いしよしハッピー計画2
- 1 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)18時49分25秒
- いしよしオンリーです。
ずっと月板を愛用させてもらっていましたが、
やはりすぐに容量が足りなくなるので、こちらに引っ越してきました。
長編もの&短編もの織り交ぜながら、
いしよしを書いていきたいと思います。
設定は高校生の2人が多くなると思います。
甘く、時に痛も入りますが、基本的にハッピーエンドのみです。
- 2 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)18時51分24秒
- ということで、引越し警報がでましたのでお引越しです♪
続き物の途中からというなんとも不恰好なことになって
しまいましたが、興味のある方は、ぜひ前スレをご一読くださいませ。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/moon/1053164879/l50
それでは、続き、どうぞ!
- 3 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)18時58分13秒
- 「ひとみこそ、新しい人できたなんて言うんじゃないでしょうね。」
「うぁ。ばれた?」
「・・・・えっ?」
「なんてね。んなのいる訳ないじゃん。」
「もぉー!バカーっ!」
「あはは。やっぱ梨華ってからかい甲斐があるや。」
「いつもそうやって人のことからかって。」
「だってさ、かわいいんだもん。好きだからからかいたくなるんだよ。」
「それじゃまるで小学生みたいじゃない。」
「ホント、成長してないのかな?あたしって。」
「頭はピカイチいいのに、精神年齢おこちゃまよね、ひとみって。」
「あはは。だから先生になんて恋しちゃったのかな。」
手を引いて、私のことを抱きしめた。
「手のかかる生徒ね。」
「へへ。でもできの悪い生徒ほど、先生はかわいがってくれるもんでしょ?」
「そうね。そうかもしれないわね。」
「・・・うぅ。やっぱ心配になってきた。」
「え?なにが???」
- 4 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)18時59分10秒
- 「梨華が先生になったらさ、またあたしみたいなできの悪い生徒が
梨華にちょっかい出すかもしれないじゃん。」
「うふふ。それはきっとないわね。」
「んぁ?なんで?」
「こんなできの悪い生徒は、きっと世界中でただ一人だけだと思うから。」
「うぁー。それってちょっとひどくない?」
「クス。これでおあいこよっ。」
「あらら。それなら世界一できの悪い生徒は、たっぷりと先生に
甘えてみよう。」
そう言って、クスリと笑うと、唇を重ねた。
しっかりと重なる2人の心。
1年という長い期間会えなかった2人だったけど、
ちゃんと気持ちは変わらず繋がり合えていたことを確認できた
瞬間だった。
ぴったりと寄り添う体に、ひとみの存在を感じることができる。
ベッドの中には、2人分の体温が満ちていて、
クーラーの温度もいつもより2度くらい下げないと暑いくらい。
「ひとみ。私すごく幸せよ。」
「あたしも。やっぱり隣に梨華がいると、すごく落ち着く。」
「あと3年かぁ・・・。はぁーっ。長いよね。」
「ごめんね。寂しい思いさせてさ。」
- 5 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)19時00分03秒
- 「ホント、寂しいよ。でもひとみが決めたことだから、私も我慢する。」
「本当はね、何度か留学やめて日本に帰ろうかなって思った時期もあったよ。」
「え?」
「梨華のことが忘れられなくてさ。甘い声や、柔らかな体の感触が。」
「クス。なんかやらしい、その言い方。」
「へへへ。でも、単身赴任のサラリーマンの気持ちってきっとこんなだと思うよ。」
「そうだった。ひとみは私の大切な旦那さまだったわね。」
「そうだよ。だから任期が終わったらちゃんとここに帰ってくるから。
かわいい妻の元へ。」
「うふっ。それなら頑張ってもらわないとね。」
「うん。頑張るよ。かわいい妻のためにね。」
抱きしめてくれる感覚が、とても体に心地よい。
「ねぇ、梨華。」
「はい?」
「明日さぁ、夜時間ある?」
「うん。いつもと同じ時間なら。」
「・・・・あのさ。明日実家に帰るんだけど、一緒に来てくれないかな。」
「・・・えっ・・・。」
「実は前から外泊する度に言われてたんだ。
好きな人がいるんだったら、一度その人を家に連れて来いってさ。兄すごく心配してて。」
- 6 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)19時00分50秒
- 「そうだったんだ・・・。」
「親代わりだからね。」
「でも・・・私・・・・」
「あぁ。心配いらないよ。ちゃんと言ってる。恋人は女の子だって。」
「えっ!?」
「いずれわかっちゃうことだから。でもさすがあたしの兄だと思ったよ。
なんとなくそんな気がしてたんだって。だから別に驚いた訳でもなかったよ。」
「・・・それもすごいね。」
「30なのに未だ独身な兄の方が妹として心配になるよ。」
ひとみは笑っていたけれど、私は自分の家族のことを考えていた。
もし生涯をともにしたいと思っている相手が、女の子だということを
知ったら、きっと父も母も許してはくれないだろう。
「梨華、今自分の家族のこと考えてたんじゃない?」
「・・・・うん。」
「やっぱりね。急に黙り込んだからそうだと思った。」
「きっと許してくれないと思う・・・。」
「普通はそうだろうね。それが親として当然の態度だと思うよ。」
- 7 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)19時01分36秒
- 「・・・どうしよう。ひとみ・・・。」
「だけどあたしは臆しないよ。そこらの男より立派な人間になる自信がある。
梨華のこと不自由がないように生活できるだけのものは与えてあげられると思うよ。
それも含めて外交官を目指してるんだから。」
「ひとみ・・・・そんなことまで考えてくれてたのね・・・・。」
「反対されたって絶対諦めない。うちの親はその辺、きっと
説得すれば許してくれるだろうけど。梨華の親は手ごわそうだね。」
「私も頑張る。ひとみだけに任せるなんてことはしないつもりだから。」
「へへ。それは頼りになるね。まぁ最悪、駆け落ちって手もあるから。」
「駆け落ちかぁ・・・。なんか楽しくなってきちゃったわ。」
「そうそう。悩んでたって始まらないんだからさ。
ここで兄を味方につけとくのも、いい方策だと思うんだ。
どう?これぞ日本式根回しの正しいあり方。」
「ひとみって本当に外交官に向いてると思うよ。」
「そうでしょ?あたしもそう思う。」
クスクスと笑ってキスをした。
ひとみが言うと、本当に何もかも実現できそうな気になってくるのが
不思議なくらい。
だけど私は知っている。
彼女は口だけではなく、ちゃんと実行してくれる人だということを。
- 8 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)19時02分07秒
「おやすみ、ひとみ。」
「おやすみ。・・・・・・って、夜のお楽しみはないの?」
「クスクス。帰ってきてそうそう楽しんだじゃない。」
「まだ物足りないんだよね。1年分の好きな想い、貯金し過ぎたから。」
「それじゃ、無駄遣いにならない程度に。」
「オーライっ!・・・ぜーんぶ使ってやる。」
「なにそれー。きゃははっ。やめて、くすぐったいよ。」
だから私は安心してひとみを愛してあげることができるのだ。
心から信頼しているひとみだけに感じる、確かな絆がここにあるから。
- 9 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)19時04分24秒
- >作者
以上で今回の投稿は終了です(w
なんかまた長くなりそうじゃないか?>作者
色々ありまして、もしかしたらまた長くなるかもしれませんが
(話を広げすぎて収集つかなくなりつつある罠(w )
まぁ、ぼちぼち更新していきます。
それでは今日もありがとうございました!
次回まで。
- 10 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月07日(土)20時03分31秒
- うぁーよっすぃー帰ってきたのですねー(感涙)
二人のラブラブっぷり!!
離れても繋がってるって、すばらしいですね。
帰って早々、キャー☆って感じです(笑
- 11 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月07日(土)20時56分30秒
- >名無し読者79さま
やった!ついてきてくださったのですね・・・(涙)
もうガシガシがんがっていきますよぉ☆
一番レス、誠に感謝しております(はぁと)
>帰って早々、キャー☆って感じです(笑
・・・あはは。作者ってバカでしょ?(wゞ
でも2人にはラブラブでいてもらいたいので(笑)
いつもありがとうございます!
さて、作者の疑問をここで少し(笑)
実は桃板もちらりと参考にさせていただいているのですが、
毎回作者のスレだけageで紹介されているのはなぜなんでしょうか???(笑)
いやはや。すごく嬉しいんですよね。
どなたかは知りませんが、いつも書き込みしてくださって
ありがとうございます。>><いしよし小説総合スレッド>
ただどなたがカキコしてくださっているのかわからないので、
お礼の言葉を言わせていただけないのが、残念です(涙)
よければ、またこちらにもカキコしてくださいね!待ってます。
いつもありがとうございます。(ペコリ)=修行僧2003=
- 12 名前:シフォン 投稿日:2003年06月07日(土)23時39分01秒
- >作者様
新スレ、おめでとぉございます〜♪
前回のレスで、座布団3枚も下さってありがとぉこじゃいます(笑)
<<痛し痒しの話は、たたけばイパーイでてきます…
きっと、ウチの方がイパーイかと…(汗)
たたかなくても出てくるし…(ヲイ
<<恋をする気持ちは同姓間でも異性間でも差異はないと思います
作者様のご意見に同感です!
…なんて、世間じゃ大きな声で言えないんですけれどもね(苦笑)
話しが作者様の作品とズレてしまって申し訳ございませんっ(汗)
将来の事をここまできちんと考えているよっすぃ〜、かっけぇっす!!
長くなっても、最後までちゃぁんとついてゆきますので、これからも頑張って下さいね♪
- 13 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月08日(日)04時07分47秒
- 新スレおめでとうございます!!&更新お疲れ様です!!
話が長くなるのはありです!!てゆーか、正直
当方的には嬉しかったり…(笑)
このスレでも修行僧2003様には期待してますYO!!
では、次回の更新楽しみにしてます♪
- 14 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月08日(日)12時49分01秒
- 新スレおめでとうございます。
・・・てか、スレ警報はおまえのせいだーなんて突っ込みが来そう。
でも広〜い海に来たからには、レスにも気合が入るってもんです。
さて、ストーリーも次第に甘甘から核心へと展開しつつあるようで
ますます目が離せません。愛に形は無いって思ってはいても、いざ
自分の娘が、と考えると微妙にマイナス思考になりますね。でもき
っと天使の声が届くはず。(自分の娘にそっくりなw
- 15 名前:Silence 投稿日:2003年06月08日(日)14時57分36秒
- 新スレおめでございます。そして更新乙様(お疲れ様)です。
(後、海へのお引越しもお疲れ様でした。
将来のことまで考えているなんてオトコマエはやることが
違いますね。
そんなよっすぃが旦那様な梨華ちゃんは幸せものだと思われます。
(まぁ、石ヲタの立場から言えば、よっすぃが断然うらやましい
ってことになるんですがね(w
これからも引き続いて追っかけて読ませてもらいますよ(w
- 16 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月09日(月)19時11分18秒
- 書き忘れたことが、新スレおめでとうございます!!
感想を書きながらまた一番じゃないかも…と思いながらポチッとクリックしたら
一番でした(^^)
どこまでもついていきます!!これからも甘×2ないしよし楽しみにしています!!
- 17 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時20分01秒
- >シフォンさま
>新スレ、おめでとぉございます〜♪
ありがとぉございまぁ〜すぅ〜♪(笑)
>たたかなくても出てくるし…(ヲイ
ステキですね、シフォンさまって。クスっ。
>…なんて、世間じゃ大きな声で言えないんですけれどもね(苦笑)
そうですねー。無理にリスクをしょいこむ必要はないのでは。
と、こちらもマジレスで、スマソ(wゞ
いやはや。でもシフォンさまとは色々語ってみたいですねー。
もちろん、かわいい女の子の魅力について(w
(よっすぃーヲタトーク含む(笑))
>ぷよ〜るさま
ありがとうございますー♪♪♪
>話が長くなるのはありです!!てゆーか、正直
>当方的には嬉しかったり…(笑)
マジっすか!?いやぁ〜ん。ぷよ〜るさまっておだて上手
なんだからぁ♪♪♪
これからも、ぜひぜひよろしくなのですっ☆
>ROM読者さま
>でも広〜い海に来たからには、レスにも気合が入るってもんです。
もう遠慮なんてなさらず、ガシガシカキコお願いいたします(wゞ
>天使の声が届くはず。
天使って誰?(笑)
もしかして、エンジェル梨華ちゃん???(笑)
- 18 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時29分47秒
- >Silenceさま
ついてきてくださって、誠に感謝の雨あられです♪
>(まぁ、石ヲタの立場から言えば、よっすぃが断然うらやましい
ってことになるんですがね(w
作者は断然梨華ちゃんがうらやましいっ!!!(笑)
あぁ。よっすぃー。作者の彼女になってくんないかなぁー。
え?ダメ???(笑)
それならマジいしよしこの目で拝ませていただきたいっ!(w
いつもありがとです☆
>名無し読者79さま
>書き忘れたことが、新スレおめでとうございます!!
あぅ・・・。わざわざありがとうございます(涙)
ほんと、温かい人ですねっ!すっごく嬉しかったですよぉ(号泣)
マジでどこまでもついてきてくださいね!約束ですよっ♪
さて、最近ちょっと面白かったことを(w
ハロプロ公式サイトで、梨華ちゃんプロフみたら、
こんなことが書いてありました。
『9.この春に必ず「やってみよう!」ということは?
桜の花びらをつかむ!ヒラヒラと落ちてくる花びらを一発でつかむと幸せな気分になれそうだから。』
きゃーっ!梨華ちゃーんっ!
それですよっ!作者が求めていたものはっ!
ぜひ『サクラサク。』にマジ登場してくださいねっ。
もちろんよっすぃ〜も強制参加(w
ということで、壊れ気味の作者ですが(笑)
これより続きご覧ください。では。
- 19 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時31分47秒
ライトアップされた階段を昇ると、大きなドアの前に立った。
ヨーロッパをイメージさせるそのおしゃれな建物は、ひとみの実家。
「緊張してきたわ・・・。」
「クス。大丈夫。」
カギを差し込んで扉をあけると、程よい涼しさを肌に感じた。
「ただいまー。兄キー。」
廊下の先にあるリビングの扉がカチャリと開く。
ガチガチに緊張した私は、ただ一点、開かれていく扉の向こうを凝視していた。
「お帰り。あぁ。君が梨華さんだね。」
にこにことこちらに近づいてくるその人は、ひとみのお兄さん。
背が高く、程よい筋肉質の体型は男の人がもつものではあるけれど、
その美形の顔は、ひとみとあまりにも似ていて思わず見比べてしまった程。
ひとみを男の子にしたら、きっとこんな感じなのかもしれない。
あまりにもステキで、うっとりと見とれてしまい、
肝心な挨拶をするのを忘れてしまいそうになった。
- 20 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時32分47秒
「はっ、はじめましてっ。石川ですっ!」
「ははは。そんなに緊張しないで。
私は兄のひかるです。いつもひとみがお世話になっているようで。」
優しく微笑んでくれる瞳に、お兄さんの人柄が伝わってくるよう。
「こちらこそ。ひとみさんにはいつもお世話になってばかりで・・・」
「まぁ、こんなところでもなんですから、どうぞあがってください。」
「はっ、はいっ。」
「兄キ、晩御飯用意してくれてる?」
「なんだ。帰ってきてそうそうそれか?久しぶりの兄妹の対面なのに。
もっと他に言うことあるだろ?」
「はぁ?他に何を言えっての?」
「昔は『おにーちゃんおにーちゃん』ってうるさいぐらい付きまとってたくせに。
最近は冷たいんですよ。梨華さんにはそんな態度取ってないですか?」
リビングへと歩きながら、お兄さんは私に振り向きながらそう言った。
「いえ。とてもよくしてもらってます。」
「へぇ。ひとみがねぇ・・・。」
にやっとした表情を浮かべて、ひとみに視線を移した。
- 21 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時33分47秒
- 「いっ、いいだろ、別に。ほら、はやく飯にしようぜ。」
「あぁ。兄さんはなげかわしいよ。手塩にかけて育てた妹が、
そんな言葉を使うなんてね。」
少し大げさに肩を落として、額に手をかけると、そのまま
ひとみの肩に腕をまわした。
「兄キはいつも口うるさいんだよ。」
「かわいい妹のためを思ってるんだよ?」
「いいの。あたしのことはほっといてくれて。」
「梨華さん。こんな生意気なやつのどこがよかったんですか?」
情けなそうに眉毛をさげていたけれど、仲のいい兄妹の姿を
みせつけられたようで、ちょっぴり妬いてしまった。
「ひとみさんはすごくステキな人ですよ。」
そう言うと、お兄さんはなぜかクスクスと笑いながら、扉を開けてくれた。
「ったく、兄キは・・・。」
ぶつぶつと文句を言っていたひとみだったけど、
テーブルに並べられている料理を見て、目を輝かせた。
「わぉ。あたしの好きなものばっか。」
「かわいい妹のために、兄さんは頑張ったんだよ。」
「すごいですね。これ全部お一人で作ったんですか?」
- 22 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時35分00秒
- 「はははっ。まぁね。こう見えても家事は全て私がこなしてきましたから。」
「うまそう。ねぇ、早く食べようよ。」
「おい、その前に。何か兄さんに渡すものがあるだろ?」
「ん?あぁ。お土産か。はい、これ。」
紙袋から洋酒を取り出すと、お兄さんは嬉しそうに受け取った。
「おっ。サンキュ。梨華さんはいける口ですか?」
「いえ・・・私は・・・」
「飲めないって訳ではないけど。梨華には飲ませない方がいいよ。」
笑い声をこらえるように、私を見る視線。
ベロベロに酔って帰宅したあの日のことを、
ひとみはきっと思い出しているに違いない。
「ん?なんだ?ひとみ?」
「なっ、なんでもないんです。本当に。ねっ?ねっ?」
「クス。本人がそう言うんだったら、何もなかったことにするか。」
「なんだよ。兄さんだけのけ者か?」
「そんなこと・・・。ほら、早く食べませんか?私、お腹ペコペコで。」
催促するのはちょっと恥ずかしかったけど、醜態を暴露されるよりはマシ。
「あぁ。そうだった。それは悪かったね。それじゃ、食べましょうか。」
「あはは。食べよう、食べよう。」
- 23 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時36分19秒
- そして、3人での夕食が始まった。
お酒をたしなんでいるせいもあってか、お兄さんはとても饒舌に、
かつ楽しい話をいっぱいしてくれた。
ひとみの小さな頃の話から、今に至るまで。時に冗談を交えながら。
そんな話を聞くうちに、最初のような緊張はほぐれていき、
いつのまにか本当に心を砕いて話すことができるようになっていた。
ひとみのことをからかって笑う姿は、まるで彼女が私にするそれのようで、
見ているこちらが照れてしまったけど。
ひとみにはきっと、こんな優しくて楽しいお兄さんの遺伝子が、
兄妹の血として繋がっているのだと思った。
「どうでした?梨華さん。お口に合いましたか?」
「はい、とてもおいしかったです。ごちそうさまでした。」
「それはよかった。どうだ、ひとみ。少しは兄さんに感謝しろよ?」
「はいはい。感謝してますよ。」
「よし、それなら。この洗いもの、後は頼んだからな。」
「げーっ!これあたし一人で片付けろっての?」
「あっ。それなら私がします!」
「いいんですよ、梨華さんは。ほら、ひとみ。それと、食後のお茶もよろしく。」
「んだよ。せっかく帰ってきたのに、ちょっとはお客様扱いして欲しいよ・・・。」
「文句言わない。たまには手伝いぐらいしなさい。」
「ちぇーっ。」
「ひとみ。私も手伝うから。」
「あ、いいよ。あたし一人で頑張る。」
「ははは。それでこそひとみだ。かっこいいぞ。」
「ったく・・・・・」
- 24 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時37分16秒
食器を運ぶくらいは手伝ったけど、結局お兄さんに引き止められてしまって、
私たち2人は、ひとみを残してソファーに腰掛けていた。
「少しは緊張もほぐれましたか?」
優しく見つめる瞳が、私に注がれている。
「はい。お兄さんのおかげで。」
「ははっ。それはそれは。」
「今日は本当にごちそうさまでした。とてもおいしかったです。
それに楽しいお話をいっぱいしてくださって。」
「いやいや。こんなのでよければまたいつでも。」
そしてお兄さんは、何気なくキッチンで洗いものをしているひとみの背中を窺った。
「梨華さん。」
「はい。」
「実は、ひとみのことなんですが・・・・。」
今までとけていた緊張が、また襲い掛かるように、私の心を固まらせていく。
「・・・なんでしょうか?」
「あぁ。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」
こちらの気持ちが伝わったのか、お兄さんは苦笑しながらそう言った。
「・・・すみません。」
- 25 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時38分18秒
- 「いや。こちらこそ。それで話はあいつのことなんですがね。
梨華さんも知ってるとは思いますが、うちは両親が不在している生活が、
当たり前のようになっていまして。」
「お父さまのお仕事の都合で海外にいらっしゃるんですよね?」
「そうです。私たち兄妹は、ひとみが小学校に上がった頃から、
ずっとそんな生活を続けてきました。それまでは、祖母に育てて
もらっていたのですが、その祖母も他界しまして・・・。」
「それは・・・大変でしたね・・・。」
「まぁ、私もその当時は高校生だったものですから、
一人前とはいきませんが、家のことは大抵できたので問題はなかったのですが。」
「・・・はい。」
「ひとみは親との関わりが、他の家庭に比べて薄いと思います。
私にはわからないくらい、きっと寂しい思いもしてきたことでしょう。」
「そう・・・ですか・・・。」
「だから私はあいつのことを、人一倍愛情をかけて育ててきたつもりでいます。
しかし、ひとみは今もどこかで埋められなかった親の愛情を
手にしたいと思っているはずなんですよ・・・。」
膝の上に組んだ手をじっとみつめながら、少し寂しげにそう言った。
「梨華さん・・・。」
「・・・はい。」
「ひとみはきっと梨華さんに、そういった愛情を求めているのかもしれません。
失礼を覚悟で聞きますが、そんなひとみのことを重荷に感じたりはしてませんか?」
私はゆっくりと首を振った。
そんなことはあるはずもない。
こちらが重荷になることはあれ、私がひとみのことを
重荷に感じることなんて、あるはずもないのだから。
- 26 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時39分19秒
- 「いいえ。私はひとみさんを・・・ひとみを愛していますから・・・。」
「・・・・そうですか・・・・。」
お兄さんもまた、視線をゆっくりあげて、私を見つめた。
「あなたはウソをつくような人間ではないとみえる。
それはきっと真実なんでしょうね。」
「はい。うそいつわりなく。」
「もう一つお聞きしますが、梨華さんが指にしているそれ。ひとみが買ったものでは?」
「あっ・・・。はい。」
「ひとみもまた本気のようですね。」
「そうだと思っています。私は。」
「はぁ・・・。」
お兄さんはため息ともなんともとれぬ言葉をつぶやくと、
そっと目を閉じて、しばし沈黙していた。
いくら理解してくれているとはいえ、やはり2人の付き合いが
ここまでと知って、ショックを受けているのかもしれない。
それこそ我が子のように育ててきたひとみの恋人が、
私みたいな女の子だというのは、兄として許せる道理などないのだ。
次に出てくるであろう言葉に、私は固唾を飲んで身構えていた。
そして、お兄さんは目を開けると、どこか遠くを見るような視線を
上に向けていた。
- 27 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時40分37秒
「・・・やっとこれで、私の責任も果たせたような気がします。」
「・・・・・はい?」
「ひとみは見つけたんですね。本当に心を許せる相手を。
あいつのことを任せられる人がいるなら、私がもう口を出すことは何もないです。」
「お兄さん・・・・。」
「お任せしてもいいでしょうか?ひとみのこと・・・・。」
私が想像していたものとは逆の言葉がかけられていた。
それは2人の付き合いを認めてくれる言葉だった。
「はい。私でよければ。」
「梨華さんでなければきっとダメなんでしょう。ひとみは。
あいつのこと、よろしくお願いします。私でできることがあれば、
いつでも力になりますから。」
「・・・・ありがとうございます・・・。」
思いもかけない温かい言葉に、胸を熱くした。
まさかこんな話ができるなんて思っていなかっただけに、
緊張していた心は一気に弛緩していった。
ちょうど話が一段落した頃、ひとみがソーサーとカップを
トレイに乗せて、こちらにやってきた。
- 28 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時42分05秒
「兄キ、まさか梨華を口説いてたんじゃないだろうね。」
「はは。ばれたか。お前が来るのが遅いから悪いんだ。」
「おっ、お兄さん???」
「こんなステキな人はひとみにはもったいないからね。
兄さんの恋人にならないかって口説いてたのさ。」
「おい。それ冗談じゃなかったら兄妹の縁切るからね。」
ガチャリと音を立てて、食器がローテーブルに置かれた。
「ひとみ、冗談だからねっ!?」
「いやいや。冗談なんかじゃないですよ。
梨華さんはとても魅力的な女性だ。ふわっと華が咲いたように、
心がトキメキますよ。甘い香水のかおりが、またいいですね。」
それはひとみがお土産に買ってきてくれたものだった。
バラの甘い香りの香水は、私のイメージに合うとプレゼントしてくれたもの。
「お兄さん、そんな話一度もしなかったじゃないですかっ!」
きっとまたひとみをからかって楽しんでいるに違いないのだろうけど、
ひとみの目が明らかに真剣なものへと変わっていくのをみて、
私はとてもあせってしまっていた。
「へぇ・・・。なら、一体どんな話をしてたんだ?」
「それは、その・・・」
「あぁ、いいから梨華さん。ひとみ、そこまで言うんだったら、
お前がどれだけ梨華さんのことを大事に思っているか、言ってみなさい。」
「ぐっ・・・。そんなの兄キに言う必要なんてないじゃん!」
- 29 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時44分03秒
- 「そうか。それなら梨華さんは私のものにしてもいいってことだな。」
「なんでそうなるんだ?」
「梨華さんも不安でしょ。はっきりと自分の意思すら言えない人間なんて。」
「私は・・・・ひとみのこと・・・・」
「・・・・っ!言ってやるよ。あたしは梨華が好き。
ずっと一緒に生きていきたいと思ってる。兄キなんかには絶対渡さない!」
「今言った言葉がどういう意味をもつのかわかってるのか?」
「もちろん。」
「誰のせいにもできないんだぞ。ちゃんと責任とれるのか。」
「言われなくてもそうするつもりだよ。あたしの意思は固いから。」
「・・・・・・ひとみ・・・・・・・」
「だそうです。梨華さん。まだまだ一人前じゃないやつですけれど、
ひとみのこと、本当にお願いします。」
「・・・・兄キ?」
「何ボケーッと突っ立ってんだ。兄さんが頭を下げてるのに。
ほら、ひとみも。」
「・・・いいの?」
「梨華さんみたいなかわいい妹ができるんなら、ひとみはいらないがな。」
「・・・・・・っくしょー。兄キばっかかっこいいとこもっていきやがってー!」
「そうだよ。兄さんってのはかっこいいお手本にならないとな。」
照れくさそうに、お兄さんを抱きしめたひとみ。
私はそんな2人のことを、少しうらやましく思いながら、
じっと見つめていた。
心の深い部分でしっかりと繋がりあっている2人。
だから私も、お兄さんに負けないように、ひとみをもっと大切にしたいと思ったのだった。
- 30 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時49分02秒
「なんかかっこ悪いとこ見られちゃったなぁ・・・。」
ベッドの上で寝転びながら、ひとみがつぶやいた。
「そんなことないよ。それどころかかっこよかった。2人とも。」
「まさかあたしのいないうちに、あんな話をしてたなんてね。
どうやって兄キに言い出そうか迷ってたけど、結果オーライだったね。」
「きっとお兄さん、ひとみのことが本当にかわいいのね。
心配しているのがすごく伝わってきたよ。」
「まぁね。それはわかっているんだ、あたしも。」
ゴロリと寝返りをうって、こちらに顔を向けた。
「それよりさぁ、梨華。」
「ん?」
「兄キのことどう思った?」
「んー。ステキな人だと思ったよ。優しくて、思いやりがあって。」
「それだけ?」
「それだけって?」
「・・・・・・・惚れたりしなかった?」
「え?」
「妹のあたしが言うのもなんだけど、兄キって結構いい男だと
思うんだよね。梨華もまんざらでもなかったみたいだし・・・。」
唇を少し尖らせるようにして、そう言った彼女。
そんなひとみの姿に、愛しさがこみ上げてきて、
ぎゅっと抱きしめてしまった。
- 31 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時50分17秒
- 「ひとみ。」
「・・・・・んぁ?」
「お兄さんはとてもステキな人だけど、私が愛してるのはひとみ
だけだからね。」
「・・・・梨華ぁ。」
「クスクス。本当はわかってて聞いたんでしょ?」
「へへっ。まぁ、ね。」
「やっぱり。」
「でもさ、梨華には兄キみたいな男の方が似合ってるのかなぁなんて、
ちょっと本気で考えてしまったよ。」
「ひとみ・・・。」
「本当にあたしでいいの?」
「ひとみじゃなきゃダメなの。」
「梨華。」
「はい。」
「これからもずっと、あたしだけを見ていてよ。」
「言われなくてもそのつもりよ?」
「よかった・・・・。」
「ちゃんと私のことろに帰ってきてくれるの、待ってるからね。」
「必ず迎えにいくよ。梨華のこと、愛してるから。」
ひとみの部屋はうちのマンションなんかよりも、
もっと広くて快適だったけど、私たちはその夜、
いつも以上にぴったりとくっつきあって眠りについたのだった。
- 32 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月09日(月)21時53分13秒
- >作者
はい。今回はここにて終了です。
さて、こらからどうなっていくのやら???(w
なーんか、難しい展開へと自分自身を陥れているようで、
これぞ墓穴って感じの展開かもしれません・・・(涙)
でも、まぁなんとかなるでしょう♪(笑)
今までもそうやってなんとか完結させてきましたから(w
それでは次回もご期待ください。
およその展開はつかめているでしょうけど、内緒でひとつ(w
では。ありがとうございました♪
- 33 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月09日(月)22時22分53秒
- 更新お疲れ様です!!
ひ、ひかるさん…何て素晴らしいお兄様なんでしょ!!
ひかるさんにおちょくられるよっすぃ〜も
いいですね!!(笑)
当方は煽てが出来るほど賢くありません!!(笑)
素で嬉しいんです。
ではでは、次回も御期待してます♪
- 34 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月09日(月)22時46分10秒
- あのぉ・・・感動して涙目になってます。仕事場で見なくて
正解だった。PCの前でうるうるしてるジャイ**なんて気
持ち悪いっしょ。次回めっちゃ楽しみです。
- 35 名前:シフォン 投稿日:2003年06月09日(月)23時07分09秒
- お、お兄さまぁ〜!
よっすぃ〜と梨華ちゃんの仲を認めてくれてありがとぉ〜!!(号泣)
兄妹揃ってかっけぇなんて、素敵過ぎっす!!(壊)
よっすぃ〜は諦めるので、お兄さまをウチに譲…(ry
>作者様
<<シフォンさまとは色々語ってみたいですねー。
なんとも嬉すぃお言葉、ありがとぉごじゃいます♪(照)
いつか機会があれば、是非色々語り合いましょぉね☆
今後、お互いのご両親をどう説得してゆくのか…そして、どんな甘い結末を迎えるのか…。
楽しみがいっぱいです♪
これからも作者様のペースで頑張って下さい☆
楽しみに待っていますよぉ♪
- 36 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月10日(火)19時15分36秒
- お兄さん、二人にとって、とっても心強い味方になってくれそうですね(^^)
やっぱり何度聞いても、不安はあるんでしょうね。
愛情の確認、恥ずかしくなるくらいたくさん書かれてて。
二人の会話もすごい思い浮かんできます。次回も待ってます!
- 37 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時44分32秒
- >作者
お久しぶりです(笑)
・・・と、いうことでコソーリと更新(w
>ぷよ〜るさま
>素で嬉しいんです。
作者も素で嬉しいっす!・゚・(ノД`)・゚・
更新遅くなってしまってごめんさない。
でもこれからもがんがっていきますのでどうぞ見捨てないで
くださいね(涙)
>ROM読者さま
>PCの前でうるうるしてるジャイ**
うぅ!!!ぜひとも見てみたいっ!(w
いつか絶対見せてくださいね?約束ですよ?(w
いつもレスさんくすです♪
>シフォンさま
>よっすぃ〜は諦めるので、お兄さまをウチに譲…(ry
わかりましたっ!シフォンさまにお譲りいたします☆(笑)
もれなくよっすぃーもついてくるので2倍お得ですね♪(w
(O^〜^)>あたしはついてかないよ?だって梨華がいるんだもん。
( ^▽^)>やだぁー。ひとみったらぁー♪
(O^〜^)>さっ。はやく家に帰ってラブラブしようよ。
( ^▽^)>うんっ♪
・・・・スマソ(wゞなんせ、ここのよっすぃーは梨華ちゃん命なもので(笑)
>名無し読者79さま
>愛情の確認、恥ずかしくなるくらいたくさん書かれてて。
あはは。作者もかなり恥ずかしかったです(wゞ
これからもっとこっぱずかしくなるような会話があったとしても、
ばっちりついてきてやってくださいね♪
それでは長らくお待たせいたしました。続きどうぞ♪
- 38 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時46分40秒
今日はひとみと過ごすことができる最後の日だった。
明日の朝にはここを旅立っていく彼女。
かけもちしているバイトも今日一日だけは無理を言って、
休ませてもらった。
カーテンを開けると、眩しいほどの太陽の光が差し込んでくる。
夏空は気持ちいいぐらいに晴れ渡り、
気分を爽快にさせてくれたけど、また一方ではやりきれない
寂しさも感じていた。
「クス。よく寝てるわね。」
こんな無邪気な寝顔を見ることができるのも、明日の朝まで。
このままずっと時が止まればいいのになんて、
身勝手なことを考えてしまうのは、やっぱりひとみの側にいたいから。
ベッドに腰掛けて、その頬にそっと手をあてた。
「ひとみ・・・愛してる・・・。」
ふりかかっている髪を指で梳いて、額に一つキスを落とした。
「・・・・ん・・・・」
寝返りをうった腕が、側にいた私の体に軽く触れた。
「・・・ふぁ・・・・ん・・・・梨華ぁ・・・・」
「おはよ。」
「ふぁー・・・・。はよー・・・・」
「ふふふ。大きなあくびね。」
- 39 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時47分33秒
- 「もう起きたんだ・・・。はやいね。」
「うん。今から朝ごはん作るから、もう少し寝てていいよ。」
「朝ごはん、いらない。」
「え?具合でも悪いの?」
心配して額に当てた私の手をつかむと、そのまま引き寄せられてしまった。
「もうちょっと梨華を抱きしめていたいの。ベッドでゴロゴロしようよー。」
「ひとみったら。」
苦笑する私の体を優しく抱きしめてくれるその腕。
「この抱き心地、たまんないなぁ。」
「クスっ。昨日の夜もそんなこと言ってたね。」
「だってさぁ。ホントに気持ちいいんだもん。梨華の体って。」
子供のように甘えるそのしぐさ。
いつもは大人びた態度で私のことを見守ってくれている彼女だけど、
やっぱりまだまだ子供っぽいところもあるのだ。
この歳でしっかりと自分の目標を定めて頑張っているのは、
本当に尊敬するけれど、きっともっと甘えたり、安心できる存在を
求めているに違いない。
- 40 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時48分33秒
「ちゃんと守ってあげるからね。」
そう言って、ひとみの体を精一杯抱きしめかえした。
母性というものとは少し違うけど、放っておけない何かが私をそうさせた。
「梨華があたしを?」
苦笑気味に笑っていた彼女の唇に、そっとキスをした。
「無理して頑張らなくてもいいのよ。
つらくなったらいつでも帰ってきていいから。
ひとみが帰ってこられる場所は、ちゃんとここにあるからね。」
「梨華・・・・」
「ひとみのこと、守ってあげる。私にもっと甘えていいよ。」
強く、強く、何度も唇を重ねたひとみ。
息が乱れて、苦しくなるほど、強く、そして激しく。
「・・・はぁっ・・・っ・・・・」
「梨華・・・っ・・・・」
「・・・・ん・・・っ・・・・」
「好き・・・。・・・梨華・・・・」
ぽたりと落ちた雫が、私の頬をぬらした。
- 41 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時49分25秒
「・・・泣いてるの?ひとみ・・・」
「・・・・くっ・・・・」
「どうして泣いてるの・・・・」
「わかんない・・・。ただ胸が熱くなってきて・・・・」
涙を指で拭ってあげると、濡れたまつげにキスをした。
「きっと頑張りすぎてたのね。ごめんね、今まで気付いてあげられなくて。」
「優しいね、梨華は。」
「そんなことないよ。ひとみが心配なだけ。」
「・・・っ・・・。・・・こっちの方が心配になってきたよ・・・。」
「・・・えっ。」
「こんないい女、世界のどこを探してもきっと見つからない。
日本にいない間、誰かに取られてしまいそうで怖いよ。」
「ひとみ・・・・」
「待たせてしまうの、本当はすごく辛かった。
だけどやっぱりあたしには梨華しかいないんだ。
わがままだけど、それでも待っていて欲しい。」
切なく見つめる視線を感じて、頭を抱えるように胸に抱きしめた。
「言ったでしょ。ひとみのこと守ってあげるって。
あなたは何も心配しなくていいの。
私はいつでもここにいる。ここでひとみのこと待っているからね。」
「うん・・・」
安堵したようにもれたため息が、パジャマ越しに胸に伝わる。
- 42 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時50分23秒
「ねぇ、ひとみ。」
「ん?」
「せっかく休みもらえたから、どこかデートにでもいく?」
「そうだなぁ。梨華は?どこか行きたいとこある?」
「んーと・・・。映画かな。今やってるので面白そうなのあったの。」
「どうしても観たい?」
「ううん。どうしてもって訳でもないけど。どこか他に行きたいところでもあった?」
「どこも行きたくない。梨華とずっとここにいたい。」
「クス。ひとみったら。」
「ダメ?」
「ダメな訳ないでしょ。私もひとみとずっとこうしていたいもの。」
「梨華ぁー。」
「なぁに?」
「今日一日、本当に甘えてもいいの?」
「ふふ。もちろん。今日だけと言わず、いつでも甘えたい時に
甘えていいんだからね?」
「・・・うん。」
しばらくはそうして抱きしめ合っていた私たちだったけど、
不意にひとみが顔を上げた。
「やっぱり朝ごはん食べるっ!」
- 43 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時51分55秒
本当に久しぶりに感じる心の安らぎ。
昼下がりの時間を、2人は静かに過ごしていた。
毎日を忙しく過ごしていた体と心にしみこんでいくような、
幸せなひとときがそこにはあった。
「今ので何回目だと思う?」
ひとみの肩に寄りかかって座っていた私。
「んー・・・・20回目?」
「残念。ハズレでしたー。正解は22回。で、これを入れると・・・」
そう言いながら、彼女は23回目のキスを私にした。
「・・・っ。バカ・・・・。」
「へへへ。」
彼女の頬をぺちりとたたいたのは、連続して8回もキスをしてきたから。
「今ので30回目。ちょうどキリがいいでしょ?」
「そんな回数かせぎのキスなんてつまらないよぉ。
もっとちゃんとして?」
「かわいいな。梨華。」
そしてひとみは、今度こそ丁寧なキスをたっぷりと時間をかけて、
一回してくれた。
「クスクス。これで31回になっちゃったね。」
「うん。今日一日で、一体何度キスができるんだろう。」
「そうね。100回は越えるかも。」
「甘いね。そんなものじゃ済ませないよ。」
そして今、32回目のキスをしてくれている彼女。
だけど、私は薄く開けた目で、時計の針をじっと見つめていた。
24時間後にはもうここにひとみはいないのだ。
- 44 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時53分03秒
開かれたカーテンの影が、確実にその角度を変えていっている。
残された時間は、もう限り少ない。
だんだんと減っていく砂時計が、頭にひとつ浮かんだ。
「・・・・?梨華?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「どうかしたの?」
「ううん・・・なんでもない。」
「なんでもないような顔じゃないけど?」
今が幸せなら幸せなほど、その分ひとみがいなくなってしまった後の寂しさが、
どれほどのものかを想像できるだけに、心が張り裂けそうになっていった。
そういった寂しさが表情に表れていたのかもしれない。
こんな時は素直に『寂しい』って言った方がいいのだろうか。
ひとみを苦しめることになっても・・・・。
だけどそう考えている間にも、ひとみはまた唇を求めてきた。
「・・・クスッ。この勢いだと本当に100回くらいは軽く越えそうね。」
「うん。目指すは100万回のキス!」
「ふふふ。そんなの今日一日じゃとても無理じゃない。」
「今日一日ではね。」
「え?」
「これからずっと梨華が側にいてくれるようになったら、
100万回なんてあっと言う間に越しちゃうから。」
「ひとみ・・・。」
- 45 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時54分10秒
- そうなのだ。寂しい気持ちばかりが心を支配していて、
その先にあるひとみとの暮らしのことがすっかり頭から消えていた。
私たちにはこれからずっと一緒にいられる時間が訪れてくれる。
それは3年後の遠いようで近い未来。
今この瞬間感じる寂しささえ、きっと何事もなかったかのように
埋めることのできる、私たちだけの未来がそこにあるのだ。
「これで少しは寂しくなくなった?」
そっと抱きしめてくれる腕が、優しく包み込んでくれていた。
「わかってたの・・・?」
「わかるよ。それくらい。梨華はあたしの大事な人だから。」
背中に回した手を、服ごとぎゅっと握り締めた。
守ってあげるなんて言ったけど、やっぱり守られているのは
私の方かもしれなかった。
「はぁーっ・・・。ひとみってなんでそんなにかっこいいの?」
「へへっ。かっこよかった?」
「うん。もっと好きになっちゃった。」
「それは嬉しいな。」
「ひとみ。」
「ん?」
「好きよ。」
「うん。あたしも。」
「好き。ひとみの全てが。」
「梨華・・・・」
キスのカウントがいくつまで回ったのか。
そんなことはもうどうでもよくなっていた。
きっとこの先、100万回を越えるキスをするのは
確実に約束されているのだから。
- 46 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時55分18秒
「今日から一年間このクラスを受け持つことになりました、
石川梨華です。みんさん、どうぞよろしく。」
教壇の上から見渡す教室は、自分が本当に先生になれたことを
実感させてくれた。
3度目のチャレンジでようやくこの春、教職を得ることができた私。
何がどう転んだのか、いきなり新任の私が担任をすることに
なってしまったのには驚いたけど、こでれこそ教師になった
意味もあるというものだ。
「では、みなさんにはこれから自己紹介を一人ずつお願いします。
えーっと。では青木くんから。」
「ういっす。」
名簿を見ながら、生徒たちの顔と名前を一致させていく。
まだほんの少し幼さを残す生徒たち。
私もまた彼らと同じく、新しい環境の下、これからを頑張っていかなくてはいけない。
「はい、どうもありがとう。それではこれで、みなさんの紹介が終わった
訳ですが・・・・」
「先生っ!」
「はい。えっと・・・・亀井さんですね。何か質問でしょうか?」
「先生の趣味とか、特技とかって何ですか?」
「あ。そうでしたね。先生のこと何も話してなかったですね。
えー、趣味は・・・・あら。考えてみたけど、何もないかもしれません。」
わっとした笑い声が教室に沸き立っていた。
「無趣味なんだ、先生。」
- 47 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時56分14秒
- 「そうですね。でも特技はありますよ。
意外かもしれませんが、先生はY字バランスが特技なんです。」
おぉーっとどよめいたのは、男子たちの声。
「先生、それ見せてくれよー。」
「オレもー!」
野太い声が、ちらほらと聞こえてくる。
だけど私はさらりとそれをかわした。
「また機会があればね。」
「はーいっ!先生!」
「はい。えー、田中さんですね。」
「先生って彼氏いるでしょー。その指輪かわいいね。」
さすがに女子の視点は鋭くて、思わず苦笑してしまった。
確か以前にもこんな質問をされたのだ。
そう、あれはまだ私が教師を目指していた頃。
胸の中に甦ってきた記憶は・・・・
明るく笑う加護さんと辻さん。
そして、あの頃のひとみの姿が懐かしく思い出された。
だから今の私は、あの頃とは違って動揺せずに答えることができたのだ。
「大切な恋人はいます。遠い空の下に。」
窓の外に広がる爽やかな春の空を見つめながら、
私はひとみのことをそっと胸に思い浮かべていた。
- 48 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時57分09秒
忙しい日々が続いたのは、私にとってはよかったのかもしれない。
寂しいなんて弱音を吐かなくて済んだのは、
もちろんそれだけの理由ではなかったけれど。
夏期休暇を使って、イギリスでひとみと過ごした日々。
クリスマスも新年も、日本で一緒に迎えることができた。
教師の仕事は相変わらず大変なものだけど、
最近になってようやく板についてきたように感じる。
あれから2年の年月が過ぎていた。
「よっ!先生。久しぶり。」
空港のロビーで出迎えた私のことを、そう呼んだ彼女。
「先生なんて呼ばないでよぉ。サボってきたの、罪悪感感じるじゃない。」
「あはは。そうだった。」
笑いながら肩に腕を回してきたひとみ。
久しぶりに会うと、やや気恥ずかしさも感じるけど、
その懐かしい感触に思わず胸が熱くなった。
「やっと帰ってきてくれたのね。おかえりなさい。」
「ただいま。はぁーっ。やっぱ日本はいいな。」
留学生の特例措置で一足早く卒業証書を手にした彼女。
帰国してもまだこれから外交官の試験を受けなくてはいけないから、
まだまだ遊んでる暇なんてないけれど、それでも
ひとみが日本に帰ってきてくれたことが、何より嬉しかった。
- 49 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時58分09秒
- 「一度実家に帰らなきゃいけないんだけど、梨華もついてくるよね?」
「うん。ついてく。」
「よし。じゃ、行こうか。」
そして私たちは、彼女の家へと向かった。
「うわぁ。すごいねー。」
ひとみの部屋には、向こうで暮らしていた荷物が
既に届けられていて、ダンボール箱の山が築きあげられていた。
「これ片付けなきゃいけないかと思うと泣けてくるよ。」
「うふふ。私も手伝ってあげるよ。」
「へへー。サンキュ。」
軽くキスをすると、そのままふわりと抱きしめてくれた。
「やっと日本に帰ってきた実感がわいてきたよ。」
「やっぱり自分の家が一番?」
「ううん。そうじゃなくて。」
「え?」
「いつでも抱きしめたいと思った時に、梨華がいてくれる。
本当に帰ってきたんだなぁって、思ったよ。」
「ひとみ・・・」
「今まで寂しい思いさせてごめんね。」
「・・・・っ。うんっ・・・・。おかえりなさい。」
「ただいま。」
互いを感じあって重ねた唇は、深く求め合うように、
しばらくの間離れることはなかった。
抱きしめる体にひとみの鼓動を感じる。
しっかりと感じるそれは、ひとみが今本当に
ここに存在することを実感させてくれていた。
- 50 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)16時59分04秒
「ねぇ、梨華・・・」
「なぁに?」
「新しい職場で、気になる人とかできた?」
「クス。なにそれ。」
「だってさ、ずっと気になってたんだもん。
最初は忙しい忙しいって言ってたから大丈夫かなって思ってたけど、
もう2年も先生やってると、さすがに落ち着いてくるだろうし。」
ひとみがそんな心配をしていたなんて、ちょっと意外だったけど、
気にかけてくれていたのがわかって、私は嬉しくなってしまった。
「私が気になる人はひとみだけよ。」
「ほんとに?梨華ってかわいいからきっと生徒たちにも
もてるんだろうなって心配してたんだけど。」
確かにそういう気持ちをぶつけてきた生徒もいたけど、
その度にちゃんと断っていたから、ひとみが心配するような
ことは何もなかった。
「ふふ。心配してくれてたのね。嬉しいわ。」
「なんで女子校にしなかったんだよー。
共学の学校に就職したって聞いた時、マジで心配したんだから。」
「ひとみが思うほど、私ってモテないから、安心して?」
「なんかウソっぽいけど・・・・」
「ウソじゃないって。」
「ならさ、これから確認してもいいかな?」
少しにやけた笑顔を浮かべながら、ひとみは肩越しから
手を滑らせてきた。
- 51 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時00分34秒
- 「・・・・まだ片付け物いっぱいあるのに・・・」
「いいじゃん。やっとこうやって帰ってこれたんだし・・・」
「・・・・・っ・・・・・・・」
ひとみは私の反応を、まるで一つ一つ確認するかのように、
キスを落としていった。
「本当に何もなかったって言ってるのに・・・・」
「・・・クス。本当はわかってるんだけどね。
ただ梨華を抱きしめたい口実を言ってみただけ。」
「・・・・・もぉ。」
久しぶりに感じるひとみの柔らかな抱擁は、
私をとてつもなく心地よくさせてくれていた。
「・・・・・・・っ。ひとみ・・・・」
「やっぱ、梨華って最高にかわいいや。」
ゆっくりと流れていく体の動きが、それを予感させていく。
とても甘いムードになっていくのが、ちゃんと肌に伝わってきた。
「・・・・・・・・ちっ。いいとこだったのに。」
2人の動きを止めてしまったのは、ガレージに入ってきた車の音。
「お兄さん帰ってきたみたいね。」
苦笑してひとみを見上げた。
「ったく。タイミング悪すぎるよ。」
「うふふ。そんなこと聞いたらお兄さん悲しむわよ?」
「いいの。あたしは梨華がいてくれたらそれで。」
「クス。ひとみったら。」
「お楽しみはまた夜にでもしよう。でもその前にもう一度。」
ぎゅっと抱きしめあって唇を重ねた。
- 52 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時01分36秒
- 「はぁ。とりあえず下に降りようか。」
「そうね。久しぶりにお兄さんに会えるの、私も楽しみだわ。」
ちゃんと服の乱れを整えてから、私たちはお兄さんが待つ
1階へと降りていった。
「あーにきっ!」
「こんばんは。お久しぶりです。」
リビングの扉をあけると、久しぶりに会うその人が微笑んでくれていた。
「お久しぶりですね、梨華さん。ひとみもお帰り。
荷物ちゃんと部屋に置いてあっただろう?」
「うん。ちょうど梨華にも手伝ってもらって片付けてたところ。」
「あぁ。それはすみませんでしたね、梨華さん。」
「いいえ。まだほとんど片付いてませんから。」
「兄キ、今日って帰ってくるの早くないか?」
「そりゃかわいい妹が帰国するんだから、当然だろ?
定時に帰らせてもらったよ。・・・何か不都合でもあったのか?」
「不都合どころか・・・ねぇ?」
ひとみがこちらを見てにやりと笑った。
「・・・ひとみっ。」
「もしや、私はお邪魔だったかな?」
「そっ、そんなことないですよっ!ねっ。」
ひとみのことを肘でつついた。
「兄キのお邪魔虫ー!」
「もぅ・・・ひとみはぁ・・・。」
「それはそれは。」
お兄さんの意味深な笑顔に、私は顔を真っ赤に染めてしまった。
- 53 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時02分42秒
「ねぇ、本当によかったのかなぁ・・・・。」
「ん?兄キのこと?それなら気にする必要ないよ。」
レストランで食事を終えた後、車で送り届けてもらうと、
そのまま一緒にひとみも降りてきてしまっていた。
「せめて今日くらいはお兄さんと一緒にいてあげてもよかったのに。」
「そんなことしたら兄キの方が気を遣うと思うよ?
お邪魔虫にはなりたくないって言ってたじゃん。」
「うん・・・そうなんだけど。」
「それとも梨華はあたしといたくないの?」
「なんでそんなこと言うのよ。一緒にいたいに決まってるでしょ。」
「クス。なら、もっと素直に喜んで欲しいんだけど。」
肩にかけていた私の頭を抱えて、ひとみはクスリと笑った。
「ひとみ・・・。」
「なに?」
「これからのことなんだけど。」
「うん。」
「やっぱりしばらくは実家で勉強に専念した方がいいんじゃないかなって
思うんだけど・・・。」
「うーん・・・・。そうだなぁ・・・・。」
「私も仕事があるし、ひとみのことちゃんと面倒みてあげられるか
わからない。それに勉強の邪魔になってしまったらやだなぁって。」
「ふっ。別に面倒みてもらおうとは思ってないけど。
梨華はあたしがいたらお邪魔かな?」
「またそんなこと言うー。」
「だってさ。なんかさっきからあたしのこと邪魔に考えてるような
ことしか言わないんだもん。」
拗ねるようなその態度が、ちょっぴりかわいくみえる。
だけどここは心を鬼にして諭さなくてはならない。
そうすることが彼女のためだから。
- 54 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時03分53秒
「あのね。私だってひとみと一緒にいたいよ?
4年も離れて暮らしてたんだから。でもそれじゃひとみのために
ならないんじゃないかって不安なのよ。」
「・・・やっぱり。」
彼女は視線を落としたままで、ぽつりとつぶやいた。
「・・・え?」
「やっぱり梨華、あたしがいない間に他に好きなやつできたんだ。」
「何言ってるのよ。そんなこと・・・」
「それじゃ、あたしのこと嫌いになったんだ。そうなんでしょ?」
嫌な緊張感が胸を締め付けていく。
好きな気持ちとは裏腹に、どんどん悪い方へと転がっていく予感を感じて。
しかし、どう伝えたらちゃんと私の気持ちを理解してもらえるのか。
私はとても困惑してしまっていた。
「なんで黙ってるの?ねぇ、どうして?」
眉根を寄せて私の肩をつかむひとみ。
こんなにも好きなのに、それを理解してもらえない気持ちが、
苦しく胸を射した。
「わかってよ・・・ひとみ・・・。私を不安にさせないで・・・。」
「不安なのはこっちの方だよ。ねぇ、梨華。
あたしがどんな思いでこの4年間過ごしてたかわかる?」
「・・・・・・・・。」
「そりゃ留学を決めたのはあたし自身だけど、
本当にそれが正しかったのかっていつも迷っていたよ。
梨華を日本に置いてきてまで果たしてここに来た意味があったのかって。」
「ひとみ・・・・・・」
「だから帰国したら、もう2度と梨華と離れて暮らすなんてことは
したくないってずっと思ってた。なのに・・・・」
私はひとみのことを、ぎゅっと強く抱きしめていた。
- 55 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時05分43秒
- 「ごめんね。そこまで思っていてくれたなんて・・・。」
「お願い。梨華と一緒にいさせてよ。じゃないとあたし、気が変になりそう・・・」
「・・・わかったわ。ひとみの邪魔にならないのなら。」
「それって、あたしがここにいてもいいってことだよね?」
「うん。私も本当はあなたとずっと一緒にいたかったの。
もう離れたくなんてないよ・・・。」
互いの気持ちを伝えるように、唇を重ねた2人。
私も本当はわかっていた。
彼女を支えてあげられるのは、私しかいなってことを。
そして、それは私にも言えることだけど。
自分がいる世界の中心にはひとみがいるのだ。
彼女の全てがこれほどまでに愛しく感じることを、誇りに思えるほど。
「ねぇ、ひとみ。私思ったんだけど。」
「なに?」
「こんなちょっとした喧嘩も、ヤキモチも、側にいるからできることなのよね。」
「ふっ・・・。できたら喧嘩なんてしたくないんだけどね。」
「うん。それは私も。こんなこと言うと、また笑われるかもしれないけど、
これからもひとみとは、本気で泣いたり笑ったりしたいよ。」
「そうだね。でもあたしは・・・・」
「なに?」
「梨華ともっとラブラブしたいな。」
- 56 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時06分38秒
- さっきまで感じていた胸の痛みも、まるで何もなかったかのように、
私は心満たされる思いで、ひとみのことを抱きしめていた。
やっぱりひとみの側にいられることが、私に一番の幸せを
感じさせてくれるから。
生きている意味を求めるとするならば、きっとそれはひとみと
一緒にいたいから。
愛する人が心の中で息づいていてくれるから。
その胸にかかえた愛を、ひとみと分かち合うように、
私たち2人は心を重ねあった。
- 57 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月14日(土)17時11分08秒
- >作者
はい、今回はこれにて終了です。
いよいよ佳境ですね。
と言うよりも、かなり時間をはしょって書いているなって
思いますけど、もともと今書いてる部分も飛ばしちゃえ!
と思っていましたので(笑)、作者的にはがんがって書いたつもりですが(w
これからが書いていて一番作者としては難しいところだと
思います。梨華ちゃんの両親、一体どうやって納得させたらいいの?・゚・(ノД`)・゚・
ヒントは逃げるが勝ちってとこでしょうか?(w
まぁ、まだ一行も書いてませんので、また更新遅くなるかも
しれないんですけど、ちゃんと完結させるつもりですので、
マターリと待ってやってくださいね!
それでは今日もありがとうございました。
梅雨時につき、みなさまも体調崩されぬよう、
祈っております。
- 58 名前:シフォン 投稿日:2003年06月14日(土)17時23分04秒
- 何か予感がして、帰宅早々PC立ち上げたら、更新されてる〜♪
今日のお仕事の疲れ、全部吹き飛びましたっ!!(笑)
>作者様
更新お疲れさまでした♪
よっすぃ〜、ついに帰国したのですね!
梨華ちゃんも無事に教職に就けて、一安心しました(笑)
<<かなり時間をはしょって書いている……
気にしませんってば!
ここは作者様が作って下さる『いしよしワールド』なのですから♪
ウチは、甘々ラブラブないしよしが読めるだけで、本当に幸せなんですもの☆(素)
ネタに困ったら、ウチの過去の話でも提供しますよ(笑)…ってゆうのは冗談で(ヲイ
次の更新もまったり〜と待っていますので、無理なさらず作者様のペースで頑張って下さいね♪
- 59 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月14日(土)17時57分06秒
- 更新お疲れ様です!!
見捨てる?ご冗談を!!
更新を待って過ごすのもなかなかいいもんですよ(笑)
6期メンがちょびっとだけ出てましたね!!
梨華ちゃんのお父様はなかなか手強そうな気がして
今から緊張と不安で胸いっぱいの当方ですが(笑)
修行僧2003様こそ体調を崩さないように
祈っております。無理はなさらないで下さいね!!
では、次回更新を楽しみに待っています♪
- 60 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月14日(土)19時29分39秒
- 今回も甘×2な二人でしたねー。
なんだか修行憎〜さんの小説は癒されます。
嫌なことがあっても吹き飛ばしてくれるというか…。
ひと時も離れないでもらいたいな、この二人には…。
次回、難題が多そうですが待ってます。
- 61 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月15日(日)01時11分00秒
- 更新乙です。愛する者同士の絆って強いですね。
離れていても心は一つ・・とても難しいけど、色んなこと
考えちゃうけど。・・何故か遠くを見つめるROMでした。
- 62 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時14分12秒
- >シフォンさま
>今日のお仕事の疲れ、全部吹き飛びましたっ!!(笑)
やった♪何より嬉しい言葉です!どうもありがとう♪(^-^)
>ネタに困ったら、ウチの過去の話でも提供しますよ(笑)…ってゆうのは冗談で(ヲイ
うわぁ。マジで聞いてみたいです!!!
でもなぁ・・・。ここってメルアド書けないし(wゞ
何かいい方策があれば、ご教授願いたいです♪いつもありがとうございます。
>ぷよ〜るさま
>見捨てる?ご冗談を!!
ホントですよ?約束してくださいねー♪(照れ)
>今から緊張と不安で胸いっぱいの当方ですが(笑)
くふふ。なんとかそれもだーっととばしちゃいましたが(笑)
>修行僧2003様こそ体調を崩さないように
>祈っております。無理はなさらないで下さいね!!
うぅ・・・。ありがとうございます(涙)
これからも、本当にお願いします♪
>名無し読者79さま
>なんだか修行憎〜さんの小説は癒されます。
>嫌なことがあっても吹き飛ばしてくれるというか…。
うれしいなぁ。本当に。
ここまでがんがってきてよかったよぉ(涙)
あと少し、完結に向かってがんがりますね!
今回の作品は、やっぱりやや重かったので
(書いてるうちに勝手に話がややこしくなってしまった(汗))
次回のはあまーく、能天気なものを書ければいいなと(w
いつもありがとです♪
>ROM読者さま
>・・何故か遠くを見つめるROMでした。
うふふ。それは楽しみですねぇ。>DVD
ジャイ**の姿、作者も楽しみにしてまーすっ♪
いつもありがとう(wゞ
さてそれでは続きを少しだけUPします。
完結に向けてがんがるだけです、オッス!
- 63 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時15分52秒
「なんか武者震いしてきたよ・・・。」
幾分緊張気味に肩を震わせた彼女。
駅の改札を抜けると、久しぶりに見る街並みが懐かしく広がっていた。
「私も・・・。ねぇ、ひとみ。もしうちの親がひどいこと言ったとしても・・・」
「わかってる。それも覚悟してるから。」
「・・・うん。」
「あたしは梨華を信じてる。それだけあれば充分さ。」
ぎゅっと手を握り合った2人。
これから2人が向かう先は、私の実家だった。
教師になったことを伝えて以来、電話すらしていなかった私。
合わせたい人がいると連絡したのは昨日のこと。
外務省に務めている人だと言ったら、2人ともすごく驚いていたけれど、
最後まで「女の子」であるという事だけは、言えなかった。
きっと認めてくれないのはわかっている。
だけどちゃんとケジメだけはつけたいと言ってくれたのは、ひとみの方だった。
彼女もおそらく反対されることぐらいはわかっているはず。
それがわかっていてここにきてくれたことだけで、
何があっても最後まで彼女の味方でいたいと思っていた。
- 64 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時17分05秒
- 「ただいま。」
ガラガラと引き戸をあけると、懐かしい家の匂いがした。
玄関で私を出迎えてくれたのは、母親だけだった。
「梨華ったら、今まで連絡もしてこないで。随分心配したのよ。
おまけに急にあんな連絡してるくから、ママびっくりしちゃったわよ。」
「ごめんね、ママ。それで、パパは?」
「奥に座ってソワソワしてるわよ。連れてきてくれたんでしょ?例の彼。」
「ん・・・まぁ。」
「なにしてるの。はやくあがっていただいたら?」
母親の認識はもちろん男の子。
普通娘が合わせたい人だと言ったら、どの親でもそう思うのだろうけど・・・。
「あのね、ママ、実は・・・・」
もごもごとしていると、それを見かねたひとみが扉の影から現れた。
「はじめまして吉澤ひとみです。」
「えっ・・・。梨華・・・・合わせたい人って・・・・?」
「うん、この人なの。私が合わせたかった人って。」
母は絶句したまましばらく固まっていた。それも無理はない。
「お父さまも交えて、是非お話だけでも聞いていただきたいのですが・・・・。」
「あっ・・・。そうね。どっ、どうぞ・・・。」
ちらりとひとみと視線を交わすと、私たちはこれからおこる出来事に、
気を引き締めた。
「パパ、いらっしゃったわよ。」
ママが入っていくと、パパはあわててタバコをもみ消して、
こちらに振り向いた。
「・・・梨華。お友達を連れてきたのか?」
困惑した顔を浮かべたのは、ママだけではなかった。
「ううん、パパ。この人が私が言ってた人なの。」
「はじめまして。吉澤です。」
- 65 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時20分17秒
パパは渋い顔をして、さっきからずっとタバコをふかしたまま、
押し黙っている。
明らかに不機嫌なパパのことを、じっと見つめているひとみ。
「パパ、あのね・・・」
「許さん。」
「えっ?」
「絶対に許さんからな。よりにもよって、なんでかわいい娘を
こんな奴に・・・・・」
「それは言いすぎじゃない、パパ。ごめんなさいね吉澤さん。」
「いえ、お父さまがおっしゃることもよくわかります。」
「お父さまだと!」
「パパ、ちゃんと私たちの話を聞いてよ。」
「そんなもの、聞く必要はない。」
「お父さまのお気持ちは察します。だけど、あたしは本気で梨華さんの
こと、愛しています。幸せにしたいと思っています。」
「私もひとみのこと愛してるの。ひとみと生きていきたいの。
だからお願い、わかってパパ、ママ・・・。」
「ダメだ。ママ、帰ってもらいなさい。」
「パパ・・・。」
「あれだけ帰ってこいと言ってもなしのつぶて。
帰ってきたと思ったらこれだ。だからパパは一人暮らしなんてさせるのは反対したんだ。
梨華、お前はパパたちのこと悲しませたいのか?」
「違うよ、パパ・・・。私は本当にひとみのことが好きなの。
ひとみといられることが私の幸せなの。パパやママには
認めてもらえないってわかってた。だけど、それでもひとみは
ちゃんと親に筋を通したいって言ってくれたのよ?その気持ちわかって。」
「吉澤くん。君も少し冷静になれば、自分のしてることが
どういうことかわかるだろう?それだけ立派な仕事をしているんだ。
他にいくらだっていい人がいるはずじゃないか。何も梨華でなくても・・・・」
- 66 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時21分13秒
- 「あたしは梨華さんのために、ここまで頑張ってきました。
彼女を幸せにしたい、ただそれだけを思って。
全ては梨華さんのために。」
「梨華のことを思ってくれるのなら、梨華の本当の幸せを考えてくれないか。
君といても梨華は幸せにはなれないだろう。そうは思わないか?」
「パパ・・・そんなのひどいよ・・・。何もわかってくれないのね・・・。
私は自分の意思でひとみを選んだのよ。どうして私の幸せを勝手に決め付けるの?
そんなのって・・・・ないよ・・・。」
「梨華・・・・。ねぇ、パパ。今日のところは保留にして、
もっと時間をかけて考えてみてあげましょうよ。ね?」
「ママは賛成するのか?自分の娘の幸せを望んでいないのか?」
「梨華の幸せは梨華自身が決めるものじゃないかしら?
この子ももう立派な大人に育ったわ。梨華がそう望んでいるのなら、
私たちはそっと見守ってあげなきゃいけないんじゃ・・・・」
「もういいっ!どいつもこいつも!」
パパはそういうと、席を立って部屋を出て行ってしまった。
「ごめん、ひとみ・・・やっぱり許してもらえなかったね・・・。」
「ふぅー・・・。まぁ予想してたことだからね。」
「ママ。ママは私たちのこと認めてくれるの?」
「そうね・・・。梨華が決めたことなら、ママは何も言えないわ。
本当に吉澤さんのこと愛しているのね。」
「ママ・・・・。」
- 67 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時22分23秒
- 「でもね、パパの気持ちもわかってあげてね?
梨華の花嫁姿、本当に楽しみにしてたから。」
「うん・・・。」
ママの理解はどうにか得られそうだったから、ほんの少しだけ
安心したけど、やっぱりパパのことが気になって、
ため息を一つついてしまった。
「お母さま。」
「えっ?あぁ、私のことね。吉澤さん、私お母さまって呼ばれるの
なんか気恥ずかしいわ。」
ママはそう言って苦笑した。
「えっと、それなら・・・」
「お母さん、もしくはママでいいんじゃないかしら?」
「そうですか。あの、それではお母さん。」
「はい。何かしら?」
「あたし、本当に梨華さんのこと大切にしたいと思っています。
何があっても彼女のこと守ってみますから。」
「ふふっ。ステキね。」
「えっ?」
「パパがママの家に挨拶にきてくれた時のこと思い出しちゃったわ。」
「パパってママにベタ惚れだったのよね?」
「クス。そうね。ママのお父さんもパパが来た時、
同じようなことを言ってたわ。それでもパパは引き下がらなかった。
すっごくかっこよかったのよ。」
「へぇ、そんなことがあったんだ。」
「そうよ。だから吉澤さんも負けないでね。
最初は正直ビックリしたけど、あなたの気持ち、ちゃんと伝わってきたから。
梨華のこと、本当によろしくね。パパのことは私に任せてくれていいわよ。」
「ママ・・・」
「お母さん。ありがとうございます。」
ひとみと私は見詰め合ってほっと息をついた。
- 68 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時23分27秒
- 「ただ残念ね・・・。こんなに綺麗な人だったら、
きっと2人の子供ってかわいかったんだろうなって。」
「それは、申し訳なく思っています。だけど・・・」
「あ、ごめんなさいね。そういうつもりじゃなかったんだけど。
そうね。2人だけの人生もまたいいのかもしれないわね。
子供もつのってそりゃ大変なんだから。
手塩にかけて育てても、連絡ひとつ入れてくれない薄情な子供も
いるものね。」
「あーっ。ママー。それ私のこと?」
「そうよ?他に誰がいるの?」
「これからはちゃんと連絡入れるようにあたしからも言いますから、
どうぞ許してやってください。」
「しっかりしてるのね、吉澤さんて。ママも安心したわ。
梨華のこと、本当によろしくお願いします。」
「はい。」
「これで一応ひと段落したかな・・・・。」
マンションへ帰ると、どっと疲れが出てきてしまった。
「ごめんねひとみ。すごく嫌な思いしたでしょ?」
「ううん。お母さんだけでも味方になってくれてよかったよ。
絶対2人とも反対するって思ってたから。」
「そうね・・・・。ママは意外だったけど、やっぱりパパは
ダメだったね・・・・。」
「お母さんが援護してくれるかもしれないんだからさ、
そう気を落とすなよ。」
「うん・・・。でもこれからひとみのご両親にも会わなきゃいけないし。
まだまだ問題は多そうね。」
- 69 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時25分42秒
- 「あぁ。そのことなんだけどさ。今度会食の席を設けてもらうことにしたよ。」
「えっ???どういうこと?????」
「兄キがさ、そりゃもうちゃんと応援してくれて。
もともとうちの親はあたしたちのこと放任してたから、
反対されることはないと思ってたんだよね。
でも兄キが仲に入ってくれたお陰で、スムーズに話がついたよ。
だから梨華は何も心配しなくていい。」
「なんかすごいね、ひとみのご両親て。ひとみのこと信頼してくれてるんだ。」
「そういうと、聞こえがいいけどね。実際は子供のことに興味が
ないだけかもしれないよ?ほとんど家にいることもなかったからね。
まぁそのお陰であたしも自立心がついた訳だけども。」
「それでひとみはあんなにもしっかりしてたのね。
高校生とは思えないほど、しっかりとしてたから。」
「ホント言うとね、梨華の親がちょっとうらやましかったかな。
こんなにも娘のこと心配してるんだって、うちの親と比べちゃったよ。」
「ひとみ・・・・」
「うちの親ももうちょっとあたしのこと気にかけてくれてもよかったのに。
まぁその分、兄キが口うるさいほど愛情注いでくれたけどね。」
苦笑しているひとみのことを優しく抱きしめた。
お兄さんからは聞いていたけど、ひとみの口から直接
そんな思いを聞くのは初めてだったから。
「ひとみ。これから私があなたの家族になったら、
絶対寂しい思いはさせないから。安心してね。」
「ありがと、梨華。」
「何があってもひとみと一緒に生きていく。いつも側にいさせてね。」
「その言葉、絶対忘れないから。」
「うん。忘れないで。」
- 70 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時26分47秒
- 「よしっ。なんかやる気がでてきたぞ。」
「うんっ!私も。」
「はぁーっ。また明日から仕事かぁ。
まだまだ一人前になるには先が遠いけど、頑張るね、あたし。」
「そうよ、頑張って。ひとみなら絶対頑張れるよ。」
「あはは。なんか今の棒読みっぽかったよ?」
「ひどーいっ!本気で応援したのにー。」
「梨華ってさ、いつもいいこと言ってくれるんだけど、
感情こもってないように聞こえるんだよね。」
「ヤな人ね、もぉ。」
抱きしめていた手を離して、その肩を押した。
けれど、それも本気で言ってることではないことぐらい、もちろんわかっていたけど。
「あれ?おかしいな。いつも側にいてくれるってさっき言わなかったっけ?」
「そんなイジワルなこと言う人の側にはいてあげませんっ。」
「そんなこと言わないで、優しくしてよー。」
クスクスと笑いながら、ひとみが抱きしめようとしてきたから、
私はわざと体を逸らせて逃げてみせた。
「ひとみなんてだーいきらいっ!」
「へぇ、そんなに好きなんだ、あたしのこと。」
「嫌いって言ったのよ?ちゃんと聞こえてる?」
「あぁ、聞こえてるよ。あたしのこと大好きだってね。」
狭いワンルームマンションでは、どう逃げてもあっと言う間に
捕まえられてしまった。
まるで子供のように笑い合いながら、私たちは抱きしめあっていた。
- 71 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時27分51秒
「ねぇ、あたしのこと好きでしょ?」
「言ってあげない。」
「言わなくても、梨華はあたしのこと好きだってわかってるけどね。」
「えーっ。自惚れてる、ひとみ。」
「あたしは梨華が好きだよ。世界中の人間を敵にまわしても。」
「本当かなぁ。それ。」
「本当だよ。だから梨華のお父さんに反対されたぐらいじゃめげないつもり。」
「クスっ。それは今日で充分わかりました。」
「それならさ、ちゃんと言ってよ。ね?梨華。」
「わかったわよぉ。その前に、もうイジワルしない?」
「うーん・・・・。しない。」
「そっか。それじゃ、ちゃんと聞いてね。」
「うん。」
「ひとみのこと・・・・大好き。」
絡めた腕を引き寄せて、唇を近づけた私。
なのに今度はひとみがそれをかわした。
「へっへー。さっきのお返し。」
「もぉ!イジワルしないって言ったくせにっ!」
「イジワルなんてしてないよ。からかっただけだから。」
「ひとみのバカーっ!」
「あはは。今度こそ本気で怒らせてしまったかな?」
「ひとみなんて・・・・」
「梨華・・・好きだよ・・・」
- 72 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時28分43秒
- 熱くたぎる胸の思いを寄せるように、重なる唇。
やっぱり2人ともちゃんとお互いに好きでいる証拠のキスに、
私はまた新たな思いで、彼女への愛を感じていた。
きっとこれは私への励ましの意味があったと思うから。
落ち込みそうになる前に、ふわりと心を救ってくれる。
そんなひとみの優しさに癒されていく心地よさを感じていた。
「はじめまして、石川梨華です。」
ホテルのロビーで待っていてくれた、彼女のご両親との対面。
お兄さんの車で向かった私たちは、5人で会食をすることになっていた。
「はじめまして、父親の良一です。」
「はじめまして。母親のルイです。」
2人ともとてもステキな人で、その背の高さとエレガントさに
思わず圧倒されてしまった。
特にお母さんはとても綺麗な人で、透き通る白い肌に、
ぱっちりとした大きな瞳は、ひとみとそっくりだったけど、
もう少しはっきりした顔立ちをしているから、きっとこの人の家系に
オランダのおばあさんの血が流れていることは明白だった。
そしてスカイラウンジへ通されると、リザーブしていた席についた。
とても社交的な笑顔をみせてくれたのは、さすがで、
こちらの緊張を解きほぐしてくれるような、和やかな会食が
すすめられていた。
- 73 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時30分49秒
- メインの料理が済んで、デザートが運ばれてきたところで、
ひとみが最後の確認をするように、切り出した。
「どうかな?父さん、母さん。梨華のこと気に入ってくれた?
率直な意見を聞きたいな。」
「そうだね。ひかるから聞いていた通りに、すばらしい人だと思うよ。
こうやって席をともにして、梨華さんと直接話すことができて、
聞いていた以上に利発で、聡明で、とてもキュートで。
申し分ないんじゃないか。いや、ひかるの言ってたように、ひとみには
ちょっともったいない気もするが。」
食後酒のグラスを手にして、微笑みかけてくれた。
「母さんは?」
「良一さんの言うように、とてもステキな人ね。
私も大賛成よ。何も反対することはないわ。」
「ありがとうございます。嬉しいです、そう言っていただけて。」
斜め前に座っているお兄さんが、私をみてウインクをしてくれた。
「ありがと、2人とも。まぁ2人に反対されてもあたしは梨華といることを選んだけどね。」
「おいおい。それじゃ兄さんが苦労した意味がないじゃないか。」
「兄キにはいっぱい感謝してるよ。もちろんね。」
「ありがとうございます。お兄さん。」
「ひとみも無事社会人としての一歩を踏み出した訳だ。
これからは、いや、これからも自分の行動に責任をもって
臨むように。梨華さんを大切にするんだよ。」
「うん。わかってる。」
「私たちもそうそう日本にいることもなくて、
力になってあげられることも少ないかもしれないけど、
2人が決めた道ならしっかりと頑張りなさいね。」
- 74 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時31分53秒
- 「うん。その点は心配しなくていいよ。
何があっても2人で頑張っていくから。ね?梨華。」
「そうね、ひとみ。」
「おめでとう、梨華さん。」
「お兄さんにはいっぱいお世話になりました。本当に感謝しています。」
「ははは。やっぱりかわいいな梨華さんは。
こんなにかわいくて素直な妹ができたなんて、嬉しいよ。」
「また兄キはー。」
「そうだね。こんなにステキな娘ができたなんて、
私たちは幸運だね、ルイ。」
「うふふ。本当にそうね。これで日本に帰ってくる楽しみが一つ増えたわね。
また梨華さんと会える日を楽しみにしてるわね。」
挨拶を交わして席を立つと、2人はそのまま空港へと向かっていった。
「お兄さん、今日は本当にありがとうございました。」
「いやいや。これもかわいい妹たちのためですから。」
「妹たち?」
「梨華さんはもう私の妹ですよ。できのいいほうの。」
バックミラー越しに、笑っている顔が覗けた。
「はいはい。どうせあたしはできがよくないよ。」
「ははは。そう拗ねることもないさ。」
私はそんな会話を聞いて、クスリと笑ってしまった。
「本当に仲がいいんですね。お兄さんとひとみって。」
「そうかもしれませんね。でも私の中では、かわいい妹と
言うよりも、育ててきた娘のような感覚がしますよ。
だからひとみの成長は嬉しくもあり、また寂しくもあり・・・。」
- 75 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時32分57秒
- 「兄キもはやくいい人みつけなよ。まぁ梨華みたいないい女は
なかなか見つけられないだろうけどね。」
「ひとみ、何言ってるのよー。」
「ははっ。本当にそうだね。はぁーっ。なんか飲みたくなってきたな。
そうだ。梨華さん、よければこれから家で付き合ってくれませんか?
明日はお休みですよね?」
「はい。私でよければ。」
「あたしも付き合うっ!」
「よし。それじゃ、路線変更だ。いざ我が家へ。」
ウインカーを出して右折すると、意気揚々、家へと車を走らせた。
「調味料ってどこにあるの?」
「えっと、はい。」
「ありがと。」
家につくと、私は今日のお礼にと簡単な手料理をつくっていた。
「手際いいね、梨華って。」
「ふふふ。ありがと。ねぇ、これ味みてくれる?」
「うん。あ、おいしい。ちょうどいいんじゃない。」
「そう?そしたらこれもっていってくれる?あとは・・・・」
「いいですね。こういうの。」
お兄さんがソファーに体をもたげながら、キッチンにいる私たち
の方をみて、そう話しかけてきた。
「えへへ。もうちょっと待ってくださいね。あともう1品すぐに作りますから。」
「なにでれっとしてるの、兄キ。はい、これ梨華の自信作。
兄キに食べさすのはもったいないけどね。」
- 76 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時35分15秒
- 「うまそうだな。こりゃひとみに食わせるのはもったいないな。」
「何言ってんだよ。これ作ったの梨華なんだよ?
ってことは、つまりこれは全部あたしのもの。兄キは食べる権利なし。」
「おいおい。」
「ふふふ。何言ってるのよ、ひとみ。はい、お待たせしました。
お口に合うかわかりませんが。」
「おっ!これもまたうまそう。」
「ありがとね。梨華も座って?」
「うん。」
「それでは、2人の幸せな未来に。」
「「「乾杯」」」
「ったく、兄キはしょうがないな・・・。」
ソファーで寝てしまったお兄さんに毛布をかけながら、ひとみがこぼした。
「お兄さん、すごく嬉しそうに話してたね。」
「うん。よっぽど梨華のことが気に入ったんだね。
ちょっと妬けちゃったよ。」
「ふふ。それってどっちに?」
「2人とも!」
「クス。でも、本当にひとみの家族はみんないい人ばかりね。
すごく楽しかったよ。安心した。」
「はぁーっ・・・。でもなんだか疲れたよ。梨華も本当にお疲れさま。」
「ありがと、ひとみ。」
肩に手をかけて、ひとみの頬にキスをした。
- 77 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時36分09秒
- 「これでまぁ一通りのことは済んだし。あとは・・・・」
「あとは?」
「へへへ。まぁ、色々あるけど、今日のところはここまでとするか。」
「なによー。気になるじゃない。」
「いいのいいの。さ、あたしたちももう寝よう。」
「お兄さん、このままで大丈夫かしら?」
「大丈夫だろ。風邪引くこともないだろうし。あたしもベッドでゆっくりしたいよ。」
「そうね。今日一日ありがと。ひとみも疲れたでしょ。」
「うん、もうクタクタ。癒してくれるよね?梨華。」
「クスクス。さぁ、それはどうかしら。」
「梨華ぁー。」
くすぐったくなるほど甘えてくるひとみ。
背中から抱きしめてくれるその温かさに、やっぱり安心できる優しさを感じていた。
- 78 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月15日(日)13時39分24秒
- >作者
はい、以上です。
なんとか、ややこしいところは逃げることができたでしょうか?(w
梨華ちゃんのパパはやはり手ごわかった(笑)
これからの展開としては、読んでてかゆくなるくらいの
ものとなるかもしれませんが(w、どうぞそのへんは
ぱぱっと読み流してやってくださいね(笑)
というよりも、これから考えるので、どう転ぶか
わかんないですが(苦笑)
おそらくラス1か2くらいになると思います。
よければ完結まで、もうしばしお付き合いください。
いつも読んでくださって感謝しております。
では、次回まで。
- 79 名前:シフォン@i 投稿日:2003年06月15日(日)14時05分41秒
- お昼休みに社員食堂で読ませていただいたのですが…泣くの堪えるのに必死でした(素)
>作者様
連日の更新、お疲れ様でした!
核心部分の更新だっただけに、大変だったでしょうね…。
梨華パパ…手強いけど、それが現実っすよねぇ(苦笑)
この先どう心変わりして、二人の仲を認めてくれるのかしら…。
<メアド…
ここでは晒せないっすからねぇ(汗)
何かいい案浮かんだら、その時は是非語りましょうねっ!
でわ、次の更新も無理なさらずがんがって下さいねぇ♪
- 80 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月15日(日)15時33分14秒
- 更新お疲れ様です!!
梨華パパ・・・娘を大切にしている気持ちが
ヒシヒシと伝わってきます・・・
でも、二人の幸せを願って欲しい!!
今後の展開は痒くなるような展開ですか。
ならば、じっくり読ませていただきます(笑)
ではでは、楽しみにしています♪♪♪
- 81 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月15日(日)15時36分57秒
- 梨華パパてごわいですね。
やっぱり同姓同士っていうのは、並大抵のことじゃ認められませんよね。
でもきっと、この二人なら乗り越えてくれるでしょう…。
次回そしてラスト楽しみにしてます!!
次の作品、あまーいのも超期待して待ってまーす!
- 82 名前:Silence 投稿日:2003年06月15日(日)16時32分40秒
- 更新お疲れ様でした。
まずはお許しを。自分は保存して読んで感想書いてコピペという
独自のスタイルなんですが前々回感想つけたと思ったのが付け忘れ
でした(涙 読ませてもらったんですけど…
修行僧様申し訳です。(ぺこり
う〜ん、石川父の気持ちわからないでも無いです。でも、きっと認めて
くれることを信じています。なんせ相手がよっすぃーだから。
完結もちろん大事ですが、ご自分のお体も大事になさってくださいね。
それでは次回まで楽しみに待ってますので。
- 83 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月15日(日)20時17分46秒
- オタのひいき目抜きで考えると、どちらかと言えば梨華パパの
リアクションが普通なのかな。もし自分なら受け入れられるの
か・・・と、ちょっと考えてます。
>DVDジャイ**の姿、作者も楽しみにしてまーすっ♪
映り込んでるとすれば、背後霊となっている可能性大。(怖!
- 84 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時28分59秒
- >シフォン@iさま
おぉ!またもや携帯から見てくださったのですね(涙)
いつも感謝しております♪
>梨華パパ…手強いけど、それが現実っすよねぇ(苦笑)
そうですね(苦笑)
それがきっと『普通』なことなのでしょう。
現実は2人だけの気持ちだけじゃどうにもならないことの方が多いかと(w
>何かいい案浮かんだら、その時は是非語りましょうねっ!
はい、もうそれは是非!その時を楽しみに待っています♪
>ぷよ〜るさま
>ならば、じっくり読ませていただきます(笑)
やだー(wゞでも、それも嬉しかったり(w
一応今回のはラス2で、次回最終回予定です。どうぞ最後までよろしくです!
>名無し読者79さま
>やっぱり同姓同士っていうのは、並大抵のことじゃ認められませんよね。
ですよねー(涙)あーぁ。2人が好き同士ならいいじゃなのっ!
って叫びたくなりますが(w
>次の作品、あまーいのも超期待して待ってまーす!
ういっす♪この「暗」の反動で、きっと激甘かと(笑)
- 85 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時29分42秒
- >Silenceさま
>修行僧様申し訳です。(ぺこり
そんなことっ!全然気にしてませんよぉー。
ってゆーか、いつもレスつけてくださっているのも
恐縮しておりますので(wゞでも嬉しいんですけど(照れ)
いつもいつも暖かいレス、サンキューなのです!
>完結もちろん大事ですが、ご自分のお体も大事になさってくださいね。
・゚・(ノД`)・゚・なかせてくれますね・・・。ありがとうございます!
>ROM読者さま
>もし自分なら受け入れられるのか
もし自分なら・・・。そうですね。
作者の子供がもしそうであるならば、おそらく葛藤はあるでしょうけど、
きっと認めて応援してあげると思います。
・・・って、まだ子供どころかケコーンもしてないけど(笑)
ラス2になりましたが、最後までお付き合いくださいね!
それでは続きどうぞ♪
- 86 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時30分44秒
そして、それから3ヵ月後。
「おかえりなさい。」
「ただいま。今日は梨華の方が早かったんだ。」
「うん。でもまだお夕飯できてないの。もう少し待ってね。」
ひとみの肩に手をかけておかえりのキスをする。
私たちは、あれからずっとこのマンションで暮らしていた。
2人とも仕事をもっているから、食事は先に帰宅した方が作ること
になっていた。
家事もお互い手がすいている方がすること、なんて
ちょっとした『我が家流』のルールもあって、私たちの生活は
とてもうまくまわっていた。
だけど、やはりひとみの方が圧倒的に忙しく、遅く帰宅
することもあるけれど、そんな時は休日に家事をこなしてくれたりと、
本当に私たちは互いに協力し合って毎日を過ごしていた。
「おいしいなぁ。ねぇ、これどこで覚えたの?」
新しく増えたメニューに、ひとみはどうやら関心があるよう。
「安倍先生に教えてもらったのよ。レシピ通りに作ったけど、
彼女みたいに上手にできなかったわ。」
「そんなことないよ。すっごくおいしい。
安倍先生って梨華と同期の先生だよね?」
「うん。こないだね、お弁当でおいしそうなのがあったから、
ちょっと分けてもらったのよ。それがこれなんだけど・・・
なんかあの時のとは微妙に味が違うのよね。」
- 87 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時31分44秒
- 「そうなんだ。それはあたしも是非安倍先生の手料理食べてみたいなぁ。」
「ダメですー。」
「なんで?」
「だって本当に彼女お料理上手なんだもん。私のと比べられたら落ち込んじゃうよ。」
「あはは。それは益々食べてみたくなってきた。」
「やな感じっ。」
「クス。冗談だよ。梨華の手料理が一番だから。」
「あーぁー。私ももっと料理上手くなりたいなぁ。
それにね、安倍先生ってすっごくかわいいのよ。
私もあんな風になりたーいっ!」
「へぇ。料理上手でかわいいのかぁ。」
「あー。ひとみー。今何考えてたの?」
「別に。・・・それよりさ、安倍先生の写真もってない?」
「もってませんっ!まったく・・・。」
「あはは。梨華ってからかい甲斐があるな、やっぱ。」
「もぉ。心配させるようなこと言わないでよ。」
「えへへ。梨華ぁー。」
「なによぉー。」
「かわいいなぁ。ホント、めちゃくちゃかわいいっ!マジ幸せだなぁ。」
「はいはい。」
「んだよー。冷たいな、その態度。」
「そんなこと言ってる間に、料理まで冷たくなっちゃうよ。もぉ、さっさと食べちゃってください。」
「はーい・・・・」
- 88 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時32分53秒
- そんな会話も、別にお互い本気でやりあっている訳ではなく、
これはつまり、ちょっとした『じゃれあい』の延長。
かまってもらいたくて、わざと拗ねているひとみがかわいくて、
思わず笑顔もこぼれていく。
「はぁい。しっかり食べてね。」
「へいへい。食べますよ。」
そんな毎日がとても愛しく思えるのだ。
ひとみが洗いものをしてくれている間、私は雑誌を広げていた。
「何見てるの?」
「んー。いい物件ないかなぁーって見てるの。」
「物件?」
洗いものを済ませると、ひとみがこちらにやってきた。
「うん。ここじゃやっぱり手狭だと思うのよね。
もう少し広い部屋があればなぁって。これから色々物も増えてくるだろうし。」
「そっか・・・・。」
「ねぇ、ひとみはどんな部屋がいいと思う?」
「梨華、その前にちょっといいかな。」
ひとみがいつになく真剣な態度でそう言ったものだから、
私は少しの緊張感をもって雑誌を閉じた。
「なに?」
「あのね、ちゃんと決まってから話そうと思ってたんだけど。」
「うん。」
「どうやら近々海外への赴任が決まりそうなんだ・・・・。」
「えっ・・・。」
膝に置いていた雑誌がぱたりと床へ落ちていった。
- 89 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時33分50秒
- またひとみと離れなきゃいけないのだろうか。
私は、また一人で・・・・。
「研修も無事終わって、それぞれ各地の大使館に赴くことになるんだ。
それでさぁ・・・。すごく言いにくいんだけど・・・・・」
「・・・うん。」
「梨華にもついてきて欲しいんだ。」
胸がキューンと切なく音を立てた。
ひとみは本当に私を必要としてくれていることがわかったから。
「梨華があれだけ努力してなった教師の仕事、辞めてついてきて
もらうのはすごく悪いと思うんだけど・・・・。
もう離れて暮らしたくないんだ。お願い、あたしについてきて。あたしの側にいて。」
「ひとみ・・・。」
「・・・やっぱダメかな、そんな勝手なこと・・・。ダメならあたし一人でいくけど・・・。」
不安げな表情を浮かべるひとみ。
けれど私はその手を取って、そっと握り締めた。
「なに言ってるの。ひとみを一人で行かせる訳ないじゃない。
教師の仕事、辞めるのは確かに未練があるけれど、
ひとみより大切なものなんてないもの。」
「うーっ。梨華ぁー。」
ひとみはまるで甘える子供のように抱きついてきた。
「ふふふ。なぁに?そんなに大げさに喜ばなくってもいいじゃない。」
それがとてもくすぐったくて、笑顔がこぼれ落ちた。
- 90 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時36分03秒
- 「だってさぁ、言いにくかったんだもん。
もしも梨華が仕事を取るって言ったらどうしようって、やっぱり不安だったから。」
「そんなことある訳ないでしょ。私をもっと信頼してよ。」
背中をトントンたたいて、なだめるように言った。
「うん、そうだよね。でもよかったぁ。梨華、大好き。」
ちゅっと頬にしてくれたキスがくすぐったい。
「それで、いつからになるの?その話。」
「えーっと。まだ詳しくはわかんないんだけど。
たぶん今月中には辞令がおりると思うよ。来月には赴任先へ渡航しなきゃならないかな。」
「来月・・・・か・・・・。」
「えっ・・・。やっぱりダメ?」
「ううん。ダメじゃないけど・・・。」
瞬間、パパのことが頭をよぎっていった。
あれからママとは連絡を取るようにはなったけど、
未だにパパは電話にすらでてくれなかったのだ。
頑なになっているとママから教えてもらっていた。
一度日本を離れてしまうと、きっとひとみの親のように、
そうそう帰国することもままならなくなってしまう。
それを考えると、どうにもやりきれない気持ちが胸を占めた。
「・・・やっぱりお父さんのこと、気になる?」
「・・・あ・・・うん。」
「だよね・・・。はぁーっ。どうしようか。」
やはりなかなか納得してもらえることは難しいのかもしれなかった。
だけど、私はひとみとこれからの人生をともにしていくと決めたのだから、
迷うことなく彼女についていけばいいだけのこと。
これ以上ひとみに不安な思いをさせたくはない。
私がちゃんとひとみを信じていれば、何も恐れることはないはずだから。
- 91 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時37分09秒
- 「気にはなるけど・・・。パパはパパよね。私たちさえちゃんと幸せに暮らしていたら、
きっといつか納得してくれる時がくるわ。そう信じたい・・・。」
「ごめんね、梨華。」
「どうしてひとみが謝るのよ。悪いのは理解のないパパの方なんだから。」
「うーん・・・。でもやっぱりあたしが悪い。」
「ひとみ・・・。」
精一杯ひとみを抱きしめた。
パパのことはもちろん気になるけど、一番大切にしたい人は、
やっぱりひとみだから。
「梨華、あたし本当に梨華のこと大事にするから。
絶対誰よりも幸せにしてみせるからね。」
「ありがとう。私もひとみのこと幸せにしてあげるね。」
「・・・はぁ。なんか言ってて自信なくしちゃうこともあるけどね。」
「何弱気になってるの?ほら、そんなのひとみらしくないじゃない。」
「そうだよね。うん。やっぱあたしはウジウジ考えるのは似合わないな。」
「クスっ。かっこいい、ひとみ。」
「えへへ。梨華ぁー。」
甘ったるくなるくらいの抱擁を、体に感じて嬉しくなる。
落ち込んでいても事態は変わらないのだ。
それなら今の私にできることをしなくてはならない。
それはひとみと力をあわせて生きていくこと。
自分が手にした『家族』を支えてあげることに他ならない。
- 92 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時38分29秒
「あ・・・。ちょっと待って。」
「え?なに?」
「来月なのよね?渡航。」
「うん、たぶん。」
しかし、そうなると私の頭にもう一つ忘れてはならない問題が浮かんできた。
それは、今の仕事のこと。
「ごめん、ひとみ・・・。私すぐには行けないわ。」
「えーっ。そりゃないよ。」
「今クラスの担任してるから、責任もって最後まで務めないと・・・。
来年の3月末までは、どうにもならないわ。」
とたんに落ち込んでしまったひとみ。
「うー・・・。それなら仕方ないか・・・。でも絶対それが終わったら、
あたしのところに来てよ?約束だよ?」
「当たり前じゃない。すぐに飛んでいくから。」
「あーぁ・・・。単身赴任かぁ・・・。泣けてくるな。」
「ごめんね、半年ほどひとみを一人にさせちゃうけど、必ず行くから。」
「はぁ・・・。なんか心配だけど、諦めるしかないか。」
「心配って?」
「あたしがいない間に、梨華のお父さん無茶しないかなぁって思って。」
「え?」
「例えばさ、強引に梨華のこと連れて帰ったりとか。
考えすぎかなぁ・・・・。うぁーっ。なんかそんなこと考えるあたしって
ダメな人間だよね・・・。はぁっ。」
「大丈夫よ。ひとみが海外へ行くこと話さなきゃいいんだし。
それに何があっても、ひとみを裏切るようなことはしないから。
ちゃんと約束する。」
- 93 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時39分38秒
- 「ホントだよ?すごく心配してるんだからね。」
「クス。わかったわ。ちゃんとひとみだけを見てる。
あなたのことだけを想っているから。」
あふれてくる愛しさを、どうやって伝えればいいのかは
わからないけど、精一杯の愛情を込めてキスをひとつした。
「梨華ぁー。」
「ふふふ。今日のひとみって本当に甘えん坊ね。」
「いいの。今日は甘えたいの。」
「はいはい。好きなだけ甘えてねっ。」
「うんっ。梨華って優しいから大好きだよ。」
「きゃははっ。やだ、ちょっ・・・くすぐったいよぉー」
「へへへー。やめないよ?」
「ひとみっ!やーっ。きゃはははは・・・」
「いっぱい愛してあげるね。これからしばらくはラブラブモードで。」
「うん。しばらく会えない分、私もいっぱいひとみを愛してあげる。」
「梨華。」
「はぁい。」
「ちゅーってしていい?」
「うふふ。いいよっ。」
結局赴任先はベルギーに決まった。
なじみのあるイギリスを希望してはいたけど、
上層部はひとみを適任と選んだのだから仕方ない。
それでもEU加盟国との外交は、優秀な人材を選抜すると聞いて
いたから、彼女の能力は既に認められていると言っても過言ではなかった。
ひとみは私が想像していた以上に、本当にすごい人
なのかもしれない。
これから世界に羽ばたいていこうとする彼女に、
ある種の尊敬とはまた別に、一抹の寂しさも感じていた。
- 94 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時41分02秒
- 「遅いなぁ、ひとみ・・・・。」
時計の針は、もうすぐ明日を射すところまできている。
これまでも遅くなることはあったけれど、
こう連日帰宅が遅くなると、体のことが心配で。
しかし、今どうしてもやらなきゃいけない仕事が山積みされて
いるらしく、弱音を吐かないで一生懸命頑張っている姿を
そっと見守ってあげることしかできなかった。
「ただいまぁ・・・。」
ぐったりと疲れた体をおして、扉が開いた。
「おかえりなさい。・・・大丈夫?」
「うん・・・。ごめんね今日も遅くなって。」
「いいよ、そんなこと。それよりご飯済ませてきたのよね?」
「うん。」
「お湯はってるから、お風呂入ってね。」
「ありがと。ごめんね、ほんと梨華ばっかりに家事任せちゃって。」
「何言ってるのよ。」
ひとみはスーツのジャケットを脱ぐこともしないで、
ベッドに体をもたげた。
「ねぇ・・・本当に大丈夫?」
「う・・・ん。大丈夫・・・。」
「ひとみ。あんまり頑張りすぎないでね、心配だよ・・・。」
「あと2週間だから。それまでになんとかしないと。」
「仕事大変なのね。お疲れさま。」
「うーっ・・・。せっかくだけど少し寝てからにするよ、お風呂。」
「うん、わかった。」
「梨華ぁ・・・。」
「ん?」
「少しの間でいいから、抱きしめさせて。」
「・・・うん。」
一緒に横になると、私をぴったりと抱き寄せて
安心したように目を閉じた。
- 95 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時41分56秒
「ひとみ・・・。本当に無理だけはしないでね・・・。」
もう既にすやすやと寝息をたてている彼女の唇に、
キスをした。
結局それから朝までひとみが目を覚ませることはなかった。
「あのさぁ・・・。もしかして今日も遅くなるかもしれないんだけど・・・。」
朝食を取りながら、申し訳なさそうに切り出した彼女。
「えっ・・・。でも明日よね、渡航するの。」
「うん、ごめん。本当に悪いとは思うんだけど。」
「う・・・ん。わかった。仕方ないよね。」
今日こそはゆっくりと2人だけの時間がもてると期待していただけに、
落ち込んでいく気持ちをごまかすことはできなかった。
明日の渡航を前に、せめて今夜はひとみの好きな料理を
食べさせてあげたかったのに。
「梨華・・・。」
フォークを置くと、席を立って、私のことを抱きしめてくれた。
「ごめんね、泣くつもりなんてなかったのに・・・。」
「寂しい思いさせているあたしが悪い。ごめん。」
「えへへ。もう大丈だから。ほら、こんなことしてると時間なくなっちゃうよ。」
胸の前にかけられている腕をぎゅっと握り締めた。
「梨華。」
「なぁに?」
「キスしたい。」
コクリと頷くと、ひとみは肩越しに顔をずらしてきてキスをしてくれた。
- 96 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時42分55秒
「はぁ・・・っ。なんか久しぶりにちゃんとキスした気がする。」
「クス。私はそうでもないかな。」
「え?」
「かわいい寝顔の誰かさんに、内緒でキスしてたから。」
「あはは。そうだったんだ。」
「でもやっぱりいいね。ちゃんとキスするのって。」
「そうだね。梨華、もう一度。」
いつでも、何度重ねても、ひとみのキスはとても優しく、甘く心に響いてくる。
「ひとみ・・・。もう一回して?」
「うん。」
出勤の時間ギリギリまでそんなことをしていたから、
結局2人とも朝食をとらないで仕事へと向かった。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
最後の夜も、ひとみが帰ってきたのは日付が変わる少し前だった。
「はぁ・・・。やっぱり今日も疲れたよ。」
「お疲れさま、シャンパン買ってきてるから一緒に飲まない?」
「うん。ありがと。」
カバンを置くと、ウエストに腕をまわしてキスをしてきた。
「あーぁ・・・今日も一日終わっちゃったね。」
元気なくもらしたため息に、疲れが窺える。
「仕事、無事片付いた?」
「うーん・・・。まぁね。やれるだけのことはやったつもりだから。
あとはベルギーに行ってからかな・・・。」
- 97 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時44分00秒
- 「そっか。でもここまでよく頑張ったね、偉いよ。」
ひとみの頭を優しくなでてあげた。
「梨華・・・・。」
抱きしめている腕に力が込められていく。
私もまたひとみを抱きしめかえした。
「梨華がいないとダメだな、あたしって。つくづくそう思うよ。」
「あら。それは私もよ?ひとみがいないとダメみたい。」
「そりゃ嬉しいな。でもさ・・・ホントにこんな頼りないやつでいいの?」
「ひとみは充分頼りになるよ。何言ってるの。」
「はぁ・・・。梨華だけだよ、そう言ってくれるの。」
「私一人じゃ物足りない?」
「クスクス。まさか。梨華さえ応援してくれれば充分。」
「ふふっ。よかった。ほら、おいしいシャンパンも待ってるわよ?」
「よし。それじゃ飲みますか。」
カーンと高音をたてたグラスの中に、シュワシュワと綺麗な泡が沸き立っていく。
「うーん。おいしいなぁ、仕事の後のお酒は。」
「うふふ。それはよかったわ。」
半分ほどになったシャンパンのグラスを傾けながら、
ひとみがぽつりとつぶやいた。
「あのさ、梨華。」
「なに?」
「あたし今まで頑張ってきたつもりだけど、
やっぱり力不足なところはあったかもしれないね。」
「どうしたの?急に。」
「うーん。ただなんとなくそう思っただけ。」
- 98 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時45分18秒
- 「ひとみ・・・。ひとみは今のままで充分よ。私、すごく幸せだもの。」
「そう言ってくれると嬉しいんだけどさ。
まだまだきっとあたしって一人前じゃないんだろうね。」
「何があったかわからないけど、そんなに落ち込まないで?」
「うん・・・。あーぁ・・・。明日からまたしばらく梨華と会えないのかぁ・・・。やだなぁ。」
「もうすぐうちの学校も夏休み入るから。すぐにまた会えるわよ。会いにいく。」
「わかってはいるんだけどね、それでもやっぱり寂しいよ・・・。」
「ごめんねひとみ・・・。一番大変な時に側にいてあげられなくて。」
その手をとって、互いの指を絡ませた。
「情けないね、あたしって。弱音なんて吐くつもりじゃなかったのに。
かっこ悪いよね、こんなの。嫌われても仕方ない・・・。」
グラスを置いて、ひとみを胸に抱きしめた。
「嫌ったりなんてしないよ。それに、弱音吐いてくれる方が嬉しい。
信頼してくれてるんだって思えるから。」
「ありがと、少しは気も楽になったよ。」
「いつも頑張りすぎてたのよ、ひとみは。
もっと私のこと頼ってくれていいんだからね?」
「梨華・・・。やっぱり梨華はすごいね。とてもかなわないや。」
「クスクス、何言ってるのよ。」
抱きかかえている頭を上げると、彼女のうるんだ瞳が目に映った。
「ねぇ・・・。今夜は朝まで梨華を抱きしめていてもいいかな。」
「うん。いいよ。」
「愛してる・・・梨華・・・・。」
胸に感じるひとみの熱い吐息を、しっかりと抱きとめて、
私はしばらくの間、優しく包み込むように髪をなで続けていた。
- 99 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月17日(火)19時47分02秒
- >作者
はい、今回の投稿はこれにて終わりです。
さて問題はラストなのですが・・・(笑)
果たしてうまくまとめることができるのか、
作者自身も不安です(w
しかーし、がんばるのみですので、
どうぞゆるーく見守っていてくださいね!(笑)
それでは次回まで。
ありがとうございました!!!
- 100 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月17日(火)20時50分44秒
- 読みながらROMのテンションも上がったり下がったりしています。
不安材料は沢山あるけど、そんなことでは揺らぐ事の無い絆である
事を信じてラストを見守りたいと思います。
- 101 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月17日(火)20時59分55秒
- 更新お疲れ様です!!
じっくり読ませていただきました(笑)
痒くなんてなりませんよ。代わりに何か
すっごく幸せな気分になりました♪
次回でラスト・・・がっちりと見守らせていただきます!!(笑)
では、ラスト楽しみにしてます♪
- 102 名前:シフォン 投稿日:2003年06月17日(火)22時20分40秒
- ヘタレなよっすぃ〜、可愛いよほ☆
お姉さんな梨華ちゃんにも萌えまりくですっ!(笑)
梨華ちゃんのパパが強行手段に出ない事を祈っております(苦笑)
>作者様
更新お疲れ様でした♪
もうすぐラストですか…。
どんな甘いラストになるのか楽しみです☆
でもこの作品が大好きなんで、終わってしまうのはちょっと寂しかったり…(素)
次回の更新も楽しみに待っています♪ 無理なさらずがんがって下さいね〜☆
- 103 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月18日(水)19時16分40秒
- よっずぃー(泣 りがちゃーん(泣
離れても心では、繋がっている!なんて素晴らしいことなんでしょう…。
なんだか現実の二人と重なってしまいます。そんなところが…。
- 104 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時39分14秒
- >作者
夜中にコソーリ更新(w
>ROM読者さま
>読みながらROMのテンションも上がったり下がったりしています。
さて、ラストを迎えて、果たしてROMさまのテンションは
あがっていただけるのか?(w
どうぞ、最後まで読んでやってくださいねー♪
>ぷよ〜るさま
>痒くなんてなりませんよ。代わりに何か
>すっごく幸せな気分になりました♪
いやぁ、実は痒くなるのはラストの投稿分でして(wゞ
なんか、書いててすごく恥ずかしかったんですけど、
どうぞよければ、かゆかゆ攻撃に耐えて読んでくださいね!
>シフォンさま
>梨華ちゃんのパパが強行手段に出ない事を祈っております(苦笑)
これ、実はちらーっと考えてたんですけど(笑)
でももっと話がややこしくなるのでやめました(wゞ
そのかわり・・・。後は読んでのお楽しみということで(w
>でもこの作品が大好きなんで、終わってしまうのはちょっと寂しかったり…(素)
マジっすか!?嬉しいよぉー・゚・(ノД`)・゚・
本当に、ここまで頑張ってきたかいがありました。ありがとうございます♪
>名無し読者79さま
>よっずぃー(泣 りがちゃーん(泣
・・・あ。79さま、鼻水が。(w
>なんだか現実の二人と重なってしまいます。そんなところが…。
それってもしかして『さくらおとめ』のことですか?(笑)
もうね、作者も諦めちゃってますよぉ・・・(涙)
今回で、いよいよラストとなりましたので、
どうぞマターリと読んでやってくださいね!是非お願いします。
それでは、ラストとなりました、本作品。
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。それでは、どうぞ!
- 105 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時45分52秒
「それじゃ、行ってきます。」
「うん。本当に気をつけてね・・・。」
キスを交わすと、玄関のドアノブに手をかけたひとみ。
だけどその後の一歩をなかなか踏み出せないまま、じっとたたずんでいる。
「ひとみ・・・。」
たまらず背中を抱きしめていた。
昨日あれほどまでに抱きしめて、抱きしめられた体。
一つに溶け合うようにすら感じた互いの体に、
だからこそ引きちぎられるような痛みが疼いた。
離れたくない・・・・。
けれど彼女はドアノブから手を離すと、ゆっくりと振り返って笑った。
「梨華。しばらく会えないけど、泣くなよ?」
冗談めかしてそう言った彼女。
「泣かないわよぉ。」
だから私も精一杯の笑顔を浮かべて答えたのだ。
けれど、それはもちろん強がりで。
泣きたい気持ちも、強がりも、そんなことは全てお見通しであるはずの
ひとみは、それ故笑って振り向いたのかもしれない。
「ウソつけ。今にも泣きそうな顔してるくせに。」
苦笑しながら私の頬を両手に挟んだ。
「ひとみのバカ・・・。」
「あはは。それだけ言えれば充分だ。」
強く重ねた唇が、まるで2人の気持ちを示すように求め合う。
「・・・いってらっしゃい。」
「うん。いってきます。」
離れる瞬間まで握っていてくれた手から、力が抜けていった。
昨日の夜、この心と体にいっぱいの想いを刻んでくれたひとみ。
それはまるで置き土産のように、私の胸にいつまでも消えない刻印の
如く、残されていた。
- 106 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時47分57秒
そしてやっとむかえた終業式。なんとか一学期も無事終えることができた。
明日から始まる夏休みを、きっと生徒たちの誰よりも待ち望んでいたのは私だろう。
それはベルギーへの旅立ちを意味していたから。
「やっと会えるのね。ひとみ・・・」
携帯の待ち受け画面にしている2人の画像を見ながら、
私はそっと微笑んだ。
だけどちょうどその時、画面が着信表示に切り替わった。
その相手は。
「もしもし?」
『もしもし?梨華ちゃん?』
「うん!久しぶりだねー。美貴ちゃん。」
それは、高校の同級生であり、教育実習を一緒に頑張った
あの美貴ちゃんだった。
『久しぶりー。元気にしてた?』
「うん。美貴ちゃんは?」
『私も、元気だよ。』
彼女の声を聞くのは、私が教師になった時以来だった。
私が教職を得た時に、お祝いの飲み会を開いてくれた以来のこと。
結局彼女は教師にはならず、ごく普通のOLさんをやっていた。
2人とも仕事で忙しく駆け回っていたから、
なかなか連絡を取ることすらままならなかったのだ。
「でもどうしたの?急に。全然音沙汰なかったからビックリしちゃったよ。」
『あはは。そうだよね、ごめんね。』
「ううん。嬉しいの。久しぶりに美貴ちゃんの声聞けて。」
『よかった。ねぇ、今日ってもしかして一学期の仕事納めの日じゃない?』
「へぇ、よく知ってるのね。そうよ。」
『やっぱり。うちのいとこがそんなこと言ってたから、梨華ちゃんとこも
そろそろだなって思ってたのよ。ビンゴだね。』
「うふふ。うん。」
- 107 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時50分44秒
- 『それでさぁ、久しぶりに梨華ちゃんに会いたいなって思ったのよ。
どう?今日の夜って時間ある?』
「うん。別にかまわないよ?あまり遅くならなければ。」
『わかった。こっちはまだ仕事あるから、7時にS駅でいいかな?』
「OK。7時ね。」
『それじゃまた夜に。』
「うん。楽しみにしてるね。」
旅立ちの前に美貴ちゃんから連絡がくるなんて思ってもいない偶然に、
私はとても嬉しく感じていた。
そして今夜はいつかのように飲みすぎないでいようと、
心の中で苦笑していた。
「こっちこっち!」
どうやら私よりも先に待ち合わせ場所についていた彼女が、
私を見つけて手を振っていた。
「久しぶり、美貴ちゃん。ごめんね待たせて。」
「ううん、気にしないで。思ったより仕事早くあがれたの。それにしても
久しぶりよね、梨華ちゃん。相変わらず元気そうでよかった。」
「ホント。美貴ちゃんも元気そうで何より。」
クスリと笑い合うと、さっそくお目当てのお店へ直行した。
「では。2人の再会を祝して。」
「「乾杯!」」
カチンとあわせたジョッキを、2人ともぐいっと勢いよくあおった。
「ふーっ。おいしいっ!やっぱり仕事終わりのビールは格別よね。」
「お疲れさま。うふふ。美貴ちゃんて飲んでる時が一番輝いてるね。」
「あー、言ったなぁー。梨華ちゃんこそ。」
「えへへ。そうかな。」
- 108 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時53分32秒
- 「そうだよー。ねぇ、ところでどうなの?先生の仕事は?」
「そうねぇ、大変だけど、やりがいはあるかな。」
「あーぁー。私も諦めないで教職目指してたらよかったなぁ。
ちょっと聞いてよ、うちの上司ってね・・・・」
それから2人は今の仕事のことで随分話が盛り上がってしまった。
そして話の流れは、やっぱりと言うか、必然的に
恋愛のことになってしまった。
「梨華ちゃん、今すごくいい恋愛してるでしょ?」
半分とろんとなっている目をしながら、彼女は絡むように
私の肩に腕をのせた。
「ふふふ。まぁね。」
「やっぱりね。すごく綺麗になったもん。」
「そうかなぁ。」
「妬けるなぁ。その人とてもステキな人なんだね。」
ひとみの顔を浮かべて、思わず苦笑してしまった。
美貴ちゃんがもし、元生徒のひとみのことを知ったとしたら
きっと驚くだろうけど、それは内緒にしていた。
「うん。ステキな人よ。私にはもったいないくらい。」
「その指輪、買ってもらったの?」
「うん。結婚しようって、前にもらったの。」
「へぇ、すごいね。それで、いつ結婚式に呼んでくれるのかしら?」
美貴ちゃんはにやけた表情で、私を見ていたけれど、
私は戸惑ってしまった。
ひとみとはこれから海外で暮らすけど、別に結婚式を挙げる訳でもなく、
ただ一緒に生活していくだけのことだったから。
「うーん。式は挙げないかもしれない・・・。」
「そうなの?」
「うん。たぶん。」
「そっかぁー。そーれは残念ねぇー。」
酔いがまわっているせいもあってか、彼女は
やけにテンション高く、私に抱きついてきた。
- 109 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時54分57秒
- 「美貴ちゃん、大丈夫?かなり酔ってきたんじゃない?」
「だーいじょーぶ。私はね、嬉しいのよ。
嬉しくて、そしてちょっぴり寂しいんだからぁー。」
「クスクス。何言ってるのよ。」
「梨華ちゃーん。ホント、幸せになってね。」
「ありがと。美貴ちゃんもね?」
「私はぁ・・・。そうね。梨華ちゃんを見習って幸せになってやるぅー。」
「ふふふ。そうよ、頑張ってね。」
「梨華ちゃんはある意味先輩だから。色々教えてね、これからもよろしく!」
「こちらこそ、よろしくね。」
「おーしっ!梨華ちゃんの未来を祝してもう一軒!
・・・・って言いたいところだけど。今日は遅くなっちゃぁマズイんだったよね?」
「あ・・・。そうね。今夜は申し訳ないけど、これで帰らなきゃ。」
「うーっ。いいなぁ。私も・・・・」
「え?なに?」
「ううん、なーんでーもないっ!それじゃ今回はこれでお開きにしますか!」
「うん。また今度会える日を楽しみにしてるね。」
「クスっ。今度ね?」
家に帰って、メールチェックをすると、愛しのひとみからの
メールが3件も入っていた。
「クスっ。ひとみったら。」
明日のことで随分心配してくれているよう。
そして私は『早く会いたい』と書いているいつもの締めくくりの文字を、
今日は少しだけ変えて送ってみた。
『やっと会えるね。ひとみ。』
- 110 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時58分18秒
空港に降り立つと、東京では感じられない透き通った空気を感じた。
「梨華!」
チェッカーをくぐって歩いていくと、そこには私のことを待っていてくれた
ひとみの姿があった。
「ひとみ!」
そして私は、ガラガラとスーツケースを引っ張る手もまどろっこしくなるほど、
精一杯駆けて行った。
「梨華ぁ。よかったぁ、無事来てくれたんだね。」
「あたり前じゃない。迷子になるとでも思ってた?」
「うん、思ってた。」
「ふふふ。何バカなこと言ってるのよ。」
「へへへー。あっ。荷物持つよ。」
「いいよ。別に重くないし。」
「いいの。貸して?」
半ば強引にスーツケースを手にすると、もう一方の手を繋いでくれた。
「嬉しいなぁ。こうやって歩くのって久しぶりだよね?」
「そうね、私も嬉しい。」
正味何週間か会えなかっただけだったけど、やっぱり
ひとみとこうしていられることが、とても嬉しく思えてくる。
だから組みなおした手を、もう一度ぎゅっと強く握り締めた。
「あのさぁ、結局休みって今日を入れて3日しか取れなかったんだよね。
頑張って上司と交渉したけど、これが限界だった。ごめんね?」
「いいのよ、気にしないで?一応こっちには2週間いるつもりだから。」
「うん、了解。とりあえず家に行こうか。荷物も置かなきゃいけないし。」
「家?官舎に住んでるんじゃなかったっけ?」
「あぁ。やっぱ梨華がくるからには、何かと不都合でしょ?
だから部屋を借りたんだ。」
「そうだったの?ごめんね。」
- 111 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)01時59分39秒
- 「2人っきりになりたいんだもん、当然でしょ。
いずれはこっちに梨華も住むことになるし。ちょうどいいかなって思って。」
「ありがと。ひとみ。」
「いやいや、これくらいのこと。」
そしてタクシーを拾うと、私たちはそこへと向かっていった。
窓から見える街並みは、都市部ではやはり大きな建物が目だっていたけど、
それでもどことなく、中世のヨーロッパを感じさせる石畳は、
どこかしら懐かしさを感じさせるものがあった。
「ようこそ、我が家へ。」
ドアを開けると、さっぱりとしたシンプルな部屋が広がっていた。
アパートを借りたと聞いていたから、日本のものを連想していたけど、
どうみてもその広さや清潔感は、私が想像していたものを
越える満足感をもたせてくれている。
「すごーい。綺麗に使っているのね。」
「あはは。要は寝て起きてしてるくらいだから。」
「へぇ。ここに住んでるんだ・・・。」
「どう?気に入ってくれた?」
「うん。もちろん。」
部屋を見渡しながら進んでいくと、ひとみが待ちきれないと
ばかりに、後ろから抱きしめてきた。
「梨華・・・。梨華の匂いがする・・・。」
「ふふ。くすぐったい。」
「はぁ・・・。やっぱりいいな。梨華がいるだけでホッとするよ。」
「ねぇ、ひとみ?」
「ん?」
「ただいまのキスはいつしてくれるのかしら?」
「クス。そうだったね。」
正面を向いて首に手をかけて見つめあった。
「おかえり、梨華。」
「ただいま。」
ちゅっと音をたてて一度。
そして深く交わるキスをもう一度重ねた。
- 112 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時01分02秒
ランチを済ませると、私はひとみの案内で観光地へと向かった。
「すごーいっ!きれいねぇ。」
キラキラと川面に映る光。せせらぎの音を聞きながら、
手を繋いでゆっくりとひとみと歩く。
「そうでしょ?観光地ってわりになーんにもないけど、
それがなんかいいんだよね。」
列車に揺られること1時間。
ここはブルージュと呼ばれる古い水路の都。
そこには色濃く残された中世の名残が、「北のベニス」と賞賛されるほどの、
美しい街並みが広がっていた。
「えへへ。」
「何笑ってるの?梨華。」
「なーんか、嬉しいなぁって思って。ひとみがこうして隣りにいて
くれることが、すごーく嬉しいのっ。」
ぎゅっと腕に抱きつくと、ひとみが笑ってこちらを見ていた。
「それならもっと嬉しくなることしてあげようか?」
「えっ?」
「少しだけ目を閉じていて欲しいんだけど。」
「うん。わかったわ。」
ほんの少し期待して、目を閉じた私。
「いい?まだ開けちゃだめだよ?」
「クスクス。うんっ。」
ドキドキと胸が高鳴っていく。
だけど、ひとみがとった行動は。
「はい。口を開けて?」
「?????」
開いた口の中に甘く広がっていくもの。
「どう?おいしいでしょ。ベルギーチョコ。」
コロコロと転がる甘いチョコは確かにおいしかったけど、
ちょっぴり期待していた私は、苦笑してしまった。
「おいしいね。」
「でしょ。あたしも最初食べた時、感激したんだ。やっぱり本場のチョコは違うなって。」
もうひとつ包みを開くと、自分の口に入れておいしそうに頬張っている。
- 113 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時03分15秒
「ひとみって面白い人ね。」
「ん?なにが?」
「だってさぁ、チョコ頬張っている姿、まるで子供みたいに見えるんだもん。」
「あはは。そう?」
「うん。でもかわいくて好き。」
「それはよかった。ねぇ、それならもうひとついいものあるんだけど。」
「クス。今度はなぁに?」
「ほら。そこの店で売ってるあれ。ワッフルもすごくおいしいんだ。」
「ひとみったら。」
購入したワッフルを頬張りながら、また手を繋いで歩き出した。
そして私たちは、久しぶりのデートを心行くまで楽しむと、家へと戻っていった。
「どう?ここの街、気に入ってくれた?」
足の高いイスに腰掛けて、リビングでくつろぐ2人。
「うん、とてもいい街ね。気に入ったわ。」
「よかった。あたしも結構気に入ってるんだよね。」
晩御飯を外で済ませた私たちは、食後のコーヒーを楽しんでいた。
「はぁーっ。待ち遠しいわ。はやくここでひとみと暮らしたい。」
「あたしも。」
「また一から色々そろえなきゃいけないね。」
「そうだね。」
コーヒーを一口飲んで、ホッと息をついた。
「色々お店もまわってみたいなぁ。ねぇ、明日はこのあたり案内してくれる?」
「それもいいんだけど、明日はちょっと遠出しない?」
「どこ行くの?」
「隣の国。オランダ。」
「えーっ。オランダ!?」
「そんなに驚くことないよ。列車で2時間くらいで着くから。」
島国で育つと、海で隔てられていない国があることにすら、
一々驚いてしまっていた。
いわば陸続きのこの世界。
国境を越えるのにも、列車でOKなんて、ちょっとうらやましい。
- 114 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時07分19秒
- 「ステキねぇ。そういえばひとみのおばあさんの国なのよね?
親戚とかいらっしゃるんじゃないの?」
「うーん、いるとは思うけど。さすがに遠い親戚だからよくわかんない。」
「そっかー。でも楽しみね。どんな国なんだろう。」
「さて、それは行ってからのお楽しみ。」
コーヒーカップを置くと、不敵に微笑む瞳があった。
翌日。
花の都と呼ばれるこの国は、さすがにどこもかしこも
彩り鮮やかなチューリップが咲き乱れていて、街中とてもいい香りがした。
「うわぁー。かわいいチューリップがいっぱい!」
「黄色と白と赤。きれいなもんだなぁ。これだけ並ぶと壮観だね。」
「そうねー。本当にオランダに来たって感じがするわね。」
「よし、あのバスだな。アムステルダムの観光としゃれこもう。」
市内観光用のバスに乗って向かった先は、アムステルダム公園だった。
園内にはアムステルダム川が流れていて、とてもゆったりとした
時間が流れている。
そこにあったリーケルの風車は、オランダらしさを感じさせてくれていて、
すごくのんびりとした田園風景が広がっていた。
レストランで昼食をとり、またバスに乗って今度は美術館めぐりへ。
有名なフェルメールの絵を見たり、他にもアンネフランクの家を見に行ったり。
その日は充分オランダを満喫して、ホテルに宿をとることになった。
「楽しかったわぁ。ステキな国ね。オランダって。」
「喜んでもらえてよかったよ。あたしもずっとオランダに来たいと思ってたんだ。
いつか好きな人を連れて。あたしのルーツがあるこの国に。」
- 115 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時08分52秒
- 「そうだったんだ・・・。なんか嬉しい、そういうの。」
「ねぇ、梨華?」
「はい?」
「これから仕事で色んな国に行かなきゃいけないと思うんだ。
なかなか日本に帰ることも難しいかもしれないけれど、
それでもあたしについて来てくれる?」
「当たり前じゃない。ひとみと生きていくって決めたんだから。」
「そう・・・だよね。それ聞いてなんか安心したよ。」
「ひとみ・・・。」
彼女のウエストに手をかけて、その瞳をみつめた。
「ひとみは私の大事な家族よ。そして大事な旦那さまなんだから。
これからもずっと側にいさせてね。」
「うん。ずっと梨華と一緒にいたい。どの国に行ったとしても、
梨華が側にいてくれるだけで、頑張っていけそうな気がするよ。」
「うん。」
「気に入った国があったら、いつかそこで暮らそうよ。」
「ふふっ。それは楽しみね。」
「梨華といつまでも2人で・・・。」
ゆっくりと瞼を閉じると、唇を重ねた。
ホテルの部屋の明かりを消すと、私たちはベッドに身を預けた。
「梨華、起きて?」
「う・・・。おはよぉ・・・。」
「クス。おはよう。」
「ひとみが先に起きるなんて珍しいね。」
ほんの少し疲れが残っている体。
その心地いい疲労感に、幸せを感じて微笑んだ。
- 116 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時09分54秒
- 「あはは。あたしだってたまには早く起きるよ。
それに今日で一応最後だからね。梨華とゆっくり時間を過ごせる日は。」
「そうだったわね。うー・・・。」
大きく伸びをすると、そのままひとみを抱きしめた。
「クスっ。梨華の甘えん坊。」
「いいじゃないのよー。たまにはベッタリ甘えさせてよぉ。」
「よしよし。かわいいな、梨華。」
「ふふふ。ひとみー。」
「なに?」
「好き。」
「あたしも。」
ベッドの上でキスを交わす。
おはようのキスにしては、少し長めだったけど。
「さて、シャワーでも浴びて、さっぱりしようかな。」
「私もー。」
「クス。なんなら一緒に入る?」
にやけた顔を両手にはさんだ。
「また今度ね。」
チェックアウトを済ませると、私たちは少し遅めの朝食を
カフェでとっていた。
- 117 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時11分09秒
「これからどうするの?早めにベルギーに帰る?」
ホットチョコの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
オープンカフェのそこでは、新聞を広げたジェントルマンや、
老夫婦が思い思いにモーニングタイムを楽しんでいた。
空は気持ちよく晴れ渡り、朝の爽やかな風が吹き抜けていく。
「ううん。ちょっと寄りたいところがあるんだ。
ベルギーへはそれから帰ろうと思うんだけど。」
「うん。わかった。」
そう言うと、ひとみは腕時計に視線を落とした。
「そろそろだな・・・。」
「え?」
「ううん、なんでもない。それじゃ行こうか。」
「うん。」
どこに行くとも言わずに、私はただひとみに腕を絡めると、
町外れの方角へと歩き出した。
「うわぁー。すごいねー。」
目の前に現れたのは、白壁が目にも眩しいカテドラル。
細くそびえ立つ塔の上には、教会のシンボル的な鐘と、
大きな十字架がかかげられていた。
「ホント。立派だなぁ。」
「ひとみが来たかったとこってここだったの?」
「うん。17世紀頃に作られた、世界的に有名なパイプオルガンがあるんだって。」
ひとみがそんなことに興味があるとは、ちょっと意外な感じがしたけど、
私は素直に頷いた。
「まだミサをやってる途中だと思うから、そっと中に入ってみようよ。」
「え?いいの?勝手に入って。」
「誰でも入れるんだよ。今ならきっとパイプオルガンも聞けるだろうし。」
「それじゃ、邪魔にならないようにそっと入ってみましょうか。」
- 118 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時12分17秒
背の高い扉を開けると、信者の人たちがパイプオルガンの
音にあわせて賛美歌を唄っていた。
「やっぱすごいな。音がキレイに抜けていくよ。」
「本当。迫力あるね。」
しばらくそうやって最後尾の長イスにかけて、礼拝を眺めていた。
「「「アーメン」」」
どうやらそれでミサは終わったよう。
ぞろぞろと出口に向かう人々は、私たちのことをとても興味深気に
見ていたけれど、笑顔を向けるだけで、通り過ぎていってしまった。
「梨華、ちょっと待っててくれる?」
「うん、いいけど。」
ひとみはそう言って立ち上がると、祭壇の上にいる神父の下へと
歩いていった。
その間に私は正面にあるパイプオルガンを眺めていた。
荘厳な音を奏でていたそれは、とても立派で、300年前に作られた
ものとは思えないほど、ピカピカと輝いていた。
ラッパをくわえた天使が2体、ちょうど両極にほどこされていて、
祝福の音を告げるように、高く吹き抜けている天井へと視線を向けている。
「梨華!こっちにきて!」
ひとみの声が、こだました。
神父は私を見てにっこりと微笑むと、横にあるドアを開けて姿を消した。
「どうしたの?」
「まぁ、いいからこっちにきてよ。」
神父が出て行った扉とは逆に位置している扉へと、
私を連れて行った。
「えっ、いいの?入っちゃまずいんじゃない?」
ドアに手をかけたひとみにそう言ったけど。
「いいの。さ、入って。」
訳がわからず通されたそこには。
- 119 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時13分30秒
「・・・・・・・えっ・・・・・・。」
見たこともないような、綺麗な純白のウエディングドレスが一着、
目の前に飾られている。
「これ着て式挙げよう。あたしと梨華の。」
「・・・・・うそ・・・・・・・・・・。」
「うそじゃないよ。約束したでしょ。梨華にウエディングドレス着せてあげるって。」
「ひとみ・・・・。」
「あたしは別室で着替えるから。終わったら祭壇にきて。待ってる。」
そう言い残すと、足早に部屋を出て行ってしまった。
それでもまだどこか信じられない出来事に、私はボーっと
ドレスを見つめていた。
まさかひとみがこんな計画を立てていてくれたなんて・・・。
胸が熱くなって、涙が一筋頬を伝っていった。
「ありがと・・・・ひとみ・・・・。」
扉を開けると、祭壇の上には純白のタキシードを着た
ひとみが待っていた。
「梨華、おいで。」
そっと差し伸べられた手をつかんで、祭壇へとのぼる。
「ひとみ・・・・」
「綺麗だよ。梨華。」
ベール越しに見るひとみの優しい微笑み。
エスコートするように差し出された腕に、自分の腕を絡ませると、
神父が経典を開いて、私たちに手をかざした。
- 120 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時15分52秒
- オランダ語でなにやら語りかけてくれていたけど、
およその理解をすることはできる。
そして、神父がひとみに視線を向けた。
「ヤー。」
そして私にも。
「梨華、『ヤー』はイエス。『ネー』はノーの意味だよ。」
もう一度神父は私に微笑みかけてくれた。
「ヤー。」
シルクの手袋を外してくれると、神父が差し出した指輪を手にした。
「どんなことがあっても、梨華を守ってあげるから。」
薬指にキラリと光るプラチナの指輪がはめられた。
「ひとみ。私、あなたと出会えて幸せよ。」
私も彼女の指に誓いの指輪をはめてあげた。
そして、ベールがあげられた。
ステンドグラスから落ちてくる光。
その色鮮やかな光が、浮かんできた涙で虹色に揺らめいていく。
誓いのキスが、しっかりとこの唇に、この心に刻まれた。
「ヘフェリシテールト メット ユリ ヒューグリック!(結婚おめでとう!)」
ぎゅっと互いを抱きしめあうと、教会の鐘が大きな音をたてて、
耳に響き渡っていった。
「まだ・・・信じられない・・・・。」
「誓約書も書いたし。これで本当の夫婦になれたかな。」
「私・・・本当に嬉しい・・・。」
溢れてくる涙を止めることができない。
「梨華、綺麗だよ・・・。」
「・・っ・・・・ありがと。」
「ほら、泣かないで?せっかくのかわいい花嫁さんなんだから。
笑顔を見せて。」
- 121 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時17分21秒
- 「かっこいいね。やっぱりひとみは。」
「あはは。まぁ、ね。」
「今日のこと、絶対に忘れないわ。ひとみがくれたステキな記念日。」
「うん。忘れられない一日になるだろうね。
梨華。あの扉の向こうに、あたしたちの未来がきっと広がっているはずだよ。」
手を繋いで祭壇を降りると、出口の扉へと向かった2人。
「いい?一緒にこの扉をあけよう。」
「うん。」
そして開いた扉の向こうに、信じられない光景が飛び込んできた。
ふりかかるライスシャワー。
私たちを迎えてくれる、祝福の拍手の音と、あふれる笑顔。
「・・・・どうして、ここに・・・・?」
私たちを迎えてくれた人たちは。
「おめでとー!よっすぃー、またオトコマエになったなぁー。石川せんせ綺麗やでー。」
「ホントだー。すごーく綺麗、2人とも!おめでと!」
随分大人っぽくなっていたけれど、それは加護さんと辻さんだった。
「加護さん・・・辻さんも・・・?」
「えへへ。あたしが呼んだんだ。」
「石川せんせがまさかよっすぃーとくっつくなんてなぁ。ほんまにおもろいわー。
ありえへーんって感じ?」
「あいぼん、それ、言えてる。」
「クス。ありがとう、2人とも。」
「梨華ちゃーん、おめでとう。」
「美貴ちゃん!?」
「すごく綺麗だよ、2人とも。吉澤さん、梨華ちゃんを幸せにしてあげてね?」
「ありがとうございます。わざわざ来ていただいて。」
「え・・・。美貴ちゃんも?」
- 122 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時18分42秒
- 「そう。ここにいるみんなのこと、あたしが呼んだんだ。」
ひとみはウインクひとつ落とすと、にっこりと微笑んでくれた。
「そういうことでしたー。ごめんね、あの時黙ってて。本当は2人のこと知ってたの。」
「あっ・・・私の方こそ、ごめんね、黙ってて。」
「いいのいいの!ほら、まだまだゲストはいるんだから!」
「ひとみ、おめでとう。梨華さん、本当に綺麗ですよ。」
「お兄さん・・・。お母さま、お父さまも・・・。」
「梨華さん、おめでとう。よかったね。」
「おめでとう。ひとみと幸せになってね。」
「ありがとうございます。」
「ありがと、兄キ。母さんも、父さんも。」
そして、一番端にいた人に私は目を見開いた。
「パパ・・・ママ・・・・。」
「梨華、おめでとう。吉澤さんも。ご招待してくれてありがとう。
2人とも、とってもステキよ。」
「来てくださったんですね。お母さん。お父さんも・・・。ありがとうございます。」
「パパ、ほら、梨華の花嫁姿見れてよかったね。」
「パパ・・・・。」
そっと手を出して、パパの手を握り締めた。
「何か2人に声をかけてあげてよ。」
「私は、その・・・ママがどうしてもついてこいってうるさく言ったものだから、
仕方なく・・・・。」
「あら。素直じゃないのね。そろそろ認めてあげたらいいじゃないの。」
「お父さん。」
「・・・・・ぐっ。」
「パパね、心の中では吉澤さんのこと認めてるのよ。
素直じゃないけど、本当は誰より喜んでいるんだから。
2人とも安心して。」
「私は、吉澤くんのこと、まだ・・・・」
- 123 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時20分21秒
- 「あら。パパ毎日吉澤さんが家に来てくれるの楽しみにしてたじゃない。
梨華、吉澤さんには口止めされてたけど、彼女毎日私たちのところまで
来てくれてたのよ。海外へ仕事に行くことになるからって。
梨華を連れていくことを認めて欲しいって、毎日、毎日。」
「そうだったの・・・ひとみ?毎晩遅く帰ってきてたのって・・・。」
「・・・うん、まぁ・・・ね。やっぱりお父さんのこと気になっていたから。」
「ひとみ・・・・」
「最初はパパも頑として部屋から出てこなかったけど、
いつも吉澤さんが帰ってから、嬉しそうにしていたのよ。
そうでしょ?パパ。」
「ん・・・。そんな昔のことは忘れたな。だけど、これだけは言っておく。
梨華を泣かせるようなことがあったら、直ちに連れて帰るからな。
梨華も、嫌になったらすぐに帰ってきなさい。いいね。」
「全くパパは・・・・。ごめんなさいね、吉澤さん。」
「いえ、来てくれないものだと諦めていましたから。
本当にありがとうございます。お父さん、お母さん。」
「ありがと、ママ。パパ・・・。ごめんね、わがままばっかり言って。
でも、パパのこと、大好きだからね。」
「あぁ。悔しいが、梨華のこと、頼むよ。吉澤くん。」
「はい。まかせてください。」
「ひとみも、ありがとう。私、本当に、本当に幸せよ・・・。」
青く澄んだ空、すーっと溶け込んでいく笑顔。
私は今、胸に溢れてくる幸せを思う存分かみしめていた。
- 124 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時21分53秒
結局新婚旅行はひとみの仕事の都合で、またの機会になってしまったけど、
それから1週間ほどは、ベルギーで新婚生活を送っていた。
「おかえりなさい。」
「ただいまー。はぁ、疲れた。」
いつものように交わすキス。
毎日何度もしているから、もしかしたらもう100万回なんて
越してしまっているのかもしれない。
「あーっ。いい匂いだぁ。今夜は一体なんの料理?」
「うふふ。オリジナルメニューかな。」
「へぇ、それは楽しみ。早速食べたいな。」
「うん。」
手を繋いでリビングへと向かう。
そこには私たちだけの甘い空気が満ち溢れていた。
そして、それから一年後。
「今日の授業はこれで終わりです。みなさん、また来週まで。」
「サヨナラ。」
「はい。さようなら。」
「センセイ、マタネ!」
「はぁい。また来週ね。」
ここは無料で借りることができる福祉施設。
私がここで何をしているかというと。
「いーしかーわせーんせっ!」
「クス。ひとみったら。」
もうすっかりここでの暮らしに慣れた私は、ボランティアで
この街の人たちに日本語を教えていた。
英語教師をしていた私がまさか、ここベルギーで日本語を教える
ことになるなんて、夢にも思っていなかったけど。
その代わりに、私は公用語であるフランス語を彼らから学んでいた。
その土地に馴染むには、やはり直接人々と関わりを持つのが一番。
教える言葉は英語ではなかったけど、教師としての本来求めるべき
『学ぶ心』を生徒たちから教わることができたのは、本当に嬉しいことだった。
- 125 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時23分30秒
「少し早かったかな?迎えにくるの。」
「ううん。ちょうどよかったよ。」
「へへへ。実はさ、梨華の教師姿、そこから見てたんだ。」
「えーっ!そうなの?」
「うん。すげーかっこよかった。」
「うわぁ。なんだか恥ずかしいなぁ。」
「恥ずかしがることないよ。また惚れ直したんだから。」
腕を肩にのせて、ひとみはすごく嬉しそうにしている。
「うふふ。惚れ直してくれたんだ。」
「そうだよ。でも、ちょっとヤキモチ妬いちゃったかな?」
「ヤキモチ?」
「だってさ、あたしだけの先生なんだもん、梨華は。」
「やだぁ。何言ってるのよ。」
そうしてクスクスと笑っていると。
「梨華、いつまでもあたしの側から離れないでよ。」
柔らかく包み込むように、そっと抱きしめてくれた彼女。
「うん。離れないよ。ひとみは私の全てだから。」
優しい眼差しが、ゆっくりと閉じられていく。
ピッタリと心地よく重なる唇は、ひとみだけのためにあるもの。
「よし。それじゃ行こうか。ブルーニュのレストラン予約してるんだ。」
「ホントに!?すごーい。さすがね。」
「当たり前じゃん。だって今日はあたしたちの結婚記念日なんだから。」
「そうね。うんっ。これからもずーっと毎年お祝いしようねっ。」
「もちろん。」
「ねぇ、私お腹すいたよぉー。」
「あはは。それじゃ、行きますか。あたしのかわいい子ブタちゃん。」
「もぉー。ひとみーっ!」
逃げる背中に思い切り抱きついて、ひとみにそっとささやいた。
「愛してる。ダーリン。」
『本気で熱い一週間』
=完=
- 126 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月21日(土)02時28分41秒
- >作者
・・・終わりっす(笑)
ねむーいっ!今かなり眠いのですが、やっと書き上げることが
できたので、そのままUPしちゃいました(w
いかがでしたでしょうか?
やはりかゆーくなりますよね?(wゞ
でもよかったぁ。完結できて。まさかこんな展開になるだなんて
ぜーんぜん思ってなかったんですもの(涙)
ただ単に、梨華ちゃん先生と悪ガキ生徒のよっすぃーを
あまーく、かつやや笑いありで書こうと思っていたのに!(笑)
でも、まぁここまでこれてよかったっす。
そして、ここまで付き合っていただいた読者の方々、
誠にもってサンキューなのです!
それではどうもありがとうございました。
また次回作でおあいしましょうね♪
あ、そうそう。ちなみにオランダは同姓同士のケコーンが
認められてるんですよ?(w
いずれはこの2人も永住するやもしれませんね?(笑)
- 127 名前:Silence 投稿日:2003年06月21日(土)02時32分07秒
- 更新、そして完結お疲れ様でした。
ちょうど友達の家から帰って来てパソコン開いたら更新していたので
リアルでずっと読んでました。
う〜ん、よかったです。と、しか言えない自分。言葉下手で申し訳です。
本当にいしよし最高〜。です。
それじゃあ、次回作に期待しつつも眠いので寝ます。
寝る前にいいお話ありがとうでした。
- 128 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月21日(土)02時54分00秒
- 完結お疲れ様です!!
ホントに良かったです!!
当方も他に言葉が見つからないです・・・
申し訳ないです。
でも、こんな素敵なお話をありがとうございました!!
ホントにご苦労様でした!!
- 129 名前:シフォン@i 投稿日:2003年06月21日(土)08時32分32秒
- 早く会社に着いたので、何気無く覗いたら、更新されてる〜!!
>作者様
深夜の更新、お疲れ様でした♪
今日も社員食堂で読ませていただきましたが、涙が止まりません(号泣)
化粧崩れて大変っす(汗)
まさか、結婚式まで挙げるとは予想してなかったっす(苦笑)
でも…いいなぁ…オランダ(何)
最後まで読ませていただいて、改めてドラマ化希望の気持ちが強まりました(素)
本当に素敵な作品ありがとうございました♪
また新しい作品が読めるのを楽しみに待っています☆
- 130 名前:シフォン@i 投稿日:2003年06月21日(土)08時40分13秒
- 連レス、申し訳ないです(汗)
(携帯からだと、長くカキコ出来なくて…(苦笑)
>作者様
私的レスで申し訳ないのですが…。
ウチのメアドですが『娘。いしよし』でググってみて下さい(何)
ウチが書いてるアホな日記が出てきます(苦笑)
日記は他の方のも出てくるのですが“卒業旅行“がBGMで流れてる日記がウチのです。
そこからHPに戻るとメアドが判明しますんで(苦笑)
HNがここのと違うんですが、よっすぃ〜の声が流れたりするんで、ウチのトコに間違いはないんで…。
私的レスで、作者様、他の読者様、ごめんなさいっ!
- 131 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月21日(土)08時52分43秒
- 完結おめでとうございます!!
二人がみんなに祝福されて、良かった(T-T) 思わず涙がまた…。
>・・・あ。79さま、鼻水が。(w
今回は、鼻水おさえられました(笑
素敵な作品ありがとうございます。次回作超期待して待ってます(^^)
- 132 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月22日(日)08時50分19秒
- 完結おめでとうございます。
いゃ〜、きました。予想していた以上の素敵な結末にめちゃめちゃ感動
しています。(マジ泣きしちまった
色々な作品を読みましたが、ここまできっちりとけじめをつけたものは
あまり記憶に無いので、とても嬉しいです。
作者様についてきて本当に良かった。どうもありがとう。
- 133 名前:なな素 投稿日:2003年06月23日(月)05時21分44秒
- 簡潔おめでとうございます。
初レスですがずっと読んでました。
いや〜おもしろかったっす
- 134 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)17時58分19秒
- >Silenceさま
いやぁ、一番のりでしたね♪
感想ありがとうございます(涙)
一言声をかけてもらえるだけで、すんごく嬉しいので、
よければこれからも読んでやってください♪
>ぷよ〜るさま
嬉しいお言葉、本当にいつもありがとうございますっ!
なんかね、どうもウダウダと話が進まなかったり、
全然筆が進まなかったりと、相変わらずうまくは書けないんですけど、
それでもやっぱりみなさまに読んでいただけることが嬉しいので、
これからも頑張ります♪応援よろしくなのです♪
>シフォンさま
うぅ・・・(涙)いつもいつも嬉しいですよぉ・゚・(ノД`)・゚・
それと、メールの件どうもありがとうございました♪
これからイパーイ色んなお話ができるといいですね♪
どうぞよろしくよっすぃーなのです☆
>名無し読者79さま
えへへ。ありがとなのです♪
新作ちらっとだけUPしますので、よければまた読んでやってください。
いつもありがとうございます。嬉しいです。
- 135 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)17時59分24秒
- >ROM読者さま
なんかね、本当にそう言っていただけて、作者嬉し涙
流しましたよぉ・・・・゚・(ノД`)・゚・
ここまでついてきてくださって、こちらこそ大感謝なのです!(マジ)
最初はROMされていたROM読者さまとも、
随分付き合いも長くなりました。すごく感謝しています。
これからもマジでよろしくなのです!
>なな素さま
おぉー!読んでいてくれてたんですね♪感謝ですっ!!!
何気にここはみなさまROMの方が多いですけど、
実際どのくらいの人が読んでくれてるのかわからないので、
カキコしてもらえると本当に嬉しいんですよぉ(涙)
せいぜい多くて10人前後かな?ともマジで思っていますが(wゞ
それでは、新作できましたので、どうぞ読んでやってください。
何話になるのかは、またわかりませんが(笑)
今回はよし視点のお話です。
はりきっていきますので、みなさんよければ応援してやってくださいね♪
それではどうぞ!
- 136 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時00分53秒
『Photo』
マジかわいいよな・・・。
人垣の頭越しにあたしが見ているのは、一枚の写真。
教室の後ろに張り出されているのは、先日クラスで行った
遠足の写真だった。
「おはよーよっすぃー。」
「おはよー。」
「こないだの写真もう張り出してるんや。」
「うん。加護も結構写ってるのあるよ。」
あたしの隣にきた加護にそう言って教えてあげた。
「おはよぉーっす。へぇ、綺麗に撮れてるね。」
「はよー。のののワンショットの写真向こうにあったよ。」
「ホント?どれどれ〜。」
「ほんまや、これのの変な顔で写ってるわー。」
「きゃははっ!我ながら面白い顔ーっ。」
加護とののは、笑い合いながらムニムニと互いのほっぺたを
つまんで遊んでいる。
- 137 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時02分05秒
- 「おっはよっ。」
「ういっす。」
「あー。こないだの写真できたんだぁ。」
「うん。梨華ちゃんのはねぇ・・・。」
そう言いながら、あたしは今までずっと眺めていた一枚の写真を指差した。
「これ。梨華ちゃんワンショットで撮ってもらったんだ。」
「わぁー。なかなか綺麗に写してくれてるっ。」
「かなりきしょいけどね。」
「またぁー。よっすぃーはいっつもそんなこと言うんだからぁ。」
「だってさ、どこかのアイドルみたいな目線だよ、これ。意識し過ぎ。」
クスクスと笑ってわざとじーっと写真を見つめてから、
おえーってお決まりのポーズをとるあたし。
「もぉー!そんなこと言わないのっ。」
むくれてあたしの肩をパシパシたたく梨華ちゃん。
こんなちょっとしたじゃれあいが、たまらなく嬉しくて、
ついつい彼女をからかいたくなるのだ。
「そういうよっすぃーのは?」
「あたしが写ってるの、これしかなかったんだ。」
それは加護とのの、あたしと梨華ちゃん仲良し4人組で
とってもらったものだった。
「え?よっすぃーのこれ一枚きり?」
「うん。もっと撮ってもらったように思うんだけど。」
「現像してくれたおじさん、よっすぃーが写ってるの見てわざと破いたんじゃない?」
梨華ちゃんはクスっと笑った。
「なにおー!心霊写真じゃないぞっ!」
羽交い絞めにするように、ふざけながら背中越しに抱きしめる。
- 138 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時03分21秒
こんなことをするのには理由があった。
なんでもいいから口実をつけて、梨華ちゃんを抱きしめたい。
梨華ちゃんに触れていたい。
・・・つまり、あたしは梨華ちゃんが好きなのだ。
嬉しくて、ドキドキする胸。
甘い髪の香りが、キューンと心をくすぐる。
「なによー。よっすぃーが先に言ったんじゃないのよぉ。」
「あぁ。言ったよ。」
「なにそれ。逆切れ?」
「逆切れじゃないよ。マジ切れ。」
そしてもっと強く体を抱きしめた。
ぴったりと感じる彼女の柔らかい感触。
このままずっと離れたくないと思わせるほどの。
「もぉ。よっすぃーやめてよ。」
梨華ちゃんだけがもつ独特の甘い声が、体に電流を走らせていく。
こんなかわいいリアクションが、たまらなくあたしをドキドキさせるのだ。
女の子っぽいしぐさ。華奢な体。
何もかもを包み込んで、あたしだけのものにしたいと思う欲求。
梨華ちゃんは本当に何をしてもかわいい。
「また2人でじゃれあってるんかいな。」
こちらに戻ってきた加護が、呆れ気味にそう言った。
「じゃれあってなんかないわよ。」
「そうそう。梨華ちゃんがふざけたこと言うからシメてるんだよ。」
「ふざけたこと言ってるのはよっすぃーでしょっ。」
「梨華ちゃんが生意気なこと言うから悪いんだ。」
もちろん、彼女もあたしも本気で喧嘩している訳ではなく、
お互いにそれがわかっているからこそ、こんなふざけたことも言い合えるのだ。
- 139 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時04分32秒
- 「ホント、仲いいよね2人は。」
今度はののがにやけ面をして絡んできた。
「だってこれ見た?梨華ちゃんのきしょいワンショット。」
「どれ?あー、ほんまや。かなりきしょいな。」
「加護ちゃんっ!」
「ヤバイよね、梨華ちゃんて。」
「ののちゃんまで、もぉーっ!」
「ほらね、みんなきしょいって言ってるじゃん。あたしの勝ち〜。」
「はいはい。いいわよ、どうせ私はきしょいわよっ。」
ぷいっとむくれて顔を反らせた。
さすがにちょっと心配になって、その顔を覗き込むと・・・。
「マジで怒っちゃった?」
「しらないっ。」
「ねぇ、梨華ちゃーん。」
「なによ。どうせ私はきしょいんでしょ。」
一向に目を合わせてくれない。
やばい。やっぱマジで怒らせてしまったかも。
「冗談だって。わかってるんでしょ?」
それでもまだ彼女はこちらを見てくれない。
「あーぁー。よっすぃーが怒らせてしもたー。しーらないっと。」
「ののもしーらないっと。よっすぃー後はよろしく。」
「おいっ!2人ともっ!」
あせって助けを求めたけど、2人はもう全くこちらには無関心で、
楽しそうに話しながら、席へと戻っていってしまった。
なんて無責任な・・・・。
と思っても、元はと言えばあたしが悪いのだけれど。
- 140 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時05分31秒
仕方がないから、絡めていた腕を離して、彼女の正面に立った。
「ごめんね?」
「ふーんだ。」
「ホントはかわいいよ、梨華ちゃんて。」
「きしょいって言ったくせに。」
「だから、それは、つまり・・・」
梨華ちゃんが好きだから。
好きだから、梨華ちゃんをからかいたくなる。
あたしのこと意識して欲しくて。
なんてことはもちろん言えない訳で。
「つまり、なに?」
ちらりと窺うようにこちらを見つめる視線に、ドキっと胸が高鳴った。
こんな色っぽい瞳で見つめられたら、もうお手上げ。
そして、意識はその艶やかな唇に釘付けになった。
吸い込まれるように、ただじっと、あたしは唇を見つめていた。
キスしたい・・・。
彼女とのキスは一体どんな感じがするのだろう、
なんてことを考えながら。
「・・・よっすぃー?」
「あ、あぁ。えっと、何の話してたんだっけ?」
「もぉーっ。いいわ。ホントによっすぃーは・・・」
かすかなため息をもらすと、梨華ちゃんは一人、席に戻っていってしまった。
- 141 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時08分45秒
いつものように、放課後あたしたちは加護の家にお邪魔していた。
お母さんの仕事の都合で、家にはこの時間誰もいないから、
いわゆる溜まり場となっているのだ。
そんなあたしたちがここで何をしているのかと言うと・・・
「うわぁー。よっすぃー今のなしにしてーっ!!!」
「へっへーん。それはダメだな。」
「よっすぃーのケチー。ええわ、みててみー。絶対逆転したんねん!」
サッカーゲーム、といってもTVゲームのそれは、
今あたしたちが一番はまっているもので、現在のところあたしは
ディフェンディングチャンピオンなのだ。
「よっしゃーっ!いけー!これ決めたらPKやからなっ!」
「甘いな、加護。そう簡単には入れさせないよ?」
「うちのベッカムさまをなめたらあかんでー!」
「がんばれー加護ちゃん!」
「えーっ。梨華ちゃんあたしの応援してくれないの?」
「当たり前でしょ。打倒よっすぃーなんだもん。ねーっ、ののちゃん。」
「そうだよ。みんなよっすぃーの敵なのだーっ!」
「ひでー。よぉし。こうなったら絶対今日も優勝してやる!」
結局無敵のスーパースターのベッカムさまも、あたしの敵ではなかった。
「うりゃっ!どうだ加護。まいったか。」
「あーぁー。今日もまた負けてしもた・・・。」
「残念だったね、加護ちゃん。」
「ののも結局勝てなかったし。次梨華ちゃんがんばりなよ。」
「よーしっ。がんばるぞっ。」
「次は梨華ちゃんか。少しは手加減してやろうかな。」
「なによ、それ。」
「だって梨華ちゃんへなちょこなんだもん。すぐに勝負ついたら
面白くないしねー。」
- 142 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時09分56秒
- クスっと笑ってコントローラーを渡した。
「見てなさい。今日の私は一味違うわよ?」
「へぇ、それは楽しみだな。」
弱いわりにムキになるのが、また梨華ちゃんのかわいいところ。
だからあたしはいつもいいところまでわざと引きつけて、最後の最後で
逆転のゴールを決めるのだ。
すごく悔しがる姿がまた妙にかわいいから。
ちょうどレフェリーのホイッスルが鳴ったところで、
加護の携帯が鳴った。
「はい。あ、お母さん?・・・うん・・・・はいはい。ほな今から行ってくるわ。」
携帯を切ると、加護が立ちあがった。
「ごめんやけど、ちょっと買い物いってくるわー。
お母さん今日おそなるから買い物頼まれてん。」
「あー!ののも買い物ついてくっ!プリン食べたいんだ。」
「うん。2人は?なんかいるもんあったらついでにこーてくるけど?」
「えっと、あたしはオレンジジュース買ってきて。」
「私もー。」
「真似するなよー。梨華ちゃん。」
にやっと笑って、ボールを蹴った。
「真似なんてしてませんー。たまたま同じだっただけですー。」
「すげーにくたらしい言い方だな。よぉし。こうなったら手加減抜きだ!」
「誰も手加減してなんて頼んでないでしょーっ。」
- 143 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時10分56秒
「・・・・はぁ。オレンジジュース2こやな。ほな行ってくるわ。ののいこっ。」
「うん。じゃ、2人ともお留守番よろしくぅー。」
「はーい。」
「気をつけてね。」
玄関の扉がパタリと閉まる音が聞こえた。
とたんに緊張感が増してくる。
みんなでいると、そう意識しないでもいられるのに、
やっぱり2人きりになってしまうとどうも調子が狂ってしまうのだ。
梨華ちゃんと2人きり・・・・。
そう考えるだけで、ここの空気も違ってみえてくる。
緊張で息が苦しい・・・。
「ねぇ、よっすぃー。」
「えっ!なっ、なに?」
「クス。そんなに驚かなくても。」
完全に意識してしまっていたあたしは、思わず声を上ずらせてしまった。
「・・・なに?」
「悪いんだけど、ちょっとストップしてもらえない?」
「いいけど。なんで?」
「なんでって。・・・ちょっとトイレにいきたいの。」
「あ、あぁ。いいよ。」
ポーズボタンを押すと、梨華ちゃんがあたしの頭に手をかけた。
- 144 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時11分53秒
- 「いない間にズルしちゃだめよ?」
「しないよ。そんなことしなくったって勝てるからね。」
「ふふっ。いいこいいこ。」
そう言いながら、あたしの髪をクシャッとなでた。
「あのねぇ。子供じゃないんだから。」
そうは言ってみても、本当は嬉しくてたまらなかった。
だけどそんなしぐさを見せる訳にはいかないから、
あたしはその手を払いのけた。
「あーら。子供だと思ってたけど?」
苦笑するように見せた笑顔。
無意識のうちに胸のドキドキが音をたてていく。
「・・・そんなこと言ってないで早くいってきたら?」
「そうね。じゃ、ちょっと行ってくるね。」
「30数えるうちに帰ってきてよ。いーち、にーい・・・」
「もぅ。ホントに子供なんだから。」
立ち上がった瞬間ふわりと揺れたスカートが、
必要以上に目に焼きついていた。
- 145 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月24日(火)18時13分50秒
- >作者
はい。ということで、今日はここまでです。
勘のいい方なら、タイトルでおよそのラストみえるとは
思いますけど(w、どうぞネタバレは勘弁してやってくださいねっ!(笑)
なかなか更新もうまくいかないかもしれないんですけど、
まぁボチボチやっていきますので、今回もまた
ゆるーい気持ちで見守ってやってください(笑)
それでは次回まで。ありがとうございました。
- 146 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月24日(火)18時59分31秒
- 新作の連載開始&更新お疲れ様です!!
素直じゃないよっすぃ〜・・・かなりツボです!!
でも、梨華ちゃんを本気で怒らせちゃダメだぞ!!(笑)
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 147 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月24日(火)20時33分53秒
- 前作の余韻覚めやらぬうちに、なんとも素敵な新作が。
見えますか?このROMの笑顔。めっちゃうれすぃ〜!
絶妙な間合いのいちゃつき具合が最高です。
>どうぞネタバレは勘弁してやってくださいねっ!(笑)
ニヤリ!・・・と思わせておいて、実はきゅっとひねったりして。
>ゆるーい気持ちで見守ってやってください(笑)
もう顔も体もゆるゆるです!
- 148 名前:シフォン 投稿日:2003年06月24日(火)21時10分12秒
- いつの間にか新作だぁ♪
小学生男子のようなよっすぃ〜、たまんないっす!!
ROM読者様同様、ウチもゆるみっぱなしです(笑)
>作者様
更新お疲れ様でした♪
無事、メアド交換出来て良かったです(素)
これからも、作者様が書き続ける限り、ウチは応援させていただきます♪
こちらこそ、これからもよろしくよっすぃ〜なのです☆
- 149 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月24日(火)21時21分59秒
- 新作始まりましたねー(^^)
勘が良くないので、全然判らないのですがこの作品を励みに
またがんばります。二人きり…どうなるのかしら…。
- 150 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)21時59分07秒
- >ぷよ〜るさま
>素直じゃないよっすぃ〜・・・かなりツボです!!
えへへ〜。サンクスです♪
まぁじゃれあっている時は素直じゃないんですが、
これからきっと素直になってくれることでしょう(w
ぜひ応援お願いいたします☆
>ROM読者さま
>見えますか?このROMの笑顔。めっちゃうれすぃ〜!
あぅ・・・。残念ながらこの心眼をもってしても見えませぬ(笑)
>もう顔も体もゆるゆるです!
やだー(笑)きりっとカッケーROMさまでいてくださいね♪(w
>シフォンさま
>小学生男子のようなよっすぃ〜、たまんないっす!!
みなさんわかってはいるのでしょうけど、
ハロモニでのよっすぃーがベースです(笑)
マジで小学生男子並みですよね、よっすぃーが梨華ちゃんにしてることって(笑)
それがまたかわいいんだー☆
たまんないっすよね?(笑)いつも応援ありがとなのです♪
>名無し読者79さま
>勘が良くないので、全然判らないのですがこの作品を励みに
>またがんばります。二人きり…どうなるのかしら…。
あらら?何か落ち込むようなことでもあったのですか?(涙)
どうぞ、こんな作者の書くものでよかったら、
ゆくーりと疲れを癒してくださいね?
一緒にいしよし妄想を膨らませましょう!(笑)
やや今回痛いですが(w、また次回は・・・(内緒)(笑)
それでは続き、どうぞ!
- 151 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時01分00秒
「おまたせーっ。」
「カウントかるく30越えてるよ?」
にやりと笑ってその顔を見上げた。
「何バカなこと言ってるのよ。」
はにかむように梨華ちゃんが笑う。
そして、ソファーに背をもたせかけて座っている、あたしの前を通り過ぎようとした瞬間。
「きゃっ!」
コントローラーのケーブルに足をとられた彼女の体が、
危なげによろめいた。
「危ないっ!」
とっさに掴んだ腕。
しかしその勢いは座っている分だけ、抑えをきかせることができずに、
あたしは梨華ちゃんを受け止める形でカーペットに寝転んでしまった。
「・・・・大丈夫?」
「よっすぃーこそ。ごめんね?」
一方の手は腕を掴んだまま、そしてもう一方の手は、
彼女のウエストにまわしていた。
ありえない・・・・。
こんなシチュエーションがあっていいのだろうか?
まるで奇跡のようにこの身に降りかかった偶然。
しかし、それは夢や幻なんかではないことは、
梨華ちゃんの長い髪が、あたしの頬に触れる感触で明らかだった。
心臓のドキドキが自分の耳にまで聞こえてきそうなほど、
沸き立っていく胸のトキメキ。
それに素直に反応する心と体。
至近距離で見つめる瞳に、どうしようもなく抑えることのできない
感情がフツフツとわきあがっていくのを感じていた。
もし、このまま梨華ちゃんにキスをしたなら・・・・。
- 152 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時02分20秒
抱いてはいけない気持ちが、胸を苦しくさせていく。
抱きしめて、キスをして、梨華ちゃんの甘い感触を味わってみたいと。
だけどそんなことはできるはずはないのだ。
だってあたしたちは・・・・。
「ねぇ・・・本当に大丈夫?」
黙っていたあたしを心配するように、見つめる瞳。
いっそ勢いにまかせてキスをしてしまえと、
心の中のもう一人のあたしがささやき続けている。
頭の中が混乱していた。
本能が理性を打ち負かそうとしている、極限状態の葛藤。
しかし、その危なげな均衡を破るが如く、信じられない出来事がおこった。
あたしの髪に手を差し入れながら、ゆっくりと梨華ちゃんの唇が近づいてきたのだ。
そっとためらうように落ちてくるその唇。
心臓が爆発しそうなほどの熱が、体を支配していった。
あたしは目を閉じることもできないで、
その行動をつぶさに目に焼き付けていた。
だけど。
「クス。びっくりした?」
あと数ミリのところで、それは止まってしまった。
梨華ちゃんの不敵な笑顔とともに。
- 153 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時03分19秒
彼女がしようとしていたことは、いつもの冗談だったのだ。
冷静になって考えてみれば、そんなことくらいわかるはずなのに。
だけどあたしはいつものように笑えなかった。
期待していた気持ちを裏切られてしまった悲しさ。
こんなことを冗談でできてしまう、彼女の気持ちが、
あたしに深い傷を与えた。
だからあたしは。
「・・・・・・・・んっ・・・・・・・・」
梨華ちゃんの頭を引き寄せて、キスをした。
力加減なんて考えずに、ただ、梨華ちゃんの唇を強引に奪っていた。
怒りにも似た悲しみが、あたしをそうさせたのだ。
「・・・・・・・・っ・・・・・・・」
梨華ちゃんがそれに抵抗するように、唇を離そうとしたけれど、
あたしはそれを許さなかった。
苦しそうに息を継ぐ、彼女の呼吸を感じてはいたけれど、
何度も何度もキスをした。
どれだけこちらが好きでいても、結局彼女には届かないのだ。
それなら、いっそのこと未練など一切もたないで済むくらい、
きれいに跡形もなく消化させた方がいい。
この気持ちを全て白紙に戻すために。
そして、力なくあたしの腕がカーペットの上に落ちていった。
- 154 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時04分49秒
「・・・・なんで・・・こんなこと・・・・」
呆然とするその声が耳に聞こえる。
今彼女がどんな顔をしてあたしを見ているのか。
ぎゅっとつぶった目には何も見えなかった。
「梨華ちゃんが悪いんだよ・・・あんなことしようとするから・・・。」
あふれてくる何かを隠すために、目を覆うように腕をのせた。
「だっていつもふざけてるじゃない。だから私は・・・・」
「そうだよ。あたしもふざけていただけ。ふざけてキスしただけだよ。」
ここで泣いてしまったら冗談では済まなくなる。
いや、冗談なんかではもうごまかすことなどできないのかもしれないけれど。
それでもそう言い切ることで、あたしは自分の気持ちにケリをつけようと
していたのだ。
その思いがあたしの弱さを流させずにいてくれた。
だけど・・・。
諦めようと思う気持ちとは全く逆の感情が、心の中でくすぶっている。
やはりあたしは、友達としての梨華ちゃんまでをも、失うことは恐れていた。
「よっすぃー・・・・・。私、私、本当はね・・・・」
梨華ちゃんが何かを言いかけたとき、ちょうど玄関の扉が開く音がした。
「おまたせーっ。色々余計なもんまでこうてしもたわー。」
「プ・リ・ン♪プ・リ・ン♪」
2人がビニール袋を提げて、ここに入ってきた時には、
もうあたしたちは体を起こしていたけれど。
- 155 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時06分33秒
「でー?どっちが勝ったん?・・・あれ?」
TV画面がポーズの状態でいることに加護が気付いてしまった。
「ん・・・・あぁ。2人とも立ち代りでトイレ行っててさぁ・・・。
それでゲームも一時中断させたままだったんだ。」
「加護ちゃーん。プリンのスプーンどっちの袋に入れてたっけ?」
ののがごそごそと袋の中のスプーンを探している。
「ふーん・・・。でもなんかおかしいなぁ・・・・。ちょっと空気がちゃうんやけど。
あーっ。さては2人ともゲームのことで喧嘩したんやろー。」
「喧嘩って訳ではないんだけど・・・・ね。」
「なんや2人ともはっきりせーへんなぁー。
まぁ、どうせいつものじゃれあいなんやろうけどな。」
結局買ってきてもらったジュースの味もわからないまま、
あたしはしばらく静止されたままの画面を、ただぼーっと見つめていた。
そして次の日。
「おはよー。」
「おはよ。」
ののが来たという事は、もうそろそろ梨華ちゃんもやってくる時間。
教室の扉が開く度に、確認しないでおこうと思う気持ちとは逆に、
その姿が現れるのを、穏やかならぬ気持ちで見てしまっていた。
そして、スーッと滑るように開かれた扉の向こうに、
梨華ちゃんが現れた。
- 156 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時07分34秒
「おはよう。」
「・・・おはよ。」
務めて冷静に、いつものように、そう心がけて声をかけたはずなのに、
やっぱりどこかぎこちない自分を感じていた。
それはあたしだけのことじゃないけれど。
いつもなら彼女の席に行って、授業が始まるまでの時間すら、
ふざけあって過ごしていたあたしたち。
だけど、今日はそれができないでいた。
きっと梨華ちゃんはあたしのことなんて嫌いになったのだろうから。
ギリリと歯を噛み締めた。
どうしようもないくらい、モヤモヤした感情が浮き上がってくる。
本当に、どうしたらいいのだろう・・・・。
堅く握った自分の手を見つめながら、泣きたくなる心を抑えつけて、
あたしはその苦しみに耐えていた。
もう友達ですらいられないかもしれない。
一番考えたくない答えが、頭の中を駆け巡っていく。
ここまで彼女にこだわるのは・・・・・・・・やっぱり今でも好きだから。
消してしまいたいと思った気持ちは、刹那の気の迷い。
だってあたしはずっと梨華ちゃんのことだけを想っていたのだから。
情けなくもはっきりと残っている気持ち。
未練と呼ぶそれは、気が狂いそうなほど、あたしの前に示されている。
だからあたしは玉砕覚悟で席を立った。
- 157 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月25日(水)22時10分25秒
- >作者
ここで終わりです(笑)
なんだ?甘書くと言っておきながら、甘じゃないじゃーんっ!
って思っていらっしゃいますよね?ね?
だって作者だって思うんですもの。
なんでこんなに痛なのかって(核爆)
でも、まぁこの痛もあまり長くは続きませんので
ご安心を。(←ほんとか?またひっぱるんじゃないだろうな?>自分)
と、いうことで、全くもってこれからの展開は
自分自身わからなのですが(笑)、ぼちぼちがんがりまっす!
それでは次回まで。ありがとうございました〜♪
- 158 名前:シフォン 投稿日:2003年06月25日(水)22時17分31秒
- おぉ、ひさぶり〜のリアルタイムだっ(笑)
ひたすらリロードしつつ、読ませていただきました♪
このよっすぃ〜の気持ち、何故だか良く分かるなぁ…(何)
玉砕覚悟で玉砕されないでね…(汗)
>作者様
お忙しい中、更新お疲れ様でした☆
よっちぃ切ないよよっちぃ(涙)
昨日からウチの涙腺は緩みっぱなしなので、ついつい涙目になっちゃいました(苦笑)
今は痛くても、甘い日は必ず来るから〜♪
そう信じて、次の更新も楽しみに待っていますね☆
- 159 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月25日(水)22時37分03秒
- モニターの前でジタバタしてます。でも、それもあり。
終り甘けりゃすべて甘。とっても楽しみです。
>やだー(笑)きりっとカッケーROMさまでいてくださいね♪(w
あ〜、ごめんなさい。(笑)そこは妄想でひとつ・・・
- 160 名前:なな素 投稿日:2003年06月26日(木)05時10分05秒
- 新しいの始められたんですね。
今回も甘ったるそうな感じでいいすわ〜〜(笑
- 161 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月26日(木)19時46分13秒
- 更新お疲れ様です。
じゃれあっていた二人が、今後どうなるのか楽しみです。
よっすぃーは、席を立ってどうするのか…ワクワクして待ってます。
>あらら?何か落ち込むようなことでもあったのですか?(涙)
いいえ、ちょっと毎日仕事で疲れまして…。
>ゆくーりと疲れを癒してくださいね?
ハイ、癒します!!これからもがんばってください。
- 162 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時38分31秒
- >シフォンさま
>このよっすぃ〜の気持ち、何故だか良く分かるなぁ…(何)
そっ、それは一体!?
>今は痛くても、甘い日は必ず来るから〜♪
そうですねー。そうなれるようにがんばりまっす♪
いつも応援ありがとー☆
>ROM読者さま
>モニターの前でジタバタしてます。でも、それもあり。
あ、それでさっきこっちのモニターが揺れたんですね?(w
なんてことは冗談で。いつも感謝しております。
よければ今回も最後までお付き合いください♪
>なな素さま
>今回も甘ったるそうな感じでいいすわ〜〜(笑
あはは(苦笑)そうですね。甘ったるいかもしれないです(笑)
でも、みなさま作者の作品読むのはその覚悟の上だと
信じていますので、これからも甘道に命かけまっす♪応援よろしくです☆
>名無し読者79さま
>よっすぃーは、席を立ってどうするのか…ワクワクして待ってます。
うーむ・・・。じ、実は・・・(笑)
今回投稿分読んで、切れないでくださいね(汗)
(と、先に布石をうってみるテスト(w )
>いいえ、ちょっと毎日仕事で疲れまして…。
あぅ・・・。お仕事、ほどほどにがんがってくださいね(涙)
えっと、今回の分は、実は梨華ちゃん視点なのです(笑)
いわゆる回想シーンですね。
彼女はよっすぃーのことどう思っているのか。
みなさんよーっくわかっていらっしゃるでしょうけど(wゞ
まぁ、次回分も梨華ちゃん視点になると思いますので、
2人の心の中をそっと覗いてみてください(笑)
それでは続き、どうぞ!
- 163 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時40分54秒
=石川視点=
初めて彼女を見た瞬間、私の視線は釘付けにされてしまっていた。
なんて綺麗な人なんだろう・・・・
入学式をするためにここに集まっている新入生たち。
体育館の中には、新しい制服に身も心も躍らせた、
ステキな笑顔がみちあふれている。
不安と期待でここの門をくぐったのは、つい先ほどのこと。
中学からの仲のいい子たちとは、どうやらクラスは離れてしまったみたいで、
簡易イスに腰掛けながら、私は自分のクラスメイトになる人たちのことを、
目立たないように眺めていた。
そして、ほぼみんな席に着き始めた頃、体育館の入り口から、
うちのクラスの席に歩いてくる一人の少女が目に映った。
颯爽と歩く姿。
意思の強そうな瞳はとても涼やかに見えて、その端正な顔立ちの
印象を更に輝かせている。
それがよっすぃーを見た初めての瞬間だった。
思えばもうその時には、私はよっすぃーに恋をしていたのかもしれない。
こんな気持ちを抱くのは初めてだったけど、きっとそれが恋の始まりだった。
- 164 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時43分43秒
式が終わってクラスに入ると、まだ先生は来てなくて、
私はここにいるはずの彼女の姿を探していた。
便宜上振り分けられた席についているのは、名前順だったから、
私は一番端の一番前の席についていた。
後ろを振り返ると、このクラス全体を見渡すことができる。
まだ席についていない子たちもいて、なかなか例の彼女の姿を見つけることは
できなかったけど、それでも体を乗り出してあの瞳を探していた。
そして。
あ・・・・・。あの子だ・・・・・。
心臓がドクンとひとつ音をたてた。
その印象はさっきよりもより鮮やかに、私の目に映った。
まるでそこだけ空気が違うような、凛とした雰囲気を漂わせている。
その姿を見ているだけで、ぽーっと頬が赤くなっていくのを感じていた。
しかし、やっとの思いで見つけられたのはいいけれど、彼女とはどう考えても
話せない距離にいた。
ここからちょうど対角線上の一番端の席にいる人。それが彼女だったから。
と、なると、きっと彼女の名前は、アイウエオ順で言うと、
かなり最後の方になるはず。
なんて名前なのだろう。
そんなたわいもないことを考えていただけなのに、
私の頬はまた赤く染まっていってしまった。
「はーい、みなさん。席についてくださーい。」
先生が教室に入ってきたのを見て、私もようやく彼女から視線を外した。
「今日からみなさんの担任をすることになりました、安倍です。
どうぞよろしく。」
安倍先生はそう言うと、明日からの授業の説明や、
連絡事項などを黒板に書きだした。
- 165 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時45分18秒
「さて。今日はこのHRの時間を使って、今からみなさんに自己紹介をしてもらいます。
出席番号順に前に出てきて、元気よく挨拶してくださいね。
それじゃ、石川さんから、前に出てきてください。」
「はいっ。」
安倍先生のにこやかな視線を受けて、私は教壇のうえにのぼった。
「えっと。石川梨華です。○×中学の出身です。
どうぞこれからよろしくお願いします。」
全然知らない人たちの前で話すのはかなり緊張したけれど、
それでも私は精一杯元気な声で、挨拶をした。
ちらりと目の端に映るあの子のことを気にしながら。
「はい、では次の人。」
「はい。」
ふーっと息をついて、席に戻った。
これであとはゆっくりと、彼女の順番がくるのを待つだけでいい。
そう思いながら、なにげなく視線を後ろに向けた。
あ・・・・・・・・・。
偶然だろうか。ちょうど私が向けた視線の先、彼女と目があってしまった。
そして、なぜか彼女はこちらに笑顔を向けている。
ドキっとして、思わず瞳を逸らせてしまった。
それはまるでずっと私のことを見ていたような笑顔だったから。
その後私は息を吸い込んで、もう一度彼女の方を見たけれど、
もうその時には視線を黒板に向けていた。
きっとさっきのはこちらの勘違い。ただの偶然に過ぎなかったのだろう。
- 166 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時46分32秒
入れ替わり立ち代り、前に出て自己紹介をしているクラスメイトのことを、
それからしばらく眺めていた。
本当はもう一度、彼女の方を見てみたいと思う気持ちを抱きながら。
そして、やっと最後の人に順番がまわった。
そう、その人こそ、私がずっと意識していたあの子だった。
「吉澤ひとみ。特技はスポーツ全般。どうぞよろしく。」
簡潔に話した声に、その人柄が伝わってくるよう。
きりっとした表情は、とても清々しく見えて、どこか妙にかっこよくて。
私は心の中でその名前を胸に刻んだ。
「はい、みなさん、自己紹介も終わりましたね。
明日から仲良く、頑張っていきましょう。それでは今日はこれで終わりです。
気をつけて帰ってくださいね。」
先生がそう言うと、ガタガタとイスを後ろにひく音が、教室中に響き渡っていった。
帰る前に、一言でもいいから吉澤さんと話してみたい。
そう思う気持ちだけが先走ってしまって、
あわててカバンの中にプリントや文具類を詰め込んでいた。
早くしないと吉澤さんが帰ってしまう。
だけど、そういう時に限って、筆箱を手から滑らせてしまった。
ガシャンと音をたてて落ちたそれは、綺麗にフタが開いて、
シャーペンやら消しゴムやらが床に散らばっていった。
あぁ・・・・。何もこんな時に・・・・。
がっくりと肩を落としてため息をつきながら、
転がっていく消しゴムを拾いに席を立ったところ。
- 167 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時48分22秒
「はい、これ。大丈夫?」
差し出された消しゴムの手の先を辿っていくと・・・・。
なんと、拾ってくれたのは、あの吉澤さんだった。
「あっ、ありがと。」
「クス。いいよ。」
優しく笑っている彼女の笑顔に、キューンと胸が音をたてた。
「ごめんなさい、私あわてちゃって・・・。」
「みたいだね。あっちにもいっぱいシャーペン転がってるよ?」
「・・・・あっ。」
もう恥ずかしくて顔から火がでそうになった。
だけど、吉澤さんは軽く私の肩に触れると、一緒にそれを拾ってくれた。
「これで全部?」
「うん。本当にありがと。」
「確か石川さん・・・だったよね?」
「えっ?えっと・・・・」
「あはは。自分の名前もどこかに転がしちゃったのかな?」
まるでからかうようなその態度。
だけど、イヤミは全く感じられなかった。
それどころか、私の気持ちは・・・・・
「からかわないでよ。吉澤さん。」
「へぇ。あたしの名前覚えてくれたんだ。」
どこか嬉しそうに向けられた笑顔。
- 168 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時49分38秒
「その・・・ほら、最後の人だったから、覚えていたのかな・・・。」
それはウソだった。
だって私は彼女の名前をずっと知りたくて、待ち望んでいたのだから。
「そっか。」
「吉澤さんこそ、私の名前、よく覚えていたのね。」
「まぁね。石川さんは最初に自己紹介した人だったから。」
まるでこちらの返事をそのまま返したような答えに、
苦笑してしまった。
そして彼女はこう付け加えた。
「それにすっごく特徴のある声だったから。
どこかでアニメが流れてるのかと思ったよ。」
クスクスと笑う顔がとても楽しそう。
最初に感じた美少女のイメージとは少し違っていたけれど、
それもどこか妙に嬉しくて。
まさかこんなに気さくで、人なつっこい人だとは思っていなかったから。
だから私も、そんな彼女に付き合うようにこう言ったのだ。
「ひっどーいっ!声のこと気にしてるのに。」
「あはは。その声、その声。」
「もぉ、吉澤さんっ!」
「なかなかいいんじゃないかな。」
冗談なのか本気なのか、もちろんその時の私にはわかるはずもなく。
だけど、吉澤さんがそう言ってくれた言葉を、
私はどこか素直に受け止めていた。
「吉澤さんっ。」
「ん?なに?」
「こんなアニメ声で筆箱落としちゃうようなドジな私だけど、これからどうぞよろしくね。」
「クスっ。こちらこそ。」
思わぬ偶然ではあったけれど、私はそうやって
よっすぃーと仲良くなれたのだった。
- 169 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月26日(木)21時52分56秒
- >作者
・・・と、まぁこんな感じです(w
なーんだ、梨華ちゃんもよっすぃーに惚れてたんだぁー(笑)
・・・そうですが、何か?(w
よっすぃーが席を立ってからの時間軸に戻るまで、
もうしばしお付き合いくださいね。
その分、梨華ちゃんの乙女心を味わっていただけるように、
作者がんがりますから(笑)
1投稿分、ややショートですが、
大体これくらいのペースでやっていきますので、
どうぞよろしくなのです☆
それではまた次回。ありがとうござました♪
- 170 名前:シフォン 投稿日:2003年06月26日(木)22時05分52秒
- 読ませていただきながら、頭の中では教室の風景がはっきりと浮かんでおりました(素)
作者様の描写の上手さには、いつもいつも感心してしまいます♪
<<梨華ちゃんの乙女心…
味わいたいっ! 『もぉこれ以上食えねぇ!』ってゆうくらい味わいたいっ!!(壊)
…すみません、暴走しました(汗)
次回の更新も楽しみに待ってますね♪
無理はなさらないように…ね☆
- 171 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月27日(金)16時15分57秒
- かわいい―――!!かわいすぎる(>_<)
梨華ちゃん、そうだったのね(笑 よっすぃー罪な人ですね!
笑顔で見詰め合う、それも超離れている席で…。
まるでライブ中の二人を見ているようです(爆
離れていても視線合ってるときがあるんですよ!この二人は!!
- 172 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時13分20秒
- >作者
ふっ。がんがってるな、作者(w。今日もコウシーン♪(笑)
>シフォンさま
>作者様の描写の上手さには、いつもいつも感心してしまいます♪
うわぁー。おだて上手なんだからー☆(wゞ
でも調子にのっちゃって、踊っちゃいます♪えへへ。サンクス♪
>…すみません、暴走しました(汗)
暴走、妄想なんでもアリです!
マターリと楽しんでやってくださいね♪いつもありがとなのです。
>名無し読者79さま
>かわいい―――!!かわいすぎる(>_<)
やった♪すんごい褒め言葉をいただきましたー♪♪♪
嬉しいな。マジで。
>離れていても視線合ってるときがあるんですよ!この二人は!!
見てみたーいっ!!!!
よっすぃーの「おしりさわり事件」も見逃してるし(w
本当に梨華ちゃんのこと好きなんでしょうねー♪
うらやましいほどの美少女カップルですね!(よだれが・・・(w )
いつも嬉しいレスサンクスなのです♪
えっとですね、今日もがんがって更新しますが(苦笑)
これからは毎日できるともいいきれませんので、
そのあたりは勘弁してくださいね♪
それでは、続き、どうぞー♪
- 173 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時15分01秒
「うへーっ。疲れたぁ・・・。」
「うちも疲れたわぁ・・・。」
ののちゃんと加護ちゃんは、今日何度目かのぐったりとしたため息をついた。
「ほら、もうちょっとでつくから、2人とも頑張りな。」
そんな2人が背負っているDパックを、よっすぃーが励ますように後ろから押した。
そして、その後ろを歩く私に振り返った。
「梨華ちゃんは大丈夫?」
「うん。ちょっと疲れたけど、まだ平気だよ。」
目の前にはまだまだ先が見えない道が続いている。
なだらかな坂ではあったけど、本当のところは私も延々と続く坂にバテ気味だった。
私たちが向かっている先は、ハイキングコースの広場。
五月晴れの空の下、親睦を深める目的で、私たち1年生は遠足にきているのだった。
入学してからちょうどひと月半。
私にはこのクラスで仲良くなった新しい友達ができていた。
加護ちゃんとよっすぃーは同じ中学の出身で、
元々仲が良かったらしく、ののちゃんは加護ちゃんと隣の席になってから
急激に仲がよくなった友達。
そして、私もその頃には「よっすぃー」なんてあだ名で呼べるほど、
仲のいい友達になれていた。
それがどれくらいのものかと言うと・・・・。
「ほら、無理しないで、手を引いてあげるよ。」
こんな優しいことを言ってくれるのは、とても嬉しいことだったけど、
どうせまた裏があるに違いない。
そのにやけた顔を見るだけで、よっすぃーがまたいつものように
私のことをからかおうとしているのがわかるから。
- 174 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時17分40秒
「いいよ。よっすぃーも疲れてるでしょ?」
「あたしは平気。だって梨華ちゃんより若いから。」
ほらね。いつもこんなこと言って、私のことを冗談にして楽しんでいる。
「同い年なのにー。」
「それでも梨華ちゃんの方が3ヶ月もおばさんだから。」
「おばさんですって?失礼しちゃうわっ。」
そんな私の抗議さえ、よっすぃーにとってはなんでもないくらいに
あっさりと流してしまう。
「おばさんは意地張らないの。」
「そんなこと言って。またどうせ何かたくらんでいるんでしょー。」
「あたしが?一体何をたくらんでいるっての?」
「だってこんなに優しいよっすぃーなんて変なんだもん。
いっつもさ、私のことどうやってからかってやろうかって、
そんなことばっかり考えてるくせにー。」
「ごちゃごちゃ言ってないで。ほら、手を出す!」
そう言って、半ば強引に手を繋いでくれた。
木々のざわめきが、まるで私の心の中を表現するかのように、
優しく揺れている。
ほんの少しぎこちなく繋がれた手には、
それでもしっかりとした感触が伝わってきたけれど。
いつも冗談ばっかり言ってるから、たまにこんな風に優しくされても、
裏があるんじゃないかって勘ぐっちゃうけど、どうやら今回だけは
少し違うのかもしれない。
「その・・・ありがと・・・ね。」
だから私も、今だけは素直によっすぃーに感謝した。
- 175 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時20分28秒
- 「ん?あぁ、ほらさ。お年寄りには優しくしなさいって、いつも言われてるから。」
そう言ってにやりと笑って憎まれ口をたたく。
冗談だとはわかっていても、やっぱり妙に悔しくなるのは、
こっちの方が子供だからだろうか。
素直にありがとうと言ってる時くらい、よっすぃーも素直になってくれてもよさそうなものなのに。
だから私もちょっぴりイジワルを言ってみたくなったのだ。
「そんなこと言ってー。本当はよっすぃー私と手を繋ぎたかっただけじゃないのー?」
ふふんと笑ってそう言ってみた。
もちろんそんなことぐらいでは、よっすぃーに対抗できるとは思っていなかったけど。
しかし。
「そっ、そんなんじゃないよ。何言ってんだよ。」
予想していたリアクションはそこにはなかった。
そして少し気恥ずかしげに顔をそむけると、ぱっと手を離してしまった。
どうしてだろう・・・。
なんだかいつものよっすぃーらしくない。
急に冗談が通じなくなってしまったとでもいうのだろうか。
それでこっちもちょっぴりあせってしまったから、
今度は私から彼女の手を繋いだ。
「よっすぃー。」
「・・・・・・・・。」
「ごめんね。怒っちゃった?」
「べっつにー。」
「あの・・・ね。」
「ん?」
「今度は簡単に手を離さないでね。」
そんなことを言うのは、やっぱり恥ずかしかったけど、
せっかくこうやって手を繋いで歩けるチャンスを、
変な意地で失いたくなかったから。
「・・・しょーがないな。梨華ちゃんがどうしてもって言うんなら。」
- 176 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時21分43秒
- やっぱりこれがよっすぃーの正しいリアクション。
妙に意地っ張りで、素直じゃなくて。
だけど、ちゃんと私にはわかっている。
「クス。お願いね。」
「うん。任せといて。」
こっちが大人になって優しく問いかけると、
それにはちゃんと応えてくれるということを。
「ひゃーっ、やっとついたわぁー。」
「おやつ、食べようよーっ!」
やっと広場についたのをいいことに、
加護ちゃんとののちゃんはもうすっかり元気を取り戻している。
「おつかれさま。ありがとねよっすぃー。」
「あ?いいよこれくらい。」
「あーっ!梨華ちゃんだけよっすぃーに手ー引っ張ってもらってたん?」
後ろを振り返った加護ちゃんが、私たちを見てそう言った。
「えーっ。ずるいぞ、梨華ちゃん!ののなんて一生懸命自分で歩いたのにー。」
ののちゃんも口をタコさんみたいにして文句を言っている。
「だってさぁ。梨華ちゃんがどうしてもって言うもんだから。」
「えーっ。そんなの言ってないじゃない。」
「言ったよ。」
「言ってません。」
「言った。」
「先に手を繋いだのはよっすぃーじゃないのよー。」
「だけどもう一度繋いできたのは梨華ちゃんだろ?」
そんなことを言いながら、未だに手を繋いでいることを
よっすぃーはわかっているのだろうか?
- 177 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時25分38秒
- 「はいっ!みなさん、全員そろっているか確認するので並んでくださいー!」
安倍先生の声にぱっと周りを見てみると、さっきまでいた加護ちゃんと
ののちゃんは、もう先に列に並んでいた。
「2人ともー、いちゃいちゃしてんとさっさと並びやー。」
加護ちゃんがからかって言ったその声は、周りのクスクス笑いを誘っている。
「あ、あのねぇ・・・。」
「・・・いこっか、梨華ちゃん。」
ようやく手を離すと、私たちはすごすごと気恥ずかしげに列に並んだ。
お弁当もおやつも済ませた私たちは、爽やかな風が吹き抜ける広場で、
ボール遊びをしていた。
といっても、参加しているのは例の3人で、私はそれを眺めているだけだったけど。
さすがにここで体力を使っては、帰る時にまたバテるのがわかっていたから。
「いっくでーっ!よっすぃーこの球受けれるかー。」
「へっへーん。かかってきなさい。」
「加護ちゃん、ののにもボールまわしてよ。」
そんな感じで、特にルールもないようなボール遊びをしている3人。
すごく楽しそうにはしゃぐよっすぃー。
私はそんな彼女のことを、微笑ましい思いで見つめていた。
「はい、ちょっとこっち向いて。」
そう声をかけられて振り返ると。
=パシャ=
同行していたカメラマンが、見上げた私の前でシャッターを切った。
「あ・・・っ。」
「すっごくいい顔で笑ってたから。驚かせてしまって悪かったね。」
- 178 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時27分15秒
- 「いえ・・・でもなんか、今のすっごくカメラ目線だったような・・・。」
「あはは。なかなかかわいかったよ。いい記念になるんじゃないかな。」
カメラを外すと、優しいおじさんの顔がのぞけた。
「これって、みんなの写真撮ってるんですよね?」
「あぁ。そうだよ。」
「それならひとつお願いしてもいいですか?」
「うん。」
「あそこでボール遊びをしている3人と一緒にとってもらいたいんですけど。」
「OK。おっ。なかなか元気のいい友達だね。」
おじさんと一緒にみんなのことろへ向かうと、
4人並んで写真をとってもらった。
もちろん私はよっすぃーの隣りの位置に並んだけれど。
その後、ののちゃんのワンショットを撮ってもらったり、
遊んでいるところを撮ってもらったり、何枚か撮影してもらったのだった。
「3年後、どの写真が卒業写真に載るか、楽しみだね。」
そのおじさんはそういい残すと、また違う場所へとカメラを撮りに向かっていった。
そして、翌週。
教室に入ると、一番後ろの方で、なにやらみんな楽しそうに集まっていた。
「おっはよっ。」
「ういっす。」
「あー。こないだの写真できたんだぁ。」
「うん。梨華ちゃんのはねぇ・・・。」
そう言いながら、よっすいーは目の前にある一枚の写真を指差した。
- 179 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時28分36秒
- 「これ。梨華ちゃんワンショットで撮ってもらったんだ。」
「わぁー。なかなか綺麗に写してくれてるっ。」
「かなりきしょいけどね。」
「またぁー。よっすぃーはいっつもそんなこと言うんだからぁ。」
「だってさ、どこかのアイドルみたいな目線だよ、これ。意識し過ぎ。」
じーっと私の写真を見つめた後、おえーってポーズをとっている。
「もぉー!そんなこと言わないのっ。」
いつもの冗談に付き合う私。
本当に、よっすぃーはいつもこんなこと言うんだから・・・。
だけど、彼女が写っている写真が気になったから、
私はキョロキョロとそれを探した。
「そういうよっすぃーのは?」
「あたしが写ってるの、これしかなかったんだ。」
「え?よっすぃーのこれ一枚きり?」
「うん。もっと撮ってもらったように思うんだけど。」
「現像してくれたおじさん、よっすぃーが写ってるの見てわざと破いたんじゃない?」
冗談には冗談で返す。きっとよっすぃーは笑ってまた反撃するのだろうけど。
「なにおー!心霊写真じゃないぞっ!」
その瞬間、背中からぎゅっと抱きしめられた。
それは反撃のつもりでしたのだろうけど、
私の胸はドキドキと鼓動を打ち始めた。
「なによー。よっすぃーが先に言ったんじゃないのよぉ。」
胸のドキドキをごまかすように、私はちょっとむくれてそう言った。
- 180 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時30分23秒
「あぁ。言ったよ。」
「なにそれ。逆切れ?」
「逆切れじゃないよ。マジ切れ。」
そしてあろうことか、もっと強く体を抱きしめられてしまった。
このまま抱きしめられていたら、どうにかなってしまいそう。
だから私は乱れる心を静めるように、こう言ったのだ。
「もぉ。よっすぃーやめてよ。」
だけど一向にその力は緩められる気配を感じない。
それどころか・・・・。
「また2人でじゃれあってるんかいな。」
こちらに戻ってきた加護ちゃんが、呆れ気味にそう言った。
「じゃれあってなんかないわよ。」
「そうそう。梨華ちゃんがふざけたこと言うからシメてるんだよ。」
「ふざけたこと言ってるのはよっすぃーでしょっ。」
「梨華ちゃんが生意気なこと言うから悪いんだ。」
「ホント、仲いいよね2人は。」
今度はののちゃんがにやけ面をして絡んできた。
「だってこれ見た?梨華ちゃんのきしょいワンショット。」
きしょいですって???
まったくよっすぃーは・・・・。
「どれ?あー、ほんまや。かなりきしょいな。」
「加護ちゃんっ!」
「ヤバイよね、梨華ちゃんて。」
「ののちゃんまで、もぉーっ!」
「ほらね、みんなきしょいって言ってるじゃん。あたしの勝ち〜。」
「はいはい。いいわよ、どうせ私はきしょいわよっ。」
ぷいっとむくれて顔を反らせた。
- 181 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時32分43秒
- みんなして私のこと・・・・。
だけど、そんな私の態度を心配したのか、
よっすぃーが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「マジで怒っちゃった?」
「しらないっ。」
「ねぇ、梨華ちゃーん。」
「なによ。どうせ私はきしょいんでしょ。」
「冗談だって。わかってるんでしょ?」
「あーぁー。よっすぃーが怒らせてしもたー。しーらないっと。」
「ののもしーらないっと。よっすぃー後はよろしく。」
「おいっ!2人ともっ!」
結局2人の援護を受けられなかったものだから、よっすぃーはますますあせっている。
「ごめんね?」
「ふーんだ。」
「ホントはかわいいよ、梨華ちゃんて。」
心にも思っていないことを言っている。
どうせこちらの機嫌が悪いから、適当にそんなことを言っているのだ。
「きしょいって言ったくせに。」
「だから、それは、つまり・・・」
つまり?私のことからかって楽しんでいるっていいたいのだろうけど、
なぜかいつもの歯切れのよさが、感じられなかった。
「つまり、なに?」
だから私も、わざとよっすぃーがあせるような視線を向けて、
その答えを待っていた。
しかし、一向に彼女は口を開こうとはしなかった。
それどころか、ただぼーっと何かを見つめている。
その視線をやけに唇に感じているのは気のせいなんだろうけど。
- 182 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時33分25秒
「・・・よっすぃー?」
「あ、あぁ。えっと、何の話してたんだっけ?」
「もぉーっ。いいわ。ホントによっすぃーは・・・」
いつもとは様子の違うよっすぃーに、きっと私はいつもとは違うリアクションを期待していたのだ。
私が彼女に望んでいたものは・・・・・・
ありもしない何かに期待している自分がそこにいた。
だから私は、言い知れぬ理不尽な思いに、かすかなため息をもらすと、
席に戻っていったのだった。
- 183 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月27日(金)22時35分11秒
- >作者
はい、今回はここまでですー。
やや長かったですかね?(w
まぁねぇ、梨華ちゃんも思うところは色々あるんですよ
(って何?(w )
ぼちぼちいきますので、みなさんもぼちぼちついてきてください。
決して作者を追い抜かないように♪
なんちゃって(wゞ
それではまた次回まで。ありがとうございましたー☆
- 184 名前:シフォン 投稿日:2003年06月27日(金)23時02分41秒
- まさか更新されていたとは…(何)
無理しちゃいけないって、いつも言ってるのに〜!!
でも…続きが読めて嬉しかったです♪
遠足、懐かしいっすねぇ(笑)…って、特に思い出はないのですが(ヲイ
今回の作品を読ませていただいていると、ちょっと学生に戻りたいなぁ…なんて思っちゃったり(苦笑)
次回の更新、ホントに無理しちゃいけませんよっ!!
いつまででも、まったり〜と待ってますから☆
作者様のペースでがんがって下さいね♪
- 185 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年06月28日(土)03時48分16秒
- 初めまして。修行僧2003さんの書く小説が好きで、サクラサク、繋いだ気持ち辺りから見させてい頂いてます♪
と、いってもココのサイトに気づいたのすらほんの数週間前からの本当に新入りで機能とかも分かってない者ですがw
このサイトで語られるいしよし物なら作者様はもういくつも不朽の名作を残してるなあとつくづく思わされます。
それで、いきなりで大変厚かましいと思うのですが作者様は痛い系でもいい作品を描けるように思います。
勿論いしよしの雰囲気は甘甘がベストだと思うんですけどw痛い系の作品は切なくて胸に深く残るので、
一度そういった方面の作品も手がけてみて欲しいなあと妄想していますw勿論ラストは激甘とかでも大歓迎ですが☆
と、戯言が過ぎましたが、これからも作者様の作品を見続けていきたいと思うので、お体にお気をつけて
更新頑張って下さい。楽しみにしています☆
- 186 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月28日(土)10時24分50秒
- 読ませていただきました!
連日の更新、お疲れ様です。ハイキングで手を繋ぐ二人…キャー素敵――(>_<)
最近、暴走多くてごめんなさい。
なんか4期って本当いいですね。この4人で分かれる前に何か思い出作りを
してほしいな…写真集とかラジオとか、何でもいいから…。
次回も楽しみにしてます。
- 187 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月28日(土)14時57分50秒
- 2人の駆け引きと間が何とも絶妙で、体中むず痒くなってきます。
・・・ウォ〜!っと叫びつつ体を掻きむしりながら読みました。
このスレの読者は皆暴走癖が・・・(w
>決して作者を追い抜かないように♪
あ・・危なかった。2レス飛ばすところだった。
ROMに対する戒めの言葉と真摯に受け止めます。
- 188 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時16分52秒
- ☆いしよし深夜枠おめ!(^-^)☆〜27時間TVですよー〜
>シフォンさま
>無理しちゃいけないって、いつも言ってるのに〜!!
あはは。作者もわかってはいるんですけどね(wゞ
すみません、いつも心配おかけしてしまって。
だけど、更新喜んでもらえて嬉しかったっす。
これからもぼちぼちがんばりますね(^-^)o
>俄かいしよしファンさま
はじめまして、なんだか全部読んでもらったみたいで(wゞ
嬉しかったです♪
>>痛い作品
えっとですね、実は甘とか言いながら、実際のとこ、
ベースは痛いものがほとんどなんですよね(wゞ
全くもって痛というのは、やっぱり書けませんですT-T
それは作者がいしよしヲタだから(wでもね、
よーく読み込んでもらえると、本当は甘いだけじゃなくって、
痛い部分も含んでいるってこと、おわかりいただけるのでは?
なんて、作者かなり生意気なこと言っちゃってますが(笑)
よければまた読み続けてやってください。お願いします♪
- 189 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時17分22秒
- >名無し読者79さま
>最近、暴走多くてごめんなさい。
暴走上等!!!(笑)
いやぁ、嬉しいんですよ、そういうのも(wゞ
もっと暴走していただけるようにがんがりますね♪いつもサンクスなのです☆
>ROM読者さま
>このスレの読者は皆暴走癖が・・・(w
暴走同盟立ち上げますか?(w
>ROMに対する戒めの言葉と真摯に受け止めます。
あーっ。自分だけいいこちゃんになってるぅ〜(笑)
結局は作者の息抜きで書いてる小説なので、
そんな真剣に考えてくれなくてもいいっすよ?
気楽にいきましょうよ、ね?(笑)
それでは、今日もコウシーン、ヘンシーン・・・(笑)
27時間TVまでのつなぎとして楽しんでいただければ(w
- 190 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時19分24秒
その日もまた、私たちは加護ちゃんの家に遊びに来ていた。
いつもの時間、いつものメンバーで、いつものゲームをして。
だけど、いつもと違う出来事が、この日、私とよっすぃーに訪れた。
玄関の扉がパタリと閉まる音が聞こえた。
加護ちゃんはお母さんのお使いをしに、ののちゃんと買い物に出かけてしまったのだ。
ぽつんと取り残された2人。
私とよっすぃーは、肩を並べてゲームに興じていたけれど、
あの2人がいなくなってしまったことで、私は妙な息苦しさを感じていた。
意識するのはおかしいことなのかもしれない。
だけど、私はやっぱり彼女と2人きりになってしまったことに、
明らかに緊張していた。
この気持ちを落ち着かせるためには・・・・
「ねぇ、よっすぃー。」
「えっ!なっ、なに?」
「クス。そんなに驚かなくても。」
なぜかよっすぃーの声が上ずっている。
それがちょっぴりおかしくて、思わずクスリと笑ってしまった。
- 191 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時20分15秒
「・・・なに?」
「悪いんだけど、ちょっとストップしてもらえない?」
「いいけど。なんで?」
「なんでって。・・・ちょっとトイレにいきたいの。」
「あ、あぁ。いいよ。」
そして私は、彼女のことを意識していないことを示すために、
わざとその頭に手をかけた。
本当はトイレなど行く必要なんてなかったから。
「いない間にズルしちゃだめよ?」
「しないよ。そんなことしなくったって勝てるからね。」
「ふふっ。いいこいいこ。」
妙なところが子供っぽくて。
だから私は、そんなかわいいよっすぃーの髪をなでてみた。
「あのねぇ。子供じゃないんだから。」
むぎゅっと口を突き出してふてくされている。
やっぱりよっすぃーはかわいい。
「あーら。子供だと思ってたけど?」
たまらなく愛しくなるその瞳。
こちらが言った冗談の真相を知ったら、きっとよっすぃーは呆れてしまうだろう。
そんなことを考えていたから、私はちょっぴり苦笑いを浮かべてしまった。
- 192 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時21分09秒
「・・・そんなこと言ってないで早くいってきたら?」
「そうね。じゃ、ちょっと行ってくるね。」
「30数えるうちに帰ってきてよ。いーち、にーい・・・」
「もぅ。ホントに子供なんだから。」
そういい残すと、私はトイレへと向かった。
洗面台に立って、自分の顔を鏡で覗き見ても、
やっぱりまだ少し緊張しているのがわかる。
「いつもと同じようにしていればいいのよ。いつものように・・・。」
自分自身に言い聞かせてはみたものの、
それが効果のあるものでないことくらい、わかっていた。
だって、私はこんなにも、よっすぃーのことが好きなのだから。
ため息ともとれない、なんとも言い難い気持ちを吐き出すと、
私はまた、よっすぃーが待っている部屋へと戻っていった。
「おまたせーっ。」
「カウントかるく30越えてるよ?」
にやりと笑うその表情。
「何バカなこと言ってるのよ。」
そんな冗談がこの時ばかりは、私を安心させてくれた。
これ以上意識なんてしなくても済みそうだから。
静止画面を確認しながら私はふふっと微笑んだ。
ちゃんとズルはしないで待っていてくれたみたい。
もちろん、そんなズルをしなくても、よっすぃーはゲームに勝つけれど。
- 193 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時22分05秒
そんなことを考えながら、彼女の前を横切ろうとしたその時。
「きゃっ!」
コントローラーのケーブルに足を絡めてしまって、
体が前に倒れていった。
「危ないっ!」
とっさに掴んでくれた腕。
だけど、その勢いはどうにも止められず、結局私は彼女に
受け止められるようにして、カーペットに転んでしまった。
どうしよう。よっすぃーが怪我でもしてしまっていたら・・・。
「・・・・大丈夫?」
こちらが聞く前に、彼女の方から声をかけてきてくれたことに、
おそらく怪我はしていないことがわかってほっとした。
「よっすぃーこそ。ごめんね?」
見下ろす視線の先に彼女の綺麗な瞳があった。
私の髪が、その白い頬に降りかかっている。
その時の私は、ただ、その瞳に心奪われていた。
どこか真剣に私をみる瞳が、なぜだかとても心に響いてきたから。
何も言わないで、じっと見つめあっている視線。
どうして彼女はさっきから黙ったままでこうしているのだろう。
もしかして、本当は全然大丈夫なんかじゃないのかもしれない。
- 194 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時22分58秒
「ねぇ・・・本当に大丈夫?」
そう聞いても、やっぱり彼女は何も答えてはくれない。
しかし、その瞳は何か言いたげに私に向けられている。
痛いくらいに突き刺さってくる視線が注がれていたのだ。
その表情に、私の中にあった何かがはじけていった。
さらりとカーペットに広がっている髪に手を差し入れた。
本当は、いつもこんな風にして彼女に触れてみたいと思っていたのかもしれない。
優しく包み込むように抱きしめて、キスをしてみたいと。
そっと目を閉じて、唇を近づけていった。
ドキドキして、胸が張り裂けそうなほど、苦しかったけど、
それでもやっぱりよっすぃーに触れてみたかったから・・・・。
だけど、心の中のもう一人の自分がそっと私にささやきかけた。
『『『よっすぃーの気持ちは梨華にはないよ。』』』
そうなのだ。
いつもふざけてからかって、楽しく遊んでいても、
よっすぃーの気持ちは私にはない。
せいぜい友達として好きでいてくれているだけなのだ。
私が彼女にもっている気持ちは、きっと彼女の中にはないのだから・・・
- 195 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時24分06秒
今ならまだ、冗談だってやめることができる。
きっとよっすぃーもそう思っているだろう。
笑って『冗談よ。』なんて言ったら、きっと笑って許してくれる。
友達でいられるのだ。
「クス。びっくりした?」
だから私はどうしようもない悲しみを隠すように、笑ってそう言ったのだ。
だけど・・・・
よっすぃーはいつものようには笑ってくれなかった。
その表情は、さっきよりも複雑なものになっている。
ぎゅっと眉根をよせて、まるで彼女も苦しんでいるかのように・・・・
そして、よっすぃーは私の頭を引き寄せた。
「・・・・・・・・んっ・・・・・・・・」
強引に重ねられる唇。
それは私がした冗談への報復とばかりに。
しかし、私はそれを受け入れることができなかった。
だって彼女は私とキスがしたかったからキスをしているのではなく、
悪ふざけの代償を求めているだけに過ぎないと思ったから。
こんな悲しいキスなら、したくはなかった・・・・・
「・・・・・・・・っ・・・・・・・」
悲しみが胸にあふれてきて、もうこれ以上唇を重ねていることが
絶えられなくなっていた。
抵抗して唇を離そうとしたけれど、彼女はそれを許してくれはしなかった。
- 196 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時25分26秒
苦しくもれていく息。
それをふさぐように、何度も何度もキスを重ねてくる彼女。
私がしようとしたそれは、今、こんなにも重い罪としてこの身に降りかかっていた。
そして、悲しみが零れ落ちる寸前で、彼女の腕がぱたりとカーペットに落ちていった。
「・・・・なんで・・・こんなこと・・・・」
混乱する頭を抱えながら、そう言うのが精一杯だった。
罪の償いをするには、あまりにも重い罰のような気がして。
だけど、よっすぃーは目をぎゅっとつぶったまま。
「梨華ちゃんが悪いんだよ・・・あんなことしようとするから・・・。」
やっぱりそうだったのだ。
私がした行為に対する報復。
彼女の気持ちはそこにしかなかったのだ。
「だっていつもふざけてるじゃない。だから私は・・・・」
それはズルイ言い逃れだった。
本当は冗談であんなことをした訳ではなかったから。
けれど、もしあのままキスをしていたのなら、
拒絶されることもまた、容易に想像できたのだ。
そして、よっすぃーは本音をもらした。
「そうだよ。あたしもふざけていただけ。ふざけてキスしただけだよ。」
ズキンと胸に刺がささっていった。
私のことなんてやっぱりその程度にしか思っててくれなかったのだ。
いや、最初からそんなことはわかっていたはず。
よっすぃーはいつも私をからかって楽しんでいただけ。
特別な感情なんてものは持っていないのだ。
- 197 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時27分23秒
ドーンと突き落とされていくような寂しさが体中に襲い掛かっていく・・・・
だけど、それじゃどうしてここまで彼女は、こんなにも
ふさぎ込んだようにしているのだろう。
その表情を隠すようにおかれた腕の下には、一体どんな顔があるというのだろう。
ふざけていたという割に、彼女は一度も笑っていなかった。
なら、どうして彼女は・・・・
いや、ここでいくら彼女の気持ちを考えても、私には理解することはできないだろう。
そんなモヤモヤを抱えていても、何の解決にもならないのだ。
それならいっそのこと・・・
私にはすべきことがある。話さなくてはいけないことがある。
さっきしようとしたことには意味があるということ。
私はよっすぃーが好きだということ。
それを伝えるのは、きっと今しかない。
「よっすぃー・・・・・。私、私、本当はね・・・・」
ようやくの思いで切り出した時、ちょうど玄関の扉が開く音がした。
私の想いは、伝えられないままだった。
そして、翌日。
「おはよう。」
いつものようによっすぃーはそう言った。
だけど、本当はいつもと同じでないことくらい、私にもわかっていた。
「・・・おはよ。」
- 198 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時30分58秒
- ぎこちなく返してしまった返事。
どうしてもっと素直になることができないのだろう・・・
例え、好きと伝えて振られたとしても、
こんな風にぎこちなくいるよりはよほどましかもしれないのに。
昨日タイミングを逃してしまったのは、私にとって幸か不幸か。
それは今でもわからないことだった。
ふーっと重い息を吐き出すと、私は机の上に体をもたげた。
何もかも、うまくいかない・・・・・
心の中でつぶやいたその声は、まるで私の体ごと、
深い闇に引き落としていくかのようにこだましていた。
- 199 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月28日(土)17時33分03秒
- >作者
まぁ、こんなとこです(w
お待たせいたしました。
やっと次回から時間軸が戻ります(笑)
まだ一行も書いてないので、いつ更新できるかわからないんですけど(wゞ
それではまた次回まで。
しーゆー♪
- 200 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月28日(土)19時08分39秒
- 更新お疲れ様です。
梨華ちゃん、そんなに悩んでいただなんて…。
よっすぃーと思いがもうすぐ通じ合えそうですね、なんかうれしいです。
読んでいる私も。ハッピーな感じになります、最高でっす!!
- 201 名前:シフォン 投稿日:2003年06月28日(土)20時34分09秒
- またもがんがってる〜(笑)
梨華たん切ないよ梨華たん…(涙)
さて、ここからどう甘くなってくれるか、いつもながら楽しみです♪
27時間テレビ、深夜枠に備えて、今から一眠りしようかしらねぇ(苦笑)
次回更新、気長にまた〜りお待ちしております☆
- 202 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月28日(土)22時22分07秒
- ・・・素直になるのにも勇気がいるよね。
なれないオイラは独り者・・・・ほっとけ〜〜!
27HTV見てたら、スタジオでよっすぃ〜のへたれ折り鶴に突っ込む
梨華ちゃん発見! 思わずTVに向かってガッツポ−ズ。
- 203 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年06月29日(日)02時25分46秒
- 更新お疲れ様です。
ベースは痛いものがほとんどなんですよね>そうですねぇ。痛いところが含まれているのは
分かっているつもりですが、よく考えたらホントにそれがストーリーの大事な転機を担っている
風に見えますね(^^;どうやらやはり、ただの戯言だったようですw
これからも戯言と暴走が過ぎるかも知れませんがw、見続けさせて頂きたいのでよろしくお願いします☆
- 204 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時39分58秒
- いしよしイチャイチャシーン。萌え氏にしましたが、何か?(w
>名無し読者79さま
>よっすぃーと思いがもうすぐ通じ合えそうですね、なんかうれしいです。
えへへ♪おまたせしました。やっとこイチャシーンです(wゞ
>読んでいる私も。ハッピーな感じになります、最高でっす!!
やった♪\(^▽^)/ハッピー♪ありがとなのです♪
>シフォンさま
>27時間テレビ、深夜枠に備えて、今から一眠りしようかしらねぇ(苦笑)
萌えましたよねぇー(ポワワン)
して、寝不足は大丈夫でしょうか?(w
これからもよろしくよっすぃーなのですっ☆
>ROM読者さま
>なれないオイラは独り者・・・・ほっとけ〜〜!
いや、ロンリーは意外に多いと思いますよ?(笑)
>27HTV見てたら、スタジオでよっすぃ〜のへたれ折り鶴に突っ込む
と、同時に、よっすぃー今まで一度も鶴折ってなかった事実も判明(w
萌え氏にシーン1号ですよね(笑)
>俄かいしよしファンさま
>これからも戯言と暴走が過ぎるかも知れませんがw、見続けさせて頂きたいのでよろしくお願いします☆
もーまんたいなのですっ♪(wゞ
基本的にリクありですし(ヲイ
何かネタっぽいのがあればちょろっと書いてもらえると、
そこから妄想しまくって作品にするのもアリかな?なんて。
(やっぱりここでも作者、他力本願(wゞ)
これからもよろしくなのです!!!
それでは甘シーンに突入!
もちろん本物を見せ付けられた昨日に比べたら、
全然甘くはないのですが(w
では、どうぞ!
- 205 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時42分15秒
=吉澤視点=
一歩、彼女へと向かう足を進めた。
そしてまた、一歩。
ゆっくりと進むその先には、机に伏している梨華ちゃんの姿があった。
「・・・梨華ちゃん。」
肩に手を置いて、体を揺らせた。
「あっ・・・よっすぃー・・・」
気負っていた気持ちがほんの少しざわめいた。
顔をあげた彼女の表情が、頼りないほど弱々しくみえて。
それはまるで、捨てられた仔犬のようだと思ってしまったから。
「どうしたの?元気ないじゃん。」
どうしたのも何も。その原因は昨日のキスにあることはわかっていたけれど。
髪にそっと触れて、あたしは机の前にしゃがんだ。
ちょうどこれなら彼女と目線が合うから。
どんな顔をして、梨華ちゃんを見たらいいのか。
そんなことはわからなかったけど、とにかく今は彼女と視線を合わせたかったのだ。
その表情をじっくりと見定めるために。
- 206 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時46分07秒
席替えしても梨華ちゃんは、結局前の席のままだった。
運がいいのか悪いのか。
今のあたしの席からは、ちょうどその横顔を眺めることができるから、
こちらとしては嬉しかったのだけれど。
一番前のこの席は、2人で話すには色んな意味で都合がよかった。
「ううん、どうもしないよ。」
ふわっと笑って目を細める彼女。
まるであたしの気負った勢いを和らげるように。
それに合わせるように、あたしもそっと微笑んだ。
もしかしたら、このまま何もなかったように、
また以前の2人でいられるのかもしれない。
そう思わせてくれるほどの優しい瞳が、あたしの前に注がれていた。
艶やかに光る髪をもてあそぶかのように、指に絡めて遊んでみる。
本当は言わなきゃいけないことがあるのに、
今のあたしは、なぜかずっとそうしていたい気持ちにかられていた。
「クスっ。よっすぃーこそどうしたの?さっきから髪なんて触って。」
そう言われて恥ずかしくなったけれど、こうやって梨華ちゃんに
触れていられることが嬉しくて。
染まっていく頬を隠すこともせずに、あたしは梨華ちゃんの髪を飽きることなく指に絡めていた。
しかしそろそろそれも終わらせて、ちゃんと切り出さなくてはならない。
授業が始まる時間が近づいてきていたから。
- 207 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時47分27秒
「ねぇ・・・梨華ちゃん・・・」
「なぁに?」
「その・・・さ・・・・」
「クスっ。本当に、一体どうしたの?よっすぃー。」
さっきよりももっと頬に熱が集まっていくのが自分でわかったけれど、
視線を逸らさずに、あたしは梨華ちゃんの瞳をみつめた。
「友達・・・・。あたしとこれからも友達でいてくれる?」
何をもってそう言うのか。
わざわざ示さなくても、もちろんあたしにも彼女にもわかっていることだった。
昨日あんなことがあっても、これからも今までと同じように
友達でいてくれるのかという確認。
その痛みに目をそむけるのは、ズルイことなのかもしれないけれど、
今は彼女との繋がりを、必死の思いで掴みたかったから。
そんな思いは微塵も顔には出さなかったけど。
「何言ってるの?今までもこれからも、ずっと友達でしょ。私とよっすぃーは。」
ふっと笑った梨華ちゃんの笑顔に、救われる思いがした。
これで友達としての存在は、確実に取り戻すことができた気がして。
だけど、そう思っていたのはあたしの独りよがりだったのだ。
「そう・・・だよね。うん。よかった。」
「ふふっ。おっかしーよっすぃーったら。」
「何も笑うことなんてないだろ?」
少しぎこちなくも、いつもの調子を取り戻すように、笑って答えた。
今はまだ元のように戻ることは難しくても、
少しずつ、以前の2人の関係に戻れればいい。そう思いながら。
だけど。
- 208 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時48分48秒
- 「笑っちゃうわよ。おかしくて、おかしくて。涙が・・・でそう・・・・・」
「梨華・・・・ちゃん・・・・?」
言ってる言葉とは全く逆の表情。
彼女は本当に今にも泣き出しそうな顔をしていた。
あたしはぎゅっと唇をかみ締めた。
きっと梨華ちゃんは、ずっと辛い気持ちを我慢していたのだ。
そうさせてしまったのはこのあたし。
やはり、元に戻るなんてことは無理だったのだ。
都合のいいことを考えていた自分に、怒りすら覚える。
一体、どうしたらいいのだろう・・・・。
あたしはもう側にいない方がいいのかもしれない。
それで梨華ちゃんの傷ついた心が救えるのなら、
あたしは、あたしは・・・・・。
もうあたしができることなんて何もないのだ。
それを嫌と言うほど思い知らされた。
もし、今のあたしにできることがあるとするなら――――――
それは友達としての存在をも放棄すること。
だから、あたしは。
「梨華ちゃん・・・放課後、屋上で待ってるから・・・。」
これで何もかも最後にしよう。
自分の心の奥底にある、本当の気持ちには目をつぶって、
ぎゅっと梨華ちゃんの手を握り締めた。
きっとこれが彼女に触れることができる、最後の瞬間だと心に刻みながら。
- 209 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時50分01秒
「はーぁ・・・・・・なんなんだろうな、一体。」
西日が傾きかけている屋上で、まだこない梨華ちゃんを待ちながら、
あたしは一枚の写真を眺めていた。
それは先日注文して、今日やっと手にした写真だった。
写真の中で微笑む一人の少女。
からかうと、いつも頬を染めて、むくれるように対抗して。
あたしの心をいつもドキドキさせてくれた彼女。
冗談を言って、笑い合って、時に本気で抱きしめてみた。
あたしがずっと好きだった梨華ちゃんの笑顔。
とうとう最後まで、本気でかわいいとは言ってあげることはできなかったけど。
「さよならするんだ。今更写真持っててもしょうがないだろ?」
自分にそう言い聞かせると、写真の真ん中に両手を添えて、
一気に引き破ろうとした。
だけど。
「・・・・・・くっ・・・・・。でき・・・ない・・・・梨華ちゃんを諦めること・・・・なんて・・・」
悲しくて・・・・いや、自分自身に悔しさがこみ上げてきて、
泣くことすらできないでいた。
ぐるぐると渦巻く心模様。
あたしは・・・・梨華ちゃんのこと・・・・・・・・・
瞬間、強い風が吹き抜けていった。
そして弱々しく握り締めていた写真が、まるで羽が生えたように、
手からすり抜けて飛ばされていく。
それを追いかけるように振り向くと―――梨華ちゃんがいた。
- 210 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時52分37秒
ごうごうと吹き抜ける風の勢いで、扉がバタリと音を立てて閉まる。
それとともに、風の流れもやんだ。
だけどあたしは立ち尽くしたまま動けないでいた。
なぜなら、彼女がその写真を手にとって、じっと見ているのがわかったから。
「・・・・よっすぃー・・・・これ・・・・・」
どう答えたらいいのか、何も思いつかなかった。
以前のあたしなら、冗談のひとつでも言ってごまかすことが
できたのだろうけど、当然そんなことはできるはずもなかった。
色んな思い出が胸の中を駆け巡っていった。
初めて梨華ちゃんを見たときに感じた胸のトキメキ。
一番にみんなの前に立って、自己紹介をした彼女。
女の子っぽくて、かわいくて、ちょっと高いキーのその声に、
完全にノックアウトをくらった。
振り返った彼女と偶然目が合った瞬間、思わず嬉しくて笑顔になってしまったあたし。
ずっと目が離せなかった。
好きって気持ちで心がいっぱいになって。
いつも梨華ちゃんのことばかりを見ていた。
拗ねた顔も、笑う顔も、全部抱きしめたくて。
だけど、それも今日これまでにしなくてはならない。
これ以上彼女を苦しめることはできないのだから。
しかし、あたしは未だ未練たらしい思いを抱えて苦しんでいたのだ。
友達ですらいられない、その事実がわかっていても。
- 211 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時54分30秒
そんな重苦しい胸の中にひとつ、やけっぱちな考えが浮かんできた。
どうせ友達ですらいられないのなら、思い切って告白して、
振られて泣いて、すっきりしたい。
もう全ての想いをぶちまけて、何もかも心残りのないように、
砕け散りたい。
これがきっと、最後になるのだから。
「その子、かわいいだろ。」
「え・・・・っ・・・・・」
「あたしがずっと好きだった子の写真。昨日無理矢理キスして
嫌われてしまったけど・・・・。」
自嘲気味に笑いながら、梨華ちゃんに近づいていく。
梨華ちゃんは、黙ったまま。
それもそうだろう。
ずっと友達面していたあたしが、本当は好きって気持ちを抱いて自分を
見ていたことを知っては。
「・・・・・・・・・。」
「今更言っても遅いんだろうけど、最後に言わせて欲しいんだ。
あたし、ずっと梨華ちゃんが好きだった。ずっと、梨華ちゃんのことだけが。」
夕日が彼女の頬に対称的な影を落とす。
光が当たる方は、より鮮やかに、そして影になる方は、
より濃いコントラストを刻み付けるように。
「・・・・最後・・・・って・・・・」
「嫌われてしまったことはもう仕方ない。だけどずっと抱えていた気持ちを
やっぱり伝えてみたくて。もうこれで友達面するのも最後にするから。
梨華ちゃんを傷つけてしまったあたしができることは、きっとそれくらいだ・・・か・・・」
- 212 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時57分25秒
体にふわりとした心地いい圧力がかかっていく。
その瞬間、梨華ちゃんがあたしを抱きしめていたのだ。
「・・・・・・・・バカ・・・・・・・・」
「・・・梨華・・・ちゃん・・・・?」
「なんでそんなこと勝手に決め付けるのよ。」
「なんでって・・・・それは・・・梨華ちゃんを傷つけてしまったから・・・」
「傷ついたわよ。当然でしょ。」
「ならどうして・・・・」
「私が傷ついた本当の意味もしらないくせに。勝手に自分で何もかも決め付けないでよ。」
「本当の・・・意味?」
「よっすぃーはあの時ふざけてキスしただけだって言ったじゃない。
それが本音だと思ったから。だから私は傷ついたのよ。」
「・・・・え・・・・・・?」
「だって・・・・私も・・・。私も、本当はずっとよっすぃーが好きだったんだから。」
背中にまわされた腕が、ぎゅっと力強くあたしを抱きしめていく。
あたしは、ただただ信じられない気分で、抱きしめ返すこともできないでいた。
「・・・・・・・・うそ・・・だろ・・・・・。」
「うそじゃないよ。」
「梨華ちゃんが・・・あたしのこと?」
コクリと頷いた頭が、あたしの肩に触れた。
頭の芯がビリビリと痺れていく感覚。
こんなことって・・・・・・・
- 213 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)14時58分35秒
しばらくそうやって抱きしめられていたからかもしれない。
ドクンドクンと駆け巡っていく血が、頭の中にもようやく巡っていき、
そしてあたしはやっといつもの『あたしらしさ』を取り戻すことができたのだ。
「梨華ちゃん・・・あたし・・・・・ね・・・」
「・・・うん。」
「悪いけど、やっぱり梨華ちゃんとは友達でいられないよ。」
もたげていた頭を起こすと、彼女はあたしを切なげに見つめていた。
「どう・・・して・・・・・」
だからあたしはにやっと笑いながら、いつもの調子でこう言ったのだ。
「友達は今日で卒業。これからは、あたしの恋人になってよ。」
切なげに見上げていた瞳が、ゆっくりと変化していく。
潤んだ瞳にキラッと輝いたもの。それは・・・・・
「もぉ。よっすぃーの・・・・バカ・・・・」
零れ落ちた一筋の涙が、ぎゅっと抱きしめたあたしの肩に、染み込んでいった。
- 214 名前:修行僧2003 投稿日:2003年06月29日(日)15時01分20秒
- >作者
・・・・にやり(w
更新終了〜♪
あ。まだ続きますので(笑)
まぁね、本物には負けますよ(苦笑)
作者も梨華ちゃんにマッサージしてもらいたいっ!!!(壊)
いいっすよね、あの2人(wゞ
やっぱあの2人はホンモノです。
気付いてないのかしら、いしよしは。
もうみんなにバレてることを。クス(ry
では、また次回まで♪
- 215 名前:チップ 投稿日:2003年06月29日(日)15時54分02秒
- お久しぶりです、やっと読めました!(嬉泣)
最近微妙に時間がなくてじっくりゆっくり読みたかったんで今日やっと…(感涙)
徹夜続きでナチュラルハイ通り越してブルーになってたんですけど完璧に癒されました。
ありがとうございました。27H最高でしたね、あの二人(ww
- 216 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年06月29日(日)16時36分20秒
- 更新お疲れ様です!!
ヤバいです!!このストーリーは・・・ツボです!!
まだ続くんですか?素で嬉しい・・・
朝まで起きてた甲斐がありましたね。
何度ビデオや動画を見直してニヤニヤしたことか・・・(笑)
では、次回更新も楽しみにしてます♪♪♪
- 217 名前:シフォン@i 投稿日:2003年06月29日(日)17時01分19秒
- バスの中で泣きながら読みますた…(素)
寝不足なんで、テンションおかしくなってます(汗)
27時間テレビのビデオは、家宝にします(笑)
>作者様
連日の更新お疲れ様です♪
今回は甘シーンなのに、泣かせていただきました(苦笑)
次回更新も無理なさらずがんがって下さいね☆
- 218 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003年06月29日(日)17時33分25秒
- あ、甘すぎる!!!失神寸前や〜!
頑張ってください!
- 219 名前:名無し読者79 投稿日:2003年06月29日(日)20時42分34秒
- 更新お疲れ様です。
写真が風にその後、なんて素敵なシチュエーションなんでしょう…。
私も見ました。お二人の仲の良さ…。
いしよしってなんでこんなにしっくりくるんでしょうね。
もう、妄想なんて言わせないぞ!なんちって(爆
- 220 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年06月30日(月)01時06分47秒
- 更新お疲れ様です♪いいですねぇこの痛→甘になる時の胸がキューッと締め付けられていたのが、
解放されてとっても愛しくなる瞬間というか・・・アラまた暴走しちゃいましたねw毎度申し訳ないっす(^^;
続き楽しみにしてます。27Hばりに甘くいっちゃって下さいw
- 221 名前:ROM読者 投稿日:2003年06月30日(月)02時14分35秒
- やっぱりこうでなくちゃね。・・・って、続きがあるのですか。
萌える準備はできてるゼ!なので宜しくお願いシマス。(甘
- 222 名前:なな素 投稿日:2003年07月01日(火)02時57分10秒
- どうも、お久しぶりです。
いや〜
やはり修行僧2003さんの書かれる展開は素晴らしい。
この展開、この展開を待ち望んでましたよ!(笑)
27時間Tvでも燃料はたくさん投下されましたし、続き期待してます。
- 223 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)14時59分15秒
- >チップさま
いやぁ〜。本当にお久しぶりでございます(wゞ
>徹夜続きでナチュラルハイ通り越してブルーになってたんですけど完璧に癒されました。
それはヨカタ!!!忙しい中、読んでいただいてありがとうございました!
相変わらず、甘驀進しておりますが(w、どうぞこれからも
応援してやってください。お願いしまーっず♪
>ぷよ〜るさま
>ヤバいです!!このストーリーは・・・ツボです!!
やったぁー♪マジ嬉しいです。そう言っていただけて(^-^)v
>何度ビデオや動画を見直してニヤニヤしたことか・・・(笑)
あ。作者も同じことしていたり(w
これからもよろしくなのです♪
>シフォン@iさま
あぅ。大丈夫ですか?携帯代。T-T
>次回更新も無理なさらずがんがって下さいね☆
えへへ(苦笑)まぁ、ぼちぼちいきますね。
いつも感謝感謝♪なのです☆
>LOVEチャーミーさま
>あ、甘すぎる!!!失神寸前や〜!
どもども♪ありがとうございます♪
さて、今回の投稿分、よりあまーく書いてみましたが(w
如何なものでしょうか?(笑)
>名無し読者79さま
>写真が風にその後、なんて素敵なシチュエーションなんでしょう…。
お褒めのお言葉、ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・
もうね、これからもがんがっていこうと思いましたよぉ〜♪
>もう、妄想なんて言わせないぞ!なんちって(爆
いや、妄想じゃないっす(笑)
マジでできています、あの2人は(w
ステキですよねー。いいなぁー。究極の美少女カップルケテーイ♪(wゞ
- 224 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時09分34秒
- >俄かいしよしファンさま
どうやら喜んでいただけたみたいで(wゞ
作者も嬉しい限りです。ほんとうにどうもありがとうございます♪
これからももっと暴走&妄想していただけるようにがんがりますね(w
>ROM読者さま
ALL Right!!!
甘ならこの作者に任せてください(笑)
今回のはやや色っぽく書いてみましたが、
果たして喜んでいただけるのでしょうか?(w
引き続き応援よろしくなのです☆
>なな素さま
>やはり修行僧2003さんの書かれる展開は素晴らしい。
やり〜っ♪♪♪そんな嬉しいこと書いてくださったら、
作者テングになっちゃいますよぉ〜(照れ)
でも嬉しかったです。どうもありがとう♪♪♪
>この展開、この展開を待ち望んでましたよ!(笑)
作者も待ち望んでました(笑)
ここにもってくるまでの前フリ(あるいは痛とも言う(w )
にくるまでって、結構書いてても辛いんですよね。
その分より「甘」を感じていただければ、本望です。
なんだか今回はいつにもまして、すごーく励みになる
レスをつけていただき、本当に感謝しています♪
お久しぶりのあの方も、いつもご贔屓にしてくださっている
あの方も、そしてROM購読されているそこのあなたも(笑)
いやぁ、本当に嬉しいです。どうもありがとう♪
これからも、もし一人でも作者の作品を読んでくれる方が
いるのであれば、ずっと色々な作品を書いていきたいと
思っていますので、どうぞよろしくなのです♪
それでは続きご覧ください。どうぞ。
- 225 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時12分33秒
=石川視点=
体がポカポカと熱く感じるのは、泣いて体温があがってしまったせいだろうか。
それともこんなにも優しく抱きしめてくれる彼女の温かさが、私の体に
まで伝わってきたからだろうか。
肩に頭をもたげながらぎゅっとつぶっていた目をあけると、
茜色にたなびく雲が、柔らかな色合いをもって、潤んだ視界に映し出されていた。
「・・・梨華ちゃん。」
私の名前を呼ぶ声が、すぐ耳元に響いてくる。
なんてステキなことだろう。
私はボーっとした頭をふりきるようにして、それでもまだしっかりと
体を寄せているよっすぃーにつぶやいた。
「・・・なに?」
「あのね・・・。その、まだ昨日のこと、ちゃんと謝っていなかったから。」
優しい気持ちが胸の中に満ちていく。
もう何もかも済んでしまったことなのに、それでも彼女がそう言ったものだから。
「いいよ、もう。気にしてないから。それに・・・先にキスしようとしたのは、私のほうだし。」
恥ずかしくて顔をあげることができないから、私はそのまま
彼女の体に直接伝わる距離でそう告げた。
「それでもやっぱりあたしが悪かったよ。だから、謝りたいんだ。」
もたげていた体を離して、肩に手をかけたよっすぃー。
夕日が彼女の頬をオレンジ色に染めている。
いつもふざけてばかりいて、こんな風にちゃんと見つめあったことなんて
なかったから、胸の中に少しの気恥ずかしさが生まれていた。
- 226 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時15分18秒
間近でみると、余計にその綺麗な顔が目にとまる。
その表情は、初めて彼女のことを見たあの日の衝撃を思い起こさせるほどの、
美しさを映していた。
「恥ずかしいよ・・・よっすぃー・・・」
その大きな瞳から逃れるように、視線を外した。
そうでもしないと、体中の血が頬に集まっていきそうだったから。
「梨華ちゃん、あたしを見て。」
肩にかけていた手が、今度は私の頬をそっと包むようにして差し伸べられた。
そして私はまたもや、その瞳の中に自分の姿を映すことになってしまった。
一呼吸つくと、彼女はそっと私に告げた。
「ごめんね、昨日は乱暴なことして。本当に悪かったよ。」
「ううん。よっすぃーは悪くないよ。さっきも言ったけど、私が先に・・・・」
「キスしようとしたんだよね。」
「・・・うん。」
「あのさ・・・・。こうなったからって聞くのはズルイ気もするんだけど、
本当は梨華ちゃん、あの時本気でキスしようと思ってたんじゃないかって。
・・・そんなこと聞くのはルール違反かな。」
微かに緩んだ瞳で私を見ていたけれど、それはいつものような
にやけたものではなく、逆にこちらの気持ちを和らげてくれるような笑顔だった。
だから私も、素直に答えたのだ。
「・・・・実は・・・そう。本当はあの時、よっすぃーにキスしたかったの・・・」
「そっか・・・。」
「でもやっぱり勇気がなくて。だから、冗談っぽくごまかしてしまったの。」
- 227 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時16分39秒
そう言ったとたん、彼女はあからさまに大きなため息を一つついた。
「・・・なぁーんだ、そうだったのか。そんなことなら・・・」
「・・・え?」
「あたしの方から先にキスしていればよかったね。」
クスリと笑った口元から、白い歯がこぼれおちている。
昨日、互いの思いを掛け違ったばかりに、苦しい想いをしながら
重ねた、その唇から。
「よっすぃーから?」
「うん、そう。だってあたしはいつも、梨華ちゃんとキスがしたいと思っていたから。」
きっとその想いは冗談などで言っているものではないのだろう。
私を見つめる視線が、真剣に注がれているから。
それがわかるから、私もまたその瞳を見つめ返した。
言葉を紡がなくても、今の2人の気持ちが一つの方向へと向かっていることに、
2人とも気付いていた。
―――キスがしたい―――
その想いを先に口にしたのは。
「キス、したい。梨華ちゃんと。」
頬に添えられている手の震えが、わずかながら伝わってくる。
「私も。よっすぃーとキスがしたい。」
心に灯った火が、ゆらゆらと揺らめいていく。
ゆっくりと、戸惑うように近づいていく距離がもどかしくなるほど、
2人ともぎこちなく唇を近づけていった。
そして。
- 228 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時18分02秒
柔らかい弾力を唇に感じた。
昨日のキスと比べることなんて、最初から間違っているのだろうけど、
それは本当に、昨日したものとは全く違ったキスだった。
心が嬉しさで満たされていく。
幸せがあふれるほど沸いてきて、体中を満たしていくような、
そんな幸せなキス。
好きな人と重ねるキスが、こんなにも幸せなことだなんて、
私はその時初めて知ることができたのだ。
キスというものは、一体どれくらいの時間をかけてするものなのか。
初心者の私にはわからなかったけれど、それでも彼女とのキスは、
もう随分長い間、繋がれていた。
やがて。
「クスっ。」
「ふっ・・・・あははははっ。」
ついに2人ともおかしくなって笑い出していた。
キスを離すタイミングはうまくいかなかったけど、
笑い出したタイミングは妙にぴったり。
「長かったよね、今のキス。」
「うん。私もそう思ってた。いつ離したらいいんだろうって。」
笑い出したのは、照れくささをごまかすためのものであったのも、
また真実だったけど。
「そうだ。これ、よっすぃーに返すね。」
それは今の今まで手にしていた、私の写真だった。
自分の写真を渡すのは、本当のところかなり恥ずかしかったけど、
これは私のものではなく、彼女のものであるから。
しかし、恥ずかしそうにしていたのは、私だけではなかった。
「そっ、そうだったね。うん、ありがと。」
あわててパッと取り上げると、手早く胸ポケットにしまい込んだ。
そんな姿がなんだかとてもくすぐったい。
- 229 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時19分14秒
だけどよく考えてみたらこの写真は、以前彼女が《きしょい》
と言っていたもの。
まさかそんな写真を買っていたなんて。
それを考えるとおかしくなって、クスリと笑ってしまった。
「ホント、おっかしーなぁ。よっすぃーって。」
「はぁ?」
「だってそれ、きしょいって言ってた写真だよ?なのになんでもってるの?」
わざと困らせるようなことを聞いてみた。
「だからぁ・・・それは、さっき言ったじゃん。」
「あの時、みんなして私のこときしょいって言ったくせに。」
「それは・・・その・・・。あぁっ!もう、わかってんでしょ。」
頬を赤らめながら、むくれて口を尖らせている。
「わかんない。わかんないから、もう一度教えて?」
本当はちゃんとわかっていたけれど、
そんな風にしてよっすぃーに詰め寄ったのは―――
もう一度『かわいい』って言ってもらいたかったから。
けれど、そんな私のことを見て、よっすぃーはこう言ったのだ。
「あのさぁ、梨華ちゃん、わざと聞いてない?」
「わざと?」
「なんだかそんな風に見えるんだけど。」
さすがはよっすぃー。こんな時だけ妙に勘がいい。
そうなると、今度はこちらが恥ずかしくなってきてしまった。
『かわいい』って言ってもらいたい気持ちを、
見透かされているのがわかってしまって。
これじゃ、まるでダダをこねている子供みたいではないか。
「えへへ。バレちゃったか。」
「あ。やっぱりね。」
呆れ気味に苦笑する姿。
- 230 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時20分37秒
「あーぁー。でも残念。もう一度言って欲しかったのに。」
空を見上げてつぶやいた。
「あはは。だったら素直に最初からそう言えばいいのに。」
「えっ?」
「かわいいよ、梨華ちゃんは。」
視線を戻すと、優しい瞳が私をとらえていた。
その瞳にぽーっとなる私。
「かわいい。すっごく、かわいい。」
嬉しくて、照れくさくて。
胸いっぱいの幸せに包まれていく。
「えへっ。ありがとう。」
「かわいいよ。マジで。めちゃくちゃかわいい。」
「ふふ。もういいってー。」
「かわいい。世界で一番かわいいんじゃないかな。」
「・・・・・・・よっすぃー?」
「なぁに?かわいい梨華ちゃん。」
「・・・・・・・・。やっぱり。よっすぃー私のことからかってるんでしょ。」
「今頃気付いたの?」
「もぉ!よっすぃー!!!」
そんなじゃれあいが楽しくて、私たちは笑い合いながら、
また抱きしめあった。
「あー、やっぱ梨華ちゃんからかうの、楽しいや。」
「ひどい人ね。」
「そんなの前からわかってたことじゃないの?」
「わかってたけどさぁ。」
「なに?なんか言いたいの?」
「うん。めちゃくちゃ文句いいたいっ!」
「あはは。よし、今日は特別聞いてあげるよ。」
そう言うと、体を離して私を見つめた。
- 231 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時21分58秒
「大体よっすぃーはね、いっつもそう。私のことからかって、怒らせて、楽しんで。」
「うんうん。」
「妙なところ子供っぽくて。」
「そうそう。」
「なのに急に大人ぶってみたり、かっこいいこと言ってみたり。」
「あはは。まぁね。」
「それに・・・・」
「それに?」
いっぱい言ってやろうと思っていたけど、もう言葉が出てこなかった。
本当は、こんなところも全て含めて、よっすぃーのことが好きだから。
「う・・・・。今日のところはこれくらいにしといてあげるわ。」
「あれ。もう終わりなの?」
にやけた顔がそこにある。
「今日のところはね。またいつか聞かせてあげるわ。」
「そっか。ならあたしも一言だけ言いたいことがあるんだよね。」
その言葉にほんの少し身構えてしまった。
よっすぃーは一体、何を私に言うのだろう・・・・
「前からずっと思ってたことなんだけどさぁ」
「・・・・なに?」
「梨華ちゃんて」
「うん。」
「マジでかわいい。」
カーッと体が熱くなっていく。
ドキドキと脈打つ鼓動。
よっすぃーはやっぱり、子供っぽくて、それでいて大人。
悔しくなるほどかっこいい。
- 232 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時23分17秒
「またぁ。どうせからかってるんでしょ。」
くるりと背を向けたのは、あまりにも彼女がまぶしく見えたから。
「ホントにそう思ってる?」
肩越しから伸びてきた腕が、そんな素直じゃない私の
体を抱きしめている。
「だって、よっすぃーは・・・・」
言い終わらないうちに、その手が伸びてきて、
そっと唇をなぞりはじめた。
「本当の気持ちだよ。梨華ちゃんはすごくかわいい。」
滑っていく指の感覚があまりにも心地よくて、
溶けていきそうになってしまった。
「・・・・よっすぃー。」
「好き。梨華ちゃんが好きだよ。」
今まで唇に触れていた指が、あごを伝って首元に落ちてきた。
ざわめく心。
それは今まで一度も触れられたことのない、体の一部だったから。
鎖骨をなぞるように添えられる指。
体がピリピリと痺れていく感覚。
「・・・やだ・・・よっすぃー・・・」
「ねぇ・・・梨華ちゃん・・・こっち向いてよ。」
だけど私は首を横にふった。
「ダメ。」
「どうして?」
「だって・・・・足がすくんじゃって動かないんだもん。」
なぜかよっすぃーの指の動きがピタリと止まった。
「マジで?」
「・・・・うん。」
「・・・・くっ・・・・。ホント、梨華ちゃんて・・・なんでそんなに
あたしのことドキドキさせてくれるの。」
そして、動けないでいる私の前にまわってくれた。
- 233 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時24分26秒
「キス、してもいいかな。」
「あ・・・うん。」
小さな声で返事をすると、よっすぃーの唇が徐々に近づいてきた。
それにあわせてそっと目を閉じて、唇にかかる柔らかな圧力を
待っていたけれど。
「・・・・・・・・っ・・・・・・」
よっすぃーがキスをしたのは、今さっきまで触れていた鎖骨の少し下の部分。
そこにチクリとした刺激を感じて、思わず頭を抱きかかえてしまった。
「・・・よっすぃー・・・?」
「ごめんね。痛かったかな?」
「・・・う・・・ん。ちょっとだけ。」
頭を離すと、彼女は、なんとも言えない微妙な笑顔を浮かべていた。
「へへっ。つけちゃった。」
「え?なに?」
「キスマーク。」
「えっ!?」
あわててその部分を確認すると、うっすらとピンク色に染まった跡が
ひとつだけついていた。
「悪いとは思ったんだけどさぁ・・・・やっぱ、ほら、心配だから・・・」
「心配???」
「これで誰も梨華ちゃんには手出ししないでしょ。」
照れ気味に笑う笑顔が、私の目に映る。
そんなよっすぃーよりも、私の方が照れていたけど。
- 234 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時25分15秒
「そんなこと心配してたの?」
「うん。だってさ、梨華ちゃん・・・すげーかわいいんだもん。」
「・・・よっすぃー・・・・・」
「あたしのものって証拠、刻みたかったんだ。」
たまらず彼女に抱きついてキスをした。
こんなにも想ってくれているのが嬉しくて。
「よっすぃー。」
「んぁ?」
「大好きよ。」
「うん。あたしも。」
ぎゅっと抱きしめ合って、互いの存在を確かめた。
もう絶対、この愛すべき人を離さないように―――
胸ポケットに入れられている写真は、くしゃりと折れ曲がってしまっていたけど。
- 235 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月01日(火)15時30分19秒
- >作者
はい、投稿終了です(wゞ
しかしまだ終わってませんので(笑)
えっとですね、先に書きますが、この2人について言えば
これ以上の「進展」はないです(笑)
キスマークのくだりも、本当はちょっと大人っぽくなっちゃうので
削除しようかなと思っていたのですが、少しだけ
読者サービスというよりも、作者自身のご褒美ということでひとつ(w
このお話もそろそろ終わりますが、
また次の作品も期待していてくださいね♪
今の作者の目標は「いかに痛を書かずに甘にもっていくか!」
ということですので(笑)、またもやただ甘いだけの
お話がでてくるかもしれないんですけど、その時は
目をつぶって許してやってください(wゞ
それではどうもありがとうございました。
またー♪
- 236 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月01日(火)16時12分46秒
- 連日のような更新お疲れ様です。やっぱり甘が一番ですかねw
この作品が完結してしまうのは惜しいですが、次回作品も気になりますねぇ。
頑張って下さい☆
- 237 名前:シフォン 投稿日:2003年07月01日(火)16時48分20秒
- 何なんだよぉ! この甘さは何なんだよぉ!!(壊)
読んでいて顔が赤くなった事は内緒ですよ(何)
<<これ以上の「進展」はないです(笑)
そっかぁ(苦笑) でも高校生だし、これくらいの展開が健全でいいですよね(笑)
>作者様
更新お疲れ様でした♪
この作品ももうすぐ終わりなのですね、ちょっと寂しいです(涙)
作者様の作品を読み続け、どんな甘でも受け入れられるように鍛えられました(笑)
次回作も、どんなに甘くてもかも〜んなっ!ですよ♪
これからも楽しみに読ませていただきますので、無理なさらずがんがって下さいね☆
- 238 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月01日(火)17時49分17秒
- あらー残念…。これ以上はないのですか(爆
暴走ごめんなさい。
それにしても甘い…とろけそうです。
私もうよっすぃーの方がどっちかっていうと好きなんですよ前から
でも、なんだかもう梨華ちゃんがかわいくって×2…ヤバイです(笑
もうテレビに映ってるだけで、キャーかわいい―――って感じで…。
よっすぃーは、キャーかっこいい――――なんですが(笑
次回楽しみにしてます。二人の愛の証も付いてますし、もうーうれすぃー(^^)
- 239 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月01日(火)21時22分43秒
- >これ以上の「進展」はないです(笑)
作者さま?・・これがいいんです!前にも書きましたが、この微妙な
2人の距離感とか心理描写がホント絶妙なので、今までついて来れた
ような気がします。
オイラもシフォン様と同様に真っ赤でちゅ!
・・・声だして読んでみたら、めっちゃ恥ずかしかった。
- 240 名前:なな素 投稿日:2003年07月03日(木)02時08分01秒
- 甘い・・・・
甘すぎて死にそう・・・(笑
>またもやただ甘いだけのお話がでてくるかもしれないんですけど、
>その時は目をつぶって許してやってください(wゞ
全然ありですよ〜作者さん、
それが楽しみなんですから(笑)
これからも意欲的な創作活動期待してます。
お身体にだけは気をつけてくださいませ。
- 241 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時36分22秒
- >俄かいしよしファンさま
>連日のような更新お疲れ様です。やっぱり甘が一番ですかねw
えへへ。いつもレスさんくすなのです♪
甘いの書いてると、テンションあがるんですよねー(wゞ
これからもガンガン応援よろしくなのです!
>シフォンさま
>読んでいて顔が赤くなった事は内緒ですよ(何)
あ。それでは最重要機密ということで(笑)
>作者様の作品を読み続け、どんな甘でも受け入れられるように鍛えられました(笑)
それはヨカタ!!!(笑)
これからも甘が多くなるとは思いますが(w、どうぞよろしくなのですー^^
>名無し読者79さま
>もうテレビに映ってるだけで、キャーかわいい―――って感じで…。
>よっすぃーは、キャーかっこいい――――なんですが(笑
禿しくドウカーン!(w
梨華ちゃん、グッ!よっすぃーキュ~ンなのです(笑)
これからも、いしよし&作者を応援してやってくださいねー♪
>ROM読者さま
>・・・声だして読んでみたら、めっちゃ恥ずかしかった。
あはは。作者もそれしてみたら、かなり恥ずかしかったです(笑)
・・・ってゆーか、作者、一体何書いてるんだろうと、
冷静に笑えなくなってしまった罠(w
>なな素さま
>甘すぎて死にそう・・・(笑
いやぁ〜ん。死なないでー(笑)
>お身体にだけは気をつけてくださいませ。
どうもどうも。お気遣い感謝いたします!^^
これからも、見捨てずについてきてやってくださいね。よろしくです♪
さて、更新ですが、ちょこっとだけ(w
次回がラストになると思います(笑)それではちょこっとラブって感じで(笑)
どうぞー!
- 242 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時38分41秒
=吉澤視点=
「おっはよーっ!」
元気よく教室の扉を開けた。
予想通り、いつものメンバーはもう既に来ている。
「おはよぉー。よっすぃー珍しいなぁ。いっつも早いのに。」
加護が遅く入ってきたあたしを見てそう言った。
「うん、ちょと寝坊しちゃって。」
「おっはよ。よっすぃー。」
「はよっ。」
「ホントだ。珍しいね、よっすぃーがこんな時間にくるなんて。」
「まぁね。」
ののが来ているということは、当然もう梨華ちゃんもいる訳で。
ちらりとその席を見てみると、梨華ちゃんもこっちを見ていたから、
あたしは飛び切りの笑顔を向けた。
「なんやなんやー。めっちゃご機嫌さんやなぁ、よっすぃー。」
「へへへ。」
「昨日うちとこけーへんかったんと、なんか関係あるんちゃう?」
加護がちょっぴり興味ありげに聞いてきた。
「んー。まぁ、色々。」
「へぇ。よっすぃーいいことあったんだ。」
その話に絡むように、ののもくっついてきた。
「まぁね。また今度話すよ。それより、ちょっと梨華ちゃんに用事あるから、ごめん。」
カバンを机の上に置くと、梨華ちゃんのところへ駆けていった。
- 243 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時39分55秒
「おっはよ。梨華ちゃん。」
弾む声に、弾む心。
無意識のうちに緩んでしまう頬は、どうしようもない。
「おはよー。」
やや気恥ずかしげに微笑む彼女。
その表情もまた格別にかわいい。
「今日遅かったのね。」
「なんかさぁ、なかなか眠れなくて。寝坊したんだよね。」
「眠れなかったの?」
「うん。色々思い出しちゃって。」
クスっと笑う顔がたまらなくかわいくて、思わず抱きしめてしまいそうになる。
このかわいい笑顔も、愛くるしい声も、全てあたしのものだと思うと、
体中がゾクゾクしてくるのだ。
そしてちらりと周りを窺うと、あたしは小声で梨華ちゃんに聞いた。
「アレ。まだついてる?」
視線をそこに移したことで、彼女は『アレ』が何かを悟ったようだ。
「ふふ。まだついてるよ。」
「見てみたいなぁ。」
「何言ってるのよ。ダメよ。」
ふっと笑ってあたしの肩を押した。
悲しいかな、一笑に付されてしまったのだ。
あたしがつけた印。
彼女が自分のものだということの証。
もちろん彼女には一個人の人格というものがある訳だから、「もの」
という考え方は適切ではないのだろうけど、やっぱり「自分の恋人」と
いう所有感は、あたしの心を満足させてくれる。
他の誰かの恋人ではなく、あたしだけの彼女という存在。
- 244 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時41分22秒
こんなにもわかいい女の子が、自分の恋人になってくれたのだ。
それを心の中で噛み締めると、ますます頬も緩んでいくというもの。
「何にやにやしてるの?」
そんなあたしの表情を目にして、梨華ちゃんはそっと頬に手を添えた。
「にやついてる?」
「うん。ほっぺた緩みっぱなし。」
そして軽くつかまれてしまった。
「そりゃ緩むでしょ。これだけかわいい彼女ができたら。」
「またからかうつもりでしょ。」
「からかってないよ。わかってるくせに。」
じっと真剣に見つめると、彼女の頬が徐々に染まっていった。
「恥ずかしいから、あまりじっと見つめないで。」
「そう言われると、余計見たくなっちゃうんだよね。」
「やっぱりね。言うと思った。」
呆れ気味に頬をペチリとやられた。
「あー。なんか冷たいなぁ。」
「冷たくないの。これが普通ですぅ。」
照れを隠すように、ちょっと唇を突き出しながら、髪を耳にかけた。
それが妙に色っぽくて。
あらわになった耳にそっと唇を近づけて、囁いた。
「昨日はあれだけキスしたのに。」
すると見る間に耳が赤く染まっていった。
「もぉーっ。そんなこと言わないのっ。」
「だって本当のことじゃん。」
「・・・あのねぇ。」
「なんかやっぱり冷たい気がする。」
昨日あれほどまでに想いを重ねた2人にしては―――
どうもこっちばっかりが熱くなっているみたいで、
それがなんだか面白くない。
梨華ちゃんも照れたり、恥ずかしがっていたりはするけれど、
どこかしら飄々としていて、ちっとも気持ちが伝わってこないのだ。
- 245 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時42分35秒
- だけど。
「ホント、困った人ね。」
あたしの頭に手を置いて、まるで子供をあやすように髪をなでてくれた。
そのしぐさ、柔らかく微笑む優しい眼差しに、
ぽーっと見とれてしまったあたし。
ムキになって彼女の気持ちを確かめようとしていた自分が、
その時になって急に恥ずかしく思えてきた。
それはつまり・・・
心の奥にしっかりとある、あたしへの愛情が確認できたからに他ならなかった。
授業中、頬杖をつきながら梨華ちゃんの横顔を眺めていた。
ちょうどここからの席だと、彼女のことがバッチリと見えて。
それはとても嬉しいことなのだけれど、
肝心の梨華ちゃんはちっともこちらを見てくれようとはしない。
さっきからもうずーっと心の中で『こっち向いて!』と、
叫んでいるにも関わらず。
それを考えると、昨日のことがまるで夢の出来事だったかのように思えてくる。
確かにちゃんと気持ちは交わした。
好きと伝えたし、好きだと言ってくれた。
そして―――数え切れないほどのキスもした。
なのに、やっぱり物足りない・・・・。
これじゃ片思いしている頃に逆戻りしたようではないか。
今朝も梨華ちゃんの気持ちは確認できた。
だけど、どこかまだ不安なのだ。
好きという気持ちが受け入れられたことで、
逆にあせる気持ちが生まれてくる。
一見して矛盾しているその思いは、あたしの中ではどちらも真実だったけれど。
- 246 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時43分53秒
あぁ。こんなにも好きなのに。
ふーっとため息をもらすと、ノートの一番最後のページを開いた。
定規を使ってなるべく音を立てずに、数センチ四方に紙を切り取ると、
メッセージを書き込んだ。
【 こっち見てよ。 】
小さく折りたたんだそれを、誰からとは書かずに、
隣りの人伝てに梨華ちゃんまで回してもらう。
授業中に手紙をまわすことなんて、そう珍しいことでもないから、
周りのクラスメイトたちは、器用に先生の目を盗んでまわしてくれた。
問題は梨華ちゃんがそれを読んで、あたしが書いたものだと気付いてくれるかどうか。
後ろの席の人に肩をたたかれて、彼女がそれを受け取った。
先生がまた板書しだしたのを見て、教科書の上で紙を開いた彼女。
そして間を置かず、こちらに振り向いてくれた。
そんな些細なことがすごく嬉しくて、やっぱり笑顔になってしまう。
一方の梨華ちゃんは、顔に「?」マークを浮かべてこちらを見ている。
だからあたしは声に出さずに、口の動きだけで『好き』と言ってみた。
苦笑して頬を緩める梨華ちゃん。
そして彼女もまた、パクパクと口を動かしたのだ。
『バーカ』って。
2人だけにしかわからない贅沢な遊び。
へらへらと笑いながら、それでもまだ梨華ちゃんのことを見ていたけれど、
またすぐに前を向いてしまった。
ちぇー。もっと見ていて欲しかったのに。
またもや一向にこちらを見てくれない空気を感じて、
あたしはふてくされるように、机に突っ伏した。
- 247 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時45分09秒
しかし、しばらくそうしていたあたしの肩を、隣の子がちょんと
つっついてきた。
顔を上げてみると、そこには小さく折りたたまれた手紙が。
それを急いで開いてみると・・・
【 不貞寝なんてしてないで、ちゃんと授業受けなきゃだめよ。 】
視線の先にいる彼女は、やっぱり苦笑していたけれど。
「あのねぇ、こんなの授業中まわさないのっ。」
休憩時間、梨華ちゃんはあたしの席にきて、さっそく小言を言っている。
机の上には、さっきあたしがまわしたメモが置かれていた。
「だってさぁ、全然こっち見てくれないんだもん。」
「当たり前でしょー。一番前の席でそんなことしたら目立っちゃうわよ。」
「本当にそれだけ?」
思わず出てしまった言葉に、自分自身呆れてしまった。
これじゃまるで、相手にしてもらえなくて拗ねているガキではないか。
だけど、今更今のはなかったことにしてくれとも言える訳はなく。
「それだけって?」
「だから・・・・」
あたしの気持ちをわかって欲しい。
梨華ちゃんと付き合えるようにはなったものの、
まだまだ不安でいることに。
もっと確実な何かが欲しいのだ。
あたしだけの彼女だという証。
梨華ちゃんがあたしだけを好きでいてくれるという証を。
うまく伝えることができないそんなイライラが心を支配して、
黙り込んでしまった。
そんな時。
- 248 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時46分23秒
「また喧嘩してるんかー?」
加護がにやりと笑いながら近づいてきた。
「よっすぃー、落ち込んでるの?」
ののはあたしの膝の上にのって、肩に手をかけた。
「そうなんだよね。また喧嘩してるんだ。」
あてつけとも嫉妬ともとれる言い回しをして、ののをぎゅっと抱きしめた。
「あはは。くすぐったいなぁー。」
ぬいぐるみを抱きしめる感覚。
梨華ちゃんもののみたいに、素直にあたしに甘えてくれたらいいのに。
なんて考えながら、彼女を見上げると。
「ふーん。よっすぃーはののちゃんがお気に入りなのね。」
冷ややかに見下ろす視線。
もしかして、これって・・・・
「梨華ちゃん妬いてるの?」
それはあたしが言ったことではなく、加護が言った言葉だった。
「やっ、妬いてなんてないわよ。」
「そうなん?それやったらうちもよっすぃーに甘えよーっと。」
「はぁ?加護、何言ってんの?」
そんなあたしの言葉が聞こえてるのか疑わしくなるくらい、
加護もまたあたしに抱きついてきた。
梨華ちゃんはというと・・・なんだかとても不機嫌な顔をしている。
「り、梨華・・・ちゃん?」
「・・・なによぉー。」
「いや、あの、だから・・・ね。」
言いよどんでいるあたしに追い討ちをかけるように、
加護がまるでキスをするように、ぴったりと頬をくっつけてきた。
- 249 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時47分41秒
「・・・・もぉ・・・知らないっ!」
あろうことか、彼女は怒って席に帰ってしまった。
ののを押しのけて、あわてて追いかけようとしたところ。
「ちょっと、待ち。よっすぃー。」
あたしの腕をつかんだのは、加護だった。
「そうそう。ちょっとは冷静になった方がいいよ。」
ののもにやりとあたしを見ている。
「なんなの2人とも。」
訳がわからなくて、2人の顔を交互に見てしまった。
「追いかけるばっかりが能ちゃうでー。」
「ののもそう思うっ!」
「・・・はぁ???」
「バレバレやねん。梨華ちゃん好きなん。」
「だよね。見てて恥ずかしくなるよね、いい加減。」
あんぐり開いた口を閉ざすことができない。
「知ってたの?2人とも?」
「あったりまえやんなー、ののっ!」
「ホントホント、そんなの常識だよね。」
「バレてたのか・・・・」
なんとも言えない気恥ずかしさが、胸にこみ上げてきた。
「どうせ昨日あたり、梨華ちゃんにコクったんやろ?」
「げっ!なんでそんなことまで知ってるの???」
「よっすぃー今朝妙に浮かれてたもんね。やっぱりののたちの見る目は間違ってなかったんだ。」
そこまでお見通しとは。
それであたしもとりあえず、もう一度席についた。
- 250 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時48分54秒
「大丈夫やって、そんなに落ち込まんでも。」
「加護が言うか?誰のせいでこうなったと思ってんだよー。」
「ほら、よっすぃー見てみ。梨華ちゃんあれから一回もこっち見てへんやろ?」
そう言われて彼女の方を見ると、なんだかムキになっているみたいに、
背中だけが向けられていた。
「よっぽどの負けず嫌いやねんなぁ。うちらによっすぃー取られたと
思ってるわりには、まるで平気なそぶりみせてる。」
「クスっ。ホントだ。梨華ちゃんてわかりやすいんだね。」
クスクスとののが笑った。
「あーぁー。嫌われちゃったのかなぁ・・・」
「そんな訳ないじゃん、ねぇ、加護ちゃん。」
「そうそう。梨華ちゃんもよっすぃーのことめっちゃ好きなんわかるから。」
「え?」
「うちら2人はずっと気ーついててんで。2人が好き同士やってこと。なぁ、のの。」
「うんっ。」
「んだよー。それならもっと早くに教えてくれたらよかったのに・・・」
「あはは。まぁそのおわびにもっと2人が仲ようなるようにしたるわ。」
「はい???」
「ちょっと、のの耳貸して。」
「・・・・・うんうん。なるほどね!」
「何2人でコソコソ話してんだよー。」
「ええか。よっすぃーはうちらの言うことに、素直に返事してたらええからな。」
「何???」
「とにかくののたちに任せるのだーっ!」
なんだかよくわからないままだったけど、そんなこんなで
結局休憩時間は終わってしまった。
- 251 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月03日(木)21時55分21秒
- >作者
はい、投稿終了〜(w
ラストにもう一度甘をもってこれるように話を
転がしてみたのですが、果たして一体どうなることやら???(笑)
まだ一行も書いてないので、明言はできませんが、
またもや甘ラストです。(こればっか(笑))
ということで、ラストまでお付き合いくださいませ♪
って、ゆーか。4期だけのお話ってこれが始めてのような
気がしますが、一体あいぼんとののちゃんは何をたくらんでいるの?
まだいいアイデアうかばないよぉー・゚・(ノД`)・゚・
なんて(w
まぁ、そのうち何か思いつくことでしょう。
ってゆーか、ラストの部分だけ、みなさんは気にかけといてください。
それまでの流れはちゃーっと読み流してくださいね!(笑)
(きっとそう話も転ばないと思うので(苦笑))
それでは次回まで。
ごきげんよう♪
- 252 名前:シフォン 投稿日:2003年07月03日(木)22時28分09秒
- あのぉ、道行く親切なお方…『これでもかっ!!』ってゆうくらい緩んだほっぺたを
元に戻す方法を教えて下さいっ!!(爆)
拗ねてるよっすぃ〜、お姉さんぶってる梨華ちゃん、ウチのツボを見事にヒットしてます(笑)
作者様の発想の素晴らしさは、本当に尊敬してしまいます(素)
>作者様
<<それまでの流れはちゃーっと読み流して…
読み流すだなんて失礼な事、出来ませんってば!
一字一句洩らす事なく読ませていただいております♪
ののたん達の計画とは何ぞや…楽しみに待っております♪
無理なさらず更新なさって下さいね☆
- 253 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月03日(木)22時37分43秒
- さて、茶々と蘭丸の企みが気になりますが・・・
>それまでの流れはちゃーっと読み流してくださいね!(笑)
やだ! じっくりゆっくり、噛み締めるように味わいたいと
思います。
- 254 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月04日(金)19時35分14秒
- もうなんなんですか!この二人は…あきれてしまうくらいのバカップル…(笑
恋人なりたての時は、やっぱり不安なんでしょうかねー。
二人ともとっても魅力的な人だから。心配なんですよね、よっすぃー…。
梨華ちゃんちょっと意地張っちゃってるのが、もうツボです。
私も頬が緩んで、緩んで、緩みまくってます(爆
- 255 名前:なな素 投稿日:2003年07月05日(土)03時47分32秒
- 更新オツカレ様です。
う〜む、付き合い出してすぐに最初の壁が二人に立ちはだかりましたね〜。
一見たいしたことなさそうで、下手をするとこじれてしまいそうな気持ちのすれ違い。
しかし、このあと作者様が考えている大甘なエピローグにその壁は見事に
崩れ去るのであった(笑)
こんなとこですかね(笑
- 256 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時04分01秒
- >シフォンさま
いやはや。なんだかとっても嬉しくなるお言葉、
作者すっかり照れてしまいました(wゞ
今回なんとか甘ラストを迎えることができました(笑)
かゆーくなるとは思いますが、どうぞ読んでやってください(w
>ROM読者さま
さて、じっくり読んでいただいた後に、蕁麻疹
おきなければいいのですが(笑)
作者、自分でアフォかなー?って思うくらい、甘いです(笑)
マタリと読んでみてください(w
>名無し読者79さま
>もうなんなんですか!この二人は…あきれてしまうくらいのバカップル…(笑
今回のラスト、もっと呆れることでしょう(笑)
でもどうか、作者のアフォっぷりにお許しをいただければ(wゞ
いつも感謝なのです♪
>なな素さま
>しかし、このあと作者様が考えている大甘なエピローグにその壁は見事に
崩れ去るのであった(笑)
崩れるというよりも、完全に溶けちゃいました(笑)
読んでも笑わないでくださいね?(w
あ、笑ってもらった方がいいかも?(笑)
そんなこんなでようやくラストとなりました(笑)
かなりおバカ甘だとは思いますが、どうぞ呆れずに
ついてきてやってくださいね(汗)
それでは続きご覧ください。
(もう既に逃げ体勢(笑))
- 257 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時09分07秒
そして昼休み。
「よっすぃーこれあげるわー。」
加護は自分のお弁当のおかずの中から、一番のメインと思われる
ハンバーグを箸にとって、あたしの弁当箱に入れてくれた。
「え?いいのもらっちゃって?」
「うん、かまへんねん。よっすぃーもハンバーグ好きやろ?」
「ん?」
きょとんとしているあたしの足を、加護が机の下で蹴った。
「・・・あ、あぁ。もちろん。ありがと。」
「ののもこれあげるー。はい、からあげ。」
あの食いしん坊のののまで。
「えっ、いいよ。そんなの悪・・・・」
言い終わらないうちに、またもや蹴られてしまったあたし。
「・・・・ありがと。」
「ちょっとー。のの。うちのよっすぃーに慣れなれしくせんといてやー。」
「何言ってるの?加護ちゃんのよっすぃーじゃないじゃん。
ねぇ、よっすぃーっ。ほら、のののからあげ先に食べてよ。」
「そんなん後回しにして、うちのハンバーグ食べてーやー。」
「あっ。抜け駆けなんてずるいよ。のののよっすぃーなのにっ!」
明らかにいつもとは違う2人の行動。
特に打ち合わせなんてしてなかったけど、
それがどういう意味をもつのかということが、さすがにもうわかってしまった。
《《《ええか。よっすぃーはうちらの言うことに、素直に返事してたらええからな。》》》
素直に返事。素直に・・・・。
・・・・・・一体どうしろというのだ。
「わ、わかったよ。どっちもちゃんと食べるから。」
- 258 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時11分19秒
- 無理矢理ハンバーグとからあげを一度に頬張ったあたし。
これって罰ゲームじゃないのだろうか。
モグモグと頬をめいっぱい膨らませながら、ちらりと梨華ちゃんを
覗き見ると、彼女はつーんとすまして黙々とお弁当を食べている。
その表情は、明らかに・・・・・
「そうそう。よっすぃー今日は家くるやろ?」
「んぁ?」
「昨日ののと2人でおもきしゲームしてたから、ちょっとは強なってんでー。
今日こそはよっすぃーぎゃふんって言わしたろうおもて。なぁー、ののっ。」
「そうだよ。ののもすげー上手になったからさぁ、よっすぃー勝負しようよ。」
「ん?うん、いいけど。」
「やったぁーっ。あ、梨華ちゃんもくるやんなぁ。」
加護がそうやって梨華ちゃんを誘ったけど。
「いい。今日はやめとく。」
「え?梨華ちゃんこないの?」
ののがきょとんとした顔でそう言った。
「なんか乗り気じゃないから。」
「梨華ちゃん・・・?」
そんな彼女のことが気になって、声をかけたけど。
「ごちそうさまでした。さ、席に戻って雑誌でも読もうっと。」
片付けたお弁当箱をもって、さっさと席に帰ってしまった。
「・・・・ねぇ。ちょっとやりすぎなんじゃないの?」
こそこそと2人に向かってそう言った。
「くふふ。思った通りやな、梨華ちゃんの行動。」
「そうだよね。まさか本当にここまで筋書き通りにいくなんて。」
加護もののもやったとばかりに楽しそうに笑っている。
- 259 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時13分25秒
- 「なんかすげー空気悪くなったみたいだけど。
ホントにこれであたしと梨華ちゃんうまくいくの?」
「わかってへんなぁ、よっすぃーは。」
「はぁ?」
「ヤキモチ妬かせてあげたんだよ。梨華ちゃんに。」
「いや、それはわかるんだけど・・・・・。」
「梨華ちゃんは、よっすぃーがうちんちにくるっておもてるやろ?」
「だろうね。」
「せやけどもし先回りしてよっすぃーが梨華ちゃんの前に現れたとしたら?」
「あっ。」
「名づけて、『ここで会ったが100年目!びっくりどっきりラブラブ再会ショー!』作戦!」
「のの、それネーミング長すぎるわ。」
「びっくりどっきり・・・なんだっけ?」
「だから、『ここで・・・・」
「いや、やっぱもういい。」
その長ったらしいネーミングの作戦はこうだった。
加護の家に行くと思わせといて、先回りしたあたしが梨華ちゃんの前に現れる。
・・・・ネーミングそのままだけど。
「でもさぁ、梨華ちゃんかなり機嫌悪いみたいだけど。
本当にそんなので大丈夫なんだろうか。」
「何ゆーてるんな。そこにいるはずのない愛しのよっすぃーが、
目の前に現れんねんでー!こんな嬉しいシチュエーションに燃えへんわけないやろー!」
「そうだよ。きっと梨華ちゃん喜ぶと思うけどなぁ。」
「そんなにうまくいくかなぁ・・・・。」
ちらっと梨華ちゃんを見てみたけど、やっぱり相当機嫌が悪いのが見て取れる。
- 260 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時14分45秒
- 「絶対大丈夫やって。なぁ、のの。」
「うん。絶対大丈夫!」
「もしうまくいかなかったら?」
「その時は・・・・。その時や。」
「はぁ???」
「その時はののたちが慰めてあげるからっ。」
なんとも嬉しくない応援を受けて、ため息をついてしまった。
こんなことなら、多少冷たくされたって、梨華ちゃんの側にいた方がいい。
梨華ちゃんだって、どうせ照れているだけで、本当は
あたしのことが好きなのだから。
自信はないけれど、そんなふうに思う。そう思っていたいと思った。
だから。
「ごめん。2人には悪いけど、やっぱあたし、自分の力でなんとかしてみるよ。」
「えーっ!」
「ちょっと、よっすぃー!」
わめきたてる2人のことを置いて、あたしは梨華ちゃんの所へと向かっていった。
「りーかちゃんっ。」
不機嫌オーラを身にまとっている彼女に声をかけるのは、
かなり勇気が必要だったけど。
「何か用?」
あぁ・・・。冷たいその声が、胸に突き刺さっていくよう。
だけどひるむ訳にはいかないのだ。
「何してるの?」
「見ればわかるでしょ。」
梨華ちゃんは顔も上げずに視線を雑誌に落としている。
これは相当手ごわいかもしれない。
- 261 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時16分09秒
「あのさぁ・・・。やっぱ、怒ってる?」
「別に。」
「やっぱり怒ってるじゃん。」
「怒ってません。」
「だったらどうして顔あげてくれないんだよ。」
開いているページの上に、あたしは手を置いた。
そしてようやく彼女も顔をあげたのだ。
・・・・にこりともしないで。
「なに?」
「だから、さっきのはちょっと色々あって。」
「色々あって?そう。それはよかったわね。」
「は?」
「モテモテだったもんね。よっすぃー。」
「いや、だからあれは、加護が・・・・」
「加護、加護って。ののちゃんだけじゃ飽き足らずに、
加護ちゃんにまで手を出したの?」
「んな・・・。何言ってんだよ、ったく。」
「3人で仲良くしてればいいじゃない。私がいてもお邪魔でしょ。」
「梨華ちゃん・・・」
「もういいよ。よっすぃーなんて。」
また視線を落とすと、あたしの手を振り払ったけれど、
逆にあたしはその手をつかんで、梨華ちゃんを見つめた。
「どうしてわかってくれないの。」
「なっ、なにがよ。」
「梨華ちゃんのこと、こんなにも好きなのに。」
ストレートな言葉。
だけど、あたしの気持ちはこの一言に尽きるから。
- 262 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時17分38秒
「・・・・・私も。私もそうだよ。よっすぃーが好き。」
「だったらどうしてあたしに冷たくするんだよ。」
「冷たくなんてしてないじゃない。」
「してるよ。全然こっち見てくれなかったしさ。
あたしのことなんてどうでもいいって、そんな気がして、不安で・・・」
「それは、だから・・・。あまりベタベタするのが恥ずかしかったから・・・ただそれだけ。」
「本当にそれだけ?」
「・・・そうよ。」
「あたしのこと、好き?」
「決まってるじゃない。」
「その言葉、信じていいんだよね。」
「・・・うん。」
梨華ちゃんの瞳の中に映る、気恥ずかしげな潤い―――
だけど、それはあたしに対する真剣な想いそのものだったから。
「加護っ!」
梨華ちゃんの手をつかんだままで立ち上がると、
めいっぱい大きな声で、こちらを見ている加護に叫んだ。
「はっ、はい???」
「今日の予定はキャンセル。あたし梨華ちゃんとデートするよ!」
周りにいたクラスメイトたちのざわめく声が、教室中に響き渡る。
「ちょ、ちょっと、よっすぃー・・・・」
見上げる彼女はすごく動揺していたけど。
「わかったでー!デート楽しんでおいでなー!」
加護はもう何もかもわかったとばかり、そう言ってくれた。
- 263 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時19分03秒
「よっすぃー・・・・・・」
「これで、もうみんなにバレちゃった訳だ。何も恥ずかしがることなんてないよ。」
「はぁーっ・・・・。ホントによっすぃーは・・・・」
呆れたようにため息をついた彼女。
けれど、その表情はあたしを充分満足させてくれるだけの
微笑をもっていた。
「公認かな。梨華ちゃんはあたしの彼女だってこと。」
「ふふっ。そこまでしなくてもよかったのに。」
「だってさぁ、やっぱ不安だから。」
「え?」
「誰かにとられるかもしれないじゃん。こんなにもかわいいんだから。」
顔を真っ赤にしている彼女の熱が、つかんだ手からも伝わってきた。
「ありが・・・と。」
素直な言葉。素直な気持ちが心にじわっと響いてきた。
だから、あたしはたまらず―――
「・・・・・・っ・・・・・・・」
「・・・・・・・・バカ・・・・・」
「へへっ。」
頬をぺちりとたたかれてしまったのは、みんなが見ている前で
キスをしてしまったからだった。
「おーっし!帰るとするかっ!」
終鈴が鳴り響くと、勢いよく席を立った。
クラスメイトの誰もがそんなあたしのことを見て、クスクスと笑っている。
だけど、特に悪い気はしなかった。
それどころか、あたしの横を通り過ぎる度に、なぜか決まってこう声をかけてくれたのだ。
「デート楽しんできてね。」って。
- 264 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時21分33秒
梨華ちゃんがあたしのところへ向かってくる。
それと同じくして、加護とののもやってきた。
「まいったわ。ほんま。あんたら2人には。」
「でもよかったね。よっすぃー。梨華ちゃんも。」
2人のなんたら作戦も、もう全て梨華ちゃんには話したから、
またこうやって4人、仲良く話すことができた。
「ありがと。これも加護とのののお陰・・・な訳ないじゃん!
一時はどうなるかと思ったんだからなー!」
「クス。私はよかったって思ってるよ。ありがと。加護ちゃん。ののちゃん。」
「あー。やっぱ梨華ちゃんはちゃんとわかってくれてんねんなぁ。
せやのに、なに?よっすぃーのその言い方は。」
「ホントだよ。ののたちは2人のためを思って頑張ったのに。ねぇ。」
「ウソくせー。本当は楽しんでたんじゃないのかよ。」
「かわいくないなぁ、よっすぃーは。梨華ちゃん考えなおした方がいいよ?」
ののがそう言ってにやりと笑った。
「ふふふ。そうねー。ちょっと考えてみようかな。」
「ちぇーっ。梨華ちゃんまで。」
「でもまぁ、こんなよっすぃーのことなんか、だーれも相手にせーへん
やろうけどなぁ。きっと梨華ちゃんくらいなもんやで。」
「あのなぁ、加護。」
「えへへ。そんなことより、どこいくん?デート。」
「あ。まだ決めてない。どうする?梨華ちゃん。」
「どこでもいいよ。よっすぃーと一緒なら。」
「よっすぃーにやにやしすぎっ!」
ののがあたしのほっぺたをむぎゅっとつかんだ。
- 265 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時23分01秒
「さぁ、そろそろ帰ろうか。梨華ちゃん。」
「うん。」
「ほんならうちらも帰ろか、のの。」
「そうだね。2人がいないと寂しいけど。その分ゲーム三昧といきますかっ!」
4人ならんで校門へと向かっていった。
「あたしたち、今日はあっち向いて帰るよ。寄れそうな店あるかもしれないから。」
「うん、わかったー。ほなまた明日。」
「ばいばーいっ!」
「また明日ね。」
2人に背を向けて、歩き出そうとしたその時。
「あーっ!よっすぃーっ!」
振り向くと、加護がこんなことを言ったのだ。
「2人がラブラブなん、クラスのみんな最初から知ってたでー。」
そしてののも。
「気付いてなかったの、2人だけだよーっ!」
そういい残すと、きゃはきゃはと笑いながら、楽しそうに駆け出していった。
「・・・あ、あははは・・・・」
「みんな知ってたのね・・・・」
そこに残されたあたしたちは、ただ照れるしかなかった。
「そ、それじゃ、いこっか。」
「うっ、うん。」
歩き出した2人の微妙な距離。
それは恥ずかしさを示す距離ではあったけど。
- 266 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時24分17秒
「ねぇ、梨華ちゃん。」
照れくささを感じて、あたしは前を見ながらそう言った。
「なに?」
彼女もまた、うつむきがちに歩いている。
「せっかくだからさ・・・その・・・・。手、繋いでみない?」
じんわりと浮かんでくる緊張に、そっとスカートで手を拭った。
「・・・・うん。」
ドキドキとわきたってくる胸のトキメキは、
歩くスピードの何倍もの速さで、この体中を駆け巡っていく。
そして、ためらいがちに出された2つの手の指がそっと触れ合い、
その隙間を埋めるように、ぴったりと絡められた。
「デート、どこいこっか。」
「2人でいられるんだったらどこでもいいよ。」
隣を歩く梨華ちゃんの表情は、とてもステキな笑顔で。
それは、机の中に大切にしまってある、あの梨華ちゃんの写真の
何十倍もの輝きを映し出していた。
「ホントにどこでもいいの?」
「うん。」
「それならこれから2人で加護んちにでも行く?」
にやりと笑って梨華ちゃんを見た。
「よっすぃーが行きたいんだったらいいけど?」
ちょっぴりすまして彼女がそう言った。
もちろんお互い本気でそんなことなど思っていないことを知ってて。
- 267 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時29分34秒
「よーっし。それならデートは加護んちに決定っ!」
「うふふ。加護ちゃんち、あっちだよ?」
ちらりと後ろを振り返って笑っている。
「あー。梨華ちゃん、知らないの?」
「えっ?なに?」
「地球は丸いんだってこと。このまま歩いて行けば、いつか加護んちにもつくよ。」
「あはは。もしかして地球一周するつもり?」
だからあたしも笑って答えた。
「そうだよ。そしたらいつまでもこの手を離さなくて済むでしょ?」
「そうね。それならいつまでも手を繋いでいられるものね。」
楽しそうに笑う2人の声が、アスファルトに反射する。
だからあたしはこの幸せな瞬間を、大切にしたいと思った。
ずっといつまでも梨華ちゃんと笑っていたくて。
「絶対離さないから。この手も。梨華ちゃんのことも。」
「私も。絶対離さないよ。」
「約束してね。この手をつかむのはあたしだけだって。」
「うん。ずっとよっすぃーの側にいるよ。」
そしてまた、あたしたちはぎゅっと手を握り合った。
今、しっかりと重なる2人の想いを表すかのように。
そしてあたしは、他の誰にも見ることのできない、あたしだけの
かわいい梨華ちゃんの笑顔を、心の中に焼きつけた。
世界でたった一枚だけのその微笑を。
『Photo』 〜おわり〜
- 268 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)17時33分32秒
- >作者
終わりです!!!(笑)
さて、いかがでしたでしょうか?
やっぱり呆れました?(w
なんだかんだ言っても、やっぱりこの2人は
あまーく結ばれる運命にあるのです!(笑)
作者の中ではね?(w
ということで、今回のお話も無事終えることができました。
ここまで読んでくださったみなさま、誠に感謝いたします!
いつもありがとなのです☆
次回作はまだなーんにも考えてませんが、甘か、はたまたやや痛か。
それともダークになっちゃうかもしれませんが、
やっぱりラストは\(^▽^)/はっぴー♪
になれるもので(笑)
たぶん、やや甘くらいのテイストになるものを考えてます。
どうなるのかはわかりませんが(wゞ
それではまた次回まで。
ありがとうございました!!!!
=修行僧2003=
- 269 名前:シフォン@i 投稿日:2003年07月05日(土)18時18分18秒
- >作者様
完結、お疲れ様でしたぁ♪
またも、外でニヤニヤしながら読ませていただきました(苦笑)
二人が同じクラスの高校生なら、きっとこんな光景が見られるんだろうなぁ…(何)
前作が大人っぽい仕上がりだったので、尚更今回の作品は『爽やか〜♪』な感じで読ませていただきました。
次回作も楽しみにしてますが…何より無理をなさらずに☆
気長にいつまでも待ちますから(笑)
これからも、陰ながら応援しております☆
- 270 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月05日(土)20時28分02秒
- 完結お疲れ様です!!
もう自分の顔がもう怖いくらい、緩んでしまった…(笑
なんか学生の二人もいいです!もうグーです!!
辻ちゃん、加護ちゃんがいたのもすごい良かったです。4期大好きなので(^^)
次回作、超期待して待ってます!!ハッピーなラスト大好っき!!!
- 271 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003年07月05日(土)21時39分23秒
- 完結お疲れ様でした。もお甘すぎてたえられません!!
顔が緩みっぱなしで・・・これからも頑張ってください☆
- 272 名前:Silence 投稿日:2003年07月05日(土)22時04分09秒
- 更新&完結お疲れ様でした。
いいっすね〜、4期大好きの自分には最高のお話でした。いしよしだけ
じゃなくて、辻加護がまた、いいっ!!
幸せそうに手を繋ぐいしよし2人が想像(妄想?)されました。(w
>やっぱりこの2人はあまーく結ばれる運命にあるのです!(笑)
う〜ん、わかる。2人が結ばれるのは偶然なんかじゃないんですよね。
完結の時に感想をと思って途中のレスは控えていました。でも、毎回
読ませてもらって顔が緩んでました(w
次回作も期待しています。がんばっていきまっしょい!!(w
- 273 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時27分51秒
- >シフォン@iさま
いつもいつもありがとーございますぅ・゚・(ノД`)・゚・
本当に、お家帰ってからゆっくり見てくださってかまわないんですよ?(涙)
>次回作も楽しみにしてますが…何より無理をなさらずに☆
いや、これが実は作者のいいストレス解消法なので(wゞ
いつも気にかけてくださってありがとうございます!
>名無し読者79さま
感想ありがとうございますー♪(えへへ)
>次回作、超期待して待ってます!!ハッピーなラスト大好っき!!!
もちろんいつも\(^▽^)/はっぴー♪エンドなのです(笑)
じゃないと、作者いしよし書いてても楽しくないので(w
また更新しますので、どうぞよろしくです!
>LOVEチャーミーさま
>顔が緩みっぱなしで・・・これからも頑張ってください☆
マジっすか!?いやはや、本当に嬉しいです♪
これからも喜んでいただけるような作品を書いていきたいと
思いますので、どうぞまた遊びにきてくださいね♪まってまーっす♪
>Silenceさま
>幸せそうに手を繋ぐいしよし2人が想像(妄想?)されました。(w
やった〜〜〜っ♪嬉しいです!そう言っていただけて(照れ)
いつもいつも丁寧にレスつけてくださって、
感謝いたしておりますよぉー☆
またいつでもいいので遊びにいらしてくださいね♪
SilenceさまともどもMoreいしょし精神で!(笑)
えっと。なんか調子にのっちゃいまして、
新作書いちゃいました(汗)
やや出だし〜中編は痛いかもしれませんが(w
短編です。よければ読んでやってください。
それではどうぞ。
- 274 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時33分08秒
『かげろう』
焼け付いた線路からゆらゆらと立ちのぼるかげろう。
夏の日差しが容赦なく、体力を奪っていくのがわかる。
ヒリヒリと痛む肌は、受験生にも関わらず、プールに遊びに行った
あたしのことを責めるように、うずいていた。
いつもは気持ち悪くなるくらいに白い自分の肌が、真っ赤に
熱を帯びて、ちくちくと痛みを感じる。
その痛みは、まるであたしの心を映し出しているかのように。
あまりの陽射しの強さに、早めにプールを引き上げたあたしたちは、
廃線になった線路を辿りながら、少し遠回りをして家路についていた。
そう。あたしの隣には、受験勉強をサボった共犯者がいたのだ。
「危ないよ、そんなことしてると。」
梨華ちゃんは、風に飛ばされないようにしっかりと麦わら帽子をつかみながら、
そう言った。
「平気だよ。さっきから一回も踏み外してない。」
線路の上を歩くあたし。
ビーチサンダルが、焼け付いた線路の鉄に、キュッキュッと音を立てていく。
一方、砂利を敷き詰めた地面を歩くのは、梨華ちゃん。
危なげない道を歩くそんな姿が彼女らしいと、心の中で皮肉を言ってみる。
- 275 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時35分07秒
あたしと梨華ちゃんの関係―――
それは普通の友達のそれとは幾分違っていた。
あたしが恋をして、一方的に想いを伝えた。
だけど彼女はその時、ただ微笑んでいただけだった。
その表情は、あまりにも微妙で・・・・
いい風にとれば、少しはにかんでいるようにみえたし、
逆に言えば、戸惑っているようにもみえた。
そして結局、『YES』とも『NO』とも明言はしてくれなかったのだ。
しかし、告白してから以前の関係が変わったかと言うと、
そうでもない。
それはいいことなのか、悪いことなのか。
避けられたりすることもない代わりに、それ以上親密になることもなく。
そういう意味では、普通の友達関係となんら変わらないもの
なのかもしれないけれど。
だけどこれだけははっきりと言い切れる。
あたしの中にある感情。
それは友達としてのものではないということに。
何も変わらないことが本当の幸せ。
何気ない毎日を送ることができるのが、本当の幸せだと、
以前誰かが話していたのを思い浮かべてみたけれど、
あたしにすれば、それは臆病な人の戯言だと思う。
真空パックに包まれた息苦しい世界より、
汚れた空気でもいいから、大空を羽ばたいてみたい。
そんな考え方はきっとあたしの独りよがりなのだろうけど。
じわじわと湧き出てくる汗は、頬を伝い、あごをぬらして線路に落ちていく。
―――そしてあたしは、意味もなく、笑ってみた。
- 276 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時37分22秒
「どうしたの?急に笑い出したりして。」
不思議そうな声が耳に届いてきた。
それもそうだろう。
今までただ黙々と歩いていたのに、突然笑い出したのだから。
「いや。なんかおかしくってさ。」
「・・・え?」
「こんな風にして2人でいることが。」
今は夏期講習の真っ最中。
中学三年の夏は、受験の勝敗を決する大事な時期だということは、
他の誰でもない、あたしたちが一番知っていること。
今日も本来なら明日に控えた模試のプレテストを受けなくてはいけなかった
のだが、あたしが半ば強引に梨華ちゃんを誘ったのだ。
元々あたしは塾なんかには興味がなかった。
ただそこに梨華ちゃんがいるから。
目的はきわめて明瞭かつ不純。
短い夏休みの間すら、梨華ちゃんと離れるのが苦痛で・・・・
「ひとみちゃんが誘ったんじゃない・・・」
確かにそれはそうだった。
だけど本当に嫌なら、約束を反故にすることくらいできるはず。
いくら強引に誘ったからといって、自分の意思はあるのだから。
もしかしたら、少しはくらいは脈があるのかもしれない。
そんな考えも浮かばなくはなかったけど、あたしは常に冷静だった。
梨華ちゃんは万事いつもこんな調子だったから。
相手を傷つけることなく、さらりと受け流してしまう。
それが彼女の持つ優しさ。
だけど、逆にそんな態度が相手を傷つける場合があるとも知らずに。
―――今のあたしがまさにそれだった。
- 277 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時39分01秒
「そうだった。あたしが無理矢理誘ったんだったよね。」
自嘲気味に笑うと、キャップを目深くかぶりなおした。
今の自分の顔は、鏡で見なくても想像がつくから。
「あ・・・。別にそういう意味じゃなかったんだけど・・・」
「いいよ、無理しなくて。」
「ひとみちゃん・・・・」
「あーっ!暑いなぁー、ちくしょー!」
自分の中の苛立ちをぶつけるように、思い切り蹴りつけて、
線路の上からジャンプした。
しかし、あろうことか目測を誤ってしまって、
ちょうど枕木の境目に足をひっかけてしまった。
そのまま2、3歩よろけながらも、体勢を立て直そうとしたけれど、
ビーチサンダルではその踏ん張りも空回りに終わっただけだった。
「・・・・っつー・・・・。」
「だっ、大丈夫?」
「ん・・・。大したことないから。」
「やだ。血が出てるじゃない。」
転んで擦りむいた膝からは、じわじわと赤い血が浮きあがってきていた。
「こんなのかすり傷だから。」
体の傷なんかよりも、心の傷の方が重症だった。
梨華ちゃんの前で、こんなかっこ悪い姿を見せてしまうことになるなんて・・・・
だけど、そんなことはもうどうでもいいことなのかもしれなかった。
彼女があたしのことを好きでもなんでもないのだとしたら、
いくらかっこいいところを見せたところで、なんにもならない訳だから。
- 278 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時42分25秒
ズキズキと痛む膝をかばうように、立ち上がろうとしたところ。
「ちょっと待って。応急手当してあげるから。」
「いいよ。ホントに大丈夫だから。」
「ダメ。しばらくおとなしく座ってて。」
いつになく強い口調であたしの肩を押さえつけた梨華ちゃん。
彼女がこんな風に、何かをはっきりと言うことなんて珍しかったから、
その勢いに押されるように、あたしは黙って腰を下ろした。
「消毒薬なんてもってないから、ペットボトルのお水かけるけど、いい?」
「ん?いいよ、別になんでも。」
苦笑したあたし。
怪我の功名とは、本当にこのことを言うのかもしれない。
あたしは手際よく処置をしてくれる彼女の姿を、
ただぼーっと見とれずにはいられなかった。
転んだ傷は、ところどころに生えていた雑草のクッションのお陰で、
本当に大したものではなかったけれど、それでもかすった傷口には、
草の汁やら砂なんかがついていて、じんわりと浮かんでいた汗と血の
汚れとともに、きれいに流れ落ちていった。
「よかった。使ってないタオル1枚あったわ。」
「いいって、本当に。血がついたら落ちないよ。」
「そしたら新しいのひとみちゃんに買ってもらうから。」
クスっと笑った笑顔が胸にしみこんでいくよう。
こんな笑顔を見るのはいつぶりだろう。
- 279 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時43分25秒
傷口の水分を拭い取ると、バンドエイドを取り出して、膝に張ってくれた。
「へぇ。バンドエイドなんてもってるんだ。すごいね。」
「クス。別にすごくなんてないよ。私も履きなれていないサンダルで
出かける時は、よくかかとに傷作っちゃうから。」
「もしかして今日のサンダルもそうなの?」
淡いピンクのワンピースによく似合うそのサンダルは、
あまり汚れが目だっているものではなかった。
「これは・・・・おニューって訳ではないんだけど。」
「そう?でもまだ新しいものだよね?」
「・・・・うん。このワンピに似合うかなぁって思って。」
「よく似合ってるよ。すごくかわいい。」
少しうつむいた彼女の表情は、麦わら帽子のひさしで
ちゃんと見ることはできなかったけど―――
「はいっ。応急手当終わりっ!」
やけにあわてて立ち上がると、梨華ちゃんはふーっと息をついた。
- 280 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月05日(土)23時47分57秒
- >作者
まぁ、前編って感じでしょうか?(w
たぶん後編で終わりになると思います。
あるいは中編書いて3話になるかもしれないんですけど(笑)
やや痛かったのでは?
なんて思いますが、たぶん、いやきっと甘いです(笑)
しかしその甘さもやや控えめになるかもしれませんが。
(ホントか!?(笑))
梨華ちゃんの気持ちが今のところはっきりしませんが、
まぁ、それは今後のお楽しみということで、ひとつ(wゞ
それでは次回まで。
さぁ、もう寝よう(笑)
おやすみなさいませー♪
・・・明日もタラチャミだったらやだなぁ(苦笑)
もっとステキなキャラで絡ませて欲しいよ・゚・(ノД`)・゚・
とかいいつつ、たらこさんかなりきゃわいいーけど(笑)
- 281 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月05日(土)23時59分42秒
- 前作の完結&新作更新お疲れ様です!!
って、新作始まったのに前作の感想を書いてない
非常にマナーの悪い読者の当方・・・(汗)
今作は甘さがやや控えめかもですか。たまには読者も
ダイエットが必要なんですね(笑)
では、次回更新楽しみにしてます♪
- 282 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月06日(日)00時18分01秒
- 東京国際フォーラムで浮気してる間に新作が・・・。
>しかしその甘さもやや控えめになるかもしれませんが。
ROMが必死に念を送っています。(ほ〜れ甘くなれェ・・)
>・・・明日もタラチャミだったらやだなぁ(苦笑)
一徹さんよりはマシかと。
- 283 名前:シフォン@i 投稿日:2003年07月06日(日)08時03分36秒
- もう新作来てる〜!(笑)
あまりの早さにびっくりしてます(素)
>作者様
作者様ったら、仕事人ですね(何)
今回も、リアルに脳内で情景が浮かんでくる、綺麗な描写に感心しつつ、涙目に…(苦笑)
次回更新、楽しみに待ってます♪
リアルタイムでハロモニ。が見られる皆さまが羨ましい〜(涙)
…と嘆きつつ、お仕事してきます(笑)
- 284 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月06日(日)09時09分51秒
- うぉ!新作ですね!前作と同じ日に新作だなんて…すばらしすぎる(^^)
こんな甘い小説がストレス発散法だなんて…。
どんどんストレス発散して下さい(爆
なんか映画みたいな二人ですね、線路を歩く二人…キャー絵になる――!!
スミマセン、暴走がつい(笑
むぎわら帽子で隠れている梨華ちゃんの表情が、超、超、超いい感じ!!な
表情なんでしょうか。きっと、あらやだ…もう…(照れ
- 285 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003年07月07日(月)22時38分29秒
- おぉ〜!!新作ですね!??
またメチャ甘いの期待してます^^
- 286 名前:なな素 投稿日:2003年07月08日(火)01時27分57秒
- 遅れ馳せながら『Photo』 完結おめでとうございます&お疲れ様でした。
仰せの通り、壁は崩れたのではなくて溶けちゃいましたね(笑)
甘いエピローグ最高でした。
余韻に浸る間もなく新作とは嬉しい限りです。
こちらは一転して最初は痛い感じがしますね。
しかし、それは大いなる前振りであるということと理解(期待)しております。(笑
- 287 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月09日(水)14時14分12秒
- 完結おめでとうございます(遅 テストでなかなか来れず、しかしその間に
更新があるのではと楽しみにしていました。新作、僕の好きな痛→甘みたいな
展開のようなので、凄く楽しみですw
夏バテしないよう頑張って下さい☆
- 288 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)22時47分13秒
- >ぷよ〜るさま
>前作の完結&新作更新お疲れ様です!!
>って、新作始まったのに前作の感想を書いてない
>非常にマナーの悪い読者の当方・・・(汗)
いやいや、いつも熱いレスありがとなのです!!!(^-^)
>では、次回更新楽しみにしてます♪
ということで、このお話も今回分でラストです(w
短編なので、こういうことになりました。どうぞ最後まで読んでくださいね♪
>ROM読者さま
>東京国際フォーラムで浮気してる間に新作が・・・。
あ。やっぱり浮気性なのですね?(w
>一徹さんよりはマシかと。
↑これ、マジ笑いしましたが、何か?(w
あれって反則ですよねー。お笑いに走りすぎ!
あぁ・・・。作者のよっすぃーがぁ。。。。
>シフォン@iさま
>もう新作来てる〜!(笑)
>あまりの早さにびっくりしてます(素)
えへへ。でもその分、今回かなりお待たせしました(wゞ
>リアルタイムでハロモニ。が見られる皆さまが羨ましい〜(涙)
こっちでは女塾すらやってなかったので(汗)
それが見れてただけラッキーですよぉー・゚・(ノД`)・゚・
>名無し読者79さま
>うぉ!新作ですね!前作と同じ日に新作だなんて…すばらしすぎる(^^)
やった♪♪♪うれしいなぁ。マジで。
泣けてきますよぉー・゚・(ノД`)・゚・
>むぎわら帽子で隠れている梨華ちゃんの表情が、超、超、超いい感じ!!な
表情なんでしょうか。きっと、あらやだ…もう…(照れ
はい、それはもう、かなーりいい感じでした!(笑)
さて今回のラスト、如何でしょうか・・・・(謎笑)
- 289 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)22時55分06秒
- >LOVEチャーミーさま
>またメチャ甘いの期待してます^^
ありがとーございます♪(^-^)
めちゃ甘は、次回に期待しててください(w
きっと、甘くなると思うので(笑)
いつもサンクスなのです!
>なな素さま
>甘いエピローグ最高でした。
うぉー・゚・(ノД`)・゚・ヨカタ。作者号泣させてどうするんですかぁー(涙)
>しかし、それは大いなる前振りであるということと理解(期待)しております。(笑
・・・・。どうでしょうか?(w
今回のは今までの中で比べると、かなりライトな仕上がりかと(笑)
どのくらいの甘かは、ぜひ最後まで読んでから判断してみてくださいね!(wゞ
>俄かいしよしファンさま
>テストでなかなか来れず
うわっ!!!現役の学生さんですか!?
ちょーうらやますぃー♪♪♪
作者も学生時代に戻りたいですよぉー(涙)
>夏バテしないよう頑張って下さい☆
は、はいっ!(wゞがんがりますね。どうもありがとうございます♪
さて、今回この後編にてお話は終わりになります。
なんだかやや納得いかない感じがするので、
次回作で甘パワー炸裂させたいなと、そう思っています(w
それでは最後までお楽しみください。どうぞ♪
- 290 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)22時57分54秒
「ありがとね、梨華ちゃん。」
見上げた顔はちょうど逆光になっていて、眩しくて見ることができない。
あたしはそんな彼女のことを、それでも目を細めながら見ていた。
こんなにも近くにいるのに・・・
「いいよ。これくらい。」
肩から胸元にかけて流れ落ちている髪は、もうかなり乾いていたけれど、
それでもまだ完全に乾いているという訳ではなかった。
しっとりと水分を含んでいるその髪が、いつも以上に艶やかに目にとまる。
普段は二つに分けている髪を下ろしていることで、
いつもとは違う何かを感じた。
「やっぱり痛くて立てない?」
しばらくぼーっと見ていたあたしに、梨華ちゃんは心配そうに少しかがんだ。
「ううん、大丈夫・・・・・・いや、やっぱりちょっと痛むかな。」
バカバカしいと我ながら思うけど、心配してもらえるのが嬉しくて。
あたしのことを少しでも気にかけてくれているんだって、
それは自惚れや勘違いであることはわかっていても。
「どうしよう・・・・。まだ家に帰るまでかなり歩かなきゃいけないのに・・・」
「少しだけ休んでくよ。痛みがひいたらぼちぼち歩いて帰ればいいことだし。
・・・・・先、帰ってくれていいよ。」
あたしはズルイ。
梨華ちゃんがあたしを置いて帰ることなんてできないことを知っていて、
そんなことを言ったのだから。
「そんなことする訳ないでしょ。」
呆れた声が返ってきた。
思った通りの答えに、あたしはつい苦笑してしまった。
- 291 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)22時59分03秒
- 「へへっ。よかった。本当は置いて帰られたらどうしようかと思ってたよ。」
「クス。ひとみちゃんたら。そんなこと思ってないくせに。」
「・・・・どうしてそう思うの?」
たった今まで笑っていた表情を瞬時に消して、あたしは梨華ちゃんをじっと見つめた。
「どうしてって・・・」
その視線を逸らすように、彼女はかがんでいた体をゆっくりと起き上がらせた。
それからしばらく遠くを見つめたまま、何も言わないでたたずんでいる。
まるでここだけ時間が止まったかのような、沈黙が続いていた。
セミの声が、どこからともなく風にのって聞こえてくる。
夏の間だけのはかない命。
今この時とばかりに鳴いているのは、それを知っているからだろうか。
この瞬間を精一杯生き抜くために。
あたしに与えられた時間も、そう長いものではないのかもしれない。
きっと梨華ちゃんとこうやって過ごせることも、
これからは難しくなっていくだろうから。
急き立てられる気持ちが、胸の中を駆け巡っていく。
だからあたしは―――
「もう、帰ろうか。」
「・・・・うん。」
慎重に、細心の注意を払って、心の準備を整える。
「悪いけど、手、貸してもらえるかな。」
起き上がるのを口実に、手を差し出した。
「はい。無理しないでね。」
差し出されたその手をぐっとつかんで立ち上がると、
あたしはそのまま梨華ちゃんを抱きしめた。
- 292 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時00分30秒
それはとても危険な行為だった。
ともすれば、全てを失いかねない賭け。
しかし、99%勝ち目がない勝負でも、わずか1%の可能性があるのなら、
それに賭けてみたかった。
答えは白か黒。
二つに一つしかないのだ。
このままずっと灰色のままでいるなんてことは、
それこそ死んでいるのと変わらないことだから。
あたしも精一杯生きてみたい。
たとえ羽をもがれて墜落したとしても。
「・・・そろそろ答えを教えてよ。好きか嫌いか。」
「ひとみ・・・ちゃん・・・」
「このままだとあたし、どうしていいのかわからないよ・・・。
振ってくれてもかまわない。ちゃんとした答えが欲しいんだ・・・。」
梨華ちゃんは、それでもまだ黙ったままだった。
じりじりと照りつける太陽が、赤く焼けた肌に突き刺さっていく。
背中を伝っていく汗が、また一滴、流れ落ちた。
その時。
「嫌い・・・・・」
絞るようにもれてきた声は、確かにそう言った。
見事に砕け散っていった心。
―――もう何もかも終わってしまったのだ。
だけどあたしは、どこかすっきりしている自分に気がついていた。
1%の可能性を求めてはいたけれど、
本当はどう考えても勝ち目のない勝負だということがわかっていたから。
これでもう、苦しみから解放されるのだ。
泣きたくなるほどの切なさに、胸を痛める日々とはさよならできる。
きっとこれでよかったのだ。
―――そう思い込んでいるのは、今だけの強がりなのかもしれないけれど・・・・
- 293 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時01分49秒
「・・・・そっか・・・。わかった。ごめんね、今まで嫌な思いさせて。」
そう言うのが精一杯だった。
泣きたくなる気持ちを抑えながら・・・。
きっと、梨華ちゃんも苦しんでいたに違いないのだ。
ここまで答えを出さないでいてくれたのは、
きっとあたしを傷つけないための優しさだったのだろうから。
しかし、今、ようやく彼女の口からはっきりとした意思が示されたのだ。
それならあたしができることは・・・・
きっぱりと梨華ちゃんを諦めることしかない。
抱きしめていた体を離すと、精一杯の笑顔を浮かべて彼女の瞳をみつめた。
―――さよならを言うために。
だけどその時。
「違うの、ひとみちゃん・・・」
Tシャツのすそをつかんで、梨華ちゃんはぽつりとつぶやいた。
「なに・・・」
「嫌い・・・なのは・・・。私自身。」
「・・・え?」
「私は、私のことが嫌いなの。」
その目はとても冗談を言っているようには見えなかった。
苦しんでいるのがわかるほど、真剣な瞳。
だからあたしも彼女の目を真剣に見つめたのだ。
「どういう・・・こと?」
- 294 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時04分16秒
- 「ひとみちゃんもわかっているとは思うけど、私、すごくズルイから。
いつも平坦な道ばかり歩いてきた。冒険するのが怖くて・・・。
目立たないように、人の顔色ばかりうかがって。」
「梨華・・・・ちゃん・・・・・・・・・」
「自分の意見すらちゃんと言えずに。まわりにあわせてばかりいた。
傷つくことが怖いの。臆病なのよ、私は。そんな自分が嫌いなの・・・・」
たまらず梨華ちゃんを抱きしめていた。
「もういいよ。それ以上話さなくて。」
「・・・っく・・・。ごめんね・・・ひとみちゃん・・・」
「何も謝ることなんてないじゃん。」
「・・・・・私ってこんなのだから・・・。だからひとみちゃんに
好きになってもらえるような人間じゃないのよ・・・・。」
震える肩をぎゅっと抱きしめた。
それは自分自身の浅はかさを戒めるため。
どうしてあたしは彼女がもつ弱さや心細さに、もっと気付いてあげることが
できなかったのだろう。
表面だけを見ていた訳では決してなかった。
けれどその告白は、あたしが知らない梨華ちゃんを
まざまざと見せ付けられた気がして・・・
だからもっと彼女のことを知りたいと思った。
繊細でもろいその心の支えになってあげたかった。
「梨華ちゃんは、間違ってるよ。」
「・・・・・え・・・・・」
「好きになる気持ちは、あたしが勝手に抱いたもの。
好きになってもらえるような人間じゃないって言ったけど、
それはあたしが決めることだよ。」
「ひとみちゃん・・・・」
- 295 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時05分38秒
- 「それに梨華ちゃんは、臆病なんかじゃない。
今日だって塾、サボったでしょ?」
「・・・そうだけど・・・・」
「まぁ、あたしが強引に連れてきてしまったんだけどね。」
苦笑したあたしに合わせるように、彼女の肩も少しだけ揺れた。
「それに、梨華ちゃんは今、ちゃんと自分の気持ちを話すことができたじゃん。
立派だと思うよ。今まで梨華ちゃんを見てきたけど、こんなにはっきりと
気持ちを聞いたことなんてなかったから。」
「・・・うん。」
「もっと・・・知りたいよ。梨華ちゃんのこと。
弱さも強さも全て含めて。あたしは梨華ちゃんのことが好きだから・・・」
ゆらめき立つかげろうを眺めながら、あたしは思っていた。
空に逃げていくかげろうを、幻として見ているだけではダメなんだと。
虚像を追いかけていたら、いつまでたってもその本質をつかみとる
ことなんてできないのだと。
梨華ちゃんは、はかなげにゆらめくかげろう。
ならばあたしがしっかりと抱きとめていてあげよう。
安心して降り立つことのできる、存在として。
「もう一度・・・・。いや、最後に聞くよ。
梨華ちゃんは、あたしのこと、好き?それとも嫌い?
心の中にある正直な気持ち、教えてよ。」
心をそっと鎮めて、その答えを待った。
勝敗は五分五分。
もし彼女を包んでいる殻を破ることができたのなら、
それはあたしの勝利を意味している。
だけど、少しのヒビも入れることができなかったのだとしたら、
それはつまり・・・・
- 296 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時06分52秒
緊張で体がこわばっていく。
そして、ようやく梨華ちゃんの口から言葉がもれた。
「・・・・好き。」
瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。
ただただその華奢な体を抱きしめて、幻なんかじゃないことを確かめた。
心地よい疲労感が体を支配していく。
気だるく感じていたプールの後の眠気も、
ヒリヒリと肌を射す夏の日差しも、全て彼女の体を抱きしめることで、
昇華されていく気がした。
胸に渦巻いていた狂おしい思いが、きれいに空へと舞い上がっていく。
「梨華ちゃん・・・・」
「ひとみちゃんが好き。ごめんね、今まで待たせてしまって・・・」
「いいよ。ちゃんと気持ちを伝えてくれただけで嬉しいから。」
ふーっと大きく息をついた。
「やっと、伝えることができたのね。私も・・・」
「え?」
「本当は、最初に告白してもらった時、すごく嬉しくて。
でも自分に自信がなかったから、ちゃんと答えることができなくて。」
「・・・そうだったんだ。」
「ひとみちゃんがうらやましかった。いつでも自信に満ち溢れてて。
自分の意思表示がちゃんとできて。私にはとても輝いてみえた。
自分にないものをいっぱい持っている人なんだって。」
「それってただ神経が図太いだけだよ。」
恥ずかしさをごまかすように、あたしは苦笑した。
「そうじゃないよ。ちゃんと私は知ってるもの。ひとみちゃんて、
しっかりと自分をもっていて、心のキャパも広くて深い。
なにもかも包み込んでくれる優しさをもっているのよ。」
「なんか・・・照れるなぁ・・・。そんなに褒められることってないから。」
- 297 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時08分08秒
- 「私にはもったいない人ね。」
「・・・ねぇ、梨華ちゃん。」
「なに?」
「もしかしてそれって、遠まわしに断ってるってこと、ないよね?」
ちゃんと彼女の思いを聞いた今も、やっぱりどこかまだ信じられなくて。
冗談交じりに気持ちを隠して、あたしは聞いてみた。
「クス。断る理由なんてないじゃない。」
けれどそんな気持ちを打ち消してくれるように、
彼女はクスクスと笑いながら答えてくれた。
「はーっ・・・よかった。」
一気に緊張から解放されて、大きく息を吸い込むと、
抱きしめている彼女の髪から、消毒薬の匂いがすることに気付いた。
「梨華ちゃんて、プールの匂いがする。」
「ふふっ。それはひとみちゃんもよ。」
いつのまにか乾いていた、彼女の髪をすくって、
指に通してみた。
「今日は楽しかったよ。ありがとね。」
「私も、楽しかった。塾サボってきた甲斐があったわ。」
おかしそうに笑う肩が小刻みに揺れている。
「また一緒に行きたいね。」
「うん。今度はもっと日差しの強くない日に・・・ね?」
ひとしきり笑い合うと、あたしたちはようやく互いの体を離した。
手を繋いで砂利道を歩く。
真っ直ぐに伸びている線路は、かげろうの向こうでぼやけて見えないけれど。
- 298 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時09分36秒
「よーっし。私も挑戦してみようっと。」
「え?なに?」
「線路の上を歩いてみるの。」
「えっ!危ないよ?」
「いいの!歩いてみたいの!」
さっきまでのあたしたちの立場が、まるで逆転してしまったよう。
「気をつけてね。サンダルだと滑りやすいだろうし。」
「だーいじょうぶっ。これでもバランス感覚はあるほうだから。」
ひょいと線路の上に足をかけると、
交互に足をくりだしてバランスよく歩きだした。
もちろん、サポートをするために、しっかりと手はもっていたけど。
「へぇ。なかなかうまいもんだね。」
「でしょ?」
「でもさぁ、油断してるとそのうちあたしみたいにコケちゃうよ?」
「ふふ。その時はひとみちゃんが手当てしてくれるのよね?」
「あはは。もちろん。ツバくらいはつけてあげるよ。」
「やだー。そんなのだったら遠慮するわ。」
楽しげに笑う声。
キラキラと眩しく映る、梨華ちゃんの笑顔。
あたしの心はかつてないほどの、充足感で満たされていく。
いつまでも彼女の側にいたい。
笑ったり泣いたり怒ったり、喧嘩したりもするかもしれないけれど、
そんな時間を彼女と共有したい。
ずっとこのまま、2人で。
2人だけで、どこまでも。
終着駅なんてきっとどこにもないのだ。
あたしたちが進む未来には。
またセミの鳴き声が聞こえてきた。
今度はさっきよりも大きな声で。
そして、まるでそんな2人をくすぐるように、一陣の風が吹き抜けていった。
- 299 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時10分58秒
「あっ!」
ひらりと舞い上がっていく麦わら帽子。
ゆっくりと回転して地面に落ちたそれは、まるで命が吹き込まれたかのように、
ころころとどこまでも転がっていく。
「あーぁ。また戻らなきゃ。」
クスリと笑って帽子の行方を目で追うと、梨華ちゃんに視線を戻した。
けれど彼女は遠くに転がっていく自分の帽子を、ただじっと見つめていただけ。
パタパタと風に揺れるスカート。
頬にかかる髪も、かまうことなく、ただ風に吹かれて立ち尽くしている。
「どうしたの・・・梨華ちゃん。」
繋いでいた手を離して、ウエストに両腕を絡めた。
そうでもしないと、彼女こそが風に吹かれて消えていきそうに思えたから。
「ううん。なんでもない。」
肩の上に手を置くと、彼女はどこかしら涼しげな瞳であたしをみつめた。
線路の上に立っている梨華ちゃん。
それはちょうどあたしと同じ視界になることを意味している。
「なんでもないような顔には見えないけど?」
「・・・えっ?」
「何か思いつめてるんじゃない?」
「・・・ふふ。ひとみちゃんは何でもお見通しなのね。」
瞬間目を伏せると、また視線を遠くへ移した。
「本当に、どうしたの?」
言い知れぬ不安がまたあたしの心を不安定にさせていった。
が、しかし。
「あのね・・・。こんなこと言ったら笑われるかもしれないんだけど・・・」
「ん?なに?」
「帽子。拾いに行きたいんだけど・・・」
「うん。」
「もしまたこの道を戻って行ったら・・・2人の関係も元に戻るような気がして・・・」
- 300 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時12分27秒
きゅーんと心をくすぐられてしまって、たまらずその体をもっと強く抱きしめてしまった。
「かわいいこと言うんだ。」
思ったそのままの気持ちを言葉にした。
「だって・・・本当にそんな気がしたんだもん。」
「そんなことある訳ないじゃん。」
「本当に?」
「クス。本当も何も。あたしの気持ちは変わらないから。
まぁ、梨華ちゃんはどうかわからないけどね。」
冗談交じりにそんなことを言ったのは、彼女の気持ちが確信できるから。
「知ってるくせに。私の気持ち。」
「はて?どんな気持ちだったかな?」
いたずらっぽく笑って、梨華ちゃんの瞳を見つめると、
はにかんだように、見つめ返されてしまった。
そんなかわいい表情に、ドキリと胸が高鳴る。
「もぉー。イジワル言わないの。」
「ちゃんと言って欲しいな。どんな気持ちでいるのか。」
「だからぁ・・・・好き。」
小さな声でそう言うと、恥ずかしげに瞳を伏せた。
「へへっ。本当は知ってたけどね。」
「何度も言わせないでよ・・・・。恥ずかしいんだから。」
ぷーっとむくれると、あたしがかぶっていたキャップのつばを、
ぐっと下に引き下げた。
「うわっ。なーんにも見えないじゃん。」
「しばらくそうして反省してなさい。」
「ひでーなぁー。ったく。」
文句を言いながらも、あたしはそんなじゃれ合いがとても楽しくて。
絡めていた腕を離して、キャップのつばをあげると、
目の前にいるはずの梨華ちゃんの姿がそこにはなかった。
- 301 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時13分46秒
- 「あれ・・・。梨華ちゃん???」
「どこ見てるの?こっちだよっ!」
その声の方へと視線を向けると、元来た道の方に進みながら、
振り返ってこちらを見ている姿があった。
「ちょっと待ってよー。置いてくつもり?」
ゆっくりと一歩を踏み出した。
「置いてくわよー。当たり前じゃない。」
クスッと笑うと、梨華ちゃんは駆け出した。
「よーっし!絶対つかまえてやるっ!」
弾む気持ちを胸いっぱいに抱えながら、あたしもまた走り出した。
だけど―――
「いてっ!」
2、3歩駆け出したところで、あたしは膝を抱えてその場にうずくまった。
その声に梨華ちゃんが振り返る。
「ひとみちゃん!!!」
あわてて引き返すと、あたしの前にしゃがみこんだ。
「大丈夫!?」
「いててて・・・。傷口がまた開いたかも・・・」
「あぁ・・・。ごめん。ごめんね。私ったら・・・」
すごく心配そうな目をしてあたしを見上げた。
「・・・なんてね。ウソだよ。」
ぺろっと舌を出して笑った。
「もぉ!バカっ!本気で心配したのに!」
ちょっとからかうつもりだっただけなのに。
梨華ちゃんはどうやら本当に心配してくれていたみたいで、
冗談ではすまないとばかりの不機嫌な顔。
「ごめんね?」
「知らないっ。」
「梨華ちゃーん。」
ぷいっと顔を逸らせて、全然相手にしてくれない。
- 302 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時15分10秒
- 「あぁ・・・。本当に痛くなってきた・・・・。」
「もうだまされないんだから。」
「本当に痛いよ。今度こそ、本当に。」
「えっ・・・。」
やっとこっちを向いてくれたのはいいけれど、
もっと心配させてしまったよう。
あたしの膝に手を置いて、ゆっくりとなでてくれている。
「・・・あのさぁ、梨華ちゃん。」
「あっ、ごめん。痛かった?」
「ううん、大丈夫。けど、痛むのは膝じゃないんだよね。」
「もしかして、どこか別の場所怪我してたの?」
「違うよ。・・・・あたしが痛いのはここ。」
胸に手を当ててその瞳を見つめた。
「・・・え?」
「梨華ちゃんが相手にしてくれなかったから。だから胸が痛かったんだ。」
どんな反応を示してくれるのか。
あたしは注意深く、それを探っていた。
「ひとみちゃん・・・・」
その瞳は、とても・・・・
「ねぇ、傷ついたあたしの心、慰めてよ。」
膝に置かれていた手の上に、自分の手を重ねた。
「・・・慰めるって・・・。どうしたらいいの?」
「そうだなぁ・・・キスの一つでもしてくれたら治るかも。」
「えっ・・・・えーっ!?」
「あーぁー。チクチク痛むなぁ。」
片目を閉じて、ちらりと窺いながら、おおげさにそう言ってみた。
「わっ・・・わかった・・・わよ・・・」
にやりと笑いたい気持ちを抑えて、あたしはじっとその瞳をみつめた。
- 303 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時16分55秒
- 「その・・・・。目、閉じて?」
「うん。わかった。」
言われたままに目を閉じた。
ドクンドクンと沸き立っていく血潮。
どうしようもなくドキドキして、心臓が爆発しそうなほどに。
「いっ、いくわよ。」
「クス。いつでもどうぞ。」
そして、ゆっくりと顔が近づいてくる気配を感じた。
きっと、2人の唇が重なるまで、あと少し。
なのに―――
「ちょっと待って。」
「は???」
「よく考えたら、どうして私がひとみちゃんを慰めないといけないのよ。
私、なーんにも悪いことしてないのに。」
「なに言ってんだよ、今更。」
「だってもとはと言えば、ウソついたひとみちゃんが悪いんじゃないのよぉー。」
「いいじゃん、そんなの。どうだって。」
「よくないっ!」
すっくと立ち上がると、パタパタとスカートのすそをはたいている。
期待していた分だけ、急激にしぼんでいく心。
けれどそんなに落胆せずにいられたのは―――
「ちぇーっ。あと少しだったのに・・・」
「ホント。あと少しでうっかりキスしちゃうとこだったわ。」
つーんとすましてはいるけれど、その頬はそれとわかるほどに、
赤く染まっていたから。
「ねぇー。梨華ちゃーん。」
「なっ、なによっ。」
「ちゅーさせてよー。」
「ヤダ。」
「んだよ。じらさなくてもいいじゃん。」
あたしもやっと立ちあがると、短パンについた汚れをパタパタと
手で払いながら、口を尖らせた。
「じらしてなんかないわよ。」
「じゃぁキスさせて?」
「なんでそうなるのよっ。」
「なんでって。キスしたいから。」
- 304 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時18分05秒
- 理屈なんてどうだっていい。
あたしはただ梨華ちゃんとキスがしたかった。
唇を重ねたくなるこの気持ちは、梨華ちゃんのことが本当に好きだから。
そんな想いを形にしたくて、手を伸ばして肩をつかもうとしたけれど。
「残念でしたー。そう簡単にキスなんてしてあげないよーだ。」
クスっと笑いながら、後ずさっていく。
「おいおい。それじゃ一体どうしたらキスさせてくれるんだよ。」
間合いを詰めながら、彼女に向かって足を進める。
「そうね・・・。それじゃ、私が帽子を拾うのと、ひとみちゃんが
私をつかまえるのと。どっちが早いか競争するってのはどう?
勝った方が言う事を聞くの。」
「あはは。それってもう勝負は見えてるじゃん。」
「ふふ。果たして、そうかしら?」
梨華ちゃんは不敵な笑顔を見せたけど、
あたしは自分の勝利を確信していた。
かけっこでもなんでも、スポーツに関しては自信があるから。
「絶対先につかまえてやる。」
「これで決まりね。負けても文句いいっこなしよ?」
「それはこっちのセリフだよ。」
「それなら・・・・。よーい、どんっ!」
「えっ?何、フェイントかよ。ズルイなぁー。」
先に駆け出した梨華ちゃんを追いかけて、あたしも駆け出した。
このくらいの距離なら楽々捕まえることができる。
そう思っていたけれど・・・・
- 305 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時22分08秒
「うわーっ!さっきのナシにしてっ!!!」
「ダメよ。約束したじゃない。」
距離は縮まるどころか、どんどん離されていってしまっていた。
あたしは忘れていたのだ。
今日履いているのは、いつものスニーカーではないことに。
走る度にペタペタと情けない音を立てるビーチサンダル。
一方の梨華ちゃんは、もうあと少しで落ちている帽子に手が届きそう。
「ちょっとは手加減してくれよー。」
「ふふふっ。」
そして勝負はついてしまった。
はぁはぁと膝に手をあててかがみ込んだあたしの前には、
余裕の表情で帽子をうちわ代わりにしている、梨華ちゃんの誇らしげな姿が。
「あーっ!くそーっ!!!」
かぶっていたキャップを脱いで、額ににじんだ汗を拭う。
「おしかったね。」
笑い声を押し殺している梨華ちゃんの肩が揺れていた。
「はぁー・・・。思い切り走って損したよ。」
うらめしそうに、その顔を見上げるあたし。
「クス。文句はいいっこなしだったよねー。」
そしてもう耐え切れなくなったとばかりに、体を抱えて笑っている。
「ちぇ。あんな約束しなきゃよかった。」
「今更言っても遅いよっ。」
「はぁ・・・。だよね。約束は約束だもんね。」
キャップのつばを後ろ向きにしてかぶると、ふーっと息をついて体を起こした。
- 306 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時23分52秒
「さ。それじゃ約束通り、私の言うこと聞いてもらおうかしら。」
「はいはい。どうせ荷物でも持てって言うんでしょ。」
「あれ?どうしてわかったの?」
「わかるよそれくらい。はい。貸して。」
素直に負けを認めて手を差し出したけれど。
「バカね。本気にしないの。」
差し出した手には、荷物ではなく梨華ちゃんの手が握り締められていた。
「・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・。」
麦わら帽子で隠すようにして重なったもの。
それは負けたあたしが手にするはずだった、勝利の約束。
ゆらゆらと立ちのぼっていたかげろうは、いつのまにか姿を消していた。
『かげろう』終わり
=修行僧2003=
- 307 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月09日(水)23時26分51秒
- >作者
終わりっすー♪(wゞ
いかがでしたでしょうか?
さほど甘くもなかったのでは?なんて思うのですが(笑)
次回作は、甘にしたいなぁ・・・。
もう激甘で、読者のみなさまが引くくらいのを、ひとつ(笑)
少し長くなってしまいましたが、思ってたように書けず、
ややストレスが(w
まぁ、次回に持ち越しということで、お許しください。
それではまた次回まで。
ありがとうございました!!!
- 308 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月09日(水)23時37分53秒
- 更新お疲れ様です。一つ一つのシーンの描写がすごく繊細で
優しく、自然に読み手の心の中に溶け込んで来るような気が
しました。
>さほど甘くもなかったのでは?なんて思うのですが(笑)
これで甘くないとおっしゃる?読みながら、かなりジタバタ
しましたけど。「くぅ〜〜たまらん!」とか言いながら。
>あ。やっぱり浮気性なのですね?(w
あ〜、つい出来心で・・ツアーファイナルだったし・・
・・申し訳!
- 309 名前:シフォン 投稿日:2003年07月10日(木)00時12分06秒
- 危うく見過ごして寝ちゃうトコだったわ(汗)
はぁ、寝る前に読めて良かったぁ(笑)
>作者様
完結お疲れ様でした♪
今回の作品は、いつもよりは短編でしたが、でも中味は十分濃かったように感じます。
ROM読者様も書かれていますが、描写の繊細さが凄く心に残る作品でした。
今回もしっかり甘かったですよ♪
う〜ん、今回の作品は『和菓子の甘さ』って感じかしら(笑)
夏らしく、さっぱり涼しげな甘さ…そんな風に感じました♪
次回作も絶対読ませていただきますっ!!
これからも無理だけはなさらず、ストレスを溜めぬ様、がんがって下さいね♪
- 310 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003年07月10日(木)00時13分41秒
- あま〜い!!すばらしくあまいっす!お疲れ様でしたっ♪
- 311 名前:時雨 投稿日:2003年07月10日(木)00時13分56秒
- 読んでて、情景が目の前に浮かんできました。大変面白かったです。
お姉さん梨華ちゃん好きなもので、かなりたまらないセリフまわしでした。(最後のセリフとか!)
小僧よちぃもかなりの可愛さ。(『だってー…』みたいな我が侭な感じが(・∀・)イイ!!)
次回作の激甘、期待してます。
- 312 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月10日(木)10時27分01秒
- 今回の作品も良かったです。
梨華ちゃんの気持ち、わかるなーと思いました。
人の目を気にして、周りに合わせて、自分もそんな感じなので…(爆
みんなもそういう所は、必ずあると思うし。
だからか梨華ちゃんの一歩を踏み出す!っていう姿がうらやましくも感じました。
すばらしい作品ありがとうございます。
次回作!激、激甘で(爆 引きませんよ、引くことはありませんが自分の顔が
どうなることか…(笑 きっと緩みまくっているかもしれません。
次回はストレスがなくなるくらい発散できるといいですね。
期待して待ってまーす!←これを打つ時なぜか娘。たちが思い浮かびます。
明治座で待ってまーす(笑 いつも言ってたので…。
- 313 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月10日(木)14時15分47秒
- まだ実は高校生なんですけどね(ボソ
素晴らしいですね。僕も作品書き出したんですけど、書くと改めて
修行僧2003様の文才を思い知らされますw今回の作品も情景が
目に浮かぶようでした!
次回作も期待しています。激甘も大歓迎です☆
- 314 名前:なな素 投稿日:2003年07月10日(木)15時36分25秒
- >今回のは今までの中で比べると、かなりライトな仕上がりかと(笑)
なるほど〜納得しました。今回は確かに激甘というわけではなかったですが、
その分状況描写や心理描写が事細かで、純粋に書き物として楽しめましたよ〜。
(何者なんだ俺は、偉そうにw)
二人の状況が頭にリアルで浮かんできました。
一言で表すと「青春」って感じの作品だと思います。
甘いけど、どこか深い。
こういうお話も好きですね。ますます作者様のファンになりました。
蒸し暑い日が続いてますね〜、夏バテしないように気をつけて下さいね。
- 315 名前:Silence 投稿日:2003年07月11日(金)15時37分02秒
- 更新&完結お疲れ様でした。
激甘もいいけどこんな2人が大好きな自分でした。もち、激甘も好きです
けどね。しっかしこんな作品が書けるのはすげ〜ですよねぇ。
さすがは修行僧様だな〜って思ってました(w
感想遅れてすいませんでした。3日ほどネットできなかったもので。
それでは次回作も期待しております。
- 316 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時34分56秒
- >ROM読者さま
>これで甘くないとおっしゃる?読みながら、かなりジタバタ
>しましたけど。「くぅ〜〜たまらん!」とか言いながら。
やったぁ〜♪♪♪
それってROMさまの心、がっちりとつかめたってことと理解して
よろしいのでしょうか?(wゞ
>・・申し訳!
いやいや。ここまでついてきていただけただけで充分ですよぉ♪
ってゆーか、これからも是非ついてきてください(wゞ
>シフォンさま
>今回の作品は、いつもよりは短編でしたが、でも中味は十分濃かったように感じます。
>ROM読者様も書かれていますが、描写の繊細さが凄く心に残る作品でした。
うわぁ♪最上級の褒め言葉ですね!!!どうもありがとうございます(^-^)
>次回作も絶対読ませていただきますっ!!
約束ですよ?(w これからも呆れずについてきてくださーいっ♪
>LOVEチャーミーさま
>あま〜い!!すばらしくあまいっす!お疲れ様でしたっ♪
感謝!!!いやはや、大感謝なのです!!!
今回のは、もうひとつあまーい感じですので、
喜んでいただけると嬉しいのですが(w
>時雨さま
>読んでて、情景が目の前に浮かんできました。大変面白かったです。
あぅ・゚・(ノД`)・゚・嬉しいですよぉー。マジ泣きました。
>お姉さん梨華ちゃん好きなもので、かなりたまらないセリフまわしでした。(最後のセリフとか!)
作者も結構お姉さん梨華ちゃん好きなんですよねー(苦笑)
次回ははるみちパロってみようかしら?なんて(笑)
感想ありがとうございました。すごく励みになりました!!!
- 317 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時47分56秒
- >名無し読者79さま
>梨華ちゃんの気持ち、わかるなーと思いました。
そうですか!!!なんともはや、嬉し恥ずかしなのです(wゞ
>明治座で待ってまーす(笑 いつも言ってたので…。
作者も何気に日常生活で使ってます(笑)
「〜〜〜〜で、待ってまぁ〜っす♪」とかって(w
>俄かいしよしファンさま
>まだ実は高校生なんですけどね(ボソ
うわーっ!現役ですね!!!うらやますぃ〜(笑)
>素晴らしいですね。僕も作品書き出したんですけど、書くと改めて
>修行僧2003様の文才を思い知らされますw今回の作品も情景が
>目に浮かぶようでした!
何気に褒め殺しですか?(w でも恥ずかしかったけど嬉しいです!
作者自身、決して上手な書き手だとは思っていませんので、
これからも頑張っていこうと思ってます。どうもありがとう♪
>なな素さま
>一言で表すと「青春」って感じの作品だと思います。
>甘いけど、どこか深い。
ほんとですか!?嬉しいです、そう言っていただけて♪
ややくらーいかなぁーと思ってましたけど、
甘を少しでも感じていただけてうれしかったです。感謝!!!
- 318 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時49分41秒
- >Silenceさま
>さすがは修行僧様だな〜って思ってました(w
あれ?またここでも褒め殺しですか?(w
でもやっぱり嬉しかったり(笑)
>感想遅れてすいませんでした。3日ほどネットできなかったもので。
何をおっしゃいますやら!!!全然気を遣わないでくださいよぉ〜☆
というよりも、ネットできなかったのは体調崩されたとかって
のじゃないですよね?ね?もしそうであるなら本当にお大事にしてくださいね。
えっとですね、今回のお話は前後編の短編です。
かなり甘いかと思いますので、甘が苦手な方は、見なかったことにしてください(笑)
でも甘が好きな方は、ぜひぜひ最後までお付き合いくださいませ♪
なにせ、書いてる作者でさえ鳥肌たてるくらい、寒いですから(w
とかいいつつ、読んでもらえると、大変嬉しいです。
それでは、前編、どうぞ!!!
- 319 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時52分16秒
『ももいろ両想い』
「はぁーっ・・・。ねぇ、ひとみちゃん。」
肩に手をかけて名前を呼んでみたけれど。
「・・・・・・・・。」
相変わらず返事はない。
「ねぇ、いつまでそうしているつもり?」
さっきからもうずっとこんな感じで、ソファーの端っこで背を向けている。
ひとみちゃんをこんなにも不機嫌にさせてしまった原因は、私にあるのだけれど、
まさかこれほどまで拗ねてしまうとは。
「・・・もうそろそろ機嫌直してもらえないかしら。」
これ見よがしに向けられた背中に、ため息混じりにつぶやいてみる。
それでも頑なになってしまった心を、そう簡単に融解させるのは、
難しいのかもしれなかった。
またため息が出そうになったけど、私はちゃんと理解してもらいたくて、
その体を後ろから抱きしめた。
「ひとみちゃん。ねぇ、ひとみちゃんたらぁー。」
「・・・んだよー。」
やっと返事をしてくれたのは嬉しいけど、やはり相当ご機嫌斜めな様子。
「今日のことはいつか絶対穴埋めするから。もう許してよ。」
「いつかっていつだよ。」
「それは、だから・・・。その・・・・・」
「いつだってそうなんだ。梨華は。もういいっ。」
結局また元に逆戻り。
もうかれこれこんな繰り返しを30分以上続けている。
ひとみちゃんが不機嫌になってしまったのは、
私の携帯にかかってきた一本の電話が原因だった。
母親がくれた連絡は、至急家に帰ってきなさいと言うもの。
なんでも、田舎にいる祖母が何の前触れも無く、
我が家にやってきたのだという。
- 320 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時55分53秒
- 小さい頃にはよく私のことをかわいがってくれた祖母。
大きくなってからはなかなか田舎に行ってあげることもできないでいたから、
会うとなると、かれこれ8年ぶりの再会となる。
私も祖母のことが大好きだから、せめて顔くらいは見せてあげたい
のだけれど、困ったことに今日はひとみちゃんとデートの約束をしていた。
それも、お泊りで・・・・・。
ひとみちゃんの両親は、この土日、旅行に出かけるということで、
私が彼女の家にお邪魔しているのだ。
親にはもちろん友達の家に泊まると言ってでてきたのだけれど、
内実、今日はひとみちゃんと2人っきりで過ごすことができる
初めての夜だった。
それだけに、彼女の機嫌はなだめてもすかしても、
一向に直る気配を感じられなかった。
こんなチャンスは滅多にないとわかっているから。
「ひとみちゃん・・・。」
絡めていた腕を離して、彼女の前に体を移した。
「2人で買い物して、晩御飯作って、一緒に過ごそうって約束したのに。」
「ごめんね・・・。でもうちのおばーちゃんももう高齢だから、
そう滅多に東京に出てくることもできないのよ。
今日会えなかったら、またいつ会えるかわからないから・・・。」
「やっぱり梨華はあたしなんかよりおばーちゃんを取るんだ。
そういうことだよね。」
「・・・・・違うわよ・・・・・・・・。」
「違わないじゃん。だったらなんであたしを選んでくれないの?
あたしと一緒にいてくれないの?」
返す言葉が見つからない。
私にとっては祖母もひとみちゃんも同じくらいに大切な存在だから。
- 321 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時57分18秒
- どちらかを天秤にかけることなんてできないのだ。
だけど、ひとみちゃんとはまたいつでも会うことができる。
同じ学校に通って毎日顔を会わせているし、デートだって
週末にはいつもしているから。
逆に祖母は会おうと思ってもなかなか会うことができない存在。
ならば今日のところは涙をのんで、祖母に喜んでもらいたかった。
なんでも私の顔を見るのを楽しみにして来てくれたというのだから。
また一つため息をついて、時計を見た。
もうそろそろ帰らないと、帰宅すると約束した時間には間に合いそうもないから。
「・・・いいよ、もう。ごめん。ちょっと言い過ぎたよね。梨華の気持ちも考えてあげなきゃ
いけなかったのに・・・。もうそろそろ時間でしょ。帰ってもいいよ。」
そうは言ってくれたものの、やっぱりひとみちゃんは視線を伏せたまま。
「ごめんね。」
頭を抱えてそっと抱きしめた。
これから2人で楽しい時間を過ごす約束をしていたのに、
それを破ってしまった罪悪感が胸を締め付けていく。
ひとみちゃんが吐き出した大きなため息が、私の胸に熱く伝わってきた。
=PiPiPi・・・・=
「・・・はい。うん。もう出るから。・・・うん。・・・わかった、じゃぁ。」
母親からの確認の電話。
もう本当に帰らなくてはいけない時間だった。
「ごめん。そろそろ帰るね・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
立ち上がった私に、黙ったままでいる彼女。
「また夜にでも連絡するから。」
額にひとつキスをして、もってきたカバンを手にとった。
- 322 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)18時58分33秒
「・・・・行くね。」
「うん。気をつけて。」
返事はしてくれたけど、今でも背中を向けたまま。
ぎゅっと胸を刺す寂しさを感じながら、私は玄関の扉を閉めた。
エレベーターのボタンを押して待っている間も、
本当にこれでよかったのかどうか、私はずっと迷っていた。
私がもし逆の立場だったら・・・・
そう考えると、彼女の中にあるどうしようもない苛立ちや寂しさが、
ひしひしと胸に伝わってきた。
このまま帰ってしまったら、きっと後悔してしまう。
ひとみちゃんの側にいてあげたい。
いや、本当は私が側にいたいのだ。
ゆっくりと開いたエレベーターの扉。
だけどそれには乗り込まず、彼女が待つ家へと駆け出していた。
チャイムを一度鳴らしたけれど、扉はなかなか開かなかった。
「おかしいなぁ・・・。まさか外出した訳でもないだろうけど・・・。」
試しにドアノブに手をかけてみると、扉が開いた。
「やだ。カギかかってないじゃない・・・。」
中に入って扉を閉めると、ちゃんとカギをかけてから、
ひとみちゃんがいるリビングへと入って行った。
「ひとみちゃん。カギかかってなかったよ。危ない・・じゃ・・・・」
そこにはさっき出て行った時と同じ格好で、背中を丸めて
向こうを向いているひとみちゃんの姿があった。
けれど、どうも様子が変だったのだ。
「・・・なに。忘れ物でも・・・・した・・・?」
その声は震えていた。
ひとみちゃんは―――泣いていたのだ。
- 323 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時00分31秒
- カバンを放すと、私はたまらなくなってそんな小さな背中を抱きしめた。
「やだ・・・。泣いてたの?」
「泣いてなんて・・・ないよ。」
「ウソ。なら顔を見せてよ。」
「そんなことどうだっていいじゃん。なんでまた戻ってきたんだよ。」
私に見えないように、そっと腕で涙を拭っているけれど、
そんな姿がまた、私の心をキューンとくすぐった。
だから私は。
「忘れ物、したの。」
「へへ。やっぱりね。そんなことだろうと思ったよ。」
力なく笑っている声だけが体に響いてくる。
だから私は首に腕を絡め直して、ひとみちゃんの耳にキスをした。
「なにやってんだよ・・・。そんなことしてないで、さっさと忘れ物もって
帰んなきゃいけないだろ。」
「・・・うん。そうなんだけど・・・。その忘れ物って、もって帰りたいんだけど、
もって帰れないものなのよ。」
「何言ってるの?」
「だって、その忘れ物って、手に取ることができないものだから・・・。」
謎かけのように言った言葉がひっかかったのか、
ひとみちゃんは私の腕をほどくと、こちらを振り返った。
「何、それ。」
「それは、ここにあるもの。」
彼女の胸に手をあてて、そっと微笑んでみた。
「あたしの・・・胸???」
「そう。ひとみちゃんの気持ち。私の一番大切な人の心。」
「梨華・・・・」
ぎゅっと抱きしめられた。
とても強く。そして優しく。
- 324 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時01分47秒
- 「もう少しで大切なものなくすところだったわ。」
「いいの?帰らなくて。」
「クス。帰って欲しいの?」
「・・・・・帰って欲しくない。」
ひとみちゃんが見せた恥ずかしそうな瞳に、泣いた跡がはっきりと窺えた。
「やっぱり泣いてたのね・・・。」
「だから違うって。目にゴミが入っただけだよ。」
「両目ともいっぺんに?」
クスクスと笑って、頬を触ると、さすがに彼女も照れくさそうにしていた。
「・・・だってさ。寂しかったんだもん。」
「ごめんね。私が間違ってたわ。」
「いいよ。ちゃんと戻ってきてくれたから。」
「許してくれるの?私のこと。」
「うん。特別許してあげるよ。その代わり・・・」
にやりと笑うと、唇をぴったりとくっつけてきた。
そして笑ってしまいそうになるほど、くすぐったくあちこちにキスをされてしまった。
「きゃはは。やだぁ。やめてよ。」
「いいじゃん。仲直りの印だから。」
「あれ?私たちって喧嘩してたの?」
「喧嘩じゃないけど、ちょっと考えちゃったかな。」
「・・・え?」
「だってさ、やっぱりあたしのこと一番に考えてくれる人じゃなきゃ
嫌なんだもん。あたしはいつでも梨華を一番に考えてるよ。
なのに梨華はあたしよりもおばーちゃんを取ったんだって、悲しかったから・・・。」
「ひとみちゃん・・・」
- 325 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時03分22秒
- 私が土壇場で考え直した答えは正解だったのだ。
もしあの時何も迷わずエレベーターに乗り込んでいたら、
もしかして、私たちの仲はうまくいかないようになっていたかもしれない・・・・
そう思うと、胸をなでおろさずにはいられなかった。
「だけど、もし梨華がおばーちゃんを選んでいたとしても、
あたしはきっと梨華を嫌いにはなれなかったんだろうけどね。」
「・・・・・どうして・・・・・?」
「だってさ。あたし梨華のこと本当に好きだから。
どんなことがあっても、やっぱり手放したくないんだ。」
気がつけば、唇を重ねていた。
これほどまでに好きでいてくれる気持ちが、嬉しくて。
やっぱり私も、ひとみちゃんのことが世界で一番好きだから。
「ありがと。ひとみちゃん。」
「ふっ。やっぱかわいいな、梨華は。」
ウエストにまわした手で私の体を支えると、そのまま
ゆらゆらと楽しげに体を揺らした。
それがまるでパンダがタイヤにじゃれている姿を想像させたから、
私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ。ひとみちゃんてパンダみたい。」
「げっ!なにそれ。」
「だってさぁ、よくパンダもこうやって遊んでるでしょ?」
「えーっ。もっとロマンティックな例えにして欲しかったなぁ。」
唇を尖らせてちょっとむくれている。
「クスっ。それならどう言って欲しかったのかしら?」
「そうだなぁ。姫を抱えて白馬にまたがる王子とかってのはどう?」
「へぇ。ひとみちゃんって王子様なんだ。」
- 326 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時05分20秒
- 「え?違うよ。あたしは梨華姫の尻にひかれているかわいそうな白馬の方。」
「ひどーいっ!!!いつ私がひとみちゃんをお尻にひいたのっ!」
「あはは。だっていつもそうじゃん。あたしは梨華の言いなりだからさ。」
ゆらゆらと揺らしていた体を止めると、
ひとみちゃんは私の体をそっとソファーに押し倒した。
「あれ?白馬なのに姫のこと押し倒すの?」
いたずらっぽく瞳を見上げた。
「知らなかった?本当は白馬こそが姫を救う真の王子様だってこと。」
「ふふっ。初めて聞いたわ。そんな話。」
「なら夜伽でもっと聞かせてあげるよ。」
髪をかきあげながら、落ちてきた唇が今までにないくらいに私をドキドキさせた。
冗談にしてはちょっぴり色っぽいじゃれあいをしていると、
せかすようにポケットに入れていた携帯が音を立てた。
一瞬にして凍りついた2人の顔。
「・・・はい。うん、今ちょうど連絡入れようと思ってたとこなんだけど・・・」
《家から?》
ひとみちゃんの口の動きにコクリと頷いた。
「・・・あのね。実は友達が急に熱出しちゃって。・・・・・そうそう、ひとみちゃん
なんだけど・・・。・・・・・うん。それでね、ご両親もいらっしゃらないから、
放って帰るわけにも行かなくなって・・・・。・・・うん。え?わかった。」
見上げるひとみちゃんは声を殺して笑っている。
そのほっぺたをむぎゅっとつかんで私も笑ってみた。
- 327 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時07分23秒
- そして電話口には母に代わって祖母がでてきた。
「あ。おばあちゃん?ごめんね、せっかく来てもらってるのに。
・・・・うん。なんとか大丈夫みたいだけど。
・・・・ううん、違う違う。彼氏じゃなくって。・・・・・そう。
大切な人。だから私がついていてあげたいの。・・・・うん。
わかった。ありがとう。ごめんね。それじゃ・・・・」
携帯を切ると、ひとみちゃんが笑い出した。
「へぇ。あたしって熱出してるんだ。」
「だって、ああでも言わないと帰ってこいって言われるんだもん。」
「迫真の演技だったよね。」
「もぉーっ。からかわないの。」
きゅっと鼻をつまんでにやにや顔をにらみつけた。
「それで?その大切な人ってあたしのことなのかな?」
「そうよ。他に誰がいるって言うの?」
「ふふ。そうかぁー。梨華の大切な人・・・ね。」
「だからここにいるんでしょ。わかってるくせにー。」
「うん。もうちゃんとわかったよ。梨華がどれだけあたしを好きでいてくれてるか。」
「よかった。また拗ねられたりしたら大変だものね。」
そう言ってクスリと笑うと、ひとみちゃんは顔を真っ赤にして視線を逸らせた。
- 328 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時08分17秒
「ねぇ・・・私のことちゃんと見て。」
頬に手をかけて真っ直ぐに顔を合わせた。
「なんだよー。あたしのことまたからかおうっての?」
「そうじゃないわよ。ひとみちゃんの顔みていたかったから。」
頬から耳にかけて手を滑らせると、頭を抱えてそっと胸に抱きしめた。
「あはは。これじゃあたしの顔見れないんじゃないの?」
おかしげに笑う声が、胸に震動する。
「ふふっ。ホントね。」
「だけどあたしはこの方がいいかも。」
「えっ?」
「だってさ、梨華の胸、すげー柔らかくて気持ちいいから。」
ちらりと見せた視線は、してやったりとばかりににやついていた。
なぜなら、今度は私の方がさっきの彼女以上に、頬を染めていたから。
- 329 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)19時10分31秒
- >作者
・・・呆れてませんよね?大丈夫ですよね?ね?(w
まぁ、いいんです、たまにはこんなのも(笑)
クラクラしちゃうほど甘くなるかもしれませんが、
どうぞひとつ、ゆるーい気持ちで見守ってください(wゞ
それではまた後編でお会い致しましょう!
ぐっちゃ〜♪♪♪(^-^) (^▽^; )>それ、私のセリフっ!!!
- 330 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月12日(土)19時13分07秒
- 新作さっそく読ませていただきました〜。
始めは、エッ梨華ちゃん!?と思いましたが、ラブラブでイチャイチャって
感じでもう拗ねてるよっすぃーもかわいいし。
後編、前編より甘くなるんですか?キャーどうしよう(笑
(0^〜^)<ウォー――――!!って感じです(爆
- 331 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月12日(土)19時53分53秒
- 新作お疲れ様です。・・ちょっと素直に喜べません。
素になってしまうけど、おばあちゃん可哀相。御年寄りにとって孫は
何よりも可愛いものだから。あと、電話の嘘も痛かったです。
読ませて頂いてる立場で生意気なのは承知ですし、作品の脚色にマジ
レスするのもどうかと思いましたが、感じた事を素直にレスするのが
ROMの性分ですのでお気を悪くされないようお願いします。
>それってROMさまの心、がっちりとつかめたってことと理解して
よろしいのでしょうか?(wゞ
どちらかと言うと、こちらが作者様につかまれて、思いっきり引き
ずられているような・・(オイ!
- 332 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)20時36分08秒
- 早速ですが、レスなど(wゞ
>名無し読者79さま
>始めは、エッ梨華ちゃん!?と思いましたが、ラブラブでイチャイチャって
感じでもう拗ねてるよっすぃーもかわいいし。
エッ!って思いました?(w
でも、展開的に先は読めたのでは?と。いつものことですから(笑)
>(0^〜^)<ウォー――――!!って感じです(爆
あら。よっすぃーまで参戦してくれたのですか?(笑)
甘く・・・なりますかね?(笑)
今回に限って言えば、きっと甘くなると思います。
って、まだ全然書いてないんですが(wゞ
本当にいつもいつも、温かいレスさんきゅーなのです♪
- 333 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月12日(土)20時36分41秒
- >ROM読者さま
>新作お疲れ様です。・・ちょっと素直に喜べません。
おぉ〜。手厳しいご意見恐れいります^^;
正直ちょっとびっくりしましたが(w、それだけしっかりと作品に
目を通してもらえているんだなぁーって、素直に感激しましたよ☆
>素になってしまうけど、おばあちゃん可哀相。御年寄りにとって孫は
>何よりも可愛いものだから。あと、電話の嘘も痛かったです。
うふふ。ROMさまって優しい心をお持ちの方のようで♪
実は、おばあちゃんの心はちゃんと補完できるように、
最初から作者は考えていますので、ご安心くださいね♪(笑)
これは実はラストにもってくる内容ですので、ここでは書けませんが
(と言うと、ちらりと展開が読めるかもしれないんですけど(苦笑))
ちゃーんと、丸く収まるように、布石は打ってあるんですね・・・(笑)
梨華ちゃんの会話に注目していただければ、後編読んだ後に、
わかってもらえると思うので、よければもう一度行間などを
見てもらえたら、嬉しいかと(w
と、作者もややマジレスしてしまってスマソ(wゞ
これからも、読者の方には気持ちよく読んでもらいたかったので、
敢えてここでレスつけてみました。
これからもどうぞ、応援してくださいね!>ROMさま&みなさま♪
- 334 名前:シフォン 投稿日:2003年07月12日(土)22時36分27秒
- >作者様
相変わらずお早いですね(笑)
恋人と家族…天秤にかけるのって難しいんですよねぇ…(遠い目
この作品と同じ状況なら、やっぱり恋人を取っちゃう…かも(苦笑)
この後、梨華ちゃんがどのようにおばぁちゃまに埋め合わせをするのかしら…。
それにしても、拗ねてるよっちぃにどうしようもなく萌えてしまうウチなのです(苦笑)
後編も楽しみに待っていますね♪
- 335 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月12日(土)23時22分29秒
- (^^)安心しました。・・てか、思いっきりフライングでした?・・・失礼!
自分がこの手の後悔を昔経験したこと思い出してしまって。ネタバレにな
っちゃいましたね。ごめんなさい。じゃ、ちょっと逝ってきます。
・・・・仕事に。
- 336 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月13日(日)01時57分34秒
- 更新お疲れ様です。おばあちゃんが少し可哀相になりましたが補完なされるそうで
安心ですw理解してくれた様子のおばあちゃんを尊敬♪
ここからがいしよしの真髄かな?って予感がしますので、楽しみにしています☆
- 337 名前:なな素 投稿日:2003年07月13日(日)11時12分12秒
- しょっぱなから甘!(w
新作おめでとうございます。
おばあちゃんの存在がなんとも気になりますね。
今からハロモニだ〜。いしよし、あるといいな〜。
- 338 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)20時48分29秒
- >シフォンさま
>この作品と同じ状況なら、やっぱり恋人を取っちゃう…かも(苦笑)
今の作者ならどうだろう・・・。
うーむ、相手にもよりますが、どちらにもいい顔できるように
行動するかも(w (←汚ねーっ!(笑))
>後編も楽しみに待っていますね♪
いつもありがとうございますぅ〜(^-^)
ぼちぼち逝きますね!!!
>ROM読者さま
>(^^)安心しました。・・てか、思いっきりフライングでした?・・・失礼!
クスクス。OKっす(笑)
でもね、最初からそんなにこの部分は突っ込んで書こうとは思ってなかった
んですよ。これから読んでもらえればわかるとは思いますが、
さらりと且つ、丸く流れるようにとだけ。
またご意見、ご感想まってまーっす。明治座で(w
>俄かいしよしファンさま
>理解してくれた様子のおばあちゃんを尊敬♪
あ。すごい。おばーちゃんの気持ち、読んでくれてましたか(wゞ
創作活動進んでますか?がんがってくださいねー♪♪♪
>なな素さま
>しょっぱなから甘!(w
えへへ、なんか嬉しいです(wゞ
>今からハロモニだ〜。いしよし、あるといいな〜。
ありましたねー(笑)なんであんなによっすぃーって
子供っぽいんだろう。それも梨華ちゃんに対してだけ(w
来週ひそかにいしよし祭りなヨカーンがするのは作者だけでしょうか?(笑)
それでは続きごらんください。どうぞ!
- 339 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)20時50分48秒
「えーっと・・・・これなんかいいんじゃない?」
「ダメよ。ほら、パックに水分出てるでしょ?」
「あ。ホントだ。」
手にとったエビのパックを戻すと、より新鮮そうなものを選んで
カゴに入れた。
夕食のメニューは、ひとみちゃんの意見を大幅に取り入れたために、
足りない食材を近くのスーパーに買出しに来ていた。
「あとは・・・ケチャップはあったのよね?」
「うん。」
「となると、あとは鶏肉とレタスでいいか。」
「梨華、あれも。」
「え?」
手を引っ張って連れてこられた場所は、アイスコーナー。
「アイスも買おうよ。ね?」
「クス。いいけど。」
「何?その微妙な笑いは。」
私もアイスくらいは買うけれど、ひとみちゃんのそんな態度が
妙に子供っぽく思えて。
「別にーっ。」
「・・・なーんかしっくりこないなぁ。」
私のそんな態度にどうも納得がいかない様子が窺えたから、
ちょっぴり苦笑してガラスケースを覗き込んだ。
「で?どれ買うの?」
「んとね、このレモンシャーベット!」
「はいはい。」
「あれ?梨華は買わないの?」
「私はいいわ。」
「なんで?」
「なんでって・・・。おこちゃまじゃないから。」
クスクスと笑いながら先に進むと、ひとみちゃんがその手をつかんで
ぷーっと頬を膨らました。
- 340 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)20時55分39秒
「やっぱりさっきのって、子供だと思って笑ってたんだな!」
「あら。今頃気付いたの?」
「くそーっ。なんかムカツクぞー。」
「ふふふ。ならアイス返しに行く?」
ちらりとその顔を見てみると。
「悔しいから絶対買う!梨華には一口も食べさせてあげないよーだ。」
やっぱりムキになるところが子供っぽくて、ついついまたからかってしまった。
「アイスを食べるのは、食後にしてね?」って。
「どうかしら?この味付けで。」
「うん、おいしい。でももうちょっと塩入れた方がいいかも。」
「ダメー。塩分取りすぎは体によくないから。」
「なんだよー。それなら最初から聞くなよー。」
「ひとみちゃんの体のことを思って言ってるんだからね?」
「はいはい。せいぜい減塩して長生きしますよ。」
なんて、憎まれ口をたたいてはいるけれど、
私もひとみちゃんもウキウキと浮かれて、キッチンに立っていた。
彼女がリクエストしたメニューは、エビフライとチキンライス。
それだけではバランスが悪いからと、サラダを追加したのは私の意見。
本当にこれだけみると、お子様ランチ風だから、
ついでに旗つきのつまようじでも買ってきたらよかったと思ったほど。
「さぁ、できあがりー。」
「ふぅー。やっと終わった。」
「ご苦労様でした。さ、食べよっか。」
「やったー。かなりお腹すいてたんだよね。はやく食べよう!」
「うんっ。」
出来立ての料理をテーブルに並べると、2人とも席についた。
「では。いっただーきまーっす!」
「いただきますっ。」
- 341 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)20時57分24秒
- 私が作ったチキンライスにまず最初に口をつけた彼女。
「どう?」
「おいしいっ!でもやっぱり塩味が・・・・」
「まだ言ってる。文句言わないでちゃんとしっかり食べてね?」
「はーい。」
そして私はひとみちゃんが作ったエビフライを口にした。
「・・・どう?」
「うん。おいしいっ。」
「へっへー。まぁね。ざっとこんなもんだよ。」
「うふふ。でもね。もうちょっと手際よく作ってもらいたかったかな?」
キッチンのあちこちに飛んでいる、パン粉やらタマゴの殻なんかを横目に、
冗談交じりにからかってみた。
「いいの。後でちゃんと片付けるから。」
「へぇー。ひとみちゃんが後片付けしてくれるんだぁ。」
「え?今のなし。一緒に片付け手伝ってよ。ね?」
「どうしようかしら。」
「ねぇ、そんなイジワル言わないでさぁ。お願い!」
「しょうがないわね。その代わり・・・」
「・・・なに?もしかして交換条件だすの?」
「うん。レモンシャーベット、一口ちょうだいっ。」
「あはは。なんだよー。結局梨華だって食べたかったんじゃない。」
「あ。バレちゃった?」
「仕方ないなぁ。それなら一口だけだよ?」
「ケチーっ!」
そんな冗談に笑い合いながら、楽しい夕食の時間を2人で過ごした。
ちらかったキッチンも、2人分の食器も、さほど時間を取られる
ことなく片付けることができたので、早速お目当てのアイスを食べることになった。
- 342 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)20時59分23秒
「堅いなぁ、これ。なかなかスプーン入んないや。」
ガチガチに冷えてしまったレモンシャーベットは、
かなり強敵で、なかなか削り取ることもままならない。
「しばらく置いてたら?そのうち溶けるんじゃない?」
「そんなの待ってられないよ。それに売られた喧嘩は買わなきゃね。」
「喧嘩って・・・」
アイスと格闘している姿も面白かったけど、そんなセリフがかわいくて、
愛しい思いで見つめていた。
「ほら、見て!ちょっと削れたよ!」
嬉しそうに見せてくれたスプーンには、ほんの少しだけ
それとわかるものが。
「ホントだ。」
「えへへ。偉い?」
「うん。よく頑張ったね。」
内心はおかしくて仕方なかったけど、あまりにも夢中でいる姿に、
さすがに笑えないでいた。
「はい。それじゃ梨華にあげる。」
「え?私に?」
「食べたいって言ってたじゃん。」
それはほんの些細なことだったけど。
「いいよ。せっかく頑張ってひとみちゃんが削ったのに。」
「頑張ったから食べて欲しいんだよ、梨華に。」
口に入れてくれたシャーベットの味よりも、私の心は甘酸っぱく満たされていったのだ。
「おいしかったぁ。ありがとね。ごちそうさま。」
食べた私よりも幸せそうな笑顔がそこに。
「まだあるから。ちょっと待ってね。もう一口あげる。」
さっきよりも幾分すくいやすくはなっているけれど、
それでもまだアイスはカチカチと音をたてている。
それをなんとなく見ていたけど、ハッとなってアイスの容器を奪った。
「ちょっと、貸して。」
「なっ、なに、急に???」
- 343 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時00分54秒
- そんな私の態度に、きょとんとした顔。
そしてアイスをテーブルの上に置くと、ひとみちゃんの手を両手に包んだ。
「しばらく置いてたら自然に溶けるから。」
「・・・え?」
「手、真っ赤じゃない。こんなに冷たくなってる・・・。」
「あ・・・・。」
「頑張らなくていいのに。」
つかんでいる手はなかなか温まりそうになかったから、
それを頬に当てて暖めてあげた。
「梨華・・・」
そのまま顔だけを近づけて、キスをしてくれた彼女。
「優しいよね、梨華って。」
「それはひとみちゃんの方よ。」
「えへへ。」
照れくさそうにしている瞳が、優しく緩んだ。
「なんかさぁ・・・・。今のキスってファーストキスっぽかったよ。」
「え?どうして?」
「だってよく言うじゃん。ファーストキスはレモンの味がするってさ。」
「クス。何言ってるんだか。」
頬に置いている手の上に、私も手を重ねた。
「もう一度、してもいい?ファーストキス。」
「うふふ。もうレモンの味はしないかもしれないわよ?」
「それでもいい。ただキスがしたいだけだから。」
「私も。」
それから一体何度キスを重ねたことだろう。
気がつけばレモンシャーベットは、ジュースと呼んだ方がいいくらいに溶けていた。
- 344 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時02分16秒
お風呂を済ませると、私たちはもうベッドの上に体を預けていた。
2人とも慣れないことをいっぱいしたせいで、かなり疲れていた
ということもあるけれど、やっぱり一番ぴったりとしていられるから。
「今日は本当に楽しかったわ。」
「そうだね。あたしもすごく楽しかったよ。」
抱きしめあったままでいられることが、心に安らぎを与えてくれている。
「クスクス。でも最初はどうなるかと思ったけど。」
「え?」
「ほら、ひとみちゃん、すっごく拗ねちゃったから。」
「あっ・・・。そういやそうだったね。なんか今となっては恥ずかしい限りだけど。」
クスリと2人とも笑い合って、体を揺らした。
「でもなぁ・・・。やっぱ梨華のおばーちゃんには悪いことしたかな。」
「うん・・・。私も本当は気になっていたの。」
「だよね。ウソついちゃったし。」
ひとみちゃんもなんだかんだと言いながら、うちの祖母のことを
気にかけてくれていたのだとわかって、私も嬉しくなってしまった。
だから私は、少ししょげている彼女のことを優しく抱きしめながら、
話し出した。
「おばあちゃんね、今日会えないんだったら、今度の夏休みに
ひとみちゃんのこと連れて2人で遊びに来なさいって言ってくれたの。」
「あたしも一緒に?」
「うん。ほら、大切な人って言ったから。是非会いたいんだって。
わかったって返事したけど・・・いい?」
見つめていた瞳が優しく変わっていく。
- 345 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時03分35秒
- 「もちろん!なんか嬉しいなぁ、そういうのって。」
「いいの?一緒に行ってもらっても。」
「当たり前じゃん。梨華の大事な人なんでしょ?おばーちゃんは。
ならあたしにとっても大切な人だから。
それに・・・ウソついたことも謝らなきゃいけないしね。
こりゃ手土産抱えて会いにいくしかないでしょ。」
「ありがと、ひとみちゃん。」
「でもウソついたこと、許してもらえるかな?」
「ふふっ。それはきっと大丈夫だと思うよ。
なんかね、もしかしたらだけど、察してくれてる感じがしたし。」
「えっ。そうなんだ。」
「恋愛に関しては大先輩だもん。うちのおばあちゃんね、
あの当時にしては珍しく恋愛結婚で結ばれたのよ。」
「へぇー。それってすごいね。」
「私が選んだ人だから、きっと気に入ってくれると思うなぁ。
好きな人を見つけて、しっかりと前をみて歩いてるんだってわかってもらえたら、
成長したねって褒めてくれると思うの。」
「そっかぁ。ステキな人なんだね。」
「うん。」
「田舎ってどこだっけ?」
「山梨。それも中心部じゃなくて、すごーく田舎の方なの。
畑もあるし、家もすごく大きくてね。近くに小川が流れていて、
とれたての野菜とかそこで冷やして食べるの。近所の人から
スイカもらったりもして、川に足をつけながら食べたりして。
すっごくおいしいのよ。あぁ。懐かしいなぁ。」
「いいね、そういうの。あたしもしてみたい。」
「うん。しよう。なんか楽しくなってきたわ。」
「あたしも。ねぇ、いついく?」
「うふふ。そうねぇ、また家帰ってからちゃんと連絡してみるね。」
- 346 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時04分43秒
- 「うんっ。あぁ、だけどその前に。」
「ん?」
「これからはウソつかなくてもいいように、
ちゃんと本当の意味で成長できるように、2人とも頑張らなくちゃね。」
「ひとみちゃん・・・・」
「梨華の成長する姿、これからも見ていきたい。
だから梨華も、あたしのこと見ていてよ。」
「もちろん。ずっと見ていくわ。」
優しく見つめてくれている瞳に、私はそっとキスを落とした。
世界で一番大切な人の温かい優しさに包まれながら、
とても心地よい眠りに落ちていった。
朝、目覚めるとひとみちゃんの穏やかな寝顔が目に映った。
とても幸せな気持ち。
こんな気持ちを感じることができるのは、
きっと互いの心がぴったりと重なっているから。
起こすつもりはなかったけど、そのあまりにもきれいな寝顔に、
そっと唇を重ねてしまった。
「・・・・・・はよ・・・・。」
「おはよ。」
「んー・・・。気持ちいいなぁ。梨華のキスで目覚めることができるなんて。」
ぎゅっと抱きしめると、今度はひとみちゃんがキスをしてくれた。
「幸せ・・・。とっても。」
胸いっぱいに息を吸い込むと、ひとみちゃんのほわっと
するやわらかい匂いに、ほっとできる安らぎを感じた。
「梨華ー。大好き!」
子供っぽくじゃれついてくるそんな彼女に、
たまらないほどの愛しさがまた、溢れてきた。
- 347 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時06分57秒
「もぉーっ。何やってるのよ。」
ひとみちゃんはイタズラ心まるだしの、少年のような瞳で、
私のほっぺたをムニムニと触っている。
「クスクス。だってさぁ、柔らかくて気持ちいいんだもん。」
「そんなことするんだったら、私だって!」
腰に手を当ててコチョコチョとくすぐってみた。
「あははっ!!!やめてよ!!!」
「どう?降参する?」
ひとみちゃんの上にまたがって、いたずらぽっく笑った。
「くそぉ!!!きたねーぞー!」
「あら。そんなこと言うんだったらやめてあげないっ。」
「うわっ!マジ降参するよー。許して!!!」
笑いすぎて涙をためていたから、もう許してあげた。
「はぁっはぁっ・・・。あーっ。笑いすぎてお腹痛くなったよー。」
「うふふ。ごめんね?ちょっとやりすぎたかな。」
「いや、いいんだけどね。そんなことより・・・」
「ん?」
「梨華って結構重い。」
「なんですってーっ!」
へらへらと笑っているほっぺたをつまんでやろうと思ったけど。
「なんてね。ウソだよ。」
その手を引き寄せて、また抱きしめられてしまった。
「全くひとみちゃんは・・・」
「あはは。ごめんごめん。」
「本当に反省してるの?」
「してるよ。」
「ウソっぽい。」
「ホントだってー。」
クスッと笑って、私の髪を触った。
- 348 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時08分09秒
「信じてよ、あたしのこと。」
声のトーンを落として囁かれた言葉。
「何を信じるの?」
「好きって気持ち。梨華のこと、本当に好き。」
「ひとみちゃん・・・」
「いつまでも離さないつもりでいるから。」
「うん。」
顔を上げて見つめあうと、深く溶け込んでいくようなキスをした。
その夏、私は両親以外の人と初めて祖母の家に訪れた。
懐かしい田舎の空気、青く広がる空に沸き立つ入道雲。そして―――
「まぁまぁ、よく来てくれたねぇ。」
おばあちゃんの懐かしい笑顔に、2人とも笑顔で応えた。
しっかりと繋いだ手を離さないで、私は今ひとみちゃんとここにいる。
川のせせらぎ。虫の声。満天の星空。
都会では過ごすことのできない贅沢で、優しい時間を
思う存分満喫することができた。
私がついたウソもやっぱり全てお見通しだったのには苦笑したけれど。
それでも、2人のことを温かく迎え入れてくれた祖母の心の深さに、
感謝の気持ちを抱かずにはいられなかった。
夏の日の思い出は、久しぶりに一緒に過ごすことができた
おばあちゃんの優しさと、ひとみちゃんの存在の大きさを再確認できた
ステキな思い出として、胸に刻まれた。
「また来年も一緒にいらっしゃい。」
- 349 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時11分20秒
帰りのバスは田舎道を走りながら、またガタゴトと揺れていたけれど、
その震動が心地よい眠りを誘ってくれた。
もって行った手土産よりも、もっといっぱいのお土産を
もたせてくれた袋の中からは、甘い桃の香りが漂って、
バスの中の空気を甘く染めていた。
肩を寄せて眠っていた私たち。
甘く優しい夢を見ることができたのは、きっと、
おばあちゃんがもたせてくれた桃と、繋いでいてくれる
ひとみちゃんの手のお陰。
「駅が見えてきたよ。」
耳元で囁かれた声に目を開けると、あたりはもうすっかりと
景色が変わっていて、中心部の街並みが見えていた。
「んー・・・。ごめん、すっかり眠っちゃってたみたい。」
「あたしもさっき起きたところだから。」
クスクスと笑ってまた肩を寄せ合うと、左折したバスが大きく揺れた。
もう目の前にロータリーが見えている。
「ねぇ、ひとみちゃん。」
「なに?」
「また、本当に来年も一緒に来てくれる?」
「うん。おばーちゃんと約束したからね。」
「よかった。」
- 350 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時12分26秒
バスを降りると、蒸し暑い空気が一気に体を襲ったけれど。
「はぁーっ。まだまだ東京までは遠いなぁ。」
「特急に乗っても、これからまだ2時間もかかるものね。」
「でもさ、ここまで来た甲斐があったよ。」
「え?」
「あたしのこと本当の孫みたいによくしてくれたし。
第2のふるさとができたみたいで嬉しいんだ。」
そう言って、元来た道を振り返ったひとみちゃん。
彼女の手を握り締めて、私もそっとその道の先を見つめた。
来年も、これから先も、ずっとずっと彼女とここに帰ってきたい。
そんな想いを込めてひとみちゃんを見上げると、
彼女もまた私をみて微笑んでくれていた。
「また一緒にこようね。私たちのふるさとに。」
「うん。今度来る時は、花火ももっていきたいな。
もう来年の夏が楽しみだよ。」
そう言って笑い合うと、重ねた手をぎゅっと握り合った。
2人の気持ちがいつまでも変わることなく、
通い合わせることができるのなら、きっとそれは難しいことではないはず。
「さぁ、帰ろうか。あたしたちの住む街へ。」
「うん。帰ろ。」
ずっしりと重いお土産を抱えながら、私たちは東京へと向かう改札口をくぐった。
―――また来年、必ず来るからね―――
心の中でそうつぶやくと、ひとみちゃんの腕に絡みついた。
『ももいろ両想い』 −おわり−
=修行僧2003=
- 351 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月15日(火)21時17分35秒
- >作者
終わりです(笑)
甘く書こうと思えば思うほど、プレッシャーに感じて
しまって、さほど甘く書けなかった罠(w
まぁ、こんなもんですかね。
あーぁー。他の作者の方々は、どうしてあんなにうまく
小説を書けるのでしょう・・・・(涙)
いつもね、思うんですよ。
作者の小説って面白いのか?って。いつも自問自答。
って言っても、これしょせん趣味でやってることですから、
そうたいして面白くなくても、気晴らし程度に読んでもらえたら
いいかなって。そうやって自分を慰めてます(w
また、書きたいなと思うネタが思い浮かんだら、投稿しますね。
それまで、少しだけ待ってください。
ほんの少し休憩したらまた帰ってきますので(w
それではまた次回作でお会いしましょう。
ありがとうございました♪
- 352 名前:シフォン 投稿日:2003年07月15日(火)22時18分10秒
- >作者様
完結、お疲れ様でした♪
今回も十分甘かったですよぉ(素)
二人でお買い物して、お料理しているシーンなんて、ニヤニヤが止まらなかったですもの(苦笑)
<<いつもね、思うんですよ。作者の小説って面白いのか?って…
面白くなければ、ウチはここにはいませんって(何)
ただ甘いだけではなくて、心理描写も風景描写も綺麗だし、毎回読ませていただく度に
感心しっぱなしなんですから(素)
これからも、ずっとずっと作者様を応援していますからねぇ♪
ゆっくり休憩して、リフレッシュされた作者様の新作が読める日を楽しみに待っています!
- 353 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月15日(火)22時25分55秒
- 更新お疲れさまです。
仕事で疲れた心に、一服の清涼剤って感じです。
>作者の小説って面白いのか?って。
星の数ほどある小説スレの中で、なぜ作者様の作品を愛読しているのでしょう。
いつもの常連の方々をはじめ、その他大勢のROMっている人達。
それぞれの意見は違うかも知れませんが、みんな作者様の作品に何かを感じて
何かを得ているからだと思います。
これからも、作者様の感性のままに創作されてください。
- 354 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003年07月15日(火)23時50分05秒
- 毎度の更新お疲れ様でした!
修行僧2003様 他の作者の方々は、どうしてあんなにうまく
小説を書けるのでしょう・・・・(涙)と言ってますが修行僧2003様の
作品だってほんといいですよ!甘いのが特にいいですね。
これからもどうか頑張ってください☆
- 355 名前:Silence 投稿日:2003年07月16日(水)00時07分58秒
- 更新&完結お疲れ様でした。
う〜ん、甘いな〜。アイスより甘いかも(w
>作者の小説って面白いのか?って。
ええと、修行僧様の作品は人をひきつける力があるとおもいます。
少なくとも自分は修行僧様の文章力にひきつけられてる1人です。
自分も他の小説見てへこむことあるんですけど、それはそれで
いいじゃないかって割り振ってます←おい
いまいち何が言いたいのか伝わらなかった感がありますが
とにかく自分は作者様の作品が好きです。
なのでいつまでもまったりと更新をお待ちしてます!!
あっ、後、ネットにつなげなかったのは回線の関係です。
ご心配おかけしてたらすいませんでした。
- 356 名前:なな素 投稿日:2003年07月16日(水)15時32分26秒
- ヽ(´ー`)ノ おばあちゃん、どうなることかと思ったけどええ話やないかい。
「ファーストキスはレモンの味」
く〜〜心憎い言い回しやな〜〜、上手い。(なんで関西弁なのかw)
>なんであんなによっすぃーって子供っぽいんだろう。それも梨華ちゃんに対してだけ(w
よっすぃーにとって唯一番組とかでも毒を吐けるメンバーですよね、梨華ちゃんて。
お互いの信頼関係があってこそできることだと思いますよ。
>来週ひそかにいしよし祭りなヨカーンがするのは作者だけでしょうか?(笑)
どうも、番組HPを見るとありそうな予感がしますね〜。(笑)
作者様の小説同様楽しみですよ〜。
>作者の小説って面白いのか?って。いつも自問自答。
面白いですよ。とことん自信持っちゃってください。(笑
。
>ほんの少し休憩したらまた帰ってきますので(w
私としては時間がいくら空いても構いません。
人間、休む時は休んだほうがいいですからね。
待ちます、いつまでも(笑)
- 357 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月16日(水)17時09分16秒
- 更新、完結お疲れ様です!!
今回は、おばあちゃん家に私も行ったような、そんな気分を味わえました。
修行憎〜さん、自身を持って下さい!うまく言葉に表すのが苦手なんですが
毎回二人の会話、情景、そして文章の暖かさが伝わってきます(^^)
私もちょっと書いたりしたことがあるんですが、本当いろんな作者さんが
いて、おもしろくて、何でこんなのしか書けないんだろうって悩んだり…
それは自分の文章力のなさなんですが(笑
修行憎〜さんの小説は、毎回読むのが楽しみなんです。
結構、細めに更新されてたじゃないですか、
時には、休息も必要です。人間なんですから(クサ)
いつまでも待ってますんで、がんばってください!!!!!
- 358 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)21時59分01秒
- >シフォンさま
>今回も十分甘かったですよぉ(素)
ありがと・゚・(ノД`)・゚・すっごく嬉しかったですよ、マジで。
>これからも、ずっとずっと作者様を応援していますからねぇ♪
感謝します。もうその言葉だけで充分です。
やる気というものは不思議なもので、もう書かないかもしれない
と思えば、また書きたくなってきたり(w
今書いてるのはストックしていたものとは別のもので、
ヒサブリにリアル系を書いてみたくなりまして(wゞ
なんでしょうね・・・。きっとシフォンさまの励ましが
私を書く気に駆り立ててくれたんだと思います。
本当にどうもありがとう。マジで感謝してますよ。伝わってます?
>ROM読者さま
>これからも、作者様の感性のままに創作されてください。
ありがとうございます。なにやらイパーイ励ましの言葉
かけてもらえたみたいで(wゞ
これからも、作者のできる範囲で更新していきますので、
どうぞよろしくなのです☆
>LOVEチャーミーさま
>作品だってほんといいですよ!甘いのが特にいいですね。
テヘテヘ(wゞいつも優しい言葉、励ましの言葉、感謝します。
作者の書くのって甘もありますが、痛いものもあると思うんですよね。
ですから、LOVEチャーミーさまが気に入っていただける
ような作品は提供できないかもしれないんですけど、
これからも色々甘、痛、暗、リアル、いろんなのを
書いていきますので、どうぞよろしくです。
- 359 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時04分24秒
- >Silenceさま
>自分も他の小説見てへこむことあるんですけど、それはそれで
>いいじゃないかって割り振ってます←おい
いやいや。マジでSilenceさまの小説はうまいと思いますよ☆
だから怖くて読めない(w 凹んじゃうんですよ、作者。
続きもまた読ませてもらいますね!
>なな素さま
>よっすぃーにとって唯一番組とかでも毒を吐けるメンバーですよね、梨華ちゃんて。
>お互いの信頼関係があってこそできることだと思いますよ。
信頼関係&そこに愛があるからってことで、ひとつ(w
やっぱ祭りのヨカーンですか?(w
楽しみですよねー♪もっとラブラブしてほすぃ〜♪(笑)
>待ちます、いつまでも(笑)
ありがとうございます(笑)
そう言ってもらえてね、本当に気持ちが楽になりました。
ややもすれば更新のためだけに日々生きている感じがありましたから(w
これからはペースが落ちるかもしれないですけど、
それでも応援してくだされば嬉しいです。本当にいつもありがとう。
>名無し読者79さま
>時には、休息も必要です。人間なんですから(クサ)
・゚・(ノД`)・゚・あぁ。作者って幸せものです(マジ)
こうやって温かい言葉をかけてもらえることができるなんて・・・。
79さまも小説挑戦されてたんですね!!!
ぜひぜひがんがっていしよし書いてください(w
(と、仲間に引き込んでみるテスト(w )
すごく嬉しかったです。励ましの言葉。作者忘れませんよ、絶対!!!
- 360 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時12分34秒
- えっとですね、しばらく更新&新作投稿はしないつもりでした。
ネタがないというのと、以前までのパワーが底をつきかけて
きていたから(笑)
でもですね、みなさまからこんなにも温かい言葉を
かけてもらえることができて、本当に嬉しかったんです。
ですので、これから一本新作をUPしたいと思います。
少し長編になるかもしれませんね。そしてやや暗いかも(w
久しぶりにリアル(娘。)の設定で書いてみたいと思います。
視点はよっすぃーです。
しばらくは梨華ちゃんでてきませんので、いしよしの絡みが
読みたい方は、もう少しだけお待ちください(wゞ
これから更新するにあたって、一言書きたいと思います。
ペースは以前よりかなりスローになります。
そして、ラストは保障できません(笑)
それは頭の中でくるくると話が変わっていきますので。
アウトライン的なものをここで言えば、ラストはバッドエンドで
ないことだけは保証します(笑)ただ、甘くなるかはわからないと。
それと、作者が書きたい話を書きますので、
しばらくは痛であったり暗であったりしても、
逃げ出さないでいてもらえれば嬉しいかと(w
まとめて最後に感想書いてもらってもかまいません。
作者のペースはかなり遅いでしょうし、投稿容量も少ないでしょうから(w
しかし、読者の方のお好きなようにしてもらってかまいませんので念のため(笑)
それでは、やや今までとは毛色の違った作品お楽しみください。どうぞ。
- 361 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時17分32秒
『それから2人は』
窓を開け放つと、階下に見下ろせる道路からは、
ざわざわと人々が行き交う声や、クラクションの音が鳴り響いてくる。
顔を上げて遠くを見ると、SOHO街のこのアパートからも、
摩天楼がそびえたっているのを見ることができる。
「morning,ひとみ。」
「Good morning,優子さん。」
部屋の空気を入れ替えるために開けた窓によりかかっていたあたしに、
優子さんは今日もめいっぱいの元気な笑顔を向けてくれた。
「今日もまたいい天気ね。ロスは晴れてるかな?」
「さぁ、どうでしょうね。TVつけますか?」
「うん。そうして。」
テーブルに置いてあるリモコンを取ってボタンを押すと、
とりあえずボリュームを最小限に絞ってから、天気予報専用チャンネルに切り替えた。
それはまだ、天使がすやすやと寝息を立てているから。
「天気は・・・まぁまぁですか。」
「曇りのち晴れ。向こうにつく頃には晴れるみたいね。」
「雨だと色々大変ですからね。晴れるようでよかったです。」
優子さんはにこりと微笑むと、天子の待つベッドルームへ向かおうとした。
「あっ。今日はどうします?スクランブルか、それとも目玉焼き?」
そして振り返ると、うーんと悩んでいた顔を上げて答えた。
「今日はひとみに付き合おうかな。私もボイルエッグにしてよ。」
「あはは。ゆで卵ですね。ラジャー!」
まるで警官のように手を額にかざすと、あたしは朝食の準備に、
そして彼女はベッドルームへと消えて行った。
- 362 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時19分25秒
あたしが今生活しているこの場所はニューヨーク。
東京を離れてから2年。あたしはこの街で優子さんと暮らしていた。
と言っても、勝手に転がり込んだようなものだけど。
コポコポと沸き立ってきたお湯が、サイフォン仕立ての
コーヒーのいいかおりを辺りにくゆらせる。
頃合を見計らってパンをトースターにかけると、
ゆで卵の出来具合を覗き込んだ。
「はぁ・・・。今日もご機嫌斜めだわ。」
ベッドルームから現れた優子さんは、泣きじゃくる天使を抱きかかえて
困った顔でリビングへと戻ってきた。
「morning,健斗」
ちゅっと頬にキスをして朝の挨拶をする。
「やっぱり寝起き悪いわ、この子。」
背中をさすってあやしているけれど、なかなかそう簡単に泣き止むものでもない。
「貸してください。あたしがやってみます。」
優子さんから健斗を譲り受けると、慣れた手つきで優しくあやした。
しばらくはぐずっていた彼だったけど、いつもの調子で
体を揺らせると、どうにか機嫌を直してくれた。
「さすがね、ひとみ。はぁーぁ・・・。これじゃ本物のママの出番がないわね。」
「クス。そんなことないですよ。ね?健斗。健斗はママのことが一番好きなんだもんね。」
眠そうにコクリと頭を揺らせている健斗に、またキスを落として微笑んだ。
まだ2歳にも満たない天使は、本当に気持ちよさげに体を預けてくれている。
「ひとみの方がママみたいね。」
苦笑している彼女。
- 363 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時20分42秒
- 「こんなかわいい子のママになれるんだったら、いいかもしれませんね。」
「ふふっ。でもあげないよ?」
「ははは。わかってますよ。それぐらい。」
おとなしくなった健斗を彼女に返すと、少し煮すぎてしまった
ゆで卵を取り出して、トーストとコーヒー、グレープフルーツをテーブルに並べた。
「さぁ、朝ごはん食べましょうか。」
「はい。」
「今日も一日忙しくなるだろうけどよろしくね。」
「こちらこそ。今日も頑張りますね。」
朝食を済ませて支度を整えると、あたしたちは仕事場であるロスに
向かうために空港へとタクシーを走らせた。
優子さんはここアメリカで、フリーのカメラマンをしている。
彼女と初めて会ったのは、あたしがまだモーニング娘。にいた頃のこと。
ジャケット撮影や、ポスターの撮影など、モーニング娘。の専属的な
仕事をしていたのだ。
歳は10こ上だけど、その頃からあたしたちにとっては
親しみやすいお姉さん的な存在として、みんなの信頼を集めていた。
その彼女も、今から3年程前にアメリカへと仕事の拠点を移し、
今に至っている。
こうやってわざわざロスから声がかかるのは、
彼女が成功したことを物語っていた。
一方のあたしはというと、18の誕生日を迎えて間もなく、
モーニングを卒業したのだ。
そのままハロプロに留まって歌手を続けるか、はたまた女優になるか、
そんな事務所からの提案をことごとく断って、きっぱりと芸能界から引退した。
あたしがとった行動は、周りの度肝を抜いたものだった。
- 364 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時21分52秒
引退会見をしたその足で、リュックをひとつ抱えると
日本を飛び出したのだから。
優子さんのニューヨークでの住所が書いてあるメモを頼りに、
あたしはここにやってきた。
半年近くはマスコミやら芸能雑誌の記者なんかに追いかけられていたけれど、
さすがにあれから2年もたつと、もうそんな騒動もなくなっていた。
あたしはただの『吉澤ひとみ』に戻ったのだ。
その頃はまだ、大きなお腹を抱えて仕事をしていた彼女を
サポートするために、そして今は、健斗の世話をするという条件で、
あたしはここで暮らしていた。
一人で暮らせるだけのお金なら、口座には充分あるけれど、
生きていくための知識をもってはいなかったから。
お互いに助けあって生きている。
ギブアンドテイクの関係は、2人にとって好都合だった。
足りないものを互いに与えて与えられて。
仕事と育児のサポートをするかわり、あたしはここに住まわせてもらっている。
しかし、必要最低限のことしか相手には求めない。
だからあたしが日本を飛び出して、転がり込んだ理由も聞かれなかったし、
優子さんがシングルマザーになって誰の子供を生んだのか、
そんなことも互いに詮索しないでいた。
「そろそろつくよ。」
健斗を抱きかかえて一緒に眠ってしまっていたあたしは、
彼女の声で目を覚ませた。
ロスに着陸したのはそれから間もなくのことだった。
- 365 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月16日(水)22時24分56秒
- >作者
以上です(wね?短いでしょ?(笑)
今回のストーリーのさわりだけUPしてみました。
これからもこれくらいの容量でUPするかもしれませんが、
基本的に話の切りのいいところまでと考えています。
リアルってことで、よっすぃーの心の内をこれから書いていこうと
思うのですが、これは作者の妄想ですので、ひとつ了承しておいてくださいね!(w
それは今日もありがとうございました。
休憩するはずが、もうUPしている自分に驚きつつ、
ここで一旦終了します。
また次回をお楽しみに〜♪(wクスっ。
- 366 名前:シフォン 投稿日:2003年07月16日(水)22時37分57秒
- もう新作来てる〜!!
そして早速読ませていただきました(苦笑)
>作者様
新作更新、お疲れ様です♪
今までとは違う雰囲気に、妙にドキドキワクワクしています(素)
リアル設定って、結構好きなんですよ。
この先どのような展開になってゆくのか、そして梨華ちゃんは…。
これからも作者様のペースで更新進めていって下さいね♪
- 367 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月16日(水)22時55分19秒
- 祝!新作♪更新お疲れ様です。
のっけからちょっとびっくりで、今後が楽しみです。
>休憩するはずが、もうUPしている自分に驚きつつ
(^^)嬉しいです。どうもありがとう。でも無理はしないで
下さい。
- 368 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月17日(木)08時26分30秒
- 新作おめでとうございます!!
なんだかすごく今わくわくしています。よっすぃーはなぜここに来たのか。
そして、二人は…。
みんな悩んで、苦しんで…。いくら大好きな娘。でも辛い事も多いだろうし。
それでも、自分の意思で選んだ道だから!みたいな感じでがんばってるんでしょうね
娘。って…。夢に向かってがんばってる人たちはかっこいいですよね、本当。
ここのよっすぃーは、新たな場所で、新たな夢を…。
>ぜひぜひがんがっていしよし書いてください(w
それがなんて言うんでしょう、文章能力がないというか、
やっぱ小説は、読むのが一番です!!(笑
- 369 名前:なな素 投稿日:2003年07月17日(木)10時32分27秒
- おりょりょ、もう新作ですか。
嬉しい驚き&おめでとうございます。
確かに今までとは随分、特色が違う作品のようですね。
よっすぃーの心境が気になりますね〜。
甘さ控え目でも充分、楽しみな展開です。
>逃げ出さないでいてもらえれば嬉しいかと(w
逃げ出すつもりなど更々ございませんが(w
更新はゆっくり作者様のペースで頑張ってくださいね♪
- 370 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月17日(木)21時46分33秒
- ぉ 完結されたんですね〜おめでとうございます(遅
おばあちゃんの家に行くとはwなかなか大胆ですねぇ〜やはり二人を理解してくれた
おばあちゃんを尊敬♪
修行僧2003さんの作品は皆様がおっしゃるとおり、心理描写や特に風景描写なんかも
素晴らしく、とても内容も面白いし見事な筆力かと思います☆
僕の創作活動ですか〜結構進んでます(^^)vもちいしよしでw伝えたいことがハッキリ
しているため割とスムーズに進みますが途中で放置するの嫌なので完結までどこにも
載せない予定です(オイ お言葉を掛けてくださってありがとうございます!励みになりました☆
新作、違った感じで先がとっても気になりますねwといっても急かすつもりは毛頭ないので、
休憩を入れながらマイペースで頑張って下さい(^O^)/楽しみにしてますよぉ☆
- 371 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時45分35秒
- >シフォンさま
>今までとは違う雰囲気に、妙にドキドキワクワクしています(素)
ありがと♪(^-^)いつも丁寧な感想嬉しいです!
>この先どのような展開になってゆくのか、そして梨華ちゃんは…。
そうですねぇ(苦笑)まだ考えてません(ヲイ!
また更新しますのでよければ読んでくださいね。お願いします。
>ROM読者さま
>のっけからちょっとびっくりで、今後が楽しみです。
しばらくはリアルタイムのいしよしはないのですが(w
そのうち梨華ちゃんも登場します。お楽しみに♪
>名無し読者79さま
>なんだかすごく今わくわくしています。よっすぃーはなぜここに来たのか。
そうですね。そういった心の葛藤を今回はメインに書いていきたいと
思ってるんですよ(^-^)
>そして、二人は…。
そうなるのでしょう?(w作者すらわかりません(笑)いつも応援ありがとです!
>なな素さま
>よっすぃーの心境が気になりますね〜。
えぇ。楽しみにいててください!(笑)
ってゆーか、これからもややトーンはフラットなのですが、
盛り上がり部分は少しずつ書きますので、どうぞ読んでやってくださいね。
>俄かいしよしファンさま
>修行僧2003さんの作品は皆様がおっしゃるとおり、心理描写や特に風景描写なんかも
>素晴らしく、とても内容も面白いし見事な筆力かと思います☆
ありがとうございます!またまた励みになりましたよぉー☆
これからも、ぼちぼちやっていきたいと思いますので、
どうぞながーい目でみてやってください。お願いします。
それでは続き、どうぞ。
- 372 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時47分05秒
空港からまたタクシーを走らせること30分。
メインストリートに入ると、さすがに高層ビルやら、
ショッピングモールなどが見えてきて、ニューヨークとは
また違った賑やかな街並みをみせている。
健斗もそんな色鮮やかな景色が気に入ったのか、
流れる窓の外の眺めに、大きな目をきょろきょろさせてご機嫌だった。
「思ったより早くついたね。」
カメラの機材を肩にかけ、あたしは手荷物と健斗を抱きかかえながら、
会場へと入っていった。
中ではまだあわただしく、リハーサルが執り行われている。
今日の撮影は、秋物のファッションショーの仕事だった。
今はまだ春うららかな季節だけれど、モード界ではこれが一般的。
ファッション雑誌の表紙を飾ることになる優子さんの仕事は、
余念がなく、ステージを見ながら今からフレームの構図を考えている風だった。
「あたしたち、先に部屋に行って待ってますね。」
「うん。わかった。」
優子さんはこちらに振り返ることなく、アングルのチェックに専念していて、
その横顔にプロの姿を垣間見ることができた。
それはとてもかっこよく、あたしの目に映し出されている。
- 373 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時49分20秒
モデルの楽屋の隣に用意されたプレスルームで、
健斗の相手をしながら時間を過ごしていた。
周りにいる何人かのカメラマンはみな、英語圏の人間で、
その体の大きさ、楽しそうに身振り手振りで会話する姿は、
典型的なアメリカンスタイル。
「Hi!」
中にいた一人のおじさんが、健斗を見てにっこりと微笑んでくれた。
「Hi,Hallow!」
健斗の手をとってにっこりスマイル。
全然知らない人間でも、こうやって声をかけてくれる。
あたしがアメリカに来てまず最初に思ったことは、
この底抜けの明るさと、親しみやすい笑顔を誰もが持っていることだった。
ここは誰もが夢をもつことのできる、開けた土地。
人種の坩堝と呼ばれるだけの様々な国の人々が暮らしているせいか、
保守的な考え方をもっている人はあまりみかけない。
おじさんはこちらに近づくと、健斗の手をとってまた笑顔を向けてくれた。
「君の子供?」
「ううん。友達の。この子のママは仕事場にいるんだ。」
「かわいいベイビィーだね。君もかわいいけど。」
とかなんとか。
おじさんは当然あたしのことなんてちっとも知らないのだろうけど、
やはり気さくな笑顔を向けてくれていた。
思えば日本にいる時は、こんな些細なふれあいさえできずにいたような気がする。
いつも仕事に追われていて、周りは仕事関係の大人ばかり。
見え透いた笑顔を浮かべて近づいてきていた大人たちの顔が、
ちらりと脳裏をかすめていった。
- 374 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時50分39秒
あの頃のあたしもまた、こんなステキな笑顔を誰かに向けていられたのだろうか・・・。
そうして少し考えにふけっていると、おじさんはあたしの肩に触れた。
「大丈夫?」
「・・・あ。うん。」
「君は笑顔がとてもステキな女性だ。Let it be
思いのままに生きるのもいいことだよ。」
ポンポンと肩をたたくと、どうやら時間がきたようで、
そのまま他のカメラマンとともに、部屋を出て行った。
=思いのままに=
それはちょうど2年前、あたしが願ってやまないことだった。
思いのままに生きてみたい。思いのままに歩いてみたいと―――
【2年前(ひとみの回想)】
「違う!吉澤、今のまたテンポずれてるよ!」
振り付けの先生である夏先生の檄が飛ぶダンススタジオ。
あたしのミスで、またダンスの流れが止まってしまった。
「すみません。」
滴り落ちる汗を拭わずに、肩で大きく息をつく。
「やる気ないんだったら今すぐモーニングやめなさい。
中途半端な気持ちでいるのはみんなに迷惑なんだよ。わかってるの?」
一見冷たく聞こえるそれは、夏先生独特の愛情表現だった。
それはもう3年も付き合っていれば自ずとわかること。
先生はあたしたちと同じくらい、いや、それ以上にモーニングを愛してくれているのだ。
だから妥協は許されない。そんなことは充分わかっているのだけれど。
あたしはハァハァと息をついたまま、動けないでいた。
- 375 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時52分01秒
夏先生の視線、そして心配そうにしているメンバーの視線が
あたしに集中しているのがわかる。
「・・・15分休憩。みんな休んでいいよ。」
先生の声にどっと力が抜け落ちて、フロアに膝をついた。
そこにいたメンバーは、あたしのことを気にかけてくれてはいるのだろうけど、
みんなペットボトルの置いてある壁際に移動していった。
「・・・くっそ!」
明らかにいらだっていた。
それはダンスがうまく踊れないこともあるのだけれど、
またそうなってしまった原因も、あたしの中にはあったから。
「よっすぃー。」
けれど唯一あたしに近づいてきたあいぼんは、いつもと変わることなく、
座り込んでいるあたしにじゃれついてきてくれた。
「んぁー。汗でベトベトなのにくっつくなよー。」
あいぼんが気を遣っているのはお見通し。
いつもと変わらないでいてくれることが、あたしに対する気遣いだと
いうことぐらい、長い付き合いをしているとわかってしまう。
それ故他のメンバーが近づいてこないのも、また自然な流れだった。
あたしたちモーニングは、大所帯にも関わらず、びっくりするくらい
仲のいいグループだった。
世間ではいろんなことを言われているけど、実際ここにいる
あたしがそう思うのだから間違いない。
友達とは少し違った仲間。言わば戦友のような感覚。
誰が抜けても、誰がいなくても、一つじゃない。
先に卒業したメンバーすら、あたしにとっては大事な人たちばかりで。
ここにいるみんなのことを家族のような気持ちで、あたしはいつも見ていたのだ。
- 376 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時52分53秒
「ダンスに切れがないねー。よっすぃーらしくないじゃん。」
ぴったりと抱きついている体重をわざと乗せながら、あいぼんはそう言った。
「はぁ・・・。なんかうまくいかないんだよね。心と体がバラバラって感じかも。」
「よっすぃーはさぁ、私なんかと違って体デカイから、
ビシッとダンス決まるとカッケーのに。ねぇ。カッケーいつものよっすぃー見せてよ。」
「あはは。そんなにカッケー?」
「うん。マジで惚れそうなんだもん。ってゆーか、もう惚れてるけどね。」
ちゅーっとほっぺたにしてくれたキスが、くすぐったく感じて笑ってしまった。
「あいぼんは甘えただからなぁ。惚れてもらえて嬉しいよ。」
おかえしのキスを額にしたけれど、別にあいぼんもあたしも
本気で恋愛感情がある訳ではなかった。
むしろ2人にあるのは姉妹のような感情。
ベッタリしていても、どこかカラッとしているのがそのいい証拠だった。
「後半がんばりなよ。」
「サンキュ。はぁっ。ちょっと外行って冷たいペット買ってくるよ。」
「はいはい。あと10分しかないからね。泣くんだったらパーッと泣いちゃった方がいいよ。」
「うるせーっ。」
クシャっとあいぼんの髪をかき混ぜて笑うと、あたしはスタジオを出て行った。
- 377 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月17日(木)22時55分45秒
- >作者
はい。今回分は終わりです(w
なんかね、今書いてて楽しいんですよ(笑)
この気持ちを忘れずにいられたら、スランプであれ
なんであれ、吹き飛ばすことができるかもしれませんね。
色々時間の都合、作者のやる気など、更新できない
ことも多くなるかもしれませんが、本当に
ゆっくりと待っていてくださいね(wゞ
それではまた次回まで。
ありがとうございました。おやすみなさいませ☆
- 378 名前:シフォン 投稿日:2003年07月17日(木)23時35分41秒
- >作者様
連日の更新、お疲れ様です。
よっすぃ〜の回想シーン…実際のモーニングのダンスレッスン風景みたいでしたよ(笑)
ちょっと影のあるよっすぃ〜、そぉとぉ魅かれますねぇ(苦笑)
まったり気分で読ませていただきますので、作者様もまったりと更新がんがって下さいね♪
- 379 名前:メープルシロップ 投稿日:2003年07月18日(金)01時14分56秒
- わたくし、1度だけ感想を書かせて頂いただけで
いつもROMってる失礼なヤツですw
当分更新はしないと言いながら、連日の更新ありがとうございます。
書いてて楽しいなんてステキですね♪
このお話がこれからどういう展開になっていくのか
とても楽しみです。
マターリと頑張って下さ〜い。
- 380 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月18日(金)05時53分13秒
- 楽しそうに歌っている娘。を見ていると、そんなことは微塵も感じさせない
けれど、実際、それぞれのメンバー達も心の中で色々な葛藤と戦っているの
でしょうね。
- 381 名前:なな素 投稿日:2003年07月18日(金)13時42分15秒
- 更新お疲れ様です。
休むとかおっしゃりながら、今のところ絶好調じゃないですか(w
しかし、ダンスレッスンのところの描写は凄いリアルに感じられましたね。
今更ながら作者様の想像力&創造力には感服させられます。
そして、よっすぃーとあの人に何があったのか・・
わくわくしながら楽しみにしてます。
- 382 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月18日(金)19時25分56秒
- 更新お疲れ様です。
よっすぃーは、きっとこのまま娘。でいていいかとか考えてたのかな…。
やっぱりそういう時って、何かが自分の中で変わった時ですよね。
昨日のうたばんの彼女からは想像が…(爆
- 383 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時14分21秒
- >シフォンさま
>ちょっと影のあるよっすぃ〜、そぉとぉ魅かれますねぇ(苦笑)
ありがとございますー☆やっぱ多少影がある方が魅力的かしら?(w
>まったり気分で読ませていただきますので、作者様もまったりと更新がんがって下さいね♪
イエス!!!がんがりまーっす♪いつも応援ありがと☆
>メープルシロップさま
>わたくし、1度だけ感想を書かせて頂いただけで
>いつもROMってる失礼なヤツですw
いやいや。いつも読んでもらっているだけで嬉しいですよ(^-^)
そりゃもちろん感想書いてくださるのは嬉しいことですが(wゞ
これからも、気が向いた時でかまいませんので、
作者のこと、応援してくださいね!!!まってまーっす!!!
>ROM読者さま
>楽しそうに歌っている娘。を見ていると、そんなことは微塵も感じさせない
そうですねー。でも色々葛藤はあると思うんですよね。
画面ではやっぱり落ち込んだり悩んだりする姿って
見せられないだろうし。また今後ともよろしくなのです。
- 384 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時14分54秒
- >なな素さま
>今更ながら作者様の想像力&創造力には感服させられます。
やったぁー♪お褒めの言葉、嬉しかったです(^-^)
これからもぼちぼち無理の無い程度にがんがりますね☆
ありがとなのです♪
>名無し読者79さま
>よっすぃーは、きっとこのまま娘。でいていいかとか考えてたのかな…。
>やっぱりそういう時って、何かが自分の中で変わった時ですよね。
あはは。ずばり作者が書きたいのはそのポイントなんですよ(wゞ
さすがと、驚いてます(笑)
>昨日のうたばんの彼女からは想像が…(爆
ですよねー(苦笑)でもよっすぃーかわいかった(wゞ
やっぱ惚れてますね。何してもかわいいんだから(笑)
さてそれでは今日も少しだけUPします。
よければ読んでくださいね。では続きどうぞ。
- 385 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時16分25秒
エレベーターを使わずに、3階のスタジオから階段を降りていった。
疲労した体にじわじわと伝わってくる振動。
新曲の振り付けは想像以上に激しくて、相当体がまいっているのがわかったけど、
それは他のメンバーもまた同じ条件なのだ。
=ガシャン=
自販機に硬貨を入れてボタンを押すと、冷えたミネラルウォーターの
ペットボトルを取り出して、あたしは一気にノドに流し込んだ。
「・・・んぐ、んぐ・・・はぁーっ・・・うまいな・・・。」
大きく息をもらして口を拭うと、自販機に寄りかかって一息ついた。
ここ最近のあたしは少し変だった。
今までならそう手こずることなく覚えられたダンスの振り付けが、
なかなか思うように覚えられない。
それはダンスだけではなく、唄の収録にしてもそうだった。
このダンスの振り付けを覚えている新曲の収録の時にも、あたしのせいで
今と同じように何度もリテイクをかけてしまうことになってしまった。
決してやる気がない訳ではない。
しかし、あたしの中で何かが変わっていることだけは確かだった。
今までとは違う何か。
それを言葉で表すとすると、『あせり』という言葉がぴったりと当てはまるのかもしれない。
では、何にあせっているのか。
それを突き詰めて考えていくと、色んなことが複雑に絡み合って、
これという答えを出せないでいる。
漠然とした不安はあたしを不安定にさせ、自分の気持ちをうまく
コントロールできないでいた。
- 386 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時17分30秒
- 繰り返される失敗もそこに原因があるのは明白だった。
今のままでは何もかも中途半端な気がして、どうしようもないあせり
だけが心を支配していく。
そしてある決意がいつもあたしの心の中に示されるのだ。
それは、『引退』という一文字。
けれど、それを口にすることはできないでいる。
その思いがまだあたしの中では、確定的になっていないことも
あるけれど、辞めて何をしたいかということも、何も浮かばないから。
繰り返される葛藤に、またため息をつくと、
ペットボトルの水を流し込んだ。
凝った筋肉をほぐすように、首をぐるりと動かすと、
階段の踊り場に、一つの人影が落ちていることに気がついた。
「クス。何してるの。梨華ちゃん。」
あたしの声に反応するように、その影はびくりと揺れた。
「なーんだ、つまんない。せっかく驚かせてあげようと思ったのに。」
そうして、まるでイタズラがばれた子供のような苦笑いを浮かべながら、
彼女は姿を現した。
「やっぱり梨華ちゃんだったか。」
「よくわかったね。私だってこと。」
手を後ろに組みながら、あたしに一歩近づいた。
「そりゃわかるよ。なんたってキショイオーラが出てたからね。」
「またそんなこと言うー。ホントによっすぃーは・・・。」
いつもの冗談にいつもの反応。
ちょっとむくれているけれど、2人はいつものようにクスクスと笑っていた。
- 387 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時19分19秒
- 「それで、何しにきたの?」
「もちろん、冷たいペット買おうと思っただけよ。
別によっすぃーのことが気になって、追いかけてきた訳じゃないからね。」
「あはは。なんだよそれ。まるでコントのセリフじゃん。」
押し付けがましくなく、且つ自然に笑う彼女。
思えば梨華ちゃんはいつもこうしてあたしのことを気にかけてくれるていた。
冗談を言いながら、それでいてちゃんとこっちの気持ちを汲んでくれているのだ。
あたしがそれをわかっていることを、彼女もまた理解しているから、
こんなことも言えるのだけれど。
梨華ちゃんとは4期メンバー募集の時に知り合った仲間だった。
きっとこの子は受かる。
最終選考に残ったメンバーの中で、あたしは唯一彼女のことをそう見ていた。
頼りない感じはするけれど、どこかしら芯の通った強い眼差しを見せていた彼女。
もちろん、あたし自身も落ちる気はしなかった。
その時のあたしは自分に訳のわからない自信をもっていた。
テレビに映るごっちんを見て、この子が活躍できるのなら、
あたしの方が絶対に人気を集めることができると。
周りにいる誰もが、あたしのことを美少女だと言っていることを知っていたから。
自分自身、外見では誰にも負ける気はしなかった。
男の子からは抜群にもてたし、バレーの推薦で入った中学の女子校でも、
信じられないくらい告白された。
憧れの眼差しを向けられる度、いい気分になっていたあの頃のあたし。
- 388 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時20分36秒
- しかし、せっかくバレーをするために入った中学も、
先輩との確執で、辞めざるを得なくなってしまったのだ。
その頃ちょうど、4期の募集をしていることを知って、
直感的に申し込んだ。
部活をやめてから家でぼーっとテレビを見る機会が増えていたのは、
まるでこのチャンスを与えてくれるためのものだったと思えるほど。
打ち込む何かを失ってしまったあたしには、これしかないと
思うひらめきを感じたのだ。
画面に映るごっちんに、なぜかしらライバル心なんて燃やしたりして。
同い年のごっちんは、あたしが失った何かをもっていると思った。
この子が輝いた存在でいるのなら、あたしだって・・・・・・
今となっては苦笑ものの話だけど、あの頃は本当にそう思ったのだ。
ビジュアルならごっちんに引けをとらない。
いや、あたしの方が綺麗だと。
そしてつんくさんに天才的美少女として認められたあたしは
このモーニング娘。に入ることができた。
あたしが唯一認めた梨華ちゃんとともに。
「それで。何飲むの?」
本当はペットボトルを買いにきたのではないのをわかっていて、
わざとあたしはもたれていた自販機から体を離した。
「そうね・・・。どれにしようかな。」
上の段から順に視線を落としている梨華ちゃんの姿に、
こみ上げてくる笑いを抑えながら、あたしはそっと見ていた。
「あたしが飲んでるのと同じのにする?」
クスリと笑って、ボトルを揺らした。
- 389 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時21分55秒
- 「んー・・・。ミネラルウォーターはいいわ。欲しいのないからやっぱりやめとく。」
「けっこうおいしのに。ノーカロリーだから体にもいいし。」
「だって水なんて味しないんだもん。」
「クスっ。ねぇ、梨華ちゃん。なんならあたしが奢ってあげてもいいよ。」
「・・・え?」
「どうせ財布も持たずに来たんでしょ。ペットボトル買いに。」
「・・・・・・・・・・。」
あたしはクスクスと笑って、きょとんとしている彼女の肩に手をかけた。
ポケットの中に1000円札を入れていたあたしとは違って、
手ぶらで来ている梨華ちゃんを見た時に、そのことには気付いていたのだ。
財布を持たないでくるということはつまり、あたしのことを気にして
追いかけてきてくれた証拠。
その影を見た時に、それが梨華ちゃんのものであるということが
わかったように、あたしには彼女の気持ちは最初からわかっていたのだ。
「いつも飲んでるの、これだよね。」
硬貨を入れて、ボタンを押した。
「ありがと。」
少し気恥ずかしげにそうつぶやきながら、彼女はガタンと音をたてて
落ちてきたペットボトルを手にした。
「お礼を言わなきゃいけないのはあたしの方かもね。」
ウインクをしてにこりと微笑んだ。
「・・・・よかった。」
梨華ちゃんはボトルを胸の前に握り締めてそう言った。
- 390 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時22分57秒
- 「ん?何が?」
「少しは元気を取り戻してくれたみたいで。」
「あたしはいつだって元気だよ。」
「・・・そうね。うん。そうそう。元気だけがよっすぃーの取り得だもんねっ!」
「えーっ。ひどいなぁそれ。もっといいとこあるでしょ。あたしにだって。」
「ないよ、全然。」
「それは梨華ちゃんのひがみだな。あたしっていいとこだらけの完璧な人間だから。」
「あはははは。自惚れてるーっ!」
「そうだよ。なんたって、あたしが一番モーニングで輝いてるからねー。」
「それじゃもっと輝いているよっすぃーを見せてよ。」
「あぁ、見せてやるよ。ビックリするなよ。」
「ふふっ。それは見ものねー。」
2人とも自然に笑っていた。
そんな関係がやっぱり愛しいから、心の中に浮かんでくるあの文字は、
ずっと奥の方にしまい込んだ。
「さぁ、それじゃそろそろ戻ろうか。」
「うん。後半も頑張ろうね。」
「もちろん。」
2人が降りてきた階段に足を向けると、あたしは聞こえるか聞こえないか
くらいの小さな声でこう言った。
「ありがとね。」って。
「え?今何か言った?」
「なーんも言ってないよ。ほら、早く戻らないと!」
そうしてまたあたしたちは、スタジオへと戻って行った。
- 391 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月18日(金)22時25分45秒
- >作者
投稿終了です(wゞ
どうでしょうか。なんとなく見えてきましたか?よっすぃーの
中にある葛藤。
きっと色んな思いをしていることだと思います。
それはよっすぃーだけではなく、他のメンバーも。
別にあの事務所やプロジェクトを批判するわけじゃないけれど、
やっぱりもっと・・・ねぇ?(笑)
まぁ、一応これはフィクションなので、
どう捉えるかは読者の方の気持ちひとつですが(w
それでは今日もありがとうございました。
また次回お会いしましょう☆
- 392 名前:シフォン 投稿日:2003年07月18日(金)22時32分12秒
- 今日はリアルタイム〜♪
切ないなぁ…めっちゃ切ない(何)
多分、読む側の心理状態によっても、受け止め方は違って来るとは思うのですが、
今のウチにはめっちゃ切なく感じます(苦笑)
次はポジティブ〜♪に読めるように、ちょっと旅に逝ってきます(笑)
次回更新もがんがって下さいね♪
- 393 名前:なな素 投稿日:2003年07月19日(土)03時15分57秒
- う〜ん、リアルですな〜。
よっすぃーの心境が手に取るようにわかります。
仰る通り、現実にメンバー達は色々な悩みや不安と闘いながら
日々過ごしてるんでしょうね。
そんな時、やはり支えになるのは仲間。よっすぃーにとってその第一はやはり
このお話のように梨華ちゃんであって欲しい。いや、梨華ちゃんに決まってるw
続きから目が離せませんね。
>別にあの事務所やプロジェクトを批判するわけじゃないけれど、
>やっぱりもっと・・・ねぇ?(笑)
私はあの事務所大嫌いですけどね(笑
- 394 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月19日(土)13時42分17秒
- おぉ凄い更新速度ですね(笑)
僕らは今日から夏休みっす(^^)v夏バテしないよう頑張って下さいね〜
梨華ちゃんも出てきてますます楽しみです☆
- 395 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月19日(土)19時56分58秒
- 二人の何気ないやりとりが、なんとも言えません。
実際にこうやって励ましあってきてそうで、二人は…。
>ずばり作者が書きたいのはそのポイントなんですよ(wゞ
さすがと、驚いてます(笑)
スミマセン、思ったことを書いたらネタバレしてしまったようで(汗
なんか私、うたばんのよっすぃーは演じてたんじゃないか!とにらんでます。
そうであって欲しいと思ってしまう、痛いファンですね(苦笑
- 396 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月19日(土)20時44分17秒
- 最近、年のせいか涙腺が緩くなって。まだ泣くの早かったですか・・・。
- 397 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月19日(土)20時50分30秒
- >396
動揺して名前入れ忘れました。(恥
- 398 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時06分08秒
- >シフォンさま
>切ないなぁ…めっちゃ切ない(何)
うむ。ごめんなしゃい・・・(涙)
でも、これが作者の中にある、よっすぃーの実像なんですよ(笑)
いや、こんなくらーいことは考えていないだろうから、
その一部としてって感じでしょうか?
それとですね、色々ありがとでした(wゞこれからもよろしくです!
>なな素さま
>そんな時、やはり支えになるのは仲間。よっすぃーにとってその第一はやはり
>このお話のように梨華ちゃんであって欲しい。いや、梨華ちゃんに決まってるw
作者もそう思います!!!(笑)
やっぱりなんだかんだといいつつ、あの2人は心を
通い合わせていますからね(w
これからも楽しみにしててくださいね!
>俄かいしよしファンさま
>僕らは今日から夏休みっす(^^)v夏バテしないよう頑張って下さいね〜
いっ、いいなぁ〜!!!夏休み。懐かしい響きです(w
>梨華ちゃんも出てきてますます楽しみです☆
今回のお話にはでてきませんが、次回には必ず(wお楽しみにしててください。
- 399 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時06分39秒
- >名無し読者79さま
>スミマセン、思ったことを書いたらネタバレしてしまったようで(汗
いや、全然問題でいですよ!!!
ってゆーかね、ちゃんと作者の書きたいことを読んでもらえた
ことが逆に嬉しかったんですよ(マジ)
文章力がないので、ちゃんと伝わっているのか不安でしたから^^;
これからも、よければ感想お願いします。
>ROM読者さま
>最近、年のせいか涙腺が緩くなって。まだ泣くの早かったですか・・・。
ですね(笑)これからもっとくらーくなるかもしれませんが、
およそ、ラストが作者自身みえてきました。
たぶんいしよし好きの方なら納得してくれるのでは?なんて(w
変わっていくかもしれませんが^^;
それでは、続きどうぞ!
- 400 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時09分02秒
それからしばらくは、あの言葉を思い浮かべずに済むくらい、
忙しい日々を過ごしていた。
新曲のPV撮りを終えた頃には、テレビやラジオ、雑誌の取材にと、
分刻みのスケジュールが組まれていたのだ。
しかし、それでも心の奥底にある気持ちが消えた訳ではなく、
ふと気を抜いた瞬間に、またどこからともなく出てきては
あたしを苦しめていた。
やっと今日の仕事も終えて、マンションに帰り着くと、
携帯のメールをチェックした。
「・・・・あれ、珍しいな。しばらく連絡なかったのに。」
=何時になってもいいから連絡ちょうだい=と書いてあった、
友達のメールを読んで、すぐさま連絡を入れた。
「もしもし。あたしだけど。」
「あぁ!ひとみー。ひさしぶり。」
「うん。元気にしてた?」
「うんっ。ばっちりだよー。ひとみは相変わらず忙しそうだね。いつもテレビ見てるよ。」
その声に苦笑して返事をした。
「まぁね。ところでどうしたの?何かあった?」
「あったもあった。ビッグニュースがあるんだ。」
「へぇ。由希のビッグニュースねぇ。それはすごいことなんだろうね。」
からかうように笑ったあたしに、由希は彼女らしからぬ反応を示している。
「そうなんだよね・・・・。ホント、すごすぎて、自分でも驚いてるの。」
- 401 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時10分10秒
- 「マジ?もしかして本当に大変なことなの?」
「・・・うん。わたしね、子供ができたんだ。」
瞬間、絶句してしまった。
あの由希が・・・・・。
「それで・・・どうするの?」
「どうするも何も。結婚するんだ。」
「結婚!?」
「うん。そのことを伝えようと思ってね、ひとみにメールしたの。」
「でもまだ高校生じゃん。学校どうするんだよ。」
「本当は辞めたかったんだけどね、親が高校くらいは卒業しとけってうるさいから。
で、取り敢えず休学することにした。わたし彼と結婚してママになることにしたよ。」
「・・・・そうなんだ・・・・。」
「それでさ。忙しいのはわかってるんだけど、ひとみに式出て欲しいなって思って・・・。」
「いつするの?」
「今度の日曜日。」
「えっ!もうすぐじゃん!」
「そうなんだよね・・・。お腹が目立つ前にって、色々都合あわせてたら、
この日しか押さえられなくて。・・・・・どうかな?」
スケジュール帳を開いてみたけれど、やはり朝から夜まで仕事が入っていた。
義務教育中のメンバーがいることで、日曜日は学校のしばりがない分、
仕事もびっちり組まれていることがほとんどだったのだ。
「・・・ごめん。無理みたい。」
「あっ、いいの気にしないで。きっとそう言うだろうと思ってたし。
式間際に連絡したこっちの方が悪いんだから。」
「由希の式に出れないなんてね・・・。マジごめん。」
「やだなぁ。それだけひとみが売れっ子ってことじゃない。」
ケラケラと笑う声が耳に響いてきたけれど、あたしは
どうにもやりきれない思いを胸に秘めていた。
- 402 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時11分15秒
- 「電報ちゃんと打つから。デカイ花束も届けてもらうようにするよ。
だから許して。」
「あははっ。OK!お祝いも忘れるなよー。」
「もちろん。めちゃくちゃ奮発してやるよ。」
由希は笑っていたけれど、本当はきっと寂しい思いをしているはずなのだ。
曲がりなりにも親友として過ごしてきた、2人の時間を考えると。
「それじゃ、頑張ってね。これからも応援してるから。」
「応援するのはこっちだよ。由希、幸せになってね。」
「ひとみも。また、落ち着いたら連絡するから。」
「うん。」
「じゃね。」
携帯を閉じて、ベッドに体を預けると、知らないうちにため息をついていた。
周りの友達は、どんどんあたしを置いて先に進んでいくような気がして。
ここにきて、色んなことが変化してきていた。
先日何気なくつけていたテレビに映っていた友達の姿。
それは春校バレーで活躍する、かつてのクラブの仲間だった。
あの頃とは比べることができないくらい、格段にうまくなったプレーをみて、
過ぎていく時間の怖さを思い知った。
もしあの時、バレーを辞めてなかったら、そこにいたのは
あたしだったかもしれない。
キラキラと輝く彼女の姿に、なんとも例えることの
できない感情が沸いてきて、テレビの前を動けなかった。
それだけではない。
地元にいる他の友達も、みんな夢をもって今を生きていた。
- 403 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時12分15秒
- 美容師になるために高校を卒業したら専門学校に行くと決めたやつ、
大学進学を目指して予備校に通いだしたやつ、
世界を見てみたいと、留学を決めたやつ・・・・・・・・。
みんな目指すもの、夢や希望をもって、前進していく姿が、
あたしにはとてもうらやましく、そして寂しく思えた。
あたしだけが取り残されていくような不安。
モーニングに入ったことを後悔している訳ではない。
ここまでくるのには、それ相当の努力もしてきたつもりだし、
唄もダンスも加入当初と比べると、信じられないくらいに上達した。
あたしはあたしなりに精一杯頑張って、それなりの結果も残してきたつもりだ。
それに、なによりモーニングに入ったことで、
他では決して経験できないような、充実した日々を送れたと思う。
楽しい思い出や、ステキな時間を心を許せる仲間、
温かく応援してくれるファンの子たちと共有して。
かけがえのない大切なものをいっぱい手にすることができた自分は、
本当に幸せ者かもしれなかった。
だけど・・・・・。
今のあたしは何かが違うのだ。いや、本当はもうちゃんとわかっているのかもしれない。
あたしはこれからのこと、そして今の自分に不安でしかたなかったのだ。
このまま高校を卒業して、しばらくモーニングも続けて。
それで、あたしは一体何を目指して、どこに行けばいいのか。
- 404 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時13分11秒
- ずっとモーニングにいることができないことぐらい、今までの卒業していった
メンバーを見てもわかっていた。
モーニングを卒業したとして、きっと残されているのは
歌手か、タレント業。
だけど、特別唄がうまいわけでもなく、多彩な才能をもっている訳でも
ないことは、あたしが一番よく知っていた。
今のあたしは何ももってはいないのだ。
自分にできること、自分だけにしかできないこと。
そんなものは、何ひとつもっていない。
そして、芸能界で生きていく上でかならず付きまとっていくことになる
『元』モーニング娘。という位置づけ。
その過去の看板にすがって生きていかなくてはならないなんて・・・
今が楽しければ楽しい分、余計に辞めた後の孤独を考えてしまう。
そんなことは杞憂なのかもしれないけれど、誰にでもいつかその時が
やってくるのだ。
それはあたしだけではなく、他のメンバーであっても。
色んなユニットを組んで、モーニングとは違った仕事もした。
だけどそれもどこか軽薄な感じがして、あたしは心の中で
いつも疑問に感じていたのだ。
自分の意思とは裏腹に、モーニングをまるで追い立てられるように
やめていったメンバーもいる。
ただ一方的に与えられる仕事に納得がいかずに、自らモーニングを
やめていった人さえもいた。
- 405 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時14分05秒
- みんな何かを思っていても、どうすることもできないもどかしさを
抱えているのかもしれなかった。
今はついていくので必死な新メンバーでさえも、もう少し回りが見えてきたら、
きっと、この不遇な扱いを疑問視する考えも生まれてきてもおかしくはない。
あたしがそうであるように。
あたしたちが動くことで、巨額のお金が流れていくのも肌で感じていた。
売れさえすればいいという事務所や、まわりのブレーンの考え方も、
今までは見て見ぬフリをしていたあたし。
だけど、それじゃ本末転倒もいいところなのだ。
唄が好きで、華やかなアイドルの世界に憧れや夢をもって頑張ってきたあたしたち。
夢を与えることのできる、モーニング娘。という存在が、あたしはとても好きだった。
けれど、それは事務所サイドから見ると、「商品」としての価値が、
あるかどうかという部分だけが、重要視されていることが見えている。
まるで使い捨てのように、卒業と新規加入を繰り返している今の体勢では、
どんどんファンが離れていくのもまた目に見えていた。
必死で頑張っていても、所詮うすっぺらなものしか
作り出すことができないのなら・・・・・
ここに留まる価値などないのかもしれない。
ならば、あたしは一体どうしたらいいのだろう・・・・・・
携帯と財布をポケットに突っ込むと、あたしはマンションを飛び出していた。
- 406 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時15分14秒
夜の街をタクシーで走り抜けると、そのマンションがみえてきた。
オートロックの部屋番号を押すと、インターホンに出てきてくれることを心の中で祈っていた。
「・・・・・はい。」
「あっ。吉澤だけど。」
「よっすぃー!?ちょっと待ってて。今開錠するから。」
プチッとインターホンが切れると、自動ドアの扉が開いた。
エレベーターに乗り込むと、7階のボタンを押して息を大きくついた。
「どうぞ。」
扉を開けてくれたごっちんは、やはりもうパジャマ姿だった。
「ごめんね、急に来たりして。」
「あはは。いいからあがって。」
部屋にあがらせてもらうと、ネイルをしていたと思しき道具が、
テーブルの上に並べられていた。
「ごめんね。ちょっとちらかってるけどさ。」
「ううん。ネイルしてたんだ。」
「うん。どう?かなりかわいくない?」
星やらハートやらのチップをキラキラとさせている爪を見せて、
嬉しそうに笑ったごっちん。
「かわいいなぁ。すげー上手だよね。」
「へっへー。メイクさんにセットプレゼントしてもらってさ。早速してみたんだ。」
「似合ってるよ。」
「ありがと。そうだ。まださぁ、爪完全に乾いてないから、適当に飲み物出してくれていいよ。」
「サンキュ。」
冷蔵庫からコーラを取り出して、ごっちんの座っているソファーに腰掛けた。
- 407 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時16分09秒
「そうそう。で、どうしたの、こんな時間に。」
「あぁ・・・。なんか急にごっちんの顔見たくなってさ。」
「あはは。嬉しいこと言ってくれるじゃん。」
ごっちんはケラケラと笑って、爪に息を吹きかけた。
「はぁっ。で?本当のところは?」
「えっ?」
「何か話したいことがあってきたんじゃないの?
そうだなぁ・・・・。想像するに、恋愛のことか仕事のことでも。違う?」
「ははは。やっぱごっちん、鋭いね。」
「それくらいわかるよ。わたしにだって。」
手にしているコーラのフタをあけると、プシュっと乾いた音がした。
一口だけそれを流し込むと、あたしは一息ついてから、ゆっくりと話し出した。
「あのさぁ、なんかね、あたし今すごくいらだってて。
不安とかあせりとか、目に見えないものが心を支配して。
どうしていいのかわかんなくってさ・・・・。」
「あせり?」
「うん。このままでいていいんだろうかって・・・。
今のメンバーに対してどうのってことじゃなくって、
あたし自身の問題なんだけど。ただ流れのままにここで
こうしててもいいのかって。でも、特にソロになりたいとか、
モーニングでこれをやりたいってこととか、そういうのではなくて。」
「うーん。こりゃまた随分ヘビーな悩みだね。」
- 408 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時17分28秒
- 「方向性っていうのとはまた少し違うんだけど、どうしようもなく
あせるんだよね・・・。周りの友達がさ、みんな目標をもって
動き始めているのを見たりして。じゃ、あたしにできることって
なんだろうとか考えて。このままじゃ、ただ何もしないで時間が過ぎていくだけの
ような気がして・・・・。」
ごっちんはあたしの手からペットを取ると、ごくりと一口ノドに流し込んだ。
「よっすぃーはさ、モーニングに入ったこと後悔してる?
普通の高校生でいたかった?」
「・・・いや。後悔はしてない。ただ、普通の高校生であったなら、
もっと違ったことはできてたかなとは思うけど。」
「わたしもね、モーニングにいた時は色んな壁にぶつかったよ。
それはソロになった今でも感じていることなんだけど。」
「・・・え?ごっちんが?」
「そうだよ。悩みなんてないと思ってた?」
クスリと笑った顔が、やけに静かに向けられた。
「そんなことは思ってないけど。でも、ソロになったのは自分の意思なんだよね?」
「んー・・・。まぁ・・・ね。いつかは歌手後藤真希として独り立ちしたいとは、
ずっと思ってたのよ。でもさ、あの中にいて、みんなと、よっすぃーとも
こんなに仲良くなれてさ。すごく楽しかったんだ。
みんな同じ夢をもって、もっともっと輝きたいって向上心をもっていて、
競争してるんじゃなくて、いい刺激をみんなお互いしていて。
だからあれだけのグループになれたんだと思うんだよね。」
「まぁ・・・ね。それはそう思うかな。」
- 409 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時18分20秒
- 「だからさ、事務所からソロの話があった時、嬉しかった反面、
本当に卒業したいのかって随分悩んだよ・・・。
みんなとはこれっきりになる訳じゃないけれど、やっぱり一つの
グループとしては動けない訳だし。」
「結局直前まで誰にも言わなかったもんね。卒業のこと。
聞いた瞬間本当にビックリしたよ。
それに・・・・・すげー寂しかったし。」
「言えなかったんだ。みんながどんな反応するかってことわかってたから。」
「あぁ。それはなんかわかる気がするなぁ。」
「でしょ?みんな応援はしてくれると思うんだ。だけど、
絶対心にある寂しさを隠してわたしと付き合うようになる。
あいぼんがいい例だよ。あの子は本当に甘えん坊で、
いつも誰かにくっついているし。昔はわたしによくべったりくっついてきたけど、
そんなことも、もしかしたらしてくれなくなるような気がしてね。」
大切な仲間だから話せないこともある。
きっとごっちんはそういうことを言いたかったのだと思った。
それは、今の自分と全く同じだったから。
「今はどう?かなり悩みも減った?頑張ってるもんね、ソロ活動。」
「いやぁー。そうでもないよ。頑張ってはいるけどね、せっかくソロに
なったのに、いきなりユニットの話がきたりして。正直へこんだりもしてたし。
でもさ、今できることに力を入れてたら、きっとどうにかなっていくと思うんだ。
あたしには支えてくれるファンの子たちも、そしてよっすぃーだっていてくれる。
他のモーニングのメンバーも顔あわせたら気軽に声かけてくれるしね。すごく励みになってるんだ。」
- 410 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時19分51秒
- 「そっか・・・。なんか嬉しいな、そんなこと思ってくれてたなんて。」
「あ。ごめんね。わたしのことばっかしゃべっちゃって。
よっすぃーの悩み聞くはずだったのにね。」
「いや。いいんだ。あたしも話したいことってまとまってなかったから。
ただ何かとても不安で。誰かに聞いてもらいたくて。」
「ねぇ・・・。もしかしてとは思うけど、よっすぃー卒業のこと考えてない?」
瞬間じっと動けずに、ごっちんの目に釘付けになってしまった。
どうしてわかってしまったのだろう・・・。
「ううん。全然考えてなんてないよ。」
笑ってごまかしたけど、きっとごっちんはわかっているのかもしれない。
「そっか。」
しかしごっちんはそれ以上聞くことはしないでいてくれた。
そんな関係が、やっぱり心地いい。
あたしの中にある、卒業をはるかに超えた引退という気持ちは、
その時、一瞬だけど影を潜めた。
「ところで。梨華ちゃんには相談したの?」
ぼーっと考え事をしていたあたしに不意をついて向けられた質問に、
あたふたとあせってしまった。
「しっ、してないよ。なんでそんなこと聞くの?」
「だってさ、よっすぃー梨華ちゃんとは妙に仲いいから。
そんなことも全部相談してるのかと思ってね。」
「なんだよ、その妙ってのは。あたしと梨華ちゃんはふつーの友達だよ?」
「へぇ。ま、そう言うんならそれでもいいけどさ。」
ごっちんはなぜかにやりと笑って、コーラを飲み込んだ。
- 411 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時21分30秒
タイミングがいいのか悪いのか、ちょうどそんなところへメールを知らせる着信音が鳴った。
「もしかして、噂をすれば・・・じゃない?」
「まさか。きっとぐったりとして今頃は寝てるよ。」
「クス。で、誰からなの?」
「んー。ちょっと待ってね。」
携帯を開くと、それは―――
「・・・・梨華ちゃんだった。」
「あははっ!ビンゴじゃん!」
「ホントびっくりするよね。」
苦笑しながらも、あたしはとても嬉しい思いでメールを読んだ。
「明日午後から歌番組の収録なんだけど、その前に家にこないかってさ。」
「へぇ。それはそれは。」
「んだよ、それ。最近あたし落ち込み気味だったからさ、
きっと気を遣ってくれてるだけなんだと思うんだ。」
「気を遣って朝からデート?」
「違うって!!!」
そんな冗談に笑い合いながら、あたしたちは夜遅くまで
色んなことを語り合った。
その夜は本当に久しぶりに、何も考えないで眠ることができた夜だった。
- 412 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)01時24分02秒
- >作者
終了です(wゞ
なんか、うまく書けなかったんですが、およそよっすぃーが
考えていることは今回で書いたつもりです。
うまく伝えることができたのかな?と、ちーと疑問ですが(w
ごっちんはきっとよっすぃーとは、マブです(笑)
で、梨華ちゃんにはラブで(うわっ!寒っ!(笑))
そんな感じの2人をこれからもどうぞよろしくなのです。(何?)
では、また次回まで。おやすみなさい。
- 413 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月20日(日)01時40分34秒
- 更新お疲れ様です。
スケールは違うけど、どんな仕事の人でも一度は持つ悩みかも。
>うまく伝えることができたのかな?
痛いほど伝わって来ていますよ。
- 414 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月20日(日)09時43分52秒
- なんか何でも話せる友達が、気兼ねなく話せる友達がいてよっすぃーには
そして、空気のように包んでくれる梨華ちゃんも…。
実際にもみんなそういうことを考えてそうで、事務所に不満を持っている人
このままでいいのかと思ってる人…。
芸能界って華やかな世界だけど、笑顔の裏にはいろいろなことがある!
そう思いました。
ハッピーエンド期待してます(^^)
- 415 名前:なな素 投稿日:2003年07月20日(日)15時53分14秒
- これってリアルを通り越してノンフィクションですね(笑)
大変、面白いです。
>まるで使い捨てのように、卒業と新規加入を繰り返している今の体勢
思わず禿同〜
さて、梨華ちゃんの家でどんなことがあるやら。
- 416 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時30分54秒
- >ROM読者さま
>スケールは違うけど、どんな仕事の人でも一度は持つ悩みかも。
そうですねぇ。悩みのない人間なんていないのかもしれないですね。
今回投稿するものは、かなり痛いと思います。
どうぞ覚悟して読んでくださいね!(w
>名無し読者79さま
>なんか何でも話せる友達が、気兼ねなく話せる友達がいてよっすぃーには
>そして、空気のように包んでくれる梨華ちゃんも…。
ホント、うらやましいですよねー!
あの2人の関係は、やっぱり2人にしかわからないものが
あると思います。友情よりも少し上で、恋人までには至らない。
でもTVで見る限りはラブラブなんですけどね(笑)
あー。また病気再発かしら?>作者 (笑)
>なな素さま
>これってリアルを通り越してノンフィクションですね(笑)
>大変、面白いです。
やった!ありがとうございます!!!(^-^)
>さて、梨華ちゃんの家でどんなことがあるやら。
こーんなことになっちゃいました(笑)
ここまで書こうとは思ってなかったのですが・・・。
筆が勝手にすすんでしまいました(wゞ
そうです。かなーり痛いです。作者自分で書いてて
口をあんぐりしてしまいましたから(w
ということで、厳しい現実?ではありますが、
かなり痛めかもしれません。
みなさまどうぞ最後にこの2人がうまくいくように、
作者を応援してください(笑)
頭の中でどうラストをもっていっていいのか
実はかなり苦戦してまして(笑)
まぁ、ぼちぼちいきますが(w
それでは、どうぞー!
- 417 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時33分41秒
「おはよ。」
「おはようー。」
約束の時間、10時ぴったりに梨華ちゃんのマンションへとやってきた。
今日の仕事は午後からのものだけだったから、梨華ちゃんは部屋着にしている
ジャージ姿のままで、あたしを迎えてくれた。
いつも見ているメイクをしていない、すっぴんの彼女の顔に、
嬉しさを感じるのはどうしてだろう。
「朝ごはんまだでしょ?サンドイッチ買ってきたんだ。」
「ありがとー。いつもながら気が利くね。」
手にしていたビニール袋を受け取ると、にっこりと笑顔を向けてくれた。
「で?家に呼んでくれたのはどういう風の吹き回し?」
クスっと笑って彼女を見た。
「別に。用がなきゃ遊びにもきてくれないの?」
「あはは。そんなことはないけれど。」
そう言いながらも、あたしは妙に浮かれた気分になっていた。
特別用事がある訳でもないのに、誘ってくれたことが嬉しくて。
「午前中せっかくオフなのに呼びつけちゃって悪いなぁって思ったんだけど、
これ、一緒に見ないかなって思って。」
梨華ちゃんが手にしたのは、映画のDVDのソフトだった。
「あぁ。それ、前に言ってたやつだよね?」
「うん。矢口さんやっと返してくれたのよ。まだ私も見てないのに、
先に貸してくれって言われた時は、ビックリしたけどね。」
- 418 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時35分20秒
- 「みんなの前で自慢するから悪いんだよ。あたしだって見たかったやつだから。」
「だって先行発売で予約して、手にしたものだったんだもん。自慢してみたかったのよ。」
「クス。そういうとこ梨華ちゃんらしくて好きだけどね。」
特に意識することなく言った言葉に、なぜか彼女は照れ笑いを浮かべていた。
「そっ、そうだ。飲み物何がいい?冷たいのはオレンジジュースくらいしかないけど。
やっぱりコーヒーの方がいいかな?」
「んー。なんでもいいや。梨華ちゃんは何にするの?」
「オレンジジュースにしようかな。」
「んじゃ、あたしも。」
「はーい。それじゃ座ってて。」
テーブルに置いてあるサンドイッチを持って、カウチに腰掛けた。
そして梨華ちゃんはDVDをセットすると、グラスに入れたジュースをもって、あたしの隣に座った。
「この辺は飛ばしちゃって・・・。本編からでいいよね?」
「うん。」
配給会社のタイトル表示の後に、すぐに本編が映し出された。
この映画は続編のもので、前作がかなり気に入ったためにわざわざ予約して
買ったものらしい。
サンドイッチを食べながら見るような映画ではなかったけれど、
それでも2人はペロリとそれを平らげてしまった。
しばらくはそうやって映画を見ていたけれど、いつしかあたしの視界の端に、
ゆらゆらと揺れるものが見えていた。
ちらりと横に視線を動かすと、どうやら梨華ちゃんは
眠かったみたいで、頭を揺らして船をこいでいた。
- 419 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時36分38秒
- それがおかしくて、しばらくは映画を見ずに、梨華ちゃんのことだけを見ていた。
そして、彼女は完全に眠りに落ちたようだった。
もたれてきた頭を肩にのせると、彼女の肩に腕をまわしてそっと支えてあげた。
よほど疲れていたのだろう。
梨華ちゃんはピクリとも動かずに、すやすやと寝息を立てている。
今度結成される新しいユニットの活動に、また抜擢された彼女。
モーニングだけでも忙しいのに、こうやって別の仕事もこなしているのは、
それだけ彼女の頑張りが認められていることだけど、いつか無理がたたって
倒れてしまうんじゃないかと、あたしは影ながら心配していた。
加入当時は、とても頼りなげに見えた彼女が、今はとてもポジティブに
頑張っている。
自分を変えたいと、いつも前向きにレッスンに励んでいた姿は、いつしか
あたしの心の中に、頼りない梨華ちゃんではなく、頑張り屋の梨華ちゃんとして
認識されるようになっていった。
画面の前面に出てくる機会が増えたことで、自信をもつことができるように
なったのだろう。
本当はとても真面目で、内気な性格だった彼女が、今はこうして
モーニングを代表するくらいにまで活躍している姿は、同じメンバーながら、
とても眩しく輝いて見えた。
それ故無理もいっぱいしているはずなのだ。
活動凍結中の新プッチのあたしとは違って、色んなことを期待されて
いるのがわかるから。
高校も結局中退した彼女は、本当にこの世界で頑張っていく決意を固めたようだった。
一方のあたしは、高校には在籍しているけれど、それも中途半端になってしまっている。
- 420 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時37分40秒
彼女の意気込みをみると、やはり自分がしていることはどれもこれも・・・・・・・。
ふーっと息をつくと、彼女の頭をそっとなでてみた。
「頑張りすぎなんだよ・・・。」
さらりと流れ落ちている髪に、指を通してみる。
これだけ疲れているのに、あたしをここに呼んでくれたのには、きっと別の意味があるはずだった。
そんなことはあたしにもわかったけれど、お互いにそのことは口にしないでいた。
あたしの中で変わっていくもの―――
それを敏感に感じ取っているはず。
あたしが梨華ちゃんのちょっとした変化に気付くように、彼女もまた
あたしのことをよく見ていてくれているから。
だけど、いや、だからこそ、あたしは彼女には何も言えなかったのだ。
不安に思っていることを話せば、きっと彼女に心配をかけるだけだから。
あたしにとって梨華ちゃんは、特別な存在だった。
それは言葉でうまく説明できない感情。
他のメンバーには感じない、梨華ちゃんにだけ感じる想い。
その気持ちをそれでも敢えて言葉に表すとすると、きっとそれは―――
梨華ちゃんの寝顔を見ながら、あたしはまた心の中に湧き上がってくる、
あの不安と闘っていた。
もし、あたしが引退を考えていると告白したら、きっと彼女は引き止めるだろう。
それがわかっているから、何も相談できないのだ。
ごっちんに話したことで、幾分消化された気がしていたけど、
やはり心の底にあるこの根深い思いは、そうたやすく消せるものではなかったのだ。
- 421 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時39分05秒
そんな思いを抱えながら彼女を見つめていると、本当に何の前触れもなく、
目じりの端から、一筋の涙がこぼれ落ちていった。
「よっすぃー・・・・・・・」
「・・・・え?」
それは寝言だったけど、眉間にしわをよせて苦しんでいる表情が、
あたしの心に鈍い痛みを突き刺していった。
テレビの画面がエンドロールに差し掛かったところで、
ようやく梨華ちゃんは目を覚ませた。
「・・・・あ。眠っちゃってたんだ・・・。」
「うん。」
「あっ、ごめんね。もたれていたのね、私。」
預けていた頭を起こすと、自分の頬に流れていた涙に気がついたようで、
あわてて涙を拭っている。
「おかしいなぁ・・・。なんで私泣いてたんだろう。」
「んー・・・・。疲れてたんじゃない?」
「そうかもしれないわね・・・。ねぇ、私寝言で何か言ってなかった?」
「あぁ・・・・・。なんかあたしの名前を呼んでた気がする。」
「・・・・・そう。」
流れていくエンドロールが終わると、メニュー画面に切り替わったけど、
それでもあたしたちは、何も言わずに沈黙に耐えていた。
まるで、次の一言を互いに探り合っているように。
そして、梨華ちゃんが先にぽつりと言葉をもらした。
「・・・・ねぇ、よっすぃー・・・」
「なに。」
「私じゃ・・・・ダメかなぁ・・・・」
「・・・・・え・・・・・・・」
「私じゃやっぱりよっすぃーの力になってあげることはできない?
あなたの支えにはなってあげられないの?」
「梨華ちゃん・・・・・・・」
- 422 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時40分20秒
こんなに苦しそうにしている彼女の顔を始めて見た気がした。
そうさせてしまっているあたしは・・・・
「何も言ってくれないんだもん。・・・よっすぃーが苦しんでいるのわかるのに。
苦しいよ、私も・・・。よっすぃー・・・ねぇ、お願い。私にも分けてよ、あなたの苦しみを・・・」
「・・・・・・・・・・。」
唇をかみ締めたまま、何も言えないでいた。
心にある全てのものをぶつけたとしたら、きっと彼女も一緒に
つぶれていってしまう。
そんなことはできるはずがない。
あたしはもう梨華ちゃんの瞳をみつめることができなかった。
視線を逸らせてうつむくと、声にならない心の叫びにむせいでいた。
けれど、そんなあたしのことを抱きしめて、梨華ちゃんは
気持ちをぶつけるように、強く唇を重ねてきた。
「・・・・・・・・・・・ん・・・・っ・・・・・・・」
彼女が流す涙があたしの頬をぬらし、重ねている唇に落ちてきた。
それはとてもしょっぱくて、苦い、梨華ちゃんとの初めてのキスの味。
本当ならいきなりキスをされたこと、そしてそれが紛れもなく同性である
彼女にされたことに驚くのが普通なのだろうけど、
いつかこんな時がくるのではないかと思っていたから、あたしはどこか冷静でいられた。
それは2人の間にしかわからない、複雑な想いの証明だった。
あたしたちは、互いに惹かれあっていることをわかっていたのだ。
言葉にすることすらないにしろ、気持ちは通い合っていた。
そう。あたしと梨華ちゃんは、仲間意識をずっと超えたところで繋がりあっていたのだ。
- 423 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時42分14秒
ふーっと息をもらして唇を離すと、梨華ちゃんは涙声のままでこう言った。
「ごめん・・・・」
「どうして謝るの。」
「私の気持ち、よっすぃーには重いよね・・・」
うつむいた顔に髪がかかっていて、その表情を読むことはできない。
だからあたしはその髪をかきあげて、まるで壊れ物を扱うように、
やさしく頬を包み込んだ。
「重くなんてないよ。梨華ちゃんの優しい気持ち、ちゃんとここに届いたから。」
「よっすぃー・・・・」
「いつも心配ばかりかけてるよね。ホント、情けないくらい・・・。
だけどね、梨華ちゃんだから言えないこともあるんだ。」
「え・・・・。どういう・・・こと。」
困惑する表情を浮かべている彼女の肩を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
「一度しか言わないから、ちゃんと聞いててね。」
「・・・・・・・・・え・・・・・」
「梨華ちゃんはあたしの一番大切な人だから。誰とも比べることができないくらい。
・・・・・・・吉澤ひとみは、石川梨華が・・・・好きです。」
あたしの肩に染み込んでいく、あたたかいものは、
止まることを知らないように流れ続けている。
- 424 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時43分04秒
「・・・・・・・・ばか・・・。・・・・どうして今そんなこと言うのよ・・・・」
「どうしてだろう・・・・・。あたしにもわかんないよ。」
「嬉しいはずなのに、寂しくなるよ・・・・。」
「・・・・・・どうして?」
「だって、まるで最後の言葉みたいじゃない。今まで言葉になんてしなかったのに・・・
ねぇ、よっすぃーお願い。約束して。一人で消えたりしないって・・・。」
ズバッと心を射抜かれた気持ちだった。
彼女は最初からあたしの気持ちに気付いていたのかもしれない。
心の奥に隠していた、この気持ちを。
だけど、あたしは何も答えることはしなかった。
ゆらゆらとうごめくどうしようもない気持ちが、あたしを縛り付けていたから。
- 425 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月20日(日)21時45分35秒
- >作者
終わりです(笑)
いやぁ。今書いててつらいっす!・゚・(ノД`)・゚・
だってすんごく暗い&痛いんですもの(涙)
でも、この2人にはきっとこれだけ苦労をかけさせてしまった分、
作者的には優しいラストを迎えさせてあげたいです(笑)
もうね、いしよしに関しては親心があるんですよ(w
現実の2人も温かく見守ってあげたいですね。
見守る会でも結成しましょうか?
↑タマちゃん?(w
- 426 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月20日(日)23時03分40秒
- 更新お疲れ様です。&心中お察し致します。
>作者的には優しいラストを
その言葉を心の支えに見守りたいと思います。
×タマちゃん ○いしよし(笑
- 427 名前:シフォン@i 投稿日:2003年07月21日(月)08時19分41秒
- いしよしを見守る会の入会はこちらで良いのれすか?(笑)
それはさておき…朝から泣かせていただきました(素)
『吉澤ひとみは……』あのクダリで涙がバーッと(苦笑)
>作者様
暗いとか痛いとかはそんな感じないのですが……リアルすぎます(笑)
『実話ちゃうの?』ってくらい、リアルです。
次回も楽しみにしてますねぇ♪
- 428 名前:なな素 投稿日:2003年07月21日(月)17時56分39秒
- いやはや、切ないですな。
だがその切なさがとてもいい感じです。
前のレスで書き忘れたことなんですが、昨日のハロモニは作者様の予想通り
いしよしがありましたね〜(嬉)
よっすぃーの服の色をしっかり覚えてるところなどは
>そう。あたしと梨華ちゃんは、仲間意識をずっと超えたところで繋がりあっていたのだ。
このフレーズがぴったり当てはまるような感じがしました。(まあ加護も覚えてたけどw)
- 429 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月21日(月)19時08分26秒
- わーなんなんでしょう(T-T)
よっすぃーの苦しみが伝わってくるようです…。
そして、梨華ちゃんの苦しみも…。
なんか、きれいな話ですね。言葉がなんとも言えません…。
次回、何か動きがありそうで…。なんだか切ない…。
- 430 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月22日(火)12時11分01秒
- いいですね。やっぱりこういう切ない系、いいです☆
更新速度の速さには毎度驚かされますが、マイペースでこの夏を乗り切って下さい☆
- 431 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時40分16秒
- >ROM読者さま
>その言葉を心の支えに見守りたいと思います。
えぇ。もうしばし見守っていてくだされば、助かります(笑)
>×タマちゃん ○いしよし(笑
作者的には、最近プチいしよし祭りがイパーイで嬉しい限り(w
>シフォン@iさま
>いしよしを見守る会の入会はこちらで良いのれすか?(笑)
いや、そこの角を右に曲がって・・・・(笑)
>『実話ちゃうの?』ってくらい、リアルです。
実話だといいですよねー(苦笑)
でもマジでできていると思われます>いしよし(笑)
>なな素さま
>だがその切なさがとてもいい感じです。
ありがとございますー♪
今回のもやや痛ですが(w、もうしばしお付き合いください。
>(まあ加護も覚えてたけどw)
しーっ!!!(笑)それは言っちゃダメなのです(笑)
梨華ちゃんかわいいよ梨華ちゃん。グッジョブだったよ♪
>名無し読者79さま
>次回、何か動きがありそうで…。なんだか切ない…。
やはりさすがですね(にやり)
かなり痛いので、覚悟してくださいね!(wゞ
次回投稿分では、みなさまのお心を少しは救えるかと。
いや、ほんの少しだけですけどね(w
>俄かいしよしファンさま
>いいですね。やっぱりこういう切ない系、いいです☆
ありがとうございます!
何にしても、作者はがんばっていしよしを補完するために
妄想を膨らませて書くのみです(w
これからも応援してくださいね!
それでは続きですが・・・・。
痛いのがあまり得意でない方は、さらりと読み流して
次回投稿分をお待ちください(w
それでは続き、どうぞ!
- 432 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時41分34秒
互いの想いを交わしたあの日から1ヶ月。
梨華ちゃんとあたしの関係は、しかし、以前とは何も変わることはなかった。
以前と何も変わらないでいられたのはきっと、その想いを言葉に表したに
過ぎないことだから。
つまり、好きという気持ちは、もう随分前から2人の中にはちゃんと認識されていた
ことであるから、今更言葉にしたところで何も変わる訳はないのだ。
ただ、唄をうたっている時や、何気ないことでのアイコンタクトは、
以前よりもより意識的に向けられているくらい。
好きな人の姿を追うことは、きっと誰にも経験があることだろうけど、
あたしと梨華ちゃんもまた、その程度のものだった。
恋人面をすることも、されることもないこの微妙な距離は、
ズルイようだけれど、あたしにはとても都合がよかった。
ともすれば、気持ちを交わしたことで、恋人の関係になっても
おかしくはないのだけれど、なぜかそれは2人とも結局最後まで言葉にはしなかった。
だからあたしは、今でもあいぼんとは冗談でキスもするし、ののとだって
じゃれあっている。
他のメンバーとも相変わらず仲がよかったし、取り分け圭織さんなんかは、
あたしのことを本気で好きなんじゃないかと勘違いするくらい、セクシーな
声であたしの名前を呼んで、絡み付いてくることもしばしば。
なぜかそういう時に限って、梨華ちゃんの視線を痛いくらいに
背中に感じたりしたけれど、彼女もあたしの気持ちが圭織さんには
ないことをわかっているから、そうあからさまな態度にでることもなかった。
- 433 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時43分09秒
- メンバーになりたての頃は、今までテレビの中でしか見ることのできなかった、
圭織さんや安倍さん、他の3期までのメンバーの存在の大きさに、
萎縮してしまって、自分の居場所を見つけることがなかなかできないでいた
けれど、今となってはそんな壁もなく、本当にここはあたしが存在しても
いい場所へと変わっていた。
だから、新メンバーに対しても、あたしが経験したような緊張感を
感じさせないように、こちらから声をかけたり、アドバイスしたり。
決して先輩面をするわけではなく、ここにいてもいい理由付けをしてあげたかった。
それは結局バレー部を辞めざるを得なくなったあの頃のあたしを
投影していたから。
先輩との確執は、狭い人間関係において、大部分を占めている。
あたしが好きなモーニング娘。を新メンバーにも愛して欲しい。
その思いは、日増しに強くなっていくばかりだった。
それは、あたしが残すことのできる、たった一つのものであるような気がしていたから。
だから梨華ちゃんとの関係も、これ以上進めるつもりはなかった。
特別な存在ではあるけれど、梨華ちゃんもまた、メンバーの一人であるという
スタンスを変えるつもりはなかったから。
―――いや、本当は怖かっただけかもしれない。
いつかくるかもしれないその時を迎えた時のことを考えると、
身軽な自分でいたいと。
梨華ちゃんのことを傷つけたくないという気持ちの影に、
自分自身も傷つきたくないという気持ちがあったことも確かで。
―――つまり、あたしはズルイ人間なのだ。
ズルくて、臆病で、そして不安ばかりを抱えて。
- 434 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時44分11秒
- そんなあたしをメンバーには見せたくなかったから、いつも明るいフリをして、
バカなことを言って騒いでいた。
仮面の下にある本当の自分は、誰にも見せなかったし、見せるつもりもなかった。
けれど、そんな思いは今日この日、音を立てて崩れていくことになろうとは、
思いもしなかったのだけれど。
それは、ちょうど全国ツアーを2ヶ月後に控えた寒い冬の日だった。
午前中から夜にかけて、今日もコンサートのための振り付けや、
唄のレッスンにクタクタになりながらも、あたしはあたしなりに
精一杯頑張っていた。
そしてレッスンも終わり、帰り支度を整えると、Dバックを肩にかけて
スタジオを出た。
「吉澤、ちょっときてくれないか。」
あたしを呼び止めたのは、事務所の人間だった。
「・・・はい。なんでしょう。」
「実はさっきつんくさんから連絡があって、レッスンが終わったら、
至急録音スタジオに来て欲しいと、伝言があったんだが。」
「つんくさんが・・・?」
「あぁ。詳しいことはわからないが、至急ということだった。
とにかく今から向かってくれないか。」
「わかりました。」
直感的に、いい知らせでないことを、あたしは感じていた。
つんくさんが個人を呼び出す時は、大抵新しいユニットの結成のことか、
ソロ活動のことがほとんどだったけど、そのどちらにも自分は
当てはまらないから。
- 435 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時46分00秒
エレベーターホールにはもう誰の影もなく、どうやらメンバーは
皆先に帰っていったようだった。
「ふぅ・・・・・。」
下へのボタンを押して、エレベーターがくるのを待っている間、
あたしは自分の中にある気持ちを、整理していた。
もしかしたら、今日これから、その決断を自ら下すことになるかもしれない。
あたしの心はあれからもずっと揺れていた。
自分の存在が中途半端で、何をしていいのか、これからどうしたいのか、
自分にできることは何なのか。
ずっと自問自答していたけれど、一方では、やっぱりモーニングを離れることは、
思い留まった方がいいのかもしれないとも。
その一番の要因であるのは、他でもない梨華ちゃんの存在だった。
もしここで、あたしが引退してしまったら、おそらくは疎遠になっていってしまって、
そのまま何もなかったことになってしまうのかもしれない。
あるいはそれこそが正解であることも否定できなかった。
今この限られた中にいることで、梨華ちゃんはあたしのことを好きに
なっているだけのような気がしていたから。
事務所の締め付けで、思うように恋愛もできないこの環境では、
擬似恋愛が成立してもおかしくはないのだ。
一見すると、ボーイッシュで女の子っぽくないあたしの存在は、
きっとそういった擬似恋愛の対象として、女の子が憧れることも
わかっていたから。
逆に女の子っぽい梨華ちゃんは、あたしと並ぶことで、
まるでカップルのようだとみんなからはやし立てられたりしているために、
自分の中での思い込みができあがっていることも考えられるのだ。
- 436 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時47分15秒
- だとすると、これからモーニングの仕事だけではなく、女優や
その他の仕事をこなしていくことで、本当の恋愛対象を見つける
ことがあるかもしれない。
「・・・・・擦れてるのかな、あたし・・・。」
ぽつりともらした自分の言葉に苦笑した。
色んなことを考えてはみたけれど、結局あたしは
梨華ちゃんが今、現実に好きでいてくれている気持ちが、嬉しかった。
だからこれほどまでに悩んでしまうのだ。
エレベーターの扉が開くと、大きなため息を一つついて、乗り込んだ。
「よっすぃー。」
エレベーターを降りると、エントランスで待っていたと思しき
彼女が声をかけてきた。
「あ・・・。梨華ちゃん。先帰んなかったの?」
「うん。さっき事務所の人に呼ばれてたでしょ?それが気になって。」
「あぁ・・・・。」
「何の話だったの?」
「別に大したことじゃないよ。」
「ウソ。本当のこと教えてよ。」
ダウンジャケットの袖を握り締めて見上げる眼差しは、
とても切なげに向けられている。
だからあたしは、できるだけ心配させないような、優しい瞳と笑顔で
梨華ちゃんの頭に触れた。
「本当になんでもないから。」
笑顔の下に隠したものを見せないようにと。
- 437 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時48分14秒
- 「やっぱりそれも、私には言えないことなの?」
だけど、梨華ちゃんはまるでその仮面の下を覗き込むような瞳で、
あたしを凝視していた。
―――ぎゅっと胸が締め付けられていく。
あたしは一体何を恐れているというのだ。
好きな人にこんな辛い思いをさせてまで・・・・
けれど、やっぱり彼女には何も言えなかった。
「・・・ごめん。ちょっと急ぐんだ。」
ぽんぽんと軽く頭を触ると、Dバックを肩にかけ直して、
あたしは一歩踏み出した。
しかし。
「どうして私には何も言ってくれないのよ。ごっちんには何でも話してるくせに。」
「・・・えっ・・・・」
振り返ると、梨華ちゃんは今にも泣き出しそうな表情で、
あたしを見つめていた。
「知ってるんだから。ごっちんには何でも相談してるんでしょ?
彼女私に言ったのよ。よっすぃーの力になってあげて欲しいって・・・。
それって結局、ごっちんには相談してるってことでしょ?ねぇ、そうなんでしょ?」
「梨華ちゃん・・・」
「ズルイよ。ごっちんには話して、私には話してくれないなんて・・・・。
そんな寂しいことしないでよ・・・。」
ぽろぽろと溢れてきたその涙を見て、あたしはどうしようもない悲しみに襲われた。
- 438 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時50分03秒
- もしかしたら梨華ちゃんは、あたしが想像する以上にあたしのことを
好きでいてくれているのかもしれない。
ならば、もしあたしが引退を覚悟していることを話せば、
一体彼女はどうなってしまうのか。
それを考えると、やり場のない思いが胸の中を駆け巡った。
今ですら彼女のことをこれほどまでに悲しませているのであれば、
もうここで何もかも終わりにしてしまった方が、
梨華ちゃんにとってはいいことなのかもしれない。
さよならの言葉を口にすることが、あたしにできる最後の優しさだとするならば。
「・・・・あぁ。そうだよ。ごっちんはあたしにとってとても大切な存在だから。
かけがえのない、唯一の存在だと思ってる。」
「・・・・・・・・え・・・・・。」
「わかるよね。それがどういう意味をもつのかってことぐらい。」
「・・・・ウソだ・・・・。だって、よっすぃー言ってくれたじゃない、私のこと・・・」
「あぁ、あれか。あれはほら、梨華ちゃんがキスなんてしてくるからさぁ。
こっちもついその場の空気に流されちゃって。・・・・ただそれだけのことだよ。」
「あの日好きだって言ってくれたこと、ウソだって言うの・・・」
「そういうことになるかな。もうわかったでしょ。それじゃ。」
一歩踏み出した背中に、それでも梨華ちゃんは―――
「・・・・・・・・信じない。」
「信じなくたっていいよ。だってあたしは・・・・最初から梨華ちゃんの
ことなんて、好きじゃなかったから。」
背中を向けたままであたしは答えた。
- 439 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時51分05秒
冷たい床に反射する言葉。
それはまるであたし自身を突き刺すような響きを伴っていた。
心の中がズタズタに切り裂かれていく。
自分でさよならのセリフを言っているはずなのに、体が引き裂かれていく
ような悲しみに、震える拳をぎゅっと握り締めた。
「・・・・・・・ひどい・・・そんな・・・・・ひどい・・・よ・・・・」
ガタンと音を立てたのは、梨華ちゃんが床に膝を落としたせいだろう。
だけどあたしはもう、振り向きもせずにエントランスホールを出ると、
待たせていたタクシーに飛び乗った。
流れていく街並みがにじんで見えるのは、自分の罪の重さがあふれ出していくから。
「・・・・・・・・・っく・・・・・。」
ハンカチを目に当てても、とめどなく流れるあつい涙は、
どうすることもできなかった。
あたしは一体、何をしているのだ。
自分の気持ちを押し殺すことで、彼女に与えてしまった深い悲しみ。
それはこの後確実に訪れるであろう、決定的な別れのための、
間違いない選択だった。
けれど、苦しくて、悲しくて、気が狂いそうになるくらいのこの気持ちは、
本当にどうしていいのか自分でもわからなかった。
結局あたしは逃げているだけなのかもしれない。
そこに待っているものの傷を、最小限に留めようとしたことで、
返って深手を負ってしまったのかも・・・。
- 440 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時52分30秒
本当は、どこかで気付いていた。
だけど気付かないフリをしていたのだ。
梨華ちゃんがあたしを想ってくれている気持ちが、
あたしが引退することで、離れていってしまうかもしれないことに。
追いかけているのは彼女ではなく、あたしの方だということに。
言い訳がましく、彼女の気持ちを変に値踏みしてしまったのも、
つまりはあたし自身に勇気がなかったから。
好きになってもらえるだけの価値がない人間だと、
それを自認させられてしまうのが、怖かったのだ。
だからあたしは先にさよならを言った。
梨華ちゃんの背中を見つめて、悲しみに打ちひしがれる日が
来ることが怖かったから・・・・・・・・・。
「・・・・すみません。戻ってもらえませんか。」
「・・・はい?」
「お願いします。さっきあたしが乗ったところまで戻ってください。今すぐ!」
「はい。承知しました。」
交差点をUターンすると、タクシーは制限速度ギリギリのスピードで
幹線道路を走り抜けていった。
まだ、今なら間に合うかもしれない。
今ならまだ梨華ちゃんとの関係を、取り戻すことができるかもしれない。
自分の勝手でさよならを告げたことが、間違いであったことに気がついた。
くすぶったままの気持ちでいても、何の解決にもなりはしない。
もし、これからあたしの進むべき方向によって、2人に別れが来たとしても、
それはその時にちゃんと2人で結論を出すべきだったのだ。
こんな形で一方的に何も伝えないで別れるなんてことは、
してはいけなかったのだ。
- 441 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時53分39秒
だって、あたしは本当に梨華ちゃんのことが好きだから。
好きだからこそ、距離を置こうと考えた。
けれど、それは臆病な自分の言い訳にしか過ぎなかったのだ。
梨華ちゃんはあんなにも気持ちをぶつけてくれたのに、
あたしに勇気がないばかりに・・・・・・・。
レッスンスタジオのビルが見えると、あたしはもう半分体を乗り出して、
車が止まるのを待ちきれないとばかりに、ドアが開くのをまった。
「すみません。すぐ戻ってきますから!」
車のドアが開くとすぐに、あたしはエントランスへかけつけた。
どうか、梨華ちゃんがまだいますようにと祈りながら。
けれど―――
そこには、もう誰もいなかったのだ。
「・・・・・・・梨華・・・・・ちゃん・・・・・・・・・」
肩にかけていたDバックがするりと落ちて、足元で音を立てた。
もう、何もかも終わってしまったことだけが、あたしの現実だった。
- 442 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月25日(金)18時56分45秒
- >作者
痛いですよね?(w
わかってるんです、作者自身も(笑)
しかーし、この痛を乗り切ってこそいしよしがあると
思いますので、どうかもう少しだけ、この痛痛タイムに
付き合ってください(笑)
次回はほんの少しだけ、みなさまのお心を補完いたしたいと
思っています。(ってまだ何も書いてないけど(w )
それと、リアルとはやや違ったユニットメンバーに
なるかもしれないのですが、話の都合上そういうことに
なると思うので、その点はご理解くださいませ。
それでは、また次回。
息抜きに書ける時間が取れれば、またUPしたいと思います。
ではー♪
- 443 名前:シフォン 投稿日:2003年07月25日(金)20時23分22秒
- 今日もまた泣かされました(素)
よっちぃ、梨華たん泣かしちゃダメだよぉ!!
次回の補完に期待しております(苦笑)
<<リアルとはやや違ったユニットメンバーに…
どんなメンバー構成になるのかしら?
ちょっと楽しみだったり(笑)
色々ご多忙でしょうが、無理なさらず更新なさって下さいね♪(素)
- 444 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月25日(金)21時10分55秒
- う、うう…(T−T)
人間って人のことを考えるより先に、自分のことを考えるんですよね
当たり前だけど…。
だけどこの梨華ちゃんは、なんかよっすぃーを一番に考えてる感じで(涙
よっすぃーもわかっているんだけど、傷つきたくないからこうしてしまう…。
今度の更新で、この痛から少し抜け出せたらいいな…。
今日のMステ、4期なんだかよっすぃーがパパ、梨華ちゃんがママに本当に
見えてしまった…。4期は、いいわ…なんか和みます(^^)
- 445 名前:なな素 投稿日:2003年07月25日(金)23時46分05秒
- >痛いですよね?(w
痛いっすw
>しかーし、この痛を乗り切ってこそいしよしがあると
頑張って乗り切りますw
しかし、よっすぃーの気持ちもわかりますな〜。
自分が傷つかない為だったとはいえ、想いが成就した後の別れのほうが
辛いこともありますからね。
梅雨がまだ明けずじめじめしとりますが、ゆっくり更新頑張ってください。
- 446 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月26日(土)00時24分20秒
- 甘さも秀逸なら痛さも強烈!
わかっていてもかなりズシッと来ました。
補完が待ち遠しい・・。
- 447 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月27日(日)13時48分08秒
- ぁあ〜微妙なすれ違いですね・・・梨華ちゃんがまだいたら!と悶えていますw
この後の展開が非常に楽しみですね♪一部地域では地震などもあって大変そうですが、
この暑い夏をいしよしの切なさと甘さで埋め尽くしてください(謎
- 448 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時21分35秒
- >シフォンさま
>よっちぃ、梨華たん泣かしちゃダメだよぉ!!
ですよね?(w作者もそう思います!(笑)
>次回の補完に期待しております(苦笑)
さて、補完されるのでしょうか?クス(w
それは読んでからのお楽しみということで♪
>名無し読者79さま
>だけどこの梨華ちゃんは、なんかよっすぃーを一番に考えてる感じで(涙
そうですねー。ここでは石→吉の感じがしないわけでもないですが、
やっぱり石⇔吉がベストかと(w
>4期は、いいわ…なんか和みます(^^)
禿同!!!吉澤一家、やっぱり絵になります♪
>なな素さま
>頑張って乗り切りますw
すみません、本気で笑ってしまいました(笑)
>梅雨がまだ明けずじめじめしとりますが、ゆっくり更新頑張ってください。
ありがとうございますー♪
こちらは梅雨明けしましたよ♪それに夏らしからぬ寒さ・・・。
でもいしよしは熱く萌えるので、応援してくださいね!
>ROM読者さま
>甘さも秀逸なら痛さも強烈!
あはは。それはそれは(wゞ
今回のお話はかなり暗くそして痛いので、
このお話が終わったら、めっちゃ甘いのをかいてみようかなと。
約束はできませんが(w
>俄かいしよしファンさま
>ぁあ〜微妙なすれ違いですね・・・梨華ちゃんがまだいたら!と悶えていますw
母を訪ねて三○里よりはマシかと(笑)
これからもがんがりますので、どうぞよろしくです♪
それでは、今回は、読者のみなさまのお心を補完して
いただきたく、話を展開してみました。
・・・・収集つくんだろうか?(w
それでは、続き、どうぞ!
- 449 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時22分44秒
「すみません。遅くなりました。」
防音ドアの重い扉を開けると、つんくさんが楽譜を見ながら
ミキシングしている姿があった。
「おぉ。吉澤か。疲れてるとこ悪いな。」
バサリと譜面を置くと、つんくさんはかけていたサングラスを
少しあげて、席を立った。
「あの・・・。今日は一体・・・」
「まぁ、とにかく座り。話はそれからや。ちょっと悪いけど、
自分ら席空けてくれへんかな。」
他のスタッフは、その声に全員スタジオを後にした。
そしてあたしとつんくさんは、缶コーヒーが並べられている小さなテーブルの
簡易イスに腰掛けた。
「それで・・・。」
「そんなせかすなや。取り敢えず吉澤もコーヒーでも飲むか?」
「・・・いいです。話があるなら、それを先に。」
「はは。相変わらずやな、吉澤は。」
つんくさんは苦笑すると、サングラス越しにあたしを見ていた。
「遠まわしな言い方は嫌いやろうから、単刀直入に言うけどな。
プッチモニ、そろそろ活動再開させようとおもてるんや。」
「プッチを・・・・ですか?」
「そうや。それでやな・・・。吉澤にはプッチから外れてもらうことに決めた。」
- 450 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時23分42秒
あたしの中にあった、最後の自尊心が音を立てて崩れていった。
プッチを辞めろ・・・だと・・・?
フラッシュバックしていく思い。
このプッチモニはあたしにとってかけがえのない、大切なもう一つのユニットだった。
市井さん、ごっちん、圭ちゃんの3人で結成されたこのグループ。
しかし、市井さんの卒業で、穴が開いたこのユニットに当時はまだ新人だった
あたしが、大抜擢されたグループだった。
先に抜けた市井さんが託した思い。ごっちんや圭ちゃんが
とても愛したこのユニットに、あたしはただがむしゃらに
早く一員として認められることを願って、頑張ってきた。
そこに刻まれている数々の思い出。
ごっちんと2人ふざけあって、圭ちゃんを本気で怒らせてしまったこと。
初めてクローズアップされるカメラに、緊張したこと。
うまく声が出せなくて、落ち込んだ日々。
励ましてくれた圭ちゃんの優しさ。
コンサートでのみんなの熱い声援。
ごっちんが流した涙。
全てがキラキラとした、あたしたち3人だけの輝かしい思い出。
しかし、ごっちんの卒業、そして相次ぐ圭ちゃんの卒業で、
結局残されたあたしがリーダーとなったけど、モーニングの辻と小川の3人で
再結成されてから、新曲の披露もすることなく、凍結状態だったこの
グループを、動き出す前に辞めなきゃいけないことになるなんて。
そんなこと・・・・・・・。
あたしが今まで大切に引き継いできた、その想いまでが、
簡単に吹き飛ばされていく。
- 451 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時25分04秒
「・・・・どうして・・・・・。どうしてなんですか・・・・・・・・・・。」
「それは自分が一番よくわかってるはずやろ。」
「あたし・・・が・・・・?」
「オレはあの時吉澤にゆうたはずや。新人のお前にこのチャンスを
与えるのは、お前の中にあるギラギラした炎をもっと引き出してみたいからやって。
保田が辞めてから、新プッチになって、気負いがあるのはわかってた。
だからしばらく様子を見てたんや。せやけどいつまでたってもお前は
なんのキラメキもオレに見せてくれへんかった。
それだけやない。ここ半年くらいのお前は、モーニングでもパッと咲こうという
姿勢がみられへんかった。オレがわからんかったとでも思うんか?」
「・・・・・・・・っ・・・・・・・・・。」
「オレは平等にチャンスを与えたいとおもてる。それに今までもそうしてきたつもりや。
だから今の吉澤には、もうプッチを任せることはできへんのや。
もっともっと上に登り詰めたいっておもてる新人が、ようさんいてるからな。
オレはそんなヤツにチャンスを与えてやりたい。それがオレの考え方や。」
決して手を抜いていた訳ではないけれど、何もかも見抜かれていたのかもしれない。
あたしの中にある、不安定な思いが、あたし自身の輝きすら
消してしまっていたことを。
チャンスは平等に与える。
それは本当にそうだった。でなければ、新人のあたしが
あの時大抜擢されることもまた、なかったのだろうから。
しかし、そうはわかっていても―――
- 452 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時26分14秒
大切にしていた宝物は、もうあたしの手の中にはない。
何もかも、あたしの手から滑り落ちて、もう2度と返ってくることはないのだ。
それはプッチモニだけではなく。
あたしの中で、全ての思いが今、はっきりと示された。
もうここに留まる価値はないのだと。
もうこれ以上何も考える必要はないのだと。
もうこれ以上・・・・何も失うものなどないのだと。
「・・・・わかりました。」
「そうか。」
「あたし、プッチを辞めます。そして・・・モーニングも。」
膝の上に組んでいたつんくさんの手が、堅く握り締められたまま、
彼は頭をうなだれた。
そして、大きなため息とともに、その顔があげられた。
「本気でゆうてるんやな。」
「そうです。今までずっと考えていました。それを言葉にしたまでのことです。」
「・・・・・・・・いつかは誰もが卒業する。吉澤が決めたんならオレは止めへんで。
ただ、ハロプロに残っても、今のお前やったら・・・」
「ハロプロには残りませんよ。あたしはこの世界から、きっぱり引退します。」
サングラスの奥に鋭く光った眼差しは、彼特有のものを秘めてあたしに向けられている。
「もう2度と戻ってこられへんのは承知やろうな。」
「言われなくても。」
「それなら今度のコンサートは、吉澤の最後の仕事になる訳やな。」
「そういうことになります。」
「・・・・・・・・・よし。わかった。最後の花火きれいに咲かせてみせろ。」
- 453 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時27分33秒
あたしは席を立った。
もう何も話すことなどないから。
けれど、扉を開けたあたしは、最後に振り返ってこう言い放った。
「あたしたちはあなたのオモチャじゃない。みんなモーニングを愛してるんだ。
大人の都合で切り売りされるなんて、冗談じゃない。
いい加減、そのことに気付きなよ。」
つんくさんは何も言おうとはしなかった。
ただ、唇の端に浮かべた、自嘲的ともとれる微かなゆがみが、
あたしの目にはっきりと残っていた。
スタジオを出ると、その足で、あたしは事務所に行った。
つんくさんと話したことを、そのまま伝えるために。
事務所の社長は、それでもあたしを引きとめたけど、
あたしの決意は固かった。
おそらくまだ商品価値があると思っているのだろうけど、
あたしはこれ以上、自分の意思に反してまでここに留まるつもりはなかったから。
きっぱりと引退の意思を告げると、ごっちんのマンションへとタクシーを走らせた。
きっとごっちんならあたしの気持ちをわかってくれるはず。
一緒に泣いて、一緒に笑ってきたかけがえのない親友だから。
けれど、不意にあたしの心の中に、あの言葉が浮かんできた。
《《《ズルイよ。ごっちんには話して、私には話してくれないなんて・・・・。
そんな寂しいことしないでよ・・・。》》》
もう全て終わったことなのだ。
なのに、梨華ちゃんが言った言葉はあたしを縛り付けて苦しめていた。
失って初めて気がつくこともある。
しかし、あたしと彼女の関係は、もう元には戻せないこともわかっていた。
だけど・・・・・・・・
- 454 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時29分20秒
「すみません。このまま真っ直ぐ行って、246まで出てください。」
「行き先変更ですか?」
「はい。お願いします。」
「わかりました。」
そのままごっちんのマンションを通り過ぎると、タクシーは夜の道をひた走った。
「・・・・・・・ふぅ・・・・・・・。疲れたな・・・・・・・・」
Dバックを抱えておりた場所は、あたしのマンション。
結局あの言葉が心を刺して、ごっちんのところへは行けなかった。
けれど、梨華ちゃんに会いにいくこともまた、はばかられたから、
そのまま自分のマンションへと戻ってきたのだ。
今日は色々なことがあった。
梨華ちゃんとの別れ。そして、モーニングとの決別。
確実にあたしは人生の分岐点に立っていた。
それはあたし自身が望んでいたこと。
誰のせいにするつもりもなければ、誰も恨むことなどない。
あたしはあたしの道を進んでみたかった。
まだ何を目指してこれから生きていけばいいのかなんてことはわからないけど、
このままでいるよりはずっとマシな気がする。
ライトアップされた植え込みのゲートを抜けると、自動ドアが開かれた。
そこであたしが見たものは―――
「・・・・・梨華ちゃん!」
観葉植物が並んでいる一番端の影に、うずくまっていた彼女の姿が
目に飛び込んできた。
「よっすぃー・・・・・・・・」
「何やってんだよ!こんなとこで!」
「・・・・・・・・・待ってたの。よっすぃーを・・・・」
- 455 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時30分33秒
- 「なんてこと・・・・。誰がくるかわからないのに。なんでそんな危ないことするんだよ・・・・」
「だって、いつ帰ってくるかわかんないんだもん。ここで待ってるより他にないじゃない。」
「・・・・・・・・・とにかく。ここにいても仕方ないから。」
あたしは彼女の手を取って、立たせたけれど。
「ごめんね・・・。これじゃまるでストーカーよね・・・・・。
好きじゃないって言われたのに。それでも私・・・・・・・・・。」
ダウンジャケットのポケットに、繋いだままの手を差し込んだ。
「こんなに冷たくなるまで・・・・・・・ホント・・・梨華ちゃんは・・・・。」
おりてくるエレベーターの数字を見上げながら、
あたしはぎゅっとその手を握り締めた。
「・・・ごめんね・・・・・・・。よっすぃーの手まで冷たくなっちゃうね・・・・・・」
「バカ。そんなこと言うなよ。」
「・・・・・・・・え・・・・」
「ほら、乗るよ。」
視線を合わさずに、エレベーターに乗り込むと、10階のボタンを押した。
「あったかい。」
入れたてのホットコーヒーのマグカップを握り締めて、
梨華ちゃんはそうつぶやいた。
「何も寒い中待ってなくてもよかったのに。携帯に連絡してくれたらいいものを。」
それは責めているのではなく、梨華ちゃんの無謀な行動が、
あたしを不安にさせたから。
何もなかったとはいえ、本当に誰が来てもおかしくない場所で待っていた
彼女のことが、今更だけどとても心配になっていたのだ。
そうさせてしまった自分が情けなく思えてくる。
ただ、嬉しい気持ちもそこにはあったけれど。
- 456 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時31分23秒
- 「だって・・・・よっすぃー出てくれないような気がしたから。」
「・・・・・・・・・・・。」
「迷惑だよね、こんなことして・・・・。それはわかってるんだけど・・・。」
マグカップをテーブルに置くと、彼女はうつむいてため息をついた。
かけているソファーにはちょうど2人分の距離がある。
それが今現実に示されている、彼女とあたしの距離だった。
しかし、もうこれ以上近づいてはならない。
それは、モーニングを、そしてこの業界を辞めると決意したあたしが、
最低限守らなければならない距離のような気がしていたから。
だけど。
梨華ちゃんはおもむろに立ち上がると、あたしの隣に座って、
そっと手を握り締めてきた。
「よっすぃー・・・・」
「・・・・・・・。」
「何があなたを苦しめてるの?一体今日何があったって言うの?
お願いだから教えてよ・・・・・。」
「梨華ちゃん・・・・」
「好きでいてくれなくてもかまわない。ごっちんが一番でもいいの。
私はよっすぃーのことが好きだから・・・・・。
好きな人の苦しんでいる姿を黙ってみている訳にはいかないの。
何もしてあげられないことが苦しいのよ・・・・・・・・。」
- 457 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時32分28秒
何も言わず、ただ抱きしめたいと思った。
愛しくて、切なくて、泣きたくなるほどの胸の高ぶりが、
あたしの心を溺れさせていく。
だけどここでもし抱きしめたとして、その後に梨華ちゃんが負うであろう傷を、
どうやって償えばいいのだろう。
あたしは梨華ちゃんの前から姿を消していく存在。
それはもう決まってしまったことなのだ。
なのに、今あたしは確実に彼女に触れたいと心から願っていた。
抱きしめて、キスをして、本当は今でも一番好きだと伝えたいと。
心の中の葛藤が、頭を混乱させていく。
そして―――
あたしはやはり梨華ちゃんを抱きしめてしまった。
結局自分自身をだますことなどできなかったのだ。
その先に何が待ち受けていたとしても、あたしはやっぱり梨華ちゃんが好きだから。
「ごめん・・・・。ごめんね・・・・。」
「・・・・・・・・・よっすぃー・・・・・・・」
「こんなにも切なくなるなんて。こんなにも抱きしめたくなるなんて・・・・・。」
「・・・・・・・え・・・・・・・・・・」
「やっぱり自分の気持ちにウソはつけなかった。
あたし・・・・・・・・・・・梨華ちゃんが好きだよ。昔も、今もずっとずっと、
梨華ちゃんだけが好きなんだ・・・。」
「・・・・・・っ・・・・・・」
- 458 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時33分24秒
- 「全てを話せば梨華ちゃんを傷つけてしまうことになるかもしれない。
それがどうしようもなく怖かったんだ・・・・。
だけど、あたしはやっぱり梨華ちゃんが好き。もうウソなんてつけないよ・・・。」
「傷ついたっていいよ。何も話してくれない方が、ずっとずっと悲しいことだから・・・。」
「梨華ちゃん・・・・・・・・」
「私を信じて。何もかも受け止める覚悟はあるから。
よっすぃーの苦しみを、少しでも私に分けてよ。」
「・・・・・・・梨華・・ちゃん・・・・・・・・・」
抱きしめた体に伝わってくる温かさ。
その温もりを逃さないように、あたしはありったけの思いを込めて、
唇を重ねた。
このままずっとこうしていたい。
彼女の柔らかい唇の感触と、流れ込んでくる温かな想いが、
あたしの心を痺れさせた。
どうして彼女はこんなにもあたしのことを想ってくれるのだろう。
誰だって傷つきたくはないはずなのに、あたしが振り切るように
言い残した残酷なセリフを、それでも全て受け止めて
ここに来てくれた彼女。
何がここまで彼女を強くさせるのだろう。
ほとんど歳も変わらないはずなのに、梨華ちゃんはとても大人で、
しっかりしていて。
包み込んでくれる柔らかなぬくもりは、一体どこから生まれてくるのか。
そんなことを考えながら、あたしは唇を離した。
- 459 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時34分21秒
「強い人なんだね、梨華ちゃんて。」
「・・・・え?私が・・・?」
「うん。出会った頃は、とても頼りなげに見えたけど。」
「私は・・・強くなんてないよ。」
「そんなことないさ。それに比べてあたしは・・・」
「ねぇ、よっすぃー。」
「・・・なに?」
「もしよっすぃーが、私のことを強い人間だと思っているのなら、
それはきっとよっすぃーのおかげかもしれない。」
「・・・どういうこと?」
「オーディションで初めて会った日のこと、覚えてる?」
「あぁ。覚えてるよ。」
「ふふっ。私も。あの日よっすぃーは、青のタンクトップを着ていたのよね。」
「そんなことまで。よく覚えてたね。」
「あの日、あの会場でよっすぃーを見た時、この子はきっと合格するって思ったのよ。」
「えっ・・・。そんなこと思ってくれてたの?」
「うん。今だから言えることだけど。よっすぃーはあの中でズバ抜けてキレイだったし。
大きくてキレイな瞳が印象的で。だから私も頑張ったのよ。
この子と一緒にモーニング娘。に入って、頑張っていけたらいいなぁって。」
「そうだったんだ。実はあたしも思ってたよ。きっと梨華ちゃんは合格するだろうって。」
「ウソ。」
「ホントだって。すごくさ、おとなしそうで、頼りなげに見えたけど、
瞳の奥にある誰にも負けない光みたいなのが、見えてさ。」
- 460 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時35分55秒
- 「それを言うならよっすぃーだって。他の子を寄せ付けない輝きを持ってたよ。
私もこんな風に、人を惹きつけられる人間になってみたいって、思ったもん。
内気で弱い自分を変えたくて、オーディションを受けて。
そして、そこでよっすぃーと出会うことができて・・・。
もしあの時よっすぃーと出会うことがなかったら、今の私はないって思ってる。」
梨華ちゃんは、優しい微笑を浮かべてあたしの髪をなでてくれた。
「それは買いかぶりすぎだよ。」
「そんなことないよ。私が強くなれたかもしれないのも、
よっすぃーがいてくれたから。私、ずっとよっすぃーに憧れてたの。
初めて会った時から。・・・・・・・あの日、私はあなたにひとめぼれしたの。
ずっと、よっすぃーのことを見てた。モーニングに入ってからも、ずっと。」
「あたしも梨華ちゃんのことが気になってた。
それは、お互い言葉にしなくても分かり合ってたことだよね?」
恥ずかしげに頷いた彼女。
今更ながら、2人が歩いてきた道が、どれほどの深さで繋がりあって
いたのかが、わかった気がした。
運命というものが本当にあるとするなら、それはきっとあたしたちにこそふさわしい。
この広い世界の中でめぐり合った2人。
時を同じくしてめぐり合うことのできた、この奇跡は、
絶対に偶然なんかではないと思えるから。
かけがえのないものを手に入れることができた喜び、
あたしはもうそれだけで満足できた。
こんなにも誰かを好きになることができることは、
人生において、そう何度も巡ってくるものではないとわかっているから。
- 461 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時36分43秒
- もしかしたら、これがあたしにとって、最初で最後の恋になるかもしれない。
優しい眼差しを向けてくれる梨華ちゃんの瞳を見つめながら、
運命の人に告げるべき言葉を切り出した。
「これから話すことは、きっと梨華ちゃんの心を傷つけてしまうことになると思う。
それでも聞いてくれる?」
梨華ちゃんは静かに一度だけ頷いた。
「あたしね・・・・。今日つんくさんに呼び出されて、プッチモニを下ろされたんだよ。」
「え・・・・っ・・・・・・・・そんな・・・・・・・。」
「今のお前じゃプッチを任せることはできないって。
まぁ、あたしも自分自身迷いがあったことも確かで・・・・・。
でもね、プッチはあたしにとってかけがえのないものだったんだ。
それを失ってしまって、色んな思いが巡ってきたよ。」
「・・・よっすぃー・・・・。」
「あたしはね、このモーニング娘。が大好きだったんだ。
みんなに元気を与えることができる、数少ないアイドルグループだって。
だからメンバーのこともとても大切に思っていて。
特にごっちんなんか、それこそ昔からの親友みたく仲良くしてるし。」
- 462 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時37分35秒
- 「そうだね・・・・。」
「あっ、誤解しないでね。ごっちんにはその・・・そんな気ないから。」
「うん。わかってる。大丈夫だよ。」
「それでね。今まであたしが色々悩んでた思いが、もう限界を超えたんだ。
ここにはもういるべきではないのかもしれない。
あたしはあたしだけにしか進めない道を歩いてみたいって。
つまり―――もうここで終わりにしようって思ったんだ。
モーニングも・・・この業界からも身を引くことに決めたんだ。」
梨華ちゃんは、瞳を伏せたまましばらく黙っていたけれど、
やがてぽつりと言葉をもらした。
「やっぱり・・・・・。いつかこんな日がくるかもしれないって・・・思ってた・・・。」
「梨華ちゃん・・・」
「よっすぃーのことずっと見てたから・・・。何も話してくれないのは、
もしかしたらって・・・。随分悩んでるのも知ってたし、もしよっすぃーが
その答えを出す時がきたら、ちゃんと背中を押してあげようって、思ってた。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・そう覚悟してた・・・はず・・・なのに・・・・。やっぱりショックが大きいよ・・・・。
引き止めたりしちゃ、ダメなんだよね・・・。よっすぃーが自分で決めたことに、
私が口を出したりしちゃ、せっかくの決意が揺らいじゃうよね・・・・。
わかってる。わかってるんだけど・・・・。でもやっぱり、私・・・・・」
潤んでいく瞳をもう見ていることができなくて、あたしは梨華ちゃんを抱きしめた。
- 463 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時39分08秒
- 「・・・・・・・ごめん・・・・」
「・・・・っ・・・・。それでも、私は言いたいの。
・・・・よっすぃー・・・・辞めないで・・・・。私を置いていかないでよ・・・。」
震える声が、肩に響き渡っていく。
梨華ちゃんの悲しみが、体を伝って心にまでしみこんできた。
だからあたしは、その肩をしっかりとつかんで、勇気をもって彼女をみつめた。
「梨華ちゃんはきっと引き止めてくれると思ってたよ。
だから何も話せなかった訳で・・・。一番好きな人の悲しむ顔はみたくなかったから。
だけどね、やっぱり今のままじゃ、あたしはあたしでなくなる気がするんだ。
今のあたしは何ももってはいないから。自分に誇れるものなんて何もない。
それを見つけたいんだ。自分の意思で自分にしか進めない道を見つけたい。」
「・・・・かっこよすぎるよ・・・よっすぃーは・・・。
そんなあなたがとても好きだけど、でもやっぱりこうなる前に、一言でも
相談して欲しかったよ・・・。私じゃ力になってあげることなんてできなかったかも
しれない。だけど・・・・すごく寂しくて・・・切なくて・・・・。
ごめんね・・・・。よっすぃーのこと、守ってあげられなくて・・・。」
「梨華ちゃん・・・・。ありがとね。そこまで想ってくれてたなんて・・・。
あたしは梨華ちゃんの何を見ていたんだろう・・・。」
頬に手を添えて、その潤んだ瞳の奥を見つめた。
「・・・よっすぃー・・・。」
「なに?」
- 464 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時40分21秒
- 「私ね、よっすぃーのことが本当に好きなの。
だからあなたの邪魔になることだけはしたくない、あなたの負担に
なるようなことはしたくないって、思ってたんだけど・・・。」
「・・・・うん。」
「だけど、ここで今言わなきゃ絶対後悔する気がするから。
・・・・・私、よっすぃーとちゃんと付き合いたい。
あなたの本当の恋人にして欲しいの・・・・。」
「・・・でも、あたしは・・・もう、モーニングを・・・・」
「モーニング辞めたら、それこそ会う時間なんてなくなっていくじゃない。
だからちゃんと付き合いたいの。よっすぃーとちゃんと・・・。」
「あたしはただの吉澤ひとみに戻るんだよ?わかってる?」
「私が最初に一目惚れした時も、あなたはまだ何ももっていない、
ただの中学生だったのよ?モーニングを辞めるからって、
よっすぃーのこと、嫌いになれる理由なんてないじゃない。」
苦笑いを浮かべた彼女の眼差しが、それでもとても優しく光っていたから。
「・・・バカだなぁ、梨華ちゃんは。」
優しく抱きしめて、その柔らかな体を包み込んだ。
「ふふふ。よっすぃーのためだったら、バカにだってなれるよ。
なんだってする。だって、誰にも取られたくないんだもん。」
「あたしね、引退するってこと伝えたら、梨華ちゃんが離れていくようで
怖かったんだ。それなら何も始めない方がお互いのためだって・・・。
だけどそれは間違いだったんだね・・・。」
「まさかこれほど好きでいるって思ってなかった?」
「・・・・うん。」
梨華ちゃんはクスクスと笑って肩を揺らせた。
- 465 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時41分32秒
- 「ねぇ、今はどう?ちゃんと伝わってる?」
「あぁ。充分過ぎるほど。」
「よっすぃーは、私のこと好きでいてくれてるの?」
「クス。もちろん。今更聞くまでもないでしょ?」
「・・・・よかった。それを聞いて安心したわ。」
「え?」
「だって本当はすごく傷ついたんだもん。ごっちんのことが一番だって聞かされて。」
「・・・それを言わないでよ。本心じゃなかったんだからさ。」
「うん。わかってた。だけど・・・・。ねぇ、もう一度、よっすぃーの
本当の気持ち、言葉にしてよ。」
抱きしめていた体を離すと、彼女はとても真っ直ぐな瞳であたしを見ていた。
「梨華ちゃんが好きだよ。世界中の誰より、一番君が好き。」
「よっすぃー・・・」
「これが本当の気持ち。梨華ちゃんが好き。」
「私と、付き合ってくれる?」
「もちろん。こんなあたしでよければ。」
唇をぎゅっと強く結んだ表情が、今にも泣き出しそうになっている。
そして彼女は、まるで飛びつくような勢いで、あたしのことを抱きしめた。
「よっすぃー・・・・・好き。大好き。」
「泣くなよ、梨華ちゃん。」
「だって・・・・嬉しいんだもん・・・」
「約束なんて何もできない。これからどうなっていくのかわかんないけど、
この気持ちだけは、絶対ウソじゃないから。」
「・・・うん。」
「愛してる。それだけは忘れないでね。」
「・・・・・・・よっすぃー・・・・」
あたしたちは抱きしめあったまま、互いの想いを重ねた。
この気持ちだけは、いつまでも変わることはないと、
数え切れないくらいのキスを、その唇に重ねながら。
- 466 名前:修行僧2003 投稿日:2003年07月27日(日)21時45分56秒
- >作者
・・・はい。以上です!(w
どうでしょう?みなさまのお心、少しは補完されましたか?(笑)
作者自身は、まぁ、これで少しは痛も半減されたかなぁと、
思っているんですが(w
・・・・みなさん、忘れてませんよね?
これ、よっすぃーの回想です(笑)
かなーり長くなってるんで、それを忘れている方が
いらっしゃるのではと気になって>汗
よっすぃーは今N.Y.にいます(笑)
ってことは、2人の関係は・・・?(w
そのへんは、またこれから詰めていきます(爆)
ということで、今日はこのあたりで。
いつも読んでくださって、感謝しております。
それでは、また次回まで。お楽しみにー♪
- 467 名前:シフォン 投稿日:2003年07月27日(日)21時59分47秒
- 涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃれす(号泣)
<<・・・・みなさん、忘れてませんよね?
あ゛…微妙に忘れてた(滝汗)
だって、今のこの展開に引き込まれちゃってるんですもの(苦笑)
今の二人の関係はどぉなってるんだろ…。
うぅ、気になって眠れないぞぉ!(笑)…ってのは冗談で(苦笑)
次回の更新も楽しみに待っております♪
- 468 名前:なな素 投稿日:2003年07月28日(月)00時14分54秒
- あ〜良かった。補完されましたw
ずっと自宅の前で待ってた梨華ちゃん可愛すぎ
ちゃんと本当のことを打ち明けたよっすぃーカッコ良すぎです。
けど、今日はなっちの卒業が発表されてややブルー。
なっちが卒業するのも寂しいですが、なんか他人事と思えなくて・・・
よっすぃー、ホントに小説と同じ心境かもなんて思ったり。
あ、ちょっと暗いですね(苦笑
- 469 名前:ROM読者 投稿日:2003年07月28日(月)00時29分52秒
- 453のあたりで、みんなが言いたいことを代弁してくれたような。
ちょっと胸がすぅーっとしました。
- 470 名前:俄かいしよしファン 投稿日:2003年07月28日(月)02時19分51秒
- 更新御疲れ様です。そうですよね・・・よっすぃはこれから
NYへ行くんですよね。展開が非常に気になります・・・ってこればっか言ってるw
そろそろ7月も終わりですねぇ。更新楽しみにしています☆
- 471 名前:名無し読者79 投稿日:2003年07月28日(月)19時10分32秒
- 切ないけど、なんかうれしいっす!
二人の思いが伝わって…。なんだか昨日から気分が…(T-T)
実際にこういう風に考えたりしてる子は、いると思うんです、実際!!
でも、がむしゃらにがんばっちゃうんですよね、きっと…。
次回楽しみにしてます。どんな風によっすぃーが羽ばたいていくのか!
そして、梨華ちゃんとは…。なっち卒業は、悲しすぎるんだべ、なんでだべか――?
- 472 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月27日(水)20時24分02秒
- 保全
- 473 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/13(土) 13:45
- 待っとります
- 474 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/05(日) 04:39
- いつまでも待ち続けます
- 475 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:28
- 大変長らくお待たせいたしました(汗)
ずっと待っていてくれたあなた。
たまたま目にしてここを訪れてくれたあなた。
どんな方がここをみてくれているのかはわかりませんが、
作者はなんとか帰ってこれましたので、続きを書きたいと思います。
本当にずっと心待ちにしていてくれた読者の方には
ご迷惑をおかけいたしましたが、どうぞよければまた
読んでやっていただけると嬉しいです。
それでは、本当に久しぶりになしました投稿、お楽しみください。
- 476 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:30
-
次の日の朝、あたしはけたたましく鳴る携帯の音で目をさませた。
「・・・んだよ・・・こんな時間に・・・・」
腕に抱いている梨華ちゃんもどうやらそれで目が覚めたようだった。
「・・・ん・・・・。おはよ・・・。」
「おはよ。ごめんね、ちょっと携帯出るね。」
気恥ずかしげに頷いた梨華ちゃんに微笑むと、初めて迎えた朝の余韻に浸る間もなく、
携帯のボタンを押した。
「・・・はい。」
「よっすぃーどういうことなの!」
テンションの高いその声は、あいぼんのものだった。
「あ。おはよ。どうしたのこんな朝早くから・・・。」
それでもまだぼーっとなっているあたしは、あくびをかみ殺しながら
携帯を握り締めていたけれど。
「どうしたも何も!よっすぃー、モーニング辞めるって本当なの!」
緩んでいた顔から血の気が引いていくのがわかった。
「・・・・・・・・え・・・・なに・・・・。」
「テレビの芸能ニュースでよっすぃー卒業って、どのチャンネル変えても
やってるんだけど、ウソだよね?」
ベッドを飛び起きてテレビをつけると、スポーツ新聞の一面として、
各紙大々的にそれが取り上げられている。
- 477 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:32
- 「あ・・・・。」
「ねぇ、ウソだよね?そんなことないよね?」
あいぼんの泣きそうな声が、耳に響いてきたけれど、
あたしの頭の中は真っ白で、どう答えていいかわからなくなっていた。
まさか昨日の今日で、こんな報道がされるなんて・・・。
「答えてよ・・・。よっすぃー・・・・。」
「・・・・ちょっと待って・・・」
落ち着こうとすればするほど、頭の中は混乱していき、
あたしはただ、画面に映る自分の写真を凝視することしかできないでいた。
隣では、梨華ちゃんがパジャマのすそをつかんで、心配そうに
こちらを見ている視線を感じる。
テレビでは、今度のツアーがあたしの卒業コンサートになることを
伝えたところで、話題が切り替わった。
それは明らかに作為的なものだった。
話題作り以外の何物でもないこの報道は、あの事務所が仕掛けたことは
明白だから。
しかし、まさかメンバーに公表する前に、こんなことになるなんて・・・。
怒りよりも失望、ただその思いだけが胸を締め付けていった。
これではメンバーをないがしろにするのもいいところではないか。
圭織さんを始めとするメンバーの顔が、頭の中に浮かんでは消えていった。
- 478 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:35
-
「・・・よっすぃー・・・・」
「・・・・ごめん。ちょっと混乱しちゃって・・・」
「ウソだよね?ガセネタだよね?」
「・・・・・いや。ウソじゃないよ・・・・。」
ここで真実を伝えることが正解だったかはわからなかったけど、
もうここまでくればこのまま否定することもできない気がして、その言葉を伝えた。
「どうして・・・・。なんで・・・・言ってくれなかったのよ・・・。」
涙声になっているあいぼんは、搾り出すような声でそうつぶやいた。
「まさかこんな形で発表になるなんて思ってなかったから・・・・。ごめん。」
「そんな・・・。ひどいよ・・・・。」
「辞めるって言ったのは昨日のことなんだ。だからあたしも
こんなことになるなんて思ってもみなかったから・・・。だけどね・・・」
「わたしたちは仲間じゃなかったの!」
「あいぼん・・・」
「裏切られた気分だよ・・・。ひどいよ、よっすぃー・・・」
「・・・ごめん。今はそれしか言えない。」
プツリと切れた携帯からは、信号の音しか聞こえなくなっていた。
「よっすぃー・・・」
ずっと心配してくれていた梨華ちゃんが、力なく落としたあたしの腕から
携帯を取ると、電源を落として立ち上がった。
「私のも電源切っておくね。」
カバンの中の携帯は、着信の知らせを告げるランプがついていたけれど、
彼女はかけなおすことなく電源を落とした。
- 479 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:40
-
「こんなことになるなんて・・・」
今までの経験上、こと卒業に関しては、こんな風にフライングで
報道されることはなかったのだ。
それは、必ずメンバーが全員そろった時点で、マスコミより先に
公表されるのが通例だったから。
だからあたしはそれが今日、あるいは折を見て、つんくさんの口から全員に伝えられる
ものだとばかり思っていた。
しかし現実は・・・・
思い当たる節はいくつか考えられた。
今回のコンサートは、今までになく、全国12箇所を巡る長期ツアーで、
2Daysのところがほとんどだったけれど、その会場の大きさに比べて
チケットがSold Outになっていない会場がいくつかみられたのだ。
起爆剤であるはずの6期加入にも関わらず、ここにきて感じるモーニングの停滞感。
そして新たに始動するプッチモニの売り込み戦術。
全てをつなげれば、あたしの卒業は、格好のエサとして
フロント側に提供されたものだったのだ。
『卒業』というものをチケット興行に反映させる。
それは極資本主義的な経営ノウハウであることはいうまでもないこと
なのだが、そこで売り買いされている只中にあるのは、紛れもなく
あたしたちモーニング娘。という商品なのだ。そこに個人的な感情や
人間としての価値などはみいだしてはくれない。
だからこんな突発的で軽薄な仕掛けも平気でできてしまうのだ。
「・・・大丈夫?よっすぃー・・・・。顔が真っ青よ・・・」
心配げに覗き込んでくれた梨華ちゃんの目が、悲しげに映っている。
「あぁ・・・。大丈夫・・・。」
「どうするの。これから・・・。どうしたらいいの・・・。」
「わかんない・・・。どうしたらいいんだろう・・・。こんなことってあるかよ・・・・。」
ぎゅっと握り締めた拳を包み込むと、梨華ちゃんはあたしの肩に頭をもたげた。
- 480 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:42
-
「どんなことがあっても、私だけはよっすぃーの味方でいるから・・・。
よっすぃーのことを守ってあげるから・・・。」
「梨華ちゃん・・・。」
「一緒にいるから。どんな時も。」
そこに見せてくれた彼女の瞳は、いつになく強い光を伴ってあたしを見上げていた。
重苦しい空気。
そこにいる誰もがピリピリとした空気を漂わせているのがわかる。
番組の収録を前に、この部屋に集められたメンバー。
あいぼんもののも目を腫らしてぐっとあふれてくる涙を押さえつけるように、
互いの手を固く握りあっている。
圭織さんも安倍さんも、他のメンバーも、瞳を伏せたまま、ただ沈黙が続いていた。
みんなの顔に浮かぶもの。それは・・・・
ここに集められた理由を本当はもう誰もが知っているはずなのだ。
だけどそれは誰も口にはしない。
直接あたしに聞いてくることはなかったけれど、いや、だからこそ、
この重い沈黙がより直接的に、あたしの心に響いてきていた。
- 481 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:43
-
「おはようさん。」
緊張の糸がまさに切れようとするギリギリのところで、つんくさんはその顔をのぞかせた。
「おはようございます。」
声をそろえて挨拶をするメンバー。
ガタンとイスを引いてつんくさんが座ると、あたりにはまた新たな緊張感が流れた。
「朝はよから集まってもらって悪いな。まぁ、今日は色々話さなあかんことがある。
そのために集まってもらった訳やけども・・・」
あたしに向けたつんくさんの視線を追って、そこにいるメンバーの誰もが、
あたしに視線を向けた。
「みんなももうフライングで知ってるとは思うけど、ここで発表することがある。
吉澤が今回のツアーを最後に、卒業することとなった。」
シーンと静まり返った室内。
そして、いくつかの苦しげな息遣いがそこにもれていく。
「吉澤。みんなに言うこともあるやろ。ここでちゃ・・・・」
- 482 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:44
-
「待ってください!」
話を止めたのは梨華ちゃんだった。
「お?なんや、石川。」
「みんなも思ってることだと思うんですが、どうしてメンバーより先に
マスコミに情報が流れたんですか。そんなのって・・・・」
テーブルの上においた手がギュッと固く握り締められている。
そしてメンバーもみな、つんくさんの動向を固唾を呑んで見守っていた。
「そやな。それは疑問におもうところやろな。せやけどその前に、
オレの方からも質問がある。・・・・飯田。」
「はい。」
「飯田はリーダーとして、今のモーニングをどう思う?」
「今の・・・ですか?」
「あぁ。例えば、中澤がリーダーを務めていた、オリジナルの時代。
あるいは後藤が加入した当時のモーニング。その頃と比べてどうや?」
「それは・・・・。その頃と今とはメンバーも人数も違っていて、
どの部分で比較していいかなんてわかりません・・・・。」
圭織さんはうつむくと、そっと唇をかみ締めた。
「安倍。」
「・・・はい。」
「お前はどうや?なんでもええ。思ってることゆうてみぃ。」
安倍さんは戸惑いながらも、その漆黒の瞳でぐるりと周りを見渡した。
- 483 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:45
-
「私は・・・。初期から圭織たちとこのモーニングを作り上げてきた自負があります。
だけど、メンバーは変わっても、どんな姿になっても、モーニングを愛しています。
その思いを大切に今のこのメンバーで頑張っていけたらいいと思っています。」
「そうか。今残っているオリジナルメンバーはお前らだけや。
オレはな、ほんまのところ、モーニングがここまで大きなるなんておもてへんかった。
想像以上の大健闘やとおもてる。」
つんくさんは自分の言葉を確かめるように、こくりと一度うなづいた。
「オレはオレなりに・・・お前らの目から見たらどう映ってるんかはわからんけど、
モーニングに思い入れがある。どのアイドルグループよりも輝いてるとおもてるで。
だからや。だからやねん。停滞は許されへんのや。
国民的アイドルとまで呼ばれるようになったお前らのことを応援してくれてる、
ファンの期待を裏切る訳にはいかんねや。」
「そのためによっすぃーを切るってことですか!」
矢口さんがいつになく鋭い口調で、そう言い放った。
「切る?吉澤をか。ある意味その選択をさせるきっかけを作ったんは
オレかもしらんな。どうや吉澤。」
みんなの視線が一気にあたしへと向けられた。
「あたしは・・・・・。この卒業を決めたのはあたし自身の問題です。
だけど・・・・・・」
メンバー一人ずつをゆっくりと見渡しながら、あたしは言葉を続けた。
「あたしは本当にこのモーニング娘。が好きでした。その思いは
加入した時から変わってません。ここにいるメンバーの誰もが・・・・
それだけじゃない。卒業していったメンバーも含めて
あたしにとっては特別な存在で・・・・。だから・・・だか・・ら・・・」
言葉に詰まったあたしの背中を、梨華ちゃんはそっと支えてくれていた。
- 484 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:47
- 「・・・こんな形でフライング報道されたことに、正直・・・不信感を持っています。」
つんくさんは何も言わず、じっとあたしのことを見ている。
「あたしはみんなのことをとても大事に考えていました。
だけどこれじゃ結果的にみんなの信頼を裏切ってしまったことになる・・・。
こんなのって・・・あまりにひどいと思いませんか・・・。」
聞こえない程度のため息をもらすと、彼はこう続けた。
「起爆剤や。」
「・・・・え?」
「オレはな、今のモーニングに満足してへんねん。それはこれからどんな
メンバーが入ったとしても、変わらん思いかもしれん。
オレは変えていきたいんや。自分で作り上げたものをぶち壊す勇気をもっていたい。
プロデューサーとしてのオレの満足度は、まだまだこんなところでは終われへんねや。
それに正直なところ、オレは今のこの状態に不満を持ってる。
進んでいかなあかんのに、もっともっと上を目指さなあかんのに、
上がっていくどころか、下降線を描いてるようにしか思われへん。
せやけどお前の卒業で、ある程度それも回復できるはずやと思うねや。
願ってもないチャンスや。集客率が上がるのは今までのデータからもわかってることやしな。
このチャンスを生かすも殺すもオレの腕次第。
フライングでマスコミに情報流したのもそのうちのひとつやとおもてくれてかまわん。」
サングラスの奥に宿る鈍い光は、彼の中にある狡猾さを映し出している。
ここにいる誰もが、彼によってチャンスを与えられた存在である以上、
それを受け入れなくてはならない。
それが例え、理にかなったものでなくとも。
それが嫌ならやめるしかないのだ。
―――そう。今のこのあたしのように。
- 485 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:55
- 「・・・わかりました・・・。いや、本当はわかっていたんです。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「もう何かをここで求める訳にはいかないと。
だからあたしはもうモーニングにはいられないんです。あたしは
この中でいつもがむしゃらに頑張ってきました。だけど、あたしの中で
何かが変わっていったんです。
モーニングの変容もそれなりに自分の中で消化してきたつもりだったけど、
やっぱりどこか納得できないでいました。
いや、それはただのきっかけに過ぎないのかもしれません。
もうここで終わりにしなければならないと思ったのは、
自分がすごく中途半端な存在に思えてきたからで・・・。
先の見えない何かにおびえてあせりばかりが心を占めてきて。
このままだと自分自身、潰れていくんじゃないかって・・・・。
あたしは、あたしだけにしかできない他の何かをみつけたくて・・・それで・・・・」
「・・・えっ。それって卒業だけじゃなくって、引退するってとこなの!」
あいぼんの悲しみに満ちた声が、あたしの心を突き刺していく。
「・・・・・・・うん。」
「嫌だよそんなの!よっすぃーがいなくなるなんて、そんなの納得できないよ!」
今度はののが叫んだ。
ぽろぽろと零れ落ちる涙にむせいでいるあいぼんの肩をぎゅっとつかみながら。
「のの・・・」
「そんなの寂しすぎるよ・・・。なんで辞めなきゃいけないの?
ののたちのこと嫌いになったの?なんで・・・なんでよっすぃーは・・・」
「それは違うよ、のの。」
すすり泣くののに柔らかな声で、諭すように梨華ちゃんが言葉をもらした。
- 486 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:56
- 「よっすぃーはののたちのこと嫌いになったなんて言ってないでしょ?
ただ自分の道を歩いてみたいと思っただけよ。そうよね?よっすぃー。」
「あぁ・・・・・」
「それでも嫌なの!ねぇ、よっすぃー。辞めるなんて言わないでよ・・・・」
室内の空気があふれ出てくる涙のせいで、暖められていくように感じる。
「先のことなんて何も保障されてないのに、それでもよっすぃーは自分にしか
できないこと、自分にしか進めない道を進もうとしてるのよ?
本当の仲間なら、応援してあげようよ。ね?のの・・・」
「ののは梨華ちゃんみたく大人ぶって理解なんてしてあげられないもん!」
「そうだよ・・・。ひっく・・・。よっすぃー辞めないでよ・・・。」
あいぼんも涙をすすり上げながら言葉をもらした。
「ごめん・・・。のの。あいぼん。それにみんな。
ここであたしが降りるのも、またみんなのためだと思ってる。
中途半端な存在ならここにいる価値はないから。
・・・・・あたしはみんなと出会えたことを誇りに思うよ。」
「やだよ、よっすぃー!辞めたらもう・・・もう・・・」
それ以上の言葉を飲み込んで、あいぼんは唇をかみ締めた。
- 487 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 18:59
- 「私は・・・私は、リーダーとしてよっすぃーの・・・吉澤の力になってあげられたか
どうかはわからない。だけど・・・吉澤が自分で決めたことなら、
応援してあげたいと思う。本当に、ここまでよく頑張ってきたね。
寂しいけど、自分で決めたことなら迷わず進んでほしい。
どうかな、みんな。吉澤のこと、みんな好きでしょ?」
圭織さんの問いかけに、みんな力強くうなずいた。
「なら、応援してあげよ?みんなで最高の卒業コンサートを務めさせて
あげようよ。きっと私たちができることはそれくらいだから。
・・・ううん。やっぱり違うかも。それは私たちじゃなきゃできないことなんだよね。」
「・・・圭織・・・さん・・・・・」
「ほら、のの!あいぼん!・・・なんだよ、矢口まで泣いてるの?
ったくしょうがないね。ほら、みんな、ちゃんと顔あげな?」
ここにいる誰もが、ちゃんと成長しているのがわかる。
先日加入した6期でさえも、徐々にではあるけれど、確実に
プロらしい顔つきへと変わっていっている。
圭織さん、安倍さん、矢口さん。
あいぼんに、のの。高橋、小川、紺野に新垣。
そして・・・誰よりも大切な梨華ちゃん。
あたしはここで多くのものを与えられた気がする。
このモーニングのメンバーでいられたことに、誇りすら感じていた。
- 488 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 19:00
-
「みんな、本当に今までありがとう。最後の最後までしっかり頑張るから。
・・・その日を迎えるまで全速力で走り抜けるから。
だからあと少し、あと少しだけ・・・あたしに力を貸して。お願いします。」
「そんなの当たり前じゃない。みんなよっすぃーの仲間なんだから!
卒業しても・・・・変わらないん・・・だから・・・っく・・・・」
「梨華ちゃん・・・・」
「泣かないの。ね?石川。」
安倍さんが優しげな眼差しを向けて微笑んでいる。
みんなと過ごしてきた大切な時間が頭の中を駆け巡っていく・・・・
あたしが進んできた道は間違っていなかったのだ。
そしてこれから進む道も、きっと。
「吉澤。こうなったらもう進むしかないで。」
「はい。」
「メンバーに恥ずかしくない卒業コンサートを務めてみせろ。」
「もとよりそのつもりです。みんな本当にありがとう。そしてつんくさん。
今までありがとうございました。」
場の空気が落ち着くと、彼は新生プッチモニの始動にあたって、
あたしに代わるメンバーを発表した。
亀井を新たに加えた、ののと小川の3人のユニット。
新しいプッチモニのリスタート。
抜擢された亀井は、戸惑いつつも、
与えられたチャンスに新たな闘志を燃やしているのが伝わってくる。
あの時のあたしもこんな風だったのかもしれない・・・・
「・・・・梨華ちゃん・・・・」
机の下でそっと手を握り締めてきた彼女は、
どこか寂しいと思っていたあたしの気持ちを、ただ一人、
感じ取ってくれていたに違いなかった。
- 489 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/09(木) 19:02
- >作者
はい!以上です(汗)
まぁ、こんな感じですけど、これからもどうぞ応援してやって
ください(w
これからの更新のほうも、マターリといきたいと思いますので、
どうぞお時間があるときにでもチラリと覗いてもらえたら
嬉しいです。
ではまた。
- 490 名前:奈々氏 投稿日:2003/10/09(木) 19:36
- 復活 ありがとうございます。
それだけしか 言葉がありません。
- 491 名前:名無しROM専 投稿日:2003/10/09(木) 21:06
- 修行僧2003さん、おかえりなさい!
お待ちしておりました!ありがとうございます!
- 492 名前:シフォン 投稿日:2003/10/09(木) 22:18
- >作者様
お帰りなさいませ〜♪
作者様の作品がまた読めるのを信じて待っていましたよぉ(T▽T)
少しずつ、作者様のペースで、これからも頑張って下さいね♪
これからも陰ながら応援させていただきます!
- 493 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003/10/09(木) 22:26
- お帰りなさいませ!待ってましたよ〜
更新お疲れ様です。頑張ってください^^
- 494 名前:つみ 投稿日:2003/10/09(木) 22:34
- いい作品にまたであってしまいました
これからもマターリ待ってます!
- 495 名前:なな素 投稿日:2003/10/10(金) 04:09
- 真夜中、眠れなくてふらっと立ち寄ったseek
なんと復活してるではないか!!!
うわ〜〜〜い!!!!(キモ
ともあれ久々更新おつかれ様です。
復活してくれて素直に喜んでる次第でございます。
物語のほうはいしよしだけでなくメンバー全員の絆がリアルに感じられて
イイ感じです。
これからも作者様のペースでマターリ更新しちゃって下さい。
- 496 名前:ROM読者 投稿日:2003/10/10(金) 13:44
- >作者様
お久し振りです。
相変わらず鋭い切り口で。とても現実離れした展開とは思えません。
更新楽しみにしています。
- 497 名前:おき 投稿日:2003/10/11(土) 03:35
- 作者様、初めまして。
ずっと前から読ませていただいてます。
今回復活されて、もう嬉しくて嬉しくて。
感動しています。
これからも楽しみにしていますので
頑張ってください。
- 498 名前:おき 投稿日:2003/10/11(土) 03:59
- 申し訳ございません。
あげてしまいました。
- 499 名前:名無し読者79 投稿日:2003/10/11(土) 20:20
- お帰りなさい&更新お疲れ様です。
待ってました!!修行憎〜さんの作品は、心が温かくなる作品が多くて
嫌なことがあっても、それを忘れてしまうくらい…。
なのでうれしいです。
梨華ちゃんがなんか…これからどうなっちゃうのかな…。
よっすぃーも…。次回期待して待ってます。
- 500 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:37
- >奈々氏さま
励ましのお言葉ありがとうございます(涙)
これからも頑張りますのでよろしくお願いします!
>名無しROM専さま
待っていてくれたんですね!ありがとうございます!
これからもどうぞご期待ください♪
>シフォンさま
いつもごひいきにしてくださってありがとうございます。
これからもゆっくりしたペースですが、更新していきますのでよろしくです^^
>LOVEチャーミーさま
ありがとうございます!!!これからもがんばりますね♪
>つみさま
お初にお目にかかります。よければこれからも応援してくださいね♪
>なな素さま
いつも応援ありがとうございます!
これからもそのお言葉を励みに頑張っていきますね^^
>ROM読者さま
いつも読んでくださってありがとうございます!
またゆっくりではありますが、応援よろしくお願いします。
>おきさま
以前から読んでいてくださったのですね(涙)
ありがとうございます!あげさげは全然関係ありませんので、
お気遣いなく^^どちらでもいいですよ♪
>名無し読者79さま
いつもお褒めくださってありがとうございます。
とても励みになりますので、これからも応援してくださいね!
それでは、少しばかり更新したいと思います。
続き、お楽しみください。
- 501 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:41
- 番組の収録が終わると、スタジオ内の別室で記者会見が開かれた。
あたしの卒業報告と、新プッチのお披露目。
予定調和の会見は滞りなく進められたけど、あたし自身の今後のことに
ついて話が及ぶと、結局何もはっきりした事が言えないままで終わってしまった。
「よすこ!飯でも食べにいくか?」
いつも通りの笑顔で安倍さんは話しかけてきてくれた。
「いや、今日はもうおとなしく帰ります。」
「そっか。んじゃまた今度ね。」
「すみません。」
カバンを肩にかけて出口に向かおうとしたあたしのことを見ている視線。
「なに?どしたの?」
こちらから一歩近づいて、梨華ちゃんに声をかけた。
「あっ・・・。えっと・・・。」
「これからラジオの収録だよね?」
「・・・うん。」
なんとも歯切れの悪い返事。
だけどあたしは梨華ちゃんが何をいわんとしているのかがわかっていたから―――
「仕事終わったらうちくる?」
「・・・いいの?」
「クス。なーに遠慮してんだか。」
ぽんと頭の上に手をおいて、にっこりと微笑んでみた。
「お邪魔にならない?」
「何言ってんだよ。まぁ、来たくなかったらそれでもいいんだけどー」
わざと意地悪っぽく笑って彼女の瞳を覗き込んだ。
「よっすぃーの意地悪っ!」
「あはは。それで?来るの?来ないの?どっち?」
「・・・行くわよー。」
「よし。なかなか素直でよろしい。」
からかわれて頬を染める彼女が、とてもかわいく思える。
だからあたしは心の底から湧き出てくる愛しい感情をありったけ込めて、
梨華ちゃんを見つめた。
「終わったらすぐ行くから。」
「うん。頑張ってきなよ。」
頭の上に置いた手を離すと、また出口へと向かったけど。
- 502 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:43
-
「よっすぃー!」
振り返ったそこに見た彼女は、ほんの少し、不安げな表情を浮かべていた。
「ん?どうしたの?」
「どこにも・・・行かないでね。」
「あはは。家帰ってゆっくりするだけだから。」
本当は彼女が言う言葉の意味を正確にわかっていたけれど、
あたしは敢えてそう答えた。
「・・・うん。それならいいの。」
帰宅すると熱いシャワーを体に浴びせた。
「疲れたな・・・」
あたしはこれからのことをしばし考えながら、流れ落ちる水に打たれて、
まるで修行僧のように体を預けていた。
自分の進むべき道。そして・・・梨華ちゃんとのこれからのことを。
「ふぅ・・・。さっぱりしたな。」
ミネラルウォーターを飲み干して、テーブルの上にペットボトルを置くと、
さっき郵便受けから取ってきた郵便物を手にした。
今朝は読む暇もなかった新聞に、携帯の請求書。
そしてどこかのDMに紛れて見落とすところだった一枚のハガキに目が留まった。
「へぇ・・・。珍しい人からきてるな・・・。」
その絵ハガキの差出人の名前を見て、あたしは頬をほころばせた。
彼女の名前は柏木優子さん。
ちょうど一年前に渡米した彼女は、かつてモーニングの専属カメラマンをしていたのだ。
現場では本当のお姉さんのようにあたしたちをかわいがってくれた彼女。
自分の可能性を試しに、単身アメリカへと渡ったのだ。
ハガキには彼女の近況報告が記されていた。
現在ニューヨークでフリーのカメラマンとして頑張っていると。
そして近々やっと小規模なものではあるが、個展を開くことができるとも。
- 503 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:44
-
「・・・すごいな・・・優子さんは・・・。」
おそらく彼女が写したものであろうハガキにプリントされている写真は、
まさしくニューヨークを象徴する摩天楼で、それは青空を背景として聳え立っていた。
20歳くらいまでモデルの仕事をしていたという彼女は、ある日を境にきっぱりと
モデル業界を引退したらしい。
それから2年ほどカメラの勉強をした後、徐々に仕事を始めだし、
その筋の紹介でモーニングの専属となったのだった。
撮られる立場―――すなわち被写体としての経験をもつ彼女が捉えるアングルは、
あたしたちの最高のショットを写し出してくれた。
表現者としてどれだけ自分を出すことができるか。
そんな基本的なことすらわかっていなかった当時のあたしにとって、
彼女の存在はとても頼もしく、信頼のできるものであり、そこにプロの意気込みを感じることができた。
それだけではない。
あたしたちは面倒見のよい彼女の存在を心から愛し、尊敬してもいた。
「ニューヨークかぁ・・・。」
摩天楼の写真をじっと眺めると、それをコルクボードにはりつけた。
まだ生乾きのままの髪を乾かすことなく、バスタオルを肩にかけたままで、
あたしはベッドへと体を沈めた。
今日の会見で、本当にあたしの引退は決まってしまった。
それは自ら望んだことではあるけれど、いまだ現実感がないのはなぜだろう。
「これからどうするかな・・・」
疲れた体に睡魔が訪れると、今朝までここにいた梨華ちゃんの感触を思い出しながら、
しばしの安らぎを求めて眠りについた。
「・・・・・・・はい。」
「もうそこまできてるから。」
「うん。わかった。」
梨華ちゃんからの携帯で目覚めたあたしは、中途半端に寝て頭痛がする
頭を抱えながら、体を起こした。
そして暗い部屋の中をベランダの窓まで歩いて行くと、閉じていたカーテンを開けた。
「今宵は満月なのかな・・・」
満ちた月をぼーっと見上げながら、窓ガラスからじんわり伝わってくる
冷気に体を振るわせた。
- 504 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:47
- オートロックの呼び出し音が鳴ったのはちょうどその頃。
ドアを開けると、寒さに身を縮ませている梨華ちゃんが、白い息を吐きながら笑った。
「やだ、よっすぃーったら。」
「ん?」
「髪ボサボサだよ?」
あわてて手を髪にやると、乾かさないままで寝てしまった寝癖の感触がわかった。
「ほんとだ。」
クスリと笑うと、梨華ちゃんもまた白い歯を見せた。
「ずっと寝てたの?」
「うん。なんだか中途半端に寝ちゃったからかえってダルイよ。」
「なにそれー。私なんかさっきまでラジオの仕事だったのにー。」
さっきつけたばかりの暖房に、まだ暖められていない部屋の中、
彼女が飲んでいるホットココアの湯気がより濃く室内に立ち上っていく。
甘い香りと、梨華ちゃんのちょっとむくれた笑顔。
心が温まっていくのは、手にしたホットコーヒーのせいだけではないのがわかる。
「あれから大変だったんじゃない?周りの人から色々聞かれなかった?」
「んー。まぁね。たまたま中澤さんが別のラジオのゲストに来ていて。
楽屋で色々と話したけど、よっすぃーの気持ちわかるよって言ってた。
応援したいって言ってたけど、今度会ったら泣くかもしれないね、中澤さん。」
「そっかー・・・。」
「それより・・・・。」
梨華ちゃんは一呼吸置くと、少しためらいがちにこう切り出した。
「・・・ごっちんとは話したの?」
「え?別に。こっちからもかけてないし、向こうからもかかってきてない。」
「そ。」
「・・・なんだよ。その反応は。」
「べっつにー。」
つーんとつましながらココアをすする彼女。
その態度は明らかに―――
- 505 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:48
-
「妬いてくれてるんだ、梨華ちゃん。」
「あちっ。」
「あはは。大丈夫?」
「なによー。よっすぃーが変なこと言うからじゃないのよー。もぅ!」
「心配しなくても大丈夫だよ。あたしが好きなのは梨華ちゃんだけだから。」
マグカップを手にしたままうつむいた彼女は、照れているかのように、
ふぅと小さな息をもらした。
それが妙にくすぐったくて、あたしもまた照れてしまったけど。
「テレビでもつける?」
「ううん。いい・・・」
「ご飯は・・・食べてきたよね?」
「・・・うん。」
二人きりの空間。
もうちゃんと彼女とは付き合っている訳だし、今更緊張することもないのだろうけど、
居心地がいいような、悪いような・・・なんとも言えないこの沈黙は、
互いの心拍数を上げていくように感じる。
そして。
「・・・よっすぃー・・・」
「えっ!?・・・なに?」
「・・・側にいっても・・・いいかな・・・」
さっきまでの甘い空気は、いつしか影を潜めていた。
それは彼女が見せる切なくなるほどの視線をその瞳に感じたから。
何かを秘めたその眼差しに、なぜだか胸がざわめいた。
だからあたしは―――
「おいで。梨華ちゃん。」
コクリと頷いたのがまるで合図のように、あたしもまたイスを下げて立ち上がった。
梨華ちゃんが抱えているであろう苦しい思いを、ちゃんと受け止めるために。
- 506 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:49
-
しばらくはただ抱きしめて、互いの鼓動を静かに聞いていたけれど、
やがて抱きしめている彼女の体から、わずかな揺れを感じた。
「・・・・泣いてるの?」
声をあげずに、ただ梨華ちゃんはその苦しげな息をもらしていた。
「・・・っ・・・よっ・・・すぃー・・・」
「なぁに?」
だからあたしは彼女が少しでも落ち着くことができるように、
精一杯の柔らかな声で答えた。
「どうしたの、梨華ちゃん。」
「私・・・すごく不安なの・・」
「ん?何が?」
「よっすぃーが・・・・よっすぃーがね、どこか遠くに行きそうで・・・」
「梨華ちゃん・・・・」
「そんなことないよね?よっすぃーは一人でどこかへ行ったりしないよね?」
心の中にあった不安を言葉にしたことで、彼女はより苦しんでいくように見える。
きっと梨華ちゃんにとって、それはとてつもなく勇気のいる言葉だったのだろう。
永遠なんてないのかもしれない。絶対ということなど何もないのかもしれない。
だけど、今、目の前にいる彼女の切なげな瞳をみて、
心を覆う不安の影を拭い取ってあげなくてはいけないと感じた。
恋人としての最善の言葉をつむぎ出さなければならないと思ったから―――
「何言ってんだよ。どこにも行く訳ないじゃん。」
にっこりと微笑んでみせたけど、その時もうすでに彼女は
これからくる別れを、どこか微妙に感じていたのかもしれなかった。
それからの毎日は、今まで以上に忙しいものへと変わっていった。
卒業に向けての各局のテレビ出演。コンサートの最終調整。
雑誌の取材や、CM撮り。
どの仕事をこなすのにも、「もうこれで何もかも最後」という意気込みを
もって臨んでいくと、自然と力みは抜けていったけど、そこはかとなく
湧き上がってくる寂しさは、どうにも消しようがなかった。
「おつかれさまでした。」
- 507 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:52
-
歌番組の収録が終わり、楽屋へと戻ると、髪を束ねながら近づいてくる
圭織さんの姿が目にとまった。
「よっしざわっ。」
「はい?なんですか?」
「今日はもうこれで仕事ないよね?」
「そうですけど。」
「ならさ、夜いつもの焼き肉屋たべいかない?」
「あぁ。あの店ですね。いいですよ。」
「他のみんなも誘ってるんだけど、まだ仕事ある子もいるから、
一応7時に予約とってあるの。時間みて来てよ。」
「はい。わかりました。」
「あっ。それと・・・」
「え?」
「あさってからツアー始まるでしょ?したらゆっくりできる時間もなくなるから、
石川の誕生日祝いも兼ようってことになったんだけど。
みんなプレゼントもってくることになってるからよろしくね。」
「そっか・・・。梨華ちゃんもうすぐ誕生日でしたね。」
「あれー。忘れてたの?冷たいんだー。」
圭織さんはクスッと笑ってあたしの肩に手をかけた。
「いや、別に忘れてた訳じゃないですよ。ちょっとバタバタしてたもんだから・・・」
「はいはい。ま、そういうことにしといてあげるよ。」
「やだなぁ。ホントに忘れてなんかないですよー。」
なんて苦笑いを浮かべていると。
「よっすぃー。」
やや不機嫌そうな声をかけてきたのは。
「あ。梨華ちゃん。」
「なんの話してるの?」
「あっ、えっとね、その・・・ほら、あれですよね、圭織さん。」
「そうそう。あれあれ。したら私は先帰るから。」
「えっ!」
「じゃね〜。」
見事に置いてけぼりをくらったあたしに、梨華ちゃんの鋭い視線が向けられている。
- 508 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:53
-
「・・・よっすぃー。」
「だから、その。今日の食事会の予定聞いてただけだから。」
「ふーん。にしては随分仲よさげだったけど?」
「んなことないよ。ほら、うちらももう帰ろうよ。ね?」
「なーんか怪しいけど、ま、いっか。ねぇねぇ、それより時間くるまで
よっすぃーんとこ行ってもいい?」
「え?いや・・・それはちょっと・・・・」
「だめなの?」
「だめっていうより・・・。ちょっと帰りに寄りたいとこあるから。」
「じゃ、私も一緒についてく!ね?いいでしょ?」
「いや、それもちょっと・・・」
「・・・・それもだめなんだ・・・・」
彼女のテンションが明らかに下がっていくのがわかる。
こういう時は一体どうしたらいいのだろう。
寂しさにしぼんでいく梨華ちゃんの心を救うには・・・・
戸惑いつつも、あたしが出した答え。それは―――
「買い物行くんだけど、一緒についてくる?」
肩に腕を回して、うつむく彼女にそっと耳打ちした。
「・・・無理しなくたっていいよ。」
「無理なんかじゃないよ。ってゆーか、梨華ちゃんがいてくれた方がいいかもしれないから。」
「・・・えっ?どういうこと?」
「さ、それじゃ行きますか。」
「答えになってないよー。ねぇー。」
「あはは。行けばわかるから。」
「んっとに・・・。それで、どこ行くの?」
「それは・・・・・・内緒。」
「またーっ!もぉー!よっすぃー!」
「イテテ・・・。」
「そんなに強くたたいてないじゃない。おおげさねー。」
「クス。それじゃいこっか。」
「うんっ!」
そうしてあたしたちは、仕事場をあとにしたのだった。
- 509 名前:修行僧2003 投稿日:2003/10/19(日) 17:54
- >作者
今日のところは以上です(w
なんかあまり進んでいない気もしますが(笑)
ゆっくり書いていきますので、マターリと待っていてもらえれば
嬉しいかと(w
それでは今回はこのあたりで。
- 510 名前:シフォン 投稿日:2003/10/19(日) 18:17
- >作者様
更新、お疲れ様でした♪
何とも切ない二人ですねぇ…。
これからも作者様のペースで頑張って下さいね!
寒くなってきていますので、お身体にはお気を付け下さいませ…。
- 511 名前:ROM読者 投稿日:2003/10/19(日) 19:18
- 更新お疲れ様です。
胸が苦しくなるような、ホント切ない展開ですが、たまには
こんな気持ちになるのも悪くないかも。(普段能天気なので)
マターリお付き合い致しまっす。
- 512 名前:なな素 投稿日:2003/10/20(月) 04:47
- はあ〜不眠症だ。
しかし、この小説を読むと癒される。
甘くて切ない展開が何とも言えませんな。
最近、めっきり寒くなってきたのでお身体にはお気をつけくださいませ、作者様。
- 513 名前:名無し読者79 投稿日:2003/10/21(火) 17:34
- よっすぃーの言葉に照れてうつむく梨華ちゃん…。
まるで今回のハロモニの光景を見ているかのような感じで(^^)
会話がなんかグサッとくるというか、切ないですね。
涙が出てきそうです、梨華ちゃんの言葉を見ただけで。
- 514 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/10(月) 22:36
- 保全
- 515 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:06
- 内緒でコソーリ更新(wさて、みなさま覚えていてくれているのでしょうか(笑)
>シフォンさま
>これからも作者様のペースで頑張って下さいね!
ながらくお待たせいたしました(汗)
すみません。応援ありがとうございます。
>ROM読者さま
>マターリお付き合い致しまっす。
マターリ・・・・・。しすぎましたでしょうか?(汗)
大変お待たせしてすみません。よければまた読んでやってください。
>なな素さま
>しかし、この小説を読むと癒される。
>甘くて切ない展開が何とも言えませんな。
そう言っていただけると、作者がぜん勇気がわきてきます!
いつも応援ありがとうございます!
>名無し読者79さま
>涙が出てきそうです、梨華ちゃんの言葉を見ただけで。
なのにすっかりお待たせいたしまして・・・(汗)
今回もややしばらくこんな感じですが、よければまたお付き合いください。
大変長らくお待たせいたしました。
作者の超スローペースにお付き合いしていただいて
申し訳ないです。息抜きにちらっと覗いてもらえれば
たまにこうやって更新しておりますので、よければ
またお付き合いください。
それでは続き、どうぞ!
- 516 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:09
-
「うわぁ・・・やっぱり人多いね。」
タクシーを降りた第一声は、まさにそんな感じだった。
平日の昼下がりではあるけれど、やたらと人通りがあるのは新宿ならでは。
「帽子深くかぶったほうがいいよ。」
「うん。よっすぃーもねっ。」
雑踏に紛れて梨華ちゃんと歩く。
周囲はあたしたちのことに気がついていないようだけど、
バレたらやっかいなので、うつむき加減でただ黙々と歩いていた。
「ねぇ、もうそろそろ教えてくれてもいいんじゃないの?」
「え?なに?」
「なにって・・・。今からいくとこ。」
少し呆れ気味の梨華ちゃんの言葉に、あたしは思わずクスリと笑ってしまった。
「あぁ、そうだった。まだ言ってなかったよね。」
「笑い事じゃないでしょ?まったくー・・・」
「クス。ごめんごめん。えーっと、確かこのへんだったと思うんだけど・・・。」
視線をあげてあたりを確認すると、あたしが目指していたお店が、
もう目の前にみえていた。
「あった。あの店に・・・」
「きゃーっ!かわいいーっ!」
「へ?」
「ねぇねぇ、ここちょっと寄っていってもいい?」
そう言うや否や、梨華ちゃんは明らかに彼女の好みの店の前まで駆け寄ると
あたしを手招きした。
「ここ・・・ねぇ。」
「なによー。ちょっとくらい付き合ってくれてもいいでしょー。」
「わかったよ。付き合いますよ。」
苦笑いを浮かべながら彼女の後について入ったお店は、
ちょうどあたしが行こうと思っていたアクセサリーショップの隣にある、
キャラクターグッズが取り揃えてあるお店だった。
「わぁーかわいいーっ!あぁー。なんか見てるだけでウキウキするよね。」
「ウキウキ?・・・しないよ。」
「なんでよー。ほら見て!このプーさんのぬいぐるみなんて
ちょーかわいいじゃん。」
彼女が手にしたぬいぐるみは、このキャラクターにしては珍しい
ピンク色をしたものだったけど、全くぬいぐるみに興味のない
あたしにとっては、特別心を動かされるものではなかった。
- 517 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:11
- 「ふーん。ピンクのもあるんだね。」
「なんかあんまり感動してなくない?」
「あんま興味ないから。」
「つまんないのー。つれないよね、よっすぃーって。ねぇ?」
なんて口をとがらせながら、彼女はさっそく手にしたぬいぐるみの手をとって、話しかけている。
「あはは。いい年してぬいぐるみに話しかけんなよ。」
「いいでしょー。冷たいよっすぃーなんて無視しちゃうんだもーん。ねー。」
「んだよ。あーぁー。せっかくそれ買ってあげようと思ったのに。」
そういうと、彼女はムニムニと動かしていたプーさんの手を止めて
あたしを見上げた。
「・・・え?買ってくれるの?」
「うん。なんか気に入ってるっぽいから。」
「いっ、いいよ。自分で買うし。」
「それじゃ誕生日プレゼントにならないじゃん。」
「・・・・え?・・・え???」
「買い物にきたのって、梨華ちゃんの誕生日プレゼント買うためだってこと、知ってた?」
にやりと笑って彼女をみると。
「そっ、そんなのわかる訳ないじゃない!何にも言ってくれないんだもん。」
むくれてはいるけれど、それは明らかに照れくさそうにしている表情。
「ま、つまりはそういうこと。それでよければ決めるけど、他のにする?」
「ううん。これでいい。・・・これがいいっ!」
「クス。はいはい。じゃレジもってくから貸して。」
「・・・ありがと。」
「うん。」
彼女がみせてくれる嬉しそうな目の輝きが、あたしの心に暖かい火をともしてくれた。
「ねぇねぇ、他のも見てていい?」
「いいよ。それじゃ清算してくるから。」
プレゼント用に包装してもらって、レジで支払いを済ませたけれど、
梨華ちゃんはまだ他のぬいぐるみたちに目を輝かせている。
そんなそぶりが、決して一般的な10代の少女としての時間を
過ごすことができなかったあたしたちの寂しさもまた、映し出しているようにすら思えた。
モーニングに入ることがなければ、決して梨華ちゃんとも他の
メンバーとの出会いもなかった。
- 518 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:13
- けれど、もし・・・。もし普通の高校生としての時間を過ごしていたとしたら、
今この時を誰とどんな風に過ごしていたか。
あるいはもっと違った人生を歩いていたのかもしれない―――
あたしも梨華ちゃんも。
そんな想いを胸にしながら、プレゼントが入れられている袋をぎゅっと抱えた。
「けれどあたしたちは出会ってしまったんだよね・・・。」
後悔しているのではなく、ただこの現実を冷静に受けとめていた。
梨華ちゃんといるこの瞬間を。
「なら、今この時を精一杯愛すればいいじゃないか。」
自分に言い聞かせるように静かに頷くと、少しだけ気持ちが落ち着いている
のがわかった。
仲間として、恋人として、一体これからどんな風に進んでいくのかは
わからないけれど、だからこそ、大切に積み重ねていかなくては
ならないものがあたしにはある。
そしてあたしは手にしたプレゼントをじっとみつめた。
それは彼女が気に入って選んだものだけれど、
やっぱりこれだけでは何か物足りないような気がしていた。
「やっぱなぁ・・・・。あれも買うか。」
ちらりと彼女の方を伺うと、こっそりと店を抜け出した。
「もぅ!どこいってたのよ!」
ちょうど店からでてきた梨華ちゃんは、もう一度店に入ろうとしていたあたしを
つかまえてにらんでいる。
「あっ、ごめんごめん。ちょっとのど渇いたからさ、自販機探しに行ってたんだ。」
「それなら一言声かけてくれたっていいじゃないのよ。」
「だよね。マジごめんね?」
肩にかけなおしたDバックの中からは、もうひとつのプレゼントが入っている
紙袋がガサガサと音をたてた。
「・・・まったく。心配するじゃない。」
「ごめんね?」
「置いていかれちゃったんじゃないかって・・・不安だったんだから・・・。」
「そんなことする訳ないじゃん。」
「そうだけどさぁ・・・」
なんてことを店の前でしていると、通りすがりの人たちがあたしたちの
方を向いて、こそこそと話している姿が目に付いた。
- 519 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:15
- 「まずいな。気づかれたかもしれない。」
「ふーんだ。よっすぃーが悪いんだからねー。」
「とにかくもう行くよ。」
「行くってどこに?」
「それは・・・・内緒。」
「もぅ!」
クスっと笑って彼女の手をとると、あたしたちはまた雑踏の中へと
少し足を速めて歩きだした。
しばらく歩いて程なく人の流れが少ない道にでると、彼女が不意に
小さな笑い声をもらした。
「ん?何笑ってるの?」
「だって・・・。」
「だって?」
「こうやって歩いてたらさぁ、まるでデートしてるみたいなんだもん。」
今でも彼女と繋いでいる左手に、さっきよりもほんの少し力が入っていった。
「そうだよね。二人でこうして休みを過ごすことってなかったもんね。」
「カラオケいくにもゲーセンいくにも、他のメンバーの子たちと一緒だったもんね。
・・・・・なんか、嬉しいなぁ。」
「うん。あたしも。ねぇ、まだ焼肉まで時間あるからさ、どこかよってかない?」
「うんっ!よってく!よっすぃーともっとデートしたいっ!」
「あはは。OK!ならさ、ここからすぐ近くにおいしいベーグル屋があるんだけど、
そこでお茶しない?」
「本当によっすぃーってベーグル好きよね。」
「いいじゃん。うまいんだからさ。」
「そんなにベーグルばっか食べてると・・・・」
「え?食べてると何?」
「・・・・なーいしょっ!」
「んだよー。いいかけてやめるなよー!」
「クス。教えてあげないよーだ。」
「かわいくねー。」
「ホントはかわいいって思ってるくせにー。」
見上げた視線にドキリと高鳴る胸は、隠しようもなく・・・
だからあたしは。
「うん。かわいいよ、梨華ちゃん。」
「・・・・あ、ありがと。」
しびれていくような心地よさを感じながら、あたしたちは、
またしばしのデートを楽しんだ。
- 520 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:19
-
「おつかれさまです。」
「おつかれー。あ。一緒にきたんだ2人。」
「はい。まだ圭織さんだけですか?」
「ううん。私も矢口ときたんだけど、今トイレにいってるよ。」
いつもの個室にいたのは圭織さんだった。
予約の時間までまだ30分もあるけれど、時間より早く集合するところは
やはり彼女らしい。
「えっとね、石川はここ。で、よっすぃーはその正面に座ってね。」
「はーい。」
梨華ちゃんと声をそろえて返事をすると、上着をかけて一番端の壁側の席についた。
「でもあたしたちここの上座の席でいいんですか?」
「うん。一応主役だからね2人とも。石川喜べ。今日は石川の
誕生日会も兼ねてるから。」
「ありがとうございますー。嬉しいなぁ。」
「・・・相変わらず棒読みだね。」
「そっ、そんなことないですよー。ねぇ、よっすぃー?」
「クス。棒読み。」
「よっすぃーまで、もぅ!!!」
「あはは。・・・・・あ。梨華ちゃん、ちょっとちょっと。」
「なによぉー。」
と、いまだちょっぴりむくれている。
「一緒にここ隠れよう。」
けれどあたしはにやりと笑って彼女を見た。
焼肉屋のテーブルの下はちょうど掘りごたつになっていて、
体を隠すにはもってこいの深さがあるから、ちょっとしたいたずらを思いついたのだ。
「なんでよ。」
と、いぶかしげに見返す瞳ではあったけれど。
「いいから。矢口さんびっくりさせるの。」
「あ、なーるほどね。」
梨華ちゃんもまた悪巧みを考える子供っぽい瞳にすぐさま変わった。
- 521 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:20
-
「2人とも子供だね。」
「圭織さん内緒にしててくださいよ?」
苦笑している圭織さんは、はいはいと言って頷いてくれていた。
メンバーといるオフの時間は、モーニング娘としての気負いを感じなくてすむ
心休まるわずかな時間。
せめてその時くらいはやんちゃな子供心を解放させてもいいように思った。
安心できる仲間がいるから、しばしの間は何も考えずにバカをすることができる。
そんな居心地のよさは理屈ではなく肌で感じるものだった。
そして座敷の下の掘りごたつに体を隠すと、
梨華ちゃんとぴったりと体を寄せ合うことになった。
「なんかこういうの楽しいね。」
いつもよりほんの少しだけ子供っぽい笑顔を見せる彼女。
話し声が狭い空間にこもってなんだか不思議な感覚がする。
それは梨華ちゃんの体温すら伝わってきそうな距離。
「うん。子供にかえったみたい。」
「あら。よっすぃーってまだまだ子供じゃない。」
「うるせー。ぬいぐるみで喜んでる誰かさんよかましだよ。」
「言ったなぁー。」
なんてコソコソ話していると、圭織さんがポンと足で合図してくれた。
「せーのでいくよ?」
「うん。」
「せーの!」
「「わっ!!!」」
と、声をそろえてタイミングばっちりに驚かせてみたけれど。
「・・・・・なにやってんのあんたら。」
「えー。なんで驚いてくれないんですかー。」
「そうですよ。せっかく驚かせようと思ってたのに。」
「あのねー・・・。それだけゴソゴソしてたらわかるよ。」
矢口さんは呆れ顔。
「あ。しまった。」
「今度は静かに隠れてようね。」
あたしたちは顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
- 522 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:22
-
「あんたたちまだやるつもりなの?」
「内緒にしててくださいね、矢口さぁーん。」
「きしょいよ、石川。」
「あはは。それが梨華ちゃんの売りですから。」
「もぅ!」
なんてペチリと梨華ちゃんにたたかれつつも、
あたしたちはまた懲りずに掘りごたつにもぐった。
「ねぇねぇ、今度は誰がくるかな?」
「そうだなぁ・・・。そろそろマコとかくるんじゃない?」
「なんかさぁ、よっすぃーって・・・・」
「ん?なに?」
「・・・なんでもない。」
「なんだよ。最後まで言えよ。気持ち悪いじゃん。」
「・・・だからぁ・・・。なんか小川のことすごくかわいがってない?
あのこのことだけマコとかって呼ぶし。最近よっすぃーに似てきてるって評判だし。」
「・・・・・・・もしかして梨華ちゃん妬いてるの?」
「そっ、そんなんじゃないもんっ。ただちょっと・・・面白くないだけ。」
「クス。そういうの、世間ではヤキモチって言うんだよね。」
「しらないっ。」
「ほんと、梨華ちゃんて・・・・・」
あたしは目の前で頬を膨らませている彼女の肩に手を置いて、
そっと口付けをした。
「・・・・・・・・・・・・っ。」
「かわいい。」
結局、当初の目的なんてものはすっかり忘れてしまって、
あたしたちはただ、2人だけに与えられたかのような密な空間を
ひとときの間楽しんだ。
その日の食事会は、あたしへの激励会、6期の懇親会、
そして梨華ちゃんの誕生日会を兼ねて大いに盛り上がり、
食べて騒いで、笑って、そしてちょっぴり涙したこともあったけれど、
とにかく久しぶりに心から楽しめる時間だった。
- 523 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:24
-
「ふぅー。外の空気冷たくて気持ちいいねー。」
乗り込んだタクシーの窓を開けて、紅潮した頬に風をあてながら、
梨華ちゃんが大きく息を吸い込んだ。
「風邪ひくよ?ほら、窓しめないと冷たい空気はのどにも悪いって言うし。」
「いいの。」
「まったく・・・。あさってからコンサートだっていうのに。」
やれやれとため息をつきながら、梨華ちゃんの横顔をただなんとなく眺めていた。
流れていく街灯りと、こぼれおちる白い息。
そこにはさっきまではしゃいでいたものとは明らかに違う表情があった。
「ねぇ・・・よっすぃー・・・・」
梨華ちゃんは窓の外を見たままであたしに問いかけた。
「なに?」
「このまま、このまま・・・ね・・・」
「え?」
「ううん・・・。なんでもない。」
「梨華ちゃん?」
そんなあたしの問いかけには答えずに、表情を隠すように下を向いたまま、
それきり彼女は黙ってしまった。
ハザードをつけて止まったタクシー。
「今日は色々ありがと。気をつけて帰ってね。」
たくさんのプレゼントを抱えたままで、あたしに微笑む静かな瞳。
「こっちこそ。ありがと。」
心の奥から湧き出てくる何か。
例えて言うならそれはきっと―――
「ゆっくり休んでね。おやすみ。」
「あっ。梨華・・・ちゃん・・・」
すぐにでも発車しようとするタクシーから、一歩足を引いて立っている
彼女を見上げた。
「どうしたの?」
「あたしも・・・降りていいかな・・・」
「えっ。」
「ほら・・・その、荷物いっぱいあって大変だろうから。」
「そうね・・・・・うん。」
コクリと頷いたのを確認すると、タクシーから降り立った。
- 524 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:25
-
「今すぐエアコンつけるから。適当に座って待ってて。」
「うん。」
「飲み物何がいい?」
「なんでもいいよ。あったかいのなら。」
「うん。わかった。ちょっと待ってね。」
梨華ちゃんがキッチンでお茶の支度をしている間、
テーブルの上におかれていた台本を手にした。
それは彼女が今度出演する映画の台本だった。
藤本とのWキャストではあるけれど、主演という配役は
梨華ちゃんのこれまでの努力が認められたものでもある。
モーニングという歌手の仕事以外でも、彼女は確実に才能を伸ばし始めていた。
一歩ずつではあるけれど、ちゃんと前に進んで行っている。
それは嬉しいことではあるけれど、同時にまた言い切れぬ寂しさをつれてきていた。
「おまたせ。」
「ありがと。」
パラパラとめくっていたそれを閉じると、コーヒーカップを手にした。
「セリフ覚えるの大変だね。」
マーカーがたくさん引かれた台本に視線を落としてそう告げた。
「うん。毎日見てるんだけど、なかなか頭の中に入らなくて結構大変なの。
でもせっかくもらえたチャンスだから。」
「ホント、梨華ちゃんは頑張り屋さんだね。」
特に意識して言った言葉ではなかったけれど、
彼女はうつむきながらぽつりと言葉をもらした。
「・・・・・・・・何かに集中してないと・・・なんだか・・・・」
「・・・え?」
「やなことばっか頭に浮かんじゃって、気持ちが沈んでいくの。
・・・・不安で・・・どうしようもなく寂しくなって・・・・」
「・・・梨華ちゃん・・・・」
「ごめんね・・・ごめん・・・。こんなこと言ったら余計な心配かけるよね。ごめんなさい。」
それはきっと、あたしの卒業のことを指して言っているのだろうことがわかった。
今日が楽しければ楽しかった分、寂しさは増幅されて心に満ちていく。
それはあたし自身も感じていた寂しさであったから。
- 525 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:31
-
「あの・・・さ・・・。」
カップを置くと、静かに梨華ちゃんを見つめた。
「・・・なに?」
「あたしはもうモーニングをやめちゃうけどさ、その・・・・
梨華ちゃんへの気持ちが変わるってことは絶対にないから。」
「・・・よっすぃー・・・・」
「この気持ちだけは信じていてよ。お願い。」
「・・・・うん。」
ほんの少しだけ潤んだ瞳で、そっとあたしに微笑んでくれた。
「あのね、その証拠といっちゃぁなんだけど。」
Dバッグから紙袋をとりだして、テーブルの上に置いた。
「え?」
「これ。なんだと思う?」
「うーん・・・。わかんない。」
差し出された紙袋を前に、梨華ちゃんは眉間にしわを浮かべている。
「あのさ・・・。あたしからの誕生日プレゼント。」
「・・・えっ。でもさっきもらったけど・・・」
「あはは。あれはさ、みんなと一緒にいた時のものでしょ?そういうんじゃなくて。」
「もうひとつ用意していてくれてたの?」
「うん。本当は最初からこれを買いたかったんだよね。」
「あけても・・・いいの?」
「もちろん。」
ガサガサと紙袋をあける姿を、満足げに見つめていた。
「うわぁ。素敵ね。」
「えへへ。なかなかいいでしょ?」
「うんっ。ありがと。こんな素敵なブレスレットもってないよ。ホントにありがとね。」
「それさ、実は普通のブレスレットじゃないんだよね。」
「え?そうなの?」
「うん。永遠の愛が約束されるっていうラブブレス。
ここのブランドのものって梨華ちゃんの趣味にあうかどうかわかんなかった
んだけど、気に入ってもらえたみたいで嬉し・・・・」
- 526 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:32
-
その瞬間、梨華ちゃんの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちていった。
「・・・ありがと・・・・。本当にありがと・・・。」
「梨華ちゃん・・・。」
「好きでいていいのよね?ずっと、よっすぃーだけを・・・」
「当たり前じゃん。そうでなきゃ困るよ。」
腕を伸ばして彼女の髪に触れた。
そしてあたしは席を立って、後ろから肩越しに彼女を抱きしめた。
「・・・っく。もっと強くならなきゃだめね・・・。」
「今のままで充分だよ。梨華ちゃんはそのままでいい。」
「よっすぃー・・・。」
「今日・・・。いや、明日もこのまま一緒にいていい?」
「・・・でも、明日はやっと丸一日もらえたオフじゃない。」
「だからだよ。一日中梨華ちゃんと一緒にいたい。」
「私も・・・。本当は私もよっすぃーの側を離れたくない。ずっと一緒にいたい。」
「あぁ。一緒にいよう。」
細い体を精一杯抱きしめると、梨華ちゃんもまたぎゅっとあたしの手を
握り返してくれていた。
卒業に向けたファイナルステージの幕開けは、いよいよあさってから始まる。
- 527 名前:修行僧2003 投稿日:2003/11/24(月) 20:35
- >作者
はい。ということで、今回はここまでです。
うーむ。これから結びの部分に入っていきますが、
また多少お時間をいただけると嬉しいかと(^-^;
ある意味長編なのは、容量よりも時間がかか・・・(ry
それではまた次回まで。
読んでいただいてありがとうございます。
- 528 名前:つみ 投稿日:2003/11/24(月) 21:46
- はあ・・・
涙がいりますなこの作品は・・・
- 529 名前:シフォン 投稿日:2003/11/24(月) 22:14
- >作者様
お久しぶりです! 続き、待ってましたよ♪
作者様の作品を忘れる事なんて有り得ませんっ!!
<<ピンクのプーさん
偶然ですねぇ! ウチも先日某ショップで手に入れたんですよ^^;
ま、ウチの場合は自分で買ったんですが…(汗)
次回の更新も楽しみにしていますね♪
作者様のペースで無理なさらずに頑張って下さいね^^
- 530 名前:LOVEチャーミー 投稿日:2003/11/24(月) 22:55
- おぉ!久しぶりの更新だーーー!!
まったり待ってますから〜
- 531 名前:ROM読者 投稿日:2003/11/24(月) 23:46
- 更新お疲れ様です。
もう終盤に突入なんですね。次回、涙腺を目一杯緩めて
待ってマス。
ピンクのプーさんって、風呂上りに鏡を見ればそこに(w
- 532 名前:なな素 投稿日:2003/11/25(火) 05:11
- お久しぶりでございます。
- 533 名前:なな素 投稿日:2003/11/25(火) 05:15
- ああ途中でenter押してしまった、すみません(汗
いしよしの初デート萌えました。
>なんか小川のことすごくかわいがってない?
>最近よっすぃーに似てきてるって評判だし。
この辺りは結構タイムリーなネタですよね。読んでて、おっ!と思いました(笑)
最後の梨華ちゃんの部屋のシーンもじーんときますたね〜。
- 534 名前:名無し読者79 投稿日:2003/11/25(火) 18:10
- 待ってましたこの時を…。
今回もなんかうまく言葉で表せれないほど良かったです。最高です。
掘りごたつ…やぐっつぁんのラジオを思い出します。
次回もいつまでも待ってます。
- 535 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/22(月) 20:28
- 保 全
- 536 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:18
- コソーリ更新(w
>つみさま
応援いただきありがとうございます。
よければまた続き読んでやってください。
>シフォンさま
ピンクのプーさんはいかがお過ごしでしょうか?^^;
久しぶりの更新ですが、よろしくお願いします。
>LOVEチャーミーさま
マターリ待っていただいて嬉しいです。これからもどうぞよろしくです。
>ROM読者さま
あ。ここにもピンクのプーさん愛好者が(w
>なな素さま
いつも読んでくださってありがとうございます!
またよければ覗いてやってください。
>名無し読者79さま
お待たせしました^^;もしお忘れでなければ、また読んでくださいね^^
それではまたもやながらくお待たせいたしました。
続き、ごらんください。
- 537 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:20
- あわただしく駆け回るスタッフ。
怒声にも似た彼らの声に、いやが上にも緊張感が掻き立てられていく。
ざわざわとした楽屋前は、あたしたちメンバーの姿をカメラに収めるための
撮影班や取材記者たちの熱気で、異様なまでの熱が渦巻いていた。
そして、声を掛け合うまでもなく、自然と輪になるメンバー。
「いよいよ今日がツアーの初日。今回のツアーは長丁場になるけれど、
みんな怪我のないように、そして練習で積み重ねてきたものを
充分に発揮できるようにがんばろうね。」
一人一人の目を見て話す圭織さん。
それに応えるように頷くあたしたち。
「吉澤にとっては最後のツアーになるけれど、みんな気を引き締めて、
最後の最後まで走り抜こうね。さぁ、せーのでいくよ。・・・せーのっ!」
「「「がんばっていきまっしょい!!!」」」
その掛け声と同時に、まるで雷光のようにたかれたフラッシュの嵐。
刹那に訪れた白い世界は、影を作ることすら許されないほどに
あたしたちを照らし出していた。
ただ唯一、重ねた手の重みだけが現実を知らしめている。
気合を入れるこの瞬間があたしはたまらなく好きだった。
祭りの前のふわふわとした高揚感が、一気にピーンとした空気に変わるこの瞬間が。
みんなの気持ちをひとつに重ねることで、大きな一歩を踏み出すことができる。
それは、同時にここにいること・・・ここにあたしがいるという存在の証明のように、
強く心に響く掛け声。
そしてあたしたちはステージのそでへと向かった。
舞台へとあがる階段の暗がりの中、いまや遅しと待ちわびるファンの子達の
期待に弾む声が、ここにまで届いてくる。
それと同調するように高鳴る鼓動。
- 538 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:23
-
緊張が最高潮に達したこの空気をまとったまま、
誘導灯をもったスタッフに促されて、圭織さんがその一歩を踏み出した。
そして次々に続くメンバー。
しかし、どうしたというのだろう。
今まで数えきれないほどのステージをこなしてきたというのに、
あたしはここにきて足がすくんで動けなくなっていたのだ。
じんわりと手のひらににじんでくる嫌な汗を、動かなくなっている
太ももにこすりつけて舌打ちした。
と、その瞬間、何かを感じたのだろうか。
目の前にいる梨華ちゃんが階段を上る前に、あたしに振り向いてこう言った。
「逃げちゃだめだよ、よっすぃー。」
「・・・え?」
「ちゃんと見てるから。いつでも。」
「あぁ。」
なんでもないという風に苦笑してみせたけど、
その瞬間、あたしの中にあった気負いが確実に解けていくのがわかった。
おそらく彼女はただ一人、いつもと違うあたしの空気を感じ取ったのだろう。
そう。梨華ちゃんだけが。
「ほら、いくよ。よっすぃー!」
「オーライ!」
笑顔で返事をすると、思い切りよく目の前にある階段を駆け上った。
それからは、過ぎていく毎日をただがむしゃらに走り続けた。
今もこの胸に残るのは、燃え尽きたという想いのみ。
流れ落ちる涙ににじむライトの光と、あたしの卒業を惜しんでくれる
ファンの子たちの声援。
今日のこのステージを降りると、あたしはもうモーニング娘。ではなくなる。
アンコールも終わり、全ての曲を歌い終えると、メンバーは
圭織さんを先頭にステージに並んだ。
「卒業おめでとう。つらいこともいっぱいあっただろうけどよく頑張ったね。
よっすぃーと過ごせた時間は私にとって宝物だったよ。本当にありがとう。」
花束を差し出したその向こうには、涙にぬれた顔があった。
「ありがとうございました。圭織さんも頑張ってください。」
もらった花束を腕に抱えて、頭を下げる。
- 539 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:26
- 「よっすぃー。卒業おめでとう。」
安倍さんもまたキラリと涙を光らせてはいたけれど、最高の笑顔を向けてくれている。
「ありがとうございました。」
しっかりと握手を交わして微笑んだ。
「・・・っぐ。なんて言っていいかわかんないよ・・・。」
「・・・矢口さん。今まで色々ありがとうございました。」
「おぅ!卒業してもみんな仲間だからね!」
「はい。」
苦笑気味にあたしも涙を拭った。
「・・・・っく。・・・・ひっく・・・・」
「梨華ちゃん・・・」
「・・・っ。よっすぃー・・・。ありがとう・・・。」
「ううん。こっちこそ。今までありがとう。」
その瞬間、ごく自然にあたしたちは抱き合った。
それは恋人というよりも、今まで一緒にいろんなことを乗り越えてきた、
戦友のような感覚で。
ポンポンと背中をたたくと、彼女は何度かうなずいてその腕を放した。
それから一通りメンバーに挨拶をかわすと、中央にひとつだけ置かれた
マイクの前に位置した。
「今日、このコンサートで吉澤は卒業します。」
大きく吸った息を吐き出すと同時にそう告げた。
客席からはあたしに向けられたよっすぃーコールが、
会場全体を揺るがすがごとく響き渡っている。
「今まであたしは数多くの人たちに支えられてきました。
こうして応援してくれるみんな。各地のツアーにきてくれたファンの人たち。
ここにこれなかったファンの人も含めて。とても感謝しています。」
にっこりと微笑んで満席になっている会場中をゆっくりと見渡す。
「コンサートを成功させるために尽力してくれたスタッフの方々。
そして・・・・。今まで一緒に頑張ってきた大切なモーニングの仲間。
本当にありがとうございました。」
背中にいくつものすすり泣く声を聞きながら、あたしは心の底から
彼女たちに感謝の言葉を述べた。
「楽しい思い出。みんなと過ごせた時間。胸の中にはたくさんの
素敵な思い出がいっぱい詰まっています。」
あふれ出る涙をぐっと飲み込んで、最後の言葉を搾り出す。
- 540 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:28
- 「吉澤は今日のこの日のことを絶対に忘れません。
今まで本当にありがとうございました。
これからのモーニング娘。もずっとずっと応援してください。」
深々と頭を下げてから、もう一度目の前の光景を焼き付けた。
あたしが駆け抜けたこの3年という月日を、しっかりと記憶に
留めるために。
吉澤ひとみという人間が、アイドルとして歩いてきた軌跡は、
今まさに終わりを迎えたのだ。
そして、手を振りながらステージを降りていくメンバーに続いて、
最後に笑顔で大きく手を振り、ステージを降りていった。
スタッフからの拍手。暖かい涙で迎えてくれたメンバー。
「よっすぃー・・・。おつかれさまでした。」
手を握ってくれたのはあいぼん。
「ありがとう。本当にみんな、今までありがとう。」
言葉にしなくても伝わってくる想いをメンバーから感じる。
そんな愛しいほどの気持ちを、そっと胸に包み込んだ。
しかし、取り囲むように側にいてくれたメンバーをかきわけて、
スタッフの一人があたしの肩をたたいた。
どうやら引退会見の準備ができたようだった。
「じゃ、ちょっといってくるよ。」
その輪から抜け出そうとした瞬間、やはり最後に梨華ちゃんの視線を確認した。
とても寂しげな瞳の色。その口元は、何かを言いたげにしている。
けれどあたしは何も言わずに、静かに微笑んで頷いた。
メイクも落とさずに、着替えだけを手短に済ませると、
報道陣の待つ席へと誘導された。
矢継ぎ早に繰り出される質問は、予想通りのものだった。
以前からまことしやかにささやかれていた、メンバーとの確執。
この引退は結婚をするためのものであるという噂。
もちろん全て根も葉もない事実とは反するものであったけれど、
それは結局、今後の自分自身の方向性を何も伝えることができなかった
ことが原因でもあった。
そう。今日のこの日を迎えても、あたしはまだどうすべきなのかを決めることが
できないでいたのだ。
- 541 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:29
-
ただ、ずっと胸の中にひっかかることがひとつだけあった。
それは、このコンサートツアー中ずっとカバンの中にしまいこんでいた、
一枚の絵葉書。
漠然とではあるけれど、埋めるべき何かをそこで見つけられるかもしれないという、一筋の光。
ステージを降りてしまったあたしは、もう、モーニング娘。ではないのだ。
光り輝くライトに照らし出されるべき人間ではもうない。
このツアー中、あたしはあたしなりに答えを出すべくずっと迷っていたのだ。
新生プッチモニのステージ。
新ユニットで頑張っている梨華ちゃん。
もっともっと上を目指すべく頑張っているメンバー。
そんな姿を見れば見るほど、みんなの存在が遠くに思えてくる寂しさ。
彼女たちの輝きは、見えないところでの努力がもたらす成果なのだ
ということは、あたしが一番よく知っていた。
しかし、あたしはその勝負を自ら放棄してしまった人間。
もうここにいてはいけない。
ここにいるべき人間ではない。
そして――――――
あたしはついに決断したのだ。
日本を出て、誰もあたしのことを知らない世界で一からやり直してみたいと。
思いのままに生きてみたい。
あたしがあたしらしく生きていくために。
その思いは今、ちゃんとした形をもって、あたしの前に示されていた。
引退会見を終えると、まるで何かにせきたてられるかのように、
リュックひとつさげて日本を飛び出した。
―――誰に告げることもなく。
- 542 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:31
-
【現在軸】
健斗がぐずる声で、ようやくあたしの意識も覚醒してきた。
彼を抱きかかえたまま、まるで浅い夢をみるように、
いつのまにか過去を振り返っていたのだ。
昨日のことのようにはっきりと思い返すことができる記憶。
ここに来たのは逃げではないと、きっぱりと言い切ることができないのは、
どこか言い訳がましく思っているうしろめたさを、自分自身感じているからだろうか。
「お腹すいたんだね。ちょっと待ってよ。」
荷物の中に入れておいたオートミールを取り出して、健斗の口に運ぶ。
時計をみると、あれから随分時間が過ぎていたのがわかった。
やがてがやがやとした声が近くに響いてきた。
どうやらプレスルームにカメラマンたちが戻ってくるようだ。
「おまたせ。健斗いい子にしてた?」
優子さんは彼のほっぺたにふれてとてもご機嫌な様子。
「さっきまでちゃんとお昼寝してましたよ。あたしもついウトウトしちゃったけど。
優子さんはいい仕事できたみたいですね。」
「わかる?」
「はい。目の輝きが違いますから。」
クスリと笑って頷いた。
「頑張ったかいがあったわ。すごくいいできになると思う。それにね・・・。」
「え?なんですか?」
「また一社契約がとれるかもしれないの。この世界ではかなり名のある出版社の
編集者とコンタクトをとることができたの。彼もこれからパーティーにでるから
そこでもっと話を詰めないといけないんだけど・・・。」
「なら先にホテルに戻ってますよ。」
「話がはやくて助かるわ。これ、ホテルの住所。リザーブは取ってあるからよろしく。」
- 543 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:34
-
ホテルについてからしばらく後、健斗の世話を済ませると、ぐったりと体をソファーに沈めた。
過去のことをこんなにはっきりと思い返したのは、ここに来てから初めてのことだった。
振り返らないように目をつぶっていたのは、自己防衛のためかもしれない。
新しい環境で生きていくには、前を向いていなければいけなかったから。
・・・・いや。きっと自分自身、振り返ることが怖かったのだ。
そこに『残してきたもの』の大きさを知っていたから。
「きっともう、あたしのことなんか忘れているよね。」
自嘲気味に笑って、クアーズを流し込む。
軽い苦味が返って喉に染み込んでいくようだった。
天使の寝顔を確認すると、体一つ分だけカーテンを開けた。
「今夜の月は消えそうなくらい細いな・・・。」
夜空に浮かんでいる細い三日月は、華奢な梨華ちゃんのことを
また思い起こさせた。
しかし、全てを振り切るようにこの国へと旅立ったあたしのことを、
憎みこそすれ、決してもう愛してくれているということはないのだ。
「結局あたしは何を求めていたんだろう・・・・。」
モーニングをやめ、日本を飛び出したあたしが今手にしているものといえば・・・
少しの英語と優子さんとの暮らし。そして、際限のない自由な時間。
ここで得た経験は、決してあのままの生活では得られなかったものばかりでは
あるけれど、結局自分らしい生き方というものは何もつかめていないのかもしれなかった。
「どうしたの?」
「・・・・え?」
「最近ボーっとしてること多くない?」
午後の暖かい日差しを浴びながら、久しぶりに取れた休日を使って
セントラルパークを散歩していたあたしたち。
「ボーっと・・・していますか。」
「あはは。自分では気づいてないみたいね。」
押していたバギーから健斗を降ろすと、優子さんは芝生に腰を下ろした。
- 544 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:37
-
「何か考えてたんじゃないの?ここ最近のひとみは少し顔つきが違うから。」
「どうなんでしょうね・・・。」
「クス。まるで他人事みたいじゃない。」
冷やかすでもなく、彼女はただ健斗をあやしながら穏やかに笑っていた。
彼女の言ったことは間違いではなかった。
ロスから帰ったあの日から、あたしの中でまた何かが変わろうとしていたから。
だけど胸の中にあるこの微妙な変化は、自分ですらつかみきれていないのが
本音だった。
「ひとみ・・・」
「はい。」
「もし、あなたの中で何か迷いがあったとしても、恐れずに進むべきかもしれないね。
私は今まで生きてきた自分の人生に後悔なんてしていないけど、
ただ一つ、この子の父親についてだけは、それが当てはまるかもしれない。」
「健斗の・・・父親?」
「そう・・・。健斗を身籠ったことを知らないまま、あの人は雲の上に行ってしまったから。」
優子さんがプライベートな話をするのは初めてのことだった。
互いに詮索しあわないという暗黙のルールがあたしたちにはあったから。
しかし今この時にその話をするということは、きっと彼女の中にある
あたしへの認識が変わろうとしていたのかもしれない。
「あの時の彼も、そして私も、自分の仕事を形にするために必死だったから。
この子は産まないつもりだった。ならば何も話さないでいたほうがいいって・・・。
だけど、あの朝。彼は突然私の前から消えてしまった。事故であっけなく・・・。」
「・・・そうだったんですか・・・。」
「もしあの日、ほんの少しでも部屋を出る時間をずらすことができたなら。
もしあの時、健斗を身籠っていると話してたなら・・・。
色んなことが心を占めて苦しくなって・・・。そして私は一人で健斗を産むことを決めたの。
彼が残してくれた大切な命だってことに気がついたから。」
「健斗・・・。」
- 545 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:38
- 「思うように生きるためには、ちゃんと自分自身に嘘をつかないでいることが大切よ。
自分自身を裏切ってしまわないように。もしひとみの中で、やり残したものが
あるとするなら・・・それがあなたを迷いの中に閉じ込めているとするなら、
正々堂々と立ち向かわなきゃいけないと思う。」
「・・・・優子さん。」
「えへへ。柄にもなく説教じみちゃったね。」
「いえ・・・」
体についた芝生を払いながら、あたしは立ち上がった。
「優子さん。あたし・・・・あたし、一度日本に戻ります。」
「うん。そう言うと思ってた。」
「ちゃんと向き合ってみます。・・・後悔のないように。」
「いつでも戻ってきていいから。健斗も私もひとみが大好きだから。」
大きく息を吸い込んで、空を見上げた。
遠くに見える摩天楼は、まぶしさに目を細めた瞳にも悠然と聳え立っていた。
- 546 名前:修行僧2003 投稿日:2003/12/31(水) 14:40
- >作者
・・・はい。終了です(w
なんとか今年中に完結したかったのですが、その辺は
ご容赦いただきたいかなと^^;
次回で最終回の予定です。
またしばらく時間がかかるかもしれないですが、
ながーーーーい目でみてやってもらえると嬉しいです。
それではどうもありがとうございました。
来年もみなさまにとってよい一年でありますように。
- 547 名前:名無し読者79 投稿日:2003/12/31(水) 15:49
- 更新お疲れ様です。
待ってました。次回最終回ということでよっすぃーが日本で彼女に会って
どのような結末になるのか楽しみに待ってます。
よっすぃー大好きな私にはちょっと今回の更新部分はきつかったですが(苦笑
- 548 名前:シフォン 投稿日:2003/12/31(水) 16:52
- >作者様
更新お疲れ様でした。
よっすぃ〜の卒業コンサート…何だか現実みたいで涙目になりました(苦笑)
実際こんな感じになりそうで、作者様の読みの鋭さにびっくりでした。
今年一年、素敵な作品を読ませて下さって本当にありがとうございました!
来年もまた作者様の作品を楽しみに待っていますね♪
作者様やここに来ていらっしゃる読者の皆さまにとって、来年も素敵な一年になりますように…☆彡
どうぞ良いお年を……。
- 549 名前:ROM読者 投稿日:2004/01/03(土) 09:59
- 新年のご挨拶・・ m(_ _)m
更新お疲れ様です。ROMは実際に何人かの卒コンに参戦経験が
あるので、雰囲気を思い出してマジ泣きしました。(恥ずい・・
数年後には現実になるのでしょうが、その時も前向きなものであ
って欲しいと思います。
・・せっかく貯めておいた涙を全部流しちゃったので、ラスト分
を急いでチャージしなきゃ。
- 550 名前:なな素 投稿日:2004/01/16(金) 00:08
- >作者様
あけましておめでとうございます&更新お疲れ様です。
このお話の完結を見届けるまでやめられませんよ〜(笑)
優子さん、ええ人や〜
しかしこの年末年始で実際の娘達には色んなことがありすぎましたね。
辻加護卒業は寂しい・・・・
最終回、よっすぃーと梨華ちゃんはどうなる!!??
- 551 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/14(土) 15:11
- 待ってるよ〜
- 552 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/23(月) 19:49
- いしよし〜
- 553 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:02
- >名無し読者79さま
>どのような結末になるのか楽しみに待ってます。
結末は・・・ゴニョゴニョ(笑)まぁ、読んでみてのお楽しみということで♪
いつも応援ありがとうございます。
>シフォンさま
>来年もまた作者様の作品を楽しみに待っていますね♪
今年に入ってからもうどれくらいたったのでしょうね(汗)
今回はやっと最終回にできましたので(笑)よければ読んでください。
>ROM読者さま
>数年後には現実になるのでしょうが
・・・ですね(涙)
でもそのときは笑って送り出してあげたい気分です!
>なな素さま
>辻加護卒業は寂しい・・・・
そうですね。でも飼い殺しの状態よりはいいのかもと
自分自身に納得させています・・・。四期はやっぱ一緒がいいですよね。
>名無し飼育さま
ありがとうございました。なんとか帰ってこれましたので読んでくださいね♪
さてさて、大変長らくお待たせしてしまって、もうお忘れの方も
いらっしゃるでしょうが(笑)、最終回ですので、ぜひ読んでいただきたく
思います。更新滞ってしまってすみませんでした(汗)
それでは最終回。どうぞ♪
- 554 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:04
- 「まいったなぁ・・・これだけ動かないとなると・・・」
タクシーの運転手の独り言は、首都高を降りた今でも同じ言い回しで繰り返し
あたしの耳に届いてくる。
「いいですよ。別に急いでないですし。」
「そうですか・・・。すみませんね。」
帽子をかぶりなおした彼は、短く息を吐き出すと、
目の前に続く車の列をみやっていた。
あたしがこの街から離れて2年。
しかし、ここにはまるで過ぎ去った時間などどこにもなかったかのように、
相変わらず人も車も絶えることなく往来を行き来している。
やがて信号が青に変わっても、歩いているのとさほど変わらないスピードで、
車は発車した。
緩やかに流れる景色は逆に、あたしの心を落ち着かせるためには
よかったのかもしれない。
それというのも、日本に帰ってきた今となっても、
なんとなく頭の中でうまく整理ができていなかったから。
「なかなか進まないな・・・」
まるで自分のことを言われているかのような、そんな言葉を耳にしながら、
後部座席の窓から見えるビルをなんとなく見上げてみた。
薄曇の空模様。
チカチカと映し出される映像と、雑踏の中に違和感なく響く音。
そこには大画面の街頭ビジョンが設置されていて、真新しい車のCMが流れていたのだが。
- 555 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:06
-
「・・・・・・・あっ。あれは・・・・」
次の瞬間、あたしの目は釘付けになってしまったのだ。
モニターの中に映し出されたその姿。
それはまさしく、あたしがここに戻ってきた『理由』そのものであったから。
「梨華ちゃん・・・」
どうやら新曲のリリースのCMらしいそれは、相変わらずの
アイドル色を前面に押し出しているのもであったのだが、
そこにいるメンバーのほとんどが、あたしの知らない顔で埋められていた。
懐かしい胸の痛みが音を立てて迫ってくる。
梨華ちゃんの笑顔は、プロらしい微笑でカメラに収められてはいるけれど、
よりシャープになっている頬のラインがあたしの知らない2年の歳月を
物語っているように感じられた。
「あの・・・すみません。」
「はい?」
「ここで降ろしてもらえませんか。」
「あぁ、いいですよ。これだけ混んでいたんじゃ仕方ねいですからね。」
支払いを済ませてタクシーを降りると、あたしはしばらく
そのビルを見上げていた。
「帰ってきたんだな・・・」
もうさっきの映像は流れることはなかったけれど、
通り過ぎる風に吹かれながら、しばしその場にたたずんでいた。
オートロックを解除して、部屋に向かう。
日本を離れてはいたけれど、この部屋の契約はそのままにしておいていた。
「ふぅ・・・。ただいま。」
誰がいるともないこの部屋にそう言って、さっきコンビニで買った雑誌を
テーブルの上に置いた。
携帯の請求書や、郵便物も、ちゃんとそこにまとめて置いてくれている。
月に一度、母親が掃除にきてくれているのは、エアメールで知ったことだった。
帰ってこいと催促されることはなかったけれど、
心配をかけていることも充分わかっていた。
- 556 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:07
-
窓を開けて、空気を入れ替える。
ここから見える街並みは、ニューヨークとはやはり違った景色を映し出していた。
「・・・梨華ちゃんが・・・ね・・・。」
ぽつりと独り言をもらしたのは、さっきの雑誌に目を通してのことだった。
あれからモーニングのメンバー構成は随分かわったものになっていた。
あたしが知っているメンバーは、もはや小川と道重、それに梨華ちゃんだけに
なっていた。あとは9期までの新メンバー。
あれからもつんくさんは同じようなことをずっと続けているらしい。
そして、一番気になっていた梨華ちゃんは、今ではモーニングを支える
リーダーとなっていたのだ。
そこに至るまでの経緯を思うと、一人逃げ出してきた・・・いや、
置いてきてしまったあたしの行動が、ひどく心に突き刺さっていった。
ため息をもらしてカバンから携帯をとりだすと、
もう随分と使っていなかったそれを充電器に差し込んだ。
「・・・え?」
耳に届いたのは確かに聞き覚えのあるメロディー。
一瞬何かの間違いかと思ったのだが、やはりそれは間違いではなく
着信を知らせるものだった。
少し戸惑いながらも、今差し込んだばかりの携帯を開いて、
誰からのものかを確認したけれど、番号だけの表示のそれは、
つまり、誰からの着信かを示す手がかりにはならなかった。
たった今日本に帰国したばかりのあたしのことは、誰も知らないはず。
誰にも言わないで帰ってきたのだから。
となると、間違い電話の可能性もなくはなかったのだが、
あたしはボタンをおした。
もしかしたら・・・との想いを胸に抱いて。
- 557 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:09
-
「・・・・・はい。」
「もしもし?」
「はい。」
「・・・よっすぃー・・・?」
「・・・え?」
「よっすぃーだよね?」
「そう・・・だけど。君は誰?」
「うそーっ!マジで!?わたしだよ!ごっちん!!!」
「え!?ごっちん!?」
「やっぱよっすぃーだったんだ!帰ってきたんだね!」
電話の相手は期待していた【あの娘】ではなく、ごっちんだった。
それは本当に奇跡に近い偶然がもたらした再会。
ボーっと街頭ビジョンを見上げていたあの時に、
移動中の車からたまたまあたしの姿を見かけたらしい。
その話し振りから彼女の興奮した様子が伝わってくる。
「うわぁ。もっと話したいんだけどさぁ、今から舞台稽古なんだよね。
ねぇ、夜って時間ある?」
「うん。こっちは全然かまわないけど。」
「よかった。それじゃさ、7時には帰れると思うから家こない?
ここからだとそっち行くよか近いから。」
「OK じゃ時間みて行くよ。」
「楽しみにしてるね。じゃ!」
「うん。頑張ってね。」
苦笑して携帯を閉じた。
と同時に、思い浮かべたのは梨華ちゃんの顔。
ごっちんの携帯が変わっていたように、彼女もまた携帯を変えている
可能性がある。
番号が仮に変わっていなくとも、今あたしがかけたところで、
何をどう話せばいいのだろうか。
「ふぅ・・・。案外根性ないやつだな。あたしって・・・」
ここに帰ってくるまでの勢いはどこへやら。
どうやらしぼんでいく意気込みは、胸の中にある不確かな現実を見据えていたから。
過ぎ去りし時のまま、留めた影があたしの心を覆う。
そう。それはつまり―――あたしと彼女との決定的な別れを意味している。
しかしそれが現実のものとして訪れたとしても、自業自得なのは最初からわかっていた。
いや。それどころか、もう彼女の中ではとっくに終わっているはずなのだ。
・・・・わかっていたはずだった。
ならば、あたしはどうして日本に帰ってきたのだろう。
- 558 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:12
-
「よっすぃー!」
タクシーから降りてきた勢いそのまま、ごっちんはあたしを体ごと抱きしめた。
「久しぶりだね。」
苦笑するあたしとは対照的に、弾む息からこぼれる笑顔。
「んだよ。どうしてたんだよ、今まで。」
「まぁ。色々。」
「ったく。まぁいいや。とにかく家入ろう。」
ソファーにかけて久しぶりの再会をワインで祝う。
あたしと違ってまだ20歳になっていない彼女も、
この時ばかりは乾杯に付き合ってくれた。
「全くさぁ。よっすぃーのやることには驚かされたよ。」
「あはは。だよね。」
「何他人事みたいにのんきに笑ってるの。誰にも何にも言わないでアメリカなんか行っちゃってさ。」
少しの苦笑いを浮かべて、あたしはワインを口にした。
「あれから大変だったんだからね。よっすぃーが消えたって。
みんな大騒ぎだった。誰もよっすぃーが渡米するなんて聞いてなかったから。」
「うん・・・迷惑かけたよね。で。その後みんなどうしてるの?ごっちんはあのまま?」
「ん?あぁ。わたしはさ、ほら、今日みたいにミュージカルの仕事が多くなってるん
だけど、唄もまだやってるよ。飯田さんはハロプロも辞めちゃって、今は
本格的に絵の勉強してる。時々個展なんかもやってるけどね。」
「そっか・・・。」
「矢口さんはラジオが本業に近くなってるかな。タレント活動も頑張ってるよ。
後は、安倍さんもソロで頑張ってるし。辻加護はユニット組んで唄うたってる。
他の子はハロプロ自体辞めちゃって学生に戻った子もいるし、
ドラマとかタレント業やってたり。色々。」
「随分変わったね・・・。あたしがいたあの頃より。」
「そうだよ。本当にこの2年で色んなことがあった。
よっすぃーの卒業をみんなそれぞれに受け止めたのかもしれないね。
まぁ、いい意味できっかけになったんじゃないかな。」
「きっかけか。」
「うん。」
- 559 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:13
- 結果的にあたしの引退がメンバーの進退に影響を与えていたという事実を
知って、ほんの少し戸惑いを覚えたけれど、それはいずれ誰にでも訪れる
選択であることもまた事実ではあった。
けれどその呼び水となってしまったことについて、申し訳なく思う気持ちが
心の中に渦巻いてもいた。
梨華ちゃんはあれからどんな気持ちでこの2年という月日を過ごしていたのか。
「でも・・・。」
そんな考えを裏打ちするかのように、不意にごっちんが言葉をもらした。
逆説的に切り出された話は、あの娘の話かもしれないとの直感が同時に働いたから。
「どうしたの?」
「ん・・・。」
ごっちんは、やや言いよどむように一度間を置いた。
そして。
「梨華ちゃんがね・・・」
そうかもしれないと予想はしていたけれど、やはり彼女の名前が出たとたん、
胸の中にドクンと言い知れぬ鼓動が響き渡っていった。
あたしの予想は当たっていた。
そしてそれはきっといい知らせではないことも。
「梨華ちゃんが・・・どうかしたの?」
「・・・うん。ほら、梨華ちゃんてさ、人一倍頑張りやじゃない。
メンバーも新旧入れ替わりが激しくてさ。なのに結局一番難しい
仕事任されることになったんだよね。」
「リーダーになったんだよね?確か。」
「よく知ってんじゃん。」
「雑誌で読んだんだよ。新曲のリリースが特集されてた。」
ごっちんは立ち上がると、手をつけていないワインを置いたまま
冷蔵庫に飲み物を探しにいった。
- 560 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:14
-
「・・・で?梨華ちゃんどうかしたの?」
待ちきれない思いでごっちんの姿を追う。
「何があったって訳でもないんだけどね。なんか見ていて大丈夫かなって。
・・・・よいしょっと。」
「大丈夫って?」
「ドラマの仕事に映画。ユニット2つもこなしてて、おまけにモーニングのリーダー。
・・・・・頑張りすぎてて壊れそうなんだよね。」
梨華ちゃんの性格から考えると、なんでも精一杯頑張るのが彼女の信条。
だとすると、相当今の状況が彼女にとってハードであるのも頷ける。
「まぁ仕事に恵まれてるって思えばいいことなのかもしれないけど。
今の事務所の体制は梨華ちゃんに頼りきってるんだよね。
今じゃモーニングも他のアイドルと横並びだし、歌以外のジャンルで
新境地を開拓したがってるみたい。
って言ってもなかなか実力がないと厳しい世界だからね。
事務所の期待が自分の肩にかかってるのがわかっているから、
もっともっと頑張らなきゃって。そんな感じかな。」
「・・・・そっか・・・・。」
「息抜きさせた方がいいと思ってさ、たまに仕事一緒になった時なんか
カラオケでもいこうって誘うんだけど、なかなか乗り気になってくれないんだよね。」
ごっちんはさっき持ってきたジュースをごくりと流し込むと、
ふーっと息をもらしながらペットボトルを眺めている。
「大丈夫なのかな・・・梨華ちゃん。」
「んー・・・。どうだろうね・・・。」
頭の中を巡るのは、もう梨華ちゃんのことだけだった。
今、この瞬間を彼女は一体どう過ごしているのだろう。
抱え込まなければいけなかった重圧に、押しつぶされてはいまいか。
あるいはその原因を作ってしまったのは、もしかして・・・・
しばらくの沈黙の後、ワイングラスを傾けたあたしを見ながら、
ごっちんは静かに口を開いた。
- 561 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:16
-
「あのさ・・・。こんなこと言ったらあれなんだけど・・・。」
「・・・ん?」
「・・・うん。あのね。梨華ちゃん・・・・。あれから笑わなくなったんだよね。」
口の中に含んだワインとともに飲み込んだのは、苦くて切ない思い。
きっと、ごっちんが言ってることは―――
「ごめんごめん!今のは聞かなかったことにして?マジごめんね?」
「・・・いや。いいよ。」
「別にさ、よっすぃーとは直接関係のないことだもんね。
変に誤解させるようなこと言って悪かった。ごめん。」
「ん・・・あぁ。」
「せっかくよっすぃー帰ってきてくれたのにね。ふぅ・・・。
よし!今夜は久しぶりにパーッと騒ごう!よっすぃーの話も聞きたいし。
そうだ。簡単なものでよかったら何か作るけど。冷蔵庫に何かあったかな・・・」
お茶を濁すようにソファーから立ち上がった背中。
けれど、あたしは一言だけこう伝えたのだ。
「帰ってきたのはあたし自身にけじめをつけるためだよ。
・・・・梨華ちゃんとの関係、ちゃんと決着つけるために。」
「・・・そっか。うん。うまくいくといいね。」
そう告げると、彼女は振り返らないでキッチンに向かっていった。
次の日。今まで散々親不孝をしていたあたしは久しぶりに実家に帰った。
本来ならすぐにでも梨華ちゃんに会いにいくべきところなのだろうけど、
あいにく海外での撮影の仕事で日本を離れているらしい。
しかし、ごっちんに教えてもらった情報はそれだけではなかった。
梨華ちゃんは今でも携帯の番号を変えていないと。
そしてあたしは実家に一度戻ることを決めたのだ。
心配をかけていた家族に顔をみせるために。
- 562 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:18
-
モーニングにいる時も頻繁に帰省することはなかったけれど、
今とあの時ではまた親にかけている心配の度合いも違うだろうから。
しかし、何も言わず急に帰ってきた娘のことを、
母親は愚痴ひとつ言わないで笑顔で迎えてくれた。
すると今まで勝手を許していてくれたことに対して、
とたんに申し訳ない気持ちがわいてきたけれど、同時に感謝の気持ちも感じることができた。
夜になると父や弟たちも帰ってきて、本当に久しぶりに家族との団欒を楽しんだ。
向こうでの暮らしのこと、みんなの今の生活。
話題は尽きることなく、心の底からリラックスできる時間を充分味わうことができた。
心が暖められていく家族のぬくもり。
大事な何かを見失いそうになった時、掛け値なく心配してくれて
助けてくれる、大切な家族がいたことを再確認させてもらえた気がした。
そしてあたしにはもうひとつ『家族』と呼べる仲間がいたことを思い出していた。
その中でも梨華ちゃんは特別な存在だったのだ。
2年前までは確かにこの手の中にあったぬくもり・・・。
しかし、手放してしまったのはあたし自身なのだ。
失うことで知ることもある。
ならば今のあたしにできることといえば。
大切な彼女との関係をうやむやのままにおいてきてしまった罪を
償わなければならない。
そうした上で、彼女が望む最大限のことをすべきなのだろう。
例え、背中を向けられたとしても。
もう二度と会うことができなくなったとしても。
―――それを彼女が望むとするならば。
あたしの中にあった恐れや迷いは、もうすっかり消え失せていた。
- 563 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:19
-
実家で過ごしたのはほんの2〜3日であったけれど、
そこで得たものはあたしにとってとても大きなものだった。
身も心も落ち着くことのできる時間をもつことで、
おぼろげながら見えてきたことがあったから。
しかし、今はまだ駆け出すことはできない。
なぜなら、今はまだスタートラインにすら立っていないから。
握り締めていた携帯を開くと、全てのケリをつけるためにあたしはボタンを押した。
3回目のコールでつながった携帯。
「あっ・・・あの。」
「―――こちらは留守番電話サービスです・・・・・・」
気負っていた勢いとは裏腹に、返ってきたのは紋切り型の音声。
そのタイミングの悪さに短く息をついだ。
それにしてもごっちんから教えてもらった梨華ちゃんのスケジュールは、
確かに休日のはずなのだが。
「―――ピーっという発信音の後にお名前とメッセージをどうぞ。」
気を取り直して、思考を回転させる。
もしかしたら急に仕事が入ったのかもしれないし、
どこかに出かけていて出られない可能性も考えられた。
ならば今日わざわざこちらの都合にあわせてもらうのも
悪い気がしたのだが。
「あの。吉澤です。突然電話なんかしてごめん。
・・・会って話したいことがあるので、都合がよければ会ってもらえませんか。
ベイサイドホテルのスカイラウンジ。9時に予約入れてるので・・・。
都合が悪ければ折り返し連絡ください。待ってます。」
できればこの気持ちが揺らぐ前に会いたかった。
そんな思いはこちらの都合のよい自分勝手なものなのだけれど。
電話を切ると、大きく息をはきだした。
緊張して固くなっていた自分に苦笑する。
直接声を聞くことはできなかったけど、
今はその方がよかったのかもしれないと思い直した。
リビングの時計をみるとまだかなり時間があったから、
夜にそなえて睡眠をとることを決めた。
眠ることなどできないと知りつつも。
- 564 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:20
-
地上50階から見下ろすことのできる夜の東京。
月を背負うようにせりたっている東京タワーが、
切なくなるほどに美しく照らし出されている。
「あのすみません。同じものをもうひとつ。」
会釈してグラスをひくウエイター。
ガラス張りに面したカウンターに映し出されているのは、あたしの姿だけ。
予約していた時間からどれぐらいの時がたっているだろう。
携帯を開いて確認したのは、時間だけではなかった。
「やっぱり・・・勝手過ぎたかな・・・。」
メールすら入っていない携帯を閉じて、静かに置かれたグラスを手にすると、
自嘲気味に笑って喉に流し込んだ。
客の出入りはあれから何度もあったけれど、
ここに来てほしいあの娘の姿は、今も現れてはいない。
こちらからもう一度連絡をとるべきなのだろうか。
だがしかし、連絡がないのもここに来ないのも
彼女が決めたことであるならば、あたしからはもう何も言うことはできない。
ジーンと目の奥に鈍い痛みが訪れる。
けれど、ここで泣く訳にはいかないのだ。
それは今日と言う日が終わりを告げるまであたしには許されない行為だから。
「・・・お客様、大変申し訳ございません。当店はまもなく閉店いたしますが・・・。」
申し訳なさそうに声をかけてきたウエイターに振り返ると、
いつのまにやら店内には人影が見当たらなくなっていた。
「・・・もうそんな時間か・・・。わかりました。」
ほとんど手をつけることのなかった何杯目かのグラスは、
もう氷が溶けきっていて、ぼんやりとした二重の層を浮かべていた。
じんわりとグラスを伝う水滴が、まるで全ての終わりを
告げるかのように、コースターにたまった水の輪の上に落ちて消えた。
そしてカウンターにおいていた携帯を手に取ると、あたしは立ち上がった。
- 565 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:23
-
結局梨華ちゃんは来てはくれなかった。
それはつまり、それ以上でもそれ以下でもない現実。
きっともう、あたしの存在は彼女の中から消えてしまっていたのだろう。
「すみません遅くまで。ごちそうさま。」
「いえ。またのご利用をお待ちしております。」
預けていたスプリングコートを受けとると、扉の前で後ろを振り返った。
夜の闇に浮き上がっている東京タワーは、もう月を背負ってはいなかったけど。
エレベーターに乗り込むと、背中を壁にもたせかけて外の景色を眺めていた。
ガラスの外に映る街のネオンに引き込まれるように、
高速で地上に向かって降りていく。
もうあたしのすべきことは何も残されてはいない。
結局あたしは何をしたかったのだろうか。
全てを投げ出して、思いのままに生きてみたいと飛び出したあの日。
最後の別れの言葉すら言うことなく、振り切ってしまった自分の行動。
そして今日、あたしはそんな自分の過ちを償うために、
彼女に会おうとここまで来た。
けれどそれすらも自分勝手な行動だったのかもしれない。
本当は、中途半端に投げ出してしまった罪の重さから解放されたい
だけだったのでは?
梨華ちゃんのためではなく、本当はあたし自身が楽になりたかったのでは?
「・・・・救いようがないな・・・。」
重く締め付ける胸の痛みに耐えながら、それでもあたしは
ガラスに映る自分の顔をじっと見ていた。
それはとても情けなく、不恰好に歪んでいる。
しかし・・・・
果たして本当にそれだけなのだろうか。
純粋に、もう一度しっかりと心の中を覗き込む。
嘘偽りのない心の底にある気持ちを確かめるために。
そしてあたしは自分自身に問いかけていた。
本当は今でもあの娘のことが・・・梨華ちゃんのことが好きなのかと。
深く静かに、心の内を探って。
「・・・あたしは・・・梨華ちゃんの・・・こと・・・」
- 566 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:24
-
体にかかる重力を感じると、一階へと降りる扉が開いた。
その言葉を言い終わる前に、エレベーターは地上へと降り立ってしまったのだ。
それはまるで、もうどうにも間に合うことのない終わりを告げるように。
ロビーを抜けて外に出ると、月はやはり今でも黒い雲に隠れていた。
「どうやら月にまで嫌われてしまったみたいだな。」
空を見上げて独りつぶやくと、そのままタクシー乗り場へと向かっていった。
カツカツと聞こえる自分の足音だけが、やけに頭に響いていくのは、
もう隣を歩いてはくれない、もうひとつの足音を無意識に探していたためかもしれない。
しかしその時突然、コートに入れていた携帯が振動とともに鳴り響いた。
ドクドクと脈打つ鼓動を感じながら、携帯を手に取る。
ディスプレイに表示されているその名前は・・・・
「も・・・もしもし。梨華・・・ちゃん・・・?」
「・・・うん。」
なんということだろう。
諦めかけていたあたしの耳に届くのは、確かに彼女の声だったのだ。
「どうしたの?どうして来てくれなかったの?今どこにいるの?」
高ぶった感情を抑えることができずに、気づけば一方的に問い詰めていた。
「どうして・・・か。どうしてだと思う?」
「そんなのわかんないよ。」
あせる気持ちが空回りしていく。
しかし、梨華ちゃんは対照的にとても静かな声でこう言った。
「もし本当に私に会いたいと思っているのなら、ここにきて。」
「・・・・ここって?一体どこなの?」
「始まりでもあり、終わりでもある場所。」
「何言ってるの?わかんないよ。ねぇ?」
「12時・・・。今日が終わる前に。」
「えっ?」
「待ってるから・・・。」
「ちょっと待ってよ!もしもし・・・?も・・・」
途切れた携帯にすぐさまリダイアルをかけたけれど、
電源は落とされていた。
- 567 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:26
-
「・・・っくしょう。どこなんだよ・・・。」
フル回転で思考をめぐらせる。
―――始まりでもあり終わりでもある場所―――
彼女が望んでいる場所。それは一体・・・
しかしここで迷っている時間はないのだ。
目を閉じて意識を集中させる。
ここではなく、彼女自身が選んだ場所。それは・・・・
目の前のタクシーに乗り込むと、あたしは行き先を告げた。
確信などあるはずもない。
今から急いで向かったとしても間に合うかどうかすらわからない。
けれど、あたしはなぜかそこで彼女が待っていると感じたのだ。
「・・・・はぁっ・・・はぁっ・・・・」
タクシーから降りると一目散に夜道を駆け抜けた。
街灯を頼りにただひたすらその場所を目指す。
うすぼんやりと照らし出されている銀色の巨大な施設、
そこはあたしの卒業コンサートで最後の公演となったSSAだった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・。」
時刻はまもなく12時を指すところまできている。
ぎりぎりで間に合ったのはいいが、しかしこの暗がりの中、
肝心な梨華ちゃんの姿はどこにも見当たらない。
「・・・くしょう!ここじゃなかったのかよ・・・」
大きく息をついでぐったりとうなだれた。
もうあたしに与えられた時間は―――しかしその時
「よくここがわかったね。」
幻聴ではなく、それは間違うはずもない梨華ちゃんの声だった。
「・・・梨華ちゃん・・・」
視線を声を方にむけると、彼女の姿がそこにあったのだ。
暗く覆っていた雲の切れ間から差し込む、月明かりを受けて。
肩で息をするあたしに歩み寄ってくる姿が、まるで幻のようにすら思える。
- 568 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:28
-
しかし、2人の間に流れる時間はまるで静止したかのように、ピーンとした
空気を伴ったまま動き出そうとはしない。
ただじっと見詰める瞳がまっすぐにあたしを刺していた。
「ごめん・・・ごめんね、梨華ちゃん・・・」
最初に喉の奥からでてきた言葉はそれだった。
この一言こそがあたしの中にあった全ての思いを伝えるべき言葉のように思えたから。
けれど梨華ちゃんは―――
「どうして・・・謝るの。」
低くくぐもった声のトーンは、戸惑っているというよりむしろ、
冷静にこちらを伺うようなものだった。
「だってあたしは・・・・・・」
「自分の夢を追いかけていたんでしょ?全てを投げ捨てて。」
冷たく響く言葉の一つ一つが、心に鋭く突き刺さっていく。
梨華ちゃんはあたしがここに来た意味をどうやら理解しているように思える。
「そう・・・だね。あたしは全てを投げ出したのかもしれない。
だけどね・・・」
しかし彼女はその言葉を遮った。
「あなたがいなくなってからどれくらいの時間が過ぎていったんだろう。」
「2年・・・かな。」
「2年。」
「・・・うん。」
「その歳月の間に色んなことが変わったわ。私も。そしてきっと・・・あなたも。
なのにどうして今になって私に会いにきたの?」
問いかけるというよりも、問い詰めるような口調。
無論それも無理のないことだとはわかっていた。
けれど言葉の端々に込められている静かな悲しみは、
あたしを苦しくさせていく。
「あたしは自分の道を歩いてみたかった。
気づけば無我夢中で駆け出していた。だけど気づいたんだ・・・。
梨華ちゃんとの関係。ちゃんとけじめをつけていなかったことに。」
そこまで言い終わると、梨華ちゃんは不意に笑い出した。
「・・・何がおかしいの?」
「おかしいわよ。おかしくて・・・涙がでてくるわ。」
ぽろりとこぼれおちてくるそれを、あたしはただじっとみつめていた。
- 569 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:30
-
しかし一転すると、また冷ややかな瞳であたしを見据えた。
「けじめですって?今になって何を言い出すのかと思ったら。」
「梨華ちゃん・・・。」
「私があれからどんな思いでこの月日を過ごしてきたと思ってるの。
もう・・・・。もう全て終わったことじゃない!」
身を震わせてたたずむ彼女の姿が痛々しく映る。
ここに来たのは間違いだったのだろうか。
やはり彼女の中では全て終わった過去のことでしかないのだろうか―――
しかし、もしそうだとすると理解できないことがある。
どうして梨華ちゃんはわざわざあたしをここに呼んだのか。
それは明らかに矛盾している行動だから。
―――複雑に絡んだ思いが交錯していく。
自分自身何を伝えるべきなのか、混乱して消えていきそうになっていく。
けれどもしここで逃げ出したとしたら、あたしは何も変わっていないことになる。
そんなのはもう―――嫌だ。
「梨華ちゃんのこと忘れたことはなかったよ。・・・本当に。
結果として全てを投げ出してしまったのも認める。
だけど・・・だけどあの時のあたしのままじゃどうにもならなかったんだ。
自分自身が中途半端のままじゃ、前に進むことができなかったから・・・」
「そう。それであなたは自分の道を信じて飛び出したのだから、
それでいいじゃない。今更私に会う必要もないじゃないの。違う?」
「・・・・・・・違うよ・・・。」
「何が違うって言うの?」
「あたしは・・・・今でも梨華ちゃんのことが好きだから。」
「・・・・勝手よ。そんなの勝手過ぎるよ・・・。
私がどんな思いで・・・あなたの・・・こと・・・・忘れる努力をしたのか・・・
全然わかってないじゃない!!!」
両手で自分の体を抱えながら、ぎゅっと苦しみに耐えている表情が、
悲しげに映っている。
- 570 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:31
-
「・・・・・・・ごめん。ここまで話すつもりはなかったんだ・・・。
ただ梨華ちゃんの中でもし、終わらせることのできない苦しみが
あったとしたら、それから解放させてあげなきゃって思っていたから。
ここに来たのもちゃんと全てにケリをつけるため。」
「何それ・・・。今でも私があなたを思っていたらってこと?
自惚れも甚だしいわよ・・・」
「そうじゃなくて・・・。君がもうすっかりあたしのことなんて忘れているとも
当然考えていたよ。その可能性の方がより確実なのはわかっていたから。
けれど、うやむやになっていたのも事実だから。
・・・・・・・梨華ちゃんがもし望むのなら、あたしはもう二度と君の
前には姿を現さない。ちゃんと諦めるから・・・」
全てを終わりにしたいと望んでいるのは果たしてどちらだろうか。
結局諦めきれない思いをかかえてここまで来たあたしは、
やはり梨華ちゃんを諦めることなどできなかったのだと、
改めて思い知る結果となったのは変えようもない事実だった。
ちゃんと諦めるなんて言葉にはだしたけれど、
そうではない思いがあたしを狂わせていきそうになる。
「私は・・・。もうあなたのことは忘れたわよ。
だからあなたに連絡をもらった時も、動揺なんてしなかった。
全て・・・全ては終わったことだから。」
呼吸することすら苦しくなっていくほどの言葉を受けて、
こなごなに砕け散っていく。
やはりあたしの存在は彼女の中からは消えてしまっていたのだ。
だけど・・・だけど、これだけはちゃんと聞いておかなければならない。
「・・・ならどうして、あたしをここに呼び出したりしたの?」
決定的な言葉を聞いた今でも、微かに伝わる梨華ちゃんの思いを
感じているのは、自惚れと呼ぶべきものかもしれない。
だけどずっとひっかっかっていたのだ。
わざわざここに呼び出した理由。
もしかしたら彼女は―――
- 571 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:33
-
「・・・・ちゃんと別れるためよ。2年前に届けることのできなかった
思いをあなたに返すために。」
そしておもむろに、彼女はあるものを取り出した。
「これ。あの日、あの卒業コンサートが終わってからあなたに渡そうと
思っていたもの。」
そしてその小さな包みを、震える手であたしは開いた。
「・・・・これ。」
「そうよ。私はこれをあなたに渡したかったの。」
あの日、引退会見に行く前に、梨華ちゃんがあたしに向けた視線は、
これを意味していたのだ。
あたしの手の中にあるもの。
それは―――あたしが梨華ちゃんにプレゼントしたものと同じ、
あのブレスレットだった。
「モーニングを辞めても、この世界を辞めることになったとしても、
私はあなたのことをずっと好きでいるって・・・ずっとこの思いは変わることは
ないって伝えたくて。ずっと一緒にいたいって思っていたから・・・。
だからあなたがくれたものと同じこのブレスレットをあの日渡したかったの。
2年たった今、こんな形で渡すことになるなんて思ってもいなかったけれど・・・」
「梨華ちゃん・・・」
なんという皮肉だろう。
続けていくはずの思いが、あろうことか別れの形見になるなんて。
「・・・もうこれで私の思いは全て振り切ることができたわ・・・。」
「ここに呼び出したのは、そういうことだったんだね・・・。」
「・・・うん。これであなたも・・・私も、もう何もかも終わりにすることができるから。」
- 572 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:34
-
静かに流れていく色々な思い出。
あの日、青くゆれる一面のサイリウムがあたしを送り出してくれたように、
梨華ちゃんもまた、精一杯の思いであたしを送り出そうとしてくれていた。
始まりでもあり終わりでもある場所。
それは別れのためにこそふさわしい場所だったのだ。
「・・・さよなら・・・・。」
「・・・・・っく・・・・。」
涙が流れてまともに呼吸ができない。
手にしたブレスレットがきしんだ音をたてていく。
「さよなら・・・・よっすぃー・・・・。」
その時あたしは初めて気がついた。
今ようやく梨華ちゃんが昔の呼び方であたしを呼んでくれたことに。
去り行く背中。
もう取り戻すことはできない彼女。
カツンカツンと路面に響いていく足音が、ひとつ、またひとつ遠ざかっていく。
それはあの卒業コンサートの日にこの耳に響いてきた、
ファンの子たちの熱い声援とは、全く違ったものであった。
あの日背中で受け止めた声援は、ステージを去っていくあたし自身が
納得した上で受け止めたもの。
しかし、今この耳に届くのは、消化しきれないままで、
ただ残酷に響き渡る足音だったから。
本当にこのままでいいのだろうか、
本当に諦めてしまっていいのだろうか―――
そして。
「梨華ちゃん!!!」
夜の闇に叫んだあたしの切なる声は、静かな空気を切り裂くように、
どこまでも遠く響き渡っていった。
- 573 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:36
-
―――7年後
「これでようやく完成だな。」
見上げる建築物は、夏のキラキラとした光を受けて、
眩しく光り輝いている。
「・・・はい。」
「これで吉澤も一人前になったってことだ。」
「ありがとうございます。これも中村さんのご指導があったからです。」
「これからは自分の感性を信じていい仕事をしていくことだ。君には期待しているよ。」
「はい!」
「いい返事だ。後で依頼主さんに祝い酒をもっていこう。いい酒が飲めるよ。」
中村さんが現場を去ってからも一人、あたしはこの建物を眺めていた。
初めてあたしの設計でまかされたこの仕事を、心行くまで味わうために。
あれから、あたしは建築士を目指して勉強していた。
大学を出てからは父の知り合いの紹介、つまり中村設計事務所の
中村さんの下でずっと仕事に携わっていた。
一級建築士の試験にも合格し、これが初めて自分の設計で建てる
ことになった建築物だったのだ。
「・・・・まだまだこれからだな。あたしが目指すものはもっともっと、大きなものだから。」
一息つくと、携帯を取り出してメールを打つ。
=やっと完成したよ。そっちは何時に終わりそう?=
しばし返信を待つ時間すらもどかしく思える。
だけど、返ってきたのはメールではなかった。
「もしもし?今大丈夫そう?」
「うん。梨華ちゃんこそ。仕事中じゃなかったの?」
「こっちは平気よ。ちょっと前に休憩入ったとこだから。」
「そうか。よかった。」
「それより、やっと完成したのね。おめでとう。」
「へへ。ありがとう。」
「これでようやく第一歩を踏み出せたわね。本当におめでとう。」
梨華ちゃんからのお祝いの言葉は何よりも嬉しい。
それは誰よりも先に祝ってもらいたい相手であるから。
- 574 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:38
-
「撮影何時くらいに終わりそうなの?」
「今のところ滞りなく進んでるから、夕方にはあがれると思うわ。」
「そっか。こっちは一度事務所に戻って依頼主さんのところに
挨拶回りに行かなきゃいけないんだけど、それも早く切り上げられそうだよ。」
「そうなの?それじゃさ、今日は久しぶりにあのお店に晩御飯食べに行かない?」
「そうだね。そうしようか。もちろん梨華ちゃんのおごりでしょ?」
笑ってそう答えるあたし。
「クスクス。またそんなこと言って。どうせレジでは自分が払うっていうくせに。」
梨華ちゃんもまた笑って答える。
「たまにはさ、大女優さんにおごってもらうのもいいかなと思って。」
「うわー。なによそれ。イジワルね。・・・あ、はい。ごめんそろそろ行かなきゃ。」
「あ。ごめんね。」
「それじゃまた後で。」
「うん。頑張ってね。セリフとちるなよ?」
「クス。長引かせたくないから頑張るわよ。じゃね。」
耳に残る余韻を楽しみながら、携帯を閉じた。
あの日。2人が再会したあの夜。
全てが終わってしまってもおかしくないというギリギリのところで、
あたしが叫んだ心からの言葉に、梨華ちゃんは足を止めてくれた。
それから随分時間がかかったけれど、2人はゆっくりともう一度
関係を取り戻すことができたのだった。
そう。それは恋人として。
ずっと自分だけの道を探していたあたし。
もうその頃には胸の中に、はっきりと進むべき道が示されていた。
ニューヨークで見上げた摩天楼の雄大さ。
東京のシンボルとして聳え立つ東京タワー。
それらはいつも人の心に何かを訴えかけるものとして、
あたしの中に強く刻み込まれたものだった。
あたしもいつかそんな人の心をひく建築物を建ててみたい。
その思いから進んだ道。
形のあるものを残してみたい。
自分が生きた証となるようなものを。
- 575 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:39
-
そしてあたしはカメラを手にした。
ニューヨークで更なる活躍をしている優子さんと健斗に
あたしがした仕事を見てもらいたくて。
色んな人に支えられてここまできたのは言うまでもない。
そして、あたしが一番心から信頼している相手。
それは―――紛れもなく、梨華ちゃんである。
「えっと・・・・わたり蟹のパスタと・・・。アスパラサラダ。
ひとみちゃんはどれにするの?」
「そうだな・・・。カマンベールピザとポップシュリンプ。あとはチリワインを2つ。」
メニューを閉じて梨華ちゃんと向き合う。
2人とも忙しくてなかなかこうやって食事をすることもできないけれど、
今日は時間も余裕があった。
そして運ばれてきたワインを手にすると、あたしの仕事の完成を
祝ってグラスを合わせた。
梨華ちゃんはあれからモーニングを卒業して、今は本格的に女優としての道を進んでいる。
ずっと肩にかかっていたモーニングのリーダーとしての役割も、
ようやく後輩に託すことができるくらいに成長した彼女たちを
見届けてから卒業したのは、本当に責任感が強い彼女らしい引き際だった。
「こうしてひとみちゃんとおいしいお酒が飲めて、本当に幸せだわ。」
「それはこっちのセリフだよ。今まで支えてくれてありがとう。」
「あら。そんな言葉を聞かせてくれるなんてね。もっと感謝してもらおうかしら。」
「はは。いつだって感謝してるさ。気づいてないだけでしょ?」
「気づかないわよ。いつだって仕事で忙しいって言ってるんだもん。」
「ごめんね?」
「クス。今日のひとみちゃんて、なんか素直でかわいい。」
「からかうなよ。」
「うふふ。あ。料理がきたわよ。」
久しぶりにおいしい料理を梨華ちゃんを前にして食べることができる幸せが、
ふつふつと心の底からわきあがってくる。
あたしは本当に幸せものかもしれない。
- 576 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:41
-
食後のコーヒーを飲む頃には、もうすっかりアルコールも抜け切っていたけれど、
あたしの気分はより心地いい満足感で満たされていた。
「ふーっ。お腹いっぱいー。」
店の外にでると、夏草のにおいがどこからともなく揺らいできた。
今夜は湿度もそれほど高くなく、自然と吹いてくる風も心地よく感じる。
「今日はどうする?うちにくる?」
車のキーをジャラリと鳴らして彼女を見た。
「うん。そうする。でも、その前に行ってみたい所があるの。」
「ん?どこかいいデートスポットってあったっけ?」
「とっておきのところがあるわ。」
ふわりと笑って梨華ちゃんがあたしの手をひいた。
「さてさて。どこにお連れいたしましょうか?」
キーを挿してエンジン音を響かせる。
「ひとみちゃんが初めて成し遂げた仕事、見てみたいの。連れて行ってくれる?」
「別にかまわないけど、特に見るべきほどの建物じゃないよ?」
「いいの。ひとみちゃんが建てたことに意味があるんだから。」
「了解。」
そして車は夜の道を走り出した。
「へぇ・・・。これがひとみちゃんが手がけた仕事なのね。」
3階建ての真新しい建物が、街灯の光を受けて静かにたたずんでいる。
「うん。そうだよ。」
「・・・なんかすごいね。本当にひとみちゃんが建てたんだ。」
梨華ちゃんは首を上下させて全体像を眺めている。
「建てたのは大工さんだけどね。」
「何言ってるのよ。バカね。」
「あはは。」
「ひとみちゃんは・・・本当にすごいよ。ちゃんと立派に自分の道を歩いてるんだ。」
「梨華ちゃんだって。すごく頑張ってるじゃない。」
一緒に見上げていた視線を彼女に戻すと、
梨華ちゃんはとても素敵な笑顔で微笑みかけてくれていた。
- 577 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:42
- 「おめでとう、ひとみちゃん。」
「ありがとう。でもまだまだだよ。あたしの夢は、もっともっとみんなが見上げるくらい
でかいものを建てることなんだ。その街のシンボルとなるようなでっかいもの。」
「そっかー。うん。私も負けていられないわ。頑張っちゃう!」
「えーっ。それ以上頑張らなくていいよ。置いてけぼりくっちゃうから。」
クスリと笑いながら梨華ちゃんの肩を抱き寄せた。
「ねぇ。こうしていつまでも私の側にいてね。
ひとみちゃんが頑張るなら私も応援するから。
だからもう一人で何もかも決めたりしないでね。」
「うん。約束するよ。」
「ひとみちゃん・・・」
軽くキスを交わすと、あたしたちはまたしばらく建物を見上げていた。
「さて、それじゃ帰るとするか。」
「うん。でもなんかちょっと小腹がすいたみたい。帰りにデザートでも買って帰ろうよ。」
「クス。太ったらこまるんじゃない?大女優さんとしては。」
「もぉー。嫌な感じ!」
「えへへ。さぁ、行こうか。」
「うんっ。」
車に乗り込むと、ギアをドライブに切り替えた。
それと同時に、左腕につけているおそろいのラブブレスが、
ギアに当たってガチャリと音を立てた。
それから2人は―――
互いに夢を追いかけながら、日々駆け回る毎日。
けれどたまには立ち止まって、ゆっくりと息抜きをする。
隣にはいつもかけがえのない人の笑顔。
今日も、そしてこれからも、ずっと大切にしたい人がすぐ側にいてくれる。
- 578 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:44
-
=プップー=
クラクションを短く2回鳴らすのは、あたしが梨華ちゃんのマンションに到着した合図。
「予定より早く来てくれたのね。」
荷物を後部座席に積み込むと、彼女は助手席に乗り込んだ。
「うん。やっぱさ、なんかちょっとでも早く行きたくて。」
「久しぶりだもんね。みんなと会うの。」
「楽しみだなぁ。みんな大人っぽくなってんだろうな。」
何年かぶりに再会する仲間。
今日はモーニングの同窓会だった。
今でもこうして会えるのは、かけがえのない時間を一緒に頑張ることの
できた本当の仲間だからかもしれない。
それぞれに進んだ道は違うけれど、みんな今でも元気にしていてくれるのが嬉しい。
「今日は久しぶりに羽目を外して楽しむとしますか。」
「明日も仕事でしょ?ほどほどにしなきゃだめよ?」
「あーい。うるさいお目付け役がいるからなぁ。」
「誰のこと?それ。」
「なーんでもない。さ、行こうか。」
「うん。出発進行ー!」
あたしが進んできた道は、決して平坦なものではなかったけれど、
だからこそ、こうして過ぎ去った時間を懐かしむことができるのかもしれない。
頭の中にはみんなの笑顔が今からもう浮かんでいる。
そして今でもすぐ隣には梨華ちゃんの笑顔をみることができる。
けれどそれは1人ではなく、2人分の笑顔。
あたしもまた、とびきりの笑顔で会場へと向かっていった。
2人で進む道は、どこまでも続いている。
『それから2人は』 ―――完―――
=修行僧2003=
- 579 名前:修行僧2003 投稿日:2004/03/10(水) 18:47
- >作者
はい。ということで、終わりですー(w
作者の書きたかったことは大体書けたつもりです。
こういう関係ってすごくいいなと思うんですよね。
どっちかが頼るばかりじゃなくて、互いに信頼しあって、
自分の道をもっているという。
まぁ、これらの2人もきっとラブラブなんでしょうけどね(笑)
それでは今までありがとうございました。
またお目にかかれる日がくるかどうかはわからないですけれども、
息抜きにでも覗いてもらえれば、またもしかして書いてるかも
しれませんね(笑)
それではまた。
- 580 名前:シフォン 投稿日:2004/03/10(水) 18:54
- >作者様
更新お疲れさまでした!
最終回、ずっと楽しみに待っていましたよ!
甘々な作品とはまた違った、大人な感じで色々考えされられました(苦笑)
<<互いに信頼しあって・・・
なかなか奥が深いですねぇ・・・。
理想だけれど、現実はなかなかうまくいない事が多いですよね(苦笑)
またいつの日か作者様の作品にお目にかかれるのを楽しみにしております♪
季節の変わり目ですので、お身体にはお気をつけ下さいませ・・・。
- 581 名前:名無し読者79 投稿日:2004/03/10(水) 21:01
- 完結ご苦労様です。ちょっと寂しい気持ちもあるんですが…。
予想できない展開がかなり続いて、驚いてばかりでした。
またお会いできることを願って。楽しみに待ってます。
- 582 名前:ROM読者 投稿日:2004/03/10(水) 23:30
- 更新&完結本当にお疲れ様でした。
いしよしのみならず、自分の人生をも考えさせられました。
毎日当たり前のように仕事に行き、上司の愚痴を言っている
自分が恥ずかしく思えます。
素敵な作品をどうもありがとうございました。
- 583 名前:なな素 投稿日:2004/03/11(木) 19:32
- 作者様、完結お疲れ様です&おめでとうございます。
ハッピーエンドなんですけど、どこか深い仕上がりであるように感じました。
>どっちかが頼るばかりじゃなくて 自分の道をもっているという。
ある意味理想のカップル像なのかもしれないですね。
辻加護の卒業は確かに飼い殺しにされるよりかは良いのかもしれませんね・・・
途中からはいしよしに限らず現実のモーニング娘と照らし合わせて読んでいました。
世界観にリアリティを感じる作品だったと思います。(9期とかホントにありそうですもんねw)
みんないずれはそれぞれ自分の道を歩んでいく・・・・
嬉しいようで寂しくもある。できるなら今のままで変らないで欲しいというのは
ヲタの詭弁なのか・・
しかし
>まぁ、これらの2人もきっとラブラブなんでしょうけどね(笑)
これだけは永遠に変わることない真実だと認識してますw
実に面白い作品でした。
新作を描かれた折にはまた息抜きに立ち寄らせてもらいたいと思います。
すっかり春ですね。長い間お疲れ様でした。
- 584 名前:チョコ 投稿日:2004/07/28(水) 13:48
- 修行僧2003 さんへ
修行僧さんの作品のサクラクの作品をみて、心が奪われました。ホント好きなタッチ、ストリーだったのでツボ!
「繋いだ気持ち」「いしよしハッピー計画」と読ませていただきここにだどりつきました。
「いしよしハッピー計画2」もまだ読み初めたばかりですが、のんびり読んでいきたいと。
修行僧2003さんの影響で自分も今小説、初だけど書いてます。(余談)
ホント応援してます!頑張ってください。長々となってしまいましたが。
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