あなたといつまでも

1 名前: 投稿日:2003年06月28日(土)22時00分19秒
はじめまして。暁ともうします。
いままで短編を少し書いたことがあったんですけど、
長めのものが書きたくなったので書かせていただきます。
更新が遅くなったりするかもしれませんが大目にみえてください。m(__)m
2 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年06月28日(土)22時06分31秒

「あのさ、・・・もし私が急にいなくなったら、どうする?」

「えー、そんなこと考えられないよ。」

「だから、もしもだって、もしも。」

「んー、・・・泣く。毎日、毎日。ずっと・・・。」

「そっかぁ・・・。」

「・・・泣かせないでね?」

「・・・うん。」
3 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月28日(土)22時07分17秒


「あなたといつまでも」

4 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年06月28日(土)22時08分52秒

「あさ美ちゃん早くー。」

今日はクラスメートの愛ちゃんとまこっちゃんといっしょに街に買い物に来ていた。
それにしても人が多すぎる。
人がいっぱいいるところってあんまり好きじゃないんだよなぁ。
こういう場所が苦手というか、あんまり慣れていない私はどんどん二人から遅れていった。

そんな人込みの中一人の女の人が目にとまった。
年は私より少し上ぐらいだろうか。長くてきれいな茶色の髪。
鼻筋がとおっていて、ちょっと眠そうにもみえる少し垂れた大きな目。
とてもきれい。
目を離すことができない・・・。
でも私はその目にどこか寂しげな印象を受けた。
5 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年06月28日(土)22時10分49秒
「もー、あさ美ちゃん遅いよー。」

私の思考はまこっちゃんの言葉で途切れた。

「そうだよーって、どうしたの?ボーっとしちゃって。」

「あはは、あさ美ちゃんがボーっとしていないことの方が珍しいよ。」

笑いながらまこっちゃんが茶化すように言った。
いつもだったらここで何かしら言葉を返すのに、今はそんな余裕がなかった。

「あさ美ちゃん、本当に大丈夫なの?」

愛ちゃんが心配そうな顔をして私を見ている。

「あ、なんでもないよ。ごめんね。はやく行こ。」

私は二人に心配をかけたくなかったからいつも通りに振る舞ったのだけれど、
どうしてもあの人のことが頭から離れなかった。
6 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年06月28日(土)22時12分16秒

#####


「あさ美ちゃん、最近妙にボーってしてるよね?」

「そうかな・・・。」

愛ちゃんの言うとおり最近の私はボーっとしている。
というか、なぜかあの日の女の人を考えている。
私にはあの寂しそうな目が気になってしかたがなかった。
そのせいで自分で言うのもなんだけど、何をやっても上の空というか。

「なにか悩みでもあるの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・。」
7 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年06月28日(土)22時13分16秒
悩みか・・・。
私はいったい何を考え込んでるんだろう。
だいたいただ街で見かけただけ、もう会うことなんて二度とないだろう。
それなのに・・・。

「それならいいけど、そろそろ帰ろっか。」

まこっちゃんのその言葉で立ち上がった時、目の前が一瞬真っ暗になり足元がふらついた。

「どうしたの?あさ美ちゃん。」

「んーん、何でもない。」

そう言ったあと、今度は景色がぐにゃりと歪んだ。
何か足元がフラフラする。
まるで空を飛んでるかのような感じだった。
二人が何か言ってるみたいだけど、何も聞こえない。
おかしいなぁ、こんなに近くにいるのに・・・。
一気に体の力が抜け、私の意識はそこで途切れた。
8 名前: 投稿日:2003年06月28日(土)22時18分41秒
一応最初はこんな感じです。
というか最初からミスばっかり・゜・(ノД`)・゜・
大目にみえてくださいってわけわかんないです。

こんなアホな作者ですが、大目に見てくださいm(__)m
ご意見、ご感想もあればどんどん書いてくだされば幸いです。
9 名前:tsukise 投稿日:2003年06月28日(土)23時21分12秒
ご連絡受けまして早速拝見しましたっ!
意味深な出だしで、今後が気になりまくりですっ!
「あの人」とは、やっぱり「あの人」ですよねっ!
楽しみにしていますので、これからも頑張ってくださいね!!
10 名前:紅屋 投稿日:2003年06月29日(日)00時16分00秒
はじめまして同じ板で書いてる者です。
「あの人」はあの人ですよね、やっぱり。
紺野さん視点がとてもいい感じです。楽しみにしてます。
11 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月01日(火)21時04分37秒

気がついたら私は見知らぬ部屋のベッドの上だった。
え?なんで私寝てるんだろ。
ぼんやりとした頭で考える。

「どこだろう、ここ。」

あたりをキョロキョロと見回す。
ここは・・・、病室?
そういえば愛ちゃんとまこっちゃんの二人と話していて、
立ち上がった時に意識が遠のいて・・・。
12 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月01日(火)21時05分46秒
「私、倒れたんだ・・・。最近調子よかったのになぁ。」

再度病室を見回してみてある事に気づいた。
私、この病室に見覚えがある。
ここは私が入院していた病室。
退院したのはだいぶ前だけど長い間いた病室を忘れるはずがない。
慣れた病室の匂い、窓から見える景色は何も変わっていなかった。

私の病名は・・・、『小児白血病』。

真っ白で無機質な病室。
独特な病院の匂い。
ひどい抗ガン剤の副作用。
私はその中で生きてきたんだ。
それが私の幼い頃の記憶・・・。
13 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月01日(火)21時06分46秒
「痛っ・・・。」

幼い頃の記憶を思い出す度に頭痛に襲われる。
辛かった記憶を消そうとしてるのかな・・・。

それから少しして主治医が入ってきた。
ひどい貧血ではあるが、再発などではないらしい。

よかった。
心の中でホっと一息ついた。

今は普通の生活をしてはいるけど、たまに病院に行かなくてはならない。
まだ再発の可能性がなくなったわけじゃない。
死という非日常的なものは、未だ私を取り巻き続けている。
私はこの恐怖から逃れることはできないのかなぁ・・・。
14 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月01日(火)21時08分13秒
バンッ

病室のドアがすごい勢いで開き、光が目に差し込んできた。

「あさ美、大丈夫!?」

お姉ちゃんはそう叫び近づくとと私を抱きしめる。
お姉ちゃんの優しい温もりが私を包み込んだ。

「よかった、あさ美・・・。本当に心配したよぉ・・・。」

お姉ちゃんは泣いていた。

「ごめんね、お姉ちゃん。心配かけちゃって。」

私はなつみお姉ちゃんと二人で暮らしている。
お母さんは私を産んですぐに・・・。
そしてお父さんは大事な仕事で海外にいる。
お姉ちゃんはずっと私を守り続けてくれた
15 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月01日(火)21時11分26秒
病弱な私はいつもお姉ちゃんに心配かけてばかり。
小さな頃は徹夜で看病なんてこともよくあった。
それでもお姉ちゃんは嫌な顔をせずに私を見守ってくれて。
再発、死、その恐怖の中いまこうやって生きていけるのは
お姉ちゃんのおかげだ。

お姉ちゃんと接することがはあの頃の私にとって唯一の安らぎだった。
私はお姉ちゃんの妹でよかった。
本当にそう思う。
今だってこうして心配してくれてる。

「ほんとに、ごっ・・・、ごめんねぇ・・・。」

私の頬を涙が伝った。
いつまでもポロポロと零れ続けた。
16 名前: 投稿日:2003年07月01日(火)21時19分34秒
今日の更新はここまでです。
量が少なくて申し訳ありませんm(_ _)m

tsukiseさん、紅屋さん、こんな駄文に感想をくださって本当にありがとうございます。
楽しみしていてくださるなんて恐縮です。
お察しのとおり「あの人」は「あの人」です。
17 名前:tsukise 投稿日:2003年07月03日(木)20時39分43秒
更新、お疲れ様ですっ。
こ、紺野さん…っ、そんな大それた病気だったんですか…っ。
なつちの優しさにジーンとしてしまいます…。
これからも楽しみにしていますので、頑張ってくださいね。
18 名前:紅屋 投稿日:2003年07月05日(土)13時49分23秒
んなっ!大丈夫なのか紺野さん!?
これからどうなるのか目が離せませんね・・・。
19 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時09分24秒
「あさ美ちゃん、大丈夫なの!?」

教室に入って、すぐに愛ちゃんが駆け寄ってきた。

「うん。もう大丈夫。」

「びっくりしたよー、急に倒れちゃうんだもん。二人ともホントにパニくっちゃってさ。」

まこっちゃんも心配そうな顔をしながら近づいてくる。
でも急に意地悪そうに笑い、

「愛ちゃんなんかすっごい取り乱しちゃってたんだよ。さすが・・・、」

「ちょっ、まこっちゃん!」

愛ちゃんがいきなり言葉を遮った。
20 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時10分20秒
「しょうがないでしょ。あさ美ちゃん、いきなり倒れちゃうんだもん。誰だってびっくりするよ。」

「そうだけど、昨日の愛ちゃんは特に・・・。」

「まこっちゃん!」

愛ちゃんが真っ赤な顔をしてまこっちゃんに大きな声を上げた。

「あはは、冗談だって。冗談。」

「ホントにもう・・・。」

「・・・?」

私は二人のやり取りの意味がわからず首をかしげた。

「ごめんね、心配かけちゃって。でも大丈夫、ただの貧血なんだから。」
21 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時12分19秒
私が白血病だったということは、愛ちゃんたちには教えていない。
そんなに体が強くないという風には思っているだろうけど、
まさか白血病だったということは思わないだろう。
知っているのは先生だけ。

特別扱いされたくなかった。
小さい頃からこの体のせいで特別扱いされ続けてきた。
何か腫れ物を扱うような・・・。
確かに仕方がないかもしれない。

だけど・・・、私はみんなと違うと
一線を引かれている気がしてしかたがなっかった。
あの二人ならそんなことにならないと思う。
でも、もしあの二人とそんな関係になってしまったら・・・。
怖い・・・。どうしようもなく怖い。
だからどうしても自分の体のことは話せなかった。
22 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時13分28秒
二人と出会ったのは高校に入ってから。
人見知りをする私はクラスメートに話し掛けることが出来ず、なかなか友達が出来なかった。
そんな私に声をかけてくれたのが愛ちゃんとまこっちゃんだった。
入学してから半年たった今、いつも三人でいる。
私にとって二人は初めてできた親友。
だからこそ今の関係を壊すのが怖かった。

「おーい、戻って来ーい。」

「え?」

目の前でまこっちゃんが手をひらひらとさせている。
どうやらまた考え込んでしまっていたらしい。
考え込んでしまったら周りが見えなくなってしまうのは私の悪い癖。
23 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時15分51秒
「ホントに大丈夫なの?」

愛ちゃんが心配そうに覗き込んでいる。

「そうだよ。大丈夫なの?心配事があるなら聞くし、なんでも言ってよ。」

まただ、また二人に心配かけちゃった・・・。

「大丈夫。なんでもないよ。」

「ホントに?あさ美ちゃんはいつもそう言うからなぁ。」
24 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時16分30秒
まこっちゃんの言うとおり、私は心配をされると必ずこう返事をする。
心配されるというのが嫌だから。
今までお姉ちゃんたちに心配をかけ続けてしまったからかもしれない。

でも、まこっちゃんの言葉がとってもうれしかった。
二人ともこんなに私のこと心配してくれているんだ。
だけど私はそんな二人に嘘をついている。
だけど言えない・・・。
私は、私は、やっぱり怖い。

「ホントに何かあったら私達に相談してね。」

愛ちゃんは優しくそう言った。
その微笑みは柔らかくて見とれてしまいそうだった。
25 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月06日(日)16時17分16秒
「ありがと・・・。」

私は何か照れくさくて、小さく、本当に小さく呟いた。

「ん、なに?」

「んーん、何でもなーい。」

「こらー、正直に言えー。」

「あはは、ホントに何でもないってー。」

私はこの二人と友達になれてよかった。
26 名前: 投稿日:2003年07月06日(日)16時32分24秒
とりあえず今回の更新終了です。
親友ってのは良いものですよね。
やっぱり持つべきは良き友ですよ。

そろそろ「あの人」を出さないといけないですねぇ。
最初に出てきて放置されぎみですが(笑)

>tsukiseさん、紅屋さん
いきなり紺野さんが重病人になってしまいました。
何か紺野さんは自分的にこういう役があう気がするんですよね。
27 名前:紅屋 投稿日:2003年07月10日(木)01時29分24秒
二人との友情が・・・泣
これからの事を考えると切なくなりました。うう
28 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月10日(木)23時35分02秒
倒れたあの日以来、病院に行く回数が増えていた。
どうも体の調子が思わしくない。
ホントに再発ではないのだろうか?
そんな考えが頭をよぎる。
再発ではないと言われてるのに、どうしてもネガティブになってしまう。
もし再発してしまったら・・・。
いやだ。いやだ。今の生活を壊したくない。

やっとつかんだ幸せな生活。
人から見れば普通の何でもない生活。
でも私にとってはその何でもない生活がとっても幸せ。
このささやかな幸せのために辛い闘病生活も耐えてこれたんだ。
29 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月10日(木)23時37分04秒

「っ・・・。」

そんなことを考えていると目に涙が浮かんでくる。
だめだ、こんなとこで泣いちゃ・・・。
いやだ。いやだよぉ・・・。
壊したくないよぉ・・・。

いよいよ涙が零れそうになった時あの人が目の端に映った。
この前、街で見かけたあの人が・・・。
あの時と同じ目をしていた。

「え?何であの人が?」

呆然とあの人の方を見ていた私は、無意識のうちに追いかけていた。
30 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月10日(木)23時42分11秒

「誰かのお見舞い?でもあの格好はどうみてもパジャマだし。」

何かの病気?
話したことすらないのに、何だか心配になってきた。
そして、気だるそうに歩くあの人はある病室に消えていった。

「ここが病室・・・。」

その病室の名札には『後藤真希』とだけ書いてある。
私は彼女に続こうとドアノブに手をかけたところで立ち止まった。
31 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月10日(木)23時43分25秒

「私、何やってるんだろ・・・。」

あの人に会って私はいったい何をするというのだろう。
街でただ見かけて気になったというただそれだけじゃないか。
そもそも何でそんなに気にしてしまうのだろう。
そう考えたところで頭に浮かんでくるのはあの目。
何故か目が、あの人の目が気になってしょうがなかった。
自分でも分からないけど気になってしまうのだ。

彼女に会えば、どうして気になるのかわかるのかな。
だけど人見知りが激しい私にはいきなり会うという勇気はなかった。
そもそも人を追いかけるなんてことはできるわけなかったのに。
なのに彼女に対しては自然と体が動いていた。
32 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月10日(木)23時45分19秒

自分でもよく分からない感情が胸の奥でぐるぐる回っているかのようなそんな不思議な感じ。
これは今まで経験したことのないものだった。
そしてこの状況を前にして私ができたことといえばただ戸惑うことだけ。
全ては彼女を見かけたあの日から。
私、一体どうしちゃったのかな?

少し考えた後、私は病室の前を離れることにした。
『後藤真希』という名前を胸に刻んで。
33 名前: 投稿日:2003年07月10日(木)23時52分50秒
短いですが今回の更新はここまでです。

>紅屋さん
こんな友達を持ってる紺野さんが本当にうらやましいですね。
毎回こんな駄文に感想を書いていただいて本当に嬉しいです。
34 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時28分55秒


私は真っ暗な部屋のベッドの上で小さくうずくまっていた。
ここは私の部屋。
お姉ちゃんと言い争ったあと、私は部屋に閉じこもった。
というよりも私が一方的にわめいてたんだけど。

それは私が家に帰ってすぐに起こった。
35 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時29分59秒

今日はいつもよりも体調が思わしくなくて、学校を早退して病院に行っていた。

「あれ?鍵開いてる。」

家に帰ると玄関の鍵が開いていた。
お姉ちゃん帰ってきてるのかな。
いつもこの時間はまだ学校にいるんだけどなぁ。

そんことを考えながら家の中には行っていく。
部屋を覗いてみるとお姉ちゃんはやっぱりいた。
でも俯いていている。
何かあったのかな・・・。
私はできるだけ明るい感じで話しかけた。

「どうしたの?この時間に家にいるのって珍しいよね?」
36 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時31分10秒
「・・・。」

お姉ちゃんからの返事がない。
いつもなら私が聞かなくてもお姉ちゃんの方からいろいろと話してくるのに・・・。
少しだけ上がったお姉ちゃんの顔は本当に辛そうな表情だった。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

本当に心配になって私はお姉ちゃんに近づいていく。

「あさ美。」

その声は小さく、かき消えてしまうかのようだった。

「ん?」

「・・・入院しなさい。」

「え・・・?」

私は目を見開いたまま凍りついた。
37 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時32分01秒
・・・入院?

「今日、早退して病院に行ったんだってね。担任の先生から連絡があったよ。」

「嫌だよ。絶対に嫌!もう入院なんかしたくない!」

「最近ずっと良くないんでしょ。私の前では隠そうとしてるけど・・・。」

「・・・病院に縛り付けるの・・・?」

涙が止めど無く溢れ出してきて、目の前の光景が歪んでくる。

「・・・っ!違うよ!私は本当に心配で・・・」

「・・・もう私のこと邪魔になった?」

もう邪魔になったの?
もういらなくった?
だから、だから・・・入院させるの?
38 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時32分48秒
パンッ

頬に痛みが走った。
その瞬間涙に歪んだ視界が晴れた。
目の前には涙を溜めたお姉ちゃん。

「・・・っ。」

また涙が溢れてくる。
叩かれたのが痛かったらじゃない。
だけど、涙が止まらなかった。

そして私は自分の部屋に駆け込み鍵を閉めた。
そうやって今に至る。
39 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時33分41秒
心配してくれているのはわかってる。
お姉ちゃんが邪魔だから入院させることは絶対にない。
わかってるけど・・・。

もしかしたらもう出てくることができないかもしれない。
もう今みたいな生活はできないかもしれない。
再発なんかしていないのにネガティブな考えばかりぐるぐると回り続ける。

ふと顔を上げてみる。
そこは相変わらずの闇の中。
カーテンも閉めていてまったく光は入らない。
完全な闇。
まるで私のこれからを暗示しているかのように思えた。
40 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時34分59秒
「あさ美?」

お姉ちゃんの呼ぶ声が聞こえる。
だけど私は会話をするのが気まずくて返事をしなかった。

「正直言って、私は入院して欲しい。でもその判断であさ美を苦しめるって結果にはしたくない。」

お姉ちゃんが喋り始める。
その口調は独り言を言っているかのようだった。

「でもね、本当に辛い時は頼ってきてほしいよ。
あさ美は私に心配かけないように無理してるように見えるんだ。
だけどね、そんな姿を見るのはなによりも辛いよ・・・。」

足音がお姉ちゃんが部屋の前から離れていったのを告げる。
41 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時35分42秒

「お姉ちゃん・・・、ごめんねっ・・・。」

暗闇の中私の目からは涙が零れ続ける。
こんなに心配してくれる人が私にはいるんだ。
それが嬉しくてしかたがなかった。

「ありがと・・・。」

お姉ちゃんに聞こえはしない。
だけど、どうしてもこの言葉を口に出しておきたかった。
泣き疲れた私はそのまま眠りについた。

42 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時38分11秒

近頃体調はだんだんと良くなってきた。
だけど病院に行かなきゃならないのは相変わらずだった。
けれど体調良くなってきて、余裕の出てきた私の病院に行く目的は、もっぱらあの人を見るため。
お姉ちゃんたちは本当に心配してくれているし、少し不謹慎かもしれない。
だけどあの人が気になってしまう。

おかしいのは自分でもわかってる。
でもこんな気持ちになったのは初めてで・・・。
自分でもどうしたらいいのかわからない。
いつものように目で探しているいると、
43 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時38分54秒
不意に後ろから声がかかった。
突然投げかけられた言葉に私は振り向いた。
でも話しかけた人があまりにも意外で、驚きのあまり魚のように口をパクパクさせていた。
え?私、話しかけられたんでよね?
でもなんでこの人が?

「ずっと私のこと見てるみたいだけどさ、何の用?」

え?ばれてたの・・・?

「気づいてたんですか・・・?」

「まあ、そりゃいつもあんだけ見てりゃね。」

何だか顔がだんだん熱くなってきた。
今、私の顔ってきっと真っ赤なんだろうな。
驚きと恥ずかしさで俯いてしまった。
44 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時39分35秒
「何の用?」

彼女は面倒くさそうにもう一度聞いた。

光を失った目。
その目はまるで吸い込まれてしまうかのような闇を宿していた。

「い、いや、あ、あの、あの・・・。」

しどろもどろになってしまってうまく言葉が出てこない。
そもそも何と答えればいいんだ。
ただ気になったから見ていたなんて言えるわけがない。

「ま、別にどうでもいいけどね・・・。」

「あ、ちょ・・・。」

私の声は聞こえなかったのか離れていってしまった。
これであの人との初めての会話は終わった。
45 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時40分19秒
「でも、あの目どこかで見たような・・・。」

やはりあの目が気になってしまう。
どこかで見たような気がするんだけど。
どこだろう?
思い出せないな・・・。

「痛っ!」

考え込んでいたら急に頭痛が襲ってきた。
痛みとともに、ノイズがかかった映像が頭に流れ込んできた。

泣いている小さい頃の私。
小さい頃の私ってホント泣き虫だったもんなぁ。
怖がりで、何かあるとすぐ泣いちゃってお姉ちゃんに頼ってたもんな。
まあ、今でもあんまり変わってないかもな。
でも何でこんな時に思い出すの・・・?
46 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時40分52秒
頭痛とともに場面が変わった。

今度はボーっと外を眺める私。
これは抗がん剤の副作用が辛くてだいぶまいってた頃。
死の恐怖に苛まれ続けていた。
この頃はホントに何もする気が起きなくて、ただずっと外を見ているだけ。

頭痛が強くなるとともにノイズがひどくなった。
な、に?
いったい何なの?
さらにノイズがひどくなる。
47 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月12日(土)11時41分46秒
「っ・・・!」

最後の強い痛みとともに映像が途切れた。

「あの目・・・。」

最後の映像はあの頃の私の目。
あの人と同じような深い闇を持った目だった。


48 名前: 投稿日:2003年07月12日(土)11時49分25秒
更新終了です。
一つ場面を長く書くことができないっス・゚・(ノд`)・゚・
49 名前:tsukise 投稿日:2003年07月16日(水)23時13分04秒
更新お疲れ様です♪
ファーストコンタクトから、意味深ですねっ!
紺野の体調が気になりつつ、次回更新楽しみにしています。
がんばってくださいね
50 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)08時57分32秒
「あさ美ちゃん、最近学校終わるとすぐにどこかに行っちゃうけどどうしたの?」

学校の帰り道、愛ちゃんから急に問い掛けられた。
確かに愛ちゃんと帰るのは久しぶりだ。
まこっちゃんは用事があるらしく早めに帰ってしまった。

愛ちゃんの言うとおり一緒に帰ることがめっきり少なくなっている。
病院に行かなければならないから。
51 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)08時58分24秒
「え!?あっ、そ、そうだっけ?」

いきなりなりそんな事を言われて曖昧な返事をしてしまう。

「そうだよ!いつも授業が終わったらあっという間に消えちゃうし。」

「あ、い、いやー、こ、この陽気に誘われてフラフラっとね・・・。」

「やっと捕まえたと思ったら毎回毎回、用事があるから、って。」

「ぐ、偶然だよ。」

動揺してしどろもどろになって答える。
こんなんじゃ嘘ついてるってバレバレだよぉ・・・。
ホントこれほど嘘つくのが苦手なのも珍しいな。
52 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)08時58分55秒
「あさ美ちゃん、正直に言って。」

「い、いや、何でもな、い。」

「あさ美ちゃん。」

愛ちゃんは真剣な瞳で私をじっと見つめる。
まるで全てを見透かすような、吸い込まれるかのような澄み切った黒い瞳。
あの人とは正反対な瞳だった。
この瞳の前では嘘はつけない。
53 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)08時59分34秒
「じ、実は、病院に行ってたんだ。」

「病院!?あさ美ちゃん、あの時のまだ良くなってないの!?」

病院行っていたことを言えなかった理由はこれ。
愛ちゃんは倒れた日以来ずっと私のことを心配してくれている。
これ以上心配をかけたくなかった。
そしてもう一つ。
病気のことが知られたくなかったから・・・。

「ううん、もう大丈夫だよ。ただの貧血だったんだから。」

そう。ただの貧血。
だけどそれは白血病と関係しているかもしれない。
倒れた日以来、日に日に再発の不安が強まっていっている。
だけどそれを見せるわけにはいけない。
54 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時00分23秒
「・・・本当に?」

「うん。完璧!」

私は小さく愛ちゃんに向けてVサインをした。
こうやって嘘をつく度に胸がちくちくと痛む。
友達を信じることができない自分にひどい嫌悪感を覚える。
話せばこの胸の痛みから逃れられるのに。
だけど、だけど・・・。
臆病な私は話すことができない。
愛ちゃんを心配させないようになんとかいつも通りに接すること、嘘をつき続けることしかできない。
愛ちゃんが悲しそうな目で見ていたことに私は気づかなかった。

いや、気づかない振りをしてたんだ。
愛ちゃんにこんな目をさせる自分を認めたくなかったのかもしれない。
そしてまだ、この目の意味に気づくことができなかった。
55 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時01分10秒


私は病院であてもなく歩いていた。
いや、行き先は決まってる。
あてもなくではなく、迷ってるんだ。
お姉ちゃんたちにむやみに心配をかけるだけなのはわかってる。
だけどあの目を、あの頃の私と同じ目をしたあの人を見て、どうしてもほおっておけなかった。
自分だっておせっかいだとは思うし、今まで同じような目をした人を何人も見たことがある。
なのにあの人に対しては違った。
あの人のために何かしたかった。
あの人の笑顔が見たい。

「あ、ここは・・・。」
56 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時01分40秒
いつの間にかあの人の病室の前に来ていた。
どうしよう・・・、ちゃんと話してみたいしなぁ。
この間のようにドアの前で考え込んでる私に、

「ねぇ、何やってんの?」

いきなり声がかけられた。

「ふぇ!?」

突然のことにびっくりした私は素っ頓狂な声を上げた。
この声は・・・、

「人の病室の前で何やってんの?」
57 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時02分29秒
あの人は感情のこもっていない声で問い掛けた。
その目にも感情は映し出されない。
そう、まるで底の見えない闇のような。

「あの、その・・・。」

やはり口篭もってしまって上手く喋れない。

「あのさー、はっきりと喋ってくんない?」

やはり彼女の言葉に感情は感じられない。

「あ、あの、お話してみたいなって・・・。」

「私はしたくないよ。」

彼女はきっぱりそう言い、病室に入って行く。
しかし、すれ違う時に一瞬とても辛そうな顔をしたような気がした。
58 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時03分12秒
「あの!」

「何?」

彼女は面倒くさそうな表情で振り向いた。

「いえ、あの・・・。」

「だからさ、何なの?」

「あの、何か気になって・・・。」

「気になる?」

そう気になるの。
あなたのその瞳が。
59 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時03分56秒
「あのさ、何であんたに気にされなきゃいけないわけ?」

確かにそれはもっともだ。
いきなりこんな事を言われたら怪しまないわけがない。
そしてあなたの瞳が気になるなんて言えるわけも無く、黙って俯いてしまった。

「ま、どうでもいいかさ、帰ってくれない?ひとりになりたいしさ。」

「は、はい。」

冷たく言い放たれた言葉に軽くへこみながらそう答えた。
まあ、こんな答えが返ってくるのはある程度予想はできてたんだけど。
あの頃の私がこんな感じだったから。
60 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時04分49秒
私は病室を出る瞬間、あの人の方を振り返った。
理由はなかった。
本当にそれは何気なくだった。

彼女の体がゆっくりと傾いていく。
それはまるでスローモーションのようだった。
その茶色の長い髪が日の光に照らされてきらきらと光っている。
それは見惚れてしまうかのようで・・・。

時が止まったかのようにぴくりとも動くことができなかった。
私の思考は完全にストップしている。
何が起こったのか、理解することができなかった。
61 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月18日(金)09時05分33秒
倒れて、る・・・?
あの人が、倒れてる・・・。

時が動き出した。

「後藤さん!」

初めて呼んだ彼女の名前。
この言葉は彼女には届いていない。
62 名前: 投稿日:2003年07月18日(金)09時15分10秒
更新終了です。
登場人物を倒れさせてばっかりです。
少しは明るい場面を書かないといけないっスね。

>tsukiseさん
確かに紺野さんの体調はやばいですけど、きっとよくなる・・・・・・はず(ぉ
63 名前:混胡麻 投稿日:2003年07月18日(金)17時24分01秒
確かに…。でも良いんじゃないっスかね、そーゆーのも。
私は好きですけど…。
64 名前:紅屋 投稿日:2003年07月21日(月)01時10分16秒
後藤さんどうしたんでしょう・・・。
二人とも大丈夫なんでしょうか。体のことが心配です。
65 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月22日(火)22時42分18秒
こう言う話、大好きなので
続きが気になります。
66 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時21分24秒
 「行かないで!ごとーをおいてっちゃヤダよ!!」

「ごめんな・・・。もう・・・、だめ、みたい・・・。」

「ヤダ!ヤダ!約束したじゃない!ずっと、ずっと一緒だって!!」

「約束、守れそうに、ないや・・・。」

「いなくならないで!ごとーを独りにしないでよ!」

「ごっちん・・・、ホントに・・・愛してたよ・・・。」

「よっすぃー!!!」

67 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時22分36秒
静まり返った病室で私は目を覚ました。
この夢を見るのはいったい何度目だろうか・・・。
あの時の光景は未だ記憶に焼き付いたまま。

「よっすぃー・・・。」

涙が止めど無く頬を濡らしていく。
私が一番愛した人。
誰よりも、自分よりも大切だった人。
その人は私の目の前からいなくなった。

少し低いけど優しいあの声をもう聞くことはできない。
太陽のような優しいあの笑顔をもう見ることはできない。
抱きしめられた時のあの温もりをもう感じることはできない。

「逢いたいよぉ・・・。」

闇に包まれた病室。
それはいつもと同じ光景。
まるで私の心映し出したかのようだ。
68 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時23分27秒
いつからだろう、こんな闇の中で生きてきたのは。
両親は私が物心がついてすぐに死んでしまった。

私の心臓は生まれつき欠陥品だった。
そんな私を親戚の誰も引き取ろうとはしなかった。
引き取った親戚もしかたがないという感じだ。

引き取られた先での生活はとても辛いものだった。
体のことなんかろくに気を遣ってもらえない。
学校でも両親がいないことをいじめられ続けた。

早く家を出たかったけどまだ小さかったし我慢し続けた。
そして中学を卒業し、遠くの高校を選ぶことにより家を出た。
普通なら体のことを考え反対するだろうけど、私のことなんか全く気にしないあの人たちはあっさりと許可を出した。
もともといやいや引き取ったのだから、自分から出て行くと言ってせいせいしたのかもしれない。
69 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時24分08秒
待ちに待った一人暮らし。
しかし病気は確実に私のからだを蝕んでいた。
一人暮らしを始めて数ヶ月、とうとう私は倒れてしまった。
面倒なことになるのを嫌ったあの人たちは私を病院に押し込んだ。

そして始まったのは病院での生活。
その辛い生活の中で私は生きる気力を失った。
そんな日々の中で私はよっすぃーと出逢ったんだ。
生きる気力を失っていた私によっすぃーは生きる希望を持たせてくれた。
病気を治してよっすぃーとずっと一緒にいたい。
いつしか強くそう願うようになった。
よっすぃーは誰よりも大切な存在だった。

だけどよっすぃーは私の目の前からいなくなった・・・。
70 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時24分39秒
私は再び生きる希望を失った。

すぐに後を追おうかとも思ったがそれはきっとよっすぃーが許さない。
それに自分から命を絶たなくたって私自身そう長くはないはず。
何事にも関心を無くし、早くよっすぃーの元へ行けることを願い、ただ惰性で生きるようになった。

誰にも関わりたくなかった。
そのはずだったのに私は気がついたらあの子に話しかけていた。
何故なんだろう。
自分自身のやったことが理解できない。
71 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時25分20秒
ガチャッ

私の思考を遮るように扉が開き、光が差し込んできた。
そこに立っていたのは、あの子だった。

「あの、大丈夫ですか?」

控えめな声。
儚くて掻き消えてしまうかのようなか細いものだった。

「ああ、なんとかね。」

「よかった・・・。」

私の答えを聞いてあの子は大きく息を吐いた。
その顔は心底ほっとしたかのような安堵の顔。

「いきなり倒れたから、本当に心配で・・・。」

倒れた?
この子を帰るように言ったところまでは覚えているけど・・・。
72 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時25分59秒
「・・・そう。」

素っ気なく答える。
誰とも余計な関わりを持ちたくないから。

「・・・。」

あの子との間に気まずい沈黙が流れる。
いや、気まずくなんかない。
これでいいんだ。
私はずっとそうやってきたんだ。

「あの・・・、」

彼女が沈黙を破る。
その声はやはり細くて消えてしまいそう。
でもこの声、嫌いではない・・・。
73 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時26分38秒
「またお見舞いに来てもいいですか?」

また来る?
何で逢ったばかりのあんたが?
いつもならそう言っていただろう。
私は誰とも関わりを持ちたくない。
そのはずなのに・・・、

「勝手にすれば。」

私の口からは思っていることと反対の言葉が零れた。

「ありがとうございます!」

さっきまでとは違う大きな声。
本当に嬉しそうな、そんな響きだった。
74 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時27分20秒
「別にお礼されるようなことされてないし・・・。」

「す、すいません。」

無愛想に答えると、彼女は慌てて頭を下げる。

「まあ、いいや。もう休みたい今日は帰って。」

「は、はい。」

彼女が背を向けて出て行こうとする。

「ねぇ。」

私は出て行く寸前で声を掛けた。

「は、はい!?」

彼女が慌てて振り向く。
その仕草がどこか滑稽に見えた。
75 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003年07月29日(火)10時27分51秒
「名前は?」

「あ、紺野あさ美っていいます。」

「そう。」

彼女は暖かな微笑みを浮かべた。
優しく微笑むその瞳に吸い込まれそう。
そんな不思議な感覚を受けた。

「失礼します。」

頭を深々と下げて彼女は病室を出ていった。
そしてまた静寂が訪れる。
いつもの空間。
それなのに今はどこか寂しいような感じがした。
76 名前: 投稿日:2003年07月29日(火)10時35分30秒
 更新終了です。
 
 >混胡麻さん
 いいんですかねぇ。
 これからは少しは明るくなるとは思うんですけど。

 >紅屋さん 
 確かに二人ともやばすぎですね。
 もう二人の体が心配で心配で(ぉ

 >名無しさんさん
 そう言って頂けると本当にうれしいです。
77 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月24日(日)19時09分06秒
待ってます。
78 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:31
「後藤さん、調子はどうですか?」

あれ以来、紺野がよく病室に来るようになった。
特に何をするわけでもないが、その日学校であったことなどを一生懸命話している。
だけど私はそれに反応したりはしない。
嫌なわけではない。
細くて高い声。
この声を聞くとどこか癒されているというか、安らぎを感じている自分がいる。
それなのにいらいらしてしまう。
どこか調子が狂う。
79 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:32
『またお見舞いに来てもいいですか?』

不安そうに尋ねる紺野が発した言葉。
その大きな瞳は頼りなさそうに揺れていた。

『勝手にすれば。』

私はそう答えていた。
自分の意志とは全く逆の言葉を。
80 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:34
私はあの人がいなくなってからずっと独りだった。
というよりも、誰とも関わりを持つことを拒んだ。
あの人がいない世界に何の価値も見出せない。
全ては惰性。
早くあの人の元へ行けることを願い、ただ生きていた。
81 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:34

『あのさ。ずっと私のこと見てるみたいだけどさ、何の用?』

今まではどれだけ人に見られていようが、そんなことは気にしなかった。
私にはどうでもよかった。
他人にどう見られているかなんて、考えるのも面倒くさい。
そのはずなのに、私は紺野に声を掛けていた。
それはまるで体が私の意志を裏切ったかのように勝手に動いていた。

きっとこの時から。
この時から調子が狂っている。
82 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:35


「・・・。」

紺野の話し声が途切れた。
紺野の表情は悲しげに見えた。
その表情を見ると、胸の奥でチクリと痛みを感じてしまう。
83 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:35
「また来ますね・・・。」

寂しげに微笑むと、ぺこりと頭を下げて病室から出ていった。
それを見てもう一度胸の奥で痛みを感じた。

紺野が帰った後の病室はしんと静まり返った。
いつもの空間。
私の好きな空間。
それなのに何処か寂しく感じてしまう。
そこまで考えて私は頭を横に大きく振った。
84 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:36
そんなわけない。
寂しいはずなんてない。
私が一緒にいたいのはよっすぃーだけなんだ。
85 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/09/30(火) 15:36
私が感じている苛立ち。
違う。
私が感じているものはきっと、恐怖。
よっすぃーの死以来、私が張り巡らせた強固な壁。
それを壊されているような、私の内面を見られているかのような、そんな恐怖。
そして、よっすぃーへの想いが変わってしまうのではないかという恐怖。
感じていたのはきっとそれ。
私はまだそれに気づけずにいた。
86 名前: 投稿日:2003/09/30(火) 15:41
 更新終了です。
 なかなか更新ができない状況になってしまったのですが、
 必ず完結させますのでまだ読んでいる方がいらっしゃればお待ちいただければありがたいです。
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/30(火) 21:56
大丈夫、ちゃんと待ってます。
88 名前:tsukise 投稿日:2003/10/01(水) 07:43
更新お疲れ様です。
同じく、お待ちしていますので
作者さんのペースで頑張ってください♪
89 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:26
『もう大丈夫だよ。』

大丈夫なんかじゃないのに。
本当は辛いはずなのに。
そう言って笑うあさ美ちゃんを見るのが辛い。
90 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:27
 あれはあさ美ちゃんが倒れたあの日から一週間ぐらいたった頃だろうか。
私は合唱部の練習が遅くなって、一人で帰っている時だった。
公園のベンチにうな垂れるように座る人影が見えた。
暗くて見えにくかったのだけれど、あれは・・・なつみさんだった。
何か話しかけづらい感じだったけど、どうしても気になってしまって声を掛けることにした。
91 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:27
「あの・・・、」

一瞬びくっとして、なつみさんが顔を上げた。
ずっと泣いていたのだろう、その目は真っ赤に腫れていた。

「あ、愛ちゃん・・・。」

私に気づいたなつみさんは腕でごしごしと涙をふくと、いつものように笑った。
だけどこの時の私には、その笑顔はまだ泣いているようにしか見えなかった
92 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:28
「いったいどう・・・、」

「な、何でもないよ!目にごみが入っちゃったかな?」

なつみさんは私の言葉を遮り、一気にまくしたてた。

「あの・・・、」

「いやー、なかなか取れなくってさー。」

「なつみさん・・・。」

喋りながらもなつみさんの瞳からはポロポロと涙が零れ続けていた。
93 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:29
「お、おかしいなー、こんなに、な、涙、出ちゃうなん、て・・・。」

いつもしっかりしているお姉さんのなつみさんが、頼りなくて、儚くて、私はできるだけ優しく抱きしめた。
いつまでそうしていただろうか、なつみさんが顔を上げた。

「ごめんね、いきなり。」

そう言って、なつみさんは私から離れた。
94 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:30
「どうしたんですか?いったい。」

私の問いかけに俯いたあと、ゆっくりと口を開いた。

「あさ美の体の事・・・。」

「あさ美ちゃんの?」

「あさ美はきっと、この事は愛ちゃんに知られたくないと思うんだ。
だけど私は、愛ちゃんだから知っていてもらいたい。」

この言葉に私の中に嫌な感じのものが広がっていった。
鼓動がどんどん速くなっていく。
95 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:31
「あさ美は小さい頃・・・、白血病だったの・・・。」

私は呆然と立ち尽くした。
あさ美ちゃんが・・・白血病・・・?

「もちろんその時は治ったの。でも今の状態じゃ・・・、」

なつみさんは一瞬言葉を詰まらせた。

あの日あさ美ちゃんが目の前で倒れたのは。
それからずっと体の調子が悪いのは。
まさか、まさか。
96 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:32
「再発する可能性が高いの。」

鼓動がひとつ、大きく高鳴った。
頭の中が真っ白になって何も考えられない。
あさ美ちゃんが白血病。
その言葉が私の中でリフレインし続けた。
その後もなつみさんは何か言っていけど、覚えていない。

その後、私はどうやって家に帰ったのだろう。
気がついたら真っ暗な自分の部屋で立ち尽くしていた。
白血病・・・。再発・・・。
その言葉が頭の中を支配する。
97 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/14(金) 12:32
「なんで・・・。」

私の口から零れた言葉は、自分の耳にすら届かないかという程小さな物だった。
あさ美ちゃんが死んじゃうかもしれない。
なんで、なんであさ美ちゃんなの。
もちろんこんな考えは私のエゴだってことは分かってる。
だけどあさ美ちゃんは、私が本当に好きな人だから。
彼女が苦しむのを見たくない。

「いや・・・。ヤダよぉ・・・。」

言葉とともに涙が零れる。
なつみさんの話を聞いていて涙を流すことはなかった。
時間が経った今、やっとその言葉をわずかながら受け止めることができたのかもしれない。

98 名前: 投稿日:2003/11/14(金) 12:34
 何とか更新終了です。
 これだけ間を空けているのに少しだけしか更新できなくて本当に申し訳ないです。
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/11/14(金) 16:42
更新お疲れ様です。
少しだけでも更新されるのが嬉しいです。
いつでも待ってるので、頑張って下さい。
100 名前:tsukise 投稿日:2003/11/16(日) 20:06
更新お疲れ様です。
高橋の苦悩とか、色々交差する心理的なものが切ないですね。
次回もマターリお待ちしていますね。
101 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:53

『あの目が気になるから。』

キレイな瞳。
でもそれは光を失った瞳。
そこにあるのは底無し沼のような深い闇だけ。

あれは何もかもを捨ててしまった瞳
そう、何もかも。
生きる希望でさえも・・・。
102 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:54
私はあの日以来、後藤さんのお見舞いで病院に行く回数が増えた。
よく考えてみると週に病院に行ってない日の方が多いぐらいに。
自分ではそんなに行ってるつもりはなかったんだけど・・・。

お見舞いに行くといっても特別何をするわけでもない。
まあ、本当は何もすることがないといった方が正しいのかな。
病室はきちっと片付いているし、後藤さんは人に部屋をいじられるのは嫌いみたいだった。
103 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:55
私はその日学校であったこととかをよく話す。
勉強のことや友達のこととか、とにかくいろんなことを話している。
だけど部屋に響くのは私の声だけ・・・。
後藤さんの声が聞こえることは、ない。

私が話をしている間、後藤さんはずっと外を見ている。
こっちを見ていたとしてもその目に私は映ってはいないかのようだった。
それでも私はずっと話し続けた。
もし何かのきっかけになってくれれば・・・。
こんなことが何になるかわからないけど、何もしないよりはきっといいはず。
そう思って続けてはみるものの、あいかわらず後藤さんは何の反応も示してくれない。
104 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:56
やっぱり迷惑なのかなぁ・・・。
それはそうだよなぁ。
お見舞い来てもかまわないって言ってはくれたけど、私がやっていることはただ延々と自分のことは話しているだけ。
迷惑に決まってるよね・・・。
いっつもそうだ。
一つのことをやり始めたら周りが見えなくて・・・。
他人のことを考えられなくて・・・。
嫌だなぁ・・。
105 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:56
頭の中に自分の嫌な部分が次々に浮かんできて、自己嫌悪してしまう。
このままだと涙が出てきてしまいそうなので今日は帰ることにした。
こんなのところで泣いてしまったら、きっと後藤さんは迷惑だと思うに違いない。

「また来ますね・・・。」

なるべく明るく、気づかれないように。
私は顔に笑顔の仮面を貼り付けた。
106 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:56
病室を出てドアを閉めた瞬間涙が溢れそうになった。
私は人に気づかれないように下を向き、足早に病院を出ようとした。
その時・・・、

「ふにゃ!?」

間抜けな声を上げて思いっきりしりもちをついた。
かなり痛い・・・。
107 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:57
顔を上げた私の前に立っていたのキレイな女の人。
端整な顔立ち。
茶色でサラサラの長い髪。
少し褐色の肌が健康的な感じで印象に残った。
でも、全身ピンクで固めた服装は・・・。
・・・別の意味で印象に残った。

「ご、ごめん。大丈夫?」

心配そうな声が上から降ってきた。
と思ったら、その人は慌ててハンカチを取り出し、

「そ、そんなに痛かった!?」

私の頬を拭った。
頬に感じる水の感触。
私はその時初めて自分が泣いてることに気づいた。
必死に抑えていた涙がぶつかった拍子に零れ落ちていた。
108 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:57
「あ、いや、こっちこそ、す、すいません!」

私は急いで立ち上がると頭を下げると、顔を伏せたまま走り出した。
失礼だとは思ったけど、泣いているのを見られたという恥ずかしさもあって顔を上げることができなかった。

そのまま家に戻った私は、リビングにいるお姉ちゃんに声も掛けずに自分の部屋に向かった。
そしてそのままベッドに倒れこむ。
109 名前:あなたといつまでも 投稿日:2003/11/25(火) 15:57
私が後藤さんに会いに行く理由。
あの目が気になるから。
あんな目をした人を放っておけない。
・・・だけど、もし後藤さんじゃなくてもそう思っただろうか。
答えはきっとNO。
後藤さんにあんな目をして欲しくない。
後藤さんの笑った顔が見たい。

私の中での理由が少しずつ変化し始めていた。
110 名前: 投稿日:2003/11/25(火) 16:02
 ほんの少しですが更新です。
 次の更新はいつになるのだろう…
 
  
 
111 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/11/26(水) 07:33
イツデモマッテマス。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/12/20(土) 18:14
ホゼン
113 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:25
オレンジに染まった病院の廊下。

「ここに来るのも久しぶりね・・・。」

窓からは柔らかな夕日が差し込んでいて私の影が長く伸びていく。
その温かな光が少しだけ眩しくて、軽く目を細めた。
遠くからは小さい子が遊ぶ声なんかも聞こえてくる。
穏やかな時間が流れている。
まさにそんな感じだった。
114 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:26
「それにしても、さっきの子大丈夫かな?」

そう、さっき入り口のところで一人の女の子とぶつかってしまった。
私もよそ見をしていてびっくりしたんだけど、何よりびっくりしたのは彼女が涙を流していたこと。
さすがに痛くて泣いてたわけじゃないだろうし・・・。
思いつめたような感じの表情だったから、なんか心配だなぁ。
115 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:27
そんなことを考えながら歩いていると危うく壁にぶつかりそうになる。
歩きながら考え事とかをやってるとよくこんな風になる。
やめようとは思うんだけど、なかなかそうはいかないんだよなぁ。
まあ、それは置いといて。

彼女と会ったのはあの時以来だろうか。
そう、あの時・・・。

116 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:27
舞い散る雪。
華やかなイルミネーション。
大きな音。
悲鳴。
流れ出る、赤い血・・・。
117 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:28
そこまで思い出して頭を振る。
どんなに忘れようとしても頭から離れない光景。
ううん、きっと忘れることはできない。
彼女も同じ。
胸に傷を負っている。
私よりも大きくて深い傷を・・・。

彼女の病室へと近づいていく。
気がつくと子供の声が聞こえなくなっていた。
しんとした廊下に唯一響くのは妙に大きく聞こえる私の足音。
それは温かな夕日の中でさえ、私に妙な不安感を持たせるほど異様に感じた。
118 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:28
彼女の病室の前に立つ。
中からは何も聞こえてこなかった。
まるで、そこには誰もいないかのように・・・。

ドアをノックしてみる。
・・・が、反応はない。
まあ最初から期待はしてないんだけど。
しょうがなくそのまま中に入ることにした。
119 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:29
静寂が支配する病室。
さっきの異様な空気を更に強く感じる。
これは彼女の心の中を顕したものなのだろうか・・・。
だとしたら、きっと・・・。

この部屋の中は私一人しかいないようにさえ思える。
彼女はずっと窓の外を見ていた。
私に気づいてないのかな。
ベッドの側まで近づいても私の方を見なかった。
120 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:29
「真希ちゃん・・・。」

声を掛けて、やっと真希ちゃんはこっちを向いた。
私は真希ちゃんの目を見て、寒気のようなものを感じた。
瞳に光はなくて、こっちを向いていても私は映してはいないようにも思える。

闇。
一言で言うならその言葉がぴったりだった。
まるで全てが吸い込まれてしまいそうな深くて暗い闇・・・。
やっぱりあの時から真希ちゃんの時は止まってしまっている・・・。
121 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/08(木) 15:30
「梨華ちゃん・・・。」

感情のない声。
そんな声でも久しぶりに聞く真希ちゃんの声はひどく懐かしく感じた。
122 名前: 投稿日:2004/01/08(木) 15:32
  更新終了です。

  遅くなってしまって申し訳ありません。
  次は何とか早めに更新したいと思います。
123 名前:ごっちんLOVE☆ 投稿日:2004/01/08(木) 15:36
もうチョット長く更新してくれれば
ありがたかったんですけど…
でも更新してくれてうれしいです!
次の更新もまってます☆
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/08(木) 19:28
更新されているだけで嬉しいです。
これからも、頑張って下さい。
125 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/22(木) 22:55
ゆっくり、作者さんのペースで頑張って下さい。
期待して待ってます。
126 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:29
「はぁ・・・。」

口から出るのはため息ばかり。
私はなつみさんから聞いたことのショックをずっと引きずっていた。
いつでもあさ美ちゃんことばかり考えてる気がする。

白血病。
その言葉が重く胸に響く。
何ともないって言ってるけど、最近のあさ美ちゃん見てる限りじゃ・・・。
127 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:30
『あさ美はきっと、この事は愛ちゃんに知られたくないと思うんだ。』

なつみさんの言葉がリフレインし続ける。
何で?
何で知られたくないの?
私なんかじゃ頼りないの?

涙で視界がぼやけてくる。
わかってる。
あさ美ちゃんが話してくれなかった理由はそんなことじゃないってことぐらい・・・。
128 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:30
『もう大丈夫だよ。』

そう言って笑うあさ美ちゃんは本当に綺麗で・・・。
でもね・・・、その言葉を信じていいの?
その笑顔を信じていいの?
もうわからないよ・・・。

涙はもう止まらないんじゃないってぐらい流れ続ける。
その涙が止まる頃、私は夢の中にいた。
あさ美ちゃんと出逢ったあの頃の夢の中に・・・。
129 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:30
あさ美ちゃんと初めて会ったのは高校の入学式の朝だった。

ずべっ・・・

後ろかな変な音が聞こえて振り向くと、そこには女の子が倒れていた。
って、あそこには躓くような物はないような・・・。
まともに転んでしまったみたいで、その子はかなり痛そうにしてる。
何かそのまま放っておくわけにもいかないから、とりあえず声を掛けてみることにした。
130 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:31
「あの・・・、大丈夫?」

顔を上げた彼女は慌てて立ち上がった。

「あ、だ、大丈夫です!完璧です!」

彼女はそうまくしたてた。
顔を真っ赤にして手をばたつかせて言っているところを見ると、そうとう恥ずかしかったらしい。
それが何か、可愛いなぁって思えた。
ん?というか・・・、
131 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:31
「か、完璧・・・?」

私の言葉を聞いた彼女はあっと小さな声を上げた。
そして顔を更に、これ以上ないんじゃないかってくらい真っ赤にして俯いてしまった。

「いや・・・、あの・・・、口癖で・・・。」
132 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:31
聞こえるか聞こえないかの小さな声でボソボソとそう言った。
いや、完璧が口癖って・・・。
変わってるなぁ・・・。
すると彼女はいきなり顔を上げて、

「と、とりあえず私は大丈夫ですので。ありがとうございました。」

ペコリと頭を下げたあと走り去ってしまった。
呆気に取られた私はその場に立ち尽くした。
133 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:32
「おーい、愛ちゃーん!」

声を掛けられてやっと私は正気に戻った。

「どしたの?こんなとこでボーッとしちゃってさぁ。」

いつのまにか来ていたまこっちゃんは、不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
134 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:32
「い、いや、別に何も・・・。」

まこっちゃんの問いを咄嗟に否定していた。
しかもかなり焦って・・・。
別に隠す程のことでもない。
自分でもなぜか分からないけど、彼女のことを人に話したくなかった。

「ホントに〜?」

「ほ、ほんとだってば!」

疑惑の視線が突き刺さる。
必死で否定する私を尻目に、まこっちゃんはごそごそと鞄の中を探り出した。
135 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:33
「ふ〜ん。愛ちゃん、これな〜んだ?」

まこっちゃんが差し出した一枚のチケット。

「ん?何それ?」

「愛ちゃんが行きたがってた宝塚のチケット。」
136 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:33
た、宝塚!?
行きたい。
ものすごーく行きたい。
でもあのチケットなら、まだ自分で手に入れられないこともないと思う。
さっきのことは自分の胸の中にしまっておきたいしね。
うん、彼女の事は黙って・・・。

「へへー、しかもS席だよ!S席!」

S席。
その言葉にさっきの決意は跡形もなく消え去ってしまった。
ものにつられてってのもカッコ悪いなぁ・・・。
だけど・・・見に行きたい!
だってS席だよ!S席!
こんなチャンスなんて滅多にないって!
私は心の中で誰にかわからないけど必死で言い訳をしていた。
137 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:33
「あははは。完璧が口癖って、変わってるコだねぇ。」

「うん・・・。」

少し不機嫌そうに頷く。
確かに私もそう思ったけど、他人にそう言われると何だか嫌な感じがした。

「ん?愛ちゃん、どしたの?」

そう言ってまこっちゃんが私の顔を覗き込む。
138 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:34
「え?」

「いや、何か機嫌悪そうにしてるからさぁ。」

「そ、そんなことないよ。」

「ホント?」

こくこくとオモチャの人形のように頷く。
何とか冷静にと思ったんだけど、内心かなり冷や汗ものだった。
まこっちゃん、こんなことに関しては昔からやたら鋭いんだよなぁ。
少しは気をつけなきゃいけないかな。

いっぱいいっぱいな私の横でまこっちゃんがニヤニヤと笑ってこっち見ている。
何かいや〜な予感がするんですけど・・・。
ホント気をつけないと、ってかもう遅いかな・・・。
とりあえず、今のまこっちゃんには目を合わせないようにしとこう。
ものすごくヤバイような気がするから。

139 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/01/28(水) 14:35
「・・・今年も入学早々おもしろいことになりそうだなぁ。」

隣から呟くような声が聞こた。
その言葉に、私はついまこっちゃんの方を見てしまう。
これ以上ないくらいにばっちり目が合ってしまった。
背中を冷や汗がつたう。
まこっちゃんの顔はこれ以上ないくらいわる〜い笑みを浮かべていて・・・。
私はその笑顔には乾いた笑いを返すことしかできなかった。

140 名前: 投稿日:2004/01/28(水) 14:35
とりあえず、できた分だけ更新です。
141 名前: 投稿日:2004/01/28(水) 14:42
>ごっちんLOVEさん
 なかなか更新できずにすみません。
 なるべく多く更新したいのですがなかなかできなくて・・・

>名無飼育さんさん
 そう言っていただけると、これからも頑張ろうって気になって嬉しいです。

>名無し読者さん
 ありがとうございます。少しずつでも更新して何とか終わらせようと思います。
 更新のペースも少しは上げたいですね。
 
142 名前:ごっちんLOVE☆ 投稿日:2004/01/28(水) 16:04
更新してくれてうれしいです!
あせらずでいいです☆
次もまってます。。。
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/28(水) 18:55
更新お疲れ様です。
いつでも待っているので、頑張って下さい。
144 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:46
「はぁ〜、昨日は疲れたよね〜。」

まこっちゃんが間延びした声を上げる。
昨日の入学式は半分以上が校長や来賓のお偉いさんの長〜い話でかなり退屈だった。

「疲れたって、まこっちゃんずっと寝てたじゃん。」

「だーってさぁ、あんなの聞いてらんないよー。」

「まぁ、たしかにね。でも、まこっちゃんと同じクラスでよかったー。」

さすがに知り合いがいないのは辛いのでまこっちゃんと一緒のクラスというのはうれしかった。
145 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:47
「昨日言ってた子も一緒だったらいいよねぇ。」

不意にまこっちゃんがそんな事を言い出す。

「ちょ、な、何言って・・・。」

「あれ?もしかしてその子に惚れちゃってんの?」

言葉に詰まる私を見て、まこっちゃんはにやにやと笑ってた。
146 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:47
「そんなことない。」

いいようにされてるのが何だか悔しくて無愛想に答えてそっぽを向いた。
まこっちゃんはさも愉快そうな顔をして私の顔を覗き込んでくる。

「ん?図星?」

「まこっちゃん!」

私の大きな声にまこっちゃんは大げさに肩をすくめて見せる。

「あはは。ゴメン、ゴメン。」

でもその声にはまったく悪びれた様子はない。
まさに私をからかうのを心底楽しんでる感じ。
まったく、この愉快犯め。
147 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:48
まこっちゃんとバカみたいな会話で盛り上がる。
よく考えたら中学の頃とあんまり変わってないなぁ。
なんて、そんなことを考えたりしながらトロトロ歩いてる間も時間は進んでるわけで、

「あ、ヤバッ!愛ちゃん、急がないと!」

そう言ってまこっちゃんが走り出す。

「急ぐ?」

登校中だということをすっかり忘れていた私。
まこっちゃんの言っていることがわからず首をかしげた。

「何言ってんの。急がないと遅刻だよ。」

「あっ!ちょっと待ってよ、まこっちゃん!」

私も急いでまこっちゃんの後を追いかけた。
148 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:48
_______________________


ずどどどどどどど・・・ばぁぁぁぁん!!

「「すみません!!遅くなりましたぁ!!!」」

そう言って、私とまこっちゃんは教室に飛び込んだ。
教室は一瞬静まり返ったあと、笑いが巻き起こった。

「うああっ!間に合わなかったぁ!!頑張ったのにぃ!!」

まこっちゃんは頭を抱えて大げさに悔しがった。
私は完全にバテちゃってそれどころじゃなかったけど。
149 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:49
「まあ、初日だし今回だけは見逃しましょう。だけど明日からは余裕を持ってくるように。」

そう言って担任の先生はこちらに笑顔を向けた。

「マジっすか!!やったぁ!!」

体全体を使って悔しがっていたのから一転して、喜ぶあまり不思議な動きをし出すまこっちゃん。
それを見て、またクラス中に笑いが巻き起こる。
まだ体力の回復しない私は笑う気もおきなくて、ただ早く椅子に座りたいと思うばかりであった。
150 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:51
一時限目はHR。
最初なので定番の自己紹介ということになった。
一番から始まり・・・、まこっちゃんの番がやってきた。

「かぼちゃが大好きな小川麻琴です。今年一年よろしくお願いします!」

クラスの至る所から笑い声が上がった。
かぼちゃが大好きなって・・・。
まこっちゃんらしいと言えば、まこっちゃんらしいんだけど。
そんなことを思い、私は少し苦笑した。
151 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:51
まこっちゃんの番が過ぎたあたりから、さっきの全力疾走のせいかやけに眠くなってきた。
さすがに寝ちゃうのはまずいかなと思いつつもまぶたはどんどん重くなっていく。

「じゃあ、次は紺野さん。」

「は、はい。」

私の意識が途切れてしまう寸前に聞き覚えのあるか細い声が聞こえてきた。
まさかと思い、私は急いで顔を上げた。
教卓のところに立っていたのは昨日のあの子だった。
152 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:52
「こ、紺野あさ美です。よろしくお願いします・・・。」

あのか細い声でそう言うといそいそと席に戻った。

紺野あさ美ちゃんかぁ〜。
いい名前だなぁ〜。
ちょっとおどおどしてる感じなんだけど、それが守りたいって気持ちになるんだよなぁ。
なんか微妙に頬が緩んでるのに気づき、それを引き締める。
153 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/03/01(月) 13:52
「次、高橋さん。」

「・・・。」

そんな事をぼーっと考えていた私は自分の順番が回ってきたことに全く気づかなかった。

「高橋さん?」

「は、はい!]

やっと先生の声に気づき、大慌てで立ち上がった。
154 名前: 投稿日:2004/03/01(月) 13:54
更新終了です。

更新のペースを上げたいなどと言いつつこのていたらく、
本当に申し訳ありませんm(__)m
155 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/14(水) 01:12
待ってますよー!
156 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 17:58
「愛ちゃん、愛ちゃん。」

まこっちゃんの声で私は目を覚ました。

「ん・・・、まこっちゃん、どうしたの?」

顔を上げるとまこっちゃんが目の前に立っていた。
ん?誰か隣にいる?
だけど寝ぼけ眼の私にはまこっちゃんの姿すら霞んでいて、隣の人が誰かなんてわからなかった。
157 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 17:59
「どうしたのじゃないよ、もう昼休みだよ。」

呆れたような表情のまこっちゃん。
え?昼休み?
まこっちゃんの言葉で目を擦り時計を見るとすでに四限目は終わっていた。
さっきの古文がものすごく退屈でうとうとしてたのは覚えてるんだけど・・・。

入学して約一ヶ月。
最初は起きてたんだけど、余裕が出てきたのか眠気に勝てないことがある。
158 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 17:59
「お〜い。起きてるかー?」

まこっちゃんが目の前で手をひらひらさせている。
うー、まだ頭が起きないてないな・・・。
目を覚ますために両手で頬を叩いた。

「じゃ、愛ちゃんご飯食べよ。」

「うん・・・。」

なんとか目が覚めてきて、少しずつ視界がクリアになっていく。
ようやく私はまこっちゃんの隣にいるのが誰かということに気づいた
な、なんで?
私は目を見開いて、何か言おうとしたけど言葉が出なくて口をパクパクさせた。
その表情を見てまこっちゃんはおもしろそうに人が悪そうな笑顔を浮かべている。
159 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 17:59
「ちょっ、まこっちゃん!」

私はまこっちゃんを引き寄せると、その人から少し離れた。

「あ、あの・・・。」

その人のか細い声が聞こえてきたけど、取り合えず今はこの状況の説明をしてもらう方が先だ。

「ま、まこっちゃん!な、な、何で!?」

焦った私はところどころ噛みながらまこっちゃんを問い詰めた。
160 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 18:00
「いやー、あさ美ちゃんいつもひとりでご飯食べてるからね。一緒にどうって誘ったの。」

まこっちゃんは私の反応を見て面白そうに笑う。
ん?あさ美ちゃん?
なんかすでに下の名前で呼んでるし。
私は少しムッとした顔をする。

「休み時間とかに話してたら仲良くなってね。」

まこっちゃんは私の心を読んだかのようにそう言うと、顔を覗き込んでくる。
おもしろそうな顔がなんかむかつく。
161 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 18:00
「あれ?ちょっと嫉妬しちゃった?」

にやにやとするまこっちゃんの頬を無言でつねった。

「いててて、愛ちゃん痛いって。」

口ではそう言ってるけど、まこっちゃんの反応にはまだ余裕がある。
もう少し強くつねってやろうか、なんて軽く思ってしまう。
162 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 18:01
「あ、あの・・・。」

大げさに痛がるまこっちゃんの後ろから控えめな声が聞こえてきた。
そこには少し不安げな顔をしたあさ美ちゃん。

「あの・・・、私が御一緒していいんですか・・・?」

ちょっと泣きそうな瞳にドキッとしてしまう。
というか、その目は反則です。
163 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 18:01
「いやややや、そ、そんなことないよ!」

焦った私は勢い良く首を振った。
それがおもしろかったのか、あさ美ちゃんは軽く微笑んでくれた。
か、かわいい・・・。
ぼーっと見つめる私を見て、あさ美ちゃんは不思議そうに首を傾けた。

「あ、あの、高橋さん?どうしたんですか?」

「な、なんでもないよ!」

「ホントですか?」

心配そうな目のあさ美ちゃん。
しかもちょっと潤んでるし。
ホント反則だって・・・。

「うん、なんでもない!あ、ご飯!早くお昼ご飯食べよう!」

話題を変えようと、少ししどろもどろになりながらもそう言うと、
164 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/04/28(水) 18:02
「そうですね。」

あさ美ちゃんは返事をして嬉しそうに笑ってくれた。
それを見て私はものすごく上機嫌になっていく。
だけどそのあと耳に届いたのは私のうれしい気持ちに水を差す愉快犯の声。

「・・・青春ですなぁ。」

しみじみとそんなことを呟いた。
とりあえず、まだ持ったままの頬をさっきよりも強くつねってやった。
165 名前:名無し読者 投稿日:2004/04/29(木) 22:56
更新キター!
愛紺萌えるなぁ・・・。
166 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:42
あの日から少しずつあさ美ちゃんと仲良くなっていった。
お喋りをしたり、一緒にご飯を食べたり。
まこっちゃんも含めて三人で遊びに行ったりもした。
からかってくる愉快犯を軽く(と言いつつ結構強めに)小突きながらも、少しずつ。
そんな中であさ美ちゃんの色んな部分が見えてきた。

例えば頭がすごくいいということ。
以前、学年でトップをとったこともあるらしい。
それなのにものすごい天然だったりもする。
ボーッとしてるようで何か考えてたり、何か考えてるようでボーッとしてたり。
どこかふわふわしてて、周りを和ませてくれるような優しい空気を持っていた。
167 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:43
他には、声は細くて小さくてよくおどおどしてたりもするけど、自分の考えをしっかりと持ってるということ。
ちゃんと筋の通ったその姿は凛としたものを感じさせた。

あれはもうすぐで夏休みというような時期だったと思う。
その時、私とあさ美ちゃんは相談を受けていた。
目の前には珍しくとっても真剣な表情のまこっちゃん。
ホントに今まで見たことないくらいの表情だった。

その相談の内容はというと恋愛相談。
実はまこっちゃんには中学の頃から好きな人がいた。

168 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:43
「好きなんだけど、もし断られたりしたらって思うとさぁ・・・。」

実はけっこうヘタレなまこっちゃん。
そう言って見せる弱々しげな表情はさながら耳を垂らして落ち込む犬のようだった。

「のんちゃんがあたしのことどう思ってるのかもわかんないしなぁ・・・。」

まこっちゃんが好きな人というのは、中学でクラスメートだったのんちゃんこと辻希美ちゃん。
ホントに元気で笑うと覗く八重歯が特徴的だった。
でもそれがとっても幼く見えて、初めて見た時は同い年とは思えなかった。
169 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:43
「そうかなぁ、大丈夫だと思うけど。」

まこっちゃんは自信なさげだけど、私はそんなことないと思う。
私が見る限りのんちゃんの方もまこっちゃんの事が好きなんじゃないかって節はあるし。
少なくと嫌ってるということは絶対にないといえるんだけど・・・。

「でもさぁ・・・あいぼんのこと好きなんじゃないかなぁ・・・。」
170 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:44
あいぼんっていうのはのんちゃんと仲のよかった加護亜依ちゃん。
途中で転校してきたんだけど、関西弁で人懐っこくてとっても馴染みやすい子だった。
それまでのんちゃんの隣にはまこっちゃんがいたんだけど、いつのまにかそれがあいぼんになっていった。

まこっちゃんは完璧に弱気モード。
考えが完全にネガティブになってる。
こういうときのまこっちゃんって何言っても聞かないんだよなぁ。

171 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:44
「あのさ・・・」

私が大きく溜息を吐くと、今まで黙って話を聞いていたあさ美ちゃんが口を開いた。

「私は辻さんのこととか、加護さんのこととか、全然知らないんだけど・・・」

「うん。」

ゆっくりと喋り始めたあさ美ちゃん口調はいつもと違っていた。
言葉に力がこもってる感じがする。
172 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:44
「まこっちゃんが好きなら、ちゃんと想いを伝えるべきだよ。」

真っ直ぐな瞳であさ美ちゃんはそう言った。

「え、で、でも、もし断られたら・・・」

弱音を吐くまこっちゃん。
あさ美ちゃんは続きの言葉でそれを遮る。
173 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:44
「ここでいくら結果の事を言ってもしょうがないよ。
もしこんなだったらなんて可能性は出そうと思えばいくらでも出せるし・・・。
悪い結果を恐れて諦めるなんて、そんなの逃げてるだけ。
まこっちゃんの想いはまこっちゃんの言葉でちゃんと伝えなきゃ。」

あさ美ちゃんはそこで言葉を区切ると、一瞬目を伏せて息を吸う。
そして最後の言葉を大切そうにゆっくりと紡いでいった。

「どんなに一緒にいたって、どんなに近くにいたって、ちゃんと言葉にしなきゃダメだよ。
言葉は自分の想いを伝えるためにあるんだから・・・。」
174 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:45
ホントにびっくりした。
力強いその言葉も表情も・・・私の知っているあさ美ちゃんのそれとは違っていた。
まるで別人みたい、そんな言葉が頭に浮かぶ。
見惚れしまうほど綺麗な表情に、私は吸い込まれてしまうようなそんな不思議な感覚を覚えた。

「ご、ごめん。なんかでしゃばったこと言っちゃって・・・。」

あさ美ちゃんはボーッと自分のことを見つめている私に気づくと、俯いて小さくそう言った。
そこにいたのはついさっきまでとは違う、私が知ってるいつも通りのあさ美ちゃん。
私は意外な面を見れてうれしい反面、まだあさ美ちゃんのこと何にも知らないのかもしれないと思えて、少し悲しい気もした。
175 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:45
とりあえずこの言葉で元気を取り戻したまこっちゃん。
思い立ったが吉日とこの後すぐのんちゃんのところに行ってしまった。
まこっちゃんらしいと言えばまこっちゃんらしいけど、あまりの立ち直りの速さ笑ってしまった。

「ありがと、あさ美ちゃん。」

「え?」

「まこっちゃんのこと。」

「え、べ、別にお礼されるようなことなんてしてないよ・・・。」

俯き気味でちょっと困惑した声のあさ美ちゃん。
さっきまこっちゃんをあんなに力強く励ましていたのが嘘みたい。
176 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:45
「ううん。私ね、けっこう前から相談受けてたんだ。
のんちゃんがまこっちゃんのこと嫌ってないのはわかってるし、もしかしたらのんちゃんもまこっちゃんのこと好きなんじゃないかなって節もあるの。
けど、のんちゃんとあいぼんはすっごいに仲良しでいっつも一緒にいて・・・そう考えたらなんだか後押しするような言葉も言えなくてさ・・・。
今日のを見てわかったと思うけどさ、いつもはあんなだけど、まこっちゃんってけっこう弱い部分があってね。
落ち込む時は際限無く落ち込んで立ち直るのも遅いし、そんなまこっちゃんをさ親友として見たくなかったんだ。
だから、あさ美ちゃんにはホントに感謝してる。」

「そ、そんな、私はただ何も知らなかったから・・・。」

あさ美ちゃんは私達と接する時でもどこか遠慮してるというか、一歩引いてるような感じがする。
こんなふうに感謝されても、照れてるのか謙遜した物言いになってしまうんだ。
もっと素直に感情を見せて欲しい。
もっと本当のあさ美ちゃんを見せて欲しい。
177 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:46
たまに見せる素直な表情はホントに綺麗だと思う。
私はそれが大好きで、もっと見てたいって思ってるんだよ。
なんて、あさ美ちゃんは私がこんなこと考えてるなんて思ってみないだろうなぁ。

「それにしてもさっきはカッコよかったなぁ。」

「え?」

「最後にまこっちゃんに言ったとき。『言葉にしなきゃダメ』って。」

「あっ・・・いや、その・・・。」

あさ美ちゃんは頬を赤くして何か言おうとしたけど言葉が後に続かない。
口だけがパクパクと動いて金魚みたいになってる。
178 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:46
「・・・カッコよくなんてないよ。」

そう言ってあさ美ちゃんは俯いてしまった。
ホントさっきとは別人だよ。
まぁこういうところが可愛いんだけどね。

「あの言葉、お姉ちゃんの言葉なんだ。」

「なつみさんの?」

「うん。私ね、ちっちゃい頃から人に自分の考えてることとか伝えるのが苦手だったんだ。
こんな性格だし・・・それに学校を休みがちだったから、友達も少なかったし・・・。
何でも一人で抱え込んで、苦しんで、そんなときお姉ちゃんが言ってくれたの。
『言いたいことがあるなら言葉にしなきゃダメ。言葉は自分の想いを伝える為にあるんだよ』って。
それから少しずつだけど自分の考えを言えるようになってきたの。
って言っても、まだ苦手ではあるんだけどね。」
179 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:46
「そっかぁ・・・できるよ、きっと。」

「え?」

「あさ美ちゃんならきっと克服できる。私はそう思うよ。」

その言葉に自分自身びっくりしてた。
思っていたことが自然と言葉になってしまっていたんだから。
あさ美ちゃんもちょっと驚いたような顔をしている。
なんかすっごい恥ずかしくなってきた。

「カッコよかった?」

180 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:47
照れ隠しに笑ってみせる。
ここでおどけたりするのはあんまり私のキャラじゃないんだけどなぁ。
どっちかって言うと・・・、

「なんだかまこっちゃんみたい。」

だよね。
これで笑ってくれたのはいいけど、やっぱりなんだか気恥ずかしい。

「か、帰ろ。は、早く帰んないと暗くなっちゃうよ。」

「そだね。」

少しどもりながら鞄を持って立ち上がった。
動揺しすぎだって私。
たぶん赤いであろう顔を見られたくなくて、背を向け先にドアの方へ向かう。
181 名前:あなたといつまでも 投稿日:2004/06/02(水) 16:47
「愛ちゃん。」

そんな背中に掛けられた細い声。

「ん?」

「ありがとう。嬉しかったよ。」

そう言ってあさ美ちゃんは柔らかく微笑んだ。
あさ美ちゃんの素直な表情。
いつもこの笑顔が見れたらいいなと強く思った。

あさ美ちゃんの言葉と笑顔で上機嫌だったのに、ノロケ話でうんざりさせられるのはもう少し後の話。
182 名前: 投稿日:2004/06/02(水) 16:48
今回の更新はここまでです。
183 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/14(月) 23:36
どうも!はじめまして!一気に読ませていただきました。
紺ちゃん・・・、かわいいなぁ・・・。
・・・はっ・・・!!意識が・・・。
それは気にせずに、つづき待ってます!
応援してます!
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/18(日) 02:41
面白いですね
次回楽しみにしています!
185 名前:ほしお 投稿日:2004/08/18(水) 13:53
まってます!

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