川∩´3`∩)<カッケー流道場×13人組手キボンヌ
- 1 名前:吉澤ヒトリ 投稿日:2003年06月08日(日)06時14分06秒
- 皆様、初めまして。吉澤ヒトリと申すものです。
seek初執筆にそーとー緊張しております。
娘。愛のある作品を書いていこうと思っています。
力量至らぬ所もあると思いますが、どうかご容赦を。
率直な意見感想お待ちしてます。
- 2 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 3 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 4 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 5 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 6 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 7 名前:∬´◇`∬<ダメダモン… 投稿日:∬´◇`∬<ダメダモン…
- ∬´◇`∬<ダメダモン…
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月08日(日)12時35分53秒
- ?
- 9 名前:吉澤ヒトリ 投稿日:2003年06月08日(日)21時33分58秒
- 2回目の更新なのですが…前回UPに失敗しましたので、
前回の更新文に関しては削除依頼を出して参りました。
重複更新で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
- 10 名前:第0話【OPナレーション】 投稿日:2003年06月08日(日)21時39分25秒
この話の発端となる場所は埼玉県某山中。太陽の光を木々の葉に
遮られた仄暗い獣道を、少女が一人足早にテクテクと歩いている
シーンからスタートします。
少女の横顔をちらりと覗いてみると額からじわりと噴き出した汗
が、幼さを残したまま小さくぷっくり膨らんでいる頬を、何度も何
度も何度も何度も伝っては落ちています。
が、少女はそれを拭う事をしません。少女の視線は真っ直ぐ、た
だ真っ直ぐを見つめていました。そこには確固たる信念、だけでは
なく、薄くほんのりと悲壮感も漂っているように見えます。
今度はちょっと距離を置いて少女を眺めてみましょう。湿り気を
増していく黒髪。草露に濡れた青みの強くなったジーンズと履き潰
され底が薄くなったスニーカー。黒のタンクトップの上に生地がす
っかり馴染んだ空手着。これを普段着としていると聞けば大抵の人
は、彼女の格闘技に対する姿勢が非常にストイックなものであるこ
とを容易に想像できるでしょう。
しばし、静かな山に少女のふうふうという呼吸音だけが響きます。
一定のリズムで。規則正しく。
- 11 名前:第0話【OPナレーション】 投稿日:2003年06月08日(日)21時45分18秒
やがて獣道の果てを知らせるように視界の木々が開けていきます。
そこは光溢れる出口。待ち受ける次なる困難。少女の目の前に現れ
たのは、思わず天を仰いでしまう程の圧倒的高さを誇る石段でした。
少女はすでに勾配の激しい獣道を6時間以上歩いていました、疲
労も限界に近いはず。さらに先程右足の親指と踵に出来ていた豆が
潰れ化膿し、歩く度に鈍い痛みを生じています。そこに現れたこの
石段はあまりに巨大で残酷でした。
しかし、その小さな体のどこにそんな力強い精神が宿っているの
でしょうか。少女は落胆の表情を浮かべることもなく一歩また一歩
と石段を黙々と淡々と上り始めました。
それではしばらくの間、この少女の視点で物語を進めることにし
ます。だらだらと長い導入に付き合って戴いた貴方に感謝を込めて。
- 12 名前:第1話【「完璧です」とは少女の弁】 投稿日:2003年06月08日(日)21時47分36秒
「ふう……長い石段でした」
気になったので数えながら上ってみたのですが、なんと2048
段もあることが発覚しました。驚きです。前回訪問した忍者屋敷よ
りも山奥にあるんですね。
ああ、ビッショリと汗をかいてしまいました。このままではタン
クトップが透けてセクシー紐が見えてしまいます。タオルでしっか
り汗を拭きましょう。これも乙女のタシナミです。押忍。
さてタシナミを終えましたら、非常食である干し芋を3枚食べ、
靴紐を固く結び直し、ゆっくり深呼吸をして精神統一です。スー
ハー。スーハー。
「よし、完璧です」
このように「完璧」と声に出すことで完璧さは3倍増し、英語で
言うなら…ス、スリーパーフェクト?になるのです。多分。
いやいや、この際英語はどうでも良いのです。国際化していく時
代ですから英語を必要とする場面がいつか来るかもしれませんが、
今、この瞬間、英語は特に必要無いのです。
- 13 名前:第1話【「完璧です」とは少女の弁】 投稿日:2003年06月08日(日)21時50分14秒
つまり脱線した話を元に戻しますと、問題なのは私の英語能力よ
りも目の前の巨大な門。私の3倍の背丈はあろう鈍い鋼鉄の輝きを
放つこの門こそが、最優先解決事項だと言いたかったのです。押忍。
さてさて門をざっと見たところでは呼び鈴らしきモノもインター
ホンらしきモノもございません。
ということはアレですね? 古来から武道に伝わるアレをやって
もよろしいですね?腰を落とし丹田に気を込める。腰、肩、ヒジを
ひねりながら弓引く。そして一気に・・・中段正拳突きです!
鉄板に陥没した拳の跡。右手に伝わるのは扉向こうのかんぬきを
粉砕した確かな手応え。足下から渦を描くように舞い上がり視界を
覆う砂埃。鈍い音を立てながらギギギギとゴゴゴゴ(効果音)と開
いていく鋼鉄の扉。さあ、ここで決めゼリフです!
「頼もう!私、紺野あさ美と申します!道場を破りに伺いましたが
どなたかご在宅でしょうか!?」
はい、我ながら完璧な道場破りです!
- 14 名前:第1話【「完璧です」とは少女の弁】 投稿日:2003年06月08日(日)21時52分01秒
- 次に「フフフフ…たった一人で乗り込んでくるとは良い度胸
だ!返り討ちにしてくれる!」などの返事が返ってくれば良かった
のですが、返ってくるのは沈黙だけです。虚しいです。もしかして
お留守だったのでしょうか。では、後日また改めてお伺いしますの
で…と、その時!
「はぁ〜い、ちょっと待ってて下さいねぇ〜」
舞い上がる砂埃に薄っすらと浮かぶ人影、というなかなかドラマ
ティックな画とは対照に、緊張感の欠片もない返事が。
「痛〜い!砂が目に入っちゃいました〜!」
…ぶち壊しです。全てぶち壊しです。私が一生懸命作り上げた完
璧な名乗りシーンを、たった2つのセリフで全て水泡に帰しました。
緊張感ゼロ。超自然体。唯我独尊的マイペース…いやいや油断は
いけません。単なるお気楽脳天気がこんな厳しい環境で生活出来る
はずがありません。
そうです、これはきっと罠です。私の油断を巧妙に誘う作戦に違
いありません。ふう、危うく敵のペースに乗せられてしまう所でし
た。いやはや実に恐ろしい敵です。自分を取り戻さなくては。精神
統一。スーハー。
- 15 名前:【「完璧です」とは少女の弁】 投稿日:2003年06月08日(日)21時53分15秒
- やがてゆっくりと晴れていく視界。はっきりと現れた敵の輪郭。
高まる鼓動。ゆっくりと敵はこちらの間合いを詰めてきます。
思わず視線が合います…え?笑ってる?敵を目の前に余裕なので
すか?思わず唾を飲みこんで、いやいや落ちついて冷静に、全ての
力を出し切れば私の、駄目です膝の震えが止まりません、こんな時
こそ自分の拳を信じて、でも嫌な波動が全身を、こんな感覚は初め
て、恐い、背筋に冷たいモノが、これは死の予感なのですか?しま
った!もう目の前に立ってい――
―――ピンク。
―――なまらピンク。
…ええ、それはもう思わず北海道弁が出てしまう程、ピンクのフ
リフリのエプロンが恐ろしいほど良く似合うお嬢さんが、ニコニコ
スマイルを浮かべて立っていました。押忍。
- 16 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時00分16秒
「鍋から目を離せなかったんですよ〜」
ピンクさんはそう言うと、呆然としている私の背中を強引に、さ
あさあまあまあ中へどうぞとグイグイ押してきます。抵抗する理由
もないのでなすがままにしていますと、ピンクさんは道場の練武館
という所に私を案内しました。
練武館はかなりの歴史を感じさせられる空間で、心地良い静寂に
包まれていました。綺麗に磨かれた板張りの床。上座と思われる空
間には由緒正しそうな立派な神棚。奉っているのは…保田大明神?
聞いた事はありませんが、おそらく武道の神様なのでしょう。私も
礼拝しなくては。押忍。
あ、ピンクさんが縁側で手招きしてます。勧められるままに座布
団にちょこんと座り、お盆に乗った麦茶を一気に飲み干しました。
プハー。生き返りました。
- 17 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時01分54秒
ピンクさんはやや大げさなリアクションだった私を見てクスクス
笑った後、ペコリと可愛く頭を下げ、
「えへへ、お待たせしてすいませんでした〜。で、お嬢さんは当道
場に何の御用ですか〜?」
「はあ、それは先程申しあげた通りですが」
「今、部長はお昼寝の時間なんで、代わりに私が伺いますよ〜」
「ぶ、部長?いやいや普通は師範代さんの前に通されて『君が道場
破りか…その実力、私が見極めてやる!』とかなんとか言うのがセ
オリーというか。あと、お昼寝しているので会えないという理由は
納得しかねるんですが…」
「あ、自己紹介まだでしたね。私はチャーミー石川と申します。気
軽にチャーミーって呼んで下さい。チャオ〜」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いしますチャーミーさん…じ
ゃなくて。あのー、私の話聞いてます?」
会話が噛み合いません。チャーミーさんの人柄の良さは私に大変
伝わってきます。とても素敵なお嬢さんだと思います。
しかしですね、私の質問は何一つチャーミーさんには伝わってい
る気がしません。はぐらかされているのでしょうか?
- 18 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時03分30秒
「部長ったら寝顔が可愛いんですよ〜。思わずホッペに…キャハ!
何言わせるんですか〜」
「あの…私の質問に…」
「無理矢理起こすのも可哀想ですよね、ね。あ、それじゃあ部長が
起きるまで一緒にご飯食べませんか?今日のオムライスは結構自信
あるんですよ〜」
「ですから私は道場破りに…」
「それとも…そうだ、一緒にお風呂入りませんか?今日は暑いです
からね〜、背中をゴシゴシ流してあげますよ〜」
「いやいやいやお風呂は結構です!それよりここの道場主である吉
澤さんに会わせて下さい!どうしても私は一対一で吉澤さんと死合
って、空手家としても武道家としても成長したいのです!」
いけません、つい声を荒げてしましました。
「……」
ああチャーミーさんの表情が曇っています。ごめんなさい。でも
これで私の真意がようやくチャーミーさんに伝わったはずです。こ
こは押しの一手というものです!
- 19 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時06分34秒
「私は憧れの吉澤さんに会うためにここまで来ました!吉澤さんと
死合って自分の限界を超えたい!吉澤さんの領域にふれてみたい!
ただその一心なんです!ですから―――」
「あなた…ヨッスィ〜に何の用なんですか?」
あれ、チャーミーさんの声のトーンが変です。
「え?ですから勝負を希望…」
「…憧れから発展する恋、希望ですか?」
「え?いやいや、ただ拳を交えたいと」
「拳で分かりあえたら…次はどうやってお互いを分かり合うつもり
なんですか?その前の『一対一でしあって成長する』ってどういう
意味ですか?ヨッスィ〜の領域とかなんとか言って、一体ドコを触
るつもりなんですか!?」
「チャ、チャーミーさん?」
「不潔です!エッチです!スケッチです!マイペットです!」
- 20 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時08分37秒
何故でしょう。何故こうも人は分かり合えない存在なのでしょう。
日本語なのに通じない意思。生じる誤解。鬼の形相のチャーミーさ
ん。うららかで平和な午後の終焉。私は襟首を掴まれ道場の真ん中
に放り投げられました。
「ヨッスィ〜に私というものがあると知ってのセクハラとは不届き
千万!五体満足で帰れると思わないで下さい!」
視線の先には闘いに構えるピンクの修羅が立っていました。私も
武道家のはしくれ。何時如何なるときも挑戦を受ける心構えではあ
りますが、こんな間抜けな理由では立会いたくありません。
「そんな事、私知りませんでしたよ!?」
「ならばその体に教えるまでです!」
「チャーミーさん、落ちついて私の話をちゃんと聞いて理解して下
さい!前後の会話のつじつまというものが!」
「問答無用!部長専属マネージャー石川梨華!参ります!」
- 21 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時12分01秒
え?チャーミー石川って本名じゃ無いんですか?そんな疑問を一
瞬にして吹き飛ばした凄まじい上段回し蹴り。バックステップで間
合いを取りましたが、つま先が私の前髪をかすめます。恐ろしい程
の伸び。軸足の回転は止まらず、むしろさらにスピードを上げ再び
上段に襲いかかります。
ならば上体をスウェーしてカウンター気味に軸足にローを叩きこ
みましょう。バランスを崩せたら密着して得意のショートレンジフ
ック。脂肪の層が薄そうなチャーミーさんになら、それだけでレ
バーに深刻なダメージを与えれるはず!
しかし、こちらの思惑通りにはいきません。チャーミーさんの蹴
りは空中で軌道を変え、下段に振り下ろしてきました。
あのスピードでこんな芸当が出来るなんて。スウェー動作の仕掛
けのため体重を後ろに預けたのが仇になりました。右ふくらはぎに
受けた蹴りの衝撃を流す事が出来ません。
チャーミーさんは執拗に私に右ローを叩きこみます。空手よりム
エタイに近いチャーミーさんの蹴りは鞭のようにしなやかで、私の
右足は数発受けただけで激しい内出血を起こしました。ジリジリと
焼けるような痛みが感覚を鈍らせます。
- 22 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時14分37秒
本来ならば最初のバックステップでもっと距離を取るべきでした
が、獣道で潰れた右足裏の痛みがそれを躊躇させてしまいました。
痛みに負けるとは武道家失格です。悔しい。このまま私は負けてし
まうのでしょうか…。
「心が折れちゃ勝てないぜ、チェケラッチョー!」
謎の声と共に突如道場にガンガン響く音楽、これは…マイケル・
ジャクソンの「BAT」です。何処から流れてるんですか?
ん、どうやら奥の方から…あ、よく見ると奥の部屋に通じるであ
ろう部屋の障子に人影が浮かび上がっています。音楽に合わせて
ターン、リバース、スキップ、バックステップ。そして取っ手に手
を伸ばす…と見せかけて、そのまま障子に体当たりして部屋に飛び
こんで来ました!
「どうして障子を開けないのですか!?」
思わずツッコんでしまいましたが、だれも答えてはくれません。
ああこれ以上ややこしい人が増えるのは勘弁してほしい。心からそ
う願いました。
- 23 名前:第2話【ピンクの魔物が棲んでいる】 投稿日:2003年06月08日(日)22時16分19秒
さてスーツ姿で部屋に飛びこんできたその人物は、私の祈りを知
ってか知らないでか悠然と何事も無かった様に立ちあがると、私に
背を向けズボンの埃を払っています。が、突然くるっと私の方を向
き、人指し指をアンダスローに振りかぶって突き出し、
「ベイビー、オイラの前では喧嘩はノーサンキューだぜ!ユー、ア
ンダスタン!?」
その人物の顔を見た私は絶句しました。だってそれは私の部屋に
貼られたポスターと同じ顔をしていて、私は先週そのポスターに
「打倒!」と赤ペンで書き込んで「もったいないことをしたかも」
と、ちょっと後悔して…。
信じたくありません。信じたくありませんが。このインチキ外人
みたいな人が、全ての空手家達の憧れで、理想で、希望で、アイド
ルの、よ、よ、よし、吉澤さんなんですかー!?
- 24 名前:吉澤ヒトリ 投稿日:2003年06月08日(日)22時20分12秒
- 本日は更新終了です。
- 25 名前:エロ火 投稿日:2003年06月08日(日)22時27分59秒
- こういうのを読んでみたかった。
ツボに入りました。面白すぎます。
- 26 名前:名無し 投稿日:2003年06月08日(日)22時28分55秒
- ソーリー。本気でソーリー。須らくソーリー。
ゴメンなさい。
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月02日(水)22時28分18秒
- 続きまだかな〜気になります。
- 28 名前:吉澤ヒトリ 投稿日:2003年07月17日(木)02時13分44秒
- 1ヶ月振りの投稿です。更新が遅くてすいません。
25:エロ火様
>ありがとうございます。感想頂けると本当にはげみになります。
26:名無し様
>いえいえ恐縮です。こちらこそ更新遅くてすみません。
27:名無しさん様
>お待たせしました。本日ようやく更新するので見捨てないで下さい。
- 29 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時16分09秒
「ヨッスィ〜、素敵な登場だったよ〜!」
チャーミーさんが目にも止まらぬ速さで吉澤さんに飛びつきます。
それを軽々と受け止めた吉澤さん、
「ヘイ、チャーミー。人前では部長って呼べっていつも言ってるだ
ろ。アーユーオーケティング?」
そう言うと人指し指で、チャーミーさんのおでこをコツン。
「そうだったね。ゴメンナサ〜イ」
コツンとされたチャーミーさんは、舌をぺろっと出して照れ笑い
を浮かべています。しばし言葉も無くじーっと見つめ合うお二人は
まるで幸せそうなカップルみたいです。ちょっと羨ましいです。あ
あ、チャーミーさんの細い指が吉澤さんの頬をなでてます。
「部長の肌…透き通るように白くて…綺麗です」
「君の肌も健康的で素敵だぜ」
「え、本当ですか!?そんな事言われたら私……ハッピ〜!!!」
そう言って満面の笑みを浮かべるチャーミーさんが眩しいです。
幸せビームの大量放射です。うう、本当に羨ましい。出来れば私に
もこう……って何を考えているのですか。スーハー。精神統一。煩
悩退散。スーハー。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月17日(木)02時16分52秒
−で、15分経過−
「ここでこうくると…ほら、カシオペア座だぜ」
「きゃあ〜!部長の顔ってロマンチックです〜!」
こんな感じでお二人のイチャイチャモードはまだ続いてます、や
や間違った方向に進んでいますが。
あのーお取り込みの所大変申し訳ありませんが、そろそろこちら
の世界に戻ってきて頂けないでしょうか。もしもーし、せめて返事
をして下さい。一人は悲しいです。もしもーし。
しかし辺りの空気は私だけ取り残して、どんどんピンク色に染ま
っていきます。チャーミーさんの瞳がとろんとして、うるうるして、
怪しい雰囲気に…あ、チャ、チャーミーさんがゆっくりと吉澤さん
の腰に手を回して、ぎゅって抱き寄せて、顔を近づけて、瞳を閉じ
て、こ、これはキスのおねだりです!!
- 31 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時19分10秒
思わず私は見てはいけないと両手で顔を覆いましたが、ついつい
指の隙間からこっそりじっくりばっちり覗いてしまいます。いけな
いと思いつつ、年頃の乙女はこういうことに興味シンシンです。
あ、吉澤さんの唇がかすかに動きました。これはもしかして「チ
ャーミー好きだよ」とか「チャーミー愛してる」とか「チャーミー
しかオレの瞳に映らないぜベイベー」とか、そういう類の甘い囁き
なのでしょうか?ドキドキ。
「で、あのキューティーなカラテガールは何者なんだい?」
ズルっ。
あ、今のは私がバランスを崩した音です。脈絡も場の空気も関係
無く突然私の話題を振るマイペースな吉澤さんに、思わずズッコケ
てしまいました。まあキューティーと言われたのは嬉しいのですが。
- 32 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時20分38秒
一方突き出した唇が意味を無くしたチャーミーさんは金魚みたい
にぱくぱくぱくぱくしています。ああ額にくっきりと青筋が浮かん
できました。危険です。チャーミーさんはこちらを振り向くとニッ
コリ・・・いえ、あれはニッコリではありません!
口元には笑みを浮かべていますが、瞳に渦巻く憎悪というか殺意
というかとにかく邪悪な気配を感じずにはいられません!!
「・・・さあ〜何者なんでしょうね?とりあえず邪魔ですから、どこ
か遠くへ逝ってもらいましょうか?」
そう言い終わると同時に、チャーミーさんは鬼の形相でこちらに
突進してきました。間違いなく私を殺す気満々です。人間って悲し
いですね、人を深く愛するが故にこんなにも人を激しく憎むことが
出来るなんて。いやいや冷静に分析している場合ではありません。
ここはひとつ、
「タイムです!」
このままでは先程と同じ展開ではないですか。それはあまりにも
安易ではないですか。物語的にも如何なものでしょうか。そう思っ
てのタイムです。
- 33 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時21分55秒
「む。今さら命乞いですか〜!?」
「いえ、私が言いたいのはですね…えーと、お二人はお似合いのカ
ップルです。とても私が間に入る事が出来ないほどアツアツでラブ
ラブなカップルです。いえ、元々私も間に入るつもりなんて最初か
ら微塵もないんですよ。ここまでわかって頂けたでしょうか?」
「むむむむむ。本当に本当ですか〜?」
「はい本当です。ですから吉澤さんの事はとりあえずこちらに置い
といて…一人の武道家として私と立ち会って下さい。先程の試合で
は無様な姿を晒してしまい、非常に不本意な結果になってしまいま
したが、今度は完璧です。勝たせてもらいます」
勝たせてもらいます。その一言を聞いたチャーミーさんが一瞬驚
いた顔をして…そしてクスクスと笑い出しました。む、これは馬鹿
にされているみたいです。憤慨です。私がむむむっと睨むとチャー
ミーさんの瞳も真剣な眼差しに変わりました。
「…わかりました。では私もカッケー流居候代表としてお相手しま
す。手加減出来ないんで全力投球でいきますよ〜!グッチャ〜!」
- 34 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時23分26秒
- チャーミーさんが奇声と共に放つ大振り右フックが、私の側頭部
目がけて伸びてきます。これは上体だけでスウェー。そこに間髪い
れず左のバックブロー…やはり最初の大振りフックはフェイントで
した、読み通りです。
すかさず間合いを詰めようと試みましたが、チャーミーさんは右
中段回し蹴りで牽制。すかさず距離を置きます。
もしかして接近戦はお嫌いですか?
この瞬間、先の闘いで浮かんだ一つの憶測は確信に変わりました。
おそらくチャーミーさんの格闘スタイルの下地になっているのは、
カポエラやカラリパヤットのように高速で繰り出される技を主体と
する舞踏闘技。チャーミーさんの細身の体から放たれる一撃がこれ
ほどまでに強力なのは、回転による遠心力+スピードである事は間
違いありません。
ならば私はその命であるスピードを殺しましょう。回転を止める
クリンチを多用し、チャ−ミーさんのヒジとヒザを警戒しつつ、レ
バーブローを確実に叩きこんでいきます。一発、また一発、
「あなたの戦い方…昔の私に似ていて…むかつきます〜!」
- 35 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時27分37秒
ゴスン!
突然頭部に衝撃が走りました、これはチャ−ミーさんの頭突きで
すか?予期せぬ攻撃で私が怯んだところを狙って、続けざまに側頭
部にヒジ回し打ちを2発、そしてぐらついた私の上体に前蹴りを放
ち、チャーミーさんは再び距離を置きます。
…良し、大丈夫。思った通りチャーミーさんの筋力だけでの攻撃
は、さほどダメージになりません。ここはチャンスです。戦法を変
えられる前に一気にラッシュを仕掛けましょう。一、二発は頂く覚
悟で前進あるのみ!
「通常の3倍で突進です!」
激しい乱打戦。チャーミーさんも焦りからか大技で急所を執拗に
狙ってくるようになりました。これは逆に軌道が読み易くなったの
でガートに余裕が生まれます。この流れならカウンターが有効かも
しれません。狙うは…このフックからのバックブローです!
フックを最小の動きでスウェーし、バックブローを一歩前に踏み
込んで回し受け、と同時に腕を絡めチャーミーさんの左ヒジを絞る
ように極めて動きを固定しました。冷静さを欠いた今のチャーミー
さんには、ロックを瞬時に離すことなど出来ません。
- 36 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時29分49秒
- すかさず極めた腕で袖を掴んだまま弓引き、そのまま腰をぎゅぎ
ゅっとひねり、全身全霊の力を込めて、弧を描くように、水月に中
段正拳突きを叩き込みました。手ごたえありです。
「これぐらいでは…これぐらいで沈んでるようでは…ヨッスィ〜に
笑われちゃいます」
しかしチャーミーさんの瞳はまだ光を失いません。決して折れな
いチャーミーさんの心。私は敬意を込めて、再び水月に正拳を全力
で叩き込みました。
チャーミーさんが苦悶の表情を浮かべたままゆっくりとゆっくり
と床に沈みます。おそらくもう立ち上がれないでしょう。
私が空手を始めてから毎日、本当に一日も休むことなく、中段正
拳突きの型を必ず777本突いてきました。ですからこの拳は絶対
の自信なのです。信念なのです。誇りなのです。ちなみに777と
いう数は単に縁起を担いだだけです、押忍!
パチパチパチパチパチパチパチパチ
- 37 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時31分01秒
吉澤さんが目を細めて微笑みながら拍手をしています。
「そうだぜベイビーその一撃だ。信念の無いパンチなんていくら撃
っても相手のハートに届かないぜ!グゥッド!」
そう言うと左手を腰にあて、親指を立てた右拳を前に突き出した
ポーズを決めます。私も真似して同じポーズで応えます。
「押忍、私この気持ち…チャーミーさんに教えてもらった最後まで
勝負を諦めないというこの気持ち……絶対に忘れません!!」
私がそう言うと何故か吉澤さんは「やっぱり」という表情を浮か
べ、そして「まいったなあ」という苦笑い。
「んー…そのチャーミーさんはもうちょーっとベイビーに教えたい
事があるみたいだね。困ったぜ…オーマイガッティング。」
「え?」
ふと床に視線を落とすと、なんとチャーミーさんが立ち上がろう
としています。思わず手を差し伸べようとしたのですが…私の右手
は無意識の内に拳を握っていました。フラフラなのに、フラフラの
はずなのに、倒れる前よりも激しいプレッシャーを感じます。
「…ポジティブに…ポジティブ…ポジティブ…ポジティブ…」
- 38 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時32分43秒
チャーミーさんはそう呟きながらフラフラと立ち上がります。そ
の姿はまるで陽炎。あれほどコロコロと表情を変化させていたのに
…暗い影が落ちた今の顔からは何の感情も読みとれません。門の前
で感じた感覚、あの恐怖が背筋に蘇ります。こちらがチャーミーさ
んの本質なのですか?
静かに構えるチャーミーさん。やがてゆっくりと間合いを詰めて
きました。が、それを制止するように包むように吉澤さんが後ろか
らぎゅっと優しく抱きしめます。
「オーケー…今日はここまで。カラテガールの実力も十分分かった
からね。これ以上やったら彼女を壊しちゃうぜベイビー」
そう耳元でささやかれるとチャーミーさんはゆっくりと瞳を閉じ、
まるで眠るように気を失いました。ふうと一息ついた吉澤さんはそ
のままチャーミーさんをおんぶして、私を手招きします。
- 39 名前:第3話【吉澤天然カッケー流】 投稿日:2003年07月17日(木)02時34分01秒
「ヘイ、カラテガール。ユーもとりあえず合格だから、荷物を持っ
てオイラの後をついて来な。部屋に案内するぜカモーン」
「え、何の合格ですか?」
「ホワイ?カッケー流入門希望なんだろ?」
「ですから私は何度も何度も何度も何度も言いましたがもう一度言
いますと…道場破りに来たんです!!」
「ヘーイつべこべ言わずに!格闘家たるもの引き際が肝心だぜ!」
「引き際の使い方…間違ってますよ」
ああ、ここの人達は本当に私の話を聞いてくれません、押忍。
- 40 名前:吉澤ヒトリ 投稿日:2003年07月17日(木)02時41分04秒
本日の更新はここまでです。
読んで頂いた皆様、ありがとうございました。
次回更新は……1ヶ月以内を目標に頑張らせて頂きます。
- 41 名前:名無し 投稿日:2003年07月17日(木)22時27分26秒
- 更新きたぁぁーー!!
もう来ないかと思っていたお……。
そして、ぬはぁぁーー。
最高です。最高の展開です。このテンションが最後まで落ちずに続いてくれる事を望んでいます。
- 42 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月09日(土)01時51分30秒
- これおもろい!!
紺野さん視点のいしよしってあんまりないけど好きです。
次回更新楽しみにしてます。
- 43 名前:ヨードーケッティ 投稿日:2003年08月16日(土)00時02分20秒
- こういう「肩すかし紺野」(私が命名、まじめにやってんのに取り合ってもらえない紺野)
大好きです。
いしよしにあきれる紺野って新鮮。
続き期待しています。
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月22日(金)23時38分37秒
- ものすげーしょーもないが、妙にいきおいあって笑える。
続きを激しく希望!
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/11(木) 19:18
- く、くだらなさ過ぎる・・・w
モットヤレー
- 46 名前:名無し 投稿日:2003/10/11(土) 08:28
- これおもろいわ。作者さん続きキボン
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/27(木) 13:06
- 同じく続きキノーン
- 48 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/23(火) 11:54
- hozenn
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2004/03/03(水) 03:37
- 保全
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