FIVE!
- 1 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月25日(金)22時12分55秒
- 容量がいっぱいになってしまったので引っ越してきました。
ひたすらマイナーCPですがよろしくお願いします。
前スレ
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/yellow/1044003594/
- 2 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時15分47秒
- ***
「おはよう!見てこれ!!」
朝。
教室に入るなりあさ美の目の前に麻琴は携帯画面を押し付ける。
「まこっちゃん!近すぎて全然見えないよ!」
「え?あぁ、これ!これ見て!」
麻琴はなおも興奮しながらあさ美に急かすように見せる。
なんだろう、と思って覗き込むとそこには
【高橋 愛 090−××××ー△△○○】
と書かれていた。
「むっふっふ。携帯番号ゲッツ!!」
某お笑いタレントの真似をして満面の笑み。
「おぉ〜、良かったねぇ!」
浮かれて鼻歌を歌う麻琴にあさ美は笑顔で声を掛けた。
- 3 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時16分19秒
- 「もうね、好きすぎる。…なんていうか、一目ぼれってやつ?
あぁ〜!!どうしよう!!もうね、ビビビっときたんだよ!
目が合った瞬間この人しかいない!って感じだよ!!」
興奮が冷めない麻琴を笑いながら宥め、席に着いた。
チャイムが鳴り、なつみが入ってくる。
出席確認の時も、授業中も、休み時間も麻琴はずっと携帯を見ながらニヤニヤしていた。
そして時に小さな声で雄叫びも上げていた。
その様子にあさ美は少し怯えた。
そして放課後になるまでずっとそんな調子だった。
- 4 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時16分56秒
- 『1年2組、小川麻琴さん、紺野あさ美さん。生徒会室まで来てください』
帰ろうとする2人の耳に放送が聞こえた。ひとみの声である。
「なんだよ〜、今日も呼び出し?」
「なんだろうね?…じゃあいこっか、まこっちゃん」
嫌そうな顔をした割には携帯番号ゲッツしたおかげか麻琴の機嫌はそう悪くはなっていなかった。
生徒会室に行く時もずっと携帯を持ってニヤニヤしていた。
そろそろ電池が切れるんじゃないだろうか、とあさ美は思った。
「失礼しまーす」
生徒会室の扉を開けるとそこにはひとみが立っていた。
「おお〜、待っていたよお2人さん。早速お仕事なんだけど、
今度生徒総会があるので冊子を作ってもらいまーす」
「冊子?」
「そう。この学園の決まりとか、あと委員会、部活の紹介とかが書かれてる冊子。
コピーしてホチキスで止めて完成。それを作ってくださいね」
ニコニコと笑いながらホチキスを差し出し、コピー機を指差すひとみ。
- 5 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時17分32秒
- 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!2人でやるんですか!?」
「うん」
「うん、って!」
「だってうちこれから部活だし、高橋も部活だし松浦は逃げたし梨華ちゃんも帰ったし」
「吉澤さんて部活に入っ…」
「愛ちゃんって何部なんですか!?」
あさ美の声は麻琴の声に遮られた。
「高橋は…確か吹奏楽だったかな」
「吹奏楽…。ぴったりだ…」
麻琴はうっとりしている。
もしかしたら吹奏楽部に入る!と言いかねない雰囲気。
「あ、あの、藤本さんは?」
「ミキティ?ミキティはケメコにつかまって社会科資料室の片付け。
だから残ってるのは君たちしかいない!というわけで頑張って!」
それだけ言い残すと逃げるようにひとみは出て行った。
- 6 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時18分11秒
- 「まじかよぉ…」
「……」
2人の目の前にあるのは大量の紙。
「……はじめよっか」
あさ美が声を掛けると麻琴も深いため息をついて作業を始めた。
2人とも真面目な為、作業中は一言も会話を発しず黙々と続けた。
ひたすら紙の擦れる音とコピー機の音、ホチキスの音が鳴り続ける。
そんな時、急に生徒会室の扉が開いた。
- 7 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時18分46秒
- 「…あれ?なにしてんの?2人とも」
「…!愛ちゃん!!」
顔を出したのは愛だった。
「聞いてよ、愛ちゃん!吉澤さんてばこんな大変な仕事を押し付けて出て行ったんだよー!」
出来上がった冊子をほら!ほら!と愛に見せる。
それを見た愛は苦笑いを浮かべた。
「ごめんね、あたしも手伝わなくて…」
「ううん!愛ちゃんはいいの!部活お疲れ様!もう終わったの?」
「うん。…手伝いたい所なんやけど今日早く帰らんといけないの。ゴメンね…。
ここに教科書置きっぱなしにしてたから取りに来ただけなの」
「えー…。…そうなんだー…」
がっかりした表情の麻琴と申し訳なさそうな表情の愛に挟まれたあさ美。
目の前に置かれた紙の束はあと少しでなくなりそう。
- 8 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時19分56秒
- 「まこっちゃん、帰ってもいいよ?あとはやっておくから」
「…え!……ほんとにいいの?」
「うん。あともう少しだし…これが終わったら電車の時間もちょうど良さそうだから」
「あ、ありがとう!あさ美ちゃん!!今度なんかおごる!!」
麻琴は立ち上がりあさ美の手を握った。
立ち上がった瞬間椅子は凄い音を鳴らして倒れた。
「じゃあ…一緒に帰ろう!愛ちゃん!」
「…え、いいの?あさ美ちゃん?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、また明日!あさ美ちゃん!」
心配そうな顔をしてる愛の手を麻琴は引っ張って出て行った。
- 9 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時20分44秒
- しーん、と静まり返る部屋。
「よし、あと少し。頑張りますか!」
自分自身を奮い立たせ、腕まくりをした。
先ほどからしていた音も一人だと静かに聞こえた。
だが、時計の音がうるさい。
顔を上げて時計を見ると針は6時10分を指していた。
腕を挙げて伸びをすると肩の間接がぽきぽきと鳴った。
伸びたまま窓の外を見ると薄暗くなっていた。
「…頑張らないと暗くなっちゃう」
また顔をテーブルの上に戻し、ホチキスを手に取った時廊下から足音が聞こえてきた。
部活動の生徒はいるがみんな体育館や外。
薄暗くなってる今の時刻。
一人ぼっちで生徒会室にいる。
足音がだんだんこの部屋に近づいてくる。
あさ美はなんだか怖くなって体が固まった。
- 10 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時21分29秒
- 足音が部屋の扉の前で止まる。
目を離さず扉の方をじっと見ると凄い勢いで扉が開き入ってきたのは大きな荷物だった。
「きゃあー!!」
それに驚いたあさ美は叫び声を挙げた。
「な、何!?誰?!」
両手に荷物を持っていた人物は思いっきり荷物を地面に落とした。
もちろんそれは自分の足の上にも。
「ぅあ!痛い」
「……え…?」
「……え…紺野さん…?」
「…藤本さん!!」
「…びっくりした。電気ついてたから誰かいると思ったけど…紺野さん何してんの?」
「ふ、藤本さんこそどうしたんですかその荷物!」
「あぁ、これ?…って落としちゃったよ。大丈夫かな?」
よいしょ、と声に出し荷物を部屋の端に置いた。
- 11 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時22分14秒
- 「保田先生の片付けの手伝いしてたんだけど要らないものが多すぎて置き場所がないから
ここにおいてくれ、って言われてね。持ってきたんだけど、で紺野さんは?」
「あ、あたしはこれを作ってくれって吉澤さんに…」
あさ美は冊子を美貴に見せた。
「あぁ、総会用の…って1人でやらされてんの?小川さんとか亜弥ちゃんとか愛ちゃんは?」
「えっと…まこっちゃ…、小川さんは途中までいたんですけど…用があるとかで帰りました。
松浦さんも高橋さんも帰ったみたいです。あ、あと石川さんも…」
あさ美が『石川』と言う言葉を出すと美貴の表情が一瞬強張った。
「…そうなんだ。災難だね、紺野さん」
そう言いながら美貴はあさ美の隣の椅子に座って手を出した。
「…?」
「ん?貸して?ホチキス。美貴も手伝うから」
「え、いいですよ!後もう少しですから!」
「早く終わらないと真っ暗になっちゃうよ?」
- 12 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時22分50秒
- ホラ、と美貴が指差したのは外。
明らかにさっきより暗くなっている。
あさ美はポカンと口を開けた後、申し訳なさそうに呟いた。
「…すいません」
「あはは、何で謝るの?美貴だって生徒会役員なんだから当たり前でしょ?」
美貴は紙をそろえてホチキスで止めた。
そしてあさ美の思考能力も止まっていた。
美貴が笑った。作り笑顔なんかではなく多分本当の笑顔。
そして自分だけに向けられた笑顔。
あさ美は必死に心の中の動揺を隠すように冊子作りに専念した。
そんなあさ美の心中を全く知らず美貴は黙々と作っている。
- 13 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時23分28秒
- しかし。
「…紺野さん?それ逆さまだよ?」
「え、あぁ!すみません」
動揺を隠すように専念。
「……紺野さん、一枚閉じ忘れてるよ?」
「え、ああぁ!すみません!!」
動揺しないよう、落ち着かせようとする度にあさ美の行動はおかしくなっていく。
ちょっと目線を隣に向ければ真剣な表情で冊子を作る美貴の姿が。
…あ、まつげが長い。そしてかっこよくてかわいい。
ぽーっと見惚れてたあさ美は間違えて指先にホチキスを挟んだ。
「痛っ」
「え、どうした…うぁ、血が出てる。ちょっと待って絆創膏持ってるからさ」
「す、すみません…」
なんとも美貴が手伝ってから全然はかどらない。
そして怪我なんかする始末。あさ美は自分が情けなくなった。
- 14 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時25分51秒
- 自己嫌悪に陥ってる最中、美貴は鞄の中の絆創膏を探し中。
「あ、あった。はい」
「ありがとうございます…」
手渡された絆創膏を見るとクールな美貴からは想像できないキティちゃんの絆創膏。
「ん?貼らないの?」
「…いえ、…可愛い絆創膏ですね…」
「え、あ、うん。好きなんだ、キティちゃん。それをよっすぃーに言ったら
『ミキティ』なんてあだ名付けられてね…」
「可愛いあだ名ですよ?」
あさ美が笑いながら言うと美貴は照れくさそうにそう?と呟いた。
美貴から貰った絆創膏を指に貼ってまた作業開始。
あさ美の能率は悪くなったが、美貴の手際よい作業で思ったよりも早く片付いた。
- 15 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時26分30秒
- 時刻は6時半。電車の時間まであと15分くらい。
「紺野さんは電車通?チャリ通?歩き?」
「あ、電車です」
「そっか。じゃあ駅まで送る」
荷物を持ち立ち上がる美貴にあさ美は両手を振って断った。
「い、いいですよ!」
「よくないよ。結構暗いし、一人で歩くのは危ないよ」
美貴の言葉を聞いた時、ふと思い出した。
駅から学校へ行く道に『痴漢に注意!』という看板が立てかけられてる事。
まだ入学したてで分からないがあんな看板が立ってるんだから痴漢が近くに潜んでいるのだろう。
「…紺野さん?鍵閉めるよ?」
「え、あ」
美貴の体はすでに半分部屋から出ていた。
右手は電気のスイッチを触っている。
あさ美は鞄を手に取ると急いで部屋から出た。
- 16 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時27分17秒
- 玄関まで行く途中、美貴はいつものように後輩から声を掛けられる。
しかしいつもはいないはずのあさ美の存在を見つけるや否や怪訝な表情を浮かべる。
その事に気がついたあさ美は目立たないように少し離れて歩いた。
靴を変えた後、美貴の下駄箱の方へ行くと足元に手紙を散らばした美貴が立っていた。
あさ美が駆け寄り拾い集めてるとそれが全て美貴へのラブレターだと気がつく。
「す、凄いですね、全部ラブレターだぁ…」
「ね。美貴のどこがいいんだか…」
「藤本さんはかっこかわいいですよ!!」
「かっこかわいい?」
「あ、かっこよくて…かわいいです…」
かっこいいとかかわいいとか結構言われるが、こんな至近距離、目の前で言われると
美貴もさすがに照れてしまうのだが。
「あ、ありがと」
- 17 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時28分01秒
- 照れ隠しにすっと足を進めると後ろからあさ美はついてきた。
駅までは歩いて10分くらい。
このまま行けばぎりぎりではあるがあさ美の電車の時間には間に合う。
そんな事を思ってると隣にいたあさ美が口を開く。
「藤本さんは家近いんですか?」
「うーん…近いといえば近いかな。徒歩通学だしね」
ホントは自転車もあったんだけど。
「そうなんですかぁ」
そして会話が止まった。
まだ知り合って間もない3年と1年。
お互いまだ相手の事を知らない。
ひとみのように誰にでも話し掛けられる性格だったら。
麻琴のように年上にも物怖じしない性格だったら。
- 18 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時28分41秒
- 美貴も昔だったらあれこれと話題を見つけて話をしたかもしれない。
しかし今の美貴にはそこまでしてあげる余裕がなかった。
この空気を何とかするべく、あさ美は思いつく話題を一生懸命考えた。
「…あー、えっと。凄いですね!さっきの手紙。5通くらいありましたよ?」
「あー…。でもよっすぃーはもっと凄いよ。下駄箱空けた瞬間バッサバッサ落ちてくるからね。
最近は自分の下駄箱使ってないみたいだし。
頻繁に中履きが盗まれるから教員用の下駄箱借りてるって言ってた」
「そうなんですかぁ」
だから昨日自分とは逆方向に歩いていったんだ、と納得した。
「でもあれですよね…藤本さん、石川さんて言う恋人がいるのに手紙貰っても困りますよね」
あさ美の言葉に美貴は立ち止まった。
- 19 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月25日(金)22時29分14秒
- 「藤本さん…?」
「…梨華ちゃんは恋人じゃないよ。幼馴染…」
「え、そうなんですか?…でも石川さん……」
「…あ、紺野さん!電車もう来てる!急がないと」
目の前は駅で、ホームにはあさ美の乗る電車がすでに止まっていた。
これを逃したら数十分待たなくてはいけない。
「あ、すみません!あたし行きます!」
あさ美は少し走るとくるっと振り向き、美貴にお辞儀して走って行った。
その姿を美貴は手を振りながら見送り、来た道をまた戻った。
自分の家と駅は全くの逆方向。
家に着くのは何時になるのやら。
「…自転車、買うかぁ……」
道端の石を蹴飛ばして、切実にそう思った。
- 20 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月25日(金)22時34分31秒
- 前スレより
510>名無しどくしゃさま
あやごまいいですよ!
でも書いた事ないので性格が違いそうです(w
2ゲットは(w
511>ぷりん様
こんな奥底にあったスレを見つけてくださってどうもです(w
これからもよろしくお願いします。
512>名無しさん様
ohiありがとうございます(w
美貴様はこれから幸せに!…多分(w
- 21 名前:つみ 投稿日:2003年07月25日(金)23時24分57秒
- この二人は見ていて新鮮ですね。
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月26日(土)08時38分42秒
- わーい♪更新キタ!
新スレおめでとうございます。
これからも応援しているので頑張って下さい
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月26日(土)23時31分59秒
- ごーしゅさん、新スレおめでとうございます
某所の1周年企画の頃から注目してたんですごく楽しみ!
頑張ってください!
- 24 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時12分15秒
- ***
「後藤先輩!」
「…んぁ?」
振り向いた瞬間、カシャッと音が鳴る。
「ありがとーございましたぁー!!!」
女の子数名はパタパタと音を鳴らして走っていった。
右手にはカメラ付き携帯。
どうやら自分はもてるらしい。
高校に入って気がついた事。
中学の頃はひとみの存在が大きくてあまり前に出る方じゃない真希はいつも陰に隠れていた。
別にそれが嫌だったわけじゃなくそれが当たり前で、居心地が良かった。
高校になって少し変わった。
高校の友達はあんまり目立つタイプの子じゃなくて、どちらかというと自分と同じ感じの子。
そんな中に混ざった時、端整な顔立ちをした真希は否応なく目立ってしまう。
- 25 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時12分59秒
- 「………」
右頬をポリポリと掻きながら、こんなとこ亜弥に見られたらどうなるだろう、とかのん気に考える。
高校に入ってから何回か告白された事はあった。
もちろん、自分には恋人がいるから、と断っているが人気は落ちることなく上り続けている。
好き、と言われれば嫌な気分になる奴はいない。
少なからず自分も嬉しいが、でも。
でも自分には亜弥以外ありえないから。
♪♪♪〜
突然の着メロに体をびくつかせて慌てて携帯を握る。
画面を見ると『亜弥ちゃん』の文字。
あまりにタイミングが良すぎてどっかで見てるんじゃないかとヒヤヒヤする。
- 26 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時13分39秒
- 「…も、もしもし」
『ごっちん?今休み時間?』
「うん、休み時間」
『…同じだぁ〜…』
受話器の向こうの亜弥はなんだか嬉しそう。
自分と同じだった事が嬉しかったらしい。
こんな小さな出来事に喜ぶ亜弥がかわいい。
実は自分がこんなに告白されてる事、亜弥には伝えていない。
自分は何回か告白されてるんだよ、とか言えるわけがないし、
何より亜弥を心配させたくなかった。
それは全て断ってるから自分は悪い事してないのに罪悪感に包まれてしまう。
それを打ち消すような明るい声が耳元に響く。
- 27 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時14分24秒
- 『あの、今日、会えません?』
凄く可愛い携帯カバーを買ったの、とはしゃいでいる。
どうやらおそろいの色違いを買ったからプレゼントしたいらしい。
「うん、いいよ。終わったら迎えに行く」
『ほんとですかぁ〜!やったぁ!』
声だけなのに嬉しさが全身に伝わってくる。
好かれてるのは分かってるし自分だって亜弥の事が好きだ。
けれどそれを言葉にするのは難しくて。
多分「好きだよ」とか「愛してる」とか言った方が良いんだろうけど言えない。
何故?
理由は1つ。照れるからだよ。
亜弥の仕草はいちいち可愛くてツボをついてくる。
そのたびに胸はドキドキと音を鳴らすのだが性分ゆえ顔や言葉に出す事が出来ない。
- 28 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時15分04秒
- 電話を切り画面を見る。
実は密かに亜弥とのツーショット写真を待ち受け画面にしている。
でもこれは誰にも内緒で亜弥にも知られてない。
亜弥が知ったらどんな顔をするだろうか?
喜ぶだろうか?…引かれるだろうか。
「……好きだよ…」
画面の亜弥に向かって練習。
その瞬間また斜め前からカシャッと音が鳴り逃げていく足音。
真希は大きなため息をついた。
「…いいかげん、うざったいんだけど」
自分の写真が犯罪に使われないように祈るだけだった。
- 29 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時15分36秒
- ────場所は変わって亜弥と愛。
「えっへへぇ〜〜」
「ん?電話してたの?」
「うん!今日もごっちんとデート〜」
「あいかわらず仲良いね〜。羨ましい」
愛は本を読み、それから目を離さずに喋る。
「愛ちゃん、何の本読んでんのさ?…?絵の本?絵とか興味あるの?」
「……あたしは、あんまり良くわかんないんだけどさ…」
「ふーん?」
亜弥は愛の隣の椅子に座り、携帯をいじっている。
愛は頬杖をつきながらぱらぱらとページをめくる。
- 30 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時16分37秒
- 「ごっちんはさー、あたしが好きって言っても多分好きって言ってくれないんだろうなぁ」
「…ふーん」
「あたしはこぉんなにごっちんのこと愛してるのに!!」
「…じゃあ、回りくどく言わないでストレートに言えばいいじゃん」
「…それが言えたら苦労しないんですー!!」
ややこしいなぁ、と愛はまたページをめくる。
次のページに手をかけた時思い出したように亜弥が話し出す。
「そういえばさ、愛ちゃんて恋人いないんだよね?好きな人とかいないの?」
「…何?急に…」
驚いた顔をして亜弥の顔を見る。
- 31 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時17分30秒
- 「いや、あんまりそーゆう話聞かないな、と思って」
愛はパタンと本を閉じて机の中に入れた。
「別にい……」
「いないわけないよね?」
顔を近づけてギロっと睨む亜弥に困りながらおどおどと喋りだす。
「……好きな人かどうかは分からんけど…気になる人はいる…」
「え!?うそ!!誰?!まこっちゃん!?」
「まこっちゃん…、って麻琴の事?」
「すでに呼び捨て!!?知らなかった!!もうそういう仲だったのね…。
親友のあたしの知らない間に…」
亜弥は泣き真似をしながらよろけるフリをする。
- 32 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時18分12秒
- 「一緒に帰った時そう呼んでって言われただけやし…。
それに…麻琴の事やないよ…」
「え!!まこっちゃんもう振られたんだ!!…可愛そうに……」
「振られた、って…」
「だってまこっちゃん、愛ちゃんの事好きでしょ、実際!」
ぴっと目の前に亜弥の人差し指が突き出る。
「そ、そうなの…?」
「そうなの?って…」
好かれてる事など全く気がついてなかった愛に亜弥はため息を漏らす。
- 33 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時18分47秒
- 「鈍感だなァ…。あんなにラヴラヴビームを送ってるのにさー。
報われないなァ、まこっちゃんも」
「……」
「まぁこの際まこっちゃんの事はいいや。で、気になる人は誰?」
「…教えない」
「はァ?!ここまで引っ張っておいてそりゃないでしょ?愛ちゃんよぉ」
「…だって亜弥ちゃんの知らない人だもん…。
それに好きな人じゃないよ?ただ気になるだけで…」
「それを詳しく教えて!」
愛に詰め寄った時、校内放送が鳴る。
- 34 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時20分11秒
- 『2年3組、高橋愛さん、音楽室まで来てください』
「あ、行かなきゃ!ゴメンね!亜弥ちゃん」
愛は天の助け、とばかりにいそいそと教室を出て行った。
「……あやしい」
腕を組み首を傾げる亜弥だった。
愛がいなくなって一人ぼっちになった亜弥はさっき愛がしまった本を勝手に取り出す。
結構使い込んであるような絵の本。
中をぱらぱらとめくると綺麗な風景画がいくつか載っていた。
- 35 名前:FIVE! 投稿日:2003年07月28日(月)21時22分02秒
- 「…興味ないのになんで読んでんだろう?」
亜弥も全然興味はないが愛が何故読んでるのかには興味がある。
本を閉じ、何気なく裏表紙を見てみると、
本の下の方に少し消えかかりそうな文字が書いてあった。
目を細めてじーっと見る。
「…KAORI IIDA…?いいだかおり…。
……なるほど。いいだかおりさん、ね…。
ふーん…?」
亜弥はニヤリと笑い、愛が出て行った扉を見つめた。
- 36 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月28日(月)21時33分24秒
- 卒業はショックですが、これからも変わらず小説には出てきます。
安倍さん、お疲れ様!これからも頑張ってね!
さて、登場人物が増えそうな予感。まだ出番はなさそうですが。
自分で自分の首を絞めてます(汗
21>つみ様
新鮮ですねー。でも結構TVでの絡みがあるので嬉しいです。
みきこん見た事ないので「そんなら自分が書いてやる!」と思い書き始めました。
自己満足です(w
22>名無しさん様
引き続きありがとうございます!
読みにくかったりする点もあるかと思います。
精進しますのでこれからもよろしくお願いします!
23>名無し読者様
>某所の1周年企画の頃から注目してたんですごく楽しみ!
…びびりました(w
うわーうわーありがとうございます!(w
マジ嬉しいです!期待に副えるように頑張ります!
- 37 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月28日(月)21時36分25秒
- _
- 38 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年07月28日(月)21時36分55秒
- _
- 39 名前:くり 投稿日:2003年07月29日(火)14時29分32秒
- 更新おつかれさまです!
自分『ごまたか』大好きなんですけど
高橋さんは別の人が好きなんですかねぇ。
これからの展開がとても楽しみです!
次の更新もがんばってください!応援してます!
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月29日(火)21時13分34秒
- 期待してます。ごーしゅさん、頑張って!
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月30日(水)00時47分41秒
- マイナーで高紺好きなんですが。
藤紺も好きだったりするのでかなり続きが気になります(w
>>40
わざわざageないでいるんだからsageましょう…
とりあえずochiやっておきますね
- 42 名前:雷斗 投稿日:2003年07月31日(木)17時08分31秒
- 初めまして。
一推しこんこん―――の雷斗です。w
この小説かなり好きです。
>>41s と同じで高紺好きなんですが・・・『あした』の方の更新も待ってます。
がんがってください。
- 43 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年08月01日(金)20時42分46秒
- 更新お疲れ様です。
高橋の想い人(?)とは……
あやごまもさいっこー萌えなんですが、みきこんが気になる今日この頃です。
続きに期待して今日はもう寝ます(ぇ
- 44 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時08分49秒
- ***
「…で、…紺野さーん?聞いてますかー?」
「ふぇ?」
はっと気がつくとみんながこちらを注目。
入学してから数日経ったある日の出来事。
いつものように生徒会室に集まっては全然学園の事を話さない役員メンバー。
「すごい今交信してたね、紺野さん」
「そうなんですよ、いつもぽーっとしてるんですよね」
解説者のように身振り手振りを入れながら愛に教える麻琴。
みんなに笑われてるのに気がつき顔が熱くなった。
- 45 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時10分09秒
- 「じゃあもう一回言うね。生徒会役員のみの恒例行事!バーベキュー大会を開催しまっす!
日時や場所なんかも手配してあるんで〜あとはみんなから会費をいただこうかとね、思いまして」
「バーベキュー…」
「そ・れ・で!生徒だけでやるのも危ないでしょ?だから先生も呼びます」
「えー、先生がいたらつまんないじゃないですかー」
批判の声を上げる麻琴をひとみは無視して続ける。
「まぁ呼ぶのは安倍先生だけなんだけど…」
「安倍先生!?ってうちの担任じゃないですか!担任の先生が来るのか〜…」
「…さっきからいちいちうるせぇ!文句あるんなら小川は来んな!!」
「なんでですか!行きますよ!あたしだって!」
「はーい!はーーーーい!!!」
2人の喧嘩の中を割って亜弥は手を挙げる。
- 46 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時10分54秒
- 「なんだよ、うるさいな」
「あのー?安倍先生も来るんだったらごっちんも誘いたいんですけどー」
「ごっちんはダメ」
「なんでですかぁー!」
「だってうちの生徒じゃないじゃんよ」
「安倍先生だって生徒じゃないじゃん!それに吉澤さんがただ安倍先生といたいだけでしょう!!?」
「え?!もしかして吉澤さんの恋人って安倍先生なんですか!?」
「うるせー!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ3人と黙ってる3人。
梨華は騒ぎなど気にせず携帯をいじっている。
あさ美と愛は苦笑いを浮かべながらこの状況を見ている。
この場にいない人物、美貴は用があるので少し遅れる、との事。
誰も場をまとめないのでみんなやりたい放題である。
- 47 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時11分40秒
- 「騒がしいですね…」
「…そーやねぇ。元々吉澤さんと亜弥ちゃんはあんな調子やったけどそれに一人増えたからね」
「…まこっちゃんですか…」
「はは…。
……ねぇ?麻琴ってどんな子…?」
「へ?まこっちゃんですか?」
「いや、なんかこう…自分で言うのもなんやけどあたし、麻琴に好かれてるみたいで…
全然気がつかなかったんだけどね、亜弥ちゃんにそう言われて、なんとなく…」
「…あぁ」
というかいつの間に呼び捨ての仲になったんですか、とあさ美は心の中で突っ込みを入れた。
亜弥ちゃんはするどいなぁ、と思ったが、あれだけ言われればみんな気がつくだろう。
言われるまで気がついてなかった愛はかなりの鈍感だ。
「あたしあんなに一直線に自分の気持ち伝えられた事ないからちょっとわかんないんだよね…」
「…まこっちゃんは本能の赴くまま動きますから…あたしもよくわかんないです…」
「そっかぁ…」
あさ美と愛が麻琴論議を繰り広げていると騒ぎの火花がこっちにまで飛んできた。
- 48 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時13分22秒
- 「そっちでマッタリしない!とにかく!バーベキューの道具の事なんだけど…!!」
「そんなの後でいいですよ!それより!安倍先生と付き合ってるんでしょう!?
教えてくださいよー!」
「それよりごっちんはー!!?」
「あー!もう!なんでもいいよ!そうだよ!なっちと付き合ってるよ!
もういいよ!ごっちんでもなんでも連れて来い!」
めんどくさくなったのかひとみは付き合ってる事を暴露し、真希が来ることも許可した。
亜弥と麻琴はおのおの違う理由で歓喜の声を上げた。
「…うるさいなー。集中できないじゃない!用が終わったなら帰るね」
「あれー?石川さん、藤本さんの事待ってないんですか?」
「美貴ちゃんとはあとで会う約束してるからいいの!じゃあねー」
「…っ!」
部屋から出て行く梨華を追いかけようとひとみは立ち上がったが、
梨華が鋭く睨むとひとみはまた椅子へと腰をかけた。
- 49 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時14分07秒
- 「さっすがラブラブですね〜!あのお2人は…。あたしも早く愛ちゃんと…デッヘッへ」
麻琴は後ろ頭を掻きながら嬉しそうに呟く。
というか本人にも聞こえてます、まこっちゃん。
終始苦笑いの愛とあさ美。
それに気がついてにひひ、と笑みをこぼす亜弥と何も気がついてない麻琴。
「それにしてもみきたん遅いねー」
「ていうか『みきたん』ってあだ名どうなんだよ」
「『ミキティ』よりいいと思いますけど?」
「あぁ?」
またくだらない事で2人に火がつきそうな予感。
そんな時、扉が開く。
- 50 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時14分45秒
- 「…うるさいよ。遠くからでも聞こえたよ、特によっすぃーと亜弥ちゃん」
部屋に梨華がいないとわかった美貴はふっと笑いあさ美の方を見て、ね?と問いかけた。
いちいちそんな些細な事があさ美の心臓の速度を速める。
「みきたん、今日はうちに寄っていってくれるんでしょ?」
「え、今日?今日は…」
「亜弥ちゃん、さっき石川さんが言ってたじゃないっすか!
藤本さんはこれから石川さんとデートですよね?」
「…いや、うん…」
美貴が言葉を濁すとひとみが心配そうに声を掛けた。
「ミキテ…」
「そっかー。みきたん、ママのお気に入りだからなぁ〜。連れて来いってうるさいんだよぉ」
ひとみの声はいとも簡単にさえぎられてしまい、
それを知った美貴は苦笑いをしながらひとみに向かってコクコクとうなづいた。
「というかなんで2人はそんな仲良いんですか?」
麻琴が不思議そうに訊ねると美貴と亜弥は同時に口を開いた。
- 51 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時16分09秒
- 「従姉妹だから」
「従姉妹だもん」
「え!?従姉妹?!」
「あれ?言ってなかったっけぇ?みきたんとあたしは従姉妹だよ?」
「聞いてないですよ!そっか、従姉妹か〜。似てないですね〜」
「…ていうか亜弥ちゃん。あたしも初めて知ったんやけど…」
「え!?愛ちゃんに言ってなかったっけ?」
「愛ちゃんも知らなかったんだ!お揃いだね!!」
「え?あ、そうだね…」
意味がわからない所で喜ぶ麻琴。
それに押されてつい相槌を返す愛。
- 52 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時17分04秒
- 「で、うちの存在が消されてるわけだが」
「あ、吉澤さん、居たんですかぁ」
「…小川、てめぇは一番重たい鉄板持ちだゴルァ!肉体労働させるからな!
覚悟してろよ!」
「うわぁ、横暴だ、おーぼー!愛ちゃん助けてー」
「えぇぇ!?」
どさくさにまぎれて愛に抱きつく麻琴。
困惑しつつも麻琴を抱きしめ返す愛。
それを見てあさ美はいいなぁ、と思った。
あさ美もどこかずれていた。
- 53 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時17分38秒
- ちらっと横を見ると美貴は携帯を取り出し、メールを打っている。
それを見た麻琴が右手を挙げて声を出す。
「みんなの携帯番号知りたいっすー!愛ちゃんのだけは知ってるんだけどね、デッヘッへ」
「あー、あたしも知りたいかも。まこっちゃんと紺ちゃんの番号教えてー」
「…紺ちゃん?」
自分に指をさし、首を傾げるあさ美。
「そ、紺ちゃん。可愛いでしょ?」
「相変わらずあだ名のセンスはない、と」
「うるさいですよ、吉澤さん」
思いっきりひとみの足を踏んだ。
「ウワァーー!痛てぇー!」
亜弥は軽く舌を出し、何事もなかったように番号を教え始めた。
ひとみは半泣きだ。
それに心配しつつも、あさ美は愛の携帯番号も教えてもらった。
- 54 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時18分16秒
- 「吉澤さんは…」
「今日携帯家に忘れたんだよねぇ。だから明日で」
「自分の携帯番号知らないんですか?」
「知らないよ」
亜弥は麻琴にひそひそと耳打ちをする。
「なんだぁ?そこ、感じ悪いな」
「べっつに〜?なんでもないよね?まこっちゃん?」
「ですよね〜。亜弥ちゃん?」
隣に居たあさ美の耳には聞こえていた。
『あの人頭悪いから覚えられないんだよ』
この2人、最強タッグかも知れない、そう思った。
- 55 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時18分56秒
- 「藤本さんのも教えてくださいよ〜」
「え?あ、いいよ」
美貴が読み上げる番号を麻琴とあさ美は自分の携帯に打ち込んだ。
美貴も同様に2人からの番号を打ち込んだ。
「よっしゃー!メモリ数が増えた、増えた」
「で、だ。バーベキューの話だけど勝手に決めたけど良いんだよね?」
「あたしはOKっすよ!」
「あ、あたしも大丈夫です!」
「あたしも大丈夫!」
「あたしも大丈夫です」
「ミキティは?」
「え、あたしも大丈夫だよ」
「じゃあ決定!!」
「ていうか、決めるの早すぎません?
まだ5月ですよ?」
「いいんだよ!こうゆうのは早いほうが!よっしゃみんな拍手!」
何故か拍手するひとみ。
それに麻琴が続き亜弥が続き、
なんとなく必然的に愛もあさ美も拍手をした。
- 56 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時19分49秒
- 「喜んでるとこ悪いんだけど」
「なんだよ、ミキティ。盛り上がってるのに…。
ホラ、ミキティも拍…」
「赤点取らないようにね」
「…ぁ」
美貴の一言でひとみの手が止まる。
「この計画してるのって夏休みだよね?その前に中間、期末テストがあるわけで、
赤点とって補習で行けません、とかやめてね」
その場に居た者全員の目がひとみに向けられる。
「な、なんで吉澤を見るんだ!」
「だってあさ美ちゃんは首席で合格ですよ?あたしだって2番だしー」
「あたしだってごっちんの高校は落ちたけど常に上位に居ますよ?
愛ちゃんもそうだよね?」
「…うん、まぁ…」
「うぐぅ……っ!」
ひとみのこめかみ辺りに嫌な汗が流れる。
- 57 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時20分34秒
- 「石川さんも頭良いし、みきたんも良いよね」
「…てことは?」
再びひとみに目が向けられる。
「…ちくしょー!何でみんなして頭良いんだよ!どうせ赤点取ってるよ!!」
「開き直ってるよ、この人」
「うるせー!!ちょっと頭良いからって言いたい放題言いやがって!!
いいもん!なっちから教わるから!!ウワーン!!!!」
ひとみは叫びながら生徒会室を出て行った。
「……安倍先生って音楽の先生だよね」
「………ですね」
「…………」
麻琴と亜弥は静かに目を閉じ合掌した。
- 58 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月01日(金)22時21分11秒
- 「…っと、そろそろ帰る。亜弥ちゃん、おばさんにゴメンって謝っといて」
「おっけー」
「じゃあ、また明日」
美貴も部屋を出て行き、残された4人。
「な〜んかあたしまこっちゃんと気が合いそうだな〜」
「ですね〜。あたしもそう思ってましたよ〜」
硬く手を握り合い、不敵に微笑み合う2人。
「そうだ!これから4人でクレープでも食べに行きません?」
「いいね〜、まこっちゃん行こう行こう!」
「ま、待ってよ!」
亜弥と麻琴は肩を組み出て行った。
それを慌てて追いかける愛とあさ美。
お互い親友には苦労する様だ。
- 59 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年08月01日(金)22時31分51秒
- うわぁ、レスが沢山だーい!
ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・。
39>くり様
ごまたかですかー。ごまたかもマイナーですね(w
これからの展開はどうしましょうか?(w
とりあえず【みんな幸せに!】をモットーに頑張ります!
40>名無しさん様
ありがとうございます!応援に答えられるように頑張ります!
41>名無しさん様
ohiありがとうございます(w
藤紺いいですよね!もう絡みがあるたびに萌えー!と心の中で叫ぶキショイ作者です(w
42>雷斗様
かなり好きとか言って頂いて嬉しい限りです・゚・(ノ Д`)・゚・。
あぁ…『あした』の方更新止まっててすみません・゚・(ノ Д`)・゚・。
一応書いてはいるんですがかなり遅くなってます…。
保全してる方にも申し訳ない・゚・(ノ Д`)・゚・。
- 60 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年08月01日(金)22時40分25秒
- 43>名無しミトコンドリア様
あやごま好きなんですよ。ごまっとう最高!
でもみきこんにはまってください!(w
みきこん仲間増やすぞー!
そして早い就寝ですね(w お休みなさいませ(w
ちょっとストックが減ってきてるので更新遅くなるかもしれません。
でもなるべく早く更新しようと思うので許して下さい…。
前スレ終わりからずっとohi更新してたら一番下の居心地がいいので(w
これからもohiでやっていきます。わかりずらくてすみません。
でもage、ohi等、特に気にしてませんのでうっかりageてしまった、という読者さんがいても
それはそれで嬉しいので(w 気にしないで下さい。
長くなりました、更新終わります。
- 61 名前:チップ 投稿日:2003年08月09日(土)20時31分30秒
- マコ亜弥コンビいいですねぇ(w
マターリ待ってますんで頑張ってください。
- 62 名前:名無しミトコンドリア 投稿日:2003年08月15日(金)08時31分20秒
- 小川と松浦…この二人の掛け合いがおもしろい!(w
安倍先生のパワーで無事赤店をクリアしろ!
(0^〜^0)< まかせろっ…
- 63 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月17日(日)11時29分51秒
- |▽`)コソーリ
カナリ面白くなって来ましたね。
イパーイ期待しちゃうよー。
- 64 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時12分55秒
- ***
携帯で時間を確認する。
さっきのメールはこう書かれていた。
【うちに遊びに来て。待ってる】
美貴はため息をついて携帯を閉じた。
はっきり言って行きたくない。
何されるか、これから自分がどうなるのか美貴には予測がつくからだ。
でも行かなければもっとひどい事されるかもしれない。
梨華の考えてる事がわからない。
足取りは重く、まるで鉄球を付けてるかのように足は前に進んでくれなかった。
この角を曲がれば梨華の家。
自分の家の何倍かあるような梨華の家。
昔は梨華ちゃんと早く遊びたくて走ったこの道。
今では長くて遠くて吐き気がする。
- 65 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時13分33秒
- 曲がり角を曲がった瞬間、二つの人影が目に入った。
少し目の悪い美貴は目を細める。
一つは梨華ちゃん。
相変わらず女の子っぽい服を着てる。
もう一つは────。
「………もうやめてあげてよ…、ミキティを苦しめてるって事わかんないの?」
「…よっすぃーには関係ない。美貴ちゃんが来るんだから帰ってよ!」
「帰らないよ。ミキティにあんな顔させて、…楽しんでるの?」
「うるさい…」
「…ミキティ、笑ってないよ?」
「うるさいったら!」
閑静な住宅街に響く2人の声。
「っつ…!」
美貴は思わず口に両手をあて、壁に隠れてしゃがみこんだ。
どうしてひとみが。
泣き真似をしながら走って帰って行ったのは美貴よりも先に梨華の所へ行こうと思ってたからなのか。
- 66 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時14分08秒
- 「…梨華ちゃんはミキティの事好き?」
「好きだよ!だから何!?」
「あたしにはそうには見えない。
…好きならもうちょっと接し方変えてみようよ。
そうしたらミキティが梨華ちゃんの見る目も変わってくると思うよ?」
「……」
ひとみが諭す様に言うと梨華は黙り込んでしまった。
「…とりあえず、ミキティが来たら一緒に帰るけど、それでいいでしょ?」
「なんでよ!なんで!?あたしには美貴ちゃんしかいないの!!
美貴ちゃんしか………」
梨華は両手で顔を覆い座り込んだ。
ひとみはばつが悪そうに目線を下に落としている。
「……梨華ちゃん、よっすぃー」
2人が顔を上げるとそこには真面目な顔で美貴が立っていた。
- 67 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時14分48秒
- 「ミ、ミキティ…」
「ごめん、よっすぃー。梨華ちゃんと話がしたいんだけど」
「でも…。……ん、わかった」
「ごめん、ありがとう」
美貴は座り込んでいる梨華の腕を掴んだ。
しかしその手は梨華によって振りほどかれる。
それでももう一度掴み無理矢理立たせた。
「…痛い」
「……ごめん、…梨華ちゃん、中に入れてくれる?」
「……」
梨華は無言のまま美貴を家の中に招き入れた。
美貴が振り向いた時、ひとみと目が合った。
ひとみは困惑しながらも何か声を掛けようとした。
美貴は自分が出来る限りの笑顔を作り、家の扉を閉めた。
「………無理して笑うなよ…」
1人立ち尽くしたひとみは吹く風に消されてしまいそうな声で呟いた。
- 68 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時15分29秒
- 部屋に招き入れられ、沈黙のままの2人。
相変わらずいい匂いがする、美貴は思った。
いつ頃からこの匂いが嫌いになったんだろう。
「…美貴ちゃん」
「……ん?」
「美貴ちゃんはあたしの事嫌い?」
「………」
美貴は答える事が出来なかった。
昔の梨華は好きだ、でも今の梨華は…嫌いだ。
返答に困り、ふと部屋の隅に目を移すと砕けたガラスと写真立てが目に入った。
静かにそれに近づき飛び出した写真を手に取った。
美貴の持ってるものと同じ写真。
2人は笑っている。
- 69 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時16分02秒
- 「…これ」
「……落としたら割れちゃった」
「そう…」
耳が痛くなるくらい静かだ。
「…誰も、いないの?」
「いないよ、ほとんど1人きり」
梨華は言葉を吐き捨てた。
家政婦も仕事が終われば家に帰る。
ずっと家で世話をすると言っていたが梨華が断ったのだった。
気心は知れているが所詮は他人。
いない方が落ち着くに決まってる。
「……そうなんだ」
こんな広い家に1人きり。
美貴も帰ったら1人だけど家が狭いせいかそう寂しくは感じない。
昔からそうだったから慣れてしまったのだろうけど。
自分がもし梨華だったらやっぱり寂しいだろう。
- 70 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時16分37秒
- 「…おじさんは?」
「…知らない。最近会ってない」
「……おばさんは?」
「…知らない。そんな事より!さっきの質問に答えてよ!
あたしの事…どう思ってるの?」
急に襟元を捕まれ体が倒れそうになった。
一瞬またキスされるのかと思い、顔を思い切りそむけた。
すると前から笑い声が聞こえた。
「…あはは、顔逸らすくらい嫌い…てことね…」
「…違うよ。違う…、急だったから驚いただけ…」
「もういい!!帰って!顔見たくない!
もう誰にも会いたくない!帰ってよ!!」
机の上にあった教科書、ベットの上に置いてあった枕、そのほかいろんなものが美貴に当たる。
それを両腕で受け止めながら梨華の右手に掴みかかった。
- 71 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時17分39秒
- 「…なんで?なんで変わっちゃったの?昔はこんなじゃなかったじゃん…。
いつも、笑って過ごしてたじゃん。…なんで?美貴、なんかした……?」
悲しそうな美貴の目は真っ直ぐ梨華の目を見て逸らさない。
梨華はその目に負けそうになって伏し目になる。
自分だって分からないのだ。
どうしてこんなにも美貴に当たるのか。
むしゃくしゃして八つ当たりをしている?
美貴ばかり幸せそうで嫉妬してる?
それとも美貴の事が好きで独占したいだけ?
悲しそうに、そして自分を同情してるかのような美貴の目は
昔の笑顔の目でも今の冷たい目でもなく、全てを見透かされてるような気がして
それを見た梨華の目から一粒の涙が零れ落ちた。
- 72 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時18分44秒
- 「……梨華ちゃ…」
「…美貴ちゃんが、幸せだから…っ!…あたしよりも!裕福じゃないのにっ!!
父親だっていなくってっ!!親からの愛情だって一人分のはずなのにっっ…!!
あたしばかり寂しくて…!!
なんで!?…なんであたしは……どぉしてあたしは、1人なの…!?」
美貴の胸倉を掴んでドンドンと壁に押し付ける。
衝撃に目を瞑り、再び目を開けると目の前の梨華はずるずると力をなくし座り込んだ。
少しの間、そこから動けず立ちすくむ美貴と座り込む梨華の間にはすすり泣く声しか聞こえなかった。
「……梨華ちゃんから見て、美貴は幸せそうに見えた…?」
「……」
美貴はすうっと大きく息を吸って吐いた。
- 73 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時19分37秒
- 「…小さい時にお父さんを亡くしてからお母さんは働いてばかりだった。
もちろん、授業参観、運動会なんか一度も来た事はなかったよ。
いつも行けなくてごめんね、って謝るお母さんになんて言えばいいの…?
…あたしには気にしないで、って笑うしか出来なかった。
笑う事で済むなら笑ってた方が楽だし…」
「………美貴ちゃん…?」
「いつも寂しかった。笑ってる自分は自分じゃなかった。分かってるのに笑う事しか出来なかった。
……梨華ちゃんは美貴と同じ匂いがした。だから…仲良くなれると思った、なりたかった」
こんな話はしたくないのに、饒舌になってしまう。
同じ境遇だから傷を舐めあおうとしたの?
そんなんだったら美貴だってサイテーだ。
- 74 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時20分32秒
- 「…覚えてる?昔、梨華ちゃんの家に遊びにきた時におばさんと一緒にクッキーを作った事」
「……うん」
あの日、梨華の母親は何の気まぐれかお菓子作りをはじめた。
そんな姿を見たのは初めてだったし、美貴と3人でそんな事が出来るとは思っても見なかったので、
あの日はすごくはしゃいでいたのを思い出す。
もちろん、こんな出来事は後には一度もなかった。
「…羨ましかった。美貴は一度もなかったから。笑いあってるおばさんと梨華ちゃんを見て羨ましかった。
美貴と梨華ちゃんは同じじゃなかったって思った」
「あん、なの…あの時だけだったよ!ずっとあたし1人だったもん!!」
梨華が叫ぶと美貴はしゃがみこみ、同じ目線になる。
そして昔のような笑顔で梨華に言う。
- 75 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時21分52秒
- 「…美貴達、同じなんだね?」
その言葉を聞いて梨華は流れる涙を止める事が出来なかった。。
美貴と一緒。同じ。1人じゃない。分かってくれる人がすぐ傍にいたのに。
梨華は美貴を傷つけた。もっとも最低な方法で。
「……ごめっ、美貴…ちゃ……、あたし……」
「…梨華ちゃん、美貴達また元に戻れるよ?昔みたいに笑っていられるようになるよ?
だって、美貴は梨華ちゃんの事好きだから…」
梨華は俯き、ぽつりと洩らした。
「………それは、…恋愛対象で……?」
「……え…」
美貴が言葉に詰まるとフフっと笑みをこぼした。
- 76 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時23分07秒
- 「……ゴメン、それは都合が良すぎだよね…。
…うん、あたしも美貴ちゃんの事が好き。
……今まで、ごめんなさい。…謝って済む事じゃないって、分かってる…」
「…もぉ、いいよ。美貴達はこれから、でしょ?」
「……美貴ちゃんよりかっこよくて優しい人、見つけるから…」
「…なにぃ?美貴だって、梨華ちゃんより可愛い子、見つけるよ?」
そう言いあった後、2人は久しぶりに心の底から笑い合った。
大きなテーブルに新しいクロスをかけて、2人っきりで焼肉パーティを開いた。
急いで食べ過ぎて肉を喉に詰まらせた美貴を見て梨華も大笑いをした。
石川家からこんなに笑い声が聞こえたのは何年ぶりかの出来事だった。
テーブルの上に置かれた昔の自分達の写真と、
ついさっき取ったポラロイド写真は同じ笑顔だった。
- 77 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時27分02秒
- 「…おじさんとおばさんの事は…大丈夫?」
「…うん。あんなのでもパパとママだもん、ね。
それに、なにかあったら美貴ちゃんに聞いてもらうから」
「うん、…なんかあったらさ、いつでも呼んでよ、ね?」
笑顔で話す美貴を見て梨華は表情を曇らせて呟いた。
「………よっすぃーは許してくれるかな…?」
「…美貴がちゃんと伝えとく。よっすぃーも分かってくれると思うから」
「うん…」
夜遅くに美貴は自宅へと帰った。
「美貴、何かいい事でもあったの?」
「え、なんで?」
「顔がね、とっても嬉しそうだから」
母親の言葉を聞き、両手でペタペタと頬を触った。
自分でも顔が緩んでるのがわかる。
「いいこと…あったよ!」
美貴は笑顔で答えた。
- 78 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時29分35秒
- ────次の日。
ひと気もまばらな屋上。
フェンスにもたれて立っているひとみと
フェンスに手を乗せて向こうの景色を見ている美貴。
- 79 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時30分26秒
- 「………全く納得できませんが」
しかめ面をしながら呟く。
「だから、もう過去の事って事で水に流すことに…」
「何言ってんの!?ミキティ!…あんなひどい事されてたのにあっさり許すなんて…!」
掴みかかって体を寄せ、叩きつけるように言葉を吐くひとみに美貴は苦笑いを浮かべた。
「美貴も梨華ちゃんも弱い人間だった、って事で…。だから許してあげてよ?
梨華ちゃんもよっすぃーの事気にしてるからさ」
「……ミキティがいいんだったらいいけどさ。それにしても人が良すぎじゃねぇ?
うちだったら慰謝料とか請求してさァ…」
「…よっすぃー」
「…ごめん、冗談。
わかったよ、別にうちは梨華ちゃんの事嫌いじゃないし…本人達が納得したならね」
ひとみは深くため息をつくと呆れたような表情で空を見上げた。
- 80 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月17日(日)17時31分19秒
- 眩しさに目を細めるとそこには一筋の飛行機雲が見えた。
「…よっすぃー」
言葉を掛けられ振り向くと美貴も空を見上げていた。
「…なに?」
ひとみもまた空を見上げた。
「…いろいろありがとう。感謝してる。
よっすぃーがいてくれてよかった」
「……」
「…?よっすぃー?」
返事が返ってこないので隣をみると真っ赤な顔をしたひとみの姿があった。
「…照れるからヤメレ」
その姿を見て美貴は大笑いした。
- 81 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年08月17日(日)17時40分50秒
- ずいぶん間が開いてしまいました、すみません(ノД`)・゚・。
しかも恋愛話書こうとしてるのに全然恋愛要素出てこない罠。
61>チップ様
マコ亜弥(+吉澤)は問題児キャラで行きます(w
恋に突っ走る3人で!
62>名無しミトコンドリア様
吉澤は果たして赤点クリアできるのか…!?
(;●´ー`)<なっちは何も出来ないべ…
63>名無しどくしゃ様
2ゲト(w
今まで書いてきてマコがこんなキャラなのは初めてかもしれません。
いかかがでしょうか?(w
- 82 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年08月17日(日)17時41分31秒
- 次回はなるべく早く…
- 83 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年08月17日(日)17時42分08秒
- 更新できるといいな…
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月27日(水)13時57分05秒
- おもしろいです。ってか石川さんは藤本さんを本気で好きだったんでしょう
かね?とりあえずみんな幸せになってください
- 85 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月28日(木)11時20分06秒
- マ コ 最 高 で す。
みきりか良かったよ〜美貴様(*´д`*)ポワワ
- 86 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時25分23秒
- ***
「…で、どうなんだろう?」
「………何が…?」
『暇だからあさ美ちゃんちに遊びに行く!』と言って来たものの、
特に話題もなくマッタリとしてる時に麻琴は急に問いかけてきた。
読んでた雑誌を閉じてあさ美が聞き返しても麻琴はうーん、と唸ってるだけで答えない。
ぽけーっとして目がうつろだ。
あさ美が目の前で手をブンブン振るとハッとしたようにあさ美を見つめた。
「何さ!あさ美ちゃん!びっくりしたなぁー!」
「…何って…、こっちが聞きたいよ!どうしたの?ボーっとして」
大体何考えてるかは想像がつく。
ここ最近2人の会話に必ず出てくる人物の事だろう。
- 87 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時26分01秒
- 「愛ちゃんなんだけどさぁ…」
「うん」
やっぱりな、とあさ美は笑みをこぼした。
「な、笑わないでよ!こっちは真剣なんだからさ!」
「ごめん、ごめん。で、愛ちゃんがどうしたの?」
あさ美が話を聞く体制に入り向き合うと麻琴は大きなため息をついた。
「結構さ、アピールしてるつもりなんだけどさ、愛ちゃんって無反応なんだよね…」
「…ああ」
本人に聞こえるくらい大きな声で好きだ!とか言ったり、
1年生なのに2年の教室まで遊びに行ったり、時には部活が終わるまで待って一緒に帰ったり。
けれど愛はいつも普通に接したりしている。
この前、愛はあさ美に麻琴に好かれてるらしい、と言ってたので気持ちには気がついているだろう。
でもそれについて麻琴に自分の気持ちを言うわけでもない。
- 88 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時26分35秒
- 「もしかしたら好きな人がいるのかなぁ…」
「あぁ…、いるのかもねぇ…」
「え!?いるの!!?」
「し、知らないよ!」
ガタンとテーブルに突いた手はコップに当たり、一面をオレンジジュースの湖にさせた。
「あーあ、もう…しょうがないなぁ」
「…ごめん、あさ美ちゃん…」
いつもなら笑ってゴメンゴメン、なんて軽く言う麻琴がおとなしい。
相当悩んでるようだ。
気弱になって何も喋らない麻琴にあさ美は一つの提案を出した。
- 89 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時27分45秒
- 「亜弥ちゃんに聞いてみるっていうのは?
亜弥ちゃんは愛ちゃんと親友同士だし何か知ってるかも?」
「それだ!!」
麻琴はすばやく携帯を取り出し亜弥に電話を掛けた。
「……」
「…繋がらない?」
「繋がらない…」
電源を切ってうなだれる麻琴になんて声を掛けていいのか。
困ってオロオロしていると麻琴は急に立ち上がり腕を突き上げた。
- 90 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時28分21秒
- 「決めた!学校が終わった後、愛ちゃんを尾行する!」
「…尾行ねぇ…。……えぇ!?尾行!?」
「そう!決めた!前一緒に帰った時、愛ちゃんも電車通学だったんだけど
あたしと二駅違いだった。家もどこにあるか知りたいし!
家もわかるし、愛ちゃんの動向もわかるし一石二鳥じゃん!」
「…まこっちゃん、それってストーカーじゃ…」
「もちろん、あさ美ちゃんも協力してくれるよね?
親友の頼みだもん、断れないよね?ね?」
「……う、うん」
あさ美は鬼気迫る気迫に負けて返事をしてしまった。
大体自分は麻琴の親友ではあるが、第三者だし関係ないといえば関係ないはずなのに
断る事が出来なかった。
- 91 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時29分11秒
- 「ありがとう!あさ美ちゃん!大好き!やっぱ持つべきものは親友だよね!」
「…もう、こんな時ばっかり親友って…。…うん、あたしもまこっちゃん、好きだよ」
あさ美が呆れ顔でため息をつくと麻琴はデッヘッへと頭をかきながら笑った。
まぁ、いいか。こんなに喜んでくれてることだし。
ちょっと家を見に行くだけだし、ね。
「明日に備えてもう帰るね!バイバイ!」
「うん、また明日…ってもういない…」
こういう時の足の速さだけは天下一品だと思う。
あさ美は開けっ放しの部屋の扉を閉めてベットに寝転んだ。
「…いいなぁ〜、好きな人、かぁ…」
高校に入って恋愛したかったのに自分には何にもないことに気がつく。
ぼうっと天井を見つめるとなぜかそこには美貴の顔が浮かんできた。
- 92 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時29分45秒
- かっこかわいい。
好きなのかなぁ。一緒にいるとドキドキするし顔が熱くなる。
手を伸ばして鏡を取り自分の顔を見てみる。
別に会ったわけじゃないのに美貴の事を想っただけで顔が赤くなる。
「…これって、恋、だよ、ねぇ?」
鏡に映る自分の顔に向かって問いかけてあさ美はブンブンと首を振った。
今は自分の事よりもまず麻琴の事を考えなければ。
鏡をベットの上に放り投げてあさ美も明日に備えることにした。
「…ていうか、あたし本当に関係ないよね」
誰にも聞こえないけどぽつりと言葉を漏らした。
- 93 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時30分37秒
- ────
「で、放課後だよ」
「…はやっ!なんで?!」
「細かい事はいいからいいから。それよりも愛ちゃんが見失う前につけるよ!
今日は部活が休みだって行ってたから急がないと!
はい!あさ美ちゃん!」
手渡された一枚の手ぬぐい。
「…これはなに?」
「これをこーやって…」
目の前の麻琴は手ぬぐいを被りだした。
「これでバッチリ!!」
「…逆に目立つよ…」
麻琴の頭の手ぬぐいを引っ張って取り丸めて鞄の中に入れた。
不服そうな顔を浮かべていたが、それも一理あるね、と呟きにやりと笑った。
…意味がわかんないよ、まこっちゃん。
ていうか大丈夫かなぁ…?
- 94 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時31分08秒
- 玄関に行くとちょうど帰ろうとしている亜弥と愛の姿があった。
「一緒にいるって事は2人でどこかに行くんじゃないかな?」
「それはない!さっき亜弥ちゃんにメールしたらごっちんさんとデートだって行ってたから!」
「ごっちんさんって…」
「ああ、もう!こんな話をしてる場合じゃない!早く行くよ!!」
右腕をつかまれ後ろ向きのまま引きずられた。
「ま、まこっちゃ…!転ぶ!転ぶぅ!!」
大親友に振り回されっぱなし。
勘弁してよ、もう。
- 95 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時31分55秒
- 駅までの道をこっそりと後をつける。
電信柱に隠れたり、小走りで追いかけたり。
はっきり言って絶対怪しい。
周りの下校中の子達もみんなあたし達を見てる。
出来るだけ普通を装い歩くものの、探偵気取りの麻琴がそれを全部無駄にする。
「はやくっ!あさ美ちゃん」
「…はぁ、やっぱり後をつけるなんて気が引けるよ…」
「今更何言ってんの!…あ!亜弥ちゃんと別れた!電車に乗っちゃう!」
麻琴は走り出し、それを慌ててあさ美も追いかけた。
その瞬間、麻琴は急に立ち止まり、あさ美は思いっきり麻琴の背中に顔面をぶつけた。
- 96 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時32分53秒
- 「…!イタタ…。…どうしたの?」
「…逆方向だ」
「え…?」
「逆方向に乗ってるの!家に向かってない!!どこ行くんだろう?
まさか恋人と待ち合わせとか?でも恋人は居ないって言ってたし…。
もしかして!好きな人のバイト先に行くとか!?
そこでこっそりと姿を見つめて淡い恋心を……!!」
「…落ち着いて、まこっちゃん」
前を見ると愛は電車に乗ろうとしていた。
「とりあえず!ついていこう?ね?」
「…うん」
麻琴の手をひき隣の車両に乗り込んだ。
小窓から見える愛の表情はどこか嬉しそうだった。
- 97 名前:FIVE! 投稿日:2003年08月29日(金)21時33分40秒
- 「…嗚呼、好きな人に会いに行くんだよ…。絶対そうだ…」
「ま、まだわからないじゃん!バイトに行くだけかもしれないし!」
「…愛ちゃん、部活やってるからバイトはしてないって言ってた…」
「……。…友達の家に行くとか…」
「……」
でもあの表情は友達の家に遊びに行く、なんて表情じゃない。
恋人とデートの待ち合わせをしてるかのような幸せそうな表情。
さっきまでの元気な姿はドコへ行ったのか。
麻琴はうなだれたままで愛を見ようともしない。
微妙な空気のまま電車は走り続けた。
- 98 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年08月29日(金)21時40分30秒
- うーん、最初飛ばしすぎたなぁ(w
遅くなって申し訳ないです川つv T从
84>名無しさん様
おもしろいだなんてありがとうございます(ノД`)・゚・。
石川さん自身も藤本さんの事好きだったのかよくわからないのです。
85>名無しどくしゃ様
美貴様の運勢も上がってくるのかな?(w
マコ出番やっとだよマコ!
- 99 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年08月30日(土)14時17分45秒
- ハァ━━━━;´Д`━━━━ン!!
マコ、がんばれ!マコ!・゚・(ノД`)・゚・
しょぼんなマコが可愛い
- 100 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時15分56秒
- いくつか駅を通り過ぎた時、小窓から見える愛が降りる準備をしていた。
愛は何かが入った包みを大事そうに抱きしめて立ち上がった。
「あ、降りるみたいだよ?まこっちゃん」
「あーそー…」
かなりテンションが下がった麻琴を励まし、愛が降りた駅に2人も降りた。
いそいそと歩く愛を見失わないようにあさ美はついていく。
「…早く!見失っちゃうよ!」
「はあ…、なんかもう、さ…」
「もう!まこっちゃんらしくない!いつも押せ押せのまこっちゃんはどこにいったの?!」
あさ美はビシッと人差し指を突きつけて問いかけた。
すると麻琴はぐっと握りこぶしを強く握り、大きくうなづいた。
- 101 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時16分30秒
- 気づかれないようについていくと年期の入ったアパートの前で愛は立ち止まった。
手に持っていた荷物を確認して、階段を登っていった。
一つのドアの前で立ち止まりインターフォンを押す。
すると中から背の高いモデルさんみたいにきれいな人が笑顔で愛を迎えた。
それを愛も笑顔で答える。
そして2人は部屋の中に入り、扉は閉まった。
やばい。
やばすぎる。
こんな光景はどう考えたって。
冷静に考えてみよう。
- 102 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時17分17秒
- その1 1人暮らしをしているお姉さんの所へ遊びに行った。
…お姉さんがいるなんて聞いたことないし、似てない。これは違う。
その2 従姉妹。
ありえなくはなさそうだけど…うーん。保留。
その3 家庭教師の先生。
これも聞いたことない。多分違う。
その4 恋人。
「………」
「あはは…あれだれかなぁ…、あさ美ちゃん…」
「…えーと」
さすがに言葉が出ない。
決定的場面に遭遇してしまったんじゃないだろうか。
- 103 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時17分48秒
- 「え、と。多分従姉妹かなんかだと思うよ!うん!きっとそう!」
「……なんで棒読みっぽいの…?」
「…えー…と…」
──それからはどう家に帰ったかあんまり覚えていない。
フラフラとその場を後にする麻琴の後を静かについていくだけ。
ボソボソと何かをしきりに呟く麻琴が怖くて話しかけられなかった。
ここまで足を突っ込んだからには何とかしてやるのが親友ってものでしょうか。
あれが本当に恋人なのかも気になるし、ここは一つ真相を追究しよう。
そう心に決めて眠りについた。
- 104 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時18分26秒
- ────次の日。
あらかじめメールはしておいた。
【お話があるので放課後に生徒会室に来てもらってもいいですか?】
返事はあっさりOK。
まぁちょっとは疑っていたけれど隠し通した。
隣の席はなんだか暗い。
今日はずっと机に突っ伏したまま。
いつもなら休み時間には愛の所へ行き、自分の教室になんかいないのに
相当ショックだったのか動こうとしない。
「…まこっちゃーん?」
「………はぁ…」
話しかけてもこの通り。
今日一日ため息しか聞いてない。
- 105 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時19分13秒
- 「もう放課後だよ?帰る支度しないと…」
「…そーだねー……。…じゃあ、また明日…」
フラフラと教室のドアにぶつかりながら麻琴は帰って行った。
いつもは一緒に帰ろう、と言うのにそれすら言う気力がなかったようだ。
あさ美はそれを見送った後、生徒会室へと向かった。
「あ、あさ美ちゃん!」
呼ばれる声の方へ振り向くとそこには愛がいた。
「愛ちゃん!ごめんなさい、遅くなって…」
「ううん、あたしも今来たとこ。…なんだけど部活があるんだよね。
だからあんまり長く話聞いてあげられないかもしれないんだけど…」
「あ、すぐ終わります!」
…はっきり答えてくれれば。
- 106 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時19分59秒
- あさ美が椅子に座ると愛も隣に座った。
「…で、何かなぁ話って」
さて、ここが腕の見せ所。あさ美は軽く手を握った。
「あの、ですね。昨日友達の家に行ったんですけど、その時偶然愛ちゃんを見たんですよ」
「…うん」
「たまたま本当に偶然で愛ちゃんが向かった先とあたしが向かった先が近くて」
「…ん」
「見るつもりは全然なかったんですけど愛ちゃん、凄く綺麗なお姉さんと話してたから
誰なんだろうと思って…」
「……」
ここまで言うと愛は黙り込んでしまった。
自分の今の会話は不自然だっただろうかと変な汗が流れる。
- 107 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時20分31秒
- 「…あ、お、お前が知ってどうするって感じですよね。
す、凄く綺麗な人だったんでモデルさんか何かかなぁと思って…」
「…モデルじゃないよ。…綺麗だけど。…あの人は美大生」
ポツリポツリと話し出したがなんだかとても歯切れの悪い、言い難そうな感じ。
回りくどく聞くのもなんなのでストレートに聞く事にした。
「…好きなんですか?」
愛は一瞬ビクッと体を震わせてからあさ美の方を見てにっこり笑った。
「好きだよ」
目を逸らさずにあさ美に言う愛。
- 108 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時21分13秒
- ああ、もうダメだ、と思った瞬間、言葉は続いた。
「…なんかね、絵が、好きなんだよね」
「…は?絵?」
「うん、従姉妹のおねーさんが行ってる大学の人でね、文化祭見に行ったの。
その時、飯田さんの絵が飾ってあって…。目が離せなくなった。
強い力を感じるんだ、飯田さんの絵って。
で、その時に知り合って、時々見せてもらってるの」
「そ、そうなんだ。その…飯田さんの事は…好き?」
「うん、おねーさんって感じ」
「恋愛感情とかは…」
「え?ないよ!飯田さん恋人といるよ?確かねぇ、あさ美ちゃん達と同い年の」
「ええええ!」
全くの勘違いだった。
愛はあの人に会いに行ったのではなく厳密に言うとあの人の絵に会いに行ったのだ。
肩の力が一気に抜けたあさ美は一つ疑問を聞いた。
- 109 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時21分55秒
- 「じゃあなんでそんなに言いづらそうだったんですか?」
「……あさ美ちゃん、偶然にあたしを見かけたんじゃないでしょ?」
「え!?そ、それは…」
「実は電車に乗ってた時から気がついてた。もしかしたら後つけられてるかな、って」
「ご、ごめんなさい!」
慌てて謝ると少し息を吐いて、それから愛は笑った。
「麻琴、でしょ?あさ美ちゃんがあたしについてきてもしょうがないもんねぇ」
「は、はぁ…」
ばれちゃった。
どうしよう、怒られるかもしれない。
背中に嫌な汗がまた流れる。
- 110 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時22分29秒
- 「麻琴、どんなだった…?」
「…恋人と思っててショックであんまり喋らなくなってます…」
「そっか」
愛はまた笑った。
その笑いは一体何を意味しているのかあさ美にはわからなかった。
首をかしげながら愛を見ていると愛は椅子から立ち上がり話し始めた。
「…あたしね、今まで一回も好きになったりとかなられたりとかなくて
一直線な麻琴から逃げてたの。でもね、飯田さんとの事勘違いして
麻琴がショックを受けてるって言うのを聞いて、なんか嬉しかった」
「…って言う事は…」
「うん、麻琴の事好きかも」
さらりと言い放ったものの恥ずかしかったのか愛の顔は少し赤かった。
それを見て心の中でキター!!とあさ美は叫んだ。
- 111 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時23分08秒
- 「じ、じゃあ…!」
「今日の夜、麻琴に電話してみる」
「…良かったぁ…」
「いろいろゴメンね?あさ美ちゃんが一番苦労してるかも」
「いいんですよ、親友ですから」
足突っ込んじゃったんだし。
「じゃあ、そろそろ部活に行くね?」
「あ、すみませんでした。わざわざ…」
「ううん。あ、敬語使わなくていいよ。なんか慣れないからさ」
「はい!」
「ほら、また」
あはは、と笑う愛につられてあさ美も笑った。
部屋から出て行くとき、愛は思いついたように振り向きあさ美に言った。
- 112 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月02日(火)22時23分41秒
- 「あさ美ちゃんも恋の事、悩んでたら言ってね!
大変だろうけど…あたしが見る限りでは石川さんよりあさ美ちゃんの方が似合ってる気がするし!」
「え!?」
「藤本さんとあさ美ちゃんの事だよ!」
そういった後、ニヤっと笑みを浮かべ、扉は閉まった。
1人取り残されたあさ美は目を丸くしたまま動けなかった。
自分は鈍感なくせに、人の事は敏感なんだね。
おそるべしです、愛ちゃん。
- 113 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年09月02日(火)22時27分01秒
- おとめ組サイコー!
99>名無しどくしゃ様
しょぼんなマコ良かったでしょうか(w
でも基本的にはおがたかを書くとき男前マコを書くほうが好きなんですけどね(w
- 114 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年09月04日(木)21時46分09秒
- (;´Д`)ハァハァ
もうずっとお胸がドッキドキ。
紺野さんありがとう。作者様すっごいありがとう。
ムフフサパッリした感じの愛たんが新鮮で好きですね。はい。
- 115 名前:チップ 投稿日:2003年09月06日(土)13時15分58秒
- うぁー高橋さんなんかカッケェー!!
マコかわいすぎる!頭撫でてあげたい(爆
マコはなにしてもかわいーなぁ(ww
- 116 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)19時57分07秒
- ***
前の席は美貴。後ろの席はひとみ。
半分に折りたたまれた紙を恐る恐る開く。
前にいる美貴はごくりと喉を鳴らし、その様子を目を見開き見つめる。
「……で、結果は…?」
「………よんじゅうにてん…」
「…おおー!赤点じゃなかったじゃん!やったねよっすぃー!
これで全教科クリアー?!」
ひとみの背中をバシバシ叩きながら喜ぶ美貴。
「痛いよ!ミキティ、前と人格変わりすぎ!!…そーとー苦労して来たんだね……」
「…それはもう、さ。禁句で」
「……わるい、笑い話にしようとしてるわけじゃないんだけどさ…ゴメン」
「まぁ、もういいよ。…それより、中間テスト全教科クリアーじゃん!
この調子で期末も頑張らなきゃねー」
「…やっと中間終わったのに期末の話をしないでよ…」
ため息をついて落胆するひとみを見て美貴は笑った。
それを見てひとみはおもしろくない表情をする。
- 117 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)19時58分19秒
- あれ以来、美貴は誰が見てもわかる通り明るくなった。
以前はクールで人気があった。
しかし今は誰にでも笑顔を見せるので人気は落ちるかと思いきや
さらに人気急上昇。
前からひとみと人気1位、2位を争っていて僅差で常に2位だった美貴がぐんぐん追い上げてきている。
恋人もいるし、人気はどうでもいいといえばどうでもいいけど目立ちたがりのひとみは
やっぱりおもしろくない。
「…ミキティって最近人気あるよね〜」
「…え?そう?よっすぃーの方があるよ?昨日もさー、購買にパン買いに行ったら、
『吉澤先輩、今日もかっこよかった〜!』って言ってた2年生がいたよ?
人気じゃ〜ん」
このこのー、と肘でひとみを突付く美貴。
ほんの何週間前の美貴とは別人だ。
- 118 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)19時59分34秒
- 「…そっかなー。……そうか!うちの方が人気あるんだ!
そうだよね〜♪あ、そろそろ部活行かなきゃ〜♪じゃあねぇ!ミキティ♪」
上機嫌になったひとみは鼻歌を歌いながら教室を出て行った。
「……扱いやすいなぁ、よっすぃーは」
残された美貴はぽつりとひとり言を漏らした。
「…あ、美貴もバイト行かなきゃだ」
時計を見上げ、焦るように鞄の中に荷物を押し込む。
教室に残っているクラスメイト達に声を掛けた後、扉を開けると前にいた人にぶつかった。
「…ぅあ、ごめんなさ…」
「美貴ちゃん!!」
ガバッと襟元を捕まれ思いっきり体を引かれる。
目を見開くと目の前にいるのは梨華だった。
- 119 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時00分36秒
- あの後、梨華との仲は少しぎくしゃくした。
納得してないひとみの目や、梨華自身今までしてきた事の負い目が重なって前とはまた別の空気が漂っていた。
今までは休み時間や帰りは必ず梨華が美貴の元へ来ていたがそれもなくなっていた。
クラスも違うし、最近までテスト期間だったため生徒会室でも会うこともない。
その矢先の出来事だ。
「ど、どうしたの?!梨華ちゃん!?」
もしやまた悪夢が繰り返されるのかと少し嫌な予感がした。
しかしその予感ははずれていた。
- 120 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時01分50秒
- 「あのね!!教育実習の先生がすっごいカッコイイの!!」
「……は?」
「だから!今度来る教育実習の先生がかっこいいんだってば!!
さっき教務室に行ったらその先生がいてね、一週間後に来るんだって!」
「…へぇ」
だからなんなんだろう、と美貴は思い顔をしかめた。
すると梨華はトーンを落として美貴を見つめた。
「…美貴ちゃんよりかっこいい人、見つけたよ。多分一目ぼれ。
……ひどいよね、あたし。美貴ちゃんにひどい事しておいて、さぁ…」
俯く梨華に美貴は両手で挟みこむように頬を軽く叩いた。
- 121 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時02分37秒
- 「だーかーら、それはもういいっこなしだってば。
…それより、その先生美貴よりカッコイイの?
よっすぃーと美貴とその先生だったら誰がカッコイイ?」
おどけて話す美貴に少し笑みをこぼし梨華は自信満々に言った。
「教育実習の先生!!」
あまりにもはっきり言う梨華に苦笑し、頬においてある両手をぐりぐりと動かした。
「はっきりいいすぎ〜」
「だぅわぁってぇ〜」
「何言ってるかわかんないし」
「…美貴ちゃんのせいでしょおー?」
もう!とぷくっと頬を膨らませる梨華。
それを見て笑う美貴。
- 122 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時03分15秒
- 2人はもう大丈夫。
もっと早く話してれば苦しまずに済んだのかもしれない。
でもそれを口に出すのはとても勇気がいる事で。
自分に勇気があれば梨華を苦しめずに済んだかもしれない。
自分に勇気があれば美貴を苦しめずに済んだかもしれない。
これからも2人の心の片隅にはこれまでの事実は残るけどそれを乗り越えて親友になれる。
美貴と梨華はもうわかっている。
「ん〜、じゃあこれからその先生見に行かない?」
「え?美貴ちゃん、時間大丈夫?今日はバイ…」
「いいのいいの、早く行くぞー!」
「ああ!待ってよ!美貴ちゃん!」
教室を飛び出した美貴は前よりも幼く見えた。
梨華は昔の美貴を見てるようで嬉しくなった。
- 123 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時03分58秒
- 教務室につくとちょうどそれらしき人が出てきた。
ショートカットで美貴よりは少し背が高いかもしれない。
けれど後姿だけでよくわからない。
「梨華ちゃんあの人?」
「そう!」
「よくわかんないなぁ…?こっち向かないかな?」
「えぇ!恥ずかしいよ…」
「恥ずかしいよ、ってまだ見たばっかなのにそんなに好きになったの?」
「うん!」
「そう…」
美貴はなんだか複雑な心境。
梨華の美貴への好意は恋心じゃなくて友情だけだったんだ、と。
- 124 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時04分40秒
- 「てかさ、名前は?名前はわかんないの?」
「わかんない…」
「…話にならないじゃん」
美貴は呆れて梨華を見ると梨華はしゅんとして俯いた。
ちょうどその時教務室からもう1人出てきた。
その人物は教育実習生と親しげに話している。
「あ、保田先生だ!なんか仲良さそうだよ?肩とか叩き合ってるし!
行ってみよう!梨華ちゃん!」
「あ、え?」
強引に手を引っ張る美貴になすすべもなく引きずられる梨華。
美貴は変わったなぁ、と本当に思った。
暗くさせてたのはやっぱり自分のせいだったんだなぁ、と心が少し痛む。
- 125 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時06分07秒
- 「保田先生!」
「あ?あー、藤本と石川」
「どうもー!」
わざとらしく元気良く挨拶する美貴とその影に隠れる梨華。
その様子に保田は首をかしげながら不審そうな顔をする。
「何?なんか企んでるの?」
「企んでる、って…。美貴、いつも保田先生の事手伝ってるじゃないですかー」
「や、だって人格がなんか違うから…」
「…まぁまぁ、それより…」
美貴がちらりと目線を横に向けると渦中の人物と目が合う。
それに気がついた保田は思い出した様に紹介をしだした。
- 126 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時10分38秒
- 「あぁ、こいつ、教育実習生。あたしの大学の時の後輩なんだけどさ」
「こいつって呼ぶなよ、圭ちゃん。紹介するならちゃんと紹介して!」
少し不機嫌そうに言うとくるりと振り向き、笑顔を見せた。
「あ、えと、教えるのはまだなんだけど、一ヶ月くらいかな?お世話になります。
市井紗耶香です」
「アンタ、一ヶ月くらいかな?…ってアバウトね…」
「市井、紗耶香さん…」
美貴の後ろに隠れていた梨華がぽつりと呟く。
顔が赤くて目も虚ろだ。完璧に恋してる目だ。
「あ、そうだ。あんた達紗耶香を校内案内してくれない?あたしこれから会議なのよね」
「え」
梨華の表情が一瞬固まる。
- 127 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時12分01秒
- 「あ、別にいいよ。自分で勝手に回るからさ」
「あんた方向音痴でしょ。この子達生徒会役員だからなにかと役に立つかもしれないし
案内してもらいなさいよ」
「別に美貴達はいいですよ?ね、梨華ちゃん?」
「えええ!?……あ、はい…」
「うーん、じゃあお願いしようかなぁ。…えっと藤本さんと、石川さん、だよね?」
「はい」
「じゃあ、後よろしくね」
ひらひらと右手を振り、保田は去って行った。
姿が見えなくなったと同時にわざとらしく美貴は腕時計を見る。
- 128 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時13分08秒
- 「…あぁ!そういえば今日バイトだった!!」
「ええ!!?だってさっきいいって…!」
「ごめん!梨華ちゃん!後よろしく!!
市井先生、案内できなくてすみません!じゃあ!」
美貴は梨華がとめる声を振り切り、笑顔で手を振りながらその場を後にした。
残された梨華と紗耶香。
「…じゃあ、案内よろしくお願いします、石川さん」
にこっと微笑みながら言う紗耶香。
「…はいぃ…」
顔を真っ赤にしながらとりあえず歩き出す梨華。
手と足が一緒に出たって気がつかないくらい頭の中は混乱。
でも一つだけはっきり思う事。
(…美貴ちゃんのばか〜〜〜〜〜〜!!!)
梨華は心の中で叫んだ。
- 129 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年09月08日(月)20時22分33秒
- これで主な登場人物は全員でましたねー。
さてこれからどうしよう…。
114>名無しどくしゃ様
高橋さんは新鮮ですね。いつもはマコと高橋さんは逆のキャラっぽいですからねぇ。
そろそろ親友達の恋よりも自分の恋に走ります、紺野さん。
115>チップ様
しょぼんなマコ良かったですか(w
まぁ、おがたかの恋の結末はもう少し引っ張ります(w
…チップさんって…もしや…。
- 130 名前:ごーしゅ 投稿日:2003年09月08日(月)20時23分32秒
- ( ^▽^)
- 131 名前:FIVE! 投稿日:2003年09月08日(月)20時24分07秒
- 川VvV从
- 132 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/09/09(火) 12:19
- ちょっぴり切ない…
っと、こんこんクル━*´Д`━!!
更新激しく待ってます。
- 133 名前:チップ 投稿日:2003/09/09(火) 14:43
- おがたが引っぱるんですか(w ワクワク
ミキティー優しいね、コンコン早くー(ww
え、えーっと……もしや、もしやです(爆
- 134 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 21:59
- ────まぁ、今までの仕返しって事でいいでしょ。
ちょっとしたイタズラに苦笑しながら美貴は歩きながら心の中で呟いた。
あの後どうなるだろう?明日休みだから休み明けに聞かなくちゃ。
「…さて、バイトに行こうにも今から行っても遅刻だしなぁ。今日はサボろうっと」
美貴はぶらぶらと校内を歩いていた。
友達ももう帰ってしまったし自分も帰ればいいのだけれどこんなに早く帰っても暇だ。
誰か話し相手でもいないかと探しながら歩いた。
しかしいるのはキャーキャーと騒ぐ子達ばっかり。
美貴は適当に笑顔を浮かべ捕まらないように逃げた。
すると鞄の中に入っていた携帯が鳴った。
- 135 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:00
- 「もしもし?」
『みきた〜ん?あたし〜!』
「亜弥ちゃん?どうしたの?今日はデートじゃないの?」
『隣にごっちんいるよ〜。代わる?代わる?』
「え、いいよ、あたし後藤さんに会った事ないし」
断ると亜弥はいいからいいから、と言って無理矢理真希に代わった。
美貴は眉間にしわを寄せ、何を言われるのか少し待った。
「…」
『……』
「………」
『…………』
無言かよ!と思った時、電話の向こう側から何か喋ってよ!という亜弥の声が。
何喋ればいいかわかんないよ!という真希の声が聞こえて心の中で同意した。
- 136 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:01
- 『あー…えっと、こんにちは。…後藤真希です。亜弥ちゃんの従姉妹さんですよね?』
「あ、はい、そうです。藤本美貴です、どうも…」
一体なんで従姉妹の恋人と話してるんだろう。
きっと真希も思っているだろう。
一体なんで恋人の従姉妹と話してるんだろう、と。
『あ、あの、バーベキューなんですけど、一緒に行く事になったみたいで、すみません。
違う学校なのに。一応断ったんですけど…』
「ああ、全然構わないです。みんなでワイワイやれたらいいなと思ってるんで。
それに亜弥ちゃんが強引に誘ったんでしょ?」
そう喋った後、がさがさと雑音が聞こえ、真希から亜弥に代わったようだ。
『じゃあねー!みきたん!ばいばーい!』
「は?え?ちょ…」
もうすでに電話は切れていて、聞こえるのはツーツーと一定音。
ちょっと待って一応美貴、後藤さんに問いかけてたんだけど…。
- 137 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:01
- 「…一体なんなんだ…」
電源を切って前を見ると見た事のある人が立っていた。
その人は美貴を見つけるとニコリと笑い近づいてきた。
「藤本!元気?今帰りなの?」
「はい、今日は委員会もないし美貴、部活もやってないんで」
「そっか…じゃあさ、お願い事があるんだけど…聞いてくれる?」
「はぁ、別にいいですけど」
なつみは内ポケットの中から封筒を取り出して美貴に渡した。
美貴はそれを手に取りヒラヒラと振った。
中身は薄い。
「なんですか?これ」
「それ、よっす…吉澤さんに渡しといてもらえる?」
「…別に言いなおさなくてもいいですよ、美貴は知ってますし」
「そ、そうだよね!あはは…」
「すっごいラブラブだって事も知ってますから」
「う…」
美貴がそういうとなつみは顔を真っ赤にして俯いた。
- 138 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:02
- 「安倍先生が渡せばいいのに」
いつもは『安倍さん』と呼んでいるが一応学校の中では先生をつけている。
ひとみからは毎日散々ノロケ話を聞かされてるから
『安倍なつみ』と言う人物の事はよく知っている。
だから今更隠そうとしたって無駄なんだ。
「よっすぃー今部活でしょ?なっちが行くと…ね…」
「あぁ、きっと部活どころじゃなくなるでしょうねぇ」
「だから、お願い!今日は会う約束もしてないから…でも早めに渡しておきたくて…」
「いいですよ、それより」
「ん?」
- 139 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:03
-
「保田先生、会議に行きましたけど安倍先生は行かなくていいんですか?」
「………え?会議…?」
「ええ」
「…うそーーーー!??ヤバイ!どうしよう!藤本!」
「や、どうしようと言われても…早く行った方がいいんじゃないですか?」
「あああああ…!じゃあ!それよろしくね!!」
なつみは大急ぎで走り、数メートル走った後、足がもつれて転んでいた。
その様子に少し噴出し美貴は体育館へと向かった。
- 140 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:03
- 体育館までの道のりが遠かった。
入り口付近には大量の人。みんな黄色い声を上げている。
そのみんなの注目の的は白いボールを力いっぱい叩きつけるひとみだ。
人だかりを見てげっそりした美貴はなるべく目立たないように人の間を縫うように進んだ。
が。
「あ!藤本先輩だ!!」
「え!?うそ!?どこどこ!??」
「………げ」
1人の生徒が美貴に気がつくと、ひとみを見ていたみんなが一斉に美貴の方へ振り返る。
きゃあきゃあ、と言う歓声が一気に別の場所から聞こえる事を不審に思ったひとみが出入り口を見ると
人にもみくちゃにされてる美貴の姿が目に入り、
苦笑いしながらひとみを見る美貴を見て眉間にしわを寄せた。
- 141 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:04
- 「…やっぱミキティの方が人気じゃんかよ」
ぼそりと愚痴り、練習を中断してひとみは美貴の方へ走って行くと、
ひとみと美貴がいる事によって出入り口はパニック状態に陥った。
ひとみはなんとか美貴の手を引っ張り、体育館の中へと入った。
その瞬間、気をきかせた後輩達が体育館の扉を閉めたのでファンの子達が中に入ってくる事はなかった。
しかし、扉の向こうでは激しくブーイングが聞こえ、暴動が起こりそうだ。
「……くっはぁ、すごいね…すっごい手とか引っ張られたり顔とか触られたり。
普段廊下歩いてても何もされないのにここではなんでもありだねぇ」
「……藤 本 さ ん は 人 気 で す か ら ね ! !」
「…なーに?まだ言ってんの?」
「みんなさ、うちの事見てたのにさ!誰かさんのせいでさ!
ここでは唯一みんなうちの事見てくれるのにさ!!」
「…ふーん、そんな事言うなら美貴帰ろうかなぁー」
「帰れー帰れー」
「安倍さんからよっすぃー宛てに預かりモノがあるんだけどなー帰れって言われちゃあなー」
「帰らないで下さい」
がしっと美貴の腕にすがりつくひとみ。
美貴はそれをぶんぶんと振り払い、笑いながらサッと封筒を見せた。
- 142 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:05
- 「これ、安倍さんから。中身は知らないけど、ちゃんと渡したからね」
「ありがとうございます!美貴様!!美貴帝!」
「…美貴様ってやめてよ」
あと美貴帝ってなんだよ!
ひとみは封筒を手に取るやいなや速攻で封を開けた。
無言のまま目を見開いて見ている。
「…ねぇ、部活はいいの?みんな待っ…」
「いいの!休憩!」
「そう…」
周りを見ると他のバレー部員や体育館を使ってる他の部員に思いっきり注目されている。
居たたまれなくなった美貴は封筒の中に入ってたであろう手紙を真剣に読むひとみを引っ張り、
体育館の倉庫へ向かった。
- 143 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:05
- 手紙を読み終わったひとみはニヤニヤしながら美貴を見ていた。
「…なに?そのいや〜な目線は。企んでるの?」
「企んでるって…まぁ、読んで、これ」
「え?読んでいいの?」
ひとみが頷きながら手紙を差し出したのでそれを手に取り読んでみた。
【よっすぃーへ
テストお疲れ様。頑張ったからなっちからのプレゼント。
遊園地のチケットです!…て言っても貰い物なんだけどね。
しかも期限が明日までなんだ。明日は日曜日だし一緒に行きたいなぁと思って…
「…あ、デートか。良かったねぇ」
「続き読んでみてよ」
「続き?」
でも2人で行くと誰かに見られた時ばれちゃうからなっち達の事を知ってる誰か、
あと2人誘ってください。チケットは3枚入れておくから2人に渡してね。
詳しい時間とかは夜に電話します。 なっち】
ひとみはニヤニヤしたまま美貴の肩に手を回した。
- 144 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:06
- 「…って事でミキティよろしく〜」
「…はぁ!?待って!美貴が行くの?!」
「だってうちらの仲知ってるじゃ〜ん?」
「そうだけど…」
はっきり言ってカップルの中に入るのなんて嫌なんだけど。
「…あ、そうだ!亜弥ちゃんと後藤さん誘えば?
ダブルデートとか…」
「嫌だよ、あんなうるさいの」
「…じゃあ、まこっちゃんと愛ちゃんは…」
「高橋は別にいいんだけど小川がうるさい。そもそもあの2人って付き合ってるの?」
「……さぁ」
「問題はあと1人なんだよねぇ〜、あ、梨華ちゃんは?
…って梨華ちゃんはヤバイ?」
「…うーん、やばくないけど梨華ちゃんは多分…」
それどころじゃないんじゃないかなぁ…。
美貴がうーん、と唸ってるとひとみはポンッと手を鳴らした。
それにびくっとして美貴は身を引いた。
- 145 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:07
- 「そうだ!紺野がいるじゃん!紺野!」
「え!紺野さん!?」
「え?嫌なの?紺野は嫌?紺野の事嫌い?」
「…別にそんな事言ってないじゃん」
むっとする美貴を見てひとみはへらっと笑って2枚チケットを美貴に渡した。
「じゃあ渡しといて!そろそろ練習始めないと…時間とか決まったらメールするから!」
「え!?ちょ…待ってよ!」
体育倉庫に置き去りになった美貴。
梨華との問題が解決しても振り回されるのには変わらないようだ。
振り回される、という点では美貴とあさ美は一緒だった。
- 146 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:07
- ────あーあ…。
右手に2枚のチケットを持って美貴はため息をついた。
確かに2人の仲を知ってるのは生徒会役員と真希くらいだった。
だからしょうがないといえばしょうがないんだけど。
そもそもなんでわざわざ封筒に入れて渡すなんて面倒な事したんだろう?
電話で済むのに。
次の日にでもチケットなんか渡せばいい話なのに。
「…あ」
わかった。
電話なら「行かない」と言い張れば行かなくていい。
チケットも持ってないわけだしなんら問題はない。
でもチケットが今手の中にあるという事は行かなければいけない。
行かなければチケットが無駄になってしまう。
ひとみが強引な性格なのはなつみも知っている。
『断らせないように誘う』という強引な事がひとみに出来る事を知っている。
「やられた…」
美貴はガックシと肩を落とした。
- 147 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:08
- ────夜。
美貴は携帯を右手に持ち、悩んでいた。
あまり話した事がない美貴とあさ美。
なのにいきなり遊園地になんか誘っていいものなのだろうか?
しかも明日と言う急な要求。
自分だったら急に明日どっか行こう、と言われたらよほど魅力がない限り行く気にはなれない。
大体今回だって行きたくないのだが。
「…きっと紺野さんも急だから断るよね」
あさ美が行かないと言えば自分も行かなくてもいいかも、と淡い期待を抱きつつ携帯のボタンを押した。
4、5回鳴った後、向こうから声が聞こえた。
『…は、はい』
「あ、紺野さん?…えっと、藤本ですけど、今時間いい?」
『はい、だ、大丈夫です』
「え、と急なんだけど…明日遊園地に行かない…?」
『…遊園地ですか…、…ええええええええ!?????ゆ、ゆうえんち!?』
物凄い驚かれてる。
それはそうだろう。あまり親しくない人に遊園地に行こう、なんて言われてるんだから。
- 148 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:08
- 「と、言っても2人でじゃないんだけど…」
これまでの経緯を美貴はあさ美に話した。
すると受話器の向こう側はシーンと静まり返り、困った美貴はなるべく明るく声を発した。
「明日とか言って急だし、紺野さんも用あるだろうしダメだったら全然断っても大丈夫だから」
そして断りの返事を待っていると。
『……行きます!』
「…ええ?!」
美貴が驚き、声を上げると申し訳なさそうな小さな声であさ美は続けた。
『…遊園地、行きます。明日特に用ないですから…。
それに断ったら安倍先生と吉澤さんに申し訳ないし…』
「べ、別にあの2人の事だったら気にしなくてもいいと思うんだけど…」
『あの、私、大丈夫です。え、っと…時間とかは…』
「…え、ああ!時間とか決まったらメールでもするから…」
『はい、わかりました。それでは、…おやすみなさい』
電話は切れて呆然と立ち尽くす美貴。
- 149 名前:FIVE! 投稿日:2003/09/22(月) 22:09
- するとすぐにメールが届いた。
名前欄には『よっすぃー』の文字。
【明日10時に駅!来なかったらどうなるかわかってるよね?】
「…結局行くしかないのか」
なんであさ美が了承したかわからないけど。
でも先輩が誘ってるんだから断れないのも無理はないかもしれない。
「悪い事しちゃったかなぁ…」
美貴はあさ美にメールを送り、眠りについた。
- 150 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/09/22(月) 22:16
- 企画物に参加していたらものっすごい期間が開いてしまいました(殴
しかもまたストックがやばいという…。スミマセン川つv T从
132>名無しどくしゃ様
えっと今回紺野さん来ませんでした(w
次の更新では多分(w
作者は藤吉の親友っぽい空気が大好きです。
133>チップ様
キタ━━━━━━\(T▽T)/━━━━━━━!!!!
まままままじでつか!
しかもチップさんって結構最初の頃から私のスレに書き込みをして下さってましたよね…。
うあー、感激です(w
おがたかマンセー!
- 151 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/09/22(月) 22:27
- 更新ochi
- 152 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/09/23(火) 09:53
- 紺野さんやっとクル*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜ !!!!!
しかも遊園地(;´Д`)ハァハァ
興奮止まらないYO!
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/27(土) 01:07
- みきこんみきこん(w
- 154 名前:チップ 投稿日:2003/09/27(土) 03:10
- とうとうキタ!
よっす…いや、なっちグッジョブ!
遊園地楽しみにしてます。
- 155 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:54
- ────どうしよう、これってデートなのかも。
っていうかデートって思ってもいいのかな?
あさ美は洋服を選びながらも頭の中はその事でいっぱいだった。
美貴から聞いた通り2人きりではないものの、学校以外で会うのは初めてだ。
それに、初めて美貴から電話がかかってきた。
メールすらする事もなかったのに美貴が、美貴の声が携帯から。
あさ美は携帯を手に取りじっと見つめる。
なんだか美貴の声がしたというだけでとても愛しいものに見える。
「…あ、もうすぐ時間だ…。はやくでなきゃ…」
お気に入りの服と買ったきり履いてないお気に入りの靴。
今までそんなに気合入れて出かける事なんてなかったから少し埃をかぶってる。
苦笑いしながら埃を払い、それに袖を通した。
部屋から出る前に鏡で確認してあさ美は駅まで走った。
- 156 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:54
- その途中。
「あ、あさ美ちゃんだ」
「愛ちゃん!どうしてここに?」
愛の家は確か二駅離れた場所にあるはず。
「…秘密。それより急いでどこ行くん?」
「えっと…」
これまでの経緯を説明すると愛はそっかー、と軽く頷いた。
「あたしに相談なんかしなくても上手いこと行ってるんだねぇ」
「…え!?」
「うんうん、なんでもない。じゃああたし行くね?」
あさ美にひらひらと手を振って、愛が向かう先は、たぶん。
あさ美はハッとして時計を見た。
「やばい…」
家から出た時よりももっと早く走る羽目になってしまった。
- 157 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:55
- 駅に着くときょろきょろと辺りを見回しているなつみの姿が目に映った。
壁の陰に隠れたり、いきなりしゃがみ込んだり。
麻琴と言いなつみと言い、変な行動をする人がまわりに多い。
その行動に疑問に思いながらもあさ美はなつみの元へ走っていった。
「おはようございます!安倍先生」
「ひゃあ!!!びびびびっくりした!ここ紺野驚かさないでよ…」
「…何でそんなに挙動不審なんですか?」
「…さっき保田先生がこの辺りをうろうろしてて…見つかったらまた愚痴聞かされちゃう…」
「…休みでも愚痴聞かされるのは嫌ですね…」
「でしょ…。あ、そうだ。ハイこれ、切符先に買っておいたから」
「あ、すいません。お金…」
「良いよこれくらい。…それより場所移動しない…?」
とりあえず目立たないように2人は駅の隅っこの方でひとみと美貴を待った。
- 158 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:55
- 「ごめんね、なんかつき合わせちゃったみたいでさぁ」
「いいえ、私も暇だったので…」
「こ、紺野は知ってるんだもんねぇ…なっち達の事…」
「はぁ…」
というかなんというかラブシーン(?)みたいのも聴いてるんですが、とは言わない方がいいだろう。
「や、やっぱり驚く?生徒と先生がそーいう仲だと…」
「初めは驚きましたけど…別に…恋愛は自由だと思うので…」
「そ、そうだよね!うん!そう!紺野良い事言った!」
1人でうんうんと頷きながら納得しているなつみを見てあさ美は、
いろいろ苦労してるんだなぁ、と少し同情した。
相手が…相手だし…。
なんて言ったら怒られそうだ。
- 159 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:56
- 時計を見ると待ち合わせ時間から10分過ぎていた。
「こないねぇ」
「…ですね」
「電話してみよっか?」
はい、と返事しようとしてあさ美がなつみの方を見ると
目線の先に全力疾走してくるひとみと美貴の姿が目に入った。
後ろを気にしながら真っ直ぐこちらに向かっている。
「あ、安倍先生…あれ…」
「ん?」
右手に携帯を握ったままあさ美の指差した方を見た。
「なっち〜〜〜!!!」
「よ、よっすぃー!?」
その瞬間ひとみはなつみの手を握り、美貴はあさ美の手を握る。
「ふ、藤本さん!?」
「紺野さん!と、とりあえず説明は後で!!」
「なっち!切符は!?」
「か、買ったよ!」
「ナイス!さすがなっち!」
2人は引っ張って、2人は引っ張られて。
- 160 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:56
- 改札を通り、階段を駆け上がりホームに向かうとようやく荒い呼吸をしながらも立ち止まった。
「な…っ、なんだべ…よっす…ハァ…」
「ハァ…ひ、久しぶりにこんなに全力疾走したよ…」
「…元はといえば…っ、よっす…のせいでしょ!?」
「…ハァ…な、何があったんですか…?」
落ち着かせるように深呼吸をした後、ひとみが口を開いた。
「…実はさ、芸能界に興味ありませんか?とか言われちゃって」
「げ、芸能界!?」
「断ってるのにしつこくてさァ」
そこまで言うと横から美貴が話し始める。
「変な人に絡まれてるなぁと思って助けに行ったら美貴まで勧誘されちゃって…」
「それで、2人で全力疾走で逃げてきた。そしたらまだ追ってくるでやんの。
しつこいっつーの!」
確かに2人は綺麗だしかわいいし、スカウトされるのもわかるけど
実際スカウトされた人を初めて見たあさ美は目を丸くした。
ひとみは背が高いし、男の子のような女の子のような中性的で誰の目も引く。
美貴は背はあまりないものの、凛としてて整った顔立ちで魅力的。
…それに引き換え自分はおどおどしてるし、いつも涙目だし。
- 161 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:57
- 「ところでさァ」
ひとみはニヤニヤしながら美貴とあさ美を見た。
2人は?マークを浮かべながらひとみを見る。
「いつまで手を繋いでるのかな?キミ達は?ん?」
そう言われて目線を落とすと硬く繋がれたままの2人の手。
あさ美は顔を真っ赤にして美貴の手を振り解いた。
「す、すみません!!あ、あの私…!」
「あ、や、手握ったのは美貴の方だし…ごめんね?」
美貴はポリポリと頭を掻いて照れくさそうに笑った。
あ…嫌な印象与えちゃったかも…。
振りほどく事は、なかったよね…。
「じゃーまぁ行きますか!遊園地へ!」
ひとみはなつみの手を握ったまま電車へと乗り込んだ。
その後を微妙な空気のまま2人は乗り込む。
この後、一体どうなってしまうのかと不安を抱えながら。
- 162 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:57
- 遊園地に着くと結構混雑していた。
ひとみとなつみは電車に乗ってたときからずっと手を繋いでいる。
その様子をあさ美はチラチラ見ながら頬を赤くしていた。
というかばれたくないのなら手なんて繋がなければいいのではないのかという疑問。
「じゃーあたしチケット買ってくるよ。みんなで行くのも邪魔くさいしね」
「なっちもいくべさ」
「じゃ、じゃあ美貴も…」
「じゃあ…私も…」
「…や、キミ達うちの話を聞いてましたか?邪 魔 だっつってんの!
なっちはいいとしてミキティ達は待っててよ」
ひとみはそう言うとなつみを連れてチケット売り場の列へと向かった。
- 163 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:57
- ポツンと残された2人。
さっきの一件があったせいかなんとなく2人きりが気まずい。
あさ美はちらりと美貴の様子を見ると両腕を上げて伸びをしながらあくびをしていた。
その姿があまりにも豪快で、あさ美に笑みがこぼれた。
美貴は笑ってるあさ美を見て苦笑した。
「…実はね、寝坊したんだ。間に合わないと思って走ってたらよっすぃーも前を走ってた。
あいつも寝坊したんだよ。だって寝癖隠すためにわざわざ帽子買ってたんだから」
あれあれ、とひとみの方を指差す美貴。
確かにまだ新しそうな帽子をひとみはかぶっている。
よく目を凝らしてみるとなんかタグが…。
「アレ取ると凄い寝癖」
「あはは」
美貴とあさ美が自分の方を見てると気がついたひとみ。
自分が笑われてるとも知らずに大きく手を振っている。
- 164 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:58
- 「アホだ、あいつ」
「藤本さんと吉澤さんって仲良いですよね」
「…あー、なんか似てるんだよねぇ。おっさんくさいとことか」
美貴は嫌そうな顔をしてひとみに向かってしっしっ、と手をヒラヒラさせながら答えた。
それを見てあさ美、そしてひとみの隣に居たなつみも笑った。
「…なんか、悪かったね。急に誘ってさ、断ろうと思えば断れたんだけど…」
「全然!…暇だったんですってば!」
グイッと体を美貴に近づけ力説するあさ美。
それに少し驚いたように身を引いた美貴。
慌ててあさ美が離れると美貴は苦笑した。
「あはは、じゃあ折角だから今日は楽しもうか」
「…はい!」
そんな話をしているとチケットを持った2人が戻ってきた。
- 165 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/19(日) 20:58
- 「ほい、チケット。早くはいろーぜぇー」
「いこいこ?」
4人は入場ゲートを潜り抜け、場内に入った。
「早速だけど」
「え?」
ひとみ達の前を歩いていた美貴とあさ美。
ひとみの言葉に振り向いた瞬間、後ろから追い越された。
「こっからは別行動ってコトでー!じゃーねーん」
「……ハァ!?ちょっと!」
ひとみとなつみは手を繋いでアトラクションの中へと消えていった。
唖然として右手を前に出して立ち尽くす美貴。
何が起こったのか状況を把握できないあさ美。
「…最初から別行動するんだったら美貴達別に要らないじゃん…」
力なく呟いた美貴の言葉に深く同意したあさ美だった。
- 166 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/19(日) 21:03
- 一ヶ月近いですね…。
しかも更新量も少なく…。
_| ̄|○<ごめんなさい。
152>名無しどくしゃ様
紺野さんきました(w
さてさてどうしようか(w
153>名無し読者様
みきこんみきこん(ww
154>チップ様
ファンだなんて…_| ̄|○
遊園地はいろいろな事が起こりそうですよねぇ…(謎
- 167 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/19(日) 21:05
- 更新ochi
- 168 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/19(日) 23:10
- 更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
みきこん(;´Д`)ハァハァ
期待しちゃいますよニヤニヤ
- 169 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:13
-
「…これでよかったんだべ?」
「オッケオッケー!作戦成功、してやったり!あとは2人が盛り上がってくれれば…」
満面の笑みを浮かべながらVサインをするひとみとちょっと呆れ顔のなつみ。
絶叫系のアトラクションの列に並びながら2人は話していた。
昨日ひとみに電話する前はちゃんと4人で遊ぶつもりだった。
最初にどれに乗ろうか、とかお昼はどこで食べようか、とかいろいろ考えていた。
一番年上の癖に一番わくわくしてわざわざアトラクションガイドなるものまで買って。
でも電話の最中ひとみはこんな事を言ってきたのだ。
『なっち!あの2人、くっついたらおもしろくない?』
最初は驚いた。電話を握る手にも力が入った。
しかし、2人ってそーゆう仲だったの!?と聞くとまだだね、と答えたので力が抜けた。
- 170 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:14
- 美貴とあさ美。
美貴がなつみの事を良く知ってるように、なつみも美貴の事は良く知っていた。
クールそうに見えて人懐っこい。しっかりしてるようで適当。
血なんて全然繋がってないのに自分と似ている容姿はなんとなく親近感を覚えた。
美貴と梨華が複雑な関係だと言う事もひとみから聞いていた。
信じられなかったけど、ひとみの真剣にその話をするので事実なんだな、と少し心を痛めていた。
その問題も最近解決されたようで最近の美貴の表情が明るくなった事に、
なつみも心底ホッとしていた。
少し前までは笑わない、笑っても愛想笑いしかしなかったのに廊下であった時、
優しく、無理のない笑顔だった。
「でもさぁ、…いきなり2人っきりって言うのもあれなんじゃないかな?」
「いや、うちが思うに紺野はミキティの事好きだね!なにかとミキティの事気にしてたし、
ミキティも紺野の事気になってると思う」
- 171 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:15
- ひとみはかぶっていた帽子を人差し指にかけてくるくると回す。
列が動き出したのでその流れに乗って進んだ。
前を歩くひとみの後ろ頭を見ると髪がぴょこんとはねていた。
「ふふっ…」
「ん?どしたの?」
「よっすぃー、寝坊したべ?」
「え…?なんでわかんの?」
「うしろうしろ」
なつみは背伸びをして手を伸ばし、はねている髪を触った。
ひとみはあ!と思い出したように声を上げたが自ら折角隠すために買った帽子を取ってばらしてしまった為隠しようがない。
それよりもふわっと優しく笑うなつみを見てドキッとした。
いつもの笑顔も好きだけど、ふとした瞬間に出る笑顔にはめっぽう弱い。
「…だってさー、楽しみだったから寝れなくてさー…。
髪も直してこようと思ったんだけど寝坊したし…遅れるわけにも行かないし」
いじけて口を尖らせながら呟き、なつみの手を握った。
それはとてもさりげない行動でいつもと同じ行動。
しかしそれに驚いたなつみはすぐに手を振り解く。
その行動にひとみは顔をしかめる。
- 172 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:15
- 「…なんで」
「だ、だってうちの生徒がいるかもしれないべ!」
「いいじゃん、別に。先生と生徒が一緒に遊んでる時点で怪しいでしょ?」
「それは…そうだけど…」
口ごもるなつみ。
「学校の近くでだって手ぇ繋いでるんだし、…今更じゃない?」
「…やっぱりさ、周りの目とか気になるし…」
「…ふーん、まぁ別にいいけど」
ぷいっとどこかを見てしまったひとみになつみはなんて声を掛けてよいのかわからず
俯いて黙り込んだ。
さっきあさ美に2人の関係を聞いて【恋愛は自由】と答えられ、納得したはずなのに心のどこかでまだ気にしてる。
考えすぎの性格は自分の短所だ。
それでも列は動いていく。
無言のまま歩く2人からはラブラブな様子は一切見当たらない。
2人の関係をとても気にするなつみと全く気にしないひとみの間に暗雲が立ち込めてきた。
- 173 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:15
-
────場所は変わって置いてきぼりにされたこの2人。
「はぁ…、どうしよっか。実は美貴ここ来るの初めてでさ、
どこに何があるかとか全然わかんないんだよね。紺野さんは来た事ある?」
「前にまこっちゃんときた事があるので大体は…」
「そっか、じゃあ紺野さんの乗りたい乗り物に行こう?ついて行くから」
入場口に置いてあった場内パンフレットをペラペラめくりながら歩いた。
けれど後ろからついてくる気配がない。
振り向くと美貴は青い顔をしながらいわゆる絶叫系の乗り物を見上げていた。
確かこの遊園地の中で一番の怖さ。
前回麻琴と来た時は3回は乗った。
「あ、あれ乗ります?」
「…えええ!?…あれ、乗りたい?紺野さん…」
「い、いえ、藤本さんが嫌なら…」
「紺野さんが…乗りたいんだったら…行こうか」
美貴は背中に変な汗を掻きながら歩き出した。
あさ美もその後をついていく。
- 174 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:16
- 順番が近づくにつれ美貴の様子がおかしくなっていく。
落ち着きがなくなり、ため息をついたり。
…もしかして。
あさ美は思ってた事を口に出した。
「藤本さん…こういう乗り物苦手なんじゃないですか?」
「え、そんな事ないよ!」
あきらかに笑ってない笑顔で、むしろ焦ってるような感じで。
誰が見たってそれは一目瞭然。
そして無常にも番が来た。よりにもよって一番前。
美貴は自分の運のなさを呪った。
ガシャンと安全バーが下ろされ、もう逃げられない。
と言ってもあさ美が隣にいる以上逃げるなんてかっこ悪い。
ジェットコースターが怖くて逃げ出す先輩なんてかっこ悪すぎる。
しっかりと安全バーに?まり、目は一点を見つめる。
足はしっかりと踏ん張って、お腹にも力を入れて。
ガタン、と動き出し、コースターは空を目指して昇りだした。
- 175 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:16
- 「あ、ああ…」
「藤本さん…?」
横を見ると声に鳴らない声を出している美貴の姿。
恥ずかしかったけど思い切って言ってみた。
「手、繋ぎます…?」
あさ美の言葉に口元をひきつらせて笑い、手を差し出した。
片手はしっかりとバーを掴み、もう片手はあさ美の手を掴む。
美貴の汗ばんでる手にあさ美は笑った。
その時にはもう頂上まで来ていて────。
「うわああああああああああああああああああ!!!!」
美貴の悲鳴は大空に鳴り響いた。
やがて悲鳴は聞こえなくなった。
どうやら声が出ないほどらしい。
あさ美もきゃーきゃー悲鳴を上げながらも、美貴の方をちらっと見ると目を閉じて必死に耐えていた。
…やっぱり苦手なんだ。
- 176 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:17
- 速度が遅くなり、元いた場所へと到着する。
「おもしろかったですねぇ〜…、…藤本さん?」
「…ん……」
ぐったりとして声も出ない様子。
バーが上がり、立ち上がろうとすると握られた手がついてこない。
ずっと座ったままの美貴の手を少し強く握ってみた。
「…こ………」
「…い、痛かったですか?」
「…ごめん…、立てないから…手、貸して…起こして…」
真っ青だった顔は真っ赤になって疲れたような顔は苦笑いへと変わった。
「…やっぱり苦手だったんじゃないですか」
「……うん、まぁ、ね」
場内の至る所に置いてあるベンチに腰掛けて真相を知る。
というかもう知ってたけど。
繋がれてた手は歩いてるうちに自然と離れた。
- 177 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:17
- 「ダメそうなのは無理しなくてもいいですよ?」
「…だってさ、折角来たのに、やっぱ乗りたいでしょ?あーいうの…」
美貴は先ほど乗ったジェットコースターに目をやる。
が、すぐに目を逸らす。
どうやら相当怖かったようだ。
「もっと2人とも楽しめるものに乗りましょう?折角来たんだから楽しみたいですよ」
「…うん、そうだね。納得」
美貴はパンフレットを取り出し大丈夫そうなのを探す。
しかし、この遊園地はいわゆる絶叫系をウリにした遊園地な為ほとんどダメそうだ。
本当に何の為にここに来たのか意味がわからない。
協力しようとした親友には逃げられるは後輩にはかっこ悪いとこ見られるわ。
軽く凹んだ。
- 178 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:18
- 「…それにしても、藤本さんクールだからジェットコースターなんて動じないと思ってたのに…
なんか違う一面が見れて嬉しいです」
「…かっこ悪いっしょ」
「そんな事ないですよ!」
「亜弥ちゃんにもよくからかわれるんだよね、ここじゃなくてさ、違う遊園地行った時も今と同じで。
すっげー笑われて、今でもネタにされてる」
「……亜弥ちゃんとも遊園地とか行くんですね」
急にトーンダウンされる声。
自分しか見た事ない一面だと思って少し喜んだけど他にも見てる人がいるんだ、と
ショックなような残念な気持ちになった。
「え、ん、まぁ、従姉妹だしね。それに遊園地に行ったのなんて何年も前だし。
亜弥ちゃんなんて今恋人しか見えてないからここんとこ遊んでないしね」
「あ、ごっちんさんですよね、確か」
真顔で『ごっちんさん』なんて言うあさ美を見て美貴は笑った。
- 179 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:18
- 「あは、そうそう、ごっちんさん」
笑ってハッと大事な事に気がつく。
「そ、それより次何に乗りたい?時間がなくなるとあんまり乗れなくなるかも…」
「…別に乗れなくてもいいです。藤本さんとお話がしたいです…、ダメですか…?」
少し涙目で首を傾げて上目遣いなんて反則すぎる。
無意識でやってるんだろうか、それとも…誘ってる…?
美貴の心臓はドクドクと大きく振動している。
そうだ。
初めて会った時目を奪われたのはきっと。
目を逸らせなかった。いや、逸らせる事なんて不可能だった。
あの時はごまかして隠した。一目ぼれなんてありえないと思ってたし。
なによりあの時の自分は恋だとか考えられる余裕がなくてこの気持ちがなんなのかさえわからなかった。
でも今気がついた。
美貴はきっとこの目の前にいる女の子の事が。
- 180 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:20
- 「こ、紺野さん…」
「…はい?」
「あのさ…美貴……」
不思議そうな顔をしながら美貴の言葉を待つあさ美。
ジェットコースターが怖くて起き上がれなくてかっこ悪い姿を晒したばかりだけど、
今なら言えそうな気がする。
「も、もしかしたら、紺野さんの事…す……」
あともう少しの所で思い出した。今日の自分は運が悪い。
なんか嫌なものが視界に入った。
それを認識する前に体は大きく揺らぐ。
- 181 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:21
- 「ミキティ!帰るぞ!!」
「…は?え…?よっすぃー?!」
「紺野も帰るベさ!!」
「あ、安倍先生…?」
両側からおのおの引っ張られて美貴とあさ美は離れてしまう。
「うちはミキティとラブラブで帰るから!なっちなんかよりも美人だし〜!!」
「…はぁ!?」
「なっちだって紺野と帰るベさ!紺野は真面目だしどっかの誰かさんみたいにお調子者じゃないし!」
「…ええ?」
全く自体が飲み込めない2人。
美貴に至っては告白のチャンスを見事にぶち壊された。
いきなりどっか行ったと思ったらいきなり現れて何故か喧嘩している。
- 182 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/28(火) 15:22
- 目の前のあさ美も困惑した表情をしている。
きっと自分も同じ顔をしているんだろう。
「じゃあね!!」
美貴はひとみに、あさ美はなつみに引っ張られて
それからお互い会う事はなかった。
初めてのデート(?)
邪魔者のせいで失敗。
- 183 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/28(火) 15:28
- 影の薄くなったCPが続出しそうな気がしてアレですね…。
あやごまとかどうなってるんでしょうか。
168>名無しどくしゃ様
みきこん来ました。
やっとなんとなくこの人たち動き出した気がします…。
周りの人の個性が強すぎていまいち出てこれない2人…。
おがたかは…フフフ。
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/28(火) 21:09
- 更新乙です。
やっぱみきこん良いですね^^
紺ちゃん推しとしてはたまらない限りです。
何ならずっとみきこんでも・・・w
次の更新も楽しみに待ってます。
- 185 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/28(火) 22:18
- 美貴様モヂモヂ━━━;´Д`━━━!!
あぁ萌え萌えだ萌え萌え。最高。
萌えるし、焦らされるし(w
ま、まこあいクルの?クルの?(;´Д`)
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/30(木) 14:54
- みきこんも気になるがなちよしも気になる。
- 187 名前:モテごまlove 投稿日:2003/10/31(金) 12:32
- あやごまがもっと読みたい。
- 188 名前:从‘ 。‘从 投稿日:从‘ 。‘从
- 从‘ 。‘从
- 189 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/10/31(金) 20:59
- ヽ(`Д´)ノギョウシャ!
- 190 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:43
-
「ここ、か」
迷いながらも辿り着いたのは麻琴の家。
ちょうどクラスメイトに麻琴と家が近い友達がいたので教えてもらったのだ。
遊びに行くとか、何にも言ってないけどなんとなく暇だったから来てみた。とか、本当は違うけど。
決してストーカーじゃないから!!誤解しないように。
家を見上げてみたもののいきなり押しかけるのもどうかと思ったのでそのまま通り過ぎた。
あさ美に言われた後、愛は麻琴に電話を掛けていた。
電話に出た時は凄く暗くて本当にショック受けてたんだなぁと思って、不謹慎だけど嬉しかった。
後をつけてた事知ってたと言うと電話の向こうでとても困惑していた。
『ごめん…後つけたりして…』
電話の向こうで謝ってる麻琴の姿が浮かんできて頬が緩む。
その後、愛は圭織の事を説明した。
好きは好きだけどお姉さんみたいで好きだという事を。
ちゃんと相手には恋人がいるという事を。
すると声はたちまち明るくなった。
『そっかー!…そうだったのかァ!…あははっ!』
テンションの高くなった麻琴と少し話し、その時はそれで電話を切った。
- 191 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:44
- それから次の日もその次の日もいつものように愛のクラスへと麻琴は遊びに来るようになった。
来なくなった事をほんの少しだけ気になっていた亜弥もいつもの光景に戻ったので、
安心して真希とのメールを楽しめるようになった。
『ほんと、心配してたんだよぉ、急にこなくなったからさぁ』
『でっへっへ、スンマセン!』
『…麻琴、謝らなくていいよ。亜弥ちゃん全然麻琴の事気にしてなかったから』
愛の言葉にヒドーイ、と言い頬を膨らませて、亜弥はまた携帯とにらめっこをしている。
笑ってる麻琴。
怒りながらも笑ってる亜弥。
笑ってるけど笑えてない愛。
愛はまだ麻琴に答えを出していなかった。
本当の事を言うと、今日は答えを出そうと麻琴の家まできた。
今から行く、なんて電話を掛けたら余計緊張しそうだからあえて連絡しなかったけど、
ここからどうにも進めない。
- 192 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:44
- 少し歩くと小さな公園が目に入ったのでそこで少し休むことにした。
ブランコまで歩き、座って少し揺らす。
キイキイ、と言う音が耳に響いてもやもやしてた心を更にかき乱した。
「…はぁ、なにやってんやろ、あたし」
初めは好かれていた。
でも今は自分も好いている。
麻琴は最初から愛の事が好きで、愛も麻琴の事が好きなのだから両想いなのだ。
別に悩むこともない。
きっと言えばすぐに付き合う事になるだろう。
でも悩んでいた。
なぜなら、自分は誰とも付き合った経験がないから。
あまり恋愛にも興味がなかった愛は好きな人もいなかったから告白する事だってなかった。
それに告白される事もなかった。
- 193 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:44
- 好きだけどどうしたらいいかわからない。
好きだから、どうしたらいいかわからない。
少し強めに地面を蹴る。
キイ、と大きな音を鳴らし、体は空へ近づいた。
こんな時、亜弥を羨ましく思う。
恋愛一筋で生きてる様な彼女ならきっとこんな事では悩まないだろう。
「押して押して押しまくるタイプだからなぁ」
大きく足を振り上げ高く上がる。
視界に見えるのは空、前の道、地面。
空、前の道、地面。空…。
前の道を誰かが歩いている。
Tシャツにジーンズというラフな格好で、右手にはコンビニの袋。
愛の存在など気がつくはずもなく、目の前を通り過ぎようとしている。
- 194 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:45
- 「あ…」
はやく声を掛けないと行ってしまう。
でもそこでまたためらってしまう。
頭の中に2人の『タカハシアイ』が現れる。
「声を掛けて答えを出して付き合うんでしょう?好きだったら言った方がいいよ!」
「このままの関係の方が良いんじゃないの?付き合ってダメになったら気まずいでしょ」
ブランコは揺れる。心も揺れる。頭の中は混乱中。
でも自然と口からは言葉が出た。
「…麻琴っ!」
名前を呼ばれ、振り向くと誰かがブランコに乗っていた。
意外な人物だった事に麻琴は目を丸くして、向いてた体を方向転換し、
愛の元へと走ってきた。
「…な、なんで!?愛ちゃんこんなとこまで来て…ブランコ乗るの好きなの?!」
「……そんな訳ないでしょ」
次第に振りが弱くなるブランコと加速する心臓の音はあまりにも食い違っていた。
- 195 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:45
- 完全にブランコが止まると麻琴は口を開いた。
「どうしたの…?亜弥ちゃんの家ってこの辺?」
「なんで亜弥ちゃんが出てくるの」
「だって、誰かの家に遊びに来たのかなぁって思って。亜弥ちゃんちこの辺なのかなって」
「…この辺だったら麻琴と亜弥ちゃん同じ中学になっちゃうでしょうが」
「あ、そっか」
なんて鈍感なんだろうと愛は思った。
しかし彼女は気がついていない。自分も負けないくらい鈍感な事を。
目の前で真剣に何故今ここに愛がいるのか考えてる麻琴。口あいてる。
でもわかんなかったようであは、とごまかすように笑った。
「…何買ってきたの?」
「へ?」
「コンビニ」
袋を指差すと麻琴は両手で袋を開けて中を見せた。
中には飴やらガムやらチョコやらたくさん入っていた。
「明日学校で愛ちゃんと食べようと思ってー」
「…こんなにたくさん?」
「食べれなかったら次の日でもいいでしょ?」
ニコニコ笑って話す麻琴。
- 196 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:46
- 今麻琴はどう思ってるんだろう。
愛が麻琴の気持ちに気がついてるという事をきっと麻琴も知ってるだろう。
それなのに返事をしないで、今まで通りで。
そのうちいつまでも振り向かない自分の事を嫌いになってしまうかもしれない。
そうしたらきっと後悔する。きっと、じゃない。絶対。
「…麻琴。なんであたしがここにいると思う?」
「えー?なんでだろう」
「あのね……」
言いかけて言葉が詰まる。喉がグゥ、っと絞められる感じがした。
恋愛ってこんなに苦しいものなのか。
片想いじゃないのに、実質両想いなのに。
初めての気持ちに愛は戸惑いを隠せなくなる。
「愛ちゃん?」
心配そうに顔を覗き込む麻琴。
顔が、近い。呼吸も感じられるほどの距離で。
- 197 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:46
- 「……………好き」
周りには聞こえない。麻琴にだけ聞こえる大きさで。
心臓は壊れるくらい動いて、なんか恥ずかしくて逃げ出したい。
麻琴に呟きは届いたようで一瞬目を大きくさせ、右手のコンビニ袋は地面へと落ちた。
「……まじすか」
右手は口元を押さえ、手からはみ出して見える口元は少し笑ってるように見える。
「……まじっす」
愛が答えると麻琴は両腕を上げた。
「ヤッターーーーーー!!嘘じゃないよね!ね!?愛ちゃん!あたしの頬つねって!」
「ええ!?」
「いいから!!」
言われるままに思いっきりつねった。
- 198 名前:FIVE! 投稿日:2003/10/31(金) 22:47
- 「イテェーーーーーーーーー!!!夢じゃないよー!」
相当痛かったのか涙目になりながら喜ぶ麻琴。
それを見て苦笑いを浮かべる愛。
「…心配することなんてなかったのかぁ」
「…え?何?」
「ううん、なんでもない」
麻琴は愛の手を取り、ブランコに座ってる愛を立たせた。
「どうした…」
「家行こう!あたしんち!今物凄い愛ちゃんとイチャイチャしたい!」
大声でそんな事を言う恋人に、愛は軽く頭を叩いたのでした。
- 199 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/10/31(金) 22:55
- と、いうことでこの人たちの仲は進んだと言う事で。
184>名無しさん様
ずっとみきこんでもいいんですけどね(w
いろいろ動かして学園生活を楽しんでもらいますよ、この人達には(w
185&189>名無しどくしゃ様
モジモジミキティハァハァ(w
自分の書いた小説で全く萌えないんですが萌えているのなら嬉しい限りです(w
ohiサンクス(w
186>名無し読者様
なちよしはどうなってしまうのでしょう。
というかどうしようかな…(w
187>モテごまlove様
あやごまはもうちょっと後かも知れないですね(汗
気長に待ってればいつか出てくるかと…
188>ヽ(`Д´)ノ
- 200 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/11/02(日) 17:41
- (;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ
どうしてくれちゃうの作者様。ハァハァが止まらんがな(w
頭叩く愛たん萌えー。作者様萌えー。
- 201 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:06
- 時はさかのぼって学校へ────。
「へぇー、石川さんは副会長なのかー。で、さっきの藤本さんも副会長?」
「そ、そうです」
「ほぉ、優秀じゃん」
二人並んで廊下を歩きながらお喋り。
友達となら楽しいだろう。先生とだったら微妙だろう。
好きな人だったら…嬉しいはずなのに。
梨華の心臓は破裂しそうで目の前もぐるぐる回って倒れそう。
出会ってまだ数十分しか経ってないのにこんなになってしまうなんて。
- 202 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:07
- 「…かわさん?石川さん?」
「は、はいぃ!!」
「えっと、ここさっきも来たよね?…あれ、あたしの勘違いかな?」
「え、あ!?」
ついさっき来た図書室前の廊下。
ぼけっとしてたから同じ所にまた戻ってきてしまった。
「あああ、すみません!あたし、ぼーっとしてて!」
「あぁ、そうだよね、同じ所だよね。随分似たような場所があるなぁ、とか普通に思っちゃったよ。
圭ちゃんの言う通り方向音痴なんだよね、実は」
あはは、と後ろ頭をかきながら話す紗耶香を見てまた胸が高鳴る。
紗耶香のその手は静かに下ろされて笑みも消える。
少し暗くなった雰囲気に梨華は嫌な汗をかく。
- 203 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:07
- 何かおかしかっただろうか。
同じとこをぐるぐる歩かせやがって、とか思われたんだろうか。
「緊張するなぁ…」
「…え?」
ふぅ、とため息をついて紗耶香は辺りを見回す。
思ってもみなかった言葉が出た事に梨華は疑問の表情を浮かべる。
「…教育実習って初めてだしさ、圭ちゃんがいるってのが唯一の救いだったりするんだけど、やっぱね…。
でもまぁ石川さんっつー強い味方も出来た訳だから大丈夫かな」
「強い味方…」
「あ、あたしさ圭ちゃんのクラスを一応メインとして見ていくんだけど、石川さんって何組なの?
圭ちゃんって3年受け持ってるよね?」
「保田先生は美貴ちゃ…藤本さんのクラス担任です」
「へぇ、藤本さんか。って別に美貴ちゃん、って呼んでもいいのに」
笑う紗耶香にを見て梨華は下唇を噛んだ。
- 204 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:08
- うちのクラスだったら良かったのに…。
美貴とひとみは同じクラスだが梨華だけは違う。
しかも教室も離れてて遠い。ばったり会う、なんて事もないかもしれない。
「ねぇ、藤本さんってどんな子?」
「美貴ちゃんは…」
一瞬脳裏によぎる、自分の罪。
「……凄く良い子です、…優しくて」
急に小さくなった声に紗耶香は気がついたが知らない振りをした。
きっとあたしには知らない事があるんだろう。
これから先生になるのなら親身に聞いてあげるのが『先生』なんだろうけど、
こういう時は向こうから話すまでこっちが突っ込んで聞いてはいけない、などど圭から聞いたような気がする。
いろいろ口うるさいけど尊敬する部分があるから紗耶香は圭を慕っていた。
そんな圭と仲良かったから梨華や美貴も問題児ではないと思うのだけど。
「…へぇ、良い子か。良かった、困ったら助けてもらおうっと」
紗耶香の声は梨華にも届き、梨華は曖昧な笑顔を浮かべた。
- 205 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:08
- 歩いてるうちに始めの場所、教務室へとついた。
窓の外を見るともう薄暗くなっていた。
「ごめんね、つき合わせて。おかげで大体わかった…気がする」
「ま、またわかんなくなったら、あたしが案内するんで…!」
「ん、ありがとう。あたし圭ちゃんが会議終わるまで待ってなきゃいけないからさ。
暗くなってるけど気をつけて帰ってね?」
「はい…」
本当はもっと長く一緒に居たい。
美貴と一緒に居たい、とはまた違う感情。
でも紗耶香の事を思うたび、頭にちらつく美貴の顔。
美貴の事が好きだからなんじゃない。
美貴の辛そうな顔、傷ついてる顔が浮かんでくる。
もう気にするな、とは言われたけど自分のやった罪は消えないし、美貴の心の傷だって消えない。
そんな梨華の心の葛藤が見えたのか、紗耶香は梨華の顔を覗き込み優しく頭を撫でる。
- 206 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:09
- 「困った事があったら市井先生に言いな?…ってまだ正式な先生じゃないけど」
優しい声。どこか聞き覚えがあった。
そうか。
紗耶香に惹かれた訳がなんとなくわかった。
美貴ちゃんと似てるんだ。
それでも美貴じゃなくて紗耶香を好きになったのは運命。
運命なんだよ。
ふつふつと心の奥底から何かが沸いてくる。
今までのネガティブが消えて行きそう。
自分が変わる瞬間がわかる感じ。
美貴ちゃん、今まで本当にゴメン。
でもあたし、出会ってしまった。
- 207 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:09
- 「…市井先生!」
「…おぉ!ビックリした。どーした石川さん」
「…あたし、頑張ります!だから見守っててくださいね!」
「え?ん?よくわかんないけど頑張れ!先生は応援するよ。…でも一つ聞きたい事が」
「なんですか?」
首を傾げる梨華。顎をぽりぽり掻く紗耶香。
「……玄関って、あっちでいいんだよね?」
「…え?」
一度沈黙し、先に笑い声を上げたのは梨華。
「あはは、全然わかってないじゃないですかー!」
「だから最初に言ったじゃん!方向音痴だってさ」
「…市井先生全然ダメだからあたしが教えてあげますよ」
梨華はニコッと笑う。さっきまでの印象が変わった梨華に紗耶香はすこし驚いた。
が、すぐに梨華のノリに乗っかる。
- 208 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:10
- 「へぇ?言ってくれるじゃん?じゃあ教えてもらおうじゃんか?全部」
イジワルそうに言う紗耶香。
「いいですよ?みっちり教えるので覚悟してくださいね?」
得意げに言う梨華。
とてもついさっき会ったとは思えないほどの言葉の掛け合い。
「じゃあ、帰ります。さよなら、市井先生」
「うん、気をつけて」
その場を離れて振り向いて手を振る。
周りから見たら恋人同士に見えるかもしれない。
…なんてのは上手い話であって。
- 209 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/13(木) 00:10
- 外に出るとすでに迎えの車が来ていた。
その車に無言で乗り込む。
これはいつもの事だったんだけど。
「…お嬢様、今日は何か良い事でも?」
「え?」
「嬉しそうですから」
「…秘密」
顔にも出てしまうくらいだったらしい。
家に帰ったら美貴ちゃんに電話しよう。
よくも置いて行ってくれたね、って怒って、
置いて行ってくれてありがとう、って御礼をしよう。
- 210 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/11/13(木) 00:15
- 人格が…人格が…。
でもこの人も幸せにならないと困るので(w
人格変わってますけど許して下さい_| ̄|○
200>名無しどくしゃ様
ハァハァしすぎ(w
いつもありがとうどくしゃたん。そして200ゲッツオメ!
これからもよろしくです。
- 211 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/11/13(木) 00:23
- 市井ちゃんですが作者もショックですが書き続けます。
娘。を好きになったきっかけは市井ちゃんなので…。
市井ちゃん、頑張って!
- 212 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/11/13(木) 15:41
- そういえば200取ってるじゃないか自分よ。オメサンクスコ。
そして市井さんのキャラ(・∀・)イイ!!
こちらこそ、これからも良い物見せて下さいね。
市井さんの引退は自分もショックです。
幸せになることを願います。
作者様、無理なさらないでくださいね。
- 213 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 21:58
-
「と、言うわけで付き合うことになりました」
「……オメデトー…」
次の日の2年の教室の風景。
放課後の教室は愛と亜弥の2人きり。
クラスメイトは真面目なのかなんなのかさっさと帰って行った。
本来なら部活に向かう愛だが、
とりあえず自分達の事を心配(してたんだかわからないが)してくれてたみたいなので、
報告しようと帰ろうとしてた亜弥を捕まえて今に至る。
少しくらいは喜んでくれるかと思ったのに返ってきた言葉はそっけなくて。
いつものように携帯しか見てない亜弥はいつもと変わらないが、声のトーンが下がっていたのが気になった。
「どうしたの亜弥ちゃん?元気ないけど。そういえば今日一日中元気なかったね?」
ガタガタ、と椅子を鳴らし亜弥の方を見ると、亜弥は眉を顰め、下唇を突き出してポツリと話す。
- 214 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 21:58
- 「…う、ん。実は……昨日の夜ごっちんにメールしてから返事が返ってこないんだよね…」
「昨日の夜?…気がついてないとか?」
愛の言葉にふるふると亜弥は首を振った。
「夜に気がつかなくても朝にはちゃんとしてくれるもん…。それにもう放課後だし…」
「じゃあ返すのがめんどくさいとか」
「…愛ちゃん?」
キッ、と睨みつけてため息をついて凹む。
そして携帯チェック。
画面は変わらず、いつもの待ち受け画面。
待ち受け画面は真希のほっぺにキスしてる亜弥という体中が痒くなりそうなラブラブな画像。
愛はそんな画像は見飽きてるから別になんとも思わない。
- 215 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 21:59
- 「電話すれば?」
「……出ないんだもん」
「うーん…」
愛は真希に会った事はない。
でも亜弥の話を(毎日耳にタコが出来るほど)聞く限り、真面目な人だと思う。
亜弥からの一日数十件にもなるメールを律儀に返しているのだから。
そんな真希がメールも電話も出ないとなるとよほどの事があるのだろう。
「携帯を家に忘れたとか、じゃない?あたしもたまに忘れてくるし」
「…そうかなぁ」
「うん、でもまぁ…連絡ないのはおかしいね…」
納得できない亜弥にどう言葉を掛ければいいか悩む愛。
少し重いムードになった時、場違いな奴が現れた。
- 216 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 21:59
- その名は、
「愛ちゃーん!やっほー!」
「…あ、麻琴、おはよ」
にこにこ笑いながら愛と手を繋いで笑ってる。
堂々と2年の教室に入ってくる麻琴は愛たちのクラスメイトにも認知される存在となった。
年上に可愛がられる性質なのか、教室から出て行く時は必ずと言っていいほど誰かしらに頭を撫でられて出て行く。
愛はいつもそれを複雑な心境で見ていたのだが。
でも今はそんな事関係なくて今の状況。
愛の目の前には不貞腐れてる亜弥と何も知らない麻琴。
「昨日は楽しかったねぇー、愛ちゃん!」
「う、うん。そうだね…」
愛はそれとなく麻琴に「その話は今しちゃダメ」とばかりに目で合図をする。
しかし、当の本人は全く気がついちゃいない。
ガサガサと持ってきたお菓子袋の中を探って飴を取り出してのんきに舐めて、
開いてる亜弥の折り畳み携帯を覗きこんでほぉ、と声を漏らす。
- 217 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 22:01
- 「おお、それががっちんさんですか」
「…!!麻琴…」
「あれ?ばっちんさんでしたっけ?あれ、なんでしたっけ名前?」
少し震えながら青い顔をして怯える愛。
でへへ、と笑いながら聞く麻琴。
「……ごっちん、だけど」
携帯を持つ手は小刻みに揺れ、さらさらと流れる髪の向こうには青筋が。
その様子を見て愛はまた震える。
「ああ〜、ごっちんさんでしたね〜。うわぁ、待ち受け画面もラブラブっすねぇコノコノ〜。
愛ちゃん、うちらも早くラブラブになろうねぇ〜」
肘でつんつんと亜弥をつつく麻琴。
亜弥の震える手が止まる。
ぎゅっと目を瞑る愛。
数メートル吹っ飛ばされる麻琴。
強烈右ストレート炸裂。小川麻琴KO負け。
- 218 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 22:04
- 「……もう帰る」
「…え、ちょっと…!」
机の横にかけてある鞄を手に取り、亜弥は教室を出て行った。
残されたのは愛と吹っ飛ばされた麻琴。
麻琴に近寄って体を起こしてやると頬を押さえイテテ、と声を漏らした。
「…どうしたのさ〜、いきなり殴るなんてひどいよぉ亜弥ちゃん」
「…間が悪いの、間が」
呆れた顔で麻琴の右頬に左手を添える。
一瞬の沈黙と、2人の間を吹きぬける風。
麻琴は添えられた手をぎゅっと握り、にへっと笑う。
「2人きりだね?」
「ん?う、うん。そーだね」
「イケナイコトしちゃう?愛ちゃん?」
「…もっと大人になったらね」
麻琴にでこピンをする愛。
大人ぶったつもりだけど単なる照れ隠し。
ちぇーっ、と嘆く麻琴には今の顔は見せられない。
だって絶対真っ赤だもん。
- 219 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 22:04
- 「じゃーあたしは部活行くから、麻琴、気をつけて帰るんだよ?」
「…はァ〜い」
麻琴は渋々という感じで立ち上がり大きく伸びをした。
その様子を見て愛も立ち上がり鞄を手に取る。
誰もいない教室で2人きりなんて絶対麻琴が何かしてくると思ったが
意外とあっさり帰るようだ。
「愛ちゃん」
「ん?」
「ばいばい」
「う、うん」
不意打ちでキスでもされるかと思って身構えてたのに何もしないで先に教室を出て行った。
せめて途中まで一緒に行くくらいしてもいいのに。
少し寂しい気持ちになって教室の扉を開ける。
- 220 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 22:06
- 「わっ!」
「わああああああ!!」
「…そんなに驚かなくても」
「ま、麻琴…?」
「愛ちゃんがあっさりしすぎだからおしおき〜」
いひひ、と笑みを漏らし、愛に右手を差し出す。
「音楽室までお送りします、お嬢さん」
「………ばか」
と、言いつつも麻琴の手を握り、教室を後にした。
- 221 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 22:06
- ────2人がいちゃついてる時、どん底に陥ってる女の子。
電話を掛ける。
トゥルルル、という音が無常にも響くばかりで、愛しいあの人の声は聞こえない。
ため息をついて電源のボタンを押す。
メールを送信してみる。
いつもならすぐに返ってくるメールも来ない。
決して長いメールではないけれど、亜弥にとってはどんなものにも代えられない大事なモノ。
そっけない返事でも打ち込んでる時は自分の事を思ってくれてるから。
「…今日は、忙しくて電話できないだけだよね…」
待ち受け画面の恋人は自分に不意打ちキスされて驚いてる顔。
この後、あまり喋ってくれなくなったから怒ったのかと思ったのに、
照れてるだけだったっていうのがわかってほっとしたのを覚えてる。
たった一日声が聞けないだけなのにこんなに寂しいなんて思わなかった。
- 222 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/22(土) 22:07
- 「ごっちんは…寂しくないのかな…」
好きなのはやっぱりあたしだけなのかな。
寂しい一人ぼっちの帰り道。
いつもなら隣にはごっちんがいるのに。
学校違うからなるべく会えるようにするね、って言ってくれて学校終わったらすぐに来てくれるのに。
用があって行けない日でも必ず電話してくれたのに。
今日はいつもの待ち合わせの場所に行ってもいなかった。
────ごめん、今日携帯持って行くの忘れちゃって────
そんな事を言いながら駆け寄ってきてくれる事、期待してたのに。
「…おかしいなぁ」
亜弥は苦笑いを浮かべながら重い足取りで家へと帰った。
- 223 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/11/22(土) 22:13
- ヴィクトリー&RPG記念(w
もうちょっと続きます。
212>名無しどくしゃ様
いつもありがとうございます&温かいお言葉サンクス。
がんがりますよ!
- 224 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/11/23(日) 18:37
- (;´д`)ヒィー
ちょっとぉまこあい死にそうなくらい良いじゃない。
殺すきですか?いや、もっと殺してください(;´Д`)
あややの不安っぷり。もんすごいリアル性がありますな。素晴らしい。
- 225 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/23(日) 19:53
- 色んなCPが楽しめて( ^▽^)<ハッピー!
- 226 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:10
-
次の日も、その次の日も真希から連絡が来る事はなかった。
毎日のようにあの場所に行ってみたけど、真希の姿はなかった。
日に日に重くなる足取り。
出来る事なら学校なんて行きたくない。
教室に入るとクラスメイトは楽しそうに話をしている。
声を掛けてくる友達に適当に返事を返して席へと向かう。
楽しそうな笑い声も憎みそうになる自分がほとほと嫌になる。
「…おはよ?亜弥ちゃん…」
愛は恐る恐ると言った感じで亜弥に声を掛ける。
昨日もろくに話してないかもしれない。
気を使って話しかけてくれる愛に少し微笑むくらいが精一杯。
「…今日も…連絡なかった…?後藤さん…」
「…うん、なかった」
「そっか…」
困った顔をしてため息をつく愛に、亜弥は出来るだけ明るく言った。
- 227 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:10
- 「…振られちゃったかなぁ〜…なんて」
「え、そんなこと…!」
愛の言葉はそこで止まり2人の間には沈黙が流れる。
そして亜弥は無理のない苦笑いをこぼす。
「そんなことないよ、って言わないんだ?」
「…だってさ、こんなに連絡来なかった事ってないんでしょ…?
振られたなんて思ってないけど!…おかしいよね」
でも、思い当たる節はあった。
どことなく距離があるなって事はわかってたから。
好きになったのは自分だし、正直真希がどれくらい自分の事を好きでいるのかもよくわからない。
もしかしたらメールもウザイと思ってるかもしれない。
電話も。そして、会うことも。
- 228 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:11
- 「…後藤さんの家に行ってみれば?もし一人が不安ならあたしついていくよ?」
「ごっちんの学校、全寮制なんだ。…だから簡単には会えないかも…」
「え、そうなの…」
連絡も取れない、会うこともできない、消息がわからない。
もしかしたら病気なのかもしれない。
前のデートの時も高熱が合ったのに無理して出てきて、その後寝込んだとひとみから聞いた。
真希は一言もそんな事言ってなかったのに。
問い詰めると心配させたくなかったから、と笑ってた。
そんな真希だから今回も心配させない為に黙っているのかもしれない。
でも、もう十分心配してる。
逆に病気で寝込んでる方がありがたい。
- 229 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:11
- 「…愛ちゃん、あたしごっちんの学校行ってみる」
「一人で平気?」
「うん、愛ちゃん部活あるしさ。大丈夫。それでも会えなかったら…また考えるよ」
「…そっか」
丁度授業の始まるチャイムが鳴り、愛は自分の席へと戻る。
決戦は放課後。
「…よし!」
亜弥は気合を入れて机に突っ伏した。
心配で眠れなかった分、ここで睡眠を取る事にしたのだった。
- 230 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:12
- ────放課後。
「…でも許せないな」
「え?」
真希の所へ向かおうと支度してる最中、目の前の愛がぽつりと呟く。
「亜弥ちゃんがこんなに心配してるのに何の反応もないなんてさ。
会った事ないし、どういう人かわかんないけど良い人だと思ってたからガッカリ」
「…きっと、なんか理由があるんだよ。…ごっちんは悪くない」
「……うん、もう何も言わないよ。上手くいくといいね?」
「ありがとう、愛ちゃん。あたし行ってくる!部活頑張って!」
少し足早に、振り向いて愛に手を振って教室を後にした。
いつもなら真希の事を悪く言われたら怒ってたと思う。
でも今回は違う。
愛は自分の事を心配してくれて言ってるって事がよくわかったから。
- 231 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:12
- 愛とは高校に入って初めて出来た友達だった。
どこの出身だかわからないけど元々訛ってたその喋りがおもしろくて気も合った。
結構しっかりしてて、あたしの話もちゃんと聞いてくれて同い年なのに年上みたいで。
騒がしいあたしを一歩引いた所からいつも見てて、
思えば愛ちゃんがいたから、あたし好き勝手な事できてるんだと思ってるよ。
ごめんね、愛ちゃん。
全て決着がついたらまこっちゃんとの事、お祝いするからね。
「よーし!」
携帯を取り出し、真希に電話する。
やっぱり返事は返ってこない。
「待っててね!ごっちん!!」
その場で叫ぶと自転車を牽いて前を歩いてた人がビクッと肩を震わせ、振り向く。
その人は亜弥を不審げな目で見て、亜弥の方へと近づいてきた。
- 232 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:13
- 「…恥ずかしいから人前で叫ぶのはやめな、亜弥ちゃん」
「みきたん!」
自転車にまたがり軽くこぎながら亜弥の隣に並ぶ美貴。
美貴は念願だった自転車を最近買ったのだ。
今月のバイト代は携帯料金と自転車で消えてしまったのにはガックシしたが、
これでもう歩いて登下校しなくて済むと思うと安いもんだ。
美貴は今の真希と亜弥の状況は知らない。
今日も会いに行くのか、と何も知らない美貴は内心呆れていた。
「今日もデート?後藤さんと」
「…ううん、でも会いに行くの」
「ふぅん…?」
いつもと様子が違う亜弥を不思議に思いつつ美貴は一緒に校門まで進む。
- 233 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:13
- 真希の学校までは駅一つ向こう。
歩いてでも行けない距離ではないが真希が学校から寮へ向かってしまったら会えなくなってしまうので
急がなければ行けない。
しかし、電車はついさっき出てしまって次が来るまで数分はかかる。
「じゃあ、亜弥ちゃん、美貴こっちだし気をつけてね」
今日はバイト休みだし、さっさと帰って家でゴロゴロしようと思い、
方向を変えてペダルを思いっきりこごうとする。
「待って!みきたん!」
「ぐぇ!!」
亜弥はとっさに美貴の着ていたパーカーの帽子を引っ張り、
そのせいで美貴の首は絞まる。
げほげほ、と咳き込みながら亜弥を思いっきり睨む美貴。
- 234 名前:FIVE! 投稿日:2003/11/25(火) 23:14
- 「何すんの!美貴死んじゃうよ!!」
「一生のお願い!!みきたん!ごっちんの高校まで乗せてって!!」
「はぁ?なんで…」
「理由は後で気が向いた時にでも言うからお願い!!」
「…気が向いた時かよ!!」
美貴のツッコミが辺りに響き、亜弥は美貴の自転車の後ろに乗る。
肩に?まって前方を指差す。
「ごっちんの高校までレッツゴー!」
「……まだ、良いとは言ってないのに…」
美貴はため息を漏らす。
小さい時からそうだった。
振り回されて、要領のいい亜弥はいつもするりと抜けて行って、痛い目見るのはいつも美貴。
一生のお願いだって何回聞いたかわかりゃしない。
それでも憎めないこの従姉妹。
「…飛ばすからしっかり?まってよ」
「は〜い!」
向きを変えて、目指すはごっちんの高校へ!
- 235 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/11/25(火) 23:19
- 何故か『掴まる』という字が文字化け?_| ̄|○
「?まってよ」という文は「掴まってよ」です。何故だぁ_| ̄|○
224>名無しどくしゃ様
どくしゃさん死なないで(w
というかおがたかがメインな感じに出番が多いという…。
225>名無し読者様
そう言ってもらえると( ^▽^)<ハッピー!
- 236 名前:チップ 投稿日:2003/11/26(水) 00:33
- ごっちん何があったんだろう、気になってしょうがないです。
藤本さんいい子なのにね…。
遅レスですけどまこあい、嬉しさのあまりほんのり泣きました(w
- 237 名前:モテごまlove 投稿日:2003/11/26(水) 08:30
- あぁ!あやごま始まってる!!
ミキティとまっつーの従姉妹コンビ
は、おもろくてイイです。
- 238 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/11/26(水) 16:42
- まこあい出番多いのなんれれしょー(w
それにしてもあやごまハマる(;´Д`)
- 239 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/26(水) 19:14
- ごっちん何があったんでしょうかねぇ。
気になりますねー。健気なまつーらさんがステキです♪
更新お疲れ様でした。
- 240 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/11(木) 00:44
- 更新待ってます。
- 241 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/12/11(木) 22:21
-
何でこんな事になったんだっけ?
美貴、そういえば家に帰ってダラダラしたかったんだよね。
や、いつもダラダラしてるけどさ、今日はバイト休みなんだよね。
生徒会の仕事もないしさ、部活にも入ってないし。
今日は保田先生にも捕まらなかったんだよね。
自転車も買ったから早く帰れると思ったのに。
そういえばやる事もあったんだ。だってもうすぐ────。
「みきたん!もっと早くこぐ!」
「はぁ…亜弥…ちゃ…のぼ…り坂は…降りてくれ…ない…?」
「いいから、ほら!頑張れ頑張れ!」
「……降りる気は…ないのね…」
真希の高校は少し高台にあって、通称『心臓破りの坂』を登らないと辿り着けないらしい。
『心臓破りの坂』ってそのままじゃん!
まさかそんな所にあるとは思ってなかった美貴は坂を見た瞬間逃げ出したかった。
逃げ出したかったというより、本当に逃げ出そうとしたら思いっきり後頭部を殴られた。
- 242 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:21
- 坂を登りきり、ようやく校門が見えてきた。凄く綺麗で大きい学校だ。
その学校の隣には同じく綺麗な寮が建っている。きっと中もさぞかし綺麗だろう。
自分の家と比べると…、悲しいからやめよう。
亜弥が言うには校内からは寮に行けないらしい。
一度、校門から出て寮へと向かうのだという。
言わば一本道。
真希がすでに帰っていない限り、見失う事もないだろう。
「…やっとついた……」
「みきたん、どいて」
「亜弥ちゃん…、軽くヒドイね…」
ガクガク震える自分の足を見て、運動不足かも、と美貴は少し思った。
そんな美貴にお礼の言葉もなく亜弥は走って校門の前に立つ。
しかも連れてきてやったのに邪魔者扱いだ。
呆れる美貴を尻目に、亜弥は下校してる生徒達にじろじろ見られながらも必死に真希の姿を探す。
- 243 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:22
- そんな亜弥の姿を美貴はぼうっと眺めている。
亜弥もじろじろ見られてるが、同じく美貴も下校中の生徒に見られている。
むしろ美貴の方が見られているかもしれない。
そんなに他校の生徒が珍しいのか。
なんとも居心地が悪い。
美貴は気がついていなかった。
芸能人にスカウトされるほどの容姿をしてる事は実証済み。
なのに。
実際学校でも何故自分がモテてるのかわからない。
はっきり言って自分の事をかわいいとか思った事がないのだ。
それは常日頃、従姉妹の亜弥が自分の事をかわいい、かわいい言ってるせいだろうか。
あれを見ると正直引く…とか言ったらまた殴られそうだ。
美貴は少し離れた所で亜弥を待つ事にした。
- 244 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:22
- 一方、真希を探し中の亜弥は、未だに探す事が出来ないでいた。
「ごぉっちん…どこぉ…」
背伸びをしたり体を縮めたり、歩いてくる生徒を一人一人確認するけど見た事ない顔。
真希の高校に知り合いはいない。だから誰かに聞く事も出来なくて。
さすがに見知らぬ人に聞くのもどうかと思ったけれど、
そうも言ってられないのでとりあえず前から歩いてきた子に聞いてみる事にした。
「あの…!」
「はい?」
「ごっち…後藤真希さんってもう寮の方に行ったかどうかわかりますか?」
寮へ行っていたらアウト。
いろいろ問題が起こらないようにと他校の生徒は入る事が出来ないから。
思い切って聞いてみて、返事を待ってると目の前の子は眉をしかめ亜弥を睨む。
「…後藤先輩なら職員室に居たのを見たけど…あなた後藤先輩の何?」
「……え、あたしは…ごっちんの……コイビト、だけど…」
いつもなら自信を持って言う言葉だけど、今はなかなか自信がない。
俯いてボソボソと呟くと、女の子は驚いた顔をして声を上げた。
- 245 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:23
- 「あなたが後藤先輩の!?」
「……うん」
『後藤先輩』と言う言葉がその場に響くと下校してた生徒が一斉にこちらを見た気はしていた。
そして気がついたら亜弥の周りにその生徒達が集まってきている。
というか囲まれてる?睨まれてる?どういう事?
「他校に恋人がいるって、本当だったんだ〜」
「ショックー!」
口々にみんな嘆きの言葉を吐いてる。
もしかして、ごっちんモテてる?
「かわいいけど普通だよね」
「ていうかブリッコ?」
「後藤先輩絶対だまされてるよね〜」
嘆きの言葉に続き、周りから聞こえる亜弥への悪口。
- 246 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:23
- いつもなら、いつもだったらこんなのなんて事ないのに。
今日はやけに耳に響く。そして心が痛い。
この子達が自分に嫉妬してるのはわかってる。
きっと真希はモテるんだ。でもそんな話は一回も聞いた事がない。
でもモテるだろうとは思ってたけど。
隠してたんだ。
真希がわからなかった。考えてる事、よくわからなかった。
でも笑顔や、ちょっとした優しさで不安も埋まってたのに。
最近、その笑顔も見れてなかった亜弥は完全にパワー不足。
目頭が熱くなって、景色が歪んで来た所で、一人の声が聞こえる。
「はいはいはいはい、いじめないであげてね」
人を掻き分けるように入ってきて、囲まれてる亜弥をそっと抱きしめる。
- 247 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:24
- 「………みきたん」
美貴も基本的には優しい。
小さい頃からそうだった。こんな時にはいつも守ってくれてた。
その様子を見ている周りはますますヒートアップする。
「後藤先輩と付き合ってるのに別の人にもいるなんて!!」
「ホント!最低ー!」
「しかもこの人もかわいい!!」
「…違う。美貴は亜弥ちゃんの従姉妹。
こんなわがままでうるさいのが恋人とか、勘弁してねホントに」
そこまで美貴がさらっと言うと、亜弥は思いっきり美貴の足を踏んだ。
「ぎゃあ!!…助けたのに何すんの!」
「…みきたんは一言多いの!」
ぎゃあぎゃあと周りの子達そっちのけで喧嘩をしてると、だんだん囲まれた輪が崩れていく。
周囲は一方を見つめひそひそと話し、足を進める。
- 248 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:25
- そして輪は道を作るようにぱっかりと開いてそこに現れたのはずっと探していた真希の姿だった。
「……亜弥ちゃん?!」
「…!ごっちん!!」
ポカンと口を開けて目を丸くして立ちすくむ真希と真希のファンに囲まれながら美貴に抱きしめられてる亜弥。
その光景は感動のご対面と呼ぶには程遠い。
「どうして…なんでここに…?」
久しぶりに聞く真希の声は懐かしくて優しくて心地良かった。
美貴の腕を振り払い、真希の目の前に亜弥は立つ。
そのただならぬ雰囲気にファンの連中はサーッとどこかへ行ってしまった。
恋人同士だという事実を見せられてショックだったのだろう。
残されたのは亜弥、真希、そして美貴。
美貴は後悔した。自分もここから離れれば良かったと。
- 249 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:25
- 「…どぉして電話くれなかったの…?」
驚く真希の服の裾を掴み、俯いて聞く。
まともに顔が見れない。
久しぶりに会えたから嬉しくて、ていうのもあるけど、どんな顔して良いかわからない。
そしてこの後、真希からの言葉が怖くて真っ直ぐなんて見れない。
「…実はさ」
「……実は…?」
「携帯落としたんだよね」
「………は?」
「え、と、だから携帯を落としちゃって…」
ポリポリと後ろ頭を掻いて、申し訳なさそうに言う真希。
一方の亜弥はと言うと言葉が出ない。
あうあう、と口をパクパクと動かして真希を見つめる。
- 250 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:25
- 「何度も電話しようと、ていうかしたかったんだけどね、
公衆電話に行っていざ掛けようと思うと番号がわからなくて」
「………」
「亜弥ちゃんの家に掛けようと思ったんだけど自宅の電話番号もそういえば知らなくて」
真希がそこまで言うと、亜弥は静かに口を開いた。
「…じゃあ、…なんで来てくれなかったの?…いつもの場所。待ってたんだよぉ…?」
「それは…────」
言いかけて真希はチラリと横を見る。
亜弥の隣には見知らぬ女の子。
さっきまで、抱き合ってた…?
真希がじっと美貴を見ていると、その事に美貴も気がつく。
「なん…?」
「ごっちん!あのね!これがみきたん!従姉妹の!」
美貴が言葉を発する前に亜弥は慌てて捲くし立てる。
あきらかに美貴の事を不審に思ってる事に亜弥は気がついた。
誤解されたくないので早急に否定しておく。
- 251 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:26
- 「あー…どうも、後藤です」
「あ、どーも、藤本です…って『これ』扱いかよ!いつも扱いひどいよ亜弥ちゃん…」
「今はみきたんはどうでもいいの!あっち行ってて!」
しっしっと手をヒラヒラとさせて邪魔、と動作をする。
美貴はハイハイ、と呆れたように自転車まで歩いて行き、またがった。
「美貴もう帰るから、よくわかんないけどあとは勝手にやって下さい。
後藤さん、大変だろうけど頑張って」
「え、は、はぁ…」
真希にだけ微笑むと、美貴はスイスイと今まで登ってきた道を下っていった。
その様子をぼーっとして見ていると、またぐいっと引っ張られて目の前には亜弥。
- 252 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:26
- 「…で、何で来てくれなかった…?もしかして…あたしなんかしたかなぁ…?
嫌いになった…?」
「違うよ、亜弥ちゃんが悪い訳じゃなくて。
…えーと…まだ早いんだけどなぁ…」
「え?」
真希はごにょごにょと小さな声で呟きながら右手に持ってる鞄を開けて、
中から小さな箱を取り出し、亜弥の目の前に手を伸ばす。
「…何?」
「ちょっと早いけど、誕生日、おめでとう」
「……え」
そういえば。
パニクってて忘れてたけど2日後は自分の誕生日だった。亜弥は思いだす。
- 253 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:27
- 「テストでさ、良い点取れたらご褒美頂戴、って親に言っててさ。
まぁ、ちょっとした臨時収入を当てにしてて…。
ごとーバイトもしてないし、ホントは自分で働いた方がかっこいいんだろうけど
急にはバイトも探せなくて。ていうか学校もバイト禁止だし…。」
「……うん」
「だから、さ、ちょっと頑張って勉強しなきゃいけなかったから行けなかったんだよね。
携帯があったら亜弥ちゃん不安にならなかったんだろうけど…ごめん」
亜弥の手を取り、箱を持たす。
右頬をポリポリと掻いて申し訳なさそうに頭を下げる。
下げた頭の上の方から聞こえたのは泣き声だった。
「うう〜〜…嫌われたと思った…ぁ…ごっち…連絡くれないし…」
「ごめん!…ごめん、亜弥ちゃん」
困らせる事はわかってたけど涙を止める事が出来ない。
安心したのと嬉しいのと。
こんな攻撃、ずるいよごっちん。
- 254 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:27
- 真希は泣いてる亜弥の頭を撫でて、それから手を繋いで少し歩いた。
校門のど真ん中で泣いてる亜弥はあまりにも目立ちすぎた。
泣かせてしまったのは自分だから仕方ないと言えば仕方ないのだが。
少し泣き止んだ亜弥に真希は優しく話しかける。
「亜弥ちゃん、開けてみてよ」
「……ん」
ガサガサと包装紙を開けて、小さな箱を開けるとそこには銀色のリングが入っていた。
「これ…」
「亜弥ちゃんとさ、前一緒に買い物行った時立ち止まって見てたよね。
ひょっとしたら気に入ったのかなと思って、これにしてみた」
確かに、立ち止まって見た記憶はあった。
このリングを見て思った事。
真希に似合いそう、そう思ったんだ。
- 255 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:28
- 「でね、ご褒美が思ったより貰えたからごとーも買ったんだ、おそろいだよ?」
「ごっちん…」
ペアリングとか好きそうじゃないのに。
一緒に歩いてても、いつも少し距離を感じてた。
どんなに話しても一言、二言くらいしか返事は返ってこないし、
だから、気がついてないと思ってたのに。
また涙が出そうになる、けどなんとかこらえた。
「ありがと、ごっちん…。死ぬほど嬉しい」
「不安にさせてごめんね」
まだ困った顔をしてる真希にとびきりの笑顔で亜弥は横に首を振る。
「これでプラマイゼロ!毎日するから!お風呂の時も、寝る時も!」
「…うん、ごとーも」
鼻を擦りながら少し目線を逸らす真希。
- 256 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:29
- 亜弥は思う。
これって、照れてる時の癖かも。
嬉しくなって右手を握ると真希も握り返してくれた。
「でもさ、どこに落としたの?携帯」
「それがわかんないんだよねぇ、無くす日の朝まではあったんだけどさ」
丁度そんな話をしていると1人の生徒が2人に近づいてきた。
「あのー、もしかしてこの携帯後藤先輩のじゃないですか?
さっさ掃除してる時中庭で拾ったんですけど」
「え!」
その子の右手にあるものはまさしく真希の携帯だった。
何で中庭に。真希は考える。
移動教室の時にでも落としたのだろうか。よく思い出せない。
着信音量も小さくしてるから、生徒で賑わう中庭になんか落ちてたら
いくら鳴らしても気がつかない訳だ。
- 257 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:29
- 「あ、それ!そう、ごとーのだ。でもなんでごとーのだとわかったの?」
「だって…」
そう言って折りたたみ携帯を開けて生徒は真希と亜弥に携帯の画面を見せた。
そこで真希ははっと思い出した。
「この画像、後藤先輩ですよね?隣は…」
「あー!!!ありがとう!もう良いや、うん、わかったから!」
携帯を取り上げて慌てて閉じる。
生徒は少し笑いながら頭を下げて行ってしまった。
きっとあの子は真希のファンではないのだろう。
これがファンに拾われてたらと思うとゾッとする。
思わぬ出来事に冷や汗をかいていると、隣の亜弥が腕に抱きついてきた。
- 258 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:30
- 「…ごっちん?あの画像のごっちんの隣の人、あたしだよね?」
「……そう、だね」
「いつだったか一緒に撮ったのだよね?」
「……そう、だね」
「ふーん…そっかぁ…ふーん」
それ以上は追求してこないけど、亜弥はとても嬉しそう。
真希はまた鼻を少し擦り、話題を変える。
「…そーいえばさ、亜弥ちゃんとこはもうすぐじゃない?」
「え、何が?」
嬉しくて顔がにやけてる亜弥。
「期末テスト」
「……期末テスト?」
真希の言葉を復唱してから一気に青ざめる。
「そうだった!期末テストまでもう一週間もないよ!どうしよう!」
毎日不安だったから期末テストなんて忘れてた。
そりゃそうだ、自分の誕生日すら忘れてたんだからテストなんて覚えてるわけない。
- 259 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:30
- パニクってると真希は笑った。
「あは、ごとーのせいだよね」
「そぉだよ!ごっちんのせいだからね!…だから」
「だから?」
ん?と首を傾げて聞き返す。
「…ごっちんこれからあたしの家に来て勉強を教えること」
期末テストの終わった真希は終業式まで休みだった。
それを知っている亜弥は人差し指を立てて、少し偉そうに真希に言う。
「ふはっ、了解しました」
真希はまた笑う。
「…でもその前にデートもすること」
「…それも了解」
「やったぁ!」
嬉しそうにはしゃいで真希に抱きついて亜弥は頬にキスをした。
驚いて目を丸くする真希にもう一度人差し指を立てる。
- 260 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/11(木) 22:31
- 「それと!あんまりモテちゃだめ!!」
「…それは」
それは自分のせいじゃないよなぁ、と心の中で思いつつ、
ちゃんと返事をした真希でした。
- 261 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/12/11(木) 22:38
- 時間かけて書いた割にはベタベタ…。
川o・-・)<私の存在はどこへ(ry
…ゴメンよ、紺野さん…。
しかもうちでは雪が降ってるというのに話の中はまだ6月…。
前スレと合わせて300レス近くいってると思うのですが、
4月から6月現在まで書くのに300レス…。
ふぅ…。
今年中にもう一回くらい更新したいけどどうだろうか。
未定です、ごめんなさい。
- 262 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/12/11(木) 22:47
- 236>チップ様
基本的に藤本さんは不幸な方向で(w
こんな所で言う話ではないと思うのですが、お疲れ様でした。
本スレの方に書くのは緊張するのでこんなとこで申し訳_| ̄|○
237>モテごまlove様
皆を振り回してくれるキャラを書くのはとても好きです。
松浦さん然り小川さん然り。
でも後藤さんには松浦さんも苦戦してるようですね(何故か他人事
238>名無しどくしゃ様
なんでだろー(w
実はおがたかが1推しなのかもしれない(ww
CPDDだからどれでも好きなのでいいんですけどね(w
239>名無し読者様
えっと引っ張った割りにこんな落ちで申し訳_| ̄|○
後藤さんにだけは健気です。後藤さん限定で!
240>名無し読者様
更新遅くて申し訳_| ̄|○
- 263 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003/12/12(金) 00:16
- ハァ━━━━;´Д`━━━━ン!!
良かったねあやや良かったね。萌え萌えですよ(つД`)
もう今年も終わりですかー。更新マターリ待ってますよぉ
- 264 名前:モテごまlove 投稿日:2003/12/12(金) 08:57
- おわぁ!!あやごまだぁ!!!
めっちゃべたべたvvv
最高ですよ☆ほんまに(wめっちゃハマリました☆☆<あやごまvvv
ミキティとコンコンにも期待vv
- 265 名前:通りすがり読者 投稿日:2003/12/13(土) 23:08
- あやごまって案外いいですね
萌えました
- 266 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/16(火) 19:30
- あやごまって少ないけど見ると嵌るなぁ…
- 267 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/24(水) 12:58
- サイコーです!!
- 268 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/24(水) 15:30
- みきこんの行方も待っています…(w
- 269 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/25(木) 13:54
- この小説であさ美貴にはまりました。
あやごまも意外にはまるもんなんだなぁ、と。w
更新待ってます。
頑張ってください。
- 270 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:33
-
一方その頃、家に向かう美貴は意外な人に出会っていた。
後ろから自転車のベルを鳴らすと驚いたのか、
手に持っていたと思われる紙袋をバサバサと落としてから睨むようにこちらを向いた。
驚かすつもりはなかったのだが美貴は慌てて自転車から降りて一緒に拾うと、
ゴルァ、と言われ軽く頭を小突かれた。
その後、許してもらい今に至る。
「家この辺なんですか?」
「いや?全然違う。この先の本屋は種類いっぱい置いてあるから見に来たんだ」
「へぇー、何の本ですか?」
「んー、参考書とかいろいろ」
自転車から降りて歩く隣には市井紗耶香がいた。
教育実習生はまだ学生だし、勉強もしなきゃいけない。
大変だよ先生見習いも、と紗耶香はため息混じりに笑って見せた。
- 271 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:34
- 偶然美貴のクラスに教育実習に来た紗耶香。
最初は緊張していた紗耶香だったが、担任の圭の存在が強かったのかすぐに打ち解けていった。
頭の回転も良いのか生徒からの質問も難なく答えているほど。
生徒の中でも仲良くなったのは最初に出会った美貴そしてひとみ。
ひとみは目立つし、授業中におもしろ回答を連発してるのでおもしろくて紗耶香はからかうようになった。
梨華と紗耶香も会えばそれなりに話すようだがやはりクラスが違うのは大きいようで
そんなにまだ打ち解けてはないようだった。
「せっかくうちの学校にも慣れたのにそろそろ終わりですよね、実習」
「うん、きみらが夏休みになるのと一緒に市井も実習終了」
「そうですか、残念です」
「…本当にそう思ってんの、藤本よ?市井はマジで悲しいぞ?」
仲良くなって気がついた事があった。
今まで自分の事「あたし」って呼んでたくせにいつの間にか「市井」になってるんだ。
もちろん学校では「あたし」あるいは「私」と言ってるけど美貴の前では変わっていた。
当人曰く慣れた人にはこうなるらしい。
先生っぽくなくてさばさばしてるとこは自分に似てて好きだった。
これから先生になろうとしてる人に先生っぽくないって言うのは失礼か。
- 272 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:34
- 「夏休み中は何やってるんですか?」
「勉強だよ。あのね、藤本からは先生に見えるかもしれないけど市井はまだ生徒なんで」
「や、先生に見えないですけど」
「…ひどいなぁ」
苦笑いを浮かべて、でもそんなに嫌そうな顔はせずに歩き続ける。
あまり年の差を感じさせない、そんな感じが好かれるんだろう。
実際紗耶香は生徒から人気があった。
お昼に誘われたり、時にはデートに誘われたり。
その姿を壁に隠れて覗いてる梨華の姿もたびたび見かけた。
ひとみはそんな紗耶香をライバル視してたようで。
「勉強の息抜きに一緒にバーベキューでもしませんか?夏休みに」
「バーベキュー?」
「生徒会のメンバーでやるんですよ。毎年恒例行事なんですけどね」
「へぇー、…でもさ市井行ってもいいの?藤本とか以外よく知らないしさ」
「安倍先生も来るんですよ」
「なっちも?」
少し意外そうな顔をする紗耶香。
それよりも美貴の方が意外そうな顔をする。
- 273 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:35
- 「仲良いんですか?安倍先生と」
「あぁ、あの人さーいっつも圭ちゃんに捕まってるからさ、
なんとなく話してみたら結構気が合っちゃって。お互い圭ちゃんには苦労するよね、みたいなさ」
「なるほど。美貴もよく捕まりますよ…保田先生には…」
「苦労人だね」
同情したようにポンポンと美貴の肩を叩く紗耶香にお互い様でしょ、と美貴は突っ込んだ。
「でもなんでなっちが行くのさ?そんなに仲良いの?なっちって1年の担任だよね?」
「…うーん、それはまぁいろいろありまして、
美貴の口から言うのもなんなので本人達から聞いてください」
紗耶香は美貴の言葉を聞いて意味深だね、と少し笑った。
「なっちが行くなら行こうかな。でもその前に勉強してるんだろうね?期末の。
こんなとこでブラブラしてるのは余裕?」
「…勉強したかったんですけどいろいろ巻き込まれまして…」
「ふーん、やっぱ苦労人か。でもまぁ藤本は成績良いからなぁ。問題はあいつだよね」
「あいつですね」
頭の中に浮かんだ人物が一致したらしい。
きっと今くしゃみでもしてるだろう。
- 274 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:36
- 「バーベキューのさ、日にちとか場所は決まってるの?」
「あー…決まってるみたいですけどよっすぃーしか知らないんで美貴もよくわかんないんですけど」
「大雑把だなぁ。詳しい事決まったら教えてよ。ついでに携帯も教えとく」
紗耶香は鞄の中から携帯を取り出す。
美貴も同じく携帯を取り出し番号を交換した。
携帯の時計を見て紗耶香は思い出したように声を上げる。
「やばい、もうこんな時間だ」
「なんか約束ですか?」
「ん?あー、…実は今日も圭ちゃんに捕まってんのさ」
「うわ…頑張って下さいね…」
「まー、別に嫌いなわけじゃないからね、先輩だし…後輩は逆らえないでしょ。
じゃあしっかりと勉強しなよ!」
「はーい…ってちょっと待った!!」
「はぁ?」
紗耶香の服を掴み、鬼気迫った顔で美貴は言う。
- 275 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:36
- 「くれぐれも 絶 対 ! 保田先生にはバーベキューの事言わないで下さいね!」
「え…あ…うん…わかったよ」
美貴の怖い顔に紗耶香は怯んだ。
右手を振って足早に美貴から離れていく紗耶香。
少ししてから美貴も自転車にまたがりペダルをひとこぎ。
すると後ろの方から名前を呼ばれたような気がして止まり振り向く。
そこには立ち去ったはずの紗耶香がこちらに向かって大声で叫んでいる。
「ねー?!駅ってこっちだったよねー!?」
美貴も大声で叫ぶ。
「逆でーす!!」
それを聞いて紗耶香は照れくさそうにまた手を振った。
遠くなる後姿を見て美貴は思った。
「…ていうか電車に乗ってきたんじゃないの…?」
来た道すら忘れてしまう、恐るべき方向音痴の紗耶香の後姿に苦笑した。
- 276 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:37
- ◇
学校ですれ違っても目も合わせてくれない。
受け持ってる学年も違うから容易くは会えない。
放課後は向こうは部活で、自分はいろいろ忙しい。
生徒の質問を聞いたり、悩み事を聞いたり。
授業の事だって考えなきゃだし、テストだって。
ホントは自分が一番悩んでるのに誰に相談したらいいかわからなくて。
この学校の中の先生で一番仲がいいのは圭だ。
しかし相談しようとすると逆に愚痴を聞かされて終わってしまう。
教育実習生の紗耶香に相談しようとも思ったが紗耶香はまだ学生。
きっと自分とは違う考えをしてるだろう。
あの子と同じ考え。
怒ってるのはわかってる。
でも自分ではどうしたらいいかわからない。
ずっと悩んでいたらあれから何週間も経ってしまってた。
- 277 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:37
- 「安倍先生…?」
後ろからの声に少し肩を震わせ振り向く。
そこには左手に楽器ケースを持った愛が立っていた。
愛はなつみがいた事に驚いた様子で大きな目をパチパチとしていた。
「…テスト前は部活はないよ?高橋」
「あ、自主練です。…ダメですか?」
「ううん、いいよ。いいけど勉強大丈夫なの?」
「家でやってますから。これは家でやると近所迷惑になるので…」
そう言って手に持ったフルートを指差す。
そういえばここは音楽室だったっけ。
一応吹奏楽部の副顧問みたいな感じのなつみはたまにだけど部活を見る事があった。
いつも練習熱心な愛の事はよく知っている。
2年生ながらソロまでもらえているほどだったから。
それは決して才能ではなく、努力して手に入れたという事も知っている。
実際1年の頃の愛の演奏は聴けた物ではなかった。
頑張り屋さんなんだよね、高橋は。
- 278 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:38
- 程なくして綺麗な音色が聴こえる。
少し目を閉じて聴いてみた。
目を閉じると何故か頭の中にはひとみの姿が現れて、あの時の表情をして消えた。
遊園地で手を払った時、怒り顔の中に悲しそうな顔が見えた。
あの表情が忘れられない。
「……安倍先生、どうかしました?」
音色は止まり、代わりに愛の声が響く。
先生は生徒の悩み事を聞いてあげて、親身になってやるそれが普通だと思ってる。
だから先生が生徒に弱音を吐くなんて間違ってると思う。
頭ではわかってるのに口は勝手に開いてく。
「…いいなぁ、高橋は」
「あたしが、ですか?」
愛はキョトンとした顔でなつみを見つめる。
なつみは笑顔になり、手を振る。
- 279 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:39
- 「いやさ、学生に戻りたいなぁとか思うわけよ、先生も」
「あー…」
「…高橋は、誰かと付き合ったりしたらみんなに付き合ってます、って言う方?」
「え?!」
目を丸くして驚く愛。
我ながら唐突すぎる質問だと思う。
先生が生徒に聞く事じゃないよね。
「……吉澤さんとなんかあったんですか…?」
「…まーねぇ。ちょっと傷つけちゃって、でもどうしたらいいかわかんないんだよね」
「そうですか…」
少し重くなる空気。
やはりこんな話をするのは失敗だったか、と後悔する。
今の話は忘れてもらおうと弁解しようとした時、愛は口を開いた。
- 280 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:40
- 「あたしは…人には言わないです。本当に仲の良い友達くらいにしか…」
「恋人が…仮に小川がね、あんまり人に見られたくない場所でベタベタしだしたらどうする?」
「ま、麻琴がですか…」
なつみには付き合ってる事言っていないはずなのにどうして知ってるのだろうと口ごもる。
きっと麻琴がクラスで話してるのが聞こえたんだろう。
声大きいから…。担任だし。
「…困りますね、嫌いじゃないけどそういう場所では少し距離を置くかもしれないです…」
「そうだよね、嫌いじゃないんだよ…」
嫌いじゃないのに上手く伝わらない。
払いのける事はなかったかもしれない。
でも先生と生徒が手を繋いで遊園地にいたらやっぱりおかしいよ。
- 281 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:41
- 「あたし、麻琴と付き合う時悩みました。自分に自信がなくて、
麻琴があたしを思ってくれてる気持ちの方が大きくて。どうすればいいかわからなくて」
「…うん」
「でも考えたんです、自分の気持ちに素直になろう、って。…先生も思ってる事はっきり言えばいいんですよ。
どんなに好きでも…わかってるつもりでも、言葉にしなきゃ伝わらないと思うんです!」
ぐっと力説する愛。
いつもおとなしくて一歩引いた所にいる愛が一生懸命自分を元気付けようとしてるのが凄く伝わる。
ダメだなぁ、先生失格かも。
「え、偉そうにすみません…。安倍先生と吉澤さんはあたし達と違っていろいろ大変ですもんね…」
「ううん、ありがと。ちょっと元気出たよ。そうだね、思ってる事言ってみる事にするよ。
それでダメだったらまた考える事にする」
「そうですか」
なつみは愛の右手の行き場がなくてブラブラと揺れてるフルートに気がつく。
練習の邪魔したり、弱音吐いたり、ホントダメな先生かも。
- 282 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:44
- 「ごめんね、変な事言ってしかも練習邪魔しちゃったみたいでさ」
「いいえ!とんでもないです。あたしこそ偉そうに…すみません」
「練習頑張って!」
「はい」
「勉強もしなよ?」
「…はい」
えへへ、と苦笑する愛を残して音楽室から出て廊下を歩き、階段を降りる。
「どんなに好きでもわかったつもりでも言葉にしなきゃ伝わらない、か…」
その通りだと思うよ、高橋。
なっちは何を怖がってるのかな。
学校にばれるのが怖い?
ううん、よっすぃーと居れない方がもっと怖いよ。
そんな事ずっと前から気がついてる。
- 283 名前:FIVE! 投稿日:2003/12/31(水) 21:44
- 足は体育館に向かっていた。
バレー部はつい最近引退したのは知ってる。
でもバレー好きだから、たとえ引退しててもテスト前でも(これは困るけど)体育館にいると思う。
体育館なんて滅多に行かない。
ひとみのファンでいっぱいだから。
自分がひとみと同じ高校生だったら。
何度か思った、けれどそんな事考えたって仕方がない。
テスト前だけあって体育館周辺には人はいない。
体育館の中からも物音がしなかった。
もしかしたらいないかも知れない。
なつみは両手で大きな扉を開けた。
体育館のちょうど真ん中らへん。
人が大の字で寝てる。
あの姿はなつみが探してた人物に間違いない。
少し背伸びをして遠くから様子を窺うと寝ながら大きなくしゃみを連発していた。
- 284 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/12/31(水) 21:56
- 今年中に更新できて良かったー。遅くなりましてすみません。
変なとこで切ってしまってまたまたすみません。
あやごまパワーすげーなーとびびってます。
263>名無しどくしゃ様
どくしゃさんも何気にCPDDですよね(w
いつもレスありがとうございました!来年もよろし(ry
264>モテごまlove様
良かったですかー、あやごままともに書くのって2回目ぐらいなんで
心配だったんですけど高評だったみたいで良かったです(照
265>通りすがり読者様
あやみきに押されてますけどあやごま良いですよね。
また通りすがった時にでも見てやってください(w
266>名無し読者様
あやごまがもっと増えるといいなあと思いつつ自給自足の生活です(w
267>名無し読者様
ありがとう!
- 285 名前:ごーしゅ 投稿日:2003/12/31(水) 22:03
- 268>名無し読者様
みきこんの出番もちゃんとありますよ!
でも…出番は…もうちょっと後かな…。
269>名無し読者様
こんなのではまってもらえるとは(ガタガタブルブル
広まれー!みきこんー!マイナーでも負けるなー!
CP分類に紹介してくださった方、ありがとうございます。
紹介される日をいつか夢に見ておりました。
見た時は嬉しくて小躍りしました。
いつかあそこで藤本×紺野で紹介されますように(w
さて、今年ももう終わりですが来年もマターリ更新になってしまいそうですけど
引き続き「FIVE!」を書き続けます。
来年もよろしくお願いします。
このスレを読んで下さってる読者の皆様、良いお年を。
- 286 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/01/01(木) 07:51
- あけおめー。
早々に(*´д`*)ポワワ
作者様のだけですぞ。CPDDなのはw。本当はまこあいしか(ry
今年もよろしくお願いします。
- 287 名前:rina 投稿日:2004/01/15(木) 09:25
- 続き待ってます!!
- 288 名前:炉 投稿日:2004/01/15(木) 16:22
- 大量更新期待してますw
- 289 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:52
- 「…風邪かなぁ」
ぐしぐしと右手で鼻を擦り、左手はバレーボールを転がしてる。
一人で寝転がって何してるんだろう。
なつみが口を開き声を掛けようとした瞬間。
「……なんだよー!」
急の問いかけになつみはビクリと肩を揺らす。
ひとみは寝転がって上を見てるし、こちらには気がついてないはず。
というか絶対気がついてないのに。
なのにひとみは大声で話し始めた。
「何でこんなに気まずくなってんだよ、もう!いいじゃんか、なっちが嫌だって言ってんだから
無理に手なんか繋がなくたってさぁ!なんでそんなに意地張ってんの?
いい加減呆れるね、全く。挙句の果てに無視?こんな事やってたら嫌われるっちゅーの!
つーかもう嫌われてんのかもしんないけどさ!!…………はぁ…」
一人でペラペラと喋り続ける。
随分大きな声のひとり言だなぁ、しかも長いし。なつみは苦笑する。
静かに扉を閉め、しゃがみ込んで更に様子を窺う。
それでもなおマシンガントークは止まらない。
- 290 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:52
- 「…あーあーあー。なっちに会いたいよーなっちーなっちー。
ぎゅうっと抱きしめてキスしたいよー」
あんな大声で喋ってたら手を繋いでるの目撃されるより先にばれるって。
しかも何気に凄いこと口走ってるし。
口に手を押さえて笑いをこらえてると、ひとみはごろりと寝返りを打った。
そしてしゃがんで頬杖ついてるなつみと目が合う。
カッと目を見開いて固まるひとみとその様子に更に笑うなつみ。
そして物凄い勢いでガバッと起き上がる。
「ななななっち!?なんで…!?体育館に滅多に来ないのに!?」
それはあなたのファンが多いから嫌なんですー。
とはさすがに言えないけど。
だってヤキモチやいてるみたいじゃん。
…実際妬いてるんだけどさ。
- 291 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:53
- 「…あのさぁ、よっすぃーって病気?」
「…へ?」
「ずーっとひとり言ばーっか。しかも大声で。ていうか大声で喋る内容じゃないって」
なつみがくすくすと笑うとひとみはむっとした顔で立ち上がった。
髪形を直して服の埃を払って唇を突き出す。
知ってる、あの顔は拗ねてる顔だ。
「……何の用ですか、安倍先生」
拗ねてわざとそんな呼び方をしてる所とか見ると子供っぽくてかわいい。
いつもファンの前じゃかっこつけてるくせに。
「あのね?今は安倍先生じゃないよ」
「…はぁ?」
腰に手をあててひとみは眉をしかめる。
無視とかしてたから壊れてしまったんだろうか。
元々なつみはおかしな事をよく言うし。キリンにあったとかなんとか。
そんな話を聞いてるのは楽しいのだけど、たまに真面目に言ってるんだろうか、とか冷静に考えてる自分も居たりして。
ぼうっとしてるとひとみのすぐ目の前になつみは来ていた。
- 292 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:53
- 「なんて顔してんのさ」
「いや、それはこっちのセリフと言うか…、どういう意味?安倍先生じゃないってのは」
「よっすぃーと2人きりの時は安倍先生じゃないの。よっすぃーの恋人のなっちなの」
「う…ん?」
よくわからない、そんな顔をしてるとまたくすくすとなつみは笑う。
本当は余裕なんてないくせに余裕ぶってる自分、嫌だなぁとか思うけれど。
「なっちはよっすぃーの事大好きだよ?」
「…や、うちだって好きだけど」
「安倍先生も吉澤さんの事が好きなの」
「……さっぱり意味がわからない」
我ながら変な事を言ってるなぁ、と思う。
疑問に思うのも無理はない。
しかも頭の回転が遅いひとみにこんな事言う自体間違っていそう。
「…そーいうことなの」
「や、そーいうことなの、じゃなくて。説明してよ。じっくりと」
ドカッとその場に座り込みなつみに隣に座れ、と指示を出す。
それにおとなしく従い、座って呼吸を整える。
目の前にいるひとみは少し怒ってるのかもしれない。
久しぶりに話した内容が意味不明じゃ無理もない。
なつみはさっきまでの笑みを消して真剣な顔で話し始めた。
- 293 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:54
- 「なっちは2人いるんだ。『なっち』と『安倍先生』。
なっちにとってよっすぃーは恋人で、安倍先生にとって吉澤さんは生徒なの。
今までね、2人きりで居る時も安倍先生だったことが多かったのね?ここまでわかる?」
「……なんとなく、…わからないような、わかったような」
「よっすぃーと居る時安倍先生は恋人じゃなかったんだよね。先生だった。
だから手を繋いだりするのもためらった。先生だから」
手を前に出してひとみの手を握る。
ひとみは戸惑ったような表情をする。
それはそうだ、あれだけ拒絶されてたのにいきなりなつみの方から繋いでくるのだから。
それにもしかしたらなつみの方から繋いでくるのは初めてかもしれない。
「…よっすぃーの事は大好きだけどふとした瞬間になっちから安倍先生に変わるの。
それは人目が気になったりとか、そういう理由で。
その事がよっすぃーを凄く傷つけてるかもしれない」
「…うん」
「それはこれからも治らないかもしれない。だからこれからも傷つけるかもしれない。
でもそれは嫌いとかそういうんじゃなくて…」
「もうわかった」
なつみが言い切る前にふわりと背中にひとみの腕が回される。
その瞬間、驚いたなつみは少し逃げるように身を引いた。
するとひとみは体を離して納得したように頷く。
- 294 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:54
- 「…今の逃げたのが『安倍先生』でさっき手を握ったのが『なっち』って事でOK?」
「……うん、…そういうこと」
「なるほどね、わかったわかった」
なつみの頭を撫でながら笑う。
その顔は怒った顔でもなくて穏やかだった。
「…嫌じゃないの?」
「嫌も何も付き合ってからずっとそうだったんだから、嫌だったらとっくに別れてるでしょ?」
「そうだけど…」
「要するにうちが卒業すれば何の問題もないわけでしょ?それまでの辛抱じゃん。
卒業まで1年もないしね。…卒業できればだけど」
あぐらをかいて照れくさそうに人差し指で頬を掻く。
成績悪いもんね、よっすぃー。
保田先生がよっすぃーの成績表見てため息をついてたのを見た事があるしさ。
- 295 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:55
- 「とりあえずさ、人前では我慢する事に決めた。なっちの事も考えないでゴメンね。
これでも反省したんだよ?…無視とかしてゴメン」
「よっすぃーが悪いわけじゃないから!」
なつみは手を伸ばしてひとみの髪を触る。
ひとみは気持ち良さそうに目を瞑り、小さく頷く。
久しぶりの甘い空気。2人きりの体育館。
何も起こらない訳がない。
「…人前では我慢するけどさぁ、2人きりの時はいいよね?他に人がいるとダメなんだよね?」
「…え、で、も人が来るかも…」
「今はテスト前。みんな帰ってるって」
ずいずいと体の上に乗っかってくるよっすぃー。
焦りだす安倍先生。
生徒はいないかもしれないけど先生はまだいるんだよ。
もう少しでキスしそうな時、運悪く体育館の扉が開く。
その瞬間なつみは両手でひとみをぶっ飛ばした。
ぶっ飛ばされた衝撃で思いっきり床に頭を強打。
- 296 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:55
- 「安倍先生、いたいた…って吉澤、アンタ何してんのよ」
「……痛てぇ……あ、……保田先生…」
「安倍先生も…何してんの?」
「あ…、いえ……」
圭は2人の関係を知らない。
万が一ばれても圭は言いふらしたりはしないとは思う。
でももしばれたら。
付き合ってる事をネタにされる→いつも以上に捕まる可能性大
脳裏に悪夢がよみがえる。
居酒屋で2時間半、ずっと愚痴を聞いたとてつもなく嫌な思い出。
仕舞いにはべろべろに酔っ払って隣にいたサラリーマンに喧嘩売っていた圭。
「…あ、あの!テスト勉強しないでこんな所にいたから叱ってたんですよ!
ね?!そうだよね?吉澤さん?!」
話を合わせて、と目で合図。
いくらアフォな吉澤でも今絶体絶命の危機に陥ってる事はわかる。
なつみと目を合わせて小さく頷く。
- 297 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:55
- 「そ、そうなんですよ。一人で遊んでたら見つかっちゃって…あはは」
「ふぅん。吉澤アンタ余裕ないんだから勉強しなさいよ?中間だってギリギリだったんだから」
「わかってますって…」
折角のお楽しみを邪魔されて不機嫌になるひとみ。
しかもテストの話題なんか出ちゃってもうやる気↓。
慌ててなつみは口を開く。
「…あ、何か用ですか?私を探してたみたいですけど…」
「あぁ、この後予定ないなら飲みに行かない?紗耶香もいるんだけど」
最後の言葉にひとみのぴくりと耳が動く。
紗耶香。市井紗耶香。教育実習生で人気のある紗耶香。
度々なつみと2人で会話してるのも見かける紗耶香。
自分よりは大人で学生だけど学生じゃない紗耶香。
ぐるぐるぐるぐる頭の中に姿が現れる。
- 298 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:56
- 「あのー…」
「何よ、吉澤」
「うちも行……」
「ダメに決まってんでしょ」
間髪いれずとはこの事か。
最後までしゃべってないのに即効で却下とは。
なつみは心の中で圭に拍手を贈る。
「生徒がテスト前なのに先生は飲みに行くのなんてずるいっすよー。
生徒の苦しみも考えて今は飲みに行くのやめましょうよ!ね?!」
「先生にだっていろいろあんのよ、それよりアンタ早く帰ってテスト勉強しなさいよ!
赤点があったらアタシが夏休み中マンツーマンで教えるからね!」
「……マンツーマン…勘弁してください…」
「じゃあ行きましょうか?安倍先生」
なつみの手を強引に引っ張って圭は歩く。
突然の事になつみは戸惑いながらもそれに引っ張られて歩いていく。
呆然と口をあけて何も出来ないひとみ。
「な、なっちぃ…」
体育館の真ん中でまたポツーンとひとりぼっちになってしまった。
- 299 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:56
- 体育館を出た圭となつみ。
さっきと変わらず圭が手を引っ張ったまま。
「…あの!保田先生、もう自分で歩きますから…」
なつみが言うと圭は振り向きニヤッと笑う。
そしてパッと手を離した。
なんでいきなりこんなに引っ張られたんだろう、と疑問に思ってると
その答えが圭の口から出た。
「お2人さんの邪魔してみました」
「……………え」
圭はもう一度ニヤリと笑う。
「…さぁーて!飲みに行くよー!いろいろ聞きたいこともあるしねー?」
両手を挙げて背伸びをしながら前を歩いていく圭。
その後姿を見つめるなつみ。
- 300 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/19(月) 22:57
- 「…もしかして…ばれてる……?」
背中に嫌な汗を感じた。
その後、紗耶香と合流し、居酒屋へ向かう三人。
終始無口で青い顔のなつみ。
それを心配する紗耶香。
しかしその理由を圭が話すと見る見るうちに青い顔が赤い顔へ。
夜遅くまで2人にからかわれたのは言うまでもない。
一番不幸なのは安倍先生かもしれない。
…と、思ったが。
「…なっち……変な事されてなきゃいいけど……」
久しぶりの甘々ムードを邪魔され、心配で夜も眠れず、
テスト勉強もはかどらないひとみが一番不幸かもしれないのでした。
どうなる、吉澤ひとみ。
テストまであと少し。
- 301 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/01/19(月) 23:05
- 年明け一発目(遅
_| ̄| ○ゴメンナサイ
286>名無しどくしゃ様
あけましておめでとうございます(遅
今年もおがたか推しです。
先日のハロモニでのおがたかで再認識しました。
おがたかマンセー!(もちろんみきこんも(w)
287>rina様
更新遅くて申し訳ないです。。
川VvV从<もっと頑張れよ
はい、すいません、美貴様。
288>炉様
おもしろいコテハンですね。
大量でもないのですがこれで勘弁してくださいil||li _| ̄|○ il||li
- 302 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 00:13
- いまかいまかと待ってましたw
なちよしいいなぁ(*´-`)
- 303 名前:名無し辻紺さん 投稿日:2004/01/20(火) 03:52
- 更新乙です。
作品はもちろんのこと、作者さまのテンパリ具合も楽しみにしてます。
- 304 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/01/20(火) 14:57
- キタ*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・
やすすナイスw
もうまこあい最高。みきこんも最高(w
- 305 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/20(火) 21:50
- 更新お疲れさまです〜。
よっすぃー頑張れ!ケメ子に負けるな!
あやごまも楽しみに待ってます。
- 306 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:36
- あさ美は1人、歩いていた。
昨日の夜から降り出した雨は朝には止んだものの、道路には水溜りが沢山。
それを避け、クラスメイトに挨拶を交わしながら駅から学校までの道のりを歩く。
以前は麻琴と2人で通学していたのだが最近1人の方が多い。
1人と言うか一応一緒と言えば一緒なんだけど。
なぜなら。
「愛ちゃーん!今日一緒に帰ろうねぇ〜。テストがあるから部活ないもんねぇ〜?
昨日は一緒に帰れなかったしねぇ〜?」
「…麻琴、それはさりげなく嫌味を言ってるの?」
「そ、そんな事ないよぅ」
あさ美の数メートル先を歩く麻琴と愛。
今では電車の時間も合わせて一緒に登校するのが決まってるようで。
なんとなく親友を取られたような寂しさもあり、恋人がいるという羨ましさもあり。
とりあえずとても一緒に歩こう、なんて気にはなれないので、
1人寂しくラブラブバカップル(一方的に麻琴が)の後ろをついていく。
「…まこっちゃん、愛ちゃんがいるとあたしの方全然向いてくれないもんなぁ」
小さく呟き、苦笑い。
そんなあさ美の後ろから自転車のベルの音が聞こえる。
- 307 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:37
- 「紺野さん、おはよう」
後ろからの声に振り向くと自転車に乗っている美貴。
今まで朝に会う事はなかったのに、と少し驚く。
心なしかとても嬉しそうな表情なのは自分と会った事が嬉しいのか、
真新しい自転車が嬉しいのか、どっちなんだろうと勝手に考える。
多分自転車なんだろうけど。
「…えーと…紺野さん…?」
「あ、お、おはようございます」
「初めて朝会うね…ってあれ?朝いつも1人なの?小川さんとは一緒じゃないんだ?」
「…いえ」
一言返して前を指差す。
そこには嬉しくてたまらないと言った感じではしゃぎながら歩く麻琴と
特に変わった行動もせず普通に歩く愛の姿。
ご主人様との散歩が嬉しくてたまらない犬の様。
「あぁ、そっか」
美貴は納得したように頷いて、
そして乗っていた自転車から降りてあさ美の隣を歩く。
てっきりそれだけで通り過ぎていくと思ったのにまさか一緒に歩く事になるとは。
- 308 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:37
- 「遠慮して離れて歩いてるんだ?」
「遠慮と言うか…まこっちゃん1日朝昼晩と愛ちゃんと話さないと禁断症状が出るので…。
結構怖いんです、その症状」
唸ったり、突然叫んだり、授業中ガタガタ震えたり、
楽しみに取っておいたお弁当のおかずの大学芋奪ったり。
最後のが一番勘弁して欲しい症状なんですけど。
「はは、禁断症状ってなんだよ小川さん。しかし朝昼晩…って愛ちゃんも大変だなぁ」
美貴は笑って前の麻琴に向かってツッコミをいれる。
そういえば遊園地に行った以来まともに話すのは久しぶりかもしれない。
あの時は強引になつみに引っ張られ、
その後、物凄い勢いで謝られて飲み物おごってもらって帰っただけだった。
次の日のなつみの様子は特におかしいと思うところはなかったし、
ひとみとも美貴とも学年が違うので会う事もなく、会ったとしても少し挨拶をするくらいで、
未だにあの時の事は何が起こってたのかよくわからないのだけれど。
- 309 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:37
- 「紺野さんは勉強してる?期末テストの」
「あ、はい。でもあたし英語が苦手で…困ってるんです」
「へぇ、首席でも苦手教科ってあるんだ?ちなみに美貴は社会が苦手。特に地理ね」
生徒会副会長でかっこかわいくて苦手なものなんてないと思ってたのに、と言うのは偏見だろうか。
美貴の嫌いなもの、苦手なものは地理と絶叫マシーン。なんとなく脳内にインプット。
というか首席が全ての教科が得意と言うのも偏見だけど。
そんな話をしてる最中でも美貴の顔は笑顔のまま。
少し鼻歌を歌いながらハンドルの右側についてるベルを人差し指でトントン、と叩く。
「…あ。新しい自転車ですね?シルバーって藤本さんに合ってますよね」
なんか凄く社交辞令っぽくなってしまった発言にあさ美はハッとする。
しかもちょっと棒読みっぽかった…。
「そう?前のは盗まれちゃったからね…」
あさ美がそんな事を思ってることなど知らずに美貴は一層笑顔になる。
なでなでと子猫を撫でるようにハンドルを撫でる美貴。
そして美貴は思う。
自分にファンがいるのは正直悪い気はしないけど盗むのはやめて下さい。
窃盗罪です。普通に犯罪なんで。
- 310 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:38
- 「また盗まれないといいですね…」
「えぇ…嫌な事言わないでよ紺野さん…」
2人で苦笑いを浮かべて歩く。
校門まで来ると前を歩いていた2人は止まって美貴とあさ美を待っていた。
「藤本さん、おはようございます」
「おはよ、2人とも」
「仲良く登校ですか?」
「それは君たちの事でしょう」
君たち、と言われ照れてる麻琴。
本当の事言わないで下さいよぉ、とか言いながら美貴をばしばし叩いている。
こんなことが出来るのは下級生の中で麻琴くらいなものだろう。
違った、もう1人いた。最強従姉妹が。
「それにしてもメチャクチャ注目されてましたよ、皆に」
「はァ?注目…?」
美貴がふと周りを見ると登校中の生徒のほとんどが4人の事を見ている。
4人と言うより美貴とあさ美を見ていると言った方が正しいのかもしれない。
- 311 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:38
- 「校内人気ナンバー3内に入る藤本さんが2人で歩いている。
それは親友の吉澤さんでもなく、従姉妹の亜弥ちゃんでもなく、
生徒会役員で後輩でノーマークのあさ美ちゃん。
皆が気になるのもあたり前だと思いますけど」
普通に真顔でさらっと答える愛。
隣の麻琴はうんうん、と頷く。
真顔で答えた後、含み笑いをしながらチラリとあさ美を見る愛。
あさ美は愛と2人きりで喋った時の事を思い出した。
*
『あさ美ちゃんも恋の事、悩んでたら言ってね!
大変だろうけど…あたしが見る限りでは石川さんよりあさ美ちゃんの方が似合ってる気がするし!』
『え!?』
『藤本さんとあさ美ちゃんの事だよ!』
*
そう言って笑っていた。
そう、愛は気がついているのだ。
- 312 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:40
- 麻琴に関しては何の事かわかってないのでただ単にからかってるだけだが、愛は違う。
本質を知っている人のからかいほど立ちの悪いものはない。
あの含み笑いの中に隠されてる事がわかるのもやだなぁ。
「…別に同じ生徒会役員なんだから一緒に歩いてたって問題ないじゃん、ねぇ?」
「…え、そ、そうだよ!別に…一緒に登校するくらい…」
あさ美がそう言った瞬間隣にいたはずの美貴の姿が消えた。
「ウワァァァァン!!みきてぃーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「…うん?…わああああああ!」
ガシャーン、という大きな音とともに後ろからの思いっきりのラリアットで自転車ごと倒れこむ美貴と、
その後ろに覆いかぶさるように乗っかるひとみ。
「ミキティ!助けてよ!気になって勉強できないよ!赤点だよ!マンツーマンヤダよ!」
倒れこんでる美貴の胸倉を掴んでぶんぶん振り回す。
振り回されてる美貴は歪んだ顔で右腹を抑えながら成すがまま。
どうやらハンドルがヒットしたらしい。
- 313 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:40
- 「ゲホっ…う…あ…ァ…何…っ…がァ…?」
言葉になってない。
その様子を唖然としながら見ている愛とあさ美。
麻琴は手を叩いて笑っている。
昨日降った雨のせいで道路は濡れている。
もちろん、倒れこんだ美貴の服はビショビショに濡れるわけで。
濡れた服を気にしつつも美貴は体を起こした。
「なぁ!…にすんの…ゲホ……あぁ…!!」
美貴の目の前に見えるのはグニャリと曲がった新品の自転車のかご。
大事に大事に大事に使っていこうと思い、バイト代をはたいて少し高い自転車を買ったのに
いとも簡単に無残な姿に変えられてしまった自転車(シルバー)。
あまりのショックに言葉を無くす。
「ミキティ!ぼーっとしてないでうちを助けてよ!もう頼りになるのはミキティしか…」
「あの…吉澤さん」
「…ん?何、紺野?」
「藤本さんが…」
「…あ…ぁ…美貴の…自転車…」
「あっはっはっは!」
「ちょ、麻琴、笑うのやめなって…」
そんな5人の様子は目立ちすぎる。
- 314 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:41
- さっきまででも目立ってたのにひとみが増えれば目立つのは当たり前。
騒ぎなんかにはいち早く駆けつける人物がこの学校にはいた。
凄く遠くの窓から声が聞こえる。
「あんた達さっさと校内に入りなさい!」
「ゲ…ケメコ。…はいはい、わかりましたー。ミキティ、行くぞ!」
襟元を引っ張られて強引に連れてかれる美貴。
だんだん遠くなる置き去りになっている自転車に手を伸ばしながらも、
なすがままにひとみに連れて行かれた。
「藤本さんって…」
「報われない人…」
愛とあさ美は哀れんだ表情で呟いた。
「あたし達も早く行こー?遅刻するよ」
「うん、そうだね…。あ、ちょっと待って、自転車片付けてから行くから」
「あさ美ちゃん、良い子ー。んじゃ、先行ってるね」
麻琴はあとでねー、と言いながら手を振って愛と歩いて行った。
- 315 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:41
- あさ美は美貴の置き去りの自転車を起こして3年生の自転車置き場に運ぶ。
当然3年生だらけな訳で注目の的だ。
中には睨んでる先輩もいる。
怖い、早く置いてさっさと行かなきゃ。
あ…、そういえば鍵、渡さないと乗れないよね…。
そんな事をふと思っていると目の前には2人の3年生が。
「ねぇ?美貴と仲良いんだね?」
「生徒会役員、だっけ?」
同時に質問攻め。
あまりよく聞き取れなかったけどなんとなく返事は一言で済みそう。
「はぁ…まぁ…」
「ふぅん…」
ああ、凄く睨まれてる。不審がられてる。
きっとこの後ちょっと裏庭来いよ、とか言われてもっと人数も増えて、
ボコボコに殴られたり、あんな事されたりこんな事されたりするんだ。
あさ美の脳内では昨日の夜やっていた学園ドラマのワンシーンが駆け巡る。
- 316 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:42
- 「あ、あの、遅刻しちゃうんで…すみません…」
「ちょっと待って。一個質問」
「な、なんですか」
一個質問とか言いながらきっと殴るんだ!
あさ美はぐっと歯を食いしばった。
「ねぇ、美貴って梨華ちゃんと別れたの?」
「ひぃ…っ…え…?石川さん…?」
「石川梨華」
「わ、わかりません…」
「そっか、じゃあいいや。ごめんね」
2人はそれだけ言うとあっさり去って行った。
その場に1人取り残されるあさ美。
「あれ…、裏庭は…?」
「何してんの?紺野?」
振り向くと首を傾げてあさ美の様子を見る梨華が立っていた。
車での送迎だから余裕で滅茶苦茶ギリギリ登校。
初めて会った時から思っていたが、今日も個性的な服を着ていらっしゃる。
- 317 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:42
- 「なんか…よくわかんないんですけど…」
「ふぅん?あ、あの2人親衛隊長と副隊長じゃない」
「……は?親衛…?」
「一応あたしにもファンがいるんだよ?よっすぃーや美貴ちゃんほどまでには行かないけど」
「へぇー…」
そういえば美貴とかひとみとかのファンとはタイプが違ったような気もする。
3年の中でのベスト3はきっとこの3人なんだろう。
「あの2人がなんか言って来たの?」
「え…、あの…藤本さんと石川さんは別れたのか?、って」
あさ美が言い辛そうに言うと梨華はその言葉に一瞬表情を歪めたが、
すぐに声を上げて笑う。
「別れたも何も最初から付き合ってもいないのに。
前からそう言ってるのに全然信じないんだよね、あの2人」
「……え?付き合ってないんですか…?」
あさ美は目を丸くする。
2人の間にただならぬ雰囲気は感じていたけれど、間違いなく恋人同士だと思っていた。
- 318 名前:FIVE! 投稿日:2004/01/31(土) 22:42
- 「うん。ただの友達だよ。……まだ…友達でいてくれてるから…」
「え?」
梨華の最後の言葉が聞こえなくてあさ美は聞き返す。
けれどなんでもない、と首を横に振ったので追求はしなかった。
美貴と梨華にはきっと別な何かがあるんだろう、とあさ美は思った。
「授業始まるよ?」
「あ、じゃあ…すみません、あたし行きます!」
パタパタと走り、その場を後にしたあさ美の後姿を
梨華は眩しそうに目を細めて見ていた。
- 319 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/01/31(土) 22:56
- 月2回更新になってしまいました、すみません。
調子がいいとスラスラかけるんですけど…ごめんなさい_| ̄|○
302>名無飼育さん様
待ってもらってあの程度の更新量で申し訳ないです。。
安倍さんも卒業しましたが引き続き出ますのでよろしくお願いします。
303>名無し辻紺さん様
ありがとうございます。
全然テンぱってないですよ!これが素ですから…。
304>名無しどくしゃ様
ヤススはこんな役で(w
CPDD万歳!
305>名無し読者様
あやごまはもうすぐまた登場予定です。
こうご期待!(嘘です、期待しないで下さい_| ̄|○
- 320 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/02/01(日) 08:47
- なんてハラハラドキドキな展開(;´Д`)
まこあいで登下校なんて堪らないね。
と言いますか、美貴様が可愛過ぎる。推しになりそう(w
- 321 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/04(水) 19:44
- やったぁ〜更新されてる〜!!
まこっちゃんと愛ちゃんのラブラブっぷりが、目に浮かんできそうです。
梨華ちゃんにも親衛隊がいたんですねぇ〜。ちょっと以外でした。
次の更新も楽しみに待ってます、頑張って下さい!!
- 322 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/16(月) 23:59
-
「で、弁償してくれるんだろうね?よしこさんよ」
「弁償?何の事?…あ、その飴くれ!」
「しらばっくれてるんじゃなーい!美貴の自転車のかご!かごちゃんだよ!
大切に乗っていこうと思ったのにあんなに曲がって…」
「うっさい」
泣いたふりをする美貴のおでこにひとみはチョップをする。
痛ぁ!、と声を上げて美貴はおでこに手を押さえた。
自分は被害者なのになんでこんな仕打ちを受けてるんだろう。
泣きたくなる。というかもうすぐ泣ける。あと一息で。
「それよりさ、全然勉強がはかどらないわけよ」
「…それよりって…美貴の自転車はどうでもいいんだね…。
……はかどらないわけよ、って普通に言うけど明後日から試験だよ?
絶対大丈夫のはずないのはわかってるけど一応聞くね、大丈夫なの?」
「大丈夫なわけないじゃーん」
「うん、知ってる」
まるで漫才師のような2人。
- 323 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/16(月) 23:59
- それをただ遠くから見ているクラスメイト達。
人気者の2人の所には何故かクラスメイトはあまり寄ってこない。
どちらか片方だけが居る時は話しかけてくるが2人揃ってる時は話しかけてこない。
それぞれ美貴にもひとみにも沢山友達はいるのだが。
前に理由を聞くとセットでいる時は神々しすぎて話しかけられないんだそうだ。
ワンセットはお買い得みたいな感じらしい。
お買い得ってなんだよ!
脳内ツッコミをとりあえず終わらせた美貴は視線をひとみに戻す。
「で、どうする気なの?もうやばいっしょ?」
「手は打ってあるのさ」
「へぇ、で、その手っていうのは?」
「その名も『頭の良いミキティに勉強を教わっちゃおう作戦』。
ふっ……完璧」
「……」
もうちょっと捻りをくわえた作戦名には出来なかったんだろうか。
出来ないだろうな、こいつの脳じゃ…。
『頭の良い』ってのは良いんだけど『教わっちゃおう』って事は結局美貴は巻き込まれる訳ね。
美貴はため息をついて目を瞑った。
- 324 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:00
- 「何?あまりにも良い作戦すぎて言葉も出ない?」
「…うん、あらゆる意味で言葉が出ないよ」
「あっはっは、だろうね!吉澤さん頭良い!カッケー!」
「はいはい…」
たった一日で何かが変わるとは到底思えないけど
勉強をする気になったってのだけは褒めてあげようか。
………?
…いや、なんか間違ってるぞ。
なんで自転車壊されたのに美貴が褒めなきゃなんないんだ。
ばからしい、やめやめ。
「でねー、ミキティ?勉強する場所なんだけど、ミキティの家に決まりました」
「…って勝手にかい!」
「だってうち電車乗らなきゃだし、ミキティの家だったら歩いてもそんなかからないじゃん?」
「…まぁ…そうだけどさ」
「でもさぁ2人きりで勉強っつーのも嫌だよね。ミキティが変な気を起こしそうで」
「ありえない」
キモイから、ありえないから。
- 325 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:00
- でも確かに2人きりでひとみと勉強するのは危険かもしれない。
途中で絶対飽きて勉強どころではなくなるだろう。
そうしたら自分の勉強も出来なくなる。
勉強できなくて自分が補習とかになったら洒落にならない。
「…誰か呼ぶ?梨華ちゃんとか…」
「梨華ちゃん、あーだこーだうるさいからやだー。
『何でこんな簡単な問題もわかんないのよ!』って甲高い声でキーキー言われるんだよ?」
「じゃあ他に誰がいるのさ」
「んっふっふ。実はもう手配してるんだなー」
全くこういう事ばかり頭の回転が速いんだから。
その速さを勉強に使えと。
ひとみはニヤニヤと美貴に携帯の画面を見せた。
そこには送信メールの履歴が映し出されている。
覗き込んで見ると相手の名前は────。
- 326 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:01
- 「……来てくれるの?ていうか美貴の家わかるの?」
「メールで説明しといたから大丈夫、たぶんわかるっしょ?
頭良いからミキティも教えてもらえば成績アップするよきっと」
「そっか…」
この人も大変だな。中学の頃から振り回されてたんだろうな。
美貴が同情してると前の方でクラスメイトが口をパクパクして手を振って呼んでいる。
っていうか声出して呼んでよ。いくら声掛けづらいとしてもさ。
「美貴、お客さん」
「え?」
指を差す方を見ると扉の所で申し訳なさそうに縮こまって立っているあさ美がいた。
それに気がついて勢いよく立つとガタンと思いっきり椅子が倒れた。
それを見たひとみは右手を挙手して美貴に言う。
「藤本さん、動揺しすぎでーす」
「うっさい」
ひとみの頭をぺしっと叩いて机の間を縫ってあさ美の元へと急ぐ。
クラスメイト達も2人の様子が気になり、目線は釘付け。
なるべく平常心を保ち、あさ美に声を掛ける。
- 327 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:01
- 「ど、どうしたの?紺野さん」
げ、声が裏返った。
ひとみがくすくす笑ってる声が聞こえて美貴は何気なく教室から出た。
「あの…これ…」
差し出されたのは自転車の鍵。
そういえば愛しの自転車ちゃんはひとみに引っ張られていったせいで、
その場に放置したままだった。
「あ、わざわざありがとう!…で、自転車は……」
「あの、自転車置き場に置いておきました。3年生の」
「ゴメンね…ありがとう。…かごはさァ、ボコボコのままだったよね…?」
「え?はい…ボコボコでした」
「そうだよね…」
あれは全て夢だと思いたかったがそうではなかったらしい。
やっぱり弁償してもらわなきゃだな、と美貴は心の中で思った。
- 328 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:01
- 「じゃあ、あの、あたし教室に戻るので…」
「あ、うん。わざわざありが……っお!?…か……っ」
思い切り後ろから羽交い絞めをされて首が絞まる。
ちょっと待って、息が出来ないから。普通に落ちちゃうから。
誰だよ!と思ったけどこんな事するのは1人しかいなかった。
「ねぇ?今日さ、ミキティんちで勉強会するんだけど紺野も来ない?」
「え…?」
「な…っ…ん……」
何言ってるんだ、と言いたいのに声が出ない。
「ミキティも是非来てよって言ってるし。ねぇ?ミキティ?」
「そ、そうですか…?」
ごめん、無理。もう声が出ない。絞めすぎ。力入れすぎ。
絞めている腕をバンバン叩くとああ、と少し笑ってひとみは腕をはずした。
- 329 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:02
- 「…はぁ…はぁ…今日は…厄日か……」
「まぁ、そー言う事だから授業終わったら玄関とこで待っててね?紺野」
「え、あ、はい…」
戸惑いながらチラリと美貴を見つめるあさ美。
その顔に胸を締め付けられながらも心の中は平常心で微笑む。
「……紺野さんが予定ない様なら……一応先輩だから教えられると思うし」
「じゃ、じゃあ…行きます。勉強、教えてください!
あの、それじゃあ教室戻ります」
あさ美はペコリと頭を下げてその場から走っていった。
無理もないよ、この階3年生だらけなんだから。居心地悪いに決まってる。
後姿をぼうっと目で追っていると腰をつんつん突付かれた。
- 330 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:02
- 「青春ですね」
「…何がですか」
「いや、2人が」
「…誰がですか」
「感謝して欲しいですけどね」
「…………………アリガトウゴザイマス」
「えぇ?なんだってー?」
「…氏ね。そして自転車のかご弁償しろ」
「……。さて授業が始まるから席に着かないとね!」
聞こえなかった振りをしてササッとその場から離れるひとみ。
授業なんて聞いてない癖して良く言うよ。
それよりも家に来るなんて。
部屋綺麗にしておけば良かったよ。
後悔してももう遅いんだけど。
- 331 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:03
- ────放課後。
「じゃあ行こうか、ミキティ」
「あぁ、うん」
教室から出ようとした時ちょうど紗耶香が入ってきた。
横には数人の生徒を引き連れている。
この人も相変わらず人気だな、と人事のように美貴は思う。
「おっと、2人で仲良く下校?」
「仲良くとか言わないで下さい、キモいんで」「とりあえずあなたには負けません、市井さん」
2人同時に言葉を発し、足早に去っていく。
その場に残された紗耶香はポカーンとして立ち尽くした。
そして首を傾げる。
「…藤本の言ってる事はわかるんだけど吉澤は何の事だろう…?」
それを知るのはもう少し後の話。
- 332 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:03
- 2人が玄関に行くとすでにあさ美は待っていた。
それに気がつくとひとみは小走りであさ美に近づく。
「紺野!待った?」
「いえ、来たばかりです」
「そっか」
それを見て美貴は呟く。
「……恋人同士かよ」
鋭い眼光で見られてる事を察知したひとみはサッとあさ美から離れて
振り向かないで美貴に手を振る。
『いちいち妬くなよ』と言ってるようでますます頭にくるけどね。
ブツブツ言いながら美貴は自転車小屋へと向かう。
ボコボコのかごを見て再びガックシするけどピンと良い事を思いついた。
- 333 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:04
- 「……安倍さんに言いつけよう」
きっとひとみの事を怒ってくれるだろう。
ひとみを怒るときっとなつみには逆らえないひとみは反省して弁償してくれるはず。
うん、と頷き1人納得しながら自分を待つ2人の元へと急いだ。
しかし美貴は忘れている。
ひとみはなつみに逆らえないが、なつみはひとみを甘やかしてる事を。
「おっせーよ、あまりに遅いからこのまま2人で愛の逃避行に行こうと思ったよ。ねぇ?紺野」
「え!?い、…行かないです」
「…いや、冗談だから」
顔を赤くして拒否するあさ美。
美貴の頭は混乱中。
可愛い、何あの顔。ありえない。反則だよ。
「ミキティ行くぞ?…ミキティ?」
「…あ?うん…」
「じゃあ、ミキティは姫をサポートね」
「え」
自転車を奪われてドンと押される。
そしてあさ美にぶつかる。
よろけるあさ美を右腕で抱きとめてひとみを睨んだ。
- 334 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/17(火) 00:04
- 「何すんの!」
「チャリで先にミキティんち行ってるわ。んじゃ」
「ちょ、ちょっと!それ以上自転車壊さないでねー!!」
ひとみはひらひらと手を振って美貴の自転車に乗って行ってしまった。
ていうか家の鍵美貴が持ってるから結局入れないぞ。
「あ、あの」
「ん…」
「えと…腕……」
「…あああ!ごめんね!…じゃあ、いこっか」
パッと手を離して歩き出す。
前もこんな事があったような気がする。
あがりすぎだよ…美貴。
こんなんで勉強なんてできるんだろうか。
勉強どころではないのかもしれないと気づいた頃にはもう遅かった。
- 335 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/02/17(火) 00:11
- いつになったらバーベキュー始めるんですかねこの人たち。
時間の流れ遅すぎ。そして更新も遅すぎ。
320>名無しどくしゃ様
なぜかどんどん可哀相になっていきます(w
振り回してくれる人が回りにいっぱいいるんで…ごめんねミキティ(w
321>名無し読者様
石川さんも何気にモテるんです。
今のところ一番順調なんじゃないでしょうかね、まこあい。
波乱が来ないといいけど(w
- 336 名前:rina 投稿日:2004/02/17(火) 09:49
- 更新お疲れ様です!!
ミキティ気苦労人ですね・・・
もう一人の気苦労人は誰なんでしょうか・・・
そこらへんも気にしながら次回も待ってます!!
- 337 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/02/17(火) 16:35
- ミキティワロタ。
ちょっと、いや、かなり可哀相w
みきこん(;´Д`)ハァハァ
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2004/02/20(金) 19:54
- よっすぃーが手配しといたという人物とは、
中学の頃からと言うのがヒントなのでしょうか。
次の更新で出てくるのでしょうか?
楽しみに待ってます!!
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/20(金) 22:27
- ↑なんであげるの
- 340 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/20(金) 23:40
-
「今頃ラブラブですかねーぇ?」
「どうだろうね」
登校と同じく下校も一緒の2人の愛と麻琴。
今日美貴の家で行われる勉強会に誘われた麻琴だったがそれはきっぱりと断った。
一緒に来てくれると思っていたのか麻琴が断るとあさ美はどうしよう、を連発して涙目になっていた。
ちょっと可哀相だったけどこうでもしないと進展しないだろうしね。
一応親友の為に気を使ってみたけど大丈夫かなぁ、なんて不安もあるんだけど。
「藤本さんとあさ美ちゃんの2人だったらなんかあっても良さそうだけど吉澤さんもいるしねぇ」
「…それなんだよねぇ。あの人が邪魔しなければ…」
元々はひとみの為の勉強会のはずなのに邪魔者扱い。
そしてすでに『あの人』呼ばわりされてるひとみ。
それがおかしくて愛はくすくすと笑う。
- 341 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/20(金) 23:41
- 「え?どうしたの?」
「いや、吉澤さんをあの人呼ばわりするなんて麻琴もすごいなぁと思って」
「だってぇー先輩って感じしないんだもーん。石川さんとか藤本さんは先輩っぽいけどさぁ」
とか何とか言っちゃって。
愛は知っている。
ひとみの引退試合を見に行って感動して目をキラキラさせてた麻琴。
素直に見えてこういうとこ素直じゃないんだから。
嬉しそうに手を繋いで歩く隣のコイビトの事がだんだんわかってきて愛は嬉しかった。
「ねぇ?愛ちゃん」
「ん?」
「うちらも勉強会しよっか?」
「えぇ?…うーん、別にいいけど」
愛の返事に麻琴は眉をしかめる。
- 342 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/20(金) 23:41
- 「…なんか嫌そう」
「なんで!別に嫌じゃないよ。たださ…」
「ただ?」
「ちゃんと勉強するの?」
愛の問いに麻琴はニヤっと笑う。
絶対変な事考えてるよ…。
「いろんな勉強しよっか?」
「……ばか」
麻琴は誰かにじゃれたり、くっついたりするのが好きみたいで、
2人きりの時はいつもぴったりとくっついてきていて。
嫌じゃないけどそういう免疫のない愛にとってはどうしたらいいのかわからない訳で。
そして、誰にでもそうなのかな、とか不安になったりして。
「愛ちゃん」
「…ん、何?」
まるで心の中の不安を読み取ったように笑顔で麻琴は言う。
- 343 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/20(金) 23:42
- さっきみたいないたずらっ子みたいな笑みではなくて少し大人っぽい顔。
「手ぇ繋いだりいちゃいちゃしたり、そーいう事したいなって思うのは愛ちゃんだけだから」
「………」
「…本心言うとね、ちょっと英語がわかんないんだー…。
だから教えてもらえたらなぁなんて思った訳で…ダメ?」
ふにゃっとまたさっきの子供っぽい顔に戻る。
もう、何でこんなにギャップが激しいんだろう。
ぼーっとしてるようでしっかりしてて、何も聞いてないようで全てわかってて。
年は一個上で自分自身しっかりしてる方だとは思うけど、
きっと一生麻琴には勝てないんだろうなぁと思うよ。
- 344 名前:FIVE! 投稿日:2004/02/20(金) 23:43
- 「じゃあ、先輩がみっちり教えてあげるからちゃんとついてきてね?」
「はーい、高橋せんせーい」
「言っておくけどあたしスパルタだからよろしく」
「愛ちゃんになら何されても良いでーす」
「……どういう意味でとってるの、それ」
やっぱただのおバカなのかも。
この前亜弥ちゃんが麻琴の事吉澤さんに似てきたね、って言ってたし。
なんとしてもそれだけは避けたいんだけど。
愛の苦悩をよそにえへえへと笑ってる麻琴。
試験よりも麻琴がひとみのようにならないように考える事が先決だと愛は思った。
- 345 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/02/20(金) 23:51
- 少ないんですけど間に入れたかったので更新しました。
336>rina様
気苦労人はあの人です(バレバレ
当初こんなキャラになるはずじゃなかったのに…。
337>名無しどくしゃ様
可哀相です、ホントに。誰がこんな可哀相な役にしてるんだか(私です
338>名無し読者様
中学の同級生は頭が良くて照れ屋さん(自らネタバレ
次回更新に明らかになると思います。多分(w
339>名無飼育さん様
基本的にageとか気にしてないんで良いですよ。
ちょっとドキッとするだけなんで(w
- 346 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/02/21(土) 12:39
- ⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ヤラレタ…
もぉー毎回毎回本気でドキドキするがなーw
神業ですよね(;´Д`)
- 347 名前:スコール 投稿日:2004/02/27(金) 15:17
- この二人は羨ましいくらいにラブラブですねぇ〜
勉強会はどんなコトになるのか楽しみです!!
ミキティの苦難は続くのでしょうか?
- 348 名前:名無しの存在 投稿日:2004/03/01(月) 19:33
- あいまこのカップルあまり好きじゃないんだけど
これを読んでかなり好きになりました。
マイペース更新でがんばってください
- 349 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:52
-
さっき届いたメールは自分の用件のみが書かれていて、
しかもご丁寧に家までの行き方の支持付きで。
それに対して一応断りの返事をすると返事は返ってこなかった。
「…という事は断る事は不可能って事か」
何年間か付き合った仲だから大体思考とかわかる。
だからあたしが無下に断ったりしないという事もわかってるから性質が悪い。
鳴らない携帯を鞄の中にしまって出かける準備をする。
もちろん今日の行く先は、決まってたはずなんだけど。
親友を取るべきか恋人を取るべきか。
愛しいあたしのコイビトは真っ先にあたしを取るだろう。
自惚れてるのかもしれないけどその確信はある。
…さて、あたしはどうしようか。
真希は寮の自分の部屋を出た。
- 350 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:53
- ────場所は変わってこの2人。
「………」
「………」
美貴とあさ美は無言で歩く。
そして2人の間には何故か数メートルの距離があった。
ひとみが勝手に自転車に乗って行ってから少しは喋りながら歩いていた2人だったが、
同じく下校中の他生徒が2人を見て何かこそこそと話しているのが聞こえるのだ。
自然にあさ美は美貴から距離を置き、美貴もなんとなく声を掛けづらくなっていた。
「…あの…!」
「ん、な、何?」
「まだ真っ直ぐで良いんですか…?」
「…あー、うん。もうちょっとしたら右」
「…はい」
本当に一緒に帰ってると言うんだろうか、目的地は一緒のはずなのに。
美貴は早く歩いて少し前を歩くあさ美の隣に行く。
隣に来た事に驚いたのかあさ美はまた美貴から体を離した。
- 351 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:54
- 「…避けないで欲しいなぁ。結構ショックなんだけど」
「そんな…!避けてなんて…」
「いるでしょ?」
「だって…」
歩きながらも下を向いたあさ美の様子に美貴はしまった、と反省する。
最強従姉妹の亜弥はこんなイジワル言うと倍になって文句が返ってくるもんだから、
つい同じように接してしまった。
けれどあさ美は違う。きっと今言葉を探していろいろ考えてるだろう。
「だって?」
「藤本さん…人気あるから、私と2人で歩くのは何か問題がありそうで…」
「問題?…問題なんてないよ。…ただ、試験勉強するためにうちに行くだけじゃん。
2人きりって訳じゃないし、同じ生徒会だしさぁ。ただの先輩と後輩じゃん」
「……そう、…ですよね」
問題なんてない、と否定しただけなのに隣にいるあさ美はますます口を開かなくなった。
- 352 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:56
- 美貴、なんか悪い事言ったかな。
美貴にそんな問題があるのならあさ美だって同じだ。
あさ美は可愛いし、人気だってあると思う。
うちのクラスのミーハーな連中は可愛い新入生をチェックしていた。
アホらしいと思いつつそのチェックリストを見ると見覚えのある名前があった。
【1−2 紺野あさ美 ☆☆☆☆】
一体最大は☆何個なのかよくわかんないけど人気があるのは確かだと思う。
美貴と噂になって困るのはあさ美の方ではないのか、と気を使って言ったつもりだったのだけれど。
そしてまた無言の時間が始まる。
ようやく家が見えてきて、美貴はホッと肩の荷を降ろす。
目の前にはぐるぐると同じ場所を回っているひとみが不服そうにこちらを見た。
「遅っせー、2人の時間が楽しいのはよくわかるんだけどもっと早く来てくれない?
鍵も開いてないしさぁ。鍵開けっ放しにしててよー」
「泥棒が入るだろうが!」
あさ美の隣から小走りで逃げるようにひとみの元へと美貴は駆け寄った。
- 353 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:56
- その後ろをあさ美はゆっくりと歩く。
あからさまに居心地が悪いから逃げた、って感じがしてあさ美はショックだった。
周囲の目が痛かった。
なんでアンタが藤本先輩と一緒に歩いてるんだよ、ってあたしを見ていた2年の先輩の目が言っていた。
だから距離を置いた。
そうしたらあたしの隣に来てくれて、嬉しかったけど。
『ただの先輩と後輩じゃん』
確かにそうだけど、そうなんだけど。心の中がチクッとした。
一緒に遊園地に行ったりしたのは確かになつみとひとみの頼み事で、
でもあさ美にとっては物凄く嬉しい事だったけど、美貴は違う。
自分とは違う気持ちを抱いてる事がわかったから、またショックだった。
初めての、気持ちだった。
- 354 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:57
- 「…紺野ー?早く入ろう?汚い家だけど」
「お前が言うな!」
手招きするひとみに向かって微笑み、駆けて行く。
家のドアの前にいる美貴の横を通り過ぎた時目が合ったけれど特に何も言う事が出来ずに
俯いて小さくおじゃまします、と呟いて家へと入った。
そんなあさ美の後姿を見て美貴は困惑した表情を浮かべていた。
けれど自分の何が悪かったのかわからない美貴は静かに息を吐いて家のドアを閉めた。
「うおー、良い部屋だねミキティ!」
「…それは嫌味か」
「なんでー、そんな意味で言ったんじゃないよー、ねー紺野?」
「…あ、はい…」
ひとみはおどけて言った後、眉をひそめる。
- 355 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:58
- なんじゃい、この空気は。
さっき合流した時からちょっとおかしかったけど
なんでいつの間にかこんな重苦しい雰囲気になってるんだ。
顔は笑ってるが内心冷や汗もののひとみ。
自分がさっさと先に行ってしまった時からの時間何があったのか全くわからないひとみは
ただただ場を盛り上げるのに必死だった。
「…一応お腹減っただろうからおやつ」
「なんだこれー?とば?酒のつまみじゃないんだからー、ねー紺野?」
「…あ、はい…」
シーン。
「…じゃあ、テーブル持ってくる」
沈黙になった所で美貴は席をはずし、奥の部屋へと消えていった。
残されたひとみとあさ美。
ひとみは担いでた鞄を放り投げてドカッとその場に座り込んだ。
それを見たあさ美もぺたりと座り込む。
- 356 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/01(月) 20:58
- 「…何があったの?紺野。なんか変だけど」
「いえ…」
「ミキティが変な事でもした?」
「藤本さんは別に変な事なんてしてないです。変なのはきっと私なんです…」
「……んぅ」
言ってる事が全然わからない。
確か学校にいるまでは元気が良かったはずなんだけど何が起こったのだろうか。
美貴はいつも通りツッコミキティ健在だから変わった様子はなさそう。
「まぁ、たいした事はないのかな…」
あさ美には聞こえないようにひとみは呟いた。
程なくしてテーブルを持ってきた美貴に蹴られる。
「…そこに座られると邪魔だから。もうちょっと向こう行って」
「邪魔だなんてヒドイなー、ねー紺野?」
「…あ、はい…」
とりあえず今日はあさ美に話を振るのはよそうと思った。
- 357 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/03/01(月) 21:07
- なんとなくあがってたのでそのまま更新。
346>名無しどくしゃ様
やっちゃいましたか(w
神業なんていわれると照れちゃいます(w
347>スコール様
ホント唯一幸せなCPだと思います<まこあい
美貴様に続いてアホアホだったあの人まで少し苦労してます(w
そしてもう1人苦労人が(w
348>名無しの存在様
うわぁ、嬉しいです!
どうしてもおがこん派が多いので悲しんでたんですが好きになってもらえて嬉しいです。
まこあい派が増えるように頑張って書きます(照
- 358 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 12:17
- 更新乙です!!
何気に二人の仲が進展しそうでしないところがまた良(ry
このカプマイナーですが自分は好きですよ♪
執筆頑張って下さいね。
- 359 名前:スコール 投稿日:2004/03/02(火) 13:59
- お疲れさまです!!
やっとごっちんが出てきたんですね!
果たしてごっちんはどっちを取るのでしょうか、
続きが楽しみです!!
- 360 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/03/02(火) 16:34
- 美貴様とポンちゃんの微妙な…歯痒い感じがイイ!
そしてヒーチャンぐっじょぶw
- 361 名前:rina 投稿日:2004/03/03(水) 10:29
- やっぱりごっちんでしたか!!
ごっちんは彼女と友達どちらをとるんでしょう?
気になるところです。
次回も期待してます!!
- 362 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/17(水) 09:18
- マイナーカプ好きですw
つまりこの作品愛してます。
更新待ってます。
- 363 名前:名無し? 投稿日:2004/03/26(金) 19:46
- この作品のCPみんな好きです♪
そして、ここの吉澤さんのキャラが最高です☆
続き楽しみにしています!!
- 364 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:03
-
チクタクチクタク時計の針はどんどん進む。
時計の音と文字を書く音しか聞こえない。
「ねぇ、ミキティ?ここはどうなんの?」
「…あぁ、それはこれを代入して……」
「ああ、なるほどね!さすがミキティ!よっ!日本一!」
「……あぁ、どうも」
「……」
カリカリ、カリカリ。
「あの…吉澤さん…ここなんですけど…」
「…あー、えっと…うちよりミキティに聞いた方が…良いと思うんだけど…はは…」
「………」
「………」
誰かうちを助けてくれ。
勉強会が始まって数十分経つがずっとこの調子。
とにかく何も話さない2人。
意図的に話をする事を避けてるのがよくわかる。
そんな2人の真ん中にいる自分は物凄く居心地が悪い。
こんなんだったら家で1人で勉強してた方がまだ数式の一つでも覚えられただろう。
- 365 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:03
- ひとみが苦しんでいる時、美貴はと言うとあさ美の不自然さを知ってか知らずか全く話さない。
質問すれば答えるけれどそれ以上は何も話さず黙々と問題集を解いていく。
この空気の悪さを本当に気がついていないのか、それとも気を逸らしているのか。
どちらにせよよく勉強できるな、とため息をつく。
「……そういえば」
「何!?何々!?」
「……なんでそんなに騒がしいの」
美貴が自分から初めて言葉を発した事に嬉しくて声を荒げる。
もしかしたら良い雰囲気に持っていけるかもしれない、そう思ったからだ。
「遅いね、後藤さん」
「……あぁ、ごっちんか…。何やってんだろ。バッチリ教えといたのに」
「………後藤、さん…?」
美貴と同じく黙々とノートとにらめっこをしてたあさ美が顔を上げた。
疑問に思ってる様な表情と落ち込んでるような表情が入り混じってる。
美貴はその表情に気がついたけれど、どうしてそんな顔をしているのかがわからなかった。
- 366 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:04
- 「あぁ、ごっちんも来るんだ。えっと、松浦の恋人の」
「…そうなんですか」
一言だけポツリと言葉を返すとまたテーブルの上のノートへと目線を落とす。
ひとみは後ろ頭をポリポリと掻いてハハ、と軽く笑い、美貴をちらりと見た。
目が合うと複雑そうな表情をした美貴を見てひとみは思った。
もしかして紺野に襲い掛かったりしたんだろうか、と。
でもまぁそれはないだろうとすぐに撤回する。
美貴は梨華との事があったからそういう事はしないだろう。
一番傷ついてるはずなのに笑って許してあげて元通りになって。
納得できないけど当人が納得してるのならば自分がとやかく言うことではないと思った。
何事もなかったかのように2人は普通だし、梨華は好きな人ができたと言っていた。
誰の事かは知らないけれど、普通の日常を取り戻してる2人を見ていると、
結局自分は何も出来なかったんだよなァ、と実感する。
美貴にも幸せになって欲しい、ただそう思うだけなのだが。
- 367 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:04
- 「…迷ってるのかもしれないし、その辺ちょっと見てくるよ」
「え、あぁ、うん」
この空気が耐えられなかったのか、美貴は2人を残して出て行った。
美貴を追求してもなんでもない、と隠すだろう。
ここは年上の特権をフル活用してあさ美を追求した方が、
この空気の意味が何なのかがすぐにわかりそうだ。
「…紺野、どうしたのさ?」
「……」
「変なのは自分、ってどういう意味?」
ひとみの言葉を聞き、持っていたシャープペンシルを置く。
そして部屋を出て行った美貴の事を少し気にしながらあさ美は口を開く。
「…ただの先輩と後輩なんです」
「……はぁ?誰が?」
「…藤本さんと私が。藤本さんがそう言ったんです。
それは事実なんですけど…それを聞いてからなんか心の中が変なんです」
「…うちとさぁ、紺野も、ただの先輩と後輩だよねぇ?」
「…はい」
「今のは心は痛む?」
「いえ…。そうですよね、って納得します」
「でもミキティに言われるのは嫌なんだ?」
「……はい」
- 368 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:04
- ねぇ、それ思いっきり恋してんじゃない?
というか美貴の事が好きなんです、と無意識ながらも言ってるのと同じ気が。
ひとみは思いっきり脱力した。
なんかもっと深刻な悩みかと思えばそんな事か。
今までの美貴の様子を見ていれば美貴だってあさ美の事気になってるようだし、
あさ美はもう告白してるようなもの。
遊園地の時からうすうす気がついてたけど、この2人、両想いなんじゃないの?
「……自分で気がついてないの?」
「…え…?何が…ですか?」
「いや…」
ここで第三者が口出ししてもあれだし、余計な事言って壊れられてもあれだし。
なんていうか。
このもじもじしてじれったい2人をニヤニヤしながら見るってのもおもしろそうな予感だし。
まぁ結論は。
放って置こう。その方が絶対おもしろい。おもしろいの大好きだし。
- 369 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:05
- 「まぁ、なんとなく言いたい事はわかった。
てっきりさー、来る途中にミキティに襲われてショック受けてんのかと思った」
「…な!?そんな事あるわけないじゃないですか!」
あさ美は顔を真っ赤にして否定する。
そんなやり取りをしてる時、玄関の方から出て行ってた美貴が帰ってきた音が聞こえた。
「お、ごっちん来たかな?」
「………」
あさ美はまた俯き、頬に両手をあてて熱くなった頬を必死に冷やした。
そして足音が近くなって戸が開く。
開くと言っても顔だけが見える程度までしか開かず、中に入ってこない。
「…ただいま」
「ミキティお帰り!ごっちんは?」
ひとみが声を掛けると美貴の後ろからひょこっと顔を出した。
- 370 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:06
- 「…久しぶり、よっすぃー」
「ごっちーん!会いたかったよ、マイハニー!」
ひとみが立ち上がってドアに近寄った瞬間、
少ししか開かれてなかったドアが思いっきり開く。
そのドアを避ける事が出来なくて思いっきりひとみは頭をぶつけた。
あまりの痛さに寝転んでのた打ち回ってる。
その様子をあさ美はおろおろしながら見ている。
「…痛ってぇ…!!感動の再会なのに何すんだミキティ!!」
「いや…、美貴じゃないし…」
「ミキティじゃなかったら誰だよ!ごっちんか!?」
「いや…、ごとーでもないし…」
「……へ?じゃあ誰…。まさか幽…」
そう言いかけた時、ひとみの視界に美貴と真希の後ろにいる人物、もう1人が目に入った。
なにやら黒いオーラを出している。
- 371 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:06
- 「………誰が幽霊?」
「………げ、…………松浦…なんで…」
「げ、って何!?げ、って!」
寝転んだままのひとみに馬乗りになってポカポカ叩きまくる亜弥。
その様子を立ったまま苦笑いして見てる美貴と真希。
何が起こってるのか必死に理解しようとしてるあさ美。
ますます勉強どころではなくなっていた。
「誰が、誰のマイハニーなんですか?吉澤さん?」
「だから…ごっちんが…うちの…マイハ…痛てっ!殴るな!」
「どの口がそんな事言ってるんですか?この口ですか?この口ですか?」
「痛ててててて!抓るな!口が取れる!」
「もう取れてもいいですから、実際」
暴れてる2人は放っておいて美貴は真希をとりあえず部屋に入れてテーブルの所に座った。
「…いっつもこんななんですか?よっすぃーと亜弥ちゃんって」
「あー、結構そうかも、って敬語やめません?タメだし」
「あ、そーだね。じゃあそーする。あたしの事は好きに呼んで、よっすぃーと同じくごっちんでもいいし」
「じゃあ、あたしの事も好きに呼んで」
2人は喧嘩中。2人は友達に。そして1人は未だ混乱中。
- 372 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:06
- 「…えっと」
真希はあさ美の方を見てそれから美貴を見る。
「あ、えっと、紺野あさ美ちゃん。一年生で同じ生徒会役員で、今日は一緒に勉強会に来てもらってて」
「あー、あなたが紺ちゃんかぁ。亜弥ちゃんから話聞いてる。天然ぽいんだよね?」
真希の言葉に我に返ってはっとする。
何か言わなきゃ、と頭の中でいろいろ考える。
「ああああ、紺野あさ美です!初めまして!亜弥ちゃんにはお世話になってま……なってるのかな…」
考えてみたら亜弥とまともに話した事がないのかも。
同じ会計だけど仕事とかした事ないし。
「ぶはっ」
あさ美の言葉に噴出して笑う真希。つられて美貴も笑ってる。
何で笑われてるのかわからないあさ美もとりあえず笑ってみた。
- 373 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:07
- 「…おい!笑ってないで少しは助けてよ!!」
依然叩かれまくってるひとみは救いの手を待っているが誰も救わない。
しかし、3人で楽しそうに笑ってるのが気になったのか、
亜弥はひとみをそこに放置して真希の隣へと座った。
部屋の片隅でひとみ、撃沈。
「ひどいよー、だってごっちん勉強はあたしだけに教えてくれる約束だったのにさぁ、
いきなり吉澤さんのとこ行かなくちゃいけなくなったみたい、とか言ってさぁ、
じゃああたしは?ってなるじゃない?でもごっちん優しいからさぁ、
きっと断れなくて仕方なくて。吉澤さんに勉強教えたって無駄なのにぃ。
絶対ごっちんにちょっかい出してくるだろうからあたしも行かなきゃ、と思って、
ついてきたんだけど、まさか紺ちゃんまでいるとは思わなかったぁ」
「…長い説明ありがとう、亜弥ちゃん」
真希にべったりくっつきながら長々話す亜弥にげっそりしながら美貴は言葉を返した。
せっかく真希が来てくれたけど勉強どころではないなぁ、と思う。
一番教えなきゃいけない奴は死んでるし。
しかも教えたって無駄とか言われてるし。
チラリと目を移すと倒れたまま動かないひとみの姿。
- 374 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:08
- 「…えっと、じゃあ何から勉強すんの?数学?英語?」
「じゃあー英語ー!」
「……えぇ…?」
脳内ミキティが勉強始めるのかよ!と思いっきりつっこんでる。
この状況でマイペースに進めていく真希とそれにニコニコしながらついていく亜弥。
さすが亜弥の恋人。一味違うなぁ、と美貴は思った。
あさ美の様子を見ると少し混乱がなくなったのか落ち着いた様子で座っている。
様子を窺ってる美貴に気がついたのか、あさ美もちらっと美貴を見る。
そして何故か顔を赤くしてから慌てて教科書を開いて勉強を始めた。
なんでそうなるのかさっぱりわからない美貴はまた首を傾げて悩む。
ひとみは放置で始まった意味があるのか不明な勉強会。
「ごっちん、これはぁ?」
「あーこれはね…」
「そっかぁ、さすがごっちんだねぇ」
目の前ではイチャイチャしながら勉強してるけどちゃんと頭に入ってるんだろうか。
真希は一応遠慮してるのか亜弥が絡めてくる腕をなんとなく解いてはいるものの、
亜弥はめげずに絡ませ続ける。
あさ美は目の前の光景が気になって英単語一つ覚えるのも一苦労。
ただでさえ英語は苦手なのにもっと苦手になりそうだ。
- 375 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:08
- 「あ、そこ違うよ、紺野さん」
「え…、あ」
不意に真希に声を掛けられてびくりとする。
どうやら自分の答えが合っていなかったようで、真希はそれを見つけたらしい。
さすが、進学校に通ってるだけあるなぁ、とあさ美は感心した。
「そこはね…」
亜弥から体を離してあさ美の方へ体を寄せてノートを覗き込む。
真希の顔はあさ美のすぐ横にあるわけで、真希は何も考えずただあさ美に教える。
あさ美も苦手な英語を教えてもらえるので真剣にその話を聞いている。
そんな2人の様子が気が気ではない2人。
美貴と亜弥。
亜弥はと言うと頬を膨らませて真希の事をじぃっと睨んでいる。
しかし真希は全く気がつかない。
美貴は2人の様子が気になってさっきから手が進んでいない。
その様子に気がついたのか、倒れたまま動かなかったひとみがのそのそと起きだした。
そして這いずりながら美貴の隣へ座る。
- 376 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:08
- 「藤本さん、藤本さん」
「……何」
「何でイライラしてるんですか?」
「……別に。イライラなんかしてないけど」
「ほぉほぉ、そうですかそうですか」
わざとこんな言い方をしている事に気がついた美貴は思いっきり睨みを利かす。
しかし美貴の睨みなどもう慣れてしまったひとみは知らん顔で鼻歌を歌ってる。
とりあえず、勉強しろよ、勉強を。
美貴は心の中で呟いた。
「…ごっちぃん!ここがっ!わかんないんだけどぉ!」
亜弥は真希とあさ美の間に割って入り、真希の顔に教科書を押し付ける。
「いたた…、亜弥ちゃん、見えないから、見えないから」
「いいの!ごっちんは教科書じゃなくてあたしを見てればいいの!」
「えぇ…なんかめちゃくちゃ…」
亜弥に押されたあさ美はよろけて倒れそうになりとっさに手をつく。
するとグキっと鈍い音が。
鈍い音とともに左手首に鈍い痛みが走る。
- 377 名前:FIVE! 投稿日:2004/03/31(水) 18:09
- 「痛た…」
「ご、ごめん!紺ちゃん!大丈夫!?」
「あ、大丈夫です!全然、ちょっと関節が鳴っただけですから」
「そう?良かったぁ」
亜弥に心配させないようにひらひら手を振るものの、鈍い痛みは治まらない。
大丈夫、と言ってから下を向いて息を吐く。
すると自分の横に影が出来た。
上を向くと隣には心配そうな顔で様子を窺う美貴がいた。
一気に顔が熱くなる。
「大丈夫?なんか変な音したし…。冷やそう?」
「あ…」
手首は掴まないようにしてあさ美を立たせて台所に向かう。
さっきの微妙な空気なんか気にならない。
ただ今はあさ美の手が心配なだけの美貴は手を繋いでる事も気にならない。
しかし握られてる方はパニック状態。
いいです、と断ってもダメ!、と一喝され、おとなしく美貴の後をついていく。
その後姿をひとみはただニヤニヤしながら見つめる。
そしてくるりと前を向くとイチャイチャする真希と亜弥。
「……うぜー、やっぱ今回赤点かもな…」
ひとみはわざとらしく大きなため息をついた。
- 378 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/03/31(水) 18:11
- すみません、レス返しは後ほど…。
- 379 名前:ごーしゅ 投稿日:2004/03/31(水) 21:39
- すみません_| ̄|○
一ヶ月あいちゃいました_| ̄|○
358>名無飼育さん様
作者の一推しCPですが簡単にはくっつきません(w
作者がひねくれ者なのでこの2人も苦労します。
359>スコール様
後藤さん登場です。
相変わらず尻にしかれ気味(w
360>名無しどくしゃ様
今回はひーちゃんが苦労人になりましたよ(w
みんな他人の恋に振り回されると言う事で。
361>rina様
ごっちんは優しいので両方を取りました(w
この2人は変わらずラブラブですね。
362>名無飼育さん様
わーい、愛されてるのか!(w
嬉しいです。ありがとうございます。
363>名無し?さん
ありがとうございます。
個人的に吉澤さんと松浦さんと小川さんのキャラは動かしやすかったりします。
ハチャメチャキャラが好きらしいです、はい。
- 380 名前:rina 投稿日:2004/04/01(木) 08:52
- 更新お疲れ様です!
おぉ!久しぶりのあやごまvvv
亜弥ちゃん嫉妬しかしてない気が・・・
ミキティとごっちんのコンビも合いますねw
みきこんのこれからの進展が気になります。
よっすぃ〜・・・ファイト!亜弥ちゃんには気をつけて!!
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/02(金) 01:14
- 続いててくれてうれしい。
どのカプもいい感じ。当然今回のやつもGOODでした。
うん、またまた続きが気になります。
- 382 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2004/04/02(金) 13:28
- や、や?ぁい激しく萌え(*´д`*)
ひーちゃん羨ましすぎるよひーちゃんw
ごっちんがナイスな役ですねニヤニヤ
- 383 名前:名無し? 投稿日:2004/04/02(金) 16:27
- 更新お疲れさまです。
まってましたよ!
みきこん(?)お互いに意識してるのに全く気づいてないとこがカワイらしいです。
これからも楽しんで読ませていただきます。
- 384 名前:名無しの存在 投稿日:2004/04/29(木) 22:23
- 更新お疲れサマでした。
みきこんどーなるんでしょーか?ガンガン気になります
私事で申し訳無いんですが前スレ見れません、読み返したいのですが・・・。
- 385 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/30(金) 02:58
- >>384
前スレは倉庫いってるよ
そういうことは案内板で聞くとよい
あとレスはsageような
- 386 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/04(火) 18:53
- 更新キタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
お疲れ様っす!
ごっちんキャラいいねぇ。あやごまもびみょーなこんごまもグット。
ちぢまりそうでちぢまらない川o・-・) 川VvV从 の距離…
ますます眼が離せませんな。
そして、ひーちゃん、お疲れ様!(ぇ
- 387 名前:名無しです 投稿日:2004/05/21(金) 10:51
- 気長に更新待ってます!!
- 388 名前:紺ちゃんファン 投稿日:2004/06/02(水) 19:42
- 更新を首を長〜くして待ってます。
早く見たいっす!!
- 389 名前:名のナイ読者 投稿日:2004/06/22(火) 20:22
- 更新まっとります!!
作者さん頑張って下さい。
- 390 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/09(金) 14:13
- まだかな〜?早く読みたいです。。。
- 391 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/07/21(水) 10:06
- 矢口と加護は出ないのかな〜?
- 392 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/09(月) 13:31
- 待ちます
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