僕と君との物語り。2
- 1 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月01日(火)19時34分46秒
- ここで書かせていただいていたモノの続きになります。
まだまだ長くなりそうなので、また空でやらせていただきます。
前スレ:http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/sky/1041003251/
メインはいしよし。
よろしくお願いいたします(ぺこり)
- 2 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時40分45秒
- 僕に電話をくれたのは店長の奥さんだった。
中々部屋に帰ってこない店長を心配して、いつも僕が仕事をしている時にいる、
カウンター奥の部屋に行くと、血を吐いて倒れている店長がいたんだそうだ。
連絡をもらった僕らは急いで病院に向かった。
息をきらして到着すると、店長の奥さんが椅子に座っていた。
『主人は救急車の中で息を引き取りました』
そして到着した僕らに待っていたのは、店長の奥さんからのこの言葉だった。
つい数十分前まで元気だと思っていたのに、店長はもうこの世にいない。
信じられるはずがなかった。
先に崩れ落ちたのは石川さんだった。
立ちすくむ僕の隣で、石川さんは床に膝をついて涙をこぼした。
こぼれる嗚咽は手で抑え、流れる涙は床に落とした。
- 3 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時41分50秒
- ほどなくして、家族の人達が病院にやってきた。
僕は石川さんの細い腕を支えながら椅子に座った。
涙を流す石川さんの隣で、ここが病院だという認識もあまり出来ないまま僕は一点だけを見つめ続けた。
店長の家族達の泣き声や話し声が残る中、僕らは病院を後にした。
奥さんは何度もお礼を言った。
『ありがとう。ありがとう』と。
僕は何もしてないのに。
何も出来なかったのに。
2人して病院から駅までの道をゆっくりと歩いた。
石川さんの肩さえ抱けない僕は、代わりに石川さんの手を掴んだ。
落ち着きを取り戻した石川さんを駅の改札まで送り届けると、僕はポケットに両手を
突っ込んでまた道をふらふらと歩いた。
人気の無くなった商店街を歩いていると、古本屋が目に入った。
「・・・店長痩せたよね」
もう結構いい年をしていた店長。
確実に細くなっていたその変化に僕は気付いていた。
だけどそれで何をしたワケでもない。
ただいつものように店に行くと店長がいて、仕事の合間、笑いあいながら話しをした。
この2年弱の間、当たり前のようになっていた風景だ。
- 4 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時42分21秒
- 「・・・2年っていうのも早いなぁ」
閉まったシャッターを前に、僕の呟きは消えて行く。
目の前にあるのは錆びたシャッター。
このシャッターは何回上がったり降りたりしたのだろう。
雨の日も、風の日も、嵐の日も、晴れた日も。
こいつはどれだけ動き続けたのだろう。
どれだけの時間を店長と一緒に過ごしたのだろう。
そんな疑問が浮かんできた。
突き刺さる風は冷たくて、思わず僕は首を竦めた。
「吉澤くん!!」
店の前から一歩も動けない僕を呼ぶ声。
静かな世界に響く靴の音。
僕の大好きな匂いが僕の手前で止まった。
「・・・石川さん、帰ったんじゃ」
「・・・うん」
「だったらどうして・・・」
「・・・吉澤くんが」
俯く石川さんが呟いた。
「・・・本当は泣きたいんじゃないかと思って」
- 5 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時42分57秒
- 冷たい風が僕に刺さった。
見上げた星空は目が痛い程に輝いていて、僕は意味もなく眼鏡を持ち上げた。
吐き出した息は天に溶けて行く。
両手をつっこんだポケットの中だけが温かい。
「・・・ここのシャッターはどれだけの時間を店長と過ごしたんですかね」
「・・・。」
「僕が産まれるより前にもう産まれてたんですよね」
首を回すと冷たい物質のシャッターが見える。
錆がこの暗い空間に上手いこと溶け込んでいて、何だか歴史を感じさせられた。
「・・・店長、今日僕を捕まえてこう言ったんです。
『可愛い今日最後のお客さんが、私の一番のお気に入りの本を勝手くれた』って。
その時の顔が、本当に嬉しそうで・・・」
「・・・吉澤くん」
「・・・大好きだったんだ。
僕が疲れてたり悩んでたりすると、すっと背中を摩ってくれる。
嬉しい時には頭を撫でてくれる。
悩みがあれば聞いてくれた。
僕の気持ちを察して黙ってお茶を出してくれた。
小さな背中だったけど、僕にとってはすごく大きな背中だった。
父みたく大きな手が本当に大好きだったんだ。
・・・なのに、何で皆突然いなくなったりするんだよ!!
僕はまた何も出来ない、何も出来なかった。
父もごっちんのお父さんも叔父も叔母も・・・店長も。
皆大好きだったのに、大好きなのに・・・」
- 6 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時43分51秒
- 冷たい風が僕に刺さった。
見上げた星空は目が痛い程に輝いていて、僕は思わず目を閉じた。
吐き出せない息は心の中で溶けて行く。
両手をつっこんだポケットの中が、無限に思えた。
「・・・吉澤くん」
石川さんは絵の具のついた指で僕の頬をそっと拭った。
ひと粒だけ流れた涙は石川さんの手の中で溶けていった。
- 7 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時44分23秒
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店長の葬儀はひっそりと行われた。
奥さんは僕にまたお礼を言った。
店長は口癖のように僕の話しをしていたんだそうだ。
『本当の息子が出来たようだ』と毎回言いながら。
僕はぐっと涙をこらえた。
最後に見た店長の顔はとっても幸せそうだった。
店はやはり閉店するそうだ。
奥さんは娘さんの所で一緒に住む為、長らく住みついていたあの家を離れる。
今ある店の所にはいずれ違う店が建つだろう。
残った本は奥さんが娘さんの家に持っていくそうだ。
最後のお別れをした後に、もう一度奥さんに挨拶をしに行った。
その時、奥さんは僕に一冊の本をくれた。
自宅に帰ってその本の1ページ目を開いた。
そこには店長の字で『もう1人の子供へ』と書かれていた。
ぱらぱらとめくるページは全て店長の手書きだった。
僕はその字を見て大粒の涙をこぼした。
今度の僕の涙は全て本の表紙に溶けていった。
そして僕のこの気持ちを店長に運んでくれた。
そう信じたかった。
冬の夜空は泣きたいくらいに明るくて、僕は思わず星に手を伸ばした。
- 8 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時45分11秒
- ◇◇◇
- 9 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時45分47秒
- ◇◇◇
- 10 名前:冬の出来事 投稿日:2003年07月01日(火)19時46分18秒
- ◇◇◇
- 11 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月01日(火)19時51分29秒
- 更新しました。
新スレ早々重ッ苦しい感じですみません(汗)
次回からはすぱっと切り替えて行こうと思っております。
レスの返事は前スレで返させていただきました。
『更新途中で容量がいっぱいになってしまったら』という臆病な気持ちで
新スレに続きがきてしまいました(かっこ悪いなぁ)
今後もテンポアップをはかりつつ、更新していこうと思いますので今後も
よろしくお願いいたしますです(ぺこり)
- 12 名前:Silence 投稿日:2003年07月01日(火)19時58分45秒
- 更新&新スレおめでとうございます。
そして、今回見事リアルで読めました。(早めに帰ってきてよかった
そして、おもいっきり泣きそうになっている人がここに1人います。
『もう1人の子供へ』マジ感動です。こんな感想しかいえないんです
が…。そして石川さんやさしいですね〜。本当に…いしか〜さんは
天使のような人です(w
この作品を見つけてから半年経ちますが、本当に匿名さんの文章に
引き込まれっぱなしです。これからもこんなスレを付けさせてもらい
ます。それでは次回に期待してます!!
- 13 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月01日(火)21時33分22秒
- 更新お疲れ様です!!&新スレおめでとうございます☆
泣きました・・・
石川さんや店長の一言が胸に響きました・・・
これからもこの作品を読ませていただきますです(ぺこり)
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 14 名前:タロイモ 投稿日:2003年07月01日(火)22時16分55秒
- はじめまして。そして新スレおめでとうございます!
いつも楽しく読ませていただいております。
今回はマジで泣けました。吉澤君の心中を思うと・・・。
石川さん吉澤君をなぐさめてあげて〜。
次回も期待しております!
- 15 名前:token 投稿日:2003年07月02日(水)21時49分25秒
- 初めまして。新スレおめでとうございます。ずっとROMっておりましたが、新スレが立ったのを機にレスいたします。
私は『娘。小説』を読むようになったから、いしよしの素晴らしさと言うか、可能性に気づかされました。
イメージ的に元気なキャラの多い吉澤さんですが、このお話の吉澤君はひと味違いますね。繊細で傷つきやすい
男の子。でもそれが違和感がないんです。やはり作者様の筆力でしょうか。
もちろん他のキャラたちもバッチリなんですが、個人的には保田さんが素敵です。ホントかっけー兄貴です。
では、このゆったりした流れのお話を、まったりとお待ちしております。
- 16 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年07月02日(水)22時59分35秒
- 作者さま、新スレおめでとうございます。
店長さ〜ん!!(T_T)
切ない展開ですが、石川さんの優しさに吉澤君...。
ちょっとずつ進展する二人もそろそろでしょうか?
がんばれ!吉澤君!君ならできる。
では次回更新も楽しみに待っています。
- 17 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月03日(木)09時12分54秒
- 新スレ、おめでとうございまーす!!!
いやぁ、もう…新スレの最初から、すっごい泣かせて頂きました…。
店長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
良い人を亡くしました…胸がいっぱいです…。先にあさごはん食べておいてよかった…。
しかも、距離が縮まってるいしよしにもじ〜んとしました。
わざわざ戻って来た梨華ちゃんに、また涙。
ああ、続きが楽しみだっ!!
がんばってくださいませ!!応援しております!!
- 18 名前:イベント事の一歩手前 投稿日:2003年07月03日(木)23時40分29秒
- 今年も残すところ後わずか。
せっかちな街はクリスマスムード一色で、人々は今か今かとその時期を待ち望んでいた。
そしてそれは目の前にいる小さな2人組も同じだった。
「早くクリスマス来んかねぇ」
「今年は何しましょうかねぇ」
2人共ベッドの上で楽しそうに笑いあっている。
私のベッドは2人が遊びまわったおかげでぐしゃぐしゃだ。
ついでにテーブルの上も2人が食べ散らかした御菓子でぐちゃぐちゃだ。
「梨華ちゃんは何か予定あるん?」
「・・・ナイ」
「悲しい大人なのれす」
「・・・。」
2人も言いたい放題言ってくれる。
私だって好きで1人身でいるワケじゃない。
クリスマスの日くらい好きな人と一緒に過ごしたいとか思ってるけどさ・・・。
「梨華ちゃんは好きな人とかおらんのかい」
「・・・おらんのよ」
「・・・本当なのれすか?」
「・・・本当なのれす」
- 19 名前:イベント事の一歩手前 投稿日:2003年07月03日(木)23時41分05秒
- 今年のクリスマスかぁ。
どうしよっかなぁ、実家とか帰えっちゃおうかなぁ。
あ、でも仕事あるしなぁ。
「嘘つきは泥棒の始まりなのれす」
「ちゃうちゃう、これは嘘なんかやなくて鈍チんって言うんよ」
「ののもあいぼんも意地悪」
「ありゃ、交信してなかったよ」
「私だっていつもいつも交信してるワケじゃないの」
2人に混じって私もベッドに倒れ込む。
待っていましたといわんばかりに私にくっついて攻撃してくる2人。
動き回っていると冬だけど汗だってかく。
息だってきれる。
「・・・ぎぶあっぷぅ〜」
先にばてた私に待っていたのはののとあいぼんの夕飯作りだった。
恐ろしく食べる2人の夕飯作り・・・。
私はお財布は一気に寂しくなり、私は体力の続く限り料理を作り続けた。
私はその夜、食べ物に潰される夢を見た。
- 20 名前:イベント事の一歩手前 投稿日:2003年07月03日(木)23時41分54秒
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「やだ〜!!!!!!」
「わがまま言わないの!」
「やだやだやだやだぁぁぁぁぁぁぁあぁ」
「もう何言ってるべさ。そんなことで駄々こねるんじゃないの」
ベッドの上で大の字になってどたばた動き回っているのは矢口真里。
それを母のように腰に手をあてて怒っているのは安倍なつみだ。
さて、何故矢口はこんなに駄々をこねているのだろうか。
「クリスマスの日くらいゆっくりしてたいよぉ!
仕事なんてしてたくないよ〜〜〜〜〜〜〜」
「贅沢言うんじゃないよ。仕事があるだけでもいいって思わなきゃいけないべ」
という理由である。
クリスマス特番ということで売れっ子パーソナリティー矢口にはクリスマスの日、仕事がテンコモリなのだ。
そんなの前々からもらっていたスケジュールで分かっていたはずなのだが、クリスマスが近付くにつれて
矢口の駄々は酷くなっていっていた。
毎晩行われる駄々になつみはすっかり疲れていた。
しかしなだめない限り本当に仕事をすっぽかしてしまいそうな矢口。
そんなことをしたら当然のことながら仕事は無くなる。
- 21 名前:イベント事の一歩手前 投稿日:2003年07月03日(木)23時43分33秒
- 「今さらそんな駄々こねるんじゃないって言ってるべ!?
その日の番組を放送する為に沢山のスタッフさんが動いてるんだから、
矢口だけその日何もしないなんて間違ってるべ!!」
「・・・んぐ」
こんなに声を上げることなんてめったにないなつみ。
さすがの矢口もじたばた動かしていた手足をぴたっと止めて亀のように縮こまる。
なつみはやれやれといった感じで矢口の暴れていたベッドに腰を下ろすと、軽くいじけている
矢口の背中をぽんぽんっと優しく叩いた。
「矢口が年末仕事大変なのはなっちも知ってるよ。
それがすごく大変で疲れてるのも知ってる。
でもさ、矢口はお仕事してお金もらって今みたく生活できるんだから、
そんなわがまま言っちゃダメだよ。
なっち、その日は矢口の仕事終わるのずっとここで待っててあげるから、頑張っておいで。ね」
子供をあやすように背中をさすって、矢口の髪をそっと撫でる。
矢口は何も言わないし動かない。
ただひたすらなつみの手の優しさを感じているのだ。
「・・・矢口子供じゃない」
「じゃあ止めるべか?」
「・・・もうちょっとだけ」
なつみは矢口に聞こえないように小さく小さく笑うと、子守唄を歌いながら矢口の背中をトントンと叩いた。
静かな部屋にはなつみの透き通るような歌声と矢口の寝息が心地よく響き渡っていた。
- 22 名前:イベント事の一歩手前 投稿日:2003年07月03日(木)23時44分54秒
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車の窓硝子は曇っている。
車内の温度と外の温度が違うからだ。
市井の隣でおいしそうにココアを飲む後藤はわざと息を窓硝子に吹き掛けて遊んでいる。
運転席で市井はそんな後藤の姿を幸せそうに眺めていた。
通り過ぎる車のヘッドライトが車内を一瞬照らす中、2人はまったり過ごしているのだ。
それも後藤の家のすぐ近くで。
理由は外は寒い、車内は温かいからだ。
「後藤のココアは残り3cmです」
まるで時刻を知らせる機械のように後藤は市井に報告する。
ハンドルに両腕を乗せてぼけーっとしていた市井は、わざと何かを考えるフリをして
後藤の持つ紙コップに指を当てた。
「後藤真希さんは渇いてますか?」
「そうですねぇ、後藤真希さんは少しだけ渇いてます」
「市井紗耶香さんはきっと後藤さんほど渇いていません」
「じゃあきっと市井紗耶香さんは後藤真希さんの考えが分かるはずです」
真正面を見つめる後藤から紙コップを取ると、市井は自分の分のココアを
後藤のコップに移し、再び手に戻した。
後藤はそれを受け取るとふにゃりとした笑顔を作って市井の方を見た。
「後藤のココアの残りは10cmです」
「じゃあ後10cm分一緒にいよう」
「しょーがないから一緒にいてあげるよ」
ふにゃりと笑って後藤は自分の鼻を市井の鼻にくっつけた。
- 23 名前:イベント事の一歩手前 投稿日:2003年07月03日(木)23時45分54秒
===================================
飯田はここ数日、仕事が終わるとひたすら部屋に隠って何かをしていた。
一人暮らしの部屋の中。
音楽もかかっていなければテレビもついてない。
ドアの隙間からこぼれる光だけが飯田の存在を知らしていた。
最近黒く染めた髪は電気の光りを受けてキラキラと輝いている。
髪には人1倍気を使う飯田。
今飯田が力を入れているのは髪と今やっている作業だけだろう。
多分飯田を知らない人が見たら感想は『とりつかれている』だろう。
大きく見開かれた目のしたにはクマが浮かんでいる。
いくら部屋が明るくたってほんの少し、そうほんの少しだけ恐いのだ。
でもよく見れば分かる。
飯田の目の奥はすごく優しく輝いていることが。
部屋の中そんな飯田の瞳の輝きを知る人は誰もいない。
飯田はひたすら手を動かし続ける。
誰にも邪魔されずに1人の世界に入り込み、己の世界を広げていく。
ここにこれるのはごく限られた人だけ。
飯田自身と飯田が心を許した人。
聖夜を前に飯田はその温かな世界に全身を沈めていた。
- 24 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月03日(木)23時51分17秒
- 更新しました。
季節外れモノです。
次は早速クリスマスネタです。
それも3回くらに分けての更新になります。
今の季節が梅雨でもうすぐ夏だろうがクリスマスネタです。
更新量少なくて申し訳ないです。
ので次回更新は早めにします(ぺこり)
>Silence様
ありがとうございます。
のったりのったり進んでやっとこさここまでやってきました(苦笑)
リアルタイムですかぁ。
何かそれもまた嬉しいですが恥ずかしいですね(w
前回更新分を下書きしながら、色々なことを考えました。
そして考えすぎて、思い出しすぎて、泣きそうになりました(苦笑)
ここに書かせていただいた分はそこまで重くなりすぎないようにと気をつけてみたのですが
どうだったんでしょうか?
気が付けば半年も経っていたんですねぇ。
予想ではもっと話しが進んでいるはずだったんですが(苦笑×2)
どうぞこれからもよろしくお願い致します。
>ぷよ〜る様
ありがとうございます。
言葉というのは本当に人に大きく影響を与えるモノだとっている私なので、このように
レスをいただくのがめちゃくちゃ嬉しいです。
前回でまた少し吉澤くんと石川さんの距離が縮まったんではないかなぁと思ってみたり、
思いたくなってみたり(w
店長の言葉も石川さんの言葉もきっと吉澤くんに大きく響いて届いたことだと思います。
時間経過のテンポアップを目標として書き続けていきますので、今後もよろしくお願い致します。
- 25 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月03日(木)23時52分43秒
- >タロイモ様
こちらこそはじめまして。
そしてありがとうございます。
吉澤くんの心中は『書きながら決して他人事のようにならないようにする』みたいな
自分に対する裏テーマがありました。
ので、こうして少しでも届いたのかなぁなんて考えると本当に嬉しいです。
これからもよろしくお願い致します。
>token様
こちらこそはじめまして&ありがとうございます。
私も『娘。小説』でさらに娘。にはまった1人だったりします(もちろんいしよしもです)
吉澤くんを書く時につねに『吉澤ひとみ』という人物から懸け離れてしまわないようにと
心掛けているんですが(って設定に時点でもうおかしい)そう考えた時に、私が勝手に持っていた
イメージとして『繊細』ってイメージがあったんですよね。
ので、こういう風に言っていただけると嬉しいかぎりです。
まだまだ至らない点とか沢山ありますが、今後もよろしくお願い致します。
- 26 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月03日(木)23時53分33秒
- >ななしのよっすぃ〜様
ありがとうございます。
本当に少しずつですが2人は近付いてるんです。
そう信じて書き続けてるんです(・・・でももう半年)
まったりまったり進んでやっとここまで来ました(w
このスレからはもっと時間経過を早くしようと意気込んでますので、いしよし共々温かく見守ってやっていて下さい(ぺこり)
ので今後もよろしくお願い致します。
>クロイツ様
ありがとうございます。
のっけから重い話で申し訳ないなぁと思いつつ、皆様からこんな風にありがい言葉をいただいて一安心します(w
きっかけがあれば近付く2人。
のはずがあまり近付かない・・・(汗)
店長は登場回数すごく少なかったのに、何故だか皆様に愛された感が沢山です。
ありがたいことです。
今後もまったりいしよしなここのいしよしをよろしくお願い致します。
- 27 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月03日(木)23時57分06秒
- いえ〜い!!一番乗りー♪
辻加護も可愛かったんですが、いちごまが!!いちごまのやりとりがすごい可愛いです!!
いちーちゃんの優しさが、心にしみますねぇ〜♪いよっ!!男前ッ!!
つーかクリスマス。いしよしクリスマス。どうするんでしょうか、吉澤くんは。にやにや。
誘ったりするんですかね?吉澤くんは。にやにや。楽しみですー!!
次回も楽しみにしております
- 28 名前:Silence 投稿日:2003年07月04日(金)01時34分39秒
- 更新乙様ですぅ。
それにしても…いいっ!!本当にいいっ!!辻加護に付き合わされる
いしか〜さん。もちろん他の人もすっごくいいっ!!(w
重くないですよ。すっごく甘かったです。すごく温かさをもらった
感じでした。うん、ありがとうです(w
いつも〜いつまでも何年経っても〜♪読ませてもらうんで(w
とりあえず『Do it now』風に応援します。(謎
それじゃあ、次回もがんばってください。
- 29 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月04日(金)02時58分21秒
- 更新お疲れ様です!!
いちごま〜・・・いいですね!!
おかしいな〜・・・匿名匿名希望様の作品を読むまでは
いちごまがいいなんて思ったことなかったのに・・・(w
では、クリスマスネタ楽しみにしてます♪
- 30 名前:token 投稿日:2003年07月04日(金)08時28分47秒
- 更新お疲れ様です。
このお話のいしよしの距離は、少〜しずつ縮まって行くのがいいんです。
変な例えですが、ぽかぽか日の当たる縁側で、孫達が遊んでいるのを目を
細めて眺めているお祖母ちゃん、私はそんな態度でいしよしを見つめてい
きたいと思いました。ホントへんな感想でゴメンナサイ。
では、次回も楽しみにしております。
- 31 名前:イブの星 投稿日:2003年07月04日(金)21時49分32秒
- 「ごめんねぇ、クリスマスイブだっていうのに仕事頼んじゃって」
「そんなの全然いいですよ。どうせ予定も何も無かったですし」
飯田の経営するこの雑貨店はクリスマスイブの今日もすこぶる盛況だ。
店の中も外もクリスマスのイルミネーションが輝き、その光りを受けて商品は美しく神秘的な輝きを放つ。
見る人の心を引くというのが一番分かりやすく、的を得てる言葉なんだと梨華は思う。
閉店時間は夜の8時。
夜になってからは若いカップルの方がよくこの店を訪れるようになったが、閉店間際の8時になると
店の中には人陰もあまりなくなり、静かな音楽だけが心地よく店の中に流れている。
飯田が音楽に合わせて静かに歌を唄い、梨華は閉店の準備をしながら飯田の美しい声に耳をかたむけた。
「よし、じゃあ今日はちょっと早いけどお店閉めちゃおっか」
「あ、はい」
梨華は扉にかかっていたプレートを『open』から『closs』に変え外に出しておいた看板を中にしまい込む。
飯田はその間に今まで行っていた作業を手早く終わらせ、店の明かりを少し落とした。
- 32 名前:イブの星 投稿日:2003年07月04日(金)21時50分18秒
- 時計の針は7時45分を指していて、今日という日が残り後わずかなんだと梨華は感じて少し寂しくなる。
『こうやって20歳のクリスマスイブが過ぎていくのか・・・』
ふうっと一息ため息をはくと、梨華は扉に背を向けた。
ガンガンガン
叩かれるドアの音に梨華は向けていた背中の向きを変え、飯田はそろえていた伝票を机に戻した。
少し警戒しながら梨華は扉に近付くと、そっとドアを開いた。
温かかった室内に冷たい外気が入り込み、薄着だった梨華は思わず片手で身体を抱きしめた。
扉の前には深く帽子を冠った女の子が俯きながら立っていた。
「すみません、今日はもう閉店なんですけど・・・」
「それは残念なのれす」
「・・・へ?」
「ったくいつもよっすぃ〜が来るっちゅう時間に来たら『closs』とかいう看板かかってるんやもん」
「・・・あれ?」
俯いていた女の子が顔をぱっと上げて微笑む。
そして陰に隠れていたもう1人の女の子が残念そうに歩いて帽子を必死で脱いでいる女の子の隣にやって来た。
そう、辻加護の名コンビだ。
- 33 名前:イブの星 投稿日:2003年07月04日(金)21時51分24秒
- 「どうしたの?2人共・・・」
「どうしたもこうしたも、独り寂しい女の為にわざわざここまで来てやったワケよ」
「そういうワケれすよ」
「石川〜、どうかしたの?」
なかなか戻ってこない梨華を心配して、肩にショールを羽織った飯田がやってきた。
飯田の姿を見つけると、辻は嬉しそうに駆け寄って飯田に抱きつく。
加護は苦笑いを浮かべながらそんな辻と飯田の姿を見つめていた。
「ありがとうね。じゃあちょうどバイトも終わった所だし、これから御飯でも食べに行こうか」
「行くのれす!!」
「お前早いなぁ・・・」
「石川、今日はもう上がっていいから行っておいで」
「あれ?飯田さんは行かないんれすか?」
「うん、嬉しいんだけど、カオリこれから予定が入ってるんだ」
辻は残念そうに頷くと、飯田に向かって『メリークリスマスなのれす』と言った。
外は想像以上に冷えこんでいて、梨華は巻いていたマフラーを思わずぎゅっと口元に押し付けた。
前を歩く辻と加護は寒さに負けないくらいにはしゃいでいて、いつもの登校時のように人々の視線を集めている。
- 34 名前:イブの星 投稿日:2003年07月04日(金)21時52分36秒
「そういえば2人共何処に向かってるの?」
「それは内緒なのれ〜す☆」
るんるんるんるん2人は進む。
光り溢れる街をかき分け、目的地に向かってひたすら進む。
足取り軽く、腰をフリフリ。
今日の2人はいつも以上に御機嫌だ。
そして歩くこと10分。
実際は歩いて5分くらいの距離だったのだが、あちらこちらにフラフラと歩き回った
辻加護のおかげで2倍くらいに時間がかかったのだ。
で・・・
「あれ?ここって私の家の近くじゃない」
連れてこられたのは冬の公園。
寒さ厳しい真冬の公園。
「へい、のの達はこれから梨華ちゃんの家に向かうのれす」
「だから梨華ちゃん、鍵かして〜」
「え、だって私も家行くんだからいいじゃない」
チッチッチと振られた指と揺られた頭。
刑事気取りな女の子。
俯けていた顔をぐいっと上げて、斜下から睨みあげる。
- 35 名前:イブの星 投稿日:2003年07月04日(金)21時53分47秒
- 「ほれ、さっさと鍵出しぃ」
「あ、は、はい」
その気迫に思わず鍵を取り出す梨華。
刑事というよりもこれじゃタチの悪い不良だ。
「ほなまたなぁ〜」
早々と鍵を受け取ることに成功した加護は、一瞬その姿を眩ませていた辻と一緒に梨華の家に向かって行った。
思いきり取り残された梨華。
冬で夜の公園なんて普通に恐い。
街灯は少ないし、寒いし、独りぼっちだし。
恐怖心は強まるばかりだ。
「も〜一体なんなのよ〜」
軽く半泣き。
マフラーに隠れた口元が思わず歪む。
ならばさっさと家に戻れば良いのだが、ここに取り残された理由が分からない梨華はここに立ち止まるしかない。
恐くて寒くて本格的に泣きそうだ。
- 36 名前:イブの星 投稿日:2003年07月04日(金)21時54分26秒
「僕ってそんな存在感ないですかね」
そんな中、突然聞こえる声。
梨華もよく知っている声。
声のした方に顔を向けてみた。
あまり大きくない滑り台に座り込んでいるのは吉澤ひとみ。
いつからいたのか吉澤ひとみだ。
「公園入ってすぐに気付いてもらえると思ってたんですけどね」
『よっと』と言いながら器用に滑り台を滑って降りて、長い足で地面を蹴った。
ショルダーバッグがひらりと揺れて暗闇に黒いコートがすらりと光る。
ベンチと滑り台しかない小さな公園。
気付かなかった言い訳を言えば、暗くて見えなかっただ。
「・・・吉澤くん、いつからそこにいたの?」
「う〜ん・・・どれくらいですかねぇ・・・」
思い出そうとしているひとみのコートをそっと梨華が掴む。
そのコートはしっとりとしていて、それないの時間、ひとみがここで過ごしていたことを示していた。
「・・・どうして?」
「ん?」
「どうしてのの達と一緒にお店まで来なかったの?」
梨華のこの質問にひとみは笑って答えた。
「サンタさんはあまり人に姿を見られちゃいけないからです」
- 37 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月04日(金)21時57分36秒
- 更新しました。
『イブの星』は全3回です。
だから残り後2回です。
そんでもって次はいしよしお休みです。
相変わらず更新量が少ないので、次もさっさか更新できるようにがんがります。
>クロイツ様
一番乗りおめでとーございます☆
いちごま書いててめちゃくちゃ楽しいです♪
いしよしの甘いのを抑えている反動からか、いちごまは甘く!!
いちーちゃん&ごっちんは幸せの車の中です☆☆
クリスマスの吉澤くん&石川さん・・・ふはぁ〜次の次更新をねばっと待っていて下さい☆
ってあんまし期待しないでお願いします(汗)
なんせここのいしよしは甘々になることがあまりないですからねぇ(遠い目)
>Silence様
やっぱり辻加護コンビは当初から大人気ですねぇ。
前回書きながら自分のいちごま好きに火がついた私。
メラメラです(w
何年もですかぁ(照)ありがとうございます☆
前々回の分もそういう風に言っていただけて嬉しいです☆☆☆
頑張ります!!!!!!!
- 38 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月04日(金)21時58分12秒
- >ぷよ〜る様
いちごまはまってくれましたか(w
いしよしの次にいちごま好きな私としては嬉しいかぎりですYO!
いや〜しかし何故かいしよしよりもいちごまの方が書きや(ry
クリスマスがついに始まりました☆
触り部分はこんな感じで(w
>token様
へんな感想だなんてとんでもないです。
レスめっちゃ嬉しいです☆
本当じょじょにじょじょに近付いてるって感じです(苦笑)
私的にはもっとこう早くくっついてくれYO!的なところもあるんですがねぇ(w
でもこんな風に言っていただけて嬉しいです☆
私もtoken様のようにまったりとここのいしよしを見守っていきたいと思います(w
- 39 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月04日(金)22時37分18秒
- 更新お疲れ様です!!
むむむ・・・気になる・・・
けど、次はいしよしお休みなんですよね。
ここはじっと待つべし・・・(w
では、次回も楽しみにしてます♪
- 40 名前:Silence 投稿日:2003年07月05日(土)05時35分20秒
- 更新乙様です。
帰ってきてパソコンを開いてみたら更新されてる〜!!
いや〜、いいな〜ここの2人。ほんと引き込まれます。
眠い目をこすって見てよかった。それじゃあ次回も
期待してます。
- 41 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月05日(土)09時07分33秒
- よ、吉澤君!!かっけぇぇぇ〜…!!
つーかもぅ、おいてけぼり梨華ちゃんがすごいツボですー!!
ロマンティックですねー!!公園で待ち伏せ(笑)どきどきしてしまいました♪
次回はいしよしお休みとの事ですが…ほかの人たちの活躍も楽しみなので♪
がんばってください!!楽しみにしてます!!
- 42 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時37分00秒
- 「ごめんごめん!ちょっと遅くなっちゃたよ」
ロングスカートをはためかせながら走る飯田。
揺れる長い髪がイルミネーションに照らされて、綺麗な天使の輪を作る。
肩から下げた大きな鞄に気を使いながら、飯田はもう少しだけ走って立ち止まった。
「んな息切らすくらいなら走ってこなくたっていいのに。
別に逃げたりするワケじゃないんだからさ」
苦笑いを浮かべながら保田は少し伸びた髪をかきあげた。
つい今さっき帰ってきたばかりの保田はきちんとスーツを着て、大きな荷物を持っている。
大きな鞄を持ったこの2人。
通行人にとってみれば見事にお邪魔である。
「ってかカオリ荷物大きすぎじゃない?」
「圭ちゃんには言われたくない」
「わ、俺は出張帰りなんだからいいじゃないか」
「?どしたの??妙に言葉使い意識しちゃって」
「別に何でもないよ。それよりもお腹すいちゃった。
カオリ何か作って」
「はい、はい。じゃあ圭ちゃんの家に向かいますか」
- 43 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時38分47秒
- 飯田が保田の少し後ろを歩く感じで2人は並んだ。
出張帰りという保田の背中はやはり心無しか疲れているようだった。
今日、何故2人がこうやって会っているかというと、保田が2週間くらい前に
飯田にこういうメールを送ったからだ。
『カオリ、クリスマス暇。
カオリの予定は知らないけど、私保田圭は暇。
一緒に御飯でも食べよう。
それもカオリの手作りで。
ついでに私はその日に帰ります。
もう一度言います。
カオリの予定は知らないけど、私保田圭は暇。』
「本当随分勝手なメールが届いたなぁって思ったよ。
やっぱ26歳にもなって独りは寂しい?」
「・・・寂しくないっていうのは嘘だけどさ。
でもこうやって出張が多いと、贅沢言ってられないし。
それでも家帰った時には誰かいて欲しいと思うのはあるね」
頑張り続けて、走り続けてここまで来た。
自分の弱さを見せず、ひたすら走り続けてきた。
足を止めたら自分自身が止まってしまうと思ったからだ。
- 44 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時40分09秒
- しかし動かし続ける足は1人ではきちんと動かし続けることすら出来ないくらいに弱った。
きちんと立とうとしすぎて、いつしか神経をすり減らすような生活になった。
酒も煙草も量が増え、1人でとる食事も簡単なインスタントものばかりだ。
「100の幸せは望まないけど、せめて1くらいの幸せは欲しいかな」
いい加減足を少し止めたってかまわないだろう。
今まで築き上げてきたものがそこに確かに残っているのだから。
ちょうど大きな仕事も一段落ついた。
確かな手ごたえもあった。
上はしばらくは日本での勤務にしてくれるようなことを言っていた。
産まれ育ったこの土地で、少し足を休ませよう。
全力ダッシュはもうしばらくお休みだ。
少し歩みを緩めてみよう。
「とりあえずは上手い飯が今は食いたいね」
振り返って笑ってみせた保田の顔に、飯田は静かに頷いた。
それから2人は肩を並べて家まで帰った。
聖夜のこの日、保田の部屋には大きな地球が描かれた絵が飾られた。
『大きな大きな地球には、沢山の愛がつまっているんだよ』
飯田の言葉に保田はこう言った。
『カオリとなら、自分の分くらいは探せそうだよ』
- 45 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時40分59秒
=================================================
市井と後藤は何処に行くワケでもなく、恒例となった後藤の家のすぐ近くに停めた車の中にいた。
後藤の手の中には温かなココア。
甘過ぎず、苦すぎず。
クセになりそうでクセにならない。
「それにしても、世の中じゃクリスマスだってはしゃいでいるのにどうしてウチらはこうなんだろうねぇ」
「お前がこれが言いっていったからだろう」
「いちーちゃんは嫌だった?」
「別に〜。俺こうやってまったりしてるの好きだもん」
倒した座席に身体を沈めながら市井は気持ちよさそうに目を細めている。
疲れのたまった身体にココアの匂いと、後藤から香る匂いが上手いこと混じりあって溶け込んでいく。
少しだけ開けた窓からは冷たい空気が流れ込んできていて、ほどよく身体に刺激が伝わる。
- 46 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時41分55秒
- 「それにさ、思うわけよ」
「何が?」
「別にクリスマスだからとかそんなん抜きでさ、こうやって後藤といれるのが幸せだってさ」
「・・・恥ずかしくなるから止めてよ」
「だって本当のことなんだぜ?こうやって手を伸ばせばお前がいるんだ」
市井の伸ばした手の先が、後藤の柔らかい髪に触れる。
サラサラと音が鳴りそうな髪を指でとかしながら市井はそっと目を閉じる。
後藤は持っていたココアを置くと、寝転がる市井のをぐっと覗き込んだ。
行き場を失った市井の手は自然と後藤の後頭部の方に回る。
「・・・いちーちゃん、いつか後藤に話してね」
2人の距離がまた少し近付き、後藤の息が市井に降り注ぐ。
甘く切なくほどよく苦く。
いつもよりも真剣なその口調に市井は目を開けた。
目の前には愛しい彼女の瞳がある。
写っているのは自分だけ。
そして後藤を見つめ続ける市井の瞳には後藤だけが写っている。
後藤は唇と唇がくっつきそうな程市井に顔を近付けると
「目、閉じて」
囁くように言葉を紡ぎ、市井の唇に自分の唇を落とした。
- 47 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時43分11秒
=======================================
「たっだいま〜!!!!!!」
ちっこい身体をコートやマフラーで被い尽くした矢口がかなり元気よく家の扉を開けた。
そしてなつみはいつになく上機嫌な人間の方の矢口をニコニコ笑顔で迎えてあげる。
「おかえりなさい。んでお疲れ様」
「おうおうただいま、ただいまで〜す☆」
片手を後ろに隠して今か今かとなつみの質問を待つウキウキ矢口。
わざと気にならないフリをするなつみをひたすら待つ。
どうでもいいような根比べ。
どちらが折れるか駆け引きをしていると、猫の矢口が人間の方の矢口に飛びついた。
「あ、こらお前最近重いんだから降りろよ〜」
「んにゃ〜」
「あ、矢口絶対今ので怒っちゃったよぉ」
- 48 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時44分24秒
- 黄色いケダマが爪をたてながら矢口の肩にのぼろうとじたばたしている。
仕返しだと言わんばかりのその攻撃に、矢口は慌ててなつみに助けを求めた。
「あぁ、これお気に入りだったのにぃ」
ちょっとぼろけたコートを残念そうに見つめる矢口に猫の矢口は『にゃ〜』と一声鳴いた。
なつみに抱きかかえられた猫の矢口は至極幸せそうだ。
「ったくオイラへのあてつけかよ」
片手で器用にマフラーを外すと、矢口は後ろに隠していた袋をなつみに差出した。
「何だかかっこ悪い感じになっちゃたけど、これあげる。
矢口からのクリスマスプレゼント」
猫の矢口はなつみの腕の中からピょんと飛び出し、綺麗に地面に着地をする。
空いた両手でなつみは矢口から差し出された袋を受け取った。
大切そうに袋を開いて覗てみると、さらに袋が入っていた。
- 49 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時44分59秒
- 「矢口先に着替えてくるね〜」
どたばた走って矢口は寝室へと消える。
残されたなつみは袋の中に入っていた袋を開けてみた。
「!!」
そして思わず赤面する。
「や、やぐち〜!!これは何だべさ〜!!!!」
急いで寝室の戸を開けると、そこにはまっ裸で着替え途中の矢口の姿。
さらに赤くなったなつみはその場にヘタリと座り込んでしまった。
「紐パンなんて素敵じゃない?」
にやっと笑う矢口に赤面し続けるなつみ。
戸の外から猫の矢口が不思議そうに2人のことを眺めていた。
- 50 名前:イブの星 投稿日:2003年07月06日(日)18時46分59秒
- 更新しました。
次回いしよし。
早ければ明日にでも。
・・・早ければ。そう、早ければ・・・。
>ぷよ〜る様
ってな感じで今回更新しました。
もうちこっとだけ待ってて下せい(ぺこり)
今回はいしよしでないですけど、お楽しみいただけたなら幸いです。
>Silence様
5時35分20秒だぁぁ!!!!!
遅くまでお疲れ様でございます。
今回いしよしなくて申し訳ないです(ぺこり)
いしよし編はもうちこっとだけ待ってて下さいです。
>クロイツ様
何んでか放置が似合う石川さん。
そして吉澤くんが公園にいた理由は次回更新で明らかになります
(って言ってもたいしたことないんですが・・・)
今回ではこんな感じでまとまりました。
堪能していただけたら幸いでし。
- 51 名前:Silence 投稿日:2003年07月06日(日)19時07分24秒
- 更新お疲れ様でした。
飯田さんと保田さんもいちごまもなちまりもすっごくよかったです。
いしよしも甘くなるのかなぁ〜(w
お疲れ様って声掛けてもらったのに…ただ遊んでただけでした(苦笑
おおっ!!次回はいしよしですか?めっちゃ楽しみです。
明日ですか、うれしいですけど無理はしないでくださいね!!
- 52 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月06日(日)19時09分48秒
- 更新お疲れ様です!!
クリスマスっていいですねぇ〜(w
どのCPの話も程よい甘さで良かったです!!
そして、次回はメインディッシュのいしよし♪
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 53 名前:token 投稿日:2003年07月07日(月)00時05分03秒
- 連日の更新お疲れ様です。
イブの夜は皆さんお幸せなようですね。猫の矢口もしばらく
見かけなかった気がしますけど元気そうで何よりです。
おお、次回はいしよしですか。イブですからねぇ。いつもより少〜し多めに期待しちゃいます。
- 54 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時22分08秒
- クリスマスイブ。
何の予定もなく働いていた私に訪れたサンタさん。
吉澤くんが言うにはののとあいぼんはやんちゃすぎて手に負えないトナカイだそうだ。
「でも何で吉澤くんだけがここにいたの?」
「いや、本当は2人も一緒にここにいて、ここで小さなクリスマス会を
やろうって言ってたんですけど・・・」
そう、2人は逃げたのだ。
この寒さから。
さっき私があいぼんに脅されている途中、滑り台の上で予定とは違う展開に驚いていた吉澤くんに
ののがそっと耳打ちをしたんだそうだ。
『寒いからのの達は家で待ってるのれす』って。
「ってことは・・・」
「はい、待ち損です」
そんな爽やかな笑顔を向けられると、長い時間1人で待っていた吉澤くんが何だか不憫に思える。
ニコニコと笑顔で立っているけど、絶対に身体の芯まで冷えてるはずだ。
「でも、今日は空がすごい綺麗だったから、待ってても全然苦痛じゃなかったですよ」
- 55 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時22分54秒
- 空を見上げる吉澤くんに続くように私も空を見上げる。
吉澤くんに出会う前までそんなに空なんて見上げたことのなかった私。
東京の狭い空と、明るすぎる夜。
それは星の存在を私の中で薄くさせた。
今見ている星空は私が知っている中で一番というワケではないけど、確かに輝いていた。
寒い日には星が綺麗に見える。
ってことはやっぱ今日いつもより寒いんじゃん。
ってことは吉澤くん風邪ひいちゃうじゃん。
「吉澤くん、寒くないの?」
「ん?そりゃ少しは寒いですけど別に耐えられない程じゃないですし・・・」
「ちょっと手出して」
ポケットの入れていた手を触る。
手袋もしてなかった吉澤くんの手。
ポケットの中で温まってはいたけど、それはほんの一瞬。
芯まで温まってワケじゃないから、あっという間に熱が引いていった。
- 56 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時23分49秒
- 「もう、何で喫茶店とか入って待ってないのよ。これじゃ風邪ひいちゃうよ」
少しでも温めてあげたくて、私のもっている熱を分けてあげたくて、掴んだ手に力を入れた。
伝われ伝われ。
私の温度が少しでも冷えた吉澤くんに伝われ。
ほっかいろみたく熱々じゃないけど、少しくらいは温いから。
だって私ポケットに飯田さんからもらったほっかいろ入れておいたんだもん。
絶対に吉澤くんより温かいよ。
「よし、これでちょっとは温かくなったでしょ」
「あ、え、あ、はい」
じっと私の手の方を見ていた吉澤くんが顔を上げて照れくさそうに笑った。
自分の手を見てからわざとらしくポケットの中に手を入れて、一度天を仰ぐ。
眼鏡の奥で吉澤くんのひとみはキラキラと輝いて、そこに私は小さな宇宙を見た気がした。
「よし、それじゃあ石川さんの家に行きますか」
「行きますか」
2人して公園を出ようとしたら、何かに気付いた吉澤くんが大急ぎで滑り台の方へ戻って行った。
自分の隣を突然通り過ぎて行った吉澤くんは、滑り台の上から大事そうに袋を持って戻って来くると、
『あぶないあぶない』と呟いて何ごともなかったように歩き出した。
- 57 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時25分27秒
- 「これ忘れたら僕が1人でここにいた意味全くなくなっちゃいますよ」
「・・・それは?」
「へへっクリスマスケーキです」
!!
やっぱり!!
私ケーキ大好きなんだよねぇ。
疲れた後のケーキ。
もう最高。
やばいよ本当やばいよ!!!
「やっぱケーキとかあった方がクリスマスって感じしませんか?」
「するするするする!!!」
「ですよね。僕もそう感じる人です」
私より背の高い吉澤くん。
私が見上げて、吉澤くんが見下ろすカタチになる私達の会話。
今日みたく星の綺麗な日はね、こうやって見上げて会話するのがとても素敵なんだ。
もちろん吉澤くんと会話する時はいつも素敵だよ。
でも今日はもっと素敵。
吉澤くんの優しい瞳の後ろには綺麗に輝く星が見えて、吉澤くんの瞳の奥には小さな大きな宇宙があるから。
- 58 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時26分32秒
- 「ねぇ、吉澤くん」
「何ですか?」
今日はクリスマスイブ。
雪は降ってないけど、星はすごく輝いてる。
いつも以上に冷え込んだ今日という日。
『私が吉澤くんのほっかいろになってあげよう』
そう思ったんだ。
ケーキも買ってきてくれたんだし、私からのクリスマスプレゼント。
「手、繋ごっか」
返事を待たずに吉澤くんのポケットに入っていた手を外に出してそっと握った。
私よりも大きな手。
やっぱり冷えてた大きな手。
絵書きさんが手を大事にしないなんてダメですよ。
私の温もり分けてあげるから、冷えてしまったその手を温めましょう。
繋いだ隙間に風の侵入すらも許しません。
私の手袋は私のコートのポケットで温めましょう。
私の手は、吉澤くんと一緒に温めましょう。
吉澤くんは恥ずかしそうに顔を赤らめてたけど、繋いだその手を離そうとしなかった。
- 59 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時28分01秒
私達は5分かからないで着く家までの道のりを10分かけてゆっくりと歩いた。
ゆっくりゆっくり夜を楽しむように。
ゆっくりゆっくりお互いの手をお互いの体温で温めながら。
輝く星は天然のクリスマスツリー。
その一番上に輝く星はお月さま。
ホワイトクリスマスなってロマンチックなものにはならなかったけど、この日に
独りぼっちじゃなくてよかったなぁなんて思った。
家に帰る前に、私達はコンビニに寄って適当に飲み物を買った。
きっと部屋の中で、ののもあいぼんも好き放題やってることだろう。
ちっちゃな天使達は悪戯盛り。食べ盛り。
私の部屋の冷蔵庫は空腹になってるはず。
『何作ろうか』なんて考えながら、私がケーキを持って吉澤くんが買い物袋を持つ。
繋いだ手がまた冷えちゃったから、もう一度温め直そう。
ゆっくり歩いて温め直そう。
そして家だ待つ小さな天使達を温めた方の手で捕まえるんだ。
多分きっと2人共嬉しそうに笑ってくれるよ。
- 60 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時28分51秒
- ◇◇◇
- 61 名前:イブの星 投稿日:2003年07月07日(月)09時29分26秒
- ◇◇◇
- 62 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月07日(月)09時35分59秒
- 更新しました。
さて、本編とは全く関係ないんですけど・・・
最初のスレでも一番初めに書いたことで、作風の違いとかでHN変えてて、気が付いたら
こっちの方が自分の中で定着しちゃったりしたので、今後はこっちに統一しようかと
思いましたので『南風』改め『匿名匿名希望』という形をとらしていただこうと思います。
2重生活送ってるみたいで落ち着かなかったんで(汗)
何だか恥ずかしい私・・・。
とりあえず今後もよろしくお願いしますです。
>Silence様
いしよしはこんな感じに仕上がりました。
甘いよぉなほろ苦いよぉな...う〜ん一応甘めってことで(苦笑)
>明日ですか、うれしいですけど無理はしないでくださいね!!
御気づかいありがとうございます!
ちょっと頑張ってみまました♪
更新の間隔をここであんまりあけたくなかったもので(汗)
次回からは通常通りになる感じです。
>ぷよ〜る様
メインディッシュはこんな感じで出来上がりました。
他のCPには少し負ける気もしますが、こんなです。
多少甘めです(w
クリスマスなんでちょっと特別編って感じです。
>token様
今回ちょっと更新頑張ってみますた。
ので次回からは通常通りです(w
猫の矢口覚えてくれてましたかぁ〜えがった〜〜〜。
猫の矢口も成長しました(重いと言われる程に)めっちゃ元気です(w
さてさて、『イブの星』いしよしは期待にお答えできたでしょうか?
満足していただけたら光栄でし。
- 63 名前:Silence 投稿日:2003年07月07日(月)10時56分49秒
- 更新お疲れ様でした。
なんかここに1人猛烈に感動してる人がいます(w
誰がなんと言おうとこれは激甘ですよ。さすがクリスマスイブ
の話です。うううっ、いしよしヲタでよかた(涙
これからもここの『いしよし2人を見守る会』の1員として追っかけ
ていきます(爆 それじゃあ次回も期待しとります。
- 64 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月07日(月)12時27分29秒
- ぎゃー!!!さすがはクリスマス!!
みんな幸せそうで、なんだか心がほこほこと温まりました♪
つーか手ぇつなぐいしよしが!!かわいくてかわいくて、思わず顔がほころびました♪
そして吉澤くん!!そのためだったんですねっ!!いやぁ、素敵過ぎます。男前!!
次回も楽しみにしています!がんばってくださいっ!!
- 65 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月07日(月)20時34分20秒
- 更新お疲れ様です!!
この甘さもたまんないですね!!
素敵なクリスマスをありがとうございます!!
「南風」様=『匿名匿名希望』様に気付いてなかった
ヘボ読者がここに一名ほど・・・
『耳に残るは…』も読んだのに・・・
逝ってきます・・・
では、次回更新もヒソーリ楽しみにしてます♪
- 66 名前:token 投稿日:2003年07月08日(火)12時52分15秒
- 更新お疲れ様です。
そうなんです。端から見ればただ手をつないでいるだけの二人なんですが、
この甘さ堪りません。わたし、大満足です。
>『寒いからのの達は家で待ってるのれす』
これはひょっとして大食らいの天使からのクリスマスプレゼントなのでは、
などと勝手に妄想を広げております。
では次回もまったりお待ちしています。ご自分のペースで頑張ってください。
- 67 名前:token 投稿日:2003年07月08日(火)12時55分42秒
- ごめんなさい。sage忘れてしまいました。申し訳ありません。
- 68 名前:母さん 投稿日:2003年07月09日(水)07時58分47秒
- 今年の終わりは今年の始まり。
巡り巡る季節の中で、僕らはこうして月と年を越えていく。
母親と2人でこたつに入ってテレビを見ながらみかんを食べる。
ぼさっと伸びた自分の髪を、後ろで一つに束ねてみる。
いいかげん切らないとなぁなんて思いながらも、髪型とかに関しては無精者の僕は髪を伸ばしっぱなしだ。
金髪頭にも黒髪が見えていた僕の髪。
見兼ねたごっちんが染め直してくれた。
色は落ち着いた茶色。
『これなら多少伸びても違和感なし』って胸はって言ってたっけなぁ。
最近ごっちんはますます綺麗になった。
これも紗耶香の力なのかと思うと人の不思議さにただただ感動するばかりだ。
世間じゃ今の時期をお正月という。
石川さんは実家に帰っているし、加護も奈良にいる両親に会いに行っている。
何だか毎日が楽しくて慌ただしかったから、こう『お正月』みたいなまったりした空気が
僕を鮮度を失った魚みたいにさせた。
- 69 名前:母さん 投稿日:2003年07月09日(水)08時00分24秒
- 僕の隣でいつの間にか寝てしまった母さんはそんな僕を見ると、何だか嬉しそうに笑う。
最初はあまり意味が分からなかったけど、こうして一緒にいる時間が増えれば増える程
その答えが見えてきた。
母さんは毎日働いて、疲れているのに僕の分まで料理を作ってくれて。
今年のお正月もこんなにおいしいおせち料理を作ってくれて。
頑張りやさんのお母さん、最近こうやって家族2人でゆっくりしていたことなかったよね。
小さい頃にぎゅっと掴んでくれた手は、今はすっかり変わって荒れて赤くなった。
でも僕はどっちも綺麗な手だと思う。
何かしてくれるのが当たり前の生活で、母さんの有り難さを忘れることがほとんどだけど、
たまにこうして母さんの寝顔を見てると、ふと思うんだ。
母さんいつもありがとうって。
- 70 名前:母さん 投稿日:2003年07月09日(水)08時01分28秒
- いつの間にか白髪が混じっていた髪。
だけどすごく綺麗な母さんの髪。
父さんがよく撫でていた綺麗な髪。
母さんはいつも照れた笑顔を浮かべながら楽しそうに唄っていた。
僕の描く理想の夫婦は自分の父と母にある。
言葉にして言うのは照れくさいし、何だかそんなこと話すような空気になることなんてないけれど、
僕はそう思ってるんだよ。
まったりとした空気の中で、色んな事を思いながらみかんを食べていたら、母さんがもそもそと起き上がった。
両手を上げて伸びをして、温かなこたつから出ると近くに置いてあったエプロンに手を伸ばした。
「ついつい眠っちゃた。ごめんね、今すぐ御飯作るからね」
起きてすぐに活動する母さん。
まったくもって頭が上がりません。
本当すごいです。
いつもなら僕はここで『うん』とだけ返事をする。
だって作ってもらうのが当たり前になってたから。
でも今日は・・・
- 71 名前:母さん 投稿日:2003年07月09日(水)08時02分08秒
- 「僕も何か手伝うよ」
母さんは驚いていたけど、だけどそれ以上に嬉しそうに笑ってくれた。
「それじゃあ今日はひとみの大好きな料理つくろうか」
「いやいや、今日は母さんが大好きな料理にしよう」
こうして肩を並べることは本当に少なくなった。
そして並べてみて改めて気付く。
小さな母の大きな力を。
「じゃあやっぱりひとみの大好きな料理だね」
「ん?何で?」
「母さんもそれが大好きだから」
母さんの指は僕の手の中にある卵に向いていた。
まったく本当母さんはすごいよ。
一生かないっこありません。
家族2人で肩を並べて作った料理はいつもよりもカタチは悪かったけど、だけど最高においしかった。
- 72 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時04分24秒
- 寒い中ひた走る、僕の自転車はその寒さに悲鳴をあげているようだった。
首に乱暴に巻いたマフラーがその小さな隙間から僕の首に寒い風を運んでくる。
1月の中頃、まだまだ寒さも厳しい季節。
そんな季節の夜なんていうのは本当に寒い。
何で僕がこんな時間い自転車をこいでいるかというと、加護からこんな電話があったからだ。
『いくら待ってもののがけえへん・・・』
最初はよく意味が分からなかったけど、ポツポツと喋り出す加護の言葉が僕を自転車の上にまたがらせた。
今日、加護は奈良から帰ってきた。
そしてそのことを知っていた辻は夕昨加護にメールを入れたんだそうだ。
『ののがあいぼんのこと迎えにいくのれす』
絶対に東京駅で辻は迷子になると加護は考え、新宿駅で待ち合わせをしたんだそうだ。
そして、約束の時間になっても、それから何時間か過ぎても辻がそこに姿を表さないらしい。
- 73 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時05分40秒
- 携帯に電話をしても電源は切られていて、全く繋がらない。
辻の家の電話をしても留守電が鳴るだけ。
それを何度かくり返すうちに、加護は辻が言っていたことを思い出したんだそうだ。
『ののの家族は今日お出かけしてるんれす。
だからあいぼん、一緒にお家で遊びましょう』
と辻が言ったことを。
下手に動いて、辻と行き違いになったら困ると、加護はじっとそこに何時間もいる。
石川さんにも電話を入れたらしいから、石川さんはもうすぐ加護の側に着くはずだ。
僕は自転車を駐輪場に入れて、ダッシュで駅に向かって走って電車に乗った。
僕は思う。
何故こんなにも埼京線のホームは他から離れているのだろうと。
時々ぶつかる人に頭を下げながら、僕は階段を一つ飛ばしで昇って行き、加護と石川さんがいる
改札の前までやってきた。
そこには予想通り加護と石川さんがいた。
加護の目は真っ赤になっていて、石川さんの胸当たりに涙の痕が見えた。
きっと石川さんが来た時に、緊張の糸が切れてしまったのだろう。
声を押し殺して泣く加護の姿を思い浮かべて、僕の胸は握られたように痛んだ。
ごめんね、もっと早く来てあげれなくて。
まだ口元をぐっと歪めている加護の頭をそっと撫でると、加護は石川さんの手を
掴んだまま大粒の涙を流した。
- 74 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時09分54秒
- じっとここで待ち続けているワケにもいかない。
しかし動く前にとりあえずもう一度辻の携帯にかけてみようということになり、加護は自分のポケットに
入れておいた携帯を引っ張り出した。
不安そうに携帯を見つめる加護に、石川さんはそっと肩を叩いた。
『大丈夫だよ』って言うみたいに。
辻が絶対に大丈夫だなんて根拠はど無い。
だけど僕らが出来ることは信じることだ。
そうでもしなくちゃこの身体は悲鳴をあげて潰されてしまうから。
僕らがしっかりしなきゃ、それ以上に加護が悲鳴をあげてしまうだろうから。
駅は蛍光灯の光りで不自然な程に明るい。
こんなにも眩しい光の中で加護は独り、辻のことを待ち続けていたんだ。
きっと暗闇にいるよりも不安になっただろう。
明るすぎるここの光りは現実を思いきり突きつけてくる。
僕はいつもそう感じていた。
「・・・もっかいののにかけてみる」
- 75 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時10分47秒
- 駅構内に広がる景色をぼーっと見つめていた僕の視線は加護の言葉で向きを変えた。
両手でぎゅっと携帯を握りしめて、今にも泣き出しそうな表情の加護。
そんな加護の肩を石川さんは優しく抱いていてあげている。
僕は加護と同じ視線になるように腰を屈めて震えている手をそっと包んでやった。
僕のちっぽけな勇気が加護の元に行くようにと。
加護は意を決したように、大きく深呼吸をすると、携帯のリダイヤルで辻の名前を出した。
そしてボタンを押そうとした時に、突然加護の携帯が鳴った。
驚きのあまり落としそうになった加護の携帯には表示は『公衆電話』という表示が表れていた。
加護は恐る恐る通話ボタンを押す。
「・・・もしもし」
「あいぼん!!ねぇ!産まれたの!!産まれたんだよ!!!」
携帯から聞こえてくる声はあきらかに辻のもので、そしてその声の大きさは興奮からなのだろう、
少し離れていた僕らの耳にも届いた。
携帯を耳につけたままの加護は動きをぴたりと止め、ただどこか宙を見ている。
「あいぼん?」
「・・・ののか?」
「へい、ののはののれすよ」
「・・・無事なんか?」
「無事?ののはいたって元気なのれす」
- 76 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時11分45秒
はっきり分かる程震えた加護の声。
それはそうだろう。
待ち合わせ時間から何時間もたっても辻から連絡がなくて、連絡が来たと思ったら
相手は驚く程ハイテンションなのだ。
そして何よりも無事なのだ。
「・・・今自分何処におるん?」
「ののは今病院にいるのれす」
「病院!?」
驚きうろたえる加護から石川さんは携帯を受け取り、辻から話しをしばらく聞いていた。
そして携帯を閉じると、不安そうに自分を見つめている加護に微笑みかけて、『とりあえずののの待つ
病院に行こう』と加護の手をとって歩きだした。
何が何だかさっぱり分からない僕らはとりあえす石川さんの後についていく。
どういうことなのか教えてほしい。
それが僕の望みだ。
多分加護も同じだろう。
それでも石川さんは歩き続けて電車に乗った。
ついた駅は、石川さんや辻加護の最寄り駅だった。
- 77 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時13分15秒
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いてもたってもいられなくなった加護は病院が見えた瞬間に走りだした。
入り口の所で辻は待っていると言っていたらしい。
そして今回はその言葉通り、辻は病院の入り口の所できょろきょろと辺りを見ながら立っていた。
「のの〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
猛ダッシュで辻に近付きそのまま思いきり抱きつく。
加護とは少し遅れて肩からかけていた鞄が辻の元に辿り着き、巻いていたマフラーが
さらに遅れて辻の元に辿り着いた。
涙も鼻水もおかまいなしに出している加護は泣き声を上げながら辻のことを抱きしめて
『よがっだよ〜』と言い続けている。
加護のタックルを受けた辻は、自分をきつく抱きしめて泣いている加護のことをすまなさそうに
何も言えずに見つめていた。
「よっすぃ〜、梨華ちゃん」
「のの、ちゃんとあいぼんに自分で理由言わなきゃダメだからね」
「・・・うん」
- 78 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時15分21秒
- とりあえず場所も場所なんで僕らは石川さんの家に移動した。
温かいココアが湯気立つカップを目の前に、辻は本当に申し訳なさそうに加護に頭を下げた。
僕の隣で加護は下を向いて黙っている。
俯き続ける加護をしばらく見つめてから辻はそっと口を開いた。
「本当にごめんなさいれす。あいぼんに沢山沢山心配かけてしまいました。
よっすぃ〜にも梨華ちゃんにも・・・」
「・・・辻、僕達すごい心配したんだよ」
「・・・ごめんなさい」
「とりあえず教えて。何か理由があったからなんだろ?」
「・・・ののは今日、ちゃんと待ち合わせの時間に間に合うようにお家を出たんれす。
あいぼんに早く会いたかったし、のの、一生懸命走ったんれす。
それで、駅までもう少しって所で道ばたにうずくまってる女の人がいて、
のの気になっちゃって女の人の所行ったんれす。
そしたらその人が、ずっと『救急車、救急車呼んで』って言うから急いでのの119番したんれす。
ののは女の人がすごく苦しそうだったからずっと手繋いれた。
救急車の中れも。
女の人は妊娠していて、予定日よりも早く陣痛が来ちゃったみたいなんれす。
ののはその人のこと知らなくて、だから連絡先とかも分からなくて、ずっと待ってたんれす。
あんなに頑張ってるのに、赤ちゃんが産まれた時に独りぼっちなんて悲しいじゃないれすか。
病院の中だから携帯の電源も切ってて、あいぼんに連絡しなきゃと思ったけど、
いつ産まれてくるか分からなくて動けなくて、気がついたらもう約束の時間は
とっくに過ぎちゃってて、れものの何だか産まれた赤ちゃんの声聞こえたら嬉しくなちゃって・・・。
- 79 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時16分04秒
- いっぱいいっぱい心配かけちゃったのに、ののは謝りもしないで・・・
あいぼん本当にごめんなさいなのれす。
・・・ごめんなさいなのれす」
「・・・ののはアホや」
しばらくの間黙って俯いていた加護の口から出た言葉に、辻は瞳から涙を流した。
「・・・嫌いになっちゃたれすか?」
「・・・でもウチはもっとアホや」
「へ?」
加護は僕の隣から立ち上がると、辻の横に行きぎゅっと辻のことを抱きしめた。
「ウチな、のの待ってる間ずっと心配してた。
何かあったんかって、ののが事故とか事件に巻き込まれてたらどうしようってずっと心配してた。
なのにののからやっと連絡あったろ思ったら人の心配もよそに、すごい嬉しそうな声しとるんやもん。
人の気も知らんでなんなん?って正直思った」
「・・・あいぼん」
- 80 名前:ちっちゃな大きな 投稿日:2003年07月09日(水)08時17分18秒
- 「ウチ怒るとか嫌いになるとかじゃなくて、心配で、不安でぐちゃぐちゃやった。
本当はののに会ったら絶対に一発ひっぱたいてやるって思ってた。
・・・ごめんな。
ののの事情も考えないでそんなこと考えてしまって・・・ごめんな」
辻は大声で泣いた。
加護も負けないくらい大声で泣いた。
涙も鼻水もおおいに出しながら、でうでうと泣いた。
その豪快な泣きっぷりに微笑ましいけど、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
そして2人は本当の赤ん坊のように泣き疲れて眠ってしまった。
まぁ加護は旅の疲れ、辻は不馴れな環境に身を置いていた極度の緊張感から解放されたというのも
あったんだろうが。
石川さんは2人の家に電話をして、今日は自分の家に泊まらせるということを伝えたみたいだ。
僕は終電の時間も迫っていたから帰ることにした。
玄関まで送ってくれた石川さんは、『こういうのはののの口から言った方がいいと思ったから』と言って
困ったような笑顔を浮かべた。
外はさっきよりも冷え込んでいた。
部屋の温かさに慣れてしまったせいか、それとも本当に冷え込んだせいか。
それでも僕の心は温かかった。
冬の寒さなんかに負けないくらい温かかった。
- 81 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月09日(水)08時19分21秒
- 更新しました。
シャッフル発売記念ということで、2回にわけるつもりだった更新を一気に
upしちゃいました(自分の首をしめるような行為)
とりあえずののあいSPってことで。
>Silence様
激甘に見えましたかぁ〜よかったです。
書きながら甘さ不足解消。
だけどさらに甘いの書きたくなった病が発病。
う〜ん・・・上手いこといかないなぁ・・・。
>これからもここの『いしよし2人を見守る会』の1員として追っかけ
>ていきます(爆
もちろん私も会員の一員として追っかけていきます(w
>クロイツ様
クリスマス特番好評だぁ。
季節外れっていうのが微妙ですが(苦笑)
ここのいしよしは手をつなぐだけで甘くなる・・・距離遠いなぁ・・・。
しかぁし!!!!!!
いしよしは甘く、そう、甘くいきます!!!!!!!
目指せ甘々!!
ので、そっと見守ってやってて下さい(w
- 82 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月09日(水)08時19分51秒
- >ぷよ〜る様
梅雨時のクリスマス特番、皆さんの評判が良くて安心です♪
あっちの作品読んで下さったんですか(恥)
ありがとうございます(正座してペコリ)
自分、ここで『君僕』を書き始めた時に、全然違うモノを書いている
という感じだったんで、きっと気付かなかった人の方が多いはずです(w
というか知らない人の方が多いかも(苦笑)
そのうえスットクで書き溜めようとしているうちに保全し忘れて倉庫行き・・・
申し訳ないです。機会があればいつか何処かで番外編をやりたと思ってますので・・・(汗)
>token様
手を繋ぐだけで甘くなる魔法。
クリスマスっていいですねぇ(遠い目)
>『寒いからのの達は家で待ってるのれす』
妄想はビンゴと思ってもいいかと(w
繋がった手から次へと一歩踏み出せ!!
みたいな気持ちで書いていきます♪
これからもよろしくです。
- 83 名前:Silence 投稿日:2003年07月09日(水)14時07分06秒
- 更新お疲れ様でした。
いいお話でした。うん、よかった。
家のネットが接続できなくなったのでほかの場所から
見せてもらいました。ののあいよかったです。
次回もがんばってください。
- 84 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月09日(水)22時38分47秒
- あいぼん…!!そのかわいらしさにのっく・あうとれす。
わんわん泣いてる姿を想像して、私まで泣きそうになってしまいましたYO!!
ののたん無事で、本当によかった…。ののたんも優しい良い子ですね…ホロリ。
そしていしよし。なんか一緒にいる姿を見る(?)だけで、どきどきしてしまいます。
母親思いの吉澤君も良いですねぇ〜!!
この小説を読むといつも、心の中がほっこりと暖かくなります。
すっごい癖になる暖かさです…大好きだー!!!
頑張ってくださいね!!次回も楽しみにしております♪
- 85 名前:token 投稿日:2003年07月09日(水)23時14分40秒
- 更新お疲れ様です。
吉澤君がこんないい子に育ったのは、お母様のお力が大なんでしょうかね〜。素敵な母子ですね。
ののちゃんは優しさ全開(!?)だし、それを素直に受け入れられるあいぼんもいい子ですね。
まさに、ええ話やな〜、ですよ。
では、次回もまったりお待ちしております。
- 86 名前:かふか 投稿日:2003年07月10日(木)00時57分44秒
- 更新お疲れ様です。
来れなかった間に、なんか素敵な出来事が増えてる!(w
吉澤くんの周りにいる人達は、イイ人達ばかりですねぇ。
類は友を呼ぶってやつでしょうか。
なんか、人間って素敵やん?って感じです(w
次回の更新も楽しみにしてます。がんばってください!
- 87 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月10日(木)01時36分38秒
- 更新お疲れ様です!!
「逝ったんじゃないの?」っていうツッコミは
入れないでくださいね・・・(w
とりあえずののあいSPのようですが、
すこぶるののあいSPですよ!!
吉澤くんと同様に当方の心も温かくなりました!!
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 88 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時19分06秒
- その日、ごっちんから突然メールが入った。
『梨華ちゃんの誕生日会はウチのお店貸しきりコース』
誕生日?
石川さんの?
そして気付く。
僕は石川さんの誕生日を知らないということに。
急いで返信をした。
『石川さんって誕生日いつ?』
って。
ごっちんからの返事はめちゃめちゃ早くて・・・
『知らなかったのぉ?梨華ちゃんの誕生日1月19日だよぉ。
こりゃ後藤の勝ちだね。( ´ Д `)よし子だっせ〜〜〜〜』
馬鹿にされた。
でも1月19日って、それって明日じゃん。
言うの遅すぎるよ。
・・・あれ?
でも1月19日生まれだと遅生まれってことだから・・・学年的には1つ上?
僕は早生まれで、石川さんは遅生まれ・・・
・・・。
ま、いっか。
- 89 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時20分02秒
- とりあえずプレゼント考えなきゃ。
しかし買いに行くにもこんな時間じゃコンビニくらいしか開いてないしなぁ・・・。
机に顎を乗せて『どーしよー。どーしよー』と呟いていたら、また僕の携帯が音をたてた。
『ちなみに今度はセイソウね。後藤の部屋は女の子専用着替え室。
よし子の部屋は男の子専用着替え室。
開演時間は午後7時。よし子はお店のお手伝いだから午前9時に後藤の家集合ねぇ』
・・・つまりこれは僕はプレゼントを用意する時間無しってことだよね。
ため息一つの中には僕の『何で誕生日とか聞かなかったんだよぉ』っていうのも含まれてるんだけど、
それより何よりプレゼントどうしよぉっていうのも含まれてて・・・どうしよう。
「プレゼントかぁ・・・石川さんの喜ぶもの・・・う〜ん・・・あぁ・・・」
そうえば僕はあんまり石川さんのことを知らない。
誕生日もそうだけど、何が好きだとか、趣味は何かとか。
話しはするけど意外にこういうところを知らない。
そしてきっと石川さんも僕のことを知らない。
曖昧な関係な僕らの関係。
友達だけど友達以上で、友達以上だけど友達で。
知っているようで知らない相手のこと。
進んだ針より進んでいない僕らの関係。
それは一方通行な僕の心。
近付きたいけど近付ききれない臆病な心。
- 90 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時20分51秒
- 大切すぎて深入りできなくて、だけど本当は知りたくて。
誰より何より近くにいたくて。
だけど、実際は何も知らない君のこと。
「僕ってなんかダメダメじゃん」
久々に凹みました。
そしてすんごく悔しくなりました。
知らないなら知ってやる!!!
みたいな変な闘争心燃やしちゃってきました。
ま、何はともあれプレゼント考えよぉっと。
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「おはようございまぁす」
「んあ、おはよ〜」
昨日、結局一晩丸まるかけて悩んだ。
そして見事徹夜。
こんな自分をカッケ−と思う。
「とりあえずここの机と椅子全部端寄せるよぉ。
んでもっとここにみらーぼーるつけるからぁ」
そういってごっちんが取り出したのは5000円弱で売っている動かすとじーじーっと
モーター音がするミラーボールだ。
ちなみにここと言って指差ししたのは天井。
・・・何だか大変なことになってまいりました。
- 91 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時22分04秒
それから大急ぎで会場作りが始まった。
他の人達は皆学校とか仕事とかでいないし、主役である石川さんに手伝わせるワケにもいかない。
2人して重い机を移動させて、さっさかさっさか場所作り。
こんな時。ごっちんの力強さは本当にありがたい。
「そういえば、今日はおばさんどうしたの?」
「んあ?よし子のおばさんと1泊2日の温泉旅行って聞いてない??」
・・・そういえば今朝そんなことを言っていたような。
寝不足でぼーっとしてたからちゃんと聞かずに流しちゃったのか。
こりゃ反省どころだ。
後でメールでも送っておこう。
「あ、よし子その椅子奥持ってっちゃってぇ」
「はいよぉ」
息付く暇なく動きまわり、机やら椅子やらを大移動させてミラーボールを取り付けて、
天井伝いにコードを引っ張っていって、飾り付けとか料理の準備とかしてたら
あっという間に時間は6時になっていた。
途中、ごっちんが作ってくれたオムライスで腹ごしらえをしたけれど、ここまで動くとさすがに腹ぺこだ。
しかしそんなことも言ってられない、もうすぐ家に紗耶香も保田さんもくるし、
ここにも石川さん達がやってくる。
「よし子、出る時は裏口からねぇ。正面は鍵かけちゃうから」
「はいよぉ、じゃあ7時ちょい前に裏口から来るよ」
- 92 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時22分41秒
- ごっちんはふにゃっと笑うと僕に向かっておにぎりを3コくれた。
どうやら僕と紗耶香と保田さんの分らしい。
お礼を言ってから裏口から出ると、空の色はもうオレンジ色になっていた。
徹夜に重労働。
正直僕の身体はくたくただったけど、綺麗な空を見たら元気が出てくる。
つくづく僕の身体の作りは単純だなぁって他人事のように思って大きくの伸びた。
「さて、シャワー浴びて着替えるとしますか」
開演まで後1時間。
のんびり準備でもしよぉっと。
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紗耶香と保田さんは6時40分くらいに来た。
僕の家の前に開いてるスペースの車を停めて、スーツの入っている袋を3つも持ってやってきた。
ってか今だってスーツ着てるのに何でわざわざ持ってくるんだろう。
そんな疑問をぶつけたら、紗耶香はニシシッと変な笑い方をして、持っていた袋の一つを僕に押し付けた。
「お前さ、正装って後藤に言われたからスーツで行こうと思ってただろ」
「うん、だってそれしか持ってないもん」
「これ、俺の友達の。そいつバスケやってたからお前と同じくらい背あったんだ。
んで、ちょっとした式典があった時にもらったんだと。
でもこんなん着るような機会ないしって俺がもらったんだけど、デカすぎるしお前にやる」
「・・・僕ももらったって困るんだけど」
「俺だって困る。着れないもんはいらねぇもん」
- 93 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時23分40秒
- ・・・ってな感じで僕は着ていたスーツを脱いで、紗耶香から渡された『タイタニック』とかで
お金持ちの人達が着ているような服を着ることになった。
ちなみに紗耶香も保田さんも似た様な服だ。
それも自前らしい。
何でもそんなの持ってるのと思って聞いたら、紗耶香は会社の開いたパーティーで着る為に
買わされたとぼやいて、保田さんは『趣味よ』と言ってうっすら笑顔を浮かべた。
とりあえず袖のボタンを閉めて、着ていたチョッキのシワをぐっと引っ張って伸ばす。
全身鏡の前に立って自分の姿を見て、思わず笑いそうになってしまった。
「吉澤、そんなボサボサ頭でその格好はないを思うよ」
保田さんの適切な指摘。
紗耶香も鏡越しに苦笑いを浮かべている。
・・・だって乾きたてだもん。
シャワー浴びてたんだもん。
それに頭なんて気使ったことないもん。
「ほれ、ちょっちこっち来な。市井様が変身させてやんよ」
おいでおいでと招かれて、自分の机の椅子に座ると、紗耶香は慣れた手つきで僕の頭をいじり始めた。
ワックスを使ってさくさく作業を進める。
実際に紗耶香はすでにバシッとオールバックに決めていて、やっぱりカッケ−と思った。
保田さんも同じくいつかのようにオールバックでビシッと決めていて、煙草を吸っていた。
- 94 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月12日(土)09時24分27秒
- 「はい完成。どうよ圭ちゃん」
満足そうな紗耶香の声に、保田さんは顔を上げて僕を見た。
・・・頬をピンクに染めないで下さい。
「ま、あたし好みだね」
「そりゃ最高の賛辞だわ」
げらげら笑ってる2人に何だか不安を感じた僕は思わず鏡の前に立った。
・・・。
「な、結構いいだろ?俺の自身作」
鏡に写った僕の髪は七三くらに分けられていて、長い前髪が上手いこと流されていた。
自分の顔なんだけど、僕はちょっとそれが自分だと信じられなかった。
「よし、じゃあそろそろ行きますか」
保田さんは煙草を持っていた空き缶の中に入れると、鏡を呆然と見ている僕の肩を叩いて先に下に降りて行った。
- 95 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月12日(土)09時29分16秒
- 更新しました。
『夢空間』は後2、3回くらいに更新になると思います。
何だか連ちゃんしてSPみたいな感じですが、どーぞよろしくお願いします。
>Silence様
御褒めの言葉、ありがとうございます。
ほんわかキャラでつっぱしる2人。
癒し系キャラです。
私は書いていて癒されます(w
そして始まった石川さん誕生日編。
突然誕生日を抜かして書いていて、つけたしたというワケではありません(w
>クロイツ様
背伸びをしない18歳。
そういうのがここの辻と加護なのかもしれませんねぇ。
>この小説を読むといつも、心の中がほっこりと暖かくなります。
>すっごい癖になる暖かさです…大好きだー!!!
ありがとうございます(読んで真っ赤になってしまいました)
吉澤くんは心優しい人です。
きっとそうです。
大好きです(w
- 96 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月12日(土)09時30分09秒
- >token様
親の背中を見て育ったっていうのですかね。
そして愛情もいっぱい受けて育ったんだと思います。
それは辻も加護も同じなはずで、素直に真直ぐ成長しております(すくすくと)
はーとふるな感じが書きたくて、出来上がりはこんなでした(w
書きたいことが上手くまとまらずに四苦八苦したのも良き思いでなり(苦笑)
>かふか様
そうですね、正に『類は友を呼ぶ』ってやつですね。
お馬鹿もしますが、根はとっても良い人達です。
素敵な出来事はこれからも続きます(予定ですよ、予定(w)
やっぱり決めては『人間って素敵やん?』です。
私は色んなところを含めて人間が好きです。
>ぷよ〜る様
おかえりなさいです(w
帰ってきて下さって嬉しいですYO!
癒し系キャラ天使の『ののあい』
私も含め、沢山の人を温かく出来たみたいで嬉しいです。
前回の下書きをしている時、『あいぼん』と打って間違えて変換して『相盆』
となったのは数知れずです(苦笑)
- 97 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年07月12日(土)10時55分15秒
- はじめましてです。
私は結構たくさん、いしよし小説を読んできましたが、この作品、私の中では最高の作品です!
続き楽しみにしています♪
- 98 名前:token 投稿日:2003年07月12日(土)20時45分27秒
- 更新お疲れ様です。
結局吉澤君、プレゼント用意できなかったみたいですね。まあ、ここの石川さんは
プレゼント忘れられたぐらいじゃ、拗ねたりはしないと思いますけど(笑)
SPの連ちゃん、大歓迎です。それに吉澤君「変な闘争心燃やしちゃって」ますから、
続きが楽しみです。頑張ってくださいね。
- 99 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月13日(日)00時44分18秒
- 更新お疲れ様です!!
SPの連ちゃんとは太っ腹ですね!!(w
変な闘争心を燃やしてる吉澤くんに期待ですね♪
余談ですが、当方は『あい』と打てば『あいぼん』と出ます。
「それが?」と言われればそれまでなんですが・・・(w
もちろん『ひとみ』と打てば『よっ・・・(ry
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 100 名前:Silence 投稿日:2003年07月13日(日)02時28分49秒
- こ〜しんお疲れです。
今回もめっちゃ堪能させてもらいました。いや〜相変わらず
よかったです。書いてて癒されるというのが大事なのかもしれ
ないですね〜。(ってなんでえらそうなんだろう(w
今回読んでいて一番思ったのが吉澤君いい奴だな〜です(w
ではでは次回の更新をお待ちしています☆
- 101 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時02分31秒
- お店の中はさっき僕が出た時よりも、料理が並んでるせいか豪華に見えた。
僕が支度をしている間にごっちんが頑張ったんだろう。
ちょっと頭が下がる思いがした。
まだ女性達は上で準備をしているのか、下に誰も降りてきていない。
紗耶香や保田さんはすっかり変わった店内を見て驚いてるようだった。
机や椅子を移動させて出来た空間はごっちんが『だんすふろあ』と名付けただけあって、
少しばかり広いスペースが出来ている。
カウンターにはさっき作った料理が並べられ、所々に花が飾られ、小料理屋というイメージから
180度変わったイメージを受ける。
お店の中には何かの映画のサントラがかかっていて、さらにここの空間を上品めいたモノにしていた。
自分で準備をしていたけど、こう改めてみると自分のした仕事に満足感があった。
「「おまたせいたしましたぁ〜」」
僕らが立って店内をウロウロとしていると、辻と加護の息のあった声が階段の上から聞こえてきた。
煙草に火をつけようとしていた紗耶香はその煙草をしまい、壁にもたれかかっていた
保田さんは壁から背中を離す。
- 102 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時03分50秒
- 「「まずはののあいコンビからの入場になりまぁす」」
そう言って2人は手をつなぎながら階段をゆっくりと降りてきた。
いつもは元気に走り回ってるイメージしかないせいかもしれないけど、ドレスアップして
髪をおろしている辻と加護は普段よりも大人っぽく見えた。
『可愛い』こんな言葉がぴったりだ。
2人とも同じデザインのドレスを着ていて、色は加護がピンクで辻が青。
膝くらいまでのスカートをゆらゆら揺らしながら上品ぶって口に手を当てながら
『おほほ』笑いを浮かべて降りてくる。
そんな2人を微笑ましい気持ちで眺めていたら、いつのまにやらおいてけぼり。
紗耶香も保田さんも階段のすぐ下まで行き、辻と加護の腕を自分の腕に絡めてエスコートしていた。
そして僕の所まで来ると僕の両腕を2人がきっちりと捕まえて、さっき紗耶香や保田さんがしたのと
同じ様に腕を絡めてきた。
「今日のよっすぃ〜かっこいいのれす」
「ウチも最初『あのでっかい兄ちゃん誰?』って思った」
「あ、ありがとう」
返す言葉が見つからなくて、素直にお礼を言うことにした。
2人は笑うと、僕の腕に自分達の腕を絡めたまんま、また声をそろえて次の人達を呼んだ。
「「次は安倍&矢口コンビでぇす」」
- 103 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時04分35秒
- 音楽とは合わない元気な声。
2人らしいといえば2人らしい。
いつもとのギャップに戸惑っていた僕は少しだけ安心感を覚えた。
階段から降りてくる安倍先生と矢口さん。
安倍先生も矢口さんも髪をアップにしていて、安倍先生はロングスカート、矢口さんは
すねらへんまでのゆったりとしたスカートをはいていた。
辻加護の時と同じように紗耶香と保田さんは2人の腕を取り、僕らが立つ所までやってきた。
今さらだけど、ここまでリハーサルをしたんじゃないかと思うくらいに完璧に決まっている。
それくらに2人はかっこいい。
「ケメちゃん、次は飯田さんだよ」
加護はそう言うと矢口の腕をとっていた保田の背中をぽんっと叩いた。
『何で俺なの?』という表情を浮かべている保田さんの背中を次は辻が少し強めに押す。
押し出されたという形になった保田さん。
ぶっきらぼうに振る舞ってはいたけれど、その表情は何だか照れくさそうに笑っていた。
「・・・圭ちゃん」
- 104 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時05分36秒
- 階段をゆっくりと降りてきた飯田さん。
その美しさに下にいた僕らは息を飲んだ。
もちろん、安倍先生だって矢口さんだって辻たって加護だって凄く綺麗で可愛いんだけど、
飯田さんは何か違うオーラみたいなものがあった。
綺麗な黒髪に、その色にあった真っ黒な細みのドレス。
揺れる黒くて長い髪が光りにあたって綺麗に輝いている。
「・・・綺麗じゃん」
「ありがと」
下で待っていた保田さんに自分の腕をからめてゆっくりと歩く。
何だか結婚式のような画に思わず僕まで微笑んでしまいたくなった。
紗耶香も同じように思ったのか、僕の隣でにやにやしながら保田さんのことを冷やかしていた。
「市井さん、次はごっちんなのれす。早く行くのれす」
辻が腕をぱたぱた振って紗耶香のことを叩いている。
紗耶香はそんな辻の頭に手を置くと、颯爽と階段の下まで移動した。
「いちーちゃーん、行くよぉ〜」
「はいよぉ・・・っておい!!」
何を思ったか階段の途中からごっちんは紗耶香めがけて大ジャンプ。
慌てた紗耶香が上手いことごっちんを受け止めたけど、驚きのあまり目を見開いている。
- 105 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時06分44秒
- 「っばか!危ないだろおが!!」
「へへっ、だっていちーちゃんが受け止めてくれるって信じてたもん」
「・・・ったく」
『これが恋人同士の空気だぞ』みたいなのを目の前で繰り広げられてる僕ら。
正直こう、直視していいのかが分からない。
っていうか僕は恥ずかしい。
そう、僕だけ何だか照れている。
他の皆は冷やかしたりして騒ぎ捲ってるけど、僕だけ照れて2人を直視できないでいた。
「よし子かっこいいじゃん」
薄緑のドレスを着たごっちんが、僕の目の前に立って僕の顔を覗き込んでいる。
ごっちんの隣では紗耶香が『俺の自身作』と言いながら胸を貼ってる。
・・・何だこのカップル。
僕の前でそんな見せつけられたって困るよ。
「ほら、次はよし子が行く番でしょ。梨華ちゃん、待ってるよ」
ごっちんが空いている方の腕で僕の肩に手を置くと、それが合図だったかのように辻と加護が
僕の両隣りから離れて行った。
・・・これ、絶対僕に内緒でリハーサルしてたでしょ。
そんな疑問を持った目でごっちんを見ると、ごっちんはふにゃっとした笑顔をつくって
口ぱくで『がんばれ』と言った。
- 106 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時07分21秒
- 階段までの道。
それが果てしなく遠く感じた。
僕の心臓は早鐘のように鳴っていて、緊張しているのがバレないように歩くので精一杯だった。
さっきの紗耶香や保田さんのを真似して、階段の下、腕を後ろにもっていて胸を貼って石川さんが来るのを待つ。
緊張するなという方が無理なこの状況。
自分を落ち着かせるように目線を床に落とした。
「・・吉澤くん?」
上から聞こえてくるのは石川さんの声。
それもナンデか疑問系。
『そうだよ』という返事の代わりに顔を上げた。
そして僕は飯田さんの時以上に息を飲んでしまった。
少し濡れたような感じの綺麗な髪、大きく胸元の開いた真っ赤な細みのドレス。
スリッドがはいったそのドレス、石川さんが歩く度に網タイツをはいた足が見える。
「何か雰囲気が違うから吉澤くんじゃないかと思っちゃったよ」
僕の隣まで石川さんが降りてくると、香水の匂いが僕の所まで流れてきた。
正直倒れそうだ。
今の僕は緊張しすぎ。
香水の匂いが僕のことを激しく狂わせているのが分かる。
それでもこんなにあがっていることがバレたくない。
だから平常心を装って、腕をすっと差し出した。
- 107 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時07分56秒
- 石川さんの細い腕が僕の腕にそっと絡まる。
香がさっきよりも近い距離に届いて、軽い目眩を感じた。
僕は皆が待つ方にゆっくりと歩きながら、石川さんだけに届くように言った。
『すごく綺麗です』
と。
石川さんは照れたような声で、僕と同じように小さな声で『ありがとう』と言った。
その声と、その笑顔。
この時、僕はまた石川さんに恋をしたんだと感じた。
それは考えるようなものじゃなくて、すごく感じたことだった。
埋もれていた僕の気持ちがまた新たに目覚めた。
そう感じた。
- 108 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時08分30秒
- ◇◇◇
- 109 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月14日(月)17時09分18秒
- ◇◇◇
- 110 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月14日(月)17時11分15秒
- 更新しました。
ちょっと紹介文みたいなのが多くてすみません。
次回の更新で『夢空間。』はラストです。
二日酔いで寝不足でハロモニのいしよしのノックアウトの私です。
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
こちらこそはじめましてです(ぺこり)
何だか恥ずかしくて顔が上げられないくらいですね(照)
ありがとうございます。
これからもそう言っていただけるようい頑張りますのでこれからも
よろしくお願いしますです。
>token様
SP連ちゃん、歓迎して下さってありがとうございます。
吉澤くんもずいぶんと変わってまいりました(ひな鳥を見守る母取りの気持ち)
昔は『変な闘争心』なんて絶対燃やさなかったのに(うれし涙)
続きは少し甘めで。
やっぱりSPですからね(w
- 111 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月14日(月)17時11分46秒
- >ぷよ〜る様
いいですねぇ〜オイラのMacはおば(ry
さらに余談ですが、高校時代私の家のようなMacのことを皆『バ○Mac』と言っておりました(苦笑)
実習の途中でよく止まるんです・・・(汗)
SPは唯一書ける甘々の場!!!!!!
そう思いながら書いてたりします。
>Silence様
堪能していただけて嬉しいかぎりです(w
今回はちょっと紹介文とかが多くて・・・(大量発汗)
次回は甘めで。
私的にはですが甘めです。
そうです、癒しは大切です!!
いしよしも書いてて癒されます(w
- 112 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月14日(月)20時04分54秒
- 更新お疲れ様です!!
石川さんの美しさは罪ですね!!(w
当方も石川さんの写真集でのドレス姿には
完全にやられてますんで、吉澤くんの気持ちは
よ〜く分かります。
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 113 名前:token 投稿日:2003年07月14日(月)21時25分48秒
- 更新お疲れ様です。
ドレスアップしたCP達が勢揃い。正に『夢空間』ですね。
次回でラストだなんて、夢よ覚めないで、と我が儘を言ってしまいそうです。
自分の恋心に改めて気づいた吉澤君、どうか梨華ちゃんと楽しんでくださいね。
- 114 名前:Silence 投稿日:2003年07月15日(火)01時08分31秒
- 更新お疲れでした〜・・・ってええ〜〜っ!!!!!
い、石川さんのド、ド、ド、ドレ・・・パタ←倒れた音(ベタw
石川さんのドレスは完全にいや、完全犯罪です。なんてこった。
自分もいしか〜さんの写真集であれの完璧さを身にしみて実感
した1人です。あれ見て一生石ヲタであることを誓いました(爆
>癒しは大切です!!いしよしも書いてて癒されます(w
書いてて癒されるですかぁ〜。うちのいしよしは・・・
癒されね〜(w それでは次回も期待しております!!
- 115 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月15日(火)21時22分34秒
- うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ドレスが!!石川さんドレスが!!!なんか色っぽいですね〜!!
辻加護も可愛かったしなちまりも可愛かったし飯田さんも素敵だったんですが、
やっぱり私は石川さんに釘付けになってしまいます(笑)
吉澤君もかっこよくなって…二人並んだ図を思い浮かべるだけで、悶え死にそうです(笑)
いやー、ストーリーだけじゃなくてこう言うところでも喜ばせて頂けるなんて…嬉しいです♪さすがっ!!
次回も楽しみにしております♪
- 116 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年07月15日(火)21時26分44秒
- 作者様、更新お疲れ様です。
ほんとに夢空間ですYO!
ドレスアップした石川さん&タキシードな吉澤君。
ある意味では結婚披露宴のお色直ししたときの服装みたいです!
『すごく綺麗です』
吉澤君、成長したね!よく言えました!!!
では、次回更新も楽しみに待ってます!
- 117 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年07月16日(水)10時14分57秒
- 更新お疲れ様です!
いやぁ〜!なんだか目に浮かぶような光景ですね!
飯田さんと梨華ちゃんのドレス姿といい、それに照れてるよっすぃー達…。
おもしろいです☆吉澤君は自分の気持ちを再確認したみたいですけど、
石川さんの方はどうなんでしょうねぇ。気になります!!
- 118 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)19時51分46秒
- 今日のバーテンは保田さん。
次々と注文が集まる中、楽しそうにカクテルを作っていく。
お酒は二十歳になってからだけど、辻も加護もちょっと飲んでいた。
あんありお酒に強く無い僕は、アルコール度数の低いカクテルをちびちびと飲んでいる。
本当は飲むつもりもなかったんだけど、隣にいる石川さんが眩しすぎて、飲んでもいないとまともに
話しすらできない気がして、僕はアルコールに手を伸ばした。
石川さんのドレス。
胸元が大きく開いているて、スリッドが入ってる驚きだったのに、さらに追加で背中部分まで綺麗に開いていた。
背中部分を貼り巡る細い紐の隙間から見えるのは石川さんの素肌なワケで・・・。
こんなドレスはハリウッドのアカデミー賞授賞式の中継でハリウッド女優が着ているのを見たくらいしかない僕は・・・
目線を何処に持っていっていいのかで随分悩んでいた。
今、石川さんは辻や加護や矢口さんやごっちん達とごっちん命名『だんすふろあ』で元気に踊っている。
ちなみ今流れている音楽は『ダンス☆マンの接吻のテーマ』だ。
『EARTH,WIND&FIREじゃないのかよ』と紗耶香のつっこみを受けつつ、ごっちんは楽しそうに踊っていた。
僕はカクテルを飲みながらさっき石川さんが話してくれた話しを思い出した。
石川さんが早生まれで、学年的には一つ上という考え。
それはやっぱり合っていた。
何気なく聞いたら、石川さんも同じように何気なく答えてくえた。
- 119 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)19時53分19秒
- 石川さんは学費と一人暮らしの資金調達の為に1年間バイトをしていたらしい。
もちろん1年で全額なんて無理に決まっているから親に大部分出してもらっているのが現状だが、それでも
1から10まで負担はかけたくないということで働いていたんだそうだ。
僕はそんな石川さんの話しを聞いて、自分自身すごく親というものに甘えていたことに気が付いた。
もちろん、ちゃんと働くようになったら学費とかは少しずつ親に返していくつもりだけど、
もう入学前からきちんと動いていた石川さんが格好よく見えた。
「しかし人間ってのは化けるもんなんだねぇ。
なっち最初よっすぃ〜だってわかんなかったよ」
「カオリもだよ。吉澤だって気付いたのはこの背の高さでだもん」
今、僕の隣では飯田さんと安倍先生が僕の方を見て、僕の今日の感想文みたいな話しをしている。
お酒も入ってじょじょにテンションのあがってきた2人。
本人が気付いてるのかどうか分からないけど、声のボリュームがけっこう大きくなっている。
「ほれほれ、そんな1人でちびちび飲んでないで梨華ちゃん達と踊っておいでよ」
「いや、僕踊れないですし」
「そんなの関係ない!ほら、カオリを見てぇぇ〜〜」
突然立ち上がった飯田さん。
石川さん達がいる方に走りだし、腰をフリながらノリノリで踊っている。
・・・さっきのあの『神秘的』っていう言葉が音をたてて崩れていくんですけど。
安倍先生も飯田さんを見て、変な闘争心に火をつけられたらしく『負けないべ〜!!!』と
叫びながらダンスフロアの中心に行って踊り始めた。
- 120 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)19時54分34秒
- 「女性陣は元気だねぇ」
今まで飯田さんが座っていた場所に、紗耶香がゆっくりと腰をおろした。
保田さんはすかさず紗耶香にカクテルを差し出すと、煙草に火をつけた。
一連の動作のように繰り広げられる世界。
僕の知らない大人の世界。
「紗耶香は踊らないの?」
「俺、こういうノリパス」
「じゃあちょっと雰囲気変えますか」
そう言うと保田さんは音楽のボリュームを絞ると、横にあったCDと入れ替えて音量を上げていった。
ついでに照明の色も少し落とし、保田さん曰く『むでぃー』な感じに変える。
キラキラ輝くミラーボールは5000円以上の働きをしていると思う。
ここの空間は今ミラーボールが反射させた光りと、落とした照明の色で成り立っている。
「どうよこれ」
「もちろん圭ちゃんもだろ?」
紗耶香は吸っていた煙草を灰皿に押し付けると、カウンターにいる保田さんを引っぱり出して、
ダンスフロアで踊っていたごっちんの手をとった。
その隣では飯田さんが困っている保田さんの手をとっていて、どうやら飯田さんの方から誘っているみたいだ。
- 121 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)19時55分33秒
「ふぇ〜喉乾いたぁ」
ダンスフロアから戻ってきた石川さん。
変な声を上げながら手でぱたぱたと顔を扇いでいる。
それに続けと言わんばかりに戻ってきた辻と加護と矢口さんと安倍先生も首を縦に振っている。
「じゃぁ何か飲み物出しますね」
こういう時は僕の役目。
女性陣に飲み物を。
今日見て学んだこと、こういう場での動き方。
来ていた上着を椅子にかけて、チョッキ姿で適当に飲み物を出した。
ダンスフロアでは2組みがゆったりとしたリズムに身を任せ、静かに静かに踊っている。
『SADEのBY YOUR SIDE』が心地よく僕の身体にしみ込んで行く。
皆の目線はフロアの方へ。
僕はあんな表情をするごっちんを僕は初めて見た気がする。
きっと紗耶香が目の前にいないとしないであろうその表情。
それは幼馴染みの僕が見ても綺麗だと思う程だ。
紗耶香の腕がごっちんの細い腰を捕まえて、お互いの距離をゼロにする。
保田さんも飯田さんも同じようにゆったりと踊っていた。
最初は照れくさそうに笑っていた保田さんも、今じゃすっかり男の顔。
僕の憧れる大人2人。
- 122 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)19時56分18秒
- 「・・・綺麗だね」
石川さんの呟きに、僕は小さく頷いた。
「ねぇ、ウチらも踊りたい」
「んじゃ加護はオイラと踊るかい?」
「じゃののはなっちとね」
「へいっ!!」
加護の一声で動きだした4人達。
取り残されたのは僕ら2人で・・・
石川さんの目線はフロアの方。
こういう時の僕の役目・・・
そして心の奥の僕の願い。
カウンターから抜け出して、行くべき所はただ一つ。
全然ない勇気の欠片を広い集めて声にしよう。
「石川さん・・・」
「・・・はい」
石川さんの視線を真直ぐ受けて、僕はカウンターから抜け出した。
僕よりも小さな手をとって、ゆっくりゆっくりダンスフロアへ。
込み合う人込みの中で、皆を真似して控えめに石川さんの腰に左手を回した。
大きく開いたドレスのせいで、僕の手は直に石川さんの肌へと到達する。
距離をゼロに出来ない臆病な僕。
繋いだ右手に自然と力が隠ってしまう。
僕の肩に回された石川さんの小さな手は、そんな僕との距離を縮めるように力が隠っていた。
- 123 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)19時59分21秒
- 曲は変わって『MARIAH CAREYのTHANK GOD I FOUND YOU』
音楽に身をゆだねるているのは僕らも同じで、踊り方とか何も分からないけど、ただここの
空間とここの音楽と間近にいる石川さんに、僕は溺れていた。
石川さんの表情を見る余裕すらない僕が、突然感じた肩への重み。
宙に漂わせた視線を重みのした方へ動かすと、石川さんが僕の肩に頭を乗せているのが見えた。
落ち着かない心臓の音はきっと石川さんにも伝わっている。
ゼロではない身体の距離よりも、ゼロになった僕と石川さんが繋がっている肩の部分が
体中で一番熱を帯びていた。
永遠とも思える時間の中で、僕はさらに石川さんに溺れていく。
もう、止まれないくらいに。
きっとここからは抜けだせない。
そして、僕は抜け出したくないと叫んでいる自分の声に目を閉じた。
- 124 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)20時00分11秒
- ---------------
----------
-----
祭りの後の静けさは、どうしてこうも悲しくなるのか。
片付け終わって一汗かいた僕は、またいつものように元通りになった店を見てため息をついた。
「はいよぉ、よし子お疲れ様ぁ」
ごっちんはぐでーっと机に顎を乗せていた僕に麦茶を出してくれた。
ありがたやぁありがたや。
乾いた喉にはこれが一番。
一気にコップの中身を飲み干すと、少し身体が生き返った気がした。
ついでに着慣れないシャツのボタンを第2くらいまであけてみると、少し生き返った僕にさらに
新鮮な空気が調達されて、僕の身体はさらに回復を見せた。
ちなみにごっちんはすでにいつもと同じジャージ姿。
昨日着ていたドレスは皆貸し衣裳屋さんに矢口さんが返しに行ってくれた。
「やっぱさ、よし子はかっこいいね」
椅子をがたっと引いて僕の目の前に座ったごっちん。
さっきの僕のように顎を机に乗せて、ふにゃっと笑っていた。
「やめてよ、何かくすぐったいじゃんか」
- 125 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)20時01分12秒
- その視線から逃れるようにして視線を天井に向けたら、そのには外しそびれたミラーボール。
昨日からじーじーと音を立てていたであろうミラーボール。
・・・何だか昨日のことを思い出す。
まるで夢のような時間。
本当に『夢』という言葉があてはまるような時間。
踊り終わった後、恥ずかしすぎてお互いに顔を見合わせられない程だった。
(それは僕だけだったかもしれないけど)
照れを隠すように渡したプレゼントを受け取った時の石川さんの笑顔。
徹夜してよかったなんてことを思った。
石川さんが辻や加護達と踊っている時の楽しそうな笑顔。
皆に出会えてよかったと思った。
紗耶香もごっちんもしこたま酔って、すごいテンションで踊っていた。
保田さんまでもがかなりのノリで踊っていた。
見ていて恥ずかしいくらいのはじ気っぷり。
恥ずかしすぎて手で顔を被った。
保田さんには『あんた失礼ね』と頭をどつかれた。
酔っぱらった辻と加護は『ちゅー』とか言いながら色んな人にキスをしまくる始末。
背の高いことで僕は何とかその手から逃れられたけど、僕を除く全員は頬に被害を受けていた。
- 126 名前:夢空間。 投稿日:2003年07月16日(水)20時02分06秒
- 「でもさ、よし子誕生日とかよく買いにいく時間あったね」
「ん?そんな時間なかったよ」
僕があげたプレゼントは僕が昔買った空の写真集。
自分で言うのも何だけど、保存状態はばつぐんだと思う。
買ったのは1年くらい前だけど新品みたく綺麗だったはず。
それに自分で絵を描いた紙をつかって包装したんだ。
時間かけて正解だったと思える出来だったし、僕的には満足。
「そっかぁ、やっぱりなかったんだ」
「・・・やっぱりって何さ」
「何か包装紙みたらよし子っぽかったから」
ふにゃり笑顔禁止令を出したいくらいだ。
その笑顔に僕が弱いことを絶対ごっちんは知ってるはず。
怒れなくなるのを知ってるはず。
確信犯だ。
「ま、梨華ちゃん喜んでたみたいだしえがったじゃんか」
「・・・まぁね」
時間はゆったり流れていく。
さすがに2日徹夜はきつすぎる。
僕の瞼はごっちんと会話をしながらも、だんだんとくっつきそうになっていて、一瞬でも気を抜くと
深い眠りの世界に落ちてしまいそうだ。
さすがにお店で寝るわけにはいかないから、僕はさっさか天井のミラーボールを取り外して家へと戻った。
布団に倒れこんだ瞬間に僕は夢も覚えていない程の眠りの世界に落ちていった。
- 127 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月16日(水)20時04分27秒
- 更新しました。
ちょっと奮発更新です。
やっぱりSPのしめですからね(w
仕上がりとしては甘めだと思うのですが、どうでしょうか?
>ぷよ〜る様
私も写真集を見た時に見事完全にやられました(w
あのままのイメージより少し変わっているんですけど、想像しやすかったでしょうか?
私の頭の中ではばっちりです(って当たり前か)
シメはこんな感じでし。
SPは砂糖が少々入ってもいいんじゃないかと思いまして(w
でも自分の中では砂糖が大さじ1杯入ってます(ww
>token様
いつもタイトルつける時に無い知恵絞って考えてるんですけど、
『夢空間』って思いついた時は全体&吉澤くんにとってのっていう意味も
込めてみたんです。
夢みたいな現実が目の前にあると、現実が真実味を無くしてしまう感覚に
襲われることがあるじゃないですか(って私だけかもしれませんが)
だからここの空間が特別で、本当に夢なら覚めないで欲しいと
願いたくなってしまったり・・・とか言ってみたり(w
吉澤くんにはきっと『夢空間』です。
そしてプレゼント用意してたみたいです(吉澤くんぱわー)
- 128 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月16日(水)20時05分02秒
- >Silence様
た、大変だぁぁぁぁ!!!!!
Silenceさんが倒れちゃった!!救急車〜〜〜〜〜←ベタな感じで(w
写真集は本当に名作集だと思いました。
写真も素材も美しい!私もあれでさらに石川さんにはまりました。
私同様、吉澤くんもはまったことでしょう(w
完全犯罪にはまった罠。
きっと逃げられません。
そして逃げたくありません(w
>クロイツ様
着せてみたかったドレスみたいな感じですね(w
実写で見てみたい2ショット!!!
頑固一徹一家のようにきっと絵になることでしょう(妄想でいっぱいな私)
↑
余談ですが、今の私のPCの壁紙は『頑固一徹一家』です(爆笑)
SPはやっぱり甘めが一番です(握り拳)
だから今回の更新は甘いです。
私にとってはかなり甘めです☆
>ななしのよっすぃ〜様
そうですね、確かに結婚披露宴のお色直しした時みたいですよねぇ(妄想妄想)
本当に実写で見てみたいです(w
『すごく綺麗です』吉澤くんはこういう言葉が言えるまでに随分な時間がかかったような気がします(苦笑)
そして今回も頑張っちゃいました。
吉澤くんの成長に拍手を贈ろうと思います(w
『夢空間』は堪能していただけたでしょうか?
こんな感じでした。
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
石川さんの気持ち編はきっとやることでしょう。
私も石川さんの気持ちが知りたいですから(w
遅くはならないと思います。
そして早くもないような気が・・・(汗)
『夢空間』私的にも『夢空間』です(w
堪能していただけたら幸いです☆
- 129 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年07月16日(水)23時16分55秒
- 作者さま、更新お疲れ様です。
胸元が開いててスリットが入ってて、背中が出ていて…(妄想中)
やばすぎます、実写版で是非とも見たいですYO!
結婚式の司会なら、ななしのよっすぃ〜にお任せを!いい仕事しますYO!
そのときは一声かけてください!やりたいですね、石川さんと吉澤君の結婚式の司会!
では、勝手に妄想しつつ更新を楽しみに待ってます!
- 130 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月17日(木)00時15分14秒
- 更新お疲れ様です!!
当方もこのドレス姿の実写版キボーンです!!(w
『夢空間。』・・・甘い一時を読者にも味わわせていただき
ありがとうございました(正座でペコリ)
では、次回も楽しみにしてます♪
- 131 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月17日(木)07時52分51秒
- ろ、ロマンティック…!!すごいロマンティックです!!腰が抜けそうです!!!
>それに自分で絵を描いた紙をつかって包装したんだ。
やってくれるぜ、吉澤君…!!!なんかもー、血ィ吐きそうなくらいどきどきしちゃいましたYO!!
「まともに見られない」とか言いながら、しっかり石川さんのドレスを説明してくれる吉澤君(笑)かっけー!!
いやぁ、もう…素敵ですー!!仲間達、最高だー!!
だんだん距離が近付いて行くいしよしの様子にも、すごいドキドキさせられてます
ああ、目が離せない!!
次回も楽しみにしてます!!
- 132 名前:Silence 投稿日:2003年07月17日(木)11時55分31秒
- 甘い、すっごく。後藤さんじゃないけどふにゃっとした和菓子みたいな
かんじの甘さ。匿名さんの文章力なのか、自分の想い入れが深いから
なのか、(多分両方でしょうけど)なんかこれが本当の甘さっていうのを
おもいっきり感じました。う〜ん、まさに夢の空間ってかんじでした。
吉澤くんにはこの夢を逃げ場所にしないで本当の夢(石川さん)を追って
ほしいです。(っと勝手に変な妄想をしてみるw
更新お疲れ様でした。救急車から飛び降りて家に戻って見た甲斐がありま
した。(w 次回の期待の方もすっごく楽しみにさせてもらいます!!!!
- 133 名前:token 投稿日:2003年07月17日(木)21時39分20秒
- 更新お疲れ様です。
そうか、吉澤君プレゼント用意してたんだ〜。しかも包装紙が自作の絵!にくい演出ですね。
梨華ちゃん、きっと包装紙の方も大切に取って置くんでしょうね〜。
ドレス姿の梨華ちゃんはもちろんですけど、飯田さんも素敵でした。そしてバーテンダーの
保田さん、かっけ〜。
では、今回の余韻に浸りつつ、次回をまったりお待ちしております。
- 134 名前:小さな約束 投稿日:2003年07月19日(土)09時11分28秒
- 冬休みが終わり、私達の学生生活は残りわずかとなった。
聞き飽きたような台詞だろうが、表すならば『あっという間』だ。
卒業制作納品日まで残すところ1週間。
講議などの授業はもうすぐ終わりを迎えるし、実際学生として授業を
受けられるのは本当にあと数回なのだ。
使い慣れた机に手を置てみると、机はひんやりしていた。
何だか卒業というのを意識すると、変に感傷的になるみたいで、
誰もいない教室から出るのにためらいを感じた。
風に揺れるカーテンも、消し跡の残る黒板も、何故か特別に見えるから不思議だ。
ぴたっと頬を机にくっつけると、机特有の温かい冷たさがしてくる。
この虜になるとなかなか抜けだせるもんでもない。
私は見事虜になってる人間だけどね。
「う〜ん幸せ〜」
小さな幸せここにあり。
だけど学校で感じることが出来るのも後わずか。
これは学校でやるから気持ちいいのだ。
- 135 名前:小さな約束 投稿日:2003年07月19日(土)09時12分02秒
- 冬の陽射しも手伝って、私は夢の世界に誘われる。
ゆらゆら小舟は動きだし、私は見事夢の中。
オールのない小舟は波にまかせて流れてく。
先にあるのは何なのか。
途切れる意識は夢への扉。
私の小舟は進みます。
そして扉は開かれます。
いい夢ならばそれがいい。
ここでの夢はもうすぐ終わりを迎えるから。
残された時間で見る夢の、夢を夢みて私は瞼を閉じる。
『学校』
そこは特別な場所。
私の大切な場所。
遠ざかる意識の中で、私は肩に柔らかい感触を感じた。
- 136 名前:小さな約束 投稿日:2003年07月19日(土)09時12分40秒
- ------------
--------
----
「う〜ん・・・」
どれくらい寝たんだろう。
覚めきらない意識の中で時計を確認してみると、針は20分くらい進んでいた。
落ちる陽のスピードは相変わらず早く、外の色はオレンジ色に変わっている。
空に漂う雲はそのオレンジ色を強く吸い込んで、白い色をほとんど残さずに変化を遂げていた。
「あ、起きた」
がたっという音が小さく鳴って、声が聞こえた。
次にパタンと本を閉じるような音が聞こえてさっきよりもがたっという音が大きく聞こえた。
「・・・安倍先生」
「おはよう。あんまりにも気持ちよさそうに寝てるから起こすの悪いかねぇって思ってね」
「あ、ごめんなさい。教室閉めるんですよね」
「あははは、んなに気にすることないよ。
どうせなっちもここで少しまったりしようと思ってたとこだからさ」
机に置いた本を指差しながら安倍先生はにこやかに笑った。
ごっつぁんとは違う類の笑顔で、だけどその笑顔は側にいる人を温かくする力を持っている。
相変わらずいい笑顔だ。
私には出来ないからうらやましくなるくらいに。
- 137 名前:小さな約束 投稿日:2003年07月19日(土)09時13分12秒
- 「いや〜もうすぐ石川も卒業だねぇ」
「・・・はい」
「早いもんだね。こう月日が巡るっていうのはさ」
安倍先生は立ち上がると私の前の席に来て、背もたれに両腕を乗っけていつもみたく笑った。
ちょっとだけ寂しそうに。
「なっちさ、このお仕事についてもう5年くらいになるけど毎年この時期にはこうやって教室くるんだよ。
何だろう・・・落ち着くっていうのかな。
教室って独特のニオイみたいのがなっちある気がしてさ、この時期は少しそのニオイが変わるんだ。
だから余計にここに来たくなる。
で、来てみたら石川が気持ちよさそうに寝ててさ、あぁ石川も学校が好きな娘なのかなぁって思った。
すっごく勝手に想像したら何だか嬉しくなっちゃってね、なっち起こせなかった」
いつもよりも饒舌なのは私の気のせいなんだろうか。
多分・・・違うと思うけど、安倍先生は笑顔を浮かべている。
お日様みたくにっこりと笑ってる。
- 138 名前:小さな約束 投稿日:2003年07月19日(土)09時13分54秒
- 「・・・やっぱり寂しいですか」
「うん。そりゃ寂しいよ。2年間見守ってきた子達がいなくなっちゃうんだからさ。
そんなかで時たま戻ってきて遊び来る子もいるかもしれないけど、そうでない子もいるワケじゃん。
だから寂しい。
でもそれでも嬉しい」
「・・・嬉しい?」
「うん、何だか嬉しい」
私にはちょっとまだ意味が分からない。
それはきっと聞くものではなくて感じるものだから。
安倍先生はそれを感じていて、私はそれを感じていない。
単純。
だけど難解。
「いつか私も分かる時とか来るんですかね」
「そうだねぇ、いつかは来ると思うよ」
「そっか、じゃあその時は先生に連絡しますね」
「らじゃ。なっちお婆ちゃんになってもまってるよ」
- 139 名前:小さな約束 投稿日:2003年07月19日(土)09時15分52秒
- 私達は顔を見合わせて笑いあった。
それからしばらく話して、私達は教室を後にした。
安倍先生はまだ仕事があるみたいなので、私は1人寒い道を歩いて帰った。
毎日のように使っていたこの電車も使わなくなるのかなぁって思うと少し寂しい気持ちになったから、
携帯のカメラで駅の写真を撮ってみた。
それだけでどうこうなるってモンでもないけど、私はその写真を保存した。
家に着くまでに空は暗い色に変わり、いっそう風が冷たくなった。
冷えた部屋に暖房を入れて、温かな紅茶を飲むと気持ちが少し落ち着いてきて、私は机の上に投げ出した携帯を
拾い上げてさっき撮った写真を呼び出してみた。
「・・・。」
ぴっぴっぴ・・・ぴっ
いらないよね。
別に。
削除した写真の画は消えないもんね。
消えそうになって思い出したくなったら行けばいいんだもんね。
今日もとくに何があったというワケじゃなかったけど、1日は終わりを迎えようとしている。
平凡だっていいんじゃない?
そんな風に思えた1日になった。
- 140 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月19日(土)09時17分30秒
- 更新しました。
何のとりとめもない話しです。
でもたまにはこういうのもいいんじゃないかと・・・
>ななしのよっすぃ〜様
実写版見たいですよねぇ。
私も切実に願います。
結婚式の司会ですね。
もしもそういう時があるようでしたらお願いします(w
>ぷよ〜る様
ですよねぇ。
皆様やっぱり実写で見たいですよね。
こんなの実写で見れた日にはもう(ry
甘い一時を味わっていただけたなら幸いでございます(同じく正座でぺこり)
>クロイツ様
腰 砕 け ☆
ってやつですか(w
もうここまで来たなら『いっちゃえいっちゃえ』みたいな感じですよね(苦笑)
そして吉澤くんの眼にはしっかり石川さんのドレスが焼き付いたみたいですね。
ここまで説明できるようになった吉澤くんに拍手です♪
>Silence様
救急車ですか(0○〜○)!!!
ど、どうしたんでしょうか・・・(オロオロ)
そんななかで『夢空間』を味わっていただけたようで。
ありがとうございます。
吉澤くんにはこれからも石川さんに向かって突っ走ってもらいます。
ってか突っ走って欲しいです(苦笑)
>token様
いや〜あのレスをいただいた時には焦りました(苦笑)
吉澤くんはにくいことをしてくれます。
さすがです。
そして石川さんは本と一緒に包装紙も大切にしていることでしょう。
いずれは額いきで(w
- 141 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年07月19日(土)15時42分24秒
- 卒業・・・。なんか切ないですねぇ。「卒業」は必ずやって来るわけですが。
石川さんは卒業しても吉澤君と二人で会いたいと思うんでしょうか?気になるところです。
卒業が近づくにつれ、二人の想いが盛り上がることを期待します!
- 142 名前:token 投稿日:2003年07月19日(土)23時37分30秒
- 更新お疲れ様です。
何か特別な事があった訳でもないのに、何故か折に触れ思い出す平凡な一日。
私にもそんな日があります。あれ、なんか変な感想ですね。(汗)
なっち、今回は正に先生ですね。最近はあまり教師らしくなかったですから。
あっ、そうか冬休みだったからか!
では、次回をまったりお待ちしております。
- 143 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月21日(月)04時02分24秒
- 更新お疲れ様です!!
こういう話好きですよ。
それに、最近はSPが続いてたんで、今回のお話のおかげで
当方は少し落ち着きを取り戻せました。
何か最近は浮かれモードだったんで・・・(w
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 144 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時17分21秒
- 僕は手に持った筆を下ろした。
これが最後の仕上の終了。
言うならば僕の学んだ2年間がつまっている作品だ。
筆を持ったまましばらく目の前に出来上がったモノに目を向けた。
長い長い道のりを経てここまで辿り着いた。
達成感と共に襲ってくるのは妙な喪失感。
そして充実感。
僕の世界の代弁者。
それがこの1枚の絵。
詰め込んだ世界はありふれているかもしれないけど、この世でたった1枚だけの僕の世界の代弁者。
『言わずとも語ってくれる』
そんなことは分からない。
伝わる伝わらないかも分からない。
それなら伝わる人にだけ伝わればそれでいい。
僕は今出来ることをここに詰め込んだ。
もう窓の外は明るくなっていた。
鳥の鳴き声が僕を眠りに誘いだす。
明るい陽射しは目の奥が痛む程だ。
- 145 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時18分32秒
- 僕は筆をバケツにつっこむと、絵の具のついた服のままベッドに倒れこんだ。
全身に回った疲労が一気に押し寄せてきて、布団よりもさらに奥へと僕を沈ませていく。
眠れ眠れと瞼は降りて落ちろ落ちろと眼鏡は落ちる。
一眠りしたら学校へ行かなきゃ。
そんなことを考えながら僕は目覚まし時計に手を伸ばして、そこで意識は終わりを迎えた。
睡眠時間は大体2時間。
中途半端に眠ったおかげで余計にダルク感じるけど、とりあえず出かけなきゃ。
さっさかお風呂に入って乾いた絵を梱包して母と一緒に朝食を取って学校へ向かった。
今日は卒業制作の搬入日。
『卒業写真を撮るから全員スーツで登校のこと』そんなことが書かれたはり紙を見て、
学校にいた何人が僕と同じようにため息をついただろうか。
慣れないネクタイと靴に、その姿に不釣り合いな程大きな荷物。
出勤時間を上手い事ずらしてもやはり動きにくかった。
卒業制作の搬入日が終わってしまえば、残りの授業は講議1回だけになる。
逆に受け取ってもらえなかったり、間に合わなかったりすると強制的に6月卒業。
まぁ学校法人なんだからそのくらい当たり前なんだけどね。
先生達は僕らに『かならずこの時期になって泣く生徒がいる』と脅しをかけていた。
去年僕もそんな人を見たことがあったからそれを冗談と受け取れず、正直筆が進まない時は焦った。
- 146 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時20分05秒
- 搬入の前にクラス写真を撮ることになっていた。
その時間まであと30分くらい。
とりあえず控え室(仮)というはり紙の貼ってある部屋に僕は作品を置くと、部屋の扉を閉めてから着慣れない
スーツのポケットに手をつっこんでエレベーターを使って5階で上がって行った。
入り口まで来て鍵がかかってたらどうしようとか思ったけど、僕はその時はその時だと思ってドアノブを回した。
当たり前だけど、鍵はかかっていて、僕は自分の想像の中と同じようにため息をついて引き返して行った。
落ち着かないっていう気持ちが僕の中にはあったんだろう。
そのまま控え室(仮)に戻る気持ちになれずに、そのまま屋上に向かった。
朝で天気でちょっと寒くて温かくなってきている今の時期に屋上に上がるのは何だか気持ちよい。
僕の身体がそう呟いていた。
フェンスに近寄ってそこに指を絡めて遠くを眺めてみた。
特に変わった風景がそこにはあるワケなんかじゃなくて、見なれた景色があるだけだ。
だけどそれも気が付かない程にゆっくりゆっくりと変わっていくのだろう。
新しい建物が建つ度に、前にそこに何がったかを考えなくてはならない程僕になじみきっていない
この街で僕はしばらく働くことになる。
この先後何回今のように遠くを眺めて僕は何かをオモイ何かをカンガエルのだろうか。
・・・って何変に感傷的になってるんだろう。
何か変な感じだ。
- 147 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時21分35秒
- 僕はこれ以上変に考えることが嫌で控え室(仮)のはり紙の貼ってある部屋に戻って行った。
さっきまで誰もいなかったその部屋にはもう随分な作品数が置いてあった。
作品数よりも人が少ないのは、人の方が煙草を吸う為に外に出てるからだろう。
控え室(仮)の中にいる人数は10人くらいだ。
入り口から溢れるように出ている靴の中に自分の靴も置き、カーペットの敷かれている部屋に入ると、
そこはパソコンとかが置いてある部屋の為、冷房が効いていて肌寒かった。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「おはよー」
地べた(って言ってもカーペットの上ね)に正座を崩した形で座って僕に挨拶の言葉をくれたのは
僕もすっかり仲良くなった柴田さんと石川さんだった。
2人共慣れないスーツスカートのせいか、座りにくそうにしていた。
「吉澤くんはスーツが似合うねぇ」
「あ、や、そんなことないですよ」
「やっぱ背高い人のスーツ姿はかっこいいよ」
「柴田さんもからかわないで下さい」
褒められることにあまり慣れていなくて、こういう時にどうやって対応していいのかが分からなくて、
ごまかすように適当な所に座ろうとしたら、石川さんが自分の隣をぽんぽんと叩いて僕を呼んだ。
・・・座りなってことだよね。
初めて見るスーツ姿に少し照れながらちょっと距離をあけて隣に座った。
石川さんの隣ではそんな僕を見て柴田さんが苦笑いを浮かべていた。
- 148 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時22分22秒
- 時間なんてものは1人でいないと早く過ぎるもので、すぐに集合写真を撮る時間になり、そしてすぐに作品の提出時間になった。
目まぐるしく動く時間の波に乗り遅れ、記憶にあまり残らない程あっという間に色々なことが過ぎて終わっていく。
やはり今日は何だかいつもよりも変みたいだ。
「吉澤くん、吉澤くん」
揺らされた身体で控え室(仮)に残されたのが僕と石川さんだけということに気付く。
時間と身体が剥がされたみたい
そんな感覚だ。
目の前にいる石川さんのシャンプーの匂いだけが変に鼻に残った。
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- 149 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時23分03秒
- 「・・・お疲れ様。確かに受け取ったよ」
安倍先生はにっこりと笑って僕と握手をしてくれた。
最後の提出者は僕で、その前が石川さんだった。
先に提出の終わった石川さんは、部屋の外で僕を待っていてくれていた。
ちなみに柴田さんはさっさか提出をしてさっさか帰ったようだ。
「お疲れ様」
「石川さんも、お疲れ様」
4月の新社会人のようにスーツに着られている僕らは、慣れない服装で慣れた道を歩いた。
『僕と石川さんがこの道を通るのは今日を含めてあと2回だけなんだ』
道中そんなことを僕は考えていた。
今もそして朝も。
- 150 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時24分06秒
- 広がる渦の中で確信めいた気持ちが浮かんでくる。
ずっと落ち着かないこの気持ち。
視線を僕よりも低い位置にある石川さんに向けてみた。
石川さんはどんなことを考えたか分からないけど、僕の視線に気付いた石川さんは『どうしたの?』という
表情を作って僕に笑いかけてくれた。
僕の隣を言葉少なめに歩いている事実。
そして視線を向ければ微笑みかけてくれる事実。
それはここにある。
それだけで今は十分だ。
そう、『今は』これだけで十分だと思いたいんだ。
感傷的になりやすいのは疲れのせいなのか・・・不安のせいなのか。
こうやって石川さんと一緒に過ごせる確かな時間は後2日。
じゃあその後は?
- 151 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時25分02秒
- 僕は今日という日をこうして終わらせ、次の日もこうして終わらせ、その次の日に石川さんはこうして
隣にいて微笑みかけてくれるんだろうか。
・・・これはまだ分からない未来。
この道をこれからも僕は歩き続ける。
石川さんはここではない道をこれから歩き続ける。
・・・これは今僕が分かっている未来。
「ねぇ、吉澤くん」
「・・・はい」
「卒業式終わった後の打ち上げ来る?」
そういえばそんなことを誰かがそんなことを言ってたっけ。
返事を濁していた記憶がある。
「そうですねぇ、一応顔出しだけはしようと思います」
「そっか、じゃあ私もそれで行こうかな」
「柴田さんは来ないんですか?」
「柴ちゃんは斉藤さんの所行くんだって。何かまたすぐ海外行っちゃうみたいだからその為の準備するって言ってた」
- 152 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時25分42秒
それぞれ分岐点に立っているんだということを実感した。
進む先で繋がることがあるか分からない道の分岐点に立っていることを。
僕ももうすぐそこに立つ。
そして石川さんも。
道を繋げるか繋げないかは僕次第。
細くて切れそうな糸を紡ぎ直すのも僕次第。
夕暮れがビルの隙間から僕らのことを照らしていた。
2つの影は重なりあうこと無く後ろに伸びている。
そこに生じた距離が今の僕らの距離。
そして今まで歩んできた道の距離。
決して交わらず、そして遠すぎず。
重ねられた日は決して無駄なんかじゃなく、だけど確実なモノを残していない。
そこが僕らの今の関係なんだ。
だから-----
「石川さん」
少しでも確実なモノにしたい僕は----
- 153 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時26分23秒
「ん?」
今ここに-----
「一緒に、いきませんか?」
少しずるい言葉の意味を織りまぜて-----
「・・・うん」
君との距離をうめようとする。
「私も言おうと思ってた」
巧みに言葉を使い分け、本心を隠して僕は歩く。
石川さんは隣で微笑みながら僕の言葉に乗ってきて、僕の心をまた混ぜはじめる。
そこにある言葉はやっぱり確実なんかじゃないけれど、少なくても1つの未来は約束された。
「とりあえず今はこれ着替えたいや」
「そうですね」
お互い苦笑いを浮かべてひっぱたスーツ。
まだまだ僕には似合わなくて、着こなすよりも着られてるけど、いつかはこれを着てやりたい。
それくらいになれる大人になりたい。
その時までその苦笑いを受け止めたいから、どうか一緒に歩いて下さい。
それがダメなら待ってて下さい。
- 154 名前:路の先 投稿日:2003年07月21日(月)09時27分01秒
- 言えない言葉を飲み込んで、言える言葉を声に変えた。
「競争しますか」
憶病者の精一杯の強がりを、石川さんは受け取ってくれた。
「きっと私負けないよ」
もちろん僕も負けるなんて考えてません。
これは僕への挑戦状。
そして石川さんへの招待状。
受け取ってもらったからには招待します。
いつか必ず僕のところに。
「それじゃあまた明後日」
軽く交わした挨拶の後、入ったメール。
『まずは展示会だ!』
向井側のホームにいる石川さんの方を見たら、石川さんは小さく小さく手を振った。
同じように手を振り返すことが出来なかった僕は、代わりに小さく頷いた。
今日はゆっくり眠るとしよう。
落ち着かなかった気持ちはもう消えたから。
そして明日また部屋に星を増やそう。
- 155 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月21日(月)09時30分08秒
- 更新しました。
2回に分けて更新しようかとも思ったのですが、どうにもきりが悪くて1回で
更新。なのでちょっと更新量はいつもより多めです(自分で自分の首を絞めるような行為)
そしてスットク溜めに走る今日この頃。
当たり前な日常は当たり前だと感じているから当たり前な日常。
大切さに気付くのはいつだってギリギリになってからです・・・
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
避けては通れない道ってやつですよねぇ・・・。
『卒業』は2人に何をもたらすんでしょうか。
今回は吉澤くん側の気持ちでございました。
次回からは何回かに分けての更新になると思いますが石川さんサイドの
気持ちになります。
私も二人の想いが盛り上がってくれることを期待している1人です(w
>token様
いえいえ、変な感想なんかじゃありません。
そういう日って本当あるんですよね。
ありふれた日常の中のありふれた一日。
だけどそれがすごく大切だったり記憶に残ってたりする。
そういうのって何年たっても覚えてたりするんですよねぇ(しみじみ)
>ぷよ〜る様
いや〜
>こういう話好きですよ。
って言ってもらえると嬉しいです。
SP続くと自分でもこういった普通のが受け入れてもらえないんじゃないかと
思ってみたりするもんです(意外に小心者です)
そして浮かれモードが落ち着いたみたいで(w
今回は浮かれモードスイッチの刺激よりは、何か微妙な曖昧さが
残るような内容でしたね(汗)
- 156 名前:Silence 投稿日:2003年07月21日(月)12時37分03秒
- 更新お疲れ様でした〜。
本当に〜。何をやってくれても画になるんだからな〜ここの
登場人物たち(w でも、卒業ってなんかしんみりな気持ち
になるんですよね〜。2人も卒業かぁ〜(しみじみ
はぁ〜。映画化してくんないかな〜この小説とマジで思う今日
この頃。ではでは次回も楽しみにしてま〜す(w
- 157 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月21日(月)18時53分58秒
- 更新お疲れ様です!!
この微妙な曖昧さ(いい意味で)のおかげで
これからどうなるのか気になって、何も手に
つかないです・・・(w
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 158 名前:token 投稿日:2003年07月21日(月)22時28分05秒
- 更新お疲れ様です。
>スットク溜めに走る今日この頃。
私もストックゼロです。貯まらない貯金箱と同じですね。(笑)
>そこが僕らの今の関係なんだ。
分岐点に立つ不安。だけど石川さんとの現状をしっかり把握しているみたいだから、
大丈夫。きっといつか吉澤君のもとへ彼女を招待できるよ。(希望的観測大)
では、次回も楽しみにしています。
- 159 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月22日(火)10時36分07秒
- >「競争しますか」「きっと私負けないよ」
このやりとりに、すっごい勢いで心臓ドキドキさせちゃいました。
吉澤君…あああああっ!!はっきり言っちゃってくれ!!でないとなんだか、その内そのギリギリのドキドキ感を感じすぎて、心臓止まりそうだ!!!(爆笑)
しかし…これを読んでいると本当に『青春〜!』って気分が味わえますねぇ♪
この先どうなって行くのか、予測がつきません。ああ、楽しみだー!!
次回も楽しみにしております!!
- 160 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年07月22日(火)10時43分01秒
- 更新お疲れ様です。
そういえば吉澤君って石川さんに対してはずっと敬語ですね。
石川さんがタメ語で吉澤君が敬語という設定は、この小説だとやたら自然に感じます。
やはり私は、この小説が好きみたいですね〜。しかし、吉澤君がタメ語になるのを見たいような見たくないような・・・。
複雑な気持ちが交差している今日この頃です。(笑)
- 161 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)20時59分02秒
- 最終講議が終わり、私の学生生活の授業は全て終了した。
何だか普通すぎて全部の授業が終わっちゃったなんて実感ゼロ。
クラスの皆だって感傷的になることなんかなくて、終わって速攻で講議室を出て行った。
絆薄いなぁなんて他人事のように思って見てた私自身に、それお前もじゃんとつっこみいれつつ、
ぶらりぶらりといつものように駅に向かって並んで歩いた。
あ、ちなみに柴ちゃんには『後で合流するから部屋を掃除しておけ』と命令された。
・・・嵐のようだ。
下校中もちろん隣は吉澤くん。
もう定位置ってやつだね。
定物定位置。
否、定人定位置。
・・・これも違う気がするなぁ。
ちらりと横を見た。
・・・吉澤くん。
- 162 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時00分24秒
「まだ背伸びてる?」
「へっ?」
おっと、思わず声に出してしまっていたようだ。
って私何ものなの!ってこれじゃ保田さんつっこみじゃない!!
「・・・石川さん大丈夫ですか」
「あ、うん。うん。大丈夫。恐ろしい程大丈夫」
「・・・そ、そうですか」
そんな苦笑い浮かべて見なくたって・・・。
恥ずかしいじゃん。
「そ、そうだ質問。吉澤くんってまだ背伸びてるの?」
「う〜ん・・・どうなんだろう・・・でも男の人って25歳の誕生日の日まで
伸びるっていう話しも聞きますからねぇ・・・」
長い腕を組んで首をかしげる姿は何とも可愛い。
お昼の陽射しをそんなに受けて輝くなんて卑怯だよ。
並んで歩く私よりも絶対綺麗だと思うもん。
- 163 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時01分00秒
- 色白の透き通るような肌も、長い手足も優しさも。
全部私に無いものばかり持っている。
いつだって気付いてたんだよ。
さりげなく吉澤くんが道路側歩くように気を使ってるの。
絶対にモテるはずなのに・・・何故か吉澤くんに女性の影がないんだよねぇ。
やっぱ私が近くにいるせいなのかなぁ。
これだけ揃ってるのに付き合ったこと無いなんて言うんだもんなぁ。
つくづく人って分からないなぁ。
何で今まで彼女とかつくらなかったのかなぁ・・・ってそんなこと言ったら私も同じことか。
でも私にはこう、何だろう縁っていうか心がぐわっと動かされるようなモノがなかったワケだし・・・。
吉澤くんもそうなんかなぁ・・・。
それとも・・・!!!ごっちんが好きだったとか!!!!!!
「石川さん、それ、全部声に出てますよ」
!!
冷静に降ってきたのは吉澤くんの声。
まさに頭上からと言った感じだ。
- 164 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時02分18秒
- 「ど、どのへんから!?」
「・・・絶対にモテるはずなのに・・・って所らへんから」
吉澤くんの顔は真っ赤で、複雑そうな笑顔で、だけど苦笑いで、
色んな感情が含まれてるような表情をしていた。
一つの笑顔でこれだけ含まれてると見抜く私もなかなか凄いわね。
「あの、僕別にごっちんのことそういう風に見たことなかったですよ。
そりゃ可愛いとは思いますけど、ごっちんは幼馴染みですよ。僕の大事な幼馴染みです」
「あ、あのごめんなさい」
「いや、別に謝られるようなことじゃないですよ。
それに結構昔から似たようなこと言われてましたから」
苦笑い。
すっかり吉澤くんに定着した苦笑いが、可笑しそうに笑った声と一緒に私に届く。
本当に昔から言われてきたことなんだろう。
背も高くて優しい吉澤くんに、可愛いくて見てて放っておけないタイプのごっちん。
幼馴染みって言っても周りはそうは見てくれなかったのかなぁって思う。
「ま、とりあえず今ごっちんと紗耶香は仲良くやってるみたいだし」
嬉しそうに笑う吉澤くんの笑顔はかっけー&ちょっと見てて惚れ惚れする。
私もこんな幼馴染みがいあたら最高に幸せなんだろうなぁなんてごっちんを羨む程に。
というか本音じゃ軽く嫉妬。
- 165 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時02分52秒
- 「何かいいね、ごっちんはこんな素敵な幼馴染みがいて」
「そうですかね?」
そんな照れた顔しないでよ。
言ったこっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃん。
ついでにもっと妬けてきちゃうじゃん。
「私、そういう幼馴染みっていなかったから・・・」
・・・嫌味なんて言うつもりないのに・・・何で口からこんな言葉出てきちゃうんだよ・・・
「じゃあ僕がなります」
「・・・っへ?」
「僕が石川さんの幼馴染みになります。
って言っても今から幼馴染みなんて言うのも変な感じもしますね」
おきまりの苦笑いを浮かべた吉澤くん。
手で前髪をかきあげて、がしがしと頭をかいて、照れをごまかすように鞄を担ぎ直す仕種。
そんな困ったような顔しないでよ。
私嬉しいんだよ。
そんな風に言ってくれる吉澤くんの気持ち。
だからそんな困ったような顔しないで。
- 166 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時03分27秒
- 「吉澤くん」
動きをぴたっと止めて私を見るその瞳。
眼鏡の奥ではきっと誰よりも輝いているその瞳。
私、大好きなんだよ。
そんな吉澤くんの瞳とか、そんな優しさとか。
多分全く伝わってないと思うけど。
「私は吉澤くんのこと友達以上だって思ってるよ」
そう、確かに友達以上。
完璧に。
「だから『幼馴染み』って言ってくれなくたって大丈夫」
ただの友達だったらここまで四六時中一緒にいないよ。
こんなに気にならないよ。
幼馴染みでもないし、友達でもない。
「私達は親友でしょ?」
- 167 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時03分58秒
- 今あてはめることが出来る言葉はこれくらいだと思う。
私自身、何だか吉澤くんが隣にいない日常が考えられないもん。
一昨日何で吉澤くんがあんなこと言ったのか、実は何となく分かってたんだ。
私達が繋がっているのは『学校』という目に見える形のモノがあるから。
卒業しちゃえば消える糸で繋がっている私達。
確かな明日が約束されてないから、何もしなければ糸は消えて無くなっちゃう。
吉澤くん、『私も言おうと思ってた』これって嘘じゃないんだよ。
私は卒業したって吉澤くんとこんな風にお喋りしたりしたいんだよ。
「・・・親友、ですか」
だから形のある言葉で私達を繋ぐ糸をつくりたいんだ。
「うん、大親友」
一つでもいいからきっかけを作って、そこから糸をまた紡いで、私はそれを明日に繋げていきたいの。
離れて行くことがないように。
- 168 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月24日(木)21時05分31秒
- 「何よりも大切な大親友」
今日も明日も明後日も、隣に優しい微笑みを感じていたいから。
優しさに甘えているとかじゃなくて、私は吉澤くんという存在が隣にいて欲しい。
だから一昨日の言葉、嬉しかったんだ。
『競争しますか』
それってこれからも私と一緒にこうやっていてくれるってことだよね?
学校卒業しちゃった後もこうやって並んで歩いたり出来るってことだよね。
不安定な板の上に乗っかって、消えてしまいそうな程に細くて薄い糸でしか繋がっていない私達が
繋がっていられる確かな言葉って思っていいんだよね。
「・・・何よりも大切な、大親友」
「うん、大切な大切な大親友」
まだ困ったような・・・でも微笑みをくれる吉澤くん。
その笑顔だけで私はいいの。
明日の約束を交わせるくらいの小さな出来事でいいから作って行こう。
改札までの短い距離を歩く歩調はいつもよりもずっと遅くて、踏み締める一歩は
いつもよりも何だか貴重な気がして、頬に触れる風がいつもよりもずっとずっと優しく感じた。
『じゃあまた今度』
笑顔で笑ってそれぞれ違うホームに向かって、歩く足が何だか重くて、振り返ったら
吉澤くんも同じ様に振り返ってて、何だかそれが嬉しくて、笑顔で手を降ったら
前みたく頭を一回下げて笑顔をくれた。
さっきよりも軽くなった足取りで、もう少し歩いて振り返ったら、吉澤くんはまだ私の方を向いていた。
「今日連絡するね」
吉澤くんは『分かった』っていう代わりに右手を上げてくれた。
- 169 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月24日(木)21時07分47秒
- 更新しました。
多分『現状・心情・あれこれあれこれ』は後3回くらいの更新になると思います。
多分です。本当に多分です(汗)
>Silence様
卒業。
そう、卒業してしまうんです・・・。
吉澤くんとしてはかなり複雑な心境でしょう。
そして石川さんは・・・。
『君僕』は私も映画であったら見てみたいです(w
(かなりシーン的な部分はカットされるでしょうが)
だもんで、どちらかというとまったりドラマ型かもしれませんねぇ。
と、私的には思ってみたり(w
>ぷよ〜る様
曖昧すぎて先に進まないような2人。
今後は本当にどうなっていくんでしょうか←オイ。
私も書いていて、考えていたものとは全く別なモノが出来上がっていく日々。
どうして上手くいかないんでしょうか(苦笑)
もうちこっと進展してほしいと願う今日この頃です。
>token様
そうなんです。
貯まらない貯金箱と同じなんですよねぇ。
入れたと思ったら底の栓し忘れてボロボロと出て行くような(苦笑)
分岐点に立った時、私もめちゃくちゃ不安でした。
現状維持とは言ってみてもそれが出来なくなる時が来る時は来ますからね。
吉澤くん&石川さん、分岐点です。
- 170 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月24日(木)21時08分33秒
- >クロイツ様
(;○〜○)ご、ごめんなさい・・・。
吉澤くん、やっぱり少し意気地なしです(苦笑)
ヘタレとも言うんでしょうか(汗)
どちらかというとやはり石川さんの方がお姉さん。
吉澤くん、このまま何もきっかけがなかったらクロイツさんも心臓が・・・!!!!!!
とはっぱをかけてみたり(w
書いている私もこの先の予想がつかなかったりしてるので、私自身この先が楽しみだったりします♪
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
そうなんです。
吉澤くんはずっと敬語なんです。
それが定着してしまったと思われます(苦笑)
私、これ書いててタメ語で話す吉澤くんと石川さんが想像出来ないんですよ(w
私自身にも定着してしまってます。
この先ですか・・・どうでしょう?
私も複雑な気持ちが交差してますね(w
- 171 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年07月24日(木)22時48分45秒
- 作者さま、更新お疲れ様です。
「私は吉澤くんのこと友達以上だって思ってるよ」
どきどきしましたYO!
ついに告白かと思いました。っていうかお互いバレバレなのに鈍感です。(笑)
「親友だよね」
好きな子に言われたらへこみそうです。(泣)
でも、がんばれ吉澤君。明るい未来は近いかも!!
では、次回更新も楽しみに待ってます!
- 172 名前:token 投稿日:2003年07月25日(金)22時01分15秒
- 更新お疲れ様です。
>「石川さん、それ、全部声に出てますよ」
私ここで爆笑してしまいました。せっかくのいいお話なんですけど、
今回は大笑いでした。
でも、石川さんの心の声を聞かされ、赤くなる吉澤君。良いシーンですね〜。
では、次回分も楽しみにお待ちしております。
- 173 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年07月26日(土)14時53分50秒
- 更新お疲れ様です。
なんとな〜くではありますが、石川さんの気持ちが徐々にはっきりしてきそうな予感・・・!
楽しみです。「友達以上=親友?」なのか?とちょっと疑問に思っている石川さんに共感します。
お互いのことを大切に思っているけど今一歩・・・。でも、そんな感じが今時の若者にはない可愛らしさだと思います。)
って言ってる私も一応若者なんですけどね。(笑)ちなみに二十歳です。
- 174 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月27日(日)08時19分39秒
- 更新お疲れ様です!!
曖昧すぎて先に進まない二人・・・
だから、読者的には二人の行く末を応援したく
なるんですよね・・・(w
では、次回も楽しみにしております♪
- 175 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月27日(日)10時52分30秒
- しんゆうー!!親友なんですかー!!
そうですね、今の関係はそう言えますねっ!どきどき♪
萌 え ま く り ま し た 。
思ってる事全部声に出しちゃった石川さん!!萌えまくりですYO!!
いやー、可愛いなぁ石川さんそんな石川さんが大好きだ〜
次回も楽しみにしてます!!吉澤くん。はやくくっつけるよう頑張って(笑)!!
- 176 名前:Silence 投稿日:2003年07月27日(日)14時08分14秒
- 更新お疲れ様でした〜。
切ない。なんかもうほんと切ない。語りたいことは山ほど
あるんですけど書いちゃうと10レスくらいつかいそうな
ので沈黙を持って感想とします。
「・・・・・・・・・。」←なんじゃそりゃ(w
あっ、そうですね、映画ってよりドラマですね。う〜ん、
それじゃあぜひ月9枠でお願いします(w
- 177 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時31分26秒
- 「何そんな顔しちゃってるのさ」
「何でそんなに嬉しそうな顔してるのよ」
柴ちゃんはいつものように(って言っても来るの久しぶりだけど)
私のクッションをぎゅっと前に抱きしめて座っている。
それも満面の笑みで。
「柴ちゃん、ヨダレ垂れてるよ」
さて、何故柴ちゃんがこんなにも満面の笑みを浮かべているのだろうか。
それもヨダレを垂らしながら。
理由はとっても簡単だ。
「やっぱ梨華ちゃんさ、女の顔ってやつになってるよ」
「だからさっきから何言ってるのさ」
どうやら柴ちゃんが就職先&彼女の元である斉藤さんの所に夢中で通っている間、
つまり私のことを放ってる間に私が『女の顔』っていうものになっていたらしい。
- 178 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時32分13秒
- それは冬休み明けからずっと思ってたらしくて、言いたくて言いたくてうずうずしてたらしい。
・・・だったら言ってくれればいいのにね。
ってそんなこと言ったら『絶対学校とかで言ったら怒る』と言われた。
・・・行動読まれてるなぁ。
「やっぱさ、梨華ちゃんは私好みだよ。どう、吉澤くんにも、瞳にも黙ってるから一発やらない?」
「やりません!!ってか何言ってるのよ!!うわぁぁちょっと柴ちゃん顔近いよぉおおおおお」
狭い一人暮らしの我が家をどたばた走る女2人。
まぁホコリがばたばたたってるのは気のせいで・・・
気が付けば私、ベッドに押し倒されてるワケで・・・
・・・
って
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
「梨華ちゃん、耳痛いんだけど」
「あ、ごめん・・・じゃないわよ!!」
「だからうるさいなぁ」
- 179 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時33分40秒
- 組み敷かれるように私の身体は柴ちゃんに押さえ付けられていて、私の目の前には柴ちゃんがいて、
その顔は実は結構本気の顔していて、押さえる力が実は結構強かったりして・・・私動けないんですけど。
「いいじゃんか、あ、でもひょっとして梨華ちゃん女の人初めて?」
「あ、はい」
「そ、まぁ私も瞳に鍛え上げられたしまかせてよ」
「・・・じゃない!!違う違う違う違う違う違う違〜〜〜〜〜〜う!!!」
押さえ付けられてる手を必死で動かしてベッドから起き上がろうとするけど、私はどうやら力で
柴ちゃんにかなわないらしくて、私の目の前で柴ちゃんは不敵な笑みを浮かべてる。
がぁぁぁ顔が、柴ちゃんの顔が近付いてきてるぅぅぅぅぅぅ・・・何とかしなきゃぁぁぁぁぁ。
「だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめぇぇぇぇぇぇぇえ!!
柴ちゃんには斉藤さんって彼女いるんでしょ!!こんなのダメ。ダメに決まってる!!」
「そんなかたいこと言わない言わない」
「何言ってるのよ!!言います!!言わせてもらいます!!!
ダメ、私そういうのダメなの!!」
「私は平気だよ。どっちもいけるくちだしね」
「わ た し が ダ メ な の!!!」
「もぉさっきからうるさいなぁ、ムードだいなしじゃん」
「ムードもなにもあったもんじゃありません!!!!!!!」
「なれちゃえば平気だって。大丈夫、優しくしてあげるよ」
- 180 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時34分53秒
- ふわぁぁぁあ耳元に息吹き掛けないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
あぁもうどう〜しよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
うぅ〜あぁ〜〜〜〜〜・・・
「そ、そうだ、前から聞きたかったんだ!!」
「何よ」
だから耳に息吹き掛けないでよぉぉ。
もぉ〜
「斉藤さんって女の人でしょ。柴ちゃん・・・そのぉ最初抵抗とかなかったの?」
「別に。だって私は瞳が女だからとかそんなじゃなくて、瞳が瞳だったから好きになったんだもん」
「・・・ご、ごめん」
柴ちゃんは私の耳元でフッと笑って『気にしないで』って言うと、私の身体の上に自分の身体を乗せてきた。
こんな所で気なんか使ってほしくないのに柴ちゃんは私に重みがかからないようにしている。
でも、でも、全然嬉しくないよぉ〜〜〜〜
私、だって、だって・・・し、し、処女だもぉおおおおん!!!
ほら、やっぱり最初っていうのは好きな人っていうのが小さい頃から思ってたことだし・・・ってそんな
小さな頃から思ってたワケじゃないけど、でも、でも、やっぱりこんな風に失うの嫌〜〜〜〜〜〜〜!!!!
- 181 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時35分29秒
「う〜んやっぱ梨華ちゃんってミルクの匂いするね」
「んなっ!!!!!!」
バッと起き上がろうとすると上に乗っかっていた柴ちゃん飛び起きて私から離れて行った。
さっきみたく不敵な笑みを浮かべて。
「へへっ、マジだと思った?」
「私ミルクの匂いなんてしないもん!!」
「いや、そこじゃないでしょ」
ミルクって、私お母さんのおっぱいもう吸ってないよ!!
お母さんだってもう出ないはずだよ!!!!
って何考えてるのよ!!!!
あぁこれ保田さんのノリツッコミじゃんかぁぁぁああ!!!!!
「ちょっと、そんな布団叩いたらホコリもっとたつよ」
「もっととか言うなぁ〜〜〜〜!!!!!」
何、一体何なのよ!!!
突然襲い掛かってきたと思ったら『ミルクの匂いする』とか言ってくれちゃって!!!!
何、何、何、何柴ちゃんは一体今日どうしたかったのよぉおお!!!
- 182 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時36分48秒
- 「ご、ごめんって、ちょっと悪戯が過ぎたよね」
「悪戯でこんなことするなぁぁあ!!!!本気で焦ったでしょ〜〜〜〜〜〜!!!!」
「いや、だからごめんってば」
「本当にもう何なのよぉお!!!!」
ぼふっ!!!!
綺麗な音がして私の投げた枕は柴ちゃんの顔面にヒットした。
いつか柴ちゃんが私に投げた時のように美しく、そして豪快に。
これって枕だけど痛いんだよねぇ。
なんてことを考えながら柴ちゃんの様子を伺うこと数秒間。
「・・・ちょっとぉ、痛いじゃない」
何故かミカワケンイチ風。
- 183 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月27日(日)19時37分35秒
- そして見事に笑ってしまった。
それも声をあげてお腹をかかえて。
柴ちゃんはしてやったりと言う顔をして満足そうに笑っている。
はぁ何だか柴ちゃんにはかなわないなぁ。
結局手の上で踊らされてたって感じ。
何がしたかったか分からないし。
とりあえず笑わされてまとめられたし。
「ほれ、とりあえずもう一回ちゃんと座りましょうや」
まるで我が家のように私の背中を押して、座らせると、またクッションを持って座り直した。
何ごともなかったかのように。
「私が海外に行く前に、きっちり話しておきますか」
ん?何が?
「今の梨華ちゃん心情を」
- 184 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月27日(日)19時41分50秒
- 更新しました。
生き抜きみたいな内容ですが・・・
そのうえ次は石川さんお休みです。
申し訳ないです(汗)
早めの更新目指しますです。
沢山のレス、ありがとうございます(土下座)
>ななしのよっすぃ〜様
揺れるユレル石川さん編。
もどかしいのは吉澤くん編との類似点ですね(苦笑)
私も多分好きな子に『親友だよね』とか言われたら凹むかも(泣)
でも吉澤くんの場合、そこで凹んで『何よりも大切な』とか言われて復活しました(w
さてさて、石川さんの気になる心情。
多分次の次くらいの更新で明らかになるかと。
早めの更新を目指しますので、よろしくお願いいたします(ぺこり)
>token様
石川さん、どうしてか上手く決まりません(苦笑)
おかげでシリアス場面もすっとばしです(;^▽^)ごめんね・・・。
いやはやまったりを書き続けて早半年。
ここまでくると吉澤くんが哀れに思えてきます・・・(涙)
次回もいしよしはお休みですが、よろしくお願いいたします(ぺこり)
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
そうなんです。
次の次には分かるやもしれません・・・!!!!!
『友達以上=親友?』難しいところですよねぇ。
例える言葉が無いんですよ(苦笑)
私も言葉のレパートリーが少ないもので、表現方法が分からない時、多々あります。
そして茅ヶ崎のマヤヤ☆さんって私と同い年なんでしょうか?(どきどき)
私も一応若者です(w
- 185 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月27日(日)19時43分10秒
- >ぷよ〜る様
もう曖昧すぎですよね(汗)
半年も経ってしまいますた(大汗)
もうそろそろ第1章の終わりが見えてきたんですが2人は・・・。
もう少し2人の行く末を応援してやって下さいです(ぺこり)
私も応援していこうと思います(w
>クロイツ様
そうなんです。
石川さん、言葉が上手く見つからないんです。
だから親友なんです。
・・・もどかしいなぁ。
本当吉澤頑張ってーーーーーー!!!!!!!
と、PCの前で叫ぶ私(w
その前に自分も頑張れ〜〜〜〜〜(涙)
と叫ぶのも私(w
>Silence様
あぁ〜〜〜ごめんなせい(土下座土下座土下座)
もう吉澤くんサイドに立つと切ない切ない(泣)
10レスくらい使われる程の駄目だし・・・。
痛い!そして吉澤く〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!
月9でいうならばごてごてしてくる5話目くらいですかね(苦笑)
(それげ理由でドラマを見れない私←だけど書く)
ちなみに柴田さんの台詞の一部は私の友達の名言の一部だったりします。
- 186 名前:TOKOM 投稿日:2003年07月27日(日)23時07分43秒
- かっこいい・・・・もぉなんかめちゃくちゃ惚れたっす!!
- 187 名前:token 投稿日:2003年07月28日(月)00時11分07秒
- 更新お疲れ様です。
>柴田さんの台詞の一部は私の友達の名言の一部
これってつまり、
>「私は平気だよ。どっちもいけるくちだしね」
の事ですか?・・・・・・・・。
ゴメンナサイ。ちょっとボケて見ました。だって、柴田さんの行動に
私、ドッキドッキでしたから。ホント焦っちゃいましたYO。
次回も楽しみです。では。
- 188 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月28日(月)08時26分13秒
- 柴ちゃん!!何だか柴ちゃんの新境地を発見したような気がいたします(笑)
そして美川憲一風な所で、私も大爆笑。
…さ、最高だ柴ちゃん!つーか吉澤君よりも男前に見えてしまったのは私だけ?(爆笑)
いやぁ、この事知ったら吉澤君、どうするんでしょぉねぇ〜…とか、ニヤニヤしながら読んでました。
女の子二人がきゃーきゃー騒いでる画と言うのは、想像すると癒されます。
次回も楽しみにしておりますので!!頑張ってください☆
- 189 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時10分29秒
- 「いち〜ちゃ〜ん、よし子いなかったらど〜すんのさぁ〜」
「そしたら部屋で待ってればいいじゃん」
「・・・あばうとだねぇ」
「お前に言われたくねぇよ」
スーツ姿の市井と、今部屋から出てきたと言わんばかりのジャージ姿の後藤。
今、2人はそろってひとみの家の前にいる。
仕事がかなり早く終わった市井は、後藤の家に直接行き、店の手伝いをしていた後藤をひょいっと捕まえて
ひとみの家の前まで連れて来た。
一応、用事といえば用事があるからだ。
市井がネクタイを直している間に、さっさか後藤はインターフォンをおす。
「押すの早っ。お前ためらいとかそんなのは無いのかよ」
「だってよし子の家じゃん」
「いや、まぁ確かにそうだけど・・・」
- 190 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時11分17秒
- 後藤は面倒臭そうにジャージのポケットに手をつっこんであくびをしている。
市井は逆に神経質そうにネクタイを直している。
姿も態度も見事真逆。
とんちんかんな2人組。
今だにごちゃごちゃとネクタイをいじっている市井を後藤は捕まえて、頭に一撃平手をおろした。
「何そわそわしてんのさ。どんな用事か知らないけど落ち着きなよ」
「・・・はい」
それからすぐにひとみが玄関から顔を出した。
ジャージ姿の後藤と市井を見比べて、クエッションマークを浮かべている。
立ち話もなんなんでと、家にあげてお茶をすすめる。
おこたに入り、ひとみは真正面にいる後藤にみかんを渡す。
受け取った後藤はお茶をすすりながらおいしそうにみかんを口に運んでいく。
「僕がいなかったらどうするつもりだったの?」
「よし子の部屋で待ってるつもりだったんだってさ」
「鍵も開いてないのに?」
「あ、そっか」
- 191 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時12分18秒
- 後藤とひとみのいつもの会話。
それについていけなくてそわそわしてるのは市井紗耶香。
出されたお茶を両手で持って、変に上品っぽくちびちび飲む。
「紗耶香、さっきから落ち着かないみたいだけど、どうしたの?」
「いちーちゃん、さっきっからそわそわしてるんだよねぇ」
「何?トイレ?」
「違う」
ひとみの質問に即答で答える市井。
何んでか緊張しているらしく、声がちょっと上ずっている。
「で、本当にどうしたの?2人で来るなんて珍しいじゃん。
そのうえごっちんはジャージだし紗耶香はスーツだし」
「後藤はいちーちゃんに何も言われずに連れてこられたんだよぉ」
頬をぷくっと膨らませて市井の方を一睨み。
市井は両手で持っていたお茶を机に置くと、突然おこたから出てきて正座をした。
『何してんの?』という視線2人分を受けて市井は膝の上に両手を置いた。
- 192 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時13分58秒
- 「あ、いや、何かこうきちんと吉澤に言ってなかったなぁって思って」
「何が?」
「ん、あ、いや、後藤と俺が付き合ってるの・・・」
「「は?」」
さすがは幼馴染みというか、後藤とひとみの息はぴったりで、そろって声をあげ、そろって市井の顔を覗き込む。
市井の顔は真っ赤である。
馬鹿みたいに真っ赤である。
「いや、その報告はメールでもらってるし・・・」
「そうなんだけどさ、こうきちんと向き合っては報告してないなぁって」
「いや、でも僕に改めて報告する必要なんか・・・」
「だって後藤はお前の大切な幼馴染みなんだろ?
その幼馴染みと付き合ってるのに、メールだけで報告を済ますのはどうかと思って・・・」
後藤は真剣な表情の市井を何とも言えない気持ちで見つめていた。
自分が大切にされていることは気付いていた。
付き合って随分たつけど、市井はまだ後藤と関係を持ってはいない。
キスだって数えるくらいしかしていない。
正直市井が自分を好きなのか疑いたくなる程、市井は後藤に対して奥手だ。
- 193 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時15分35秒
- 車の中で過ごす時間も、デートで行った動物園でも、市井は後藤の手を握ることしかしてこなかった。
それが不満なワケじゃない。
でもそれはとても不安なことだった。
だからこうやって市井がひとみの所にわざわざ自分を連れてきて、報告をしようとしている姿を見て、
後藤の中には嬉しい気持ちと愛しい気持ちが溢れていた。
「俺、後藤と付き合ってます」
『娘さんをお嫁に下さい』と言っているような市井の姿。
その真剣さに、ひとみも急いでおこたから抜け出し、同じように正座をして頭を下げた。
変な画である。
ここは一体何処なんだとツッコミたくなるような画である。
ジャージ姿の後藤は、市井のまっすぐな気持ちに照れながらも、2人の男の正座姿を
ぼけーっとしながら見つめていた。
- 194 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時18分13秒
- 帰り道。
と言っても後藤の家はひとみの隣だから、わざと遠回りをしている帰り道。
後藤は家の手伝いもしなければいけないと思いながらも、市井としっかり手を繋いで歩いていた。
「何かやっとスッキリしたよ」
「後藤はびっくりしたよ」
「いやぁ、こういう報告ってのは照れるもんだねぇ」
「それは後藤だって同じだよ」
「・・・怒ってんの?」
「違うよぉ」
そう言って立ち止まる後藤。
電信柱に寄り掛かるようにカラだを預けて市井を見上げる。
「ねぇ、いちーちゃん」
「ん?」
「キスして」
- 195 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月28日(月)10時20分28秒
- 『ここでかよっ』というツッコミを心の奥底に隠して市井は真剣な後藤の目を見つめ返した。
本気で好きになった人に対してめっぽう奥手な市井。
大切すぎて何も出来なくなってしまうのだ。
キス一つするだけど心の中の火がついてしまう。
キスだけじゃ終わらせたくないという気持ちに火がついてしまう。
だけど大切にしたくて手を出せない。
見事単純悪循環である。
目を閉じる後藤の唇。グロスで濡れた唇が市井のことを自然と誘う。
惹かれるように唇を近付けて、合わせるだけどキスをする。
離れた唇は物足りなさそうにもう一度惹かれあう。
それを何度かくり返し、後藤は市井に抱きついた。
「んぁ〜幸せ〜」
真っ赤になって市井はそっと後藤のことを抱きしめた。
- 196 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月28日(月)10時26分08秒
- ひっそり更新しました。
昨日から一夜明け、私の心はまだ不安的状態です。
なっちの卒業は寂しいことです・・・
だけど『これからも頑張って』コールを続けることでしょう。
で、今回はいちごまのみです。
引っ張りすぎるのもどうかと思い、連日更新。
スットク残りあとわずか。
頑張れ自分。
次回は石川さん心情編です。
>TOKOM様
どうも初めましてです(で、いいんですよね(w)
実はあんまり出番のなかった柴田さん。
だけどやっぱり石川さんの親友です。
決める時には決めてくれます。
>かっこいい・・・・もぉなんかめちゃくちゃ惚れたっす!!
これって柴田さんで合ってますよね・・・?
>token様
おしいですね(w
名言はそこじゃなかったです(ww
前回の更新分、実はすごくキーボードを叩く指が早く進み(自分でも驚く程)
あっという間に出来たんです。=この2人のからみがめちゃ書きやすかった。
柴田さん流のリラックス法ってやつかもしれませんね。
まぁ本当にリラックスさせようとしたかどうかは柴田さんにしか分かりませんがね(w
>クロイツ様
暴走柴田さんが意外に好評なようで嬉しいです(w
>つーか吉澤君よりも男前に見えてしまったのは私だけ?(爆笑)
私もそう思いました(w
多分ここに出て来た保田くんや市井くんや吉澤くんの誰よりも男前だったでしょう。
柴田さんと石川さんが騒いでる画って私も想像すると癒されたりします。
そして早くここのいしよしで癒されたいです(苦笑)
- 197 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年07月28日(月)10時33分52秒
- 更新お疲れ様です!
えっ!なっち卒業すんですか!?現実世界で!?
マジっすかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ!!!!!!!
それは置いといて、リアルタイムで更新見てました。
いちーちゃんすごいです!大切だから手が出せない・・・。
これもまた、現代の若者に欠けている部分ですね。(笑)
でもそんないちーちゃん、素敵です。後藤もさぞかし幸せ感じていることでしょう。
次回は石川さんの心情編!!待ってました!!楽しみにしてます!!
P.S 作者さんも二十歳なんですか??
- 198 名前:TOKOM 投稿日:2003年07月28日(月)10時59分19秒
- ども!初めましてですよ(^_^)
かっこいい・・・・もぉなんかめちゃくちゃ惚れたっす!!
ってのはこの小説っす!!もちろん柴田さんもかっこいい!
- 199 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年07月28日(月)14時55分37秒
- 更新お疲れ様です!!
市井さんもなかなかやりますね(w
いしよしがない・・・
けど、最近じゃここのいちごまなら
許せちゃうんですよね。いや、むしろ
いちごま読んでて楽しかったり・・・(w
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 200 名前:token 投稿日:2003年07月28日(月)21時07分09秒
- 連日の更新お疲れ様です。
なっちの件は私もショックでした。でも、ソロになってもハロプロコンだってあるし、
それに、女優安倍なつみの活躍も期待できるので、ポジティブに行きましょい。
と、自分にも言い聞かせたりして。(笑)
前回の過激な柴っちゃんとは一転して、ストイックなまでのいちーちゃん。
たらしのように書かれてましたけど、これが本当の姿なのかもしれない、な〜んて
思っちゃいました。吉澤君への報告も済んで、ごっちん幸せに向かって一直線ですか。
では、次回も楽しみにしております。
- 201 名前:クロイツ 投稿日:2003年07月29日(火)08時24分53秒
- い、い、い、いちーちゃん!かっけぇぇぇぇ〜!!!!
スーツだし(笑)律儀な所が、すごぉぉぉ〜くイイ感じですねぇ…。すばらしい。
なんだか、吉澤君以外の男前にもどきどきさせられっぱなしです。
さて、吉澤君の男前っぷりが見られるのは(ry
次回も楽しみにしております!!
- 202 名前:Silence 投稿日:2003年07月29日(火)19時13分19秒
- 更新お疲れ様でした〜。
いち〜ちゃんかっこいいな〜。本当に惚れるよ。ごっちんは
幸せですね〜。自分は匿名さんの書くCPは全部好きですよ。
それぞれみんな違うけどONLY1ですから(w
次回の更新石川さんの心情編楽しみにしてますね。
- 203 名前: 現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月30日(水)18時12分39秒
- はじめ、柴ちゃんが何を言ってるのかさっぱり分からなかった。
私の心情?
何だそれ??って感じ。
柴ちゃんは珍しく大真面目な顔。
『話せ話せ』オーラを放ってきている。
話すもなにも、私はこれといって特に何があったわけじゃない。
恋人だって相変わらずいないし、皆とも仲良くやっている。
「・・・柴ちゃん、やっぱりよく分からないよ」
嘆いた言葉を柴ちゃんはバットを大きく振って私に打ち返してきた。
返球は『よく分からないじゃないだろーーー!!!』という言葉。
それでもまだ困っていた顔をしていたらしい、私に柴ちゃんは質問方式を考え出した。
『質問するから答えてね』ってやつだ。
「まず第1問、今梨華ちゃんに好きな人はいますか?」
「沢山います」
「じゃあ第2問、今、梨華ちゃんの隣にいつもいる人達が突然いなくなったら寂しくなりますか」
「はい」
- 204 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月30日(水)18時13分10秒
- あたりまえだ。
そんなの考えられない。
誰かが欠けてもすごく嫌だ。
柴ちゃんの意図が分からないまま、質問は続いていく。
「第3問、その中に吉澤くんはいますか?」
「え?あ、はい」
「じゃあ吉澤くんは梨華ちゃんにとってどんな存在?」
・・・存在。
それはついこないだ私が言葉として当てはめたもので・・・
それで言っていいのならば・・・
「・・・親友かな」
「親友?」
「うん、いなくなったら困る存在。いなくかった時のことなんて想像つかない」
「私とは違う感じで?」
「そうだね・・・柴ちゃんとはちょっと違った存在。
何だろう、ぴたっとくる言葉が分からないや」
- 205 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月30日(水)18時13分49秒
- 私の言葉の知識が足りてないんだろうか。
何にもあてはまる言葉がない。
私の中で言葉と存在がパズルのように組み合わさることがないのだ。
「梨華ちゃんはさ、恋ってしたことある?」
「う〜ん・・・本気で人を好きになったことはないかも・・・」
恋と呼べるかどうかは分からないけど、何人かは『この人いいなぁ』って思ったことはあった。
でもそれは一時的なもので、気が付いたらその人はただ友達だったり知り合いだったり。
告白されたこともあったけど、私は自分の中にそんな感情が持てなくて、悪いなぁと思いながら断ってきた。
友達は『付き合ってみれば?』とか言ってたけど、私はどうしてもそういう付き合いが出来なかった。
だからきっと恋というものは本当はしたことがないんだと思う。
だから私が吉澤くんのことをどう想っているのかも分からない。
何もかも分からない自分の気持ち。
これが恋愛感情なのか、それとも全く違うものなのか。
ただ分かっていることは吉澤くんが近くにいると安心感を覚える。
気が付けば私の隣には吉澤くんがいる。
こういうことだけだ。
- 206 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月30日(水)18時14分33秒
- 私達の関係は表す言葉がない。
最適だと思えるのは今さっき使った『親友』という言葉。
だけど私の中ではそれ以上。
好きか嫌いかとかそういうのじゃないんだよね。
友達だとか親友だとかそんなんでもない。
・・・やっぱり最適な言葉がない。
「問題です。今、梨華ちゃんは恋愛感情を持って『好き』って言える人がいますか?」
「・・・わかりません」
「それは誰を考えて『わかりません』と答えましたか?」
「・・・吉澤くん」
柴ちゃんは大きくため息をつくと、床にべろっと広がった。
床をぺちぺち手のひらで叩いて前髪を息でふーふー吹いている。
・・・大丈夫かな?
突然壊れたおもちゃみたいな動きをする柴ちゃんは見ていて普通に不安になった。
思わず額に手を伸ばしたくなるくらいに。
しばらくぺちぺちと床を叩いていた柴ちゃんは、ゆっくりと身体を起こすときちんと私の目を見て口を開いた。
「最終問題。石川梨華に吉澤ひとみという存在は必要?」
「・・・いなかったら、イヤ」
柴ちゃんは良く出来ましたという風に私の頭をよしよしと撫でてくれた。
- 207 名前:現状・心情・あれこれあれこれ 投稿日:2003年07月30日(水)18時15分08秒
- 私の中にある気持ちは恋愛感情なのかどうかは分からないけど、私にとって吉澤くんという存在はとてつもなく大きな存在。
気が付いたらそうなってた。
生まれてから21年間とちょっと、こういう存在の人は家族以外で初めてたっだ。
だからこれからもすごく大切にしたいと思うし、私も吉澤くんにとって大きな存在になれたらと思ってる。
「うん、やっぱ梨華ちゃんはこの1年でいい女になったよ」
「柴ちゃんもね」
私はここの専門学校に入って、本当に素敵な出会いを沢山した。
生涯大切にしたい出会い。
そして親友。
宝物はいつでも私のポケットに入ってる。
優しく守っていこう。
そう思った。
- 208 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月30日(水)18時17分43秒
- 更新しました。
短いです(ごめんなさい)
だけど石川さん心情編です。
そして次回の更新はいしよしです。
私、とってもいしよし不足です(苦笑)
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
リアルタイム更新(何だか照れます)
最初のタラシ野郎ブリが綺麗さっぱり消えたいちーちゃん。
書きながらまたもどかしい感じ♪
石川さん心情編はこんな感じでした。
書いたり消したり書いたり消したり=今回更新分だす。
P.S はい。ってかもうすぐ21歳になりまし。
>TOKOM様
あ、初めましてでしたか(W
では改めまして・・・というか2度目まして。
そんなに褒められてしまうと・・・(恥ずかしいです(w)
これからもそう言っていただけるように精進し続けます。
>ぷよ〜る様
最初よりもカブが上がった(多分)いちーちゃん。
えがったえがった(w
いしよし不足、申し訳ないです(ぺこり)
次回は絶対にいしよしです。
書いてる私もいしよし不足(涙)
- 209 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月30日(水)18時18分57秒
- >token様
そうです、幸せに向かって一直線!!!(になって←願望)
書いてる私も、書きながらどんどんと変わっていく内容に先が読めない状態
なので、書きながらつねに願望がつきまとってます(苦笑)
↑
柴ちゃんもいちーちゃんも勝手に動き出した感じで、止められません(w
なっちの卒業は私も今だショックが抜けませんが、1ファンとして応援し続けます☆
>クロイツ様
ふふっ、いしーちゃんはマジに な っ た ら カッケ−んです(苦笑)
そのうえ律儀♪
根(本来の姿)は真面目なんです。
まぁ、彼も色々ありましたからね
(この件についてはいつかまた何処かで語られることがあるでしょう)
ここの主人公は・・・私も遠いモノを見る感じで見守り続けます(w
>Silence様
いちーちゃんの人気がUPしてる模様(w
登場シーンからは考えられない感じです(苦笑)
>自分は匿名さんの書くCPは全部好きですよ。
ありがとうございます(ぺこり)
そう言っていただいてめちゃ嬉しいです☆
これからもごっちん以外の幸せな人もうまれるといいなぁ←オイ。
と思いながら頑張ります☆☆☆
沢山のレス、本当にありがとうございます(ぺこり)
- 210 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年07月30日(水)18時21分38秒
- 書き忘れてた(汗)
『現状・心情・あれこれあれこれ』は今回更新分でおしまいです。
第1章終了まであとわずか・・・のはず。
- 211 名前:token 投稿日:2003年07月30日(水)20時37分33秒
- 更新お疲れ様です。
柴ちゃんと梨華ちゃんとのほのぼのした関係も良いですね。理想的な姉妹みたいです。
まあ、現実の姉妹って歳が近いと、割と反目し合う見たいですけど。(笑)
恋愛感情について考えるなんて、梨華ちゃんまた少しだけ前に進みましたね。
うん、うん。良い傾向ですYO。
では、次回も楽しみにしております。
- 212 名前:Silence 投稿日:2003年08月01日(金)00時54分28秒
- 更新お疲れ様でした〜。
石川さんもやっぱり吉澤君のことを意識してるんですね〜。
やっぱ少しづつですけど前に進んでる。
って感じがしてうれしいです。吉澤君のことを少しづつ真剣に
考えてる石川さんかぁ〜。←勝手に親の境地(w
次回も楽しみに待ってますよ。しかもいしよしですか!!!
- 213 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年08月01日(金)13時13分42秒
- 更新お疲れ様です!!
おおっ!少し前進しましたね!
梨華ちゃん、ホントにいいオンナになったよ・・・(w
個人的には柴ちゃんとの会話は好きです(w
では、次回更新も楽しみにしてます♪
- 214 名前:2月の冬のあたたかさ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時39分24秒
- 2月。
風が一番冷たくて、最後の冬が残る月。
僕の部屋には散らばった紙、紙、紙。
学校の授業も終わって、卒業制作も終わって、残すは『卒業制作展示会』と『卒業式』だけ。
就職先も決まっているし、新しくバイトをするには時期的にも中途半端だった僕は、
この長い休みを使って趣味に時間を費やしていた。
母さんが一度部屋に来た時、珍しくちらかっている僕の部屋を見て目を丸くした程、今の僕の部屋は汚い。
ゴミ箱からはゴミが飛び出しているし、脱いだ寝間着はベッドの上に無造作に投げ捨てられてる。
資料の本や雑誌はまとめられずにそこら中にちらばっているし、
足の踏み場も無いという程ではなくても、それくらい汚い。
でも、それは今日で終わりだ。
「完成〜!」
出来上がりはかなり満足。
初めてにしては上出来なんでない?
そんな風に思えるよ。
ってワケで早速掃除開始。
動ける時に動いておかないと、やる気なくなっちゃうからねぇ。
- 215 名前:2月の冬のあたたかさ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時40分24秒
- ----------
-------
---
で、今僕は部屋の片付けもせずに卒業制作の展示会の会場にいる。
あの後、タイミングを見計らったように鳴った携帯に呼び出されてここまでやってきた。
もう夕方だったりする。
昼抜きで頑張って仕上げをしていたからかなりお腹だってすいている。
僕を呼び出したのは安倍先生で、呼び出された理由は大幅に遅れをとっているパンフレット作りの手伝い。
何で僕なのかと聞いたら『来年度からTAになるから』と普通に返された。
でも僕1人増えたところで作業の能率がそんなに上がるとも思えない。
そのことも聞いたら、丁度トイレから石川さんが表れた。
『ここはやっぱりコンビっしょ』ニコニコ笑って安倍先生はまだ自分の作業があるからと逃げて行った。
ちなみに会場は生徒閲覧禁止。
矛盾しているなぁと思いながらも、楽しみは後にとっておこうと自分を納得させて、
僕らは入り口に設けられた受け付けのデスクでひたすらパンフレットを作り続けた。
会話をしながらも手は動かす。
早いとこ終わらせて御飯が食べたい。
でもそんな僕の願いとは裏腹に、作業が終わったのは夜9時を過ぎた頃だった。
- 216 名前:2月の冬のあたたかさ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時41分46秒
- 「はいはいお疲れ様ねぇ」
安倍先生はぐだっと疲れきっていた僕らに温かいコーヒーを持って来てくれた。
こんな時間まで働き続けた安倍先生、それなのにずっと笑顔。
カッケ−なぁと思いつつ、僕もこんな先生になりたいと思ってみたり。
差し出されたコーヒーは空腹の僕の胃に綺麗に広がっていった。
そしてとたんに僕の胃は活動を開始した。
静かなロビーに僕のお腹の音が華麗に響き渡る。
真っ赤になったのは言うまでもないし、2人が大笑いしたのも言うまでもないだろう。
もう少しだけ作業があるからという安倍先生に挨拶をして、僕らは会場を後にした。
2月で夜で、そりゃ寒いワケで。
僕らは近くにあったコンビニで肉マンを買って歩きながら食べている。
手に伝わる温かさ以上に熱い肉マンが僕の口の中で暴れまくっていて、食べ始めは2人して
ハフハフ言いながら道を歩いた。
「吉澤くんは何食べたい?」
肉マンの熱が引いた頃、残りでいうとあと半分くらいの時、石川さんは両手で持った肉マンを
口に頬張りながら僕を見上げきた。
- 217 名前:2月の冬のあたたかさ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時42分48秒
- 可愛いなぁと思いながら、頭の中で食べたいものリストを作成する。
僕ら学生さんはビンボーだから行くのはやっぱし安いところ。
それも冬だし食べるのは温かいのがいいよねぇ・・・。
消去方でリストから食べ物を消していく。
「立ち食いそばかラーメンで。安くいきましょう」
リストに残ったのはこんな感じ。
寒い日に食べるものとして間違っていないし、値段的にも間違っていないはず。
石川さんも『OK』サインを出しているし、目指せお夕飯一直線。
駆け込む先は、やっぱり座れるラーメン屋。
せっかくだから一緒に餃子も食べてしまおう。
お店に入ってマフラー取って、向かい合わせに座ったら、ほらさっきよりも全然温かい。
寒い外から温かい室内に入ったおかげで、石川さんの頬は桜色。
多分僕の頬も桜色。
「今日は何だか僕のせいで呼び出されたみたいになっちゃたみたいで・・・」
「吉澤く〜ん、日本語なんかおかしいよ。
でも気にしないで、私も暇だったし、楽しかったし」
『だからそんなこと言わない』と言いながら僕の額を人さし指でぐっと押して笑う石川さん。
行動の一つ一つがもう僕のツボなわけで。
ラーメンなんてしばらく来なければいいのにと思う程、僕はこの時間が楽しかった。
・・・しかし、ここのお店のもっとーは、『早い上手い安い、これであなたに幸せを届けます』
世の中本当にうまいこといきません。
まぁだからこそ楽しいっていうのもあるんですがねぇ。
- 218 名前:2月の冬のあたたかさ。 投稿日:2003年08月01日(金)18時44分06秒
- 「食べないなら私が食べちゃうよぉ」
お箸をカチカチさせて微笑む姿。
はい、すぐに食べます。
本当に欲しければあげますが、今回はゆずりません。
そのかわり餃子はあげてもいいですよ。
ニヤリと笑ってアッカンベをしたら石川さんは頬をぷくっと膨らませて僕の分の餃子を奪っていった。
得意そうな顔をして美味しそうに餃子を食べて、お箸をまたカチカチ。
僕、絶対に石川さんから抜けられそうもありません。
高らかに宣言してもいいくらいです。
「石川さん、餃子の恨みは大きいですよ」
「へへ〜んだ、ぼけーっとしている吉澤くんがいけないんだよぉ」
まるで小学生のような会話をしながら食べるラーメンは最高です。
でもそれはラーメンに限ったことじゃなくて、こうやって石川さんと食べるモノなら
何でも最高なのかもしれないです。
ラーメン味の幸せを、その日僕はしっかり噛み締めた。
『早い上手い安い、これであなたに幸せを届けます』
このお店のキャッチフレーズはあながち外れではなかった、かな。
- 219 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月01日(金)18時45分43秒
- 更新しました。
季節外れな感じですが(苦笑)
たまにはいしよし。
やっぱり書いてて楽しいなぁ。
>token様
石川さん視点が吉澤くん視点に比べて少なくて、何か気持ちとか
そういうのを書いていることがなかったなぁということに前回の
更新で気付きました(苦笑)
本当はもっと早くに書きたかったんですけどね。
いししばって私の中では友達と姉妹の入り交じったような感覚なんです。
だからこんなじゃれあいもOKOKです(w
>Silence様
はい、見事にしておりました。
というよりもしすぎて分からなかったとでも言うような・・・
石川さんの中で必要不可欠ですね(w
吉澤くんも石川さんもお互いに大事すぎているんです。
自分なりの理解の仕方は違ったとしても(苦笑)
まぁ私としては石川さんサイドの気持ちが分かって嬉しい限りですね。
>ぷよ〜る様
そうです。
少しだけ前に進みました。
本当はもっと早くにこれを書きたかったんですが(苦笑)
気が付けばもう8月。
月日の流れるのは早いものです。
私も石川さんは本当に美しい人になってきたと思います(w
- 220 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月01日(金)21時05分05秒
- 更新お疲れ様です!
季節外れですが、そこがまたいい感じです!
寒い季節だけど二人の心は温かいものが通い合ってる感じがします。
あー、いつまでも見守っていきたい・・・と思わせてくれますね、この二人の行動や言葉の一つ一つが。
次回の更新も楽しみにしています。
P.S じゃあ作者さんは私より一つ上です!私は六月に二十歳になりました!!
- 221 名前:token 投稿日:2003年08月02日(土)12時50分20秒
- 更新お疲れ様です。
季節外れオッケー。寒い時期は食べ物が美味しいってイメージがあります。
石川さんと吉澤君の餃子を巡る攻防戦、いいですね〜。微笑ましいですよ。
二人の仲だいぶいい感じで暖まってきたんじゃないですかねえ。
では次回も楽しみにしております。
- 222 名前:Silence 投稿日:2003年08月03日(日)13時53分24秒
- 更新お疲れ様でした〜!!
いいな〜。いや、本当に。読んでいる間終始顔が緩みまくり(w
うんうん、分かるよ。といたるところで頷きまくってました。
最近の吉澤くんは本当に自分の気持ちに素直になってますよね。
『僕君』の一読者としてこれ以上うれしいことってないです。
ものすごく次回も楽しみです!!!
- 223 名前:夜の酒も君となら 投稿日:2003年08月04日(月)08時43分22秒
- しばらく海外に行かずに日本で仕事。
少しは楽なるかと思ったのに・・・どうして仕事は終わらない。
残業なんて当たり前で、家に帰ると巨大水槽だけが迎えてくれる。
「・・・寂しい人間だぁ」
ため息をすると一つ幸せが逃げていくなら、保田の幸せはもう何百と逃げていっている。
昔描いた理想の中では、もう結婚してるはずだった。
毎晩家に帰ったら、奥さんが料理を作ってくれていて、自分の帰りを待っていてくれる。
『おいしい?』なんて言われながら『あーん』とかしてもらって食事の後は
一緒にお風呂なんかに入ったりなんかしちゃって!!!!!
「・・・理想と現実の関係なんてこんなもんだよねぇ」
現実は奥さんどころか彼女もいない。
家に帰っても人はいない。
食べる御飯はほとんどインスタント。
見兼ねて飯田がたまに御飯を作りにきてはくれるけど、甘えているばかりじゃいられない。
だけど料理はいくらやっても上達しない。
「・・・結婚の前に身体壊すよねぇ」
- 224 名前:夜の酒も君となら 投稿日:2003年08月04日(月)08時44分02秒
- 悲しいなぁ。
寂しいなぁ。
飲みたいなぁ。
「・・・カオリに電話だね」
やっぱり頭に最初に出てくるのは飯田の顔で、嫌々いいながらも来てくれる自信が妙にある。
おつまみくらいはつくるから、今日は一緒に飲みましょう。
電話越しでやっぱり飯田は嫌々言いながらも『もうちょっとしたら行くから』と言ってくれた。
そしてその言葉通り飯田は少したってからやってきた。
家でまどろんでいたらしく、見事スッピン。
だけど美しい。
ちなみに第一声は『眉毛は描いてないよ』だった。
やっぱり少しずれている。
だけどそれが飯田らしい。
保田はニヤリと笑ってやった。
飲んだ酒はいつもよりも少しだけ旨かった。
保田は心の中で呟いた。
- 225 名前:手を握っていこう。 投稿日:2003年08月04日(月)08時45分56秒
- 「だめ、絶対だめ」
「何でそんなダメ駄目言うのさ」
小さな睨み合い。
その小さなは身体のことを指しているワケではない。
そう、決してない。
2人の手に握られているのは2枚の旅のパンフレット。
時間が合った時に行こうと昔から言っていた旅行のパンフレットだ。
1枚は沖縄で1枚は北海道。
沖縄は矢口が持ってきた放で、北海道はなつみが持ってきたのもだ。
「そんなに矢口は北海道に行きたくないんかい?」
「違うもん!行きたくないワケじゃないもん」
「じゃあ何でそんなにダメ駄目言うのさ」
諦めたようになつみはため息をつきながらパンフレットから手を離す。
『もう北海道じゃなくていいから理由だけでも教えてよ』
なつみのため息を真正面から受けた矢口はバツが悪そうに今だ自分の手に握られている
少しシワの入ったパンフレットに視線を落とす。
上は北海道で下が沖縄。
北海道のパンフレットには一面に広がった緑が写し出されていて、
隠れた沖縄のパンフレットには真っ青な海が広がっている。
- 226 名前:手を握っていこう。 投稿日:2003年08月04日(月)08時47分38秒
- 「・・・行きたくないワケじゃないんだもん」
怒られて子供のように声を小さくする矢口の髪をなつみはそっと優しく撫でて、茶色の細い髪に指を通した。
些細なことでよく小さな喧嘩を起こす2人のことをきちんと理解している猫の矢口はそれに怯えるワケでもなく、
部屋の中をウロウロしながら、自分の食べ物が入っている戸棚を爪でガリガリと引っ掻いて開けようとしている。
それに気付いたなつみが矢口の髪から手を退けて、食事を求める猫の矢口にいつものお皿に食事を入れて、
柔らかな毛に先刻まで矢口の髪に落としていた手を落とした。
「・・・オイラはさ」
「うん」
「本当に北海道に行きたくないワケじゃないんだ。
だからって絶対に沖縄に行きたいってワケでもないの」
自分の握っているパンフレットがクシャッと音を立てて、矢口の手の中で少しだけシワを増やす。
知らず知らずのうちに入れてしまった力のせいで、シワの入ってしまったパンフレットを見つめながら
矢口は小さな手でそのシワを伸ばす。
なつみは矢口の言葉を待って、何も言わずに猫の矢口の柔らかな毛に手を置いている。
しばらく沈黙の時間だけが部屋の中をゆっくりと流れ、食事の終わった猫の矢口が伸びをしばがら
毛ずくろいをし始めた頃に、やっと矢口は子供のような口調で声を発した。
- 227 名前:手を握っていこう。 投稿日:2003年08月04日(月)08時48分30秒
- 「・・・なっちはさ、地元が北海道でしょ?
オイラよりも全然北海道のことも知ってるし、北海道のこと大好きだし。
地元だからもちろんなっちの知り合いとかいるワケじゃん。
あ、それがイヤだとかじゃないよ。
オイラはなっちの友達とかにも合ってみたいし。
だけどさ、この前なっちが北海道に里帰りした時あったでしょ?
でさ、何だか帰って来た時さ、そんごく寂しそうな顔してたじゃん。
・・・オイラだってなっちが行きたい所に一緒に行きたいよ。
だけどさ、あのさ・・・うん、何だろう・・・」
視線は絶えず宙を彷徨い、探し出す言葉が同じように宙を彷徨い、言いたいことを声に出せない。
手の中のパンフレットはまだシワが結構残っている。
紙についたシワなんてそう簡単に伸びるはずもないし、そんなことは矢口にだって分かっている。
無意味かもしれないけど、それでもシワを伸ばそうと頑張ってみる。
そんな矢口の言葉だけれど、なつみは矢口が言いたい気持ちを受け取った。
「・・・うん、大丈夫だよ。矢口の言いたいことなっちにはちゃんと伝わったよ」
「あ、うん。だから、そう、行きたくないワケじゃないんだ。
だからさ、ってか今さらかよって思うかもしれないけど、なっちが行きたい所行こう。
あの、オイラが言いたかったのはそのことだけだったから・・・うん。
そうだ、やっぱり北海道行こうか。オイラもなっちの両親とか友達に会ってみた---」
- 228 名前:手を握っていこう。 投稿日:2003年08月04日(月)08時49分09秒
- 無理に笑っている笑顔をなつみはそっと自分の胸に抱きしめた。
『大丈夫』『ありがとう』『心配しないで』沢山の思いをいっぱい込めて。
伝わった優しさに届けたい感謝を込めて、しばらくずっと抱きしめ続ける。
トクトクトクトク心臓の音が一定のリズムをとって、そのリズムを矢口に伝える。
言葉の代わりのメッセージをしっかりしっかり伝えてみた。
「・・・なっち、オイラと一緒に北海道行こう?」
矢口とだったら大丈夫。
帰る時にちょっと寂しくなったりするかもしれないけど、隣に矢口がいてくれるなら大丈夫。
きっと絶対笑っていられる。
きっと絶対側で手を握っててくれる。
「んだね、沖縄はその次に行こう」
そして2泊3日の旅行の行き先が決定されて、その夜なつみは夢で広い空を見つめた。
遠い遠い空のことを、自分の隣で小さくて温かい矢口が一緒になって眺めていた。
夢の中でも繋いだ手からは温かさを感じた。
- 229 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時52分43秒
- その日は、冬が最後に頑張りをみせたような日だった。
温かくなってきたかな?と思っていた時に突然訪れた冬日。
3月に足を踏み入れたのにも関わらず、冬は強くて冷たい風を運んできた。
夕方、待ち合わせ場所の駅で先に着いて待っていた吉澤くんは、白い肌をいつも以上に
白くさせてじっと空を眺めていた。
同じように空を見上げてみたら、空の色は灰色で、雲が厚くて、この気温だったら
雪が降るんじゃないかと思うような空の色だった。
夕方だけど夜に近いような色の世界は、何だか不思議な世界に感じた。
並んで歩いてみても、やっぱり温かさに慣れ始めていた身体は寒さに負けていて、
私達はマフラーにすっぽりと顔を隠して言葉少なく歩いて会場まで歩いた。
別にその間の沈黙のような時間も苦じゃなかったし、むしろちょくちょくと気を使ってくれている
吉澤くんの気配を感じられて楽しくて嬉しかった時間。
そんな時間を私は結構楽しんでいた。
吉澤くんは・・・どうだろ?
私に気ばっか使って疲れなかったかなぁ。
会場に入ってマフラーを取りながらそんなことを少しだけ考えた。
会場の中は夕方ということもあってか人の数も少なくて、
ゆっくりと作品を眺めるには丁度いい感じだった。
受け付けで自分達で必死になって作ったパンフレットを受け取って、
その時のことを思い出して顔を合わせて笑いあってみたり。
- 230 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時54分09秒
- 静かなBGMが鳴る会場は、多少の話し声はするものの、歩くと靴の音が響く程静かで、
私達は並んで歩きながらも声を潜めて会話を交わしていた。
「あ、これ石川さんのですか?」
立ち止まった吉澤くんの視線の先には私の作品。
全然描けなくて泣きそうになりながら頑張って仕上げた作品だ。
思いでも私の気持ちも沢山つまっている。
大きな空に両手を伸ばして、掴んだ雲よりさらに遠くの星に手をかけた。
渦巻く色とりどりの雲達は私を取り巻く人達で、手をかけようとした星は
私の隣でじっと私の作品を見ている人をイメージしてた。
螺旋上に昇り夜の空に吸い込まれる細くて白い階段を照らしてくれる淡い光を放つ星。
私は随分と前から吉澤くんの存在の大きさを感じていたんだと思う。
無意識のうちにイメージが出来上がり、手を動かしたこういう構成になっていた。
最後の仕上げで星に一番時間をかけた。
光りの一つも逃さないように、光りの欠片を零さないように。
「僕、この絵好きです」
吉澤くんの声が遠くに聞こえた。
緊張しすぎて遠くに聞こえた。
すぐ隣にいるのに、頭の奥の方を痺れさせてくれるような声。
絵に描いた星が光ったように見えた。
私だけにしか見えないであろう光りは、私の心を強く温かく包んでくれた。
- 231 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時54分45秒
- もうしばらく見ようとする吉澤くんの背中を押して、さらに奥へと進んでいく。
移動を重ねて辿りついたのは最後の絵。
そのキャンバスは普通のキャンバスよりも分厚かった。
真っ白な世界の上に白を重ねて、無造作に引かれた数本の黒い線。
当てられたライトは作品の前よりも、作品の裏側からの方が強い。
作品の裏側からライトを当てるというのを私が見たのは始めてだった。
だから絵の前に来るまでその意図が全く分からなかった。
「・・・これって」
息を飲むとはまさにこのこと。
私は前から見たその世界に息を飲んだ。
真っ白な世界の奥には影絵のような世界が広がっていた。
女の人の横顔を取り囲むように木々が広がり、小さな鳥が飛び交っている。
無造作に引かれたと思っていた線は、木々から降りるツタの代わりに描かれたもの。
裏側から当てられたライトはこのキャンバスの奥にあるモノの影を表面に写し出す為。
統べてが計算されたような世界。
だけどその世界は吉澤くん特有の温かさを出している。
そう、これは吉澤くんの作品。
私の隣で照れくさそうに笑っている人の作品だ。
「この女の人のモデル、石川さんなんです」
- 232 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時55分43秒
- 自分の名前に思わず振り返った。
吉澤くんは顔を真っ赤にしながらもじっと作品を見つめている。
・・・確かに言われてみれば私の横顔に似て無い気もしない。
自分の横顔なんて偶然とれた写真とかでしか見たことがないから確信なんてもてないけど、
いつも私の隣にいる吉澤くんが言うんだから間違いなんかじゃないんだろう。
っていうか作ったの吉澤くんだし。
間違いないじゃん。
「柔らかい女の人のイメージ。それを考えてたら石川さんが浮かんできたんです。
無断で悪いなって思ったけど、言い出すのも照れくさくて・・・すみませんね」
ぺこりと頭を下げる吉澤くん。
それに答えて首を横に振る私。
謝る必要なんて全然ない。
それよりもこうやって私のことをイメージして作ってくれたというのが嬉しくて、
お互いがお互いに作品の中でお互いのことを描いていた。
その現実がもっと嬉しくて。
だけどすっごく照れくさくて。
多分私達は並んで顔を真っ赤にしていたんだと思う。
憶測なのは顔を見れなかったから。
喋れなかったのは嬉しかったから。
いつまでも作品の前に立って見入ってた私の背中を押したのは、さっきの私の真似をした吉澤くんだった。
- 233 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時56分26秒
- 外に出たら季節外れの雪が降ってきていた。
『寒いはずだ』呟くように言った吉澤くん。
マフラーをきっちりと巻いて両手をポケットに入れて、傘なんて持ってないからそのまま外に飛び出した。
少し雪に降られながら空を見上げて、いつまでも屋根の下にいる私に『おいで』と語りかけるような笑顔を見せてくれた。
雪は私に触れるとすぐに溶けていき、水滴となってその形を私に残した。
吉澤くんの隣に並ぶと、吉澤くんは手を伸ばして私のマフラーをきっちりと巻きなおしてくれた。
『風邪、ひいちゃいますよ』
ありがとうの言葉も言えないで、私は吉澤くんが触れていた部分に自分の手を重ねた。
感じられるはずのない温もりを感じて、私のマフラーで隠れた口元は笑みを浮かべていた。
テクテク歩く私達に降り注ぐ雪。
道路はもうすっかり湿っていて、まるで雨が降っている時みたいだ。
暗くなった空に明るすぎる自動販売機の光り。
仕事帰りのサラリーマン達が襟を立てて足早に横を通り過ぎていく。
「雪、積もるかな?」
「このままずっと降り続いたら積もるんじゃないですかね」
「3月の雪っていうのも悪くないね」
「そうですね、僕もそう思います」
- 234 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時57分18秒
- 『持ちますよ』さりげなくそう言って、手で持っていた私の鞄を吉澤くんは自分の手へと移し、
断ろうとする私をおいて吉澤くんは走って先に角を曲って行ってしまった。
追い掛けた私を待ち構えていたのは温かい缶の紅茶。
冷えた手で持つと熱いくらいの熱をもった缶の紅茶。
「手、冷えたでしょ?これで温めて下さい」
伝わる優しさ。
感じる心。
もらった缶から欲しいのは、その温かさじゃなくて今まで吉澤くんが触れていた所の温かさ。
大事に大事に両手で掴んで、今度はきちんとお礼を言った。
だけど本当に言いたい言葉は---
『温もりをありがとう』
きっと雲に隠れている空高くにある星はこんな私も見て笑っているだろう。
だけど今はそんな星の笑い声なんて聞こえないよ。
厚い雲が被っているし、耳に都合のいい耳栓しちゃったから。
- 235 名前:展示会と紅茶 投稿日:2003年08月04日(月)08時57分56秒
- 「ねぇ、吉澤くん」
返事の代わりに大きな瞳をこっちに向けて『何ですか?』と答えてくれる。
『私やっぱり3月の雪って好き』
夜まではきっと降り続かない3月の雪。
きっと明日にはお日様が顔を出して『洗濯でもしなさい』と言い始めるのだろう。
だから多分、今この時間だけがくれた気紛れなお天気さんの気紛れな雪。
「明日晴れたらどうする?」
少し時間をかけて考えた吉澤くんは、ニコッと笑ってこう言った。
『雪でも晴れでも一緒に土手でも行きましょう』
気紛れお天気さんの気紛れな雪。
明日はひょっとしたら雨かもしれない。
だけどそれでもきっと吉澤くんは『一緒に行きましょう』と言ってくれるんだろう。
明日は雪でも何でもいいや。
そんなことを思っていたけど、私はその夜、密かに吉澤くん顔の照る照る坊主を作った。
吉澤くんに会えるなら、雨でも雪でも曇りでも何でもいいけど、やっぱり晴れが一番いいから。
そして翌日は見事な晴れ空。
私達は土手の柔らかい草に並んで座ってべ−グルサンドを頬張ったんだ。
- 236 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月04日(月)09時03分08秒
- 更新しました。
世間では『夏休み』だし、夏休みSPってことで大量更新。
と、いうかこの季節感の無さから早く脱出したいのもありですが(苦笑)
さて、予告です。
『僕君』の第1章は後2、3回の更新で終了です。
(第1章と違い第2章はとんでもなく時間が過ぎるのが早い気もしますが・・・)
第1章の残りは全部いしよしでいきます。
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
いつの間にやら梅雨も終わり、夏がきました。
東京のじめじめとした夏は何年経っても慣れません(苦笑)
物語りの中ではまだ冬です。
書いてて季節感ないなぁなんて思って、でも温かい2人を書き続けていきたくて。
冬の寒さの中での温かさ。
石川さんも吉澤くんも温かくあれ。
そして随分遅いですが、お誕生日おめでとうございま(した)☆
>token様
そうなんです。
寒い時に食べる温かいものって身体の芯からほくほくしてくるし無条件で『旨い!!』
と思えてくるんですよねぇ。
私の中にある固定イメージは『夜食べる肉マン』です(w
(高校時代の駅までの帰り道、課題や部活で遅くなると友達とよく食してましたから)
永い時間をかけて2人はほくほくと見えないほっかいろを温めあってきています。
>Silence様
久々のいしよしはやはり甘めで(w
『頬が緩みすぎてヨダレが垂れてしまう程甘く』はここでは程遠いですから、
ほどよく甘めです(w
吉澤くんは本当に変わりました。
まだごにょごよとしている所もありますが、素直にすこやかに成長しております。
『君僕』の作者としてもかなり嬉しいです。
やっとこさ進展が見られそうな 予 感 ♪
- 237 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月04日(月)11時20分38秒
- どーもぉ♪…いやぁ、なんかもう…心温まるって、こう言う事を言うんですね…。
圭ちゃんの寂しさを味わった後かおりんの暖かさを味わって、なちまりの絆の暖かさを味わって、いしよしのぬくもりも味わって…。
つーか吉澤くん、超カッコいいです。モデルが何気に石川さんだなんて!!
最近、ここの「いしよし二人っきり」を見るとドキドキしてしまいます(笑)
次回も楽しみにしております!!
- 238 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月04日(月)11時40分45秒
- 更新お疲れ様です!
大量更新とても嬉しかったです。
第一章はあと2・3回で終わりですかぁ。何か少し寂しい気もしますが、
第二章があると知り、ほっとしました。
残りは全部いしよし!!すっごく今から楽しみです!
期待してます!!
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)13時09分20秒
- 240 名前:token 投稿日:2003年08月04日(月)22時27分29秒
- 大量更新お疲れ様です。
他のCPの動向と、吉澤君と石川さんまで。大盤振る舞いですね。
私、絵のことはあまりよく解りませんが、吉澤君の絵は見てみたいですねー。
やっぱり、あの顎のラインでモデルが誰だか一目で解るんでしょうかね。(笑)
土手はすっかり二人のデートスポットですね。おべんと食べて、いやー微笑ましいなー。
では、次回も楽しみにしております。
- 241 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)07時59分26秒
- 「ひとみちゃーん、忘れ物ないー?」
「大丈夫大丈夫。行ってきまぁす」
玄関から顔を出して手を振っている毋。
その玄関から飛び出したスーツ姿の僕。
スーツの理由は今日が卒業式だから。
そして飛び出した理由は、今日にかぎって目覚まし時計をセットし忘れたから・・・。
これじゃ待ち合わせの場所に着くのギリギリだよぉ。
慣れないスーツで走って走って。
電車の中でネクタイ直して。
やっぱり到着したのは時間ギリギリで、石川さんは時計をチラチラ見ながら改札の方を見たりしていた。
「すみません、待たせちゃッたみたいで」
「ううん、私も来たばっかだから気にしないで」
- 242 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)08時00分35秒
- 駅には僕達のようにスーツを着た人や、着物を着た人が多くいた。
卒業式の日というのは何処も同じような時にやるんだと変に感心したりしながら、僕らは会場へと足を運んで行った。
クラスごとに分けられている座席に石川さんと並んで座って、入り口でもらったパンフレットに目を通した。
書いてある内容はとりあえず卒業式でやらなきゃいけないような項目、それに加えて何故か『ぷれぜんと』
何のぷれぜんとだか分からないけど、とりあえずぷれぜんと(それも後半の終わり間近)をやるらしい。
隣に座っている石川さんも同じ疑問を持ったらしく、首をかしげていた。
それから卒業式の開演間近に柴田さんが隣に駆け込んできて、ギリギリに駆け込んでくるような柴田さんに
石川さんが呆れてて、その間に挟まれた僕は2人の会話に挟まれてどうしたらいいか分からなくて・・・
とりあえずこんなどたばた状態で卒業式の幕は上がった。
- 243 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)08時01分47秒
- -----------
--------
-----
駄目だ・・・眠いよ。
いくら時計を見ても進まない針。
終わらないんじゃないかと思う程長いありがたい祝電・祝辞。
こっくりこっくりする度に、隣の石川さんが僕を揺すって眠気を飛ばしてくれる。
やはり昨日あまり眠れなかったのがいけないんだ。
眠れなくて本なんか読んじゃってそれにはまって余計に眠れなくなったのがいけないんだ。
しかし当たり前だけどこんな原因解明を行ったって眠気は飛ばない。
校長先生の言葉も眠気のあまり頭に入らないという有り様。
気が付いたら卒業式終了間近。
・・・2年間のシメの行事がこんな風になるとは思ってもみませんでした。
「吉澤くん、ぷれぜんとだよ」
ぽけーっとしている僕の身体に感じる揺れ揺れ揺れ。
石川さんと柴田さんが僕を強烈にゆすってる。
柴田さん・・・力が強すぎです。
僕の後ろから押し殺したような笑い声が聞こえます。
起きますから、きちんと起きますから。
もう揺らさないでも大丈夫です。
・・・吐きそうです。
「し、柴ちゃん、吉澤くんの顔色が悪くなってるって」
- 244 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)08時03分07秒
- 石川さん、ないすふぉろー。
柴田さん、一応ぐっじょぶ。
おかげで目が覚めました。
そして眼鏡がずれました。
「さて、卒業生の皆さん。今日は本当におめでとさん」
ずれた眼鏡を直している時に突然始まったのは安倍先生のスピーチ。
いきなり舞台袖からマイクを持って表れて、卒業式とは思えないような口調でトークスタート。
服装も何故かラフな感じのジーパン白Tそれに加えて麦わら帽子。
季節外れも場違いも全部おかまい無しの『なっち笑顔』。
呆然としているのは僕だけじゃない。
絶対ない。
だけど全然憎めない。
それもきっと皆同じ。
その証拠に周りからは『なっちコール』があったり指笛があったりと盛り上がりはじめている。
「はいはい皆さんありがとねー。さくさくいくよー。
次は『ぷれぜんと』ってなってるっしょ?だからぷれぜんといくね。
皆、本当に2年間お疲れさんでした。
なっち達先生って呼ばれている人達は皆に出会えて色々なこと教わった。
お礼っていうか、それで皆にお返しがしたくて、皆にプレゼントを用意させてもらいました。
だから皆、受け取ってねーーーーーーーーーー!!!!!!」
照明が全て消えた。
そして黄色いスッポトライトが舞台に光りの道をつくると、それに続くように次々と
スポットライトが舞台に光りの道を作っていった。
光りを全面に受けた幕がゆっくりと上がっていく。
そして幕が上がるにつれ、周りからはため息にも似た歓喜の声が次々と生まれてきた。
- 245 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)08時04分04秒
- 舞台には巨大なひまわり畑の絵が飾られていた。
夕暮れの時間、オレンジと紫の空と雲。
吸い込まれるような空の元に咲くひまわり。
黄色い花びらを夕暮れ色に染め、風に吹かれながら太陽を向いて輝いている。
「・・・この卒業式が終わって、担任の先生から卒業証書を受け取ったら
皆はそれぞれの道を歩いて行きます。
それは全然違うものだったり、少し違うものだったり・・・。
これからの人生っていう名前の中で1人1人が違う道を歩いていきます。
出会いも沢山あって、別れも沢山あって、それぞれがそれぞれの道を築いて・・・
記憶の渦の中で霞んでいってしまう思い出もあると思います。
だけど、忘れないでっていうのは無理かもしれないけど、たまには思い出してほしい。
ここでの出会い。ここでの思い出。
ひまわりの絵はその思い出の扉をあける為のきっかけになればいいなと思って先生達全員で
描きました。
3月18日、この日で皆は学生という身分を卒業します。
だけどなっち達先生はいつまでも皆の先生です。
困った時とか嬉しかった時とかいつでも来て下さい・・・
じゃないな、来てね。
なっち、皆のこと大好きだし、意外に寂しがりやなんだ。
だから気が向いた時にでも顔出しに来てね。
コーヒーくらいは入れてあげるからさ。
ん、ちょっと話しが長くなっちゃったね。
とりあえず『ぷれぜんと』はこれにて終了!
皆、卒業おめっとさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」
- 246 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)08時05分17秒
- きっと帽子とか冠ってたのなら皆がこの時一斉に投げていることだろう。
卒業式の中で一番大きな拍手が起こった。
校長先生の言葉の後の拍手が可哀想になってしまうくらいに大きな拍手。
それはしばらくの間止むこと無く続いた。
そして卒業式は無事終了。
担任の先生から卒業証書とクラスの集合写真をもらって、また皆で写真を撮ったりした。
安倍先生はやっぱりすごく慕われていて、他のクラスからも生徒が来て一緒に写真を撮ったり、
泣いて別れを惜しんだり。
僕はこの春からも安倍先生にはお世話になるからそんな寂しいとかないんだけど、
泣いている皆をみたら少しグッときた。
「じゃあ私出発の準備しなきゃいけないから。
またね!梨華ちゃん、それに吉澤くん。
こっちに帰ってくる時には連絡でもするね」
長い時間の別れもさらりと言いのけてしまう柴田さん。
その目が少し潤んでいたのは心の中だけの納めておこう。
石川さんも嵐のように去っていった柴田さんの背中を微笑みながら見守っていることだ。
だから石川さんの目も少し潤んでいたのも心の中だけに納めておこう。
会場の外に出て空気を大きく吸ってみた。
気が付けば終わってしまっていた卒業式。
来年は今日とは違う立場で迎える卒業式。
「頑張りますか」
独り言のように呟いたのに、石川さんがそれに答えて背中を叩いてくれた。
- 247 名前:3月18日 投稿日:2003年08月07日(木)08時07分21秒
- 更新しました。
第1章の最終章『3月18日』です。
まずは第1幕終了。
残すは2回。
さくさくいきます。
>クロイツ様
前回は『はぁとふる』な感じで(w
何だかんだであったかいやつらです。
吉澤くん、ここにきて急成長♪
一番の成長株です♪♪
ヘタレさを残しつつも成長成長。
今回でやっと第1章終了の第1幕が終わりました。
残りの2回もいしよしです。
ドキドキしてみたりなんかしちゃったりしてください(w
↑
文章が変(w
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
第1章は学生編ってやつですね。
寂しいと言っていただけるのが何だか嬉しいです(w
学生最後のいしよしは、一体どんな風に終わるんでしょうか。
そんなにひっぱるつもりもないので、のこりのいしよしを待ってて下さい(w
>239 名無しさん様
(0○〜○0)<ありがとうだYO!
つ〃∩ ←緊張して手が動いている。
(眼鏡よし子はAAが何か変(苦笑))
>token様
たまに登場しないと忘れられてしまいそうないしよし以外のCP。
私も忘れてしまいそうなので、たまに登場してきます(苦笑)
私も絵のことが解るかどうかと言われたら、何とも言えない感じですが、
今まで学んだ知識をちょっといれつつ『出来るかなぁ』なんて思いつつ、
絵をつくっていってます。
いつかは作ってみたいですね。
土手はもう2人からは切っても切れない場所です(w
- 248 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月07日(木)09時56分38秒
- なっちありがとう…!!
感動しました。ああ、こんな先生いたら…私は思いっきり抱きついてそうだなぁ(←オイ)
寝ちゃってる吉澤君に笑い、なっちに感動し…ああ、なんて素敵な卒業式っ!!
>そして眼鏡がずれました。
ここで大爆笑しました(笑)
次回も楽しみにしてます!!がんばってくださいね♪
- 249 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月07日(木)10時54分08秒
- 更新お疲れ様です!
私も感動しました。いい卒業式になってよかったですね。
なんと言っても「ぷれぜんと」!なっち先生達も粋なこと考えるもんですね☆(笑)
第二章楽しみです。いしよしの二人の関係はどうなっていくのか。
あと何気に「保田&飯田」コンビも結構気になります。どーなんでしょう??(笑)
期待大!って感じです♪
- 250 名前:Silence 投稿日:2003年08月07日(木)11時40分06秒
- 更新お疲れ様でした〜!!
なっちがすごくいい。でもですね〜自分的には駅の待ち合わせ
遅れてきたよしざわくんに当然のように言った石川さんの
セリフがつぼりました。な〜んか石川さんの優しさが自然に
出ている感じで(w では次も楽しみにしてます
- 251 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月07日(木)20時46分32秒
- 作者さま、更新お疲れさまです。
とりあえず、吉澤くん・石川さん、卒業おめでとうございます。
ひまわりの絵を想像したら鳥肌がでました。
卒業は新しいことの始まりだと思います。二人の微妙な距離ももう恋人同士の距離よりも絶対になくせない存在になっているんだと、温かく見守りたいです。
では、次回更新も楽しみに待ってます!!
- 252 名前:token 投稿日:2003年08月08日(金)08時28分17秒
- 更新お疲れ様です。
なっち、卒業式の主役じゃないですか。(笑)
でもいいな〜、こんな素敵な卒業式が出来て。
ぷれぜんと、か〜。私も絵を描いてみたくなりました。(影響されやすいもんで)
皆さん、卒業おめでとう!
次回も楽しみです。
- 253 名前:3月18日 投稿日:2003年08月09日(土)08時09分57秒
- 飲み会まで2時間くらいあったから、僕らは適当な喫茶店に入って時間を過ごすことにした。
慣れないスーツのおかげで僕らはクタクタ。
コーヒー飲んで眠気を飛ばして、サンドウィッチを頬張りながら幸せを噛み締める。
石川さんは目の前で、美味しそうにケーキを食べている。
満面の笑み。
この言葉がぴったりあてはまる。
もう駄目だね。
やっぱり僕は君を離せない。
今日が卒業式で、今日が終われば君は僕から少し離れていく。
当たり前だけど毎日は会えない。
下手したら全然会えない。
言葉で交わした約束が、強さを持たない言葉だったから、こうして僕は不安になる。
だけど、今こうして石川さんが目の前にいると分かっているだけで気持ちは遥か雲の上へ。
その場限りの幸せを。
こうして僕は足踏みをくり返す。
- 254 名前:3月18日 投稿日:2003年08月09日(土)08時10分51秒
- 「飲み物、何か飲みますか?」
グラスの中には氷だけ。
お皿の上にはまだ残っているケーキ。
喉が乾いていたならそう言ってくれればいいのに。
答えに困っている石川さんを置いて、僕はカウンターへ向かって歩いていった。
紅茶を買って、石川さんの座る座席へ。
・・・石川さん?
席を立ったのなんて本当にわずかだった。
なのにどうしてそんなに苦しそうな顔をするんですか?
あっという間に笑顔が消えていて、眉間にシワを寄せてハの字眉毛。
冷えたグラスをそっと石川さんの前に置いたら、はじかれたように顔を上げて、
そしてとっても安心したような表情をして笑ってくれた。
僕は何処にも行きませんよ。
石川さんを置いて何処かに行くことはしませんよ。
許される限り近くにいます。
許される限り近くで手を取ります。
だからそんな苦しそうな顔、しないで下さい。
僕の胸まで苦しくなります。
言葉で言えたらどんなに楽だろうか。
もどかしい想いが僕の両手を縛り上げ、石川さんに不安な表情をさせている。
言える言葉の少なさに、僕は苦笑いを抑えきれない。
悲しくなる程臆病だ。
- 255 名前:3月18日 投稿日:2003年08月09日(土)08時11分30秒
- 「氷が溶けちゃいますよ」
石川さんが望んでいる言葉。
それを僕は多分分かっている。
今日という日がどんなに大切な日かも分かっている。
不安な気持ちは僕だけじゃないと思う。
確実な何かがない僕らだから。
でも、もしそれが思い違いだったらどうしよう。
いつだって僕は憶病者だ。
何かに怯えて、失うことを怖がっている。
10が0になることはないだろう。
ひょっとしたら10は11、12と増えていくかもしれない。
だけどそれは9にも8にもなるということだ。
僕の中での葛藤が始まって一体どれくらいの時間がたったのだろうか。
一言言えば済むことなのに、気が付けば時は随分経っていた。
「ありがとう。お金、後で払うから」
「別にいいですよ」
「駄目、私そういうのきっちりしないと気すまないの」
- 256 名前:3月18日 投稿日:2003年08月09日(土)08時13分00秒
- 強きな視線に、結局僕は負けてしまう。
さっきまであんなに苦しそうな顔してたのに、どうしてすぐにああいった強さを
見ることが出来るような表情が出来るんだろうか。
石川さんの深みだ。
やっぱり2人でいる時の時間の経過は早いもので、気が付けばもうそろそろ行く時間。
顔だけ出して帰るつもりだから、あまり遅く行ってからまれるのは勘弁だから、
早々に喫茶店を後にして、飲み会が開かれる店へと向かった。
・・・結局テンションは高いワケだ。
どんなノリだか分からないけど、通された座敷きは随分盛り上がっていた。
こういったのに慣れてない僕だから、簡単み皆に挨拶をして、柴田さんのようにすっぱり店を後にした。
あまりクラスの人と関わりを持っていなかったせいか、そんなに感傷的になることはなかった。
石川さんは、少しだけ残って皆と話しているようだ。
1人店の入り口に突っ立って、明るい空を見上げた。
- 257 名前:3月18日 投稿日:2003年08月09日(土)08時14分00秒
- 人工光。
つくられた空の明るさはやっぱり不自然だ。
眠らない街。
それは眠れない街にも思える。
人が俳諧しすぎている為、木々はゆっくり休めない。
人がいるから人が動き、そこでここは眠れない街へと変化を起こす。
自論だけど、僕はそう思っている。
「おまたせ」
この石川さんの一言で僕の思考は停止命令。
素直に命令を受諾して、人工光溢れる街を僕らはゆっくりと歩く。
光りの渦に飲み込まれ、歩く僕の足は硬いアスファルトに吸い込まれていく。
会話の少ない僕らの間にある無言の会話。
きっとどっちも待っている。
確実な約束を交わす大切な一言を。
「もうすぐ、駅だね」
人の溢れる駅前で、僕らはさらに歩みを緩めた。
会話が止まり、騒がしい周りの声が僕らの間を駆け抜ける。
改札の開く音がして、僕らはさらに足を進める。
- 258 名前:3月18日 投稿日:2003年08月09日(土)08時14分53秒
- 自分の家に続く電車に乗りたくない。
この気持ちだけで、僕はいつもとは違うホームに向かった。
理由を訪ねられて『ちょっと寄る所があって』と適当にごまかした。
本当は少しでも長く石川さんといたいだけだけど、言うのが照れくさくて、行動に移すのも照れくさくて。
同じ電車の行き先の違う電車。
交わした言葉は『じゃあ、また今度』
頼りない約束。
今度って一体いつのことだよ。
自問自答して弱い自分を笑いたくなる。
滑り込んでくる電車。
ほとんど同じタイミングで電車はやってきて、乗り込んだドアから見えた石川さんの姿。
電車の中から見た石川さんの表情は、不安そうに揺らいでいた。
だから笑顔で右手を上げたら、石川さんは無理な笑顔をつくって手を振った。
後ろでドアの閉まる音がして、お互いの乗った電車は動き出す。
狭い車内、響くアナウンス。
僕は走り出す電車の中からずっと外を眺めていた。
見えない石川さんを見つめていた。
- 259 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月09日(土)08時17分05秒
- 更新しました。
第2幕終了。
残りあと1回。
あえて何も言いません。
それではまた次回。
>クロイツ様
私はこんな先生がいたら抱き付けずにちょっかい出してます(小学生のように)
専門学校の卒業式、講師の先生がベース&ギター弾いてくれたんです。
何か曲とかは覚えてないんですけど、すげー格好よくて、眠気も吹き飛んだの覚えてます。
(まぁその前に舞台上でブレイクダンスを踊りだしたやからのおかげでちょっと目も覚めたんですけどね(w))
記憶に残るような卒業式ですた。
そしてその日、大腸にばい菌が入って39度の発熱出して苦しみました(爆笑)
最後の飲みにも参加出来ず、ある意味記憶に残る卒業式の日でした。
(いつのまにやら感想文(苦笑))
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
やっぱり卒業式には何かを起こさなくちゃです(w
高校の卒業式、色々な科があったんですけど、その中の一つの科の生徒が大声で『集合〜!!』
って言ったんです。
それを合図に卒業生全員舞台前に集まって、担任の先生にクラスの代表者が
忍び込んで隠しておいた花束贈呈。
まぁ伝統行事のようにもなってるんですが、こういう卒業式だったもんで、
やっぱり思い入れがあるんですよね。卒業式って。
(またしても感想文(苦笑))
保田&飯田コンビですね・・・どうなるんでしょうか(w
- 260 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月09日(土)08時18分44秒
- >Silence様
石川さん、10分くらい前とかに来ててもこう言いそうです(w
優しさ溢れる女性なんです。
吉澤くんもわかって何も言いませんでした。
ここの2人はこんな感じなんです(w
良くも悪くもまったりです。
なっちは今回好評ですねぇ。
やっぱり先生、きちんとしめてくれます♪
余談ですが、私は待ち合わせ場所で2時間程待ちぼうけしてた時(友達が待ち合わせ時間に起きた)
まだ携帯とかも持ってなくて連絡とれなかった時、さすがに『今来たとこ』とは言えませんでした(苦笑)
>ななしのよっすぃ〜様
(*^▽^*)ありがとうございます(0○〜○0)
ひまわりの絵、頭の中で描いたモノを言葉で表すことが上手いこと出来なかった気がしていたので、
そう言っていただくと嬉しいです。
そしてこれからもここのいしよしを温かく見守ってやってて下さい。
(2人の関係、一体どのような関係なのか表現出来なくなってしまいましたが(苦笑))
卒業は終わりで始まりです。
今後のことも楽しみなことです(w
>token様
その通りです(爆笑)
やっぱしなっちはきめるとこきめてくれます♪
いい先生ですよ。
私自身、高校、専門と卒業式では色々と楽しませてもらったんで、思い入れは強いんです。
そして『絵』私は好きですよ。
高校時代は課題としてあったんで楽しめなかったこともありましたが、全部は経験。
良い財産になっています。
描きたい時に描きたいように描くのが大好きです。
是非試してみて下さい♪
- 261 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月09日(土)11時52分39秒
- 二回連続、トップバッターげっとぉ☆うれしいのれす!!
ああ、吉澤君。なんだか吉澤君の気持ちにすごく引き込まれてしまいました。
うああ!!なんかもどかしいっ!!
男になってくれ、吉澤くん(爆笑)
そう思わずにはいられない…(笑)
だけど、この微妙な距離もすごく読んでて心地よいんですよね…うう。
梨華ちゃんがどう思ってるのかが、すごく気になります!!
次回も、超楽しみにしてます!!
- 262 名前:Silence 投稿日:2003年08月09日(土)14時17分52秒
- 更新お疲れ様でした〜!!
後、一回か〜。何が起こるのかな〜と思ってますが(w
言いたいことがまとまらないのであえて一言だけ。
2人の絆が本物と信じています。2人の幸せを。
次回も期待してます。匿名さんがんばってください!!!
- 263 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月09日(土)21時50分02秒
- 匿名匿名希望さま、更新お疲れ様です。
飲み会を早々に抜け出す二人が最高です!
どこからみても恋人同士なのに、互いを必要としているのに…。
吉澤くん!勇気を出すのは今ですYO!!
今後の二人もどうなるのか楽しみです!
次回更新も楽しみに待ってます!!!!!
- 264 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時25分59秒
いつからか、独りで過ごす時間を苦痛に感じるようになった。
投げ捨てたスーツのジャケットに白いブラウス。
静まりかえった部屋の中で、下着だけの上半身が冷たい空気に触れられている。
ベッドのシーツを剥がして身体に巻き付けたら、空気よりも冷たい感覚が私の肌を刺激した。
音楽も鳴らない部屋。
静かすぎる空間。
2年間の一人暮らしで慣れたはずだった。
だけどいつからかとても寂しくて、切なくて、誰か側にいて欲しくなった。
いつから?
そう、いつからだろう・・・。
- 265 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時27分10秒
誰かを待つのは嫌いじゃない。
だけどそれは約束ごとがるから。
守ることがそこにあって、守ってくれる人がそこにいるから。
『守られる約束』
だから待っているのは嫌いじゃない。
どうしてだろう、もう隣にいてくれる『誰か』という存在が無いと普通に生活するのですら苦痛に感じる。
投げ出した卒業証書が痛いくらいに輝いていて、私はその存在が少しだけ疎ましく感じた。
大好きな場所で、沢山の思い出が詰まった所だけど、私から確実な存在を奪っていってしまった
形ある存在が疎ましく思えた。
今日を境に、今まで当たり前のように会っていた人達と会えなくなることはずっと前から分かっていたこと。
柴ちゃんだって海外に行っちゃうし、クラスの皆はそれぞれ仕事についたりする。
それは私も同じなんだけど、それはつまり、吉澤くんも同じことで-----
いつか帰り道で話した会話。
私は本当に吉澤くんとこの先の人生でも今までのように話すことは出来るんだろうか?
いつか吉澤くんに大切な人が出来て、吉澤くんがその人と同じ道を歩もうとする時がきたら、
それは不可能になる気がする。
私が吉澤くんの大切な人の立場だったら、私のような存在は・・・嫌だと思うから。
- 266 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時28分03秒
- 何でこんなに胸が苦しくなるのかな・・・。
どうしてこんなにも寂しくなるのかな・・・。
喫茶店で吉澤くんが私の為に紅茶を買いに行ってくれたわずかな間。
何で席を立ったのかなんて理由は分かっていたはずなのに、遠ざかる背中を見たら胸が苦しくなった。
今さっき、反対側の電車に乗り込む時の吉澤くんの顔が頭から離れない。
笑顔で私に頭を下げて、笑顔で電車の中から行き先の違う電車の中にいる私に軽く右手を上げて-----
どうしてそんなに笑顔でいれたの?
寄る所って何処なの?
私は不安でたまらないのに。
確実なモノなんて何もない。
強く繋がれた手なんて一つもない。
信じたい気持ちよりも大きな不安。
夢の中で夢を見ているような感覚。
明日からは全く違う道を歩いて、並ぶことも交わることもなかったら・・・。
- 267 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時29分13秒
- 今さらながら気付かされる。
私は1人で立てる程強くないということに。
ベッドに寄り掛かって膝を抱えたら涙が出そうになった。
シーツ越しに触れた肌。
それは温かくなくて、私じゃない誰かに温めてもらいたくなった。
人の優しさに沢山触れてきて、それに慣れて独りでいれなくなったのかもしれない。
甘い甘い蜜を吸えば、それはクセとなって私に残る。
クセになった味からはなかなか抜けだせない。
私は多分その罠に、はまっていたんだ。
静まりかえる部屋の中。
薄暗い部屋に光るブルーのライト。
名前も確認せずにボタンを押したら、聞き慣れた声が聞こえて、我慢していた涙が溢れてきた。
「・・・今、何処にいるの?」
考える暇もなく出てきた言葉。
その言葉は本当に私が言ったのかと疑いたくなる程自然に零れた。
『石川さんの・・・家の前にいます』
- 268 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時30分00秒
- 手から零れた携帯は、光りを残したまま音を立てて転がった。
扉を確認もせずに開けたら、吉澤くんが携帯を耳に当てたまま俯いて立っていた。
「・・・どうして?」
声が震えた。
涙も出た。
気持ちがぐちゃぐちゃになって感情の蓋が上手く閉まらなくなっていた。
「・・・不安、だったから」
吉澤くんの瞳が私を捕らえて離さなくなる。
いや、私が吉澤くんの瞳を捕らえて離したくなくなったのかもしれない。
片手を伸ばして吉澤くんの服に触れたら、吉澤くんは一歩前に進んで部屋の玄関の中へと入ってきた。
ゆっくり閉まる扉の音。
それで私の感情の蓋は壊れてしまった。
- 269 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時30分51秒
- 気が付いたら私は吉澤くんの胸の中に飛びこんでいた。
そして声を上げて泣いていた。
プラスチックが床に落ちた時に聞こえるような音が私の耳に響いてきて、
ゆっくりと腕の温かさを背中に感じた。
私が欲しがっていた温もりを感じた。
『離さないで』
『私を独りにしないで』
言葉は泣き声に代わり、気持ちは涙に代わり、全て吉澤くんの元へ運ばれていった。
誰でもいいなんてワケじゃない。
私が欲しいのはこの人の温もりなんだ。
感じていたいのはこの温かさなんだ。
「・・・僕が、側にいますから」
優しい言葉と強く抱き締められた感覚に、私の胸は鼓動を早くする。
いつか吉澤くんの大切な人が私とは逆の隣に立つ時まで、私はこの温もりを離したくない。
シーツ越しに感じる温もりは、しばらく私の涙を誘い続けた。
- 270 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時31分52秒
- -------------
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「紅茶でいいですか?」
「う、うん」
吉澤くんは、慣れた手つきで台所に立って作業をしている。
慣れた手つきというのは、以前家でパーティーをした時に吉澤くんもここの台所を沢山使ったからだろう。
「ごめんね、本当は私がやるべきなのに・・・」
「気にしないで下さい。僕が勝手に来ただけですから」
微妙な沈黙。
気まずいというか・・・恥ずかしいというか。
「吉澤くん・・・」
「ん?」
「・・・さっきの言葉」
「・・・っへ?」
「あ、うんん。何でもない。気にしないで」
- 271 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時32分47秒
- 着たばかりのシャツを抱きしめて私はまた体育座りをしてベッドに寄り掛かる。
しばらく吉澤くんの胸で泣いた後、自分の姿を目の当たりにして大声で叫んで
吉澤くんを突き飛ばしてしまった。
突き飛ばされた吉澤くんも私の叫んだ理由を理解して、真っ赤になって背中を向けた。
あのまま抱き合っていたのなら、私達は一体どうなっていたんだろう。
確かに残る吉澤くんの腕の温かさ。
そして言葉。
『僕が側にいますから』
嘘でもいいと思った。
あの温もりの感じていられるなら嘘でもいいから言葉を信じたくなった。
差し出されたのは温かな紅茶。
私の向い側に座るように吉澤くんは腰を下ろした。
緩めたネクタイに開けられた第一ボタン。
こうして見ると、会社帰りのお父さんみたい。
「お腹空いてませんか?」
「あ、え・・・そうだなぁ・・・うん。少し空いてるかな」
「じゃあ何か作りますよ」
「でも、冷蔵庫の中あんまり物ないんだ」
「う〜んじゃあ何か買いに行きますか」
- 272 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時33分39秒
- 立ち上がって私に差し出された手。
『一緒に行きましょう』
そう誘ってくれてる手。
私が不安にならないようにと差し出してくれた手。
大きくて、温かい、私の大好きな手。
掴んだら優しく握ってくれた。
夜の風がだんだんと温かくなってきていた。
もう春なんだなぁって思った。
この日、私達の間に一つの約束事が決められた。
それは吉澤くんの提案で、『毎週金曜日一緒に食事しよう』というもの。
確実な約束。
毎週訪れる確実な約束。
『でも、もし本当に無理だった時には絶対に連絡を取合うこと。
お互いに無理はしない』
これも追加で決まったこと。
縛られず、だけど結びつく。
- 273 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時34分18秒
「ねぇ、吉澤くん」
振り向いた顔はやっぱり笑顔。
眼鏡の奥で輝く瞳。
柴ちゃん、やっぱり私は吉澤くんを必要としてるみたいです。
好きだとかそういう気持ちは分からないけど、吉澤くんが必要なんです。
「金曜日以外の日も一緒の食事はOKなの?」
返事は分かってるんだ。
だけど言葉で聞きたいの。
言って欲しい。
その声で。
『当たり前です。いつでも僕はOKです』
春が来る。
私達は新しいスタートを迎える。
もうすぐ桜も咲くだろう。
そしたら一緒に御花見しよう。
今までみたいに同じ時間が空くワケじゃないだろうけど、時間を作って御花見しよう。
買い物袋をぶら下げて歩く道のり。
またこうして一緒に歩こう。
大丈夫。
もう、不安じゃないから。
私も。
そしてきっと吉澤くんも。
- 274 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時34分54秒
- ◇◇◇
- 275 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時35分27秒
- ◇◇◇
- 276 名前:3月18日 投稿日:2003年08月10日(日)09時37分28秒
- ◇◇◇
- 277 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月10日(日)09時40分22秒
- 更新しました。
これにて第1章終了です。
そして宣言。
第2章は時間の流れが早いです。
第1章とは流れ違いです。
とりあえず第1章(学生編)はおしまいです。
ま、あんまり変わらないところもあるんですけどね(苦笑)
>クロイツ様
2回連続のトップバッターありがとうございます♪
もう切り込み隊長です。最高です。
さて、これで第1章が終わったんですが、いかがだったでしょうか?
微妙な距離は永遠のテーマです(w
一応石川さん視点でお送りしました(何か久しぶりな感じです)
結構前に書き上げたモノなので、あんまし記憶に残ってないんでが←オイ。
最後の方を色々と書き直した記憶もちょっとあります。
予定よりもかなり長くなってしまった第1章、気に入っていただけたら幸いです。
>Silence様
こんなこと起こりました(w
私も2人の絆は信じ続けている奴ですよぉ。
いしよし好きの熱、冷めること知らずです。
何だか最終的によく分からないYO!
という突っ込みはナシの方向でお願いします(苦笑)
作者も2人の幸せを願っています。
第1章、こんなしめ方でした
(0T〜T0)<僕、一応主人公なんですけど・・・
↑
おいしいところを石川さんに持っていかれた吉澤くん(W
>ななしのよっすぃ〜様
どっから見ても恋人同士。
だけど何とも中途半端は関係がここのいしよしですかね(苦笑)
第1章よりも時間の経過が早い第2章、ここの2人はどんな風になって
いくんでしょう(w
今回の吉澤くん・・・いかがだったですか?
これが第2章の掛け橋になればいいなと思ってます(w
- 278 名前:token 投稿日:2003年08月10日(日)10時13分17秒
- 更新お疲れ様でした。
危なかったー。危うく更新途中にレスするトコでした。
男は立てよ、行けよ、女のもとへー、なんておちゃらけた事書いてたら、
なんと、更新が始まってるんですよ、奥さん!(意味不明)
しかもこれが、この作品の第1章の終わりに相応しい、ドキドキなシーン
なんだけど微笑ましくて、弱いようでいていつの間にかしっかりした絆を
持っていた、いしよしを見せられて、もう感動です。
第2章も、楽しみにしております。
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月10日(日)12時18分19秒
- 更新お疲れ様でした。
初めてレスさせていただきます。
これだけ長い、平坦になりがちな日常的なお話なのに
盛り上げつつ落としつつ、最後もとても巧く収束されているなあと思いました。
更新スピードも速いし話は面白いし、凄いの一言です。
しかもまだまだ続くという事で。。
第1章完結お疲れ様でした。これからも楽しみにしております。
- 280 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年08月10日(日)17時01分19秒
- 更新&第1章完結お疲れ様でした!!
一言・・・最高でした。
では、第2章も楽しみにしてます♪
- 281 名前:Silence 投稿日:2003年08月11日(月)15時27分52秒
- 更新、そして1章完結お疲れ様でした。
作者様(あえてそう呼ぶ)、感動、感激、感無量です(w 最後を石川
さん視点にしたというのは自分の中で大ヒット。吉澤くんがめっちゃ
かっこいいわけで。石川さんがめっちゃかわいすぎなわけで(w
書けと言われれば原稿用紙10枚くらい簡単に感想を書ける気がする
んですがあえてこの一言を
「forever 感動した。」(爆
それでは2章の方もがんばってください〜〜!!!!!!!!!!!
- 282 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月11日(月)18時05分18秒
- 作者さま、更新お疲れ様でした。
今回の吉澤くんは…
「・・・今、何処にいるの?」
『石川さんの・・・家の前にいます』
えらいぞ吉澤くん!君はえらい!!!
それに石川さん
『柴ちゃん、やっぱり私は吉澤くんを必要としてるみたいです。』
『好きだとかそういう気持ちは分からないけど、吉澤くんが必要なんです。』
って思ってるくせに
『いつか吉澤くんの大切な人が私とは逆の隣に立つ時まで、私はこの温もりを離したくない。』
なんで自分が、吉澤くんの大切な人になろうとしないの?
とういうか、いい加減気づきなさ〜い!!!
でも、そんなもどかしい二人が大好きですYO。
好きか分からない、でもそばにいて欲しい。そんな人と結婚したいです(笑)
第1部、楽しくて、もどかしくて、そして、最後に感動しました。
これからも期待して更新を待ってます!!
PS:第二部も保存させていただきたいと思います。
- 283 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月11日(月)18時34分43秒
- >282
そういうレスは止めてくれませんか
更新チェックで飛んで来ると、読む前にネタばれになるので。
本文引用は勘弁してください。
- 284 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月12日(火)09時52分11秒
- 微妙な距離、最高ッ!!!
ああ、別にいちゃいちゃしてるワケじゃないのに…なんでこんなに萌えられるんだろう…(笑)
素敵です!!つーか吉澤くん…か、かっけ〜!!!
なんかもう、この距離が早く縮まってほしいような、このままでいてほしいようなっ!!
複雑…でもすごく面白いです〜!!!目が離せませんっ!!
次回も楽しみにしております!!
- 285 名前:はじまりました。 投稿日:2003年08月12日(火)13時16分55秒
- 春、僕は今まで通っていた学校の先生(ッて言ってもまだ見習い)として学校へ足を踏み入れた。
不思議な感じだった。
職員室には僕用の机があって、挨拶をしたら皆が拍手で迎えてくれて。
今年、TAとしてここの学校に入ったのは僕1人だけだ。
やる仕事は沢山ある。
ほとんど雑用雑務(先生達曰く、ADさんのような仕事)だけど、それも立派な仕事。
入学式の準備に他の先生達に頼まれた用事等々。
1日1日が恐ろしい程早く過ぎる。
学生時代、分からなかった先生達の努力を見た。
安倍さん(先生言うなって怒られた)は僕の席の隣。
ベテラン教員は僕に沢山アドバイスをくれる。
そして僕が仕事をしやすいようにと、他の先生達との交流の場を設けてくれた。
何度頭を下げたか分からないくらいに、僕は頭を下げた。
感謝の気持ちをどうして伝えたらいいかが分からなかったから。
- 286 名前:はじまりました。 投稿日:2003年08月12日(火)13時18分35秒
- そうそう、今年の新入生の中にはなんと辻がいた。
驚かそうと思ってずっと秘密にしていたらしい。
名簿で『辻希美』という名前を見つけた時にはびっくりしたものだ。
そのうえ安倍さんのクラスの生徒。
講議の時に受講カードやプリントを配っていると、必ず何かおもしろいことをして僕を笑わせようとしてくる。
困ったものだけど、可愛いものだ。
加護は保母さんになるべく、短大に入学したんだそうだ。
辻と加護が違う学校に通っていると思うと変な感じがした。
でも2人の仲の良さは相変わらず。
毎週金曜日の石川さんとの食事会の時、2人して一緒に遊びに来て、僕らは4人で食事会を楽しんだり。
想像していた以上に忙しいけれど、毎日がとても充実している。
- 287 名前:はじまりました。 投稿日:2003年08月12日(火)13時20分55秒
- 僕も他の先生達に慣れた頃、生徒達も僕に慣れてくれたみたいで、休み時間や廊下ですれ違う時に
色々と話しかけてきてくれる。
先生よりもTAの僕の方が生徒に距離が近いんだろう。
年もあまり変わらないしね。
駆け足のように過ぎていく日々。
そんな日々の中、桜の開花が少し遅れていたおかげで、僕は石川さんと御花見をすることが出来た。
と言っても時間がなかなか合わなくて、御花見をしたのは本当に桜が散る寸前。
夜桜を見ながら僕らは沢山語り合った。
石川さんも仕事を頑張っているらしい。
前からバイトとして働いていた所での仕事だけど、正式に雇ってもらったからには
バイトの時にはなかった仕事もあるし、忙しくもなる。
だけどその話しをしてくれてる時の顔はすごく楽しそうだった。
いいことだ。
お互いの毎日が充実しているということは。
たまに僕も早く上がれる時がある。
そういう時は石川さんの働くお店に7時45分頃顔を出す。
そう、決まった時間。
決まらずに決まった僕らの約束の時間。
- 288 名前:はじまりました。 投稿日:2003年08月12日(火)13時22分21秒
- 石川さんの働くお店と僕が働く学校。
距離にするとあまり離れていないから、会おうとすればこうして会える。
肩を並べて歩いて喋って。
疲れた身体には石川さんが。
栄養ドリンクよりも効き目大。
僕にとっての万能薬だ。
そう言ったら叩かれた。
でもその後に笑って自分で叩いた所を撫でてくれた。
一緒にいることは学生時代よりも確実に減った。
だけど僕らの関係はずっと続いていいる。
今まで同様曖昧さを残しながら。
休日がたまに合えば、前のように一緒に土手に行くし、ちょっとお金に余裕があったら
動物園なんかにも行ったりして。
触れることはないけれど、距離は前よりも近付いているんじゃないかと思う。
心の距離はね。
- 289 名前:はじまりました。 投稿日:2003年08月12日(火)13時24分58秒
- 何処までも平たんに。
何処までも平和に。
願った。
そして望んだ。
何年経ってもこうして隣にいてくれるようにと。
悪戯に近付いた距離は、中途半端に僕らを結びつけ、それ以上にも
それ以下にもならないように鍵をかけていた。
『友達以上恋人未満』
そう、以上でもなくて以下でもない。
だからお互い聞かれたらこう返す。
『恋人はいません』
そして僕は心の中で付け加える。
『でも、大切な人はいます』
- 290 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月12日(火)13時29分11秒
- 更新しました。
今日、バイトあると思って行ってみたら実は自分休みで・・・
働いてもOKってサインもらいましたが何か空しくて帰ってきますた。
ので、更新してしまいました(w
『短いっ!!』って突っ込みはナシの方向でお願いします(苦笑)
>token様
あら奥様、気があいますわね〜。
こんな感じですかね(w
第1章の終わり方、満足していただけたみたいでよかったです。
いしよしの絆、最強です。
ここのいしよしって出会って2年、親しくなってもう1年経つんですよねぇ。
早いもんです。
最初の頃、こんな風になっていくなんて思えませんでしたから(苦笑)
構想からどんどんとずれていくいしよしに翻弄されっぱなしです(再び苦笑)
>279の名無しさん様
どうも初めましてです(ぺこり)
書いているうちにどんどんと長くなっていってしまっています(w
本当にここまで長くなると思ってなかったもので、自分でもびっくりなんです。
なんか沢山褒めていただいて(〃´Д`)頬が緩みっぱなしです(w
第2章、こんな感じでスタートしました。
これからもよろしくお願いしますです。
- 291 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月12日(火)13時30分47秒
- >ぷよ〜る様
(б`.∀´)бゲッツ!ゲッツ!!ゲッツ!!!
上手いことハートを掴めたみたいです(w
ありがとうございます。
思った以上に長い長い第1章。
このくらいの長さって、構想では終わっていてもおかしくなかったくらいなんです。
やっとこさ第2章。
どうなることやら(w
>Silence様
作者様だなんて(オロオロ)
そんな恥ずかしいですぅ←タラ子風。
原稿用紙10枚ですか!すげー(0^〜^)カッケ−!!!!
やっぱ最後くらいはかっこよくきめさせてあげたいなぁなんて思って、
梨華ちゃんにも少しくらい幸せが降り注いでもいいかなぁなんて思って(w
月9ドラマでは中盤終わってちょっと経った頃の展開ですね(w
第2章、どうなるかは私にもよく分かりません←オイ。
- 292 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月12日(火)13時31分33秒
- >ななしのよっすぃ〜様
吉澤くんの株上昇中♪♪
前回で今までのヘタレキャラを少しは返上できたんでしょうか(w
もどかしすぎる2人。
最初の頃は書きたいところに永遠に辿り着かないんじゃないかと思ってましたよ(苦笑)
って今もそうと言えばそうなんですがね。
随分と長い間保存ありがとうございます。
本当に感謝感謝です。
第2章から先もどれくらい逝くのかわかりませんが、これからもよろしくお願いいたします。
>クロイツ様
『微妙』本当にその言葉がぴったり状態です。
いつまでも微妙・・・にならないように頑張ります(w
でも何か微妙じゃなくなっても微妙な状態になりそうな2人ですよねぇ。
山あり谷ありどうなるんでしょう(苦笑)
第2章、はじまりましたが先がまったく見えてません←オイ。
きっとこの先も指先の動くままに話しは進んでいくことでしょう。
そんなのもまたありってことで(w
- 293 名前:token 投稿日:2003年08月12日(火)21時46分38秒
- 更新お疲れ様です!
第2章の始まりは少し更新が空くのかな、な〜んて思ってたら、早速始まって嬉しい限りです。
作者様が予告していたように、時間経過が少し速いようですけど、いしよしのほのぼの感はあるし、
一緒の時間が減っても、心の距離が近づいた二人。先が楽しみです。
- 294 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月13日(水)11時46分51秒
- 作者さま、更新お疲れ様です。
意外といそがしく働く吉澤くん。週一度の食事会のつながりが徐々に二人の距離をもっと縮めてくれることを期待してま〜す。
PS:保存の方は第二章として別フォルダにわけさせていただきました。
今後もよろしくお願いいたします。
- 295 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月13日(水)13時30分20秒
スルーかよ!
- 296 名前:Silence 投稿日:2003年08月14日(木)13時30分37秒
- 更新お疲れ様でした。
いや〜、この2人の距離もよくて。ずっとこんな関係
の二人でいてほしいような進んでほしいような(w
さて、この月9ドラマ。ど〜なっていくのかな〜
んでは次回も期待してます!!
- 297 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月15日(金)15時31分29秒
- 更新お疲れ様です!
やっぱいいですね二人の関係!
ほのぼのする反面、ドキドキします。(笑)
辻ちゃんの入学にはビックリ!!
次回も楽しみにしています♪
- 298 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月15日(金)16時54分59秒
- 会えない時間が、二人の絆を強くしてるって感じですねっ!!かっけぇぇ〜!!
変わらないようで、だんだん距離が近づいて行ってるような気がします♪
吉澤くんの『想い』は、なんだか胸がしめつけられるような感覚を引き起こしてくれますねー♪
変わらない『味』が、すっごくうれしいです♪
次回も楽しみにしてます!!がんばってくださいねっ!!
- 299 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)22時55分16秒
- 「疲れたぁ・・・」
社会人になって家に帰ると呟く独り言。
聞いてくれる人は家に待っていないけど、必ず言ってる気がする。
暗い部屋に明かりをつけて、昨日の残り物で食事を済ます。
熱いシャワーを身体に浴びて、羽毛布団に身体を沈める。
決まったパターんの毎日の流れだ。
春、私は学生から卒業した。
正式に雇ってもらってからは仕事の内容も少し変わったし、その仕事に慣れ始めてからは
飯田さんから経営についても習っている。
やっぱり将来的には自分のお店を持ちたいし、やってみると結構楽しいし。
もちろん難しいんだけど、目標があると何とかやっていけるから。
明日は金曜日。
仕事が終わった後には楽しい楽しい食事会。
ののやあいぼんも参加できるみたいだし、そのうえ吉澤くんの家での食事会だ。
- 300 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)22時55分57秒
- 吉澤くんの家に行くのは本当に久しぶり。
ごっちんの誕生日会以来かな。
いつも私の家だったから、吉澤くんが気を使ったらしく『来週は僕の家来ますか?』と言ってくれた。
そのことを伝えたらののもあいぼんも大喜び。
絶対に行くと言ってさっそくどんなお菓子を持って行こうか思案しいたらしい。
変わらないでいて欲しいなぁ。
うとうとしながらそんな風に思った。
明日もお仕事頑張ろう。
眠りにつくのに必要な時間はあまりかからなかったらしい。
私の記憶はそこで終わっていたから。
翌朝、空は綺麗に晴れていた。
------------
--------
---
「なぁなぁよっすぃ〜」
「ん?」
「明日よっすぃ〜は仕事なん?」
「明日は休みだね。ついでに明後日も休みだよ」
- 301 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)22時57分00秒
- 緑が綺麗な季節。
夜の街灯に照らされた葉が風に吹かれてかさかさと心地よい音を響かせている中、
私達は4人仲良手を繋いで吉澤くんの家に向かう。
時間はもう夜9時を回っていた。
日が延びていたとはいえ、もう暗くなって当たり前の時間だ。
「梨華ちゃんは明日休み?」
「うん。私も明日はお休みだよ」
ニヤッと笑う2人組み。
時間は夜9時。
夕飯もまだ食べていない。
笑顔の理由、何となく予想していた通りだ。
「ちゃんと布団は用意しといたよ。
どうせ泊まるつもりだったんでしょ?」
そして吉澤くんも予想していたらしい。
もうののとあいぼんの扱い方なんて手慣れたもんだと言わんばかりの笑顔。
それ以上に嬉しそうなのは私達の間にいる2人。
- 302 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)22時57分42秒
- 私の家で食事の時は私の家とののとあいぼんの住む家が近いからお泊まりってほとんど無いんだけど、
やっぱり今日とかはそういう流れになるんだろう。
しかし、誰1人として吉澤くんが男だってこと意識してないよねぇ・・・。
って私も似た様なもんか。
「梨華ちゃんも泊まるのれす」
Noなんて言えない雰囲気。
分かってますよ。
2人が泊まるって言ったら必然的に私もなんでしょ。
目で吉澤くんに『大丈夫?』って聞いたら、頷いてくれた。
やっぱりここも予想通りなんだろう。
てくてく歩いてごっちんの家に顔を出して挨拶をする。
ごっちんに会うのは久しぶり。
でも何も変わってなかった。
あ、でも前よりも何だか綺麗になった気もするな。
ごっちんは忙しそうに働いてる中、いつもみたくふにゃって笑って手を大きく振ってくれた。
お店を出てすぐ隣の吉澤くんの家。
迎えてくれた叔母さんは、夜分遅くだというのにニコニコと笑って私達を招き入れてくれた。
- 303 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)22時59分22秒
- 夕飯は叔母さんの手作り料理。
それも最高に美味しかった。
ののとあいぼんなんて遠慮もせずにがっつくがっつく。
気持ちは分かるけど・・・まぁののとあいぼんならいっか。
夕飯を済ませて片付けを4人でやって、お言葉に甘えてお風呂までお借りして
(ついでに寝間着も借りました。吉澤くんが泊まりになるかもと考えて、
ごっちんから借りておいてくれたんだそうだ)星屑の溢れる世界にお邪魔します。
相変わらず綺麗に片付いた部屋。
吉澤くんがお風呂に入っている間、ののとあいぼんはベッドの上で
ぴょんぴょん飛び跳ねてプロレスごっこをしていた。
つでに私もからまれて-----
「おまたせー・・・って何してるの?」
吉澤くんに救出されました。
- 304 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)23時00分46秒
- -------------
--------
---
「これは何れすか?」
プロレスごっこに飽きた2人が次に行ったのは部屋の物色。
『がさいれ、がさいれ』と言いながら本棚や机を引っ掻き回す。
そしてののが見つけて引っぱり出してきたのはA4くらいの箱だった。
床に座ってその様子を眺めていた私達の元に駆け寄って来て、箱をぐいっと前に突き出す。
ベッドの上にいたあいぼんは、何だ何だと首を伸ばして覗き込もうとしていた。
「あぁ、これか」
吉澤くんはののから箱を受け取ると、照れくさそうに笑って箱の蓋を撫でた。
「これはね、僕が今年の2月くらいに描いた本なんだ」
「よっすぃ〜が描いたんれすか?」
「うん、学生時代中に一冊本を描いてみたくてね」
まだ乾ききっていない髪の隙間から覘く吉澤くんの綺麗な横顔が、懐かしそうに笑っていた。
2月。
まだ日事体あんまり経っていないように思えるけど、実際はもう何ヶ月も前なんだ。
何だか遠い昔のようにも思えるし、つい最近のことのようにも思えるな・・・。
- 305 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)23時01分41秒
- 「なぁなぁ、その本読んで〜」
ベッドから飛び下りたあいぼんは、吉澤くんの手を引っ張ってベッドの上に引っ張りあげる。
それに続けとののも私の手を引っ張ってベッドによじ登る。
吉澤くんの膝の間にはあいぼんが座り込み、吉澤くんの隣に座るように押された私の膝の間にはののが座り込んだ。
吉澤くんと私の距離がすごく近くて、肩と肩が触れあうぎりぎりまでの距離で、至近距離で感じた吉澤くんの体温、
今日は私と同じシャンプーの匂い、私は隣に座りながらあの独自の安心感に包まれた。
心臓の音がいいテンポで私のリズムを刻んでいる。
やっぱり、この安心感は吉澤くんが隣にいる時にしか味わえない。
このまま目を閉じてしまいたくなるような気持ち。
- 306 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月15日(金)23時02分11秒
- でも今は駄目。
ののの腰に回した私の手をののはいじりながら私のことをちらちら見ているからね。
大丈夫、放っておいたりなんてしないから。
ニコッて笑ったらののもニコッて笑ってくれた。
吉澤くんの膝の間に座っていたあいぼんが吉澤くんに代わって、箱から大事そうに本を取り出す。
シンプルな表紙には綺麗な字で『空に流れる大きな河』と書かれていた。
吉澤くんがそっと表紙をめくると、次のページには夜空に輝く星が綺麗に描かれていた-------
- 307 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月15日(金)23時07分22秒
- 更新しました。
『金曜日の夜』は後1回です。
内容はいつものようにまったりです(苦笑)
>token様
はい、本当に時間はスピードを上げて進んでいきます。
まったり感は忘れずに(良い意味でです(苦笑))いければなぁとは
思ってるんですけどねぇ・・・。
今までが相当ゆっくりだったんで、この速度が嫌っていう意見も
あるんじゃないかと内心ドキドキだったりしてます。
第2章はちょっと書き溜めてあったんで普通通りにスタートしました。
目指せ定期更新ですから(w
>ななしのよっすぃ〜様
吉澤くんも石川さんも順調にスタートを切りました。
第1章の学生時代の時よりも書きたかったことが書けるんじゃないかなぁなんて
思いながらの第2章。
わずかな希望を秘めてます(w
保存、ありがとうございます。
本当にこちらこそ今後もよろしくお願いいたします。
- 308 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月15日(金)23時08分05秒
- >296の名無しさん様
ひょっとして283の名無しさん様でしょうか?
(間違っていたらすみません。さらにとらえかたも間違ってたらすみません)
(もし283の名無しさん様なら)前回、どうやって答えたら良いものかと随分と悩みました。
いただいたレスでかなり励まされているので『何を書かないで欲しい』
というようなものがなかったんです。
のでネタばれになるようなコメントでも読者様の素直な感想だと受け取り、
特に何を言うワケでもなかったのですが、もしそれで不快な思いをさせてしまったのなら、
申し訳ありませんでした。
きちんと言っていなかった私の責任です。
私の作品を読んで下さり、わざわざ手間ひまかけてレスをいただいている。
そんな立場で強いことなど何も言えないんですが、
今後、このようなことで荒れるようなことがあればその時に対処させていただこうと思います。
起きてからでは遅いという批判もあると思うのですが、言葉で言葉を縛るようなことを
したくないもので・・・。
わがままですみません。
重ね重ねお詫び申し上げます。
(スルーの意味、取り違えてるんですかしょうか?
もしそうだったら295の名無しさん様にはどう頭を下げて良いものか・・・)
- 309 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月15日(金)23時08分38秒
- >Silence様
ほどよくほどよくといった感じですかね(苦笑)
心の距離や身体の距離。
色んなものがあると思うのですが、ここの2人はほとんどが
ほどよくほどよくみたいな感じですよね(苦笑汗)
月9ドラマからこのままのペースだとN○K連続テレビ小説(w
どうなっていくかは私にもいまいち分かりません(w
指の動くままにお話は進んでいくことでしょう←いいのかなぁ〜
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
あまり変わりませんでしたね(苦笑)
つねにほのぼの。
良い意味で変わらず状態みたいな。
ほどよい距離はずっと変わらず。
やっぱりそれも良い意味で(w
ポジティブポジティブ♪
>クロイツ様
第2章。
変わっていくのはこれからでしょうか?
あまり変わらず、だけども過ごした時間の中では変化もあり。
良い意味であまり変わってません(w
やっぱりこれから変わっていくかもしれませんね。
吉澤くんの想いも石川さんの想いもいつかはきっとからみ合うと信じて
私も頑張れ(w
- 310 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月16日(土)07時05分20秒
- 匿名匿名希望様
283,295です。
余計な事を書き込んで、お気を使わせて、申し訳有りません。
作者さま出もない読者がしゃしゃり出ることでは? とも思ったのですが
多少のネタばれは良いのですが、引用レスはもろに来ますので、つい書いてしまいました。
もちろんそんな決まりが有るわけでは無いのですが、マナーでは?と思ったので。
>295は>294へのレスで、作者さまへのクレームでは無いので、お気使い無く。
何か荒らしたような事で申し訳有りませんでした。
前HNの時から、いつも読ませて頂いています。
ファンなら荒らすなって。(w
これからも良質な作品、期待しています。
- 311 名前:token 投稿日:2003年08月16日(土)07時08分16秒
- 更新お疲れさまです。
いしよし二人だけでなく、辻加護を含めた4人の絆も深まってるみたいですね。
この勢いだと、金曜のお食事会が、週末お泊まり会になったりして。(笑)
私の部屋なんか「がさいれ」されると、あんな本やこんな本が。(爆)
さすが、吉澤君。やましいところがなくて落ち着いてますね。あっ、でもひょっとして、
「がさいれ」も予想して、前日必死になって片付けてたりして。(そんなこたーナイ!)
では、次回も楽しみにしております。
- 312 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003年08月16日(土)08時35分40秒
- 匿名匿名希望様、更新お疲れ様です。
順調すぎると中々、距離が縮まらず恋人未満が長く続くのかな〜。
吉澤くんにもう一歩踏む込む勇気を!
283,295,310さま
引用レス、申し訳ありませんでした。
スルーしたつもりはないのですが、謝罪の言葉などを書くと荒れることもあるので感想のみを書きました。
申し訳ありませんでした。今後は気をつけます。
また、作者様にもご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。
では、次回更新も楽しみに待ってます!
- 313 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月16日(土)10時35分29秒
- ののたんとあいぼんの無邪気さが愛しい…。本当に、この二人にはいつまでも変わらないでいてほしいですね♪
そして吉澤くんの本!!やっぱり素敵です、吉澤君!!
本当に『吉澤一家』って感じですねぇ…なごみます。
この作品は、私にとって『癒し』です。心がほわ〜ん、と暖かくなるのれす!!
次回も楽しみにしています!!
- 314 名前:Silence 投稿日:2003年08月16日(土)15時49分13秒
- こ〜しんお疲れ様でした。
吉澤くんに石川さんに辻加護。4期が絡むとほんと自分好み
の話にもっていかれます。
(いや、匿名さんの話は全部好きなんですけど特に好き(w
ど〜なっていくのかな〜本当に。このドラマ目が離せません(w
では、次回も楽しみに
- 315 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月17日(日)13時23分28秒
- 更新お疲れ様です!
どんな本なんだろう!?石川さんに関係するないようかなぁ?
すごく楽しみです。
- 316 名前:名無しくん 投稿日:2003年08月17日(日)20時23分21秒
- 上げないで↑ください
- 317 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時07分27秒
------『空に流れる大きな河』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今でも考える。
あの時、あの瞬間のあの出来事。
それは夢だったのか、それとも・・・夢じゃなかったのか。
目を閉じれば思い出せる。
柔らかくて温かいあの感触を。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
- 318 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時08分35秒
- 空を何回か見上げてみた。
ゆっくりと流れる雲、真っ青な空。
見ていて吸い込まれるような空。
昔から変わっていないはずなのに、本当は同じものなんて何もない。
日に日に姿を変える空。
そして雲。
『空を飛びたい』
何度もこう思ったことがあった。
雲に乗って空を泳いで、風になって空に溶けて。
ベランダからいつも空を見上げて、届かない雲に両手を伸ばしていた。
『いつか届くんじゃないか』
ささやかな願いを胸に抱きしめて。
暇があれば空を眺めた。
願いはいつしか叶うもの。
そう信じて首が疲れるまで眺めていた。
- 319 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時09分14秒
- 小さい頃、台所も高くて、台がないとお母さんのお手伝いが出来ない程小さい頃。
その体験をしたのは、まだ純粋に雲に乗れると信じていたあの頃だった。
いつものようの空を見上げていたら、空に向かってのびている不思議なモノが目に見えた。
色は様々。
赤や青や黄や緑。
小さな色が、空に向かってのびていた。
生まれて初めて見たモノに自然と引き寄せられて、走って走って走り続けて。
動かしていた足はいつしか空を蹴り続け、色に混じって身体は空へと向かっていて----
不思議と恐いとは思わなかった。
下を見下ろすと広がる街並、上を見上げると遠くに見えてた雲がすぐそこにあった。
色に混じって雲へ吸い込まれていく身体。
視界が一瞬真っ白になったと思ったら、足は宙ではなく、柔らかな白い色をした地面についていた。
直感的に雲の上にいるんだと思った。
理屈なんてないけど、そう思った。
足を踏み出せば、バランスを崩してしまうんではないかと思う程柔らかな地面は、
自分の足を包み込んで、倒れないようにと支えてくれてるようだった。
温かくて、柔らかくて、触ると弾力もあって、想像していた通りの雲の感触。
走っては転がって走っては転がって、全身で雲を感じていた。
- 320 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時10分21秒
- そしてどれくらいの時間が経ったかは分からないが、その遊びに飽きて雲の上に転がって、
自分のいる雲よりも上の雲を眺めていた時、雲の中で泳ぐ何かを見つけた。
目をこらしても見えにくい。
上にある雲は遠くにありすぎて行けそうにもない。
悔しいなぁという気持ちを持ったまま、しばらく雲を眺めていたら、
何処からともなく自分に話しかけてくる声が聞こえてきた。
『ここは君が来るような所じゃないんだが・・・』
声は足元から聞こえた。
急いで起き上がって声の聞こえた方を向くと、足元では雲と同じ色をしている
魚の形をした雲が、自分に向かって語りかけていた。
よく見ると、魚の形をした雲の他にも魚と同じように雲と同じ色の砂や貝がそこら中に散らばっている。
・・・どうして今まで気付かなかったんだろう。
考えたところで答えが出るワケでもない。
それでも疑問はわずかな時間だけ頭に残り続けた。
- 321 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時11分08秒
- 『どうしてここにいるんだい?
ここには人間が来てはいけないんだよ』
「きちゃダメって言われたって・・・あのね、イロをおいかけてたらここについちゃったんだ」
『色?・・・あぁ気持ちの色のことかな?』
「きもちのいろ?」
『そう、気持ちの色。この雲はね、雲の下にいる人達の気持ちで出来ている雲なんだよ』
頷いてはいたものの、正直分からなかった。
理解出来なかったというのが正解なのかな。
それでも聞くことには興味があった。
だから頷き続けたんだと思う。
『この雲は特別でね、すごく強い気持ちが溢れて溢れて地上に治まりきらなくなった時に
その気持ちをもらって成長していくんだよ。
気持ちの色は人それぞれ。
だから色々な色になってここにやってくるんだ。
私達はね、その気持ちを受け取って成長していく。
旅をしながら仲間を増やし、空と一緒に生活していくんだ。
終わらない旅、だから君のような子はここにいてはいけないんだ』
- 322 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時12分32秒
- 口調が少しだけきつくなった。
『早くここからいなくなるんだ』
そう言われているようで恐くなった。
「で、でもね・・・ずっとずっと雲に触りたかったんだよ」
そう言ってどうなるワケなんかじゃない。
それでもここから早く出ていけと言われることが嫌で、少しでもここにいたくて、
恐かったけど、頑張って喋った。
その後、どれくらいの時間が経ったかは分からないけど、自分の前にいた魚さんはフフッと笑って
雲の中から少しジャンプをしてみせてくれた。
『君がここに来れたのはその気持ちの大きさのせいなんだね。
でもね、やはり君はここにいたらいけないよ。
もうこの河は次の場所へと行かなければいけないから』
そう言って魚さんは柔らかな雲を少し取ると、空中に浮かべて『乗りなさい』と促した。
さっきよりも優しい口調だったけど、それには逆らえない絶対的な何かがあって、
足は自然と小さな雲へと進んでいた。
『さぁ、その雲が君のことを地上まで運んでくれるよ。
そしてその雲が消えるのと同時に私達も遠くへと行くことだろう。
ひょっとしたらもう会うこともないかもしれないが、元気で過ごすんだよ』
- 323 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時13分28秒
- もう一度魚さんがジャンプをしたら、雲はゆっくりと地上に向かって降り初めた。
一方的な『さよなら』に何も言うことが出来ないまま雲は降り続ける。
さっきまでいた雲は遥か遠くにもうあって、それがとても悲しくて、必死に言葉を探して口に出した。
「・・・かわ!!!!ねぇ、かわってどこにあったの?」
届くかどうか分からない言葉。
どうやら魚さんには届いたらしい。
返事は直接頭へと届けられた。
魚さんはこう言っていた。
この雲こそが河なんだ。
色んな人の願いや気持ちを受け取って大きな大きな河になる。
暗くなく時もあれば真っ白になる時もある。
河はその度に色を変えて泳ぎ続ける。
そして雲は流れ続ける。
空の河はいつでも皆のことを見ているから、君のことも見続けているよと。
- 324 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時14分27秒
- この言葉の最後の方はあまり聞き取れなかったけど、多分そう言ってくれたんだと思う。
声が完璧に聞こえなくなってしまう頃には意識は消えていて、目が覚めた時には
芝生に大の字になって寝転がっていた。
この不思議な体験は、夢だったのか現実だったのか------
それは今でも分からない。
今日も空は青色で、雲は相変わらずゆったりと流れて、空に大きな絵を描いていた。
fin
- 325 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時15分12秒
- -----------吉澤くんは本をゆっくりと閉じた。
話しの間中身体を固めていた私達は、しばらく話しの余韻に浸ってから大きく息をはいた。
「最後の方、ちょっと焦りすぎちゃったんですよ」
本とあいぼんをまとめて抱きながら吉澤くんは笑って言った。
止まっていた空気が動きだし、ののが私の胸にぐだーっと重みをかけてくる。
吉澤くんは照れたように鼻の頭をかいてベッドから立ち上がって本を元の位置にしまった。
「よっすぃ〜」
「うん?」
「その本の主人公さんは男の子なんれすか?女の子なんれすか?」
ののは私からひょいっと身体を離し、ベッドにころっと横になりながら吉澤くんの方を見ている。
それを真似したあいぼんも同じような体勢になる。
「どっちも・・・かな」
「どっちも?」
「うん。それは読んでる人が決めることだからね」
- 326 名前:金曜日の夜 投稿日:2003年08月18日(月)10時15分52秒
- 2人(私も含めたら3人)の視線を浴びて、吉澤くんはまたさっきのように鼻の頭をかいた。
まだまだ質問を浴びせようとするののとあいぼんに吉澤くんは
『これ以上は恥ずかしいから質問にお答えできません』と言って、2人の上に布団をかぶせた。
じゃれてる2人を放置して、2人して布団を敷いて。
ベッドの横に敷かれ布団。
・・・ののとあいぼんが私の上に落ちてきませんように。
そう祈ってから私は布団に入った。
「じゃぁ朝食の準備が出来たら起こしに来ますから」
部屋の電気をぱちんと消して、吉澤くんは階段を降りて行った。
遠ざかる足音を聞きながら、部屋中に散らばる星を見つめ、布団に残る太陽の匂いをかいで私は目を閉じた。
仕事で疲れていた身体はすごく正直で、自分の家でもないのに私は眠りの世界に引き込まれていく。
意識がなくなる前、扉が開いた音がして『おやすみなさい』という優しい声を聞いた気がした。
- 327 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月18日(月)10時19分15秒
- 更新しました。
今回は本編からずれてるワケじゃないですが、ちょっと違う感じなのでsageで
やってみました。
あんまり意味ないといえば意味ないですけどまぁ気持ち的にってやつです。
>310の名無しさん様
こちらこそお気を使わせてしまって申し訳ありません。
そしてこれからも頑張ります。
『マンネリ化しそうな恐れあり』
そんな感じで私自身が一番びびっているのですが、これからも
よろしくお願いしますです。
>token様
4期好きな私はこの4人を書くのがかなり好きです(w
何だかどうにか繋がりを持たせていたのはいしよしだけじゃなくて
私も同じなんですねぇ(苦笑)
余談ですが、私の部屋『がさいれ』なんてしても楽しいものも無さそうです。
そういえば写真の整理も全然してない・・・。
書きながら反省。
そして実行・・・はいつか(苦笑)
>ななしのよっすぃ〜様
( `.∀´)はっきりしなさすぎなのよ!!!
(0=〜=)・・・。
凹む吉澤くん。
頑張って欲しいものです(苦笑)
まったりしすぎなんですよねぇ・・・。
吉澤くんも石川さんもはっきりして欲しいものです。
しかし、これがここのいしよし・・・。
今後の期待しておいて下さい(w
- 328 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月18日(月)10時20分05秒
- >クロイツ様
本当に私もそう思います。
ののにもあいぼんにも良い意味で変わらないていてほしいです。
吉澤くんの本の内容いかがでしたか?
何かひょっとして吉澤くんの質を落としてしまったんじゃないかと
不安でいっぱいだったりします(苦笑)
『癒し』だなんて・・・恐縮です。
でも最高に嬉しいです♪
>Silence様
私も4期が大好きです♪
だから書いていて楽しいです♪♪
こんな話しはいかがでしたか?
たまには(っていつもかも)まったりまったり仲良い系で(w
ドラマも時期的には佳境なはずなんですが・・・
まったくもって終わりが見えてきません(苦笑)
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
こんな本でした(w
楽しみを裏切るようなモノでなければよかったのですが・・・。
そして、メール送ってみたりしてしまいました(どきどきです)
- 329 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月18日(月)11時50分27秒
- 更新お疲れ様です!
絵本の内容、なんだか深いですね。
何度も読んでもまだ疑問が残るような、そんな感じです。
メールきました。速攻返事返しました。(笑)
- 330 名前:token 投稿日:2003年08月18日(月)19時28分16秒
- 更新お疲れ様です。
辻ちゃんの疑問を読んで、『空に流れる大きな河』の部分を読み返したんですけど、
確かにどちらとも取れる書き方なんですねー。ちなみに私は女の子だと思ってました。
題名から勝手に、天の河の話かな、なんて想像してたんですけど、いいお話ですね。
陳腐な言い方ですけど、文は人なりで、吉澤君の優しさが所々に滲んでいるようでした。
では、次回も楽しみにしています。
- 331 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月19日(火)10時47分45秒
- 絵本の中身…す、すごいですねっ!!!
私は読みながら、やっぱり空の青さを思い出しました。心がすっきりするような、素敵な物語ですねぇ…うっとり。
そこで、はっと気づいたんですが…そう言えばこの『僕と君との物語り。』も、私の中では青いイメージなんですよ。
うーむ…
ツ ボ で す 。
大好きです、このお話ッ!!
絶対に最終回が来てほしくない、と真剣に思っております。
次回も楽しみにしております!!
- 332 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)22時59分55秒
- 「最近どうなのよ」
「は?」
「だから最近どうなのよって聞いてるのよ」
ここは保田さんの家である。
目の前に座っているのはバスローブを着た保田さんで、正座をしてるのは僕である。
ちなみにもうそろそろ足の痺れは限界だ。
「最近どう?とはどいうことでしょうか・・・?」
「石川のことに決まってるじゃない」
持っていたビールの缶を乱暴に机に置いて睨むその顔。
目がすわっている。
・・・どうして酔っぱらいは人にからみたがるんだろう。
「どうしたんですか?何か嫌なことでもあったんですか?」
「私が今は質問してるんでしょ!あんたは質問い答えてればいいのよ!!」
「・・・飯田さんのことですか?」
「うっ、うっさいわよ!!!」
- 333 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時00分46秒
- 図星だったらしい。
見事ストライクゾーンだ。
最近、保田さんが何かにつけては飯田さんを呼び出しているという噂は紗耶香から聞いていた。
そして石川さんからも同様の話しを聞いていた。
飯田さんの元で働いている石川さん。
最近よく『圭ちゃんがおかしい』という話しを飯田さんから聞いていたらしい。
『圭ちゃんがおかしい』この言葉を保田さんが聞いたらどんな風に思うのだろう。
いや、ひょっとして・・・
「あの、飯田さんに『圭ちゃん、最近おかしくない?』とか言われたりしました?」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
見事今回もストライクゾーン(それも直球で)だったらしい。
保田さんが大きな猫のような目を見開いてワナワナと震えている。
ついでにその震えで机まで震えている。
足の痺れ度数がピークだった僕には泣きたいくらいに衝撃的な震えだ。
- 334 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時01分19秒
- 「・・・吉澤」
ぐしゃっと缶を握り潰してゆっくりあげられた視線。
・・・最高に恐いです。
「今日は飲むわよ」
「でも僕明日仕事です。今から飲んだら家帰れません」
「私も明日仕事だから大丈夫」
何が大丈夫だというのだろう。
それは保田さんの事であって僕のことじゃないんではないのだろうか。
僕は大丈夫じゃないのに・・・。
「吉澤、あんたの今日の寝床はここだからね。
今日は飲み明かすわよ!飲んで飲んで飲みまくってやるわ!!!」
・・・勘弁して下さい。
--------------
--------
---
机に転がっているのは空になったビールビールビール。
かなりのハイペースで飲んだ保田さんの戦いの残骸とでもいおうか。
ここまで酔った人がいると、僕は逆に酔えなくなる。
というか普通に酔えないでしょ。
「だ〜から〜〜〜、俺っちが〜〜おかし〜んじゃないわけよ〜〜〜」
「はいはい、そうですね。それさっきも聞きましたよ」
「うるはいっ!!!!!!!ひょっと黙って聞いてなさい〜〜〜〜」
- 335 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時02分01秒
- 保田さんは手で掴んでいた缶のビールをまた喉の奥に流し込んだ。
ビール=水
といった感じの豪快さ。
こんなになって、本当に明日の仕事は大丈夫なのだろうか(って自分もか)
「俺っちは誰でもいいわけじゃ〜ないんよ!なんれそれを分からないんだかな〜」
「いや、それは保田さんが言わないからでしょ」
「あんたに言われたくないわよ!!!!!!!」
「ご、ごめんなさい」
保田さんが言いたいのはこういうことらしい
『何度も何度も飯田さんを家に誘って飲んでいた。
その回数が増えすぎて飯田さんは『最近おかしい』発言をした。
保田さんは飯田さんに好意も持っているらしい。
しかし肝心な所を言わずにただ家に誘って飲んでいただけだから、
飯田さんが『圭ちゃん最近おかしい』と言った。
自分の気持ちがまるで伝わっていなかった保田さんはショックを受けた。
飲んだ。
1人じゃ寂しい。
だけど飯田さんは誘いにくい。
紗耶香はごっちんののろけ話しばっかされそうで嫌。
そして同様の理由からごっちんもダメ。
安倍さんや矢口を誘ったら、逆にもっと怒られそう。
石川さんにはこんな情けない姿見せれない。
・・・僕の呼び出し決定』
- 336 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時02分35秒
- これっていわゆる消去法。
つまり僕は残ったモノ。
・・・それでこんな時間まで。
「ったくさぁ〜カオリも分かってないのよ〜〜〜〜!!!」
何度目かのため息。
もういいかげん飲むの止めて方がいい。
普通に飲み過ぎだ。
机の上で空き缶をいじっている保田さんに水を渡してビールを取り上げた。
「返せよぉ〜」
「ダメです」
「それは俺っちのだっつ〜の〜」
「ダメです」
「何だよ〜石川に告白の一つも出来ないよ〜な吉澤のくせに・・・」
呟き・・・捨て台詞のような呟き。
しっかりと僕の耳に残りましたよ。
何ですか、それは何が言いたいんですか。
もうダメです。
絶対にビール返しません。
確かにそうだけどさ、そうだけどさ・・・
- 337 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時03分12秒
「そのうえ、最近会ってもいないんでしょ・・・。
石川、ちょっと寂しがってたわよ・・・」
2度目の呟き。
それもしっかりと僕の耳に残りましたよ。
確かに、辻と加護が家に来た日以来会ってませんよ。
だって仕事が忙しいんだもん。
電車に乗るのなんていつも22時回ってからだし、最近じゃ休みの日も
実習に来る生徒とかいるから学校行かなきゃいけないし・・・。
何さ、何さ、何なんですか。
会いたくないから会ってないワケじゃないんですよ。
会いたくても会えないんですよ。
「まったく、そんなノロノロしてたら他の誰かに取られちゃうっての・・・」
「・・・あてつけですか」
「あのこさぁ、やっぱりモテルみたいなのよねぇ、よくカオリから聞いてるのよ。
『今日も石川目当ての人が来てさぁ、もう何日連続だろ?
あれもうすぐ石川落とそう作戦に出るよ、絶対出るって』ってねぇ」
- 338 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時03分50秒
- 初耳。
・・・マジすか。
確かに石川さんはモテルはず。
あんなに可愛いのに他の誰かが放っておくはずはない。
・・・聞いてないっすよ。
「石川はどう出るんですかねぇ、ほほっ、やっぱりOKとか!?」
「・・・はぁ」
「ため息つくくらいなら飲みなさい!!そうぐいっと飲みなさい!!!」
すっかり平常通りの口調に戻った保田さん。
立場は逆転。
今凹んでるのは僕の方だ。
「・・・明日は仕事何時に終わるんだろ」
会いたくても会いないのよ。
だってさ、23時とかになったらさすがに迷惑でしょ、家に行ったり呼び出したりするの。
確かに生活の時間軸はお互い違って、前みたくお店の方に顔出すことなんて出来なくなったよ。
でもさ、こう何て言うのかな、『それでも!!!』みたいな妙な確信とかあったワケよ。
- 339 名前:ケメ子と僕と 投稿日:2003年08月20日(水)23時04分27秒
- ・・・はぁ。
会いたいなぁ。
保田さんの言ったことが理由ってワケじゃないけど、やっぱり会いたいなぁ。
もうどれくらいだ?1ヶ月近く会ってないんじゃないかな・・・
「・・・会えないって辛いですよね」
「・・・そうなのよね」
その後、僕らは飲み明かしました。
次の日お互いに仕事だっていうのに飲み明かしました。
同じ格好で出勤した僕は皆になじられ、そして冷やかされました。
僕らの友情は前よりも少し(?)深くなった気がしました。
- 340 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月20日(水)23時05分59秒
- 更新しました。
たまにはいしよしじゃなくてこんなもありかなぁと思いまして。
男2人、飲んでます(w
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
本、頭の中のイメージを言葉にすることが何か上手く出来なくて(苦笑)
憧れも想像も妄想も絡まれば何か一つは出来上がるみたいです(w
ただ言葉ったらずな自分にやきもきです。
メール読みました。
またいつかふらっと送ってみます。
そして待ってます(笑)
>token様
想像の世界によく足を踏み入れている私(w
頭の中覗いたらちょっとひくかもしれませんよ(苦笑)
題名はいつも悩むんです。
でも『空に流れる大きな河』は速攻出てきました。
でも文は何度も書いたり消したり。
言葉は難しいですね。
書いてる間は吉澤くんモードな私。
何かを演じているのと同じ感覚です。
『いいお話』恐縮です(w
吉澤くんも照れてることでしょう(でも喜んでます)
- 341 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月20日(水)23時08分52秒
- >クロイツ様
妄想爆発状態です(w
見る夢もはちゃめちゃだったり、想像することもはちゃめちゃだったりする私。
人が見たら普通にひくはずです(苦笑)
私も『君僕』のイメージ『青』なんですよねぇ。
ちなみに前作は『黒』もう一つ某所の方では『緑』です。
きっと一番はじめに何となくでも全体の色が決まってるのかもしれません(w
最終回、全然見えてきてません(苦笑)
これ書くのが生活の一部になってますから。
いつまでもそう言っていただけるように頑張ります☆
さて、この場をかりてちょっと宣伝。
HPなんてものを作ってみました。
お暇な方は来てみて下さい。
何もないですけど(苦笑)
問題あったら消していただこうと思いつつ、ついぺたっと貼ってみたり・・・
http://homepage3.nifty.com/anponman/
シンプルです。
- 342 名前:Silence 投稿日:2003年08月21日(木)01時09分17秒
- 更新お疲れ様でした。
なるほど『僕君』は青のイメージなのか(w
たしかに癒しの青って感じしますね〜。
二人で飲み明かすか〜。かっけ〜です(w
HP覗かせてもらいました。いろいろ見させて
もらいましたよ(w
それでは次回も楽しみに
- 343 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月21日(木)14時08分44秒
- 更新お疲れ様です!
保田さんのお陰(?)で吉澤君の気持ちは更にヒートアップ!!
と言った感じですね。(笑)
石川さんも吉澤君もお互いに会いたがっているなら話は早い!
会っちゃえ!!(笑)お互い気持ちが一緒なんだから時間が遅かろうが早かろうが
関係ない!!会え!!!会うんだ!!!
次回も楽しみにしています。
- 344 名前:token 投稿日:2003年08月21日(木)21時16分02秒
- 更新お疲れ様です。
>頭の中覗いたらちょっとひくかもしれませんよ
いや、私の頭の中も妄想だらけですから・・・。(笑)
学校の先生ってマジにやると忙しい職業だそうで。(不穏当な発言ですか〜)
吉澤君、学生さんが質問や相談に来たら、親身になって対応したりで、
ますます時間がなくなっていそうですね。
社会人になって少しは逞しくなり、ケメ子の魔の手(笑)から逃れられるのか、
と思いきや、石川さんの事を持ち出されて、あえなく撃沈!やけ酒の二日酔いは辛いぞ〜。
「石川落とそう作戦」の存在は察知出来るくせに、「圭織口説いてるんだぞ作戦」には
ちっとも気づかない飯田さん。居酒屋ならまだしも、誘われて部屋にまで飲みに来るのに、
保田さんの気持ちが伝わってないなんて・・・。そりゃーやけ酒飲みたくなりますよね。
HPにも行ってみました。今度、以前の作品も読んでみたいです。
では、次回も楽しみにしています。いろいろ大変でしょうが頑張って下さいね。
- 345 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年08月22日(金)03時55分09秒
- 更新お疲れ様です!!
男二人で飲み明かす・・・素敵です!(w
HP見させていただきました。完璧です!!(w
では、次回更新も楽しみにしております♪
- 346 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時38分40秒
- もう1ヶ月かぁ・・・全然会えないんだよね。
毎週金曜日って約束ごとだって吉澤くんの方が忙しくて守れてないし。
私は会いたいんだけどさ、吉澤くん忙しそうだしさ、もうちょっと消化しきれない思いからイライラ。
・・・会いたい。
それだけなんだけどな。
「梨華さん、どうしたの?お腹でも痛いの?」
あぁもう嫌だなぁ・・・。
『梨華さん』だなんて軽々しく呼ばないでよ。
私あなたのことなんか何も知らないんだから。
「どうした?そんな辛そうな顔して」
「や、ちょっと触らないで下さい」
- 347 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時39分27秒
- 今私に手を回そうとしているのはよくお店に来る高校生らしき男の子だ。
名前を聞いた気もするけど、もう忘れてしまった。
・・・だって自己紹介された時からさ、目が何かいやらしかったんだもん。
そのさ、なんか・・・見てるところがね。
見計らったように 私の休憩時間に表れて、言い訳無用で喫茶店へ連れてこられて。
正直、私こういうの苦手なんだよね。
「もうそろそろ休憩終わるから行くね」
私は伝票を掴んで一足早く立ち去ろうとした。
そしてまるでドラマの展開のように私は手首を掴まれた。
そう、名前も忘れてしまった私の目の前に座っていた高校生らしき男の人に。
「ねぇ梨華さん、俺と付き合おうよ。
俺さ、マジ運命みたいなの感じちゃったんだよねぇ」
そういう台詞を私の身体をじろじろ見ながら言うのは勘弁して欲しい。
そして早くその手を離して。
『運命』なんて言葉を軽々しく言わないで。
- 348 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時40分21秒
「だからさ、ね、俺と付き合おう」
どうしてこの人は自分の意見だけで私の意見を聞こうとはしないんだろうか。
自分の気持ちばかりを押し付けて、私に気持ちにはノータッチ。
こういうのは本当に止めて欲しい。
私にだって気持ちっていうのがあるんだ。
悪いとは思うけど、断る時にはきちんと断ることが一番だと思うんだよね。
昔きちんと断らなくて相手に悪いことしちゃったこともあったし・・・。
だからね------
「ごめんなさい。私、彼氏はいないけど大切な人がいるの」
お願いだからその手を離して。
私が大切だと思うのは・・・あなたじゃないんだ。
「・・・そ、ん、じゃ分かった」
私の手から伝票を奪って、一足先に喫茶店から出て行った。
フラれたショックとかそういうモノを感じさせない程あっさりとした展開。
おいてけぼりを食らったのは私の方といった感じ。
・・・軽すぎなんじゃないの?
- 349 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時41分12秒
- -------------
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「で、結局はお遊び程度って感じだったんだ」
「・・・何だか気を使い過ぎて疲れた感じですよ」
帰り道、今日は飯田さんが御飯を御馳走してくれるらしい。
だから私達は今肩を並べて飯田さんの家へと向かっている。
たまに飯田さんはこうやって私に食事を作ってくれる。
家もそんなに離れていないから電車の時間に気を使うこともない。
一人暮らしで寂しい夕食をとっている私にとってこういう些細なことでもかなり嬉しい。
「そのせい?石川、最近ちゃんと食べてないでしょ」
その通りといえばその通りである。
どうしたらいいかちょっと悩んでいて、食事をちゃんと取らなかった。
・・・そういえば少し痩せたかも。
飯田さんは苦笑いを浮かべると私の頭をくしゃっと撫でて何も言わずに歩いてくれた。
- 350 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時42分01秒
- その仕種、吉澤くんを思い出させるなぁ。
苦笑いとか、あんまり語らないけど優しさをくれる背中とか・・・。
「・・・会いたいよぉ」
声に出すつもりはなかったんだけど、思わず声が零れてしまった。
多分少しだけ前を歩く飯田さんにも聞こえたはずなんだけど、
飯田さんは何も言わずに歩いていてくれた。
「飯田さん、荷物私も持ちます」
そう言ったら飯田さんはニコッと笑って小さい方の買い物袋を渡してくれた。
そして何でか私が飯田さんをおぶるはめにもなった。
細いけど私よりも大きい飯田さん・・・ごめんなさい、限界です。
「石川、その中卵入ってるんだから落としちゃ駄目〜〜〜〜」
この日の食事はオムライスとニラ玉と卵ときスープだった。
そしてわずかに残った無事な卵達もどうせだからとゆで卵へ。
吉澤くんなら大喜びなメニュー。
しかしこうも卵たまごタマゴだと・・・しばらくは卵買わないですみそう。
- 351 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時42分58秒
- 「・・・このゆで卵どうするんですか?」
「う〜ん・・・圭ちゃんにでも渡そうかな」
そりゃすばらしい考えです。
飯田さん、冴えてますよ。
「そういえばこの間吉澤くんからメール来たんですけど保田さんが随分お酒に溺れてたらしいですよ」
飯田さんは少し驚いた顔をすると、そんな保田さんの姿を想像したのか、
飲んでいたビールを吹き出しそうになった。
「ってことはさ、吉澤がそれに付き合わされたってことだよね」
「はい。その通りです」
「お互いにさ、はっきりしない奴を持つと大変だね」
飯田さんはハハッと笑って目の前にあったスープを口にふくんだ。
『お互いに』っていう言葉がひっかかりはしたものの、飯田さんがいつもよりも
嬉しそうな顔で食事をしていたから、まぁいいかなぁんて思った。
- 352 名前:飯田さんと私と 投稿日:2003年08月23日(土)11時44分09秒
- 梅雨はもう終わる。
そんな感じだ。
今年の夏は一体どんなことがあるんだろうか。
『夏中には吉澤くんに1回会えたらいいな』
会えなくたって存在の大きさが変わるワケじゃない。
そんな不思議な『吉澤くん』という存在。
でも私の吉澤くん不足は日に日に大きくなっていくばかりだ。
こんなに上手いこと時間が合わないもんだなんて思ってなかったよ。
何度か学校に遊びに行こうとも思ったけどさ、吉澤くんが忙しそうにしてたら悪いしなぁなんて
こと考えてて会いに行けなくて。
多分吉澤くんも同じこと思ってるんだと思うんだけど・・・。
「やっぱり不足してる〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
無意識のうちに机をバシバシと叩いてしまったらしい。
机の上のお箸が飛び跳ねて、飯田さんが驚いた顔をしていた。
石川梨華、私の社会人として初めての梅雨はこうして終わっていった。
- 353 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月23日(土)11時47分21秒
- 更新しました。
夏ですね。
もうやっと来てくれました。
ってかもう8月終わってしまう・・・。
>Silence様
イメージっていうのも私が勝手に思ってることなんですけどね(w
『青』って感じは『空』とかそういうのに近いのかもしれないです。
・・・嘘かもしれないです(w
私もイマイチよく分かりません。
とりあえず『青』です(w
HPは本当気ままにやらせていただいてます。
もう書きたいこと書いちゃえ!みたいな感じです(苦笑)
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
荒れた男2人組(保&吉)
好きな組み合わせですねぇ(w
今回は梨華ちゃん視点です。
梨華ちゃんはこんな感じでした。
奥手な吉澤くん、私も応援しています。
『頑張れやぁ〜〜〜〜〜〜☆』
っていつも叫んでます(w
- 354 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月23日(土)11時47分58秒
- >token様
先生、大変そうですよね・・・。
私は大学じゃなくて専門学校出なんですけど、そこで働くTAの先生達はめちゃ大変そうでした。
教室で寝てたり、それを映像で収められたり、言い訳してたり(w
教員目指している人とか、元教員の人とかもちらりと話しを聞いたら相当大変そうだと私は思いました。
高校時代、学校の帰りとかに一緒に飯を食いに行った先生も色々悩んでました。
すごいですよ。
今でもその先生は私の恩師です(っていうか友達感覚ですけどね(w))
飯田さんの気持ち、少しだけ見えましたか?
やけ酒ならぬ、やけ卵状態です(w
過去の作品ですかぁ。
多分ギャップの差がかなりあると思います(苦笑)
色んなことに手を出し始めて自分で自分の首しめてます(涙)
>ぷよ〜る様
今回は女2人で食い明かしてます(w
石川さんの妙なファインプレーです。
HPの方も足を運んでいただいたようで・・・(照)
ありがとうございます。
頑張っていきます☆
- 355 名前:token 投稿日:2003年08月23日(土)12時29分44秒
- 更新お疲れ様です!
なるほど、飯田さんにも事情があったんですね〜。
やけ卵ですか?そうそう、生卵って殻が割れると、途端に日持ちが悪くなるんですよねー。
それにしても、梨華ちゃんにまとわりついていた名無し高校生、この作品の嫌な奴No.1決定ですYO。(笑)
先生達の苦労も知らず、私はずいぶん生意気な高校生でしたね〜。うん、うん。
ホント夏ももう終わりですねー。今年、泳ぎに行った訳じゃないですけど、海に行ったらメチャ寒かったです。
今回感想が支離滅裂なんですけど、次回も楽しみにしております。では
- 356 名前:Silence 投稿日:2003年08月24日(日)18時09分00秒
- 更新お疲れ様でした〜。
石川さんに絡むとは、しかも告白・・・。100年早いと(w
でも、石川さんの断り方。いいな〜、ますます石ヲ タに(ry
なんか、運命で思い出したことが・・・。あっ、1ヶ月放置し
てた・・・。ナンテコッタ。
ではでは次回の更新も楽しみにしていますね!!
- 357 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月25日(月)10時24分53秒
- 更新お疲れ様です。
「お互いにハッキリしない奴持つと大変だね」ってセリフ、いいなと思います。
多分これには石川さんも少しドキッとしたのではないでしょうか?(笑)
それにしても高校生らしき男の人…軽すぎです。吉澤君の真逆ですね。(笑)
それでは次回も楽しみにしています!
- 358 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時44分51秒
- 6月30日、いちーちゃんに呼ばれた。
電話でいちーちゃんは真面目な声で、お昼に駅で待ち合わせをしようと言ってきた。
どうしたんだろうと思いながらも素直に従って、お母さんに『ごめんね』と言って休みをもらった。
いちーちゃんが昼間に会おうというのは珍しい。
後藤の家のことを知っているからだ。
久しぶりに電車に乗って、いちーちゃんの待つ駅へと向かった。
いちーちゃんはすでに来ていて、煙草を吸ってぼーっとしていた。
ラフな格好。
だけど顔はいつもよりも表情が読めない。
たまに見せるあの表情だ。
駅からバスに乗るらしい。
それもちょっと長い時間。
バスは時間が経つにつれて人がどんどん少なくなっていき、最後には後藤といちーちゃんの2人だけになった。
- 359 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時45分55秒
- 景色はどんどんと変わっていく。
建物の数は減って、変わりに緑が増えていく。
そんな景色を眺めていたら、いつしか眠ってしまっていたらしく、バスは終点に到着していた。
揺さぶられ、起こされ、後藤はいちーちゃんに手を引っ張られながらバスを降りた。
いちーちゃんはあまり喋らない。
後藤達の周りは静かで、虫の鳴く声や風が鳴らす音だけが聞こえてくる。
バスを降りた時から繋がれた手は、歩くリズムに合わせてゆらゆら揺れる。
不思議な感じ。
いつもと違う空気がある。
途中、いちーちゃんが寄りたい所があると言って寄った所は、小さなお花屋さんだった。
中には少し背の曲がったお婆ちゃんがいて、風にふかれながら気持ちよさそうに目を閉じていた。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
お店の中はお花の良い匂いがしていた。
決して多くはないけれど、どれも綺麗に咲いていて、見ているだけで何か気持ちが癒された。
- 360 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時46分58秒
- 「いつもの、お願いします」
「早いねぇ、もう1年かい」
「えぇ・・・早いもんですよ」
いちーちゃんとお婆ちゃんは言葉少なめに、だけど楽しげに会話をしていた。
何だか後藤はそこにいるのが場違いな気がして『外で遊んでくる』なんて下手な言い訳をしてお店を出た。
陽射しが一番強い時間は終わり、夏間近の少し暑い風が吹いていた。
「おまたせ、ここからちょっと歩くから」
いちーちゃんはまた後藤の手を取って歩き始めた。
さっきと違うのはいちーちゃんの手に綺麗な花束が握られているということだ。
いちーちゃんの言葉通り、お花屋さんから目的の場所まではちょっと歩いた。
ちょっととは言っても随分な距離だったのかもしれない。
だけど後藤は初めて来た場所だから、そんなに距離を感じなかった。
「花屋がさ、一番近いのあそこだけなんだ」
「ふ〜ん。でもさ、珍しいね」
「・・・この日は歩く方が好きなんだよ」
いちーちゃんは後藤が言いたいことが分かったみたい。
だからもう詳しくは聞かなかった。
後藤も歩くのは嫌いじゃないから。
いちーちゃんとは一緒にいるのがほとんど車の中。
こうやって手を繋いで歩くことはあんまりない。
お日様の下、こうやって歩くのは嫌いじゃない。
- 361 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時48分08秒
- お花屋さんから歩いて20分くらいだろうか。
細い道路を歩いて辿り付いた所は、緑の山に囲まれた墓地だった。
正方形のコンクリートのブロックが繋ぎ合わされて作られた道。
その道を歩いていちーちゃんは進んでいく。
「毎年さ、この日にここに来るんだよ」
立ち止まった所。
墓標に刻まれた名前は『福田』という名前だった。
「今まで、誰とも一緒に来たことなかったんだ。
11年目にしてついに解禁」
この日、いちーちゃんが初めて心から笑ったような顔をした。
悪戯子のように。
だけどすごく綺麗な笑顔で。
いちーちゃんはお墓の前で、手をあわせるようなことはしないで、
目の前に誰かがいるようにポケットに手を突っ込んで佇んでいた。
「今日はさ、紹介したいやつがいあたから連れてきたんだ。
ってもう随分前から気付いてたかな?
お前鋭かったからな。
こいつ、後藤真希ってんだ。
今の俺の彼女。
別に見せつけに来たとかそんなワケじゃないよ。
ただ報告に来たかったんだ。
今までお前にも随分心配かけさせたと思うから」
- 362 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時49分20秒
- 本当に報告するようにいちーちゃんは1年間あったことを思い出せる限り話した。
後藤とのことも。
きっと毎年行われていたんだろう。
この会話はとっても普通だ。
ただ、それに答えが返ってこないだけ。
「お前のことを忘れるワケじゃないよ。
絶対忘れられないと思うしさ。
何だろうな、どんな風に言っていいのかよくわかんねーけど、
ともかくこいつと一緒にここに来たかったんだ」
それからいちーちゃんは少し言葉を残してここを後にした。
後藤は何を言ったらいいのかわからないから、頭だけ下げていちーちゃんの背中を追った。
返り道、来た時と同じようにいちーちゃんと手を繋いだ。
お花屋さんのお婆ちゃんに挨拶をして、バスを待つ間にのんびりと道路に座って足を伸ばした。
さっきみたく聞こえてくるのは風や虫の鳴き声だけ。
下ろしてきた髪が風にあおられてぐちゃぐちゃっとなった。
「あれ、明日香の家。
もう住み始めて11年経つんだ」
いちーちゃんは思い出話しをするように後藤に教えてくれた。
ずっと気になっていたことを。
- 363 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時50分00秒
- 「明日香はさ、俺が本気で好きになって、本気で愛した人だった。
中学生の頃だよ。
ぶっ頂面で、真面目で、クールは奴で、だけどときどき見せる笑顔がすげー可愛かった。
中学1年の時に惚れて、アタックしまくって付き合った。
まぁ1年くらいしか一緒にいれなかったんだけどな。
俺らさ、まだ中学生で、世間じゃ『夢見てんじゃねー』みたいなこと結構言われたけどさ、
本気で結婚まで考えてた。
一緒に中学卒業して、一緒に高校入学して、一緒に高校も卒業して。
永い未来のこと、沢山考えてた。
でもさ、明日香は本当突然いなくなったんだ。
家族で出かけた時に交通事故にあって、本当は助かるはずだったのに、医療ミスってやつで
俺からずげー離れた所にいっちゃった。
・・・それからだよ。
沢山の人と付き合って、沢山の人を傷つけたの。
自分の気持ちとか全然分かんなくてさ、好きとかそんなの分からんかくてさ。
色々無茶してきた。
俺が新聞記者になった理由って明日香のことがあったからなんだ。
自分の手で何かを伝えたい。
皆が知らないことを伝えたい。
そんな気持ちが気付いたら生まれててさ。
- 364 名前:夕暮れに光る髪 投稿日:2003年08月25日(月)19時50分53秒
- それでもさ、やっぱ何かが欠落してた。
探す為に無茶し続けた。
それでいつしか思うようになったんだ。
『もうきっと誰かを好きになったりすることは出来ないんだろう』って。
お前に会うまで、本当にそう思ってた。
10年。
たっぷり時間かかったんだけどさ、欠落していたモノは見つかったよ。
お前に出会えたから」
言葉を選びながら話すいちーちゃん。
穏やかな表情だけど、やっぱり心の何処かでは泣いているんじゃないかと思う。
断片的はな記憶の言葉はやっぱり思い出すのが辛いからだろう。
でもさ、後藤はそういういちーちゃんだから好きなんだと思う。
いちーちゃんがいちーちゃんだから好きなんだと思う。
バスがクラクションを鳴らして後藤達の前を通り過ぎて行く。
次のバスまでは1時間ある。
今日はここでいちーちゃんと一緒に夕日を見ようと思う。
少し甘えさせてあげようと思う。
いちーちゃんの頭を引き寄せて胸にぎゅっと抱きしめた。
柔らかいいちーちゃんの髪が風に揺れて、夕日に照らされて輝いていた。
- 365 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月25日(月)19時53分39秒
- 更新しました。
明日から2泊3日で北海道行ってくる為、前倒しで更新です。
『いちごま』
もう忘れられているかもしれないけど、最初の方でちょっと出てきた市井くんのお話です。
>token様
卵落として割った瞬間、どうしてあんなに泣きたくなるんでしょうか?
割ってしまった日はウチでも卵料理大会が開催されます。
私まだ今年の夏に海に行ってないんですよねぇ。
まぁ行っても眺めているだけなんですけどね(苦笑)
しかし暑い!!突然暑くなりました。
なのにもうすぐ9月。
秋ですねぇ・・・。
>Silence様
高校生、最高級に嫌われてます(苦笑)
そして石川さんの人気がさらにアップ。
何とも言えない使われ方をされた高校生、まぁ良い(良くない)仕事をしたってことで。
実際、こんな人が出て来たから吉澤くんの良さを改めて感じていたりしてたかも(w
そういえば、Silenceさんって北海道に住んでらっしゃるんでしたっけ?
背が高くてごっついのがいたらそれは匿名です(w
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
石川さんよりも飯田さんの方一歩大人です。
そして名前もない高校生は嫌われもの決定で(苦笑)
保田&吉澤のヘタレコンビ。
飯田&石川も大変ですよ(w
今回はいちごま。
忘れられた頃のいちごまでった。
- 366 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月25日(月)22時20分30秒
- い、いちーちゃん…!!!!!
ああ、そうなんだ…あなたの背中にあった影は、その悲しい過去だったんですね…!!!
なんだか泣けて泣けて仕方がないです…。
梨華ちゃんにつきまとう男への怒りとか、はっきりしない男二人へのもどかしい気持ちとか、いっぱいあったんですけど…
なんかいちーちゃんに洗い流してもらった気分です…。
ああ、かっけ〜!!いちーちゃんかっけ〜!!!
次回も楽しみにしてます!!
- 367 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年08月26日(火)00時46分15秒
- 更新お疲れ様です!!
市井くん・・・やっと謎が解けたって感じです。
にしても、市井くんカッケ〜っスね!
ホント、ここのいちごまは最高です!
では、次回更新も楽しみにしております♪
- 368 名前:Silence 投稿日:2003年08月26日(火)10時23分34秒
- 更新お疲れ様でした。
ほへぇ〜、そっか、市井さんも昔いろいろあった苦労人
なんだな〜。っと考えるとなんかちょい込みあげてくる
ものあるな〜。う〜ん、なんて言って良いのかわからな
いけど穏やかな話だな〜っと。
それでは次回も楽しみに。北海道楽しんでいってください(w
- 369 名前:token 投稿日:2003年08月26日(火)12時56分00秒
- 更新お疲れ様です。
いちーちゃんの想い人があの人だったとは。ちょっとビックリです。
後藤さんを紹介しに行くなんて、今回も律儀ないちーちゃんですね。
やっぱいちーちゃん、あんたエエ人なんやねー。(何故か関西弁もどき)
北海道ですか。夏場は季候が良くて天国なんでしょうねー。
では、次回も楽しみにしています。
- 370 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月26日(火)21時04分01秒
- 更新お疲れ様です!
久々のいちごま。忘れかけてました。(笑)
いちーちゃんには事情がなにかあるとは思っていましたが、
そんな理由があったとは・・・。
でも後藤と出会えてよかったですね。
心からそう思います。
- 371 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時21分31秒
- 晴れた空に浮かぶ雲。
僕のわずかな昼休みはまったりゆっくり過ぎていく。
長かった梅雨があけて、夏は始まった。
7月入ってすぐ、僕と石川さんは紗耶香に呼ばれて、11年前のこと、福田明日香さんのことを聞いた。
保田さん、飯田さん、安倍さん、矢口さん、ごっちんはもう知っていることで、
辻や加護にも後日話すと言っていた。
一生付き合っていく仲間には話しておきたかったんだそうだ。
これについて僕が言えることなんてはなかった。
だからこの話しもここでおしまいにしよう。
さて、今の僕だが高校生達の為に開かれる体験学習、その準備に追われる日々で
身体は悲鳴をあげそうである。
最近じゃ金曜日の食事会だって毎週開けない状態だし・・・。
もうしばらく石川さんにも会っていない。
頻繁に行うメールのやり取りだけじゃ物足りないよ・・・。
「ほら、もうすぐ昼休み終わるよ」
- 372 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時22分35秒
- ぽんぽんと僕の肩を叩いて安倍さんは次の授業の準備に取りかかる。
その元気は何処から湧いてくるんだしょう?
小さな身体に秘めたパワー。
見習いたいと思いつつも、真似することは大変だ。
前期最後の授業のプリントを、まとめて持って講義室へ。
以外に量が多いんだこれが。
エレベーターの中にはすでに生徒がいっぱいいるし・・・
2階から5階までか・・・頑張って階段で行こうっと。
「あ、吉澤さんプリント落ちたよ」
『吉澤さん』って僕のことを呼ぶのはここの生徒達。
先生ってワケじゃないから、しっくりくるといえばしっくりくる。
お礼を言ってプリントを上に置いてもらって、急ぎ足で階段を上っていった。
こうやって一日一日が目まぐるしく過ぎていく中で、僕はそれないりに
人との交流も上手くなったと思っている。
人間としての成長とかどうとかは分からないけど、少しでも前に進んでるんじゃないかと思う。
- 373 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時24分12秒
- 前よりも自分に少し自信がついたし、仕事もそれなりにこなせるようになってきた。
でもそれに伴って石川さんと会う時間も激減した。
最近じゃ帰るのはいつも夜、暗くなってから。
暗い道を1人歩いて、家路に向かう。
忙しい生活の中、忘れてしまいそうなはずなのに、1日のうちで石川さんのことを考えない日なんてない。
本当は無茶をしてでも側に行きたい。
21歳の誕生日。
その日も僕は仕事に追われていて、気が付いたら時計の針が12を過ぎていた。
あまりの忙しさに自分の誕生日すら忘れていて、何だか少し悲しくなった。
でもね、12時を過ぎて一番早く来た石川さんからの
『お誕生日おめでとう。吉澤くんにとって21歳の年が良い年でありますように』
というメールだけで僕の心は満たされたんだ。
その後もぞくぞくと寄せられた祝福のメール。
1年でこんなにも自分の周りがにぎやかになったことが嬉しかった。
- 374 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時26分45秒
- いつも仲間内で行う誕生日会。
それが今回なかった理由(と言っても僕自身忘れてたくらいだからあまり気にもしてなかったんだけど)
ごっちんのメールに書いてあったんだけど、皆がメールだけをくれた理由は僕があまりにも
忙しそうに動き回っているものだから誕生日会を開くのを中止にしようということになったんだそうだ。
『何かを開くことだけが全てじゃない』
何だか温かい気持ちがふわっと伝わってきた気がして、思わず文を読みながら1人微笑んでしまった。
1人駅に向かう道。
数カ月前には石川さんと並んで歩いていた道。
変わらないものはあまりなくて、変わってしまったものが現実として僕の前にあった。
当たり前のように隣に並んで帰っていた時が懐かしい。
もっと早く、もっと沢山一緒にいれればよかったなぁって何度も思う。
僕は絶対に石川さん不足中毒だ。
卒業式のあった日、抱きしめた石川さんの温かさが忘れられない。
もっと僕の近くにいて欲しい。
あの時、僕は自分が必要とされているんじゃないかと思えて、そして僕自身が石川さんを
必要としいるんだということを再認識させられて、回した腕に力を込めた。
あの時のこと、最近よく夢に出てくるんだ。
夢で感じた石川さんの体温が、朝目が覚めても忘れられすに残っていて、
それが僕をもっと寂しい気持ちにさせる。
- 375 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時29分26秒
- こういう時、他の人達はどうしているんだろう。
僕は今、石川さんに無性に会いたい。
すぐ隣に感じることの出来なくなった石川さんの体温。
あの笑った顔、少し怒った顔、一度聞いたら忘れられないあのちょっと高めの声。
全てを近くで感じたい。
時間はとっくに22時を回っていて、おまけに明日はお互いに仕事もある。
いつもならここで僕は家へと向かっているけど、今日は足がそれを拒否した。
『逢いたい』気持ちが僕の気持ちの容量をオーバーしてしまったんだろう。
時計を腕から取り外し、乱暴に鞄に突っ込むと、いつもとは違う方向に向かう電車に乗り込んだ。
駅に着くまでの時間すらもどかしくて、言い訳になる言葉なんてモノも考えられないけど、それでも僕は
電車が石川さんの家の最寄り駅に着くと、そこからダッシュで石川さんの家へと向かった。
一体僕はどうしてしまったんだろう。
こんな風に行動に移すなんてこと今までなかったのに。
そして思った。
『きっかけなんてモノはあまり具体的にはないのかもしれない』
と、いうことを。
逢いたかったら会いに行けばいい。
単純にそうやってもいいんじゃないか。
もう1ヶ月以上会っていない石川さんを想って僕は足を動かし続けた。
- 376 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時30分13秒
- 平穏、平和、現状維持。
都合のいい言い訳はもういらないよ。
会えない時間がこんなにも長くて辛いものだなんて考えてもみなかった。
会える約束のない毎日がこんなにも苦しいものだなんて知らなかった。
『石川さんに会いたい』
この気持ちだけでいいじゃないか。
もっと素直になれ自分。
風はもう温かい。
これ以上の季節を重ねて石川さんが消えていくことなんて耐えられないよ。
捕まえなきゃ。
誰かに奪われてしまう前に。
時間はもうすぐ23時。
1分だけでもいいから会いたいよ。
- 377 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時31分13秒
- 久々に出した電話帳の『石川梨華』の文字。
きれる息を整えながら通話ボタンを押した。
数回のコールの後、電話越しから聞こえたのは懐かしい声。
僕の名前を呼んでくれるその声。
やっぱりメールなんかではもの足りていなかったことを思い知った。
「ドア、開けて下さい」
その一言だけを言って電話を切った。
そして僕の目の前のドアがゆっくり開いた。
最初は驚いた顔をしていたけど、すぐにニッコリと嬉しそうに笑ってくれた。
都合のいい言い訳はそれで吹き飛んだ。
「会いたくて、来ちゃいました」
会えない時間が僕を少し強くしてくれた。
そして僕を素直にしてくれた。
- 378 名前:正直に 投稿日:2003年08月29日(金)11時31分58秒
「私も会いたかったよ」
僕の隣を歩く石川さん。
やっぱりそこは石川さんの特等席。
石川さんが隣にいてくれると落ち着くんだ。
すごくね。
コンビニにアイスを買いに行っただけだけど、それでも十分。
会って10分後にはもうさようならだけど、それで十分。
だってね、10分の間に決められた約束事があるんだ。
『今年の夏、2人で夏祭りに行こう』
お互いに我慢をしていたのは十分伝わっていた。
会いたいと思ってたのは僕だけじゃない。
ごめんね、僕のせいで時間をつくれなくて。
次からはもっと時間を作っていくから。
夜遅くになっちゃうかもしれないけど、会いにくるから。
僕も、会いたいし。
石川さんの家の前で『じゃあ、またね』と言葉を交わして、さっき走って来た道を、
今度はゆっくり歩いて行く。
月が明るくて空に雲が見えた。
そして星も見えた。
変わっていく自分を感じることが出来た。
- 379 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月29日(金)11時33分34秒
- 更新しました。
右腕、めちゃ筋肉痛。
さらに寝過ぎで頭がはたらいてませしぇん。
読みにくかったらごめんなさい。
>クロイツ様
随分と引っ張っていたいちーちゃんの過去。
こんなだったんです。
何か、書いた後に言うのもなんですが、誰かを不幸にしてしまうような話しは悲しいですね..。
しかしいちーちゃん、最初に比べたら相当高感度がアップしてます(w
最初は・・・酷いもんでした(苦笑)
ヘタレな2人、ここにももうちょっとかっけくなってもらいたいですね。
作者の願望です(w
>ぷよ〜る様
随分と引っ張てしまって申し訳ないです。
かなぁり昔から濁していた話しでしたよね(汗)
いちーちゃんのある意味、優しさの後ろにあるもの。
全て今のいちーちゃんをつくる土台となってます。
ごまにもいちーちゃんにも幸せになってもらいたいものです。
- 380 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年08月29日(金)11時34分16秒
- >Silence様
『悲しい』
という感じだけにはしたくなかったので、『穏やかな話』と言っていただけてよかったです(w
いちーちゃんはこの中ではある意味一番の苦労人ですかね。
色んなことがありました。
今ごまと幸せになっていてくれてよかったです(w
北海道、満喫してきました。
良い所ですね。
>token様
はじめの方から『この話しをするならごまも一緒!』と強く願っていたので、
気がついたらこんなにも時が経ってしまっていました(苦笑)
想い人、やっぱし意外でしたか。
私もあんまり予想はされてないだろうと思ってました(w
北海道、27日に星を見た時は寒くて4人でくっついてました(w
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
やっぱり忘れかけてましたか(w
相当前にちょろっと出しただけでしたから。
何か主人公を一瞬奪われてしまったくらいにいちーちゃんが自分の中で出てきてしまいました。
ごまと出会えた幸せ、大切にしてもらいたいものです。
私も心からそう思います。
- 381 名前:Silence 投稿日:2003年08月29日(金)13時00分00秒
- 更新お疲れ様でした〜。
ら〜ら〜ら、らら〜ら、言葉にできない♪みたいな心境です(w
(この曲しらなかったらど〜しよう・・・。小田さんです。
相変わらずの二人。いしよし最高と連呼したくなりました(w
では、次回も楽しみに待ってますです。
- 382 名前:token 投稿日:2003年08月30日(土)00時05分27秒
- 更新お疲れ様です。
10分間のデート。良いですね〜。微笑ましい、
そして羨ましいですよ。うん、うん。
そしてお話のなかではいよいよ夏が始まる!
次回からの展開も期待してます。
- 383 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年08月30日(土)12時53分34秒
- 更新お疲れ様です!
「逢いたいなら会いに行けばいい」
そうですよ!吉澤君!よくぞ気付いた!!
会えない時間が気持ちをハッキリさせてくれたみたいでよかったです。
ただ寂しいだけで終わらずに自分に素直になれたわけですから。
夏祭り、楽しみにしてます♪
- 384 名前:クロイツ 投稿日:2003年08月31日(日)10時17分11秒
- 吉澤君ってば…感動的なまでに男前ですねッ!!
ああ、梨華ちゃんの感動を想像すると、なんだか私までドキドキしちゃいますよー!!
じれったい二人ですが、なんだか確実にお互いを想い合ってるのがわかって…ううう、最高ッ!!
はやくくっついてほしいような、まだもうちょっとこのままでいてほしいような…
複雑です(笑)
次回も超楽しみにしております!!
P.S.私も右腕筋肉痛です(笑)
- 385 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年09月01日(月)05時28分30秒
- 更新お疲れ様です!!
吉澤くんが最高にカッケーです!
やはり、この二人の微妙な距離がたまらないデス(w
では、次回更新も楽しみにしております♪
- 386 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時21分24秒
- ある夏の日の出来事。
風鈴とかを家に置いておいたら、たまぁに気持ちよく鳴る程度の風が吹いている。
いつもの夏の日。
何も変わらないような少し暑い夕方。
日暮れ前。
久々に着た浴衣。
去年は着なかったから・・・あ、一昨年も来てないか。
ともかく久々に着た浴衣。
この日の為に実家から送ってもらったんだ。
ちなみに着付けをしてくれたのは飯田さん。
お世話になっております。
夏も中盤。
残暑なんて言葉は程遠い気もするけど、カレンダー上では夏の中盤だ。
夏休み、相変わらず吉澤くんは忙しそうに働いているんだけど、この日の午後はお休みをもらったらしい。
というかもらってくれたらしい。
- 387 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時22分14秒
- 今日は花火大会の日。
会場は吉澤くんの住んでいる方で、結構大規模な花火大会らしい。
屋台の数も多いし、訪れる人の数も多いんだそうだ。
駅でも浴衣姿の人を何人か見かけた。
今日は様々な所で花火大会が行われる。
ここにいる人達もその各会場へと向かうんだろう。
車が出せない(大規模なお祭りだからね)変わりに『駅まで迎えにいきますよ』と言ってくれたけど、
疲れている身体にそんなことさせるワケにはいかないから、それは丁重にお断りしておいた。
ちょっとしょぼくれてる顔をしてるが何とも可愛かった。
電車は進み、駅へ到着。
・・・こんなにも人が多いんですか。
それはちょっと予想外だ。
いや、予定外だ。
これ、吉澤くんがデッカクなかったら私見つけられなかったよ。
「吉澤く〜ん!!」
ここにいる人達よりも頭一つ出た吉澤くんに向かって大きく手を振る。
さっきからきょろきょろと私のことを探していたんだろう。
私の声に気が付くと、人混みをかき分けながら近付いてきてくれた。
- 388 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時23分02秒
- 「とりあえず駅から出ましょう」
浴衣のことにはノータッチですか。
久々の再会の感動的場面なんてなくて、吉澤くんは私の前に来てニコッと笑って頭を下げると、
人で溢れる駅から私を守るようにして歩いていってくれた。
・・・うん、いい久々の再会だね。
今日の吉澤くんは真っ白なTシャツにジーパン。
Tシャツの上に羽織った青色のシャツが何とも爽やかで夏らしい。
伸びた髪も薄い茶色になっていて、昔の暗い雰囲気からは180度変わったよね。
こんな風に守ってもらいながら歩くのなんては初めてだし。
何かこういうのっていいぃなぁ。
でもさ、吉澤くん。
駅から出てもさ-----
「十分混んでるじゃん」
「いや、あ、うん。土手の方とか行けばあんまし混んでないんですけど・・・」
- 389 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時24分09秒
- あ、そっか。
駅よりも人がいないのが駅から出たこっちで、もっと人が少ないのが土手ってことなんだね。
なる程。
納得しましたよ。
日本語って難しいね。
いや、それよりうん、まずはあれだ。
「吉澤くん、とうもろこし食べよう」
お祭りだし、屋台がこんなにも出てるんだし、遊ばないなんてそんなことしちゃダメっしょ。
お腹もすいてきたしさ。
花火の打ち上げまではまだ1時間くらい間があるみたいだし、とりあえずは屋台巡り。
お祭りなんて久しぶりだもん。
楽しまなきゃね。
電車の中から沈んでいく太陽を眺めていた。
今はもう空の色は夜の色に変わっている。
吊るされた提灯と、屋台から発せられる光が淡く綺麗に輝いていて、
夏の風と共に優しく揺れて当たりを照らしていた。
- 390 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時25分20秒
- でさ、それが綺麗なんだけど・・・これちょっと人多すぎない?
よそ見すると迷子になっちゃいそうだよ。
ってすでに吉澤くんと離れそうじゃん!!!
がぁ!間を通るなぁ・・・・って
ふわっと感じた大きな手。
私から目を反らして歩いて行く真っ赤な顔をした吉澤くん。
ぎこちなく柔らかく握られたもんだからちょっとくすぐったい。
だから少し強めに手を握ったら、吉澤くんも少し力を入れて握ってくれた。
-------------
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-----
「なぁなぁケメちゃん!とうもろこし!!とうもろこし!!!!」
「いいらさん!ののも!!ののも!!!」
ちょっと良い感じの雰囲気の中。
とうもろこしを買う為に、屋台に向かって歩いて行くと、何とも聞き慣れた声が聞こえてきた。
そしてさらに見なれた背中2つ・・・。
「あ、よっすぃ〜に梨華ちゃん」
- 391 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時26分51秒
- 私達の視線に先に気付いたのは飯田さんの浴衣の袖を引っ張っていたのの。
さらにすごい勢いで振り向いた残り3人。
ちょっと珍しい組み合わせ。
「お、吉澤久しぶりじゃん」
「こちらこそお久しぶりです」
「この間は圭ちゃんに付き合わされて大変だったんだてね」
「あぁ、もう本当ですよ・・・次の日大変だったんですから」
その当事者である保田さんは知らん顔してののとあいぼんにとうもろこしを買ってあげている。
絶対に聞こえているはずなのに無視を決め込む。
でもその背中を見ると、飯田さんに随分絞られたのがよく分かった。
ちらちらと様子を伺う仕種なんて怒られた後の子供のようだ。
「ごめんねぇ、圭ちゃんにはカオリがビシッと言っておいたからさ」
ケラケラと笑っている飯田さんに比べ、保田さん・・・
多分ビシッという効果音と共に背中でも叩かれたのであろう。
言葉と一緒に激しく反応していた。
何だかちょっと可愛らしいな。
保田さんの知らない面を見た感じ。
- 392 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時28分16秒
- 「あいぼん!!あっちにわたがしが売ってるのれす!!」
「よしゃっ!すぐに出発や!!!」
「あ、ちょっ!ほら、カオリ行くよ!!!って2人も待てーーー!!!!」
ちょっとした世間話しに花を咲かせている間にあっという間に遠ざかる3人の背中。
私も吉澤くんも飯田さんもそれをぽけーっと見ていた。
まぁ、あの2人をこんな誘惑だらけの屋台の世界に連れてきたらこんな風になるのは当たり前か。
「カオリーーーーー!!!早く早く!!!!」
少し離れた所で保田さんが泣きそうな顔で手を振っている。
そのワキでは保田さんにたかるちびっこ風味は2人組み。
飯田さん、早く行ってあげた方がいいですよ。
絶対に。
「じゃぁカオリ行くね。邪魔して悪かったね」
『バイバイ』と手を振りながら飯田さんは行ってしまった。
最後の意味ありげなウィンク。
その理由って・・・。
- 393 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時31分09秒
- 「とうもろこしは1本で十分ですか?」
この人と繋がった手、だよね。
・・・ののにもあいぼんにも保田さんにも見られてたのかな。
「石川さん?」
「あ、うん。十分十分。そうしなきゃ他の入らないし」
ま、いっか。
今日はお祭りなんだから楽しまなきゃね。
うん、うん。
細かいことは気にしなぁい。
さっぱりすっきり行こうじゃないの。
言い訳じゃないよ。
ほら、お祭りなんだからね。
うん、そうだそうだ。
- 394 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月01日(月)21時31分57秒
- その時、ふっと手の中から吉澤くんの手の感触が消えた。
理由は分かってたんだけど・・・何だかすっごく寂しくなった。
私がさっきまで掴んでいた手は今財布を握っている。
頭の中では冷静に『後でお金払わなきゃ』なんて思ってるけど、突然消えた温もりが一気に恋しくなった。
「はい、どうぞ」
「・・・ありがとう。後でお金払うね」
「別にいいですよ」
ニコッと笑った笑顔に流されて、私はおとなしくごちそうになることにした。
さっきよりも減った人混み。
多分駅から離れていってるからだろう。
本当はもう手を繋がなくてもはぐれることは無いと思うけど、私は隣を歩く吉澤くんの手をそっと握った。
真っ赤になりながらも握り返してくれる手の温もりはやっぱり気持ちよかった。
- 395 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月01日(月)21時34分08秒
- 更新しました。
匿名、ついに訪れた ス ラ ン プ
更新ペース落とさないように頑張ります。
でも、あの・・・はい、頑張ります。
ついでに次は吉澤くん視点です。
>Silence様
9月に入って動き出す『君僕。』
ドラマで言うなら終盤ですか。
しかしまだまだ終わりそうもないんですけどね(苦笑)
今回も『いしよし最高!!』と連呼していただけたら幸いです。
曲・・・ごめんなさい、最初に出てきたのは大黒さんでした(汗)
た、タイトルを・・・(大汗)
>token様
サービスサービス♪
というよりもいいかげん動き出した『いしよし』と言えるでしょう(w
夏がやっとこさ始まりました。
過ぎる夏の早さは現実世界と同じかもしれませんけど(苦笑)
こんな展開になりました。
次は吉澤くん視点です。
- 396 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月01日(月)21時34分52秒
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
吉澤くん、時間はかかりましたが随分と成長しますた。
そして夏祭り、早速始まりました。
次回は吉澤くん視点。
成長した吉澤くんに私も期待したいです←オイ。
スランプスランプな私ですが、頑張っていきまぁす♪
>クロイツ様
連載開始から半年を過ぎ、やっとこさ男前になってまいりました(苦笑)
私の中では梨華ちゃん=クロイツさん
こんな方程式まで出来てしまいそうです(w
夏はもう終わりそうな現実世界、ここではやっとこさ夏(汗)
それも早いこと過ぎてしまいそうな予感(大汗)
どうなることでしょう(頑張れ自分)
筋肉痛、直りましたか?私はすっかり復活しました♪
>ぷよ〜る様
吉澤くんも株が上昇(w
ヘタレ返上といったところでしょうか?
この先、どうなるかどうなるか全然分かりませんが←オイ。
これからも見守ってやっていて下さい。
- 397 名前:token 投稿日:2003年09月01日(月)23時03分42秒
- 更新お疲れ様です。
前にドレス姿の梨華ちゃんに萌え〜となりましたが、浴衣姿もそれに劣りませんYO。
真っ赤になりながらも積極的な吉澤君、なんかカワイイぞ!
スランプですか。でも大丈夫ですよ。だってこのお話の『いしよし』達も、
もっと接近したいと思っている筈ですから、きっと素直に動いてくれますYO。
では、次回も楽しみにしています。
- 398 名前:クロイツ 投稿日:2003年09月01日(月)23時39分00秒
- 「もうっ!駄目じゃないの吉澤君ってば!!何かコメントしなきゃ!!」
とか本気で思ってたら…ヤラれました。
梨華ちゃんの方が一枚も二枚も上手です。
萌 え 死 ぬ か と 思 っ た … 。
最後の数行で、鼻血噴出しましたYO!!
流石は梨華ちゃん。…ああ、心臓がドキドキ言ってる…(笑)
>私の中では梨華ちゃん=クロイツさん
ぎゃ────────────────────!!!!!
ま、マジれすかッ!?いやーん!!!嬉し過ぎますッ!!!あぁ、鼻血が更に…(爆笑)
あ、筋肉痛、私もなおりました♪
そしてスランプ…無理しないでくださいませねっ!!
そーゆー私も、微妙にスランプ中…(笑)ああ、なんかことごとくタイミングが似てますね(爆笑)
次回も楽しみにしております!!
- 399 名前:Silence 投稿日:2003年09月02日(火)13時43分48秒
- こ〜しん乙かれ様でした。
ええと、とりあえず見ながらにやけてしまっている顔を直した
方がいいですよね(w もう、無理。ほんと。最高でつ。
ぜひともまだま〜だ終わらないでくださいね。ってか10年
くらいでも・・・(w まったくスランプなんて感じない
ですよ。っと万年スランプな自分が言ってみたり(爆
それでは、次回も楽しみに
- 400 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年09月02日(火)18時24分25秒
- 更新お疲れ様です!
おっ!吉澤君!!1歩と言わず、2歩も3歩も男らしくなってるじゃないっすか!(笑)
しかも石川さん。あなた吉澤君にハマッてますね。(笑)
吉澤君視点、楽しみにしてます☆
- 401 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時02分48秒
- 手。
一度しかちゃんと握ったことのない手。
その手はやっぱり小さくて、温かくて。
隣でとうもろこしを食べている石川さんの手。
僕の好きな人の手。
「あれ?あそこにいるのごっちんと市井さんじゃない?」
「あ、本当だ」
どうやらごっちんはヨーヨー釣りに夢中になっているらしい。
隣で立っている紗耶香は腕を組ながらその様子を楽しそうに眺めている。
ま、声はかけなくてもいいか。
邪魔しちゃ悪いし。
「あれ?あれ?あっちにいるのは矢口さんと安倍さんじゃん」
「・・・本当だ」
- 402 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時03分53秒
- ヨーヨー釣りに夢中になってる2人は気付いてないのかな。
向かいの『チョコバナナ』って書かれた屋台にいるちっちゃい2人組みの存在。
ジャンケンで勝ったらもう1本もらえるというやつらしく、矢口さんはかなりの気合いを入れている。
・・・こっちも邪魔しちゃいけないからスルーでいっか。
背中の方で喜ぶ矢口さんの声を聞きながら、のったりのったり歩いて行く。
途中屋台でたこ焼きやき買って、途中屋台で綿菓子買って。
花火の時間までゆっくりゆっくり過ごしいく。
右手にはたこ焼き(丁寧に袋に入れてくれた)左手には石川さん。
どちらもまだまだ温かい。
駅周辺から離れるにつれ、人の数はどんどんと減っていく。
多分花火を見る人達は、花火のポイントから離れた土手の方までは来ないんだろう。
僕らが訪れた時、ここは人で溢れかえっているような空間ではなかった。
全く人がいないワケじゃない。
だけどここは静かだ。
着ていた服を芝に置いて、『大丈夫大丈夫』と言う石川さんを無理矢理座らせる。
綺麗な浴衣に草の色をつけるわけにはいかないから。
- 403 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時05分20秒
- 花火が始まるまでの時間。
さっき買ったたこ焼きと綿菓子を頬張ってまったりと過ごす。
水辺の風はとても気持ちがいい。
ただ普通に会話をするだけなのに、夜の吹く風は人を穏やかな気分にさせる。
そして人を素直にさせる。
「浴衣・・・」
「ん?」
「浴衣、似合ってますね」
「へ?あ、ありがとう」
石川さんの頬が赤く染まる頃、夏の花は夜空に光りの花を咲かせる。
何度も何度も。
様々な色の花をちりばめながら、空は明るく輝き続ける。
時間の流れを一気に速め、静まる空気を揺るがしていく。
とめどなく打ち上げられる花火。
気が付けば時間は恐ろしく流れているものである。
たこ焼きの入っていたケースは爪楊枝だけになり、綿菓子の綿部分が
無くなった綿菓子は割り箸だけに。
- 404 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時06分23秒
- 止められない時間の流れがここにある。
いつか、石川さんがここへ時計を持って来た時にしたのと同じように、
僕は腕時計をポケットの中へと隠した。
それで時間が止まるワケじゃないけど、刻まれる目に見える時間は消える。
無意味な行動なんかじゃなくて、僕にとったら大切な行動。
いつまでもこの時間が続くようにと願いを込めた大切な行動だ。
「もう、花火終わっちゃうね」
「・・・そうですね」
眺めた花火は最後の光りを空へと放つ。
ちりばめられた強い光が石川さんの横顔を照らし出す。
濡れたような唇。
深い色の瞳。
最後の花火が終わるその瞬間。
僕の視線は空じゃなくて隣にい石川さんへ向いていた。
花火よりも惹かれる存在。
何にも代えられない存在へ。
- 405 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時07分04秒
- ------------
---------
-----
音も煙りも空から消え、虫の鳴き声だけだ聞こえてくる。
花火が終わってどれくらいの時間がたったのだろうか。
時計を外した僕には分からない。
ただどちらからも『帰ろう』という一言は出ず、星と月が輝く空を見続けている。
「月、綺麗だよね」
「星も、綺麗だと思います」
「じゃあ空が綺麗なんだ」
そうですね。
空、綺麗なんですよね。
何度も何度も見上げてきた空。
大好きな空。
それを今こうして石川さんと眺めている。
こういう幸せってなかなか味わえるものでもないよね。
「石川さん」
「ん?」
「手、握ってもいいですか?」
- 406 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時08分04秒
- 『聞かなくたっていいよ』そう言いながら差し出してくれた手をそっと握ってみた。
触れ合えることの喜び。
単純なことなのかもしれないが、きっととっても大切なこと。
「吉澤くん」
「ん?」
「もうちょっと、そっち行ってもいい?」
『聞かなくたっていいですよ』そう言いながら握った手を自分の方へと引き寄せた。
内心ドキドキしてるくせに、平気そうな素振りは僕の精一杯の強がり。
気付いても笑わないで下さいね。
右半身に石川さんの温もりを感じて、右肩に重みを感じた。
こんな日はやっぱり素直になったっていいのかもしれない。
側にあるこの人の体温を一人占めしたってお月様は怒ったりしないだろう。
繋いでいた方の手を右手から左手にそっと代えて、空いた右手で
石川さんの肩を触れるように抱いてみた。
壊れてしまうんじゃないかと思う程、ドキドキと早鐘のように鳴る胸。
でもそれと同時に感じる心地よさ。
石川さんといる時にしか感じることの出来ないモノ。
- 407 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時09分42秒
- 「・・・あったかいね」
「・・・はい」
風が僕らに優しく吹く。
少し冷えるくらいの風だけど、こうして肩を寄せあっていれば問題ない。
『幸せ』を感じられる時間。
全てが僕らを見守っていてくれる感覚に陥る。
溺れさせて下さい。
離れたくないんです。
少し風が強くなって、僕は肩を抱く手に力を入れた。
石川さんが寒くないように。
僕が寒くないように。
『キッカケ』
多分それが生まれた瞬間。
- 408 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時10分39秒
- 僕らはいつも一緒にいた。
それを望んで、それに答えてくれたから。
曖昧な境界線、飛び越える為の『キッカケ』
心の境界線はとっくに飛び越えている。
存在でいうならもう言葉では表すことが出来ない。
『恋人』よりも大きな存在。
張りめぐられたタブーへの境界線はいつまでも僕の前にあり続けた。
どれくらい経っても踏み込みきれないモノ。
それを跨ぐ『キッカケ』
肩から重さがすっと引き、繋がっている右手に力を感じた。
惹き付けられる。
その瞳に。
その唇に。
近付く程に魅せられて。
閉じられていく瞳を愛おしく思った。
過ぎ行く夏の風、過ぎ行く夏の香。
静かに聞こえる川の音。
自分に聞こえる壊れてしまうんじゃないかと思う程の鼓動。
間近で感じる石川さんの空気。
生まれて初めて感じたやわらかい唇の感触。
月と星だけが見守っている世界。
幻に思えた時間。
繋いだ手と触れあった唇が僕を現実という世界につなぎ止めていてくれた。
- 409 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時11分41秒
- ***
- 410 名前:ズレタメガネ 投稿日:2003年09月04日(木)10時12分20秒
- ***
- 411 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月04日(木)10時14分08秒
- 更新しました。
今日は・・・寒いですなぁ。
( `.∀´)あたしが暖めたあげるわ!!!
・・・。
>token様
石川さんの浴衣姿は、いつぞやのハロモニを思い浮かべて
いただければと・・・。
もうなんか微妙スランプは続くんですよ。
これもストックとして溜めてあったモノのおかげでの更新(汗
スットク残料が・・・(大汗)
・・・というか今回更新分を書いてから ス ラ ン プ ?
( ´Д`)作者、今頃冷や汗かいてるよ〜♪
>クロイツ様
もっと鼻血出ましたか?(w
(;^▽^)いや、作者もなんてこと言ってるんですか・・・。
何かここに出てくる男集はどうにもこうにもヘタレばかりです(汗)
>なんかことごとくタイミングが似てますね
そうなんですよねぇ。実は飼育デビュー日も近かったり(w
とりあえずは自分を追い込んで頑張ってみます(大汗)
- 412 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月04日(木)10時15分19秒
- >Silence様
今回でさらに顔は溶けたでしょうか?
(;0◎〜◎)いや、だから作者、何言ってるんですか・・・?
私も『君僕。』に愛着が・・・。
続けばいいなぁって思いながら書いています。
しかし動かない指・・・久々のスランプ。
とりあえずは頑張りまぁす☆
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
いいかげん成長しなきゃいけない吉澤くんの急成長ってヤツでしょうか(苦笑)
急成長させすぎて骨が痛い匿名だったり(汗)
( `.∀´)作者もまだまだ甘いわね!!
どうでしたか?吉澤くん視点。
匿名的には・・・○○○○と思ってますねぇ(w
- 413 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月04日(木)11時36分39秒
- ああぁぁぁああ!!よよよ吉澤君!!
どうしようどうしよう、とにかく落ち着け、自分。
しかし大学生でよかった…こんな時間の更新でもチェックできるから(w
スランプですか。でも大丈夫です、しばらく更新されなくても。
それほど今回の更新でおなかいっぱいになりました。
……本心としては続き期待。
- 414 名前:クロイツ 投稿日:2003年09月04日(木)11時42分03秒
- きゃ────────────────────ッ!!!
ぎゃ────────────────────ッ!!!
ぐは────────────────────ッ!!!
…あ、は、鼻血が…。
なんつーかもう!!んもう!!!やってくれました…やってくれましたよ、吉澤君!!!
もう、どきどきどきどきしながら読んでて…最後で本気で鼻血噴きました。…ティッシュティッシュ。
興奮し過ぎて、もう…やばいです…。
これ以上語るとネタばれになりそうなんで、自粛いたしますね。
でも、最後に一言。
最 高 で す 。
あー、このお話大好きだー!!
次回も超楽しみにしてます!!
- 415 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月04日(木)11時43分15秒
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
おめでとう、梨華ちゃんに吉澤君。
この日を本当に心待ちにしていました。
これからの二人に幸あれ。
- 416 名前:タロイモ 投稿日:2003年09月04日(木)17時02分25秒
- はぁ〜やっとここまできましたねー!
これを読んでいる私までドキドキしちゃいました。
ともかくお二人が幸せそうでなによりです。
次回も楽しみにしております。
- 417 名前:Silence 投稿日:2003年09月04日(木)17時18分26秒
- ((((;T▽T)))) き、き、き・・・
キタ━━━( ^▽^)━( ^▽)━( ^)━( )━( ^ )━( ▽^ )━(^▽^ )━━━!!!
あかん、あかんで大将(?)そんな・・・あっ、くらくらっ。
ついにこの日が。うんうん、この日をどれほど待ったことか。
どれほど待ったかというと・・・(自粛規制
更新お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。(?)
次回いつになっても待ってます。ってか、マジ感動した。
- 418 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年09月04日(木)22時27分00秒
- 更新お疲れ様です!
なんかもうこの二人、恋人同士よりも強い絆で結ばれているような気がします。
あえて恋人同士にならなくてもいいかも・・・なんて思っちゃいます。
○○○○ってなんでしょう??教えて下さい!!
次回も楽しみにしています☆
- 419 名前:token 投稿日:2003年09月04日(木)23時31分09秒
- 更新お疲れ様です。
パパンがパン。あ、だーれが殺したクックロビンッ!だーれが殺したクックロビンッ!
思わずクックロビン音頭を踊ってしまいました。(古っ!)
もうホント驚きです。そして大満足!
では、次回をまったりお待ちしてます。
- 420 名前:ぷよ〜る 投稿日:2003年09月04日(木)23時59分37秒
- 更新お疲れ様でした!!
生きててよかった・・・この瞬間を見ることが出来て・・・
では、次回更新も楽しみにしております♪
- 421 名前:時雨 投稿日:2003年09月05日(金)00時08分26秒
- あああああああわわあっわあわわわああ
この小説を、連載開始の頃から読んできてよかったと心から思いました。
吉澤君、おめでとう!!そして本気で羨ましいぞコンチキショー
- 422 名前:よっすぃ〜( ´ω` ) 投稿日:2003年09月05日(金)21時37分37秒
- 作者さまああああああああああ
なんて素敵な作品を〜ありがとうございました。
今日全部読みましたはぁ・・・・・・・よすこいいなぁ
- 423 名前:御食事件 投稿日:2003年09月06日(土)14時33分38秒
- 「圭ちゃん、カオリ思ったの」
「何さ突然」
今日もいつものように飯田は保田の家で料理を作っていた。
あまりにも酷い食生活に見兼ねて、毎日のように作りに来ているのだ。
「圭ちゃんの無駄に家って広いじゃん」
「無駄って何よ」
独身貴族保田。
お金を使うことなんてほとんどない。
光熱費や家賃の他は食費くらいだ。
休日は疲れをとる為に家でゴロゴロしているし、服だってそんな買いに行くこともない。
「カオリがさ、毎日来るくらいだったらここ住ませてよ」
- 424 名前:御食事件 投稿日:2003年09月06日(土)14時34分49秒
- ブッ!!
という音と共に保田の口からは綺麗にビールが吹き出した。
何も乗っかっていなかった机がびちゃびちゃと濡れて、それを置いておいた布巾で綺麗に拭く。
ついでに自分の口も拭いておく。
「突然何言い出すんだよ」
「だって圭ちゃん彼女とかいないでしょ?」
「・・・うっさいなぁ」
「じゃあ問題ないじゃん。部屋だって余ってるんだしさ」
「あのさ、それって同棲ってことでしょ?
俺、これでも一応男だよ。いいの?」
「何考えてんの?ただ一緒に住むだけじゃん。
同棲じゃなくて同居。ね?これなら問題ないでしょ?」
火を止めてお皿に盛り付けてはい完成。
飯田特製ハンバーグだ。
- 425 名前:御食事件 投稿日:2003年09月06日(土)14時35分55秒
- 何とも言えない表情でいる保田の前と自分の席の前にお皿を置いて、ワインなんかを取り出して、
少し電気を暗くして、音楽もちょっとムーディーな曲に変えて本当の完成。
気分はもうレストランだ。
「カオリと一緒じゃ嫌?」
「嫌じゃないけど・・・」
「けど?」
『いつか襲いそうです』なんんてことは言えない保田。
適当に言葉をごまかしてモゴモゴと口を動かす。
ひとみに強くいいながらも、保田も以外なヘタレもん。
嬉しいくせに素直になれない。
だけどダメなんて言ったら本当にそれで話しが終わってしまうのもよく知っている。
「掃除するから」
「ん?」
「掃除するからもう少し待ってて」
わざとぶっきらぼうに、嬉しい気持ちが相手にばれないように顔を背けた。
でも飯田には届いている。
気付かれている。
だてに付き合いが長いワケじゃない。
- 426 名前:御食事件 投稿日:2003年09月06日(土)14時36分50秒
- 「何かさ、矢口となっちのところと似てるよね」
「まぁね」
とりあえずは乾杯しようということになり、ワインの入ったグラスを合わせて乾杯。
あんまり汚れていない空き部屋のことも飯田は知ってる。
だからこういう保田の姿が可愛くてしょうがない。
作ったハンバーグを美味しそうに食べてくれる姿も、頑張ってつくる料理がいつも上手くいかないで
嘆く姿も飯田にとっては見事なツボなのだ。
「ま、とりあえずはよろしくお願いしますね」
この時の保田の顔は見事なまでに真っ赤。
『酒のせい』なんて言い訳が通用するはずもないけど口にしてみたり。
突然訪れた幸福な災い。
保田の気持ちを知ってか知らずか。
罪作りといえば罪作り。
沢山ついたため息は、まだ幸せのチャンスを残しておいてくれたらしい。
長い長い独り者生活。
『祝』というワケにはいかないけれど、とりあえずは春風吹くと言ったところだろう。
遅い春の風は、優しく保田のお酒に到着した。
この後2週間程経った頃、『保田』の表札の隣には手書きで書かれた『飯田』の文字が増えていた。
- 427 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月06日(土)14時40分29秒
- ひっそりと微量更新。
休憩所の設置な感じで(w
そして私自身の追い込みもかねて・・・(汗)
(;0○〜○)た、沢山の祝電あ、あ、ありがとうございます
>413 名無しさん様
(;0◎〜◎)だ、大丈夫ですか(オロオロ)
何かタイトルでネタバレしてるかなぁって思いながらの更新でした(苦笑)
お腹一杯になっていただけたようで(一安心)
すでに君僕。が始まって随分経っていたんですねぇ(遠い目)
続き、頑張りますです(()使いすぎな私(苦笑))
>クロイツ様
(;^▽^)だ、大丈夫?(オロオロ)
ティッシュ足りました?(w
そして吉澤くんは無事ヘタレ返上でしょうか?
前回更新分は何回も何回も書き直した記憶が・・・。
鼻血を噴いていただけたみたいで、安心です←オイ。
今回、更新少なくて申し訳ないです。
いしよし、ちょっと待っててくだせい(汗)
>415 名無しさん様
キタ━━━━━━( `.∀´)━━━━━━ ワヨ!!!!
はい、ヤッスーに登場していただいてみました(とくに意味なしです)
私も心待ちにしておりました。
気付けば時間は随分と経っていました(汗)
私も2人の幸せの願いたいと思っております)
- 428 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月06日(土)14時41分52秒
- >タロイモ様
随分とお待たせしました。
ぐずぐずぐずぐずと引っ張って来て、やっとこさですた(汗)
2人共微妙なヘタレでしたからねぇ・・・。
これで甘いいしよしが書けるようになればいいんですけど(苦笑)
2人に幸あれですね。
>Silence様
半年以上経って、やっとこさです(苦笑)
私もこの日をどれだけ待ったことか(涙)
そして一度も出て来てませんが・・・
___
c2___ヽ
∬∬`▽´)呼んだかい?
と大将登場です(w
いやぁお礼なんて(こちらこそいつもありがとうです)
とりあえず、しばしいしよしは待っていて下さいです(汗)
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
絆はもう圧倒的に強いですよ。
私はそう信じています(握り拳)
何かくっついてもあまり変わらないんじゃないかという不安も(大汗)
どうなることやらです(苦笑)
- 429 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003年09月06日(土)14時45分25秒
- >token様
満足していただけたみたいで(かなりホッとしております)
もうずっと前から考えていたことがやっとこさ書けそうになってきた展開です。
長かったぁ・・・。
ヘタレすぎていた吉澤くん、もっと頑張ってくれぇぇぇぇ・・・と、叫んでみる(w
そしてクックロビン音頭が分からない・・・(鬱)
>ぷよ〜る様
おまたせしました。
本当にお待たせしました。
私もこの瞬間に出会えて良かったですよ(w
長かったですからねぇ(遠い目)
さて、これから先どうなっていくんでしょうか(苦笑)
>時雨様
皆様が壊れていっている(w
いや〜随分とお待たせいたしました。
半年以上もこんな・・・。
いや、よかった・・・本当に良かった。
私からも、おめでとうを贈ろうと思います(w
>よっすぃ〜( ´ω`)様
全部ですかぁ、お疲れさまです(w
かなりのボロが出てきた気が(汗)
素敵な作品だなんてありがとうございますです。
ここのいしよしをどうか温かく見守ってやっていて下さい(ぺこり)
(*^▽^*)本当に沢山の祝電ありがとうございます。
これからも気長に-----
( `.∀´)見守ってなさい!!
( ゜皿゜)・・・ケイチャンコンバンユウハヌキ
(;`.∀´)・・・。
- 430 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003年09月06日(土)19時16分46秒
- 更新お疲れ様です!
保田のヘタレ具合にしびれをきかした飯田さんが前に出た感じですね。
ハッキリしない男を持つ女は大変ですね。(笑)
でもそのお陰で二人は一歩前進。「同棲」じゃなくて「同居」って辺りが
二人っぽくていいです。
次回も楽しみにしています。
- 431 名前:token 投稿日:2003年09月06日(土)20時56分17秒
- 更新お疲れ様です!
>突然訪れた幸福な災い
この言い回し、なんか好きです。そして前回に引き続き、ビックリです。
>クックロビン音頭が分からない
ごめんなさい。『ズレタメガネ』の回は、絶対レスが殺到すると思ったので、
他の人と被らないようにしたんですけど、ウケ狙いすぎました。(ぺこり)
元ネタは少女マンガの『パタリロ』です。主に激しい驚きを表現する時に
使うそうです。
いや〜それにしても皆さん、歯車が良い方に回っているみたいですね。
では、次回も楽しみにしています。
- 432 名前:クロイツ 投稿日:2003年09月07日(日)20時31分08秒
- や、ヤッスー!!よかったねヤッスー!!!
どきどきしてしまいました…ああっ!!よかったねヤッスー!!!
そして題名に爆笑。たしかにその通りでございます!!
いやー、これから先どうなって行くのか…すっごく楽しみです!!
次回も楽しみにしております!!
- 433 名前:Silence 投稿日:2003年09月08日(月)20時39分39秒
- こ〜しん乙でした。
いしよしの2人とは違って大人ですね〜。すごくいいです。
特に最後の一文。さいこう過ぎですw
にしても、夕飯抜き笑ったw では次回も楽しみに
- 434 名前:とまとけちゃっぷ 投稿日:2003/09/09(火) 10:16
- あの日。
あの花火大会の日。
初めて吉澤くんと口付けを交わした日。
あの日からの私達の関係。
それは特に変わったというところはない。
サマーワークも終わって忙しさが少し落ち着いたらしく、金曜日の食事会も無事復活。
ののとあいぼんも交じって相変わらず楽しく過ごしている。
あ、でも前よりも仕事後に一緒にいる時間は増えたよ。
それでもさ、ずっと一緒にいた人だし特別何かが変わるワケでもなくて、
だらだらしながら過ごしたり、たまに遠くに遊びに行ったり。
前と同じように過ごしている。
しいて変わったという所をあげるとしたら、私は前よりも素直に吉澤くんに甘えるようになった。
そして時たまそっとキスをするようになった。
(吉澤くんはいつも真っ赤になるんだよねぇ)
そんなところだろう。
カレンダーはどんどんとめくれていく。
そして私達はどんどんと成長を続けていく。
- 435 名前:とまとけちゃっぷ 投稿日:2003/09/09(火) 10:17
- ----------
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「吉澤く〜ん!!!!」
「あ、あれ!?石川さんじゃないですか」
「おぉ梨華ちゃんじゃないの。久しぶりだねぇ」
「石川かぁ〜、随分とまた綺麗になって」
久しぶりに会う先生方に挨拶をして、たまたま職員室にいたののが駆け寄って来てくれた。
突然お邪魔しましたよ。
そうです、学校です。
お昼休みを狙って来ちゃいました。
今日は私お休みだったからさ、お弁当作ってきたんだ。
もちろん吉澤くんにね。
「何?吉澤さんの彼女?」
「え!マジで!!」
と、職員室におしかけてくるのはここの生徒達。
ののは何も言わずにニコニコと笑っている。
『彼女』という言葉が合うのかどうかは分からないし、『付き合っている』という言葉が
あてはまるか分からないけど、私達は一緒にいる。
ののもあいぼんも何も聞かないし、特に気を使うようなこともないけど、
何となくこんな不思議な空気を読み取っているみたいだ。
- 436 名前:とまとけちゃっぷ 投稿日:2003/09/09(火) 10:20
- 実は卒業してから7ヶ月くらい経つけど、こに来るのは初めてで、
吉澤くんが仕事をしているのを見るのも初めて。
だからこんな風に生徒から慕われている吉澤くんの姿を見るのも初めてで、何だか新鮮。
良い顔して笑ってるんだね。
冷やかしの言葉を背中に受けながら吉澤くんは職員室から出てきた。
安倍さんが後ろの方で手をひらひらと振っていたから、
頭を下げる変わりに同じように手を振った。
「びっくりしましたよぉ」
「だってビックリさせたかったんだもん」
そう言うと吉澤くんは嬉しそうに笑って鼻の頭をちょっとかいた。
とりあえず屋上にでも行こうということになって、少し寒いけど私達は屋上に出た。
ついてこようとする生徒達に吉澤くんは苦笑いを浮かべていたものの、ついてくるようなことを
しない子達と知っているのか、何も言わずに階段を上がって行った。
「ここ来るの久しぶり〜」
「僕も久しぶりですよ」
いつか一緒に座った時のように吉澤くんと並んでベンチに座って、
11月の冷たい風を受けながら食事をとる。
吉澤くん曰く、ここくらいしか2人で過ごせる場所はないんだそうだ。
やっぱり冬は皆引きこもるんだね。
そういうところは何年経ったって変わらないで続いていくんだろう。
- 437 名前:とまとけちゃっぷ 投稿日:2003/09/09(火) 10:21
- 「寒くないですか?」
吉澤くんこそ寒くないの?
私と違って上着着て無いじゃん。
まったく、風邪なんてひいちゃったらどうすんのよ。
ま、突然おしかけた私がいけないか。
しょうがない。
鞄の中にしまっておいたマフラー、かしてあげるよ。
くるくるっと巻いてほら完成。
温かさ全然違うでしょ?
ついでにもうちょっとくっついてあげるよ。
半分だけだけど少しは温かくなるから。
「今年もさ、あとちょっとなんだよねぇ」
「早いですよね、本当。時間が過ぎるの」
本当だよ。
前から時間が過ぎるのは早いと思ってたけど、吉澤くんと一緒にいるようになってから
もっと時間が過ぎるの早くなった。
何かね、どんなに疲れても、嫌なこととかあっても吉澤くんがいてくれると落ち着くし安心するんだ。
でね、ちょっと泣きたくなるの。
安心しすぎちゃって。
- 438 名前:とまとけちゃっぷ 投稿日:2003/09/09(火) 10:22
- 「石川さん、次の休みの日に海行きません?」
「海?冬なのに?」
「はい。星見にいきましょう。それで花火なんかもしましょう」
答えはもちろんYESですとも。
断る理由もないし、こんなにも隣で熱く語ってくれる人がいるんだから。
次の休み一緒なのはもうちょっと先になるけど、いつでもいいよ。
絶対行こう。
寒くないようにちゃんとカイロも持っていこう。
こうやって遠くに出かけるなんて久しぶり。
吉澤くんと海に行くなんて2年ぶりだよね。
何か嬉しいなぁ。
「今日、お休みなんですよね」
「うん、今日はずっと暇人だよ」
「じゃぁ仕事終わったら食事でもしましょう。
今日はそんなに遅くならなはずですから」
いいねぇ、じゃあののとかあいぼんも呼んじゃおうか?
底なしの天使達も呼んじゃいましょうか?
吉澤くんもOKサイン。
- 439 名前:とまとけちゃっぷ 投稿日:2003/09/09(火) 10:23
- 『今日は僕が作りますよ』そんな頼もしいことまで言ってくれちゃって。
じゃぁあいぼんとののには私がメールしとくね。
ついでにお部屋も片付けなきゃ。
「それじゃぁ、僕もうそろそろ戻らなきゃいけないんで」
吉澤くんはお礼と一緒にマフラーを外して私の首に巻いてくれた。
職員室に向かう吉澤くんとは階段でお別れ。
私には部屋の掃除が待っている。
よし、ちょっと頑張っちゃうかね。
帰りながらメールを打って、速攻で返ってきた2人分の返事を読み終えて、
私はまだ吉澤くんの香の残るマフラーを口元に押し付けて家へと向かった。
何かちょっと恥ずかしくなった。
その日の夕食は吉澤くん自慢のオムライスだった。
卵の上にはケチャップでそれぞれの似顔絵が描かれていて、
どんな記念か分からないけど、写真を撮った。
似顔絵の私と吉澤くんの間に挟まれたののとあいぼんはにっこりと笑っていた。
- 440 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/09(火) 10:27
- こ、更新しました。
えぇ〜っとドキドキしながらの更新。
空板についてからカキコするまで20分かかりました(汗)
管理人様お疲れ様です
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
ここは女性陣がとてつもなく強いです(w
へたれなのは男性陣(爆笑)
飯田さんは何か保田さんをひっぱっていくというかうまいこと補助
をしていそうな予想を勝手にしています(w
書きやすいこと発見です!
>token様
びっくり続きは私のテンションの現れですかね(w
楽しいテンションで書いていましたから。
で、ですねぇ・・・『パタリロ』は数ページだけ見たことがあったんですよ(汗)
次回ちょっと探しに逝ってきます(大汗)
遅い春が皆のところにちょろちょろとやってきたみたいです(w
良いことです(w
>クロイツ様
ヤッスー、20数年目にしてやっとこさ春風吹きました(w
何か書いてて嬉しくなりましたもん。
よかったね( `.∀´)♪
そして、『御食事件』私は昔本当にこういう字を
書くのかと思っていました(爆笑)
今回はそんな過去の失態が生きました(w
>Silence様
大人なのはきっと飯田さんの方ですね(苦笑)
ヤッスーはまだまだおこちゃ(ry
いつか名字が一緒になるといいね( `.∀´)♪♪
ちなみに( ゜皿゜)←の時は最強ですよ(w
夕飯は何度も抜きになりそうですから(w
- 441 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/09(火) 15:35
- 大きな変化はないけれど、少しずつでも前に進む二人・・・
何でここの二人はこんなにも素敵なんですか?(w
- 442 名前:時雨 投稿日:2003/09/09(火) 15:54
- 時々とかいって…羨ましすぎるよ吉澤君…。
けどあなたがそんなに純情だから、なぜか微笑ましく見守っていられます。
やっぱりここのいしよし大好きです。
更新頑張って下さい。
- 443 名前:( ´ω` )よっすぃ〜 投稿日:2003/09/09(火) 16:29
- 更新おつですmm(_ _)mm
純情だあああああ!青春っすね!♪(*/∇\*)キャ♪
いつまでも、このままでいてほしい気もするけど
もう少し進展してほすぃ気もするなぁぁぁ
吉澤くんはまだ敬語なのれすか?リカちゃんとか呼ばないのれすか?
超〜〜〜気になるっす!!でも汗っちゃいけないのですね・・・(反省)
続きも楽しみに待ってますぅぅぅ!
- 444 名前:クロイツ 投稿日:2003/09/09(火) 17:51
- ああ…進展してる!進展してるよお母さん!!!
す、すみません。興奮しちゃって…。
すっごい良い雰囲気ですね!!今まで見た事もないようないしよしを、ありがとうございます!!
あー、なんか幸せな気分です♪
次回も超楽しみにしております!!
P.S.私もさっき、自スレで戸惑いまくりました(笑)題名間違えまくったりして。
- 445 名前:token 投稿日:2003/09/09(火) 20:24
- 更新お疲れ様です。
時間経過は早いけど、二人の仲はゆっくりとでも確実に、ですね。
周りも温かく見守ってくれているみたいだし、いい雰囲気ですね。
>『パタリロ』は数ページだけ見たことがあったんですよ
あのマンガはギャグですけど少年愛が入ってますから、好みが分かれると思いますので・・・。
では、次回も楽しみにしています。
- 446 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003/09/09(火) 21:37
- 更新お疲れ様です!
さっきはいきなり読めなくなったと思い、焦りました。(笑)
えーーーーーっ!!!???いつの間にキスしたんですかぁーーーーっっ!!!!????
かなりびっくり!だけど嬉しい!!でも関係は今だ変わらず。恋人同士でもなければ
付き合っているわけでもない。複雑なようですが、この二人はそっちの方がなぜか自然なんですよね。
なんかこのままおじいちゃんとおばあちゃんになっていく姿が想像できますね。
その頃もやっぱり吉澤君は石川さんに敬語で。(笑)
なんかこの小説、売り出したいですね。もう常に携帯して暇さえあれば読んでいたい、
そう思わせる小説です。(大絶賛!)
それでは次回の更新も楽しみにしています☆
- 447 名前:sai 投稿日:2003/09/11(木) 19:23
- こ〜しん、おつでした。
今更言うこともないんですけどね。ほんとここのいしよし
見てると癒されますよ。マジで。自然にか〜、いいね〜。
では次回も楽しみに。更新頑張ってね〜。
- 448 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:37
- 最近、日が過ぎるの早すぎると思う。
何で気付いたらカレンダーこんなにめくれてるの?
そんな気持ち。
切なくなるってもんですよ。
石川さんと会えるのも夜くらいだし、今だに休みの日が会わなくて海にも行けてないし。
雪ですか?雪降ったりするんですか?
そのくらい寒くなってしまったし・・・。
机の上に顎をのっけてグダ−としたくもなりますよ。
安倍さん、頭に名簿乗っけないで下さい。
他の先生達もその上に乗っけないで下さい。
何ですか『記録!記録!!』って拍手。
へ?10冊?重いはずですよ。
「ったく吉澤も入学したての頃はこんな感じの奴じゃなかったのにな」
「んだね、もっとこう暗いってか無愛想っていうか」
「やっぱあれか?石川のおかげか?」
「いいねぇ、若いっていうのはさ」
- 449 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:39
- と後ろでは色んな先生方が騒いでらっしゃいます。
分かります?
僕すごく顔上げにくいんですけど・・・。
やっぱし何かこういうの恥ずかしいです。
それに僕ら付き合ってるとかどうとか言葉にしたことないからそれも分からんないんですよ?
まぁその・・・き、キスとかはしちゃったりなんかしてますけど・・・。
・・・へへっ。
やっぱし早く会いたいなぁ。
「よっちゃん口、締まり悪すぎだよ」
ついでにもう一言追加で『ヨダレたれそうになってる』
安倍さん、隣の机をいいことに僕の実況中継ですね。
なかなかやりますね。
「ほら、父ちゃんになるんだろ?しっかりしろよっ!!」
バシーンと叩かれた背中。
その拍子に落ちた名簿達。
・・・ちょっと待って下さい。
いつのまに僕が父親になることになってるんですか?
何ですか?
何ですか?この話しの展開??
安倍さん、マジに驚かないで下さい。
- 450 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:40
- 「いや、あの〜僕別に父親にならないんですけど・・・」
先生方、どうやら僕のいじる方向性が決まってきたようです。
皆何悪戯ッ子みたいな顔してるんですか。
・・・でも、ちょっと想像してみちゃった。
『家族』か・・・少し夢みちゃってもいいですかね。
・・・うん、やっぱいいよね。
へへっ
「よっちゃん、だから口」
この後、空想にふけっていた僕の頭の上にはまた名簿が乗せられていた。
でも今度はそんな重く感じなかった。
空想(夢)の力は大きいものだ。
・・・多分今日はずっと口のしまりが悪かったと思う。
でも何だか幸せな気分になってた一日だった-----
- 451 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:41
- -----って思いたかった。
「今日は飲んだ〜飲んだ〜飲んだ〜」
「ちょっと、恥ずかしいから止めてよ」
「春よ〜近き春よ〜」
「浮かれすぎです保田さん」
「敬語禁止〜保田さんも禁止〜」
「あぁわかりましたよ〜ほら、圭ちゃんもしっかり立って」
「こら〜吉澤〜!!俺もかまえ〜〜〜〜」
「近い!近い近い近い!!ほら紗耶香もちゃんと立ってったら」
だ〜もうよっぱらいの相手は嫌だよ・・・。
学校出たらスーツ姿で待ってた2人。
安倍さん知ってて教えてくれなかったし。
強制連行。
居酒屋ですか。
そのうえすでに酔ってたし。
「ほら、タクシー乗って。紗耶香もっとつめてよ」
タクシー乗せるのも一苦労。
飲んでる間はさんざんのろけ話し。
ついでに火の粉は僕まで飛んでくるし。
いいじゃんいいじゃん、僕らのことに触れないでよ。
恥ずかしいっつぅの。
- 452 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:42
- とりあえず居酒屋から近かった圭ちゃんを下ろして、家にいた飯田さんに受け渡し。
ダレダレ圭ちゃんは飯田さんにしっかりと怒られていた。
そして待ってもらっていたタクシーに乗り込んで次は紗耶香の家へと向かって行く。
「なぁ吉澤」
「何?」
「お前さ、最近忙しいの?」
タクシーは夜の道を丁度良いスピードで走っていく。
たまに光る対向車の車のライト、信号機の色。
暗い夜に不自然に光っている光り。
少し疲れていた目にはきつい感じだ。
「夏よりはそんな忙しくはないかな」
「でもやっぱ忙しいっちゃ忙しいんだ」
「どうしたのさ突然」
「ん?何かしばらく会ってないうちに疲れた顔になってたから気になってさ」
そうかな?
自分ではそんな変化には気付かないけど・・・。
「でもさ、良い顔にもなった」
- 453 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:43
- ニヤッと笑って僕の頭をくしゃくしゃ撫でる。
酔っぱらいのからみっていうよりはいつもの紗耶香のからみに近い。
でもさ、そういう紗耶香も良い顔してるんだよ。
ごっちんと付き合い始めてからさ。
「何かさ、やっとこさ全員に春来るってやつ?」
「圭ちゃんは微妙なラインかもしれないけどね」
お互い顔を見合わせてちょっと笑った。
今頃たっぷり絞られている圭ちゃんを想像したからだ。
多分想像通りだと思うし。
「そう言えば最近なっちとか矢口と飲んでないなぁ」
「安倍さんもだけど、矢口さん最近また特番とかで忙しいらしいよ」
「そっか、今度はいつ全員で飲めるんかなぁ」
こうして働き始めてわかったこと。
全員が時間が合うなんてことがなかなかない。
でもさ、やっぱり年に1度はそんな会を設けたいよね。
ちょっと寂しそうな顔をする紗耶香と同じことを僕も思った。
だんだんと時間がバラバラになっていくのに寂しさを覚えていたのは前からだから。
- 454 名前:寒い空の1日 投稿日:2003/09/12(金) 13:45
- 「いつかさ、ちゃんと計画しようね」
「んだな」
紗耶香はあくびをするとそのまま眠りに落ちて行った。
僕が疲れた顔してるって言ってたけど、紗耶香も十分疲れた顔をしていた。
忙しいのは昔からなんだろう。
多分僕よりも疲れがたまっているはずだ。
圭ちゃんも紗耶香も僕の親友で、僕の憧れの人。
疲れてたって、こうやって人との繋がりを大切にしようと頑張っている。
ついでに色々と見ていてくれる。
同じようにっていうのは違うけど、こんな風には憧れるよ。
自分自身、いつかはこんな風に思われたい。
それくらい大人になりたいと思った。
- 455 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/12(金) 13:45
- 更新しました。
たまにはこんなのもありかなぁなんて思いながらの更新でした(w
>441 名無し読者 様
まったりしすぎは良くも悪くもあるところですかね(苦笑)
味と言えば味となるんでしょうか?w
これからも素敵と言っていただけるように精進します☆
>時雨 様
純粋というかウブというか(苦笑)
まだまだまたっり、それえでもちょっとずつ進んでいる・・・はず(w
そう願いつつ、見守りつつ、ちょっとずつ進んでいきます。
長い目で見守ってやっていて下さい(ぺこり)
>( ´ω` )よっすぃ〜様
『青春』甘い響きです(w
ちょっとしたことでもドキドキする感覚は何だか書いていてこっちまで
恥ずかしくなってきます(ウヴ!)
吉澤くんが石川さんに『梨華ちゃん』と言う姿・・・いつか辿り着きたい
その場所へですね(爆笑)
まったり待っていて下さいね♪
>クロイツ様
進展しました!進展しましたよクロイツさん!!!(w
書きたかった甘々がちょっとずつ出てきていますよ(w
吉澤くん、石川さん、共に幸せを噛み締めている(はず!)です。
書いていて癒されるい『いしよし』私も幸せな気分になってますw
P.S.お互いに頑張って慣れていきましょう( ´Д`)んぁ〜♪
- 456 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/12(金) 13:46
- >token 様
一歩ずつ一歩ずつ、足元にしっかりと道を刻んでいるって感じですね。
というかまったり し す ぎ ?(w
それでも周りの皆様同様、私もここのいしよしを温かく見守っていきます。
良い意味での雰囲気の変化がいつか訪れたらいいですね(w
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
無事読めたみたいでよかったです(w
気付けば進展しているここのいしよし。
しかしあまり進展も見えない罠。
変わらないような変わったような(苦笑)
良い意味ではあまり変わってないですね。
小説・・・いや、そんな・・・・・・・・・・・・(大汗)
が、がんまります!!!(w
>sai様
自然とまったりがもっとうですから(w
変わる空気も変わらない空気もずっと保っていたいものです。
味を失わないように進んでいけばいいなぁって思っております(w
- 457 名前:token 投稿日:2003/09/12(金) 22:05
- 更新お疲れ様です!
社会人になると、そしてそれが別々の職場だったりすると、実際はなかなか
会えないんですよね。そう言った意味では今回のエピソードはリアルですねー。
このお話の人達の何が立派かと言えば、忙しいなかでも日々のルーチンワークに
流されてない(と、思われる)ところでしょうか。少しずつでも確実に何かに
向かって進んでいますから。
では、次回もまったりとお待ちしてます。
- 458 名前:tennya 投稿日:2003/09/13(土) 18:56
- 更新ありがとうございます。はじめてカキコしました。いつも更新を楽しみに待っています。次回もよろしくお願いします
- 459 名前:圭ちゃんとカオリ 投稿日:2003/09/15(月) 13:46
- 「圭ちゃん、起きて、起きてってば」
ゆさゆさ揺れる身体。
鼻にかかった髪がくすぐったくて変な笑い方をした。
・・・寒いのに布団をひっぺがされた。
「だから起きてって言ってるでしょ!!!今日大掃除しようって昨日言ったでしょ!!!」
美人なお姉さん、今日は何故だか気合い入りまくってます。
ねぇカオリ、寒いんだけど。
布団返して。
後5分でいいから。
・・・通用するはずないか。
ぼさぼさの頭をシャワーで濡らしてタオルでごしごし擦って戻ったら、
カオリは呆れた顔して髪をドライア−で乾かしてくれた。
スウェットの上下、頭に巻いた白いタオル。
私ってばばっちりじゃない。
気合いがやっと入ってきたよ。
- 460 名前:?\??????J?I?? 投稿日:2003/09/15(月) 13:47
- 「よし、じゃぁ圭ちゃんは部屋から掃除するよ。
いらない雑誌をさっさとまとめる!!!」
ハタキでスパーンとケツを叩かれた。
変な気合いの入ったカオリはちゃきちゃき動いて、ベッドのシーツを剥がして
洗濯機へと持って行っていた。
しかしなぁ、いらない雑誌ったってあんまし無いんだよなぁ。
基本的に買わないし、読むのは小説くらいだし。
あ、そういえば読みかけの小説が・・・
「圭ちゃん!さぼってないで動いて動いて!!!」
・・・夜までとっておきますとも。
ってか何でそんな楽しそうなんよ。
カオリ、生き生きしすぎじゃない?
そんな生き生きとしたカオリと作業すること数時間。
元からあんまりモノもないし、カオリが直々掃除をしていてくれたからすぐに終わった大掃除。
気合いを入れて、お風呂掃除に網戸掃除。
窓なんかもピカピカに拭いちゃって。
終わった頃には部屋中綺麗で気持ちが良い。
ちょうど小腹が空いてきた頃、カオリはおにぎりを作っていてくれた。
- 461 名前:圭ちゃんとカオリ 投稿日:2003/09/15(月) 13:48
- 労働の後の食事は最高。
握ってくれたのは愛しい女性。
旨くないはずがないでしょう。
「今日のお布団は気持ち良いはずだよぉ。
お日様の力でぽかぽかしてるはずだからねぇ」
「あ、でもカオリの布団干してないでしょ?
今日わた、お、俺の使っていいよ。お日様パワープレゼント」
ちょっとした優しさ。
どうよ、私ってはキマッてるんじゃいの?
ところがカオリはぷっと吹き出しお腹をかかえて笑ってる。
何さ何さ何なのよ。
どうもても優しさ満点じゃないの!
「ありがとー、ってかそんな言葉使い気使わないでよ。
違和感ありまくり。カオリお腹痛いっつーのぉー」
- 462 名前:圭ちゃんとカオリ 投稿日:2003/09/15(月) 13:49
- ゲラゲラ笑って床を手でばしばし叩いて。
あらあら、涙なんて流し始めちゃって。
だんだん恥ずかしくなってきちゃったじゃない。
いいじゃんかよぉ、いいじゃんかよぉ。
たまにはこんな私だっていいじゃんかよぉ。
ちょっと拗ねてみたらカオリは余計に爆笑するし。
一度入ったスイッチはなかなか解除出来ないらしい。
カオリの笑い声で何か私まで笑いたくなってきたじゃないの。
何だかよく分からなくなってきたけど、一緒に笑って一緒に涙流して、
掃除したての床にごろんと横になってしばらく肩で息をして。
この家にカオリが住むようになって、私の笑う回数はかなり増えた。
同じ時間と同じ空間を共有するようになって、過ぎていく時間は早くなった。
きっと望んでいた幸せの一部はここにあるんだろう。
そう思える。
「カオリさ、今日は頑張って私料理作ってみるよ」
笑いとからかいの声がカオリの口からもれて、それからカオリが私の頭をぽんぽん叩いた。
- 463 名前:圭ちゃんとカオリ 投稿日:2003/09/15(月) 13:49
- きっと楽しい時間も、嬉しい時間も、悲しい時間も、辛い時間も、こうやって過ぎていくんだろう。
カオリに横に立ってもらいながら作った料理。
味は全然だったし、見た目もぐちゃぐちゃだったけど、カオリは全部食べてくれた。
そして干した布団はどっちが使うか問題。
譲り合いが続いて解決しない。
だから結論『一緒に寝よう』
・・・いや、寝れないよ。
そんなこと思いながらも布団の中へ。
カオリの背中を見つめながら、抱きつきたい衝動を一生懸命に抑えて。
いつもよりも近いカオリ。
届く彼女特有の甘い香とか、もう普通に届くわけですよ。
ドキドキなる心臓の音とか感じられてると思うもん。
「・・・カオリ」
「・・・ん?」
答えてくれた背中を抱きしめた。
彼女は抵抗することなく受け入れてくれて、回した腕に手をかけてくれた。
「・・・ドキドキいってるね」
「・・・そうだね」
- 464 名前:圭ちゃんとカオリ 投稿日:2003/09/15(月) 13:50
- 少しだけ触れてしまった彼女の胸の膨らみ部分。
欲望に流されてしまったというよりも、彼女の全てが知りたかった。
きつく抱きしめてカオリの首元に顔を埋めた。
受け入れてくれるかとか、あんまり考えていなかった。
触れたかった。
感じたかった。
翌朝、隣で眠るカオリの素肌を見て、昨日のことが夢でないことを実感した。
重ねた唇から零れた言葉に嘘はないし、彼女も嘘はなかっただろう。
今日は外は雨だった。
だからカオリの布団は今日も干せない。
お日様の匂いは薄くなったけど、今晩も彼女と同じ布団で眠ることだろう。
いつかベッドを買い直して、少しゆとりを持って眠りにつこう。
それまでは、そしてそれからも、抱きしめて眠ろう。
- 465 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/15(月) 13:51
- 更新しました。
変な季節です。
9月なのに・・・暑い。
>token様
リアル、そう言っていただけてよかったですw
内心ドキドキでしたから(つねに怯えてます)
定期的に集まってっていうのは私の夢でもあるんです。
前回の更新はだから私の願いもちょっと込めてですねw
>tennya様
はじめまして(ぺこり)
一応定期更新を目指して頑張っています。
ので、ペース崩さないように頑張っていきますので、これからも
よろしくお願いしますです。
- 466 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003/09/15(月) 17:36
- 更新お疲れ様です。
うわお!いいっすねぇ〜!もうこの二人は問題なし!
完璧です!(笑)
いしよし以外もカップリングも、この小説は穏やかな風が吹いてます♪
最近きになること、それは「辻加護は誰かとどうにかなんないのか。」
ということです。まぁ、あの二人はまだ子どもでいっか。(笑)
それでは次回も楽しみにしています☆
- 467 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/16(火) 00:13
- いやぁ…なんかいいですねぇ。大人な二人、って感じで。
それに比べおこちゃま二人はいつでもまったり。
どうなるんだろうなぁ、おこちゃまな白い人と黒い人は(w
- 468 名前:sai 投稿日:2003/09/16(火) 15:49
- 大人な二人。いいですね〜。こ〜んな二人結構理想だったり
しちゃってますがw この二人の仲がいつまでも良好である
ことを願いつつ次回の更新もお待ちしてます。
- 469 名前:token 投稿日:2003/09/16(火) 21:07
- 更新お疲れ様です。
今回のお話って、つまり、その〜
きゃ〜〜〜です。(取り乱し中)
皆さん幸せそうでなによりです。
では、次回も楽しみにしています。
- 470 名前:クロイツ 投稿日:2003/09/16(火) 23:02
- しまりのないお口の吉澤君も素敵でしたが(笑)
ど、どうしましょう。心臓バクバク言いまくってて…(汗)
あああ、でもでも!!でもでもでも!!!
よかったね、圭ちゃん…!!!
素敵過ぎるあなたに乾杯です。
もう、今夜は心拍数上がり過ぎで眠れなさそうです(爆笑)
次回も楽しみにしてます!!
- 471 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:40
- 相変わらず忙しいですが、何とかやってる今日この頃。
今の季節冬ですよ。
冬。
夏なんてあっという間に飛んで行って、秋とか気付く間も無くいなくなっちゃった。
気がつけば葉っぱは散ってるし、自分の来ている服もすっかり冬用。
マフラー、コートは当たり前。
ついでで言えばホッカイロ。
風がヒューヒュー口笛を鳴らす中での帰宅は手に焼き芋でも欲しくなる。
そんな日にやってきました。
海遊び決行日。
いや、真冬の海遊び決行日か。
車の中で聞こえる御機嫌な音楽。
運転する吉澤くんの楽しそうな顔。
- 472 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:41
- お昼頃から合流して、色々とお店を回ったり買い物したり。
夕方になってから車に乗って一路海へ。
買い物でちょっと疲れてしまった私は、吉澤くんには申し訳ないけど助手席で
ちょっと眠ってしまっていた。
気付いて起きたら『まだ寝てても大丈夫ですよ』と優しい声が聞こえてきて、
さらに申し訳いけどまた眠ってしまっていた。
2度目に目が覚めた時に素直に吉澤くんに謝った。
海へ続く道を照らすのは背の高い明かりに対向車とかのヘッドライト。
スムーズに進む夜の道。
少しだけ開けた窓からは冷たい風が入り込んできている。
音楽と吉澤くんと私の声が響く車内。
寒い風なんかに負けないくらいに暖かい空間。
「ねぇ吉澤くん」
「ん?」
「ちょっと止まってもらっても大丈夫?」
「え?あ、はい」
ちょっと走って道路の端に止まった車。
不思議そうな顔の吉澤くんを手で呼んで、内緒話しするように顔を近付けた。
- 473 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:42
- 「あのね」
「はいはい?」
耳を近付けてくる吉澤くんの柔らかそうな(って実際柔らかい)頬を
両手で挟んで強制的にこっちを向かせて
チュッと軽く唇を合わせた。
挟んだ頬がかぁーっと熱くなるのが伝わってくる。
「キス、したくなっちゃった」
本当はね、眼鏡取って欲しいんだ。
いつだって軽く合わせる唇に、少しずれる眼鏡。
私さ、吉澤くんの眼鏡取ったとこ見たことないんだよね。
出会ってから一度も。
今度お願いしてみようかな。
熱い頬とか赤い耳とか伝わって私まで熱くなってくる。
何回か交わした口付け。
いつだって心臓はドキドキする。
薄い唇の熱さは一度感じたらクセになるのよ。
その後の照れたような顔がまた何とも可愛くてさ。
でもさ、眼鏡の次でもいいんだけどお願いあるのよね。
あ、やっぱ眼鏡の前がいいかも。
- 474 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:44
- 「吉澤くん」
今度は吉澤くんからキスしてね。
初めてキスした日から一回も吉澤くんからキスしてくれたことないんだよ。
そりゃさ、恥ずかしがり屋さんだっていうのは知ってるけどね、
こっちとしては奪って欲しい時もあるわけさ。
今だってこうやって一緒にいられるのは幸せだけどね、ちょっと多く
望んでもいいならお願いします。
「何ですか?」
でも・・・ま、今はその照れたような嬉しいような顔がこんな近くにあるからいっか。
そして吉澤くん、可愛いすぎ。
「もっかいキスしよう」
返事はいらないよ。
だってその前に唇奪っちゃうから。
眼鏡ずれても焦らないでね。
後一回キスしたら海、行こうね。
合わせた唇はさっきよりも熱かった。
海に着くまで吉澤くんは、ずっと赤い顔をしていて、だけど楽しそうに運転していた。
- 475 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:44
- ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 476 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:45
- 想像通り、冬の海は相当寒いです。
車内でほくほくしていた僕らに『甘ったれるな!』みたいな喝を入れられてる気分です。
つっこんだポケットに入れた両手が一気にかじかんでいく。
やっぱし冬の海なんて誘わない方がよかったのかなぁ。
石川さんめちゃ寒そうだもんなぁ。
「よし、とりあえず砂浜まで行こう!」
そんな僕の不安をよそに石川さんは元気一杯拳を振り上げた。
走って行く石川さんの背中を追い掛けるように僕も走って。
途中、砂に足を取られながらも走って走って。
お互いに息を切らしながら笑って砂浜に腰を下ろした。
身体、少し温かかくなったね。
大の字になってごろんと寝転がってみた。
少し湿った砂浜がズボンにしみて少しひんやりしたけど、雲の少ない今日の星は
本当に綺麗によく見えた。
- 477 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:46
- 冬の凛とした空気。
その空気の中で見る空はどうしてこんなに綺麗なんだろうか。
星座の名前とかはよく分からないから、散らばる星を勝手に繋げて自分勝手な星座を作る。
何処までも広がる空。
心地よい波の音。
吸い込まれていくような世界。
目を閉じても思い出せるようにじっと空を見つめてみた。
「やっぱりさ、空は広いんだね」
僕の横に同じ様に大の字になって石川さんが寝転んだ。
伸ばしていた僕の右手と石川さんの左手が触れあって、僕らはそっと手を繋いだ。
『宇宙は有限で無限じゃない』昔そんな文を読んだ気がした。
今も尚広がり続ける世界。
きっと一生かかっても宇宙の先は見えない。
『無』っていうのは一体何なのか。
真っ白なのか、そうでないのか。
想像力外のことで、イメージすら出来なくて。
見上げる空は、僕の目には無限に写る。
空の先にあることなんてよく分からない。
雲がどれくらい高い所にあって、月がどれくらい遠い所にあって、
空がどれくらい高い所にあるかなんて。
そんなこと僕には分からない。
- 478 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:47
- 年を重ねるごとに掴めないモノを知って、思い描いていた夢は少しずつ欠片を落としていった。
落とした欠片はすぐに溶けて、僕は大事な何かを落とした気がしてならなかった。
拾えなくて、救えなくて。
それが今までだった。
でも、最近思えることがあるんだ。
多分石川さんとこうして手が繋げるようになった時くらいから。
溶けた夢はまた固まり、形を変えて新たな夢へと変わっていく。
破片に刻まれた思い出も、その時感じたことだって、次へ繋がる何かになる。
落としていたんじゃんなくて気づけなかった。
失望感が優先していて、僕は欠片を見失っていた。
そう思う。
いつか僕の夢、話したの覚えてますか?
多分忘れちゃってるかもしれないですね。
いつか僕にもっと勇気と自信がついた時、ちゃんと言葉に出しますから。
僕の夢、落とした欠片は固まって、新しく夢が出来てたんですよ。
そして小さな欠片を掴んでました。
永い永い時間をかけて。
- 479 名前:星 投稿日:2003/09/19(金) 12:48
- 「・・・星」
夜空に溶け込むような綺麗な声。
掴んだ手、少し冷えてきちゃいましたね。
そんなことを思いながら石川さんの言葉を待った。
「星、いつか掴めるといいね」
自然と笑みが零れてきた。
覚えていてくれたんですか。
些細なことかもしれないけど、すごく嬉しいです。
そのうえなんて絶妙なタイミング。
何処かで繋がってるんじゃないかと本気で思いたくなる。
「・・・そうですね」
でも、本当はもう掴みかけてるんです。
僕の小さい頃の夢。
溶けてしまって、再構築した僕の夢。
『一番輝いている星を捕まえること』
言えない言葉の変わりに繋いだ手に少しだけ力を込めてみた。
握り返してくれる手に、僕は空を見上げながら微笑んでいた。
- 480 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/19(金) 12:50
- 更新しました。
本日砂糖が多め。
初期の頃書けなかった反動かなぁ・・・
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
ののかお好きです。
だから書いていて楽しいですねぇ。
荒波があまり好きじゃないんで、気付けばまったり。
どのCP書いてもそうなるみたいです(w
『辻加護』ですかぁ・・・(遠い目)
>467名無しさん様
ののかおはアダルトです。
書いてて楽しいアダルトです!
白い人と黒い人・・・本当どうなるんでしょうね(苦笑)
見当つかないとはこのことを言うんでようか(w
>sai様
唯一の大人って言ってもいいのかもしれませんね(苦笑)
圭ちゃん、やっとこさ少し大人になりました。
私もこの2人がいつまでも幸せであることを願います。
>token様
ご想像の通りです(・∀・)ニヤニヤ
御想像の通りかと思われます(・∀・)ニヤニヤ
幸せ、そう、皆幸せなんです!!
そいが素敵なんです(w
>クロイツ様
(#`.∀´)<て、照れるじゃないの!!
最初の頃に書きたかった反動とでもいうんでしょうか。
甘々ですわ(w
今夜のはきちんと眠れるでようか?
心拍数は・・・下がったですかね(苦笑)
- 481 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/19(金) 14:29
- この甘さ・・・たまんないなぁ(w
反動万歳です(w
- 482 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003/09/19(金) 22:07
- 更新お疲れ様です!
マジ最高!でもやっぱり吉澤君は奥手ですね。そんな奥手な吉澤君、逆に素敵ですけど。(笑)
でもやっぱり、女の子は唇奪われたいもんですよ。(笑)
吉澤君!愛しの石川さんのために、ほんの少し勇気を出して下さい!
次回の更新も楽しみにしてます☆
- 483 名前:Silence 投稿日:2003/09/20(土) 16:18
- 尊敬する匿名匿名希望様、更新お疲れ様でした。溶けるよ
マジで(w ここの2人がそんな甘いことしちゃあ(ry
いつまでもこんな世界観が続くことを祈ってます(w
- 484 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2003/09/20(土) 21:48
- 作者さま、更新お疲れ様です。
吉澤くんにもようやく来ました。あまいひととき。
読んでるほうが溶けてきそうですほんとに。
真っ赤になる二人、ぜひとも隠し撮りしてください。撮影は引き受けました。(笑)
次回更新も楽しみに待ってます!!
- 485 名前:名無し( `.∀´) 投稿日:2003/09/21(日) 14:21
- いつも楽しみにしています。
いしよしヲタ兼やすかおヲタとしては、こういう小説はうれしいっす。
これからもがんがってください。
- 486 名前:仲 間 投稿日:2003/09/22(月) 16:14
-
・・・はじけすぎなんじゃないの?
本日開宴
『久々に飲みましょう、語りましょう、カップルいちゃつき禁止飲み会』
タイトル命名は辻と加護のコンビ。
無理矢理スケジュールを合わせて実現した飲み会。
タイトルには忠実に。
それがルールだ。
「吉澤ぁ、酒買い行こうぜぇ」
投げられた空き缶は見事僕の頭にヒットしました。
紗耶香、微妙に中身残ってたよ。
かかったよ。
石川さん家のカーペット濡れそうだったじゃん。
- 487 名前:仲 間 投稿日:2003/09/22(月) 16:14
- ぶつくさ言う僕はスルーされ、僕は手をひかれて酔っぱらい1名とお酒の買い出し。
戻ってみれば、次は圭ちゃんがつまみが足りないと騒いでいたり。
いちゃつき禁止令につき、飯田さんにいいよれないこの大人は僕の方へと飛んできた。
紗耶香に続き、ぶつくさ言う僕はスルーされ、僕は手をひかれて酔っぱらい1名とつまみの買い出し。
・・・僕、さっきから同じようなことばっかしてる?
「あ、よっすぃ〜やっと帰って来たぁ」
「こっちに来るのれす」
そして速攻御指名です。
意外にモテモテ吉澤くんだよ。
最近またぐんと綺麗になってきた辻と加護の2人に呼ばれて間に入ってお酒を注がれる。
すでに2人はほろ酔い状態。
辻なんて赤い頬をして辻の隣に座る石川さんの膝の上でごろごろ遊んでいる。
前言撤回。
ほろ酔いじゃなくて、辻は酔い酔い状態だ。
加護も負けじと僕の膝の間に着陸成功。
どうやら加護も酔い酔い状態。
- 488 名前:仲 間 投稿日:2003/09/22(月) 16:15
- 続いてやって来たのはちちゃなちっちゃな矢口さん。
そうそう、特番とかお疲れ様でした。
家のラジオで聞いてましたよ。
そしてお願い。
『Rさん』と『Hさん』って頭文字使って僕らのこと話さないで下さいよ。
めちゃめちゃ恥ずかしかったんですから。
と、まぁ言ってみるものの、酔っぱらいな矢口さんはケラケラ笑うだけで通用しない。
とりあえずからんで次の餌食はどうやら圭ちゃん。
次から次へとここの人はよく動く。
「ほれ、全然飲んでないっしょ」
いや、安倍さん、飲んでます。
少なくとも安倍さんよりも飲んでます。
いや、嘘です。
かなり飲んでません。
ってか飲む暇もなく次から次へと人が来すぎなんですよ。
僕、注がれたお酒も飲んでないんですよ?
「カオリ〜こっちゃおいでぇ」
- 489 名前:仲 間 投稿日:2003/09/22(月) 16:16
- そしてカランだ僕をスルーして、飯田さんと北海道について熱く語りだすしまつ。
僕は基本的にスルーされまくり。
・・・悲しいなぁ。
「ほれ、よし子も飲みなよ」
と、そこに表れた救世主。
スーパー幼馴染みのごっちんだ。
「は?何言ってんの?すーぱー幼馴染みって何さ」
笑いながらグラスを取って、僕に持たせて乾杯乾杯。
ちょっと冷静になってみて、自分が軽く酔っていることに気付いたり。
思考回路がぐーるぐる。
そんな感じになっていた。
「何かさ、こうやってよし子と話すのも久しぶりだよね」
そうだね。
最近全然話してなかったよね。
僕が今までよりもちょっと忙しくなっちゃったし、お互いに一緒に過ごす時間を
占める相手が変わってきちゃったからねぇ。
「幼馴染みっていうのもあるし、家が隣だといつでも会えるって気持ちになっちゃうのかね」
「まぁそれもあるかもね。後藤もそういう考えあったりするし」
- 490 名前:仲 間 投稿日:2003/09/22(月) 16:18
- とりあえずは飲みますか。
そんな感じで久しぶりにごっちんと飲みか交わして、ゆっくりと話しなんかしちゃって。
僕の膝の間で加護はすっかりお眠モード。
いくら容姿が変わっていったって、あまり変わらない加護や辻には癒されてみたり。
僕も子供が出来たらこんな風に育ってもらいたいなぁと思う。
隣では辻が石川さんの膝の上で同じように眠そうにごろごろしている。
ちょっと一緒に飲んでるごっちんに失礼して、眠そうな2人を
石川さんのベッドの上に連れて行く。
まぁ3時にもなれば眠くなるよね。
僕もちょっと眠かったりするし。
両手につないだ辻と加護の手はもうけっこう熱くって、2人の眠気度数を表していた。
「もう寝ちゃった?」
「うん、多分ちょっとした騒ぎじゃ起きないんじゃないかな?」
ベッドの上を占領して寝ていた紗耶香を引きづり下ろして、辻と加護を寝かせて。
石川さんは僕が辻と加護を寝かすのを見ていたらしく、寝かし終わった時に、
ニコッと笑って手で『こっちにおいで』と僕を呼んだ。
ごっちんと石川さんの間に座ってもう一度乾杯し直し。
明日が休みなのをいいことに、今日はひたすら飲み明かす方向決定。
この3人で飲むことなんてあまりないから、こういった時間も新鮮に感じる。
- 491 名前:仲 間 投稿日:2003/09/22(月) 16:20
- そのうち飯田さんも安倍さんも矢口さんも圭ちゃんも混じって、眠っている
紗耶香や辻加護を除いた全員でさらにもう一回飲み直し。
話すことは沢山あったし、話したいことも沢山あった。
こうして集れる時間はほとんどないから、皆でいれることが嬉しくて。
笑いあっていられる時間、そんな単純なことが嬉しくて。
流れる時間は人それぞれ違っていて、同じ生活をしていな僕らはその時間を共有しあっていない。
こうやっていれる時間は人生の中で見たらすごく短くて、だけど出会えた仲間達と
こうやって過ごせる時間はすごく貴重で。
語れる言葉も交わせる言葉もきっと本当は大切だけど、記憶にはきっとあんまり残らない。
それでも過ごせる時間がすごく好きなんだと思う。
僕は皆が好きなんだと思う。
はじけすぎたり、たまに馬鹿やって怒られて。
だけど真面目な話しだって出来ちゃって。
感傷的になるとかそういうのじゃないけど、何だか突然皆が大切に思えちゃって、
皆を抱きしめたくなっちゃって。
お酒の力を借りてじゃないけど、僕は腕の届く範囲で皆のことを抱きしめた。
いつかは変わる風が吹くかもしれないけれど、僕は皆と一緒に歩き続けたい。
交わる時間は少しだってかまわない。
それでもこの仲間達と過ごす時間が少しでも欲しい。
だんだんと痺れていく頭で僕は強く強くそう願った。
- 492 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/22(月) 16:21
- 更新しました。
次回はちょっと風が変わります。
>481名無し読者様
時にはマターリ。
いつもマターリ?
こんな仲間が大好きです。
仲間は素敵です(w
>茅ヶ崎のマヤヤ☆様
素敵な時間を作ってみて、憧れる自分がいて。
こんな時間もいかがでしょうか?(w
吉澤くんの勇気・・・いつか見たいです(苦笑)
奥手なのはきっとなかなか変わりません。
吉澤くんの味といったら味な気がしますから(w
>Silence様
尊敬・・・いや、あの、されるような人じゃごじゃいません(汗)
『様』とか本当似合わないんどぅえ(滝汗)
こんな世界はいかがだったでしょうか?
たまには集合です(w
- 493 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/22(月) 16:21
- >ななしのよっすぃ〜様
吉澤くん、こういう一時が来るまでが長かった・・・。
春 春 春 。
次回かたりは固まってしまうおそれあり?(w
前回の更新分は甘しすぎて途中で一瞬指固まりました(爆笑)
しかし冬の海は寒いですよね・・・(遠い目)
名無し( `.∀´)様
ありがとうございます。
やすかおは私もツボなんです(w
書いてて楽しいですから♪
これからも地道に頑張っていきますのでよろしこお願いしますです(ぺこり)
- 494 名前:token 投稿日:2003/09/22(月) 23:06
- 更新お疲れ様です。
わ〜い宴会だ〜!みんな楽しそうですね〜。
あっ、でも辻加護は宴会してもええんかい・・・・・。
ごめんなさい。鬱だ・・・・・。
次回風が変わるだなんて、どうなるんでしょう?
楽しみにしてますYO。
- 495 名前:クロイツ 投稿日:2003/09/23(火) 11:45
- まったり最高…!!!
やさぐれるいちーちゃん&圭ちゃんも最高。更にスーパー幼馴染最高です(笑)
辻加護、変わらないのは私も嬉しいです♪
ああ、そうだ。そう言えばもう二人とも(この中では)高校卒業したんですよね。
…いいなぁ、辻加護…。
次回、ちょっと風が変わるそうで。…わくわくわく♪
楽しみにしてます!!頑張ってください!!
- 496 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:15
- 多分、見上げた空の広さ全てを僕は空を見上げて見ていない。
視界に入る空は広すぎて、それを見上げる僕は全てを見れる程心にゆとりを持っていないから。
広くて狭くてぶつかりあって、広がらない思考が余計に僕を縛ってく。
気持ちが荒れると、人に優しく出来なくなる。
だから今の僕は多分人に優しくない人間だ。
カッコ良く『原因』という言葉をつけていいなら『僕の生徒が軽い気持ちで石川さんに告白をして、
フラれたくせに『つき合っている』と言いふらしている』ということだ。
ちなみに一度、その生徒が石川さんにフラれたということは、飯田さん情報を聞いた安倍さんから聞いた。
学校で僕と石川さんが一緒にいるところを目撃している人や、噂でそれを聞きつけた人は
興味本意で僕のそばへとやってきては、あれやこれやと聞きまわる。
勘弁してほしい。
生徒と先生(半人前だけど)という立場から、強くもいけないし、言えないし。
石川さんは、そんな風に言われていることを知らないから、そんなこと言われていることを知られたくない。
- 497 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:16
- こんな荒れた中、僕はその生徒から呼び出しをうけて屋上にいる。
廊下ですれ違った時に渡されたメモには『17時に屋上で』と書かれていた。
放課後、早めに仕事を終わらせて、17時よりもちょっと前に屋上に来て。
時間よりも前にきたのは、自分の荒れた気持ちを落ち着かせたかったから。
しばらく空を見つめてみたけど、気持ちなんて落ち着かなくて、
ベンチに座って意味もなく携帯を開いたり閉じたりしていた。
何言われるのかなぁ・・・。
ってか多分『別れてくれ』みたいなこと言われるんだろうなぁ・・・。
今の僕は先生じゃなくて、ただの『吉澤ひとみ』だ。
「お、早いじゃんか」
そして17時ちょい過ぎに表れたのが、もうすぐ卒業になる現在2年の生徒。
しかしさ、自分で呼び出しておいて遅刻はどうなのさ。
僕さ、今落ち着いてないからそんなに心広くなれないよ。
僕の隣に腰かけて、灰皿を引き寄せて煙草に火をつけて。
吐き出された煙りが僕の前をユラユラと通過をしていく。
僕はその煙りの奥に見える景色を見つめていた。
白いフィルター1枚かかった世界。
夕暮れ時のビルの影は、いつ見ても美しいと思っていた。
今日は・・・そんなに美しいとは思えなかった。
- 498 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:17
-
「用事って?」
「煙草吸い終わるまで待ってくんねぇ?」
「まだ仕事あるんだ」
「あ、そうなんだ」
時間の流れが酷く遅い。
煙草の煙りをここまで不快に感じたことはなかった。
全てが僕の嫌いな状態を作っているように思えた。
「早くしてもらえないかな」
「へぇ、吉澤さんでもそんな低い声出すんだ」
「用事が無いなら行くよ。今日中に終わらせなきゃいけない仕事があるから」
立ち上がったら目の前に広がる景色にかかった白いフィルターが少し薄くなった。
風の方向が微妙に変わり、僕の胸を気持ち悪くさせていた
匂いが少し遠くへいった気がする。
まだ寒い風の吹く中で、僕は一体何をやっているんだ。
伸びた前髪が眼鏡にかかって、それすらも不快に思えた。
「なぁ、吉澤さんは梨華さんともうヤッたの?」
そしてこの声も僕を不快にさせる。
何ニヤニヤ笑ってるの?
そんなことを僕に聞いてどうなるっていうんだよ。
君には関係ないだろう。
- 499 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:18
- 「俺さ、何度も店行ったんだよ。梨華さんの働く店。
ここの学校いる時から可愛いって思ってたからね。
何度も顔出してるうちに絶対俺に堕ちるって思ってた」
白いフィルターがまた景色を包んだ。
吐き出される煙りに僕の世界を犯されていく気がする。
土足で踏み込まれている感じだ。
「梨華さんってさ、処女っぽいよねぇ。
何かまだウブって感じで。俺ねぇ、そういう女大好きなの。
だから今ふりまいてる嘘をさ、事実にしたいワケよ。
無理矢理じゃ犯罪じゃん?さすがに捕まりたくないし」
言葉の一つ一つが心の奥をえぐっていく。
石川さんをそんな風にしか見ていないような言葉が嫌だ。
1人の人として見ていないような言い方がしゃくに触る。
「吉澤さんもさ、梨華さんの身体目当てで付き合ってるんでしょ?
まだヤッてないんだったらさっさと手、引いてくんねぇ?
俺今順番待ちしてるんだけど」
白いフィルターが濃くなった。
世界は色を暗くしようとしはじめている。
「本気で言ってる?」
ねぇ、それは本気で言ってる?
そのニヤけた笑いの奥には何も無い?
君の心は?
石川さんの心は?
- 500 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:19
-
「本気じゃなかったらわざわざ呼び出したりなんてしねぇよ」
身体目当て。
心はいらないの?
君は友達に『石川さんは俺の彼女』とか言いながらどんな卑猥な
言葉を使って石川さんの存在を辱めた?
一体何を満たしたいんだよ。
優越感でも感じたい?
周りから羨む視線でも欲しい?
「・・・これ以上石川さんのこと話さないでくれるかな」
「ははっ、何?いっちょ前に彼氏のフリ?
梨華さんの身体目当てな吉澤さんが何を言ってんのさ」
「君に何かを分かってもらおうなんて思ってないよ。
でもさ、こんなくだらないことで石川さんを傷つけたくないから」
もう、口にしないで。
石川さんの名前を口にしないで。
「君はさ、何が目的で石川さんと付き合ってるなんて言った?
嘘までついて、何を感じたかった?何が欲しかった?」
「・・・は?」
「嘘で重ねた言葉の世界なんて、いつかボロが出てくるよ。
いつか引く周りの目と、いつか出る自分の嘘。
回収するなら今のうちじゃないかな。
僕は石川さんの手を離すつもりはないから」
僕にとって、必要な人だから。
僕の大事な人だから。
何があっても全力で守るから。
- 501 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:19
-
「僕は石川さんの気持ちや心を無視するようなこと、絶対にしたくないから」
白いフィルターが濃くなり、やがて薄くなっていった。
オレンジ色に染まっていたビルはもう影だけのような色に変わってきている。
日の落ちるスピードは早い。
時間の流れよりも早い。
春になりきらない冷たい風は、煙りを吹き飛ばして僕の前を通りすぎた。
「もう、行くよ。何かあったら職員室いるから」
今から僕と君は先生と生徒に戻るよ。
もうこの話しも終わりね。
石川さんに対する気持ちも想いもない君と、これ以上
『吉澤ひとみ』として話すのは意味ないから。
- 502 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/25(木) 13:20
- 「もうすぐ卒業制作の〆きり日だよ。期限内提出意外は受け取らないからね」
校舎の中は、外よりも暖かかった。
今すぐに変わったことはそれだけたった。
大人になりきれない僕の気持ち。
落ち着かない気持ち。
それは右手に表れていて、今僕の右手は震えている。
こんな気持ちになったのは久しぶりだ。
白いフィルターがまだかかっている気がした。
僕は目を閉じて、深呼吸をしてから階段を降りて行った。
響く靴の音が、静かな校舎に響き渡った。
- 503 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/25(木) 13:22
- 更新しました。
『ただいまとおかえり』はあと3回くらいの更新です。
>token様
こんな風に変わってしまいました・・・(汗)
仲間で集まり、こんな風に楽しく過ごすことが出来るのは
幸せなことですよねぇ。
辻加護は見事な爆睡ぶりでしたが(苦笑)
急展開(?)です。
>クロイツ様
マターリが終わってちょっとぴりぴり。
いや、風の変更はこんなでした(大汗)
辻加護の成長も書けたらいいんですけどねぇ(遠い目)
実際の辻加護が20歳くらいになったらどんなかなぁと
想像じながら書いてたりしてます(妄想爆発)
- 504 名前:Silence 投稿日:2003/09/25(木) 13:39
- 更新お疲れ様です。
ほぼリアルだ(w う〜ん、なんか見ているこっちもすごい不快
になりました。感情移入して見れる。それが僕君のいいところと
勝手に思っています。次回も待ってますよ。
- 505 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 14:55
- ちょっと一波乱ありましたね。
当方も自分のことのように腹が立ちましたね。
でも、こうして感情移入できる作品は読んでてホント楽しいですよ。
- 506 名前:クロイツ 投稿日:2003/09/25(木) 15:26
- よ、吉澤くんかっけ〜…!!冷静ですね。大人です。かっけ〜!!
そしてその分だけ想いの深さを感じて…胸がきゅるるん(笑)
石川さんも大変だぁ…。
この先どうなって行くのか、すっごく楽しみです!!
次回も超楽しみにしてますので!!頑張ってくださいっ!!
- 507 名前:SINKI 投稿日:2003/09/25(木) 16:05
- 始めまして。
某サイトからきました。
楽しみにしているのでがんばってください。
- 508 名前:token 投稿日:2003/09/26(金) 22:36
- また、こいつか〜ッ!なんて奴だ。
ええい、叩ッ斬ってやる!(w
おっと、更新お疲れ様です。
次回、ハラハラしながら待ってます。
- 509 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/27(土) 01:28
- 現実的に考えてもある話ですよね。体だけ、ってのは。
心が満たされなければ何の意味もないのに。
最近はそういう犯罪とかも多くて心底嫌な気持ちになります。
- 510 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:25
- よっちゃんがいつもと違う顔をして戻ってきた。
いつもニコニコとしている顔だけど、目の奥が優しく笑ってはいなかった。
そしてその翌日から、『梨華ちゃんと付き合っている』というデタラメな噂は影をひそめていった。
机に戻ってきて、仕事をするよっちゃんは何も言わなかったけど、なっちは何となくわかっていた。
よく頑張ったね、よっちゃん。
帰ったら休みだった矢口が料理を作っていてくれた。
お腹も空いていたし、矢口が夕飯で作ってくれた料理はなっちの実家から送ってきてくれた
じゃがいもを使った料理だったから、いつも以上の箸が進んだ。
もちろん、矢口の作ってくれた料理がおいしいからだよ。
つい最近の学校の話しをしたら、矢口はちょっと難しそうな顔をしてから頭をがしがしとかいた。
お風呂上がりで髪を乾かしていない状態だったから水しぶきがなっちの方まで飛んできた。
水しぶきはちょっとだけ冷たかった。
- 511 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:26
- なっちはよっちゃんの本気で怒ったところを見たことがない。
それは矢口も同じみたいで、多分梨華ちゃんもないんだと思う。
よっちゃんは極限まで自分の感情を押さえ込む感じがするから。
心配だった。
怒りとかそういった感情を吐き出し方、何となくだけど、そういうのが苦手そうだから。
お布団の中に入って、矢口と背中合わせになるように横になった。
考えがまとまらない。
なっちはよっちゃんの職場の先輩で、よっちゃんの友達。
一体どんなことをしてあげることが出来るんだろうか。
どうすれば少しでも助けてあげられることが出来るんだろうか。
ずっとずっと頭の中を回っている。
ちょっとだけため息をついた。
多分何も出来ないんじゃないかという結論に辿り着いたから。
- 512 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:27
- 「・・・大丈夫だよ」
「・・・。」
「そうやって考えてあげるだけでも良いんだと思うよ。
矢口はさ、同じ職場にいるワケでもないし、そこまでよっすぃーのこと
知ってるワケじゃないけど、友達だもん。
何かあったら助けてあげよう。なっちも一緒に。
そんでまた一緒に考えよう」
矢口はそれだけ言うと、すぐに眠りについた。
多分起きているんだろうけど、目を閉じて眠ろうとしていた。
・・・ありがとう矢口。
その後、なっちはもうちょっとだけ考えて眠った。
明日はじゃがいもの差し入れでもしてあげよう。
そんなことを考えながら眠った。
- 513 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:28
- そしてそんなことがあった日からちょっとして、よっちゃんがお昼御飯を食べながら
小さく『ありがとうございます』って言ってきた。
何のことだかさっぱり分からなくて理由を訪ねたら、この前なっちが矢口に話したことを
矢口から聞いたんだそうだ。
そしてじゃがいものお礼に、おいしそうなみかんをくれた。
『矢口さんと食べて下さい』と照れたように笑いながら。
よっちゃんはじゃがいものお礼と言っていたけど、本当はどうか分からない。
でもはっちは素直に受け取った。
『ありがとう』と言ったらよっちゃんはまた照れたような笑顔をくれた。
でも、やっぱり多少は無理をしているんだと思う。
授業の後、よっちゃんにに缶コーヒーを渡したらよっちゃんは疲れた顔をしてお礼を言った。
- 514 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:30
- 「大丈夫?」
「えぇ、何とかやってますから」
「・・・そっか」
「何か心配かけさせちゃってるみたいで・・・すみません」
「謝らないでいいよ。でもさ、何か力になれることあったら言ってね」
「はい、ありがとうございます」
『先に行きますね』と言ってよっちゃんは授業の準備をする為になっちよりも先に
職員室に戻って行った。
なっちはやっぱりちょっと悲しくなった。
もうちょっと何か出来ることはないんだろうかと思って。
何も出来ない自分自身に悲しくなった。
卒業式が間近にせまっている。
仕事は増えるし、忙しくもなる。
よっちゃんもなっちもそれは同じで、授業が減ってもやる仕事は沢山あった。
隣で忙しそうに働くよっちゃんは何だか無理して仕事に打ち込んでいるようにも見えた。
- 515 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:32
- 今年の冬は長い。
なかなか抜けない寒さだなって思った。
そしてなっちはよっちゃんの冬も早く終わればいいのにって思った。
そしてそれからまたしばらく日が経った頃。
よっちゃんが倒れた。
原因は疲労だそうだ。
聞いた所によると、仕事が終わっても1週間程まともに眠らなかったらしい。
これは後からよっちゃんに聞いたんだけど、よっちゃんの怒りのような感情の
鉾先の向ける場所、それはキャンバスだった。
仕事が終わって帰ると、ずっとキャンバスに向かって筆を動かし続けていたんだそうだ。
平均睡眠時間、1時間。
連日のハードはスケジュールに加えて過度のストレス。
- 516 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/09/28(日) 21:34
- 病院で点滴を受けている間、よっちゃんは死んだように眠り続けていた。
そしてその隣には泣きそうな顔をした梨華ちゃんが座っていた。
よっちゃんのお母さんは少し前に帰っていった。
親子で倒れてしまった方が大変だ。
梨華ちゃんが『私がついてますから』と言って説得をしたからだそうだ。
なっちは自分を沢山攻めた。
なっちからカオリに連絡を入れ、カオリから梨華ちゃんへ伝えてもらいながら、
なっちは涙をずっとこらえていた。
カオリにはバレてたみたいだけど・・・。
泣いちゃ駄目、泣いちゃ駄目って思いながら、なっちは帰って
矢口に抱きしめられたら大泣きしてしまった。
隣でずっと仕事をしていたのに、日に日にやつれていくよっちゃんを
見ていたはずなのに、ここに来るまで何もしてあげられなかったから。
そんな自分が情けなくて、悔しくて、申し訳なくて。
その夜、泣きつかれて眠るまでなっちは矢口の胸で抱きしめられ続けていた。
- 517 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/28(日) 21:38
- 更新しました。
『あの時、もっと何か出来なかったんだろうか』これはいつも後から思います。
何度も手を見つめました。
>Silence様
僕君。の嫌われもの再登場はやはり批判だらけでしたね(苦笑)
感情移入をしていただける作品ですか(照)
何だか恥ずかしいもんです。
久々のなちまり(?)でした。
>505 名無し読者様
やはり嫌われもの(苦笑)
皆さんこういう反応かなぁとは思ってましたが、
やはり出さない方がよかったかな・・・。
楽しい作品と言っていただけるように精進していきたいです。
>クロイツ様
吉澤くん、冷静でしたがこんな風に(ネタバレ防止ぬぅん)
どうにも苦労の風が吹いて来ている吉澤くん、頑張って!
そして石川さんも頑張って!!(笑)
次回は石川さん視点になります。
マターリとマターリといきますです。
- 518 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/09/28(日) 21:38
- >SINKI様
どうもはじめましてです。
どうにもマターリとしている僕君。
楽しみと言っていただけるように頑張ります。
ので、よろしければマターリとよろしくお願いします。
>token様
嫌われものくんはやはり出したのは失敗だったかな(苦笑)
そして嫌われものくんは叩き斬られる前に逃げ出した模様です(爆)
今回はなちまりでした。
次回はいしよし(?)な予告を出してみるテスト(笑)
>509 名無しさん様
確かにあることですよね。
求めるモノが違うんですよね。
不快な気持ちにさせてしまったならすみませんでした。
- 519 名前:token 投稿日:2003/09/29(月) 20:10
- 更新お疲れさまです。
>嫌われものくんはやはり出したのは失敗だったかな
そんなことはありません!現実の世界ではともかく、お話の世界では
こうした悪役は欠かせません!
前回のレスでオチャラけたのは、「嫌われものくん」の中に、自分の中の嫌な部分を
感じ取ったからで、いきなり鏡を突きつけられたような気分がしたからです。
まあ、それだけこのお話にのめり込んでいると、言うことで(w
では、次回も楽しみにしています。
- 520 名前:クロイツ 投稿日:2003/09/30(火) 21:13
- なっち…ええ子や、なっち…(泣)
そうか、吉澤君の怒りはそっちに向かったんですね。
なんて吉澤君らしい…。
次回、石川さん視点ですか♪
どうなるのか…楽しみです!!てゆーか石川さんはどんな反応をするのでしょうか…。
どきどきどき。
次回も楽しみにしてます!!
- 521 名前:509 投稿日:2003/10/01(水) 01:22
- いえいえ、作者さんのお話を読んで気分が悪いとか
思ったわけじゃないんで!
この作品を読んで不快になるなんてとんでもない。
これからも楽しみにしてるんで頑張って下さい。
- 522 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:35
- 吉澤くんが倒れたその次の日の夜近くまで、吉澤くんは眠り続けた。
寝後を見つめながら私はまず最初に何を言おうかとずっと考えていた。
そしてあれ程外して欲しいと思っていた眼鏡を外した時の顔を、こんな風に見るとも思っていなかった。
眠っている吉澤くんの長い睫毛と白い肌、夕日に照らされてオレンジ色に輝く髪、こんな時じゃなければ
単純に綺麗だとか思うんだろう。
夕日を感じてか、吉澤くんが小さく呻いた。
そしてゆっくりと目を開けた吉澤くんは、しばらく天井を見つめ、少し視線を泳がせて自分が
何処にいるのかを確認しようとしていた。
「吉澤くん、大丈夫?」
あれ程考えていた最初の言葉。
最後まで思い付かなかったけど、自然に出てきたのはとてもありきたりな言葉だった。
まだ意識がはっきりとしていないんだろう。
吉澤くんはよく分からないような表情をして私の方を見ていた。
「看護婦さん、呼ぶね」
- 523 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:36
- 結局、吉澤くんは明日退院することになった。
昨日から一睡もしていない私は、また眠りにおちた吉澤くんの寝顔を見つめながら
いつの間にか眠ってしまっていた。
翌朝、吉澤くんは私が起きるよりも早く起きていて、すでに着替えもすましている状態でいた。
どうやら帰るギリギリまで私は眠っていたらしい。
そしてそれまで吉澤くんは起こさないように気を使っていてくれたようだ。
いつものように眼鏡をかけて、申し訳なさそうに笑う吉澤くん。
何だかその顔を見て、私はやっと少しだけ落ち着いた。
- 524 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:36
- 並んで歩く道。
陽射しは少しずつだが暖かくなりはじめている。
いつも以上に寡黙な吉澤くんは、時折上を見上げて葉を見るように天を仰いだ。
お昼よりも少し早い時間。
平日だし、学生も社会人も皆今はあまりいない。
「お腹、空すいてませんか?」
吉澤くんは立ち止まって天を仰いだままだ。
その視線の先で何を見ているのだろうか。
視線の先は分からないけど、私は素直に頷いた。
全然食べていなかったのは事実だから。
そして私のお腹も突然騒ぎはじめたから。
「じゃあ喫茶店でも入りますか」
- 525 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:37
- 私達は外を歩く人々に目を向けながら遅い朝食をとった。
今日は良い天気だ。
少し厚手のコートも日中だったら必要ないかもしれない。
「仕事、休ませちゃったみたいですね。すみません」
「気にしないでいいよ。飯田さんもそうしろって言ってくれたし」
「・・・そうですか」
吉澤くんはまた視線を外へと向けると、少し冷めたコーヒーを口に含んだ。
私も同じ様にコーヒーに口をつけた。
喉を通ったコーヒーは想像以上に熱を失っていた。
この後、私達は吉澤くんの家へと向かった。
大丈夫だと言う吉澤くんに私が無理矢理くっついて行ったという方が正解かもしれないけど。
1人にすることが心配だったし、聞きたいこともあった。
そして私は一緒にいたかったから。
- 526 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:38
- 揺れる電車の中で、吉澤くんはまた少し眠った。
座席が沢山余る電車の中、私達は肩を寄せあい静かに時を過ごした。
右肩に感じた吉澤くんの頭の重み。
前よりも伸びた髪からは少し病院特有の香がした。
駅前のコンビニで飲み物等を少し買って、吉澤くんの家へ向かった。
ごっちんの家の前を通った時、どうしようか少し悩んだけど、挨拶は帰る時にでも
しようと思ってそのまま吉澤くんの家へとあがった。
おばさんは働きに出ている時間らしく、家の中には誰もいなかった。
ちょっと散らかっているから片付けるという吉澤くんに言われた通り、
私はリビングでしばらく時間を過ごした。
時折聞こえる犬の鳴き声と時計の時刻を刻む音が、ここの空間を支配していて、
差し込む陽射しの暖かさを感じながらも、気持ちはあまり落ち着かないでいた。
「おまたせしました。どうぞ」
- 527 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:39
- 吉澤くんの部屋は、前に来た時よりも確かに汚れているみたいだった。
モノが散乱しているとかではなくて、床等、所々に散った絵の具が
そう見せているのかもしれない。
大きな布で隠された四角いモノ。
覗くイーゼルでそれがキャンバスだと分かった。
私に椅子を進めて、ベッドに座った吉澤くんは『散らかってて
すみません』と言って少し笑った。
沈黙が続く中、ここでもリビングにいた時に聞こえた犬の鳴き声や時計の音が響いていた。
吉澤くんは床に落ちていたリモコンを拾ってスイッチを入れると、
CDをかけ無音のような空間に音楽を広げた。
「これ、誰の曲?」
「BOYZ MENです」
「随分前にここで聞いた気もするなぁ・・・綺麗な声だね」
吉澤くんはまた少し笑った。
- 528 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/01(水) 12:41
- この椅子とベッドまでの距離。
その距離はほんの1メートル足らずかもしれないけど、私にはとても長く思えた。
「そっち行ってもいい?」
「えっ?」
ちょっと驚いている吉澤くんの返事を待たずにベッドに近寄って、
吉澤くんを壁の方に押すと、膝の間に身体をすべりこませて、背中を吉澤くんの胸に預けた。
宙を彷徨う両腕を捕まえて、私の腰の辺りでしっかりと結ばせた。
『逃げさせないよ』
『でも、顔は見ないでいてあげる』
そのドキドキとしてる鼓動に気付いていることも気付かないフリをしてあげるから・・・話して。
吉澤くんは、しばらく黙っていたけど、やがて私の腰に回した腕に少し力を入れて口を開いてくれた。
- 529 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/01(水) 12:42
- 更新しました。
『ただいまとおかえり』は次でラストです。
スランプだなぁ・・・。
>token様
お話しとなると色んな人が出てきますからねぇ(苦笑)
今度嫌われものくんの名前も出すかな(w
たまに起きる荒波もしだいに落ち着きを見せはじめました。
次回は荒波ラスト。
まったりとお待ち下さい(w
>クロイツ様
なっちは天使です。ええ子です(w
吉澤くんはどんな風に怒るのだろうかと考えたら
こんな感じになりますた(苦笑)
現実世界じゃモノに当たるらしいので遠からず近からず(w
石川さん視点はこんなですた。
次回は吉澤くん視点でし。
>509様
勘違い申し訳ないです(土下座)
今回は中和出来たかい?更新。
マターリですがこんなのもありかと(w
- 530 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:13
- 石川さんの体温を近くに感じながら、僕は少しだけ音楽のボリュームを落とした。
リピートをかけてリモコンをそこら辺に投げ出して、もう一度石川さんの腰に腕を回した。
細くて、強く抱きしめたら折れてしまいそうな身体。
自分でも分かる程早い鼓動、絶対に伝わっているんだろうね。
ありがとうございます、しばらくはまだ気付かないフリをしていて下さい。
その優しさにちょっとだけ甘えさせて下さい。
ちゃんと、ちゃんと話しますから・・・
石川さんの身体の前で組んだ手に、ちょっと力を入れてみた。
僕よりも小さいけど温かい手を、石川さんはそっと僕の手の上に重ねてくれた。
それだけで嬉しくて、余計に自分を情けなく思った。
- 531 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:14
- 「・・・最近、あんまり寝てなかったんですよ。
寝れないっていうんですかね。
布団の中に入って、目を閉じても落ち着かなくて、気持ち悪いワケ
でもないのに胸のあたりがムカムカしてて・・・
自分でもどうしていいのかが分からなくて、横になっているのも
何だか出来なくて・・・・
だからずっと絵を描いていたんです。
ずっと、ずっと感情のままに筆を動かしてました。
時間が過ぎるのも忘れて、次の日に仕事があったとしても
ずっと・・・ずっと。
そしたら倒れちゃったみたいですね。
本当、何やってんだろうって感じですよ。
本当に・・・本当に・・・
何か僕ずっと色んな人に迷惑かけちゃって・・・」
- 532 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:16
- ・・・弱い。僕はとてつもなく弱い。
改めてそんなことを思った。
こんなに弱気になって、迷惑ならここにいる石川さんにも十分かけてしまって。
初めて宝物を傷つけられた感覚を覚え、『守る』と言いながらも
守りきれていないことに気付いて、自分で勝手に落ちていって、
守るどころか色々な人に迷惑をかけて。
僕は強く抱き締める勇気もない。
求められていることを知っていて、答える勇気も持ってい。
強くなりたいという心の元にあるのは僕の勇気の少なさで、僕の心の弱さ。
石川さんは一体どれくらいのことを我慢しているんだろう。
どれくらいのことを心に蓋をして溜めているんだろうか・・・。
「・・・理由、その理由聞いてもいい?」
蓋をしているのはこうして僕が石川さんに気を使わせてるから。
あまり喋らないで、聞くキッカケを作っていないから。
僕の弱さを知っているから言葉と心の奥まで無理に触れてこない。
悲しい優しさ。
- 533 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:17
-
壁を越えて。
僕が壁を越えて。
そして手を伸ばそう。
そして掴んでもらおう。
悲しい優しさを拭ってあげる。
拭わせて。
僕の心の奥まで触れてきて。
そして強く、強く抱きしめさせて。
重ねられた手に自分の指をからめてみた。
たったこれだけでもドキドキする。
この温かさが僕にいつだって勇気をくれる。
- 534 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:18
- 壁をこえよう。
自分の弱さを伝えてしまおう。
もっともっと僕を知ってもらう為に、もっともっと石川さんを知る為に。
「・・・前に、石川さんに告白した人、覚えてますか?」
「え・・・あ、うん」
絡めた指に力が入っていた。
見えない表情を伝えてくれるのはこの指先。
何を思っていても、何を考えていても離さないから。
だからそんなに不安そうな気持ちにならないで。
「その人、ちょっと前まで学校で言ってたんです『石川さんと付き合ってるって』
学校の生徒だったんです。で、呼ばれました。そして屋上で言われました。
『別れてくれ』って。『身体目当てなんだろう』って。
許せなかった。
もっと僕から早く言えばよかった。
そうすれば石川さんを言葉から守ることだって出来たかもしれないのに。
- 535 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:19
- 一番許せないのは僕自身。
守るっていいながら実な全然守れていなくて、それどころかこんなに
沢山の人達に迷惑をかけて、石川さんにも・・・こうして・・・
弱いんですよ、僕・・・すごく弱んです。
だから石川さんにも沢山我慢させたことあったと思うし、
今でも我慢させてることが沢山あると思うんです。
守りたい、言葉ではいくらでも言えるんですよね。
僕は言葉だけだった・・・・守りたいのに・・・守りたいのに・・・」
言いたいことを言葉にすると、きっとあまり伝えられない。
今でも言葉は足りなくて、伝えたいのに言葉に出来ない。
全部分かってなんて言えないから、少しでも多く君に伝えたい。
もう、隠さないから。
僕を全部君に伝えるから。
- 536 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:20
- 「・・・うん、知ってたよ」
絡めた指をほどいて、僕の手をとって。
何もなくなった手に石川さんは自分の手をそっと重ねて包んでくれた。
「安倍さんから聞いてたんだ。その人のことも、吉澤くんのことも。
・・・黙っててごめんね。
そんなに苦しんでたのに助けてあげられなくて、ごめんね・・・。
何かね、吉澤くんが一生懸命私にバレないようにしていてくれたの
気付いてたから・・・だから聞けなくて・・・言ってもらえるまで、言えなくて」
越えられなかったのは僕だけで、石川さんはずっと待っていてくれたんだ。
壁の向こう側で、ずっと高い空を見上げて待っていてくれたんだ。
僕が飛び越えるのを。
僕自身が飛び越えるのを。
「だからね、吉澤くんが倒れたって聞いた時、どうしていいかわかんなかった。
倒れてしまう前に私はもっと違うことが出来たんじゃないかって・・・
あのね、私ね、守ってもらおうってばっかり思ってないよ。
私も吉澤くんを守ってあげたい。
だからさ、一緒に支えあっていこう。
こうやってちょっとずつでもいいから話しあってさ」
- 537 名前:ただいまとおかえり 投稿日:2003/10/03(金) 21:21
- 手の甲に石川さんの唇の柔らかさを感じた。
『泣きたい』そんな気持ちになった。
この人は僕の弱い所も全部受け入れて立っていてくれた。
ずっと待っていてくれた。
ごめんね、辿り着くのが遅くて。
ごめんね、ずっと待たせていて。
僕は泣きたいっていうのと同時にすごく強く抱きしめたいと思った。
それで『ただいま』そして『おまたせ』って言いたくて、そっと強く抱きしめた。
「おかえり、吉澤くん」
いつだって一歩先にいた石川さん。
今度こそ、ちゃんと追い付くから。
僕は石川さんの首元に顔を埋めた。
石川さんは何も言わずにずっと僕の髪を撫でていてくれた。
- 538 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/03(金) 21:23
- 更新しました『ただいまとおかえり』はこれでおしまいです。
そして次回から更新スピード落ちます。
きっと落ちます。
多分落ちます。
- 539 名前:時雨 投稿日:2003/10/03(金) 22:45
- 更新お疲れ様です。
まだまだ二人は成長するんですね。大切な人と、一緒に前に進んでいけるなんて幸せですよね。
しかしこのラブっぷりには当てられっぱなしです。もっと!もっと甘いのを!(w
匿名匿名希望さんも、マイペースで進んでください。待ってますよ。
- 540 名前:クロイツ 投稿日:2003/10/04(土) 21:10
- ドキドキしっぱなしです。
なんだか、一歩ずつ大切に前に進んでる感じの二人が良いですねっ!!
吉澤君のどきどきも、石川さんのどきどきも…なんだか肌で感じられるような♪
さすが!ですねっ!!
ペース落ちるとおっしゃってましたが、大丈夫です!!いくらでも待てます!!
ですので、無理のないペースでがんばってくださいませ♪
次回も楽しみにしてまっす!!
- 541 名前:ポッキーガール 投稿日:2003/10/06(月) 16:25
- はじめまして。
ポッキーガールです。
これを見たとき一気に読んでしまいました。
更新楽しみにしています。
- 542 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:05
- 「いちーちゃーん」
その日、後藤は家へとやって来た。
一人暮らしで片付け下手の俺の家にだ。
後藤に『来週の頭に行くから』と突然言われた時には相当焦って、週末に頑張って片付けたりしてみた。
・・・まぁ色んなモノが出てきましたよ。
何年前のか分からない新聞がベッドの下から出てきたり、タンスの下の隙間からは
無くしたと思っていたピアスまで出てきた。
あれだ、『片付ける』というよりもそこらにあるものを『端へ寄せる』ということをしてるからだ。
掃除にはもちろん丸1日かかった。
「おう、とりあえず上がってな。すぐお茶入れるからさ」
鍵が閉まる音がして、後藤が珍しそうにキョロキョロしながら奥へと入って行った。
そうそう、後藤が俺の家に来るのは実は今日が初めて。
付き合い始めて1年以上経つけど今日が初めてなんだ。
ま、理由は俺の家と後藤の家が離れてるから。
そんだけなんだけどね。
- 543 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:07
- 「へ〜意外に綺麗にしてるんだぁ」
「片付けたんだよ。丸1日かけてな。
後藤は飲み物コーヒーと紅茶と緑茶とココアどれがいい?」
「随分多い選択肢だねぇ」
「これも昨日用意しといたんだよ」
「ふ〜ん、じゃぁ紅茶で」
本当、昨日は珍しく沢山買い物をしたもんだ。
夕飯もろくに作らないから買い物だって少ないのに、後藤用食材や後藤用飲み物や
後藤用洗剤・・・あ、こりゃ違う。
ただの台所洗剤だよ。
本当、まじで。
後は・・・その他もろもろ。
しかし買った。
よく行くスーパーの顔見知りのおばちゃんが相当驚いていたくらいだ。
両手に袋を持つなんて久しぶりだったし、こんなに食材で金を使ったのも久しぶりだった。
でも、何だか楽しかった。
- 544 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:08
- 「いちーちゃーん、お茶まだぁ?」
「あ、悪りぃ悪りぃ。今すぐ持ってく」
ベッドに座って辺を見回していた後藤。
お茶を持って行ったら嬉しそうに受け取って得意技のフニャ笑顔をくれた。
ってか何で机の前じゃなくてベッドの上なのさ。
まぁ得に意味もないんだろうけどさ、俺としては緊張するわけだよ。
分かるかい?
分かんねぇよなぁ・・・。
「んぁ!これ後藤も持ってるよぉ」
そう言ってしまっておいたCDを取り出してベッドの上に寝転がって。
・・・誘われてるのか?
うつ伏せになって、足をじたばたさせて、自分も持っているというCDを御機嫌そうに眺めて。
・・・誘われてないのか?
「これ聴いてもいい?」
「ん、あぁいいよ」
CDをひょいっと受け取って、コンポに入れた。
流れてきたのは『K-C-&JOJO』
夕方からまったりする音楽。
これじゃぁ夕飯作る気力とか起きないんじゃねぇか?
- 545 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:11
- 「これ聴いたら後藤がご飯つくるねぇ」
・・・後藤はそうでもないらしい。
美しい歌声が部屋に響く中で、お互い言葉を交わすワケでもなく紅茶をすすって。
ってかベッドの上で飲むのかよ。
・・・ま、いっか。
5分くらいの曲はすぐに終わって、後藤は言葉通り夕飯作りにとりかかった。
手伝おうかと言ってみたら『邪魔』と一言返されて、悲しく今まで
後藤が寝転がっていたベッドに顔を伏せた。
自分のとは違う、後藤のシャンプーの匂いと香水の香が枕から香って、
ちょっと顔が赤くなるのを感じた。
夕飯はやっぱし旨かった。
まぁ後藤の料理の腕は前から知っているし、疑うところでもなかったんだけど、
こうやって自分の家で食べるとなるとまた違う味がする。
向かい合って座って、適当な話しをしながら飯を食って、
あんましおもしろくもないテレビを2人してだらだら見て。
ちなみに、今日は後藤を家まで送るから酒は禁止。
だから乾杯は烏龍茶だった。
- 546 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:12
- いつもと同じ車の中で、後藤はすやすや眠っている。
こいつも疲れてるんだよな。
わざわざ今日はありがとな。
普段だったらあまり言わない言葉を、眠っている後藤に言ってみた。
口をちょっと開けて寝ている後藤は得に反応なんかもしないで眠り続けている。
規則的な呼吸がCDの曲と曲との変わり目に聞こえてきて、何だかちょっと笑いたくなった。
夜の道の渋滞知らず。
だけど少しスピードを落として運転をした。
途中でコンビニによって、意味もなく飴なんかを買ったりした。
「後藤・・・」
「・・・んぁ、あぁ〜・・・んぁ」
何だ今の声?
よく分からないけど、後藤は変な声をあげて数分経ってからやっとこさ目を開いた。
「今コンビニ、何かいるか?」
「んぁ〜・・・いちーちゃん・・・」
「へ?」
「・・・と同じジュース」
- 547 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:13
- な、何んだよ!!
変なところで言葉切るんじゃねぇよ!!
普通に驚いただろ!
・・・俺なんか意識しすぎなんかなぁ。
「ほれ、じゃあこれ飲みな」
「ありがと〜」
付き合いだしてもう1年ちょっち。
何だかかんだで御泊まり経験ゼロ。
んでもって後藤を抱いた回数もゼロ。
嫌じゃないんだよ。
嫌じゃないんだけどさ、こうなんかタイミングが会わないんだよねぇ。
隣でがさがさ鞄をあさる後藤を横目に見て、そんなことをぼんやり考えてみた。
んでもって隣の後藤がやらかした。
- 548 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:14
- 「んぁ!!後藤いちーちゃんの家に携帯忘れて来た!!」
はい、自宅へ一度戻りまぁす。
まぁ後藤といれる時間が増えるのは嬉しいからいいんだけどさ、もうちょっと早く気付けよ。
とツッコミ入れたくなるワケで。
でもとりあえずは自宅へ戻る。
後藤の携帯はベッドの下から出てきた。
・・・何でそんな所に落ちてるんだよ。
んなことを言いながら軽く小突いたら後藤はふにゃふにゃと笑っていた。
「後藤、お前帰る時間とか大丈夫なんか?」
「今日は大丈夫だよぉ。いちーちゃんの家に泊まるかもって言っておいたから」
・・・確信犯。
ってか親もよく許したなぁ。
「お前さ、わざと携帯忘れて行っただろ」
- 549 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:15
- 答えを返さず、後藤は俺に抱きつくと、俺を引っ張ってベッドに倒れこんで行った。
自然と後藤を下に見る感じになって、自分の身体の下にいる後藤が何だか不思議な感じがした。
「あのさ、いちーちゃんは後藤にあんまし興味がないの?」
「・・・何でさ突然」
「あのタラシだったいちーちゃんが1年以上も何もしてこないから」
見上げてくる瞳。
何だよ、突然女の色気とか出すなよ。
しばらく見つめあってたら、胸に抱き締められるように引き寄せられた。
後藤の胸の柔らかさとか、そんなものがダイレクトに伝わってきて・・・。
ダメだ、もう抑えらんないわ。
その夜、後藤を一晩中抱いた。
次の日が仕事だったけど、一晩中かまわず抱きしめた。
朝起きたら朝食を作ってくれていた後藤がいて、後ろから抱きしめたら
『朝からはダメだよ』なんて言われた。
- 550 名前:いちーくんのある1日 投稿日:2003/10/08(水) 10:17
- 一緒の電車に途中まで乗って俺は会社へ、後藤は家へ。
寝不足だったけど、その日の俺は絶好調。
そんでもって帰る途中で偶然会った圭ちゃんと一緒に居酒屋へ。
飲んだ調子でちょっとカオリとのことをいじくったら、報告受けてかなりびびった。
男2人、飲みながら『最初のきっかけが両方共彼女・・・』なんて
ちょっと凹んでみたりして、短い時間をたのしんだ。
短い時間っていうのは圭ちゃんはあんまし遅くなるとカオリに怒られるということだから。
と、まぁ久々に色々なことのあった1日だった。
普段の俺の1日は、そんなあまり何もない。
今回は特別ね、特別。
ま、こんなこと言いながら口元がにやけていたりしてるのは内緒な。
今日は久々に自分で料理でもつくるかね。
んでもってちょっとは上達したら、後藤にでもつくってやっか。
- 551 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/08(水) 10:18
- 更新しました。
寒いよ・・・最近寒いよ。
>時雨 様
マターリ成長2人組みってやつでしょうか。
そんな時間っていうのも幸せだよなぁなんて考えてみたり(w
甘いの書きたい病は今も再発中です。
だからきっと指は動いてくれるはず!
そう、きっと動いてくれるはず!!!
ありがとうございます。
ゆっくり更新していこうと思っております。
>クロイツ様
純粋すぎる純粋達。
それがここのいしよしなのかも(苦笑)
荒波去って次はどうなる!?こんなことを考えてたりしてます(w
見事更新ペース落ちてます。
申し訳ないです。そしてありがとうございます。
作者もいしよしもほどよくマターリいきたいと思ってます。
>ポッキーガール様
こちらこそはじめましてです。
一気読み・・・お疲れ様です(ぺこり)
そしてありがとうございます。
はじめから一気読みすると見えてくるぼろ有りな予感(w
マターリ更新していきます。
どうぞこれからもよろしくです。
- 552 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 12:33
- 更新ありがとうございます!しかもいちごまヽT∀Tノ
いちごま大好きなんで読んでて顔がにやけちゃいました(^〜^)
- 553 名前:Silence 投稿日:2003/10/08(水) 19:20
- 更新お疲れ様〜♪
いちごまいいですな〜。ちょっとってか、かな〜りにやけてた
わけですが(w そしてこのふたり温かいな〜。
- 554 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 23:45
- いいねーいいねー
上手く言えないけど、いいわ
のほほんとしてて心が温かくなる
いいねー
- 555 名前:クロイツ 投稿日:2003/10/09(木) 14:59
- いちごまッ!!い、いち…いちごまッ!!!
すみません、興奮し過ぎちゃって…んもぅ。
よかったねいちーちゃん…よかったねごっちん…。
私もすごく嬉しいです!!
次回も楽しみにしております!!
- 556 名前:ポッキーガール 投稿日:2003/10/10(金) 17:34
- いちーちゃんやったね。だった瞬間でした。
今度はいしよしで(できれば)お願いします。
- 557 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/10(金) 18:05
- >>556
レスはできればsageてもらえないですかね…期待しちゃうんで…。
それと、いきなりリクはどうかなと…。
- 558 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:36
- 早いもので、私が卒業をしてからもう1年が経った。
卒業式のあった日、吉澤くんはそのまま打ち上げに参加。
下っ端な吉澤くんが早く帰れるはずもなく、吉澤くんは次の日の朝、
くたくたになった状態で帰ったらしい。
卒業式の次の日の朝、届いたメールには『ごめんなさい、今日夕方くらいに電話します』
と書いてあった。
別にそこまで無理をさせたくないし、してほしくないから『無理はダメ』と送っておいた。
で、暇なの。
送ったはいいけど、今日の予定は吉澤くんと遊ぶ為に空けておいたから暇なのよ。
現在の時刻、10:48
起きて2時間弱。
目はばっちりと覚めているし、寝癖だってもう直している。
- 559 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:38
- メールが来てからもう2時間弱。
起きてしまって2度寝もできなくてゴロゴロしてても何だなと思ってテキパキ動いてしまった。
なもんで洗濯も簡単な掃除も終わってしまった。
たまにやる気を見せたのは失敗だったのだろうか?
普通に考えれば卒業式の次の日は遊ぶなんてことは無理だろうと考えるだろう。
しかしちょっと浮かれ気分だった私達は『何とかなるでしょ』の一言で、
あれやこれや何処へ行こうとか考えまくった。
で、結論が『遊園地にでも行こう』
で、現状が『吉澤くんはきっと2日酔い』『私は暇』
ちょっと前の吉澤くんなら無理をしてでも来たんだろうけど、そんなことをしても
私が怒るだけなのを知っている吉澤くんは、無理をせずにきちんと家で寝ているみたいだ。
気を使いすぎないあたし達の関係は、とっても一緒にいて過ごしやすい。
前よりも私自身、吉澤くんに遠慮するようなこともなくなったから。
- 560 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:39
- 太陽は温かくて、風も温かくなってきた。
気候的には絶好の後楽園日和。
それを考えると今日の日がちょっと残念に思えるけど・・・
こんなに天気がいいならちょっと外に出てみようっかな。
寝間着を脱ぎ捨て着替え完了。
お財布を掴んで扉を開けて鍵をかけて。
外の空気は、部屋で吸うようり気持ちがよくて、ちょっと御散歩をしたくなる陽気だ。
近くの公園では小さな子供達が砂場や滑り台で楽しそうに遊んでいる。
きっといつもある風景なんだろうけど、この時間に外に出ない私にとってはとても新鮮に見えた。
商店街からちょっと外れた所にある喫茶店で簡単な食事をとって、さっきよりも
昇った太陽を浴びながらいつも歩く道をいつもとは違う気分で歩いた。
- 561 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:40
- そして商店街を歩いていつ途中に目に止まったのは普通の自転車。
リサイクルショップでそれもお店の隅の方にある少しだけ錆びた自転車。
値段もついていないから、ちょっと気になって見ていたら、お店のおじさんが
『大分古くなってるからね』
そう言って今日明日でお店から下げることを教えてくれた。
お給料日直後はお財布の紐が緩みやすい。
だからという言い訳をつけて、私はその自転車を格安の値段で売ってもらった。
しかし、千円って・・・いいのかなぁ。
おじさんは『処分されるよりもそいつもずっといいだろう』そう言ってくれたけど、
何だか悪いと思って交渉しようとしたら『ちゃんと乗ってやってくれたら
それでいいよ』と言ってくれた。
- 562 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:41
- 買ったばかりの自転車にまたがって、いつもとは違うコースで家に向かう。
昇った太陽と吹く風は、いつも歩く時に感じる風とは少し違くて、それがすごく気持ち良くて。
気がつけば寄り道をしまくり状態。
時計も携帯も持ってきていなくて、一体今が何時なのかもわからない。
もうそろそろ吉澤くんからの電話が来るかもしれないなぁと思ってお家へごー。
少し沈んで来た太陽を横に受けながら、まったりまったりこいでいく。
「あれ?吉澤くん??」
で、到着した我が家のアパートの前に座りこんでいたのは吉澤くん。
軽く寝癖のついている吉澤くん。
・・・どうしたの?
「いや、何回か電話してけど繋がらなくて、
今日のことで怒ってるかなぁって思いまして・・・」
どうやら吉澤くんは昼ちょっと過ぎから私に電話をかけていてくれたらしい。
携帯を持たずに出かけた私が気付くなずもない=吉澤くんの勘違い発生。
- 563 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:42
- そっか、だからそんな寝癖頭でかけつけてくれたんだ。
うん、怒ってない。
大丈夫。
むしろちょっと嬉しい。
「自転車」
「へ?」
「さっきね自転車、安く買ったんだ」
ちょっと錆びてるからさ、一緒に磨こうよ。
遊園地とかじゃないけどさ、私ね、ワクワクしてる。
一緒に綺麗にしてあげよう。
吉澤くんは私が怒っていなかったことを知ると、本当にほっとしたように笑った。
よく見れば結構寝癖がついている。
それで電車乗ってきたの?
こんなツッコミを入れたくなる程の寝癖だ。
よし、自転車を磨くついでに吉澤くんの寝癖も綺麗にしてしまおう。
- 564 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:43
- 水道の横に置いてある青い長いホースを蛇口に合体させて、部屋からいらないボロ布を取り出して。
ちょっと気合い入れる為に前髪をちょんちょこりんにして。
完璧完璧。
ボロ布を吉澤くんにパスをして、お水発射。
狙うは自転車と吉澤くん。
逃げたって追い掛けるよ。
服なんて濡れたらば乾かせばいいんだから。
そしてとりあえずお水の無駄使いを禁止にして、2人して一つの自転車をキュッキュと拭いて。
錆びは全部落ちないかもしれないけど、こういう作業がすごく楽しい。
後ちょっと綺麗にしてあげるからね。
そしてまた一緒にお散歩しよう。
- 565 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:44
- 「石川さん」
「ん?ってきゃっ!」
そして作業に没頭していた私への攻撃ですか?
そんな無邪気な顔して攻撃ですか?
さっきとは打って代わってお水主導権を握ったのは吉澤くん。
逃げ回る私に追い掛ける吉澤くん。
春になったばかりでまた水に濡れて風にあたるとちょっと寒いくらいなのに
2人してずぶ濡れになって自転車くんを綺麗にして。
そしてその自転車くんを綺麗に乾拭きしてほら完成。
さっきよりもずっとずっと輝いてる。
- 566 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/12(日) 13:44
- 2人して満足そうに自転車を見つめて、ちょっとした達成感に包まれて。
空はすっかり夕方色。
さすがにこれじゃぁ風邪ひいちゃうね。
自転車を端に止めて、とりあえずは家入ろう。
今日ね、遊園地行けなかったのはちょっと残念だったけどね、
こうやって楽しく過ごせたから無問題。
でもね、さすがに携帯に記録かれてた着信履歴20件には驚いたよ。
全部の着信履歴が吉澤くんの名前。
ごめんね、心配しちゃったよね。
でもね、来てくれてありがとう。
「吉澤くん吉澤くん」
「はい?」
「とりあえずはこれ着ててぇ」
- 567 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/12(日) 13:46
- 更新しました。
中途半端なところできります。
『春だってさ』はあと1回更新。
多分あと1回更新。
きっとあと1回更新。
>552名無し読者様
いえいえ、私もいちごま好きなんで(w
喜んでいただけたみたいでよかったです。
書いてる私もニヤニヤしてました(w
>Silence様
基本的にのほほんとしているのが僕君。
そう私は思ってるんですが(どうなんでしょう?)
ここの2人はのほほんしてます。
微妙はヘタレ市井にふにゃふにゃ後藤。
えぇ、すばらしいタッグです(w
>554 名無し読者様
心温まりましたか(w
えがったです。
いいねー×3ありがとうございます。
のほほんは最強。
しかし話しがなかなか展開しない罠(苦笑)
- 568 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/12(日) 13:46
- >クロイツ 様
いちごまへの祝電ありがとうございます(w
まったりしすぎな僕君。登場人物達。
そしてまったりしすぎな私。
今回もまったりです。
市井&後藤の今後もゆっくりと見守ってやっていて下さい(w
>ポッキーガール様
市井くんやっとおめでとうでしたからね(w
今回は見事いしよしでした。
リクにはそんなに答えられるかわかりませんが、
少しでも楽しんでいただけるように頑張ります。
あと、他の作者様の御迷惑にもなるのでできればsageでお願いします。
更新する時はあげるようにしますので(いつも汗か来ながらですが(苦笑))
我がまま申し訳ないです(土下座)
>557名無し読者様
わざわざすみません。
本来な私が言わなければいけなかったんですが・・・。
ありがとうございます。
- 569 名前:Silence 投稿日:2003/10/12(日) 18:25
- 更新お疲れさま〜です。
読むたびにここの2人が好きになっていくわけですが。
戯れて遊ぶ二人本当に(・∀・)イイ!!ですね〜(w
- 570 名前:クロイツ 投稿日:2003/10/13(月) 18:02
- まったり具合が、すごく良い感じです…。
渇いた心に染み込む感じが最高です。
いや〜、この二人…良いれすねぇッ!!やっぱり大好きだぁぁぁぁ!!!
一歩一歩確実に前に進むってのがナイスです!!
次回も楽しみにしております!!
- 571 名前:token 投稿日:2003/10/13(月) 22:52
- 更新お疲れ様です。
寝癖頭でかけつけるなんて、吉澤君もずいぶん積極的になりましたね。
以前なら、一人でウジウジ悩んでいた様な気が。
いいですね〜。春の休日の二人。
では、次回も楽しみにしています。
- 572 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/15(水) 00:53
- 更新お疲れ様です!!
お二人さんはとても幸せそうな一日を過ごしたみたいですね!
読んでる当方も何か勝手に幸せのお裾分けさせていただきました(w
- 573 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 11:56
- とりあえず先にお風呂場で着替えてきた石川さんは、青色のジャージ姿。
中学校の時のジャージらしく、胸元にはデカデカと『石川』と書かれていた。
まぁ何着ても可愛いと思うからそれはいいんだけど・・・。
ずぶ濡れな僕にタオルと一緒に渡されたもの。
それを持ったまま、僕はお風呂場で固まってしまった。
「後でコインランドリー行って乾燥機で乾かすから。だから全部脱ぐんだよぉ」
え?そ、それは下着もですか?
あ、あの・・・それはちょっと・・・
「今コンビニで下着買ってくるからちょっと待っててね」
バタンっと扉の音がして、部屋の中はシーンとして。
え?あのジャージで買い物行ったの??
ってぼ、僕の下着??
- 574 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 11:57
- 追いかけたくても鍵なんて持ってないから追い掛けるワケにもいかないし・・・
とりあえず上着とかTシャツを脱いで、タオルで身体を拭かせてもらった。
で、問題はここから。
・・・これどう見たってエプロンだよね。
赤のチェック・・・。
上半身裸エプロン??
いや、あのそれは・・・。
でさ、さらに問題は広がり下。
ジャージの色、ピンク・・・。
そのうえ丈が短い・・・。
絶対小さい・・・。
いや、あの・・・これ・・・どうしよう・・・。
ってか捕まらない?
僕捕まらない?
- 575 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 11:58
- 拭いた身体も冷えてきた(これで身体が温まるとも思えないけど)
ジーパンもがっつり足にくっついてるし、ちょっと寒い。
でも・・・でも・・・。
こんなことをくり返しながらエプロンを前に悩むこと数分。
バタンっとさっきと同じ音がして、 石川さんが帰ってきた。
「ただいまぁ、ちょっと入っても平気?」
「あ、あのちょっと待って下さい!」
と、とりあえず・・・着るしか・・・いや、でもエプロンって・・・。
・・・悩め僕。
急いで悩め僕。
着るモノ・・・やっぱエプロン・・・い、嫌だ。
「吉澤く〜ん」
トントントントン扉を叩かれている。
すり硝子だから僕の上半身が裸なのはバレてるワケで・・・。
無駄にあがかず怒られるか。
- 576 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 11:58
- 「は〜い」
がちゃっと侵入石川さん。
・・・やっぱし着なきゃダメですか?
エプロンを持って石川さんの方を向くと、石川さんは目で『着て』と言ってきた。
・・・着せたいんでしょ。
何が何でも着せたいんでしょ。
目で無言の抗議をすること数十秒。
石川さんは『しょうがないなぁ』と言って白いTシャツを持ってきてくれた。
「あとでそれつけて一緒に料理ね」
買ってきてくれた下着を置いて、真っ青なジャージ(上はトレーナーに変わってた)
を着た石川さんは爽やかな笑顔をお風呂場に残して扉を閉めた。
- 577 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 11:59
- ・・・Tシャツも微妙に小さい気がしないでもないが、裸エプロンよりもずっといい。
とりあえずTシャツに着替え、買ってきてもらったトランクスをはいて
・・・ピンクのジャージをはいてみた。
・・・つんつるてんだった。
何とも情けない姿。
ジャージをくるくる膝まで巻いて・・・ごまかし成功。
「お待たせしました」
石川さん・・・次は何たくらんでるんですか?
手に持ってるの、ドライア−ですよね。
何で手招きなんてしてるんですか?
躊躇している僕に石川さんのとどめの一言。
『遊園地楽しみにしてたのになぁ』
・・・。
素直に石川さんの指差した所に座り込む僕。
今日はもう何でもありです。
ごめんなさい。
「素直でよろしい」
- 578 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 12:00
- ぽすぽすと僕の頭を叩いて、自分はベッドに座りこんで。
で、想像通り、僕は石川さんに頭乾かされてます。
恥ずかしいんだけど、実はちょっと嬉しくて。
そして以外に気持ちよくて。
ブオーブオーっと音が鳴って、石川さんの手がさくさく動いて、僕の髪はみるみる乾いてく。
普段ドライア−なんて使わないし、誰かに乾かしてもらったのなんて
小さい頃母にやってもらったくらいだからこの時間にちょっと酔いしれた。
「はい、おしまい。次私のやって」
渡されたドライア−。
変わった場所。
見よう見まねで同じように石川さんの髪を乾かした。
あ、これやる方も気持ちがいいんだ。
ドライア−はさっきと同じようにブオーブオーと音をたてている。
石川さんの長い髪がどんどんと乾いていくのは、たったそれだけなのに何だかとっても嬉しくて。
僕と同じように気持ちいいと思ってくれたらいいなぁなんて思った。
- 579 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 12:01
- -------------
----------
-----
そして僕はピンクのジャージに白いTシャツ、その上に赤チェックのエプロンつけて夕飯の準備。
その間に石川さんはコインランドリーへ。
帰ってきた石川さんと並んで御飯を作って、肩を並べて御飯食べて。
暗くなっちゃったから一緒になってコインランドリーに行って洗濯物取り行って。
もちろんピンクのジャージでね。
遊園地には行けなかったけど、僕、こういう過ごし方好きだよ。
幸せっていうのかなぁ。
何かね、今日は一段とそれを感じた。
借りた服、洗って返します。
Tシャツは伸びちゃったかもしれないから、僕の今度持って来ます。
- 580 名前:春だってさ 投稿日:2003/10/16(木) 12:01
- ちょっと予定の狂っちゃった日だったけど、僕は楽しかった。
すごく気が休まった。
昨日までが忙しかったから、こうやって過ごせたので、すごく気が休まった。
ありがとう、石川さん。
遊園地にはまた今度行きましょう。
次は絶対に行きましょう。
メールで『近いうちに辻と加護を誘ってまた遊び行きましょう』と送った。
最近一緒に遊んでないから。
また4人で遊びに行きたいから。
石川さんの答えはもちろん『YES』
きっと見逃しがちな当たり前な幸せの日々、僕はすごく今日大切に思えた。
何でだろう、よく分からないけどそう思えた。
- 581 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/16(木) 12:04
- 更新しました。
『春だってさ』はこれにて終了。
そして予告
( `.∀´)<もうすぐかおけいSPよ!!
次回じゃないけど、もうすぐSP番組『かおけい特番』
まぁきっと1回で終わる特番でしょうが(w
>Silence様
えぇ、私もここの2人が大好きなワケで。
実はきっと誰よりも大好きなワケで(w
きっとしっぽが生えてたらかなりの勢いで振っているはずですね(w
>クロイツ様
あっとほーむな感じで(w
こんな感じの日常を送ってみたい今日この頃・・・
・゚・(ノД`)・゚・。さみしくなんてないです(爆
いや、でもこういう感じがすごく好きなんです。
なんかほのぼのボーみたいな(w
私もここの2人『大好きだぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』
>token 様
本当、最初の方からは考えられないくらいですよ(苦笑)
最初なら絶対ウジウジうじうじ。
成長しました吉澤くん。
何だか嬉しいですね。
春の休日。
実はもうすぐ冬な罠ですが、まぁこんなのもありかなぁって(w
>572名無し読者様
幸せのお裾分けが出来たみたいでよかったです(w
今回も幸せぱわーがお裾分け出来たら良いなぁなんて思ってみたり
思ってみたり。
幸せっていうのは幸せなもんですね。
- 582 名前:SINKI 投稿日:2003/10/16(木) 15:08
- はじめまして。
最初から読ませていただきましたが
とてもいいですね。
私は同人ものとかに嫌悪感を感じていたのですが
これはとてもいい気持ちで読めます。
途中泣いたり、笑ったり、
いろいろな表情をさせてくれますね。
大好きですね。
これからも頑張ってください。
- 583 名前:Silence 投稿日:2003/10/16(木) 16:06
- 更新お疲れ様〜ずです。
すごいよ〜。なんか石川さんが吉澤くんで遊んでるよ(w
戸惑ってる吉澤くんがかわ(・∀・)イイ!!んですが・・・w
- 584 名前:名無し胡麻 投稿日:2003/10/16(木) 18:50
- まったりとした流れの、ふたりの一日がたまりません。
ごちそうさまです。
そして『かおけい特番』!
やすかおヲタとしてはたまりません。
その日に備えて今から好物を絶ちます。そして、その日は朝から禊します(w
次回も楽しみにしています。がんがってください。
- 585 名前:吉澤一家 投稿日:2003/10/20(月) 10:30
- 「ひとみちゃん、今ちょっと平気?」
こう母さんに言われたのは家に帰って、お風呂に入って頭を乾かしている時だった。
最近僕の帰りが遅かったりで、すれ違いがちな生活をしてたから朝以外で話すことは珍しい。
時計の針はもう12時を回っているし、いつもならこの時間は母さんはもう眠っているから。
リビングに行ったら、母さんはお茶を2つテーブルの上に並べて僕を待っていた。
椅子を引いて座り、お茶を一口飲んでから母さんの言葉を待った。
「ひとみちゃん、今度の土曜日ってお家いる?」
「土曜日?えぇっとねぇ・・・」
確か石川さんは仕事って言ってたし、得に予定も入っていなかったし・・・。
「うん、家にいるね」
「じゃあさ・・・」
母さんが僕に言ったのは『母さん達の画を描いて欲しい』ということだった。
今まで一度だってそんなこと言ったことないし、何でそんなこと突然言うのかも分からない。
- 586 名前:吉澤一家 投稿日:2003/10/20(月) 10:31
- 僕は不思議に思ったし、『達』っていう複数形も期になったから
母さんに理由を訪ねたら『何となく』そう言われた。
別に断る理由もないから僕は普通に頷いた。
そして土曜日、母さんは昔着ていた綺麗な服を着て椅子に座った。
普段あまりしないお化粧をして、髪をセットした母さんは息子の
僕が言うのも何だけど、すごく綺麗だと思った。
そんな母さんの微笑みの先に、父さんを見た気がした。
それから、僕は大きなキャンバスに向かってひたすら手を動かした。
目の前にいる母さん、見えないけど近くにいる父さん、そして僕自身。
時計の針を見たワケじゃないからどれくらの時間が経ったかなんて分からないけど、
随分と陽は移動した気がする。
母さんは遠くを見つめているように静かに座っていた。
座っているだけというのはすごく辛いはずなのに、母さんはただ静かに座っていた。
- 587 名前:吉澤一家 投稿日:2003/10/20(月) 10:33
- ------------
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「お疲れ様、もう動いて平気だよ」
母さんはニコッと笑うと身体を伸ばすように固まってしまった関節を動かした。
『本当、疲れたわ』何て言いながらもすごく幸せそうに笑って。
こんな風に母さんと一緒に時間を過ごすことっていうの初めてだし、こんな風に母さんと
向き合って何かをするっていうのは久しぶりだった。
変な感じだけど全然嫌な感じじゃなくて、流れている時間はすごく穏やかで。
父さんも昔はこんな風にして母さんと向き合っていたのかなって思った。
母さんが下で色々と家事をしている間、僕は部屋に戻って絵の続きを描いた。
目を閉じて、父さんと一緒にいた時を思い出して父さんの絵を描いた。
鏡を見て、目の前にいる自分を絵に描いた。
- 588 名前:吉澤一家 投稿日:2003/10/20(月) 10:34
- 完成はまだまだ先だけど、僕は手を動かしながら終わって欲しくないなって思った。
懐かしくて、楽しくて、でも少しだけ寂しくて。
いつか僕が倒れるまで描いていた絵の横に描き途中の絵を置いて、目をつぶって天井を見上げた。
母さんと2人だけでここに暮らすようになってもう5年。
だんだんと一緒にすごく時間が減ってきちゃって、会話もあまり交わさなくなってしまった。
いてくれることが当たり前のようになって、その大切さが埋もれてしまっていた。
瞼の先にある天井では光りを待つ星達がいて、瞼の先にある空には懐かしい思い出がある。
その思い出を見つめていたら、何で母さんが突然家族の絵を描いてほしいなんて
言ったのかが分かった気がした。
・・・頑張ってゆっくりと早めに仕上げるとしますか。
幸せの形っていうのは人それぞれで、心に残る思い出も人それぞれ。
僕は僕の幸せの形を、僕は僕の心に残っている思い出をここに記そうと思った。
忘れるワケじゃないし、消えるワケじゃない。
僕は忘れたくないし、忘れてしまうはずもない。
今の気持ちを、今の思いを素直に描こう。
きっと届くはずだから。
- 589 名前:吉澤一家 投稿日:2003/10/20(月) 10:35
-
その日は、ずっと部屋にこもって手を動かし続けた。
描きたくてしょうがなかったし、すごく素直に手も動いたから。
食事中、母さんは絵が途中でもいいから見たいって言っていたけど、
これは完成するまで母さんには見せないからね。
そう言ったら母さんは笑って『じゃあゆっくり待ってるわ』って言った。
僕は『大丈夫、そんなに待たせないから』っていう言葉を胸にしまった。
明日は久々に母さんと買い物にいこうかな。
たまには親子でドライブするのも悪くないでしょ。
遠くには行けないけど、たまにはのんびりしよう。
もちろん僕が運転するから。
母さんの答えは『Yes』
じゃあ決定ね。
明日は10時には出発しよう。
- 590 名前:吉澤一家 投稿日:2003/10/20(月) 10:35
- その日の寝る前、僕は石川さんにメールじゃなくて電話をした。
ちょっと眠そうな石川さんと短い時間のお喋りをして『おやすみなさい』って言って電話を切った。
明日も晴れるかなぁ。
うん、きっと晴れるよね。
だって星がすごく綺麗に見えるから。
僕はいつもよりも少し早い時間に目覚ましをセットした。
明日は僕が朝食を作ろうって思ったから。
たまにはゆっくり寝て下さいな。
多分僕が作ってもそんなに不味くはないと思うから。
- 591 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/20(月) 10:37
- 更新しました。
細かいツッコミはなしの方向でお願いします(苦笑)
次回『かおけい特番』
一回で終わる『かおけい特番』
>SINKI様
こちらこそはじめまして。
最初からですか・・・お疲れ様です。きっと沢山のぼろが
見えていたことでしょうが内緒でお願いします(w
作者も基本がのんびりしてたりするんで内容もそんな感じに
なってきているもよう。
これからも『大好き』って言っていただけるように精進しますです。
ありがとうございます。
頑張ります。
>Silence様
実はとんでもなく書きやすかったんです(w
石川さんはやはりお姉さん風味。
じゃれあっている姿が大好きなんですねぇ。
書いて想像しながらニヤニヤしていたのは内緒です。
>名無し胡麻様
おそまつさまでした(w
本当普通のまったりした1日。
おいしく召し上がっていただけたなら幸いです。
次回の『かおけい特番』あんまし期待しないで待ってて下さい(w
少し好物解禁した方がいいかもしれずです(苦笑)
- 592 名前:Silence 投稿日:2003/10/20(月) 12:18
- しみじみとふか〜く余韻の残るようなお話。家族のつながり
っていいですなぁ〜。絵のことはよくわからないんだけど、
吉の気持ちになって思い描いている自分が居ましたよ。
- 593 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:01
- 「「け、結婚!?」」
それは突然だった。
本当に突然たった。
あまりにも突然だった。
「あんたら驚きすぎ」
いや、だって驚かない方がおかしいでしょ。
僕の隣の石川さんだって口をあんぐり開けて止まってるし。
僕らは2人そろってのんびりしていた所に『緊急召集』というメールを届けられた。
次に『今すぐ』というメールを届けられてここに集まった。
ってか集まったっていうか呼び出されたっていうか。
それも『飲み物よろしく』っておまけつきって・・・。
- 594 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:02
- よくわからないけど行こうってことになって、途中で飲み物買って僕らはここに座っている。
そう、座っているんですよ。
自分らで買ってきた飲み物を4人分目の前に並べて座ってるんですよ。
そして目の前に圭ちゃんと飯田さんが座っているんですよ。
「なっちと矢口と辻加護と紗耶香と後藤とかにはもう伝えた」
「で、数十分前に飲み物と食べ物を食い散らかして去っていったんだ」
あぁそれ辻と加護でしょ。
だから飲み物買ってきてって言ったんだ。
納得納得。
「で、どうせあんたらは一緒にいちゃいちゃしてんだろってことで後から呼んだの」
「・・・いちゃいちゃって」
- 595 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:03
- 圭ちゃんはニヤニヤ笑って僕らの方を見た。
隣では飯田さんが苦笑いを浮かべてちょっと困った顔をしている。
『おやじ・・・』って小さく呟きながらね。
「でも本当突然だったね」
「んだねぇ、突然っちゃ突然だったかもねぇ」
いや、そんな他人事みたいにケラケラ笑われてもリアクションに困るんですけど・・・。
「俺ね、もうすぐまた海外行くんだ。今度もちょい長めなんだけどさ、多分これが最後。
嘘か本当かわからないけど、これが最後だって言ってたから。
んでね、カオリにもついてきてもらうんだわさ」
保田さんの隣では飯田さんが首を壊れたおもちゃのように縦に振り続けている。
「へ!?じゃあお店どうしちゃうんですか??」
- 596 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:03
- で、その壊れたおもちゃのような飯田さんにくいついたのは石川さん。
ずいっと身体を前に乗り出して、『どうするんですか!!』オーラを出しまくり。
身体を前に乗り出しすぎて烏龍茶の入ったコップが倒れそうにっている。
そんなコップをさりげなくナイスキャッチな僕。
ナイスフォロー。
「カオリは2週間しか向こうにいないから心配ご無用。
ちょっと前に夏に2週間くらい休むからよろしくって言ったじゃん?
あれのこと。新婚旅行という名前でちょっと一緒に行こうかなぁって」
ニッコリ笑ってピースサイン。
幸せそうな笑顔を向けて、隣じゃ圭ちゃんが照れくさそうに笑っている。
- 597 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:04
- それから石川さんと飯田さんは、飯田さんがいない間の2週間のことの話し合いを始めた。
2人の会話はまだまだ終わりそうにないし、何だか僕がここに座っているのは
ちょっと場違いな感じがして、僕は手で押さえていた石川さんのコップを
自分の横に並べて、ベランダの方へと向かった。
部屋の中と外の温度はほとんど変わりがなかった。
天気予報では台風が明日か明後日には関東地方を通過するかもって言っていたけど、
この夕日を見ているとそんな予報があまり信じられない。
綺麗に伸びた薄い雲を染めあげる太陽の光りはずっとずっと先の空まで染めあげている。
この光りの先には一体何があるんだろうか。
見えない先の先の先には一体何が待っているんだろうか。
不思議な感覚の素敵な気持ち。
吸い込まれていきそうな空に向かってちょっと手を伸ばしてみた。
「何1人で遊んでるのさ」
- 598 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:05
- こつんと僕の頭を叩いて圭ちゃんが隣にやってきた。
煙草をくわえてニヤニヤ笑っている。
「圭ちゃんこそ今日は頬の筋肉ゆるゆるじゃんか」
煙りがふわふわ空に昇ってオレンジ色に染まる。
そんな風に見えた。
白いけど色んな色に染まっているいみたいで、そんな風に見えた。
この色は圭ちゃんの気持ちの色なのかなぁって思ったり思わなかったり思ったり。
あんまり口に出さないけど幸せなんだよね。
口に出さない代わりに思いきり顔に出てるもんね。
「圭ちゃんはさ、結婚式とかはしないの?」
「あぁ、俺ん所もカオリん所の親も結婚式はしろ〜って言うんだけどさ、
俺らはするつもりないんだよね。
時間もあんまりないし、そんな形に乗っ取ったことすることもないかなぁってさ。
カオリもそれには同じ意見でね。
もしやるとしたらお互いの親戚とか両親とかだけ集めて小さくやると思う」
- 599 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:06
- そう言って圭ちゃんは煙草の煙りをまた空に向かって飛ばした。
圭ちゃんの頬はオレンジ色の夕日に照らされてオレンジ色に染まっていた。
それが太陽の色なのか、圭ちゃんの色なのかはよく分からなかったけど、
幸せなんだなってことは分かったよ。
『じゃあ結婚式は僕らが作ってあげるよ』って言ったら『さっきも同じようなこと
言ってたやつらがいた』って圭ちゃんは笑った。
「俺は本当いい仲間を持ったよ」
煙草の煙りはまたオレンジ色に染まった。
ぐんぐんぐんぐん伸びていって、空に溶けて一緒になった。
僕はそんな煙りと空を掴みたくてまた手を伸ばしてみた。
届かないかもしれないけど、掴めるモノはきっとあるから。
圭ちゃんはさっきみたく笑って僕を横目にいれて空を見ていた。
- 600 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:07
- 同じ空を見上げて同じ雲を見つめて。
僕のかっけー兄ちゃんは、『あんたも頑張りな』って言いながら
僕の頭をぐしゃぐしゃにした。
色んな意味での頑張りな。
ありがと圭ちゃん、じゃあ圭ちゃんも頑張りな。
色んな意味で頑張りな。
そんな会話を交わして部屋に戻ったら、待っていた2人は『遅いわよ』って
視線をこっちに向けてきた。
僕も圭ちゃんも思わず微笑んでしまった。
幸せだよね、僕らって。
言葉じゃなくて視線でそんな会話を交わしてみた。
- 601 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:11
- この後、圭ちゃんと飯田さん(カオリさんって言う方がいいのかな)
はカオリさんの誕生日に籍を入れた。
保田圭と保田圭織。
実は名前書くとほとんど字が同じじゃんってことに今さらながら気付いてみたり。
『川‘〜‘)||人(`.∀´ )婚姻届け出したわよ!!』ってメールが皆に一斉に届いた時には、
皆でごっちんのお店に集まっていたからハイタッチしまくって大騒ぎした。
すぐに圭ちゃんとカオリさんの携帯に電話して全員で『おめでとー!』って言葉を贈った。
皆が時間を見つけては手作り結婚式の準備をして、皆が楽しそうに笑っていた。
ラジオでは矢口さんが『ヲイラの友達のKちゃんがついに結婚したんですよぉ』とか言っていた。
きっとイニシャルを言ったつもりなんだろうけど見事名前言ってるじゃんって
突っ込んだ人は僕だけじゃなかったはず。
次の日僕の隣の席で安倍さんは『矢口も言った後に気付いてCM中に
爆笑したって言ってたよ』って言ってたし。
石川さんもカオリさんのいない間頑張るって言ってはりきりまくってるし、
僕も僕で何だか今年の夏をはりきりモードで頑張っている。
もうすぐ母さんに頼まれていた絵も完成しそうだし、
きっと沢山大きな幸せが動くんじゃないかなって思っう。
僕は土手で夏の風を受けながら風に向かって両手を広げてみた。
風はすごく優しくて、僕はそれだけで嬉しくなった。
- 602 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:12
- ◆◆◆
- 603 名前:圭×2 投稿日:2003/10/21(火) 16:12
- ◇◇◇
- 604 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/21(火) 16:14
- 更新しました。
隠す程でもないかなぁとも思ったけど一応。
『かおけい特番』すげー期待してた人がいたらごめんなさい。
こんなでした。
>Silence様
幸せですよね。
本当。そう思いました。
書きながら描きながら色々なことを思ったのは
吉澤くんだけじゃありません(w
思いを込めたモノが好きなんです。
- 605 名前:TOKOM 投稿日:2003/10/22(水) 01:12
- こんばんわっす。
正直ビビりましたわ・・・・
突然すぎ!でもよかったよ!圭ちゃん&圭織さん!!
いや〜よかったよかった。しかしプロポーズしたのは果たしてどっち?
そんな話をほんのすこ〜し期待してます。(笑)
- 606 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/22(水) 23:41
- >>605
ネタバレなレスとかやめてくれませんか。
正直腹立ちます。しかもあげてるし。
- 607 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/23(木) 04:25
- >>606
言ってる事は間違ってないけどそういう言い方はやめよう。
雰囲気悪くなっちゃうし。そんなあなたに2chブラウザがオススメ。
詳しくは案内板等を見ましょう。この話ココで終わりね。
- 608 名前:607 投稿日:2003/10/23(木) 04:31
- ゴメン、FAQの方が早いや。
- 609 名前:silence 投稿日:2003/10/23(木) 09:54
- 更新お疲れ様です〜。
なんかいきなりすごいことになちゃってますね〜。かなりびっくり
でも、おめでと〜♪ いつか、あの二人にもそんな日が?(w
- 610 名前:token 投稿日:2003/10/23(木) 12:45
- 更新お疲れ様です。
飯田さんは様々な表情をしますよね。
可愛らしい顔になったり、美人さん顔になったり。更新中の不思議な顔も(w
『シャボン玉』のPVで、「苦労なんて覚悟してたー」と歌っているシーンでは
ちょっと怖い顔に見えたりします。
で、この物語の今回のエピソードでは、一体どんな顔をしてたんでしょうね〜。
あと、矢口さん。グッジョブ(w
では、次回も楽しみにしています。
- 611 名前:TOKOM 投稿日:2003/10/23(木) 17:34
- >>606・>>607様
ご迷惑掛けて申し訳ありません。
今後このようなことの無いように気をつけます。
ホントに申し訳ありませんでした。
- 612 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 22:59
- いくつかの階段を昇っては下り、上っては下り、ここに辿りついた。
登った数はどれくらいか、降りた数はどれくらいか。
数えたこともないし、数え方もいまいちわからないからまぁいっか。
辿り着いた所は今立っている所で、これから先進むのも今のこの場所から。
陽射しが眩しくて思わず目を細めた。
気付けばもう朝。
嘘。
気付いてたけどもう朝だ。
長い短い2週間で、どれだけのことが出来たとかわかんないけど、自分なりに精一杯頑張った。
きっとこれならカオリさんに胸を張って報告出来る。
テーブルに置いておいたコーヒーを台所に持っていって、目指す先はお布団の中。
数時間は寝れるはずだし、今日は午前中で仕事終わりだし。
そんなこと考えてたらすぐに夢の世界に引っ張ていかれそうで、
私は最後の気力を振り絞って目覚ましをセットした。
そしてその途端に夢の世界に引きずりこまれた。
- 613 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 22:59
-
*******************************************
- 614 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:00
- 〜夢の中の光り〜
水の音が聞こえた。
光りが眩しくて、目が痛くて、だけどすっごく気持ちよくて。
ぽかぽかぽかぽか陽の光りを浴びて、私の身体もほかほかほか。
耳元で聞こえる歌声がもっともっと気持ちがよくて。
ほかほかほかほか、ぬくぬくぬくぬく。
ちょっと目を開けようとしたんだけどい、身体はそれを許してくれないらしい。
なのに起きて起きてと瞼をたたく、冷たい冷たいお水さん。
・・・お水さん?
ザーザー聞こえてきたのはお水な音で、びじょびしょ濡れていくのは私の身体。
さっきまで温まっていた身体は一気に温度を下げられて、身体全体がぷるぷる震える。
- 615 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:01
- なのにどうしてか瞼が開かない。
開けようとしても開かない。
『こっちだ!!』
そして突然聞こえた声に、掴まれた腕への感触。
『もっと速く走って!!もっと速く!!!』
聞こえてくる声はさっき歌を歌ってくれてた人の声。
誰だろう?どんな顔だろう??
気になるのに、瞼は開かない。
も〜もどかしいなぁ〜!!
身体を濡らす水はまだまだ振り続いている。
どれだけ走ったか分からないけど、不思議と全然息がきれない、きれていない。
そしてバタンと音がして、水の音が遠くなって、私の身体に降り注いでいた水も姿を無くした。
遠くで聞こえる何かが倒れる音に突然ワケもわからない恐怖にかられた。
ただ『恐い』すごく『恐い』
- 616 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:02
- 「危なかったね、あの水は長時間浴びると身体が凍ってしまうんだよ。
僕も話しにしか聞いたことがなかったけど、まさか本当に伝説と同じ
赤い雲が出るとは思ってなかったな」
淡々と話すその口調が余計私に恐怖を与える。
見えない世界、知らない世界。
・・・知らない世界?
私はこの世界を本当に知らない?
私はこの声の人を本当に知らない?
・・・嘘だ。
私は自分で嘘を言っている。
私はこの世界を知っている。
私はこの声の人を知っている。
「・・・梨華は随分と足が速くなったんだね」
- 617 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:03
-
この声を知っている。
「・・・ひとみお兄様」
そうだ、私のお兄様だ。
今日は久しぶりにお兄様が旅から帰ってくるから、私はずっと森の中で待ってたんだ。
そしてあまりにも陽射しが気持ちよかったから眠ってしまったんだった。
「久しぶり、3年ぶりだったっけ?」
開かない瞼は4年前から。
お兄様は私のこの理由の分からない病気を直す為に旅に出たんだ。
何で私はこんなことも忘れてしまっていたんだろう。
「梨華?どうしたんだい?」
- 618 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:04
- こんなにも愛した森。
こんなにも愛した水。
こんなにも愛した街。
こんなにも愛した音。
こんなにも愛した・・・声。
「・・・そうだよね、恐かったよね」
ぎゅっと抱き締められて濡れたお兄様の体温を近くに感じた。
優しい声、優しい体温。
優しい言葉、優しい温もり。
全部全部愛したもの。
全部全部叶わぬモノを愛した私。
「大丈夫?」
「あ、はい」
すっと離れていく身体。
消えない温もり。
- 619 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:04
- 「梨華もちょっと見ない間に随分綺麗になったね」
「お兄様も少し背が伸びたんじゃないかしら?」
「う〜んそうだね、ちょっとは伸びたかもね」
『手、かしてごらん』
そう言われてお兄様の顔に触れた。
そうだ、3年ちょっと前にもこうやってお兄様の顔を手で触れたんだ。
薄い唇、長い睫毛、前よりも伸びた髪。
「お兄様も少し、変わったみたいですね」
私が知らない間に。
私がいない間に。
「髪が伸びたくらいだよ、そんなに変わってないから。
きっと梨華が覚えているまんまの僕だから安心して」
お兄様は優しい。
すごく優しい。
だけどそれは妹に対する優しさで、私を女性とし見ている優しさじゃないんだと思う。
「もうすぐこの赤い雨も上がるだろうから、そしたら家へ帰ろう」
- 620 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:05
- お兄様はそう言って私の側から離れていった。
手探りで回りのモノに触れて、藁の感触のする所に腰を下ろした。
お兄様が『赤い雨』だと言った、赤い雨の音はだんだんと聞こえなくなっていき、
やがてその音は完璧に聞こえなくなった。
「・・・もういいだろう。梨華、暗くなる前に家に帰ろう」
優しく手を掴まれて、私はまた優しい陽射しを感じる外の世界へと足を踏み出した。
少し陽が傾いたんだろうか?
感じる風が冷たかった。
行きに一緒だった馬のラッキーはどうなってしまったんだろうか?
さっきの『赤い雨』に降られて凍ってしまったんだろうか?
ずっと私の目の変わりになっていてくれたのに・・・。
「お兄様、あの、私の側にいたラッキーはどうなってしまったんでしょうか?」
「あぁラッキーなら大丈夫だと思うよ。僕が来たのを確認したら、
先に家の方に帰っていってみたいだから」
「そうですか・・・」
- 621 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/24(金) 23:06
- 歩くスピードが少し落ちて、お兄様は私の手をぎゅって握ってくれた。
『大丈夫だから、本当に大丈夫だから』って私に伝えてくれている手。
3年ぶりに感じる手はやっぱり大きくて、すごく安心する。
「父さんと母さんは元気かい?」
「はい、お父様もお母様もすごく元気ですわ。
2人とも今日の日をすごく楽しみにしていたくらいですから」
「そっか、じゃぁなおのこと早く帰らなきゃな」
お兄様はそう言って私のことを抱きかかえると楽しそうに笑って駆け出した。
私の記憶の中にあるお兄様はちょっとひょろっこい体系だっからだ、
そんなのが全然信じられなくて、
だけどそれより何より恥ずかしくて、恐くて、私は思いきりお兄様に抱きついた。
静かな森に響く私の声とお兄様の笑い声が私の耳に心地よく響いていった。
- 622 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/24(金) 23:09
- 更新しました。
『夢でも逢いましょう』はあと1回更新。
ツッコミどころは満載でも、まぁ自分が見るのもそういう
ツッコミどころ満載なモノばかりなんで、あえてそんな感じでです。
>TOKOM様
どうもどうもです。
えぇ突然なのですみません(反省なし)
二人ともお幸せにですな。
もし番外編があったら、その時のエピソードなんでいうのも
書いてみたいですね。
>606-607様
何か色々すみません。
>silence様
いつ来るんですかねぇ(遠い目)
来てほしいです。
本当来てほしいですわ。
どうか心の底の隅らへんで願ってて下さい(w
>token様
元が美しい人ですからね、飯田さん。
色んな表情ができるのも飯田さんの味。
そんな風に思ってます。
前回のエピソードは多分幸せ満開orいたって普通な表情。
のどっちかでしょう(w
矢口さんはエースストライカーですから(w
- 623 名前:silence 投稿日:2003/10/25(土) 00:52
- 更新お疲れ様です。
おおぅっ!!なんかいつもと違う雰囲気が漂ってきますねぇ。
引き込まれますねぇ〜こういう世界も。綺麗な情景が。
- 624 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:08
- その日の夕食はすごく賑やかだった。
色々な所で見たモノや聞いた話、それをお兄様は楽しそうに話してくれた。
私もお母様もお父様もそんなお兄様の声を聞くのがすごく楽しくて、嬉しくて、皆声をあげて笑った。
だって本当にお兄様の話すことは楽しいんだもん。
食事の後は、暖炉の近くに座ってお兄様とお互いの3年間のことを話した。
もちろん『寂しかった』なんて一言も言わないよ。
だって言えないもん。
私の為に旅に出てくれたお兄様に向かってそんなこと言えないもん。
でもお兄様はそんな私の気持ちに気付いちゃったみたいで、昔みたいに私の手を握って
私が落ち着くまでずっと待っていてくれた。
- 625 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:08
- その後はいつものように水浴びをして、ベッドの中へ入った。
明日はお兄様が見つけてきてくれたお医者様が来るらしい。
話しによれば、早ければ明日にでも手術をするって言っていた。
すごく忙しいお医者様だからあんまり時間がとらないんだそうだ。
手術と言う言葉にすごく不安は覚えたけど、お兄様が『大丈夫』って言ってくれたから
私はきっと眠ることが出来る。
私の愛した声が『大丈夫』って言ってくれたから私はきっと眠ることが出来る。
そう、お兄様が『大丈夫』って言ってくれたから明日もきっと大丈夫。
きっと大丈夫なんだ。
- 626 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:09
- ---------
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「よし、じゃあすぐに手術しちゃおう」
午前中にやってきたお医者様の安倍先生は私を診察するなり、
すぐに助手の矢口さんに準備をするよう指示を出した。
どうやら私の病気は様々な所で確認されていたらしい。
と言ってもまだそうなった理由とかは分からないし、知られているこも少ない。
それでも安倍先生は私の前に何人も同じ症状の人を見たんだって。
そして何人も治療をしたんだって。
- 627 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:10
- お兄様が安倍先生の存在を知ったのは2年くらい前で、
安倍先生の元に辿りついたのは半年くらい前。
忙しく動き回る安倍先生を捕まえるのがすごく大変だったみたい。
で、捕まえたのはいいんだけど、安倍先生にはまだまだ待ってる患者さんがいるから
私の所に来て下さるまで半年かかったんだそうだ。
それから少し経って、手術は始まった。
簡単につくられたベッドに寝かされた私は、不思議な匂いのする布を
矢口さんに嗅がされ、段々と意識を失っていった。
完全に失う意識の前、いつもの優しいお兄様の手の感触を感じた。
そしてその感触を感じたまま、私の意識は途切れた。
- 628 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:11
- 次に意識を取り戻した時、もう安倍先生達の気配はなくなっていた。
もう次に安倍先生を待つ人の元へ行ったんだとお母様に聞いた。
私の目の部分には布のようなモノが巻かれている。
後3日間、このままでいたら布を取っていいそうだ。
長い3日間。
お兄様の声を隣にずっと聞きながら、私はそのほとんどをベッドの上で過ごした。
取りの鳴き声、木々の声、お兄様の声、お母様の声、お父様の声。
全部がすごく優しく聞こえた。
そして3日目。
ベッドの上に座った私の前にいるのはお兄様。
お母様もお父様もお兄様の後ろのいるみたい。
そんな気配を感じた。
「・・・梨華、布を取るからね」
「・・・はい」
- 629 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:12
- ゆっくりとゆっくりと取られていく布。
そして瞼に空気を感じた。
『恐い』・・・『恐い』・・・。
もし開かなかったらどうしよう。
3年もかけてお兄様が探してきて下さったのに・・・。
がっかりさせてしまったらどうしよう・・・。
恐い・・・恐いよ・・・。
「梨華、大丈夫だから・・・。大丈夫だからゆっくり右の瞼を開けてごらん」
『大丈夫だから』
お兄様の声。
愛しい愛しいお兄様の声。
いつだって勇気をくれるお兄様の声。
・・・大丈夫。
そう、大丈夫。
だってお兄様が大丈夫だって言ってくれたから。
お兄様が大丈夫だって言ったから。
- 630 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:12
- 右の瞼に力を入れた。
ゆっくりゆっくり。
震えながら離れようとする瞼と瞼。
・・・大丈夫。
大丈夫。
ほら、だから目をあけるの。
それは梨華、私がやるんだよ。
そう、だから頑張って、頑張って。
『大丈夫だから』
- 631 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:13
- 私の右目は4年ぶりに光りを見た。
そして一番始めに見たのはお兄様の笑っている顔だった。
『ほら、大丈夫だっただろ?』
そんな風に言ってお兄様は笑った。
私の両目はもう無くなってしまっていたらしい。
その理由は今でもわからないし、どうやって無くなってしまったのかもわからない。
それでも私の右目には光りが見える。
私の右目に光りが戻った代わりに、お兄様の右目から光りが失われたから。
そう、お兄様の右目は私の右目になったのだ。
私達が兄妹だったから出来たことだったらしい。
そう後からお兄様に聞いた。
- 632 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:14
- 『僕の右目はもう梨華のもの。これからずっと一緒に2人で色々なモノを見ていこう』
お兄様は笑っていた。
3年ぶりに見たお兄様は、髪も伸びて、身体付きも少し変わっていた。
私は今日も森へ出かける。
薪を拾ったり、水をくんだり。
そして私はまた森で眠る。
愛しいお兄様の声を聴きながら・・・。
*******************************************
- 633 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:15
- ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ-----
目覚ましの音で私の目は覚めた。
そして起きた時、すぐにベッドから起き上がることが出来ずにいた。
こんなにも最初から最後まで見た夢も、こんなにハッキリ覚えている夢も
今までそんなになかったから。
天井を見上げながら思わず両目に触れた。
・・・不思議な夢。
綺麗な世界。
でも切ない想い。
・・・泣いてるじゃん、私ってば。
夢の中での『梨華』は絶対に私のことで、夢の中での
『ひとみお兄様』は絶対吉澤くんのことだ。
声しか聞こえなかったけど『安倍先生』っていうのも『矢口さん』っていうのも
私は知っている安倍さんと矢口さんのこと。
・・・。
- 634 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:16
- 時計を見たら時間は8時を回ったところだった。
起きてるかどうか心配しながらも、私は吉澤くんに電話をかけた。
何だかすごく不安だったから。
夢なのに、それが現実だったらどうしようって思ったから。
電話越しでの吉澤くんの声は、まだ寝起きっていう感じだった。
『ごめんね』って言いながらもその後10分くらい喋っちゃった。
電話を切る前に『おやすみ』って言ったら吉澤くんは電話越しで笑ってた。
そして仕事場に行った私は、久しぶりに会ったカオリさんへの2週間分の報告をして、
午前中もばっちり仕事をした。
『今度皆にお土産渡すからねぇ』って言ったカオリさんの顔はすごく幸せそうだった。
『今度』って言ったのはまだ荷物の整理も何も出来ていないからだそうだ。
- 635 名前:夢でも逢いましょう 投稿日:2003/10/27(月) 10:16
- その後吉澤くんに会って、今日見た夢の話しをした。
本当は帰って寝るつもりだったんだけど、どうしても聞いてもらいたくて会いに行った。
夢から始まった1日。
不思議な夢から始まった1日。
今晩は何か夢を見るのだろうか?
それはどんな夢なんだろうか?
ひょっとしたら見ないかもしれないけど、睡魔に負けた私は
深く考える前にすぐに眠りにおちた。
- 636 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/27(月) 10:17
- 更新しました。
最近不思議な夢をよく見ます。
どうにもこうにもはちゃめちゃはちゃめちゃ。
不思議なもんです。
>silence様
毎度毎度ありがとうです。
引込まれていただけたみたいで(・∀・)ニヤニヤ。
しかし今回の更新でいつもと違う雰囲気も終わってしまった罠。
申し訳ないです(w
でもたまにこんなもいいですね。
って書いてて思いました。
- 637 名前:sai 投稿日:2003/10/27(月) 23:51
- 夢って不思議ですよねぇ。いろんな夢があって。石川さんの
見た夢は石川さんにとって哀しいだけの夢だったのかな〜。
きっとどこかに優しいを感じていたんだったらいいな〜。
- 638 名前:token 投稿日:2003/10/29(水) 22:18
- 更新お疲れ様です。
意味深な夢ですね〜。何か深読みできそうな、
でもしない方が正解なような・・・。
今でこそ、夢は見る人の願望の現れだと考えられてますけど、
平安の頃には、相手が自分を愛しく思っているからこそ、
夢の中にまで逢いに来てくれる、と考えられていたそうです。
ここのいしよしの関係は、そう考えた方が良くないかな?な〜んてね。
では、次回も楽しみにしています。
- 639 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:40
- 「吉澤くん、今から時間とれる?」
職員室を出ようとした時にかかってきた電話。
相手は石川さんだった。
夏のサマーワークももうすぐ終わる時期。
季節はまだ夏って言われる時期で、外に出たら東京特有のじめじめとした暑さが待っている時期。
そんな時期に僕は石川さんの運転する車(初心者マークつき)に乗って、都心からどんどんと離れた方へ行き、
さらにその離れた道から『普通なら見て素通り』するような道に入って、何とも不思議なお店へやってきた。
ようは地元人ならではの店っていうような店ってことだ。
・・・あれ?言葉がおかしかな?
「ここね、私がずっと小さい時からあるお店なんだ」
「あ、じゃあここって石川さんの実家の近くなんですか?」
- 640 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:41
- 『うん、車で20分くらいかかるけど』そう言って石川さんは笑った。
そんな近くなのか。
じゃあここは神奈川県なのかな?
しかし、石川さんの家が近いと思うと何だか緊張するな・・・。
今の時間はもう夜の21時を回っているから、挨拶なんて行ける時間じゃないし・・・。
あ、でも突然お邪魔する方が駄目駄目じゃんか。
「吉澤くん、大丈夫?何か顔が百面相みたくなってるよ」
石川さんは柔らかく笑って『行こう』って言って僕の前を歩いていった。
不思議な感じのこの店は、回りの木々に店自体も埋もれているようで、
店の明かりが木々の隙間からもれているような不思議な感じのする所だった。
「木漏れ陽の店・・・」
そして木の階段を5段くらい上がった所にある入り口の看板にはそう書かれていた。
手彫りで掘られている看板はきっと長い間ここにあったんだろう。
少し古びた感じが、この木々に埋もれるような店に自然に溶け込んでた。
- 641 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:43
- 店の中の机や椅子も全て手作り。
薄暗い照明はここの雰囲気にすごく良く合っていて、『店の中にいる』
というより『木々の中にいる』という感じだ。
「ひょっとして・・・梨華ちゃん?」
そしてボヶーッと店内を見回している僕と、誰かを探している石川さんの背中の方から声が聞こえた。
クルッと振り返ったら、そこにはカウンターの奥の方から出てきた眼鏡をかけたお姉さんと、
少し目の細めの金髪の男の人が立っていた。
「お久しぶりです、めぐみさん、雅恵さん」
「おう、まぁとりあえず座りなって。飲み物何がいい?」
「私今日車なんで烏龍茶でいいです。吉澤くんお酒とか飲む?」
「あ、僕も烏龍茶でいいです」
「はいよぉ、じゃぁちょっと待ってな」
- 642 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:45
- 空席があまりない店内だったけど、カウンターの席は3つ程空いていたので僕らはその席に座った。
ここは昔、雅恵さんのお父さんが1人で経営していたBerだったんだけど、
石川さんが高校2年生の頃にそれまでお店の手伝いをしていた雅恵さんが正式にこの店を継ぎ、
店を継いで少し経った後に結婚した
奥さんのめぐみさんと一緒に今は経営をしているんだそうだ。
ちなみにここはお昼から開いていて、Berだけど普通の喫茶店としても営業をしているんだって。
独特の雰囲気や、雅恵さんとめぐみさんの作る料理も評判で地元はもちろん、
情報誌にも載ったりして随分と繁盛しているらしい。
雅恵さんが飲み物を用意している間に石川さんがそう教えてくれた。
「はい、おまたせ」
僕らの前に置かれたのは烏龍茶2杯とおいしそうなサラダやパン。
石川さんと僕が雅恵さんの方に視線を向けたら雅恵さんは黙ってウィンクをした。
何だかその姿がすごい自然。
そんでもってカッケ−かったりする。
雅恵さんの後ろの方ではめぐみさんが可笑しそうに笑っているし、何だかここに
皆が集まる理由がちょっと分かった気がした。
そう、店の雰囲気と一緒で、ここの2人はすごくあったかいんだ。
- 643 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:46
- めぐみさん手作りの焼き立てのパンはすごくおいしくて、今さらだけど、僕は自分が
お腹が空いていたことなんなき気付いた。
その後、石川さんオススメの『特製お魚煮込みセット』を注文。
これもすごくおいしかった。
石川さんと2人『おいしい、おいしい』を馬鹿みたいにくり返して夢中で食べた。
店に入って1時間くらいが経った頃かな?仕事の方が一段落ついたらしく、
雅恵さんとめぐみさんが僕の前にやってきた。
「ちゃんと自己紹介してなかったね。俺は大谷雅恵。ここの店のマスター」
「はじめまして。妻の大谷めぐみです」
改めてこんな風に挨拶されると緊張するのが僕のクセ。
椅子から立ち上がると、膝がガクガク震えているのがモロわかる。
あぁ多分隣に座ってる石川さんは気付いてるんだろうなぁ。
かっこ悪いなぁ。
「ぼ、僕は吉澤ひとみって言います、ど、どうも」
- 644 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:47
- あれだ、きっと歩いていたら右手と右足が一緒に出てしまうってくらいの緊張だ。
何でそんな緊張してるかは自分でもわからないし、きっと誰にもわからない。
う〜んダメ駄目じゃん、僕ってば。
「ははっ、んな緊張することないよ。ま、座って座って」
促されるように椅子に座ったら、隣で石川さんは僕を肘でつっついて
『お疲れ様』ってちょっと笑いながら言ってくれた。
・・・挨拶でお疲れ様って言われる僕も何だなぁ。
「めぐみ、ちょっとお願いな」
雅恵さんの声にめぐみさんは『はいはい』って笑って答えた。
で、雅恵さんは一旦カウンターの奥に引っ込むと、
薄手の上着をひっかけてきて僕の隣に腰を下ろした。
あぁ『ちょっとお願い』ってそういう意味だったんだね。
この店では雅恵さんがこういう風にカウンターを抜け出すことは結構あるみたいだ。
周りから『おいおいまたマスターのナンパかよぉ』みたいな笑い声もあがっている。
あれだ、一種の『名物』ってやつなんだろう。
- 645 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/10/31(金) 10:48
- 「いやぁしかし久しぶりに梨華ちゃんが来たと思ったら一緒に彼氏も来るんだ−−−」
「ぶっ!・・・げほっ、げほっ」
あぁ、軽く吹いちゃった、むせちゃった。
ベタだよ僕、僕やることがベタだよ。
いや、いきなり彼氏なんて言うの反則ですよ。
あぁすいみません、石川さん、背中さすってもらってしまって、いや、もう大丈夫です。
あ、でもちょっと嬉しいかも。
って何ちょっと思ってるんだ僕。
「だ、大丈夫か?」
「すみません、はい、大丈夫ですはい」
「なんかおもしろい奴だなぁ吉澤って」
「はぁ、そうですかねぇ」
うんうん頷く雅恵さんと石川さん。
あれ?何で石川さんまで頷いてるんですか?
そこは『そんなことないですよぉ』とか言うところじゃないんですか?
あれ?違う??
「ははっ、本当おもろいやつ。で、吉澤って石川さんの彼氏?友達??」
- 646 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/31(金) 10:50
- 更新しました。
ちょっと読みにくい場所があるかもしれません。
えぇっと本当、もし読みにくかったらごめんなさい。
で、突然ですが、一応もうすぐ最終回なんて考えてます。
残り何話!っていうのが決まったら報告します。
でもって、『単純素直な幸せ幸せ』は後1回更新です。
>sai様
理由がですね、悲しいっていうのは、結局夢の中では石川さんは
吉澤お兄様への願いっていうの成就されてないんですね。
んでもって絶対に叶わないってわかってるんです。
見る夢っていうのは『何で!?』みたいなこと沢山あって、
あまりにもこう上手いこといきすぎる夢っていうのもなかなか
なくて、たとえ現実じゃ嬉しいことでも悲しくなってたり。
ワケわかんないことが沢山あって、それでも夢は夢なんですね。
だもんで夢で感じた気持ちがそのまま現実にくると
『あれ?何でそんな風に思ったんだろう?』みたいな。
石川さんが見たのは夢だったんです。
だから『切ない夢』って思ったんでしょうね。
でも優しさも感じてたと思いますね。
うん。
- 647 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/10/31(金) 10:51
- >token様
どうもどうもです。
あんまし深読みしない方がいいかもですね(w
えぇっと、一応『切ない理由』っていうのはsaiさんの所に
書いた感じなんですね。
でも解釈の仕方は人それぞれだと思うので、tokenさんが
思ったような解釈が正解だと思います。
あくまでも『私は』ってやつですね。
>今でこそ、夢は見る人の願望の現れだと考えられてますけど、
>平安の頃には、相手が自分を愛しく思っているからこそ、
>夢の中にまで逢いに来てくれる、と考えられていたそうです。
そうだったんですかぁ。
知りませんでした。
前回のいしよしの関係ですか・・・う〜んどうなんでしょうね(w
- 648 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:17
- ・・・どうなんですかねぇ。
それって僕自身も疑問なんですよねぇ。
多分それは石川さんも同じ疑問を持ってると思うんだよなぁ。
「う〜ん何て言うんでしょうか・・・ねぇ」
「・・・ねぇ」
思わず顔を見合わせてしまう僕ら。
僕の中で一番大切な人なのはずっと同じで、いつまでも一緒にいたいという気持ちは
前よりもずっとずっと大きくなってる。
でも何だろう、『くくる言葉』っていうのが無いんだよね。
付き合ってる?
そういう言葉を使ったことがない。
『好き』
そういう言葉も使ったことがない。
- 649 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:18
- でもずっと一緒にいるし、一緒にいたいし。
き、キスだってたまにしてるんだけど(最近してない・・・)
う〜ん・・・何て言えばいんだろうか。
『彼氏』『彼女』っていう言葉はどうにもしっくりこないものがあって・・・。
友達以上親友以上。
言葉に代えれる言葉がない。
大切すぎて欲しすぎて。
・・・掴めないんだよねぇ。
「ま、色々あるもんだからね。別にんな詳しく聞くつもりもないよ。
ってか悪かったね。うん、まぁあんま気にせず流してくれ。
でさ、梨華ちゃん、この前電話もらった件なんだけど・・・」
「あ、はい。どうでしょうか?」
- 650 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:18
- ん?あれ?何だか急展開。
間にはさまれた僕はえぇっと・・・どうすればいいんでしょうか。
まぁいいや烏龍茶飲みながら聞いてますわ。
はい、えぇっと・・・ちょっと寂しいです。
「うん、ウチは全然OKだよ。どうせ店休みの日だしね。
もちろんサービスもするよ。ばっちりばっちり」
「ありがとうございます。よかった〜」
「おう、まぁじゃまた今度打ち合わせでもしよう。電話でもいいからね」
そう言って雅恵さんは違う席へと移って行った。
そして僕の烏龍茶も空になった。
「保田さん達の結婚パーティー、ここのお店貸しきりでやってくれるってさ」
僕の方を見た満面の笑みの石川さん。
そう、今回の圭ちゃん達の結婚パーティーの石川さんは今回会場係り。
ありえないくりあ張り切っていたんだ。
そっかそっか、そういうことだったんだね。
少しでも寂しいって思っちゃってごめんなさい。
- 651 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:20
- 「よかったですね」
「うん」
こんな笑顔向けられたら僕もすごく嬉しい気持ちになる。
笑顔っていうのは不思議だね。
誰かが笑っているのを見たらその幸せを分けてもらった気持ちになるもん。
本格的に始動し始めた『w圭ちゃん結婚パーティー(仮)』
忙しいけどすごく楽しい。
うん、本当に。
一応パーティーの予定は10月。
早く来てほしいような、実はもっとゆっくり来てほしいような。
僕はこういう準備段階っていうのがすごく好きだから。
静かな音楽が流れる木の香のする店。
こんな中で出来るパーティーを考えたらこっちがドキドキしてくる。
音に溢れて自然に溢れて。
見えるモノも感じるモノもここはとっても心地良い。
- 652 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:21
- 「いい所ですね、ここ」
「でしょ、いい意味でここは変わってないの。ずっと昔から」
それはきっと雰囲気とかそういうモノなんだろう。
温かいのは変わってなくて、きっと人を惹き付ける。
僕ももうその1人だ。
「今度道教えて下さい。僕もここに来たいです」
「えぇ〜1人で来るつもりでいるの〜?」
「あ、いやそういう意味じゃなくて・・・」
ちょっと焦った僕を見た石川さんは『わかってるって、そんな焦んないでよ』って
言いながら肩を震わせて笑った。
軽く優しく天使みたいに。
ゆったりとした時間の流れる店の中で、僕らは肩を震わせながら笑いあった。
本当くだらないことを言い合って、ただそれだけで。
別にめちゃくちゃ楽しいってことがあったワケじゃないけど、笑ってることが笑えてきて。
- 653 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:21
- 言葉で何かを探ったりするとかじゃなくて、ただ言葉の会話を楽しむ。
これってきっといつも当たり前に出来てるんだよね。
たまに探りあいの言葉も使ったりするけど、言葉っていうのは楽しいんだよね。
あぁなんかそんな風に考えたのはじめてだ。
でもそう一回考えるともっと会話したくなる。
いつも何か会話してるけど、それでももっと話したくなる。
それが出来る僕は幸せもんだな。うん。
「あぁお腹痛い・・・久々にこんな笑ったよ」
「僕もですよ」
僕達は笑っていることがおもしろくて笑っているってことが結構多い。
しまいにはお互い涙をこぼす程笑ってみたり。
何がおもしろいかわからなくなる程時間が経ったりするけど、
こんなにも思いきり笑えるっていうのはすごい幸せなことなんだよね。
ま、そんな難しく考えることもないか。
ただ楽しいんだもんね。
こうやってやってるのが楽しいんだもんね。
いいじゃん単純で。
いいじゃん素直で。
- 654 名前:単純素直な幸せ幸せ 投稿日:2003/11/03(月) 22:22
- 「とりあえずもう一杯烏龍茶頼みますか」
もうちょっとここで笑っていよう。
もうちょっとここの温かい空間で一緒に話そう。
もうちょっとここで幸せは時間を過ごそう。
「そうですね、頼みますか」
単純で素直でいいじゃないか。
今はそれでいいじゃないか。
だって楽しいもん。
だって幸せだもん。
心地よい感じのお店は心地よい空気。
うん、これも単純で素直でいいんだよね。
うん。
- 655 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/03(月) 22:23
- 更新しました。
『単純素直な幸せ幸せ』終了です。
- 656 名前:sai 投稿日:2003/11/05(水) 00:23
- 更新お疲れ様です。
単純な幸せですかぁ。今更また言わせてもらうと、ほんと
このまったりした空気が好きです。次回も期待
- 657 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 11:57
- 「寒い!!」
「・・・むにゃむにゃむにゃ」
「寒い!寒い!!寒い!!!」
「・・・むにゃむにゃむにゃむにゃ」
「布団全部持ってくんじゃねぇーよ!!!!!!」
「むにゃむにゃむにゃ・・・」
起きた時には布団がなかった。
【理由】
寝相の悪いなっちが全部奪ったから。
- 658 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 11:58
- 「ぶぇぇぇっくしゅ!!!」
頭痛い。
喉も痛い。
鼻水も出る。
咳も出る。
ついでに身体の節々が痛い。
『風邪ですね』
そうお医者さんに言われた。
身体は丈夫な方なのに、見事な風邪をひいた。
薬をもらってフラフラしながら家に帰って、倒れるようにベッドにダイブした。
今日は午後から打ち合わせがあるっていうのに・・・。
あぁダメだ。
身体力入んなや・・・。
- 659 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 11:58
- まっぱのオイラが寒くて目が冷めたのは朝の5時頃。
なっちが起きたのは朝の5時30分頃。
何度揺さぶっても、何度布団の上から叩いても、なっちはなかなか起きない。
だから起こすのに30分かかった。
で、その頃には『せくしーしるくぱじゃま』を着込んだオイラの体調は絶不調。
ベッドに座っていても辛い。
頭は重いしぐらぐらする。
それでも『一言言ってやらんと気がすまん!!』なオイラは頑張って起きてたのさ。
でさ、なっちの寝起きの一言。
『やぐち〜・・・好き』
怒れなかったよ・・・寝ぼけてたかどうかわかんねぇけど怒れなかったよ。
普通に顔がニヤけてたなんて言えないよ。
たとえそれがネコの方の矢口だったとしても怒れないよ。
- 660 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 11:59
- しっかりと起きたなっちはオイラの体調不良度を見てかなり驚いていた。
理由を説明したら思いきり泣きそうな顔をして、出勤前だというのに
お粥やら色々なモノを準備してくれた。
『すぐ帰ってくるから!!!』って言いながら出かけていったなっちの
後ろ姿を見送って、オイラは病院に行った。
で、今に至る。
布団の上でぐでぐでしても、身体の芯が寒いから変に震える。
『これが久々の風邪のツラさだ』
風邪なんてひくもんじゃないよなぁ・・・。
情けねよぉ〜。
その後、薬の力をかりて何とか打ち合わせに行って倒れるように家帰ってきた。
その頃にはなっちがもう帰ってきていて、矢口が玄関は入るとすぐに、
文字通り飛ぶようにオイラの元にかけつけくれた。
- 661 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:00
- 寝間着に着替えてベッドに倒れ込んだ。
もうダルダル。
本当ちょいキツイ。
自分の息が熱いのがよくわかる。
オイラはなっちから『食べないとお薬飲めないべ』なんて言われながら、
一生懸命胃の中に食べ物を流し込んで、薬も同じように胃の中に流し込んだ。
本当風邪なんてひくもんじゃねぇよなぁ・・・。
- 662 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:01
- 小さい頃は、何かさぼりたいこととか
逃げ出したいことがある時に『風邪ひかないかなぁ』とか思ってた。
でもそういう時に都合よく風邪なんてひかなくて、
むしろ大事なことがある日にかぎって風邪をひく。
で、『辛いよぉ』とか泣き言言ってみたり。
何で熱って出ると涙もろくなるのかなぁ。
それってオイラだけなのかなぁ。
人肌恋しくなるのはオイラだけなのかなぁ。
オイラはそんなことを考えながらボーッとする目で天井を見つめていた。
そして薬の力のせいか、なっちが握っていてくれた手のせいか、
オイラはいつの間にやら眠りに落ちていた。
- 663 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:02
- 目が冷めたのは朝じゃなかった。
まだ太陽とお月さんが光りの入れかえをしていな時間。
どのくらい寝たのかはわからないけど、ほんの少しだけ楽になった気がした。
カーテンの隙間から覘くお月さんは、キラキラきらきら光っている。
目の錯角かどうかはわからないけど、オイラにはそう見えた。
「どした?喉乾いた??」
あぁそういえば何か飲みたいかも。
ぼんやりとした頭でお月さんを見つめながらオイラは頷いた。
なっちが持ってきてくれた水で喉を潤したら少し落ち着いた感じがして、
またオイラの瞼は重たくなった。
オイラの髪を撫でてくれるなっちの手が気持ちよくて『ありがとう』の言葉も言えないまま、
また瞼と瞼が握手をしてオイラのことを眠りの世界に引きずり込んだ。
- 664 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:04
- 翌朝起きたら、昨日よりも身体が軽くなってた。
昨日39度あった熱も37度くらいまで落ちていたし、昨日みたいな酷い状態じゃなくなってた。
なっちは一晩中起きてくれてたみたい。
オイラが起きて体温計を見せたら『よかったぁ』って嬉しそうにクマの出来た顔で笑ってくれた。
オイラは休みだけど、なっちは今日もお仕事。
ばたばたと動き回って朝食の準備をしてるなっちの後ろ姿に『自分の分は
自分でやるからいーよー』って言ったら、『ダメ、直りかけが一番
危ないんだからしっかり寝てなさい』って怒られた。
なっちの作ってくれたお粥はおいしかった。
- 665 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:05
- その日は1日中寝てた。
こんなにもベッドの中にいたのってすごく久しぶりで、
あまりにも寝過ぎたせいか、それで身体が痛くなった。
夜になる頃には熱もほとんど引いて、残すは鼻水!みたいな状態。
いや、まぁ熱が完璧に下がったワケじゃないんだけどね。
それでも全然調子がよくなっていた。
風邪ひきオイラが隣で寝てたら、健康なっちが風邪をひいてしまう。
そんな理由でオイラは久方ブリになっちとは違うお布団でおねんね、おねんね。
なっちは『別にいーよー』って言ってたけど、それはオイラが許しません。
ベッドだってオイラ絶対使わないから。
つっぱり続けるオイラになっちはやっとこさ諦めてくれたみたい。
『ん、じゃぁおやすみ』って言ってすぐに寝ちゃった。
- 666 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:06
- 昨日ずっと起きてくれてたんだもんね。
なっちの寝息を聞きながら、オイラはまだ言っていなかった言葉を思い出した。
何だか今言わないとまたすぐ忘れてしまう気もする。
でもなっちはもう寝てる。
・・・。
うん、まぁいっか。
明日なっちが起きたらまた言おう。
「ありがとね、なっち」
その後、オイラもすぐに睡魔さんに捕まった。
- 667 名前:矢口真里さんと安倍なつみさん 投稿日:2003/11/07(金) 12:07
- こうやって一緒に暮らしてると、あんまし感じることも少ないんだけどさ、
なっちにはいつも何かもらってる気がするんだよね。
元気だったり幸せだったり優しさだったり温もりだったり。
『ありがとう』に沢山の気持ちを込めてなっちに『ありがとう』を言おう。
ちょっぴり照れくさいけど言ってみよう。
『ありがとう』
「何だ?矢口また熱でたのかい?」
・・・そりゃねぇよなっち。
- 668 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/07(金) 12:10
- 更新しました。
一応ちょっとずつ消化中のつもり。
>sai様
またーりまたーりがもっとーです。
なんて言ってみるものの、マターリしすぎて先にすすめない罠(苦笑)
マターリ空気を奪ってしまうと何もなくなってしまいますからねぇ。
でもなぁマターリです。
いつものごとく(w
- 669 名前:sai 投稿日:2003/11/07(金) 13:29
- 温かい。すごく温かい二人。こういう関係って本当に
うらやましかったり。にしても作者さんマタ−リて
言葉使いすぎ(w でも、マタ−リ頑張ってください
- 670 名前:token 投稿日:2003/11/07(金) 21:18
- 更新お疲れ様です。
ああ、イメージ的にいつも元気な矢口さんが・・・・・。
矢口さんにとって、なっちの存在は大きいんでしょうね。
もちろんその逆も、でしょうけど。やっぱ素敵な二人ですね。
では、私もマターリお待ちしています。(w
- 671 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:30
- 「よ〜しこ、あ〜そ〜ぼ〜」
「あのさぁ、いい加減ノックとか覚えようよ」
『ニヒヒヒーッ』って笑ってこんにちは。
はい、こんにちは。
日曜休日外は晴天。
行進するには絶好調。
お絵描きするにも絶好調。
ついでにごっちん這いずりすぎ。
「何描いてんの〜?」
べたべたベタベタ行進行進。
僕の背中に張り付いて、覗き込む込む日曜晴天。
- 672 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:31
- 「あ、これよし子のお父さんとお母さんとよし子じゃん」
日曜晴天本日完成絶対完成。
ってか今完成。
「できたー!!」
『両手を上げて万歳をしたら、ごっちんが『おぅ』と言って転げ落ちた。
あ、ごめんね。
ごっちん変な格好で倒れてるけど大丈夫?
時間を越えた家族写真。
それがこうして目の前に。
達成感と充実感。
そんでもってちょっと感じる喪失感。
- 673 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:31
- 「んぁぁすごいねぇ、そっくりだねぇ」
ごっちん、それじゃ絵が天地逆さまに見えないかい?
いい加減落ちたままの体勢でいるのやめたら?
「よしこ〜、助けて〜」
・・・はいはい、手のかかるお嬢ちゃん。
-----------
--------
-----
「じゃぁさ、新しいお父さんがここに来るんでしょ?」
「そうだね、母さんがそう言ってたから」
「じゃぁさ、よし子と新しいお父さんは一緒に住むんでしょ?」
「そうだね、僕が出ていかない限りね」
「じゃぁさ、よし子はその人のことを『お父さん』って呼ばなきゃいけないんでしょ?」
「そうだね、きっとそう呼ぶんだろうね」
「ふ〜ん」
「ふ〜ん」
- 674 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:32
- 絵を描いてくれって母さんに言われて、描いてる時から何となく分かってたんだ。
僕は反対するワケでもなんでもないし、否定するワケでもない。
むしろ母さんが幸せになってくれるならそれでいいって思ってる。
父さんが他界しちゃってから、ずっと1人で僕を育ててくれて、
ずっと1人で頑張ってたの知ってたから。
母さんは父さんのこと、本当に愛してた。
それは子供の僕が見ていても分かることで。
そんな母さんが新しく再婚する相手っていうのは、やっぱりどっか気になることで。
僕は父さんも母さんもすごく好きだったし、すごく好きだから、何て言うんだろう。
何か・・・うん、何かね。
でも、僕は母さんが選んだ相手だから、ちゃんといい気持ちで迎えたいって思ってる。
だからさっき絵を母さんに渡して、再婚の話しをされた時も
そんなに動揺もしないで聞けたんだって、そう思ってる。
相手の名字は同じ『吉澤』
その言葉だけがすごく頭に残った。
- 675 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:33
- 階段を上って部屋に帰ったら、ごっちんが床に座り込んで僕を迎えてくれた。
何も言わないし・・・本当何も言わないし。
でも、ごっちんの目は『大丈夫?』って僕に信号を送っていた。
「よし子、後藤今ここでお昼寝するからちょっとクッションかりるね」
「寝るなら僕のベッド使っていいっていつも言ってるじゃんか」
「後藤もいつも言ってるでしょ?あれはよし子のベッドなの。後藤のベッドはここなわけよ」
そう言ってごっちんはクッションを抱きしめてごろんと床に横になった。
「・・・風邪ひいたって知らないからね」
随分と前から交わしている同じ言葉の同じ台詞。
今日だけは違う温かさ。
昔から変わらない僕らの間。
僕が落ち着くまで、隣で居眠りをしながら待ってくれるのは変わりなくて、
そんなごっちんの優しさに甘える僕も変わりなくて。
- 676 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:34
- 絵の具を片付ける前にごっちんに布団をかけて、
僕はベッドに座り込んで窓から空を見上げた。
日曜休日外は晴天。
見上げて見上げて雨が降りそう。
ごしごしゴシゴシ擦ったら、雨はどうにか消えてくれた。
本日休日日曜晴天。
膝抱え小僧の空模様。
日曜休日軽く曇り。
膝抱え小僧の雲模様。
「も〜い〜かい」
「ま〜だだよ〜」
居眠り姫の呟きで、思わず笑う心模様。
曇りの空も何処かに消えて、いつか輝く空模様。
まずは挨拶こんにちは。
そしたら笑顔でこんにちは。
- 677 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:34
- がっちり握手でちょっとずつ、晴れていくよね空模様。
雨降り万歳し晴天万歳。
「も〜い〜かい」
空は毎日変わっていくから、僕も毎日変わっていく。
ちょっと嘘かもしれないけれど、いつかはきっと晴れ模様。
「も〜い〜よ〜」
歩いて歩いてごっつんこ。
壁にぶつかりゃ何とかしよう。
本日休日日曜晴天。
膝抱え小僧の空模様。
「よ〜しこ、あ〜そ〜ぼ〜」
本日休日日曜晴天。
燃える戦い、いざゲーム。
- 678 名前:日曜休日空模様 投稿日:2003/11/12(水) 11:35
- 健康不良の遊びかな?
いやいや、燃えよう、たまには燃えよう。
居眠り姫の呻き声。
何だい何だいまだまだやるかい?
ほうほう来るならどんと来い。
本日休日日曜晴天。
明日はきっともっと晴天。
僕の心の空模様。
絵の具は床に転がって、空に輝くお星様。
沢山沢山いるお星様。
いつも見ていてくれてありがとう。
いつも側にいてくれてありがとう。
これからもよろしくね。
僕も空を見上げているから。
僕の心の空模様。
晴れでも雨でも曇りでも。
きっときっと僕自身。
僕の心は僕自身。
- 679 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/12(水) 11:36
- 更新しました。
ちょっと調子が違う感じは日記風味とでも思っておいて下さい(苦笑)
>sai 様
(;‘Д‘)<きょ、強調したかった・・・。
確かに(w
随分と使ってましたね。
改めてみてちょっとびっくりしましたわ。
ちょい更新スピードがダウンしそうな今日この頃。
マターリいきます(苦笑)
>token 様
やぐなちの関係好きなんです(w
どっちにとっても大きな存在っていうのは変わりないでしょうね。
しかし原因の一つを作ったのはなっちな罠(苦笑)
マターリいかせていただきます。
そう、マターリ・・・
( つДT)<きょ、きょ・・・強調したかった・・・。
- 680 名前:sai 投稿日:2003/11/12(水) 23:57
- 小説というか、詩に近い感じですね。描写が
綺麗で好きです。眠り姫って表現いい(w
- 681 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:27
- 「あいぼ〜ん」
「ん?あ、のの」
夕方、電信柱の影が伸びる時間。
高校時代のようにいつも一緒じゃなくなって、こうして偶然会うことも少なくなった2人。
いつの間にか大人になって、いつの間にか違う顔をするようになった2人。
「何だか久しぶりれすね」
「そうだねぇ、1週間ぶりくらいか?」
「うん、でもやっぱあいぼんの標準語ってちょっと違和感」
「ウチもののの舌ったらずぶりが消えかけてるの聞くと悲しくなるわ」
前みたく同じ髪型じゃなくなって、前みたく同じような服じゃなくなって。
変わっていく中で、お互いがお互いの中にいないことをちょっと悲しく思ってみたり。
そんな2人の伸びる影が、肩を並べて歩いていく。
- 682 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:27
- 久しぶりに手をつないで歩いて帰った。
甘えん坊なのは変わりがなくて、どちらかともなく手を握って。
ちょっとしたことで笑えいあえる関係も変わってなくて。
そんな2人の伸びる影が、ちょっと重なって歩いていく。
「あいぼんは明日朝から授業れすか?」
「んにゃ、明日は3限目から。ののは?」
「ののも明日1、2限目が休講になったから3限目かられす」
お泊まり決定。
夜更かし決定。
交わさなくても交わせる言葉を持った友達っていうのはきっとこの人だけなんだろう。
辻も加護もそう思った。
離れていても、連絡をとっていなくても、絶対会えるってわかっているから。
絶対的なんてモノじゃないけれど、消えない絆は見えているから。
- 683 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:28
- 「あいぼん、太陽をいっぱいあびたのののお布団がいいれすか?」
「のの、太陽をいっぱいあびたウチのお布団がいいか?」
どっちも太陽いっぱいなら、決めてみましょうジャンケンで。
「じゃぁ今日はののん家れすね」
「んだね、じゃぁ次はウチにしよう」
手を繋いで振って歩けば、きっともっと楽しくなる。
長い髪と、ちょっと長い髪。
歩いて揺れて跳ねて揺れて。
「この間ね、新しいクッション買ったんらぁ」
「じゃぁそれウチとった〜」
「へへっ、ちゃんと2つ買ったから平気れすよ」
フラフラ歩いて途中電信柱にぶつかりそうになること数回。
お隣さんのワンちゃんに御挨拶して、また後でねぇって一度分かれて。
今日も夕日は昇って降りて、お日様やお月様がキラキラきらきら輝いている。
- 684 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:28
- 帰ってただいまを言ったら手を洗ってうがいして、お部屋に入ったら部屋着に着替えてスタンバイ。
多分あいぼんはすぐにやってくるはずだからさっさかさっさか着替えちゃおう。
早く日が落ちるようになったからねぇ、もうすぐ白いお月様が金色に輝き出すんだろうなぁ。
今夜はちょっと大人っぽくそんなお月様眺めながら語っちゃったり何かしhゃったりしちゃおう。
下からピンポ〜ンって聞こえて早くも訪問者の御登場。
長いながーい夜が始まって、早いはやーい朝がやってくる。
いつまで続くかなんて考えたこともないしわかんなけど、これからもずっとずっとよろしくね。
こんなこと言ったらどんな反応するのかなぁ。
ちょっと考えて辻は笑った。
お月様は今日もニコニコ輝いていた。
『今日も明日も晴れれすね』
辻は『はぁ?』って顔をする加護に向かって今出てるお月様のようにニコニコ笑った。
だから加護もつられて笑った。
今出てるお月様のようにニコニコ笑った。
- 685 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:30
- 同じ毛布にくるまって、ベッドに座って手にコップを持って。
中から湯気立つスープ。
辻はさっき考えた通りに、お月様を眺めながら喋れる場所に座った。
ちょっとした大人気分でも味わっちゃおうっかなぁって加護に言ったら、
加護は苦笑を浮かべながらも『はいはい』なんて言いながらも楽しそうに笑った。
部屋についてる時計の音がカチカチかちかち響く中、色違いのクッションが
机からの光りに照らされている。
ついている電気はその机の光りだけ。
月明かりは部屋に届く程強くはないから、ほとんど真っ暗のような部屋で
2人はぼーっと月を眺めた。
「背、同じくらいだったのになぁ」
「高校生くらいからののの方がちょこっと大きかったれすよ」
「う〜ん・・・そうなんだけどぉ」
加護はコップを両手で持って、う〜んう〜んと考え込む。
隣じゃ辻がほげ〜ほげ〜と加護を待つ。
チクタクちくたく時計が進んでも加護はやっぱりう〜んう〜んと考え中。
ちょっと飽きた辻が加護の太腿をぺちぺち叩きはじめる。
チクタクぺちぺちチクタクぺちぺち。
- 686 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:30
-
・・・。
「・・・わからん」
「じゃぁそのままれいいのれす」
辻はぺちぺち遊びが気にいったのか、ぺちぺちぺちぺち持続中。
痛いワケでもないからされるままになってる加護は、楽しそうにぺちぺち自分を叩く辻を
コップを覗くフリして覗き見てみた。
いつの間にか自分よりももっと伸びた背。
いつの間にか大人っぽい顔付きになって(自分もだけど)
いつの間にか爪を噛むクセも直っていた。
でも無邪気に笑うその表情は自分が知ってるままで。
毛布の中でぴったりくっついて、スープをこぼさないように気をつけながら自分の太腿を
叩いているその姿に思わず頬の筋肉もゆるゆる状態。
そして加護の太腿叩きにちょっと飽きた辻は、今度はスープをふーふーしながら飲んでいる。
- 687 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:31
- 今までよりもちょっと離れて育っているから、何か違和感は沢山あって、
自分の知らないうちに大人になっていく姿はかなり加護的には複雑モード。
気になったのはただ身長の差だけなんかじゃなかった。
それだけじゃなかった。
でも辻は言ってくれた『じゃぁそのままれいいのれす』って。
言葉の指す意味は自分の考えていることとは違うかもしれない。
それでもいいって思った。
無邪気に笑っている辻の顔を見たら『そのままでも大丈夫だ』って思った。
「スープ冷めちゃうよ」
同じ毛布にくるまって、別に沈黙も嫌な感じがしなくて、
同じ味のスープを飲みながらひそひそ話しなんてしちゃったりして。
『やっぱしののはののじゃん。』
そんな結論。
こんな結論。
最高の結論。
- 688 名前:手を握って 投稿日:2003/11/15(土) 00:32
- 大人になっていくのは止められなくて、止めたくなくて。
できればずっとこうして過ごしていきたい心情で。
でも思った。
ちょっとくらい離れていても全然大丈夫だって。
そう思って、そう確信した。
「う〜んやっぱし旨いなぁ」
「れしょ?もっと熱いうちに飲めばもっとおいしかったのに」
今日もお月様は輝いている。
キラキラきらきら輝いている。
うちらも絶対キラキラきらきら輝いてる。
どっちかが曇り空だったら、どっちかがお助けマンになる。
そんでまたキラキラきらきら輝こう。
負けないよ。
お月様には負けないよ。
ウチの相棒は強いんだからな。
ののの相棒は強いんだからな。
2人は強いんだからな。
今日もお月様は輝いている。
ウチらはもっと輝き続ける。
- 689 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/15(土) 00:34
- 更新しました。
次回から『僕と君との物語り。2』のラストに向かって一直線です。
>sai様
ごっちんのイメージですね。
眠り姫。
最初の頃から変にそんなイメージを作ってたもんで、こんな感じでした(w
良い眠り姫です。
最高に。
- 690 名前:SINKI 投稿日:2003/11/15(土) 14:52
- いいですね。
なんだかほほえましくなってきます。
にしてもなんだかよっすぃーと梨華ちゃんの展開が、、、。
これからも甘いやつでよろしく。
- 691 名前:クロイツ 投稿日:2003/11/18(火) 07:45
- 癒され中…。
ああ、癒されました…。登校前に良いモン読ませて頂きまして、本当に感謝感激…。
いいですね、この二人!!
これから先もずーっとこんな感じなんでしょぉねぇ♪
てゆーかこの二人が並んでるところを想像しながら読んだら…ちょっとやばい位に素敵でしたYO!!
ああ〜。心がほんわか致しました!!
次回も楽しみにしております!!
- 692 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:32
- 「吉澤くん、今何考えてる?」
「何だと思いますか?」
夕暮れ時、ジーパン姿で散歩道。
『w圭ちゃん結婚パーティ』までちょっと時間があったから、僕らは思いでの沢山詰まっている
土手をフラフラ一緒に歩いている。
パーティー参加者は全員ジーパンがお決まり事項。
だから僕らはジーパン姿でふらふらフラフラ。
ジーパンの理由は『着飾るのは絶対禁止!』というW圭ちゃんからお言葉があったからだ。
夕暮れまでもうちょっと。
最近じゃ陽も大分短くなった。
まぁ10月後半にもなればそうだよね。
- 693 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:33
- 土手を歩いている僕らの横では太陽がどんどんと沈んで行き、空の色はオレンジ色になっていく。
こんな時間を外で散歩して過ごせるっていうのも貴重だな。
・・・うん。
歩くペースと同じくらいゆっくりと沈んでいく夕日は、もうすぐこの空の色を変えていく。
白とオレンジと紫と黒と青。
不思議な色の大きなパレット。
独りじゃ全部を染めることも出来ないんじゃないかなぁって。
染めようって思ったワケじゃないけど、もし染めようとするなら無理だなって思った。
「そうだなぁ・・・今日の運転は私で本当に大丈夫だろうか?みたいなこと」
そうだ。
今日の運転は石川さん。
実家からすでに車は乗って持ってきていて、今は僕の家の前に止めてある。
慣れた道だから走りたいんだって。
懐かしい道を走るのが好きなんだってさ。
「違いますねぇ。外れです」
- 694 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:34
- ちょっと頬を膨らませながら僕の横をゆっくりと歩く石川さん。
真剣に考えているんだろう。
でもね、『僕がさっき考えていた正解って何だろう?』って思うくらいに
あまり自分でもわかってないんだ。
頭の中ではくるくるくるくる色んなことが回っていて、実はちゃんと覚えてないから。
「なんだろ〜な〜」
「なんでしょ〜ね〜」
空の色が完璧に変わり始めたくらいに、僕らはくるりと向かう方向を変えて元来た道を歩いてく。
さっきと同じくらいゆっくりと歩いて、ちょっと冷たくなった風に肩をすくませながら。
「もう冬ですねぇ」
「そうだねぇ、秋っていうよりも冬に近くなってきたよねぇ」
薄いシャツ1枚じゃ今日はちょっと寒い感じ。
家帰ったらパーカーとか持ってこよう。
これじゃ夜はもっと寒くなってるはずだもん。
ちょっと強めの風が吹くと、あぁ木枯らしだぁなんて思う。
落ち葉はカラカラ音をたてて地面の上を滑るように飛んでいく。
木の葉もカラカラ音をたてて風に吹かれてなびいている。
葉の色が緑だったり赤だったり、季節の変わり目はずいぶんと長いこと続くものだ。
- 695 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:34
- ゆっくり歩いていたつもりでも、行きよりも帰りの方が早く感じる不思議な感じ。
いつでもこの感じはあるもので、今もそんな感じ。
この坂を下りて、もうちょい歩けば僕の家だもんなぁ。
長いと思う距離もそうでもない。
1人じゃないと、そうでもない。
「正解は?」
「正解?」
「そ、さっき吉澤くんが何考えてたのかなぁってやつ」
街灯が少なくいから、気をつけて坂を下る僕らを時折通る車のヘッドライトが一瞬照らす。
人口光のつくり出す一瞬の絵。
車が通った後に吹くかすかな風と、自然と吹く柔らかな風。
その両方が僕らの髪を遊んでいた。
「実はあんまし覚えてないんです。だから正解なんてないですね」
『なんじゃそりゃ』なんて笑って言って、乱れていた髪を直してくれて。
『ありがとうございます』の代わりに同じように髪を直して。
ちょっと寒くなったせいかな。
僕らは自然に近付いて歩いた。
- 696 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:35
- 「行く前に何か上着持ってきますね。この格好じゃさすがに寒いと思いますから」
「うん。ありがとね」
時間が経つにつれて気温はどんどんと下がっているようだった。
ここのところ、微妙に暖かかったから今日の寒さは結構キク。
天気予報で『今夜は冷える』って言ってたのは外れでもなさそうだ。
「じゃぁ適当に何か持ってくるんで車で待ってて下さい」
玄関の扉を開けて階段を急いで上がって適当に掛けておいた服を掴んで外へと一直線。
一応もう一度ガスの元栓が閉まってるかチェックしてから鍵を掛けて、
1人でぼーっと運転席に座っている石川さんの横へ滑り込んだ。
「おまたせしました」
「いえいえ、そんなにお待ちしてませんよ」
「じゃぁぼちぼち行きますか」
「了解です。がっちりシートベルトよろしくです」
目指す先は『木漏れ陽の店』
のったり走っても十分間に合う時間だからゆっくりまったり走りましょう。
- 697 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:36
- ちょっと窓を開けたら冷たい風が入ってきた。
ラジオから流れてくる音楽ももうあまり夏の音楽も流れなくなったし、発売される音楽や
リクエストされる音楽も夏から秋冬へと移っている。
僕の聴く音楽は夏の時期とは変わってきているし、 やっぱしもうすぐ冬なのかなぁって思った。
そして音楽と季節っていうのは昔から切っても切れない縁だなぁとも思った。
----------
--------
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渋滞にも引っ掛からずに走り続ける車。
少しボリュームを絞ったラジオからは聴いたことのある邦楽の曲がかかっている。
静かじゃないんだろうけど、静かな夜。
走る車の光るヘッドライト。
夜ならではの画。
ゆったりとラジオから流れる音楽。
車の心地よい振動。
隣で静かに唄う石川さんの声。
会話も少なめにゆったりとしていた僕は、見事に自然と眠りに落ちていってしまった。
- 698 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:36
- そして僕が目を覚ました頃には、もうすぐお店に到着という状態。
随分と寝てしまったらしい。
お店には圭ちゃんとカオリさんを除く全員がすでに揃っていた。
見事皆ジーパン姿。
ついでに雅恵さんとめぐみさんもジーパン姿。
さすがにちょっと笑ってしまった。
何か変な会合みたいだもん。
「もうすぐ圭ちゃん達着くってさぁ」
「おう!じゃぁ皆手にクラッカー持ってー」
カオリさんからの電話を受けた安倍さんの声に矢口さんがすぐさま反応して
全員にクラッカーの入った箱を回す。
王道かもしれないけど、やっぱり一番最初はこうして迎えたいっていうのは全員の意見だった。
雅恵さんもめぐみさんも手にクラッカーを持って今か今かと待っている。
やっぱしあったかい店だな。
うん。
そして、少ししてから車が入ってくる音がして、車の扉が閉まる音がした。
- 699 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/19(水) 03:37
- 「「「「「「「「「「おめっとさぁぁぁあぁん!!」」」」」」」」」」
一斉に鳴るクラッカーの音に、お店に入ってきた圭ちゃんとカオリさんは一瞬固まった。
それでも最後に出遅れたごっちんの鳴らしたクラッカーの音がパンッと鳴ると、
ニヤリと笑って照れたように笑って2人して手を繋いで頭を下げた。
「おっしゃ!!今日は飲むぞこらぁぁぁぁぁ!!!」
「いちーちゃんはいつも飲むぞこらぁぁ!でしょ」
長い夜は始まったばかりだ。
僕の横では石川さんが楽しそうに手を叩いて回っていた。
うん、長い夜は始まったばかりだ。
- 700 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/19(水) 03:38
- 更新しました。
多分『君と僕との物語り。2』は後4回くらいで終わる予定。
あくまでも予定。
はい。
>SINKI様
辻と加護はみていてほのぼのするんです。
ので、ここでもほのぼのですねw
そういえば随分といしよし不足だったことに今さら気付きました(苦笑)
甘いやつですか。
頑張ってみます(w
>クロイツ 様
癒され解凍中ですかね(w
変わって欲しくない変わらない所ですかねぇ。
脳味噌フル回転で20歳になった辻さんと加護さんを想像。
えぇ、1人激萌えでした(w
想像は力ですね(爆
- 701 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:28
- わいわいガヤガヤ。
文字通りわいわいガヤガヤ。
矢口さんと安倍さんの視界進行の元、結婚パーティーはさくさくホクホクと進んでいく。
全員からの今さらながらの祝辞やら、紗耶香と矢口さんによる小ネタ漫才やら。
後は何故だかあんぱん早食い対決やら。
誰がこの企画考えた?っていうくらい意味わかんないこととか沢山織りまぜられた結婚パーティー。
ちなみに僕は強制的に烏龍茶5杯早飲み大会に参加させられた。
で、見事圭ちゃんに負けた。
そんでもって罰ゲームで尻文字。
・・・顔から火が出る程恥ずかしいとはこのことだ。
こんなの空気にノリながらじゃないと出来ないって・・・。
・・・なんで平仮名で書かせるんだよ。
それも『ぬ』とか『ね』とかまるッこいのが入ってる文字ばっか・・・。
- 702 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:28
- 皆笑いすぎだし(冷静に見られる方が嫌だけどさ)
あぁ絶対僕の顔真っ赤だって。
ってか今だって絶対に真っ赤だって。
矢口さんなんて笑いすぎて進行できなくなってるじゃん。
「あぁマジ最高。あの吉澤の尻文字だぜ?こりゃビデオでもまわしときゃよかったなぁ」
「ちょ、紗耶香!何言ってるのさ!!」
「んぁ〜よし子の顔まっかっか〜。あれだねタコからーだねタコからー」
げらげら笑うごっちんと紗耶香とその他大勢否全員。
もう石川さんも飯田さんも泣く程笑うことないじゃん。
ってか辻と加護なんて号泣じゃんかよ。
しかしなぁ・・・すごい皆テンション高いんだよなぁ。
- 703 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:29
- 今回はノンアルコール結婚式でもある。
皆運転とかあるし、さすがにここのお店で寝るワケにもいかないから。
でも酒無しでここまであがるテンションもすごい。
Tシャツと薄手のシャツ1枚だけど、結構暑いもん。
何て言うのかな?
空気が暑い?空気が熱い?
体中から熱気が出てるって感じかな。
ともかくアツイ空間なんだ。
「はいはいはいは〜い!皆さんちゅうも〜く!
大谷めぐみ特製特大オムライス完成だよ〜!!」
で、そんな空気をより一層盛り上げたのは『どうやって作ったんだ?』
と思うようなめぐみさん特製特大オムライス。
まさに文字通り特大オムライス。
それに合わせた特大のお皿。
それもかなり美味しい。
烏龍茶で満腹だった僕のお腹にもすいすい吸収されていく。
「あ、そうだ。店内BGM好きなのかけていいよ」
- 704 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:30
- オムライスにかぶりつきながら今さらながらの発言をしたのは雅恵さん。
僕と同じツッコミをナイスタイミングで放ってくれたのはめぐみさん。
いいねぇ、こういう微妙は間。
裏ツッコミをして満足そうな顔をするめぐみさんが輝いてみえます。
『いい仕事したぞ!』っていう満足感が溢れ出てます。
で、ボケ−ッと光り輝くめぐみさんを見ていたら、
隣の隣の隣から微かにため息が聞こえてきた気がした。
幻聴?
そう思えるくらいの小さな小さなため息が聞こえたんだ。
「よっすぃー、CD何か持ってきた?」
「ばっちりです。ちゃんと用意してきましたよ」
一応なんちゃってBGM係りだった僕。
『なんちゃって』っていうのは別に最後ほ方に行われるダンスまで
音楽はお店のBGMでもいいんじゃないかってことになってたから。
でもまぁかける事もあるんじゃないかなぁって思って、なんにしようか考えながら
がさごそ部屋の中からあさってきたんだ。
- 705 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:34
- オムライスに群がっている人の輪から外れて、ちょっと気温の低いお店の隅へ。
ぼてぼて置いてある鞄の下の方に埋まってた自分の鞄を引っぱり出して、持ってきたCDを取り出した。
CDのケースはちょっと冷たくなっていて、やっぱし今日は寒い日なんだって思った。
「とりあえずBGM用にはこれ持ってきたんですけど」
「おぉ、何か懐かしいなこれ」
僕の後ろにちょっこり座っていた矢口さんは、渡したCDを見ると
『懐かしー懐かしー』を連発して僕の頭をぽふぽふ叩いて、最後に一言
『あんまし石川にため息つかせんなよな』と言ってめぐみさんにCDを渡しに行った。
僕はその場で少し、動けなくなってしまった。
「よっちゃ〜ん、早く来ないとあいぼんに全部食べられちゃうよ〜」
手にもったスプーンを振り振りした辻が僕を呼んでくれるまで、その場でぴきっと固まってしまった。
『あんまし』これって一体どれくらいなんだろう。
そう考えたら固まってしまったんだ。
- 706 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:36
- 「どうした?吉澤〜早くこっちゃこ〜い」
「あ、うん」
辻と同じようにスプーンを振り回して僕を呼んでくれた紗耶香が、隣のカオリさんに
『スプーン振り回すんじゃないの!』って怒られてる姿を
僕はちょっとその場で見つめてから皆の輪の中に戻った。
オムライスはさっきよりも大分減っていて、
辻の口の回りにはさっきよりも大量のケチャップがついていて、
その横で加護がこっそりと自分の口についていたケチャップを拭っていた。
「ほら、辻も口のまわりちゃんと拭いちゃいな。加護もまだ横についてるよ」
2人の頭に手を置いたら、何かちょっと落ち着いた自分がいて、
横目で見た石川さんが優しそうに笑っていて、そして皆も優しそうに笑っていて。
きっと今僕もこんな風に笑っていられるのかなって思った。
皆がいてくれて、こうやって笑ってるんだろうなって思った。
- 707 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/21(金) 01:37
- 「はい皆さ〜ん!もっかい注目ねぇ」
そしてめぐみさんの明るいもう一声。
手に持たれたのは
「大谷めぐみ特製、激旨特大デザートとお菓子の盛り合わせせっと〜!!」
これでもかっ!!っていう笑顔で高々と持ち上げられたお皿の中には、
言ったタイトルそのまんまのデザートとお菓子がテンコモリ。
とどめだね。
とどめ。
お腹へのとどめ攻撃。
それでも皆でちょくちょくつまみながら食べれるこの『激旨特大(以下略)』は
大好評だったのは言うまでもないだろう。
- 708 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/21(金) 01:38
- 更新しました。
マターリ。
- 709 名前:sai 投稿日:2003/11/21(金) 14:29
- 706の最後の部分の表現がすごく好きです。この寒い季節
に心に響く温かい表現ですね。流石、詩人の作者さん(w
- 710 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:03
- 「んぁ、これマイガールの2の方のサントラでしょ〜」
デザートやお菓子をつまんで皆が好き好きに喋っていた頃。
そうだな、曲で言ったら3曲目くらいになった時。
ごっちんが口いっぱいにするめイカを詰めたごっちんが
天井にあるスピーカーを見上げてほげーと呟いた。
「そうだよ。久しぶりに聴くのもいいもんでしょ」
ちょっと離れた席にいるごっちんは、まだ口ももごもごさせながらニコッと笑って頷いた。
皆がさ、こうやってマッタリとしながら音楽を聴いて、お菓子食べて、誰かと喋って。
好きだな、こういう感覚。
僕はお店の隅の方でぼーっと皆のことを見ながらそんなことを思った。
- 711 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:04
- 今、お店の中央は雅恵さんが空間を開けてくれたから狭いホールみたくなっている。
ずいぶんと前に石川さんの誕生日会で踊った時以来のダンスパーティー。
今夜は久しぶりにその復活の日。
『せっかく久しぶりに皆が集まるんだからやらなきゃダメっしょ』
と安倍さんが張り切ってきりきり動いていた。
「おっしゃ!じゃあ後藤いっちょ踊るか」
「い〜よ〜。あ、でもこのピスタチオ食べ終わったらね」
カウンターの席で口をもぐもぐさせていたごっちんの手を、
紗耶香は強引にぐいっと引っ張ってホールの中心へ。
連れていかれた方のごっちんはピスタチオが食べれなかったことが悔しいのか
頬を膨らませてブーブー言っている。
まぁ、あんまし怒った顔してないけどね。
素直じゃないねぇごっちんも。
「ほれほれ、んな頬に空気入れてると魚になっちまうぞ」
「ワケわかんない」
- 712 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:06
- そんなこと言いながらもびっちりくっついてふらふらフラフラ好き勝手踊っている2人は結構微笑ましい。
『音楽なんだから音を楽しめばいいんだって』いつかそう言って笑っていた紗耶香が
その言葉通りに踊っていて、ごっちんも同じように音を楽しみながら踊っている。
そして後へ続けと言わんばかりに皆がどしどし参戦参戦。
圭ちゃんは加護と、カオリさんは辻と。
矢口さんは石川さんと皆が好きなように踊っている。
そんな皆をさっきと同じように見ていたら、何かをめぐみさんに頼んでいた安倍さんが
烏龍茶を持ちながらこっちに向かってスキップしながらやってきた。
「よっちゃん、梨華ちゃんとは踊らないの?」
『どっこらせ』って言いながら僕の隣に腰を下ろして、持っていた烏龍茶を
口に含んで安倍さんは『ここ、ちょっと涼しくていいね』って言った。
「あぁ、多分。いや、多分踊ると思います」
安倍さんは『そっか』って言うと笑って僕と同じように皆の方を見つめた。
いつの間にかフロアの中央で矢口さんと楽しそうに踊っている石川さん。
揺れるシャツが音楽に合わせて踊っているようで、見ていて思わず目を細めてたくなるような感覚に陥る。
- 713 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:07
- 「よっちゃん、いつかはね、すっごく大きめな勇気がいる時っていうのもあるんだよ」
安倍さんの視線が何処にいっているかっていうのはすぐに分かった。
優しさに溢れた目はきっと全員に向けられているもので、
それでももっと特別な感情を込めた目で見つめているのはあの人だけだ。
「いつまでも続くと思ったら実は全然続いてない道があったり、
大丈夫だなんて思って歩いていたら、気が付いたらひとりっきりだったり。
不安って気持ちはさ、何か突然襲ってくるんだよね」
烏龍茶の中の氷が音をたてて溶けた。
安倍さんの言っている意味っていうのはすごくよく分かっている。
『それでもいいかな』って思っていたから。
何か今じゃもうどんなタイミングで言葉にしていいのかもわからなくて、
いつの間にか見えない壁が出来上がってしまってて。
流されてるワケじゃないんだ。
ただ、今が幸せって感じちゃってるんだよね。
「なっちはさ、よっちゃんの元気のない姿も、梨華ちゃんの元気のない姿も見たくないワケさ。
2人ともさ、すっごいいい顔で笑ってるって思ったら突然暗い顔になったりさ、
何か見ててちょっと心配なんだよね。
だからね、おせっかいかもしれないけどさ、ちょっと気になって言ってみた」
- 714 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:08
- そう言うと安倍さんは走って皆の輪の中に入って行った。
それを合図にしたように音楽が変わった。
『SADEのBY YOUR SIDE』
石川さんの誕生日会でかかった曲。
僕が石川さんにもう一度恋をした日の音楽。
安倍さんは僕に向かって手を振ると、石川さんの肩をちょいちょいっと叩いてバトンタッチ。
石川さんも笑顔で安倍さんとバトンタッチをすると、めぐみさんから飲み物を受け取って
こっちへとやってきた。
「ここ涼しくていぃねぇ」
ちょっと汗ばんだ首筋。
いつもよりも頬をピンク色に染めて、石川さんは笑顔でフロアを見つめていた。
ゆったりと揺れる輪の中に、もう一度戻りたいのかな。
目を細めて皆のことを見ているその視線に少しそんな願いがこもってる気がした。
- 715 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:09
- この前も、こうして誰かがさりげなく僕にキッカケをつくってくれたんだよね。
覚えてるよ。
背中押してくれて、一歩前に進むことが出来たから。
変わったつもりで、あんまし変われてないな・・・僕って。
今回もまたこうやって誰かのお世話さんになってる。
・・・それでもさ
「石川さん、僕らも行きましょうか」
そのキッカケを潰そうとも思わないんだ。
これが最後だから。
次からは僕自身がキッカケを作れるように。
・・・うん。
頑張るから。
そっと手を取る行動が何だか照れくさくて、不器用に笑ったら、
石川さんは『変な顔』って笑って手を握り返してくれた。
「こうやってさ、誰かと踊るっていう機会はあんまり無いもんだよね」
「ですね。僕もこの間っていっても、もう1年以上前になりますけど、あの時が初めてでしたから」
「なんかさ、こういうこと出来るのってすっごくいい仲間って感じじゃない?」
「前から知ってました」
- 716 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:10
- そう言ったら石川さんは『そうだった』って言いながら笑ってくれた。
そして実際に踊りに行こうと思ったら実はけっこうフロアはいっぱいいっぱい。
皆が皆、中心でわちゃわちゃ集まりすぎな感じ。
だから僕らは皆の輪からちょっと離れた、ここで踊ることにした。
『ここ』って言うのは今まで座っていた机の前ってことで、ちょっと寒さを感じるここのこと。
腰に手を回してみたけれど、やっぱりなんだか恥ずかしくて、顔を見られないように天井を見上げた。
木製の天井。
その先にある空。
その先にある星。
遠くて、遠くて、すっごく遠くて。
見えない空を目を瞑ってイメージした。
胸に感じる温もりと、身体に感じる温もりと。
満点の星空の下で、包まれているのは僕。
この温もりを感じているのは僕。
この感じ。
同じような感じを石川さんにもあげたいな。
「・・・石川さん」
「・・・ん?」
「ゆっくり目を閉じて、イメージして下さい」
- 717 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/24(月) 04:10
- 腰に回した手に少しだけ、ほんの少しだけ力を入れた。
いつか、石川さんは暗くなった部屋で怯えたことがあったから。
怖がらないでもいいようにって力を入れた。
「僕らのすぐ上には木の天井があって、その上には空があって、そのもっと上には星がありますよね」
「・・・うん」
「だから今石川さんはその星の下にいます。満点の星空の下です。
周りには色々な色の貝や星や石や砂があって、僕らの足元で光っています。
周りの世界は光りに溢れていて、夜空だというのに少し明るいんです。
・・・その世界は今、温かいですか?」
僕の胸に頭をこつンとのっけて、石川さんは小さく頷いた。
だから僕はもう少しだけ回した手に力を入れた。
「・・・じゃぁそのまま。そのままで僕ともう少しそこにいましょう」
耳に聞こえてくる音楽は『MARIAH CAREYのTHANK GOD I FOUND YOU』に変わっていた。
初めて僕と石川さんが踊った曲。
踊り方とか今でもわからないけど、ただ音楽に身体をゆだねていた曲。
あの頃にくらべたら、少しだけ、前に進んだよね。
きっと・・・・・・絶対。
だからもうちょっと、もうちょっと前に進めるよね。
でも今は、この曲が終わるまではこの世界で一緒にいましょう。
星空の下で。
この、同じ星空の下で。
- 718 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/24(月) 04:12
- 更新しました。
いいかげんホゲホゲしすぎですね。
で、本日のお題。
『へたれなくさくさ吉澤くん』
後2回。
>sai様
温んでいただけたならよかったです(w
詩人の作者かと言われたらそりゃどうかわかりませんが(#`.∀´)
えぇっと、ありがとうございます。
温いお湯は今の季節に気持ちがいいです。
- 719 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/26(水) 11:16
- プログラムの最後から2番目のダンス項目も終了し、残るは最後のスペシャル項目。
多分これが今夜にメインイベントだって言ってもおかしくない。
「ねぇ、カオリまだこのスペシャル項目の内容聞いてないんだけど・・・」
「ん?だからスペシャル項目なんだって」
「・・・紗耶香、それじゃぁカオリ全然わかんないんだけど」
『まぁすぐにわかるよ』と紗耶香はケタケタ笑いながら跳ねるようにして圭ちゃんの方へと向かった。
これが合図だ。
僕らは打ち合わせ通りに動いて、カオリさんと圭ちゃんを囲うようにして並んだ。
圭ちゃんを挟むように僕と紗耶香が立って、カオリさんを挟むように辻と加護が立つ。
カオリさんは、頭のてっぺんに『?』マークを沢山飛ばしながら皆のことを目で追っていて、
圭ちゃんはそんなカオリさんのことをおもしろそうに見ていた。
「本日最後のイベントです」
「はい、それじゃぁ圭ちゃん頑張って」
- 720 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/26(水) 11:17
- 司会者の矢口さんと安倍さんがひょいっと皆の輪に加わって、僕と紗耶香が圭ちゃんの背中を押す。
圭ちゃんは照れ笑いを浮かべながらもゆっくりとカオリさんに近付いて、頭をぽりぽりとかいて
ジーパンのポケットに手をつっこんだ。
「何なに?カオリだけのけもの企画だったワケ??」
「のけもの企画ってワケじゃないれすよ」
「そうそう、ほれっ」
そして今度は僕らと同じように辻と加護がカオリさんの背中をポんッと押した。
まだまだ頭のてっぺんに『?』マークを浮かべて、これから起こることを色々と考えているんだろう。
カオリさんは軽い交信状態みたくなって、ぽけーっと天井を見つめていた。
「お〜い、カオリ〜戻ってこ〜い」
なんて素早き更新技術。
やはり元祖は違うな。
うん。
「吉澤、お前何1人で感心してんだよ」
「いや、なんか最短記録って感じでね」
「は?何だ?わけわかんねぇよ・・・」
- 721 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/26(水) 11:18
- 圭ちゃんの何度目かの呼び掛けで、更新時間ちょっと長めだった
カオリさんがやっとこさ戻ってきて、スペシャルは再スタート。
たしくない咳払いを圭ちゃんがして、ポケットから無造作に手を出した。
「えぇっと、今さらなんだけどさ、これ、あげるよ」
差し出された手に、カオリさんの手が重なる。
何か、圭ちゃんの緊張がこっちまで伝わってきて、僕が結構緊張してる。
そんな僕に気付いた紗耶香が苦笑いを浮かべているのが横目で見えた。
「・・・これって」
「ん、何か指輪じゃない方がいいかなぁって思ってこれにした」
照れ笑いを浮かべた圭ちゃんは、頭をぼりぼりかきながらカオリさんの手をぐっと握らせた。
開かれた指の隙間から細いシルバーのチェーンがするりと落ち、
その部分が照明に当たって綺麗に輝いている。
チェーンが揺れる度に輝く明るい光。
カオリさんは手の中のモノをただジーッと眺めていた。
「・・・圭ちゃん」
「ん?」
「これ、ひょっとして手作り?」
「あぁ、うん。独創性溢れてるっしょ?」
- 722 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/26(水) 11:20
- カオリさんは『そうだね』と言って笑った後、そのネックレスをぎゅっと胸に抱きしめて
『大切にする。ずっと大切にするよ』と言って圭ちゃんに抱きついた。
もちろん起こる周りからの拍手の大喝采。
顔を真っ赤にした圭ちゃんもカオリさんの背中に手なんて回しちゃったりして、
でれでれとだらしなく笑っている。
そして紗耶香の一声で始まったキスコール。
皆の中心で抱き合っていた2人が恥ずかしそうに顔を見合わせて、皆のことを見回してから、
圭ちゃんがカオリさんの口に自分の唇を落とした。
その瞬間、ごっちんも矢口さんも安倍さんも石川さんも辻も加護も雅恵さんもめぐみさんも
そして僕も、皆が指笛鳴らしたり、手を叩いたり大盛り上がり。
ちゃんと聞こえなかったけど、圭ちゃんはカオリさんの耳元で何か囁いていた。
カオリさんの表情が恥ずかしそうに、でもすごく嬉しそうに輝いていたから
何となく囁いた言葉が分かった気がした。
こうして、祝福と冷やかしとの入り交じった大歓声の元、W圭ちゃんの結婚パーティーは幕を閉じた。
- 723 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/26(水) 11:20
- その後は、全員で保田夫妻を見送って、お店の片付けの手伝いをしてから皆それぞれ帰って行った。
最後に残った僕と石川さんは『もう大丈夫だよ』と言う大谷夫妻の言葉を何度も聞きながら、
散らかった店内の掃除をした。
「ねぇ、吉澤くん」
「ん?どうしたんですか」
「掃除終わったらさ、ちょっとドライブしない?」
石川さんはニコニコと笑ってゴミ袋の口を縛っている。
断る理由も何もないし、ドライブもしたいからちろんOK
僕が頷いたら石川さんは嬉しそうにスキップをして『じゃぁ運転はまかせて!』
何て言いながら鼻歌を唄いながらゴミ袋を持ってカウンターの奥へと行ってしまった。
長い夜はもうちょこっと続くみたいだ。
- 724 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/26(水) 11:21
- 更新しました。
後1回。
- 725 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/26(水) 12:27
- あと一回などと言わず、
何回でも続けてくださってよろしいですのよ?
終わっちゃうのやだー!
- 726 名前:alone 投稿日:2003/11/27(木) 01:00
- 初めまして、aloneと申します。
あとわずかで終わりと知り、その前にと思って
初めて書込みさせていただきました。
『2』がはじまったころに見つけまして、
前作を一気に読破するとともに、
リアルタイムで楽しませていただいております。
娘。小説にハマッて以来いろいろ読ませていただきましたが、
この作品は最高ですね!!ホント大好きです。
特に質感というか「ほのぼの」とした雰囲気がとても
僕好みです。
あと僅かで終わりとのことで、少し残念ですが
それも楽しみにさせていただきます。
創作活動はとても大変でしょうが、今後も頑張って下さい。
- 727 名前:token 投稿日:2003/11/27(木) 01:33
- 更新お疲れ様です!
以前出てきた『夢空間。』の章とはまた違った趣の
楽しげで素晴らしいパーティーでしたね。
各キャラの元気な様子が目に浮かびますYO。
最終回をいつもよりも期待して待ってます。
- 728 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:26
- 掃除を終えた僕らは、雅恵さんが出してくれたコーヒーを飲みながら、少しまったりして車に戻った。
エンジンをかけて、シートベルトをして、少し窓を開けて、行とは違うCDをセット。
流れ出した曲はいつか僕が貸したCDだった。
ゆっくりと走り出した車はそのまま石川さんの秘密の場所へと出発をした。
『何処に行くんですか?』って言っても『内緒』って返されて、『あのぉ』って言っても
『内緒だってば』って返されて。
どうやらかなり内緒らしい。
普通の会話をしようとしても『内緒なのよ〜』と言われる。
だから僕は唄えない歌をCDに合わせて唄った。
そんなに上手くないかもしれないけど、唄った。
そしたら石川さんも一緒になって唄ってくれた。
だから僕らはずっと一緒に唄っていた。
会話するみたいに唄って、唄うようにして会話した。
何だか新しい発見。
ちょっと照れるような歌詞も歌に合わせて言ってみたり、言われてみたり。
英語だったから意味がよく分からないのもあったけど、それでも僕らは唄っていた。
石川さんの『秘密の場所』に着くまでずぅっとずっと。
- 729 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:27
- ----------
--------
----
『ちょっとだけ歩くからねぇ』
車を降りてそう言う石川さんの後ろを歩くこと約10分。
ガサガサがさがさ草木をかき分け、道とも呼べないような道を歩いて登った。
文字通り『登った』
僕には丁度いいサイズの大きさのパーカーと、石川さんには大きいサイズの僕のパーカー。
車を下りた時はこれでもちょっと寒いくらいだったのに、どうにも軽く汗をかいてきた。
長袖長ズボンじゃなきゃ虫刺され万歳。
葉っぱよけたり葉っぱ押さえたり。
目の前を歩く石川さんの背中は何だかちょっとカッケ−もんで。
『ちゃんと私についてくるのよ!』
みたいなちょっと保田さんちっくなオーラが出ていた。
=僕ら、何か変わっていったよね=
見つめる背中。
いつもいつも見つめてた背中。
僕よりも小さい背中なのに、すごく大きな背中。
- 730 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:27
-
=君は、すごく綺麗になっていく=
遠くに離れては、近付いて、掴みそうになるのにすっと離れられてく。
空を切る手に握られているのは柔らかい空気だけ。
そう、いつも、いつも。
カタチの残らない手の中で、踊り続ける気持ちがいるんだ。
「私が小学生の時にお父さんに連れて来てもらったんだ」
立ち止まった背中を風が優しく、そして激しく通り抜け、石川さんのパーカーが風に
吹かれて舞っていた。
そこから見える世界は輝くネオンの美しい世界。
ここから見つめる世界は僕が今まで見たことのないような世界。
光りが溢れ、僕の周りには風が溢れ。
暴れる風は優しく僕の髪も視界も乱していく。
- 731 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:28
- 石川さんが僕を連れてきてくれたのは、地元の人でもあまり来ないような場所だった。
僕よりも背の高い金網が張られているその場所は、金網を越えてちょっと行けば急斜面。
そういう場所だからこそだから余計に美しく見える街並。
吹き上げる風は優しく踊って、隔てる金網に僕の髪を絡ませる。
優しい優しいダンスなマジック。
並んで光るは赤青黄色の揺れるマジック。
「・・・すごい」
きっと知っている人は少ないんじゃないかなぁって思う。
うん、あんまり人が来なさそうな場所。
知ってる知ってないの前にここに来ない気がする。
「でしょ?吉澤くんにもいつか見せたいって思ってたんだ」
横で石川さんが目を細めて目の前に広がった世界を見つめていた。
その横顔を見て、僕の頭の中に今日の出来事、そして今日よりももっと前の出来事が駆け巡った。
視線を前に戻して一歩前に踏み出した。
=僕も、ちょっとは変わってるのかな?=
- 732 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:28
- カシャリと音が鳴る光りの世界と僕を別ける線。
視界に入ってくるのは光りの世界だけではなく、はり巡らされた線と線。
高い壁が邪魔をする。
揺れる光と揺れる風の邪魔をする。
だから思った
・・・見たい。
そう、ただ純粋に思ったんだ。
「ちょ、吉澤くん!?」
こんな風に金網に足をかけたのはどんくらいぶりだろう。
こんな風に封じられた何かを越えるのはどれくらいぶりだろう。
不思議な気持ち。
焦りもちょっとは入っていたのかもしれない。
追い付きたくて、もう、待たせたくなくて。
飛び越えた壁の先に、石川さんがいてくれた気がしたんだ。
- 733 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:29
- カシャンと音が鳴って僕の足は草に着地。
見つめる先には光りと風の揺れる世界。
線なんてなくてなくて光りと風だけの世界。
眼鏡が邪魔で、眼鏡を取った。
光りはもっと溢れた気がした。
正直言えば、結構恐い。
数歩前に足を出してしまえば『はい、さようなら』だ。
天国と地獄は紙一重。
それでもね、リスクがあっても越えたかった。
姿はなくても見える背中。
その横に並べる。
この壁の先には君がいる。
そう想った。
そしてたどり着けそうだった。
見たいのはこの景色。
それよりも見たかったのは本当の君の素顔。
本当の自分の想いと気持ち。
- 734 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:29
- 背中を押してくれたのはこの景色。
背中を押してくれたのはこの空気。
背中を押してくれたのは僕の周りにいてくれる皆。
そして側にずっといてくれた石川さん。
=僕は、もっと変わりたい=
ずっとずっと思ってた。
ずっとずっと想ってた。
喉元まで出かかって消えた言葉達。
最後の一歩。
踏み出せなかったのは僕のせい。
今までつかせちゃったため息、それを全部僕がもらうから。
背中を見続けるのはもう十分。
沢山沢山見せてもらった。
きっと、今、やっと並べそうな感じ。
勇気を出せば越えられる壁があって
気持ちがあれば越えれるモノがある。
- 735 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:30
- きっと僕らも越えられる。
こんなもどかしい距離。
こんなにも純粋な気持ち。
きっと僕は越えられる。
今みたくきっと越えられる。
もっともっと深く愛したいから。
もっともっと深く伝えたいから。
ドキドキとなった心臓はどういう意味が込められているんだろう。
ここに立つ恐怖感?
それとも後ろに感じる心配そうな視線?
それとも、突然現れてきたこの衝動?
全然わからないくらいに広がる僕の中の気持ちと言葉。
『素直』すごく簡単なようで難しい気持ちだった。
恐い理由が見つからなくて、だからよけいに怯えていたのかも。
言葉の重さと言葉の大きさに。
でも、その気持ち、きっちりと言葉にして、もっとしっかり抱きしめよう。
君と、そして幸せを。
こんなに素敵なプレゼントをくれて、ずっとずっと側にいてくれた君に届けよう。
- 736 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:30
- 心の奥で産まれた『キッカケ』
今まであやふやだった僕の気持ちが、すごく突然に、でもすごく自然に産まれていた。
それはずっとこうして伝えたかったからかな。
わからないけど、意気込んで言おうと決めてたワケじゃない。
もちろん言いたかったけど、何か消えてしまっていた言葉。
自然に出てくる言葉。
そして一番言葉にしたかった言葉。
消えずに産まれてきてくれた言葉。
大きく息を吸ったら心の奥で大きく大きく広がっていった。
溢れる気持ち、溜めていた言葉。
「大好きです!!!!」
- 737 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:31
- 言ってしまえば楽になる言葉がある。
言ってしまえばもっともっと深くなる想いがある。
言葉にしよう。
純粋な気持ちを。
ただ溺れるだけの時間にするんじゃなくて、もっともっと深く。
もっともっと深く君を想えるように。
言葉の大きさに潰されるようなことはきっとない。
言葉の想いに潰されてしまうようなこともきっとない。
溢れる想いに蓋をしようとするから潰されそうになるんだ。
気持ちが暴走しそうなら、こうやって素直に蓋を外してあげればいいんだ。
僕の言葉が風に流されたとしても
僕の気持ちは風に流されない。
それくらいに強いと思えるこの気持ち。
「石川さん」
交わされる口付けに言葉を込めて。
交わされる時間にもっと真実を込めて。
- 738 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:31
- カシャリと音が鳴った。
僕らの間にあるのは細い線。
儚いくせに丈夫で強くて。
今までの僕らの心と同じモノ。
その線越しに石川さんの小さな手と自分の手を合わせた。
お互いに冷たくなった手を、お互いの温もりであたためよう。
僕の目に写っているのは石川さんだけ。
石川さんの目に写っているのは僕だけ。
今はそれだけで十分だ。
重ねた手の平は熱を持って、風で下げられていた体温を復活させる。
この熱は石川さんからしかもらえない。
この熱は石川さんからしか感じられない。
- 739 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:32
-
=君と一緒に少しずつ変わっていきたい=
今なら不思議と空も飛べる気がする。
そんな高揚感と、そんな軽くなった気のする身体。
言葉にしたら、心の奥にあった何かが音もなくすっと溶けた。
立ち止まれないような、立ち止まりたくないような気分。
感じられる熱を、もっと感じたくて
金網越しに、指を絡ませ
金網越しに、そっと不器用に唇を重ねた。
こんなに大胆に行動が出来る自分自身に驚きを隠せない。
でもそれよりも気持ちと行動はすごく素直に正直だ。
触れたかった
伝えたかった
一緒になりたい
現れては消えて現れては消えて
くり返された気持ちの本音。
言葉にしたら身体が動いた。
- 740 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:32
- 少し冷えている石川さんの唇の冷たさが、僕の高揚感を抑えていく。
石川さんとの口付けで、こんなに涙が出そうになったことなんてなかった。
だんだんと暖かくなっていくお互いの唇は、ただの熱なんかじゃない。
言葉で伝え切れない想いを唇で伝えて、溶けてしまいたい程にこの感覚を感じていたい。
時間よ止まれなんて思わない。
周り続ければいいさ。
僕らのことを巻き込んで。
僕らのことを包み込んで。
「好きです、大好きです」
今まで言えなかった気持ちが溢れ出てくるように、僕の口からは言葉が溢れた。
こんなにも素直に言葉にすることが出来て、こんなにも素直に身体が動く。
全身の血液がフルに回って、僕の頭のてっぺんから足のつま先まで全てが熱くなっている。
抑えきれない言葉と抑えきれない想い。
伝わりきらないのがもどかしくて、僕はもう一度金網越しに唇を重ねた。
不器用なのはわかってる。
- 741 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:33
-
「僕は、石川梨華さんが大好きです」
言葉にするごとに泣きたくなるこの感覚。
込め切れない想いがもどかしい。
言葉と一緒に届いて。
届けて。
溢れる想いはもう止めることも何も出来ない。
泣きたくないのにすごく泣きたい。
胸の鼓動はすごく早いのに、不思議とすごく落ち着いていられる気分。
なのに産まれる言葉と一緒に産まれる涙。
言ってしまえば楽になる言葉があって
言ってしまえばもっともっと深くなる想いがある。
そして言ってしまえばもっと苦しくなる気持ちもある。
- 742 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:33
- 大切すぎて、愛おしすぎて、どうしていいのかわからない。
言葉を紡げば、絡みあえる言葉がある。
繋がれる僕らがいる。
ずっと僕を待っていてくれた君に。
今度は僕が両手を広げて待ってるから。
僕の側にいて。
ずっと僕の側にいて。
なごり惜しむように唇と指先を離して、僕は石川さんに背を向けて、
映画のヒーローの真似をして両手を広げて風を受けてみた。
恐いし、寒いし、格好悪いかもしれない。
でも見せつけてやった。
目の前に広がる光の世界に。
僕、自身に。
- 743 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:34
- 僕はこんなに幸せなんだ。
恐いけど、恐くなんかないぞ。
溢れでる気持ちを抑えないで目を一瞬閉じた。
再び視界に入った世界はさっきよりも少し変わっていた。
流れる光は止まることを知らない。
その光りの中には沢山の生き物がいて、沢山のモノがある。
その光りの一部で僕らもいる。
目には見えてないけど、僕らも宇宙から見たらきっとぴかぴか光ってる。
1番星にはかなわないかもしれないけど、ぴかぴかピカピカ光ってる。
僕は光りを見失わないように走っていく。
たまに立ち止まって、振り返ったりするだろうけど、それでもきっと進んでいく。
光る破片を拾い集めて、両手に一杯抱え込んで。
ぱたぱた揺れる僕のパーカー。
聞こえる風が揺らす木々の音に混じって、カシャンと乾いた音が後ろで聞こえた。
石川さんは『きゃっ』って言いながら金網を飛び越えて、ぐいっと僕を引っ張った、
振り返ったら君がいて。
ニコッて笑ったら同じようにニコッて笑ってくれて。
お互い絶対恐いはずなのに、ナンデかきっと上手に笑えて。
両手を今度は石川さんの方に向かって広げてみた。
石川さんはやっぱりニコッて笑って胸に飛び込んできてくれた。
- 744 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:34
- どんなに細い道かわからないし、どんな高い道かわからない。
でも、一緒にいて。
願望丸出し一直線。
まだまだ言葉に出せない言葉があるから
今はぎゅっと抱き締めよう。
甘い香り、優しい香り。
これ以上にないくらい幸せの香り。
「私も好き、大好き」
重ねた唇。
溢れる想い。
溢れてくる涙。
真直ぐに伝わった言葉。
きっと真直ぐに伝わった言葉。
抑えることなんて出来ない気持ち。
- 745 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:35
- 誓える言葉なら結構あって、言葉に出来る言葉なら沢山ある。
言ってしまえば楽になる言葉があって
言ってしまえばもっともっと深くなる想いがある。
止まる必要もないし、止める必要もない。
言葉以外でも感じる言葉がある。
言葉以外でも触れ合える心がる。
ずっとずっと1年以上交わされなかった一つの言葉。
それは別にタブーっていうワケじゃなくて。
当たり前になりすぎてた関係だから、きっと確信が必要な言葉がいらなかった気がしてた。
言葉で交わさなくても何となくお互い分かってるかなぁって。
そんなの間違ってるって気付いてたくせに。
失うことを恐れすぎて。
言葉にして繋がったら、失うかもしれない不安も出てくるから。
だから僕は言葉に出来なかった。
そうなんだと思う。
自分の気持ちは言葉にしなきゃ相手に伝わらなくて、
相手の気持ちも言葉にしてもらわないと僕はわからない。
目を見れば全部わかるはずもなくて、抱きしめたら全部わかるワケでもない。
結局0から100までわかることなんてはないから文字があって言葉がある。
伝える為の言葉がある。
伝えた気持ちの言葉がある。
本当はもっともっと伝える手段はあるんだろうけどね。
- 746 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:35
- 前みたいに『どんな関係?』って聞かれたら、僕はきっと今までみたいに答えると思う。
でもそれは前と同じでも前とちょっと違う感じで。
『どんなだろ?』なんて思わない。
きっともう思わない。
もし思うことが起きたとしたら、またこうして確認しあおう。
またこうして素直に話そう。
きつくきつく抱きしめて、壊れてしまいそうな身体を優しく抱きしめた。
感じあえる喜び。
素直にならないと生まれないこと。
知らないことはまだまだ沢山ある。
知りたいこともまだまだ沢山ある。
僕ね、こう思うんだ。
僕と君との物語りはまだまだ始まったばかり。
今までも、これからも、一緒に作っていこう。
手探りで、危なっかしくて、でこぼこでこぼこしてるかもしれないけど。
一緒につくっていこう。
- 747 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:35
- 本当はとっくにきられていたスタート合図。
きっと桜よりも前にきられていたスタート合図。
ぴったり合わさる僕と君の破片達。
つなぎ合わせればほら笑えた。
時たま間違えて食い違うけど、迷っても困ってもいつかぴったり合う日がくる。
だって破片はカタチだって変えられるはずだから。
かわらない破片だって大切な大切な宝物だから。
全部大切にぎゅっとして。
僕と君との物語り。
見えないことも、知らないことも、まだまだ沢山あるけれど
つくっていこう肩を並べて
不安なことも、怒るようなことも、ありえないくらい笑えることも
まだまだきっと待っている。
それでも一緒に歩いていこう。
素直な僕は独占欲丸出し状態。
それでもいい。
それでもいい?
- 748 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:36
- こんな言葉を言えるのは、一体いつになるのかわからないけど、
いつかその時が来たら言葉にするね。
それまでは僕の中で芽をあたためよう。
思ってる気持ちを言葉に出来るその時まで。
永遠に続かせよう
僕と君との物語り。
願いをとりあえずお星さんに投げてみた。
そしたら星と一緒に石川さんが笑ってくれた。
きっと明日はお天気だろう。
だから2人で出かけよう。
その笑顔と一緒に歩いて行こう。
ずっと、ずっと。
うん、いつまでもね。
おわり。
- 749 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:36
- ***************************************
- 750 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:37
-
でね、あのですね。
最後に最後にもういっちょ。
「・・・石川さん」
「ん?どうしたの?」
正直ついでにもういっちょ。
「僕、ここに立ってるの結構恐いです」
だから一緒に帰りましょ。
ぎゅっとぎゅっと手を繋いで。
やっぱしヘタレな僕だけど、一緒に一緒に帰りましょ。
えへって笑ったら、星よりも綺麗に石川さんが笑ってくれた。
本当におわり。
- 751 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:38
- ◆◆◆
- 752 名前:きっと長い永い夜。 投稿日:2003/11/29(土) 00:38
- ◆◆◆
- 753 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/29(土) 00:38
- 更新しました。
えぇっと、何かこんな終わり方でいいのかなぁって思いながら
消したり書いたり付け加えてみたり色々しいました。
最終回に辿り着くよりも前に書いていた時、部屋でかけていた
音楽が耳にすっと入って、先に未完成のままカタチをつくっていったのが
今回更新した分です。
伝えたい気持ちや今までの思いを言葉にしようと思っても上手いこと
出来なくて、PCを窓から投げてやりたくもなりましたが(苦笑)
それでもここまでやってこれたのは、読んで下さった皆様のおかげです。
頂いた言葉がすごく力になりました。
感謝の気持ちをまたしてもうまく言葉に出来ないんですが、
私の知っている言葉で表すなら
『ありがとうございました』
- 754 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/29(土) 00:39
- 本当はもっともっと書きたいこともるので、ひょっとしたら
番外編や3が出てくるかもしれません。
その時はこっそりと見てやっていて下さい。
レスを下さった皆さん。
そしてひっそりとROMっていて下さった皆さん。
そして管理人さんどうもありがとうございました。
1年弱、本当に本当におつき合いありがとうございました。
えぇっと、今の私の気持ちは・゚・(ノД`)・゚・。 ←こんな感じです(w
- 755 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/11/29(土) 00:39
- >725の名無し読者様
このレスを頂いて、私も終わらせてしまうのが何だかもったいないような
気持ちになっちしまいました(苦笑)
そうですね、もし番外編や3があるのなら、その時にまたここの
ヌルーイいしよしをよろしくお願いします。
>終わっちゃうのやだー!
これ読んだ時、涙が出そうになるくらい嬉しかったです。
ありがとうございました。
>alone様
こちらこそはじめましてです。
だらだらと長い物語。を読んで下さってありがとうございました。
こんなにもマターリ長く続くと自分でも思ってなかったので、
何だか不思議な感じがしています。
皆様から言っていただける言葉がいつも力になってくれて、言葉に
変わっていってくれます。
ありがとうございまいした。
また何処かで吉澤くんと石川さんを見つけたら、その時はひょっこり
見守ってやってて下さい(w
>token 様
どうにもこうにもイベント事が同じようになってしまうのは
ここの愉快な仲間達のおかげでしょうか(苦笑)
最終回、実は結構前から書き上がっていて、そこに向かって
途中から物語りが動きだしていました。
こんな最終回が期待に添えたかどうかはわかりませんが、
だらだらと長い物語を読んで下さってどうもありがとうございました。
眼鏡をかけた色白くんがまた出てきたりしたら、またチラリと覗いてみて下さい(w
- 756 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 00:53
- お疲れ様でした!!
最終回リアルタイムで読ませていただきました!
もお、くうぅ〜!!良かったです!
レスをするのは始めてですが、この話を読むといつも物凄く癒されました。
作者さま、ありがとう!
番外編、3もお待ちしております♪
- 757 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 01:13
- いままでずっとROMってましたが今日は書き込ませていただきます。
最終話脱稿お疲れ様でした。
作者様の書かれる文には温かみがあって
毎回読むたびに心が温まってました。
今回はさらに温かくてすごいジーンとしました。
キャラにもみんな個性があって、
ちゃんと主人公以外にもストーリーがあって
それもとても楽しめる内容でとてもよかったと思います。
個人的には辻加護コンビが大好きです。
最後に、作者様ありがとうございました。
番外編も楽しみに待ってます。
- 758 名前:alone 投稿日:2003/11/29(土) 01:20
- 長期にわたる連載、お疲れ様でした。
これでひとまず連載は終わりとのことですが、
きっと吉澤君と石川さんの『物語り。』は
これからがほんとうのはじまりなのでしょうね。
願わくば彼らのこれからに幸多からんことを。
僕はこの『物語り。』が本当に大好きです。
大きな感動をありがとうございました。
作者様の今後にも幸多からんことを…!!!!
- 759 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 11:42
- お疲れ様でした。私も初レスです。
いつも切なくてもどかしく、でも救われるような
気持ちになりながら拝見させて頂いていました。
こちらこそ、「ありがとうございました」。
- 760 名前:茅ヶ崎のマヤヤ☆ 投稿日:2003/11/29(土) 22:06
- 更新おつかれさまでした!
ずいぶんの間レスしてなくてすみません。でもずっと読ませて頂いてました。
とてもいいお話ありがとうございました。
私はやはりこの話のドラマ化を希望します☆(笑)
これからもいい小説できたらお願いします!
- 761 名前:SINKI 投稿日:2003/11/30(日) 15:24
- 、、、終わったんですね、、、(涙)
終わちゃったんですね〜(号泣)
やっぱり最期はヘタレな吉澤くん(笑)
この小説はとてもとてもともて(?)楽しかったです。
そして、おもしろかったです。
読んでいて微笑んだりしていました。
番外編では微笑がいっぱい出せるようなものを期待しています。
何年後とかそういうシチュエーション、いいですね。
ありきたりだけど読んでみたいです。
- 762 名前:token 投稿日:2003/12/01(月) 04:10
- 最終回の更新お疲れ様です!!
愉快な仲間達と創り出した素敵な世界。
最初の頃は、繊細だけれど精神的にはひ弱だった吉澤君がとうとうここまで来たか!
と思うと感慨深いです。
バカップルではないけど、いい感じの二人でした。ここまでがプロローグで、これからも
続くであろう物語。いつかまた、何かのおりに、それも読めたら嬉しいんですけどね。
では、次回作にも期待しています。
- 763 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/02(火) 00:33
- 作者さんの優しさが表れているようで
とても温かい作品でした。
ありがとう。
- 764 名前:ごまべーぐる 投稿日:2003/12/02(火) 20:52
- 本当に更新が毎回楽しみで仕方なかったです。
お疲れ様でした。
吉澤くんの成長が母のように嬉しいです(ry
作者さんといしよしと愉快な仲間達に幸あれ!
- 765 名前:だべさ〜。 投稿日:2003/12/08(月) 14:26
- いや〜。最高です。ハイ。
最終回読んでから、もう一度1から読み直して今終わりました。
吉澤君のよりヘタレなくせして吉澤君よりかっちょわり〜オイラにとって、
やっぱり吉澤君は幸せだな。っておもわせて頂きました。
続きも読みたいが、番外編の方が結構おもしろかったりして・・・・。
- 766 名前:クロイツ 投稿日:2003/12/12(金) 21:58
- 完結、お疲れ様です!!
最後の最後まで、心の中を暖かくして頂きました。遅くなっちゃって、本当にごめんなさい。
…なんだか信じられない思いです。
明日からも普通にこの作品の続きを待っていそうな感じです(笑)
続きを読むのが楽しみで楽しみで…本当に大好きなお話です。
素敵なお話を、ありがとうございました!!
- 767 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:05
- 「吉澤く〜ん!!!!!!」
光り輝く世界の中、ちょっと高めの声が僕の耳に届いてくる。
きっと今、大きく手を振っているんだおろう。
そんなことを思いながらクルッと振り返ったら、ちょっと離れた所に真っ白なコートを着て、
暖かそうなマフラーを巻いた石川さんがいた。
季節は冬。
そして12月。
街が冬色に染まって、街がクリスマス色に飾られている。
こうして好きな人と一緒に過ごせるこの季節は、ワクワクやドキドキが止まらなくて、
寒いはずなのに心は幸せで暖かくてしょうがない。
「こんにちは、石川さん」
言葉を発するごとに消える白い息が、マフラーの壁に当たって静かに溶けていく。
『寒いねぇ』なんて言いながら冷えた身体を暖める為に喫茶店へと向かった。
仕事も終わるこの時間。
街は人で溢れていた。
こんな季節しか味わえなくて、こんな時期だから味わえるきっと1年で1度特別な日。
- 768 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:05
- 「最近どうでした?」
実は、石川さんとこうして会うのは1週間ぶり。
何かお互い忙しくて、会える時間が中々なかったんだ。
電話とかメールとかしてても、何か寂しいのは隠せなくて、電話越しでお互いに苦笑いを浮かべながら
『あんまし平気じゃないかもよ』何て言いながら過ごしていた。
「うん、頑張ってた」
頑張っていたのはお互い同じみたいで、こうして笑顔で会えるのもお互いに同じみたいで。
会えなかった時間も、こうして一緒にいられる時間も、全部が全て輝いてみえる。
それがこのイルミネーションのせいなのか、それとも今こうして一緒に石川さんといられことのおかげなのか。
全然分かんないけど、きっと、僕らはすごく幸せだ。
入った喫茶店は結構満席で、店内はコーヒーの香ばしい匂いで一杯だった。
人の喋り声、笑い声。
このお店は暖かさで溢れている。
「何飲みますか?」
「じゃぁ、コーヒーで」
きっと石川さんもこのお店の中に漂っている気持ちのいい匂いにつられたんだろう。
マフラーを外しながら石川さんは気持ちよさそうに目を細めている。
僕もマフラーだけ外して、カウンターに向かった。
早く、暖まりたかった。
- 769 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:06
- ------------
---------
------
「石川さん、何処か行きたい所ありますか?」
カップからはもう湯気は出ていない。
残りの量もほんのわずか。
ここに入ってもう結構時間が経って、身体の内も随分と暖かくなった。
「う〜ん、特にはないんだよねぇ。ただ、会いたかったからさ」
柔らかい笑顔。
照れない方がおかしい。
僕の顔が赤くなっているのはここの気温だけじゃないはずだ。
絶対に。
曖昧に笑って、受け取ることしか出来なくて、照れ隠しのつもりで鼻の頭をちょっとかいた。
石川さんはちょっと可笑しそうに声を押し殺して笑っていた。
「じゃぁ、ちょっと本屋寄ってもらってもいいですか?」
「本屋さん?」
「はい、近くにあるのでいいんで」
- 770 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:06
-
その後、僕らは残りのコーヒーを飲んでから喫茶店を後にした。
外の気温はさっきよりも下がっていて、扉を押した瞬間、思わずマフラーを口元までひっぱりあげた。
「今日寒いですよね」
「うん、何か今日は天気予報でも2月くらいの寒さだって言ってたからね」
寒い寒いと言いながら、石川さんはコートのポケットの中に手を入れた。
並んで歩いて目的地の本屋さんまで、お互いにポケットの中で手を暖めた。
ギュッて握るのは何か少し恥ずかしい。
こう、人が沢山いるとね。
別に誰かが僕らのことを見ているワケじゃないんだろうけど、何か...うん、恥ずかしいや。
入り口の扉を押すと一瞬強い風が吹き、その一瞬が過ぎると店内の暖かさが
僕らをふわーっと包んでくれた。
閉店間際の本屋さん。
そんなに沢山のお客さんが入っているワケでもない店内。
大きすぎないこんな空間が僕は好きなんだ。
「あ、じゃぁちょっと私も見たいのあるから」
『また後でね』そう言って石川さんは奥の方へとぱたぱた早足で向かって行った。
閉店まで後10分くらいしかないもんね。
僕も急いで探さなきゃ。
- 771 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:06
- * * * *
1週間ブリに会う吉澤くんは、1週間前と全然変わってなくて、相変わらずほわほわした
柔らかい笑顔をしていた。
あっという間で長くて短い1週間。
目が回る程忙しいっていうのま正にこのことで、私は吉澤くんとの数分の電話やちょっとした
メールのやり取りなんかで、沢山エネルギーを補充してもらってた。
吉澤くんも大変なのに、何か随分お世話になりました。
「石川さん、本、見つかりましたか?」
1人回想なんてしてたら、隣にはひょこっと背の高い吉澤くんがニコニコ笑顔で立っていた。
時計を見たら閉店3分前。
ギリギリのぎりぎりだ。
探していた本はすぐに見つかったんだけど、久々の再会に私はボーッとしすぎていたらしい。
「その本ですか?」
「う〜ん、これなら古本でもありそうじゃない?」
私の手から本を受け取って、吉澤くんは返事もせずにレジの方に向かって行った。
えぇっと、その行動って・・・
慌てて背中を追いかけた。
「私、今度古本で探してみるからいいよ」
- 772 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:07
- そう言ったら吉澤くんはくるっと振り返っていつものようにニへらって笑った。
「もちろん、古本も好きだし、古本の魅力っていうのもあるんですけどね、親書にも、魅力があるんですよ」
「魅力?」
「はい、親書はその物語りの1ページ目を自分で開くことが出来るんです」
店内BGMは螢の光に変わっていて、お店の中には私達を含めて残り数人。
店員さんが2つある内の1つのレジを閉め始めていて、閉店に向かって皆が忙しそうに動いている。
そんな中、私は立ち尽くしていた。
・・・吉澤くんがウィンクしたよ。
それも照れながらウィンクしたよ。
走ってレジに向かう後ろ姿は相当可愛い。
あぁ、あの髪で隠れてる耳は今頃真っ赤なんだろぉなぁ。
俯いてる顔も真っ赤なんだろぉなぁ。
そういえば昨日テレビでやってる映画観たって言ってたしなぁ。
あ、確かその中に主人公の人が振り返ってウィンクシーンがあって、あの時の主人公
私がカッコイーって電話で言ったんだっけか。
- 773 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:08
- ・・・それでか。
可愛いよ。
可愛すぎるよ吉澤くん。
電話じゃ『あぁ、そうですねぇ』とか何でもないような口調で言ってたくせに。
その後、お会計の終わった吉澤くんの後ろ姿を追いかけながら、私は口元のニヤニヤを必死に抑えていた。
ほんの少しだけ前を歩く吉澤くんの耳は、寒さと照れでまだ真っ赤。
まだ気にしてるのかなぁと思ってちょっと肩を並べられるように急ぎ足で歩いて
『吉澤くんの方が可愛いよ』
何て言ったら、吉澤くんは余計顔を赤くして俯いてしまった。
今日はクリスマスイブ。
ホワイトクリスマスじゃないけれど、まだまだ終わりそうもないこんな素敵な夜。
吉澤くんが本を持っていない方の手をぎゅっと握った。
冷えていたけど、すんごく暖かかった。
目指すは我が家、冷蔵庫で今か今かと出番を待っているケーキさんの元へと急ぎましょう。
途中のコンビニで買い物して、またギュッて手を握って歩いた。
道中『吉澤くん照れ笑い初ウィンク』何てからかいながらね。
- 774 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:08
- * * * *
「おじゃましまぁす」
久々に訪れた石川さんの家。
入り口の横にはいつか2人で磨いた自転車が置いてあって、その隣にはビニール傘があって。
前に来た時とあんまり変わってなくて、そんな些細なことでも僕は嬉しかった。
部屋の中は綺麗に片付いていて、そのことを言ったら石川さんは得意そうに
『昨日張り切って掃除したんだぁ』って言った。
だから目を瞑っておこう。
ベッドの下からひょっこり雑誌がのぞいていることは。
「とりあえずお酒とか飲む前に済ましちゃおうか」
「あ、はい。お願いします」
持ってた荷物を部屋の隅に置いて、買ってきた飲み物は冷蔵庫に入れた。
その間に手際良く準備をしてくれた石川さんに感謝の気持ちを言葉で伝えて、
僕は用意された新聞紙を前に座って、すっぽりくり抜いたビニール袋を頭から被った。
- 775 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:09
- 「すいませんね、クリスマスイブだっていうのにこんなことさせちゃって」
「気にしないでいいよ、忙しかったんだからしょうがないしね」
シュッと霧吹きで前髪が濡らされ、クシで髪をとかされた。
「あ、吉澤くん、眼鏡取ってもらってもいい?」
「あぁ、すみません」
慌てて眼鏡と取ってあたふたしたら、石川さんが柔らかく笑って『そんな焦んないでよ』って
僕のおでこを指でパチンとはたいた。
まぁデコピンってやつだ。
「でもさ、本当に私でいいの?吉澤くんが自分でやった方がよくない?」
「いや、随分前に自分でやったらごっちんに大批判食らっちゃいまして・・・」
「そう、じゃぁ・・・頑張るね」
濡れた前髪が目の前でふらふらと揺れている。
その先ではまだ緊張した顔でいる石川さんが、グッとハサミを持って何か分からない気合いを入れている。
・・・緊張してきたな。
緊張が相手に伝わるっていうのは嘘じゃない。
絶対に嘘じゃない。
ハサミが近付いてきたから、僕はぎゅっと目を瞑った。
- 776 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:10
- 何で僕がクリスマスイブのこんな日に、石川さんに前髪を切ってもらっているかっていうと、
実は、明日、母の再婚相手とその人のお子さんと一緒の食事があるからだ。
さすがに初めて会うのにだらしない姿で会うワケにもいかない。
で、本当はもっと早くに髪を切りに行こうと思ってたんだけど時間がない。
忙しくて忙しくて、気付いたら食事会の前日。
昨日何度も石川さんに謝りながら頼んだんだ。
髪を切るのが最初よりも石川さんは慣れたみたいで、途中からは鼻歌混じりで髪を切ってくれた。
チョキッ、チョキッと音がして、パサッパサッと音がして、その音が止んで鼻歌も一緒に止んだらほら完成。
目の前じゃ石川さんが満足そうな顔をしていて、僕の足元(膝元?)じゃ黒やら茶色の髪が
ポてッと落ちている。
あぁ、結構大胆に切ってくれたんだなぁって、口には出さないで思った。
「ありがとうございます」
「いえいえ、気になさらないで下さいですわ」
オホホホおほほほと笑って石川さんはお片付け開始。
何でこんな短時間にそんなにもテンションが上がったのか分からないけど、僕も被ってたビニールを
丁寧に脱いで、片付けの手伝いをした。
そしてそのまま夕飯準備。
と、言っても前もって石川さんがある程度作ってくれていたので、ほとんど並べるだけ。
石川さんも忙しかったはずなのに、こんなにも頑張ってくれてたんだなぁって思うと何だか
とってもこう、ぎゅっとしたくなるような・・・。
- 777 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:10
- 「吉澤くん、これもそっち持っていってくれていい?」
「あ、はぁい」
いかんいかん。
何を考えてるんだひとみ!!
ドキドキする気持ちを抑えるように、ポカポカ空いてる方の手で自分の頭を叩いた。
落ち着くっていうか、ちょっと痛かった。
テーブルに並んでいく湯気たつ料理。
見ていると結構お腹が空いていることに気付いてみたり。
石川さんも多分同じだよなぁなんて思いながらもせかせか動いた。
「これでラストですか?」
「うん、それでラストだね。私お腹空いちゃった」
「僕もですよ」
『それじゃあ早く食べよ』同じ言葉を同時に言って、思わず笑ってハイタッチ。
今さっきコンビニで買ってきたお酒をグラスに入れて『メリークリスマス』なんて言ってみたり。
おいしい料理に、ちょっと殻入り卵焼き。
何かいいなぁ、こういうの。
まったりしながら音楽聴いて、程よくアルコールが身体の中に染みていく。
- 778 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:11
- 疲れていたせいかもしれないけれど、あんまりお酒に強くない僕はすでに結構ほろ酔い状態。
脳がポーッとしている信号を出している。
暖かい部屋でおいしい料理を食べれて、こういう幸せを感じられるのが何か嬉しい。
ちょっと寄り掛かる所が欲しくて、テーブルから離れてベッドサイドに背中を預けた。
手の中で冷えたグラスが氷の音をカラカラ鳴らして、天井を見上げたら、隣に石川さんの温もりを感じた。
「はい、ラスト一個」
そう言われて口に運ばれたのは、石川さん特製空揚げ。
カリッとふわっと口の中に美味しいさが広がっていく。
「これ、美味しいですね」
「2人で食べるからおいしいんだよ」
「そうですねぇ、でもきっと、普通に食べてもおいしいと思います」
お世辞とかそんなの関係なしに言ったら、石川さんが小さな声で『ありがとう』って言った。
僕は残っていたお酒を喉の奥に流し込んで、手に持っていたグラスをちょっと身体を起こして
テーブルの上に置いた。
「やぱっり、ちょっと緊張してる?」
「明日のことですか?」
「うん」
緊張してないっていうのは嘘になる。
でもそんなに緊張してるかって言ったらそれも嘘になる。
何て言うのかな・・・
「変な感じですね」
- 779 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:11
- 石川さんの頭の重さを右肩に感じた。
お酒の力が多少はあったかもしれないけど、僕はドキドキしながらも右手を石川さんの肩へと回した。
何か、さっきのぎゅっとしたい衝動っていうのと、やっぱり何処か不安な分っていうのが
あったんだと思う。
普段ならそんなにするようなことでもないんだけど(というよりも僕が1人で恥ずかしがって出来ない)
この時は、何かもっと近くで石川さんを感じていたかったっていうのもあって、すごく素直に、
多分緊張で軽く腕は震えてたんだろうけど、石川さんの肩を抱いた。
「妹が出来るっていうのも、何かまだ想像つかなくて」
「名前、麻琴ちゃんだっけ?」
「はい、16歳って言ってたかな、確か」
高校生で、いきなりちょっと年の離れた兄が出来るっていうのはどんな気持ちなんだろう。
僕が分からないように、麻琴ちゃんも悩んでたり、よくわからないものなんだろうか。
「多分、明日になったらちょっとは分かるよ。多分、多分ね」
そう言ってくれた石川さんの言葉が、僕の中にスッと溶け込んでいった。
僕にもわからないし、石川さんにもわからない。
でも、無理にわかろうとも思わない。
そして、こうして聞いてもらえるだけでもいいってこと。
石川さんはすごく分かってくれていた。
- 780 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:12
- 窓の外では雪が降る気配なんてないけど、こういうクリスマスもいいと思う。
風の強さで時たま震える窓、暖房と石川さんの体温で温もりを感じていられる僕。
全部が、僕にとってはクリスマスプレゼントだ。
いつからか、想像の中のサンタさんは僕の前に現れなくなったけど、毎年何か必ずもらっている。
それは時間だったり、モノだったり、気持ちだったり、あげたらキリがないけど、
絶対に僕はもらってると思う。
今年は、こういう幸せな時間や気持ち。
後は、その他諸々。
これもきっと上げ出したらキリがないんだと思う。
「何か、こうして過ごすクリスマスっていいね」
視線がからみ合っているワケじゃないけど、僕と石川さんは目の前にない何かを見つめあっている。
時間、空間、モノ、存在。
視線の先で見えるモノは違うかもしれないけど、感じあえる温もりは違うけど同じもので、
共有出来る空間は同じ空気で染まっている気がした。
「石川さん」
「・・・ん?」
- 781 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:12
- 僕は肩を抱いていた手を石川さんの髪に通した。
柔らかくて、微かにシャンプーの香りのする髪。
全てが、さっきから輝いて、愛おしくて、ぎゅってしたくなるモノ。
1週間会わなかったからじゃない。
明日のことがあるからじゃない。
ただ、もっと石川さんが知りたくて、欲しいという気持ちがあるのは嘘じゃない。
正直な気持ち。
ずっと、ずっと前からある正直な僕の想い。
それと同時の不思議なとまどい。
同じかどうかとか分からないけど、いつか、きっとそういうのがお互いに合う日っていうのが来る気がする。
僕はそれでいいと思ってるし、その方がいいと思ってる。
焦ることじゃないと思うから。
ただ、今はこうしてお互いに体温を感じていたい。
僕よりも小さな手、僕よりも華奢な肩。
全部、抱きしめていたいんだ。
「石川さんは、クリスマスにどんな奇跡が起きて欲しいですか?」
「奇跡?」
「はい、映画であるような奇跡だって何だっていいんです」
- 782 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:13
- 子供の頃に夢みた奇跡。
起きる起きないよりも、奇跡を夢みていた。
突然起きるかもしれない。
夜になったら起きるかもしれない。
いつか起きるかもしれない。
そんな風に思う奇跡。
「吉澤くんは?」
「僕ですか・・・僕は、雪、ですかね」
「雪?」
「ドラマみたいに降ってくるんです。突然、雪を待ち望んでいる人達の所に」
窓から外を覗いたら、一つ、白くて柔らかい光が降ってきて、そしてその光りが次々と増えていき、
やがていつか雪が空から降ってきて、地面に柔らかく積もっていく。
星も雪も全部が眩しくて、目を閉じるんだけど、瞼の奥でも光りは消えないんだ。
寒いけど、暖かくて、遠くにあると思っていたモノが近くにあるんだ。
「じゃぁ、私が一つ奇跡を起こしてあげるよ」
そう言った石川さんが、僕の頬に柔らかく、そっと、優しくキスをくれた。
何度も、何度も。
「ちょっとは、瞼の奥で、何か光って見えたでしょ?」
照れたように笑って、また僕の肩に石川さんは頭を乗せた。
僕の左肩に回された石川さんの右手が、すごく熱を持ってた。
- 783 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:13
- 「私はねぇ、今、こうしていられる奇跡だけでいいよ」
『沢山望んだら、消えちゃう気がするから』
頬に残る柔らかい感触。
優しくて、愛おしくて。
石川さんの髪に唇を落として、その髪に自分の頬をあてた。
伝えたいんだ。
すごく。
この僕の気持ちも。
好きで、好きで、どうしようもないくらい大切で。
言葉だけじゃ足りなくて、ぎゅって抱きしめていたくて。
消えないよ。
消さないよ。
僕が手を差し伸べるから。
一夜限りの奇跡なんかじゃなくて、ずっと続く奇跡にするから。
「・・・奇跡は、きっと、もうちょっと起こりますよ」
僕が奇跡を起こすから。
これからも、ちょっと照れたりして上手くいかないかもしれないけど、起こるよ。
- 784 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:14
- 眼鏡を外して、床に置いた。
そして少し身体をずらして、石川さんの薄い唇に、自分の唇を重ねた。
「今、こうしていられる奇跡と、僕に起きた奇跡が一緒にあるんですから」
雪、石川さんも見れたでしょ?
瞼の奥でも眩しくて、すごく柔らかい光。
2人分の奇跡が合わされば、きっともっと大きな奇跡になるよ。
だって1人じゃないんだもん。
一緒にいられるんだもん。
「・・・吉澤くん」
「ん?」
「照れくさいならさ、無理に言わなくたって大丈夫だよ」
『顔真っ赤』そう言ってから石川さんが僕の頭に手を回して唇を重ねてくれた。
- 785 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:14
- どうにも、僕はまだパチッと決めることが出来ないらしい。
恥ずかしがり屋さんがずっと残ってるみたいだから。
それでも、『でも、ちょっと嬉しかったよ』何て照れながら言われたら頑張りたくなるもんでしょ。
お互いに照れちゃって、またさっきみたいに肩を寄せあっていても笑顔が止まらなかったけど、
僕、幸せだよ。
今、こういう時間が過ごせて。
「明日、電話しますね」
「うん、でも無理しないでね」
止まらない時間。
それでも、もう少し、このままで。
キザな言葉とか、素直な言葉とか、きっと言葉にしたら、言った後から体温がギューッと上がってきて、
また真っ赤になったりするんだろう。
だから、今回はそんなに無理しないで、ただ肩を抱いていた。
「クリスマスはさ、やっぱり沢山の奇跡が起こるのかもね」
『私もね、きっと吉澤くんが思ってるのと同じようなこと、思ってるから』
- 786 名前:じんぐるべるな夜 投稿日:2003/12/24(水) 00:14
- いつも起きてる奇跡かもしれない。
ひょっとしたら違うかもしれない。
それでも、僕はこのクリスマスの奇跡を信じてもいいかなって思った。
だってさ、サンタさんはいつだって近くにいてくれるんだから。
信じてれば、伝えようとすれば、きっとその想いは届いてくれる。
「今日はさ、何か2人してキザだね」
この笑い声も、この気持ちも、全部届けるよ。
ずっと、僕が石川さんのサンタクロースでいたいから。
* * * *
『Merry Christmas』
* * * *
- 787 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/12/24(水) 00:15
- クリスマス番外編更新しました。
書きたいことをつめこみすぎて、ちょっと反省。
でも、書いてて楽しかったです。
ついでに明日も短いけれど、おまけうpする予定です。
皆様、沢山のレスありがとうございます。
改めて、僕君。は1人で書いていたんじゃないなぁって思いました。
(0○〜○)人(^▽^ )
この2人も、その他大勢(ry
( ´Д`)<変にまとめられたよ〜
皆様に愛されてることを改めて感じ、幸せいっぱいです。
本当に、どうもありがとうございました。
>756 名無し読者 様
はじめましてです。
リアルタイムだったんですか、何かちょっと恥ずかしいですね(w
私の書いたもので少しでも癒されていたなんて(照
読んで下さってありがとうございます。
そしてちょっとでも楽しんでいただけたなら幸いです。
- 788 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/12/24(水) 00:16
- >757 名無し読者 様
はじめましてです。
ほんわかマターリが私自身なもんで、気付いたら僕君。も
そんな風になってました(w
最初は吉澤くんと石川さんの話しだけにしようかと思ってたんですが
気付いたら他の人達も自己主張しはじめてました(w
読んで下さってありがとうございます。
>alone 様
続くいてく道で、吉澤くんも石川さんも物語り。を紡ぎ続けてます。
そしてその物語り。の1シーンを私が書かせてもらってます。
って感じなんですね(w
いつも書こうとすることからずれていくのは、そのキャラ達が
暴走するからでしょうか(苦笑)
皆に愛されて私も吉澤くんも石川さんも幸せすぎです。
ありがとうございます。
>759 名無し読者 様
はじめましてです。
ヘタレすぎた吉澤くん、ハラハラしながら私も成長を見守ってました(w
ちょっとマターリしすぎたかなぁとも思いましたが、私自身も
楽しんで書けていたのでよかったかなぁって思ってます。
だらだらマターリな僕君。を読んで下さってありがとうございます。
>茅ヶ崎のマヤヤ☆ 様
おひさしぶりでし。
ドラマにしたらきっと見ながら『吉澤くん!もっとがんがれ!!』
とか私、言ってそうです(w
ありがとうございます。
そしてこれからも何かを伝えられたらいいなぁって思ってます。
- 789 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/12/24(水) 00:16
- >SINKI 様
終わってしまったんですが、番外編で復活しちゃいました(w
書きたいことが暴走して、詰め込みすぎたクリスマスの袋状態。
ヘタレもちょっとは変わってきてるんですかねぇ。
何年後とか、書きたいです。
だからきっといつか吉澤くんと石川さんの数年後をお届けしたいです。
ありがとうございます。
>token 様
見守ってきた感は私にもありますねぇ。
吉澤くん、あんたぁ成長したねぇ・゚・(ノД`)・゚・。 みたいな(w
バカップルみたくなるといいんですが、この2人だとなかなか難しそうですね(苦笑)
スタートラインから少し経った物語。
こんな風に進んでいきます。
吉澤くん達を見守って下さってありがとうございました。
>763 名無し読者 様
こちらこそ、読んで下さってありがとうございました。
私だけでここまで僕君。の物語りを書けたのでなくて、読んで下さってる
皆様がいたから書けたんだなぁって思ってます。
だからこちらこそありがとうございました。
>ごまべーぐる 様
吉澤くんのお母さん(w
いやいや、こうして見守っていただけて嬉しいかぎりです。
そして時たままた見守ってあげて下さい(w
吉澤くん達の成長記録、まだまだ私も続けていきたいと思ってますから。
見守って下さってありがとうございます。
- 790 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/12/24(水) 00:18
- >だべさ〜。 様
最初からですか、それはお疲れ様です。
そしてありがとうございます(照
(0○〜○)つ旦 <お茶どうぞ。
ヘタレすぎて途中で『はっきりしろ吉澤くん!!』って突っ込み入れたい
こと数回。でも、それがまた書いてて楽しくて(w
吉澤くん、確かに幸せものです。
そして番外編は相変わらずでしたね(苦笑)
おもしろいかどうかは分かりませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
>クロイツ 様
完結したのに戻ってきてしまいました(w
ほわほわしていただけましたか?
私も最終回を書き終わった後は何かよくわかんない感覚でした。
で、番外編書きはじめたら『終わらない物語。なんだなぁ』って思いましたね。
こちらこそ、読んで下さってありがとうございました。
(0○〜○)<めりーくりすます>(^▽^ )
- 791 名前:タロイモ 投稿日:2003/12/24(水) 02:23
- 遅くなりましたが、完結お疲れ様でした。
そして番外編、楽しみにしておりました。
ちょっぴりキザな吉澤君可愛かったです。
次の更新待ってまーす。
- 792 名前:じんぐるべるな夜2 投稿日:2003/12/25(木) 00:10
- ち、遅刻だよぉぉぉぉぉお!!!
走る僕。
スーツでコートで眼鏡でダッシュ。
学校を出た時に時計を見たら、短い針が8を指してた。
僕がお店についていなきゃいけない時間は20時だから、僕があまり頭がよくなくたってわかる。
これを人は『遅刻』と言うっていうことを。
母にはさっき電話を入れておいたけど・・・あぁ、これじゃぁ第一印象最悪になっちゃうよぉ。
こんな大事な日に限って、いつもはないような仕事が次々舞い込んできて、ついでにコピー機が壊れてみたり。
すごく頑張ってみたけど、学校を出たのは予定していた時間よりも2時間も後だった。
改札を通って、すごい勢いで階段を昇って、滑り込んで来た電車に息着く間もなく乗車。
暗い外を眺めながら、窓に写った自分を見つめて、まがったネクタイや乱れた髪を直して、
携帯で目的地までの時間を調べた。
昨日から調べていたから学校から目的駅までの時間は分かってはいたけど、こうやっぱり調べたく
なるワケで・・・。
- 793 名前:じんぐるべるな夜2 投稿日:2003/12/25(木) 00:10
- そしてリアルにわかったこと。
僕の遅刻は1時間と20分徒歩も入れたら1時間と30分だ。
そんなに電車の中で僕が急いでも、電車はスピードをあげるワケじゃないけど、
僕は電車に乗ってる間中、落ち着きなく携帯を開いたり、無意味に手すりを掴む手に力を入れていた。
到着した頃にはもう21時30分。
前に母さんから聞いた通りにお店に行ったら、何やら豪華そうなお店で正直びっくり。
で、ちょっと怯えながらお店に入って案内された先には、綺麗に着飾った母さんと、
写真でしか見たことのないスーツ姿の男の人、そしてちょっと茶色っぽい髪をして制服を着ている女の子がいた。
「す、すみません、遅くなってしまって」
緊張がちがち。
発した言葉に何か現実感がなかった。
言葉が中ぶらりんに浮いていて、着地地点を探してる。
そんな感じだ。
- 794 名前:じんぐるべるな夜2 投稿日:2003/12/25(木) 00:11
- その後はひたすら頭を下げて、自己紹介をした。
僕が母さんに電話を入れた時点で、母さんは先に食べてて平気とは言ったらしいけど、ずっと待ってて
くれたらしい。
運ばれてきた料理の味なんかがわからないくらいに最初は緊張をしていたけど、ただ、
僕の目の前に座っている子の口が時たま開いてるのを見てから、不思議なほんわかした空気が流れて
僕自身がちょっと落ち着いたのを覚えている。
文字通りにあっという間。
そんな風に過ぎていく時間。
遅刻と緊張と色々ごちゃごちゃした感覚で気付いたらもうおしまい。
印象とかどんな人だったとかいうの、実はちゃんとわかってないけど、この人とだったら
母さんは幸せなんだなぁっていうのはちょっと分かった気がした。
「ひとみちゃん、明後日休みだったよね?」
「うん、引っ越しでしょ?」
家までの道。
母さんと2人で並んでゆっくり歩きながら、雲にかかった月を見上げていた。
実は明後日は吉澤さん家(何かちょっと変な感じだね)のお引っ越し。
話しは随分前からしてたから、僕の隣?っていうか前?まぁ向い側のお客さん専用部屋のようになっていた
部屋の片付けはもうしておいたんだ。
そこには麻琴ちゃんが住むようになる。
下にはもう、本当にすぐに僕のお父さんになる人が住む。
もうスピード。
すんごいスピードで急展開。
- 795 名前:じんぐるべるな夜2 投稿日:2003/12/25(木) 00:11
- 本当はもっと早く向こうの家族と会うはずだったんだけど、なかなか予定が会わなくて
こんな風に慌ただしくなってしまった。
年内には落ち着くっていうのが予定であったから、引っ越しが終わればそのまま再婚。
父親の再婚に、麻琴ちゃんも賛成らしいし、すんなりと決まったんだってさ。
もちろん、僕も反対なんてしてないからね。
「そうなんだけど、大丈夫?疲れてない?」
「平気だよ。こう見えても体力には自信あるんだから」
笑い声や話す言葉と一緒に吐き出される白い息は、フワフワ浮かんで飛んでいく。
帰ったらお茶漬けでも食べようか。
明日も早いから、本当は寝なきゃいけないんだけど、今夜は久々にゆっくり話しますか。
食べたお茶漬けも、飲んだお茶も、いつもと変わりないんだけど、僕は多分忘れない。
いつもと変わらないから忘れない。
その夜は、遅くになっちゃったから電話じゃなくて石川さんにメールを送った。
もう2時過ぎてるし、寝てるかなぁって思ったけど、すぐに石川さんから電話がかかってきて、
そのまま10分くらい話した。
携帯を閉じた後でも、僕の耳には石川さんの声が心地よく残っていて、その夜はあっという間に
眠りに落ちていった。
- 796 名前:じんぐるべるな夜2 投稿日:2003/12/25(木) 00:12
- そして、朝、目覚ましの音で目を覚ました僕の枕元には小さな飴玉が一つ、置いてあった。
その飴にくっつけられた手紙には、母さんの字で『Merry Christmas!』と書いてあった。
毎年もらうクリスマスプレゼント。
それが嬉しかった。
窓の外は良い天気。
カーテンを開けて、窓を開けたら珍しく早起きしてるごっちんと偶然目があった。
近所迷惑な感じで『おはよぉ』って言ったら、ごっちんが『おはよぉ』って同じように返してくれた。
新しい1日が今日も始まった。
大きくを伸びをして空気を吸ったら、世界がちょっと明るくなったように見えた。
- 797 名前:匿名匿名希望 投稿日:2003/12/25(木) 00:14
- 更新しました。
こんな感じでクリスマス番外編終了です。
えぇっと、短くてすみません。
でもって、ありがとうございました。
また吉澤くんがひょっこり顔を出すかもしれませんが、
とりあえずクリスマス番外編終了ってことで。
>タロイモ 様
どうも長い間読んで下さってありがとうございました。
ちょっとキザにしすぎて書いてる自分がかゆくなったのは内緒です(w
またいつか、楽しみにしていただけるような吉澤くん達が
書けたら嬉しいなぁなんて思ってます。
- 798 名前:SINKI 投稿日:2003/12/25(木) 12:09
- お久しぶりです。
再開されて嬉しい限りです。
3になるのでしょうか?
まこっちゃんとのからみもありそうですね。
本当に嬉しいです。
あとメリークリスマス。
- 799 名前:sai 投稿日:2003/12/27(土) 12:21
- 温かいな〜。そんな感じです。ちょくちょく書くたくなったら
書くみたいな更新がこれからもあったらうれしいです。
クリスマス編お疲れ様でした!!
- 800 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:42
- 僕の住んでいた家に、新しく家族が2人増えた。
新しく僕のお父さんになった人は、あんまり時間は会わないけれど、朝とか、うん、
まぁ話すようになった。
正直、まだ完全に馴染んだワケとかじゃないけど、まぁ、そんな荒波がたってるワケじゃない。
多分もうちょっと時間がかかるんだと思う。
何て言うのかな・・・そう、何かもうちょっと時間が必要な感じだった。
嫌いじゃないけど、いきなり、全部打ち解けるとか、上手いこと出来ないでいる。
頑張ってみてはいるんだけどね。
何か、やっぱり上手いこといかなくて。
吉澤さん・・・じゃんくて、お父さんも、そうの辺はわかってくれてるみたいだ。
でもって、もう1人。
僕の妹になったかぼちゃ好きの女子高生。
最初はあんまり喋れなくて、正直、怯えられてるのかなぁなんて思ってたけど、
それは僕と同じで、ただ、慣れていなかっただけだったみたい。
だってさ、今じゃさ・・・
- 801 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:44
- 「お兄〜ちゃ〜ん!!!」
どたどたバタバタ階段を昇ってくる音が聞こえて、ノック無しで飛びこんで来る女子高生。
新しく出来た、僕の妹。
「はいよぉ、どうしたのさ、そんな急いで」
「夕飯出来たってさぁ」
にぱぁっと笑って、こんな風にいつも僕の部屋に駆け込んで来る。
僕はこの間はじめて会ったけど、母さんと麻琴とは何度か会っていたらしく、麻琴は
随分ともう母さんにも慣れたみたいだった。
人懐っこい性格なのかなぁって僕は思う。
「早くしないと冷めちゃうよぉ、早く、早く」
こうして出来た妹、血は繋がってないけど、すごく大切だ。
一緒に生活しはじめて数週間、僕はこの麻琴の人懐っこさがなかったら、まだきっと
こんな風に話せなかったと思う。
何か、自分よりも年下の妹に頼ってしまったっていうのは悪いなぁって思うけど、感謝してる。
麻琴の存在は、この家族にとってすごく大きくて、すごく大切。
僕の、大切な大切な妹だ。
- 802 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:45
- 「はいはい、今行くよ」
石川さんと一緒に過ごす時間は、前よりも少しだけ減った。
『最初が肝心』そう石川さんが僕の背中をぽんっと押して笑っていた。
ありがたい反面、僕は正直、寂しかった。
でも、電話やメールから伝わってくる石川さんの声や文章からも隠してる寂しさが
溢れていている時があって、そんな時にいつも僕はずっと心の中でありがとうとごめんねをくり返すんだ。
- 803 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:45
- 夕飯も終わって、部屋に戻って無意味にテレビのチャンネルをまわしてみた。
ニュース番組、あまり見たことのないバラエティー番組、旅番組。
かちかちと何度かリモコンをいじった後、テレビの電源を切ってベッドに横になった。
いつもよりも早く仕事が終わった時は、石川さんに会って時間を過ごしていたから、
こんな風にいつもよりも時間が余った時にはどうしたらいいのかがわからなくなる。
ごっちんと遊ぼうかなぁと思っても、今はきっと忙しい時間だし、石川さんへの電話も
今じゃ何か早い感じがする。
いや、いつもかけてる時間っていうのが何となくあって、それで、まだ早いなぁって思うんだよね。
って、誰に言ってるんだろう。
お風呂は入ろうかなぁって思うけど、何か起き上がるの面倒だし、1人でゲームする気もあんまり起きない。
・・・石川さんと出会う前って、どんな風にして時間を過ごしてたんだろう。
出会って、同じような時間を過ごすようになって、いつの間にか変わってた生活のリズム。
時間の過ごし方。
ダメだよね、こんなじゃ。
僕も、ちゃんと両足で立たないといけないよね。
「ほっ!」
暖房をつけてないと寒い部屋。
あえて暖房を切ってみた。
うん、やっぱし寒い。
でも、動く気になる。
- 804 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:46
- 最近、すっかりしまいこんでいた画材を出して、ちょっとやる気モードでタオルを頭にぐいっと巻いた。
久々に、星を増やしてみようと思ったんだ。
麻琴の星や、父さんの星、母さんの星、後、石川さんの星も。
・・・もっと、増やせるかな。
何か楽しくなってきた。
寒いけど、音楽をかけて、ちょっと小躍ぎみにやってみよう。
麻琴はまだお風呂だから、多少ボリュームを大きくしたって大丈夫だろう。
動く筆や、増える星。
何だか楽しくてしょうがない。
そうだ、今度麻琴にも見せてやろう。
この部屋、あの星、色々な星を。
石川さんにも、新しい星を見てもらおう。
ぱっと浮かんだ空への招待。
そんなことを考えてたら、いつの間にか時間は大分経っていたらしい。
隣から『おやすみ、お兄ちゃん』って声が聞こえてきた。
慌てて時計を見たら、いつの間にやらもう0時を回ってて、かけようと思ってた石川さんへの電話も
まだかけてなかった。
* * * *
- 805 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:47
- 「・・・はぁ」
何度目になるんだろう。
最近すっかりため息の量が増えた。
部屋の中はきっとため息だらけ。
空間が私の逃げた幸せでうめつくされてる感じ。
抱えたクッションにぎゅっと力を入れてみても、返ってくるものなんて何もなくて、
ただ、さっきよりも寂しさが増すだけだった。
・・・やっぱり相談してみた方がいいのかなぁ。
こんなことを思ってもうどのくらい?
自分でもわからないくらいにぐるぐるぐるぐ回る質問。
ずっと同じ質問。
でもさ、誰に相談しよう・・・。
柴ちゃんは海外。
ごっちんとはなかなか時間があわない。
同じ理由で安倍さんも矢口さんも無理だし。
やっぱりののとかあいぼんに相談するのも恥ずかしい。
- 806 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:48
-
・・・やっぱり飯田さんかなぁ。
同じ結論になるのも何回目だろ?
もう、わかんないよ。
「・・・はぁ」
煎れた紅茶はもう冷えちゃってるし、今日なんて携帯鳴らないし。
いくらさ、今は家族との時間大切にしてって言ったからってさ、電話くらいくれたっていいじゃない。
何か私からかけるのもちょっと今嫌だし・・・。
別にさ、吉澤くんが嫌いってワケじゃないけどさ。
「・・・複雑なんだからね」
乙女心っていうの。
もう、何さ。
- 807 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:48
- 悩みはちょっとイライラに変わっていってしまった。
別に吉澤くんが何かしたワケでもないし、何か言われたワケじゃない。
でも、積もり積もった悩みとか不安は鉾先をくるっと変えてしまった。
「馬鹿ぁ!もう、あほー!!」
ポフッてクッションを叩いたら、ちょっとホコリが舞った。
何か、ますます凹んだかも。
「・・・でも好きなんだよなぁ」
ポテッと床に転がったら、ちょっと泣きそうになった。
何か、こんな悩むくらいならさっさか電話かければいいんだよね。
でも、もう夜遅いしなぁ。
何か時間的にも微妙だもんなぁ・・・。
「明日、相談してみよっかな」
その日は、髪も乾かさないで寝た。
何か面倒くさくてそのまま寝た。
で、ちょっと風邪ひいた。
・・・もう最悪。
- 808 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:48
-
* * * *
「風邪ひいちゃったんかい」
「・・・そうみたいなんです」
職員室。
ぐでーっと机の上でのびちゃってるのは吉澤ひとみくん22歳。
ついでに彼女は石川梨華さん23歳。
僕の席の隣でみかんをぱくぱく食べてるのは安倍なつみ先生27歳。
実は、ちょっと凹んでる。
今日のお昼にって今さっきなんだけど、石川さんに電話したのさ。
そしたら電話越しに聞こえてきたのはちょっと鼻声の声。
ついでに咳とくしゃみつき。
で、今日御飯でもつくり行くよぉって言ったらさ、『今日はカオリさんくるから平気』
だってさ。
それもちょっと冷たい声で。
- 809 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:49
- 今までさ、そんなに意見の対立なんてことがあったワケでもなくて、のほほんと一緒に過ごしてきたワケさ。
だからさ、ちょっと驚いたっていうのと同時に、自分自身に凹んだ。
「・・・矢口さんは元気ですか?」
「うん、矢口は相変わらずぴんぴんしてるよ」
「そうですか・・・」
会話終了。
ダメだ、何か話す気力すら起きてこない。
会話の糸口すら見つける気が起きない。
ぐでぐで星人。
それが今の僕。
「梨華ちゃんも随分素直になったんだねぇ。なっちはちょっと嬉しいよ」
「・・・どういうことですか?」
コテって顔を安倍さんの方へ向けたら、口にみかんをぐいっと押し込まれた。
・・・ちょっと酸っぱいですよ、安倍さん安倍さん。
- 810 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:50
- 「だってさ、あんまり梨華ちゃんとよっちゃんって喧嘩したことないでしょ?」
「むしろ全然です」
「なっちは思うワケさ、些細なことかもしれないけど、ずっと自分の中にしまい込んじゃうんじゃんくて、
今みたくちょっとでも外に出すことの方が大変なんじゃないかなぁって」
僕の口の中へみかん追加。
さっきと同じようにちょっと酸っぱいみかんだ。
安倍さんは何で普通に食べれるんだろう。
「よっちゃん、気になるんだったら聞いちゃいなよ。
我慢しすぎとかダメ。梨華ちゃんもそんなよっちゃんの姿見たら余計怒ると思うよ」
指でツノ作って鬼の真似?それとも石川さんの真似ですか?
石川さんはそんなじゃないですよ。
違いますもん。
「・・・青春だねぇ」
「そうですかねぇ」
やっぱし会いに行っちゃおっかな。
夕飯今日はいらないって母さんにメールでもしておこうかな。
- 811 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/02(金) 13:50
- 「安倍さん」
「ん?」
「みかん酸っぱくないですか?」
「酸っぱいよ」
『でもおいしいよ』
安倍さんがニコッと笑った。
冬の向日葵。
そんな感じに思った。
「矢口さんは、幸せものですね」
「なっちも幸せものだよ」
冬はもうちょい続くけど、そういえばもうすぐ春もくる。
強行突破で春に走る人もいるのかなぁ。
「梨華ちゃんも幸せものだよ」
「じゃぁ、僕も幸せものです」
メールを打った。
『夕飯外で食べてくるから。ごめんね』
返事はすぐ返ってきた。
『了解しました』
・・・夕飯、何食べよう。
外を見たら、ちょっと雪が降りそうな天気だった。
- 812 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/02(金) 13:59
- 更新しました。
『まぁ、色々とね』は後2回くらいです。
僕君。3になると言ったらそんな感じですが、いつまで更新し続けられる
とかわからないんで、いつでも完結、いつでも更新いたいな
変な感じで進みそうです。
あ、でも完璧に終わる時にはきっとそう言います。
そいでもってあけましておめでとうございます。
皆様にとって今年1年が素敵な年になりますよぉに。
>SINKI 様
どうもおひさしぶりです。
3と言えば3なんですが、今までみたいに定期更新は出来ない感じなんです(汗)
個人的にもマコをこういったカタチで登場させれて嬉しいんです。
だもんで、きっとまた出てくることでしょう(w
嬉しいと言っていただけて嬉しいです(w
>sai 様
温かったですか?(w
かなりの不定期かもしれませんが、またこうして書かせていただくかもしれません。
ので、そん時はまた吉澤くんと石川さんをよろしくお願いいたしますです。
- 813 名前:alone 投稿日:2004/01/02(金) 17:36
- あけましておめでとうございます。そして新年早々の更新お疲れ様です。
再び「続き」を読むことができ、たいへん嬉しく思います。
また再び彼らに逢えて、とても暖かい気持ちになれました。
これからもご自分のペースでがんばってください。
たとえ更新が無くとも彼らの"Usual Days"に終わりはありませんから。
吉澤君たちがどうしているのか、あれやこれやと気味の悪い
想像(妄想?)をして勝手に楽しんでおります(笑)。
寒い日が続きますが、風邪など引かぬよう、どうかご自愛ください。
『じんぐるべるな夜』を読ませていただいていると、
僕の頭の中にSkoop On Somebodyの
『僕が地球を救う〜Sounds Of Spirit〜』という曲が流れます。
きっと吉澤君なら石川さんと見つめ合うだけで地球(ほし)を
止めてしまうでしょう(笑)。
- 814 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/01/04(日) 18:57
- 作者さま。
新年あけましておめでとうございます。(遅)
最近はROMってばかりいました。
よっすぃ〜&石川さんの幸せが確認できました。
このまま、『僕君。3』への移行、期待してます!!!
では、本年もよろしくお願いいたします。
- 815 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:02
-
* * * *
カオリさんが家へやってくるのは結構久しぶり。
『相変わらず散らかってるねぇ』なんて先制パンチを受けちゃったけど、ついでに
保田さんからカオリさん奪っちゃったけど、でも、わざわざ来てくれたことにまず感謝。
「保田さん、拗ねてませんか?」
「圭ちゃんは大丈夫だよ。夕飯も作っておいたし」
きっと今頃1人晩酌。
ごめんなさい、保田さん。
「で、どうしたのさ。綺麗で優しいお姉さんに話してごらぁん」
よしよしと頭をわしゃわしゃ撫でられて、早速ちょっと私は泣きそうになった。
うぅ・・・久々に頭撫でられた。
嬉しいよ。
でも、でも・・・。
「私って、そんな魅力ないんですかねぇ・・・」
- 816 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:03
- 悩みが先に先攻するワケです。
部屋中に充満するため息にまた一つ追加。
一度落ちてくと、ドンドンと落ちていくのが私なんです。
最近はポジティブな自分とか思ってけど、やっぱり根っこはネガティブらしい。
あぁ・・・参った。
「おぉい、石川ぁ。目覚ませよぉ」
そのうえ風邪ですか。
私風邪ですか。
鼻水出るし、咳でるし、くしゃみも出るし・・・
私ってばついてないのかしら。
「ほらぁ、もうしっかりしなよぉ。ほれほれ、お姉さんがぎゅっとしてあげるからさ」
ふわっと抱き締められた感触。
それはかなぁり気持ちがいいもので。
そのうえすごくいい匂いがするもので。
「・・・やっぱり私って魅力ないんですよね」
- 817 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:03
- すんごくベタな言葉。
よく聞くような言葉だけど、私は本当にそう思うワケです。
そして、カオリさんにぎゅっとしてもらったら、自分との差を思い知らされたような感じで、
余計に凹みました。
カオリさん、スタイルよすぎ。
カオリさん、気持ちよさすぎ。
「保田さん、いつもこんな感触味わってるんですよね」
「いつもってワケじゃないよ。ってか石川何か頭の中おやじみたくなってるよ」
カラカラ笑ってカオリさんはぎゅっと抱きしめてくれた。
あぁ、もう私本当泣きそうかも。
ってかごめんなさい、泣きます。
「んぐ・・・が、ガオリざぁん・・・」
「カオリはガオリじゃないよぉ」
『よしよし』って言いながら撫でてくれる手とか、ぎゅって抱きしめてくれる腕とか、
何かすごく安心する。
お姉ちゃんがいたら、きっとこんな感じなのかもしれない。
「大丈夫だよ、絶対石川には石川にしかない魅力っていモノがあるんだからさ」
- 818 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:04
- 『だからそんな鼻水ずびずびしないの』
そんな声を頭の上から聞きながらも、私の一度流れ出した涙は中々止まらない。
風邪の鼻水と、涙の鼻水と、多分顔ぐしゃぐしゃ。
軽くばっちい気もする。
でもさ、止まらないもんはしょうがないのさ。
「あ、ちょっと、石川、誰か来たみたいだよ」
「うぐ・・・こんなんじゃ、で、出れないでずよ・・・」
カオリさんは『じゃぁちょっと待っててねぇ』って言って玄関へと向かって行った。
何か独りぼっちになると余計に寂しくなる。
泣きたくなる。
玄関の方でがちゃって音がしたからクッションに顔を押し付けて泣き声をこらえたけど、
どうだったんだろう、聞こえちゃったのかな。
でも、まぁ多分大丈夫だよね。
根拠のない『大丈夫』
だって涙止まらないんだもん。
大丈夫って言わなきゃやってられないもん。
どれくらいだろ?
もう一度玄関が閉まる音がして、手に何か持ったカオリさんが戻ってきた。
- 819 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:04
- 「よっすぃだった。で、圭ちゃんの相手しといてって言っといた」
ガサッと音がしてかかげられた袋。
近くのコンビニのやつだ。
「これ、よっすぃから石川に」
中に入ってたのはヨーグルトととか、バナナとか、後はスポーツドリンクとか。
多分今日のお昼にかかってきた電話に私が鼻声で出ちゃったからだろう。
風邪セットみたいのが沢山入ってた。
何かそれ見たら余計に泣けてきちゃったよ。
「もう、石川泣きすぎ。枯れちゃうよ?そんなに泣いたら」
渡されたのは、吉澤くんが持ってきてくれたスポーツドリンク。
余計泣けてくるっていうのに。
でもさ、喉は乾いてたみたい。
泣きながらかなり一気に飲干した。
で、落ち着いた頃にカオリさんが『台所かりるねぇ』って言って暖かい紅茶を煎れてくれた。
- 820 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:05
- ------------
---------
------
「石川からもいっちゃいなよ。がばーっとさ」
アクションつきで突然攻撃。
前フリとか何もナシで突然攻撃。
防御体勢なんて出来て無かった私は見事吹いた。
ごめんなさい、カオリさん直撃。
タオルで拭き拭き、ただひたすら謝るばかり。
ごめんなさいロボットっていうのがあったら間違いなく私はなれる。
「カオリ、結構本気なんだけどなぁ。あのね、カオリの周りにいる人達ヘタレすぎなのさ」
語られて上がる名前は市井さんに保田さんに吉澤くん。
ごっちんと市井さんの間じゃ主導権を握っているのはごっちんらしく、
そしてカオリさんと保田さんの間じゃ、ヘタレぎみな保田さんをカオリさんががっちりと
捕まえているらしい。
それも聞けばキッカケは両方とも彼女なワケで。
- 821 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:05
- 「もうさ、途中でイライラもしてきちゃったよ。
はっきりしろバカぁ!とか、逃げちゃうぞぉ!!とか思ったけどさ、でもさ、
やっぱり好きなんだなぁって思った。それに、カオリも圭ちゃんが欲しかったから」
長い髪を、耳にかけながら、カオリさんは思い出すように少し遠くを見つめていた。
その顔は、すごく幸せそうで、見ていて、こっちまで幸せになってくるような顔だ。
「与えるとか、与えられるとかじゃなくて、好きなんだ。
欲しくて、知りたくて、知ってほしくて。
結局さ、欲張りなモノなんだなぁって思った。
人間の欲って尽きる所がないんだなぁって、そう思うよ」
『もう一回だっこしてあげるからおいで』って呼ばれて、私は再びカオリさんの腕の中へ。
ちょっと服は濡れちゃってて、髪もちょっと濡れちゃってるけど、腕の中はすごく暖かい。
「石川さ、結構いいスタイルしてるよね」
- 822 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/04(日) 21:06
- そう言いながらお尻とか腰とかをぺたぺた触って、ついでにぐいっと私を剥がして胸まで触って。
この自称綺麗で優しいお姉さんは、綺麗で真直ぐで優しいお姉さん。
脇をこちょこちょくすぐられて、また違う涙が出るまで笑わせてくれる。
優しい風が吹いてきて、部屋に充満してたため息さん達は何処かへさよならしちゃったみたい。
ため息と変わって、今部屋の中にあるのは優しい空気。
暖かい空気。
ありがとうって言葉を、どのくらい積み重ねても足りない気がして、でも『ありがとうございます』
って言ったら、カオリさんはニコッと笑ってくれた。
その後、ちょっとゆっくりしてから、カオリさんは保田さんの待つ家へと返っていった。
何か、泣いたらちょっとすっきりした。
で、ついでに風邪の症状みたいな身体のだるさが一気にやってきた。
「・・・明日が休みでよかった」
部屋着に着替えようとして服を脱いだら、随分と寒いことに今さら気付いた。
- 823 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/04(日) 21:16
- 名前: 匿名匿名希望
E-mail:
内容:
更新しました。
後1回。
今まで通りに、でもちょっと更新スピードダウンでごめんなさいになります。
>alone 様
ちょっぴりローペースになります。
ごめんなさい。
でも、読んで下さってありがとうございます。
>吉澤君たちがどうしているのか、あれやこれやと気味の悪い
>想像(妄想?)をして勝手に楽しんでおります(笑)。
これ、私もです(w
でもってそれがここに出てたりしてます(爆
書いてる間は音楽かけてることがほとんどですね。
人それぞれ、何かそういった音を見つけてくれるのもまた嬉しいことです(w
>ななしのよっすぃ〜 様
どうもあけおめです(w
一応『3』ってことになるんですかね←オイ。
更新は前よりもまったりになると思いますが、どーぞよろしくお願いいたします。
吉澤くんと石川さん、この話しの中じゃもう22とか23だと思うと不思議な感じです。
でも、やっぱりまったりですね(w
- 824 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/04(日) 21:17
- >>823
の
>名前: 匿名匿名希望
>E-mail:
>内容:
これ無視して下さい。
・・・ちょっとミス_| ̄|〇
ごみんなさい。
- 825 名前:sai 投稿日:2004/01/05(月) 11:49
- いつの間にか、この二人って大人の恋愛しちゃってますねぇ〜。
少し前まではよっちゃん、こうしろとかあ〜した方がいいんじゃ
なんて思いながら読んでたんですけど、やっぱ大人の恋愛編(?)
に入ってからは難しくて。でも、その分深いです。続き期待!!!
- 826 名前:SINKI 投稿日:2004/01/06(火) 15:28
- 更新、お疲れ様です。
なんか飯田さん、けっこうすごいこと言ってますね、、、。
でも本気で好きなんだろうなって思いました。
梨華ちゃんやよっすぃーも飯田さんみたいなことが
言える所まで成長して欲しいですね。
これからもがんばってください。
- 827 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:11
-
* * * *
・・・雪降ってきちゃったよ。
いくら屋根があったって、外は正直寒い。
でも、カオリさんには申し訳ないけど、僕は石川さんに会いたかった。
「・・・よっすぃ?」
がちゃって音が2回して、にゅっと現れたのはカオリさん。
何故か髪がちょっと濡れてるカオリさん。
「あ、どもです」
「あ、いえ、どもです」
ペコリペコリと頭を下げて、ただ意味もなくお互いにぼーっとした。
あれだ、会話する言葉の糸口が見つからないからだ。
多分、きっと。
で、ちょっとした沈黙を先に破ったのはカオリさん。
「あの、よっすぃはずっとここにいたの?」
「はい、圭ちゃんはきっと今頃1人晩酌中ですよ」
ごめんなさい。
相手してなくて。
- 828 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:11
- 「風邪ひくよ?」
「僕は大丈夫です」
「根拠は?」
「何となくです」
沈黙再開。
今度は会話の糸口探しというよりも、カオリさんが驚いて軽く交信状態なだけだと思うけど。
屋根の上には雪がハラハラ落ちてきていて、ハ−ッと息を吐いたら白くほわっと浮かび上がって、
白い息と白い雪が、視界に入っては消え、入っては消えをくり返す。
動き続ける空気と、動き続けない空間。
お互いに今、止まっている理由なんて無い気がした。
ふと、そんな風に思った。
だから余計に思った。
こんな風に時間を過ごしてしまうよりも、早く石川さんに会いに行きたい。
軽く交信中なカオリさんには申し訳ないけど、僕はもう、行きますね。
「ちょっと僕、石川さんに会ってきます」
そう言って頭を下げたら、カオリさんが少ししてからニコッて笑って僕の頭をがしがし撫でた。
わざと、髪の毛が乱れるようにがしがし撫でた。
それも、楽しそうに。
いや、楽しそうっていうか、嬉しそうにかもしれない。
ともかく僕の頭をがしがし撫でて『東京で見る雪もまたいぃねぇ』なんて言いながら
雪の中へ飛び出して行ったカオリさんは、ちょっと歩いて振り返ると、『ヘタレ!!』って
一言叫んでダッシュで雪降る下を駆け抜けて行った。
- 829 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:12
- 「・・・知ってますよ」
そして僕のこの呟きは雪と一緒に地面に吸い込まれて、ちょっとカタチを無くしてくれた。
- 830 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:13
-
* * * *
乾いた音が聞こえた。
化粧を落として、今日はお風呂は入らないでもいいかなぁなんて思ってた時に聞こえてきた。
その音の鳴らし主は、忘れ物でもしたカオリさんかなぁと思ったけど、違った。
眼鏡で背が高くて前髪がまた伸びてきた人だった。
「・・・また、来ちゃいました」
薄い唇を紫色に変えて、ニコッと笑って立っていて、さらに少し眼鏡、曇ってるよ。
少し寒いこの部屋よりも寒い外。
そういえば、雪、降ってきたんだったけ。
「えぇっと、何か食べましたか?」
「え?いや、まだ何も」
『おじゃましまぁす』って言いながら吉澤くんは部屋に入ってきて、そのまま私の肩を押して
ベッドに私を座らせた。
何か、こんな行動が、ちょっとドキドキした。
え?私まだ心の準備が・・・・とか思った。
でもさ、やっぱし違ったワケで。
「僕、お粥でも作るんで横になってて下さい」
『ちょっとでも食べないと薬飲めないじゃないですか』
笑顔で吉澤くんは台所に向かって、『鍋かりますね』とか『何か温かいの飲みます?』とか
色々と言いながらテキパキテキパキ動いていく。
- 831 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:14
- ・・・何か見たことない吉澤くんかも。
強引ってワケじゃないけど、弱きなワケもなくて、でも『何言っても帰りません』みたいな
変なオーラが出てる気がする。
台所でマフラーを巻いたままで、コート着てるままで料理をしてる姿をちょっと見てからベッドに
素直に横になった。
で、思ったこと。
多分、ちょっと頑張ってるでしょ。
頑張りすぎてるからコートも脱がないで、マフラーも外さないでいるんでしょ。
「・・・バカ」
今日は涙もろいなぁ。
やっぱり熱とか出ると泣きやすくなるのかなぁ。
何か頑張ってる吉澤くんの姿見たら涙出てきちゃったよ。
悩んでたことが消えるワケじゃないし、解決したワケじゃないけど、ただ、今ここに吉澤くんがいて、
それであんなに一生懸命になってる姿見たら、何か私、すごい悪い気がしてきちゃった。
「石川さん、お粥出来まし・・・」
泣いてるところ見られたくなくて、布団をぐいっと引っ張り上げて、顔を隠した。
多分、今横で吉澤くんはお粥を持ちながら固まってるはず。
やだよ、泣き顔とか見られたくないよ。
でもさ、今日は涙がすごい出てくるんだよ。
- 832 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:14
- 顔を布団で隠したまま涙を止めようとしてたら、カタッとテーブルが鳴って、ベッドが少しだけ沈んだ。
そして、布団の上から優しい手の感触を感じた。
少しだけのぞいていた私の指をそっと掴んで、ぎゅっと優しく握ってくれる。
泣いてる理由も聞かないで、ただ、優しく指を握って撫でていてくれる。
優しさが、すごく流れ込んできた。
何か、本当に大事にされてるって思った。
だから涙は止まらずに溢れてきて、止めたくて、頑張りたくて、握られた指に力を入れて
吉澤くんの指をぎゅって握った。
こういう時、どんな言葉を言っていいのか分からなくて、どんな風に気持ちを声にしていいのか
分からなくて、少しの間ぎゅって指を握って、優しい親指の動きを感じていた。
- 833 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:15
- 出会ってから、沢山の時間を一緒に過ごして、沢山の気持ちを知って、沢山、知らないことを知った。
まだまだ知らないことは沢山あって、知りたいことも、知りたくないことも知ると思うけど、
この、今繋がってる手はずっとずっと、繋いでいたってすごく強く思った。
今、強く、すっごく強く思った。
「・・・石川さん」
少しだけ、布団をめくられてもう片方の手で髪を撫でられて、その手が少し下がって私の額に触れて、
また少し下がって私の頬に触れて、涙をそっとぬぐってくれた。
泣き顔(それもすっぴん)を見られたことは、思ってたよりも嫌じゃなかった。
目の前で、吉澤くんが優しい顔をしていてくれたから。
そんな風に思える気がした。
「僕、自分じゃ気付かない間に、何か悩ませたり、嫌な思いさせちゃってたんですね」
少しずつ止まっていく涙を、それでもずっと頬を指で撫でながら拭ってくれて、
『ごめんなさい』って言いながら、大きな手で頬を包んでくれて。
『気づけなくて、ごめんなさい』
『そんな思いさせちゃって、ごめんなさい』
沢山の言葉と沢山の気持ち。
繋がった部分から、沢山降ってきた。
- 834 名前:まぁ、色々とね 投稿日:2004/01/08(木) 13:16
- 言葉にするの、恥ずかしいし、その上私今風邪ひいちゃってるから、行動にすること出来ないけど、
ちょっとでも届けれるように、握ってくれていた指を掴んで、指にキスをした。
その後に、腕をのばしてぎゅって吉澤くんを抱きしめた。
で、すぐに腕を離して吉澤くんを突き飛ばすようにしてベッドに座った。
もう、大丈夫。
ちょっと、大丈夫。
「お粥、ちょうだい」
あっけにとられてる吉澤くん。
多分、何となく感じ取ったんだと思う。
私の考えてたこと。
思ってたこと。
嘘、わかってないかもしれない。
でも、きっと、今は違うのかもしれない。
今必要なのは、きっと吉澤くんのつくってくれたお粥だ。
早く、元気になろ。
じゃなきゃキスもちゃんと出来ないもん。
この日は、ちょっと甘えてみた。
お粥食べさせてもらったり、飲み物、用意してもらったり。
吉澤くんは、何か嬉しそうだった。
明日が休みでよかった。
きっと目こすっちゃったから腫れちゃうだろうし。
うん、何か、休みでよかったって思った。
終電ギリギリまで居てくれて、それでも心配そうに何度も振り返る吉澤くんの姿が、今夜夢に出てきそう。
きっと、それはいい夢な気がするな。
- 835 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/08(木) 13:17
- 更新しました。
次回まで微妙に間あくかもしれません。
ごめんなさい。
>sai様
最初の方からは考えられないですよね(苦笑)
二人もずいぶんと歩いてきたものです。
でも、あんまり変わってないかもしれないですよ、ここの二人。
っていうか変わってても気付いてないかも(w
>SINKI 様
カオリさんのお答えです。
川*‘〜‘)||<だって欲しかったんだもん。
本当、正直っていうか、素直っていうか(w
中々大胆ですよ、ここのカオリさん。
ここの( ^▽^)と(0○〜○)にはもう少し時間と経験が必要かも(爆
- 836 名前:SINKI 投稿日:2004/01/08(木) 14:01
- なんとなくたくましい吉澤君ですね。
ちょっと好きかも、、、。
にしても飯田さん、かっこいいですね。
石川さんもかっこいいよ。
そんな風に見せられる作者さんに脱帽です。
- 837 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:30
- 『あの、両親に旅行をプレゼントしようって考えてるんですけど、どう思います?』
その夜、電話から聞こえてきた声はいつもよりも若干高めだった。
もちろん、電話の相手は吉澤くん。
あ、もちろんってことはないか。
まぁ、ともかく吉澤くん。
『やっぱり、何かベタすぎますかねぇ』
電話の奥で『う〜ん、う〜ん』って悩んでるみたい。
会話がちょっと止まりがちで、でも、それがちょっと可愛らしくて。
「そう?いいんじゃないかなぁ。再婚旅行のこと言ってるんでしょ?」
そういう気持ちって、それだけでも嬉しいんだよね。
いいじゃんベタだって。
もっとベタな温泉旅行なんてもっと素敵じゃん。
『気にいってもらえますかねぇ、そんな贅沢さしてあげれるワケでもないんですけど』
- 838 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:30
- じゃぁ頑張ろう。
出来る範囲で良い旅行にしようよ。
ほら、別に贅沢だったから良い旅行ってワケじゃないと思うし。
それにね、
「私も一緒に考えたい」
企画事って何か燃えちゃうんだよね、私。
一瞬電話の奥で固まった吉澤くんを解凍しながらお話ししましょうよ。
吉澤くんの御両親がいつそろってお休み取れるとか、後何処の温泉宿にしようとか。
あ、そうだ。
後、その後に残る吉澤くんと麻琴ちゃんのことも考えよう。
夕飯とか、朝食とか、洗濯物とか。
それと、えぇっと後・・・
『い、石川さん?』
何だろう。
まだまだありそうなのに出てこないよぉ。
あ、予算。
そだ、吉澤くんの予算。
- 839 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:31
- 『あのぉ、えぇっと、近いうちに会って話しませんか?
仕事終わった後でも、休みの日でもどっちでもいいいですから』
笑い声が小さく聞こえて、その後に笑いを含みながらの『ありがとうございます』が聞こえた。
その後、吉澤くんから大体の予算を聞いて、会う日とかを決めた。
調べられたら、会う約束の日にお互いに考えたことを発表する。
でも無理はしない。
それが決められたことだった。
そだ、会う場所は吉澤くんの家。
麻琴ちゃんとも一緒に旅行の計画考えたいんだって。
後、私がまだ会ったことのない麻琴ちゃんのことを紹介したいみたい。
麻琴ちゃんのことを話す時の吉澤くんは、私が嫉妬しそうになるくらいデレデレした顔をする。
本当可愛くてしょうがないらしい。
『お兄ちゃんなんて言いながら部屋に入ってくるんですよぉ』とか『かぼちゃ好きなんですよ』とか
妹自慢みたいな感じ。
あのね、いくら妹だって言ってもさ、それじゃ心配になるんだよ。
だって御両親が旅行中は吉澤くんと麻琴ちゃん二人っきりでしょ?
何があるワケでもないと思うけど、何が起こらないとも言い切れないじゃない。
よし、次会う時までにそのことも考えておかなきゃ。
- 840 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:32
- ちょっとテンションの高い私。
思考回路はフル活動。
そんな感じの夜だったから、翌日仕事のくせに、私はノートを開いて思い付いたことを
どんどんと書いていった。
だってさ、楽しいんだもん。
止まらないんだもん。
------------
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-------
「石川、その目の下のクマどしたのさ?」
ちょっと暇な時間。
お店の中を整理したり色々してた時に、休憩中のカオリさんが不思議そうな顔をしながら私の顔を覗き込んできた。
結局、明け方まで止まらなくて、今から寝るのも中途半端だと思った私はずっと起きてた。
吉澤くんに言ったら普通に怒られそう。
でも楽しくて、止められなかったのさ。
そんなこと言ったら『言い訳言わないの』って言われちゃうかな。
その時の吉澤くんの顔の想像をしたら、ちょっと何か笑えちゃった。
「おぉい、石川?大丈夫なの?」
- 841 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:32
- 手をひらひら振って、頭をちょっと振られて。
私は鈴じゃないんですよ。
振っても鳴りませんよ。
それに大丈夫じゃなかったら余計に悪くなっちゃうじゃないですか。
私の無言の抗議はカオリさんには効かないらしい。
だから、手を動かしながらクマの出来てしまった理由をカオリさんに話した。
そしたら何かを思いだしたようにカオリさんが手をポんッと打って、何やら電話帳を広げ始めた。
で、速攻で電話とか。
「あ、そうそう・・・・・うん・・・・ありがとう」
で、速攻で電話終了とか。
「カオが素敵な人、紹介してあげるよ」
笑ったカオリさんから渡されたメモには、旅行代理店の名前かな?そんな名前とその電話番号と、ついでに
1人の人の名前が書かれていた。
「みっちゃんはすっごくいい子だよ」
- 842 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:33
-
* * * *
久しぶりに一緒に電車に乗って、向かう先は僕の家。
仕事上がりでちょっと疲れているけど何か楽しい。
麻琴も朝から石川さんに会えるのをすごく楽しみにしてるし、石川さんも麻琴に会えることを
楽しみにしてくれてるみたいだし。
母さんも父さんも今日は帰りが遅いはずだから好都合だ。
別に隠すことじゃないけど、どうせなら驚かせたい。
だから相談してることも出来れば内緒にしておきたいんだ。
「ただいまぁ」
ガチャッと扉を開けたら聞こえてくるすんごい足音。
そのうえ早い。
「おかえりなさぁあぁぁぁぁい!!」
靴下が滑ったのか、勢いのつきすぎた麻琴は玄関先で1人よれよれしながらニパッと笑った。
「ただいま、麻琴。えぇっと、こちらが、石川梨華さん」
「はじめまして、麻琴ちゃん」
そっと差し出された手を、麻琴はすごい嬉しそうに握ると、強すぎるんじゃないかと思うくらいに
ぶんぶんと振る。
- 843 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:34
- 「はじめまして、あのぉ、麻琴でいいっすよぉ」
照れてたり、嬉しかったりしてるんだろう。
くねくねしながら麻琴は笑っている。
何か、こんな喜んでくれるならもっと早く会わせてあげればよかったな。
「じゃぁ、とりあえず上行きましょうか」
玄関じゃ寒いし、落ち着けないしね。
ほら、麻琴、そんな急いじゃ石川さん転んじゃうじゃんか。
バタバタと、さっきよりも2つ増えた足音を響かせながら階段を昇って、多分かなり力強く
ドアを開けられ、麻琴は石川さんの手を引いたままベッドに向かってダイブした。
「こら麻琴、そんなことしたら危ないじゃんか」
デヘデヘ笑って『ごめんなさぁい』
反省してるのかね、本当に。
「それじゃぁ、僕下でお茶でも用意してきますね」
「あ、私手伝おうか?」
「大丈夫ですよ、それより麻琴と遊んでて下さい」
麻琴もあんまり石川さんに迷惑かけちゃダメだからね。
ってもう聞いてないんですか・・・。
- 844 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/11(日) 20:34
- ちょっと寂しいなぁって思いながら階段を下りてリビングに入った。
母さんと2人で暮らしていた時にはあんまり感じかなかったけど、誰もいない台所っていうのは
何か結構寂しい感じがする。
上の階と、下の階。
人がいるかいないかじゃ全然温度が違うんだよね。
お湯が湧くまでの時間、ソファーに座って足を投げ出して天井を見上げて息を吐いた。
ちょっとこの部屋寒いかも。
この部屋のカレンダーには母さんと父さんと僕と麻琴の休みの日の印がつけられている。
で、今度3日くらい連続でその印しが重なってる所があるんだ。
だからその日を使って旅行に行ってもらおうかなって思ってる。
でもさ、調べてみたけど中々良い所っていうのが見つからないんだよねぇ。
「・・・難しいなぁ」
もう一度息を吐いたら、火にかけてたやかんがぴゅーって鳴った。
今日は緑茶にしようかな。
何となくそんな風に思った。
- 845 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/11(日) 20:37
- 更新しました。
目指せ連日更新。
『広いよ空は、どこまでも』は僕君。の中では一番長い回になるのかな?
って思いながらの更新です。
>SINKI 様
>なんとなくたくましい吉澤君ですね。
>ちょっと好きかも、、、。
(#0○〜○)<・・・テヘッ
|▽´)<・・・。
⊂
三角関係スタートだ(w
いやいや、でもえがったです、ちょっと成長がみられたみたいで(爆
>石川さんもかっこいいよ。
(#^▽^)<・・・テヘっ
|〜○)<・・・。
⊂
- 846 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:38
-
* * * *
吉澤くんの言ってた通り、麻琴ちゃ・・・じゃなくて麻琴は本当人懐っこい娘だった。
ニヘラって笑ったり、時たま口をポかーんって開けてる姿とか見てるこっちが癒されてくるような。
不思議な魅力を持った娘。
そんな風に思った。
で、ついでに麻琴は人の温もりが大好きらしい。
今も私の腕の中ぬくぬくと笑いながら色々と話してくれる。
何か吉澤くんがかまいたくなる気持ちがよく分かるよ。
自分の背中を私の胸に預けて、吉澤くんのベッドに置いてあった枕をぽふぽふしながら
遊んで話して笑って暴れて。
可愛いんだよねぇ。
吉澤くんが部屋に戻ってきた時も、腕の中で『お兄ちゃんおかえり〜』何て言いながら手振って。
あぁ、こんな妹私も欲しいよ。
むぎゅって抱きしめたら、麻琴がくすぐったそうに身体をよじった。
う〜ん、私も人の温もりって好きだぁ。
- 847 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:39
- それから3人でお茶を飲みながら少しまったりして、吉澤くんが話しを切り出した。
そだ、あんまりのんびりしてると御両親が帰ってきちゃうんだもんね。
吉澤くんが考えている日程っていうのが家族皆が休みの日。
旅行中、吉澤くんが仕事とかでいない間を麻琴1人にしたくないみたい。
偶然にも私も休みの日だったから、そう言ったら『よかったら遊び来て下さい』だって。
腕の中で麻琴ちゃんが嬉しそうに飛び跳ねた。
ちなみにその時の声は『うほ〜』ね。
「で、結構調べたんですけど、予算とか考えるとあんまりいい所がないんですよねぇ」
「あのさ、私カオリさんに紹介してもらった人がいるの」
あ、何か誤解させるようなこと私言った?
吉澤くんの手が頭をかいていた状態でフリーズしてる。
「あ、えぇっと、紹介違いで、いや、紹介違いってワケでもないんだけど
旅行代理店やってる人でね、平家みちよさんって人なんだけど・・・」
吉澤くんの解凍作業をしながらカオリさんから紹介してもらった平家さんのこととかを話した。
ちょっと話しをしただけなんだけど、すごく格安で手配してくれるみたいで、
色々とおもしろそうな所を教えてくれたんだ。
- 848 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:40
- 「へぇ、じゃぁその北の方にある温泉旅館なんていいかもしれませんね」
「あ、やっぱり吉澤くんもそう思った?私もそう思ってたんだ」
「うん、あたしもそこがいいと思う」
決まるのって早い時は本当早いと思う。
いきなりそろった3人の答え。
今夜はもう遅いから明日にでも平家さんに吉澤くんが電話をしてみて、詳しいことを聞いてみる。
で、決まったら御両親に話しをしてみると。
「お父さんとお母さん喜んでくれるかなぁ?」
「大丈夫だよ、きっと喜んでくれるよ」
ね、吉澤くん。
不安なくせに、ちょっとその時のお父さんとお母さんの顔想像してたりしてるんでしょ?
ほこほこした表情が顔に思いきり出てるよ。
「うん、そうだよ。きっと喜んでくれるよ」
私と吉澤くんの2人で麻琴のことをくすぐった。
『やめてよぉ』なんて言いながらも楽しそうに笑う麻琴を見て、私の心もどんどんとほくほくになっていった。
- 849 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:41
-
* * * *
石川さんとカオリさんの紹介してくれた平家さんは、本当にすごく格安で手配をしてくれた。
こっちが驚くくらいの値段で、さらにレンタカー付き。
思わず聞き返しちゃったら『安くて楽しいがモットーです』何て言われちゃって。
電話越しで何度も何度も頭を下げた。
で、そのことを父さんと母さんに話したら、最初驚いて固まってたけど、その後に
『どうせだったら皆で行こう』って言ってくれて。
平家さんにもう一度電話をかけたら快く『大丈夫大丈夫』って言ってくれた。
で、さらに麻琴がボソッと一言。
『ねえ、お兄ちゃん、石川さんも一緒に行けないかなあ』
随分と仲良くなったんだよね、麻琴と石川さん。
メールなんかもしてるみたいだし。
麻琴の発言に父さんは少しだけ首をかしげた。
母さんは石川さんと話したことあるから『あぁ、あの人ね』って言ってた。
これがごっちんとかだったら話しは別だろうけど、いきなり出てきた名前の人と旅行って言われても驚いて当たり前だよね。
・・・これを機に、石川さんのこと、ちゃんと紹介しておこうかな。
前から、ちゃんと紹介しておきたいって思ってたし、うん。
- 850 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:43
- 話しの流れでってワケじゃないけど、この場にいない石川さんのことを僕は皆に紹介した。
母さんはもう随分前から気付いてたみたい。
で、麻琴にはこの間紹介してる。
父さんは何となく母さんから聞いてたみたいだけど、それはやっぱり何となくで、
確信とかあったワケでもないからね。
結果としては皆が知ってたような感じだけど、僕は自分の口から紹介しておきたかったから、
ちょっと照れくさいのもあるけど、今度連れて来るって言っちゃった。
物事が動く時っていうのは、すごく大きく動くこともある。
そんな風に思った。
皆が早く石川さんに会いたいって言ってくれたこと。
それがすごく嬉しかったんだ。
- 851 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:44
-
* * * *
「・・・へっ?」
吉澤くん、何て言ったの?
もう一回言ってくれる??
「えぇっと、今度の旅行、一緒に行きましょう」
じゃなくて、その前。
もうちょっと前。
「近いうちに、家に御飯食べに来て下さい」
それ。
それ、正解。
「あ、別にそんな気使わなくたって大丈夫ですよ」
「えぇっと・・・あの、でもいいの?私、行って」
「はい、前からちゃんと石川さんのこと紹介しておきたかったんです」
夜の喫茶店。
温かいコーヒー。
目の前にいるのはちょっと真面目な顔した吉澤くん。
- 852 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:45
- 『麻琴が私も一緒に行けないのかなぁって言ってくれたのがキッカケだったけど、
もっと早くに紹介しておきたかった。で、もう私のことも皆に話しちゃった。
さらに皆私と吉澤くんのこと気付いてた』
っていう説明を今聞いていた。
吉澤くんのお母さんとは何度か話したことあるし、別にいいんだけど、何か紹介とか言われると
こう、緊張するワケですよ。
それも、吉澤くんと友達以上になってから吉澤くんのお母さんと話すのはじめてだし。
吉澤くんのお父さんに会うのもはじめてだし・・・。
「すみません、こんなこと突然言っちゃって」
いや、別に平気だよ。
驚いたっていうのはあるけど。
後、まだ心の準備があんまり出来てないけど。
「で、それはいつ頃・・・?」
「あの、実は明後日なんてどうだろうとか思ってるんですけど」
『無理にとは言わないんですけど、出来れば会ってほしいなって』いつもみたく消えそうな声じゃなくて、
しっかりとした口調だった。
それに押されたワケじゃないけど、私は頷いた。
別に隠れて付き合っていたワケじゃない。
でも、こう挨拶をするっていうのもよくわからなくて、いつかちゃんとお話ししたいなって思ってたから。
だから、頷けた。
「旅行の返事は、その後でもいいですから」
- 853 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/12(月) 11:46
- ------------
---------
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えぇっと、突然ですが、私も旅行参加決定しました。
大緊張で吉澤くんの家で行われた食事会に行ったんだけど、数時間いるウチにすっかりと打ち解けてしまいました。
何か吉澤くんのお父さんもお母さんも麻琴もすごく私のことを気に入ってくれたみたいで。
で、『是非一緒に行きましょう』って説得されまくり。
家族旅行なのにいいのかなぁって思って辞退しようと思ってたんだけど、結局御一緒させてもらうことにした。
平家さん、何度も何度もごめんなさい。
ありがとうございます。
吉澤くんの話しじゃ、電話越しで平家さんは『安くて楽しくて優しいがモットーです』って言ってたらしい。
温泉旅行までの短い期間。
忙しくてあんまり会えなかったけど、ワクワクした気持ちや、ドキドキした気持ちは抑えきれなかった。
- 854 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/12(月) 11:47
- 更新しました。
テンポアップ。
- 855 名前:ななしのよっすぃ〜 投稿日:2004/01/12(月) 20:38
- 作者さま
更新お疲れ様です。
なんなく進展の予感ですが、ヘタレ克服気味な吉澤くん。
またまた、ヘタレれてしまうんでしょうか?
では、続きも楽しみに待ってます。
PS:『まぁ、色々とね』から第三章として
番外編から独立させていただきました。
これからもよろしくお願いいたします。
- 856 名前:YONE 投稿日:2004/01/13(火) 00:50
- 作者様はじめまして
更新お疲れ様です。
いっきに全部読ませて頂きました。
ホンワカした気分になりました。
これからも頑張ってください。
- 857 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/13(火) 11:06
-
* * * *
「「「寒っ!!」」」
到着した日本の北の方。
空港を出た瞬間に口にした僕と麻琴と石川さんの言葉だ。
少し風邪ぎみの麻琴はおまけでちょっと鼻水つき。
ずっと関東の方に住んでたからこんな世界を見るの初めてだったりする。
いや、雪は降るけどそんな大雪っていうのは滅多にないから。
晴れてるんだけど、一面真っ白な世界。
ちょっとオーバーな言い方かもしれないけど、本当、そう思った。
平家さんが手配してくれた温泉旅館は、今ちょうどシーズンオフってことで格安だけど、
シーズン中だと『高級旅館』と呼ばれるような所らしい。
『これと言って目立った観光スポットがあるワケでもないけど、すごくいい所だよ』
そう言いながら平家さんは笑っていた。
でだ、ついた旅館はすごく綺麗な所だった。
これであの値段でいいの?って思うくらいに。
- 858 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/13(火) 11:06
- お客さんも僕らを含めて後数人らしい。
女将さんは『特に観光資源があるというワケでもないですし、こんな雪に閉ざされた状態だとねぇ』
って言いながら僕らを部屋に案内してくれた。
「すごーい!広ーい!!」
1泊しか予定はないから荷物は少なめ。
なのに何故だか麻琴の荷物はパンパンだ。
その荷物と一緒に畳みの上をズザ−っと滑ってゴールはテーブル足にごっつん。
一言言うなら浮かれすぎ。
「温泉温泉畳に温泉、お外で雪で遊びましょ〜」
即興の歌を唄いながら、畳みの上でゴロゴロごろごろ。
入り口で麻琴の浮かれ具合を見ていた僕らも女将さんも思わず笑ってしまった。
「石川さん、お兄ちゃん、外行こう、外!!」
荷物を投げ出して外へダッシュ。
父さんも母さんも笑顔で手を振ってくれてる。
今行かなければいつ行くのさ。
そんな感じで飛び出したのは午後の夕方。
旅館の入り口ですれ違った2人組の女の人が、麻琴に手を引かれる僕らを見て何か笑ってた
気がするのは気のせいかな?
- 859 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/13(火) 11:07
- 「お兄ちゃん早く、早く」
いや、そんな急がなくたって雪はなくならないから。
そんな風にちょっと微笑ましい感じで見てたくせに、気付いたら鼻すすりながら超マジ雪合戦とか。
寒いくせに、暑い。
そのくせめちゃめちゃ楽しい。
こんな身体動かしたの久しぶり。
思いきり顔に雪ぶつけられようが、調子にのった麻琴のボディーアタックを受けようが、
その拍子に石川さんを押し倒してちょっと時間が止まろうが、楽しくてドキドキしてしょうがない。
二人の手を引っ張って立たせて、そのまま雪の中に投げ込んで。
何か子供の時に戻ったみたい。
こんな沢山の雪見たのなんて初めてだし、こんな寒いのも多分きっと初めて。
初めてじゃないかもしれないけど記憶が残ってるウチじゃ初めて。
・・・浮かれちゃいますわ。
でもさ、やっぱり寒いっていうのはあるワケで、ぐずる麻琴を連れて旅館に戻って温泉に入ることにした。
麻琴、風邪ぎみなんだから早く温まった方がいいよ。
「じゃぁ、また後でね」
「はい、じゃぁまた後で」
そう言って一時のさようなら。
さぁて、僕も温泉入ってこよぉっと。
- 860 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/13(火) 11:08
-
* * * *
温泉なんて何年ぶりだろう。
気持ちいいねぇ、こういうの。
大きなお風呂にぽーっと浸かって、さっき見た空を思い出してみる。
広いんだよね、すんごく。
オーバーって言われるかもしれないけど、ずっと続いてるんじゃなかって思う空。
ビルで空が切れることもなくて、電線で空に線が入るワケでもない。
本当、広くて、綺麗。
私の隣では麻琴が口を開けながら頭の上にタオルを乗せて、目を閉じてぽーっとお湯を楽しんでいて、
時たま肩にお湯をかけながら『ごくらく〜ごくらく〜』なんて言ってたりしてる。
「ねぇ、石川さん。さっきさ、あたし達が来る前にお風呂入ってた人いたでしょ?」
「うん、入れ代わりみたいになっちゃった人達だよね」
「そうそう、何かね、その人ね、ちょっと石川さんに似てた気がするの」
私に?
・・・そうだったかなぁ。
顔とかちゃんと見なかったから分からないや。
う〜ん・・・まぁ、でも今考えてもわかるはずないか。
しかし気持ちがいい。
本当気持ちがいい。
- 861 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/13(火) 11:09
- 「私、ここに一緒に来れてよかった」
「あたしも石川さんが一緒に来てくれてよかったよぉ」
ポかーんという音が鳴るような静かな空間。
知らず知らずのうちにたまってた疲れが落ちていくみたい。
「ねぇ、石川さん」
「ん?」
「お兄ちゃんのこと、好き?」
と、突然何さ。
ちょっとびっくりしちゃったじゃない。
「好き?」
麻琴はまだ目を瞑ったまま。
だから表情っていうか、どんな意味で聞いてるのかもよく分からないけど・・・
「うん、好きだよ」
私、吉澤くんが好きだよ。
でね、
「麻琴のことも、好きだよ」
- 862 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/13(火) 11:09
- 少し『好き』の意味が違ってきちゃうけど。
でも、麻琴のこともすごく好きだよ。
「へへっ、あたしも石川さんのこと好きぃ」
照れたようにお湯をぱちゃぱちゃして、瞑ってた目を三日月みたく細めて麻琴は笑った。
「でね、あたしもお兄ちゃんのこと好き。
だからね、嬉しいんだ。石川さんも、お兄ちゃんも好きだから」
裏表のないような笑顔。
純粋だなぁって思った。
麻琴は本当に吉澤くんのことが好きで、私のことも好きでいてくれる。
好きの種類が違うかもしれなくても、好きってことには変わりがなくて、一緒にいるってことに違いはない。
「石川さんが一緒に来てくれてよかった」
照れ笑いを浮かべながら『先に出ますねぇ』なんておどけて先に麻琴は上がっていった。
・・・何か、吉澤くんとちょっと似てるかも。
1人残った温泉で、空を見上げながら吉澤くんと麻琴をダブらせてみて、やっぱり似てるなぁ
なんて思いながら、もう少しだけ、温泉につかった。
う〜ん、やっぱり気持ちいい。
- 863 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/13(火) 11:13
- 更新しました。
テンポアップ2
>ななしのよっすぃ〜 様
微妙に成長しているみたいですよ、ウチの吉澤くん(w
どうでしょう?頑張ってもらいたいものです(苦笑)
いつもありがとうございます。
でもってこれからもよろしくお願い致します(ぺこり)
>YONE 様
はじめまして。
一気読みお疲れ様でした。
(0○〜○) <お茶でもどうぞ。
つ旦
ホワホワ気分をこれからも放ち続けられるように頑張ります。
ありがとうございます。
- 864 名前:SINKI 投稿日:2004/01/13(火) 13:29
- いい展開ですね。
読んでいて微笑んでしまいます。
温泉!!ということで石川さんと二人っきりになったりはしないのでしょうか?
しないだろうけど、、、でもちょっと楽しみです。
これからもがんばってください。
- 865 名前:まっち☆ 投稿日:2004/01/13(火) 14:48
- 面白いです。見ていて勉強になりました。
これからが楽しみです!
- 866 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/14(水) 11:19
-
* * * *
長風呂ってどうにも苦手なんだよねぇ。
速攻でお風呂から出てきてしまった僕。
温泉上がり、浴衣姿でコーヒー牛乳を片手に持って、腰に手を当てて豪快に一気飲みをしたら
『ゴメンね、ちょっと通らせて』っていう声がした。
あ、僕ってば思いっきり通路塞いでるじゃん。
ごめんなさい、ごめんなさい。
謝るよりも先にバッと道をあけた。
そんな僕の慌てっぷりがおもしろかったんだろうか?
女の人から、ちょっと笑い声が聞こえた気がした。
でもって、その女の人から漂う湯の香。
・・・正直、ちょっとだけポワンってなった。
僕の中では一瞬のポワン。
「・・・浮気、絶対駄目だからね」
だから真後ろからいつもよりも低い麻琴の声がした時はかなり驚いた。
- 867 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/14(水) 11:20
- ま、麻琴!
いつからそこにいたのさ・・・。
いや、だってさ出てくるの早いよ。
僕並みに早いじゃん。
そのうえ髪濡れまくってるじゃんか。
「ち、違うよ、別に浮気とかするつもりないって。
あのね、僕、お、お湯の香にね、ちょっとさ、ね」
って必死な言い訳みたいじゃん。
いや、実際そうなんだけどさ。
でもさ、驚いたり焦ったりすると、こうなんかなるじゃん。
ね、そうだよね、麻琴。
「・・・お兄ちゃん」
「いや、本当だから違うんだって」
・・・信じて下さいよ。
本当、浮気とか僕がすると思う?
どうやって信じてもらおうかって考えながら頭をかいたら麻琴にぎゅってお尻をつねられた。
チラッと麻琴を見たら、ちょっと怒ったような顔してるし・・・。
勘違いなんだってばぁ。
別にデレデレしてたワケじゃないんだから。
参ったなぁ、参ったなぁって思ってたら、もう一度低い声。
- 868 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/14(水) 11:21
- 「浮気はダメだよ」
「浮気なんてするつもりないよ」
「・・・ふ〜ん」
その目、全然信じてないでしょ。
ってかさ、その口調って・・・
「麻琴、ひょっとして拗ねちゃった?」
冗談半分で言ってみたら、見事的中だったらしい。
『別にいいもん』なんて言いながら軽く膨れっ面。
何だかなぁって思いながらも、この年下の妹が可愛くてしかたない。
思わず頭をぽふぽふしたくなる。
「・・・ねぇ、お兄ちゃん」
「どうした?」
「あの人、ちょっと石川さんに似てたね」
そうだったかな?
ちゃんと見なかったからよくわからなかったけど、似てたって言われたら似てた気がするかも。
「どうだろ?ほら、それより麻琴先戻っていいよ。湯冷めするとよくないしさ」
「・・・お兄ちゃんも石川さんもちゃんと見なさすぎだよ」
ぼそっと呟いて麻琴は部屋の方へと歩い行った。
・・・ごめんなさい。
に、なるのかな?
- 869 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/14(水) 11:22
- 更新しました。
すんごく短くてごめんなさい。
でもって連日更新目指すとか言いながら、次回更新は明後日です。
>SINKI 様
温泉で石川さんと二人っきり・・・。
そしたらうちの吉は鼻血吹き出してしまいそうですね(苦笑)
すっかりマコ中心になりはじめた吉澤一家+石川さんの温泉旅行。
今後の展開、どうなっていくか見守ってやっていて下さい。
>まっち☆ 様
はじめましてです。
この駄文を読んでいただいて、何か勉強になるようなことがあるのかどうか
私にはわかりませんが、お役にたてたなら幸いです。
( `.∀´)<今後もキリきり逝くわよ!!
ありがとうございます。
頑張っていきます。
- 870 名前:sai 投稿日:2004/01/14(水) 13:06
- おぉ、なんか旅してる。温泉入ってる。石川さんと
よっちゃんの絡みに期待してま。
- 871 名前:SINKI 投稿日:2004/01/14(水) 14:17
- 更新してあって思わずにやけてしまいました。
見守りますよ。
見守りますとも!!
続きが気になるのはもちろんですけど、
この二人、憎めませんね〜。
- 872 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 01:35
- 連日更新乙です。
明日まで楽しみに待ってますね。
>>871 SINKIさん
作者がsage更新してるときは、sageで見守ろうね。
蛇足かもしれませんが、メール欄に半角小文字でsageって入れるだけだから。
- 873 名前:SINKI 投稿日:2004/01/16(金) 13:39
- >名無飼育さん
すいません。
なんという大ミス!!
気づかなくてすいません。
作者さん、本当にすいませんでした。
- 874 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:01
- 「あれ?ひょっとして待っててくれたの?」
浴衣姿でポケーッとしてたら、後ろから声がした。
クルって振り返ったら、髪をタオルでポンポンと叩いてる石川さん。
それも浴衣。
・・・血液が上にブわ−って上がっていくようなそんな感じ。
一言で言うと、か、可愛いっていうか、き、き、綺麗というか。
「あ、はい。ちょっと、えぇ、あの、ま、待ってました」
「噛みすぎ」
ニコッて笑ってまだ冷えていない手でギュッて僕の手を包んでくれた。
『結構待ったんじゃない?手、冷えてるよ』
優しい言葉が脳天直撃。
浴衣でちょっと濡れた髪で手なんて、握られちゃって。
・・・て、照れないなんてありえないよ。
「麻琴、先部屋に戻ったの?」
「あ、風邪ちょっとひいてるみたいだし、湯冷めしないウチに先に部屋に戻りなぁって」
「そっか、それじゃ吉澤くんも早く戻らなきゃね。風邪、ひいちゃうといけないし」
- 875 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:02
- ギュッて手を握ったまま『一緒に戻ろう』
ぱたぱたスリッパにほくほくな頬。
誰も見てないよなぁとか思いながらもしっかり手なんてにぎっちゃったり。
だって離すつもりないもん。
だから、もうちょっとこうギュッとね。
部屋に戻ったらそこにはすでに料理が並べられてて、麻琴はばっちり着席中。
あ、ちゃんと暖かい格好してなきゃダメじゃん。
風邪ひいてるんだから。
ワクワクしてる麻琴の肩に、服をかけて全員着席。
父さんの言葉で『『『『『いただきます』』』』』
新鮮な魚介類は、どうしてこんなにおいしいんだろ。
この場所で食べるからっていうのもあると思うけど、本当、おいしい。
横から伸びてくる麻琴の箸を避けたり避けなかったりしながら沢山色々話して、お酒なんかもちょっと
飲んじゃったりして。
あ、もちろん麻琴は飲んでないよ。
未成年さんにはオレンジ色のジュースもしくはビールに見立てた烏龍茶。
お酒の力がちょっと入って、少し饒舌になってる皆様方。
ってまぁ僕もなんだろうけど。
盛り上がる会話は終わりを知らない。
明日には帰らなきゃいけないなんてあんまり考えたくないな。
- 876 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:03
- で、そろってもう一度大浴場へ。
今度は少しマッタリ入って部屋に戻ったら布団がしっかり並べられてました。
旅館の人って大変だなぁって思いながらも、ごくろうさまです。
皆が戻ってきて、またちょっと話してる間に聞こえた一回のくしゃみ。
「麻琴大丈夫?」
「う〜、大丈夫大丈夫」
ズビッと鼻水をすすって笑顔向けられても説得力の欠片もないワケで。
まだまだ騒ぎ足りなさそうな表情されても無駄なワケで。
時計はもうとっくに12時を回っちゃってるし、そろそろ『おやすみなさい』をしましょうか。
僕と石川さんの間で麻琴がまだちょっと鼻をぐしぐしさせながら布団をかぶった。
電気を消して『おやすみなさい』
疲れもあったのかな、結構早く皆の寝息が聞こえてきた。
それでもって、僕も同じように眠りの世界に引込まれていったけど、その後ちょっとして聞こえた、
隣から聞こえる咳き込む声で目を覚ました。
上半身を起こして声の方を向いたら、麻琴が苦しそうに咳きをして汗をかいていた。
電気をつけたのは父さんかな?
わからないけど、皆がすでに起きていた。
石川さんが麻琴の額に自分の手をくっつける。
- 877 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:04
- 「・・・熱、あるんじゃないかな」
石川さんの言葉を聞いて、父さんがフロントの方へと向かって行った。
麻琴は苦しそうにまだゲホゲホと咳きをしている。
その背中をさすっている母さんの後ろ姿を見つめながら、どうしていいのかわからなくて、
ただ、どうしたらこの咳きが治まるんだろうって、そう考えることしか出来なかった。
それからすぐに父さんが急いで部屋に戻って来た。
どうやら同じ宿に偶然お医者さんも泊まっていたらしく、すぐに来て下さるとのこと。
そしてその言葉通りにノックをする音がして、父さんがすぐに扉を開けると、女の人がぺこりと頭を下げた。
「ナースの石川と申します」
「お休みのところ、申し訳ありません」
「いえ、あの患者さんは?」
父さんに案内のされた石川さんという看護師さんは、まだ咳き込み続けてる麻琴の額に触れて、
背中をさすっていた母さんに変わって麻琴の体を抱き起こすと『大丈夫だよ。もうすぐ先生来るからね』
って優しい声で言いながら麻琴の背中をさすった。
何でかわからないけど、その優しい声とか聞いたら、あぁなんかもう大丈夫かもって思った。
『大丈夫』っていう言葉が、すごく、大丈夫だって僕に響いたんだ。
それで少し落ち着いたんだと思う。
突然のことで、動揺していた僕、自身が。
頭の中で『そういえば石川さんと同じ名字だ』なんて考えられる程の余裕が生まれてたから。
- 878 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:05
- 「着替え、ありますか?Tシャツか何か。それと、タオル」
看護師さんの方の石川さんの言葉にすぐに動いたのは石川さん。
麻琴の鞄を勝手に開けるのはどうかと思ったんだろう、自分の鞄からTシャツとタオルを取り出した。
「男の方は、席を外してもらえますか」
あぁそっか。
ごめんなさい。
何ボーッとしてたんだろ。
父さんと2人、席を外そうとふすまを閉めようとすると看護師さんの方の石川さんが
『あの、フロントに確認して、水枕と、氷と洗面器、もらって来て下さい』
そう言ったので、僕は頷いてフロントへと向かった。
* * * *
吉澤くんと入れ代わるようにして、少し背の高めの先生が来て下さった。
「すいません、お待たせして」
柔らかい声。
それでいて、何か温かい声。
・・・ちょっと私のよく知っている人に似てる気がしないでもない。
「名前、教えてくれる?」
「ヨシザワ、マコト、です」
- 879 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:06
- まだ咳きで苦しそうに喉を鳴らしている麻琴が自分の名前を言うと、看護師さんと、先生が
ちょっとだけ驚いたような顔をした。
でもそれは私が『気のせいかな?』っていうくらいの一瞬。
その後、先生が麻琴のことを診察してくれているのを見ていたら忘れてしまうくらいに短い一瞬だった。
「こんなに咳ひどいと、眠れないね」
先生が麻琴に色々と優しい言葉をかけてくれているのを少し離れた所で見ながら、声だけじゃなくて
ひょっとして顔つきも似てるんじゃないかなぁなんて考えてたら突然
『ごめん、石川さん、お水お願い』っていう声が聞こえたから思わず『はい』って言っちゃった。
見事にカブッた2つの『はい』
いや、突然だったし、その、似たような声で『石川さん』なんて言われると思わず返事をしてしまうワケで。
返事をした後に看護師さんも同じ名字だったことに気付く。
そして私の名字を先生が知っているはずもないってことに今さら気付く。
ちょっとした沈黙。
すみません、すごく恥ずかしいです。
「えーと、お水。どっちの石川さんでもいいから」
先生の声にすばやく反応させてもらいました。
だってさ、あのままいるの恥ずかしいじゃん。
早歩き程度の歩き方で水を取りに行った。
急がなきゃっていうのと、私の照れ隠しも含めたスピード。
水を用意して先生の方へ戻ると、先生はちょうど麻琴に薬を手渡していたところだった。
- 880 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:07
- 麻琴が先生から手渡された薬二つをゴクッと飲み込むと、看護師さんがニコッと笑って麻琴と同じ
視線の高さになるように座った。
「マコトちゃんは、ラッキーガールだね」
「ふへ?」
「今日はたまたま、すっごくよく効く薬、持ってたんだ」
「先生、これ。マコトちゃん、ついてるね。日頃の行いだね」
「珍しい薬だから、普段は持ち歩いてないんだけど、運命かな」
渡された薬を、麻琴は『?』マークを大量に浮かべたような顔で様々な角度で覗き込む。
えぇっと、これは私の予想だけど、そうやって薬を見てもあんまり分からないと思うよ、麻琴。
「ときに、マコトちゃん。注射は、好き?」
その後の先生の言葉にぐいっと麻琴の眉間にシワがよる。
ついでにアヒル口のおまけつきだ。
「・・・キライですよぉ。痛いし」
「そっか。今ちょっとガマンすれば、早くよくなると思うけど、どうしよう?」
今の麻琴の表情は、『かぼちゃの煮物とかぼちゃのプリン、どっちがいい?』
そう聞かれているような感じ。
痛いのは嫌いだけど、早く直したい。
天秤がぽてぽて揺れているんだろう。
でもその天秤もあっという間に傾いたらしい。
- 881 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:08
- 「お願いします。ガンバリまっす!」
「んじゃ、ちょっと腕出して。痛くない、すぐ終わるからね」
でもまぁ痛くないと言われても、痛いと思っちゃってるから眉間にぐいっとシワはよる。
見たいような見たくないようなで、微妙な反目で口をぐいっと結んで注射の針が入ってくとこは見てしまう。
わかるよ、麻琴。
私もそうだもん。
「よし、オッケー。着替えて横になって朝がくれば、もう大丈夫」
でも本当に注射はそんな痛くなかったみたい。
麻琴はいつもみたく口をポケーっと開けながら今まで針が刺さっていたら辺を見ている。
だからね、麻琴。
やっぱり私の予想だけど、そうやって見てもあんまりわからないと思うよ。
で、今まで着ていたTシャツを脱いで、さっき私が渡したTシャツを手に取ると、それが自分のじゃないって
気付いたらしい。
『これ着ていいの?』みたいな表情をしてこっちを見たから、私が笑顔で頷いたら麻琴はへへって笑って
よいしょ、よいしょと袖に手を通した。
「どうもありがとうございました」
ペコリと頭を下げる麻琴と一緒に私も頭を下げた。
不思議なモノで、いつの間にやら麻琴の咳はピタッと止まっている。
やっぱりあのスペシャルな感じの薬のおかげ?
わからないけど、さっきみたいな苦しそうな麻琴の表情が消えたから良かった。
本当にありがとうございます。
- 882 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:09
- 「あ、あのぉ、もう入っても大丈夫ですか?」
そんな時にふすまの向こう側から聞こえてきたのは吉澤くんの声。
そだ、そういえば席外してたんだっけ。
何か似たような声ずっと聞いてたからすっかりってワケじゃないけど軽く忘れてた。
ごめんね、吉澤くんと吉澤くんのお父さん。
返事の代わりにふすまを開ける。
手に持たれてたのは、さっき看護師さんが言ってた水枕に氷に洗面器。
そっか、そういえばもらいにも行ってたんだよね。
何か色々忘れてるな、私。
吉澤くんが麻琴の頭の下に水枕を置いて、さっきよりも全然楽そうな表情をしている麻琴を見て、
安心したような顔をしてた。
それはお父さんも同じみたい。
麻琴の側で心底安心したような顔をしてた。
「明日の朝、また会おうね」
人懐っこい麻琴は、この先生と看護師さんにもすっかり懐いちゃったらしい。
先生の声に布団の中から手を上げて答えて『はーい、おやすみなさーい』
その上げられた手を吉澤くんが掴んで、布団の中へと戻して肩まで布団をひっぱり上げ、
布団をぽふぽふ叩いた。
そうだよ麻琴、いくら咳が止まったからってまだ熱あるんだからね。
ちゃんと温かくして寝なきゃ。
吉澤くんが麻琴の額を優しく撫でたら、麻琴は気持ちよさそうに目を閉じた。
- 883 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:10
- その後、先生達から今夜注意する点と、部屋番号を教えてもらった。
本当、すみません、お休み中だったはずなのに。
「じゃ、今夜はとりあえずこれで」
荷物を持って部屋を後にしようとする先生と看護師さんに頭をもう一度下げた。
それも見事全員同じタイミングで。
皆を代表するかのように、吉澤くんのお父さんが口を開いた。
「どうもありがとうございました」
「明日の朝、また様子見に来ますね」
「はい。すみません。あの、先生、お礼・・・」
「あ、いや。たいしたことしてませんから」
そんなことないです。
だって先生達は麻琴の咳を止めてくれただけじゃなくて、私達のこともこんな安心させてくれたじゃないですか。
まぁ、私の思いは言葉になってなかったんだけど、それを代弁するかのように吉澤くんのお父さんが
先生に食い下がると、先生は
『明日、できれば診療所に寄って下さい、すぐ近くなんで。そのとき、薬代だけいただきますから、ね』
そう言ってにっこり笑った。
「それより早く、そばにいてあげて下さい」
麻琴はまだうつらうつらとしているんだろう。
時たま頭を動かしてこっちの方を見ている。
まだ頭を下げ続けている吉澤くんのお父さんを先生は制して『それじゃ、おやすみなさい』と言って
部屋へ戻って行った。
私と吉澤くんと吉澤くんのお母さんはその後ろ姿に向かって頭を下げてから麻琴の側へと戻った。
麻琴の側から振り返った時、吉澤くんのお父さんはまだ頭を下げ続けていた。
- 884 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/16(金) 20:11
-
* * * *
静かな寝息をたてている麻琴。
タオルを何度か氷水に浸して取り替えながらさっき来て下さった先生達のことを思い出してみた。
石川さんと同じ名字の看護師さん、声とか、顔つきとか、石川さんに似てたなぁ。
まぁ違うとこはもちろんあるんだけど、それでもたっぷり似ているところはあって、
ちょっとじぃっと見てしまった。
多分、麻琴が気付いてたら『浮気しちゃダメだからね』って言われてるだろう。
でもさ、それくらい似てたのさ。
ぱっと見た感じがね。
このことを石川さんと話したいなぁって思ったけど、会話してる声で麻琴のこと起こしちゃったら
あれだから、とりあえず今日思ったことは朝まで胸の中にしまっておこう。
もう一度額の上のタオルを変えたら、母さんから『後は母さんがやるから寝ていいわよ』
隣で父さんも頷いている。
それじゃぁと、石川さんと僕は父さんと母さんと場所交代。
旅の疲れとかもあったんだろう。
麻琴のことが気になりつつも、僕はすごく早く眠りの世界に引込まれていった。
- 885 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/16(金) 20:16
- 更新しました。
( ´Д`)<・・・んぁ?
と思った方がいらっしゃいましたら、明日の更新までもうちょこっと見守ってやって下さい(ぺこり)
>sai様
旅出ちゃいました。
温泉も入っちゃいました。
絡みですか・・・(・∀・)
どうなってくんでしょうねぇ←オイ。
あんまし期待しないで待ってて下さい(w
>SINKI 様
ニヤニヤされちゃいました(w
気長に見守ってやって下さい。
憎めない二人のうち、
∬´▽`)←の方が憎めないのは私だけでしょうか(苦笑)
マコが可愛いんです(爆
age sage今回だけごめんなさい。
いつもは気にしないんですけどね(苦笑)
大丈夫っすよぉ。
こちらこそ言わないでごめんなさい。
>名無飼育さん 様
わざわざありがとうございます。
そしてはじめましてです(で、いいんしょうか?)
マターリとしてるんですが、また楽しみに待っていますと
言っていただけるように頑張っていきます。
- 886 名前:SINKI 投稿日:2004/01/17(土) 15:28
- そうかもしれません、、、(笑)
最近の(現実での)まこっちゃんは本当にほんわかしてますよね。
こちらのまこっちゃんもとてもかわいいです。
( ´Д`)<・・・んぁ? となっちゃいましたね。
もしかしたら、、、?
楽しみで仕方ありません。
これからもがんばってください。
- 887 名前:背番号6 投稿日:2004/01/17(土) 22:10
- 初めてレスします
「っすげーーーー」って思っちゃいました。
2回前ぐらいで気付けYO!って話ですが鈍感な私には気付くなんてことは
無かったとです。
次の更新楽しみにしてます
- 888 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:01
- 翌朝。
あっという間に訪れた朝。
僕を起こしてくれたのは、布団の上に乗っかってきた麻琴だった。
「お兄ちゃん、起きて起きて起きてぇ」
あれ?確か君昨日の夜はうなってなかったっけ?
そんな疑問がぷかぷか浮かんでくる程元気な姿。
まだ鼻水ぐずぐずしたり、ちょっと咳とか出ちゃってたりもするみたいだけど、
それでも昨日の苦しそうな表情が嘘みたいだ。
「朝御飯食べよぉ、食べよぉ、食べよぉ」
ぽふぽふ攻撃開始ですか。
そうですか、そっか、そんな元気になったのかい。
うん、それはよかった。
でもさ、
「麻琴、起きるから、起きるからちょっと下りてね」
じゃなきゃ僕、起きれないから。
ってかもう寝てるの僕だけじゃん。
皆起きてるじゃん。
まだ布団の上にいる麻琴を転がして、急いで起きて寝癖直したり。
ともかく色々なことをダッシュでやった。
で、やっとこさ僕が着替え終わった時に先生達が診察に来て下さった。
- 889 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:03
- 「あ、せんせ〜と石川さ〜ん」
『石川さ〜ん』って呼ぶ声に、看護師さんじゃない方の石川さんがちょっと反応したのは内緒にしておこう。
だってさ、その後何か恥ずかしそうに顔赤くしてるんだもん。
「おはよー、マコトちゃん、すっかりよくなったみたいだね」
先生の笑顔にデヘデヘとゆるい笑顔を向けている麻琴。
口、開いてるよ。
ゆるみすぎだよ。
でもさ、わからなくもないかも。
診察が始まりそうになったから、昨日みたく席を外そうと思ったら、先生が
『あ、そのまま見ててもだいじょうぶですよ』
と言ってくれた。
どうやら今日は、僕らがいても大丈夫な診察らしい。
あの、こう胸にぺたんぺたんってしないってことね。
診察を受けながらもニコニコしている麻琴を見ていて、こっちまで思う。
この先生達って、何か温かいんだよね。
声とかも何だけど、その、オーラ?っていうのかな?
あれ?違うか?
まぁともかく雰囲気がね。
だから、わからなくもない。
麻琴がすぐに打ち解けた理由。
「よし、もう大丈夫。ただし、今日は雪合戦は禁止ね」
「本当、ありがとうございます」
「いえ。あの、でもお薬は出しておきたいんですよ」
そう言った後に、先生はちょっと考えるような表情をしてから父さんに聞いた。
- 890 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:04
- 「今日は、ご予定は?どこか行かれるんですか?」
「いや、後は帰るだけですね」
先生は『そっか』って呟くと、看護師さんの石川さんに何やらこしょこしょ話しかけた。
石川さんも何か言いながら頷いてるみたいだ。
で、すぐに先生がこっちをくるっと振り向いた。
「診療所まで、道案内しますよ」
えぇっと、いいんですか?
だってせっかくの休暇までちょっと潰しちゃったのに、そのうえ道案内とかって。
先生達、ゆっくり休めないんじゃないですか?
目をぱちくりしてると、先生がもういちょと言わんばかりにこう続けた。
「地図書くの、苦手なんですよ。だから」
- 891 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:06
- 僕らは御好意に甘えさせてもらうことにした。
まだ父さんと母さんは申し訳なさそうにしてたけど、麻琴は大喜び。
ほら、畳の上を靴下で走ると転ぶよ。
って言わんこっちゃない。
ここで一体何回怪我したいのさ。
おでこをペチッとしたら、麻琴は『すいませんねぇ』なんて言いながら洗面所へと隠れて行った。
- 892 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:08
-
* * * *
あの後、先生達はまた会う時間を決めてから部屋に戻って行った。
で、私達も朝食食べてすぐに帰りの準備をしようとしてたのさ。
そしたらね、吉澤くんのお父さんがこう言ったのよ。
突然、思い出したように。
「そうだ、ひとみと石川さんは、今日もここ、泊まっていっていいから」
って。
まさに荷造りしようとしてた瞬間。
私と吉澤くん以外の3人はニコニコしてる。
「ひとみちゃん達、明日も休みなんでしょ?」
「そうだけど・・・」
いつの間に予約とったの?
吉澤くんの疑問は私の疑問。
で、答えてくれたのは麻琴。
「あのね、この間お兄ちゃんがいない時に平家さんに連絡しといたんだ」
・・・平家さん。
カオリさんの言う通りです。
ごめんなさい、何度も、何度も。
- 893 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:11
- でもさ、それってさ、今日、吉澤くんと、二人っきりってことだよね。
そうだよね、絶対そうだよね。
ってかですね、あの・・・何で黙ってたんですか。
「父さん、そんな気使わなくてもよかったのに」
えぇっと、動揺してるね、吉澤くん。
思いきり。
冷静に装ってるつもりでしょ?
バレバレだよ。
噛まなかっただけ褒めてあげれるけど。
「まぁいいじゃない。後1日、ゆっくりしていきなさい」
『石川さんもね』なんて言われたもんだから私は思いきり噛みました。
いや、だって、私も動揺してるし。
突然なびっくり企画。
多分、私達に先に言ったら断るとか予想してたんだろうなぁ。
いやまさにそんな気もするけど。
- 894 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:12
- でも、せっかく用意して下さったんだし、あの、すみません。
じゃぁ、ね、吉澤くん。
うん、後1日、ゆっくりさせてもらおうか。
「何か、すみません、私まで」
「いいのよ、そんな気にしないで」
ってなワケで決まりました。
ある意味運命な1日。
それが、突然、今日、今、こうして決まりました。
・・・何処かで下着とTシャツ買わなきゃ。
皆が帰り支度をしている中、私の頭の中ではこんな考えと、今夜のことがぐるぐるしてた。
- 895 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:13
-
* * * *
外に出てちょっとすると、先生達がやってきた。
挨拶を交わして先生の運転する車の後に続いて走る。
どうやら診療所があるのは隣町らしい。
東京では考えられない程信号の数は少なくて、ゆっくり走りながら見る景色はすごく広い。
知っている自分の世界よりも全然広い。
『空って何処までも続いているんだ』
そんな風に思う。
後、時間がゆっくりと流れてる感じがした。
まぁ、車もゆっくり走ってるし、父さん達は飛行機までの時間はまだまだあるみたいだし、
ゆっくり出来るっていう気持ちのゆとりもあったからだろうけど。
車の中から見える景色が変わっていき、海沿いの道を僕らはゆっくりと走った。
窓側に麻琴、真ん中に石川さん、その隣に僕。
石川さんは、ちゃんとこの景色見えてるかな?
帰りは場所、変わってあげよう。
知らない場所。
知らない景色。
見えるモノすべてが新鮮で、刺激的だ。
流れる景色を見つめながら、僕はきっと麻琴のように口を開けていたことだろう。
- 896 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:14
- やがて車は駐車場へと入っていき、ゆっくりと停車をした。
あれ?ここ、どう見ても診療所じゃないよね?
ってか車揺れてない?
あれ?ん?これ何??
車の中で皆が同じ疑問をぷかぷか浮かべている時、こんこんって窓を叩く音がした。
ちょっと窓をあけたらすんごい風。
これか、これが正体か。
「寒いけど、ちょっとだけ岬、見ていきませんか?」
先生の声も、風であんまり聞こえない。
聞こえたんだけど、多分、先生大声だったよ。
大声っぽく聞こえなかったけど。
で、もちろん見ていきますとも。
岬、見きにきたいです!
- 897 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:15
- 「「「風強っ!」」」
寒いんですわ。
でもって凄いんですわ。
外に出たら、看護師さんの方の石川さんが麻琴にコートと長靴をかしてくれた。
もこもこほっくりな完全防備。
何から何までありがとうございます。
首をすくめるようにして先生達の後を、麻琴と石川さんと3人でビトッてくっついて追いかけた。
父さんも、母さんも寒そうにして肩を寄せあってる。
いや、昨日も空港着いて思ったけど、やっぱりさ、寒いよ。
うん、東京人には軽く辛いや。
風に吹かれながら遊歩道を歩いて、到着したのは岬の先。
麻琴は『とれる、とれる』とか言いながら頭を抑えてはしゃいでいるけど、僕はこの風の強さと
寒さにとりあえず冷凍状態。
うぅ・・・寒さに結構弱いんだよねぇ。
石川さんはどうなんだろ?
あ、でも寒そう。
いや、寒いか。
「ここ、風の岬って言うんですよ」
歩いていけるぎりぎりまで進んで、先生の言葉を聞く。
寒いけど、風凄いけど、でもすごい。
麻琴と石川さんは腕を組んで、『すごい!』って言葉を連発中、だと思う。
口が動いてるのは見えるけど、声とか聞こえないんだ。
僕はただ見つめるだけ。
言葉とか、何か出てこなかったんだよね。
- 898 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:16
- 広いんだ。
地球は広いんだ。
空は広くて、海も広い。
知っているはずだけど、今こうして眺めて改めて実感した。
「すごいでしょ?ここ」
隣に立った先生の言葉にポカンとしながら頷いた。
ずっと見ていたいけど、寒さと風が許さない。
僕の体は結構な冷え具合。
でも見たい。
もうちょっと見ていたい。
ちょっとした沈黙があって、先生がまた口を開いた。
何か僕から何も喋ってないや。
気、使わせちゃってるのかな・・・。
「冬の岬、見せてあげたいなって思ってね」
ありがとうございます。
この言葉が一番はじめに出てきた。
こういう景色って、見る機会なんてほとんどないし、今日も先生達に案内してもらわなかったら
来なかったはずだし。
- 899 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:17
- 「あ、あの、ありがとうございます。ここ、連れてきてくれて」
出てきた気持ちを言葉にしたら、見事に噛んだ。
で、噛んで焦ったら早口になるとか・・・。
何かなぁ・・・麻琴のような話せる能力がこんな時欲しくなる。
「今日帰っちゃうんだ。もっとゆっくりしてけばいいのに」
「あ、僕らだけ、あの、もう1泊することになったんです」
えぇっと、僕らっていうのは僕と石川さんのことで、あの、はい、もう一泊泊まっていきます。
あ、で、石川さんっていうのはあそこにいる娘のことで・・・。
寒さと緊張とさっきの焦りで噛みまくり。
いつものことだけど噛みまくり。
意味もなく眼鏡上げてみたり、わちゃわちゃ手を動かしてみたり。
こんな僕の行動を、先生はちょっと笑って見ていた。
何か、やっぱり暖かさのある、笑い方で。
「最初はね、3人兄妹かと思ったんだ」
「僕らがですか?」
「うん。仲良さそうに雪合戦とかしてたから」
あ、やっぱりあの時入り口ですれ違ったの先生達だったんだ。
いや、でも兄妹って・・・。
「僕ら、似てますかね?」
「そうだね。普通に兄妹には見えたよ。マコトちゃんとキミは似てるし」
- 900 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:18
- その言葉を聞いて、僕はジワって嬉しくなった。
後、ちょっと照れくさくもなった。
僕と麻琴は兄妹だけど、つい最近兄妹になったばかりで。
一緒に過ごした時間っていうのはそんなに沢山ないけど、でも、やっぱり兄妹で。
全然似てないよりも、少しでも似てるって感じられる方が共通点を見つけれたみたいで嬉くなる。
そんなのが全くなくたって、兄妹には変わりないんだけど、やっぱり言われると嬉しいもんで。
「でも、石川さんと僕は似てないですよ」
照れ隠しをちょっとしながら、また海と空を見つめた。
風は強くて、寒いけど、でも、ちょっとだけ、心の中がさっきよりも温かくなった。
「全然、似てないですよ」
それでもいい。
こうやって、一緒にいられれば、それでいいんだ。
小さく小さく呟いて、風と一緒に空に流した。
多分、僕は今笑ってる。
寒さで頬が変な感じだけど、絶対、イイ顔で笑ってるよ。
- 901 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:18
-
* * * *
「マコトちゃん、何か食べたいものとかある?」
石川さん(って何か自分で言うのも変な感じ)がちょっと鼻をすすってる麻琴に向かって優しく聞くと、
すんごい勢いで振り向いた麻琴は満面の笑みで答えた。
「かぼちゃ。かぼちゃが食べたいです」
いつでもどこでもかぼちゃが一番。
それが麻琴だ。
冬はそこに焼き芋を入り込んでくるらしいけど、やっぱり一番はかぼちゃらしい。
「そっか、じゃぁお昼は家で一緒に食べようか」
えっ!?そんなお昼も御一緒しちゃっていいんですか?
ニコニコ顔の石川さんに、キラキラ顔の麻琴。
いや、でも悪いですよ。
こんな案内までしていただいたのに。
色々言おうと思って頭の中で言葉をまとめていたら、近くに先生や吉澤くんや、おじさんやおばさんが
集まっていて『そろそろ行こうか』なんて言っている。
- 902 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:19
- そしてまた、私達はお世話になることになりました。
昨日から本当ありがとうございます。
それから本当ごめんなさい。
休暇潰しまくりじゃないですか、私たち。
反省やら感謝やら、沢山沢山重なって、『うぅ〜』とか唸っていたら、心配されちゃったらしい。
吉澤くんが、私みたくハの字をして『大丈夫ですか?』って近寄ってきてくれた。
うん、全然大丈夫。
ごめんね、ありがとう。
駐車場までの帰り道、先生達と一緒に歩く麻琴と、その前を歩くおじさんおばさんの後ろ姿を見ながら、
『ここ、連れて来てもらってよかったね』なんて吉澤くんと話して歩いた。
- 903 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:20
- 診療所のすぐ側にある先生達の家にお邪魔させてもらって、御飯まで御馳走になってしまった私達。
そうそう、お昼は戸田先生っていう先生も一緒だったんだ。
皆でわいわいしながらの御飯。
こんなに大勢でも食事はすごく久しぶりだったから楽しかったぁ。
でも、何いから何までお世話になるワケにはいかない。
だからせめて洗い物だけはやらせて欲しいとお願いしたら、ちょっと先生達が考えて、
『じゃぁ、せっかくだから手伝ってもらおうか』って言ってくれた。
よかった。
少しでも何かしないと落ち着かなかったから。
きっとこのまま帰っても気になってしょうがない。
そんな数はなかったんだけど、ありがとうの気持ちとか込めながら洗わせていただきました。
で、一生懸命拭かせていただきました。
いや、オーバーじゃないよ。
本当だよ。
そして、飛行機の時間とか、先生達もそろそろ診療所に戻らなくちゃいけないとか。
そんな話しが出てきて時、先生達は何と空港まで自分達が見送ると言ってくれた。
いや、それはいくら何でも悪いですよ。
本当、それは悪すぎますよ。
- 904 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:20
- でも、頑張って断ったんだけど、私と吉澤くんが二人で先に宿に戻ることになった。
ひたすらぺこぺこ。
こっちに来てからお世話になりっぱなし。
何度も言った気がするけど、本当お世話になりっぱなし。
本当にすみません、本当にありがとうございます。
「先生と先生と石川さん!」
それぞれが家を出る支度をしようとした時、さっきまでお茶を飲んでいた麻琴が突然声をあげた。
ちょっと、びっくり。
皆びっくり。
「あのぉ、皆で写真撮りません?」
ニへッて笑った顔からは、ちょっとだけど寂しい気持ちがのぞいていた。
もうちょっと、一緒にいましょうの麻琴なりのアピール。
多分、そうだと思う。
・・・もうすぐさよならの時間だもんね。
- 905 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:21
- 8人で撮る写真。
反対する人なんて誰もいない。
麻琴はタイマーをセットしながらウハウハしている。
『お兄ちゃん、もうちょっと石川さんの方にくっついてぇ』とか
『石川さん、もうちょっと先生の方にくっついてぇ』とか。
どっちがどっちの石川さんかは、まぁ御想像におまかせします。
ちゃんとフレームに全員がおさまることを確認して、タイマーセット。
どでどで走ってきて、ど真ん中にズザ−っと滑り込んできて、隣にいる私と石川さんの腕に
自分の腕をからめて、多分、最高級の笑顔。
私も、きっと最高級の笑顔。
で、多分皆もいい笑顔。
時間っていうのはやっぱり止められるワケじゃなくて、ついに来てしまったさよならの時間。
一足先に、宿に戻る私達に先生の言葉。
『運転、気をつけて。それから、ガンバレよな』
思いきり優しさに触れた気がした。
「はい、お世話になりました」
吉澤くんの運転で、ゆっくりと車は走りだした。
目指すは今日の朝まで皆で泊まっていた宿。
でも、今日は吉澤くんと二人だけで泊まる宿。
優しい声や、優しい笑顔に見送られた、車はゆっくりと走っていく。
二人っきりの車の中、外を眺めていたけど、正直、あんまり景色は目に写っていなかった。
- 906 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 00:22
-
* * * *
お兄ちゃん達と先生達がさよならをした後、あたし達は先生に空港まで送ってもらった。
こうやって先生達といれるのは楽しいし、嬉しいんだけど、やっぱりお別れって好きじゃない。
「元気でね。風邪引いたら、またおいで」
風邪引かなくたってまた来ます。
でもすぐには行けないから
「帰ったら写真送りますね」
「ありがと。戸田先生の分も、一緒に頼むね」
お別れをする時は、笑顔でお別れって決めてたのに、無理。
笑おうと思ってるのに、全然顔が言うこと聞いてくれない。
ぐしぐし泣きそうになった。
石川さんがギュッて抱きしめてくれたら、我慢しようとしてたのに涙とか勝手に出てきそうになったから
頑張ってまたグッて我慢した。
ちゃんと泣くの我慢出来てたかどうかはわからないけど、我慢しようとはしたんだよ。
先生と石川さんとお別れをして飛行機に乗った後、やっぱり寂しくて涙がちょっと出た。
また、絶対会いたいから、会いに行きますね。
もちろんお兄ちゃんとお兄ちゃんの大事な人の石川さんも一緒に。
先生と石川さん。
いっぱい迷惑とかかけちゃってごめんなさい。
でも、あたし、すっごい楽しかったよ。
ここに来て本当よかったって思ってるよ。
だからね、沢山ありがとう。
- 907 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/18(日) 00:32
- 更新しました。
『広いよ空は、どこまでも』は後3回な予定です。
でも一足先に、この場をかりてお礼をば。
気付いた方もいらっしゃるみたいなんですが、一応。
この二日間は、名無しOAさんとのコラボというカタチで更新させていただきました。
こういうのが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、
更新の間、見守って下さってくれてありがとうございました。
今までの更新分も、この後の更新分も、スタートは名無しOAさんから
お声をかけていただいたのが始まりでした。
ので、きっかけをくれた名無しOAさん、読んで下さった皆さん、
どうもありがとうございました。
まだ更新は続くんですが、先にこのお礼だけ言わせて下さい。
えぇっと、今だ緊張していて日本語おかしい気がするんですが、
できれば目を瞑ってやって下さい(苦笑)
それではまた明日(ん?もう今日になるのか)
(0○〜○)<・・・緊張です。
- 908 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/18(日) 00:35
- >SINKI 様
∬´▽`)←人気者。
マコの登場で僕君。が書きやすくなったのは内緒で(爆
いいですよね、このほんわかした感じ。
一応コラボとしてはここまでなんですけど、僕君。はもうちょい続きあります。
続きも楽しんでもらえるように頑張ります。
>背番号6 様
どうもはじめましてです。
いやいや、驚いてくれて何よりです(笑)
『っすげーーーーー』って思っていただけて嬉しい・゚・(ノД`)・゚・。
ありがとうございます。
頑張ります!
|▽`)<・・・お兄ちゃん。
⊂
- 909 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/18(日) 00:38
- 書き忘れ発見_| ̄|〇
名無しOAさんの作品は銀板のオサブリオです。
こんな大事なこと書き忘れるなんて...。
ごめんなさいごめんなさい・゚・(ノД`)・゚・。
- 910 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/18(日) 00:39
- 訂正
>オサブリオ×
>オサヴリオ○
もう本当にごめんなさいごめんなさい。
- 911 名前:名無しOA 投稿日:2004/01/18(日) 00:56
- 落ち着いたかな(笑)?
僕と君との物語り。読者の皆様、初めまして。オサヴリオを書いてる者です。
今回はお邪魔してどうもすいませんでした。
私どもの拙文とあわせて楽しんでいただけましたら、最上の喜びに存じます。
匿名匿名希望様。
無理を言って平家まで出していただいて、本当にありがとうございました。
幾度も書き直しのお手間を厭わずお付き合い下さったこと、心より感謝いたします。
一足お先にシモテハケー、いたしますが、一読者の立場で続きを楽しみにしております。
などと軽くプレッシャーをかけつつ(笑)、本当にシモテハケー。
- 912 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/18(日) 00:56
- コラボ、すごい良かったです。
どちらの作者様も大好きなので、すげー嬉しかったです。
ところで吉澤君、決めろよ?決めてくれよ?w
- 913 名前:alone 投稿日:2004/01/18(日) 01:03
- 連日の更新お疲れ様です。
なんだかんだでペースが凄く早くて嬉しい限りです。
やはりペース落とそうと思っても
吉澤君たちがほっとかせないのかな(笑)?
今回はリアルタイムで楽しませて頂きました。
もう「更新ボタン連打!連打!」ってな具合に(笑)。
コラボ企画、面白かったです。
ウデのある作家さん同士でないとこうはいかないですね。
また明日も頑張って下さい。
- 914 名前:名無読者M 投稿日:2004/01/18(日) 01:47
- こんな素敵な競演を実現していただいてありがとうございます。
2作品のコラボを楽しく読ませていただきました。
吉澤君の弟っぷり(?)がなんとも言えずかわいいですね。
二人の進展を楽しみに、次の更新をお待ちしております。
- 915 名前:オレンヂ 投稿日:2004/01/18(日) 02:10
- はじめて感想書かせていただきます。
前のスレからすごく好きで欠かさずチェックして読んでました。
すごく心があったかくなる作品で、大好きです。
オサヴリオもとても大好きな作品で、
すれ違った人が石川さんに似てたというところから、もしや?!と思ってました!
すごく心がほかほかにあったかくなりました!
これからも楽しみに読ませていただきます。
- 916 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:49
-
* * * *
宿までの道。
風景に見入っている石川さんは、今、どんな気持ちなんだろう。
今夜は二人っきりっていうことが、僕の頭の中ではぐるぐるぐるぐる。
意識しないでいようと思ってるけど、そんな風にうまいこと出来ないのが悲しいところ。
先生の言ってくれた『ガンバレよな』
その言葉の意味って何だろう。
僕が今考えているようなことも含まれてるのかな。
それを聞いた、石川さんも同じようなこと、考えてるのかな。
- 917 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:50
-
出発前、ごっちんから紗耶香に伝わってしまった旅行の話し。
仕事の後、突然部屋に呼び出されて、あのぉ、色々とレクチャーされました。
内容は、まぁ、うん。
いらないって言ったのに渡されたモノとか、紗耶香的まめ知識とか。
僕の鞄と頭の中に入ってしまってることが、余計に僕をドキドキさせるんだろうか。
しかしなぁ、僕の為って言いながら、一番紗耶香が楽しそうだったんだよなぁ。
夜のテンションっていうのもあったのかね。
後はお酒の力っていうのもあったのかね。
紗耶香は、楽しそうにキラキラしてた。
- 918 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:50
- ・・・考えすぎちゃダメだよ。
ダメだよ僕。
ほら、そうなるかなんてわからないんだし。
石川さんがそう望んでるかんてわからないんだし。
都合のいい言い訳とか、勝手な思い込みとかで頭の中をごまかして、片手で頭をぽかぽかした。
・・・変に意識しすぎて、せっかくの旅行を台無しにしたくないから。
ちょっと頭を切り替えたら、何か楽になったかも。
肩の力がちょっと抜けたっていうのかな。
息が楽になった。
緊張するにはまだまだ早い。
それに、僕が緊張なんてしてたら石川さんにも、伝わっちゃうもんね。
一瞬だけ、車の窓を開けてみた。
寒いけど、本当寒いけど、今まで車内にあった空気をちょっと入れ替える感じで開けてみた。
「うぅ、やっぱし寒いですねぇ」
寒かったけど、別に後悔とかしてないですよ。
ほら、石川さんだって、何かさっきよりも顔の筋肉ゆるんでるじゃないですか。
- 919 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:51
- 「当たり前じゃん」
笑い顔。
やっぱり笑顔がいい。
風景もいいですけど、今は僕と話しましょ。
宿はもうすぐ。
本当にもうすぐ。
ちょっとだけ車のスピードを落として走りましょうか。
空はもうすぐ暗くなる。
そんな時間。
駐車場で見た空は、やっぱり広くて、すごく、綺麗だった。
- 920 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:51
-
* * * *
「やっぱり、二人だと広く感じるね」
部屋に戻った私達は、畳の上にぐでーっとして座りながら、適当にテレビをつけて、ちょっとゆったりしていた。
今日の朝まで5人いたこの部屋は、やっぱり2人だと広く感じてしまう。
私と吉澤くんの間にある微妙な空間もその理由の一つなのかなぁ。
「そうですねぇ、何かちょっと空間、あまりすぎてますよね」
荷物なんてそんな量ないし、散らかすようなモノもない。
ちゃぶ台を囲んで座っているんだけど、微妙な隙間が開いてしまう。
ほら、やっぱりこの隙間も理由の一つだ。
静かな場所。
昨日は麻琴が騒ぎまくってたからあんまり気にならなかったけど、多分、テレビを消したらすごく静かなはず。
見てるワケじゃないんだけど、何となくつけたテレビ。
この部屋にはニュースを読んでるアナウンサーの声と、私達の声くらいしか聞こえない。
いつも、回りに音がありすぎるのかな。
そんな風に思う程、静かで、心地よい空間だ。
- 921 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:52
- しばらくマッタリとしていると、旅館の人が夕飯を運んできてくれた。
久々に吉澤くんと二人っきりで食べる食事。
こういう所では初めて食べる食事。
へへっ、何かいいね、こういうの。
おいしい御飯をゆっくりと食べて、そのまま浴場へ。
昨日よりも念入りに体を洗って、昨日と同じくらいゆっくりと浸かった。
・・・意識するなって方が無理。
多分、それは吉澤くんも同じだと思う。
ここまでの間も、最初はちょっと微妙な空気だったし。
いつか、カオリさんが言ってくれたことをちょっと思い出した。
そうだよね、多分、私からも動かないと、ね。
焦ってるとか、そういうワケじゃない。
ただ、私はもっと吉澤くんが知りたくて、もっと近くに感じたい。
求める気持ちっていうのは本能なのかなぁ。
自然と生まれていたこの感覚は、一体どこからやってきたんだろう。
不思議。
でも、このまま消すってことは、出来ないと思う。
- 922 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:53
- 浴衣の帯をギュッと結んで鏡を見つめた。
鏡に写る私の顔は、ちょっと緊張してるみたいだった。
今から緊張なんてしてもしょうがないんだよね。
また、変な沈黙な空気になったら気まずいし。
頬を両手でぺちぺち叩いて、半纏をぎゅっと寄せて脱衣所を出た。
そしたら、やっぱり吉澤くんが待っててくれた。
「僕、長風呂って苦手なんですよ」
湯に浸かってせいか、まだ頬がほんのりピンクな吉澤くん。
手をそっと握ったら、少し強めに握り返してくれた。
- 923 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:53
- 部屋に戻ったら、布団が敷かれていた。
えぇっと、それもくっついて並べて。
ドラマとか漫画でありそうなベタな展開に、固まるっていうよりも、思わず笑ってしまった。
本当にこういうのあるんだね。
手をつないだまま、布団を飛び越えて窓際へ。
ちょっと寒いけど、空、見たかったんだ。
昔はそんな星なんて見てなかったのに、吉澤くんに出会ってから私は本当よく空を見上げるようになった。
東京で見る空と、今、ここで見ている空。
同じはずなのに全然違う。
空が星で明るいんだよね。
吸い込まれていきそうな色。
きっと人工の光りとかがなければ、東京でも見れるはず。
でも、ずっとここに住んでたらそれが当たり前で、気付くこともなかったのかな。
「電気消したらもうちょっと星って見えるのかね」
この部屋の光も、東京の光も。
『じゃぁ消してみますか』そう言って吉澤くんが部屋の明かりを消してくれた。
- 924 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/18(日) 10:54
- 街灯が少ないと、夜って本当に暗いと思う。
そして、だからこそ星はすごく輝いて見えると思う。
部屋の電気を消したくらいの変化じゃそんな変わりはなかったけど、でも、暗い中で見る星の方が好きだな。
自分も空の下にいるって思えるから。
色々考え事をしながら外を見ていたけど、ちょっと寒い。
せっかく温まった体から熱がちょっとずつ無くなっていく。
少し体を震わせたら、後ろからぎゅって抱きしめられた。
夜の闇と、星の明かりが奪っていった私の体温が、私の背中から全身に伝わっていく。
それは、吉澤くんだけの温もりじゃなくて、多分、私のこの一気に上がった体温も関係ある。
こんな風に、後ろから抱きしめられたことって、実はあんまりない。
というよりも、あんまり抱きしめあうっていうことがない。
吉澤くんが照れ屋っていうのもあるかもしれないけど、何か、そういったことってあんまりないんだよね。
だからかな。
いや、言い訳かもね。
私の体温が上がった理由、それはドキドキしてるからだもん。
突然のことで驚いちゃったけど、でも、照れくさいけど嬉しくて。
もう少し、こうしててもらいたくて、回された腕に手をかけた。
触れた吉澤くんの肌は、ちょっと温度が高かった。
- 925 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/18(日) 10:55
- 更新しました。
『広いよ空は、どこまでも』残り2回。
次回更新は明日( ^▽^)さんの誕生日です。
今吉澤くんと石川さんよりも緊張しているのは私です(爆
>名無しOA 様
まだ落ち着いてません(笑)
こちらこそ本当にどうもありがとうございました。
平家さんはいつか出そういつか出そうと思っていたので、
こういったチャンスの波に乗って登場出来て喜んでると思います。
(;`◇´)<・・・でもちょっとだけとか。
軽くプレッシャーを受けつつ頑張っていきます(笑)
>名無飼育さん 様
コラボ、楽しんでいただけたみたいでよかったです。
私もスゲー嬉しいです・゚・(ノД`)・゚・。
そして吉澤くん、運命の時です。
ついにここまできますた。
- 926 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/18(日) 10:56
- >alone 様
吉澤くん達が暴れてます。
だもんで更新ペースが落ちてません(0○ー○)ニヤリ
リアルタイムでしたか。
緊張しまくって更新スピードが遅くなってしまいました。
すみません。
コラボ、楽しんでいただけて何よりです。
私も今回のコラボでは沢山勉強させてもらいました。
まだまだ未熟者ですが、頑張っていきますです。
>名無読者M 様
すっかり弟の(0○〜○)
なかなか可愛いもんですよね(笑)
私もこんな風に競演できるなんて思ってなかったので、書いていて
嬉しくて、楽しかったです。
楽しんでいただけたみたいで、よかったです・゚・(ノД`)・゚・。
>オレンヂ 様
はじめましてです。
前スレからですか、長い間おつき合いしていただいてるみたいで。
どうもありがとうございます。
寒い季節には湯たんぽ代わり、温かい季節には熱い鍋の代わりにでも
なれたらなぁなんて今思いました(笑)
ほかほかになっていただけたみたいで。
よかったです、本当よかったです。
これからも大好きって言っていただけるように頑張っていきます。
どこまで続くのか私にもさっぱりわかりませんが、
よろしければこれからもここの吉や石達を見守っててやって下さい(ぺこり)
- 927 名前:背番号6 投稿日:2004/01/18(日) 15:30
- たくさん更新されてて嬉しいです
コラボは、どっち先に読もうかなぁっ悩んでみたり
それも又楽しい。
ここの吉の世界観がすごく大好きです(・∀・)
- 928 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:16
- 「・・・石川さんって、石川さんに似てましたよね」
空を見上げながら、吉澤くんは思い出すように呟いた。
同じ名字だった看護師さん。
そういえば、下の名前ってなんだったんだろうね。
「先生も、声とか、何か吉澤くんに似てたよね」
「そうでしたか?」
ちょっと笑いながら吉澤くんは『自分じゃあんまりわからないですよ』って言って
腕にちょっと力を入れた。
「名前も意外に同じだったりして」
偶然でも、そういうことあるかもしれないよね。
もしそうだったら、ちょっとすごいよね。
究極に似てるってことでしょ?
あれ?究極って言葉古い?
あ、寒いとか言わないでよ。
- 929 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:17
- 寒いけど、お互いの体温を近くに感じて、肩を震わせながら笑って、冷えた体をもっと暖めて。
優しく包まれた感覚の中、きっと、同じようなタイミングで何かを見てたんだよね。
そう思った。
しばらく続いた会話の後の、フとした沈黙。
突然、訪れた沈黙。
それが、訪れたから。
吉澤くんの腕にちょっとずつ力が入って、私も触れていた腕を、さっきよりも少し強く掴んだ。
こんなにドキドキしたことって、今まであっただろうか。
わからないけど、でも、今、私はすごいドキドキしている。
期待と、少しの不安。
色々な感情が渦巻いている。
少しだけ、吉澤くんの腕の力がゆるだと思ったら、体をぐるっと向回され、正面から抱きしめられた。
吉澤くんの心臓の音、こんな近くで聞いたことなんてあまりなくて、こんな早い鼓動も感じたことがない。
でも、きっと、私も同じくらい早い鼓動をしていると思う。
バレないようにとか、そんな風にはあまり思わなかったけど、赤くなってる顔は、ちょっと恥ずかしくて
見られたくないなって思った。
- 930 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:17
- それから、言葉も交わさないで、しばらく、ずっと抱きしめあった。
こんな時、どんな風なことを口にしていいのかわからないし、言葉も出てこない。
遠くで聞こえる風の音や、時計の針が動く音、そして自分の心臓の音が
この辺一体を支配してるみたいだった。
ずっと、こういう風になるのを待っていたはずなのに。
少し、怖かった。
震えないように、震えないようにって体に力を入れて、吉澤くんにしがみついた。
大きな手が髪を撫で、優しい口付けが髪に落ちてくる。
大丈夫だよ、大丈夫だよっていうみたいに。
知らない世界に対する不安も、期待も、全てが流れるワケじゃないけど、吉澤くんの優しさは、
私に十分なくらい伝わってきた。
怖くないって言ったら、嘘になるけど、でも、きっと、大丈夫。
自分の恐怖心を吹き飛ばそうと思って、言葉を探した。
きっと無言だから沢山、色々なこと考えちゃうんだ。
「・・・眼鏡、なくても見えるの?」
「ん?えぇ、そんなに目が悪いワケでもないですから」
『それよりも、今ここが暗くてあんまり見えてません』
ちょっと笑ったような声とか、少しだけ震えている指先とか。
全部、吉澤くんのこと、近くに感じる。
ほら、やっぱり大丈夫。
この声が、近くにあるから。
- 931 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:18
- どんな表情なのかね、今の私達。
やっぱり、ちょっとは緊張してるよね。
私は、そうだよ。
吉澤くんもでしょ?
指、まだちょっと震えてるもんね。
頑張ってくれてる、吉澤くんに、私も伝えたい。
でも、言葉にするのは、まだ、恥ずかしいから。
ちょっとだけ体を離して私の髪を捕まえていた指を捕まえて、風邪をひいた時のようにキスをした。
私、吉澤くんをもっと知りたい。
大丈夫。
そう伝えたかった。
だんだんと暗闇に慣れていく目。
今なら、さっきよりも表情がわかるね。
吉澤くんの、いつもの柔らかい笑顔が見えたよ。
眼鏡が置かれた時の乾いた音が、やけに響いた感じがした。
そっと重なる唇。
何度も、何度も重なる。
止められない。
止めたくない。
こんな気持ちになるキス、初めてだった。
- 932 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:19
- そして背中や体を行き交う手。
その手が優しく私を包み
私達は、やがて布団へと、沈んでいった。
額や、頬や、髪に今まで受けたことがないくらいにキスが降ってくる。
今までしたことのない深い口付け。
体験したことのない感覚。
ぶつかった歯の痛み。
私以外の舌の感触。
長い指が髪を撫で、大きな手があたしを包む。
怖いっていう気持ちも、欲しいっていう気持ちも、ずっとずっと一緒にいる。
知らない世界の扉が開きかけてるんだ。
怖くないはずない。
手探りだけど触れたい。
怖いけど知りたい。
お互いがお互いを求め続けた。
- 933 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:20
- こんなに、頬の感触が気持ちいいなんて知らなかった。
服の上からでも、触れられた部分が熱くなるなんてことも、初めて知った。
溶けてしまいそう。
全身を熱と電気が走っているみたい。
服の上から感じる手や、足に絡む足。
浴衣の隙間から吉澤くんの手が入ってくる。
覚悟してたはずなのに、求めていたはずなのに、体に力が入る。
期待や、興奮や、恐怖。
そんなのが私を包んでいるのに、触れられた瞬間、体が震えた。
「・・・ん・・・んぅっ!」
繋がった唇から、声と熱い空気がこぼれる。
空いている手でシーツを握りしめて、必死で腕を伸ばした。
漂っているみたい。
体が自分のモノじゃないみたい。
しがみつきたくて、伸ばした手を、吉澤くんの頭に回した。
体温が欲しい。
現実感が欲しい。
開けない瞼の先にいる、茶色い眼差しが欲しい。
- 934 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:20
- 熱を持った私の体から、私が、一枚一枚はがされていく。
隠すことすら出来なくて、どんな風な瞳で見られているのか見ることも出来ない。
怖い、恥ずかしい。
未知のこの感覚が快感というモノなのだろうか。
震えている気がした。
それは緊張なのかな、もっと違うことなのか。
その震えが私なのか、吉澤くんなのか。
わからないことだらけだ。
腕から半纏や浴衣とかが落ちていく。
体を包む布の感触が無くなり、思わず吉澤くんにしがみついた。
でも、そこに感じた感触は、素肌じゃなくて、旅館の匂いのする布の感触。
汗ばむ手で、浴衣を掴んで、隙間に唇を当てた。
熱く、汗ばんだ肌。
そこにはまだ私の知らない吉澤くんがいるみたいだった。
薄く目を開けて、掴んだ浴衣を左右に開く。
白い肌が眩しくて、私はまた、目を閉じた。
これから訪れるであろう、感覚が、少し、怖かった。
- 935 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:21
-
* * * *
石川さんの唇が触れた場所に、まだ唇の感触があるみたいだった。
肩から浴衣が落ちていく。
少し震えている手を掴んで、僕らの間にあるモノをその辺に脱ぎ捨てた。
僕の下で、まだギュッと目を閉じている石川さん。
まだまだ、知りたい。
もっと、もっと欲しい。
隙間なんて欲しくない。
夜の力というのか、それともこれが本能なのか。
いつもは手だってつなぐのにドキドキするのに、僕はすごく突っ走ってた。
体中の血液が沸騰してるみたいで、ブレーキが利かない状態。
立ち止まったら正面すら見れなくなって、きっと抱きしめることも出来なくなる。
根拠なんてないけど、そんな気がしてたんだ。
ずっと、知りたかった石川さんのこと。
ずっと、触れたかった石川さんのこと。
求めていた気持ちが爆発した。
そんな感じだった。
- 936 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:22
- 体験する前、こういうのって、もっと静かに出来るのかなって思ってた。
映画であるみたいに、優しく、そっと、抱きしめるように。
主人公はすごく冷静そうで、落ち着いていて、ヒロインは情熱的にそれを受け止める。
そんななのかなって思ってた。
でも、実際は全然違くて、僕はずっと冷静になんてなれなかった。
落ち着こう、落ち着こうって思ってたのに、頭の中は真っ白状態。
テンパるっていうのかね、こういうの。
全身が石川さんを求めて走ってた。
手を繋ぐこと、抱きしめること、キスをすること、石川さんの素肌に触れること。
それは僕以外じゃ嫌だ。
僕の腕以外で抱きしめられているところなんて見たくない。
独占欲が渦巻き、離れたくなくて、一緒にいたくて、伝えたくて。
走り出した自分を抑えることがなかなか出来なかった。
触れた肌の感触に、心臓を掴まれたみいだった。
自分とは違う柔らかな感触。
触れる度にこぼれる声と息が、僕のことを叩いた。
- 937 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:23
- 落ち着こうって脳が働きだしたのは、石川さんの目元を見た時。
目尻に、うっすら涙が浮かんでいた。
伸ばした手で、ぐっとシーツを握っていた。
何やってたんだろう。
こんな、大切なのに。
不安だったり、怖かったりっていう気持ち、きっと石川さんにも沢山ある。
自分が落ち着かないでどうする。
傷つけたくないし、怖がらせたくない。
長い時間、ずっと一緒にいたのに。
心と体が一緒になれる時を、ずっと待って、望んでいたはずなのに。
気付いたら1人で暴走。
バカか、僕は。
沢山の後悔をする前に、『ごめんなさい』を唇に込めて、触れるだけのキスをした。
うっすらと開いていく目元に、同じように触れるだけのキスをした。
頬に手を当てて、少し下がった眉毛や、額や、まだ乾ききっていない髪を撫で、
閉じられた瞼や、唇に何度も唇を落として、力の入った体にそっと触れ、
シーツを掴んでいる手をそっと握って、指でその手を撫でた。
- 938 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:23
- ごめんね、すぐに気付かなくて。
ずっと、1人っきりにさせてて。
まだ潤んでいる瞳を見ると、心がチクチクした。
この涙の意味が、僕にははっきりわからなかったから。
嫌がること、しないよ。
傷つけるようなこともしないよ。
だから泣かないで。
そんな顔が見たくて一緒にいるんじゃない。
別に今日だけっていうワケじゃない。
これから先、もっと時間だってかけていい。
石川さんが僕を受け入れてくれるまで、ずっと待つから。
ね、焦る理由なんて何もないんだし。
もっと、気持ちの整理がついてからだっていい。
だからさ、今日は無理しないで眠ってしまってもいいよ。
眠れるまで、僕が起きてるから。
だから、そんな風に困ったような泣き顔しないで。
- 939 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:24
-
言葉と、僕の中での言葉。
それがどんな風に石川さんに届いたのかな。
敬語になっちゃったのかな。
これ、もう癖みたくなっちゃったんだよね。
落ち着いたと言っても、やっぱり僕、まだテンパってる。
言ったはずの言葉が、もうよくわからなくなってるや。
- 940 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:25
- 繋がっている手は、まだ少しだけ震えている。
この震えは、僕じゃなくて、きっと石川さんのモノ。
無理矢理なんて、そんなの絶対したくない。
考えてみれば、突然だったんだもんね。
二人っきりで何処かに泊まるなんてこと。
覚悟っていうか、気持ちが、ちゃんと決まってなかったよね。
ね、石川さん。
無理するの、やめよう。
本当、また今度にしたっていいんだし。
僕も焦りすぎちゃってたよ。
「・・・石川さん」
呟いた言葉の後に、繋がっていない方の人さし指を口に当てられた。
まっすぐな瞳。
何処までも深く、どこまでも広い。
その微かに潤んだ瞳が、少し笑った。
「・・・・吉澤くん、私の下の名前、知ってるよね」
頷くのを待たずに、唇が『呼んで』と動いた。
- 941 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:26
- 立ち止まりそうになるのは僕の癖で、その背中を押してくれるのはいつも石川さんだった。
繋いだ手や、回された腕。
流れた涙や、生まれた言葉。
いつもなら言うことだって恥ずかしい言葉だって、素直に、すごく素直に生まれてきた。
恥ずかしさとか、そういうのを全部なくして、自分が自分の気持ちに正直だったから。
伝えたい気持ちも言葉に変わる。
でも、伝えたい気持ちや想いの表し方。
それは一つじゃない。
それを、強く思った。
誰かの名前をこんなにも沢山呼んだことは今までなかった。
誰かに名前をこんなにも沢山呼ばれたことも今までなかった。
深く、繋がった瞬間。
自分の中に、今まで以上に強いオモイが生まれた。
彼女のいない未来なんて考えられない。
『永遠』
この言葉を僕に、そして大切な人に届けたい。
『永遠』が存在しないのならば、僕らがつくっていく。
だから、一緒に、ずっと一緒に未来を見て。
- 942 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/19(月) 00:27
- 流れた涙を何度もぬぐった。
その度に照れたように笑う顔に、自分も自然と笑顔になった。
ずっと、守っていきたい。
この笑顔を、ずっと、抱きしめていきたい。
強くて、心地良い風が吹き抜けた後、色々な話しをした。
出会った時のことだったり、その後のことだったり。
もう出会って何年だっけ?
4年だっけ?
でも、沢山話すようになって3年くらいか。
何だかついこの間のことみたいだ。
それぐらい早くてあっという間に過ぎ去っていった日々。
懐かしいっていうか、なんていうか。
あの頃は、こんな風になれるなんて思ってなかったな。
『それは私もだよ』
笑いながら僕の指と自分の指を絡ませて遊ぶ姿が、何だかとても、可愛くて、
まだ少し潤んでいる瞳の近くに唇をあてた。
また照れたように笑った顔を、ギュッて抱きしめた。
会話が途切れたのは、腕の中で、彼女が静かに寝息をたてはじめていたから。
起こさないようにそっと布団を肩の方まで引っ張り上げて、僕はしばらくその寝顔を見つめていた。
その夜は、永遠って思えるくらいに永く、そしてあっという間に走りさった。
そんな、夜だった。
- 943 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/19(月) 00:30
- 更新しました。
次で『広いよ空は、どこまでも』はラストです。
もうちょい、見守っててやって下さい。
>背番号6 様
私も自分で驚いてます『すげー何かすげー更新してるかも』って感じで(笑)
突っ走った後は水分補給とかできっと休憩。
でもまだ明日までつっぱしります。
(#0○〜○)<ぼ、僕の世界観は、あの、きっと、だfのだdfdfvんhぉだdkm
照れ過ぎて吉撃沈。
ありがとうございます、吉に変わってお礼を言わせて下さい。
石川さん、お誕生日オメ。
- 944 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/19(月) 01:01
- 息をひそめてたみたいですw
読み終わって大きく深呼吸した時、
この夜、吉澤君と石川さんが感じた幸せを少し分けてもらった気分でした。
ありがとう。作者さまにも、二人にも、ありがとう。
- 945 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 00:16
- 更新キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
若者2人、心からおめでとうございます♪
作者サマ、連日の更新お疲れさま&ありがとうございます!
- 946 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:08
-
* * * *
朝、目が覚めたら横で好きな人が眠っている。
これがこんなにも幸せなことだなんて今まで知らなかったよ。
何となく残っている感覚が皆の言うやつなのかな。
その感覚が余計に昨日のことを私に思い出させる。
流しちゃった涙は痛みだけじゃなくて、一緒になれたことの喜びとか嬉しさ。
後、沢山伝わってきた気持ちや、優しさとか、いっぱい、いっぱい。
大切にされてるって、すごく思った。
ずっと、気づかってくれて、ずっと、優しくしてくれた。
私が泣くと、吉澤くんまで泣きそうな顔になったり。
でも、そこには吉澤くんの気持ちとかがいっぱいつまってるの、わかったよ。
私が眠るまでずっと髪を撫でていてくれた手。
いつもは眼鏡でかくれちゃっている綺麗な顔。
全部、全部大好き。
- 947 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:09
- ずっと、見ていたくなるような無防備な寝顔。
少し茶色の髪が、零れた陽の光りをあびてキラキラと輝いている。
可愛いなぁって思いながら起こさないように、そっと頬にキスをした。
あ、でも起きちゃったみたい。
「おはよ」
「・・・ん、おはよう・・・ございます」
あ、やっぱり敬語なんだね。
へへっ、何か吉澤くんらしい。
まだちょっとボーッとしている吉澤くん。
あ、寝癖ついてるよ。
腕を伸ばして寝癖部分を触ったら、吉澤くんが突然、顔を真っ赤に染め上げた。
湯でタコ。
そんな状態で、せわしなく視線を動かして、髪をガシガシかいて、チラッと私を見て、
またボわ−ッと顔を赤くした。
あ、ひょっとして、昨日のこと、思い出してたんでしょ。
吉澤くんのエッチ。
昨日はあんなに頼りがいあったのに、今じゃおもしろいくらいに顔を真っ赤にして
照れた笑顔を浮かべている。
- 948 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:10
- 吉澤くんらしすぎる吉澤くん。
こんな笑顔みちゃうと、ちょっと悪戯心とかが生まれてきちゃう。
「ひとみ」
昨日沢山呼んだ名前。
それを呼んだら、吉澤くんはこれ以上ないくらい顔を真っ赤にしてまた布団の中に戻ってしまった。
で、すぐにまた布団から急浮上してきた。
白い肌も何かちょっと赤くなってるんじゃない?
いつまで赤い顔でいるつもりなのかなぁ、この人は。
そういうの見ると、イジメたくなるっていうのかね、何か困らせたくなっちゃうんだよね。
「ねぇねぇ、私の名前、呼んでよ」
わざと甘えた声なんか出してみちゃったりして、手を握ったら、前髪をいじりながら、
視線を下に落として小さく『り、りか・・・・さん』って呟く吉澤くん。
もうね、ツボ。
私のツボ。
可愛いすぎ。
でもさ、あんまり意識しすぎて名前呼んでもらえなくなっちゃうのも嫌だから、
無理しないでいいよって言っといた。
まだまださ、ゆっくりでいいもんね。
時間はたっぷりあるもん。
- 949 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:10
- 「・・・石川さんって、いじわるですね」
「そぉ?吉澤くんが恥ずかしがりやさんなだけじゃない?」
昨日の夜とは何か大違いじゃん。
そう言ったら吉澤くんは苦笑いを浮かべながら鼻の頭をかいた。
「石川さん、石川さん」
「ん?」
腕を掴まれてギュッて抱きしめられた。
ドキドキいってるのがわかるくらいギュッて抱きしめられてから、呟くように『おはよう』って言われた。
空は青い。
広くて遠い。
広がり続ける空を見上げながら、ずっと一緒にいられたらいいな。
体を合わせてわかることや気付くことがある。
誰かがそう言ってた。
本当なんだなぁって、思った。
おはようの挨拶と、唇にチュッてキスをして、もう少し、吉澤くんの腕の中にいた。
眠るワケじゃなけど、もうちょっとだけ、ギュッてされてたかったから。
昨日、欲しかった茶色の眼差しは、すぐそばにあった。
- 950 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:11
-
* * * *
今日も外はイイ天気だ。
僕らは旅館を出発した後、レンタカーを返してそのまま空港へと向かった。
明日からはお互いに仕事がある。
そのことを考えてくれてか、飛行機の時間は遅すぎず早すぎずというもの。
帰ったら平家さんにお礼言わなきゃね。
もちろんカオリさんにもね。
先生達に挨拶しに行こうとも考えたけど、忙しいかもしれないし、色々考えて
手紙でまたお礼とか言おうってことにした。
遠くなっていく地面。
雲がその姿を隠すまで、僕はその大地を眺めていた。
色々な出会いや、色々な出来事のあった所。
また、いつか絶対来ようね。
一緒になって窓から外を眺めていた石川さんは、いつの間にか僕の肩に頭を預けて眠っていた。
やっぱり疲れちゃったのかな。
東京に着くまで、ゆっくり寝てて下さいね。
- 951 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:12
- 飛行機は飛んでいく。
僕らはまたいつのも生活に戻る。
それは前から変わっていないようで、でも、毎日何か違っていて。
きっと、明日も明後日も、違った世界が待っている。
ずっと雲を眺めていたはずなのに、気付かないうちに僕は眠っていた。
そして起きた時には、空はオレンジ色に色付いていた。
- 952 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:13
-
「じゃぁ、また連絡しますね」
「うん、麻琴やおじさんやおばさんにもよろしく言っといてね」
石川さんと別れた後、お土産を誰にいつ渡そうとか考えながら家に帰った。
で、帰ったら麻琴が手に写真を持って迎えてくれた。
先生達と撮った写真、もう出来てたんだ。
せかす麻琴に引っ張られるようにしてリビングに戻って、皆で写真を眺めた。
すごい笑顔の写真とか、ちょっとおどけた写真とか。
思い出と一緒におさめられたその瞬間。
それを見ていて、皆が口をそろえて『また行こうね』って言った。
- 953 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:14
- 次の日、僕は石川さんから預かった手紙を麻琴に渡して、一緒にポストまで手紙を出しに行った。
全員分の手紙と、皆で撮った写真はこのポストから遠く離れた先生達の元へと旅をする。
「またさ、皆で行こうね、絶対」
「うん、石川さんも一緒にね」
見る場所によって違う空。
でも、きっと見えてる星は一緒なんだと思う。
今見ている星を、石川さんも、先生達も見ているのかも。
そう思ったら遠い大地が何だか近くに感じられた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「手、繋いで帰ろう」
空は広い、どこまでも。
知らない世界、これからの未来。
この空のようにどこまでも広がっている。
ずっと一緒に歩いていきたい人がいる。
ずっと一緒に繋がっていられる人達がいる。
どっちもすごく大切で、どっちも無くしたくない。
- 954 名前:広いよ空は、どこまでも 投稿日:2004/01/20(火) 02:14
- 僕らは大袈裟に腕を振りながらゆっくりと家へと帰っていった。
僕の部屋の壁には皆で撮った写真が飾ってある。
麻琴の部屋にも、石川さんの部屋にも、父さんと母さんの部屋にも。
また星を増やそう。
出会いの数だけ、増やしていこう。
僕のつくる空。
そこに、沢山の星を増やしていこう。
見上げた空は、やっぱり広くて気持ちがよかった。
- 955 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/01/20(火) 02:16
- 更新しました。
『広いよ空は、どこまでも』はこれでおしましです。
sage進行は一応前回更新分とかを考えてでした。
皆様、私の我がままなsage進行におつき合いいただき、ありがとうございました。
次回は量によっては新スレなんて立てさせてもらおうかと思っていますが、
更新までちょっと間があくかもしれません。
ごめんさない。
>944 名無飼育さん 様
幸せになってもらえたみたいで一安心です。
それも、色々な意味で(笑)
こちらこそ見守って下さってありがとうございます。
私も吉も石も幸せものです・゚・(ノД`)・゚・。
>945 名無飼育さん 様
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
連日更新出来たのも皆様のおかげです。
そして代表して
( ^▽^)<ありがとうございます。
- 956 名前:SINKI 投稿日:2004/01/20(火) 11:43
- やっとできましたね。
おめでとう、二人ともって感じです。
作者さん、お疲れ様です。
これからもがんばってくださいね。
- 957 名前:温泉に行って来た人 投稿日:2004/01/20(火) 15:41
- 吉澤くん、よくやったね!
実は昨日まで北陸の方まで温泉に行っていました。
目の前に広がる海と潮風を感じながら、読ませていただきました。
いしよしの素敵な一夜を目の前で見た感じでした。
ドキドキ。
- 958 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 22:59
- 市井さんグッジョブ。
素晴らしい気遣いに笑いましたw
- 959 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/29(木) 23:21
- この話本当に面白いですね。早く再開してくださいね!!
- 960 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/30(金) 08:38
- >>959
ageないで。
メール欄にsageと書けば、sageになります。
他の作者さんにも迷惑にもなりますから。
- 961 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/11(水) 03:45
- わかりました
- 962 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/12(木) 21:19
- はい
- 963 名前:名無し飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 01:04
- 作者さんに期待
- 964 名前:匿名匿名希望 投稿日:2004/02/15(日) 16:15
- >SINKI 様
(0○〜○)人(^▽^ )
ありがとうございます。
もう時間かかりすぎました(w
遅くなってしまって申し訳ありません。
でもってこれからもまったりと頑張っていきます。
>温泉に行って来た人 様
( #0○〜)<あ、ありがとうございます。
ヘタレは何処までもヘタレで、でもちょっとは脱ヘタレ(w
温泉ですかぁ…いいですねぇ、そんな素敵な場所で
( ^▽^)<しないよ!
いや、嘘です(w
これからもよろしければ生温く見守ってやってて下さい。
>958 名無飼育さん 様
たまには市井くんも素敵なことをします(爆
持って行った吉澤くんもまたグッジョブとか(・∀・)
>959 名無飼育さん 様
遅くなってしまって申し訳ないです。
ありがとうございますです・゚・(ノД`)・゚・。
>960 名無飼育さん 様
どうもありがとうございます(土下座)
>963 名無し飼育さん 様
き、期待に答えられるようにがんがります!
新スレ立てさせていただきました。
またマターリいかせて頂きます。
のでよろしくお願い致しますです(土下座)
新スレ:http://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/sky/1076828618/
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