不器用な心臓の記憶
- 1 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時09分43秒
アンリアルでよしごまになると思います。
学園モノです。
もしかしたら痛くなるかもしれません。
レスは歓迎しますんで、感想お待ちしています。
- 2 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時11分03秒
- 私『吉澤ひとみ』の通う高校、朝比奈学園は都下でも
それなりの有名校だった。
中、高、大の一貫教育、それぞれが偏差値が高く、
生徒の家庭のほとんどはプチブルジョワ以上。
なのに校風は自由で、中学は普通と変わらないが、
高校の場合、制服は基本服で、ある程度なら私服が許されている。
この高校で、私は日々快適な生活を送っていた。
- 3 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時12分12秒
- 自分でいうのもなんだけど、ルックスは悪くないと思うし、
成績も学年でベスト50から落ちたことは無い。
運動に関しても夏でクラブは引退したけど、現役時代はバレー部の
スタメンだった。
高校三年でもうちの学校はエスカレーターだから、通常の成績が優秀で
あれば特別な試験もなく希望する学部に進める。
もちろん私は今のままで好きな学部に入れるだけの成績を取っていた。
友人も結構いると思うし、男の子にもモテてる。
今のところ人生を甘く考えてもいいくらい、私の人生は順調だった。
不幸のタネなんか一つも無いし、ストレスなんか感じない。
毎日が楽しくて仕方が無い。
ついこの間まではそんな日々だった。
- 4 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時13分17秒
- そんな私の心の中にちょっとした引っ掛かりを生んだのは、
3年になってから編入して来た一人のクラスメートのせいだった。
『後藤真希』
無愛想で口数も少なく、友人の一人も作ろうとしないその娘が、
今、気になって仕方ないのだ。
「今どき珍しい硬派な不良みたい。」
「あの子っていっつも制服だよねぇ。きっと貧乏なのかも。」
「うちの学校の感じじゃないよねぇ。」
と入って来た頃、友人たちはそう言っていた。
私も気になったが、それはこの学校の雰囲気に合わない
変なやつがいるなぁとか思っただけ。
だから、どうこうしようなんて思っていなかった。
ただ、その横顔は気にいったけれど。
- 5 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時14分42秒
- それが変わったのは夏休み明け。
戯れに業者の実力テストを受けた時。
受験の必要の無い私はもちろんそんなテストを受ける必要は無かった。
けれど一度くらいは自分の実力を試すのに受けてもいいかなって思ったから。
結果はもちろん悪く無かった。
全国順位で二桁以内にとどまっていた。
- 6 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時15分58秒
- だけど、そのテストの結果のリストの中に見つけてしまった。
『後藤真希』という名を・・・。
彼女は全国2位という、私よりも上の順位を勝ち取っていた。
あの子が?あの後藤さんが?
同名の別人という可能性も考えた。
でも、所属学園の欄には『朝比奈学園』と記されていた。
- 7 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月20日(金)21時17分54秒
- まずは、こんな感じで・・・。
週1、2回は更新していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月20日(金)22時12分05秒
- よしごまだぁーーーー。
嬉しいです。
- 9 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時27分41秒
- 彼女は、学校こそサボらなかったが、授業が終わればすぐに姿を消す。
校内のテストでは貼り出しベスト50に一度も名が載ったことがない。
友人も作らない。
何人かが声を掛けたこともあったが、冷たく見放され、軽く流されたのも見ていた。
どう見たって受験とか模試とかに関係なさそうなヤツなのにどうして?
それからなんだ。
あいつが気になったのは。
- 10 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時28分28秒
- 偶然なんてことはありえない。
昔みたいにマークシートじゃないんだから。
答えがわかって書き込んでじゃないと正解にはならない。
それなら何故、学校の成績は良くないんだろう。
あんなテストを受けたってことは外部の大学受けるつもりなのか?
この学校でやってる勉強をバカにしてるのか?
この学校だってかなり上ランクなんだけどな。
- 11 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時29分55秒
- 良く見れば無愛想なその顔も決して不細工なんかじゃない。
でもいつもやる気なさそうな顔で、
制服のリボンは適当に結んで、
半分近くまでブラウスのボタンは開けてるような格好で、
義務だからここにいるんだよという顔で席に座っている。
考えて見れば益々わからないことだらけだった。
- 12 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時30分47秒
- 友人は彼女が制服を着っぱなしだから貧乏だと言っていたが、
大前提としてウチの学校に貧乏人は入れない。
学費も高いし、なんだかんだで寄付金も多い。
うちの親だってそれをこぼしていた。
どう考えたって校風にそぐわない(はずの)学校にどうして入って来たのか?
親が決めたにしてもここへ編入するぐらいなら公立に入れた方がいいだろう。
- 13 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時31分55秒
どうして、『後藤真希』はここにいるのだろう?
どうして、あんな態度をとっているのだろう?
[どうして]が心の中に溜まり、気がつけばいつか自然に目は彼女を追い、
そして彼女のしていることのすべてが気にかかっていた。
- 14 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時32分51秒
- かといってあの冷たい態度に、声をかける勇気はない。
もし自分の疑問を口にして、あいつに「だからなに?」と拒絶されたら
プライドが傷つくのがわかっていたから・・・。
近寄ってみたいのに近寄れない。
興味があるのに追求できない。
だからストレスが溜まる。
イライラしてしょうがない・・・。
これが平穏な日々をすごしてきた私の、今一番の気がかりだった・・・。
- 15 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月21日(土)22時41分36秒
- 更新しますた。
最初のうちはがんばって毎日更新できたらいいなぁ。
( ´ Д `)本人の登場までもう少しです。
>>8 名無しさん
レスありがとうございます。
期待に沿えるようがんがります。
どうぞよろしくお願いします。
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月22日(日)01時29分36秒
- 謎めいてていいっすね。楽しみ
- 17 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月22日(日)21時49分04秒
- 「う、寒い・・」
そんなイライラを払拭する日が来たのは、年末も押し迫った頃。
すでに大学へ通っている従姉妹がウチから3駅の場所へ引越してきたというので
遊びに行った道だった。
一人暮らしはうらやましかったんだけど、彼女がそれほど
悠々自適な生活を送っている訳ではないと察した私は、
『夕飯くらい奢るよ』という誘いの言葉を断り夕暮れの前にそこを出た。
- 18 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月22日(日)21時50分00秒
- 駅前に大型店があるその街は、自分が住んでいる駅よりも華やかで、
その分一軒家は少なく、アパートが多い。
そのせいか学生が多くかっこいい街のように思えた。
従姉妹の話だと駅から離れたところには大きい家の並ぶ閑静な住宅街があるらしく、
雑多な店の中に時折着物屋や食器の店があるのはそういう客相手のものらしい。
- 19 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月22日(日)21時51分49秒
- せっかく出て来たのだし、時間もまだ早い寒さを和らげるにも
ちょっと暖かいものでも飲んでいこうかな。
そう思って、来る時にちょっと見かけた駅から離れた場所にある、
洒落たカフェへ足を向けた。
繁華街と住宅街のギリギリの所にあるその店は、テラスタイプのオープンカフェで、
その張り出した部分がカッコイイなと思いながら通ってきた。
風で乱れた髪をさっと手グシで整えると、その店のドアを開けた。
- 20 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月22日(日)21時53分33秒
- 思っていたより奥行きのある店は、フローリングで、
天井にはゆっくりと回るプロペラ、窓際にはうるさく無い程度の観葉植物があって、
まるでテレビのロケにでも使われそうなお洒落な内装だった。
目当てのテラスには外側からは直接入ることが出来ないようになっていたので、
ぐるりと回って外に出る。
寒いかな?と思ったのに、そこは意外にもさして寒さを感じなかった。
ふと上を見ると、テラスの上の方には電熱ヒーターみたいな赤い管が走っている。
そういえば、確か前にどこかで聞いたことがあったなぁ。
スイスだかどこだか忘れたけど雪の多い国では、
テラスカフェにこんな仕掛けがしてあるって・・・。
- 21 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月22日(日)21時55分00秒
- 自分が一人で見つけた店が気に入ると嬉しいもの。
私はすっかり気を良くして、上着を脱ぐと隣の席に置いてウエイトレスを待った。
「いらっしゃいませ」
白いブラウスに黒いギャルソン用のエプロンをした、
私と同じくらいの長身な女の子はすぐにやってきて、私の目の前に立った。
「メニューを・・・」
そして手にしたメニューを私の前に差し出したままのポーズで固まった。
「・・後藤さん・・?」
そう、そこに立っていたのは、すっかりこの店の雰囲気に溶け込んでいる
ウエイトレスの〈後藤真希〉だった。
- 22 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月22日(日)22時01分07秒
- 更新しますた。
何とか毎日更新がむばっとります。
やっと( ´ Д `)さんを登場させることができました。
>>16 名無しさん
レスありがとうです。
謎っぽいのも最初だけかもしれません(w
楽しみにしていただきありがとうございます。
これからもお見捨てなきよう・・・
では皆さんよろしくお願いいたします。
- 23 名前:名無し( `.∀´) 投稿日:2003年06月23日(月)21時02分38秒
- |
|`.∀´)チラッ
|ミ オキニイリニトウロクット
|ミ
- 24 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時38分04秒
「吉澤さん」
相手は私の名前を知っていた。
同じクラスなんだから当然と言えば当然なんだけど、
その事実は私のプライドを少しくすぐる。
そしてそれ以上に私を喜ばせたのは、後藤さんがこの店の店員として
私の前に居たことなんだ。
うちの高校は他校に比べ自由な校風だけど、たった一つだけお堅いことがある。
アルバイトは禁止なんだ。
通ってる生徒はほとんど裕福な家庭の子達だから文句が出ることも無いが、
それを破れば停学というペナルティが待っている。
- 25 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時39分16秒
- 「ねぇ、あんたってココでバイトしてんだ。」
と聞くと、案の定彼女はチッと小さく舌打ちした。
「・・・黙っててよ」
押し殺すような彼女の声が耳に届いた。
「どうしようかな」
うれしくて顔がゆがむ。
興味のある人間の弱みを握ったんだ。うれしくないわけが無い。
「とりあえず、カフェ・ラテ。もち、オゴリでね。」
「・・・かしこまりました。」
後藤さんは苦虫を噛み潰した顔のまま一礼するとくるりと踵を返す。
- 26 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時39分59秒
- どうして、彼女がココにいるのかは知らなかった。
だがその理由を、もう自分は聞けるだろう。
今までは色々疑問に思っていたことを口にすることが出来なかった。
『関係ないでしょ』
と撥ねつけられ、拒絶され、無視されるのが怖かったから。
けれど、もうその心配は必要ない。
もし彼女が拒絶の姿勢を見せたらこう言えばいい。
『じゃあ、学校に報告しなきゃね。』と。
- 27 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時41分48秒
- オーダーした、カフェ・ラテはすぐ届けられた。
仏頂面した後藤さんの長い指が白いカップとソーサーを目の前に置く。
昨日や今日仕事についたのではない優雅さ。
「それ、飲んだら出て行ってくれる?」
短い追い立ての言葉にも傷つかない。
「そんな冷たいこと言わないでよ、トモダチじゃん。少し話しくらい聞かせてよ。」
「バイト中だし。」
「いつ終わるの?」
「聞いてどうすんの?」
「そのあとにゆっくり話を聞かせてともらおうかなってさ。」
「なんであんたに。」
「校則違反を見逃すかどうか決めようと思ってさ。理由くらい聞かせてもらってもバチは当たんないと思うけどなぁ」
ほらまた思って通りの反応。
彼女は薄い唇をきゅっと引き結んだあと、答えをくれる。
- 28 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時42分57秒
- 「九時だよ、まだ四時間もあるし。」
「いいよ、行く先はあるんだ。じゃあまた9時にくるよ。」
彼女は黙ったまましばらく私を見下ろしていたが、肩を落とすように軽いタメ息をつくと視線をはずした。
「ちょっと待っててよ」
上体を揺らさずくるりっとターンするその仕草がカッコいいしかわいく見える。
ウエイトレスの格好をしているからかな。
モノトーンのその衣装は誰が着てもかわいらしく見えるものだしね。
- 29 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時43分52秒
- 目で追うと、カウンターに歩み寄り中にいる年配の男性に何かを話している。
こちらを見て一度私を指差したが、そのまままた話を続けた。
友達が来た、くらい言ってるんだろうか?
まさか脅されてるなんて告げ口はしてないよね。
正義は私にあるんだし。
じっと見ていると、振り向いた後藤さんと目が合う。
それがなぜか妙に気まずくてテラスから外を見る。
- 30 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時45分19秒
- ちょうどその時、犬を連れた女性が手馴れた様子で自分の犬を抱きかかえ
テラスの隅にあった小さなくぐり戸を抜けて私から離れた場所に席を取った。
なるほどね・・・。駅前から離れた場所なのにこれだけ広いテラスカフェ
にしているのは、住宅街のペットを連れた人間を狙ってなんだなぁ。
後藤さんではないウエイトレスがにこやかに女性に声をかけて、
水の入ったグラスを差し出す。
女性はメニューも見ずにオーダーをする。
これもまたテレビドラマのワンシーンのようだった。
- 31 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時46分34秒
- 「吉澤さん」
そんな光景をぼうっと見ていると背後から急に呼ばれてドキリとする。
「な、なに?」
見下ろす後藤さんは相変わらず仏頂面だった。
「はなし、聞きたいんなら来てよ。」
「来いって、どこに?」
「どこでもいいよ。ただ、ここで話せないからさ。ごとーのアパートは?」
偉そうなその態度は気に食わなかった。
けれど、彼女のアパートというのは魅力的な響きだ。
- 32 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時47分40秒
- 「アパートって・・・。実家から通ってないの?」
「だからさぁ。ここじゃ話せないって言ってんの。」
「で,バイトは?」
「今店長に引けさせてもらうよう話したから。従姉妹の妹分が来たってさ。」
「ち・・、ちっと待ってよ。従姉妹はいいとしてさぁ、なんでうちが妹分なの?」
「・・・しかたないよ。ごとーはここでは二十歳で通してるんだしさ。吉澤さんはどう見ても二十歳以上には見えないしさ。」
確かに、ロゴ入りのダウンジャケットにTシャツの重ね着の格好では大人とは言い難いかも知れない。
- 33 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時49分05秒
- 「で、わかった?口裏合わせるんだよ。」
「それが人にモノを頼む態度な訳?」
「・・・今着替えてくるからさ、それまでに飲んでおいてよ。」
後藤さんは一度も笑顔を見せずにまたすぐ離れて行った。
さっきのウエイトレスは客ににこにこと笑いかけていたのにさ。
「二十歳なんて良く言うよ。」
そりゃ今の格好だったらそれくらいには見えるけど、
私服に戻れば見えないだろうにさ。
けれどそれは間違いだった。
私がちょうどカップを空にしたと同時に再び戻ってきた後藤さんは、
古着のアーミージャケット、長い足にぴったりとしたスリムタイプの
ストレートジーンズという、ぜんぜん子供っぽくない格好だった。
- 34 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時54分34秒
- 更新しますた。
結構話を進めることができました。
毎日更新する気だったのですが昨日は飲んでしまいできませんでした。
申し訳ないです。
>>23 名無し( `.∀´) さん
お気に入り登録ありがとうです。
期待を裏切らないようにがんがります。
では今後もよろしくお願いいたします。
- 35 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月24日(火)20時59分38秒
- あー、ミス訂正です。
>>28 じゃあまた9時にくるよ→じゃあまた九時に来るよ
>>32 ちっと待ってよ→ちょっと待ってよ
大変失礼しました。
- 36 名前:紅屋 投稿日:2003年06月24日(火)22時34分23秒
- 黒吉がイイ感じです。
先が気になる話だなぁ。楽しみがふえますた。
- 37 名前:ノッキ 投稿日:2003年06月25日(水)19時29分54秒
- ブラッククロスさんが小説を書いているのは知りませんでした。
それで、ちょっと覗いてみたら…読みやすくおもしろくて思わずお気にいり入り決定です(w
よしとごまが両方黒くて良い感じです。
次回更新まってます
- 38 名前:カヲル 投稿日:2003年06月25日(水)22時50分07秒
- よしごま苦手なんですが、こちらは苦手意識なく読むことが出来ました。
これからも読ませていただきたく思います。
- 39 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月26日(木)02時17分35秒
- 「いくよ。」
と言われ、文句も出ない。
黙って立ち上がり彼女の後をついていく。
「ごっちんの従姉妹なんだべか?あんまし似てないべさ。」
「無愛想な従姉妹を持って大変だねぇ、カオリ同情するよ。」
と、ほかの店員さんに話しかけられる。
制服の胸のとこにあるネームプレートに安倍と書いてある人と、
飯田と書いてある人だった。
しかし、相手は確実に自分より大人な人たちだろう。
だから、気の効いたセリフは出てこなかった。
- 40 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月26日(木)02時19分01秒
- 「なっち。子供からかって遊ばないの。トイレのチェックはすんだ?」
「ごっちんはほんとにいっつもきびしいべ。」
「カオリもだよ。あそこのテーブル片付けてないよ。」
「なにさー、ごっちんでも従姉妹はかわいいんだねぇ。カオリは意外だったよ。」
なのに後藤さんはその大人たちとタメ口をきいている。
「店長、後でまた来ます。」
「ああ、時間は延長と入れ替えていいんだろ?」
「いいですよ。では、すいませんあとはお願いします。」
そして店長らしい髭の男性に声をかけると、
私の手を軽く引いて外へ連れ出した。
- 41 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月26日(木)02時20分13秒
- この人は、私の知らない世界を知っている。
それはあのランク表で自分の届かない順位に、
彼女の名前を見つけたときのような敗北感。
年上の人のからかいの言葉を軽く無視する相手と、
どうでもいいはずなのにやっぱり店を去るとき
彼女らにぺこりと頭を下げてしまう自分。
黙ったまま彼女に手を引かれて道を行きながら、
さっきまでの高揚とした気分が萎えていくのを感じる。
- 42 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月26日(木)02時21分36秒
- 弱みを見つけたといっても、この人にとっては、
大したことじゃないんじゃ、ないだろうか。
この人なら、私の知らない方法で軽く切り抜けて
しまうようなことなんじゃないんだろうか?
今、私を連れて行くのはその浮ついた私に怒りをぶつけるためなのでは・・・?
「ねぇ、どこまで行くのさ?」
駅とも、自分の従姉妹のアパートとも違う方向へ導かれていることに
不安を感じ聞いてみる。
- 43 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月26日(木)02時22分16秒
「ごとーの部屋だよ。さっき言ったじゃん。」
「そこらの喫茶店でもいくない?」
「んあ?お金もったいないし。」
振り向きもしないから、彼女がどんな顔をしているのかわからなかった。
けれどその言葉は、怒っている風ではないような気がしたから、気持ちがほんの少し楽になった。
- 44 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月26日(木)02時36分33秒
- 更新しますた。
ちょっと少ない更新でした。
なっち&かおりん初登場にして出番ここだけかも・・・w
レスのお礼です。
>>36 紅屋さん
読んでいただきありがとうございます。
黒吉良かったですか、恐縮です。
少しずつ黒くなくなるかも・・・w
>>37 ノッキさま
見つけて読んでいただき、そしてお気に入りに登録ありがとうございます。
読みやすいと思っていただきすごくうれしいです。
次回もがんばっていくんでよろしくです。
>>38 カヲルさま
レスありがとうございます。
よしごま苦手でも読みやすいと言っていただき大変うれしいです。
これからもお見捨てなきようお願いいたします。
というわけでこれからもよろしくお願いいたします。
- 45 名前:みるく 投稿日:2003年06月26日(木)22時19分51秒
- よしごま好きなんで頑張って下さいね!!
毎日更新されてるんで楽しみで仕方ないです♪
- 46 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時09分18秒
- 後藤さんのアパートは、店から歩いて十分ほどで、
駅からは多分二十分くらい離れているだろう所にあった。
古い木造の建物、ボロボロ大谷石の塀と建物の間には雑草が密集している。
何だか昭和の遺物みたいなアパートだった。
階段の脇に付いてる郵便受けの状態を見ると空き部屋もあるみたいだ。
そのアパートの一階の、一番奥の部屋に立って彼女が鍵を取り出す。
ドアには表札もなかった。
- 47 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時10分13秒
- 「はい。入ってよ。」
促され、足を踏み入れる後藤さんの部屋。
ガランとした部屋は生活感に溢れてはいたが、物は少なかった。
「あ、ブラ・・・。」
締め切った窓には洗濯物さえ干してあった。
「うるさいなぁ、見ないでよぅ。」
あわてて後藤さんがその洗濯物を隠す。
その顔は学校では見たこともない、照れたような、焦ったような顔だった。
- 48 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時11分53秒
- 「ティーバッグのお茶くらいしかないけど、いい?」
「ああ、うん。」
後藤さんって・・・、どんな女の子なんだろう?
二畳ほどのキッチンに消えた背中を見送りながら、
私の心の中にはまたその疑問が湧き起こった。
ついさっき従姉妹の部屋を見てきたばかりの自分には、
この部屋が『親元を離れての一人暮らし』というようには見えない。
というか、いまどき見つけるのが難しそうなビニールロッカーや、
カラーボックスを家具に使っているところが、『親元を離れての一人暮らし』
だったとしてもかなり貧しい生活を強いられているのだろうと思わせた。
- 49 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時12分58秒
- 別に貧乏学生が不思議なわけじゃない。
世の中にはそういうやつだっていっぱいいるだろう。
ただ不思議なのは、そういう女の子がどうしてウチの学校にいるのかってこと。
前にも言った通り、ウチの学校は金持ちでなけりゃダメというほどではないが、
それなりに余裕がなければ通うことは出来ないランクなのだ。
とてもじゃないが、洗濯物を部屋の中に干していたり、傷だらけのテーブルに
カップ麺を積んでおくような人間が入れるところではないのだ。
- 50 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時13分44秒
- 「はい。お茶だよ。」
気になるのはそれだけではない。
「後藤さん?あれ何?」
この部屋には一人暮らしにそぐわない物がもう一つあった。
そこだけ綺麗に整頓されたカラーボックスの上にある黒塗りのもの。
それは、どう見ても仏壇だった。
「ああ、それ。おかーさんとおとーさん。」
なのに彼女はこともなげに言ってのける。
- 51 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時14分45秒
- 「ひょっとして・・・、後藤さんって・・・。」
それは口にしていいのかわからない質問だから、口ごもってしまう。
すると彼女はふっと優しい顔を見せ、子供にするように私の頭をガシガシと撫でた。
「そんな顔しないの。死んだって言ったって、もう二年も前のことだよ。」
私は決して可愛い系の顔じゃないし性格でもない。
だからそうされると、まるで彼女に本当に子供扱いされているようで、
少しムッとした。
- 52 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時15分32秒
- 「・・・ご愁傷様でした。」
「んあ?なにそれ?」
「ばかだねぇ、人が死んだときは言うもんでしょ。」
「それってさぁ、葬式の時とかに言わない?」
「違うよ。死んだってわかったときに言うもんなんだよ。」
「へぇ、そうなんだ。知らなかったなぁ。じゃ、ありがたく受け取っておくよ。」
後藤さんはカップ麺の載ったテーブルの上にひじを乗せ、寄りかかるように立てひざで座った。
居心地が悪いから正座をしていた私も、それを見て足を崩す。
- 53 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時16分21秒
- 「じゃあさ、後藤さんってご両親が亡くなったからバイトしてんの?」
知りかったことへ話を向けようと、自分から話題を持ち出す。
「んあ?まあ、そんなとこかな。」
「学費は誰が出してんの?学費出してくれてる人が生活費とか出してくんないの?」
その辺が彼女の核心らしい。
「うーん、そいつらからは貰うのが嫌なんだよねぇ。」
「一応親戚とかでしょ?」
「まあね。」
「じゃあ別にいいじゃん。」
「そういうわけにはいかないの。いろいろ事情があるんだぁ。」
「でもウチはバイト禁止だしね。」
「あーわかってるよ。だから、こっそりやってたんでしょ。」
「ウチに黙っててほしい?」
彼女はカップの縁をつかむ様にして持ち上げたお茶をコクリと一口だけ飲んだ。
- 54 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時17分05秒
- 「言っとくけどさぁ、バイトしてたってお金なんか無いよ。仕送りも断ってるんだからさ。」
「何?その言い方。ウチがユスリするような奴に見えんの?」
「違うの?」
「違うよ。」
いや、ある意味一緒だね。
この『後藤真希』という人の弱みを握りたいと思っていたんだから。
だけど彼女の口からチンピラ扱いする言葉をきいたら、そう言わざるをえない。
- 55 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時18分31秒
- 「ウチはその・・・、浮ついた気持ちでやってるんだったらバイトは
禁止されてることなんだから止めたらって言うつもりだったんだ。事情わかんなかったし。」
「じゃあさぁ、事情がわかったんなら黙っててくれるの?」
「もっと詳しく話してくれたらね。」
「もっと詳しく?」
「そうじゃない?学費は出してもらうけど、仕送りは貰わないって変じゃない?これじゃ単に遊びたいから親戚の家を出たみたいじゃない?」
「・・・吉澤さんがそんなに真面目とは知らなかったよ。」
ふっ、と息を吐き、彼女は背中を丸めるようにして頭を掻いた。
- 56 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)00時23分49秒
- 更新しますた。
( ´ Д `)さんの家の事情が少しずつわかってきました。
>>45 みるくさま
レスありがとうございます。
よしごまお好きですか、喜んでいただき何よりです。
毎日更新何とかがんばっていきます。
では次回もよろしくお願いいたします。
- 57 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月27日(金)23時55分01秒
- 更新しようと思ってたのですが、今日は仕事で力尽きました。
明日午前中に更新します。
平にご容赦を・・・。
- 58 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時06分24秒
- 「親が死んで、親戚に引き取られたんだ。
お金はあったけど親のことを馬鹿にする連中だったから腹立ってさだから家を出たんだ。
ただね、まだ未成年だし、高校くらいは出たほうがいいと思ったから、
そいつらが決めた学校に行ってるんだよ。
連中に借りを作るのが嫌だったから自分で稼いでるの。以上。」
言い捨てるようなそのポーズさえ、様になってる。
- 59 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時07分38秒
- 「このアパートも自分で払ってるのかい?」
「そうだよ。」
「だって、安くないしょ?」
「いちおー、親の貯金もあったからね、バイトは生活費のためだよ。それにもうすぐ卒業だし。」
「後藤さんって頭良いんでしょ、だったら大学行けば良いのに。」
「目的も無いのに行ってもしょうがなくない?」
「将来ってどうすんの?」
「んー、おとーさんの後でも継いでトラックの運転手でもしようかと思って。」
「・・・トラック・・・」
「うん。」
似合ってる・・・かもしれない。口は悪いし目つきも悪いしね。
- 60 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時09分05秒
- 「本当はね、中退でも良かったんだ。でも連中の用意した学校でそれなりにやっていけるところは見せておかないとね。
おとーさんがバカじゃないことを証明したかったんだ。」
彼女は大人なんだ。
私のように親のスネをかじってとりあえず大学でて、
そのときに給料が良くて見栄えのいい会社に入れればいいなんて考えていない。
彼女にとっては、毎日が生活で、自分でその道を開いていかなければならないものなんだ。
「黙っててもいいよ・・・。」
自分と全然違う人間。
- 61 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時10分14秒
- 「そのかわり口止め料。ウチを時々ココに来さして。」
こんなに近くにいるのに、同じ場所にいるのに・・・遠い。
「んあ、なんなの?」
それが嫌だ。
「一人暮らしの家って、いいじゃん。隠れ家みたいでさ、邪魔はしないから。」
「あのねぇ・・・。」
気になってる存在だった。
せっかく彼女の秘密を握って、これから彼女に近づいてみようと思っていたところだった。
「別にいいじゃん。ちゃんとバイトの連中の前では従姉妹の妹分だって事にしておくからさ。」
チャンスが訪れたと思った途端にすぐ離れるなんて。
- 62 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時11分21秒
- 「じゃ、バイト先にも来る気?」
「安いもんじゃない?金とかせびってる訳じゃないし。飯だって持って来てもいいよ。」
「んー、そういう問題じゃなくない?」
「じゃあ言ってもいいの?卒業間近で停学や退学食らったら、嫌いな親戚たちに馬鹿にされるんじゃないの?」
「あんたねぇ・・・。」
「まあ、今日は帰るよ。これからは私と後藤さんは『トモダチ』ね。」
「あ、あとさ、敬語とか使うの止めない?『トモダチ』なんだからウチのことは『よしこ』とでも呼んでよ。で、なんて呼んだらいい?」
「・・・ったく・・・、『ごっちん』・・・。」
半ば勢いに押されながらも、やさしい顔で静かに答えてくれた。
- 63 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時12分34秒
もっと知りたい。
自分が彼女より子供なら、彼女のそばにいて、私も彼女と同じ場所に立ちたい。
彼女の背中だけ見たまま別れるのは嫌だ。
私だけが彼女を見ている、そんな状況のままじゃ私は後藤さん・・
いや、ごっちんに負けたままじゃないか。
傍にいて、くっついてその顔も私に振り向かせたい。
「じゃ決定ね、これからはココはウチの隠れがだよ。」
「ごとーの家だよ」
「一部共用って事で。」
「よっすぃ・・・。」
- 64 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時13分35秒
- あと少しで卒業してしまう。
そうなったら私はごっちんにとってクラスのほかの連中と同じように、
いやいや行っていた学校にいた誰かで終わってしまう。
そうなりたくないのなら、彼女の視界に飛び込んでいかなきゃ。
「忘れないでね。ウチはごっちんの秘密を握ってる。立場はウチのほうが上なんだよ。」
たとえこの行動で彼女が舌打ちをしようとも、苦々しい顔を見せようとも、
視線を合わさないまま去られるよりはずっといい。
- 65 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時14分18秒
- 私は、ごっちんに振り向かれないことに小さな苛立ちを感じている。
その理由はわからないけれど、それが自分だけなのが気に入らない。
彼女にも同じ気持ちを味わわせたい。
だから、彼女のそばにいなくては、そして、ごっちんに私を認めさせなければ。
自分『吉澤ひとみ』の、プライドのために・・・。
- 66 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月28日(土)10時26分14秒
- 更新しますた。
今回の更新で第1章『遭遇』終わりました。
今夜にでも第2章『学校』を更新したいと思います。
ではよろしくお願いいたします
- 67 名前:カヲル 投稿日:2003年06月28日(土)10時26分49秒
- 動き出したって感じですねぇ(主観かな?)
吉澤さんの気持ちはよくわかりますわ。
いい感情っちゅうのとは違うんだろうけど、気持ちはわかるっす。
- 68 名前:カヲル 投稿日:2003年06月28日(土)10時28分43秒
- もしかして…ageたんですか!?私。
いや…あれ?
とりあえずすいません。
- 69 名前:ノッキ 投稿日:2003年06月28日(土)13時54分50秒
- 更新お疲れ様です。
後藤さんのイメージは『大人』ですね。
これから吉澤がどう関わっていくか楽しみです!
- 70 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時01分45秒
- その日はお茶一杯で別れたが、翌日学校で再び顔を合わせると、
すぐに彼女に声をかけた。
「おはよう。」
と言うありきたりな挨拶。
たったそれだけの言葉を言うにも、今までは無視されるのが怖くて口に出せなかった。
ごっちんから人を寄せ付けないオーラが出ていたって・・・
私だけは彼女のそばへ歩いていける。
- 71 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時02分28秒
- 「そういえば、ごっちんって遅刻とかしないよね。」
カバンの中から教科書を出す彼女のそばで、にこやかに声をかける。
「例の親戚の手前マイナスイメージが付かないようにしてんの?」
ごっちんはぶすくれた顔はしていたが、ちゃんと返事はしてくれる。
「ん、まあそんなとこ。」
もう彼女は無視なんかしない。
- 72 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時03分05秒
- 「そういえばさー、あの部屋。カップ麺いっぱいあったけど、ごっちん好きなの?」
「んあ、んなわけない。飯つくんのめんどいだけだよ。」
「もしかして・・・作れないとか?」
「んー・・・ご飯炊いて肉や魚焼くくらいなら出来るもん。」
「野菜食ったほうがいいって、栄養偏るしさ。」
「もー、うっさいよぅ。」
周囲の友人達はウチらを遠巻きにして驚いているようだった。
- 73 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時04分09秒
- それはそうだろう。
私だって昨日まではごっちんと誰かが普通に話してたらビックリするし。
「今度行くとき、煮物でも作って持っていこうか?」
「へぇ、料理しなさそーだけどするんだ。」
「まあね、昔母さんが病気したことあってさ、その時からね。なんか食べたいものある?今ならリクエスト受け付けるよん。」
「んー、・・・肉じゃがかなぁ。」
「月並みだねぇ。」
「料理とかあんましわかんないからしょうがないじゃん。
あ、ピーマンとナスを味噌で炒めたヤツなんか好きかも。」
「味噌炒め?」
「出来ないの?」
「出来るさ、当然だよ。あんなの簡単だし。」
- 74 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時05分19秒
- どうしてごっちんが学校で友人を作ろうとしないのか、それはまだ知らなかった。
彼女が何で頭のいいことを隠しているのか、嫌いな親戚ってのはどういう連中なのか、
そういうのも知らなかった。
だけど、今は急がない。
彼女が友人を作らないことがわかって、それが大したものではなかったら・・・
たとえば、単に人が近づいて来ないだけだとかだったら、
このポジションにほかの人間が入って来てしまうかも知れない。
私がやっと手に入れたこの場所を他人にも譲るなんて許せない。
それくらいならまだ知らないままでもいい。
- 75 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時06分32秒
- 「今日も来るの?ヨシコ。」
「昨日の今日じゃ行かないわぁ。仕事サボらせて悪い事としたしね、
まあ、二、三日中には行くよ。ごっちん。」
軽いため息を付くけれども『来ないで』とは言わない。
「じゃ、またね。」
いい気になってるとは思う。
でもこの面白い立場を無駄にはしたくない、そう思った。
- 76 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時24分46秒
- 更新しますた。
少し少ないんですがご容赦を。
日付が変わってしまいましたが何とか出来ました。w
レスのお礼です。
>>67,68 カヲル様
いつもありがとうございます。
(O^〜^)さんの気持ちわかっていただきうれしく思います。
ただ本人はわかってるんだかわかって無いんだか・・・w
>>69 ノッキ様
( ´ Д `)さんは大人でしw
大人な感じを表現するのに苦労しております。
そう感じていただき非常ににうれしいです。
これからもがんがりますのでお見捨てなきよう・・・
- 77 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)00時40分24秒
- あーまたやってもうた。
訂正です。
>>63
( ´ Д `)<「よっすぃ・・・。」→( ´ Д `)<「よしこ・・・。」
です。
ちょっと前に(O^〜^)<『よしこ』とでも呼んでよ。
って言ってたのに・・・なんでやねん。
失礼いたしました。
- 78 名前:紅屋 投稿日:2003年06月29日(日)00時51分26秒
- 更新速度がはやい!
そしてごっちんCOOL!
言うことありません。素晴らしいですわな
- 79 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年06月29日(日)22時15分12秒
- 皆さんいつもおせわになっております
今夜更新分なんですが、急に今から出張が入りまして出来そうにありません。
もうしわけないです。
今携帯から書き込んでおります。
明日の午前中には更新致します。
では。
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月30日(月)19時16分34秒
- よしごま発見、オキニに追加っと、
更新ガンガってください
- 81 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月04日(金)21時03分44秒
- ごっちんのそばを離れ、自分の席へ戻ると、案の定友人達は私を囲んだ。
「あの日と、後藤さんでしょ?」
この人は、『石川梨華』。
梨華ちゃんって呼んでる。昔から家が近所で小さいころから仲良くしてる。
いわゆる、幼なじみってヤツかな。
何かあるといっつも泣きそうな顔で眉毛をハの字にして心配してくれる。
- 82 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月04日(金)21時04分25秒
- 「ん、そうだよ。」
「あの子って不良なんじゃないの?」
ぬくぬくとした水。
自分と梨華ちゃんはどっぷりと肩までそれに漬かっている。
- 83 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月04日(金)21時05分13秒
- 「よっすぃ、いつの間に仲良くなったの?」
「別にー。そんなに親しいってわけじゃないし。ウチの従姉妹が住んでるトコで偶然会ったんだ。」
「そうなの。喧嘩とか売られてない?大丈夫?」
「え?なんでさ?」
「あの子って、どっかの不良と乱闘してたって噂あるし・・・。」
「そっかぁ。」
遠ざけてはいるけれど、誰もが彼女のことを気にしている。
- 84 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月04日(金)21時05分52秒
- でも、みんなは知らないだろう。
ごっちんがどんな部屋で暮らし、どんな生活を送っているか。
私だけが、その片鱗を知っている。
学校ではあんまり声を掛けない方がいいかもしれない。
ごっちんが近づきやすいと思ってほかの人間が親しくしないように・・・。
「それよりさー梨華ちゃん。今日の現国、漢字の小テストじゃなかったっけ?」
「あっ、そうだね。大変だぁ〜・・・。」
梨華ちゃんはバタバタと自分の席に帰っていった。
- 85 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月04日(金)21時06分59秒
- 授業の始まる前の慌ただしさの中、足を投げ出して、
目を閉じているごっちんの周囲だけ空気が動かない。
その日、わたしはもうごっちんに声を掛けなかった。
ごっちんも自分から声を掛けて来ることは無かった。
いつか・・・そう、いつか。あっちから声を掛けさせてやる。
学校じゃなくてもいい。
どこででもいい。
ごっちんがわたしの名前を呼んで、向こうから歩み寄ってくるように・・・。
だけどその前に、自分にも少し準備することがあった。
- 86 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月04日(金)21時18分35秒
- 更新しますた。
先ほど出張より帰宅いたしました。ですので少なめになりました。
更新が滞り申し訳ありません。
( ^▽^)さん登場しました。
この先、何回出てくることやら・・・(w
レスのお礼です。
>>78 紅屋さん
更新の早さも尽きはじめました。(w
また前のペースで出来るようにがんがります。
( ´ Д `)さんCOOLです。きっとこのままCOOLでしょう。
いうことなしとはありがとうです。
>>80 名無しさん
レスありがとうです。
呼んでいただき、そしてお気に入り登録ありがとうでし。
これからもがんがります。
ではまた次回・・・。
- 87 名前:紅屋 投稿日:2003年07月05日(土)13時42分42秒
- 出張お疲れ様でした。
梨華ちゃんが出てきてますます気になります。
これからどうなるんだろう。
- 88 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時23分05秒
- 授業が終わると、もうごっちんのことなど気に掛けていないかのように
まっすぐ帰る家。
父親が留守なのは当然だが、ウチは母さんもカルチャースクールか何だかで、
夕方までは戻ってこない。
だから、彼女の部屋へ大手を振って行くための理由を練習しようというのだ。
つまり、手料理を。
- 89 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時23分56秒
- 母親が病気の時にご飯を作っていたのは嘘ではない。
結構自分でも美味く出来たと自負していた。
でもアレから随分経っているし、ごっちんの言っていた
『ナスとピーマンの味噌炒め』
っていうのは作ったことが無かったのだ。
- 90 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時24分51秒
- 家に帰るなり自分の部屋で私服に着替えを始める。
着替えながら、ごっちんの部屋は、ウチのこの部屋より狭かったかなと思い出す。
違うな。
実際は大差ないはずだ。
ただ、私の部屋には自分の物しかないけれど、ごっちんの部屋には
この家の他の部屋にある物までがあの一つの部屋一つに納まっている。
だから、狭く感じるんだ。
この部屋には洗濯物を干すことも、食料品を置くことも無い。
荷物が少ないのに部屋を広いと感じなかったのはそういうことだろう。
- 91 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時25分40秒
- 「何なら、ウチがあの部屋をコーディネイトしてあげるってのもいいかも。
そうすれば自分の居場所も作れるし。」
家から荷物を持ち出すことを咎められたら、バザーとか何とか言えばいいだけだし。
まるで秘密基地のことを考えるかのように、彼女の部屋のことを考える。
あの、自分には背中しか向けない女の部屋に自分の居場所を作るのは、
とてもすばらしいことのように思えた。
着替えが終わり、早速キッチンへ向かった。
- 92 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時26分25秒
- 「あら、おかえりなさい。」
驚いたことに、そこにはカルチャースクールに行っているはずの母親の姿があった。
「あれ、アレンジメントフラワーの教室は?」
エプロンをして料理の支度を整えている母親に、
少しバツの悪そうな顔をしてしまう。
月曜はいつもお花の教室で、夕飯は教室の近くのデパートで買ってくる。
だから、母さんがいない間にキッチンを自由に使おうと思っていたのに。
- 93 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時27分06秒
- 「ああ、あの教室ねぇ、やめたのよ。」
「なんで?」
「先生が若いお嬢さんなんだけど、あんまり丁寧じゃないし。
お母さんがやりたかったのって、ああいう子供っぽいお花じゃ無かったのよねぇ。」
母親は言いながら手元の包丁を動かしていた。
「何だか面倒だから絵手紙のお教室もやめちゃった。」
「気にいってたのに?」
「あれも子供っぽいんだもの。」
「飽きっぽいなぁ。」
- 94 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時28分27秒
- どうしよう。
ここで料理の練習してからごっちんのところに持っていこうと思っていたのに。
「それよりひとみ。おなか空いているのかい?帰ってくるなり台所に来るなんて。」
母親に何もかも本当のことを話す気にはならない。
けれど、すべて嘘をつくと、後が面倒なのを知っているから、
私は半分だけ本当のことを交えて説明した。
「実は、友達で一人暮らししてるヤツがいてさー、何だかかわいそうだから
ご飯でも作ってあげようと思って。」
そして親達がなにより喜ぶ言葉を付け加える。
- 95 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時30分03秒
- 「その娘ね、頭凄くいいんだ。全国模試でトップクラスなの。」
そんなこと、私たちにはどうでもいいことなのに、いつも親は知りたがる。
相手の成績は?親御さんは何してるひと?
もっと子供だった頃はそんな質問うざくて、答える気にもならなかった。
今は、先にそこだけを抑えておけばいいとわかっているから楽なものだ。
もっともごっちんの親がトラックの運転手ですでに死んでいるとは言えないから、そこはこんな風にカバーする。
「ウチの学校の友人なんだけどね。」
ウチの学校は貧乏人の子供はいないとわかっているから、母親はそれだけで納得した。
「珍しいわねぇ。『朝比奈』で一人暮らしなんて。まだ高校生なのに。」
「さあ、よくわかんないんだけど、越境なんじゃない?よくあるじゃん、志望校遠いと子供だけ学校の近くにマンション借りる人とかって。」
ごっちんがそうだとは言わないけど、それを聞いた母親は勝手に誤解したようだ。
「高校生にマンションって贅沢よねぇ。」
わたしはそれを『違う』とも『そうだ』とも言わない。
ただ『そういう人もいるよね』と言っただけで嘘でもない。
- 96 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時31分00秒
- 「それでね、その娘に煮物とか作ってあげようかと思って。
母さん教えてくれる?」
「ひとみが料理するの?」
「そう、美味く出来たら母さんにも食べさせてあげる。」
母親は手を止め、ちょっと考えるように上を仰いだ。
「そうね。そろそろひとみも料理くらい出来なきゃね。じゃあエプロンして手を洗っていらっしゃい。」
「サンキュ。」
料理の本を見ながらやるつもりだったのだから、直接母親に習えるなら
ラッキーってことにしておこう。
「着替えて来たよ、でさあ『ピーマンとナスの味噌炒め』っての作れる。」
- 97 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時32分01秒
- もっと理由を考えなきゃ。
自分があそこへ行きたい理由を。
あいつが私にドアを開く理由を。
どうしてそこまでしなければいけないのかは考えず、私は笑っていた。
- 98 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時32分43秒
- 「珍しいもの作るのね。」
「その娘が好きなんだ。」
「お友達?」
「そう。今度さ、その友達の所に泊まりに行ってもいい?」
「そうねぇ『朝比奈』の子なら。」
「その子、もしかしたら外部の大学受けるかもしれないから、二人で勉強しようかって言ってるんだ。」
「・・・ひとみも外部受けたいの?」
「ってワケじゃ無いけど、勉強はしておいたほうがいいと思うから、もうすぐ期末だしね。」
「そうね・・・。」
- 99 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時33分32秒
- エスカレーター式の高校で外部を受験するということは、付属の大学以上にいいランク受けるか、
付属に上がれない学力だということになる。
多分、母親はそれを心配したのだろう。
「大丈夫、ウチはちゃんと希望した学部にいけるって先生も太鼓判を押してたよ。」
だからそう付け足した。
「そうねぇ・・・。」
だが母親は何か他のことを考えていたのか、気の無い返事を返しただけだった。
けれど彼女が自分を目の前にして他のことを考えるのはいつものことなので、
私は気になどしなかった。
- 100 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時34分09秒
- 「それで、まずなにしたらいいかな?」
嫌いではないけれど、好きでもない家族だなんて、今時はありふれた関係なのだから。
一々『ウチの話を聞いて』なんて言わない。
「まずは野菜を洗って頂戴。」
「はーい。」
やさしく響く声に笑顔で応えていればそれで素敵な家だと言えると知っていたから。
- 101 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月10日(木)17時42分29秒
- 更新しますた。
最近忙しくて更新していなかったので、少し大目の更新です。
しばらくは毎日は無理かな。
すいませぬ。
レスのお礼です。
>>87 紅屋さま
いつもありがとうございます。
( ^▽^)さんはこの中に絡めるんでしょうか?
この人しだいですが・・・。(w
これからたまにAAで気晴らしなネタでも挟むかもしれません。
更新出来なかったらですが・・・。
今後ともよろしくお願いいたします。
- 102 名前:カヲル 投稿日:2003年07月11日(金)15時20分47秒
- 母親に受ける感情というのは人それぞれですねぇ。
よしこさんのやや黒なところがいいっす。好みっす。
なんだか後藤さんと吉澤さんの関係に色っぽさを感じました。
これからもブラッククロスさんのペースで、続きを。
- 103 名前:カヲル 投稿日:2003年07月11日(金)15時21分28秒
- すいません……なんだか知らないけどageてしまいました。
もうしわけありません。
- 104 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時45分01秒
- 週末まで、私は我慢した。
取りあえず私はそこらのガキとは違う。
ごっちんが生活のために働いていると知っていて、
邪魔をしに行くなんてことはしない。
そして、そういう態度を取ることで、彼女に私がちゃんと物事を知っている
人間だと印象付ける狙いもあった。
土曜の帰り際、誰も見ていないのを見計らってごっちんに近づき、
ちゃんと『今日行ってもいい?』と聞きもした。
- 105 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時45分58秒
- 「今日?」
彼女は相変わらず無愛想に聞き返したが、ダメだとはいわなかった。
「ごとーは今日も終わるの遅いよ。」
「いいよ、近くで時間潰してから行くからさ。」
「戻るの十時位になるよー。」
「じゃあさ、十時にアパートに行けばいい?」
ごっちんは軽くため息を付いて頷いた。
「んー、十時前に店に来て。時間決まってないから部屋の前で待ってんの嫌でしょ。」
「平気だよ。」
「もー、風邪引くよ。バカ。」
彼女はそれだけを言うとくるりと背を向けた。
こぼす言葉が小さく耳に届く。
「まったく、ごとーになんかかまって、何が楽しいんだか・・・」
それは、正直言えば自分にも問い掛けたい言葉だった。
- 106 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時46分49秒
- ごっちんが他の連中と違うから、気に掛かるから、他の連中と親しくしていない、
自分だけのモノになりそうな人間だから。
そんな理由が頭に浮かぶけれど、どれもしっくりこない。
だけど、女ってのは秘密が好きなものなんだ。
私はそのまま家へ帰ると、練習していた料理を作って準備した。
今日も家にいた母親が少し気に掛ける素振りをしたけど、
例の友達の家に泊まりに行くと言うと、ただ頷いただけだった。
- 107 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時48分27秒
- あんな狭い家でお風呂に入る気にならないから、
家でシャワーを浴びてから出掛ける。
九時を少し過ぎた頃、行ってきますと声を掛けたが、
母親はボーっとテレビを見ていた。
夜になるとグンと冷える風に上着の襟を立てる。
タッパーに詰めた自信作胸に、ごっちんの店に行く。
店の名前が『タンポポ』という名前なのを、そのとき初めて知った。
会社帰りのOLや、少し酒の入ったカップルのいる店内にそうっと入っていくと、
飯田とかいう名前のウエイトレスがにっこり笑って近づいて来た。
「いらっしゃいませ。」
の言葉に少し緊張する。
「すいません、後藤の従姉妹です。先日は失礼しました。」
と嘘を口にした。
「ああ、ごっちんから聞いてるよ。」
そう言って近くのテーブルに座るように言って奥へ消えた。
- 108 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時49分45秒
- 入れ替わりに黒いエプロンを付けたごっちんが姿をあらわし
『待ってて。』と声を掛ける。
私服に着替えたごっちんと二人、夜の町に出て、あのボロアパートへ向かう。
まるで親友のように、二人並んで歩くアスファルトの道。
部屋は外と変わらないほど寒く、彼女が手馴れた様子でスイッチを入れていくテーブルを兼ねたコタツ
と電気ストーブだけでは、上着を脱ぐ気にはなれなかった。
- 109 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時51分05秒
- 「ご飯作ってきたよ。」
少し誇らしげに出す紙袋。
ごっちんは『へぇ』と意外そうな顔をした。
「ごとーが毒見役じゃないよね。」
「バカ言わないの。母さんだって美味いって言ったんだよ。電子レンジは?温めるからさ。」
「レンジ?そんなもんあるわけない。」
「ないの?」
今時?
だけどごっちんは紙袋を勝手に開けると、中身に口笛を吹き、
そのままタッパーを持って台所へ向かった。
「どうすんの?冷たいままじゃ美味しくなくない?」
後を追って台所へ行くと、板張りの床がひんやりと足元から冷気を伝えた。
「そんなのさぁ、鍋で暖めればいいんじゃない。」
寒いから彼女のそばに寄る。
- 110 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時51分56秒
- 「どうやって?」
「どうやってって、鍋に移して火にかけるだけー。」
彼女の背後に付き、その手順を眺める。
彼女は私なんかより手際よく料理をさばき、作ってきた煮物を暖めながら湯を沸かした。
「よしこ、何時に帰るの?」
「泊まってく。」
「んあ?」
「いいっしょ。親にはもうちゃんと言ってきたしさ。」
「勝手に決めるかな、そういうこと。」
- 111 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時52分52秒
- それから、彼女は鍋の中をのぞき込み、ポツリと聞いた。
すぐ近くにいる私の顔を正面からじっと見つめて。
「よしこ・・・、市井って知ってる?」
顔の近さにドキッとするけれど、その名に聞き覚えは無かった。
「市井?うちのクラスにいたっけ?」
「いや、別に知らないならいいんだぁ。」
そしてまた視線を鍋に戻すと、ぼそぼそとした調子で昼間呟いていた質問を直接ぶつけてきた。
「よしこ・・・、なんでごとーに付き纏うの?」
つきまとう、という言葉が胸に刺さる。
- 112 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時53分49秒
- そうだよね、寒い台所でコンロの火で暖を取るように寄り添っているけれど、
これはごっちんが望んだ状況じゃない。
「別に悪いって言ってるんじゃないよ。たださー、得することなんか無くない?」
「・・・ウチにもわかんない。でも面白そうじゃん。ウチはごっちんのこと・・・」
『好き』と言いかけてやめる。
『好き』なワケじゃ無いから。
- 113 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時55分03秒
- 「・・・気になってたんだ。ごっちん、頭いいのにテストとか真面目にやらないでしょ。
体育の時だってかったるそうにしてるしさ。
でも本当は運動上手いんじゃない?」
「んあ、そんなことないよ。」
「そういう秘密にしているとこが気になるんだ。別に特別ってわけじゃないけど、
中途半端に知ると最後までって気になるじゃん。」
「この間話したよ。」
「あんなの、チラッとだけじゃん。別に名にもかも話してってワケじゃ無いよ。
ウチは他人の私生活を暴く趣味は無いしね。
ただ・・・、ただ気になることがスッキリするまでは少し付き合ってみようかと思っただけだよ。」
それが本当の理由なのかどうなのか、自分にもよくわからなかった。
- 114 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時56分01秒
- けれど少しは真実も含まれているだろう。
親に向かって半分の嘘と半分の本当を言う癖が付いている。
すべてを嘘にすると後でフォローが大変、
全部本当にすると思った通りの反応が無かった時に自分が傷つく。
だから、半分だけ。
- 115 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時56分51秒
- 「・・・ご飯は食べてきた?」
その半分の答えで満足したのか、彼女はその話題をそこで終えた。
「まだだよ。」
その顔は『わからないな』って顔だけれど。
「一緒に食べるんだったら、そこのお皿出してー」
「食べる。」
- 116 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時57分38秒
- 絶対、いまごっちんの一番近くにいるのは私だと思う。
バイトの人間は学校の彼女を知らない。
学校の連中は放課後の彼女を知らない。
学費を出してくれている親戚だって、きっとごっちんのことなんか全然知らないに決まってる。
だから私が一番ごっちんのそばにいるんだ。
なのにそれでも、こんなにごっちんからは遠い。
- 117 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)11時58分22秒
- 「ウチ、クリスマスとか年越しにもここに来ようかな?」
「ごとーはバイトだよ。」
「いいよ、じゃあクリスマスは来ないから。でも年越しは休みでしょ、
家からおせちとかくすねてくるよ。」
「・・・カマボコ持って来て。」
こんなにいろいろな表情を見ているのに、まだまだ遠いんだ。
- 118 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年07月14日(月)12時10分09秒
- 更新しますた。
ヽ^∀^ノさん名前だけ登場(w
最近、まったりと不定期に更新しております。すいません。
二人の会話の部分を書くのはなんだか難しいです。
変なところあったらぜひ指摘してくださいませ。
レスのお礼です。
>>102 カヲル様
いつもありがとうございます。
母親ってのはいつまでも口うるさい者のようです。
まだギリギリ黒よしですね。いつまで持つ事やら(w
黒ゴマな文章って難しいです。
これからもよろしくです。
ではまた次回更新のときに・・・。
- 119 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月14日(月)14時37分46秒
- >「・・・カマボコ持って来て。」
時々見せる子供っぽい後藤さんが好きです。
- 120 名前:紅屋 投稿日:2003年07月21日(月)01時18分21秒
- 家に来ることは拒まないごとーさんがいいですね。
隠れた可愛らしさを感じます。
- 121 名前:名無しさん@ 投稿日:2003年08月07日(木)14時46分56秒
- おもしろそうだから保全させていただきます。
(〇^〜^〇)<真希ちゃ〜んかまぼこ持って来たよ〜
( ´ Д`)<んあ?かまぼこ板は?
(;〇^〜^〇)<え?
( ´ Д`)<かまぼこ板の上にかまぼこが乗ってないとかまぼこって言わないじゃん!
(;〇^〜^〇)<え?そうなの?
( ´ Д`)<そうだよ!バカよしこッ!もう寝るッ!
(;〇^〜^〇)<あ、ごっごめんよ〜
( ´ Д`)<Zz・・・
(;〇^〜^〇)<(結局寝たかっただけじゃ・・・)
- 122 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月11日(月)12時54分19秒
- おひさしぶりです。
先日事故を起こしてしまい怪我療養をしておりました。
更新が滞り申し訳ないです。
近日中に更新いたします。
とりあえずレスのお礼だけでも。
>>119 名無しさん
レスありがとうございます。
微妙にクールになれない後藤さんです。
なかなか書くのは難しいです。
>>120 紅屋さん
いつもありがとうございます。
後藤さんはどう書いてもこういう部分が出ちゃいますねぇ。
時折見せる可愛さをもう少し出して行きたいです。
>>121 名無しさん@さん
保全ありがとうございます。
AAの文章いいですねぇ。
自分もたまにはこういう風に書いてみようかなと思いました。
ではまた次回更新のときに・・・。
- 123 名前:名無しさん@ 投稿日:2003年08月11日(月)18時40分10秒
- 事、事故にあったとは・・・
でもご無事でなによりっす。
怪我の方はもう大丈夫なんすか?
更新大変だと思いますけどがんばってください!
( ´Д`)<Zz・・・
(;0^〜^)<あの・・・かまぼこはもういいの?早く食べないと腐り
ますよ?後藤さん・・・
( ´Д`)<Zz・・・板・・ムニャムニャ・・・Zz・・・
(;0^〜^)<まだ言ってるよ・・・しつこいな・・
煤i ´Д`)<なんかしゃべった?
煤i;0゜〜゜)<い、いえ・・・
( ´Д`)<そう・・・ならいいけど・・・Zz・・・
(;0゜〜゜)<・・・(こえ〜)
- 124 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時50分07秒
- まるで磁石の同極のように、うち達の間には目に見えない壁があった。
すぐ側まで行くのに、本当の姿に触れることが出来ない。
ごっちんの態度は少しずつ軟化していったし、
いろいろな事情を知ることも出来た。
たとえば、ごっちんの頭がいいのは、以前は公立の学校にいて、
大学へ行けと言う親のために学費の安い国立を狙っていたせいだとか、
体育をサボるのはバイトに体力を温存してるんだとか、
料理はあまり上手くないし、作るのを面倒がるとか、
両親が亡くなった理由は車の事故で、その時ごっちんは弓道部の合宿中だったとか。
それでも、私にはまだ知りたいこと、わからないことがいっぱいあった。
- 125 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時51分20秒
- 時間がもったいないというほど、私はごっちんに飢えていた。
クリスマス、私はクラスのみんなと遊びに出たが、
ごっちんは他のバイトの人が休みを取るからかきいれ時とかで働いていた。
私の方は年末年始の休みはいつもなら家族旅行に連れていかれるのだが、
今年は冬休みの前に大きな飛行機事故があったからと、取りやめになった。
そのせいで相変わらずバイトをしていたごっちんの部屋へ頻繁に通っていた。
- 126 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時52分07秒
- 一緒にご飯を食べて、ほんの少し勉強して。
やっぱり本当の不良だった彼女に付きあって少しビールも飲んだ。
私はさすがにそれは真似なかったが、ごっちんはタバコも吸った。
それがまた後藤真希を吉澤ひとみとは違う世界の人間のように思わせる。
「ごっちん。肺がんになるよー。」
「なるわけないって、気晴らしに1、2本程度でさー」
と文句は言ったけど、そのポーズが少しかっけーと思ってしまった。
- 127 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時52分45秒
- 匂いが服に付かないようにするために、消臭剤をあの部屋に買って置いてきたけれど。
再び学校が始まり暫く経つと、私は平日でもごっちんの部屋に行くようになった。
梨華ちゃんや他の友人の誘いを断って、あのアパートに直行した。
いちいち面倒だというごっちんに、合鍵も貰った。
それでも、ごっちんは私に返事する時に笑顔なんか見せてくれない。
一歩ずつ近づいているはずなのに、同じ速度で逃げられていくようだ。
- 128 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時53分37秒
- 「ねぇ、ごっちん。弓道もうやら無いの?」
「結構お金かかるしねぇ。別にそれで仕事しようってワケじゃ無いし、どの道よしこもクラブは辞めたんでしょ。」
「まあそうだけどね。大学行ったらまたやるかもね。」
「知らないの?社会人はクラブは無いんだよー」
「ちぇっ。面白くないの。」
- 129 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時54分28秒
- 私はごっちんの部屋で足を投げ出し、畳の上でごろりと横になって本を読む。
その隣でごっちんはテレビを見ながら菓子をつまむ。
何もしない。
会話も少ない。
帰る時間が来るまで、ただ一緒にいるというだけ。
なのにどうして、私はここに来るのだろう。
ごっちんは『もういいでしょ。』と言わないんだろう。
「よしこ、今度来るときは魚の煮物食べたいなぁ。」
とリクエストを受けて。
「いいよ。何の魚でもいい?」
と答えているんだろう。
- 130 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)11時55分54秒
- 立ち上がる私に、どこいくの?と声を掛けるごっちんに、トイレと答える。
寒い夜の闇の中、帰宅の途につく私に、寒いから上着のボタン閉めるんだよーという
ごっちんの言うことを聞く。
テレビのチャンネルを決める時にテレビ雑誌を並んでのぞき込み、
どれがいいかと話し合う。
不思議な関係。
それでも、私はそれが気に入っている。
最後の一歩を踏み出せない理由はきっとそこだ。
嫌がられないギリギリのラインで、この関係を崩したくないんだ。
少しずつ自覚していく。
ごっちんが他の友達たちと違うってことを。
たぶん、彼女に興味を持った時からずっとそうだった。
その理由はわからないけれど、たぶん後藤真希は特別なんだ。
そして離れたくない相手なんだ、たぶん・・・。
- 131 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月21日(木)12時03分30秒
- 少ないですがやっと更新出来ました。
全体の半分くらいは書けたような気がします。
体ももう少しで本調子になると思うのでがんがって書いて行きます。
レスのお礼です。
>>123 名無しさん@さま
心配していただきありがとうございます。
何とか生きております。
応援は大変励みになるのでこれからもよろしくです。
本調子まではあまり量は書けませんがなるべくこまめにがんばります。
では次回更新で・・・
- 132 名前:TOY 投稿日:2003年08月21日(木)13時59分21秒
- ずっとROMってました。ここの、よしごまの関係が好きです。
体に無理せずにして下さい
- 133 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)19時54分16秒
- 自分たちの進む道の先に『卒業』の文字が見え始める頃になると、
三年の授業はぐっと少なくなる。
他の高校では受験の文字に踊らされる季節なのに、
私達はのんびりと暖かくなる日を待つ。
いつものように、私はのんびりと家に戻りおかずを作るとごっちんのアパートに向かった。
タッパーに料理を持って遊び歩く人間などいないから、親も何も言わない。
父親は夜遅くまで戻らず、顔を合わせることも無かったし、
ここのところ家にいることが多い母親は、いい加減にしなさいよ、
と少しだけ文句は言ったが止めはしなかった。
- 134 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)19時55分03秒
- 今日はごっちんのバイトが早く終わる日で、
私達は約束と言うほどではないが、
何となくごっちんの家の近所に出来たラーメン屋へ行こうかと言っていた。
だから、本当は料理なんかいらないんだけど、これがないとあの部屋を訪れる理由が
減る気がするから紙袋を下げて電車に乗る。
この頃には、大分ごっちんのことがわかったような気になっていた。
彼女の側に、自分以外の人間の影など無いと、いい気になっていた。
もう案内などされなくても行ける、駅からまっすぐのアパートまでの道。
- 135 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)19時55分42秒
- 学校でも会ってはいるけれど、あそことここでは二人の関係は違う。
たとえ最後の一歩を残したままでも、自分はあそこに入れる唯一の人間。
自分だけが後藤真希の側にいることを許されているのだ。
けれど・・・それは過ちだった。
- 136 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)19時56分56秒
- 鼻歌を歌って見慣れたしまった大谷石の塀に歩み寄る。
「べつに、いいよ。」
ごっちんの声。
「いいわけないよ、せっかく帰ってきたんだしさ。」
そしてもう一人。
「帰ってきたって関係無いよー、恥ずかしいから来ないでよ。」
「いいじゃん、いつなんだか教えなさいって。」
「おしえないよぅ。」
親しげな会話。
誰?誰が来てるの?
この部屋に私以外の人間が訪ねて来てるなんて初めてじゃないか。
そうっと塀から顔をのぞかせて見ると、ドアの前のポツリとした明かりのし下に人影が見えた。
- 137 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)19時59分18秒
- 襟にボアの付いた皮のコートを着た、金持ちそうな女。
ドアを開いたままその女に対応しているごっちん。
「真希の卒業式はちゃんと写真に撮るって決めてんだからさー。」
「そんなのそっちの都合じゃん。」
女はごっちんを名前で呼んだ。そして彼女はそれを咎めない。
「いいからさーもう帰ってくんない?今日は友達が来るんだからー。」
「『友達』?真希に?前の学校の子かい?」
「んあ?ちがうよ。今のだよー。」
「そりゃよかった。んじゃ是非挨拶しなきゃなー。」
「いいから帰って。またその内ちゃんと連絡入れるからさぁ。」
- 138 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時00分38秒
- 彼女の学費を出してる親戚?
でもその親戚のことは嫌いだってふうにしてた。
とてもこんな親しげな口をきくとは思えない。
「わかった、わかったよ。じゃ今日の所は帰るけど、ちゃんと卒業式の日程は教えろよー、それとちゃんと大学には行けよ。『トラックの運転手』もいいけど『大学に行けなかったから』って言われちまうからなぁ。どうしてもなりたいんなら大学受かってから辞めるって形にしとけよ。」
「はい、はい。」
- 139 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時01分40秒
- その女は誰なんだ?
うちよりもごっちんのこと知ってるふうに口をきくそいつは。
何で手なんか振るの?
何で『はい』なんて言うの?
他の誰も近づけないで、うちだけがごっちんの部屋を訪れる権利を持ってんじゃないの?
うちだけが、ごっちんのことを知ってるんじゃないの?
女がドアを離れ、こちらに向かってくる。
- 140 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時04分05秒
- 別にすれ違ってもかまわないのに、何故か私はとっさに身を隠した。
見られたくない。
単なる学校の友達って目で見られたくない。
何もかも知ってそうな女に、部外者の目で見られたくない。
女は塀の中から出てくると、近くに停めてあった高そうな高級車に乗り込んだ。
暗闇に隠れる私なんかに気づかずに・・・。
暗がりの中はっきり顔は見えなかったが、綺麗な感じの顔のように思えた。
胸がドキドキする。
・・・どうして。
たったそれだけのことなのに、こんなに胸が苦しいのだろう?
- 141 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時05分36秒
- ごっちんが今まで一人で生きてきたわけはない。
自分にだって、他の友人や、家族や、近所の人や、いっぱい知り合いは居る。
ごっちんなんかより私のことを知っててくれる人はいっぱいいる。
ごっちんにもそういう人間が一人くらい居たって当然のことじゃないか。
私はただ、ごっちんの弱みを握って近づいただけの『学校の友人』なんだから。
車が完全に走り去ってから、ぼんやりとした光の中に出て、
私はゆっくりと部屋に向かって歩き出した。
さっきまで、ちょっとだけあった自信や喜びはもう微塵もない。
- 142 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時07分03秒
- 「ごっちん」
ドアをノックし、名前を呼ぶ。
「んあ、遅かったねぇ。」
「料理。作ってきたから。」
「あれ?今日はラーメン食べに行くんじゃなかったっけ?」
「うん。でも一応さ。後で食べてよ。」
差し出す紙袋を、ごっちんは手を差し伸べて受け取った。
- 143 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時10分56秒
- 「ねぇ、うちがもし、もうごっちんのバイトのことは忘れる、
誰にも言わないから、って言ったらここへ来るなって言う?」
「んあ?」
「脅すのやめたって言ったら・・・」
「よしこ、ごとーのこと脅してたの?」
「違うよ。」
「じゃあさ、別にどうでもいいことだよ。言わないでいてくれるのはありがたいけどねぇ。」
「でもさ、うちがさバイトのこと知ったからココに入れてくれたんだよね?
だからそれが無くなってからも、うちをココに呼んでくれるのかなぁって思ってさ。」
ごっちんは何を言ってるのかわからないという顔をした。
- 144 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時11分51秒
- だろうね。
自分でもどうして突然こんなこと言ってるのかわかんないんだから。
ただ、何の取引も無くごっちんと話をしているヤツがいるかと思ったら、
自分は何なんだろう?って思っちゃったんだ。
吉澤ひとみと後藤真希のつながりって、何なのか。
本当は何も無くて、ただ自分だけが何も無いところで
ごっちんに繋がる何かを探してるだけなのかって。
- 145 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時13分49秒
「んー、よくわかんないけどさ。確かによしこがバイトのネタで
恐喝ったからここに入れたんだけどねぇ。」
そう・・・なんだ・・・。
やっぱりね・・・。
「でもね。」
ごっちんは何故か眉を寄せて困ったような顔をした。
「その後にさ、別に何を要求とかされたわけでもないしね、今はさ友達だよー。」
それからごっちんは酷く驚いた顔をした。
「友達?」
何でだろう。
自分の言葉に驚いてるのかな?
だとしたら、ごっちんが意外に思うほど、私はごっちんの側にいるってことなのかな?
- 146 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時15分21秒
「うん。」
ならいいかも。
「うちのこと、友達だと思ってるの?」
それって、少しは特別ってことになるから・・・。
「ん?よしこそれじゃ嫌なの?」
「ううん、いい。友達ならいいよ。」
「・・・わからない人だねぇ。待ってて、今財布持ってくるから。」
鼻先でいったん閉じられるドア。
中では身支度を整える物音がする。
- 147 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時16分30秒
「そっか・・・友達かぁ・・・。」
何で、私はそんな言葉がうれしいんだろう。
ただ自分の周りにいないタイプの女だから、謎を持ってそうで興味があったから
近づいただけのヤツなのに。
「さあ、いこーよ。」
ドアを開けて、私を見る眼差しにほっとするんだろう。
軽く頭に載せられる手に、胸が苦しいと思うんだろう。
「なにしてんのさ、ガキみたいじゃん。」
慌ててその手を払いのけないとヤバイと思うほど。
「ガキだからじゃーん。」
「なんなのさぁ。」
「んあ。さあいくよー。」
ごっちんのことなんて、別にどうでもいいはずなのに・・・。
- 148 名前:ブラッククロス 投稿日:2003年08月30日(土)20時26分17秒
- 更新しました。
(O^〜^)さん困惑気味です。
レスのお礼です。
>>132 TOYさま
レスありがとうです。
体気遣っていただき感謝です。
だいぶ良くなりましたんで大丈夫です。
これからもよろしくお願いします。
もっと早く更新しなきゃなぁ・・・。
ではまた次回お会いいたしませう。
- 149 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月30日(土)21時58分13秒
- 何気にいつも楽しみに読ませて頂いてます。
よしこの心境に少しずつ変化が…?
なんだかこれからの展開が甘くなりそうで期待。
- 150 名前:TOY 投稿日:2003年08月31日(日)19時07分40秒
- おお、更新されてる!
甘くなるのかな?
なにはともあれ、ブラッククロスさんの体調がよくなってよかった、よかった。
更新はどんなゆっくりでも待ちますので(笑)
- 151 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/11(木) 06:02
- いつの間にか板がかちゅ対応なんですね。
TESTもこめて更新では無いですが書き込んで見ます。
レスのお礼です。
>>149 名無しさんさま。
なにげに読んで頂きありがとうです。
(O^〜^)さん、かなり自覚はしてませんがはまってます。
甘くなるかは・・・どうでしょうか?
これからもよろしくです。
>>150 TOYさま。
気にしていただき感謝に耐えません。
遅い更新待っていただき、ありがとうございます。
そろそろ甘いほうがいいのでしょうか?
ちょっと悩んだり・・・。
まあ、(O^〜^)さんのはもっとがんがってもらいます。
今回はTESTなので更新はしないですが、ちょっと番外編風なものを
1つ書いて見ます。
一レスで終わりますが・・・。
好評ならもっと書きたいと思います。
では近いうちの更新でお会いしませう。
- 152 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/11(木) 06:03
- カフェ『ブラウ・サロン』での午後のひととき。
(* ´ー`)<今日はごっちんやすみだべか?
川‘〜‘)||<そだよ、久しぶりの休みじゃないかな。
(* ´ー`)<ごっちん休みなのに、今日に限って忙しいべ。
川‘〜‘)||<うちらも一応先輩なんだから、がんばんなきゃ。
(* ´ー`)<そだね、でもごっちんはほんと頼りになるべさ。
川‘〜‘)||<カオリじゃだめなの・・・?
(* ;´ー`)<ちがうべ、なっちの一番はカオリだべ。カオリがいれば大丈夫だべ。
川T〜T)||<またそう言って・・・、どうせ頼りにならないチーフですよぅ・・・。
(* ;´ー`)<チーフしっかりするべ。今日終わったらなっちがカオリの好きなクリームパン焼くから。
川T〜T)||<うん・・・ありがと。なっちだから・・・好き。
(* ´ー`)<だから後3時間がんばるべ。
川‘〜‘)||<なんかやる気出ちゃった。がんばっていきま〜っしょい!
(* ´ー`)<もう・・・カオリってば、げんきんな奴だべ・・・。
以上。カフェ『ブラウ・サロン』のごっちんがOFFのときの会話でした。
ちなみに<ブラウ・サロン>はドイツ語かな??で青い談話室と言う意味だったと思います。
- 153 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/11(木) 06:04
- 普通に書き込めますた。・・・よかったぁ・・・。
- 154 名前:TOY 投稿日:2003/09/12(金) 19:35
- カオリ…
笑わさせてもらいました(ry
書きにくくなるようなことを言ってしまってすみません。
甘くても痛くても、ブラッククロスさんの書かれる話が好きなのには変わりませんので、気にせず続けてください
- 155 名前:リタリン 投稿日:2003/09/20(土) 04:21
- ちょっとした番外編もイイ!
そういうのを色々混ぜてくれると話が膨らむので楽しみにしてます。
- 156 名前:TOY 投稿日:2003/09/23(火) 12:48
- すみません・・・。今、パソコンでみたらageてしまってました。
ほんとうに、申し訳ありません。
- 157 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2003/09/24(水) 05:20
- 書きためた文、あぼーんしてしまいました。
更新遅れてすいません。
何とか今日中に更新します。
申し訳ない。
- 158 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:40
- 学校には中学の頃からの友人がたくさんいる。
幼馴染の梨華ちゃんもいる。
その子達は、別に『ウチらってどんな付き合い?』
なんて聞きたいと思ったことは無い。
一緒にいるのは当然で、別に相手がどう思っていようが、関係無いと思った。
私のことが嫌いなら離れていけばいい。
私だって嫌いな人間の側になんかいたくないしと、すぐに気持ちを切り替えられる。
- 159 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:41
- でも・・・。
私はわかってしまった。
ごっちんだけ、ごっちんだけは私のことをどう思っているのか気になって仕方ない。
ごっちんも私のこと好きでいてくれるといいなと思ってる。
迷惑だって、うざいって思われたくないって思ってる。
ごっちんの弱みを握って、私の方が立場が上なのにあんまり得意ではない料理を
親に習ってせっせと運んでいたのは、嫌なヤツと思われたくなかったから。
私が来ることを喜んでくれるといいなって思ったから。
学校でごっちんに声をかけないのは、そんな関係を他人に知られて、
他の人間に割り込まれたくなかったから。
ごっちんは一人でいなければいけない。
ごっちんの側にいて、無愛想な顔のテリトリーに入っていけるのは私だけじゃなくちゃいけない。
- 160 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:42
- 自分でも、漠然とは感じていた独占欲。
それに気付かされたのはあの女。
人と付き合うためには列があるのだと思う。
一番から順番に。
みんなずっと並んでる。
いつもはそんなことに気付かないのに、時々選択しなければならない時に気付かされる。
誰より誰が大切か?
誰より誰が離したく無いと思うか?
あの女がドアに立っていたとき、私は怖かった。
怖いから、出ていけなかった。
「この子と話しあるから待ってて。」
と、自分がごっちんの列であの女の後ろにいると思い知らされるのが嫌だった。
- 161 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:43
- ごっちんを待つ列で、自分は一番前にいたい。
振り向いて、後ろにズラッと並んでいる学校の友人やバイト先の人たちを見て、優越感に浸りたかった。
悪いね。
ごっちんの一番はウチなんだ、と。
だけど、そうして振り向いた後、視線を前に戻した時、自分の前にあの女の背中があった。
そのことがショックなのがショック。
何でなんだろ。
どうしてなんだろ。
ごっちんなんて、どうでもいじゃん。
ごっちんがどう思ったって、どんな関係だって。
あの時、バイトしているごっちんに会わなかったら、きっと言葉も交わさなかったはずなんだから。
なのにどうして、気になるんだろう。
初めて彼女を見たときのように、あの横顔に目がゆくんだろう。
その顔を、自分の方に向けさせたいと思うんだろう。
- 162 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:44
- 自分と違うから?
私は何にも飢えてはいないのに。
ごっちんよりいっぱい物を持っているのに。
父親もいる。
母親もいる。
ちゃんとした家があってお金もある。
大学にだって行ける。
友人だっていっぱいいる。
なのにどうして、前だけ向いているごっちんの横顔が気になるんだろう。
最後に、一歩分だけ近づけない距離。
それは私がごっちんの後ろを歩いている証し。
ごっちんが振り向いてくれないと、私はごっちんの視界に入らない。
横に並んでも、こっちを向いてくれなければ視界に入れない。
それがどうしてこんなに悔しいんだろう。
- 163 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:45
- 欲しい、と強く願わなくても大抵のモノは手に入っていた。
今抱く強い独占欲はきっと初めての『欲望』。
それを抱いた相手が、どうしてごっちんなんだろう。
私にはわからなくて、わからないから悔しかった。
- 164 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:45
-
クラブや部活に出る人は3年だからいないから、
別れの挨拶とともに一斉に空になる教室。
人の流れの中を自分の速度でゆっくりと歩いて行くごっちんの姿を黙って見送る。
ここで、彼女の名前を呼べば、ごっちんは振り向くだろう。
でも・・・。
私が呼んでも、誰が呼んでも、違いは無い。
私だからといって、微笑んでくれるワケでも無い。
- 165 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:46
- 「よっすぃ〜」
友人が私を呼べば、それが誰でも振り向くのと一緒。
「梨華ちゃん?なに?」
「バレー部の追い出し会、日程決まったよ。」
梨華ちゃんは一応、私のお目付け役を自称している。
だから私がバレー部に入ったときも無理にマネージャーとして入部して来た。
なんだかんだでいつも一緒にいることの多い、空気みたいな存在。
- 166 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:47
- ときおり、きしょかったりウザイ時もあるけど、
いないといないで物足りなさを感じる。
「ほんとにー。んで、いつになったの?」
「えっとね、卒業式の翌日。場所は部室で。その後カラオケだってぇ。」
「ふあぁ、定番だねぇ。」
「しょうがないって。大学生じゃないんだから、飲みになんて行けないでしょ。」
「ま、そりゃそうだね。」
こうして、他の連中とは笑える自分が、他の連中の笑顔にどんな意味があるのかなんて、
気にしない自分が、やっぱり一人だけ気になってしまう。
- 167 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:48
- 「それでね、3年だけで遊びに行こうって案があるんだぁ。よっすぃはどうする?」
「遊びってなにさぁ?」
「んー、旅行でも行こうって話。」
「そっか、まあ場所次第だなぁ。」
「まぁ、とりあえずよっすぃは参加ってことにしておくね。幹事は私なんだぁ。」
梨華ちゃんはいつもこういうことがあるとはりきって引き受けちゃう。
ほんとにお人好しだなぁなんて思う。
ま、それもいい所なんだけどね。
「いいよ。」
「それじゃね、私まだ全員に聞いて無いんだぁ、急がなきゃ。」
相変わらず、バタバタしてるなぁ。梨華ちゃんは。
- 168 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:50
- 「うん、じゃ気を付けてね、バイバイ。」
別れる時も心一つ残さず手を振れる。
向けられた背中に寂しいと思うことも無い。
もう一度振り向けと心の中で願うことも無い。
何でなんだろう。
そのことばかり考えてしまう。
一緒にいて、とびきり楽しいワケじゃない。
ただご飯を食べ、テレビを見て、ぽつぽつ会話するだけ。
バイト先をのぞきに行ったことも何度かったが、店の中には入らず外から見るだけだった。
声をかける理由が無かったから。
掛けられる言葉も、見せてもらえる表情も、そんなに多いワケじゃない。
でも、私はごっちんを見てる。
あの子に近づいてしまう。
その理由は?と聞かれても、答えることは出来ない・・・。
だってごっちんが自分を迎える理由もわからないのだから・・・。
- 169 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 12:51
- こっちが言えるワケがない。
もし言うとしたらごっちんと同じ言葉だけだ。
「友達だから・・・」
だって、ごっちんがそう言うのだからそうだろう。
私だけが違う気持ちだなっておかしい。
ごっちんが何も言わないのに、私だけが言うなんて。
「・・・なんて言うんだろう?」
言葉が見つからない。
理由もが見つからない。
イライラする。
「ウチも、かえろかな。」
バイトをするためにまっすぐ帰るごっちん。
することが無くてダラダラと家路を辿る自分。
その違いにも苛立ちを感じる。
この気持ちを、なんて言い表せばいいんだろう。
私には、わからなかった・・・。
- 170 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/09/24(水) 13:04
- 更新出来ました。
結構あったストック飛んでしまってかなり焦ってます。
消えたものを書き直すのは気合が必要ですた。
微妙に内容変わってるし・・・。
とりあえず更新出来た。何よりです。
レスのお礼です
>>154 >>156 TOYさま。
いつもありがとうございます。
AAで書くのは不慣れですが、こんな感じで大丈夫だったでしょうか?
なるべく甘くなるようがんがってます。
まだ先でしょうが・・・。
age、sageは気になさらないでください。
自分も良くやりますので。
>>155 リタリンさま
読んで頂きありがとうございます。
番外編良かったですか、ありがとうございます。
出来るだけAA編織り込んでいけるようがんがります。
これからもごひいきに。
正直、読んでくれてる人ってどのくらいなんでしょうねぇ。
感想や、改善点など有りましたらレスください。
すごく励みになりますので・・・。
勝手なこと書いちゃいましたね。
すいませぬ。
では、ブラッククロスでしたー。
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/24(水) 18:37
- 読んでますよー。
話の流れもありますから、あんまりがしがしレスできないだけで、
かなりの人は期待してると思います。
もちろん私もその一人です。
焦れるよしこが可愛くて好きです。
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 07:37
- 読んでるよ
- 173 名前:リタリン 投稿日:2003/09/25(木) 14:17
- 更新お疲れです。
毎回楽しみにしています。
AA編またやってくれたら嬉しいです。
がんばってください。
- 174 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2003/09/26(金) 10:14
- 今日の地震びっくりしました。
私の住んでるところは震度6弱の地域で結構揺れました。
皆さんは大丈夫でしたか?
更新の方は今日中に少しですがします。
ではブラッククロスでした。
- 175 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2003/09/27(土) 00:48
- 急に取引先にてトラブル発生。復旧のため今日の更新出来ませんでした。
申し訳ないです。
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/27(土) 01:40
- 自分も読んでますよー。お仕事大変そうですね。
更新の方は、作者さんが時間と心に余裕のあるときに
するような形でいいと思いますよ。自分のペースで。
どんなにゆっくりでも自分はマターリ待ってますので…。
- 177 名前:ZIPPO 投稿日:2003/09/29(月) 06:52
- 読んでますよー
地震被害は大丈夫でしたか?
マターリ更新お待ちしてます。
ROMってる方、結構おられるんですネェ。
みなさんのためにがんがってください。
- 178 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2003/10/06(月) 02:54
- お待たせしております。
明日かあさってには更新いたします。
しばしお待ちを・・・。
レスいっぱいでうれしいです。
レスのお礼は更新後いたします。
ではブラッククロス@携帯デシター
- 179 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/06(月) 06:22
- 明日か明後日ですね?
楽しみに待ってま〜す!
- 180 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2003/10/12(日) 04:04
- 家のパソコンのLANボードがあぼーんしてしまいました
更新もう少しお待ち下さい
ごめんなさい
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/31(金) 14:29
- お待ちしております
- 182 名前:名無しさん@ 投稿日:2003/11/03(月) 21:46
- お久しぶりです。
とりあえず、保全です。
( ´ Д `)<ごと・・ごとっごと・・・
(0^〜^)<ごとうがとうしたの?
( ´ Д `)<ごとっごとっ・・・ごと・・
(0^〜^)<だからごとうがどうしたのさ。はっきり言わないとわかんないよ。
( ´ Д `)<地震の物真似。
(;0^〜^)<あ〜そう・・・。
- 183 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/11(火) 02:39
- 保全
- 184 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2003/11/19(水) 03:22
- みなさん保全ありがとうございます。
家のパソコンが完璧にあぼーんしてしまったので、ネットカフェでも行き今月中にはなんとか更新致します。
ご迷惑おかけして申し訳ありません。
- 185 名前:みかん 投稿日:2003/11/19(水) 03:31
- わ〜い!!まってたかいがありました★
期待しておりま〜す!!
- 186 名前:春雷 投稿日:2003/11/20(木) 17:12
- ブラッククロスさん、がんばってください!!
じつは、自分は更新される度にネットカフェに通ってます(笑)
- 187 名前:みかん 投稿日:2003/11/23(日) 03:47
- 何時まででも待ちますよ!!
期待してます!!
- 188 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2003/11/30(日) 17:09
- 皆様大変お待たせしております。
本日更新しようとネットカフェにきました。
しかし、このお店、Wordが使えないぃぅ。
家で書き込んだものが読み込んでいただけないんです。
・・・頭んなか真っ白になってしまいました。
更新お待ちの方大変ご迷惑さまです。
もう少しお待ちを・・・・
- 189 名前:名無しさん@ 投稿日:2003/11/30(日) 21:54
- 報告どうもっす。
期待してまってます!
- 190 名前:みかん 投稿日:2003/12/02(火) 23:26
- 楽しみにしてます!!
- 191 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:22
-
家に戻ると、平日の昼間だというのに父親の車がガレ−ジに停まっていた。
どうしたんだろうと思いながらドアを開ける。
母親の方ならまだわかる。
あれだけ通っていたカルチャースクールをみんな面倒だと辞めてしまったのだから。
でも会社に行っているはずの父親がいるなんて。
- 192 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:22
-
「ただいま。」
いつもは黙って部屋へ直行するんだけど、一応父親の手前、声をかける。
「ひとみ。」
二人はそろってリビングにいた。
嫌な感じだ。
- 193 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:23
-
「ただいま。」
「ちょっとこっちに来なさい。」
「じゃ、着替えて・・・。」
「いいから、こっちへ来なさい。」
私、何か怒られるような事をしただろうか?
まさか、ごっちんが安アパートに一人住んでるような人間だってばれたのかな?
あそこは従姉妹の妹の部屋が近かったから、一緒にいるところを見られたとか。
私はドキドキしながら並んで座っている二人の前に腰を下ろした。
- 194 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:25
-
「どしたの?今日はお仕事休み?」
父親は眉間に皺を寄せたまま俯いていた。
その表情は苦虫を噛み潰したような、不機嫌な顔だ。
隣にいる母親も大して差の無い表情をしていた。
「話がある。」
父さんの、膝に上に組んだ両手が白い。
「・・・お前、学校は後どれだけあるんだ?」
「どれだけって、もう授業はほとんど無いよ。今月の末にはもう休みだし、来月卒業だし。」
そんなこと、わかっているじゃ無いか。
- 195 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:25
- 「そうか・・・。」
いまさら何でそんなわかりきった事を、こんな畏まった形で聞いてくるんだろ?
「大学も・・・内定してたんだな。」
「うん、政経。希望通りだよ。」
そして二人はじっと下を向いて、私と視線を合わせないようにしながら押し黙ってしまった。
出窓の所に置いてある陶器の置き時計の音だけがチッチッ、と規則正しく時を刻む。
空気はその音にあわせてドンドン重くなっていく。
- 196 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:26
- ついに沈黙に耐えかねて、私は口を開いた。
「何なの?どうしたの?話って何?何かお小言があるならハッキリ言ってよ。」
怒ったようなその口調に、母親が顔をあげた。
「違うのよ、ひとみちゃん。怒ってるワケじゃ無いのよ。」
そしてその目に涙を浮かべ、信じられないことを言った。
- 197 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:27
- 「お父さんの会社・・・倒産したのよ・・・。」
ガツン、と背後から誰かに殴られたような眩暈。
「な・・に・・・?」
泣き伏しながら続ける言葉が、タイプされた文字のような無機質さで耳に届く。
「いろいろ頑張ったんだけど、親会社が会社更生法ってのを適用してね、
倒産が決まったの。まだ残務処理が残ってるから今日明日って訳じゃ無いんだけど、
会社・・・無くなっちゃうのよ・・・」
ガンガンする。
二人で雁首揃えて何の冗談かと問いただしたいのに口が動かない。
- 198 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:28
- 「お前にはすまんと思うが、大学は・・・あきらめてくれ。
もっと安いとこか奨学金のあるところなら何とかなるかもしれないが、
『朝比奈』の授業料じゃ・・・払えないんだ。」
いまさら他校?
二月の頭になって?
「この家のローンもあるし、お父さんの就職先もすぐ決まるわけじゃないから
無駄なことは何も出来ないのよ。」
あれだけ大学へ行けと言ってたのと同じ口が、それを『無駄』と言うのか。
「この家は手放したく無いけど、それだって出来るかどうか。
ここを手放したらどこか遠くへ行かなくちゃならない訳だし・・・」
わかってる、わかってるよ。
私はガキじゃない。
自分なんかより父親や母親の方が辛いんだってことくらい。
母親がカルチャースクールみんな辞めた理由が、
父親が毎日夜遅くまで帰らなかった理由が今更わかる。
大学に生きたいと強く願っていたワケじゃ無かった。
父親が職を失うということがどういうことなのか、ハッキリとわかっていた訳じゃなかった。
ただ、頭が割れるように痛くて、何も考えられない、考えたくない。
- 199 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:29
-
「これから・・・大変になるから。お前にも迷惑を掛けると思う・・・」
何故両親が自分に頭を下げて、迷惑なんて言葉を使うんだろう。
彼等のせいじゃ無いってことを、私がわからないと思っているんだろうか?
その事で、親を責めると思っているんだろうか?
何故少しずつでもそういうことを自分に話してくれなかったんだろう?
私なんかに話してもしょうがないと思ったんだろうか?
・・・実際しょうがない事かもしれないけれど、私だって家族の一員なのに。
まるで部外者に説明するかのような口をきくんだろう。
- 200 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:30
- 「ひとみ。」
ゆっくりと、私は立ち上がった。
「ひとみ、まだ話が・・・」
引きとめる言葉に反発するように、部屋を飛び出す。
「ひとみっ!」
ここに、いたくない。
この家に、いたくない。
話の続きなんて聞きたくない。
頭が混乱して、何も考えたくない。
部屋に戻って着替えをすると、行き先も告げず私は家を飛び出した。
出て行く時、もう私を止める声はなかった。
- 201 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:30
- 派手な音を立ててドアを閉じ、バカみたいに駆け出す道。
どこへ行こう。
行き先なんてどこにも無い。
高校生の子供には、家を出てしまえば泣き叫ぶ場所も無いんだ。
私は子供で、自分の場所なんて持っていない。
泣きそうで、きっと、ひどい顔をしてる。
それを誰にも見られたくないから、走って、走って、私は電車に飛び乗った。
頭の中に浮かんだ、たった一つの場所。
それが『自分の場所』かどうかわからないけれど、そこしか浮かばなかったんだ。
学校も、行きつけのファーストフード店も、中学の時からの友人の家も、梨華ちゃん家でもない。
恥も外聞も、思惑も何も無い空っぽの頭で、駆け込む場所。
それは、あいつの所だった。
- 202 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:31
-
「ごっちん!」
白いシャツに黒いエプロン。
モノトーンのコントラスト。
驚きの顔。
「よしこ・・・?」
美しく整然としたカフェの中でただ一人みっともないほど取り乱した自分。
慌てて駆け寄ってくるごっちんの前で、くしゃっと崩れる顔。
「ごっちん・・・」
その瞬間、私はごっちんや店の迷惑も考えず、彼女の手を欲しがった。
今だけ、私の為にその腕を広げて欲しい。
私の事を抱き締めて、支えて欲しい。
今だけでいいから。
混乱している私を一番大切だって顔をしてて欲しい。
私には『後藤真希』が必要だから・・・。
- 203 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:31
-
家で大変な事があったみたいなんで早退させてくださいと、
泣いてる私の肩を抱いたままごっちんが言っているのが
遠くの出来事のように聞こえていた。
飯田って言う先輩らしき人は私の取り乱した姿を見て、
すぐ行ってやりなさいと彼女を解放してくれた。
私が離れないから、着替えもせずエプロンだけ外し服を手に取り店を出る。
大丈夫?とさして長くないアパートまでの道程で何度も彼女は私に聞いた。
自分がなんて答えたのか、覚えてはいなかった。
泣くなんてみっともないってのはわかってたから、泣いてしまった自分が、
バツが悪くて顔が上げられなかった。
私は人前で泣くタイプなんかじゃない。
そういうのはみっともないって思うほうだ。
今まで人前でこんな風に泣いた事なんて、無いと思う。
- 204 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:32
- 去年、バレーの地区大会で優勝した時だって泣かなかった。
中学の時、自転車でコケて三針縫った時だってそうだった。
でも、ごっちんの顔を見た途端、この人の前でなら泣いてもいいと思ってしまった。
ごっちんは自分より強いから、私はここで泣いていいんだって勝手に思い込んだんだ。
ごっちんは、私より大人だからって。
冷たい部屋に招かれ、部屋の中に干したままだったタオルを顔に押し付けられる。
涙はもうとっくに止まっていたが、赤くなった目を見られたく無いから、
私は素直にそれを受け取った。
- 205 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:33
-
「・・・どうしたの?いったい。」
ごっちんは以前したように、私の頭に軽く手を置くと髪を撫でるようにやさしく滑らせた。
だが、今日はその手の温かさが嬉しくて、払いのけるようなことはしなかった。
「・・・ごめんね。」
「ごめんじゃわかんないって。」
「仕事の邪魔したしょ。だから最初に謝らせて。・・・ごめん。」
「んあ、わかったよ。ちゃんと詫びてもらったからさ、なんで泣いてんのか話してよ。」
「迷惑じゃない・・・?」
「んあ、いまさらなに言ってんの。前にさ、よしこも言ったじゃん。
途中で言い止めるなってさ。気になるじゃん。」
「気になる・・・?私のことが?」
「当然じゃん。泣きながら飛び込んでくるってさ、普通じゃないもん。」
私はそうっとタオルから顔をのぞかせた。
思ってたより近くにあるごっちんの顔がじっと私を見ている。
気のせいか、いつもより優しい眼差しで。
- 206 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:33
-
「・・・ウチのね父さんの会社、潰れるんだ。」
頭を撫でた手は肩に残り、そこから彼女の体温を伝える。
「今日・・それ聞かされて・・・。何かいろんな事がショックだった。
ウチ、何も知らなくて。」
ごっちんはそのまま黙って私の話に耳を傾けてる。
「ウチ、大学諦めろって言われて・・・。別にすごく行きたいってワケじゃ
なかったのに、大学行けって言ってた親がそんなもの『無駄』って言ったとき、
じゃあ何で今まではあんなにうるさく言ってたんだよって思って。」
そうか・・・。
私がここに来てごっちんと一緒にいたいと思った理由の内の一つはわかった。
「何にも話してくれないで、自分たちの考え押し付けて、それが正しいみたいに
ずっとずっと振舞ってたのに、急に今までのことは間違いだったって言われたみたいで。
それじゃ今までの私は何なんだろうって思うでしょ。」
両親は普通の親だった。
冷たくもなく、虐待なんかもしたことは無い。
私をちゃんと学校に上げてくれて、それなりの生活をさせてくれてた。
- 207 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:34
-
「私はもう高3なんだよ、それも卒業するんだ。だったらもうちょっと信用して、
ちゃんと話してくれればいいと思わない?何も知らないままずっときて、
いきなりすべてを否定されたら、どんな顔をすればいいの。」
でも両親は、私の話なんか聞いてくれなかった。
私のことなんか考えてくれてなかった。
自分がどう思うか。
世間がどう見るか。
そんなことばっかりだった。
今時は当然のことだからそれを『酷い』とは思ってはいない。
でも、ごっちんは違った。
ごっちんは多くは語らないけど、ずっとこの部屋で私の話を聞いてくれてた。
いい加減な返事や、流した相槌なんかうたなかった。
立ち上がる私に、どこに行くの?と声を掛けてくれた。
寒い夜の闇の中、帰宅の途につく私に、寒いから上着のボタン閉めておくんだよ言ってくれた。
テレビのチャンネルを決める時でさえ、テレビ雑誌を並んで覗き込み、
どれがいいかと話し合ってくれた。
勝手に決めたり、好きにすればなどと言わなかった。
これにしてと命令もなかった。
ごっちんは、いつもちゃんとここにいる私を見て、私と話をしてくれた。
今だって、ごっちんには関係ない話をしているのに、まじめに聞いてくれている。
だからこの部屋は居心地が良かったんだ。
だからここに来たかった。
ごっちんじゃなきゃ嫌だった。
取り留めなく話し続け、少しずつ落ち着いてきた私はタオルを手放すと長く息を吐いた。
- 208 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:35
-
「・・・ごめんね。当然押しかけてこんな話して。ごっちんのほうがもっと大変なのに。
ウチなんかまだ親はちゃんといるし、家だけは何とか残すって言われてんのにさ。」
「・・・ショックだったんでしょ?」
「ショック・・・。うん、ショックだったんだね。何もかもがさ。
自分の将来が真っ暗になったみたいな気がしてたんだ。
ごっちんに言うと甘いって言われるかもしれないけど、
ウチはずっと昨日と同じ今日が続くと思ってた。大学行って、親のスネかじって・・・。
それこそごっちんには『甘いんじゃない。』って言われそうだけど、それが当然だと思ってた。」
「そんなこといわないよ。」
「言っていいよ、甘いんだから。」
今見ているのはごっちんの横顔じゃなかった。
その瞳に私だけを映している、向き合った顔だった。
バカみたい。
あんなに取り乱していたのに、そんなことが不思議なほど嬉しいと思うなんて。
- 209 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:36
-
「ごっちんは将来のことも自分で決めて、一人で働いて生活しているってのに、
私はたかが親が決めた大学に行けなくなったとか、話してもらえなかったとか、
家が無くなって遠くに行くのかもってだけでギャーギャー泣いて。」
「あると思ってたものが無くなるっていうのは、どんなことだってショックだよ。」
私のことをどう思っているのかなんて、言ってくれないからわからないけど、
それでも今は精一杯優しくしてくれているのはわかる。
「どんな生活だってさ自分がね、当然のように生きて来た時間が途切れるのはショックだよ。
『ごとーが』とか『よしこが』とかは関係ないんだよ。
それまでね、一人で生きて来た人が大勢の中に放り込まれれば驚くし、
大勢の中で生きて来た人は一人にされれば寂しくなるでしょ。」
肩から手が離れ、ごっちんがコタツの上に置いてあったお茶に手を伸ばす。
- 210 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:37
-
「人間ってさ誰だって、明日急に自分の生活変わるなんて考えないよ。
それが突然起こったんだもん、泣いたってわめいったって自然なことだよ。」
珍しく多に語る唇に、ぎこちなくグラスを運びお茶を飲み喉を潤している。
「よしこなんてさ、特に幸せに育ってきたんだもん。どんな変化だって不幸と
感じたってふつーだよ。働いたことも無いし、お金に困ったことも無いしょ。」
「甘ちゃんだって、暗に言ってるし。」
- 211 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:38
-
「ごとーだってそうだった。昨日と同じ今日が、今日と同じ明日が、ずっと続くと思ってた。
そりゃ少しは違うかもしれないけど、大したことないって思ってた。
もっと不幸な人間に比べれば大したことじゃないのかもしれないことが、
ショックで、悲しかった。
だけどね、他人と比べてどうなると思う?他人にとって不幸じゃないから
ごとーもショックじゃないの?
違うと思う。ごとーが悲しいって感じたら、それはやっぱり悲しいことだよ。
ごとーが不幸だと感じたらそれは不幸なことなんだよ。
堪えられることも、堪えられないことも、他人が決めることじゃない。
ごとーが決めるの。よしこがショックだったって言うんだったら、
それは大きな出来事。甘いも甘くないも関係ないよ。」
言葉の中に、ごっちんの両親の死が含まれているのに、私は驚いた。
そんなことを、ごっちんがウチに話してくれるとは思っていなかったから。
- 212 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:38
-
「・・・ウチ、不幸だって言っていいのかな?」
「いいじゃん。手にしてたものを失ったんだからさ。」
手に持っていたグラスを置き、慰めるように私を抱く。
「たかが大学に行けないくらいのことを、辛いって言っていいの?」
「辛いと思うんだったらさ、言っていいよ。」
もう泣きはしないけれど、ごっちんに大切にされたという実感が
回された腕から伝わるのが嬉しくて声が震えた。
「大切だと思うものってさ、その時になってみないとわからないんだよ。
そのために何かを支払ってもいいって思うまでね・・・」
「そう…だよね。いいよ、ウチにはまだ帰る家があるし、定時制とかって手もあるしね。
頑張るよ。」
最後のごっちんの言葉の意味は良くわからなかったけど、
多分大学より親が生きている方が大事だろうってことを言いたいんだなぁと思った。
- 213 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:39
-
ごっちんが感じた『悲しみ』よりきっと私の『ショック』の方が小さい。
そしてそんなものより、今こうしてごっちんが私に優しくしてくれることを
『嬉しい』と思うほうが大きい。
いいや・・・。
大学に行けなくても、ごっちんが側にいてくれれば。
ごっちんと同じ境遇になれば、きっともっと親しくなれる。
それならそれでもいいや。
不思議なほど落ち着いて、ごっちんの身体に腕を回し抱き返す。
小動物が抱き合うように、力を込めずそっと身体を寄せ、その幸せを満喫する。
「ご飯食べにいこ。人間ってさおなか空いてるとロクなこと考えないしね。
おなかに食べ物詰めた方がいいんだよー。」
- 214 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:40
-
たった今、昨日と同じ今日が続くことなんてないと思い知ったばかりなのに、
その時私は不器用な慰めを口にするごっちんがずっと側にいると安心して
彼女の温かさに身を任せていた。
- 215 名前:ブラッククロス 投稿日:2003/12/04(木) 14:40
-
翌日から、ごっちんが姿を消すなんて微塵も想像しないで・・・。
- 216 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2003/12/04(木) 15:14
- やっと更新できました。
今回はちょっと多め?な更新です。
お待たせいたしまして、ごめんなさいです。
結構たくさんの人に読んでいただいているみたいなので、
安心いたしました。
では、レスのお礼です。
>>171 名無し読者さま
レスありがとうございます。
そういっていただけるとは、大変安心いたしました。
気にせずガシガシレスしてくださいませ(w
これからもよろしくお願いいたします。
>>172 名無し読者さま
読んでていただきありがとうございます。
これからも何とか続けていきますんで、
お見捨てなきようよろしくお願いします。
>>173 リタリンさま
今回もありがとうございます。
楽しみにしていただき感謝です。
AA編ですね。
何とか、また挑戦してみます。
- 217 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2003/12/04(木) 15:15
- レスのお礼の続きです。
>>176 名無しさん さま
読んでいていただきありがとうございます。
またーりになってしまってますが、何とか更新できました。
自分のペースを維持しつつ、早めの更新をしていきたいと思います。
これからもよろしくです。
>>177 ZIPPOさま
レスありがとうございます。
地震は何もなく無事でした、心配いただき感謝です。
これからもがんばっていきます。
>>181 名無し読者さま
本当にお待たせいたしました。
何とか更新できました。
早めの更新心がけます。
>>182 >>189 名無しさん@さま
いつもありがとうございます。
それと保全、感謝です。
いつもAAでのレス、楽しみにしています。
これからも、お見捨てなきよう願います。
- 218 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2003/12/04(木) 15:16
- お礼の続きです。
>>183 名無し読者さま
保全感謝です。
ありがとうございます。
>>185 >>187 >>190 みかんさま
お待たせいたしました。
何とかの更新です。
期待寄せていただき感謝いたします。
これからもよろしくお願いいたします。
>>186 春雷さま
いつもありがとうございます。
ネットカフェのパソコンは自分のと違い使いにくいですねぇ。
がんばって更新していきますんで、これからもよろしくです。
と、いうわけでなんとかネットカフェから更新できました。
しばらくは家がネット環境にないため、通いつめようかなんて考えたりしてます。
でも、やっぱり使い慣れた愛機がいいなぁ。
なんて考えているブラッククロスでした。
- 219 名前:名無しさん@ 投稿日:2003/12/04(木) 17:38
- 大量更新どうもっす!!
よっすぃ〜・・・かわいそうっすね。
でもこれからはごっちんが側にいるから・・・って思ったらいなくなちゃうんすか?!
ごっち〜ん!!
( ´ Д `)<『そのために何かを支払ってもいいって思うまでね・・・』
( 0^〜^)<支払うって一体何を・・・?
( `.∀´)<あれに決まってるでしょ!
( 0^〜^)<あれって?
( `.∀´)<もぉ〜!わかんない子ねっ!後藤もあたしと一緒に売られていくのよ!
煤i ´ Д `)<えぇ!?そうだったの?そんな・・・じゃあもうよしことっ
パシッ!
( `.∀´)<すべこべ言ってないで早く来なさいっ!
( 0^〜^)<行かないでよぉ〜、ごっちん!
- 220 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 02:11
- 乙
- 221 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/14(日) 19:20
- 大量更新、お疲れ様です
こんなにたくさん更新して頂いて大満足なんですけど、もう次の更新が
待ちきれません
ごっちんどうしたの?ふたりはどうなってしまうの?
つづきが気になるよぉ〜
- 222 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2004/01/02(金) 20:22
- みなさまあけましておめでとうございます。
今年もよろしくお引き立てください。
- 223 名前:みかん 投稿日:2004/01/07(水) 07:04
- あけおめです!
今年も期待しております☆
- 224 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 02:57
- 頑張って下さい。
- 225 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:23
-
夜遅くに家に帰り、親に頭を下げもう少しいろいろ考えさせてと言った翌日、
学校へ行くとごっちんは休みだった。
もう既に授業は消化試合状態で、欠席するものが多かったからみんなは気にも掛けなかったが、私はそれが酷く気になった。
ごっちんは授業中に寝てるようなことがあっても、親戚の手前休むようなことは無かった。
家に帰りたくないという気持ちも手伝って、そのままバイト先に顔を出すと、意外なことにそこにもごっちんの姿は無かった。
- 226 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:23
-
嫌な予感がする。
胸が早鐘のように鳴り響く。
アパートへ向かい、貰ってからまだ一度も使っていなかった合鍵で中に入って見たが、そこにもごっちんの姿は無かった。
書き置きも何もない。
- 227 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:24
- 昨夜自分が帰ったままの部屋。
引越しをしたのではない事は、ご両親の位牌が残っている事でわかったが、胸の中の不安は消えなかった。
昨日あんなに優しくしてくれたごっちんが、自分に何も言わずに姿を消すなんて、考えられない、そう思えて。
そしてその不安は悪い事に的中した。
翌日も、その翌日もごっちんは学校に来なかった。
- 228 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:24
- 家の中の空気も日を追って重苦しくなり、自分の居場所がなくなってゆく。
真綿で首を絞められるようにじわじわと追い詰められる感じ。
母親は毎日実家に電話をかけて何事かを相談していた。
父親はいつものように会社へ出かけながらも、夜には憔悴しきった顔で戻ってくる。
学校は卒業前の虚しい明るさに包まれ、ごっちんは戻らない。
- 229 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:25
- 昨日と同じ今日が来ない。
思い描いていた明日がどこにもない。
ごっちんがいない。
ごっちんがいない。
ごっちんが・・・、いない。
- 230 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:26
- そんなことより父親の失職の方が大変なはずなのに、ごっちんの事しか考えられない。
『堪えられることも、堪えられないことも、他人が決めることじゃない。ごとーが決めるの。』
耳に残るあの声。
『他人と比べてどうなると思う?他人にとって不幸じゃないからごとーもショックじゃないの?
違うと思う。ごとーが悲しいって感じたら、それはやっぱり悲しいことだよ。』
そうだ、誰がなんと言っても、今私にとって一番大事なのは、ごっちんがいない事なんだ。
たかが友人の一人が顔を見せないと言うだけの事でも、私にとってはそれが一番『悲しい』ことなんだ。
横顔でもいい、背中でもいい、ごっちんを見て安心したい。
そうでなければ飢えて乾いてしまう。
そんな気分になる。
だって私はごっちんが『・・・』だから。
- 231 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:26
- 目が勝手にごっちんを捜す。
無愛想で、少しおっかなく見える顔を。
側にいて、話を聞いて欲しい。
いや、何もしなくてもいいから視界の中にいて欲しい。
最初から、その横顔を追ってきた。
遠くても、声を掛けられなくても、ずっとそれを見つめてきた。
それすらもできないと、泣きたいほど寂しくなってしまう。
気になっていたのは、振り向いて欲しかったから。
- 232 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:27
- 『大切だと思うものってさ、その時になってみないとわからないんだよ。
そのために何かを支払ってもいいって思うまでね・・・』
ああ、そうだよね。
ごっちんの言葉はみんな真実だ。
いなくなって初めてわかった。
ずっとずっと『どうして』とか、『なぜ』とか、自問自答を繰り返してきた本当の理由が。
- 233 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:28
- ごっちんが私の事を一番と思ってないってわかってたから、ハッキリさせようと思わなかった。
ごっちんが何も言わないから、自分も言わなかった。
でも今なら深く考える事もわかる。
それは恐ろしく単純な答え。
どんな大変な問題よりも、ごっちんの事が頭の中を閉める理由。
学校でも、バイト先でも出向いてまでも、留守のアパートを訪れてまでも、あの姿を捜す理由。
- 234 名前:ブラッククロス 投稿日:2004/02/01(日) 21:28
-
私が、ごっちんを『好き』だから。
そう、最初からたったそれだけの理由だったんだ。
ただそれだけの・・・
- 235 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/02/01(日) 21:46
- 今年初めての更新です。
今年もよろしくお願いいたします。
今回は少なめの更新でしたが、
高校生編もクライマックスに近づいて参りました。
レスのお礼です。
>>219 名無しさん@さま
圭ちゃん・・・売られる仲間増えてよかったねぇ・・・。(w
いつもありがとうございます。
ごっちんはどこへ?は次回明かされます。
待っててくださいませ。
>>220 名無し読者さま
ありがとうございます。
>>221 名無し読者さま
続きを気にしていただき感謝です。
今回は少なめでしたが次回は多めにしますんで、これからもよろしくです。
>>223 みかんさま
あけおめでした。
いつもありがとうございます。
そして、今年もよろしくお願いします。
>>224 名無飼育さんさま
応援ありがとうございます。
これからも何とか続けていきますんで、
よろしくお願いします。
というわけで、今年もやっていきますので付き合ってくださいませ。
現在失業中のブラッククロス@ネットカフェでしたー。
- 236 名前:( ^∇^) 投稿日:2004/02/03(火) 02:01
- 更新お疲れさまです
初レスですが最初からずっと見ておりました。
がんがってください。
- 237 名前:春雷 投稿日:2004/02/10(火) 14:28
- 高校生編ということは、次は大学生ですか?
どんな方向に進むのか見当もつかないです。次の更新、楽しみにしてます
- 238 名前:名無しさん@ 投稿日:2004/02/11(水) 01:22
- よっすぃーの気持ちがとうとうはっきりとしましたねぇ。
ごっちんは一体どこへ?ほんとに気になります(汗
(0T〜T)<ごっち〜ん、早く戻ってきてよぉ・・・
(;´ Д`)<タダイマ・・・
(0^〜^)<あ、ごっちん。ってか、そんな汗だくでどこ行ってたのさ?
(;´ Д`)<ちょっとハンティングに。それで鍋作ったから一緒に食べよ?
(0^〜^)<鍋?う、うん。
( ´ Д`)<じゃぁ〜ん!ごとー特製石狩鍋!
(0;^〜^)<・・・(じゃあ、ハンティングされた生き物って・・・この中に刻まれて入ってる黒い物体って・・・)
( ´ Д`)<もう捕まえるのに一苦労したよ・・・
(0゜〜゜)<ハハ・・お疲れ・・(殺られる・・ウチもそのうち殺られる)
※この話は全てフィクションです。
- 239 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 23:32
- 楽しみに待ってます。
- 240 名前:みかん 投稿日:2004/03/10(水) 08:21
- ごっちーん早く戻ってきて!!
AND
ブラッククロスさん気長に待ってますよ★
- 241 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2004/03/23(火) 00:44
- 最近欝気味で更新が遅くなってます。
申し訳ないです。
だいぶよくなってきたので近日更新予定です。
もう少々お待ちください。
- 242 名前:春雷 投稿日:2004/03/24(水) 22:25
- 楽しみにまってます。
でも、無理はしないでください。
- 243 名前:名無しさん@ 投稿日:2004/03/27(土) 15:17
- 気長に待ちたいと思います。
無理せず頑張ってくださいっス!!
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/28(日) 06:29
- ありがとう
待ってるよ
- 245 名前:名無しさん@ 投稿日:2004/05/02(日) 12:09
- 保全して気長に待ってます。
- 246 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/16(日) 05:15
- 川ο・ー・)ノほぜむ
- 247 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/07(月) 18:53
- mattemasu
- 248 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/29(火) 03:00
- 保
- 249 名前:ブラッククロス@携帯 投稿日:2004/07/03(土) 05:10
- 大変お待たせしてすいません
欝のあとしごとかわっててんやわんやでした。
かなり言い訳ですね…
かならず今月中には更新しますので、お見捨て無きよう願います。
皆さんのおかげで落ちないですみました、保全してくれて方々本当に感謝です。
こんな駄文を楽しみにしてくれてると思うと、感涙ものです。
家でネット環境整うまではなにかとご迷惑おかけしますが、なにとぞお見捨て無きよう願います。早くネットカフェ生活から脱出しなければと思いつつおかねが…
頑張りますのでよろしくお願いいたします。
- 250 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/08(木) 22:50
- 生存報告ありがとうございます。
駄文なんてとんでもない!
楽しみにしてますが、待ってるのもいいものです(w
- 251 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:27
-
三年の登校日が無くなり、もう学校という逃げ場も無くなった私は、
残務処理に出ていく父親と同じ気持ちでそれでも朝になるとふらりと外へ出た。
当ても無く辺りを歩き回り、昼に一度家へ戻りご飯を食べてからごっちんの
バイト先のカフェへ行き、その帰りにアパートをのぞく。
日課になりつつあった。
もう、それが日課になりつつあった。
もう、ごっちんがいなくなってから一週間以上経つ。
その間電話も一本も無かったし、アパートへ帰った様子もなかった。
考えてみれば自分は彼女の親戚の家も知らなかった。
- 252 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:28
- 探す当ての一つも無い。
だから決まった場所しか行けない。
今日も、塞ぎ込んだ母親の顔を見たくなくてふらふらと近所を歩いた私は、空腹に負けて一度家に帰った。
「ちぇっ・・・」
だが、ガレージに父親の車を見つけた私は小さく舌打ちした。
気まずさが二倍になってるのかと思うと空腹を堪えてどこかでパンでも買った方がましに思えた。
その気持ちを変えたのは家の前に停まっている車を見たときだ。
ここいらで見た事も無い高級車。
だけど私はそれを以前見た事がある。
- 253 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:28
- 「・・・本当にありがとうございました。お世話になります。」
その記憶を裏付けるように、母親の声に送られてウチから出てくる女。
この間と着ているコートは違うが、あの背格好はあの時の女だ。
ごっちんの部屋の前で一度だけ姿を見た、彼女の知り合いだ。
「いえ、こちらこそ。それでは来月からよろしくお願いいたします。」
女は思っていたよりも年が上だった。
母親よりはぜんぜん若いが、自分よりは結構上だと思う。
- 254 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:29
- そして彼女は私に気付くとチラッとこちらを見て、にっこりと笑った。
「娘さんですか?」
と両親に聞く。
「え?ああ、そうです。ひとみちゃん、ご挨拶なさい。」
言われてぺこりと頭を下げる。
どうして、この女がここにいるんだろう。
母親と言葉を交わしているのだろう。
「利発そうなお子さんですね。それでは、私はこれで。」
謎への答えは一つもくれず、女は車に乗り込み、あの時と同じように軽やかなエンジンの音を響かせ、
あっと言う間に向こうに走り去った。
- 255 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:30
- 「母さん、今の人誰?」
母親はここのところ見せた事の無いような満面の笑みをこちらに向けた。
「市井さんっておっしゃるのよ。以前お父さんがお仕事した関連の会社の方とかでね、
お父さんの会社が潰れるっれ聞いてお父さんをスカウトに来たの。是非来月からあちらの会社で働いて欲しいって。」
母親は興奮した声で喋っているが、私は反対に身体が冷える思いだった。
「ほら、中に入りなさい。お腹空いてるでしょ。父さんも帰ってるから、三人で食べましょう。」
「いらないよ。うちちょっと出かけて来る。」
「ひとみちゃん?」
ごっちんのことなら、何でも覚えていた。
一度しか見ていないあの女の背格好を間違えなかったくらい。
- 256 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:31
- だから母親が口にした『市井』と言う名前、ずっと以前にごっちんが口にしたことも覚えていた。
前にアパートを訪れたとき、ごっちんは聞いた。『よしこ・・・、市井って知ってる?』と。
何も知らなかったから、学校の人間かと聞き返した私の言葉に、彼女はもういいとごまかした。
だけど今の女が『市井』じゃないのか?
何故かそう思った瞬間、今ならごっちんはあの部屋に戻っていると確信した。
あの女とウチを繋ぐ接点はごっちんしか思いつかないじゃないか。
なんだかわからないけれど、何かが自分の周りで動いている。
そしてきっとごっちんなら、その『何か』を知ってるはず。
空腹はどこかに消え、一分一秒でも早くあの部屋に行かなきゃと心がはやった。
- 257 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:32
- 遅れたら、二度とチャンスがない気がして、気が急いた。
飛び乗った電車を遅く感じ、自動改札を抜けるのさえもどかしく走る道。
見慣れてしまった大谷石の塀に見える頃には息が切れていたが、私は足も止めずそのまま彼女の部屋のドアの前まで行き激しく叩いた。
「ごっちん!ごっちん!」
内側から開くドア、いつもと変わりない無愛想な顔。
何故そんなに慌てているのかと驚く瞳。
「よしこ・・・?」
彼女は、思った通りそこにいた。
手の届く場所に戻ってきた。
- 258 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:32
- 「市井って誰?ごっちん、今まで何してたの。何であの女がウチの家に来るんだよぅ?」
もう離したくないからギュッと掴む腕。
「説明してよ!」
関係ないしょ、と言われるかと思った。
何を言いだすのと、と言われるとも思った。
単なる感でここに来たけれど、関係無いかもしれないじゃないか、いや、関係無いほうがいいだろうと。
だが、ごっちんは困ったような顔で、たった一言こう言った。
「入って、話すから。」
引き入れる手はごっちんから差し出され、しっかりと私の腰を抱く。
強い力が、私を部屋へ誘う。
部屋の中は片付けられ、そこには大きなカバンと紙袋にしまわれた位牌が置いてあった。
「どこ・・・行くの?」
胸が、潰れる。
「どこ行く気なの、なにしてんのさ!」
好きなのに、離したくないのに、側にいて欲しいのに、彼女が去って行く予感で私は叫んだ。
「ごっちん!」
悲しくて。
- 259 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:33
-
- 260 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:34
- 「ウチの家に市井って女が来てた。
ウチはあの人が以前ここでごっちんと話しているのを見たの。
なんでごっちんの知り合いがウチの父親に仕事を持ってきたんだよ?
ごっちん!今までどこで何してたの?どこいくつもりなのさ?ウチには・・・何も言ってくれないの?」
堰を切った私の問いかけに、最初に彼女が返した言葉はまったく答えになってない一言だった。
「・・・本当に市井ちゃんの家の事は知らなかったんだねぇ。」
的外れな答えにカッと血が上る。
「知るわけないしょ!誰なのさ、あいつは!」
だが次の答えで、その血はいっぺんにすうっと下がった。
「ごとーの叔母だよ。」
「ごっちんの・・・叔母さん・・・?」
落ち着けというように両肩を抑えられ座らされる。
頭の中では幾つもの疑問が浮かんでは消えた。
- 261 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:35
- ごっちんと出会ってから、いつも私にはわからない事ばかり。
悩んで、問いかけて、謎を解きたくて、彼女を追いかけてばかり。
「なんでごっちんの叔母さんが家に来るのさ。」
「ごとーが行ってって言ったからだよ。」
「何で!」
ごっちんは少しだけ困ったような顔をした。
気のせいかもしれないけど。
「怒んないでよ。・・・よしこのお父さんに仕事紹介してもらうためだよ。」
でもそんな顔も今の自分には関係ない。
「どうして!」
この頭の中をいっぱいにする疑問の答えを聞く方が先。
- 262 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:37
- 「失業したって聞いたからさぁ。」
「ウチの親が失業したからって何でごっちんの叔母さんが出てくるのさ。
・・・ウチは、そんな事頼んでない・・・」
「わかってるよ。」
「わかってるんだったら、なんでそんなことすんのさ。」
「よしこが心配だったんだよ。よしこがのためにしてあげれる事があったから、それを利用しただけ。」
「なんで・・・」
「なんでって・・・」
「・・・ウチにはわかんない事ばっかりだよ。ごっちん、親戚の事が嫌いだったんでしょ?
貧乏じゃなかったんのかい?
お父さんの就職先を世話できる親戚がいるの?
頼る先も無かったんじゃないの?
一週間以上も姿を隠す場所を持っっているなんて、言ってくれなかったじゃんか?
ウチの事どう思ってるんの?何でウチの事なんか心配するの?
おしえてよ、何でウチの事を心配するんだよ?
教えてよ、ちゃんと話してよ。
そしたら・・・。そしたら・・・ちゃんと聞くから・・・。」
知りたいんだ、ごっちんの事を。悔しさや、怒りなんかよりそれが一番大きいんだ。
何一つ持ってない答え。
せめて一つくらいは答えて欲しい。
私は彼女を見上げ、ぐっと睨みつけた。
- 263 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:40
- 「親戚は嫌い、だけどねこの間来た叔母さんだけはどっちでもない。
ごとーが嫌いなのはお母さんのお父さん、つまり爺ちゃんだけ。
お母さんはけっこうお金持ちの家の娘だったのでもトラック運転手のお父さんと結婚して、
その時に縁を切られたんだ。
お父さんが生きてる間は連絡ひとつ寄越さなかったのに、お葬式の日にいきなり現れて
ごとーに爺ちゃんの養子なって戻って来いって言ったんだ。」
ごっちんの目の中に、自分が写っている。
「引き取るんじゃないんだよ。養子だよ。この意味がわかる?
お母さんの旧姓は『市井』だった。
だけどねごとーの名字もちろんお父さんの姓だから『後藤』なの。
養子に入れって事は、ごとーにお父さんの名前を捨てろって言ってんの。
冗談じゃないよ、そんな事出来るわけないよ!」
言葉を荒くして、ここにいない人間の事ばかり語っていても、その目の中には私だけしかいない。
「だから拒んだの。
それで向こうの家を出たんだ。
だけど外聞が悪いってんで、高校卒業まではお金を払うって言ってきたの。
よしこの見た模試は、ごとーが頭が悪いかどうか確かめる為に爺ちゃんが受けさせたんだ。
お父さんの名にかけて悪い成績は取れないからさ、あの時はマジにがんばったよぅ。」
「どこ・・・、行ってたの?」
「あの叔母さんのとこだよ。
あの人はお母さんのすぐ下の妹で、お父さんが生きてる頃にもこっそり何度か来てたから付き合いがあったんだ。
ついこの間までアメリカだかアフリカだかに行ってたけどね。」
「アメリカとアフリカじゃずいぶん違うと思うけど・・・」
「ま、どっちでもいいよ。関係ないしね。」
卒業の写真をどうのって言ってたのは、叔母さんだったからなんだ。親戚なら、そういうことするもんね。
「あれでも会社やってるからさ、何とかならないかなって頼んだんだ。
借りは出来ちゃったけど、爺ちゃんみたいな横暴な事は言わなかったし、
あの人のところで働いて返すって事で約束を取り付けたんだよ。」
「なんでそこまですんのさ?」
ごっちんの手が、私の手首を捕らえる。
その指の感覚は、不思議なほどハッキリしたものだった。
- 264 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:41
- 「最初、よしこが付きまとってくるのは爺ちゃんの差し金かと思った。
あの学校自体爺ちゃんが選んだもんだから、きっと学校の中にスパイがいると思ってたからね。」
それで人付き合いが悪かったんだ。
「でも違ってた。」
「当たり前。」
「うん、ごめんね。よしこほど何でも顔に出る人なんていないもんぇ」
「なにさ・・・」
私だけを映す目が近づく。
近づいて、近づいて、柔らかな感触が唇に当たる。
「な・・・!」
驚きに顔を紅潮させて離れたが、手首を?まれたままではそんなに遠く離れる事は出来なかった。
「よしこの事をどう思ってるかって聞いたよね?これが答え。」
鼻先が触れ合う距離までまた詰め寄られ、息がかかる。
- 265 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:42
- 今したのって、キスだよね・・・。
それが答えって、どういうこと?
ごっちんはウチの事友達としか思ってなかったんじゃないの?
ウチが来るから追い払わないだけで、自分から望んでるんじゃないんでしょ。
「よしこ・・・」
ウチを呼ぶ声が耳元で聞こえ、耳朶に温かい感触。
ゾクリ、と身体が震え全身が粟立った。
「な・・・、何いきなりさ。」
「いきなりじゃないじゃん。よそこだってそういう気持ちで来てたんでしょ?」
「そういうつもりって何さ?ウチはごっちんの家が金持ちなんて知らなかったよ・・・。」
「ああ・・・、そういうことじゃないよ。よしこはさぁ、ごとーの事が好きなんでしょ。」
自分でさえ、ごっちんがいなくなるまで気づかなかった事実を、どうしてさらりと口にするんだろう。
まるで子供に向かって『よしこはベーグル好きでしょ。』と言い当てるかのような当然さで。
- 266 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:42
- 「どうしてそんなこと・・・」
「ごとーが見てたからだよ。いっつも、縋るような目でね。
理由もなく、ごとーの側にまとわりついて、ごとーと一緒にいたがってたしね。」
ごっちんはウチより大人で、いろんな事を知っている。
電子レンジがなければ鍋で温めてとか、洗濯物を干す前に軽く叩いて皺を伸ばすんだよとか。
そんな事と同じレベルで、ごっちんはウチに恋愛を説く。
「ここに来ていいのかとかさ、自分達ってどんな関係とか、必死で聞いてきたでしょ。」
時折見せていた表情。
困ったり、戸惑ったりしていた顔。
あれはウチが自分の気持ちを表に出していたからだっていうの。
- 267 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:43
- 「だ・・め・・・、ごっちん。」
近づく顔に押し倒されて、両手を取られたまま仰向けに倒される。
それでもごっちんがウチに近づくから、唇が触れ合ってキスになる。
「隠し事出来ない性格なんだー、わかった、よしこ、かわいい。」
顔が熱い、身体が熱い。
「だからね、ごとーの出来る事をしたの。ごとーが側にいて欲しいって思った人が、
ごとーの知らない間に遠くへ行かないようにね。」
「何言ってんのさ・・・、ウチは別にごっちんのことなんか・・・」
ごっちんはウチの上で、初めて満面の笑みを見せた。少し意地悪そうな笑顔を。
「じゃあ、何で泣きながらごとーのとこにきたの?」
逃げられなくなる。
腕力の問題じゃない。
実はウチなんかよりずっと頭のいいごっちんに、逃げ道を全て塞がれてしまう。
- 268 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:44
- 「ごとーの名前呼んでよ。」
答えられないでいると、それを返事と受け取ったごっちんはもう一度唇を合わせた。
温かい。
この瞬間、誰もウチらの間にはない。
ごっちんと心も身体も、一番近くにいるのは自分だけ。
「おとなしくしてて・・・」
ささやく声は男っぽくて、自分はそれを子供のように少し怖いと思いながらも甘く痺れてしまう。
「や・・・」
ごっちんの薄い唇が、顎へ滑り、首筋を這う。
そのまま器用に口を使ってブラのホックを外してずらす。
着ていたTシャツの布を通して、彼女の温かな吐息に伝わる。
心臓の上、胸の敏感な場所を探り当て、軽く食む。
途端に何かのスイッチを入れたように自分の身体がビクッと跳ね返った。
- 269 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:45
- 「よして・・・!」
知識では知っていても、実際には行ったことの無い行為を、ごっちんはためらいなくウチに施す。
「おとなしくしてね」
ずっと捕らえられていた両手を離し、その手を使ってウチの服を剥ぐ。
部屋は、寒かった。
荷作りしていたごっちんがいつここへ戻ってきたのかはわからないけど、たった一つしかない電気ストーブでは温まらなかった。
お腹の辺りを引っ張られシャツとブラがめくられると、剥き出しの肌に空気が冷たい。
けれどそれを寒いと思う前に、熱い唇がそこに降る。
「すき」
ごっちんの言葉が、お腹をくすぐった。
「すき」
どうして、ごっちんはウチの欲しいものがすらわかってしまうほど頭がいいんだろう。
今まで何も言わず、鈍いフリをしていながら全部わかっていた風な口をきくのだろう。
- 270 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:46
- 「ごとーはよしこを『すき』と思ってる。だからよしこは側にいる事。」
恥ずかしいとか怖いとかと思って抵抗しようとする力さえ、言葉で簡単に奪ってしまう。
その方法を知っている。
「そういう関係でいいよね。」
小さな手が、熱の跡を残しながら肌を滑っていく。
「だからよしこのお父さんの世話をしたって理由なら納得出来るしょ?」
部屋はまだ温まってないのに、服を脱がされた身体はだんだんと寒さを感じなくなる。
「これでね、よしこんとこは家を手放さないし、よしこは遠くに行かないし。」
むしろ熱いほど。
「ごとーはそれが望み」
抱きしめられ、肌を貪られ、誰にも覚えた事の無い感覚を掘り起こされる。
柔らかい場所ばかりを狙って蠢く指が、浮いた骨の下にある。
とくとくと波打つ柔らかい物を優しく指で触る。
見えてはいないのに、見えているのは古い天井板とごっちんの髪だけなのに、ウチにはわかる。
目ではなく、身体が感じているから。
- 271 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:47
- 「あ・・・」
ぞくぞくと、何かがざわめいて快感が走った。
「や・・・」
人と触れ合うことが、こんなにも自分を過敏にさせるなんて。
指の一本一本が自分の胸を、お腹を、腰を、少し膨らんだっぽい熱いものを、
味わってゆくのがわかってしまうなんて。
「ごっちん・・・」
指だけじゃない、キスのために使われた唇もどこで何をしているのかわかった。
濡れた舌先が、熱を帯びた肌からその熱を奪うように舐めてゆくのが。
ごっちんは、ほかの人間とこういうことしたことあるのかな。
だから簡単にすきって言った後にこんなことするなかな。
ウチはまだ、ごっちんが側にいてくれればって思う程度のガキの恋なのに、
ごっちんはまたずっと先を行ってるのかな。
- 272 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:48
- 「ん・・・」
ずるずると服が自分から離れてゆき、隠す物の無くなった箇所からごっちんの愛撫を受けた。
皮一枚内側の神経が切なく痺れ、身体のあちこちから、そこじゃなくて、ここに触れてと欲望がもたげてくる。
「ああ・・違う、このままじゃまずいよね・・・」
意味のわからない彼女の言葉が耳に届くけれど、その意味を考える余裕はなかった。
全身を包む朦朧とした快感に呑まれて彼女を感じる神経以外が麻痺していくみたい。
がしゃっ、とコタツの上の物が倒れる音が聞こえた。
いったんごっちんの手が離れていく。
でも、身体は離れていかない。
- 273 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:50
- 何をするのかと思って身体を起こそうとすると、下半身にニュルっとした感覚があった。
「ひ・・っ」
冷たい。
冷えている部屋のせいか、冷たいごっちんの指。
「ごっちん・・・!」
返事はなく、ウチから出ている愛液を使って彼女の指が身体の中に滑りこむ。
「・・・やっ!」
じんっ、と身体の芯が痺れた。
彼女の指を捕らえた自分の身体が、それを離すまいと力を入れる。
「なに・・・?」
胎内で指がわずかに動くだけで、溶けてしまう。
「力・・、抜け・・・」
掠れる彼女の声が指以上に身体の中に入り込む。
- 274 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:51
- 「よしこ」
切ない。
酷く、切ない。
ごっちんがウチを呼ぶから、胸が苦しい。
「ここまでしたら、よしこ、ごとー以外のトコにいけないねぇ・・・」
独占欲を表した言葉と共に、下半身に強い圧迫感と痛みを感じた。
「あ・・・っ!」
脚を開いたその間に、彼女の指が二本、胎内の奥の奥まで入り込む。
ごっちんが起き上がり、その顔が目に入る。
「あ・・ぁ・・・!」
折り曲げられた身体の、彼女と繋がった場所から鈍痛が広がる。
この痛みはごっちんがウチを縛る痛みだ。
どこへも行くなという言葉だ。
ここへ、彼女のそばへ、縫いつける痛み。
- 275 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:52
- 「その・・・」
痛いのに、嬉しくて涙が出そうだった。
「また・・・、顔に出てるよ」
そのうちの顔を覗き込み彼女は笑った。
苦痛に顔を歪めるようないびつな笑みで。
「ごとーがいいって、ハッキリ顔に書いてあるよ」
この感覚で、ごっちんも喜んでるだろうか。
ウチと一緒にいて、ウチの身体を味わって、気持ちいいって同じように思ってくれてるんだろうか。
ウチにはごっちんの表情は読めなかった。
けれど表情より言葉より雄弁に彼女の指がウチに深く突き刺さり、
ゆがんだ顔の理由が苦痛ではなく快感を堪えているのだと教えるような身震いを伝えた。
- 276 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:52
- 「・・・だって・・・」
腕がごっちんの身体に届く。
これは、ウチのだ。
「ごっちんだって・・・」
ウチより強くて、一人でも生きて行けそうで、かっこよくて、謎だらけの女が、それとわかるほどウチを欲しがってる。
「・・うちがいいくせに・・・」
強がって向ける言葉に、ごっちんは頷いた。
「当然だよ」
だから、ウチは彼女の顔を捕らえ、引き寄せるとその唇に噛み付くような口づけを贈った。
そうだよ、当然だよ。
ウチがこんなにごっちんのこと好きなんだから。
ずっと追いかけてきたんだから。
自分の気持ちに名前が無いときから、一生懸命努力して側にいたいと願ってきたんだから。
「ごっちん・・・好き・・・」
恋人になれなければ嘘だろうと・・・。
- 277 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:52
-
- 278 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:53
- 初めて彼女を見たとき、ずいぶん飄々とした女だと思った。
ボーっとしているといった意味じゃない。
まるで風のように流れに身を任せてはいるけれど、外部からの干渉は受け付けないと思った。
それは、今考えれば周囲に潜んでいるかもしれない
彼女のおじいさんのお目付けに対して武装していたのかもしれない。
「ずいぶんいい部屋だよね。」
だからその横顔しか見れなかった。
その風の刃を自分の身体に受けることが怖くて。
それで傷ついてしまうことが怖くて。
- 279 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:54
- 「あのオヤジ派手好きだからさー、十代のガキがマンション住んでどうするんだろーねー」
「オヤジって・・・あんまり年違わないし、女の人じゃん。」
「だっていちーちゃん、おっさんくさいんだもん。」
でももう今は違う。
傷ついても、痛んでも、全身でそれを受け止めたい。
深く、ウチに突きたてても埋めて欲しい。
ここ以外に収める先はないんだよって言って欲しい。
横顔なんかじゃ満足できない。
「大学、一緒でよかったね。」
「仕方ないよ、いちーちゃんの会社、大卒しか雇わないって言うんだもん。
おかげで返す学費がまた増えちゃった。」
- 280 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:55
- ああ、そうだ。
本当はきっと最初からごっちんの事、カッコイイと思ってたよ。
バイトのときの姿なんか、見惚れるほどだった。
「でもウチは嬉しいよ。これでずっと一緒にいられるし。」
でもごっちんがウチをすぐにアパートへ呼び入れたのだって、きっとウチの事を気に入ったからだよね?
誰が来てもそうしてたわけじゃ無いでしょ?
「卒業式終わったら、ずっとここへ遊びに来ようかな?うちの部屋よりずっと広いもん。」
「いいけど、気をつけてね。」
ごっちんの叔母さんが用意したマンションの一室で、ウチはごっちんの顔を正面から見つめた。
これからは、ここへ来る事をウチは躊躇なんかしない。
ごっちんに傷つけられる事も怖がったりしない。
- 281 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:55
- 「なんで?」
ウチはごっちんが好きで、ごっちんだってウチの事をムチャムチャ好きだってわかったから。
「ごとーはね、あんまり我慢が効かないほうだから、手が届くんだったらありがたく頂いちゃうから。」
どんな事をされても平気。
「・・・バカ。」
たぶんきっと・・・。
- 282 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:56
- 2月以来に更新となりました。
遅くなって申し訳無いです。
今回の更新で、高校生編が終了いたしました。
今まで読んでくれた皆様ありがとうございます。
次回からは大学生になってからのお話になります。
もうしばらくお付き合いください。
- 283 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:56
- レスのお礼です。
>>236 ( ^▽^)様
初レスありがとうございます。
最初から見つめていただいて感謝します。
これからもよろしくです。
>>237 >>242 春雷様
いつもありがとうございます。
はいその通りで、これからは大学生編です。
身体も心配頂き嬉しく思います。
これからもよろしくお付き合い願います。
>>238 >>243 >>245 名無しさん@様
いつも顔文字ショートコントありがとうございます。
それと保全もありがとうございます。
今回一気に結果が出ました。
大学生編でどうなっていくかお楽しみにして頂ければ幸いです。
- 284 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:56
-
>>239 >>244 名無飼育さん様
いつも待たせてばっかりでごめんなさい。
待っていただいた甲斐はありましたでしょうか?
これからも楽しみにしていただけるような物を書いて行ける様がんがります。
>>240 みかん様
ごっちんやっと帰ってまいりました。
気長にお待ち頂きありがとうございます。
これからも長い目で見てくださいね。
>>246 >>247 >>248 名無飼育さん様
保全ありがとうございました。
大変助かりました。
感謝です。
>>250 名無飼育さん様
何とか更新出来ました。
文章をお褒め頂き嬉しく思います。
これからもよろしくお願いいたします。
- 285 名前:ブラッククロス@ネットカフェ 投稿日:2004/07/26(月) 18:57
-
最初の頃は毎日更新を目指していたんですが、
すっかり遅筆になってしまいました。
5ヶ月掛けてしまって申し訳無いです。
こんなに間を空けないようがんがります。
これからもお見捨て無きようよろしくお願いします。
- 286 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/26(月) 22:24
- 更新されてる〜♪
高校生編完結お疲れ様です。
ごっちんが帰ってきてくれて良かったです。
大学生編もあるみたいで、すごく嬉しいです。
- 287 名前:春雷 投稿日:2004/07/27(火) 19:51
- 更新お疲れ様です。
ごっちんが帰ってきてくれて本当によかったです。
読みながら、あわわわわってなってしまいました。
- 288 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/27(火) 20:01
- >>286,287
ネタバレ勘弁して下され…。
- 289 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/27(火) 20:40
- ねたばれかくし
- 290 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/27(火) 20:42
- ageちゃった。欝氏。
- 291 名前:春雷 投稿日:2004/07/27(火) 22:00
- 申し訳ないです。見えないと思いやってしまいました。以後、気をつけます
- 292 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/28(水) 03:55
- 待ってました
有難う
- 293 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/28(水) 18:08
- まってました!
謎めいた彼女の本心がみれてよかった
- 294 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/30(金) 11:27
- 待ってました!作者さん帰ってきてくれて嬉しいです・゚・(ノД`)・゚・。
- 295 名前:みかん 投稿日:2004/08/11(水) 01:17
- 待ってましたよ!!
もう感激です!!
更新ありがとう!
大学編も期待してるんで頑張って下さい!!
よしごまバンザイ!!!
- 296 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/01(水) 12:41
- この作品超つぼにはまります(*´ェ`*)
すごい好きなので更新楽しみにしてます。
それではマイペースに頑張ってくださいー
それでは
- 297 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/11(土) 00:40
- 保
- 298 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/19(日) 22:29
- 田
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/01(金) 12:43
- 保
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/02(土) 05:54
- 田
- 301 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/15(金) 19:29
- 待ち
- 302 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/29(金) 15:40
- 待ちますよー
- 303 名前:ブラッククロス改めB.C 投稿日:2004/11/05(金) 20:50
- お待たせいたしております。作者です。
名前が長いなぁと思い短くしました。
やっと家のネット環境が復活いたしました。
近いうちに更新したいとおもいます。
大変お待たせいたしまして、申し訳ないです。
- 304 名前:春雷 投稿日:2004/11/25(木) 13:35
- よかったです。
楽しみにしています
- 305 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/30(火) 09:28
- B.Cさん待ってましたよ〜。
大学編楽しみにしてます。
- 306 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/06(月) 22:12
- 1ヶ月たったけど、まだかなぁ?
- 307 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/06(月) 23:48
- まぁまぁこんだけ待ったんだからさ
気長に待ちますよ
- 308 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/08(土) 16:19
- まってます
- 309 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/13(木) 22:01
- 一番好きな作品です
- 310 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/16(日) 14:16
- 保全
- 311 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/20(木) 16:52
- ほーぜーん
- 312 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/27(木) 17:22
- hozenn
- 313 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/08(火) 22:25
- 待ってます
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