へなちょこ小悪魔
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月17日(木)21時09分48秒
- おがこんを書かせていただきます。
ジャンルはアンリアルです。
- 2 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時13分25秒
ばたばたとピンク色の羽を夜空にはばたかせて、今夜も彼女がやって来る。
窓を開ける音。続いて床を歩く音。
こつこつと靴を鳴らしてベッドに近づいてくる。
最初の頃に土足では入るなと言ってたけど、どうやら彼女は人の話をよく聞かないらしいので
近頃は面倒くさくて許している。
ゆっくりと体を起こすと彼女の歩みが止まった。
雲の境目から射す月の明かりを背に受けて露になる姿を、光にまだ慣れない目を細めて見た。
霞んだ視界からでも、彼女が微笑んでるのだけはなんとなく分かった。
黒いロングストレートの髪、透き通るように白い肌、ぽってと垂れた愛くるしい瞳、細いとこは
細くて出るとこはちゃんと出ているとゆう何とも羨ましいスタイルを持つ彼女。
ここまでなら可愛い女の子なのだが、その背中には、地球に生存する人間科にはありえないシロモノ
がついている。
羽だ。
しかも、鳥とかについてるようなふわふわした柔らかそうなものじゃない。
アイドルの後藤真希ちゃんが新曲の衣装でつけていたような刺さったら痛そうな感じのやつ。
色はピンク。
吸血鬼は黒ってイメージがあったから軽くカルチャーショック。
- 3 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時13分56秒
「ふつつか者ですが、今夜もよろしくお願いします」
そう言って【吸血鬼】の彼女は丁寧に頭を下げた。
- 4 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時14分56秒
- アサミちゃんと初めて会ったのは四日前の真夜中。
その日は熱帯夜で、深くは眠りにつけなかった私は何度も寝返りをうって暑さに唸っていた。
「・・いいんですかぁ・・・・だって・・・不法・・入じゃ」
「いいの・・・・うちらに・・だろ」
ぼそぼそと話し声が聞こえた。
最初は外を歩く人の声だと思って無視してた。
だけど、カチャっと何かが外た音がして、私が恐る恐るタオルケットの隙間から薄目を開けて
窓のほうに視線をあわせたんだ。
そうしたら、ふたつの黒い塊が窓から部屋の中に入ってくるのが見えた。
「よしっ!忍法窓抜けの術大成功」
「窓わっちゃいましたね・・・」
「さて、そんな嫌なことは忘れて、さっそく研修を進めるぞ」
「あ、はい」
そう言ってふたつの塊は、何事もなかったように歩き出す。
えぇ!?窓割って入ってきたの、この人たち。
私はお母さんになんて申し開きすればいいの。
「弁償してください!!・・・べ、別にうちが貧乏なわけじゃないですけど」
なに言い訳してるんだろ、私。
壊したら弁償、これ当たり前・・・だよね。
- 5 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時16分53秒
- 「なんだ、起きてたんだ」
「やっぱドライバーでこじ開けたのがやばかったんですよ」
「何も知らずに血を吸われていればいいものを。おいらたち、くのいち羅舞羅舞隊の姿を見たから
には生かしちゃおけねえな」
「あのー、私は違いますから。あくまで吸血鬼です」
あくまで吸血鬼です、と真面目くさって言う彼女に、私は思わず笑ってしまった。
これがヘナチョコ吸血鬼・コンノアサミちゃんと私・小川麻琴のファーストコンタクト。
一緒にいたのはヤグチさんと言って、アサミちゃんの教育係でもありお姉さんでもある。
でも、血の繋がった姉妹ではないらし。深く突っ込むのもあれなので詳しい事情は知らない。
ただ、アサミちゃんがヤグチさんを慕っているのは本当。
豹柄の羽を持つヤグチさんは、どっかのお店にご出勤してるようなハデハデな容姿と人柄で、
笑うともろ悪魔って感じがした。
見た目小さいけど貫禄はあり、アサミちゃんだけがうちに来てたら、絶対に吸血鬼の存在
なんて信じられなかったに違いない。
だって、アサミちゃん弱々しかったんだもん。
- 6 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時18分16秒
- そして、その晩アサミちゃんは、ヤグチさんに押さえつけられた私の血を吸うとき緊張のあまり貧血を
起こして倒れ、ヤグチさんに担がれて帰路についた。
もう現れないだろう、変な夢をみたと思って忘れよう、そう気を取り直した次の日、アサミちゃんは
また私の前に姿を見せた。
- 7 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時19分23秒
「アサミちゃん。その言い回し恥ずかしい」
「え?そうですか?このほうが相手をその気にさせるってヤグチさんが」
ヤグチさんって、あぁ、あの人ね。
ま、それはひとまず置いといて。
「だから、その気にさせるってのが、・・・エロい」
「えろいってなんですか?初めて聞く単語ですね、小川さん是非教えて下さい!」
何事にも勉強熱心なアサミちゃんはメモ帳とペンを取り出す。さぁ早くって顔して見られても困る。
そういえばこの娘は「ショジョってなんですか?」とか訊いてくるようなそっち方面には疎い
ピュアガールだった。
しかし、ふつつか者を知っててなんで知らないんだ。
「えっとぉ、それはねえ」
当然しどろもどろになる私。
エロいって言葉を説明したことないもんなぁ。いざ説明するとなると難しいんだなぁ。
意外と奥の深い言葉なのかもしれない、エロいって。
困って辞書をぱらぱらめくっても・・・載ってるわけないか。
ちらりとアサミちゃんを窺うと、なにやら窓の方を見て口をぱくぱくさせてる。
人に訊いといてなんだよと思いつつ、アサミちゃんの視線の後を追う。
- 8 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時20分17秒
- ・・・どなたですか?
窓に張り付いるその人は私たちの痛いほどの注目に気づくと、挙動不審に空中を見回す。
背中にはアサミちゃんと同じように羽がある。色はアサミちゃんよりも派手なショッキングピンク。
色んな意味でめちゃくちゃ怪しいんですけど。
「中に入ります?」
臆することなく声をかけると、アサミちゃんの同胞(たぶん、絶対)は振り返り、
「どうも〜、チャーミーイシカワで〜す。チャーミーって呼んでね」
と、顔の横に親指と人指し指を立てて、とても甘い声で自己紹介した。
部屋に招き入れるとき、チャーミーさんは遠慮するどころかお約束通り靴を脱がなかった。
吸血鬼はみな外人気質、と。
チャーミーさんは綺麗な顔立ちをしていて、それこそエロいと云う言葉が似合う。
ボディコンだよ、ボディコン。セクシー○塾に出てくるようなやつ。
いや、アサミちゃんも同じの着てるんだけど、アサミちゃんの場合、無理して着てますって
感じで、H度が違うんです。
- 9 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時21分08秒
- チャーミーさんの来訪にアサミちゃんは興奮気味に椅子から立ち上り、駆け寄った。
「イシカワさんどうしたんですかぁ!?福井に行ってたんじゃないんですかぁ」
「ヤグチさんに頼まれて様子見に来の。どう?頑張ってる〜?」
「それが全然なんです」
「もしかして〜、まだ手つけてないの?」
「はぁ、はい」
「まじで〜。ヤグチさんに怒られちゃうぞ〜」
「うう・・・、どうしよう」
チャーミーさんの一言にアサミちゃんはシュンとなる。羽までもが弱くうな垂れる。
ヤグチさんは怒ると相当怖いらしい。見た目もあれだしね。
吸血鬼には吸血鬼なりの苦労があるようだ。
「どうしようって、さっさと血を吸えばいいんじゃない。いつまでも人間の食べ物で生きてくわけにも
いかないでしょ〜」
「分かってますよう、でもぉ」
そこで二人して私を見ないで。生々しいから。
落ち込んだアサミちゃんを見て、チャーミーさんはふうとわざとらしくため息をついてアサミちゃ
んの羽を撫でた。
アサミちゃんは気持ち良さそうに頬を緩める。
- 10 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時22分11秒
- 「生まれてから一度も自分の力で血をとったことないなんて、吸血鬼として赤点だよ」
「はい・・・」
「食費だってばかにならないし」
「だって芋うまいんだもん」
「コンノ」
「はい、すみません・・・」
へコヘコと平謝り。
へえ、一回も血吸ったことないんだ。知らなかったわ。
吸血鬼のくせに血が怖かったりして。
冗談みたいで笑えるけど、本人にとっては死活問題なのだろうからやっぱ笑えないか。
で、どうするつもりなのだろう。
このチャーミーさんとやらが連れて帰ってくれるのだろうか。
明日からはまた今までどおりに平穏な眠りにつけるのだろうか。
神様仏様イエスキリスト様、どうか彼女たちを闇の世界へとお戻し下さい・・・。
小川必死だな、って笑われたっていい。とにかく祈った。
が、しかし、現実はそう甘くはない。
「そんなことだろうとヤグチさんからコンノにしゅくだ〜い。この娘の血を吸うまで帰ってきちゃ
駄目だぞ、キャハハ、だって。コンノの世話よろしくね、小川ちゃん」
不意に流し目される。ううん、超べりーキュート。
- 11 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時23分22秒
「お任せ下さい!!」
チャーミーさんて・・・いいなぁ。すごくいい。
それにしても、帰ってきちゃ駄目ってヤグチさん酷なこと言うなぁ。アサミちゃん大変だね。
陰ながら応援するから。
って、あれ、なんか変くない?
理解するのに数秒。
「「えぇっ!!」」
私とアサミちゃんの悲鳴は見事にハモった。
立ち尽くす私たちに有無を言わさずにチャーミーさんは、彼女のとびきりであろう笑顔を浮かべ
「タカハシが待ってるからもう行くね、ちゃお〜」と窓から飛び立っていった。
アサミちゃんは窓から顔を出してチャーミーさんが飛んでいった方向に叫んだ。
この世の終わりを告げられたかのように顔色が真っ青だ。
私としては、色気につられて頷いた立場上チャーミーさんに何も言えない。
「私は今日から何処に住めばいいんですかぁ!?ご飯は誰が用意してくれるんですかぁ!?」
アサミちゃんはまだ理解してないんだ。そんなアサミちゃんを見て、私は心の中で思った。
これから面倒みきれるかな、と。
- 12 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月17日(木)21時24分06秒
- 「アサミちゃん機嫌直して、ね?」
「やです」
「ほんとごめんてば」
アサミちゃんはベッドでまるまってヘコんでる。床にへたり込んで謝る私。
チャーミーさんが帰ってからずっとこんなやりとりの繰り返し。
あぁ、さいさき悪い。
ぽりぽり頭をかいて、タオルケットからはみ出てるアサミちゃんのピンクの羽を所在なく見つめて
あることを思いついた。
さっきチャーミーさんに羽撫でられて気持ちよさそうにしてたし、撫でたら機嫌直るかも。
では、ちょっとためしに。
羽毛じゃないのに羽毛の手触り。猫とか犬のおなかを触ってるみたいとも言える、不思議で心地好い。
「やめてください、なにするんですかぁ」
アサミちゃんは言葉では抗議していても表情はウットリとしてる。
しばらく撫でているとアサミちゃんは眠ってしまった。
「・・・単純」
でも、可愛い小悪魔。
アサミちゃんの寝顔を見てたら私も眠くなってきた。
ベッドはアサミちゃんが羽を広げて占拠してる。
しょうがない、今晩は床で寝ますか。
- 13 名前:読者その1 投稿日:2003年07月18日(金)13時09分27秒
- 紺ちゃんのキャラが面白いですね。吸血鬼が貧血で倒れたり
吸おうとしてる麻琴っちゃんに慰められたり。
ほのぼのしていて心が和みます。
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月18日(金)18時28分36秒
- >読者その1さま
感想ありがとうございます。
紺野さんはリアルでも微妙にこんなキャラじゃないかと思って見てるせいか、
ちょっとおかしくなってしまいました。
その代わり、小川さんが地味に。
- 15 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時29分53秒
朝、ベッドを見るとやっぱりアサミちゃんはいた。
昨晩の出来事は現実だったんだ。私の血を吸うまで彼女は本当にずっとうちにいるんだ。
で、面倒みるのは私。
まだ寝ぼけている頭でぼけっと再確認。
いつもの習慣でカーテンに手をかけて開けて、慌てて閉め直した。
カーテンは開けちゃ駄目だよね、これでもアサミちゃんは吸血鬼なわけだし。
「アサミちゃーん」
見事なまでの無反応。起きる気配なし。
それとも、起きてるんだけど昨日のことを怒っていて無視してるのかな。
怒るよね、普通。
私が頷かなきゃアサミちゃんはうちに置いてかれないですんだんだから。
んー、でも、アサミちゃんていつまでも根に持つタイプに見えない。
あ、そっか。吸血鬼は朝が苦手なんだよ。基本中の基本じゃん。
朝ごはんに誘うつもりだったけど、よく考えてみたら家族になんて説明すりゃいいんだって感じだし、
部屋まで運んでくればアサミちゃんの好きな時に気兼ねなく食べれるしね。
- 16 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時34分17秒
顔洗って、ご飯食べて、ばれないようにアサミちゃんの分のパンとおかずを、新聞読んでるお父さんの
お皿から失敬して、と。
たんたんたんとリズムよく階段を登る私を見て、「あれ今日どうしたの?」とお姉ちゃんが寝ぼけ眼で
言ってきた。
どちらかというとお姉ちゃんより私のほうが寝起きが悪い。不思議に思われてもしょうがない。
「ちょっとねえ」とだけ答えた私を、お姉ちゃんはやはり不思議そうに見返し、「なんか気持ち悪い」と
言ってリビングに消えていった。
気持ち悪いって酷いなぁ。ちょっとヘコだぞ、妹は。
着替え終わって学校に行く間際になってもアサミちゃんは起きなかった。
枕元に置手紙をして、かなり後ろ髪を引かれながら家を後にする。
誤解されると困るので一応付け加えておくが、決してアサミちゃんと離れるのが名残惜しいから
じゃない。純粋に心配なのだ。
- 17 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時35分17秒
私がいない間、アサミちゃんが家の中をうろついて家族に見つかったらと想像するだけで血の気が引く。
しかも、あの格好(体のラインまるわかりのぱつんぱつんの服)、あの羽、あの色(目の毒)。
コスプレ仲間かと疑われてしまう。
いやいや、そうじゃなくて、アサミちゃんがバカ正直に「吸血鬼のアサミです」なんて自己紹介しそうで
心配なんだよ。
あの子ならありえるから。
ホームに滑り込んできた電車は超満員。私の頭の中は悩み事でごったがえしている。
電車の窓の外を鳥が優雅に舞っていた。アサミちゃんもあんなふうに空を飛ぶのだろうか。
私にも羽があったらこんな満員電車からはおさらばして、空飛んで通学したいよ。
今日は部活さぼって早く帰ろう。
迷わずそう思った私は、自分でも呆れてちゃうくらいかなりの心配性だ。
- 18 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時37分56秒
そして、彼女は私の心配する気持ちに見事に応えてくれた。
当然悪い意味で。
置手紙の内容。
『部屋からは絶対に出ない。
ご飯は机の上。
最悪のケース、お母さんが掃除で部屋に入ってきた場合、あくまでも友達のふりをする。
正体を明かさないこと』
部屋からは絶対に出ない。
部屋からは絶対に出ないって確かにちゃんと書いておいたよね、アサミちゃん?
「なのにどうしてリビングにいるわけ!?」
学校からダッシュで帰ってきた私の目に一番に飛び込んできたのは、リビングでテレビを見ながら
お菓子を食べているアサミちゃんの楽しげな姿。
血の気が引くなんてもんじゃなかった。卒倒しそうになった。
部屋に引っ張り戻したのは言うまでもない。
アサミちゃんは膝を抱えてベッドに座り、ふてくされた顔をしてる。
怒るのは私で、アサミちゃんじゃないっしょ。
喉まで出かけて、グッと我慢した。
アサミちゃんも好きでここにいるわけじゃないんだ。だから、あんまり頭ごなしに言うの可哀相だ。
- 19 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時38分51秒
- 「でもまあ、家に誰もいなくてよかった」
さっきよりは優しく声をかけた。
アサミちゃんは上目がちに私を見る。
「トイレに行きたかっただけだもん。それなのに怒るなんて、まこちゃんひどい。この悪魔!」
えー、悪魔って言葉はそのままお返し致します。
これはいわゆる逆ギレってやつですね。
あと、関係ないけど、アサミちゃんの喋り方が物凄く変化してる。
敬語じゃないし、私のこと「まこちゃん」て呼んだ。
うん、ほんと関係ないことだけど。
「トイレ行きたくて部屋出たなら謝るよ。でも、じゃなんでリビングでお菓子食べる必要
があるのかなぁ」
「そこに新製品のお菓子があったから」
「はい?」
「そこに新製品のお菓子があったから」
「二回も言わなくたって・・」
「私は悪くないもん。誘ったのはあっちだもん」
昨日のようにベッドでまるまって今度こそ本格的にアサミちゃんは拗ねてしまった。
そりゃ私にだって非はあったさ。だけど、アサミちゃんのほうが支離滅裂でもうめちゃくちゃで。
お菓子が誘ってきた?子供でもそんな言いわけしないよ。
- 20 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時39分45秒
「あのねアサミちゃん」
「やだっ!」
最後の駄目押し、枕が飛んできて顔に直撃。
申し訳なさそうに枕は私の足の上に着地する。
アサミちゃんて意外と子供っぽくって、かーわーいーいぃ。なんて私が思うとでも?甘いな。
「・・・・・・あっそう、もうアサミちゃんなんか知らない」
別にアサミちゃんは何も言わない。
何故かこちらが居ずらくなって、私は制服も着替えないで部屋を出た。
リビングのテーブルにはアサミちゃんの食べかけのお菓子が広げっぱなしだった。
ポテトチップにチョコにおせんべいに他いろいろ。全種類ちょこまかと食べてるよ。
ほんとお菓子好きなんだね。
キッチンに行くと、今朝私がアサミちゃんに運んでいったときに使ったお皿とコップが洗って
あった。
けっこう律儀なんだね。
- 21 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時40分26秒
- はぁ。悪い子じゃないのはわかってる、わかってるんだよ。
「知らない」なんて突き放すような言っちゃいけないこと言っちゃった、私。
謝ろうかなぁ。
・・・いいや、奴は私が折れるのを待ってるんだ。
「ここで謝ったら思うつぼだ!」
って気合を入れたのだが、しかし。
テレビを見てもつまんない、お菓子を食べても美味しくない。
入れたつもりが、逆にふにゃふにゃと腑抜けた状態になっている。
夕飯を食べた後もいつまでもリビングでぐだぐだしている私(制服)を家族が物珍しそうに見るから、
ひとまず着替えに部屋に帰った。
予想通りアサミちゃんは数時間前と同じでいた。
しょうがない子だ。
思うつぼにハマると分かっていても、黙っていられなかった。
「一生そうやって猫みたいにまるまってるつもり?」
おーい、と呼びかける。
するとアサミちゃんは寝返りをうってこちらを向く。
「猫じゃないもん。私のこと知らないんじゃなかったの」
まだ意地張っちゃうんだ。
- 22 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時41分36秒
「そこにアサミちゃんがいるから」
「???」
「アサミちゃんの真似してみた」
「・・・ばか」
意味が通じたようでアサミちゃんは今日やっとはじめて笑ってくれた。
いつも月明かりでしかアサミちゃんの笑顔を見たことがなかったから、ちょっと新鮮だった。
ベッドに座った私の隣におずおずと近寄ってくる。
「知らないなんて言ってごめんね」
「いいんです、私が悪かったんです。小川さんの言いつけも守らずに」
「ねえねえ、なんで敬語にもどるの」
「あ、あの、私、食べ物が絡むと言葉遣い悪くなるみたいで。すみません・・・」
「えー?全然いいって。敬語だと堅苦しいしさ。小川さんより、そのぉ、まこちゃんのほうがいいかな、
なんて」
「じゃあ、・・・・・・・・まこちゃん」
「・・・・・・・・・・うん」
二人して顔を見合わせて照れ隠しに笑う。
しかめっ面してるのはもったいない。笑ってるほうが楽しい。
同居二日目、なんとか上手くやってけそう、で今日は終わるはずだった。
この後、余計なことを一言さえ言わなければ。
- 23 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月18日(金)18時42分12秒
「それで、昨日の機嫌は直ったんだ」
「あ」
「・・・もしかして忘れてた?」
「うん」
アサミちゃんのニコヤカだった表情がみるみる変わる。
私に凭れかけていた体を離してじっととした眼で睨んでくる。
ううっ、さすが吸血鬼、迫力ある。
「色仕掛けに引っかかるなんて最低」
「違うよ、あれはノリで」
「嘘つき。鼻の下伸びてた」
「しょうがないじゃん。チャーミーさんに言われたら誰だってイエスマンになる!」
「ふーん、開き直るんだ?」
「・・・」
「勝った」
上手くやってけそう?私たち。
- 24 名前:読者その1 投稿日:2003年07月18日(金)23時07分35秒
- かなりツボに入ってます。
この作品読んでる時ってめっちゃ笑顔になってるし。
- 25 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月19日(土)14時35分34秒
- 自分もそうだったり。また楽しみな作品が増えた〜
- 26 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月20日(日)22時48分12秒
- >読者その1さま
ありがとうございます。
笑顔になってるし>最高に嬉しいです。
>名無しさんさま
ありがとうございます。
読者さまに楽しみにしていただけるのが糧になります。
本日は紺野さん視点で。
- 27 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)22時50分48秒
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・・・・・・ん〜〜、朝だ。
まこちゃんおはよう、朝ですよー、遅刻しちゃいますよー。
なぁに?あと五分?そう言って起きたためしないじゃない。
今日は絶対起きるの?しょうがないなぁ、じゃあ、あと五分だけだよ。
目覚ましが鳴ってもまこちゃんは寝転がったまま。毎朝こうして私が呼びかけて、それからしばら
くしてダルそうに体を起す。
寝起きのまこちゃんはボーっとしてて、時々、「アサミちゃんは朝日にあたって大丈夫なの?」などと
訊いてきたりする。
吸血鬼の寝床は棺で、苦手なものは朝と光とニンニクと十字架。
自分の抱いていたイメージと違う私たちに驚いてたね。
科学が進歩するように私たちの種族も進化しているのですよ。
今日も例のごとく約束した五分よりずっと後に起きたまこちゃんは、床に敷いた布団から何か別の
生き物みたいに這い出てくると、テレビを見る私の隣に腰をおろした。
- 28 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)22時54分11秒
「まこちゃんおはよ」
「ぅん、ぉはょぅ」
まこちゃん、目ぇ開いてない。
ゆらゆらと頭を揺らし、朝の星占いを聞く。これがまこちゃんの一日のはじまり。
そして、私の一日のはじまりは、そんな無防備なまこちゃんの横顔を観察すること。
まこちゃんの横顔のラインがすっごく好き。
寝癖だらけの柔らかな茶色の髪が好き。
長めの下睫毛が好き。
もちろんこれだけじゃなくて、まこちゃんの全部が大好きだよ。
でも、笑顔は特別。
目の細め方が優しくて、微笑まれると気持ちがポワワンてなる。
はじめて二人が会ったとき、まこちゃんは、「吸血鬼です」って言った私を何故か笑った。
今でもちゃんと憶えてる。
人間とまともに接触したのはそれが初めてで物凄く緊張していたことも。
初めて見た人間の笑顔に魅了されたことも。
私の年で吸血鬼は皆ひとりで狩が出来るようにならなければいけない。
動物、ましてや人間の血すら吸えない(飲みたいとゆう気持ちになれない)私をせめて半人前ぐらい
にはレベルを上げてやろうとヤグチさんが研修と称した渇を私に入れるべく、その夜まこちゃんの家に
狙いを定めたのが出会いのキッカケだった。
- 29 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)22時55分15秒
- 家に入る前に何故この子をターゲットにしたかと理由を訊いた私にヤグチさんは、「ばっかだなぁ、
処女の血が一番うまいんだぞ」と答えた。
ショジョ?ヤグチさんはたまに私の知らない言葉を使う。
あとからまこちゃんに意味を訊いて赤面した。
たった今きづいたんだけど、なんでヤグチさんはまこちゃんがショジョだと知ってたんだろう。
あ、話がずれちゃう。
とにかく、まこちゃんの笑顔のおかげで緊張がほぐれて、でも、いざ血を吸うという段階で倒れて
しまって、今日に至る。
「まこちゃん、まこちゃん。さそり座3位だよ。ラッキーアイテムはねえ、カサだって」
「聞いてるからぁ。あんまおっきい声出さないで」
眉間にシワを寄せて床にゴロリと仰向けに横たわる。
怒らせちゃったのかなぁ。それとは違う気もするけど。
どちらかとゆうと、お酒を飲んだ次の日のヤグチさんに似てる。
ぐううぅ。
「まこちゃん、まこちゃん」
「今度はなに」
「朝ごはん」
「・・・・」
「お腹すいちゃった」
「・・・・」
「まこちゃん」
羽をぱたぱた動かしてオネダリしてみる。
- 30 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)22時56分23秒
「・・・はぁ」
まこちゃんは大きくひとつタメ息を洩らした。
怒るのかな、怒るかも。
「しょうがないなぁ」
口ではめんどくさそうに言いながらも、まこちゃんは笑ってた。
まこちゃんはそんなことじゃ怒らない。よく知ってる。
どんなワガママを言っても、しょうがないなぁって叶えてくれる。
たまーにケンカになっても、意地っ張りでなかなか折れようとしない私を許してくれる。
だからといって甘いとかそんなんじゃなくて。
なんだろう。
これってやっぱり甘いのかな。
私がまこちゃんが運んできてくれた朝ごはんを食べてるあいだ、まこちゃんは学校に行く準備をする。
一人でとる食事は少し寂しいけど、まこちゃんのお母さんが作る食事は美味しいから、
食べ始めると幸せな気分になってそんな寂しさもたちまち消えてしまう。
「おいしい?」
「うんっ」
「よかった。アサミちゃんが朝はパン派とかご飯派とか関係なくて」
ちなみにまこちゃんもどちらでもいい派らしい。
「そうだ。今日遅くなるから」
鏡に映る自分と向き合い、制服のりぼんを器用に丁寧に結びながらまこちゃんが言う。
- 31 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)22時57分44秒
「えー、なんでー?」
「部活会に出なきゃなんないの。六時か七時くらいになるかも」
その時間帯は一緒にアニメ見る時間でしょう。
「やだやだ、つまんない」
「無理だって。ここんとこ部活休みっぱなしだったし。・・・誰かさんのせいでさ。アサミちゃん」
「まこちゃん昼ドラに出てくる小姑みたい」
「それ言いすぎだし。お願いだからおとなしくしてて」
「じゃーお土産買ってきて。美味しいもの」
「アサミちゃん太っちゃうよ」
呆れたように私の羽を撫でると、まこちゃんは「やば、電車間に合わない」と言って慌てて部屋を
出て行った。
遠ざかってくまこちゃんの足音を聞きながら食べる食事は、あまり美味しくなかった。
- 32 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)22時59分52秒
- 今は七時半。まこちゃんが帰ってくるまで残り約十二時間。
ワイドショー見て、マンガ読んで、いいとも見て、昼ドラ見て、またワイドショー見て、再放送の
ドラマ見て、ここでやっとアニメ見て・・・。
何の妨害(部活)もなければこの辺(再放送のドラマ)でまこちゃんが帰ってきてくれるのに。
一日のことを考えてベッドでまるくなる。
思い浮かぶのは不満ばっかり。
枕に顔を埋めた。まこちゃんの匂いがする。
ふぅ。余計に帰りが待ち遠しくなっちゃった。
だから、もう少し眠ろうと思う。起きてるとまこちゃんのことで寂しくなるから。
###
たぶん午後にはいってからだ。
空に濁った雲が流れはじめて、天気予報でも雨が降るとか言っちゃてて、朝のいい天気っぷりが
すっかり嘘のよう。
まこちゃんが帰ってくるころには止むかな、どうかな。
そんな心配をしながらテルテル坊主を作ってる間に、イジワルするみたいに雨は降り出した。
- 33 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)23時03分23秒
----pm6:00----
机に肘をついて雨と睨めっこ。
カーテンレールにぶらさがるテルテル坊主も頑張ってくれている。
効果は全然ないけど。
まこちゃんカサ持ってってないよね。今朝は晴れてたもんね。
迎えに行こうかな。でも、まこちゃんの学校がどこにあるか知らない私にまこちゃんに辿り着くすべ
はない。
・・・・学校の名前くらいならわかる。
あとは電話帳で住所調べれば。
ごめんね、まこちゃん。おとなしくしてるって約束破っちゃう。
足音を立てないよう細心の注意を払って玄関からカサをゲットして家を抜け出した。
- 34 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)23時06分49秒
- 外は部屋から見るよりも雨の降りが激しかった。
どしゃぶり。
これじゃ空を飛んで行けそうにない。
仕方なく歩いて駅まで行く。ひさしぶりに自分の足で地面を踏みしめるのはドキドキする。
これが晴れの日で隣をまこちゃんが歩いててくれたら楽しいんだろうなぁ。
二人でどこでもいいから出かけたいよ。
これからの季節なら海とか。お弁当持って水着持ってさ。
まこちゃんのことばかりに気を取られていて進行方向に電柱があるのに気づかないでおもいきりオデコ
をうってしまった。
靴は雨が沁み込んで素足で歩いてるのと同じだ。まこちゃんが着せてくれた服もほとんど濡れて、
肩の辺りは特にひどくて肌にぴったりとくっついている。
一人歩きは心細いし、オデコは痛いしでなんだか視界が涙でぼやけてきた。
こんなんでまこちゃんのとこに着けるのかな・・・。
私ってほんと何やっても駄目な奴。
「アサミ・・・ちゃん?」
え?
あ、あ、まこちゃんだぁ。
「なに、なに、どうしたの!?」
「まこちゃぁん」
私はカサを放り投げて夢中でまこちゃんに飛びついた。
「うわっ、駄目だよ、私めっちゃ濡れてるから」
- 35 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)23時08分08秒
- 慌てて引き剥がそうとするまこちゃんの腕を無視してもっとギュッと抱きついた。
雨で体が冷えているはずなのに、まこちゃんはすっごく暖かい。
まこちゃんは何か言いかけてやめて、私が落ち着くまで腕の中にいてくれた。
密着させた体からまこちゃんの鼓動が伝わってくる。
ドキドキしてる?私もだよ。
「帰ろっか」
「・・・うん」
傍らに転がっていたカサを拾い上げ、まこちゃんは私の手をとった。
手もすっごく暖かい。
「まこちゃんごめんね」
「へ?なんで謝るの?」
「だって、家でおとなしくしてられなかったよ、私」
「そうだったね」
まこちゃんは立ち止まり、繋いだばかりの手を離した。
今日こそは本気で怒っちゃうよね。
反省してます。ギャクギレしたり、拗ねたり、ふてくされたりもしないよ。
覚悟を決めて目をつぶる。
- 36 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月20日(日)23時09分51秒
「それなりの理由があったからでしょ。いいんだよ、そうゆうときは。・・・ありがとね」
また手を握られた。
恐る恐る薄目を開けると、うっすら頬を赤く染めて優しく微笑むまこちゃんと目が合った。
ちゃんと分かってるよ、そう言ってくれてるみたいで嬉しかった。
「で、なんで傘が一本しかないわけ?」
「アイアイガサ」
「・・・意味知ってて言ってないでしょ」」
「ヤグチさんが一度でいいからしてみたいって言ってたんだぁ。今度会ったときに自慢するの」
「(ばか姉妹)」
「まこちゃん聞こえてる」
「水溜りのとこばっか歩かないでよ、制服がドロで汚れるー!」
雨の日も楽しいと知った時。
それはきっとまこちゃんが隣にいるから。まこちゃんは私に色んなものを与えてくれる。
本人は何もしてないと否定するだろうけど。
ラッキーアイテムはカサ。私的には大当たり。
- 37 名前:読者その1 投稿日:2003年07月21日(月)06時08分09秒
- 更新毎に可愛さが増してきますね。
2人の関係も徐々に深まって今後に期待です。
>羽をパタパタ動かしてオネダリ
・・・・・されてみたい。(爆
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月22日(火)20時09分47秒
- ハケーン!
面白そう!頑張って下さい!
- 39 名前:雷斗 投稿日:2003年07月22日(火)23時20分50秒
- おぉぉぉぉぉ・・・!!!
こんこん可愛いい!!かわいすぎる!!
すみません。いきなりハイテンションで。w
そして、初めまして。初レスです。
川o・-・)<当たり前です。・・・つっこみも完璧です。
紺野さんが大好きです。でも、ここのアサミちゃんの方がもぉーっと好きです。w
更新乙です。頑張ってください。
- 40 名前:u-dai 投稿日:2003年07月23日(水)14時52分15秒
- この小説・・面白い!!こんこんいいっすねこんこん
小川さんとの会話が絶妙です・・おがこんマンセーです
これからもがんばって下さい〜
初レスなのにあつかましくてごめんなさい・・でも応援してます。
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月24日(木)18時23分09秒
- >> 読者その1さま
レスありがとうございます。
>可愛さが増してきますね。
キショさが増してるとかじゃくてよかったです(w
羽をパタパタは自分もされ(ry
>>名無しさんさま
レスありがとうございます。
発見されてしまいました(w
頑張ります。
>>雷斗さま
レスありがとうございます。
>紺野さんが大好きです。でも、ここのアサミちゃんの方がもぉーっと好きです。w
元ネタを思い出すのに小一時間かかった自分て一体・・・。
>>u-daiさま
レスありがとうございます。
あつかましだなんてそんな滅相もない(汗汗
応援に応えられるよう頑張ります。
そして、おがこんマンセー
少しだけですが更新します。
- 42 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月24日(木)18時25分46秒
「まこちゃん大丈夫?まだあっつい?」
「熱はだいぶひいたんだけどねー、喉が痛い・・・」
「そっかぁ」
「なーんでアサミちゃんが痛そうな顔すんのさ」
「別にぃ」
まこちゃんの掠れた声聞いてたら、私もまこちゃんと同じとこが痛くなちゃっただけ。
言ったらまこちゃんが心配するから内緒にしとくんだ。
熱で暖かくなったタオルを氷水の入ったボールに浸して絞ってまこちゃんのオデコにのせる。
まこちゃんは「ありがと」と目を細めた。
どしゃぶり雨に打たれた昨日、まこちゃんは夜に熱をだして翌日の今日には本格的なカゼっぴき
になってしまった。
まこちゃんて意外と体が弱い。低血圧だし。
十数世紀前頃に発生した私たちのマスターたちは受け継いだ血がまだ濃かったため、湿気や雨に
触れるとすぐに体調を崩したり、朝は血の巡りがよくなかったらしい。
ヤグチさんから聞いたことがあるこの話は、まこちゃんの体質と重なるものがある。
もしかしたら私たち、遠い何処かで繋がってたりして。
そうゆうのってロマンチックでステキでいいね。
- 43 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月24日(木)18時27分17秒
まこちゃんの背中にも羽があったなら銀色なんか似合いそう。
それで、二人で月の浮かぶ濃紺の夜を優雅に飛ぶの。
・・・え?ヤグチさんもイシカワさんも行きたい?もぉ、ちょっとだけですよ。
「いたっ・・まこちゃんなにすんのぉ」
「アサミちゃんこそ人の顔見てニヤニヤしてキショイ」
「むぅ」
デコピンされたオデコをさすりながら睨んでも、まこちゃんには全然きかない。
私の反応を見て笑ってる。
まこちゃんの笑顔に私も自然と笑みがこぼれる。
「まーたニヤニヤするし」
ニヤニヤじゃなくてニコニコだよぉ。
変な子だねアサミちゃんは、そう言ってまこちゃんはくしゃくしゃになった私の前髪に手を伸ば
して直してくれた。
「まこちゃんの手あっつい。とけちゃいそう」
「アサミちゃんのおでこは冷たいね。気持ちー」
「ずっと触ってる?」
「えーっと、遠慮しとくわ」
「なんでー、遠慮しなくていいのにぃ・・・あ、誰が来る」
階段を上って部屋に近づいてくる人の気配を感じてクローゼットに隠れた。
- 44 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月24日(木)18時31分04秒
ドアがノックされてまこちゃんが返事する。
かちゃかちゃとガラスがぶつかり合う音と女の人(たぶんお母さん)の声がして、それに答える
まこちゃんの声がした。
「うん、ありがと・・・だいじょぶ・・・・・・うん・・はぁい」
ばたんとドアが閉まってスリッパの音が遠ざかる。
耳から完全に聞こえなくなってからクローゼットから出ると、まこちゃんがオイデオイデと手招き。
まこちゃんの膝の上にはトレーと、その上にはスープ皿がのっている。
湯気を立てているその食べ物は、白くて粒々していてドロッっとしてて、初めて見るものだった。
「これなぁに?お米みたいな匂いする」
「これはおかゆって言ってね、炊いたお米に水と塩を少し入れて煮たやつ。風邪ひいたりしたとき
に食べるんだよ」
「わぁ、なんかドロドロしてておもしろーい」
「冷めないうちに食べなよ。お腹すいたでしょ」
「駄目だよ、これ、まこちゃんの分だもん」
「いーの、私は食欲ないから。食べ物で遠慮するなんてアサミちゃんらしくないじゃん」
- 45 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月24日(木)18時33分28秒
アサミちゃんらしくないって、まるで私が食い意地が張ってるみたいな言い方してー。
でも、強くは否定できないのがちょっこと情けない。
まこちゃんの気持ちは嬉しいよ、嬉しいけど、このまま私だけオカユを美味しく頂いちゃうのも。
「・・・じゃぁ、はんぶんこしよう」
「だから私は」
「何かお腹にいれといたほうが体にいいのっ!」
「は、はい」
二人仲良く食事をする。
「まーこちゃん」
「えぇ!?・・・あーん」
「美味しい?」
「う、うん」
「よかったぁ」
「・・・別にアサミちゃんが作ったわけじゃないじゃん・・・」
「次、まこちゃんね」
まこちゃんにスプーンとお皿を渡して、今度は私が口を開ける番。
「あーん」
「はぁ?」
「まこちゃん早くう」
「なにやってんだか・・・」
呆れながらもオカユを掬って食べさせてくれるまこちゃん。
当然 私はこう言う。
「おいしー」
うん。やっぱりご飯は誰かと一緒に食べるのが一番美味しいね。
- 46 名前:雷斗 投稿日:2003年07月24日(木)23時55分49秒
- 更新乙です。
小川さんがんがれ、小川さん。
てか、紺野さんに『アーン♪』なんてされたら熱が下がるどころか上がっちゃいますよ。w
そしてちゃっかり病人(小川さん)に食べさせてもらってる紺野さん。w
マジで好きです。w オソロでは柴紺が多いですけど結局は紺がらみが好きだということに気づきました。w
では、次回更新楽しみに待ってます。
- 47 名前:読者その1 投稿日:2003年07月25日(金)01時28分05秒
- 可愛いっす。なんか2人の周りがホンワカしていて、こういう雰囲気
好きです。
- 48 名前:u-dai 投稿日:2003年07月25日(金)13時58分16秒
- ん〜・・・(゜∀゜)ノイイッ!!!
こんな雰囲気がサイコーでつハイ。
見ていて口元が緩んでしまうし・・家族には白い目で見られるし・・・なんなんだ
でもこの小説が悪いわけではありませんそりゃそうです。
長くなりましたがこれからもがんばって下さい!!!
>雷斗さん
僕とタイプが一緒です^-^なんか被ってるヒトがいて嬉しいです。
これからも名無しさんの小説を応援していきましょう〜(何
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月25日(金)19時16分15秒
- >> 雷斗さま
レスありがとうございます。
自分、ヘタレな小川さんに萌えなので、今後も紺野さんに振り回されて頑張ってもらう予定です。
>>読者その1さま
レスありがとうございます。
リアルおがこんのホンワカ感を参考にしてるので、上手く伝えられてるようで良かったです。
>>u-daiさま
二人の持つ雰囲気を壊さずにこれからも頑張ります。
キャラは壊れ(ry
それでは更新します。
- 50 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時17分50秒
「まーこちゃん」
嬉しそうにスプーンを私の口元に差し出すアサミちゃん。満面の笑み。
アサミちゃん、それ反則。
そんなことを思いながら、差し出されたスプーンを咥える。
「おいしい?」
「うんっ」
こんな顔されちゃ言えないよ、一口づつ順番に食べて分けるのは効率が悪いだなんて。
いやいや、効率が悪いからとゆうのはあくまでも建前で、ただ恥ずいんだ。
はい、あーんして、って、ねえ。どこのバカップルだよっ!みたいな。
うぅ、また熱が出そうだよぉ。
「はい、アサミちゃん」
「あーん。・・・・おいしー」
私が掬ったおかゆをアサミちゃんはとても幸せそうな顔で食べて、ただでさえ下がりがちな
瞳をさらに下げてフニャリと微笑みかけてくる。
くっ。私は、この顔に弱い。
しょうがないなぁって何でもかまってあげたくなっちゃうんだ。なんでも許しちゃうんだ。
代わる代わるにおかゆを食べさせあって暫く、やっとお皿の中がカッラポになった。
後半おかゆは冷めてきて私的にはいまいちだったけど、アサミちゃんは別段気にせず最後
まで美味しそうに食していた。
アサミちゃんにお代わりはいるか訊くと彼女には珍しく、いらないとの返事。
- 51 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時20分10秒
「まこちゃんと一緒に食べてたらお腹いっぱいになっちゃったの」
ふうん。そうゆうものなのかな、よくわかんないけど。
不思議に思っているのがそのまんま表情に浮かんでいたのか、
「そうゆうものなの」と拗ねるように言ってから、アサミちゃんはベッドの肘をついて床にべったり
と座る。
で、なんにも喋る様子もなく私の顔をジーッと見ている視線を感じる。
毎朝アサミちゃんが私の横顔を飽きずに観察しているのは知っていて慣れてるはずなのに、
今は寝ぼけているわけでもなく意識がハッキリしている状態だから気恥ずかしい。
「アサミちゃんテレビでも見てたら」
「いいよぉ、今日は一日中ずぅっとまこちゃんの傍にいるって決めたの」
「風邪うつっちゃうし」
「大丈夫。私たちと人間の受容体は作りが違うから、人間の感染するウイルスは私たちには入り
込むことができないのです」
「でも、私寝るし、アサミちゃんつまんないでしょ」
「・・・まこちゃんは私が傍にいちゃヤダ?」
うるうるの瞳と、計算してるのではと疑いたくなるような絶妙な首の傾げ方。
アサミちゃん、狩は出来ないけど、やっぱハンターだよ、きみは。
- 52 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時22分39秒
「そ、そんなことないよ、ありえないから!」
「ほんとに?」
「あったりまえじゃん!」
大きくなった私の声にアサミちゃんは驚きつつ、
「よかったぁ」
と微笑んだ。
ちょっと甘やかしすぎかな。
まあ普段は学校行ってて夜しか相手してあげられないからいっか。
「ねえ、アサミちゃんは私がいないとき、何してる?」
「ううんと、テレビ見たりマンガ読んだり寝てたり・・・大抵は寝てるかな」
「毎日そんなんじゃ退屈でしょ。お姉ちゃんゲーム持ってるから借りてくるよ」
「あ、でもね、一昨日はノンちゃんが遊びに来てくれて楽しかったんだぁ。二人で干し芋食
べたりして。今度来たらまこちゃんに紹介するね」
ノンちゃんはアサミちゃんの友達で、ヤグチさんと一緒に「くのいち羅舞羅舞隊」とゆう時代劇
同好会(と言ったら聞こえがいいが、実際には忍者コスプレを愛する人たちの集まり)に所属し
ているらしい。
主だった活動内容は不明。源氏名は、蘭丸だそうだ。
- 53 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時24分39秒
ヤグチさん、チャーミーさん、ノンちゃん、アサミちゃん。
とりあえず私の知る限り、日本にはこの四人の吸血鬼がで生息している。
アサミちゃんに出会う前の私が人づてにこれを聞いたとしたら、鼻で笑うことだろう。
でも、出会ってしまった現在、本当に確かに彼女たちはいる。
稀少な存在の彼女たちに出会えた自分は幸か不幸か。
迷うことなく前者だと思う。
- 54 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時27分48秒
午後にはいってから喉の痛みも消えて、ベッドから体を起こしても眩暈がしなくなった。
私の回復に伴うように、曇り空がひいて太陽が見え始めている。
傍らでマンガを読んでいたアサミちゃんは、まこちゃんは晴れ女だね、とノンビリした口調で
冗談を言いながら眠たそうに瞼を擦る。
「寝ちゃう?」
「んーん、起きてるぅ」
アサミちゃんは首を振って頑張って起きていようとするけれど、目が閉じかかってるよ。
大抵は寝てるってさっき言ってたよね。無理しなくていいんだよ。
「無理してないもん」
「うっそだー。ほら、寝ちゃえ寝ちゃえ」
頭をぽんぽんと叩いて促す。
アサミちゃんは、やだやだと首を振る。
「寝ちゃ・・・駄目なの・・ぉ」
「なんでよ」
「だってねぇ、せっかく・・・まこちゃんがいる・・のに寝ちゃったらもったいない・・・」
途切れ途切れに言い終えて、ものの数秒で眠ってしまった。
小さな寝息を立てているアサミちゃんに、軽くデコピン。
一瞬まゆをしかめて、でも、深い眠りに落ちる。
- 55 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時29分46秒
「言わなくたって、いつだって一緒にいたげるよ」
アサミちゃんはほんとは吸血鬼じゃなくて魔法使いじゃない?
こんなに簡単に私の心を甘くしちゃう。ちょっとした一言で、ちょっとした仕草で。
ま、さすがに恥ずかしくてアサミちゃんが起きてるときには言わないけどね。
てゆーか、言ってあげない。
アサミちゃんがますますワガママになりそうだから。
- 56 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時33分43秒
アサミちゃんが起きるまでマンガでも読んでよっかな。
マンガに手を伸ばしたときだった。不意にドアが開いてお姉ちゃんが入ってきたのは。
「まこと風邪ひいたんだってー」
ここまで、私はアサミちゃんのふわふわした雰囲気に包まれて油断していた。
病み上がりの鈍い五感のせいも多少はある。
足音が無意味にデカイお姉ちゃんの気配に気づかなかったなんて・・・。
余談だが、アサミちゃんは耳では捉えられない音、生物が無意識に発している超音波を羽で感じて
どんな遠くからも物体を認識することができると得意気に言っていた。
にもかかわらず、アサミちゃんはお姉ちゃんに気づかないどころか、部屋に入ってきても
寝たまんまだった。
「あれー?誰その子、友達?」
「う、うん、まあそんな感じ」
うわ、めっちゃ見てるよ、やばいやばいやばい。
アサミちゃん、羽まる見えだよ、羽。
いまさら隠したら怪しいよなぁ。
「学校の帰りに寄ってくれて、それで、えっと、なんか疲れちゃったみたいで、少し眠ってるんだ」
「へー、優しい子じゃん」
冷や汗をかいている私を横目に、お姉ちゃんは眠っているアサミちゃんに近づくと、顔を覗きこんだ。
- 57 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時34分34秒
「可愛いねー。今かおりが狙ってるアイボンもいいけど、この子もいいかもしれない」
「ア、アイボン・・・?」
「それがね、デートに誘ってもなかなかオーケーしてくれないんだ。けっこうガード固いってゆうか
、初心ってゆうかさ。そこがまた萌えるんだけどねー」
「あ、あぁ、ゲームの話ね」
「かおりのどこが気に入らないのかな。かおりこんなに背ぇ高いし、美人だし、歌うまいし、
絵だってうまいし、静香ちゃんの物真似だってできるし。・・・そっか、照れてるんだ!」
一人で納得する。
そうだった。彼女はギャルゲーヲタだったんだ。
次の日に大学があろうと就職活動があろうと朝方5時までゲームをしてる姉なんだった。
おまけに電波なんだ。
アサミちゃんが超音波を感じることができるなら、お姉ちゃんのこの電波に気づいてよ。
って、今はそんなことはどうでもよくて。
「それで、お姉ちゃん何しに・・」
「まこと、この子の背中にあるのなに?」
あんた唐突だな。
私の問いを遮り、お姉ちゃんは既に眼中になかったはずのアサミちゃんに再び興味津々たるご様子。
アサミちゃんのピンクの羽に右手をのせて撫でる。
- 58 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時38分42秒
「・・ぁっ」
アサミちゃんの口から吐息と共に甘ったるい声が洩れた。
う、あ。なんかエロい。
お姉ちゃんがまた2、3度撫で上げると、アサミちゃんはイヤイヤをするようにぎゅっとシーツを
掴む。
今度は別の意味で やばいやばいやばい。
さっすがお姉ちゃん。ギャル(アサミちゃんギャルじゃないけど)のそうゆうポイントは上手く押さえてるんだね。私が撫でても
アサミちゃんこんな反応したことないよ。
すごいけど、妹としては、そんな姉が情けないです。
「よくできてんね。本当に背中から生えてるみたいじゃん。リアルー」
「で、でしょう」
「かおりもコスプレとかしてみようかな。そしたら、アイボンもかおりにメロメロ?
よーし、今日も頑張るぞぉ」
「うん・・頑張って」
「あ、そうそう、お母さんから風邪だって聞いてゼリー買ってきたんだった。冷蔵庫にあるからね」
「ありがと」
- 59 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年07月25日(金)19時40分23秒
ゲームの世界に住むアイボンさんにどうやってコスプレした勇姿を見せんのだろう?
お姉ちゃんが出て行ったドアを見て思う。
なにはともあれ、お姉ちゃんはアサミちゃんのことを怪しんだふうもないし、ひとまず安心。
なんだけど、アサミちゃんのあの声が鼓膜から離れてなくて・・・。
- 60 名前:雷斗 投稿日:2003年07月25日(金)22時02分03秒
- >うるうるの瞳と、計算してるのではと疑いたくなるような絶妙な首の傾げ方。
>アサミちゃん、狩は出来ないけど、やっぱハンターだよ、きみは。
いや。むしろハンターに見つかったウサギみたいで。w
それよか・・・
(○^〜^)<飯田さん。姉ちゃんかYO!しかもギャルゲーヲタなのかYO!
ひそかに加護ちゃん狙ってるのにも笑わせてもらいました。
( ´D`) <らってらって・・・面白いんらもん。
( ‘д‘) <うちはおもろない!!
↑
すいません。 こんなこと言わせて・・・。
いやいやもぉ・・・マジでいいっす。なんたってキャラの作り方が上手い。
アサミちゃん。一家に10匹くらいの勢いで欲しいです。w
更新乙。
- 61 名前:読者その1 投稿日:2003年07月25日(金)23時11分37秒
- 読んでいて、すごくリアルに情景を思い描くことができます。
ソフトフォーカスでとても優しくて暖かい雰囲気の。
- 62 名前:u-dai 投稿日:2003年07月26日(土)07時59分19秒
- アサミちゃんがマジ最高!コスプレに近いピンクの羽つけたまま
「・・ぁっ」とか言われたらもう(゜∀゜)=3
まこちゃんのお姉さんが笑えます。逆に怪しめよと言いたくなる・・
それにしてもこの雰囲気はホントにいいっすね
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月27日(日)19時18分29秒
- 当分 更新を停止させて頂きます。
すみません。
再開は未定です。
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月27日(日)20時19分15秒
- ochi忘れ・・・
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月31日(木)17時48分26秒
- >63
何があったのかは知りませんが、待ってますよ!
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月02日(土)08時43分54秒
- age
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月02日(土)14時23分33秒
- レスありがとうございます。
>雷斗さま
紺野さんのキャラは立てやすいので楽しみながら書いてます。
>読者その1さま
雰囲気がちゃんと伝わっていることが本当に何より嬉しいです。
>u-daiさま
紺野さんにコスプレさせたいと思って考えた話だったり(ry
>名無しさんさま
安倍さんの卒業があまりにもショックでして。回復するまで暫く時間を下さい。
更新までageないで下さい、お願いです。
不甲斐ない奴ですみません。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月09日(土)19時01分26秒
- すみません。
少しだけですが更新させていただきます。
- 69 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時04分40秒
カオ姉ちゃんがいなくなって静かになった部屋にアサミちゃんの寝息が
やけに大きく響く。
ベッドに突っ伏して眠ってて顔が見れなくて残念。
きっとすっごく可愛い寝顔なんだろうなぁ。
そこで一度だけ見たことのあるアサミちゃんの無防備な寝顔が回想される。
微かに薄く開いた唇に、伏せられた睫毛に、もちもっちとした白い頬。
くーっ・・・たまんないねえ。もっかい見たい。
って、私かなり親父くさい、かなりの変態。
や、私はいたって健全なる女の子で、悪いのはカオ姉ちゃん。
アサミちゃんに変なことして、変な声を出させたカオ姉ちゃんが悪いのだ。
さっきのあの声を聞いてからどうも落ち着かなくて。
だからイケナイ目でアサミちゃんを見てニヤニヤとしちゃってるんだ。
今の私、アサミちゃんに見られたら「まこちゃんニヤニヤしてキショイ」って
返されるくらいヤバイ状態。
アサミちゃん、このドキドキが治まるまで起きるな、起きるな、起きるな・・・。
しかし、それはそれでむしろ妄想に拍車がかかるんだけどねえ。
- 70 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時06分08秒
起きてる時にアサミちゃんをあまり直視できない分いっぱい見とかなきゃっ
て思っちゃったりして眺めて。
それでまたドキドキ。エンドレス。
なんで直視できないか。
それはですねー、普段アサミちゃんが私を飽きもしないでずーっと見てて、
照れくさくて真正面からなんて見返せないからなんですよ。
会話をしていても、宿題してても、本読んでても、
着替えていても(恥ずいからコレだけはやめてほしい)、
何をしていても私にベッタリ。
卵の殻を破って生まれて初めて見たものに懐くヒヨコみたいに
くっついて離れない。
たまにうざったいとか思う。普通にそうでしょ。
部屋にいる間、四六時中「まこちゃん○○してぇ」「まこちゃーん」とか
まとわりつかれちゃ息つく暇もない。
でも、あんな純粋な目で見つめられたり、無邪気に慕われたら
無下にはできないよ。
仮にもアサミちゃんにとって私は生まれて初めてまともにコンタクトを
とった人間なんだからそうなっちゃうのもしょうがないと思うもの。
うん、うん。しょうがないのだ。
- 71 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時06分50秒
てか、嫌な気はしないしね。
もうすっかりアサミちゃんの無意識の小悪魔っぷりに魅了されてるな、私。
自分の単純さに苦笑い。
つらつらと思い巡らせてるとアサミちゃんが体を少し傾けた。
あーあー、そんな寝方するとそのうち肩から崩れ落ちて床に打っちゃうってば。
「アサミちゃん」
名前を呼んで肩を叩く。
気持ち良さそうに寝ているところ申し訳ないが、
ひとまず起こしてソファにでもいいから寝直したほうがいいかと。
アサミちゃんは大きなお世話だと言うように、
肩に置いた私の手を体を揺らしてどかそうとする。
「危ないからちゃんとしたとこで寝なよ」
もう一度叩く。
今度は無視される。
いつも寝起きのいい彼女もこんな日があるのかとちょこっと意外。
否、毎日の昼寝のおかげで朝は清々しく目覚めることができてると
言ったほうが正しいのだろう。
- 72 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時07分58秒
「ねえってば」
三度目の正直か、アサミちゃんは半分開きかけのいかにも眠たそうな目で
私を見上げた。
そのアングル、心臓にかなりの負担が・・・。
「なぁに?」
「そこで寝るの危ないからさソファで寝るか布団敷いて寝るかしたら」
「やだよぉ。動くのめんどくさいもん」
この無精者が。
「・・・んじゃ、私が布団敷いたげる」
「ありがとー、まこちゃん大好きだよう」
「はいはい」
どこまで甘やかすつもりなんだ、まこちゃんさんよぅ。
悪魔にいいように使われて、ほんと情けない奴だな。
人間としてのプライドないんかい。
アサミちゃんに惑わされてない最後の砦、冷静な小川麻琴がせせら笑う。
で、アサミちゃんに惑わされているどうしょうもないヘタレ、アサミちゃんの
まこちゃんが悔し紛れに言い返す。
そんなん重々承知。わかってるっつうの。
私だって頑張ってるんだよ。
- 73 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時09分26秒
よっこいしょと掛け声かけてベッドから出ようと毛布を捲り上げた。
あぁ、立ち眩み。
熱が下がったとはいえ私まだ病人なんだよ、アサミちゃん。
そこんとこ忘れないで、って既に忘れてるからワガママなのか。
・・・うむ、納得。
アサミちゃんを理解して簡単に納得できるのはもう慣れだね、慣れ。
一週間も経たないうちにこんなんじゃこれから先、私は一体どこまで
アサミちゃんを受け入れて、そしてアサミちゃんは一体どこまで
私を振り回してくれるつもりなのか。
疲れるから今は考えるのやめとこう。
「あ、ちょっと待って」
そう言ってアサミちゃんの手が押入れに向かおうとする私の腕を掴んで押しとどめた。
「どうしたのさ」
「わざわざそんなことしなくてもいい方法思いついちゃった」
「アサミちゃんが自分で敷いてくれるの?」
「ううん」
「ソファで寝るの?」
「それも違くて」
「じゃあどうすんのさ」
言い当てられない私にアサミちゃんはちょっとご不満顔だ。
- 74 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時10分25秒
他に何かあるか?
・・・あー、わかった。
「寝るのをやめて起きてるんだ!」
勢いつけて答えるとアサミちゃんはもともとふっくらした頬をさらに膨らませて
拗ねたような目で睨んできた。
「バカなまこちゃんは嫌い」
「へ?違うの?」
「だからぁ」
何が言いたいのかいまいち把握できない私に、じれったいそうにアサミちゃんは
一旦立ち上がってベッドの上にのぼる。
アサミちゃんが私を見下ろす。
それから一瞬だけ時が止まって。
「まこちゃん・・・」
どことなく苦しげに呟やかれた。
草食動物みたいに温厚な瞳が黄色く光っているように見えるのは気のせいだろうか。
主に生き物の血を啜って糧にしている吸血鬼は肉食動物の部類に属するのだと
私は考えている。
なにがどうさせたのかは知らないが、アサミちゃんは今、その片鱗を覗かせているのだ。
- 75 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時11分55秒
どうしょうもないへなちょこな彼女の中にもちゃんと眠っていた悪魔の血。
目を閉じればその闇の血脈の音が聞こえてきそうだった。
もしかして、私、血ぃ吸われちゃう?
「ア、サミちゃん・・・?」
声掠れてる。かっこわる。
全然怖くなかった筈なのに、いざこうゆう時が来るとなるとやっぱ
怖くなるもんなんだね。
ゆっくりとアサミちゃんの顔がアップになる。
「・・・いいよ。でも、あんまし痛くしないでね」
この台詞、ベッドの上で言うと微妙にエロい。
覚悟を決めてぎゅっと唇を噛んで、今まさに訪れようとしてる予測不可能な
痛みに身構えた。
首筋を撫でるアサミちゃんの生暖かい息。
肩を掴む両手は熱っぽくて、緊張しているのかなと思ったけれど、
アサミちゃんではないアサミちゃんの顔なんて見たくなくて確認する気にも
なれない。
- 76 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時13分07秒
怖い、怖い、怖い。
何が怖い?
血を吸われるのが怖い。
私の血を吸った後、アサミちゃんがアサミちゃんじゃなくなりそうなのが怖い。
臆病な私は横に目線を逸らしたままだ。
ほんとかっこわるい。
「しつけーのれす!」
「待ってくだせー」
悲しいかな。近所の子供の戯れがこの状況が現実なのだと改めて認識させる。
「なして逃げるんやよー。久しぶりに会えたのに酷いでねぇですかー」
「てめーになんて会えて嬉かねーのれす」
声が段々と大きくなった。
喧嘩か?
理由はなんであれ喧嘩は感心しないですねえ。
- 77 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月09日(土)19時15分29秒
「あっ、何処行くんですかー」
「ノノはこの家に用があるのれす。わかったらさっさと家帰ってバナナでも食ってろ」
うっわぁ、きっついなぁ、おい。
じゃなくて、うるさい子供たちだなぁ。
こっちは今お取り込み中なんだぞ。
稚拙な喧嘩にいつの間にやら恐怖心は吹っ飛んでいて、アサミちゃんとの儀式めいた
やり取りをかき回されたようで不機嫌になっている自分がいた。
「うちも着いてきますー」
「・・・勝手にしろなのれす」
最後の会話が聞こえた次の瞬間、部屋の窓が派手に割れて破片が床に散乱。
現れたのは二匹のコウモリ。
一匹は小くて黒い。もう一匹はでかくて青かった。
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月09日(土)19時17分32秒
- ∬∬´▽`)
- 79 名前:u-dai 投稿日:2003年08月09日(土)20時07分25秒
- あぁ・・結局まこちゃんは何をされるんだったんだろう
やっぱ血をアサミちゃんに(ny
ってかノノさんはキツイな〜バナナのとこでマジ笑いしました
青くてデカイ人はやっぱあの人ですよね?キャラでてますね
次の更新も待ちまくってます!ガンガッテください
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月11日(月)18時07分45秒
- >u-daiさま
でかい人、たぶん予想されていた方とは違ったかと思います。
ノノさんそんなでかくないんですけどね。黒の方に比べたらってことで。
それでは、更新します。
- 81 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時08分43秒
「ちーっす、また遊びに来ちゃったれす」
青いコウモリが舌っ足らずに挨拶をする。
その隣でふよふよと羽を動かして浮いている黒いコウモリは
「はずめますてー。おじゃまするやよー」と関西(?)訛りで丁寧に自己紹介。
なので私も「はぁ、どうも。小川麻琴です・・・」と真面目に返した。
すると青いコウモリが私を見た。
「あなたがまこちゃんれすか。どもども」
えっと・・・なんで私のこと知ってるんだろ。
どっからどう見てもコウモリだよね。
でも、普通に喋ってるんだよね。
さっきの会話は近所の子供なんかじゃなくて、全部このニ匹がしてたんだよね。
で、窓をぶっ壊してくれちゃったのもこの二匹なんだよね。
どれも揺ぎ無い事実だ。
アサミちゃんたちの存在を簡単に認めてるわりに私ってけっこう現実主義者だったり
する。
だから、いきなりコウモリがうちの窓を突き破って部屋に侵入して
挨拶されたりしても「最近のコウモリは人間語(しかも訛ってたるする)を話せるんですねぇ、
まことビックリ」とか言って当たり前のように受け入れられるとでも。
- 82 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時12分11秒
「蘭丸さまー、なしてこんなガキくさい人間の女と親しげにするんですかー。
あっしには冷たいのにー。ラブリーちょっぴりジェラシー感じちまう・・・」
「うっせーのれす。なーにがラブリーだよ、気持ちわりー」
「でも、そんな悪なとこも好きですー。嗚呼、なんで女はそうゆう男に惹かれるんやろか。
恋ってミステリーやわぁ」
「ノノは花も恥らう十六歳の乙女で男じゃないのれす。寝言は寝てるときに言え。
いや、寝てても言うな」
「そのつれなさがまたいいっ!」
黒が青に体を摺り寄せる。
途端に青は羽を上手く使って、擦り寄ってきた黒を振り払う。
駄目だ。
何度聞いても、何度見てもコウモリだし人間語喋ってるよ。
私もカオ姉ちゃんみたくとうとう怪電波を受信したり送信したりするようになっちゃたの
かしら。
アサミちゃんはとゆうと、口をポカーンと開けて魂が抜けてる。
ガラスの割れた音に驚いて放心状態って感じなのか。
瞳からは鈍い光は消えて、肉食動物からすっかりいつもの草食動物の顔に変わっていた。
- 83 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時13分24秒
安心したような、でも、アサミちゃんに眠る本当の姿を覚醒させたかったような。
元に戻った今だから怖がりもせずにそう悔やむことができるのだ。
実際に最後までいかれてたら・・・。
ううっ、寒気する。
黒を強引に引き剥がして青は、私たちの頭上にふわんとひとっ飛びして距離を詰め、
いっきにアサミちゃんの鼻先にま近づいて止まった。
「そろそろイチャつくのやめねーれすかアサミちゃん」
その一言にアサミちゃんがはっと意識を取り戻す。
そして、自分の目の前にいる青をまじまじと見つめると、続けてアサミちゃんに
馬乗りになられている私を見て抑揚のない声で言った。
「別にイチャついてないよ」
「そうは見えないのれすが」
「ノンちゃん何しに来たの?」
「相変わらずスルーするのが下手くそれすね。ま、いいれす。今日は遊びにきたから
その話しはノノの胃の中に放り込んでおくれす」
「ありがとう。なんか頭がぼーっとしちゃって」
- 84 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時14分48秒
夢見心地な表情で頭を押さえるアサミちゃん。
質問の先が私にも向けられる。
「私なんでまこちゃんの上に乗っかってるんだろう。まこちゃん知ってる?」
「え」
答えを求めてるアサミちゃんの目。澄んだ黒い瞳。
アサミちゃんは本気で知らないの?。
私はどう答えるべきだろう。
本当のことは言ってはいけない。赤信号が点滅する。
言ってしまったらアサミちゃんが今度こそアサミちゃんじゃなくなる予感がするから。
だから私は「アサミちゃんてば寝ぼけていきなり抱きついてきたんだよ」と誤魔化し笑いをした。
笑った声は誰が聞いても乾いた響きを伴っているように思えた。
アサミちゃんは何も聞き返しはしなかった。
・・・さて、気分を変えてさくさくいっちゃいましょう。
「あのさ、アサミちゃん、この・・・人はどなた?」
この人と言って指した先にはもちろん青。
途中アサミちゃんに気を取られて危うくそれこそスルーしそうなとこだった。
- 85 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時15分53秒
「そういえば、ノノの自己紹介はまだだったれすね」
そう言って青は何やらぶつぶつと呪文らしきものを唱えた。
ぼんっとゆうベタな効果音の演出と白い煙が部屋を被う。
「・・・重い」
アサミちゃんの苦しそうな声。
「あちゃー、ごめんなのれす」
割られた窓から煙はまたたくまに空へと駆け出し、視界はすぐに良好。
アサミちゃんの膝の上には、今の今までそこにいなかった筈の女の子の姿があった。
女の子はアサミちゃんをお尻で押しつぶしながら照れくさそうに笑っている。
その背中にはお約束通りに羽が生えていた。
「アサミちゃんの友達のツイノノミです。よろしくー」
口から覗く八重歯が大きくて特徴的だ。
「えっと、こちらこそよろしく。ツイさん」
「苗字だとくすぐったいのれ、ノノのことはノノでもノンちゃんでも呼んでいいれすよ」
「じゃあ、ノノさんで」
「てへへ、人間のお友達ゲッツれす」
本当に嬉しそうにニコニコと私を見る。
アサミちゃんやチャーミーさんとは別の意味で可愛い。
母性本能をくすぐられるタイプって感じ。
- 86 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時17分00秒
「仲良くなったところで、みんなでお菓子でも食うのれす」
手に提げたコンビニの袋を持ち上げる。
「あのね、今日はね、カボチャプリンとカボチャパイ買ってきたんだー」
「わぁ、これ見たことないやつだ。ありがとう。ノンちゃん大好き」
目をきらきらとさせるアサミちゃん。
なんだよう、アサミちゃんて誰にでも「大好き」って言うんじゃん。
大好きの大安売りじゃん。
「・・・アサミちゃんカボチャ好きなの?」
「うん、ちょー大好き」
ほら、また大好きって。
「まこちゃんも食べる?はい、あーん」
「いいよ」
「なんでー」
「恥いし」
「そう。じゃ、ノンちゃん、あーんして」
スプーンはノノさんに向かう。
- 87 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時17分50秒
・・・させるか。
「あー!やっぱ食べる、食べる」
大口開けたノノさんを退かして見事にカボチャプリンをゲッツ。
実は私もカボチャ好きなんだ。
ところで、満足顔でプリンを飲み込んだ私をノノさんが意味ありげな目で見るのは
なんでだろ。
「ふうん、まこちゃんはアサミちゃんにねー。なるほろ、なるほろ」
###
まったりとした雰囲気だった。
ぶっ壊された窓のことなんて気にならないくらい。
しかし、そんな和やかな空気を一蹴する負のオーラを部屋の隅に発見する。
天井の角の黒い影。
マックロクロスケを彷彿とさせるその塊は、よくよく目を凝らして見ると、
羽が生えていて。
やべ、黒コウモリ、君のことすっかり忘れていたよ。
- 88 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時19分30秒
「ねっ、あの黒いコウモリも友達?」
「ああ、あいつれすか?ちげー・・・と言いたいとこれすが」
ため息をついてノノさんは「タカハシしゃん」と、天井にぶらさがっている
黒いコウモリに声をかけた。
「元に戻ってまこちゃんにご挨拶するのれす」
タカハシしゃんと呼ばれた黒はゆっくりと羽をはばたかせて床に降りると、
ノノさんがしたように呪文を唱えた。
ポンと弾けた音がして、これまたやはりノノさんと同じように女の子の形体に変身。
「タカハシラブリーと申しますー・・・」
黒いワンピースに黒い髪、黒い羽。
憂いが似合うその顔は、正統派美少女と言っても過言ではない。
「趣味は読書と宝塚を観ること。好きなものは、蘭丸さまやよー」
いきなり告白。
ちらりと視線を送られ、お菓子の詰まったノノさんの頬に怒りマークが浮き上がる。
- 89 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時21分59秒
「アホかボケナス。恥じらいってもんがねーのか」
「ああ、ないやよ。おまけにアホやしボケナスや。それが何か?」
「てめー、逆ギレするつもりれすか。いい度胸れす。かかってこいや」
そう言ってノノさんは平らな胸を叩いた。
「ほほほほんとにええんですかー!」
ラブリーさんは、もともと驚いたように見開かれている目をおっきくさせて
ノノさんに迫る。
その鬼気迫った勢いにノノさんの体がやや引く。
もったいない。
ラブリーさんみたいな美少女に好かれて嬉しくないなんて、ノノさん贅沢ですぞ。
第三者だから言えること。これから発揮されるラブリーさんの変態っぷりを
私は知ることとなり、前言撤回することとなる。
「お、おう!もちろん、かまわねーのれす。ノノがてめーに負けるわけねー」
「あとからなしは、いくら愛しの蘭丸さまとは言え許しませんよー」
「それはこっちの台詞れす」
「ほれやったら、遠慮なくいきますねー。絡んじゃいますよー。
あんなことしたり、こんなことしちゃうやよー」
- 90 名前:へなちょこ小悪魔 投稿日:2003年08月11日(月)18時23分31秒
憂い、そして驚きから嬉々とした笑みに変わるラブリーさんの表情。
両手の指をわきわきと動かしてノノさんににじり寄ってく。
さっきまでの勢いは何処へ。寄られた分だけノノさんは後退。
「ハァハァ・・・」
悦の入ったラブリーさんの息遣い。
こいつ勝負する気ないな。ノノさんに触りたいだけだなと気づくのに0.01秒。
ノノさんがラブリーさんの真の目的を知って激怒するまで五分。
ベッドに追い込まれたノノさんは、おもいきりラブリーさんに頭突きをかました。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月11日(月)18時29分09秒
( ´D`)人(’ー’川
- 92 名前:u-dai 投稿日:2003年08月11日(月)19時50分50秒
- 最近更新が早いですね〜更新できなかったブランクを
取り戻しまくりですね、胸が躍りますよ!
青いほうがノノさんでしたか・・全く逆だと思ってました。
てか口悪すぎ・・でも面白いです。
タカハシさんは本当に変(ryですね
次も待ってます。
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月01日(月)19時12分42秒
- おぉ!更新されてる!
待っていてよかった…
これからも待ってますんで、作者さんがんばってくらはい。
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)02時43分04秒
- 待ってるよー
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/16(火) 02:30
- 変態川’ー’川さんにほんのり期待しながら保全
- 96 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/22(月) 05:13
- もう駄目だな!もったいないね。
- 97 名前:読者その1 投稿日:2003/09/22(月) 09:16
- 死亡確定にしても、遺書くらい残してもいいよね。
別に恨まないし。ただ、いつまでも期待しちゃうから。
- 98 名前:ななし 投稿日:2003/10/08(水) 00:02
- 待ってるで!元気になったら帰ってきてや!
毎日チェックしてるからね。
諦めたら、そこで試合終了やで。
- 99 名前:おじちゃん 投稿日:2003/10/16(木) 14:56
- おじちゃんも待つてるからね!
はよ元気になってや!
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/23(木) 16:46
- へなちょこなのは作者。
これ定説。
- 101 名前:名無し君 投稿日:2003/11/30(日) 13:12
- 書いてくれ〜(泣)
- 102 名前:読者その1 投稿日:2003/12/01(月) 00:57
- びっくりするからageんなや。Let lt be・・・
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/04(日) 22:33
- ageんなよ!すごい喜んじゃっただろが!w
もう待つことを辞めようと思いつつ期待しちまう…
- 104 名前:名無し 投稿日:2004/01/18(日) 01:56
- 4ヶ月経ってるんですけど。
- 105 名前:読者その1 投稿日:2004/01/18(日) 15:14
- >104
知ってる。
お願いだからageるのは作者の更新だけにして・・・
ホント心臓に悪いから・・
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