残される側

1 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)20時55分03秒
カップリングはいちごまです。
内容は多分アンリアルの分類の話だと思います。

金板で書かせていただくのは初めてですが、SEEKでは何作か書かせてもらってます。
まだまだ稚拙な文章で甘い部分も多々あると思いますが、お付き合いいただけると嬉しいです。

更新は1週間くらいに一度を目標にしていきたいと思います。
それではよろしくお願いいたします。
2 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)20時57分41秒
「いちいちゃ〜ん!こっちこっち〜」
「ちょ、ちょっと待てよ〜。ねぇ、そろそろこの辺で一回休憩しない?」
「え〜何で〜?やだよ〜早く早く〜」
「私が休憩って言ったら休憩なの!」

市井は少し口調を強めてそう言うと、後藤は呆れたような顔をした。

「もう!いちいちゃんは体力ないんだから〜」

市井がたくさんのクローバーで敷き詰められた地面の上に座ると、
何やらぶつぶつ言いながら先に進んでいた後藤が近づいてきた。
3 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)20時58分27秒
「全く〜いちいちゃんはホントへなちょこだね。せっかくこうやって二人っきりで
 ピクニックに来てるのに」
後藤は隣にドンと座り込むと、少しむすりとしながら市井の顔を覗いてきた。

「まぁいいじゃんいいじゃん。そんなに急がなくても。二人っきりでこうやって
 ゆっくりするのも久しぶりなんだし。ね?」
市井はそう言うと後藤の頭を軽く撫でた。

「・・・えへへへへ・・・そうだね」
後藤は顔がくしゃくしゃになるくらいの笑顔でそう答えた。

辺り一面を均等に照らす日差しがとても気持ちよい。
市井はたまらずごろんとその場に寝転んだ。
4 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)20時59分32秒
「ねぇいちいちゃん?」
「何?」
「私さ〜これでよかったのかも」
「ん?」
「この世界に来れて」
「ああ、そうかもしれないね。私もそう思ってるよ。失うものも多かったけど
 それ以上にこうやって後藤とずっと一緒にいられるんだと思うとね、嬉しいかな」
「・・・うん。私もいちいちゃんとおんなじだよ」

後藤は空を見上げて何やら考えている様子でそう言った。
市井も視線を後藤から空へと移す。
5 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)21時00分45秒
「・・・でもまさか私たちが一緒に死んじゃうなんて夢にも思わなかったよ」
「・・・・・・」
後藤は何も言わず空を見続けている。聞こえてないのかと思った。

「ねぇ後藤聞いてる?」
「あ・・・うん。そうだね、まさか一緒に事故に遭うなんてね。あの時・・・私全然見えてなかったよ」
「アハハ、今考えれば笑い話にもなるけどある意味私からしたらショックだったな〜。
 自分を犠牲にしてでも後藤を助けたようと思ってたのに結局助けられずに、ましてや
 一緒に死んでたなんて恥ずかしいよ。そう言えばまだ謝ってなかったね。ごめんな後藤」
6 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)21時01分16秒
そう、二人は死んだのである。

したがって今二人のいる世界と言うのは死後の世界ということになる。
7 名前:morizo 投稿日:2003年06月15日(日)21時04分46秒
更新終了です。
今回は少な目の更新ですが、次回からはこれくらいかもう少し大目の量を
UPしていきたいと思います。

読んでいただき感想等いただけると幸いです。
ではまた次回まで
8 名前:morizo 投稿日:2003年06月18日(水)21時57分20秒
その日二人は一緒に仕事に休みを入れて久しぶりに買い物でもしようと出かける予定だった。
事が起きたのはまだ二人が市井の家から出たばかりの時であった。
駅へ向かうために歩道を並んで歩いていると、突然小さな猫が横の公園から車道へ飛び出してきたのである。

「あっ!いちいちゃん見て見て!あの小っちゃくて猫かわいいね〜」
後藤が市井の服の袖を引っぱってそう言った。
「ん?どれどれ?・・・お〜かわいいね〜」
「でしょでしょ?ほんとか〜わいい〜」

後藤は立ち止まってその猫に向かって手招きをしていたが、
その猫は警戒しているのかなかなか後藤に近寄ってこなかった。
9 名前:morizo 投稿日:2003年06月18日(水)21時57分57秒
市井は前に視線を戻すと大きなトラックが猛スピードで前から走りこんできているのが目に入った。
運転手は余所見をしながら携帯電話を片手に運転をしておりどうにも前を見ているという感じではなかった。
危ないなと思いながら市井は隣の後藤を見たが後藤がいない。

後藤はいつのまにか逆に自分のほうから猫に近づいていき頭を撫でていた。それも道路の真ん中で。
当然後藤は猫に夢中でトラックのことなど気付いていない様子だった。

「あ・・・おい!!・・・危ない後藤!!」
「えっ!?」
「ちっ!」

勿論それを市井が黙って見ているわけもなくその後藤を助けようと飛び込んだ・・・。
10 名前:morizo 投稿日:2003年06月18日(水)21時58分43秒
結果市井は即死だった。
そのため事故の意識は全く無い。

そして・・・。
今こうなっているのである。

「でもでも!本当はあれは私が悪かったんだよ〜。私が何にもしなきゃこんなことに
 ならなかったんだから・・・いちいちゃんに迷惑かけたのは私の方だよ。
 ホントに余分なことばかりで迷惑かけてごめんね」
後藤の声はどんどんトーンダウンしていった。いつの間にか下を向いている。

「まぁまぁ後藤。死んじゃったら今更何言ってもしょうがないって」
市井は意外にもあっさりそう言い捨てた。
11 名前:morizo 投稿日:2003年06月18日(水)21時59分21秒
「それにしてもこんなの死んだ後の世界がいいとは思わなかったな〜。
 もっと何かこうひどいところかと思ってた。普通に生きてる時と同じような感じだし居心地はいいし。
 ってか神様は本当いい人だよね。きっといいことしようとした私たちにご褒美与えてくれたんだよ。
 この世界に来る前なんかそう言われたような気がする。そこらへんの意識は曖昧だけど。後藤もだよね?」
「あっ・・・うん」
市井は後藤のほうへ目をやった。

「昨日後藤が私のところに急に来た時はかなりびっくりしたよ。
 もう絶対逢えないと思ってたからね。私自身は死んでるとも思ってなかったわけだし」
市井は少し笑った。
しかし後藤は少し険しい顔をしていた。何か言いたそうなのが市井にひしひしと伝わってくる。
市井は我慢できなくなり後藤に問いかけてみた。
12 名前:morizo 投稿日:2003年06月18日(水)21時59分53秒

「後藤どした?そんな顔して。気分でも悪いのか?それとも何か嫌なことでも思い出しちゃった?」
「ううん、違うよ。何でもないって。あんまりいちいちゃんの休憩が長いからくたびれちゃったんだよ。
 いつ終わるのかな〜って」
後藤は市井の問いかけにそう切り返すと、先ほどとは打って変わって意地悪そうな笑みを浮かべた。

それを見て安心したのか、市井はすっと起き上がった。
お尻をパンパンと叩く。

「よし!じゃあ休憩は終わり!まだ先があるのにくたばっちゃいけないからね。これ以上後藤に
 馬鹿にされちゃ私もたまらないし。ほら、行こうか」
市井は満面の笑みで後藤を見ると座っている後藤に手を差し出した。

「うん!行こっ!」
後藤も市井に負けないくらいの笑顔でその手を掴むと素早く起き上がった。

「「しゅっぱ〜つ!!」」

二人は声を合わせると手を繋いだまま、また歩き出した。
13 名前:morizo 投稿日:2003年06月18日(水)22時01分06秒
今回の更新終了です。完結までにはペースも乱れることがあると思いますが、
最後まで頑張るんでよろしくです(^^

ではではまた次回まで
14 名前:たけトラマン(o|o)/ 投稿日:2003年06月19日(木)00時35分23秒
おぉ、新作ですね
がんばってください
15 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月21日(土)19時19分35秒
続きが楽しみです。
作者さんのペースで、焦らず頑張って下さい。
16 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時11分52秒
「あはははは!たっのしいね〜、ほら!」
「わっ!冷て〜!やったなこのやろ〜、くらえ!」
「きゃっ!冷た!ちょっと〜いちいちゃんやりすぎだよ〜びしょびしょになっちゃったじゃん」
「あはは!ごめんごめん〜」

あの後二人は山の中を流れる小さな川に来ていた。
二人共腕を捲くり、足も捲くって川に入り、水を掛け合って遊んでいた。
川の水は底にある石の一つ一つの模様がしっかりわかるほど透き通っていて綺麗だった。
流れも緩やかで木々の間から漏れてきている日の光がその川の水を照らし、
四方八方に反射していた。

「もう〜」
そう言いながらも後藤は嫌な顔をすることなく、水で濡れた長い髪の毛をかき上げながら
白い歯を見せて笑っている。
17 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時12分30秒
市井が思いっきり水をかけてしまったせいで、後藤の上半身はかなり濡れてしまっていた。
それに少し小さめのTシャツを着ているせいで、後藤の上半身にぴったりシャツが吸い付くように張り付いていた。
市井は少しドキッとした。

何故なら、それにより後藤の豊満で形の良い乳房が強調されていたからだ。

更に、お腹の横もキュっとしまっていて、綺麗にくびれができているのは一目でわかり、
当然そんなものを見せられて、後藤の女としての色気を感じないわけにはなかった。

後藤の髪の毛の先から雫が滴り落ちている。
その綺麗な透明の雫に自分の顔が写ったような気がした。
市井は急に抱きしめたくなった。
18 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時13分08秒
後藤から市井がどう見えていたのだろうか。
きっと考えていることがすぐわかるくらいいやらしい目で見ていたのだろう。

「うん?市井ちゃんそんな私をじろじろ見てどうしたの?・・・んん?
 ああ!さては市井ちゃん、今私でいやらしいことでも考えてたんでしょ〜。
 全く〜ほんと市井ちゃんはエッチなんだから〜」

後藤は腰に両手を当てて少し怒ったような表情を作った。
しかしそういう後藤の表情もまた、逆に市井にはかわいらしく見えた。

「おいおい後藤、あのさ〜いくら何でもそんな格好してたら別にそんな気が無くても
 嫌でも考えちゃうよ」
市井は後藤の上半身を指差しながらそう言った。
19 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時13分45秒
後藤は『へっ?』という感じで自分の体を見ると、一瞬恥ずかしそうな顔をしたが、
そんな後藤の体をまだじろじろ見ている市井の顔をもう一度見ると、
次にはへへ〜んと自慢げな表情をした。

すると旧に後藤は左手を腰に、もう一方の手を頭の辺りに添えて、体を少し斜めにしてポーズを取り始めた。
後藤は自分で意識しているのかわからなかったが、先ほどより胸が強調されていた。
さらに、プリッとかわいらしく突き出ている形の良いヒップも市井の目を釘付けにした。

「ふふ〜ん、そうですか・・・そっちがその気ならこうしてやる〜!」
「わ、わ、わ!市井ちゃん何すんの!?」
「ふへへへ〜ん」

「バシャ〜ン!!」
大きな水の弾く音があたり一面に響き渡った。
20 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時14分34秒
「もう!今度は全部濡れちゃったじゃ〜ん」
「へへへ、いいじゃん。今度は私もびしょ濡れなんだからさ〜」
「そういう問題じゃないよ!」

市井は突然後藤に抱きついた。
二人はその勢いで川の中へ倒れこんでしまったのだ。

「・・・・・・」
「ん?どした?」

今度は逆に後藤が市井に目を奪われていた。

市井のボーイッシュなショートカットの髪の毛が水しぶきで微妙に濡れている。
そのせいか、いつものさわやかな市井の笑顔がより一層後藤には輝いて見えた。
21 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時15分18秒
『水も滴るいい男』という言葉が市井に対して褒め言葉なのかどうかはわからなかったが、
不意にそう思ってしまうほど今の市井は格好よく見えた。

「おい!何だ何だその目は?私の顔に何かついてんのか?」
市井はすべてを見透かしたように悪戯っぽく笑っていた。

「べ〜つ〜に〜。市井ちゃんなんて見てないもん。そんな市井ちゃんばっか興味ないしね」
考えが見透かされているのがわかった後藤はそう強がって見せると、
市井はふふんと鼻で笑うような素振りを見せた。

「あっ、そうですか。はいはいはい、そういうこと言うわけね。あ〜あ〜市井ちゃんショックだな〜」
二人はまだ川の中に倒れこんだ状態のままであった。

「そんな憎たらしい口を利くのは・・」
右手でがっと後藤の体を抱き寄せ顔を近づけた。
22 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時15分57秒
「えっ!?」
「この口か!!」
「!!」

市井は言葉の感じとは裏腹に、優しく、そしてそっと後藤の唇に自分の唇を触れさせた。(重ねた)
長い間水に浸かっているせいか、後藤の体は少し冷えていた。
その分いつもより余計に市井の唇が温かく全身に広がっていくように自分の体を包み込んで
くれるような感じがした。

(何でこんなに市井ちゃんは暖かいんだろう・・・ああ・・・気持ちいいなぁ・・・暖かい・・・)

後藤は始めびっくりして目を大きく開けていたが、いつの間にか目を閉じていた。

時間的には数十秒もなく、数秒ほどであった。
市井からゆっくり顔を離すと、後藤もゆっくりと目を開けた。
23 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時16分32秒
一瞬沈黙が流れる
今まで聞こえなかった川の水がさらさらと流れる音が聞こえる。

「おい、後藤!」
「・・・へっ?何?」
まだ先ほどの余韻に慕っており、後藤は少し反応が遅れた。

「お前・・・顔赤くなってるぞ」
「え!?あ!ん?そ、そ、そんなことないよ〜」
「ほらほら〜またそんな風に焦ると余計赤くなっちゃうよ」
「もう!市井ちゃん!からかわないでよ〜」

後藤はそう言うが、自分でもカーッとなって顔が火照ってきているのが感じられた。
24 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時17分05秒
「あっはっは!何興奮してんだよ〜。そんなんじゃ鼻血とか出るんじゃないか?」
市井はそう言うと水を両手ですくった。

「ほ〜ら!これで熱でも冷ましな」

後藤の顔に冷たい水がパシャリとかかった。
もう乾きかけていた頬にまた水がつたっている。
少しぼ〜っとしてい後藤だったが、ようやく我にかえった。
市井はその様子を見て大笑いをしていた。

「やってくれたな〜・・・。この!くらえ!」
後藤も立ち上がって両手で水をすくうと、市井めがけて投げた。

「わっ!やりやがったなこんにゃろ〜。もう一回くらえ!」
「きゃ!やったな〜それ!」
「アハハハハ」
「アハハハハ」

二人がそうして元気一杯にそこで遊んでいるうちに、もう太陽は大きく傾いていた。

25 名前:morizo 投稿日:2003年06月24日(火)20時22分01秒
今回の更新はここまでです。少し多めに更新しました(^^

>たけトラマン(o|o)/さん
どうも、この度はお世話になっています。
新作なんで心機一転頑張っていきたいと思います。

>名無しさん
レスしてくださってどうも有り難うございます。続きを楽しみにしていただけるのは
とても嬉しいことです。毎回このくらいのペースですがよろしくお願いします。

皆様レス有難うございました。m(_._)m
26 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月18日(金)21時48分27秒
保全
27 名前:morizo 投稿日:2003年07月20日(日)06時15分24秒
昼頃までは全くと言っていい程風が吹いていなかったが、少し風が出てきた。
カサカサと木々たちの葉の擦れ合う音が周りの世界を包んだ。

「くしゅん!!・・・ちょっと冷えるね」

後藤のまだ十分に乾ききっていない体が大きく一度ぶるっと震えた。

「おいおい大丈夫か?風邪なんか引かないでくれよ〜。ん?ってかここでも風邪とか
 引くのかな?」
市井は首をかしげながらじっと後藤を見つめた。
「う〜ん・・・でもやっぱ心配だな。ほら、これ着て」

市井は自分が羽織っていた長袖の上着を脱ぐと、後ろから後藤に被せた。
しかし後藤はすぐにそれを脱ぐと、市井に返そうとした。
28 名前:morizo 投稿日:2003年07月20日(日)06時15分55秒
「ん?どした?私はいいよ、着なって」
「でもでも、市井ちゃんもそんな半袖だけじゃ絶対寒いでしょ?私は市井ちゃんが心配だから
 これはいいよ。市井ちゃんが着てて」

市井は手渡された自分の上着を受け取った。

「わかったよ、じゃあこれは私が着ればいいんだね。・・・ってなるか!」

後藤は面食らった様子で驚いた。

「もう〜、いっつも後藤は心配性なんだから〜。私は全然平気だって」
「だから私も全然平気・・・へっくしょん!!・・・なんだから」

後藤はしまったという感じの表情で視線を斜め下に落とした。
辺りは暗くなってきていたが、後藤の少し焦ったような表情を市井は見逃さなかった。
29 名前:morizo 投稿日:2003年07月20日(日)06時16分25秒
「ふふふ、強がっても体は正直だね〜。ほれ、これ以上酷くならんようにこれ着なって」
今度は半ば強引に市井は後藤に上着を着せた。
後藤はもう反抗しようとはしなかった。

「ありがと・・・でもいっつも私は市井ちゃんにしてもらってばっかだよね。
 嬉しいんだけど何か嫌だなぁなんて思っちゃって」
後藤は斜め下を向きながら今にも消えていきそうな声でそう言った。
それを市井は笑った。

「私はそういう後藤の気持ちだけで嬉しいんだよ。な〜に、別に私の方が偉いとか
 思ってないから大丈夫だって。たまたま今は私が後藤にしてやる時だっただけで、
 今度は後藤が私にしてくれる時が絶対来るはずだから、その時までの貸しってことで。
 ね?そん時はお願いだよ」
「う、うん!わかった。じゃあ言われたとおり私そういうつもりでいるから期待してて」
後藤は顔を上げてそう答えた。

「へへヘ、そういう立ち直りが早いのも後藤らしいや」
市井はまた笑った。
30 名前:morizo 投稿日:2003年07月20日(日)06時16分59秒
「よし、もうそろそろ暗くなってきたから真っ暗になる前に帰ろうか」
「そうだね、帰ろ」
市井と後藤は二人で寄り添うようにして山を下って家へと向かった。

後藤はその帰り道の途中、後藤は市井から上着を着させてもらっている分暖かかったが、
そのせいで半袖でいる市井の腕を見ると肌寒そうに感じた。

「ええ〜い!」
「な、何だよ!いきなり〜」
「だって市井ちゃん寒そうなんだもん。こうやってあっためてあげようと思ってさ〜」
それを見ているのが我慢できなくなった後藤は市井の左腕に抱きついた。
「・・・サンキュ」

市井の家に到着するまでに少し時間がかかったが、二人共その時間が窮屈に感じることは
ほんの一分もなく、それどころか時間の流れという概念もその時は微塵も頭の中になかった。

ただそれを見守るように月だけが少しずつ傾きながら、二人が家に着くまでの間照らし続けていた。

31 名前:morizo 投稿日:2003年07月20日(日)06時18分56秒
久しぶりの更新ですが、量は少ないです。すいません(^^;
諸事情により全く小説を書いている暇がここのところなくて1ヶ月ほど空いてしまい
ご迷惑をおかけしました。今後はないように頑張ります。

>名無し読者さん
更新遅くなりすみません。ご迷惑おかけしました。
これからもよろしくお願いします。ゆっくり見守ってやってください。
32 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)16時58分26秒
何かイイっすね〜(^皿^)
「いちごま」大好きなもんで…
気長に待ってますよ〜。









33 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/21(日) 21:28
34 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:01
「へっくし!!」
「市井ちゃん・・・大丈夫?」
「後藤、お前は大丈夫か?」
「うん、私は全然大丈夫だけど・・・」
「ならよかっ・・・へっくし!!」
「市井ちゃんもしかして風邪引いたんじゃないの?」
「ああ、どうやら風邪引いちゃったみたい・・・。ってかここでも風邪って引くんだな」

市井は鼻水をすすりながらそう呟いた。どうやら帰り道で体を冷やしてしまったらしい。
指をこちょこちょと体の前で動かしながら後藤が心配そうに市井を見つめている。

「なぁ後藤」
今まで座っていた椅子から腰を上げると、ふらふらと歩き出してどかっと大きなソファーに寝転んだ。
35 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:01
「な〜に?」
後藤は椅子の向きをくるっと市井のいる方向に向き変えた。

「あのさぁ、変な話して言いかな?」
「へ?」
「まぁいいじゃん、聞いてよ」
「う、うん」

市井は後藤に了解を得ると、後藤のほうから視線をはずし壁の方に視線を向けた。

「別に今私が風邪引いて気付いたわけじゃないけど、本当にこの世界って生きてるときの
 世界と何にも変わらないよね」
ぼ〜っとした目をしながら今はもうどこかに視線を向けていた。
36 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:02
「だって考えてみるとさ、朝があったり夜があったりするし、こうやって病気にもなるし。
 色んなお店とかもたくさんあるし・・・」

後藤はただ黙って市井の話に耳を傾けていたが、その時はいったい何の話をしているのか
わけがわからなかった。話が途切れるたびに時計のチッチッという音が聞こえた。

「結局私が言いたいのはさ」
市井はまた後藤のほうへ視線を向けて、口調を強めた。

「人間にとっての幸せって、実は生きてた世界と同じ世界なんじゃないかと思うんだよね。
 だから天国っていうのはこうなんだって自分なりに納得してるんだ。
 だってそうじゃない?いいことばっかり、苦労が何にもないところだったら、やっぱり
 人間っていうのは駄目になっちゃうし」

市井は半分後藤に同意を求めるような話し方をした。
後藤も少し話の内容が掴めてきたのでうんうんと頷いて見せた。
すると安心したように市井は一度息を吐いてまた話し始めた。
37 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:03
「今からの話は勝手な私の想像なんだけど、神様はもう一度チャンスを与えてくれてるんだって思うんだ。
 一回目でやり残したことを二回目で悔いが残らないようにやり直せっていうさ。
 だから私は今回は絶対に後悔しないように過ごすつもりなんだ」

そう言いきった市井の目は先ほどとは違い、後藤からは強く、何かの決意に満ちたような目をしていた。
後藤は何も言わずにもう一度、今度は大きくコクリと頷く。

市井はもう一度今度は大きく息を吐いた。
顔には微妙に笑みが浮かんでいる。

「・・・急に変な話して悪かったね。でもこういうことを思うようになってからずっと誰かに
 言いたくて言いたくて。でもまさかこれを後藤に直接話せるなんて思ってなかったけど
 何だかスッキリしたよ」

すると今まで一言も口を開かなかった後藤がようやく口を開いた。
38 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:03
「私はここに来て、全くそんなこと思わなかったし、きっと市井ちゃんにこんな話されなきゃ
 思いもしなかったと思う。ただ私は・・・」
後藤は何かを考えながら話しているようだった。少し俯き加減の姿勢だったが、一度言葉を
止めると視線を市井の方へ向けた。

「ただ私は市井ちゃんに会えればと思って、それだけ考えてただけだから・・・。
 市井ちゃん、色々考えてるんだね。やっぱすごいや、改めて関心しちゃったよ」
「・・・・・・」
「市井ちゃん?どうかした?私変なこと言っちゃった?」
「いや〜・・・照れるな〜って」
市井は頭をポリポリと掻いた。

「あっそうだ!もうそろそろお腹減ってきてない?私何か作るよ。
 何が・・・ふぁっくしょん!・・・いい?」
話を言い終わって気が抜けたのか、思い出したようにそう言いだした。
39 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:04
また鼻をずるずると吸いながら台所へ向かおうと立ち上がるの見た後藤は
さっとそれを制して、もう一度今まで市井が座っていたソファーに座らせた。

「無理しなくてもいいよ。ご飯作るの私得意だし、明日だってあるんだから今日はもう
 ゆっくり休んでよ。ね?」
その後藤の言葉はいつも以上に市井には何故か優しく聞こえた。
流れで言っているのではなく、本心から出た言葉のようであった。

そのせいもありいつもなら強がって『大丈夫だって』と言うところだったが、
今回はそんな後藤にたまには甘えてみてもいいかなと思い、素直に聞き入れることにした。
40 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:04
「心配してくれてありがとね。じゃ遠慮しないでお願いするわ」
「ま〜かせといて!市井ちゃんはそこで寝てるだけでいいからね。
 安静にしてないと駄目だよ」
「はいはい」

後藤はにこっと笑いかけてきたので市井もにこりと笑い返すと、さっさと台所のほうへ姿を消した。

「ふ〜」
「・・・ね〜え〜市井ちゃ〜ん!何でもいい?」

ソファーに横になろうとしたその時、台所の方から後藤の声が聞こえてきた。
41 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:05
「いいよ、あるもんで適当に作ってくれれば。後藤の作るものなら何でも喜んで食べるから」
「ふふん、そう?嬉しいな〜。じゃちょっと待っててね。すぐ作るから」
「ああ、よろしく〜」

すると後藤は鼻歌を歌いながら何かを作り始めたようだった。

市井はソファーに横になり天井を見つめると、一言こう呟いた。
「こんな生活がいつまでも続けばいいのに・・・。これだけで私は今幸せなんだから」

瞼が次第に重くなり、いつのまにか目の前は真っ暗になっていた。
42 名前:morizo 投稿日:2003/09/23(火) 21:09
>>34-41
今回更新分です。間が空いてしまって申し訳ないです。
正直なところ、誰も読んでくれていなかったのでこのまま落ちるまで待とうと
思っていたんですが、読んでくださる方がいる間は必ず終わらせますので
何卒よろしくお願いします。

>名無しさん
まだ待っていてくださっているでしょうか?遅くなりすみません。
もしよろしければお読みいただければ嬉しいです。

>名無し読者さん
保全どうも有難うございます。これからも頑張って更新したいと思います。

皆様レス有難うございました♪
43 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/30(日) 08:59

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