GardensV
- 1 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時41分34秒
- また新スレ立てちゃいました。
前スレは同じ金板にあります。
ジャンルはアンリアルで、よっすぃ〜主役です。
CPはいずれできると思います。(もうばればれ)
今回はかっけーよっすぃ〜を書くことと、放置しないを目標にがんばります。
それではよろしくお願いします。
Gardens
http://mseek.xrea.jp/purple/1024846246.html
GardensU(金板)
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/gold/1029944087/
- 2 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時42分44秒
それが正しかったのか、まちがっていたのか。
あたしには、ぜんぜんわからない。
すべてがわかった時には、何もかもが終わっていたから。
時間は決して戻ることはない。
それに、わかるはずなどないのかもしれない。
なぜなら、あたしは他人を愛した事なんてないから。
- 3 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時43分45秒
世の中すべてが、ハッピーエンドで出来ていれば、こんなに悩むことはなかった。
正義も悪も、同じ明かりで照らされているこの街では、ハッピーエンドはとてつもなく遠い。
そもそも、この街で正義なんてものを口にする人は、たいていが嘘つきで悪人だ。
そんな最低な街のいつものベンチで、あたしは愛について悩んでいた。
あわいレモン味なんかじゃない。
どんどん形を変えていく、熱くドロドロした感情。
愛は、はてしなく難しい。
けれども、悩んでばかりいたわけじゃない。
得たものだってある。
4人の天使との出会いと、そのうち2人の携帯番号。
今のあたしには、それで十分だと思う。
- 4 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時52分15秒
Gardens
第六話 Angel Cage
- 5 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時53分20秒
7月に入り、梅雨が空けると、気温も街のテンションも止まる事なく上へ上へと昇っていた。
街は、水着の様な格好で歩く女性や、洋服を着ることさえ忘れた男の人達であふれている。
夜動き始める少年少女にとって、夏の昇り続ける暑さは、栄養剤みたいなもんだ。
そんな7月の週末は、上がりすぎた熱を下げるのに、ちょうどいい雨が、ゆっくりと降っていた。
そんな夏の週末、あたしはごっちんと梨華ちゃんの3人で、駅近くのゲームセンターにいた。
雨が降った週末は、屋根のない公園に集まるわけにはいかない。
たいていは、平家さんの経営しているベーグルショップに集まって、時間をつぶしたり、
近くのデパートや、ショッピングセンターを、3人並んで歩いたりする。
- 6 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時54分05秒
飯田さんはというと、雨が降る日は決まってこない。
雨の日は、アパートの窓から見える雨の日の街の絵を描かくのが日課らしい。
雨の日と晴れの日の違いは、雲の色くらいしかわからないあたしが、芸術家になるのは無理みたい。
まぁ、そんな気はさらさらないけどね。
その日は、あたしとごっちん、そして梨華ちゃんとで、プリクラを撮ることになり、
駅前にあるゲームセンターにいた。
ゲームセンターの名前は「エンジェルコイン」。
駅近くにある3階建てのゲームセンター。
自動ドアの上には、赤いネオンでAngel Coinの文字と、
文字の両端に、体と同じくらいの大きさの100円玉を持った、赤や黄色のネオンでできた天使が飛んでいる。
- 7 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時55分05秒
広くはない1階のフロアは、プリクラとUFOキャッチャーばかり。
週末だけあって、1階のフロアはカップルや女子高生で混雑していた。
入ってすぐ、さわぎ始めたのはごっちん。
子供みたいにあたしの手を引っ張るように進んでいく。
「あのぬいぐるみかわいい〜!」
UFOキャッチャーのぬいぐるみをガラスに張り付くようにして見るごっちん。
そして、プリクラのコーナーを見つけると、またはしゃぎ始める。
「ねぇ、どれにする?あ、まだあっちにもある!」
ごっちんはそう言って、あたしの手から離れ1人で走って行った。
あたしと梨華ちゃんは、そんなごっちんの後を、追うようにゆっくりと歩いて行く。
プリクラコーナーにいるのは、ほとんどがカップル。
あたしと梨華ちゃんが、並んで歩いているのさえおかしく見えるくらい。
夏は変な季節だ。
- 8 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時56分15秒
「ねぇ、ひとみちゃんは好きな人いる?」
とつぜん梨華ちゃんからのいがいな質問。
あたしは言う。
「あ、あたし?いないいない、そういうのぜんぜんだもん」
「ふ〜んそうなんだぁ」
少し不機嫌そうな声、梨華ちゃんはつまらなそうに言う。
「そう言えば、梨華ちゃんは好きな人できたんだよね?」
「え?あ…うん」
梨華ちゃんは少しうつむき、照れながら笑う。
梨華ちゃんも夏にむけて順調に進んでいるみたい。
「だれだれ?あたしの知ってる人?」
「ひみつ。誰にも言わないの、ごっちんや飯田さんにも…その人にも」
あたしには悲しい言葉に聞こえたけど、梨華ちゃんはいつかよりもずっと明るい笑顔。
「言わないの?どうして?」
「それもひみつ。それに今のままで十分だもん」
恋は人を強くしたり、きれいにしたりするって言うけど、それも梨華ちゃんを見ていれば分かる気がした。
- 9 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時57分18秒
「よっすぃ〜!梨華ちゃ〜ん!こっちこっちー!」
ゲームセンター中に聞こえるくらい大きなごっちんの声。
声のするほうを見ると、プリクラの機械の中から顔だけを出しあたし達に向かって手を振っている。
まわりの人の目は、大声を上げたごっちんに集まり、そのあとごっちんが笑顔で手を振ったあたし達に集中した。
あたしは、ただぼうぜんと意味もなく笑うだけ。
梨華ちゃんは赤い顔を隠すように下を向いた。
けれども、カップルや女子高生達の視線は、あたしと梨華ちゃんをとらえたかと思うと、すぐに散っていく。
この街で他人を見続けるのは、血が好きな奴か、たくさん背負いすぎて動けずに困っている人か、
ただのまぬけぐらいのものだ。
- 10 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時57分56秒
ごっちんのいるプリクラ機まで2人で走り、ごっちんを。プリクラの中に押し込む。
あたしと梨華ちゃんで、押し込んだごっちんの両脇を固める。
「もう、ごっちん声大きすぎだっての、みんなこっち見てたよ」
1人ではしゃぎながら、プリクラのフレームを選んでいるごっちんに言った。
ごっちんをはさんだ反対側では、梨華ちゃんが熱を持った頬を手で冷やしていた。
- 11 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)01時59分03秒
ごっちんはあたしの言葉に頬を少しふくらます。
「え〜、だって2人とも向こうで話ししてるんだもん、小さい声じゃ聞こえないじゃん」
そう言って、ごっちんはプリクラのフレームを選んだ。
緑の草のジャングルのフレーム。
画面にうつるごっちんが、自分の耳を引っ張って猿のまねをする。
3人で爆笑。
3匹並んだお猿さんのプリクラを撮る。
出て来たプリクラでまた爆笑。
「でもさ〜、あんな大きな声出さなくてもいいじゃん。
梨華ちゃんはずかしがってたよ」
「だって〜大きな声出さないと目立たないじゃん」
そう、街で大きな声を出せばだれもが振り向く。
それはゲームセンターでも変わりない。
そして、あたしは大声に振り向き、またトラブルの巻き込まれる。
べつに呼ばれてもないから振り向く必要なんかないのにね…。
- 12 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)02時00分25秒
2枚目は普通のプリクラ写真。
あたしとごっちんのピースサインと、梨華ちゃんの両手を広げた変なポーズ。
また爆笑。
機械から出る女性の声に3人でポーズをとる。
その短いカウントダウンが終わるちょくぜん、ゲームセンター中に女性の大声が響いた。
「だーかーらー、この下においらの100円玉が入って行ったって言ってるだろ!!」
フラッシュを横から受けたあたし達。
2枚目のプリクラは、3人が同じ方向を見ている横顔のプリクラだった。
- 13 名前:シグナル 投稿日:2003年05月28日(水)02時03分42秒
- 更新終了。
前回が終わって早二ヶ月。
遅くてすみません。
今回は、かなり遅い更新になる予感がします。
その点はご了承ください。終わってからの一気読みを推奨します。
次回の更新は未定です。
- 14 名前:七誌 投稿日:2003年05月28日(水)18時37分55秒
- キターーー!!
ゆっくり味わさせて頂きたいと思います。
そして遂に彼女の登場。とても楽しみです。
- 15 名前:たけトラマン(o|o)/ 投稿日:2003年05月30日(金)20時07分34秒
- Vの開始おめでとうです
期待してるので、がんがってください。
俺は時間がないので、あまり読めるかわかりませんが、ご了承を(w
自分のも削除依頼出そうとしてるので(w
- 16 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年05月30日(金)22時05分20秒
- おめでとうございます
またこの作品が読めると思いますと嬉しくて嬉しくて
おっといよいよ彼女が登場ですか
敵か? 味方か?
- 17 名前:EAGLE 投稿日:2003年06月03日(火)01時46分52秒
- シグナルs
オヒサです。
わーい、わーい、始まった!
終わってからの一気読み?
オイラ、日本語解りませーん(ぉぃ
「♪誰だ 誰だ 誰だ〜♪」(ガ○チャマンかよ
いよいよ登場…それにしても、コワっ!
あれ読んで、これ読んで〜とかやってると自分の3作品の更新を忘れそうだ(ぇ
更新に時間をかけても継続することが大事っす(んなこと書いてるオマエモナー(涙
更新の方はマターリと待たせて貰います。
- 18 名前:シグナル 投稿日:2003年06月06日(金)00時54分33秒
ゲームセンターの壁には、金色の輪を頭に浮かべ、白いローブを着た天使が、
手に自分の体と同じくらいの100円玉を抱え、照明で作られた陽だまりの中をふわふわ飛んでいる。
このゲームセンターにはそれと同じような天使のレリーフが、いたるところに貼ってあった。
プリクラが貼ってあるボードの隅や、トイレのドア、店の天井やUFOキャッチャーの透明のしきり。
そのUFOキャッチャーの前には、ゲームセンターの店員と1人の小さな天使。
その天使の頭には、金色の輪の代わりに、店内の照明を倍にして跳ね返すくらいの金色の髪。
白とはほど遠い、マリンブルーのぴちっとしたTシャツ、生足にマイクロミニのスカートと、何センチもある厚底の靴。
背中にくまのプーさんが描かれたリュックを背負った天使は、ゲームセンターの店員を下からにらみつけていた。
この街では、天使も金髪でミニスカートと厚底をはいているらしい。
- 19 名前:EAGLE 投稿日:2003年06月06日(金)01時02分19秒
- りあるたいむ?
マリンブルーな訳ねw
マイクロミニ+厚底=マンセー!(…もう死にたい、
遂に天使が舞い降りたべ(ぉ
眠いから続きがあったら明日にでも読もう……おやすみなさい(ぇ
- 20 名前:シグナル 投稿日:2003年06月06日(金)01時04分13秒
「だから、この機械の下においらの100円が落ちたから取ってくれって言ってんの!」
UFOキャッチャーの機械の前で話している男の店員と金髪の女性。
けれども、聞こえてくるのは金髪の女性の声だけ。
店員はあきあきした顔で天井を見ている。
背の高い店員の顔にはぶしょうひげに鼻ピアス。
店員の赤い髪は、天井に向かって立っていて、身長をごまかしている。
よく見ると、髪の毛をのけても男の店員は女性の倍ほどの身長をしている。
正しく言うと、金髪の女性が男の店員の半分しかないんだけどね。
どっちかって言うと女の子なのかな?
- 21 名前:シグナル 投稿日:2003年06月06日(金)01時09分02秒
あたしがそんなどっちでもいい事を考えながら見ていると、女の子の声にあきあきしたような顔をして、
男の店員が店の奥に引っ込んでいく。
「おいこらー!おいらの百円返せー!訴えるぞバカー!」
金髪の女の子は、店の奥のドアに入っていく店員にそう言って、あかんべーをした。
「んあ〜、すごい人がいるね〜」
「なんかかっけー」
店員に、大声で文句を言った女の子を見てあたしとごっちんが、ほとんど同時に言った。
自分の倍ほどの背をした男を罵倒する姿は、かっこいいものだ。
まぁ、天使であろうが、お金の恨みはしぶとく恐いんだけどね。
金髪の女の子は、店員が引っ込んだドアの前で悪口を言ったあと、厚底靴の先で蹴り上げ言う。
「こんなとこ、ニ度とこねーよ、ばかー!」
- 22 名前:シグナル 投稿日:2003年06月06日(金)01時11分25秒
「くっそーおいらの百円返せってんだ、まったく」
ブツブツと悪口をつぶやきながら、あたし達の前を金髪の女の子が歩いていく。
ラメでまわりもキラキラした目。
唇のグロスは、照明の光を鋭く乱反射させている。
年齢不詳。
もしかして二十歳以上?
金髪の女性は、つぶやきながらUFOキャッチャーの前まで行くと、床に張り付くようにしゃがむ。
このまま、床と機械の隙間に入っていけそうだ。
「ねぇ、よっすぃ〜行ってみようよ、なんか困ってるみたいだしさぁ」
無邪気な笑顔のごっちんがあたしの横で言った。
好奇心の塊みたいな笑顔。
この笑顔は止まらない。
「やだ。って言っても行くんでしょ?」
大きくうなずくごっちん。
「まぁ、あの人には、あたしも用があるから行ってみよっか」
「へ?よっすぃ〜あの人知ってるの?」
あたしは、ごっちんに知らないとだけ言って、金髪の女性に近づいて行く。
- 23 名前:シグナル 投稿日:2003年06月06日(金)01時14分25秒
金髪の天使とは会ったことも話した事もないけれど、いつかチームのメンバーが言ってた、
あたしのことを調べまわってる金髪のちっちゃなギャル。
正解なら思わぬ所での出会いだ。
けれども、この街では出会いなんていつもこんな感じ。
出会いはいつも唐突でとつぜんやってくる、その上そこら中に転がっている。
ストリートで油断なんかしてたら、いくつもの出会いを逃してしまうのだ。
けれども、それを拾うかどうかは本人の自由。
ストリートにあるのは縛られることのない自由と少しのルールだけ。
声を掛けるのも掛けないのもあなたの自由だ。
そんな街で、あたしは大声に振り向き、声をかけトラブルに出会い、こう言われる。
「ひとみちゃん助けてあげて」
「ん〜力になってあげれば〜?」
ま、そんな事言われなくても、あたしがどうするかなんて、たいして変わらないんだけどね。
- 24 名前:シグナル 投稿日:2003年06月06日(金)01時34分21秒
- 更新終了。
みじか!!以上です。
>>14 七誌様
ゆっくり更新になってしまうようなので、ゆっくり読んでください。
今回もがんばらせていただきますので、よろしくおねがいします。
>>15 たけトラマン(o|o)/様
終わったころに読んでください。
それだけでも十分うれしいです。
削除依頼…たしか…リレーに参加表明してましたよね?
>>16 むぁまぁ様
また書かせていただきます。
私も読んでくださると思うとうれしくてうれしくて。
がんばって書きたいと思います。
>>17&19 EAGLE様
>マリンブルーな訳ねw
気がつかんかった!自分で書いといて…。
次回更新は来週中にできればいいかなと…。
- 25 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年06月06日(金)07時57分56秒
- おおいよいよ登場しましたなぁ
出会いは衝撃的で且つ刺激的?
二人と100円玉の金髪天使とのやりとりが楽しみだ
>作者殿
楽しみにしてますぞ
- 26 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年06月06日(金)13時38分52秒
- お初です。全部読み終わりました。ってかやっと追いつきました!
すごいおもしろいです!続きが待ち遠しいです。
あの人(金髪のギャル)も出てきたことですし…カッケー吉澤を見るならもうココ!って決めました(w
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月06日(金)17時59分49秒
- わぁ楽しみにしていました!続き期待です!
>>19
すいません。一読者が生意気な事言わせて貰うと
冷めてしまうので更新の途中でのレスは勘弁してくれませんか。
- 28 名前:七誌 投稿日:2003年06月10日(火)12時20分31秒
- むぅー。不覚にも矢口に萌えた(w
面倒な事にどんどん巻き込まれていくよっすぃーに期待です。
- 29 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月10日(火)15時02分18秒
- >>27
一読者でも言いたい時は言った方がその人の為になるときも。
- 30 名前:名無し読者@29 投稿日:2003年06月10日(火)15時04分52秒
- ↑書き込み途中に間違ってenterキー連打してしまった(鬱
スレ汚し申し訳ない>ALL
- 31 名前:たけトラマン(o|o)/ 投稿日:2003年06月13日(金)03時00分16秒
- >>24
あい、リレー参加してまふ
今ちょうど順番回ってきてますし(w
HPも私用で停滞気味なのでおわかりかと思いますが、忙しいので自分で書いてたのは削除してもらおうかと思ってます
読者いないし(w
この板の14か15にありますよ(w
では、更新がんばってください
- 32 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時40分45秒
ゲームセンターの照明のせいで輝く金髪。
床とUFOキャッチャーの隙間を覗いてる女性の髪は、透きとおるほどに輝いている。
まぢかで見ると、見とれてしまうくらい。
あたしもあんな色にしようかな?
そんな事考えていると、横にいるごっちんが金髪の女性に声を掛けた。
「ねぇ〜、なにしてるの〜?」
「ん〜、おいらの100円がな、この下に入っていったんだよ」
声を掛けられた女性は振り向くことなく言う。
よーく見ると、床に頬がつきそうになりながら、
床と機械のすきまを覗きながら、機械の下に手を入れている。
「くっそ〜ぜんぜんわかんねーや。うわ、手がホコリまみれになっちったよ」
変にオヤジくさい言葉。
金髪の女性は、ゆっくりと立ち上がると、あたし達のほうを向いた。
- 33 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時42分15秒
向き合ってみると、思っていたよりも背の低さが目立つ。
厚底靴を履いているのに、あたしよりも顔半分くらい低い。
推定身長150cm未満。
金色の髪の毛は頭の後ろのほうで針のようにつんつんになって、まとめられいる。
大きくパッチリした目の周りにはキラキラのラメ。
プックリとした唇にはたっぷりのグロスが水面のように照明を反射している。
高校生といえば高校生だし二十歳といえば二十歳にも見えなくない。
まぁ、中学生と言われれば、そう見えなくもないけどね。
「ん?どうした?おいらの顔に何かついてるか?」
目の前を動く金色の髪を見ていたあたしを見ながら、金髪の女の人が言う。
「あ、いえ、べつになにも」
あたしがそう答えると、その女性は、ふ〜んそっか、とだけ言い、
クルッとUFOキャッチャーのほうに振り向くと、腕を組んで首をかしげる。
揺れる髪と、リズムを取る厚底靴。
「しっかしどうやってとるかな〜、100円」
- 34 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時43分13秒
べつに100円玉はどうでもいいけど、それを解決しないと話しなんか聞ける状態じゃないみたい。
「ごっちん、あれ持ち上がりそう?」
「ん〜なにが?」
「あれ」
そう言ってUFOキャッチャーを指差す。
「ん〜、何とかなると思うよ」
「あたしも手伝うけど」
「あ〜、いいよ〜1人でじゅうぶん」
ごっちんは、それだけ言うとUFOキャッチャーに近づいていく。
そして、ボタンやお金の投入口のあるでっぱりの下に手を入れる。
「おーい、お前なにやってんだ?
そんなもん持ち上がるわけねーだろ」
ごっちんの行動を見て、金髪の女性が言う。
けれどもごっちんは、そんな事気にも止めてないのか、少し足を開くと、腰をおとす。
- 35 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時45分13秒
「んあ!」
掛け声?と同時に傾くUFOキャッチャー。
「うっそー!!」
金髪の女の人の驚きと感激の声。
たしかに「うっそー!!」だ。
UFOキャッチャーを傾ける女子高生なんて聞いたことがない。
なに食べたらあんな物持ち上げられるようになるんだろう?
ごっちんには驚かされてばかり。
傾いたUFOキャッチャーと床には、顔1つ分入り込める隙間。
驚きの声を上げていた金髪の女の人だったが、すぐにその場にしゃがむと、
ごっちんの股の間から滑り込むようにして機械の下に手を伸ばしながら入っていく。
あたし達の周りには、その様子を物珍しそうに見る人達。
いい見世物。
- 36 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時46分05秒
そんな中、機械の下から聞こえる声。
「あ!あったぞ、おいらの100円、…あー!あの奥にあるのは500円玉!!」
はしゃぐように声を大きくして言う機械の下の女の人。
そして、機械の下に頭を入れながら言う。
「もうちょっとだ、機械もっと持ち上げろ」
「んあ〜、だめ、もうむり。手離すからどいてよ〜」
「だめ!おいらの500円が取れるまでがんばれ」
あきれた。
500円のために機械につぶされそうになっている。
それに、落ちてた500円はもう自分のものらしい。
ごっちんはもう限界なのか、苦しそうに言う。
「よっ、すぃ〜、おね、がい、この人、どうにか、して、よ〜」
「わかった!」
あたしは、そう言ってごっちんの下でじたばたしている女の人の足を持つ。
「あ!こら、なにすんだ、足なんか持っておいらをどうするきだ!」
そんな、ごっちんの下から聞こえる声を無視して、あたしは金髪の女の人を、
ごっちんの股の下から引きずるようにして引っ張る。
- 37 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時47分49秒
「こら、やめろ!スカートがめくれるだろ!」
床を腹ばいになり、モップみたいにすべる金髪。
体重が軽いからか、金髪の女の人はよくすべる。
金色の髪が、家にある黄色のモップみたい。
あたしが金髪の女の人の足を離すと同時に、ごっちんがUFOキャッチャーから手を離した。
重く床を叩くUFOキャッチャーの金属音は、床と店中に響く。
ごっちんが急に手を離したショックでか、UFOキャッチャーの取り出し口に、白いぬいぐるみが1つ落ちた。
ごっちんは取り出し口の前にしゃがむと、白いぬいぐるみを取り出し言う。
「やったー、ごとーぬいぐるみ取っちゃった!
見て見て、ほらかわいいよ〜!」
白いふわふわした毛のアザラシのぬいぐるみ。
「もらってもいいの?返したほうが良いよ」
「え〜、やだ!これはごとーが取ったの」
あたしが言ってもごっちんはぬいぐるみを抱いたまま首を横に振る。
ダダをこねる子供。
- 38 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時51分22秒
あたしの横でそれを見た梨華ちゃんが、ごっちんにかけよる。
「ごっちんだめだよ、100円入れてないんでしょ?」
「い〜じゃんべつに、落っこちてきたんだからさぁ、それにこのぬいぐるみ、
すりすりすると気持ちいいんだよ、ほら」
そう言ってごっちんは、梨華ちゃんにぬいぐるみを手渡す。
「わぁ〜、ほんとふわふわしてて気持ちいい」
もうごっちんを注意する気はないみたい。
梨華ちゃんは、ごっちんに言われたように、ぬいぐるみを頬にすりすりして目を細める。
いや、梨華ちゃんちがうから。
「うわ、なんだこれ!ホコリまみれじゃねーか」
あたしのすぐ前から聞こえる声。
あたしの前では金髪の女の人が、Tシャツとスカートについたホコリを手で払いながら立っていた。
こっちはまだ終わりそうにない。
- 39 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時52分38秒
「誰だか知らないけどな、引きずったりするから、おいらホコリまみれになったじゃねーか。
おいらの服汚そうとしたのか?」
あたしの前で腕を組み、にらむようにあたしを見上げる金色の髪。
その向こうには、楽しそうに話しているごっちんと梨華ちゃん。
「ちがいますよ。機械につぶされそうになってたから助け出したんです」
「ふ〜ん」
疑いの目と軽い返事。
「まぁいいや。ぶじ500円は帰ってきたんだし。許してやるよ、うひひひひ」
ホコリまみれの500円を顔の前でじっと見つめて含み笑いを見せる。
背の低い天使はゲームセンターのレリーフと同じように、お金が大好きみたい。
- 40 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時55分57秒
あたしが金髪の女の人と話していると、いつのまにかゲームセンターの店員が、ごっちんの側に立っていた。
さっき金髪の女の人と言い合いをして奥へ引っ込んでいった人。
店員は無愛想な声でごっちんに向かって言った。
「あのさー、UFOキャッチャーゆらして取った景品、返してもらえる?」
ここのゲームセンターは店員のしつけがなっていない。
誰が返すかこのやろう!
そんなあたしの思いが伝わったのか、ごっちんは白いアザラシのぬいぐるみを抱きしめて言う。
「やだ、これは、ごとーが取ったんだもん。かえさない」
うんざりした顔の店員と、あっかんべーをするごっちん。
あたしも、ごっちんの味方をしようとして近づこうとした時、
あたしの目の前にいた金髪の女の人が、あたしを止めて言った。
「ここは大人のおいらにまかして高校生はそこでまってるんだぞ」
鼻の頭を親指でさわり、あたしの肩をポンポンと叩く。
あたしと隣にいる梨華ちゃんを見る顔は、どこか得意げな顔。
完全な子ども扱い。
金髪の女の人は、意気揚々と店員とごっちんのいるほうへと近づいて行く。
- 41 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時57分07秒
「まぁまぁまぁ、あなたも大人なんだし、話し合いで行こうよ、話し合いで」
店員のすぐ後ろで金髪の女の人が言う。
けれども店員は見向きもしない。
すると金髪の女の人の肩が振るえ、大声が飛ぶ。
「おい!お前なに無視してんだ!
だいたい、おいらの時はさっさと引っ込んだのに、なに出てきてんだ!」
後ろから背の高い店員に向かって吠える女の人。
短気。
どこが大人だ。
まかせて良かったんだろうか?
店員はやっと金髪の女の人の方を振り向き視線を落とす。
けれども、店員の視線はすぐにごっちんへと戻る。
ものすごく分かりやすいシカト。
- 42 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)00時58分25秒
「あ!無視したな、あったまきた、おいらを怒らせやがって!」
なおも叫ぶ金髪の女性。
飼い主の足元でキャンキャン鳴くチワワみたい。
けれども、金髪の女性がいくら言っても店員は見向きもせずごっちんにつめよっていく。
完全な無視。
それが悪かった。
金髪の女性は、すばやく店員の前に周りこみ、そのままごっちんの前に立つ。
そして、黒い厚底靴を履いている足を引くと、店員のすねをためらう事なく蹴り上げた。
店中に響く、厚底靴と骨のぶつかる乾いた音、そして店員の低い悲鳴。
あれは痛い。
- 43 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)01時00分16秒
ものめずらしさと店員の悲鳴に人が集まり、すっかり囲まれてしまったあたし達。
そんな中、ひざを押さえてうずくまった店員の前では、金髪の女の人が仁王立ちになっている。
晴々とした笑顔。
そして、女の人は店員を見おろして言った。
「バーカ、おいらを怒らせるからだ。
ちっちゃいからってバカにすんじゃねぇ!」
急所をつく的確な攻撃と決めゼリフ。
たぶんこういうことになれてるんだろう。
うずくまる店員の前で仁王立ちになって腕を組んでいるポーズもどこか貫禄がある。
晴々とした笑顔は青空みたいにいつまでも続く…、かと思ったけど、
とつぜん金髪の女性の顔が曇る。
原因はすぐにわかった。
関係者以外立ち入り禁止と書かれたスタッフ用のドアから、騒ぎを聞きつけたのか2人の店員が出てきた。
赤い髪の毛を逆立てた細身の男と、金髪の坊主頭の横にも縦にも大きい店員。
腕なんてあたしの家の店にあるハムみたい。
金髪の女の子なんて、片手で持ち上げられるんじゃないかな?
あたしは金髪の女の人に近づき得意げな顔で言う。
「あの2人も任せていいですか?」
- 44 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)01時02分09秒
金髪の女の人は、あたしを見ながら顔をひきつらせ言う。
「お、おう、まかしとけ。大丈夫大丈夫…ハハ、ハハハ…」
無理矢理作ったような笑顔。
困っていることは良く分かった。
そうしているうち、2人の店員はすぐ近くまで来ていた。
すると、金髪の女の人は、それに気づくと、ごっちんの手をとると言った。
「よし、逃げるぞ!」
そして、金髪の女の人はごっちんの手を引っ張るように出口へと走って行った。
ある意味正しい選択。
だいたいあんなの2人、相手にできるわけがない。
「梨華ちゃん、走るよ」
あたしも梨華ちゃんの手を握りそう言う。
そして、なにがなんだか分からないといった表情の梨華ちゃんの返事をまたずに走り始めた。
- 45 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)01時04分28秒
後ろから聞こえる店員の声を無視して、店の自動ドアから外へ出る。
外に出ると、雨は上がっていたけど湿った空気とぬるい風が、体にまとわりついて服が水を吸ったように重い。
けれども、あたしの心は今日の天気よりもずっと晴れやかで軽い。
どうやらあたしもこういうトラブルが嫌いじゃないみたい。
それに、人ごみの街を全力で走る楽しさは、やったことのある人はわかるはず。
ゆっくりと歩く人や、意味もなく流れるように歩く人達、ビルの壁にもたれて、
誰かを待っている人の目を横に、あたしは街で1番自由で速い風になれるから。
- 46 名前:シグナル 投稿日:2003年06月23日(月)01時18分58秒
- 更新終了。
更新の遅いな…。スピードアップスピードアップ。
皆様レスありがとうございます。
>>25 むぁまぁ様
この方との出会いはやっぱり刺激的じゃないと.(w
>>26 名無しミトコンドリア様
どうもはじめまして、読んでくださってありがとうございます。
これからも、かっけーよっすぃ〜書ける様にがんばります。
>>27 名無しさん様
楽しみだ、なんてうれしい言葉です。
遅い更新ですがこれからもよろしくおねがいします
>>28 七誌様
萌えていただけましたか。
いや〜よかった、そう言っていただけるとうれしいです。
>>29&30 名無し読者@29様
いえいえ、ミスは誰にでもありますから気にしないでください。
作者は気にしませんから大丈夫です。
>>31 たけトラマン(o|o)/様
リレー辞退ですか、なんだかお忙しいようで。
ちなみに、ホムペの小説は読んでますよー。
- 47 名前:satomi 投稿日:2003年06月23日(月)05時59分53秒
- おもしろいです!最初から一気に読みました。
頑張ってください。マイペースで。
心待ちにしてる読者がいること忘れないでマターリ・・・。
完結してください♪
- 48 名前:七誌 投稿日:2003年06月23日(月)18時04分24秒
- やべっ!!
ごっちんの気合の入れ方可愛すぎ!
矢口の空回り方もらしくって好き。
- 49 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年06月23日(月)18時36分16秒
- ははははは なーにやってるんですか? 君たちは(笑
しかしごとぉさんの怪力にはぶったまげましたわ
無邪気さもいい
- 50 名前:名無し娘。 投稿日:2003年06月23日(月)22時21分24秒
- (0^〜^0)<手伝うよ
( ´ Д `)<1人でじゅうぶん
( ;^▽^)(なんだかレイとケンシロウみたい・・・)
どっちがどの役かを言うのは敢えて避ける石川であった。
- 51 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年06月27日(金)22時12分31秒
- 更新乙ですw
ごっちん怪力ですね。
やぐっつぁんのキャラもかなり良いと思いました!
次も期待しています。
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月10日(木)01時01分25秒
- 行進・・・しないのぉ????
- 53 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年07月22日(火)12時24分30秒
- ほぜむ
- 54 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月07日(木)22時52分02秒
- 作者さん、楽しみに待ってますよ〜
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月27日(水)00時22分34秒
- ほ
- 56 名前:EAGLE 投稿日:2003年09月01日(月)09時58分34秒
- ほぜむ
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/02(木) 01:10
- ほぜん
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/04(火) 03:52
- ho
- 59 名前:みさと 投稿日:2003/11/10(月) 23:47
- 作者さんどうしたんだろ?
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/12(金) 00:02
- 待ってますよ〜
- 61 名前:七市 投稿日:2003/12/17(水) 23:29
- 今日見つけて一気に読んじゃいました。
めっちゃおもろいです。
続き期待してます。
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 11:33
- 作者は名作に溺れる。名作は完結するほうがレア。
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