーーん!!
こんな良いところで止めるなんて作者さんったら…(笑)
なちごまなちごま〜♪
続き期待しまくりです。
33 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月05日(木)16時18分27秒
な、なんてところで・・・(w
続きが気になってしょうがない!
34 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月07日(土)02時51分49秒
こっちもドキドキしてるんだが、寸止めかよっ!
>>20
ラブマ三銃士マンセーなので、なちごま、なちまりどっちでもうれひー!
あ!なちまこってのもありなんかな。。
ま、とりあえず、マターリ待ってます。がんばってね。
35 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月10日(火)23時55分52秒

「あ〜っ!!あやしい二人発見!」

「文麿がかわもち君をナンパしてる〜!」

張り詰めた空気を一瞬にして壊してくれたのは、辻と加護。
私たちはいつのまにか狭まっていた距離をあわててもとに戻した。

「誰がナンパだって〜!?」

ごっちんが何事もなかったかのように立ち上がって、二人の方へ走り寄る。

「ごっちん、マネージャーさんが呼んでるよ」
「あっ、なんだ。呼びに来てくれたんだ」
「そうだよー、お礼にお菓子ちょーだい!」
「しょうがないな〜、おいで!」
「やった!」

ちびっ子二人に腕を掴まれながら、ごっちんの姿が見えなくなっていった。


36 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月10日(火)23時56分49秒

一人取り残された私は、まだ今の出来事を受け入れられなくてかなりの混乱状態。

『ごとーは…、ごとーはなっちが…』

あれって…。

あの言葉の続きなんて、容易に想像がつく。
自惚れとかそんなんじゃなく、私だってそれなりに恋愛を重ねてきたから。
あの雰囲気、あの眼差し…、きっと間違いない。
にわかにはとても信じられないことだけど。

ごっちん、私を…?


考えれば考えるほど身体中がどんどん熱くなっていく。

手にしていた紅茶を一気に喉に流しこんだけど、急激に上がった体温はなかな
か戻らなかった。


37 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月10日(火)23時57分40秒

鼓動が静まらないまま楽屋に戻ると、矢口と5期メンがいた。

私が中に入ると、一斉に「お疲れ様です!」と元気のいい声が飛び交う。
5期メンはホントに礼儀正しい。

矢口は一人離れたところでファッション雑誌を広げていた。
誰とでも絡んでいく矢口が、ポツンと一人でいるのはめずらしい。

私は静かに矢口の向かい側に座って一息つく。
そして今あった出来事を頭の中で整理しようとしたけど、…ダメだ。
気持ちが追いつかない。


38 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月10日(火)23時58分18秒

その揺れた表情が表に出てしまったのだろうか。
矢口が声をかけてきた。

「なんかあった?」
「え?な、なに?なんで?」
「いや、なんとなく普通じゃないみたいだから」

視線は雑誌のままなのに、やけに鋭い矢口。

「そんなこと…べつに…なんもないし」
「ふーん、そっか」
「そうだよ」

ちらっとこっちを見た後、また雑誌をめくり出す。

今日はなんだか矢口もどこかおかしい。


39 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月10日(火)23時59分14秒

「きのう、歌詞間違ってたね、めずらしく」
「あ〜、うん。やっぱ一人だと緊張する」

「でもさすがだよ」
「なにが?」

「嫌々歌ってるようには絶対見えない、さすがなっちだなって感心した」
「そりゃーね、まあ、お仕事だし」

こんなふうに本音を吐けるのは矢口だけ。
矢口も今までいろんな思いをしてきて、プロの顔になった。

私たちは似てる。
本音を笑顔で隠して、すべてを受け入れられるところが。

40 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月10日(火)23時59分57秒

「なっちってさ…」
「ん?」

「仕事以外だとわかりやすいよね」
「な、なにさ。やぐち今日変だよ…」

含み笑い気味の意味ありげな言い方が気に障る。
普段の矢口はこんな言い方しないはずなのに。

「隠すことないじゃんか」
「だからさっきから何なのさ…」

イライラしてきた私に、矢口がとどめを刺した。


41 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月11日(水)00時00分45秒

「告られたんでしょ?ごっつぁんに」

「…!」

言葉を返すことができず、キッと矢口をにらんだ。
混乱している状態の中でそんなこと言われたらなおさら…。

「あー、ごめん。さっきジュース買いに行って、…見ちゃった」

「……ない」

「え?」

「何も言われてない!変なこと言わないで!!」

自分でも驚くくらい大きな声が出てしまった。
矢口が目を丸くして固まっている。

かっこ悪い…、これじゃあ動揺してるのがばればれだ。

5期メンもびっくりした顔でこっちの様子を窺っている。
私が怒鳴るなんてめずらしいから、驚かせちゃって…悪かったな。


42 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月11日(水)00時02分22秒

「あ、なんでもないから、気にしないで!なっちさんたら、機嫌悪くてさー、
 まいっちゃうよね!」

矢口が明るい声でフォローして、5期メンもほっとしたような笑顔になった。
こういうの、矢口はすごく上手だ。
私はおろおろしちゃって、咄嗟には何も言えない。


「ごめん、なっち。やぐちの勘違いだったね」

「あ、うん。なっちも…、大声出してごめん」

「…上、行こっか」

「ん」

おやつをおいしそうに頬張っている5期メンの横を通り過ぎ、私たちは屋上へ向かった。





43 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月11日(水)00時03分15秒

なっちのソロデビューが嬉しすぎて、勢いで更新。

( ´ Д `)<なっちぃ、がんばってよぉ〜♪


44 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月11日(水)00時06分27秒

レスありがとうございます。感謝!
(読んでる方がいてくれて嬉しいです)

>32 読者さん
レスありがとうございます。
なちごま派ですか〜?
とんだ邪魔者が入ってきて、今回はごまの出番が…。

>33 名無しさん
レスありがとうございます。
続きはこんなことに…肩すかしですいません
しばらくなちまりかもです。

>34 名無し読者さん
レスありがとうございます。
ラブマ三銃士マンセー!ですよね、ですよね!
自分もこの3人がたまらなく好きで〜す♪

45 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月11日(水)00時25分40秒
なちごまだったりなちまりだったりする私にとっては理想であり、ある意味一番辛い話(w

どっちになっても好き好きなんで、楽しみにしてます。
46 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月11日(水)20時31分54秒
いや、なちごま・やぐごまであってほしい!!(w
ってなわけで、更新お疲れ様。
続きに期待
47 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月20日(金)00時08分33秒

手すりに寄り掛かって大きく息を吸い込む。
スタジオ内での仕事が多いから、こんな場所でも外の空気は貴重だ。
隣にいる矢口も大きく伸びをしながら目を細め、太陽の日差しを気持ちよさそう
に浴びている。

「はあ〜っ、気持ちい〜」

「うん、外はいいね〜」


私たちはよくここに来ていた。
待ち時間が急に延びたときや、今のように二人だけで話をしたいときなんかに。
誰にも邪魔されずゆっくり話ができる数少ない場所だ。



48 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月20日(金)00時09分27秒

「ねぇ、やぐち」
「ん〜?」

間の抜けたような矢口の返事。
まるで陽の光を浴びすぎて溶けたみたいだ。

「んーと、なんか知ってるの?その…、ごっちんのこと」
「知ってる、言えないけども…」

さらっと答えてあとは知らん顔。
ちょっとムッとしてしまう短気な私。

「なにさー、嫌な感じーっ」
「まあまあ、今にわかるから、きっと」
「おしえてよ」
「ほんとはなっちだってもう気づいてるんでしょ?ごっつぁんの気持ち」
「え…いや…」

自分から聞いておいて、核心に迫られるとうろたえてしまう。

だって、その言葉をちゃんと言われたわけじゃないし、違うかもしれないし。
大体、ごっちんが私をなんて、とても信じられないし。


49 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月20日(金)00時10分19秒

はっきり答えられずにいる私を矢口はさらに追い詰める。

「なっちはさ、ごっつぁんのこと、どう思ってるの?」

「えっ…?」

「好き?」

「…」


直球ド真ん中のストレート。

そして、真剣な矢口の顔。


50 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月20日(金)00時11分19秒

娘。内の恋愛はめずらしいことじゃなかった。

メンバー愛がふとした瞬間、恋心に変わる。
この年頃の女の子が毎日一緒にいて苦楽を共にしていたら、そうなることは
至極必然なことだった。
一般の人には、この感情は理解できないだろうけどね。

実際、梨華ちゃんとよっすぃーは恋人同士。
同期で歳も近いということもあり、二人がそうなるのに時間はかからなかった。
私たちの前では梨華ちゃんをからかって喜んでるよっすぃーだけど、二人きり
のときはかなりの甘えん坊らしい。
一度梨華ちゃんがそんな話をしてくれて、すごく驚いたっけ。


そして私も…。
実は裕ちゃんとそういう関係だった。
そう、過去形。
卒業後しばらくして終わってしまった。
原因は裕ちゃんの心変わり。


あのときの私は、落ち込んで、自棄になって、ボロボロだったっけ…。


51 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月20日(金)00時12分12秒

「…ち、なっち?」
「ん?ああ、ごめん。…交信してた」

「ったく、こんなシリアスな会話中にさー!」
「あはっ、ごめんごめん」

「で?」
「ん?なに?」

「だからぁ、さっきの質問の答え」
「あっ、うん」

ごっちんのこと好きかって?
そんなの考えたことなかったし、そんなふうに見たことないよ。
そりゃあ、さっきは死ぬほどドキドキしたけど。

52 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月20日(金)00時13分42秒

「好きなの?」
「まさか、ごっちんをそんなふうに見たことないし」

「いい雰囲気だったけどな、さっきのロビーでの二人」
「そんなこと…」

「ちょっと妬けたもん、やぐち」
「へ…ええ?」

錆びた手すりを掴みながら、矢口がこっちを見た。
やわらかくて、それでいて強い視線はあの時のごっちんと同じ。

「言っちゃおうかな…」

「やぐ…ち…?」

そして、この時間が止まったような感覚も−。


「やぐちね、なっちのこと…ずっと…」


ふいに強い風が私たちの間を吹き抜けて、矢口の薄茶色の髪を揺らしていった。




53 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月20日(金)00時14分40秒

更新しました。

( ´ Д `)<ごとーは出番無しか〜


54 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月20日(金)00時15分51秒
レスありがとうございます。感謝!

>45 名無しさん
レスありがとうございます。
なちごま、なちまり、どっちもイイですよね。
それだけに自分も書いてて辛いです。いっそのことやぐごま!?(えっ)

>46 名無しさん
レスありがとうございます。
なちごまはいいとして、えっ、やぐごまですか!?
とりあえず、ごまは外せないってことですね。
ごま、今回は出番無しで…次回も…?

55 名前:名無し 投稿日:2003年06月20日(金)00時42分44秒
更新乙です。なっちゅーの過去気になりつつごっつあんに続いて矢口もかよ!!
とつっこみつつ楽しみに次を待ってますね(はあと
56 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年06月20日(金)10時16分53秒
くぁ〜!!なちまりかよっ!
勝手にやぐごまを期待していた俺はちょっとショック(w
なっちモテモテやなぁ。
姐さんが心変わりした相手も気になります
57 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月24日(火)00時28分44秒
む〜、また寸止めですねぇ。。
ラブマ三銃士に続いてなっちゅーとは!好きなCPオンバレードっす♪
続き楽しみにマターリ待ってます。
58 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時11分07秒

「…ずっと…見てたんだ」

そう言って矢口は伏し目がちに微笑んだ。
少し頬を染めながら、片手で髪なんかかき上げて。

「な…、どういう意味?」

矢口の言葉がごっちんのメールと同じなら、無意識に出てしまった自分の言葉
も、ごっちんに対するのと同じ。

こんなことって…。
あまりの偶然に驚きを隠せない。

59 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時12分05秒

「意味って…、それぐらい察しろよぉ」

「あ…うん…」

照れくさそうに口を尖らせる矢口に、私は曖昧に頷く。
今これ以上突き詰める勇気はなかった。

「なっちさ、裕ちゃんと別れたときボロボロだったじゃん。あの頃そばにいて、
 めっちゃ辛かったんだ」

「へ…?」

矢口が突然昔のことを語り出した。
あの頃の胸の痛みを思い出して、私はとたんに落ち着かなくなる。

60 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時13分00秒

「平気そうにふるまってたけど、へこんでるのが見え見えで。なんとかなっち
 の笑顔取り戻したくてさ、がんばったんだぞぉ、うちら」

「うちら…?」

「そっ、やぐちと…、ごっつぁん」

「えっ?あっ…」

思い当たるたくさんのシーンが次々と駈け巡った。

「思い出した?」

「あれ…、なっちのために…?」



61 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時14分02秒

たとえば楽屋でのバカ騒ぎとか、くだらなくて笑えるメールとか。

カラオケで高得点を競ったり、バカみたいにゲーセンで熱くなったり。

かわいい服を見つけては衝動買いしまくって、おいしい焼肉屋を見つけては
何度も足を運んで。

いっぱい映画も観たし、遊園地にも行った、サウナにも通った。

どの場面にも私の隣には矢口とごっちんの二人。
笑わせてくれて、和ませてくれて、そして忘れさせてくれた。




あれは全部、私のために…二人で…。

62 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時16分41秒

「なっちのため…だったはずなんだけど、結局は自分のためかなぁ」

「え…?」

「なっちが立ち直ってからも、ずっと気になって見てたからさ」

「やぐち…」

「ごっつぁんもなんだよね、なっちを見てたらよく目が合ったんだ。思わず
 苦笑い…」

「…」

「で、二人して気づいちゃったんだよね。なっちへの…その…想い?裕ちゃん
 を忘れさせるためにがんばってたはずが、いつのまにかうちらがなっちには
 まってたみたいな。でもごっつぁんと修羅場なんて嫌だしさ、とりあえず二
 人でなっちを見守っていこうなんて決めたりして…」

全然知らなかった。
二人の間でそんなことがあったなんて。

昔と比べると3人で遊ぶ回数が減っていて、私は距離感さえ感じていたのに、
矢口とごっちんはずっと私を…?

63 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時17分42秒

「うそ…」
「はい?」

「そんなのうそだよ」
「なっ!?ひどいなー、人が真剣に気持ちを打ち明けてるのに」

「だって、やぐち…最近ずっと、なっちから離れてたじゃん。楽屋でもあんま
 り話しかけて来ないし、梨華ちゃんとばっかりいるし」
「あ…うーんと。それはですね…」

顔をしかめながらクシャクシャと頭をかく。
それは次の言葉を言おうかどうか迷ってる時の仕草だ。

しばらくたって、矢口は観念したように話し出した。

64 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時18分52秒

「ぬけがけみたいで嫌じゃん。ごっつぁんがいないとこでなっちと仲良くする
 なんてさ」

「へ、なにそれ?」

「ごっつぁんは『卒業したら側にいれないから、やぐっつぁん頼むね』なんて
 かっこいいこと言ってたけど、やぐち的には正々堂々といきたいし。だから、
 ちょっと距離置いたんだ、辛いけどさ」

「そんな…」

まさか矢口がそんなこと考えてたなんて…。
いや、言われてみればそうかも。
ごっちんが卒業してから、急に遠ざかった気がする。
代わりにののが私の側に来るようになって、それが自然になっていって。


65 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時20分04秒

「でもさっき、ロビーで二人がいい感じになってるの見てさ、ごっつぁんが
 行動開始するならおいらもって…」

距離が近いことに今さら気づく。
袖口を引っぱられて、そのまま矢口の唇が頬をかすめた。

一瞬の、矢口の香り。

「ちょっ…なにすんのさっ」

「へへっ、宣戦布告のキス!」

おどけたように、にっと笑う矢口。
かなわないなあ、もう。

「ばっかみたい…」
「あー、ひどいなぁ。乙女心を傷つけんなよぉ!」

「だれが乙女だって?」
「訂正!さくら≠ナしたー!」

思わずプッと吹き出し、顔を見合わせて大笑い。

矢口といるとやっぱり和む。
本音も言えるし、素でいられるし、たぶん誰よりも大切な存在。

それだけじゃあダメなのかな…。


66 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時21分07秒

「ね、やぐち」
「ん?」

「やぐちのことはさ、すごく好きだよ」
「…うれしいけどー、それって、メンバー愛でしょ?」

う…。
たしかにそうだ。
今のこの感情に恋愛的な要素は入ってない。

「…うん」
「…やっぱし」

表情が陰る矢口を見て胸がチクッと痛んだ。
私は矢口にそんな顔をしてほしくない。


67 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時22分02秒

「だ、だって、やぐちのことそんなふうに考えたことなかったから…。
 ちょっと、ねぇ、そんなへこまないでよぉ」

「じゃあ考えてみてよ、ちゃんと」

「え…」

「本気だから、マジでさ」

私を見つめる目は確かに熱くて。
本気だってことはそれで十分伝わってくる。

やぐち…
そんな目でずっと私を見てたの?

私、鈍感だったね。
なにも気づかずに今までずいぶん甘えてた。


68 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時23分02秒

「…ちゃんと考える」
「ほんと?」

「うん、だから時間ちょうだい」
「わかった。おーし!ごっつぁんに負けないようにがんばるべ!」

手すりから身を乗り出して、矢口が大声で叫ぶ。
私はその声の大きさに驚いて、あわててその身体を引っぱり戻した。

「もお!やぐち、声でかすぎっ!」
「だって、なっちのことめっちゃ好きなんだもん!」

そんな堂々と宣言しなくても。
しかも矢口スマイル炸裂させちゃって。

…ちょっとかわいいじゃんか。


69 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時24分26秒

「だから、声がおっきい…」
「へへっ、言っちゃった!」

全然話聞いてない、こいつ…。
なにが言っちゃっただよぉ、もう、こっちが恥ずかしい。

「…ほ、ほら、もう行くよ…時間」
「照れんなよぉ、なっち〜」
「照れてないっ!」

掴まれた腕を解くと、もっと強く絡められた。
いつのまにか完全に矢口のペース…ちょっと悔しい。

「かわいい〜、なっち。へへっ」
「やぐちはかわいくないよ、そのだらしないにやけ顔」

「へへっ、なっち、好きぃ〜!」
「わかったから、も〜」

なんだかなぁ、この甘えぶり。
こんな矢口を知ってるのもきっと私だけだね。


70 名前:恋吹雪 投稿日:2003年06月28日(土)13時25分23秒

やっぱり矢口は違う。
他のメンバーとは違う感情が私の中に確かにある。


それがどんなものなのか、今はまだはっきり言えないけど。
彼女の真摯な想いに誠実に向き合おうって思う。

いつか答えを出さなきゃならないから――




71 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月28日(土)13時26分23秒

更新しました。

( ´ Д `)<やぐっつぁんには負けないぞぉ

72 名前:ビビオ。 投稿日:2003年06月28日(土)13時27分39秒
レスありがとうございます。感謝!

>55 名無しさん
レスありがとうございます。
はい、ごっつぁんに続いて矢口も。やぐは積極的!
んーと、なっちゅーの過去は…気にしないでください。(汗)

>56 名無しミトコンドリアさん
レスありがとうございます。
今回は思いっきりなちまりでした〜。
やぐごまの展開は…ん〜、ノーコメントで!
姐さんの相手ですか!?そ、それは…(汗)

>57 名無し読者さん
レスありがとうございます。
なっちゅーも好きなんですか?
みなさんそこに反応しますね、出番作ろうかな…
メール欄かわいい!なっちモテモテ〜

73 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年06月28日(土)14時02分56秒
くぁー!なちまり!!
この二人はなごみますね〜。
次はごっつぁんの登場か??
GoGo後藤!!!
74 名前:jinro 投稿日:2003年06月28日(土)18時26分35秒
ぬあっ!なちごまもやぐなちもどっちも捨てがたい!
どうなるんだあ!!
75 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時10分11秒

「笑わん姫」の撮りの時間が近づいた。
キノコたちは二人でネタ合わせ。
そして、姫であるごっちんと執事の私も、別室で打ち合わせをすることになった。


そこは殺風景な一室。
テーブルの上には数枚のハガキと台本。

とりあえず椅子に座ったけど、まだ一言も会話はない。


76 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時11分35秒

『ごとーは…、ごとーはなっちが…』

あんな中途半端なところで切れたままだから、正直どう繋いでいいのかわからなくて。
お喋り大好きな私もさすがに戸惑う状況…。

「なんかアレだね」
「ん…?」

下を向いたままのごっちんが先に声をかけてきた。

「照れる…よ」
「あ、うん…」

きっと沈黙に耐えられなくなって、がんばってくれたんだろうな。
なのに私の返しがこれじゃあダメだね。
こんなときこそリードしてあげなきゃ。

んーと、最近のごっちんの話題は…。

あっ。



77 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時12分58秒

「コンサート…」
「ん?」

「すっごく評判いいみたいだね」
「え、そっかな…」

「うん、夏先生も褒めてたよ」
「ほんと?それ、うれしい。へへっ」

いつもよりはぎこちないけど、やっと会話になったので一安心。
それに、笑ってくれたしね。
テレビじゃめったに見られない、ふにゃあとしたやわらかいごっちんスマイル。

私も世間から「笑顔がかわいい」なんてよく言われるけど、あれって作ってる
部分が多いんだ。
いわゆる営業用ってやつ。
でも、ごっちんは違う。
作り笑顔なんてできる娘じゃなくて、ほんとに嬉しいときにだけ最高の笑顔を
見せてくれる。


78 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時14分18秒

「パパに似ている彼♂フってるんだって?」

「うん。1曲選んでいいっていうから、いちばん好きな曲にしたんだ。びっくり
 されたけどね」

そりゃそうだろう。
スタッフはきっとI wish≠ネんかを予想してただろうから。
まさかごっちんが加入していない頃のセカンドアルバムの歌を選曲するなんて、
私たちもそれを聞いたときはすっごく驚いた。

「なっちもね、あの歌大好きなんだ」
「いい歌だよね。ああいう歌、歌いたかった。…娘。にいるとき」
「え…」
「ごとーが入ってから曲調が変わっちゃったんだよね…」
「ごっちん…」

唇を噛み締めて、すまなそうな表情をするごっちん。

ごっちんのせいじゃないのに。
仕事の上で私たちの意志が通ることなんて、ひとつもないんだから。


79 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時15分37秒

「ねぇ、歌ってよ」
「へええ?」

「聞きたいな、ごっちんのパパ彼=v
「ん〜…」

恥ずかしそうに天井を見上げた後、ごっちんは「ちょっとだけね」と言って、
歌いだした。
耳に馴染んだ歌声が静かな部屋に響く。
あのころの娘。みたいに、私も一緒に声を重ねていった。


♪パパママ(パパママ) ごめんね(ごめんね)ちょっと悪い娘かな?
 でも彼を(ママだって)気に入るわ(たぶん)だってパパに似てるよ♪


まるで何度も歌ったことがあるかのように、きれいにハモる私たちの声。

心地いい。
こういう歌い方があったんだな。
ずっと忘れてた…、というよりは、封印されてしまったんだ。
私たちが大好きな歌…。


80 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時16分57秒

「なっち、すご〜い!」
「えへっ、即興にしてはうまくいったね」

ちょっとだけのはずが結局2コーラスも歌いきってしまった。
ごっちんはよほど気に入ったのかいつになく興奮気味。

「二人で歌うとやっぱりちがうね!一人よりすごくいい!」
「そお?ごっちんは一人でも十分いいよ」

「なっちと、もっと歌いたかった」
「そんなのこれから…」

言いかけてやめた。
これからいくらでも歌える≠ネんて、ごっちんにそんな気休め言う必要ないし。
ありえないってことは、お互い十分わかってるから。

年に1度のバカバカしい企画シャッフル≠ナさえ、もうごっちんが加わるこ
とはなくなった。

もう二度と、一緒に歌うことは…。

81 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月06日(日)04時17分50秒

「好き…」

「っ……!」

前触れもなく告げられた言葉に思わず息を呑む。

ご、ごっちん…?


「なっちの歌声、大好き」

「あ、ああ、うん。ありがと…」

歌声…ね。

一瞬の勘違いをあわてて取り繕って苦笑い。
私のその過剰な反応にごっちんも気がついたようで、私たちを包む空気がそこ
からガラッと変わってしまった。


82 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月06日(日)04時22分34秒
更新しました。

( ´ Д `)<なっちと歌いたいなぁ

83 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月06日(日)04時23分31秒

レスありがとうございます。感謝!

>73 名無しミトコンドリアさん
レスありがとうございます。
はい、今回はごっつぁん登場でした。
ごっつぁん、がんばります!応援してください!

>74 jinroさん
レスありがとうございます。
なちまり、なちごま、どっちも捨てがたい…ですね〜。
どうなるかは、なっちだけが知っている…はず。

84 名前:まろんめろん 投稿日:2003年07月06日(日)14時34分28秒
うぉーーーーー!
続きがきになりまっすぅーー!
『なちまり』『なちごま』どっちも捨てがたいけど、私は『なちごま』かなぁ。
これからもがんばってください!応援しています!
85 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月06日(日)21時57分42秒
マジで聞きたい!!
なちごま のハモり!!!
86 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時41分58秒

「あ、んと、もちろん、歌声だけじゃないけど」

「え、あ…」

避け切れることじゃないことはわかってた。

「なっち…」

「ん…?」

そして、まっすぐ向けられる想いは、ちゃんと受け止めなきゃならないことも。

「もうわかっちゃってるよね、ごとーの気持ち」

「……ん…」

紅く染まっていくごっちんの頬。
たぶん、私も負けないくらい真っ赤だ。



87 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時42分57秒

「びっくりしてる?」

「…とっても」

「困ってる?」

「…っていうよりは戸惑ってる」

「それって、迷惑ってこと?」

「ち、ちがうよ!全然迷惑なんかじゃないっ!」

あ…、なんで私ったら。
こんなにむきになることないのに…。
ごっちんだって私のあまりの勢いにびっくりしてる。


88 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時44分02秒

「ご、ごめん。大きな声出しちゃって」

「ううん。迷惑じゃなくてホッとした。えっと、じゃあ…」

「ん?」

「なっちのこと、好きでいてもいい?」

自分の想いに許しを請うごっちん。
私は言葉に詰まった。
いい≠チて言ったら、それは想いを受け入れたことになるのだろうか。

「ん、あの…でもね…」

「わかってる、一方的だって。それでも好きでいたい」

「ごっちん…」

見返りを求めないその言葉は、心の奥深いところを揺さぶった。
こんな告白のされ方は初めてかもしれない。


89 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時45分03秒

好かれるのはとても嬉しいことだし、ごっちんのことは他のメンバー以上に好
きだと思う。
でもやっぱり、そこに恋愛的感情はないだろう。

「ありがと。ごっちんのことは好きだから、そんなふうに言ってもらえてすご
 くうれしいよ。でも、なっちの好きはね…んーと」

「仲間としてでしょ?」

「…うん」

「わかってる、だからそんな顔しないで。ねっ」

ごっちんが気遣うように笑顔を向ける。
でも私は何かが胸につかえたような感じがして笑えなかった。

仲間として好き…、確かにそうだけど、でも…。


90 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時45分50秒

「それだけじゃ、ないよ…」

「え…?」

「うまく言えないけど、なっちにとってごっちんは、…特別」

「なっち…」

そうなんだ。
加入してきてからずっと、ごっちんとはいろんなことがあったから。
ツートップを張って娘。を背負ってきた者同士。
二人にしかわからないシンパシーがきっとある。
二人だけで築き上げたものが確かにある。


91 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時46分42秒

「ほ、ほんと?ごとーが特別って…」

「うん」

その言葉が一番ぴったりする。
私にとってのごっちんの存在。

「特別って、なんかいいね」

「今はそれしか言えないけど…、ごめん」

「十分だよぉ、めっちゃうれしいもん。へへっ」

その顔を見ればわかるよ。
私の一言にそんなに喜んでくれるなんて…。

ちゃんと答えを出すから、待ってね、ごっちん。

92 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月12日(土)11時47分42秒

「えっと、ごっちん。じゃなくて、姫!」
「へっ?」

「そろそろ始めようよ、打ち合わせ。録りの時間になっちゃう」
「あ、だね。ハガキ選ばなきゃ」

「おもしろいのあるかな」
「んー、どうだろ」

目の前にあったハガキを手にして、いそいそと読み始めるごっちん。
くすっ…なんでかなぁ、なんでもない仕草なのにめちゃめちゃ可愛いらしく映る。

このごっちんの心の中に私がいるなんて…。
正直、今まで全然気づかなかった。
矢口のことといい、ごっちんのことといい、私ってもしかしてものすごく鈍感
なんだろうか。


ごっちんをぼんやり見つめながら、私は3人で遊んだ日の頃を思い出していた。


93 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月12日(土)11時48分39秒
更新しました。

( ´ Д `)<いいとも〜

めっちゃ可愛かった!!

94 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月12日(土)11時50分32秒
レスありがとうございます。感謝!

>84 マロンメロンさん
応援レスありがとうございます。
お、マロンメロンさんはなちごま派ですか。
今回は思いっきりなちごまでした。どうでしたか〜?

>85 名無しさん
レスありがとうございます。
なちごまのハモリ聴きたいですね〜
自分にとって永遠のツートップです!

95 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月12日(土)13時50分51秒
なっち、愛されてますねー。
二人の雰囲気、イイ..。
ごっちんの声が「なっち」って呼ぶ感じ、
なんか特別な感じがしていいんですよね。
うまく言えないけれども..。

どうなるんでしょう???
楽しみです。
96 名前:まろんめろん 投稿日:2003年07月12日(土)18時45分58秒
更新おつかれさまです!
うん!やっぱ『なちごま』いいっす!
でも、安倍さんはどっちなんでしょうか?これからの展開が気になります!
次の更新もがんばってください!
97 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)20時55分52秒

あの後ADさんが私たちを呼びに来て、すぐに収録が開始された。
ろくに打ち合わせをしていなかった私たちだけど、キノコたちのフォローもあって、
なんとか本番も無事終えることができた。


スタジオから楽屋へ向かう廊下。
少し前の方をごっちんとよっすぃーが談笑しながら歩いている。

そして私の隣には――。


98 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)20時56分57秒

「ぜったいあやしい!」
「そんなことないって」

「大体ごっつぁんとなに話してたんだよぉ。二人っきりでさ」
「だからー、打ち合わせだって言ってるっしょ」

さっきからこうやって執拗に絡んでくる矢口。
本番で私とごっちんが妙にベタベタしてたらしくて、それが気に入らないと…。
自分では全然そんなつもりなかったんだけどなぁ。
まあ、たしかにごっちんのテンションはかなり高かった…うん。

「打ち合わせなんて全然できてなかったじゃんか、違う話してたんでしょ?」
「え…いや。そ、そん、そんなことないよ」

「あ〜っ!噛んだ、噛んだ!やっぱりごっつぁんと…」
「なんもないってば〜!」

子どもっぽいやきもちだってことはわかってる。
わざと絡んで甘えてるってことも。
そして、それがなぜか嫌じゃなかったりもしてね。



99 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)20時57分47秒

「あやし〜」
「あやしくな〜い!」

「絶対なんかあったなー!?」
「ないから、べつに」

「白状しろぉ、なっち〜!」
「痛っ…ちょっとぉ、あんまり近づかないでよ。キノコがぶつかるっしょ」

こうやってじゃれ合って楽しんでるんだ。
いちばんいいみたい、私と矢口の間柄はそれが。

「ねぇ、ちょっとやぐち、機嫌直してよ」
「だって、二人しておいらを仲間はずれにするから」
「そんなことないってば。そーだ、久しぶりに焼肉行こっか?みんなでさ」

娘。たちの仕事はこれで上がりのはず。
たまにはみんなでっていうのもいいよね。
うん、裕ちゃんも、ごっちんも誘って。

100 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)20時59分21秒

「おっ、いいねぇ!って言いたいとこなんだけど、やぐちまだ仕事あるんだ〜」
「あれ?そーだっけ」

なんだ、残念…。
矢口がダメなら今日はやめよう。

と思ったとき、矢口が小さな声で言った。

「ごっつぁん誘ってよ。みんなじゃなく、ごっつぁんだけ」
「え?」

「なんだかめっちゃ痩せちゃってるじゃん、最近のごっつぁん」
「うん、確かに。なっちも気になってた」

前を歩くごっちんの後ろ姿。
もともとスタイルは抜群だけど、今はさらに細く締まっている。
それがいいと言う人も実際少なくない。
でも私は前のごっちんの方が健康的で好きだなって思う。
たぶん、矢口もそうなのだろう。

101 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)21時00分06秒

「だからさ、おいしいもんいっぱい食べさせてやってよ」
「ん…。それはいいけど」

「けど?なに?」
「…」

引っかかったのはごっちんだけを誘えってとこ。
だってさ、普通二人だけで行けって言う?
さっきまであんなにヤキモチやいてたくせに…。
なんか矛盾してませんか、矢口さん。

でもそんなこと口にするのは憚られて、私はその言葉を飲み込んだ。


102 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)21時00分54秒

「…ううん、なんでもない。誘ってみる」
「…んと、なっちと二人だけのほうがごっつぁん喜ぶだろうと思って」

私の困惑を見抜いたように矢口がつぶやいた。
複雑そうな表情をちらっとのぞかせながら。

「ほら、ごっつぁん、なっちと二人になることってあんまないしさ…。
 あ、でも食事だけね、それ以上はダメだからね!」

「それ以上って…、そんなのあるわけないっしょ!」

いきなり何言い出すんだ、矢口は。
やさしいヤツだって見直してたとこだったのに。


103 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)21時01分43秒

「だと思うけど、ちょっと心配。なっちって案外ムードに流されやすいからさ、
 ごっつぁんの一途な想いにグラッときて、いい雰囲気になって、そのまま二
 人は…痛っ!」

矢口の脇腹に肘鉄一発。
こうでもしなきゃ、妄想止まりそうもないから。

「なにすんだよ〜」
「やぐちが変なこと言うからでしょ!」

私とごっちんがそんなことになるわけないのに、まったく矢口ったら。
ちょっとだけ想像しちゃったじゃんか…もう。


104 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月18日(金)21時02分35秒

「じゃ、おいらがごっつぁんに伝えておくから。なっち着替え終わったらさ、
 んーと、さっきのロビーで待っててよ」

「へ…」

「わかった?それじゃ、お疲れ!」

「ちょっ、やぐち…」


勝手に段取って、私の返事もろくに聞かないで。
キノコ頭の矢口はすたすたとごっちんの方に走って行った。






105 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月18日(金)21時03分22秒
更新しました。

( ´ Д `)<やぐっつぁん、やさしいね…


106 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月18日(金)21時05分54秒
レスありがとうございます。感謝!

>95 名無しさん
レスありがとうございます。
>ごっちんの声が「なっち」って呼ぶ感じ、なんか特別な感じがしていいんですよね。
すごーくよくわかります!
ちょっと甘えた感じがイイですよね。
今回はやぐに愛されるなっちでした〜

>96 まろんめろんさん
またまたレスありがとうございます。とても励まされます!
今回はごまの出番なしでしたが…次を待ってくださいね。
展開…なっちはどっちなのか?どっちでもないのか?(え!?)


107 名前:まろんめろん 投稿日:2003年07月19日(土)09時40分31秒
更新おつかれさまです!
矢口さんの優しさがいいっすね!
このあと安倍さんと後藤さんは食事に行くのでしょうか?
次の更新もがんばってください!
108 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月19日(土)11時52分48秒
続き、ものすごーく楽しみです。
109 名前:jinro 投稿日:2003年07月21日(月)02時26分14秒
こういうシリアスでステキな文章かけるのって尊敬します。
自分がかいてるのがアホ丸出しなので…。
楽しみにしてます。頑張ってください!
110 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時02分41秒

「おじゃましま〜す」
「どーぞど−ぞ」

言いながら真新しい黄色のスリッパを差し出した。
そう、ここは私の家。
にこにこしながらスリッパを履いているお客様は…、ごっちん。

「なっちの家、久しぶり」
「だね〜、前はしょっちゅう来てたのに」

どうして家に来たかって?
それは話の成り行きで――。


111 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時03分25秒

あの後、矢口に言われたとおりロビーに行ったら、そこにはもうごっちんが待
っていた。
『食事、行く?』って誘ったら『ホントにいいの?ごとーと…』なんてかわい
いこと言ってくれちゃって。
食べたいものを聞くと『ん〜、焼き魚』って、おいおい…。
中華とかイタリアンとか、最近行った店を頭の中でピックアップしてた私は、
思わず吹き出してしまった。
それならちょうど実家から送られてきたおいしいほっけがあるからってことで、
お店じゃなくて私の家に行くことになったというわけ。

112 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時04分43秒

「すぐ作るから待ってて」
「手伝うよ、ごとーも」

手を洗って腕まくりするごっちん。
一緒に料理っていうのもいいけど、でも今日はね。

「いいから、そっちで待ってて。今日はごっちんに作ってあげたいんだ」
「なっち…」

「今度一緒に作ろう、ね?」
「うん、じゃ、待ってるね」

『楽しみ〜』と言いながら、ごっちんはリビングへ向かった。

食べてくれる人がいるっていいな。
元々料理は好きだから時間があれば必ず作ってるけど、一人だとどうしても手
を抜いてしまう。
よし!今日は久しぶりにがんばっちゃおう。
っていっても、ごっちんのリクエストは焼き魚とお味噌汁。
いや、いいけどね。私も和食大好きだし。

113 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時05分42秒

「ねぇ、お味噌汁の具は何がいい?」

あれ、聞こえなかったかな。

「ねぇ、ごっち〜ん?」

いくら待っても返事がない。
いったん包丁を置いて、リビングに行ってみた。


「ごっち〜ん…あ…」

あわてて自分の口を押さえた。

ソファの上にはすやすやと眠っているごっちんが。
そうだよね、この状況でごっちんが寝ないわけないか。
ほんとにいつでもどこでもすぐ寝ちゃうんだから。

114 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時06分28秒

くすっ…かわいい。

クッションを抱き枕のようにしながら、静かに寝息を立てている。

寝顔はまだまだ幼いね、ごっちん。
加入してきた頃とおんなじ顔だよ。


すっと頬に垂れてきた髪が邪魔そうで、指ですくい上げた。
一瞬しかめっ面、そして…。

「…ん…なっちぃ…」

え!?
起きた?
…いや、違う、……寝言だ。

ごっちんが私の名前を…。
急にドキドキして、ぽっと顔が火照っていく。

私は足早にキッチンに戻った。


115 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時07分09秒

両手で頬を包んだら、やっぱり信じられないくらい熱い。

寝言で名前…
それだけといえばそれだけのことなのだけれど。
ごっちんは矢口のように積極的に気持ちをぶつけてこないから、それだけのこ
とがこんなにも重い。

ごっちん…

料理の続きを始めたけど、またすぐに手が止まる。

『なっちのこと、好きでいてもいい?』
『わかってる、一方的だって。それでも好きでいたい』
…真剣だった眼差し。

『ほ、ほんと?ごとーが特別って…』
『特別って、なんかいいね』
…はにかんだ笑顔。

思い出すだけで、こんなにもドキドキする。
なんだろう、この感じ…


116 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時08分08秒

「なにボーっとしてるの?」
「へ…あ、ごっちん!」

びっくりした、まさか後ろにいたなんて…。
心臓が止まるくらいびっくりした。

「ぜんぜん気づいてくんないんだもん」
「あ〜、ごめん、考え事してて…」

いつからいたんだろ…、ほんとに気づかなかった。
独り言とか言ってないよね。

「なに考えてたの?」
「えっ!…んと…あの…新メンバーのこととか…」

とりあえず適当にごまかしてみたけど、明らかにしどろもどろ。
でもまさかごっちんのこと考えてたなんて言えないしね。


117 名前:恋吹雪 投稿日:2003年07月25日(金)17時09分00秒

「ふーん…新メンかぁ。やっぱ大変なの?」
「まあ、いろいろあってね、うん」

突然現れたごっちんをまともに見ることができない。

それでもなんとか平静を装って、料理を再開しようとしたときだった。


「なっち…」


私はごっちんの香りに包まれた――。





118 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月25日(金)17時09分42秒

更新しました。

(〜^◇^)<おいおい、ごっつぁん…
119 名前:ビビオ。 投稿日:2003年07月25日(金)17時10分59秒
レスありがとうございます。感謝!

>107 まろんめろんさん
励ましレスありがとうございます。
読んでくれる方がいる限りがんばります!
安倍さんと後藤さん、こんなことになってしまいました。
やぐ…(悲

>108 名無しさん
レスありがとうございます。
そう言っていただけると、意欲倍増!
はい、根が単純なもので。がんばります。

>109 jinroさん
レスありがとうございます。
こんな文を褒めていただいて…恐縮です。_(^^;)ゞ
えっと、jinroさんのなちごま、読ませてもらってます。
ちびなっち…カワイイ!!
120 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年07月25日(金)18時47分59秒
いつ起きたんだごっちぃーん!!(w
( ´ Д `)<なっち…
急展開にドキドキです。
頑張って下さい
121 名前:まろんめろん 投稿日:2003年07月25日(金)21時40分28秒
更新おつかれさまです!
うぉおおおおお!ヤバイぐらい続きがきになります!
安倍さんと後藤さんにいったいなにがぁあああ!
矢口さんはどうなるんだぁああ!とかなり興奮しております。
次の更新もがんばってください!
122 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月25日(金)23時13分47秒
なちごまスクランブル警報発動中!!!
どうする矢口!!
123 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月25日(金)23時46分19秒
うわぁー、続きめちゃくちゃ気になる!
124 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月01日(金)18時28分19秒

「なっち…」

「え…、あ、あの…」

一瞬何が起こったのかわからなかった。
そう、ごっちんの声が耳元で響くまで。

「すこしだけ、このまま…」

私は後ろから抱きしめられていた。
少し遠慮がちな腕がすっぽりと身体を包み込む。

言葉は何もないけれど、まわされた腕のやさしさから伝わってくるみたい。
静かだけど、でもどこか激しいごっちんの想い。

ごっちん…

あなたはそんなふうに気持ちを表すんだね。
その不器用さがせつないよ。


125 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月01日(金)18時30分10秒

「もうちょっと、いい…?」
「ん」

「今、なっちの夢見たんだ」
「え…、あ、どんな夢?」

そっか。
それでさっき、私の名前を。

「ごとーね、ひとりぼっちだった。どこ探しても誰もいないんだ。やっと
 娘。たち見つけて追いかけるんだけど、みんなどんどん先に行っちゃって、
 なっちも行っちゃって…。ごとー追いつけなかった、一生懸命走ったのに…」

夢の話だというのに、その声は震えていて今にも泣きそうで。
まるで迷子になった幼い子がお母さんを見つけたみたいに、ごっちんは私を
ぎゅっと抱きしめた。


126 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月01日(金)18時31分07秒

「ごっちん…、だから今、なっちをつかまえてるの?」
「うん…」

ダイレクトにかかるごっちんの息。
胸が、苦しいよ。

「なっちはごっちんから逃げたりしないよ」
「ほんと?」

「うん、ほんと。ぜったい」
「よかった…」

ソロ活動の孤独さがそんな夢を見させるのだろうか。
守ってあげたいってそのとき思った。
すがるように抱きつくごっちんがたまらなく愛しく感じて。

127 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月01日(金)18時32分08秒

「いいにおいがするね」
「あ、うん、もうすぐできるよ」

「料理じゃないよぉ、…なっちのにおい」
「え…そ、そう?」

ちょっと恥ずかしくなって横を向いた瞬間だった。
ごっちんが首筋に顔をうずめ、やわらかな感触があたる。

「ご、ごっちん…?」

これって…、キス、だよね…。

突然のことに私は激しく動揺。
頭の中は真っ白になって、心臓の音だけがやたらと大きくなって。

なのにごっちんはそのまま耳に、そして頬に――
何度となくそのやわらかい唇を落としていった。



128 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月01日(金)18時33分14秒

「なっち…」

「…ん…?」
 
ドキドキして上ずってしまう私の声。
どうしよう、この雰囲気…。

「あのね…」

「ん…」

このまま流されてしまいそう…。

「…お味噌汁、煮だってる」

「へっ…あーっ!」

とたんに現実に戻されて、反射的に手を伸ばし火を止めた。
側にあった布巾を取り、吹きこぼれた汁をあわてて拭き取る。


129 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月01日(金)18時34分21秒

振り返るとごっちんはもうそこにはいなくて。

ようやく開放された身体はしばらく熱いままだった――。





130 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時36分32秒

更新しました。(短くてすいません)

(〜^◇^)<ごっつぁん、なにするんだーっ!

131 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時38分08秒
レスありがとうございます。感謝!

>120 名無しミトコンドリアさん
励ましレスありがとうございます。
今度は、ごっちんいついなくなったんだ〜≠チて感じですね。
とりあえずこんな展開、ドキドキしてもらえたら嬉しいのですが…。

>121 まろんめろんさん
励ましレスありがとうございます。
今回は後藤さんなりにがんばってみました。
矢口さんは…もちろん黙ってませんよ!

>122 名無しさん
レスありがとうございます。
とりあえず警報は解除でしょうかね。
矢口さんは…そろそろ行動開始します。

>123 名無しさん
そう言っていただけると、やる気が出ます。
ありがとうございます。


卒業…
いろいろ思うことはあるのですが、これからもなっちを応援していきます!
132 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年08月01日(金)20時35分35秒
( ´ Д `)<なっち…
卒業悲しいですね。
でも、今回の更新萌え!!(おぃ
今夜はいい夢が見れそうです。更新有難うございました
133 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月02日(土)02時15分54秒
ドキドキしました。
キュンとなりました。
せつないごっちんの想い、叶うといいなあー...。

作者さん、凄すぎです。


作者さん、
134 名前:まろんめろん 投稿日:2003年08月02日(土)09時34分13秒
更新おつかれさまです!
矢口さんは2人っきりでいる安倍さん
と後藤さんをどう思っているのでしょうか?
これから矢口さんがどんな行動をおこすのか
気になります!
次の更新もがんばってください!
135 名前:jinro 投稿日:2003年08月02日(土)11時38分20秒
ぎゃーーーー!!!あんな駄文を読んでいただいてるとは…!
なちごまなはずなのにちっともそれらしい場面がなくて…精進します。

ところでなっち…ごっちんに揺れてますな。
優しいんだけど強引なごっちんがイイ!
がんばってください〜。

136 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時27分20秒

私の料理の腕は満更でもないらしくて、ごっちんは『おいしい』を連発しなが
ら残さず平らげた。
その食べっぷりは娘。にいる頃と何ら変わっていなくて、激ヤセしたのはやっ
ぱりハードなライブのせいなんだなって納得。


ごっちんはいたって普通のままだった。
さっきあんなに私をドキドキさせたことなんて、まるでなかったことのように
普通。
だから私もあえて触れずに普通に振舞ってる。
ホントは目が合っただけで心拍数が上がってるのに…、それを気づかれないよ
うに必死だった。

でもキスされたのは紛れもない事実。
そして、抵抗せず為すがままだったことも――。

あのときの私は、確かにごっちんを受け入れた。



137 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時30分26秒

食後は紅茶と手作りクッキーを食べながら他愛のないお喋り。
コンサートでの失敗談、家族やメンバーのおもしろ話、最近はまっている食べ
物など、話題は尽きることがない。

娘。時代のテレビでのごっちんは自分から前に出ることがなくて、一般的には
あまりお喋りなイメージはなかったと思う。
だけど、実際はめちゃめちゃ話し好き。
とくに今日のごっちんはいつも以上に饒舌で、私が聞き役に回るくらいだった。

久しぶりにゆっくりごっちんと話せてすごく楽しい。

そう、あまりに楽しすぎて、私たちはすっかり時間を忘れていたんだ。


138 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時31分16秒

「あれ、ごっちん眠くなった?」

お喋りの合間に時折目を擦るしぐさが気になって聞いてみた。

「ん〜、ちょっと眠いかも」

ごっちんが軽くあくびをしてまた目を擦る。
外していた腕時計を手にとって見ると、とっくに日付が変わっていた。

「えっ、もうこんな時間!?」
「うゎっ!いつのまに」

私たちは目を丸くして顔を見合わせた。


139 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時32分01秒

「ごっちん、明日のお仕事は?」
「ん、お昼から取材が入ってる。なっちは?」
「んーと、たしかなっちも午後入り」

そこで急に途切れてしまった会話。
あんなに賑やかだったのにシーンと静まり返ってしまって、かけていたはずの
CDがとっくに終わっていたことにその時初めて気づいた。


「えっと…、じゃ、そろそろ帰ろうかな」

ごっちんが立ち上がりかけたその時――



140 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時32分47秒

「泊まってく?」
「え…」

ホントに自然に出た言葉。

なんとなく今日はこのまま一緒にいたかった。
それが理由、それ以上は…ない。

「ほら、もう遅いし…」
「あ、でも、いいの?」

何度も泊まったことあるのにね。
ごっちん、意識しすぎだよ。
たしかにあの頃と状況は違うけど。

「いいよぉ、もちろん」
「…じゃあ、お泊りします」


141 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時33分44秒

ごっちんがシャワーを浴びている間に寝床の用意。
前に泊まりに来たときはこのベッドに二人で寝たこともあったけど、今はそう
もいかないよね。
…意識しすぎかな、私も。

ベッドの横に布団を敷き終わったとき、かばんの中に入れっぱなしだったケー
タイが鳴った。



142 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時34分42秒

ディスプレーに映ったのは矢口の名前。
一瞬よぎったなんとも言えない後ろめたい気持ち。
通話ボタンを押すタイミングが少しだけ遅れた。

『もしも〜し、なっち?』
『うん』

『そろそろ寝る頃だと思って電話してみました〜』
『うん、よくわかったね』

『なっちのことだったら何だってわかるのさっ!で、今日なに食べたの?おい
 しかった?』
『え、うん、おいしいって言ってくれたよ』

あ…
私って、やっぱり天然だ…。

143 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時35分25秒

『へっ…なに…それって…。もしかしてなっちの手料理?なっちの家?二人きり?』

矢継ぎ早の質問に一瞬ひるむ。
でも、隠すことじゃないよね、別に…。

『ごっちんが魚食べたいって言うから、それならってことになって』
『なんだよぉ、ずるいなー』
『ずるいって、だって焼き魚だよ。お店に行くより家の方がいいっしょ…』
『…』

なぜか矢口が黙ってしまい、めずらしく会話が途切れてしまった。
遠くに聞こえるシャワーの音がやたらと耳につく。



144 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時36分22秒

『あのさ…』
『ん?』

矢口の声のトーンが変わった。

『もしかしてごっつぁん、まだいるの?』

いるはずないよね、って言いたいんだろうな。
一瞬ごまかそうかとも思ったけど、矢口に軽率な嘘は通用しないし。
ここは正直に…。

『…うん。今シャワー中』
『シャワー!?』
『や、なんでもないからね。寝る前にシャワー浴びるだけで…べつに…』

矢口が変なこと想像してそうだから必死に状況説明。

145 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月08日(金)17時37分18秒

『寝る前って…、泊まるの?ごっつぁん』
『うん、お喋りしてたら遅くなっちゃって。仕事、午後からだって言うし』

『…行く!』
『え?』

『おいらもなっちの家に行くから』
『今から!?』

『待っててよ、じゃ』
『ちょっ、やぐ…』

…切れた。
今から来るって!?


矢口の行動力にしばし唖然とする私だった。


146 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月08日(金)17時37分57秒

更新しました。

(〜^◇^)<二人っきりにはさせないぞっ!


147 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月08日(金)17時38分52秒

レスありがとうございます。感謝!

>132 名無しミトコンドリアさん
レスありがとうございます。
萌えていただけてよかったです。
なっちのソロ活動がいよいよ増え出してきましたね。
嬉しいようなさびしいような…

>133 名無しさん
レスありがとうございます。
自分が書いた文でドキドキしてもらえて嬉しいです。
ごっちんの想いは叶うか…見守っててください。

148 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月08日(金)17時40分13秒

>134 まろんめろんさん
レスありがとうございます。
矢口さん、早速行動開始しました。積極的です!
どうなってしまうのか…え〜、お楽しみに。

>135 jinroさん
レスありがとうございます。
たしかになっちはごっちんに揺れかけたのですが、矢口さん登場で…。
3人とも大好きなので書いてて辛い。
あ、jinroさん、新作がんばってください!


カオリ、Happy Birthday♪
ちょい早いけど、なっちもオメデトー!



149 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年08月08日(金)18時05分58秒
(〜^◇^〜) <参戦!!
( ´ Д `)<じゃますんな んぁー!!

なっちも罪な女よのう…
150 名前:jinro 投稿日:2003年08月08日(金)18時31分36秒
おおお〜〜〜!!!

三人揃っちゃう…。
(●´ー`)どーすんだ〜?気になるう。

カオリ22歳おめでとう!
151 名前:: 名無し読者 投稿日:2003年08月10日(日)03時52分24秒
さすが矢口ですねぇ
>「だと思うけど、ちょっと心配。なっちって案外ムードに流されやすいからさ、
> ごっつぁんの一途な想いにグラッときて、いい雰囲気になって、
ここまであってるw
続き楽しみです!
それとなっち誕生日おめでとぉぉぉぉ!正真正銘22歳!
152 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時03分14秒

「おっす!」
「やぐっつぁん!?」

私がシャワーを終えた時、矢口がやって来た。
まさかホントに来るなんてね、もうびっくり。
ごっちんも目を丸くしてる。

「どうして?」
「まあまあ、いいじゃん」
「いくないよぉ。なんで、やぐっつぁんが来るのさ〜」

突然表れた矢口を前に不平不満のごっちん。

「ごっつぁんが抜け駆けしようとするからじゃんか」
「抜け駆けって?」
「だからー、おいらに内緒でこういうことをさ」

そんなに心配なの?
私とごっちんがどうにかなるって思うの?

そんなわけないのにって文句の一つも言いたいけど。
さっきごっちんに抱きしめられたときのことを思い出すと、そう強くも言えな
かったり…。


153 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時03分53秒

「ご飯食べて、遅くなったから泊まるだけだよ。やぐっつぁんが思ってるよう
 なことなんてないも〜ん」
「ほんとかよ〜」
「ほんと!」

しばらく続きそうなこの言い合いに言葉も挟めず苦笑いをしていたら、矢口が
急に私の方を見た。

「ねぇ、なっち、ホントになんにもなかった?」
「えっ!」

突然こっちに振られて言葉が詰まる。
と同時にごっちんのやわらかくてあったかい感触がよみがえって…。
あれは、なんにもなかったとは言わないよね、十分あったよね。

154 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時04分39秒

「なに固まってんの?あ〜、やっぱり…」
「ないないない、な、なんにもないから!」

「あやしーっ!っていうか、なっちごまかすの下手すぎ!白状しなさい」
「うっ…」

はい、その通りです。
ごまかすの苦手です、特に矢口には。

焦って困って苦し紛れに笑ってみる。
それでごまかそうとしたら、ごっちんが私の代わりに白状した。

「抱きしめたよ、キスもした」
「なっ…!まじで?!」
「あ、でも口にはしてない、それは我慢した」

ごっちん、何言うんだ。
そんな平然とすました顔で…。

155 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時05分27秒

「ごっつぁん、ずるい!なっちの手料理食べた上にそんな…」
「だって、なっちかわいいんだもん」
「それは認めるけどさ、キスしたくなるのもわかるけどさぁ…」

あのね、あなたたち、本人を目の前にそういうこと言うのってどうなの…。
照れくさくて顔が火照るよ〜。

「でしょ?やぐっつぁん、ありがとね!なっちとの時間作ってくれて」
「あ、いえ、どういたしまして。ってなんで話が終わっちゃうんだよーっ!」

くすっ、どうやらごっちんの勝ちみたい。
この二人の掛け合いってホントおもしろい。
矢口もめっちゃごっちんをかわいがってるからね。
だから昔から甘いんだ、ごっちんには。


156 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時06分36秒

「ほら、やぐち、もうそんなふくれないでさ。寝よっ」

と言ったところでまた問題が発生。
ベッドと布団にどうやって3人が寝るかで揉め出した。

「やぐっつぁんが後から来たんだから下じゃないの?なっちとごとーがベッド」
「はあっ!?ごっつぁん、先輩の矢口に対してそれはさー」

「やぐっつぁんがなっちとベッドで寝るって言うの?そんなの危なすぎるよ」
「危ないってなんだよぉ、失礼な!」

あ〜、また始まっちゃった。
せっかくおさまったと思ったらこれだもん、ホントに子どもなんだから、二人
とも。


157 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時07分18秒

「じゃあ、なっちに決めてもらおうよ、やぐっつぁん」

へ?
また私に振るの?

「おし!そうしよう。なっち、おいらとごっつぁんのどっちがいい?」

え?
そんな選択を私にさせるんですか?

「どっちって…」

二人の視線がまっすぐ向かってくる。

ちょっと待って、二人とも。
どっちなんて答えられないよぉ…っていうか、どっちでもいいし。

158 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月13日(水)18時08分03秒

「じゃあ…、なっちが下の布団で寝る。二人はベッドで寝て?」
「えーっ!だめだめ、そんなのだめっ!」
「やだよー、やぐっつぁんと寝るなんて」

せっかく私が考えた平和的解決案は即否決。


「じゃあどうするのよ…。そうだ、もうジャンケンで決めたら?」

半ば投げやりに言った打開案に、二人は顔を見合わせて頷いていた。

「ジャンケンで勝った方がなっちとベッドね」

矢口が右手を振り上げる。

「いいよ、ジャンケン…!」

ごっちんの掛け声とともに、二人の右手が目の前に出された――――。



159 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月13日(水)18時09分51秒

更新しました。

(〜^◇^)<邪魔者じゃないっ!


160 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月13日(水)18時10分52秒

レスありがとうございます。感謝!

>149 名無しミトコンドリアさん
レスありがとうございます。
矢口さん、思いっきり邪魔者ですね。
これからも積極的にいきますよ!

>150 jinroさん
レスありがとうございます。
3人そろいましたが、基本的に仲よしなのでこんな感じに。
修羅場は…

>151 名無し読者さん
レスありがとうございます。
楽しみと言ってもらえてうれしいです。
そうですね、さすが矢口さん、なっちを知り尽くしてます!

161 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月14日(木)00時05分24秒
うー、作者さん、またまたいいところで...。
続き、早く読みたーい!
どっちが勝つんだろう? やっぱり今度は矢口さん?
ガンバレ、ごっちん。
162 名前:名無し 投稿日:2003年08月14日(木)01時17分13秒
修羅場にならなくてうれしいです。
やっぱこの3人の仲の良さとほんわかした感じが
大好きなんで・・・
実は今一番気になる小説だったり・・・。
163 名前:まろんめろん 投稿日:2003年08月14日(木)10時57分32秒
更新おつかれさまです!
なっちとベットで寝るのは後藤さん?
矢口さん?どっちだぁー!
続きがかなり楽しみです!
次の更新もがんばって下さい!
164 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時18分11秒

「ちょっとぉ、そんなくっつかないでよ」
「いいじゃんかぁ、べつに。あっ、押さないで!落ちるって!」

じゃんけん一発勝負に勝ったのは矢口。
こうして二人並んで寝るのは久しぶりだ。

「ごっつぁん、もう寝たみたいだね」
「うん、特技だし」
「ははっ、たしかに」

まだ布団に入って10分足らずだというのに、下のほうからごっちんの寝息が
聞こえてきた。
さすが、ごっちん、寝付くのが早い。


165 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時19分03秒

「うちらももう寝よ?」
「うん。じゃ、おやすみのチューしよっか」

にやけ顔の矢口が身を乗り出す。

「しません!おやすみ!」
「ちぇ〜、冷たいのぉ。ケチなっち〜」

「なんだって?」
「いえ、なんでもないっす。おやすみ〜」

矢口が枕もとの明かりを小さくした。

ちょっと身の危険を感じたので、横向きになって矢口に背を向ける。
しばらく様子をうかがったけど、どうやら矢口も眠ったようす。

軽く欠伸をして目を閉じたら今日一日の疲れがどっと出てきて。
吸い込まれるように眠りに落ちようとしたとき、ふわりと背中にぬくもりを感じた。


166 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時19分50秒

「やぐち…?」
「あ、起きてた?」
「う、うん…なに?」
「んと、ちょっとさ、こっち見ないでそのまま聞いて?」

いつになく真剣な声。
伝わる緊張感。
私は黙って頷いた。

「今日、突然来ちゃって…、なんか、ごめん」
「ううん…そんなの全然」

どうしたんだろう、急に。
さっきまでの矢口とは別人みたい。


167 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時20分37秒

「今んなってさ、おいら何やってるんだろって…。なっちのことになると、
 冷静じゃいられなくなるんだよね、なっちしか見えなくなるっていうか…」
「やぐち…」

なんだか胸がジーンと熱くなって…。
思わず振り返ろうとしたら、矢口がそれを制して話を続けた。

「おいらさ、ずっと、なっちを見てるから…。なっちが娘。離れても、ずっと、ずっと…」
「え…」

「変わるものなんてなにもないから、それだけは覚えといて」
「やぐち…なんで?」

知ってるの?私の卒業が近いって事。
まだ誰にも知らされていないはずなのに…。



168 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時21分40秒

そう、とうとう私にもその時≠ェ来てしまった。
私、安倍なつみは、モーニング娘。を卒業する。

社長からソロデビューの話を聞かされて、もうそれだけで私は満足だったのだ
けれど、そのすぐ後娘。卒業≠伝えられた。
あの時の気持ちはどう言い表せばいいのだろう…。
本音を言えば娘。にいながらソロ活動というのが理想だったから、その話を聞
かされた時はとても複雑だった。

169 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時22分21秒

「どうして?やぐち、聞いたの?」
「ううん、それぐらい雰囲気でわかるよ。もう何人見送ってると思ってるのさ」
「やぐち…」

そうだね、矢口とはずっと一緒だもんね。
圭ちゃん、ごっちん、裕ちゃん、紗耶香、あやっぺ、明日香…
これまで6人のメンバーを矢口と見送ってきた。
その度に一緒に泣いたよね。
悲しくて、さびしくて、やり切れなくて。
『卒業おめでとう』という言葉の裏に、どれだけの涙があったか…。

170 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時23分01秒

「ごめん、黙ってて…あのね…」
「いいよ、全部わかってるから」

メンバーにさえも緘口令を敷く事務所。
そんなやり方をずっと腹立たしく思っていたのに、結局私も従ってしまった。

「具体的な日にちとかはまだ言われてないんだ。ただ安倍は近々卒業だって」
「そっか…」

怒ってる?やぐち…
私…、約束破った。

「…ごめん、約束、守れなくて…うっ…」
「ばか、そんなん…っ…謝るなよぉ…」

一気に涙が溢れてきた。
だめだ、もう堪えられない。


171 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時23分37秒

圭ちゃんが卒業した日、私と矢口は約束を交わした。
卒業するときは一緒に≠チて…

あのときの気持ちに偽りはない。
なのに、一方ではソロへの思いも大きくなって。
私は約束を破ってしまった、矢口を裏切ってしまったんだ。

「ごめんね、やぐち…うっ…ごめんっ…」
「なっち…もうわかったからぁ…っ…」

泣き虫の矢口が必死に泣くのを堪えている。
全部背中から伝わるのに。

ねぇ、やぐち…、許してくれる?

172 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時24分27秒

「娘。にはずっといたいけど、…っ…ソロは、夢で…」
「わかってるよぉ、誰よりわかってるから…」

「やぐちとカオリと最後まで娘。に…うっ…っ」
「心配すんなぁ、娘。はちゃんと、守って…っ…いくからさ…っ…」

「やぐち…」
「…ホントはめちゃめちゃ引き止めたいけど我慢する。なっちの夢、応援する」

「やぐち…ありがと…」
「なっち…」

私の枕は涙でぐちゃぐちゃで。
たぶんパジャマも矢口の涙でぐちゃぐちゃで。


173 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時25分28秒

二人とも泣きつかれてしまい、いったいいつ眠ってしまったのかもわからない。


ただ、ずっと矢口に包まれたあたたかさだけは、しっかりと覚えていた――。




174 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月18日(月)18時26分11秒

安倍編 〜了〜



175 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月18日(月)18時26分58秒

更新しました。
次から矢口さん視点で進みます。

(〜^◇^)<がんばるぞっ!
176 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月18日(月)18時27分47秒
レスありがとうございます。感謝!

>161 名無しさん
レスありがとうございます。
予想通り、矢口さんが勝ちましたねー。
そして後藤さんが寝てる間に…。

>162 名無しさん
レスありがとうございます。
>3人の仲の良さとほんわかした感じが大好き
まさにそうですね!それがテーマでもあったりします。
一番気になるだなんて…嬉しすぎっ!がんばります!

>163 まろんめろんさん
レスありがとうございます。
なっちとベッドは矢口さんでした!
次から矢口さん中心に進みます。
引き続き楽しんでもらえるといいのですが。

177 名前:つみ 投稿日:2003年08月18日(月)19時40分54秒
むう・・・
次からやぐっつあん視点か
ごっつあんがかすむね・・・
178 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月19日(火)02時50分33秒
矢口がんがれ。
179 名前:jinro 投稿日:2003年08月20日(水)11時45分54秒
むむむ。
ごとーさんはほんとに寝てたのかな…?と疑ってみる。
180 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時38分17秒

矢口編
181 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時39分08秒

ライブ終了直後の楽屋。
いつもならそこは充実感に溢れていて、みんなの興奮冷め止まぬ会話が飛び交って
いる。

でも、今日は…、しんみりとした涙モード。
タオルで顔を覆ってる娘。
うずくまって泣いている娘。


「安倍さん、かっこよかったです」
「ん、ありがとね」

涙声の小川がなっちに声をかけた。
やわらかい笑顔で小川の頭を撫でるなっち。

それ、おいらが一番に言おうと思ってたのに…先越されちまったなぁ。


安倍なつみ・卒業
今終えたばかりのコンサートの中で、とうとうそれが公に発表されてしまった。

182 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時41分32秒

なっちに卒業のことを聞いたあの夜から、もう3ヶ月が経っていた。

その間ソロ活動を始めたなっちはめちゃめちゃ忙しくなって。
おいらも二つのユニット活動が重なって目が回るくらい忙しくなって。

別々の活動が増えて一緒の時間はぐんと減ったけど、なっちのことはちゃんと見てた。

なっちはどんどん綺麗になっていった。
おいらが知ってるなっちじゃないみたいに――。



183 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時42分11秒

卒業≠フ発表は突然だった。
コンサート会場のVで、いきなりつんくさんがそれを伝えた。
しかも能天気な明るさで、軽いノリで。
当然ながらそのやり方はファンのみんなをかなり驚かせたようで、会場は微妙
な空気に包まれた。

そんな中、なっちがステージに立った。
そして、一瞬にしてその空気を変えたんだ。

一人ステージの真ん中に立ち、堂々と卒業について語った。

その姿は清くて凛として厳かで。

あのなっちを見て、すべてを受け止めることができた。

なっちはもう、娘。の器じゃ窮屈すぎるんだ。
なっちはもう、ずっと先を歩いてたんだ。


184 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時42分51秒

一人堂々と歌ってるなっちをおいらは舞台の袖で見ていた。
込み上げるさびしさは大きくなる一方。

応援するけどさ、誰よりもなっちのソロを喜ぶけどさ。

やっぱ、悲しいよ。
やだよ、おいらは。

せつなく響くなっちの歌声が、押し隠していた本音をさらけ出してしまう。


185 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時43分58秒

ふと横を見ると、ごっつぁんがステージの方をじっと見ていた。
その視線の先にいるのはもちろんなっち。

まるでなっちを見ることだけがすべてのように微動だにしないその姿は、なっちへの
想いの深さが溢れていた。

「ごっ…」

呼びかけてやめた。
うん、ごっつぁんは決して振り向かない。


あの日からおいらとごっつぁんはなっちの話をすることはなくなった。
なんとなくお互いにそれを避けていた。

話してしまうと何かが壊れてしまいそうな…そんな気がして。


186 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時44分38秒

最後までしっかりと歌いきったなっちが、緊張した面持ちのままでこっちに向
かって来た。

最高だったよ、なっち。
マジで感動したから。

一番になっちを迎えて思いっきり抱きしめようと思った。
なっちもおいらのところに来てくれるって思ってた。

でも、なっちが向かった先は矢口じゃなかったんだ。
ごっつぁんでもない。


なっちは…、まっすぐ裕ちゃんに向かっていった。

そして、抱き合った――――。




187 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時46分09秒

「お疲れさまでした〜」

着替え終わった娘たちがどんどん楽屋を出て行く。
示し合わせたわけじゃないのに、最後に残ったのは二人だけ。
なっちと二人になりたいっていうおいらの気持ちが通じたのかな。

「とうとう発表しちゃったね」
「うん…」

なっちのとなりに座りながらポケットの中に転がっていた苺味の飴玉を差し出
した。
にっこりと笑ってその飴玉を頬張る彼女は、ついさっきステージで輝いていた
人物とはとても思えなくて、思わず小さく笑ってしまった。


188 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時46分45秒

「なによぉ、なんかおかしい?」
「いや…うん、かわいいな〜って思った」
「へ…もお、からかわないでよね!」

ポッと頬を染めるなっち。
めっちゃかわいい。

そんな顔されると触れたくなるよ。
ずっと我慢してるっていうのに…

こんなおいらの気持ち、わかってないんだろうな、この人は。

189 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時48分11秒

「あ〜、でもさっきの一人で歌ってるなっちはさ、マジかっこよかったよ」
「えっ、ホントに?実は緊張して、ちゃんと歌えてたのかもよくわかんな
 いんだよね」

「大丈夫だって。すっごく伝わったから、なっちの思い」
「そお?やぐちにそう言ってもらえるとうれしいな。うん、一番うれしいよ」

一番うれしい…
おいらを一番って言ってくれるの?

本来ならそれはものすごくうれしい言葉なんだけど、素直に喜べないのはあの
シーンを思い出してしまうから――。

190 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時48分51秒

『裕ちゃん…』

緊張のステージを終えて、なっちが真っ先に向かったのは裕ちゃんのとこだった。
すぐ近くにおいらだっていたのに…。
しっかりと抱き合った二人の姿が眼に焼きついて離れない。

「一番うれしい?」
「え、うん。そうだよ」

「ホントに一番?」
「なにこだわってるのさ、子どもみたいだよぉ、やぐち」

笑いながらおいらの頭をポンポンと軽く叩くなっち。


言っちゃいけないのかもしれない。
言う立場でもないだろうし。
でも…。

押さえきれない想いが勝手に動き出してしまった。




191 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時49分36秒

「じゃあ、なんで?」
「ん?なにが?」

「なんで…裕ちゃんのとこに行ったの?」
「あ……」

追い詰めたいわけじゃないのに、歯止めが利かない。

「やぐちだっていたのに…」
「…」

「なっちにとって一番は裕ちゃんなの?」
「ちがうよ、裕ちゃんはそんなんじゃない…」

「ホントはまだ好きなんじゃ…」
「そんなことないっ」

なっちが辛そうに顔を歪めた。



192 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月23日(土)22時50分31秒

そんなつもりなかったのに…なっちを苦しめるつもりなんて。
どうしてこんな特別な日に、おいら…。
自分が情けない、腹が立つ。


「ごめん、なっち…っ」


これ以上なっちの側にいたら、もっとめちゃくちゃなこと言いそうで。


おいらはなっちを残して楽屋を飛び出した。
背後でなっちが呼び止めてるのを振り切って――。



193 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月23日(土)22時51分15秒

更新しました。


194 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月23日(土)22時52分00秒

レスありがとうございます。感謝!

>177 つみさん
レスありがとうございます。
>ごっつあんがかすむね…
そうですね…、しばらく矢口さん中心です。

>178 名無しさん
やぐ応援レスありがとうございます。
きっとがんばってくれます。
見守ってください。

>178 jinroさん
レスありがとうございます。
>ごとーさんはほんとに寝てたのかな…?
ごとーさんですからね…。
195 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月24日(日)02時11分52秒
マジで面白いです。はまってます。作者様のペースで頑張ってくださいね。
応援しております
196 名前:まろんめろん 投稿日:2003年08月24日(日)11時17分50秒
更新おつかれさまです!
うぅー矢口さんせつないですねぇ。
安倍さんの中澤さんへの気持ちも気に
なるところです。
次の更新もがんばって下さい!
197 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時49分38秒

裕ちゃんを呼び出したのはそれから1週間経った頃だった。
『食事でもしない?』って送った誘いのメール。
そして、うまく都合がついたのが今日だった。

向かった先は、前に一度行ったことがある裕ちゃん行きつけの小料理屋さん。
案内された個室に入ったら、裕ちゃんはすでにビールを半分空けていた。

「お〜!やぐち〜、久しぶりやなぁ」

いきなりハイテンションの裕ちゃん。

「この前会ったばっかじゃん」
「仕事は別やんか。プライベートで会うの、めっちゃ久しぶりやって」

裕ちゃんはホントに嬉しそうにおいらを見る。
このやさしい眼においらも随分甘えてきたっけ。
でも、今日は…。


198 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時50分21秒

裕ちゃんを呼び出したのはどうしても聞きたいことがあったからだ。

なっちとはあの後すぐ電話で謝って、とりあえず気まずくなることだけは避けられた。
でもおいらの裕ちゃんに対する嫉妬はどんどん大きくなって。
さらに圭ちゃんから聞いた噂話も重なって…。

どうしても裕ちゃんと直接話さなきゃ気がすまなくなったんだ。



199 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時51分10秒

「裕ちゃん、話がある」
「ん?なんや、あらたまって」

こんなに真剣に裕ちゃんと向き合ったことって…、あ、あの時以来だ。
裕ちゃんの卒業をおいらが泣きながら引き止めた時。
あのときの裕ちゃんも、今みたいに優しい眼でおいらを見つめてくれたね。
すべてを包み込んでくれる大人の眼。

「別れたってホントなの?」
「え…!?」

単刀直入な切り出し。
グラスを持とうとしていた裕ちゃんの手が止まる。


200 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時51分54秒

「ね、ホントなの?」
「…誰に聞いたん?」

「圭ちゃん」
「ったく…、ほんまお喋りやな、圭坊は」

ってことは、ホントだったんだ…、裕ちゃんが彼氏と別れたってのは。
なっちを捨てて選んだ人なのに、別れるなんて。


頭の中で描いていた最悪なストーリーが現実味を帯びる。


201 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時52分41秒

「ホントに別れたんだ」
「ん…」

「どうして?」
「まあ、いろいろあるわさ」

「それでなの?それでなっちに戻るの?」
「ちょ、ちょい待ち。なに言うねん、なっちはもう関係ないで」

裕ちゃんはあわてて否定したけど、そんなの信じられない。
しっかり抱き合った二人は誰が見たって絶対…。

202 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時53分32秒

「だって裕ちゃん、抱きしめたじゃんか、あのとき、歌い終わったなっちを思
 いっきり」
「あれは…、なっちが精一杯がんばったからよくやったっていう、そういう意
 味やんか」

「好きなんでしょ?なっちのこと」
「だからそういうんじゃないって」

二人とも声がだんだん大きくなってる。
知らず知らずのうちに高ぶってしまった感情。
だめだ、もう抑えられない。


203 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時54分40秒

「じゃ、なんで…!?なんで裕ちゃんの胸に飛び込んでいくのさ…。なっちは
 裕ちゃんに振られて、めっちゃ傷ついて…。なのになんで?」
「やぐち…」

わかってる、嫉妬だって。
ただ身勝手な感情をぶつけて…、まるで子どもだって…。

「そんなのおかしいじゃんっ!絶対おかしいよ!裕ちゃんとなっちはまだ…」
「…」

わかってるけどだめなんだ。
なっちのこととなると冷静でいられない。


正面にいる裕ちゃんは興奮してるおいらとは正反対で、ただ黙ってこっちを見
ていた。
取り乱すおいらをあのやさしい瞳で見ていた。


204 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時55分29秒

「なっちのこと、本気なん?」
「うん」

眼を見てはっきり答えた。
これだけは裕ちゃんにも負けない自信はある。

「だったら、やぐちは間違ってる」
「え…?なに?」
「あたしは、そんな大層なもんとちがう。残念ながら」

裕ちゃんがビールをぐいっと飲み干し、薄っすらと苦笑い。

どういうこと?間違ってるって…。
裕ちゃんのいってる意味がわかんないよ。


205 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時56分28秒

「なっちがあん時飛び込んできたのは、ソロのことであたしが何度か相談に
 のってたから、それだけや」
「相談?」

「なっちもな、やっぱり初めてのソロはプレッシャーだったらしい。かなり
 悩んで、ずっと後藤に相談してたんだけど」
「えっ、ごっつぁんに…?」

なにもかも初めて聞く話だった。
相談とかプレッシャーとか悩んでたとか。
その上ごっつぁんの名前まで出てきて、おいらはますます混乱し動揺していく。

なっちがごっつぁんに……!?



206 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時57分29秒

「でも後藤は、そりゃソロデビューは早いけど、後輩で年下やんか。だんだん
 背負いきれなくなったらしくてな、なっちを支えてくれって…」
「え…」

「あん時、確かになっちはあたしんとこに来たけど、ホントに飛び込みたかった
 先はたぶん…」
「……」

別のストーリーが見えてきた。

「もうこれ以上は言わんほうがいいかな」
「……」

そっか、そういうことか。
なっちの視線の先は裕ちゃんじゃなくて…。

裕ちゃんじゃなくて…。


207 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時58分22秒

「やぐち?大丈夫か?」
「え…」
「顔、真っ青やん」

裕ちゃんの手が真っ直ぐ伸びてきて頬に触れた。
それは以前と変わらずやさしくて、激しくなっていた鼓動が不思議と徐々に
おさまっていく。

「裕ちゃん…」
「ん?」
「ごめん、やぐち…」
「謝らんでいいよ。矢口のまっすぐなとこが裕ちゃんは好きやで」
「裕ちゃん…」

最後まで優しい眼でおいらを見つめてくれるんだね。

でも裕ちゃん、今のおいらにはそのあたたかさが痛い。
深く深く胸に沁みるよ。


208 名前:恋吹雪 投稿日:2003年08月30日(土)13時59分08秒

一人で先に店を出たら、ぽつりと雨粒が頬に当たった。


おいらはその足でごっつぁんの家に向かったんだ――。





209 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月30日(土)13時59分58秒
更新しました。
210 名前:ビビオ。 投稿日:2003年08月30日(土)14時02分04秒

レスありがとうございます。感謝!

>195 名無しさん
応援レスありがとうございます。
とても励みになります。
楽しんでもらえるようにがんばります。

>196 まろんめろんさん
励ましレスありがとうございます。
矢口さん、こんな展開に…
そろそろ終盤です。


211 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)14時59分37秒
やぐが動いてますね。
どーなるのかな。

続き待ってます。
212 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時18分45秒

会って何を言うつもりなんだろう。

今の自分は明らかに冷静じゃなくて、頭ん中ぐちゃぐちゃで。
まっすぐ自分の家に帰ったほうがいいってわかってるのに、タクシーはどんどん
ごっつぁんの家に近づいている。

「雨、降ってきましたね」
「はあ……です、ね」

「天気予報、最近はずれっぱなしですよ」
「そうなんですか」

「まあ、その方がうちは儲かりますけどね」
「はあ…」

こんなときに限って、お喋り好きな運転手。
どうでもいい話題を次々に振ってくる。
最初はうざったいと思ってたけど、適当に相槌を打っているうちに、無駄に高
ぶっていた気持ちが静まった気がした。


213 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時19分28秒

目的地到着。
ケータイをバックから取り出して、ごっつぁんの番号を呼び出す。
躊躇したのは一瞬だけ。
ボタンを押して、家に来たことを知らせた。


「わっ、やぐっつぁん!?」
「おっす」

Tシャツに短パン姿のごっつぁんが、驚いた顔で飛び出してきた。

「どうしたの?」
「突然ごめん、話あってさ」
「へ?あ、じゃあ入って」
「ん、お邪魔します」

図々しいと思いながらも遠慮なく中に入れてもらった。



214 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時20分10秒

久しぶりのごっつぁんの部屋は相変わらずの散らかりぶり。
全然変わってなくて、つい笑ってしまった。

「もお、来るなら言ってよぉ、こんな散らかってて恥ずかしいなぁ…」
「いつものことじゃん、そんなの」
「むぅ〜、そうだけどぉ」

頬を膨らませながら床に散らばってる雑誌やTシャツを拾い集めるごっつぁん。
くすっ、かわいいな。

おいらはこの娘に何を言いたいんだろう。
いったい何が言える?

もう、シナリオはラストまで見えてきてるのに…。



215 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時20分45秒

「ねぇ、やぐっつぁん。なっち、大丈夫?」
「え?な、なにが…?」

突然その名前が出てきてドキンと胸が跳ねた。

「なにって、すっごく不安がってたじゃん。一人の仕事が怖いとか言って」
「ああ…」
「なっちがそんなこと言うなんてさ、ごとー、びっくりしちゃって」

おいらにはそんなこと一言も…。
やりがいあるとか、楽しいとか、前向きなことしか言ってなかった。

あれは、あのなっちは、偽り?
おいらに本心は見せてくれてなかったの?

216 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時23分03秒

「なっちさ、何度もごっつぁんに相談してたの?」
「ん、今のやぐっつぁんみたく突然来たり、泣いたり」

「えっ…、泣いた?」
「うん。あんな弱々しいなっち初めてで…。ごとー、あんまりうまくアドバイス
 できないから困っちゃった」

弱々しいなっちか…。
おいらの前ではそんな姿、決して見せなかったな。

「それで、裕ちゃんを頼ったの?」
「あ、知ってたんだ。ホントはごとーひとりで支えたかったんだけどね、ダメ
 だった。なっちの話を聞いてあげるのが精一杯で、ありきたりの事しか言え
 なくて…」

それでいいんだよ、ごっつぁん。
アドバイスなんかしなくたっていい、黙って聞いてあげるだけで。

なっちが頼ったのはごっつぁんなんだから。
おいらでもない、裕ちゃんでもない。


217 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時23分42秒

「でも、よく裕ちゃんのとこに行ったよね、心配じゃなかった?」
「なにが?」

「いや、ほら、より戻ったらどうしようとかさ…」
「あー、うん」

うつむいて黙ってしまったごっつぁん。
側にあったクッションをぎゅっと抱いて顔を隠す。

「正直言うとちょっと思ったよ。でもね、実際なっちは裕ちゃんの励ましで自
信持ったみたいでさ、ごとーはまだまだダメだなって思い知った。裕ちゃん
にはかなわないって」

「そんなことないよ…」

なっちにとっては、充分支えになってたんだよ。
ごっつぁんの存在そのものが。


218 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時24分38秒

「で?」
「え?」

ごっちんと目が合った。
首を傾げておいらを見てる。

「話あるんだよね、やぐっつぁん」
「あ、ああ、なんだっけ…」

やっとわかった。

「へ?ちょっとぉ、やぐっつぁん、ボケるのもいいかげんに」
「頼みに来たんだ」 

ごっつぁんに言いたいこと。

「なにを?」
「なっちのこと。んと、これからも支えてあげてよ」

これが、おいらが出した結論。

「え、うん。それはもちろん」
「頼んだよ」


これでいい――――。




219 名前:恋吹雪 投稿日:2003年09月01日(月)19時25分15秒

外に出たら雨はザーザーといつのまにか本降りで。
ごっつぁんが傘を差し出してくれたけど、おいらは受け取らなかった。


雨は、涙を隠してくれるから――――。




220 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月01日(月)19時25分46秒

更新しました。
221 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月01日(月)19時27分17秒

レスありがとうございます。感謝!

>211 名無しさん
レスありがとうございます。
自分からどんどん動くやぐちが続いています。
自分の気持ちを秘めて回りに気を配る、というのがやぐちのイメージ…。

222 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)01時11分20秒
泣いちゃいましたー切なすぎです!やぐっつあんの気持ちが痛いほど伝わってきて涙が止まりません。これからも頑張ってください!
223 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)20時59分14秒
やぐっつぁん…なんていいやつなんだ〜
でもせつない…哀
224 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時27分59秒

「…ち?やぐち?」
「…へ…?」

肩を揺すられてはっと我に返った。
目の前には心配そうな顔でおいらを見つめているなっち。

「どした?ボーっとして」
「え、べつに…」

久しぶりに15人揃った楽屋での空き時間。
楽しそうにお喋りしてるメンバーからおいらは一人離れていた。


225 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時29分15秒

「疲れてる?最近、テンション低いよ」
「ん…そんなことないけど」

そういやこの頃ずっとそうかも。
根っからお喋り好きなおいらが誰とも話さずに黙ってるなんて、おかしいと思
われて当然か。

でもどうしようもないんだ。
どうしても考えてしまうから……なっちのことを。

「無理しないでね、矢口が元気ないと心配だよ」
「うん、ごめん。マジ大丈夫だから」

そんな目で見るなよ、なっち。
苦しいじゃんか…。

いつのまにか、おいらはこんなになっちを好きになってて。

胸が苦しい、泣きたくなるくらいに――。


226 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時29分49秒

あの日、自分なりに答えを出したはずなのに、そこから一歩も進んでいない。

潔い自分とそうでない自分との葛藤。
そんなことのくり返しで、今まで曖昧に過ごしてきた。

こんなうじうじしてる自分は嫌いだ。
おいらはこんなキャラじゃない。


はっきりさせる時なのかもしれない。

おいらにとっても、なっちにとっても、そして――。


227 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時30分25秒

「なっち、話があるんだけど、今いい?」

「……うん」

なっちの手を取って連れ出す。
場所は、屋上だ。



228 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時31分03秒

「日差し、強いね」
「うん」

二人並んで手すりに寄り掛かった。
錆びた鉄策は素肌に触ると少し熱い。

「この前ここに来たときは、気持ちいい風が吹いてたのになぁ」
「もう、夏だから」

そう言って眩しそうに目を細めて空を見上げるなっち。

綺麗だな。
ずっと、見ていたい。

でも、はっきりさせなきゃ。


229 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時31分39秒

「ここで、おいら、…告白したよね」
「え…」

「もう、充分待ったと思うんだ」
「…」

「そろそろ聞きたい、なっちの気持ち」
「やぐち…」

答えはわかってるけど、けじめっていうか、けりをつけたいからさ。
なっちの口からその言葉を言って欲しいんだ。
うじうじ未練を残すおいらをスパッと断ち切って欲しいんだ。


そう覚悟を決めて、おいらはなっちの言葉を待ったんだけど。
なっちは下を向いたまま黙ってしまった。


230 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時32分17秒

「なっち…?」
「……」

沈黙に耐えられず声をかけてみる。
それでも返事がない。

「お〜い」
「…」

ゆっくりと顔を上げたなっちは今にも泣きそうだった。

「なっち!?」
「…っ…」

な、なんで…?

「あ、あの…え?」
「…ごめっ…」

おいらをじっと見つめる澄んだ瞳。
ひとすじの涙が頬をつたう。



231 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時32分59秒

ごめん――

それはどういう意味のごめん≠ニ受け止めたらいいんだろう。

「どうして、泣くの?」
「ごめん…っ…」

「どうして、謝るの?」
「ごめん…ごめん、やぐち…」

「なっち…」
「ごめん、やぐち…っ…」

そっかぁ。
それがなっちの返事か。

どうせならはっきりした言葉でちゃんと振られたかったけど…。
しかたない…許してやるか。


232 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時33分41秒

なっちが泣き止むのを待って、おいらはやっと一歩踏み出した。

「なっち、もうすぐ誕生日だね」
「…うん」

「ちゃんと欲しいもの、ごっつぁんに言わなきゃダメだよ」
「えっ…?」

なっちのびっくりした顔。
おいらは精一杯の笑顔で言葉を続けた。

「ちゃんと言わなきゃ、はじまらないんだからさ」
「やぐち…」

「おいらに遠慮とか、そういうのなし!もしそんなことしたら絶交だからね」
「…」

「わかったかぁ!おい」
「ん…うん…」

「わかったんなら、笑ってよ。おいらはなっちの笑顔に惚れたんだから」
「やぐち…ありがと」

これでいいのかな。

おいら、ちゃんと笑えてたかな。



233 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時34分24秒

「安倍さ〜ん、あっ、やっぱりここにいた」

遠くの扉から顔をのぞかせたのは石川。

「マネージャーさん、呼んでます。楽屋に戻ってください」
「わかった、ありがと。すぐ行く」

ケータイ置いてきちゃったと、なっちが笑いながら言った。

うん、その笑顔。
やっぱり、なっちは笑顔がいい。

「早く行きなよ、怒られるよ」
「ん、やぐちは?」

「おいらは…、もうちょっと日向ぼっこ」
「そっか、じゃあ行くね」

歩き出したなっちの後ろ姿を見てふと思う。
今呼び止めて、抱きしめて、思いっきり気持ちをぶつけたら…、なっちはおいらを
見てくれるかなって。



234 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時35分09秒

「…なっち!」
「んー?」

振り向いたなっちは天使のような微笑み。

「あのさ…」
「なあに?」

好きだよ、なっち――

「…」
「やぐち…?」

大好きなんだよ――

「がんばれっ!応援してるからさ!」
「やぐち……、うん!ありがとっ!」

バタンと扉が閉まる音がして、おいらはひとりになった。




235 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時35分42秒

コンクリートの地面に、大の字に寝転んでみる。

太陽が眩しい。

ぎゅっと目を閉じたら、なっちの笑顔が浮かんできて泣けてきた。



236 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時36分17秒

なっちが好き――

たとえばなっちの夢を阻むものが現れたら、おいらはすべてを賭けて闘うよ。
なっちを悲しませるものは、何であろうと許さない。



237 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時38分03秒

なっちが好き――

たとえばなっちがおいらを選んでくれなくても、それさえも許せてしまうんだ。
なっちのすべてが好きで、存在そのものが愛しくて。




238 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時38分52秒

なっちが好き――


なっちが幸せになってくれればそれでいい。





239 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時40分04秒

矢口編 〜了〜



240 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時41分30秒
更新しました。

(名前欄、タイトルを入れるはずが…)
241 名前:ビビオ。 投稿日:2003年09月06日(土)14時42分24秒

レスありがとうございます。感謝!

>222 名無しさん
レスありがとうございます。
やぐちさんはせつない役が似合う人…と思い込んでいます。

>223 名無しさん
レスありがとうございます。
やぐちさん、いいやつ過ぎますかね。
自分よりも相手を思いやる、そんなイメージが強いのです。

242 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)15時34分14秒
矢口さん、やさしい..。
次は後藤さん編ですか?

続き楽しみにしてます。
243 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)21時48分20秒
それでいいのかー!?
やぐっつぁん…泣けるね…。

244 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/21(日) 19:27
待ってます。
245 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/15(水) 13:36
作者さん〜早く帰ってきて〜
246 名前:みっくす 投稿日:2003/11/05(水) 18:04
保全
247 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/11/23(日) 02:23
続き、待ってます保全
248 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/11/23(日) 17:02
>>247さん
だから保全はsageでしょ
249 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/10(水) 15:10
>>248さん
あなたしつこいですよ、色んなところで。
ルールは各自で確認するべきだし、ほっとけばいいんじゃ。
250 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/10(水) 22:21
>>249
別に全部が248ではないと思うのだが…
知らない人にルール教えるってのは悪い事じゃないし。
まぁ、言い方とかが引っ掛かるんだろうが
何もこんなとこで空気悪くしなくてもいいっしょ。

マターリ続き待ちましょうや。
251 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 01:32
マターリマターリ
252 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:36

後藤編
253 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:37

「なっちぃ!」

タクシーから降りてきたその姿を見つけ、思わず大声で名前を呼びながら駆け寄った。
気づいたなっちも手を振ってこっちに向かって走ってくる。

「来ちゃった…」

ハアハアと肩で息をしながら、にっこりと笑う愛しい人。
あたしはまだ訳がわかんなかったけど、とにかくなっちに会えた嬉しさでいっぱいだ。

254 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:37

突然なっちから電話が来たのは、もうすぐ日付も変わろうとしている遅い時間だった。
今行くからって、用件はホントにそれだけですぐ切れた。

こういうの、前にも何度かあったんだ。
そう…、あれはなっちのソロが決まった頃。
あのときのなっちは突然家にやって来てはネガティブモード全開だった。
だからまた何かあったのだろうかと考えてしまって、待ってる間中ずっと心配
でたまらなかった。

255 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:38

「どうしたの?なんかあった?」
「え?なんで?」

「だって、こんな突然家に来るなんて」
「うん、……会いたくて」

「へ…?」
「あ、迷惑だったかな…」

思いっきり首を横に振った。
迷惑だなんてあるはずない。
なっちが会いたいって、あたしに会いたいって思ってくれたんだから。

256 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:38

「そんなわけないよ。会いたかったんだよ、ごとーも」
「ホント?」
「うん、だって明日はなっちの――」

――なっちの誕生日。
娘。にいた頃は、みんなでハッピーバースデー歌って、カンパイして、プレゼ
ント渡して…、それが普通だった。
でも今年はあたしにはそれができそうもなくて、すっごくさびしく思ってた。

「明日じゃないよ、もう今日が誕生日」
「え…?あっ、ホントだ!」

腕時計の針は12時を回っていた。
8月10日、なっちが生まれた記念すべき日。
257 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:39

「じゃあ、あらためて。誕生日おめでと、なっち」
「ん、ありがと」

まさか誕生日に直接おめでとうって言えるなんて…。
無理だとあきらめていたことだけに、めっちゃうれしい。

「遅い時間にごめんね」
「ううん、ごとーはうれしいよ。一番におめでとうが言えて」
「ごっちん…」

なっちの頬が紅く染まった。
ごとーのセリフ、ちょっとくさかったかなぁ。

258 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:39

「あ、んと…、プレゼント、部屋にあるんだ。行こっ?」

なっちの照れてる顔を見ていたら、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきて。
何も喋らなくなってしまったなっちをとりあえず家に誘った。

でも、少し歩いたところでなっちが急に立ち止まってしまった。
黙ってうつむいたまま、あたしのシャツの裾をぎゅっと握る。
やっぱり顔は、まだ紅いままで――。

「ん…?なっち?」
「…プレゼント、今もらいたい」
「うん、だから行こっ?」

ちゃんと買ってあるんだ。
なっちが好きな三日月型のシルバーペンダント。
密かにおそろいにしたことは内緒だけどね。

「ここでもらいたい」
「へ?あ、でも、部屋の中にね…、テーブルの上に置いてあるからさ」
「そうじゃなくてっ…」

言い終わらないうちになっちの腕がすうっと伸びてきて、あたしの首に廻った。

259 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:40

「え……」

右の頬に当たるサラサラな髪。
そして、ふわっと広がったなっちの香り。

今あたし、まちがいなくなっちに抱きしめられてる…。

「な、なっち…?」
「見ててくれる?」

「なに…を?」
「なっちをずっと…これからもずっと見ててくれる?」

なっちの声が耳に甘く響く。
それは夢のような言葉。

「え…なっち、それって……」

ごとーの都合よく受け止めていいの?
なっちに向かって行ってもいいの?

260 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:42

突然の展開についていけなくて返事ができない。
伝えたいことをうまく言葉にできないもどかしさに、どうしようもなく苛立っ
てしまう。
こんな大事な場面でおろおろしてしまう自分が情けない、ホント。

「ごっちん?」
「…」

どれぐらいそうしていたんだろう。
いつまでも反応がないあたしに痺れを切らしたのか、なっちがすっと腕の力を
緩めた。
近すぎる距離にドキドキして眼が合わせられない。

「ねぇ、なっちを見て?」
「…ん」

ゆっくり視線を向けた先には、やわらかくてやさしい微笑み。
あたしが一番好きななっちの笑顔だ。

261 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:42

「なっちもごっちんだけを見てるから。だからごっちんも、なっちだけを…」

「なっち…」

溢れ出す慕情。
それをずっと好きだった人が受け止めてくれようとしている。

今なら言える、あの言葉。
迷って悩んで必死で伝えた、あの日のメールでの告白。

262 名前:恋吹雪 投稿日:2003/12/20(土) 21:43

「なっちを見てます、これからもずっと」


やっと、言葉にできた――――。


263 名前:ビビオ。 投稿日:2003/12/20(土) 21:44
更新しました。

264 名前:ビビオ。 投稿日:2003/12/20(土) 21:44
>>242->>251
レスありがとうございます。感謝!

ホントにお待たせしてすいません。
がんばって完結させます。
265 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/21(日) 05:32
更新キタ――――!!!
266 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/21(日) 11:09
わーい
267 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/23(火) 21:23
( ´ Д `)< 更新きたねぇ。ついにごとーの出番だよ〜

なっちはついに…。
268 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/25(木) 18:41
待っててよかった(泣
269 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 03:21
保全やよー
270 名前:名無し読者 投稿日:2004/03/04(木) 10:52
ほぜんだべさ
271 名前:ビビオ。 投稿日:2004/03/18(木) 19:15
自己保全
272 名前:ビビオ。 投稿日:2004/04/25(日) 22:01
>>265->>270
レスありがとうございます。感謝!

少しですが更新します。
273 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:02

「なっちを見てます、これからもずっと」

ありたっけの想いを込めたあたしの告白。
なっちにちゃんと届いただろうか。

さっきから激しさを増す胸のドキドキは最高潮で、緊張感が身体を硬直させる。
見つめ合ったままのあたしたち。
まるでここだけ時間が止まったよう。

なっちは微笑を浮かべると、しだいに瞳を潤ませていった。
もう一時も目を離すことはできない。

――――あたしはずっと、この瞳に映りたかったんだ。
274 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:03

「…っ…ありがとう、ごっちん。嬉しい…最高のプレゼントだよ」

泣いてるような笑ってるような顔でなっちが言った。

これって、あたしの気持ちが届いたんだよね。
なっちは受け止めてくれたんだよね。

最高のプレゼントだなんてさ…。
嬉しいのはあたしの方だよ、なっち。


あ、でもプレゼントは…。
275 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:03

「プレゼント、ちゃんとあるんだよ。んと、なっちにね、すっごく似合いそうな…、
なんかね、かわいくて…」

頭の中いっぱいいっぱいのあたしはしどろもどろの説明で。
それが余程おかしかったのかなっちがくくっと笑って、そしてまた抱きついてきた。

「えっ…?」

な、なに?

「もぉ、かわいいなぁ…」
「な、なっち…?」

嬉しい状況だけどさっぱり意味がわかんない。
あたしはコチコチの棒立ち状態で、なっちの腰に手を廻すこともできなかった。
276 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:04

「大好き」
「…ほぇっ…」

耳元で確かに聞こえてきたその言葉は夢としか思えなくて。

「今…なんて?」

もう一回聞きたい。

「聞こえなかった?」
「聞こえたけど…、もう一回」

信じさせてほしいから。
目の前にいるなっちが現実だって。
決して夢じゃないって。

なっち…、あたしはあなたのことになると、こんなにも弱気で臆病になる。
277 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:04

「…しょうがないなぁ」

首に廻されていた腕がすっと緩んで、至近距離で目が合った。
ドキドキしすぎて、もう胸がパンク寸前。

「ごっちん、好き!」
「…」

にっこり笑った瞳の奥にあたしが映る。

「大好き!」
「なっち…」

笑顔と一緒に伝えられた想いに、あたしの心が重なった。
278 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:05

嬉しいときって、心から嬉しいときって、こんな風に放心状態になるのかな。

気の利いた台詞とか言ってかっこよく決めたかったのに、あたしはなっちの顔を
ただ見てるだけだった。
自分がこんなにへたれだったなんて…こんなはずじゃ…。

「…もういい?なっちもけっこう恥ずかしい」
「あ…うん」

真っ赤になった頬を両手でパタパタと仰いでるなっち。

か、かわいい…。
279 名前:恋吹雪 投稿日:2004/04/25(日) 22:05

「行こっか」
「へ?どこに?」

「どこって…、ごっちんの部屋にあるんでしょ?」
「あ、そ、そう。うん、あ、あるある」

噛みまくりのあたしを見てなっちがぷっと吹き出した。
あたしの顔を覗き込んで笑う目は可愛らしい三日月型。

一度笑うとなかなか止まんないなっちだから、あたしは手をとって家へ誘う。

「行こっ?」
「うん」

握られた手の感触がやさしくて、そのままどこまでも走り出したくなった――。

280 名前:ビビオ。 投稿日:2004/04/25(日) 22:07
更新しました。

遅くてすいません。
がんばります…。
281 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/26(月) 06:23
待ち焦がれてましたよー
幸せっていいですねえ
暖かくなりましたです
282 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/27(火) 22:37
お帰りなさーい!待ってました。待っててよかった。
なちごまかわいい。
283 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/29(木) 05:54
更新きたー!!!!まってましたよ!!とにかくお疲れ様です
いやーなちごま最高だなー。
284 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:42

部屋に戻ってさっそくプレゼントを渡したら、なっちはとても喜んでくれた。

キラキラの三日月を手にご機嫌のなっち。
腰掛けたベッドの上で無邪気に身体を揺らしたりぴょんぴょん跳ねたり、子ど
もみたいにはしゃいでる。
そんななっちを見ているあたしも、つい顔がにやけてしまったり。

「気に入ってくれた?」
「うん、もちろん!ねぇ、ごっちん、つけてくれる?」
「ん、いいよ」

渡されたペンダントを持って首の後ろに両手を回したら、なっちがすっぽり腕
の中に入ってしまった。

「あ…」

いきなりのシチュエーションに身体が硬直。
285 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:43

「どうしたの?つけられない?」

不自然にもたついてるあたしをなっちが不思議そうに見上げる。

あたしだけを見てくれるまっすぐな瞳。

だめだよ、なっち…。
そんな目で見つめられたら、もう…。

「なっち…」
「ん?」

ざわめく感情。
もう抑えられない。

「抱きしめても、いい?」
「えっ…」

ようやくつけたペンダントがキラリと胸元で光ったのと同時。
あたしは自由になった両腕で、なっちを力任せに引き寄せた。

286 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:44

なっちを抱きしめたのは2回目だった。

1回目はなっちの家でご飯を食べたとき。
台所に立つ後ろ姿があまりにかわいくて、気がついたら抱きしめていた。
それだけじゃ我慢できなくなって頬にキスしちゃったけ。

そう、あの日――
なっちはあたしを『特別』と言ってくれた。

なっちのその言葉がずっと心の支えになっていたんだ。
287 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:45

なっち…

ずっとずっと好きだった。

あたしと違って小さくて華奢な身体。
力を込めたら壊れちゃいそうだけど、気持ちが溢れて抑えられない。

なっち…

もう離さない、誰にもわたしたくない。
288 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:46

「ごっちん…」
「…ん?」

「ちょっと痛いかも」
「あ、ご、ごめんっ」

あたっしったら、どんだけ力が入っていたんだろう。
背中に廻していた腕をあわてて解く。

「大丈夫だよ…」
「へ?」

「なっちはちゃんといるから、ごっちんのそばにいるから」
「なっち…」

いっつもそうだ。
余裕がないあたしとは違って、なっちは大きく包み込んでくれる。
不安とか寂しさとか丸ごと全部。
それはあたしが娘。に入った頃と変わらない、圧倒的な包容力。

やっぱり大人なんだなぁ…なっち。
289 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:47

やさしい眼差しに引き込まれるように、なっちをもう一度腕の中に抱き寄せよう
としたら、なぜか肩口に手を置かれて拒まれてしまった。

…な、なんで?

「なっちぃ…?」

不安げに呼びかけると、なっちは拗ねたような顔をあたしに向けた。

「…まだ聞いてない」
「なに?」
「なっちだけ何回も言った、ずるい…」

なっちだけ?
何回も?

あ…

そういうことか。

290 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:48

「言ったことあるじゃん…前に」
「そんなのナシ、今聞きたいんだもん」

う…
そう面と向かって言われると、なんていうか…恥ずかしい。
言いたくないわけじゃ決してないんだけど。

「ごとーは…」

なかなか言い出せず口ごもるあたし。

でもなっちはそんなあたしをやわかい微笑でじっと見ていてくれた。
291 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:49

「ごとーは…いつのまにか…うん、気づいたら好きなっちゃってたんだ、
なっちのこと…」

言えた…、ちゃんと言えたよね、あたし。
もうこれが精一杯。

と、ほっとする間もなくなっちの声が―――。

「どのくらい?」
「…は?」

「どのくらい好き?」
「…」

どのくらい!?

なっちって昔から子どもっぽい発言をしてメンバーから突っ込まれてたけど、
まさかこんな場面で…。

どのくらいって…ん〜。
292 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:50

「なんて言ったらいいんだろ…んと…」

すごく好きとか、めっちゃ好きとか、そんな単純な言葉しか浮かんでこなくて、
あたしはちょっと考え込む。

どのくらい好きか…。
それって、今あるなっちへの想いを言葉にすればいいのかな。

あたしは大きく息を吸った。

そして一気に――――。

「なっちはごとーにとって誰よりもいちばん大切で、いちばんそばにいたくて、
いちばん一緒に歌いたいヒト」

「ごっちん…」
293 名前:恋吹雪 投稿日:2004/05/04(火) 21:51

「なっちがいるからがんばれたんだ。ソロ活動で不安なときとか寂しくなった
ときたか、いっつもなっちのこと思い出してた。なっちがごとーのパワーの元!
それぐらいなっちが好きです」

「…ありがと。そんなふうに思ってくれてたなんて…うれしい」

肩に置かれていた手がふわっと背中に回った。

「ずっと歌っていこうね、ごっちん。ソロとして一緒にがんばっていこう」
「うん」

あたしもそっと抱きしめる。

今度は力を入れすぎないように――――。

294 名前:ビビオ。 投稿日:2004/05/04(火) 21:51

更新しました。
295 名前:ビビオ。 投稿日:2004/05/04(火) 21:53

レスありがとうございます。感謝!

>>281 名無飼育さん
こんな更新の遅いモンを待っていてくださって感激です。
幸せいっぱいのなちごまでまた暖かくなってもらえたら嬉しいです。

>>282 名無飼育さん
お待たせしてすいません、そしてありがとうございます。
なちごまってかわいいですよね。
そういう雰囲気をもっと出していけるといいのですが…精進します。

>>283 名無読者さん
待っていてくださってありがとうございます、励まされます。
なちごまは書いてて難しいのですが、こんな感じでいいでしょうか…?
296 名前:名無し読者 投稿日:2004/05/05(水) 14:53
ビビオさん更新またまた乙です。なちごま大好物な自分にとって
は最高ですよ。がんばってください
297 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/29(土) 08:36
い、いつの間にか更新されてた…
作者さんありがとう・゚・(ノД`)・゚・
久しぶりに小説見て心が癒されますた。
段々終わりに近づいてきていますね。
これからも頑張って下さい!
298 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:18

「そろそろ帰らなきゃ…」
「うん…」

と言ったものの、腕の中にいるなっちをそう簡単に離すことはできず。

「ごっちん、もう…」
「ん、もうちょっとだけ」

離れようとするなっちを力で抑えるかのように抱きしめた。

だって、まだまだたりないよ。
幸せな時間って、どうしてこう早く過ぎていくのかな。

「なっちもこうしていたいけど、…仕事早いから」
「ん…」
「ごっちん?」
「わかってる、でも…帰したくない」

なっちをもっと感じていたい。

もっともっと――
299 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:19

「もぉ…困らせないで。なっちだって…でもね…わかるでしょ?」
「ん…」

困らせたいわけじゃない、うん、わかってる。
なっちは今忙しい時期で、ほんとはここに来るのだってキツかったはずで。

「またすぐ会える?」

言いながらあたしは廻していた腕をしぶしぶ解いた。

「ごっちんが会いたいって思ってくれるなら」
「むぅ…会いたいに決まってるじゃんかぁ」

ちょっといじわるななっちの言い方に思わず口を尖らせた。
300 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:20

「ごめんごめん、そんな膨れないでよぉ。メールするし、電話もする。時間が
できればいつでも会えるっしょ?」

幼い子をあやすように、なっちがあたしの頭をポンポンと軽くたたいた。

「いつでも?」
「そうだよ、なっちの時間は全部ごっちんのもの」
「…え」

なっちの時間が…ごとーの…。
なんかすごいこと言われたような気がしてすぐに反応できなかった。

なっちは変わらず満面笑顔のまま。
301 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:21

「だから今日は帰るね」

そう言ってなっちはもう一度あたしの頭をポンポンとたたき、鏡の前へ向かった。
甘いムードはすっかりどこかに行き、なっちはてきぱきと身なりを整え始める。

あたしと違って、ちゃんと気持ちの切り替えができるんだなぁ。
やっぱり大人だよ、なっちは。

「ごっちん、ブラシ貸して?」
「あ、うん。そこにあるの使って」

鼻歌交じりに髪を梳いてる。
後ろ姿しか見えないけど、ご機嫌顔のなっちが目に浮かぶ。

「かわいい…」

思わず口にしてしまうほど、それは誰が見ても22歳とは思えないほどの可愛い
さだった。
302 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:22

「へぇ?なんか言った?」

なっちの問いに答えず、あたしはそろりと背後へ。
おもむろに鏡の中で目が合うと、なっちは「なんだよぉ」と言いながら、前髪
を整え出した。

「ううん、べつにぃ」

すっと腰に手を回して、背中からぎゅっと密着。

「こらこら、なにすんねん」

鏡越しになっちが変な大阪弁で突っ込んできたけど、もちろん離れる気はさら
さらなく。

「気にしなくていいよ、続けて」
「ちょっとぉ…」

「ほら、前髪なおすんでしょ」
「気になるってー!」


振り向いたなっちの顔が近すぎた――――


303 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:22

「なっち…」

「ん?あっ…」


あたしは、なっちにキスをした。

304 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:22

唇に伝わるやわかい感触。
そこだけに神経が集中する感じ。

随分前に、ふざけてチュッっていうの一回だけしたことあったけど、そんなの
とは全然違う。
お互いの気持ちを唇から感じることができる。

これがホントのキスなんだね。
305 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:23

押し付けるだけのあたしのキスは幼くて。
いつのまにか主導権がなっちに移る。

なっちは一度離れてあたしの方に向き直ると、両腕を首に廻して背伸びをする
ように唇を重ねてきた。

「…んっ…」

挟んだり突いたり舐めたり。
なっちのキスはあたしを深く揺すぶるように刺激する。

熱くて、溶けそうで、気持ちよくて。
身体中をじんじんと痺れさせていく。

なにもかも初めてでいっぱいいっぱいのあたし。
ただなっちの動きに必死に合わせて、そしてますますはまっていった。

306 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:24

「んんっ……」

甘くもれる息。
しだいに深く濃密になるキスにあたしは酔う。

苦しいけど心地良くて。
激しいけどやさしくて。

「…はぁ…ん…」

絡めて、味わって、また求め合って。
腰に廻した腕に思わず力が入る。

もう何も考えられない。
本能的にキスだけに夢中になってる自分がいる。
理性がとぶってこういうことなんだろうか。
307 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:24

「はぁっ…なっちぃ…」

ようやく離れた瞬間、大きく深呼吸。

「ごっちん、大丈夫?」
「…た、たぶん……」

「くくっ…、かわいい〜」
「……」

なんか、くやしいけど…。
後藤真希、完全に敗北です。

308 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:25

ずっと好きだったヒトと想いを交わした夜。

なっちは変わらぬ笑顔で帰っていったけど、刺激的なキスの余韻はいつまでも
残った。


309 名前:恋吹雪 投稿日:2004/08/03(火) 18:25

〜後藤編 了〜
310 名前:恋吹雪…エピローグ… 投稿日:2004/08/03(火) 18:26

なっちはモーニング娘。を卒業し、ソロ活動を開始した。

ソロ同士になったら会える時間が多くなるかなぁ、なんてのはまったくの甘い
期待で。
ミュージカル、そして連ドラと、活動の幅を広げるなっちは多忙の一途で、
あたしたちはなかなかゆっくり会えない。
唯一ハロモニの収録だけがその機会だった。

その貴重なハロモニの収録日。
出番待ちのあたしの楽屋に、やぐっつぁんがひょっこりやってきた。
311 名前:恋吹雪…エピローグ… 投稿日:2004/08/03(火) 18:27

「この卵焼き、うまいっ!」

部屋に入るなり、遠慮のないやぐっつぁんはテーブルの上に広げていたお弁当
をパクッとつまんだ。

「だって、なっちのお手製だもん。当然でしょ」
「まじ!?もういっこも〜らい!」
「だめ〜っ!!」
「イタッ!マジで叩くなっつーの」

右手を擦りながら、やぐっつぁんがイスに腰掛けた。

なっちは今、歌のリハ中。
終わったらまっすぐここに戻って来るはず。
それまで久しぶりにやぐっつぁんとお喋りタイムだ。

312 名前:恋吹雪…エピローグ… 投稿日:2004/08/03(火) 18:27

「ごっつぁん、今日はコントだけ?」
「そう、文麿だよ〜」

学ラン着て、後ろで髪を結わいて。
もう完璧に文麿仕様の出来上がり。

「おいら悪麿の方がタイプだなぁ」
「あはっ、なっちもそう言ってた。なにげに悪麿って人気者かも」

「あ〜、えっと…」
「ん?」

「うまくいってるんだね、なっちと」
「うん」

「そっか」
「そだよ」

目が合って、小さく笑い合って、そして、グーでパンチされた。
313 名前:恋吹雪…エピローグ… 投稿日:2004/08/03(火) 18:28

それ以上は言葉にしなくてもなんとなくわかる。
あたしたちはなっちを通じて固いつながりがあるから。


「ごっつぁん、またカラオケいこうよ。3人でさ」

「うん。娘。ヒットメドレーいっちゃうよぉ!」


なっちと、やぐっつぁんと、ごとー。

3人で笑い合える今がとってもうれしいんだ。




〜おわり〜

314 名前:ビビオ。 投稿日:2004/08/03(火) 18:29

更新しました。
『恋吹雪』終わりです。

長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
315 名前:ビビオ。 投稿日:2004/08/03(火) 18:30

レスありがとうございます。感謝!

>>296 名無し読者さん
 なちごま大好物ですか…同士!
 最後は甘いシーンも入れてみましたー。

>>297名無飼育さん
 心が癒されただなんて、嬉しすぎます。
 励ましレス、ありがとうございました。
316 名前:ビビオ。 投稿日:2004/08/03(火) 18:30

完結 age
317 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/03(火) 19:57
完結お疲れ様でした。
最初から最後まで、この甘酸っぱい感覚を感じられて嬉しかったです。
気が早いかもしれませんけど、
次回作などお考えでしたら、そちらの方にもまた顔を出させて頂きますね。
有難うございました。
318 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/04(水) 17:33
完結お疲れ様です。
ずっとついてきててよかったっ!
この三人大好きなんで、この関係が崩れなくて
ホント満足です。
ありがとうございました。
319 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/04(水) 23:41
完結おめでとうございます。
ずっと、読ませていただいておりました。

この三人の組み合わせが大好きです。
3人ではじけ過ぎちゃうところとか。

ほんとうにありがとうございました。
320 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 23:48
完結お疲れ様です。
矢口・安倍・後藤の関係がどうなるのか先が読めなくて
せつないやら甘いやらのめりこみっぱなしでした。
みんな相手を思いやるいい子達でしたね。幕切れが明るく爽やかで嬉しくなりました。
読めてよかった。サンクスです。

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